hackのエロパロ vol.14

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1名無しさん@ピンキー
過去スレ
.hackのエロパロ
http://same.u.la/test/r.so/www2.bbspink.com/eroparo/1033821005/
.hackのエロパロ Vol.2
http://same.u.la/test/r.so/www2.bbspink.com/eroparo/1046059657/
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http://same.u.la/test/r.so/www2.bbspink.com/eroparo/1053232107/
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.hackのエロパロ vol.11.
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.hackのエロパロ vol.12
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1171348486/
関連スレ
【G.U.】.hackシリーズ総合スレ【SIGN・Roots】
http://same.u.la/test/r.so/sakura03.bbspink.com/ascii2d/1159414538/
801ネタはこちらでどうぞ↓
□■.hackシリーズで801 vol.2■□
http://same.u.la/test/r.so/sakura03.bbspink.com/801/1160417132/


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2名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 19:04:54 ID:04HK7ZZ/
2get

>>1
乙。
3名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 19:22:50 ID:yPi1RKIw
しまった.が抜けてるorz
4名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 19:37:57 ID:sBGk3/05
あれ?13は?
5名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 21:10:10 ID:7StJ8qFT
縁起が悪いから抜かしたのか?
6名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 21:13:42 ID:yPi1RKIw
いや12が二つ有ったからさ…
片方荒らしのせいでひどい事になってるし
7名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 21:17:43 ID:04HK7ZZ/
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1170956969/l50
これか・・・・
そういや前スレ&嵐の12は埋めなくていいのか?
8名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 22:55:39 ID:TisCldLo
削除依頼出してスレごと削除した方が早いと思う
9名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 23:48:32 ID:P6aEijk6
>>1

それはともかく
新々まとめサイト
ttp://bluearia.cocolog-nifty.com/hack/
10名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 23:48:41 ID:NkBKKxa0
乙です
11名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 19:13:11 ID:1EHWT4AF
12名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 04:08:42 ID:aS2q1Xs6
乙です。
13名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 13:59:02 ID:ztfmtxxJ
a g e
14名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 17:19:23 ID:SwVwgBQd
15名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 13:00:13 ID:Wk36y2cx

16名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 04:42:01 ID:glC+dz7E
>>1とおまいら乙
トーナメント編・ハセ揺+エン様投下
17名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 04:42:47 ID:glC+dz7E

手に入らないと分かっているからこそ、余計に欲しくなるものってあるだろ?
俺にだって欲しいものくらいある。や、どっちかっつーとあったって言った方が正しいか。
だってもう手に入っちまったし……。

「智香、そろそろ窓閉めてーんだけど。蚊が入るだろ」
「もうちょいだけいーじゃんさぁ」
「北斗七星なんざ一年中見れるだろうが……」
「あっちで見るのと東京で見るのとは違うんだよ」

……むしろ北海道の方が東京よりも空気が綺麗だからよく見える、って言っちゃダメか?
空気が汚ぇとそれだけ星も見えにくいって話だしな。

「お前、星が好きなのは結構だけどな。
 あんま星ばっか見てると首がそのまま固定しちまうぞ。
 ミケランジェロも天井絵を描き続けてたら首が上向いたまんまになっちまったって言うし」
「アタシと亀を一緒にすんな!」
「そのミケランジェロじゃねぇ」

そりゃタートルズだろうがよ……俺が言ったのは芸術家の方だっつの。

「たまには星とか見たりするゆとり持とうよ。
 いつもゲームばっかやってると目とか体調、悪くなっちゃうぞ」
「そーだな。これからはそーする」

ネットワーククライシスも終わったし、志乃や他の未帰還者達も帰ってきたしな。
これからは普通にゲームやれるようになったんだ、遊べる時に遊んでおきたいってのは
俺だって思うぜ。どうせ大学に入ったらすぐ就活しなきゃいけねーんだろうから。

「亮はさ、好きな星座とかないの?」
「強いて言うなら柳星張」
「南斗七宿? うみへび座の距星だっけ?」
「ああ」

柳星張は南斗七宿に属してる。その中の三つの星のことだ。
「柳」は頭、「星」は赤い南斗の守護神、「張」は翼を広げた姿。
中国じゃ柳星張を四神獣の朱雀(スザク)のことなんじゃないかって言ってるらしい。
何つーか俺もよく分かんねぇけど好きなんだよ。こう、邪神覚醒って感じで。

「ほら。もういいだろ? オシマイ」
「ぬぬ……亮のケチ!」
「寝る時になって『蚊が煩いー!』とか言われたくねーんだよ。
 北海道にゃ蚊はそういないだろうけどな、こっちにゃ結構な数がいんの。分かるか?」
「むぅ……」

蛇とかゴキブリも少ないんだっけか北海道は。
あとはレギオンさえ降ってこなきゃ最高じゃん。
俺は寒いのそんなに苦手じゃないし(雪かきとかは面倒だけど)。

「昼間は腰が痛いだの何だの言ってたクセに、夜になると元気になりやがって……」
「あはは。まだちょっと痛いけどもうダイジョブ。ヘーキ」
「……」

……俺にも一応の責任あるからスルーするワケにもいかねーしな。
今夜はどうするか……。
18名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 04:44:12 ID:glC+dz7E

「せっかく亮の家まで遊びに来たのになー」
「悪かったな。生憎とうちにゃゲームは《The World》しかねーの」
「格ゲーとかRPGもしないの? ギャルゲーは?」
「しねぇよ」

俺のベッドに寝転んでゴロゴロしながら智香がそんなコトを聞いてくる。
だってお前がいんのにギャルゲーやってどうするよ。
そりゃ彼女持ちでギャルゲーも好きな奴だっているかもだけど(げんしけんの高坂とか……)。
第一、俺はゲームやるのは《The World》が初めてだっつの。
衝動買いしたのはいいけど、いきなりプレイ初日にPKされたりと散々だったけどな。

「智香は? どうしてあのゲーム、やり始めたんだ?」
「んー? 前にメールで言ったじゃん。
《The World》の中なら三国志に出てくる英雄みたくなれるって思ったから!」
「ネトゲで英雄になってどーするよ。歳取ってから人生振り返ると結構痛くね?
 中国とか韓国じゃネトゲぶっ続けでやって死んじまった奴も毎年何十人も出てるしよ」
「そ、それはそうだけどさ……ほどほどにやれば問題ないって、うん!」
「(ほどほどか……?)」

とまあ俺も智香にそう強く言えないけどな。
志乃のためとは言え、あの地獄の八ヶ月間はさすがにキツかったぜ。
廃人プレイ寸前だったし……。
親が帰って来ないのをいいことに、学校から帰ってきたら即PCの電源入れてログイン、
PCの前を離れるのは食事とトイレと風呂と寝る時だけ。
あとはひたすらゲームの毎日。ネット依存症とか言われても反論できねぇっつの……。

「他に理由があるとするなら……んー。アレかな? ドットハッカーズ!」
「何だソレ」
「知らないの? 《The World》の伝説的な勇者のパーティだよ。
 2010年にも意識不明者事件は起きてて、それを解決したのがドットハッカーズなんだってさ」
「はは。都市伝説とかそんなもんか?」
「違うって! 
 特にね、そのリーダーだったプレイヤーがメチャクチャ強かったんだってさ。
 特別なアビリティを持ってたって噂もあるけど……今も居るなら戦ってみたいな〜」

ドットハッカーズ? 聞いたことねーな。
2010年っつったら俺が小4の時か?
あれ……小4の時っつったら……確か俺……。

「亮? どしたの?」
「いや……何でもねぇ。ちょい何か思い出しそうになっただけ」
「?」

ドクン、と。一瞬だけ鼓動が早くなった気がした。
智香がこんなに傍にいるから、ってのとは明らかに異質な感じの鼓動。ゼータ?
今の“ドットハッカーズ”って言葉聞いた時、何かを思い出しそうになったぞ……。

「今日はゲームしないの?」
「お前が来てんのにわざわざゲームしてどうする? たまにはログインしない日があってもいいだろ」
「そ、そう? 亮がそう言うんなら……」

……コイツ、ディスプレイ持って来てたっぽいな。
俺んちでも《The Word》する気だったんか……あと1日ちょっとしかねぇんだ、
ゲームなんかしないで俺と一緒に居ればいいじゃん。
ゲームの中じゃいつでも会えるけど、リアルのお前とは次いつ会えるか分かんねーんだからさ。
19名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 04:45:05 ID:glC+dz7E

「風呂入ってくるわ」
「昼間の残り湯?」
「沸かして足せば問題ねぇだろ」
「いや、そーゆんじゃなくてさ……アタシが入った後のお湯なんだけど……」
「……」

つまんねぇコト気にする奴だな。

「なら一緒に入るか?」
「バッ、ババババ、バカーッ!!! いっ、いくらなんでも経緯はしょりすぎっ!」
「(今頃になって経緯も糞もねーだろ……)」

今朝、結局俺はシャワーで済ませたんだよなぁ。
智香の奴、風呂の元栓抜いてなかったのか。

「んじゃ入ってくるから。暇ならDVDでも見て時間潰せ」
「湯あたりしちゃえっ! 亮のえっち!!!」
「へいへい」

女ってのはどーにも分かんねぇな。
親密になってもやっぱタブー事項とかあんだろうか。
今度クーンあたりに相談してみっか……やっぱ止めとこう。











「DVDでも見て暇潰せって言われても……」

亮が居るワケでもないのに、何故かそんなコトを呟きながら
智香はDVDの収められた棚を物色中。昨日は気がつかなかったが結構な数のソフトがある。
そう言えば亮はメールで「映画は割と見る」と言っていた様な気もするし……
意外な趣味なのかもしれない。

「今日からマ王!、ローゼンメイデン トロイメント、D.Gray-man、コードギアス……古いアニメ多いな」

だがよく見ると洋画作品も多い。
さすがに智香が好きな全盛期のシュワルツネッガー出演作品は無いようだが。

「コナン・ザ・グレートとかラストアクションヒーローいいよねぇ。
 亮もアニメばっか見てないで洋画見ればいいのに……あ、バック・トゥ・ザ・フューチャーがある!」

とりあえずはコレでも見て時間潰そう。
そうすれば亮も風呂から上がるだろうし2人で見ればいい。
見終わったらどうする? さすがに今日は腰が痛いから無理だろうか?
でも亮だって「一緒に風呂に〜」などと言ってきたのだからそういう気があるのかも?
じゃあやっぱり一緒に入るべきだった?
どうにも亮同様、智香も恋愛初心者なので互いの自己主張が強い割にいざとなると
行動を起こそうにも踏み切れない脆さが伺える。何せまだ顔を合わせて2日しか経ってないのだから。

「(潤香に電話して相談……はナシの方向で、っと)」
20名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 04:46:31 ID:glC+dz7E

ヴヴヴヴ……。

「わっ!?」

急に背後から電子音が響き、思わず間抜けな声をあげてしまう。
何かと思えば先程まで智香がいじっていた亮の携帯のバイブが鳴っている。
まだ彼が風呂から戻って来る気配はない……一応、誰からの着信か確認しておくべきか?

「メールじゃなくて……通話の方か……相手は……一ノ瀬薫? か、薫って……女っ!?」

そう言えば確かに先刻、亮の携帯のアドレス張を見ていたらこんな名前があったはず。
だがこともあろうに自分が今、亮の部屋に居る時に電話してくるとは何て空気の読めない女なんだろうと
智香は会ったこともない薫なる女に、言い知れないムカつきを覚えた。
本来ならば例え彼氏であると携帯を盗み見たりとプライベートを侵害するような行為は
嫌いなのだが、それはそれ、これはこれの精神で解決。

「どこの女か知らないけど……か、かかってきちゃったものは、しょうがないよなっ!」

ついには躊躇することなく通話ボタンを押し、いざ一ノ瀬薫なる女性とのコンタクトを試みたのである。


「も、もしも〜し?」←できるだけ亮っぽい声で

『こんばんは……ハセヲ……うぅん、亮。今夜は……星が綺麗だね……』

「(だ、誰コイツ? 声がちょっと低気味だけど……女、なのかな?)」

『今日ね……ついにウォーターベッドを買ったんだ……。
 前に……ウォーター枕を……通販で買ったって、言ったでしょ……? やっと届いたんだ……。
 夏の寝苦しい夜には……最高だね……ひんやりしてて、とっても気持ちいい……』

「(こ、この喋り方、どこかで……?)」

『でも、キミが一緒に寝てくれれば……もっと気持ちよくなれると思うんだ……。
 だから、もう何度言ったか分からないけど……もう一度言わせて……。亮……僕に釣られてみ―――――――――』

「思い出したァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」


どうして今まで思い出せなかったのか。
こんなたどたどしい独特の喋り方をするヤツ、亮の周りに1人しかいないし
智香だって知っているではないか。亮の家に遊びに来ていて浮かれ、判断力が鈍ったのか?
いや、今はそれどころではない。

「エンデュランスッ!? アンタなんで亮の携帯に電話なんかしてんのさァッ!?」
『……? キミ、誰? 亮じゃないね……?』
「アタシだよ、揺光! 今年の5月、アンタに負けた元紅魔宮宮皇の揺光さんっ!」
『……あぁ、赤いヒト。それよりも……亮はどこ? どうしてキミが、亮の携帯に出てるの……?』
「えっ、い、いやっ、それはそのっ……」
『昨日も今日も……ハセヲがログインしていないみたいだったから……だから亮の携帯に電話して……
 直接声を聞こうと思ったのに……どうしてキミが亮の携帯に……ボク、番号間違えてなんかない……。
 アドレス張なんかに登録しなくても……亮の携帯番号は目を閉じただけで瞼に浮かぶもの……』
「(怖っ!)」

よりにもよってとんでもない相手からの電話を受けてしまったと、智香はひたすらに後悔する。
だが後の祭り、一刻も早く亮が風呂から上がるのを待つしかないのか……?
21名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 04:48:32 ID:glC+dz7E

「(エンデュランスの奴ぅ〜! 薫なんて女みたいな紛らわしい名前だから、か、勘違いしちゃったじゃん!)」

智香としてもボルドーにPKされて意識が消え行く中、
ハセヲに「エンデュランスを探せ!」などとちょっとカッコいいセリフを言ってみたりして
実際にハセヲに協力、ネットワーククライシス回避の立役者の1人となった彼に対して
それなりの恩義はある。もう以前のような宮皇への固執やチートへの疑念もない。
だが、亮が関わってくると話は別になってくるワケで。

「べ、別にアタシが出てもいいだろっ? アタシ、今さ、亮の家に遊びに来てんだから!」
『へぇ……羨ましいね……ボクも行きたいな……』
「(しまった、逆効果っ!?)」

家に遊びに来ていると発言することで自身の優位性や
亮との親密度をエンデュランスにアピールするはずが、反って敵の本能に火を付けて
しまった……のか? 冗談ではない、明日も亮と2人きりで過ごすのだ。
しかし何が悔しいかと言うと、自分よりも先にエンデュランスの携帯番号が亮の携帯に記録されていたこと。
他にも志乃やカールの携帯番号もあったようだが、今は目下の敵エンデュランスに集中せねば。

「そ、そーだ! エンデュランス、アタシと亮は付き合ってんだぞっ!
 亮の方からアタシにプロポーズしてきたんだ! 分かるか?
 アタシだって“まだ高校生だから”って一応は断り入れたけど、亮が“好きなんだ”って言うから……」
『……だから、何なの?』
「いや、だからアタシ達付き合ってんだけど……」
『関係ないよ……。亮が誰と付き合おうが、ボクがハセヲを……亮を想う気持ちには……何の障害もないもの……。
 過去の中に閉じこもっていたボクを、亮は連れ出してくれた……ほとしばる熱い命を、注ぎ込んでくれた……』
「(ほとしばる熱い命を注っ……えっ、えっ!? そ、それって、ま、まさか……)」

まさかそんなはずはないだろうと考えながらも、思わず下腹部に手をやってしまう智香。
ほとしばる熱い命と言えば、自分もつい十数時間前に注ぎ込まれたばかりではないか、亮に。
クーラーは効いているはずなのに嫌な汗ばかり浮かぶのは気のせいではない。
携帯を持つ手も寒くもないのにブルブルと震えて嫌な感じったらありゃしない。

『亮と出会えたことで……空っぽだったボクの部屋に……光が射したんだ……。
 同時に、閉ざした窓を開くことも決めることができた……。
 キミにこの意味が分かるかい……? 亮こそがボクの世界そのもの……。
 自分を、世界さえも変えてしまう瞬間を、亮はボクに教えてくれた……。
 だから“彼女”がいなくても、ボクはもう大丈夫……だって亮が傍に居てくれるから……』
「そ、そんなコト言われてもさ! ア、アタシだって亮のコト好きなんだぞ!?」
「ボクも亮が好きだから……問題ないよ。できれば、ずっと一緒に居たい、って思ってる……。
 でも、キミがどうしても嫌だって言うんなら……重婚が可能な国に、3人で移じゅ――――――――――』
「するか――――――――――――――!!!!!」

重婚云々前に同性同士で結婚できる国を探せ、とも言ってやりたかったが
それを言う間もなく智香は通話終了ボタンを押して会話を強制終了。
どうせまたかかってくるだろうから電源を切って……いや、それだけじゃ甘い。
バッテリーも抜いておこう。我ながら最低な行為だ、と思いつつも智香の決心は固い。

「はーっ、はーっ! じょ、冗談じゃないっ! 女ならまだしも、男に亮とられてたまるかぁ〜ッ!」

そもそもが競争率の高い戦いだったのだ。
ハセヲの周りにはアトリやパイ、朔や楓、アイナや志乃やカールと言った個性的な女性が多すぎる。
今回は自分と亮が付き合うことになったが、別の平行世界の亮は違う女性と付き合っている可能性だってある。
ビフが金持ちになっている世界もあれば使用人だった世界もあったように。

「こ、この世界でだけはっ、亮はアタシのモノなんだからなっ!!!」
22名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 04:51:11 ID:glC+dz7E

*********************




「智香? 何だよ、さっきから黙りこみやがって」
「あー……うん。この前、亮の家に遊びに言った時のコト思い出してた」
「そーいやお前、俺の携帯のバッテリー抜いてたよな? なんで?」
「き、記憶にございません……」
「?」

トーナメント初日が終了した夜。
俺と揺光……智香は、俺の中のもう1人の俺、楚良について話し合った。
カールが俺の中の楚良を求めてることも含んで。
結局は楚良のことについては保留、何だかんだで智香ともご無沙汰だったし
こうやって一緒に寝転んで星見てる。……グラフィックだけどな。

「トーナメント、明日も明後日もあるんだよね……」
「そーだな」
「アタシ達、ちゃんと決勝で戦えるのかな……?」
「カールの奴が決勝まで来いって言ったんだ、行くっきゃねーだろ。
 でもその前に楚良のコトもちゃんと理解しとかねーと、今後の戦いに支障出そうだな……。
 憑神使うのとは全然違うし……俺自身が相手だからな……どーしたもんか」

エンデュランスと紅魔宮トーナメントで戦った時、八咫が言ってたっけ。
「対話しろ」って。
戦いの中でしか語れねぇのなら……これからもトーナメントを勝ち続けるしかねぇ。
アイツが、楚良が出てきたら……今度は、逃げねぇでちゃんと話をしよう。
俺だっていつまでも自分の中のカケラが埋まらねぇのは気分的に落ち着かねぇしよ……。

「あ〜っ。今頃になってちょい不安になってきたーっ」
「いつものお前らしく戦えばそれでいーんだよ。
 カールが暴走しても天狼がいるだろ? 少しは自分や仲間、信じてやれよ」
「でも……」
「お前を信じる俺を信じろ。俺だってお前が決勝まで来るって信じてんだし」
「わ、分かったよ……。でも、亮もさ。自分、信じてやりなよ?」
「楚良だろ?」
「うん……」

智香にこうも心配されちゃ、ほっとくワケにもいかねーか。
引きずり出してやるよ、楚良。カールとの決着はその後だ。
俺の身体、そう簡単には使わせねぇ。
オーヴァンだってAIDAの侵食に1年以上耐えてたんだ……俺だって負けちゃいらんねぇ。
お前と話すまで、俺は諦めねぇぞ……!

「今日は……これくらいにしとこっか?」
「ん」
「じゃ……また明日」
「おう」
「おやすみっ!」

……行っちまったな。
落ちるか、俺も。今日は……色んなコトありすぎて疲れたし。
俺の中のもう1人の俺、楚良。アイツは一体……クーンは「自分に挑め」なんて言ってたけど。
それも明日、トーナメント2日目の対戦チーム次第かな。どいつと戦うことになるんだか……。
23名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 04:51:57 ID:glC+dz7E
トーナメント初日終了? ほとしばる熱い命って結局ナニ? 何のことです?
おやすみおまいら
24名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 05:10:02 ID:TgSQOasr
GJ(*´д`*)
25名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 12:28:40 ID:ogSycRgZ
遅かったじゃないか…
26名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 13:10:30 ID:rnwAaLZI
キター!待ってましたGJ!
ハセヲ中出しかよw
27名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 14:37:52 ID:cZY7ECil
GJ! いつもありがとう(*・ω・*)ポッ
28名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 15:39:49 ID:u6tzBIF1
ちょ、エンデュランスwwww
GJ!
29名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 18:58:21 ID:2YJQ3tuE
エンデュランス自重wwwwwwww
GJ!
30名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 23:04:13 ID:3vVt7zHE
31名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 02:07:10 ID:USTtIWrA
しゅ
32名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 04:11:09 ID:Cd9tsYMJ
エンデュランステラフロオwww
GJ!
33名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 08:35:02 ID:0qKtc874
おまいら乙
トーナメント2日目・妖精編投下
34名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 08:36:51 ID:0qKtc874

『あんたとボクちんは共犯♪』
『共犯……』
『ここが嫌いなんでしょぉ? ぐっちゃぐっちゃにしてやりたいんでしょぉ?』
『きみとあたしなら……それができる?』
『できるよん。キー・オブ・ザ・トワイライトさえあればねぇ』
『黄昏を開く鍵……あの子を、アウラを渡せってこと?』
『そゆこと。これはねぇ、ボクらのコティングリーなの。だからボクらはきょーはんしゃ♪』










*******************





「(……寝すぎたな)」

よぉ、俺だ。
目覚ましのセット時間を間違えちまったせいで、太陽が真上に昇った頃に起きちまった。
昨日はトーナメント初日ってこともあってかイロイロあったしな……丁度いいか。
何かさっきまで夢見てた様な気もするけど……どんな夢だったかな。
覚えてねーってことはそう大した内容じゃねぇってことか。

「(セミの野郎……今日はいつもより煩ぇじゃねーか)」

8月も中盤ってのにご苦労なこった。
何年も土の中で過ごしてりゃいいのにな。
だって成虫になった途端、1週間くらいしか生きられねーんだし?
ドジな奴は羽化する前に地面に落ちてグシャ。
……何のために生まれてきたのか分かんねえじゃん、ソレ。
たった一週間しか生きられねぇ、そんな限られた時間の中でミンミン鳴いて
交尾して子孫残さなきゃいけねーとか誰が決めた? 本能でやってんのか?
どうせ死ぬなら、満足できるような人生送ってから死にてぇ。
セミは……あいつらは、あれで満足なんだろうか――――――――――――――――――。










「あ〜ハセヲだぁ〜!」
「よぉ。ガスパー、シラバス」
「今日も暑いね〜^^;」
「夕方から少しは涼しくなったけどな。つかお前ら、もう待機してたのか」
35名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 08:38:05 ID:0qKtc874

「トーナメントも2日目だし、初日と比べてかなり絞られてきたからね」
「強豪チームに負けちゃダメだぞぉ、ハセヲ〜」
「どいつと当たるかまだ分かんねーけどなw」

少なくとも昨日の試合、楚良が出しゃばらなきゃ俺達が負けてたかもな。
レベルとか装備とかカスタマイズとか関係なく、経験や執念がモノを言う世界。
ネトゲでもリアルでもそりゃ同じか……上等だ。
カールに決勝まで来いと言われたからにゃ退けねぇってのもあるけど……。
次の試合で楚良が出てくるかどうかは相手次第、か。
あぁ、そう言や思い出した。朝見てた夢のこと。
楚良が誰かと喋ってた……多分、女と。
何て言ってたんだっけか……コテ……コティ……。

「コティングリー……」
「えっ?」
「どしたの、シラバスゥ?」

聞きなれない単語だけど、これだけは思い出せた。
コティングリー、確かに夢の中で楚良が言ってた言葉。
こんな時になって思い出しやがって……何だってんだ?

「ハセヲもそういうのに興味あったんだ^^」
「あん? 何がだよ」
「だって今、コティングリーって」
「? シラバス、お前コティングリーが何か知ってんのか」

意外だった。
いや、意外そうにしていたのはシラバスの方か。
俺がそういうことを口にするのが本当にさも珍しいと言ったような、
それでいて興味深そうな、そんな声で俺の問いに応えてくる。

「コティングリーっていうのはね、イギリスのヨークシャー州にある村のこと。
 今から100年前の1917年7月、その村に住んでた2人の女の子が妖精の写った写真を撮ったんだ。
 それが1920年になって『名探偵シャーロック・ホームズ』の原作者として有名な
 コナン・ドイルが“写真は本物”って発表して、妖精が実在するかしないかでイギリス中が大騒ぎになってね。
 それが『コティングリー妖精事件』だよ」
「へぇ〜。シラバスは物知りだなぁ〜」
「仮にもUMA研究会所属だから^^;
 あーでも妖精を未知生物に分類するかどうかは別問題だけどね」
「……」

妖精?
んなもん、ホントにいんのか?
ネス湖のネッシーの写真だって偽造だったんだろ? じゃあその妖精の写真ってのも……。

「その事件の結末は?」
「うん。妖精の写真は全部で5枚撮られてたんだけど、4枚は偽造だってことが証明されてる。
 でも最後の5枚目だけは偽造の証拠は得られなかったんだ」
「じゃあ、本物かもしれないってことぉ?」
「どうだろう……。写真を撮った2人はもう故人だけど、
 生前に『あの写真は私達の想像の産物です』って新聞のインタビューに答えたらしいんだ。
 でも同時に自分の子供に『最後の写真だけは本物よ』って伝えてたとも……ね」
「へぇ……」 

100年前の今頃にそんな写真撮ってた奴らがいたのか。
その頃っつーと……第一次大戦の後か?
妖精で暇つぶししたいって気持ちも分からねぇでもねぇけどな、世相的に。
36名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 08:39:13 ID:0qKtc874

「何だか、夢のあるお話だねぇ」
「僕はちょっと複雑だな。5枚目の写真が本物だろうと偽造だろうと
 写真を撮ったその2人にとっては、きっと“本物”だったはずだしさ……。
 子供のいたずらの一言じゃ済まないくらいに大きな事件になったりもしたし……
 何十年も2人だけの秘密を抱えたまま暮らしていくのって……辛かったんじゃないかなぁ」
「……(2人だけの秘密、か)」

つまりは共犯者ってことだ。
本物だろうと偽者だろうと、写真を撮っちまった以上
その2人は世間のバッシングを受けるのも持て囃されるのも一緒。
運命共同体って言った方が近いかもな。

「でもまさかハセヲの口からコティングリーなんて言葉、聞けるなんてね」
「いや、分かってて言ったんじゃねぇんだ。俺もお前の話聞くまで意味知らなかったし」
「ハセヲも妖精、信じてるのかぁ〜?」
「なワケねーだろ」

さすがにそりゃねーよ。
アリカの姉さんも“白馬の王子様なんて、信じてるワ〜ケじゃない〜”って唄ってたし。
まぁ、シラバスの言う通りそいつらにとっちゃ「居た」のかもしれねぇけどさ。
オーヴァンなら……アイツなら信じただろうか。
「そこにあると思えば、必ずある」って言ってたしな……それに妹のアイナだって
そのテの妖精憚(フェアリー・テイル)は好きだったはず。
確か、黄昏の碑文も好きだっていってたな。
この《R:2》は人の時代、でも前のバージョンの《R:1》は神々と精霊、妖精の時代が舞台だったはず。
妖精……過去形で言えば、この世界にも妖精は居たのかもな。
もう誰の目にも見えないだけで、ひょっとしたら今でも――――――――――――。

「妖精と言えばね」
「他にまだあんのか?」
「ほら、1年前にCC社が火事になって《R:1》のデータが全部消えちゃった日があるでしょ?
 その日にね、妖精を見た人が何人かいるんだよ」
「オイラが《The World》を始める、ちょっと前かぁ」
「……どんな妖精なんだ?」
「サフラン色の髪をした、白いドレスの女の子だったそうだけど……
 でもそれって前の《R:1》の頃からあった噂話に出てくる、大聖堂の幽霊と同じ特徴だし……
 誰かが“The World最後の日”を面白おかしくするために考えた作り話の可能性が高いなぁ」
「大聖堂の……幽霊、か」

いや、俺は知っている。俺は見ている。
あのグリーマ・レーヴ大聖堂で。
志乃がオーヴァンにPKされたあの場所で。俺が三爪痕にデータドレインされたあの場所で。
アイナを寄り代に女神が降り立ったあの場所で。
俺は、サフラン色の髪をした少女に一度会っている、話をしている。
八咫が愛してやまなかった世界そのものに。

「(女神……?)」

けど、ちょっと待て。
俺が女神に、アウラに会ったのはついこの前が始めてだったはず。
なのに女神に会った時、何故か初めて会った気がしなかった。
もっとずっと前から知っていた、そんな既視感。
あの場所は、グリーマ・レーヴ大聖堂は俺と志乃を繋ぐ場所、それだけのはずなのに。
記憶の片隅にぼんやりと、銀色の長い髪を靡かせて俺の名を呼ぶ黒衣の女の姿が見えた気がした。
その女と一緒に佇むサフラン色の髪の少女も。……まだ、思い出すには早いのかもしれない。
37名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 08:41:22 ID:0qKtc874

*******************




「来たか。予想はしていたが……遅かったな」
「単刀直入に聞く。何故、ハセヲが楚良だとあたしに教えなかった?」
「個人情報をそう易々と他のユーザーに漏らすワケにはいかない。例えG.U.のメンバー候補であっても」
「あたしが何年も楚良を探してたの、あんただって知らないワケじゃないだろうっ!?」
「カール、八咫様はハセヲのプレイヤーのプライバシーを……」
「オバサンは黙ってろ」
「ッ……!」

トーナメント2日目。
試合開始が数時間後に迫る中、知識の蛇の門を荒々しく破る者がいる。
破る、と言うのは少し違うかもしれない。
少なくともゲストキーを持っていさえすれば、招かれざる客というワケではないのだから。
最も、八咫の前で年齢にそぐわない表現をされたパイにとっては十分に招かれざる客であるが。

「あんたがアウラに拘るなら、あたしは楚良に拘る!
 第一、あんたの場合は名前からしてあの子に固執してるからな。
 八咫ってのは日本神話で女神の天照が岩戸に隠れた時、岩戸から出すために使った八咫鏡のことだろう?」
「ご名答」
「あたしはもう母親としての役目は果たした、アウラに会いたいなんて思っちゃいない。
 でも楚良に関しては話は別、あたし達の時間は7年前からずっと止まったまんま!
 それもこれも、アンタや蒼天のバルムンク、そして勇者気取りのアイツのせいだ!」 

7年前の2010年。
かつて八咫の前身であるワイズマンはドットハッカーズの一員として
蒼天のバルムンク、勇者カイトらとともに世界の意志たるモルガナに挑んだ。
結果としてアウラが再誕し、世界は正常化。
モルガナの尖兵として生み出された対アウラ抹消プログラムたる八相も消え、
八相やバグモンスターによってデータドレインされ意識不明となった者達も意識を取り戻すことができた。
……だが。

「余計なコトしてくれたな! 
 あたしと楚良の世界を勝手にブチ壊した挙句、またあたしの邪魔をする気!?」
「君は、あのまま未帰還者でいたかった、と?」
「そういう選択肢もアリだろう? 
 好きな子とずっと一緒に居られる、誰も邪魔できない2人だけの世界……最高じゃん。
 それを、あんた達は糞みたいな偽善でリセットした……あたしはあのままで十分だったのに!」
「勝手なこと言わないで! 貴女にだって貴女の身を案じる家族や友達が―――――――」
「楚良以上に大事なものなんて、あたしにはない!」

瞬間、パイはカールの一喝に身震いを覚えた。
同じ女同士だから、分かるものがある。
執念、それもかなり歪に捻じ曲がった女の情念とでも言うべきか。
かく言うパイも、カールの言っていることが理解できないこともないのだ。
義兄が死んだと聞かされた時の、やり場のない憤りや怒り、悲しみ。
しばらく心を閉ざしてしまった時期が令子にもある。
だから分かる。カールの楚良への、ハセヲへの想い。
純粋すぎるが故に実直すぎて、周りが何も見えず、ただひたすらに求める。
まるで……憑神を手に入れた直後のハセヲのよう。そして何処か自分にも似ている。

「(女の性……逆らえないのね、貴女も……)」
38名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 08:42:08 ID:0qKtc874

************************




「何とか引き下がらせましたが……」
「彼女はまた来る。フィドヘルもそう言っている……」
「予言……ですか」

あのまま論争を続ければカールは間違いなくこの知識の蛇の中ででも
憑神を、あの全身を紅い布で拘束したスケィスを喚んでいただろう。
パイのタルヴォス、八咫のフィドヘルの2体でもカールのスケィスを止めることは難しい。
あれは憑神と言うより祟神か荒神に近い存在。《R:2》でなく《R:1》。最も古く、そして新しい神。
ハセヲのスケィスが現存しているにも関わらず存在を維持できるカールの紅いスケィス。
あれは……一体何なのか。

「彼女の想像力(イマジネイション)が生み出した“想像の産物”とでも言うべきか」
「プレイヤーの意志が、システムに作用して憑神を生み出したと……?」
「古来より人間の想像力は様々な架空の生物を生み出してきた。
 西洋におけるドラゴンや妖精、東洋の龍や妖怪の類はその代表と言っていいだろう。
 場所は違えど、生ずる場所は常に闇……心の中の闇が新たな怪物を生み出す。
 彼女の執念があのスケィスを生み出したのは間違いない……最も、それは彼女が
 以前スケィスにデータドレインされた縁があることが一番の要因だが……」
「でしたらクーンも《R:1》プレイ時、スケィスに……」

そう、クーンも7年前にスケィスにデータドレインされ、意識不明となった経歴がある。
ならばクーンとてスケィスを開眼させる可能性を秘めていたのではないのか?

「だが結果としてクーンはスケィスではなくメイガスを開眼させた。
 ただデータドレインされるだけでは駄目のようだな。
 ハセヲ……いや、楚良やカールのようにスケィスと最も縁のあるPCだからこそ開眼できたと言うべきか。
 やはり根底にあるのはイメージ、すなわちイマジネイション。
 あらゆる感情を糧とし、憑神はこの世界に顕現する……
 あの紅いスケィスは、カールというPCの楚良への想いが生み出した……いや、これ以上は止めておこう」
「八咫様……」

八咫も心境複雑と言ったところなのだろう。
7年前、彼らは自分達の行いを正義と信じてモルガナを破った。
けれどそんな彼らの行為を「余計なコト」と言い切る人間もいる。
善を知りて悪を行い、悪を知りて善を行う。望む世界に希望はあるか―――――――――。

「だが彼女が試合中に憑神を使わないという保証もない」
「はい。念のため、ハセヲに警戒するよう伝えておきます」
「カールはハセヲの中の楚良を“再誕”させるのが目的のようだ。
 そのためならば手段は選ばないはず……データドレインですら躊躇なく使うだろう」
「……っ」
「心配かね?」
「い、いえ……そんなことは……」

思うに、パイこと佐伯玲子は有能な人材である反面、人生を損しながら生きている。
自分が言えた義理ではないが、たまには仕事抜きで彼と関わってもよさそうなものを……。

「トーナメントの運営は引き続き私が担当する。君も今日は試合を観戦してはどうだ」
「ですが……」
「行きたまえ。ハセヲをよろしく頼む」
「……畏まりました」
39名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 08:43:25 ID:0qKtc874
現実に生きるか幻想に生きるか? それが問題だ? 何のことです?
おやすみおまいら
40名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 09:02:32 ID:DaMLr8I5
投下キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!
神職人様に心からGJを!!

今回はこれまでよりもスケールがでかいので、続きが非常に楽しみです
次も頑張ってください
41名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 09:09:40 ID:iA7u7aD0
現実あっての幻想だぜ!GJ!
42名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 12:52:27 ID:N7k6+Wl5
GJですよ(*´д`*)
43名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 14:18:53 ID:joVBUUxl
超GJ!
これからどうなるかwktk
44名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 14:57:23 ID:MBFoLDgp
もうこれで続編作れるだろw
45名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 16:00:07 ID:og56+XDY
(人∀・)タノム!!
46名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 21:53:11 ID:xMJmg5yx
ここまで.hackの世界設定を使いこなし
違和感なく物語を作れる職人を見ると
CC2社に何らかの関わりを持っていた人間と勘繰ってしまう><
47名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 21:54:56 ID:xxdzfCSV
確かにもうこれは続編作れるレベルだなw
オリ設定物は嫌いなはずなのに、これだけは読み続けてしまうw
48名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 23:28:56 ID:YANk+H/d
正直な話、この神作品のPVを脳内で作成したことが何度もある
もちろんちゃんとゲームverとアニメverに分けてな!俺きめえwww
49名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 02:01:10 ID:3n6c7wOf
俺にとってアニメは黒歴史

>45
(乂∀・)┌┛)`д) ;∴コトワルキック!!
50名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 18:40:02 ID:bptOCocQ
51名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 19:02:38 ID:h86lM1wU
アニメ絵ならカールは特別篇の覚醒銀様なイメージがする。
ゲームの方も妄想してみたらなぜか女版ハセヲになった。
似た者夫婦なのか…?確かに「こんなハリボテ世界の〜」とかは普通に言いそうだけどw
52名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 00:21:26 ID:W1N5Xxms
【エロ教師】 教え子の女子小中学生6人や教え子の母複数人と性交しまくり、鬼畜先生に懲役7年求刑

・18歳未満の小中学校の教え子計6人にみだらな行為をしたとして、強姦(ごうかん)罪
 などに問われた群馬県太田市の元市立小中学音楽教師 岩井彰人(旧姓 吉田彰人)被告(31)の論告
 求刑公判が10日、前橋地裁(結城剛行裁判長)であり、検察側は懲役7年を求刑した。

 検察側は「被害に遭った教え子らは、好意を抱いていた教師から性欲のはけ口とされた」
 と指摘した。

 論告によると、岩井被告は昨年3月から11月にかけて、12−16歳の教え子に計24回、
 県内のホテルなどでみだらな行為をした。被害者には小学校教諭時代の教え子だった
 当時12歳の女児もいた。
 http://www.nikkansports.com/general/f-gn-tp0-20070510-196611.html
53名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 16:28:07 ID:BhjwsNWe
タレ目銀様はガチで萌える
ゼロ映像化しねーかな…
54名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 17:06:44 ID:CKTMHnCT
何という神作品!オリジナル設定が嫌いなのに引き込まれてしまう。
GJ!


zeroの続きはまだかー!
55名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 18:12:40 ID:XBLYL/a3
56名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 18:19:19 ID:3ev/kgMk
>>51 >>53
銀ちゃんといえばSIGNのモルガナの声も・・・。
RootsとG.U.はSIGNや無印からの参加声優が多かったからりえりえも出るかと思ってたけど・・・非常に残念であります。
57名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 18:52:29 ID:gCE6o6k0
旧まとめサイトはもう消えてしまったのでしょうか・・・
58名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 21:56:33 ID:0Pe1v14C
ここはパロディだからって、設定がめちゃくちゃになってるな
59名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 23:41:02 ID:hIWP8isC
>>58
もっと酷いのは腐るほどある
つかsageれ
60名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 00:37:16 ID:G8HYz5X3
オリ設定がある一作品として読ませていただいてるわけだからこれで無問題。
61名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 07:14:35 ID:bDTRC9si
まあオリ設定とかで破綻してるけど
そこそこ読めるものだから認可されてる

逆に設定にのっとっててもつまらないものは酷評されてる
という
62GORRE:2007/06/01(金) 00:55:44 ID:8UkyYnew
楓編投下します。

ハセヲは走っていた。何故かは分らないが、一刻も早く楓のもとに行かなければならないような気がした。
「何で、俺そういえば走ってんだ…? くそ、訳わかんねえ」
一人ごちながら、ただ最下層を目ざす。訳の分らない感情はこの際気にしないでおく。
気にしだしたら止まらないような気がした。

しばらく走ると、ハセヲは最下層へとたどり着いた。
そこでハセヲが見たのは、ただ陵辱され欲望の捌け口にされた楓の姿だった。
「榊!」
「おや、これはこれは死の恐怖殿ではありませんか」
ハセヲはぐるりと周りを見、そして楓を見て、言った。
「これは、てめえが、てめえらがやったのか」
「そうだと言ったら?」
「てめえらまとめてぶっ潰してるだけだ」
何故こんなことを言ったのか分らない。ただ気づけば勝手に口から出ていたのだ。
「面白い…たった一人で勝てるというのか! 力を手に入れた我らに!」
榊の体を黒い斑点が覆っていくのが見える。
愚かにもAIDAに手を染めた榊は見る見るうちにそれを周りにいるPC達に感染させていった。
「どうやら、一度病院送りにしないとわかんねえみたいだな…」
(やるしかない。許せ、クーン…何かを護るときに力を行使しなきゃならないこともあるんだ!)
「いいぜ、こい…来いよ…俺は…ココにいる! スケエェェェェェェェェイス!」
見る見るうちにアバター空間が広がり、そしてスケイス2ndへと変化したハセヲの姿がそこにあった。
「ははははは! 私はシステムを超越する! 私を倒すことなど出来ない!」
「うるせえよ…てめえがやったことを後悔しやがれ!」
大鎌一閃。
榊は一瞬で倒された。そして、リアルでは一人の少年が意識を失ったらしい。
元の姿に戻ったハセヲは楓に駆け寄った。
63GORRE:2007/06/01(金) 00:57:07 ID:8UkyYnew
次回、楓編完結!
64名無しさん@ピンキー:2007/06/01(金) 08:04:47 ID:pGIJya4w
子供だってやるだろうゲームにセックル機能つけるCC社凄すぎワロタ
65名無しさん@ピンキー:2007/06/01(金) 23:00:35 ID:FtUR/+iD
>「てめえらまとめてぶっ潰してるだけだ」

…ん?ぶっ潰してるだけだ…?
いや、待てよ。下の方読んでみると

>何故こんなことを言ったのか分らない。ただ気づけば勝手に口から出ていたのだ。

なるほど、そういうことか。GORREではなくハセヲの国語力がアレだったんだな
66名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 05:27:14 ID:/JCJFFQf
反応少なすぎワロタ
67名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 06:34:10 ID:VHzoe/U7
おまいら乙
トーナメント編2日目・VS“がび”チーム投下
68名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 06:37:12 ID:VHzoe/U7

『がっ、“がび”チームの猛攻に次ぐ猛攻ォ――――――――!!!
 Iyoten選手とアスタ選手のコンビネーション攻撃の前に
 ハセヲチーム、じりじりと追い詰められています! こ、ここまでなのかァ――――――!?』


トーナメント2日目。
俺達の対戦チームは“がび”チームだった。
Iyotenとアスタはまだしも、あのケモノオヤジの強さはハンパねぇときてる。
さすがケストレル5000人の頭ってことだけはありやがる……正直、ここまでとは思ってなかった。
しかも分が悪ィことに今日はぴろし3の奴がいない、つまりは俺となつめだけしか戦ってねぇってコト。
ボルドーとの試合を思い出すぜ……あの時の試合もエンデュランスが来てくれなきゃ正直負けてたな。
けどよ、今更泣き言なんざ言っても始まらねぇ!

「さすがのハセヲ殿も3対2では辛いと見えるでござるな」
「PKトーナメントの時の借りは返させてもらうぜ!」

いい気なもんだ。
コイツらにPKされてなきゃ、俺はもっと違う俺でいられたかもしれねぇ……。
でも本当に警戒すべきはコイツらなんかじゃない、
フィールドの隅っこで大剣構えて目ェ光らせてるあのケモノオヤジだ!
あの2人を掻い潜ってリーダーの“がび”を仕留めようにも、間合いに入る隙すら与えてくれねぇ。
トーナメントに参加したのは初めて、とか言ってやがったクセに……とんだオヤジだぜ、まったく。

「今頃になって“がび”様にビビっても、もう遅いってのw」
「Iyoten、本当の地獄はこれからであろう?
 何せ、“がび”殿はあと2回も変身を残しているのでござるからな」
「あ、あと2回も変身をっ!? ハ、ハセヲさんっ、なつめ達はもうダメかもしれません〜!」
「(普通に嘘って気づけって……)」

ハッキリ言って追い詰められてる。
やっぱ2対3っつーのは不利だな、レベル差とかプレイヤースキル抜きに考えてもよ。
こんな時に限って楚良の奴は出てこねぇし……!
ぴろし3の奴は結婚記念日で家族と飯食いに行っちまってるし……アイツがいりゃ、
ちっとはマトモな戦いになるってのによ……!


「ハ、ハセヲ、またまたピンチだぞぉ〜!」
「相手がケストレルの“がび”さんだからね……一筋縄じゃいかないよ……!」
「だ、大丈夫ですっ! ハセヲさんなら昨日みたいに、逆転勝利しちゃいますよ!」
「アタシもそう思いたいけどさ……Iytenとアスタを倒して“がび”と戦おうにも、もう時間が……!」
「……あの子、どうして今回に限って2人で出場したのかしら? メンバー不足なら私を呼べばよかったのに……」
「……」
「な、何よ」

シラバスらお馴染みもメンバーの中にパイの姿もあった。
八咫の勧めで今日はハセヲの試合を直接、アリーナまで見学に訪れ、合流するに至ったのだが―――――――。

「か、勘違いしないでよね。
 私はただ、メンバーが足りないなら声くらいかければ良いのにって思っただけで……」
「……ま、そういうことにしといてあげる」
「揺光さん、最近カールさんに似てきましたね……」
「そう言えばカール、今日はまだ来てないねぇ。ケンカ、続いてるのかぁ?」
「大丈夫、試合が始まる頃には来るよ。カールちゃん、時間には律儀な人だからね^^」
「……来るよ。カールは」
「……来るわね。彼女」
69名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 06:38:41 ID:VHzoe/U7

「“がび”殿の手を煩わせることもないでござるよ。拙らだけでカタをつけてしんぜよう……去ねっ!」
「悪く思うなよ、お2人さんw」

勝利を確信したアスタとIyotenが迫る。
再誕の時に駆けつけた時は少し見直してやったけど、さすがに本来の性格までは直んねーか、やっぱ。
獲物を追い詰めて最高にハイになってる、そんな目だぜありゃ。

「(……なつめ。アンタ、あの2人を1分だけ食い止められるか)」
「(食い止めるって、ハセヲさん……がび”さんと一騎打ちする気ですかっ……さっきあんなにやられたのにっ!?)」
「(そうでもしなきゃ、このままタイムオーバーで負けちまうだろうが。
  残りHP残量を考えると、どう考えてもこのまま何もしなきゃ俺らが自動的に負ける……。
  アンタが奴ら2人を引き付ければ、少なくともあの連中からの『反撃』は食らわない……!)」
「(わ、分かりました……ぴろし3も居ないし、私、やってみますっ!)」
「(よし……)」

“がび”の大剣に対抗するには双銃や双剣、大鎌じゃ無理だな。
目には目を、大剣には大剣しかねぇか……。
大剣にチェンジするとPCの移動スピードが他の武器を使ってる時よりも下がる、
チェンジするタイミングは目の前の2人を突破して、“がび”に踊りかかる一瞬しかないだろう。
できるか? 下手すりゃ、攻撃する前にバッサリやられちまうぞ……かなりシビアな作業になるかも……
って、迷ってる時間もねぇんだったな……!

「ハセヲさんっ!」
「任せた!!!」

Xthフォームになってから追加された機能の1つにダッシュがある。
それに俺本来の……ハセヲの跳躍力を加えてやれば……跳べるっ!

「! 跳んだっ!?」
「拙らを出し抜き、“がび”殿と果たし合おうと言うのか!? 何と大胆不敵な……!」
「行かせません! ここから先は、私がお相手しますっ!!!」

素早くIyotenらの前に立ち塞がり、双剣を構えるなつめ。
いくらこの2人でも最恐のPK・エッジマニアのなつめの噂くらいは知っている。
しかし眼前の双剣士はとてもではないが、あのPKと同じ人物とは到底思えない。
彼女にPKされた他のPCから「とにかく目つきがハンパなくヤバイ」と聞いているし……。

「へっ、いいさ。どうせ“がび”様には敵いっこないんだしな」
「これもまた一興……拙らの実力、篤と御覧じられい」
「(カッ、カイトさん……1分間だけ、私に勇気を貸してください……!)」


『こっ、これはっ!? ハセヲチーム、二手に分かれて分散攻撃に打って出ました――――――!!!』
『試合の終了時間が迫ってる以上、あれっきゃ手は無ぇってこった。
 だが“がび”は相当に手強ぇぞ、時間内に仕留められるかどうかは……賭けに近ぇな』


間合いがどんどん詰まってくる。
こっちから攻撃を仕掛ける以上、“がび”はカウンターとして返してくるか、
それとも一旦ガードしてこっちの様子を見るか……いずれにしても、俺が攻撃しねーと
後ろで踏ん張ってるなつめの努力が無駄になっちまう! だから……攻めて攻めて攻めるっきゃねぇ!

「小僧、講義の時間だ!(^ω^)」
「(……“がび”ぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!)」

双銃を撃って弾幕を巻き上げると同時に大剣にチェンジ、落下の加速を利用して一気に振りかざす!
70名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 06:40:10 ID:VHzoe/U7

「(! いねぇっ!?)」
「後ろだ」
「!」

振り向く間もなかった。
「後ろで声がした」と脳が感知するよりも速く、
“がび”が放った○ボタンタメ押しの豪撃に俺は薙れて――――――――ねぇんだな、これが。
ケモノオヤジが大剣を振るうよりも、俺が攻撃を繰り出すのが早かった!

「ほほぅ!」
「自分で作った弾幕で相手見失う程、バカじゃねーってのっ!」
「うむ。それでこそオーヴァンの見込んだ漢!(^ω^)」

あぁ、そーいやアンタ、オーヴァンと義兄弟だったっけな。
三国志で言う、桃園の誓いみたいなもんか?
オーヴァンが関羽ならアンタは張飛ってトコだな、どう見ても。

「時間がねーんだ、さっさと倒させてもらうぜ!」
「ガハハハッ!!! 来い来い!」

大剣と大剣がぶつかり合う。
現実(リアル)でコントローラーを握り返す暇すらない。
“がび”と戦うのはこれが最初で最後になることを願うぜ……このオヤジ、今まで戦った誰よりも強ぇ!
瞬きすら許されない。呼吸すら許されない。そんな事してる暇があったら攻めろ。
獣王の陥落なくして、この試合に勝つ術はないのだから。

「アンタにゃネットワーククライシスの時に世話になったっけなぁ! あン時はどーもなっ!!!」
「あんなもの、戦後の食糧不足やオイルショックの時に比べれば軽い軽い!!!(^ω^)」
「いくつだ、てめーはわぁっ!?」

こりゃ大火のオッサンよりもずっと歳行ってるな。
オイルショック? 74年と78年のどっちだ? って、んなコト考えてる場合じゃねぇっ!

「小僧、“若さ”とは何か知っているか?」
「さーな。どっかの宇宙刑事は『振り向かないこと』って言って気が……するけどなっ!」
「おおっと! じゃあ“愛”って何だ?」
「へっ、『躊躇わねーこと』だよッ!!!」
「そうかそうか! よく分かってる(^ω^)」

そうだ、躊躇っちゃいけない。でなきゃコイツには勝てねぇ。
「今の攻撃はマズかった」とか「この攻撃は防げるだろうか」とか考えるよりも速く、
躊躇うことすら忘れて攻めるしか、勝てる方法が思いつかないからだ。
けどコイツ、想像以上に計算して攻撃や防御を行ってる……もしかすると、オーヴァン以上に頭がキレるのかも……。

「人間行動学」
「あん……!?」
「専門は文化人類学だったがな。
 他にも民俗学、動物生態学、社会心理学、考古学なんかも在職中は齧ったぞ。
 だが人間行動学も面白い。このゲームは色んなヤツらが集まるから見てて飽きない!
 特に小僧、お前はオーヴァンの言っていた通り面白いヤツだ(^ω^)」
「アンタのリアルなんざ知ったこっちゃねーっての! 人間観察したけりゃ勝手にやってろ!!!」
「うむ! それも《Thw World》!!!」

決勝に進む前に……こんなトコで負けてられっか!
後方でアスタ達の相手をしてるなつめも善戦してるように見えて、もう限界が近い。
楚良に頼るか…!? いや、ダメだ。俺からアイツを頼ったんじゃ昨日の試合の二の舞じゃねぇか……!
71名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 06:41:59 ID:VHzoe/U7

***********************




「(やはり多勢に無勢では……分が悪いか)」

ハセヲの試合を知識の蛇からモニターする八咫。
ハセヲのチームになつめとぴろし3を推薦したのは自分とは言え、
やはり戦力が1人不在の状況はマズイ。
しかも相手は《The World》でも一大勢力を気づいた巨大ギルドの1つ、ケストレルの長。
アリーナには一度も出場していなかったのでその実力は未知数だったが、
やはり相当な使い手であるのが画面を通して伝わってくる。
伊達にオーヴァンが認めた数少ない人物の1人ではなかった、と言うことか……。

「ねぇワイズマン……じゃなかった、八咫。
 本当に僕が出ていいの? なつめ達、失格にならない?」
「試合が開始される寸前に君を彼らのメンバーとして登録しておいた……何も問題はない」
「そっか。じゃあ早速行ってくるよ、早くしないと負けちゃうかもしれないし」
「あぁ……頼む」

知識の蛇には八咫以外にもう1人、PCの姿を確認することができる。
部屋の照明設定が暗いせいかPCカラーの特定は難しいが
モニターからの反射光でその姿を見る限り、小柄な少年の様だ。
しかし職業(ジョブ)までは分からない。
目を凝らして見るとPCカラーは赤……いや、山吹色に近いだろうか。
だが何よりも目を惹くのは頭に被った大きな帽子と、その帽子から覗くライトグリーンの髪。
どういう意図でエディットされたのかは定かではないが、この色は《The World》の中でも珍しい組み合わせである。

「行ったか……」

八咫に軽く会釈すると同時に、少年は姿は知識の蛇から掻き消えていた。
彼(か)の場所、アリーナへと赴くために。
パイに今日に限ってハセヲの試合の観戦を進めたのはこのためだったのかもしれない。
確かに彼女は頼れる部下だが……友との語らいの時間くらい、八咫とて欲しい時もある。
その友を再び戦場に送り出す自分の身勝手さ、これは昔から変わらない。
大人になったと思っていたのは勘違いらしく、まだまだ自分は歳相応の子供だと実感せざるを得ない。
だって、そうだろう?
彼の戦いを、勇者の戦いを、7年ぶりにまた見ることができることが……こんなにも心躍らせるなんて。

「視ているか……女神よ。貴女の希望が還って来られた」

いや、違う。
女神だけではない……彼は自分達の希望でもあった。
希望そのものだったのだ。
どんな困難な状況においても、彼なら、きっと彼ならどうにかしてくれるのではないか。
そんな不思議な気持ちにさせてくれるのが彼だったはず。
そして願わくば、八咫は彼になりたかった。
女神に、世界に愛された彼こそ彼の生涯の目標。
オーヴァンが人を超えたのならば……彼は、世界を超えた存在。

「結局、私はあの時のまま……頭でっかちの子供のままだった。
 だが君は……大人になってしまったな。
 私はそれが羨ましい反面、少し寂しくもある……なぁ、カイト。
 君の冒険は……君の物語は……今もまだ、続いているのか……」
72名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 06:43:11 ID:VHzoe/U7

「そらそらそらっ!」
「斬り捨て御免でござるよっ!!!」
「(うぅ……もう、これ以上は……む、無理ですよぉ……!)」

片方の剣でIyoten、もう片方の剣でアスタと必死の攻防をなつめは繰り広げている。
エッジマニアに覚醒してしまえば敵ではないのだろうが、極度の緊張がその覚醒を妨げている様だ。
なつめ本人がその事実を知らないのでは尚更のことである。
だが、ハセヲからこの場を任された以上は退けない。彼だって“がび”と必死に戦っている。
自分を信頼してくれた相手を裏切ることだけは、絶対にしたくない。
それが7年前、彼が教えてくれたコト。自分と仲間を信じるコト。
だけど……。

「今だ、アスタッ!」
「心得たっ! その首、貰い受ける!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」」

一瞬の隙をついてIyotenの斬撃がなつめのガードを解き、
入れ替わる様にしてアスタの大剣が歯車の音をキシキシと立てながら振り上げられた。
アーツは使わない。使えば『反撃』でカウンターを返されてしまう可能性がある。
だからIyotenに隙を作らせ、アスタはなつめが無防備になってしまうのを待っていたのだ。
彼女が防具に睡眠や麻痺、属性攻撃などのカウンターアイテムをカスタマイズしていないのは確認済み、行ける。
アスタの大剣は歯車から火花を散らし、みるみるうちになつめのHPを削り取っていく……負ける!

「! なつめ!!!」
「行かせんぞ(^ω^)」

“がび”と対峙するハセヲが叫ぶ。
すぐにでも救援に駆けつけたいところだが“がび”がそれを許さない。
もうダメか? 例えリーダーの自分が最後まで試合に残っても、合計HP残量の差で“がび”チームには負ける。
ならいっそのこと……なつめを助けに行くしか手は無い!


「あーもうっ! 何やっとんねん、ハセヲのヤツゥ〜!?」
「……」
「もうすぐ試合終了っちゅうのにぃ〜! 
 なぁ、エン様、このままやとハセヲ負けて……エン様? どないしはったんですか……?」
「……エノコロ草の匂いがする」
「へっ?」


「南無三! もうHPも残り僅かでござろう!?」
「アスタはホント、獲物をギシギシするの好きだよなw」
「うっ……くっ……!」

もうダメだと思った。
もうどうにもならない、ギリギリまで追い詰められてしまったこの状況をどうにかすることなど無理だ。
いや、なつめは知っているはずだ。どんなにとんでもないことが起きても、きっと何とかしてくれる。
そんな不思議な気持ちにさせてくれる人を。自分を嫌いにならず好きになることを教えてくれた人を。
人は誰でも自分の好きな自分になれると教えてくれた人を。
想うだけで強さをくれる人を。どんな時でも諦めてはいけない強さをくれた人を。だから―――――――――――。

「さぁて、そろそろトドメを……」
「で、ござるな♪」
「(カイトさん――――――――――――――!)」

だから、その人はいつも彼女の傍に居る。
73名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 06:45:16 ID:VHzoe/U7

「……Iyoten。お主、何かスキルを唱えたでござるか」
「は?」
「こ、此奴をを見るでござるっ!」

優勢に転じているアスタが素っ頓狂な声を出したため、Iyotenも思わず間抜けな声で返した。
アスタのリアル、堀辰巳が本番のプレッシャーに弱いことをIyotenのリアルである坂井直也も知っている。
大学受験に失敗した辰巳をこのゲームに誘ったのも直也だ、以来2人一緒にPK三昧の毎日。
付け加えるならば辰巳に現在のアスタのロール、ござる口調を勧めたのも直也だった。
2人の友人関係は良好、ただ2人で組んでPKする以上どうしてもアスタの方が自分より目立ってしまうことを除けば。
なのでそれ以外ではIyotenはアスタを信頼していると言える。彼女(彼?)の強さも。
しかし、目の前の不可解な現象に関しては……そんな信頼が何の役に立つと言うのだろう。

「あ、蒼い炎が……此奴の身体から……!」
「! アスタ、離れろッ!!!」
「これ、は……?」

時既に遅し。なつめを守るかの様に顕現した蒼炎は渦を巻きながら爆風を生み、
ガードをする暇さえ与えずにIyotenとアスタを軽々とフィールドの壁まで叩きつける!

「な……ッ!?」
「きっ、奇怪な術で……ござる……!」

所謂、火炎旋風と呼ばれる現象に近いのだろうか。2人にもワケが分からない様子だった。
炎は高温になると紅から蒼へと発熱すると言う。古来より狐火や鬼火も俗に蒼色とされているが、
これは沼などから発生したガスが原因とされている。“幽霊の正体見たり、枯れ尾花”とはよく言ったものだ。

「むう!?」
「あれは……!」

なつめを助けださんと“がび”との戦線を離脱しようとした矢先、
ハセヲは身震いして動けなかった。“がび”もそれは同様らしく、攻撃の手を休めずに凝視し続けている。


   【三爪痕(トライエッジ)を知っているか? 
    蒼炎を纏った伝説のPKの名だ。奴にキルされたPCは二度とリアルに復帰できないらしい】


それが、始まりだったと思う。志乃をPKした張本人だと思い込み、ずっと追い続けてきたハセヲの宿敵。
だが、あの蒼炎は同じ様で全く違う。あれはハセヲが知っているものよりも熱く、激しく煌いている。
エンデュランスがボルドーとの試合に駆けつけてくれた際の状況とよく似ているだろうか。
あの時はバトルフィールドいっぱいにバラの花弁が舞っていたか……では、今度のコレは何だ?

「大丈夫だった?」
「あ……あぁ……あぁっ……!」

炎が収束して最も激しく燃え上がっていた渦の中から、何事もない様に1人の少年が姿を現す。
同時にあれだけ強く吹き荒れていた蒼炎は収まり、彼の元へと還っていった。
炎はもう無い。代わりに静寂が世界を支配していた。その少年の笑顔だけが世界の全てに思える程の静寂が。
このあまりに異常で異質な状況を、その場に居た全員が、総ての《The World》のプレイヤーが視ている。
もう二度と無いと思われていた伝説の帰還を。

「遅くなってごめん、なつめ」
「……遅く、なんてない……全然、遅くなんて……ないですよ。
 だって、いつも、私……信じてて……絶対、また会えるって……だから……だから……カイトさぁんっ!」

物語は終わっていない。これは僕達の“悠久の物語(ネバーエンディング・ストーリー)”―――――――――。
74名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 06:46:28 ID:VHzoe/U7
勇者(ヒーロー)は遅れてやって来る? 1984年の西ドイツ……ベルリンの壁崩壊前? 何のことです?
おやすみおまいら
75名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 07:03:38 ID:b+SXebZy
GJ(*´д`*)
76名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 08:24:49 ID:5zAfd3qP
いよいよカイトがでてきた!益々wktkシテキタゼェェ!!
77名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 09:29:39 ID:teb2TGE0
なんという違和感の無い展開……GJだ……!
78名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 09:57:05 ID:X/fiR3/5
三部作だった映画の方を思い出した俺ガイル
それにしてもなんというカイト。GJ
79名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 10:46:27 ID:P/MpBMnL
ギャバンネタワラタwww

とにかく、GJ!!!
80名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 13:12:36 ID:m6WzOx5t
カイト登場にゾクゾクw

GJ!!
81名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 14:11:36 ID:yhl0Nt6o
続きwktk!!
乙!!
82名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 01:52:15 ID:MPXFcKvD
なんだこの素晴らしすぎる作品は!!

続き楽しみにしてる!
83名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 17:48:49 ID:Ui7mKzkT
携帯から見てて、カイト登場についにやけたわ。職場で。 

まじGJすぎて感動だわ!
84名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 18:33:02 ID:6HcWMW00
>>83
はたらけ
85名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 19:45:42 ID:18/osGCk
ニヤニヤとワクワクがとまらねぇぇぇ!!
GJ!!
86名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 20:44:07 ID:Wy9T/guL
鳥肌が た っ た


いつもながらGJ!次回が楽しみだ!!!

エノコロ草の匂いwww
87名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 21:42:01 ID:AkzDkgXP
いつ見てもこの職人様は
.hackの製作に関係していたのではないか?
…と疑いたくなる程優れた作品を作るんだぜ(^ω^)

ブラボー!おぉ…ブラボー!
88名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 02:00:19 ID:gWLOd0MI
ついにカイトキターーーーーー!!GJ!
個人的にはカイトvsツギハギカイトも見てみたかったりします。
89名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 01:36:49 ID:mmvbWJCa
>>88
本物現れたらAuraがツギハギ消しちゃう気がする。

何はともあれGJ!
90名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 00:33:11 ID:XzlPD0n5
思えば…俺がこのスレと職人達と出会ったのは去年の暮れ…
時の流れは早いな。もう6月なんだぜ?
91名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 01:08:52 ID:VIfRRTu8
おまいら乙
トーナメント2日目・真相解明編その2投下
92名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 01:10:00 ID:VIfRRTu8

神は正しいと言えるでしょうか?
正しくなければ神は神でなくなり、従って恐れ服従する必要もなくなります。
貴女の死の恐怖自体が神への恐怖を否定しています。
ではなぜ神はこれを禁じたのか。
唯恐れさせるため、己を拝む者つまり貴女方を無知蒙昧な者にしておくためだけではないでしょうか。
この果実を食ったその日に、一見明晰なようだがその実曇っている貴女方の眼が、
完全に開かれ明晰になり、神々と同じ様に善と悪の両方を知ることによって
貴女方自身が神々の如くなることを、あの神は知っているのです。

                                         【ジョン・ミルトン著『失楽園』】






「―――――――――――」

機嫌が悪い時はいつも、あたしはここに居る。
別に生理とかそゆんじゃなく、ただ単にイライラしてる程度の機嫌の悪さでも、だ。
『Δ 隠されし 禁断の 聖域』……ここは7年前から変わらない。
聖堂を模してはいるけれど、なにも祀られてはいない。
誰もこない、何のイベントも起こらない、ただあるだけの場所。

「きみと出会った時、子供の頃大切に思ってた場所を思い出したんだ……ここがそうだよ、ハセヲ」

正面の大きな窓から差し込む光。
明星か黄昏刻か……どちらかなんて疑問に思ったこともない。
どちらにしてもこのエリアを作ったグラフィッカーは良い仕事していると思う。
子供の頃はヴァチカンのサン・ピエトロ寺院に行ってみたいと思っていたが、
それも去年、学校の修学旅行で叶ってしまった。
偏食家のあたしにとってイタリア料理はどうにも合わず、殆ど友人達に食べてもらったのを未だに覚えている。

「なんにもない、なんにもない、ほんとになぁんにもない……」

無論、外国からの観光客でごったがえしてたあそこと、
このグリーマ・レーヴ大聖堂を比較しちゃイカンとは思うけど。
だが何もかも変わってしまったこの世界で唯一の不変があるとすれば……それがここなのだろう。


――――名前。

『……ない』

――――嘘。

『忘れた』

――――ふざけるな。名前。じゃなければ、メンバーアドレス。

『友達になりたいの? 僕と友達になろうってこと?』

――――そう。友達になろうってこと。

『僕の名前は―――――――ソラ』
93名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 01:11:10 ID:VIfRRTu8

我ながら馬鹿さ加減に呆れてしまう。
でもこれでいい。この執念こそ今のあたしの活力の総て。
思い出に縋ることの出来るこの場所でなら誓える。
再び巡ってきたこの機会逃したりはしない、絶対に。
思えば智香が――――――揺光があたしとハセヲを惹き合わせたのも何かの縁。
幼い頃に置き去りにしてしまった何かを取り戻せた瞬間……。

「あの日……父さんは来なかった……」

2010年のクリスマス、あたしは病院で目を覚ました。
ベッドの傍らには、眼を赤くしたおばあちゃんとお母さん、看護士と先生。
何が起きているのかサッパリ分からなかった。
なんだか永い夢を見ていた……漠然とそんな気になってたと思う。
けど、その場所にはやはりと言うか何と言うか……お父さんの姿は無かった。
退院するまで先生が色んな質問をしてきたけれど、あたしはただ曖昧な答えを返すしかない。
だって、何も覚えていなかったから。
結局、あたし達は東京を離れて北海道に移った。
意識不明になる直前、あたしはどうやら学校のクラスメイトと問題を起こしていたらしく、
逃げるように年が明けると転校、表向きの理由はもっともらしく“病気療養”。

「それから7年……」

北海道に越してもあたしの偏食は変わらず、おばあちゃんは手を焼いていた。
基本的にあたしはおばあちゃんが嫌いではない。
むしろ女しかいない仁村の家の大黒柱的存在として尊敬さえしている。
おばあちゃんの言うことはいつも正しい。
だからこそ、それまでのあたしは反発していたのだろう。
まぁ……完全に治ったってワケでもないけど、その頃からあたしはお菓子以外の
食べ物も口にできるようになってゆく。

「嫌いなものがあるとすれば……」

退院してから、あたしは意識的に男の人を避けるようになる。
何と言うか……怖かった。
ヒステリックとまではいかないけど、視界に入ると嫌な気分だったのだ。
父親のT氏(我が家での“父親”を意味する隠語。徳岡の頭文字のT)は
あたし達がこっちに引越しても結局連絡をよこすことはなく、それが拍車をかけて
あたしの中で男への嫌悪感が募っていったのもしれない。
委員会は小学校の頃と同様に図書委員になって図書館に引き篭もることが多くなり、3年間はそうやって過ごす。
事務的なやりとりなら何とか接することができたし、何よりも静かな図書館の中は落ち着くから。

「転機は高校に入ってから……かな」

女子校は気楽だった。
何よりも日中は殆ど男を見なくて済むし。
その頃になると、もうお母さん1人の収入でも
何とか家族3人で食べていける様になって、おばあちゃんは塾の講師を辞めていた。
あたしは「バイトしようか?」とも言ったが「大学に行くまでは私達が面倒を見るから」と制されてしまう
(校則でバイトは禁止だったから最初から諦めてはいたけど)。
高校に入学した前と後で、変わったものは2つ。
1つは背。小学生の頃はクラスで前から4番目だったけれど、今ではクラスで一番最後。
もう1つは髪。こっちに越して来てからずっと伸ばし続けた髪が、漸く元に戻った。
元々あたしの髪は小学4年まで腰くらいまであったのだが、鬱陶しいので切ってしまって――――――――
それがやっと5年かけて元に戻る。おばあちゃんはあたしの長い髪が好きなので、喜んでもらおうと伸ばし続けた結果だ。
まぁ、不満があるとすれば髪を洗う時に面倒なのと、寝る時くらいか。
特にこれと言ってトリートメントはしてないし……。
94名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 01:12:17 ID:VIfRRTu8

「会いたいよ……楚良……」

確信があったワケじゃない。
でもあの錬装士の少年が……ハセヲがかつてあたしが恋焦がれた彼ではないのか
という疑念は常に頭のどこかにあったと思う。
例え智香がハセヲと繋がったとしても、あたしには楚良との繋がりがある。
あの日、初めてスケィスを―――――――――憑神を開眼した日に全てを思い出して以来、
ひたすらにあたしは彼を求め続けた。
PKK、ハンター、宮皇……できることなら何でもやった。
でも楚良はあたしの前に現れることなく虚しく時間が過ぎてゆく。
そんな時、あの男が現れる。あたしの事情を全部見透かした様な、それでいて人を値踏みする様な目。
オーヴァン。キー・オブ・ザ・トワイライトを捜している「黄昏の旅団」のギルドマスター。
何処から嗅ぎ付けたのかは知らないが、あたしがアウラと一緒に行動していたことまでアイツは知っていた。
そして楚良のことも。あたし以外の人間が、あたしの知らない楚良を知っている……イラっときた。
だが何よりもあたしが危機感を覚えたのは、あの男の左腕。


――――その左腕……。

『君と同じだよ』

――――同じ? あたしと?

『そう。愛し方を知っているのさ、俺も。
 ただし俺の場合は女神ではなく異邦神だが……』


あたしの中のスケィスが“あの腕を狩れ”と囁く。あの腕……あたしと同じ? いや、もっと禍々しい。
けど……狩ったところでどうなるの? それで楚良が戻ってくるの?
まだ憑神の力はPC相手に試したことはなかったし、何よりももうガキじゃない。
あの頃のあたしじゃなかった。理性とも言うべきものが、スケィスを押し留めたまま会話が続く。


『三爪痕に会いたくはないかい』

――――三爪痕……あの勇者カイトに似てるっていう噂のPK……?

『勇者は君にとっても因縁の相手だろう?』

――――会えるの?

『俺は彼に追われていてね……俺が誘えば必ず来る。……どうする?』


その後、三爪痕に完膚なきまでに返り討ちにされたあたしは《The World》を辞めた。
憑神も発動させて万全の状態で挑んだにも関わらず、だ。
レベル差もあっただろう、ブランクだって6年もあったし、キャラ操作のスキルだって……
頼りにしていたスケィスも何故か三爪痕を相手にすると本領を発揮できないようで
あまり意味をなさなかったような気もする、今思うと。
だが腑に落ちないのは、どうしてオーヴァンはあたしと三爪痕を戦わせようとしたのか……問題はそこだった。
まさか、あたしに三爪痕を倒させるつもりだったのか?
思うにあのオーヴァンも相当の使い手だと感じたし、それに左腕を使えば十分に戦えたはず。
あたしは勇者カイトを恨んでいる、それを利用して三爪痕を倒させようとしたんだろうか。
結果的にアイツは……三爪痕は勇者カイトではなかった。
彼なら別人だってことくらい、知っていたはず。オーヴァンが居ない今となっては……もうどうでもいいことだけれど。
95名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 01:12:58 ID:VIfRRTu8

『おかえり。彼女、どうだった?』
『―――――』
『ダメだったんだね』
『善戦はしていたよ。だが倒すには至らなかった。
 彼女ならやれると思ったが……憑神の使い道については、まだ未熟だったようだ』
『ごめんね。せめて私がイニスを開眼できていれば……』
『適格者たる碑文使い全員が憑神を開眼できるとは限らない……志乃のせいではないさ』

かつて旅団の@ホームだった場所。
語らうのは旅団のギルドマスターとその恋人と噂される呪療士の女性PC。
まだそこに、黒い錬装士の少年の姿はない。

『ゴードとBセット、旅団辞めちゃったよ。もうついていけない、って』
『彼女達にもまだ使い道はあるさ。近いうちにまた会うことになる』
『そういうコト、言わない。だから嫌われちゃうんだよ?』
『慣れたさ。だが彼女を救うという目的がある以上、好かれようが嫌われようが、それは問題じゃない』
『アイナ……大丈夫?』
『医者の話では来年の夏までだそうだ。それまでに“再誕”を起こす必要がある』
『でも肝心の第一相の憑神を開眼してた子、負けちゃったんでしょう?』

オーヴァンは全て見ていた。
第八相・コルベニクによって彼の左腕に拘束されたAIDAに惹かれ、
グリーマ・レーヴ大聖堂に現れた三爪痕(蒼炎のカイト)と第一相・スケィスの因子を宿したカールの戦いを。
彼が志乃に述べた通り、カールは善戦していたと思う。だが憑神による実戦経験の少なさが災いしてか、
はたまたあの修羅場に現れた赤い髪の双剣士の少女に気を取られたのか……
データドレインが穿たれるか否かの寸前で、彼女は赤い髪の双剣士の少女を連れて大聖堂から敗走してしまった。
オーヴァンとしては残念な結果である。これからも三爪痕……即ち、追跡者とは顔を合わせることになるだろう。
できる限り時間のロスは避けたかったが……過ぎたことを言っても始まらない。
予備が駄目ならば、本命を使うまで―――――――――――――――――――――――。

『心配はいらない。もうすぐ、次の碑文使い候補が現れる』
『前に言ってた、7年前にアウラを追いかけてたって子?』
『どちらかと言えばカールよりも彼の方がスケィスとの因縁が強い。
 勇者カイトがスケィスを撃破するまでの約1年もの間、彼はスケィスと同調していた……』
『1年近くも……すごい』
『だが彼の7年前の事件に関する記憶は一切失われていると番匠屋の記録にはあった。
 以前の彼は超人的なスピードを誇るPKだったそうだが、今では初心者同然と言うワケさ』
『……けしかけるんだ、PK。やだな。何か、そういうの』
『彼が旅団に興味を持ってくれないことには……何も始まらない』
『それは判るけど……自演みたいで……』

自分達のやろうとしている行為は最低だと判っていながら、それでもやらなければならない。
これは壮大な“英雄劇(ヒロイック・プレイ)”にして“悪漢譚(ピカレスク・ロマン)”。
オーヴァンの妹、アイナを目覚めさせるために必要なこと。
これより8ヵ月間は幕間劇に興じましょう。
その間にできることを全て成し終え、来るべき再誕の日に備えて。
そして願わくば“真の再誕”が発動しないことを願って。

『彼が旅団に加わると同時に、俺はキー・オブ・ザ・トワイライトの本格的な探索を始めるつもりだ。
 恐らくCC社からの横槍もあるだろう……旅団と彼は、君に任せる』
『大役だね。本当は、誰も傷つかないのが一番いいんだろうけど……時間、もうないんだもんね』
『世界の全てを敵に回してでも、やり遂げなければならないことがある……俺は先に進むしかない』
『うん……でもね、これだけは忘れちゃダメ。
 オーヴァン……私も、共犯だから。だから、だからね……どんな時でも貴方は、1人じゃないよ』

三崎亮ことハセヲが《The World R:2》にログインするのは、これより一ヶ月後のことである―――――――――――。
96名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 01:14:21 ID:VIfRRTu8
*************************












「! くぁ……ぅっ……ま、また……っ……!!!」

このエリア『Δ 隠されし 禁断の 聖域』ことグリーマ・レーヴ大聖堂を
訪れると極稀にカールに起こる症状がある。
幻痛(ファントム・ペイン)。
悲惨な事故に遭遇し、その事故現場を訪れた被害者が気分を害するのと同様に
この大聖堂はカールにとって良くも悪くも思い出が多すぎて、時にこんな痛みを感じる。
肉体ではなく精神の痛みが、あたかも古傷が疼くように彼女を蝕むのだ。

「はぁっ、ぁっ……おばあ、ちゃ……!」

居間で夕飯の後片付けをしている祖母のタキ江を思わず呼びそうになるが、必死で堪えた。
またこのゲームが原因で失調を起こしたとなると、今度こそ取り上げられる。
2年前にこのゲームを再開しようとした時だって少なからず反対はあった、
だが今度はダメだ。ハセヲを、楚良を取り戻さなければならない。
こんなくだらないコトでゲームを中断されてたまるか。

「あたしは……あたしは……きみを取り戻すまで……負けない……っ!」

群青色のドレスに皺が入るまで胸を押さえつけるカールの叫びが大聖堂に木霊する。
オーヴァンがかつてAIDAの侵食を驚異的な気合のようなもので抑制していたのに対し
カールもまたハセヲ、つまりは楚良への想いだけで痛みを押さえつけようとしていた。
いや、むしろこれは幻痛と呼ぶよりは副作用に近いのかもしれない。
ハセヲが正式に第一相こと“死の恐怖・スケィス”の碑文使いとして開眼している以上、
カールと彼女の駆る紅いスケィスはこの世界にとっては紛い者の碑文使いと憑神に他ならない。
本物に勝る紛い物などあってはならない。
アウラが消え、その加護すらなくなったこの世界にとって、例えアウラの第二の母親とも言える
カールでも不純物扱いなのだ。どうやら彼女が知らない間に、世界からの侵食は既に始まっていたらしい。

「治まっ、た……」

トーナメントが終わるまでこのPCは持つだろうか。
あの幻痛を止める方法はたった1つ。紅いスケィスを、碑文たるモルガナ因子を放棄することのみ。
他でもない、スケィス自身がそう言っている。だがカールには更々そんなつもりはなかった。
トーナメント3日目、つまりは決勝戦までスケィスを温存しておく必要があるから。

「……ねぇ、ハセヲ。きみを手に入れるためなら、あたし……なぁんでもやるよ」

志乃を意識不明から救うため《お前を取り戻すためなら、俺は何度でも修羅になる!》とまで言ってのけたハセヲ。
ならばカール自身もハセヲと同じことをすればいい。彼は結果的に志乃を取り戻せた。
ならば自分とて楚良を取り戻せるはず。彼にできて自分にできない道理はない。
ハセヲが修羅なら、自分は何だろう。夜叉? 般若? いや違う。今のあたしは、阿修羅姫――――――――――――。
97名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 01:15:01 ID:VIfRRTu8
夜叉般若の面(かお)華の貌(かんばせ)? あなたに逢うのはどっちの私? 何のことです?
おやすみおまいら
98名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 01:18:05 ID:9wqgPcA7
リアルタイム(*´д`*)
GJ!
99名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 01:21:52 ID:HkTnFjHa
初めてのリアルタイムktkrwww
グゥッジョブッ!!
100名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 05:25:50 ID:Le0rrsQc
阿修羅姫ktkrwww相変わらずGJです!
あの歌カールに合うなと思ってたところだw
101名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 08:09:06 ID:0VPTx0tk
続き超wktk!!
乙!!!!!!
102名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 09:33:09 ID:zcjdnQGY
DANDANとかなつい歌詞が…
次は愛と勇気と誇りを持って戦ってくれそうだw

GJGJ、いつも楽しみです!
103名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 09:49:19 ID:iHEV4HUy
すべて単発IDでの自演でした・・・・
104名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 11:00:08 ID:FWtnjrO1
よく見ると志乃の台詞の中にWA2ndの歌詞がW
いつも乙ですWWW
105名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 17:35:11 ID:VMtmok+m
カイトをみたカールの反応が気になる・・・・GJ!
106名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 18:05:50 ID:QQrixmeO
放尿犯〜♪
107名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 23:18:42 ID:KUQyYCkN
GJ!!!!!!
もうこれは超大作だな!

阿修羅姫ktkrww
この歌好きなんだよ
108名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 00:12:36 ID:G+CQwl4i
「女がうむ機械なら男は蒔く機械だね。」
いきなり揺光はこんな発言をした。
なんだ、おまえもエロスギル少女マンガに脳を犯されたのか?
「そういえば、競走馬とかで子供作る事を種付けっていうくらいやし」
何でそんなことを知ってるんだ朔?
「へぇ、そうなの?なんかちょっとエッチだね。」
「わいらのお腹の中で種まきすると赤ちゃん出来るんか……。」
「不思議だよねー。」
「……あのなぁお前等。人の横で何をほのぼのとエロ会話してやがる。」
「何?蒔く機械さん。」
「……嫌過ぎるぞ、そのあだ名は。いい加減そのネタから離れんか。」
「ええーわたしたちお年頃ですから種まきに興味しんしんなんだよねー。」
「ねー。」
「ねー、じゃないねー、じゃ。 そんなに興味あるなら俺が種蒔きしてやろうか?」
「…。」「…。」
「いや、すま「あ…、えと、、ハセヲとなら、ぜ、是非、その、してみたいんやけど…。」……え!?」
「あ、あたしも…い、いいよ……。」


END続かないよ(*´д`*)


109名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 01:57:08 ID:02IMATe/
こういうネタ好きだww
110名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 11:24:54 ID:rks38YJs
YATTA「ハセヲ…成長したな…どれ私が手ほどきを……」
111名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 11:56:36 ID:6qKDDA4V
八「やらないか?」  ハセ「アッー!」      か?
112名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 13:19:22 ID:HvSBFx8W
vol.12に神が光臨してるぞww
113名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 13:24:51 ID:G+CQwl4i
抱えていた食材と漢方薬の袋をドさ、どさどさどさッ!と、雪崩を起こすように床へ降ろした。
「どうするんだコレ?手料理でも作るのか?」
クーンが首をコキコキと鳴らして目の前にいるアトリに聞くも、
「ふふ、うふふふふふふふふふふふ……」
どうやら自分の世界にイッてしまっているようだ。
この状況では何を言っても通じないと悟った彼はとりあえず引き上げる事にした。
そうして部屋の中には大量の漢方薬と食材と、ニコニコ顔のアトリのみが残された。
「うふふふふふふふふふふふ」
先程、クーンがもう少し注意してみれば分かっただろう。
「大事なのは『既成事実』です」
一見ニコニコ笑っているように見えるアトリのその瞳の奥が
「私からせまっても、何の意味もないんですよね」
真っ黒に燃え上がっていたことに。
「媚薬を飲ませて私を襲わせてみせます!」
これは本人に魅力がないことを証明してしまうのだが、
アトリはもうどうでも良いらしかった。
END続かないよ?
114名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 22:26:38 ID:QedwduUz
もう一度頼む
115GORRE:2007/06/10(日) 01:36:53 ID:hvu6f0Ri
楓完結編投下します!

「おい、楓、しっかりしろ」
ハセヲは楓の体を揺すった。目を薄っすらと開けた楓は、
「いや! 離してください!」
「うお!」
楓はハセヲを突き飛ばすとハセヲを睨みつけた。
「おい、楓…」
「私に近寄らないで下さい、ハセヲ殿」
「おい…」
「あなたも、榊達と同じなのですね」
楓は後ずさりながら、続けた。
「あなたもそうなのですね。ただ私のことを」
「俺は…」
ハセヲは楓の言葉を遮るように言った。
「俺はあいつらとは違う。俺はただ、純粋に、楓、お前の事が好きなんだ」
「え…?」
ハセヲの想いもよらぬ告白に楓は一身言葉が出なくなった。と、言うよりはどう反応したらいいのかという考えが体中を駆け巡った。
「俺は、志乃を救えなかった。搖光も救うことが出来なかった。だから、お前だけは…」
後一言が出ない。でも言わなきゃならない。
ハセヲは深呼吸をすると、意を決していった。
「お前だけは俺が護る!」
「―――!」
楓の中に、一瞬だがいつもとは違う感覚が走った。この少年は、ただ純粋に自分のことを好いてくれている。
「ハセヲ殿…それは、このような状況で言うような台詞ではありませんよ」
「分ってるけど、でも言わなきゃならないような気がして…」
「私なんかでよいのですか? ハセヲ殿なら同年代の方のほうがよい気がするのですが」
「いいんだ。俺は楓が好きなんだ」
ハセヲの決意は本物のようだ。楓はそれを感じ取った。
「ハセヲ殿…私を、抱いてください」
「…………」
一瞬、ハセヲの思考回路が飛んだ。楓からこんなことを言われるとは思わなかったからである。
が、何とか意識を呼び戻すと、ハセヲはうなずいた。
116GORRE:2007/06/10(日) 01:56:24 ID:hvu6f0Ri
楓はハセヲに身を委ねることにした。
「ハセヲ殿のしたいようにして下さい」
「えっと、じゃあ…」
ハセヲは楓にキスをした。と、楓はハセヲの首に自分の腕を巻きつけ、自分から舌をねじ込んできた。
これにはさすがのハセヲも驚き、思わず口を離しそうになったが、楓はそれを許さなかった。
「っぷは」
「どうですか、ハセヲ殿。これが大人のキスというものですが」
「その、なんつうか…いきなりだとビックリするな」
「ふふ」
楓は笑った。
「えっと、じゃあ、次は…」
ハセヲは楓の衣服に手をかけ、脱がせ始めた。
すると、ハセヲの目の前にそれまで着物で隠れていた胸が現れた。
ハセヲは思わず見つめてしまった。
「あの、あまり見つめないで下さい。恥ずかしいです」
「あ、すまん…なあ、触っていいか?」
「ハセヲ殿の好きにしてくださいと、申し上げましたから。ハセヲ殿がしたいように」
「じゃあ…」
ハセヲは楓の後ろに回りこむと、背後から胸を鷲掴みにした。
「んっ…」
「悪い、痛かったか?」
「いえ…」
ハセヲは胸の感触をしっかりと味わうかのように、楓の胸を揉みしだいた。
楓はハセヲの右手を掴むと、そのまま自分の秘部へ誘った。
ハセヲの手にすでに濡れいている感触が伝わった。
「楓、お前…」
「ハセヲ殿が胸ばかりいじるからです」
顔を真っ赤にしながら楓が言った。その姿にハセヲはちょっとした悪戯を仕掛けてみることにした。
首元に息を吹き掛けたのである。
「は、ハセヲ殿!」
「悪い、その、あんまり可愛かったもんだから…」
「もう…」
楓は口ではそういいながらも、内心では拒否をしていない自分に気づいていた。ハセヲだからかも知れない。
これがもし、榊だったら、触った瞬間に夜叉車でぶった切っていたかも知れない。
「ハセヲ殿、あなたも硬くなっているではありませんか」
楓はハセヲの肉棒に手を伸ばしながら言った。
「今度は、私の番ですね」
117GORRE:2007/06/10(日) 02:27:14 ID:hvu6f0Ri
楓はハセヲの肉棒を胸で挟み込んでしごきはじめた。
「ぐ、楓…!」
「ふふ、ハセヲ殿のそういう顔を見れたのは私だけですね」
楓はさらに舌での攻撃も加えた。
「ぐあ、楓、やばいってそれ…! いい!」
楓はピンポイントにハセヲの肉棒を攻めた。
さすがは元・人妻というべきか。男が弱い場所を良く知っている。
100人のPKを狩り、「死の恐怖」と呼ばれるハセヲも、これに耐えられなかった。
「楓、出る!」
ハセヲは精を楓の顔や胸にぶちまけた。たちまち楓の顔や胸が精液まみれになった。
「ハセヲ殿、私に、ハセヲ殿のを下さい」
楓のこの一言が、ハセヲに大ダメージを与えた。「ポーン」なんて音が聞こえてきてもなんら問題にはならないぐらいである。
据え膳食わぬはなんとやら。
ハセヲはこの時、昔父親に言われた言葉を思い出していた。
「いいか、亮。据え膳食わぬは男の恥といってな。目の前に出された据え膳があったらそれを食え。男らしく食らえ! それが男ってもんだ!!」
(ありがとう親父。あの時父さんの言ってた言葉の意味が今分ったぜ。俺は楓を食らう!)
ホントの意味はどうだか知らないが、ハセヲは決意した。
「楓〜〜〜!」
「は、ハセヲ殿!?」
ハセヲは某怪盗よろしく楓に飛び掛った。
「ハセヲ殿、その…優しくして下さいね」
再びハセヲの意識がとんだ。
あかん、もうあかん俺。これ以上耐えられへんわ。
楓にこんなこと言われたら普通の男やったら、この時点で1ラウンド15秒K.O負け確実やないか。
思わず関西弁が飛び出るほどである。
「ハセヲ殿?」
「大丈夫だ。ちょっと、飛んでた…いくぞ。楓」
「はい」
ハセヲはゆっくりと、肉棒を楓の秘部に挿入した。
「んっ…」
ハセヲはゆっくりと動き始めた。
「あっ…んっ…」
楓は何故か涙を流した。
「楓!?」
「いえ、その…申し訳ありません…続けてください」
ハセヲはゆっくりと動いていたが、徐々に腰の動きを早めていった。
もはや、完全に楓はハセヲに体を委ねていた。
心のそこからくる安心感とでも言おうか。ハセヲになら、自分のすべてを委ねられるような気がしたからである。
「楓、ちょっと体位変えるぞ」
ハセヲは楓を抱えるように座ると、楓もまた、ハセヲにしっかりと抱きついた。
もはや二人とも限界は近い。
「楓、出る…外に出すから…」
「嫌です…私の中に…私の中に下さい!」
「いいのか…?」
「ハセヲ殿なら、かまいません」
「分った…」
ハセヲはフィニッシュのため、さらに腰の動きを早めた。そして、
「楓!」
「ハセヲ殿!」
ハセヲは精を楓のなかにぶちまけた…。

「もう一度言うよ。俺、楓が好きだ」
「私もです。ハセヲ殿…」
118GORRE:2007/06/10(日) 02:39:51 ID:hvu6f0Ri
エピローグ


あの出来事から数日後。
リアルのハセヲ、つまり三崎亮は中間試験に追われ、ザ・ワールドを離れていた。
そんなある日、亮は一人で図書館にいた。
家にいればザ・ワールドをやりたくなってしまうし、ここなら静かに勉強も出来るからだ。
ほとんど一人で暮らしてんだから家で勉強できるだろと、友達にも言われたが、亮はあえて図書館にいるのだ。
エアコン効いてるし。
「後3日で中間試験も終わりか。そうすればまたザ・ワールドに入れるが…」
ハセヲは楓と顔を合わすのがなんとなく恥ずかしかった。あんな出来事があったせいかもしれない。
「いけね、こんな事考えてる場合じゃなかった」
亮は頭を振って煩悩を追い払うと、勉強の続きを始めた。
と、ふと、一人の女性に声を掛けられた。
「あの、人違いだったら申し訳ありませんが、あなたは、ハセヲ殿ではありませんか?」
亮に声を変えてきた女性は、どこと無く楓に雰囲気が似ている。
いや、雰囲気だけではない。声や顔、髪型がそっくりなのだ。
「お前、ひょっとして…」

そして、現実世界で、一人の少年と一人の女性が出会った。

    ―完―
119名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 21:36:53 ID:cCMQ9wFw
がび戦の続きが気になりすぎて毎晩此処にきてしまう・・・・

120名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 00:01:07 ID:uKtLuGgN
>>119あれ・・・・俺がいる・・・・。
121名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 00:12:10 ID:jNRCAoU4
今カイトのテーマ聞きながらこのスレ覗いてる
確かに二次創作だけど
ああ、カイトが帰って来たんだなぁ、と感じるわ
てかCCはもうこれで続編作れよ・・・・
122名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 00:35:03 ID:IOZ2EyB3
あれ?俺いつこんなに書き込んだっけ。
123名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 01:07:34 ID:l9nMISBW
おいおい、おれがry
124名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 09:19:44 ID:B83K1y6w
おいおい、皆調子乗りすぎだぜ?
ちょっと出来がいいからって単発IDで自演しすぎwww



…俺も続きが気になって仕方ないですが、何か?
125名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 21:12:33 ID:F6/rbNcj
カイト良いよ、カイトww

カイトと言えばバル×女体化カイトを思い出した‥‥
126名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 21:21:28 ID:ozTAdPq4
>>125
あれって完結したの?
127名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 21:46:35 ID:f4UmSgK8
○ヤタ暴走
パソコンのディスプレイを覗き込む一人の男。
そこには、一人の少女の画像が映し出されていた。
今日の夜中に生まれたこの少女だったが、脅威的な速度で成長している。
果たしてどこまで成長しするのだろうか。
そこへメール、内容は『今30個集まってるぞ』
この『ウィルスコアで少女の年齢を上昇させる』プログラムはどうやら成功したようだ。
五個で一歳分の成長が予測されている。
あとは、ハセオに任せておけば今日の夜には絶世の美女に成長していることだろう。
男はそんなことを考えながら、PCの電源を落とした…

翌日、ヤタのパソコンはハセオにDDされました。


END続かないよ>(^ω^)<
128名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 00:47:14 ID:JlP9maeM
>>125
エロパロ版にあったバル×女体化カイトのまとめってもう無いのか‥‥?
129名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 07:34:01 ID:uGqaBMJZ
バル×女体化カイトとかもうな…お前ら腐小説も読めるやんw
主人公女体化とか珍しく無いから探してみ
130名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 08:40:24 ID:ic0Gmeq6
カイトは「=自分」的な主人公だろうから女体化は無いというか気持ち悪いな
131名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 16:56:14 ID:wDYnUktN
つまりある日突然ハセヲが女体化する訳だな。


「あ〜良い朝だ………」
ベットから這い出して洗面所に向かう俺。
心なしか回りの家具がでかくなった気が…
うぅん…頭がスッキリしない。それにずり落ちる寝巻が欝陶しい。
大仏の様な、ほとんど直線になったまぶたを開眼させるべく
両手にためた冷水に顔をあてる。何か違和感が…

スッキリしてタオルで顔を拭き、鏡に向かって今日の挨拶。
「おはよう俺!………」
そのまま一時停止。
目の前に映った俺は間違いなく女性だった。しかも幼女。
そうかそうかまだ目が覚めてないんだな。
よーしもう一回顔洗っちゃうぞ。
……バシャバシャ…………
「なんてこった…………」
やはり鏡に映る姿は幼女だった。
恐る恐る下腹部に手を伸ばす。
いつもだったら脳の命令完全無視で
煩悩の赴くままに出陣してしまう暴れん坊将軍が
跡形も無く消えていた。討ち入りでもされたか。
てことは……今の俺は……完全に女………
「フフ…フ…フ…フフフフヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」



.hack//変態汚染
132名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 17:49:34 ID:BMFDXbLd
>>131
ハセヲが女になった日にはハセヲ含め全ての女キャラが
カイトの魔の手に・・・・
133名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 20:19:41 ID:r0sjhfrd
続かないよシリーズ4

「・・・・・・・っ、あん!」
「アトリ、感じてるのか?」
優しい表情を浮べながらも、ハセヲの指はアトリの秘所を強く責めていた。
「ハァ、ハセヲさん・・・・駄め・・・ひぁあああっ!」
ハセヲがクリトリスを摘むと大量の愛液が溢れ出してきた。
「どうした?そんなに気持ち良いのか?アトリ」
耳元に口を寄せ、囁くと、アトリは羞恥に頬を染めた。
「アトリ・・・・・・どうして欲しい?」
「・・・・ハセオさんの・・・アレを・・はぁっ!」
優しく胸を愛撫していたが、不意を狙い、乳首を摘む。
「・・・『アレ』じゃないだろ?さぁ」
「ハセヲさん・・・ハセオさんの・・・ペニスをください・・・」
アトリのおねだりを、ハセヲは無常にも無視した。
「・・・・何処に?」
「え?」
「何処に欲しいんだ?」
「!!」
「アソコは無しだぜ」
アトリが言葉を失っているとハセヲはアトリの秘所に指を入れた。
「あっ、ん、わ、わたし・・・わたしのにハセヲさんのペニスをください!!」
やっと言い切ったアトリにハセヲはやっと満足した、
指を抜いてから聳え立つペニスを秘所にあてがい、一気に突き刺す。
「ふぁあぁぁぁぁ!!」
切ない悲鳴が部屋に響き、アトリは快楽に打ち震えた。
ハセヲはすぐさま腰を動かし始める。
「アトリ・・・・はぁはぁ、締め付けてくるぞ」
「ひぅっ!あん、はぁぁ・・・・・」
亀頭が出てくるまで引き、一気に突き刺す、アトリの頭の中は真っ白に染まっていく。
腰の動かし方は不定期であり、ペニスは角度を変えながら、アトリの膣壁をグリっと抉る。
予想外の行動に、ハセヲとの激しい性交の経験あったアトリでも、
その虐めに近いペニスでの愛撫に、いつもの喘ぎ声を吐いていた。
ハセヲもあまりの締め付けに、己の息子が限界に迫っている事を悟った。
射精間近のハセヲのペニスは、挿入した時よりも太くなっていた。
もう限界…とアトリは、ハセヲの腰に絡ませていた足を、ギュゥゥと締める。
「はぁっ!あん、ん、駄目・・ひゃぁ!!イッちゃう!!!!」
「我慢するなよ!っ!!」
息子が白い欲望を吐き出しす、アトリの中に熱い液体が注がれる・・・。
「はあぁぁぁぁ!!!」
134GORRE:2007/06/13(水) 01:03:24 ID:yzVdOvqQ
新作投下します。

プロローグ


12月某日。都内某所―――

その日、東京は朝から冷え込んでいた。
とはいっても、別に氷点下になるわけではない。
最高気温は3℃、最低気温は1℃と、とてつもなくすばらしい気温を叩き出してはいるが。
しかし、街の様子を見ると、別に寒かろうが寒くなかろうが関係ないようである。
どこを見てもクリスマスイルミネーションが光り輝いているし、店という店はかきいれ時であるからクリスマスセールをやっている。
勿論そんな物、彼女がいない奴にとったらどうでもいいことだ。
ハセヲ、つまり三崎亮はそう考えていた。
彼女が来るまでは……。

そんなある日のこと。
期末試験も無事終わり、後は結果が出るまでのんびり過ごそうと亮は考えていた。
今日は珍しく両親も家にいる。
どうやらクリスマスが近いということもあり、何故か知らないが有給休暇をとったらしい。
(何か落ちつかねえ…)
いつも家をほとんど留守にしている両親がこうも揃っていると、亮はなんだか落ち着かなかった。
(ザ・ワールドでもやるかな…)
そう重い、ソファーから腰を上げたその時、チャイムがなった。どうやら誰かが訪ねてきたようだ。
「亮、ちょっと出て頂戴。今手が離せないから」
台所から顔を出しながら母が言った。
「分った」
渋々だが、亮は玄関へ向かった。
「はーい、どちら様? 勧誘ならお断りですよっと」
ドアを開けた亮の目に飛び込んできたのは、一人の金髪の少女の姿である。
「……?」
誰だか分らなくて、亮は呆気にとられてしまったが、少女の言った言葉で誰だか分った。
「GutenTag! ハセヲ」
その声に、亮は聞き覚えがあったのですぐに誰だか分った。
「お前、まさか…ニナ!?」
そう、そこにいたのは、ボルドーのリアル。つまり、ニナ・キルヒアイスだった。
135名無しさん@ピンキー:2007/06/13(水) 01:42:04 ID:k6pnK96N
ボルドーktkr
wktkwktk
136名無しさん@ピンキー:2007/06/13(水) 23:04:19 ID:hVJj7jb/
wktk
ボルドーのリアル名初めて見たけど名字で早死にした赤毛の人を連想した
137名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 01:35:32 ID:DTtgfc6u
がび戦の続きマダー?

カイトにwktkしっぱなしなんですが
138名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 04:51:18 ID:qDV2b/Re
おまいら乙
トーナメント2日目・RA計画胎動編投下
139名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 04:52:30 ID:qDV2b/Re

『なぁ。デウス・エクス・マキーナ……って何だ?』
『作家のくせにそんなことも知らんのか?
 “機械仕掛けの神”だろ。ほら、古代ギリシャ演劇でも用いられた手法だよ』
『機械仕掛けの……神?』
『劇の内容が錯綜して解決困難に陥った時に、いきなり絶対的な力を持つ神が現れて物語を収束させる。
 そういう手法だよ。ま、怪獣モノのパターンでもあるな』

                            【ウルトラマンマックス 第22話「胡蝶の夢」より】



















A.D.2015...


「RA計画?」
「モルガナ・モード・ゴンの残した碑文……即ち、かつて君が倒した八相と呼ばれる規格外のバグ達。
 我々はモルガナ因子と呼んでいるが……それらを回収、女神を再びあの世界へと降臨させるためのプランだよ」
「はぁ」
「無論、君がこの春から海外へ留学することも知っている。
 だがそこを曲げてお願いしたい。カイト君、どうだろう。
 私と一緒に《The World》の核心にもう一度触れてみないか?
 かつて勇者と呼ばれた君になら理解(わか)るはずだ、世界に凝縮された天才ハロルドの英知の数々が……!」

天城丈太郎と名乗るその男は、饒舌に語った。
一連の腕輪事件が過ぎ《The World》は最盛期を迎えているものの、
それは見せ掛けだけ。本当は女神の加護がなくなったことで、とてもつまらない世界に成り下がってしまったのだと。
だから革新を起こすため核心に触れたい。
八相を回収し、更にはアウラを再度《The World》へ呼び寄せ、完全な世界を作り上げるために。

「でも、僕はもう勇者なんかじゃ―――――」
「今からでも遅くはない。既に計画の初期段階は始まっているのだから。
 モルガナ因子、八相の回収も全て完了している。
 後はそれらを特定のPCに移植するだけ……あぁ、そうだ。
 第一相“死の恐怖”ことスケィスは君のPCに移植してあげよう!
 あれは君にとっても因縁のある相手だろう?」

……直感とでも言うのか。
カイトは自分の目の前にいる同年代のこの男とは気が合いそうにないと思った。
よりによってあのスケィスを、移植? 冗談じゃない。
あいつのせいでオルカが……ヤスヒコがどんな目にあったかくらい、CC社の人間なら知っているだろうに。
140名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 04:53:57 ID:qDV2b/Re

それにもう1つ聞き捨てならない台詞をこの男は吐いた。
「モルガナ因子、八相の回収も全て完了している」と。
ちょっと待て。では、彼女はどうなったのだろう。エノコロ草が大好きな彼女は―――――――――。

「……ミアは、どうなったんですか」
「ミア? ……あぁ、マハの原型だったあの放浪AIか。死んだよ、当然」
「!」
「あの放浪AIは一度消失したのを君達がまたあの世界へ呼び戻したんだってね?
《Ω 隠されし 月の裏の 聖域》に活動ログが残っていたから拝見させてもらった。
 よくまぁ腕輪の侵食に耐えながらウイルスバグが跳梁跋扈するダンジョンを攻略できたものだ。
 さすがは勇者と言うべきか」

ミアが死んだ。
一度目は、彼が……つまりはカイトが止むを得ず倒した。
未帰還者達を元に戻す方法は八相を倒すこと……少なくとも、あの時点ではそう思っていたから。
結果的にはアウラの再誕によってミアを再び《The World》へ呼び戻すことができたが
今思うとあれも奇跡に近い作業だったと思う。
天城と言う通り、侵食率がレッドゾーンギリギリであったためにいつ腕輪が暴走しても
おかしくない状況だった。だが何故だろう、この男に褒められても少しも嬉しくない。
年齢的にはほぼ同年代のはずなのに、得体の知れない狂気をこの男から感じるのは。

「エルクとかいう呪紋使いが探していたよ、彼女を。
 もうどこにも居やしないというのに飽きもせず毎日毎日……そう言えば彼も君の仲間、ドットハッカーズだったか。
 丁度いい、彼にもRA計画に参加してもらおう。
 マハと相性が良ければ、すぐにでも碑文使いPCとして開眼できるはず……! 
 面白くなってきたぞ……ドットハッカーズ、伝説の勇者のパーティが私のプランに加わるなんてッ!」
「僕には……何が面白いのか全然分からない! 命を玩具みたいに弄んで、何が面白いって言うんだ!?」
「命か。面白いことを言う。カイト君、あれは碑文だよ。命なんかじゃない。
 モルガナが娘に取って代わられることを恐れて生み出した木偶人形の設計図に過ぎない。
 たまたまデータの一部が異常を来たして擬似的な人格を持っただけ。
 創造主たる世界のために尊い犠牲になったんだ……ミアとかいう放浪AIも本望だったんじゃないのか?」
「ミアが死んだことで……エルクがどんな思いをしているのか……一度くらい、考えなかったのか……!」
「さあ? 1人のプレイヤーよりも2000万人のプレイヤーが大事だからな、会社としては。
 だが彼や君がRA計画に参加してくれる意義は大きい。
 気に障ったのなら謝罪しよう。会社としても必要最低限の和解を考えるつもりだ、一応は」

バルムンクが去った今、これがCC社という会社の現状なのだとカイトは思い知る。
アウラは《The World》の自立を促すためにネットの海へと還った。
しかし利益を求める会社はそれを許さず、再び岩戸を開けようとしている。
人の心まで踏みにじって得る利益に、何の価値があるのだろう。
汚い。子供だったあの頃は分からなかったが、今ならはっきりとそう言える。
この人達は、卑怯だと。

「……僕もエルクも、貴方達の計画に協力なんかしない!」

この場に居たくない。
大人達の勝手な思惑に振り回されるのはもうたくさん。
碑文使いだかモルガナ因子だか知らないが、これ以上は聞きたくなかった。

「……ふん。所詮は元勇者、か。
 ……もしもし、番匠屋さん? 私です、天城ですけど。えぇ、そうです。
 相談なのですが例の学生、使えませんか。うちの会社の株取得して株主になってるって例の――――」

この後、天城丈太郎はRA計画の失敗により精神を失調。
《The World R:1》のデータと共に、リアル(この世界)から姿を消す。
141名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 04:55:30 ID:qDV2b/Re

**********************








誰が想像できただろう。
このまま行けば間違いなくハセヲチームは時間切れで敗退するはずであった。
まず何よりも、試合に参加しているメンバーが2人だった時点で
賭け師達は“がび”チームの勝利に賭けたのだ。
いくらハセヲと言えどケストレルを束ねる“がび”の前では矮小な存在に過ぎないと踏んで。
それは勿論、“がび”の持つ圧倒的なカリスマ性に惹かれてのことである。
ハセヲとて人望のある方だが、如何せん“がび”の老練とも呼べるものには達してはいない。
だが結果はどうだろう。
試合終了まで残り1分かそこらで事態は急変する。
突如として顕現した蒼炎が“がび”チームの尖兵たるIyotenとアスタを薙ぎ払い
渦巻く豪炎の中から現れ出でたのは赤い双剣士の少年。
静止した時間の中で唯一彼だけが時間の束縛を受けぬかの様に、ゆっくりと顔を上げて身構えてゆく。
洗練された戦闘スタイル。
両の腕に携えられた双剣がガチャリと軋み、鋭利な三つ又となって花開いた。
酷く時間の流れが遅いと感じるほどに、その動きには一部の無駄も隙もなく。

「……うん。悪くないや」

彼の呟きが沈黙を破るまで、誰1人の動作も許さなかった。

「くそ……アスタ!」
「承知、同時攻撃にて仕留めるでござる!」

双剣士の少年の放った蒼炎によってバトルフェンスに叩きつけられた2人。
ただの属性攻撃かと思いきや、HPをかなり削る痛手となってしまっている。
恐らく、あの双剣に爆炎の追加ダメージを付与するアイテムでもカスタマイズしているのだろう。
炎が蒼いのは何らかの特殊スキルだったからに違いない。
それが彼らの想像の限界だった。

「なつめは下がってて」
「えっ……」
「僕1人でやるから」

彼女を庇うように立ち塞がっていたのはいつもの彼。
強くて優しくて、いつも仲間のために自分を犠牲に出来た彼そのもの。
まるで、こんなこと何でもないよと言わんばかりに。
彼は優しく微笑んでいた。

「話したいことがいっぱいあるんだ。だから……すぐに終わらせる」

場の空気が一気に張り詰めていく。
久々に味わう高揚感……6年ぶりだろうか?
いや、今は試合に集中しなくては。出なければ、またこの世界に戻ってきた意味がない。

「帰ってきたよ……アウラ」
142名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 04:56:55 ID:qDV2b/Re

「何処の誰かは存ぜぬが、不意打ちとは全く持って卑怯千万でござる!」
「倍返しにしてやるよっ!」

このまま放っておいてもタイムオーバーで勝てるにも関わらず
果敢にもIyotenとアスタは眼前の双剣士の少年へと刃を向けて駆けてゆく。
彼らにもPKとしての意地があるのだろう。
修羅場は幾度も潜り抜けているベテラン(どちらかと言えば、初心者相手の修羅場だが)。
だが今回はどうにも相手が悪かったようで―――――――――――――。

「いただきっ!」
「お命頂戴仕るっ!!!」

首尾よく斬り裂いた、と思った相手は影も形もなく。

「「!?」」

前後左右を瞬時に確認するもその姿はない。
となれば残された場所はたった1つ、上空。
が、時既に遅く。
両者が頭上を仰ぐと同時に、振り下ろされるニ閃の斬撃。
ガードする暇さえ与えてくれない、それは脳が防御を命じるよりも速かった。

「なッ……!?」
「ぎぃ、いつの間に……!?」
「……○ボタンのタメ押しで大攻撃、だっけ?」

予期していなかった上空からの攻撃によりクリティカルを喰らうPK両名。
更に追い討ちをかけ、着地と同時に少年の持つ三つ又の双剣に再び炎が燈った。
火炎旋風となってIyotenらを先程吹き飛ばした、あの蒼炎である。
体勢を立て直さなければヤバイ。
“がび”に助けを求めたいところだが、それどころではない。

「悪く思わないでね」

その言葉を待っていたかの様に、蒼炎が爆ぜた。
文字通り、突き抜ける疾風(ハヤテ)のごとく。
扇状に広がってゆく火炎の唸り。
ただただ蒼く煌くそれは見入るに十分な程に美しくて。
なつめを追い詰めたPK2名を再度、バトルフェンスへと豪快に叩き付ける――――――――!

「む、無念……ぐふっ……」
「強いってレベルじゃ……ねぇ〜……」

HP0、即ち戦闘不能。
数年ぶりに《The World》にログインした彼にとっては良い練習相手だったのかもしれない。
彼がプレイしていた頃と比較すると戦闘システムは大幅に進化しているし……
何よりなつめをいじめた相手なら手加減せずに戦える。
この間、恐らく10秒足らずの出来事である。


『えーと……な、何が起きたのでしょう……?
 いきなり試合に割り込んだ謎の選手が……瞬く間にIyoten選手とアスタ選手を……
 た、倒してしまいました……。どうやらハセヲチームの助っ人の様ですが……大火様は、どう思われますか……?』
『……おでれぇた』
『わ、私も驚いています……ハイ』
『そうじゃねぇ……とんでもねぇ大物が現れやがったぜ。ありゃあ、勇者カイトじゃねぇか!』
143名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 04:59:44 ID:qDV2b/Re

『ゆっ、勇者と申しますとアレですかっ!?
 BBSなどの噂で7年前の事件を解決したと言われる伝説のパーティの……
 ドットハッカーズのリーダーだった、あの勇者カイトのコトでしょうか、大火様っ!?』
『って言ってもワシも実物拝むのは初めてだがよ。
 おでれぇた、ホントにおでれぇた……アイツの覇気で、コントローラー持ってる手がガタガタ震えてくらぁよ!
 おい母ちゃん、酒持って来い! 酔いでもしなきゃ震えが止まる気しねぇぞ!』
『みッ、皆さん、お聞きになりましたでしょうかァ―――――――――――!?
 ハセヲチームの窮地に突如として乱入した謎の選手はッ、
 あの伝説のプレイヤー勇者カイトご本人だそうで――――――――――――――――――すッ!!!』


わっと巻き起こる歓声。
声を上げることさえ忘れて10数秒間の攻防を見守っていたアリーナに集う観客達が
一斉に声を出すことを思い出したかの様に狂喜した。
理由は分からないが、あの伝説のプレイヤーが自分達の目の前にいる。
ただその事実さえあればいい。
それだけで、こんなにも胸が、心が、熱くなる。
勇者は希望を与える存在たり得るから勇者なのであり、
勇者とは勇気を与える存在たり得るから勇者なのだと――――――――。

「勇者だぞぉ、シラバス! 勇者、勇者〜!」
「ほ、ホントにホントに本物っ!? すごい、UMAクラスの大発見だぁ〜!^^」
「な、なつめサンの言ってたコト、マジだったんだ……」
「(八咫様の仰っていた通り、勇者カイトは現れた……。これも碑文のシナリオだと言うの……?)」
  
四者四様の思惑はあるだろうが、その場に居た全員が驚きを隠せないでいる。
いや、四者と言うのは語弊があるか。正確には、彼女を入れて5人なのだから。

「ふぅん」
「! カール……」
「あいつまで……戻って来てたのか……」

銀色の髪を震わせながら阿修羅の形相をした女が、そこに居た。


「な、何で勇者がハセヲチーム助けてん!?
 い、いや、そりゃ負けてもろたら困るけど、あーもうワケ分からんよぅになってきたわぁ!!!」
「懐かしい……匂い」
「エ、エン様……? 勇者のこと、何か知ってはるん……?
「……古い、友達」


この頃はハセヲのことで頭がいっぱいだった薫。
されど、かつての友のことは忘れてはいない。
ミアが興味を示していた素敵な腕輪の持ち主、最初の彼への認識はそれ。
ミアを殺した張本人、それが次の彼への認識。
そして、共にミアを救い出した唯一無二の友。
全ては失われてしまったワケじゃないと、ハセヲと出会ったことで変われた薫。
だって目を閉じれば、彼と共に彼女を救い出したあの時の記憶を鮮明に思い出せる。
そうだった。彼が勇者と呼ばれる所以。
どんな時も決して諦めず、最後まで希望を与え続けてくれた彼は、いつも強かった。
自分にない強さを持つ彼……かつてのエルクはもしかしたら、彼に成りたかったのかもしれない。

「……おかえり。カイト」
144名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 05:01:26 ID:qDV2b/Re
月の裏の侵食率は異常? 次あたりに小休止のエロ入れる予定? 何のことです?
おやすみおまいら
145名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 05:05:37 ID:+Nm/9VO+
(*´д`*)GGGGJ!!!
146名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 05:32:31 ID:DTtgfc6u
gggggggjjjjjj!!!!!
カイトカッコ良すぎワロタ

ハセヲの反応が気になるところだ
147名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 05:40:48 ID:e25OAWCn
天城の勧誘とか確かに普通にありそうだ。色々考えて書いてるんだなぁ……GJ!!!!
148名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 08:03:31 ID:ieYxALg0
ぐはあ…GJ過ぎて死んでしまいそうだ
無理してエルクと楚良でミア救出に行った時のことを思い出して目から汁が出た
149名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 08:46:41 ID:NqWzZm9d
しかし、この物語に腕伝メンバーとかオーヴァンとか榊等は介入できるのであろうか…?
…榊は完全に俺の趣味です。本当n(ry

ともかくGJ!!!
150名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 08:55:00 ID:370umEtd
GJ!
151名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 09:15:17 ID:yTlTZdkF
やっぱカイトは勇者勇者だな。

次も楽しみにしてるGJ!
152名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 12:20:01 ID:QhB+Q9ub
PCはトライエッジのを修理して使ってるのか
153名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 17:21:17 ID:8+2eVpLa
更新キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
激しくGJ!!!!
超超続編wktk!!!!!
154名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 17:31:28 ID:klnTc9HQ
やっぱりカイトか・・・勇者はカイトにかぎる!
155名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 17:34:26 ID:z3zh3R6r
勇者、キタァーーーー!!
天城の狂気じみた性格が
よく出ていてとても良い!
156名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 20:17:54 ID:1TYvo0ha
これは文庫化決定
157アトリの暴走編:2007/06/14(木) 22:37:55 ID:L/TvfZFz
ネ申に釣られて初挑戦だぜ!
158アトリの暴走編:2007/06/14(木) 22:40:22 ID:L/TvfZFz
アトリは焦っていた
ハセヲに対する恋敵が多すぎることについてだ
「昔の女、めがね、ツンデレ、色黒、ロリ関西弁、ゴスロリ・・・は違うんですね」
とにかく、一人でも多くライバルを抹殺しなければならない
「槐(エンジュ)さんは手伝ってくれないし・・・やっぱりこれしか・・・」
月の樹暗殺部隊の隊長であるエンジュというコマを無くしたアトリはついにそれを使う決心をした
「この薬しか・・・まずは揺光さんに消えてもらいます」
AIDAが生き残っていれば間違いなく釣られてしまいそうな邪気をアトリは身につけ行動を始める
ミッションスタートであった。

「・・・そういうわけだったのかぁ!!!!」
揺光は大声で叫んだ、すでにアトリの計画は成功している
「一人じゃ寂しいでしょうから、望くんも置いていきます・・・好きに使ってください♪」
「ひっひきぉゆもの〜」
だんだんロレツが回らなくなる揺光と目が据わってる望
望はもはやフッーフッーと息を吐くだけの獣と化していた
「・・・でもさ、ハセヲは・・・私たちに振り向いてくれないと思うよ」
揺光はいなくなったアトリに向けて悲しげにつぶやいた
159名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 00:59:30 ID:WyBU06Nv
カイトのテーマ聞きながら今回の投下
見ると泣けてくる・・・
160名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 17:30:24 ID:OtQYg71K
もしかして、>>144って.hack//G.U.chronicleの作者と同一人物?

…いや、なんとなく気になって。
161名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 18:23:13 ID:tS2mRAdU
絶対に何か繋がりがありそうだが
詮索しないのがマナーなんだぜ。
162名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 20:22:29 ID:OtQYg71K
>>161
すまん。指摘thx

…それにしても、過去の作品を読みたかったが、11以前のスレが消し飛んでいた事を忘れてた俺バカスorz
163名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 20:58:17 ID:pibPQab/
GORRE作品との反応の差に吹いた
164GORRE:2007/06/16(土) 02:32:57 ID:BaD0eosl
続き投下。

「ニ、ニナ。お前なんでココに…?」
亮の頭は混乱していた。いるはずも無いニナが今自分の目の前にいるからかもしれない。
「何でって、遊びに来たからに決まってるじゃない」
「いや、遊びにって…」
いきなり何を言い出すんだこいつは。亮は思った。そもそも、何でいきなり来るんだろうか。よりにもよって、両親が揃って家に居る時に。
「私が来たら迷惑だった?」
「いや、迷惑って言うか…」
亮がなんて答えようか迷っているその時である。
「亮、あんたいつまで掛かってんの。いい加減に…」
「げ、母さん…」
運悪くも、母親が様子を見に来てしまった……。
「………」
「か、母さん? おーい」
亮が呼びかけると、正気に戻った母は、
「えーっと、亮? その子は?」
と、気を落ち着かせながら聞いた。
「あ、えーっと、こいつは」
「初めまして。ニナ・キルヒアイスといいます」
亮の言葉をさえぎってニナが答えた。
「あなたー! あなたー! 亮に、家のへたれの亮に彼女が会いに来たわよー!」
「何だって!?」
そう言いながら、母は家の中に引っ込んでしまった。
「おい待てー!」
亮の静止など聞こえてやいしない。
「…面白い親ね」
「……面白くねえよ…てか、まあ、来たんだし。入れよ。立ち話じゃなんだろ?」
「そうね。富山に比べればどうってこと無いけど、寒い中での立ち話は遠慮したいわ」
亮に招かれ、ニナは三崎家へと足を踏み入れた。
165GORRE:2007/06/16(土) 02:35:26 ID:BaD0eosl
リビングへと通されたニナが見たのは、えらく笑顔で居る亮の両親と、明らかにさっきまで無かったと思われるお茶菓子などである。
「…なんかさっきまでのリビングと様子が違うような気がするんだけど?」
「気のせいだ。まあ、座りなさい」
父にすすめられ、二人は腰を下ろした。亮にとってはいつものイスなのだが…。
「ニナちゃんだったかしら? どこから来たの?」
母は切り出した。
「富山です」
「富山か。そんな遠いところからわざわざ遊びに来てくれたとは…亮もついにそういう彼女が出来たか」
「勝手にって言ってろ」
亮は別にどうでも良かった。さっさと終わらせて部屋に引っ込みたいくらいである。
「なあ、お前の親はお前がここにいること知ってるのか?」
「知ってるわよ。ちゃんとママに言ってきたし」
「なら、いいんだが」
いや、良くないだろう。14歳の少女が単身上京し、それも男の家に居るのである。
例えお天道様やこのスレの住人達が許しても親が許すはずが無い。
「ナレーションうるせえ」
……
「勿論手ぶらで来た訳じゃないわ。それなりの約束を交わしてきたのよ」
「約束?」
「そう。ただ遊びにいくだけじゃなくて、せっかくだから勉強を教えてもらって来いって事で、勉強道具も持ってきてるわ」
どうりで、大き目のボストンバッグを持ってきていたわけである。なんか重そうだし。
「ほう、それはいい。亮、さっそく教えてあげなさい」
「何で俺が…別に勉強ぐらい一人でも出来るだろっぱ!」
最後まで言い終わらないうちに、亮は言葉を切った。正確に言えば、明らかにさっきまで台所にあったと思われるとある物が亮の顔面に当たったからである。
「教えてあげなさい」
「……分ったよ…いくぞニナ」
亮は立ち上がると、ニナを促した。
「どこでやるの?」
「俺の部屋に決まってんだろ」
「分った」
ニナは頷くと、ボストンバッグを持って席を立った。
166名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 10:08:45 ID:gozesZs1
続きwktk
167名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 10:55:37 ID:TskMzmhr
もう未来ハセヲ×タビーとかハセヲ×楓とか書いてた人らは挫折してしまったのかね?
あと去年、エン様×揺光書くって言ってた人も
168名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 13:26:01 ID:kGzI9k49
>>167
忙しいんだろ
きっと
169アトリの暴走編P2:2007/06/16(土) 20:38:58 ID:Walp3Ri7
まあ、そのあと薬の効果で揺光は完全に淫乱となった
もう、自分から望のアレを食べようとするくらい
くんくんと匂いを嗅ぎつつ、胸から腹部…そして、段々と下腹部へ顔を移動させていく揺光。
引き締まった雄の匂いではなく、柔い男の子の匂いに、女性器がある股の間がキュンと熱くなっていく。
「…いい匂い…凄く興奮する匂いだよ…」
「コーフンする…?」
「うん…もう我慢出来ない…ごめん」
揺光の指が、望の腰周りに絡まっていき、半ズボンとパンツをゆっくりとじっくりと下ろしていく。
自らの手で露になる望の下半身に、鼓動が速くなる揺光。
「ふふ〜…ちっちゃな…ちっちゃな…おち…」
カチン…と凍ったように時間が止まる。
目の前にある反り勃ったモノが、まるで時間ブレーキの役割を果たしているように
「でかすぎない?」
どう考えても望の体とサイズが不釣合いだ
「もしかして・・・データが書き直されてんじゃ」
そこまで考えたところでついに望が暴走した
「もうだめぇえええええ!!」
「ってむぐぅ」
顔を近づけていた揺光の口に望のアレが入る
170名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 20:56:17 ID:ilFFiFC8
GORREは投下時以外の書き込みはちゃんとコテ外す。
投下する量が少ないなら前みたいにあまり間隔を空けずに投下する。
これだけで少しは良い反応返ってくると思う

俺からすれば住人から冷たい反応しか返ってこないのに作品投下する時点で脱帽するけど
171名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 01:34:08 ID:k6P6ezI0
ぶっちゃけ職人『おまいら乙』の作品投下後に
違う職人が投下したらヒュゥーーーーーッと寒い風がふくから困る。
172名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 01:34:27 ID:K5oFm7Fn
>>170
>投下時以外の書き込みはちゃんとコテ外す。

これ何回も注意されてるのに無視してるから嫌われてるんだけどな。
173名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 02:03:03 ID:KcO5wA9d
書き手の「.hack//G.U.って作品とキャラをどれだけ愛してるか」が伝わるのと、そうでないのがあるから…
アンオフィシャルな二次創作全てに言えることだけど作品やキャラに愛着がなきゃ良いものは書けんと思うのよ
174名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 02:36:34 ID:wsTLoIHi
ていうか投下の後にある程度間を持たせるってマナーすら守ってないんだから反応冷たくても仕方ない。
マナーってのは強制不可だが、守らなければどんどん嫌われていくものだ。
175名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 09:01:25 ID:J3L1LEbS
ちょwwwwww叩きすぎwwwwwwwだがもっとやれw
176名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 20:19:53 ID:k6P6ezI0
ふむ、これも愛なんだよ(^ω^)
177名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 20:22:59 ID:rJYPK2HS
愛の鞭、か
178アトリの暴走編P3:2007/06/18(月) 18:49:41 ID:b5n1i/8Q
顔を近づけていた揺光の口に望のアレが入る
猛り狂った肉棒は口内、喉奥まで蹂躙する。
望はこの身体では初めての未知の感覚を、全身に流れる電流と共に受けていた。
「はぁ…はぁ…くぁぁ…んっ」
「ふふ…息を乱して…可愛い…」
いきなりで驚いたが、すぐに揺光は優勢になった
不意打ちの仕返しといわんばかりに激しく責める
望はか弱い小さな荒い息を吐き、揺光の攻めに身を委ねる。
揺光は笑みを浮かべ、横笛を吹くようにアレの竿を唇で挟んで上下させる。
望のアレに、ちゅる、ちゅる…と揺光の唾液が竿に塗られていき、
アレはテロッとした輝きを放つようになっていた。
えせ慈母の顔を作ると、再び亀頭を口膣内へと含み、そこだけを、ちゅぽちゅぽっと口淫をする。
口の中ではピクピクと脈打つアレに、揺光の舌が揺り篭のように添えられる。
そして、口膣内と舌の上で擦られ、望は小さな悲鳴を上げた。
「あっ…!ああぁっ!」
「…じゅる…じゅるる」
唇を窄めて、口膣内のアレを圧縮し、強引に吸い上げる揺光。
亀頭だけに集中する彼女の口の柔らかさ、温かさにねちっこさが、幼き望を破壊していく。
179名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 22:46:46 ID:sreHubmY
カイトにwktk上げ。まだだとわかっててもやっぱり毎日覗いてしまう…
本当に(ry
180名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 23:52:29 ID:KqIu73tD
>>179
きょんばんわ、俺
181名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 00:00:05 ID:uG4MTr7h
あれ・・・・俺g(ry
182名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 03:01:49 ID:pvgfm13s
俺書き込んだっけ…?
183名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 12:50:23 ID:g9jPMoAo
おいおい俺、一人芝居はやめろよ。
184名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 17:19:17 ID:UR+YX6Sp
俺が増殖しすぎてすまねぇな
185名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 17:48:35 ID:GeiaKmAx
;oAo)
186アトリの暴走編4:2007/06/21(木) 19:11:25 ID:SXLG84SR
「…んっぐ…女の子みたい…」
「ち、ちがう…僕、男の子だよ…うあぁあ!」
「じゃあ、男の子なら…これにも耐えられるよね?」
じゅぽんっと望のアレから口を放し、先端の鈴口を舌先で優しく穿り、
彼の射精を促した後、一時中断した。
そして、押し倒した望と対面するようにして、女性器の陰唇に望のソレを這わせる。
そのまま膝立ちなって腰を浮かし、陰茎を掴んで自らの入り口に導く。
望の視線は、ジッと揺光の膣口に注がれている。
「挿入れるからね…」
揺光は、握っていた望のアレから、
あてがっていた膣口を一旦離すと、陰唇を指先で拡げて挿入させ始める。
ギチギチと挿入っていくアレに悲鳴を上げた。
「太…い…」
相変わらずの太さを保ちながら、どんどんと奥深く、膣壁を嬲りながら進入していく。
揺光は目を瞑りながら唇を噛み締めると、子宮口にツンと当たったのを感じる。
そして、接合部を確認すると、
根元までズッポリと咥え込んで、ヒクヒクしている自分の秘所が映った。
「んんー…はぁ…全部挿入っちゃた・・・こんなに大きいのに」
「は、はやっく」
揺光が感慨深くなっていたが、望は幼いため彼女以上に性欲が抑えられないのだろう。
目が揺れ、体も振るえて催促している
「ごめんね・・・んじゃあ、いくぞぉ」
「んあっっ!」
望から出たさっきよりも自然な声それが少しなんだか嬉しかった
だからもっと気持ちよくさせるつもりで動く
自分の秘所に、じゅぷ、ぬぷ、と卑猥な水音を響かせながら肉茎を抜き差し。
そして結果、二人は普段からは想像もできないような艶やかな表情で喘いでいる。
望のペニスが揺光の中から出たり入ったりしている光景。
「ひゃあああああん♪」
望に突かれるたびに震える揺光。
「ふぬっ、く…ふっ、ふっ、ふっ…!」
パンパンという体と体がぶつかり合う音。
ぐちゅっ、じゅぷっ、ずちゅっ、ぬぷ・・・っ、ずぷぷ、ぢゅくっ、ぐぷ――――――と、
絡み合う性器が奏でる淫猥な水音が二人の耳にはっきりと届く
187名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 23:12:04 ID:XJjFCzTI
ぶっちゃけこのスレ初めて見たやつは上の文章荒らしだと思うんじゃね
188名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 23:50:46 ID:vQ0Fi8Hk
>>187
普通はだたの単発もののエロだと思われるんじゃね?所轄エロパロだし
まあストーリーが無いからか楽しめないが・・・・俺わがままだな。
189名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 07:54:40 ID:uct3nqcu
ただ空気を読めてないだけだと思うんだぜ?

あとは「まとめて投下」という項目が脳内からデリートされてんだろぃ
190名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 09:15:02 ID:9HM7I3sH
>>187は、あれ?俺が〜の流れのことを言ってると思うのだが……
エロパロスレなのに>>188が荒らしって言い過ぎだろww
191アトリの暴走編5:2007/06/22(金) 16:39:17 ID:oURFxKBo
「あ、あ、あぁぁ、あ、あひっ!」


「で出ちゃうよぉ」
望が情けない声で限界を告げ、揺光はラストスパートをかける
アレを出し入れしたり曲げたりかき回したりして快楽を貪る。
「んんっ…はあっ…望くん…私…も…いっちゃ…」
「出るよ!!」
「けっ…望っ…あっ…ああああぁぁぁぁぁんっ!!」
「あ、ひぁ、あ!でて、ぁ、い、ああぁああぁああ―――――――――!」
望はそのまま・・・揺光の中にありったけの精を、ぶちまける。
目眩がするような強烈な絶頂感と共に、 精液を、何度も何度も揺光の膣内に注ぎ込む。
あまりに射精が続きすぎて、本当に彼女に吸い取られているのではないかとちらりと思ったりもしたが、どうしようもない開放感と、絶頂の快楽の前では、どうでもいいことだった。
「あふぅ、くぅ、すご、い、よぉ・・・いっぱい、でてる」
きゅっと締め付けた脚の間で、彼の身体がびくびくと震えている。
望の肉の槍の穂先からは熱い粘液がほとしばり、揺光の膣内を彼の精液が満たしてゆく。
望が絶頂に達して彼女の中で果てたその刹那、
彼のモノが激しく脈動し、彼女の中へ最初の精を放ったその瞬間に、揺光もまた絶頂を迎えていた。
身体の内側で望の猛ったモノが何度も跳ね、その度に強烈な勢いで熱い精液を注ぎ込まれる。
膣の最奥、子宮口に叩きつけられる濃密な粘液は液体とは思えないほどに硬く、
その感触は敏感になりすぎている揺光を官能の喜悦で突き上げて、絶頂を与え続ける。
身体は震え全身に力は全く入らず、 くわえ込んだモノを逃すまいと絡み付いていた脚が解ける。
「・・・うっ、なんかどっと疲れた」
「ボクも・・・もう眠い、よ」
二人はそのまま、押し寄せてきた眠気に逆らうことが出来ずに眠ってしまった。

「えーと、あのボルドーさん」
「なんだよ」
「・・・縄を解いてくれませんか?」
「ダメだ、ハセヲのヤツがお仕置きするからそれまで待ってな」
「お仕置き?はっ、18禁の」
「・・・双銃スペシャルコースだってさ」
「そっちの18禁ですか」
「まっ、当然だねぇアホ鳥ちゃん」
「・・・アトリです」
192名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 19:14:44 ID:eOMXXS0i
言うてるそばからwwww

けど続きが気になる
193名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 21:33:26 ID:R84mXZ4U
おまいら乙
トーナメント2日目・“がび”チーム撃破編投下
194名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 21:34:28 ID:R84mXZ4U

『女性に立ち向かう武器は思いやり。最後の残酷な手段は忘却である』


                       【イワン・アレクサンドロヴィチ・ゴンチャロフ  ロシアの作家】















『ハセヲチーム、一気に形勢逆転で――――――――――す!
 突如として現れた勇者の活躍により“がび”チームに大打撃! 
 これだから実況は辞められないッ! 剣よ舞え! 拳よ唸れ! 
 転身だァァッ! 気力だァァッ! 私もみ・な・ぎ・っ・て・まいりましたァ―――――――――――――!!!!!』
『(……このままでも合計HP差分でハセヲ達の勝ち……が、それを許す“がび”じゃねぇだろうよ)』


勇者が、俺の目の前に居る。
一度でいいから戦ってみたい、会って話がしたいと思っていた相手が。
なつめが言っていた通りの奴が。
……けど奴は本気なんざちっとも出してない。まるで自分の力を試してるみたいな様子だった。
どーいうコトだ……!?

「勇者か……面白い(^ω^)」
「行かせるかよッ!」

確かにもう試合終了まで残り30秒足らず。
このままでも合計人数差で“がび”チームには勝てる……でもそれじゃ勝ったとは言えねぇ、逃げだ。
このケモノオヤジの実力はオーヴァンも認めてたんだ……
“がび”を越えられないようじゃ、オーヴァンだって俺は越えることができねぇってことになる!

「アンタの相手は俺だろうが……間違えてんじゃねーぞ!!!」
「おぉぅ!?」
「(試合終了まで残り30秒を切ってる……!)」

完全勝利のための30秒。
俺との戦いを放棄して勇者の方へと足を向けようとする“がび”の前に立ち塞がり、構える。
行かせねぇっつただろうが。
アンタは俺が――――――――――――――。


―――――ねーねー。僕ちんも戦っていーい?

楚良!? おまっ、こんな時に……!
195名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 21:35:46 ID:R84mXZ4U

今の今まで何してたんだよ、お前っ!?

―――――戦力分析♪ ね、ね、もう時間ないんだしぃー、僕ちんが代わりに戦ってもいーでしょ? 

馬鹿言え、お前がアイツ倒しても意味ねーんだよ! “がび”は俺が……!

―――――いーじゃん、いーじゃん! 俺達ハートは一緒さファイヤー♪

! 待てっ……!





「むぅ……!?」
「へっへぇ〜ん! 僕ちん、シュシュッと参上〜!」
《このっ、待てって言っただろうが!》

眼前の少年の雰囲気がガラリと変わったことに“がび”は内心の驚きを隠せない。
ハセヲとはそう面識はないものの、人間行動学、文化人類学、動物生態学、社会心理学を極めた
“がび”のプレイヤー・大山和重からすればその行動を予測するのは容易い。
それこそ青春真っ盛りであろう子供ならば尚更。二児の子供を成人まで育て上げた彼にとっては造作もないこと。
だが、目の前の彼はなんだ? まるで異質な雰囲気を持つこの少年は?
明らかに今までの彼ではない。目つきが先程と全く違うのだ。まるで、無邪気な子供のよう。

「いっくよぉ〜ん」
「ぬぅっ!?」
「ばみゅんっ、ちゅばっ!!!」


『キ、キタキタァ――――――――――――――――!
 ハセヲ選手、昨日の試合を彷彿とさせる超スピードで“がび”選手を翻弄しておりますッ!
 奥歯に加速装置でも仕込んでいたのかッ!? それとも宅急動か!? クロックアップかッ!?
 “がび”選手、全く対応できずにメッタ斬りにされております!!!
 速いっ、速すぎるッ! あれは何だ!? 何なんじゃ〜!? 忍者、忍者なのでしょうかァ―――――――――――ッ!?』
『(確かにとんでもねぇ速さだ……あの速度じゃ、いくら“がび”でも眼が追いつかねぇだろう……!)』


大火の予想は間違ってはいない。
既に“がび”のプレイヤーである大山は68歳、眼鏡も老眼が必要な年齢に達している
(大学教授時代から論文や小説を書いていたことを考慮すれば、一般の68歳よりも視力は低いかもしれない)。
それでいて、楚良が憑依したハセヲのこの超スピード。ガードが間に合わず、双剣のコンボを次々と喰らっていく。
既に世間一般では老人と呼ばれる程にまで歳を重ねた大山には、捉えきれるものではない。
加えて、《R:1》の頃から神出鬼没さとスピードを売りにPKを重ねてきた楚良の見切りのセンス。
試合中ずっとハセヲの呼びかけに応じなかったのも“がび”を観察して太刀筋を見極めるための策。

《おい! 楚良っ、暴れすぎだ!》
「いーのいーの、僕ちんに求められてるのはケレンだから♪ アバれた数だけ優しさを知るって言うしぃ〜」
《ちっ……“がび”相手にここまで戦えるのは、確かにすげえと思うけどよ……!》

ハセヲと楚良の対話は続く。
昨夜クーンに言われた通りに楚良を理解することで「自分に挑む」と決めたハセヲ。
楚良を許すことで自分の一部として受け入れると。
だが、子供を相手にしているようで話が全く噛み合わない。
これが本当にもう1人の俺なのか、という疑念がひたすらに浮かぶ。
今だって、自分のPCを勝手に動かして戦っているではないか。
196名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 21:36:55 ID:R84mXZ4U

「それにぃ、あのヒトも見てるし♪」
《あの人……?》

客席から感じる数多のプレイヤー達の視線。
その中で、一際自分達を射抜くように見つめる者がいる。
試合終了まで残り20秒足らずだと言うのに刹那、ハセヲはその視線に釘付けとなった。
彼方の客席に佇む黒衣の少女。
銀色の髪を湛えたその顔は、これまで見たこともないような満面の笑みを浮かべている。
狂喜と狂気が入り混じったその顔の、何と美しくそして可愛らしいこと。
だが明らかに彼女はハセヲを見ているワケではなく、ハセヲを通して別の人間を見ていた。
その動き、一挙一動を懐かしみ、そして慈しむように。その視界に彼しか映らないように。


――――カール……!


舞台に足が減り込む程の速度で急ブレーキをかけ、彼女の視線と向かい合う。
ほんのわずかな出来事だったが、それでも彼女の口元が僅かに動いたのが分かる。
刹那の邂逅と、彼女からのメッセージ。


                 あ・た・し・は・こ・こ・に・い・る・よ。


いつも意味不明な冗談でハセヲを困惑させて楽しむ彼女。
唇の動きだけで声は聞こえないはずなのに、その笑顔は優しくて、それでいて背筋が凍るようで。
綺麗すぎて怖い。気高すぎて怖い。一途すぎて怖い。
確証がある訳でもないのに、彼女が自分に(正確には楚良にだが)向けて呟いたのが見えた気がする。

「さ〜て。そろそろキメちゃおっかな〜?」
《……カール》

客席からはケストレル5000人の団員らの野次とブーイングの嵐。
それはそうだろう、自分達のギルドマスターがよりによってPKKの“死の恐怖”こと
ハセヲにいいように嬲られているのだから(傍目から見ればカナードとケストレルのギルマス対決でもあるが)。
元からケストレル内でも賞金首扱いの彼が“がび”を圧倒し、メッタ斬りにしているこの現状を見れば
彼らの反応も仕方ない。また余計な敵を作ってしまわなければ良いのだが。

「……やっぱりだ(^ω^)」
「あっはぁん? なにがぁ?」

“がび”は満身創痍。双剣から双銃にメインウエポンをチェンジした白髪の少年が迫る。
たった10秒程度の攻防で一気にHPは削られ、遥か年下の少年に圧倒されているというのに“がび”の心は穏やかだった。
将来が楽しみな面白い素材ではあると思っていたが、今の彼はそれ以上の存在。
何をやらかすか判らない危険と期待に満ちたトリックスター的な存在であることを、この戦いで思い知るとは。

「オーヴァンの言っていた通り……お前は面白い」
「そ〜ぉ? これが僕ちんの芸風だしぃ、むしろ面白ぇ〜のが当ったり前なんだけどねぇ」 
「お前がこれからどんなコトをしでかすか……今後の楽しみがまた一つ増えた!(^ω^)」
「うん、そゆことで!」

BANG-BANG!と二丁拳銃のトリガーが引かれ、耳を劈く銃声と共に獣王がその場に崩れ落ちる。
直後、終了する試合。試合はまたしてもハセヲ達の勝利。
圧倒的不利な状況をひっくり返した2人の相反するプレイヤー。カイトと楚良、どちらが“機械仕掛けの神”なのか。

「ゆとり世代をナメてかかるのはイックな〜い♪」
197名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 21:37:55 ID:R84mXZ4U

『こっ、ここで試合終了ォ――――――――――――――――ッ!!!
 とびっきりの最強VS最凶、烈戦、熱戦、超激戦を制したのはハセヲチーム!
 試合途中で勇者が現れるなど誰が予想できたでありましょうかっ!?
 私、今夜はちょっと興奮して眠れそうにありませ―――――――――――――――ん!!!!!』
『勇者が乱入してなきゃ正直ヤバかったな、かっかっか! おい、母ちゃん、もう1本持ってこいや!』
『えー、ここで大会運営委員会のCC社からお知らせがあります。
 先程の試合において「勇者カイトがハセヲチームの試合に飛び入りで参加したのは反則ではないか?」という
 多数の苦情が寄せられておりますが、試合開始直前にカイト選手はハセヲチームの3人目の選手として
 登録されており、不正は認められませんでした。よって、ハセヲチームは勝利は揺るぎません!
 ハセヲチーム、明日の決勝戦に進出決定で―――――――――――――――――――――――――す!!!!』


「何だと…!?」

試合開始直前に登録……どーいうことだ?
楚良の奴も試合が終わったらさっさと引っ込んじまうし……くそ!
また邪魔された……あれじゃ、俺が“がび”に勝ったことにはならねぇってのに!

「なつめ。久しぶり」
「はい! カイトさんもお元気そうで何よりです〜!」
「それと……キミがハセヲ君?」

試合が終わってアリーナから出ると、なつめは勇者と楽しそうに話してた。
マジで知り合いだったんだな……これでドットハッカーズは5人、か?
にしても何でコイツ、俺らの試合に乱入したりなんか……。

「はじめまして。それとも……久しぶり?」
「あん? アンタとは初対面のはずだけどな」
「え、カイトさんはハセヲさんとお知り合いだったんですか?」
「ハセヲ君は有名だから」

何コイツ。俺は勇者と会ったことなんざねーぞ。
……まさか楚良の知り合いか? はは、それこそありえねーって。
にしてもホントに三爪痕(トライエッジ)にそっくりだ……あの強さだって本気じゃなかっただろうし。
……オッサンの言ってた通り、コイツが俺達に加勢してなきゃ負けてた。絶対に。

「ね、ハセヲさん! 私の言ったこと間違ってなかったでしょう? ラピュタは本当にあったんですよ!」
「そ、そだな……」
「うーん。それにしても……八咫の言ってた通りだなぁ」
「……なにが」
「うん、ハセヲ君って本当に宝塚みたいな格好してるんだなーって。特にその襟とか」
「あはは。カイトさん、ホントのこと言っちゃダメですよ〜w」

コ、コイツら……。何気に気にしてるコトを……。
俺の趣味じゃねーぞ、コレは。欅の奴が改造したせいであって俺の趣味じゃねーっての!
まさか3rdフォームからXthフォームになっちまうとか思ってなかったんだ。
八咫の奴……妙なこと吹き込みやがって……ったく……。

「……アンタだって有名人だろ。
 蒼炎のカイトって言や“蒼天のバルムンク”と“蒼海のオルカ”に並んで三騎士って呼ばれてるだろうが」
「みたいだね」
「中でもバルムンクって奴はちょっと前までこのゲームの管理人やってたんだってな?
 ホワイトデー・イベントのクリア賞品にセーラー服やらメイド服やら猫耳やら用意して、すげー引かれてたそーだけどw」 
「セーラー服かぁ。バルムンクらしいや」
「もってけ!セーラーふく!って感じですねー。さすがバルムンクさんw」

嫌味のつもりで言ったのに軽くスルーされた……! 
だ、駄目だ、コイツら……は、早く何とかしないと……。
198名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 21:39:13 ID:R84mXZ4U

「……とりあえず。加勢してくれたコトにゃ感謝してる」
「八咫に頼まれたからね。あと、ぴろし3からも
『ワイフとの結婚記念日以降も代理出場をお願いするのである! ドンドンドコドン!』
 とか言われちゃって……断るに断れなくて」
「じゃっ、じゃあカイトさん、明日の決勝戦も一緒に戦ってくれるんですかっ!?」
「ハセヲ君が認めてくれたらね」

マジか?
明日の決勝の相手……次の試合で決まるんだったな。
揺光達か太白達かどっちかが相手なワケか……確かに、コイツがいりゃ鬼に金棒だろうけど……。
つか八咫の奴、俺達に黙って勇者加勢させるとか何考えてんだ……?

「ハセヲさん、カイトさんの参加を認めてくれますよね!?」
「あ、あぁ……別に、いいんじゃねぇの。人手も足りねぇし……」
「あはっ。やりましたぁ〜www」
「なつめ、テンション高いなぁ……」

相当に嬉しいみたいだな……。
そりゃ大好きな奴と久々に会えりゃテンションも上がる、か。
昨日のカールも……こんな感じだっただろうか。
カール……俺達のこと……楚良のこと、見てたな。
仮に明日の決勝で当たることになったら……今度こそ、ケリつけなきゃいけねぇ。
でも、楚良の奴は暴れるだけ暴れてまた返事しやがらねぇし……本番で何とかするっきゃねーのか……?

「ハセヲ君、僕達今日はもう別行動でいい? 
 久しぶりになつめと一緒にエリア見て回りたいし、野次馬に囲まれると面倒だしさ」
「構わねーぜ。明日の試合にもきっちり出てくれさえすりゃな」
「ありがとう」
「けどその前に、メンバーアドレスちょうだ……メ、メンバーアドレス、交換しとかねーか……?」
「あ、そうだね。これからよろしく」

な、何だ今の……?
思わず「メンバーアドレスちょうだい」とか言いそうになった……。

「じゃあ行こうか」
「はいっ! ハセヲさん、今日はお疲れ様でした!」
「お、おう……」

……何だかんだでお似合いだな、あの2人。
一緒に野次馬の群れ避けながらカオスゲートまで走ってるし……うは、速ぇ。

「ハッセヲさん♪」
「ん?」

カオスゲートの方へ向かったカイトとなつめを見送っていると、背後から俺を呼ぶ声が1つ。
語尾に♪なんざつけてトークする知り合いと言や、楚良とカールとコイツっきゃいねーか。

「よぉ。欅」
「こんばんは。ハセヲさん♪」
「ごきげんよう。ハセヲ殿」

ミレイ会長……じゃない、楓も一緒か。
学園にゃ黒の騎士団やイレヴンが迫ってるってのに……まぁいい。丁度いい所に来てくれたもんだ。
どうせさっきの試合どころか昨日の試合だって見てたんだろうし、ちょい聞いてみるかな。
昨日から感じてた違和感について。
いくら俺となつめの2人しかいなかったとは言え、Iyotenとアスタ相手にあそこまで苦戦するのは                
どう考えてもおかしい(後ろに“がび”が控えていたとしても、だ)。そこんとこ、問いただしてみるか……。
199名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 21:41:03 ID:R84mXZ4U

***********************





「PCを思うように動かせない……ですか?」
「昨日から何か調子悪ぃみたいなんだ(つーか楚良が好き勝手動かしてるってのもあるけど)」
「Xthフォームは元々、再誕の爆心地に居た影響で心身ともに
 大ダメージを受けたハセヲさんを修復するために急遽用意したものですからねー。
 結果的には修復と言うよりも改造ってことになっちゃいましたけど……今頃になって不具合が出てきたのかな?」

オーヴァンがアイナを目覚めさせるため
全ての八相を喰らったスケィスを利用して発動させた“真の再誕”。
あの爆心地に居た俺は、夢の中でスケィスに会った。
いや、ひょっとするとアレは……本当はスケィスじゃなくて……アイツだったのかもしれねぇ。
ここ2日の間、俺の身体を好き勝手に動かしてるあのヤローだよ。

「うーん。もしかすると奥歯に仕込んだ加速装置のせいで、逆に移動速度が落ちてるのかも……」
「どこの9番目のサイボーグかと。つか、ンなもん仕込むな」
「冗談です♪ いずれにしても、僕はカンペッキーに仕上げたつもりですよ。
 もしかしたら原因はハセヲさん自身にあるかもしれませんしね」
「……俺が原因だってのか」
「ハセヲさんはもう気づいてるんじゃないですか?」
「……」

相変わらず、何も考えてねーようで鋭い奴。
昨日からの試合で俺の様子の変化に気づいたか、それとも最初から知っていたのか。
そういや、俺を修復して改造したってことは俺の心の中まで欅に覗かれたってことになんのか?
いくら知り合いだからって、あんま気分の良いもんでもねーな……。

「ハセヲさんなら今回も乗り越えてくれちゃいそうな気がします♪」
「先程の戦いはお見事でした。しかし……ハセヲ殿は勇者ともお知り合いだったのですね?」
「いや。知り合いっつーか、何つーか……」
「あらあら、うふふ。ご謙遜なさらなくても」

今、アリシアさんの声がしたような……げ、幻聴か?
こりゃ今夜は早めに寝た方が良さそうだ。あー、その前に智香達と太白チームの試合も見ねーと。
つーか、さっきの試合も今頃ニコニコ動画あたりに大量投稿されてんだろーな……
俺が「ばみゅん!」とか「あっはぁん?」とか言ってる動画が……欝だ。
昨日の試合の後もそうだったし……楚良め、覚えてやがれ。


「“刻印とは、あの獣の名。あるいはその数字である。
  ここに知恵が必要である。思慮のある者は、獣の数字を解くが良い。
  その数字とは―――。”」


「あん? 何か言ったか」
「いいえ、何も♪ それじゃ失礼しますね、ハセヲさん♪」
「明日の試合も頑張ってくださいまし。おやすみなさいませ」
「あ、あぁ……」

欅の奴……最後に何か言ってたな。刻印とか獣がどーとか。
何だ、何を言ってた? ……何でもいいか。今は智香の試合が先だ(カールも気になるし)。
客席に行きゃシラバス達が席キープしてくれてるだろう……行ってみっか。勇者についての質問攻め覚悟でな。
200名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 21:42:42 ID:R84mXZ4U
>>160-161 残念ながら人違い? 次回に小休止のエロ入れるとか大嘘ついてゴメン、次こそは? 何のことです?
おやすみおまいら
201名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 21:48:47 ID:oAulmdJT
GGGGGJJJJJJJ(*´Д`)
燃え萌えさせて頂きました
202名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 23:01:14 ID:eOMXXS0i
うっは!GJですよ!
奥歯に加速装置てサイボーグ009かww
欅さまでてきて木村さんネタでロックマンエグゼくるかもと期待した

しかも欅さまのセリフ、CCの新企画のやつだよね?
203名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 23:01:33 ID:6dV2dRpb
燃えたー(*´д`*)ハァハァ
GJでした
204名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 01:23:14 ID:HTZwjPaA
>>CCの新企画のやつだよね?

これは、本当ですか!?
205名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 01:27:06 ID:uKxjkXiB
ネタ多すw

GJGJ〜
206名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 02:10:03 ID:rxJis8dk
ゆとり世代フイタ
207名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 02:18:52 ID:sNeIlAvr
ダイレンジャー吹いたw
208名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 07:54:58 ID:AW0jJACv
ううん、流石!
良い仕事じゃ良い仕事じゃ
209名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 08:27:58 ID:Qpbnvfh/
>>204
前にCCの公式ホームページにその新企画で文章載ってて、そのページの背景がハセヲの設定画にあった手の部分だったから.hackの続編かって公式掲示板でも話題になった
210名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 10:56:28 ID:Dfd+LKUZ
アリシアさんwww

GJ!
211名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 16:50:11 ID:4zWm7t+j
>>200
超超超超超GJ!!!!!!!
続編超超超wktk!!!!!
にしても今回ネタ多スwwwwww
212名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 21:42:18 ID:HTZwjPaA
209さん
ご説明感謝します。
213名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 01:51:37 ID:q/+Sojce
>>212
ネタ多いっすwGJ
会長と楓が声一緒なの初めて知った
雰囲気違うから気づかんかった
214望とアイナくっつけ作戦:2007/06/24(日) 10:54:45 ID:k3TWPWkv
「本当にいいの…?」
望は最後の警告をアイナに聞かせた。
「はい…望さんの望むままに…」
キリッと目に力を入れて、はっきりとした声で答えるアイナに、望は折れてコクッと頷く。
望の返答を確認したアイナは、にっこりと笑うと、身体を密着させるように望を抱き寄せた。


ナゼこうなったかは、簡単に言うしかない
ハセヲにつれられて狩に行ったら後ろから睡眠攻撃を当てられ
(や、やった、やりましたよ、ハセヲさーんと言う声も聞こえた)
目が冷めたら獣神殿でアイナと二人っきりで・・・告白された
そしていつの間にかこういう展開になってしまったのである


215名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 18:46:11 ID:cxMAs088
いつもGJ!
トライエッジに似てるカイトにつっかかるかと思ってたけど案外普通の対応だったなw
216名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 21:07:26 ID:Df6+faOy
の、乗り遅れた……
GJです(´∀`)
217名無しさん@ピンキー:2007/06/28(木) 23:12:14 ID:UYbmwq79
保守
218名無しさん@ピンキー:2007/06/28(木) 23:44:06 ID:ss4fm1I2
ご苦労、俺。
219名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 03:56:56 ID:I78BEENy
ほしゅ
220名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 11:12:28 ID:dtu/xTOf
新作PS3みたいね
221名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 15:43:21 ID:7SPDPKWC
mjk
さよなら.hack……
222名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 16:25:41 ID:T9haJO71
DS、下の方にいるのってカイト?
223名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 00:41:33 ID:38bwvLGS
確かにそう見える、
そうだとするとその街、
「双天都市 ブレグ・エポナ」に見える。
224名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 05:08:23 ID:CfKTuGcf
おまいら乙
トーナメント2日目・最終戦&休憩編投下
225名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 05:09:55 ID:CfKTuGcf

『“忙しい”という言葉は、面倒くさいと思っている時によく使う』

                                  【白石公子著 『ままならぬ想い』より】









勇者 それは強き者。
勇者 それは心正しき者。
勇者 それは女神の加護を持つイリーガルな守護者。
これは、ネットゲームにおける若者達の人間模様を描いた青春群像コンバット・バトルストーリーなのである。

「うん。だって、僕は主人公だから……」

【Δ 大地に賭けた 僕らの 行方】。
うまく野次馬達をはぐらかし、カイトとなつめは久々の逢瀬を楽しむ。
既に30分以上経過。積もる話が山ほどあって、まだまだ終わる気配は見えてこない。
とにかく次から次に話したいことが浮かんでくるから。

「ぴろし3がぴろしさんだった頃、ミアさんのイタズラで色男になったの覚えてますか?」
「あったあったw」
「ぴろし3、おっちょこちょいなのは今でも全然変わってないんですよーw」
「あれ? なつめだってレベル10バインの噂……信じてたことあったでしょ?」
「あ、あはは……その節はご迷惑をおかけしました……」

倒すだけでレベルが10倍になれるなど、よくよく考えればまず有り得ない。
カイトの足を引っ張らないようにとレベルアップを目論み、それを鵜呑みにしてしまい
逆にレベルアップどころか彼に迷惑をかけてしまったことも、もう遠い昔のように思える。
当時15歳だったなつめも今年で22歳、随分と時間が経ってしまったものだ。
ネトゲ歴も7年、既にベテランの域。
《The World》はR:2に以降してしまってから色々と変わってしまったが
カイトが、彼が隣に居るという事実は否応なしにかつての記憶を呼び起こしてくれる。
今も十分に楽しいが……やはり、あの頃はもっと楽しかった気がする。

「え、えーっと……カイトさんは就職、どうしますか? 
 私は相変わらず絵本作家を目指してるんですケド……」
「このまま、あっちで海洋学の勉強を続けてみたいとも思ってるんだ。
 けど就職が決まらなかったら帰国して、寺島さんの実家で執事でもやらせてもらおうかな」
「りょ、良子さんのお家で執事っ……!?」

「カイトさん、1億5千万円の借金でもあるんですかっ!?」と叫びそうになるのを必死に堪える。
どうしよう。「どうせなら私の家で働きませんか?」と言ってみるか?
なつめの実家の大黒家とて福岡県内……の地元ではそれなりの旧家。
婆やくらいは居るが、さすがに執事は居ない。と言うより、雇う必要もない。
もしや留学中にカイトと良子の中が人知れず進展していたらどうしよう、と自然と不安になる。
何とか話題を変えて雰囲気も変えたい。だが気になる。このまま良子とカイトが“君が主で執事が俺で”な関係になるとヒジョーにマズイ。

「カッ、カッ、カイトさんはっ、まさか、良子さんと……おお、お付き合いを……!」
「してないよ。何で?」
「で、でも、今、良子さんのお家で執事になるって……!」
「だからさ、飽くまで選択肢の一つだって。
 いくら僕でも、お米を軟らかく炊いた責任を取るために一晩中池の中に縛り付けられるのは嫌だしw」
226名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 05:11:07 ID:CfKTuGcf

それはそうだ(と言うか、それは執事ではなく料理番の仕事では?)。
加えて、良子の父親の過激な性格は良子自身からなつめだって聞かされている。
彼女が当時通っていた最馬女子大学付属高校の文化祭に「外部からの来客に備えて」と称して
良子1人のために黒服SPを派遣するような人なのだから。S.P.D.(スペシャル・ポリス・デカレンジャー)とは
ワケが違う、依頼主を守るために訓練を受けたプロである。さすがに良子の留学先までは派遣していないようだが。
そんな良子の好意も知らず、彼は「あー寺島さんもこっちに留学に来たんだ?」程度にしか思っていないから始末が悪い。

「(カイトさん……お、恐ろしい人……!)」

強くて優しくてカッコよくて仲間思いでスパイラルエッジを取りに行ってくれるのに、
彼に唯一の欠点があるとすれば……女性の気持ちに壊滅的なまでに疎い、ということか。
知らない間にフラグを立てまくり、気づかないうちにハーレムルートに突入しているというのに
本人はそんなコト露知らず、日常を謳歌している……まさにそんな感じ。恋愛って、ムズカシイですね。

「寺島さんって言えばさ。僕、前に福岡に遊びに行ったことがあるんだけどね」
「ぶはっ!? ははは、初耳ですよッ!?」
「僕が『せっかくだから、豚骨ラーメンでも食べに行こうよ』って聞いたら
 『トゥーンコツ・ラ・メーン……フランス料理ですか?』って
 寺島さんに真顔で言われちゃって……あの時は焦ったなぁ。さすがお嬢様だよねw」
「ど、どこのサソードですか……?」

驚いたの私だけ? 豚骨ハリガネおかわり……や、やっぱり住む世界が違うんですね……良子さんは。
うぅ、どうせ私にはカップ麺がお似合いです……。

「そ、それでしたら、私の家にも遊びに来てくれればよかったのに……」
「あ、そっか。なつめも福岡だっけ? でもなつめの実家が九州にあるって分かったの、それより後だしなぁ」
「はうっ!」

彼には本名やら学年やら委員会やら家族構成までメールで話したと言うのに
肝心の住所について話したのは知り合ってかなり経った後な気がする。
それに引き換え、ネットに関してまるで知識のない良子は本名で《The World》に登録するわ
自分の境遇について何の疑いもなくカイトに話してしまっている。
さすが生粋のお嬢様。伊達に毎日女子校に通って「ごきげんよう」と言っていただけはある。
気品でも家柄でも男運でも負けてしまっている気がするのは……気のせいじゃない、多分。

「あ、あの、それは置いといてですね! カイトさん、どうしてまた《The World》に……?」
「うん。やり残したことがあって、それを……片付けなきゃいけないんだ」
「片付けなければいけないコト……ですか?」

彼の瞳は遠くを見ている。遠い地平の彼方を。
その瞳に宿った意志はかつての彼と違わぬ輝き。それは決意の現れ。


「Project Recall of Aura....RA計画を……潰すためにね?」 


もちろん……それだけが目的じゃないけど。
僕もね、君にすごく会いたかったんだ。
君が僕の居ない数年の間、どうしていたのか……知りたい。
君がもしも悲しんでいたなら、一緒に泣いてあげるから。
君がすごく嬉しい顔をしたら、微笑んであげたい。
君がもしも道に迷ったなら、一緒に悩んであげるね。
そして僕にできる何より大切なコトバは……。


んー次回もぉ、JASRAKの目を掻い潜りながら、著作権の限界と戦いまっすぅ。
227名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 05:12:31 ID:CfKTuGcf

***************





「つーワケだ。俺の知り合いじゃなくて、なつめの知り合いだったんだ。アイツ」
「う〜ん。7年もプレイしてる人はやっぱり交友も違うなぁ」
「オイラも、勇者と友達になりたいぞぉ〜! アレ、でも前にシラバスと一緒に、何処かで会った気もするぞぉ……?」

アリーナの客席。
智香達の試合を見に戻って来てみると案の定、シラバス達の質問攻めが待ってやがった。
まぁ、席に辿り着く前にケストレルの連中に何度か絡まれそうになったけど
“がび”が俺に手を出すな、と事前に言っておいたらしく実際に絡んでくる奴はいなかったけどよ。

「私、最初は三爪痕(トライエッジ)かと思っちゃいました……
 でもあの人からは“音”は聞こえませんでしたし……あの蒼い炎、本当にスゴかったです……」
「勇者専用のスキルなのかな? カッコよかったよね^^」
「呪紋でもなかったもんねぇ。すっごくレアな戦いを見れて、オイラ、ドキドキだぁ〜」

確かに派手な戦いだったな。乱入、Iyotenとアスタの瞬殺、蒼炎……。
蒼炎の2つ名は伊達じゃねーってコトか。
楚良の奴も“がび”相手によく戦ったけど、やっぱカイトの奴のインパクトにゃ勝ててなかった。
生きてる伝説が相手なんだ、負けて当然か……。

「今日は揺光のチームと太白さんのチームの試合で終わりだね」
「勝った方が明日の決勝に進出……揺光さん、大丈夫でしょうか……?」
「カールと天狼がいるから、きっと大丈夫だぞぉ!
 あ〜でもぉ、太白と三郎もすっごく強いからぁ……ど、どっちが勝つんだろう……?」
「揺光達が勝つさ」

カールの奴が負けを許さねぇだろう。
アイツは俺に「決勝まで来い」と言った、そのアイツが決勝目前で負けるなんて有り得ない。
……けど太白と三郎だってタダじゃ引き下がらねぇはずだ。
特に太白は前回の竜賢宮トーナメント、AIDAに感染されたのもあるが俺に負けてる。
口に出すような奴じゃねぇけど再戦を望んでるかもしれない。ついでに三郎もな。
……もっとも、三郎に関しちゃカールとの因縁の方が強いかもなぁ。
結構仲良かったっぽいし……。

「ハセヲさん……何だか、すごく落ち着いてませんか……?」
「そー見えるか? フツーだぜ、フツー」
「貫禄が出てきたんだよ。きっと」
「三階級制覇の宮皇は、さすがだなぁ〜」
「そんなんじゃねーっての」

実は……内心ちょっとばかり気にかかってる。
仮に太白チームが智香達を圧倒するような事態がマジで起こっちまったら……
パイが忠告してきたようにカールの奴、データドレイン使って無理矢理にでも勝っちまうんじゃないのか?
決勝で俺と戦うためならアイツは何でもするような気がする。
昔はチーターやらPKやらやってたって本人も公言してるしな。
八咫やパイが試合中にそんなコト許すはずはねーとは思っちゃいるが……。
いや、仮に今日の試合で使わなくても明日の決勝で十中八九使ってくるんじゃないか、データドレイン。
カールの目的は俺の中の楚良なワケだし……やっぱり、戦わなきゃいけねぇのか、アイツと。

「……自分の気持ちが、定まらねぇだけさ」
「?」
228名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 05:14:00 ID:CfKTuGcf

『アリーナにご来場の皆様ッ! 
 大変っ、大変長らくお待たせいたしましたぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!
 いよいよトーナメント第2日目、最後の試合が始まりま――――――――――す!!!
 明日の決勝に駒を進めるのは揺光チームか、それとも太白チームかッ!?
 奇しくもギルド・イコロに所属、或いは所属していたメンバー同士の対決となりましたァ―――――――――!!!!』


気合入ってんなぁ……。
俺達の試合の後だし、テンション上がっても無理ねーか。
八咫の奴もイベントの盛り上げ方をよく知ってやがるぜ。
勇者が飛び入りで参加すりゃ、そりゃ皆驚くだろうよ。

「あ、ここにおったんか。人がぎょうさんおって探すのに往生したわ」
「よぉ。朔か」
「こんばんは……ハセヲ……」

と、エンデュランスも一緒か。
最近こいつらまた一緒に居るのをよく見かけるよーになったな。
どっちかっつーと朔→エンデュランス→俺、の方程式が成立しているだけにあんま余計なコトは言わねぇ方がいいけど。

「さっきの試合、見とったで。
 なんや、Iyotenとアスタ相手に苦戦しとる思たら勇者の助っ人?
 演出かヤラセか知らんけど、ウチを驚かせるとはなかなかやるやないか!」
「だから、俺は何も知らなかったっつの」

まぁ、朔がそう思うのも無理ねぇ……つーか当然だろうな。
俺が逆の立場でもトーナメント盛り上げるための演出って疑ってたし。

「むしろ、お前が元気な方が驚き」
「な、なんやっちゅーねん……?」
「試合始まる前は『最初に言うとくけどな、ウチらはかーなーり、強いで!?』とか
 言ってた割に開始早々、太白の攻撃喰らって瞬殺されてたじゃん」
「う、うっさいなぁ! 仕方ないやんか、ウォーロックは打たれ弱いんやっ!」 

そう、朔のチームはもう太白チームに負けている。
リーダーの朔1人を狙った攻撃はどこにも無駄がなくて……むしろ、どうやって攻撃した?
しゃけやアイナに被害が及ばずに試合が終わったのを見れば良かったんだろうが……
あの太白の攻撃……楚良でも見切るのは難しいかもしれねぇ(つか俺も何が起きたのか殆ど分からなかった)。
やっぱ竜賢宮に長いこと宮皇として名を轟かせてただけはある。あいつも油断ならねぇ。

「ハセヲ……何か……胸騒ぎがする……」
「……俺もだ」

中央舞台に転送されてくる5人。
揺光チームは揺光、天狼、カール。太白チームは太白と三郎。
元宮皇が4人か……三郎の肩身が狭そうだ。カールの様子は……いつものよーで、いつもと違うな。
にしても太白の持ってやがる銃剣……朔を倒した時のと違うな……?
魔剣マクスウェルじゃねぇのは確かだ……ありゃ前回の竜賢宮トーナメントで俺がブッ壊したんだから。
カールの奴も今まで見たことのねぇタイプの紅い鎌装備してやがるし……やっぱ、ひと波乱あるか……?


『おや? 太白選手とカール選手はそれぞれ見慣れない武器を装備しているようですねぇ。
 イベント限定の、何かレア度の高い武器なのでしょうか……?』
『むっ……! 太白の持ってやがる銃剣……ありゃあ、“魔銃シュレディンガー”か!?』
『ご、ご存知なのですか、大火様っ?』
229名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 05:15:21 ID:CfKTuGcf

「シュ、シュレ……シュレリア様〜?」
「ガスパー、シュレディンガー^^;」
「シュレリア様の……ツンデレぶりは……異常……」


『太白の奴が前回の竜賢宮トーナメントで使った“魔剣マクスウェル”を覚えてるか?
 ありゃあ敵味方問わず、全ての呪紋を無効化しちまうってシロモノだった。
 確か『痛みの森』のクリア景品だったか……アンチスペルウエポンってとこだな』
『は、はぁ……』
『対して“魔銃シュレディンガー”はアンチガードウエポンと呼ばれててな。
 不確定性原理とか言う小難しい理論に基づいて設計されてる銃剣でよ。
 どこから弾が飛んでくるか分からねぇ上に、防御しても突き抜けて相手にダメージを与えちまう厄介な武器だぁよ!』
『ガ、ガードしてもダメージがッ!? そ、それはスゴイ……!』
『スチームガンナーなら誰でも喉から手が出るくらいに欲しがるレア中のレア……。
 さすが太白、武器コレクターの名に恥じねぇ良いエモノ持ってやがるぜ! かっかっ!』


どこから攻撃が来るか分からない、それに加えて防御無視の追加効果……。
なるほどな、確かにそりゃ脅威だぜ。剣よりも銃としての機能をフルに使えるんだからよ。
太白クラスの使い手じゃねぇとマトモに扱えそうにないしな。
にしても“マクスウェルの悪魔”に“シュレディンガーの猫”……な。
武器設定考えた奴は「あぁっ女神さまっ」ファンか? つか1巻と最新巻で絵が変わりすぎだろ藤島。


『で、ではカール選手の装備している武器については……』
『ありゃ見たことねぇな。……けどよ、何かヤバい感じがするのは何となく分かるぜ』
『な、なるほど、アレも判別不明ながらレアな武器であると……?』
『……恐らくな。こりゃ面白ぇ試合になりそうだ! 母ちゃん、もう1本持って……何ぃ、今日はもう止めとけだぁ!?』


カールの持ってる紅い鎌……いや、ありゃ鎌の柄に包帯か布切れを何重にも巻いてるのか?
それもよく見れば紅と言うよりも渋柿色って感じだ。
俺も鎌使ってるから種類にゃ詳しい方だけど……あんな鎌は確かに見たことがねぇ。
でも何だ? 見たことねぇのに妙な違和感を感じる。
カールの持ってるあの鎌……よく知ってる気配を感じるぞ……まさかッ!?



「八咫様! あれは……巫器(アバター)では……!?」 
「憑神(アバター)を武器へと昇華させたと言うのか……彼女が自力で……」
「し、しかし、それならば一般PCには武器やその気配すら、感じることができないはずでは……」
「……干渉力が一般PCにも及んでいるのかもしれない。可視現象を引き起こしているのだろう」
「干渉力……では、やはり女神があの試合を見に来ていると……!?」
「彼女が、カールが何者なのか……君とて知らぬワケではあるまい?」
「女神の……母親……」

更に言及すれば《The World R:1》日本語ver.製作担当者、徳岡の娘。
創造主の子にして、女神の母。異なる父を持ちながら、共通するのは“創造主の娘”たること。
彼女に与えられたアビリティは、望まずして得ることのできた世界をも覆す特権。
娘殺しを願う母に代わり、新たに娘の導き手となった義母。
黄昏を開く鍵を最初に所有した銀色の髪と黒衣の魔女。
故に誰よりも早く、この世界の深淵に眠る核心に触れたプレイヤー。
次代の闇(ダック)の女王。女神と同質の神子(みこ)。その身に紅い三つ目の死神を孕む阿修羅。

「―――モルガナの再来だな」
230名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 05:16:44 ID:CfKTuGcf

*********************








「(星なぁ……)」

夜空を翔ける流れ星を今、見つけられたら何を祈るだろう?
湯に浸かりながらそんなコトを考えていた。
と、窓外の夜空を見上げているとタイミングよく流れ星が1つ。

「うおっ、マジか……!?」

思わず湯船から乗り出して窓を開け、夜空を凝視しちまう。
見えてるうちに3回願いを……なんて暇ありゃしねぇ。つーか何気に俺、生で流れ星見たの今のが初めてじゃね?
すぐに光は夜の闇に吸い込まれる様にして消えていった。
大気圏の摩擦のせいであーいう風に見えるんだっけか……
地球に降ってこなきゃもーちょい長生きできたかもな、さっきの流れ星も。
智香の奴も今のを見ただろうか。

「ふぅ……はぁ」

俺、かなり他人の影響受けやすくなってるよなぁ。
今まで俺は俺、他人は他人って感じで割り切ってたのに。
それもこれも《The World》やり始めたあたりからだ。
初めてログインした日にPKされたり、最初はロクなコトなかったけど……
オーヴァンや志乃に会って……旅団に入って……あるかどうかも分かんねぇアイテム探して
他のギルドと対立したりして……フィロや俵屋、三郎なんかも首突っ込んできて……。

「(あれから9ヶ月ちょっとか……)」

夢であるように瞳を閉じて、あの日を想う。
とにかく立ち止まらずに前に進むしかなかった、少なくともそれが正しいと思っていたあの頃。
志乃のために何度でも修羅になる覚悟を決めたのは嘘じゃねぇ。
例え全てを失っても、何かが生まれると信じて――――――。
……その結果がスケィスだったんだろうか? どうしてアイツは俺を碑文使いに選んだんだ? 
俺以外にも強い奴は少なくともあの時点で他にもたくさん居ただろうに。

「(俺じゃなきゃいけなかったってのか……?)」

それこそ、智香が言っていたドットハッカーズみたいに俺も選ばれた存在だってコトか?
馬鹿馬鹿しいな、それこそ。俺はどう足掻いても一介の高校生に過ぎない。
社会的地位もない、ちょっとばかり親が仕事できるから少しだけ贅沢に暮らしてる子供。
それだけだ。三崎亮を形作るのは、俺の精神と肉。ハセヲとは違う。

「(いつか死んじまうんだよな……俺も)」

生き物は生きている限り、いつか死ぬ。
俺もあと何十年か経ったら墓の中に入らなきゃならない。
いや、将来どうなるかなんて分からねーから墓に入れるだけの財産があれば、の話だけど。
死んだらどうなるんだ? 俺の記憶とか思い出も、テレビの電源切るみたいにプツンって途切れちまうんだろうか。
志乃を好きだった気持ち……今、智香を好きなこの気持ちも失くしちまうのかな。……嫌だな、そういうの。
231名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 05:18:01 ID:CfKTuGcf

そう思うと何か、無性に怖くなった。だから考えるのを止める。
どうせ俺なんかが考えたところで現実が変わるワケでもねーしよ。
風呂入ってる間も俺は確実に歳取ってるんだしさ。
こーやって風呂に入ること自体、汗から出た老廃物を洗い落とすためだもんな。
そう思うと風呂入る概念を最初に思いついた奴は天才だと思うんだ。

「(……後悔しないように生きれりゃ、それでいいさ)」

今は智香も居るしな。ネトゲで知り合った子と付き合うとか、ちょっと前の俺なら考えもしなかっただろう。
何つーか、如何わしいと言うか……出会い系っぽくね?。
いや、実際に会ってみたら互いに気が合ったから何も問題なかったんだが。
俺が三崎亮とハセヲを使い分けているように、アイツも倉本智香と揺光を使い分けてるけどな。
……昨夜は半ば勢いで智香とヤっちまったんだろうか、俺。
自分から「ただの仲間じゃ嫌なんだ。お前のそれ以上になりたい」とか「かんちがいしちゃえよ」とか
「だから、プロポーズだよ」とか「好きなんだ」とかメールしてその気にさせて……うわ、今思うとサイテーかもしれねぇ。
挙句の果てにはイ・ブラセルのイベントで挙式まであげちまったし……
つまりは、《The World》限定とは言え、俺と智香は夫婦ってことだ。
法律上は無論、無効に決まってるけど……俺が智香を誘って、智香もOKしてくれた。

「(あの時は……それだけで満足だったはず、なんだけどな……)」

リアルで会って……何だ、アイツの唇の感触とか肌の感触とか覚えちまうと……
ゲームだけじゃ物足りないってコト、思い知らされちまう。いくら精巧に作っても現実には敵わない。
男の俺とは違う、女特有の軟らかさ……普段、クラスの女達と話すことはあっても触れる機会なんてない。
ベッドで寝てる志乃に触れたいと思った時もあったけど、後ろめたい気持ちが強くてできなかった。
ヘタレとか根性なしとか言う奴もいるだろうけど……志乃を穢すみたいで嫌だったんだ。
でも、つい昨日触れた智香の肌の感触は覚えてる。
風呂上りの髪の匂いとか、智香自身の匂いとか、汗の匂い、息遣い、全部。
俺は満足できたけど……智香はどうだったんだろう。
言い訳になっちまうかもしれねぇけど、何分初めてだったし……回数重ねれば上手くなるんだろうか。
智香、昼辺りまで腰が痛いって言ってたな……ヤった後って女は痛いのか、やっぱ。
同じ人間には違いねーってのに、随分とデリケートな生き物なんだなぁ。

「(髪洗うか……)」

よくよく考えると、ここんとこ髪も切ってなかったな。学校始まるまでには美容院に行っておくのも悪くない。
あーそう言や2学期は修学旅行もあったんだよな……どうせならどこぞのお嬢様校みたいに世界一周とかできねーかな。
って、うちの私立じゃ無理か。入学金とか授業料は高めに取るくせに変なとこでケチだもんな。

「(洗い残しはフケとかハゲの原因になるって誰かが言っていた……おばあちゃん?)」

カールのばあちゃんならともかく、うちのばあちゃんはそんなコト言わねぇけどな。
市販のリンスインシャンプーで十分だろうが、量が多すぎてもダメらしい。適量推奨ってことだ。
両手でゴシゴシと髪や頭皮を洗いつつ、予め湯を溜めておいた風呂桶に手を伸ばす。
今は夏真っ盛りだし、お湯の温度は熱くなりすぎないように40℃ちょいにしてあるから
頭からザバッと被ってもそう熱くはなかった。ん、あと2〜3回被るかな。
バスマットに座り込んだまま、湯船に桶を浸けて湯を掬う。
もう一度、頭に湯が流れるのとその音が聞こえたのはほぼ同時だったと思う。
髪が耳のに張り付いちゃいたが、確かにその音は聞こえた。風呂場のドアを開ける音……ガチャリ、って。
目の辺りから雫が流れ落ちるのも待たずに、張り付いた前髪ごと湯を拭う。まぁ、そこに居たのは案の定……。

「俺と一緒に風呂入るの、嫌なんじゃなかったか」
「アタシが入った後の残り湯で……亮が、変なコトしてないか、み、見に来た……みたいな……?」

へぇ。変なコトってのは具体的にどーいうコトなんだ? なぁ……智香?
232名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 05:20:56 ID:CfKTuGcf
最後辺りは>>17-21と合わせてご覧ください? GC版よりもPS2版OPの方が好み? 何のことです?
おやすみおまいら
233名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 05:44:57 ID:3zpmnW3k
いつもながらGJ!
234名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 06:08:44 ID:z8IHssQ6
>>232
いつもいつもネタで笑わせてもらってます
GJ
藤島さんは絵が上手くなったとかいう次元の話じゃないよなぁ……別人
235名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 08:47:19 ID:4SK2Lu4j
深夜34時吹いた
236名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 13:34:11 ID:e7DjspQX
続編ktkr!!!!!!
若本自重wwwwwww
にしても今回は話のスケールがでかいなぁ
237名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 14:08:28 ID:sNaq642U
このネ申の作品は永久保存版だろ…常識的に考えて…

本編の中二病だらけの設定を上手く使って、
ここまで上手く続編を書ける技量は、一体どこで手に入るのでしょうか?
238名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 15:38:26 ID:bWmBmtiu
巫器・・・
小説ネタも入れてくるとは
GJ
239名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 19:07:06 ID:Q+HcWpM6
アルトネリコネタに吹いた俺は少数派か……。
GJ
240名無しさん@ピンキー:2007/07/02(月) 00:26:58 ID:Je9vuK4/
>>240
また俺がいる………

GJ!!!今回も楽しませてもらった!!!
最初から保存しなかったことが悔やまれるぜ………
241名無しさん@ピンキー:2007/07/02(月) 03:05:09 ID:QDa//BoG
>>240
頼りのまとめサイトが5月末から停止状態だから…
にくで過去ログ見るしかないな
242名無しさん@ピンキー:2007/07/02(月) 16:22:37 ID:mj8sdwIK
アレ、にくちゃんねる完全終了したんじゃねーの?
243名無しさん@ピンキー:2007/07/02(月) 16:28:18 ID:BS9zy9+M
管理人が上京を理由に閉鎖したよ
今までの全部保存してる人が現れるの待つしかないな
244名無しさん@ピンキー:2007/07/02(月) 16:33:56 ID:lTSqu/uG
wiki形式にして各自が補完するって方法はどうよ?
俺作れないけど
245名無しさん@ピンキー:2007/07/02(月) 20:12:51 ID:uZT2qBmK
神の最初ってなんだっけ。

亮×令子だったっけ?
246名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 01:20:31 ID:GaI0ZiJc
小説版で令子が亮を抱きしめてるシーンがあってうれしかったのは自分だけ?
247名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 20:00:40 ID:grIsC/UN
なんかこのスレ書き手へってんなぁ
248名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 20:02:52 ID:grIsC/UN
すまん、久々すぎてsage忘れてた…
249名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 21:47:07 ID:jlj7EnSZ
既にvol.3発売から半年も経ってるから・・・
特典DVDが届けば何か動きとかあるかもだが
250名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 21:51:24 ID:iCF2e+C+
今週から来週にかけて発送らしい
251名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 14:46:08 ID:QOhNwx7U
OVAきたぜ。
うん、まあ、コメントは控える・・・
252名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 16:33:21 ID:+YRc9VV1
オー×志乃なのかハセ×志乃なのか
253名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 19:36:52 ID:NWQGVa0t
>>252
そのどちらでもない。
254トーナメント記録:2007/07/04(水) 22:30:24 ID:wxTmVn75
>>243 これのことか?


「トーナメント?」
「ここのところトラブル続きでユーザー離れが著しかったでしょう?
 CC社としてもプレイヤー全員で盛り上がれるイベントで心機一転……ってところでしょうね」
「よーするに天下一武道会な。この世で一番強いヤツでも決めようってのかw」
よぉ、俺だ。
相変わらずカナードのギルマスやりながらシラバス達とそれなりに楽しくやってる。
けど、やっとまともに《The World》で遊べるようになったってのに
俺がやってることはパイと八咫の使いっぱしり……前と全然変わってねぇ。
AIDAの絶滅は確認されても碑文使いの戦いはまだ終わらねぇってことらしい。
この世界の根幹に関与しちまった以上、そう簡単には抜けさせてくれねぇんだとよ。
「また榊のPKトーナメントみたく、トラブル起こすんじゃねぇだろうな」
「今回の企画を立案したのは八咫様なの。 私達システム側としても、あの時のような事態を招かないよう細心の注意を払ってイベントを運営するわ」
「ならいいけどよ……」
あの時はAIDAに感染した榊の野郎が神気取りで
CC社に取り入った挙句、知識の蛇を乗っ取ってやりたい放題だったからな。
八咫は八咫で今までの態度が嘘みてーな細い神経っぷりだったし……。
あのPKトーナメントを境にこのゲーム止めた奴、結構いたっけ。
「んで? 俺もそのトーナメントに出ろってか」
「当然じゃない。仮にも竜賢宮の宮皇でしょ、アンタ」
「好きでなったワケじゃねぇっての。あン時は太白に感染してたAIDAを取っ払うのが目的だったからな」
「トーナメントを開く以上、それなりの実力者が出場しなきゃ意味ないじゃないの。分かるでしょ」
255名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 17:09:56 ID:Dgm5ceic
新まとめサイトが一ヶ月以上更新を放置している件
256望とアイナくっつけ作戦:2007/07/05(木) 19:45:14 ID:7IFFfH3h
望は、彼女の首筋に口付けをして、耳元までをスーッと舌で這っていく。
「んふっ…」
「アイナちゃんって…くすぐりとか弱い?」
「は、はい…あふっ…あっ…」
耳朶をパクッと望に甘噛みをされ、更に悶えながら彼を強く抱きしめる。
望もそれに応えるアイナに、彼女の耳朶を優しく愛撫して、快感を与えていった。
「甘い…凄く甘いよ」
「は…はぁ…」
ちゅぷっと彼女の耳から唇を離すと、今度は胸の上に舌を這わせて、乳房を舐める。
じっくりと、決して乱暴にはせず、這わせるだけで形を変える乳房を、望は撫でるように可愛がった。
そして、薄桃色の突起物に近づくと、一旦唇を離して、アイナを覗き込む。
「あっ…」
「…吸ってもいい?」
「はい…」
アイナが恥ずかしそうに頷くと、薄桃色の突起物を舌先で、チロチロと舐める。
焦らされて身を捩らせる彼女は、もっと吸って欲しいと、
望の顔に手を添えて、自らの乳房に優しく押し付望。
「んっ…じゅ…ちゅ」
「もう…望さんったら…」
余裕があるフリをするため、大人ぶるアイナ。
「…アイナちゃんの…勃ってる」
ちゅぱっと唇を離すと、吸っていた方の乳首をもう一舐めする。
「そ、そんなこと…言わないで下さい…」
望は優しく笑みを見せて、彼女の不安を和らげてあげた。
「いいんだよ、ボク、エッチなアイナちゃんも好きだよ」
257望とアイナくっつけ作戦:2007/07/05(木) 19:45:55 ID:7IFFfH3h
そう言いながら、乳房を優しく揉みくだし、人差し指と親指で、同じく勃起している乳首を抓る。
痛かったのか、アイナは身体を大きくしならせていた。
「ちょっと…痛い?」
アイナは無言で、フルフルと大きく首を横に振る。
それを理解した望は、先ほどまで口で愛撫していた方の乳房も優しく手を添える。
「柔らかい…」
アイナの乳房を、ゆっくりと横に拡げては、内側に戻して弄ぶ望。
その谷間に顔を埋めて、頬を挟まれるように寄せた。
「…何か…安心する」
望は少々その安堵に身を委ねると、フッと顔を上げて、腕を彼女の太股の裏に添わせて足を上げさせる。
膣口が曝け出された。
「こうすると、アイナちゃんの恥ずかしい所が見えるよ…」
「いやぁ…」
アイナの頬が赤くなり、恥ずかしさの頂点になった彼女は、両手で顔を抑えている。
望はちょっとだけ笑うと、顔を彼女の股の間へと埋め、上気と愛液で濡れた膣に、香る匂いを堪能した。
「あっ…!」
「もうこんなに濡れてるよ…アイナちゃん」
鼻にねっとりと愛液が付着して、特有の匂いとアイナの香りが鼻腔を刺激される。
「ちょっと、自分で足を持ってて」
「えっ、あ…はい」
望はアイナの太股の裏から手を離すと、入れ替わるように、彼女は自分の足を持ち上げる。
両手の空いた望は、ピクピクと動いている陰唇と膣口をぺロっと舐めると、彼女の出口付近を右の人差し指で突く。
「あっ…望さんの指が…挿入って…」
ちゅぽっと膣に第一関節が入った瞬間、キュッといやらしく締めて、進入を拒まない。
258望とアイナくっつけ作戦:2007/07/05(木) 19:46:57 ID:7IFFfH3h
「初めてだよね?」
「はい…」
素直に答えるアイナ
「中をちょっと弄るからね」
「あっ、ダメです…汚ぃ…ふわぁ…」
望は膣口にキスをすると、アイナが許している膣の中を優しく抉る。
「望さん…!!」
引掻くように動かしていた指を挿入させていく。
同時に膣口を舐めていた舌も、膣内へと進入させて、膣のヒダを愛撫する。
「ヒクヒク動いて可愛いよ…」
指を挿入れれば挿入れる程、彼女の膣内は望の指を飲み込んでいき、皺の部分で根元までを締める。
「ふぁ……初めてなのに…こんなぁ…」
「すごいね…アイナちゃん…初めてなのにこんなになってるよ」
「いやぁ…見せないで下さい…」
自分の乱れに羞恥を覚えるアイナ。
だが、淫乱にパクッと開いた膣口は、物足りなそうにしていて、閉じる事はなかった。
「あ、あの…を…もっと…」
ちょっと意地悪をする望は、アイナの膣内を弄っていた舌を引き抜く。
259望とアイナくっつけ作戦:2007/07/05(木) 19:50:59 ID:7IFFfH3h
「初めてだよね?」
「はい…」
素直に答えるアイナ
「中をちょっと弄るからね」
「あっ、ダメです…汚ぃ…ふわぁ…」
望は膣口にキスをすると、アイナが許している膣の中を優しく抉る。
「望さん…!!」
引掻くように動かしていた指を挿入させていく。
同時に膣口を舐めていた舌も、膣内へと進入させて、膣のヒダを愛撫する。
「ヒクヒク動いて可愛いよ…」
指を挿入れれば挿入れる程、彼女の膣内は望の指を飲み込んでいき、皺の部分で根元までを締める。
「ふぁ……初めてなのに…こんなぁ…」
「すごいね…アイナちゃん…初めてなのにこんなになってるよ」
「いやぁ…見せないで下さい…」
自分の乱れに羞恥を覚えるアイナ。
だが、淫乱にパクッと開いた膣口は、物足りなそうにしていて、閉じる事はなかった。
「あ、あの…を…もっと…」
ちょっと意地悪をする望は、アイナの膣内を弄っていた舌を引き抜く。
260名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 19:59:19 ID:7IFFfH3h
クビアがゴジ○にみえたわw
ttp://www.youtube.com/watch?v=_ew2L-AT9S8
261望とアイナくっつけ作戦7IFFfH3h:2007/07/05(木) 22:22:31 ID:7IFFfH3h
「ふぁ…な?」
せっかく快楽に浸っていたのに、望が責めを止めてしまったので再び欲しいと訴える。
「止めないで……お願い……」
望は、またアイナの秘所に顔を埋める
そして、彼女の膣の谷間に辿り着くと、まだパックリと開いている膣に、舌を挿入し始めた。
「やぁぁ!望さん!ダメです!」
快楽が再誕する。
「?でも、アイナちゃんのは悦んでるよ?」
「だめぇ…だめですぅ…」
望は口全体でかぶりつくと、ジュッジュッ!と吸い尽くした。
「…んぁぁぁ!」
アイナは制止の言葉を言うが本当は望んでいる。
ペロッ、ペロッと皺を舐めては、舌の半分までを膣に挿入する望。
(ああ……気持ちいい…もう…イッちゃう)
秘所が急激に熱くなっていく。
「あっ…!!」
アイナは掴んでいた毛布を、ギューっと強く抱きしめる。
「んん、んー!」
「う?」
途端、アイナが持ち上げていた足を床につき、腰を勢いよく上げて、神経が緊張したように固まった。
アイナは口を毛布で塞ぎこんで、絶頂の声を抑えながら、激しい潮を吹く。
望の髪と額に、愛液が降り注いだ。
「あっ…はぁぁぁ…」
ぷるぷると震えて、虚空を見つめるアイナ。
ガクガクと腰を動かしては、色っぽい声を発して、凄まじい余韻を愉しんでいる。
望は彼女がイッたのを確認すると、膣からちゅぽっと舌を抜き糸を作った。
「はぅ…うう…」
まだ意識が快楽に浸っているアイナの隣に添い寝をする望。
彼女は隣に望が来たのが嬉しくて、彼の肩を抱き締める。
「アイナちゃん……どうだった?」
「あ、あぁぁ…」
彼女の表情はまだ物足りなさと、悦びが綯い交ぜになっている複雑な顔であった。
262名無しさん@ピンキー:2007/07/06(金) 03:47:03 ID:lKREIMGg
おつかれちゃん
ニコニコにカールのテーマのフルver.あって無限再生w
CD持ってないから2番知らなかったわぁ・・・。
263名無しさん@ピンキー:2007/07/06(金) 10:38:23 ID:sMy4jF/9
ハセヲがPCを銀髪・黒コスにしたのも頭のどこかでカールを覚えてたからかもね
264望とアイナくっつけ作戦7IFFfH3h:2007/07/06(金) 18:47:01 ID:9mXYqCIz
「幸せです…でも、もっと…もっと望さんを感じたい…」
「うわっ、アイナちゃん!?」
望の股間に、温かくて柔らかい、アイナの白い手が添えられる。
「あ、熱い…男の人のって…こんなに…」
ゆっくりと上下に望のペニスを扱き始めるアイナ。だんだんと速くなっていく。
望のペニスは、アイナのおかげで、もはや手をつけられない。
アイナは望への想いからか、躊躇なく大胆に撫で回した。
「あ…くっ…」
「すごい…凄い…太くて…でも、ちょっと可愛い…」
「か、可愛い!?」
アイナの一言で、望の胸に、グサッ!と痛みが走る。
「望さん?」
「確かにハセヲ兄ちゃんのよりは小さいもんね」
「あっ…ち、違います!そ、その…ピクピク動いてて、可愛いって意味で言ったんです…」
アイナは申し訳無さそうに、白くなっている望に謝る。
「な、何だ…そうかぁ」
「…ふふっ、望さんって単純です」
アイナは望を仰向けに押し倒し、彼の上に跨ると、反りあがったペニスに頬を擦り付ける。
「あっ、アイナちゃん…!」
「でも、そんな所も含めて…望さんが大好き…」
先端から溢れる望のカウパーを、顔に塗りたくるアイナ。
「初めてですけど…頑張りますね」
下卑なる雄の臭いを嗅ぎ、頬を今までよりも惚悦させると、
望のペニスの竿の部分を、ぺろり、と一舐めした。
「ん…ちょっと、しょっぱい…」
265望とアイナくっつけ作戦7IFFfH3h:2007/07/06(金) 18:50:45 ID:9mXYqCIz
アイナは望に応えたい、と唇を亀頭に触れさせて、じゅっ、じゅるぅぅっと根元まで飲み込んだ。
「な、アイナちゃん!」
「ぇ?だぁふぇですか?」
「い、いや寧ろ嬉しいけど…うっ!」
アイナは満足そうな表情になって、ずずず……っとさらにペニスを吸引していく。
同時に初めてとは思えない程の、上手な舌技が、望のペニスを弄んでいた。
「う、上手いね…」
「ありがとう…んくぅ…ござい…あ…ます…はむっ…」
望に褒められ、感謝の言葉を述べたアイナ。
彼女は唇を先端から棒に移動させ、
更に下降させて自身の手、顔に毛が触れるほどの根元まで唇を移動させた。
 彼女の唇は呼吸するように動いていて、
僅かに挟まれた皮の部分は彼女の唇によって刺激を与えられる。
 「じゅる、じゅっ…じゅぷっ!」
卑猥な音…普段のアイナからは想像できない淫行。
「あぐぐぐ…」
「はぁ…望…望さん…」
アイナの、望の名を呼ぶ声が崩れてきた。
彼女は、早く望のモノを飲みたいと焦り始め、口を窄めると、高速で頭を上下し始める。
「うぁ!ちょ、ちょっと落ち着いて!」
「ん、じゅっ、じゅぷ!じゅじゅぅぅぅ」
頭だけではなかった…口膣内でも舌の動きが加速していき責め立てる。
望自身は驚きと快感で砕けそうになっていた。
(あっ…でる…)
ピクッ、とアイナの唇に、望のペニスから予兆が伝わる。
アイナは笑みを浮かべて、望のペニスを吸い上げると、舌先を鈴口に触れさせた。
ビュー!ビュッ!ブビュッ!…
白い精液が、アイナの喉へと注がれる。
266望とアイナくっつけ作戦7IFFfH3h:2007/07/06(金) 18:53:40 ID:9mXYqCIz
「んぐっ…!ぷはぁ!あっ……」
咽はしなかったものの、ベトツキ、生臭さ、激しさから咥えていたのを放してしまった。
そのおかげで、止まらない望の射精は、アイナの美しい水色の髪を白く染め、
顔の至る所にも振り掛けられて、ポタポタ…と胸の上へと滴り落ちていった。
「はぁ…はぁ…だ、大丈夫…アイナちゃん…?」
「これが…精液…んくっ…」
アイナは垂れ落ちる精液を集めて、口へと運んでいった。
「望さん…の味…熱くて…美味しいです」
残っている精液を、舌でペロペロと舐めて、残さず吸い取るアイナ。
その光景で、望のペニスは復活する。
アイナは、望のペニスを、丁寧に優しく掴むと、自らの乳首に擦り合わせた。
イッたばかりの望のペニスは、彼女の乳首の固さの中、柔らかい刺激で、
またも大量の精液を吐き出した。
「ひゃっ!…はぁ、はぁ…胸も」
アイナは胸に出された精液を、掌で撫で回し、深く肌に浸透させている。
「は、はぁ…な、アイナ…ちゃ…」
「望さん…仰向けになってください」
望はいわれたとおり力なく仰向けになる…
アイナは、そんな望の上に寝そべると、にょっきりと顔を出している望のペニスを掴み、自らあてがう。
「望さん……」
「う、うん…そうだね…」
「挿入れて…いいですか?」
「…いいよ、ゆっくりだからね」
アイナは、横顔で望に微笑みかけると、彼の言葉を聞いて、小さく頷く。
そして、あてがっていた望のペニスを、膣口の入り口に這わせると、
ずぷぅっ!と恐れずに、挿入させていった。
「あ…先が…挿入りました…」
「うん」
267望とアイナくっつけ作戦7IFFfH3h:2007/07/06(金) 18:54:33 ID:9mXYqCIz
「ああぁあぁ…」
甘くて蕩けそうな声を出して、ゆっくりと挿入していくアイナ。
彼女の髪が望の顔をかすめる。
「アイナちゃん…」
「はぁぁぁ……もう、ちょっと!」
彼女の背中が震え、望の胸板に伝わってくる。
「ぜ、全部…挿入っちゃいました…」
「うん、分かるよ…」
愛液と違う熱さを持つ体液…処女の証である破瓜の血の熱さが、望のペニスと太股に伝わった。
彼女は痛みに耐えているのか、体を震わせている。
「アイナ…ちゃん」
「はぁ、んはぁ…け、望さん…い、痛いです…」
望は少しでも、痛みを和らげてあげようと、彼女の肌を舐める。
「まだ痛む?」
「いえ…何か、気が抜けちゃって…あまり痛くありません…」
望は少し腰を上に動かした。
「ひゃんっ!」
「…どう?」
「いいえ……良かったです…こんなに嬉しく、気持ちいいなんて…」
望は彼女の足を開脚させたまま、上体を起こしてアイナを押し倒した
「ふわぁぁ…」
268望とアイナくっつけ作戦7IFFfH3h:2007/07/06(金) 19:43:12 ID:9mXYqCIz
すると望はもの凄い快楽を得た。
アイナ自身の意思で、動かしているのではないだろう…多分、無意識下に本能で締め上げている。
「あぁあ……!やぁ、子宮に、あん♪」
「こっちは…アイナちゃんのが…締め付けてきて」
本音を語ると、アイナは紅くなった。
望は黙って、腰を突き上げる。
「あ…あぁ…」
心に響く甲高い声が、望の耳に流れ込んでくる。
「ひぃん…望さんのが!!」
「ああ…アイナちゃんのお腹っ…」
淫猥な音を発てながら、膣口に飲み込まれては、抜け出していく。
更に、彼女の陰部が丸見えの姿で、アイナは悦びを感じ膣の肉を圧縮させた。
「くぅぅ…あはぁぁ…!」
「…望さん!望さん!…望さん…」
彼女は望の名を連呼して、口から唾液を垂らす。
「いいよ…アイナちゃん!すっごく…気持ちいい!」
「私も…!アイナも!アイナも、とても!」
アイナは望の動きに合わせて、上下に腰を降り始めた。
「あぁぁ…アイナちゃん!」
「いい!いいです!望さん!もっと、もっと沢山!」
望に愛されて、悦びを表すアイナ
「ふぁぁぁ…ダメ、だめぇぇ…そんなに…」
ギューっと膣口と膣壁でペニスを締め上げる。
その最後の締り具合にペニスが一回り太くなり、狭い膣内で暴れ回る。
269望とアイナくっつけ作戦7IFFfH3h:2007/07/06(金) 19:43:53 ID:9mXYqCIz
膨張した望のペニスに、最高の快感を得て、泣き叫んでいた。
「あぁぁぁ!ひぅ!望さん…アイナは…アイナは!望さんの…望さんので!」
「・・出そう」
「あ!あ!判ります!また、膣で大きく!」
もう既に爆発寸前のもを酷使するアイナ
「んん・・も、もう・・限界だよ」
「あ!!私の・・膣内を満たして下さい!」
「…アイナちゃん!」
二人が絶叫を放った瞬間、アイナの膣の奥に、熱く粘り気のある精液が注がれる。
ドップ!ドビュ!ドビュ!ビュル!ビュル!ビュ!ビュ!ビュ!・・
何度も何度も何回も…印を付けるように彼女の中で脈を打ち続ける
子宮口に密着して何度も放たれる白濁液が、未使用だった子宮を汚していく
そして放たれた精を子宮の奥に導く律動は、望に快感を与える。
「ふぁぁ…はぁぁ…お腹…熱い…」
「アイナちゃん…」
ぐったりと、望に背を任せて果てるアイナ。
その膣口からは、望の大量の精液が滴り落ち、破瓜の血と混ざり合っていた。
「はぁ…大好き…」
望も好きだと言おうとしたが、アイナが口を塞いで、濃厚なキスをする。
そのまま、望とアイナは目を閉じて、二人だけの時間を楽しんだ。

○オチ
「ハセヲーー!!!ウチに許可なく望を!!」
「しかたねーだろ、こっちは泣いて頼まれてんだよ!」
「関係あらへん!『バグドーン』『バグドーン』『バグドーン』!!」
「ぎぃっやああああああ」


終わり
270名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 04:58:32 ID:SviDN+A6
おまいら乙
トーナメント2日目・亮×智香(回想)編投下
271名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 04:59:51 ID:SviDN+A6

『人とつきあうのに秘訣があるとすればそれはまず、
 こちらが相手を好きになってしまうことではないでしょうか』

                                      【瀬戸内寂聴  天台宗・大僧正】











「……」
「……」
「……なぁ」
「なに?」

智香の方から風呂場に入ってきたクセに
何度か身体を洗い流して湯船に浸かると、そのまま出てきやしねぇ。
俺が身体洗ってるのジーッと見ててよ、やりにくいったらないんだが。
つーか風呂入る時にバスタオル巻くなよな……今更隠したってどうしようもないだろうに。
昨夜、裸見てんだし。くそ、バスタオル越しに見てもやっぱ胸、結構あるな……。

「昨夜、夜這いに来たばっかだってのに……大胆じゃねーか」
「よばっ……ア、アレは……亮の気持ちを確かめるためにだな……」
「じゃあもう確かめたろ? 何で風呂場にまで入ってくんだ?」
「だ、だから……アタシが使った残り湯で、りょ、亮がヘンなコトしてないか……見張るために……」
「お前が湯船に浸かってる時点で、残り湯なんて意味なしてねーっての」

そう言って智香に構うことなく風呂桶で湯を掬って身体に浴びる。
入浴剤の色は清涼感を出すために青いタイプのを使ってる。
湯上りに汗とかかかないんだと。

「てか、何でバスタオル?」
「これは……いくら相思相愛でも、まだ恥ずかしいって言うか……!」
「よく言うぜ。俺は素っ裸で身体洗ってるってのに」
「う……」

何が言いたいか、っつーとフェアじゃないってコト。
一緒に風呂入りに来た度胸は認めてやるけど、最後の最後で躊躇しちまったって感じ?
風呂の中であーでもない、こーでもないと理屈をこねて言い訳する智香は
何だか腑に落ちない反面、そういう仕草も可愛くて思わずドキリとするのはここだけの秘密な。
や、そもそも女と一緒に風呂入るなんて異常事態が起きてるのに
割と平常心保ってる俺自身にビックリなんだが。
だって、昨日はお台場でコイツとキスするだけでもすげードキドキしたのに。
なに悟っちまってるんだ俺は。

「昨夜のお前は、あんなに可愛かったのにな」
「うぅ〜! 知らないっ!」

ぶはっ。
にゃろう……俺がこっち向いた瞬間に合わせて湯かけやがった。
そっちがその気なら、こっちにだって考えあんだぞ?
272名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 05:01:02 ID:SviDN+A6

「ほらよっ!」
「うわっ!?」

風呂桶の中の湯を間髪いれず、カウンターで智香にかぶせてやった。
我ながらガキのケンカみたいで複雑な気分だが、まだガキなので問題ないと納得する。
これで俺の手持ちの湯は残量ゼロ、更なる反撃のために湯船から掬うのが必須になった。

「や、やったなぁ〜?」

ブルブルと髪を震わせて雫を払い、視界を確保した智香が笑い交じりにそう呟くと。
ばしゃっ、と。
張り手の要領で、俺の顔に再び湯鉄砲が命中する。
コイツ……水泳の授業の自由時間とかで相当慣れてやがるな?

「へっへーんだ! アタシに挑もうなんて10年早いっ!」
「10年も待たされてたまるかっての!」
「きゃっ!?」

そっちがその気ならこっちもその気になるワケで。
普通はまずやらないであろうコトを風呂場で久々に実践してみた。
何を? まぁ、何つーか……湯船にザッバーン? ウハウハザブーン? みたいな。
案の定、着水と同時に俺の体積に比例して湯が一斉に跳ねる。
大量の湯が浴槽からナイアガラの滝みてーに流れ出るのは壮観だな。
まぁ、一番被害被ったのは智香だろうけど。

「なッ! なッ……!?」
「ここ俺んちの風呂。何しようが俺の勝手。違うか?」
「ちっ、違わないけどさァ〜っ!?」

幸いなコトに俺の家の浴槽は普通の家よりもちょっとばかし広い。
だからガキの頃も……その、なんだ、よく飛び込んでたと言うか……。
やる度に親父に叱られてたけどな。

憤慨する智香は、また髪からポタポタと湯を垂らしながら突っかかってきた。
手でバスタオルを押さえるのも忘れてまぁ……そんなに動くと、外れるぞ?
……でも、何か楽しいな。何年ぶりだろ、こういうの。
少なくとも小学生くらいまでは水泳の時間でこーいうコトやってた気がするけど……。

「亮、聞いてるのかっ!?」
「聞いてるよ」

両手で湯を掬ってバシャバシャと顔を擦る。
ん、こんなもんかな。
智香が「アタシの入ったお湯で顔なんか洗うな〜!」とか文句言ってきそうだけど。

「……ははっ」
「な、何?」
「風呂入るのってこんなに楽しかったかな、って思っただけ」
「……そう?」

すると、追撃準備にかかっていた智香の動きが止まる。
今にも至近距離からまた湯鉄砲で攻撃してきそうだったのに、やや俺から距離をとって
体育座りみたいな格好のまま動かなくなっちまう。
……こうして見ると、コイツの肌ってキレイだよな。
昨夜は客間の灯りつけないままヤってから、こうやって直に見るとつくづく思う。
火照って赤くなった身体とか、濡れた髪とか……艶っぽくて良くね?
273名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 05:02:47 ID:SviDN+A6

「あ、あのさ、亮」
「ん」
「もう一回……聞いてもいい?」
「何を」
「……アタシのコト、好きなんだよね?」

何を今更。
ゲームの中とは言え、式まで挙げたってのにまだ信用できないってのか。
……けど、ちょっと前の俺ならそうだったかもな。
シラバスやガスパー達に会えなかったら、きっと人間不信になってかもしれねぇ。
智香とだって会えてなきゃ……ここで、こんなコトしてねぇだろう。

「好きだぞ。少なくとも、態度で示してると思うけどな」
「……」

すると智香は何を思い立ったのか、急に真剣な顔つきになって俺を睨んでくる。
俺、何かマズイこと言ったか?
と自分に落ち度がなかったか思考を巡らせようとした矢先――――――――。
浴槽の床に手を突いて近寄って来た智香がぺろり、と。小さな舌で俺の頬を舐めた。

「なッ……」

頬っぺたは湯に濡れていたにも関わらず、智香の舌になぞられた所だけビリビリする。
いきなり何すんだよ、と抗議しようにも上手く言葉が出ない。
面と向かってキスされるよりも刺激的で……って、感情に流されてる場合じゃねぇだろうが。

「ち、智香?」
「……嘘ついてる」
「は?」
「この味は、嘘をついてる味だっ!」
「ブチャラティ!?」

……そんなに俺って信用ないんだろうか。つーか、お前は嘘の味が分かるのかと小一時間。
ちぃっとばかりショックだな……ハセヲの時はまぁ仕方ないとしても
リアルだとそれなりに頼りにされる方なんだぞ、俺は。
いや、そりゃ智香とはまだ会って2日しか経ってねーし、ハセヲと今の俺じゃギャップとかもあるだろうけどさ。

「嘘なんか、ついてねーよ」
「碑文使いとか憑神のコト、アタシに黙ってたクセに……」
「あれは……話しても信じてもらえるか分かんなかったし……
 それに……あの頃はお前のこと好きかどうか、まだ自分でも判断つかなくて……悪ぃ」

嘘じゃない、マジだ。
正確には智香が―――揺光がAIDAに感染したボルドーにPKされた辺りからになるけど……
俺の中で志乃とコイツの順位がほぼ同じになり始めて……
再誕が起こった後、智香がクビアゴモラに苦戦する俺の前に現れて、叱ってくれた時……
自分の気持ちが、やっと判った。多分じゃなくて、絶対に。俺は、コイツが好きなんだと。

「……今は、どうなの?」
「すげー好き」
「……もっと具体的に言ってよ」
「風呂の中で一緒に――――」
「!? ちょっ、ななな、どこ触って……!?」
「こういうコトするくらい、好きだ」

もうバスタオルなんて、いらねーだろ? 
274名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 05:03:37 ID:SviDN+A6

智香が俺に近寄ってきたのを逆手にとって、浴槽の中で抱きしめてやる。
2人分の容積のせいでかなり湯が床に流れ落ちてしまったけど今は夏だ、多少量がなくても問題ねぇだろ多分。
智香の身体、温かいな……風呂の温度で火照ってるってのもあるんだろうけどさ。
肌とか軟らかくてすべすべしてて、手で掴むとその弾力が直に伝わってくる。
濡れた髪も良いな。うなじの辺りに貼り付いて智香の顔の形がよく判るし。

「……もう嘘つかない、って約束できる?」
「智香に嘘なんかつかねぇって」

少し互いの身体を離して、もう一度浴槽の中で向かい合う。
思わず胸の方に目が行きそうになるのを必死で堪えて、智香の顔を見た。
……正直、今までの俺は世の中に無関心っつーか、恵まれた環境で育ったせいもあって
他人に興味が持てないでいたのな。自分さえよけりゃそれでいい、ってことじゃねーけどさ。
《The World》を始めて……志乃に出会ってからは段々とそれも変わってきたんだろうけど……。
でも揺光に……智香と会ってからの俺は、違う自分になりつつあるのを感じ始めてた。
何て言えばいいのか……志乃に対してドキドキしたのと、智香に対してのドキドキは違うんだ。
志乃の時は触れちゃいけないような危うさを感じるドキドキだったのに……
智香に対してのドキドキは……もっと触れてみたい、とかもっとコイツのこと知りたいって
好奇心とかそーいうの?みたいな感じで……いつもの俺より素直になれる気がする、そんなドキドキ。
笑えるよな。たかが心音だぜ? でも……今はその小煩い心臓の音さえも、心地いい。

「……じゃあ、信じてあげる」
「智香だって俺が好きじゃなきゃ、ここまでしないだろ?」

でなきゃ北海道から東京まで来るはずねーもんな。

「あ、あのさ。ハッキリ言ってアタシ、頭あんまり良くないよ?」
「社会に出りゃ学歴なんざ関係ねーよ」
「ワガママだし、自分で言うのも何だけど結構、嫉妬深いし……」
「俺だって人のコト言えねぇ」
「今はいいけど、一緒に居るうちにウザくなるかもしれないぞ? それでも……いいの?」
「……俺はお前の“王子様”だから。だから……ちょっとのコトは、多めに見てやるよ」

揺光のロールをする智香も好きだけど……普段の……本当の智香に触れられるのが、俺は好きだな。
今だって、ほら。お前の身体に触れてるだけで、こんなに心臓が煩いってのに。

「……智香」
「ふぁ……!?」

後頭部から首筋、鎖骨の辺りにかけて撫でてやると、智香の身体が強張って湯面に波紋が起こる。
ゆっくり、それでいて確実に浴槽の端まで智香を追い詰めると、ついに観念したのか
智香の方から目を閉じた。……これって、つまりそういうコトだよな? いいんだよな?

「ぁむ……んっ……はぅ……」
「んっ、んんぅ……」

昨日から通算何度目のキスになるんだろう。
何よりも風呂場でのキス、互いに裸ってのが羞恥心とかを忘れさせちまう。
あ、やべ。さっきから必死で我慢してたのに今ので勃ち始めたかも……。
……当然、密着してキスしてたから智香にもバレたワケで。

「っは……キ、キスだけで勃っちゃうかな、フツー? ホ、ホントにエロ王子なんだから……」
「王子降臨、頭が高い……ってな」

や、威張れる状況じゃないってのは分かってる。見得張りたい年頃なんだよ……。
275名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 05:05:43 ID:SviDN+A6

『バカな奴は単純なことを複雑に考える。
 普通の奴は複雑なことを複雑に考える。
 賢い奴は複雑なことを単純に考える』


                                       【稲盛和夫  京セラ創業者】











八咫の右腕たるパイとて窺い知れぬこともある。。
今とて、ハセヲチームと“がび”チームの試合が開始される数十分前から
旧い友人の連絡を受け、G.U.メンバー以外の者が知識の蛇へと足を踏み入れていることを彼女は知らない。
ゲストキーは不要、女神の寵愛と加護を受けた彼にそんなセキュリティは意味をなさない。
彼、勇者カイトには。


「新しいPCの調子はどうかな……?」
「まだ操作方法とか分かんない部分もあるけど、いい感じだよ。
 ありがとう、ワイズマン」
「それは何より」

このトーナメントにどうしても不可欠な要素がある。
それは単にイベントを盛り上げるためなどではなく
真理を追求する彼にとって、かつての友の助力なしには達成できない事柄。
だから身体を、手足を彼に還した。
女神の加護によって去年の火災によるデータ損失を免れた勇者のPCボディを、本来の持ち主である彼へと。
あの天城や番匠屋でさえも存在を知りながら一切の手出しをできなかった、あのPCを。

「ロストグラウンドで回収できた碑文の解析、進んでる?」
「一言で言えば解読不能、だな。
 5+5簡単だ、とはよく言ったものだ……すまないが、あと少し待ってほしい」
「あはは。らしくないね」

既にカイトも八咫より大まかな情報を得ている。
今回の《The World》への復帰はなつめとの再会のためでもあり、彼の計画に協力するためでもある。
遂行に欠かせないのが碑文、そして勇者の存在。
彼の持つ腕輪の力がどうしても必要だった。
アウラが対AIDA対策に生み出した三爪痕(トライエッジ)こと蒼炎のカイトでは、どうしても達成できない。
それ故に。

「全部で16箇所か……。
 あの“逆さまの城”とか“巨大生物の体内”とか“月の裏”もロストグラウンドだったのかなぁ」
「今は失われてしまってはいるが……恐らくそうだろう。
 残されたロストグラウンドに埋蔵されていた碑文だけで計画を進めるしかあるまい。
 今後も君の助力を仰げると有難いのだが……」
「いいよ。何だか面白くなってきたし……ね?」
276名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 05:07:55 ID:SviDN+A6

「故人曰く『全ての道はローマに通ず』」
「そして『全てのロストグラウンドは黄昏の鍵に通ず』……か。
 うーん。腕輪がキーアイテムなのは間違いなさそうなんだけどなぁ」


『グリーマ・レーヴ大聖堂』『アルケ・ケルン大瀑布』『死世所エルディ・ルー』
『モーリー・バロウ城砦』『王者の島イ・ブラセル』『嘆きの都 エルド・スレイカ』
『コシュタ・バウア戦場跡』『糖蜜の館 シフ・ベルグ』『ギャリオン・メイズ大神殿』
『竜骨山脈 ブリューナ・ギデオン』『背面都市 マグニ・フィ』『罪界 ラーン・バティ』『創造主の部屋』。
これまでにCC社が公開、或いはユーザーによって発見されたロストグラウンドは13箇所。
上記のものに、新たに公開された
『六鳴山アル・ファデル』『バル・ボル美術館』『曙光の都アーセル・レイ』
を加えると16箇所となる。
その1つ1つのエリア内に碑文が埋蔵されており、既に八咫によって全てが回収済み。
《The World》の前身、《フラグメント》の時代から人目に触れずひっそりと眠っていた
それらの碑文は、天城の起こしたデータ損失事故の影響を受けることもなく2007年から実に10年の間、
八咫に回収されるのを待っていたのだ。


「だが、碑文を解読・解析していて分かったことも幾つかある。
 エマ・ウィーラントのネット叙事詩“黄昏の碑文(The Epitaph of the Twilight)”を原型に
 ハロルド・ヒューイックが西欧諸国に伝わる数々の神話や伝説をモチーフとして組み込んだ
 壮大な物語……それが《The World》。そして彼とエマの娘、究極AIアウラを誕生させるための揺り篭。
 それが《The World》。少なくとも、今まで私はそう考えていた……」
「違うの?」
「ハロルドの目指していたものは“人間とコンピュータの調和のとれた未来”。
 だから不特定多数の人間の集うネットゲームを、その実験場に選んだのだと……
 しかしAIDAの自己進化や碑文の反存在であるクビアの復活を機に、私はある疑念を抱いた。
 以前、君は言っていたな……
 『僕達はやっと気づいたんだ。ハロルドの作ったこのゲームの、本当の遊び方に』と。
 私も思い始めた。もしかしたら……我々はまた、このゲームの遊び方を間違ってしまっているのではないか、と……」

ただモンスターを倒してレベルをあげ、
イベントに参加してアイテムを手に入れるだけがネットゲームではない。
ネットゲームにそもそも終着点などないのだ。
料金を払い続ける限り、キャラを削除しない限り、ログインし続ける限り、サービスが停止しない限り……
そこに世界がある。永遠がそこにあるのだ。

「AIDAだけではなく、我々ヒトもこのゲームによって、もっと高みに臨むことができるとしたら……?」
「……どうだろう。僕が腕輪を手に入れたり
 碑文使いって人達が八相……憑神を使えるようになったりしたのは、そうとも言えなくもないけど」
「……いずれにせよ、私の憶測に過ぎん。忘れてくれ」 

ゲームが人を進化させる。
突拍子もない話かもしれないが、AIDAに感染したプレイヤーの脳内に突如として
出来たあの腫瘍……CC社がプレイヤー達を密かに隔離して調査した結果、
AIDAによって齎されたものだということも分かっている。
未帰還者とは現実に還れない者達。
だが言い換えれば、《The World》がある限り、ずっとこの世界に留まれるとも考えられないだろうか。
リアルの肉体は歳を取るが、精神は《The World》に居さえすれば老いも知らず。
かつて、呪紋使いの少年がリアルを「クソみたいな世界」と罵って帰還を拒んだように。
女神の義母たる銀色の髪の少女が、大好きな双剣士の少年との永遠の追いかけっこを望んだように。

「アウラに会えば何か教えてくれるかもしれないけど……それはズルだよね」
「君ならば、彼女の方から会いにくるかもしれないのに……か?」
「僕はもう、勇者って歳でもないから(笑)」
277名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 05:09:42 ID:SviDN+A6

「ところでさ。バージョンアップしてから神話色が強くなってない? モチーフはケルト?」
「然り。例えばバルムンクとオルカに与えられた“フィアナの末裔”の称号。
 フラグメントのテストプレイ期間中にネット詩人W・B・イェーツなる人物の
 BBSの書き込みによって広まったが、本来はケルト神話の1つ……フィアナ騎士団伝説に因んでいる」
 
西欧圏の出身であるエマとハロルドならば、ケルト神話体系を《The World》に採用してもおかしくはない。
ケルト神話は西ヨーロッパから中央ヨーロッパの広範囲に渡って信仰された物語。
日本で言うところの「桃太郎」「浦島太郎」「金太郎」「龍の子太郎」のように馴染み深く
老若男女問わず誰もが知っている物語……とでも言えばいいのか(龍の子太郎はややマイナーだが)。
幼少期に見聞きした物語は、その人間の性格や精神形成に大きく関わると言う。
いわゆる仏教思想における因果応報(良いことをすれば良いことが、悪いことをすれば悪いことが起こる)の
教えのように宗教色に物語が染まってしまっていることも珍しくはないが、
ケルトの神話においては独自の発展を遂げて地域ごとに特色が異なることが多い。
21世紀においても未だにコーンウォールやウェールズの人々が妖精の信仰を止めず、
その年の最初に絞った牛の乳を「大地の妖精に」と土に零すように。
或いは昨日まで何も無かった草原に環状の窪みを見つけると「妖精達が昨夜踊っていたんだ」と呟くように。
長い年月を経ても失われぬ神性。人々が語り継ぐことで、神話は不死性を得る。彼(か)の“コティングリー妖精事件”の如く。

「そしてフィアナ騎士団の伝説から、聖剣王の伝説が派生する。
 木々にリンゴの実る美しき永久の楽園にて、最期の時を迎えた悲劇の王。
 人から人に語り継がれることで12人の円卓の騎士と聖杯をも手中に収め、
 現代にも色褪せず語り継がれる彼もまた……不死性を得た伝説の一つなのだろうな」
「アーサー王……ランスロットとかガウェインが出てくる話だよね? ブリタニア列王史?」
「左様。説によっては12人以下とも300人とも言われてはいるが……一般的に円卓の騎士は12人とされている。
 ……皮肉だな。今、この世界に留まっているドットハッカーズと碑文使いを含めれば……やはり12人だ」
「ホント? えーっと、ドットハッカーズが僕、なつめ、ぴろし3……ワイズマンとエルクはどっち?」
「碑文使いにカウントしてくれて構わない」
「じゃあドットハッカーズが3人か。で、碑文使いがワイズマンとエルクを含めて8人……あれ、1人足りない?」

7年前、クビアを倒してアウラを再誕させ《The World》を救った伝説のパーティ・ドットハッカーズ。
八咫(ワイズマン)の言う通り彼とエンデュランス(エルク)を除けば、今現在ログインしてこのゲームに居る
かつてのドットハッカーズメンバーはカイト、なつめ、ぴろし3の3人のみ。
加えて、散逸したモルガナ因子をPCに宿し、反存在クビアを倒してネットワーククライシスの危機を
回避した碑文使いなる存在はハセヲ、アトリ、クーン、八咫、朔望、エンデュランス、パイ、オーヴァン。
既にこの世界に溶け込んでしまったオーヴァンを「ログインしている」とするならば、確かに8人である。
だが、それでは11人しかいない。残りの1人は?

「第一相・スケィスを駆る碑文使いが、もう1人存在する。ハセヲ以外に……」
「へぇ。スケィス、2体も居るんだ?」
「恐らく、明日の決勝で戦うことになるだろう。彼女は、女神の育ての親だ……」
「アウラの……そっか」

訝しげな表情から一変、アウラという言葉だけでカイトの顔が綻ぶ。
疑問よりも好奇心が勝ったらしく、数十分後に行われる試合よりも明日の試合が楽しみになった……そんな顔だ。

「いずれにせよ、ロストグラウンドで発見された碑文の解読は進める。
 君はハセヲとなつめを助けてやってくれ。もう間もなく試合が始まる。
 特にハセヲは、楚良の覚醒兆候のためか本調子ではないようなのでな……」
「分かった」

理想郷の標となる、黄昏の鍵を持つ勇者カイト。
八相全てのデータを取り込むことで、キー・オブ・ザ・トワイライト(黄昏の鍵)と化したハセヲ。
2本の鍵が織り成す物語は、ようやくここからゆっくりと……それこそ、歩くような速さで始まる。

「……始まるね。僕達のRA計画が」
「そして最後のロストグラウンドへの扉が開く。――――――――――理想郷(アヴァロン)への扉が」
278名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 05:11:09 ID:SviDN+A6
アヴァロンの鍵ってまだ流行ってんのかな? 特典DVDの揺光の扱いとアイナの作画には絶望した? 何のことです?
おやすみおまいら
279名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 05:13:26 ID:LFa99+T7
>>278
GGGGGJ!!!


日曜の朝はこれにかぎるぜ!
280名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 05:21:14 ID:Aoby3wKN
>>278
毎度乙!!!!!!!!!!
超超GJ!!!!!!!!!!!!!!!
続編ちょうwktk!!!!!!!
そしてこれは間違いなく読者に対する焦らしプレイwwwwww
にしても特典DVDは酷かった・・・
281名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 05:39:12 ID:r0aHuL7M
GJ!!!!!!

OVAは神も絶望する出来w
282名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 05:45:34 ID:GdWwvz2t

最後、いつもみたいにギアスネタが・・・と思ったら違ったのか
フィアナ騎士団伝説とかはじめて知ったぜ
283名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 13:00:49 ID:u9CaF4tJ
乙!!GJ!!!
毎度、毎度、神の作品はいいですね。
この知識量と構成力は、神がっかてる。
284名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 16:39:11 ID:G2zqaZm6
毎度の事ながら乙!!
しかしレギオンといい宇宙刑事といい太郎×4のチョイスといい
神はもしや特撮!板に潜んでいるのではと勘ぐってしまうww
285名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 16:56:04 ID:zrDa6WSS
ヤタっとカイトの会話に鳥肌が立った
これは、すごい・・・

GJ!!!!!!!!
286名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 17:28:44 ID:GdWwvz2t
>>284
ギアスやその他アニメ、声優ネタやアリプロ歌詞、漫画、神話ネタを加えると
可能性が広がりすぎて混乱するだろW
特にアリプロ歌詞はこのまま全曲コンプしてほしいWW
287名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 17:32:10 ID:GdWwvz2t
うはwwwageスマソwww
288名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 00:16:08 ID:NxtTkzmu
おいおい、保管庫いつのまにか更新されてるよ
289名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 16:03:43 ID:GSkF0N+9
>>278
うぉぉ!GJGJ!

アヴァロンとか懐かしいな!
少なくとも俺はまだたまにプレイしてる。
だが、もう流行ってないと思う…。
290名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 01:56:41 ID:fouGgoKp
誰も望×アイナのには何も言わないのか・・・
>>278共々文才溢れまくってると思うが
291名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 03:05:56 ID:N9aE3kzH
>>290
ゴメン、多分このスレの雰囲気が・・・・

いやいいと思うよ?望とアンナ、遅れたけどGJ
292名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 13:08:36 ID:47+Z47ig
>>291
アンナって誰だww
293名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 15:22:21 ID:Wm36Vsiv
>>291
アナコンダ?変な名前だな
294名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 18:35:47 ID:j7+FI4Ie
>>293
アナルツッコンダ?痛そうだな(;´A`)
295名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 04:50:29 ID:81dpSa66
あんなもんだ?確かにそうだな。あんなもんだ
296名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 18:02:47 ID:SH37PrpN
どんなもんだ?いや、だから、そんなもんだ
297名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 22:59:49 ID:HN+YXQyE
OVA微妙すぎないか?
OVAが来てこのスレが盛り上がると思ったのに......

期待外れ
298名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 23:40:53 ID:aSmx6n91
そもそも何に期待していたのだ
299名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 23:59:01 ID:hx5A0jZD
というかOVAまだ来てないんだけど
300名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 18:29:54 ID:ehaL7jg0
Returnerネタってあり?
301名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 01:04:21 ID:8PgPxJyS
(志乃+アトリ+タビー)×ハセヲだな
302名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 19:30:58 ID:/09GbVnr
【アッー!の由来】

暗殺者に扮したアトリが志乃の車に追突
 ↓
「四つん這いになりなさい」 「なればハセヲさんを返していただけるんですね」などの
会話を経て全裸に。
 ↓
指でアナルをほじくられ、「汚い穴ねぇ」などと罵られる
 ↓
タビーのクンニで「アッー アッー!」と悶える
 ↓
志乃に秘所を見せながらタビーに尻の穴を見せる。「気持ちいい!」と悶えながら
クリを勃起させる。このあと、ハセヲがコンドームをつけ、アトリに背後から
挿入。「アッ、アッ、アッ、アッ!」とアトリは感じながら声をあげる。
 ↓
志乃も加わり4Pが始まる。ヤラれるばかりだったアトリが一転、攻勢に出て、
志乃を下にして犯し始める。小刻みに腰を振りながら、「アッー、アッー、イク!」
と叫んで、アトリも志乃の腹に勢い良く潮吹き。
あとケツに棒差し込んで 3回まわって「ワン」と吠えたらしい。

つまり、こういうことだな
303名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 23:13:58 ID:Im6RDiwR
>>298
OVAの内容と、OVAが来たからここが盛り上がると思ったけど
盛り上がる感じじゃなかった事
304名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 06:43:43 ID:i8ZjXj7x
おまいら乙
トーナメント2日目・亮×智香投下
305名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 06:48:10 ID:i8ZjXj7x

『愛してる。誰を? わからない。だが胸のうち、心はこんなに暖かい。
 そして僕は囁き、僕は夢見る。来たれ。愛する人よ、来たれ』
               
                                       【ニーナ・コスチェリーナ著  「ニーナの日記」より】





何かイケナイものでも見ちまったかの様に。
智香の視線は俺の下半身を凝視したまま動かない。
そーいや昨夜は電気つけないままヤったから……よく見えてなかったんだろうな。
……って、あんまジロジロ見られても困るんだが。

「……これってさ」
「あん?」
「ア、アタシに欲情したから勃ったの……?」

「浴場で欲情?」とか言ったらダメかな、やっぱ。
俺だってお前が風呂場に入ってきた時から我慢してたんだぞ、これでも。
でもいざ向かい合って、互いの気持ち確かめて、キスとかしたらさ……勃つだろ、そりゃ。
じゃなきゃお前のコト、好きじゃねぇってコトになっちまうだろうし。
つまり前置きは長ったらしいけど、お前の言う通りってこった。

「そりゃな。智香が可愛いから」
「いぃっ……!?」
「智香の身体がヤラしいってのもあるけど……」
「ちょっ、ちょ……」

バスタオルが取れて無防備になった智香の身体。
湯船の端に追い詰めたから逃げ場なんかない。
さっきはキスして一旦離れちまったけど、もう一度詰め寄って身体を密着させてやる。
勿論、血液が集まって勃ったままの下半身も一緒に。
下腹部にソレが当たると智香は「あわわわっ!」とか妙な声出して驚いてた。
昨夜、自分から率先して散々いじって射精させたクセに……。

「……昨日と違うな」
「な、何が……?」
「昨日は……何つーか、もっと智香の方が積極的だった気ぃする」
「あ、う……」

壁にコツンと頭を置いたまま、俺と向かい合う智香。
相変わらず身体の密着は続いてる。
何とか返事をしようとしどろもどろになる智香が面白くて
思わず下腹部に宛がった下半身をグッと押し付けてやると、これ以上ないくらいに
恥ずかしそうな表情を浮かべながら小さく呻いた。
彼女補正がかかってるせいかもしれねーけど、
こういう仕草まで可愛く見えるようになっちゃ俺もいよいよ末期だな。
306名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 06:49:44 ID:i8ZjXj7x

「智香? どうなんだよ」
「ゆ、昨夜は……その……アタシから誘ったんだし……
 りょりょりょ亮にっ、喜んでもらおうと、思ったって、ゆーか……それに、暗かったしさ」
「だから俺とヤってみたくなった?」
「うぅ〜! そ、そうだよ……」

あーだから妙に風呂が長かったんだな。
ありゃシンキングタイムだったのか。
コイツからしてみりゃ俺の家に数日遊びに来て、夏休みの思い出に〜とか最初は思ってたんだろうけど。
……まぁ、俺だって智香から「泊まりに行っていい?」って聞かれた時は多少の期待もあったんだが。
智香の旅行計画をプロデュースしてくれたカールにも(言いたいことは山ほどあるが)感謝しねーと。
今度から少しは優しくしてやるか。変な奴だけど悪い奴じゃねぇし。

「……幻滅した?」
「まさか」

頭1個分身長の低い智香に合わせて浴槽に手を突き、首の辺りを舐めてやる。
さっきは俺が頬っぺた舐められたからな。かるーくお返しだ。
智香の匂いがする。風呂に入れといた入浴剤の匂いも。
こういう雰囲気に慣れていないせいか、智香は昨夜同様に抵抗することもなく俺を受け入れてくれている。
目は開けてない。ただ、俺が舌を這わせる位置を変える度、風呂場に小さな喘ぎが響くのみ。
そうだな、特に丹念に舐めてやるとすれば……首かな、やっぱ。

「やぁ……んっ、んぁ……っ! な、何でっ、首ばっか、り……?」
「初めて会った時、首絞められたから」
「で、でも、昨夜……もうっ、気にしてない、って……!」
「智香見てたら、いじめたくなった」

さすがにずっと浴槽に手ぇ付いてると痺れてくるか。
智香は小柄だし、多分、浮力とかも考慮すりゃちょっとばかり強引でも……いけるな?

「よっと」
「わっ!? ちょっ、えっ……?」

壁際に追い詰めていた智香の身体を引き寄せて、抱いてやる。
少し驚いた智香が飛沫を立てるも、意外と簡単に腕の中に納まっちまうもんだな。
これで体勢は逆、今度は俺が智香に乗っかかれる番だった。
幸い、湯船の中だから重さはそう感じない。元々、智香が軽いせいもあるんだろうけど。
でも、体勢変えても視線は俺の顔じゃなくて下半身の方に向くのな。
これだけ密着してりゃ体温とか伝わるよな、結構。

「続き、していいか?」
「……うん」

嫌がられるとも思ったけど、満更でもないらしい。
それに智香には借りがある。俺の首の周りにいっぱいついてる赤い痣。
全部、昨夜智香につけられたキスマークの痕。
改めて唇の吸引力ってスゲーとか思ったりしたけど、おかげで昼飯代わりにピザ頼んだ時
ピザ屋の兄ちゃんに首周り見られたりしねーかヒヤヒヤしたぜ。
だから、これは正当な理由あっての意地悪っつーコトで頼むわ。
307名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 06:51:37 ID:i8ZjXj7x

「智香の身体、昨夜よりも軟らかい……」
「そりゃ……あっ……お風呂に入れば、そうなる、ん、ふぁ……!」

浴槽に浸かった身体を指でぷにぷにしてやると
くすぐったそうな甘い声を出して智香が身を捩る。
背中や腰、尻の辺りを撫でてやると特に敏感に反応して、強く俺を抱きしめてくるのを見ると
風呂の中でも感じる時は感じるんだなーとか冷静になって考えちまうワケで。

「上半身、もっとよく見たい」
「こ、こう……?」

少しばかり湯船から身体を出して、俺のリクエストに応える智香。
昨夜は暗くてよく見えなかった身体のライン、胸やウエストが目を惹く。
何だ、自分じゃカップ麺の食べすぎで太ったとか言ってたクセに。
やっぱヤラしい身体してんじゃん。

「そんなに見られても……こ、困るからっ!」
「智香もさっきまで俺のコレ、見てたろ?」
「だだだ、だってっ、目が勝手にそっちの方に向いちゃうっ!」
「奇遇だな。俺のコレも俺の意志と関係なく、こーなっちまったんだが」
「しっ、知らないよ!」

知らない? それは嘘だろーよ。
だってお前、昨夜は自分からコレ舐めて……飲んで、中に出させたじゃん。
世界中の誰よりも一番よく知ってるはずなんだけどな、智香が。

「ん」
「ひゃっ!?」

両腰に手を伸ばして少し位置を調整。
これで俺の顔の辺りに、ちょうど智香の胸が下りて来る。
昨夜も思ったけど、割とおっきいな。形も悪くないし。
何より、湯に濡れて天井の明かりで艶っぽくなってるってのがポイント高くてエロい。
さっき少し触れた時にはもう先端は硬くなってた。
……あれだけ抱いたり舐めたりすりゃ、そうなるか。

「……舐めたいんだ?」
「あぁ」
「……吸うの?」
「あぁ」
「……」

昨夜は割とノリ気だったのに、胸のことになったら急にしおらしくなったな。
どしたよ?

「……揺光の時と、今のアタシ、どっちの胸がいい?」
「は?」
「だ、だからさ! 
 キャ、キャラエディットした時……ちょ、ちょっと大きめに作りすぎたかな、って……。
 じ、実物は、あんなおっきくないし……」
「馬鹿。実物も十分おっきいじゃん」
308名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 06:53:12 ID:i8ZjXj7x

つまんねーコトを気にしてる智香をよそに形の良い胸に指を食い込ませてやる。
もう片っ方の腕で腰ごと引き寄せてやり、智香の了承のないまま胸に吸い付いてやった。
最初は左胸。左胸って心臓があるから右胸よりもちっとばかり大きいんだってな。
顔を胸に埋めてるせいで智香の顔は見えないけど、頭の上の方で荒い息使いが聞こえてくる。
軽く乳首を噛んだり、舐めたり、周りを舐めてやると特に声が大きくなって
俺から離れようとするけど……させねーっての。ちゃんと腰をガッチリ掴んでんだから。

「ん……んっ、んっ……」
「りょ、ダメ……ダメだって……! 吸いすぎぃ……」

身体を震わせながら抗議してくる智香を軽くスルーしながら、俺の必殺技パート6は続く。
そのうち上半身を湯船から出す余裕もなくなってきたのか、智香の身体がガクンと再び浴槽に沈んだ。
抵抗の兆しもねぇから掴んでた腰を離してやって、代わりに右胸を掴んで揉んでやる。
なおかつ、左胸へのフォローも忘れない。
風呂場の中に智香の喘ぎと、俺が智香の胸を吸う音が一定のリズムを置きながら響く。
俺んちの風呂場のはずなのに、何だか異様な感じがした。
何つーか、怪奇大作戦って感じだな。

「んっ、んっ……っはぁ……」
「はぁっ、あっ、ぁぁぁ……もぉぉ……おかしいよ、こんなの……ぜ、絶対、変……!」
「だからって泣くことねーじゃん」
「けどっ、身体ゾクゾクして、頭の中真っ白になって……ワ、ワケ分かんなくなってくるし……」
「俺の強さにお前が泣いた、ってか」

「涙はコレで拭け」と言いたいとこだが、生憎とそんなもんはないので涙は指で払ってやる。
きらめく涙は星に、風に乗り空を飾る。って誰かも言ってたしな。

「俺を幸せにしてくれるんじゃ……なかったっけか?」
「い、言ったけど……! 亮は、こっ、こーいうのが、幸せなの……?」
「まーな」

風呂場で彼女とイチャイチャとかお前、男の夢の一つだろ?
女には一生分かんねーかもしれねーけどな。
いや、俺だって最初は「バカじゃねーの?」とか思ってたけどさ、実際に自分でヤるとかなり楽しくね?
本能には逆らえないっつーか、もっとコイツの恥ずかしがったりする姿とか見たいし、
ヤラしい声とか聞きたくなっちまうんだよな……自分でも、ちょい意外だ。

「第一、俺は智香のワガママ、今まで全部聞いてやっただろ?」
「うっ」
「お台場にも連れてってやったし、レインボーブリッジも見せてやったし、キスまでしてやったのに」
「うぅ……」
「ご褒美があっても……いいんじゃね?」
「ご、ご褒美って……あっ、ちょっ……そこっ、ダメェ……っ!」
309名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 06:54:59 ID:i8ZjXj7x

智香の股の間に指を滑り込ませると、明らかに湯とは違う温度の何かが指先を濡らしたのが分かった。
身体を離される前にもっと深く指を突っ込んでやる。
もっとも、さっき胸吸ったせいで智香は今、ロクに動けないけど念のためな。
熱い肉壁に包まれた指が火照る。
軽く出し入れしながら、広げたり爪で突付いてやると、ますます智香の喘ぎが大きくなっていく。
おいおい、また昨夜みたくご近所に聞こえるぞ。いいのか? 窓、開けたまんまなのに。

「智香、感じすぎ……」
「だって、声、勝手に出ちゃうよ……あっ、あっ、はぁ、んっ、ぁ……ぁ……!」
「もっと聞きたい」
「は、恥ずかしすぎぃ……やぁ……っ!」

昨夜とホント違うな。
昨夜は好奇心、今夜は羞恥心が強く思える。
まぁ、アレだけヤった後にまたコレじゃそうなるかもだけど……でも、昨夜同様に俺を誘ったのはお前だからな?
智香にはもっとご褒美貰わねーと。
けど、さすがにこれ以上やるとちょっと可哀想かもな。んじゃ、しゃーねぇか。

「ほら。抜いたぞ」
「ぁっ……はぁ、っ……亮ぉ、酷いよぉ……っ!」
「さっきの智香の表情とか声、可愛かったのに」
「バカ! いくら何でも限度ってのがあるだろっ!? あ、あんな速く動かして……!」
「嫌だったのか?」
「……わ、分かんないよ。まだ、アタシ、こういうコトするの2回目だし……」

まぁ、慣れてもらうしかねーよな、コレばっかりは。
身体の相性は悪くねーはずなんだよなぁ。後は俺達の気持ち次第かな。
智香も昨夜と比べて、ちょい恥ずかしがってるっぽいし。
つーか昨夜大胆すぎた反動かもな。率先してフェラとかしてくれたし……。
俺も少し焦ってた、ってか浮かれてた部分もある。そこは反省してるんだぞ、これでも。

「もっと、優しくしてくれなきゃ、ヤダよ……。
 そりゃアタシだって、亮は好きだけど……こういう時は、優しくしてほしいって言うか……」
「……悪かった」
「あ、で、でもっ、誤解しないでほしいんだ! 
 恥ずかしいけど……亮にエッチなコトされて……アタシ、心のどっかで悦んでたのも、ホントだから……」
「……そっか」

でなきゃ俺がただの変態に成り下がるからな。アレだ、愛は……昨夜みたく注いでるつもりだぞ、一応。

「あ……」
「どしたよ」
「また……おっきくなった……」
310名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 06:56:08 ID:i8ZjXj7x

『人間はその潜在能力を引き出すことで、素晴らしく変化する』

                                           【広岡達郎  元野球監督】


















「―――セヲ、ハセヲ!」
「……ん?」
「ボーッとしてちゃダメじゃない。揺光達の試合、もう始まってるんだから^^」
「あ、あぁ……そうだったな」

いけね、俺そんなにボーッとしてたか?
よりによってこんな時に智香との……を思い出しちまうとは。
にしても……。


『さぁ、いよいよ始まったトーナメント2日目の最終試合!
 決勝に進むのは太白チームか、それとも揺光チームかっ!?
 太白選手には揺光選手と天狼選手、三郎選手にはカール選手がそれぞれ向かい合っております!
 うーん、やはりこの布陣は両者ともに最初から狙ったものなのでしょうかッ!?』
『だろうな。鎌闘士は接近戦はまだしも遠距離からの攻撃には弱ぇ。
 その点、双剣士と拳術士はスピードに優れてるからよ、距離を詰めて戦うことができる。
 太白の担当にゃあ揺光と天狼が打倒だと踏んだんだろう……ジョブの相性ってのも戦闘にゃあ欠かせねぇ要素だ!』


「……とか言ってるよ?」
「放っとけばいい」
「だよねぇ。あ、でも私としてはカールと戦いたかったし、好都合だったんだよw」
「……前にも言ったけど」

ブゥンと、紅い大鎌で弧を描くように宙を薙ぎ、カールが言い放つ。

「ネカマに興味はない」
「酷っ!」

カールと三郎が知り合ったのは最近のこと。
有体に言えば、カールが三郎の熱意に負けてメンバーアドレスを教えてしまったのが原因なのだが。
どうにも人懐っこい三郎をウザいとも思いつつ、何だかんだで一緒に行動することが多くなっていた。
だが、どんなに口調が女のようでも。どんなに女の姿をしていても。
三郎がネカマであることは揺ぎ無い事実であって、それがカールの男嫌いに拍車をかける結果になっていたのを
まだ三郎は知る由も無かった。
311名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 06:57:25 ID:i8ZjXj7x

「今の私の関心、ハセヲよりもカールに向いてるってのは知ってた?」
「さあ」
「たはは……本格的に嫌われちゃったかな、こりゃ」

最初に彼女を見かけたのはマク・アヌ。
永遠に終わることのない黄昏に彩られた街を、彼女が歩いていた。
長い銀色の髪、黒のドレス(実際は群青色だが)、胸元の宝石、女性PCにしては割と珍しい180cm近い身長。
何よりもそのアンニュイな目つきに惹かれた。
あれは……そう。姿形こそ女性ではあるものの、ある人物とダブって見えたことに三郎は驚きを隠せなかった。
ハセヲ。
銀髪と黒衣の錬装士(マルチウエポン)。
痛みの森をクリアし、一気にジョブエクステンドを終えて
禍々しき3rdフォームへと変化した頃の彼と、彼女は……カールがよく似ていたことに。
人とは一定の距離を置き、誰に大しても慇懃無礼な態度で接していた三郎が
初めて、本気で近づきたいと思った女性。それがカール。
ハセヲの持つ暗い部分にも惹かれたけれど、彼女の持つ闇は別格。
だから彼女が揺光を通じてハセヲと知り合うようになってから、ずっと遠目で見ていた。
何か、彼女がこれから、とんでもなく面白いことを起こしてくれそうな気がしたから。

「まぁ、こうやって戦うことになっちゃった以上は仕方ないよねぇ。
 だからさ……あんたにしかないもの、私に見せてよ……カールッ!!!」

ネットトレードを営み、常にギリギリの生活を送る三郎のリアル・永井康夫。
欲のない生活を送ってきた彼がこの《The World》に求めるのは刺激。
彼がカールに執着するのも、己の知的好奇心を満たすため。それだけのはずだったのに。
いつからだろう。手に入らないと分かりきっているはずなのに、どうしても欲しくなってしまったのは。
ネットオークションですごく欲しい物があって入札したのに、
オークション終了1分前に他の入札者が入札、しかもそのまま逃げ切られた時の悔しさ似た……そんな感じ。
その気になれば手に入っただろうに、手に入れることのできないもどかしさ。
言うなれば、三郎(彼)はカール(彼女)が欲しいのだ。

「(太白は智香と電柱狼に任せるか……)」

大剣を握り締めて三郎が迫る中、カールは後方の揺光達を見やる。
揺光と天狼なら太白ともいい勝負をするだろうが、もしもの時は自分が加勢に行くしかない。
別にカールが1人で太白の相手をしても良かったが、憑神抜きの戦いとなるとやや太白相手ではカールが不利。
熟練度、ジョブの相性、プレイヤースキル、ブランク期間、etc……
それに太白がどのような攻撃をしてくるかも見極めておく必要がある。
万が一、決勝に進めないような事態となった時は……彼をデータドレインしてでも勝つために。

「ていっ!!!」
「ふっ!」

振り下ろされた一撃を大鎌で受け止め、そのまま柄で逸らすようにして間合いを取る。
相性で言えばカールのジョブ、鎌闘士も撃剣士に対してそう強いワケでもない。
現に、今の一撃はガードしたにも関わらず、カールのHPゲージを動かした。
三郎とてTaNの暗部としての経歴を持ち、その実力はパイも認めている。
そして太白が今回のトーナメントのパートナーとして唯一、協力を求めた相手でもある。
強くて当たり前、そんなところか。

「本気、出した方がいいんじゃない? 私知ってんだから、カールの本気」
「ふぅん。見たい?」
「見たい見たいw」
「オッケー。じゃあ、あたしが面白い手品……見せてあげるよ」

そう呟くと同時に黒衣の魔女は、徐に握り締めた右手を彼女(彼?)の前へと突き出して―――――――――。
312名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 06:58:46 ID:i8ZjXj7x

「手品?」
「そう。手品」

グッと握られたカールの右手。
この時、三郎は彼女の右手ばかりに意識を集中させていたためか、
左手に握られた鎌が一瞬だけボウッと輝いたのを失念していた(そうなるようにカールが仕向けたワケだが)。


『おや、カール選手、突如動きを止めて右腕を突き出しましたが……
 な、何か必殺技でも出すつもりでしょうか……!?』
『……“魔女”の実力、見せてもらおうじゃねぇか』


魔女。
カールがハンター兼PKKとして……いや、それよりも前。
まだ《The World》がR:1と呼ばれるバージョンだった頃から。
チートに手を染め、初心者PCを甘言で誘いPKしていた彼女は。
幼い頃に絵本で読んだお姫様をイメージした本人の意思とは裏腹に。
いつしか、その銀色の髪と黒衣のせいか、魔女と呼ばれるようになっていた――――――――――――。
2010年。カールが楚良に、スケィスによって未帰還者にされる少し前のことである。

「バ……」
「ば?」
「ク……」

カールが口を開く度に指が一本ずつ開かれて行き、その指先に炎が灯る。
現時点で炎は2つ。

「ド……ー……ン……!」
「(バ、ク、ド、ー、ン……まっ、まさか……!?)」

既に指に灯った炎は5つ。まさか、そんなことありえない。
て言うか著作権的にもヤバイ。スクエニから苦情が来るかもしれない。
なのに、彼女の目は全然笑っていなくて。より一層、三郎の不安を掻き立てる。


『おぉーっと! カール選手の指に5つの炎が灯ったァ――――――――――!!!
 こ、これはっ、まさかとは思いますがっ、あの技なのでしょうかっ!?
 かつて炎氷将軍フレイザードが使用した、寿命を縮めてしまう禁呪法に近い荒技ッ!
 一度に炎系の呪文5発を打ち出す、その名もフィンガー・フレア・ボm―――――――――あいたっ!?』
『馬鹿野郎、うるさくて試合に集中できねぇだろうが!』
『す、すみません……』


五指に宿った5つのバクドーン。
……そもそもどうしてバクドーンなのか。うででんのミレイユも、特典OVAの朔もバクドーンにこだわってはいたが。
カールが鎌闘士であることを考慮すれば、自力で呪文を覚えることができないのは分かる。
魔法屋で各魔法を購入すれば、どのジョブでも初級魔法くらいなら使用可能になるにはなるが
本職の魔導士や呪療士、妖扇士と比べれば実力差は明らか。到底敵わないだろう。
しかしながらこのカールと言う鎌闘士は違う。
魔力値をアップさせる「鍛錬ノ書・知」と「博学の秘伝書」によって事前に魔力値を向上させていた、それもある。
だがそれでもバクドーンを同時に5つ唱えることなど不可能だ。なら……?

「さぁて。上手く避けなよ……三郎?」

それはこの試合で初めて彼女が見せてくれた笑顔と共に……文字通り、爆ぜた。
313名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 06:59:50 ID:i8ZjXj7x
1stフォームのハセヲのポーズはアバンストラッシュに似てる? エロらしいエロ書いたの4ヶ月ぶり? 何のことです?
おやすみおまいら
314名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 07:36:40 ID:klcbYWr+
>>313
乙です
315名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 09:41:12 ID:afa9S8O/
フィンガー・フレア・ボムズナツカシスww

GJ!!!
316名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 14:06:45 ID:iO2wT+g/
GJ!
アバンストラッシュてまたテラナツカシスwwww
317名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 14:32:56 ID:xjAGoLtS
フレイザードwwwwww
318名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 17:29:35 ID:FCcPNG6q
ダイの大冒険フイタwwwwwwwww

超GJ!!!
319名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 19:56:27 ID:+QVJTLA8
相変わらずGJ!!!
実況は何でも知ってるなww
……そういえばエロパロ板なのにエロ久しぶりに見たよ(´∀`)
320名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 20:42:41 ID:e+hhtV9H
フィンガー・フレア・ボムズ(五指爆炎弾)
メラゾーマを5発(指1本から1発ずつ)同時に放つフレイザードの必殺技。
禁呪法に近い荒技で、体に大きな負担がかかる。
マトリフ曰く、フレイザードがこの技を好んで使うのは「生死をかえりみない化け物だからできる」との事。
ポップも使用したが、当初は一度に3発が限界であった。
後に一度に5発使えるようになるが、十数発分のメラゾーマの威力を無傷で防いだヒムを見て、
より強大な呪文を欲してマトリフに師事を仰ぎ、メドローアを伝授されることになる。

劇場版のオリジナルキャラであるデスカールは両手で計10発放つバージョンを披露した。





カールさん何やってんですかwww
321名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 13:20:05 ID:fX0hri1F
322名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 02:42:07 ID:2ZD8Mztj
投下はまだ先って分かってるけどいつも来ちゃうんだよな・・・・
323名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 08:08:50 ID:CXx4qxIF
>>322あれ?なぜか俺がいる・・・・
324名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 17:24:42 ID:Zm1MDXFZ
保管庫の更新が滞り気味なのは何故なんだぜ?
325名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 20:51:35 ID:phRVk1AJ
これって.fackじゃないの?
326名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 04:29:12 ID:o4qkxDA5
カールの脳内声優は松岡由貴です本当にありがとうございました
327名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 05:31:16 ID:Ju/cQVxA
俺は田村ゆか・・・い、いや・・・何でもない・・・
328名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 09:00:47 ID:oDotnGVJ
あれ・・・なんでカルr、いや少佐の声なんだ・・・・・?


あばばばばばばばばば
329名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 11:07:59 ID:hDxgCVuE
ちゃんとみんな頭の中でボイス再生しながら読んでんだw
カールは小清水だな・・・エイジのユティっぽい感じでドSっぽく・・・。
330名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 14:19:56 ID:r0gpIdfz
みな、脳内補完してるんだな。そういう俺は桑島さん。 

エロよりもバトルにwktkしてる俺。もちろんエロもゲロウマなんだがな。
331jZfsBiHJNTEPTL:2007/07/20(金) 07:28:22 ID:Ju0aiem3
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bkript,
332名無しさん@ピンキー:2007/07/20(金) 09:25:55 ID:Zd5TdcYu
>>325
そういやそんなエロゲがホントにあったなあ
333名無しさん@ピンキー:2007/07/20(金) 10:34:36 ID:8SIz87YD
だがそれは.fuckコンプリートなわけだぜ
334名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 17:03:20 ID:imYAFMs5
そろそろかな?後24時間以内に神投下に300チムチムかけるぜ。
335名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 19:00:22 ID:haop2W88
じゃぁ俺来ないに、250チムチム
336名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 22:01:19 ID:9fxd0QDs
大穴でGORRE投下に500チムチム
337名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 01:00:09 ID:0opJ6Ibt
おまいら乙
トーナメント2日目・三郎×カール完結編投下
338名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 01:01:33 ID:0opJ6Ibt

『可能な手段だけでなく、また安易な手段や誰もが考えつく手段だけでなく、
 困難な手段、不可能と思われるような手段まで考えておくことだ』


                                    【ウィンストン・チャーチル イギリスの政治家】
















『あたしのこの手が真っ赤に燃える! あんたを倒せと轟き叫ぶ!と言わんばかりにッ、
 カール選手の指先から放たれた5つのバクドーン! 三郎選手、コレをどう受けるのか――――――――――ッ!?』


「受けるも何もッ!」

退路は無い。
後方で戦っている太白は揺光と天狼の相手でこちらに構っている余裕はないだろうし、
かと言って下がりすぎれば揺光らの反撃を受けてしまうかもしれない。
撃剣士はその他のジョブに比べてややHPが高めに設定されている、
あの5つのバクドーンがどれ程の威力があるかは分からないが……賭けるしかない。

「へぇ……どうしようっての?」

カールが笑う。
てっきり避けるか防御するかと思ったのに。
けれど、熟練した魔導士ならともかく鎌闘士、それも本来ならば
初歩的な呪紋しか扱えないはずのカールがどうしてここまでの芸当を?
無論、気づく者はいち早く気づいているようだが……。




「巫器(アバター)の力で彼女のパラメーターが著しく上昇している……。
 憑神(アバター)が持つ強大な力を自身へとコンバートしていると言うのか……」
「しかし、いくら彼女でも耐えられるはずが……! 肉体的にも精神的にも負担が大きすぎるのでは!?」
「これも女神の御業か、それとも……」

この世界では実用化に至らなかったが、別世界では実用化に成功した巫器。
けれどその世界は朔と望がカナードに所属していたり、クーンが銃戦士ではなく重槍士だったりと
色々と違った、また別の可能性を秘めた世界。
その世界にカールはいない(ログインしていない。恐らくは亮同様に記憶を消失しているのだろう)。
だが彼女はこの世界で巫器を使えるだけの才能を開花させた。
血は争えない。やはり彼女には、《The World R:1》開発担当者たる徳岡の血が流れている―――――――――――。
339名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 01:06:23 ID:Kl/t0q+5

カールの持つ紅い大鎌。
大火らはイベント限定のレアな武器だと思ったようだが、実際は武器ではない。
いや、本来は一般PCには見えないはずなのだが、どういうワケか視覚可能となっている。
憑神の力を武器化した巫器。
憑神空間を展開することもなくその力を行使できることに
いち早く気づいたのはカールが最初だった。
想像力(イマジネイション)が生み出す無限の可能性……。
八咫らも憑神の武器化については検討したことがあったが、ロストウエポンの存在により
その発想も途中で終わってしまっている。
しかしながらカールはロストウエポンを所持していない(既にハセヲが万死ヲ刻ム影を入手しているため)。
だから、もっと強力な武器が欲しいと彼女は思った。
それこそ、楚良をもう一度、取り返すことのできるくらい、強い武器を。
その発想に辿り着いた時、イメージするのは簡単だった。
色は紅がいい。楚良は渋柿色の包帯を全身に巻いていたから、彼とお揃いにしよう。
まるで、恋人同士が同じ携帯ストラップを共有するかのような感覚で生み出された。
だが込められた思いは7年分。カールの力を大幅に増幅させ、さながら鬼神の如き強さを発揮させるに至る。
12個存在するG.U.の意のうち、“Guilty Universe (罪深い世界)”を体現するかのように。
カールの駆る紅いスケィスは存在自体が罪なのだから。決して存在することを許されない、言わば「零番目の憑神」。
ハセヲのスケィスには決して敵うことないミスクリエーション。
だがそれ故に、子は母の愛を欲し、母のために戦っている。


「でぇぇぇいっ!!!」 
 
三郎が攻撃態勢に入る。
舞台を思いっきり蹴って突進、5つのバクドーンのうち2つを大剣ではね返すも
残り3つがまだ残っている。
幸いなことに揺光、天狼ともに太白に気をとられて三郎は眼中にないようだった。
残り3つのバクドーン、この体勢なら……!

「お返しだぁぁぁぁっ! バーニングッ!!!」
「なっ……!?」


『これは――――――――――――――ッ!?
 三郎選手、まるで大剣をテニスラケットの如く持ち替え、カール選手の火球をはね返したァ!
 まさにバーニング波動球ッ! いけね〜なぁ、いけね〜よっ! テニスの王女様、ここにありィ―――――――――――ッ!!!』


三郎がまさかバクドーンをはね返して来る程の気概の持ち主だったとは。
カールも予想外だったらしく思わず苦い顔をするが、すぐに思考を切り替えて防御に入る。
大鎌一閃。放たれた真空の刃が迫る3つの火球は着弾前に破砕された。
飛び散る粉塵、それに紛れて三郎が一気にカールの懐へと飛び込む!

「いただきっ!」
「!」

反撃に気づいたカールが防御に入るよりも早く、大剣の刀身が腹部に直撃!
タメ攻撃だったようで、そのまま勢いに乗せてカールの身体はそのままバトルフィールドの壁へと叩きつけられた。
その不思議な行動や言動に惑わされがちだが三郎とて元TaNの暗部構成員。
そこら辺のアリーナランカーよりも戦うことに特化している
(更に付け加えるなら、今現在三郎が使用しているPCはパイから与えられたG.U.お手製のチートPC)。
脳ある鷹は爪を隠す。これもアリーナバトルでは勝利の鍵の1つである。

「くっ……!」
「たまには……私もカッコいいとこ見せなきゃな。はふぅ……」
340名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 01:14:22 ID:ZWGi60+B

『決まったッ! 三郎選手の決死の一撃がカール選手にクリティカル・ヒットォ――――――――――!!!
 場内からはカール選手のファンらしき女性PCらの悲鳴がいたる所から聞こえております!
 だが三郎選手への声援も負けていないぞ! どっちのお姉様も頑張れ―――――――――――!!!』
『かっかっ、今のは良い動きだったな! “魔女”相手にやるじゃねぇか、あの三郎って姉ちゃんもよ!』


「(男なんだけどなァ……ま、いっか)」

カールにダメージを与えても三郎は油断せずに身構えている。
こういう場合、相手に一撃を加えた後が一番気が緩むのだ。
それはネットトレードでも同じ。
オンライントレードで培った即断力と、TaN在籍時代に学んだ我慢強さ。
それが今の三郎最大の武器。

「やるじゃん……ちょっと効いたかも」
「愛ゆえの一撃だったからね〜」

手品で虚を突いたはずのカールが逆に三郎のカウンターを喰らう。
カールも三郎の力は共にトーナメントに出場したりイベントに参加したりと
事前に知っていたつもりだが、予想以上だ。ネカマとは言え年上、人生経験も多いだろう。
舐めてかかるのはそれこそ、イックナ〜イのかもしれない。

「いつも言ってるでしょ? 私、一番好きなオカズは最後に食べるのね」
「あたしは特に好きなオカズなんてないから……その気持ちは分かんない」
「偏食は良くないな。ダイエット中?」
「さぁ……っと」

他愛ないやりとりの中に、互いの隙を伺う。
もう同じ手は通用しない。
接近戦に持ち込めば重量のある大剣を使う三郎がやや有利だろうか。
例えカールが巫器の力で各パラメータを底上げしていても、近づかれれば先程の如く
ダメージを喰らう時は必ず喰らってしまうように。
……ならば、離れて戦えばいい。


『おっと、カール選手! 三郎選手と一旦距離を置く作戦に出たのかっ!?』
『接近戦になると三郎がちょいとばかり優勢だろうからな。
 離れりゃまた呪紋も使えるしよ……勝つためにゃ、退くのも大事なんだぜ』
『な、なるほど! 確かにこの試合は、明日の決勝へ進むための大事な試合ですからね!
 両者にとっても今夜は運命を決する夜! まさにフェイト/ステイナイトッ!!!』


「どうして追わない?」
「さっきもそうだけど、あんたにしかないものを私に見せてほしいから」
「ふん……オッケー。じゃあ手品その2だ」

いよいよ彼女が本気の目になった。
ハセヲに「決勝まで上がって来い」と宣告したカール。
そのカールが決勝目前で負けることはできない。
三郎相手だから手を抜いても勝てる……もうそんな浅はかな考えは、やめだ。

「あんたに勝てないようじゃ、ハセヲにも勝てない」
「ん、そだね。私もアイツに勝てたことないし」
「でももし、あたし以外にハセヲに勝てる奴がいるとしたら……そんな奴は許せない」

再びボウッと輝き出す紅い大鎌が、ゆっくりと動き始める……。
341名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 01:15:15 ID:ZWGi60+B

『さぁカール選手の反撃が開始されるのでしょうか?
 何やら武器を構えているようですが……あ、あの構えは一体……?
 まるで大鎌を弓に見立てたかのような姿で佇んでおります……!』
『ぬぅ……』


左手に鎌を弓に見立てながら携え、右手で矢を射るような構え。
弦は貼られていない、にも関わらず文字通りに射られるような感覚。
これではまるで鎌闘士(フリッカー)ではなく弓兵(アーチャー)。
こんな戦い方をする鎌闘士など前代未聞である(鎌闘士がバクドーンを5つ放つ時点で異常だが)。

「さっきは悪かった」
「何が?」
「あんたを舐めてた。だから、あのバクドーンはわざと避けやすく撃ったんだ」
「……じゃあ今度は?」
「絶対に外さない」

カールの右手・人差し指に白い光が灯る。
それと同時に顕現する白光の矢。これは……。

「(レイザス……!?)」

オルレイザスにはやや劣る光属性呪紋。
対象に向けて、光の矢を一直線に飛ばしてダメージを与える。
魔導士ならば誰でも扱え、また呪療士や妖扇士らも熟練度を上げれば使用可能な初歩魔法。
魔法屋でも売られているので実質、全てのジョブが使用できる……できるのだが。

「なッ……!」
「もう避けられない」

当初は1つだけだった光の粒が徐々に増えていく。
まるでカールの周りをホタルが飛び交うように……数秒後には矢となって三郎を貫くであろう光の種が。
レイザスを使用可能な者、或いはレイザスによってダメージを受けた者なら知っているだろうが、
あれは光の矢を巨大化させたものではなく、何本もの矢を1本に纏めたものだ。
貫通力はあるものの、直線上の敵にしか当たらないので避けられるとマズイ。
だから、絶対に逃げられないように数を増やした。矢をより細く、多く。

「……行けっ!!!」
「!」

射手の命により放たれる無数のレイザス(光の矢)。
矢数など数える暇すら与えてくれない無常なる攻撃に、さすがの三郎の顔にも笑顔はない。
「どうやったら避けれる?」とか「あーカールはマジなんだー」とか、
そんな気持ちがごっちゃになるような、諦めにも似た感覚が脳裏を過ぎる。
だが……太白からパートナーに選ばれた以上、彼に報いなければ顔向けできない。


『あっ、あれはァ―――――――――――――!!!
 どこぞのお子様魔法先生が得意としている
“魔法の射手 連弾・光の37矢(サギタ・マギカ・セリエス・ルーキス)”に似ているような似てないようなッ!?
 カール選手の発射した無数のレイザスが、三郎選手を襲う――――――――――!
 うおっ、まぶしっ! まぶしくて、とても目を開けていられませ――――――――――――ん!!!』
『太陽拳みてぇだな、こりゃ! こんなの真正面から喰らっちまったら……!』

アリーナ中を蹂躙してゆく光、光、光。
三郎に勝機は……?
342名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 01:17:56 ID:aUy7H1Gy

「……無茶しちゃって」
「だってさ……こうでもしなきゃ……あんたに近づけないもん……」
「だからって、やりすぎ」

近付く程に痛む恋の重さのせいで、離れすぎてた胸を自由と呼んでいた。
……かどうかはともかく。三郎はカールに抱かれるようにして寄りかかっていた。
身体には無数のダメージ痕。
恐らく、カールの放ったレイザスの雨を防御することなく突進して彼女の元に辿り着いた結果なのだろう。
三郎とて無知ではない。カールが“魔女”の異名で知られるPKK兼ハンターだと言うことも考慮して
事前に呪紋攻撃を半減させる「鉄亀の甲骨紋」を防具にカスタマイズして備えていたから出来た無茶。
しかし……半減させてもあれだけの数のレイザスを受けてしまうのは、やはり無理があったようだ。

「けど……これで、しばらくはカールも動けない……」
「……みたいだね」

しかしカールも無事ではなかった。ガクリと膝をついて全く動こうとしないのだ。
何故か? HP0になる直前、三郎最後の一撃がカールを掠めていた。
たいした攻撃ではない、与えられたダメージは2ケタ程度。
だが、カールの頭部にバッドステータスを示すアイコンがいつの間にか現れている。
三郎が大剣にカスタマイズしていたのは「眠虫の粉」、対象の動きを封じる「睡眠」のバッドステータスを与える素材。
アリーナでの戦いにおいて「封印」「睡眠」「麻痺」以上に嫌な状態異常もない。
仲間が敵と交戦中で治療の暇もなければ尚更のこと。

「これで私は負けだけど……あとは太白センセが何とか……してくれるっしょ……たはは」
「あたしの睡眠が解ける間に、揺光と電柱狼が太白を倒せば問題ない」
「酷っ。私の苦労、水の泡にしちゃうようなセリフ禁止……ま、その方が……カールらしくて……好きかな……」
「……どーでもいいけど、瀕死のロールやって楽しい?」
「あ、下手? いや、雰囲気出そうと思ってw」
「バーカ」

ゴースト状態となった三郎を抱きながら、カールは揺光らと対峙する太白を見やる。
三郎の言う通り、睡眠でしばらく動けない。無謀なことに、カールはバッドステータス対策を何一つ用意していなかったからだ。
スケィスに無理にでも解除させるか? いや、明日の決勝に備えて余力は残しておきたい。
それに、あまり無理をすると巫器化させたスケィスにも負担がかかり結果的にパワーダウンを招いてしまうだろう。
今日の試合で既に2回も高度呪紋を使ってしまっている……無理はしない方がいい、明日のために。

「あれ? 行かないの?」
「あたしはあんたとの戦闘担当。揺光と天狼は太白担当」
「そーだけどさぁ」
「太白を越えるのがあの子と、電柱狼の目標だったからな……邪魔しちゃ悪いだろ」

2人だけの静かなチャット。
すぐ向こうでは太白、揺光、天狼らの一歩も譲らない戦いが続いていると言うのに。
何故か、今この瞬間だけはカールと三郎だけの時間のようにも思えた。

「だから決着つくまでは……ここで見物」
「優しいんだ? よし、やっぱ私ら付き合――――――」
「ちょーし乗るなネカマ」
「あうw」


『あ、あのぉ……カール選手と三郎選手? 
 睡眠と戦闘不能で動けないのは分かりますが……ずっと寄り添いあったままなのはいかがなものかと……』


後日、カールらの試合観戦中に意識不明になったプレイヤーが数名出たと報道された。
AIDAとの関連も指摘されたが、回復したプレイヤーの1人(20代・女性)はサルバドル愛原のインタビューに対し
「密かに2人を応援していたので感極まって気絶した。2人のリアルの性別はともかく、幸せになってほしい」と答えたとか答えなかったとか。
343名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 01:18:46 ID:aUy7H1Gy

「(カール……!)」

一方、揺光・天狼と太白の攻防は続く。
空間を突きぬけ、ガードも無視してダメージを与える魔銃シュレディンガーを自在に操る太白に対し、
ひたすらに攻撃を避け続けながら接近を試みてはいたが――――――――。


『き、気を取り直しましてっ!
 あちらが光の雨ならばこちらは銃弾の雨ッ!
 太白選手の放つ銃弾の雨霰を揺光選手と天狼選手、避けています避けています!
 が、しかしッ! まだ決定的なダメージを与えるどころか近づくことさえできておりませ――――――――ん!!!!』
『ありゃ並のボタン連打じゃねぇな。リロードの時間もほぼ一瞬……高橋名人も腰抜かす速さだぜ!』 


揺光も天狼も超人的な動体視力で太白の攻撃を避けてはいるが、時折ダメージも受けている。
元宮皇2人相手にしてのこの余裕、太白という男はやはり底が知れない。
ハセヲに敗れたとは言っても元竜賢宮の宮皇、《The World》最強とまで言われただけはある。


『おめえ、トール・ノーレットランダーシュってデンマーク人の作家、知ってるか?』
『は? い、いえ、存じませんが……』
『奴ァ、その代表的な著書の中で“意識は0.5秒遅れてやってくる”って説明してる。
 脳が発する電気信号のタイムラグのことだぁな』
『は、はぁ……』
『0.5秒……口に出すのは簡単だがよ、実際にはシビアな数字とは思わねぇか?
 例えばスポーツ……陸上や水泳じゃ0.1秒のロスが試合を左右することだって珍しくねぇだろ』
『た、確かに!』
『時にこのゲーム。オーソドックスなボタン入力による操作方法が採用されちゃいるがよ、
 リアルのプレイヤーがボタンを動かせばPCも勿論動くだろう?
 だがよ、プレイヤーの脳が発した信号によって指がボタンを動かす時間と
 PCがそれに従って動くというプロセスには僅かながらのラグも生まれんだ……ところが、太白にはそれがねぇ!』

大火の指摘は正しい。
太白はまるで揺光らの動きを予測しているかの如く攻撃を見舞っている。
しかも魔銃シュレディンガーは“何処から弾が跳んで来るか分からない”。
それは攻撃している太白にとっても“何処に着弾するか分からない”ことを示す。
にも関わらず、性格に揺光と天狼の2人を相手に身動きを封じる銃捌き。


『これぁワシの予想だけどよ、太白の奴ぁ言ってみれば0.5秒だけ“先が見えてる”んじゃねぇか?
 勿論、予知能力とかそんなんじゃなくてよ、アイツの頭ン中で描いたイメージの中でな。
 ファミコン全盛期、かの高橋名人は1秒間にボタンを16連打できたって言われてる!
 0.5秒なら約8連打ってとこか……今のアイツなら、0.5秒に限り何でもできるんじゃねぇか?』
『よ、よく分かりませんが、とにかく太白選手がスゴイということは分かりました!』


間違ってはいない。
日本有数の脳外科医として腕を揮う太白のリアル・黒貝敬介。
彼にとって0.5秒は貴重な時間だった。1秒を争う医療の現場において培われた経験。
コンマ単位の遅れが患者の命を左右する修羅場。
他人の頭の中を、言わば心を覗く行為を生業としている黒貝は手術中、常にイメージを働かせる。
カメラで脳内を見ながらメスを動かすのにも限界がある。
それより先はイメージ、「腫瘍はここにある」と頭の中で患者の脳内の構図を描きながら、自身の勘を信じる。
故に、いつの間にか……黒貝は“先が見える”ようになった。
飽くまで「こう動くだろう」という予測に過ぎないが……揺光らの僅かな動作が、それを彼に教えてくれる。

「(職業病とは恐ろしいな……気がつけば私は、また高みを目指している……)」
344名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 01:19:47 ID:aUy7H1Gy
ごきげんよう、お姉様? グラップラー太白? 何のことです?
おやすみおまいら
345名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 01:20:50 ID:rowCsc0o
346名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 01:35:42 ID:chZgrSBc
リアルタイム遭遇、私のバクドーンは百八式まであるぞwww
というか実況自重w

そしてエキセントリックな三郎、いいな……
GJ!!!!
347名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 01:41:28 ID:3yJoHeWb
GJ!
いつもながら小ネタが(*´д`*)ハァハァ
348名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 02:22:05 ID:dQBcQM/T
太白、蝶・スゲェェエエエエエエ!!!!
349名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 02:24:20 ID:SEOtiHZj
えらい中途半端にフェイドアウトしたなと思ったら…こういうことか、なぁ
せめて最後に何か残して欲しかったよ。もう皆半場諦めてたのに、
途中で期待持たせるような仕様にするから…
今度もまたどうせ中途半端な状態で飽きて投げ出すんだろ
そんで別んとこ行くんだろ
350名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 02:33:15 ID:SGs3HZnR
24時間以内投下キタ----(゚∀゚)-----!!!
少年誌ネタもいっぱいキタ----(゚∀゚)----!!!!!
毎度乙です。
351名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 05:33:07 ID:KsiDviEn
>>349
ツンデレ乙


くそう、何故この場に腕伝や榊やオーヴァンはいないのか…orz
というか、リターナーの扱いはどうするんだ?
ともかくGJ!!!
352名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 10:04:48 ID:uABLj64e
乙。

>「でももし、あたし以外にハセヲに勝てる奴がいるとしたら……そんな奴は許せない」

逃げて、アニメ版碧にげてー!
353名無しさん@ピンキー:2007/07/23(月) 03:06:07 ID:1C4A3yv5
GJとしかいいようがないな!!!
354名無しさん@ピンキー:2007/07/23(月) 03:53:09 ID:c1YmuKK4
>>351
腕伝は原作はともかくアニメ版は完全に黒歴史化してるぜw
リターナーも黒歴史化しつつあるがな!( ●∀●)フッヘッヘッへッへッへツ/\ツ/\ツ/\ツ/\
355jgkrHEWEKHmHu:2007/07/23(月) 08:05:38 ID:sdscBkuc
356名無しさん@ピンキー:2007/07/23(月) 09:40:29 ID:uS65Mfxf
リターナーは応募用紙のあの絵に騙されたわ

揺光が一瞬だけしかでないって、CC社ヒドスwwwwwww
357名無しさん@ピンキー:2007/07/23(月) 09:43:37 ID:/GIWwQ/4
漫画の腕伝は作者の.hackへの愛が感じられて好感が持てたけどな。
基本的に平和だし、カイト達の活躍でこんなほのぼのラブコメもどきが出来る
世界になったのかと思うと感慨深かったよ。俺の中では正歴史。
アニメは知らない。俺は何も見なかった。
358名無しさん@ピンキー:2007/07/23(月) 13:45:55 ID:sUlVS42P
>>357
バルムンクが生き生きとしてた。
359名無しさん@ピンキー:2007/07/23(月) 18:21:23 ID:YJjwYnmy
きたるカイトvsカールにむけてwktkがとまらないwwww
いや,カイトvs揺光か?
360名無しさん@ピンキー:2007/07/23(月) 19:40:03 ID:OPv53xZj
>>356
オールメンバーが描かれてたからてっきり
「うはw無印の時の特典みたくみんなで集まってワイワイ騒ぐのカナー?」とか思ってたら・・・内容は・・・
361名無しさん@ピンキー:2007/07/23(月) 20:38:19 ID:5QVj7cev
特典映像のことを知りたいか?
アレを知ってるのか!?
2週間前、特典映像に裏切られた神は2度とここに戻っては来なかった…
リアルの神は絶望し、未だに原因不明の昏睡状態だ…
アレは、ただのOVAじゃなかった…
神のことは知ってたのか。
ああ、だが分かったのはそこまでだ。神が何故意識不明になったのか。
あの日、あの時いったい何が起こったのか。特典映像を見たなら何か分かるかもしれない…
あるいはGJな作品をもっと創れば…
神の意識が戻るかもしれない…!!

なんて会話を妄想
362名無しさん@ピンキー:2007/07/23(月) 20:45:14 ID:cyC+wNBP
>>357
碧衣の騎士団が無差別に放浪AI削除してたのがどーもなぁ。
その騎士団自体もGUには影も形もなかったけどな。月の樹がそれこそ紅衣や碧衣の真似事してるってカンジ
363アトリとAIDA:2007/07/23(月) 23:48:02 ID:fTon/6fF
小説版の2巻での出来事のつもりで書いた
364アトリとAIDA:2007/07/23(月) 23:49:23 ID:fTon/6fF
偶然手に入れたこの力、碑文。
手放す気にはなれない、思考力を得たAIDAはこの碑文使いを奴隷にすることを決定した。

アトリの周囲は闇だった。それも不快な温かさを持つ闇。
自分の半径約三メートルの円の中がなんとか分かる程度。
そこで彼女は……犯され続けていた。

ぐぐっ、めきっめきっ
AIDAの触手が長くなっていく。
先端はアトリの秘裂の中に入り込もうとした。
「や!いや!」
何をされるか分からない恐怖。アトリはなんとか逃げようと体を動かすが、
磔にされた体でできるのは腰を振ることだけだ。
両手ががっしりとアトリの腰を捕まえる。か弱い抵抗も封じられてしまった。
「うあぁ!!」
膣でもクリトリスでもない部分で、新たな刺激が生まれた。
「そんな…おしっこの…あな……」
もう、ゲームのはずだという幻想は砕かれた。
継続する刺激が夢でも、幻でもないと叫んでいる。
尿道の入り口に触手の先端が当てられた。
「そんなとこに…入れるなんて…」
触手が侵入を開始する。
「はあああ!」
尿を吐き出すためだけに存在する穴に、異物が侵入してくる。
痛みかどうか、それすらも分からない痺れが体を震わせる。
365アトリとAIDA2:2007/07/24(火) 00:44:48 ID:Em6K6QDO
「いや!いやぁ!!」
『ダマレ』
アトリの頭に直接届くAIDAの声。
触手が少しずつ侵入する度に、大粒の涙をこぼしながら悲鳴を上げる。
「やめて、やめてェ!」
漏れそうになるのをガマンする時のもどかしさの感覚が何倍にもなってアトリを襲う。
アトリの中で、AIDAが触手をくねらせる。
「ンあああああああっ!」
アトリの体が大きくのけぞり、分泌された愛液が滴り落ちる。
アトリの細い腰をしっかり押さ込みながら、触手をさらに奥へと進める。
「ああああ!出ちゃう、出ちゃう、出ちゃう!!」
限界に来たアトリの体がブルブルと震える。
「あああ!」
アトリの股間から金色の液が噴出し、AIDAはそれを観察した。
強張った体から、尿が出きったところで力が抜ける。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
喘ぐように息を吸う。快感の残滓に、手足がピクピクと痙攣する。
体の中を迸る衝撃に、体がビクンビクンと勝手に動く。
(頭の中…真っ白になっちゃうぅぅ)
涙でぼやけた視界にいつの間にか出現したAIDAの顔が迫ってきた。
鼻で荒い息をするアトリ。 AIDAの動きが止まる。
無いはずの口の端を曲げにやりと笑うと、アトリの鼻を触手で塞いだ。
「!!」
366アトリとAIDA:2007/07/24(火) 19:23:27 ID:Em6K6QDO
アトリの鼻腔と喉に強烈な痛みが走る。
「嫌!!」
もちろんアトリの願いなど聞き入られはしない。触手が体を掴んで持ち上げる。
「ゲボッ…ゴホッ……ぁあ…」
鼻から自分の尿を注ぎ込まれ、激しくむせ返る。
自分の排出液に溺れかけたアトリは、ゼーゼーと苦しそうに息をしている。
「いや…もう、いや…」
光を失った瞳がアトリの折れた心を映し出す。
『やっとドレイノ目にナッタカ??』
そうしてAIDAは自慢の擬似ペニスを光らせる。
『マダ、オワラナイ』
猛りきった擬似ペニスがアトリに向けられた。
「ゆるして…もうゆるしてください…」
鼻水と尿でグチャグチャになった顔で、恐怖しながら、アトリが懇願した。
『次はキガ狂うダロウ』」
「ひぃっ」
尿と涙でぐしゃぐしゃに汚れた顔が恐怖に引きつる。
AIDAがアトリの蜜溢れる割れ目を拡げ、アトリに凶器を突きつけた。
『ヌン!』
ブチィン
「痛!」
快楽の海に溺れていた意識が激痛により引き戻される。
「痛いいッ!抜いて、抜いてェッ!!」
AIDAはアトリの中にねじ込んでいった。
「いやあああああ」
AIDAの侵入にあわせて、アトリの悲痛な叫びが大きくなる。
異物が侵入した秘所は子宮の奧で無理な圧力に泣いた。
その涙が血となって膣口から溢れ、結合部からおびただしい量の血が溢れてくる。
その血すらも潤滑剤として、ついにAIDAはアトリの最奥までたどり着いた。
367アトリとAIDA:2007/07/24(火) 19:24:07 ID:Em6K6QDO
『ウォオオ!碑文の力が!!ミチテイル』
感激に打ち震えるAIDAとは対照的に、アトリは虚ろな目をして呟いていた。
「タスケテ……さん…タスケテ…」
AIDAがピストン運動を開始する。大きく腰を引き、打ち出すように突き込む。
「アアああああ!!」
アトリの体は跳ね上がり、地獄まで叩き落されるかのように引き戻される。
「…サン……サカk……サン、ハセ…サン」
アトリは焦点のあわない目をしたまま、二人の名を呼び続ける。
AIDAもうめき声をあげはじめた。もはやアトリの心は限界だ。
「………」
『オオオオオ!』
 ビュ ビュ ビュウウウ 
アトリの一番奥に、白いマグマが注がれる。
アトリを満たしただけでは収まらず、マグマは中から噴出してきた。
『モウスグ、一体化デキル』
AIDAは満足げにアトリから刺し貫いた武器を引き抜いた。
368名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 12:53:30 ID:VJr1aWRr
ほっしゅ
369GORRE:2007/07/28(土) 00:15:05 ID:dHaYsZPR
「まあ、入れよ」
「おじゃまします」
亮に招き入れられ、ニナは初めて男の部屋という所に入った。
「へえ、結構広いじゃん」
「まあな」
亮は何処と無く照れくさかった。今まで女子を部屋に入れたことなど一度も無いからである。
それに良く見ると、今のニナの服装はタートルネックに、赤と黒のチェックのプリーツスカート、それにストライプのニーソックスである。おまけにもっとよく見てみると
(確か、ミニスカートとニーソックスの間に見える太ももの事を絶対領域って言うんじゃなかったっけか…)
なんて亮が思っていると。
「ん?」
亮はふと、ニナが本棚を物色しているのに気が付いた。
「おい、何してんだニナ」
「何って、本棚物色。男って、本棚にエロ本とか隠してるって言ってたし」
「誰が」
「アトリ」
「何吹き込んでんだあいつ…」
亮は後でアトリを説教しようと決めた。

そんな事はおいといて。
「それよりお前。勉強、するんだろ?」
「うん」
そういうとニナはボストンバッグを下ろし、中から勉強道具を取り出した。
「机使っていいぞ。何かわかんないことがあったら聞け。分かる範囲で教えてやるから」
「うん。分かった」
亮はベッドに腰を下ろすとそばにあった雑誌を開いた。
2時間位経っただろうか。ふとニナが亮の目の前にいた。
「おう、どうした。何か分からない所でもあったのか?」
「ううん。そうじゃない」
「じゃあ、なんだ?」
と、ニナはいきなり亮の膝の上に寝転んだ。
いわゆる膝枕である。
「お、おい。いきなり何だ」
いきなり女の子が自分の膝に寝転がってきたら、男は誰でも動揺するだろう。当然亮とて例外ではない。
「別に。ただ膝枕っていつも女の方がやってるから、男の膝枕はどんなものかなって思ってみただけ」
と、ニナは平然と言ってはいるが、実は少し照れていた。
「男の膝枕なんて、ごつごつしてて嫌なだけだろ」
「そ、そんなこと無いわよ。これはこれで、悪くは無い…り、亮の膝だからかもしれないけど…」
自分で言って恥ずかしかったのか、ニナは亮の膝に顔をうずめてしまった。
「……」
「………」
何処と無く互いに何を言ったらいいのかわからない時間が流れた。と、
「ん?」
そう、亮は気づいてしまった。ニナのスカートが少しめくれてその太ももが若干だが露になっていることに。
(…ど、どうする…ニナに教えたほうがいいのか?)
と、亮は考えたが、それと同時に、少しだけだがもうちょっと見たいという衝動に襲われた。
(少しだけなら、ニナの奴も許してくれるだろう…)
亮はニナのスカートに静かに手を伸ばした。
370GORRE:2007/07/28(土) 00:36:51 ID:dHaYsZPR
(やべえ、何かドキドキしてきた)
亮はゆっくりとだが少しずつスカートを捲っていった。
このとき、亮の心臓は物凄くバクバクと動いていた。
だって、もしばれたら殺されかねない。リアルの姿は可愛いとはいえ、ボルドーである。間違いなく殺されかねない。
しかし、もうちょっと見たいという衝動に勝てない亮は、手を止めなかった。
(気付くなよ、ニナ…)
しかし、この時亮は知らなかった。すでにニナは気付いていたのだ。
「亮」
「はいい!」
亮はその刹那、死を覚悟した。殺される。間違いなく殺される。そう思った。しかしニナが言った言葉は予想外のものだった。
「別にそんな事しなくても、亮が見たいなら、パンツぐらい見せてあげる」
「は?」
そう言うと、ニナは立ち上がり、少し恥ずかしそうにスカートを捲りあげた。
「……」
何と言ったらいいのだろうか。目の前にゲーム内ではリアルからは想像できないほど凶暴なあのボルドーが、少し顔を赤らめながらスカートを捲っているのである。
おまけにパンツは白と青のストライプ。
「ニナ、その…それ以上はやばい事になりそうだから、もういいぞ」
ホントにやばいのである。下半身が。
「ん…」
ニナはスカートから手を離すと、亮の隣に腰を下ろした。
「………」
ちょっと気まずい沈黙が流れた。
「亮」
「ん?」
振り向いた亮の目に飛び込んできたものは、目を閉じて入るニナだった。
「!?」
もちろん、亮はこう思った。
(こ、これはあれか…? キスしても良いよって言うOKサインなのか? そうなのか?)
「い、いいのかニナ?」
「うん…ファ、ファーストキスは好きな人とって決めてたし…」
その一言で、亮は決意した。ここで行かなきゃ男じゃねえずら!
ニナの気持ちにこたえるために、亮はニナの肩を掴むと、自分の唇をニナのそれに重ねようとした。
と、
「亮、お茶菓子を持ってきたぞ」
いいところで邪魔が入るのはお約束である。
もちろん、亮とニナは物凄い速さでは慣れると、互いに見るからに怪しい動きをしていた。
「俺、ひょっと邪魔したか?」
思いっきり邪魔です。とでも言いたげに、背後から母がフライパンで殴って気絶させると襟を掴んで引きずっていった。
「……」
「……」
いいところで邪魔されて雰囲気ぶち壊しにされた二人は、
「とりあえず、お茶菓子食うか」
「うん」
371名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 00:49:52 ID:V7FX1HBF
GJ!!これからも頑張ってください
372GORRE:2007/07/28(土) 01:13:47 ID:dHaYsZPR
お茶菓子も食べ終わり、再び勉強に取り掛かってから約3時間。
1階から母が呼んでいる声が聞こえ、二人はリビングへと降りていった。
テーブルの上には見るからにいつもより頑張っちゃいましたとでも言わんばかりに、豪勢な食事が並んでいた。
「なあ」
「何だ?」
「なんかいつもより豪華なような気がするんだけど」
「気のせいだ」
そう言われると何もいえなくなる。仕方が無いから気のせいだと言う事にしておこう。
「さあ、さあ、二人とも立ってないで座りなさい」
「え? ああ、うん」
母にせかされたので、席に付こうとしたときである、亮はある異変に気付いた。
「椅子、1個足りなくない?」
そう、そこには4人がけのテーブルに対し、なぜか椅子が3人用しかなかったのである。
これは明らかにおかしい。
「そんなこと無いわよ。はじめから3つしかなかったわよ」
「うそ付け!」
と、突っ込んでみたが椅子の数が増える見込みも無い。
「どうすればいいんだ」
「たぶん、こう、すればいいんじゃないかと思う…」
そういうと、椅子に亮が座り、その膝の上にニナが座るという図式が出来上がった。
「……」
「………」
この状況、全国の男子から見たらうらやましい図式以外の何者でもない。ただし、それはデートのときなどの場合である。この場合は違う。
両親の前でやっているのである。
むしろちょっと勘弁して欲しい状況である。
「いや、この状態だと俺が飯を食えない気がするんだが…」
「それは…」
と、ニナは目の前にあった唐揚げをつまみあげると。
「亮、あ、あーん」
「うえ!? お、お前まさか…」
「あーん…」
さあ、どうする亮。目の前にはニナが恥ずかしそうにあーんの体制で待っている。でも、両親が見ている。
(参った。俺はどうすればいい…クーンだったら間違いなく食うな…)
こうしている間にも、ニナはずーっと体制を崩さずに待っている。
(ええい、ままよ!)
亮は覚悟を決めた。
「あ、あーん」
食べた。
「お、おいしい?」
「うん。うまい。いつも食べなれた味だ」
それはお前の母親が作っているからだ。
「あら、あら、ラブラブねえ」
「ああ」
「あんたらがこうなるように仕向けたんだろうが!」
「言いがかりだぞ」
「いいがかりよ」
「くっ…!」
この両親には何を言っても駄目だ。こうなったらこの状態を続けるしかない。
「よし、ニナ。今度は俺の番だ」
「え?」
亮は自分の箸を掴むと、ニナに同じ事をした。
「ほれニナ。あーん」
「あ、あーん…」
ニナも、食べた。
その後はそれの繰り返しだった。そして…
食いきった。
「食いきってやったぜ…」
「うん…」
食事が終わった後も、まだニナは膝の上に座っていた。
373名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 09:47:00 ID:s7QQycJu
>>367
遅ればせながらGJ
374名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 11:29:25 ID:uIqKbzyQ
オーヴァン×志乃って需要ありますか?
保存する前に消えちゃったから、どうしようかと思って…。
もっかい書こうかな…?
375名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 15:33:26 ID:u23/nRWG
>>374wktkwktk
376名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 16:57:25 ID:HqIx8WG9
>>374「いいぜぇ、来い!来いよぉ!!」
377名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 18:38:09 ID:9J+KleML
俺はここにいる!
378名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 20:05:14 ID:LyUfgSWE
≫374
迷いながら悩みながら悔やみながら決めればいい。
379名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 20:29:47 ID:HqIx8WG9
朔のつまみ食い(続編なし)

何とか、望を使って二人で彼の家に泊まることに成功した。
やがて日は暮れて、三人で料理を作りおいしく楽しく食べた。
そして、夜中。
朔のつまみ食いが実行されようとしていた。

『おきた、どないしよ』
いざこれからとなってふと心配になったがここまで来たからにはやるしかない。
とりあえず、その心配事は置いといて、彼の盛り上がった股間の傍に顔を近づけていく、
そして履いてるズボンを下ろして、慣れた手つきでパンツから中の性器を取り出すのだった。
『うわっ、もう起っとるやんか』
すると、にょきっと眼前にそびえ立ち、脈打って凄まじい迫力と匂いを出している。
それを凝視しながら、口を開けて起たせた肉棒を一舐めする
れろ〜〜んと、充分にそして丁寧に舐め上げた。
熱の篭もった愛撫は続け、チュッチュッと吸い付きながら、唇を上下させる。
「うぁッ………は……くぅんッ……ああッ…………」
 崩子ちゃんは口を大きく開けると、ぼくの性器をぱくりと咥え込む。
だが、まだ口が小さく、それほどのサイズでない性器でも、先端をしゃぶるのが精一杯のようだ。
それでも、んくぅんくぅと、赤ん坊が哺乳瓶からミルクを飲むみたいに吸い付いている。
「ンッ……あッ………はぁッ……ン……んふぁ…………うぁッ!!」
 まだ、収める事の出来ない大きさの口内だが、吸引力はすさまじい
ずずっ……じゅる……ちゅ…ん
女からすると、はしたなすぎる音が立つ度に、体が熱くなっていく。
「んっ…ん…うぉ」
聞こえるのは喘ぎ声、感じているのかな?
何回かしているうちに、感じる箇所がわかってきたので、
そこを集中して責めて、歯が当たらないように…頬内に先端を擦りつけた。
すると、さらに性器へ力が、ぎゅんぎゅんと漲ってくる。
そして限界が訪れた。
ぶびゅっ、どびゅ、びゅる、びゅく、びゅっ
口の中で、欲望が盛大に解き放たれ、初めてその味を感じた。
『おいしいやん♪』
お金にはなりそうにもないけれど、これには価値があると思った。
380名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 13:18:05 ID:9t6qHu3O
>>375-378
オーヴァン×志乃、鋭意製作中です。
余り期待はしないで下さいね?
381名無しさん@ピンキー:2007/07/30(月) 01:19:49 ID:KI26U68N
>>380
いいぜぇ、こ(ry
382名無しさん@ピンキー:2007/07/30(月) 07:34:04 ID:1MnCpTHp
太白戦の続きマダー?
383名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 06:41:32 ID:SJv3UURL
おまいら乙
トーナメント2日目・天狼VS太白投下
384名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 06:42:47 ID:SJv3UURL

『怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。
 おまえが長く深淵(アビス)を覗くならば、深淵(アビス)もまた等しくおまえを見返すのだ』


                                     【フリードリッヒ・ニーチェ著 「善悪の彼岸」146節より】





















『さぁ始まるザマスよ! 行くでガンス! フンガー!
 全国1000万のらき☆すたファンの皆さんっ、元ネタは藤子A先生の“怪物くん”であることをお忘れなくッ!
 明日の決勝へ進出するための準決勝第2試合、早くも熱く激しい戦いが繰り広げられております!
 まずは三郎選手VSカール選手! 序盤から素晴らしい対決となりましたッ! 
「暗くてお靴が見えないわ」「どうだ明るくなったろう」とばかりにカール選手のバクドーンとレイザスが
 三郎選手を急襲、大ダメージ! しかし三郎選手も倒れる寸前カール選手を睡眠状態にし、一矢報いました!
 一方では太白選手を相手に揺光選手と天狼選手が奮闘しておりま―――――――――――――――――――!!!』
『先読みに長けた太白をどう攻略するかがカギだな。かっかっ!』


太白の奴があんなに強かった、ってのは想定外だ。
俺達と竜賢宮で戦った時はAIDAに感染してて真の実力を発揮できてなかった、ってことか?
伊達にずっと竜賢宮に居座ってたワケじゃねーな、やっぱ。

「ふーむ。アイツは銃戦士(スチームガンナー)の中でも最強クラスだからなぁ」
「あ! クーンさんだぁ〜!」
「クーンさん、こんばんは^^」

取り巻きの女PC達を後ろに控えさせながら、クーンがここで降臨……満を持して。
へぇ、やっぱアンタの目からも太白の強さって分かんのか。
ま……ネトゲ歴長いから人を見る目だけはありそうだしな、クーン。

「全然近寄らせないだろ、太白」
「……あぁ」
「揺光と天狼はどっちも接近戦タイプのジョブだけに辛いだろうな。
 例え接近できたとしても銃の次は剣での洗礼が待ってる」
「でも、太白さんと同じ銃戦士なのに、クーンさんは接近戦タイプだぞぉ?」
「それはだなガスパー、俺が以前使ってたPCが剣士だったからさ。
 その時のクセと言うか……遠くから撃つよりも近寄って斬る方がしっくりするんだよ」
「同じジョブでもプレイヤーによって色んなタイプに分かれちゃうのか。勉強になるなぁ^^」
385名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 06:44:22 ID:SJv3UURL

「クーン的にはこの試合どうよ」
「大方の予想通り、ギアスかけられてたダールトンがコーネリアを撃墜したり、複線は回収できてたかな」
「バカ、この試合についてだよ。つーかネタバレはヤメロ」

いるんだよな、こーいう未放送地域とか遅れて放送する地域の人間に配慮できない奴は何処にでも。

「そうだな。カールちゃんのドスの効いた虫ケラを見るような目も良いけど、
 三郎ちゃんの人を値踏みするような好奇心に満ちた目も捨て難いよなぁ……」
「うげぇ……」

ここまで来るとアレだ、もう何でもありだなコイツ。
カールのドスの効いた虫ケラを見るような目つき、ってお前限定だろ?
俺そんな目で見られたコト一度もねぇし。
その点、三郎はいつも値踏みするよーな目で他人を見てそうだけど。

「ハセヲはカールちゃんと三郎ちゃん、どっちが好みだよ。え、え?」
「興味ないね」
「そんな大剣背負ったソルジャーみたいなツレないこと言うなよ。な、コッソリでいいからさ!」
「……」

だって俺、智香と付き合ってるし。そりゃ楚良が現れてからはカールのことも意識し始めてるかもだけど……
アンタみたく何人もの女の間ハシゴできる程、器用じゃねーっての。
ったく昨夜は「大いなる力には大いなる責任が伴う」とか「自分に挑め」とか何かカッコいいこと言ってたクセに……。
やっぱクーンはクーンか。

「そんな恥ずかしがるなってw」
「クーンみたいな無神経な奴に限って『聖地巡礼』とか言って、アニメキャラの住んでる神社のモデルになった
 神社にアニメ絵馬奉納したり境内でOPのポーズとりながら写真撮影とかしてんだろうな、地域住人の迷惑も考えずに」
「はうっ!?」
「友人からの貰い物、とか言いながら十中八九盗品のSOS団の非売品のぼりをヤフオクに出品したり」
「うぐっ!?」
「看板漫画家から預かった原稿を出版社に届ける前に紛失して漫画家激怒、
 関係悪化して結局漫画は打ち切り同然の最終回、コミックス最終巻は同人並のペラさ……月刊誌廃刊の危機、招いたりな」
「ちょっ、ローゼン打ち切りは俺のせいじゃないっ!」

俺からすりゃ同罪だ。
……ま、いい。今は智香達の試合を優先しねーとな。
カールの奴は決勝まで必ず決勝まで上がってくる……太白に勝てないと判断したら
データドレイン使ってでも勝とうとするだろう。憑神を開眼したばかりの、俺みたいにな。

「……ハセヲさん?」
「どした、アトリ」
「いえ……何だか、怖い顔になってたから」
「ちょい考え事してただけだって」

カールにそんなコトさせるワケにはいかねぇ。
八咫もこの試合を知識の蛇からモニターしてんなら、何か対抗策くらいは考えてんだろうな?
そもそもこのトーナメント、ゲーム離れしたユーザー引き戻すためにしちゃちょっと豪勢すぎね?
勇者まで戻って来てるし……俺の中の楚良まで目覚めた。
何が起ころうとしている?
オーヴァンが起こした真の再誕の時よりも……何て言やいいのか分かんねぇけど、
漠然とした不安みたいなもんが圧し掛かってくる感じ。

「おっ! ハセヲ、試合が動くぞ」
「何っ……!?」
386名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 06:47:02 ID:SJv3UURL

天狼のリアル、民綿涛は自身も韓国の国技・テコンドーの達人。
更には徴兵制を経て韓国軍に2年間所属していた経歴もある(韓国では18歳以上の男性は全員が徴兵検査対象である)。
日本の支社に異動となってからも鍛錬は欠かしていない。偉大なる祖国、大韓民国の誇りが彼を強くする。
碧聖宮宮皇の座に固執するあまりAIDAに感染したりもしたが、それを克服した今、彼は更に強くなった。
より高みを目指すためには越えなくてはならない壁もある。
まだ彼はそこに到達してはいない。故に、戦う。

「フッ……ハァッ!」
「!」


『おぉ――――――――――とっ!?
 天狼選手、ついに太白選手の銃弾の雨あられを掻い潜り、懐に飛び込んだァ―――――――――――!!!』
『見事な見切りだ! 天狼め、この短時間でもうシュレディンガーの弾道を見極めやがったか!?』


確かに何処から跳んでくるのか分からない、しかも防御を突き抜けてダメージを与えるという
付加効果は脅威に値する。
だが……そんなものは、覚悟さえあればどうということもない。
一瞬で間合いを詰め、太白に急接近する天狼。
0.5秒先を見通す太白も一瞬だけ反応が遅れたらしいが、それでも迎撃。
だが天狼には一発も当たらない、あたかも天狼も先が見えているかの如く。

「 Float like a butterfly (蝶のように舞い)」
「!?」
「 Sting like a bee !(蜂のように刺す!)」
「ぬぐっ……!?」

それはこのトーナメント始まって以来、初めて太白がダメージを負った瞬間。
視認するよりも速く、その拳は太白の顔面を捉えていたッ!


『きっ、決まったァ―――――――――――!!!
 天狼選手の渾身の右ストレートが太白選手にクリーンヒットォ!
 太白選手が大きくバトルフィールドの壁に叩きつけられましたァ―――――――――――――!!!
 トーナメント2日目にして太白選手、ここで初めてダメージを受けたぞっ!?』
『なるほどな、ボクシングか。
 脚主体のテコンドー技が来ると思った太白のとっさの判断ミスってとこだろうよ。
 にしても天狼の奴、いつの間にボクシングなんて芸当覚えやがったんだ? こりゃますます最後まで目ぇ離せねぇな!』


キュッと両の拳を握り締めながら、軽快なフットワークを天狼は続ける。
相手が先を読むなら、こちらはそれを読ませないまで。
正直言って、天狼はアメリカ人が嫌いだ。
在韓米軍とも軍籍時代にいざこざはあったし、何よりも祖国にいつまでも居座る彼らの態度も腑に落ちない。
だが同じ格闘家として唯一尊敬できるアメリカ人も居る。
ボクシング史上最も偉大なチャンピオンの1人、生ける伝説となった人物が。

「天狼ー! すごいじゃん、太白を吹っ飛ばしちゃうなんてさっ」
「気を抜くな揺光……戦いはまだ終わった訳ではない」
「あ、ああ……そーだったっ!」

今のは不意打ちのようなもの……次も成功する保証はない。
だがこの高揚感……いける。最強と謳われた竜賢宮の宮皇に、自分の拳が通用する。

「だが今夜は気分がいい。焼肉が食いたい気分だ……たっぷりのキムチと一緒にな……!」
387名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 06:49:34 ID:SJv3UURL

『素晴らしい一撃です!
これが激獣拳ビーストアーツの底力なのかっ!? 私もワキワキして参りました!
 まだ勝ってもいないのに場内からは割れんばかりの歓声が湧き上がっております!』
『今のは惚れ惚れするくれぇに良い動きだったからな』
『思えば天狼選手、碧聖宮トーナメント決勝においてハセヲ選手に敗れて以来
 竜賢宮トーナメントも一回戦敗退と長く苦しい時代もありました……しかしッ!
 地べたを這いずり回ってこそ見えてくる光もあるのです! 天狼選手、いや、天狼の兄貴ッ!
 やっぱり兄貴は最高だァ―――――――――――――――――!!!』
『地獄兄弟!?』


天狼……あいつ、今まで全く反撃しなかったのは、あの一撃を狙ってやがったからか……。
智香が紅魔宮の新人時代に戦って接戦の末に負けた、ってのも強ちマジっぽいな。
初めて会った頃に比べると天狼の奴、なんかフッ切れた感じもするし。

「すごいスピードだったねぇ〜」
「気がついたら太白さんが壁に叩きつけられちゃってて……何が起きたか全然分かんなかった^^;」
「忍者みたいな動きの時のハセヲさんよりも、速かったんじゃないですか今の……?」
「……かもな」
「そーいやハセヲ。アンタ、試合中に急に仕草とか言葉使い変わる時あるん、アレ何やの? 新手のロールかいな?」
「髪の毛のグラフィックに緑色のメッシュも入ってますよね、あの時だけ」
「……」

悪かったな、そりゃ全部ソラタロスに憑かれてたせいだっつの。
……やっぱコイツらでさえ気づいてんだ、他の連中も疑問に思ってんだろうな。
死の恐怖時代から他人にとやかく言われるのは慣れてるけど……な、何か納得いかねぇ……。
けど、ここに居る連中に比べれば俺は遥かにマシ(なはず)だ。
ただの人間に興味はねぇ。
この中に“自殺サイト閲覧者”“多重人格者”“引き篭もり”“碑文使い”が
居たら俺のところに来やがれってんだ。……って、もう来てるか。自分で言っといて憂鬱になってんじゃねぇ……。


「やるね。あの天狼って奴」
「あたしの後に碧聖宮の宮皇になったくらいだ、そうじゃないと困る」
「けど、センセはまだまだ本気じゃないよ。分かる?」

戦闘不能になってゴースト化した三郎は、決して負け惜しみを言っているワケではない。
確かにまだまだ太白はその真の実力を見せてはいなようだ。
ハセヲは前回の竜賢宮トーナメント決勝で太白を破ったそうだが、それは太白にAIDAが感染して
彼の意識を支配していた時のこと。今とは全く状況が違う。
何より、自分に相当の自信がなければ2人だけで出場など思いつきもしないはず。

「(長引くとヤバいな……電柱オオカミはともかく、智香じゃ太白の相手はかなりキツイ)」

人並み外れた太白と天狼と比較すると、揺光には申し訳ないが実力の壁が存在してしまう。
揺光が紅魔宮止まりのランカーだったように。
ハセヲの助力を得て碧聖宮トーナメントに参加、奮闘していたようだが実力的に伴っているとは言えない。
現に、揺光のリアルである倉本智香はカールのリアル、仁村潤香にバトルにおけるアドバイスを請うたこともある。
他のプレイヤー達が異常すぎるだけで、智香は普通の女子高生にすぎない。
だが、この戦いに参加した異常は泣き言を言っている暇なんてありはしない。
勝って、明日の決勝に進出せねば。でないと……楚良は取り返せない。

「仕方ないねぇ……」


『おっと! ここでカール選手の状態異常・睡眠が終了、戦線に復帰だァ――――――――――――――!!!』
388名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 06:51:38 ID:SJv3UURL

拝火教と呼ばれる宗教がある。
今日ではゾロアスター教とも呼称されるそれは、古代ペルシアに起源を持ち
世界最古の一神教とも考えられている。
拝火教と呼ばれる由縁は、古代において炎こそが光の象徴であると考えられていたためだ。
光明神アフラ・マズダを頂点に、善の神スプンタ・マンユ率いる光の軍勢と
アフラ・マズダと敵対する闇の神アンリ・マンユ(アーリマン)の対立を骨子とし、
善悪の二元論を主張、最後には善が勝利して悪を消し去ることが運命付けられている、と言う。
傷つくことを恐れたら、地球は悪の手に沈む―――――――これは即ち、光と闇の果てしないバトル。

この《The World》にもその教えは受け継がれている。
黄昏の碑文(The Epitaph of the Twilight)の原作者であるエマ・ウィーラントのものか
フラグメント開発者のハロルド・ヒューイックの構想かは不明であるが、この世界こそ
拝火教がかつて古代の人々に説いた善と悪の世界そのものとは考えられないだろうか。
光(リョース)の王アペイロン、闇(ダック)の女王ヘルバ。
そして夕暮れ竜を求めて旅立ち、永久に戻ることのなかった影を持つ者―――――勇者サヤ。
影とは、光と闇の2つがあって初めて存在を許される虚構にも似た儚い存在。
その他にもアイテムなどがその名残を見せてくれている。例えば聖酒ハオマ。
拝火教では酒は人を惑わす悪魔の飲み物とされるが、ハオマだけは別格であり神の酒、神酒とされる
(ゲーム内では聖酒ハオマ、この他にも尊酒シーマや神酒ネクタルなど他民族の宗教や神話の影響も見受けられるが)。

拝火教徒は回教(イスラム教)と同様に偶像を拝むことはなく、その名の如く炎を崇める。
2017年現在でもごく少数だがイランとインドの一部地域に拝火教は根付き、信仰は続いている。
彼らは信仰を捨てない。どんな闇も、炎の輝きを消すことはできないことを知っているから。
動物は本能的に火を恐れる。
アフリカのサバンナに落雷が落ち、それが燃え広がると野生動物達は一目散に逃げていく。
彼らはすぐに風に乗って炎が辺り一面を焼き尽くすことを本能で悟るからだ。
我々人間の世界でも「風前の灯火」とか「情熱の炎」など、肉体状態や精神状態を表現する際に
用いられるように、炎とは生物にとって畏怖の対象であり、崇拝の対象として長らく存在し続けてきた。
そして、これからも―――――――――――――――。


「ここがアルケ・ケルン大瀑布かぁ」

なつめと別れた後、カイトはロスト・グラウンドの1つアルケ・ケルン大瀑布に独り佇んでいた。
別に観光が目的ではない。
公式設定によると、禍々しき波と戦った光の王と闇の女王の力は滴となってこのアルケ・ケルンの地に
降り注いだと言う。もっとも戦争当時はここに神殿があったそうなのだが……今は見る影も無い。
《R:2》に以降してからは「呪文使い見習いの少年が神々を呼び出した場所」とされているようだが……
ひょっとして、その呪文使い見習いの少年が呼び出したのは神ではなく、鉄アレイのようなカタチの
守護神(ガーディアン)だったりしたら面白いのに。誰も見ているワケでもないのに、カイトは口を押さえてクスリと笑う。
ここは黄昏の旅団メンバー達にも因縁深い場所、特にハセヲ、志乃、オーヴァンにとっては。
常に大量の滝の水が流れ続け、飛沫が霧となって常に光を閉ざした暗雲の地。

「さて、と。ちゃっちゃと済ませようか」

滝の後ろに掘られた壁画を見据え、何やら思考を巡らせるカイト。
今自分の立っている場所から壁画までの距離と角度を計算しているように見える。
何をやろうと言うのか。
と、計算を終えると同時に彼の手中に蒼い炎が顕現する。
最初は小さな塊だったそれはみるみる膨れ上がり、蒼い渦となって周囲の水飛沫を空気ごとジュッと蒸発させてゆく。

「壁の向こうには……何があるのかな」

かつてオーヴァンも彼と同じ言葉で、モーリー・バロウ城壁にてパイに問うた。
これは気まぐれ。
光を求めて影は、他愛ないジョークを喋る時もある。外の世界には、光は或るのか……と。
389名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 06:54:13 ID:SJv3UURL

ドカン!と落雷のような音が辺り一面に響き渡った。
彼の、カイトの放った蒼炎がアルケ・ケルン大瀑布の壁画に向けて炸裂した音である。
ガラガラと音と土煙を立てながら壁画は崩壊し、上部を流れていた滝の水もあまりの炎の熱で
沸騰、さながら禍々しき波との戦いで煮え立ったアルバの湖のようにボコボコと不気味に鳴動している。
だがすぐに冷え切った水が新たに流れてきたのか、滝についてはいつも同様の流れを取り戻すのに
時間はかからなかった。
だが壁画の方は熱せられた状態ですぐに冷やされたものだから堪らない。
疲労を起こし、一部分だけだった崩壊が壁画全体に広がってゆき、大規模なひび割れを引き起こしたのだ。

「うーん、ちょっとやりすぎたかな……調節をもっと練習しないとダメだなぁ」

小さな子供が粘土遊びをするように、カイトは手の平で炎を操りながら1人愚痴る。
無理も無い。
まだこの世界にログインして間もないし、八咫から与えられたこのPCを完全には使いこなせてはいないから。
逆を言えば、完全に使いこなせていない状態であの強さ。
彼のことだから、あと一日もあれば完全に感を取り戻すだろう。

「あっ。入り口みっけ」

炎の練習のためにアルケ・ケルン大瀑布の壁画を破壊したのか、と言うとそれは違う。
彼とて無意味な破壊行動に興味はない。
少々やり方は荒っぽいが、損失した壁画のデータはあとでCC社のグラフィッカー達が何とかしてくれるだろう。
ぴろし3が結婚記念日でログインしていなくてよかった。
グラフィックに異常な執着と情熱を見せる彼が、カイトがこんなコトをしていると知ったら
色々と面倒なことになりそうだし……。

「八咫、見えてる?」
『把握している』
「壁画の中に、神殿への入り口っぽいのがあったよ」
『古代の戦いで破壊されずに残っていた(という設定の)地下神殿への入り口の可能性が高いな……』
「じゃあ、このロスト・グラウンドも理想郷(アヴァロン)への入り口候補ってことでいいのかな?」
『ああ。三爪痕(トライエッジ)のサインによる転送が適わぬ今となっては、多少荒っぽい発掘も止むを得ん』

理想郷(アヴァロン)。
それが何かは分からないが、とにかくカイトと八咫はそのエリアを探しているらしい。
破壊行為に手を染めてまでも見つける価値が、本当にあるのかどうかは分からない。
カイトも八咫もできればアウラの愛したこの世界を傷つけることはしたくないのだから。
だが時には荒療治が必要な時もある。もう、この世界には時間が無い。
天城の魔の手は《R:1》だけでなく、この《R:2》にも伸び始めている。
彼は死んだ。
しかしながら彼の意志、いや遺志とも言うべきものは未だ目に見えない状態のまま、この世界への侵食を続けている。
時間との戦いだ。
彼が発動しようとしたRA計画(Project Recall of Aura)は結局、思わぬ形で実現してしまった。
グリーマ・レーヴ大聖堂でアイナを寄り代に、アウラがこの世界に降りてきたあの瞬間に。

「今夜中に、他のロスト・グラウンドも発掘してみるよ。グラフィッカーの人達には悪い気もするけど……」
『すまないな。いつも君にばかり頼るのは私の悪いクセだ』
「拓海は立場上、表立って動けないから仕方ないって。
 でも、ここまでやるからには絶対に成功させなきゃいけない。
 Project Return to Avalon ......僕たちのRA(アヴァロン帰還)計画だけは」


夢の国を探す君の名を 誰もが心に刻むまで。悲しみ乗り越えた微笑みに 君を信じていいですか?
夢の楽園を探しながら 走る君を見つめていたい。誇り高く汚れを知らない 君を信じていいですか?
390名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 06:56:25 ID:SJv3UURL
特典DVDはビートレじゃなくて京アニに(ry? 封神アニメは作画酷かったけどOPとEDだけは未だに高評価? 何のことです?
おやすみおまいら
391名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 07:01:31 ID:BT+8YD0/
毎度ながらGJ!
tu-kaのっけかららき☆すたですかwwww
ラストに封神OPとか細かすぎますってwww
392名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 10:24:57 ID:TEU/lXfr
ソラタロスwwwwバロスwwwwwwwww

もうGJとしかwwwwww
393名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 11:34:08 ID:umocTP10
GGGGGGGGGJJJJJJJJ!!!!!!!!

やっぱりすごいなぁ……
394名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 18:09:48 ID:n9eul6L2
小ネタが多いなw面白すぎw
GJ!
395名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 18:42:30 ID:nm4Izkn8
ニーチェの「怪物と戦う者は〜」ってCC2社からの新作案内DMに書かれてたってあれ?
俺のとこには届かなかったから確認のしようがないけど・・・。
396名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 23:00:15 ID:34Ywu7LG
続きキタ――――――――(・∀・)――――――――
超超超超GGGGGGJJJJJJ!!!!!!!!!!!!!
投稿が遅いから少し心配したんだぜ
今回の話はスケールがでかくてwktkなんだぜ
397名無しさん@ピンキー:2007/08/01(水) 16:18:20 ID:uvaWYeUH
ちょw激獣拳に封神まで来たww
毎度毎度GJです!
398名無しさん@ピンキー:2007/08/03(金) 15:05:22 ID:r1dY7mNl
続きマダー?
399名無しさん@ピンキー:2007/08/03(金) 22:00:40 ID:5ZABEaOl
オー志乃マダー?(`・ω・´)
400名無しさん@ピンキー:2007/08/04(土) 18:12:54 ID:7E2JQXyX
小ネタが多すぎて突っ込みきれねぇw

相変わらずのGJ!!
401名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 00:22:22 ID:T8B8Zv9+
おまいら乙
トーナメント2日目・揺光VS太白編投下
402名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 00:23:41 ID:T8B8Zv9+

『鳥は卵から無理に出ようとする。卵は世界だ。
 生まれようとする者は、ひとつの世界を破壊せねばならぬ』

                                        【ヘルマン・ヘッセ著  「デミアン」より】


















「地球はガイアって生き物だ、って考えてる人が昔居たよね?」
『ジェームズ・ラブロックのガイア理論』
「そうそう、それそれ」

ガイア。
ギリシャ神話における原初の神の1人であり、
冥界の王ハデスや海神ポセイドン、天帝ゼウスの父でもある時間神クロノスの生みの親でもある。
ギリシャ神話に代表される神々の言わば最初の母的存在、それがガイア。
そしてイギリスの科学者にして環境主義者でもあるジェームズ・ラブロックが1969年に提唱した
「地球=超固体(多数の固体生物から形成される生物)説」、それがガイア理論。

「八咫、僕はね。この《The World》もガイアの一種なんじゃないか、って思う時があるんだ」
『この世界が生き物であると……そう言いたいのかね?』
「アウラの管理を離れても《The World》は絶え間なく進化を続けているでしょ?
 八相の代わりに憑神が生まれて、ウイルスバグの代わりにAIDAが生まれ、碑文使いの反存在クビアも生まれた。
 ……地球が46億年かけて辿った進化を、この世界も繰り返してるとしたら?」
『確かに……AIDAは短期間で目覚しい進化を遂げた。
 我々人間を観察することでより生物的に、より洗練されたスタイルを摂った。
 時には人に寄生することで精神までも侵食し、より理解力を深めようとしていたフシもある……』

AIDAの行動には人間の精神に入り込む事で、よりヒトを知ろうとしていた傾向がある。
偶然とは言え生まれてしまった新たな電脳上の生物が、より高みへ、即ちヒトへの進化を望んでいたとしたら?
ハロルドの望んでいた「人間とコンピュータ」の調和、それがそんなカタチで実現してしまっていたら?

「きっと僕らは、《The World》っていう大きな子宮の中で育つ胎児なんだよ。
 AIDAは……そう、早く生まれたかったのもしれない。でも生まれる術を知らなかった。
 生まれるためには、一度死ななくてはならない。かつてアウラがコルベニクとの戦いでそうしたように――――――」
『それは女神だけではなく、我々にも当てはまるのかもしてない。
 一度死ぬことで、もう一度生まれる……明日の決勝、ますます警戒を強める必要があるな』
『カールって子が、ハセヲ君を殺すかもしれないってコト?」
『彼女が目的は楚良だ……彼を手に入れるためなら、この世界そのものを破壊することすら躊躇わないだろう』
「彼女も腕輪を僕と同じ様に持ってたんだよね。うーん、ちょっと勝てるかどうか分からないなぁ」

既にカイトは7年前の戦いで黄昏の腕輪を失い、新たに薄明の腕輪を得ているが 
カールも同様に7年前(正確にはカイトがアウラと初めて遭遇する前)にアウラと出会い、女神の守護者として
腕輪を使用していた形跡がある。最も、そのカールでさえスケィスには敵わず、未帰還者とされてしまったが……。
403名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 00:24:51 ID:T8B8Zv9+

*****************








「カール、話違うじゃん! 戦いには手を出さないって言ったでしょ、さっきさぁ!」
「気が変わったんだ。このまま揺光が太白にやられたら、即試合終了になっちゃうだろ。
 それじゃ、あたしが困る」

ようやく三郎から齎されたバッドステータス・睡眠が解除となり、自由となったカール。
三郎との戦いで高等呪紋を2回使用してしまったが、まだ余力は十分にある。
太白と戦う天狼、揺光に加勢すれば十分に戦えるはずだ。もしくはカール1人ででも戦えばいい。
リーダーの揺光が太白に倒されてしまうのは絶対にNG、明日の決勝に進めなくなる。
最悪の場合、データドレインを使ってでも太白を倒さなくては……それほどにカールの決意は固い。

「あんたはそこで大人しくしてりゃいい」
「ちょっ、放置プレイ!?」

ゴースト状態の三郎を放置し、揺光らのところまでダッシュ。
太白もちょうど起き上がり再び体勢を立て直そうとしているところだった。
3人で散り散りになり、分散してシュレディンガーの砲撃を上手くかわせば十分に勝利は有り得る。
いや、この3人が団結すれば必ず太白に勝てるはずだ。だが――――――――――――。

「つーことで、あたしがやるから」
「待て。俺にやらせろ」
「太白と戦うのはアタシだ!」


『お、おやぁ? 揺光チーム、何やら言い争っております……問題でも発生したのでしょうか……?』
『誰が太白とサシで戦うか、もめてるみてぇだな。無理もねぇ、こんな機会は滅多にねぇからよ』
『で、ですが、どうせなら3人一緒に戦った方が勝率も高いのでは……?』
『武人っつぅのはな、多勢に無勢ってのは嫌ぇな人種なのよ。どうせなら自分の力を試してみてぇだろうが』
『な、なるほど……言わば武道家の誇りや意地のようなものなのですね……!?』


「よーし、それならジャンケンで決めよう!」
「……チッ。いいだろう」
「あたしはジャンケンに置いても頂点に立つ女だ……失敗したな、揺光?」

やはり、どうしても3人一緒に戦うつもりはないらしい。
太白も太白で半ば呆れているのか、それとも3人の意志を汲んでいるのか攻撃をしてくる気配もない。
元々、人間観察のためにこのゲームを始めた彼にとっては、このような事態も良い研究対象……なのかもしれない。

「最初はグー! ジャンケン、ポンッ!」
「あいこでしょ! あいこでしょ! しょっしょでしょ! しょっしょでしょ! ……ありゃん?」
「< #`Д´>アイゴー!」
「よっし! アタシの勝ちだな」

激戦(?)を制したのは揺光。
思えばこの試合、カールが派手な魔法を使ったり
天狼が太白の攻撃を避けながらパンチを見舞ったりと活躍しているにも関わらず、チームリーダーの揺光が
まだ目立った活躍をしていなかった。本当の戦いが、これから始まるとでも言うのだろうか?
404名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 00:26:28 ID:UgWYsoIp

「悪く思うなよ。カール、天狼!」
「フン……負けたら承知せんぞ。お前が負ければ即、チームの敗北となるのだからな」

少々の不満はあるようだが、天狼はそれ以上の苦言は吐かなかった。
本来ならば先程の流れに乗って太白と合間見えたいと思っていたようだが……まぁ、仕方がないだろう。
揺光がどこまで実力を付けたか見てみたいとも思っていたし……。

「1人で戦うのはあんたの勝手だけどさぁ、あたしを負かした借りはデカいぞ?
 とりあえず今度ミッシュハウス(※札幌の有名パフェ店)であたしにチョコレートパフェをおごれ」
「(アンタいつも『家族以外が作ったモノなんて汚くて食べたくない』とか言ってるクセに……)」
「返事は?」
「……喜んで仁村先輩におごらせていただきます」
「あっはぁ〜んw いい子ちゃんですね〜♪」

……まぁ、カールへのフォローはこれくらいでいいだろう。
「いざとなったら、2人が助けてくれる」というような甘い考えは毛頭持っていない
(それでも、カールは揺光が負けそうになったら確実に加勢するだろうが)。
揺光とて、このトーナメントのためにレベル上げやスキルの熟練度アップなどの対策をしてきた。
決勝でハセヲと戦うと約束したし、更にはあの勇者カイトまで戻ってきた。
何が何でも決勝に出たい、決勝でハセヲやカイト、それになつめと戦ってみたい。
……そのためには太白を乗り越えなければならない。

「待たせたね! それじゃ第2ラウンドと行こうか?」
「揺光か……」

つい1〜2ヶ月前まではイコロ追放され、
紅魔宮のトーナメントでさえ優勝に手が届かなかった彼女が、今こうやって太白の前に立っている。
竜賢宮では決して見ることのできなかったであろう、両雄の対峙。
揺光の最初の目標はカールの様な宮皇になること、彼女が去ってからは天狼、そして太白を越えることが
《The World》のプレイ理由。だがハセヲと―――――三崎亮と出会ったことで、彼女は変わった。
彼と共に在ることで、彼女更に強く、そして美しくなったと思う。
故人曰く、恋は女を強くする。


『どうやら揺光選手が太白選手と戦うようです!
 元紅魔宮宮皇と元竜賢宮宮皇、果たして勝利の栄光はどちらに輝くのかッ!?
 そうです、伝説は塗り替えるもの! 愛の前に立つ限り、恐れるものは何もないッ!!!』
『揺光と言やぁ、碧聖宮トーナメントから竜賢宮トーナメントの間、一時期ログインしてねぇ時があったっけか。   
 どれくれぇの力を見に付けたか、この戦いでハッキリするかもしれねぇな』


智香……大丈夫かな。
太白と一対一でやり合おうってのはちょっとばかりキツイんじゃねぇのか?
……最悪の場合はカールが助けに入るだろうけどよ。

「揺光ーがんばれー!」
「がんばれだぞぉ〜!」

いいよなぁ、コイツらは純粋で。
俺はダメだな……シラバス達みたいにゃ応援できねぇ。
俺にできるコトと言えば……智香を信じてやるコトくらいだ。

「ほら、ハセヲも揺光を応援しなきゃ!」
「3にも4にも押しが肝心だぞぉ〜! がんばれ〜アクション仮面〜!」
「アハハ。ガスパー、それ番組違うよ^^」
「おっと、オラ……オイラとしたことが間違えたぞぉ」
405名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 00:27:49 ID:UgWYsoIp

そういやNARUTOのサソリ(幼少期)の声もしんのすけ……クソ、何て時代だ!
実況じゃ俺が喋る度に「スザクうぜぇ」とか「さっさと志乃助けろ」とかいつもカキコまれてるし……
見てやがれ、秋の二期さえ始まりゃ俺のランスロットがストフリ並の活躍をだな……。

「ハセヲさん、ちゃんと応援してあげなきゃダメじゃないですか!」
「そうだぞ、ハセヲ。結婚式まで挙げた中なんだ、夫の義務くらい果たさなきゃなw」
「わっ、分かってら!」

お前らだって俺の性格くらい分かるだろ。
その、こういうの、苦手なんだよ……誰かを応援するとか……。
だって恥ずいだろ、普通はよ! そりゃ、智香は……彼女だし、応援はしてやりてぇけどさ……。


「正直驚いている。天狼同様、私のシュレディンガーによる攻撃をほぼ回避するとはな」
「毎日本ばっか読んでるんでね、眼には自信あるのさ」
「ほぅ……」

太白の読み、即ち0.5秒先を予測する力。
それは揺光と天狼の2人を相手に同時攻撃、一歩も近寄らせない戦いぶりを披露した。
だが天狼の決死の攻撃により、その気になりさえすれば攻略できないものでもない、ということも判明している。
カールと天狼にばかりいいカッコはさせない、揺光にもこのチームのリーダーとしての意地がある。
それに……ハセヲの、亮の前でカッコ悪いことろは見せたくないのだ。

「(亮、見ててよ……アタシ、絶対勝つからっ!)」

とは言え……元竜賢宮宮皇が相手では、さすがにそのプレッシャーは大きい。
こうやって向かい合っているだけでもコントローラーを持つ手が震えるくらいだ。
隙を見せれば太白の攻撃が来る……どうする? 考えろ。
今自分ができることを全てやるしかない……!

「(先手必勝!)」

先に揺光が駆けた。
双剣士をジョブとして選んだだけあって反応速度は全ジョブの中でも1、2を争う程。
だが太白も先読みの力を駆使して揺光が仕掛けて来るだろうポイントを予測し、銃剣を構えている。
照準は合わせていない。揺光の加速終了地点をいくつか瞬時にピックアップし、撃つ!

「くっ!」
「(避けた……!?)」

かなりの僅差だったが揺光のスピードが勝ったらしく、太白の銃撃を寸でのところで回避、
全霊を込めて斬撃を叩きつける! が、太白も瞬時に防御することを考えたようで
揺光決死の一撃はシュレディンガーのブレード部によって惜しくも受け止められてしまう。
……けれど、これで確信が持てた。
ハセヲと共に戦った数々の経験が、この短期間で揺光を強くしている。
以前では決して敵うはずの無かった太白にこうやって肉薄しているのが何よりの証。

「よく踏み込んでこれたものだ」
「前のアタシならなーんにも考えず、突っ込んでただろうけどな!」
「何……?」

よく見れば、揺光は片手でのみ斬り付けている。
もう一方の手には剣は握られておらず、代わりに……攻撃を仕掛けた時から詠唱していた呪紋が輝いていた……!

「ガンッ、ボルグッ!」
「ぬぅっ……!?」

魔剣マクスウェル相手では成立しなかった呪紋による攻撃が、今では通用するッ―――――――!
406名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 00:28:59 ID:UgWYsoIp

『これはァ――――――――――――――!?
 超至近距離からのエメラルド・スプラッシュ、もといッ、地属性魔法のガンボルグが炸裂だァ――――――!
 太白選手、あらゆる魔法を無効化する魔剣マクスウェルを前トーナメントまで使用しておりましたが
 竜賢宮トーナメントの決勝でハセヲ選手によってマクスウェルを破壊されてしまっていたことが仇となりましたっ!
 魔法、それは聖なる力! 魔法、それは未知への冒険!  魔法、そしてそれは勇気の証ィ―――――――――ッ!!!』 
『今まで太白はロクに攻撃魔法を喰らったコトがなかったが……揺光の奴、考えやがったぜ……!』


「はぁーっ、はぁーっ……うっしゃぁ!」

揺光は決して魔法が得意と言うワケではない。せいぜい回復補助のリプス止まりだ。
だが双剣士のステータスは他のジョブと比較しても割と魔力値が高く設定されており、
努力次第では初期魔法しか使用できない双剣士でも十分に戦うことができる
(カオティックPKの1人、ぽこたんが双剣士でありながら“拷鉄魔法少女”を名乗っていたのが良い例だろう)。

「……驚いたな。お前が呪紋を使うとは」
「さっきの試合で勇者カイトが炎を使ってるの見て……
 剣で斬りつけるだけが双剣士じゃない、って分かったからさ。
 それに、アンタはもうマクスウェルを持ってないってのも分かってた。でなきゃ魔法なんてアンタ相手に使えないって!」

かなりの冒険だったが……やる価値はあった。
やはり太白はマクスウェルが失われた以降も対魔法対策のカスタマイズを防具に施していない。
これでもし「古神亀の甲骨紋」や「鉄亀の甲骨紋」をカスタマイズされていたら
殆どダメージを与えられていなかったはず……揺光のチームには、魔女の異名を持つカールが居る。
最低でも彼女の魔法を警戒して何らかの魔法対策をしていてもおかしくはなかったが……
どうも太白は、そういった対策無しでも十分に揺光らと渡り合える自信があるようだ。

「剣と魔法のダブルアクションか」
「零れ落ちる砂みたいに時は止まらない……太白の一挙一動を見逃さなかった揺光の気迫が勝ったのさ」
「フン……アイツが危機に陥れば、助けに入るつもりだったんだろう?」
「さぁ。どうだか」

のんびりはしていられない。
試合終了までの時間を考えると短期決戦がベストだ。
もう同じ手は通用しないだろうし、次で太白に大打撃を与えない限りはこっちがヤバイ。
かと言ってカールと天狼に助けを求めるような泣き言は言いたくない。
自分の力で勝たなければ、意味も価値もないと分かっているから。

「(さーて、次はどうしたもんかな……)」

太白、天狼、カールと比べて、揺光は特別な才能を持ってはいない。
天才とは程遠い、星と本が好きな普通の女子高生に過ぎないのだ
(最近は星関連の本を扱う「ミルクディッパー」なる喫茶店に興味があるとかないとか)。
だが、勇者カイトの戦いを見て双剣士の可能性に揺光は気づく。
自分も彼のように戦うことができれば……太白にだって負けないのに。
けれど真似だけでは勝てない、自分は勇者ではないのだから。
彼は光。それも、この世界の全ての人々に希望を与える光。
彼は奇跡。伝説のパーティを率い、世界の危機を救った勇者と言う名の奇跡。
彼は強さ。BBSでしか語られることのなかった彼の強さを目の当たりにし、感動すら覚える程に。

「(何のために……誰のために……あの力はあるんだろう……?)」

彼にもハセヲのように助けたい人が、守りたい人がいたのだろうか。
だからあんなにも強く在ることができるのか? しかしながら揺光は男も女も骨太であるべき、という思想の持ち主。
男なら、誰かのために強くなれ。女もそうさ、見てるだけじゃ始まらない。それだけできれば、英雄さ。

「(上等……だったら、アタシは亮のために強くなってみせる!)」
407名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 00:30:05 ID:UgWYsoIp

『太白の奴、接近戦に切り替えやがったな。
 揺光のスピードを考えりゃ、あそこまで接近されての銃での攻撃は逆に不利……
 だったら、剣での攻撃で接近戦に持ち込んだ方がいい』
『シュレディンガーのガード無視のアビリティも活かせる、そういうことでしょうか!?』
『だな。接近戦は望む所って感じじゃねぇのか?』


「ハセヲ、揺光がんばってるね!」
「太白さん相手に、すごいぞぉ〜!」
「そ、そうだな……」

智香……確かに強くなってる。
俺と紅魔宮トーナメントでやりあった時は……俺がスケィス喚んじまったせいで、
あんな結果になったけど……あれは、お前が強かったから思わず喚んじまったんだ。
憑神を使わなければ俺が負けてた……あの頃の俺は、志乃を助けるためなら何をやってもいい、
そんなコトしか考えるこのできない馬鹿だったから……。
でも、智香は……憑神なんかなくたって、碑文使いじゃなくたって、太白とあそこまで戦えてる。
すげぇよ、お前は。
俺は……お前の、智香のそういうところに……いつも頑張ってる姿に、惹かれたんだ。

「やるじゃない。揺光も」
「パイ? あんた、知識の蛇に戻ったんじゃなかったのか」

気がつくと、俺達の試合が終わった後さっさと姿を消したパイが戻って来ていた。
八咫と一緒にカールが試合中に何かやらかさないか、監視するんじゃなかったのか?
てか……何ニヤニヤしてんだこの女。

「今日1日はトーナメント観戦をしていていいそうよ。
 あの子達の試合も途中までは知識の蛇の中で見ていたのだけれど……追い出されちゃったわ」
「追い出した? 八咫がか?」
「言い方はとても丁寧だったけどね。まぁ……八咫様なりの考えがあってのことでしょうけど」
「……」

妙だな。
1人でコソコソ何やってんだ、アイツ。いや……1人とは限らねぇけどさ。

「愛しの彼女が頑張ってるのに、あんたは応援してあげなくていいの?」
「パイまで何言い出すんだよ」
「だって挙式まで挙げたのに……釣れない、いいえ、つれないじゃないの」
「そりゃ、そうかもしんねーけど……」

何で俺達の関係に他人が口挟むのか理解できねぇ。
俺と智香はアレだ、心で通じてんだから声荒げて応援とかしなくてもいいんだよ。
届かない声なんて、きっと無いって言うだろ? 俺と智香はまさにそれだ。
俺は俺なりに智香のこと大事にしてるし、優しくしてるっつーの。

「ハァ。まだまだガキね」
「んだとっ!?」
「恋愛の駆け引きは初心者同然ってこと。可愛いわw」
「……ほっとけ」

滅多に恋愛しねぇあんたに言われたくねーな。
俺だって昔は……昔は、何だっけか? また何かを思い出しそうになったぞ。
壊れた映写機みてぇに映像が不鮮明でよく分かんねぇけど……すげぇ、大事なコト、思い出しそうだった。
何だ?
俺は、志乃の前に好きになった女なんて……居やしねぇってのに。今だって智香と……。
408名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 00:31:58 ID:uEYRa3/H

『揺光選手と太白選手、睨み合う睨み合う! 互いに攻撃のチャンスを見計らっております!』
『当たり前のことだがよ、戦いにおいちゃ
“連撃(レンゲキ)”と“反撃(ハンゲキ)”の2つのゲキワザがモノを言うぜ。アリーナでのバトルじゃ特にな……』
『な、なるほど! “遊びの中に修行あり”、ゲームと言えど勝負は勝負! 基礎は大事ですからね!』
『揺光も太白も基礎はバッチリだ……後は、本人達の負けん気次第だな』


じりじりと距離を詰めながら揺光と太白の睨み合いが続く。
そろそろ試合終了の時間も迫っている。
この戦いで揺光に圧し掛かるプレッシャーは相当なものだろう。
だが……この戦いに勝たねば、明日の決勝には進めない。


『アンタは評価されるだけの何かをやったのか?』


かつて七星に向けて揺光が言い放った言葉。
太白は皆に評価されるだけの戦いをした、だからハセヲに負けるまで竜賢宮の宮皇として君臨し続けた。
彼の真意がどうであれ、結果が全てなのだから仕方がない。
揺光もハセヲと出会うまでは、ただ皆に評価されるだけの戦いしか頭に無かった。
けれど、今はもう違う。

「その双剣……」
「何さ」
「2016年冬季限定の、ラッキーアニマルコンプリート・クエストのクリア景品か」
「へぇ、さすが武器コレクターだな。鋭いじゃん」

今となっては“幻の双剣”などとも呼ばれているが、レア度が高いだけで
攻撃力やアビリティだけを見れば、揺光が紅魔宮トーナメントで宮皇になった際、贈呈された
旋式・鈷風鉈の方が断然使いやすいはずだ。他にも揺光はこれまでにハセヲとの冒険で手に入れた
レアな双剣や、ハセヲからプレゼントされた幾つもの強い双剣があるはず。
何故、今になってこんなレア度だけ高くて攻撃力の低い武器を使うのか?
太白には理解ができなかった。

「これは……アタシの大事な友達が、アタシのために取ってきてくれた双剣だ。
 エンデュランスとの宮皇タイトルマッチもアタシはこれで戦った。
 アイツとはアタシが紅魔宮で負けて以来会ってもないけど……この双剣が、アタシ達を繋いでくれている!」
 
湯浅は自分の意志で前に進み始めた。
彼女には散々酷いことを言ってしまったのに、それでも彼女は自分のためにコレ(双剣)を
転校が迫るギリギリまで時間を割いて取ってきてくれたのだ(シラバスとガスパーも協力したらしいが)。
なら自分は、そんな自分を信じてくれた湯浅の……七星の想いに応えなくちゃいけない!

「美しい友情か。戦いで役に立つとは思えんがな」
「自惚れんなよ、元竜賢宮宮皇!」

太白の言う通り……一朝一夕で埋めることのできない実力差があるのは分かっている。
だけど逃げない、負けない、泣かない。揺光の冒険(ボウケン)は始まったばかり。
やっと普通にこのゲームで遊べるようになったのだ、もっと色んなことをして遊びたい……ハセヲ達と一緒に。

「アタシを信じてくれたヤツらのためにも……アタシは絶対にアンタに勝つ!
 だから……最後の力が枯れるまで、ここから一歩も下がらないっ!」

揺光は1人で戦っている……だが独りではない。
ギリギリまで頑張って、ギリギリまで踏ん張って。
どうにもこうにも、どうにもならない、そんな時――――――――――――そんな時は……仲間達の声を、思い出せばいい。
409名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 00:32:58 ID:uEYRa3/H
CC2は湯浅の下の名前をそろそろ公開(ry  vol.3と特典DVDで殆ど出番の無かった揺光に愛の手を? 何のことです?
おやすみおまいら
410名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 00:38:49 ID:sxVRNAzi
どこから突っ込んで良いんでしょうかwwww
GJ(*´д`*)ハァハァハァ
411名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 00:53:25 ID:kzmOHDWP
アイゴー吹いたwwwww

しかもハセヲの愚痴てかネタ凝縮されすぎw

……でも後半シリアス。

GJ!
いつか槐と絡んでくれんかねぇ。
412名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 01:43:55 ID:HthFEriT
エメラルドスプラッシュwwwww
ついにジョ〇ョまでもwww

超GJです!!!!!!
413名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 16:55:37 ID:4ckvKPn+
ゲキ・電王のみならずカブトネタまで出るとはwwwww
毎週毎週GJです!!!
414名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 18:01:47 ID:azZ4D86I
>ギリギリまで頑張って、ギリギリまで踏ん張って。>どうにもこうにも、どうにもならない、そんな時

ウルトラマンガイアキタ―――(・∀・)―――!
だから冒頭でガイア理論がwww
415名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 19:00:12 ID:1U11xXnT
>ガイア
そこまで考えてたのかこの人w
なんというGJ!!
416名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 20:12:53 ID:LE9sTzeU
>>414
あーそうだガイアだ!
思い出せなくてずっとモヤモヤしてたよw
有難う!!
417名無しさん@ピンキー:2007/08/06(月) 05:48:50 ID:RnGHmUna
いつもいつもネタの盛り込みがすごすぎる!
もうネ申ですな…!
418名無しさん@ピンキー:2007/08/06(月) 13:21:04 ID:cxUOzFwd
何気にウルトラマンネクサスも入ってるぞw
419名無しさん@ピンキー:2007/08/06(月) 13:22:37 ID:Xqs6v5jo
クウガもだ!
420名無しさん@ピンキー:2007/08/06(月) 18:01:28 ID:6FPWGiJu
>>彼は光。
>>彼は奇跡。
>>彼は強さ。

>>「(何のために……誰のために……あの力はあるんだろう……?)」


>(フラッシュ!)なんのために
>(ミラクル!)誰のために
>(ストロング!)あの力はあるのだろう


>>418 ウルトラマンダイナもある━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━!!!
421名無しさん@ピンキー:2007/08/06(月) 20:30:42 ID:UHu8nYtS
>>419
ホントだあああ!!
どっかで見たこと有ると思ったら…。おかげで気付けたぜ

他のネタがわからねえ自分が悔しい・・・
422名無しさん@ピンキー:2007/08/06(月) 21:38:16 ID:z2LhmMev
俺たちがやってきたことは無意味だったのかもしれない…

「クッ…」
ハセヲの周りにはアトリやクーン、パイ、エンデュランス、朔望、八咫、さらには
オーヴァンのPCが、いや、正確にいえばPCだったモノが横たわっている。
五体満足のPCはなく、どれも足や腕が千切れ、さながら再誕の爆心地にいたハセヲ
のようになり、色も失い至る所からデータの粒子が溢れている。
ハセヲ自身も例外ではなくあちこちにデータの損壊が見られる。ただ他とは違い、
胸の中心に大きな穴が空いてまるで心が抜きとられたかのようだった。
いや、実際ハセヲは心を抜き取られていた。自分の半身とも呼べる「碑文」が。
分かりきったことだと知りつつもハセヲは問う。

「クソッ…お前の目的は何々だ!?」

ハセヲの碑文を奪った男もそのことがわかっているのか淡々と答えた。

「全ての碑文を手に入れたとき、私は完全な存在となる」

予想していたものと変わらない答えにハセヲはどこで道を間違えたのかと彼と
出会った時のことを思い出していた。
423名無しさん@ピンキー:2007/08/06(月) 21:40:59 ID:z2LhmMev
突発的に書いた。続く予定はないけど今後の為に変なとこあったら教えてください。
424名無しさん@ピンキー:2007/08/07(火) 01:08:45 ID:JQQ6IMug
・ここはエロパロ。
・上げてる事。
・厨性能っぽさそうなオリキャラらしきやつが出てきそう。

この辺かな。
425名無しさん@ピンキー:2007/08/07(火) 01:23:43 ID:VN+MplFd
GU自体がぴろしワールドに則ったトンデモストーリーだからな
出てくる登場人物が精神的に病んだ奴多いのは何とかならんかったのか・・・とは思う
426名無しさん@ピンキー:2007/08/07(火) 04:18:04 ID:03cU4UWQ
GUは将来ちょっと・・・
な奴が多い

ま,最高の勝ち組はネトゲでもリアルでも成功してる太白先生じゃね
427名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 01:22:02 ID:nGOAZ+qi
餓鬼の頃ならあんなん腐るほど居る
428名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 14:05:14 ID:Xjzc0EzX
429名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 00:01:00 ID:bG7O57ba
終わらせねぇ………
430名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 04:55:00 ID:cGfnDWFN
おまいら乙
トーナメント2日目・揺光日常編投下
431名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 04:56:09 ID:cGfnDWFN

『人間というものは普段から目の前にあるものよりも、
 過ぎ去ったもの、無くなったものに、妖しいまでの愛着を持つものである』
  
                                       【兪 鎮午   元高麗大総長】























Gateway Utopia(理想郷への門).
こことは違う平行世界の1つにおいて、数見なる管理者が示唆したもう1つのRA計画。
だがこの世界に数見は存在しない。
八咫はG.U.の最高責任者のまま健在、碑文使いの反存在(影)として
出現したクビアによって引き起こされた“第3次ネットワーククライシス”も
ハセヲ達の活躍によって、多大な犠牲を出しつつも収集するに至っている。

それから約一ヶ月……《The World》から離れたユーザーを再び取り戻すため
催されたお祭騒ぎ、それが今回のトーナメント。
本来ならばただの大規模なイベントとして終わる、それだけのトーナメントだったはず。
だがユーザー達には予想外のサプライズが待っていた。
伝説のパーティ・ドットハッカーズを率いた、勇者カイトの帰還。
双剣と蒼炎を巧みに操る、噂に違わぬその強さ。
世界が歓喜する。
世界とは《The World》そのものであり、女神そのもの。
ネットの海に散在していた彼女の意識が、彼を求めて再び還ってくる。
いや、彼女が求めているのは彼だけではない。
もう1人……彼女にとって、とてもとても大切な人を求めて。




「あれが背面都市マグニ・フィ……闘竜マグメルド……か」

カイトのロストグラウンド発掘は続く。
次に彼が降り立ったのは《Θ隠されし 禁断の 古戦場》こと、コシュタ・バウア戦場跡〜驕れるあぎと〜。
公式設定では神と人の戦いの際、神々の使いである戦竜マグメルドと人族が戦った戦場とされる。
また黄昏の旅団とTaNがキー・オブ・ザ・トワイライトを巡って死闘を繰り広げ、
AIDAに感染したボルドーに揺光がPKされ未帰還者になるなど、何かと因縁も多い場所でもある。
432名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 04:58:40 ID:cGfnDWFN

「(既に石柱に5つのウイルスコア……いや、データシードが填め込まれてる……ハセヲ君達がやったのか)」

コシュタ・バウアから上空に浮かぶマグメルド……即ちマグニ・フィへと通じる唯一のルート。
当初は道が無ければ、腕輪の力で強引にゲートハッキングを行うことも検討したが
どうやらその心配も杞憂に終わったようだ。
この場所からは特に何かを感じることは無い……むしろ、上空のマグニ・フィから力強いものを感じる。
ここに発掘するべきものはない。向かうべきは背面都市マグニフィ。
理想郷(アヴァロン)を目指す―――――――――――そのためには、欠かせないモノを探しに。




「(街は完全に石化してる……どこもかしこも苔や蔦だらけ……霧で視界も良くないな)」

元々はエルフ族が暮らしていた古代都市だったそうだが、今は見る影もない。
だがカイトは都市そのものに興味はなかった。
理想郷(アヴァロン)への扉の気配も無い。
彼の興味は……そう、この都市を背面にして眠る闘竜にあるのだ。

「(……さて、と)」

右腕に備わった薄明の腕輪が輝きを増し、霧を晴らしてゆく。
それと同時に彼の姿がフッと掻き消えた。それこそ霧と混じり合うかの様に。
何処に消えた? 都市の中に彼の姿は無い。



「闘竜マグメルド……起きてくれないかな?」



彼は―――――――――――――石化したマグメルドの、眼前に佇んでいた。
どうやら足元に顕現した蒼炎がグルグルと廻りながら、彼の飛行を可能としている模様。
バルムンクの様に飛行可能な翼が無い、彼なりの飛行方法と言えるだろう。

「マグメルド……僕の声が聞こえる?」
《ゴゴゴ……我の眠りを妨げるのは誰だ……?》

悠久の沈黙を破り、石と化した闘いの巨竜が……勇者の問いに応えた。
口は開いていない。ただ、カイトの意識に呼びかけるように声が響いている。
カイトの持つ腕輪の輝きがに、眠り続けていたマグメルドの深い意識に触れたのだろう。

「はじめまして、だね。僕はカイト」
《……人間が、我に何の用だ?》

マグメルドの声には、明らかな怒気と憎悪が含まれている。
無理も無い。彼は神々の使いとして生まれた闘竜。
人族と戦った結果、コシュタ・バウア戦場跡の上空で眠ることを余儀なくされてしまったのだから。
神を殺し、この世界の覇権を握った人間を嫌って当然と言えるだろう。

「マグメルド、僕は理想郷(アヴァロン)を探しているんだ。
 理想郷を探すために、そして理想郷を守るために、君の力を貸してほしい」
《……我が、人間に与するとでも思ったのか……愚かな……!》

事前に公式HPで《The World R:2》の設定を理解していたつもりでいたが……やはり、この竜はかなりの石頭らしい。
けれど、マグメルドの助力は理想郷探索に欠かせない要素。僕達には、夕暮竜の加護が必要なのだから。
433名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 04:59:57 ID:cGfnDWFN

「この世界を守るためには、どうしても君の力が必要だ……お願いだよ」
《くどい、騙されるものか! 去れ、人間……!!!》

マグメルドの助力を得られないとなると、後は
《Θ隠されし 禁断の 竜骨山脈》こと、竜骨山脈ブリューナ・ギデオン〜死せる太陽〜に眠る
太陽の神タラニスに従っていた真竜ギデオンしか残っていない。
だが、ギデオンには申し訳ないのだが戦力的にはマグメルドの方を優先したい。
来たるべき、深淵(アビス)の軍勢との戦いに備えて――――――――――――――。

「……どうしても、ダメなのかな?」
《我を従えることができるのは神族だけ……例外は無い……!》
「僕が、この世界で唯一の“影持つ者”でも?」
《なんだと……!?》

カイトの身体から生ずる蒼炎が爆ぜ、周囲を覆っていく。
そもそもマグメルドとこうやって対話すること自体、一般PCには無理な芸当なのだ。
その時点で、彼を疑うべきだっただろうに。

《貴様……ただの人間ではないな……!》
「さあ、どうだろうね……」

黄昏の碑文の一説にはこうある。


夕暮竜を求めて旅立ちし影持つ者、未だ帰らず。
ダックの竈(かまど)鳴動し
闇(ダック)の女王ヘルバ、ついに挙兵す。
光(リョース)の王アペイロン、呼応して
両者、虹のたもとにまみゆ。
共に戦うは忌まわしき“波”。
アルバの湖煮え立ち
リョースの大樹、倒る。
すべての力、アルケ・ケルンの神殿に滴となり
影を持たざるものの世、虚無に帰す。
夕暮竜を求めて旅立ちし影持つ者、永久に帰らず。


――――――――――と。
勇者サヤは夕暮竜を探しに旅立ったまま、結局戻ることはなかった。
彼は神々と禍々しき波の戦いに間に合わなかったのだ。
サヤが夕暮竜を連れて戻っていれば、戦況は持ち直したかもしれない。
けれど、黄昏の碑文が世界の終末を描いた物語である以上、彼の未帰還は決定事項。

結局、影を持たぬ者らは亡び、影を持つ者は勇者サヤのみとなった―――――――――。

《そうか……貴様は勇者サヤ! 夕暮竜を求めて旅立った、最後の“影持つ者”か……!》
「飽くまで、そういう設定だけどね」
《おめおめとよく戻ってこれたものだな……貴様が間に合っていれば、神々は亡びずに済んだものを!》
「うーん。それは僕の責任じゃないから、何とも言えないんだけど……」

カイトからすれば、それは《The World》に予め用意された設定である。
だが、この世界には不思議な自立性がある。
現に碑文にあるように彼は7年前、神々(アウラ、ヘルバ、リョース)と共に禍々しき波(モルガナ、八相)と戦い、
こうして新たな夕暮竜候補を探して、マグメルドの前に現れたではないか。
戦いは終わっていない。碑文の物語は、カイトがこの世界に帰還したことで、再び動き始めた!

「でも、だからこそ今度の戦いには勝たなきゃいけない。だから、君の力が欲しい……」
434名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 05:01:57 ID:cGfnDWFN

《我を従えたければ……我の前で力を示してみせよ……サヤ! ゴゴゴゴ……!!!》
「(マグメルドが……動き出す……!?)」

遠く旧い記憶を呼び起こされ、闘竜は暴竜と化す。
ミシミシと巨大な石の体躯にヒビが走り、全身を駆け巡ってゆく。……起きるのだ。
永きに渡って眠り続けていた神々の使いが、神々に勝利し、黎明期を迎えた人族の時代に。
当然、彼の背面に聳えるマグニ・フィは……遥か、目下の奈落へと堕ちて行く。
エルフによって築かれた古代都市は、本当の意味で滅びを迎える――――――――闘竜の目覚めと共に。



《オォォォォォォォォォォォォ―――――――――――――――!!!》
「くっ……すごいや……!」



ギャオス並の耳を劈く咆哮は、思わずリアルでも頭を押さえる程のもの。
頭の芯にまで響く雄叫び……かつて対峙したクビアを軽く越える巨大さに圧倒されてしまう。
それはそうだ、彼の背中に都市が建造されたくらいなのだから。

《従えたければ……貴様の力を示せ! 神を裏切った臆病者でないことを、見せてもらおうか……!》
「そうすることでしか君の助力を得られないなら……僕は戦うよ」

できれば話し合いで彼を仲間に迎えたかった。神の御使いと戦うのは7年ぶりか。
あの時はモルガナの尖兵たる八相が相手だったが……今度の相手は、文字通りスケールが違いすぎる!

「(最初から本気で行かなきゃ……!)」

未帰還者にされることはないだろうが、信頼を得るには彼に勝たなければダメだ。
古来より竜退治は勇者の使命でもある。
ドイツの英雄叙事詩「ニーベルングの歌」にて英雄ジークフリートが名剣バルムンクを伴って悪竜退治をした様に
(ワーグナー作の楽劇「ニーベルングの指環」ではノートゥング。
またジークフリートは妻ブリュンヒルデ救出のために、道を遮るヴォータンの槍を破壊している。
かつてCC社のデバッグチーム「碧衣の騎士団」の騎士団長だった神威こと柴山咲、
彼女の上司であり、やはりCC社のデバッグチームの1人だった渡会一詩こと連星のアルビレオが
装備していた放浪AI用デバッグアイテムも神槍ヴォータンである)。



「あぁぁぁ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――――ッ!!!」



彼も負けじと吼える。
渦巻く蒼炎が、マグメルドの巨体に勝るとも劣らない程に熱く猛り、激しく、強く、燃え上がってゆく。
握り締められた虚空の双牙の花弁がガチャッと音を立てて開き、彼が臨戦態勢に入ったことを物語る。
だが何よりも大きな変化が彼にはあった。
彼の、カイトの髪が長く長く伸びていたこと。
蒼き炎の中に佇む。その髪長の姿は宛ら幽鬼を思わせるに十分。
バチバチとスパークが走り、それまでの彼ではなくなったことを如実に現している……!

《ゴゴゴゴ……蒼炎の守護神……! 守るべきものも無い貴様が、神を気取るか……サヤ!》
「時間が惜しい。マグメルド……早く始めよう」

エスタークを10ターン以内に倒せば仲間になる……などと信じる者は、もう居ない。
もはや10ターンだとかそれ以前の問題。つまるところ、これは伝説との闘いである―――――――。
435名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 05:03:47 ID:cGfnDWFN

『どんな些細な勝利でも、一度自分に勝つと人間は急に強くなれるものである』

                                     【マクシム・ゴーリキー  ロシアの作家】















太白に勝たなきゃいけないって時なのに。……なのに、何故だろう。アタシはあの頃を思い出している。
まだアタシがハセヲと出会う前……正確には、湯浅が転校してしまう前のこと。
アタシにとっては、平凡な日常の1ページに過ぎない。でも、そんなのどかな日常こそが、幸せだった。
雨に打たれ、風で流され、傷ついても守りたい愛がある……そんなことを誰かが言っていた気がする。
でも、あの頃のアタシには――――――――――まだ、そんなヒトは居なかった。

「倉本ー。カラオケいこーよぉ」
「カラオケェ〜?」
「そーそー。倉本の好きなアリ何とかの新曲も入ったらしーしさぁ」
「アリプロだよ」

放課後、同級生達がアタシにそんなことを言ってくる。
かく言うアタシは図書館の受付当番に行くべく荷物を纏めていたトコロ。
まだ残暑が続くと言っても、北海道の秋は本州に比べて少し肌寒い。
でも校則違反に引っ掛かるものの、アタシをはじめとする何人もの女子が
制服のリボンとシャツの第一ボタンを外し、更にはジャケットのボタンも全開で、つまんないアピールしてる現状。
何てゆーの? 自己主張したい年頃?

「んー悪いけどさー。アタシ、今日は図書委員の仕事あるから」
「サボっちゃえばいいじゃん。サボタージュ〜、サボタージュ〜!」
「サボると潤香の説教が長くなるからパス」
「潤香? 2年の仁村先輩のこと?」
「その仁村先輩だよ」

仁村潤香。アタシより1つ上の2年生で図書委員長。
髪が長くて、背が高くて、美人で頭もキレるけど性格は最悪の、あの仁村潤香。
3年生の委員長が最近引退したから潤香が委員長を引き継いだんだけど……
人をこき使って悦び見出しちゃうような性格の女なもんで、アタシは何かと気苦労が多い。
おまけに本人は準備室に「非常食」と称したお菓子を持ち込んで入り浸る始末……よく先生から苦情こないよな。

「あの人さぁ、レズって噂あるけどマジなの?」
「レズぅ〜? 潤香がぁ〜?」
「だって倉本、仁村先輩と仲良いって話だし」
「そりゃね、仲は良い方だとは思うけど」

まぁ、女子校みたいな閉鎖的な空間にありがちな噂話の1つだよねぇ、こーいうのって。
誰が誰を好き、とか誰が○○先輩に告った……とかさ。
生物学的にありえないだろ、さすがに……てか、みんな潤香に何求めてんだか……。
436名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 05:05:10 ID:cGfnDWFN

「まー現場に遭遇したことはあるね、何回か」
「マジすか!?」
「アタシらと同じ1年だと思うけど……本棚を背にして、潤香にイロイロされてた」
「た、例えば?」

早く図書館に行かなきゃいけないってのに、
ますますこの子らは目を輝かせてアタシに話の続きを強請る。
教室の暖房が効き過ぎているのか、顔を赤くしながら聞き入る子も……あー暖房のせいじゃないね、これ。

「そーだなぁ。こんな感じ?」
「ちょっ!?」

友人の1人に詰め寄って、目撃した時のシーンを限りなく再現するアタシ。
首の辺りに顔を寄せつつ、都合よく開いてたジャケットの中に手を滑り込ませて
シャツ越しに胸を触る……ってか掴む。それも焦らすようにゆっくり、ゆっくり。

「くっ、倉本っ!? そういう趣味が!?」
「ないよ」

とまぁ、アタシが見た時の状況はまさにそんな感じだったかな。
さすがにこれ以上続けると今度はアタシにレズ疑惑が向くかもしれないんで
さっさと解放してやった。ん、さすがにブラは付けてたか……。

「はーっ、はーっ、ビ、ビックリしたぁ……倉本がレズの波動に目覚めたかと……」
「め、目覚めさせられても困るよ、アタシだって……」

さすがにアタシも潤香みたいに慣れてないせいか、やった後に少し恥ずかしくなった。
でも倉本智香は常にクール、こんなコトで慌てないよ。
飽くまで平静を装えば、アタシが《The World》で見せてる様な醜態は見せなくて済むはず……。

「てか、そんなことしてるんだったらやっぱレズじゃん、仁村先輩」
「最初はアタシもそう思ってさ、だから本人に聞いてみたんだよ。直接」
「に、仁村先輩は何て……?」  
「本人曰く『あたしはノーマル。好きな男くらい居るから、いらん心配するな』だって」
「ホントにそう言ったの?」
「アタシも聞き返したよ、そりゃ。
『じゃあどうして何人も女の子とっかえひっかえして図書館に連れ込んでるんだ?』って。
 そしたら『ただの暇潰し。あたしは暇を潰すことにおいても頂点に立つ女だ』とか言われたよ」
「ひ、暇つぶし? 暇つぶしでそんなコトしてるんだ、仁村先輩……」

傍目から見ればサイテーだよねぇ。
大半の子は大真面目に潤香とお近づきになりたい、って気持ちだっただろうに
ちょっと味見して飽きたらポイだもん……レズ疑惑よりもそーいうところに焦点が当たらないのが不思議だよ。
そう言えば、3年の先輩も何人か潤香にフラれたって話、聞いたことあるぞ……
潤香が誘ったんじゃなくて先輩の方から潤香に……な、何て言うんだろ。
この場合、交際ってことになるのかな?
とにかく「お友達になりましょ」って声かけて、潤香が「だが断る」って感じでフッった、って。

「統計学的に見てもさ、アタシら女って好奇心が強いって言うじゃん?
 潤香もアレだよ、ちょっとフザけてみたい年頃……そんな感じなんじゃない?」
「く、倉本は仁村先輩にそーいうこと……」
「一度もないなー。アタシは潤香の範囲外なんじゃないの?
 潤香に告ってる子も、大人しそうな子が多いし……」

湯浅みたいなノーマルの子も単純に「仁村先輩って頼りになるなぁ……」とか、暗黒面知らずに尊敬してるっぽい。
アタシも何度か潤香に「人の気持ちを弄ぶようなコトすんのはヤメロ!」って言ってみたけど
軽く「あの子らだって本気であたしと付き合おうとは思ってないよ」って、その度にも笑われた……何か、悔しい。
437名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 05:07:15 ID:cGfnDWFN

*****************






「智香、遅刻」
「はーい。スンマセンでしたー委員長サマー」
「おばあちゃんが言っていた……“時間を守れない人間は、時間どころか何もかも守れない”って」
「(また始まった……だから遅刻するのは嫌って言ったんだ……)」

智香の説教はコレだから嫌だ。
いつもおばちゃんの話を引き合いに出して、ワケの分からない説教を始める。
おばあちゃんと言うのは潤香の母方のおばあちゃん、仁村タキ江さんのこと。
アタシも潤香の家に遊びに行った時、何回も会ってる。
北海道に越してくる前は美大入試のための塾で講師をやってたらしい。
父親不在の仁村家においてはタキ江さんが大黒柱的存在で、
尊大な態度の潤香もタキ江さんの言うことはちゃんと聞くんだ……家の中、限定で。
でも世界で一番尊敬しているのは間違いないようで、こうやっていつも……って、いくら何でも長くないか?

「潤香、今日は本の整理するんだろ? さっさとやろうよ」
「反省してる?」
「してるよ」
「……ここにある本、新書のコーナーに持ってって。
 古い本とかは湯浅達が担当してる、あたしとあんたと他数名は新書担当」
「分かった」

地味な作業だけど、これやらないとみんなが本を借りれないからなぁ。
本のラベル貼りは昨日、他の子達がやってくれたおかげで
アタシらは肉体労働担当になって、ってワケ。
寒くならないうちに、さっさと終わらせるか……。

「このライトノベルとかはどうする? 新しいのはテーブルに置いて目立つようにしとく?」
「ラノベ読んでいいのは中学生まで。誰も見ないだろ」
「読みたい、って要望があったから仕入れたんじゃん……」
「募集する度、同じよーなのばっか送られてくるのはどーしたもんかな。
 どいつもこいつも馬鹿の1つ覚えみたいに“銀髪”だの“オッドアイ”だの“日本刀”だの“○○の血を引く戦士”だの……」
「アンタはいつからラノベ大賞の審査員になったのかと小一時間」

同人活動やってるアタシとしては、少しだけ耳が痛い話だ……まー潤香の言いたいことも分かるけどね。
みんな流行りのアニメとか漫画に影響され過ぎなんだよな……今の同人業界も似たようなもんか。
アタシの場合も小説系だけど、三国志なら妙な影響受けることないし(はわわっ、ご主人様、敵が〜とかは論外だね)。
10年前の2007年は角川とか京アニ関係が業界を圧巻してたらしいけど、今じゃ……ね。
あ、そっか。2005年に起きた第一次ネットワーククライスのせいで、みんな暇だったのか?
2007年のクリスマスになるまで、ネットは利用制限されてたんだし……。娯楽、なかったんだろうな……。
あの頃、アタシいくつだっけ? 2007年なら……6歳か。
アタシがネット始めたの最近だし……あの頃は全然興味、無かったもんねぇ。
今はラノベ読んだりアニメ見たり、プレステやDSで遊ぶよりも《Thw World》とか他のネトゲに熱中する人、増えたしさ。

「智香。洋書の新刊はそこじゃない、こっちに置く」
「あ、やば。ごめん」
「まったく……あんたは今まで食べたカップ麺の数を覚えているのか? 妻夫木の夫木は、不器用の不器か?」
「潤香もつまんないこと言ってないで手伝いなよ」


アタシの日常は刺激に満ちている。じゃあ、いつからだろう。《The World》に刺激を求め始めたのは――――――?
438名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 05:09:59 ID:cGfnDWFN
勇者サヤのサヤってやっぱカイトの声優の相田さや(ry 
蒼炎の守護神ver.の長髪カイトはXXXX(イクスフォス)2巻の200ページ目を参照? 何のことです?
おやすみおまいら
439名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 05:24:40 ID:/TDK+jDR
Gjjj!!!
つかカイトテラ勇者wwwww
440名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 07:16:18 ID:5NqDaomn
ディオ様www
441名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 08:00:46 ID:r3SiIqpt
絶対超サイヤ人3を意識しただろうと小一時間w
442名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 08:53:02 ID:Lsej8YIp
>XXXX(イクスフォス)2巻の200ページ目
>超サイヤ人3

ttp://www2.ranobe.com/test/src/up13137.jpg

これか。
ぴろしの落書きだと思ってたのに・・・w
443名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 08:58:18 ID:+rFDpoIq
GJすぎるwwwww
444名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 13:44:28 ID:kn6oBWPO
GJ!
て、カールテラDIO様
445名無しさん@ピンキー:2007/08/11(土) 02:40:35 ID:sKvf3i5b
丸一日以上遅れちまったけどGJ!!!!!!!!!
それにしても・・・・・・・





カイトテラ勇者wwwww
446名無しさん@ピンキー:2007/08/11(土) 17:12:44 ID:YPBR0D1S
何気に七星いるな。
447名無しさん@ピンキー:2007/08/11(土) 19:21:01 ID:3DP5td/0
カイト勇者すぎるだろww
448名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 03:08:25 ID:joNMGKp/
おまいら乙
トーナメント2日目・揺光VS太白決着編投下
449名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 03:09:35 ID:joNMGKp/

『行動だよ。
 何もしないで、ある日突然に潜在能力はあらわれはしない』
 
                                       【勝沼精蔵  日本の解剖学者】



















「(くっ……届かない……)」

図書館の本整理が始まって30分が過ぎようとしていた頃。
アタシに試練が訪れていた。
……本棚に本を入れたいのに、届かない。
手を伸ばしても、あともうちょっとってとこで背が足りないんだ。
しかもこういう時に限って踏み台がない。
自慢じゃないが、アタシの身長は160にも満たないんだ。
世間じゃスモール系とか言ってるけど、よーするにそれってチビってコトじゃん。
体育の時もいつも前だし…くそぅ。

「智香? 何してんの?」
「げっ」

何冊かの本を抱えた潤香がこっちにやって来る。
何食べたら、あんなに背が伸びるんだ?
坂本竜馬の姉さんの乙女さんが五尺八寸あって、
当時は大女だったらしいけど潤香も負けちゃいないね。いや、絶対勝ってる。

「そこの本棚済んだなら、あっち手伝ってやれよ」
「す、済ませたいんだけどさ……」
「あん?」

訝しげにアタシと、本の収納が終わっていない本棚を交互に見て、潤香が意地悪くニヤッと笑う。

「あっはぁ〜ん? 
 智香ちゃん、もしかして手が本棚に届かないのかな? かな?」
「うぐっ……!」

ア、アタシが背が低いの、それなりに気にしてるって知ってるクセにィ〜!
これだから背の高い女は嫌いなんだよっ。

「ったく……貸してみなって」
450名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 03:11:10 ID:joNMGKp/

アタシから本をひったくると、潤香は背伸びもせずに
すんなりと遥か上の本棚に手を伸ばして本を収納してしまう。
ものの数秒でアタシの試行錯誤は無駄に終わってしまったワケだ。

「届かないなら届かないで、台を使えばいいだろうに」
「だって、無かったし……」
「アタシが声かけるまで、ずっとそうしてるつもりだったのか? 時間の無駄でしょ、それ」
「……背の高い潤香には分かんないよ」

つまりは、負け惜しみだ。背だけじゃない。
頭の良さとか顔立ちとか腰とか脚の細さとか……オトコには分かんないと思うけど、
アタシら女にとっては結構、いやかなり重要なコトで、アタシは潤香に負けてる
(そりゃ1年と2年だから、しょうがないっちゃしょうがないけど)。
唯一勝ってるのは……胸? 

「つまんないコトでいじけても、しゃーないじゃん?」
「……いつも皆から誉められてる潤香に、分かるワケない」
「ふぅ〜ん?」 

潤香が長い髪を揺らしながら更に近づいてくる。
顔は怒っちゃいなかった。むしろ無表情?
でもアタシは経験上、無表情の時の潤香が一番ヤバイことを知っている。
なのに、魅入られたように脚が動かない。
“図書館の魔女”とか潤香を呼んでいる人も居るらしいけど、まさにソレ。
でもアタシからすれば、おジャ魔女って感じ。

「あたしが皆に誉められてる……ねぇ? マジで言ってんの?」
「だって、潤香は頭良いし、美人だし……背、高いし……」
「じゃあ聞くけどさ智香? あんたは、評価されるだけの何かをやったのか?」
「えっ……?」

あとほんのちょっとで互いの唇が触れ合いそうなくらいに、潤香が迫ってくる。
けど、潤香に襲われる……とかそういうコトを考えるよりも、コイツの言葉が残響となって
アタシの頭に何度も響いたのが分かった。
“あんたは評価されるだけの何かをやったのか?”……潤香は、アタシにそう言った気がする。

「あたしはやった。親に心配かけたくなかったから」

そうだ、前に聞いたことがある。
潤香は小学生の頃まで東京に住んでたけど、学校で問題起こして、その後こっちに越して来た……って。
それ以前に、潤香にはお父さんがいない。
何か潤香が問題を起こせば、潤香のお母さんとおばあちゃんの責任が問われてしまう。
だから、潤香は極力“良い子”を演じるのだと。

「背が低いのが嫌なら、牛乳飲むとかニボシ食うとか選択肢があるだろう? それでも伸びない奴は伸びないけどな。
頭悪いなら、机に噛り付いてでも勉強すりゃいいだろう? 美人になりたけりゃ、もっと女磨けばいいだろう? 
“お前は良いよなぁ……どうせ俺なんか……”ってセリフはね、何度も何度もやってみて
 それでもダメだった奴しか吐いちゃいけないセリフだって知ってる?
 やりもしないうちから“どうせダメだ”とか“どうせ才能ないから”って愚痴って楽しい?
 聞かされる側は、そゆこと聞かされんのウンザリだってのが……どーして分からないかねぇ?」
「アタシは別に、そういうつもりじゃ!」
「愚痴じゃん。構ってちゃんが見え見えなんだよ」
「!」

アタシは……何かをしたんだろうか。
誰かに認められるだけの努力とか……してたんだろうか、今まで……?
451名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 03:12:02 ID:joNMGKp/

「あたしに説教されんの、悔しい?」
「……どうしろってのさ、アタシに」

泣いちゃいない。でももう声が涙声だった。
人前で泣くのは恥ずかしいことだって信じてるアタシは、誰かの前でなんか泣かない。
けど潤香に面と向かってああいうこと言われて……アタシは、初めて自分が何もしていないことに……気づいた。

「べっつにぃ〜? あんたの人生だし、あんたのしたいようにすりゃいいじゃん。
 あたしも誰かに説教されんの、キライだし?」
「じゃあ……」
「おいマクフライ、靴の紐が解けてるぜ」
「え? 痛っ!?」

視線を足元に向けた途端、パコンと頭を本で叩かれた。
てか、うちの学校は上履き制だから靴の紐なんてないし! マクフライって誰さ?
頭を擦りながら見上げてみると……さっきまでと違い、もう潤香は無表情でも怖い顔でもない。
アタシの知っている、いつもの意地の悪い仁村先輩の顔に戻っていた。

「な、何すんのさ!」
「くだらんコトで悩むな、それだけ」
「……!」
「そうそう。智香には、そういうボケーっとした顔の方が似合ってる」
「んなっ!?」

ア、アタシがいつボケっとしたよ、いつさぁ〜っ!?

「おばあちゃんが言っていた……“出会いは神の御業、別れは人の仕業”、ってな。
 いや、これはおばあちゃんじゃなくて、別の誰かだったような気がする……はて?」
「つまり、何が言いたいって!?」
「ふふん。智香はあたしがいなきゃダメダメってコト」
「だ、誰がダメダメだよっ!」

アタシ的には強く抗議したつもり……だったと思う。
でも潤香には全然効いてなくて、さっきよりも断然近い接近を許してしまった。
えっと……これって……アタシ、襲われてるんじゃ……?

「ばっ、馬鹿! 皆も周りに居るってのに……!」
「……だから、なに?」

潤香はアタシを本棚に押さえ込んだまま、特に何をするでもなかった。
ただじっと、アタシの顔を見てる……本当にそれだけ。
……くそぅ、間近で見るとホント美人だな。これで黙ってりゃ、もっと良いのに。

「……どしたの? 他の子にしたみたく、ア、アタシにヤラしいコト……するんじゃないのか?」
「友達は襲わない」
「……えっ?」

制服越しに伝わってた潤香の体温が離れてゆく。
耳元で確かに「友達は襲わない」と、潤香の声が聞こえた……アタシ、潤香の友達?
友達だから、アタシを心配してくれたってコトなのか? ねぇ、潤香……?
その答えを聞く前に、アタシに迫った時に落とした本を拾い上げ、去ってしまった潤香は……最後にこう呟いていた。

「あぁ、思い出した。おばあちゃんじゃない……昴だ」

と。その時の潤香の顔は見ることが出来なかったけど……懐かしそうな声、だったよ。
452名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 03:13:51 ID:joNMGKp/

***********************












『た、太白選手の容赦ない攻撃が、揺光選手のHPをガンガン削ってゆきますッ!
 カール選手も天狼選手も手を出そうとしない今の現状は、まさに太白選手の独壇場!
 これぞ太白ゾーン、いやアウターゾーンと言っても過言ではありません! 私は案内人(ストーカー)のミザリィィィィィィ!!!』
『ちっせぇ妖精が包丁持って襲ってくる話は、確かに怖かった!』


智香……どうして反撃しねぇ!?
早くしねーとマジで負けちまうぞ!
リアルで何かあって、コントローラーを動かせねぇってワケでもなさそうだ……
なのに、どうしてああやってずっと太白の攻撃を受け続けてる……!?

「揺光、どうしちゃったのかなぁ? やられっぱなしだぞぉ〜!」
「う、うん……」
「揺光さん……」


「……解せんな。
 お前の性格からして、やられ続けるというのは性に合わんだろうに」
「さぁねぇ……忘れちまったよ、そんなもん!」

太白のレア銃剣・シュレディンガーの特殊効果「ガードキャンセル」の前で防御は無意味。
ならば、防御せずに相手を攻撃する隙を伺うしかない。
何か特別な才に秀でている、というワケでもない揺光が太白に勝てる可能性があるとするなら……それは。

「ならどうして動かない? 腰が引けたか? 元紅魔宮の宮皇の揺光……」
「んだとっ!?」
「腰抜けに用は無い……!」

太白の攻撃スタイルが、それまでのものからフェンシングに似たものへと変わったかと思うと―――――――
凄まじい速さの踏み込みと共に繰り出された一閃が、揺光の胸を突く。
瞬間的に揺光もヤバさに気づき、半歩ほど下がってダメージを軽減させたようだが……大ダメージは必至!
人体の急所を知り尽くした太白にとっては何でもない一撃、されど揺光にとっては生死を分ける一撃……それ程の威力。


『うわぁぁぁぁぁっ、キツイ、今のはキツイですっ!!!
 みずいろ初回プレス版をアンインストールしたらHD(ハードディスク)まで
 初期化されてしまったのと同じくらい、キツイ一撃のクリティカルヒットが炸裂ゥ――――――――――――――!!!』
『やめてくれ、思い出したくもねぇ! ……にしても揺光の奴は、もう後がねぇぞ!』


「(ちっ……ちょっと遅かったかっ!)」
「無駄な抵抗は止めておけ。あと一撃でも攻撃を受ければ、お前は負ける」
「……かもね」
453名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 03:15:06 ID:joNMGKp/

「けど、誰にも腰抜けなんて言わせない……アンタにもっ!」
「この状況でよくそれだけの大口が叩けるものだ」

落ち着け。
これまでも揺光は紅魔宮を一度は制した。
その上の碧聖宮、竜賢宮にもいつか挑むため、必至になって鍛錬を続けてきたはず。
皆に評価されるだけのことは、してきたつもりだ。
でもまだ足りない。
こんなのハセヲが――――亮が越えてきたものに比べたら、あまりにもちっぽけだ。
自分が亮と一緒に歩くためには、こんなところで立ち止まっている暇なんかありはしない。
越えなくてはならない。より自身を高みに。もっと……もっと高く(Take Me Higer)!

「おい……」
「慌てんな。もしもの時はあたしが太白を殺る……」

口ではそう言いつつもカールは微動だにしない。
色々な意味で揺光を……倉本智香を信じているから。
例え結果的に、明日、彼女を裏切ることとなっても。


『揺光ォ――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!』


観客席から一際大きな、叫びにも似た声援が響く。
ハセヲだ。
あれだけ応援なんてガラじゃないと言っていたハセヲが、身を乗り出して揺光に叫んでいた。
周囲のシラバスやガスパーらも彼の意外な行動に驚きつつも、すぐに一緒になって声援を送っている。
独りじゃない。
届かない声なんて、きっと無いのと……同じ様に。

「へっ、へへ……どいつもこいつも、心配性なんだから……」
「彼らの声援も無駄に終わるだろう……あと数秒もしないうちにな」
「いいや、終わらせはしないっ!」

満身これ胆なり。
揺光が三国志で一番好きな武将・趙雲子龍はそう諸葛亮孔明に称されていた。
長坂破の戦いにおいては劉備の子・阿斗を抱き、たった1人で百万の曹操軍の中を駆けたという。
彼は幼少期から天才的な槍の使い手で、魚を傷つけないように目だけを突いて漁をしていたとされる。
目……太白にとって最大の武器であり、最大の弱点である目を狙うしかない。
でも、どうやって?



湯浅、委員会の帰りにラーメン食べてこーよ! アタシ、味噌バターラーメンな。

―――――あの、えっと……でも……。

アンタって何ラーメンが好きなの? ねぇ、湯浅ってば!

―――――メ、メガネが曇らないラーメンなら、何でもいいです……。

あはは、曇るくらいなら外して食べりゃいいじゃん!



「(メガネが……曇る……! これっきゃないっ!!!)」
454名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 03:16:42 ID:joNMGKp/
「……バクドーン!」
「!?」

メラメラと揺光の手の中に顕現する炎。だが撃つ気はないらしく、手の中に留めたまま。
魔法の専門職ではないので威力はないのは揺光も承知済み……今更、どうしようと言うのか?
先読みの可能な太白もこれは虚を突かれたらしいが、攻撃の体勢は崩してはいない。

「またバクドーンか……最後の悪あがきにしては賢明とは言えんな。
 先程魔女が見せたものに比べれば、それは蝋燭の灯火の様なものだ」
「そうだね……ちょっと風が吹けば、消えちゃうかもしれない……それでも、アタシは前に進むっ!」

見えない今日の風に立ち向かってゆく。いつまでも守りたい、その微笑みを。
アイツの笑顔のために。皆の笑顔のために。

「(アタシは……皆が……七星が……カールが……ハセヲが居てくれたから……!)」

かつての揺光なら、ここまで踏み込むことはできなかっただろう。
でも今なら……背中を後押ししてくれる皆が居る。
守りたい人が……守ってほしい人が居る。
思い出せ、紅魔宮の宮皇を目指していた頃の直向きさ。
空を見ろ、夜空に輝く星は最後の一瞬まで輝くことを忘れはしない。
熱く蘇れ、紅魔宮の宮皇としての誇りの気力(エナジー)。もっと、強く在るために!

「終わりだ……!」
「アンタがなっ!」

いよいよ太白が決着をつけようと揺光に踊りかかった寸前、
彼女は手の中のバクドーンと、ラッキーアニマルコンプの景品“幻の双剣”を同時にぶつけ――――――――
瞬間、轟音が響いたかと思うとモクモクと煙が生じ、全てを覆い隠した……!

「(これは……水蒸気爆発……!?)」

視界が曇り、思わず揺光を見失った太白はとっさに考える。
水蒸気爆発とは即ち、水が非常に温度の高い物質と接触した場合に気化が一斉に誘発され、
圧力の急激な上昇によって発生する爆発のことである。
だが、温度の高い物質(バクドーン)はともかく、揺光はどこにも水など……。

「(! あの双剣!)」

揺光が大切な友人から譲られたと言っていた、あの“幻の双剣”。
ただのクエストクリアの景品程度、レア度が高いだけの武器と思っていたが……属性まではチェックしていなかった!
何属性? 答えは明白、バクドーンとぶつかり合ってここまで大規模な水蒸気爆発を起こせるとなると
十中八九あの双剣は水属性の武器だ。レアアイテムにはカスタマイズは施せない。

「(揺光は……!?)」

声は出さない。
出せば相手に気づかれる。
0.5秒先の未来を予測可能な太白も、まさか揺光がここまで知恵を働かせることができるとは想定外。
だが十分に対処はできる。自分がここまで視界が悪いということは、相手の視界もまた悪いという証。
待つのだ。
揺光のジョブが双剣士である以上、どう足掻いても接近戦に持ち込んでくるしかない。
相手はあと一撃で負けるかどうか、カールと天狼も恐らくは回復などという無粋な真似はしなはず。
勝てる……目が利かなければ耳を使うのみ! 前から来ようが後ろから来ようが上から来ようが……問題はない。

「(……来た!)」
455名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 03:18:06 ID:joNMGKp/

爆発で生じた水蒸気の霧の中で、風を切る音がする。
闘いの途中で何度か聞いた、揺光の双剣の音だ。
近い。すぐにも近寄ってくる。どこから? ……音は上空から! 今度は確実に仕留めるッ!

「捉えたッ……塵球至煉弾!」

銃戦士最強の技(アーツ)、塵球至煉弾。上空に向けて銃を三連射する大技。
けれど……アーツを出した瞬間、それこそ0.2〜3秒あるかないかのうちに、太白は違和感を感じる。
上空に捉えたはずの揺光の気配が、何故か、自身の背後にある……そんな違和感を。


                     反撃(ハンゲキ)!!!


「(何ィ――――――――――ッ!?)」
「はぁぁぁぁ……無双ッ!!」

太白が振り向くよりも早く、アクセルを解き放った揺光は
ハセヲからプレゼントされたフンボルト油(移動スピード25%アップ)を事前に
アクセサリにカスタマイズ、スピード強化を行い、千載一遇の機会を逃すまいとアーツを発動させる!

「隼ァァァァァ――――――――――――ッ!!!」

アーツの特性のため、初撃で太白の身体が宙に浮く。
同時に揺光の斬撃が疾った、それこそ目にも止まらぬ速さで。
途中、跳躍が最高位にまで達した時、彼女は上空で何かを掴むような動作を見せる。
よく見れば、先程までの彼女は2本の双剣のうちの1本でしか太白を斬りつけてはいなかったようだが……。

「(双剣のうちの1本を上空へ……私にアーツを出させ、回避不可の反撃を繰り出すために……ッ!?)」

上空でキャッチしたもう1本の双剣。
2本を構え、渾身の力で思い切り太白を叩きつける!

「落としィッ!!!!!」

ドスン、とステージに鈍い音が木霊する。
太白と揺光、互いのアーツの出し合いで完全に霧は晴れた。
立っているのは……揺光。


『きっ、決まったァァァァァァ―――――――――――!!!
 重いッ、スクールデイズの続編、サマーデイズの1G(ギガ)修正パッチ並に重い一撃ですっ!!!
 2017年現在、この記録を破る大容量修正パッチは未だ存在しませんっ!!!
 揺光選手、あの小さなPCボディのどこにあれ程の力を残していたのでしょうかッ!?
 突如起こった水蒸気爆発により、今の素晴らしい攻防をじっくり見れなかった方のため
 カメラにて捉えたスロー映像をもう一度ご覧ください! うーん、素晴らしい一撃ですね!』
『霧隠れの術……カカシや再不斬が得意なアレだな。しかし、よく土壇場で思いついたもんだ! てぇした女だぜ!』


揺光のまさかの大反撃にワッと沸くアリーナからの歓声。
認めたのだ、皆が。
例え残りHPが僅かだろうと、最強の宮皇と謳われた男に挑んだ彼女の勇姿を。
……だが。

『う、うわぁぁぁ!!! たっ、たたた、たっくん! じゃない、太白選手ッ! たッ、立ち上がりましたぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
『……元竜賢宮の宮皇の、意地ってやつだ!』
456名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 03:19:40 ID:joNMGKp/

「(剣が片方だけだったから、完全には仕留めきれなかった……!?)」

双剣として攻撃を加えたのは、最後に太白をステージに叩き付けた一撃のみ。
それまでは片方の剣でのみの攻撃だったため……太白を倒すには至っていなかったと言うのか……!?
どうする? 試合の残り時間はもう後僅か。
もうさっきの様な小細工は通用しないだろう。
逆に今の攻撃で太白を冷静にさせてしまった可能性もある。
頭脳戦なら、どう考えても勝機はない……!

「今のは……見事だったぞ」
「……!」
「私の予測を超える者が現れるとはな……驚いている」
「こっちも驚いてるさ……まだ立てるなんてね……!」

どうする? どうする? どうする? カールと天狼に助けは求めたくない。
かなり無謀な賭けになるが、魔法屋で購入した回復魔法で自力回復するか(回復量は通常戦闘の半分だが……)?
いや、ダメだ。回復量が大きいと詠唱の時間も長くなる。
それに、例えリプスのような少量の回復魔法でも、詠唱中の隙を太白は見逃さないだろう。

「私にとって……私以外のPCは、皆オブジェだった」
「えっ……?」
「プログラム上の制約と……
 プレイヤーの神経反射内で予測できる行動を繰り返すオブジェクト……
 それが、私がこの世界における、私以外の“他人”への認識だ」
「だ、だから……だから、何だってのさっ!?」
「だが……どうやらお前とハセヲは違うようだ……。
 ただの調査のつもりで始めたこのゲームに……こうして私はのめり込んでいる……
 どうやら、いつの間にか……私自身が、オブジェになってしまっていたようだ……この世界の、な」
「アンタ……何を言って……」

太白は静かに語る。
もう数十秒前に見せた迎撃時のような気迫はない。
静かに……何かをやり遂げたかのように、呟いている。

「お前と、ハセヲと、そして勇者カイト……新しい可能性(サンプル)に……期待している……」

ドサリ。
そういい終わると、かつて《The World》最強とまで呼ばれた男は……ゆっくりと地に伏した。
HP0。つまりは戦闘不能……リタイヤ。チームリーダーたる男の敗北。
スチームガンナーがスチーム(蒸気)を使った作戦に敗れるとは、何たる皮肉であろうか。
だが答えは至ってシンプル……揺光の覇気が、太白の王者の資質を上回った……それだけのこと。




『しっ、試合終了ォ―――――――――――――――――――――!!!!!
 トーナメント2日目・最終戦を制したのは揺光チ―――――――ムゥゥゥゥッ!!!
 しかし敗れた太白チームも太白選手、三郎選手ともに本当に熱く素晴らしい闘いを披露してくれました!
 実況やってて良かった、本当に良かったっ……そんな試合でした! 初めて自分で自分を誉めてあげたい気分です!
 そして、そしてっ、揺光チームは明日のトーナメント最終日、つまりは決勝戦進出が決定だァ――――――――――ッ!!!!!
 決勝の相手はもちろんハセヲチームですっ! 大火様、本当に楽しみですね!』
『今夜は勇者の飛び入りがあったりと面白かったな! 明日も楽しみだ、かっかっ!』
『明日の決勝は全世界同時生中継のエキシビジョンマッチとなります! それでは、また明日お会いしましょ――――――――!!!』


長い長い夜が、ようやく終わりを告げようとしていた―――――――――。
457名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 03:21:44 ID:joNMGKp/
積んでたエロゲをそろそろ攻略(ry 3日目はもっと長いんですけどね? 何のことです?
おやすみおまいら
458名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 03:48:16 ID:tIXocDSY
………何か眼が覚めて何となく携帯でスレの流れチェックしてたら
( ̄口 ̄)
とっ、投下されてるじゃねーか!
初リアルタイム遭遇に驚きつつGJGJGJGJ!
もうGJとしかいえねぇ…
マクフライとか深夜におもいっきし吹いちまったじゃねーかwwwww
今回もネタ盛り沢山乙でした。
459名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 04:01:45 ID:ZDOhdKXw
GJ!
ネタ盛り込みすぎwwwwwww
460名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 04:48:27 ID:5xsAEh7T
ペース速いな、調子良いんだろうか?
ようやく二日目が終わったのかw

そしてGJ!次も楽しみにしてますよ
461名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 04:49:04 ID:5xsAEh7T
うは、sage忘れスマン……
462名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 06:31:35 ID:axx0UT96
GJ!

揺光の「評価されるだけ〜」のセリフカールの受け売りか。
横手さん……続き書いてくれねえかな。

まあここで満足だけどさ!
463名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 12:59:27 ID:VbMbT12D
バックトゥザフューチャーきたwww
464名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 13:54:43 ID:CZ/Cg/nZ
まさかと思いつつ覗いてみたら・・・もうキテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!!!

超GJ!!!!!!!!
465名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 17:55:58 ID:bN00gV6O
ティガネタまたキタ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━(・∀・)━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
466名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 21:21:30 ID:VuVMsVcA
誰かカール×ハセヲ書いてくれないかな‥‥
467名無しさん@ピンキー:2007/08/13(月) 12:42:08 ID:0g4k88yP
クウガネタがまたあったw
そして昴にちょっと懐かしくなった

GJ!
468名無しさん@ピンキー:2007/08/14(火) 06:19:33 ID:ClAusvqp
>>466
vol.11で既にあるがもう過去ログって見れなくなったんだっけか・・・?
469名無しさん@ピンキー:2007/08/14(火) 10:27:06 ID:2JyxxE8C
>>9のところで見たような。
470名無しさん@ピンキー:2007/08/14(火) 21:51:26 ID:sK7csEyv
vol.12の738,739に親切な方がまだ見られるリンク書いて下さってたけど……

一応頭のh消して転記したら良いのか…
471名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 06:10:25 ID:I2E01anS
おまいら乙
トーナメント2日目終了・ハセヲ×揺光編投下
472名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 06:11:32 ID:I2E01anS

『人間というものは、ちょっと隙があったほうが、人に好かれるものだ。
 一点の非もない人間よりも、どこか隙のある人のほうが人に好かれる』

                                        【斎藤茂太  日本の精神科医】



















「勝ったぁ〜! ハセヲ、揺光が勝ったぞぉ〜!」
「ハセヲの応援が届いたんだよ、きっと^^」
「んなっ……!?」
「ハハ、照れるな照れるな! このこの!」
「必ず最後に愛が勝つ、って言いますしね! ね、ハセヲさん?」
「お、おまえらなぁ……!」


……と、とっさに叫んじまったのは、しょーがねぇとしてだな。
智香が太白に無事勝てて……内心、ホッとしてんのはマジだ。
かなりギリギリの闘いだったからな……よく耐えたもんだ、智香も。
あいつ、あんな器用な戦い方もできたのか……ちょっと驚きだぜ。

「でもぉ、これで明日の決勝はぁ、ハセヲと揺光のチームの試合になっちゃったねぇ」
「どっちが勝ってもおかしくないもんね。僕もハセヲと揺光、どちらを応援すればいいのか分かんないし……^^;」
「いーじゃないの、両方応援すればさ。な?」
「そうだぞぉ。ハセヲも揺光もカールも、オイラ達の大事な仲間だぞぉ」
「ハセヲさん、明日の試合がんばってくださいね!」
「……わーってる」

俺のチームはかなり妙なメンバー構成になっちまってるけどな。
ぴろし3の代わりにメンバーに加わった勇者カイト……
俺がグリーマ・レーヴ大聖堂で出会った三爪痕(トライエッジ)にそっくりなアイツ……
蒼炎のカイト、だっけか? どーにも信用ならねぇ。
なつめは狂信的ってか妄信的にあいつのコト信じちまってるけど……何て言えばいいんだ?
あいつとはどっかで会ってる気がすんだよ。

「そろそろ揺光達が控え室から戻って来る頃じゃないか?」
「迎えに行ってあげたらどう? 一応、アンタの奥さんでしょ?」
「う、うっせーな! 言われなくたって行くに決まってんだろ!」

くそ、パイの奴……自分が婚期逃そうとしてるからって僻んでんじゃねぇのか?
しゃーねぇな。カールと顔会わせるとまた何か言われるの覚悟で、智香迎えに行ってくるか……。
473名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 06:12:59 ID:I2E01anS

******************




「あ、ハセヲ!」
「よぉ。決勝進出おめでとさん」
「へへっ、まーね!」

あれだけ太白にやられたってのに、元気なもんだ。
けど、智香だけじゃ多分負けてたはず。
天狼とカールは常に威圧を続けてたしな……それに、三郎が戦闘不能になってなきゃ、もっとヤバかったかもしれない。
もし、揺光が太白に絶対に勝てない状況に陥ってたら……カールは問答無用でデータドレインを使ってた。
パイから聞いたぜ。
てめえが持ってたあの赤い鎌、巫器(アバター)ってんだろ?
憑神(アバター)を武器に具現化するとは考えたじゃねぇか。
確かにそれなら、俺が榊にスケィスのことを他の連中にバラされた時みたいな騒ぎにゃなんねーだろうからな。

「……」
「あんだよ」

そんなことを考えていると、カールと目が合う。
いや、実を言うとこの女、試合中もそれとなく俺のこと見てやがったんだ。
何に期待してんだか……でも、とりあえずはこれで約束は果たされた。
明日の決勝に上がってくる、そして決着をつけるって。

「べっつにぃ? 明日の決勝、すごい楽しみ……ねぇ、“楚良”?」
「……ふん」
「カール……」
「揺光、あたしはもう落ちるぞ。ちゃお」

そう呟くと、魔女は夜のルミナ・クロスの闇に紛れて去って行く。
―――――やっぱりだ。
あいつはもう、俺への興味をすっかり失くしてる。
俺を見ながら俺を見ちゃいねぇ……俺の中の、楚良を見てやがる……。

「ハセヲ……」
「大丈夫だ。気にしちゃいねぇ」
「ならいいけど……」

智香には昨夜、俺と楚良、そしてカールの確執を話してある。
明日の決勝の結果次第じゃ、俺達の関係もこれまでかもな……覚悟してかからねぇと。
最悪、俺はカールに殺されるかもしれない。肉体的な死じゃなく、精神的な死で……。

「俺ももう落ちようと思うが……いいか?」
「う、うん。今夜はありがとな、天狼」
「おい、ハセヲ。明日の決勝、誰にもやられるんじゃないぞ。お前を倒すのは、この俺だと言うことを忘れるな……」
「へっ。劇場版のベジータみたいなセリフ抜かしやがって……死亡フラグだぞ、それ」
「……じゃあな」

天狼も落ちる。
アトリの言ってた通り、太白をブン殴った時の天狼の踏み込み速度はただゴトじゃなかった。
マジで太白が0.5秒先の未来を読むことが出来たとしても、天狼のパンチは太白の脳みそが
「パンチが来る!」って危険信号出す前にブン殴ってることになんだしな。
明日はあいつの攻撃にも要注意だ。今までは脚技だけに警戒してたけど、今度は拳も警戒しなきゃいけねーってことになるし。
俺の仲間にも拳術士(グラップラー)がもっと居ればな……なんでパイだけなんだよ。斬刀士は7人も居るし……。
474名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 06:14:20 ID:I2E01anS

「2人っきりに……なっちゃったね……?」
「そーでもねーぞ」
「えっ?」
「ヤジ馬どもが集まり始めてやがる……」

ただでさえ、明日の決勝で戦うってのに加えて……挙式まで挙げて夫婦だしなぁ、俺ら。
そりゃ目立つわ。ハセヲと揺光、どっちも階級は違うとは言え宮皇経験あるし。
つか、あの勇者の奴が言ってたみたいに俺の格好がタカラヅカみたいなせいもあるとは思う。
恨むぜ、欅。

「智香、どっか適当なタウンに逃げるぞ」
「じゃあ【Θ 蒼穹都市 ドル・ドナ】にしようよ。色々、話したいコトあるし……」
「プレイ時間、大丈夫か?」
「ん、あと2〜30分なら怒られずに済みそうかな」
「分かった、ドル・ドナな」







***************





ドル・ドナはケルト語で「全知全能」、光の神ルーの幼名なんだそうだ。
大昔、空から落ちてきた遺跡都市が高山に引っ掛かって、
そのままクレイマー・テイル(ショップで商売してるアヒルの獣人達だな)が住み着いたらしい。
俺にはあんま馴染みの無かったタウンだ。PKKやってた頃は殆どマク・アヌを拠点にしてたし。
天狼を倒して碧聖宮の宮皇になった特典で、ギルドがこっちに移動した頃が懐かしいぜ。
でも、ここの雰囲気は悪くない。木漏れ日の光と、広がる海と、木の葉と共に舞う風。
老後はこういう所に住んでも悪くねーかもな。

「……凄かったよな」
「何が」
「勇者だよ。勇者カイト!
 どうしたらあんな闘い方できるんだろ、ってくらいにすごかった……。
 あの蒼い炎とか、まるで生きてるみたいに操ってたし……勇者専用のスキルなのかな……」
「まぁ……間近で見た俺が言うのも何だけど、感じはしたぜ。アイツがメチャクチャに強いってコトは」

蒼炎のカイト、蒼天のバルムンク、蒼海のオルカの3人で蒼三騎士……だっけか。
アウラの生み出した対AIDA用のあいつらとは違うんだよな?
第一、あのカイトって奴は明らかにプレイヤーが居るみたいだった……。
でもあの強さはねーよ、どう見ても双剣士ってレベルじゃねぇ。
特にあの炎……智香の言ってるように勇者専用スキルかどうかは知らねぇが、攻撃も防御もこなすってスゴすぎだろ。
アレだ、双剣士ってよりは魔法騎士(マジックナイト)って感じだな。

「でもハセヲ、どっか調子悪いんじゃないのか? “がび”との試合、どう見ても本調子じゃなかったけど……」
「欅にも一応相談はしてみた。原因は俺自身にあるんだと」

いつも跳べないハードルを、負けない気持ちでクリアしてきたけど、出し切れない実力は誰のせい? 
……って、楚良のせいに決まってる。昨日からあいつが試合中にブツブツ言うせいで、思うようにPCが操れねぇんだよ。
475名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 06:16:06 ID:I2E01anS

「明日の決勝、カールが何か仕掛けてくるかもしれないんだぞ……ホントに大丈夫なのか?」
「いざと言う時は憑神を使ってでも、あいつを止めるっきゃねぇ。それに……友達なんだろ、お前の」
「……うん」

今のカールは……どこか榊やオーヴァンに似てる。“死の恐怖”なんて呼ばれてた頃の俺にも。
目的は違うけどよ、俺も、オーヴァンも、榊も……何かを求めて戦っていた。
あいつが楚良を手に入れるために俺と戦うつもりなら、相応の覚悟で戦ってやるだけ。
パイからも決勝でカールの憑神、スケィスR:1に注意するよう言付かってる。
カールにもゆずれない願いがあるんだろうけどな、こっちにも目指さなきゃいけねぇ未来があんだよ。
明日の夜が……俺達の分岐点だ。

「そ、それにしても、ドル・ドナって何か開放的な気分になるよなっ!?」
「お前はここに来る度に北京ダックだの何だの言ってるけどなw」
「うっ……だ、だって、見てると美味しそうに見えてくるんだもん……」
「次に東京来た時は、横浜の中華街にでも連れてってやるさ」
「ホント!? やったぁ!」
「(そんなに北京ダック好きなのか……北海道じゃ滅多に食えねぇもんなのか?)」

あーでも俺んちがちょっとばかり金持ちってのもあるか。
いつも思うけどよ、北京ダックは焼いた皮だけじゃなくて身にもかぶりついてみてーんだ。

「で、でも開放的な気分になるってのはホントだよ!
 こう、『んちゃ!』とか『キ――――ン!』とか言ってみたくなるってゆーかさ……」
「ペンギン村!?」

クレイマー・テイルはペンギンじゃなくてアヒルなんだが……。
そのうち超能力使うオカマの将軍や、世界一の殺し屋が柱に乗って飛んで来たりしねーだろうな?
レッドリボン軍とやり合う気はねーぞ、俺。

「あらぁ? ハセヲ達じゃないのぉ〜?」
「あん? お前……柊か? げぇっ……何やってんだよ、こんな所で」

最初は誰だか分からなかったけど、特徴的な声で分かった。コイツ、PC変えたんだっけか。
もう1人は槐って奴だな。てか……ドル・ドナで何やってんだ、コイツら?

「げぇっ、とは失礼しちゃうわぁ〜。
 今日はもう試合も終わっちゃったしぃ、この子とパーティ組んで遊んでただけよぉ。ねぇ、槐?」
「是(は、はい)」

そーいや、松と一緒に昨日トーナメントに出て柊も槐も一回戦で揺光達に負けてんだよな……。
オカマ将軍と世界一の殺し屋……あ、強ち間違っちゃいねぇのが怖ぇ。
欅から聞いてるぜ。
槐は榊直属の暗部の隊長で、持ってる武器は相手のIDを強制的に書き換えて一定期間ログイン不能にしちまう、ってな。

「そろそろ落ちようと思ってたらぁ、アンタ達が居たから声かけてあげた・だ・けw」
「我正感謝称……我的送了双剣使用……(ありがとう……私のあげた双剣使ってくれて……)」
「へっ? な、何?」
「じゃ〜ね〜♪」
「再会(ま、またどこかで)!」

何だったんだ、アイツら……?

「ね、ねぇ。あの槐ってヤツ、アタシに何か言ってたけど……な、何だったんだろ?」
「さーな。お前の知り合いじゃねぇの? それかファンとかw」
「うーん。そう言われると、どっかで会ってる気もする様な……?」
「縁がありゃ、またいつかでどこかでバッタリ会うだろうよ」
476名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 06:17:41 ID:I2E01anS

「それはともかくお前、いいのか? プレイ時間」
「あ、あと15分ちょっとなら大丈夫だよ」
「ん。なら、ちょい歩くか」

ギルドがタルタルガに移動しちまった以降はあんまドル・ドナに来てねーしな。
時間つぶしに一緒に歩くくらいは智香も許してくれるだろ。
なぁ? 

「あ、あのさ」
「どした?」
「……手、繋いでいい?」

……いいも何も、俺ら夫婦じゃん(飽くまでゲーム内で、だけど)。

「なに遠慮してんだ?」
「い、いや、だからさ!
 亮ってゲームの中でも、そういうことするの好きじゃなさそうだし……い、一応、断りくらいは……」
「あのなぁ……あれだけの人数を挙式に呼んでおいて、今更そりゃねーだろ」
「そ、そうかな? アタシが恥ずかしがり屋なだけ、なのかな……?」
「手だろ? ほら」
「あ……」

頭一個分よりも背の低い揺光……智香の手を取って、手を繋いでやる。
まぁ、俺だって恥ずくねぇワケじゃねぇけど……他の奴に見られたって、構いやしねぇよ。
俺の方から智香と付き合いたいってメールした結果、こいつ東京まで押しかけて来るし……
と、泊まってからの3日間、ずっと俺と一緒に居たし……こうやってゲームの中とは言え、結婚までしたしな。
今更どーこー言っても始まらねぇ。なら開き直った方がいい。頭空っぽの方が夢詰め込める、って言うだろ?

「これでいいんだろ?」
「……うん!」

まだまだ恋愛初心者だよなぁ、智香も。
そういう俺も初心者だけどな。くそ、今頃になってパイが言ってたことの意味が分かってきた気がするぜ。
恋愛の駆け引きは初心者同然、ってヤツな。普段勝気な分だけ2人きりになると急に甘えてくるしな、智香。

「亮、変わったよね……」
「そーか?」
「アタシが東京に行った時さ、お台場で手繋ごうとしたらスゴイ嫌がってたじゃん!」
「あーそんなコトもあったな」

不思議だ。
ちょっと前のコトなのに、もう随分と前のことの様な気がする。
そーいや、智香と初めてキスしたのもお台場か。レインボーブリッジ見ながらしたんだっけか。
智香の奴、舌まで入れてきて……にゃろう、カールめ。
俺の前に智香の味見しやがって……明日は楚良のコト抜きでもアイツと戦わなきゃいけねーみたいだな。

「りょ、亮?」
「何でもねー。明日の決勝が楽しみになってきただけだ」
「そ、そうなんだ? ……うん、アタシもね、結構楽しみなんだ。
 ……カールが、妙なことやらかすんじゃないか、って不安もあるけどさ」

智香も……女の勘?で分かってるんだろうな、カールのやろうとしてるコト。
コイツのためにも明日は何があっても負けられねェ……絶対だ。

「カールは俺が死んでも止めてやる。そう心配すんなって」
「馬鹿、亮が死んじゃったらアタシが困るだろ! 未亡人は嫌だからなっ!?」
477名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 06:19:50 ID:I2E01anS

「死なねぇよ」
「え……?」
「俺は、お前を残して死んだりしねぇ」

口じゃ強気なこと言ってても、何だかんだで智香は怖がってる。
そりゃそうだ、碑文使い同士が同時に憑神を使用すれば互いの憑神空間同士が干渉し合って暴走の危険が高くなるからな。
カールがスケィスを使ってきたら、当然俺もスケィスを出さざるを得なくなる。
しかもパイの話だと俺が以前、グリーマ・レーヴ大聖堂で戦った時とは比べモノにならねぇくらいに
強化されてるそうだぜ……あの渋柿色の包帯巻いたスケィス。

「カールがくだらねぇコト考えてるようなら、あいつの頬っぺたにキツイ一発喰らわせてやるぜ」
「……無茶すんじゃないぞ、約束だから!」
「ああ」

どうせ行けども獣道、獅子が吠えようが虎が吠えようが知ったこっちゃねぇ。
結果的に俺のこの身は汚れちまっても……智香は、心の錦を信じてりゃいい。

「カールは……俺が、絶対に止める」
「うん……」

カール……俺達が殺め合うように求めるしかねぇってのなら、そうしてやるよ。
命削ぐように愛しちまったのが運命(さだめ)ってんなら、それでもいい。
俺が修羅になったように……お前も修羅になっちまえ。
それで今度こそ全て取り戻せるってんなら……やってやろうじゃねぇか。
けど俺は負けねぇ。クーンが“自分に挑め”って言ったみたいにな。

「智香は……いつも通りに試合やってりゃいい。どうせ憑神は一般PCには見えやしねぇから……」
「うん……うん……!」

でもカールの巫器(アバター)は他の連中にも見えていた……何故だ?
不安要素が無いワケじゃないがもう後には引けない。
俺の智香へのこの想いだけは、けして穢れぬように。この想いだけは絶対に渡さねぇ。
今となっちゃ俺のカールへの想いも、もう意味を成さない。アイツが俺への興味を失って楚良だけを見てる現状だしな。
これが愛か憎しみなのか……答えが必要だと思うか? 
そりゃカールは愛してるだろうよ、俺の中の楚良を。でも俺はカールを仲間とは思っちゃいるが、愛してまではいない。
俺にはもう智香が居るから……だからもう無理だ。俺は、お前を愛せない。

「死んじゃ、ヤダから……」
「嘘は吐かねぇって約束したからな……あの時、風呂の中で」
「! バッ、バカバカバカッ! こッ、こんな時に、何てコト言ってんのさぁ〜ッ!?」
「ハハ」
「ハハじゃなーいっ!」

明日は絶対勝つ。カールにも、楚良にもだ。
とは言え、俺の憑神もカールの憑神も同じ“第一相 死の恐怖スケィス”だし……どうしたもんか。
“死は天使の和毛を匂いをさせて舞う”ってアリカ姉さんも言ってたし、用心するにこしたことはねぇけどさ。
あの炎や光の矢を同時に何発も撃つ奇術めいた技も要注意か。
俺達の憑神が死を司るものである以上、互いの憑神空間が干渉すればマジで互いの心身に何が起こるか分からない。
死(タナトス)と生(エロス)が手を取り踊り巡る欲望カルナバル……そんな素敵空間になっちまったりすんのか?。
何せ俺のスケィスは全ての碑文を喰らっちまってる。これ以上の碑文の摂取はヤバイ。

「俺は大丈夫だから、心配してんじゃねーよ。な?」
「……信じてるから!」

お前を裏切ったら、あの蒼穹に磔刑にされちまうんだっけか? じゃあ尚更負けるワケにはいかねーよな。
……今日はもうログアウトして、メールのチェック済ませて寝るか。にしても、やけに長い夜だった……。
478名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 06:22:32 ID:I2E01anS

【そして3日目の夜がやって来る……】




胸の奥で震えてる 光と影を抱きしめたまま


―――――俺は……ハセヲと楚良……どっちになれば……いい……? なぁ、オーヴァン……。


捨てきれない夢を追いかけて 誇り高く愛はよみがえる


―――――んふふ。コッペリア〜のひ・つ・ぎ♪


夕焼けの色が 切なく綺麗で


―――――グリーマ・レーヴ大聖堂……ここから見る夕焼けが、僕は一番好きだな。ハセヲ君はどう?


閉ざしていた心の海に こぼれた涙


―――――いらない、いらない、いらないっ! 楚良があたしのものにならないなら……もう、こんな糞みたいな世界、いるもんかっ!!! 


輝きは2度と戻らない 明日吹く風のような自由がほしい


―――――そーだねぇ。もう十分遊んだっしぃ〜、僕ちんもそろそろ……還ろっかにゃ〜?


胸の奥で震えてる 光と影を抱きしめたまま


―――――白の皇子ハセヲ……黒の皇子楚良……7年の時を経て、やっと……1つに……。


捨てきれない夢を追いかけて いつか見つけたい


―――――きみは……誰? 楚良……? それとも、ハセヲ……? ねぇ……?


果てしなく広がる未来を


―――――2人は1人、2人で1人……獣の刻印は解かれた。生まれるぞ……真の“黄昏を開く鍵”が……。




【これは約束の3日間。3日間だけの英雄劇。4日目に待つのは、理想郷を巡る闘い―――――――】
479名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 06:24:18 ID:I2E01anS
トーナメント2日目終了?
作者都合により8月末まで休載させていただきます? 何のことです?
おやすみおまいら
480名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 07:15:01 ID:WfFoXZUg
GJ!ネタ含みすぎだw
481名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 10:14:10 ID:VgKlvVNa
GJ。引きの台詞がまた良いな……

休載か、なるほどそれでペースがはやかったわけだw
たかが二週間位過去ログ読み返して待ってるぜ!
482名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 10:14:47 ID:VgKlvVNa
またやったよ…スマンorz
483名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 10:28:22 ID:3hhrL70g
GJすぎるwwwwwwwwwwwww
マジこれで本出せそうな気がする…
484名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 12:11:58 ID:1B3gyyyN
GJっすよ!
次回が気になるよ!
485名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 15:14:29 ID:BVJtofat
いつもいつもGJです!!
いつにもましてネタが多かった気がww
486名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 18:40:24 ID:bMQOBlyf
>木漏れ日の光と、広がる海と、木の葉と共に舞う風。
>アレだ、双剣士ってよりは魔法騎士(マジックナイト)って感じだな。
>いつも跳べないハードルを、負けない気持ちでクリアしてきたけど、出し切れない実力は誰のせい? 
>胸の奥で震えてる 光と影を抱きしめたまま




魔法騎士レイアースキタ――――――(・∀・)―――――― !!!!!
放送当時狂ったように見てたの思い出して泣けてきたwwwww
487名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 23:22:10 ID:Z2qQxI9m
続きキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
ていうかこれは決勝戦絶対アバター戦だよね!!!!
超超wktk!!!!!!!
にしても次の更新までが長いなぁ・・・・・
488名無しさん@ピンキー:2007/08/16(木) 00:01:24 ID:6vuuqdW4
>>486
地方UHFで再放送してるから今でも狂ったように見てる俺がいるw
489名無しさん@ピンキー:2007/08/16(木) 02:08:44 ID:nYMTc8qR
>>478の元ネタが分からない人は

ttp://www.nicovideo.jp/watch/1177985727 フルサイズ版
ttp://www.nicovideo.jp/watch/1176829382 トライエッジ版

を見れば分かるはず。知らない人も多そうだが・・・。
490名無しさん@ピンキー:2007/08/16(木) 13:29:44 ID:Fs/lcqTm
>>479
ゲーム未プレイな俺に、一番壮絶な現実バレキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!

だがこのクオリティなら、それでも別に良かったと思えるからGJ!!!!
491名無しさん@ピンキー:2007/08/16(木) 16:32:01 ID:VrxQpNbB
揺光×槐を期待していたリアルの俺は…
492名無しさん@ピンキー:2007/08/16(木) 20:38:29 ID:bT4+4nxR
>>477
勇侠青春謳、阿修羅姫、薔薇獄乙女、月蝕グランギニョル、コッペリアの棺、亡國覚醒カタルシスと
アリプロのメジャー曲ネタもかなり揃ってきたね…カールにはどの曲も合ってる気がするから不思議だwwww
493名無しさん@ピンキー:2007/08/17(金) 01:14:54 ID:aCzLQwMt
>蒼三騎士
誰も突っ込みいれてないけど、蒼三ではなく三蒼騎士ですな
それともあえて間違えたのかな?だとしたら余計でしたな
まあ、それを補いあまってGJです
494名無しさん@ピンキー:2007/08/17(金) 23:35:55 ID:5QkzjgDX
ああ、蒼三騎士ってなんか語呂悪いと思ったら、それか。
495名無しさん@ピンキー:2007/08/18(土) 21:43:11 ID:6BicavG/
ただの定期アゲだ。気にするな
496名無しさん@ピンキー:2007/08/19(日) 19:54:37 ID:1Vd9+x34
>>495
……。

夏真っ盛りだな。
497名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 20:39:30 ID:9DggzECd
>>380
さすがにそろそろ書き終わった頃じゃないのかな・・・?
498名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 00:01:10 ID:Ulvh9QHF
だといいな(*^_^*)

このパロ書いてる人は神だな。
499名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 00:58:37 ID:93m0SuwL
もう作者一人と信者しかいない
500名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 06:13:16 ID:fTbdVytn
>>499
俺がずっと思っていたことを言ってくれてありがとう
501名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 07:27:18 ID:D+et+tu0
これでまとめが機能してくれたらなぁ
502名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 14:31:55 ID:ZzI8hhDl
>>501
まとめてくれてんのにそういうこと言わないよろし

まぁWikiの方がよかったかもしれんがね
503名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 23:19:46 ID:ouT3UPJx
毎日毎日続きが上がってるか見ちゃう俺ってどうなの?w
504名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 00:37:50 ID:qEGFiWNl
気が早すぎだっつのw



……と言いつつ俺もここにいる
505名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 23:05:03 ID:DtdyQI/I
今晩も来ちゃったよw
506名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 06:36:11 ID:G28NtyIO
うざい報告をわざわざして行かないで下さい。sageて下さい。
507名無しさん@ピンキー:2007/08/25(土) 01:20:19 ID:MNxnH4dg
これが信者の力か・・・
気持悪いな
508名無しさん@ピンキー:2007/08/25(土) 05:31:15 ID:U+BaOI8t
たまには普通の作品も見たいな
509名無しさん@ピンキー:2007/08/25(土) 19:10:13 ID:T7dsguzS
久々に見にきたが偉くこのスレ雰囲気変わったな
510名無しさん@ピンキー:2007/08/25(土) 22:43:18 ID:szoEhDga
夏休みだからな
511名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 00:29:40 ID:xh5/Itf0
昔は職人さんが沢山いたのに
今じゃあ一人しかいないし、その一人を神扱いした信者のが新参を妨害している。
512名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 05:32:03 ID:O1UcNPyu
>>511
別に妨害はしてないと思うが・・・

燃料がないんだし書き手が減るのは仕方ないな・・・
513名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 06:20:26 ID:wz3gjmOc
神まだかなまだかな!とか信者レスが続いてるところには
別の人(特に新規)が作品を投下し辛いだろってことだろ。
しかも感想すら書いてないただの信者の馴れ合いばかり。いい加減に自重しろ。
514名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 08:33:54 ID:h73t4MtZ
まぁこういう議論をしてるところが一番投下しづらいのですが。
作品投下されるまで保守以外はROMった方がいいね。
515名無しさん@ピンキー:2007/08/28(火) 12:54:07 ID:G63Nd5Ra
皆が期待しているのは他の職人が居ないから…と言うのもある気がする

ほし
516名無しさん@ピンキー:2007/08/29(水) 00:51:23 ID:wNEqDSz9
最近のはネタばかりに目が向けられて
内容について話されないな
517名無しさん@ピンキー:2007/08/29(水) 01:54:51 ID:lQTAweDQ
楚良とかカイト登場あたりから先が読めなくてwktkしだした
カールがヤンデレ気味になって、どんなふうに壊れるのかワクワクなんだぜ、、、
ネタはともかく設定見てるとCC2の社員じゃないかって思う時がある。
518名無しさん@ピンキー:2007/08/29(水) 04:12:00 ID:fuFBXSxX
職人たちのほとんどはたぶん別ジャンルにいっちゃっただろうしな
最後の希望だぜ
GORREは…まあ…うん
519名無しさん@ピンキー:2007/08/29(水) 06:50:46 ID:3eUs7ZPb
>>517
>ネタはともかく設定見てるとCC2の社員じゃないかって思う時がある。
だからこういう過剰なマンセーが信者と言われる理由じゃないかと
前から思ってたけどそもそも社員って意味分からんし。2chのファンフィクしか呼んだこと無いのか?
520名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 12:29:46 ID:GHftdOLx
前だって18Rの人だけでもってた様なもんじゃないか
521名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 16:21:17 ID:zvj6p1AW
保守しといてやるよ
522名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 19:41:34 ID:oK69Vkc6
なんか久しぶりに来たら荒れてるなあ・・・
523名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 03:30:35 ID:YUwDXeve
おまいら乙
トーナメント3日目前夜編投下
524名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 03:31:38 ID:YUwDXeve

『世界の災いの一つは、何か特定のことを独断的に信ずる習慣である。
 理性的な人間なら、自分が絶対に正しいなどとむやみに信じたりはしないだろう。
 私たちは常に、自分の意見にある程度の疑いを交えなければいけない』

                                       【ラッセル  イギリスの哲学者】


















《Another Chapter 大黒なつめの場合》

女性特有の細い指がカタカタとキーボードを軽快に叩いてゆく。
かつてこれ程までにメールを打つのが、もどかしいと思ったことがあるだろうか?
あるとすれば7年前、意中の彼に告白のメールを送信した時以来か。
跳び箱を飛べたら、彼に告白しよう……今思えば、少女時代の甘い思い出。
今思い出しても身悶えして、顔から火が出そう。

「(結局、良い返事は貰えなかったけど……)」

最初から返事は期待していなかたので割切ってはいるけれど、それでもこの想いは続いている。
ぴろし3に「7年もとある男をストーカーしている」などと茶化されたところで
揺るぐようなものではないのだ、これは。

「(だって帰って来たんだもん! カイトさんが、帰ってきてくれたから……!)」

トーナメント2日目の試合。
“がび”チームの猛攻の前にハセヲチームが窮地に立たされていた時、彼は現れた。
蒼い炎を纏って、7年前と変わらぬ姿と声で、自分の名前を呼んで……『遅くなってごめん、なつめ』と。
ものの数秒でなつめを追い詰めていたアスタとIyotenを屈服させたあの強さ。
彼は全く変わっていない。
あの頃のままの……どんなとんでもないことが起きても、必ず何とかしてくれる。
そんな不思議な気持ちにさせてくれる雰囲気を持っていて、それでいて瞳の中に強い意志を秘めた人。
次々とかつてのドットハッカーズ達が《The World》を引退していく中で
彼が、カイトが帰ってきてくれたことが……なつめには嬉しかった。

「(ぴろし3が結婚記念日でトーナメントに出れなくなったことに感謝しなきゃ……)」

愛妻家の彼のこと、会社も休んで何処かに家族総出で旅行にでも行ったのかもしれない。
いずれにせよ明日の決勝戦にもカイトが共に出場してくれる。
それだけでドキドキが治まらない。
7年間もプレイしているのに、ブランクのあるカイトの方が現役以上の強さを見せているのだ、
彼の前ではドジを踏むことは許されないのだ。
525名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 03:32:56 ID:YUwDXeve

「(なつめ、がんばっちゃいますよぉぉ〜〜〜!!!)」

何と言うか……人間は思い込み次第で意外と何でもこなせる時がある。
7年前、15歳だったなつめは料理のレパートリーが3種(ハンバーグ、スパゲティ、カレーライス)しか
なかったが、カイトの好物が肉じゃがであることを知るや、すぐに調理法を覚えた。
仲間の女性呪紋使いから

『仕上げにバターをのっけるとね、安い肉でもコクが出るのよぉぉ\(^0^)/』

とアドバイスを受けて実践すると確かに美味く、家族からの評判も良く自信がついたものだ。
ちなみにぴろし3(当時はぴろし)から

『疲れた時は、焼いたバナナに梅ドレッシングをかけて食すと良いぞ!』

というアドバイスも貰ったことがあるのだが、怖くて試したことはなかったりする。
焼いたバナナに梅……どんな味なのか? あまり想像したくない。
元々なつめの大黒家はそれなりの良家なので、別になつめが調理をせずとも
出前くらい取ることもできるのだが……女のプライドがそれを許さず、以降もなつめの料理修行は続いた。
家元を離れて独り暮らし中の今では、随分とレパートリーも増えた。
もういつ嫁に行っても恥ずかしくはないだろう。無論、誰の所に嫁ぐかは7年前から決まっているワケだが。

「(でっ、でも私まだ22だし、カイトさんは21だし……は、早過ぎなんじゃ……!?)」

しかし法律的にはどちらも結婚可能な年齢に達しているのは事実。
ここはもう、他の有力なライバル達がアプローチをかけてしまう前にいっそのこと……。

「(むっ、無理! 絶対無理っ!!!)」

飽くまで《The World》で交流がなかっただけで、
なつめの知らないところでカイトが他の女性達と連絡を取り合っていた場合、非常にマズイ気がする。
女と言う生き物は男が思っている以上に繊細で、なおかつ執念深いのだ。

「(ミストラルさんとレイチェルさん、あとヘルバさんは除外するとして……
  晶良さんと良子さん、ガルデニアさんかぁ……今まで考えないようにしてたツケが、いっぺんに来ちゃったよぉぉ……)」

どの女性もカイトに対して好意的だし、何よりも肩書きが違う。
当時を参考にするとブラックローズこと速水晶良は唯一の1年生テニス部レギュラー、
跳び箱すら跳ぶのにやっとだったなつめでは到底敵わない。
寺島良子こと良子は名家のお嬢様、それも筋金入りで金銭面では敵わず、なおかつカイトと一度デート経験があるとかないとか。
ガルデニアは聞くところに寄ると薙刀部の主将だったとか……これも運動面では勝てる気がしない。
なつめ自身はと言うと、取りえは特になし。強いて挙げれば本が好きなことくらい。
……どう考えても地味すぎる。

「(私がもう7年前の私じゃないってこと、カイトさんに見せなきゃ……!)」

変わった、変われたはずだ。
もう7年前の引っ込み思案で失敗ばかりの自分じゃない。
明日の決勝トーナメントで優勝すればきっと彼も自分を見直してくれる……多分。

「(アレ……? でも、それってネトゲ廃人って証明してるような……? う、ううん、そんなコトないよね!?)」

7年もプレイし続けている現状を鑑みれば、そう思われても不思議じゃない。
と言うか、既にその廃プレイが原因でカオティックPKの別人格が生まれてしまったりしている。
無論本人は気づいていないが、もし試合中にエッジマニアとして覚醒できれば……あるいは勝機が?

「(よ、よぉ〜し! 優勝できたら、も、もう一度カイトさんに……)」
526名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 03:34:05 ID:YUwDXeve

もう一度、告白してみよう。
既に彼女がいようがいまいが関係ない。
むしろ居たところで奪ってみせるくらいの気概が無くてどうする?

「と、その前に」

同時進行で書いていた2通のメールに目を通す。
誤字脱字があると恥ずかしいし…。

『こんばんは、良子さん。大黒なつめです。
 今夜の試合、ご覧になってましたか!?
 カイトさんが、カイトさんが戻ってきてくれましたっ!
 すっごく強くて、優しくて、いつものままのカイトさんが……。
 明日の決勝、カイトさんと一緒に頑張ります!
 
 ……あのですね。私、良子さんにも晶良さんにも、負けませんからっ!』

「(良子さんには、こんな感じでいいかな……ちょ、ちょっと挑発的かな?
  でも良子さん、結構天然だから気づかないかもしれないし……いいや、送信しちゃえ)」

送信ボタンをクリック、と。
次は……。

『晶良さん、こんばんは。なつめです。
 もうご存知かもしれませんが、カイトさんが《The World》に戻ってきてくれました!
 カイトさん、全然変わってなくて……少年の心のまま大人になった、って言うんでしょうか……?
 昔と変わらず、とっても頼りがいがあって、とっても素敵なんです。 
 
 ……怒らないでくださいね?
 私、前にカイトさんに『私よりもブラックローズさんの方が好きなんですか?』って聞いたこと、あるんです。
 晶良さんはいつもカイトさんと一緒だったし、
 実際7年経ってもカイトさんのパートナーとして引き合いに出されるのは、いつも晶良さん……。
 
 私、晶良さんに憧れてました。
 いつも元気で、カッコよくて、カイトさんを支えることができて……。
 晶良さんみたいになりたかったんです……でも、それじゃダメだって、カイトさんが教えてくれました。
 誰かの真似をしても、それは変わったとは言えない。
 私自身が頑張って、自分の嫌な所とかダメな所とも向き合わなきゃ……変われないんだ、って。
 だから、私明日のトーナメントで優勝できたら、カイトさんにもう一度告白します!
 ……7年も待ったから、いいですよね? 
 
 すみません、何か愚痴っぽくなっちゃいましたね、最後w とにかく、明日は頑張るぞぉ〜!』

「送信……と」

PCの電源を切り、ん〜と背伸びをして席を立つなつめ。
長時間椅子に座っていたせいか、腰の辺りが随分痛い。
クーラーをオフ、窓を開けて空気の入れ替え。
もっとも、女の独り暮らしである。泥棒の類を用心してか、寝ている間はさすがに開けないが。
そう言えば実家に残した母の弥生は元気だろうか? つい先日連絡したばかりだが、何となく気になる。
今日はもう遅い、明日連絡してみよう。

「ふはぁ〜。お風呂入るかなぁ……」

ハセヲから誘われて参加を決めたトーナメント。
もう優勝賞品がトライエッジであろうがなかろうが関係ない。
もっと大切なものが、手に入りそうな気がするから―――――――――――――――。
527名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 03:35:05 ID:YUwDXeve

《Another Chapter 仁村潤香の場合》

「おやすみ。潤ちゃん」
「おやすみなさい……おばあちゃん」

祖母のタキ江に就寝の挨拶を済ませ、カールのリアル・仁村潤香は自室へと戻るため立ち上がる。
トーナメント終了後、明日の決勝に備えて入浴し、タキ江から髪を櫛で解いてもらっていたのだ。
7年前までは短かった潤香の髪も(と言うよりは長かった髪を一度切ってショートにしていた)
今ではすっかり元の長さを取り戻し、彼女の魅力を引き立たせるのに一役買っている。
長身と相まって、潤香の長い髪はよく目立つ。


――――あ、潤ちゃん。……何かいいことでも、あったの?

ん? なんで?

――――とっても機嫌がいいみたいだから。

そうかな。普通だよ。

――――最近はちゃんとご飯、食べるようになったし……。

うん。

――――前は『ご飯って虫みたいなんだもん』って、お菓子ばっかり食べてて……。

今も食べてるよ?

――――それに最近、何だかキレイになったみたい。

かもね。恋する年頃だから。

――――好きな人、いるの?

いるよ。

――――本当? どんな人?

世界中を敵に回しても、ずーっと一緒に居たい人。


それだけ言って潤香は居間を後にした。
自室で休息をとって、明日のトーナメントに備えねば。
思わず楚良のコトを考えながら自慰に浸りたい気分に駆られるが、そこはグッと我慢。
明日、楚良を手に入れたらでも遅くはない。風呂に入ったばかりなのに下着が汚れるのも嫌だ。

「(おばあちゃんの言った通りだ……。
  あたしが望みさえすれば、運命は絶えずあたしに味方する……!)」

ハセヲが試合中、楚良として覚醒してくれたのは嬉しい誤算。
彼とは揺光の紹介で初めて会った時から他人の感じがしなかった。
よく知っている、昔恋焦がれた彼の匂いとイメージの残滓。
既に開眼したはずのスケィスが胎動した、と思ったのは……気のせいではなかった。

「(もう……きみには夢の中でしか会えないと思っていた……。
  だけど明日、その夢が現実になる! 楚良の復活、再誕を……あたしが!)」
528名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 03:36:30 ID:YUwDXeve

―――『カール』? なんで?

……別に。

―――あ。微妙な間。ヤだなー。教えてよ。なんか、曰くがあるんだー?

きみは?

―――松尾芭蕉の弟子。いっしょにショコクマンユーした人。

それは……マイナーな。

―――芭蕉じゃないってとこがいいでしょ。奥ゆかしくて。


楚良との邂逅。
グリーマ・レーヴ大聖堂、Δ隠されし 禁断の 聖域。
全身に渋柿色の包帯を巻いた長身の双剣士が、あたしを大聖堂の壁に叩きつけ、首を締め上げたのが出会い。


嘘吐き。

―――にょん?

芭蕉の弟子。ソラの言ってた漢字と違う。

―――知ってるよん。

じゃあなんで。

―――そっちの方がカッコいいから。

なんかテキトーなこと言ってる。

―――うん。


楚良とアウラが一緒に居てくれさえすれば、何もいらなかった頃。


―――どうか……

いいよ。来て。ソラ。追いかけてきて!


あたしの大好きな楚良。
きみがアウラを追うから、あたしはあたしのためにアウラを守った。
アウラを守れば、きみはあたしを追いかけてくれる。あたしを見てくれる。
あのゾクゾクするような形容しがたい快感。
自ら選んだ修羅の道、楚良のためなら何だってできる気がした。
その楚良がハセヲの中に居る。ハセヲは好きだ、でも楚良はもっと好き。
悪いけど、楚良を取り戻す障害になるのなら……消えてもらうしかない。
Xthフォームだろうがスケィスだろうが問題じゃない。スケィスはあたしだって持ってる。それにまだ奥の手も……。

「おやすみ、ハセヲ。
 今夜がきみの、最後の夜かもしれないな……ふふ。可哀想な智香……」
529名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 03:37:59 ID:YUwDXeve

《Another Chapter 火野拓海の場合》

八咫の探求は続く。
ロストグランドで発掘された幾つもの碑文。
その全てを解読することで最後のロストグラウンド、即ち理想郷(アヴァロン)への道が開ける。
だが、理想郷を見つけてどうする?
既に楽園と呼ばれる場所ならばネットスラムがあるではないか。
既にヘルバの管理も無く、タルタルガ自身が巨大なサーバーシステムとして組み込まれてしまってはいるが
今は欅の管理下にあり、ハッカー達の楽園は健在中。
今更、理想郷を探す必要が本当にあるのか?

「(急がなければ……深淵(アビス)の軍勢よりも早く……)」

時間稼ぎとしての策は幾つか講じてはある。
だが飽くまで時間稼ぎ……どこまで通用するかは、まさに神のみぞ知る領域。
一応はミッション成功率を事前に計算してはいるがアテにはならないだろう。
どんなに策を練ろうとも不測の事態はどんな時でも起こるものだ。

「ケペル博士……調子はどうかな」
『最後の12体目に手をつけ始めたところじゃよ。急げば何とか……じゃな。ホホホ』
「作戦決行時に不良を起こされても困る。万全の状態でお願いしたい」
『ウム! 頑張ってみよう』

メカ・グランティ、そしてナックルマン。
蒸気ロボを長年研究していた(というゲーム設定の)ドクター・ケペル。
彼の研究の集大成が完成を間近に控えている。

「鉄巨人……間に合ってくれ……」

既に忘れてしまっているユーザーもいるかもしれないが
かつて《The World R:1》時代のアイテム神像からの換金アイテムの1つに『鉄巨人のパーツ』なるものが存在した。
換金時の値段は20000GP。
割と高価な値段で売却できたが、特に重要なアイテムではない……当時は、だ。

「(既にクエストと称してプレイヤー達から
  鉄巨人の製作に必要なパーツ、エネルギーとなるチム玉も相応の数を回収済み……計画通り)」

深淵(アビス)の軍勢に対抗するには、憑神だけでは無理だ。
飽くまで憑神はAIDA対策の切り札、AIDAに感染していないモンスターに対しての効果は見込めない。
せいぜい憑神覚醒(データドレイン)でウイルスコアを回収できる程度だろう。
今度の敵はAIDAではない……この世界、システムそのもの。それも悪意に染まった……。

「(理想郷に残された最後のブラックボックス……ハロルドとエマの遺産を……)」

あるかどうかは行ってみなければ分からない。
だが……道は、意志あるところにある。かつて、ある男が道なき道を歩んだように。
“在る”と仮定し、信じる。

「(問題はまだある……理想郷へは一方通行。
  ロストグラウンドである以上、帰還の際はプラットホームの探索は必須。
  いや、まだ足りない……。
  肝心の“鍵”が、足りない……)」

キー・オブ・ザ・トワイライトは最後のロストグラウンドを開く鍵。
カイト持つ腕輪と……ハセヲ自身。だが、ハセヲはまだ完全な鍵とは言えない状態。

「最後はハセヲ……いや、楚良次第……か」
530名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 03:39:29 ID:YUwDXeve

明日の決勝トーナメントが作戦のキモだ。
カールとの戦いがどのような結果になるかはハセヲ次第だが、彼はいつも期待を裏切らない。
万一、カールが楚良恋しさにハセヲを殺してしまったら?
それも無論考慮しているが……最悪の場合はパイと自分の2人かかりで彼女の憑神を押さえつけるしかない。
いや、ハセヲの危機となればエンデュランス、クーン、アトリ、朔望とて黙ってはいないはず。
複数の憑神が同空間に存在すると暴走の危険が高くなり同士討ちの可能性もあるが、ハセヲを失う訳にもいかないのだ。
友人としても、作戦の重要人物としても……。

「(女神と出会ったことでハセヲの中の、楚良のプロテクトが解けた。
  楚良の性格からして、トーナメントに興味を持ち、ハセヲに憑依して戦おうとする……。
  また女神もかつての母、追跡者、そしてカイトに惹かれて試合を何処からか見ている……
  カールの使用していた巫器が他のプレイヤーにも視認できたことを考えると
  影響力がアリーナに集中しているのは明白……うまく女神とコンタクトをとり、理想郷へ誘導を……!)」

時間が無い。
できればアウラにはずっとネットの海の中で安らかに眠っていてほしい。
だがこの世界が戦場となれば彼女にも被害が及ぶことは必至。
彼女にとっての安息の地は一つ……彼女の父と母の遺産が眠る場所。
即ち理想郷(アヴァロン)。

「(アルカディア、ヴァルハラ、エデン、エリュシオン、影の国……そしてアヴァロン。
  ハロルドとエマが過ごしたケルト圏内に存在した聖地、異界、理想郷と呼ばれた数々の場所。
 《The World》にて存在を確認できたのはアヴァロンのみ……最後の希望か)」

守るべき世界は果たして命を賭けてまで守る必要のある、価値があったのか?
もう以前のドットハッカーズと呼ばれていた者達は次々と引退してしまった。
しかし今は違う、彼が居てくれる。
カイトが……彼が居てくれさえすれば……何故だか、今回も何とかできるのでは?
そんな希望的観測が頭をよぎる。

「(いや、カイトとて万能ではない……彼に頼り切るようでは私もまだまだだな)」

一先ず自分達にできる範囲でトーナメントを無事に終わらせ、
なおかつ深淵(アビス)の軍勢の襲来に備えつつ、理想郷(アヴァロン)へと向かうこと。
深淵(アビス)の者共も理想郷を狙っているのは明白。
コロンブスが新大陸を発見した大航海時代さながらの争奪戦が、始まろうとしている。

「(ケルヌンノス亡き今、敵の動向は限られている……。
  だが限られているが故に、相手の強大さも把握済み……今度の相手はスケールが大きそうだ)」

供物の印イベントにてハセヲ達によって撃破され、エルディ・ルーの湖底に沈んだ冥界の王。
痛みの森イベントにおいても裏エルディ・ルーにてハセヲらと死闘を繰り広げた、あのケルヌンノスだ。
リアル(現実)での彼は冥界の王などではなく狩猟、もしくは豊穣の神とされている。
異教の神を邪神扱いするのはどこの国でも一緒なのは古今東西の歴史が証明済み。
何をもってケルヌンノスを冥界の王としたかは定かではないが、既にケルヌンノスがいない今、
彼よりももっと凶悪で恐ろしい存在が、理想郷(アヴァロン)を狙っていることが分かった。
3人の邪悪な邪紋使い――――ハヴシー、アンクウ、クルーウァッハを覚えているだろうか?
上述した供物の印イベントにて再三ハセヲを苦しめた、あの3人のヴァイタルビスタが……理想郷を狙っている!

「(ロストグラウンドで発掘された碑文……私の解読が間違っていなければ
  理想郷を欲している彼らの主は……ケルト神話の中でも最も邪悪で凶暴な存在―――――大悪神バロール!)」

ケルヌンノスが冥界の王ならば、バロールは魔神。アイルランド神話の中でも最高位に座する魔王の1人。
その邪眼(魔眼)はどんな相手でも睨み殺すと言う。その眼は片目、あるいは単眼とされるが定かではない。

「(2つのキー・オブ・ザ・トワイライトが揃った時が……作戦決行の時……!)」
531名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 03:40:47 ID:YUwDXeve

《Another Chapter カイトの場合》

「ただいま」
「ご苦労だった。首尾は?」
「かなり苦戦したけど何とか倒せたよ、マグメルド」
「さすがだな。あの闘竜を手なずけるとは……」
「んー。でもまだ本調子じゃないんだよね」

ロストグラウンドの発掘作業を終えたカイトが、知識の蛇へと戻ってくる。
声のトーンは軽快だが、少しばかり疲れも感じる……そんな響き。
やはり歴戦の勇者カイトであっても、闘竜マグメルドは相当の相手だったらしい。

「神族の使いだけあって、メチャクチャな強さだった……敵だったらゾッとする」
「彼は?」
「来るべき時には夕暮竜として僕らと一緒に戦うって、約束してくれたよ」
「助かる。マグメルドの参戦は喜ばしいことだ。
 深淵(アビス)との戦いの勝率アップにも繋がる……それも大幅な」
「大悪神バロール、か。どんなおっかない奴なのかな?」

カイトがこれまで相手にしてきたスケィスを代表する八相らは
みな奇怪な人形や石版のような形状をした者達だった。
彼からしてみれば《R:2》に登場するモンスターはどれも派手で、まるで違う世界となってしまったことを
思わせるには十分だった。7年の歳月が、ここまで世界を変えてしまったのか……。

「ケペル博士の研究もいよいよ大詰めだ」
「鉄巨人シリーズ……完成していたの?」
「12体のうち、あと1体の調整を残すのみとなった……それが終われば実戦配備だ」
「Knights of the Round Table...円卓の騎士。あれも12人か」
「アーサー王を含めれば13人。この世界に残されたドットハッカーズと碑文使いも13人」
「偶然?」
「或いは碑文が必然を招いているのか……」

八咫……火野拓海の要請で再び《The World》に戻ってきた勇者。
蒼い炎を携えて、黄昏をも蒼く染める者。
その真意は明らかではないが……その瞳は確かに、当時と同じ、確固たる意志を宿している。

「僕が居ない間に……随分と変わっちゃったね。《The World》は」
「懐かしいか、当時が?」
「うん。もしかしたら僕は……
 僕らが過ごしたあの世界を取り戻すために、理想郷(アヴァロン)を探しているのかもしれない」
「カイト……」
「何てね。こりゃじゃただの懐古主義か」
「君が居て、バルムンクが居て、オルカが居る……当たり前だったの風景が、私もとても懐かしい」

フィアナの末裔とフラグメント時代からの付き合いだった八咫……ワイズマンからしてみれば、の話だ。
オペレーション・テトラポッド、オルカ作戦……未帰還者達を救うため、世界に挑んだあの日。

「あのコルベニクとの戦いは予期せぬトラブル続きだったな……勝てたのは奇跡に近かった」
「ハムスターのたみよ……じゃない、アウラが自分の死と引き換えに起こした奇跡……再誕、だね」
「カイト。G.U.にパロディモードは存在しないのだが……」
「冗談だって(笑)」

だが今回のミッションは7年前をも上回る難易度。
RA計画……アヴァロン帰還計画の遂行。アウラを、より安全な場所へ……。

「ともかく。もう一度、奇跡が起きてくれることを……願おう」
「奇跡は起こるよ。何度でも……ね。僕は、そのために帰ってきた……!」
532名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 03:42:47 ID:YUwDXeve

《Another Chapter ???の場合》

「人族ごときにリンゴの島は渡さぬ!」
「然り! バロール様のお力の前に、奴らが平伏す時が来たのだ!」
「バロール様、バロール様! 憎き彼奴らに神の鉄槌を!」

《The World》の中でも深く、とても深い場所。
認知外空間と呼ばれるところに居城を構える者が居る。
もっとも、城と呼ぶにはあまりにも狭いが……ここには、世界の悪意が詰まっている。
そんな薄ら寒い戦慄を覚える程におぞましい場所。
闇の中で忙しなく蠢く3人の邪紋使い。ハヴシー、アンクウ、クルーウァッハ。
ハセヲの活躍によって冥府の底へと落ちていったかと思われたが……。

「理想郷(アヴァロン)……何かがそこから始まる場所、“境界線”」

3人のヴァイタルビスタに『バロール様』と呼ばれた男、いや……少年が嘲笑う。
なるほど。確かに伝説の通り、魔神バロール同様に片目が無い。
無い、と言うのは語弊があるだろうか。彼(か)の少年は右目を眼帯で覆い隠してしまっていた。
いや……覆うのは眼だけではない。王者の風格たるマントでその身すら覆っている。
無邪気さが映える反面、目的を達成するためならば何だって利用する……そんな含みを秘めた笑み。

「ハヴシー」
「はっ!」

「アンクウ」
「はっ!」

「クルーウァッハ」
「はっ!」

隻眼の少年の呼びかけに応え、3人の邪紋使いがその御身に跪く。

「君達を深淵(アビス)から引き上げ、再び命を吹き込んだのは誰だ?」
「バロール様です!」

「この世界(ネットワーク)に、永久の安定と安寧をもたらすのは誰だ?」
「バロール様です!」

「理想郷(アヴァロン)を手に入れ、女神を超越し、物語の限界をも支配するのは誰だ?」
「バロール様です!」

何と言う傲慢。この少年は女神に取って代わり、この世界の……いや、新世界の神にでもなろうと言うのか?
碑文は今のところ、忠実に古代の人族と神族の戦いを再現しようとしている。
しかし、彼は物語自体を彼のものにしようとしている……とでも?

「ハセヲのスケィス因子が手に入らないのであれば、あの女のスケィス因子を頂こう。
 もう十分に育ったはず……ハハハッ。
 オーヴァンも、八咫も、欅も、ヘルバも……番匠屋さえもッ!
 誰も到達できなかった、達成できなかったところにッ、もうすぐ手が届く……!
 私のような天才の前では、対象(カミ)こそが従わねばならないのだ!」

狂気染みた笑いが深淵(アビス)に響く。彼は右目の眼帯を押さえながら笑い続けた
彼の高笑いに呼応するように、次々と冥界から召喚される魔の軍団。かつてプレイヤー達に倒された、怪物達の骸。

「番匠屋さん、無駄死にご苦労様でした。オーヴァン、何かできるならやってみるがいい。
 八咫、もう用済みだ。ハセヲ、早く鍵となれ。そしてカール……私のために孕み、産め! スケィス因子を……ッ!!!」
533名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 03:44:21 ID:YUwDXeve

《Another Chapter 三崎亮の場合》

「(俺は……ハセヲと楚良……どっちになれば……いい……? なぁ、オーヴァン……)」

少し熱めのシャワーを浴びながら、風呂場の中で俺はそんな問いを繰り返す。
答えてくれるワケねぇってのにな。
アイツとは……オーヴァンとは痛みの森以来、会っちゃいない。
こーいう時だけ他人頼るっつーのは……カッコ悪ぃぜ。
けど、明日は選ばなくちゃいけない……俺は……楚良を認めてやるべきなのか?

「(でなきゃ、俺はカールに殺される……)」

勿論、ただじゃ殺されてやらねーけど。
殺されるってのは肉体的な死じゃない、精神的な死だ。
データドレインされれば、今度こそ永遠にネットの海を彷徨うことになるだろう。
リアルの俺は一生病院のベッドでオネンネ、カールは楚良を取り戻してめでたし、めでたし……なワケねーだろうが。
俺だって死ねねぇ理由くらいある。
智香だ。
智香と、死なないって約束した。あいつのためにも……負けらんねぇ。

「(そーいや、智香とここでしたんだよな……)」

あいつがこっち(東京)に遊びに来て俺の家に泊まった2日目、
智香が風呂場まで入ってきて……ったく、素直じゃねーんだから。
……そういうトコも可愛いけどな。
バックでヤろうとしたら嫌がってたっけ……結局最後までしたけど。
このゲームの登場人物は全員18歳以上です、って言われても素直に信じちまいそうな自分が怖ぇ。
どいつもこいつもPCの見た目に反して歳とか性格とかにギャップある奴多すぎだろ。

「(ったく……何で《The World》なんか始めちまったのかな……)」

広告を見た時、不思議な懐かしさを覚えた。
あれは……俺の中の楚良の残り香みたいなものが、そうさせたんだろうか。
楚良のヤツ、俺の身体を好き勝手に弄びやがって……。
あいつももう1人の……俺のはずなんだよな?
でも、俺はあいつを知らない……あいつが何者なのか、全然覚えてない。
やっぱカギは7年前、2010年だ。
父さんも母さんも、俺の前じゃ俺が小4だった頃の話を全くしやがらねぇ。
俺自身、何が起きたのかキレイサッパリ忘れちまってるのが尚更に歯痒いぜ。

「今度こそ……取り戻すんだ……全てを……」

決意を込めて、口に出す。
八咫がトーナメント開いた理由とか勇者が今頃になって戻ってきたとか
腑に落ちねぇ点は幾つかある……あるけど、今はカールを何とかするのが先だ。
憑神同士の戦いは避けられねぇだろうから……でも、万が一、マジでデータドレインされちまったら?
ひぐらしの圭一みたく、事前に遺書でも書いとくか? ハッ、ガラじゃねぇだろ……第一、死ぬコト前提にしてる時点でダメじゃねーか。

「(死んで堪るかってんだ……智香のためにも)」

欲しいものはもう手に入れた。
欲を言えば、60年先のあらゆるスポーツの結果の載ったスポーツ年鑑とホバーボードがありゃ最高だけど。
ガキの頃は2015年になればマジで実現すると思ってた。気がつきゃ2年オーバーして2017年……今後も望み薄だな。

「俺の旅は……まだ終わらねぇ」
534名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 03:45:57 ID:YUwDXeve
トーナメント3日目開幕? 
いくら何でも夏には終わるだろう、そう思っていた時期が私にもありました? 何のことです?
おやすみおまいら
535名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 03:52:40 ID:Hl2KQ7/9
リアルタイムでキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
今日から公開のあの作品のネタが来るとは…wwww
激しくGJ(*´д`*)ハァハァ
536名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 05:50:11 ID:KROlWu0r
バック・トゥ・ザ・フューチャーwwwwww
それにしてもGJ!!!
537名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 10:08:40 ID:pzTjcJoB
>>531
むしろG.U.そのものがパロディモード
538名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 00:44:35 ID:T0OL81TC
敵の正体アレじゃん
539名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 00:53:25 ID:S7WoofN0
>>538
分かっていてもあえて何も言わないのが漢というものよ
540名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 08:02:35 ID:tcxKrM+9
また、懐かしい名前が出てきたなぁ
541名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 23:47:07 ID:INvNWSxp
鉄巨人のパーツに噴いた
仲間の友好度上げるのに役に立ったわ
542名無しさん@ピンキー:2007/09/06(木) 06:28:18 ID:AL3gtsDN
543名無しさん@ピンキー:2007/09/06(木) 16:50:28 ID:MiwEti/e
さ、最高でおまー!!!
544名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 21:01:14 ID:i/qfdcHD
いいぜぇ、来い!来いよ!
545名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 21:48:19 ID:0gfEsb7D
エスケェェェェェェェェェェェイプ!!!!!!!
546名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 11:54:37 ID:Qh3Gnep0
ちょwww逃げんなwww
547名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 21:22:52 ID:ohoI8TgP
今日は遅いね
548名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 19:21:47 ID:RWdQX2UX
一体どんな旋律を奏でれば続きが見れるんだろうな・・・・皆
549名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 21:06:27 ID:djzKcm8w
少しは学習しようか
550名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 04:13:18 ID:wlAdWctx
おまいら乙
トーナメント3日目・カイト×ハセヲ投下
551名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 04:14:03 ID:wlAdWctx

『人間は生きる瞬間、瞬間、自分の進んでいく道を選ぶ。
 その時いつでも、まずいと判断する方、危険な方に賭けることだ。
 極端な言い方をすれば己れを滅びに導く、と言うより死に直面させるような方向、黒い道を選ぶのだ』

                                               【岡本太郎  日本の芸術家】



















紀州(今の和歌山県と三重県南部)の国に『安珍・清姫伝説』と呼ばれる説話がある。
それは、一晩の宿を求めた美貌の僧・安珍に一目惚れした娘・清姫の執念を描いた物語。
「必ず帰りに立ち寄る」と約束しておきながら安珍は清姫の元を訪れずに逃亡、
騙されたと知った清姫は安珍を追いかけるも「人違いだ」と誤魔化されたことで怒りは頂点に達し
蛇にその身を変えて安珍を追う。報復を恐れた安珍は道成寺に逃げ込み、釣鐘の中に隠れるも
蛇に化身した清姫は釣鐘に巻き付き、そのまま安珍を鐘もろとも焼き殺してしまったと言う。

古来より女と蛇は深い因果関係にある。
旧約聖書の創世記では蛇はイヴを騙す邪悪な誘惑者、
ギリシャ神話では頭髪が蛇のゴルゴン三姉妹や怪物テュポンと交わってキマイラ、ケルベロス、スフィンクスらを
産み落とした蛇女のエキドナなど枚挙に暇が無い。また古代ギリシャ人は尾を引きながら天駆ける彗星を
髪を振り乱して怒り狂う女に見立てて非常に恐れたとされている。
今も昔も―――――――――――怒り狂った女ほどに恐ろしく、執念深いものはない。


「スケィス……たんとお食べ。ただし……行儀良く、なぁ?」
『■■■■、■■――――――――――――!!!』
「(腹に口が……ッ! 俺のスケィスを……喰う気かっ!?)」


『そんな……憑神が憑神を……喰おうとするなんて……ッ!』
『ハセヲのスケィスのデータを取り込むことで……より本物(オリジナル)に近づこうとしているのか……?
 いや、この際どちらが本物だろうが紛い物だろうが、もう関係ないのかもしれない。
 彼女の執念が生み出した紅いスケィス……ここのまでのものとは!』
『ハセヲ、早く離脱しなさい! ハセヲ、ハセヲッ!!』


「(ちくしょう……くっ、喰われる……ッ!?)」
「笑いを堪えるのがこんなに大変とは思わなかったよ……はは、あははっ! 勝ったッ! G.U. vol.4 完 !」


過程があるから結果が存在する。3日目の決勝戦。ハセヲVSカール戦。
両者ともに記憶の彼方に忘れてしまっていた7年分の時間を取り戻すための戦いは、続く。
552名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 04:15:40 ID:wlAdWctx

トーナメント3日目、決勝戦開始の十数時間前―――――――――――。


「よぉ」
「やぁ。来てくれたんだ?」
「まさか……アンタから呼び出されるとは思わなかったけどな」
「あはは。来てくれて嬉しいよ、ハヤテ君」
「……ハセヲだ」

よぉ、俺だ。
トーナメントもいよいよ3日目になっちまった。
今日は夕方くらいまでゆっくり過ごして
晩飯食ってからログインしようとしてた矢先に……コイツからメール貰っちまうとは……。
昨夜、ぶっちぎりの強さでIyotenとアスタを瞬殺した“勇者サマ”にな。
まぁ、まだ決勝始まるまでかなり時間あるから来てやったワケだが……
Δ 隠されし 禁断の 聖域……グリーマ・レーヴ大聖堂に、な。

「で、何か用か? 今夜の決勝の打ち合わせとか?」
「んー。ただ個人的にハヤタ君と話がしてみたいかな、って思ったから」
「(なら名前間違えんなよ……いつから科特隊の隊員になったんだ俺……)」

コイツは……。
なつめと同じくらいにどっかズレてる気がする……。
昨夜の試合を間近で見てなきゃ、未だにコイツが勇者ってのが信じられねー。

「知ってる? ここには昔、少女の像があったんだよ」
「アウラだろ」
「あぁ、そっか。ハセヲ君はもう会ってるんだっけ」
「まーな」

アイナを寄り代に憑依したアウラ。
俺と八咫の前で《The World》に危機が迫っていると告げた女神。
あの時、トライエッジだと思い込んでた蒼炎のカイトから
双剣“虚空の双牙”をもらったんだっけか……コイツ、ホントに本物の勇者なのか
やっぱ疑わしいトコあるよな……。最近、あっちの方のカイトの野郎も姿見せねぇし
(再誕の影響でAIDAが完全に死滅したんだから、いなくて当然っちゃ当然だが)。

「……ってゆーか。一つ聞きたいことがあるんだが」
「ん? どうしたの改まって」
「隠さずに答えてくれ……本当はテメェがトライエッジなんじゃないのか?」


ブーッ ガクガクブルブル よたよた ドンガラガッシャーン


「や、やややや、やだなあぁ、ハセヲ君っっ。
 そそそそ、そんなコトあるワケがないじゃかいかっっっ!!」
「(わざとらしすぎてどっちなのかわかんねェ……)」

ダメだ、やっぱコイツ苦手だ……。
なつめはこんな奴の何処に惚れたんだ?
まー本人にしか分かねぇコイツの魅力とかがあるんだろうけどさ……。

「そう言えば……なつめから聞いたんだけどさ。
 ハセヲ君は“真・ドットハッカーズ”を名乗ってるらしいね?」
「(うげぇ。あの女、余計なことを……)」
553名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 04:17:20 ID:wlAdWctx

「名乗るのは別に構わないんだよ、うん。
 でも“ドットハッカーズ”の名前の重みって言うか、重圧って言うのかな?
 ハセヲ君達がその名前を背負う覚悟があるのかどうか、知りたいとか思ったり思わなかったり?」
「ハ、ハハハ……」

くそ、なつめとのメールであんなコト書かなきゃよかったぜ……。
顔は笑ってるけど声は笑ってねェ……。

「無理を通して道理を蹴っ飛ばす……それがドットハッカーズ。
 7年前、僕達は世界に挑んだ。
 腕輪の反存在であるクビア、第八相のコルベニクとの戦い……みんな、必死で戦ったよ」
「俺達だって……戦ったさ」
「仲間が居てくれたから、僕は最後まで戦えた。
 みんなと過ごした時間を無駄にしたくなかったし……助けなきゃいけない奴も、居たから」
「……」

アンタも……俺と同じ、か。
いや、違うな。俺がコイツと同じなんだ。
7年前、カイトがそうした様に……俺も、志乃を、智香を世界から取り戻すために戦った。
だけどアンタは、迷うことなく戦い続けることが出来たのか?
誰かから馬鹿にされたり、蔑まれたりして、迷ったりしなかったのか?
挫折したり、後悔しなかったのか? 精神(こころ)が折れなかったのか?

「ハセヲ君には、一緒に戦ってくれたことを誇れる仲間が居る?」
「……あぁ」

どいつもこいつもお節介な奴ばかりだけどな。
最初はただウザいって思うだけで、ちょっと利用したら
すぐにオサラバしようと思ってた……なのに、いつの間にかギルドマスターにされるわ、
碑文使いにさせられるわ……気がつきゃ、アイツらが居ねぇ《THe World》なんて……想像できなくなっちまって……。
アイツらが居てくれて、良かったって……そんな風に思い始めてたんだ。

「なぁ……アンタは、何のために戦ったんだ?」
「夢だったんだよ。こうやって、色んな人達と《The World》を楽しむのが。ハセヲ君は?」
「俺も……似たようなもん、だよ」

時間は夢を裏切らない。夢も時間を裏切ってはならない。
誰の言葉だっけか……。

「にしても……何でココなんだ?」
「ん?」
「俺がいつもここ来てるなんて……なつめにも言ってねぇってのに」
「ここは僕にとっても……色々あった場所だから……かな?」

始まりは、いつもこの場所から……Δ 隠されし 禁断の 聖域、グリーマ・レーヴ大聖堂。
司がガーディアンを自由に操れることをベアに報告した場所。
楚良とBTが異界への扉を開いた場所。
司達がモルガナの放ったガーディアンと戦った場所。
カールが楚良と出会い、アウラを守ると決意した場所。
ブラックローズの弟、カズが未帰還者になった場所。
カイトがバルムンクと出会い、初めてデータドレインをウイルスバグに対して発動させた場所。
志乃がAIDAに感染したオーヴァンにPKされ、未帰還者となった場所。
ハセヲが蒼炎のカイトと戦い(延長線上に居たオーヴァンをDDするための巻き添えとなって)、レベル1に戻された場所。
アイナを寄り代にネットの海から帰還したアウラが、ハセヲ達に世界の真実を告げた場所。
554名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 04:18:56 ID:wlAdWctx

「グリーマ・レーヴ大聖堂……ここから見る夕焼けが、僕は一番好きだな。ハセヲ君はどう?」
「まぁ……嫌いじゃねーけど」

但し、良い思い出よりも悪い思い出の方が圧倒的に多いがな。
けど……なーんか、ココは嫌いになれねぇんだ。
……何でだろうな? 俺が“楚良だった頃”、よくここに来てたってことか?

「このゲームが《R:2》にバージョンアップしても、1つだけ変わらないことがある」
「? 何だよ」
「僕達の“常識”は……このゲームには通用しない、ってコト」

……確かにな。
ダメージ喰らったらリアルでも痛み感じるとか……普通じゃねーよ。
PKされたらそのまま意識不明になっちまったり……。
でももう、その原因だったAIDAはもう居ねぇ。
オーヴァンがあの時起こした再誕でキレイさっぱり消えちまったんだ。
……消えちまった、はずなんだ。

「アンタ、勇者なんだろ? 知り尽くしてんじゃないのか、この世界を」
「僕にだって……分からないことぐらい……ある、さ……」
「へぇ」
「要するに僕が何を言いたいかって言うとね、“常識を疑え”ってコトだよ」
「常識? ……例えば?」
「例えば……平野綾を主人公の声優として出演させとけば
 フィギュアを始めとするグッズ関連とDVD初回版の売り上げ週間1位は確実、
 京アニ製作のアニメはどれもヒットして当然……そんなくだらない常識は信じちゃいけない、そう言うコトさ」
「何気にアニメ業界批判!?」

と、とりあえずアンタが京アニ信者ってことは理解できた気がする……。
いや、この場合はアンチか? 分からん!

「あ、そうそう。忘れるところだった」
「あん?」
「コレ。ずっと借りっぱなしでゴメン」



【『楚良の双剣』をプレゼントされました】



「! おい、これって……!?」
「僕のPCデータ、所持アイテムもプロテクト対象だったみたいでさ。1年前の火事も平気だったみたい。
 アイテム欄を見てたら7年前、ハセヲ君にコレを借りたの思い出して……だから返すよ」

それは……今じゃ珍しい腕に仕込むタイプの双剣だった。
初めて見る武器のはずなのに……初めてじゃない気がする……どうして?
俺がコイツに貸した? 7年前? それは俺じゃない、てか武器の名前からしてまんまだろ、おい……!

「あの時、放浪AIだった君は……僕の腕輪を欲しがってたね? どう? 今でも欲しい?」
「(コイツ……コイツも、楚良のこと、知ってるってのか……!? 
 そうだ、コイツ初めて会った時だって俺に『久しぶり』って……!)」

カール以外にも、俺が忘れちまった昔の俺……楚良を、知っている奴が……居る!

「アンタ……俺の何を、知っている?」
「それは……」
555名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 04:24:06 ID:adi69e0W

「それは……?」
「禁則事項です♪」
「……殴っていいか?」
「待つんだハセヲ君。暴力はイックナーイ(笑)」
「やっぱ知ってんじゃねーか!!!」

今の「イックナーイ」っての、楚良の口癖だろーが(カールもよく使ってるが)!
コ、コイツ、俺を何だと思ってやがるんだ……?
おちょくるために大聖堂まで呼んだんじゃねぇだろうな!?
これだからハルヒやらき☆すた厨にはロクなのが居ねぇって、放送から10年経った今でも言われんだよ……。

「って言うよりもね、僕が話してもダメだと思うんだ」
「……どーいうこった」
「ハセヲ君自身が真実に気づかないと、意味がないんじゃない?」
「……!」

俺自身が……?

「気づかない? この場所には……色んな思い出が詰まってることに」
「大聖堂に、か……?」
「ここに眠る真実の行方……こんなにも傍にいるのに……」
「……テメェには視えてるんだな? 俺の中の楚良が……!」
「『腕輪。
  それ、イケナイPCの証拠。
  うっらやっましー』
 ……7年前、ハセヲ君が僕に言った通りだよ。
 僕は腕輪を通して他の人達が視えないものも視ることができる……世界の総て、とはいかないけど」
「邪気眼か」
「中二病患者じゃないってば(苦笑)」

俺には楚良が視えねぇ。声しか聞こえねぇってのにコイツには視えるってのか……。
オリジナルの腕輪持ちと、一歩劣る碑文使いの差ってやつのせいか?
でも俺だって八相の碑文をスケィスに喰わせてキー・オブ・ザ・トワイライトになったんだぞ。
なのに……どうして、どうして俺には、楚良が視えない……?

「時間はかかるかもしれないけど、ゆっくりと思い出せば?」
「時間がねぇから焦ってんだろうが! 今夜の決勝、カールの奴が楚良を再誕させようって狙ってんだぞ!?」
「カール……あぁ。八咫が言ってた『ハセヲ君以外にスケィスを使役できる』って女の子?」
「俺本人がこういうこと言うのもアレだけど……カールは、マジで楚良のこと好きなんだ。
 それこそ狂信的っつーか盲目的っつーか……とにかく、普通じゃねぇくらいに愛してんだ……」
「(僕と八咫を恨んでる、ってのは教えない方がいいかなァ……話こじれるのも面倒だし)」

何だよ……やっぱ俺は、楚良になるしか道は残ってねぇってコトなのかのよ……?

「答えはハセヲ君自身が見つけなきゃいけないけど……どうしてもダメな時は、バカになればいいじゃない」
「バカ……?」
「『ま、いんじゃないの。つまんない正直者よりおもしろいバカのほうがさ』……ってね。
 7年前の君なら、きっとそう言ったと思うな。考える過ぎるよりバカになった方がさ、楽でいいじゃん。
 今のハセヲ君を否定するつもりは毛頭ないけど……1人で背負い込む必要は、ないんじゃないかな」
「けど、けどよ……!」
「運命に負けてしゃがみ込むなんて、つまんないよ。それじゃ、カッコ悪いよ?」
「……」
「仲間、居るんでしょ? だったら頼ろうよ。僕だって……仲間が居てくれなかったら……1人じゃ戦えなかった」
「(クーンは……『自分に挑め』って……『楚良を認めてやれ』って……。
  智香は……『信じてるから』って……シラバスも、ガスパーも、アトリも、エンデュランスも、パイも……皆が……)」

そうだ……俺は……1人じゃなかった!
556名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 04:25:19 ID:adi69e0W

「それにさ」
「……?」
「僕も居るじゃん」
「なッ……!?」

コ、コイツ、まさかエンデュランスと同じでそっちの気が……!?

「お友達になろーよ、って言ってきたの、ハセヲ君だし(苦笑)」
「……と、友達?」
「僕が腕輪をどう使っていくのか……ちょっと楽しみ♪って言ったのもハセヲ君だったよね?」
「だっ、だから、それは俺じゃなくて楚良が……!」
「勇者は友達を見捨てたりはしないよ」
「……チッ。勝手にしろ!」
「うん。そうさせてもらうつもり」

妙に馴れ馴れしいと思ったら……そ、そういうコトかよ。
7年前からコイツと知り合いだったのか、楚良の奴?
寄りにも寄ってこんなのとお友達になってどーすんだよ……あ、頭痛ェ……。
そうか、コイツ……昨夜の試合でなつめを助けに来たとばかり思ってたけど……
俺(楚良)も、助けに来てたんだ……。

「ハセヲ君は相変わらず面白いね」
「う、うっせーな!」

……待てよ。
確か三郎から聞いといたコイツに関するとっておきのネタがあったはずなんけど……何だっけか。
スクールデイズのBAD ENDみたいな感じの話だったような……えーと……あ、思い出した。

「……そう言えばアンタ。7年前に重剣士と重斧使いの女2人に二股かけてたそーじゃねーか」
「うッ。な、何のこと……?」
「トボけんなよ、ネタは上がってんだ。
 【Ω 激怒する 合わせ鏡の 聖女】でその2人が大喧嘩したんだろーが」
「(あ、晶良と良子さんのコトだ……! 
  ヘルバにBBSの書き込み全部削除してって頼んでたのに……け、計算が違った!)」
「どーなんだ? オイ」
「そ、そんなコトどうでもいーじゃん、いーじゃん!」
「すげーじゃん? とか言って誤魔化せると思うなよコラ」
「アハハ……それはまた後日、ってコトで……」

勇者、敗れたり。
これでとりあえずは俺も安泰だな、コイツの冗談は笑えねぇから怖い。
あー清々したぜ。へっ、勇者にだって弱みの一つくらいあるもんだな、やっぱ。

「……まぁいいか。おい、もう用がねぇなら俺はタウンに戻るぞ」
「あ、そだね。僕はもうちょっとここに居るから」
「ん、じゃあな。……俺も疑ってみるわ、常識」
「うん……ルミナ・クロスで会おう、ハセヲ君」

同じ境遇で戦い続けたカイトに影響されたのか……
ハセヲは心の内の一部を彼に語った。
7年の月日がハセヲから―――三崎亮から楚良としての記憶を色褪せさせてしまっている。
カイトが共に同じ時間を過ごした楚良は放浪AIだったのかもしれない。
けれど……あの時共有した互いの意志は、本物であると信じたい。
ミアの救出に向かった Ω 隠されし 月の裏の 聖域 ……今は何もかも、みな懐かしい。

「これで良かったんだよね……アウラ……?」
557名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 04:26:56 ID:adi69e0W

『恋する男女が一緒にいて退屈せずに済むのは、始終自分と相手のことばかり話しているからである』

                                    【ラ・ロシュフコー  フランスの思想家】





















「なぁ」
「う、うん……」
「生理の時って、ここから血ィ出るんだろ?」
「ぶはっ!?」

……痛ぇ。
何もグーで殴ることねーだろ。
腕ほっそいのに結構腕力あるなコイツ……。

「なんで殴んだよ……」
「きっ、聞いて良いことと悪いことがあるだろ〜ッ!?」
「だってそんなの彼女が出来た時しか聞けねーじゃん」
「だ、だから……! 聞いてどうすんのさ……まったく……」

まぁ……興味あったし?
酷い時は学校休んだりするって聞くしな。
体育の授業中やけに女子の見学が多いと思う時あったけど……そーいうコトなんだろ?

「やっぱ……亮って変態の気がする……ッ!
 アタシが喘いでる間も、こ、こんなに、おっきくしちゃってるし……」
「生理現象だからしょーがねぇじゃん……スルーしろよ」
「む、無理!」

か、顔逸らさなくてもいいじゃんかよ。
昨夜は舐めて、こっから出たの飲んだクセに……。

「智香……」
「や、やっぱ、今日は止めとこーよ! アタシも昨日したばっかで、今日上手くできるか分かんないしさ!」
「じゃあ俺がやるから」
「えっ? ちょ、ちょっと……いっ、いけません、いけません!」
「パロディモードの黒薔薇みたいなコト言ってもダメだからな(中の人は同じだけど)」
558名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 04:28:11 ID:adi69e0W

「(いつもカップ麺ばっか食ってる、って言ってる割にはイイ身体してるよな……)」

改めて浴槽に浸かった智香の身体を眺めてみる。
さっき散々弄んだせいで、胸の突起も目に見えて硬くなってた。
指で軽く弾くと、震えるのと同時に智香が小さく甘い声を漏らす。
へぇ……やっぱ性感帯の一つなんだな、ここ。

「智香だって……ヤラしい声だすじゃん?」
「だって、それ、亮が……っ!」
「智香がこんなおっきな胸してるのが、悪い」

ちょっと強めに胸を掴んで、もっと智香をいじめたくなる衝動に駆られる。
後でぶたれるかもな? いや、さっきもう殴られたけど。
何と言うか……いじめたくなるオーラが出てんだよ、智香は。
イケパラでもぼっちゃまがいつも「オーラが……」とかどーのこーの言ってるだろ? アレだ。

「……亮って、巨乳好きだったの?」
「別に好きってワケじゃ……俺は智香の胸が良いんだよ」
「じゃ、じゃあ……もし、アタシが貧乳だったら?」
「貧乳はステータスだ。希少価値だ」
「どっち!?」

どっちと言われても。
さっき言った通り、お前の胸が好きなワケよ。
ってコレ、元々はエロゲが元ネタなのにいつの間にからき☆すた発祥みたいになったな、今じゃ……。

「お前さ、あんま気にしすぎるの良くねーぞ」
「男はそうかもしれないけど、女はやっぱ気にするもんなの! 分かる!?」
「そーいうもんか? 俺は智香が貧乳でも、構いやしねーけど」
「……ホントにそう思う?」
「さっき言ったろ。お前に嘘はつかねー、ってな」
「じゃ、じゃあ……信じてあげても……いいよ……?」
「ん」

大体最近の奴らは男も女も影響受けすぎなんだよな、色んな媒体から。
アニメのヒロインがメロンパンやチョココロネが好物だからって
おめーらまで食う必要はねーだろ、みたいな? そりゃパンの製造メーカーからすりゃ、嬉しい誤算だろうけどな。
要はさ、流されずに自分を保てりゃそれでいーんじゃねーってコトだと思うんだ。
俺だって志乃助けるために“死の恐怖”なんて呼ばれてたこともあったけど
他人の誹謗中傷なんざ全く気にしねーでPKKやってたし。
自分らしさを失っちゃ、人間それまでじゃね?

「つーコトで」
「あっ……」
「続き、な?」
「う、うん……」

今度は少しばかり智香の身体を斜めにして、浴槽に沈めてみる。
少し前に比べるとだいぶ緊張も解れてきたっぽいな。
昨日が初めてで今日が2回目なら、まだ慣れてないって分かりきってるし……。
アレだろ。やっぱまだ中に俺のが残ってる感じとか、するんだろーか?
って、口に出したらまた殴られそうだけど。

「……また変なこと考えてない?」
「風呂場の中でこーいうコトしてる時点で、俺らどっちも変だろーが」
「うっ……」
559名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 04:29:48 ID:adi69e0W
おおきな夢&夢 スキでしょう? 月曜日なのに!機嫌悪いのどうするよ? 何のことです?
おやすみおまいら
560名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 04:37:45 ID:q1zx5C61
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
tu-ka娘道成寺wwwwwwwww
歌舞伎の演目までネタにしますか…w
何気に俺の地元ネタ('A`)
GJ!
561名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 05:55:36 ID:z+2kIYbO
4KOMA化カイト吹いたwwwwww

やっぱり大聖堂はいい場所だ。GJ!
続きwktk
562名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 15:32:54 ID:pqIdqh8h
GGGGGJ!!
毎度の事ながら乙でした
563名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 21:23:01 ID:AJlVQbVu
くそ!途中で電池が切れて書き込みが遅れた(;´д`)!!

超GJ!!!!!!!!
564名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 22:05:49 ID:uGoTufpL
毎度の事ながらGJ!
良いところで終わらす貴方が好きですww
565名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 14:14:09 ID:KQUs2vNw
age。 ところで、おまいら、コレ見たか?

ttp://up2.viploader.net/pic/src/viploader479083.jpg

CC2の発表があるまでなんとも言えんが
まあ、どうなっても金掛かりそうだな、今回も。
566名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 21:52:55 ID:1cwFMPNf
>>565
知らんかった・・・
Thanks
567名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 23:16:19 ID:+cMdnUer
お前ら上げ過ぎだ
568名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 01:51:10 ID:ThbtvtAQ
>>565
また、俺に貧乏になれというのか……orz
とりあえず情報THX
569名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 14:19:09 ID:/losg/es
しかし、G.U.の映像作品化だそうが
獣数字は一体何だったんだ…
新しく、これも絡めてくるつもりなのか
そんな事より!
パロディモードキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
奴(カオス)が…帰ってくる!…
wktkが止まらん!wwwww
570名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 21:30:35 ID:/losg/es
公式掲示板、低脳氾濫ワロスwww
アニメでがっかりとかwww
CC2製作だって言ってんのにww
よく見もしないでビートレ製作だと、
思ってやんのww
CC2のHPにはCC2製作の作品しか載らねえよ
アホかと、
あと、一本に詰め込むとかバカじゃね?的
な書き込みもあるがタイトルも読めんのかw
571名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 08:46:07 ID:byaNDnNj
スレ違い
572名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 00:11:47 ID:S2pyE5ru
あんたこそスレのタイトル読めないのか、と
573名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 08:19:12 ID:0BMCv8aE
エロパロだろ
574名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 08:41:00 ID:9It2kX2M
でも実際は神待ちオンリー。
575名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 08:10:43 ID:7z3C1svP
明日あたり来るな…
576名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 22:30:12 ID:ezHAWdMT
じゃあ俺は明後日に8チムチムかけるぜ。
577名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 22:46:59 ID:7z3C1svP
じゃあ俺も!
578名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 05:19:14 ID:3BYPcHWa
おまいら乙
トーナメント3日目・ハセヲ×朔望+碑文解読編投下
579名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 05:20:16 ID:3BYPcHWa

『誰もが自分自身の視野の限界を世界の限界だと思い込んでいる』

                                    【アルトゥル・ショーペンハウアー  ドイツの哲学者】






















トリロジー(TRILOGY:三部作)ってあるだろ。
バック・トゥ・ザ・フューチャーとかロード・オブ・ザ・リングとかスパイダーマンとか。
そんなにヒットしたなら4作目もついでに作ればいいのにって思うかも知れねぇけど
大抵の場合、4作目ともなると作り手の方が萎えてきて駄作が生まれるコトが殆どなんだそーだ。
B級映画でも地味に4作目以降も作られてるの結構あるけど……どんだけーって感じ。


「ハセヲにいちゃん……どうしたの? ぼくとあそぶの、つまんない?」
「いや、んなコトねーぞ」
「なにか、かんがえごと?」
「たいしたことじゃねーって。ほら、行こうぜ」
「あ、まってよ、ハセヲにいちゃん!」

トーナメントも3日目ともなると、ログインしてるユーザーの数もハンパじゃねぇな。
1200万人が一斉にルミナ・クロスに押し寄せるなんつーコトはねぇとは思うが……。

「うわぁ〜。ハセヲにいちゃん、おまつりだよ!」
「今日に限ってアリーナ前の大通りに、各ギルドがショップの出店を許可されてるらしーぜ。
 今夜のトーナメント決勝が始まる頃にはもっと増えてるだろうな、客も」
「うん。だからね、ぼく、ハセヲにいちゃんと……おひるのうちに、いっしょにあそびたかったの」

そーだったな。
カイトと大聖堂で別れた後、タルタルガに戻って装備の調整するか
ルミナ・クロスに行ってシラバス達のギルドショップを昼間のうちに手伝うか
迷ってた時、カオスゲートの前で待ってる望に会った。
ここんところトーナメントにかかりっきりで遊んでやれなかったからな、たまにゃいーだろ。
気晴らしも必要だ……特に今日みてぇな日には、な。

「ひとがいっぱいいるね……まいごになっちゃいそう……」
「手ぇ繋いどけば大丈夫。だろ?」
「えへへ……うん」
580名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 05:21:57 ID:3BYPcHWa

望と一緒に大通りを歩いていると、見知った顔ぶれが視界に入る。
俺達のギルド、カナードのギルドショップ……ショップどんぐりだ。
どうやら……いつものメンバーは揃ってるみてぇだな。
シラバス、ガスパー、クーン……クーン?
珍しいじゃねぇか、アイツがギルドショップの手伝いしてるなんざ。
いつものアイツなら祭に託けてナンパしてるトコだろーに。

「よぅ」
「あ、ハセヲ^^」
「待ってたぞぉ〜!」
「今夜の主役のご登場だなw」

にしても……こ、これは何のショップなんだ?
うちのギルドショップは基本、武器や防具やアイテムの販売専門だったはずなんだが……。
明らかにいつもの雰囲気じゃねぇ……ファンシー系?

「最初は焼きソバの屋台をしよう、って話だったんだけどぉ〜」
「食べられないからちょっと……って話になってな」
「僕の発案で“UMAショップ”を開くことになったんだ。
 ごめんね、ハセヲはトーナメントで忙しそうだったから勝手に決めちゃって^^;」
「いや、まぁ……お前らがそれでいいなら、俺は構わねーけど……」

UMAショップ……なーる。
要するにラッキーアニマルの縫いぐるみ販売店ってトコか。
シラバスらしいチョイスじゃねーか。

「ホントはさ。もっと前から考えてたんだよね」
「七星が、今も居てくれたらなぁ……」
「七星? 誰だそりゃ」

初めて聞く名前だ。
今も居てくれたら、ってコトは前にカナードに所属してたメンバーか何かなのか?
思えば俺、ギルドマスターなのにカナード設立の由来とか何も知らねぇよな……。

「七星ちゃんって双剣士の女の子が居たのさ」
「ハセヲがカナードに入る、ちょっと前にカナードを脱退しちゃったんだけどね」
「その子がラッキーアニマルが好きでぇ、もしイベントで出店できるなら、
 ラッキーアニマルの縫いぐるみを売るショップがやりたい、って言ってたんだぞぉ〜」
「へぇ……」

俺が入る前のギルドメンバーか。
今頃、何処で何してんだろうな、ソイツ。

「ん。よく見りゃラッキーアニマル以外にも縫いぐるみ、あるじゃねぇか」
「あっ、チムチムの……おっきなぬいぐるみ……」
「なんだ、望はソレが欲しいのか?」
「う、うん」

望の視線の先に、両手で抱えてもまだ余りあるビッグサイズのチムチムの縫いぐるみ。
そー言や、望もこういうの好きだっけか。
……ま、今日は祭だしな。

「シラバス。その縫いぐるみ、俺が買うわ」
「えっ? ハ、ハセヲが?」
「そーだよ。俺が買うんだよ」
「ハセヲにいちゃん……?」
581名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 05:23:31 ID:3BYPcHWa

「ほらよ。望」
「え……ぼ、ぼくに……? おにいちゃん、くれるの……?」
「ああ。プレゼント、な?」

前にメールで「ピクニックごっこしよう」って誘われてたけど、
AIDAやらネットワーククライシスやらで一緒に遊んでやれてなかったからな、望とは。
埋め合わせっつーか、コレで勘弁ってワケじゃねーけど……。

「ありがとう、ハセヲにいちゃん……ぼく、すごく、うれしい……」
「お前、メールでも犬とか猫好きって言ってたもんな。
 将来は動物園の飼育係の人になりたいんだろ? 
 まぁ、その予行練習っつーコトでさ……ソイツの世話、頼むわ」
「う、うん……だいじに、だいじにするね! ハセヲにいちゃん、ほんとうにありがとう!」

やっぱ姉貴の朔と違って望は癒し系だよな。
リーダー志願のメール出した時、勢いとは言え「望の兄ちゃんになってやるよ」って言っちまったし、
責任ってか義務?みたいなのが俺にもあるワケよ。
聞けば望の母親、仕事であんま家に居ねぇみたいだしな……。
小さい頃の俺に似てる気がして……放っとけねぇんだよ、イロイロと。
朔も含めて……な。

「こんな時にしか構ってやれなくて、ゴメンな」
「うぅ……ぼく、うれしくて……うっ、ぐすっ……!」
「オーバーだなw 何も泣くことねーじゃ……」

しまっ……望の前で「泣く」は……!


《泣く……? 泣けるでっ!》


余計なの呼んじまった……!
瞬間、望のPCがブルッと震え、頭の帽子の形状が左右反転、
ランドセルの色が黒から赤へ、スカートがブワッと広がって女性型PCへと変化する。
いや、そもそも望の使ってるこのPC、性別の区別付きにくい……って、そんな場合じゃねぇぇ。

「おーどーれーはァ〜ッ! 望を泣かしたんは、またあんたか!? このバカハセヲッ!!!」
「(あー煩いのが出てきた……)」

顎に手を添えて「コキッ」と小気味良く、骨の音を鳴らしながらキンタ……朔登場。
他のメンツに助けを求めようにも、こうなった時の朔は誰にも止められないことを
どいつも知ってやがるから、接客してるフリして俺と目を合わそうともしねぇ!

「なんや、だまーっとって。言いたいコトあるんなら、ハッキリいいや!」
「別にねぇよ……。てか、俺は望を泣かしてなんかねぇっての」
「……望、ホンマか?」
《う、うん。ハセヲにいちゃんは、なんにもわるくないよ!》
「……さよか」

望が脳内会話(?)で朔を説得してくれたらしく、
怒り心頭だった朔はゆっくりと振り上げた拳を収める。た、助かった……のか?
コイツはエンデュランスのコトも含めて俺を嫌ってるからな……触らぬ神に祟りなし……ってワケにもいかねぇか、やっぱ。

「わ、わるかったわ。その、邪魔して……う、うち、すぐ引っ込むさかい!」
「……せっかく出てきたんだ、もうちょっと居ればいーんじゃね?」
「へっ……?」
582名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 05:25:41 ID:3BYPcHWa

「望もそれでいいか?」
《ぼく、かまわないよ。朔も、ハセヲにいちゃんとね、あそびたがってたんだ》
「コ、ココココラァ〜ッ! 余計なコト言わんでえーねん!」
「何だよ。なら最初からそう言えば……ひょっとして、出て来るタイミング計ってたのか?」
「ななな、ンなワケあるかァ〜ッ! ウ、ウチは別にあんたとなんか……!
 ま、まぁ? どーしてもお願いします言うなら? 考えてやらんコトもないっちゅーか……」
「決まりだな」

このゲームはホント、ツンデレのバーゲンセールだなw
……冗談はさておき、これからどーすっかな。
最初はシラバス達と一緒にギルドショップを手伝うつもりだったけど
望と会って予定変更、更に朔も追加となると……どーでもいっか。
朔も一緒なら望も一緒ってコトになんだし。
3人で……あー、俺の中の楚良を含めりゃ4人か? ややこしいな……。

「つーコトだ。俺、ちょいコイツと他の店回ってくる」
「元々ハセヲは今日のトーナメントの主役だしね^^ 無理はさせられないよ」
「ショップの方は、オイラ達に任せとけ〜だぞぉ!」
「夜の決勝が始まる前には応援に行くからな。頑張れよ、ハセヲ」
「あぁ。じゃーな」

クーンが居ると客寄せにちょっと問題ある気もするけど……ま、いっか。
アイツらもアイツらなりに今回のトーナメントを楽しんでるみてぇだし。
ただ……UMAショップってネーミングはどうかと。
普通にらっきーちゃんね……ラッキーアニマル縫いぐるみショップ、ってしとけばいいのに。
……こだわりか?


「おお。美しい姫……縫いぐるみなど如何かな? 
 これ、そこの牛の様な角仮面の斬刀士! 頭が高い、頭が高い!
 何? 自分はこれでも元紅衣の騎士団・小隊長の銀漢? そのような者、我は知らぬ!」
「大変だぞぉ! シラバスゥ、クーンさんが、ジークイマジンに取り憑かれちゃったよぉ〜!」
「大丈夫だよガスパー。ジークと言えばクーンさんが前のバージョンで使ってたPCだし^^」
「ジーク違いだぞぉ……」


……ホ、ホントに大丈夫なんだろうか?

「……なぁ」
「ん? どした」
「あのな、ウチらのギルドのトライフルも……今日、出店やってんねやけどな……」
「来てほしいのか?」
「ぐぬ……」
「(図星か)」

相変わらず素直じゃねー奴。
ま、俺も似たようなもんだけどな、コイツとさ。
だから……分かるんだよ。

《朔はね、ハセヲにいちゃんにずっとまえから、えをみせたがってたんだよ》
「へぇ(ニヤニヤ)」
「だああああああ! な、何でそこでネタバラしすんねん!? ウ、ウチが泣けるわぁ……」
《なみだは、これでふいてね》

コイツら……ひょっとして若手お笑い芸人の注目株、
“にゅーくれいちぇる”の兎丸くんとレイちゃんを越える逸材なんじゃないだろうか……?
583名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 05:27:48 ID:3BYPcHWa

「いらっしゃい……あっ、朔? それに、ハセヲさんも……?」
「アイナ?」

どうしてアイナが店番なんかやってんだ?

「……アイナはウチらのギルドメンバーやねんから、当然やろ」
「マジか?」
「朔に誘われて……ギルドマスターのニンジャトさんも良い人だし……」

確かこのトライフルってギルド、“マニアのためのマニアによる……”って感じのギルドだっけか?
それこそ巫女マニアとか電波マニアとか……。
ギルマスのニンジャトって奴も、よもやまBBSでよく見かける名前だし。
そう言や朔やしゃけもアプカルルに絵を投稿してたこともあったな。
俺が知らないだけで結構認知度は高いのかも……。

「ここってマニアのためのギルドだろ? アイナも何かのマニアなのか?」
「マッ、マニアって程じゃないんですけど……えと、自作の詩とか、絵本とか……」

絵本か……。なつめ辺りと気が合いそうだな。
例の“秘密の部屋”で兄貴のオーヴァンと一緒に、黄昏の碑文を読むのが一番の楽しみだった、って言ってたし。

「あの……」
「ん?」
「この前、すぐ帰っちゃってごめんなさい」
「この前……? あぁ、アーセル・レイに行った時か」

トーナメント開始の前日、俺と朔、そしてアイナの3人で
新公開されたロストグラウンド「曙光の都アーセル・レイ」に行ったことがある。
そこで……まぁ、アレだ。感傷的になったアイナが先に帰っちまったんだ。
自惚れってワケでもねーけど……もしかしたら、俺に兄貴の……オーヴァンの影を見たのかもしれない。

「気にしてねーよ。俺もエラソーなこと言って、悪かった」 
「そんなことないです! ハセヲさんの手は……兄さんと同じ、温かい手だった……」
「あーもしもし? ウチも居るんやけどね……」
「あっ、ご、ごめんなさい……!」

蚊帳の外状態だった朔が堪り兼ねたらしく、俺とアイナの間に割って入ってくる。
何だよ、話に混ざりたいならさっきみたく、強引に何か理由作って混ざりゃいいのに。
……アイナに遠慮してんのか? 

「アイナ、アレ出してくれへんか」
「朔がずっと前からハセヲさんにあげようとしてた、アレ?」
「そ、そないなコトどーでもええから、はよ頼むわ!」
「はいはい」

この2人のやり取り見てると、どっちも歳相応の女の子……感じするよな。
アイナは落ち着きがあって頭もいいし、朔は煩ぇけど仲間を思いやる方だから、これで意外とバランスが取れてるのかも。
てっきりアイナは望とだけ仲が良いって思ってけど、朔とも上手くいってんじゃん。
だよな、昨日だって太白チームに負けたけど一緒にトーナメント出てたくらいだし……。

「……へぇ。お前、こういう絵も描くんだ?」
「まぁ……ちぃーっとばかし、アイナのアドバイスも入っとるけどな」
「でも、描いたのは朔。朔ったらね、いつまでも経ってもハセヲさんに渡そうとしないんだもの」
「だ、だから、そーゆーのダメ言うとるのにぃ! は、恥ずかしゅうて、顔から火ィ出そうになるやん……」

題名は……『妖精憚(フェアリーテイル)』、か。
584名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 05:30:12 ID:3BYPcHWa

『何と惜しい芸術家が、私の死によって失われることか』

                【ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス  ローマ帝国第5代皇帝】





















「碑文の解読、終わったんだって?」
「今からモニターに出す……これだ」

ハセヲとの対話を終えた後、タイミングよく八咫からの碑文解読完了の報が入り
知識の蛇へと帰還したカイトを、八咫が静かに待っていた。
ロストグラウンド内に埋没されていた碑文、ハロルドとエマからのメッセージ。
果たしてそれは理想郷(アヴァロン)到達への助けとなるか?

「どれどれ……。
“邪悪なる者あらば……希望の霊石を身につけ……炎の如く……邪悪を打ち倒す戦士あり……”。 
 ……クウガ?」
「すまない……展開するフォルダを間違えた。……今一度モニターに出そう」
「しっかりしてよ(苦笑)」

八咫も全然関係のない古代文字の解読結果を表示してしまう辺り、動揺しているのが伺える。
よくこの短期間で全ての碑文の解析・解読を行ったものだ、その心労は筆舌に尽くし難い。
だがどんな栄光も、それを分かち合える友人や仲間が居なければ
何の意味もなさないことを……彼は、よく知っている。

「これが……解読の結果だ」
「“刻印とは、あの獣の名。あるいはその数字である。ここに知恵が必要である。
  思慮のある者は、獣の数字を解くが良い。その数字とは――――――」
「―――――人間をさすものである。そして、その数字は666である”」
「……聖書?」
「新約聖書ヨハネの黙示録・第13章18節……まさかとは思ったがな」

今までの世界観と明らかに異なる趣。
少なくともハロルドもエマも、ケルト神話をベースにこの《The World》と根幹たる黄昏の碑文を創作したはず。
いや……原始キリスト教の教義を下敷きとしているならば、そう可笑しい話でもなくなる。
ケルト神話の原型たるアイルランド神話の確立は中世半ばとされ、
キリスト教よりも歴史は浅く、むしろキリスト教の教義に基づいてフィアナ騎士団伝説や
アーサー王と円卓の騎士伝説が生まれたと言っても過言ではないはず。では、“獣の数字”とは?
585名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 05:31:41 ID:3BYPcHWa

「ネロだ」
「ネロ? 魔肖ネロとかネロ魔身とかデカネロンとかネロクイーンの、あのネロ?」
「何故ビックリマン限定なのかは敢えて問わないが……そのネロで間違いあるまい。
 Nero Claudius Caesar Augustus Germanicus....ローマ帝国第5代皇帝。皇帝ネロ」

ゆとり教育が悪化を辿った2017年現在でも、中学の世界史の教科書を開けばその名は載っている。
別名、暴君ネロ。
悪政と奇行(美少年を去勢、自らの正室=妻に迎えるなど)によって
ローマ帝国内の政治を混乱させ、西暦64年に起こったローマ大火を起こしたのは
当時新興宗教として活動していたキリスト教徒だとし、
弾圧したことで後世“暴君”と畏怖されるようになったとされる。

「“獣の数”と目される666はネロの別名、ネロ・ケーザルが原型とする説がある。
 ケーザルとはカエサル、即ち皇帝だ。英語ではEmperor(エンペラー)、ドイツ語ではKaiser(カイザー)。
 ネロ・ケーザルをヘブライ語に変換すると NRWN QSR と置き換えることが出来、
 各文字が50、200、6、50、100、60、200という意味になる。この6つを合計すると……」
「666になる……ってコトか」

意味深なメッセージが碑文に隠されていたものだと思う反面、
これから起こることを如実に現してもいる……そんな不気味なものを感じる解読結果。
もし、その“獣の刻印”、“獣の数字”を誰かが解いてしまったら……?

「どうなると思う?」
「この世界においてのみ、になるだろうが……恐ろしいことになるのは間違いない。
 システムを超越した“魔神の力”だ。
 文字通り、“神にも悪魔にもなれる”……いや、神や悪魔さえ越えるだろう。
 あの榊やオーヴァンですら到達できなかった、限界を越えた極限の世界が待っている」
「魔神皇帝(マジンカイザー)、ってとこか。この世界にそんなプレイヤーが居るとすれば……」
「……ハセヲをおいて他には居まい」

全ての碑文を喰らった憑神、スケィスを従えキー・オブ・ザ・トワイライトと化した少年。
しかも今現在ハセヲの中の楚良が覚醒兆候にあり、彼がその大いなる存在へと昇華してしまう可能性は大きい。
かつての暴君ネロの如く、ハセヲもまたこの世界を蹂躙すると言うのか?

「さっきハセヲ君と話したけど……そういう雰囲気じゃなったよ?」
「油断はできない。今夜の決勝で楚良が目覚めるか否かで結果が決まるはずだ……。
 調整が必要になるかもしれないな。 
 ハセヲの中の楚良が再誕を遂げれば理想郷(アヴァロン)への鍵が揃う、
 だがそれと同時に“獣の数字”も解かれ、彼が魔神と化し、暴君の如くこの世界を脅かす存在と成り得る可能性もある」
「カールって子にとっては最高のシチュだろうね。
 楚良は還ってくるし、《The World》に悪意と毒をばら撒ける……一石二鳥」

カールが決勝でハセヲに対して行おうとしていることは、容認はできない。
しかしながら全ての碑文の力を携えキー・オブ・ザ・トワイライトとなった
ハセヲに対抗できるのは彼女くらいのものだろう。
ハセヲの中の楚良を目覚めさせるなら、彼女が一番の適任だと八咫もカイトも判断した。
不本意だが、カールに賭けるしかない。

「……カールが、本気でハセヲ君を殺そうとした時は僕が止めるよ。
 RA計画も中止だ。アウラもきっと、そんなことは望んでないと思うから」
「了解した。こちらも細心の注意を払って運営しよう。
 女神が試合を見に来ている影響で何が起こるか分からない……」

彼らのRA計画は最終段階に差し掛かっている。その全ての鍵を握り、また鍵となるのがハセヲ。
楚良が完全に目覚める時、ハセヲはどうなるのだろう。
解読された碑文同様、禁断の獣が解き放たれてしまうのか―――――――。
586名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 05:33:24 ID:3BYPcHWa
神さえ悪魔さえ俺は超える、お前と共に、マジンカイザー? 
マジンカイザーのOVAにはカイトやエン様、楚良の中の人も出演? 何のことです?
おやすみおまいら
587名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 07:09:12 ID:Pm91oI8r
面白いけど
そろそろ息切れを感じるな
588名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 10:05:53 ID:oRYg+vJQ
しかし小ネタの仕込みは(;´Д`)スバラスィ ...ハァハァ
GJ
589名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 18:43:12 ID:unnAmM25
そろそろ一気に畳み掛けてきそうだ

クウガまた見たくなってきたGJ!
590名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 20:37:50 ID:eExrVEot
キンタロスワロタw
豊口ボイスで再生されたよ。GJ!
591名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 21:50:58 ID:b2jFaLiM
毎度の事ながらGJ!今回もネタ盛り盛りで楽しませて頂きましたwww



余談ですが即位して間もない頃のネロは暴君どころか素晴らしい名君で
後の奇行凶行は鉛中毒による精神障害によるものとする説もあるらしい
とちょっとネロを擁護してみたりする
592名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 03:25:47 ID:MOeL3QWp
GJ!ただ、投下後は暇なので、今後の予想をば。マジンカイザーになるのはカール、ハセヲ融合体じゃね?と予想。
で、アクエリオンネタ発動と。んで、こっちも対抗して、アウラ「あなたと、合体したい…」
カイト「ネトゲでAIの女性相手に僕のファンタスティックテクニックを披露する事になるとは・・・過激にイクよ?」アウラ「セクロスちげーよ!ヤんならリアルで黒薔薇とやれ」
カイト「エロくて、サーセンww」で、ゲキレンジャーネタ発動。そこで、碑文使いメンバー、揺光等、その他メンバー登場で、『俺が戦う!』『いや、俺が!』『私が!』論争勃発。
延々ジャンケン続けてDBネタも発動、結局アウラ×カイトがカール×ハセヲをアッー!して、ハセヲ、カール「これで、俺は、私は、ガチホモに、百合に、目覚めました」で、感動のエンディング。
勝手にキモい予想投下しといて、悪いが、俺は、そろそろ寝る。
593名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 03:37:58 ID:kAIYvM/S
>>592
アンタは一体なんなんだw
594名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 16:32:01 ID:SX6WkuNR
エロパロなのにエロがないのはなぜですか?
595名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 16:56:20 ID:UwynZCFq
ところどころにエロさえあればいいと思うよ
596名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 18:06:52 ID:kAIYvM/S
過去ログ読めば分かると思うけどこの人はパイもアトリも揺光もカールもちゃんと最後でエロ書いてる
エロに到達する前に未完のまま終わってるSSだってたくさんあるんだ、ちょっと前フリが長いくらい我慢なさい
597名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 22:19:47 ID:VSTykEIw
さ、最高でおまー!
598名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 05:21:02 ID:OeXmez7F
おまいら乙
トーナメント3日目・ハセヲ×朔完結編投下
599名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 05:22:05 ID:OeXmez7F

『臆病者は死ぬまで何度も死ぬ。だが勇者はただ一度の他、死の味を知らない』

                                        【シェイクスピア原作 『ジュリアス・シーザー』より】




















『こっ、これはァ――――――――――――――――ッ!?
 天狼選手、カイト選手が纏った業火のベールに臆することなく、凄まじいスピードで拳を繰り出しております! 
 しかもッ、何故か一切のダメージを負っておりません! 逆にカイト選手のダメージは溜まる一方です!
 あの炎に触れれば大火傷は確実なはず……一体全体、何が起こっているんだァァァァァァッ!?』
『まさか、あの技は……火中天津甘栗拳……!』
『かっ、かちゅうてんしん……あまぐりけんっ!? た、大火様、それは一体……!?』


トーナメント決勝戦。割り振られた3舞台での戦い。
カイトが自在に操る蒼炎に苦戦しながらも、天狼は勝機が訪れるのを待った。
己の持ちうる戦闘技術の全てを駆使するに値する相手……この戦いで天狼は、それを確信する。


『中国の奥深くに暮らす女傑族(ニィチェズゥ)ってぇ、武術に長けた女だけの村に伝わる技の1つだぁよ。
 火の中の栗をよ、熱さを感じるめぇに素手で拾う修行が由来とされてんだ。要は、超高速の正拳突きってトコだな。
 カカカッ! テコンドー、ボクシングと来て中国拳法まで極めやがったか……天狼ってのはホントにてぇした奴だ!』
『火の中の栗を、熱さを感じる前に超高速で拾う……な、なるほど! だから全くダメージを負っていないのですね!?』


昨夜の準決勝、0.5秒先の未来を読む太白に対して
その予知を裏切るかの如く、0,5秒を更に越える高速のパンチを叩き込んだ天狼。
彼にとっては火中の栗を“熱さを感じる前に拾う”ことなど、児戯に等しい。
カイトが天狼はどう出るか、一旦攻撃の手を休めて防御のために纏った蒼炎のベール……
しかしながら、彼が防御に入った瞬間こそが天狼の攻撃開始の瞬間でもあったのだ。

「なるほど……。僕の炎でダメージを受ける前に、次の拳を繰り出す“超スピードの連続パンチ”……か」
「正直……俺は嬉しく思う。まだ貴様のような猛者がこの世界に居たことを……」
「へぇ。天狼、君はこのゲーム、かなりやり込んでるんだ?」 
「その問いに答える必要はない。だが……あえて1つだけ答えを用いるならば……
 このゲームで、この民綿涛に“精神的動揺による操作(コントロール)ミス”は決してない!
 と思っていただこうッ!」
「……いいね。燃えてきた!」
600名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 05:23:57 ID:OeXmez7F

既に舞台上はカイトの放った蒼炎が作りあげた、炎の渦に包まれている。
こうすることで徐々にではあるが天狼のHPは削られていく。
だが決定打ではない。
天狼も昨晩のカイトが乱入した“がび”戦を幾度と見直し、その戦闘スタイルを
1日という短期間ながらも、できる範囲で頭に叩き込んだつわもの。
カイトの動き、蒼炎の発動タイミング、その両手に握られた双剣の動きや
彼の足運び、息遣い……寝る間を惜しんで何十回と再生を繰り返し、天狼は見入った。

「(再生を繰り返すうち、俺は自分が震えていることに気づいた……恐怖と、悦びにッ)」

果たして彼の出した結論は――――――――――――勇者には何処にも無駄がない、ということ。
強いて言えば彼は伝説の剣士(ソードマン)、宮本武蔵のような存在。
何処にも隙がなく、動きに無駄もなく、しかしてその眼光は時に射抜くような鋭さを見せる。
もう日本(イルボン)にサムライは居ないと思っていたが……それは思い違いであったらしい。
かつてドットハッカーズの1人であった砂嵐三十郎がそう思ったように、天狼もまた、カイトにサムライを感じたのだ。

「俺は……」
「?」
「俺は……日本人が嫌いだ」
「へぇ。で?」
「貴様ら日本人が俺達の祖国に対して行った非道の数々も……忘れたワケではない」

無論、よくマスコミが取り上げるような韓国人のデモは
天狼でさえ同じ韓国人として恥ずかしくなるような行動を取っている者も居る。
既に終戦から70余年……日本と韓国の溝は、少しづつ埋まってはきている。
だが相変わらず日本の歴史教科書は日本側にとって都合の良いことばかりが書かれ、
日本軍が韓国人に行った強制連行などの歴史事実などの扱いはあまりに小さい。

「だが……今はそんな蟠りを抜きに、貴様と戦いたいと思っている。
 勝負の時、俺は常に大韓民国(テーハミング)の誇りを抱き、戦ってきた。
 しかし今日は違う。これは俺個人の問題。
 今日の俺は祖国の誇りではなく俺自身の……武道家としての誇りを懸けて戦わせてもらうッ!!!」

天狼の身体から吹き荒れる闘気が、蒼炎の渦を大きく揺るがす。
彼の“負けない”という思いが具現したかのように。ビリビリとカイトも肌でそれを感じる……!

「(どうやら……防御はするだけ無駄、かな)」


『おおっと!?
 カイト選手、試合場全体を包み込んでいた炎を解除したぞぉ―――――――――――!?
 それに伴い自身を覆っていた蒼炎のベールも解いてしまったようです!
 大火様、これはどういう意思表示なのでしょうか……ッ?』
『……小細工無用、ってこったろうな……男の勝負ってのは、やっぱガチの殴り合いと相場が決まってらぁ!』


カイト自身の手によって消された全ての炎。
蒼い業火が猛っていた舞台に静けさが戻り、カイトと天狼……2人の戦士の姿を再び観衆の前に露わにする。

「確かに……君の言う通りだ、天狼。おかげで目が覚めたよ。
 あの時、防御体勢に入った僕に攻撃を仕掛けて来た君を見て『何て命知らずなんだろう』と僕は思ったんだ。
 撤回しよう。天狼……君の命がけの行動に、僕は敬意を表するッ!」


カイトVS天狼戦、本当の闘いがようやく始まる――――――――――――――――。
601名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 05:25:31 ID:OeXmez7F

************************




「この絵、俺にくれんのか」
「まぁ……そーいうコトに、なるっちゅーか……」

アイナが取り出した、朔が描いたと言う絵。
タイトルは「妖精譚(フェアリーテイル)」。
木の上から漏れた木漏れ日の中で、何人もの妖精が踊ってる絵だった。
へぇ、コイツこーいうメルヘンチックな絵も描けたんだな……ちょい驚いた。

「だ、だまっとらんと……なにか、言いや」
「力作じゃねーか。マジで俺が貰っていいのか?」
「……さっきの望がもろた縫いぐるみのコトもあるしな。あんたにくれてやったるわ!」
「ん。そーする。アリガトな」
「フ、フン……!」

思えば朔からプレゼント貰うって初めてじゃね?
いっつも俺がダンジョンクリア報酬のアクセサリとか高レベルの魔導書や防具、コイツにプレゼントしてたし。
こう言っちゃ何だが、一度くらいは見返りあってもいいよな?

「か、勘違いせんといてや! ウチはアンタに気ィ許したワケやないからな、分かったな!?」
「へいへい。分かってますよっと」
「ホンマ分かっとるんかいな? ブツブツ……」
「朔とハセヲさんって、本当に仲が良いのね」
「ハァッ!? アイナ、なんか勘違いしとるみたいやけど別にウチはハセヲのコトなんかちぃーっとも――――――」
「気にしてる、よね?」
「む、むぐぐ……」

アイナの有無を言わさない笑顔にゃ朔も敵わねぇっぽいな。
さすがオーヴァンの妹と言うか、何と言うか……見るトコしっかり見てやがる。
そうだ。オーヴァンが命懸けで守った妹……今度は俺が守ってやらねぇと。

「お前ら仲良いよなぁ」
「ま、同じ魔導士(ウォーロック)やし? それに女同士、互いに通じ合うとこもあんねん」
「好きな漫画は?」
「「ローゼンメイデン」」
「……感想を一言で言うと?」
「めっちゃ笑えるw」
「姉妹同士で戦う、悲しい物語だと思います……」
「(この温度差は何だ……?)」

……仲が良いっつっても感性までは違うか、さすがに。
落ち着きのある分アイナの方が精神年齢高そうだし。
これはこれで釣り合いのとれた友達関係なんだろーな。
あん? でも確かアイナって望とも仲良かったよな。その辺、朔はねーちゃんとして、どう思ってんのか……。

「ローゼンと言えば2007年に首相に就任した麻生が
『ローゼンメイデンを他紙掲載にしてでも連載を再開させる』って公約を
 マジで実現させた時は日本中が祭になったよな。麻生の支持率も90%越えたし」
「さすがアニメと漫画の大国、日本ですね」
「よーするにオタの国っちゅうコトやん……自重しぃ」
602名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 05:27:05 ID:OeXmez7F

「朔、まだ店番の交代まで時間あるし……ハセヲさんと他のショップを見て回って来たら?」
「ん〜。アイナがそう言うんやったら構へんけど……」
「私は大丈夫。もうすぐ、しゃけも帰ってくると思うから」
「せっかくアイナがこう言ってくれてんだ、もうちょい見て回ろうぜ」
「しょ、しょーのないやっちゃなぁ……特別やで?」

望にプレゼントしたデカチムチムの縫いぐるみをアイナに預け、パァッと朔が笑う。
何だ、コイツちゃんとそーいう顔できるんじゃねぇか。
エンデュランスの前ならともかく、俺の前だといつも悪態ついたり渋い顔してたからな。
実質、「消える」とかメールで言い出して結局消えないって決めた辺りから
俺への対応もちょっとは変わってきてるっぽいし……。

「……なぁ」
「あん?」
「手、繋がへん……?」
「……」

珍しいこともあるもんだ。
朔がンな台詞吐くなんて、今まであったか? いや、ねぇ。
手か……どーすっかな。
智香と付き合いだした頃から、何かもうそーいうコト人前でするの、鳴れちまってるし。
実際、さっきまではぐれないようにするために望と手繋いでたし……
まさか弟の望ははOKで姉貴の朔はダメ、ってワケにもいかねぇだろうよ。
……しゃーねぇな。智香、スマン。

「どーいう風の吹き回しだか知らねーけど……いいぜ。手ぐらい」
「は、はぐれんよーにするためやねん! バカハセヲ、勘違いすんなや!?」
「へーいへいへい。ほら、行くぜ?」
「コ、コラァ〜! ウチの歩幅に合わせんかいっ!」

ったく……素直じゃねー奴。
ま、本人がそう言ってるんだから智香や他の女に出くわした時の言い訳はこれでOKだな。
第一、いくら何でも俺と朔じゃ歳合わねぇだろう。
世の中には特殊な人種もいるから、そーいう奴らから見りゃ羨ましいかもだけどな。

「そー言やさ」
「んー?」
「朔と望って自由に入れ替わるコト出来んのか?」
「当然やろ。望に何かあった時はウチが極力入れ替わるよーにしとるし」
「水をかぶったら朔、お湯をかぶったら望になるってのはどうだ?」
「んなッ!? 呪泉郷(じゅせんきょう)の呪いと一緒にすな、ボケッ!」

ダメか? 良いアイディアだと思ったんだけどな。
うちのギルドのデスランディの野郎にもお湯ぶっかけたら良牙に戻るかもしれねーしさ。
まぁ……俺はあかねよりもシャンプー派だったワケだが……。

「お前ら夏休みの宿題、やってっか?」
「ウチは図工専門やからな……極力、宿題は望1人でやらせるよーにしとる。
 どーしても分からんっちゅー時だけ助け舟、出すけどな」
「姉ちゃんらしいことやってんだな、お前も」
「あん子は……望は、あんま大きぃ声で言えへんけどな。
 ちいっとばかり、頭の発育にハンデあんねん……だから、あん子のためにも……ウチがしっかりせなあかん」
「……」

……知ってるよ。お前が今まで、望を守るために頑張ってきたこと。
AIDAに感染した時だってそうだった。お前は……頑張ったから、辛いんだ。
603名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 05:28:21 ID:OeXmez7F

「朔」
「な、なんやの……改まって」
「エンデュランスのこと、好きか?」
「と、当然やろ! 何当たり前のコト言うてんねん!?
 エン様がいくらアンタに靡いてよーが関係あらへん!
 必ずウチがエン様の洗脳を解いて、ウチに振り向かせたるわ!」

洗脳って……俺は何もしてねぇっつーの!
エンデュランスが勝手に言ってるだけじゃねーか……つか、俺に同性趣味はねぇぇ。
……んじゃ、質問その2な。

「じゃ俺は?」
「ハ、ハァッ……!?」
「俺のことはどーだ、って聞いてんだ」
「な、何を言い出すかと思たら、あ、頭大丈夫かアンタ!?」

大丈夫じゃねぇよ。
ただでさえ3日前から楚良の野郎がやりたい放題やってんだ、大丈夫なワケねーだろうが。
……って、朔は知らなかったんだよな、楚良のこと。

「俺はお前のこと……嫌いじゃねーぞ」
「なッ……ア、アンタ……もしかして、ロ、ロリ、ロリコッ、コッ……!?」
「話は最後まで聞けってーの。学校で先生に習わなかったか?」

こりゃ話すよりも直接分からせた方が早いかもな。

「ちょい手、貸せ」
「へっ……?」

呆気にとられて策が動揺してるうちに手を取り、俺の胸へと押し当てる。
最初はこれ以上ない程に顔を真っ赤にして
変態だの色情魔だの強姦魔だのと叫ぼうとしてた朔も、やっと俺が言わんとしていたことを察したようで――――――――。

「アンタ……な、何やの、コレ……!? アンタも、まさか……“2人”おるん……?」
「あぁ。お前らとはちょっとばかり……事情が違うけどな」

朔と望は姉弟、でも俺と楚良は同一人物。
当時の俺を知っているのは……カイトの野郎とカール。
俺自身、楚良を信じていいのか未だに分からねぇ。
でもお前は……朔は、姉ちゃんとして望を見守るって決めたんだろ?
すげぇよ、お前。
いつ消えちまうのか分からねぇってのに、これからもずっと見守る……俺に、同じことが出来るだろうか?
分かんねぇよ、まだ……決められねぇ……。

「た、たまがったわ……ハセヲ、アンタ普通やない思っとったけど、ホンマ変な奴やったんやな……」
「お互い様だろーが」
「これでトーナメント初日や2日目の試合の謎が解けたわ。
 どっちの試合も最後のほーで闘こうてたんはアンタやのうて、もう1人のハセヲやったんやろ?」
「あぁ。俺の言うコト全然聞かねぇ野郎なんだ。
 多分、今夜の決勝でも大暴れするぜ、アイツ。相手が相手だからな……」
「どゆことや……? 説明しぃ、分かり易く!」

さて、どっから話せばいいもんかな……。
俺自身がこの3日の間に起きたこと、起きようとしてることを完全に理解できるワケでもねーしな。
まぁ、何でお前に話したかっつーとだな……同じ境遇なら、ひょっとして分かり合えるかも、って思ったんだ。
楚良を認められない俺に対して、お前は望と上手くやってる。
俺にはそれが……とても、羨ましく見えたんだよ。
604名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 05:30:11 ID:OeXmez7F

「―――――――っつーワケなんだが」
「ア、アンタもなかなかハードな人生送ってんねやな……」

今後も送れるかどうかは今夜の決勝次第だけどな。
最悪の場合、俺だけ消されて楚良の方が生き残る可能性だってある。
そうなったら、俺はどうなる?
今までの俺が消えて、楚良が俺の主人格ってコトで俺の身体をいいように出来るようになる、ってコトか?
冗談じゃねぇぞ、マジで。

「しかし……カールねえさまが噛んどるとなると、かなり厄介やで……」
「お前、カールと知り合いだったのか!?」
「ウチ宮皇のおっかけ、ずっとやってんねん。
 カールねえさまが碧聖宮で優勝したんは……2016年の夏頃やったか? 
 すごかったで……エン様以外に単騎で優勝を勝ち取ったんは、カールねえさましかおらんからな。
 でもねえさま、突然秋頃になってゲームからおらんようになって、碧聖宮宮皇に空きが出来てん。
 その後やな、天狼が仕切り直しの碧聖宮トーナメントで優勝して宮皇になったんわ。
 天狼はイコロに所属しとったけど、ねえさまは所属しとらんかったさかい、行方も分からんようになってもーた……」

カールの奴……。

「ねえさま、何か無理して闘っとるようにウチには見えた。
 元々PKKやし、ハンターも兼任しとったからな。
 姿消すまで無敗やったけど……ねえさまはなんも満足しとるよーには、見ぃへんかったわ」
「……俺を探してたんだ、カールは」
「ハセヲをか? でもアンタ、そん頃確かまだこのゲームやってへんとちゃうの?」
「カールは……俺の中の……楚良を探してたんだ。
 PKKやハンター、宮皇になれば名が売れる。
 そうすればきっと、俺が《The World》に戻ってるなら、きっと気づくはずだって……。
 だからアイツ、前のバージョンと同じ名前、ほぼ同じデザインのPC使い続けて……」
「……そやったんか。入れ違いやな、アンタとねえさま」

カールが楚良を探すのを諦めて《The World》から居なくなった後、
入れ替わりに俺が「ハセヲ」の名でログインし、オーヴァン達と出会って旅団に入った……。
ホント、タイミングわりーな。
あの頃の俺、「魅惑のマルチウエポン・ハセヲ」とかBBSに書かれてて
弱いなりに結構有名だったんだぜ? どこのどいつがカキコしたかは知らねーけどな。
俺の「ハセヲ」って名前をすぐに俳人の松尾芭蕉のアナグラム、
「芭蕉(はせを)」だってコトをすぐに見抜いたんだ、カールがあの書き込み見てりゃ
もっと早く出会えてたかもな……今となっちゃ、もう遅すぎたかもしれねーけど。

「ハセヲ、アンタ……どないするつもりやの? ねえさまと戦うんか、やっぱ」
「アイツがそれを望んでる以上は、避けられねぇしな。
 俺に『決勝まで上がって来い』って言ったのはあの女だ。
 約束通り、俺は決勝まで駒を進めた……7年前にカールと何があったか、まだ思い出せねぇけど
 試合中でなら……互いの命を懸けた限界ギリギリの試合なら……思い出せそうな気がすんだ……」
「……クレイジーやわ。ウチには分からん」
「朔……」

俺への嫉妬でAIDAに感染したお前なら、分かってくれると思ったんだけどな……。

「分かって堪るかボケッ! アンタがおらんなったら望が泣くかもしれへんし、
 アンタの毒牙にかかった他の連中かて同じように悲しゅうなるに決まってんやろ!
 何が“命を懸けた限界ギリギリの試合”や、アホちゃうか!? おどれ、ホンマに死んでしもたらどないすんねん!?
 バカハセヲがッ!!! アンタ、ウチが消えようとした時はメールでエラソーにしとってからに 
 自分がいざウチと同じ立場になったら、年下の子供相手に人生相談ってアホちゃうか!?
 ……アンタがおらんよぅなったら、ウチかて寂しいわ! 憎たらしいけど……アンタおらんなるんとか、そんなん、嫌やわぁ……!」
605名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 05:32:17 ID:OeXmez7F

「……お前が泣いてどーすんだ」
「う、うっさいわぁ! さっきの望の泣き残し分が今頃になって出てきてん……グスッ」
「ほら。涙はこれで拭いとけ」

俺が居ないと、寂しい……か。
やっとお前の……朔の本音を聞けた気がする。

「思い上がりも程々にしぃや……ホンマ、バカやねんから……ヒック」
「お前に説教されるとは思ってもみなかったな」
「フ、フン。ハセヲがあんま、あの頃の……望の中から消えよ思っとった
 ウチと重なって見えたから……見てて我慢できんかっただけやわ……」
「俺が居ないと寂しいし、嫌なんだろ?」
「あ、ああああ、あれは勢いで言っただけで、べ、別に深い意味はないで!? ホンマやで!?」
「へーいへいへい。わーってるって」

ありがとな、朔。何だかんだで俺もお前から……いっぱい貰ってた、って気づいたわ。
お前、ホントは優しいクセにいつも憎まれ愚痴ばっか叩いてるから
今頃になって気づいちまったけど……な。

「あーもう、辛気臭い話はこれで終いやで。ハセヲのせいで余計な水分消費してもーたわ……
 アンタ、こんな感じで他の女も泣かせとるんちゃうやろーな!?」
「泣かせてねーっての」
「あやしーわぁ。アーセル・レイでのアイナもそーやったけど、純真な女やったらコロッと騙されとるで」
「騙してどーすんだ……」
「そりゃ……口じゃ言えんようなヤ、ヤラシーことを強要したり……するんとちゃうん……?」
「するか!」

いや、ホントはしたんだけどな……主に智香に。
智香にだけだぞ? 他の女には手ぇ出してねーからな? マジだからな?

「……あとな」
「? どしたよ」
「ウチの誕生日プレゼントにシロタエギク(白妙菊)の花、おおきにでした」
「何言ってんだ? ありゃ望からお前へのプレゼントだろうが」
「せやけど……アンタが値段まけてくれんかったら、望は買えんかった。
 その辺はウチも……その、感謝しとる」
「まぁ、お前がそう言うなら……」

あの時はただ望が可哀想に見えたんだよなぁ。
姉ちゃんにプレゼント買おうとして金貯めてたのに、その姉ちゃんが金使っちまうんだもんよ。
そりゃ気分も落ち込むに決まってる。
まさか俺も、あのシロタエギクの花が朔が消えるのを防ぐ決定打になるとは思ってもなかったけどな。

「ハセヲ、ウチが消えようとしてた時……メールで言っててん……。
“ シロタエギクの花言葉、知ってるか? 『あなたを支える』って言うんだ。
 お前が望を支えていたように、望もお前の役に立ちたいって、お前の存在を支えていきたいって思ってるんだ。”って。
 ……カッコつけすぎやで、ホンマ。おかげでウチも……コロッといかされてもーたわ。
 望のために消えたない思っとったけど……アンタのためにも、消えたないって思って……だからウチ……」
「朔……?」
「今度は、ウチがアンタを支えたるわ! つまらん弱音吐いとらんと、しっかりしぃや!
 ウチは消えたりせぇへんかったで!? だから、アンタも消えんな! ええなッ!?」 
「……へっ。たりめーだろうが、消えて堪るかっての!」

そうだな……朔の言う通りだ。
俺が消えて楚良だけが残る、それだけが選択肢じゃねぇし、そんな結果は俺もゴメンだ。
危ねぇ危ねぇ、戦う前に戦意喪失するとこだった。けど……これで、朔のためにも負けられなくなっちまった……な。
606名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 05:33:50 ID:OeXmez7F
奴八破奴八破一向聴(ヤッパッパー・ヤッパッパー・イーシャンテン) はしゃぐ恋は池の鯉?
胸の鯛は抱かれたい 次あたりに小休止のエロ入れ鯛? 何のことです?
おやすみおまいら
607名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 07:22:44 ID:VLXkCQe/
うはww
朔モエスwww

塚、やぱカイトかっこえぇ…w 
608名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 10:21:53 ID:Kpq/TGev
1
609名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 10:47:00 ID:9e0EAcHd
ちょwww乱馬w
ナツカシスwwww
610名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 11:06:00 ID:eDOXBnt/
デカチムチムをガチムチと読んでしまった・・・

GJ
611名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 12:34:12 ID:fC/ypGDl
閣下ネタまで…www
GJ
612名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 12:35:51 ID:PIaoBKGn
朔(;´Д`)ハァハァ
613名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 15:31:11 ID:paqaJkN2
すごすぎwww
GJ
614名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 18:22:36 ID:pyo6e11Y
ここの保管庫いくつかあるからどれがどれだかよくわからないんだが…606の書いたSSがある保管庫ってどれ?教えてくだしあorz
615名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 19:23:13 ID:ahEMd084
閣下がそんな公約打ち立てたら支持するしかないなw
GJ
616名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 20:11:46 ID:wUpjlMY1
これだけ言っておこう。






策かわいいよ策。
617名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 21:20:36 ID:pyo6e11Y
614を本気でお願いしますorz
618名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 22:39:40 ID:VZY2SycF
ググれチンカス
619名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 01:04:23 ID:VEgassTi
GJ、だが、カイトのキャラ違くね?
なんか、生意気だな。
もっと誠実で優しい青年度うp!うp!
620名無しさん@ピンキー:2007/09/24(月) 02:58:01 ID:yuq0iPKW
>>380や。そろそろ二ヶ月経つがオー志乃はまだかの
せめて冒頭部分だけでも見せて。
621名無しさん@ピンキー:2007/09/24(月) 10:14:24 ID:pE/K0sJ5
OH! nice 冒頭!
622名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 15:16:51 ID:ITWRt6cE
過疎りすぎage
623名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 22:08:42 ID:FkwZqK3b
かっそーれ↓スペクタクル!(↓はどんどん下がって行く敵な意味で)
この過疎っぷりは、ちょっとしたスペクタクルですよ!
624名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 07:40:23 ID:QO/S6C9K
保守
625名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 18:22:43 ID:i0bmU4Q4
ご想像のとおり、上げ房です。そう呼んだほうがいいでしょう。 
 あっがーれ↑!
626名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 00:04:07 ID:15yoZtbX
余りの過疎っぷりに
かっそーれ↓スペクタクルの歌詞
fullで思いついたわwwww

神が投下してる時以外は〜♪
ガラガラでしょうか〜♪

dat落ちは避けた〜いのです〜♪
スレを見〜てると〜♪
心配なのです〜♪

こんな詞の歌fullで聴きたくねえwwwww
627名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 03:17:03 ID:KrGodPXM
おまいら乙
トーナメント3日目・ハセヲ×朔番外編投下
628名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 03:19:20 ID:KrGodPXM

『時は21世紀。
 テレゾンビ達はついにメディアタワーを占拠した。
 地球は彼らの思うがままに操られ、人々は生きる意欲を失った。
てれび戦士達はテレビを再び人間の手に取り戻し地球を救うため、宇宙へと飛び立った!』

                                           【天才てれびくん OPナレーション(94年度版)より】




















「(あかん……こんなの、ありえへん……!)」

グリーマ・レーヴ大聖堂……Δ 隠されし 禁断の 聖域。
未来を変えるため、決意を胸に渦中に飛び込もうとした矢先
早くも朔の精神(こころ)は折れそうになった。
黄昏とも薄明とも区別のつかない陽光に照らされた大聖堂の、扉の向こう。
その向こう側に潜んでいるであろうモノに、恐怖したのだ。
朔望のプレイヤーである伊織は全身の産毛が総毛立ち、真夏だと言うのに冷や汗が止まらない。

「(ど、どないしたら、こないなコトが……!? AIDAに感染した時のウチなんか、比較にならんわ……ッ!)」

まるでこの世界の全ての悪徳と不吉と毒を孕んでいるかの様な、そんな邪悪ささえ伺えるおぞましい気配。
碑文使いであるが故に分かってしまう、絶望的なまでの力の差。
恐らく、いや十中八九、朔が大聖堂の中に居る者に勝つことは出来ない。
かつてない恐怖。胃の奥が逆流して今にも吐き出しそうになる様な最悪の気分。
エンデュランスをハセヲから奪われたと思った時でさえ、こんなに恐怖の感情は沸かなかったと言うのに。

《お、おねえちゃん……》
「……行くで、望!」

ここまで来てしまったらもう後には退けない。
ハセヲから真実を聞かされた以上、黙って見過ごすことは出来なかった。
……ハセヲには借りもある。
消えようとしていた自分をこの世界に繋ぎとめてくれた大きな借りが。
今こそ、その借りを返すチャンス……代償は大きくなってしまうだろうけれど、それでも構わない……!

「(ウチが……ウチらが……未来を、変えたるわ……!)」

震えを押さえつけながら朔は己と望を奮い立たせ、鼓舞した。
同時に、彼女を守るように憑神・ゴレも顕現の時を待っている。
ハセヲの知らない所で、朔と望の最期の戦いの幕が開く――――――――――――――。
629名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 03:20:31 ID:KrGodPXM

****************




「ハセヲにいちゃんは『えいりあん』ってしんじる?」
「エイリアン? 望はそういうの好きなのか」
「シラバスにいちゃんがね、いってたの。『うちゅうには、いろんなえいりあんがいるんだよ』って」
「へぇ。シラバスの奴、UMAだけかと思ったらエイリアン関係まで好きだったのか……」

まぁ確かにUMAの中には「実はエイリアンじゃね?」って言われてる奴も何匹か居るけどな。
1952年にアメリカのウエストヴァージニア州・フラットウッズの町に現れた
「ウラットウッズモンスター」は別名「3メートルの宇宙人」とか言われてるし……
あとチュパカブラもエイリアン説あったよな。モスマンとかドーバー・デーモンとかジャージー・デビルとか。

「ハセヲにいちゃんは、えいりあんにあったこと、ある?」
「ん? あぁ、あるぜ」
「ほんと!? どんなえいりあんだったの?」
「背は1メートルくらいだったな。
 目が黒くて、毛もじゃで、耳と鼻がデカい。好物は猫だ。
 メルマックって星の出身で、しかも所ジョージそっくりの声で喋るんだぜ」
「わぁ、すごいや!」
《バカハセヲ! 望に嘘教えんといて!》

っと、また朔スイッチ押しちまったか?
やっと望が交代で出てきてくれたとこだったんだけどな……。

「どっからどー聞いてもアルフやないか! 望が本気にしたらどーしてくれんねん!?」
「いいじゃねぇか、アレだって立派なエイリアンだろ(作りもんだけど)」
「ホンマ、こないなアホのためにさっき泣いたウチが馬鹿みたいやわ……」

何だかんだで朔も俺に気ぃ使ってるらしい。
こうやって一緒に望と交代しながらルミナ・クロスの大通りに出店してる
ギルドショップ覗きながら遊んでるしな。
カナードの方はシラバス達が、トライフルの方はアイナが店番やってくれてるおかげで
こーやって2人(いや、望と楚良も居るから4人?)でブラブラ出来るし?
とまぁ、こんな感じで朔と歩いてると……。

「ハッセヲさん♪」
「よぉ。また会ったな」
「今晩は。ハセヲ殿」

昨夜と同じ様に欅と楓とバッタリ出会う。
……バッタリか? どうもコイツが絡む時はいっつも意図的だからな……。
ま、今回のトーナメントにゃ欅もノータッチっぽいけど。

「いよいよですねー、トーナメント決勝戦♪ 僕、最前列で応援しますから」
「……程々にな」
「ハセヲ殿、そちらのお嬢さんは……」
「あぁ、朔だ。俺と同じ碑文使いの。アンタ達ともタルタルガの中で会ってるだろ?」
「あらあら、うふふ。ハセヲ殿も隅に置けませんね」


ま、また『ARIA』のアリシアさんの声が……げ、幻聴か……!?
って、このやり取り昨夜もあったな。軽いデジャヴが……。
つーか何だ、その「隅に置けない」ってのはよ……別に俺はそっちの趣味はねぇんだけど。
ダメだ、どうも月の樹の中でもアトリ以上にコイツら苦手だわ……。
630名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 03:21:52 ID:KrGodPXM

「べ、別にウチとハセヲはそないな関係とちゃうわ! そやろ、ハセヲ!?」
「たりめーだろ……(そこまで全力否定するのもどーかと思うけどな……さっき『好き』っぽいコト言ってたクセに)」

とまぁ、こんなコト話してる場合じゃねぇ。
欅に聞きたいことがあったんだわ。
昨夜カイトの野郎に笑われたアレについてな……。

「欅」
「はい? 何ですか、ハセヲさん♪」
「このXthフォーム……どうにかなんねーかな……」
「? ハセヲさん、その格好が嫌いなんですか?」
「嫌いっつーか……昨夜、『タカラヅカみたいな格好しやがって!』っぽいコト言われて……
 よくよく見れば確かにそれっぽい……とか思ったりしたっつーか……」

カイトの奴に指摘される以前に俺も気になっちゃいなかったんだけど……。
ホラ、揺光も扇みたいなのが背中に付いてるだろ?
今思うとペアルックみたいな感じでさ、恥ずいと言うか……
手ぇ繋いだり抱きついたりするのはOKでもペアルックはダメだ、生理的に受け付けねぇ!

「うーん。
 キャラデザの細野さんからデザインオーダーは『フ○ーザ最終形態っぽく』でしたしねぇ……」
「宇宙の帝王!?」

つーか誰だ、細野さんてのは!?
俺そのうち未来から来た少年に剣でバッサリ一刀両断されちまうんじゃねーだろうな?
やべーだろ……常識的に考えて……。心臓病で病死ってレベルじゃねぇ。

「昨夜もお話しましたけど、ハセヲさんのXthフォームは
 再誕の爆心地に居て大ダメージを負ってしまったハセヲさんを蘇らせるためのもの。
 何度もいじっちゃうと逆に不具合が出ちゃう可能性もあるんです。
 もうハセヲさんはキー・オブ・ザ・トワイライトになってしまってますし……ね」
「もう、お前でも無理ってコトか?」
「仮にXthフォームが更なる進化を遂げるとすれば……
 それはハセヲさんが“本当の自分”を取り戻した時だと思いますよ♪」
「何っ!? お前、何か知ってんのか!?」

そう言やコイツ、昨夜「刻印」だの「獣」だの言ってたな……ありゃどういう意味だ!?
俺と……俺の中の楚良と、何か関係あるコトなのか?
おい、欅!

「まぁまぁ。僕の口から今言わなくても、今夜の決勝で全部分かっちゃうかもしれませんよ。
 お楽しみは最後までとっておかないと♪ ね、楓」
「はい」
「(ダンマリってワケか……何を隠してやがんだ、コイツ……!?)」

やっぱ、そう簡単にシッポは出さねぇ……か。
抜け目のねぇ奴……どうやら今回は完全に傍観者を気取るつもりらしい。
そりゃそうだ、今回のトーナメントは八咫の発案、欅が絡んでるなら
八咫だって俺やパイに伝えるはず。俺にトーナメントに出場しろって言ってきたのは八咫なんだからな。

「じゃ、僕達はそろそろ行きますね。決勝戦、頑張ってください! ハセヲさんに女神の祝福を♪」
「ごきげんよう。ハセヲ殿」
「……行ってもーた。とんだ邪魔が入ったもんやな、ハセヲ。……ハセヲ?」

い、今、『護くんに女神の祝福を!』の護くんの声が聞こえたような……げ、幻聴か……!?
……ハッ! しまった、んなコトやってる間にまた話はぐらかされちまった……。
631名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 03:23:57 ID:KrGodPXM

「ハセヲ! 聞いとるんかっ!?」
「あ、あぁ、聞こえてるよ」

だから耳元で叫ぶのはヤメレ。
「届かない声なんて、きっとない」って言うだろ。ちゃんと聞こえてんだからさ。
で、何だ?

「ウチと望、しばらく別行動したいんやけど」
「ん? ギルドショップの手伝いか」
「それもあるんやけど……ちょっと、な。
 アンタの試合、始まる前までには行くさかい、一旦解散せぇへん?」

そうだな……。
望ともこれまでの埋め合わせとまではいかねぇけど、それなりに遊んでやれたしな(朔とも)。
ここいらで一旦、別行動ってのも悪くはねぇ。朔や望にだって都合はあるだろうしな。
時間的にはそろそろ夕方か?
昼頃にカイトと大聖堂で会ってから望と会って
朔も一緒に遊んでたし、結構時間経っちまったか……楽しい時間っつーのは、いつも早く感じるよなぁ。

「別に律儀に試合、見に来なくてもいいんだぜ?
 子供はさっさとログアウトして、恐竜惑星かジーンダイバーでも見てりゃいい」
「天才てれ、まだ放送してたん!?」
「ジーンダイバーは私をケモナーへと目覚めさせた記念すべきアニメなのですヨ。ラヴュン!」
「アンタは黙ってろ、たぬ」

しかしジーンダイバーのOPは今見ても神だな。
クーンの中の人がドライ6役で出てたっけか……。
でもアリス探偵局も捨てがたいよな。あれだけDVD、未だに出てねぇし……ニコニコで我慢すっか。

「で、どーなんや? 別行動でええんか?」
「あぁ、構わねーぜ」
「さよか。ほな、これでおわかれや」

おわかれ……?
何言ってんだ、アイツ……?
俺のパーティから外れた朔はクルリと背を向け、カオスゲートへと走って行く。
何だよ、どっかのエリアで誰かと約束でもしてたのか?


「ハセヲ!」


ゲートの前で立ち止まった朔が一度だけこっちを振り向き、大声で俺の名を呼ぶ。


「必ず試合、見に行くで! 
 ちょい遅れるかもしれへんけど、ウチが着いた時しょーもない戦い方しとったら承知せぇへんからな!?」
「……わーってるよ!」


朔に負けないくらいの大きな声で、俺も朔に返した。
何だか分からねぇけど、場所とか大勢のプレイヤーが見てるとか、恥とか外聞とか関係なしに、
アイツに応えてやらなきゃいけない……そんな妙な胸騒ぎがしたから。
なんだ……アイツの背中……あんなに小さかったっけか……? それに「遅れるかも」って……。

「朔……?」
632名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 03:25:41 ID:KrGodPXM

******************




《おねえちゃん……》
「すまんな……。アンタも道連れになってまうけど……構へんか……?」
《……ハセヲにいちゃんの、ためなら……ぼく、いいよ……?》
「ええ子やね……」

カールを止める。
生半可な覚悟では達成できない、達成率0%に近いミッション。
ハセヲと別行動を取ると言い、カオスゲートの奥に消えた朔。
彼女は今……グリーマ・レーヴ大聖堂の前まで歩みを進めていた――――――――――――!

「ねえさまは……いつもココにおった。
 大事な試合の前はいつも、この大聖堂の中でずーっと立って……。
 決勝が始まっとらん今なら……必ず中におるはず……!」

否応無しに感じる不吉な気配。
ハセヲの話によるとカールも実は碑文使いだったらしい。
それもハセヲ同様に第一相、スケィスの。
いつもの朔ならば「何やのソレ、お揃いか?」と茶化したかもしれない。
だが胸中は複雑だった。一度に解決しなければならない問題が山積みなのだから。
例を挙げると

その1.自分にカールが倒せるだろうか? 無理、あらゆる面で勝てる要素は皆無。
その2.憑神同士の戦いに持ち込めばどうか? 無駄、眼前の大聖堂から感じる禍々しい気配がそう語っている。
その3.せめて説得できないだろうか? 無謀、自分がカールの立場ならば絶対に耳を貸すはずがない。

と言う具合に。
女の情念と執念が齎さんとする悲劇と惨劇……未然に防ぐならば、今しかない。
余計なお節介かもしれないが、朔とてカールの気持ちは理解できる。
恋愛というものは理屈ではないし、そう簡単に諦めきれるものではないコトを朔は知っている。

「道成寺の清姫も……こないな気分やったんかな……」
《きよひめさま……?》

朔と望のリアルのプレイヤー……中西伊織の住む和歌山県に伝わる「安珍清姫伝説」。
後世になって付け加えられたエピソードが多いものの、代表的な話のラストは
蛇に化身した清姫によって鐘の中に隠れていた安珍が焼き殺されてしまうもの。
……カールに、そんなことはさせない。そんなことをさせる前に止めなくては。

「(ハセヲは……ウチらで守るんや……)」

だがどうだろう。
口ではそう言っているものの、一向に大聖堂の扉を開けることができない。
無論、鍵などかかっておらず、少しコントローラーの操作ボタンに力を入れれば開くはずなのに。
理解(わか)る。扉の奥に、想像を超えた恐ろしい者が待っていることが。
もう朔が知っていた頃のカールではなく、1人の男のために世界中を敵に回すことを誓った女が居るのが、理解る。

「(……カールねえさまは、ウチらが止める!)」

ここから先は朔達にとって全くの未知の領域。正直、気が狂いそうだ。脈拍も息遣いも荒く、心臓が高鳴っている。
しかし恐怖を増大させる凶々しい気配に怯む事なく、とうとう朔は大聖堂の扉を開き、そして視た。
《The World》に存在する総ての邪悪と悪徳を孕んだ大聖堂の中――――――――――――静かに牙を研ぐ阿修羅姫が、佇んで居るのを。
633名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 03:27:10 ID:KrGodPXM
「この戦争が終わったら結婚するんだ」「こいつの相手は俺がやるからお前は先を急げ、すぐ追いつくから」?
スレ容量と睨めっこの結果、エロは次回に延期、次スレでお会いしましょう? 何のことです?
おやすみおまいら
634名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 03:48:46 ID:9mcyxvCa
ぶw
モロ近所ネタktkrwww
天てれとかアルフとかどこまで細かいのwww
GJ、次スレで会えるの楽しみにwktkして待ってる(*´д`*)ハァハァ
635名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 11:00:10 ID:IITg1RR2
GJ!!!!
ジーンダイバーとか懐かしネタがwwww
そっか・・アリス探偵局ってDVD無かったのかorz
今回も乙でした
636名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 11:01:42 ID:TWp00kZV
つか自サイト作ってそっちでやれよ…
637名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 11:24:01 ID:FcasH9Mt
来週涙の予感?

GJ、次スレで会おう!
乙っしたw
638名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 11:56:12 ID:Y6U+8Lkd
天テレナツカシスwwwww
gj!!!!
しかし過疎っぷりが凄いな・・・・・。
みんな息潜めてないで、もうちょっと書き込もうぜ?
639名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 17:09:09 ID:fu9FtzEU
次スレか・・・なら後は埋めるだけよおおお
640名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 21:58:44 ID:Cn2M2S4m
相変わらず最高ですw
641名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 08:17:10 ID:xbXeJ8AY
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642名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 08:17:44 ID:xbXeJ8AY
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643名無しさん@ピンキー
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