女性の求めをエロカッコ良く押しとどめろ!2制止目

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114319 ◆lHiWUhvoBo

 15時。ビジネス街の真ん中にある、とあるファミレス。戦争の様なランチタイムが終わり、雲霞の如くに押し寄せた客の
姿も途絶え、店内は閑散としていた。兵(ツワモノ)どもの夢の跡、的な店内を見据えたフロア担当のアルバイトの女の子
がほっと溜息を吐く。今日も問題なく捌けて良かったな、と。この短いスカートと胸を強調した制服は男性客の視線が痛い
程に突き刺さる。ストレスと性欲の溜まっているオジサン達の視線を否応なしに浴びる格好のイケニエなのだ。
 
 「ご苦労様都ちゃん。もうブレイク取っていいからね」
 「は〜い、では入らせて貰いますねマネー…」

 都築 都(20)は振り向いた途端絶句した。このピア・キュロット6号店を常に陣頭指揮で切り盛りする、鉄の女と綽名
される敏腕マネージャーがそこに居た。なんと…フロアの制服で。そう言えば他のバイトの娘が噂をしていた。ここ数日、
マネージャーが決まってこの時間にブレイクを勧めたり、何故かフロアのシフトを変わってくれるようになった、などなど。

 「都ちゃん? どうしたの? 」
 
 普段のスーツ姿からは想像も出来ない程の色っぽさだった。…簡単に言ってしまえばまるでその筋の夜のオミズの
お店のお姉さんの卑猥さだ。キツイ切れ長の目の顔立ちと制服とのギャップが同じ女の目から見ても、もの凄くそそる。
特にボディラインのボンキュっポンの段差は犯罪的だ。思わず決して小さくは無い自分の胸を思わず撫でてしまう程に。
決して太くは無いウェストを確認する程に。決して弛んではいないヒップの張りを確認する程に。正に黄金率の極致だ。

 「マネー…ジャー? 」
 「この格好? 私も研修の時にしてたの。特に問題無いでしょう? 」
 「くるっと回られても…その…」

 その時、来客を告げる電子音のチャイムが言葉に詰まる都築 都(20)を救った。20ウン歳で四捨五入すれば30歳の
年増女がまるで同年代かそれ以下のような反応を返すのはまだ良いとして、店内スタッフからは般若とか鬼とか呼ばれて
畏れられつつも慕われている女性のやって良い事では無いな…と思っていると、思いを寄せる厨房スタッフがデレデレして
いたので、マネージャーの言葉に甘え、都は奥に厳然たる制裁を加えに行くことにした。駆け寄るようにしてマネージャーが
訪れた客に接客に向かう様がチラリと見えた。マニュアル通りの応対なのだが…何かが違う。厨房スタッフを予備メニューの
束でブン殴りながら、都は耳を澄ませつつ、そっと覗き見て店内の様子を伺うことにした。
115319 ◆lHiWUhvoBo :2007/10/25(木) 17:53:46 ID:x3AATHV5

 「いらっしゃいませ、一名様ですか? 」
 「ええ、申し訳ありませんが僕独りです」
 「謝る必要は有りません。むしろお独りで安心…失礼を致しました、こちらへどうぞ」

 幼い頃の、スプラッター映画を覗き見た感覚に都は襲われた。あの、氷を削って創られたんだとか言われてた女王様気質の
鉄面皮と冷静ぶりを誇るマネージャーが、頬まで染めて浮かれている。これはもう、店内スタッフ全員に対する犯罪レベルだ。
同人誌を書いていると言うアルバイト仲間にこれを見せたら『あ〜ん、ギャップ萌えの極致ぃ!』とか言ってハァハァして見守るに
違いない。当然の如く、アルバイト仲間は同性だ。しかも少しその「ケ」があると言われている、近郊にある全寮制女子校出の。

 「今日のお勧めは…私…と言って見ますけれど…どうでしょうか? 」
 「…そうですね、今日もお綺麗ですが、僕には少し勿体無さ過ぎます。済みません。…チョコレートパフェをお願いします」
 「畏(かしこ)まりました。残念です…。・・・っ!! 少々、お待ちください」

 ヤバイ! 気付かれた? 都は厨房に注がれた鋭いマネージャーの目に射抜かれた気分にさせられた。己の親の敵を見る
ような目付きだ。マネージャーは客に丁寧に一礼すると、般若の顔をして都の方に向かってくる。もう逃げられない。足が竦む。
そして、固まったままマネージャーに襟を掴まれ持ち上げられる。…スゴイ筋力だった。きっと数々の繁忙期のオーダーの
修羅場を潜り抜けてきたに違いないと都は未知の恐怖に震えながらそう思った。…厨房スタッフは都の乱撃によりノビていた。

 「私は休んでなさいと言ったわね? 都ちゃん? …貴方が今居る事がお客様に知られると、私が非っ常ぉ〜に、困るの」

 コクコクと頷く事しか都には出来なかった。途端にマネージャーの顔がパッと笑顔に戻る。釣られてフロアを見ると客が心を
定めたのか、先程のウェイトレス=マネージャーの姿を捜していた。必要最小限だけ首を動かし、何かこう、ビシュ! ビシィ!
と効果音が入りそうなキビキビとした動きだった。

 「ああ、あのヒトが私を求めてるぅ…

 眉が太く、凛々しい。目も大きく、切れ上がっている。顎はガッシリとしている。首は太く、長い。それでいて、マッチョとは違う。
例えて言うなら…CSでやっている、昭和の日活東映の映画スターを思わせる精悍な顔付きだ。今風のフェミニンな坊やとは
根本的に土台から違う逞しさを持っている。骨付きのチキンの骨まで噛み砕きそうな顎を左手でつまみ、スタッフを呼び出す
ためのチャイムを押そうか押すまいか、右手を上下させ迷う様が、何故か可愛く見えた。

 「都ちゃぁ〜ん? どこを見てるのかなぁ〜っ? 」

 …ふと、都の背筋に戦慄が奔った。都はゴメンなさい、と小さく口の中で呟き、厨房スタッフが用意してくれた『賄い』を持って
スタッフルームへ素直に赴く事にした。これ以上邪魔すると殺すわよ、との言外の響きが込められていることを理解出来たから。