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若本:2008/03/18(火) 21:27:46 ID:NGpdoqwP
うわ、久しぶりの投稿で制限あるのわすれてた。編集するから
お待ちあれ。
「後、もう少しで着くと思うんだけど」
無尽蔵に生えた山笹が行く手を阻む。獣道を正守の誘導で、時音は険しい山を一時間程登山していた。
途中までは正守が出した迎えの者が送り届けてくれたが、途中から空からは移動が難しいと徒歩に切り替えられた。
足場の悪い場所を先に正守が登り、後ろにいる時音へ手を差し出す。
運動しやすい格好で訪れたのでそこまで過保護にされなくても平気なのだが、正守は相手が男ならいざ知らず、時音は女の子だ。
つい、無意識に気を配ってしまうのは当然の事で。
「それにしても、凄まじい山奥に篭ってるんですね。山が深いと言いますか……人間の手が殆ど入ってなくて、漫画に出て来る妖怪
が本気でいそう」
「はは、水木繁とかみたいのか?妖は精神体だけど、彼らは肉体があるっぽいよね。俺もいるのなら滅したりしないから是非拝みたいも
んだ。ねずみ男とか、ぬり壁とか一旦木綿とかね」
他愛も無い世間話をしながら、更に森は深くなり太陽の光が届かない場所へと足を進める。
彼女が目指す場所は良守が修行していると言う神佑地。猟師でも無い限り、入口でさえ一般人はけして訪れる事が無いと言う。
完全に下界とは隔離された場所。だからこそ異能者の修行場として裏会が所有していた。
彼はもう三週間も兄と一緒に厳しい修行に明け暮れている。
そもそもの発端は、良守が十八歳になり高校を卒業した頃、彼の身に変化が突如訪れた。
烏森の仕事に差し支える程に、結界を形成する力が酷く不安定になり、事実に彼は激しく動揺した。
色々と試行錯誤した結論は、無尽蔵にある彼の力を上手く使いこなす為の壁らしく、また正守も修行者して同じ壁にぶつかっていた。
結界師と言うのは、強力な術者であればある程、成長に伴い時折力にブレが生じるらしい。
上手く矯正できれば、更なる高みを目指す事も出来ると言う。
彼の所属する夜行も、三年も月日が経過すれば組織として随分安定していた。彼は副長である刃鳥と補佐の行正に全権を委ね、
兄弟で一ヶ月修行に明け暮れる事にしたのだ。それだけ長い間、烏森を離れる事に良守は顔色を煙らせたが、夜行から人員も借り
れてしかも年寄り連中もまだ現役なのだ。むしろ力が不安定な良守が烏森で勤めをする方が余程、問題は多かったのだった。
彼は渋々修行に向かう事を了承し、恋人である時音にしばしの別れを告げる。
十六歳から恋人として付き合い始めて、一日たりとも顔を合わせなかった事はなかったのに。
「とっとと修行なんて終わらせて帰ってくるから!!俺がいなくて寂しくても泣くなよ」
送り出す駅のホームで、今にも泣きそうな情けない顔をして良守は時音に握手を求める。本当は時音を自分の胸に抱き寄せたかったが、
ここは人の往来も多い駅。しかも地元だ。多少なりとも彼に理性が備わっていたらしい。辛うじて我慢して握手なのだ。
時音は薄く微笑み、差し出された良守の手にそっと自分の手を合わせた。
「大丈夫だって。雑念は捨ててあんたは修行にだけ集中しなさい」
「大丈夫って迷い無く言われてもまた寂しいんだけど。男心は複雑なんだぜ」
握った手を少し強めて、離すのを躊躇う。もう、電車はすぐ傍まで来ているのに。
「一ヵ月後、あんたが修行を終えて、戻ってきたら真っ直ぐあたしの家へおいで」
「それって、時音もしかして?」
彼は十六歳から時音と付き合いだして二年間、ずっと待ち続けていた事がある。恋人として二人の仲を現当主である時子にカミングアウトする日を。
その日が一ヵ月後に訪れる。彼は泣きそうだった顔を更に歪めて感激した。
「今よりもずっと逞しくなってる良守を……あたし、待ってるから」
満面の笑顔で時音にそう言われれば、良守も修行に励むしか無くなる。しかも一ヵ月後に楽しみまで追加され、彼も断然やる気が漲っている様子で。
時音はたった数言で彼のモチベーションを最大限に引き出したのだ。こうして、良守は電車に揺られて正守と共に神佑地に入山したのだが。
二週間が過ぎた頃、正守の式神が時音の元に一枚の手紙を遣す。
そこには、正守の達筆な時でこう書かれていた。
『良守さ、やっぱ時音ちゃんがいないと駄目っぽい。迎えを遣すから陣中見舞いに来て♪』
隅には膝を抱えていじけている良守の落書きまで添えられている。
その絵がやたら上手くて、時音は全力の力が抜けそうになった。
「あの馬鹿、雑念は捨てろとあれだけ言ったのに」
携帯の電波も届かない山奥で修行しているらしく、送り出したきり連絡も取れずじまい。確かに良守の様子が気になっていたのもあった。
幸い、明日は土曜日で用事も無い。後に迎えに来た者の話によれば、神佑地は日帰りで帰れる場所にあるらしい。
時音はそれならと陣中見舞いとしてお重箱を作り、一路向かったのである。
獣道を抜けるとゴツゴツした岩場が見えて、直ぐ様良守の姿が時音の視界に映った。
彼は宙に結界を作り、その上で座禅を組んで精神統一していた。
身体中、擦り傷だらけでもう胴衣もボロボロだった。だが、草臥れた様子は感じ取れない。
時音が思っていたよりも良守は真面目に修行に励んでいる様にみえる。
「正守さん、あたしが顔見せたら修行の邪魔になりませんか?」
良守が折角やる気なのだ。それに水を差すのは流石に居た堪れない。だが、正守はニコリと微笑んで時音の問いに答える。
「あいつ修行に集中し過ぎてるの。入れ込み過ぎって奴?余程早く帰りたいんだね」
確かに一ヶ月なんて篭ってられるかと言っていたが、本気で短縮を考えていた様だ。
だが、修行も意気込みが空回りすれば隙が生まれる。生傷があるのはその所為か。
「結界師としてさ、折角来てくれた時音ちゃんの気配に気付かないのがいい証拠だよ。だから少しガス抜きさせてやんないといけないっ
ぽくてねぇ。時間は有限だし、効率良く修行しないと」
「はぁ、そうですか。何だかんだ言いながら良守に甘いですよね、正守さん」
「んや、そうでも無いよ」
そう言って正守は結界で階段を作り、宙にいる良守相手に絶界を纏って勢い良く飛び込んで行った。
「げぇぇぇ。またきやがった!!」
「ほら、脇ががら空きだ」
二人は軽く戦闘状態に突入した後、良守が競り負けたらしい。勢い良く落下して来るではないか。
「ちょ、結!!」
ギリギリの所で時音がクッション代わりの結界を作るが、上手く形成できないで流石に焦る。
術者の力を不安定にさせる作用が神佑地に備わっていたのだが、時音は聞かされていなかった。
時音の術が間に合わず、そのまま良守は地面に叩きつけられる格好とな。
急いで駆けつけ、良守の頭を膝の上に寝かせて、意識レベルを確認するが命に異常は無い様だ。
こんな修行をしていれば生傷は耐えないだろう。現に良守は気を失っていた。
頭上を見上げれば、正守が結界で作った足場から見下ろしているではないか。
「あーあ。良守の奴、着地に受身取って無いぽい?」
申し訳無さそうに尋ねてくるが、余り反省の色は見えない様子だ。
時音は無茶ばかりするのは良守の専売特許だと思ったのに、兄も同類かと嘆息が漏れた。
「思いっきり気絶してます。正守さん、スパルタ過ぎますって」
「うん。こいつを極限まで追い詰めるのが俺の今回決めた修行だし」
「なんて嗜好性に満ちた修行なのかしら」
どう考えても修行半分、趣味半分だろうと時音は更なる嘆息を深める。
正守は音も無く地に足を下ろし、だらりと伸びた良守の手首を掴んだ。
そのまま引き起こして、背中に喝を入れて意識を無理やり覚醒させた。
「良守、大丈夫か?受身取らないと打ち所が悪かったら死ぬから気をつけろよ」
「大丈夫な、訳がねぇ……まじで死ね。くそ兄貴」
「ほら、時音ちゃん来てるし、機嫌直せ」
正守が良守の背中をくるっと向けさせると、恋人である時音の姿がある。
良守は怪訝そうに眉根を顰めて盛大に不機嫌を露にした。
「おま、勝手に人の彼女の精巧な式神作ってるんじゃねーよ」
修行中、焦がれて悶えた夜もあった事を知ってる癖に、悪ふざけにも程がある。
余程腹に据えかねたのだろう。良守は渾身の力で時音の式神を滅してしまおうと印を構えた。
だが、流石の良守も数秒で気がつく。目の前にいる存在が式神なんかでは無い事を。
「あれ、本物?」
「うん、一応そのつもり」
良守は突然現れた時音の存在が幻の様に思えて、慎重に指を彼女の頬に這わせる。
触れた指先から感じた肌の弾力は、まさしく良守が見知った時音の柔らかさで。
「どうして……お前、ここ来るのだけでも大変だったろ?」
「まぁ、修行と言っても一ヶ月は長いし。陣中見舞いって奴?」
時音は持参したお重を良守に見せて、照れくさそうに微笑んだ。
その愛らしさが破壊的過ぎて、声も出ない。久しぶりに拝めた恋人の姿に良守は感極まる。
正守は立ち上がると、良守の頭をポンポンと叩いてくしゃりと撫でた。
「そんな訳だ良守。たまには生き抜きしよう。今日の夕方まで自由行動な」
つい先程まで攻撃をしかけてきた人間の台詞とは到底思えない程、優しい口調だった。
だが、良守としても後10日は会えないと思っていた恋人に会えたのだ。嬉しくない筈が無い。
「兄貴の癖に粋な計らいじゃねーか」
「時音ちゃんのお重が食べれなくて残念」
「誰が時音の手料理をお前に食わせるか」
ふて腐れた様に唇を尖らせて、お重箱を両手で抱える良守。
正守はからかいを含む視線を良守に落として、ふいに時音へと目線を合わせた。
「はいはい、じゃ。夕方まで時音ちゃんを堪能してくれ。俺も楽しんでくるから」
そう言って正守は軽い足取りで一人、森の奥へと消えてしまった。
誰もいない修行場に、時音と良守が二人残された。持参したお重を二人で食べて、良守は軽く修行の成果を報告する。
術が不安定になりやすい場所を選んだのには意味があった。
結界を力技でなく土地の波を読む事で、形成を安定させるのが今回の修行らしい。
だが、集中しすぎていると正守が襲ってくるのだとか。そんな追い詰められた状態で良守は着実に腕を磨いていったのだ。
「な、昔より精度が上がってるとおもわね?」
時音は良守の繰り出す術の成果が明らかに進歩していて、素直に感心した。
特殊な環境下で彼は自らの壁と戦い、そして活路を見出していたのだ。
もう、力だけのごり押しタイプではない。頭で考える事も覚えている。
「あんた、やれば出来るじゃん」
滅多に褒めない時音に褒められて、良守も顔を綻ばせて子供の様に喜ぶ。
ここ三週間、ろくな食事もしてなくて久しぶりに食べたものが時音の手料理なのだ。
彼のボルテージは最高潮まで上がって、もうメーターは振り切れる寸前まで上り詰めていた。
空はまだ明るく、夕方まで随分時間がある。外はまだ雪が時折ちらつく程寒いが……。
「時音、ここ来るまで疲れただろ?」
「うん。獣道を一時間も歩けば、流石に良い運動になったわ」
「なあ、すぐ近くに温泉あるんだけど……一緒にはいらね?」
時音は良守の提案に瞳を瞬いた。
こんな明るい時間から温泉に入ると言う事は裸になる必要がある。
暗い部屋の明かりで裸を見られた事は多々あるが、こんなに明るい場所は無い。
流石に恥ずかしいと頬を染めるが、その恥じらいが更に良守の興奮を高めてしまった。
恋人の初々しい恥じらいに、彼は身体の軸がぶれる程に頭へ血が上った。
もう何が何でも温泉に入りたいとごねたのは言うまでも無い。
結局時音が良守の我が侭に負けて、共に温泉にはいる事となった。
「イテテテテ」
良守は湯に入ると同時に、湯が傷に沁みて顔を激しく顰めた。
温泉は傷に効能ある質らしく怪我の治りは早くしてくれるのだが、生傷の耐えない良守にはこの湯は痛みを生じさせる。
傷口を殺菌してくれるので助かるし、汚れも落としてくれるが、毎回入浴の最初は悲鳴ものだった。
「このお湯、確かに傷があったら刺激が強いかも」
「まぁ、疲労回復にはもってこいと思うけどな。掛け流しだし」
「うん……。凄く成分濃そうね、この温泉」
「お陰で飲料には向かないらしいぜ。お陰で下の川まで水汲みに行くのがだりいのなんの」
ケラケラと笑う良守の表情で修行がまんざらでもない様子が覗える。
時音も共に湯に浸かってしまえば恥じらいも少しは薄らいでいた。
だが、良守はまだまだ不満げだ。時音が彼と距離を取って入浴していたのが気に入らないらしい。
夕方までしかイチャイチャ出来ないのだ。一秒とて時間は無駄に出来ない。
「こっちこいよ」
再会した時は会えた事が嬉しすぎて、すっかり内なる獣は也を顰めていたのだが。
考えてみれば、まだ抱き寄せても、キスもしていない。良守の欲はみるみると膨れ上がっていた。
時音の手首を掴み、自分の方へ引き寄せて向かい合う形で抱き締めあう。
最初は驚いて身体を硬くした時音だったが、唇をぺろりと舐められて微笑まれると、もうどうでも良くなってしまった。
しかも向かい合う姿勢だからこそ判る。時音の腹を先程から突く硬いモノの正体が何であるか位は。
「あんたさ、さっきまで正守さんに気絶させられていたのに元気ねぇ」
「元気になるなと言う方がむしろ辛いと思う」
呆れてモノが言えないとはこの事だとばかりに、良守の鼻をつまむ。
だが、良守は気にする風も無く時音の柔らかい身体に触れて擦れた息遣いになっていた。
「時音、お前は俺とこうしてて何も感じない?」
「それは……」
「俺、さっきから時音が欲しくてどうにかなりそう」
良守に抱き締められて何も感じないといえば嘘になる。
身体の奥は彼の熱に反応して鈍い疼きを始めていた。
擦り寄る様に甘えて身体を強請ってくる。時音としても三週間も離れていたのだ。
良守に触れてもらいたい。彼に愛されたい。だが、一つ大きな問題が残っていた。
「あんた、ゴム持ってるの?」
時音の問いに良守の身体が面白い程に硬直した。そして微動だもしなくなる。
避妊するのは男の義務だ。だが、修行にそんな物は端から持ってきていない。
勿論、時音だって持参してくる筈が無く。彼は時音を強く抱き締めて溜息をついた。
「―――持ってない」
「あたしもよ」
「うっ……生殺しだ」
だが、時音に対し行為を強行する気配は感じられない。
良守の身体はすっかり興奮で収拾が付きそうも無いのに、避妊しない行為は男として最低だと自制が勝っている
。修行が終われば、時音の家に直行しても良いと言われているのだ。付き合いを認めて貰う前に妊娠させてしまったなんて
事になれば、流石の時子も二人の仲を許す筈が無い。
それを頭の中で理解してるからこそ、良守は歯止めを掛けられたが……。
「ごめん」
「いや、お前全然悪くないから」
時音とて温泉に入ろうと言われた時点で薄々予感はしていたのだ。
良守は我慢できなくなると。判っていながら流されてしまった。
それでも、避妊具が無いと理性が警告を鳴らせば我慢してくれるのだ。
残念そうに眉根を下げてしょげ返る良守を見ていると、凄まじい罪悪感が時音を襲う。
「でも、良守がこのままだと辛いでしょ」
「大丈夫。せめてこのまま抱き締めさせてくれ。抱き締めてるとスベスベしてて気持ち良いんだ」
彼は持ち足る理性を総動員して時音に微笑んでみせる。随分と聞き訳が良くなったものだ。
だが、そんな聞き分けの良い良守に対して、何もしてやれないのは申し訳ないと思ったのか、時音はすっかり膨張した良守の熱
をそっと掌で包んだ。
「お前、やめてくれよ。刺激されると我慢しているモノが凄い勢いで壊れるから」
「だってこんなに大きくなってるし。良守、あたしが口で……その」
「まじか?」
時音の方から口での奉仕を志願してくると良守は思ってもおらず、思わずぽかんと口を開けて唖然としてしまった。
それ程、珍しい事だったのだ。時音は視線を横に落とし、恥じらいながら彼に指示する。
「そこの岩場に腰、下ろして」
「うん……」
良守はコクコクと頷き、操られているかの様な素直さで時音の言葉に従った。
湯で温もった身体が外気に触れて、熱を冷まし、ひんやりとした岩の冷たさが心地良い。
彼の足の間に時音が割り込んで、向かい合う形となった。彼女が良守の腰に顔を埋めようとした時だった。
「あ、ちょっと待ってくれ」
良守が静止をかける。時音の身体を起こして再度二人で湯に浸かった。
「どうしたの、外でて寒くなった?」
「んや、そうじゃなくて。ちゃんとキスしてねーから。キスさせてよ」
今から恋人に口で奉仕して貰うのに唇での抱擁を求める。
良守は何も時音に性欲の処理をして貰いたかった訳では無い。
抱きたい本能的なものもあるが、大好きな人と触れ合う精神的なものの方に重きを置いている。
「あたしもキスしたい」
「じゃ、これ三週間分な」
時音も微笑んで被せられる良守の唇を享受する。触れて離れ、また重ねて。
裸で抱き締めあったままキスを繰り返す。いつもよりもずっと重なりが長く深い。
だが、唇が重なれば重なる程に身体は互いを求めて疼きだす。時音の身体が快楽でぶるりと震える。
いつしか重ねた唇の隙間から可愛らしい声が漏れていた。そんな声を聞いてしまえば、良守が我慢できる筈も無く……。
「時音……やっぱ、いれたい」
散々唇で奉仕を受けたにも関わらず、まだ身体は熱が篭ったままで。案の定、我慢が出来なくなって良守は懇願する。
「だめだってば」
弱々しく拒絶するが、良守の手が時音の快楽を助長する手つきになっても振り払えない。
それ所か、良守が齎すゆるやかな疼きの波に身体を預けて荒い息を吐いていた。
「お前のここトロトロになってるのに?」
指でかき回し、擦り上げ、奥の壁を指の腹で引っ掛ければもう悲鳴さえ上げられなくなる。
良守の手による愛撫では、もう満足できる段階ではなくなっていた。
「んっっ……そんなにしたら、あたし」
このまま流されてしまえばと調子に乗って良守は時音を弄繰り回したい放題だ。
「どうしても駄目ならやめるから、時音が俺の手を払い除けて」
もう自分からは無理と良守は付け加える。彼女に選択を委ねたつもりだが、制止する手が這わされると愛撫の勢いが増す。
唇を塞いで焦らす様に快楽を与えられれば、払い除ける力など簡単に失ってしまう。
長く湯に浸かっているのもあった。三週間ぶりに触れた身体が熱かったのも災いした。
時音の理性が良守より先に壊れるまで、そうさしたる時間は掛からなかった。
「良守……」
両の腕を良守の首に絡めて、自らの蕩けた粘膜を摺り寄せ強請る。
唇を深く重ねて、舌で突けば良守も嬉々として答える。
だが、あくまで時音の許可が無ければ、その先は動かないらしい。
それが酷くじれったくて、彼女の方から腰を浮かして繋がる入り口スレスレで制止する。
降参だとばかりに溜息をついて覚悟をきめた。
「抱いてよ」
「俺、最初すげえ早いかもしんねーけどいい?」
「それ、いつもだから」
「ひでぇ。最近はタイム伸びてたのに」
頼りない程小さく囁かれた声は、どこか不機嫌な質が混ざっていた。
少し強引過ぎたかと良守は反省はするが、後悔はしていない。
「あたし、どうかしてる」
「―――っん、ときぃ」
「黙って」
時音は自ら腰をゆっくりと落として、良守の熱を招きいれた。
穿たれた場所が悲鳴を上げる様にギチギチに締め上げる。
「妊娠したら、とっとと婿養子に来なさいよ」
と、言う事は……孕ませたら結婚コースまっしぐらと言う事か?と、良守はとんでもない期待に胸が躍る。
その一言が彼の理性を完全にぶち壊したのだった。
結局行為は一回では終わらず二回目に突入した後、時音も良守も湯あたりを起こして強制ENDとなってしまった。
「良守、今度から温泉ではこーゆー事すんのやめようね」
「ああ。危険すぎる……。危うく気絶し掛けた」
若い恋人達が久しぶりの逢瀬を堪能している頃、兄の正守は麓の町に呼び出しておいた筈の春日さんに振られて絶叫したとか。
後に、良守への攻撃が更に粘着質、陰湿極まりないものになったとか、ならなかったとか。
END
では、最後まで読んで頂きまして有難うございましたー。
過疎ってるこの板が活性化する事を心から呪いつつ、アディオース
GJ!!!
うわぁ〜若本さんだー、お帰りなさいませ!
素晴らしい純愛良時ですよ!結局負けちゃう時音がいとカワイィ
うわぁい!若本氏が降臨してた!
グッジョブ!若本さん
婿養子でも長男いるから大丈夫か!
夜未さんに振られたまっさんカワイソス
GJ〜♪サプライズありがとう!
最後のオチにクソワロタwwwGJ!
おまけ
「蜈蚣、春日さんは?」
通常なら軽く三時間は下山に時間が掛かる山を正守は三十分で駆け下り、
息を切らしながら待ち合わせの場所にいた蜈蚣に尋ねる。
呼び出しておいたはずの夜未が姿を見せてないからだ。
「あの……伝言を言付かってます」
蜈蚣がオズオズと差し出したのは一枚の封書。
正守はもしかしてと盛大にいやな予感が駆け巡った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「墨村正守様江」
お久しぶりです。修行の方は励んでおられますでしょうか?
貴方が不在の夜行本部は刃鳥さんが滞りなく職務を代行されております。
使いの者からそちらの修行場に向かう様ありましたが、詳しく尋ねてみれば
正守さんの私的なお話との事。大変申し訳ありませんが…私は現在、早急を
要する案件で、調査の為遠方の神佑地に来ております。
私事より職務が優先ですので、残念ではありますが謹んでお断り申し上げます。
残り十日程だとお伺いしました。
どうかお身体に気を付けて修行に励まれてください。
春日夜未
「追伸」
くだらない用事で呼び出すんじゃないわよ。
ずっと山奥にひっこんでなさいよね、この糖尿坊主!!
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「……蜈蚣、これは職務を押し付けた事に対しての不満で刃鳥が捏造したものでなく、
春日さん本人からか」
「はい、紛れも無く彼女本人から言付かりました」
「……今から帰って……良守の邪魔してやろう」
無表情で正守は踵を返したとかw
では、ありがとうございましたー。
だめだってばと言いつつ手を払い退けられない時音萌え
続きで雪村家に突撃編とか見てみたくなったww
>おまけ
ちょw夜未さんヒドイww
まっさんも荒れるわww
嗚呼、まっさん哀れ・・・w
>>946 雪村家に突撃編・・・面白いかも。
エロというよりドタバタギャグって感じだけどw
948 :
若本:2008/03/20(木) 00:26:30 ID:HRupgZFm
んー考えてなかったけど、そそるネタフリだわぁ。
そりゃエロパロ板だから書くからにはエロにするw
ぽっこり投下してたら笑ってやって下さいませ。
若本さんキテター!
おまけが秀逸すぎて笑ったw
若本さんはまっさんに対してツンツンしてるような気がするw
950 :
若本:2008/03/20(木) 16:33:37 ID:HRupgZFm
>949
んなこったーない。むしろまっさんに対してヤンデレだw
952 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/20(木) 22:49:40 ID:bEEc58pI
若本さんGJ!!良守のエロい子ぶりと時音の甘やかしっぷりが
ちょー堪らんです!おまけもがっつり楽しみました
まっさんもかなり溜まってるとみたwww
またの降臨をお待ちしております〜
今週号のシチュで誰か話を書いてくれんだろうか?
裏会特捜班に連れて行かれた時音が
閃のいう「きつい手」で責め抜かれ
神佑地狩りの犯人に仕立て上げられてゆく…とか
拉致監禁、籠の鳥、そして孤島・・・
イエロウも凄いエロネタ振ってくれたもんだw
久し振りにこのスレの正夜未読み返したら萌えがふつふつとw
やっぱり正夜未はいい
やるせない正夜未をお待ちしてます!!
えーと・・・
笑える正刃鳥かメロドラマみたいな正刃鳥をこっそりPushしとく
メロドラマみたいな頭領×副長見たいな
誰か書いてくれと思う前に自分で書ければいいんだろうけど力不足orz
正刃鳥、正刃、正美希、正美・・・
正守×刃鳥の略語はどれが一般的なんでしょうね?
結構好きなのにまだよくわからんw
正美って源氏名みたいで何かイイなw
正美じゃ一般的な名前と同じ過ぎて、一瞬『誰のこと?』と
思ってしまったよ。やっぱ正刃じゃね?
車田正美
962 :
若本:2008/03/25(火) 08:17:24 ID:Xsggmtrq
正×刃投下ー。実は大好きCPだったりします。
少しでも皆様の燃料になれば幸い。てか一人で投下して
('A`)おい…ええのんか?とビクビクなんですけどw
他の方のお話も是非是非。
酷く視線を気にする彼女は、身じろいで俯き肌蹴た胸元を自らの手で手繰り寄せる。
「まだ慣れない?」
わざと優しい声音で話しかければ、瞼を伏せて大きく溜息を付かれる。
「その声も慣れません。私にとって貴方は何一つ慣れ合う要素が無いんです」
いつもの凛とした面持ちは消え、眉根を下げて黙り込み俯かれる。
二人でいる事がどれだけ落ち着かないのか、態度からして十分に理解できる。
「刃鳥、それならどうして俺を拒まない?」
「それは……」
「俺が組み敷いてるからと言うのは理由にならないから」
彼女は初めから男と女の関係なんて望んでいなかった。
俺が触れる事、その全てを拒絶したかったろうに。
無理やり境界線を越えて土足で彼女の領域に踏み込んだ。
許されると思っていた。心の何処かで期待していた。
唇を奪い畳に押し倒せば、せめて布団の上でと可愛い事を言われた時は気が昂ぶった。
力を抜く事さえ知らなかった硬い身体を丹念に解し、破瓜の痛みを与えた事に更なる欲が芽生えて。
身体も心も手に入れたと、一人で先走っていた。俺が幾ら好きだと囁いても、彼女は一言も発しなかったのに。
憐れな程に空回りな感情だと気付いたのは、押し潰す様に抱き熱を解き放った後の事で。
自分の解き放った精の残滓が、彼女の滑らかな腹を斑に穢して、それを満足げに指の腹でなぞった時だった。
彼女は微動だにしないまま、泣きそうな声音で告げられたのだ。
「私は貴方の恋人にはなれませんよ」
先程まで交換していた身体中の熱が音も無く消えてゆく。醒めた肌がぞわりと粟立った。
尋ねずにはいられなかった。俺の知ってる限り、刃鳥は好きでもない男に身体を許す様な女では無い。
「じゃ、何故黙って抱かれた?」
自分でも不思議な程に怒りは無い。むしろ冷静極まりなくて。
「判らない……。ただ、これだけは言えます。私は貴方を男として永遠に愛しません」
困り果てた様に嘆息を交えて告げられる言葉は、どこか乾いた様なガサツキを覚える。
彼女は残滓が垂れる事も気にせず立ち上がり、畳に落ちた着衣を手に取り身につけた。
「それを言う為に抱かれた訳じゃないだろう」
「頭領、私は弱いです。ですが……許されるならこれからも片腕としてお傍にいたい。それが答えです」
覚悟を決めたかの様な強い眼差しを向けられて、思わず閉口してしまう。
迂闊にも綺麗だと見惚れてしまったのだ。
今ここで言うべき事を言わなければ機会は永遠に失うのは理解していたのに。
「刃鳥、知ってると思うけど俺は貪欲だよ」
「存じ上げてるつもりです」
「それが俺の答えだ」
わざと語尾を強くして刃鳥に言い切る。
まるで、今後起きる事を宣言するかの様に。
彼女は表向きはいつも通り仕事をこなし、そして時折俺が手を伸ばせば抵抗も無く抱かれる。
どんなに狂おしく愛撫を重ねても瞼を伏せて、終わる時間までひたすら耐える様に唇を結んで。
強く抱き締めても彼女からの反応は無い。だが、人形と言うには聊かぬくもりがありすぎた。
彼女は意思をもって抱かれ、そして嫌うのでは無く、弱いからと拒み続ける。
回数を重ねるうちに一つの真意が浮かんだ。
「お前は自分の事が弱いと言ったが……俺が強いとでも思っているのか?」
「強くありたいと願っているのでしょう」
愛せないのではなく、愛しませんと言われたその訳を。
「そうだね。特にこの世界は力が無い人間は簡単に虐げられるから」
「なら、あなたは私に固執してはいけません。どうして理解して下さらないのですか」
もし、勘違いでなければ随分と見くびられていたものだと憤慨せざるを得ない。
「困ったな、相変わらずの平行線だ」
「頭領、今の私は貴方にとって綻びでしかありません。そんな立場は御免被ります」
彼女にしては素直な気持ちを吐露してくれている。
むしろ、望まないのに抱かれ続けるのも限界だったのだろう。
「お前が自分の事を綻びと思うのなら、俺は本気で怒るけどいいか?」
彼女は観念したかの様に長く息を吐いて深呼吸する。そして溜息混じりに呟いた。
「私の考えは多分、頭領にとって腹立つ事ばかりなので勘弁して欲しいです」
「それは無理だ。俺は思い通りにならないと気がすまない我が侭なんでね」
「我が侭なのも存じ上げてます。だから男として愛せないんです」
「それはただの言い訳だな」
彼女の真実は今だ深い嘆息の中に眠っている。
965 :
若本:2008/03/25(火) 21:07:49 ID:mHLeyGwp
あ、ごめんなさい。終って入れ忘れてた。
んではではー次のスレが立つのを楽しみにしてます。
時音の尋問とか誰か書いてくんねーかなぁw
若本さんGJ!
刃鳥さんの真意が気になる展開で
続きがあるのかと思い米控えてました
頭領を拒みきれない刃鳥さんがいつになく女性らしくて萌え
このあとの二人の行く末が何気に気になりますた
正刃いいよ正刃
若本さんスレ活性化ありがとー
うわーうわー、まさか若本さんの正×刃を拝めるとは!
中々ラブラブに進まない所に、今後の展開を期待してしまいます。
大人の恋のもどかしさがたまらんですよ、GJ!
>>958 正美と聞くと「新キャラ?」とか思ってしまうけど、名字ではなく
名前×名前だし、本当はこれが一番正しいのかも・・・??
激しくGJ
副長好きにはたまりませんなw
二人の微妙な擦れ違い感とか距離感とか、とにかく健気な刃鳥萌えた
素直になれない刃鳥かわいいよ刃鳥
イイヨイイヨー
正×刃がもちっとメジャーになってくれる事を願いつつ。
成人向け同人誌みたいなサンデーの時音から目が離せません。
手首を縛られ、逃げられない様にしるしを付けられる時音・・・
見直したよイエロウ、ここまで描くとは思わなかったよ
ほのぼのしたのも見たいけど・・・
夕上×時音って有り得るカプなのかねぇ・・・?
有り得る!
躰だけなら大アリだけど感情の方はビミョ〜
狩人(&猟犬)と囚われた小鳥ってイメージでなら有り
今週号見たらエロ無し夕時も有りかと思えた
保管庫は無理かもしれないな・・・
保管庫の管理人、もう消えてるんじゃねーの完全に