繁華街の路地でチンピラに囲まれていた小僧に酔った頭で説教を垂れ、因縁付けられたのでそいつらを叩きのめし、
行く所が無いと小僧が抜かすから部屋に連れ帰り、風呂に入れと言い残し、明かりを点けないまま部屋で寝てたら…
俺の腕の中にバスタオル一枚身に纏っただけの少女が飛び込んで来ていた。…全く。…ホロ酔い気分が台無しだ。
女臭ぇったらもう…髪が鼻をくすぐる。…知ってるか? シャンプー使おうが、女の体臭は自然と匂ってくるもんなんだ。
「おとなしく寝てろや。どういう事情か知らんが一晩泊めて貰っただけでな、簡単に自分を安売りするんじゃねぇ」
「…どうして? 」
「どうしてかって? …自分の膝小僧よ〜く見て見な、お嬢ちゃん」
かくかく膝が笑ってるだろうが。それに震えてる。どんな事情でそんな結論に至ったかは解らんが、そんな思い詰めた
挙句の女を抱けるほど、世慣れちゃあいない。だが我が愚息は意志に反比例してお嬢ちゃんのお腹を押し上げている。
…ほ〜ら言わんこっちゃ無い。またピクッ、と反応してやがる。…だ〜か〜らぁ、無理すんなっての。な? お嬢ちゃん?
「怖いのに無理する必要は無いさ。俺が説教垂れたのも酔っぱらった上での気まぐれだしな? 」
「でも……でもっ! 」
「俺のを握るなってのっ! …全く、そこにベッドあるからもう寝ろ。湯冷めしちまうぞ」
やれやれ、良く吠える子犬を拾ったと思ったら子猫ちゃんだったとはね。誰かにばれたら淫行条例に引っ掛かっちまう。
事情は有るんだろうが聞くのは朝陽を浴びてからだ。今お嬢ちゃんに聞いてたら勝手に我が息子が直に聞いちまうしな?
ベッドのシーツを捲り、お嬢ちゃんを寝かせてから掛け直し、俺は後ろ髪を引かれる思いでかろうじてドアを閉め廊下に出る。
「さあて、風邪でもいっちょ、引きますかね」
冷たいシャワーを浴び続けて、この火照った頭といきり立ったモノを冷ますしかない。初秋とは言え、冷水は結構キツイ。
怖気づくと途端に、押し付けられた豊かな胸の膨らみの感触や、しっかり出来てた胸の谷間、スラリと伸びた綺麗な脚線、
潤んで見上げていたつぶらな瞳を思い出す。この時ばかりは遠い昔に夜戦訓練を受けて夜目が聞く自分が呪わしかった。
「芸も無え。遺伝病を断つ為、一生独身を誓ったんだろ? おい? 」
俺の余裕もここまでだった。意気揚々と脱衣所に踊りこむと、そこに篭もるお嬢ちゃんの匂いに悶々とし、風呂のナイロン
タオルを手にとって妙な想像をしてしまい、結局俺は頭から冷水を朝まで浴び続ける哀しい修行者の身と成り果てたのだった。
わざとやってるんじゃないかと思う程に狙った格好の、俺のワイシャツ一枚を身に纏い、お嬢ちゃんが朝食だと呼びに来るまで。