ツンデレのエロパロ5

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392『ツルとカメ』×47:2007/08/09(木) 01:15:20 ID:jfT22OlG

 ◇ ◇ ◇

 食品売り場や本屋に寄ったりとデートと言うには地味過ぎるコースを回った後、センス
の強い要望で向かった先はゲーセンだった。ワンコインで最新のシューティングをクリア
したホクホク顔のセンスを見ていると、こちらも和やかな気分になってくる。
「満足したか?」
「はい、それはもう」
 にへら、と笑みの形に崩れた表情でジュースの缶を傾けるセンスを見て、一つ気付いた
ものがあった。ミチルのように食べ物を扱う場所でバイトをしている者は例外になるが、
この年頃の殆んどの女の子は爪がそれなりの長さを持っている。勿論それが全ての女の子
に当てはまる訳ではないが、男のように短く切る者は多くない。ごつごつした男の手とは
違って華奢で繊細な指を持つ女性の手は、指先の丸さが出ると少し不格好に見えることが
あるからだ。指が太く見えたりもするので、爪を少し伸ばし指先を隠していることが多い。
だがセンスは真面目という性格を抜かして考えても、少し短いような気がした。若干では
あるが普通よりも深く切っているし、また空手などをしていることもあり、意識して手を
観察してみると男の手のように見えないこともない。それは僕のものと比べると、やはり
女の子のものだ。だが雰囲気というか、細かな部分で女の子のものとは違っている。
「どうしたんデスか?」
「いや、珍しい手だなって」
「あんまり見ないで下サイ、恥ずかしいデスよ」
 頬を赤らめて手を下ろしてもじもじと指を動かす、その細かい仕草は女の子のものだ。
では何が理由かと考えて視線を巡らせ、一つの篋体を見たときに気が付いた。
393『ツルとカメ』×47:2007/08/09(木) 01:20:01 ID:jfT22OlG
 それは先程センスが頑張っていたシューティングの篋体で、今は別のプレイヤーが巨大
なボスを相手に連打を重ねているところだった。左手でレバーで自分の機体を振りながら、
右手は高速でのボタンの押しを連続させている。上下に指を動かして叩くのではなくて、
パネルに指先を当てたまま左右にスライドさせて、だ。摩擦を減らす為なのか、指先の肉
ではなく爪を当てての行為。普通ならば爪が割れるような行動だが、そのことへの躊躇い
が無いのは注意深く見てみると気付く爪の短さ故か。なんとなしに他の篋体を見てみても、
激しく指を動かすプレイヤーの殆んどが自分の指先をあまり気遣わない動きでキャラなど
を暴れさせていた。それら全員に共通している部分と言えば、やはり短く切り揃えられた
爪だった。そうした視点で見ていて気付くのは、一つの事実。
「センスも、本当にゲームが好きなんだな」
 訊いた訳ではなく実感の意味を込めて言っただけなのだが、その言葉にセンスはこちら
の瞳を覗き込んできた。意図的にしたのだろうか、真正面から合わさってきたサファイア
のような二つの澄んだ青が、強い意思を持って視界の中心へと固定される。
 数秒。
「大切にしたいから、デスよ」
 間を置いた後に、センスは言葉を続けた。
「わたしが何で空手をしているか、知ってマスか?」
 僕の記憶が確かなら、エクササイズとして空手をしていると言っていたような気がする。
その他に剣道長刀弓道とあらゆる距離に対応出来るように学んでいたのを聞かされたとき
は驚いたものだが、それがゲームと何の関係があるのだろうか。ベクトルも内容もゲーム
とは全く違うものだし、共通点と言っても、センスが夢中になっているということ位しか
思い浮かばない。その僅かな共通点とて、センスのことを知らない存在からしてみたら、
消えてしまう程度のものなのだ。
394『ツルとカメ』×47:2007/08/09(木) 01:22:44 ID:jfT22OlG
 首を傾げる僕から目を反らして空中を見上げると、友達の証なんデスよ、と言葉が続く。
「エクササイズが理由っていう理由は、まだ半分なんデス。わたしが11歳のとき、パパが
テンキンゾクになりまシタ。そのときにわたしは一杯泣きまシタ、大好きな友達と別れて
しまうのが嫌だったんデス。そのときの友達の一人のエミリィちゃんが、わたしに教えて
くれたのが空手でシタ。いつもカメさんに使う、あの正拳突きデス」
 成程、これを覚えていれば、いつでも思い出せるという訳か。チーちゃんが僕と一緒に
よく行っていたエロ本墓場のことを気にしていたのと似たようなものだろうか。
「剣道はコロラド州のアリスちゃん、長刀はテキサス州のマレッタちゃん、弓道はユタ州
のクリスちゃんから教わりまシタ。後はヨークシャー州でカポエィラをエミリアちゃんに
教わったり、バージニア州ではテコンドーをシェイラちゃんに教わったり」
 ちょっと待て、何で全員格闘系なんだ。
「どれも毎日、練習を欠かしたことはありまセン。大晦日のときも」
 寝不足でそんな練習をしたら、それは確かにブッ倒れるだろう。だがそれだけの価値が
あるものだ、ということでもある。だがゲームとそれと、どこに繋がりがあるのだろうか。
「カメさんと仲良くしようと思ったきっかけ、分かりマスか?」
「いや、何か気付いたら馴染んでいたような」
「最初にカメさんの家でやったゲームデスよ、とても楽しかったデス」
 思い出した、確か操作を教えたときに偉く喜んでいたような気がする。
「皆と共通の遊びが出来て、とても嬉しかったんデス。だから、こっちでの思い出として
続けよう、と思ったんデスよ。嫌がって泣いて拒絶していたわたしにも変わらずに接して
くれたカメさんとも仲良くしていこうって、そう決めたのもそのときでシタ」
 そんな理由があったのか。
「そして、カメさんに教えて貰ったものがもう一つあるんデスけど」
 はて、何だろうか。
395『ツルとカメ』×47:2007/08/09(木) 01:24:38 ID:jfT22OlG

 ◇ ◇ ◇

 ここはデパートから徒歩数分のラブホテル、その中のランクが高めの一室だ。出来れば
こんな展開は避けたかったのだが、『どうしても』と乞われて、こうして来てしまった。
それだけなら何とか説き伏せたのだが『これが最後になるかもしれないデス』と言われて
無視出来る程、僕は悪人ではなかった。センスの性格からして狙った訳ではないだろうが、
ゲーセンでの『繋がり』の話を聞いた後では、それは尚更だった。
「わぁ、広いデス。それにベッドもフカフカで、それにカラオケまでありマス!!」
 随分なはしゃぎようだ、そんなに珍しいのだろうか。僕はアメリカに行ったことがない
ので向こうの内装がどうなっているのかはAVの中でしか知らないが、こちらの国の方が
充実していると聞いたことがある。センスは向こうの国に居たときは入ったことが無いと
いうが、それを抜かしても楽しいことには変わりないようだ。ここにどれだけの差がある
のか少し興味があるが、分からないのは少し残念だ。
「あ、冷蔵庫がありマスよ。ジュース付きデス!!」
「勝手に抜くなよ、抜いた時点で料金が発生する。テレビは無料で見放題だが」
『Oh, ohh!! I'm come'ing!!』
 言うなりセンスはテレビを点けたが、いきなりのハメ映像に涙目になってこちらに振り
向いてきた。アメリカの深夜番組では毎日のように流れていると思ったのだが、どうやら
センスは耐性が低かったようだ。過去にも何度かしているし、これから同じことをすると
いうのに何とも不思議な娘だ。だがそこがセンスの長所かもしれないとも思う。どこまでも
純粋で純朴で、現実を有りのまま理解し、そして受け止めている。反応は様々なものだが、
共通している部分は『素直』というところだ。
「カラオケは無料デスか?」
「ここは無料だった筈だけど、残念なことにアメリカ国歌は無いぞ?」
 また涙目になったが、何を見付けたのか再び笑みを取り戻す。
「凄いお風呂デスよ!! ジャグジーやバブルバスも出来るみたいデス!!」
396『ツルとカメ』×47:2007/08/09(木) 01:26:42 ID:jfT22OlG
 そう叫んで風呂場に駆けてゆくと、楽しそうに蛇口を捻る。鼻唄に合わせて尻が揺れ、
短いスカートの中の下着が見えそうになっていた。あくまでも見えそうで見えないのだが、
そこが逆に良い。自分から覗きに行く場合は別だが、受動的な立場の場合は露骨にパンツ
が見えるなど邪道以外の何物でもない。寧ろパンチラどころか、見えない方が良い。
 数秒。
 これはいかんと思い、
「ところでセンスよ」
 つい眺め続けそうになっていたが、思考を真面目なものへと切り替えた。少し残酷かも
しれないが、じっと待っているのは性に合わないしタイミングを図ってばかりいたら前に
進めないような気がしたからだ。それにこれは僕だけでなくコイやツルなど皆にも関わる
大事な話だ、はっきりとさせておいた方が良い。
「ここに入る前に話していただろ?」
 それはホテルに入る前から、ずっと気になっていたこと。
「最後かもしれないって、どういうことだ?」
 びくりとセンスの背が震え、こちらに向けられていた顔がバスタブに戻る。センス自身、
あまり意識したくなかったことかもしれない。だがこれは、意識して見なければいけない
問題なのだと思う。それ故に、僕とセンスはこんな場所まで来たのだから。それに素直と
いう言葉を体現したかのようなセンスがする誤魔化しの行動は、はっきり言って違和感の
塊のようになっている。どこまでもセンスらしくない。
 沈黙。
「わたしがこっちに来た時期を、覚えてマスか?」
 確か、五月の初めだ。
「わたしが覚えている格闘技の数、少し計算してみて下サイ」
 ゲーセンで聞いたのが全てなら、確か六つ程。
「あ」
 何と無く、センスの言おうとしていることが理解出来た。センスがこれまで回ってきた
土地はここを合わせて計七ヶ所、平均すると一年間で一ヶ所を回ったことになる。そして
ここに居た期間は約一年程、つまり今までのパターンから考えると後数ヵ月でこの土地を
離れることになるかもしれないのだ。
397『ツルとカメ』×47:2007/08/09(木) 01:28:34 ID:jfT22OlG
「分かりまシタか?」
 振り返った表情は辛うじて笑みの形になっているが、いつもの明るさや強さが足りない
ものだった。その表情のままセンスは立ち上がると、服を脱いでゆく。
「思い出作り、には少し早いかもしれまセンけど」
 僕も無言で服を脱ぎ、センスへ近付いてゆく。そして薄く目を伏せた彼女に近付いて首
を掴み、そのまま一気に捻りを加えて投げた。ずぶねり、という相撲の技だ。別に格闘技
ということにこだわった訳ではなく、キスをすると見せかけるには、と考えたときに思い
付いたのがこれだったというだけだ。深い意味は無い。
 バスタブには湯が溜っていたのが見えたので、打ち身などの心配はなかった。二人分の
体積と重量を受けた湯は、大きな音と水柱を上げ、僕達の体に降り注いだ。
「馬鹿だ、お前は馬鹿だ」
 本当に馬鹿だ。
「これから確かに別れるかもしれないけどな、でも、今生の別れじゃないだろ? それに
先のことばかり考えて不安になって、それでヘコんでたって意味ないだろ!!」
 数秒。
 暫く呆気に取られていたような様子だったが、センスは顔を自然な笑みへと変化させた。
背を震わせて小さな笑い声を漏らし、続いて僕の頬を両手で挟んで固定するとアメリカ的
にキスを連続させてくる。頬に、鼻の頭に、首筋に、唇に、躊躇わずに何度も何度もキス
を重ね、あるいは甘噛みするようにして喜びの感情を示してくる。
「そうデスよね、ありがとうございマス!! だからカメさん、大好きデス!! ところで」
 何だろうか。
「その、固くなったおちんちんが当たってるんデスけど」
「馬鹿野郎、こんなエロい状況で立たない方がおかしいだろうが」
「さっきまで真面目なお話をしてまシタよね?」
「思考と体の反応を一緒に考えるな」
398『ツルとカメ』×47:2007/08/09(木) 01:30:25 ID:jfT22OlG
 どうしてこんな質問をするのだろたうか、不思議な娘だ。しかし疲れて論理的な判断が
出来なくなっていたんだろう、センスに罪はない。これからのことで不安もあっただろう、
これ以上責めるのは酷というものだ。
「因みにカメさんの思考は?」
「センス転校乳乳尻乳尻乳乳」
 無言で殴られた。
「まぁ、そんなカメさんも含めて好きなんデスけどね」
 嬉しいことを言いながら、センスは股間に顔を埋めてくる。プール嫌いな上に泳げなく、
また体も小さいなど様々な理由がありツルでは不可能だった潜望鏡だ。湯に顔の下半分を
沈め、こちらを上目遣いで見上げながらセンスはストロークを開始する。これは湯が鼻に
入ってきたりもするし、簡単に息継ぎが出来ないので実は結構慣れが必要らしいのだが、
流石は優等生のセンスなだけのことはある。開始の数秒間は少し手間取ったようだったが
すぐにコツを掴んだらしく、大して苦しそうな顔をすることもなく舌の動きを連続させる。
頭を上下に動かすと目に湯が入ってくるらしく、基本の動きはストロークを止めて舌での
刺激に重点を置いたものになった。たまには深く飲み込んできたりもするが、舌で擦って
くるのが殆んどだ。その代わりに、余すところなく全体をねぶってくる。
「気持ち良い、デスか?」
 頷き、センスを見つめて気付いた。
「随分とエロいな」
「せっかくなので、もっとアグレッシブになろうかと思いマシて」
 本場の出身だから言葉の意味を間違えることは無いだろう。アクティブ『積極的』では
なく、アグレッシブ『攻撃的』らしい。言いながらも、センスは自らの股間を指で慰め、
ツボに来たらしいタイミングで尻を揺らして大きく湯を揺らしている。水中の行為なので
粘度のある独特の水音は聞こえてこないものの、しかしフェラをしていたときよりも強く
なった波が体全体に、確かに行為を伝えてきた。
399『ツルとカメ』×47:2007/08/09(木) 01:32:17 ID:jfT22OlG
「あの」
 不意にそれが止み、
「そろそろ、入れてほしいデス」
 その性格上、はしたない、と思っているのか湯船に入っていること以上に頬を赤らめて、
可愛くおねだりをしてくる。そして一旦体を離すとこちらの肩に手をかけて目を伏せて、
ゆっくりと唇を重ねてきた。それに応えるべく、僕もセンスの頬を挟んで舌を唇の間へと
割り込ませてゆく。今度はずぶねりなどをせず、ただセンスを求める為にキスをする。
「嬉しいデス」
 えへへ、と小さな声を浴室にリバーブさせ、センスも舌を伸ばしてきた。互いに口内を
貪り、舌を絡ませ、存在自体を味わうようにしてキスを続ける。別れてもまた会えるし、
日常としての部分を言うならば明日学校でも会うことが出来る。しかし離れたくないと、
言葉にはしていなくても、そう言っているように感じた。
 息継ぎに唇を離したのを合図に肩から胸、脇腹を通って細い腰へと両腕を伸ばし、
「入れるぞ?」
 浮力で普段より軽く感じるセンスの体を抱えると、肉棒の先端を割れ目に当てがった。
抱き締めるようにして腰を手前に引き込みながら、僕も腰を突き出して一気に深いところ
まで埋めてゆく。何度か経験もしているし、湯の中なので普通にするよりも幾らか負担も
少ないだろう。そう考えて、湯の抵抗を無視するようにやや激しくグラインドを開始した。
腰を跳ねる度にワンテンポ遅れて逆方向の波が作られ、水面に浮かんだ豊かな二つの胸が
それに合わせて左右に揺れる。見ていて何とも気分の良い光景だ。
「や、あんまり、見ないで、下サイ」
 成程、揺れるのを見られるのが嫌か。
400『ツルとカメ』×47:2007/08/09(木) 01:33:40 ID:jfT22OlG
 センスの意見を尊重し、腰を抱いていた腕の片方を離して胸へと移動させた。揺れない
ように掴んで固定すると、ゆっくりと指を食い込ませてゆく。布越し状態で何度も揉んだ
ものだが、やはり生は一味違う。すべすべとした感触や、いつもよりも少ない力を込める
だけで形が変わるのが堪らない。それを堪能しながら、反対の胸へと顔を埋めた。両手を
腰から離すと自由に動かせなくなるので、代わりに唇と舌で胸を固定する。固くしこった
乳首を吸い、甘噛みし、丹念に周囲をなぞりあげてゆく。その度にセンスの腰がびくりと
震えて、膣内の肉も淫らに踊り狂う。体勢上表情は見ることが出来ないが、途切れること
なく響く甘い声。唇から垂れているのだろう、不規則な感覚で降りてくる透明な糸のお陰
でなんとなく予想は出来た。僕以外が見ることはない、いつもの雰囲気を裏返したような、
寒気を感じる程に艶やかなものだ。それを脳裏で思い描くと、背筋が震えた。
 は、という声が聞こえ、頭に細い腕が回される。見た目は華奢な普通の女の子の腕だが、
伝わってくる感触はしなやかなもの。アズサ先生のものに似ていたが、それよりも脂肪は
少なく、鍛えられたものだと感じることが出来るものだ。それとは対照的な感触の胸へと
顔を強く押し付けられ、気持ち良いと言うよりも不思議な気分になってくる。その行為で
更に気持ち良くなったのか喘ぐセンスの声が一段と高くなり、膣内が痙攣して締め付けを
強くする。僕も少しタイミングが遅れる形になったが、ほぼ同時に絶頂に達した。
「いっぱい、出まシタね」
「……出ましたよ」
 今日のセンスは危険日と記憶していたのに、対面座位で押し付けられていたので膣内に
出してしまった。そのことに後悔があったが、出された本人は悪い気分ではないらしい。
鼻唄を歌いながらセンスはバスタブから上がり、垂れてきた白濁液を流そうとシャワーを
股間に当てて悶えている。それを僅かばかりの希望と思いながら少し面白い光景を眺めて
いると、不意にこちらに振り向いた。しかし眺めていた僕を咎めるのではなく、瞳にある
のは純粋な、いつもの気軽な質問をするときに浮かべる疑問の色だ。
「あの、わたしが言うのもアレなんデスけど」
 何だろうか。
「買い出しは大丈夫デスか?」
「あ」
 晩飯を作れずに苛々しているツルの姿が脳裏に浮かび、僕はバスタブから脱出した。
401『ツルとカメ』×47:2007/08/09(木) 01:35:22 ID:jfT22OlG
亀「『ツルとカメ』質問コーナー!!」
水「今回は三枚の葉書と、十一個のレスを御紹介!!」
亀「ゲストはセンス!!」
扇「お久しぶりデス」
亀「本当にな。だから今回はサービスとして他のヒロインが出なかった訳だが」

>>344
亀「確かに黒髪と貧乳は相性が良いな」
扇「着物とかデスね?」
亀「水樹とかな」
水「何で!?」
亀「でも作者は幼女は好きだが貧乳はあまり好きではない、と」
扇「水樹さんは良いんデスか?」
亀「ちんこ付いてるからセーフ」
水「何でさ!?」

つ[]さて…〜
水「してるの?」
扇「と言うか、あのサイズって鼻に入るんデスか?」
亀「無理だろう、普通に。それに個人的に変態プレイは好きじゃない」
扇「確かにセックスの時は比較的まともデスね」
水「それでもたまにブッ壊れるけどね」
亀「失礼な。ユーモアを大切にしたいだけだ」

つ[]センスへ「同じ金髪〜
扇「尊敬してマスよ、少し怖いデスけど」
亀「最初の印象の問題か」
水「呼び出されたカメに着いて行ったのがファーストコンタクトだしね」
扇「でも、とても良い人デスよ?」
水「そうだね」
亀「レズでSでMだけどな」

つ[]カメへ「こんなに〜
亀「いや、それは無い」
水「うん、プロットには書いてないね。今のところ」
扇「今のところ!?」
水「いや、作者の気まぐれで話が変わったことは過去にも何度か」
扇「残念な話デスね。カメさん、成仏して下サイ」
亀「死んでねぇよ」
402『ツルとカメ』×47:2007/08/09(木) 01:36:24 ID:jfT22OlG
>>370-372
亀「モテモテだな」
扇「そんなに言っても何も出まセンよ?」
水「意外とクールな反応だね」
亀「慣れてるだろうからな、実は校内でも結構モテるし」
水「そう言えば何気に『ツルとカメ』の中で一番スペック高いしね。アメリカの力?」
亀「いや、作者の金髪巨乳外人補正だ」

>>373
水「あたしは男だよ!!」
亀「久しぶりだな」
水「そうだね」
扇「わたしはどう反応したら良いんデスか?」
亀「気にするな、いつものことだ」
水「残念だけどね」

>>375-379
亀「まとめてですみませんけど、ありがとうございます」
水「平仮名ばっかりだね」
扇「それよりも、作者さんを嫁って」
亀「見たら駄目だ」
水「改めて言うけど、作者は男だよ」
亀「たまに腐女子臭いけどな」
水「言ったら駄目だって」
扇「腐女子って何デスか?」

>>380
水「ありがとうございます!!」
扇「ありがとうございマス!!」
亀「作者は嬉しさのあまり失禁脱糞して、泣きながら掃除したらしいな」
水「嘘だよね?」
亀「…………」
水「何、その無言は?」
扇「嘘、デスよね?」

亀「さて、今回の『ツルとカメ』も終わり。次回の主人公は一真」
水「主人公?」
亀「ヒロインは円谷さん」
水「お隣さん?」
亀「作者恒例の思い付きネタ話だ。個性は強いのに空気だから、主人公にしたかったとか」
水「良いのかなぁ?」
亀「次回一真の純情恋物語、乞う御期待!!」
水「来週も見てね、『ツルとカメ』でした!!」
403ロボ ◆JypZpjo0ig :2007/08/09(木) 01:38:11 ID:jfT22OlG
今回はこれで終わりです

もう残り五回とか、月日が経つのは早いですね
404名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 01:40:24 ID:MCRJ6bzm
>>403
一番槍GJ!
カメも種撒きすぎて刺されたりすんじゃねえぞ。

>亀「確かに黒髪と貧乳は相性が良いな」
大好物です。
黒髪・長髪・貧乳 二見さん万歳!
405名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 03:08:54 ID:QsOpQ9g2
センスハァハァ

しかしeは省略するんじゃないのか
406名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 03:33:20 ID:LtqK8DzY
GJGJ!!!センス最高だよセンス

つ[]>>対面座位だったので〜〜危険日に〜〜

カメ、お前はもちろんセンスも妻にするんだよな?
こんなにセンスに愛されて幸せな奴だな。
407名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 05:50:29 ID:DaAjkahX
>>403
四番エースGJ!

つ[]<カメ、ハーレムルート逝け。誰も悲しませんな、みんなを幸せにしろ。
408名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 19:03:00 ID:I1BOj/pH
5番ファースト清原GJ!

センスの印象がかなり変わった俺変態><;

っ[]<レインボーブリッジ封鎖できません!
409名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 22:56:13 ID:ZZ+wf+1g
大丈夫、エアメールで
「日本で産みます」
ってお腹の大きいセンスの写真付きで届くから
410名無しさん@ピンキー:2007/08/11(土) 00:32:43 ID:eVyCN3qZ
センスはかなり腹ボテが似合いそうだなww
逆に他のヒロインは恐ろしく似合わない印象だが、俺の脳内では
特に合法ロリのツr(ry

それとロボさんの作風もあるんだろうけど、なんとなく
カメにはハーレムルートは似合わないと思った

つ[]真子タソはもう出てこないの?
411名無しさん@ピンキー:2007/08/13(月) 04:26:49 ID:iTVN28j2
上げ
41279 ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:19:44 ID:1Hq0/YT2
|ω・`)ジー
41379 ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:32:26 ID:1Hq0/YT2
|ω・`)ダレモイナイ・・・トウカスルナラ イマノウチ
恐ろしく長いです。リドル○ナ大灯台並に長いです。

しかも濡れ場二つしかないです。連投規制ごめんです。
テーマは日曜洋画劇場(うそ)。テーマ曲は天体観測(たぶん)。
41479 Le souhait last_escape(1/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:33:48 ID:1Hq0/YT2
俺の名前は江口 遥(えぐち はる)。あだ名はハロ。
誰が自己紹介しろって言ったよ。いちいち思い返してみなくても名前は変わってないよ。頭でも打ったか。
「だーっ!」
布団を跳ねのける。
夏の朝。性懲りもなく今日も快晴。そして猛暑。とても寝てなどいられない。
暑さで目が覚めるというのは本当に嫌だ。
まだ鳴っていない目覚まし時計のアラームを止める・・・まだ五時だ。
部屋は熱気が充満していて暑い。更に、カーテンを貫通する日光も相まって、灼熱の空間を形成している。
ラクダも干からびる。体感温度としては七、八千度ぐらいだろう。
とりあえず部屋を出る。
「シャワー浴びよう」
このままじゃ死んじゃう。まだ若いのに。

寝汗を洗い流しさっぱりした後に、予めつけておいた冷房のつめたいいきが迎えるという連鎖関係は神。
リビングは天国、いや、神と化していた。
ううん。ここはリビングなんかじゃない。花と緑のサンクチュアリ。
などという妄想を抱きながらタオルで頭を拭いた後、ソファーに体を沈めるのであった。
チャ。
「あ、おはよぅおにいちゃん。早いね・・・」
と、朝から三文の損をして起きてきたのは、義妹の由梨。
寝るときの抱き癖が治らない彼女は、
「枕置いて来いよ」
「へ?・・・あっ!」
などと言って舞い戻る事がたまにある。
「若年寄って若いの?」などというわけの分からん質問をする彼女は、いわゆる天然である。
――両親の不和が原因で、俺が一人この家に残るかどうかというところで、「一緒に残る!」と言って
聞かなくて、それで現在はこの家に二人で暮らしている。考えてみると、大分不思議な話だ。由梨も、
父は違うとは言え妹も居るし、ああしなければ今頃は江川の実家で恙無く過ごせたろうに。毎日
ごはん作ったり洗濯したり大変だなあ、と。それで嫌そうなそぶりも見せないんだけど。
そんな由梨と出会ったのは・・・って、それはまた別の話。
由梨が戻ってきた。
「シャワー浴びたらどうだ?」
そしてさっぱりするがいい。
「それじゃあ朝ごはん遅くなっちゃうよ?」
ここで「じゃあ俺が作るよ」なんて気の利くこと言えたらかっこいいけど、でもそれは憧れなんだぜ。
「別に、遅くなっても構わないけど?」
ハロは にげだした!
「んー、じゃあ浴びてくるね・・・」
眠たげにそう言って、由梨はリビングを出た。
「さっきまでの同情はどこへ」
と呟きながら、テレビをつけた。強くなれ、由梨。

炎天下。
直射日光。
照り返し。
このサ○゙系ゲームのような夏の連係プレーに見舞われたら、いくら強靭な戦士でもひとたまりもない。
帰りたい。
家を出て数十メートルの地点でそう思っていた。
という事は数百メートルも歩く頃には、家どころか無に還りたいと思うかもしれない。
この暑さに、存在すら脅かされている。
ふらふらと歩道を行く。
「?」
何かの気配に気付いて頭を上げると、何かがぴゃっとブロック塀の陰に隠れた。
41579 Le souhait last_escape(2/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:34:45 ID:1Hq0/YT2
まあ、それが何なのかはよく知ってますけど、走る気にはならないのでそのまま行く。
蝉がうるさいなあ。カメムシの仲間のくせしていい気になんな。全身日焼けして死ね。
何だよミンミンミンミンと個性の無い。そんなんだから一生童て
「遅い!!」
と、目の前に現れたツインテールの少女。
この少女こそが、ツンこと、月岡 秋奈(つきおか あきな)である。
一時期、筆者の趣m・・・都合で桃色になってしまった髪の毛の色も、今はすっかり栗色。
白いリボンが今日は一段と日差しに映える。
「はい、これ」
言って、怒り狂うツンの眼前に、半分凍った麦茶入りのペットボトルを差し出す。
「え?」
「あげる」
「そのために持ってきたの?」
「そう」
ツンはすこし固まった後、やや乱暴に麦茶を受け取った。
「・・・こんな事ぐらいで許してもらえると思ったら大間違いだから」
とか言いながらキャップをはずす。
「はいはい」
今日みたいに暑い日じゃ、もし待ってるとしたら気の毒だよなあ、と思って持ってきた麦茶は心からの
お詫びであった。
「っていうか、こういう心があるならもう少し急いできなさいよ!バカ!」
ひと飲みして、ツンは再び怒号を飛ばす。
「以後、気をつけるであります」
締まりのない敬礼をして答える。
「ふん・・・」
ツンは怒っているようではあったが、満更でもないような様子で歩き出した。
当然俺も歩き出すが、その前に一瞬ツンの後姿をチェックさせてもらったがそれは故意ではない。
やっぱり、こう暑い日は髪を上げたほうが涼しいよな、とも思った。
けど、それでもニーソックスを欠かしていないのは多分俺のせいだと思います。けどもう時効だ。
「今の麦茶さ、」
「?」
「今日、暑いでしょ?」
「そうね」
「だから、ここに来る前にすこし飲んだんだけど」
「・・・ふーん」
数秒間、間があった。
「これって間接キスだよな」
「あー、言うと思った!絶対言うと思った!」
つかつかと歩き出すツン。
「何よ、子供みたいな事言って。大体今どき、かっ、間接キスなんて流行らないわよ。死語よ死語。
バカみたい。何ニヤニヤしてんのよ。ふん・・・」
だんだんフェードアウトしていく。
それにしても日差しが強いな。ソーラービ○ム撃ち放題だ。
間接キスなんて真に受けるのもツンぐらいなもんだと思うけど。でも意識する姿は可愛い。
「確かにまともなキスもしてないし・・・」
独り言。
「えっ!?///」
ツンの素っ頓狂な声に、ちょっと驚く。
「え、何?」
「な、なんでもないわよ!それより暑いんだからもう少し早く歩きなさい!早く学院に行って
涼みたいから!」
急に早足になるツン。
41679 Le souhait last_escape(3/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:35:28 ID:1Hq0/YT2
「ちょ待てよ」
誰にも伝わらなくて封印していたものまねが、今何気に復活した。
――ツンとは幼馴染で、本当に小さかった頃から一緒で、ツンは気の強い子だった。
小学校から中学校に入るくらいのときかな、ツンが今のような性格になったのは。典型的なアレ。
向こうがあんまり意識するから気になってしょうがなくなったな。それから今は正式に付き合ってるけど、
ツンに色々な技術を試させて上手にしてしまったのは間違いなく俺の罪であって、バカそんなもん時効だ。
だって寝相が悪いから・・・いやいやそんな昔の事!知ってる人は少ないから大丈夫だ。

半死半生になりながらも、俺たちはようやく学院に辿り着いた。
始めのうちはそれなりに会話も弾んでいたのだが、後半は殆どお互い無口になってしまっていた。
現に今も、玄関を睨みつつ驀進する二人の姿がある。
「ハロ」
突然、ツンが口を開いた。
「あの車、もしかして・・・」
ツンの向いている方向を見ると、見るからに高級そうな車が、日光を受け黒光りしながら、こちらに
向かって来るのが見えた。
「んなアホな。敷地内だぞ」
俺の手首を掴み、玄関へと走り出すツン。
「オイ、そんな露骨に避けなくても・・・!」
相手が車だとは言え、玄関は目前。
当然俺たちが玄関に至るほうが早かった。ガラス戸が押し開けられ、中の冷たく快適な空気が
俺たちを包み込んだ。
「何とか逃げ切れたわね」
「遥君!」
「ぬわっ!?」
一息入れる間もなく、何者かが背後から抱きついてきた。この感触は、理緒だ!
「理緒!何でここに!?」
「理緒はいつもハロ君の傍に駆けつけますわ!」
言いながら、俺にぴったりと体を寄せる。
ツンの目の前とは言え、背に当たる柔らかい感触と、髪から香る芳香に、この俺が抵抗できるわけもなく。
「ちょっと、離れなさいよ!」
ようやく状況を把握したツンが、理緒を制止する。
「あら、居ましたの?」
などとわざとらしい事を行って、ぱっと体を離す理緒。こと、輝青院 理緒(きしょういん りお)。
――幼い日、俺とツンと理緒はよく一緒に遊んだものだった。
理緒の俺を独占しようとする態度が、ツンには昔から気に入らなかったようで、このやり取りもテンプレです。
とは言え、理緒は高校に上がる前に引っ越してしまったから(そのため、理緒は蕪雲がつけたあだ名『ハロ』
を使わない)、最近ここに戻ってくるまでは何の音沙汰もなかった。ちなみに、俺を調教したのも理緒である。
言うには、決められた結婚を断るために、俺と結婚しに戻ってきたとか。・・・って、それはまた別の(ry
「オトリを使うなんて卑怯よ!」
「手段は選びませんの」
と、茶色がかったブロンドを掻きあげる。
「こんな日に抱きつくなんて、暑苦しくて迷惑するに決まってるじゃない」
「そんな事、愛があれば関係ございませんわ。遥君も嫌がってませんでしたし。ね、遥君?」
にこ、と理緒は笑顔を向ける。
「ああ、いや、うん、別に・・・」
ギロ、とツンが怒りのまなざしを向ける。
「そう、だな。勘弁して欲しいな」
目こそ合わせなかったが、ありゃあ鬼の目だ。おらぁびびっちまっただよ。
「お嬢様」
「ぬわっ!?」
41779 Le souhait last_escape(4/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:36:25 ID:1Hq0/YT2
「お鞄をお持ちしました」
「ありがとう、緋柳」
緋柳と呼ばれた女性は鞄を渡すと軽く会釈をし、足音も立てずに外へと出て行った。
あの人はいつも無表情だ。そしていつもメイド服だ。その服のまま車を運転し、理緒を送り迎えしている。
よく覚えてないけど、昔は従者は違う人だったような。
っていうか、あの服で暑くないんだろうか。
「さ、行くわよ。ハロ」
グイ、と左の手首を引くツン。
「行きましょう?遥君」
グイ、と右の手首を引く理緒。
「朝から全国的に真っ二つの予感」
俺は二人に引っ張られて右往左往しながら教室に向かった。
周りに人がいなかったのがせめてもの救いだったな。

が、更に朝早い連中(約二名)が教室で待ち受けているのも、いつもの事だった。
三人並んで教室に入る。
「お、おはよう」
約二名、すなわち別府 蕪雲(べっぷ ぶうん)と日暮 毒男(ひぐらし どくお)は、何か言いたげにこちらを見ていた。
こいつらの妙な連帯感は、俺も未だに少々理解しがたいものがある。決して悪いやつらではないんだけど。
「歌舞○町であんなの見たことある。行った事ないけど」
「たぶん嫌がらせだお」
ツンの席は俺の隣、理緒の席は蕪雲の隣である。
理緒が席に鞄を置いてくるまでの間、二人は黙っていたが、またなにやら話しはじめたようだ。
俺は二人に板ばさみになっていたから、悪友二人には気を配らずに居た。
「漏れのターン!」
と言って、携帯を取り出す蕪雲。
「こいつで一矢報いてやるお」
「何か秘策があるんですか隊長」
「智途様を招聘して昼ドラのようにしてやるお」
「電話番号知ってるん('A`)?」
「なんと、この前直に教えてもらったお」
入力した後、携帯を耳にあてる。
「珍しい事もあるもんだ」
殆ど疑ってはいたが、毒男は携帯に片耳を向けた。
「なーに、ようやく漏れのみりきに気がついたんだお」
数回、呼び出し音が鳴る。
ガチャ。
「漏れだが」
「はい、警察と消防です」
ピッ。
「・・・いや」
蕪雲は首を傾げた。
「道理で桁が少ないなー、とは思ったんだけど、」
「アホの子ですか('A`;)っていうか『だが』って何?」
「きっと番号聞く前の日に留守番電話に四十二件メッセージ入れたのがまずかったんだお」
「暗に『自首しろ』って言ってんじゃね?」
「一件にひとつずつ都道府県名を入れてみた。反省はしていないお」
「ガチで通報しますた。しかも一県足りねえし」
遠くで蕪雲が沈んでいるように見えるが、何かあったんだろうか。
41879 Le souhait last_escape(5/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:37:35 ID:1Hq0/YT2
俺たちが通っている熾惺学院は、その名のとおり(?)私立高校だ。
数年前、それはもう何も無かったこの街に、現学院長が「故郷への恩返しをしゅる」と言って、周囲から
ハイリスクノーリターンだのなんだのと騒がれながらも建てられたこの学院には、学院長がそのツテで
集めた優秀な人材と設備のお陰で大発展を遂げた。
それからは鉄道を引くやら店舗が進出するやらと町の景観が大きく変わっていった。
その目まぐるしい変化が、当時小学生だった俺にとってどれほど衝撃的であったかは計り知れない。
その頃理緒が居た事を考えると、家のほうで進出を狙っての下見が目的としてあったのかもしれない。
だが、表にある学院長の金ピカの像(もちろん金色はメッキ)は、ちょっとウザい。
そのウザさにもかかわらず、像にはかすり傷一つついていない。噂ではプロが手入れしているらしい。
陽の光を存分に浴びて輝くそれを窓の外に遠目に見ながら、俺はボーっとしていたのだった。
キーンコーンカーンコーン・・・
「うむ、キリがいいのう。今日はここで終わりにしよう」
などと麻呂のような話し方をするのは、我らがてんてーこと、東雲 泉(しののめ いずみ)である。
童顔で、背が低くて、いつも着物を着ていて、扇子を常時携えている。
見かけは子供っぽいが、話してみると大人としてちゃんとした考え方や意見を持っていることがわかる。
ので、皆『てんてー』と呼ぶなど侮った感じではあるが、心の中では敬意を持っている。
そんなてんてーの担当科目は国語である。英語だったら逆に許せない。
とにかく、昼メシの時間だ。ハデにな。
「俺、なんか買ってくるわ」
「また?もう、ちゃんとした昼ごはん食べないと体壊すわよ」
そう言われても面倒くさいこと風のごとし。
「どうしても、って言うなら」
ツンがためらいがちに切り出す。
「弁当ぐらいなら、つ、作ってきてあげてもいいわよ?」
「マジで!?」
ツンはこくりと頷いた。
「どうせ、一人分作るのも二人分作るのも変わんないし」
「一人分って、じゃあツンは自分の弁当自分で作って来てるんだ。偉いなー」
俺なんか由梨に頼りっぱなしだからな!でっひゃっひゅwwww
「そんなの当然よ。それに、将来、お嫁さんになった時のために、・・・///って、あるでしょ?だからその、
ああもういいから、早く何か買ってくれば?」
ツンは紅潮した顔をそっぽに向けながら、手をひらひらと払うジェスチャーをする。
「ん、じゃあ行って来る」

学院の昼は賑わう。
食堂こそ無いが、購買があるからそこでいつも買い食いをする事にしている。だがそれも今日で終わり。
終わりなのだ。もう手遅れなのだよ何もかも。君との付き合いもこれでゲームオーバーなのだ。
「ハロ」
廊下。誰かが俺の名を呼ぶ。振り返ると、智途が居た。
「今日も買い食いなのか?」
「どうかな?」
「違うのか」
「そうだ」
「・・・何なんだ」
呆れる智途。
長岡 智途(ながおか ちと)。
――話し方こそ女らしくないが、その長く美しい黒髪、凛々しい顔立ち、豊満なバスト、そして美脚。
しのたのように、彼女に憧れる女性とも少なくない。蕪雲にとってはかなり内角高め直球ストライクらしい。
そんな彼女には、更に優れた姉、雪花(せつか)さんが居る。うん、まあ二人にはよく可愛がられました。
姉妹には何か複雑な事情があるようで、なんでも組織がらみで生死に関わる抗争が続いているとか。
・・・って、それはまた別の(ry
41979 Le souhait last_escape(6/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:38:40 ID:1Hq0/YT2
「よくここの廊下で会うよな」
「ん・・・まあそれは、お前が・・・」
「俺が?」
「や、なんでもない。気にするな。それより、弁当は持って来てないのか?」
「明日から作ってくることにしたよ」
なんとなくツンの名は出さなかった。
「あ・・・そうか、なら仕方ないな」
何故だか、智途は悲しげにその視線を伏せた。
「こぉらぁー!」
声に振り向くと、そこにはもうダッシュで駆けつけるしのたの姿があった。ザザッ、と俺の前に立ちはだかる。
「智途先輩をいじめちゃダメです!」
「俺は何も・・・」
しのたこと、篠田 美佳(しのた みか)。
――彼女は自分の事をボクと言う。メガネをしている。そして部活の後輩にして、智途親衛隊の一人。
よく諌め、よく動く(バスケ部だったからか)。由梨と仲が良くて、いつも二人で行動している。
そんなしのたには生徒会と縁があって、生徒会とともに、熾惺の生徒の殆どが知らない熾惺の恐怖に
立ち向かっているらしいが・・・って、それはまた別(ry
「いいんだ、しのた」
智途はしのたの肩をぽん、と叩いた。
「でも、先輩!」
「しのたん、待ってぇー!」
息を切らして、由梨がようやく追いついた。
「あ、由梨。丁度良かった。こいつらが俺のことをいじめるんだ。助けてくれ」
と、無茶振りをしてみる。
「そうなの?」
呼吸を整え、しのたの顔を見る。
「違いますよ!先にいじめたのは先輩のほうです。ボクはむしろ庇ったんですよ?」
「でもハロの場合、いじめられるのが好きだからな」
「そ、そうなの?」
俺の顔を見る。
「そんなわけないだろ」
あるけど。って言うか義理とは言え妹に何で今ここで自分の性癖を暴露せなあかんのだ。
「えっと・・・」
以上の情報を由梨の頭の中で整理させるとどうなるのであろうか。由梨はしばらくまごまごした後、
「いじめはよくないと思います!」
と、丁寧語でスローガンを掲げた。
言い放ってガッツポーズのまま固まる由梨を見て、一同はしばらく黙っていたが、
「そうだな、いじめはよくないな」「そうですね」「俺も悪かった」とりあえず合意に達した。
「よかった」
ほっとして笑顔を見せる由梨。
「あ、俺昼メシ買って来なきゃ」
「先輩は予定あります?」
「私は特に無いな」
「じゃあボクたちと一緒にお昼食べましょうよ」
そっちはそっちで話が進んでるみたいだな。じゃ、あっしはこれで。
そう思って去ろうとした時、擦れ違いざまに智途から左腕を組まされた。
「一緒にどうだ?」
ぎゅっ、と俺の腕を抱き寄せる。もし着けてなかったら二の腕の辺りはその谷間に呑み込まれていた
かもしれない。それでも心を揺らすくらいの誘惑が、その温かさと柔らかさにはあった。
「そうだよ、折角だし、たまにはおにいちゃんも一緒に食べよ?」
由梨の発言に悪気は全く無いのだが、俺はもう折れてしまいそうな気がしていた。
42079 Le souhait last_escape(7/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:39:34 ID:1Hq0/YT2
その時、どこからかブーンという音が聞こえてきた。
「智途様ゲトォォーーー!!」
とっさに俺から体を離した智途と俺との空隙に、時代を駆け抜ける一筋の旋風がよぎった。
紛れもなく蕪雲だ。まさに風雲児。
はっと気がついた智途の表情を最後に見てから、
「また今度!」
と言って俺は超神速縮地の二歩手前でその場から逃げ出した。
呆然とする場。
智途の怒りの矛先は当然、窓枠を支点にヘの字に体を折り曲げたままほぼ静止している蕪雲へと
向けられた。
智途はその足を持ち上げ、くるりと蕪雲を窓の外へ自由落下させた。
かわいそうな蕪雲ちゃん。でもあなたは丈夫だから、落ちても平気よ。
「さ、昼飯にしようか」
「はい」
「・・・えっ?えっ??」
あまりに誰も蕪雲の心配をしなかったため、由梨には何が起こったのか理解できていなかった。
慣れとは恐ろしいものである。

放課後のことだ。
「先輩」
「ん?」
ここは、THEサンクチュアリ百式-Ver2.01-部の部室。
部員は俺、蕪雲、しのたの三人だけ。ここでは、主にプログラミングを学ぶ事を活動にしている。
ということにしておこう。
「智途先輩、怒ってましたよ。断る理由くらい教えてくれてもいいのに、って」
「・・・。ま、確かにあれじゃ嫌ってるようにしか見えなかったかな」
狭い部室に、パソコンの動作音だけが残る。
「何か理由があったんですか?」
回転椅子をこちらに向けて、しのたは聞いた。
「ツンを、待たせてたから」
回転椅子を半分だけ向けて、俺は答えた。
はあ、としのたはため息をついた。
「そうならそうと言えばいいんですよ。どうしてそう、思ってることを言わないんですか。本当のことを
正直に言ってあげるのが誠意を見せるってことじゃありませんか?相手が好きな人なら、尚更・・・」
普段ならそれは違うだろ、と軽く否定するところだが、今はなんとなく論破されたような気になった。
「悪かったよ」
「ボクに謝ってどうするんですか」
「はは・・・」
しのたに向かい合って、言い直す。
「明日、ちゃんと謝っとく」
しのたはそれを聞いて腕を組み、
「じゃあ、良しです」
と偉そうに言った。
でも俺にはひとつ気になる事があった。
「ところで、蕪雲来てないな」
「まあ、勢い余って窓から転落してましたからね」
「マジで?」
平然と頷くしのた。当然、『勢い余って』の部分は事実無根である。
「でもま、大丈夫だろ」
キィ、と椅子の向きを戻し、両者パソコンに向かう。
慣れとは恐ろしいものである。
42179 Le souhait last_escape(8/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:40:22 ID:1Hq0/YT2
帰り道。
部活をサボらない限りは、いつも一人で帰る。サボってもいいんだけど、それだとしのたが怒るからな。
そりゃ止むを得ない場合はサボりますよ。何かの発売日の時とか。ご容赦願いたいのであります。
帰り道には、神社に立ち寄る事がある。そこには俺と奇縁のある少女が住んでいる。
日が長いとは言え、今日ももう真っ暗である。これで神社に通って今まで通報されなかったのが不思議だ。
居る居る。
石段を登った先に見える、縁側に座ってこくりこくりと船を漕いでる金髪アホ毛巫女さん。こと、ウィッシュ。
外人さんか?と思われるような名前だが、彼女は外人でなければ、人間でもない。
――数百年前、当時霊山である事で有名だった、この神社の裏手にある山のふもとを開拓するに際し、
開拓にはどうしても多くの人が山(あるいは谷)を出入りする必要があったので、当時人間の少女だった
ウィッシュ(本名、萩)が選ばれたのであった。ウィッシュが人間であった頃、俺の先祖とウィッシュは
恋仲だったようで・・・って、それはまた(ry
現在、ここは無人の神社と化していて、ウィッシュは拾ってきた三毛猫(名前はポチ)と一緒に日々を
過ごしている。無人の筈なのに常に小奇麗なのが人が置かれない原因だろうか?ウィッシュは普通の
人間には姿を現さないし。
「おい」
「はうっ!?」
素っ頓狂な声を出して飛び起きた。
「お祈りはどうしたお祈りは。願いの精なんだろ」
「むーその言い草・・・」
目をこすりながら不平を漏らす。
「ところで、ウィッシュ」
「ほえ?」
「『ほえ?』じゃない。最近は何か特別な事はあった?」
「うーん・・・最近・・・」
首を傾げる。
「あっ!そう、変な・・・嫌な感じがしたんだった!」
「嫌な感じ?」
「うん、なんだかとっても嫌な、何かが来るの」
「・・・具体的には?」
ウィッシュの深刻な面持ちに、冗談で返してやる事もできなかった。
「あはは・・・よくわかんない」
ガク、とうな垂れさせていただく俺。
ウィッシュはぽん、と手のひらを叩いて、
「そうだそうだ、それで、どうしようかなって考えてるうちに寝ちゃったんだ。思い出した思い出した。
よかったよかった」
と、足をぶらぶらさせて喜ぶ。
「全然良くないぞ」
「なー」
猫の鳴き声がした。足元に目をやると、とてとてと三毛猫が歩いてきた。その口には、何かお守り
のようなものが咥えられている。
「あっ、そうそう、これ!」
ポチからお守りを受け取る。
「これ、お守り」
言われて受け取ったそれが、『安産祈願』など関係の無いものかどうか確認してから聞いた。
「ウィッシュが作ったのか?」
「うん。厄除けのお守り」
「へえ、しっかりしてるんだな」
俺はとりわけ信心深い人間ではないが、願いの精(自称)から直接手渡しされたお守りを否定するほど
背徳的な人間では決してない。つまり、内心は心強かった。
「えへへ・・・///」
42279 Le souhait last_escape(9/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:41:20 ID:1Hq0/YT2
「ポチは」
「なっ!」
「だって、ポチが持ってきてくれなかったら渡しそびれてただろ?」
「う。そんな事無いもん」
本気で膨れるウィッシュ。
「冗談だよ」
そっと、ウィッシュの頭を撫でる。
「ありがとう」
「・・・うん」
そんな俺たちを見て、席を外すポチ。あの猫は何気に真摯だ。見習わねば。
手を離した後、アホ毛は頑固にも再びぴょんと跳ね上がった。
「今日、暑いのかな。すごく汗かいてる」
「もう夜なんだけどな」
「・・・無理しなくていいから、帰っておフロ入ったほうがいいよ」
額から頬を伝う汗の感触が一筋。これで「無理してない」なんて言っても、ただのギャグでしかない。
汗を拭う。
「うん、じゃあ悪いけど帰るわ」
お守りは洗濯してしまわないよう、鞄に入れた。
「気をつけてね」
右手を軽く挙げて返事をした。
背中で応えたところで、暑さで目の前の石段もちょっと踏み外しそうなくらいだったから格好こそ
つかなかったけれど。
それにしても、嫌な予感か。気になるな。

翌日。

その日の朝の教室は、いつもより騒がしかった。
「何かしらね」
「さあ」
「おっおっおっおっ」
この笑い声は、蕪雲か!?と思って振り向く。
「よく生きてたな。驚かないけど」
「1うpしたから大丈夫だお」
「それで?今日は何のお祭りなわけ?」
ツンの問いに、蕪雲はまた不愉快な笑みを浮かべる。
「実は今日、転校生が来るお」
「へー」
大して驚きもしない。
「あのなぁ蕪雲。転校生が来るなんて事は早々何回もあることじゃないの。理緒が来ただけで十分じゃん。
いくら今回が特別編だからといってそんな事は許されないの」
「そういうことはお話の中のキャラが言うもんじゃないお(^ω^;)」
キーンコーンカーンコーン
「はいはい、皆席に着けい、席に!」
扇子をパチパチ鳴らしながら、てんてーが入室遊ばされる。皆大人しく席に着く。
「今日はみんなも知っておろうが、転校生の紹介をする」
ぅゎマジかよ。
「では、入るが良い」
つかつかと入って来た男は、左手をポケットに突っ込んだまま、適当な白チョークを取ると黒板にでかでかと
自分の名前を書いた。
熱血教師の初授業か。
「俺、紺野 日透(こんの ひずき)っていーます!よろしくお願いしまーす!」
えらくニコニコしたその男は、だらんと頭を下げ、挨拶した。
42379 Le souhait last_escape(10/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:42:05 ID:1Hq0/YT2
やや癖のある茶髪、高い背(横にてんてーが居るからそう見えるのか)。いかにも今日びの池面という風貌の
男だった。周りの女子が「ちょっとカッコ良くない?」「ねー!」とか囃し立てている中、ツンは、
「まあまあね・・・」
と呟いていた。
その後も、日透は好きな食べ物やらやってたスポーツやらを続けて話していた。
激しくどうでも良かったので殆ど聞き流した。はいはいわろすわろす。
「あっ、妹も一緒に転校して来てます。日水(ひなみ)っていいます。よろしくしてやってください」
最後にそう言って、日透は自己紹介を終えた。
「うむ。では自己紹介はそれくらいに。あの席がそなたの席じゃ」
ぴっ、とてんてーが扇子で指した先の席は一番窓際だった。
「早くも窓際族かー」
頭を掻きながら席に向かう日透。
クラスでは割と受けているようだったが、毒男は肘をついて見ていたし、蕪雲なんかはDSで魔女を捜していた。
こいつが何か厄介ごとを起こすのだろうか?
いや、人間何をしでかすかわからないものだし。決して人を殺したりするような人には見えないわ。ねえ。
だってあんなに真面目な子がねえ。怖いわー。なんて、閑静な住宅街が震撼。所○郎も駆けつけるわ。
でもツンに手を出したら許さんな。フルボッコにしてやんよ。

日透は人当たりも良いようで、すぐにクラスの人気者になった。
日透の周りの人だかりを見ていると、蕪雲と毒男の視線に気付いた。
そちらを向くと、二人はなぜかニヤリとしていたが羨望の眼差しで見ていたわけではないというのに。
そんな休み時間。
「あ」
「何よ?」
「ごめん、ちょっと用事思い出した」
「ふーん?行ってらっしゃい」

廊下を駆ける少年が一人。
もう怒ってないかもしれないけど、一応智途に謝っておこう。そう、それが誠意。
俺の下げた頭をその美脚で踏みつけるがいい。だが、それがいい。それが性意。
ピコーン
超反応で、角を曲がってきた誰かを回転しながら躱す。
「おわっ、たっ、と」
だが、結局はバランスを崩して盛大にコケた。
「だ、大丈夫ですか?」
女子らしい。ニーソ穿いてるから悪い人ではないと思うんだけど、誰だろう。
「何とか」
立ち上がって、尻をはたく。
「君、もしかして江口君?」
驚いてその顔を見る。
顔立ちは整っていて、可愛いほうだとは思うけど、何がおかしいんだという感じのそのニコニコ顔。
どこかで見たような。背は小さいけど。
「なぜ俺の名を」
「ふふ。由梨ちゃんから聞いたの」
「・・・すると、あんたがヒナミちんか」
「そうそう、ヒナミちんヒナミちん。よくわかったね」
手をぱちぱち叩いて喜ぶヒナミちん。
「それはそうと、俺、今急いでるから」
「あ、大丈夫。すぐ終わるから」
「え?」
42479 Le souhait last_escape(11/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:42:50 ID:1Hq0/YT2
ヒナミはじっと俺の眼を見た。
だがしばらく経つと、近視の人が遠くを睨むように目を凝らした。
俺の顔に何かついていたのだろうか?
「何?」
それが気になって聞くと、ヒナミははっと気がついて慌てたように、
「あ!なんでもない!なんでもないから!じゃ、引き止めてごめんね!」
と言って、そそくさと退散して行った。
まさかヒナミは霊能力者で、俺の背後に何か居たのでは。
だからウィッシュはお守りを?そんなバカな。お化けなんて無いさ。寝ぼけた人が見間違えたのさ。
「あ、急がないと」

「えと、昨日はごめん」
智途の居る教室。
なにやら数学の問題をバリバリといてるらしいその傍で、俺は両手を合わせて謝った。
智途はシャーペンを置き、合わせた両手を見、俺の顔を見、
「何が?」
と聞き返した。
「いや、昨日何も言わずに逃げちゃったから」
「何だそんなことか。それならもういいんだ」
再びシャーペンを取り、机に向かう。
まだ起こってるのか許してくれたのかよくわからない。
でも、何か他のことが気になって俺に意を介さないだけのような感じだった。
「何かあったの?」
シャーペンの動きが止まった。
「いや、姉さんがな」

家に帰ると、珍しく姉さんが先に帰っているようだった。
今を覗いてみても居ない。テレビも点いていない。
私は特に気にせずに、二階の部屋で制服から着替えようと、階段に一段、足を乗せた。
そこで考えた。
こういうときは大抵、部屋のドアを開けた途端「智途、お帰りー!」とか言って姉さんの奇襲(主にハグ)
を受ける。
季節が季節なのでやめて欲しい。
警戒しながら、再び階段を登り始めた。

が、部屋に入ったときは疎か、シャワーで汗を流し、着替え終わった後も、姉さんは現れなかった。
「姉さん?」
とうとう気になって、姉さんの部屋をノックした。
「智途、お帰りー!」
「うわっ!?」
その胸にガッチリと掻き抱かれる。
「んん?姉さんに内緒でシャンプー変えたな?ハロ君に抱いてもらうためか?ん?」
渾身の力をこめて押し返す。
「ぷはっ。いきなり生々しい話をするな!そんなつもりも無い!///」
「智途が怒鳴る・・・」
わざとらしい泣きまねをする姉さん。
「心配して見に来たのにこれか」
「姉さんだって智途のこと心配よ?だから寄り道しないで早く帰って来てね?」
「新妻か」
「いいから。真剣に聞いて。わかった?」
急に真顔になる姉さんに、圧倒されたように返事をした。
「・・・わかった」
42579 Le souhait last_escape(12/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:43:35 ID:1Hq0/YT2
すると、姉さんは元の笑顔に戻った。
「ほら、暑くなってくると変な人が増えるでしょ?だから智途みたいな妹もつと心配で・・・」
と、色々な後付を繰り返していた。

「・・・なるほどな」
智途、シャンプー変えたのか。
「だから、ハロも、気をつけろよ?」
智途は不安げに俺の顔を見上げた。
「俺も?」
こくん、と返事をする。
聞き返すほどのことでもない。でも、雪花さんに警戒されるなんて、あの二人は何者なんだ?
「わかったよ。気をつけ――」
キーンコーンカーンコーン
「って、やばい時間が!じゃな!」
猛ダッシュで教室を出る。何の準備もしてねえっての。

既に二人とは接触したが、妹のほうが霊能力者だっただけで(勝手に断定)危険な感じはしなかったな。
「はい、これ」
ツンがハンカチの包みを取り出す。一瞬それがなんだかわからなかったが、すぐに気付いた。
「これ弁当か!」
「そうよ」
「うわーありがとう助かった!恩に着る!」
「おっきな声出さないでよ、いいからお昼にしましょ、恥ずかしいじゃない、バカ・・・///」
久々のまともな昼食に喜びもひとしお。わくわくしながら結び目を解いていると。
「ここ、いいかな」
日透が現れた!
「嫌よ」
まず、ツンが答えた。
「俺も嫌。ダメ。かたつ無理。殿下陛下却下。さっさと引越し。今日は満喫したいのだ。空気嫁」
「うーん、冷たいなあ」
断りも無視し、日透は俺の右隣(ツンは左隣)の席に座った。そしてコンビニ弁当を置き、割り箸を割る。
「君の事気に入ってたみたいだよ。俺の妹」
ツンは、むっとして俺の顔を見た。
「あの変な妹が?」
「そうそう、変な妹が、変な妹が」
割り箸を向けて笑う日透。セリフの返しかたが一緒だ。
「とにかく、今はツンと俺との愛溢れる至福の時を邪魔しn」
ドス、とわき腹に一発やられた。
「いいねえ弁当。それ、彼女が作ったんでしょ?俺もそんな健気な彼女が欲しいよ、本当」
「日透ならすぐできるんじゃないか?」
(´・ω・`)ウザス
「このタコさんはどうやって作るんだ?」
先の割れた赤ウインナーを箸で持ち上げる。
「知ってるくせに聞かないでよ」
かあっ、と顔を赤くするツン。
「ヒナミが興味を持つわけだ・・・」
日透がボソッとそう呟いたように聞こえた。
「は?」
それが気になって聞くと、日透ははっと気がついて慌てたように、
「あ、なんでもない!なんでもないんだ!じゃ、邪魔してごめんね!」
と言って、コンビニ弁当を持ってそそくさと退散して行った。
42679 Le souhait last_escape(13/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:44:19 ID:1Hq0/YT2
「なんなのよ、あいつ」
「だな。でもあいつの妹もあんな感じだったぞ」
「いつ会ったの?」
「さっきの休み時間、偶然。なんだか意味不明なこと言って退散して行った」
「変な兄妹ね」
できればツンにも「気をつけろよ」、とは言いたいんだけども変なだけだからなぁ。
そもそも『気をつけろ』って言う時には気をつけても何ともならない事に望む時に言う言葉じゃないか?
だからここは別の言葉で補うべきだ。
「幸運を祈る」
「はぁ?」
端折りすぎたか。

「あー、うまかった。正直泣けた」
「大袈裟」
「あーっ!」
叫び声の先には理緒が居た。
「酷いですわ!理緒というものがありながら、二人で、しかも手作りのお弁当なんて・・・!」
「いつあんたのものになったのよ」
理緒はつかつかと歩み寄り、俺の机に乱暴に両手をついた。
「遥君!何かリクエストは!?」
「弁当は二個も要らないのよ!」
「じゃあマグロの手羽先・・・」
「マグロの手羽先ですわね!わかりましたわ!」
わかるなよ。
「絶対、あなたなんかに負けませんわよ!」
ビシ、とツンを指差し、理緒は嵐のように過ぎ去って行った。

翌日、理緒は『マグロの羽が用意できなかった』と断念した旨を伝えに来た。

大草原。
風は草木を優しく揺らし、舞い上がった木の葉は風に乗って、澄んだ青空の彼方へと、
あの青い山々へまでも、どこまでもどこまでも飛んで行けそうな、のどかで穏やかで、そして限りなく
広々とした空間が広がっていた。
水鳥たちが戯れる湖の近く、丘の上の、さわさわと葉を揺らす大きな広葉樹の木陰に、一人の
ウサ耳少女が寝息を立てているのが見える。
そんな少女の傍に、この場に似つかわしくない黒い影が四つ。二人は男性、もう二人は女性だ。
「たるとさーん」
黒髪の男性が話しかける。名をルシフという。
しかし、たるとと呼ばれたウサ耳少女は、その長い耳をぴくりと動かしたぐらいで、目を覚まさない。
「たーるーとーさーん!」
「だーっ!まどろっこしいな!叩き起こしてやろうぜ!」
癇癪を起こす茶髪の男は、ベルゼット。
「賛成。何がいいかしら」
痺れを切らす赤髪の女性、エルナ。
「かわいそうだよー」
一応止める水色の髪の巨乳、リュシル。
「ニンジンを下の口に突っ込んでみるってのはどうかしら?」
「寝耳に水を注いでみるのはどうかな」
「耳なんかこぶ結びにしてやりゃいいんだよ」
42779 Le souhait last_escape(14/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:45:11 ID:1Hq0/YT2
「よくなぁーい!」
たるとが飛び起きた。
「私をいじめにきたのね」
某人魚のセリフを呟きながら目をこする。
ベルゼットが始める。
「最近、外部からの意識の干渉があったろ」
「ふい」
「俺たちがヤツから開放されたいのもやまやまだが、今、意識がお前ひとりになったら、簡単に精神の
侵害を許してしまう事になる」
「ふえ」
「って聞ーてんのかこの野郎!鍋にして食っちまうぞ!」
「いたいいたいいたい!聞いてる!聞いてるよう!」
耳を引っ張られ、泣き叫ぶたると。
「やめなよ。耳がもげちゃうじゃないか。また生えてくるけど」
「こないよ!」
そのやり取りに、エルナはため息をつく。
「つまり私たちが言いたいのは、当分は協力して誰かさんからの意識の干渉を防ぎましょう、って事」
離してもらえた耳を半べそで撫でながら、
「はぁい・・・」
と、一応答えた。
「じゃあ、もう寝てい?」
「協力しろって言ってんだろうが!早く天使形態に戻れ!」
「いたいいたいいたい!」
遥の頭の中では、この五人がまとまりなく遥の精神を形成している。
黒い四人組は、遥にエロゲの主人公になれる能力を備わせているらしい。
だが同時に、自我が強いため、宿主からの解放を望んでいる。解放された後のことは知らないが。
たるとは、精神世界では遥と一番結びつきが強いため・・・って、それ(ry

それから、数日が経った。

紺野兄妹は相変わらずだし、特にこれといった事件も起きず、平穏な日々が続いていた。
お守りはちゃんと常備しているが、危機感は薄れ、忠告など忘れかけさえしていた。
ある朝の事だった。
ピンポンパンポーン
「今日は臨時の全校集会がありますので、生徒は体育館に集まるように」
いい声で評判の教頭先生の放送連絡だった。
「何かしら」
「誰か何かやらかしたか?」
一瞬紺野兄妹が浮かんだが、なんとなく違うだろうと思った。
「行こう」
手を差し出す。
「こういうときは別に手は繋がなくていいの!」
差し出された手のひらを叩き返す。はいはい、と歩き出す。
「すぐそうからかう!」
でもやはり満更でもないように俺の後をついてくる。

生徒も職員も全員集まったが、そこには校長の姿も、さっき放送連絡した筈の教頭の姿も無い。
なかなか始まらない集会に、辺りはざわつき始めた。
「レディース!エーン!ジェントルメーン!」
突然、どこから出したかわからないマイクを手に、日透がステージ上に躍り出た。
42879 Le souhait last_escape(15/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:45:54 ID:1Hq0/YT2
唖然とする全校生徒(+職員)。それはそうだ。
いきなりこんなことする人間が現れたら、かかりつけ医を呼んで病院に連れ戻してもらうしか手立てが無い。
シーンと静まり返る聴衆に、日透は続けた。
「俺、この学院に爆弾を仕掛けちゃいました。ほら、これ一番大きな爆弾の起爆スイッチ」
ポケットから赤いボタンのついた機械を取り出す。何ともベタなデザインだ。
少しすると、「何言ってんだー!」とか、「ふざけんなー!」とか非難の嵐が始まった。
俺も頭に縦線が何本か入るような呆れた顔をして日透を見ていた。
ドォン!!
耳を劈くような轟音が響き、体育館は大きく揺れる。外、中庭のほうからだった。
おぼつかない足元が、揺れが収まってようやくバランスを取り戻した時、皆は恐怖を自覚した。
パニックを起こした全校生徒が、叫びながら、慌てながら、一気に出口へと駆け寄る。
俺はとっさにツンの手を握った。
案の定、出口は閉まっているようだった。押さないで!、痛え!、やめろ!、開かねぇ!、助けて!、・・・!
日透はその光景を嘲弄し、続けた。
「はいはい下手に動かないほうがいいですよー!皆さんの殆どの人はラッキーな事に解放されます。
ね、俺っていい奴でしょう。今から名前呼ぶ人、体育倉庫で待ってて下さい。それ以外の人は、今から言う
経路を辿って外に出て下さい。じゃ、読み上げまーす!」
わざとらしくポケットから取り出した紙に書かれた名前を、順に読み上げる。

体育倉庫には、ツン、智途、由梨、しのた、理緒、あと蕪雲と毒男が集められた。
俺は禄に目を合わせることもできなかった。
ガラガラ、と倉庫の扉が開く。
「出て出て」
笑顔で手招きするヒナミちん。
由梨はその登場に酷く驚いていたようだが、大体グルだろうという予想はついていた。

「いやねえ、てんてーがなかなか出て行ってくれなくて、困ったよ。うん」
日透はステージの縁に腰掛けて、いつものようにニコニコしながら語りだした。
「めんどくさいから蹴っ飛ばして追い出してやったんだけど。やっぱり面白いね。こういうときになると、
普段は大人しい子なんかも大慌て・・・」
「一体、何が望みなんだ」
元ソルジャーのような剣幕で食って掛かる俺に、日透はやはり平然と答えた。
「せっかちですな。ヒナミ、皆さんを案内してあげて。兄さんは遥君とお話しがあるから」
「はーい。じゃ、ついて来てくださーい」
ヒナミについて行く七人を、俺は横目で見送る。最後に目が合ったツンには何も言ってやれなかった。
体育館の扉が閉まって、その音は静まり返った場に余韻を残した。
「俺とヒナミはねえ」
日透が始めた。
「人の心が読めるんだよ。それに、勉強もできる、スポーツもできる」
「性格は悪いがな」
「でも君の心はどうしても読めない。それが面白くてしょうがないんだよ。だからこういう、ちょっとした
ゲームの遊び相手としては最高。弱いやつと張り合ったって、つまんないでしょ?」
日透は起爆スイッチを床に放り捨てた。それはカラカラと音を立てながら回転し、止まった。
「それ、ニセモノ。笑えるっしょ」
ステージから飛び降りると同時にそれを踏み壊して、破片を足で寄せた。
「爆弾は君にとって大切な人たちに一つずつと、他にでっかい爆弾が一つ。制限時間内にすべてを
なんとかしてくれたまえ」
扉が開き、ヒナミが戻ってきた。
「丁度良かった。ヒナミ、教室で遥君の相手してやって」
「お兄様は?」
「ゲームに邪魔な人たちを何とかしてくる」
42979 Le souhait last_escape(16/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:46:55 ID:1Hq0/YT2
熾惺学院、正門。
警察、野次馬、生徒や職員、マスコミなどでごった返している。
そこから少し離れた塀の許に、変わった服装の三人組が立っていた。
夏なのに暑苦しいくたびれたロングコートを着た男、いつでもメイド服の女、そして、麦藁帽子をかぶり
白いワンピースという一番夏らしい(って言うかまともな)服を着た女。
コートの男、渋沢 銀二(しぶさわ ぎんじ)は、毒男の叔父である。
「厄介な能力を持っているものだ」
「ここはハロ君一人じゃ荷が重過ぎるでしょうね」
「どうするんですか?」
渋沢はタバコの煙を燻らし、しばし思索に耽る。
「お前はどうする、麦わら」
雪花は渋沢が嫌いであった。
「当然三人散るべきでしょうね。助けたい人も違うでしょうし。三人で紺野姉妹の片割れを叩かなければ
ならないわけでもないわ。電波の乱れ、反響音、床や壁の振動で隠された爆弾の位置も大体わかるわ」
「身体能力においても、普通の人間の域である彼らに劣るとは思いません」
「普通の、か。どちらが普通でないかの勝負と言ったところか・・・ふっ」

教室。俺のクラスだ。
よくわからないうちに俺は縄で両手を後ろ手で縛られ、足首も縛られ、斬首寸前かのように床に正座
させられていた。
で、ヒナミはというと、教卓に腰掛けて足をぶらぶらさせていた。
日透が何をしに行ったのか、皆はどうなってしまったのか、それも十分に気になるし気が気でないのだが、
ヒナミがわざとらしくパンツを直視できる位置に腰掛けているのも気になる。
それでいて常に俺から視線を外しているのもわざとらしい。たまに足を組んだり組み替えたりするのも。
兄妹は互いにそっくりだから、どうせ後から俺のことを変態だのなんだのと嘲弄しようなどと考えているの
かもわからないが、俺としては望むところなのでむしろ直視している。
黒ニーソ、太もも、奥には暗くてもよく見える白。
「暇ね」
「そうだな」
「しりとりしよっか。しりとり、の『り』から」
「輪姦」
「・・・」
「リンカーン」
「伸ばしてもダメ。はいはい、私とは話したくないって言うんでしょ?」
「誰にでもある凡ミスだ。気にするな」
ヒナミは教卓を降り、椅子を一つ拝借して、俺のすぐ前に座った。
「くっ、お前、何をする気だ!」
是非とも教えてくれ!っていうか僕縛られてのあれは初めてだから優しくして欲しいです。
靴のまま、ズボンの上からそれを踏みにじり始めるヒナミ。
「君がマゾだって事はすでにわかってるから」
「うう・・・」
何という事だ。不覚にもおっきした(´・ω・`)
ヒナミは足を離し、両足とも靴を脱いだ。
そして今度はベルトに手をかけた。手を使えない俺はもちろん抵抗できないが、ズボンを下ろされたまま
さらし者にされるのは流石に勘弁して欲しす。
あっけなくパンツからすでに屹立したものを取り出されてしまう俺。
「ふーん」
『ふーん』で片付けられてしまう俺の息子。
観察した後、今度は足先で色々弄り回し始める。
43079 Le souhait last_escape(17/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:47:42 ID:1Hq0/YT2
「ちょっ、無抵抗の相手に卑怯な。武士道に反するぞ」
「声、震えてるよ?」
右足を使って、押し付けるように本格的に扱き始める。
「ぁ、う、いや、マジで、やめ・・・」
「随分反応いいね。いじめたくなるわけだわ。ち○こ気持ちい?」
なん、てセリフを・・・!早く用済ませろよ日透!
汚れた制服着て助けに行くなんて助けられたほうもどんな顔していいかわからないっての。
そんな心境とは裏腹に、早くも粘着質な感じの音が立ち始める。
「ぁ、がっ、く・・・!」
体が痙攣するほど必死で我慢するが、ソックスのわずかなざらざら感に撫ぜられるのは堪らない。
「我慢しないで出しちゃえば?服きったなくしてやらしいにおいさせて皆を迎えに行けば?そうしたほうが
面白いでしょ?カッコつかなくて。観念してだらしなく射精してみなさいよ」
そう言って、ますます早く激しく足を動かし始める。
既に射精寸前だった俺がそれに耐えられるわけもなく、最後には我慢するのもやめていた。
「あー♪」
ヒナミの嘲るような声を聞きながら、俺はだらしなく射精してしまった。
足を離すと、ペニスは脈打ちながら、黒いソックスを欲望の証で白く染めていく。
「・・・うう」
俺は悔しいんだかなんなんだかよくわからない感情に、呻くしかなかった。
ヒナミが足を持ち上げると、丁度その指と指の間からどろりと落ちた精液が、制服のズボンの上に落ちた。
「ちょっ!やめろよそれは!」
「どうして?君が出したんじゃない。汚れたままにしておけって言うの?」
目の前に足を突き出す。
「そうされるのが嫌だったら、綺麗にしてよ」
「うっ・・・」
目の前にはテカる黒いソックス。先には、反笑いで見下すヒナミ。
何で、こんな事に・・・。理緒にはよくやらされゲフンゲフン。・・・今回は哀しくなってきた。
ためらう俺の口に、無理矢理足先を突っ込んで来た。
「んんっ!」
「ほら、こうされるのが好きなんでしょ?さっさと舐め――」
ヒナミはポケットから携帯を取り出した。
「にーさま?今いいとこなんだけど。え?うん」
「・・・!(足を口から抜いてから離せっつーの!)」
と思っていたら、本当に抜いた。口の中に残ったものをなぜか反射的に飲み下した。ちょっと嫌になった。
ヒナミがしゃべらなくなったと思ってその顔を見ると、なにやら真剣な顔になっていた。
「はーい」
最後にそう応えて、通話は終了した。
汚れたニーソを脱いで、言う。
「あげる」
「いらない」
言ってみただけなのだろうか。その場にそれを置くと、後ろに回って縄を解き始めた。
やっと手足が自由になった俺は、まずポケットティッシュで汚れを拭いた。
「無駄だって。君いっぱい出したもん。匂いは消えないよ」
「そこは知らないフリでカバーだ」
とりあえず拭き終える。
「今、十一時。十五時までに何とか助けないと、君の大切な人たちは学院とともに心中するわ」
制服を着直す。
「俺には爆弾解体の技術が無い。圧倒的に不利じゃないか」
「大丈夫よ」
ヒナミは、ポケットから鍵を取り出す。
43179 Le souhait last_escape(18/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:48:46 ID:1Hq0/YT2
差し出された鍵を受け取る。
「それで爆弾はガラクタになるわ」
「嘘じゃないだろうな?」
ヒナミは微笑した。
「当然よ。そういうゲームだもの。その代わり、見つけるのは難しいと思うよ?」
「他には?」
「私からは何もないわ。じゃ、頑張ってね、変態君♪」
ぽん、と肩を叩き、教室を出て行った。
なるほど、ノーヒントってわけか。
・・・何がゲームだ。何でみんなが。何で、こんな事に。

三人は、玄関に居た。
「ここで、散るか・・・」
渋沢が呟いた。
そこで――ザッ、と三人が向きを変えた。
「おっと、みつかっちゃったか」
「忍び寄るなら、足音、呼吸音、心拍をもう少し落とす事ですね。お嬢様はどこですか?」
「本当に面白い人たちだ。それに、正直だ。でもね、邪魔なんだよ。帰ってもらえるかな?」
三人は一斉にバラバラの方向に散った。
「・・・あら?本当に帰った」
私は助走をつけ、跳躍して二階から張り出した玄関の屋根の上に飛び乗り、そこにしゃがんだ。
電磁波を感じた。おそらく遠隔操作する何かを持っている。それを使わずしても、窓の多いこの学院、
片割れがどこかから見ていれば、ヤツの合図で――。流石の私も、遠く離れてしまえばどこからの
電磁波かの見分けはつかない。人の考えが読める、っていうのは本当に厄介だ。
日透はしばらく私たちの隠れている位置をきょろきょろ見回していた。
「しっ!」
太ももに隠していたハンドガンで、スボンの左ポケットを撃ち抜く。
と同時に、ヤツから一番近い、植木の陰に潜んでいた緋柳が飛び出し、右肩に左で肘打ちをする。
怯んでいてもヤツはそれを躱したが、緋柳はその右手を地面につき、体全体を使って回し蹴りをした。
その踵は右肩をしっかりと捉え、転げるように後方に倒れこむヤツの先の渋沢が顎に一発加え、
気絶させた。
ベルトで手足を束縛する渋沢の所に、私も緋柳も歩み寄る。
「口の中にはありませんか?」
「無い。殴るときに確認した」
てきぱきと作業を終える。
「で、どうして陣形がEH(エンプティハンド)キラーだったのだ?」
「私は、せっちゃんがそう動いたから」
「TAでもDAでも良かったと思うけど、まあ一番注意を引けるのは私かなあ、と。他は並列的だし・・・」
体で覚えている技術が読めるわけないし。銃を使うとも思わないだろうし。ね?
「まあ、いい。自信過剰が仇になったな」
そう言って視線を下げると、日透は激しく咳き込み、息を吹き返した。
「はっ、俺が最後まで見れないのが残念だけど、どのみち爆弾は遥にしか解除できない」
「どういうことだ?」
「唯一の解除方法である鍵は、普通の人には見えないんだよ」

THEサンクチュアリ百式-Ver2.01-部の部室を覗くと、蕪雲と毒男が捕まっていた。
「毒男は部員じゃないだろ」
と思わず突っ込みを入れる。
43279 Le souhait last_escape(19/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:49:38 ID:1Hq0/YT2
「救世主キタコレwwwwww」
「お前ら普段散々悪態ついておいて、現金なやつらだなあホント」
二人の縄を解き、首に下げられている黒球(爆弾のつもりか)についている鍵穴に鍵をさし、開ける。
「よし、これでいいだr」
「今から智途様助けに行くんだけど何か質問ある?」
「由梨ちゃん助けないと」
俺を差し置いて歩き出す二人。
「お前らいい加減にしろよ」

校舎の外、テニス部の部室。
何でよりによってこんな所に。智途はそう思っていた。
確かに私は、月岡とここでテニスの勝負をして、・・・負けたんだったな。
でも、それだけの場所だ。
校舎すべて捜したって、私は居ない。
「・・・」
暑い。禄に身動きも取れない。
人に気をつけろ、なんて言っておいて、自分がこのザマだ。可笑しいな。
正拳も裏拳も回し蹴りも頭突きもすべて動きが読まれていた。あんな女は見たことが無い。
目の前に腕時計を置いて行ったのは、ただの嫌がらせだろうな。
ハロは、助けに来てくれるだろうか?あの日を思い出して、ここだろうかと思って来てくれるかな。
もしハロが私と付き合っていたなら、私が好きなら、真っ先に助けに来てくれただろうか。
・・・。
まだ三時間ほどもある。きっと、大丈夫だ。
そう、思いたいものだな。
・・・。
私は泣かない。姉さんを助けられるくらい強くなりたいと思っていたけど、それは、無理だったのかな。
・・・。
・・・。
「!」
足音がする。
誰かはわからない。だが、私の心は期待でいっぱいになっていた。
ガラッ!
「智途様ゲトぉぉー!!」
身を躱す。蕪雲は部室の壁(コンクリート)にそのまま激突した。
「毒男、縄を解くの手伝ってくれ」
「よしきた」
あっという間の出来事に、私は縄と爆弾が解かれた後、すこし固まってしまった。
やがて、自然に涙が浮かび、
「ハロ!」
目の前に立つハロを、力いっぱい抱きしめた。
「な、泣くなよ。皆見てるじゃないか。っていうか折れ」
「もう会えないかと思った!本当に、良かった・・・!」
「蕪雲にとっては泣きっ面に蜂の光景だが('A`)」
「そうだ、智途。ここいるって引っ張って来たのは蕪雲なんだ。蕪雲のお陰」
「そーなのか」
涙目で見上げる智途。彼が(新しくしたシャンプーの)においを追ってきた事は伏せておく。
「蕪雲、ありがとう」
智途は珍しく素直に、倒れている蕪雲に伝えた。
「・・・や、何・・・まあ当然のことだお」
「ツレデレ('A`;)?」
よっぽど予想外だったらしい。
43379 Le souhait last_escape(20/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:50:31 ID:1Hq0/YT2
「制汗スプレー」を取りますか?
[YES]
NO
傍にあった制汗スプレーを使って、制服の匂い消しを図った。
蕪雲や毒男はさっさと行ってしまって傍に居なかったし、智途は必死さからか気付かなかったみたいだが。
フリかもしれないけど。
「何で、制服にスプレーしてるんだ?」
「いや、別に・・・使う?」
差し出す。
「使う」
何とかごまかせたようだ。
携帯の時計では、十二時十分。あと四人(ツン、由梨、しのた、理緒)。
「携帯は全員持ってないんだっけ?」
「ああ。全部あの女に回収された」
「でも、あの時は持ってなかったな」
「あの時?」
「十一時までは、日透の命令でヒナミと教室で待ってたんだよ」
蕪雲が何か言いたげにこちらを見ている。
「何だよ?」
「それでイカくさかっ」
「おま、ちょっ黙ってろ!おい!」
助けなきゃ良かっ・・・でも智途を助けたのは蕪雲だし。
「どうかしたのか?」
「いや別になんでもない。校舎の外にまで範囲が及ぶとはな。これは厳しいかも知れない」
「けど、由梨ちゃん助けないと」
「全員だろ」
半ギレで突っ込む智途。

一階廊下。
「話の内容はわからなかったけど、ハロ君たちのグループと合流したほうが良さそうね」
「はい。地雷などのトラップの位置がわからないぶん、固まって移動するであろう彼らは危険です」
日透はとりあえず外の木陰の隅に隠しておいた。テレビがあるなら、妹に情報が伝わって、ヤケを起こされる
とかなわないからである。
「何ボーっとしてるのよ、渋沢」
「ゲーム、か・・・。まあいい。そうするなら早く電話だ。お前なら番号知ってるだろう」

同じく、一階廊下。窓際の長い廊下。
「由梨ちゃんとしのたは休み時間になるとこの先の水のみ場の辺りに居る」
毒男に導かれるまま、俺たちは一階廊下を歩いている。
「?毒男は学年が違うからここの水のみ場には用は無いだろ」
智途が言う。
「そこは愛でカバーだ」
と俺。
「そうなのか?」
「そうだお。現に漏れはいつでも智途様の傍に駆けつけるお」
「そう言えばそうだな」
「・・・(^ω^ )」
とんとん、と蕪雲が俺の肩を叩く。
「何だよ?」
「なんか智途様に殴られて会話が終わらないと物足りないお」
「それは俺も思った。まあ非常事態なんだから我慢しろ」
43479 Le souhait last_escape(21/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:51:26 ID:1Hq0/YT2
どの道、変態か。
「あれに見えるは!」
毒男が指差す先には、縛り上げられている由梨としのたが居た。口にはガムテープが貼られている。
俺はそれを見て、直感的に気付いた。
智途も、由梨もしのたも、心の読めない俺じゃなくて、読まれている筈の蕪雲や毒男にしかわからない
場所に捕まっていた。その蕪雲や毒男も、俺がいつも立ち寄る部室に居た。つまり、俺の心が読めなくても、
今の俺たちの行動は完全に予測可能だ。
つまり、あれは罠だ。
「待て、毒男!」
駆け出す毒男を追いかける。
智途も、必死に首を振る二人の意を汲み取り、気付いて走り出す。
蕪雲は、ただ智途の後を追うだけだが走り出した。
走る毒男の右手を何とか掴み、足を軸に回転するように後ろに放る。それを蕪雲が見事にキャッチ。
だが、当然バランスを崩す俺。追いついた智途が、倒れ込む俺を抱えるようにして支える。
「ナイス連携d――」
ドン!!
轟音。
音に気付いた時には、体が浮いている事に気付いて、すぐに床に叩きつけられた。
何とか上体を起こす。舞う土煙。ぱらぱらと崩れる、壁や天井。側壁なんかは完全に穴が開いていて、
鉄心が剥き出しになっていた。派手にやってくれたな。本当。
「ゲホ、ゲホッ。みんな、大丈夫か?」
「何とか。まあ、ちょっとやってしまったけど」
飛び散った破片で、智途は二の腕の辺りを五センチほど切られていた。
「智途ざま゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!゙!゙」
「お、俺のせい・・・」
うろたえる毒男。それを見て、智途はフッと笑って返した。
「男ならこれくらいでうろたえるな。こんな傷、舐めておけば治る」
腕白少年か。舐めて治る傷でもないし。
「もう罠は無い筈だ。とりあえず二人を助けて、智途は水飲み場の水道で傷を洗ったほうがいいな」
俺は一応適当な事は言ってみたけど、もし毒男を引き止めなかったら、と思ってぞっとしていた。

電話があって、トラップが少ないだろう屋外(中庭)で、俺たちは最強三人組と合流した。
「智途ぉ!怪我してるじゃないの!痛いの?痛いの?飛んでいかないの?」
慌てた様子ながら、雪花さんはどこからか取り出したガーゼとテープでしっかり処置を始めていた。
「お嬢様は?」
「すいません、まだ・・・」
無表情な筈の緋柳さんの表情が、少し曇ったように見えた。
「毒男」
渋沢さん。
「('A`)?」
「帰るぞ」
全員が無言になった。
「・・・いや、危険かもしれないけど、俺は知らないフリして帰ることはできない」
「そうか」
その言葉を特にどうというわけでもなく、渋沢さんはまたタバコを咥えた。
「日透は私たちが何とかしたわ」
「何とかしたんですか!???!!」
「はい。現在、十二時五十二分です。残り約二時間で二名。これまでのペースでいけば達成は容易ですが
彼の言った事とその妹の動向を考慮に含めますと、何とも言えません。急ぎましょう」
「『彼の言った事』?」
43579 Le souhait last_escape(22/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:52:19 ID:1Hq0/YT2
「そうだ」
渋沢さんが口を開いた。
「『爆弾は遥にしか解除できない』と言っていた。何か心当たりはあるか?」
「これのことかな」
爆弾を解除する鍵を取り出す。
「これは、俺以外の人には見えないと言ってました」
雪花さんが近付いてきて、鍵(のあるらしい空間)を見る。
「ほんとだ。あるんだけど、ハロ君以外の目には光を反射しないわ。触る事はできるけど」
俺は非現実的な事に慣れてるからどうと言う事もないけど、って言うか見えてるから不思議でもなんでもない
のかもしれないけど、やっぱり不思議なんだろうな。おそらくこれも、意識に干渉する能力の一部。

「由梨ちゃん、大丈夫だった?気絶してたけど」
「え?うん。あはは・・・私、おっきな声とか音は苦手で。しのたんと話もできないし、やっぱり怖かったかな」
「『心当たりがある』って私たちを導いてくれたのは毒男なんだぞ」
智途が口を挟む。
「よせやい俺なんかよせやい」
「そうなんだ。ありがとう!」
「・・・や、何・・・まあ当然のことだ」
「ツレデレ(^ω^;)?」
「でも腹立ちませんかあの女!縛った上に口にガムテープ!ボクもう息苦しくて・・・」
「私はテニス部の部室だった。放っておいても熱中症で死んでしまうぞ」
「ひどいですね!」
蕪雲や毒男も悪態垂れるとか死ぬかと思ったとかそういうこと言えよ。マジ現金だったぞ。

「ここからは義理とかそういうのは要らない。後二人なだけに、トラップには十分気をつけるべきだ。即ち」
一服し、タバコの煙を大きく吐く。
「遥と緋柳以外は学院の中に入る必要は無い」
酷なようだが、本気で殺す気の爆弾トラップを体験した以上、その言葉は否定できなかった。
「おにいちゃん・・・」
「大丈夫だって。ちゃんと帰ってくるから」
ぽんぽん、と由梨の頭を優しく叩く。
「智途先輩、いいんですか?ボクたち、このまま引き下がっても」
智途は俯き、ぎゅっと二の腕を押さえた。
「仕方、ないことだ」
「・・・じゃあ私たちは、安全なところへ避難しましょう」
その光景を横目で見ながら、雪花さんは提案した。
「そうだな」
渋沢さんは咥えていたタバコを捨て、足で踏み消した。
不安そうに俺を見ながら連れられていく面々と、目を合わせていた。
ツンとはもう朝から顔を合わせていない。残り時間が何分だから、とかそう言う事は言えない。
誰にも大切な人が居て、誰でも大切に思われているんだから。
「遥様、行きましょう」
「・・・はい」

時刻は、十三時半頃。
「待って下さい。そこはトラップです」
「ここもか!」
俺には何もわからないが、緋柳さんには地雷の位置がわかるらしい。
・・・輝青院家ではたかがメイドにどんな訓練をさせているのだろう?ちょっと恐ろしい。
「それ以前に、そこは女子トイレです」
43679 Le souhait last_escape(23/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:53:16 ID:1Hq0/YT2
無表情で指摘するのが怖い。
「つらい思い出のあるところに閉じ込めたり、楽しい思い出のあるところに罠を仕掛けたり、そういう
嫌がらせが多かったからさ、理緒もこういう所に閉じ込められてないかな、と」
でも俺の教室がスタート地点で、そこには居なかったし、あと所縁のあるところってどこだろう。
「生徒会室、かな?」
生徒会室には所縁は無いと思うが、しのた救出で行く必要の無くなったそこに意表を突いて隠すかも。
むしろ所縁があるのは生徒会室というよりも、生徒会室にあるようなゴージャスなソファー(基本的に
生徒会室は豪華空間)なのだ。まだ純真だった俺にあんな事やこんな事したのはその上で。
「では、行きましょう」
理由を聞かれなくて助かった。

生徒会室の扉を開ける。
目に入ったのは、縛られてソファーに座っている理緒と、生徒会長の席に座っている――ヒナミ。
ドン!!

埃舞う中を、ヒナミは笑いながら私と擦れ違い、走って行った。
入り口付近の床に爆弾が仕掛けてあったらしい。自動ドアの電磁波かと思ったのが迂闊だった。
「遥様?」
割れた窓ガラスから煙は逃げていき、晴れた視界に見えた光景に、私は絶望した。
とっさに腕を掴んで引き下げたつもりが、十分でなかったらしく、遥様は気絶してしまわれていた。
切れた頬から流れた血が、私の頬から一滴、床に落ちた。
爆弾は遥様の持つ鍵でしか解除できず、遥様にしか見えない。
意識の回復を待つことによる時間の浪費は、遥様にとって大切な人を捜す時間に影響する。
しかも、さっき遥様が鍵を戻したズボンのポケットには、何も入っていない。
爆音に紛れた金属音は、やはり鍵の音だったらしい。
「・・・これは?」

「――はっ!」
体を起こす。ここは、生徒会室?
「遥君!理緒、理緒、怖かったですわ!」
涙ながらに抱きつかれ、そのまま力任せにソファーに沈められる。
「ぅゎ理緒!?爆弾の解除は・・・あれ?無い」
緋柳さんは手に、見えない筈の鍵を持っていた。
「血が、ついていました。それで見えました」
「そうか、よかった。って、今何時!?」
理緒が生徒会室の時計を眺めて答える。
「十三時五十分ですわ。遥君が気絶していたのは、ほんの五分程度でしたわ」
「あと、一時間・・・!理緒、そろそろどいてくれ。俺は行かなきゃ!」
理緒にはわかっていた。今ここで俺を行かせてしまうのは、どういうことなのかを。
いくら俺が普段は言いなりでも、こういうときだけは頑固になるのも。
だから、理緒は黙って体を離した。
「遥様!一人では――!」
最後まで聞くことなく、鍵を取り、ソファーから跳ね起き、どこへとも言わず一目散に生徒会室を駆け出た。
ソファーにへたり込む理緒。その頬に、涙が伝った。
「止めるなんて、できるわけありませんわ。だって、理緒は、遥君のことが好きですもの・・・」

熾惺学院、グラウンド。
「お嬢様は助かったらしい」
そう言って、渋沢は携帯をしまう。
43779 Le souhait last_escape(24/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:54:14 ID:1Hq0/YT2
「そっか。じゃあ後は、ツンちゃんだけなんだ」
沈黙が広がる。
あと一時間あるか無いか。それが皆の心に重くのしかかった。
熾惺学院が粉々になるかもしれないこと、ハロとツン死んでしまうかもしれないことが、だんだん
現実味を帯びてきた。
「おじさん」
「ん」
「あのさ、ハロはあれでも、俺の大切な友達なんだ。だから、その、協力してやって欲しいんだ」
「・・・」
「姉さん」
「はーい!ねえ渋沢、帰りは窓飛び降りでいーい?」
聞いて、渋沢さんは微笑し、タバコを踏み消した。
「そのほうが性に合う」
言い終わるかというところで、二人は校舎に向かって駆け出して行った。

時間が無い。
理緒を捜すために立ち寄った場所に、ツンは居なかった。
しかもどこに爆弾が仕掛けられているかもわからない。一人で飛び出してきてしまったことを後悔した。
「どこなんだ・・・ツン」
「教えてあげよっか」
声に振り向くと、ヒナミが居た。
「ツンちゃんの爆弾は特別製でね、もし外せたとしても後で爆発するから気をつけてね。それも、凄い爆発」
「ツンはどこだ」
楽しそうに語るヒナミに、激しい怒りを抑えて聞いた。
「君の教室。移動させたの。思い出深いでしょ?最後はそこがいいかなって思って。ドラマチックじゃない」
最後まで聞かずに階段を駆け上がった。
「ふふ・・・物語は、ちゃあんと主役が死んで終わったほうが、すっきりするじゃない?」
ヒナミは大きな声を出して笑った。

今俺が駆け上がった階段は、罠だったかもしれない。今俺が駆けている廊下は、罠に繋がっている
かもしれない。もう十センチずれて走っていたら、地雷の餌食になっていたかもしれない。
それでもいい。早くツンに会いたい。話をしたい。朝、あの角でまた会って、一緒に学院に行こう。
「ツン!」
教室の扉を開ける。
「ハロ!」
ツンはいつもの自分の席に固定されていた。即座に縄を解く。
そして、抱き合った。抱いたツンの後頭部を一回だけ撫でて、言葉はまだ出てこなかった。
「はやく爆弾を解除して出よう!」
鍵を取り出す。
探すが、首輪にある筈の鍵穴はどこにも無い。他の人についていたものとは全く別物だ。黒い輪だ。
接合部が線のように見えるだけで、他には何にも無い。無理に外そうとするならば、きっと爆発する。
「ね、ハロ。これ爆弾だから、早く逃げたほうがいいわよ?」
自分が何を言っているのかわかっているのかいないのか、ツンは微笑んでそう言った。
「何、言ってんだよ?どこに逃げんだよ?バカ言うな」
教室の時計は、十四時四十分を指す。
「私、ハロに会えてよかった」
「はーいわけわかんないこと言わないの。ツン、君失格」
「真面目に聞きなさいよ!だってこの爆弾、外れないのよ!?」
「聞いてるよ!」
43879 Le souhait last_escape(25/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:55:05 ID:1Hq0/YT2
怒って言い返した俺に、ツンはすこし驚いたようだった。
「でも、こんな所で終わるのなんて嫌だろ。ちっちゃいときからずっと一緒で、色々あったけど、今まで
ずっと一緒に居て、俺がこんな所で引き下がる男じゃないっていう事、わかってるだろ。普段はそりゃ、
だらしなくて優柔不断で頼ってばっかだけど、でも好きな人を守りたいと思うことぐらいできる!」
「・・・」
ツンは何も言わず、俯いてしまった。
俺も心の中では、こんな窮地に追い込まれるまでに今の言葉を言ってやれなかった事を嘆いた。
時間は過ぎていく。
あと八分では、この広い学院の玄関まで走って行くことは、殆ど不可能だ。
足音がした。
ヒナミか、と思って見てみたら、それは予想外の人物だった。
「し、渋沢さん?」
ふぅ、とタバコの煙を吐く。ちなみに、学院内は禁煙だ。
「時間が無い緊急事態、私の場合は窓から飛び降りて帰る。そのほうが私には性に合う」
俺とツンは何を言っているのかわからず、呆然と続きを待った。
「そう言えば、この学院にはプールがあった。懐かしいな。飛び込みを練習した時代は、私も若かった」
言い残し、渋沢さんは窓からひらりと脱出して行った。
「ハロ、時間が・・・!」
時計を見たツンが慌てだす。あと三分も無い。
その時、教室の俺の鞄から、ふわりと紙切れが飛んできた。ウィッシュからもらったお守りだ。
お守りは優しい光に包まれ、そして消えていった。
その時、黒い首輪はペキ、と音を立てて外れた。
――首輪は『もし外せたとしても爆発する』。その事を思い出した俺は、ツンを無理矢理お姫様抱っこ
して、窓に向かい、日透の机に乗って、窓を開けた。
眼下にはプール。ちなみに、ここは三階。勢いが足りなくてプールサイドに落下しようものなら、である。
「え、あんた、本気?」
「成功したら拍手ヨロ」
しかも助走は二歩だけ。意を決して、アルミサッシを思いっきり踏みきって飛んだ。
「おー!いけたか、これ!?」
「きゃあああああああああああああ!!」
ぅゎ内臓が浮く気持ち悪い気持ち悪い気持ちわ
近付く水面。そして――
ザッバァアアァアァアン・・・!!
飛び散った水滴が、雨のように降り注ぐ。何とか両者、水面に顔を出した。
その時だった。
ものすごい轟音とともに、俺たちの教室は炎に包まれ、窓は跡形も無くなっていた。
ガオンッ、と、元椅子がプールサイドに落下。その威力に、俺たちはしばしボーっとしていた。
「スタント無しだぜ・・・」
ようやく呟いた言葉が、それだった。その後、ツンから強く抱きしめてきた。
「ハリウッドスターみたいなことして!」
「ちょおまごぼばごぶべば」
というか、沈められた。
「ぶはっ!」
「私も、ハロの事、好き。一緒に居たい!」
「そんな素直なツン、ツンじゃないやい!」
「じゃあ、なんて言えばいいの?」
何だろう。
「『そんなに好きなら仕方ないわね、明日からもずっと一緒に居てあげるから!』とか?」
「何それ」
お前の真似だよ!!!
439名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 03:55:22 ID:1xQzgbnO
44079 Le souhait last_escape(26/27) ◆sKDRdae3Hs :2007/08/15(水) 03:55:52 ID:1Hq0/YT2
学院全体が爆発する事は、最強三人組が学院長の像の中にあった起爆装置を解体したため、免れた。
そのために長年無傷だった学院長の像が無残にも叩き割られたことは、全体の被害からすれば軽い。
問題の紺野兄妹だが、パトカーの中で二人とも消えるように姿を消したそうだ。
人間ではなかったのだろうか?
あとでウィッシュにその事を聞いてみた。
「わかんないけど、たぶん、熾惺学院が建ったことで潰された塚か何かの崇りかな。そういうこと、
たまにあるみたいだよ」
などと、何気に怖い事を言っていた。
読者の殆どが忘れていたであろうお守りがあの場面で役に立つとは思わなかったから、通常の三倍は
ウィッシュにお礼を言った。
崇りに抜かれた俺って一体。そんなの時効だ。気にするな。
爆弾の撤去、校舎の補修の関係で、俺たちはちょっと早い夏休みとなった。
というわけで、俺は自宅にツンを招き、冷房の利いた部屋でテレビを見ながら、のんびりと過ごしていた。
ツンは立ち上がって、俺のベッドの上に座った。
「ベッドシーン?」
「そうよ。あんたの好きなベッドシーン。早く来なさい」
ツンはそう言った後、目を伏せて言った。
「私、ハロが来てくれるまでの間とても怖かった。もうこんな事もする事無いのかなって、思って。だから、
・・・何よ?」
「いやいや」
「何ニヤニヤしてんのよ。真面目に聞いてる?」
怒ったツンの唇を奪い、二度、三度とキスをする。
「あんな非常事態に、そんな事考えてたのが俺だけじゃなくて良かった」
かあっと、ツンは顔を赤くする。
「ばっ、バカ!あんたは非常事態じゃなくてもいつも考えてるじゃない!私の場合は偶然・・・!っていうか
色々考えた後に出てきたわけであって・・・!///」
意味不明なジェスチャーを交えながら必死で弁解するツン。
「はいはい・・・」
また、唇を奪う。今回は長く、深いキス。
舌を舐めあい、唇を吸い合い、俺はゆっくりとツンを倒していった。
ツンはたたんでいた足を伸ばし、俺はその服のボタンに手を伸ばしていた。
ツンにしては珍しくマグロ状態だ。
恥ずかしいのか、服を脱がしていく俺と目を合わせないように目を伏せて、赤面したまま。
「んっ・・・///」
ブラも外し、その柔らかい乳房に口をつける。ツンはわずかな嬌声を漏らした。
左の乳房に当てている右手には、心臓の鼓動がよく伝わってきた。熱くなっていく胸を揉みほぐす。
「あっ、ハロ・・・///」
その抑えたような、思わず漏れたような声が、俺をますます興奮させる。
あまりツンがドキドキしすぎているためか、それに触発されるようにますます夢中になっていく。
下のほうに手を伸ばす。
まずはスカートを脱がす。続いて、その下も。
脱がす時に糸を引くほど、そこは濡れていた。物欲しそうに愛液を漏らしている限りなく淫靡な
それを見ているうちに、俺は理性が削られていった。目を離せずに、ただベルトを外し始める。
「今日は、ハロでいっぱいにして・・・よね?」
脱ぎ終わると、痛いほど勃起したそれを秘所にあてがう。濡れきったそこへのペニスの侵入は、
実に容易だった。
「あ、ああぁっ!///」
ツンの強気な顔は快楽に乱れた。
「もっと、ハロ、近くに・・・!///」
差し出されたツンの両手を取り、抱き合った。
44179 Le souhait last_escape(27/27) ◆sKDRdae3Hs
華奢なツンの肢体を全身で感じながら、俺は本能に任せて動く。
膣内の襞の感触がペニスに絡みつき、奥へ奥へと吸い上げるようだ。
気持ちよくて、だんだん射精しそうになってくる。
「あっ、はろ、いい、はろで、いっぱいにしてぇ・・・!///」
だんだん呂律が回らなくなってくるツン。
「う、あ、もう、・・・だめかも」
「へっ?あ、じゃ、しゃっさと、出しなさ、よっ・・・!///」
最後に思いっきり突き上げ、ツンの奥深くへと射精した。
「あっ、ぁあっ、出てる、ハロの・・・///」
どくどくと注ぎ込まれるそれを、ツンは震えながら受け止める。
ようやくおさまり、ペニスを引き抜く。と同時に、精液がどろりとツンの中から太ももに垂れていった。

行為の後からぐっすりだった俺は、夜、誰かが頭をつつくので目が覚めた。
「そろそろ出かけるわよ」
ツンだった。既に浴衣に着替え、髪は下ろしていた。
「祭りとかあったっけ?」
「花火大会よ」

この町が開発の嵐に晒されたとは言え、こういった土手もちゃんと残っている。
土手から見る向こうの景色は昔と違うけれども、こうして毎年花火を見に来る事は、恒例だった。
昔はよく、土手の川とは反対側のほうの林が暗くて怖いって言ってたっけ。情けない話だ。
花火は色とりどりの光彩で夜空を照らし、轟音で時を刻み、見る人の心を癒した。
「綺麗ね」
「君がね」
ぱしっ、と、持っていたうちわで突っ込まれる。
お茶目ですがな(´・ω・`)
「こうして花火が見られることも、無かったかもしれないのにね」
「おいおい、まだ言ってるよ」
「悔しいけど嬉しかったわ」
何が悔しいのか。
「学校始まったら、また弁当作ってきてくれる?」
「仕方ないわね」
「朝、あの角で待っててくれる?」
「当たり前じゃない」
「俺、もう絶対、危険な目に遭わせないから」
「・・・」
ぱたぱたとうちわで扇ぎ始める。
「でも、私はもう平気よ?危険な目に遭っても」
「え?」
「だって、あんたが助けてくれるんでしょ?」
「うん、まあ」
「おかしいわね。花火終わっちゃったわ。誰かさんが寝坊するから」
「俺、禄に見てないのに」
「せいぜい来年の花火に期待する事ね」
仰ぐ手を止める。
「・・・ハロ、私のこと、好き?」
「そりゃあ、うん。好きだ」
「『そんなに好きなら仕方ないわね、明日からもずっと一緒に居てあげるから!』」
俺は唖然とした。
「何よ、こう言って欲しかったんでしょ?///」
「・・・ああ。ツンらしい返事だな」

かくして、熾惺学院占拠事件は幕を下ろした。
いつだってデッドエンドと紙一重だった。翌日には二度と顔を合わせることは無かったかもしれない二人。
そんな二人の絆は、この事件を通して、ますます深まっていったのだった・・・。
ある暑い夏の日の事であった。