>>719 違うような気もするが、反吐が出るほどのクソ女だな。
その辺はもう嫉妬・三角関係・修羅場スレじゃない?まあ、双子の兄弟みたいなスレですが、
寝取られ側が反撃した時点でそっちに行ってしまうような気ガス
>>719 熟読した
すげえなオイ
トランの嫁と一緒じゃん
そういえば不幸な神はよくなかったけど姉恋模様はどうなんだろうか?
くだらない話だが某フラッシュサイトの作品を見てるせいで374の話でキラが寝取られ男というのに激しい違和感を覚える
なんでだよキラは寝取り側だろ?って。
婚約者キラー乙w
姉恋模様<<まあまあ
正直、妻陥落それおじの方が寝取られ的には上。
完成度は姉恋模様が上って感じ。
『藪の中』ってのが何か知らなくて、
調べてみたらモロ被りだったんで、ビビってる最中だったりする
>>708 ご想像にお任せします
それじゃ続き投下
登場人物おさらい
・安室怜……唯に犯された女の子。
・吉良大和……怜の彼氏。
・日色唯……怜を犯した男。
・挟道志保……唯の事が好きな、小さい女の子。
・その他大勢……あんまり覚える必要無し。単なるモブども。
・吉良視点
もう二度と会う事は無いと思っていた。
しかし、断る事も出来なかった。
俺と怜ちゃんは、今一度唯と再会する事になってしまった。
いや、なってしまった……なんて言い方も無いか。
今思えば、俺達は再会するべきだった。
再会したかったわけでも、再会して良かったと思えるわけでも
決してないのだけれど、会わないまま、何も知らないままで
一生を終えていたとしたら、それは許されない事だっただろう。
「うんそう、それでね。
もう一度あの時の飲み会のメンバーで集まれないかなぁ、と思って」
受話器の向こう側からそう提案してきたのは、挟道さんだった。
彼女の娘の志保ちゃんが、余程唯の事を好きになったらしく、
またあのお兄ちゃんと遊びたい、とねだってきたのだそうだ。
それだけなら、もう一度唯と志保ちゃんと、
保護者として挟道さんが同伴して、三人で一緒に会えば良い話だ。
しかし、仮にも挟道さんは人妻だ。
娘が一緒とは言え、若い男と会うのは、旦那に悪いらしい。
最低限、男女織り交ぜて、もっと人数が欲しいとの事だった。
そんなわけで、俺達は今一度、集合する事になった。
俺の中での唯への認識が変わりかけてきているとは言え、
まだあの男と、進んで一緒に遊びに行きたいとは思えない。
それでも、旦那さんへの気遣いからメンツを
揃えたがっている挟道さんの事を考えると、無理に断る事は出来なかった。
子どもが目一杯遊べる時間帯となると、昼間に限定される。
日曜日の繁華街、その駅前で、俺達は久しぶりに顔を合わせた。
「……久しぶり、唯」
「ん、まぁな。こんな事聞くのはアレだけど
怜とは仲良くやってっか、吉良」
「……本当、お前が尋ねるような事じゃないよ。
まぁまぁ仲良くやってるよ。たまに喧嘩もするけどね」
「そうか」
ぎこちないが、これでも俺にとっては精一杯の『普通の挨拶』だった。
まだ待ち合わせの時間までは少しあった。
俺と唯の他には、まだ誰も到着していなかった。
これでも俺は時間には煩い方なので、遅れないように
かなり早めに到着したつもりだったのだが、何と唯の方が先に来ていた。
十五分早く到着した俺より早いとなると、二十分近く早く来たのではないか?
そう思って尋ねてみると、予想以上の答えが帰ってきた。
「三十分くらい前からいるぜ。
電車の運行遅延で到着が遅れると嫌だから、大体いつも
三十分前後早く到着出来るように、心がけてんだよ。
時間が余ったら本屋で立ち読みでもしてりゃ良いだけの事だしな」
「……仕事じゃあるまいし、そこまで自分に厳しくするか?」
「別に自分に厳しくしてるって意識は、無いけどなぁ。
逆の意味で時間にルーズなだけだよ、多分。
三十分単位、一時間単位でしかモノを考えられないから、
きっちり予定の五分前に到着とか、出来ないんだよ」
俺は呆れ返った。
やはりこの男は、よくわからない。
第一、かつては一方的に殴りかかった事さえある俺に対して、
何ら警戒心や敵愾心を向ける素振りさえない。
あれだけ殴られたのなら、一発殴り返される程度の事は、こちらも覚悟していたのに。
以前の飲み会の時は子ども……志保ちゃんがいたから、
遠慮しているのだと思っていたのだけれど。
一体この男は何なのだろう。
普段から気になって仕方の無い事ではあったが、ここにきて
改めて気になりだした俺は、唯からは見えない角度で携帯電話を操作し
唯がZEROという名で記している、例の日記を閲覧してみた。
あまり頻繁に読んでいるわけではないので、
やはり俺の知らない記事、俺の知らない相談事がまた書き込まれていた。
「千春:
ここに来たら、相談に乗ってもらえるって聞きました。
こないだクラスの男子の告られたんですけど、一週間立つのに
まだ返事返してないんです。その子の事、かっこいいなぁとは思うけど
これって、好きだって事なのかなぁ?
オーケーの返事して良いのかなぁ? どう思います?」
相変わらず、この手の相談ばかりか。
まぁ志保ちゃんに気に入られている事と言い、唯は
元々年下に頼られたり、好かれたりする性質の男なのだろう。
このコメントを書き込んだ子も、微妙に誤字が混じっているところや
文章が達者でない点を見ると、恐らく中学生程度の年齢だろう。
「ZERO:
自分の本音がわからないのなら、答えを出すのは、
まだ相手に待ってもらった方が賢明だと思うけどな。
焦って出した答えなんか、相手の男子だって聞きたくないだろうし。
一週間で答えが出せなくても仕方ないさ。
さすがに半年経っても返答無しとかだと、ちょっとまずいけどなw」
「……お前さっきから何してんの? メール?」
突然ZERO本人が……唯が、窺うような目で俺を見てきた。
俺は慌ててウェブ画面を閉じ、携帯電話をポケットに仕舞いこんだ。
「知り合いとメールしてただけ。大した用事じゃないよ」
そう答える俺の表情が不自然で、言葉が滑らかでなかった点は、唯も気付いたようだ。
しかし、別段それ以上何かを疑ってくるような事はしなかった。
そうこうしている内に、残りのメンバーも少しずつ揃ってきた。
「お早う吉良君。……唯も。久しぶり」
「ん」
「お早う、怜ちゃん」
やはりまだ唯と怜ちゃんの間には、壁か溝のようなものが横たわっている印象だ。
もっとも、過去が過去なのだから、それは仕方の無い事なのだろうが。
「お早う、皆」
「おにいちゃん、おはよー!」
程なくして、今日のメインである挟道母子が到着した。
志保ちゃんは唯を見るなり駆け出し、その膝に抱きついた。
抱っこして欲しそうに唯を見上げ、唯も笑って少女を抱き上げる。
「もう、志保ったら。ごめんね日色君」
「大丈夫っすよ、お母さん。今日はいっぱい遊ぼうな、志保ちゃん」
「うん!」
そして最後に、ほぼ同時のタイミングで慎達他のメンバーも集合した。
小さい子どもが一番喜ぶのは遊園地だろうから、
当初は遊園地に行こうと思っていたのだけれど、志保ちゃん自身は
遊園地よりも歌を歌う方が好きらしく、この日はカラオケに行く事になった。
慎や海本は、この年になって遊園地に行くのは辛いものがあると思っていたので
少女がカラオケに行きたいと言ってくれた時は、内心ほっとしていたようだった。
歌う歌も、個人ごとの好みが、かなりはっきりと現れていた。
俺は邦楽の中で比較的新し目で定番のものを、慎は格好つけて洋楽を。
嘉狩さんはorb、海本は徳永英明やDEEN、村雨さんと怜ちゃんはあまり歌わなかった。
挟道さんは、俺達よりは十歳くらい世代が違うから、
自然と懐かしいタイプの選曲になっていた。
そして俺は、ここでも唯の事が気になった。
この男はカラオケでは、一体何を歌うんだろうか?
「唯って、前はどんなの歌ってたの?」
ちょうど慎が声を張り上げてメタル系のを歌っている最中、
周囲に聞こえないように怜ちゃんに尋ねてみた。
「えっと……いろいろ、かな。
音楽の事はよくわかんないけど、さっき慎君が歌ってたような
ロック……? メタル……? 何かそんな感じのとか。
あと一時期、ラップっぽいのに凝ってた頃もあったし……」
まぁ、大方イメージ通りだ。
ここで演歌だとか、フォークソングだとか言われたら、
俺の中での唯へのイメージは、更にわけのわからないものになっていただろう。
そんな事を考えている内に、画面には『森のくまさん』が表示された。
一瞬気が抜けかけたが、よくよく考えれば今日は、
ちょうどこういう歌しか知らないような年齢の子が、一人いるのだった。
「次は志保ちゃんの番か」
何気なく俺はそう呟いたが、どうも違っていたらしい。
「あぁ、それ選曲したの俺」
そう言ったのは、少女を膝の上に乗せた、唯だった。
驚きの表情を隠せない俺を尻目に、リモコン操作で音量を下げる。
それが、耳を聾する程のボリュームから子どもを守るための気遣いだと、
俺が気付くのに数秒かかってしまった。
そう言えば俺も慎も、他の者達も、子どもの事を考えずに
カラオケ特有の大音量のままで歌っていた。
幼児に対する配慮の無さに、俺は少し恥じ入った。
唯は、膝の上の志保ちゃんにマイクを向けてやり、声を揃えて一緒に民謡を歌い始めた。
つくづく、子どもへのサービスが行き届いた男だ。
・怜視点
「怜。次お前の番だぜ」
そう言って唯は、私にマイクを手渡してきた。
けれど私は歌うのがあまり得意ではなかったので、嘉狩にマイクを回した。
そうしてすぐに、あぁ、だから私は駄目なんだと、思いなおした。
唯だったらこんな時、自分が歌わない代わりに、志保ちゃんにマイクを回しただろうに。
順番はある程度意識こそすれ、基本的には子どもを楽しませる事を優先するだろう。
それが証拠に、結局この日唯は、殆ど自分の歌いたい歌を歌わなかった。
幼稚園や小学校低学年で習うような、民謡。
或いは昔のアニメソングなど、画面にキャラクターが出てくるもの。
そういった曲ばかりを選んで、極力志保ちゃんを退屈させなかった。
それに引き換え私達は……唯以外の者は、いろいろと志保ちゃんに話しかけたりして
自分なりに少女を楽しませようとはしていたものの、
さすがに民謡を一緒に歌ってあげる程のサービスは、誰もしなかった。
わずかに慎君が、ブリーフ&トランクスだったか何か、
そんな冗談のような名前のアーティストの、冗談のような歌を歌って
志保ちゃんを笑わせようとしたぐらいだったが、
子どもにはそんな歌よりも、単純に御伽噺のような民謡の方が、わかりやすかったらしい。
結局唯以外の者の気遣いは殆ど不発に終わり、改めて
唯の『良いお兄さん』的な部分を、私も吉良君も、強く思い知らされた。
嘉狩は子どもの気を引こうとして、アイスを注文してあげていた。
確かにそれで志保ちゃんは喜んでくれていたが、それでも唯の優しさに比べると
どうしても、遅れをとるまいと張り合っている程度にしか、見えなかった。
思えば唯は、前からそんな人だったかもしれない。
連れ立って歩道を歩く時、必ず車道側を歩いていた。
一本の傘で二人で雨を凌ぐを時、私を濡らさないように傘を持ち、
代わりにいつも自分の肩を濡らしていた。
二人で食事をする時、食べるのが遅い私に合わせるように
わざとゆっくり箸を進めてくれていたのだと、今なら気付ける。
何でもない、ごく普通の気遣いと言われれば、その通りだけど。
あいつの、小さな気遣いの一つ一つが、今となっては懐かしかった。
あぁ、そんな時代も、私達の間にはあったんだなぁと、妙に感慨深くなる。
……そうして、何でこんな事になってしまったのだろうかと、思い悩むのだ。
あの夜の事は、今思い出しても吐き気がする。
私の上に覆いかぶさってくる唯の目が、声が、息が、匂いが。
ことごとく私の記憶の中を駆け巡り、這い回り、私の呼吸を狭くする。
やはり私の中には、今でも拭い去れない嫌悪感が、蜘蛛の糸のように粘着していた。
もうすっかり傷跡も癒えた筈の、手の甲の切り傷が痛んだ気がした。
いつだったか、自分で刃物で傷つけたやつだ。
あっけらかんと笑うあいつの声が、私は好きになれなかった。
掴み所の無い笑顔と声が、何だか不気味に思えて。
そんな風に、考え事に没頭している時だった。
カラオケを出て、全員で一緒に夕食をとろうとなった。
いつの間にか私の歩調は皆より遅れていて、
気がついたら横断歩道の信号は点滅していた。
「おい、遅ぇぞ怜」
「怜ちゃん、早く」
先に反対側の歩道に辿り着いていた唯と吉良君が、振り返って私を呼ぶ。
トボトボと歩いていた私は、焦って小走りになった。
けれど、私が横断歩道を渡りきる前に、信号の色が変わった。
停止線で止まっていた車の運転手が、携帯電話のメール操作に夢中になっていて
前方を見ていなかったのは、不幸だった。
きっと隣の車が発進しだしたのを見て、その運転手は
反射的にブレーキを解除し、アクセルを踏みなおしたのだろう。
顔を上げて私を見た瞬間に、何事か大きな声で叫んだ運転手の驚愕の表情が、
眠りに落ちる前に私が見た、最後の光景となった。
第六話(だったっけ?)終了
あ、言い忘れてたけど
当分エロ無いんで、人によってはNGしといた方が良いかも
まさか…純愛寝取られ…?
毎回思うんだが何で偉そうなんだろう・・・w
>>736 お前だって俺だって偉そうじゃん。
丁寧語使ってないからそう見えるだけだろ。
職人は全て丁寧語を使わなきゃならない決まりなんて無い。
敬語を使ってないだけで偉そうに感じる奴と会話交わすのって難しいよね
すんません、正直俺も投下時は
敬語の方がやりやすいから、敬語にします。
>>374で下らない私見を書き込んだ時点では
まだ書き手でも何でもない状態だったので、
敬語を使うのが不自然と思い、そのために常体で書き込んだのですが
その後
>>375からいきなり敬語にするのも変なので
慣れないのを我慢しつつ、ずっと常体で通していました。
こっちの方が慣れてるので、今後はもう喜んで敬語使わせていただきます。
で、早速なんですが。
>>732の下から八行目「あの夜の事は」の部分なんですが
これ、間違ってました。全然夜じゃありません。思っくそ真昼間でした。
どうか脳内で訂正しといて下さい。
視点が二転三転してわかりにくいかと思いますが
もうちょっとで終わりますんで、辛抱して流し読みして頂ければ幸いです。
乙!
気にせず、やりやすいやり方でがんがってくれー!
>>739 おらはなんとも思わん方なのでお気の召すままに行動してくらはい
とは言いつつも気分的には( ゚∀゚)o彡゜ワッフルワッフル!
>>739 無視しといたほうがいいよ
たまにやっかむ文盲がいるから
なんでこんなに荒らし耐性無い奴多いんだ?
次374が投下する時荒らしてくれって言ってるようなもんだぞ?
本人ならともかく周りが騒いでどうすんの…これだと荒らしの奴と同罪だな
続編投下します。
そろそろクライマックスです。
もうしばらくお付き合い下さい。
※注意
作者は、医療の事も医療現場の事も、一切知りません。
「いや、これはオカシイだろ」という描写や場面があっても
学の無い者の戯言と思って、流して下さい。
・吉良視点
何が起こったのか、俺には瞬時には理解出来なかった。
飛び散る赤い飛沫。聞きなれない轟音。
骨が破裂するような、鉄が歪むような、形容しがたい音が、
一瞬だけ周囲に鳴り響いた。
その音を擬音であらわすなら、丁度「ゴシャッ」というのが近いだろうか?
続いて「ドサッ」と、ゴミが地面に落ちるような
呆気ない音を立てて、怜ちゃんは倒れ伏した。
それきり彼女は、目も口も動かさず、一声も発さなくなった。
「……あ?」
気の抜けたような声を漏らした俺の横で、唯が携帯電話を操作していた。
唯の判断は的確で、実に迅速だった。
「もしもしっ!? 人身事故です、すぐ来て下さいっ!
場所は矢島駅前の交差点の横断歩道です!
知り合いが乗用車と衝突して……」
衝突した運転手はハンドルを握ったまま困惑の表情を見せ、
志保ちゃんは泣き喚き、慎や嘉狩は錯乱していた。
周囲の通行人達は、驚き戦慄く者もいる一方で、興味津々といった風に
携帯電話のカメラ機能で撮影しようとする者までいた。
夥しい量の血を流し、ピクリとも動かない怜ちゃんを、
パニック映画を見て楽しむ高校生のような表情で、嬉々として撮影する。
「やめろっ! やめろっ!」
俺は、ただそれだけしか、言えなかった。
やめろ、やめろと、何度も叫びながら、怜ちゃんの傍で立ち尽くした。
冷静な判断力を欠き、動く事さえままならなかった。
俺は怜ちゃんのすぐ隣に屈みこんだが、それは単に腰が抜けただけだった。
手を伸ばして彼女を抱きしめようとする俺を、唯が制止する。
「動かすな!」
その表情と声に気圧されて、俺は伸ばしかけた手を引き下げた。
唯が呼んだ救急車が駆けつけたのは、その数分後だった。
しかし俺には、それは何時間とも思える程の、長い時間に感じられた。
一秒ごとに怜ちゃんの魂が消えかけていくのが、
その肌の色から実感出来たからだ。
ただでさえ白かった肌は、更に白く、青くなっていった。
最初は救急車が早く到着して欲しいと、そればかりを考えていたけれど
いざ救急車が到着したらしたで、今度は早く病院に着いて欲しいと
そればかりを考えるようになった。
俺が焦っても仕方ないのに、心が急く。
救急隊員の人が「どなたか一緒に来て下さい」と言った時
俺は何もかもを無視して、真っ先に救急車に乗り込んだ。
後になって思い返してみれば、嘉狩か誰かを押しのけていたような記憶もある。
その程度の記憶さえも不明瞭になる程、俺は焦っていた。
急ぎ発進した救急車の中で、ふと気がつくと、隣に唯がいた。
あまりに慌てていて気付かなかったけど、この男も一緒に同乗したのだろう。
「落ち着け、吉良」
いつしか涙を滝のように流して「怜ちゃん、怜ちゃん」と喚く俺を、
唯は諭すように涼しい声で制した。
不思議と、その声一つで俺の心は静まりかけてきた。
やがて、怜ちゃんと俺と唯を乗せた救急車は、最寄の病院に到着した。
やった。
これで怜ちゃんは助かる。
間に合ったんだ。
俺は根拠も無く、頭からそう信じ込んだ。
普段は気にもかけなかった病院という存在、病院という建物が、
今日はやけに頼もしく見えた。
ドラマなどではよく、手術室の前で男が「娘は助かるんですか?」
などと医者に詰め寄るシーンがあったりするが、俺は何故かそうならなかった。
盲目的に、ここに来ればもう大丈夫、と思えていた。
だから、駆けつけたナースが医者に告げた言葉が、
地獄の使者が放つ死の宣告のように聞こえた。
「先生! さっき環状線の方で起きた玉突き事故に回したせいで、
今安室さんに回せる保存血が足りません!」
医者は驚愕し、俺は呼吸さえ停止するかのような絶望に叩き落された。
「何だと!? 血液が足りなければ、手術も出来んではないか!」
患者の身内を不安にさせるような会話を、
事もあろうに目の前で繰り広げられては、こちらはどうしようもない。
怜ちゃんの血液型はAB型だ。
ただでさえ日本人の全人口の1割にも満たない。
まして俺はA型だ。俺は、彼女に対して何の力にもなれなかった。
「……俺の血を使ってくれ」
そう申し出たのは、唯だった。
「俺もこいつと同じ、AB型だ。血液にも異常は無い筈だ。
定期的に献血に行ってるけど、後日の通知では
検査上の異常が認められた事は無い」
神の差し伸べた救いだろうか。
まさかこんなに都合よく、適合する血液提供者が現れるとは。
いや、或いは唯は、最初から輸血を見越して同乗してきたのかもしれない。
タクシーを利用したのか、慎や嘉狩達も駆けつけてきた。
「しかしね、君。今回の手術に必要な血液は、
献血に供される400ml程度の量では済まないぞ?
この病院にもわずかに保存血が残っているとは言え、
最悪君の方が倒れてしまいかねない……」
「うるせぇっ!!」
その叫び声が唯の者だと気付くのに、俺は一瞬の時間を要した。
俺が聞いた事の無い程の怒声、見た事の無い程の剣幕で、医者を睨みつける。
志保ちゃんはびっくりして、怯えたような目で唯を見上げた。
「患者が二人で済むのと、死人が一人出るのと、どっちがマシだよ!」
その言葉に、医者も頷く。
「ありがとう。力を貸してくれ」
怜ちゃんの手術が始まった。
数時間後。
手術は無事に成功し、怜ちゃんは助かった。
彼女を撥ねた運転手は、ベッドの上で眠る怜ちゃんに、涙を流して頭を下げ続けた。
明日になって、彼女が目を覚ましてからもう一度、謝りに来ます。
そう言って、運転手はトボトボと歩いて帰った。
人身事故なので、今後は当事者である運転手と怜ちゃんの間で
法的、賠償的な問題が交わされる事になるだろうが、今はそんな事はどうでも良い。
怜ちゃんを見守る役を女子一同に任せて、
俺と慎と海本は、別室で安静にしている唯の元へ向かった。
「唯。入るぞ」
ベッドの上で、唯は無言でこちらを見返してきた。
その表情は、これもまた、俺が見た事の無い程に生気の無い顔だった。
「気分が……悪いのか……?」
「別に。まぁ多少血は抜きすぎたから、吐き気はするけどな」
それを気分が悪いと言うのだろう……とは、俺には突っ込めなかった。
傍には、ナースが一人、待機していた。
「戻しそうになったら、ここに吐いて下さいね」
そう言って、傍の台の上に洗面器を置き、下がる。
俺は慎と海本に目配せして、この個室から出てもらった。
唯と、二人で話をしたかった。
「……」
けれど、いざ二人きりになったら、何を話して良いのか、わからなかった。
「……ありがとう。
お前が怜ちゃんに血を分けてくれたお陰で、怜ちゃんも助かったよ」
どうにか搾り出すように、俺はそれだけ口にした。
緊張、あるいはプレッシャー。何か息苦しいものが、俺の中にあった。
唯はちらりと俺を一瞥し、また目を伏せた。
「俺があいつに血を分けてやった事、あいつには言わないでくれ」」
唯が呟く。
だが俺には、意味がわからなかった。
「何で? 唯のお陰で彼女は……」
「俺の血が自分の血管の中を流れてる事を知ったら、
あいつが気持ち悪るがるから……」
俺は言葉を失った。
確かに怜ちゃんは、唯の事を嫌悪していた。
自分を強姦した男の血が、自分の中にも混ざったなどと聞かされて、
彼女がどんな反応を示すのか、俺には想像出来ない。
「俺、あいつの事……
血まで、汚しちまっ……」
最後まで言い切る事さえ出来ず、そのまま唯は表情を隠すように、
頑なに布団の上に俯き、下唇をかみ締めていた。
血まで、汚した。
その言葉は、俺の胸に深く突き刺さった。
そうだ、この男は、怜ちゃんを汚したんだ。
嫌がる怜ちゃんを押し倒し、無理矢理犯したんだ。
……だが。
それも全て、彼女に対する愛情の深さ故だとしたら?
「なぁ唯、お前は……」
「……れ」
言いかけた俺の声を遮るように、唯が何事か呟いた。
俺は聞き孵す。
「え?」
「出てってくれ」
聞こえるか聞こえないか、それ程に小さな囁き声。
俺には、今は意を汲んで一人にしてやる以外に、出来る事が無かった。
俺が出て行こうとした時、入れ違いに挟道母子が入ってきた。
志保ちゃんは唯のベッドに駆け寄り、下から彼の顔を覗き込んだ。
きっと唯は、涙を流していたのだろう。
心配そうに見上げる志保ちゃんが、懸命にベッドの上に手を伸ばす。
「おにいちゃん、どこかイタいの?」
「……だいじょっ……ぶ……だかっ、ら……」
頑なに涙を見せようとしないまま、唯は少女の前で気を張った。
少女は唯の手の甲に、自分の小さな掌を当てた。
「イタいの、イタいの、とんでけー」
無邪気で無垢な気遣いが、何故だか心に染みた。
しばらくしてから、唯は涙を止め、気丈な表情を俺達に向けた。
「もう、大丈夫だから。怜の所に行ってやってくれ」
俺と挟道母子は、唯を一人にして、怜ちゃんの元へ戻って行った。
・怜視点
目が覚めると、白い天井がまず目に飛び込んできた。
続いて、私の顔を覗き込む、見知った友人達の顔、顔、顔。
嘉狩の目元は真っ赤で、泣きはらしていたであろう事が、容易に知れた。
ふと、右手が誰かに握られている事に気付く。
ゆっくりと視線を辿ってみると、一番近いところに、吉良君の顔があった。
何で私、こんなところで寝てるんだっけ?
呆然と記憶を辿る中、医者の先生の声が聞こえてきた。
「軽い記憶喪失状態ですね。
事故時の事を、目が覚めた瞬間すぐには思い出せないんですよ。
ショック状態の影響でね」
あぁ、えっと……事故。
そうだ、私は車に撥ねられたんだ。
たわむ骨と肉の感触、その激痛が、まだ体に残っている。
ズキズキと細胞が痛み、起き上がる事さえままならなかった。
「まだ起きない方が良いよ。大変だろうけど、しばらくは入院だ」
不安に引きつりそうな表情の上に、無理に笑顔を貼り付けて、
吉良君は私にそう言った。
……無理して笑うところは、あいつとそっくりだな。
私は、私を汚した男の顔を思い浮かべたものの、その名は口にしなかった。
ふと、気になった。
見渡す周囲のどこにも、あいつがいない。
吉良君、嘉狩、村雨さん、慎君、海本君、志保ちゃん、挟道さん、
それとせいぜい、先生と看護婦。
この個室の中のどこにも、唯の姿が見えない。
撥ねられる直前、横断歩道の向こう側から呼びかける、
吉良君と唯の、並び立つ姿がまだ記憶に残っている。
唯は、どこ?
心の中でそう呟いたつもりだったけど、うっかり声に出してしまっていたらしい。
吉良君が、一瞬目を逸らした後、決意したように私に答えてくれた。
「唯は今、別の病室にいる」
「……何で? あいつも事故に巻き込まれたの?」
「いいや。ちょっと気分が悪くなってね。体を休めてるだけだよ」
すぐに嘘だと分かった。
先生も看護婦も、勿論他の人達も、嘘をついている人間の目をしていた。
もっとも志保ちゃんだけは、何が何だかよくわかっていないのかもしれないけど。
「先生。唯、怪我したんじゃないんですか?」
「いや、そういうわけじゃないが……。
守秘義務があるのでね、私の口からは詳しい事は教えてあげられません」
釈然としない。納得出来ない。
何故だか知らないけれど、私は、唯が何故病室で休んでいるのか、
その真実を知らなければならないと思った。
知らないままで終わる事は、人道に背くような気さえした。
「お願い、吉良君……唯には私の方から謝っとくから、
本当の事、教えて?」
しばらく押し黙った後、吉良君は口を開いた。
「……そうだね。唯に口止めされてたんだけど、
正直俺も、この話は怜ちゃんにはしておくべきだと思うから」
「良いのかね、君。彼は、知られたくないから口止めしたんだろう?」
「構いません、先生。後で唯には、怒られるかもしれないけど……」
少し困ったように笑いながら、吉良君は私の目を見据えた。
その眼差しに、私も心持ち居住まいを正す。
もっとも体は眠っているから、然程動作に変化は無いけれど。
「良いかい、怜ちゃん。心して聞いてくれ。
唯は……君に、輸血してくれだんだ。それも、
自分の方が、健康状態を損なってしまいかねない程の量を」
吉良君は全てを話してくれた。
保存血が不足していた事。あの時その場に、他にAB型がいなかった事。
駆けつけた他のメンバーも含めて、唯以外にはAB型はいなかった。
私の命を救うために、あいつは血を沢山分けてくれたのだと。
先生は、臓器移植のドナーと一緒で、輸血に協力してくれた人間でも
わざわざ名乗りたくないと考える善意の者は大勢いるから、
唯もそういう意味で、口止めをしたんだろうと言った。
けれど、唯がそんなつもりで口止めしたのでない事は、私にもわかった。
その考えを裏付けるように、吉良君が打ち明ける。
「あいつ……最後に言ってたよ。
怜ちゃんの事、血まで汚しちゃった……って」
その言葉に、嘉狩達も表情を変えた。
「ねぇ、血『まで』って、どういう事?」
「それに、汚したって……」
彼女達の疑問に、吉良君は答えなかった。
「俺も、事の仔細はよく知らないんだ。
だから、聞かせて欲しい。思い出すのも辛いかもしれないけど。
吉良との間に、本当は何があったのか……」
いよいよ、この時が来たと思った。
いつかは、話さなければならない事だと、わかっていた。
私のために自らを犠牲にしてくれた唯に対する、これがせめてもの返礼。
私の罪は、秘匿して良い類のものではない。
吉良君にだけではない。私を取り囲み、心配してくれている人達全てに、
伝えなければならない。私が、どれ程罪深い女なのか。
「わかったわ……全部話す」
私は、唯と出会ってから、決別するまでの事を、今でも鮮明に覚えている。
一つ一つ、記憶をなぞりながら、その全てを打ち明けた。
・唯視点
頭がクラクラする。
呼吸が苦しい。
気管支が狭くなったような気がする。
内臓が全部重い。
立ち上がってフラフラ歩いてみれば、平らな床の上でコケそうになる。
真っ直ぐ歩いてるつもりなのに、柱に肩をぶつけてしまった。
……なぁに、平気さ。いつもの事だろ?
俺は、誰にともなく呟いた。
そう、いつもの事なのだ。
決して、大量に血を失ったからではない。
この体調不良と眩暈と吐き気は、ここ数ヶ月常に俺に付きまとっている。
今更、たかが血を抜かれたぐらいが、何だ?
死ぬわけじゃあるまいし。生き地獄に叩き落されたわけでもあるまいし。
生き地獄、か。
また嫌な事を思い出しちまった。
……いや、違うか。
思い出すなんて、それじゃまるで、普段は忘れてるみたいじゃないか。
そうじゃないだろう。
俺は、一瞬たりとも忘れてはいないだろう。
あの時の怜の涙も、そのために俺が背負う羽目になった荷物も。
忘れた事と言えば、そう。
笑い方ぐらいのものか。
あれからもう、心の底から笑う事は無くなったっけな……。
第七話終了です。
次回、過去編。
>>754 GJ!
これは…最後にドカンと来る流れなのか…
しかし、本当に今更ながら、なぜ主人公たちはこんな名前なのか…
名前はあえて厨二病ネームにしてると思う。
面白いと思うけどちょっとだらだらしすぎだと思う。
一度は推敲してるんだろうけど…
携帯小説読んでるみたいで、そのくせ余分な部分が多い。
でも、これだけ長く書けるのはある意味才能だと思うので頑張ってください。
そういやユウタイノヴァの1巻が出てたな。
フフフ、狙って誤爆ですよ。
ほとんどがvip用語の中エロゲ用語が入ってるのは違和感あるねw
IYHなんて使ってるの見たことないんだが
それ何?
ヤハウェか何か?
>>761 「イヤッッホォォォオオォオウ!」のことらしい。
ナウなヤングの考えることはわからん……。
gkbrって?
gkbrを知らんとは…ガクガクブルブル
で、まあこの位にしときましょうよ
>>762 どうしてもその掛け声がグリリバの声で脳内再生されるのは俺だけではないはずだ
ROCOさんとかかきやーさんとか◆7UgIeewWy6さんが来たらIYHを使わせてもらおう・・・
イヤッホウ!=ジャンパイアじゃなかったのか
ジャンパイア云々以前に、
今年は審判の質悪すぎるだろ。
巨人だって納得いかん判定いくつもあったわい。