桝田省治作品でエロパロ

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1名無しさん@ピンキー
ゲームや小説などで活躍されている桝田省治氏の、
作品を問わず取り扱うエロパロ総合スレです。

題材の作品やそのカップリングを忘れず記載するのと、
特殊な嗜好の場合はあらかじめそれを告知する事をお忘れないようにお願いします。
2名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 04:33:27 ID:RVX5AiZb
という事で、
「鬼切り夜鳥子2 京都ミステリーツアー」より、
三ツ橋初美と虚空坊で14レス投稿します。
3三ツ橋、喪失する。 1/14:2007/04/21(土) 04:34:29 ID:RVX5AiZb
 時刻は午後二十三時頃。三ツ橋は夜鳥子に関わって以来多分もっとも忙しかった今日という日に心地良い混乱を覚えていた。
 とにかく色々と頭の中を駆け回る物が多すぎて、何を中心に考えたら良いのかわからない。というより、考えたい事、したい事があるはずなのに、それが何なのかを思い出せなかった。
 おかげで体は疲れきっているのに、目が冴えて睡眠をとる気にもならない。先にシャワーを浴びている駒子を待つ間、倒れこんだベッドの上で思考の迷走を楽しんでいた。
 こういう時、迷いが晴れた自分が一直線に突っ走ってしまう事を三ツ橋は知っている。特に今回はそれがとても楽しみなのに気付いて、「アレレ? オヤオヤ?」とドキドキしっぱなしの胸の中心に両の掌を押し当てた。

「……三ツ橋ちゃん」
 気が付けば、いつの間にか駒子がパジャマ姿でベッドの横に立っていた。わからないくらい物思いに耽っていた自分に苦笑してしまう。
「どうかしたんですか、桂木さん?」
 見ると、駒子は俯き加減でじっと下を向いている。ただでさえ小柄な駒子がさらに小さく見えるほどだ。
 それに、覗き見える部分の彼女の顔は、本当に「絵に描いた」という表現が相応しいくらいに真赤だ。シャワーの後にしてもちょっと異常だし、ひょっとして体調に異変でもあったのだろうかと心配になってくる。
「師匠に何かあったんですか? それとも……」
 さっきまでとはうって変わって、あまり楽しくない方向に頭の回転が始まった……が、ぽそぽそと駒子が話しだしたので一旦それを中止した。
「ううん、違うの。あのね、その……」
 そこから後はさらに声が小さくなったので、とても聞き取れない。比例しているのか反比例しているのか、駒子の赤面はますます進んでいる。
「ええと、きゅ、Qと、その、ふ、二人きりで話がしたいな、って」
 詰り詰り紡がれる駒子の言葉を繋げると、どうやらこういう内容になるようだった。一息で言ってくれたなら理解も早かったのだが、脳内で文章を構築するのに若干時間がかかったので、意味がすとんと胸に落ちるのにも数瞬必要だった。
「二人きり……ああ、なるほど、そういう事ですか。えー、はい、わかりました」
 分かってしまうと、駒子の感じているであろう気恥ずかしさが三ツ橋にも伝染してきている。目はきょろきょろと泳ぎ、手はぱたぱたと宙をかく。
 こっちも結構真っ赤になっているんじゃないだろうかと思うものの、自分以上に真っ赤な駒子のおかげでいくらか冷静なので、ようやく決心した友人の勇気が嬉しくなってきた。
 湯上りパジャマで照れた表情という最強のシチュエーションになっている駒子を覆うように軽く抱きしめて、ぽんぽんと背中を叩いて励ましてやる。
4三ツ橋、喪失する。 2/14:2007/04/21(土) 04:35:44 ID:RVX5AiZb
「大丈夫ですよ。きっと上手くいきますから」
 自分の腕の中にいるので表情はわからないが、わたわたした様子で駒子の感情は察するまでもなく伝わってくる。言葉にも明らかだ。
「う、ううう、上手くって、何が!?」
 ──アレレ? この期に及んで白を切るつもりなのかしら?
 ──オヤオヤ? それとも私が発情しているからそんな風に誤解してしまったのかな?
 なんて風に考えながらくすくすと笑いながら、三ツ橋は気付いてしまった。そう言えば自分も「発情(花も恥らう乙女らしく表現すると、恋)」していたんだった、と。
「いえその、私にとっても願ったり叶ったりといいますか、とにかく好都合なので。ですから、久遠くんとゆっくりお話してくださいね」
 口調こそ先程までの頼れる委員長・三ツ橋初美だったが、頭の中は恋する女・三ツ橋初美に切り替わっている。言い訳みたいなものを口にしている駒子に応対しながら、その裏でこの後どうするかを組み立てていた。

 ──さて、と。まずは連絡……ですよね。
 ずっと紅潮したままだった駒子を部屋に残し、三ツ橋は「これから」の事を実行を開始した。……とは言ったものの、携帯を取り出すと同時に失敗点に気付いてしまったのだが。
 ──シャワー浴びとけば良かったなぁ。汗臭くないかしら?
 すんすんと二の腕などを嗅いでみても、鼻腔に入ってくるのは土埃の匂いばかりで汗までは判別できない。意識してしまうとGカップの谷間などにじめじめした不快を感じてしまう。
 「玉ちゃんと虎ちゃんは汗で気持ち悪くなったりしてないだろうか」とちらりと思ったものの、それ以上に次のような事が三ツ橋の頭を支配していた。
 ──まぁ、あちらで借りれば良いですよね。その方が……それっぽいし。
 らしくもなく乙女っぽい回路が機能して、シャワーを浴びるという行為の前後を三ツ橋に想像させる。こんな風にふわふわした気分になるのは今日が初めてのことだった。
 軽くトリップした思考がふっと覚める。ここは自分の部屋なんかではなく、修学旅行で訪れているホテルの廊下だった。だらしなくにやけた顔をきりりと引き締め、気を取り直して携帯に指を走らせる。
 数度のコール音の後に、意中の相手へと電話が繋がった。
「……もしもし。何かあったのか、ミツバチ?」
 体格や人柄を示すように頼りのある野太い虚空坊の声を聞いただけで、三ツ橋は気が緩んで何だか泣けてきそうになってしまっていた。
5三ツ橋、喪失する。 3/14:2007/04/21(土) 04:36:40 ID:RVX5AiZb
「いえその、あの……会ってお話したい事がありまして」
 ──これじゃぁさっきの桂木さんとおんなじだなぁ。
 と内心で苦笑する。こういう時はみんな似たような反応をしてしまうんだろうかと妙な感心もして。
「ふむ、会って話、だと? それは今日でないといかんのか?」
 言われてみると、今自分が想定している事を今日行うのは性急過ぎる気がしてきた。けれど、三ツ橋は走り出すと止まれない困った性格である。
「はい、今日が良いんです」
 きっぱりと宣言すると虚空坊の反応を待つ。受験や試験の結果発表だってこんなにどきどきした事はない。
「今一よくわからんが……。とりあえずは承知した。すぐにそちらへ向かおう」
 了承してくれた虚空坊の回答が嬉しくて、またしても三ツ橋はトリップしてしまいそうになった。尋ねられてホテルの在所を答え、電話を切るとゆっくりと屋上へと階段に向かう。
 ──アレレ? 階段といえば、昔の歌で大人がどうとかっていうのがあったような。
 ──オヤオヤ? だとしてもコクボさんは王子様って感じじゃないぞ? でも……うふふ。
 明らかに野獣といった外見の虚空坊が三ツ橋にはいとしくてたまらない。変わった物好きなのは、異性でも例外にならないようだ。

「待たせたな、ミツバチ。寒くはなかったか?」
「いえ、5分くらいでしたし、大丈夫です」
 屋上に降り立った虚空坊に三ツ橋はいきなり抱きつきたくなる衝動を必死で堪えて笑みを見せた。寒いどころか何時間も前から火照りっぱなしで困っているくらいだったが、虚空坊の気遣いはやっぱり嬉しい。
 よく見ると別れた時と違って、肩まである髪を後ろで無造作に束ねている。意外に色気を感じられて、三ツ橋の大きな胸がどきどきとする。
「髪、止めてるんですね」
「ん? おお。帰ってすぐにブログの更新をしておったんだが、そういう時は髪が邪魔でなあ。まあ、それなら切れば良さそうなもんだが、普段はどうもこれくらいの長さの方が落ち着くようだ」
 この虚空坊という人(?)は、本人も口にした「ブログ管理人」などなどと意外性があまりにも多く存在していながら、何故か自然に見えてしまうのが面白い。
6三ツ橋、喪失する。 4/14:2007/04/21(土) 04:37:51 ID:RVX5AiZb
「ここがワシが住んでいる部屋だ。急なもんで片付いてないが、ま、入ってくれ」
「あ、はい。お邪魔します」
 虚空坊の部屋は、やっぱり意外と自然が混在している、実にそれらしい佇まいだった。
 ドラマなんかで出てくるようないかにも格好の良い大人の男性といった感じではなく、かといって不精に乱れた感じでもない。丁度良い具合に綺麗で、丁度良い具合に乱れている。不思議と落ち着く空間だった。
 飛び飛びらしいとはいえ長年を生きている天狗にしては「和風」という要素が殆ど無いのが意外と言えば意外だが。強いて和を感じるのは日本酒や焼酎の酒瓶くらいだ。
「やはり、もっとこう『庵』っぽいんだろうなとか思っていただろう?」
 三ツ橋の内心を察したのだろう。虚空坊は無造作に置かれた雑誌などを片付けながら、部屋について喋りだした。
「え。あ、はい。天狗さん、ですしね」
 そう、虚空坊は天狗である。なのに、出会ってからずっと、抱く印象に「天狗なのに」という前置詞が付いてしまう。一般的な天狗のイメージと虚空坊の実像は正反対に位置すると三ツ橋は思う。
 ところどころ古語めいた口調や、確かな知識や経験が無ければとてもじゃないが天狗だなんて(たとえ師匠の旧友でも)信じられない。見た目だけなら日本かぶれの外人さん、といった所だろう。
 と、そういった事を三ツ橋が話すのを、楽しそうに虚空坊は頷きながら聞いている。
「まあ、お前さんが言っている事はあながち間違いでもない。夜鳥子らと京で組んでおった頃は想像通りの天狗そのものだったからな。ただ、それが当時は自然だった、という事だ」
「えっ? ……あ」
「わかった様だな。今も昔も、ワシらは変わってはおらんのだよ」
 なるほど、天狗の身体的特徴といえば「大きい(長い)鼻」「背中から生えた羽」などがあるだろうが、服装的特徴と言えば「修験者」が一般的で、少なくとも修験者の服装に関しては昔であれば違和感は無い。
 そう考えると虚空坊や他の天狗たちの服装が今風であるのも確かに頷ける。多少間違ったセンスも否定できないが、それは笑って許せる範囲内だろう。
「結局な、天狗の武器は『飛べる』という一点だけだ。テレパシーだとか、そういう超能力なんかは使えん。だから携帯を使うし、パソコンも使う。便利だしな。カカカカカ」
 虚空坊の言葉には長年を生きた重みというか、古強者らしい現実家の側面が感じられて三ツ橋は軽い感動を覚えた。それでも。
「……やっぱり天狗さんがパソコンとかテレパシーって言うのはちょっとおかしいです」
 と笑ってしまう。虚空坊も「む、そうか?」と受け答えた後は、二人してクスクス・カカカカカと笑い声のデュエットを部屋に響かせた。
7三ツ橋、喪失する。 5/14:2007/04/21(土) 04:38:50 ID:RVX5AiZb
「ふー……」
 体を洗って汗を落とし肩まで湯船に浸かってしまえばうら若い女子高生といえど溜息の一つは出る。うっかりすると寝てしまいそうな心地良さに、余程疲れてたんだなと今日一日の大変さを改めて感じた三ツ橋だった。
 それにしても、「アレレ? オヤオヤ?」と首を傾げて考え込んでしまう。
 ホテルの屋上に呼び出して「虚空坊さんの部屋が見たい」と唐突に口にしたものの、真意は察してくれたのだろうと部屋に着くまで野暮な事を口にしなかった虚空坊にそれを感じた。
 勧められるままにこうして風呂に入ったが、自然な流れなはずなのにどうも艶っぽさに欠ける気がしている。勿論、がっつかれてもそれはそれで少し残念に思ったのだろうけど。
 とまぁ歳相応の少女らしい(が、三ツ橋らしくはないかもしれない)混乱に陥っていたせいで、曇りガラスの扉の向こうの人影に三ツ橋は気付かなかった。
「入るぞ、ミツバチ」
「はい。……って、えぇ!?」
 静止する暇も無く入ってきたのは言うまでもなく虚空坊である。タオルで前を隠すなどと情けない事はせずに肩に引っ掛け、つまりは生まれたままの姿で堂々と扉を開けて入ってきた。
 筋骨隆々とした虚空坊の裸体に悲鳴をあげる理性も本能も忘れて見惚れてしまいそうになる。上半身が裸という状況はこれまでに何度か目にしたが、これは初めて見る下半身の筋肉の逞しさにうっとりした。
「っ!」
 息を飲むと同時に三ツ橋の体が揺れ、湯に波を立たせたのは、虚空坊の股間にぶら下がったものを見てしまったからだった。「キャッ!」と両手で顔を覆ういかにもお約束な反応ではなく、僅かに目を見開かせて。
 小さい頃は父親と一緒に風呂に入る事もあったわけだし、弟達と一緒に入った事だってあるのだから、初めて見たというわけではない。とはいっても肉親以外では当然初めてなのだが。
 問題は「ぶら下がった」という点だった。「上向き」ではなかったのである。はしたない事なのかもしれないが、がっくりとする三ツ橋であった。

「ふー……。やはり一日の締めは熱い風呂に限るな」
 体を洗って湯船に入ってきた虚空坊が三ツ橋の向かいにどっしりと座ると、豪快に湯が溢れこぼれだす。実に虚空坊らしい姿に、驚くほどにあっさりとさっきまで感じていた失望を吹き飛ばしてしまった。
 というか、失望なんて忘れるくらいにどきどきしてきている。いくら目の前の相手が興奮していないみたいだとはいっても、向かい合わせで異性と湯船に浸かるなんていう経験が無いのだから。
 割に物事に動じない方だと自負していたが、この状況には流石の三ツ橋もふわふわと浮ついてきている。湯当たりした、のではないだろう。
「それにしても……」
8三ツ橋、喪失する。 6/14:2007/04/21(土) 04:40:00 ID:RVX5AiZb
「へ? あ、は、はい、何ですか?」
 びっくりするくらいにぽーっとしている自分に三ツ橋は驚く。何か話そうとしている虚空坊に気付けたのが不思議なくらいだった。
「いや、なに。随分久方振りに色々あった一日だが、充実していたなと思ってなぁ。楽しかった。それに」
「?」
「こうして若い娘と風呂に入るなんていう役得まであるとはな。ありがたい事だ。カカカカカ」
 ──オヤオヤ、ありがたがってる割には興奮してなかったくせに……。
 なんていうちょっと恨めしい気持ちもあるにはあった三ツ橋だが、目の前で本当に楽しそうな笑顔を見せられては何も言えない。またもぽーっとなるが、不意に目に入った物に醒めるような感覚を覚える。
「傷……」
「む。どうかしたか?」
「傷、いっぱいあるんですね……」
 虚空坊が体を洗っている時からその事は気になっていた。大小様々な傷はとても数えられそうにない程大量だが、それより不思議なのは、湯船に浸かった事で更に傷が増えたように見えるのである。
 明らかに切り傷とわかる痕は意外と少ないようで、大半は傷痕とも痣ともつかない物だった。幾つかの傷の形の鋭さから、切り傷を連想したのかもしれなかった。
 三ツ橋の食い入るような視線を受けて、虚空坊の返した反応はカカカカカと笑うことだった。さっきのように豪快にではなく、恥ずかしそうにという違いがあったが。
「恥ずかしながら、ほれ、ワシは長い事生きているわけだろ? 前世でも揉め事は多かったからなぁ。切り傷刺し傷が付く事はざらだった。そうした古傷が、体が変わっても何故かこうした時に出てくる」
 二人の顔の間にかざした腕の傷を虚空坊が擦る。ちょっとした誇らしさを三ツ橋は見て取った。
「ま、あまりありがたい代物ではないが、腐れ縁とでもいうかな。ワシが『虚空坊』だという事の証拠のようにも思えるから悪い気はせんのだ。もう少し上手く立ち回れんかったのかと先代共を殴ってやりたいがな。
 ……とはいっても先代も当代もひっくるめて全部が『虚空坊』なのだから、文句を言っても性質の悪い自虐にしかならんか。カカカカカ」
 今度の笑いは虚空坊らしい豪快さを取り戻していて、釣られて三ツ橋も笑みをこぼす。が、他と比べて明らかに異様な傷痕に気付いてしまった。
 首筋から肩にかけて薄っすらと、だが、面積は相当に大きな痣が浮かんでいる。最初はその巨大さにただ驚いたようなものだが、他のどの傷よりもここが三ツ橋には気になった。
 そうした気持ちが体に伝わったのか、思わず三ツ橋の掌が虚空坊のその傷を撫で擦る。
9三ツ橋、喪失する。 7/14:2007/04/21(土) 04:40:44 ID:RVX5AiZb
「ミツバチ……?」
「どうしてでしょう……ここの痕が、一番気になるんです」
 痣だから、盛り上がっているわけではなく抉れてもいない。視覚的、要は直接的なインパクトだけな筈なのに、三ツ橋はどうしても原因が気になって仕方なかった。
 当然この時の三ツ橋は知る由もないが、「女の勘」という意外に馬鹿に出来ない感知力がこの痣が重大であると知らせていたのかもしれない。
 虚空坊はというと、今までで一番困った表情をしていた。「何が辛いって、その痣に触れられる事が一番辛い」というのがありありと伝わってくるくらいに。
「あ、ごめんなさい。誰にでも話したくないことってありますもんね」
 肩に置いた手を三ツ橋がどけようとすると、その前に虚空坊の手がそっと重ねられた。ごつごつした感触なのに、なぜか優しい。
「この痣がどういう由来かは誰にも打ち明ける気はない。話してしまうとその相手にもワシのつまらない因縁を背負わせてしまう事になるしな。それに」
「あっ……」
 ぎゅっと力がこもった虚空坊の手のひら。怒っているのか悲しんでいるのかと三ツ橋が思ってその顔を見ると、出会って以来一番の笑顔がそこにあった。
「傷の事を腐れ縁と言ったが、こいつはその中でも一番の腐れ縁だ。殆ど一心同体のようなものだよ、困ったことになぁ」
「……はい」
「だがまぁ、いつかこいつと別れる時が来る。きっと、来る。その先のワシがどうなっているかと想像するのがたまらなく楽しいのさ。まったく、困った因業親爺だ。カカカカカ」
 何も答えてないのに等しかったが、心配無用という虚空坊の自信だけは伝わってきた。やっぱり虚空坊の頼もしい姿が三ツ橋は一番好きだった。
 だから、「その時はご一緒させてくださいね」と満面の笑みで虚空坊の未来を祝福してあげる。根拠のない確信だが、虚空坊の決着に居合わせる自分を自然に思えたのだ。
 この時スイッチが切り替わったような錯覚を三ツ橋は感じた。きっと虚空坊もそうだったろう。しかしそこは歴戦の戦士である虚空坊だった。暴走はしない。
「……さて、ワシは先にあがっておるぞ。三ツ橋も、湯当たりする前に出るようにな」
 と虚空坊が湯船から身を乗り出す。自然に見えた所作だったが、浸かる前とは違っていた一点を三ツ橋は見逃していなかった。下を向いてぶら下がっていたものが、確かに上を向いていたのである。
 ──アレレ? 今度こそ期待していいんですよね、虚空坊さん? というか、そんな物見せられちゃったから、湯当たりしちゃいそうですよぉ。
 乙女が想像しうる最大限にHな想像がついに現実になりそうな状況に、思考も体もブースト状態になる三ツ橋であった。
10三ツ橋、喪失する。 8/14:2007/04/21(土) 04:51:41 ID:2ohBqdmV
「……あのー、あがりました〜」
 バスタオルを胸の辺りで巻いただけの姿の三ツ橋。下着を着けるかどうか随分と迷ったのだが、意を決してバスタオル以外で身を隠してはいない。中々の度胸である。
 とはいえ、感情が表に出ない方ではあるが流石に今は平静とはとても言えず、ばくばくと胸を打つ心臓の鼓動が酩酊に拍車をかける。
 部屋の灯りも落とされていて、引くに引けない状況であるという事を嫌でも三ツ橋に伝えてくる。もっとも、三ツ橋自身が望んで招いた事態なのだが。
「虚空坊さん?」
 暗い室内をざっと見渡してみたが、あの巨体がどこにも見当たらない。まさかもうベッドの中かとも思ったが、そこは平坦な形のままのように見えた。
 さすがに「アレレ? オヤオヤ?」とこの状況に混乱してきた時、突然三ツ橋の体は抱え上げられた。犯人は勿論、虚空坊である。
 バスルームから数歩離れていたとはいえ、三ツ橋に気付かせず後ろに回ったのは流石というか、呆れるというか。当事者である三ツ橋の反応は、安心、だったのだが。
「カカカカカ。驚いたか?」
「ちょっとだけ。それよりも、ここで逃げられたらどうしてやろうかって思い始めてました」
「うーむ、それはおっかないな」
 言葉とは裏腹に、虚空坊は至極楽しそうである。室内の色っぽい空気が消し飛ぶような勢いだが、何もかもアンバランスな人なのだから、これはこれで相応しいのだろう。
 ずかずかと大股で歩いて運ばれて、ベッドに寝かされる。覆い被さってきた虚空坊の表情はさすがにちょっとは真剣さを見せていたもののすぐににやりと笑って、その事が三ツ橋を何故か安心させた。
「さて三ツ橋よ。失礼な質問かもしれんが、二つ聞いておきたい」
「はい、何ですか?」
「お主、こういう事は初めてか? これが一つ目。二つ目は、初めてだとすれば、ワシで構わんのか?」
 何だそんな事かと三ツ橋は笑ってしまいそうになる。とっくに通過した問題だったからだ。
「一つ目の質問は、はい、その通りです。二つ目は、虚空坊さんじゃなきゃ嫌です」
「……うーむ。参った。出会って以来お前さんに押されっぱなしのような気がするよ」
 そう言うと、虚空坊が三ツ橋へと唇を重ねてきた。
11三ツ橋、喪失する。 9/14:2007/04/21(土) 04:53:08 ID:2ohBqdmV
 虚空坊の唇の感触はやや厚ぼったいが、がさがさしていないので充分な心地良さを三ツ橋に伝えてくる。太い首筋に手を回そうかと考えていたのに、その前に虚空坊の顔は離れてしまった。
 残念そうな表情を隠さず見せた三ツ橋に降りかかってきたのは、またしてもにやりと笑った虚空坊の表情だった。
「三ツ橋、誰も見たことがないものを見せてやろう」
 という宣言を伴って。

 びっくりするくらいに虚空坊はキスが上手い。とはいっても比較対照が無い三ツ橋だったが、上手いに違いないという確信があった。
 体格自体一回りも二周りも違うのだから、個々のパーツの大きさも似たような対比になる。今は三ツ橋の口内にある虚空坊の舌も、当然そうだ。
 にもかかわらず、巧みに動いては三ツ橋の脳に電流を次々と走らせる。負けじとこちらも応酬に出るのだが、易々と絡め取られて篭絡されてしまう。新兵が古兵に敵うはずもないと言わんばかりである。
 最早これだけでもくらくらしているほどだというのに、一旦唇を離れて耳たぶを甘噛みされたのだからたまらない。特に我慢していたわけではないが、緊張から出なかった喘ぎ声が三ツ橋の口を突いた。
「あっ……」
 どういう聞こえ方をしたのだろうとちらりと思ったのだが、それどころではなかった。いつの間にか三ツ橋のGカップに虚空坊の大きな掌が押し当てられている。
 思う存分揉みしだかれるのだろうかという期待と不安にますます鼓動を早ませる三ツ橋だったが、虚空坊の掌は掴む素振りさえ見せずに胸の谷間へと移動していく。
 谷間の中心からややずれた位置にあったバスタオルの結び目で止まると、次の瞬間解かれる。ぶるんと音を立てるようにまろび出た乳房の感覚が、一糸纏わぬ姿にされてしまった事を三ツ橋に知らせるようだった。
 さすがに恥ずかしくなって目を閉じてしまうが、特に何かが起こっているという気配がない。不審に思って目を開けてみると、虚空坊が首を傾げていた。
「実は風呂に入った時から気になっていたのだがな」
「え? あ、はい。何でしょう?」
「お前さんの飼っているおっかないペットたちはどうしたのだ?」
「……そう言えばそうですね」
 あんなに自分の胸に”玉と虎”が帰ってきたのが嬉しかったというのに、今そこにいない事に気付かなかった事に三ツ橋は苦笑してしまう。困ったご主人様だ。
 けどまぁ、理由は明白なので心配は必要なかった。
12三ツ橋、喪失する。 10/14:2007/04/21(土) 04:54:11 ID:2ohBqdmV
「あの、向こうも、桂木さんと久遠くんも同じような状況じゃないかなーと思うので」
「ん? ……おお、そういう事か。夜鳥子が気を利かせて姿をくらませたというわけか。成る程なぁ」
「きっとそうだと思います」
 ひょっとしたら不測の事態が起こっている可能性も低くないのだろうけど、その点に関して三ツ橋は全く心配していない。師匠である夜鳥子があっさり負けるなんて事は想像できないからだ。
 納得した様子だった虚空坊だったが、またも首を傾げる。今度はさっきの逆の方向にだった。まだ何かあるのだろうか。
「あの娘と久遠がなぁ。いやはや、それは夜鳥子のやつも難儀しているに違いない。カカカカカ、ワシも見物してやりたいくらいだ」
「えっ? あ」
 駒子に夜鳥子が宿っているように、久遠にも誰かはわからないが宿っているらしかった。久遠本人にもよく理解できていないようだったが、虚空坊はそれが誰なのかを知っているのだろう。
 駒子と久遠が幼馴染であるように、夜鳥子とその人も旧知であるなら。若い三ツ橋には夜鳥子の心境は到底推し量れそうになかった。
 というか、人の心配なんてしている状況じゃないのだ。しきりに忍び笑いをしている虚空坊の頬をつねってやる。
「いてて。む、どうした?」
「……もう。あっちはあっち、こっちはこっち、ですよ」
 他に言い様がありそうなものだが、やはり三ツ橋は若いのだろう。意味が通るような通らないような内容になってしまった。でもまぁ通じたみたいなので、よしとする。
「すまんすまん。どうも歳を重ねると変に気が回ってしまうのだ。さて、それではと」
「あ……」
 ひたり、と豊満な乳房に虚空坊の掌が再び押し当てられる。また焦らされるのかと思った瞬間、確かな意思を持って動き始めた手に、たちまち三ツ橋は翻弄される。

 Gカップの胸。誇らしくないと言えば嘘になるが、殆どの場合は文字通り「持て余す(三ツ橋の掌には収まらない)」存在だ。肩は凝るし、運動にも不便だ。
 本当の意味で胸が大きくて得をしたと思ったのは、それこそ”玉と虎”が駒子の控えめな胸よりも三ツ橋の豊かな胸の方が居心地が良いと知ってぐらいのものである。
 そんな巨大と言って良い乳房も虚空坊の掌だとすっぽりと収まってしまっている。あつらえたようなフィット感だった。怖くなるくらいに出来すぎた話だと思うが、やっぱりそれ以上に嬉しい三ツ橋だった。
13三ツ橋、喪失する。 11/14:2007/04/21(土) 04:55:53 ID:2ohBqdmV
「は……う……」
 形を留めることなく乳房を捏ねられ続けて、声を我慢する事が出来ない。自分で触るだけでもそれなりに気持ちが良いというのに、他人だとこれ程なのかと驚いてしまう。
 既に先端は固くなってしまっていた。マメやタコこそないが根本的に張り詰めた質感の虚空坊の掌に擦られて、ぴりぴりとした快感が三ツ橋の体を走る。
「うぁっ……!」
 不意に乳首を指でぴんと弾かれて、身を軽く弓なりにそらす。
 それが標的変更の合図だったのか、執拗にそこを攻められ続けて次第次第に体の芯に火でも灯ったような、逆にどろどろに蕩けてしまいそうな快感に溺れそうになる。
 気がつけばざらざらとした舌に突起が舐め擦られ、吸われては転がされている。初めてだというのに、既に三ツ橋は虚空坊の愛撫の前に緊張が無くなっていた。
 当然の様に下腹部は疼いている。そこももう洪水のような有様になっていることは、触れる必要もなく三ツ橋は感じていた。
 胸に触れられているだけで、こうだ。もしそこを触られたらどうなってしまうのだろう──と思った時にはもう虚空坊の指が宛がわれていた。
「そこは……っ!」
 嫌じゃないのに、制止するような声を出してしまう。幸か不幸か、虚空坊は止める気はないようだった。そろりそろりとそこを指で掃かれる。
 予想通りというよりは、想像以上だった。そこが伝えてくる快感は。腰が大きく跳ねそうな時にこそ強く力がこもるが、それ以外の時は細心の注意で繊細に働く虚空坊の指は巧みに三ツ橋を昂ぶらせていく。
 おかげで三ツ橋は今度も気付かなかった。虚空坊の顔が下腹部に、三ツ橋の秘所に移動している事に。ほんの少し前に乳首で味わったざらりとした感触でようやくそれを知る。
「……えっ!? いや! 見ないでくださいっ!」
 今度も本当はそんなに嫌じゃないのに、どうしてもこういう言葉になる。けれど、仕方がないだろう。いくら知識として知ってはいても、「舐められる」という事象は強烈に過ぎた。
 そして、やっぱり今回も虚空坊は止まる素振りも見せずに三ツ橋の下半身に張り付いている。
 最初こそ恥ずかしくも恨めしいような気持ちでぐいぐいと虚空坊の頭を押し退けようとしていた三ツ橋だったが、次第にその力も失せていき、恥ずかしくも愛しい気持ちで虚空坊の髪へと指を絡めて愛撫した。
 何も考えられず、ただ快感だけに支配されてる。自分がどういう表情をしているのか、どんな声をあげているのかも三ツ橋にはもうわからない。
 やがて、一人で慰めている時のあの爆発的な感覚がすぐそこに来ている事がわかった。もっとも、比較にならない規模なのもわかってしまって悦びに震えそうになる。
 訪れた絶頂がシーツを掴み、足の指にぎゅっと力を込めさせる。その激しさに、三ツ橋は声にならない悲鳴をあげていた。
14三ツ橋、喪失する。 12/14:2007/04/21(土) 04:57:48 ID:2ohBqdmV
「おい、大丈夫か、三ツ橋」
「……へ?」
 気がつくと、虚空坊が三ツ橋の額をぺしりぺしりと叩いていた。湿ったような音で、随分と汗をかいていた事がわかる。
「すまん。もう少し加減するべきだったかもしれん。何分、久しぶりなものでなぁ」
「そう、なんですか?」
 がっついていた、という意味なのだろうか。思い返してみてもとてもそんな印象はなかったのだが。
 ともあれ、心地良い気だるさにふらふらと酔いながら、三ツ橋はある事に気付いた。今の所、気持ち良くなったのは自分だけなのである。
 申し訳ないなと思って何かしら口にしようと思うのだが、恥ずかしすぎて「あの……その……」と吃ってしまい中々喋る事が出来ない。赤面だけが進行していく。
 それでも三ツ橋の意図を虚空坊は察したようである。押し当てられていてた逞しい胸板が離れていき、太い腕がしっかりと三ツ橋の脇につかれる。
 三ツ橋のそこに、虚空坊の固い物が押し付けられた。始まってから何度か太股などに当たっていたのだが、多分相当に大きいのだろうと感じられた。
 少し目視しておくべきだったかなと思ったが、もしそうしていたら恐怖感が強まってしまいそうだから、見なくて正解だったろう。
「ここから先は痛いだけだと思うが……我慢してくれるか?」
 虚空坊の表情は真剣で、心配そうだ。本当に卑怯だなぁと三ツ橋は思う。けど、許してやる。三ツ橋にとっても願う所なのだから。
「はい。お任せあれ、です」
 にっこりと笑った三ツ橋の反応を皮切りに、虚空坊がゆっくりと侵入を始めた。

 痛い。とにかく痛い。悲鳴こそあげなかったものの、苦悶の表情までをも隠す事は出来なかった。
 随分と潤っていたはずなのだが、生まれてから十数年閉じていた箇所を拡げられる痛みを緩和するには至らなかったようだ。何かが破れたとか、割けたという事を感じる余裕も無い。
 やがてお互いの腰と腰がこつんとぶつかると、三ツ橋は大きく息を吐いた。ぴったり収まっているか、少し虚空坊のものが大きいようだった。体の奥が僅かに押されているような気がする。
 挿入しだしてからの時間は精々一分か二分といったところだったのだろうが、その十倍ほども経ったように三ツ橋には思えた。それくらいに痛く苦しかったのだが、清々しくもあるのが不思議だった。
15三ツ橋、喪失する。 13/14:2007/04/21(土) 04:59:43 ID:2ohBqdmV
「大丈夫か、三ツ橋」
 さっきも同じような台詞を虚空坊は口にしていた。今度は額や頭を優しく撫ぜながら、だったが。嬉しさが胸いっぱいに広がる中で、一つだけの不満を三ツ橋は口にする。
 随分前から虚空坊の三ツ橋への呼び方が「ミツバチ」から「三ツ橋」に変わっている事には気付いていた。そのさりげなさが愛しかったが、今となっては「三ツ橋」ですら不満を感じるのである。
「……初美、です」
「む?」
「こういう時くらい、ミツバチや三ツ橋じゃなくて、初美って呼んでくれないといやです」
 そう言って、こつんと額を虚空坊の胸に当てる。今更のように「あぁ、この人に抱かれているんだなぁ」という時間が涌いてくるようだった。
「……ふむ。では、いくぞ、初美」
「はい……」
 聞き慣れている筈の「初美」という単語に、三ツ橋は信じられないくらいの歓喜が溢れる。うっとりと柔らかに微笑んだ三ツ橋の顔は例えようもなく美しかった。

「くっ……痛っ……」
 固く大きな物が三ツ橋の体内を出入りする度に鋭い痛みが走る。こういう体験を女の子は皆乗り越えてきているのかと思うと、三ツ橋は変な感動を覚えた。
 男の人は痛い経験をしないなんてずるいなとも思ったのだが、ちらりと盗み見た虚空坊の気持ち良さそうな表情を見ると非難する気にはなれない。というか、少しだけ楽しい。
 信じられないくらいに長生きしている虚空坊なのに、多分抱いた女の数もとても沢山だろうに、自分で気持ち良くなってくれていると思うと嬉しいのである。
 そんなもので誤魔化せる痛みではないのだが、我慢の助けには充分以上になっていた。
 十分ほどが経過しただろうか。虚空坊の律動が不意に早くなる。痛みを感じる周期も早まった事で、耐え切れず三ツ橋は顔を顰めた。
「うっ……」
 虚空坊が低いうめき声をもらす。何事かと思ったが、体の奥で感じている熱い奔流で事態を理解した。「あ、これが射精なのか」と。熱を持った液体がじわりと三ツ橋の中へと染込んでいく。
 事が終わって崩れ落ちるように被さってきた虚空坊(その癖全ての体重を乗せないようにしているのは、心憎い)をしっかりと抱きしめて、三ツ橋は初めての余韻に浸っていた。
16三ツ橋、喪失する。 14/14:2007/04/21(土) 05:01:46 ID:2ohBqdmV
 それから、もう一度二人で風呂に入って、汗やら体液を流し落とす。また発情してしまうんじゃないかなと悩める三ツ橋だったが、意外とそんな事もなくただ和気藹々と入浴を楽しんだ。
 前回は湯船の中で向かい合わせで座っていたが、今回三ツ橋は虚空坊の胸に背を預ける形で座っている。至高の一時だった。
「あっ……」
「ん? どうした?」
 ぷかりと白い小さな塊が湯面に浮かんできた。三ツ橋の中に残っていた、虚空坊の体液なのは間違いない。ベッドで拭き取って、シャワーで洗い流したというのに、まだ残っていたようだ。
「中で、出したんですよねぇ」
「う……すまん……」
 三ツ橋が振り返ってみると、虚空坊がぽりぽりと鼻を掻いている。いたずらを咎められた子供のようで可愛い。思わずクスクスと笑ってしまう。
「別に、気にしてるわけじゃないですよ。嬉しかったですし、ね。それに、天狗さんには子供は出来ないんですよね、確か」
「うむ。結果論だから、絶対とは言えないかもしれないがな。まあ大丈夫だろう」
 ──アレレ? コクボさん、言い逃れ出来たみたいな顔してるぞ?
 ──オヤオヤ? 私はそんな事じゃ誤魔化されませんよ?
 生まれて初めて好きになった人である。体でこそもう繋がったが、ここらで一度心の方ももう離れませんよと繋ぎとめる必要を三ツ橋は感じた。
 ちょっと玄人好みするかもしれないけれど、こんな格好良い人、もう現れないかもしれないのだから。……と言うと怖い女のようだが。
「私……コクボさんの子供だったら生みたいです」
「ぶふっ! な、何を言うんだ、ミツバチ!」
 ちなみに、三ツ橋としては冗談半分である。まだまだ学びたい事がいっぱいあるのだから、子供を生む事は大事だと思うけれど、今はそちらの方を優先したいのだ。
 クスクスと笑いながら、からかうように虚空坊の頬をつねる。
「たとえ赤ちゃんは出来なくても初めてをあげたんですから、責任、取ってくださいね?」
 冗談三割の三ツ橋の言葉に蒼白になる虚空坊の表情は、仮に夜鳥子が見ていたなら末代までからかい尽くされたであろう愉快な代物だった。
17名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 05:03:40 ID:2ohBqdmV
以上です。
ここからはスレの空気に従いたいと思いますので、
ご意見感想、カップル案などご自由にお話くださいませ。
18名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 08:35:11 ID:UX3oR7tZ
…GJ!
雰囲気でてるなあ
そしてよく桝田スレを立ててくれた
自分で立てて自分で最初に投下する>>1カッコヨス

俺もなんか書きたいなあ…
リンダキューブなんか覚えてる奴いるかな?
19名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 19:03:51 ID:PuQgUrp7
>>18
リンダキューブほどエロやりやすい桝田ゲームないしなー。
何といってもティッシュ消費カップルだし。
20名無しさん@ピンキー:2007/04/22(日) 18:34:40 ID:xd9F8nhM
age
21名無しさん@ピンキー:2007/04/22(日) 20:09:56 ID:EEy1z8sm
保守
221:2007/04/24(火) 00:40:38 ID:/Md5jB8G
天外魔境でエロパロ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1114766894/

関連スレという事で…。
既にdat落ちしていますが。

今が旬ですのでハルカで書こうかと思ったのですが、
してしまうともれなくバッドエンドなんですよね、彼らは。
それにいずれ本編でいたしてしまいそうではありますがw
23名無しさん@ピンキー:2007/04/27(金) 17:51:13 ID:rgFccbti
age
24名無しさん@ピンキー:2007/04/29(日) 18:20:48 ID:9LJSfk64
保守
25名無しさん@ピンキー:2007/05/01(火) 13:10:46 ID:NAYa6oHl
ハルカようやく買ったー
……ぶ、分厚っ
26名無しさん@ピンキー:2007/05/01(火) 22:43:02 ID:Y/Em6hK4
天外魔境2より、卍丸と絹で16レス投稿します。

なお前提としまして22に張った天外エロパロスレにての
・卍丸は弁天で初体験
・幻夢城直後から卍丸と花火とそういう関係に
という設定を踏まえての物となっておりますのでご容赦を。
271/16:2007/05/01(火) 22:43:49 ID:Y/Em6hK4
 カブキ団十郎が「三日」と読み、極楽太郎が「五日」と張ったのは白銀城崩壊直後の事である。一体何の賭けかというと、「戦国卍丸と絹がいつそういう仲になるか」という当人達にかなり失礼な代物だ。
 この時から二日を経た今、卍丸達は秋芳洞を脱出する為の途上にある。

 秋芳洞での戦いは意外過ぎるほどに呆気のない物だった。
 この地で待ち受けていた根の将軍には目を見張るしぶとさがあったが、それでも魔城の主に比べれば強かさ(狡さ、でもある)に欠け、到底現在の卍丸達の敵とはならなかった。
 暗黒ラン撃破後に三博士によって洞窟の通路のあちこちが封鎖されもした。しかしこれも今卍丸の目の前を歩いている百々地三太夫のお陰で突破に成功している。
 早い話が卍丸は物足りないのだった。今一どころではない根の将軍に腑抜けた事後策(何も通路を封鎖などと手緩い事をせずに爆破してしまえばよかったのだ)ではそう思ってもある程度は仕方が無い。
 これが根の一族の最後の抵抗と考えると、今までの方が余程気合が入っていたろう。三博士に余裕があった点への違和感も、そうした疑問に拍車をかけていた。
 ……三博士ではなく自分こそがもっとも緩んでいたのだと、ほんのすぐ後に卍丸は思い知る事になる。あの時三博士を即座に斬り殺していればああいう光景が現れるに至らなかったのではないか、と。

 ぼんやりと物思いに耽りながら歩いている卍丸の背に何とも嫌な感じの視線が突き刺さっている。
 今彼の目の前を絹と百々地三太夫がきゃいきゃいと談笑しながら先を行っているのだから、その正体は勿論カブキと極楽であった。いわくありげな視線の意味にも察しはつく。
 百々地三太夫の長姉、花火。彼女と卍丸の関係はカブキ、極楽、絹の三人の仲間にも周知の事であった。勿論、この二人が何度となく体を重ねあっている事も。
 絹と花火の仲はこれまで悪くはなかったのだが、それも白銀城を経た今では随分と趣を変える。この時から絹の卍丸への好意は熱烈な物へと変じたからだ。
 そう、要は卍丸が女性関係で苦しむ所をカブキと極楽は楽しみにしているのである。カブキは当然のこと、極楽も中々に卍丸をからかう資格は無いのだが。
 不思議な事に卍丸の目の前で話し込んでいる絹と花火の間にぎくしゃくしたものは一切無い。むしろ絹が明るくなる以前より格段に仲が良くなっているのではないかとすら見えた。
 この事は卍丸の読み違いではなく、カブキ達にも確かにそう映っている。流石に事態が全く読めない卍丸とは違ってある程度の察しがついているが、それを教えてやるつもりは無い様だった。
 前門の不可解な女達。後門の不親切な男達。戦国卍丸にはまだまだ世の中の事は欠片ほども分からない。

 何にせよ、彼ら七人が人がましい瞬間を過ごせたのは秋芳洞までの事である。この後、戦国卍丸の時間は真の修羅道へと至る。
282/16:2007/05/01(火) 22:45:20 ID:Y/Em6hK4
 地獄とは正にこういった物だと確信させる光景が卍丸達の前に広がっていた。
 鋼鉄城の窓から下を眺めやる。だが、そこに有る筈の王城、京の都の美しい景観が一変していた。
 そこが都であった事を示すのは外周を囲う所々が崩れた防壁だけで、それ以外には何も無い。いや、在ってはならない物ならば、そこには満ち溢れていたのだが。
 防壁の内側の中心部には、瓦礫を積み上げて出来上がったのであろうか、かなりの大きさの山が禍々しい迫力と共に聳えている。その頂上に、卍丸達をこの旅でもっとも驚愕させた存在が我が物顔で蠢いていた。
 暗黒ラン、である。八本目が今こうして目の前に存在している事自体が混乱を誘うが、これまでの比ではないその巨大さ、また蠢動の激しさが否応無く事実を示している。
「ああ、これが本体なのだな」と何も言われずとも、言わずとも卍丸達は理解した。聖剣が存在しない今、何をもって対抗すれば良いというのだろうか。

 だが、はっきり言ってしまえば都の町並みが無くなった事も、新たな暗黒ランが出現した事も、次の一事に比べればまったく以って些細な事であったろう。
 実際、歴戦の戦士である戦国卍丸達を確実に絶望させたのは上記の事象ではないのだ。「それ」が無ければ、或いは闘志の沸き様もあっただろう。

 京であった場所全てを浸すように、池が生まれていた。その池を浸す液は、紅い。
 その液体の正体が何なのか、生死を掻い潜ってきた卍丸達が理解出来ない筈も無い。空中にある鋼鉄城にまで噎せ返るような臭いが上ってきているのだから。
 血。眼下の京はその朱色に染まっていた。

 不思議と怒りも哀しみも涌いてこず、訪れるのは只管の虚無だった。
 立っているのも億劫になるくらい、今の卍丸達の心には確かな重さをもって絶望感が圧しかかっている。これまで連戦連勝を重ねてきた卍丸に、初めて根の一族は反撃に成功したのだと言えた。
 勿論、ここで追撃を許すような優しい敵ではない。

 血の京が現れてから、卍丸達の間に笑みなどの人間らしい温かみに満ちた感情が殆ど消えた。蜘蛛の糸の様にか細い光明を信じて、ただただ斬り進むだけの日々、だった。
 その中で、戦国卍丸は花火を喪った。
293/16:2007/05/01(火) 22:51:23 ID:Y/Em6hK4
「……極楽さん、何をしてるの?」
 問いかけたのは絹である。今、彼女達は都を見下ろせる位置にある高野山山門近くの宿にて最後の休息をとっていた。

 この日の日中、戦国卍丸は聖剣を完成させた。
 八本目の暗黒ランが本物なら、こちらも正に本物の聖剣であり、恐らくは如何に抵抗が強大であろうと撃破には成功するだろう。だが、このままではどんなに事が上手く運んでも不本意な結果になる。
 何故なら、花火が死んだ瞬間卍丸の目から輝きが消えた。今の彼は、最強ではあるかもしれないが、ただ敵を切るだけの剣士に過ぎない。
 ジパング一のガキ大将という目標を、戦国卍丸は捨て去っていた。

 自分を守って女が死んだ。しかも、それは心底惚れた相手である。この瞬間をもって戦国卍丸の少年時代は終わりに入った。
 花火とは体から始まった関係である。惚れていたかどうかに結局生前の間に確信には至れなかった事が卍丸に深い傷を生んだ。失くしてから気付いた、などというのは不甲斐無さの極みであろう。

 目前で花火が死んだ時、二番目に戦国卍丸の異変に気が付いたのは極楽太郎だった。
 少年の体から何かが抜けていったのを感じたのである。「また俺は守れなかったのか、代わりになってやれなかったのか」と、深く自身を責めた。
 最後に気付いたのはカブキ団十郎である。
 吐き出すように自らの怒りを口にして思わず卍丸の胸倉を掴んだ次の瞬間、冷や水を浴びせられた様な感覚を覚えた。「オレのせいでこいつは怒る切欠を失ってしまった」と更なる悔恨に身を浸した。
 絹は勿論真っ先に気付いていた。惚れた相手の事なのだから。ただ、卍丸の顔を見るのも、その心を推し量るのも、全てが怖かった。この時から、今ここに至るまで卍丸を正面から見据えていない。

 夜が明ければ彼ら火の勇者は血の京へと攻め入る。何が起こるかなんて分かりはしない、いや、何が起こっても不思議は無いのだ。そのあらゆる可能性の中で、死という結果は当然大部分を占めるだろう。
 そう思うと絹は居ても立ってもいられなくなった。自分には何も出来ないかもしれないけれど、せめて卍丸の顔をきちんと見てから明日に臨みたい、とそう思ったのである。
 優れた異能者である彼女が、この時はその力に頼っていない。全てが無心のなせる業であった。
304/16:2007/05/01(火) 22:52:33 ID:Y/Em6hK4
「おお、絹か。いやなに、珍しく良い月が出てたんでな。こいつと酒を飲んどった」
 庭に無造作に座り込んでいる極楽がぽんぽんとある物を叩く。そこに在るのは地面に突き立てられた巨大な刀だった。
 その刀は正に極楽太郎の相棒と呼ぶに相応しい極めて無骨な造りである。刀剣としての美しさなど微塵も感じさせないが、強靭さに関しては疑うべくも無い迫力があった。

 極楽太郎は巨体である為に長らく十全に力を振るい得る武具を備える事が出来なかった。
 防具はまだ良い。如何に巨躯であろうと彼に合わせた物を作るのは容易だったし、そもそもの頑健さがさして防具を必要としないからだ。その筋肉は正に鋼と呼ぶに相応しい。
 やはり困るのは武器の方で、彼の怪力で振るわれると呆気ないほどに脆く敵ごと破壊されてしまう。下手な刀剣の類よりも日用具やまるで鬼が振るうような鉄棒等の方が武器としての体をなした。
 つまりは極楽太郎は恵まれた体躯と膂力を持ちながら、ごく最近まで精々が七割といったところの戦闘能力しか持ち得ていなかったのである。
 そんな彼がほんの一月ほど前に真の力を取り戻した。千年前に用いていた極楽の武具が倉敷に眠っており、しかも一切の損傷無く現存していたのだ。
 巨大な刀も、体を覆う防具も、どれもが極楽が装着すると自然に見えた。在るべき形を取り戻した極楽の活躍については記す必要も無いだろう。
 余談ではあるが、この日火の都にて極楽は自分の相棒を上回る刀を発見したのだが、これを持ち出していない。
「良い刀だ。だが、すまねえな。わしの相棒はこいつだけなんだよ」と優しく刀を撫でながら語りかける様子は、絹にはなぜか美しく見えた。
 これは更に余談となるがカブキも絹もそれぞれに見合った武具を発見したものの、やはり都に置いたままにした。
 出来に関しては疑うべくも無い(永い時間を水中に在りながら損ないが無いのだから、尋常ではない)のだが、最後くらいはこれまで共にした武具と共に在りたい、と思ったのであろうか。

「月? ……ほんとうに、綺麗」
 見上げれば確かにそこに月が出ている。京の空はあの時からずっと暗雲に塞がれていたというのに、まるでそんな事など知らぬと言わんばかりのように気ままに、見事に照り輝いている。
 そういえば空を見上げた事自体いつ以来だろう、と絹は思う。両親の死から白銀城で吹っ切れるまでにはそんな余裕は無かったし、悪夢が覚めてからも目まぐるしい日々であった。
 ひょっとしたら何ヶ月ぶりかもしれない月の光は美しく、絹の決意を優しく祝福してくれているかのようである。
315/16:2007/05/01(火) 22:55:12 ID:Y/Em6hK4
「そういえば、カブキさんはどうしてるの?」
 ある程度素晴らしい月を堪能した絹はそうした疑問に気付いた。
 普段カブキと極楽はしょっちゅう喧嘩をしているが、そのくせこういう酒を飲むのに絶好の機会の時には数十年来の友人もかくやと言わんばかりの気の合いようを見せる。
「……ん、カブキか。興が乗ったとか言って、帳面片手にどっかに行っちまったな」
 ああ成る程と絹は合点がいった。カブキ団十郎はその密かな趣味に興じる事を選んだのだろう。

 カブキ団十郎はこの旅の合間合間に日記を書く事を趣味としている。無論過酷な日々を送っているのだから執筆できる機会はごく稀であったが。
 何度か絹はカブキが日記を書いている所を見た事がある。当時の彼女は感情の起伏に乏しかった為にカブキの姿に何も思う所が無かったが、今にして思えばそれは随分と奇妙な物であった。
 なんと書きながらカブキはくすくすと笑い、或いは鼻をすすったりしていた。過日の事を思いだしては感情が高まっているのであろう事は疑いが無い。カブキ団十郎とはそうした人物だった。

 縁側に腰を下ろし、しばらくの時間を極楽と共に月見を楽しむ。それはそれで充分に素晴らしい事ではあったが、今夜ばかりは他にしなければならない事がある。
「……わたし、そろそろ行きますね」
 立ち上がって極楽に呼び掛けると、その表情の真剣さに絹は驚いた。卍丸やカブキと比べれば彼の精神的余裕は大した物で、常に悠然と人生を楽しむ態度を崩す事がない。
 この一ヶ月ほどの殺伐とした日々の中で絹達がぎりぎりで人らしさを保てたのは間違いなく極楽太郎のおかげだった。
 それ程の男の今この瞬間の深刻な表情。絹がこれからどこへ向かい、何を為そうとしているか察したのであろう。
「すまねえが、頼んだぞ」
 という言葉に含まれる重さに極楽の切実さがはっきりと感じられるようだった。
 極楽太郎は、卍丸が絹を救った様をその目でしかと見ている。少年への更なる敬意と共に、やはりこの二人は対となるべき男女なのだと確信した。なれば今、卍丸を救うのはやはり絹しかいない。
 無論花火の事は承知しているし、卍丸の為に命を落とした事を思うと申し訳がないと思う心はある。しかし、だ。恐らくは花火も絹であれば許したのではないかと、そうも思えるのだった。
326/16:2007/05/01(火) 22:57:52 ID:Y/Em6hK4
「はい、任せてください。わたしは卍丸の妻なんですもの、きっと大丈夫です」
 かなり大袈裟な言葉を口にしているが、にっこりと笑んだ絹の表情に冗談の気配など微塵もなく、清々しいまでの自信だけがそこにある。

 戦国卍丸がジパング一のガキ大将になると決めているように、カブキ団十郎がジパング一の伊達男であると宣言するように、絹の「卍丸の妻である」という自負は若さゆえの夢であろう。
 しかし、往々にして幼稚な夢ほど純粋で強い。この三者の夢への姿勢の在り方は、枯れ切った(と自身では思っている)極楽にはひどく眩しく、ひどく羨ましかった。
 夢に殉じた若者を極楽は何人も知っている。中には、或いは自分が関われば救えたかもしれない者も何人かいた。その悔恨は彼の巨躯をも押し潰さんばかりに大きく、重い。
 ならばこそ、今この時を共にしている卍丸、カブキ、絹の三人だけは守りきりたいと思う。例えその事で千年間彼を支え続けた誓いが折れようとも。

 ちなみに、絹は卍丸の前で自分が彼の妻であると宣言した事は無い。いやそもそも、それ以外の他人に対してもこうして口にしたのは初めてであった。
 要は認識しているのは絹本人だけなのだが、宣告する意味も必要性も感じていない。そうした行為が他人にどう映るか、幼少から異能者として他人の反応を気にせざるを得なかった絹は充分承知しているからだ。
 女のしたたかな計算と言ってしまえば確かにそうであろうが、反面、絹は仮に自分以外の誰かが卍丸の妻となろうとも、見捨てられようとも、騒ぎ立てるような事はしないとこれも固く決めている。
 戦国卍丸に選ばれる。この事で生きる意味を取り戻した絹である。その卍丸が選んだ女であるなら、文句など言う事も無く納得してしまうだろう。

 更に余談であるが、絹は卍丸との未来を異能で見知ろうとした事もない。
 それはこれまで根との戦いに対しての暗い結果を示した予知を悉く卍丸が覆してきたからという事もあるが、やはり夢に対しての自負ゆえだった。
 今の絹に卍丸と初めて会った時の今にもふっと消えそうな儚さはなく、日の光を受けて力強く輝く瑞々しさがある。

 極楽に軽く挨拶をしてから卍丸の居る部屋へと向かう。ただ恋に恋する少女であったならその胸は早鐘を打っていただろうが、絹の心は本人も驚くほどに澄み切っていた。
 妻であるならば、夫の前に座してその顔をしっかと見つめれば何もかもを理解するはずである。つまりは鏡のようでなければなるまい。
 自身の心の平静に吉兆を感じ、それまでにも増して絹は自信に満ちて卍丸への元へと歩を進めた。
337/16:2007/05/01(火) 23:00:56 ID:Y/Em6hK4
 宿に入って以来食事すらもとらず、戦国卍丸は愛剣を目の前に掲げてひたすら一心に自身の剣法の完成形を案じ続けていた。
 その姿は紛れもなく当代一の剣士としての気迫に満ち溢れている。しかし卍丸を知る者が今の彼の姿を見れば目を疑うほどに、らしくない。

 卍丸、と呼び掛けて室内に一歩踏み入っただけで絹は泣きたくなった。こんなのは卍丸じゃない。
 振り返って優しく微笑んだ卍丸を見て更に泣きたくなる。こんなのは断じて卍丸じゃない。
 決壊しそうな感情を必死で我慢して、端座している卍丸の前に腰を下ろし、姿勢よく正座する。そうして、一月程ぶりに惚れた男の顔を真正面からしっかりと見据えた。

 そこには何も無かった。絹の目の前には確かに戦国卍丸がいるというのに。

 目の前の青年には一人の人間としての完成された風格が漂っていた。しかし絹が好きになったのは、カブキや極楽とふざけあっては笑い、彼女にぎこちないながらも真摯に接してきた少年である。
 哀しかった。だがそれ以上に、奇妙にも絹は感動を覚えていた。戦国卍丸をここまで変貌させた百々地花火に対してである。
 愚かにも「自分が死んでも卍丸はこうなっただろうか」などという考えがよぎるほどに、死んだ花火への強い感情が絹の中に溢れてくる。それは妬心等では決してなく、本当に純粋な憧憬だった。

 やがて絹の瞳に涙が満ち、すーっと一筋を描いて流れ出す。嗚咽もなく、ただただ涙は静かに溢れ続けた。

 ぐらりと卍丸の体が揺れる。この一月、彼の心を抑え続けていた固い岩壁にひびが入ったような、そんな錯覚を彼は感じていた。

「どうして……泣いてるの?」
 こう問うた瞬間、卍丸は少年の日々へと再びその身を戻したと言えるだろう。他者、それも生者への興味を再び抱いた事がその証拠である。
 急速に何かが卍丸の中で湧き上がってきていたが、それを自覚する事も忘れて泣き続けている絹の顔をじっと見るしか出来なかった。
348/16:2007/05/01(火) 23:03:02 ID:Y/Em6hK4
「泣きたいから泣いている」
 と言うような事を途切れ途切れに泣きながら絹が口にする。この頃にはさすがに泣き声が伴っていた。
 もう駄目だった。
 涌きあがってくる感情を抑えつける事はぎりぎりで可能だったかもしれない。そうすれば、卍丸はまた一つ大人へと近づけたであろう。
 だがそもそも、卍丸に冷静な思考能力は無くなっていた。

 気が付けば卍丸は泣いていた。顔をくしゃくしゃにして、洟さえも垂らしながら。絹と二人して幼児のようにわんわんと泣く中で、花火の死を初めて悼み悲しんだ。
 涙が枯れ果てた荒野の様だった卍丸の心に潤いを取り戻し、元の生命の輝きに満ちた草原の様な心へと戻していく。

 潤った心と反するように涙はやがて枯れるかの如く引いていき、それと同時に二人ともゆっくりと落ち着いてきた。
 いくら貸し切り状態の宿といっても主人が顔を出しそうなほどに泣き声を上げていた筈なのだが、今に至るも声をかけてきたり足音さえも無い。
 随分と心得た主や従業員であったのか、それとも極楽あたりが手を回したのであろうか。絹は何となく後者だろうなと思った。
「……ふふ、随分泣いちゃったね」
 照れてはにかみながら、そんな事を口にする。卍丸もやはり恥ずかしいのか鼻の頭を掻いていた。
「うん。……こんなに泣いたの、おれ、久しぶりだよ」
 二人とも既に満足したような、本当に心地良い状態にある。だから、いつもの様に部屋を別にしてそれぞれで就寝すればいいわけなのだが、今この瞬間がどうにも得難く思えて、少しでも一緒に居たかった。

 卍丸にとって絹とは常に高嶺の花であった。彼女は少数の異民族のとはいえ歴とした高貴の身であり、片や卍丸は山村生まれの山猿に過ぎないのだから、この認識は至極当然であろう。
 白銀城で少しその距離が縮まりはしたが距離の変化がむしろ彼には怖く、出来れば一定の距離を保ち続けたいとすら考えていた。まさに恋ゆえの逡巡なのだが、花火がいた事でこれを自覚するには至っていない。
 しかし、今は確実に二人の距離は零である。今まで抱いていた恐怖が馬鹿馬鹿しくなるほどに、絹への愛しさが募っていく。
359/16:2007/05/01(火) 23:05:36 ID:Y/Em6hK4
「そろそろ寝ようか。明日は、その……最後の戦いになるだろうし、しっかりと寝ておかないと」
 どうにか絹から顔を背けて理性を口にするが、それが本能とは極めて離れている事に卍丸自身驚いていた。とてもではないが本心を口にしたとは言えない。
 ただ、本心とは性欲であるかと言えば、実はそればかりでもなかった。では他に何が含まれるというのかと問われれば卍丸にも不明瞭であったが。
 とにかく、ただそばに居るだけで酔ったような気分(ちなみに、卍丸は酒を殆ど飲んだ事がない)になっている。

 絹を抱きたい。強くそう思う。しかし同時に、手折りたくないとも思っている。この矛盾めいた感情。
 それが吹っ切れたのは、名残惜しさに負けて絹の顔を今一度だけと振り返った時だった。
 変わらず自分を見続けている絹を見た、たったそれだけの事で、卍丸の理性は決壊した。

 押し倒すような勢いで絹の唇へと自身のそれを押し当てる。自然二人とも身を横たえ、逃さないとばかりに絹を抱きしめる卍丸の腕に力が篭った。
 少しでも拒む素振りを絹が見せたなら、その瞬間卍丸は飛び退いただろう。そして、恐らくはその後の生涯で決して彼女を抱こうとしなかったに違いない。
 しかし今、卍丸の下の絹は、愛しい男の初めて見せた激しい情欲に身を任せ続けている。身を固くせず、震えも起こさず。
 健気にも卍丸の背へと腕を回し、きゅっと抱きしめる。これが効いた。奇跡的な按配の冷や水が卍丸にかけられた、といった所であろうか。
 要は点ってしまった情欲の炎は、勢いこそ弱まりはしたが、消えてはいない。

「……ごめん、ちょっとがっついちゃった」
 これまでの二人の女性との同衾において一度として最初から本能のまま突っ走った事の無い卍丸である。がっついたのはこれが初めてなのだから、本当に「ちょっと」だったのか本人にも疑問だった。
 考えれば考えるほどに(ろくに頭は回らないのだが)、既に充分以上に昂ぶっている自分に卍丸は気付く。今初めて女を抱くかのような興奮に包まれていた。
 もっとも、弁天の時は雰囲気に流され飲まれたようなものだし、花火の時はやむを得ずという形で始まったようなものだったのだから、自らの本能のままに抱く事になったわけではない。
 相手の意思を確かめる事すらせずに、ただ抱きたい。卍丸にそう思わせたのは絹が最初で最後だった。
3610/16:2007/05/01(火) 23:08:55 ID:Y/Em6hK4
「ちょっとびっくりしたけれど……だいじょうぶ」
 頬に朱色が注して一層その美しさを増した表情の絹。吐息も僅かばかり荒いでいるのか、卍丸を許す言葉に掠れが感じられた。それが、ひどく扇情的である。
「ほんとうに、ごめん」
 謝りながら、絹の額にかかった前髪をどけるように優しくそっと撫でる。くすぐったいのか、照れくさいのか、それとも嬉しさを示すためなのか、目の前の少女は見事な笑顔を咲かせた。
「気にしないで。卍丸とこうしてることがわたし、嬉しいの。あなたがわたしを求めてくれるのなら、何だって耐えられるわ。だから、卍丸の好きなように、して」
 言葉こそ健気であるが、絹の表情にそれは無い。卍丸への確固たる信頼がそれを纏わせないのだろう。ここまで言わせて退くほど、卍丸は野暮天ではない。
「……わかったよ。今から絹を……抱く」
 力強くそう宣言した卍丸の頼もしさ。絹はまさにそこに惚れたのである。少女の心は歓喜の極みに達した。

 布団へと移動し、二人衣服を落として生まれたままの姿になった。この時ですら震えを見せない絹の度胸は大したものである。内心そこに感心しながら改めて絹に覆いかぶさり、その裸体をさっと眺めやった。
 清楚。その一言に尽きた。女体としての起伏はとてもなだらかで幼さをぎりぎりで脱却している程度のものだ。しかし、胸の膨らみにも腰周りの肉付きにも見る限りには固さはなく、優しげな柔らかみを感じさせる。
 秘所上部の陰りもひどく薄く、殆ど無きに等しい。何もかもが絹らしくて、ただただ美しかった。
 思わずごくりと卍丸は唾を飲む。見るだけで満足してしまうような絹の裸体に自分はこの先唇を這わせ、掌で覆い、自身を差し入れる事になる。その感動。
 どこか使命感にも似た衝動に動かされて、それでもはっきりとした意思の元にゆっくりと絹の唇を奪いに近づいていった。

 形良い唇のしっとりとした感触。
(ああ……すごい)
 絹の唇と自分の唇が合わさっている。たったそれだけの事で、有頂天に達するようであった。彼女も同じ心境であったのか、唇を話してその顔を見れば、本当に嬉しそうな笑顔を卍丸へと差し向けている。
 絹も同じなのだと分かれば何度でも口づけを交わしたくなり、実際数える暇さえ惜しいくらいに合わせ続けた。
 舌は入れない。入れてしまえば捕らわれてしまうのが分かりきっていたから。たとえ愛撫が最小限になろうとも、早く絹と繋がってしまいたかった。
3711/17:2007/05/01(火) 23:11:38 ID:Y/Em6hK4
 穏やかな、しかし若い瑞々しさに溢れた膨らみにそっと手を置く。「あっ」という声と掌に感じる鼓動が絹の初めての心の揺らぎを卍丸へと知らせるようだった。
 少しでも安心させたいという卍丸の気持ち通りに、絹の胸を撫で擦る動きはひどく優しい。揉む事さえ躊躇われる。その頂に指を這わせる際にも細心の注意を少年は払った。
「うっ」
 絹の乳首は小さいながらも健気にその存在を誇示している。ひどく可愛い。卍丸の小指の先の半分ほどしかないそこが、嬲られるのを待っているように見えた。
 喘ぎとも怯えともつかない声が絹の口から吐かれる。それをもっと聞きたくて、固くなった鴇色の尖りを何度も何度も擽ってやった。

 いつしか絹の首筋に押し当てられていた唇を胸の丘陵へと下げていく。その柔らかさに酔いながら、ひたすらに頂上へと。時折は舌で乳房をくっと押し、その柔らかさを楽しみながら。
 つんと立ったそれの感触を下唇が感じた刹那の後、優しく両の唇で摘む。そうして何度か固さを確かめるように唇だけで甘噛みをしてから、ひたりと舌を押し当てた。
「あ」
 微塵たりとも動いていないのに、ただ当てられているだけで絹は心地良さを感じている様子である。この程度で満足してもらっては困るとばかりに、卍丸の舌は捕らえている獲物の蹂躙を始めた。
 くりくりと舌で転がせばその度絹の体に震えが走り、優しく吸ってやればその度我慢しきれない悦びの声を少女があげる。楽しいというよりは、堪らなかった。
 背中を微かに幽かに撫でていた右手をさっと秘所へと走らせると、そこはもうしっとりと湿りを感じさせている。
「いやぁ……」
 卍丸の指は自然に秘所の突起、琴弦に触れそれを優しく擦っていた。その性技で何も知らぬ無垢な少女を乱れさせる悦び。湿りは潤いへと転じていく。
 表情、声、身体の震え。ありとあらゆる絹の痴態が卍丸を追い詰め、瞬間、少年の我慢は限界に達した。

「絹……」
 音にしてたったの二文字を口にするだけでももどかしい。早く、早く一つになりたいと卍丸の身も心も咆哮をあげていた。
 嘗て無いほどに、卍丸のそれは猛っている。獲物を前に涎を垂らす狂犬のようでさえあった。醜悪ではあるが、それ故に強烈に生と性をを感じさせる。
 切羽詰った恋人の表情で考えるまでもなく察したのであろう。慎ましげに両の脚をゆっくりと開き、笑顔と共に絹は卍丸へこくりと頷きを返した。
3811/17:2007/05/01(火) 23:12:53 ID:Y/Em6hK4
 穏やかな、しかし若い瑞々しさに溢れた膨らみにそっと手を置く。「あっ」という声と掌に感じる鼓動が絹の初めての心の揺らぎを卍丸へと知らせるようだった。
 少しでも安心させたいという卍丸の気持ち通りに、絹の胸を撫で擦る動きはひどく優しい。揉む事さえ躊躇われる。その頂に指を這わせる際にも細心の注意を少年は払った。
「うっ」
 絹の乳首は小さいながらも健気にその存在を誇示している。ひどく可愛い。卍丸の小指の先の半分ほどしかないそこが、嬲られるのを待っているように見えた。
 喘ぎとも怯えともつかない声が絹の口から吐かれる。それをもっと聞きたくて、固くなった鴇色の尖りを何度も何度も擽ってやった。

 いつしか絹の首筋に押し当てられていた唇を胸の丘陵へと下げていく。その柔らかさに酔いながら、ひたすらに頂上へと。時折は舌で乳房をくっと押し、その柔らかさを楽しみながら。
 つんと立ったそれの感触を下唇が感じた刹那の後、優しく両の唇で摘む。そうして何度か固さを確かめるように唇だけで甘噛みをしてから、ひたりと舌を押し当てた。
「あ」
 微塵たりとも動いていないのに、ただ当てられているだけで絹は心地良さを感じている様子である。この程度で満足してもらっては困るとばかりに、卍丸の舌は捕らえている獲物の蹂躙を始めた。
 くりくりと舌で転がせばその度絹の体に震えが走り、優しく吸ってやればその度我慢しきれない悦びの声を少女があげる。楽しいというよりは、堪らなかった。
 背中を微かに幽かに撫でていた右手をさっと秘所へと走らせると、そこはもうしっとりと湿りを感じさせている。
「いやぁ……」
 卍丸の指は自然に秘所の突起、琴弦に触れそれを優しく擦っていた。その性技で何も知らぬ無垢な少女を乱れさせる悦び。湿りは潤いへと転じていく。
 表情、声、身体の震え。ありとあらゆる絹の痴態が卍丸を追い詰め、瞬間、少年の我慢は限界に達した。

「絹……」
 音にしてたったの二文字を口にするだけでももどかしい。早く、早く一つになりたいと卍丸の身も心も咆哮をあげていた。
 嘗て無いほどに、卍丸のそれは猛っている。獲物を前に涎を垂らす狂犬のようでさえあった。醜悪ではあるが、それ故に強烈に生と性をを感じさせる。
 切羽詰った恋人の表情で考えるまでもなく察したのであろう。慎ましげに両の脚をゆっくりと開き、笑顔と共に絹は卍丸へこくりと頷きを返した。
3912/17:2007/05/01(火) 23:14:15 ID:Y/Em6hK4
 ゆっくりと、決して止まる事無く、卍丸が絹の内部へと侵入していく。途中、一際狭く閉じたような箇所が卍丸を阻んだが、断固とした意思の前にそれも儚く破れた。
「うっ……」
 破瓜の瞬間だけ、さすがに絹が呻き声を漏らす。必死に笑顔を崩すまいとしている様がいじらしくて、卍丸は泣けそうになった。
 精神的には二度目のようなものだが肉体的には一度目なのだから、絹の痛みは当然だろう。身も心も一つの契機を卍丸によって迎えたという充実感がなければ、泣き叫んでいたかもしれない。
 やがて卍丸が絹の奥へと辿り着く。あつらえたようにぴったりと二人の秘部は一致していた。ぐいぐいと自身を絞める絹の動きに、卍丸はきつさと心地良さという相反する二つの感覚を楽しむ。
 女を知らないガキでなくて良かった、と卍丸は思う。男を迎え入れる体にぎりぎりで到達している絹である。何も知らぬ頃であったならただ傷付けるだけだっただろうから。
 動きたい、貪りたいという気持ちを驚くほど冷静に支配下に置けている。卍丸の背中に回された絹の両腕の健気な力み、破られ押し広げられる痛みを知らせる瞼の震えが消えるまでは、ただただ待ち続ける。
「絹……」
 何の意思もなく、いや、ただ愛しくて、自分の下で可憐に震えている少女の名前を呼ぶ。その囁く様な卍丸の声が柔らかく絹の心を打ち、体をすっと伝って中にいる彼を喰い絞めた。
「くっ……」
 絹の不意の攻めに、今度は卍丸がたまらず呻き声を漏らす。生娘のこわばりに加えての、天性の締まり。痛みにも似た性感に少年は当然とさせられる。

「絹……」
 先程と違ってどこか苦しそうで、けれど心地良さそうな卍丸の声。事ここに至れば絹にも卍丸がどうやら自分で心地良くなっているらしいことに気付く。
 嬉しい。と言うより、楽しい。泣き出しそうでさえある卍丸の表情が可愛くて仕方がない。じんじんとした痛みは依然残っていたが、こんな顔を見せられては受け入れてやるしかない。
「動いていいよ、卍丸」
 と、はっきりとした声で告げる。瞬間嬉しそうな顔をした卍丸だったが、刹那の後にはきりりと表情を引き締めて神妙な顔付きになった。
「……大丈夫? 絹」
 こうした事は何度となくあった。どれほどの回数、絹は卍丸に気遣われたことだろう。礼も謝意も返さなかった当時の自分への不甲斐なさが少女を悔恨で焼く。
 今こうして卍丸に抱かれる事で帳消しになるとは思わない。また、帳消しになったとしても卍丸と一緒にいたい。これからもずっと、ずっと。
4013/17:2007/05/01(火) 23:15:29 ID:Y/Em6hK4
「私はいいの。卍丸がしたいようにしてくれれば、それが一番嬉しいから」
 絹がにっこりと微笑む。彼女のこんな顔を見るようになったのはごく最近だ。出会って以来ずっと卍丸は絹の笑顔をを思い描いていたようなものだったから、何度見ても嬉しくなってくる。
 我慢しているし、させてしまうのはわかりきっていたが、もう躊躇はしない。絹との繋がりに、卍丸は溺れ溶け込んでいく。

 ゆっくりと押し入れ、ゆっくりと引き抜く。一度の往復でさえ酔い、二度三度となれば更にそれが増す。
 ──ああ、凄い。
 と、卍丸は絹の胎内のあまりの心地良さにただただ陶然としていた。
 進む時に迎えてくるのは、柔らかな体温と、しっとりとした締め付け。それらがゆるゆると卍丸を追い詰めていく。一つになれたという絹の歓喜が伝わってくる。
 退く時に追いかけてくるのは、烈しい蠢動と、ねっとりとした締め付け。それらがじりじりと卍丸を追い詰めていく。一人にしないでという絹の気持ちが伝わってくる。

 卍丸は攻めている、筈であった。しかしその一挙一動は優しく受けとめられ、包み込まれる。無論傷付けないように、痛ませないようにという注意を忘れてはいないが、その必要がない程に馴染んでいるようだった。
 ほとんど崇拝の対象ですらあった少女に己の欲望を突き立てる、その達成感と背徳感。初めて女を知ったときを軽く上回る凄絶な快感に卍丸は溺れていた。

 絹が感じているのはやはり苦痛ばかりである。その痛みを感じているという点に関してだけは、唯一残念がるような感想を絹は覚えていた。
 それ以外は、ただただ嬉しい。
 こっそりと目を開けて卍丸を盗み見れば、戦闘中でも見た事のないような真剣な表情で動いている。男の人って大変なんだなと絹は思う。
 卍丸は汗までかいて、それが絹の胸の膨らみへとぽたぽたと落ちてきている。この運動量に見合うだけの快楽を自分に感じてくれているのだと思うと嬉しいのだった。
 まだ勝手は掴めないが、時折自分のそこが時折蠢いてしまうと卍丸がたまらず呻くのも楽しい。いずれ自在に操る事が出来るようになればもっと楽しくなるのだろうかと、少女らしい純粋な興味が湧いてくる。

 感情が肉体を凌駕する、という事はある。絹の身体は歓喜から生じた熱に酔い、次第次第にそれが錯覚ではない確りとした悦楽へと変じつつあった。
4114/17:2007/05/01(火) 23:17:40 ID:Y/Em6hK4
 不思議なもので、快感が生じてきている事が絹を恐怖させていた。
 無論自分は淫らなのだろうかなどというものではなく、こんなに幸せでいいのだろうかという、惚気のような恐怖である。申し訳ない、というようなところもあっただろう。その対象だけは明白であった。
 言うまでもなく、百々地花火に対してだ。

 白銀城崩壊の日の夜。花火は絹に謝罪に現れた。気が済むのならば刺して頂いても構わないと小刀を前にして、だ。花火が泣く様に演技はなく(絹を誤魔化すのは至難)、真実済まないと思っているようだった。
 面食らいはしたが、絹には妬心など微塵も無いので易々と花火の謝意を受け入れた。花火と卍丸の関係は自分と出会う前からなのだから理解も納得もしているからである。
 そもそも絹と花火が惚れた相手は戦国卍丸だ。一人や二人の女の想い程度、平気で背負うくらいではないと困る……と絹は思っている。
何も同じ男に惚れた同士、争う事も無いだろう。
 大体そんな内容を花火に話した所、最初は唖然としている様子だった。しかし絹が本気らしいと知ると安心したようで、次第に笑顔を見せ始めた。この夜以来、絹と花火は親友になったと言って良い。

 その親友が亡くなった事を初めて悼んだ夜に、こうして卍丸に抱かれている。痛みがあったうちは後ろめたさを感じる事はなかったというのに、一旦心地良さを覚えてしまうともう駄目だった。
 恐らくは卍丸も同じ気持ちなのだろう。躊躇っているような、苦しんでいるような表情をしている。
 不思議なものでお互い花火に対して後ろめたさを覚えていると知った瞬間、面白いように二人の苦悩は晴れた。晴れたというよりも共犯者が見つかったといったような心境だったろうか。
 ともあれ、消えかけてさえいた劣情の火は再び灯り、卍丸と絹を酔わせていった。

 絹の身体から生娘特有の固さはとれたというのに、尚きつい。つまりは生来のものだという事だろう。自身を絞られる感覚に卍丸は呻く。
 卍丸が圧迫感を覚えているということは、絹もより自身を穿つ物を感じているということに他ならない。その逞しさに絹は喘ぐ。
 鈍痛はまだ少し残っていたが自分の体内を激しく擦る卍丸がとても気持ちが良くてたまらない。
 未知の体験だというのに、絹には一つの高みがすぐそこに迫っていることを自然と理解していた。そこへ卍丸によって導かれる悦び。
 卍丸に出会い抱かれた事が嬉しくて、絹はしっかりとその背中に腕を回して抱きついた。
4215/17:2007/05/01(火) 23:19:18 ID:Y/Em6hK4
 卍丸は、自分は戦国卍丸なのか、それとも絹なのか、そんな事も分からなくなるほどの愉悦に溶けている。
 一月ぶりの女体である。手慰みさえしてこなかったのだから、今なお吐精を耐えられているのが不思議ですらあった。まして相手は憧れていた絹だ。自身の忍耐に、子供っぽい誇らしさが卍丸に湧く。
 しかしそれもいよいよ限界だった。ますます潤み蠢く絹の絡みの前に、放出の予感で腰が震える。それはもう数瞬ほどの先でしかなかった。
 ここぞとばかりに絹を貫く動きを小刻みに加速させる。黙って何かを待つのは我慢ならない性分だからだ。ぎりぎりまで抗い続け、そして突き抜ける。それが戦国卍丸だ。
 最後の一突きを絹の体奥に届かせた瞬間、卍丸は弾ける感覚に灼かれた。これまでを遥かに上回る絹の蠢動に捕らわれながら。

 絹の絶頂も卍丸と同時であった。自分の中に当たってくる卍丸の体液の勢いと熱に追い上げられながら。
 強烈な快感が残す余韻はただただ心地良い。最後の一滴までをも吐き出し終えてぐったりと崩れ落ちた卍丸を抱き締め、絹は今この時を存分に満喫していた。

「……しちゃったんだね、わたしたち」
「……うん、しちゃった」
 ぼんやりと二人呟く。別に後悔してのことではない。お互い一つの夢が実現した感慨がそうさせたのだろう。
 反応したのは絹の方が先で、ひくりと蠢いたそこに卍丸は危険を感じた。
「うっ……やば」
 と急いで絹から自身を引き抜く。様々な体液に塗れていたが、何より目立ったのは赤い色だった。そのことで先程までの行為が思い返され、ますます兆していきそうだった。
「卍丸? その……私はいいよ?」
「ぶっ!」
 あまり冗談を言わない絹である。この発言も本気でのものだろう。本当ならば思う存分甘えたい卍丸だったが、今夜ばかりはそうもいかない。
 何せ、朝になれば最後の暗黒ランへと挑まねばならないのだ。まさか絹を抱き疲れて失敗したなんて事になったら目も当てられない。
 この時初めて卍丸は身勝手な怒りを根の一族へと感じていた。義憤に狂うよりは、情けない今の彼の方がよほどそれらしかっただろう。
4316/17:2007/05/01(火) 23:23:57 ID:EXk2jqjT
「そう……残念」
 卍丸がどうにか事情を説明し終えた後での絹の返事である。全くもって卍丸と思いを同じくしていた。
 とにかくいそいそと身支度を整え、絹を寝室へと帰す。今夜くらいは一緒に寝ても良さそうなものだったが、そうなるとカブキや極楽が寝る場所がない。
 意外に聞き分けよく納得してくれた絹が部屋から消えると、心地良い疲れが卍丸を睡魔へと誘う。逆らう暇さえなく、卍丸は布団へと崩れこんで眠りを貪った。

「起きやがれこの馬鹿野郎!」
「いてっ!」
 蹴飛ばされた痛みで跳ね起きると、カブキが仁王立ちをして卍丸を見下ろしている。怒っているような笑っているような、妙な表情だった。
 その向こうでは極楽がただただニヤニヤしている。ちょっとむかむかする笑みだった。
「痛いなぁ、まったく。何すんだよカブキ」
 元々寝起きは良くすぐに頭もはっきりとする卍丸だが、蹴られる理由にはさすがに想像がつかない。最悪の目覚めである。
「うるせぇ。今日はいよいよ決戦だってぇのに、前の日に女としっぽり楽しんでやがる馬鹿ガキをオレ様が起こしてやったんだ。ちったぁ有り難く思いやがれ」
「ぶっ! な、何でそれを」
「ケッ! そいつを教えてやるほど優しかねぇんだよ、オレ様はな。ふん、馬鹿馬鹿しいったらねぇや」
 思う存分悪態をつきながらカブキが部屋を出て行った。卍丸とは逆に寝起きは不機嫌な男だが、今日のそれはいささか事情が異なるようだった。卍丸には皆目理由が分からないが。
「何であんなに怒ってるんだろ、カブキ。……極楽は知ってる? 理由」
「おう、知っとるぞ。ありゃあな、妹に男が出来た兄貴の心境ってところだ。ま、アイツは絹を妹と思っとるようだが、絹の方でもカブキを弟と思っとるだろうがな」
 どちらかと言えばカブキの方が絹の弟だななどと頻りに頷いている極楽だったが、卍丸にとってはそんな事はどうでもよかった。
「その、あの、二人とも、知ってるの? おれと絹がその」
「おう。寝たんだろ。気付くに決まっとるだろうが」
4417/17:2007/05/01(火) 23:24:27 ID:EXk2jqjT
「い、いや、えーと、それはそうなんだけど。……も、もしかして、聞こえてた、とか?」
「わしもカブキのバカ野郎も戻ってきたのは明け方近くだ。それまでは寄ってすらいねえよ。お前や絹のよがる声聞きたがるほど野次馬じゃねえしな」
「よ、よがるって」
 冗談は言うが嘘は言わない極楽であるから、卍丸と絹の痴態を見ても聞いていないというのは事実だろう。ならば何故そういう関係があったのを知ったのか、これがわからない。
「何でってそりゃお前、絹の顔見ればすぐにわかるだろうが」
「へっ? 顔?」
「おう。……ちょうど絹が来たみたいだな。」
 すすっと障子を開いて絹が入ってくる。すっかりと身支度は整えられており、朝食は皆でとるという事で来たらしい。いつもの絹である……はずだったが、強烈に印象が違っていた。
 出会った頃の儚げな美しさ。悲しみから吹っ切れた後の咲き誇る美しさ。そのどちらをも上回る今の絹の美貌。開いた口を塞ぐ事すら忘れて、卍丸は見入るしかなかった。
 成る程、支度中に極楽やカブキは先に絹に出会っていたのだろう。今の絹を見れば何があったのかなんて言われずともわかるというものだ。
 惚れた相手と身も心も結ばれるという事が女の美しさをここまで咲かせるとは。花火の時でも体験していたはずなのだが、改めて驚愕する卍丸であった。
「……おい。気持ちはわからんでもないが、突っ立っとらんでまずは座れ」
 卍丸と目が合うと、絹が頬をぽっと染めてやや俯く。極楽の注意の声は耳に入っていたが、その程度では卍丸の金縛りは解けない。下手をすれば息さえ忘れてしまいそうである。
「ケッ。ったく、こんなガキに絹をくれてやらなきゃなんねぇとはな。ま、絹が幸せだってんならいいけどよ。おら、どきやがれ」
 いつの間にか戻ってきたカブキにまた蹴飛ばされて、卍丸は一瞬だけ冷静さを取り戻した。本当に一時的なものでしかなく、飯の味さえもわからないくらい、やたらと絹に見蕩れ続けたのだが。
「……おやおや、二人して幸せそうな顔しちゃってまぁ。困りますねぇ極楽さん」
「……えぇえぇ、我々はまるっきり邪魔者みたいですねぇ。困りますなぁカブキさん」
「カブキ!」「極楽さん!」
 普段はしょっちゅう喧嘩しているくせに、こういう時だけはやけに仲が良いカブキと極楽。卍丸と絹が仲良く二人して突っ込むも、それだけで照れくさかったり嬉しかったりする。
 最後の決戦の日だというのに戦国卍丸達四人はいつもの朝を、そして久しぶりの朝を、こうして過ごした。この旅以来、最も過酷で最も長い一日。それを常態で迎えられた今の彼らに敵は無い。
45名無しさん@ピンキー:2007/05/01(火) 23:25:21 ID:EXk2jqjT
以上です。
総数を間違えていたのと、二十投稿をしてしまい申し訳ありませんでした。
46名無しさん@ピンキー:2007/05/04(金) 18:33:45 ID:jrhcKfuc
ほしゅ
47名無しさん@ピンキー:2007/05/05(土) 20:07:35 ID:su0AOjIN
age
48名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 02:45:45 ID:WfgeBwhz
age
49名無しさん@ピンキー:2007/05/23(水) 00:07:45 ID:8rjigSTH
ほしゅ
50名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 03:38:42 ID:dxAyvpX2
age
51名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 20:04:21 ID:6KE3PtqX
sage
52名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 21:21:13 ID:8Y1GADBN
sage
53名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 05:21:13 ID:uAG0BXBy
久遠と駒子、張政とハルカ、
どっちの方が需要があるでしょうか?
どちらへも転べるように手出し始めたところなので先は長いのですが。
54名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 13:21:02 ID:z0eyvGpJ
久遠と夜鳥子、と言ってみるテスト


選択肢がその二つなら久遠×駒子がよんでみたいっす
55久遠、そわそわする:2007/06/13(水) 00:51:29 ID:TcRnx2LJ
「……ふーっ」
 京都駅構内のベンチに腰を下ろして大きくため息をつく。久遠久が今感じているのは長旅の疲ればかりではない。先が思いやられるとかそういう不安を感じてのことでもなく、むしろ期待からだったりする。
 時は三月。受験も終わって無事に地元の大学へ進学も決まり、思う存分卒業旅行を楽しもうとここ京都にやってきた。奇しくもというか当然というべきか、修学旅行で同地を訪れた時とメンバーは同じである。
 ただ、皆心の中は穏やかではなかった点は前回と大きく異なっていた。まるで利害の一致した悪者達とでもいったような奇妙な連帯感がこの四人を繋いでいた。
 荒木乱雅はそれでも四人の中では一番微笑ましかった。「陽様に会える!」だけで真っ先に春の陽気に突入できる男だからだ。多分、目立った進展はしないだろうと他の三人は本人に内緒でそう思っている。
 三ツ橋初美はそもそも進学先が京都という事もあって今回は卒業旅行よりも引越しの側面の方が強い。勿論目的はそればかりではなく、チョイワルどころではすまない男と会うのも目的なのだが。
 久遠と桂木駒子の旅の目的は、実は本人達もよく分からない。卒業旅行に行くと決まって以来二人とも妙に浮かれた気分になってしまって、本音と建前の境界線が曖昧になってすらいる。
 いや、久遠の方は本音だけははっきりとしていた。
(……色んな意味で「卒業」旅行になればいいなぁ)
 という久遠にしてはちょっと珍しいニヤケ面を見れば、どういう下心があるかは少なくとも駒子には一発でバレてしまっていたに違いない。
 もっとも、幸いなことにその駒子は駅に着くなり久遠に荷物を預けてむやみやたらに広大な京都駅の散策に駆け出してしまったので、久遠は思う存分気を緩めて呆けた顔を満喫していたという訳である。
 多分駒子も気恥ずかしいんだろうと久遠には分かっていた。早々に意中の相手の所へ向かうために二人と別れた荒木と三ツ橋がいなくなった今、嫌でもこの後どうなるのか意識してしまうのだから。
 そう考えると相方を置いてけぼりにしていきなり土産物を物色しにいった駒子を責める事は出来ない。というか無理に引き止めたところで何だかがっついているみたいで情けないのでしなかった久遠であった。
「……隣、いいかな?」
 表情がキリリとデヘヘの狭間をだらしなく漂っていた久遠に、同じ位の年恰好の男が話しかけてきた。一目見ただけで南国系だとすぐに分かる雰囲気に包まれている。
「あ……はい、いいですよ」
 慌てて荷物を除けて男が座れるスペースを作る。何もここじゃなくても他に場所あるだろうに、などといった反感を思いもしなかったのが後々になっても久遠には不思議だった。
 間違いなく初対面の人物なのに物凄いシンパシーを感じている。それは相手も同じのようで、ちらちらと久遠を窺っていた。冷静に考えるとそれなりの体格の男達がベンチでもじもじしているのは不気味だ。
 話しかけないと(そんな訳は無いのだが)ますます変な雰囲気になってしまいそうなので話しかけようと決めた久遠だったが、先を越されて相手が名乗りだした。
「俺は張政美。あんまり語呂は良くないから呼びにくいだろうし、張政(ちょうせい)って呼んでくれ。で、あんたの名前は?」
56訪京:2007/06/13(水) 00:52:52 ID:TcRnx2LJ
 京都──。
 この国でも有数の歴史的名所に訪れたというのに、何が悲しくて俺は男なんかに話しかけてるんだろう?
 しかも恐ろしい事に、「張政って呼んでくれ」なんてこの口がほざきやがった。俺は生まれてこのかた、この名で呼ばれて得したことが”一度しか”ないというのに。

「旅に出たい……」
 同じ事を昔呟いたようなデジャビュを感じながら、深呼吸のように健康的な溜息がひとつ。
 大体こういうことを口にする時は現実逃避をしたい時と相場が決まっているものだが、俺も例外じゃない。これが口癖になっているくらいにここの所の俺はまいっていた。
 半年前の夏にハルカがこの現代へとやって来た。そこから今に至るまでのドタバタは、省く。……省かせてくれ。それくらい色々あったし、色々あるんだ。
 とにかく、ここのところの忙しさは、あれだけハルカのことを「抱きたい! 抱きてえ!!」とさかっていた俺を、「まぁチャンスはこれからいくらでもあるんだし」と落ち着きのある青年に変えていた。
 幸いというか不幸にもというか、今の俺は受験生でもある。
 ハルカがこちら側にいる以上必要性は随分減少したようなもんだけど、学問はあればあるに越した事はないのを知っているから疎かには出来ない。
 という事で、夏以来の俺の一日は受験勉強三割、ハルカの世話が四割、残り三割が日常生活であり、とても発情している暇はないのだ。
 「ハルカの世話が四割もあるなら、その時に」だって? まあ俺も一日の終わりに何度もそう思ったさ。けど、これがなかなか難しい。
 ハルカは古代から現代にやって来た旅行者だ。当然この時代の物事は何もかもが珍しい。そして、ハルカは好奇心旺盛でもある。
 となれば、だ。テレビを指して「張政! あの箱、中に人が入ってるの?」なんていうオヤクソクなものを始めとした、物心ついたころの子供のような質問攻めをハルカがしてくるのは想像できるだろう?
 どんどんと知識を吸収していくハルカの姿を見てると嬉しかったり楽しかったりするので苦にはならないが、俺も親父も母さんも、これで結構時間をつぶしているわけなのだ。
 そんな日々の中で、俺は何とか大学に合格する事が出来た。ランクは、まあ夏まで高校球児をやっていた事を考えればそこそこの大学なんじゃないかと自負している。何より学問を続ける場所が出来たのは幸いだ。
 で、落ち着いてみれば、すこし後ろを振り返ってみたくなり、自分の不甲斐なさに気付いてしまうわけですよ。(少なくともうちの)両親公認カップルだってのに、同棲もしてるのに、何てザマだよ! ……ってね。
 気付いてしまえば、後は早かった。言葉巧みに親父達とハルカを説得して、ここ京都に卒業旅行に来たわけだ。鼻の下が伸びるのは、SS(スーパースケベ)な俺じゃなくても自然な成り行きのはずだ。
 それなのに、何で俺はベンチに腰掛けてた、涼しげでいい感じの男に話しかけてるんだ? 生まれて初めて、俺はひょっとしてそっちの人だったのかと、自分を疑う羽目になった。
57名無しさん@ピンキー:2007/06/13(水) 00:57:29 ID:TcRnx2LJ
ちょっとしたお遊びで導入部はこうしてみました。
どっちに行くかはまだ決めてませんが。

以下は余談。
これまで二十行までと決めて区切ってたんですが、
三十行でも大丈夫のようですね
(「省略されました・・全てを読むにはここを押してください」と出るのは三十行以上の書き込み)。
という事で、以後はそうしようかなと思っています。
また上記の縛りで一行あたりが長かったので見づらかったかもしれませんが、
その辺はいかがでしょうか?
58名無しさん@ピンキー:2007/06/27(水) 11:47:16 ID:WmuhaXjy
保守
59名無しさん@ピンキー:2007/07/02(月) 00:46:22 ID:60Ezl9qs
夜鳥子3発売されたな。
それにしても筆の速いお人だ。
60名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 01:52:56 ID:xgr9UTTO
>夜鳥子3
「やられた!」とか「でもこれで思う存分出来る」っていう印象w
61名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 00:12:57 ID:VUszqZ9V
温泉入りすぎだよなw
舞エロいよ舞
62名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 06:33:12 ID:nOYMvEVm
風呂以外でも露出しまくりだしな。
ストリーキング陰陽師めw
63名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 18:32:17 ID:rPyTkhDe
やっぱ玉虎は邪魔なのなとw
つか百爺の方が邪魔だろうにw
64名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 17:08:27 ID:OmMjcxWa
ほっしゅほっしゅ
65名無しさん@ピンキー
保守