ヤンデレの小説を書こう!Part5

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1名無しさん@ピンキー
ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。

○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど)
○ぶつ切りでの作品投下もアリ。

■ヤンデレとは?
 ・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。
  →(別名:黒化、黒姫化など)
 ・ヒロインは、ライバルがいてもいなくても主人公を思っていくうちに少しずつだが確実に病んでいく。
 ・トラウマ・精神の不安定さから覚醒することもある。

■関連サイト
ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫
http://yandere.web.fc2.com/
■前スレ
ヤンデレの小説を書こう!Part4
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1172332198/

■お約束
 ・sage進行でお願いします。
 ・荒らしはスルーしましょう。
  削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
  削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。

■投稿のお約束
 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
 ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。
22get:2007/03/20(火) 13:31:15 ID:HOChU6A9
>>1
乙。
3名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 13:42:35 ID:Tx1KgVJI
>>1
お憑かれ
4名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 14:01:22 ID:XjUBHhrl
>>1
乙彼。
5名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 15:30:25 ID:UkbVlw2v
>>1
乙華麗。
6名無しさん@ピンキー:2007/03/21(水) 02:36:36 ID:OBj5RVO0
>>1大津カレー
7名無しさん@ピンキー:2007/03/21(水) 08:37:09 ID:MrQwIGlG
>>1

そういや、地獄堂霊界通信っていう子供向けホラー本の中に、
男への執心から怨霊となった女の話が合ったけど、最後にいい言葉があったのを思い出す。

なんか、男にはここまで自分を思い続けて女が狂ったなら、それを受け止めてやる必要がある。
みたいな感じだったなぁ。よく覚えてないけど。
8慎@携帯 ◆lPjs68q5PU :2007/03/21(水) 09:37:58 ID:GKH1kr/a
>>1乙♪
>>7
ある男が夜道を一人歩いていた。すると突然一人の女が男にぶつかってきた。その手には包丁。
女は男を狂おしい程に愛していた。が、それ故不安でもあった。いつか他の女に男を取られるのではないかと。
「これでもう他の女に取られることは…」女がぽつりと言う。それを聞いた男は「とうとう来たか」と思った。
男はよくわかっていた。女が自分のことを狂おしい程に愛していたことを。そんな彼女のことだ、いつかこんな行動に出るとは思っていた。
むしろ俺が望んでいた結果かもしれないな、とも思った。いつも周りからすれば甲斐性なしにみられるようなこの俺を奇特なことに一途に愛してくれた女のことをようやく受けとめられるチャンス…そう考えたからだ。
男は痛みに歪む顔を笑顔にかえて、「ごめんな、不安な気持ちにさせて…お前のこと受けとめきれない駄目な男で…でもようやくお前のこと受けとめられるよ…ごめんな、こんな最後の最後で…」と言い残して…そして崩れた。

こうですか、わかりません><
9名無しさん@ピンキー:2007/03/21(水) 11:11:32 ID:rKpbPAHa
じゃあ、俺も本の話を。

稲川淳二の怪談で「緑の館」っていうのがあった。

屋敷の跡取り息子にはきれいな嫁がいた。

嫁が病に倒れる。死ぬ間際に言った言葉は、
「私が死んでも他の女房をもらっちゃだめだよ。そしたら、あんたもその女も殺してやる。
 あんたの女房は、私だけなんだから」

夫はその言葉に誓いを立てる。そして、女房が死ぬ。

しかし一年後、さみしくなった夫は再婚する。

婚礼の儀が行われた夜に、死んだ女房の霊がでる。
新しい女房の首がねじ切られて(以下略)。

夫は殺されまいと必死に対策を練るが、脇が甘くて足をねじ切られ(以下略)。


ホラー本はヤンデレヒロインが多いぞ。
というより、ヤンデレがホラー系ヒロインなのかも。
10名無しさん@ピンキー:2007/03/21(水) 11:31:14 ID:TJoiUQVn
前スレは容量から作品投下出来ないだろうから雑談は前スレで
11名無しさん@ピンキー:2007/03/21(水) 13:17:07 ID:MrQwIGlG
>>8
微妙にちげぇwww

ようするに、単純に相手の恋心を受け入れろってんだとおもうよ。
最後の怨霊倒した後の説教シーンだけどね。
12赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/22(木) 00:03:40 ID:hJFrsf6U
お久しぶりです。投下します
13赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/22(木) 00:04:36 ID:hJFrsf6U
 えへへへへ。
 そんな低い笑い声が上の階から聞こえている。
 ここは二十八歳元引きこもりの榛原よづりの高級住宅だ。広いリビングに広い台所。俺の実家よりでかいんじゃないかと思う。こんなところにあいつは独りで住んでるのか?
 榛原よづりを助け起こした後、俺が学校へ行く準備を命ずるとよづりは素直に頷いて、自室のある二階へと鼻歌を歌いながら上がっていった。
 さっきまであんなに落ち込んでいたくせに、もう上機嫌になっている。猫か、こいつは。
 今、上でヤツはあの縁起の悪い黒い服からちゃんと学校指定のブレザーにでも着替えているのだろう。しかし、二十八歳の学生ブレザーか……。なんか想像つかん。
 そんなことを考えつつ、俺は散乱した一階で、連絡してそのまま姿を消していた委員長を探していた。
 よづりを宥めるので一瞬だけ忘れていたが、元々ここに来た目的は委員長を助けるためだったんだ。
 いま委員長はどこに居るのだろう。携帯電話で委員長の番号を押してみると、台所からサトミタダシのあの音楽が聞こえた。うわぁ、委員長の着メロだよ。
 委員長いわく、お父さんの好きな演歌歌手の曲が気に入ったので使っていると言い張っていたが……。残念ながら俺はこの曲の元ネタを知っていた。
 興味なさげにそう言い張る委員長を見て、俺は委員長でもゲームするんだなぁとちょっと親近感湧いた。そんなエピソード。
「台所に隠れるスペース無いだろ……」
 あったとして、冷蔵庫の中か? 無理だ無理。開いてたし、中見てるし。台所を覗くと、着メロのほかにブーンブーンとバイブが響くときの独特の音が一緒に流れている。
 テーブルの下を除くと、あった。委員長の携帯電話。
 携帯電話だけあっても意味無いんだよ。どうやらドサクサの最中に落としたようだ。俺は自分の携帯の緑ボタンを押して、止める。委員長のピンクの携帯電話が音をとめた。
 俺はそれを拾い上げる。この携帯電話の持ち主はいまどこにいるんだろう。
 玄関に委員長のものらしき靴はあった。中に居るのは間違いない……いや、委員長が裸足で逃げた可能性もあるな。
 くそぉ。
 台所、和室、風呂場、すべて見て回る。……隠れるところ、逃げ込むところ……。俺だったらよづりが刃物持って襲ってきたとしたらどこに隠れるだろうか。
 一階にはいないのかな? じゃあ二階か? しかし、二階にはよづりがいるし。まぁでも一応見てみるか。廊下を歩いて、二階への階段を昇ろうとした戻ったところで、
「ん?」
 廊下の奥にあるドア。小さな摺りガラスの窓がついていて、太陽光の明かりが漏れていた。トイレか。
 俺はちょっと気になって近づいてみる。よく見ると、トイレのドアノブの先にある小窓が赤くなっていた。誰か居る。家の者ではないはずだ。ではトイレに隠れているのは……。
 こんこん。
 軽くノックしてみる。返事は無い。
 しかし、人の気配はある。もう一度、静かにノックをする。何故か、子供の頃親戚の家でやったファミコンソフトのグーニーズを思い出した。
 ドアに顔を寄せる、もしかしたら怯えていて返事ができないのかもしれない。俺は小声で委員長を呼んでみた。
「いいんちょうー?」
「………森本君?」
 ようやく、聞こえた委員長の声はとてもか細い。怯えて怯えて、ついにどうしようもなくなったような。そんな感情の最後に出したような声だ。
「生きてる?」
「……なんとか」
 俺の小さいボケにも大して突っ込んでくれない。よづりはいったい何をしたんだ?
「そこに、榛原さんはいない?」
 ようやく俺という仲間に話しかけられたせいか、委員長は徐々に声の調子をとりもどしていく。しかし、口調によづりを怯えるような感情が残っている。
 俺が「いないよ」と言うと、ドアの向こうで大きな大きな安堵の息を吐く音が聞こえた。はぁぁぁぁという空気が震える音。
 そして、トイレのドアノブの赤いロック表示がガチャリとまわり、青へと変わる。そして、ゆっくりとドアが開いていき……。
「……本当に森本君?」
 ちいさなドアの隙間から、委員長の目が覗く。その瞳が俺を捉えた。俺はどんな表情で迎えればいいのか分からず、とりあえず普通にやぁと朝挨拶するように右手を上げてみた。
 委員長の目が大きく丸くなった。ドアの外に居るのが本当に俺だとわかると、委員長は急いでトイレのドアを開いた。そして大きく飛び出すと、、
「森本くぅん!!」
 ……俺の胸へ飛び込んできた。
 へっ!? 委員長の柔らかくてほそい体の感触がぼふりと俺の胸元に抱かれるように当たる。そのまま俺は押し倒されそうになるが、足の力で何とかその体を胸で留めた。
「ど、どうしたんだよ、委員長」
14真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/22(木) 00:05:40 ID:hJFrsf6U
 俺が声をかけると、途端委員長の体は脱力したようにへにゃりと床に引っ張られる。
「わっと!」
崩れそうになった体を俺は両腕で支えた。委員長のわきの下に腕を挟みいれて、きちんと立たせる。
「だ、大丈夫か? 委員長」
「……よ、よかったぁ……こ、こわくて、こわくて……森本君の顔見たら、安心しちゃって………」
 そう言う委員長の顔は、普段のキリリとした強情な表情とはまったく違う。ハリウッド映画の化け物に襲われたヒロインのような、とても弱弱しくて危なげで不安定な、怖がる女の子の顔だった。
 その表情に俺は少しだけ、胸がきゅんとなる。なんつーか、委員長でもこんな顔するんだ……という新鮮さ。うわぁ、めちゃくちゃベタだな。俺。
「安心しろ。もう大丈夫だ」
「……う、うん。……大丈夫、大丈夫だよね、ねえ、ねぇ………え、え、えぐ、えぐっ」
 俺の言葉に安堵したのか緩んだ顔の委員長はどんどん言葉尻が弱まっていくと。嗚咽を混じらせて、
「ええ、えぐっ、えぐっ、えぐぅ」
 静かに、泣いた。
 ……俺の胸で。涙をぽろぽろ流して。安堵の涙。ぽつりぽつりと、俺の制服を濡らす。
 よっぽどよづりに追われたのが怖かったのだろうか。それだけじゃないな。真面目一本で芯が頭の先から尻尾まで通っている委員長にとって、よづりのようなまったく芯が通っておらず、行動も思考も混濁した意味不明な相手と対峙したのは初めてだったのかもしれない。
 相手の意識が読めないという恐怖。それがよづりが暴れだした時の身体的な恐怖とあいまって、委員長にかつて無いほどの恐怖を襲わせたのかもしれない。
 よづりがどんな風に暴れたのかはこの家の惨状を見るしかないし全て俺の想像だよ? しかし、そんな想像を俺にさせてしまうほど委員長の姿はか弱かった。
 そのままえぐえぐと泣く委員長を俺は宥めるように彼女の髪の毛を軽く撫でた。細くて綺麗な髪質。俺が手のひらをスライドさせるごとに委員長のおさげが揺れる。
 しかし逆に、心の奥では俺はこんな女の子にいままで指図されていたのか……と妙な感情も浮かんでくる。
 まてまて、なんで俺はそこまで冷静なんだよ! ちょっと前の俺は女の子に抱きつかれたら確実に真っ赤になって慌ててただろ! 酔っ払った鈴森さんに抱きつかれた時なんて動けなくなって鈴森さんのリバースを避けきれず顔面からうけちゃったぐらいだぞ!?
 泣いている委員長を宥めるように彼女の髪の毛を撫でつつ、俺の頭の中では二つの意味で苦い思い出が再生されていた。
 と、そのとき。
「かずくぅぅぅぅぅん♪♪」
 二階にあるはずの家の主の部屋(多分)の引き戸が、ガラリガラリと勢いよく開かれる音と共に、全ての幸福を詰め込んだような甲高い声が家中に響いた。
「かずくんかずきゅぅぅぅん♪♪」
 猫なで声とも違う、媚びて媚びて媚びに媚びて媚びすぎるほどの甘ったるい響き。その声がドスドスドスという階段を勢いよく下りる音と共に抱き合う俺らの耳に届いた。
「……っ!」
 無言で委員長は肩をこわばらす。
 それを見て、俺はこの状況のマズさに気付いた。
「やべぇ!」
 トイレの前で、抱き合う二人。せっかく機嫌を治したよづりにこの姿を見られたなら、こんどは家の大黒柱(あるのか知らんが)を粉々にするほど暴走して、高級住宅を一瞬にして築80年のボロ家にしてしまう程暴れるかもしれない。
「かずきゅんかずきゅぅぅん♪♪ きゅんきゅん〜♪♪」
 二十八歳がきゅんきゅん言うんじゃねぇ! さっき俺言ったけど。
 サキュバスのような甘い甘い悪魔の声が近づいてくる。階段を下りて、俺に向かってくる!
 よづりに応対していて、俺は判断能力が確実に上がっていた。
「わりぃ、委員長! ちょっとまた隠れててくれ!」
「きゃあ!」
 抱きかかえていた委員長をむりやり引き剥がすと、開いていたトイレのドアを開け、委員長を元のトイレの中へ押し込んだ。姿をもう一度隠させる。
「も、森本くん、いったい……」
「委員長! 少し静かにしてて!」
 洋式トイレだったトイレの便器に委員長は腰を落として座った格好。突然のことに口を開こうとする委員長を俺は全てを言わせず、俺はトイレのドアを勢いよく閉めた。
 かなり、でかい声で会話をしてたが、よづりに聞こえてなかっただろうか。多分、あの女の性格からして大丈夫だとは思うが。
「かずきゅぅぅぅん♪♪」
「いてぇ!」
15真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/22(木) 00:06:36 ID:hJFrsf6U
 背後からの衝撃! 甘い声と共に俺の背中によづりが飛び込んできたのだ。
背中にふよんと、柔らかくあたる女の人特有の感触が伝わる。大きなクッションに俺は一瞬だけ意識がいやらしいほうに揺らいだ。その次の瞬間、なんと俺の首元にしっかりとよづりの腕がまきついていたのだった。
 今日は委員長に飛びつかれて、よづりに飛びつかれて、よく飛びつかれる日だな。オイ。そんなことを考えつつも、がっちりと閉められた首元。ちょいと力を入れればチョークスリーパーである。確実に死ねるな。
 ぐいっと、俺の横からよづりの横顔が現れた。
「かずきゅんかずきゅんっ♪♪」
 よづりは嬉しそうな声で俺の頬にキスの雨を降らせていた。ちゅっちゅっちゅっとついばむような感触がくすぐったくてこっぱずかしい。俺の頬が紅潮していくのがすぐにわかる。
愛情表現のようだがこれはいくらなんでもクラスメイトの域を超えているだろ! 俺が引き剥がそうとするが、かまわずによづりはキスを続けた。
小さな吸音が耳元で響いている。うわぁ、キスは憧れのものなのに、コイツのだと妙に変なことを考えちまう。
 よづりはようやく気が済んだのか最後に、
「ん〜〜っっ。ちゅっ」
 大きく頬を吸い込んだキスをすると、腕をはずして。俺から離れた。
俺は跡になってないかと心配で頬を指でなぞる。上書きされる心配は無いが、誰かに見られたら恥ずかしさで腹上死もいいとこだ。幸いにも吸った力は大して強くなかったようで、触った限りでは跡はない。
口紅だったら後で委員長にでも化粧落としを借りなければ……。
「えへへ、えへへへへ」
 よづりと向き合うと、よづりは相変わらず何も考えていない純粋すぎるほどの満面の笑みで俺を見つめていた。
「ねぇねぇ。見て見て。あたしの制服姿! 着たの一年振りなんだよ! ねぇねぇ! ねぇ!」
「お、おう」
 うるせぇよ! 構われたがりか! あ、構われたがりだった。
よづりはブレザーの制服を引っ張るように俺に見せつける。
うちの学校の制服は男女と共通の青色のブレザーで胸元にはプラスチックの名札がついている。男子は無地の黒ズボン。女子はひだのついたスカート。シャツの胸元には男子はネクタイ。女子はリボンがつき、ネクタイとリボンの色は学年ごとに違っている。
一年生は黄、二年生が赤、三年生が紺である。なんで、学年が上がるごとに地味になっていくかは永遠の謎だ。
 よづりは俺と同学年なので、赤色のリボンをつけていた。結び目は多少捻じ曲がっているが、一年ぶりに着たのだから慣れていないのも当然か。
「えへへ、似合う?」
 首をかしげて訊いてくるよづりに、俺はこくこくと頷くしかなかった。つーか、この会話の流れじゃ頷くしかないって。
 ただ思う。よづりの制服姿は正直委員長と比べると確実に浮いている。
 そりゃそうだ。二十八歳という年齢で大人の体つきのよづりには、なんというか……主婦が無理してきてみちゃいましたという感覚がしてならない。
いや、それすらも無いな。主婦にはありえない長い長い黒髪がよづりの浮いた状態をさらに際立てている。リングの貞子みたいな髪の毛だからな、普通の状態でも怖さが際立ってんのに……。
「えへへへ。かずくんに似合うって言われた。うれしいうれしい」
「ああ」
「じゃあ明日も制服で学校に行くことにするね!」
 当たり前だ。
「えへへ。さぁ。かずくん。早く学校に行こう?」
 こいつは、陽と陰の差が激しすぎる。さっきまで死ぬんじゃないかと思うほど落ち込んで泣きじゃくってたクセに、今は天真爛漫という言葉が似合うほど陽気だ。天真爛漫すぎて言動が幼児化している。
 だいいちあんだけ煽っていた酒は? まさかもうアルコールを分解したのか!? 日本酒だぞオイ!? 未成年だから甘酒しか飲んだこと無いけどさ。
 よづりは俺の手を掴んで引っ張った。まるで遊園地に行くのが楽しみで仕方が無い幼稚園児のようだった。
「あ、ちょっと待てくれないか。よづり」
「ん、なぁに? かずくん」
 学生鞄を持って玄関へ引っ張り靴も履かずに外へ出ようとするよづりを引き留める。よづりはこちらを向いてむぅ?と首をかしげた。なんだか仕草が猫みたいだ。黒猫だな、確実に。
「トイレ貸してくれないか?」
「おトイレ?」
 このまま出るわけには行かない。トイレに委員長が隠れたままだ。
16真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/22(木) 00:08:06 ID:hJFrsf6U
「うん。トイレどこだ?」
「そこ。一緒についてってあげようか? かずくん」
「いや、いい。玄関で待っててくれ」
「うん。すぐ来てね」
 珍しく、よづりは素直に頷いた。俺は靴下で玄関に出ているよづりに靴を履かせるように促すと、彼女はいそいそと靴べらを使って革靴を履き始めた。きついのか、うんうん言っている。
 その間に、俺はトイレの前まで走って来た。玄関からトイレのドアは見えないため、よづりに気付かれずコンタクトは取れるはずだ。よかった、ヤツが本当についてこなくて。
「いいんちょぉー……」
 突然、押し込めたことを怒ってないかな……。ドアごしになるべく小声で呼んでみる。
「……なに?」
 怒っているのかどうか微妙な間で返事が返ってきた。トーンは低いが、はっきりとした声だ。くそ、表情が見えないし俺が鈍感なせいで委員長の感情が想像できない。
「とりあえず、いいか。お前が出てくるとまたややこしくなるかもしれないから……。俺らが出てってからしばらくしてそこから逃げろ」
「この家の鍵はどうするわけ?」
「開けっ放しでいいだろ」
「泥棒が入るわよ」
「もう、泥棒が入ったみたいにグチャクチャになってんだから、逆にはいらねぇよ」
「まあ……そうよね」
「じゃあ、いまからよづりを学校に連れて行くから。お前も後から来いよ!」
「ねぇ、あたしと榛原さんが教室で鉢合わせたら……もしかして危ない?」
 委員長の語尾が弱弱しくなっていく。彼女はある意味俺の知らないよづり(暴走モードな)を知っている。委員長はよづりに対して怯えているのだ。
 しかし、俺はあまり大事にはならないと確信していた。
「大丈夫。俺がなんとかするよ」
「なんとかって……」
「もし、よづりが暴れてお前に危害を与えようとしたら、全力で守ってやる」
「森本君……」
 そろそろ、戻らないとマズイかな。
 なぜなら、玄関から聞こえるよづりの鼻歌がだんだん不機嫌なメロディーと変化してきているのだ。ヤツには忍耐が無いらしい。
「そろそろ行って来る。あとでな」
「……うん」
 俺は委員長のうなずく声を聞くと、慌てて玄関へ戻った。玄関では制服姿でカバンを持ったよづりが俺のほうを見て、くんくん鼻を鳴らしながら待ち構えていた。まるで散歩を待っている犬のようだだ。
 さっきは猫で、今は犬。ワンニャンだ。ワンニャン。
「かずくん! いこいこいこう!」
 よづりは俺の手をもう一度掴んで、しっかりと指を絡めた。いわゆる恋人つなぎだ。
 そのまま俺を引っ張ると、玄関を飛び出した。幸せそうに笑って俺の手を引くよづりの顔。満面の笑み。天真爛漫。

 そうだ。あまりにも天真爛漫……すぎる。

「かずくんと一緒のクラスなんだよねぇ。えへへ、昼休みは一緒にお弁当食べようね。放課後は一緒に帰ろうね。ずうぅっと一緒だもんねぇ。えへへへへ、えへへ、えへ、えへへへへ」
俺はよづりが元々どんなヤツだったのかは知らない。もともとの性格も知らない。もしかしたら、引きこもる前は普通のOLでバリバリと働いていたキャリアウーマンだったのかもしれない。
だが、わかる。この天真爛漫さが確実に後天的なものだ。後からできた天真爛漫。
 さらに、この天真爛漫の根源は、俺への執着。いや、依存といったほうが正解か。俺への依存心が彼女をそこまで天真爛漫にさせている。
 じゃなきゃあ、迎えに委員長が来ただけであんなに暴れていたのに、俺が着たとたんに大人しくなって俺に懐くのは異常だろ?
 
 じゃあ、……解決すべき問題はここなのかもしれない。
 彼女の依存心を捨て去ることが、よづりを更正させる一番の近道だろうな。

 ただ、今は彼女を家から出して学校に行かせることが大事だ。今は、今だけは、俺に依存させてあげよう。そして少しづつ、離していけばいい。

「さぁ、かずくん。行こ行こ!」




 この時の俺は、まだ物事を楽観していた。まだ甘く考えていた。
 まだ、覚悟を決めていなかったのだ。

 覚悟したと思い込んで、頭が働かせ彼女を助けようとするヒーローになった自分に一人で勝手に酔いしれていた。
 それが彼女を、よづりを傷つける結果になるとわかっていたはずなのに。
(続く)
17赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/22(木) 00:08:42 ID:hJFrsf6U
お久しぶりです。赤いパパです。
忘れている方いらっしゃいますでしょうか。真夜中のよづり第四話です。
今回はインターバルを挟んだ形で短めです。更新ペースは本当に遅いですが、なんとか続けていただきます。
文章のクセなのか、いつもわかりづらいところで楽屋ネタや版権ネタを使ってしまいます。誰か気付く人はいるのか
18名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 00:58:13 ID:/1dsAWpo
よづりキテルーーーーーーー!!!
相変わらずよづりの異常な不気味さがリアルに伝わってきて怖いぜ!
あと委員長は普通に萌えキャラなのもグッドですよ。

最後の形が分かっているだけにこの後の展開が凄い気になります。マイペースでも最後まで書き終えてください!応援してます!
19名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 01:30:40 ID:2dhwRX7h
よづりだーーー!!不気味可愛いよー!しかも制服キタ━(゚д゚)━!!
心配だったんだよ…委員長無事で良かった!
赤いパパ氏のペースでがんがって下さい!続き待ってます
20名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 02:59:14 ID:AXBzyLTr
夜釣りキター超GJ!!
ヤンが楽しみだ
21名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 07:57:05 ID:U6sCMXja
赤いパパさんGJです!!よづりのキャラが気に入ってるだけに凄い楽しみ。

>>18
しかし冒頭の心中も、まだ何かしらありそうな気がする。
二人して死ぬはずなのに、「俺たちは死のうとしていた」ではなく、
「榛原よづりは死のうとしていた」って片方のみだし。
22名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 11:51:05 ID:5ArBZU46
よづりのダークな感じは天然だったのか?
じゃあ、ここからまた黒くなるのか?ワクテカするねぇ
23 ◆dkVeUrgrhA :2007/03/22(木) 21:12:51 ID:yOjs1jOF
パパ様・・・GJでした!おばはんはいらないので委員長をください!生きててよかった・・・w

とりあえずおにいたん2最終話です。

警告:以下の言葉に嫌悪感がある方はあぼーん願います。
・近親相姦
・修羅場
・フタナリ
・ロリペド
・獣姦
24新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA :2007/03/22(木) 21:13:56 ID:yOjs1jOF
 ”おねえたんはつかれてるのでつよ”
 ”つかれてるのかなぁ・・・”
 ”つとれつ(ストレス)でつか?”
 ”うん・・・うまいこといかないの・・・”
 ”どうちて、でつか?おみちぇ、はやらないのでつか?”
 ”ねぇ、かぁるちゃん、きいて・・・”
 ”あい”
 ”えみるね・・・おにいちゃんがすきなの・・・”
 ”ゆういちおにいたん、でつか?”
 ”そうなの・・・むかしから、ずっと、ずっと・・・”
 ”どうちてでつか?『こくはく』ちて、ないのでつか?”
 ”じつのきょうだいだもん、けっこん、できないもん・・・それだけならいいんだけど・・・”
 ”まだあるのでつか?”
 ”おにいちゃん、がっこうのせんぱいとくっついたの・・・”
 ”てんぱい・・・みたとおねえたんでつか?”
 ”そう・・・そいつ、えみるのたいせつなもの・・・まえも、うしろも、はじめてをぜんぶもっていった・・・”
 ”それだけであきたらず、おにいちゃんまでもっていったの・・・くやしいの・・・”
 ”おかちいでつね”
 ”え?”
 ”かぁるは、ゆういちおにいたんと、みたとおねえたんが、きょうだいとききまちたが?”
 ”そうなの?そうよね。おにいちゃんとえみるが、きょうだいなわけないよね”
 ”こんなにすきあってるふたりが、きょうだいなわけないよね”
 ”おねえたんは、あくむをみてるのでつよ”
 ”どうしよう・・・どうしたらこのゆめ、さめるとおもう?”
 ”ゆめは、ちゃめるでつ。もうつぐ、ちゃめまつよ?”
 ”ほんと?”
 ”ほんとでつ。ゆういちおにいたんが、えみるおねえたんのへやにいるとき”
 ”いるとき?”
 ”あい。けどとれだけぢゃだめでつ”
 ”え?”
 ”いるときに、おみちぇの『ちーえむ』がながれるとき、ゆめはちゃめるでつ”
 ”おにいちゃんがいるとき、しーえむがながれたら・・・うん!えみる、そのときまでまつね”
 ”あい。ゆめからちゃめたら、ちゃんと、きていぢぢつ、つくるでつよ”
 ”きてい、じじつ?”
 ”でないと、みたとおねえたんに、また、とられまつよ?”
 ”そうだね。あのおんなに、みせつけてやらないとね”
 ”あい!きていぢぢつにひつようなものは、おねえたんのかばんにいれておきまつでつ”
 ”そこまでしてくれるの?!ありがとう、かぁるちゃん!!”
 ”ではおねえたん、もうねてくだたい。おねえたんはおつかれなのでつから”
 ”うん”
 ”かぁるが、5かい、てをならちたら、ぐっつり、ねむれるのでつよ”
 ”うん”
 ”(ぽん)いっかぁい、(ぽん)にかぁい、(ぽん)ちゃんかい、(ぽん)よんかい、(ぽん)ごかい!”
 ”・・・・・・”
 ”おやつみなたい、おねえたん・・・”
25新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA :2007/03/22(木) 21:14:38 ID:yOjs1jOF
「おにいちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!」
 「えみる、なにする、おい、やめろ!」

 画面の向こうでは耕治、あずさ、美衣奈が驚きの表情をする。とき子だけは動じずニコニコ。
 「え、なに?笑留さん、なにしてるの?」
 「うそだろ?!笑留さん、店長組み伏せちゃった!」
 「え、笑留さん、かばんから手錠出しました!」
 「手錠って、まさか・・・あ〜!店長手錠でベッドに縛られちゃった!」
 「か・・・薫ちゃん・・・まさか?!」
 「あい!」
 薫がエッヘンのポーズを取る。
 「ちゃいみんぢゅつ、でつ♪」
 「催眠術〜?!」
 驚きの声を上げる3人。
 「まづね、えみるおねえたんは、ゆういちてんちょうたんがつきだったんでつ」
 「そうだったんだ・・・」
 納得する耕治。一方あずさはこういう。
 「けどあの二人は兄妹だよね。で、あきらめた。店長は、美里マネージャーと結婚した」
 「とこでつ。どうも、えみるおねえたんの『どーてー』と『ちょぢょ』は、みたとおねえたんがうばったみたいでつ」
 「げ・・・美里さんもそういう趣味だったんだ・・・」
 「そういえば、『お姉ちゃんがえみるをこんなエッチな子にしたんでしょうが』って、いってましたね・・・」
 記憶をたどるように、耕治の意見に美衣奈が相槌を打つ。
 「だからおねえたんに、『ぢつはいまのちぇかいはゆめで、ほんとはおにいたんとはぢつのきょうだいではない』ってふきこんだんでつ」
 「ちょ、ちょ、ちょ?あのふたりは、間違いなく兄妹なのよ?信じるわけじゃない?」
 あずさが当たり前の疑問を薫にぶつける。
 「あまいでつ。えみるおねえたんは、とんなちぇかい(そんな世界)がほちいのでつ。だから、ちんぢるとおもいまつ」
 「・・・!」
 「『あんぢ』でつ。ゆういちおにいたんがいるときに、おみちぇのちーえむがながれると、ゆめからちゃめる(覚める)といったんでつ」
 「で、笑留さんは『夢から覚めて』、欲望のままに突っ走ってる・・・と」
 耕治が納得するように言う。
 「とうでつ。だめおちで、『きていぢぢつ(既成事実)』つくっておかないとだめだよ、ともいってまつ」
 「き、既成事実・・・」
 あまりに周到な準備に崩折れる3人。
 「では、ゆういちてんちょうたんの、ぎゃくれいぷのつづきをみるでつ」

 理由は分からない。自然と鞄に手が伸びた。中には手錠が二つ。誰が入れたかわからない。
 ・・・けどありがたく使わせてもらう。
 笑留は雄一に馬乗りになり、力任せに雄一の手首に手錠をかけ、さらにベッドの角の柱につないだ。これで雄一は大の字になる。
 「えみるさん?あのー、落ち着いてもらいませんか?」
 「どおして〜?おにいちゃん・・・あ、そうか、恋人同士だから雄一って読んでいいよね」
 「お、おい!」
 「恋人同士なんだから、エッチなことしてもいいよね?」
 笑留は鞄から今度はナイフ−それもコンバットナイフとよばれる厚みの刃を持つ小刀−を取り出し、乱暴に雄一のベルトを引きちぎる。
 「え、え、笑留!」
 「えっへっへっ、ぎゃく・れいぷ・ぷれぇぇい!!」
 「落ち着け!笑留!それヤバイって!!」
 「えへへ・・・笑留ね、おにいちゃんとの子供が5人ぐらい欲しいんだぁ〜」
 笑留は乱暴に・・・しかし雄一に怪我をさせないよう器用にズボンを切り裂いていく。そしてトランクスにも。
 数分で雄一の下半身は丸裸になる。
 「あわわわわわ・・・」
 「はぁはぁ・・・お兄ちゃんの、お、おちんちん・・・」
 熊が敵を威嚇するようなポーズをとったあと、笑留は雄一の一物をほおばった。
 「いやだ・・・お兄ちゃんの・・・汗と・・・おしっこと・・・せーえきと・・・あの・・・」
 一度口を離すと笑留は怒った表情をする。
 「美里の、あの女の臭いがするぅ!!」
 怒りを爆発させると雄一を咥える。
 「美里の!臭いも!愛液も!全部舐め取ってやる!全部!笑留の臭いにするんだからぁ!」
 
 
26新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA :2007/03/22(木) 21:15:39 ID:yOjs1jOF
 そうして笑留はフェラチオを開始する。
 ごぼ、ぐちゃ、ぐちゃ、べろ・・・
 「えみる、ちょっと、乱暴、痛い・・・」
 雄一の意見など聞かない。笑留は欲望のままに雄一の一物を口で犯す。
 なんだかんだ言っても、数分後には雄一の一物は直立してしまう。
 ぷはっ。
 息継ぎなのか笑留は再び口を離す。雄一のそれは天をつくようにそり立っていた。
 「やだ・・・どんなに舐めとっても、あの女の、臭いがするのぉぉぉぉぉ!!」
 怒りと泣きが入り混じった表情をして笑留が叫ぶ。
 「もういい!笑留の下の口で舐め取ってやる!」
 笑留はパンティだけ脱ぐと、強引に雄一の腰に自らの腰を下ろした。
 じゅる。
 既に洪水状態だった笑留の陰部は雄一の一物を抵抗なく受け入れる。
 「う、う、うそだろ?!え、笑留!!」
 「えへへへへ・・・ついに、ついにお兄ちゃんと繋がっちゃった・・・」
 そして笑留は自分で腰を動かし始めた。

 「ではちあげ(仕上げ)といきまつか」
 画面の向こうでは薫が自分の携帯を取り出し、どこかに電話をしだした。
 「薫ちゃん、誰に電話するのかしら?」
 「さ、さぁ?」
 
 樹元美里は家路を急いでいた。会議は1時間前に終わったが彼女は会議の整理と後片付けをしていたのだ。
 「ああ〜もう、帰るのが遅くなっちゃった・・・え?」
 コートのポケットの中、携帯が振動をしている。誰かからの電話だ。
 「だれだろ・・・雄一かな?」
 美里は携帯を取り出し発信者を確認する。
 「あれ?薫ちゃんだ・・・なんだろ?」

 ぴっ。
 「もしもし、薫ちゃん?」
 「み、みたとおねえたん!たいへんなのでつ!!」
 「ど、どうしたの?落ち着いて教えてくれる?」
 「あのね、いまね、えみるおねえたんと、ゆういちてんちょうたんと、おでんわちてたでつ」
 「うん、それで?」
 「それがね、おねえたんと、てんちょうたんが、けんかちだちたの」
 「えぇっ!」
 「みたとおねえたんちか、たよりになるちといないの。はやくかえってあげてくだたい!」
 「わ、わかったわ!」
 ぴっ

 「これでいいでつ」
 もはや言葉はなかった。とき子を除く3人はもはやただ呆然と画面を見るしかなかった。

 「おにいちゃんの、おにいちゃんのがいぃのぉ・・・」
 その後も笑留は腰を振り続けていた。股間の自らの一物をしごきつつ、体の中にある雄一の一物をむさぼる。
 「おい、笑留!やばいって、もうでる・・・」
 「えみる、子供は9人ぐらい欲しいなぁ〜それでね、子供たちだけで野球チームつくるの」
 「たのむ、正気になってくれぇ!て、で、で、でるぅぅぅぅ!!」
 ごぼぉっ!
 雄一にはそう聞こえたような気がした。
 「えへへへへ・・・おにいちゃんの、なかだし・・・」
 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁ・・・」
 笑留の股間から、白い粘液が零れ落ちた。笑留はそれを指ですくい上げると、悩ましげな笑顔でそれを舐めてみせる。
 「えへへへへ・・・おにいちゃんの、本気汁、にがくて、おいしい・・・」
 雄一は言葉を継がない。頭を抱えれるならそうしただろう。今雄一は、笑留から顔を背いてうめくだけであった。
 「今日はね、お兄ちゃんが、失神するまで、笑留の中を味あわせてあげるの・・・」
 そして笑留は2回目の『事』に及ぼうとしたとき。
 どごぉぉぉん! 乱暴にドアが開く音がした。笑留はドアのほうを向かず、ただ淡々と、こう言う。
 「何の用かしら・・・この、泥棒猫!」
27新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA :2007/03/22(木) 21:17:03 ID:yOjs1jOF
 「えみるちゃん・・・ゆういち・・・あんたたち!なにしてんの?!」
 「恋人の営みに決まってるじゃない?泥棒猫の、美里さん?」
 「あ、あ、アンタのほうが泥棒猫じゃないの!おまけに、実の兄弟で!!」
 「なにいってんのよ!!アンタの方が、お兄ちゃんの妹じゃない!!」

 画面の向こう。
 「ちょ、ちょっと?!なんで美里さんのほうが妹になるわけ?」
 「えみるおねえたんのせかいでは、みたとおねえたんが、ゆういちてんちょうたんの、いもうとみたいでつね」
 「現実と夢が、まぜこぜになってますね・・・」

 「あんた・・・とりあえず、雄一からどきなさい!」
 「い・や!」
 美里はどこから取り出したのか、銘刀義流餓座旨(実際はただの鉈)を両手で構え、笑留に近づく。
 笑留も笑留で、ナイフを片手に持ちその刃を美里へ突き出す。
 「そっか・・・泥棒猫は殺さなきゃ何回でも盗むもんね・・・待っててお兄ちゃん、ちょっとこの泥棒猫始末してくるから」
 「雄一、ごめんね。アンタの妹、病みすぎてもう殺さなきゃ救えないわ」
 
 「き゛ぇや゛ぁぁぁぁぁ!」
 がぎぃぃぃぃ!!
 笑留は雄一から離れるや否や、上段からナイフを振り下ろした。すかさず鉈で受ける美里。
 両方の刃先から火花が出るのが、画面からでも確認できた。

 「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ・・・殺し合い、はじめちゃいましたよ・・・」
 さすがの事態に、青くなる美衣奈。隣のあずさも、さすがに顔色が青い。
 「ど、どうしよう耕治ぃ!!」
 「って、どうすんだよ?!」
 おろおろする3人を尻目に、薫は涼しい顔で答える。
 「ほっといたらいいでつ。ゆっくり、『りあるしゅらば』をけんぶつするでつ」
 「かおるちゃん」
 いままで、ずっとにこにこしながら事態を眺めていたとき子が、いきなり真剣な顔で薫のほうを見た。
 「なんでつか、まま?」
 「止めなさい」
 「え?」
 「あの二人を、止めなさいと、いったの」
 「なんででつか?とめるひつようは、ないでつ!」
 「かおる?あの二人が、いつ、貴方の命が欲しいといいましたか?」
 「うぅ・・・」
 「何か悪いことをしたのですか?少なくとも、薫ちゃんや、私よりはしてないはずですよ?」
 「うぅ・・・」
 「かおるちゃん?」
 薫はしばらく押し黙っていたが、やがて口を開く。
 「おにいたん・・・けいちゃつを、よんでくだたい。えみるおねえたんは、ひとりにしてしばらくおちつかせれば、もとにもどるでつ・・・」
 画面の向こうでは、笑留と美里が、文字通りの『剣戟』を繰り返していた・・・。
28新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA :2007/03/22(木) 21:17:40 ID:yOjs1jOF
〜えぴろーぐ〜

 がちぃっ!
 「この泥棒猫!いい加減死になさいよぉ!」
 「そっちこそ!この性欲魔人!ポリバケツ!ブラックホール!」
 「いったなぁぁぁぁぁ!」

 「あ〜はっはっはっはっ」
 「いや〜本物の修羅場って、迫力あるわぁ〜!」
 「あ、あの・・・えみるおねえたん・・・?」
 数日後、禾森家。今度は美里まで交えての乱交パーティーになっていた。
 現在の状況。
 テレビの前に笑留と美里。薫は笑留の股間に刺さっている。
 美里の股間にはピオンがいて、一心不乱にピオンの股間を舐めている。
 二人の後ろではとき子が耕治の上に馬乗りになって耕治の股間を味わっている。
 ちなみに耕治自身は既に白目向いて失神。
 あずさと美衣奈は裸のまま美里たちの後ろでテレビを観賞中。
 そのテレビ画面にはつい先日の修羅場というか殺し合いの動画が流れていた。
 「これ・・・えみるおねえたんたちなんでつけど・・・?」
 「だからおもしろいんじゃないの、ねー?」
 「ねー!そんな口答えする子は、こうだ!」
 笑留は股間の薫を突き上げる動作をする。縦に豪快に揺れる薫。
 「えみるおねえたん・・・きもちいいけど、いたいでつ・・・」
 「なにいってんの?あたしたちなんか、死に掛かったんだもん、ねー、おねえちゃん!」
 「ねー!」
 そういって笑う美里と笑留。しばらくして、美里はとある疑問を口にした。
 「ねぇ、薫ちゃん?あれって催眠術なのよね?すごいなぁ。本当に人を思うように動かせるんだ」
 「とんなわけないでつ」
 股間の快感に耐えつつ、薫が美里に説明する。
 「えみるおねえたんは、ゆういちてんちょうたんと、えっちちたいとおもってまちた。ちゃいみんぢゅつは、そのちぇなかを、おちただけでつ」
 「背中を押しただけ・・・それってさ・・・もしかして素面でも襲ってた可能性があるって事?」
 これは笑留の言葉。
 「ちかいみらい、ありえたとおもいまつ」
 「あは、あはははは・・・」
 力なく笑う笑留。今も思う。あれは、本当に、催眠術のせいだったんだろうか?自分の欲望が、外に出ただけだったのではないかと。
 「とういえば、みたとおねえたん?てんちょうたんは、どうちたのでつか?」
 「ん〜、これ、聞いてみる?」
 さっきから、美里はピオンに股間を舐めさせながら、イヤホンで何かを聞いていた。
 美里からイヤホンを借り、聞く薫。

29新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA :2007/03/22(木) 21:18:13 ID:yOjs1jOF
 「いやだ、店長、今日奥さんはどうするんですか?」
 「今日は友達のところに泊まって帰らないってさ。だからさ、これから二人で・・・」
 
 「ゆ・・・ゆういちてんちょうたん・・・」
 なんと雄一の体に盗聴器を忍び込ませていた。がっくりとなる薫。イヤホンを薫から取り上げ続きを聞く笑留。
 「・・・あれ、ちょ、ちょっと!このお兄ちゃんの相手って・・・」
 「さすがに笑留ちゃんは気がついたか〜」
 にやりと笑う美里。
 「そう。あの宿六の相手は2号店店員。あたしの可愛い子猫ちゃん♪」
 うれしそうに言う。笑留はイヤホンを外すと、元の機械とテレビのスピーカー端子をつないだ。テレビから店長たちの声が聞こえる。

 「じゃあ店長、あたし、いい店知ってるんですけど一緒に、どうですか?」
 「いいねぇ、一緒に行こう」
 「けどお願いがあるんです。そこにつくまで、店長さん、目隠しをしてもらえますか?」
 「ああ、いいとも。どこにつくか、楽しみだなぁ〜」

 ぶぅっ!美里意外全員噴き出す(失神中の耕治除く)。
 「あの、おねぇちゃん、ま、まさか・・・」
 「とき子さん?あと二人、お客さんがココに来ますがかまいませんか?」
 「あらあらまぁまぁ。どうぞおこしくださいな」
 「んふふっ」
 美里は忠実に自分の仕事をしているピオンの頭をなでた。
 「ピオンはえらいわね〜。まっててね。もうすぐ、ごほうびに、あなたのだぁ〜いすきな、アナル処女をあげますからね♪」

おちまい。
30新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA :2007/03/22(木) 21:20:37 ID:yOjs1jOF
終わった・・・
『催眠術で突然病化』をコンセプトに作ってたらこんなに長くなるとは思わんかった。
次はもっと「病み」をテーマに精進します。
とりあえず次回はおにいたん1のバッドエンド版、
そのあとプロットだけなら3つぐらいあるのでおいおい。
31名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 10:36:10 ID:U6qYWsDk
ロリエロ投下GJ!
やっとのヤンデレ展開がギャグとして片付けられてしまったのがスレ的にはちと惜しいかも。
バッドエンドものに期待。
32名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 12:21:35 ID:4xl6OPvM
会話が多いのはあまり好きじゃない
延々続くと、どうでもいい気分になってきます
33名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 21:19:04 ID:pFVTPDBh
>>32
それならあなたは読まなければいいんじゃないですか?
あなたの好みなど知ったことではありません。
34名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 21:29:46 ID:Am0zAZSp
あー……ちょっと言っていいかな。
>>33のようなSSへ向けた意見に対してレスをすると荒れるんだわ。
実際、お隣さんはそういうところがあった。

だから、感想レスに向けたレスは控えないか?正直、荒らしも煽りも御免だから。

あと>>32
もうちょっとオブラートに包んでくれ。
35名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 21:38:54 ID:U6qYWsDk
感想レスに対して反論レスするとスレが荒れる
反論レスという歯止めが無くなると感想レスが言いたい放題になる

なんというジレンマ……
3651 ◆dD8jXK7lpE :2007/03/23(金) 21:42:33 ID:1qNt958Q
まあ、なんというか。
書き手は全ての感想を真摯に受け止める覚悟があるから投下してるのであって、
あまり「そんな感想はおかしい!」というような話はしない方が嬉しいと思う。
37名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 21:44:04 ID:Am0zAZSp
自分で感想レスに対してレスをするなと言っておきながら、それを自ら実行してしまうとは……

なんというバカな俺……orz
スマヌみんな。
38名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 23:15:33 ID:d7UT3CFJ
>>35
>>37
前スレでトライデント氏のトリップ割れについて下さって有難う御座います。

ヤンデレスレの皆さんも新スレになったので、
既存の作家さんを語る書き込みには注意して下さい。
39 ◆dkVeUrgrhA :2007/03/23(金) 23:38:04 ID:79PH3+n7
>>32
俺的にははっきり言ってくれた方がうれしい。ありがとう、参考にするよ。

>>36、51様
代弁ありがとう。俺も同意見だ。

みんなー、まったりしようぜm(_ _)m
40名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 23:39:11 ID:QW15ZpWj
正直、あんまり読む気がしない
41名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 00:54:01 ID:Z6aG/rXQ
>>40
そんなら書けば?
42名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 01:11:27 ID:8BlPKAiA
>>41
お前マジで頭いいな!
43名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 02:25:50 ID:OORyAG+T
熟女ヤンデレはありますか?
無いなら脳内で。
44名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 02:36:06 ID:UPNMoHZL
wktk
45名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 06:32:12 ID:K7eLtHnR
>>43
そのほとばしるリビドーをプロットにして前スレに投下してみないか?
もしかしたら職人さんが書いてくれるかもしれないぞ。前例もあることだし。
46 ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/24(土) 14:27:44 ID:UIL5bFFq
上書き第10話後編、投下します。
選択肢1・すぐに携帯電話を確認する、のB-1ルートからです。

>保管庫管理人様
いつも更新お疲れ様です。
申し訳ありませんが、前回第10話として投下した分を「第10話前編」に修正してください。
ご迷惑をおかけしてすみません。
47 ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/24(土) 14:28:35 ID:UIL5bFFq
 俺は一目散に床に静かに横たわっている携帯電話の下へと駆け寄っていった。

 そもそも加奈が”急に”こんな事言い出すのは明らかにおかしい。
 何か『きっかけ』がなければ俺と目を合わさないなんて事はありえない。
 そう考えるならその『きっかけ』として最も怪しいのは、机の上にあったはずなのに、
 不自然にも今は床の上で沈黙を守っている携帯電話だ。
 加奈はその携帯電話の中の”何か”を見てこんな事言い出しているんだ。
 ならば今すべき事は真っ先にその中身を確認する事だ。
 俺と加奈の関係の脆さを思い知った今、僅かな溝ですら作ってはならないのだ。
 加奈が知っていて俺が知らない、そういった状況から勘違いが生まれ崩れていくのだ。
 二度とそんな事は御免だ。

 その一心で素早く携帯電話を掴み取り、俺はその中身を確認した。
 その『中身』の内容を読んだ瞬間………
「………は、はは…」
 いつも俺の行動の邪魔をしていた理性の壁が崩壊して、
 心の奥底からかつて味わった事がない程”気持ちいいもの”が流れ込んできた。
 それが俺の思考回路を急速に早め、やがてある”一つの結論”に至らしめた。
 その『答え』を理解した途端、心が痺れた。
「はっ、はははははははははは!!! あーっ! ははは!!!」
 そして笑いが腹の底から込み上げてきた。
 抑えようと思っても抑えられない程愉快な気分になってくる。
 何時間も考えていた問題の答えを解き明かしそれが正解だった時のような、
 全身全霊で喜ぶべきそんな状況。
 ふと加奈に目をやると、その表情は既に満面の笑顔だった。
 二度と離れまいという意識が読み取れる程目線を俺と合わせてくる。
 その確固たる意思に安心感を覚えながら、俺は携帯電話を放り加奈の下へ歩み寄る。
 近付いてみると、笑顔を向けながら加奈は小さく小刻みに震えていた。
 その嬉しくて震えている肩に俺はそっと手を添える。
「…加奈…、俺今凄く嬉しい。やっと”解った”んだからな…。加奈は嬉しい?」
 肩に添えていた手を口元に移し、ピンク色の柔らかい唇を優しくなぞってやる。
 その仕草に擽ったそうに笑いながら、加奈は俺の背中に手を回してきた。
「うん! とっっっても嬉しい!」
 大袈裟に告げながら俺に体を預けてくる、そんな動作一つ一つが心地良い。
 そして何より、加奈と心が一つになったという事実が俺に満足感の快楽を与えた。
 今までは存在がいるだけで、その幸せを大きく見せる事で満足するようにしてきた。
 だが、そんな仮初の幸せなんて欲してない。
 欲しいのは加奈との真の心からの繋がり、その為に”何をすべきなのか”分かった。
 こんなに簡単な事だったんだ。
 何年も付き合っていたのに何故気付けなかったのか不思議に思う。
 しかし、過去は消えない、そんな物はどうでもいいのだ。
 重要なのは未来、未来の道末は自分たちが決定権を持っている。
 だから、その決定権を駆使させて貰う、幸せな未来の為に。
 そして………
「それじゃ、行くか…?」
「うん!」
 ”加奈の幸せの為に”。
48上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/24(土) 14:30:23 ID:UIL5bFFq
 きっとあの携帯電話の中身を見なければ、俺はまだ闇雲に手探りし続けていただろう。
 言葉で伝えなければ理解し合えないような、”薄っぺらい”関係のままだっただろう。
 だから、『答え』に気付かせてくれた『奴』には心から感謝している。
 本当に心から…そう、何度”殺しても”足りない位に感謝している。
「ははは…」
 そんな事を考えているとまた笑いが込み上げてきた。
 慌てて下唇を噛み、漏れ出さないようにしっかりと堪えようとする。
 まだここでは駄目だ。 
 しっかり”あの場所”までは我慢しなくてはならない。
 ”あの場所”へと行って”すべき事”を遂行したら、その時は思い切り笑ってやる。
 それこそ、今の闇夜の空を切り裂き、明るい朝を強制的に呼び出す位にな。
「誠人くん、興奮し過ぎだよ」
「男ってのは、夜に満月を見ると狼になるもんなんだよ」
「その血が騒いでいるって事かな?」
「分かってんじゃねぇか」
 靴を履きながら冗談を言ってくる加奈の黒髪を優しく撫でてやる。
 相変わらずどこにも淀みのない、一本一本が生きているような美しい長髪だ。
 髪に対して性的魅力を覚えながら、俺は玄関の扉を開けた。
 その扉は物凄く軽く、俺たちの事を後押ししてくれているようにさえ思えた。
 開いた扉の先に広がっていたのは、ただひたすら深遠な闇。
 そして、その中にたったひとつぽつんと佇んでいる本能を燻る魔性の存在。
「今夜は満月か………」
 見上げた空に光るどこにも隙のない円形の満月に向かって、俺は決意を新たにした。
 その決意の対象の事を思い浮かべて、『奴』が送ってきたメールの内容を思い浮かべ、
 俺は心の中で厭らしい笑みを浮かべた。

          ――――――――――――――――――――          

 隣を歩く誠人くんはとても頼もしく見える。
 いつも頼もしかったけど、今日はいつも以上に凛々しい。
 きっと”あのメール”のおかげなんだろうな。
 ”あのメール”を見て、あたしたちやっと分かり合えるようになった。
 そういった意味では”あのメール”の送り主さんに感謝しなきゃならないんだろうな。
 うん、感謝するよ。
 今回だけは、わざわざあたしたちの仲を取り持つような事をしてくれた事に感謝する。
 でもね…やっぱりあのメールの内容は許せないな。
 誠人くんの事を小馬鹿にした口ぶり、そして何よりあたしたちの仲を崩そうとしている
 意思が滲み出ている内容…。
 それに関してはどんなに譲歩しても許し切れない…。
 だから、その”お礼とお仕置き”にすぐに向かってあげるよ…。
 首を長くして待ってよ…すぐに楽にしてあげるから…。
 あたしは決意を胸に秘めながら、誠人くんの隣に寄り添いながら闇夜の道を突き進んだ…。

          ――――――――――――――――――――          
49上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/24(土) 14:31:19 ID:UIL5bFFq
 俺たちは『奴』の家の前へと辿り着いた。
 真新しく見えるインターホンを弱く押し、その場で数秒佇む。
 そして、インターホン越しに聞き慣れた声が耳に響いた。
『誠人くん?』
 他の家族に出られたら厄介だと思ったが、本人が出てくれた事に安心する。
 どうやら家の中から俺の姿は見えているようだ。
 加奈に隠れるように言って正解だったと自分を褒めながら、慎重に言葉を選ぶ。
「あぁ。伝えたい事があるから出てきてくれ」
『分かった!』
 その言葉と共に室内の音声が途絶える。
 しかし、屋外にいる俺にも分かる位うるさく階段を駆け下りる音が聞こえる。
 そんなに俺に会いたいのかと呆れながら、今日俺の事を好きだと言ったのは本当
 だったんだなと心の中で確かめた。
 どうでもいい事だけど。
 やがて足音が止まるので、扉の前から一歩下がる。
 案の定扉はこちら側に向かって勢い良く開いた。
 あのままあの場にいたら無様に扉にぶつかっていたなと、今日の俺はやけに冴えている
 という確証を広げる。
 そしてその扉の中から何も知らない様子の『奴』が出てきた。
「誠人くん!?」
「よう…『島村』………」
 俺はその一言の後………

『シュッ』

 一瞬の刹那…俺の顔を見て喜んでいる島村の喉下を、隠し持っていた
 ペーパーナイフで瞬間的に切りつけてやった。
 喉下を狙ったのは、叫ばれては困るのと、即死して欲しかったからだ。
 切り付けた瞬間、ナイフを持った右手に温かい島村の”命の証”が降り掛かる。
「…ガッはァ………ッ!」
 望み通り、叫ぶ事も出来ずに島村はその場に崩れ落ちた。
 その表情は、何故こんな事されているのか全く理解出来ないという困惑と、
 止め処なく溢れる血液に自らの命が刻々と削り取られている事への恐怖で歪んでいる。
 一瞬で島村の家の玄関は自身の血で赤い海と化し、そこに島村は順応している。
「今の島村………綺麗だぜ…なぁ、加奈?」
 俺はその惨めな死に様に、敬意を表したくなった。
 真の絆を築いていく為に一体何をすればいいのか、それを教えてくれた一人の人間に。
 加奈の方を振り向くと、加奈も島村の苦痛に悶える表情を見つめながら、
 恍惚の表情を浮かべていた。
「うん………本当に、ひたすら生にしがみつこうとして、悪意の欠片もない…。
 誠人くんに何かしようともしていない…こんな純粋な顔出来るなんて…。
 ちょっと嫉妬しちゃう位、それ位綺麗だよ?
 最期に誠人くんに『綺麗』って言っても貰えて良かったね…フフフ…」
 どこにも屈折したところのないその笑顔から、加奈の言っている事が本心だと分かる。
 やはり加奈と俺の考えている事は同じ…最期の最後まで俺と加奈の関係の強さを再確認
 させてくれた事に感謝しつつ、虚ろな目でこちらを見上げる島村と視線を合わせる。
「島村…お前の『メール』の質問に答えてやるよ…」
 既にもがく気力はなく、意識絶え絶えの状態にも拘らず島村は
 必死に俺の言葉を聞こうとしている。
 そこまでして聞く程の事じゃないだろと思いながらもその真っ直ぐな瞳に敬意を表す。
「”加奈だから”だよ」
 その答えを言った後島村の顔を見ると、既にその瞳に光彩は失われていた。
 指一本とて動かせていないその姿が告げる…”島村由紀は死んだ”。

   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
50上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/24(土) 14:32:42 ID:UIL5bFFq
「やったね、誠人くん!」
「あぁ、これで俺たち、やっと『一歩』を踏み出せるんだな…」
 加奈が俺に笑顔を向けてくれている…この儚い幸せを手に入れる為に、
 俺たちはどうしてあんなに不器用な事をしていたのだろうかと今になって思う。

 俺と加奈が幸せになる為に必要な事…その『答え』は簡単だった。
 俺は常日頃、”加奈の幸せの為に”行動してきた。
 そして、加奈は”俺の幸せの為に”行動してきた。
 つまり、俺の幸せと加奈の幸せは『同意義』だったんだ。
 俺がしたいと思う事は同時に加奈がしたい事に直結している。
 そして、加奈がしたいと思う事も俺がしたい事に直結している。
 深く考える必要はない、俺がしたい事をすれば良かっただけの話なんだ。
 相手の幸せだなんて難しい事を考えるより、自分がしたい事をする事こそが
 互いの幸せへの第一歩に繋がるんだ。
 それに気付かせてくれたのは島村が俺に送ってきた『メール』だ。
 露骨に加奈を侮辱したその内容を見て、俺は胸に黒いものが湧き上がるのを感じた。
 それは、殺意を抱きながらも理性が覆い被さって行動を制止させようとしたが故に
 生じた、抵抗力の産物だ。
 本当ならそこで思い止まるのが普通だったのだろう。
 それが世間的には正しいし、そうしなければいけないルールなのだ。
 しかし、そのメールを見た後の加奈の様子を見て、俺の中で理性が崩壊した。
 そう、加奈もあのメールを見て、また別の理由で殺意を抱いていたのだ。
 目的は『一緒』………ならば躊躇する必要なんか欠片もない。
 互いの幸せの為に、迷う事なく殺意のままに従えば良かったんだ…。
 そうする事で、俺と加奈の幸せが叶うんだ、こんな簡単な事はない。

「それと誠人くん、一ついいかなぁ?」
 甘ったるい口調で加奈が俺を見上げながら訊ねてくる。
「何だ?」
「これからは、あたし以外に『綺麗』なんて言うのは嫌だなぁ…」
「何だ、そんな事か」
 思わず笑ってしまった。
 そんな俺の態度が御気に召さないようで、加奈は頬を膨らましている。
 露骨に怒っている加奈の下へと歩み寄り、そっとその小さな体を抱き締める。
「俺が好きなのは城井加奈一人だ…。加奈が好きなのは?」
「誠人くん…あたしが好きなのは、沢崎誠人くん、あなた一人ですっ!」
「良く言えました」
 俺の背中に手を回す加奈を抱き締める力を一旦抜く。
 今まで相手の為とか、『上書き』とか、陳腐な事を言い合って恋人ごっこを
 し続けていたけど、もうそんな事に惑わされる事はない。
 心が一つになった今、もう俺たちは言動や行動で伝え合わなければならないような
 関係ではなくなったんだ。
 加奈と見つめ合いながら、俺は”『一歩』を踏み出す為の”口付けを交わした。
51上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/24(土) 14:33:17 ID:UIL5bFFq

          ――――――――――――――――――――          

 誠人の部屋の中で、開かれたまま沈黙を守っている携帯電話。
 既に光は失っている、しかしその薄黒い闇の中に確かに『跡』は刻まれている。
 二人の男女を狂気に奔らせた、簡潔な文章が。

 『From 島村由紀
  Sub  (無題)

  誠人くん、あなたは何で”あんな”子が好きなんですか?』

          ――――――――――――――――――――          




 B-1ルート「未来を築く為に」 HAPPY END
52 ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/24(土) 14:37:08 ID:UIL5bFFq
投下終了です。
予定として次の時は選択肢2を投下します。

以下チラシの裏
個人的に消化不良なラストでした。
以前Cルート(加奈と誠人の肉欲エンド)を投下した際、「誠人が狂えたらハッピーエンドだった」
という声を受けて思いついた話ですが、読み返すと喉に魚の小骨が引っかかったような気分…。
本ルートでは納得のいくようなのを書きたいです。
53名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 14:46:07 ID:cgpfVPqQ
>>52
リアルタイムキタワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!☆GJ!
個人的には素晴らしいハッピーエンドですとも!
二人に幸あれ。・゚・(ノ∀`)・゚・。

てかこんな俺はもう駄目かも分からんねorz

54名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 16:41:44 ID:hQM6V2+S
>>52
なんかものっそ凄まじいエンディングですなぁ・・・。
携帯の文面を見ただけで豹変するなんて、
他のエンディングを見ても既に誠人が狂ってる事がわかりますわ。
男まで狂ってヤンデレ化するだけでどれだけ他の作品と一線を駕すかわかりますた。
55名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 22:03:32 ID:tWUhvSic
>>52
まさにこのスレならではのHAPPYEND GJ!
でも島村さんあっけなさすぎw
個人的には応援してたんだけどなあ…w
56名無しさん@ピンキー:2007/03/25(日) 02:09:24 ID:CyM5zxwp
チラシ

男まで狂う場合、絶望や混乱のどん底にまで落ちて狂うのならわかるけど、
男までヤンデレ化するとバランスが悪いっていうか収集がつかねって。

チラシ終わり
57名無しさん@ピンキー:2007/03/25(日) 13:03:00 ID:5p2qUqRE
こういった狂った幸せって大好きだ!GJ!
58名無しさん@ピンキー:2007/03/25(日) 13:04:07 ID:Tm3KXieg
だからラストに持って行ったんじゃね?
59名無しさん@ピンキー:2007/03/25(日) 15:33:43 ID:/7rDjX3q
>>52
GJ!!
共狂いENDもいいモノだ。
本ルートにも超期待してます。

>>56
作者の人も、そのへん分かってるから選択肢つけたんでしょ?
作者のしたい事も少しは理解した方がいいよ。
60名無しさん@ピンキー:2007/03/25(日) 16:33:07 ID:CyM5zxwp
>>59
別に糾弾するつもりはないさ。単なる意見として。
61名無しさん@ピンキー:2007/03/25(日) 23:04:59 ID:yx74Ws21
自分は書き手(ここに投下したことはなく読んで楽しむだけ)だが、
色んな意見を貰えるほうが為になるし嬉しいもんだよ。
前からこのスレはGJだらけで、書き手さん達は物足りなくないのかな〜
と、思っていたので言ってみた。ではでは。
62名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 00:36:11 ID:G9NV0cef
場合によりけり。控え室見れば分かるが、書き手といっても一概には言えない。
スルーでも堪えないって猛者から、ちょっとしたことで愚痴るもやしっ子までいる。

それに最大の問題は、批評ってのどうしても批評厨を呼び寄せやすいこと。
感想レスに対するレスを禁止に出来れば、荒れの元にはならなくなるだろうが……
63名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 02:14:33 ID:q8tIE4m4
こんな空気でも俺は「居ない君」を待ち続ける。
64名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 03:45:25 ID:AOwcUCL3
人によるよなー。叩かれて伸びるひともいれば褒められて伸びるひともいる。
まぁようするに荒れるような感想の書き方だけはやめようや。
自分と合わないから嫌いとかそういうはやめてさ。
65名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 09:40:38 ID:xxl3fyhy
収拾がついてるのにつかないとか言うとただのケチ付けに見えるけど
66名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 11:50:43 ID:00gKYNv/
そこは何がどうつかないか、で受け取り方が変わる。
まあ、ちゃんと話は終わらせられてるけど。


とりあえず、議論するより次の話を待とうぜ。
67名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 13:12:08 ID:Q8K9PY1H
ところで「ヤンデレスレは」「エロエロよー」の元ネタってなに?
68名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 13:42:23 ID:G9NV0cef
このスレのパート2か3あたりのやり取りだった気が。
69名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 14:00:23 ID:3a3GhM50
少数かもしれないが鬼葬譚の続編を待ってる漏れがいる
70名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 17:45:13 ID:3bsNz/5j
流れぶった切って感想。

>>52
GJ!!
こういうエンドを待っていた。
ヤンデレハッピーエンドはこうでなくては。
71名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 20:17:38 ID:00gKYNv/
ところで、恋に不慣れで不器用な女がついつい暴走したりするヤンデレってのもあるかね?
そして男は恋に慣れてないだけだからと女を突き放し、さらに暴走させる。



うん、正直ヤンデレとは違うのかもしれないし、コメディタッチになっちゃうけどね。
72名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 20:21:48 ID:mBdGnf2Z
「男くん! 私、きみが好きなの!」
「あ、そうなんだ。俺は卵はしろみのほうが好きだけどな」

みたいなもん?
73名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 20:46:37 ID:5GPQpqOE
軽いヤンデレでも良いじゃない。
You、書いちゃいなよ。
74名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 21:20:35 ID:K9g9qz2n
ヤンデレは相手を殺すよりも相手を拉致監禁して相手に尽くす方が萌えるのは俺だけか・・
男性が監禁の場合は物凄く萌えないが・・女性なら和やかな雰囲気になるww
75名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 22:44:05 ID:/S3uAAfn
>>74
×物凄く萌えない
○単なる犯罪
76名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 23:43:14 ID:YSDBgQqB
男が女を監禁するだけならハードル低いからな。すぐに豚箱行きとはいえ
77ラック ◆duFEwmuQ16 :2007/03/27(火) 00:00:49 ID:RI+ri3es
身に覚えが無いのに規制が……今回はヤンデレ要素少ないです。
次回から本格的にしていきたいと思っています。
78ラック ◆duFEwmuQ16 :2007/03/27(火) 00:02:22 ID:9shiYSb+
かつて悪魔が私にこういった「神もその地獄を持っている。それは人間に対する彼の愛である」と。
そして、私は悪魔がこういうのも聞いたことがある。「神は死んだ。人間に対する同情ゆえに神は死んだ」と。
                       ──ニーチェ『ツァラトストラはかく語りき』
ヒッコリー製のアンティークな本棚に並べられた書籍に朧は眼を通した。本の表紙に触れる。表紙も古いものから新しいものまで実に様々だ。
オスカー・ワイルド、ジャン・ジュネ、サルトル、ボードレール、バルザック、アポリネール、ニーチェ、ヘーゲル、マンディアルグ
ユイスマンス、バロウズ、ケルアック、稲垣足穂、三島由紀夫、川端康成、その他にも文学、哲学系の作品が揃えられていた。
昨日はオスカー・ワイルドの『サロメ』を読んだ。今日は何を読むべきか。本を眼で追いながら思案する。
朧の視線が止まった。本を取り出し、タイトルと作者名を眺める。ホコリが指を汚した。ふっと息を吐いてホコリを飛ばす。
(カポーティの『冷血』か。面白そうだな)
机に置かれた手錠を朧は自分で掛けなおした。鍵の部分が簡易な作りの手錠は、ヘアピンの一本でもあればいつでもはずせた。
朧は雪香の居ない時だけ、こうして手錠をはずして羽を伸ばした。短い時間ではあったが、手首の感覚を戻すには充分だ。
本を持つと朧は書斎を出て、雪香の寝室に戻る。本を読み始めたのは単に暇だったからだ。雪香との奇妙な生活が始まって二ヶ月が過ぎた。
最初の二週間は部屋から出られないようにベッドにくくりつけられた。足にも錠をかけられて身動き取れぬ有様だった。
食事に混ぜられた筋弛緩剤と睡眠薬。睡眠薬の効果は失せていたが筋弛緩剤のほうはそうはいかなかった。
頭の中ははっきりしていたが、身体の自由がほとんど利かないのだ。この少女は何故、自分にこんな仕打ちをするのか朧は考えた。
雪香に恨みを買ういわれはなかった。
澱のようなものが腹の底に沈み、怒りが沸々と煮えた。自由を奪われた獣の怒りだ。
そして、こんな罠にひっかっかった間抜けな己自身に対する怒りでもあった。憤怒が脳髄を灼いた。
筋弛緩剤の効果が薄れるとともに、怒りが燎原の火の如く燃え広がった。両腕をめちゃくちゃに動かす。手錠が肉に食い込み、皮膚が裂けた。
血飛沫が舞った。傷口から溢れる鮮血が手首を汚した。かまわずにベッドで暴れ続けた。痛みなどどうでもよかった。
『はずせっ、はずせっ!』
叫んだ。無言で不安そうに気弱な眼でこちらを見やる雪香の姿──ぶっ殺してやりたかった。
顔面がザグロになるまで拳を叩き込んでやりたかった。血みどろになるまでぶちのめしてやりたかった。
『そんなに暴れないで。手、怪我しちゃったよ……』
『ふざけるな。さっさと手錠をはずせッ!』
傷ついた朧の右の手首に雪香が労わるように手を伸ばす。雪香の頬に朧の唾が飛んだ。雪香は黙って掌で唾をぬぐうと部屋をでていった。
室内に独り取り残された朧は冷静さを取り戻そうと瞼を閉じた。闇が視界を覆う。脳内で渦を巻く冥い殺意を腹に押し込んだ。
朧は隙を窺うことにした。問題はどうすれば逃げ出して雪香を殺せるかだ。朧は思索した。こういう手合いにはどう対処すればいいのか。
朧は雪香に対し、徹底的に無視を決め込んだ。飲食物を一切取らず、何をされようが一言も喋らなかった。
朧の態度に雪香は柳眉を逆立て、罵詈雑言を浴びせた。ヒステリックに朧の脇腹に爪を立てて胸を痣が出来るまで叩いた。
『なんで雪香を無視するのッ、お願いだから何か言ってよ……ッッ』
79ラック ◆duFEwmuQ16 :2007/03/27(火) 00:04:04 ID:RI+ri3es
朧の頬に平手打ちを浴びせながら雪香が大声を喚いた。鼓膜が振動で震えた。切れた唇から血が滲む。
雪香に殴られ、罵られても朧は石の如く口をつぐみ、無反応を通した。完全なる拒絶を示し、眼をそらそうとさえしなかった。
その態度が雪香の苛立ちを募らせ、雪香はさらに手酷く朧を打擲するという悪循環だった。
十日間が過ぎたあたりで雪香は狂ったように泣き喚いた。髪を掻き乱し、喉が張り裂けんばかりに叫び声をあげる。
『お願いだよっ……お願いだから何か食べてよ……っっ』
躍起になって朧に食事を摂らせようと自分の口にミルクを含ませ、雪香は朧に口移しで何度も飲ませようとした。
それでも、朧はミルクを飲まずに吐き出す。雪香の口に含んだミルクを飲むくらいなら、朧は餓死したほうがマシだった。
それよりもあと何日持つか。せいぜいが一週間以内。それ以上経てばまず動けなくなるだろう。
頬骨がこけ、肋骨が浮き出た肉体。眼窩は窪み、初雪のように白かった朧の肌は栄養失調で灰色にくすんでいた。
ただ、黒い瞳だけがいつまでも変わらなかった。朧は掠れた声帯から搾り出すように呟いた。
『死んじまえ。このキチガイ女……』
雪香に向かって罵りの言葉を吐き捨てる。
それっきり朧はまた口を閉ざして、天井の一点を瞬きもせずに見続けた。飢えの苦しみはすでにない。
人間の身体はうまく出来ているのだ。三日間食事を摂らなければ、脳内麻薬が分泌されて飢餓の苦痛を取り除く。
持久戦だった。衰弱して死ぬのが先か、ベッドから開放されるのが先か。二週間目の朝、雪香はついに根を上げて朧の拘束を解いた。
──俺が衰弱してると見て油断してるのか。それでも首を絞めるくらいの力は残ってるぞ
体力の擦り減った身体は動かすたびに悲鳴を上げた。筋肉はその柔軟性を失い、硬くなった関節がギシギシと軋む。
空中を飛んでいるような感覚だった。身体に力が入らない。そのくせ、やけに意識だけは明瞭だった。
網膜の奥に映った雪香の首筋。青白い静脈を皮膚の内部に張り付かせている。スローモーションな動きで頤に手をかけた。
親指と人差し指に力を込める。雪香は抵抗も、振りほどこうともしなかった。朧はじわじわと力を強めた。
指先に伝わる柔らかい肉を掴む生々しい感触──何の感慨も涌かなかった。復讐の達成感が感じられないのだ。
『なんで抵抗しないんだ』
朧は不思議でしょうがなかった。恐怖を感じるわけでも、憎悪を現すわけでもない雪香の反応に朧は眼を細める。
雪香の相貌を見た。どこか夢見心地だ。雪香は死を厭わなかった。この少女は朧から与えられる死を歓喜を持って迎え入れようとしたのだ。
胸裏深くに沈んだ記憶が、小波を打つ水面のようにゆらりと揺らめく。
瞳に灯った慈愛の輝き──無意識に朧は手を離した。雪香のその聖母の如き明眸を見た瞬間、怒りも憎悪も消えうせていた。
思えば哀れな少女だ。
『どうして止めちゃったの……雪香を殺したい殺してもかまわなかったのに?』
キョトンとした表情を浮かべて雪香が朧に尋ねた。雪香の頬を撫で付けながら朧は言った。
『あんた変わってるな……』
雪香が笑みを浮かべて答えた。
『朧だって変わってるよ』
朧の拳が飛んだ。病み上がりにしてはキレのある良いフックだ。雪香の顎に命中した。脳が震盪し、雪香はあやうく意識を失いかけた。
『とりあえずそれで許してやる』

朧は出て行かなかった。雪香に興味をそそられたのもあった。それにこの家に住んでいれば明日の寝床と食事にもありつけるからだ。
80ラック ◆duFEwmuQ16 :2007/03/27(火) 00:05:56 ID:RI+ri3es
室内の空調が一定に保たれているので裸でも寒くはない。わりと居心地は良い。気が向いたときに出て行けばいいだけの話だ。
雪香は朧に決して服を着せようとしない。服を着せないのは雪香の趣味だ。
雪香も家の中では同様に、一緒に裸になって過ごす。裸なのは、どこでもセックスが出来るからだ。
少し気疲れを覚え、朧はベッドに寝転がった。身体の芯がだるいのだ。運動不足が原因だろうか。
うつ伏せになったままページをめくっていく。三十分ほど本を読み勧めていくと軽い空腹感を覚えた。
冷蔵庫を漁ろうと朧が身を起こしかけると、タイミング良く雪香が買い物から帰ってくる。朧は本を傍らに置くと部屋を出た。
「ただいまァ」
明るいほがらかな笑みを浮かべて雪香は買い物袋をキッチンに持って行き、冷蔵庫を開けて食材をしまった。
穏やかな光を称えた雪香の双眸──それは幸福に満たされたものだけが持つ瞳だった。実際、紛れも無く雪香は幸せに包まれていた。
朧と暮らし始めて、雪香は眼に見えて日々明るくなっていった。
ダイニングキッチンの窓から差し込む薄暮の輝きが、雪香の顔貌に優しく降り注いだ。
太陽の光が染めたかの如き艶やかなセミロングの栗色の髪、くっきりとした薄い二重瞼、黒く清らかな長い睫、
丹花のように可憐な唇、綺麗に象られた鼻梁。明眸皓歯だ。朧と出会う前も美しくはあった。だが今のような華やかさがなかった。
それは明るさだ。あの病的な美はすっかりナリを潜め、雪香は健康的な笑みを振りまくようになった。
雪香が少女本来の笑みを取り戻した理由──それは朧に対する恋であり愛だった。
ダイニングの脇から朧は雪香を盗み見た。今の雪香には華やかさがある。それでも朧は思い出すのだ。
あの時嗅いだ色香を。腐臭を。絶望的な孤独の中に感じた雪香の腐敗じみた色香。あの匂いはどこへいったのだろうか。
何故、雪香は狂っていたのか。当初、朧は雪香の孤独の苦しみが理解できずにいた。いくら思案を巡らしてもわからないのだ。
孤独が理解できないのではない。孤独である事に何故苦痛を感じるのかだ。朧も孤独だった。
しかし、孤独である事を寂しいと思った事も無ければ、苦痛を感じた事もなかった。朧は孤独を愛していたのだ。
孤独とはいいかえれば自由。しかし、雪香と暮らすようになってその苦しみがわかりかけてきた。
孤独は二種類存在するのだ。他人から強制された孤独か、自分で選んだ孤独か。
朧は自分で孤独を選んだが、雪香のそれは他人から強制されたものだった。強制された孤独はつらく悲しい。
強制された孤独は人の心を腐らせる。雪香にとって生き地獄とは恐ろしく静かな場所なのだろう。
エプロンをつけると雪香は食事の準備にとりかかった。鍋に水を汲んでお湯をわかし、大さじ二杯ほどの塩を混ぜる。
お湯が沸騰すると次はスパゲッティのパスタを茹でながら、少量のオリーブオイルをひいたボウルと作り置きのミートソースを横に置いた。
丁度いい茹で具合になったパスタをトングで掴み、ボウルに移した。その上からミートソースをかけて絡ませてから皿に盛り付ける。
肉汁たっぷりの湯気をくねらせるパスタからは食欲をそそる匂いがした。ソースをすくって舐める。隠し味に加えたトマトの酸味が爽やかな味わいだ。
テーブルに皿を乗せて雪香が朧を呼びにいこうとしたが、朧はすでに階段を下りてキッチンの前に来ていた。
イスには座らず、朧が立ったままでパスタを飢えた野良犬のようにかぶりつく。さながら地獄の餓鬼だ。
フォークを突き刺すと一気に口に運び、一心不乱に咀嚼する。ミートソースが唇を茶色く濡らした。肉汁が顎の周りを汚す。
そんな朧を雪香はテーブルに肘をつけてニコニコと笑いながら見つめ続けた。雪香は何も言わない。
朧が何をしようが、無言で微笑を浮かべるだけだ。
中々の早食いだった。朧が三人前のパスタを完食するに要した時間は実に四十八秒だ。雪香がエプロンと服を脱いだ。
鍵を取り出して朧の片方の手錠をはずし、自分の手首にかける。
「ねえ、キスしていい?」
悪戯っぽく微笑みながらキスをせがんだ。唇を重ね合わせ、雪香が舌先を朧の口腔内に入れる。
狂おしい感触に雪香は恍惚の表情を張りつかせた。
81ラック ◆duFEwmuQ16 :2007/03/27(火) 00:07:54 ID:RI+ri3es
粘った唾液がミートソースと絡みつく。雪香は朧の唾液を呑んだ。唾液が喉を通って滑り落ちる。
ふたりの指先が互いのアヌス周囲の麝香分泌線を探る。
雪香にとって最高のコミュニケーションとはセックスだ。言葉は何の意味もない。言葉はうそをつくからだ。
だから雪香は言葉を信用しない。
ディザイア──この肉の交わりこそが全ての真実であり、なにものにも勝る。嗅覚、体温、視覚、感触、快楽だけは嘘をつかない。
百の愛の言葉を送られるよりも、一度のセックスのほうが魅力的だ。雪香は手錠をかけた掌を強く握った。
ドクッ、ドクッと心臓が胸板を激しく乱打した。
めまぐるしい甘美さが内部を駆け巡った。身体が熱く火照る。朧の唇を一層、激しく求めた。求め狂った。
熱い舌が絡みつく。
雪香は舌で朧の存在を実感した。母の面影を追っていた雪香は当初、朧を母の代わりと愛していたが、今はひとりの人間として心から愛していた。
いや、それも正確ではない。人はやはり過去の呪縛からは逃れられない。朧と肌を合わせると、心のどこかで母の温もりが喚起する時がある。
雪香は元々レズビアンだ。朧に出会う前は男に興味を持つ事が無かった。出会った時も最初は異性として認識していたとはいい難い。
雪香がレズビアンに走ったのは未だに母親離れできないせいだった。朧の言葉を思い出す。
『俺はお前の母親の代用品じゃない』
その一言が雪香に何かを目覚めさせたのだ。朧に対する茫洋とした性の認識が定まった。唇を離した。欲情に濡れ輝く雪香の瞳。
「今日はこっちでしようか……」
しなやかなタッチで朧のペニスに触れた。柔らかい肉茎を指弄して雪香は楽しむ。徐々にペニスが硬度を増していった。
「雪香がしたいことをすればいいよ。俺はどっちでもかまわない」
高鳴る胸、女の肉裂が熱く疼いた。ふたりは床に身体を横たえ、もう一度キスを交わす。ペニスを握ると雪香は膣口に導いた。
最初は鈴口で自分のクリトリスを弄り、温かい蜜液で秘所をトロトロに濡らしてから挿入する。
「ああ……ッ」
半ばほど没したペニスを締めながら、雪香は自ら腰を動かした。朧の薄い胸板に噛み付く。痛みに朧は僅かに表情を曇らせた。
「美味しい……」
「痛いからあんまり強く噛むなよ」
「……ごめん」
謝りながら朧の薄桃色の乳首の幹を甘く愛咬する。形の良い乳房が小刻みに揺れた。雪香の息遣いが荒くなり、美しいラインの眉根が歪んだ。
「んんん……ッ、ああ……あああッ」
膣壁がペニスを擦るほどに、朧は亀頭の先端に熱い血流を感じた。汗が額に浮かぶ。こめかみから頤を伝わって汗がこぼれた。
「はあぁぁ……もっと、もっと奥に欲しい……ッ」
雪香は呻くように呟くと腰をさらに密着させてペニスを割れ目の奥へと呑みこむ。膣内は激しくうねり、せり上がった恥骨が当たる。
「もう、もう駄目……あああッ」
おびただしい愛液を股間をまみれさせながら、雪香は激しく腰を荒打ちさせた。背筋に凄まじい喜悦が走った瞬間、ふたりは達していた。
                 *  *  *  *  *  *
ベッドで安らかな寝息を立てる雪香の頬を朧は軽く舐めた。隠し持っていたを後ろ髪から抜く。手錠の鍵穴にヘアピンを差し入れた。
小さなレバーの部分をヘアピンで回す。はずれた手錠から手首を引き抜いた。雪香が起き出さないように静かにベッドから降りる。
クローゼットからトレンチコート、書斎から本を一冊失敬する。久しぶりに外の世界を見たかった。玄関を開けて外へと出る。
庭に視線を向けた。ドーベルマンは吠えもせず、ただ朧を見つめた。何かに誘われるかのようにふらふらと朧は道玄坂方面に足を運んだ。
気が向けば帰ってくるし、気が向かなければ帰らない。糸が切れた風船のように風の向くまま気の向くまま、自分の本能に従って朧は行動する。
東に風が吹けば東に飛び、西に風が吹いたら西にいく。流れ流れてこの世を漂い、好き勝手出来ればどこで野垂れ死にしようが一向に構わない。
須臾の時間、この刹那の時だけを生きる。昨日も無ければ明日もない。
明日を信じたところで何が起こるかわからない。昨日を振り返ったところで、過去が変わるわけでもないのだ。
明日という予測のつかないモノを信じてストレスを抱え、己を殺して生きるよりは今日を好きに生きて明日死んだほうがいい。
82ラック ◆duFEwmuQ16 :2007/03/27(火) 00:10:03 ID:RI+ri3es
気に入らない奴はぶちのめし、欲しいものがあれば盗んででも手に入れる。朧は自分に対して嘘はつかない。
その考えは到底、社会に受け入れられるものではない。反社会的とさえ言える。だから朧はつねに独りだった。
集団の中にいれば何かと煩わしいからだ。
下は裸のままトレンチコートを一枚羽織って、暁闇に包まれた住宅街を横切る。当たり前だが人通りは途絶えていた。
夜空を見上げた。星一つ見えなかった。
「ああ……はらへった」

「親分さん、色突き終わりましたよ」
彫菊に声をかけられた初老の男が布団から身を起こした。歳を食ってはいるが、男は壮健そのものの身体つきをしていた。
実際の年齢より十五歳は若く見える。太鼓腹だが、相撲取りのように脂肪の下には厚い筋肉が隠されているのが彫菊にもわかった。
男の眉は太く一本に繋がっており、一重瞼の金壺眼に顔面の中央にどしっと座った低い団子鼻という異様だが精力溢れる面貌だった。
鯉に金太郎の彫り物を背中に背負うこの男は、関東では有名な金看板を掲げてた一家の総長だ。
本来ならば、たかが七年そこらの駆け出し彫師に毛の生えたような彫菊に声をかける人物ではない。
彫菊の師匠筋に当たる人物と総長との付き合いが深く、ある席で師匠に紹介されたのが縁を持ったそもそものはじまりだった。
「十八年ぶりの色突きはきついよ。やっぱり私も歳だねえ。だけど若い娘さんにやってもらうとなんか若返った気分になるよ。
特にあなたみたいな綺麗な娘さんにしてもらうとね」
「いえ、とんでもありません」
大島紬の袴を着ると叩いた。若衆らしき黒服の青年が襖を開けて部屋に入ってくる。
「総長、彫菊さん、お疲れ様です」
三つ指を突いてふたりに向かい深々とお辞儀をする青年に総長は温和な微笑を投げかけた。屈託の無い笑みだった。
「ご苦労さんだね。ちょっと忙しいと事悪いんだけど、彫菊さんを家まで送ってやってほしいんだよ」
「はい、わかりました。ではどうぞこちらへ」
青年が車庫まで案内するとベンツのドアを開けて、彫菊を車内に促した。
                 *  *  *  *  *  *
スツールに腰を下ろして彫菊はウイスキーの水割りを頼んだ。肩の荷が下りた気分だ。流石にあれほどの大物と会うと緊張する。
マスターが運んできた水割りを三口で飲み干すと彫菊は水割りのお代わりを頼んだ。あの少年──朧の事が気にかかる。
不思議な少年だった。美しい顔と肌の持ち主だった。金と食事を与えるから背中に刺青を彫らせてほしいと頼んだら自分についてきた。
すでに半金を支払ってはいたが、残りの金を受け取りに来ない。今頃どこで何をしているのか気がかりだ。
堅気ではないだろう。かといってヤクザでもない。今まで見てきた人間のどのタイプにも当てはまらないのだ。
しいていえば小学生の時に飼っていた黒猫に似ていた。濡れ羽色の毛並みをした細身の綺麗な雄猫だった。彫菊はこの猫が好きだった。
美しかったからだ。半年ほどしてから家から居なくなってしまい、泣きながら日が暮れるまで探したのを覚えている。
彫菊が彫師の世界に身を投じたきっかけ──それは飼っていた黒猫に右腕を引っかかれた事が引き金だった。
鋭い爪が肉を引き裂く灼けるようなあの痛み。腕に残った傷の跡。傷とは、痛みとは何なのだろうか。
幼いながらに彫菊は痛みについて頭を絞って思い集んだ。英国の詩人フランシス・トムソンはこんな詩を残している。
『全ては呻きではじまり、呻きで終わる。人生は他人の痛みで始まり、自分の痛みで終わるのだから』
では傷跡とは何なのか。傷跡──それは痛みの痕跡だ。傷跡はしばしば他人に苦痛を喚起させる。しかし美しくは無い。
美しい傷跡など彫菊は見た事が無かった。仮に美しい傷跡があったとしよう。だが、大部分の傷跡は醜い。
出来る事なら美しい傷を身体に残してみたかった。そしてたどり着いたのが刺青だった。
83ラック ◆duFEwmuQ16 :2007/03/27(火) 00:12:52 ID:RI+ri3es
投稿完了。
器とは一度ヒビが入れば二度とは……二度とは……
84名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 03:36:37 ID:fdtPuEyf
俺的熟女ヤンデレはこんな感じ

ある若いカップルが結婚式を行う。
カップルはお互い愛しあっていた。
ところがハネムーンで新婦の目の前で、新郎が不慮の事故で亡くなる。
かくして新婦は若くして未亡人に
(この時のショックで新婦は自分を責め、しばらく人間不信になる)

数年後、未亡人の隣に越してきた若い男が挨拶に来る。
若い男は、数年前に亡くなった夫に瓜二つだった。
これは運命だと、数年間溜めに溜めた自責の念を、若い男を籠絡する事に注ぐ。
青二才の男の体を、熟れた女の肢体が貪り喰らい尽くす。
85名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 04:43:32 ID:9Zsedw4q
>>83
続編ktkr!
文体に独特の雰囲気があってイイ!
てかここからさらにヤンデレ分強くなるのかwktk

>>84
そーいえば昔中年のおばさんが主人公に惚れてしまって
ライバルに勝つために周囲の人間から「美しい体のパーツ」を集めて
それで作った新しい体に人格を移して絶世の美女になる……
というエロゲがあったな。今思えば立派なヤンデレだった
86名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 06:08:57 ID:ve4KSm9d
>>85
アリスのDr.stopだな。言われてみればあの婦長はヤンデレだ。逆光源氏やってたし。
87名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 17:47:16 ID:eoMttp5n
タワシコロッケはヤンデレ的ですか?
88ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/03/27(火) 20:01:24 ID:ZX4xyh8k
第七話を投下します。
89ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/03/27(火) 20:03:32 ID:ZX4xyh8k
第七話〜にらみ合いと、秘められた伝言〜

 従妹が通っている大学の先輩が、以前に一度だけ会ったことのある女性だった。
 今日俺が大学に来ているのは華に無理やり連れてこられたからなのだが、
そこで菊川かなこさんに会うとは予測も予想もしていなかった。
 しかも、かなこさんと華は先輩・後輩の仲らしい。
 こんな偶然が起こる確率はどれほどのものだろう。
 数値化することはできるのだろうか。
 できるのならば、導き出すための数式を誰かにご教授願いたい。

 俺は、完全な予測を立てるのは不可能だ、と考えている。
 天気予報の降水確率などは信じられないものの代表格だし、
いくら綿密にNASAが計算したところでシャトル打ち上げの成功を保証することなどできない。
 正しい数値を入力すればコンピュータはそれに合わせて答えを出してくれる。
 そうすればスペースシャトルの打ち上げは100%の確率で成功するだろう。
 だが、ここで疑問がわいてくる。

 その正しい数値をどうやって割り出せばいいのか?
 その数値とやらは本当に正確なのか?
 そしてコンピュータの計算式に不備は無いのか?
 なにより、それらが正しいということを証明するものなど存在するのか?
 それらはすべてが曖昧なものでしかない。
 正しいものなど、科学においては存在しえない。
「科学が正しいということを証明する科学は存在しない。
 なぜならば『証明する科学』が正しいと『証明する科学』が存在しないからだ」
 というやつである。

 物事の予測を計算式でまかなおうというのが無理なのだ。
 どこかで妥協をするしかない。
 降水確率が0%でも折りたたみ傘を持ち歩いたり、
シャトル自体に不備が無いよう点検・整備をしっかりと行うのが望ましい。
 そして俺はその通りに、人生を妥協して生きていこう……と考えていたが、
人間関係において妥協しようとしなかったのはなぜだろう。
 ……若気の至り、ということにしておくか。

 俺の性格は予測することには向いていない。
 深く考えずにその時、その場の状況に合わせて動くほうが上手くいく。
 考え始めると思考のベクトルが予測外の方向へと突き進み、行動もおかしくなる。
 そのせいではないのだろうが……現在、俺は全く予測のつかなかった状況に置かれている。
 
 自ら企業を退職したフリーターであるどこにでもいるような24歳の俺が、
 普段ならコンビニの事務所でのんびりと昼食をとっている正午に、
 従妹に連れてこられた俺とは全く縁の無い大学の中庭で、
 男装の変人と不必要な会話をしている間に従妹の魔の手から逃げ遅れ、
 従妹で幼馴染である現大園華と、その言動が全くの予測外である変人の十本松あすかと、
 顔見知りであること自体があり得ない良家のお嬢様である菊川かなこさんと昼食を食べることになった。

 こんな事態に俺が陥ることを予測していた者がいるとしたら、神か仏かお天道様だ。
 三人いるんなら誰か一人ぐらい教えてくれてもいいのではないか、と思う。
90ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/03/27(火) 20:04:15 ID:ZX4xyh8k
 大学の中庭は日当たりがよく、食事したり、昼寝をするには最適の環境だ。
 おあつらえむきに数人で食事ができるようなテーブルまで設置されている。
 さすがにハンモックを用意するほどに酔狂ではないようだが、
 木製のテーブルだけでも充分気が利いていると言える。

 華から渡された弁当箱を、膝の上からテーブルの上に移動させる。
 弁当箱を持ち上げたときに思ったことは「これは中身が詰まっているな」だった。
 普通ならばそれは喜ぶべきことなのだろうが、いささか多すぎるような気もする。 

 俺から少し間を空けて左に座っている華の表情は緊張していた。
 ときおり、ちらちらと俺の手元を見ている。
 自分の顔が見られていることに気づくと、ごまかすようにそっぽを向いた。
 空色のリボンが華の流れるような長い髪をまとめているのが見える。
「遠慮せずに食べていいですよ。おなか、すいているでしょう?」
「ああ」
 別に遠慮しているわけではない。
 いったいどんなものが入っているのかと不安で、蓋を開ける気にならないのだ。
 しかし、躊躇ったところで結局はこの弁当の中身を腹に収めるまでの時間を延ばすことにしかならない。
「おや、食べないのかな? それとも食べたくないのかな?
 それはよくないね。まだ若いのに、健康体なのに、そのうえ男なのに。
 もしかして君は見た目より年をとっていたり、不治の病に冒されていたり、女だったりするのかい?」
 テーブルを挟んで向かい側に座っている十本松が、無駄に長い台詞を吐き出した。
「……あえて返答するが、お前が言ったことのいずれも正解ではない」
 俺は女ではないし、この弁当はもちろん食べる。
 しかし食べたくない、というのは少しだけ当たっている。
 いくら俺が食べたくないと思っても、食べなければならないのだが。
「わたくしたちに気を使わずに、お先に召し上がってもよろしいのですよ」
 左斜め前には、どこまでも礼儀正しい佇まいをしたかなこさんが座っている。
 彼女の席には藍色の布に包まれた四角形のものが置かれている。
「かなこさんもお弁当なんですね」
「はい」
「自分で作ったんですか?」
「こう見えても、料理を作ることが趣味でございまして。
 将来、殿方となった男性には毎日毎食手料理を食べていただきたいですから」
 俺の顔を見ながら、かなこさんが微笑んだ。
 そんなことを言いながら微笑まれたら、好意を向けられていると勘違いしてしまいそうだな。
 
「よっし……」
 俺の胸の前に置かれている弁当を食べる覚悟は、たった今決まった。
 こういうのは躊躇うより、さっさと行動して、さっさと終わらせてしまうほうがいい。
 蓋の上に手を置く。そして、一瞬の躊躇のあとで、その手を持ち上げる。
 あらわになった弁当箱の中身を見た俺は、あっけにとられた。
 きつねの色をしたご飯の中に、細長く切られたごぼう、きざまれている人参、
小さな四角形になったこんにゃく、鶏肉が入っている。
 ところどころに、いんげんがアクセントのようになって点在している。
「これは……五目ご飯か」
「私が一番得意な料理なんです。
 何を作ればいいか迷ったからそれにしたんですけど、おにいさんはそれ、嫌いですか?」
「特に嫌いってわけじゃない。
 ……が、一つ聞きたい。何故それがぎっしりと弁当箱につめこまれているんだ」
 手元にある弁当箱のサイズは、横に30センチ、縦に20センチ、高さは6センチほど。
 かなり大き目の弁当箱であるが、中身の全てを五目ご飯が埋め尽くしている。
 これを俺一人で食べろというのだろうか。
「可愛い従妹である、華君が作った料理だ。
 もちろん米の一粒すら残さず、具のひとかけらも残さず食べるのだろう?」
「……ああ、もちろんだ」
 途中で倒れたりしなければな。
91ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/03/27(火) 20:06:02 ID:ZX4xyh8k

 両手を胸の前にあわせ、割り箸を親指とひとさし指の間に挟む。
 手が軽く震えているせいで、箸がぶれて見える。
「い、いただきます」
 左手で少し重い弁当箱を支えて、五目ご飯に箸をさしこむ。
 箸を使ってちょうどいい大きさに分けようとするが、かたくて、なかなか細かくなってくれない。
 華のやつ、かなり力を込めて押し込んだな。
 いったいどれだけの量を炊いてこの中につめこんだんだ。
「この、こいつ。さっさと……よし、これなら食べられる」
 苦戦しつつも、一口に収まる大きさの五目ご飯の塊を分けて、箸の先端でつまみ口に運ぶ。
 おそるおそる、舌でその味を確かめる。
「……ん……ぅむ、うん……」
「どうですか、味の方は?」
 華が緊張のおももちで、感想を求めてきた。口の中のものを飲み込んでから答える。
「まともな味……じゃなくて、ちゃんと味がついてるな」
「お、美味しいです、か?」
 ……言ったほうがいいんだろうな。恥ずかしいけど。
「うん。自信を持つだけあって上手に作れてるな。
 美味いぞこれ。本当に上達してるんだな」
 そう。まったく予想外の美味さだった。
 ご飯にはもちろん味がついているし、鶏肉の歯ごたえも感じられる。
 初めて作った人間であれば、ここまではうまく作ることはできないはずだ。
「これなら全部食べられるよ。ありがとな、華」
 弁当箱を持つ左手に重さを感じさせない程度の量にしてほしかったが、あえて言わないでおこう。

 褒められたことがよほど驚きだったのか、しばらくの間目を大きく開けていたが、
次は口をぱくぱくと小さく動かし始めた。
「へ、ぁ……ぁぅ……ぁりがと、ございます。おにい……さんん……」
 そう言うと、また俺に顔を背けた。華の耳が、きもち紅くなっている。
 ……そういえば、昨日、華は俺のこと好きだって言ったよな。
 いかん。思い出すと、なんだか華が可愛く見えてきた。
 まだ二月なのに、体がほてっている。
 おまけに、胸の奥がなんだかむずがゆい。なんだか、これって……
「うぅーむ。まるで思春期の中学生のような光景だね。
 憧れの先輩にお弁当を作る健気で、無垢で、穢れの無い女子生徒と、
 野獣のごとき食欲と、恥ずかしい台詞を人前で言える心臓を持った男子生徒。
 そのままお弁当と一緒に華君を食べたりしないでくれよ。
 食べるんなら私もぜひ混ぜてくれ。混ぜ込んでくれ。そう、わかめごはんのように!」
「俺の思考を読むな、この変人!」
「ほう。君は、私と華君と君の三人で混ぜ込まれたかったのかい?」
「断じて違う!」
「せっかくの誘いだが、断らせてもらうよ。私にはかなこという名前の婚約者が……」
 俺の言葉を無視して、十本松がかなこさんの肩に手を乗せた。
92ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/03/27(火) 20:07:04 ID:ZX4xyh8k

 しかしすぐさま、自分から手を退けた。
「おやおや、これはこれは……」
 そう呟きながら、今まで十本松は一度も見せなかった苦い色を顔に張り付かせて笑った。
 その理由は、かなこさんの雰囲気が先刻とまるで異なっていた、ということ。
 目を細めて、頬を少し緩ませて薄く笑っているが、何かが違う。

「ふふふ……ようございましたね。雄志さま。
 華さんに美味しいお弁当を作っていただいて。
 仲のよろしいお二人を見ていると、こう……えも言われぬ気分になりますわ」
 どんな気分なのかは明確に口にしなかったが、なんとなくわかる。
「華さんにここまで仲のよろしい男性がいらっしゃること、とても嬉しく思います」
 彼女は、面白いなどとは、嬉しいなどとは思っていない。
 声を聞いていれば、分かる。
 初めて会った日と同じだ。
 料亭で食事したときに豹変した彼女の声と、今の台詞。そのトーンとアクセントのつけ方がまるで同じなのだ。
 低いトーンと、強いアクセント。
 聞く人間に訴えかけるような、強く、はっきりとした、忘れさせまいという意思。
 それを言霊にして、俺に――俺だけに、ぶつけてくる。

「聞いてくださいまし。
 華さんは大学では男性とまったくと言っていいほど会話をされないのです。
 わたくしはそれをいつも気にかけておりましたが、すでに仲のよい男性がいらっしゃったのですね。
 ふふふ……それが、まさか雄志さまだとは米粒ほどにも思いませんでした」
 かなこさんは弁当箱から一粒の白米を箸でつまみ、美しい顔の前にそれを構えた。
 その箸の先端と、米粒が俺に向けられる。
「どうかされましたか? ふふふ……」
 目を反らせない。
 彼女の目の輝きから目が離せない。
 かなこさんは俺の目を見つめているから、当然彼女の目には俺が映りこんでいる。
 その目を見つめていると、まるで俺自身が瞳の中に閉じ込められたのではないかと錯覚してしまう。
「お口を、開けてくださいませ」
 言われるがまま、反射的に上下の唇を離す。
 
 ひゅっ

 彼女が着ている服の袖が、空気を切るような軽い音を立てた。
 かなこさんが身を乗り出し、右腕を突き出して、俺の口の中に箸の先端を入れたのだ。
 もちろん、箸は口内のどこにも当たっていない。口内の空間でどこにも触れずに停止している。
 冷や汗が流れる。息ができない。
 もし動いたら、そのまま右腕を動かされて、箸の先端を喉の奥に突き刺されそうな気がしたから。
「ふふ……」
 かなこさんが静かな声を漏らした。
 声を漏らしただけで、笑ってはいなかった。
 目は大きく開き、まばたき一つしない。
 俺の目と、脳を貫いて、後頭部に穴を開けてしまいそうな――恐ろしい瞳だった。
93ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/03/27(火) 20:08:27 ID:ZX4xyh8k
 
「かなこさん。そこまでです」
 唐突に、華の声が割り込んだ。いや……華が出したのか、今の声は?
「おにいさんに変なことをするのは、やめてください。
 いくらかなこさんが相手だとしても、それ以上何かするというのなら、怒りますよ」
 
 ――刀。

 その声を聞いて思い浮かべたのは、緩やかな曲線を描き、
見ているだけで喉元を捉えられているような錯覚と緊迫感を与える、美しい刃物の姿だった。
 かなこさんと同じく、華の声までもが異質なものへと変貌していた。

 肉体と思考を捕らえて動けなくしてしまう、かなこさんの声。
 遠く離れていても、それすら無視して射抜かれてしまいそうな、華の声。

 そして、俺はその声の持ち主たちが手を伸ばせば届きそうな距離にいる。
 完全に、動きを封じられた。
 たった今かなこさんに箸を突きつけられているというのもあるが、もうひとつ。
「おにいさんに危害を加えるというのならば、私は……」
 今の華を刺激したら、まずいことになる。
 『下手に動いたら彼女のなにかが爆発する』、と直感が告げている。
 それが何なのかはわからない。だから『なにか』という曖昧な、抽象的な表現しか出来ない。
 だが、華から噴出している気配から察するに、暴力的なモノであることは間違いない。
 その矛先は、確実にかなこさんへと向けられるだろう。
 それだけは防がなければならない。
 そしてそんな事態に陥るのを防げるのは俺しかいない。
 顎に手を当てて苦笑いを浮かべている十本松など当てにならない。

 『かなこさんの悪ふざけを止める』。
 それが今の俺に考えられる最良の事態打開策だ。
 まず、かなこさんの手を退ける。
 次に、華を冷静にさせる。
 単純だが、この手順でいくことに決めた。
(よし……!)
 空いている右手を動かして、かなこさんの腕を握った。
 ――つもりだったが、俺の手はただ握り拳を作っただけだった。
 気がついたら、目の前にいたはずのかなこさんは元の位置に戻っていた。

 彼女は手元にある弁当箱を布でくるんでいた。
 藍色の布でしっかりと結び目を作り終わった後で、鈴の鳴るような声を出した。
「ふふふ。華さんは本当に可愛いですわね」
 いつもの穏やかな微笑みで呆けている俺と、険しい顔のままの華を見つめている。
「冗談ですわ。あまりにお二人が仲良くされているものですから、つい」
 かなこさんは穏やかな口調でそう言ったが、華の表情は依然険しいままだった。
「……冗談が通じない場合もあるということをかなこさんは理解した方がいいですね。
 すみませんけど、私はこれで失礼します!」
 華はテーブルの上に広げていた弁当箱を手早くしまうと席を立った。
「ちょっと、待て!」
「おにいさん。弁当箱は私の部屋の前に置いててください。……それじゃ」
 静止する俺の声を聞かず、華はその場から立ち去った。
 
 その時の華は、額に軽くしわを寄せて、奥歯を強くかみ締めて、怒りを押さえ込んでいるように見えた。
94ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/03/27(火) 20:10:14 ID:ZX4xyh8k

 立ち去っていく華の背中を見送っていると、いままで黙っていた十本松がようやく声を出した。
「雄志君。君も大変だな。同情はしないが、苦情は出そう。
 なぜ君だけがそんなにモテているのか。これこそ、恋愛格差だと私は思うよ。
 毎年の賃金闘争でも取り上げるべき案件だね」
「…………」
 「黙ってろ。つっこむ気分じゃない」と言ってやりたいが、生憎そんなことを言う気分ですらなかった。
 華はというと、近くにある建物のドアを勢い良く開け放ち、中へと入っていくところだった。

「……」
 かなこさんも立ち去る華の背中をじっと、物憂げな瞳で見つめていた。
 もちろんこうなった原因は彼女にあるわけだが、その目を見ていると責めることがためらわれた。
「申し訳ありませんでした。
 また、雄志さまを不快な気分にさせてしまって……」
 なぜか、彼女が俺に向かって頭を下げた。俺に謝ってもらっても困る。
「俺じゃなくて、華に謝ってやってください。
 あいつは結構意固地だから、こうなるとなかなか口をきかないんです。
 だから、かなこさんの方から声をかけてくれませんか?」
「……わかりました。雄志さまがそうおっしゃるのでしたら、そのようにいたします」
 かなこさんはトートバッグの中に弁当箱を入れると、ゆっくりと立ち上がった。
「それでは、わたくしはこれで失礼いたします。ごきげんよう。雄志さま」
 両手を腰の前で合わせて、俺に頭頂部を見せるように礼をすると、
かなこさんは華の通ったドアの方へと向かっていった。

 華とかなこさんが居なくなり、中庭のテーブルの前に残っているのは二人だけになった。
「ここ、途端に色気がなくなったな」
 と、俺から十本松に話を振ってみる。
「まったくもってその通りだ。
 雄志君、何故君が色気を持ち合わせていないのかと不思議でならないよ」
「俺が持ってても仕方ないだろ、それ。……むしろ女のお前が持っていて然るべきだな」
「何を言っているんだ。私が男を惑わす色香をぷんぷんと匂わせていたら君に襲われてしまうじゃないか。
 そうなったらかなこと海の見える教会で愛を誓うことすらできないだろう? 私は浮気はしない性質でね」
 こいつは本気でかなこさんと結婚するつもりでいるのだろうか。
 その口から飛び出す無駄な喋りのように、悪い冗談だとしか思えない。
 十本松だって顔立ちは悪くないんだから、黙ってさえいれば男が寄ってくるだろうに。

 そもそも、なんでこいつは男装なんてしているんだ。
 性癖か?お遊びか?罰ゲームか?
 それとも悪い病気にでもかかっているんだろうか。
「なんだい、さっきからテーブル越しに私の顔を見たり肩を見たり胸を見たり。
 立ち上がってくれ、なんて言わないでくれよ。君に全身を視姦されるのは御免だからね」
「全力で否定させてもらう。
 何でお前が男装なんてしているのか、って疑問に思ってな。観察してただけだよ」
 一番気になる疑問をぶつけてみる。
 また訳のわからない、意味を成さない返事が返ってくるかと思ったが、
俺の目をじっと見つめたまま、顎に右手を添えた格好で沈黙していた。
95ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/03/27(火) 20:12:51 ID:ZX4xyh8k

「メッセージだよ」
 声の調子はそのままに、十本松が簡潔な返事をした。
「メッセージ?」
 おうむ返しに聞き返す。
「伝言だよ。かなこへ向けた、ね」
 ジャケットの襟を正し、ネクタイを軽く左右に動かしながら言葉を続けた。
「伝言の内容は……私はある人物に成り代わっているんだぞ、というところかな。
 つまり、『十本松あすかは誰かに成り代わっていることを、かなこへ暗に伝えている』。ということさ」
 テーブルに両肘をつき、組んだ両手の上に顎を乗せてから、十本松の台詞は終わった。
 それで充分だと言わんばかりににやけた笑いを浮かべているが、俺にはさっぱり理解できなかった。
「……お前が、かなこさんの昔の恋人の振りをしているとでも言うのか?」

 俺の言葉を聞いて肯定なり否定なりの言葉を返してくるかと思いきや、
右拳を唇に当てて、細い肩を揺らし始めた。
「ふ、ふふふふふふふふ。……ははははは、あっはははははは!
 ははは……違う。まったく違う。
 携帯電話とPHSは違う、というぐらいに違う答えだよ」
 首を右に振り、左に振り、もう一度右に振ってから俺の顔と向き合った。
「じゃあ、いったいなんだって言うんだ」
「人に聞く前に、自分で考えてみたらどうだい?
 ……と言っても、ヒントなしではわかるはずも無いね」
 右手をジャケットの内側に入れて、四角形をしたもの――1冊の本を取り出して、
テーブルの上に置いた。

 大きさは文庫本程度。青い背表紙はところどころ破けていて、
タイトルのようなものは記されていないという、本かどうかも疑わしいものだった。

 それをテーブルの上でスライドさせるように動かして、俺の前までたどりついたら、
這うような緩慢とした動きで右手を戻す。
 テーブルに左肘をついて左手に顎を乗せたまま、こう言った。
「その本を君にあげるよ。とても面白い本だから、熟読してみるといい。
 心が熟れて、膿んで、腐ってしまうほどに読みふけるがいいさ。フハハハハハハ!」
 わざとらしい笑い声をあげた後、十本松は立ち上がった。
 そして、細い指を全てまっすぐに伸ばして肘を90度に曲げ、腕を振りながら走り去った。

 奴まで走り去った後その場に残っているのは、俺と、華の作った弁当と、十本松からもらった本だけだった。

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少し短めですが、投下終了です。
96いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/03/27(火) 20:13:51 ID:Sz/kwEqI
間が開いて申し訳ありません
投下します
97いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/03/27(火) 20:15:12 ID:Sz/kwEqI


 ――生首が其処にある。

 瞳、瞳、瞳が見ている。ただの球体になりはてた眼球がまっすぐに見てくる。いや、神無士乃の眼球
は僕を見ていない。ただ、こっちを向いているだけだ。その瞳にもう意思はない。意志を造るのは脳味
噌で、けれど脳味噌へと血を送るための器官は首から切り離されて遠くへ遠くへ遠くへと去って行先を
うしなった首の血管からはだらだらとだらだらだらと零れ落ちる雫の色は赤で神無士乃の体は人間型か
ら球体へと変わってしまった骨の白い断面が神経を縺れながら地面に垂れて床に赤い赤い赤い赤い赤い
血が血が血が地面へと零れて――
 神無士乃の生首。
 生首が、そこにある。
 生首が、僕を見ている。
 僕を、僕を、神無士乃の生首が見ている――
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
 口から漏れる悲鳴が自分のものだとは気付かなかった。気付けるはずもない。声はもう声
でもなんでもなくてただの音の塊として喉が震えるだけで震える喉は痛くてその痛みに狂い
そうになって既に狂っていることを思い出して僕は僕は狂気からひっくりかえって正気へと
戻ったせいでクルってしまう。
 くるくると狂う。
 くるくると回る。生首が回る。
 神無士乃の生首が。
 生首。
 それは、首だ。
 首だけだ。
 体から切り離されて、首だけだ。
 体。
 体はどこだ?
 神無士乃の体はどこにある?
 離れてしまったなら、くっつけないと。くっつけないと、離れてしまう。
 永遠に。
 命が、遠くへ。
 遠くへ、逃げてしまう。
 逃げる。
 逃げ水。
 逃げ水のような、血の池が。
 神無士乃の――血液が。

「声が、声が、声がよく響くものだね里村くん」

 あああ、という音を貫くようにして声。僕の声でも生首の声でも、生首を前にして
茫然としている神無佐奈さんの声でもない。
 聞き覚えのある声。
 聞き忘れることのない声。
 如月更紗の――声。
「こんな、こんな、こんな夜中に騒いでいては――鬼が出てしまうよ、蛇が出てしまうよ」
 すたんと。
 声と共に着地してきたのは、男性のようなタキシード姿に身を包む少女。肩甲骨のあたりまで伸ばされた黒い髪。
白いはずのシャツには返り血がついているせいで、赤い水玉模様に見えた。
 その手に持っている長い長い長い、30センチものさしをかみ合わせたような大鋏も血に濡れている。
 赤い血だ。
 神無士乃の――赤い血だ。
 大鋏は、血で濡れている。

 あの鋏が、神無士乃の命を刈り取ったのだ。

 それ以外に、考えられるはずもなかった。
98いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/03/27(火) 20:16:08 ID:Sz/kwEqI

「大丈夫かい、大丈夫かい――里村くん。そんな姿をして」
 言いながらも如月更紗は近づいてこない。上へと昇る梯子に背をかけ、足を斜めに交差させ
て寄りかかっている。右手には何も持っていない。白手袋には何も持っていない。ただし左手
の手袋の色は赤く染まっている。
 左手に持つ鋏と同じように。
 大鋏は、赤く血に染まっている。
「如月――更、紗」
「その通り、その通りだとも里村くん。如月更紗さ。そして――」
 ――マッド・ハンターだ。
 くるぅりと。
 左手に持った鋏を如月更紗は――いや、マッド・ハンターは回転させた。鋏先についた血が
跳び、黄い地面に水滴の跡をつける。暗すぎて、それが赤なのか黒なのか判然としない。
 赤黒い。
 赤くて、黒い。
 マッド・ハンターの姿のように。黒いタキシード姿が、なぜだか、赤いタキシード姿に見え
てしまう。
 血に――染まっている。
 血に、染まりきっている。

「士乃、士乃ちゃん……? 士乃ちゃん……、士乃、ちゃん……」

 神無佐奈さんが、動いた。
 へたりこんだまま、立ち上がることすらできずに――けれど、自分の娘の名前を呟きながら
這いずり始める。ずり、ずり、と、冷たく痛いだろう床とすらいえない地面の上を、神無佐奈
さんは這う。服が汚れるのも肌がすれるのも気にしていない。僕の姿も、侵入者であるマッド
・ハンターの姿もみえていないだろう。
 一心不乱に。
 乱心不和に。
 自分の娘のもとへと。
 自分の娘だったものへと。
 這っていく。
「士乃ちゃん……?」
 それが、そうであると認識できないのかもしれない。
 問いかけるように言いながら――神無佐奈さんは、神無士乃の生首の元へと、這って行く。
 その先に待つのは。
「ふぅん――」
 生首と、這う神無佐奈さんを、見下ろすマッド・ハンターがいた。
99いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/03/27(火) 20:17:10 ID:Sz/kwEqI

「――ふぅん」
 呟いて。
 こつん、と、マッド・ハンターは脚を動かした。組んでいた足が前へと伸び――地面に転が
っていた神無士乃の生首を爪先でつつく。あと一歩――あと一這で神無佐奈さんの手が届くと
いうところから、首は無常にも転がり離れていく。
 ころころ。
 コロコロ。
 ころころと。
 僕の前へと――神無士乃の生首が、転がってきた。
「…………神無、士乃」
 ――はぁい、先輩、なんですか?
 そんな返答を、聞いたような気がした。
 けれど勿論それは幻聴で、生首だけになった神無士乃は何も言わない。何も見ない。何も考
えない。うつろな瞳だけが的を射るように僕を定めている。
 眼球。
 眼球が見ている。
 首だけになった神無士乃が、僕を見ている――

 ――しゃきん、と。

 鋏を鳴らす音が聞こえた。
 顔を上げて見れば、マッド・ハンターがこれみよがしに鋏を開き、閉じたところだった。
 準備運動のように。
 準備をするかのように。
「あ――――」
 足元にいる神無佐奈さんはそれを見ていない。彼女が見ているのは、自分の娘だけだ。首だ
けになってしまった神無士乃を、神無佐奈さんは見つめている。手は届かない。僕のところま
で転がってきた首へは手が届かない。
 何も届かない。
 何も。
「士乃――――」
 それでも。
 彼女は母親だから。
 娘の下へと、再び這いずろうとして。
 その背中に。

「首、ニつ――」

 マッド・ハンターの、鋏が、
100いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/03/27(火) 20:18:44 ID:Sz/kwEqI

「――――――やめろ!!」
 気付けば。
 気付けば、僕は叫んでいた。
 姉と異常な愛情を築き、姉を殺された相手を殺そうとし、自分を殺しにきたような相手に守
られることを誓わされ、自分を監禁するような相手を幼馴染として、その幼馴染を『どうでも
いい』と思い、姉さん以外はどうでもいいと思っていた――僕が。

 制止の声を、あげていた。

「――――」
 まったくもって驚くべきことに、マッド・ハンターの手が止まった。振り下ろされかけてい
た鋏は、慣性の法則も反作用も完全に無視して空中で固定されていた。そこにどれだけの力が
必要だったのか僕は知らない。分かることは、僕が止めなければ――その力は、全て神無佐奈
さんの体に突き刺されていたということだけだ。
 そうすれば、死ぬ。
 当然のように、死ぬ。
 神無士乃と、同じように。
 姉さんと――同じように。
「何――何やってんだ、お前!」
 気付けば、ではない。
 僕は、僕の意志でマッド・ハンターへ――いや、違う、狂気倶楽部の人間に対してなんて僕
は怒らない。
 認めたくない。
 認めたくないが――認めないといけないだろう。
 僕は。

 如月更紗という人間に対して、怒鳴っていた。

 怒って、いたのだ。
「何あっさりぽっくり殺してんだよ! 一休さんかお前は!」
「無休さんとは働き者だね」
「いい感じなボケが聞きたいんじゃねえ! 何殺ってんだ! お前は――」
 お前は。
 その先何と言うべきか、言葉に詰まる。
 如月更紗は、僕の何だというのだろう?
 護衛か。
 ただのクラスメイトか。
 姉の仇か。
 それとも――
 その答えは、まだ出ていない。
 それでも。
 わずかな時間の触れ合いだったにしても、如月更紗のことが嫌いではなかったからこそ――
こんなことを許せるはずもなかった。

「――お前は、僕の身の安全を保証するんじゃなかったのか?」

 口から出た言葉は――最初のあの日に、如月更紗から言われた言葉だった。
101いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/03/27(火) 20:19:48 ID:Sz/kwEqI

 その言葉をどういう意味にとったのだろうか。如月更紗はもっともらしく頷いて、
「なるほど、なるほど、なるほどね。けどね、けれどね――君がどうして怒っているのか私に
は分からないよ」
「分からない、だって……?」
「そうさ、そうだよ。だって」
 如月更紗は。
 血に濡れる鋏を携えたままに、あっさりと言ってのけた。

「――君の敵を殺しただけさ」

「…………」
「それで、それなのに――どうして責めるんだい? 人殺しなんて、どこにだってあることだ
ろう」
 あっさりと。
 当然のように。
 何気なく。
 如月更紗は、言う。
 その言葉に澱みはない。嘘や偽りどころか、反省や後悔どころか、歓喜や達成感すら感じさ
せない声。真実それが『当たり前』だと思っている声。如月更紗にとっては、殺し殺されるこ
とすら当然なのだと物語っている。
 たとえばここが戦場なら――如月更紗が屈強な軍人ならば――それも受け入れられたのかも
しれない。
 けれど、違う。
 僕の目の前に立つ少女たちは、少女でしかなくて――ただのクラスメイトと、幼馴染のはず
だ。なのに一方は首が切り離され、一方は切り離した鋏をしゃきんしゃきんと鳴らしている。
 おかしい。
 狂っている。
 狂気だ。
 狂気――倶楽部。
 狂気倶楽部の――マッド・ハンター。 
 思う。
 僕の姉さんも、彼女たちと、同じだったのだろうかと。
 彼女たちと同じだったからこそ――当然のように殺されて死んだのかと。
 僕はその思考を振り払い、真下まで転がってきた神無士乃の生首へと眼を向ける。
 生きてなどいない。
 ただのモノが、そこにある。
「その子は……僕の幼馴染だった」
「幼馴染だ、幼馴染さ、幼馴染なだけで君は興味なんてありはしなかった」
「生きて――たんだ」
「今は死んでる、今は死んでいる、完膚なきまでに死んでいる」
 問答。
 わけのわからない、やりとり。僕は何が言いたいのかも、如月更紗から何を聞きだしたいの
かもわからないままに言葉を続ける。
「死んだんだぞ!?」
「そうだね、そうだよ」
「お前が――殺したのか?」
 わかりきった質問をする僕に。


「そうだね、そうだよ。私が殺したんだ――『彼』が君のお姉さんにしたように」

 わかりきった答を、如月更紗は返した。

102いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/03/27(火) 20:20:37 ID:Sz/kwEqI

「…………」
 お姉さん。
 僕の、姉さん。
 里村春香――三月ウサギ。
 殺されてしまった、僕の姉さん。
 一年前に、姉さんが死んだように。
 今――神無士乃も、死んでしまった。
 殺されて、しまった。

「遂に、終ぞ、終に――復讐の花は一つ? 二つ?」

 くすくすと笑いながら、如月更紗はしゃきんと鋏を鳴らした。鳴らすだけで、それ以上は振
ろうとしない。不様に這いずる神無佐奈さんを突き刺そうともしない。彼女の興味は、もう何
処にも向いていない。
 きっと、僕にしか向いていない。
「なあ、如月更紗」
「なんだい、里村くん」
 僕は。
 ずっと、疑問に思っていたことを――
「本当に――」
 この状況で、問いかけた。


「本当に――姉さんを殺したのは、三月ウサギなんだろうな」


 考えていた。
 如月更紗は言った。姉さんを殺したのは、五月生まれの三月ウサギなのだと。アリスが狙っ
ていると。チェシャが見張っていると。そんなことを滔々と語ってのけた。僕を守るという彼
女は、僕を守るために様々なことを教えてくれた。
 それは構わない。
 問題は教えてくれた人間が如月更紗一人であって――それの成否を確めてくれる人間が、誰
一人としていないということだ。実際に起こったことといえば白ドレスの少女に襲われただけ
で――それ以外は、全て如月更紗の話しの中でしか進んでいない。彼女が嘘をついている可能
性が、ないわけではないのだ。
 そうでなくとも、きっと。
 如月更紗は、『本当』を話していない。
 全てを――いまだ、語っていない。 
 エピローグには遠すぎるとばかりに。
 ただの疑問でしかなかったそれは、今の如月更紗の姿を見て――神無士乃をためらいもなく
殺してのけた姿を見て、僕の中では疑惑へと変わっていった。わずかなながらにうちとけてい
た心が、再び敵対すべくとがっていくのがわかる。
 如月更紗――マッドハンター。
 信頼する理由など、どこにもないのに。
 口約束だけで、僕はこいつに、ついていっている。
 そう。
 僕は、疑問に思ってしまったのだ。
 疑ってしまったのだ。
 姉さんと旧知の仲だという如月更紗に対して。


 マッド・ハンターが、姉さんを殺したのではないかという――疑いを。


 それは――全ての前提をひっくり返す疑問だったけれど。
 如月更紗は『さぁね』とでも言いたげな微笑みを返すだけだった。
 何も、はっきりとしたことは、言わなかった。
 微笑みの意味は、分からない。分かろうとも、思わなかった。
103いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/03/27(火) 20:21:11 ID:Sz/kwEqI

「今夜」
 微笑みをやめないままに、如月更紗は言う。
「君のお姉さんが死んだ、君のお姉さんが死なされた、君のお姉さんが死なれた場所に――

『彼』を呼んだ。『彼』は遠くへいくそうだから――これが、最後の機会というわけだね」
「…………」
 彼。
 五月生まれの、三月ウサギ。
 姉さんを殺したと、如月更紗が言った男。
 その男と――ついに、合えるのか。僕を助けにきたのだけでなく、それを言うために、如月
更紗は此処へきたというのか。一体、僕がこの地下で閉じこめられている間に、上で何があっ
たというのだろう。
 分からない。
 でも。
 今夜――全てが、分かる。

「其処で物語を終えよう。おしまい、おしまい、おしまい――」

 お終い、お終い、お終い――そう繰り返しながら、かつん、かつんと、如月更紗は踵を返し
た。血にぬれた手を拭いもせずに、梯子を昇っていく。如月更紗の姿が上に消える。
 後に残ったのは。
 神無士乃の生首を抱きしめる、神無佐奈さんと。
 つながれたままの僕と。

 反対側の壁に立つ――姉さんの姿。

 姉さんは、微笑んでいる。
 僕を見て、うっすらと微笑んでいる。
 ――ああ、わかってるよ姉さん。
 微笑む姉さんに、僕はつながれたまま――微笑み返す。
 そして、思う。
 そして――誓う。


 ――全部、お終いにしてやる。

104いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/03/27(火) 20:22:35 ID:Sz/kwEqI


     †   †   †


 放心した神無佐奈さんに鍵を外してもらい、僕は外へと出る。外は良い天気で、良い朝だっ
た。東の果てからは太陽が昇ってきている。なるほど、曜日感覚も時間感覚もすっかり忘れて
いたが、今は朝だったらしい。
 朝日がこれほどまでに清々しいものだとは思わなかった。
 清々しい朝の中、僕は閉じ込められていた倉庫を――神無士乃の父親の物なのかもしれない
――出た。監禁場所は神無士乃の家ではなかったらしい。ただそれでも、それほどまでに遠く
離れていないのが幸いした。歩いて帰れる距離だ。
 僕は爽やかな朝の中を、ぼろぼろの体を引きずって家まで帰る。長い時間監禁されていたせ
いで、痛まないところなどなかったけれど、不思議と気にならなかった。
 家に帰って、トイレで胃の中のものを残らず吐いて、僕は真っ直ぐに自分の部屋へと戻る。
 夜はまだ遠い。
 それでも準備だけはしておくべきだろう。ぼくは自分の机の引き出し、その一番上を開けた。
 そこに入っているのは、鈍く銀色に光るナイフだ。刃の長さは二十センチほどで、 如月更
紗の持つ鋏よりも短いが、使い勝手なら彼女のソレよりも良いだろう。
 魔術単剣だ、と姉さんは誇らしげに言っていた。
 魔術が何なのか、僕は知らない。
 僕にとっては、これは姉さんの遺品であり。

 ――人殺しの武器だ。


「お前がその気なら――僕も、そうなるまでだ」

 お前。
 それが、姉さんを殺した『五月』へと向けられたものなのか――それとも神無士乃を殺した
如月更紗に向けられたものなのか分からぬままに、僕は独り呟いた。



 そして夜が来る。



<続く>

105いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/03/27(火) 20:24:04 ID:Sz/kwEqI
以上で終了です。
しばらくは間をあけることなく投下できそうです
106名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 20:38:16 ID:9Zsedw4q
キタ━━(゚∀゚)━━!!
華とお嬢様の嫉妬が可愛いことのはぐるまも
久々の更紗が素晴らしい&クライマックスにwktkのいない君も
待ってましたァ!
107名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 21:22:23 ID:aHzv2HJI
>>88
キター!待ってました!GJですよGJ!
108名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 22:48:24 ID:mCIagdKT
連続投下キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η *・゜(n‘∀)゚・*( n‘) :*・゜ (  ) *・゜(‘n ) ゚・* (∀‘n) ゚・*η(‘∀‘n) ゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!!!

>>95GJ! しかしヒロイン3人いるのに十本松が一番気になってしまっている俺ガイルw 

>>105GJ! 冬継君にしか興味のない更紗が凄くいいです(*´д`*)ハァハァ
ここまでの病みを見せてくれるとはw 冬継君と更紗に幸あれ!
109名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 00:06:05 ID:xeI4X/k0
二人ともGJ!
もう感無量。
110慎 ◆lPjs68q5PU :2007/03/28(水) 00:17:52 ID:bpuO8QO6
|
|`ヽ  こそっ
|リソ|ノ    誰かいる・・・でも投下するなら今のうち・・・
|゚ノ
|
|

2ルート「絵里のうちに行く」第一話です。では。
111慎太郎の受難2ルート第一話 ◆lPjs68q5PU :2007/03/28(水) 00:20:46 ID:bpuO8QO6
・・・俺は今までのことを考えた。
今まで自分は素直に生きたことがあったか?自分の思うままに行動してきたか?
いつも周りばかり見て、自分の身にはなにも起きないようただのらりくらりとすごしただけじゃないのか?
考えてみろ。
今までの俺は心の中で思うだけ、または冗談みたいに言うだけで、自分の言いたいことなんて、素直に言ったためしがないじゃないか。
そう考えれば今日は自分を変えるチャンス。今日こそは絵里に自分の気持ちを伝えなきゃいけないんだ。
絵里のところへ行こう。奈津子には断りをきちんと入れよう。
俺はそう心に決めた。決めたはずだった。
なのに、心の中はもやもやしたままだった。自分がやりたいことをやるって決めたはずなのに、何か後ろめたい。
重たく感じる罪悪感、そして決定を再考するよう求める心の声。
俺の決意とは裏腹の、俺の心。
奈津子に断ることが後ろめたいのか?何故?
相手が傷つくところを見たくない?もうそんなことは言ってられない。
何かを手に入れるためには何かを犠牲にしなくちゃだめなんだ。
奈津子にはちゃんと断りを入れる。中途半端であるよりは。そのほうが絶対いいはずだ。
こんな自問自答を練習中ずっと繰り返した。でも心は一向に晴れない。もしや俺は奈津子のことが好きなのか?
馬鹿馬鹿しい。おれはずっと絵里のことが好きだったんだ。そんなことはない。じゃあこの心のもやもやは何だ?
結局練習中には答えはわからなかった。奈津子にきちんと断りを入れれば、わかるだろうとも思った。
否、分からなくとも心のもやもやは晴れるだろうとも思った。
ただ練習中ずっとこんな調子だったためか、周りから見るとかなり集中力が落ちていたらしい。
音は間違う、楽譜は一段飛ばしで読む。周りからは練習中痛い視線がばしばし俺のほうに飛んできていた。あぁ普段はこんなでもないのに・・・
練習が終わった後、俺はこれはかなりの人数から大目玉食らうとな思い、一人で昼飯を食うことにした。
普段どおり部活の男どもと一緒に食ったら、今日のことはネタにされること間違いない。
今日という日ぐらい静かに食わせてもらいたいものだ。
奈津子へのいいわ・・・ではなく、いかに傷つけずに断るかの言葉も考えなきゃいけないしな。
ところで、うちの学校の校舎はアルファベットで言うところのHの形をしている。右奥にあるのが音楽室で、部活の活動場所。4階にある。
そして今俺がいるのが同じ4階の左奥の特別教室。自分たちのパート練習の場所だ。
いつも、誰もいない、一人でいたいときに俺が来る場所。普通の教室に比べ広くそしてがらんとしている部屋。今日はここで―
がらっ
「・・・慎ちゃん、答え、聞きにきたわ」
奈津子、襲来。
112慎太郎の受難2ルート第一話 ◆lPjs68q5PU :2007/03/28(水) 00:22:36 ID:bpuO8QO6
さてどうしたものか、こんなにも早く来るとは。俺は困惑した。まったく何も考えていない。
とりあえず一言。
「うっす、まず飯食うか?」
「・・・・・・・・・・・・・うん」
奈津子は俺の前に座り、コンビニで買ってきったパンを食べ始めた。
机ひとつ越しに、対面して座っている。奈津子からは普段の姿からは想像できない、なんとも言えないオーラが出ていた。
そのオーラに当てられた俺は緊張して、手が汗だらけになった。
長い沈黙。その沈黙をやぶるように奈津子が尋ねてきた。
「・・・今日練習中ずっと今日どうするか考えてたでしょう?」
「・・・何で?」
「だって、あんなにミスする慎ちゃん始めてみたもん。ばればれだよ。」
・・・言葉が出てこない。そのまままたしばらく沈黙が続いた。
また言葉を出したのは奈津子のほうだった。
「絵里さんのところに行くんでしょう?」
「へっ・・・いや、その・・・」
「答えはイエスかノーかだけにして」
「そうだ・・・けどどうして絵里のところとわかったんだ?俺はそんなこと一言も言ってないが」
そう俺にとっての最大の疑念。そういえば絵里もあのとき奈津子からのメールだと当てていた。
偶然にしてはできすぎている。今日もいきなりだ。この二人にはもともと面識はないはずだ。
ということはそもそもなんで名前を知っているのか?ということにもなる。
俺の頭の中は疑念でいっぱいになった。
「ほ、ほら、あれよ女の勘って言うやつ。でさ、絵里さんってあの日曜にあった人?」
・・・もうひとつの疑惑。何故奈津子は記憶を取り戻したのか?
あのことを知っているのは、当事者4人だけのはず。そして、俺は何も言ってない。
今の発言からすると、やはり絵里との面識もなさそうだ。
恵か?しかし、恵こそ奈津子の記憶が戻ることを快く思ってなかったはずである。
つまり、誰かが教えたという可能性はかなり低いと見てもいいはずだ。
鈴木?そもそもあいつは奈津子としゃべらん。
となると忘れていたふりをしていたということなのか・俺は思い切って聞いてみることにした。
「まぁそうなんだが。それよりおまえさぁ、月曜日そんなこと何も言わなかったよな?突然言うから俺びっくりしてるんだが。」
「あーあのときはあれよ、言わないほうが・・・その空気読むってやつ?だから言わなかったのよそれより・・・」
「何だ」
「絵里さん、どんな人?慎ちゃんとどんな関係なの?」
・・・重苦しい空気が流れる。奈津子の目には普段と違い強い意思が宿っていた。
言いなさい、聞くまで返さないんだから―そう言うように、じっとこちらを見据えている。
説明に迷ったが、いわなきゃどうしようもないと思い、事実をまず言おうと思った。
それなら無用な問題は避けられるはずだ。
113慎太郎の受難2ルート第一話 ◆lPjs68q5PU :2007/03/28(水) 00:23:34 ID:bpuO8QO6
「あいつとは幼馴染だ。幼稚園も小学校も中学校も一緒でな、高校もここを志望してたんだが、落ちてしまってな。
んでこの前は買い物に付き合えって言われて付き合っただけさ」
嘘は何一つ言ってない。
「じゃあ何であんな夜遅くまでいたのかなぁ?買い物だけだったら、夕方には帰れるじゃない?」
ごもっともで。しかしここで負けるわけにはいかない。
「いやな、あいつが行きたいっていうパスタ屋があってなそこに行ってたんだわ」
「お昼ごはんにはできなかったの?」
それも正論。しかしまだ負けるわけにはいかない。
「あいつが3時からって言うからさぁ・・・昼には遅いだろ?だから夕飯にしたってわけ」
「ふーん・・・」
奈津子はあまり合点がいかない、といった表情をしている。これじゃまるで不倫した疑いをかけられた夫が妻に詰問されてるのと一緒だ。
ペースを握られてしまっている。流れを変えなければ。
「でさ・・・」
おれはペースを戻そうともう一度疑問を口に出そうとした。しかし奈津子がそれをさえぎるようにさらに質問してくる。
おそらく今日最も聞きたかった質問を。
「今日はなんで絵里さんのところへ?」
一瞬俺の思考は停止した。なんと答えよう。正直に言ったほうが無難なのか。
「早く」
奈津子が答えの催促をしてくる。もう何も考えれなかった俺は話すことに決めた。別段いってもまずいことはないだろう。
「家庭教師をしに」
しかしこれがまずかった。
「じゃぁなんで私の家にこれないのかなぁ?終わった後来れば良いでしょう?」
3度目のごもっとも。
「それとも泊まってて〜なんて言われたのかしら?」
ずばり、である。今日の奈津子は冴えている。何の言い逃れもできないのか?
「いや、その・・・」
「さっきいったこと忘れた?答えはイエスかノーだけよ?答えられない?寝言は寝て言うものよ。早く答えて」
顔は笑ってる。にこやかに微笑んでる。しかし口調は笑ってない。目もよく見ると笑ってない。
しかし怒ってるという感じではない。何も感じ取れない、そういう表現のほうが正しい表情のようだ。
いろんな感情がごちゃ混ぜになっているようだ。こんな奈津子は始めて見る。
いつもにこやかにぼけてくれる奈津子。そんな奈津子を俺は・・・
頭が真っ白になる。そして知らずのうちに声が動いていた。
「・・・そうだ。」
空気がピンと張り詰めた。俺は奈津子にいまから何をされるか、恐怖でいっぱいになった。
しかし次の奈津子の言葉は、予想外、否言葉は予想内だったが予想外のことが起こった。
114慎太郎の受難2ルート第一話 ◆lPjs68q5PU :2007/03/28(水) 00:24:45 ID:bpuO8QO6
「・・・ぐすっ」
奈津子が―泣き始めた。
「・・・・・どうして」
「ん?」
「どうして!私じゃだめなの?絵里さんじゃなきゃだめなの?私はずっと慎ちゃんのこと見てるんだよ?
いつも一緒に入れるんだよ?学校でも、部活でも・・・なのに、なのに、どうして!どうして絵里さんなの!」
そういって泣きじゃくり始めた奈津子。そしてずっとずっとどうしてどうしてと言いつづける。
「だって高校は行ってからずっと私が傍にいたのよ・・・なのになのに・・・っ」
俺ははっきり言うとどうすればいいかわからなかった。こんな経験初めてだし、こんなときに経験するとは思わなかった。
でも、ベストじゃなくとも、ベターであるはずの答えを俺は知っている。いやたぶんこれだとしかいえんのだが・・・
つまりそれは・・・謝ることだ。
「すまん」
奈津子は顔を上げ目を見開いてこちらを見る。
「すまん奈津子、お前を泣かせるようなことをして。」
「慎ちゃん・・・・」
「すまん。許してくれ・・・」
机に両手をつき頭を何べんも下げる。
「・・・・・・・・・・・・」
奈津子は無言のままだ。
「すまん奈津子、何でもするからこのとおりだ!」
それでもなお謝り続ける俺。はたから見れば痴話げんかの結末だ。もしくはとうとう不倫がばれた夫が妻に謝ってるところか。
そんなあほな思考をしてると奈津子がようやく口を開いた。
「謝らないでよ・・・」
「へっ?!」
「だから謝らないで。これは私のわがままなんだから」
「でも・・・」
「でももなんでもないよ。終わり。この話は終わり」
「いいのか?奈津子はそれで」
「いいの。わがまま言ってごめんね。」
・・・・いいのかこれで・・・なにかすっきりしない。奈津子は許してくれたようだ。表面上は。
しかし俺はすっきりしなかった。なぜなのか・・・その理由はわからなかった。
「でもさ、慎ちゃん言ったね」
「何を」
「なんでもするって」
115慎太郎の受難2ルート第一話 ◆lPjs68q5PU :2007/03/28(水) 00:25:31 ID:bpuO8QO6
・・・しまった。
「いやあれはなぁ・・・その何だ勢いで言ったというか」
「待ったはなしよ!」
いや奈津子さん?こわいですよ?
「そうねぇ・・・じゃぁ絵里さんとこ行くまであたしとおしゃべりして。」
・・・・・・・へ?
「おい奈津子そんなことで良いのか?」
「いいわよ。それとも拒否するつもり?」
「いえそんなことは・・・」
「じゃぁこうしようか。これから慎ちゃんは私に対しては『サー!イエスサー!』っとしか言っちゃいけないとか」
・・・・拒否権なしですか。
「大体どこでそんな言葉覚えてきた?」
「映画で見たの〜」
たくっ昨日の絵里といい変なものばっかり見ているな・・・そういえば昨日の絵里の言葉の元ネタになったアニメってなんだったんだろう?
まぁあいつの性格のことだ、何かのラブコメかなんかでの痴話げんかでのワンシーンだろう。
俺は昨日のことは忘却のかなたへと飛ばすことを決めた。
「よしったまにはこんな日も良いさ。とことんしゃべってやる」
俺はせめてもの償いとして奈津子に付き合うことにした。
それから時間にして4時間。学校のこと、部活のこと、友達のこと・・・俺たちは多くのことをしゃべった。
奈津子と会話するのは今日が初めてじゃない。でも今日ほど楽しかったことはない。
何故だろう?まぁ理由なんてどうでも良いのかな。とにかく今の時間はとても楽しい。それで良いじゃないか。
時間はあっという間に過ぎた。もう下校時刻だ。
「おい奈津子、帰る時間だぞ」
「うん、そうだね」
すうと2人とも立ち上がる。
「ねぇ慎ちゃん」
奈津子がぽつりと言う。
「何だ?」
「今日楽しかったな。ずっとこんな風な時間が過ぎればいいのにって思った」
「・・・・・・・・・・・」
「でも、だめだよね。慎ちゃんは絵里さんのところに行っちゃうんだもんね」
「・・・・・・・・・・・奈津子」
「・・・あたしはね駅前にいるわ」
「へ?」
「ずっと待ってるから。慎ちゃん来るのずっと待ってるから」
「奈津子・・・」
「じゃ、また明日ね慎ちゃん。早く行かないと絵里さんに怒られちゃうぞ〜」
奈津子はいたずらっぽく笑ってそう言った。その表情は今日奈津子が見せた表情の中で最も魅力的で、
そしておれの心の中のもやもやをさらに大きくするものだった。
116慎 ◆lPjs68q5PU :2007/03/28(水) 00:30:41 ID:bpuO8QO6
というわけで今回はここまで。次回絵里家にて。奈津子はある意味病んでるんだろうけど、まだ開花しきってないということです。
こちらは普通のHAPPI−ENDにする予定。ちなみに絵里ルートではなく奈津子ルートだったりします。
伏線何点かはってっみました。こっそり分からないように。別ルートで回収したりする予定。
久々の投稿、アンド執筆はなかなか大変なものになりました・・・・今回も短めですね。
ではでは。あと、上2人、ことのはぐるまといない君、お疲れです。
どちらも久々の投稿だったのでwktkして待っていたので楽しく読めました。
ではでは。
117名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 00:50:15 ID:1CGz88/w
なにこの投下ラッシュはwww
どれもこれもGJ!続きwktk
118名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 01:04:51 ID:efmWe5cc
イヤッホウ! 投下ラッシュ万歳!
どいつもこいつも続きが楽しみだぜ。
119名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 01:35:26 ID:Ej+/izBp
お久しぶりです!GJ!
しかし昨日今日は名作が次々復活して、一体何の祭りの前兆ですか!?

しかし、>>116が意味深ですな・・・。あくまでこのルートが奈津子エンドなのか、
それとも”穏健に終わる”奈津子エンドなのか。是非とも続きが見たいですな。
120名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 02:49:19 ID:v/UztMhi
スピードグラファーの変態歯科医を女に変換したら、良いヤンデレになりそう。

女歯科医は、何ヶ月に歯科検診に来る主人公の口の中が堪らない程好き。
主人公の乳歯を宝物として、いつも持ち歩いている。
自慰の際、乳歯を舐めるだけでは飽きたらず、秘所に擦りつけたり挿入したりする。
ちなみに得意プレイはDキスと顔面騎乗。
121名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 08:00:19 ID:ze8whDje
投下ラッシュがキテタ━!作者様方GJ!!
>>95かなこさんと華の開戦?にwktkしたが十本松の強烈なキャラにやられたw
>>105更紗分補給完了! しかもこれはかなりの病みっぷり(*゚∀゚)=3ハァハァ
しばらくは連続投下あるのでしょうか?wktk
>>116待ってました! 奈津子が普通に可愛い
でも色々裏設定ありそうで今後の展開が楽しみ
122名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 08:30:02 ID:YN10pMZ0
今さら聞くのもなんだけど、「いない君といる誰か」の主人公である
「冬継」はなんて読めばいいんだ?ふゆつぐ?とうけい?
保管庫のお話を読んでもわからんかった。誰か教えてくださいな。
123名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 09:54:28 ID:h5syMFS9
「ふゆつぐ」としか読まないだろ、常識的に考えて……。

と一瞬思ったけれど、最近の名付け事情からすれば
「とうけい」と読んでもおかしくはない……のか?
124名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 10:58:29 ID:60h3xTI4
実は「うつ」と読むかも知れないぞ
125名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 12:51:42 ID:c/L+3D8o
ふゆつぎ に一票
126名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 13:08:51 ID:fE7ER88d
ああもう、どれから読んだらいいのか迷っちまうぜ! なんという贅沢なんだっ!

>>120
変態女医っていうと俺は二番町眉子が思い浮かぶな。
患者の脚が綺麗だからってちょん切ってホルマリン漬けにして持ち帰っちゃったり、
その患者をリハビリ中に弄んだり、ナースに食指を伸ばしたり……
127上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/28(水) 20:05:09 ID:EUQSeXtA
>>56
ご意見ありがとうございます。
収集がついていないように感じられたのは、このルートが結果だけを意識して作られた話だからだと思います。
もう一つの理由として、誠人が狂うのが突発的過ぎたというのがありますかね。
勿論他にも理由はあるかと思いますが、本ルート以外の話は基本的に結果だけを意識して書いていますので、
それがご不満とあらば申し訳ありませんでした。
今後は更に精進していこうと思う次第です。

後人によるとは思いますが、私は基本的にどんな意見でも貰えれば嬉しいと思っていますので。
厳しい意見も実にしていきたいので、「ここ変だよな」等思われたら指摘して下さると嬉しいです。

では、「そのまま行かせる」のB-2ルートを投下します。
128上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/28(水) 20:06:18 ID:EUQSeXtA
「加奈の、好きにしてくれ…」
 俺には止める事が出来なかった。
 別に止める理由もなかったし、加奈自身が”ちょっと”と言っているんだから本当に
些細な事なんだ。
 そんな事をわざわざ気に留める必要もない、ある筈がない。
 なのに………
「ありがとう…」
 俺と全く視線を合わそうともせず俺の傍を離れていこうとする加奈に、言い表せない
ような奇妙な『不安』を感じているのは何でなんだ…?
 俺は加奈の幼馴染だ…加奈の彼氏だ…”加奈が一番信頼してくれている”人間なんだ。
 その俺が、加奈を信頼しないでどうするんだよ…っ!
 沢崎誠人よ、お前はさっき加奈と誓い合ったばっかじゃなかったのか…?
 独り善がりせず、意思疎通を通して相手との『信頼』を何よりも大切にする事を…。
 だったら、加奈に対して多少なりも疑念を抱くというのは失礼な行為だ。
 それに、『信頼』は”お互いが”信じ合って初めて成立する至極の関係だ。
 ”一人でも”欠けたらそれはただの一方通行の感情にしか為り得ない…。
 そして加奈のこの念を押すような感じを含む言葉は、俺を信頼しているが故のものだ。
 そう、加奈の言葉には”許可への欲”ではなく、『念押し』の感じが強く滲んでいた。
 それは加奈が俺を信頼していなければ自然に出来る筈がない芸当…。
 加奈が俺を信頼している以上、”俺が”加奈を信頼すれば『信頼関係』は成立する。
 だから、俺は『信頼関係』の確かさを加奈自身に求めた。
「…加奈、”気を付けてな”…?」
 既に俺の前を通り過ぎ、部屋の扉の前に立っているであろうと思われる加奈は無言だ。
 本当は今の俺を取り巻いている不安の根源を知りたくて加奈の表情を伺いたかったが、
その行為すらも加奈を信頼していない証拠になりそうで怖かった。
 だから俺は振り向けなかった。
「心配してくれてありがとう、誠人くん。大丈夫だから…」
 そう言い残すと、加奈は小さな音を立てながら部屋を出て行った…気がする。
 加奈のこの言葉に甘えて、自分で納得して、加奈の表情も確認せずに送ってしまった。
 …送って”しまった”?
 俺は一体”何を”危惧しているんだ…?
 さっき加奈を信頼するって決心したんじゃなかったのか…?
 だったらおとなしく待っていれば良いんだ。
 それが俺と加奈の『信頼』を築く為の一因となるんだから、それでいいじゃないか。
「ちょっと神経質になり過ぎだろ…馬鹿馬鹿しい…」
 自分に悪態をつく事で仮初の安心を得ながら、俺は敷布団の中へと飛び込んだ。
 そこからは話をするまで加奈が隠れていたからか、加奈の匂いが沁み込んでいた。
 その匂いが懐かし味を帯びていたのは、いつも一緒にいて慣れていたからだろう。
 それと同じように、俺たちは『幸せ』にも慣れていて気付けなかった事が多かった。
 これからはそんな事も噛み締めていきたいと思いながら、俺はその布団の中でしばし
加奈の匂いに包まれながら夢心地に浸かる事にした。
「…加奈、早く帰って来いよ…」
129上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/28(水) 20:07:01 ID:EUQSeXtA

        ――――――――――――――――――――          

 あたしは思う…好きな人と幸せになる為にはそれ相応の努力をしなければならないと。
 その『努力』の形は様々だ。
 まだ想いが通じ合っていなければ、好きな人を自分に振り向かせるところから始める。
 直球勝負をするも善し、時間を掛けて徐々に落としていくも善し、方法は多種多様。
 そうやって試行錯誤の末、好きな人と付き合う権利を手に入れた後は、その『権利』を
手放さないように一生懸命『努力』しなければならない。
 付き合ってみて初めて見つけた好きな人の美点を指摘して上げる、逆に付き合っていて
まだ好きな人が気付いていない自身の美点を見せてあげる…その他諸々。
 その段階で勿論お互いに相手の欠点に気付く事もあるだろう。
 それがきっかけで相手に失望し、別れてしまうケースは数え切れない程だ。
 人は付き合うまではその相手に自分の『理想』を”重ねている”ものだから、それが
崩れ去った時のショックは確かに大きいものだと思う。
 しかし、それはお互いに相手を『理解』してあげられなかった末の結末…自業自得だ。
 ではもし、『努力』を重ね相手の全てを『理解』している上で付き合ったとしたら…?
 お互いに相手の欠点も全て受け入れられる、そんな『存在』に出会えたとしたら…?
 二人は結ばれるべき…結ばれなければならない…結ばれる『運命』にある筈だ。
 だって、積み重ねてきた『努力』の末に今の幸せを手に入れたのだから。
 高め合った結果の『収束地』で二人だけの幸せな世界を堪能しているのだから。
「二人だけの、幸せな世界………かぁ…」
 口に出すと、恥ずかしいながらも震えるような快感の奔る言葉。
 じゃあ…その『世界』を何者かによって崩されかけたとしたら、どうすればいい?
 勿論みすみす崩れ去る様を傍観している訳にはいかない。
 行動を起こさなければ、『結果』は自らの下に訪れはしない。
 その結果が良いものか悪いものかは定かではないが、少なくとも『結果』が欲しいなら
行動しなければならない…。
 行動という名の『努力』をまたしなければならない。
 そう、付き合うという事は、結局は”『努力』の連続”で成り立っているのだ。
 もし、一瞬でも気を抜けばどんなに長い年月積み上げてきた『関係』も砂浜の砂上の
ように脆く、簡単に崩れ去ってしまう。
 だから、あたしは愛しの人…誠人くんとの幸せの為に、終わりのない『努力』を重ねる。
「絶対に、”守ってみせる”から…」
 見ていて、見守っていて、誠人くん。
 あたしは頑張るから…。
「”どんな”『手段』を使ってでも…」
 今宵は満月、あたしは右手に構えた”誠人くんの家から”持ってきた包丁に誓う。
「誠人くんと共に、あたしは幸せを掴んでみせるからね…」
 夜道を歩きながら、満月の眩い光が、希望の象徴である包丁を明るく包み込んだ。

          ――――――――――――――――――――          
130上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/28(水) 20:08:01 ID:EUQSeXtA
「遅い」
 思わず呟いてしまう。
 既に加奈が出て行ってから一時間以上経つ…もうすぐで日付も変わってしまう。
「遅い」
 何度目か分からない言葉をまた呟く。
 呟く事で意識を悪い方向から遠ざけようとしている意図が自分でも読み取れる。
 意図的な行動だから当然と言えば当然だ。
 でも、”『意図的』だと”自覚するのは正直言って物凄く怖い。
 意図的に意識を遠ざけようとしているという事は、自分が悪い想像をしている事の証明
だからである。
 さっき俺は確かに吹っ切った筈だ…加奈を信頼するって決心した筈だ…。
 なのに、俺はまだ加奈を信じ切れていないのか…?
 自問自答が頭を渦巻く中………
『ガチャッ』
 そんな音が下の階から響き、俺の思考を中断させた。
 この音はもう十何年間、飽きても飽きても聞き続けたもの…聞き間違える訳がない。
 俺の家の扉の開く音…『終わり』の音であり、『始まり』の音でもある。
 その無味乾燥な音は、今だけは俺の心に喜悦感を充満させる引き金へとなった。
 その音が鳴ったという事実が俺に告げるもう一つの事実…”加奈が帰って来た”。
 それだけで十分だった。
 加奈の言動に一抹の不安を覚えていて、それに翻弄されていた俺にとっては、加奈が
何事もなく戻って来た事だけが嬉しかった。
 もう沈黙が支配する部屋の中で、「遅い」と不安を払拭する為に呟く必要もない。
 これからはこの部屋で加奈と共に愛を囁き続けてやるのだ、そんな期待を膨らませる。
 階段を一歩一歩着実に踏みしめている音が近付く毎に、その期待に現実感という装飾が
施されていく。
 加奈との甘い関係は『終わり』、新しい日々の『始まり』…それは目の前の筈だった。
 そして、俺が凝視している先にある部屋の扉、それが静かに開いていく…。
「加奈ッ! お帰り!」
 俺の大声が部屋にうるさく響き渡った。
 しかし、何故か返答は返ってこない。
 加奈の奴、からかっているのか…そう思っていた刹那………俺は”それ”を見た。
 普段何気なく見かけている…いや、見かけていると表現するのもおかしい。
 だって、”それ”はあくまで”全体の中の『一部』”に過ぎず、意識すべきものでは
ないのだ。
 俺が”それ”が何なのかを認識してから数秒後、扉を隔てて声が聞こえてきた。
「”ただいま”」
『ボトッ』
 その声と共に、”それ”は俺の傍に乱暴に投げ込まれた。
「は?」
 その珍妙な声は、俺が”それ”を確認した際に出してしまったものだ。
 俺が、細い細い、本当に細い、『腕』を見ての素直な感想だった。
 そして………
「どうも」
 同時に扉から出てきたのは、今の今まで全く意識の外にいた存在…島村由紀だった。
131上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/28(水) 20:09:05 ID:EUQSeXtA
「機嫌はどうですか?」
 自分が放った物をまるで気にしていないように、島村はニヤリと笑った。
 瞳は大きな眼鏡と長い前髪で隠れているが、口元だけが厭らしく弧を描いている。
 この部屋にいるのは自分と俺だけだと言わんばかりの、”当たり前な”佇まい。
 しかし、そこまで『常識』を演出したいなら、こいつは何故右手に…真っ赤に染まった
右手に、右手同様赤く彩られた長い鋸なんか持っているんだ?
 それに何より、右手だけじゃなく、こいつの全身も真っ赤に染まっている。
 今放り投げた”誰かの腕”と手に持っている”赤い鋸”、この二つから連想してしまう
情景なんて『一つ』しかないじゃないか。
 そう思いながらも、俺は無意識の内に現実逃避していた。
 頭の中では必死に別の可能性を模索していた。
 ”島村は俺を驚かせたいだけだ”、そう頭の中で何度も自分に言い聞かせていた。
「どうしたんですか、誠人くん? 顔怖いですよ…あっ」
 島村は何かに気付いたように、自分の右手に持つ鋸を直視した。
「ごめんなさいね。別に誠人くんを脅かす気はなかったんですよ」
 …ん?
 前半はいい、「ごめんなさい」っての謝罪の言葉だ。
 そこに示されている意図は、俺を脅かしてしまった事に対しての事だと解釈出来る。
 しかし、後半に島村は何と言った…「”脅かす気”はなかった」だと?
 その発言は前半の言葉の意味も全否定してしまう…。
 それに、脅かす気がなかったなら、お前は何でそんな格好をしているんだ…?
 それ以外に、どんな目的で以ってそんな格好をしているというんだ?
「ちょっと、『作業』する為にどうしても必要だったんで」
 そう言うと、島村は一旦扉の後ろに回り、一つの袋を取り出した。
 その黒い袋は、男である俺から見てもあり得ないと思う程の大きさである。
 かなり重そうにそれを部屋の中へと入れた島村は、その中身を物色し始める。
 そして、その中から素早く”何か”を取り出し、玩具箱を漁る子供のような手の仕草で
それを先程同様俺の前へと放り投げた。

 ―――足
 ―――腕
 ―――足

「あっ…あっ………」
 それらが音を立てながら俺の前に道端の石ころのように転がっている。
 声が段々抑えられなくなり…そして………
「これで最後っとっ!」

 ―――頭

 そう、頭だ。
 人の頭、鮮やかな黒を誇る長髪を宿した頭、女の子の頭、俺が何度も見続けてきた頭。

 加奈の頭。

「胴体は重いんで省略しておきましたが、ご勘弁願いますね」
 島村が何か言っている気がしたが、正確には聞き取れない。
 俺の注目の全ては、眼前に静かに控えている加奈の頭…加奈の瞳に吸い込まれていて。
 その虚ろな瞳が、色彩を全て失っても尚愛しく思える瞳が残酷に俺に訴えかけるように
見つめてくる、その現実を受け入れた瞬間…
「――――――――――ッ」
 声を抑え切れそうになくなったと思ったが、強制的にその声は塞がれた。
「今は夜中、ご近所迷惑になるつもりですか?」
 島村の赤い鋸が、加奈の血が染み付いているであろう鋸が、俺の首に添えられたから。
132上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/28(水) 20:10:07 ID:EUQSeXtA
 躊躇する事なく、島村は俺の首に鋸の切っ先を当てている。
 金属の感情を宿さない冷たさと、感情を宿していたであろう加奈の鮮血の温かさが、
混ざり合って「ぬめり」とした気持ち悪い感覚を俺の皮膚に奔らせた。
「誠人くん、あの娘は…加奈さんは、駄目ですよ?」
 楽しそうに俺の首に時折触れさせながら鋸を動かしている島村。
 そう、本当に楽しそうだ、失ってしまった時間を逆行するかのように子供じみた笑みを
浮かべている。
「驚きましたよ…。こんな夜遅くに突然インターホンが鳴るんですから。誰かと思って
 家内で確認してみたら…加奈さんがいるじゃないですか。しかも画面越しにでも分かる
 位殺気がギンギンしているんですよ? 念の為に護身道具を持ちながら扉を開けたら、
 瞬間加奈さん包丁を刺してこようとするんですよ、こんな感じにね」
 島村が小さく奇声を発しながら持っている鋸を一旦引き、それを両手を器用に使って
くるりと回し、自分の腹の方へと持っていき、刺すような動作を繰り返している。
 一通り俺に見せ終わると、再び鋸を俺の首先に構えてくる。
「もし加奈さんが瞬きもせずにインターホン越しに私を睨みつけていなかったら、きっと
 私油断していて刺されていたでしょうね。本当に警戒していて正解でしたよ。向かって
 くる加奈さんの胸に向かって、私は持っていたペーパーナイフをね…をね…グサッと、
 刺してやりましたよ…フフフ…はっ、あーっはっはっはっハハハハハハハハハハ!!!」
 今度は腹を抱えて盛大に笑い出した。
 さっき近所迷惑云々言っていた奴とは思えない程、遠慮なしに俺の部屋で笑っていた。
 島村の笑い声が俺の部屋に響く。
 島村が静かにしたければ静かにし、笑いたければ笑う…この部屋の主導権は、完全に
島村のものだ。
 やがて一頻り気の済むまで笑い終え、狂気の体言化の時間に幕が下ろされる。
「ご、ごめんなさいね…。あまりにも哀れだったもので。だってそうですよね?わざわざ
 自ら殺されにくるなんて、馬鹿としか言い様がありません。”誠人くんの彼女”という
 素晴らしい地位を獲得しておきながら、嫉妬に狂って私を殺そうとして誠人くん自身を
 汚そうとするなんて、言っては悪いですが、”死んで当然の”屑だったんですよっ!!!」
 島村は言いながら転がっていた加奈の首を力強く蹴飛ばした。
 遠くの方へと飛ばされていく加奈の残骸…俺はそれをただ見てる事しか出来なかった。
「結局この女は、自分が”そういう事”をしたら誠人くんがどう思われるかすら考える事
 の出来ない無能な屑、誠人くんには相応しくありません」
 飛ばされた頭の方向に一瞬視線を向ける島村。
 長い前髪がその動作で揺れて隠していた島村の瞳を俺に焼き付けさせた。
 加奈の頭を見る島村の目は、頭だけになった加奈が向けてきた目と殆ど同じに思えた。
 そこで加奈のバラバラの体を再び思い出し、吐き気を催した。
「ですが、私は違います。誠人くんの為を思って行動出来ます…。あっ、誤解のないよう
 言っておきますが、私が加奈さんを殺したのは正当防衛という奴です。かなり憎かった
 んでバラバラにしてしまったのは、誠人くんから加奈さんを消す為止むを得なかった
 行いとお受け止め願いますね」
 島村は今確かに言った…”私が加奈を殺した”と。
 ”加奈を殺された”、つまり”加奈は死んだ”…その事実を再確認し俺は涙を流した。
 声はもう出ない、出そうとも思わない。
 今はただ、”ある事”を考えていたかったから。
 しかし、その思考はすぐに止まった。
 ふと目をやった、俺の傍らに置いてあった何故か開いている携帯電話の中身が全てを
物語った。

 『From 島村由紀
  Sub  (無題)

  誠人くん、あなたは何で”あんな”子が好きなんですか?』
133上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/28(水) 20:11:05 ID:EUQSeXtA

 今まで俺はずっと考えていた。
 島村が「加奈が自分を殺しに来た」と言った時かたずっと考えていた。
 ”何故加奈が島村を殺そうとしてしまったのか”…と。
 俺は加奈を愛する事を誓った、加奈も俺を愛すると誓ってくれた筈だったのに。
 なのに、何でこんな事になってしまったのか?
 その『答え』は、俺の携帯に映し出されているメールを見てはっきりした。
 つまり、加奈はこのメールを見て、島村が俺と加奈の関係を壊そうとしていると思って
しまったんだろう。
 思い返せば、様子のおかしかった加奈の傍らには不自然にも俺の携帯電話があった。
 あの時、俺は何でその中身を確認しようとしなかった?
 あの時、俺は何で加奈を止める事が出来なかったのか?
 あの時、俺は何で加奈を素直に行かせてしまったのか?
 今となってはもう分からない…過去は消える事のない足跡だ。
 それをどんなに『上書き』しようとしたってそんなのは無駄な行いだ。
 俺は、加奈の犯そうとした罪が『過去』のものになる前に、『上書き』出来ない状況に
陥る前に、先回りして対処しなければならなかったんだ。
 その為には、”離れてはいけなかった”んだ。
 俺は加奈と話をした時、確かに自分の口で言った筈だ。

 ―――「俺たちはまだまだ未熟なんだ。お互いを分かり切った気でいても、まだまだ
     言葉で意思を伝え合わなきゃやっていけない関係なんだ、離れちゃいけない
     んだと思う。」

 離れても分かり合えるようなそんな強い関係じゃない。
 言葉一つで簡単に崩れ去ってしまうような、そんな脆い関係。
 だから片時も離れず、お互いを確かめ合いながら生きていく事を誓ったんじゃないか。
 なのに俺は、こんな事を言っておきながら、まだ俺は自惚れていた。
 その証拠に、加奈が自分を信じていると信じて疑わなかったじゃないか。
 本当なら、あの時失礼を覚悟して加奈の行動を制止すべきだったのに、また俺の意思を
汲み取ってくれていると勘違いして、加奈を見殺しにしてしまったじゃないか。

 ”加奈を殺したのは俺だ”。

「誠人くん、泣かないで下さい。すぐにあの娘の事なんか忘れますから…」
 島村が首に鋸の切っ先を添えたまま、俺の眼前へと自らの顔を近付けて来る。
 そして、次の瞬間、俺は唇を奪われた。
 ほんの触れるだけのキス…それはあの日”謝罪とお礼”と称してしてくれた加奈からの
”初めての”キスと似ていて…あの時の笑顔を思い出させるには十分な行為だった。
 すぐに唇を離した島村、離れ際に見えた島村の目は黒々としていて、しかし決して色を
失っている訳ではなかった。
 とても純粋にその瞳は色鮮やかに輝いていて…本当にそれは加奈そっくりで…。
 こんな事する資格なんてないのに、俺は流れる涙を止める事が出来なかった。

「すぐ加奈さんの事は『上書き』してあげます…。そして、『島村由紀』という名を誠人
 くんの脳の奥底深くまで刻み込ませて上げます…。大丈夫ですよ、私となら絶対上手く
 いきます。私と新たな関係を築いていきましょう?」




 B-2ルート「外れない首輪」 BAD END
134上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/28(水) 20:14:48 ID:EUQSeXtA
投下終了です。
これも結果だけが書きたかった話です。
何で加奈が島村の家を知っているのか等色々ツッコミ所はあると思いますが、それらは脳内補完するか指摘して下さい。
ちなみに加奈が島村の家を知っていたのは、第7話の後に島村の事を調べていたという事にしておいて下さい。
我ながら後付け設定で、申し訳ありません…orz
次の時は本ルートを投下しますので。
135名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 20:42:30 ID:Ej+/izBp
GJ!
凄い話でした・・・。2つのルートであっけなく死んだから、
ただの噛ませ犬かと思いきやとんでもない伏兵でした。
136名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 20:50:44 ID:ze8whDje
>>134GJ!
最後に大逆転とは……ヤンデレ同士の対決だとやはりより病んだ方が勝つのか!?
でもさりげなく島村さんを応援していた俺は嬉しかったり
こんなシチュエーションでせまられる誠人ウラヤマシス
137名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 20:53:13 ID:+E2Z04/4
GJッス
だけど誠人には八つ当たりでも何でもいいから島村を殺して欲しかった俺がいる……
138名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 00:07:50 ID:ccjIKQbq
>「加奈ッ!!お帰り!」
ここ見てとあるエロゲーを思い出した。
139名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 00:50:37 ID:ZiHX2F8R
GJ!
島村さんまで萌えキャラになるとは思わなかった。
140名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 01:11:19 ID:dfXEPjy/
GJ…以下チラシの裏



どうしてお茶会の人といい上書きの人といい、ヒロインを呆気なく殺してしまうんだろう…。
141 ◆6PgigpU576 :2007/03/29(木) 01:31:34 ID:PjZaIhi7

投下します。
第八話目になります。
142 ◆6PgigpU576 :2007/03/29(木) 01:32:33 ID:PjZaIhi7

瞳に突き刺したナイフを、抉る様に捻り引き抜くと、又も夏月は振り上げ、
今はまだ無事な左目に、突き立てようとした。

頭は真っ白なのに、自然と身体が反応していた。
二度目の、左目に突き刺そうとしたナイフを、僕は止める事が出来た。

「だ、だめ… にい、さ… よご、よご、れ… 汚れ… ちゃ…
 ごめ、ご、ごめ、さい… ごめ、な、さい… ごめ、な、さ……」
左目からは透明な涙を零し、右目からは涙のように真っ赤な血を流し、
夏月は僕に謝り続けている。

堪らなくなって、僕は夏月を抱き締めた。

「夏月、ごめん! ごめんっ!」

もっと早くこうしていれば、よかったんだ。
後悔に苛まれながら、今はそんな場合じゃないと気付く。

このままじゃ、夏月が、失明… いや、死んでしまう!
どうすれば…!?

咄嗟に思い出したのは湖杜さんと射蔵さんで、慌てて携帯とメモを引っ張り出すと
夢中で連絡を取っていた。
助けてとか、夏月がとか、混乱した事ばかり口走っていたような気がする。
そしてその後の事は、よく覚えていない。
謝り続ける夏月を、ただ抱き締める事しか出来なかった事しか。





テレビや映画でしか見た事がないような、立派な庭園を眺めていた僕の隣に、
何時の間にか、射蔵さんが並んで立っていた。
「また眺めていたのか… いい加減飽きただろう?」
「いえ、まだまだ飽きませんよ」
静かだった。
改めてこの広い敷地では、外の雑音など全く関係がない事を思い知らされる。

「今日… これから、行って来ようかと思います」
庭園に目を向けたまま、僕はそう言った。
「そうか、決心がついたのか」
射蔵さんもまた、見飽きているであろう庭園を向いて、煙草を燻らせている。

夕陽に照らされていた庭園にも、そろそろ夜が来る。
「いい加減、けじめをつけなきゃいけないと……」
「けじめ?」

「ちゃんと別れを言うのが、けじめだと思いました。
 けじめをつけないと、先には進めないんです」
143同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 :2007/03/29(木) 01:34:02 ID:PjZaIhi7

これから僕がしようとしている事を考えると、辛い。
自分で考えて出した結論だけれど、やっぱり辛い。

けど、決別しなくては、僕は、先には進めない。

「そうか。では、車を手配しよう」
「ありがとうございます」

「お花は、どうなさいますの?」
いつから聞いていたんだろう? 湖杜さんが廊下の先からこちらへ、そう言いながら
ゆったりと近付いて来た。
「花、ですか?」
「お持ちになるのが、定番ではなくて? 用意致しましょうか?」
「…いえ、花はいいです。すぐに済みますから」
湖杜さんの気遣いは嬉しかったが、元より長居をするつもりはなかった。
別れの挨拶をするだけなのだから。

「陽太さん、私もご一緒してよろしいかしら?」
「え?」
真っ直ぐこちらを見る湖杜さんの意図は解らないが、正直迷う。
最後の別れは誰にも邪魔されたくなかったから。
「大丈夫です。陽太さんの邪魔はいたしませんわ。私は、車に居りますから」
「あ、いえ、は、はぃ…」
うわ、バレバレだよ…
恥かしさに吃ってしまった僕に、にっこりと微笑む湖杜さんは気にもしていない
様子で、それがまた余計に恥かしさを煽った。

「では、正面に車を回すよう手配するから、二人とも仕度を済ませたらどうだ?」
「そうですわね。それでは陽太さん、また後ほど」
「は、はい」
射蔵さんの助け船にのって、僕は湖杜さんの後姿をほっとした気持ちで見送った。


重厚な黒塗りの車の後部座席に、湖杜さんと並んで座っていたが、終始無言だった。
その間僕は、これまでの事、これからの事をずっと考えていた。

あの時こうしていたら… すぐにその考えに至ってしまい、またすぐ打ち消す。
起きてしまった事を、今更悔やんでも遅い。
考えなくてはいけないのは、これからの事だ。

これからの事。思い出すのは、楽しかった事。

思い出に浸りながら、それと決別しようとしている事に、痛みを感じていた。

今だけ、この車の中で、最後にしよう。
三人でいた、あの輝いていた、楽しかった日々を思い出すのは。
144同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 :2007/03/29(木) 01:35:11 ID:PjZaIhi7

「陽太さん、私はここでお待ちしておりますわ」
車はすでに目的地についていた。
湖杜さんに声を掛けられてその事に漸く気付いた僕は、返事に代わりに小さく頷くと、
一人車を降りた。

思った以上に、人の出入りは疎らで、閑散としている。
本家を出た頃はまだ仄かに明るかった空も闇に包まれ、すっかり夜になっていた。

歩きながら、落ち付いていくのが解る。
車内であれほど感じていた躊いや痛みは、今ではもう感じない。

そして、凪いだ気持ちのまま、目的のドアをノックした。


「…はい」
最後にその声を聞いたのは、いつだっただろう?
酷く遠く昔のように感じられ、その懐かしさに一瞬引き込まれそうになるが、
目を閉じその思いを振り切ると、白いドアを開けた。

「久しぶりだね… 怪我の具合はどう?」
いつも通りに話しかけると、滅多に見られない驚いた表情でこちらを凝視したまま
固まってしまっている。

無理もないと思う。
しばらくドア傍に立ったまま、落ちつくのを待った。

しかしすぐにその驚きの表情は安堵の顔に変わり、軽く息を吐くといつもの見慣れた
表情に戻った。
「大丈夫だ。それより、お前、今までどこにいたんだ?
 学校の連中に聞いても、お前も夏月も伊藤も、学校にはあれ以来姿を見せてないって
 言うし、お前の家や携帯に電話しても繋がらないし…
 あれから何があったんだ? 陽太」

「巻き込んで怪我までさせて、ごめん。
 東尉には感謝してもしきれないくらい、感謝してる。ありがとう」
きっちりと頭を下げ、謝罪と感謝を告げた。

「馬鹿、頭上げろって。俺が勝手に巻き込まれたんだし、お前が怪我させた訳でも
 ないだろうが。それより、何があった?」

「それは言えない。東尉は知らない方がいい」
145同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 :2007/03/29(木) 01:36:40 ID:PjZaIhi7

「……それは、どういう意味だ?」
訝しげに眉を寄せた東尉の顔を、静かに見続ける。

「今日は感謝と謝罪、そして別れを言いに来たんだ」
感謝と謝罪は終った。残るは―――

「今まで、ホントにありがとう。東尉が親友でよかった。
 もう会う事もないけど、元気で」

「お前何言ってるんだ? ちゃんと説明しろ、陽太!」

「―――さよなら」
「陽太っ!!」

呼び止める東尉の言葉を振り切り、病室を出て足早に出口に向かう。
脚を怪我している東尉が、僕を追ってくるのは無理だと解ってはいたが、
一刻も早くこの場を去りたかった。


闇に溶け込む様にひっそりと駐まっている車に安堵する。
車から降りてきた湖杜さんはドアを開けたまま佇んで、僕を待っている。

一歩一歩、ゆっくりと車に近付くと、無言のまま湖杜さんをそのままに
車に乗り込もうとした。
しかしその前に、もう一度病院を振り返り、これが最後だと目に焼き付ける。

「陽太ぁっ!!」

驚いた。驚いた事に、病院の入り口には、肩で息をする東尉の姿があった。
ギプスで固められた脚を引き摺って、ここまで追いかけてくれた事に胸が痛んだが、
すぐに消えてなくなるだろう。
迷わず車に乗り込み、シートに深く座る。

「陽太っ、待て! ――っ!」
どさりと鈍い音がして、東尉が倒れ込んだんだと解ったが、敢えて何もしない。
視界の端で湖杜さんが東尉に駆け寄って、手を貸しているのが見えた。

東尉はまだ追ってこようとしていたが、それより早く湖杜さんが戻ってきて、
車は何事も無かったかのように滑り出した。


これで、お別れだ―――


バックミラーに映る東尉の姿に、最後の別れを告げ、目を閉じた。
146同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 :2007/03/29(木) 01:37:44 ID:PjZaIhi7

すっかり見慣れたが見飽きない庭園を、何時の間にか居た射蔵さんと並んで眺める。
「煙草… 身体に悪いですよ?」
一体一日に何本、いや何箱吸っているのかと思うほど、いつでも射蔵さんは
煙草を吸っている。

一度ゆっくり深く吸い込むと、射蔵さんは紫煙と共に吐き出す様に呟いた。
「吸うと思考が鈍るんだ… 苛つきが少し治まるしな。
 見つからないもどかしさに、おかしくなりそうだ…
 生まれる前から運命の相手と一緒のお前が羨ましいよ」

そう言って笑った射蔵さんの言葉は、既に狂人のものだった。
けれどその狂人の言葉に、笑顔で頷いた僕もまた、狂人なのだろう。


離れの中に入ると、楽しげに話す声が聞こえる。
「――それで、兄さんの事を兄さんって呼ぶようになったんです」
「そう」
「…………。十年くらい前の本家の集まりに、湖杜さん来てましたか?」
「ええ、居ましたわ」
「お兄さんも一緒でしたよね?」
「ええ、お兄様も一緒でしたわ」
「湖杜さんが、きっかけなんですよ」
「そうですの… 夏月さん、その話はまた今度聞かせて下さいね。
 今日はこれで帰らなくてはいけませんの」
「はい、湖杜さん」
「ご機嫌よう、夏月さん」

「同じ話を何度もすいません…」
「確かに、空で言えるほど聞きましたわね」
玄関にやってきた湖杜さんにそう謝ると、笑いながら少し僕を責める。
「でも、今日で最後ですから」
「あら… そうですの」

そう、今日で最後だ。夏月に寂しい思いをさせるのは。

僕の決心を悟ったのか、湖杜さんはにこりと微笑むとそのまま離れを出ていき、
僕は玄関のドアに鍵をかけると、迷わず夏月の元に向かった。
ノックもせずに部屋に入ると、ベッドの上で上半身を起した夏月がいた。

こうして二人きりで向き合うのは、久しぶりだった。
夏月はどこかぼんやりとした表情で、僕の事を気にも留めていない。

いや、実際見えていないのだろう。

「夏月、戻っておいで」
向かい合う様ベッドに座ると、無事な左目を覗き込んで呼びかける。

夏月、夏月、寂しいよ、夏月。
夏月は、寂しくない? 僕は寂しい。独りきりは、寂しいよ。
でも、一緒なら寂しくないよね? ね、僕も一緒だから、

だから、戻っておいで―――
147同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 :2007/03/29(木) 01:38:56 ID:PjZaIhi7

「夏月、夏月、夏月、夏月、夏月…」
何度も何度も名を呼びながら、何度も何度も触れるだけの口付けをする。

投げ出された細く小さな手を握り、口付けの合間に柔らかい唇を舐め、
薄く開いたそこに舌を潜り込ませた。
滑らかな歯や歯肉を舌先でなぞると、誘う様に更に口が開く。

「……んっ…」
舌先が奥に隠されていた舌を掠める様に撫でると、小さかったが反応があった。
その夏月の漏れた声と、震えた身体に、あの時と同じ感覚が背筋を駆け上がる。

夏月のこの舌に、傷口を舐められた時と同じ感覚。

それは、肉欲――

その衝動に突き動かされるまま、深く唇を重ねると舌を絡めた。
思うまま存分に夏月の口内を貪っていると、息も荒く僅かだった反応も徐々に多くなり、
その事が僕の欲を益々煽り、夢中で味わい続けた。

強く握り返された手に、名残惜しく唇を離すと、夏月を覗き込む。
「夏月?」
「兄さん…」

戻ってきた。戻ってきてくれた。
嬉しさに夏月を抱き締めようとすると、やんわりと拒絶されるが、それは予想済みだ。

「だめ… 汚れる、よ… 汚… わ、わたし… きたな…」
「汚れないよ。夏月は、汚くない」
「ちが… きたな…」
「大丈夫。僕と夏月は一緒だから、大丈夫」
「い… しょ?」
「そう、一緒。同じだよ。だって、双子だろ?」
「ふた、ご… おなじ…?」
「そうだよ。一緒。同じ。だからね、大丈夫」
「わたし… わたし…」

「好きだよ、夏月。好きは、夏月と同じ好き。僕も夏月が好きなんだ」

信じるまで、何度でも言うから。
「夏月、好きだよ」

「わたし… 兄さんを、好きで、いいの?」

夏月の左目から溢れる涙を、そっと拭ってやり、そのまま頬を包み込む。

「いいよ。僕も夏月が好きなんだから」

「兄さん… 好き… 兄さんが、好きなの」

僕もだよ。返事の代わりに、口付けた。
148同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 :2007/03/29(木) 01:40:02 ID:PjZaIhi7

そっと抱き締め、口付けを深くし舌を絡めると、今度はしっかりと答えてくる。
ぬるぬると蠢く舌が絡まり、じわりと腹の底から熱が沸き上がって、堪らずに夏月を
押し倒すと覆い被さる様にして、また貪る。
獣染みた互いの息遣いと、にちゃつく水音、そして口内での繋がりが欲を掻きたて、
夏月の寝巻きの合わせ目から手を滑り込ませた。

寝巻きの下には何も着けておらず、掌に夏月の滑らかな肌の感触が伝わってくる。
そのまま掌を滑らし、一層柔らかく膨らんだ場所、乳房に辿り着く。
初めて触れた吸い付くような肌と弾力。
確かめる様に優しく触れていたのは最初だけで、夏月の身体がびくりと震えたのを
合図に、持ち上げる様に押し付ける様に揉み拉く。

そして掌を押し上げる様に硬く凝った頂きを摘むと、夏月は甘く高い声を上げて身体を
仰け反らせた。
その反動で唇が離れてしまったので、飲みきれず顎を伝わって零れる雫を舌で辿り
腰紐を解きはだけると、首筋、鎖骨を舐め、尖ったそれに吸いついた。

「あぁっ… にぃ、さんっ… 好き、好きなのっ」
甘い声が僕を呼び想いを告げる。

もっとその声が聞きたくて、吸いついたそれを舌で転がし甘噛みし、空いた手を
脇腹からのなだらかな線に沿って滑らす。
「ひぁんっ! …あっ!」
辿りついた秘所は既に濡れていて、指を滑らせるとより一層甘い声で鳴いた。

ぬるりと指に絡みつく蜜を擦り付ける様に、何度も陰唇をなぞり、溢れてくる
蜜の助けを借り、徐々に沈み込ませていく。
「んんっ! っ… ああっ!」
淫口に指をゆっくりと押し進めると、やはり痛かったようで夏月の身体が強張る。
しょうがない事とはいえ、これから更に夏月には痛い思いをさせてしまう。
僕に出来る事といえば、少しでも痛みを軽くする事ぐらい。
そんな思いと、もっと気持ち良くなって欲しいという思い、そして自分自身の欲から
身体をずらすと、夏月の秘所に舌を這わせた。

「ひあぁぁん! …あぁん! にぃ、さっ… 兄さんっ!」
次々溢れる蜜を舐め取り、指と舌とで淫口を解すように刺激していると、漂ってくる
女の雌の匂いが色濃くなり、頭の芯が甘く痺れ、もっともっとと駆り立てる。
そしてさっきよりは柔らかくなった淫口に、なんとか指を沈み込ませると、
ぷくっと膨らんだ淫核に吸い付き吸い上げた。
「ひぁぁぁぁぁっ!!」
その淫核の刺激に、ぎゅっと肉襞は指を締め付け、身体を仰け反らせると、
一際高い嬌声を上げた。どうやら、いってしまったらしい。
しかしその事で、ひくつく肉襞は柔らかくなり、指の動きを受け入れるようになった。

丁寧に確実に追い詰めながら、指を増やし解してゆく。
嬌声にすすり泣くようなものが混じり、夏月が身をくねらす。

「にっ… さぁん! も、もう… ダメぇ! ひあんっ!」
その言葉に身を起こし指を緩やかに引き抜き、着ている物全てを脱ぎ捨て、
夏月の脚を開くと、身体を滑り込ませた。
149同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 :2007/03/29(木) 01:41:08 ID:PjZaIhi7

「夏月… このまま挿れて、中に出すからね」
コンドームを付ける気は無かった。
それが僕の、夏月に対しての答え。
「うん。兄さんの、わたしの中に… 全部ちょうだい…」
うっとりと微笑んだ夏月の、汗で貼りついた前髪を梳いてやり、露になったおでこ、
包帯に隠れた右目、赤く熟れた唇に口付けた。

「夏月… 力、抜いて」
「ぅん…」
その言葉に従って夏月が息を吐いた瞬間、怒張を一気に最奥まで突き立てた。
「―――っ!!」
ぎゅっとしがみ付いてくる夏月を愛おしく感じながら、眩暈がするほどの快感を
抱き返しながら、ぐっと耐える。
痛みに浅い息を繰り返す夏月に口付けながら、じっと動かず落ち着くのを待つ。

「夏月、好きだ… 夏月、夏月、好きだ」
「…わた、しも… すき、好きなの… 兄さん、大好き…
 ね、兄さん… わたしに、ちょうだい… 全部、全部、ぜんぶ
 兄さんの、全部、わたしに、ちょうだい…」

ああ、もう少し待つつもりだったのに。
優しくするつもりだったのに。

「全部あげるよ、僕の全部をあげる…
 だから、夏月の全部、…僕が貰うよ」
夏月の返事を待たずに、激しく腰を打ち付ける。
「ひあっ!! あっ! んぅ! あぁっ!! んんっ!」
痛みを耐えるような声に、僅かに快楽の色が見え隠れするのがせめてもの救いだったが
それでももう止まれなかった。

本能の赴くまま、快楽だけを追い求める。
「…兄さんっ! にっ、さん! …あぁっ!」
「夏月っ! 夏月っ…!」
名を呼びながら、ただひたすら貪り尽くす。
そして全てを、夏月の中に放った。


荒い息を吐いたまま、腕の中にいる夏月の重みを感じ、ぼんやりと天井を見ていた。
「にぃ… さん…」
掠れた声で囁いた夏月の吐息が、鎖骨を擽りふわりと消える。
「わたしの中で、たくさん、出してくれたんだね… 嬉しい…
 ね、兄さん… 兄さんはわたしのだよね?」
摺り寄せる夏月の柔らかい髪や肌を擽ったく感じながら、そっとお腹に手をやった。

「夏月の中、凄く気持ち良かったからね。沢山、出たよ…
 夏月は僕のものだし、僕は夏月のものだよ」

「うん、嬉しい… わたし、幸せ… すっごく幸せだよ…
 これからもいっぱい、いっぱい出してね… だって―――」

「うん。僕も、幸せだよ。そうだね、沢山夏月の中に出すよ…
 僕も、欲しいから―――」
150同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 :2007/03/29(木) 01:42:17 ID:PjZaIhi7

  ***************************

「ふぁぁぁぁ… おはよー夏月」
「おはよう、兄さん。今出来るから座って」
「んー」
リビングに入るなり、大きな欠伸をして朝の挨拶をした僕に、朝食作りの手を止め
笑顔で挨拶をしてくれる、愛しい双子の片割れで妹の夏月。
白いエプロンを付け、くるくると手際よく朝食を作るその姿は、ホント可愛い。
朝から僕のためだけに甲斐甲斐しく働く姿が見られるのは、兄である僕の特権だ。

「ごめんねー、夏月ぃ… 朝ご飯の仕度、全部任せっきりで」
離れに二人で生活し始めて三ヶ月、ほぼ毎日ほぼ同じ台詞で謝っている。
炊き立てのつやつやふっくらご飯をよそりながら、夏月はぷっと頬を可愛らしく
膨らませた。怒っている顔をしているようだが、ちっとも怖くなく逆に愛らしい。

「もう! 気にしてないって言ってるでしょ? 兄さんは朝弱いんだから、いいの!」
そうは言っても、任せっきりっていうのは、どうだろう。
夏月も大事な時期に差し掛かった訳だし、朝もちゃんと起きて手伝わなくちゃな。

「うーん… じゃあ、今日の夕飯は僕が作るからさ」

「え!? ホント!?」
「ホントにホント。今からレパートリー増やしておかないとね。
 ただし、リクエストは僕が作れるものにしてくれよー」
「うん! ありがと、兄さん!」
「お礼言うのは僕の方だってば。
 あ、夏月の美味しいご飯冷めちゃうよ、早く食べよう。いただきます!」
「いただきます」
もぐもぐと美味しい夏月の朝ご飯を食べつつ、目の前で笑顔でご飯を食べている
夏月を見ながら、僕は幸せに浸っていた。

「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
日課になっているのに、いまだに照れるのか、ほんのりと頬を桜色に染め、
目を瞑ってその時を待つ夏月の可愛らしい唇に、触れるだけの口付けを落とすと、
まだ何の変化も見えない夏月のお腹を、そっと撫でる。

手を振って見送ってくれる夏月に手を振り返しつつ、僕らの家である離れから、
仕事仲間の射蔵さんらが居る母屋までの道程を歩きながら、庭園に目をやる。
残暑も過ぎ、秋の気配が色濃くなって、また違った風情がある。
この庭園で四季を繰り返し感じながら、これからの日々を過ごしていくんだろう。
そして一日の仕事が終ると、我が家、夏月の元へと帰る。


巡り巡って、帰ってきた――――

僕の帰る場所は、夏月。
夏月の帰る場所は、僕。


「ただいま」「おかえり」


−了−
151 ◆6PgigpU576 :2007/03/29(木) 01:44:17 ID:PjZaIhi7

以上です。ようやく終りました…
色々反省点だらけでしたが、次に生かしていければと思っています。
お付き合い、ありがとうございました。
保管庫管理人さん、いつもありがとうございます。
152名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 02:29:36 ID:dQaKiL+h
>「加奈ッ!!お帰り!」
ここ見てとあるエロゲーを思い出した。
153名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 08:12:25 ID:+pjERbC8
>>151完結乙でした
このスレでは少ない普通のHAPPYEND、二人が幸せになれてよかったです
でも東尉が最後影薄くてちょっとカワイソスw
次の作品もwktkして待ってます
154名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 10:30:10 ID:yVywkz9R
イイハナシダッタナー 乙です。
狂うタイプではなく、精神的に廃人化するヤンデレは珍しいかも。
155名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 11:25:44 ID:ZiHX2F8R
>>151完結乙です。
お兄ちゃんGJです。
ヤンデレても受け止めてくれる人がいれば幸せですね。
156名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 13:01:24 ID:oP0fIjir
>>151乙です。
正ヒロインではない好乃の方が狂気的なヤンデレだったっていうのは珍しいパターンで。
ヤンデレに標的にされる恐ろしさがわかる作品でした。
好乃と東尉のその後も気になる…てか、東尉がヤンデレ化しそうな気がしている俺ガイル
157名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 13:31:32 ID:3S2RiwCG
>>151
ついに完結キタ!
というか早くも次回作?

ところで。
http://news21.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1175095081/l50

前も似たようなな記事があった気がするが、中国では男のために詐欺をはたらくのが流行りなのかね?
158名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 23:18:01 ID:ajsdAiMn
>>157
むしろ詐欺を働くのが流(ry
159名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 03:04:49 ID:AUlC+QOZ
なあ、陽太が自分を狂人だって言ってるけどなんでだ?
オレには陽太は好きな娘を守り通した勇者にしか見えんのだが。
160名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 03:22:58 ID:HeXAXwNr
>>159俺は
単純に相手が「妹」であること
or
前作読むと射蔵はかなりのヤンデレ思考だから、
その考えを肯定する自分も「同類=ヤンデレ」ということ
どっちかじゃないかな、と思っている
まあこの辺りは読み手個人々々があれこれ想像して楽しめばいいんじゃないかな
161名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 19:50:22 ID:VkcjW4hz
>>84
使って書いたんだがうpしていいか?
初SSでしかも勢いだけで書いたからはじめのほう載せて評判が悪かったら止めるが
162名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 19:55:11 ID:KjrwoCJ8
Come ooooooooooonnnnnnnnnnnn!!!!!!!!!!!!
163題名未定:2007/03/30(金) 19:57:50 ID:VkcjW4hz


「誠一さん・・・」
そう呟くと愛しい男の写真に目を落とした。

神坂真奈美は新興住宅地に住む主婦である。
もう30の声が聞こえてくるが見た目はまだ20代前半といったところだ。
そんな主婦が一人で新築の一軒家に住んでいる。

‐かつて夫が買った家。‐

「誠一さん・・・まだ帰ってこないのかな・・・?」
もう一度そう呟くと一人静かに台所へと向かった。

第1章

それは2年前のことだった。

「あなた〜!!」
周りの奇異の視線を気にすることなく大声で叫びながら
まるで10代の少女のような快活さで真奈美は走ってくる。

「やれやれ・・・」
誠一はその様子を見ながら苦笑いを浮かべ
「まるで主人に駆け寄ってくる子犬だな」
と真奈美に聞こえない程の小声で一人呟いていた。

ドンという軽い衝撃とともに抱きついてきた真奈美の体を受け止める。
すると真奈美は顔を上げ少し恨めしげな視線を誠一に送りつつ
「誠一さん・・・今、犬みたいだとか思ってなかった?」
と問いかけてきた。
「いゃ〜?そんなことないよ?」
そ知らぬ表情で流すが内心は『もしや妻はニュー○イプか!?』
とかなり慌てていた。
164題名未定:2007/03/30(金) 20:00:26 ID:VkcjW4hz
「まぁいいや!おなかすいた〜ご飯食べにいこ!」
とやや頬を膨らませながらもタクシーを拾った。
車内に乗り込むとガイドブックを片手に片言の英語で
運転手に行き先を告げると真奈美はうれしそうに
「去年とは違うお店にしたんだ」
と言いつつ手を絡めてきた。

真奈美と誠一が結婚して1年経つ。
その間誠一は新規の事業を任され新婚だというのに
ろくに家を省みることが出来なかった。
だが妻はそんな夫をかいがいしく支え続けた。
なんとか仕事が一段落しやっと長期の休暇がとれ
今まで構ってやれなかった妻に対する罪滅ぼしよろしく2度目の新婚旅行にやってきていたのだ。
行き先は去年と同じタイ・バンコクだ。
『どこでもいいんだぞ?』
と誠一は言ったが真奈美は
『去年まわれなかった所も見たい』
と2度目のバンコク訪問となったのだ。

食事を終えホテルに戻り人心地ついていると突然真奈美は
「夜景を見に行こう!」
と言い出した。
「もう夜は出歩かないほうがいいよ。ここは日本とは違って治安が良いわけじゃないから」
と誠一がたしなめるが駄々っ子のように頬を膨らませ
「いや〜いくの〜せいいちさんとよるのおさんぽするの〜」
と言って聞かない。こうなってしまったら誠一は真奈美に勝てない。
『まぁ元々真奈美の為の旅行だしな・・・俺がついてれば問題ないだろ』
と結局妻とともに夜の街を散歩することにした。

ホテルを出てしばらく二人で手をつなぎながらぶらぶらと散歩していると
いつの間にか見慣れない路地に入り込んでしまっていた。
誠一は
『まいったなぁ・・・迷ったか?』
と立ち止まり大通りに戻ろうと妻の手を引き踵を返すと
そこには先ほどは居なかった男たちが自分と妻を取り囲んでいた。
手にはナイフが握られている。
リーダー格らしい男が
「MONEY!MONEY!」
と言っているところをみるとどうやら追いはぎのようだ。
とりあえず財布の中にあった現金を差し出すべく男に近づこうとする
その時ぎゅっと手を握られた。見ると妻が震えている。
「大丈夫・・・俺が守る・・・あいつらも金さえ渡せば危害は加えないだろ」
といつもの口調で語り掛け男たちのほうへ向かっていった。
165題名未定:2007/03/30(金) 20:02:17 ID:VkcjW4hz
リーダー格の男に金を渡しその場を離れようとするといきなり周りの男たちが
飛び掛ってきた。逃げようともがくが気づけば全員で誠一を押さえつけようとしていた。
真奈美は一瞬目の前で何が起こったか理解できずにいた。
『最初から逃がしてくれる気は無かったか!』
と誠一は一瞬後悔するがそんなことよりも先に妻を逃がさなければならないと
放心している真奈美に向かい
「何してる!!!早く逃げろ!!!」
と叫ぶ。
が真奈美は消え入りそうな声で
「ぇ・・・でも・・・」
と、まだ放心状態のままだ。
「はやくホテルに戻って警察を!!」
との叫びでようやく我に帰った真奈美は路地を抜け大通りを駆けぬけた
ホテルへ戻ると「警察を!!!はやく!!!はやく!!!」と
泣き叫ぶ。ボーイが慌てて駆け寄ってくるが
日本語が出来ないらしく困惑の表情を浮かべフロントのマネージャーを見る
マネージャーも慌ててフロントから真奈美に駆け寄り片言の日本語で
「どうしましたか?なにかあったのですか。」
と優しく問いかけた。
それを聞き少し落ち着いた真奈美は
「せいいちさんが・・・ろじで・・・しらないおとこたちにかこまれて・・・」
と訴えた。

そこから先のことは真奈美は夢の中の出来事のように感じていた。
その後警察が現場に到着し発見したものは冷たくなった一人の日本人旅行者だった。

大使館の職員が来た。現地の警察が事情を聞きに来た。帰国しマスコミが来た。
その全てが夢の中の出来事
テレビをつければ誠一が写っている。
<・・・死・・・た神坂誠一さんは・・・現地では警察が犯人の行方・・・未だ何の手・・・も・・・いない・・・です。>
『・・・このひとはなにをいっているのかな?』
ぼーっとテレビを見ていた真奈美はニュースキャスターの話している内容が理解できずにいた。
『せいいちさんはもうすぐかえってくるのに』
薄く笑いを浮かべつつ真奈美はそう呟いていた。


あの日から真奈美は全てが壊れてしまった。
自分があの夜夫を連れ出さなければという自責の念が心を蝕んでいき
ついに誠一が死んだことすら認められなくなっていた。

それから真奈美は2年間帰るはずの無い夫を待ち続けた。
なぜか預金通帳には多額の金が保険会社から振り込まれていて生活は苦労をしなかったが
その保険会社から
『このたびは御主人様大変ご愁傷様です。保険に関しましては今回の事案では全額支払われますので・・・』
と言ってきて訳が分からなかった。

第1章終
166名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 20:06:29 ID:VkcjW4hz
オナヌー的勢いで書いた。
推敲も適当だ。反省はしている。

エロ描写も書いたがまだもう少し先になる。

まだ読みたいなら続きうpするが正直言って自信ない。
駄目ならもう少し練り直して出直す。
167名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 20:32:22 ID:aF5Q5RI3
>>166
説明不足な部分は特に見当たらない。話の展開も把握しやすい。
細かい描写は回想シーンであればこれぐらいの量で充分だ。と俺は思う。

数日に分けて投下するなら、次回からトリップとタイトルをつけてもらえたら嬉しい。

練り直したいならば後日投下しなおしてもいいが、俺のリビドーと股間のブツが冷めないうちに頼む。
168 ◆WBRXcNtpf. :2007/03/30(金) 20:43:17 ID:VkcjW4hz
>>167
了解
とりあえず続き投下する。
てか一昨日8章くらいまで書いたんだがタイトルが思い浮かばなくて今日まで投下してなかった。

なんかいいタイトルないか?
169題名未定 ◆IwjmeSx3m6 :2007/03/30(金) 20:46:06 ID:VkcjW4hz
第2章

「まだかな・・・」

台所で夕食を作りつつ一人呟いていると突然玄関のチャイムが来訪者を告げた。
エプロンで手をぬぐいつつ玄関に駆け寄り誰何の声をだすと
<すいませーん。隣に越してきたものなんですがご挨拶に伺いましたー>
と帰ってきた。声を聞き真奈美は息を呑んだ。
その声はこの2年間待ち続けた声に間違いなかったからだ。
慌てて玄関を開けようとするが何かおかしいことに気づく。
『ぇ・・・?隣に越してきた・・・?』
自分たちは新婚でもちろん夫婦仲も円満別居なんて考えたことも無い
それなのに何故隣に超す必要があるのか?
そもそも何故こんなに他人行儀なのか?もしかして別人?
そんな疑問が数瞬頭をめぐったが
『とにかくドアを開けてみよう』
というところで思考が落ちつきゆっくり玄関を開けた。

第2章終
170題名未定 ◆WBRXcNtpf. :2007/03/30(金) 20:47:37 ID:VkcjW4hz
第3章 Side健一

「あぢー・・・もう駄目だわ・・・俺死ぬ」
そう真紀に呟くと俺は少しでも冷たい場所を求めてフローリングの床を這いずり回った。
「・・・」
何も言わずに何か哀れなものを見るような目つきで俺を見る真紀
「そんな目つきで視姦されると俺濡れちゃう!」

・・・ごふ

いきなり鳩尾に蹴りが飛んできた。
プロレスでいうサッカーボールキックだ。
あ・・・頭にも・・・あ・・・もう・・・だめ・・・
そのまま俺は深い闇の中へ落ちていった。

目を覚ますとそこは知らない部屋だった・・・
いや・・・違う・・・そういえば今日この家に引っ越してきて・・・
あれ?俺なんで寝てるんだ?まだ引越しの荷も解ききってないのに
たしか真紀と一緒に来て・・・掃除をしていて・・・暑さに負けてフローリングを這っていたはずだ。
真紀はどこだと探すと部屋の隅で扇風機に向かって「あ”〜〜〜」なんてやってる。
「おーい、真紀さーん。俺なんで寝てたんだ?」
我ながら間の抜けた質問をしてみると真紀は扇風機に向かったまま
「じら”な”−い、あ”づざに脳でも”や”ら”れ”だんじゃないー?」
と返ってきた。
「????」
どうも腑に落ちないがとりあえず目の前のダンボールの山をなんとかしなければならない。
「真紀さーん手伝えー。・・・・てか手伝ってください。ほんとすいませんごめんなさい調子乗ってました。」
ギロリと一睨みされ狼におびえる羊のようにぷるぷる震えながら手伝いを頼む。
うん!我ながらいい情けなさだ!
そんな俺白坂健一が斉藤真紀と知り合ったのは3年前だ
同じ大学に通う真紀とはゼミが一緒でそこで出会った。
『うひょ!セミロング!しかも清純派肉体(悪く言えば幼児体系)!てか巫女服着てほしー!』
などと初対面の時とりとめも無い妄想をしていたことは今でもいえない。
普通に高校に通い普通に大学に入学した普通の俺がこんな可愛い女の子と知り合いになれる
この時ほど俺はこの大学に入学できたことを感謝した時は無かった。
それからはちょくちょく一緒に飯を食ったり午前の講座が無い日はゲーセン行ったりと
夢に描いたようなキャンパスライフを送っていた。

そういう普通を絵にしたような俺が少しだけ普通でなくなった日が来た。
趣味でやっていた株取引である日どこぞの証券会社が数千億単位の誤発注を出したのだ。
しっかりその尻馬に乗った俺は一夜にして数億の金を手にした。
だが喜んだのも束の間だった。
それから先はあまり思い出したくない。
お決まりな事にやたら親戚・親友・同級生が増えた。
どこから嗅ぎ付けたのか分からないが中には幼稚園の同級生なんて名乗る奴も居た。

そんなこともあってか俺はすっかり人間不信になり
密かに恋心を抱いている真紀にまで心にも無いことを言っていた。
「どうせ俺の金目当てなんだろ?!」
「金がなくなれば水が引くみたいにいなくなるくせに!」
171題名未定 ◆WBRXcNtpf. :2007/03/30(金) 20:48:48 ID:VkcjW4hz

そう言い放った俺の頬に突然鈍い衝撃が走る

見ると真紀が綺麗な右フックを入れてきたのだ。
そのまま反動で次は左フック・・・右・左・右・・・
『え?デンプシー?え?え?』
痛みと目の前の可憐な少女が振るう某ボクシング漫画主人公の技に頭を混乱させていた。
猛ラッシュが止み何が起きたのか確かめようと頭を上げると
真紀が泣いていた。俺はさらに混乱していると真紀は
「・・・そう、思われてたんだ、さよなら、もう、はなしかけない」
とだけ告げその場を立ち去ろうとしてる。
それを聞きもう混乱ってレベルじゃなくカオスの状態となった俺は
その手を取り体を引き寄せなぜか口付けをしていた。

次の瞬間体を押され引き離された俺は何故か
「好きだ!付き合ってくれ!」
と愛の告白をした。
自分でも何故この場で告白なんてしたのか未だに分からない
当然場の空気が妙な空気になる。

俺はなんとなく居心地が悪くて
「し・しんけんだぞ!結構マジな告白だ!さっきは心にも無いことを言った!
反省している。付き合ってください!」
ともう一度告白した。
すると真紀は小さくクスクスと笑い出した。が、すぐに真剣な表情になり
「私も・・・健一のこと好きだよ・・・だから・・・さっきの言葉は傷ついた。」
と返してきた。
それを聞き俺は大地に向かって頭をこすり付けた。
「ごめんなさい!」
こすり付けるというか大地に向かって頭突きをしていた。
例えていうなら大地オンヘッドな状態で文字通り全身全霊を使って謝罪の意を伝えた。
それを見た真紀はまた小さく笑い
「もう2度と人を傷つけたりしない?」
と聞き俺は
「もう2度としません!!」
と誓った。

それから俺は少しずつだが人間不信が治っていった。
もちろんそれは真紀の力があったからこそだ。
金のほとんどを福祉施設へ寄付すると周りの自称親戚等もあっという間に去っていったが
俺は再び人間不信に陥ることはなかった。
残った金を使い家を買って一人暮らしをすることを薦めてくれたのも真紀だった。
「環境を変えてリセットするのもいいかもしれないよ」
と言ってこの物件を紹介してくれた。
それから実家を出てこの家に引っ越してきたのだ。

荷解きも一段落し俺は真紀にちょっと気になっていたことを聞いてみた。
「なぁ・・・越してきていまさら何なんだが」
「ん?何?」
172題名未定 ◆WBRXcNtpf. :2007/03/30(金) 20:51:26 ID:VkcjW4hz
「どうして一軒家なんだ?学生なら普通良くてマンションとかじゃね?」
俺のここに引っ越してくる前からの疑問に
「そりゃ・・・もし健一が結婚とかして子供ができて、いざ一軒家を買おうって時に肝心のお金がなくなってるかもしれないじゃない。先行投資よ。先行投資。」
と返してきた。
「俺としては真紀とだったらどこでもいいんだけど・・・」
「馬鹿言ってないで早く片付けるよ!ご近所さんへの挨拶回りもしなくちゃいけないんだし!」
と軽く流されてしまう。それを聞き
『ウツダシノウ』
とへこんでいると
「私の子供は庭付き一戸建ての中で育てたいしね・・・」
と小さく呟く。

脳内にたちまちお花畑が浮かんできた。
『AHAHAHAHAHAHAHA』

第3章終
173題名未定 ◆WBRXcNtpf. :2007/03/30(金) 20:52:50 ID:VkcjW4hz
スマソ
>>169はトリをミスった。
174題名未定 ◆WBRXcNtpf. :2007/03/30(金) 20:56:06 ID:VkcjW4hz
第4章 Side真紀

健一がまた馬鹿なことを考えてる。
私の呟きを聞いた健一が幸せそうに蕩けている。
『かわいい・・・』
素直にそう思う。
まったくこいつは馬鹿である。しかも結構エロい
だがそれ以上に純真で繊細だ。

初めて知り合った時同じのゼミのお調子者といった程度の認識だった。
だがたまに二人で遊んでみたりして健一は周りが思っている以上に純真で
繊細だということに気づいてきた。
それがはっきり分かったのは健一が株で相当な大金を稼いだと聞いたときだった。
それまでいつも笑っていたのに急に無表情になっていった。
たまに一緒に遊んでも異様に口数が少ない。
『あれ?こいつこんなに静かだったかな?』
いつも必要以上に明るい奴が急に周りを拒絶していった。
心配になり
「なんかあったの?」
と聞いても別に・・・と酷くつっけんどんに返される。
いい加減頭にきた私は
「ちょっと何なの?!いい加減にして?私なんか言った!?」
と怒鳴り声をあげていた。
すると向こうも負けじと怒鳴り声で
「どうせ心配してくるのは俺の金目当てなんだろ?!」
「金がなくなれば水が引くみたいにいなくなるくせに!」
と叫んでいる。それを聞き私は

あたまがまっしろになった。

なぜだかほほにつめたいものがつたっていくのをかんじた。

てをつめがくいこむほどにぎりしめている。

『わたしのことをしんじてくれない・・・わたしのことをしんじてくれない・・・わたしのことをしんじてくれない
・・・わたしのことをしんじてくれない・・・わたしのことをしんじてくれない・・・わたしのことをしんじてくれない
・・・わたしのことをしんじてくれない・・・わたしのことをしんじてくれない・・・わたしのことをしんじてくれない
・・・わたしのことをしんじてくれない・・・わたしのことをしんじてくれない・・・わたしのことをしんじてくれない・・・』

気が付いたら健一のことを無茶苦茶に殴っていた。
手から血が流れている。
健一の血なのか私の血なのかすらわからない。
私は泣きながら健一のことを殴っていた。
刹那、我に返ると血まみれの健一が下を向いていた。
訳が分からず本心とは逆の言葉が口から飛び出す。
「・・・そう、思われてたんだ、さよなら、もう、はなしかけない」
とだけ呟いきその場から一時でも早く逃げようとした。
その時、強い力で腕を握られ体を引き寄せられる。
次の瞬間唇に何か当たった。
175題名未定 ◆WBRXcNtpf. :2007/03/30(金) 20:58:26 ID:VkcjW4hz
何が起きたか理解できず必死にもがいて健一の体を押し返した。
するといきなり

「好きだ!付き合ってくれ!」

今度こそ本当に何が起きたのかまったく理解できなかった。
時が止まったように感じた。
カレが次の言葉をつむぐのを待っていると少しばつが悪そうに
「し・しんけんだぞ!結構マジな告白だ!さっきは心にも無いことを言った!
反省している。付き合ってください!」
その少し間の抜けた様子に思わず笑いがこみ上げてきた。
それを見てカレはポカンとしている。
その様子を見てこちらも気を取り直し
「私も・・・健一のこと好きだよ・・・だから・・・さっきの言葉は傷ついた。」
と本当の気持ちを伝えた。
するといきなりカレは物凄い勢いで土下座をし始め必死に謝ってきた
そんな姿に無性に愛しさを覚えまた笑いがこみ上げてくる。

私の中にあったさっきまでの絶望が嘘みたいに晴れていった
『健一はあんなに酷いことをした私のことを信じてくれている』
そう思うと体の芯のほうからゾクッとしたものがこみ上げてくる。

それから私は健一を全てのゴミから守ってきた。
余計なものを引き寄せる金は施設に寄付させた。
それでも寄ってくるゴミから健一を守る為残った金で家を買うよう薦めた。
もちろん私と健一の愛の巣にする為に。

だから正直さっき健一が私と一緒に居るならどこでも良いと言ってくれた時は飛び上がって喜びたかった。
心のそこからうれしかった。
もうすぐ健一と一緒に暮らせる。
もうすぐ健一と同じ時を過ごせる。
もうすぐ健一の全てが私のものになる。

だけどそうはやる心を押し殺す為わざと冷たくあしらってみる。
そんな私を見てしょげる健一が可愛くてしょうがない。
もう少しいじめてみたい気もするが少しフォローを入れてあげた。
今度は蕩けそうな顔で何かを思い浮かべている。
その姿も可愛くてしょうがない
『だめだ・・・このまま押し倒しちゃいたい・・・』
そう私の中の何かが訴えるのを必死でなだめ引越しの続きをすることにした。

第4章終
176題名未定 ◆WBRXcNtpf. :2007/03/30(金) 21:02:57 ID:VkcjW4hz
とりあえず本日の投下終了。
投下するために改めて見直すとやはり粗が目立つorz

もし続けてもいいなら残りの部分推敲して今度続きうpする。
エロは次回の投下で出るかもしれない。
177名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 21:12:48 ID:MPfOfMe3
173 名前:優しい名無しさん[sage] 投稿日:2007/03/27(火) 14:31:52 ID:CM3TXBj3
知り合う前から足や内臓が悪かった人との遠距離恋愛に耐えられず、東京から大阪まで追いかけて
行って同棲をはじめた自分。
「彼は足が悪いのだから」とか「体調が悪い彼を丈夫な私支えてあげなければ」と頼まれてもいない
のに、自分が夜の仕事に働きに出て足りない分は自分の預金を崩して生活費を出してた。
相手の足が悪くても仕事が出来る様に企業したいという夢をかなえてあげようと思っていたのだけれ
ど、結局は私がヒモにして囲ってた状態。
同棲6年目で色々あって別れて実家に戻っていたのに、別れてからも生活費を送ったり就職祝いを
送ったりしていたのだけれど、ある日ぷっつりと連絡が途絶えた。

約1年後、交通事故で下半身不随の上、心臓に疾患の残る障害者になったと連絡をうける。その
上、大阪から東京に転勤になったと知る。
で、今は彼と結婚して専業主婦になり介護をしながら過ごす日々。

共依存という言葉を最近知りました。
はっきり言って、今は最高に幸せです。相方の仕事に行くときも送り迎えをしてるので、ほぼ行動を
管理できている状態。
ヘルパーさんは頼まないで、すべて私が介護をしています。
自分の親には「まだ若いのだから、別の人生を考えろ」と言われていますが、自分はこれで良いの
ではないかと思っています。
178名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 22:01:36 ID:C884M9nX
( ̄□ ̄;)!!
179名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 22:01:59 ID:46sKetTH
もしかしてこれは、>>84の小説化ですか?ワクテカ

ということは、この二人の仲は男を亡き夫の代用としか見ない未亡人に引き裂かれるのか。ヒドス
180名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 22:39:59 ID:aF5Q5RI3
>>176
エロシーンを出すまで、俺はぐっじょぶなんて言わないんだからな!
つ 乙

しかし、これは修羅場のヨカーンを感じる。
未亡人の一人舞台にはならなさそうだな。wktk



以下は個人的に思ったこと。※スルー推奨

第二章について
>というところで思考が落ち着き〜
の表現がよかった。

第三章について
冒頭で真紀がいきなり登場したことにちょっと違和感を覚えた。
「恋人の真紀が目の前にいて〜」みたいな、簡単な説明があると良かったかもしれない。
時間軸が現代から三年前にとぶとき、息継ぎみたいなものがほしかった。

第四章について
真紀に萌えた。

タイトルについて
「未亡人〜夫は隣に住んでいます〜」とか。……いやすまん。忘れてくれ。スレの皆に聞いた方がいい。

以上。
181無形 ◆UHh3YBA8aM :2007/03/30(金) 23:03:28 ID:hQz4Jvy2
新参です。
短編を書いてみたのでスレ汚しさせていただきます。
182帰り道 ◆UHh3YBA8aM :2007/03/30(金) 23:04:54 ID:hQz4Jvy2

「彼女が出来たんだ」

学校からの帰り道。僕は裕未(ゆみ)にそう告げた。
「え・・・・・・・」
ずっと傍にいた幼馴染は、虚を突かれたように――呆けた顔をした。
「B組の七霧(なぎり)さん。裕未も知ってるだろう?」
「・・・・・恭(きょう)・・・・くん・・・・・・?」
呆けた様な貌のまま、裕未は僕に振り返った。
「一年のときから・・・・ずっと好きだったんだ。で、ほら、オレってヘタレだろ?
だからさ、想いを伝えるのに・・・・こんなに時間掛かっちまってさ。でも、覚悟を決めて
告白したんだ。そしたら、オレなんかを受け入れてくれてさ」
思い出すと、顔が熱くなる。
はにかみながら、頷いてくれた七霧さんの笑顔。
「自分でもまだ信じらんねーよ。あんなに可愛い子がオレなんかと、な」
思わずにやけてしまう。
「でさ。お前とも付き合い長いし、一番の親友だからな。最初に云っておこうと思ったんだ」
「・・・・・・・・・・・・」
裕未は何も答えない。
ゆらゆらと、瞳孔が蠢いていた。
「裕未?」
「・・・・・恭、くん・・・・」
ゆらゆらと。
見たことのない貌で。
幼馴染は僕の前に立った。
「いくらなんでも・・・その、じょ、うだん、は、・・・・ないんじゃないかな・・・?」
「え?いや、冗談なんかじゃねーよ」
「恭くんは優しいけど、たまに意地悪とか、悪戯するよね?私、そう云うの今まで気にして
なかったけど・・・・これは酷すぎるよ」
「いや、だから、」
「駄目だよ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ゆ、裕未・・・」
大きな声だった。腹の底から搾り出すような感情の発露。
「恭くん、そんな冗談は駄目!!!絶対に駄目!!!!!駄目なの!!!!!」
裕未の細い手が僕を掴んだ、信じられないくらい力強く。
「いっ・・・・・つ・・・」
思わず声を上げた。
「ねえ!?なんでそんな意地悪するの!?裕未なにか悪いことした!!!!!???
そんな冗談云っちゃだめなんだよ!!!???」
「お、落ち着けよ・・・!」
僕は裕未を振り払った。
183帰り道 ◆UHh3YBA8aM :2007/03/30(金) 23:07:00 ID:hQz4Jvy2
「確かにオレは悪戯とかするけどよ、これはそんなんじゃねーって。
オレはホントに七霧さんを好きで、付き合うことになったんだ」
「どうして・・・!?どうしてまだそんな冗談言うの!?駄目だよ!
だめ、ダメ、駄目、駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
駄目なんだからぁ!!!!!!」
裕未が叫んだ。鬼のような形相で。
僕は何も云えない。
どうして冗談だと思うのか?
なんでここまで怒るのか?
疑問はあったが、質するのは躊躇われた。
否――単純に、今の裕未が恐ろしかったのだ。
「ねえ、恭くん」
笑った。
口元だけ。
「もう一度だけ聞くね?」
一歩。
僕に近づく。
「七霧・・・・・さんと付き合うって、嘘、だよね・・・・?」
怖かった。頷いてしまうほうが楽かと思えるほど。
けれど、ここで頷くわけにはいかなかった。七霧さんを裏切りたくなかったからだ。
「――――本当だ」
「・・・・あ」
裕未の動きが止まった。
「あ、は、」
途端――
「あはははははははははははははははっははははははははあはははあはっははははっはは
ははははははははははははははははははははっははははははあはっははははっはははは」
声を上げて幼馴染が笑う。
「そう!そうなんだ!そういうことなんだ!わかった!わかったよ恭くん!!!
“つけこまれた”んでしょ?そうだよ。そうに決まってるよね?恭くん優しいもん。
あの女に騙されてるんだね?」
「お前・・・なに云って・・・・・・」
「大丈夫。大丈夫だよ!恭くんは裕未が護ってあげるから!!!あの薄汚い女から、
絶対に助けてあげるから!!」
「裕未、なに云ってるんだよ!?オレは騙されてなんて、」




「   黙         れ           よ  」




「・・・・・・・っ」
息を呑んだ。
裕未が、こんな言葉を口にしたことはなかったはずだ。
裕未は笑顔。
すごく眩しい、向日葵のような笑顔をつくる。
「恭くん。すぐになんとかするからね?」
僕はなにも云えなかった。

翌日―――七霧さんは、事故死した
184無形 ◆UHh3YBA8aM :2007/03/30(金) 23:07:56 ID:hQz4Jvy2
以上です。
スレ汚し失礼致しました。
185名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 23:12:41 ID:m2iMjMy6
スレ汚しかどうかは住民が判断する。
だがこのSSはスレ汚しにならない。
GJ!!
186名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 23:33:05 ID:/jxDVPYF
すばらしい出来!次も宜しく
187名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 23:44:00 ID:JqhnYeNb
>>176 >>184
GJです
需要があるない、スレ汚しとか、そういうのは誘い受けっぽいからやめた方がいいよ
>>1読んでその注意を守ればいいんだから
188名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 23:59:09 ID:z29mPxWy
>>176>>184
ちょwwwこれは素晴らしいwww!!!
投下はいつでも大賛成です!
189名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 00:04:09 ID:z3Y8zWm7
>>184
ええい、生殺しか!そんなところで切られたらそれからどうなったか気になるじゃないか!
続きをカムオオオオオォォォォォォオン!
190 ◆WBRXcNtpf. :2007/03/31(土) 00:30:05 ID:nMJNDJ0F
続き投下

とりあえず今書き上げてる分を手直した。
タイトルは>>180を参考にしてみた。
エロ有
191夫が隣に住んでいます ◆WBRXcNtpf. :2007/03/31(土) 00:35:54 ID:nMJNDJ0F
第5章 Side健一

あらかた荷物を片付け終えたあと真紀は俺に
「さてと、そろそろご近所にあいさつ回り行かなくちゃね。」
と促す。
正直まだ真紀と一緒にいたかった俺は
「えぇ・・・後でよくない?それより今は俺たちの愛を語r」
と抵抗を試みるが
「何言ってんのこういう住宅地じゃご近所付き合いは大切なの!早く支度して!」
「うぃまだむ・・・」
と撤退するしかなかったのである。

真紀にせかされノロノロ動き出すと
まずはお向かい次に左隣最後に右隣・・・
『まぁ学生だしこんなもんで良いだろ・・・』
と挨拶する家とその順番を決め向かいの家へと向かった。
そこは老夫婦が二人だけで住んでいた。何事も無く普通に挨拶を済ませ
次の家へと向かう。こちらは中年のサラリーマン家庭といったところか、
対応に出てきた女性は50を少し過ぎたあたりの所謂よくいるおばちゃんである。
犬を一匹飼い高校生の娘と中学生の息子がいるらしい。絵に書いたような普通の家庭であった。
そこで社交辞令程度の挨拶と取り留めの無い世間話を済ませるともう時刻は夕刻を過ぎている。
『少しのんびりしすぎたか?』
と若干早足で右隣の家へ向かう。

「神坂さんか」
表札を見るとどうやら夫婦二人暮しのようだ。

チャイムを鳴らすと「どなたですか〜?」
と誰何の声が返ってきた。とりあえず先ほどと同じように
「すいませーん。隣に越してきたものなんですがご挨拶に伺いましたー」
と答える。
しばらく待つと玄関が開き中からエプロン姿の美女が現れた。

第5章終
192夫が隣に住んでいます ◆WBRXcNtpf. :2007/03/31(土) 00:42:47 ID:nMJNDJ0F
第6章

ドアを開けると真奈美はしばらくその場から動けなかった。
急に世界が色づいてくる。
2年前から止まったままだった真奈美の中の時間が動き出す。
目の前に2年前と変わらない夫の・・・誠一の姿があった。

「せ・・・せい・・いち・・・さん?」

そう呟くと
頭の中が真っ白になり真奈美は目の前の男性に飛びついていた。
「せいいちさぁぁぁぁぁん!!」
抱きつきながらその名を叫ぶ。

一方健一の方はと言えばいきなり知らない名前を呼び、泣きながら自分のことを抱きしめてくる美女を見て真奈美とはまったく違う理由で頭の中が真っ白になっていた。
『え?ええぇぇぇ???』
と、何が今、起きているのか脳が理解できる範疇を軽く超えている。
素数を数えてみて落ち着こうともしたが無駄だった。
だがこのままで良いわけでもない。とりあえず真奈美を引き離すと
「えぇと神坂さん・・・?ちょっと・・・ええと・・・」
とこれから紡ぐべき言葉を捜す。が、その言葉が見つかるより早く
「なんで他人行儀なの?誠一さん?」
と真奈美のほうが返してきた。その言葉でさらに混乱し言うべき台詞が見つからない。
それを見て真奈美は
「アハハ変な誠一さーん。それよりご飯出来てるよ♪今日は誠一さんの好きなすき焼き作ったんだ。」
と嬉しそうにはしゃいだ。

真奈美はあの日以来毎晩すき焼きを作り続けていた。
まるでそうしていれば誠一が帰ってくるとでも言うように。

真奈美はさらに言葉を続ける。
「ずっと出張だったんでしょ?寂しかったんだから!でもいいのちゃんと帰ってきてくれたしね♪
それにみんなが変なこと言うんだよ?もう誠一さんが死んじゃったとか。誠一さんはちゃんと帰ってきたのにね♪」
一息にまくし立てると、今度は固まっている健一を家内に押し入れようとする。
その動きでようやく止まっていた健一の脳も活動を始めた。
「いやいやいやいや!俺はそのセイイチさん?じゃないですから!俺は今日、隣に越してきた白坂健一という者です!」
とかなり慌てて真奈美の動きを止めようとする。だが真奈美は何を言っているのか分からないといった表情で健一のことを見返すばかりだ。
「とにかくコレ引越しのご挨拶です!つまらないものですが!じゃ!」
と強引に粗品のタオルを渡すと回れ右をし、走って自分の家に入っていった。

その場に残された真奈美はしばらくポカンとしていたが、手に握られたタオルの感触で我を取り戻すと
「せい・・・いち・・さ・・ん?・・・せいいちさん・・・せいいちさぁぁぁんっっ!!!!!!!!」
と泣き叫んでいた。

第6章終
193夫が隣に住んでいます ◆WBRXcNtpf. :2007/03/31(土) 00:44:22 ID:nMJNDJ0F
第7章

「あ”〜変な人だった・・・」
一人呟きながら健一は家へと戻っていった。
家に着くと真紀が夕食に出前の引越し蕎麦を注文しているところだ。
「おかえりー」
と、真紀が振り返ると健一の様子がおかしいことに気づいた。
「どうしたの?」
と問いかけるが
「いや・・・なんか変なお隣さんだった。それより真紀さん、蕎麦もう頼んだ?出し巻き玉子焼きも追加で頼んどいてね」
と健一は言葉を濁す。その様子に真紀は少し違和感を抱きつつも蕎麦屋に追加注文をしていた。

蕎麦が来るまで残りの荷物の整理をしていると
ふと真紀の鼻腔に嗅ぎなれない香水の香りが入ってくる。
それは健一の体から発せられた香りだった。

『女物・・・?なんで健一の体から女物の香水が?』

「・・・ねぇ・・・健一・・・挨拶に回ってただけだよね・・・?」
いつもより数段低く冷たい声が自分に向けられていることに健一は戸惑いつつも
「んぁ?そうだよ?」
と少し上ずった声で返す。
「なら・・・なんでゴミの匂いが付いてるの・・・?」

『ゴミ???俺ゴミ臭いか???』
と、健一は自分の服を嗅いでみるが特に臭いわけでもない。
強いて言うなら先ほど行った隣家の美女がつけていた香水の移り香がする程度だ。
「えぇ?真紀さんの気のせいじゃない?ちゃんと毎日風呂も入っているしNE♪」
と冗談めかして返すが相変わらず真紀の声は冷たく低い
「嘘つき・・・ゴミの匂いがプンプンするよ・・・どこでそんなゴミに会ったの?」
健一は真紀が何を言っているのか訳がわからなかったが
「えぇ?そんなに言うんならシャワーでも浴びてくるよ。真紀さんも一緒に入る?」
と再び冗談めかして答える。
194夫が隣に住んでいます ◆WBRXcNtpf. :2007/03/31(土) 00:45:02 ID:nMJNDJ0F

『普段ならここでリバーにいいブローが入る』
と腹筋を固めこれから来る衝撃に耐えようと身構えるが、いつもと違い今日はいつまでもその衝撃が健一を襲うことは無かった。
『あれ?今日はボディーじゃないのか?』
少し気が抜け真紀のほうを見ると、さっきまでの雰囲気が嘘のように顔を赤らめつつ下を向き小さく≪うん≫と呟いた。
『こ・・・これは・・・もしや・・・!!!苦節3年!やっと・・・やっとOREのJIDAIが来たのではないか!!!』
と心中で猛烈にガッツポーズを決めつつ、クールにいこうと
「じ・じ・じじゃあ、さ・さ・さきにはいっててていりゅから」
完全に動揺した口調でバスルームへ向かった。

第7章終
195夫が隣に住んでいます ◆WBRXcNtpf. :2007/03/31(土) 00:45:41 ID:nMJNDJ0F
第8章

シャワーを浴びこれから入ってくるであろう真紀を待つ
すると自然と股間に血流がまわってくる。
「落ち着けマイサン!もうすぐ君の役目はやってくる!」
となだめていると突然ドアが開いた。

振り返るとそこには一糸まとわぬ姿の真紀がいた。
「真紀・・・さん・・・」
美しかった。今までも女性の裸は見たことはあった。が、これほどの美しい裸体を見るのは初めてだ。
「綺麗だ・・・」
素直な感想が口から飛び出す。それを聞いた真紀は顔を真っ赤にして俯いている。
そんな真紀を健一はエスコートするように腰に手を回し、体を引き寄せ軽く唇を合わせた。
「ぅぁ・・・」
と真紀が小さく呻くと唇を離しもう一度
「綺麗だ」
と呟きもう一度唇を合わせ次は舌を真紀の口内に侵入させた。
クチュクチュと音を出しながら口内を貪る。いつの間にか真紀の舌も健一の舌と絡み合っている。

「もぅ・・・なんか・・・きそぉ・・・」
一旦口付けをやめると真紀が切なそうな目で見つめつつ、健一に囁きかけた。
それを見て興奮した健一は少し乱暴に真紀のまだ小ぶりな胸へと指をかける。
「アァっ!」
まるで電流でも走ったような衝撃に真紀は欲情した声をあげる。
その反応に手ごたえを感じた健一はそのまま顔を落とし舌を真紀の乳首へと這わせていた。

「ッン・・・もう・・・イキそッ・・・アァアアァ!!」

真紀はキスと胸だけで軽くイってしまった。
真紀とて経験が無いわけではなかったが、こんなに気持ちのいい愛撫は初めてだった。
少し時間が経ち落ち着いた真紀は
「今度は・・・私がやってあげるね?」
そう言って健一の股間に手を伸ばすとそこはもう天を突く勢いで猛っている。
「あつい・・・健一のここ凄く熱くなってる・・・」
耳元で囁きそのまま頭を腰の辺りに持っていき健一の肉棒を口にほおばった。
ちゅぱちゅぱとイヤラシイ音を立てながら喉の奥まで肉棒を迎え入れる。
その姿と与えられる快楽で健一の欲望は一気にたかまり
「やばい・・・も・・・出そう」
と声を上げる。それを聞いた真紀は一気に根元まで咥え欲望の汁を一滴も逃すまいと吸いたてた。
その強烈過ぎる衝撃に耐え切れず
「うぁっ!」
と小さく呻くと健一は真紀の食道まで犯す勢いで射精した。
196夫が隣に住んでいます ◆WBRXcNtpf. :2007/03/31(土) 00:47:12 ID:nMJNDJ0F
「いっぱい出たね・・・」
微笑みながら健一を見あげる真紀の口元からは一筋の白くにごった液体が垂れている。
それを見て出したばかりだというのに健一の肉棒は再び天を仰いでいた。
「もう・・・こんなに出したばっかりなのに・・・」
と言いながら立ち上がり真紀は手で肉棒をさすってくる。
「今度は・・・こっちで・・・ね?」
手に握られたその肉棒を自分の秘所にあてがい立位のまま繋がった。
「んあぁぁぁ!!」
繋がった瞬間真紀は背を仰け反らせて健一の背中に手を回す。
健一も真紀の背中に手を回し倒れないよう支える。
そしてそのまま腰を動かし始めた。


腰が動くたびにバスルームに嬌声が響く。
「もっとぉぉもっときてぇ!」
「アッ奥まできてるっなんかっあたってる!!!」
もう何度真紀の中に射したか分からない。
あれから2時間は経とうとしているがその間ずっと真紀と健一は繋がったままだ。
「だしてぇぇぇぇ!!中に!あかちゃんの元いっぱいいれてぇぇぇ!!」
と真紀が声を上げると再び膣内に射精した。

「も・・・もうそろそろあがろっか・・?」
流石に体力と精力の限界を迎えていた健一は、イッた直後の気だるい感覚に包まれている真紀にそう伺いを立てる。
やや不満そうな顔をした真紀だが流石に疲れきった表情の健一を見てしぶしぶ納得した。
「まだ足りないけど・・・いいよ。あとでまたやろ♪」
健一を絶望させる台詞とともにバスルームの扉に手をかける。

だがその動きが一瞬止まり健一を振り返った。そしてまた冷たく低い声で
「もう、ゴミなんかに関わっちゃ駄目よ・・・健一はずっと私が守ってあげる・・・」
と告げた。

第8章終
197 ◆WBRXcNtpf. :2007/03/31(土) 00:50:44 ID:nMJNDJ0F
しゅーりょー

今書き上げている分はここまで。

なんかエロ描写が薄い
次はもっとこってりしたのを書く
198しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA :2007/03/31(土) 00:57:31 ID:UbkAri17
>>197
GJ! すき焼き…切ないです

間が空きましたが投下します


 否命はパソコンの電源を入れると、真っ先にインターネットエクスプローラーを起動
させる。否命がホームページとして使用しているYahoo!JAPANのサイトが開くと、否
命はまるで憑りつかれたようにあるキーワードを入力した。
 検索結果が出ると、否命はマウスのホーイルを廻してページを下に移動させていく。
検索結果のページには紫色の太文字がチラホラ見えていた。否命は既に何度か、この
キーワードで引っ掛かったHPを覗いているのだ。
 否命は何ページか移動すると紫色の太文字クリックし、リンク先のHPに飛ぶ。そこ
のページにも所々、否命がクリックした跡が残されていた。
 否命はそうやって、しばらくネットサーフィンしていたが、やがてマウスを止めると
モニタから背を向ける形で、椅子の上で少し尻を浮かした体育座りをした。当然、否命
からモニタは見られなくなる。すると否命は丁度、自分の足の間からモニタが見える位
置まで自身の背を曲げた。否命の背は綺麗な円形の曲線を描いている。それは恐らく十
人中十人が「折れてしまうのではないか?」と思うほどに…。
否、それは常人なら確実に背骨を折っているであろう光景であった。否命の背の柔ら
かさは、明らかに常軌のそれを逸している。
 そして否命の身体で常軌を逸しているのは背だけではない。それこそは、否命が親戚
に厭われた理由であった。
 否命はスカートを捲りパンツを脱ぐと、やおら股間に顔を埋め




股間から天を突くように生えている12pほどの肉の棒を、己の口に咥えしゃぶり始めた。

 パソコンのモニタにはスクール水着を着た少女のあられもない嬌態が映っていた。
 否命はそれを見ながら一心不乱に本来、女にはついているはずのない「マラ」を口で
慰め続けた。
199しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA :2007/03/31(土) 00:58:14 ID:UbkAri17
―将軍様ハ齢十三ニシテ 塚原ト伝ヨリ秘奥一之太刀ヲ伝授サレ候
 塚原ト伝 将軍様ヲ指シテ 曰ク 体ノ柔ラカナ事 タコノ如シ
 背ヲ曲ゲレバ顔 股ニ着キ 自身ノ逸物ヲ咥エル事モ 可ナリト
 コノ儀 真実トハ 到底思イ難ク―
北畠具教「天文剣術記」

 あるところに、「梓」という名の姉さんと、「否命」という名の妹がいました。二人の
お母さんとお父さんはいませんでしたが、二人はとても幸せでした。
 姉さんは本当に妹思いです。
二人の年齢は16才も離れていたので、姉さんはまるでお母さんのように妹の面倒を
見ました。妹はいつも姉さんが傍にいてくれたため、両親がいなくても寂しいと思った
ことは一度もありませんでした。
 姉さんは本当に妹思いです。
 妹がまだ赤ちゃんの時は、おしめを嫌な顔一つせずに取り替えてくれました。
 妹が保育園に行くときは、手をとって連れて行ってあげます。そして妹が保育園から
帰る時も、迎えに来て手をとって家まで一緒に歩いてくれます。
 妹が風邪を引いた時は「大学」をサボってつきっきりで看病してくれました。公園や
野原で遊ぶときは迷子にならないようにしてくれます。
 妹が転んで泣いた時も、姉さんが直ぐに泣き止ませてくれます。まず、傷口をハンカ
チで拭いて、それから妹をソッと抱きしめ、頭を撫でてくれるのです。
姉さんはなんでも知っていて、なんでもしてくれます。妹は「姉さんに出来ないこと
なんてないに違いない」…そう、思っています。だから妹は姉さんの云う事には素直に
なんでも聞きました。
妹は姉さんが大好きです。それでも、妹は時々、姉さんから離れて一人になりたい時がありました。
 妹はなにかにつけて、姉さんに「それは駄目」「さぁ」「ほら、こうやって…」「こうし
なさい」だのと云われるのに飽きたのです。
 ある日曜の昼下がり、姉さんが昼飯を作っている隙に妹はこっそりと家を抜け出し、
野原へ行きました。妹は一人になれたのが嬉しくて、普段は姉さんから「服を汚すから
駄目よ」と言われている泥んこ遊びをして遊びました。妹は前々からずっと泥遊びをし
たいと思っていたのです。
 広い野原に一人きり…、直ぐに妹は泥だらけになりました。でも、妹は泥遊びを止め
る事はありません。何故なら野原には姉さんがいないからです。「これは駄目!」と妹を
注意する姉さんがいないからです。妹は楽しくなって服が汚れるのもかまわず泥遊びを
続けました。
 しばらくすると、姉さんの妹を呼ぶ声が聞こえてきました。
「否命!否命!!ねぇ、返事して!」
 ほうら、姉さんが妹の事を呼んでいます。
 でも、妹は黙っていました。泥んこ遊びを止めて、野原の茂みにジッと身を潜めてい
ました。姉さんの声は近くなったり、遠くなったりします。でも妹は黙っていました。
 声が段々と遠くなっていきます。妹はそこで突然、自分が空腹であることに気がつき
ました。自然と妹の脳裏に、姉さんが昼飯を作っていた姿が浮かびます。
 それから姉さんがいつも食後に出してくれるおいしい宇治茶の事が…、その後にいつ
も姉さんが読んでくれる本の事が…、それから野原に連れてって、一緒に遊んでくれる
姉さんの事が…そして姉さんの口癖「否命、それは駄目よ」が妹の脳裏に浮かびました。
 そのいつも傍にいてくれる姉さんは、今は妹の隣にいません。姉さんは、妹のこの泥
まみれになっている姿を見たらなんていうでしょうか?
 それを思うと、妹は急に心細くなって膝を抱え野原に蹲ってしまいました。
 飛蝗が足元でピョンっと跳ねます。風がヒューと通り過ぎていきます。妹の手につい
た泥が乾燥して砂になっていきます。でも、妹はただジッとしていました。
200しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA :2007/03/31(土) 00:59:04 ID:UbkAri17
 姉さんの呼び声がまた近くなってきました。
「否命!!否命!否命ェ、お願いだから返事をしてぇ…」
 姉さんの声はドンドンか細くなっていきます。
 しまいに姉さんは地面に座り込み泣き出してしまいました。
 姉さんは中々、泣き止みません。まるで転んでしまった時の妹のように…、姉さんは
ウェ〜ン、ウェ〜ンと泣き続けました。
 妹はいつも姉さんが自分が転んだ時には、優しく抱きしめて、頭を撫でてくれたのを
思い出しました。すると、不思議と妹の心細い気持は何処へ行ってしまいました。
 妹は立ち上がりました。そして、姉さんの前に歩いていきます。しかし、姉さんはあ
まりにも激しく泣いていたので、妹のそんな姿も目に映りません。
 妹は姉さんの前に立ち、肩に手を…



置こうとして………妹は色を失いました。

 自然と妹の身体に震えが走ります。背筋がツゥーと冷たくなります。妹はまるで凍り
付いてしまったように、動くことが出来なくなってしまいました。妹はただ呆然と姉さ
んの前に立ちすくんでいます。

 妹はある日、姉さんに連れられてお寺に行った事がありました。そこで妹は住職から
恐ろしい「否天(アスラ)」の木像を見せられました。否天とは三面六臂の姿をし、この
世を呪って天を睨んでいる恐ろしい魔羅(悪魔)です。妹はそれを見た時、恐怖のあま
り思わず泣いてしまいました。
住職はこの否天は釈迦如来の慈悲によって、魔羅から仏世の守護神になったのだよ…
と妹に説明しましたが、それでも妹は恐怖に身体を震わせつづけました。妹は恐かった
のです。その否天のまるでこの世の全てに絶望し、憎んでいるかの如き瞳が…。



 泣いている姉さんはそれと全く同じ瞳をしていました。

 妹の歯がガチガチなります、顔が真っ青になります。自分は何かとんでもない間違い
を犯したのではないか…そんな思いが妹の恐怖をますます煽りました。妹の震えは止ま
りません…。妹の歯がガチガチなります。
 姉さんがその妹の歯がガチガチなる音に気がついて、顔を上げました。

その瞳はいつもの優しい姉さんのものでした。

 そして次の瞬間、姉さんは妹の事をギューッと抱きしめていました。妹も、さっきの
姉さんの瞳はきっと見間違い…っと思って、姉さんの暖かい温もりに身を委ねました。
「否命!!嗚呼、否命!!!心配したのよ!?ねぇ何処に行ってたの!?否命が無事で
本当に良かったわ!!本当に、本当によ!!!」
 姉さんの喜びようは大変なものでした。
「否命、心配したのよ!?いったいどうしたの…嗚呼!!泥遊びがしたかったのね!?
いいわ…これからは…、その代わり絶対に私から離れないでね!!お願い、他のなにを
してもいいから、これからは…ねぇ否命、お姉ちゃんと約束して!!」
 姉さんは、そういって妹に小指を差し出してきます。いえ、正確には姉さんは妹に指
を「突きつけて」います。果たして妹には、その指を「取らない」と言う選択権が与え
られているでしょうか?
201しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA :2007/03/31(土) 00:59:59 ID:UbkAri17
「否命、お願い!お姉ちゃんと約束して!!もう、私から離れないって約束して!ねぇ
否命…もう私の元から離れていかないで!!」
 姉さんの妹を抱きしめる力が段々と強くなっていきます。
「否命!否命!!もう私から離れないでッ!!約束よ!!」
 妹はなんだか恐くなってきました。姉さんの爪が妹の首筋に食い込みます。妹の首か
ら血が滴り落ちました。それでも姉さんは妹を抱きしめる事を止めません。
妹の眼前には姉さんの小指が突きつけられています…。
「………」
 妹は恐る恐る姉さんの小指を取りました。すると姉さんは万力の如き力で妹の小指と
自身の小指を絡め、ニッコリ笑っていいました。
「約束よ、否命。もう、絶対に私から離れないでね…絶対によ!!」
 妹は首をコクッと動かして頷きました。なんだか急に口が動かなくなってしまったの
です。ですが、それを見ると姉さんは再び優しげな瞳を浮かべて言いました。
「さぁ否命、お家に帰りましょう。今日は否命の大好きなカレーなのよ」
 妹はその日、不思議な事に大好きなカレーが出されたというのに、それがどういう味
をしていたのかサッパリ分かりませんでした。
 妹が三歳と八ヶ月の時のことです。

 妹が四歳を迎えた頃、妹は恐い夢を見るようになりました。
 その夢の中には、決まっていつも恐い摩羅(まら−悪魔−)が出てきます。白装束を
身に纏い、真っ黒く長い髪を乱し、顔に角を生やした恐ろしい摩羅です。
 その摩羅の瞳に射すくめられると、妹は恐くて身体が動かなくなってしまいました。
恐ろしくて妹は目をあけることも出来ません。すると摩羅は妹の身体を、白装束から伸
びてきた幽鬼のような手で撫で回すのです。
 妹はその冷たい手の感触に背筋がゾッとしましたが、あまりにも摩羅が恐いのでただ
ジッと目を瞑って気持ち悪さに耐えていました。
 摩羅はそうやって一通り妹の身体に手を這わすと、パジャマのズボンを脱がして、今
度は舌を出して妹の足を唾でベトベト汚していきます。
 摩羅はその後、必ず妹のパンツを脱がします。そして摩羅は、妹のコカンにダランと
ぶら下がっている「マラ」を口に含みとジュボジュボと音を立てて、唾を垂れ流しなが
ら、なんとも美味しそうにしゃぶるのです。
 妹はその時、不思議な感覚に襲われます。むず痒いような、くすぐったいような、熱
いような、寒いような…そんな感覚が妹のマラを中心に広がっていくのです。
 
 恐い夢を見た朝は、妹は必ず倦怠感を覚えました。なんとなく身体に力が入らないの
です。夢の事を思い出すと妹は思わず、身体をギュッと縮めてしまいます。
 そんな妹の様子を見て姉さんが、
「否命、どうしたの?」
と、聞いてきたので妹は恐い夢を見る事を話しました。
 最初こそ姉さんはニヤニヤしながら、妹の恐い夢の話を聞いていましたが、段々と姉
さんの顔は強張っていきます。目は吊り上り、口元は歪になっていきました。
しまいには姉さんの顔は凄まじい憤怒の色に覆われてしまいました。
「否命、その話は本当なの!!」
 姉さんは妹をガクガク揺すり、血走った目で、唾を撒き散らしながら妹に迫ります。
その姿は否天のそれとまったく同じでした。妹は魔羅以上に姉さんの様態が恐くて思わず、
「嘘だよ…」
っと、言ってしまいました。なんだか「本当だよ」と姉さんに答えたら、もっと恐ろ
しい事になるような気がしたのです。
 しかし、それを聞いても姉さんの顔は元には戻りませんでした。姉さんは大学に行く
のも忘れて、妹を連れてホームセンターに行きました。
 そこで姉さんは色々なものを買いました。
 窓が開かないようにする装置や…ドアが開いたらブザーが鳴る機械や…ダミーの監視
カメラ等です。
 姉さんは家に帰り、それらを残らず仕掛けました。仕掛け終わった姉さんはもう恐い
顔をしていません。姉さんはもう一度、仕掛けた装置を見直すと、
「これなら大丈夫ね」
 と、満足そうに言いました。妹も姉さんのその顔を見ていると、なんだか大丈夫そう
に思えてきます。
202しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA :2007/03/31(土) 01:00:43 ID:UbkAri17
でも、全然大丈夫じゃありませんでした。
妹はその後も、たびたび恐い夢を見ました。夢の中に出てくるのは、やはりあの白装
束を着た摩羅です。そして最後は、必ず妹のマラ(陰茎)を美味しそうにしゃぶりました。
 妹は姉さんに相談しよう…と思いましたが、出来ませんでした。妹は姉さんのあの時
の血走った眼を思い出すと何も言えなくなってしまうのです。妹は一人で摩羅の恐怖に
怯え続けました。
 妹の恐怖は身体の異常という形で現れました。妹はどうしたわけか、ご飯をみても、
おやつのケーキを見ても、大好きなカレーを前にしても、全然食欲が湧かないのです。
 妹は見る間に痩せこけていきました。姉さんは、何か困ったことがあったらなんでも
相談して…と言いましたが、妹は勿論相談できるわけありませんでした。
妹はますます痩せていきます。

 見かねた姉さんは、ある日、妹をお寺に連れて行き、そこの住職に妹を預けました。
姉さんは神仏など信じていませんでしたが、それでも何か起こる事を期待したのです。
 住職は怯えている妹を居間に通すと優しく、妹に「何か悩みがあるのですか?」と、
尋ねました。妹はしばらく俯いていましたが、住職が「秘密は守りますよ。遠慮なさら
ずに貴方の悩みを打ち明けてください」と言いましたので、妹はホッとして言いました。
「ジュウショクさん、魔羅って、どうやってタイジするの?」
 それを聞くと、住職はその優しげな顔を僅かに歪めました。しかし、直ぐに優しい顔
に戻って「貴方の身体のことは梓さんから聞いていますよ」と言い、それから住職は、
「貴方はマラを去勢したいのですか?」と妹に尋ねました。
「キョセイ?」
「私は修行のため、マラを小刀で切り落としました」
「そうしたら、もう魔羅は出てこないの…?」
「はい、切り落としたのですから」
 それを聞くと妹の顔がパーッと明るくなりました。
その後、住職は顔を明るくした妹に去勢は子供が一人で出来るものではないよ…と、
注意しましたが、恐い夢の解決策を見つけて有頂天になっていた妹には聞こえません。
 私達が見上げている天のその上に、更に八つの天があります。その最上の天を有頂天
といいますから、有頂天になっている妹がもう何も聞こえなくなるのは当たり前のこと
でした。
 妹の脳裏に浮かぶのは、魔羅をキョセイ(退治)した自分の勇ましい姿です。
203しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA :2007/03/31(土) 01:02:26 ID:UbkAri17
その夜、摩羅が妹の前に現れた時、枕の下にコッソリ手を入れました。妹の指先にヒ
ンヤリしたものがあたります。それは妹が寝る前に隠しておいた包丁です。これがあれ
ば自分は摩羅をキョセイすることが出来る…、妹は枕の下の包丁の柄をギュッと握りま
した。
 しかし、摩羅は妹の倍は大きい身体をしています。それに力もとても強そうです。も
し魔羅と取っ組み合いになったり、キョセイしそこねた場合は、逆に妹のほうが摩羅に
殺されてしまうかもしれません。
ですから、妹はチャンスを狙いました。
 一撃で確実に摩羅をキョセイするチャンスです。
 摩羅はいつものように妹の身体に指や舌を這わせていきます。しかし、この時点では
まだ駄目です。今、ここで妹が枕から包丁を取りだせば摩羅はそれに気付いてしまうで
しょう。そうすれば摩羅は妹に対して何をするか分かりません。ですから、妹は摩羅の
おぞましい感触にジッと耐えていました。
 そして、妹の狙っていたチャンスがやってきました。魔羅は妹の身体に指を這わせる
のを止めると、いつも通りに妹のズボンとパンツを脱がしマラをしゃぶり始めました。
 摩羅の髪は長いので、摩羅が妹のマラをしゃぶるために顔を舌に向けると、髪がダラ
ンと垂れ下がり摩羅の視界を塞いでしまうのです。これなら、妹が枕の下から包丁を出
しても摩羅が気付くはずはありません。
 妹は包丁を枕からそっと取り出しました。そして包丁を高く掲げると、それを摩羅の
首に渾身の力を込めて振り下ろしました。
(ヤッ!!)
 包丁と摩羅の首がゴンっと鈍い音を立ててぶつかります。


 しかし、それだけでした。四歳の少女の細腕で、摩羅の首が断ち切れるはずはありま
せん。包丁は摩羅の首に確かに命中しましたが、その反動で包丁は妹の手から離れ、何
処かに飛んでいってしまいました。
摩羅の首と胴体は未だに繋がっています。妹の包丁は、摩羅の首に食い込みもしませ
んでした。妹の顔に死相が浮かびます。
 すると、摩羅はそんな妹の怯えきった顔を見ると、嬉しそうに口元を歪ませて笑いだしたではありませんか!
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
 摩羅は妹を見据えながら、ケタケタと可笑しそうに乾いた笑い声をあげています。
 妹はあまりに恐くてお漏らしをしてしまいました。妹のマラから黄色い小便が、勢い
よく流れ出ました。
 妹の布団に黄色いシミが広がります。すると、摩羅はそのシミに口をつけて小便を吸
い始めました。
妹は呆然としながらそれを見るより他はありません。妹は自分が摩羅に殺されてしま
う事を半ば確信しました。シミを吸い終わった摩羅は妹をニヤニヤしながら、眺めてい
ます。


 っと、その時――――唐突に摩羅の首筋からツゥーっと何かが垂れ落ちてきました。
それは摩羅の白装束に赤い赤いシミを広げていきます。
204しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA :2007/03/31(土) 01:03:13 ID:UbkAri17
「えっ?」
 その間の抜けた摩羅の声が合図であったかのように、摩羅の首から血が噴水のように
噴出してきました。何処か冗談みたいな光景です。
妹の布団に赤い染みがドンドン、ドンドン広がっていきます。
「ぁっ・・・・・・・嗚呼アアアアアア!!」
 摩羅は悲鳴を上げ、血を撒き散らしながら妹の部屋から転がるように逃げていきました。
(やった!!)
 妹はそこで目が覚めました。
 しかし、何処か、何かが変です。
 まず妹の下半身は裸でした。布団には黄色いシミが確かにあります。妹のマラには得
たいの知れない粘液がこびりついています。
 そして、赤いシミが妹の部屋を真っ赤に染め上げていました。
 赤いシミは妹の部屋から廊下へと繋がっています。妹は部屋に落ちていた包丁を握り
しめながら、恐る恐る廊下の赤いシミを辿りました。
「ァッ・・・ァァァァ」
 何処からともなく、そんなモータの駆動音のような呻き声が聞こえてきます。赤いシ
ミを辿るにつれ呻き声は段々と強くなっていきました。
 妹の包丁を握る手に力が入ります。
やがて、赤いシミは姉さんの部屋の前で止まりました。呻き声もその中から聞こえて
くるようです。
(姉さんが危ない!)
妹は自らの危険も省みずに姉さんの部屋のドアを開けました。
「否命…、こんな時間にどうしたの?眠れないの?」
 姉さんは突然、真夜中に部屋に入ってきた妹を見て怪訝そうな顔をしていいました。
 般若の面を被り、髪を解いて、白装束を着て、首から血を噴出させながら…。
 


それから三時間後、姉さんは運ばれた病院で輸血が間に合わず、出血多量で息を引き
取りました。
妹が四歳と二ヶ月のことです。
205しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA :2007/03/31(土) 01:04:05 ID:UbkAri17
 妹は親戚の家に引き取られました。
 しかし、妹は新しい家に馴染めないこともあって、直ぐにホームシックを起こしてし
まいました。
 妹は姉さんが恋しくてたまりませんでした。
 いつも自分の傍にいてくれた姉さん…、泣いている自分をあやしてくれた姉さん…、
本を読んでくれた姉さん…、妹は失って初めて姉さんの本当の大切さに気付きました。
 しかし、現実はもうどうしようもありません。妹は親戚の家の子として生きていくし
かないのです。妹もそのことを幼心に分かっていました。でも、分かっているから割り
切れるか…と言われると、それは違います。
 妹はどうしても割り切れませんでした。ですから、妹はどうしても新しい家を、自分
の家と感じることが出来ません。割り切らなくちゃ…と、思うのですが、そう思えば思
うほど新しい家に馴染めなくなってしまうのです。
 そんなある日、妹は、ふと「姉さん」が自分のマラをしゃぶっていたのを思い出しま
した。それからあの時の不思議な感触を…。
 すると妹のマラは二倍ほどの大きさに膨張し、まるで天を付くように立ち上がり、ビ
ンビンに硬くなりました。
 再び、妹のマラにあのむず痒いような感覚が広がります。そして妹の身体に、そのマ
ラを触りたいような、擦りたいような…マラに何かしらの刺激を与えたい衝動が湧き上
がってきました。
 妹は、その衝動にしばらく戸惑っていましたが、やがて姉さんがそうしたように、妹
もマラを口に含みました。
「お姉ちゃん…」
 そして、妹は思わず涙を流しました。
 そこには、もう決して感じられないと思っていた姉さんの「温もり」があります。姉
さんの温もりはマラを通じて妹の身体全体に広がっていきました。
 背筋が痛くなってきましたが、それでも妹はマラを口に含むのを止めません。妹は、
まるで姉さんに抱きしめられているような安らぎを、全身で感じていたのです。
 妹は嬉しくて、嬉しくて、涙をひたすらに流し続けました。
 遠くに行ってしまったと思っていた姉さんが、実はこんなに近くにいるんだ…、妹は
なんだか可笑しなって笑ってしまいました。マラを口に含んだまま、フフフ…と心底幸
せそうに笑い声を上げました。
 そして、妹はこの新しい家で生きていく決心をしました。
 確かに、この家は自分の家ではありません。姉さんに買ってもらったヌイグルミも、
赤いシミのついた布団も、自分の成長を姉さんが刻んでくれた柱もありません。
 だけど、それがなんだというのでしょう?
 もう、妹は何処にいっても姉さんと一緒なのです。もう、妹は姉さんと離れることは
ないのです。そしてこの家にも姉さんは確かに存在していました。
 もう、妹は寂しくなんかありません。妹はこうすることでいつでも、姉さんを感じる
ことが出来るのですから。
 妹はこの新しい家で、きっと幸せにいきていけるに違いありません。


しかし、マラを口に含んでいるのを親戚に見つかった妹は…その三日後、再び自分の
家へと追いやられてしまいましたとさ…。

206しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA :2007/03/31(土) 01:04:49 ID:UbkAri17
------------------------------------------------------------------------------


「ふぅ」
 一仕事終えた否命は、顔を上げると手を組んで「ん〜」と呻き声を上げながら、背筋
を上に伸ばした。そのまま、上体を左右に倒していく。否命のこの体勢は激しく背筋に
負担をかけてしまうので、念入りにストレッチを行わないと、背筋を痛めてしまうのだ。
 っと、その時、
「二分二十四秒。早漏なのね…、貴方って」
なんの前触れなく、唐突に否命の背後から声がかかった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
思わず悲鳴を上げかけてしまうほどビックリして後ろを振り向いた否命の視線の先に
は…普通にソファーでくつろいでお茶を飲んでいる例の財布を盗んだ少女の姿があった。
自分は確かに鍵もかけたし、防犯ブザーの電源もいれたはず…なのに…なんで?と固ま
る否命に少女はニッコリと微笑みながら言った。
「自己紹介が遅れたわね。私の名前は来栖凛(くるす りん)。宜しくね、灘神影流・脱
骨術の使い手さん」
207しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA :2007/03/31(土) 01:05:42 ID:UbkAri17
投下終了です
208名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 01:12:58 ID:nMJNDJ0F
GJ
209名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 01:51:43 ID:z3Y8zWm7
>>197
健一がすごく、ものすごく、残暑厳しい夏に冷たいカフェオレを飲んでいる人を羨ましいって思うぐらいに、羨ましい。
誰か俺を亡くなったダンナさんと勘違いしてくれる人がいないだろうか。……いないよなぁ。


以下、個人的な感想。※スルー推奨
説明不足な部分が少なくなってる。あとは細かい描写なんかを入れるともっと内容が濃くなる。
重要な一言・アクションの前や、緊迫感のあるシーンでは地の文を多く入れるといいってじいやが言っていた。
そして、それを見極めるのは職人の道を行き文を司る者だっておばあちゃんが言っていた。

先日から色々言ってすまんかった。この辺にしときますわ。


>>207
俺にレズ萌えは無いというのに、なんというキモアネか……
しかし、ふたなり注意報が以前から発令されてたのは否命が両性具有者だったからか。
つか、体柔らかいな。否命っち。
210伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/03/31(土) 05:52:42 ID:oJy4J/ZK
おはようございます。
更紗置いときますね。
http://imepita.jp/20070331/211260
211名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 06:11:41 ID:iCCqFoB1
これなんて投下ラッシュ?

とにかく全てにGJを
212名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 13:41:23 ID:i5ax/Si3
ttp://www30.atwiki.jp/yandere/pages/1.html

vipをうろついてたら、こういうの見つけた。
キャラ設定見てて思わずニヨニヨしそうになった。
213名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 23:13:12 ID:Zd+5VeT1
ところで、ヤンデレって、
 心を病んでしまった「ヒロイン」であって「ヒーロー(男)」は含まないのでしょうか…?
 主人公(男)が病む話も面白いような気がしますし、それでしたら衆道も書けるので創作の
幅が広がるかと…。
214名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 23:16:36 ID:oJy4J/ZK
需要があればそれもまたありじゃね?
俺はヤンデレBLなんか断じて認めないが
215名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 23:46:34 ID:B2TxszwP
個人的に男のヤンデレは萌えない
216名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 23:58:10 ID:z3Y8zWm7
女性視点で語られる物語ならば、アリかな。

俺もBLはだめだわ。
21751 ◆dD8jXK7lpE :2007/04/01(日) 00:18:15 ID:cYfvBBu7
ちょっと長いですが投下します
21851 ◆dD8jXK7lpE :2007/04/01(日) 00:23:29 ID:cYfvBBu7
鬼葬譚 第二章 『篭女の社』

よんばんめのおはなし
==============================
 人間の価値は、その人間の死をどれほどの人間が悼むかで
計る事ができるとは、一体誰の言葉だったろうか。
 父の葬儀はしめやかに、だが多くの人に悼まれながら過ぎて行った。
 父が良く相談に乗っていた方々、氏子の方々、それに…
良く神社に遊びに来ていた子供達までも、葬列に並んでいた。
 そういう意味で言うならば、父の価値はきっと高かったのだろう。

 ――唯一の肉親であった、あたしにとっても。


 父は、殺されていた。

 心臓を刃物で一突き。それが致命傷だったらしい。
 手荷物から金銭類がなくなっているため、恐らくは小金目当ての
賊の仕業だろうとの話だった。

 何故。どうして。

 父が、何かしたというのだろうか。
 こんな理不尽な最後を父が迎えなければならない理由が
どこにあったというのだろうか。
 葬儀の日以来、あたしの脳裏をめぐるのは答えのない
その問いだけ。
21951 ◆dD8jXK7lpE :2007/04/01(日) 00:24:27 ID:cYfvBBu7
 そしてその日も…あたしは、何をするでもなく社の縁側で
ぼうと空を見上げていた。
 空はからからに晴れ、もう夏の陽気を降り注いでいる。
けれど、その陽気ですらあたしの心に掛かった澱みを
掃う事は出来ない。
 頭をめぐる『何故』、という問いかけ。
 …いや、それはもう問いかけですらなく、あたしの心を縛りつけ、
深い闇の中に沈める『呪詛』にも似ていた。

 だからだろうか、あたしは目の前に人影があることにすら
気がついていなかった。

「…よう」
「…」
「…おい」
「…」
「おい…紗代!」
「え…?」
 
 あたしを呼ぶ声に気がついて、ようやっと顔を上げる。
 逆光に遮られ、影になった男の顔。

「儀…介」

 ぼぅと、熱病に浮かされたかのようにその男の名を呼ぶ。
 

「…なにかよう? ごめん、いま少し疲れてるから…」

 あたしは儀介にそれだけ言うと、室内に戻ろうと
立ち上がる。今は、とにかく一人でいたかった。
22051 ◆dD8jXK7lpE :2007/04/01(日) 00:25:10 ID:cYfvBBu7
…だが。

「待てよ…!」

 儀介はそんなあたしの手を掴み、あたしを引き止める。
…ああ、そういえば父が死んだあの日も、こんな感じで
儀介に無理やり呼び出されたのだっけ。
 あたしは、何故か急にそんなことを思い出した。
 …もっとも、今はそれもどうでもいい事か。

「…ごめん、疲れてるの…放して」

 あたしは、儀介の顔も見ずにその手を振り払おうとする。
 だが、儀介は手を放さない。それどころか、より強くぎゅうと
あたしの手を握り返した。
 あたしは何も言わずに手を振り払おうとさらに力を入れる。
 それでも、儀介はあたしの手を握る力を弱めようとはしない。

「…放して、お願いだから」

 儀介のほうを振り向き、あたしは懇願するように言う。
 …儀介は、そんなあたしを真っ向からじいと見据えた。
あの日…あたしに向けたあの視線そのままに。
 あたしはそんな儀介の視線に居た堪れなくなり、逃げ出す
ように走り出そうとする。
 だがそんなあたしを逃がすまいとするかのように、儀介は
ぐいとあたしの手を強く引き返した。
 逃げようとすれば逃げようとするだけ、儀介の手の力は強くなる。
22151 ◆dD8jXK7lpE :2007/04/01(日) 00:26:22 ID:cYfvBBu7

 なんなのよ…!

 だんだんとあたしはそんな儀介に苛立ちを覚えはじめていた。
 一人でいたいのに、そっとしておいて欲しいのに…ッ!

「…いい加減に放してよ! なんなの?! 一人にして欲しいのよ!」

 幾度かそんな事を繰り返すうちに、とうとうあたしの癇癪が炸裂する。
 そんなあたしに、一瞬儀介は驚いたような顔をし、だがすぐにむっと
した顔になると、あたしを睨んだ。

「あのな! そんな落ち込んだ姿見せられてな、はい、わかりました
 なんて帰れると思うのかよ?! 人が心配してるってのに…」

 なんて…勝手な。
 儀介の勝手な言葉に、あたしの頭にかぁっと血が上る。
 
「判らないくせに!あたしの気持ちなんかわからないくせに!」
「わからねえよ! 何も言わないで、一人で塞ぎ込んでちゃさぁ!」

 腹が立つ。
 こいつなんかに、こんな奴に何が判るって言うんだ。

「じゃあ、教えてよ! 答えてよ!
 どうしてお父さんは殺されなきゃいけなかったのよ?!」

 気が付けば、あたしは儀介に向かって激昂していた。
22251 ◆dD8jXK7lpE :2007/04/01(日) 00:27:12 ID:cYfvBBu7
「お父さんが何かした!?
 お父さん、殺されなきゃいけないくらい悪い事したのかなぁ?!
 お父さんのどこに殺されなきゃいけない理由があったのかなぁ?!」

 興奮した頭は、冷静な判断をさせてはくれない。
あたしは儀介に向かって叫び続ける。
 叫ぶあたしの目じりがどんどんと熱を持っていく。

「教えてよ…どうして…お父さん…おとうさんがぁ…
 う…うぇっ…ぐっ…うぇぇぇ…」
 
 最後の言葉を紡ぐ前に、零れ出した、涙。
 堪えきれない感情の高ぶりに、あたしはもはや泣く事しか出来なかった。

「ふぇ…ぐ…おとーさん…ひぐ…おとぉさぁん…うぇっ…」

 嗚咽が、涙が、止まらない。
 あたしは、まるで幼い頃のように泣きじゃくり続けた。
 …そんな時だった。
 ふわりっ、と温かい感覚が私を包む。

「…?」

 涙に濡れた顔をあげる。
 そこには…あたしを優しく抱きとめる儀介の姿があった。
22351 ◆dD8jXK7lpE :2007/04/01(日) 00:28:02 ID:cYfvBBu7
「…辛かったよな。苦しかったよな。昔からお前、父親っ子だったし…な」

 儀介の声。先ほどまで感じていた嫌悪感は、もうない。

「お前…本当は結構泣き虫なんだからさ…少しは、泣いちまえよ。
 恥ずかしいなら、胸の一つや二つ、貸してやるからさ」

 儀介…。
 胸が詰まる。先ほどの涙とは、違う涙がこみ上げてくる。

「俺、頼りねえかもしれないし、親父さんみたいに頭がいいわけでもないけど…。
 …俺じゃ、駄目かな。俺じゃ、親父さんの代わりには、なれないかな?」

 儀介の顔を見る事が出来ない。
 だからあたしは、顔を儀介の胸にうずめた。

「…俺と、結ばれてくれないか。
 辛い事も、悲しいことも、半分ずつならきっと耐えられると思うんだ」

 儀介のその言葉に、あたしはただ、泣く事しか出来なかった。

==============================

と、ここまで。
なんか…長いですな
224名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 00:47:08 ID:0sydcjTA
泣かせるじゃあないか
225名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 00:53:01 ID:o4AwaBLq
続きwktk
226名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 01:24:26 ID:FRyGPpEg
依存ヤンデレの気配がする…!
227いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/04/01(日) 01:53:40 ID:UppdIXDd
>>伊南屋 氏
GJ!
書いておいてなんだけれど、これそのまま鈍器とした方が使い勝手が良さそう

>>212
素敵なゲームだ……完成したら是非やってみたい

投下します
228いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/04/01(日) 01:54:25 ID:UppdIXDd

 夜までにやっておくことがあった。

 神無士乃に監禁された影響か、体の節々が酷く痛い。できることなら約束の夜まで寝ていた
かったけれど――如月更紗のあの様子を考えれば休んでいるわけにもいかなかった。
 いい加減、あの女に翻弄されているだけのこの状況はマズい。
 こちらからも動かなくてはならない。主導権を握られっぱなしというのは、あまり僕の性に
はあわない。振り回されるだけだと、いつか放り投げられることを経験で知っている。そうで
なくとも、如月更紗があんなにあっさりと人間を殺す存在だった以上、それなりの対処は――
 人殺し。
 神無士乃の死。

「――――」

 止めよう、それを考えるのは。
 姉さんが死んだときに比べれば、衝撃も怒りも少ない。無い、とすらいっていいほどだ。け
れど、幼馴染である神無士乃が死んだということは――そしてそれ以上に、如月更紗が人を殺
したという事実が――僕の心を揺らしていた。
 考えるのは、後回しだ。
 今は――動かないと。
 立ち止まる暇は、もうない。行く付く所まで、来てしまったのだから。

「さしあたっては……風呂入るか」

 汗がしみこみすぎて色が変わったシャツを脱ぎ捨ててシャワーを浴びる。久し振りに浴びる
水は心地良くてたまらない。温度をいつもよりも上げて、頭が煮えるような熱湯をあびる。体
が熱くなったところで、冷水に切り替える。高温と冷水。交互に、交互に繰り返して浴びてい
るうちに意識が醒めてくる。
 頭からシャワーを浴びながら考える。如月更紗の言うことを信じるならば、今夜全ての決着
がつく。少なくとも、決着の場が用意されることになる。
 選ばなくてはならない。
 姉さんの復讐を優先するのか。
 如月更紗を、優先するのか。
 今答を出す必要はない。夜までに出せばいい。たとえ出さなくても――きっと、選ばざるを
得なくなる。
 二つのことを同時にできるほど、器用でないのは自分がよく知っている。

「あー……」

 考えたくなかった。何も考えないままに、ただ復讐鬼でいられればよかった。悩むことなく、
姉さんの仇を討てる存在であればよかった。
 数日前までは、そうだったはずだ。
 そうでないとしたら――良くも悪くも、あの女の存在が、心の奥にまで根を張ったからだ。

「……最悪だ」

 何が最悪なのか分からないままに、そう呟いてシャワーを止めた。

229いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/04/01(日) 01:56:42 ID:UppdIXDd

 ぬれた体をバスタオルで綺麗にふき取る。手足に妙なアザができていた。円状に出来たソレ
が何なのか考え、長時間手錠をされていたせいで欝血しているのだと気付いた。さすがにあま
りいい気はしないが、包帯やリストバンドで隠したら逆に怪しまれるのでそのままにしておく。
 手首のアザはリストカットみたいで、姉さんのことを否応無く思い出してしまう。

「あのリストカットって……これで斬ったのか……?」

 制服の上に置いてある魔術単剣の刃は妖しく耀いている。姉さんの血を吸ったとしても不思
議はない。それこそが『魔術』なのではないかと勘繰ってしまう。
 魔術も魔法も信じないけれど、
 姉さんは――そういうのが実在すると、信じていたのだろうか?
 少し考えて見るが、結論はでなかった。姉さんにとってはきっと、どっちでもよかったに違
いない。寄りかかる対象であるのならば。

「…………」

 制服に袖を通す。黒白で染められたの制服を着ていると、まるで喪服に身を包んでいる気が
してくる。ある意味、喪服で間違いはないのかもしれない。
 いや――
 僕の中で姉さんが死んでいない以上、喪に服しているとはいえないか。

「――さて」

 着替え終わったのを姿見で確認し、通学鞄に魔術単剣を放り込む。教科書を入れていないの
でいつもよりは軽いはずのなのに、ずっしりと重く感じるのは――それが人殺しの武器だから
だろう。
 ふと、思う。
 如月更紗のあの鋏は、一体どれほど重いのだろうかと。
 考えても仕方のないことだった。僕は頭を振りかぶり、思考を切り替える。
 今日は月曜日。この時間なら、ちょうど一限目が始まったくらいだ。人のいない通学路はさ
ぞかし気持ちがいいだろう。
 呼び出された時間は夜だが、その前に、学校へ行く必要があった。
 ――如月更紗の住所を知るために。
 僕は鞄をつかみ、玄関から出る。扉を閉める前に、振り返って家の中へと声をかける。

「行ってきます、姉さん」

 玄関の向こうで、姉さんは優しく微笑んで手を振っていた。行ってらっしゃい、とその口が
動いている。
 その笑みを見ながら、僕は、心の中でそっと付け加える。


 ――もしかしたら、もう戻ってこないかもしれないけれど。

230いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/04/01(日) 01:58:29 ID:UppdIXDd
 
 如月更紗の住所を手に入れること自体は容易かった。問題は、偶然如月更紗とはちあわせし
ないこと。下手に姿を見られれば、勘の良さそうな如月更紗は僕がしようとしていることに気
付きかねない。
 幸いにも学校は授業中で、如月更紗どころか他の生徒とも会わなかった。
 学校の中では真面目な生徒を装っていたから、職員室に入ることも珍しくない。コツはゆっ
くりと歩くこと、真顔を崩さないこと。いかにも『先生に頼まれました』という顔をしていれ
ば、他の教師は無関心に受け流してくれる。担任が授業をしているのを確認し、授業中で人の
いない職員室に入って如月更紗の住所を調べ上げる。
 学校を挟んだ反対側だった。 

「……意外と分かりづらいな」

 学校でメモしてきた住所をもとに家を調べる。『地図』ではなく『住所』でしかないので、
そこらで番地を見ながら探すしかないのが辛いところだった。仮にも学校をサボっている身な
ので――何よりも鞄の中には言い逃れのできない凶器が入っているので――警察に頼るわけに
もいかなかった。
 番地を一つ一つ確認していきながら如月更紗の家を探す。この辺りは高級住宅街なのだろう
か、奇妙なほどに静かだった。どこの通りも同じに見えて、正直迷ってしまいそうになる。
 昼間の街が、こうも静かだとは思わなかった。
 まるで――街が死に絶えたみたいに。

「そんなSF作品あったよな……タイトル忘れたけど」

 掲示板があったので住所を確認する。大まかにはあっているが、道を一本間違えていたらし
い。歩いてきた道を引き返し、左へと折れて直進する。
 向かう先は――如月更紗の家だ。
 学校があるこの時間、恐らく如月更紗はいないだろう。家族がいるかどうかは、分からない。
 そもそも、行って何がしたいわけでもない。
『何か』を知りたいだけだ。
 一方的に僕へと関わってきた、『如月更紗』について、何かを知りたかったのだ。どんな些
細なことでもいい、家族構成や何やら、そんなことでもいい。
 全てが終わる前に――如月更紗のことを、知りたいのだ。
 だから、僕は今彼女の家へと向かっている。不法侵入も辞さぬ覚悟だった。最悪の場合、如
月更紗本人が学校にいかずに家にいるという可能性もあるが――その場合は直接話をするだけ
だ。十二時間ほど予定が早まったに過ぎない。
 突き当たりで左に曲がり、すぐに右に折れる。番地は確実に如月更紗のところへと近づいて
いる。
 そこの角を曲がれば、如月更紗の家がある。

「――――」

 覚悟を決めて、
 曲がった。


 そこに――家はなかった。

231いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/04/01(日) 02:02:22 ID:UppdIXDd
「なんだ――これ」

 驚愕で、口が塞がらない。
 何もないわけではない。建物があるにはあるが――少なくともソレが『家』には見えなかった。
 廃屋、では生易しすぎる。
 廃墟、では生ぬるい。
 幽霊屋敷、でもない。あばら家、とも違う。
 無理に表現を探すのならば――『終わっている』。
 この家は、どうしようもないほどに、終わっている。
 そう云うのが相応しい姿をしていた。高級住宅街らしく、かつては西洋風のモダンな家だっ
たのだろうが、今ではその名残しか残っていない。三階までの窓ガラスは全てわれていて、割
れたガラスが地面に散らばっている。鉄門は斜めに歪んでいて、押しても引いても飽きそうに
ない。壁の塗装はところどころが剥がれていて、その上を蔦が走っている。泥棒ですら脚を踏
み入れるのを躊躇ってしまいそうな、かつて家だったモノがそこにあった。
 もう一度メモで住所を確認する。間違いなく、この家が、如月更紗の家だった。
 人の気配は――何もない。
 ここだけ、世界が終わってしまっているかのように、静かだった。

「住んでる……のか、ここに?」

 言ってみるも、自信がない。此処に人間が『住む』ことが出来るだなんて、想像すらできなかった。
 住所の間違い――それが、一番ありそうな線に思えた。
 けれど。
 如月更紗ならばともかく。
 マッド・ハンターなら、此処にいてもおかしくはないと、そう思った。
 それが決め手だった。覚悟を決めるには、十分な理由になった。
 唾を飲み込み。
 覚悟を決めて。

 僕は――如月更紗の家へと、踏み込んだ。

 見た目どおりに開かない門を無理矢理に乗り越えて玄関へと向かう。玄関扉に鍵は掛かって
いなかった。ぎぎ、と重い音を開けて、扉が開く。中は思ったよりも暗くはない――当然のよ
うに電気はついていないけれど、窓が割れているせいで無制限に光が入ってくる。
 靴を脱ぐか脱ぐまいか悩んで、結局脱がずにあがることにした。フローリングの上には土や
ガラスが散らばっていて、裸足で歩いたらまず間違いなく怪我をする。足跡が残るのが気にな
るが――まず気付かれない自信はある。
 入ってすぐに、二階へと続く階段があった。

「…………」

 明らかに上に何かがありそうだったけれど、とりあえず下から見て回ることにする。
 単純に――上には、いきたくなかったのかもしれない。ホラー・ムービーで死亡フラグをた
てるような気配が、上にはあったからだ。
 家の配置というのはどこも同じなのか、一階には家族共用のスペースが広がっている。トイ
レ、風呂場、脱衣所、居間。どこにでもありそうなその部屋は、やはりどれも荒れている。荒
れているのだが――

「なんか――変だ」

 荒れ方に、妙に作為的なものを感じる。外を見たときには、今にも崩れてしまいそうな印象
があったが、中はそうでもない。歩いていて床が軋むこともない。壁をよく見れば、老朽化ど
ころか建築されて十年とたっていないようにも見えた。
 意図的に『廃墟』へと仕立て上げたような――そんな印象があった。
 その印象は、台所に脚を踏み込むと同時に強まることになった。
 ヴゥゥウウン、と。
 蝿が飛ぶような――耳鳴りの音が、断続的に響いてた。その音で気付く。この家に、電気が
通っていることに。
 冷蔵庫が、動いているのだ。
232いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/04/01(日) 02:03:46 ID:UppdIXDd

「…………」

 台所の隅に置かれた大型の冷蔵庫。一人暮らし用のではない。ホームタイプの、身長ほども
ありそうな巨大な冷蔵庫だ。かくれんぼにでも使えば、子供どころか大人さえも入ってしまえ
そうな冷蔵庫。
 それが――動いている。
 ヴゥゥゥン、と、低く唸りをあげている。

「…………」

 開ける必要はない。別に、冷蔵庫を開ける必要なんて、少しもない。
 ないというのに。
 どうして――冷蔵庫を開けたくないと、強く思うのだろう。
 開ける必要がない以上、そんな心配はしなくてもいいのに。考える意味なんてないのに――
あの冷蔵庫を開けて、中を見ることだけは絶対にしたくないと思うのは、何故なんだろう。
 直感か。
 本能か。
 それとも――想像力か。
 例えば。
 如月更紗にだっているはずの『家族』のこととか。平日の昼間だというのにいない母親だと
か。こんな家の有様を見て彼女の父親は何も言わないのだろうか、とか。そんなことが、頭の
中で渦巻いている。
 それこそホラー・ムービーだ。あれは何だったか、冷蔵庫の中に、ずらりと肉が並んでいた
のは――

「……バカバカしい」

 そんなことが――あるはずがない。
 それこそ、想像力の暴走だ。
 僕は思い切って、唸りを上げ続ける冷蔵庫に手をかけ、
 開けた。
 中には――

「…………」

 ペットボトルが入っていた。

 ミネラルウォーターのペットボトルが数本と、なぜか冷やしてあるカロリーメイト。ワイン
が一本に、ビスケットの缶が一つ。
 閑散としすぎているものの、極普通の冷蔵庫だった。

「……はは」

 乾いた笑いが、意図せずに口から漏れてくる。
 そうだよ――これが普通なんだ。廃墟モドキの家に、そんなに食材がびっしり入ってるわけ
もない。出し忘れたものが残っている、その程度の有様だ。
 気負っただけ、損した気分だ。
 意識して笑い続けながら、僕は冷蔵庫を閉めて、ついでとばかりに冷凍庫の扉も開けてみた
。中に何が入っているのか気になったのだ。
 開けた冷凍庫の中には、


 生首が入っていた。


233いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/04/01(日) 02:04:38 ID:UppdIXDd

「――――」

 氷付けにされた、どことなく如月更紗の面影がある中年女性の生首が――じっと僕を見てい
た。
 生首を、目があった。
 ――神無士乃と、同じように。

「ぐ……が、ああぁぁ!」

 堪え切れなかった。
 込みあがる吐き気を堪えきれずに、僕は床へと倒れこんだ。はきたい。はきたいのに、喉か
らは何も出てこない。吐き気に衝き動かされるように喉を掻き毟りたくなる。必死で喉を押さ
え、そのせいで呼吸が苦しくなる。
 思い出してしまった。
 生首と目があったせいで、神無士乃の死に様を、思い出してしまった。
 そして――
 想像してしまったのだ。
 生首に、如月更紗の面影があったせいで。

 如月更紗の死に様を、考えてしまったのだ。

 この吐き気は、そのせいなのだろうか。死にたくなるような吐き気を必死で押さえ込む。こ
こで吐いてしまうわけにはいかない。そんな『証拠』を残していくわけにもいかない。
 水を呑みたかったが、水道が通っている保証はなかったし――冷凍庫を見た後では、冷蔵庫
に入っているミネラルウォーターを呑む気にはなれなかった。
 見ないように気をつけて冷凍庫の扉を閉める。噴出してきた冷気が途絶えるだけで、だいぶ
楽になった気がした。
 よろよろと、壁に手をつき、台所を後にする。
 ともかく――これで、はっきりした。
 この家は、異常だ。
 如月更紗は、僕と出会う以前から――異常なのだ。
 狂気倶楽部に相応しく。
 僕が想像するよりも、ずっと、異端だったのだ。

「…………」

 首を斬られていた死体――たぶん、如月更紗の母親なのだろう――も、やはり『鋏』で斬ら
れたのだろうか。
 自分の母親を――自分の手で。
 殺したのだろうか、彼女は。

「…………」

 分からない。それこそ、本人に問わなければ分からないことだ。
 よろめく体に鞭を打って歩く。まだ二階が残っている。本当に何かがありそうなのは、二階
なのだ。冷凍庫に入っていたモノよりも酷くはないと思うが――正直、この先何がでてきても
驚かない自信はあった。
 手すりに全体重を預けながら、二階への階段を一段一段昇っていく。足取りが重い。脚が鉛
よりも重く感じる。
 何も見なかったことにして、帰りたいと思う自分がいる。
 それ以上に――全てを知りたいと思う自分がいる。
 せめぎあいを続けながらも、階段を昇りきり、正面にある扉の前に立つ。
 此処だ、という直感があった。
 扉の奥に――全てがある。
 覚悟を、決めなおす必要はなかった。ノブに手をかけ、ひと息に開ける。
 扉の向こうには――
234いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/04/01(日) 02:06:05 ID:UppdIXDd

 ――極普通の、少女の部屋があった。

「…………普通、だな」

 普通だった。
 荒れていない。荒れ果てた家の中で、その部屋だけが守られていたかのように荒れていない
。窓にはレースのカーテンがかかっていて、二段ベッドは天井からつるされたヴェールのよう
なもので覆い隠されている。大き目のクローゼットが部屋の両端で存在を主張し、床には赤い
カーペットがしかれていた。広い部屋は少女趣味な小物で満ちていて――正に、女の子の部屋
だった。
 死体が転がってもいないし、血痕が残ってもいない。
 ここで誰かが住んでいるといわれても、違和感はないだろう。

「靴は……脱いだ方がいいよな、これ」

 荒れ果てた廊下とは違い、この部屋に靴で入ったら間違いなく証拠が残る。自分でも滑稽だ
とは思いながらも、家に入るときのように、扉の前で靴をそろえて室内へとあがる。カーペッ
トはよく手入れされているのか、踏み心地がよかった。
 確信する。
 如月更紗は――ここで育ったのだと。
 この部屋が、如月更紗の中身なのだと。
 ようやく、此処まで来た。
 問題は――

「これから……どうしよう」

 来たのはいいが、具体的に何をするかなど考えていなかった。来れば何かあるだろう、程度
にしか考えていなかったのだ。確かに冷凍庫には『何か』があったが――それは如月更紗の行
為の残りかすだ。
 彼女の内面が知りたいのだと、僕は今更ながらに気付く。

「定番なら日記とか……」

 確かに日記があるなら、如月更紗を理解するのには役に立つだろう。
 そう思い、部屋の中央におかれた机へと向かう。日記があるとしたら、机の引き出しの中が
一番ありそうだと思ったからだ。
 その推理は、半分正解で、半分間違っていた。

「…………」

 目的のものはあった。ただし、引き出しの中にではなく、机の上に無造作に置かれていた。
 そして、それは日記ではなかった。
 それは――本だ。
 市販にされているような本ではなく、自分で折り、ホッチキスで止めた――学校の文芸部
が発行するような、お手製の本が置いてあった。
 表題には、くせのある丸字で、こう書かれている。


『ハンプティとダンプティ』


 ――如月更紗が、創ったのだろうか。
 逸る心を押し殺し、僕は、震える指で表紙を捲った――

235いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/04/01(日) 02:10:22 ID:UppdIXDd
以上で終了です
236慎 ◆tXhMrjO4ms :2007/04/01(日) 02:45:17 ID:ooM7V4jl
>>235
怖いです・・・・・・・・GJ
ハンプティ、ここで出てくるんですね。なるほど。
さて諸事情により取りを変えましたあしからず。
237名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 03:12:23 ID:If0BQs9a
男ヤンデレか・・・難しいな
ヘタしたら単なるストーカーになるし、いやむしろそれがいいか。

男は幼少時から臆病な性格だった。
何をするにしても決断が鈍る、他人の視線を感じるだけで逃げてしまう。
その性格のせいで男が引き籠もりになるのは当然の結果だった。
しかしある日、男の家にセールスウーマンがやって来た。
最初は避けていたが、毎回訪問してくるセールスウーマンに次第に興味を持ち始める。
やがて男はセールスウーマンの全てを手に入れようと考える。
男はセールスウーマンの、名前、年齢、住所、電話番号などを自力で調べ、
深夜にセールスウーマンのマンションに訪問する。
男の妄執とも言える欲望を、セールスウーマンの体にぶつける。
そして男はセールスウーマンの全てを手に入れる・・・。
238ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/01(日) 03:56:26 ID:HTSRzVfw
投下します。長めです。さらに、謎が多いです。

第八話〜二つの告白〜

 中庭にある時計に目をやって、現時刻を確認する。
 午後1時5分過ぎ。
 ろくに弁当に手をつけていないというのに、従妹やお嬢様や変人と会話したり、
全員がその場から立ち去ったりしているうちに、正午から一時間も経過してしまっていた。
 実にもったいない。
 一時間もあれば、ご飯を食べ終わって、その後で軽く昼寝するぐらいの時間はとれる。
 以前、会社に勤めていたころの俺にとっては至福の時間だった。

 ――今は違う。
 今では弁当の味を褒めたら華が顔を紅くしたり、かなこさんがなぜか箸をつきつけてきて、
それに対して華が険悪になって、十本松が変な本を渡す、という良くも悪くも味わい深い時間になっている。
 そんな出来事が会社での昼休み時間に起こったりしたら、上司に何を言われるかわかったものではない。
 今の俺が就職していなくて良かった。……いや、良くは無いか。

(……改めて、いただきます。っと)
 テーブルの上に置かれている、特大の大きさを誇る弁当箱を左手で持ち上げて、箸をつける。
 五目ご飯を箸で挟んで、食べる――というよりは削り落として、食べる。
(やっぱり美味いな、これ)
 箸が進む。これなら毎日食べてもいいぐらいだ。
 華が昔、俺の自宅でチャーハンを作ろうとして調理油をドバドバと注いで、
それをコンロにこぼしてしまって、それに驚いた華が手元を狂わせてフライパンをひっくり返して、
コンロがチャーハンまみれになった時の光景を思い浮かべ、時の移り変わりを実感しながら、
しばらくの間だけ舌鼓を打った。

・ ・ ・
 
 食べ終わるころには既に時計の針は長針と短針の組み合わせが1時50分を差していた。
(さすがに、食いすぎたな……)
 やはり一人で食うには多すぎた。
 中身の七割を胃の中におさめた時点で「もういいよ」と脳がぼやき、
九分目で味が分からなくなり、最後の一口を飲み込んだときには達成感さえ覚えた。
 無理に食べるぐらいなら持って帰ればいいのだが、「出されたものを残したくない」という変なプライドが
邪魔をして、俺の行動を「五目ご飯の完食」という結果へと導いた。
 ときどき、横隔膜が波を起こして喉と胃を締め付ける。
 しゃっくりが止まらない。
 ――――動けん。
 仕方が無い。ここで満足に動けるようになるまで休むことにしよう。
 テーブルに突っ伏して、左の頬をくっつける。
 そのまま寝てしまおうかと思ったが――あるものが目にとまって、寝るのをためらった。

 テーブル上、俺の顔の右に一冊の本が置かれている。
 十本松が「面白い」という理由で薦めてきた、青い色をした背表紙の、薄い本だ。

 ……あやしい。疑う余地も、確認する必要もないほど、あからさまにあやしい。 
 十本松が薦めてきた本、というだけでもあやしいのに、
奴が男装している理由のヒントが隠されていると聞くと、忌まわしいものにすら思えてくる。
(――それでも、気にはなるな)
 なぜ十本松が男装しているのか。なぜあそこまで変わっているのか。
 なぜかなこさんを婚約者と呼ぶのか。その理由が隠されていると思うと、好奇心がわいてきた。
239ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/01(日) 03:56:59 ID:HTSRzVfw

 左手にすっぽり収まる大きさの本を広げる。
 1ページ目は、何故か黒いでたらめな線で塗りつぶされていて読むことができなかった。
 2ページ目を開く。白紙だった。
 3ページ目。縦書きの文字がずらりと並んでいた。
 本のあらすじは、だいたいこんな感じだった。
 

 あるところに、一本の刀と強い復讐心を持ち合わせた男がいた。
 男には心から愛する女がいたが、忍び寄る魔の手からその女を守りきることができなかった。

 復讐を誓った男は遠く離れた地で恋人の仇を見つけた。
 恋人を殺した男には、娘がいた。その娘を手篭めにして、仇に近づき、ようやく男は復讐を果たす。

 刀を捨て、昔住んでいたところへひさしぶりに帰ると、昔の女が男を待っていた。
 男はその女のもとへと駆け寄ろうとするが、父を殺された娘があとを追ってきていた。

 男は、かつて自身が持っていた刀に胸を貫かれ、復讐を遂げた娘の前で絶命した。
                                                   』

 本に記されている物語はそこで終わっていた。
 最後のページをめくっても、あとがきどころか著者名すらなかった。

 結局、ヒントを掴むどころか、むしろ混乱しただけだった。
 ――十本松が登場人物の誰かの真似をしているとでもいうのだろうか?
 しかし、復讐者の男も、殺されてしまう仇役の男も十本松にあてはまるとは思えない。
 もしそうだったとしたら十本松は殺されてしまう。
 自分から殺される役を買ってでるほどあいつも馬鹿ではないはずだ。
 一体この本にどんな意味が隠されてるんだ?


 三度ばかり読み返したところで、本を畳んでテーブルに置く。
(んーーーー〜〜〜………)
 腕を組んで考えても、やっぱり何も浮かんでこない。
 もしかして、ヒントは隠されていないとか?
 十本松にからかわれたか?
 ……だよな。やっぱりそうとしか――――
240ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/01(日) 03:57:50 ID:HTSRzVfw

『チャーチャーチャーチャー チャーチャチャーチャチャ チャチャチャ チャチャチャ・・・・・・』

「んむ?」
 ポケットに入れていた携帯電話が着信音を鳴らしながら振動した。
 手早く携帯電話を開いて、通話ボタンを押す。

「もしもし」
『あんたいまどこほっつき歩いてるのよ!!!』

 右の鼓膜を突き破って、反対側の耳から飛び出してきそうな声が携帯電話から飛び出した。
 バイト先の、女店長の声だった。
「……店長。いきなり大声出さないでくださいよ。なんだって言うんですか」
『とっとと来なさい! もう四時半になってんだから!!』
 ヒステリックな声でそう言ってから、受話器が壊れたのではないか、
と疑うほどの派手な音を立てて電話を切られた。

 ――もう四時半になっている、だって?
 中庭にあるこじんまりした時計台を見ると、短針が四時の方向を、長針が七時の方向を指していた。
 午後の、4時35分だった。

「う、うそだろおおおぉぉっ?!」

・ ・ ・  

 自分の足で全力疾走をして、バイト先のコンビニに到着したら、香織がレジに立っていた。
「いらっしゃいませ――って! 遅いよ雄志君! 店長、カンカンに怒ってるよ!」
「悪い! すぐにレジに出るから!」

 そのときは運良く店内に客がいなかったので、小走りで事務所に向かってドアに手をかけた。
 ノブをひねってドアを押し開けると、眉を吊り上げてひくひくと動かしている店長が立ちはだかっていた。
「すいません店長! 時計を見るのを忘れてました!」
 店長に向かって一も二もなく、素早く、深く頭を下げる。
「……つまり、理由は無し。言い訳も無し、ということ?」
「はい!」
 ここで本当のことを言わないと後が怖い。
 俺はごまかすのだけは昔から苦手で、勘の鋭い人にはすぐにばれるからだ。
 そして店長は、(俺の知る限りで)これ以上優れた勘を持つ人はいない、と断言できるほどの人物だ。
 よって、言い訳はしない。

「……頭を上げなさい」
 低い声が頭上から聞こえてきて、心臓が一回だけ大きく収縮した。
 その声から察するに、店長は今怒りの炎を心の中で燃やしているはずだ。
 頭を上げたら店長の鬼の形相が目に飛び込んできて、その次は鉄拳が飛んでくるはずだ。
 顔を殴られることはないだろう。
 これからレジに立つ店員の顔を腫らす真似はさすがにしないはずだ。
 ――女性の力じゃたいして痛くも無いだろう。平気さ。
 
 楽観的にそこまで考えて頭を上げた時、目に飛び込んできたものは、
予想通りに右手を固く握り、右腕を腰に構えている、鬼の形相をした店長の姿だった――
241ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/01(日) 03:58:29 ID:HTSRzVfw
・ ・ ・

 バイトが終了した、夜の八時過ぎ。

 コンビニの外に出たら、香織がベンチに座って俺を待っていた。
「お疲れ様」
「ああ、ほんとにな……」
 大学からコンビニまでの道のりを全力で駆け抜けて、
コンビニに到着して、怒り狂った店長のボディブローを受けて、
それから四時間のバイトを終えた今の俺は疲れ果てていた。

 まだボディブローを受けたときの衝撃が腹と、脳の深い部分に残っている。
 店長があそこまでいいものを持っているとは夢にも思わなかった。
 なぜあの時、本気で腹筋を固めて歯を食いしばらなかったのかと後悔しきりだ。
 数時間前の俺に会うことができたら何度も、しつこく、うざったく思われるぐらいに注意してやりたい。
 これからは遅刻しないようにしよう。――絶対に。
 
 香織が右に移動して、左側にスペースを作った。
 ため息をつきながら、香織の左に腰を下ろす。
「ねぇ。どうして遅刻したの?」
「……寝坊だよ。昼寝してたから時間を忘れてたんだ」
 本当のところは言わないでおく。 
 いくら香織が相手でも「本を読んでいたらいつの間にか四時を過ぎていた」とは言えない。

「あはは…そうなんだ。今度から、気をつけてね……」
「どうかしたのか? 元気が無いぞ」
 香織の声には、いつもの覇気がなかった。
 アスファルトの地面を見つめて俯いたまま、顔をあげようとしない。
 両手は膝の間で組まれている。
 ときどき、人差し指と親指を開いたり閉じたりした。

「……いつもは遅れないからさ。…………不安になったんだ」
 ぽつり、と小さく香織が呟いた。
 左膝、右膝の順に足を浮かせて俺との距離を詰めてきた。
 顔を上げて、弱弱しくなっている瞳で俺の目を真っ直ぐに見据える。
「もし雄志君がいなくなって、このままボクの前から消えちゃったら……って。
 そう思ったら、なんだか怖くなっちゃって……」
 そこまで言うと、俺の右手を両手で掴んだ。
 香織の両腕の、肘から先が震えている。
 俺の右手を支えにして、ようやくその場に留まっていられるような頼りなさを感じられた。
「そんなの、嫌だよ。
 寂しすぎるよ……。いなくなっちゃ、いやだよ……」
242ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/01(日) 03:59:08 ID:HTSRzVfw

 香織の目が涙を溜めはじめた。
 整った眉の左右それぞれが垂れ下がっている。
 唇は薄く開いていて、小さく振動している。
 何度か鼻がすん、すん、と小さな音を鳴らした。
 最後に見たのがいつだったか思い出せない程、久しぶりに見る香織の泣き顔だった。
「っく……ぅ……」
 下を向き、必死に泣き声を口から外に漏らさないようこらえている。
 香織の両手が、右手を柔らかく圧迫してきた。
 それから、手の上に一滴の雫が落ちてきた時点で俺はようやく動くことができた。

「……とりあえず、ほれ」
 ジーンズのポケットからハンカチを取り出し、香織に差し出す。
 香織はハンカチを受け取って何度か目の下を拭った後、俺にそれを返す。
「…………ありがと」
「ああ」
 短く返事をしてから、ハンカチをポケットにしまう。

「雄志君は、」
 香織がひっく、と小さな嗚咽を挟んで、一拍置いてから言葉を続ける。
「ボクが高校卒業してからもずっとキミと連絡を取り合っていたか、わかる?」
「学校の友達の中で、一番仲が良かったから。だろ」
「もちろんそれもあるよ。でもそれだけじゃない。
 キミと離れ離れになるのがいやだったんだ。
 ずっと――あの時点では六年間の付き合いだったかな。
 それでもボクにとっては一番長くて、一番大事な、失くしたくない関係だったんだよ」
「一番長い? 家族は……?」
 『家族』と俺が言った途端、びくり、と香織の肩が揺れた。

 香織は、合わせていた目を反らし、すっかり日が沈んで星が出ている空を見上げた。
 俺もつられるように夜空を見上げる。
 雲ひとつなくて、月が良く見えた。
「お母さんは、ボクが物心つく前からいなかった。
 離婚したのか、死んじゃったのかはわからない。顔も思い出せないよ」
「親父さんは?」
 遠くを見つめたまま、香織に問いかける。

「お父さんは、ボクが高校二年生のときに、死んじゃった」
243ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/01(日) 03:59:54 ID:HTSRzVfw
 死んだ。

 それはおそらく、直喩でも隠喩でもなく、そのままの意味で言っているのだとわかった。
 香織の声があまりにあっけない、あっさりとしたしゃべり方だったからだ。
 そして、その声に悲しみの色が一切含まれていなかったことが気になって、
香織の父親が死んでいたという衝撃的な事実はその時の俺の頭からは消えてしまっていた。
 
「悲しくはないよ。
 お父さんは仕事で忙しくてあまり家にいなかったから、思い出は無いし。
 ボクを養うために必死になって働いていたのか、って思ったこともあるけど、
 貧しい生活をしていたわけじゃなかった。――むしろ裕福な方だった」
 香織はそう言うと一旦言葉を区切った。

「年齢・かける・一万円。それがボクの毎月のお小遣いだった。
 10歳なら10万円、11歳なら11万円、12歳なら……って感じ。
 どう考えてももらいすぎだよね? でも、それが毎月繰り返された。
 家の大きさも、小さい頃は普通だと思っていたけど、成長していくにつれて、
 その家が相当な値段をかけて作られたことがわかっていった」
 香織は一回、鼻で息を吸った。
 そして、今度は沈んだ声で喋りだした。

「でも、ボクはちっとも面白くなかった。
 小学生の頃は、誰が言ったのか知らないけれど『お高くとまったお嬢様』みたいに言われてて、
 友達なんかいなかった。近づいてくるのは、お金欲しさに近づいてくるいじめっ子だけ。
 お金なんかいらない。友達が欲しいって、毎日、学校がある日もない日もそう思ってた」
 そう言うと、俺の方を振り向いた。
 香織はもう泣いてはいなかった。
 ただ、その時の彼女の目が縋るような色をしていて、俺は思わず抱きしめたくなってしまった。
 ――思っただけで、実行はしていないが。

「中学校に入学したら、何か変わるかもしれない。
 そんな願いとか、希望とかを胸に秘めて入学した中学校には、雄志君がいた。
 入学初日のこと、ボクは今でもはっきりと覚えてる」
「……俺も覚えてる」
「雄志君がボクの顔を観察してて……ボクがそれに気づいて雄志君に話しかけて……
 そのとき、ボクは初めて『この人とは友達になれる』って思った。
 そして、その通りに友達になれた。親友になれた。――とっても嬉しかった」
 独白を続ける香織の瞳からは、涙がこぼれていなかった。
 
「気づいたら、ボクは雄志君から離れられなくなってた。
 それを初めて自覚したのは、高校の進学先を決めるときだったけど。
 雄志君がどの高校に進むのか調べて、
 その高校がボクの成績じゃ受からないレベルだって気づいて慌てて勉強したりして」
「……どおりであの頃、付き合いが悪かったわけだ」
「高校二年生の今頃の時期かな。お父さんが死んじゃって。
 ボクはそれから、雄志君以外に心を許せる人がいなくなっちゃった。
 親戚の人たちはお金の話しかしない人ばっかりだったし、
 友達は雄志君を通して関係がある人だけだった」

 悲しい告白だった。
 ――あの頃の俺はそんなこと、気づいてもいなかった。
 それだけじゃない。
 香織の家庭の事情を聞いたのも、これが初めてだった。
 10年以上友人の関係でいたのに、俺は香織のことをほとんど知らなかったのだ。
244ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/01(日) 04:02:02 ID:HTSRzVfw

「高校を卒業してから、雄志君と離れ離れになるかもしれないって思ったときは焦ったよ。
 ボクも同じ会社を受けたんだけど、採用されなかったし。
 しかも雄志君はボクの知らないところに引っ越しちゃうし。
 メールが今の時代にあること、ものすごく感謝してるよ。連絡がいつでもとれるんだから。
 ……もし雄志君と連絡がとれなくなってたらボク、今頃どうなってたのかな」
 そう言って香織は微笑んだ。悪い想像をごまかすように。

「ね、お願いがあるんだ。――ボクとずっと、仲良くして。
 せめて、こうやって話をできるように、連絡をとりあえるように。
 実は……昨日の夜、華ちゃんが言っていたように、ボクも雄志君のことが好きなんだ」
「……やっぱり、聞いてたか」
 香織は俺の言葉には答えなかった。
 そのかわりに、独白のような告白を続けた。
「今すぐに答えて欲しいわけじゃない。
 雄志君が華ちゃんを選んでも、ボクを選んでも、他の誰かを選んでもいい。
 どんな結果になっても、今みたいに仲良くしてほしい。
 それが――ボクのお願いです」
 そこで香織の告白はとまった。
 俺に向かって頭を下げている。
 まるで、今の自分にはそうすることしかできない、というような実直さだった。

 俺からも、香織に言いたいことがあった。
 ――今の関係を変容させてしまうものではないけれど。
「俺は香織に感謝してる。
 こう言っちゃなんだけど、俺が心を許せる人間は香織だけなんだ。
 それなりに仲のいい奴はいるけど、香織ほど気が合う奴はいない。
 会社に勤めていたときだって、香織以上に仲良くなった人間はいない」
「……?」
「いつか誰かを選ぶときが来たとしても、俺はずっと香織と仲良くする。
 ご先祖さまに誓うよ」
 右手の小指を軽くまげて、香織の前に差し出して、自分の顔を笑みの形に変える。
 よくこんなことが口から飛び出すもんだ、と自覚する。
 でも、今はこうしたい気分だった。

 俺の小指と、顔を交互に見て、それから香織は右手の小指を絡めてきた。
 細くて、小さい感触と、熱が俺の右手に伝わった。
 右手の小指を弱い力で、しかししっかりと握り締められた。
「雄志君ってさ、ご先祖さまだけに誓いをたてるよね。昔から」
「会ったことがあるのはじいちゃんとばあちゃんだけだけどな。
 それでも、会ったことのない存在に誓いをたてるよりはマシだ」

「あははっ……ありがと。嬉しいよ。
 じゃ…………『ゆーびきり げーんまん うーそついたら』、……ついたら、ついたら……えーと」
「…………どした?」
 目だけを動かして俺の目を見たり、空を見上げたり、繋いだ手を見たりしている。
 『嘘ついたら』の次の言葉を何にするかを考えているようだ。
 嫌な予感がする。――って今日は嫌な予感、覚えまくりだな。

「『うーそついたら むーりやーりいうこときーかす』! 指切った!」
 その言葉を元気良く言い終わると小指を素早く離した。
 『無理矢理言うこと聞かす』?
 ――これって、解釈次第ではどうとでもとれるぞ。
「なあ、今のって……」
「もし約束を破ったら、無理矢理でも仲良くしてもらうからね! そのつもりで!」
「なんだそりゃ……」
 
 それだけ聞いても、どんなことされるかわかったものではないな。
 指切りなんかするんじゃなかった。――とも思うけど、香織が元気を取り戻したし、よしとするか。
245ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/01(日) 04:02:52 ID:HTSRzVfw
 嬉しそうな顔をした香織は、ベンチから腰を浮かせるとぴょんっ、と前にジャンプした。
 そして俺の方を振り向くと、また笑顔を浮かべた。
「それじゃ、バイバイ雄志君! またね!」
「ああ、またなーー!」
 香織が大きく手を振ってから、駐輪場の方へと走って行った。

(こういうの、傍から見ると変だろうな)
 周りに人の気配は無いが、少しだけ恥ずかしい。
 だというのに、胸が暖かい。自然と頬が緩む。
 ――目からじんわり、汗がでてきた。
 上下のまぶたを結んで離す、ということを数回繰り返すと目から出てきた汗は引いていった。
 
 駐輪場の方向からバイクのエンジン音が聞こえてきた。
 続いて何度か空ぶかしの音がして、排気音がコンビニから遠ざかっていった。


 携帯電話で時刻を確認すると、8時40分だった。
 少しばかりゆっくりしすぎたようだ。
 今から戻れば、9時を過ぎた頃にアパートの自宅に到着するだろう。
「さて、帰るとするか」
 小さく呟いて、ベンチから立ち上がる。
「うむ。帰るとしようか」

 唐突に、右側から、聞き覚えのある声をかけられた。
 右を向くと、髪をオールバックにして、紺色のスーツを着た人間が立っていた。
 月光とコンビニの外灯がその男――ではなく、女を照らしていた。
 そいつは左手を右肘に、右手を顎に当てたまま真っ直ぐに立っていた。
「……またお前か。十本松あすか」
「そうだ。君の言うとおり、また私だよ。
 ――しかしここで疑問が沸いて来るんだ」
 相変わらず――数時間しか経っていないから当たり前だが――の口調だった。

「『また』というが、君が先刻遭遇した十本松あすかと、ここにいる十本松あすかは、
 細胞のレベルにおいて変化を起こしている。そして今も細胞分裂を繰り返し、その分細胞が減っている。
 だというのに、まったくの同一人物であるなどと言えるのかな?
 来年の卒業論文にしたいから、君の論理を参考にしたい。ぜひとも聞かせていただきたい」
「……お前が俺のことを知っている。
 俺はお前のことを知っている。
 お前は相変わらず言っていることが滅茶苦茶だ。相変わらず男装をしている。
 お前以外にそんなことをする奴はいない。だからお前は十本松あすかだ。……これで満足か?」
「ふむ。他者の認知と自己の行動によってこそ、同一人物であると証明できる。ということか。
 なかなか面白い意見だ。参考にしよう。家に帰ってノートに記すまで覚えていたらね」
「……参考にするつもり、まったくなさそうだな」

 まじめに返答した俺が馬鹿だった。
 この女は頭がおかしいうえに、人の話など聞いていない。
 それは昼のやりとりで分かっていたつもりだが、どうしても返事をしてしまう。
 ――俺も変人なのかもしれないな。
246ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/01(日) 04:03:42 ID:HTSRzVfw
 立って会話をするのもどうかと思ったので、再度ベンチに座りなおす。
 十本松はさっきまで香織が座っていた場所、俺の右側に腰を下ろした。
「まず聞きたい。なんでお前がここにいるんだ」
「あまりにいい夜空だったものでね。つい散歩にでかけてしまったのだよ。
 こんな夜にはきっと恥ずかしい男が恥ずかしいことを言いつつ、恥ずかしいことをしながら、
 恥ずかしい部分を見せびらかしているのではないかと思ってね」
「……もっと簡潔に『散歩に出かけていた』とだけ言ってくれ」
 ――恥ずかしい部分を見せたりはしていないが、自分の行動が恥ずかしくなるだろう。
  
「ところで、さっき香織と面白い話をしていたね。
 父親が死んだ、とかなんとか」
 と十本松が言った。
 俺はその言葉に引っかかるものを感じた。
「お前、立ち聞きしてたのか? あと、なんでお前が香織の名前を知ってるんだ?」
「うむ。一つずつ答えるとしよう。
 立ち聞きをしていたのか? ――最初から立ち聞きしていたとも。
 おっと、聞いていたことを咎めるのは無しだよ。
 コンビニの前に寂しげに置かれているベンチに座りながらあんな話をしているのが悪い」
 ……反論できない。
 やはり、ああいう会話は人目につきにくいところでやるべきだったか。
 頭を抱えたい気分だ。自分のうかつさに腹がたつ。

「もうひとつ。
 なぜ私が香織の名前を知っているのか? ――昔会ったことがあるからさ」
「な、に……?」
 ――どういうことだ?
 俺の周りにいる四人が、あらかじめ何らかの関係を持っている?
 香織と華は、昔から喧嘩しあう仲で。
 華とかなこさんは、大学の後輩・先輩で。
 かなこさんと十本松が、婚約者(?)同士で。
 十本松と香織は、昔会ったことがあって。
 そして、俺はその全員と知り合っている。
 これは、偶然なのか――?

「二回程かな。香織に会った回数は。
 一度目は私の父の葬式の席。
 二度目は香織の父の葬式の席。
 ま、私が覚えているだけで香織は覚えていないだろうけどね。
 だからこそ、さきほど香織がいるときに気配を消して陰に隠れて、顔を出さなかったわけだが」
「父の葬式って…………お前、親父さんを……?」
 俺がそう言うと、十本松は腕を組み、顎を上に向けた。
 数秒間星を見た後、いきなりではなく、ゆっくりと目を瞑った。
 その仕草にどんな意味があるのかはわからなかったが――なんとなく、想像がついた。

「素晴らしい、至上、最高、男の中の男。
 いろんな形容詞がこの世には存在するが、父をあらわす的確なものは無い。
 愛にどんな形容詞をつけても陳腐にしかならないようにね。
 そして、私は父を愛していた。説明しようもなく、形容しようもなくね」
 そこまで言い終わると、ようやく首を下ろした。
 十本松の視線の先には、車道があった。
 それは目に見える限りにおいてどこまでも伸びていて、同時に十本松の目も遠くへ向けられていた。
247ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/01(日) 04:04:21 ID:HTSRzVfw
「娘が父に向ける想いではなく、女が男に向けるものであったと、私は今でも思う。
 父を愛したこと、一片たりとも悔いてはいないよ。
 父と手を繋いでいるとき、間違いなく私の心は父と繋がっていて、
 同時に空気の上をふわふわと浮かんでいるような浮遊感と開放感を得られたのだから」
「…………」
「君の言うとおり、私は変人さ。
 12回誕生日を迎えただけの子供だったというのに、かつては実の父に対して肉欲を抱いていたのだから」
 俺はそういった意味で変人と言っているわけではない。
 ――と思ったが、そんな野暮なことは言えなかった。
 十本松が初めて本当のことを打ち明けている、と感じたからだ。

「ふっ――」
 十本松は鼻で笑うと、首を振った。
 やれやれ、といった様子で。
 俺にではなく、自分自身に向けて。
 その仕草は、どこか諦観しているようにも見えた。

「話が反れたね。なんの話をしていたのかな?
 ……ああ、香織の父親のことについてだったね」
 ああ、と俺は頷いた。
「香織の父が亡くなったのは7年前の、彼の誕生日の日だった。
 十階建てのビルから落下して、体を強く打ち、死亡した。
 自殺か他殺かの決着は未だについていない。
 ビルから飛び降りたのか、突き落とされたのか、それを見た者がいないからだ。
 ちょうど今頃だったかな。ちょっとしたニュースにもなったものだよ。
 なにせ、菊川家と少なからず関係している人間だったからね」
 ――なんだって?
「待てよ。ということは、香織とかなこさんは……」
「君の予想通り、推測どおり。知り合いだよ。
 もっとも、深い仲ではないようだが。顔を合わせたらば、きっと分かるのではないかな」

 俺は眉間をつまんで、目を瞑って頭を働かせて、意識を深い闇の中に沈めた。
 黙考する。
 ――野球のベースで考えてみるか。
 香織、華、かなこさん、十本松。
 その四人を野球のベースに、ひとりずつ配置する。
 最初に挙げた順番に並べていけば、四つのベースは関係の線で結ばれる。
 しかし、そうするとあと二本の線が作り出されることになる。
 向かい合ったベースである、香織とかなこさん、華と十本松。
 つまり、この四つのベースはどんなやり方でも結びつけることはできるし、
同時に結び付けられないベースは存在しないことになる。
 
「四人全員が、少なからず関係を持っているってことか……」
「そういうことさ。実に面白いね。
 しかも全員が雄志君と知り合いだなんて、もはや君の策謀に引っかかったとしか思えないよ。
 もし、全員を手篭めにするつもりだったとしても、私とかなこは開放してくれ。
 君の謀、もしくは棒よりも、かなこの房のほうがいいからね」

 十本松の電波な台詞より、俺はこの奇妙な四角形のことが気になっていた。
 四人が皆、俺の知り合いだった。
 じゃあ……俺は四人にとっては、何者なんだ?
 ただの知り合いなのか?
 それとも、別の何かだとでも言うのか……?
248ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/01(日) 04:05:16 ID:HTSRzVfw
「はぁっ!!!」
「うおっ?!」
 俺の思考を遮るかのように、十本松の口からかけ声が飛び出した。
 十本松は左手首にはめた時計を見ている。
 つられて、俺もその時計を見る。
 銀色のシンプルな時計だった。
 短針と長針が黒く、秒針だけが仲間はずれのように銀色だった。

「9時20分……ゆっくりと談笑を楽しむ時間は無いな」
 十本松はベンチから立ち上がり、上着の内ポケットに右手をつっこんだ。
 また文庫本でも飛び出すかと思ったが、手を取り出したとき、そこには紙切れが握られていた。
 その紙切れには、見たことのない文字が印刷されていて、読むことができなかった。
「なんだ、それ?」
「招待状さ。これを渡すのがここに来た目的だったことを失念していたよ。
 というわけで、これを最優先で受け取りたまえ! さあ!」
 びしっ、と指ではなく、招待状で俺の顔を差してきた。
 無言で受け取ると、その紙がただの薄っぺらいものではなく、厚紙でできていることがわかった。

「なんの招待状だよ。悪いが、お前の誕生日だって言うなら行かないぞ」
「安心したまえ。菊川家のパーティだよ。
 菊川家当主の誕生日がささやかに、しかし局所的に華やかにとり行われる。
 具体的に言えば、最高級のワインや銘酒、超一流シェフの料理が振舞われる」
「なんだと……!?」
 これは罠か?
 そんな美味しい、いやおいしい場所に俺を誘うなど、現実的にありえない。
 メジャーリーガーのストレートに素人の振ったバットが触れてホームランになるぐらい、ありえない。

「かなこからのお誘いだよ。そうでなければ、君がその招待状に触れることは、
 アメリカ空軍の演習中に戦闘機のコクピット同士が触れ合って、
 さらにパイロット同士の唇が触れ合って愛が生まれるぐらいの低確率でしか起こりえない」
「……よくわからんが、本当に行ってもいいんだな? スーツでも着てくれば大丈夫か?」
「うむ。できればタキシードで来てくれればいいが、スーツでもかまわないだろう。
 ただ、上流階級の椅子にふんぞりかえっている連中がくるパーティだからそれなりの覚悟をしてきてくれ。
 ちなみにそれ一枚で五人まで同時に参加することができる。
 お誘い合わせの上、菊川の屋敷まで来てくれたまえ」

 そう言うと、十本松は俺に背を向けてコンビニ前を通る車道へ向けて歩き出した。
 歩道の上で手をあげると、そこにいいタイミングでタクシーが走りこんできて、音を鳴らさずに停車した。
 タクシーの後部座席に乗り込む前に、十本松は俺の方を振り返ってこう言った。
「あの本を、読んだかい?」
「青い本のことか? 何回か、読んだけどさ。……あれのどこがヒントだっていうんだよ。
 お前があの本に毒されたとかいうオチはナシだぞ」

「そうか……気づかないか。今はそれでいいさ。だがいつかは気づくことになる。
 そうしたら――――――きっと、君はあまりの歓喜、もしくは恐怖にその身を震わせるよ。
 ふるふるブルブルがくがくガタガタがちがち、といった様子でね」
 笑みを浮かべずにそう言い残すと、十本松はタクシーの後部座席に乗り込んだ。
 見計らって、タクシーのドアがばたん、と音を立てて閉まった。

 タクシーは右のウインカーをオレンジに点滅させながら走り出した。
 その橙が消えると真っ直ぐ走り出し、赤いテールランプを光らせたまま、夜の闇に染められた空間へと向かっていった。


「あ……そういえば、かなこさんの家って、どこだっけ……」

 他にも、招待状に書かれた文字が読めないとか、スーツをどこにしまったのかとか、
何時に菊川家の屋敷に行けばいいのかとか、参加するにあたっての問題点を箇条書きにして頭の中に並べていくうちに、
十本松が乗っているはずのタクシーのテールランプは見えなくなっていた。
249ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/01(日) 04:05:50 ID:HTSRzVfw
投下終了になります。
250名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 10:42:46 ID:FsHwXHEa
昨夜は投下ラッシュだったのか
全ての神々に感謝を(-人-)

>>223
( ;∀;)イイハナシダナ-
……と、普通ならここでHAPPY ENDで終わる所だが
そうならないのがこのスレw 病みの伏線はバッチリだ! wktk

>>235
好きな子のことは何でも知りたくなってしまうもの、
そんな冬継君の恋心(?)が更紗のハードさにズタボロにされそうでw
カンガレ冬継! 相手がヤンデレならそれ以上に狂ってしまえばいいんだ!

>>249
香織の依存っぷりに萌えました(*´Д`)ハァハァ
告白もしちゃって、もう後には引けなくなりそうw
251名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 12:04:52 ID:CQmHZV6F
更紗の病みは尋常じゃなさそうですねえ
さすがは狂気倶楽部の最古参、というべきか
更紗派としては嬉しいですがw

香織は雄志にちょっとでも突き放されたら一気に病んでしまいそうな脆さがでてきましたね。
そういうシーンがこの先あるのでしょうか?wktk
252名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 17:42:18 ID:fV+7qToG
十本松あすかの父親を香織の父親が殺害し、香織の父親をあすかが殺害した。

と読めた。
仮に今後の展開がこの通りだったとしたら、事実を知った香織は壊れるでしょうね…。
253上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/04/01(日) 18:10:08 ID:rphe6b+j
>>207
フタナリレズ属性ありの私としては生唾ものの展開…。
早漏な否命に悶えつつ、続きをwktkしてます。
>>227
前回の長いデレからの急降下ヤンを考えると、
背筋が気持ちよく冷えていくのを感じますw
>>235
突然の生首には正直油断してしまいました…。
さすが更紗の家、気を緩められないなと思ったりしました。
>>249
物凄い複雑に入り乱れてきましたね。
種明かしの時がかなり楽しみです。

では、上書き第10話後編、B-3ルート投下します。
254上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/04/01(日) 18:10:53 ID:rphe6b+j
「”すぐに”済む『用事』だから…」
 加奈が俯いたまま、覚束ない足取りのせいで揺れる体で扉の前へと向かっている。
 発せられた言葉からは一言一言を噛み締めるように相手の脳裏に焼き付けようとする
強い意志が感じ取れ、同時に根拠のない説得力が俺に安心感を齎した。
 だから、俺は加奈の発した言葉から僅かに滲み出ている、延々と続くエレベーターに
乗っているような心の隅に滞在して不安を煽る不快感を払拭する為に振り向いた。
 そして”加奈の『背中』”を見た瞬間、何かが弾けた。
「ひゃっ!? ま、誠人くん?」
 俺は自分より一回りは小さい加奈の背中目掛けて無我夢中で飛び込んだ。
 加奈が驚いているのも厭わず、俺は自分の頭を加奈の背中に擦り付けた。
 動物の独占欲の象徴とも取れる行動、『マーキング』のように、何度も何度も。
 目で加奈の背中を見、耳で擦り付ける度に漏れている加奈の呻き声を聞き、鼻で加奈
だけの匂いを嗅ぐ、自分でも呆れる程厭らしい行為を繰り返す。
 全ては、加奈の姿を見た事によって広がった寂寥感を根絶する為。
 そして………
「…頼む…。”行かないでくれ”…」
 加奈自身を、俺の手元から手放したくないが故の行動である。

 さっき見た加奈の背中の事を思い出すと、体の芯から凍えるような寒気を感じる。
 その背中は、俺を安心させるように強気だった口調に反し、壊れ物のように脆そうで
弱々しかった。
 小さ過ぎるそれを見た時理解した、”加奈はまだ『無理』しているんだ”と。
 理由は分からないが、”俺の為に”思いつめているのは火を見るより明らかだった。
 数時間前の『誓い』をまるで無視するかのような行動に、俺は一つの不安を感じた。
 ”加奈が遠くに行ってしまう”という、立証しようのないしかし確信に近い推測。
 想いそのものを加奈が拒絶してきているなら、悲しむのは俺だけだから構わない。
 だが、加奈の俺の事を労わるような口ぶりからしてそれはありえない。
 ”想いは繋がっている”、その上で加奈は俺の為に”一人で”頑張ろうとしている。
 それは俺があってはならないと思っていた『状況』と全く同じなのだ。
 相手の事を全て理解していると仮定した上で相手の為に行動し、理解し切れていない
部分から『亀裂』が生じてしまう危なっかしい関係。
 そんな自己満足の為だけに存在しているような関係に甘んじるのは駄目なんだ。
 勿論加奈が自己満足なんて歪んだ欲望の為に行動しているとは微塵も思っていない。
 加奈は俺の事を想ってくれている、だがそこが問題なのだ。
 俺の事を”想うあまり”、自分の身を省みない行過ぎた行動を取りかねない。
 その延長線上でもし加奈の身に何かあったら、俺は絶対に自分を許せない。
 何より、加奈が傷付く事だけは何としても避けなければならない『絶対』なのだ。 
 その為ならば、見栄やプライド等の、持っていても関係維持に何ら役に立つ事のない
下らないものは喜んで捨ててやる。
 格好悪かろうが構わない、杞憂だろうと罵られようと構わない、”俺たちの為”だ。

「置いてかないでくれよ………頼むから…加奈ァ………」
 こんな子供染みた甘ったれた言葉も、恥ずかし気もなく平気で口から漏れてしまう。
 改めて今の言葉を脳内で繰り返してみると、語感までが甘えた感じになっている。
 いつから自分はこんなヘタレになってしまったのかと嘆きつつ依然と頭を擦り付ける
のを止めず、抱き締める力をより一層強くする。
 そうする度に僅かに揺れる黒髪から、”加奈だけの匂い”が漂う。
 絶対に口では説明出来ない、俺だけが知る幼い外見とは対照的な妖艶な香り。
 俺の心を焦らすように、煽るようにほんの少しだけ流れる夢想世界にうっとりしそう
になっていると、突如体に衝撃が奔る。
 刹那………
「ごめんね…誠人くん………ごめんね…」
 俺の腕を振り払った加奈が体を反転させ、今度は逆に抱きついてきた。
 いきなりの行動に戸惑いながら、加奈を見下ろす。
 そこには「ごめんね」という単純な言葉に『生』を吹き込むようにしっかり発音し、
自分より大きい筈の俺に子供をあやすように優しく囁く加奈の姿があった。
 加奈に、愛しの相手に擁護されているような感覚に包まれる。
 その心地良い一時を永遠の物にしたい意思の表れなのか、俺は加奈を抱き締め返す。
 お互いの力で繋がっていると言う実感が、俺の中の不安を完全に風化させていった。
255上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/04/01(日) 18:12:10 ID:rphe6b+j
「加奈…何かあったんだよな?」
 もう心の僅かな隙を狙い均衡を崩そうとする悪魔が巣食う事もない。
 そんな奇妙な確信を得た俺は、自分の想いを『確認』という形で示す事にした。
「………」
 抱き締める力を緩めた加奈が、居所を探すように視線を動かしている。
 その挙動不審な様は、先程の俺の中途半端な確信を確固たるものへと変えた。
「教えて欲しい。駄目か…?」
 数時間前の『誓い』をどんなに無様な格好であろうと遂行してやるという『意志』、
そして先程の『確信』が前提にあったからこそ、俺は恐れずストレートに訊けた。
 『覚悟』があるからもう心を揺さぶられる事はない、だから失う物もないんだ。
 俺も抱き締める力を緩め、加奈の肩を掴みながら腕の長さ分距離を取り見つめ合う。
 強制的に俺と視線を交錯する事を余儀なくされた加奈は、ばつが悪そうに視線だけを
下に向ける。
 その行為に多少なり焦燥感を感じながら、肩を掴む力を強くしていく。
 その力と、俺の今の想いの大きさは比例しているんだと暗示したいが故に。
「…目を背けないでくれ…!」
 勿論、想いは口で伝えなければ意味を為さない事は十分過ぎる程痛感させられた。
 だから、俺は呆れる程実直に今の想いを、一言一句違わずに加奈に伝えた。
 そんな俺の言葉に感化されたのか、再び視線を合わせてくる。
 互いの想いを伝え合う『経路』、それが俺と加奈の合わさる目線上と重なっていく。
 それでも、もう”目で会話している”なんて甘い妄想に取り憑かれる事はない。
 自らの意志の固さを再認識しつつ流れる数秒の後、加奈は微かに笑みを見せてきた。
 いつかのような無理な作り笑いでもない、何かに取り憑かれたような狂気染みた笑顔
でもない、俺が加奈と出会ってからずっと愛してきた幼さ残る笑み。
 その柔らかい表情を見て、ふと加奈と付き合い始める前の事が思い出された。
 思えばあの時は、お互い想いを心には秘めても決して口には出さない、『幼馴染』と
いう関係を守り抜いていた。
 だから、気兼ねなく話せていた気がする。
 そんな時の笑顔が今の加奈の笑顔とぴったり一致したような気がしてならなかった。
 自身以外の存在を全てなしにして、純粋に己が一番輝ける俺にとっての最高の笑顔。
 そんな笑顔を見て、俺は心の底から湧きあがって来る『懐かしさ』を覚えた。
 『懐かしさ』を感じるという事は、長い間それを見ていなかったという証拠だ。
 きっと俺がいたから、俺を意識するあまり加奈は無意識の内に心の底から笑う事すら
出来なくなっていたのかもしれない。
 そしてその原因は俺にある事に罪悪感を感じたが、今更いちいち悔やむ事はない。
 そんな事をしている暇があるなら、一刻も早く加奈を笑わせてやるべきなのだ。
 『誓い』という名の『決意』を新たにする俺をよそに、加奈はゆっくりとした足取り
で俺から離れ、俺が部屋に入った時にいた場所…敷布団の上に移動した。
 そして無駄のない小さな動作で俺の『携帯電話』を拾い上げるのを、静かに見守る。
 『携帯電話』………、置いてある場所が移動していた位にしか気に留めなかったが、
それに一体何の意味があるのだろうか…?
 困惑する俺に、加奈はゆっくりとその中身を突きつけてくる事で『答え』を示した。

 『From 島村由紀
  Sub  (無題)

  誠人くん、あなたは何で”あんな”子が好きなんですか?』

 そのメールを見て、『納得』と共に激しい『憤怒』が体中を駆け巡っっていった。
 折角前者が理解を前提とした爽快感を与えてくれたというのに、後者の感情のせいで
相殺、もしくはそれ以上の激情が俺の頭の中に奔ってしまった。
 加奈の不気味な行動の真意は読めた、要はこのメールが気に食わなかったのだ。
 島村は今日俺の事を好きだと言った。
 その事とこのメールの内容を繋げると、島村が俺たちの仲を壊そうとしているという
結論に十分に至る事が可能だ。
 だから、加奈はそれを憎悪に変えて”何か”をしようとしたのだろう。
 その”何か”の正体は、今俺が感じている起伏の激しい感情が教えてくれている。
 純然たる………『殺意』。
 失礼な推測だが、”加奈は島村を殺そうとした”のではないかと、俺は思った。
256上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/04/01(日) 18:13:03 ID:rphe6b+j
 勿論、それが真実だったのか、俺の空想に過ぎないのかは定かではない。
 可能性は五分五分だが、だからといってそれを確かめようとは思わない。
 加奈がもうその行動に対する意欲を失っているのだから、確かめる必要もない。
 しかし正確には、確かめようとしないのではなく、確かめたくないだけなのである。
 俺は島村から送られてきたメールを見て、はっきりと『殺意』を覚えた。
 今日島村がはっきりと加奈を侮辱する発言をした時思わず「殺す」と言ってしまった
時並の、沸々と湧き上がる、それでいて波の激しい感情。
 今もそれを感じているが行動を起こさないのは加奈が意志を手放したからに過ぎず、
もしも今も加奈が島村に対して殺意を抱いていたら、果たして俺はその感情を抑止して
やれたか、否定してやれたか、正直言って自信が全くないのだ。
 同じ欲を持った者同士と言う『共通点』を『絆』と意図的に錯覚して、それに便乗し
流されるままに加奈が纏っている狂気に呑み込まれていたのではないかと思ったのだ。
 加奈を狂気から助けてやるという目的を達成出来ないまま、結局お互いに甘い現状を
抜け出す事が出来ないままに、真の『絆』の居場所を見失っていたのではないか。
 その光景を想像すると身震いしてしまう。
 自分たちが正しい『幸福』を手に入れられなかったのに気付かないまま歪んだ妄想の
中で一生沈んでいく、そんな無限地獄、俺は死んでも御免だ。
 そんな最低で甘い終幕を『上書き』するかの如く、俺は加奈の手から携帯電話を奪い
取り、そのメールを滑らかな手つきでボタンを弄る。

 ―――『メールを削除しますか』

 そして携帯に表示されたその文章を加奈に見せながら、俺は微笑んだ。
「”二人で”決めよう…? ”俺はする”。加奈は?」
 それは、『誓い』を最も体言化しているであろう、俺の中での『最善』。
 そんな俺のボタンに触れている指に、温かい感触が伝わってくる。
 見ればそこには加奈の細くてしなやかな指が、同化を求めるように添えられている。
「”あたしもする”」
 たった一言そう言っただけの加奈は、しかし相反する程充実した笑顔を向けてくる。
 俺が何年も待ち望んでいて、遠回りばかりして視界に広がりすらしなかった理想物語
が、ついに終着点に辿り着いて完結したんだという実感を加奈と共有する。
 こんなに近くにあった、ちょっと機転を利かせれば簡単に見つけられたであろう道。
 複雑過ぎる迷路の端っこに横たわっている一直線の『正解』を思わせる。
 加奈と見つめ合いつつ口で交わした言葉を手繰り寄せながら、俺と加奈は”二人で”
そのボタンを押した。

 ―――『削除しました』

「終わった…」
 安心感から漏れた言葉、しかしこれは明らかに間違っている。
 まだ終わっていない、終わらしてはいけない、終わらせられる訳がない。
 まだ”やり残した事”がある、それが決着するまでは先に進む事は出来ない。
 手始めに俺は加奈と向き合い、言葉の大切さを噛み締めながら一つの要求をする。
「加奈、約束してくれ。もう二度と、誰も傷付けようとしないって」
「え?」
 俺の言葉を受けて、加奈は心なしかキョトンとしてしまった。
 無理もないかと、心の中で気休めに苦笑してみるが、やはり罪悪感は拭い切れない。
 これが俺の出した、加奈を狂気から助け出す為の『手段』であり『答え』だ。
 この言葉は加奈の中に巣食う狂気を認める事に繋がってしまうが、俺だけでなく加奈
も納得する為には、加奈自身にも滞在する『狂気』を認めてもらわなくてはならない。
 『誓い』を守りつつ加奈を助ける為の方法として、俺はこれしか思いつかなかった。
 加奈を一時的に傷付けてしまうかもしれない、それでもこれは避けて通れない道。
 これを約束してもらわなくては、また独断での行動に奔ってしまうかもしれない。
 危ない種は早々に摘んでおかなければならない。
 沈む俺の心中を察してか、加奈はその深くて暗い闇に灯を灯すように笑顔で答えた。
「約束するよ。もう誰も傷付けないよ…!」
 その答えに俺は安心しながら、距離を詰め加奈の頬に軽いキスをした。
 これは明日への誓いの証、真っ赤になって蒸気している加奈の頬を撫でながら思う。
 ”明日で全てを終わらせてやる”。
257上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/04/01(日) 18:14:03 ID:rphe6b+j


「お早うございます。そちらから呼び出しておいて遅刻というのは頂けませんね」
「痛いとこ突くな…。俺の寝覚めは最悪なんだよ」
 暑中真っ只中だが朝はやはり肌寒いななんて事を体と心で感じ取りながら、目の前で
クスクス笑う島村を見て、俺は因縁の体育館裏の中で俄然やる気を奮い立たせた。

 昨日加奈にあの約束をさせた後、今度は加奈が一つの『約束』を要求してきた。
 その『約束』は俺が”やり残した事”として、やらなければならないなと心に決めて
いた事だったから、俺はすぐさま快く了承した。
 その『約束』の後、俺は島村にメールをした。
 そして翌日の早朝、あの体育館裏で待ち合わせをする約束を取り付けたのだ。

 ―――『体育館裏』。
 一昨日、女子トイレから出てきたところを見られて、無理矢理連れ込んだ場所。
 初めて人に、それも女に踏まれるという屈辱的体験をし、同時に島村由紀という人物
の存在が俺の中で色濃いものになるきっかけとなった場所。
 加奈が敵意を向け、カッターを取り出した狂気が渦巻く忌々しい場所。
 思えばこの静かで穏やかな空間は、俺と俺を取り巻く人間をかき回し続けてきた。
 神の悪戯なんだと現実逃避すらしたくなった、『非日常』の連続だった二日間。
 その時に起こった事象にに幾度も翻弄され、大切な人をも失いかけてしまった。
 これからその因縁に決着をつける、その因縁の連鎖を作り出してきたこの場所で。

「それで、『話』とは一体何ですか?」
 先手を取ってきた島村の発言に怯む事もなく、俺は唇を噛み締める。
 そう、迷いを振り払う為に、躊躇いを捨て去る為に、血が滲むまで噛み続ける。
 そして余裕を絵に描いたような島村の態度をよそに、俺は一歩左にずれる。
 俺という壁がなくなった事により、その後ろから隠していた加奈の姿が露になる。
 この突然の演出に驚くかと思ったが、意外にも島村の顔色が変わる事がなかった。
「あら、加奈さんもご一緒されていたんですか。仲の宜しい事で」
 相変わらず笑顔は崩さないまま、島村は多少皮肉めいたような口ぶりで言い放った。
 島村のその言葉を受け流す加奈、ここで俺が加奈にさせた『約束』が効いている。
 誰も傷付けないというあの『約束』、していなければ今頃また加奈と島村の無意味な
口論を繰り広げて、下手をすればまた加奈は逆上して奇行に走っていただろう。
 自分のした事の正当性を改めて確認しながら、俺は島村を見据える。
「島村、今日言いたい事は『一つ』だ」
 俺は加奈を庇うように右手を横に伸ばしながら、島村を真剣な眼差しで見つめる。
 催促するように”俺だけ”を嘗め回すような視線で凝視してくる島村。
 その行為を感じ、昨日島村が言ってきた「俺の事が好き」という発言が本当なんだな
と今更な事を思いつつ、左手を自分の胸に当てる。
 大丈夫だ、とひたすら自分に言い聞かせる。
 そして口早に、陳腐だが絶対に捻じ曲げる事の出来ない『真実』の言葉を紡ぐ。
「”俺が好きなのは『加奈』だ”。だから、お前とは付き合えない」

 そう………加奈が俺に要求してきた『約束』とは、”島村との絶縁”だった。
 『絶縁』というと少々大袈裟に聞こえるが、要は”付き合えない”という意志を明確
に示し、島村の俺への想いを諦めさせてくれ、という事だ。
 これは俺自身やらなければならないと実感していた必須事項だ。
 島村が俺に好意を以って接してくる限り、俺にとっても加奈にとっても平穏と心から
感じ取れる時間は訪れる事はないと思う。
 この二日間で十分に理解している、島村の行動原理は俺を振り向かせる事にある。
 単純な一つの理由であり、理屈が決して割り込めない思考での行動だから、島村由紀
の行動は全く読めない。
 それは紛れもなく、俺と加奈の関係維持にとって最大の『脅威』と言って良い。
 だから、その危険な芽は速めに摘んでおかなければならない。
 それに、島村は加奈以外で初めて俺に好意を示してくれた女の子だ。
 そういった意味で一人の男として『けじめ』をつけなければならないと思ったのだ。
 加奈と付き合う為には、中途半端な関係は全て清算しなければならない。
 それが最愛の加奈への愛情表現であり、加奈と付き合う上で”あるべき様”を教えて
くれた島村由紀という一人の女の子への、最大の礼儀なのだ。
258上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/04/01(日) 18:15:42 ID:rphe6b+j
 俺の発言の後、島村は一瞬目を大きくして驚いた表情を見せてきて、すぐに俯いた。
 何の返答もない為に広がる沈黙、場所が場所なだけにその負の雰囲気は不気味に俺を
包む空気に順応し、そのカクテルが織り成す不気味さに俺は耐え切れなかった。
「………島村?」
 ここで下手に出ては不味い気がしたが、自分の忍耐力のなさに呆れながら訊ねた。
 そんな俺の呼び掛けへの答えは『即答』という形でしっかりと返ってきた。
「誠人くん、何か『勘違い』していませんか?」
「『勘違い』…だと?」
 突然の心当たりのない問い掛けに、俺は思わず口篭ってしまった。
 慌てながら『答え』を探している俺の様子を、島村は見下すように楽しんでいる。
 島村の本性を垣間見たあの時と似た『空気』が、鼻を通して全身に行き渡っていく。
 …”不味い”、直感がそう告げている。
 この直感は、矛盾しているが島村にされた体験を基にしての根拠ある推測に近い。
 だからより一層俺の心をかき乱している…島村のペースに呑まれているという実感を
全身全霊で感じてしまっているから。
 それに連動して心臓が収縮しているような息苦しさが体を支配しているのを感じた。
「やはり分かっていませんね。私自身の事あまり理解されていないようで悲しいです」
 悲しんでいるようには到底思えない明るさを保ったままの声調で島村は攻めてくる。
 今の言葉が引き金になって、体中からどっと冷汗が噴出すのを肌で感じ取った。
 駄目だ、このままではどんどん島村の術中に嵌っていくようでならない。
 だから俺は『逃避』に限りなく近い行為、『無視』で応戦する事にした。
 何を言ってもボロが出そうな気がしてならない今の俺にとっては最も有効な策だ。
 島村の緩んだ目元をひたすら凝視している事数秒、島村の口が静かに開いた。
「これは『略奪愛』なんですよ。文字通り『略奪』させて頂くんですから、その前提と
 してお二人が付き合いなさるというのは至極当然の事。どうぞ私が『略奪』し終わる
 までの間は、正直嫌ですがお二人だけの時間をお楽しみ下さい。邪魔しますがね…」
 悠然と、何の障害もなく、真っ直ぐ島村は俺と目線を合わせようとしてくる。

 ―――『略奪愛』…なるほど。
 そういう可能性は全くと言って良いほど考えていなかった。
 島村は俺と加奈の関係を”容認した上で”、その仲に割って入ろうとしているのか。
 俺が好きなのは加奈だけど、不謹慎ながら可愛いと思ってしまった。
 そこまでして俺と付き合いたい、そんな娘の想いを無碍にするなんて俺は出来ない。
 加奈への気持ちが揺らぐ訳はないんだし、島村が”それでいい”と言っているなら、
島村が諦めるまで今まで通りの関係であるというのもいいんじゃないか。
 島村は飽きればそれで終わりだし、何だ、最善の策じゃないか!―――

 多分今までの俺なら、島村が俺たちの関係を容認しているという『逃げ道』を利用し
そんな最低な事を平気で考えていたのかもしれない。
 だが、”加奈と”『約束』を交わした今の俺には、する事は一つだと分かっている。
「島村………」
「本当はすぐに付き合いたいんですが、物事には順序があり…」
「島村ッ!!!」
 人の話を聞こうとしない島村に、落ち着いた静寂をかき消すかのように一喝する。
 突然の大声に、さすがの島村も驚きを隠しきれないかのか目を丸くしている。
「心臓に悪いですねぇ。どうされましたか、誠人くん?」
 すぐに呼吸を整えた島村は、再びポーカーフェイスを作り直す。
 これからこの余裕そうな表情を崩さなければならないのかもしれない事を考えると、
かなり胸が痛むが、『逃げ』ではなくこれは間違いなく島村の為の行為だ。
 ”分からせてやらなければ”、俺は加奈のみならず島村まで傷付けてしまう。
 加奈に”誰も傷付けるな”と言っておいて俺が実行してしまっては示しがつかない。
 どうせ傷付かなければならないのなら、傷が深くない内が良いに決まっている。
 多少良心が軋むのを感じるのは、俺だけだ。
 それは今まで”はっきりさせられなかった”俺の優柔不断さへの報いなのだと思う。
 だから、俺は受け止めなければならない。
「『勘違い』しているのは、お前だ。島村」
「はい?」
 間の抜けた声を発した島村、初めて隙が出来たなと思いつつ、俺は続ける。
「お前が俺を好きでい続けるなら、俺はお前と『友達』としても付き合いはしない」
259上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/04/01(日) 18:16:36 ID:rphe6b+j
 言ってしまった…だが後悔はしていない。
 こうしなければならなかったのだ、そう自分に必死に言い聞かせる。
 そうしなければ俺自身良心の呵責で、心が潰れてしまう気がしたから。
「それはつまり………”好きになるのも止めろ”って事ですか? ”まさか”ですよ。
 そんな酷い事誠人くんが言う訳ないですよね? これでも恋する女の子なんですから
 そんな一途な想いを否定なんて出来ませんよね? あ、もしかして私が本気で愛して
 ないとか思ってます? そんな事滅相もありませんよ。私は誠人くんを一番に愛して
 いる自信、いえ確信がありますしそれにですね…」
「それ以上言うな!」
 「ひえ」という情けない声を発しながら、島村は肩をビクリと震わした。
 その震えはそのまま体全体に広がっていき、顔も歪んでいくのが分かる。
 もう先程までの余裕は微塵も感じられない、壊れそうな表情を浮かべている。
 予想通りの反応、しかしこうするしかなかった。
 俺が島村を好きになる事は死んでもありえない、俺の一番はいつだって加奈だけだ。
 だからそれを知らずに、『可能性』があると思い込みいつまでも俺に固着していたら
島村は絶対に後悔する。
 叶わない想いだと知る由もなく、永遠に『俺』という呪縛から抜け出せなくなる。
 大袈裟だが、最善の策である事は明白だ。
 ”島村が俺への想いをこれ以上募らせない内に思い知らせてやる”、それしか無知な
俺には島村を助けてやる策を思いつかなかった。
「…”どうしても”なんですか? 私じゃ駄目なんですか? 何で加奈さんじゃなきゃ
 いけないんですか…?」
 眼鏡越しの潤んだ瞳が、俺を手放さんとするように粘着質に絡んでくる。
 だが、今ここで情を移したら全てが水泡に帰してしまい、また島村を傷付ける。
 心を鬼にするしか、ないんだ………。
「俺には、”加奈しかいないんだ”」
 …終わらした。
 絶望に打ちのめされ、目を見開かせ、口をパクパク動かしている島村を見て思った。
 俺と加奈の曖昧な関係を、そして”島村の恋”を俺が強制的に終わらせた。
 やはり罪悪感を感じる、それでも俺は島村に優しくしてはいけない。
 好きな人以外への好意は周りの者を傷付けはしても、癒すなんて事はありえない。
 もしかしたらこれよりももっといい方法があったのかもしれない。
 それでも俺のした事は間違っていない。
 俺を見たまま固まっている島村を見ながら、想いを断ち切ろうとする。
 …刹那、島村が俺から視線を外し下を向いたと同時に、静かに言った。
「…分かりました………”私では”駄目なんですね…」
 分かってくれて良かった、そう俺が思う暇もなく島村は何故か眼鏡を静かに外した。
 そして次の瞬間………
『ガシャッ』
 実際起こった事の割には結構小さい音が響いた。
 その音が耳に入ってからしばらく、俺は何が起こったのか理解出来なかった。
 それが島村お得意の、”理解不能の行動”だからだったと思う。
「島村!? お前何してんだよ! お前の眼鏡だろ!?」
 思わず叫んでしまう、叫ばなければ頭の中が疑問符で溢れかえってしまう。
 島村がした行動…眼鏡を外したと思ったらいきなり足元に放り投げ、そして躊躇なく
踏み潰してしまうという行動の真意が全く読めない事で、俺はかなり動揺している。
 困惑し生唾を飲み込む俺をよそに、島村は初めて眼鏡を外した状態で俺を見てくる。
 長い前髪でよく見えないが、微かに妖しく光っているような気がした。
「だって、もういりませんもん。誠人くんは眼鏡を掛けた女の子は嫌いなんですよね?
 …”加奈さんは”眼鏡を掛けていませんもんね…ハハハ………」
260上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/04/01(日) 18:17:21 ID:rphe6b+j
投下終了です。
261名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 19:03:37 ID:fV+7qToG
島村さん………。



GJ!!!

頑張って略奪してください!!
262名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 19:10:11 ID:0sydcjTA
島村さん、メガネは己を表し、顔の一部、一人の個性なんだ!!君からメガネをとってしまったら何も残らないぞ!!
メガネに乱暴する奴は許さないぞ!!



とメガネスキーであり、メガネをかけている俺が言ってみる。

いや、GJなことに変わりはない。なぜなら彼女は己を捨てたからだ!
263名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 19:32:38 ID:quRtnBOJ
まあコンタクトか手術したほうがいいぜ、リアルならな
264名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 20:02:21 ID:MQ105Nsf
ピンキーストリートでヤンデレ風の女の子を作ってみた。
デジカメ持ってないので携帯のカメラだけど…
ttp://vista.crap.jp/img/vi7542502620.jpg

首曲げてフライパン持たせて瞳のハイライト消しただけだけど。orz

脳内妄想では主人公の幼馴染で、主人公が家に遊びに来たときに
「○○くんの面倒は私が一生見てあげるね♪」と言って
背後からフライパン→拉致監禁のコンボ。
265名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 20:18:15 ID:YW3UWV13
GJでした!
島村の理論はアレですね、かなりイイ感じに病んでて好きなのですがね
島村と加奈の一番の違いが一緒に過ごしてきた時間、過去である以上、島村の勝ち目は無いよなー
と、加奈スキーの俺が言ってみる
266名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 22:19:58 ID:qW/EeRIi
加奈「ウヒョヒョ、これで島村のアピールは全て終了!誠人君の宣告により島村のライフ(精神力)は0!やったー、これで私達を邪魔する者はいなくなった、ヒャーハッハッハー」
島村「何勘違いしてやがる・・・まだ俺のバトルフェイズ(略奪愛)は終了してないぜ!」

すいませんゴメンナサイ嘘です
267名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 22:20:42 ID:FsHwXHEa
>>260
加奈が落ち着いちゃったと思ったら島村さんが本格的に覚醒ktkr!
でも意外と島村さんも人気高いんだな。
ってかそんな俺も島村さん派だがw

>>264
>背後からフライパン→拉致監禁のコンボ。
それなんていたり先輩?
といいつつGJ!
268名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 23:08:42 ID:sLZ1tdTz
島村「誠人君を略奪するまで、ずっと私のターン!」




ごめんなさいごめんなさいごめry
269名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 23:35:13 ID:WR2kTa9Z
まさに無限ループ
270名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 02:15:02 ID:y7iYMzhd
>>264
首を傾げてるとこがカワイイね
すごいなー
271伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/04/02(月) 04:28:20 ID:QI9zv4Ww
暇だったから(といっちゃなんだが)絵にしてみた。
http://imepita.jp/20070402/159530
272名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 09:02:10 ID:ofj9TQfL
ダメだよ島村さん!眼鏡外すなんて、鞘捨てた佐々木小次郎じゃないか!

>>263
貴様は全宇宙の眼鏡っ娘スキーを敵にまわす気か?
273名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 10:06:31 ID:pIEgAs/T
>>272
メガネいいっていえばいいんだけどみつあみといっしょだと萎えないか?
274名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 10:29:36 ID:LgvvlkvA
メガネは賛辞のほうがいい
275名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 10:30:59 ID:pa62wC43
くせっ毛ワカメみたいな髪型だったらなえる
276名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 11:29:08 ID:ofj9TQfL
>>273
しかし三つ編みで緑色で巨乳な看護師なら萌えるだろ、少なくともここの住人ならなぁー!HAHAHA!
277名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 11:30:26 ID:pa62wC43
それトラウマ
278264:2007/04/02(月) 12:28:02 ID:skEz3jD2
>>271
ぉぉぉ!ありがとうございます!
かわいいよフライパン少女かわいいよ…

ところでフライパン少女のSSを書こうとして名前が付いていないことに気が付く。
ほのぼの純愛みたいに男君と女さんでは味気ないので名前募集。以下スペック。

近所の共学校に通う17歳。主人公の幼馴染で小中高と一緒。
趣味は料理。大き目のお魚もお肉も三枚おろしにでもブロックにでも捌ける腕。
宝物は誕生日に主人公に買ってもらったフライパン(構えてるこれ)。
「将来料理研究家になりたいので試食して♪」と言いながら、一人暮らししている
主人公の食事を毎日作ってくれている。
食費は毎月主人公から貰っているが、結婚・出産費用に積み立てている。
279名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 13:34:55 ID:VPuTJgIA
>>278
料理ということで味香(みか)

うん、「一発変換できない」んだ。済まない。
280名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 13:38:11 ID:ied5OfWv

本読んでたらたまたま出てきた。適当でスマソ
281名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 14:46:38 ID:Sn3oVAK6
富良野衣羽

ところで、男女の性の概念に基づいたヤンデレってどうよ?

ある少年が男を好きになるが、男はホモじゃないから拒否。
少年は再び告白するために女性化(性転換にあらず)するものの玉砕。
そこでどんどん狂っていく。

ある少女は男として育てられてきた。そんな少女は男の親友に惚れた。
そして自らの秘密と愛を告白するが、男として付き合ってたために拒絶される。
そして、次第に狂ってゆく。
282名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 16:11:02 ID:qZ5ub/An
前者の少年はもともとが性同一性障害者だったのか、それとも性同一性障害ではない
男性同性愛者だったのかによって女性化するということの意味が変ってくるな
しかしよほどうまく進めないと単にキモい話か下手するとギャグになってしまいそう

後者は秘密まで告白したんだったら、単に女が男に振られたってことにならんか?
幼なじみとかが「友達としか思えない」って振られるのとそんなに変らない気がする
283名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 17:36:20 ID:6FpCIcin
>>281
その話は少年が準にゃんっぽい男だったらめちゃくちゃ読みたいな。
ショタっつーか女装男が絡む話って某修羅場スレにも少ないし。

俺ほんと変態だな・・・
284264:2007/04/02(月) 18:15:55 ID:skEz3jD2
フライパン少女のSS投下します。
例によってタイトル未定。ついでに募集とか?w

途中URLが入りますが挿絵です。
「このろだでは見れない」という人は他に使い勝手のいいろだを教えてください。
見れない人が多ければそちらにも再アップします。
2851/4:2007/04/02(月) 18:16:36 ID:skEz3jD2
キーンコーンカーンコーン…

昼休みを告げるチャイムが鳴りようやく授業が終わる。
クラスのみんなは学食や購買に行ったりお弁当を取り出し始めてる。
俺は今日は学食の安いご飯でも購買のパンでもなく…

「お弁当一緒に食べよ?」
「いつも悪いな味香」

机をくっつけて鞄からお弁当を取り出したのは幼馴染の彩 味香(いろどり みか)だ。
一人暮らしの俺にほぼ毎日料理を作ってくれている。
将来料理研究家になりたいらしく料理の腕は確かでこのお弁当もとっても美味しいだろう。

「今日のおかずはリクエストにお応えしてハンバーグでーす」
「おおお、いつ見ても美味しそうだな」
「違うよ『美味しそう』じゃなくて『美味しい』の!」
「あははは、それじゃあいただきまーす」
「めしあがれ」

周りからは愛妻弁当だと冷やかされつつお弁当を味わう。
うん、確かに『美味しそう』じゃなくて『美味しい』だな。
そして食べながら他愛のない話しをする。最近出た音楽の話、マンガの話し、新発売の
お菓子の話し、そして今晩のおかずの話し。

「夕ご飯はなに食べたい?」
「ん〜、なんでもいいや」
「もう…作る方にとってはそれが一番困るの。
 そうだ放課後一緒にスーパーに食材買いに行こうよ、ね? 決定♪」
「わかったわかった。
 ごちそうさま。さてと、ちょっと用事があるんで行ってくる」
「お粗末さまでした」

そう言って弁当箱を畳むと教室を出る。用事というのは手芸部の引越し作業だ。
俺自身は帰宅部だが友人に手芸部員の彼女持ちのやつがいて、そいつが新しい部室へ
引っ越す作業に駆り出されるので手伝ってくれと言ってきたわけだ。
作業も運ぶ物はダンボールに既に入れてあるのでそれを運んで旧部室を掃除するだけ。

「それじゃあこの箱をお願いします。
 新しい部室は…説明し辛いので一緒に行きましょう」
「よっと。…このペースだとお昼では終わらないかな?」
「一応今日の放課後も作業の予定なんですよ」
「放課後も? あー、悪いけど放課後はちょっと用事があってさ」
「あら残念。…ああ、ここですよ、新しい部室は」

その後旧部室と新部室を何度か往復して移動作業は終了。
そして掃除をしていると予鈴が鳴り掃除道具を片付けていたら部長さんに呼び止められた。

「今日はありがとうございました」
「おつかれさま。そうだ、放課後の作業なんですけど…」
「…そうですかわかりました。あとは掃除だけですので大丈夫ですよ。
 そうだこれお礼のクッキーです。食べてくださいね」

クッキーを貰い教室に戻り授業が始まる。
眠い授業だがなんとかガマンしているうちに放課後になった…
2862/4:2007/04/02(月) 18:18:00 ID:skEz3jD2
「ふぅ、終わった終わった」
「あとは私と買い物して帰るだけだね」
「『帰ったら味香の料理を食べる』はやらなくていいのか?」
「だ、だめだよ、美味しいのを作るからちゃんと食べてよ!」

そんな会話をしながら近所のスーパーに寄る。
昼はハンバーグだったので夜は魚料理を食べようと思って鮮魚コーナーに向かっていると、
ふとお菓子コーナーが目に入った。

「お菓子食べたいの? クッキーとかなら私が焼くよ」
「いや、クッキーなら持ってるから良いよ。それより焼き魚と煮魚どっちにしようか…」
「…ねぇ、ちょっと待って」
「どうした? 魚のフライの方が良いのか?」
「そうじゃないよ。なんでクッキーを持ってるの?」

味香は急に足を止めて聞いてきた。その顔は俯いていて表情が読み取れない。
…心なしか周りの温度が下がったような気がする。
いや、単に周りに冷蔵棚があるから寒く感じるだけだろう。

「俺がクッキーを持ってるのがそんなに変か?」
「だって市販品のクッキーはあまり好きじゃないでしょ?
 いつもは甘いものはチョコやシュークリーム、和菓子なら羊羹とかを買うじゃない。
 それにクッキーを食べたいときは私に言うのに、前回作ったのはもう二週間以上前だよ?」
「あー、その…貰ったんだ。
 昼休みにちょっと友人のツテで手芸部の手伝いをしたんだけど、手芸部の女の子に…」
「女の子から貰ったの?」

心なしか更に周りの温度が下がったような気がする。
いや、単に近くに冷凍棚があるから寒く感じるだけだろう。

「あ、ああ、でもこれは手伝ったお礼なだけだから…」
「女の子からクッキーを貰った女の子からクッキーを貰った女の子からクッキーを………」

味香は俯いてブツブツと呟いている。
いったいどうしたって言うんだよ…

「そ、そうだ。久しぶりに味香のクッキーが食べたいな」
「クッキーを…え? わ、私の作ったクッキーが食べたいの?」
「そ、そうそう、食べたい食べたい、すっげえ食べたい!」
「わかった、それじゃあ材料取ってくるから先に鮮魚コーナー行っててね」

急に明るくなった味香はカートを押しながらお菓子コーナーに向かって行った。
ふと周りの温度が戻ってきたような気がする。
…ここはインスタント食品のコーナーで冷蔵棚も冷凍棚も遠いんだけどな。
2873/4:2007/04/02(月) 18:19:11 ID:skEz3jD2
スーパーからの帰り道、味香は何故かご機嫌だ。
買い物袋を俺が持つ代わりに持っている俺たちの鞄を振り回しそうな勢いだ。

「焼き魚も煮魚もフライも美味しいの作るから楽しみにしててね」
「結局全部か」
「平気よ、私の料理は美味しいからいくらだって食べられるよ」
「って食べるのは俺か? まぁ、余ったらフライならお弁当に転用できるしな」

そうしているうちに味香の家に着く。
今日は味香しか居ないらしいので台所に買い物袋を置いたあと自分の鞄を持ってリビングの
ソファに座ってTVをつけると、ふと持っていた鞄が味香の鞄だったことに気付いた。
学校指定の男女共用鞄だったから間違え…


ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!


突然台所から凄い音がし始めた!
魚料理にしろクッキーを焼くにしろ、味香はいったいなにをしてるんだ!?
TVも消さず台所へ向かうが音はまだ続いている!

ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!

「味香っ! いったいどうしたんだ!?」

台所に入ると背中越しに味香がフライパンを持っているのがわかる。
もしかしてあのフライパンでなにかを叩いていたのか? いったいなにを…


ttp://vista.jeez.jp/img/vi7550484596.jpg


視線の先には、俺が昼休みに貰ったクッキーの包みがあった。


そして振り向いた味香の瞳は狂気を宿していた


ttp://vista.crap.jp/img/vi7550490444.jpg
2884/4:2007/04/02(月) 18:20:04 ID:skEz3jD2
「あははは、こ、ここここの、クッキーは、クッキークッキークッキーは…食べちゃダメ。
 あはははははははははははははははははははは、クッキーが食べたければ私が焼くからね?
 クッキーじゃなくても古今東西どんなお料理お菓子でも作るのは、わ・た・し♪
 だからもうお菓子とか貰っちゃダメだよ? 私と約束ね、約束約束約束約束ヤクソク………
 え? なんなのかなその顔は? どうしてあとずさるの? 嬉しいでしょ? 嬉しくないの?
 私の! 私の私の私の私の私の私の私の私の私の私の私の私の料理だけを食べるの!!
 あなたの専属シェフに、ううん、お嫁さんになってあげる。
 ほら見て、誕生日に買ってくれたこのフライパン私の宝物なの。
 毎月食費として貰っているお金も結婚出産資金に積み立ててるの。
 好きなの。愛してるの。
 好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き
 好き愛してる愛してる好き好き好き好き好き好き好き好き愛してる愛してる好き好き好き
 好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き
 好き好き好き好き好き愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる好き好き好き
 愛してる愛してる好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き
 好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き愛してる愛してる好き好き好き
 好き好き愛してる愛してる愛してる好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き愛してる
 好き好き好き好き好き好き好き愛してる愛してる好き好き好き好き愛してる愛してる好き
 愛してる愛してる好き好き好き好き愛してる愛してる好き好き好き好き好き好き好き好き
 あはははははははははあははあはははははははははははははあははははははははははあは
 ははははあはははあはははははあははははあはははははあははははははははあははははは
 ははあはははははははははあははははははははははははははあはははあはははははははは
 ははははあはははははははあははあははははははははあはははははははははあははははは」


ttp://vista.jeez.jp/img/vi7550494363.jpg

目の前が真っ暗になって意識を失う寸前に、俺の目に写っていたのはフライパンを持って
濁った瞳でワラッテイル味香だった。
289264:2007/04/02(月) 18:22:35 ID:skEz3jD2
投下終了。
名前は>>279さんと>>280さんの案をミックス。ありがとうございました。

やっといてなんですが挿絵二枚目、エクソシストで似たようなシーンがあったような…
290名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 19:31:53 ID:/Xw03ukI
>>289GJ!
291280:2007/04/02(月) 21:27:44 ID:ied5OfWv
>>289 GJ!
まさか俺の案も入れてもらえるなんて、感動です!
292名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 22:35:31 ID:Sn3oVAK6
フライパンGJ!本人を殴ると思いきやまさかクッキーをかwww

>>282
ならば、男と幼馴染と男友達とはどうだ?
幼馴染は男友達が実は女だと気付かず、いつの間にか奪われてたとか、
男友達に幼馴染が惚れたが、それは振られた男の彼女の座を狙う男友達(女)の罠とか。
293名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 10:03:01 ID:PPqSZg36
>>289
GJ!!
でもなぜか画像見れない(´A`)
294名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 14:40:41 ID:w5w+UrXk
なぁ、みんな!
ツンデレ喫茶があるんだからきっとこれからはヤンデレ喫茶もメジャーになり、テレビに進出………………………………無理か。
きっと警察沙汰になるもんな
295名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 15:02:22 ID:dQSk7oyh
ヤンデレ喫茶か……
毛髪入りとか睡眠薬入りのメニューがありそうだな
296名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 15:17:11 ID:UshWYBTj
前にもそんなネタあったなぁ
確か十回その店に通ったとかでサービスという名の拉致監禁。とか
297名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 15:44:28 ID:w5w+UrXk
>>296 前にもあったんだ。俺比較的新参者だから知らなかった。

俺の妄想の中では






・ 「いらっしゃいませ!こちらの席へどうぞ!」
「ご注文はお決まりでしょうか?
〇〇〇〇が一つですね。
……………………私以外のウェイトレスに話しかけないでね?あんな体の70%が水分のかわりに汚物や虫でできてる奴としゃべったら料理がまずくなっちゃうよ?」


・ 店員がこれだと食欲うせるわぁー
妄想に付き合ってくれてありがとうな
298名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 16:05:22 ID:Qy+5Nn+V
つ 保管庫の3スレ小ネタ集
299名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 16:15:20 ID:PPqSZg36
>>297
いんやスーパーネタだったと思う
300名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 16:48:48 ID:GHbug5mL
無理無理w
ヤンデレ喫茶みたいなのができたら、ツンデレ喫茶みたく勘違いした所になりそう。
ただ基地外の店員さんがいるだけの喫茶店になっちゃうよwww
301名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 17:06:58 ID:Qogub4tq
mixiのヤンデレコミュで『ヤンデレ喫茶の同人誌作ろうぜ!!』って企画があった……はず。
302ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/03(火) 20:56:37 ID:bhK99rbs
>>297
こんな感じ? 


 とある掲示板で、面白い書き込みを見つけた。


 なぁ、みんな!
ツンデレ喫茶があるんだからきっとこれからはヤンデレ喫茶もメジャーになり、テレビに進出………………………………無理か。
きっと警察沙汰になるもんな
                  』

 僕がよく覗きにいくスレッドの名前は『ヤンデレスレ』。
 ヤンデレとは、『男性を愛するあまり心を病んでしまった女性』のことを差して使う言葉だ。
 そのスレッドはなかなかの盛況ぶりである。
 帰ってきてからこのスレッドでSSを読んだり、雑談するのが僕の毎日の楽しみだ。

 それはともかく。
 
 さっきの書き込みにあるように、ヤンデレ喫茶というものが存在していたら面白い、と僕は思った。
 そこで、早速僕は行動を開始した。
 
 比較的仲のいい友人二人に連絡を取る。
 彼らは、都内某所のメイド喫茶に頻繁に通っている。
 詳しく聞いてみたところ、友人Aは8回、友人Bは6回同じところに通っているという。
 ちなみに僕も彼らに連れられて、先日までで4回ほど通っている。

 ヤンデレスレに投下されたネタによると、10回通うと特別サービスということで
特別ケーキをごちそうされて、その後で監禁されてしまうらしい。

 僕が『メイド喫茶に10回通って、監禁されるか試そう』とメールすると、
友人Aは『参加希望 ノ』と返信し、
友人Bは『ヤンデレにレイプされたいので参加キボンヌ』と返してきた。

 そういうわけで、僕と友人二人でヤンデレ喫茶が存在するのかを検証してみようと思う。
303ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/03(火) 20:57:42 ID:bhK99rbs
 都内の大通りから少し離れた場所にある、メイド喫茶が検証の場所だ。

 初めてメイド喫茶に足を踏み入れたときは「父さん母さん生まれてきてごめんなさい」と思ったが、
実際にはただウェイトレスさんがメイド服を着ているだけのお店だった。
 意外と普通のお店だな、というのがメイド喫茶に対する印象だった。
 ―とはいえ、気が引けるのは相変わらずではあるが。

 それはともかく、さっそくメイド喫茶の扉を開けるとしよう。

 からんからん、という軽いベルの音が扉の上から聞こえた。
 そして、入り口の近くには白と黒の組み合わせが男の妄想を掻き立てる、
メイド服を着た女の子が立って、僕たちに向けて挨拶をした。

「お帰りなさいませ。ご主人様」

 うやうやしく頭を下げた女の子の髪には、フリルのついたカチューシャが飾られている。
 僕としては、このカチューシャがメイド服の一番素晴らしいところだと思う。
 ちなみに、友人Aにそう言ったら、「メイド服といったらエプロンだろう!」と声を荒らげ、
友人Bは「はん! メイド服はロングスカートが最高なんだよ!」と吐き捨てた。

 だが、なんと言われようと僕はカチューシャが好きなのだ。ここはゆずれない。
 特に理由は無いけれど。

 メイドさん(ここでは便宜的にそう呼ぶことにする)に案内されて、三人で同じテーブルにつく。
「何にいたしましょうか。ご主人様」
 と、漆黒の長い髪を伸ばしたクールな印象のメイドさんが聞いてきた。
僕はアイスカフェオレを注文した。友人二人とも同じものを、と言った。

 
「お待たせいたしました」
 しばらく待っていると、さっきのメイドさんがアイスカフェオレの入ったカップをトレイの上から一つずつ、
僕たちのいるテーブルの上にゆっくりと置いた。
「それでは、ごゆっくりおくつろぎくださいませ」
 と言いながら頭を下げると、メイドさんは他のお客さんの接客へと移っていった。

 アイスカフェオレに口をつける。
 舌で味わって見る。が、特に変わった味もしなかった。
 「まだ10回通っていないからだろう」と僕は思ったが、友人二人はどこかつまらなさそうな顔をしていた。

 アイスカフェオレを飲んだ後、僕たち三人はお店をでることにした。

「いってらっしゃいませ。ご主人様」
 髪の長いメイドさんが頭を下げながら、僕たちを見送った。

 この日で、メイド喫茶へ通った累計回数は僕が5回、友人Aが9回、友人Bが7回になった
304ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/03(火) 20:59:37 ID:bhK99rbs
 検証二日目。

 もしヤンデレスレのネタが実現するとしたら、友人Aは今日監禁されてしまう。
 それを理解しているからだろう。
 友人Aはスーツを着てメイド喫茶へやってきた。
 しかし、スラックスはしわだらけだし、ジャケットのボタンはほつれている。
 はっきり言って、カッコ悪い。
 友人Aにさりげなく注意してみたら、「あえて着崩すのがいいんだよ」と、薄く笑いながら言った。
 僕は「それを言っていいのは着こなしを知っている人だけだ」と思ったが、あえて言わないでおいた。

 大通りからわき道に入り、メイド喫茶の前にやってきた。
 もちろん、今日の検証場所も同じ場所だ。

「おかえりなさいませ。ご主人様」
 と、お決まりになった出迎えの台詞でメイドさんに挨拶をされた。
 そのメイドさんは、一日目と同じ、黒い髪に真っ白なカチューシャが映える人だった。

 カウンターのテーブルに三人並んで座り、先日と同じくアイスカフェオレを三人分注文した。
 ネタが実現するならば、この後で友人Aの前には薬の入ったケーキが置かれるはずだ。

「お待たせいたしました」
 髪の長いメイドさんがトレイを持って僕たちの前にやってきた。
 そのトレイの上にはカップが三つあるが――ケーキが置かれていなかった。
 
 それを見て、僕は「ああ、やっぱりか」と思った。
 しかし、友人Aは首が折れたのではないか、というほどにうなだれた。
 友人Bはいったいどれだけの肺活量があるんだ、と言いたくなるほどの長さでため息をついた。
 しかし。

「ご主人様! お着物のボタンがほつれております!」
 メイドさんが突然に慌てた声をだした。

 「え、あ、その」と友人Aがしどろもどろになっていると、
「私が、すぐに手直しいたします!」
 と言ってから、メイドさんが友人Aを店の奥へと引っ張っていった。
 「もしかして、実験成功か?」と僕たちは顔を見合わせた。


 そして、友人Aが店の奥へと引っ張られていってから一時間が経過した。
 「このまま戻って来るな!」と僕は祈った。友人Bもそう思っていたはずだ。
 いや、友人Aを嫌っているからではない。
 もしこのまま戻ってこなかったら、ヤンデレスレのネタが実現するからだ。

 数分待っていると、『チャーンチャチャンチャン チャーンチャチャンチャンチャーン』というメロディーが聞こえた。
 『TAXI』のテーマソングは僕のメール着信音ではない。友人Bのものだ。
 友人Bが届いたメールを確認する。――それを見た彼は、顔に深いエクボを浮かべた。
 彼が僕に向けて、携帯電話の画面を見せる。

『おまいらさきにかえてろ』
 
 ……おそらくは、『お前ら、先に帰ってろ』と送るつもりだったのだろう。
 つまり、一緒に帰れない、ということだ。そして、友人Aは店の奥に連れて行かれてこんなことになった。
 これが意味することは――ひとつしかない。
 都市伝説的なヤンデレ喫茶は、ここに――大通りから外れた場所にこそ、在ったのだ。
 
 そのあと、会計を済ませた僕らは興奮をなんとか押さえ込み、
見送るメイドさんに見向きもせずに、店をあとにした。

 この日で、メイド喫茶へ通った累計回数は僕が6回、友人Bが8回になった
 友人Aは、監禁(?)されてしまったので、カウントしない。さらば――エプロン萌えの勇者よ。
305ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/03(火) 21:01:53 ID:bhK99rbs
とりあえず出来上がっている分を投下しました。
今日〜明日で全て投下し終わります。
306名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 21:05:44 ID:w5w+UrXk
友人Aどうした?!
面白いな、これ

待ってるよ!
307名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 22:18:16 ID:lQdAvuTW
ていうか三次は基本的にだめだろ常識的に考えて・・・

ヤンデレが広まるとツンデレと同じ末路をたどるような気がする
308名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 22:45:12 ID:q4P0y3Do
どれが三次だって?
309名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 22:49:34 ID:PHaNfVPg
ヤンデレ喫茶だろ
310名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 01:39:48 ID:04qMFGEC
さがってるage
311ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/04(水) 02:07:38 ID:7cbl3E8J
投下する。エロ注意。
312ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/04(水) 02:08:30 ID:7cbl3E8J
 検証三日目。
 
 僕と友人Bは昨日に引き続き、またしてもメイド喫茶へとやってきた。
 ちなみに友人Aとは連絡がとれなかった。そのため、今日は同行していない。
 しかし、僕には――いや、僕と友人Bには確信があった。
 「友人Aは、ロングヘアーのメイドさんに監禁されてしまったのだ」という、確信が。

 そのため、僕と友人Bははやる気持ちを抑えつけるのにかなりの労を要した。
 僕はアルバイト中、ずっとうわの空で過ごしていた気がするし、
友人Bは朝の5時に起きて、僕にメールを送ってきた。
 『早く行こうぜメイド喫茶!』というのが本文だったが、午前1時に眠りについた僕としては実に不愉快だった。
 
 ともあれ、今日も憧れの監禁に向かう一歩を踏み出すことにした。
 具体的には、メイド喫茶の入り口のドアを開けた。

「……いらっしゃいませ。…ご主人様」
 挨拶してきたのは、昨日入り口近くに立っていたメイドさんではなかった。
 昨日のつややかな髪をした女性ではなく、どこかくすんだ印象のある黒髪だった。
 髪型はボブカット。そして、縁無しの丸い眼鏡をかけている。
 だが、もっとも印象的なのは、エプロンの胸元を押し上げている巨乳であった。
 
 見るつもりはなくても、つい凝視してしまいそうになる。
 友人Bにいたっては、誰が見てもセクハラにしか思えないような目でメイドさんを見つめていた。
 主に胸を。彼の萌えポイントであるロングスカートには目もくれない。
 所詮、彼にとってはその程度のものだった、ということだろう。
 僕は彼女の髪に飾り付けられているカチューシャを見た。
 ――至福。メイドにはカチューシャがあればいいのだ。胸など、おまけの要素でしかない。

 メイドさんの小さな声に導かれるようにして、テーブルにつく。
 僕は、「昨日の髪の長い女性は?」とメイドさんに問いかけた。
「あ……実は、昨日付けで……、やめ、てしまったんです」
 僕の問いに対して、彼女は僕の視線におびえるような震えた声でそう言った。

 そのまま下を向きながら、
「ご注文は、その……何に、いた、いたしま、しょう……?」
 と言った。
 僕はアイスカフェオレを注文した。友人Bは、カプチーノを注文した。

 メイドさんがおどおどとした様子で僕たちの前から去って言った後、
僕は友人Bに「なんで今日はカプチーノなんだ」と聞いた。
 彼は、「彼女の顔を見ていたら、カプチーノを注文してしまったんだよ」と言った。
 その後に、「あの眼鏡、そしてあの豊満なバスト……まるでカプチーノの泡のようじゃないか」と続けた。
 
 どうやら、友人Bは眼鏡をかけた巨乳のメイドさんに惚れてしまったらしい。
 そうでなければ、そんな意味不明な言葉を発するはずがないからだ。

 その後、アイスカフェオレとカプチーノをそれぞれ飲み干し、店を後にする。
 巨乳のメイドさんが見送ってくれたが、彼女の声は小さくて聞こえなかった。

 三日目にして、メイド喫茶へ通った累計回数は僕が7回、友人Bが9回になった。
 ――明日、友人Bは10回目のメイド喫茶通いを達成する。
313ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/04(水) 02:09:34 ID:7cbl3E8J
 検証四日目。

 僕と友人Bは大通りから横道に入り、ひとけの少ない路地を肩を並べて歩いている。
 僕の右を歩いている友人Bは、タキシードを着ていた。
 「なぜタキシードを着ているのか」と問いかけると、友人Bは首もとの蝶ネクタイをつまんだ。
 「今日は俺の一世一代の晴れ舞台なんだ。そして……最後のな」と彼は言った。
 僕は何も言わなかった。ただ、心の中で彼の言葉に同意だけすることにした。

 メイド喫茶のドアを開けると、メイドさんが二人、向かい合って立っているのが見えた。
 昨日の巨乳のメイドさんと、金髪ツインテールのメイドさんだった。
 二人は実に対照的だった。
 とても暗く、輝きの無い黒髪と、蛍光灯の光を反射するように輝く金色の髪。
 エプロンの胸元を激しく隆起させている巨乳と、エプロンの形を崩さない貧乳。
 その対照的な二人が、向かい合って口論をしていた。
「あんた! もっとはっきり喋りなさいよ!」
「ひぃっ……ごめ、ごめんなさい……き、気をつけます、から……」
 どうやら、金髪のメイドさんが巨乳のメイドさんを叱っているようだ。

 これはどうしたものか、と思っていると、突然後ろから大声が飛んできた。
 「やめたまえ! そこのツインテールの貧乳メイド!」ということを言っていた。友人Bであった。
 貧乳と言われたことに腹を立てたのか、金髪のメイドさんが友人Bを睨みつけた。
「何よ、このメイド萌えのオタク! 邪魔しないでよ!」
 とてもメイドが言うような言葉ではなかった。――が、僕はあることに気がついた。
 彼女は「ツンデレメイド」という存在である。
 ツンデレ、プラス、メイド。萌え要素を無理矢理合わせたとしか思えない存在である。
 事実、こうやって目にするとちっとも萌えない。

 それはともかく。
 友人Bは金髪のメイドさんの声に痛いところを突かれたのか、押し黙ったままだった。
 そのまま居心地の悪い空気が続くかと思ったが、意外な人によってその空気は破られた。
「ごめ、ご、ごめんなさ、……ごめんなさい……ごめんなさい……!」
 謝罪の言葉を述べながら、巨乳のメイドさんが立ち上がった。
 くしゃくしゃの泣き顔をした彼女は友人Bの側を通り抜けて、店内から出て行った。
 友人Bはしばらく呆けていたが、すぐにきびすを返してメイドさんのあとを追った。
 僕も、とりあえずその後を追うことにした。
 後ろで誰かに声をかけられた気がするが、この場では優先すべきことではないと思ったので、
彼らの後をそのまま追うことにした。

 店内を出て、路地を見回しながら、友人Bと巨乳のメイドさんを探す。
 ―――いた。メイド喫茶の向かい側の店の、裏手で向かい合っている。
 僕は彼らのもとに近づこうとした。が、すぐにためらった。
 友人Bが、メイドさんの眼鏡を外して、ポケットから取り出したハンカチーフで彼女の涙を拭っていたからだ。
 友人Bの唇が小さく動いた。彼女に向かって、何かを言ったようだった。
 すると、メイドさんがまた涙を流して、友人Bの背中に手を回して、抱きついた。
 友人Bはメイドさんの黒髪をいとおしげに撫でている。
 ――それは、父が我が子を泣き止ます仕草にも見えた。

 邪魔をするのも野暮に思えたので、僕はその場を後にして、家路につくことにした。
 もし、今日のことをカウントするならば、メイド喫茶へ通った累計回数は僕が8回で、友人Bが10回ということになる。
314ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/04(水) 02:10:56 ID:7cbl3E8J
 検証五日目。

 僕は今日もメイド喫茶にやってきて、アイスカフェオレを注文した。まだ届いてはいない。
 携帯電話を見る。メールの着信も、電話の着信もなかった。携帯電話をポケットにしまう。
 僕が誰からの連絡を待っているのかというと――友人Bからのものだ。
 昨日、帰ってからも連絡をしたのだが、なしのつぶてだったのだ。

 その原因がなんであるか。それはわかっている。
 ――自分達が原因である。
 『メイド喫茶に10回通うと監禁される』。
 ヤンデレスレで語られたネタを真に受けて実行してみれば、この通り。
 友人Aは黒髪のメイドさんと、友人Bは巨乳のメイドさんと一緒に消えた。店内に彼女の姿が無いからだ。
 消えた、という表現は正確ではない気もする。
 僕の見える場所から居なくなっただけで、彼らは――おそらく――この世界に居る。
 ただ、見えないだけなのだ。つまり、それが『監禁』というものの実態である。
 
 しかし――考えてみればなんでもないことにも思える。
 世界が狭くなっただけなのだ。そう。ただ、男と女の二人だけしかいない世界に変わっただけ。
 とはいえ、僕としてはそれは好ましくない。
 僕はただ、ヤンデレ喫茶が存在するのかを検証したかっただけだ。
 友人Aや友人Bのように、監禁されたかったわけではない。
 僕は家族や友人、そして、社会に住む人々との世界を望む。
 
 だが――今僕は監禁されるかもしれない、という状態に置かれている。
 今日この店を出てから、明日ここに来れば、僕はきっと監禁される。
 そう考えると、店内を優雅な足取りで歩くメイドさんたちが恐ろしく見えてきた。
 彼女達は、僕を監禁しようとしているのではないか。という疑心暗鬼にとらわれる。
 
 ――もう、やめよう。
 ここまでやったらもう、疑う余地はない。『ヤンデレ喫茶は実在する』のだ。
 あとは、それをヤンデレスレに書き込めばいい。
 『俺の友達が10回メイド喫茶に行ったらいなくなっちゃったよ』と書き込めば、全ては幕を下ろす。
 そのあとで適当にスルーされてしまえば、心のもやもやもなくなるはずだ。
 ――さらば。友人Aと友人B。
 
 椅子から立ち上がると、金髪のメイドさんが僕の前にアイスカフェオレを持ってきた。
「あ……これ、いらないの…?」
 トレイにはアイスカフェオレが注がれたカップが乗っている。
 先日までは味わって飲んでいたそれも、いまとなっては恐ろしい毒物に見えてくる。
 僕は「いらない」とだけ告げて、レジに立っているただ一人の男性ウェイターにお金を払う。
 そして、店をでるためにドアを開ける。
 と。

「待って! ……行かないで、お願い……また、ここに来て――来て、下さい……」
 金髪のツンデレメイドが僕のシャツの裾をつまんでいた。
 その姿を見ていると、そのままお持ち帰りしたくなる。
 だが、それをしてはいけないのだ。監禁されるなんて、僕は御免だ。
 
 全力で走って店を出て、路地を駆け抜け、大通りに出る。
 これで、メイド喫茶に行ってから通算9回目。しかし、もうあの店にいくことはない。あっては、ならない。
315ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/04(水) 02:12:11 ID:7cbl3E8J
 自宅の前までようやく辿り着いた。
 メイド喫茶から立ち去ったものの、さっきの金髪メイドが追ってきているかもしれない、
と思うとゆっくり歩いて帰ることができず、自宅前まで走ってきたのだ。
 これなら、後をつけられたとしても、さすがにわかるまい。
 僕はこれでも逃げ足だけは速いのだ。
 高校では陸上部のエースとして慣らした足だ。そうそうなまるものではない。

 ふと、時刻が気になった。
 ジーンズの後ろポケットに入れた携帯電話を取り出そうと、手を入れる。
 しかし――そこには何も入っていなかった。
 走ったばかりで温まっていたはずの体に、冷たいものが走る。
 
 どこで落とした?走っているときか?――もしそうだったら、僕でもさすがに気づくはずだ。
 次に考えられるのは、どこかに忘れてきた、ということだ。
 たしか最後に携帯電話を見たのは、メイド喫茶だった。
 そうだ。そして、後ろのポケットに入れた。それは覚えている。
 その後、勘定を済ませて、それから――――あの、メイドさんにくっつかれた。
 ということは、彼女が僕に近づいたときに掠め取ったのか?
 
 もし、そうであればまたメイド喫茶に行かなければならない。
 そして――――そのとき僕は、あの店に10回目の靴の跡を残すことになる。
 結果、僕は監禁される。
 相手は、おそらくあの金髪のツンデレメイドだろう。
 彼女以外に話をしたメイドさんはあの店にはいない。
 
 携帯電話を放置しておいたら、他人に悪用される可能性もある。
 それは良くない。
 この情報化社会で情報を漏らすことは、人間関係にも悪影響を及ぼす。

 そこまで考えて、僕は決断した。
 ――もう一度だけ、あのメイド喫茶へ行こう。

 もちろん行くだけだ。
 男性のウェイターさんに声をかけ、ツンデレメイドから携帯電話を返してもらう。
 拒否されたら、その場合は警察に連絡をすればいいのだ。
 あのツンデレメイドには近づかない。
 それさえ守れば、僕が監禁されることはない。

 
 僕は、もう一度メイド喫茶へ向かうために、さっき走ってきた道を引き返すことにした。
316ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/04(水) 02:14:00 ID:7cbl3E8J
 メイド喫茶についたとき、玄関には『CLOSED』の札が張り付いていた。
 おかしい。まだ太陽は沈んではいない。
 どう考えても、普通の喫茶店が閉店するような時間ではない。(メイド喫茶が普通かどうかは置いておくとして)
 
 ――店が閉店していては、どうしようもないな。
 そう思い、立ち去ろうとしたら。
『キィィーーー』
 という音を立てて、ドアがゆっくりと開いた。
 そして、ドアが開ききったとき、僕はおかしなものを見た。

「う、うっうっうぅぅ……」

 金髪のツインテールをしたメイドさんが、立ったまま、顔に手を当てて泣いていたのだ。
 彼女の足元には、トレイと、それの上に乗せられたコーヒーカップがあった。
 カップにはキャラメルのような色をした液体――カフェオレが注がれていた。
 おそらくは、僕が注文したカフェオレだろう。
 だが、何故それを今までカップに入れたままにしているんだ――?

「私のいれたカフェオレ……どうして、飲んでくれないの…?
 なんで? 私………が、私が悪いの? ……あなたに、なにかしちゃった?
 いつも、来た時には飲んでくれたの、にぃ……どし、て……?
 私が、いれた、い、れ…ぁ…う、ふぅぅぅ、うう、う、う………」

 彼女は、両手を顔から離して、僕に向かって消え入りそうな声で語りかけてきた。
 僕はその姿に――ヤンデレヒロインの影を見た。
 健気で、惚れた男のために懸命に尽くす、心を病んだ女性たち。
 そして、主人に奉仕するメイドという職業。
 僕には、その二つがどこか似通った部分があるように思えてきた。

 気づいたら、僕は歩き出していた。
 大きな目から涙を流す金髪のメイドさんの元へ向けて。
 何も考えられなかった。
 ――彼女のその涙を拭いたい。
 それだけしか、考えられなかった。
 
 そして、僕が店内の床に右足をつき、次に左足をついたとき。

 ばぁん! と真後ろから大きな音が聞こえてきた。
 振り返ると、ドアが閉まっていた。
 ノブをひねる。押しても、引いても、開かない。
 
 鍵がかかっていた。
317ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/04(水) 02:15:09 ID:7cbl3E8J
「あぁははは……あぁはははははは……やったぁ……ヤァッタァァァァ!
 これで、これでこれでこれで! あなたはわたしの、わたしはあなたのものよ!」
 笑い声に振り向くと、金髪メイドが大きい目をさらに大きく、目玉が飛び出すのではないか、
と思うほどの大きさにして、僕を見つめていた。
 僕は、呼吸が重くなるのを感じた。
 
「うれしい。とぉっても、すっごく……うれしい。
 ううん。言葉になんてできないし……、言葉にするなんてもったいない。
 この想いは、私の! 私の! 私だけのものよぉ! そして! あなたもぉ!
 ねえ、うれしいでしょ? ねえ。ねえねぇねえねぇねぇーーーーーーーー!」
 金髪メイドが僕の肩を掴んだ。
 そのまま、前後に揺らす。
 だんだんと、その動きが早くなっていくのがわかる。
 そして、僕が気持ち悪くなり、酔いそうになったとき――足払いをかけられ、仰向けに倒された。
 
 金髪メイドは倒れている僕の胸の上に腰を下ろし、馬乗りになった。
 彼女の右手にはコーヒーカップが握られている。

「さあ……召し上がれ」

 そう言うと、彼女はとても美しい金髪の上から、カフェオレをかぶった。
 ばしゃり、と。
 勢い良く。ためらいなく。

 それは彼女の金髪を伝い、幼さの残る顔の額、こめかみ、鼻の横を通り、彼女のメイド服を濡らしていく。
 その顔を拭いもせず、彼女は僕の唇に、自分の唇で――くちづけた。
 
 唾が、まず入った。
 はじめのうちだけカフェオレの味がして、その後は甘くも苦くも辛くもなく、舌に泡の感触だけを与えてきた。
 僕がそれを飲み込まないように必死に喉を引き絞ると、彼女は両手で僕の脇に指を当てて、くすぐった。
 すると、引き絞っていた喉の力がほんの少しだけ緩められて、彼女の口液が喉の繊細な部分にかかった。
 たまらず、僕はむせた。
 一回、二回と咳き込む。僕と彼女の唇の結び目から唾液があふれ出した。
 それでも、金髪のメイドは唇を離さない。
 
 今度は、舌を入れられた。
 小さい舌だった。僕がいつも口内に擦り付けている、自分の舌ではなくて、もっと細くて、
もっと薄い、それでも温かい熱を持った舌だった。
 口内で蠢くそれは、上顎、下顎の順に歯茎をゆっくりと這いずり回る。
 舌の裏に、ざらざらとした感触が生まれた。
 時に細かく、時に素早く動く彼女の舌が僕の顎の筋肉を弱らせていく。
 
「ん……ふふふぅん♪」

 金髪メイドは僕から顔を離すと、唇を結んだまま、鼻でわらった。
318ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/04(水) 02:16:30 ID:7cbl3E8J
 右手をつかまれた。
 そして、馬乗りになっている彼女の左足の下を通り過ぎると、彼女のスカートの中に持っていかれた。
 僕の手の甲と、彼女の掌が重なる。
 そして指の一本ずつに、それぞれの指を添えられた。
 人差し指と、中指が動いて、彼女が身に着けているパンツの上から、秘所を弄らされる。
 僕の指が曲がると、彼女が両足で僕の両脇を締め付け、指が秘所から離れると軽く腰が浮く。
 まるで、僕の指と性行為をしているかのようだった。

 金髪のメイドは腰を動かしながら、空いている右手でブラウスのボタンを外そうとし始めた。
 しかし、腰を動かしていて、さらに焦点の合っていない目では上手く外せないのか、もたついていた。
「……こうしちゃお♪」
 僕の左手を掴むと、またしても指を添えて、ブラウスのボタンとボタンの間に、僕の指を差し込んだ。
 そして、彼女は一気に腕を下ろした。
 ぶちぶち、という音がして、ボタンがちぎれてブラウスとエプロンがはだけ、
勢いよくおろした指の勢いに負けて、ブラジャーまでがずれた。
 彼女の決しておおきくない乳房には、ピンク色の乳首があった。
 白い肌の上にあるそれは、雪の上に落ちた桜の花びらのようだった。
 
 金髪の雌は僕の指を操作し、右の乳首をつまませた。
 その途端、彼女の口から小さな声が漏れて、僕の指にはぷにぷにとした肉の感触があらわれた。
 僕の指を使って乳首を押し込み、つまみ、そのまま上に下に、左右に弄る。
 物足りなくなると、今度は左の乳首をつかって同じことを繰り返す。
 僕の胸の上で暴れる腰はでたらめな動きになっていった。
 前に動くと思ったら、腰で円を描き、左にいくかと思ったら上へと動く。

「あっん! も……ふぅ、あっ! …………あはっ♪」
 金髪のメイドは胸の上から腰を浮かせて、後ろに下がっていく。
 そして、すっかり硬くなっている僕の股間を軽く撫でた。
「…・・・これ、いただくわ……」
 そう言うと、彼女は僕の身に着けているベルトを外し、ジーンズを膝まで下ろした。
 その次は、僕の下着までも、ずらした。
 
 それまで衣服の上に圧迫されていた陰茎が開放される。
 すぐに金髪メイドの小さな手がそれを覆い隠す。そして上下に動かしだした。
 すかさず、自分の口からうめき声が漏れた。
 冷たい手の感触と、乱暴に動き出していく、速度さえもいびつな上下運動。
 陰茎が、どんどん伸びていくような気がした。
 腰の奥に溜まっていたものが引っ張り出されて、限りなく伸びていく。
319ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/04(水) 02:18:56 ID:7cbl3E8J
 ――が、突然その動きが止まった。
 思わず、「なんで」の「な」までを口に出してしまった。突然、竜巻のような快楽から開放されたからだ。
「だ、め、よ。……全部、なかにいれてぇ。中にぜぇんぶ……、だしてもらうから」
 そう言いながら、彼女は右足だけを上げて、ショーツを脱いだ。
 笑いながら腰を動かし、淫裂を陰茎にそって這わせる。
 
 それを幾度か繰り返すと、垂直に立つペニスを秘所で後ろに押し倒しながら、
亀頭を彼女の入り口にぴたりと当てる。
 腰をゆっくりと回しながら、彼女の下の口が陰茎を少しずつ咥えていくのが感じられた。
 途中で、軽く引っかかりを感じたが、金髪のメイドはさらに笑顔を愉悦に歪め、そして――腰を落とした。
 うめき声や、叫び声は出さなかった。
 むしろ、笑い声の大きさがさらに増えた。
 僕と彼女は、そのとき完全に繋がっていた。
 僕にも彼女にも、その場所自体がスカートに隠されていて見えてはいなかったが。

 金髪のメイドは髪を振り乱し、肩を上下させ、腰を乱暴に振りはじめた。
 乱れていく。僕の意識が。
 乱れている。メイドの体も、呼吸も、笑い声も。
 締め付けられると陰茎が爆発しそうに思えるほど膨らむのに、
今度は緩められて快楽を遠くへと追いやっていく。

「あっは、は、はあぁ、あっすき、すきぃ…好きよぉ……おっ!」
 彼女の動きは、止まらない。
 がくがくと顎が上下に揺れて、頭も前後に振られている。
 背中と、肩は入れ代わるように前へ行ったり、後ろへ行ったりあわただしく動く。
 腰はどんな方向にでも動いた。
 上と下、前、後ろ、斜め、横。
 ときには、腰を回す動きをする。そのとき、彼女の上体は腰を中心にして円を描く。
 首をがっくんがっくんと動かしながら、哄笑をあげながら。

 そして、とうとう――僕に限界が訪れた。
 僕は、全力で喉から声を絞り出した。
 足、背中、腹、腰。全てに溜まっているものが陰茎の出口から精液とともに吐き出される。
 その全ては、金髪のメイドの膣内に注がれた。
 
「あたしぃ、あなたの……くひ、ひく、くひひ……こども、うむ……からね……」

 その言葉を聞いて、僕は完全に、自分の立場を理解した。
 僕は――ヤンデレメイドに縛り付けられた。

 別の言い方をすれば、金髪メイドに監禁されたのだ。――――完膚なきまでに。


 終
320ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/04(水) 02:21:32 ID:7cbl3E8J
終わりです。

>>297さん、三スレの小ネタを書いてくれた方。
勝手に使用してすみませんでした。
321名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 03:43:57 ID:lYE8XNXW
イヤッホオオオオオオオオオオオオオオオオオオウ!
GJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJ!
322名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 06:16:07 ID:aCH5DjRu
ツンデレ喫茶:営業。ツンデレはポーズ
ヤンデレ喫茶:マジ。ヤンデレの素質がある子を雇う。
         むしろ店員が気に入った子を拉致るタメの店、か。
323名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 11:55:26 ID:oZdnnlcH
ヤンデレ喫茶KOEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE
324名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 12:23:12 ID:UroiYnml
これはシリーズ化希望ですねww
主人公とヒロインを変更して常に違うお話を作ることも可能だw

巨乳メイドと友人Bが気になるのは俺だけかww
325297:2007/04/04(水) 13:02:17 ID:m1shhhk+
>>320 いやこちらとしても本望だ。ありがとう!

にしても……俺もう軽い気持ちで喫茶店入れねぇ
326名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 13:14:33 ID:5R7paCl3
>>324
やべぇ、俺今9回目なんだが
今週行くべきか行かざるべきか…
327名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 13:36:08 ID:c1Gv0uWs
大丈夫大丈夫。女友達とか女兄弟連れてって牽制させれば大丈夫
328名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 13:38:06 ID:rILAVw8l
>>326
お前に「行かない」という選択肢は無い
329名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 13:48:00 ID:m1shhhk+
>>327 バカ!お前、女友達も女兄弟も解体されてハンバーグの材料になっちゃうだろ!!
330名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 14:54:27 ID:Q5/0i2ba
それ以前に、嫉妬深いキモ姉やキモウト、キモ馴染みだったらそんなところ行かせてもらえないんじゃね?
331名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 15:46:31 ID:DbqBhUSj
>>330
つか、そんなのが居るなら行く必要なくね?
332名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 15:49:23 ID:tFwEAo8O
>>331
頭良いな。おまえ
333名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 16:00:32 ID:oZdnnlcH
嫉妬深いキモ姉やキモウト、キモ馴染み自体この世に存在しなくね?
334名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 16:02:55 ID:n5PIcIn1
その通りだ
335名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 16:11:09 ID:FVMIoh8U
>>333
ブラコンな姉なら存在しているが・・
336名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 16:27:26 ID:aCH5DjRu
しかし、だ。こんな風に都合よくヤンデレ少女をどうやって雇ってるんだ。
条件としては、
・客に惚れるんだから現在彼氏なし。つまり、雇う時点でヤンデレではダメ。
・惚れっぽいが一度惚れたら絶対にその人に一途。
・惚れたら手段を選ばない。
こんな人を雇うべきだ。
そして、好きな人が10回来たら持ち帰っていいと教え込む。

あれ?もしかすると、あえて罠をしかけて10回通うようにしてるんじゃね?
逆に気に食わない男は中々店に来れないようにしてなwww
337名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 16:29:40 ID:4FnIxPkB
あんま深く考えないほうが吉ってばっちゃがいってた
338名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 16:34:46 ID:lYE8XNXW
ヤンデレはヤンデレに引き寄せられるってばっちゃがいってた!
339名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 16:45:46 ID:m1shhhk+
おばあちゃんが言っていた。
世界は自分を中心に回っている、と
340名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 16:46:48 ID:m1shhhk+
さらにこうも言っていた。
その方が楽しい、とな
341名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 17:15:55 ID:m1shhhk+
書き込みミスしたー

ちょっとヤンデレ喫茶行ってミンチにされてくる。
みんな、ごめん
342名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 18:47:09 ID:wlxoz18X
その喫茶店は実は時空の狭間にある「ヤンデレ界」に属しているんだよ
いまだ最愛の人を見つけられずに居る潜在的ヤンデレは自然と引き寄せられるのさ
343名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 19:58:10 ID:PNxzaUaF
ヤンデレ喫茶って10回も通えば・・監禁してくれるのか・・
自分のためにヤンデレ化してくれる女の子は責任とって付き合うぜ!!
というわけでその場所を教えてくれないか?
344名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 20:08:23 ID:aCH5DjRu
>>343
店員に気に入られなきゃ10回目行けずに終わりだからな。

俺なんか10回目行こうとしたら何かしら災害や妨害に見舞われる。
>>336の最後の1行はマジだった。
345名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 20:20:42 ID:UhnyUmAu
ええい、まだるっこしい!
そのヤンデレ界とやらに行ける、銀河鉄道の切符を俺にくれ!

もちろん片道でいいから
346名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 22:34:39 ID:5R7paCl3
ふと思ったんだが、

女、男がメイド喫茶に行っている事を知る

自分以外の女が男にベタベタするのが許せないので、そこでバイトする

店、女の熱意に打たれ男が10回来客したら「お持ち帰り」して良いと言う

女、約束通り男を「お持ち帰り」
想い人のいる友達にこの事を話す

以下、無限ループ
347名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 23:15:41 ID:ORukf7MX
実の黒幕は店長だな……。
おそらく店長はヤンデレの素質を見切る慧眼を持っている。

そして、スマートに明るい未来へと誘導するための、
さりげない言葉の投げ掛け方もマスターしていると見た。

348名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 23:44:48 ID:aCH5DjRu
>>346
そこいらの話も読みたいなぁ。
表向きは普通のメイド喫茶を装い、ヤンデレ少女の恋の手助けをする。
ただ、何度も通う人に都合よく恋する人がいるのか、
逆にヤンデレの恋する相手を都合よく喫茶店の常連にできるのかが難しい。

まあ、最初はダミー用の予め用意された普通のメイドがいるよな。
だが、店長が男だとダミーメイドに計画が知られた途端、逆に自分が狙われて持ち帰られたりしてな。
349名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 23:49:32 ID:5kyVKZ2P
いや、俺ならば仮令女店長でもその可能性は否定しない。
350名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 00:24:28 ID:5lRL2Fmz
>>349
なんのこっちゃ
351名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 00:28:05 ID:5lRL2Fmz
とりあえず、ヤンデレスレにヤンデレ喫茶の情報を書き込み、
【俺】、友人A、友人Bを喫茶店に通わせるようにしかけたのは、
彼らを狙ってた長髪、巨乳、ツインテールのメイドって事でFA?
352 ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/05(木) 01:09:56 ID:NS2FAo27
>>324
それじゃ、おまいらの妄想と俺の妄想を混ぜてまたお話を書くことにするよ。
353名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 01:16:47 ID:jp+SlvaG
>>352
    ∧_∧
    ( ・∀・)ワクワク
  oノ∧つ⊂)
  ( ( ・∀・)ドキドキ
  ∪( ∪ ∪
    と__)__)
354名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 01:18:54 ID:Tfj6q6qw
神降ろしじゃああ
355名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 03:14:08 ID:dhFU8Zum
誰か俺の気持ちに答えてくれーっ!!!!
ヤンデレ喫茶はーっ
356名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 03:27:42 ID:ZSflysQN
なんかアウターゾーンのミザリーみたいな店長を想像したんだが
ヤンデレの素質がある女の子の前にふらりと現れてヤンデレ喫茶に
勧誘するんだ。その一方で男のほうもヤンデレ喫茶に誘導
357名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 09:27:52 ID:YVIfEc41
>>355
王者のエロよっ!
358名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 10:09:36 ID:4xBz1KzQ
勧誘の場合こんな感じか?





「ねぇ、君!
今好きな人いるでしょ!おじさんにはわかる!!伊達に生きてきたわけじゃない。おじさんの目は確かだよ。
あっ!君の恋路の邪魔をする泥棒猫や女狐が彼の近くにいるでしょ?
ほら、おじさんの目に狂いはない。
彼との2人だけの世界が欲しいんでしょ?でしょ?でしょ?
やっぱり!!
おじさんが協力してあげる。
えっ?どうするかって?
簡単、簡単。おじさんの店で働けばいいんだよ。
おじさんが、君の意中の彼が店にくるように仕向けるよ。彼が10回店に来たら、君は解雇だ。そして退職金のかわりとして、彼をお持ち帰り。好きなようにしていいよ。
ん?そんなことが許されるのかって?
ほっといたら、彼は醜い泥棒猫どもに汚されちゃうよ?
君のもののはずなのに、どんどん遠くに行っちゃうよ。
ね、いやでしょ?
そうそう、もちろん給料も出るよ。
働く気になったって?もちろん大歓迎さ!!
これからよろしくね!!
どうしてそこまでしてくれるのか?
おじさんはこんななりだけど恋のキューピッドだからさ!!」




店長が病んでるように思えてきたぜ。
359名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 10:17:41 ID:Qm98JzkY
>>358
    ,,,,,,,,,,,,,,,
   ノ。;:,,:;,.:。;ヽ
  /;,.';:. /, ’ .,;,;ヽ
  (:;,.(:.;_.,;:_,;:);,..,/
   ヾ,.;,:.;`:,:..,;:,,/
店長予想図
360名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 10:19:18 ID:Lq4YSlFq
>>358
それなら店長を女性にするとか(もちヤンデレ)
361名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 10:49:47 ID:5lRL2Fmz
>>360
いや、>>348のような展開なら男性でもあり。
362名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 10:52:57 ID:HsryTF/w
466 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 01:24:50 ID:7pxgBqcn

「お姉ちゃん・・巴君に言っておきたいことがあるんです」
「何だよ」
「どうして、巴君はお姉ちゃんの部屋に夜這いを仕掛けて来ないの?
 全国の弟の皆様は問答無用にお姉ちゃんを襲うために布団に入り込むのに」

「いい歳して姉の寝床に入り込む人間はいないだろうが」
「そんなのダメですぅ!! 巴君は若い性欲を受け止めるのは世界でただ一人だけなのよ
 他の女の子に痴漢やレイプすれば、亡くなったもとい、弟と夢の二人暮らしのために
 謀殺したお父さんとお母さんに顔向けすることができないわ」

「いや、ちょっと待て。数秒待て・・。今、とんでもないことを言わなかったのか」
「そ、そ、そんなお姉ちゃんのことを性欲に飢えた狼の瞳で見つめないで
 恥ずかしすぎるぅぅぅよぉぉぉおぉぉ!!」
「華麗にスルーしやがった・・このクソ姉」
「巴君・・乱暴な言葉遣いしないの・・。さあ、お姉ちゃんがベットの中で
 大人の保健授業を教えてあげるから♪」
「うん。全力でお断り致します」
「そ、そ、そ、そ、そんな。実の姉、義理の姉、血の繋がらない姉に欲情しない
 弟は不潔よ。不潔よぉぉ!! 巴君はそんな悪い子じゃないよね?」
「残念ながら・・最近、嫉妬スレやヤンデレスレを見て悟ったことがあるんだ」
「何かな?」
「キモ姉というのは弟の事を考えずに激しい独占欲と嫉妬心で檻に閉じ込めるのがスタンダードらしい。
 これはあるある捏造なんてレベルを遥かに超えている都市伝説なんだけど・・
 
 姉は違うよな?」

「・・・・檻に閉じ込めるなんて・・そんなことは全国にいるお姉ちゃんなら誰だってやっていることじゃない!!」

「((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル」

「愛しい弟に近付く泥棒猫から守るためには家から一歩に出さないわ。プライベートも巴君の自由な時間すらも
 お姉ちゃん権限で全て管理してあげるよぉ・・。ずっと、お姉ちゃんは巴君の傍から離れないわ」

「ま、ま、まさか。キモ姉は実在していたのか・・」
「うふふふ・・巴君巴君巴君・・お姉ちゃんだけの巴君・・」

「ちょっと待ってよ・・本気で俺を檻に閉じ込めるのか?」
「お姉ちゃんの布団で肌と肌を重ね合うように抱きしめてくれるなら
 檻に閉じ込める件については保留してもいいですよ」
「保留かよ!!」
「嫌なら今すぐにこの時のために作った地下牢の中に閉じ込める」
「ううん・・俺も今すぐにお姉ちゃんと一緒に寝たかったんだよ」
「やったぁーーー!! じゃあ、お布団の中に入ろうね」

 結局、キモ姉を持っている弟は絶対に逆らうことができないだろうと
 俺は姉の暖かなゆりかごに包まれながら、意識は遠くなって行った


 キモ姉SSをちらりと書いてみた
 今は猛烈に反省している


 ヤンデレスレ向けのネタがあったから転載してきた
 キモ姉サイコーーーー!!
363名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 11:29:52 ID:IJ3OTuT5
修羅場に出てたやつか…
364名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 12:16:37 ID:9vR8WUur
>>358
全身痙攣!
365名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 12:18:16 ID:YVIfEc41
>>364
見よ!
366名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 12:46:43 ID:wcmF69gv
>>362
何このキモ姉・・・テラモエス

>>364
監禁室は血で染まっている!
367>>364と>>365の間に…:2007/04/05(木) 13:58:17 ID:9vR8WUur
電波狂乱!
368名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 21:59:39 ID:LecRitZn
社会人になっちゃってからこのスレを離れていたが…
やっぱ無理やーーー!!ヤンデレがない生活なんて考えられない!!
369名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 22:00:42 ID:LecRitZn
間違ってageちゃった。やっぱ疲れてるみたいだ…
370名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 22:11:33 ID:x4RNbPa8
 最近とある喫茶店でバイトしていたのだが、9日働いたらクビになってしまった。

 そしたら先程そのバイト先から、また来てくれと連絡があった。

 次であの喫茶店に行くのは10回目。


 まさかな……………。

371名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 22:44:10 ID:4xBz1KzQ
>>370 お前はすでに死んでいる
372名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 22:53:43 ID:bTlG1StJ
南斗水鳥拳
373名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 22:57:57 ID:x4RNbPa8
>>372
効かねえよ。
肌に粗塩を擦り込んであるからな。

古代のベアナックルの選手は、そうやって切れにくい肌を作ったものさ。


バイト行って来まーす!
374名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 23:18:03 ID:r9nm0KRu
一週間後―そこには元気に監禁される>>373の姿が


「まさか、あの人が私のものになってくれるなんて思っていませんでした。
 店長にはとても感謝しています。」
375名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 23:29:24 ID:4xBz1KzQ
373に敬礼!!
376名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 23:44:42 ID:5lRL2Fmz
待て、男のバイトは何で雇うんだ。
377名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 00:03:10 ID:yZP5QFvh
監禁するために決まってるじゃないか
378名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 00:19:02 ID:qT8bVEa2
>>373はきっと扉を開けたのだよ。
379名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 00:44:28 ID:wP2+pi59
>>376
「店長さん、実は秘密にしてたことがあるの。」
「どうしたの?〇〇ちゃん。怒らないから言ってごらん。」
「実は私の好きな人はお客さんじゃなくて同僚だった人なの。
その人の名前は―」
>>373さんだね?しかも一目惚れ。」
「?!」
「なんで知ってるの、って顔してるね。おじさんを見くびってもらっちゃあ困るなぁ。
言ったでしょ?
君の意中の彼が店にくるように仕向ける、って。
なにも客としてだけなんて言ってないよ。」
「じゃあ、なんで彼をクビにしたんですか!!
もう会えないかもしれないじゃないですか!!!」
「落ち着いて。彼にもう一度店で働かないかって電話したから。
一度クビにしたのは彼に君との世界以外のものとお別れさせるため。
たぶん、もうすぐ来るさ。
あっ、ちょうど10回目になるからあなた達2人は寿退職だ!
おめでとう!!
幸せになるんだよ。おじさん、応援してるよ。」




きっとこういうことがあったのさ
380ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/06(金) 00:50:29 ID:oKsZ0FHK
そんな店長もありだったかな、と思いつつ、少しだけ投下。
381ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/06(金) 00:51:33 ID:oKsZ0FHK
 俺は、メイド喫茶の店長というものをやっている。

 店長という肩書きが引っ付いているが、実際店を回しているのは副店長で、
俺は椅子に座っているだけで、何も(と言っちゃなんだが)していないようなものだ。

 俺がやっていることは、モニタを見ることと、スイッチを押すことと、メールを見ることだけ。
 ひとつずつ説明していこう。

 まずはモニタについて説明する。

 モニタには、喫茶店の、内外の様子が映っている。
 つまり、仕掛けてある監視カメラの映像を見ているのだ。
 事務所の中に置いてあるモニタの数は6つ。
 
 喫茶店の入り口から路地を見渡すように一つ。
 店内に四つ置いてあるテーブルをそれぞれ監視するために、四つ。
 カウンター内にいる店員の頭上からカウンター席を望むように、一つ。
 いずれも、客が不審な行動をしていないかを監視するために設置されている。
 
 たとえば――入り口に一番近い位置にあるテーブルに座っている若い男。
 文庫本などを読みながら、注文の品が届くのを待っている。
 たった今、本を畳んでしおりを挟み、それをテーブルの上に置いた。
 大きく伸びをして、あくびをしている。
 誰にも見られていないと思っているのだろう。
 天井に顔を向けながら、顎が外れんばかりに口を開けている。
 しかし、監視カメラを見ている俺からは、男の口内がよくわかる。

 店員のメイドの一人が、トレイの上にカップを乗せて男のいるテーブルにやってきた。
 男はあくびをやめて、腕をテーブルの上に置いた。
 テーブルの上に置かれたカップを左手で持ち、唇をつけた。
 そして、ソーサーの上にカップをもどすと、また文庫本を手にとり読み始めた。
 店員はそのテーブルに背を向けて、立ち去った。

 男は文庫本片手に、カップの中にある液体をちびちびと飲んでいる。
 どうやら、まだこの男は10回目に達していないらしい。
 普段ならこの時点で眠気を催して、テーブルに突っ伏しているからだ。
 もしくは、店員がテーブルに近づいた時点でカップの中身を男にぶちまける。
 その後で、その男は店の奥に連れて行かれるはず――おや?
382名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 00:51:43 ID:yLs1zJQn
ツンデレ喫茶が完全予約制のように、
ヤンデレ喫茶は選ばれた男性しか来られないんだろうな。
何も知らない人がやってきた場合、どうしていいかわからんもん。
383ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/06(金) 00:52:33 ID:oKsZ0FHK
 先ほどまでカウンター席に座っていたスーツ姿の男が立ち上がって、
店員に向かって何かを言っている。
 彼の前にいる店員は、ぺこぺこと何度も頭を下げている。
 監視カメラに併せて集音・録音用のマイクを設置したりはしていないのでよくわからないが、
男がジャケットを脱いでそれに顔を近づける様から考えるに、店員が粗相をしてしまったようだ。

 普通の店ならこの場で店長なりが登場するのだが、生憎俺はそんな面倒なことはしない。
 カウンターの前にいる男は店員に何か怒鳴っている。
 彼に向かって、店員が申し訳なさそうに頭を下げる。

 店員のメイドが何かを喋ってから、男の手をとった。
 店員は男を奥へ引っ張っていこうとするが、男はその手を振り払った。
 カウンターに背を向けて、男は喫茶店の入り口へ向かって歩いていく。
 
 ――どうやら、出番が来たようだ。
 数少ない俺の仕事の一つ。
 事務所の机の上を占領しているスイッチ類の操作。
 数にして、およそ……50ぐらいだろうか。
 ときどき無造作に増えているのでよく覚えていない。
 
 ともあれ、今回のような『10回お店に来たお客様へのサービス』を拒む、
入り口へ向かって今も歩き続けている男に対しては、『car-2』スイッチを使う。
 スイッチを押す。すると、カチッ、とあっけない音がした。
 
 店先を映し出している監視用モニタを見る。
 路地に停めてあるミニバンタイプの乗用車が動き出した。
 乗用車には、もちろん人が乗っている。
 運転ばかりは、ここにあるスイッチでは役不足というものだ。
 今のスイッチは、ただミニバンの運転手に合図を送るためだけのものだ。

 店の入り口と壁に張り付くように、ミニバンが停車する。
 それを確認したあと、店内の様子を監視カメラで観察すると、
スーツのジャケットを腕にかけた男が入り口のドアを開けようとしていた。
 喫茶店のドアは外開きになっているので、今のように外に車が停車していたら、もちろん開かない。

 男は扉に向かって怒鳴ったあと、先ほど粗相をしたメイドの元へと向かう。
 彼がジャケットを店員に手渡すと、店員が笑顔を浮かべたのが、俺からも良く見えた。
 店員のメイドが男の腕を掴むと、男はたたらを踏みながらそのままメイドの腕に引っ張られて、
カウンター横のドアをくぐっていった。
 
 ――さて、仕上げだ。
 
 手元の、『K-01』スイッチを人差し指で軽く押す。
 しかし、特に何が起こるわけでもなく、店内はいつもの静けさを保っていて、
店員のメイド達も普段の業務へとすでに戻っている。
 では、このスイッチがなんなのか、というと。

 ――かいつまんで言えば、お客様へ向けた、当店のサービスです。
384ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/06(金) 00:53:48 ID:oKsZ0FHK
 最後に、メールについて。これが一番簡単な仕事だ。
 事務所においてあるPCに届くメールを見て、プリントアウトすることだけ。
 送り主は女の子ばかりだ。では、ついさっき届いたばかりのメールの内容を紹介するとしよう。

-----------------------------------------------

タイトル:
 お店で働かせてください
本文:
 先日、A町の街頭でお会いした者です。
 名前は、T村K子です。年齢は19歳。大学生です。
 私と彼の近況を明記してください、とのことでしたので、以下に記します。

 私と彼は大学の同じサークルに所属しています。
 講堂でも、お互い隣同士の席になることがよくあります。
 いつも、彼のほうから私の隣に座ってくるんです。
 彼は、私のことが好きなんです。そうに決まっています。
 でも、一つ問題があります。
 
 彼の姉と名乗る人物が、私たちの仲を壊そうとしてくるんです。
 この間、私は彼のためにお弁当を作りました。
 腕によりをかけて、愛情をいっぱい、いっぱい込めました。
 お弁当を持って、昼食の時間に彼を探し出しました。
 そのとき、彼の隣には女が座っていました。
 私はあふれ出す怒りを押さえ込み、彼らの隣に偶然を装って近づきました。
 
 彼の隣に座っていた女、彼の姉の目といったら、もう、憎くてたまりません。
 『なによあんた』『私の弟に近づかないで』
 『あんたみたいな他所の女に弟は渡さないわ』という、独占欲が丸出しになっていたのです。
 
 私は彼に弁当を渡すことなく、その場を立ち去りました。
 大学から家に帰って、私は泣きました。
 せっかく作ったお弁当を彼に食べてもらえなかった。
 あの時、無理矢理にでも押し付けていけばよかった、と後悔しました。

 何時間も泣き続けて、泣きつかれて眠って、起きたときに私は決断しました。
 彼を、絶対に私のものにする、と。
 そのためには、彼をあの女の手の届かない場所に連れて行くことが一番だと考えました。
 あなたの言うとおりに、誰も知らない場所に監禁してしまえば、
 あの女もきっと彼を諦めるに違いありません。
 
 お願いです。私をあなたのお店で働かせてください。
 どうしても、私は彼が欲しいのです。
 彼も、私に監禁されることを望んでいるに決まっています。
 
 最後に、彼の名前と年齢を記します。
 O谷Tくん。19歳です。
 他にも必要な情報がありましたら、連絡をいただければお教えします。

----------------------------------------------- 
385ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/06(金) 00:54:56 ID:oKsZ0FHK
 事務所にあるPCに届くメールは、どれもこんな内容ばかりだ。
 決まって、メールを送ってくる相手は年頃の女の子だ。
 そして、男を手に入れるためにここで働きたい、ということが必ず書いてある。
 ちなみにメールに書かれている『あなた』というのは、俺のことではない。

 『オーナー』のことだ。
 『オーナー』が、どんな人物なのかとか、何歳なのかとか、俺は何一つ知らない。
 ただ、副店長の父親だということだけがわかっている。

 副店長は、18歳の女の子だ。
 身長は、160cmぐらい。
 スリーサイズは、俺の目測では93・60・89。カップはF。
 体重は、怖くて聞いていない。
 ただ、いつも俺の体に乗ってくるときにそれほどの重さを感じないから、
体型に合わせたぐらいのものだと思う。
 髪型はおかっぱで、メイド服と組み合わせるとかなりいい感じになる。
 彼女がいつも浮かべている微笑からは、幻想的というか、非現実的な印象を受ける。
 とはいえ、顔立ちがいいからいつもその笑顔を見ているだけで俺は癒されてしまう。

 副店長――春香は、俺の恋人でもある。
 俺たちの関係は、このメイド喫茶に俺がお客としてやってきたことから始まった。
 そのころから、春香は喫茶店でメイド服を着ていた。
 当時はまだ、副店長ではなかった。俺が店長になってから彼女も副店長になったからだ。
 
 一目見た時から、俺は春香に惚れてしまった。
 さきに挙げたように、周りにいるメイド達と比較しても際立つ魅力を放っていたからだ。
 あの頃の俺はまだ女を口説くことに慣れていなかったから、声をかけることができなかった。
 だから、春香に会うために俺は何度もこのメイド喫茶に足を運んだ。

 椅子に座ってコーヒーを注文して、しばらく待っていると春香がトレイにカップを乗せてやってくる。
 彼女が優雅な仕草でテーブルの上にカップを置く。
 ナプキンを敷いて、ミルクと、砂糖と、銀製のスプーンをその上に置く。
 春香は「ごゆっくりおくつろぎくださいませ」と言って頭を下げる。
 きびすを返し、コツコツ、と小さな音を立てながら、俺のいるテーブルの前から居なくなる。

 その一連の動作と、彼女の微笑を見ているだけで、俺の胸は締め付けられた。
 ――春香が欲しい。
 ――俺のものにしたい。
 ――彼女を、抱きたい。
 メイド喫茶にあししげく通っていたころの俺は、いつもそう考えていて、
その考えがそのまま目に宿っていたのではないか、と今では思う。
 普通に考えれば、通報ものだ。

 ともあれ、10回メイド喫茶に通うことになったあの日。
 ――願いが、現実になった。
386ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/06(金) 00:57:05 ID:oKsZ0FHK
連投規制にかかりそうなので、一旦切ります・・・・・・
ただいま、エロシーンを書き続けております・・・・・・
一時間〜二時間はかかります・・・・・・
387名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 01:22:46 ID:M1TXGoEp
>>386GJ!
388名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 01:44:55 ID:yLs1zJQn
>>386
割り込んですんませんでした〜。
寝てる間に完成しそうなのでゆっくり待ちまーす。
389ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/06(金) 02:42:13 ID:oKsZ0FHK
投下します。レイプ注意。





 大学からの帰り。
 人でごったがえしている都内の大通りを俺は歩いている。
 大通りに面する場所には、色々な、多種多様な店舗が軒を連ねている。
 大手百貨店、大型電気店、数十階建てのビルに、古今東西の料理店。
 通行の邪魔になるような小型の立て看板を手でどけて、人の波を避ける。
 
 ――めんどくせえ。

 しかし、それでも俺の足は浮き足立っていた。
 まるで天にも昇ろうかという気分ですらあった。
 それは何故かというと、春香のいるメイド喫茶へと向かっているからだ。
 今から春香の癒しの笑みを拝むことができるかと思うと、人の波もなんのその、というやつだ。

 ホームセンターとコンビニの間に置いてある立て看板をどけて、通り抜けてからまた元に戻す。
 人が一人余裕を持って通れるぐらいの幅の路地に入ると、
俺はいても立っても居られなくなり、駆け出した。
 
 ――この先に、春香がいる。

 それだけしか、今の俺の頭の中にはない。
 それ以外は考えない。走りながら、勢いをつけすぎて軽く前のめりになる。
 倒れそうになったところで、体を軽く前に倒して足を強く踏み込む。――倒れずに済んだ。
 ボロボロの服で春香に会うなど、俺にはできない。
 そうなったら今日は春香と顔を合わせることもできない。
 こけるわけにはいかないのだ。

 その後はスローペースで路地を走って、メイド喫茶の前に到着した。
 緊張で震える手で、喫茶店のドアの取っ手を掴み、静かにドアを引く。

 喫茶店の店内が、良く見えた。
 木製のフローリングになっている床。
 右手にふたつ、左手にふたつ、向かい合わずに交互に並ぶテーブル。
 グラスやカップや大小の皿が納められた食器棚が奥に置いてある、カウンター。

 そして、入り口のすぐ近く。
 俺の立つ場所から見ると、右斜め前の位置。

「おかえりなさいませ。ご主人様」

 メイド服を着て、ほほえみを浮かべる春香がいた。
390ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/06(金) 02:43:01 ID:oKsZ0FHK
「お席に、ご案内させていただきます」

 春香が優雅に頭を下げる。俺は首を軽く前に倒した後で、店内に足を踏み入れた。
 春香は音を立てるなと命じられたかのように、小さな靴の音を立てて、前を歩いている。

 思わず、その後ろ姿に息を呑んだ。
 そのまま近づいて、彼女の細い体を抱きしめたくなったが、自分を叱り付けてそのまま歩く。

「こちらのお席にどうぞ」

 春香がカウンター前の椅子を引き、座るよう促した。
 無言でその椅子に座る。音を立てないように。クッションをゆっくりと潰すように。
 
「何にいたしましょう。ご主人様」

 ――君を。
 などとは言えるはずもなく、「コーヒーをください」とだけ告げる。

「かしこまりました。それでは、少々お待ちくださいませ」

 そう言って、春香は手を前に合わせて、カチューシャを見せるように礼をした。
 後ろを振り返り、春香はカウンターの中へと入っていった。
 
 店内をカウンター席から見回す。
 どのテーブルにも客はいないし、他のメイドさんもいなかった。
 時刻はまだ四時を少し過ぎたばかりだというのに、めずらしいこともあるものだ。
 
「〜〜♪」

 カウンターの向こうから、春香の鼻歌が聞こえる。
 コーヒーを淹れながら、彼女は目を細めた、優しい笑顔でそこにいた。
 彼女が嬉しそうにしていると、俺の心の中にも花が咲く。
 
 そのまま、春香のハミングを目を閉じたまま聞いていると、しばらくして歌が止まった。
 春香が、コーヒーカップをトレイに乗せて、カウンターから出てきたのだ。

「ご主人様。コーヒーをお持ちいたしました」

 メイド服を着た春香が、左掌の上にトレイを乗せて俺がいる席の前へとやってきた。
 コーヒーカップが乗せられたソーサーの縁を右手で持って、カウンターの上に置いた。
 同じくカウンターに置かれたミルクと砂糖を入れようと手を伸ばすと、白い手が横から伸びてきた。
391ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/06(金) 02:43:44 ID:oKsZ0FHK

「今日はご主人様が来られてから10日目になりますので、私めにやらせてくださいませ」

 そう言うと、彼女は砂糖を入れて、次いでミルクを入れた。円を描くように。
 コーヒーと乳白色の液体をスプーンで混ぜたあと、カップを差し出された。

「どうぞ。お召し上がりください」

 右手の人差し指をカップの取っ手に回し、コーヒーを飲む。
 いつもより、美味い。
 なぜだろうか。――いや、愚問だな。

 春香が淹れたコーヒーに、春香が入れた砂糖とミルクが合わさっているのだ。
 俺の味覚は、これ以上美味いものは存在しない、と断言している。

 そのコーヒーを味わって飲んでいるうちに、いつのまにかカップの中身が空になった。
 残念に思いながら、カップをゆっくりとソーサーの上に置いた。
 すると。

「ご主人様。もう一杯、いかがですか?」

 春香がポットを持って、俺におかわりをすすめてきた。
 せっかくの誘いを断るわけがない。
 俺は「いただきます」と言って、コーヒーを淹れてくれるよう頼んだ。
 ポットから、黒と琥珀の中間の色をした液体がカップに注がれる。

 春香がコーヒーを注ぎ終わったあと。
 なんのはずみかはわからないが、彼女の手が滑ってポットが俺の膝の上に落ちてきた。
 膝の上で一旦止まり、ポットが床に落ちる。

 ――ガシャン

 という音を立てて、ポットが割れた。

「も、申し訳ありません!」

 と言って、春香が床に膝をつき、布巾を持って俺の膝を拭き始めた。
 彼女は泣きそうな目をして、俺のジーンズを布巾で擦っている。
 そして、彼女の手が右膝から左膝に移ったとき。 

 ――ドクン

 心臓の音が俺の耳に届いた。
392ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/06(金) 02:44:54 ID:oKsZ0FHK

 春香はしゃがんで、俺の――股間の前にいる。
 彼女の目は潤んでいた。
 今にも泣き出しそうな顔をしていた。
 その顔を見ているうちに、俺は、自分の喉が締め付けられるのを感じた。
 
 普段より、目が大きく開いた。
 目は、初めのうちこそ春香の顔を見ていたが、いつのまにか視線が下へと向かっていった。
 その先には、メイド服のエプロンを押し上げている、春香の胸がある。
 俺の手はポットが落ちたときの驚きで肩の辺りに上がっていたが、
その手が、肘が、腕が、うずうずとしていた。

 手が震えている。
 寒いわけでも、武者震いをしているわけでもなく、勝手に動いている。
 俺の意識は「動くな」とだけしか言わないが、頭の奥の深い部分が言っていた。
 
 ――――春香を犯せ。

 ジーンズに押さえつけられている肉棒が脈を打った。
 睾丸の辺りから骨盤を通り、へその下の部分に得体の知れないものがたまり始めた。
 
 ――これは、肉欲だ。
 
「ご主人様? どうなさいましたか?」

 春香の声が、下から聞こえた。
 それは俺の耳だけに聞こえるはずだったが、股間にまでその声が響いてきた。
 怪訝な顔をして、春香が俺の顔を上目遣いで見つめてきた。
 
 奥歯を強くかみ締める。
 鼻から大きく息を吸う。
 唇を固く、離れないように強く押し付ける。
 それで、なんとか体の感覚を春香に向けないようにすることができた。
 が。

「ご主人様……?」

 春香の白い顔が俺のすぐ目の前にやってきて、

 俺は――顔の力を抜いた。
393ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/06(金) 02:45:48 ID:oKsZ0FHK

 両手で春香の顔を鷲づかみにする。
 柔らかい髪が俺の指の先をとおりすぎ、指の間に埋まった。
 春香は口を薄く開けて、俺をまっすぐに見据えている。
 彼女の唇が薄いピンク色をしていることを理解したあと、そのあとは何も考えずにキスをした。

 策も、技も、加減もなかった。
 ただ、彼女の唇に自分の唇を合わせて、舌を突き出した。
 彼女の舌を求めて、俺の舌は動き出す。
 春香の舌の先端を、舌の裏を、舌のくぼみを舐める。
 舌の先端に、意識は全て集中していた。
 春香の舌は、俺の舌のなすがままにされていた。
 従順に、荒い波に揉まれつづけるようにたたずんでいた。

 唇を離す。
 春香は呆然として俺の目を見つめている。
 けれども、その目に嫌気が混じっていないことを悟った俺は、再度くちづけた。
 今度は、唇を当てて、舌で舐めるだけではなく、頭までが動いた。
 首の力を使って、唇を強く押し付け、舌を深く突き出す。
 俺が首を左右に振りながらキスをしていると、春香の首までもが応えるように動き出した。

「ん、ふぅ……はぁ、ん……」
 お互いが首を曲げるたびに唇の結び目から声が漏れる。
 しかし、俺も、春香も唇をくっつけたまま、離そうとはしない。
 この熱を、放したくなかった。

 春香の脇に、左右それぞれの手を差し込み、彼女を立ち上がらせる。
 まだ、お互いの唇は離れていない。
 手を春香の背中に回し、抱きしめる。
 柔らかい。
 まるで、ぬいぐるみかなにかのように、ふわふわしている。
 春香の頭に手を当てて、さらに強く唇を押し付ける。
 もう――止まることはできない。

 その体勢のまま、春香の体を抱えるようにして前進する。
 喫茶店に置いてあるテーブルに、春香の体がたどりついた。
 そのまま、春香をテーブルに押し倒す。
394ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/06(金) 02:47:36 ID:oKsZ0FHK

 一旦唇を離す。
 俺と、春香の唇が結びついていた証のように、透明な細い糸が伸びる。
 春香を見る。
 顔が紅い。
 目は潤んで、目じりは垂れ下がっている。
 俺が見ていることに気づいたように、口の端を少しだけ上げて笑った。
 その笑顔はいつも俺の心を癒すものだった。
 が、今ではその笑顔すらも蹂躙することができる。
 ――その一手が俺には与えられている。
 
 首を下に曲げて、春香の胸を見る。
 呼吸に合わせて、上下に動いている。
 二つのふくらみが、メイド服の胸元を押し上げて、その存在を主張している。
 膨らみの頂点に向けて伸びるしわを見ているうちに、俺はそれに手を伸ばしていた。
 両手でエプロンの上から乳房を揉む。
 柔らかな、布の感覚が両手にある。
 だが、――物足りない。

 左手を春香の背中に回し、エプロンの結び目を探る。
 丁度、腰のうしろに布の塊があった。
 力任せに引っ張る。すると、結び目がよりいっそう大きくなり、解けなくなった。
 何度やっても解けない。
 ――ならば。
 エプロンがずれないようにするための、肩の布を引きちぎった。

 エプロンをひっぺがすと、今度はブラウスが現れた。
 左右の布を結び付けているのは、小さくて、黒いボタンだった。
 両手の指をボタンの間につっこむ。
 勢いよく腕を、外に向けて開く。

「あっ……」

 ピンクのブラジャーがそこにはあった。
 小さなフリルのようなものが、アクセントとして飾り付けられていた。
 その形と色は俺をさらに興奮させた。
 背中に手を回し、手探りでホックを取り外す。
 背中から、ゆっくりと体に這わすように、手で下着と肌を引き剥がして、体の前に持っていく。
 正面に手がやってきた時点で、そのまま手で布を押し上げる。

 そこには、春香の乳房があった。
 下着をつけていなくとも、それは形を崩すことなく、そこにあった。
 右の乳房の頂に、くちづける。
 唇の先で甘噛みすると、それは柔らかい感触を残したまま、潰れていく。
 一度唇を離す。
 今度は舌を唇から突き出し、ぺろり、と舐める。
 すると、春香の口から喘ぎ声が漏れた。
 舌を動かすたびに、その声はさらに甘さを増していく。
395ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/06(金) 02:48:28 ID:oKsZ0FHK
 ロングスカートを手で掴む。
 それは何度か手を往復させていないと完全に捲くれないものであったが、
何度か、繰り返していく内にスカートの縁が俺の手の中におさまった。
 春香の白い太腿に、口をつける。
 舌で押しやると、柔らかく押し返す。そんな感触だった。

 ショーツの上から秘所に手を当てると、そこはすでに愛液が溢れていて、ぐっしょりと濡れていた。
 親指をそこに当てて、軽く押す。
「…っん、くぅ…はあっ……」
 それだけで、春香の両足に力がこもった。
 続けて、強く押したり、上下に押しやる。
 そのたびに春香の白い足は力を込めて動き出す。
 
 腰に手を当てて、ショーツの端を指で引っ掛けて、膝を通り、足首から脱がせる。
 俺の目の前には、彼女の膣口があった。
 そこからはすでに彼女の愛液が滴り落ちていて、スカートにしみを作っていた。
 舌をその割れ目に這わせて、舐め上げる。
「る、ぁ、めぁぁ……ごしゅ、じ…ん……ぁ…」
 幾度となくそれを繰り返すうち、彼女の陰裂はふるえてきた。
 春香の足も、ふるふると動いていた。

 両手で、彼女の腰に手を回す。
 テーブルの上から、彼女の腰だけをはみ出させるようにする。
 俺は、下半身を覆う全ての衣服を脱ぎ捨てて、それから、彼女の体と向かい合う。
 目の前には、春香のあられもない姿があった。
 口からはよだれを垂らし、胸元を隠す衣服は破かれ、白い乳房がむき出しになっている。
 そして、俺の腰の前に、春香の陰裂がある。

 へその下から彼女の体にぴたりと体を合わせて、少しずつ腰を近づける。
 亀頭を春香の入り口に当てて、そして、一気に腰を突き出す。
 
 春香の口から、叫び声が飛び出した。
 その声が、まるで誘っているような響きに聞こえてくるほど、俺はおかしくなっていた。
 腰を突き出して、肉棒を深く突き刺し、一気に引き抜く。
「ご、ぉっ、し……いん…ああ! …さ……ふぁっ!」
 突き出すと春香は歓喜の声を上げる。
 引き抜くと、切ない声を上げる。
 ――たまらない。
 止まることなど、熱に浮かされた体では考えもつかなかった。
 じゅ、じゅ、という音が聞こえてきた気がする。
 だが、俺には春香の喘ぎ声しか聞こえない。
 
 そして、大きく、理性の壁を破壊する流れが股間に集中して――俺は果てた。
396ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/06(金) 02:53:47 ID:oKsZ0FHK

 そのあとは、よく覚えていない。
 欲望が爆発して、そのときの記憶を頭と体から、おしやった。
 
 
 その後で、体を包む倦怠感とともに目を覚ましたとき――俺は、椅子に縛り付けられていた。




 俺の足首とパイプ椅子は、手錠でつながれている。
 そのため、腰を浮かすことはできても歩くことはできない。
 初めて自分の置かれている現状を見て、俺は「監禁されている」と理解した。
 
 だが、特に不満なことはない。
 用を足すときや、風呂に入るとき、服を着るときには、春香ガ手錠を解いてくれるからだ。
 できれば食事も自分の手で食べさせて欲しいものだが、嬉しそうな春香の顔を見ていると、
何も言うことができなくなって、俺は春香のなすがままになってしまう。

 そして、今もそう。

 たったいま事務所にやってきた春香が、俺の前で両手を合わせながら、語りかけてくる。

「ご主人様。ごきげんいかがでございますか?
 今日も、お二方が結ばれましたよ。
 男性に手錠をかけて、ベッドに押し倒し、目隠しをしたときのあの女性の表情は、
 本当に幸せそうで……私も、思わずご主人様に同じことをしたくなってしまいましたわ。
 そうそう。また明日も一名、この喫茶店で働きたいという方がやってくるそうです。
 きっと、彼女たちも結ばれますわよ……私達のように。
 うふふふふ……本当に、本当に、なんと楽しいことなのでしょう。
 お父様のおちからが冴えている、ということですわ。
 このままゆけば、きっと……私達はさらに素晴らしい存在になれますわ。」

『――――うふふふふ』

 女性の笑い声が聞こえてきた。
 その声は、俺がこの椅子に座ってから、何度も聞いてきたもの。
 そして、俺はこの声を聞くために、ここに座っている。

 そして、これからも座り続けるだろう。この喫茶店がここにある限り。

 終

-------
こんな感じです。
店長に期待した人。ごめんなさい。
397名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 03:41:45 ID:1Q9taPxk
一番槍GET!GJ!店長は副店長の傀儡か
398名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 03:43:41 ID:uCtXdUKl
二番槍GET!GJです。地味に店長も病んでる
399名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 06:05:16 ID:yLs1zJQn
まさか誘い受けとは・・・。GJ!
400名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 06:27:29 ID:Lj9glFke
まさか薬を盛られてたとかは無いよな・・・・
401ヤンデレ喫茶訂正 ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/06(金) 07:38:39 ID:oKsZ0FHK
>>396
>用を足すときや、風呂に入るとき、服を着るときには、春香ガ手錠を解いてくれるからだ。
 用を足すときや、風呂に入るとき、服を着るときには、春香が錠を解いてくれるからだ。

でした。申し訳ないです。
402名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 09:29:41 ID:91sWNAal
>>400
違うのか?
てっきり薬盛られたから襲ったんだと思ってた
403名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 10:10:39 ID:dzuS8Sa8
結ばれたというよりは監禁された表現が正しいのではww
404名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 10:35:50 ID:wP2+pi59
>>403 それは「愛」だから結ばれるで正しいのさ
405名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 12:34:31 ID:1Yx8SgSg
GJです
個人的には薬(媚薬?)盛られたと思ってる。それっぽい描写もあるし
まあ、その方が嬉しいって事もあるがw
406名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 12:37:10 ID:Lj9glFke
>>402
いや、わざわざ書くって事でその意図を察してくれると嬉しかった
407名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 15:37:54 ID:xv/RXmbz
ようするに襲った理由は・・コーヒーの中に薬が入っていたからかな?
408名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 21:31:13 ID:FkjBvFGN
ふと妄想した。
409名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 21:36:27 ID:FkjBvFGN
すまん、途中で送ってしまった。

意中の彼を監禁するために、ヤンデレ喫茶に勤めたはいいが、そこのメイドに気に入られて逆に監禁される…。


というの妄想をしたんだ。

410名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 21:46:15 ID:yLs1zJQn
百合スレに行け
411名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 22:21:34 ID:wP2+pi59
>>410
意中の彼→彼女
に変換すれば問題なし
412名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 22:26:10 ID:23dpMhH8
主人公に協力すると見せかけて、実は…というやつか
結構いいかも
413名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 22:54:08 ID:Jkl2MzdC
メイド喫茶を執事喫茶にすればいけるんじゃね?



ただの監禁レイプになりそうだが
414名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 23:13:46 ID:wP2+pi59
>>413 妙案だな……………………………………と言いたいが、店長は恋する乙女だけの味方さ!!
415名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 00:47:32 ID:nA+rX4nK
別に男のヤンデレが駄目とは言わんが、監禁とかとなるとウザイというのが本音だな
416名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 00:54:36 ID:qekcZacK
百合でも歓迎。嫌ならスルー
417名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 00:59:30 ID:JZkh7eRL
某スレに名前出されたせいでこっちにも流れてきた?
418名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 10:13:05 ID:E8jGwZ4Q
>>417
嫉妬SSスレのこと?
419名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 12:57:29 ID:RASyGi3T
どうでもいいさ。
二人だけの楽園を邪魔する存在には、例外無く血の裁きが下されるのだから。
420名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 16:35:38 ID:LUDJ3kz8
>>396
GJ!!
これで子供ができたら無限ループの悪寒。
421名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 17:53:24 ID:LXhQbhJd
とりあえずこの喫茶店はどこですか?
422名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 18:10:30 ID:nA+rX4nK
君の心の中にあるのさ
423名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 18:59:54 ID:dIQDsftg
>>421 君の周りに恋する乙女がいたら、後をつけてみよう。終着点にそれはある。
結界として秘密保持のために消されるかもし(ry
424慎 ◆tXhMrjO4ms :2007/04/07(土) 19:09:12 ID:okgjui4L
>>421
君が心からあってほしいと望めば、ヤンデレ喫茶は君の前に現れるのさ。

さて投下。2ルート第2話になります。前回の続き。
425慎 ◆tXhMrjO4ms :2007/04/07(土) 19:10:15 ID:okgjui4L
俺は家に帰り、絵里のうちへ行く準備をしていた。だが、なんとなく気分が浮かない。
服を用意し、今日はご飯はいらない、泊まってくることを母につげ、家を出た。
坂ををくだり、登り、下ってまた登る。
どうしてこうも複雑な地形をしているのか最近恨めしく思えてきている。
この近辺は山が二つあり片方の山に俺が通う高校、そして対面の山にうちがある。
高さはないが勾配が急で、そのせいか、うちの高校は自転車通学が禁止されている。
そもそも校則で禁止されなくても誰がするか!と言うぐらいきつい登りで、そんな坂を延々のぼった先にうちの高校はある。
生徒はバスで通学するのだが、乗り遅れたが最後。きつい登りを必死で登る必要がある。
あるものはタクシーを使うが、ばれると怒られるので模範的な生徒は使わない。
まったくなんでこんなところに学校を建てたんだか。
通学にするしても、いたずらに体力を消費するだけだし、いいことなんて一つもない。
足腰が鍛えられるといっても、運動部でない俺が足腰鍛えたってどうしようもない。
そう、まったく意味がない。坂を登り下りするという行為も、この思考もまったく意味がない。
そもそも意味があるものとは?と言われると困る。だが今の俺にはまったく意味がない。
何故こんなことをしているかと言うと、俺の頭の中がすこし困ったことになっていたからだ。
どういうことかというと、俺の頭の中で奈津子の最後の言葉がリピートされている。
”駅前で待ってるから”
表情から声質まで完全に再現されたこの言葉が、ずっと俺の脳内をリピートしている。
俺は今から絵里のところへ行くというのに、奈津子のことばかり考えてしまっている。
そのことを忘れるための思考なのだ。
そう絵里のことを考えなきゃいけないけど、よくわからないができないから、別のこと考えて気を紛らわしているだけ・・・だけなんだ。
さて次は何を考えよう・・・と思っていたら絵里が住むマンションに着いてしまった。
絵里が住むマンションは少し変わっている。下の階は全部駐車場で、3階分ある。
そのためのエレベーターにまず乗り、駐車場の上の4階まで上がる。
そこからは今度は居住階用のエレベーターに乗り換える。階段でいけば一発なのだが、
絵里の住んでる所は10階だし、そんな体力は残ってなかった。
1004号室。
絵里の住む部屋である。
すぅ、と一息すって俺はインターホンを押した。

ピンポーン

「ハーイ♪」
中から明るい声がする。
ガチャ
「慎君やっときた〜♪」
明るい声を出しながら絵里がドアを開けてきた。
426慎太郎の受難2ルート第2話 ◆tXhMrjO4ms :2007/04/07(土) 19:11:40 ID:okgjui4L
「よう」
普通に挨拶をする。
「遅かったね、もう夕方だよ?」
確かに、もうそろそろ6時だ。
「あぁ練習しててさ。下校時刻ぎりぎりまでいたんだ。だから遅くなった。」
「へぇ〜偉い偉い♪ぎりぎりまで練習だなんて慎君はまじめだね♪」
そのまま俺の頭をなでなでしてくる。今日の絵里は明るいな・・・
いやいつも確かに明るいんだが、いつもと違う感じの明るさ・・・
異質な感じがする。来てくれて嬉しいにしてもこのハイテンションは異常だ
そんなに不安だったのだろうか・・・なんにしても今日の喜び方は・・・すこしおかしい。
気のせいだろう。というか俺の自惚れだ。さて、変なことは考えないで、早速本題に入ろう。
「それで、今日は何の教科教えてほしいんだ?」
「え〜と・・・全部♪」
「全部って何だよ全部って。」
「全部は全部。どうせ今日うちに泊まってくからいいでしょ?」
そう、俺はここに泊まっていく予定・・・だがまだ俺の頭から奈津子の声が離れない。
”待ってるから”
俺は・・・
「慎ちゃんどうしたの?」
絵里が心配そうに見つめてく聞いてくる。
「いやなんでもない。うん少し考え事してただけ。」
「・・・駄目」
「・・・へ?」
「考え事なんかしちゃ駄目。あたしのことしか考えちゃ駄目!」
「じゃぁ勉強教えれないじゃないか!」
「あ、そうだね。じゃぁ勉強のことは考えてもいいよ♪」
おかしい・・・キャラが違いすぎる。そしてもう一つ。
まとっていたオーラが、雰囲気が、一瞬変わった気がした。
不安、憎悪、嫉妬・・・何かは分からないが一瞬だけ負の感情とでもいうんだろうか・・・
そんなものが絵里の周りに見えた。
すぐになくなったが、そんな今日の絵里の様子に俺は疑問をぬぐいきれなかった。
「じゃあじゃあまずは数学からやろうか」
絵里が話題を変えるように提案してきた。
特に異論はない。まずは家庭教師役をこなすことにする。
それならば特に問題はない。そう、ない。皆無だ。ナッシング。
問題ないことを自分になぜか言い聞かせながら、
俺は絵里に招かれるままに、部屋に入っていった。
「さぁ〜やるぞー!」
やけに明るい絵里に疑問を感じながら・・・
427慎太郎の受難2ルート第2話 ◆tXhMrjO4ms :2007/04/07(土) 19:13:27 ID:okgjui4L
「はやく〜」
絵里が手招きしてくる。どうやら自分の部屋に入れとのことのようだ。
何度か通ったことはある。
しかし、小学生のころの話だ。中学生になってからは絵里のマンションには行ったことがなく、
俺が部屋に入ると絵里は部屋を出て行った。
今回が久々の訪問になるわけだ。どうやら部屋の場所は変わってないらしい。
この部屋でよく遊んだものだ・・・女の子と遊ぶなんてことは確かに数は少なかった。
その数少ない一緒に遊ぶ女の子が絵里だった。
思えば、絵里と一緒にいるときはいつも楽しかった。
いつも絵里と一緒にいたいなと思い、この感情が恋なのかなと思っていた。
しかし、今回のことで、いやもう前々からかもしれないが、本当に自分は絵里に恋をしているのか?
という疑問が心の多くを占めるようになっていた。
もしかして俺が恋に落ちているのは奈津子のほうじゃないのか?
さっきから俺がぐるぐるとした思考を続けてるのは奈津子のことが気になって仕方ないからだろ?
そう、ずいぶん前は疑念だった。ついさっきは、否定したかった。しかし今は確信している。
俺は・・・奈津子のことが好きだ・・・
絵里とは・・・友達的な感情・・・そう友達だ。一緒にいることは楽しい。楽しいが何か違う。
そう、俺は奈津子のことが・・・っ!
でももう遅い。いまさら気付いても、俺は絵里のもとにいる。
今日という日をうまくやり過ごすしかない・・・そう俺は思い始めていた。
「慎く〜ん♪」
絵里の声が聞こえる。さて、どうやって何事もなくすごすか・・・
「何だ?」
「ご飯は〜?」
「まだいい」
「お風呂は〜?」
「それもまだでいい。絵里、お前ちゃんと勉強する気あるのか?」
「あるよ〜。でもさ、ほら、おなかがすいて勉強できなくなったりしたら大変じゃない?
すっきりして勉強したほうが、効率よくない?そう思って聞いたんだけど」
「おれはやるべきことやってすっきりさせるほうがいいと思うな。」
「う゛〜」
「・・・勉強しないなら帰るぞ。」
「・・・分かった」
絵里はしぶしぶながら従ってくれた
「じゃあ数学から。問題集は?」
絵里がすっと出してページを開く。
さぁお勉教タイムの開始だ。
428慎太郎の受難2ルート第2話 ◆tXhMrjO4ms :2007/04/07(土) 19:14:21 ID:okgjui4L
絵里の高校は、ここからバスで40分くらいかかるところにあり、女子高である。
ワンピースタイプで黒タイツという露出を抑えた制服で、キリスト教系。かなり厳しい校風である。
その昔は、男子とは友達としても付き合うことは許されず、
お兄さんと歩いてるところを見られ学校から処分をくらった生徒もいたそうだ。
いまはそんなことはまったくない。じゃなかったら今俺はここにいない。
成績のレベル的には俺が通う高校とは、何段階かは落ちる。
うちの地元では私立と公立の差は、果てしなく広い。
絵里が通ってる高校は大学を持ってる高校で、そのままその大学へ行くこともできるので、進路にさして困らないだろうが。
問題集のレベルはやはり高校のレベル差を反映してか、俺が使ってるものより少しやさしめであった。
いやむしろ俺の高校がやたらと高いのをさせてるだけかもしれないが。
先生方に過度の期待って言葉を教えてやりたいもんだ。俺には少し荷が重過ぎる。
まぁ絵里が持ってきた問題集ぐらいなら、
成績中間の俺でも教えることにはまったく問題はない。
教え始めてから気づいたんだが、絵里の理解力はすごい。俺が教えることを次々に理解していく。
この理解力を、受験のときに発揮すればよかったんだろうが・・・
いまさら何を言っても手遅れか。そう今さらだ。
絵里の抜群の理解力も手伝ってか数学、英語、と順調にこなしていき気づけば九時になっていた。
「もう九時だね」
「え・・・あーもうそんな時間か。よくがんばったな。」
もう九時か・・・
ふと不意に、本当に不意に奈津子の言葉がよみがえってきた。
”いつまでも待ってるから”
まさか・・・あの野郎・・・そんなことあるはず・・・
俺は急に不安に襲われる。
まさか今でも、駅前で待ってるというのか・・・?
俺が来ると思って、俺が来ることを信じて・・・。
いいのか俺?ここまで思ってくれてる女の気持ちにこたえなくていいのか?
今日さえやり過ごせばなんて思っていいのか?
もし、待ってる間に奈津子がトラブルに巻き込まれたら、一生後悔することにはならないか?
奈津子のもとへ行かなくていいのか?
答えは・・・明白だ。行かなければ。
一刻も早く行かなければ。何かが起こってからは遅い。
ちょうど勉強も一段落着いたころだ。抜け出すには絶好のチャンスのはず。
どう絵里に切り出すかを考えなければ・・・
「ねぇ」
俺がいかにして抜け出すかを考えてると絵里が声をかけてきた。
「さっきから何考えてるの?」
さっき俺が一瞬だけ感じた負のオーラを全開にして。
429慎太郎の受難2ルート第2話 ◆tXhMrjO4ms :2007/04/07(土) 19:15:59 ID:okgjui4L
まずい。さっき感じたときもそうだが、このオーラを出してるときの絵里は・・・
絵里であって、絵里じゃない。
今日の昼の奈津子のいろんな表情が混じった表情を見たときよりもさらに違和感を感じる。
もっというなら戦慄だ。本能が恐怖を感じている。
なんとかしなければ・・・とにかく逃げ切るしかない。
「い、いやなんでもない。うん、別に。」
「嘘」
絵里がぽつりと言う。その顔からはだんだんと表情が欠落してきている。
「いや本当になんでもないって。ところでさぁのど乾いてないか?
俺からからでさぁ。アイスも食べたいなぁなんて。そうそのこと考えてたんだ。」
「アイスならあるよ。飲み物もあるよ。」
「いや、ほらそこのロー○ンで最近売り始めアイスがあるんだが、あれが気に入っててなぁ
買いに行きたいんだが・・・」
「駄目」
「そこを何とか・・・」
「ならあたしが買いに行ってくる。何がほしいかメモして」
「いやほらちょっと外の空気でも吸いたいというか・・・散歩したいというか」
「ねぇ・・・慎君もしかして帰りたいの?」
ばれた。というかばれるか。ここまで必死だと。
「だったら?」
開き直ってみる。が、失敗だった。絵里の目が・・・今の一言で完全に死んだ。
「なんで帰るの?何か不満?慎君のいうことは何でも聞くよ?ねぇ何で?」
「いやちょっと帰らなきゃいけない用事があってな。」
「そんなことさっきまで言ってなかったじゃない。」
「今思い出しだよ。うん帰らなきゃ・・・」
「駄目よ・・帰っちゃ駄目・・・駄目、駄目・・・」
ふらりと立ち上がる絵里。そうして俺のもとへふらふらとやってくる。
来るなり胸倉につかみかかってくる。死んだ目のまま話しかけてくる。
間近で見ると、やはり表情が怖い。
「嫌よ、いまさら帰るなんて。そんなの許さない。」
「しかたがないだろう、帰らなきゃいけないんだから。」
「嫌って言ってるのが分からないの?」
「わがまま言うな。」
「嫌。嫌だよ・・・やっと、やっと、やっとチャンスが来たのに・・・」
「じゃ、じゃあこの辺でな・・・またお泊りは別の日にな?いいだろそれで」
強行突破を腹に決めた。
と、とたん俺は絵里に押し倒された。
「・・・」
430慎太郎の受難2ルート第2話 ◆tXhMrjO4ms :2007/04/07(土) 19:16:42 ID:okgjui4L
「おい絵里苦しいぞ。離せ」
「慎君がその気じゃないなら・・・」
「じゃないなら?」
「さっさか犯ってしまえばいいんだ♪」
はぁ?!ちょっとまてと言うまでもなく、絵里は着ていた部屋着を脱ごうとし始めた。
「ちょ、ちょ、ちょっとまて。意味が分からんし、流れが分からん。」
「まぁまぁ♪気持ちいんだからいいじゃない♪おとなしくあたしのものになりなさい♪」
あっという間に上を脱ぎ終わる。と、俺のズボンに手をかけ始めたじゃないか!
ここで犯されるのは本望じゃない。俺は力を出して、絵里が俺のを出すために
一瞬腰を浮かせたのを利用して、抜け出した。
「きゃ!」
絵里はそのまま、仰向けになって倒れた。
「いたた・・・」
腰を押さえ仰向けのままで、しばらく立ち上がれない絵里。
その隙に荷物をまとめてしまう。
さぁ出ようというときに、またもや絵里が立ちふさがってくる。
「駄目じゃない暴れちゃ・・・おとなしくして♪」
その表情は先ほどとは違い、何かこう・・・穏やかな目になっていた。
「慎君の中には、悪魔が住んでるんだよ。私のことを嫌いにする悪魔が。
そんな悪魔、ちゃっちゃか追い払わなきゃ♪」
「追い払うって、どうやって?」
「私とHすれば追い払えるよ♪さぁ!」
「さぁ、じゃねぇよ!お前がやりたいだけじゃないか!」
「違うよ。これは儀式なの・・・2人が結ばれるための、大切な、大切な儀式・・・さぁ!」
さっきの転倒で壊れたか?だが俺の決心に変わりはない。俺は行く、駅前へ、奈津子のもとへ。
「絵里・・・すまん、通せ!」
強行突破を決め込んでいた俺は、思いっきり真正面に突っ込み力づくで突破した。
しがみつく絵里を振り切り、部屋を出る。
エレベーターは4階。遅い。俺は階段を猛スピードで降りる。
マンションを出て、一番近いバス停へ向かう。時刻表を見る。
幸いにして、バスはすぐ来るようだ。
やってきたバスに乗り込み、俺は速くついてくれと思いながら、バスの流れる景色を見ていた。
奈津子・・・待っててくれてるのか・・・?
なら、今すぐ行くから、もう少し辛抱してくれ。すぐに、すぐに行くから。
夜は更けていく・・・そして時間は残酷にもだんだんと過ぎてゆく・・・
はやる気持ち。
遠い駅。
時間よ、止まってはくれないのか?
431慎 ◆tXhMrjO4ms :2007/04/07(土) 19:18:08 ID:okgjui4L
投下終了です。前にも告知しましたが、諸事情により鳥変えました。
ご了承ください。
432名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 20:08:00 ID:dIQDsftg
待ってました!
鳥?そんなの気にしない!
433名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 20:22:16 ID:nA+rX4nK
ザ・ワールド!

スンマッセン言ってみたかっただけッス……
それはともかくGJッス! 主人公の流されない性格が好ましいッス
434名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 21:45:30 ID:sgWa/GIZ
こんなの愛情【あいじょう】じゃない!ただの異常【いじょう】だ!!
435名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 22:00:20 ID:dIQDsftg
>>434 坊主、大人になったらわかるようになるぜ
436名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 22:13:29 ID:DleaXnrW
>>435
お前カッコイイな
437名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 00:27:06 ID:v85lzZEU
>>433
いやいやいやいやいや、流されていないように見えるが、優柔不断さが垣間見えてるような・・・。

以前にハッピーエンドと言っておきながら、バッドエンドのフラグが立ちまくってる気がする。
438名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 12:07:39 ID:yypZ4o+7
サイ娘の異常な愛情 または私は如何にして正気であるのを止めて彼だけを愛するようになったか

だぁあっ、435の前では霞む('A`)
439名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 16:38:18 ID:0+lgzImK
キモ姉&キモウト小説を書こう!
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1176013240/
440名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 13:35:10 ID:XQlaIcYs
俺的キモ姉の条件、キモく美しく。
441名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 14:22:06 ID:0nKh07st
キモく犯しく美しく
442名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 14:30:31 ID:tkIqVqTo
おおっ!まとめサイト更新されてる
阿修羅氏乙カレーです!
443名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 14:31:10 ID:tkIqVqTo
すまん激しく誤爆した
444名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 16:18:29 ID:s1IFIC97
>>442
期待してしまったではないか
445名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 16:19:10 ID:s1IFIC97
>>442
期待してしまったではないか
446名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 16:52:48 ID:oh2eAwB7
>>444-445
どれだけ期待してたかはよーくわかったからもちつけw
てか俺もちょっと期待しちゃったorz
447名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 21:14:07 ID:frP+UqEQ
俺もかなり期待したorz
448しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA :2007/04/10(火) 02:36:42 ID:vgC7m8Qf
投下します

注意 フタナリです
「あっ…、私は否命、秋月否命。宜しくね、凛ちゃん」
「りっ、凛ちゃん!?」
 凛はその言葉を、まるで聞いた事がないかのようにオウム返しに言った。
「えっと…違った?」
「いえ、合ってるわよ」
「…………」
「…………」
 自己紹介を終えた二人の間に沈黙が訪れる。本来ならば気まずいはずの、この沈黙を凛
は楽しんでいるようだった。顔には相変わらずのニヤニヤ笑いが浮かんでいる。一方、否
命は落ち着きなく視線を動かしながら、沈黙に耐えられずに言葉を探していたが…
「〜〜〜〜〜〜〜!!」
 凛がなんでニヤニヤ笑っているのか知り、思わず顔が真っ赤になった。
 凛は未だに否命の股間で硬直し、ビクッ、ビクッと震えながら精液の残滓を放出してい
るマラを眺めていたのだ。否命は咄嗟にスカートでマラを隠したが、それでも尚マラはス
カートに染みを作りテントを張る形で自らの存在を主張していた。覆い隠されたことで、
妙な淫猥さがそこにある。
 否命は凛の顔を見て、隠したことを後悔したが、隠した以上、まさか再び露出させるわ
けにはいかない。しかも、なぜかそんな状況においても否命のマラは雄雄しくそそり立っ
たままであった。そしてスカートの染みはどんどん広がっていく。
「凛ちゃん…何処を見ているの?」
 半ば無駄だと分かっいたが、否命は恐る恐る訊ねてみた。
「気になる?」
 あくまで視線はマラに注いだまま凛は言う。
「うん」
「どうしても?」
「どうしても…」
「ごめんなさい。だけど、私は貴方のマラが気になって仕方ないの………どうしても」
「〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
 叫びたかった、否命は思い切り叫んでこの、同年代の少女に射精直後のマラを見られて
いる…という羞恥プレイを誤魔化したかった。
「あら、そんなに赤くならなくても大丈夫よ、秋月さん。気にするほど、貴方のマラ、大
きくないもの」
「はぅぅ…」
 人の気も知らずに…いや、凛のこの言葉は明らかに人の気を知ってるからこそのもので
あろう。そして事実、否命の陰茎は12センチをやや下回る大きさであるから、日本人の
平均より下位に位置している。世界的に見ても、この長さは短小の分類である。
「って、大きい、小さいの問題じゃないもん!!」
 そう真っ赤になりながら抗議する否命の様子を見て、凛はわざらしく小首を傾げ、口に
人差しを当てて思案にふける…ふりをする。それから「嗚呼」と頷いて、
「そういうことね。それも大丈夫よ。だって、貴方の12p小型キャノン砲には、砲身を
起こしても、ちゃんと包皮セーフティーがかかっているじゃない。機密は守られてるわ」
 そういう問題でもなーーーい!…、と云い掛けて否命は固まった。重大な事に気づいて
しまったのである。
449しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA :2007/04/10(火) 02:37:19 ID:vgC7m8Qf
(って、凛ちゃんはずっと此処にいたんだよね?ということは、私がパソコンで×××を
見ていたところも、マラを×××しているところも見られて…あっ、あぁぁぁぁ!!)
「そっ、それで、なっ、なんで凛ちゃんが私の家に?ていうか、どうやって入ったの?私
ちゃんと鍵しめたはずだし…、防犯ブザーだって…」
 否命は羞恥を隠したい一心でここまで一気にまくしたてた。
「なんでって、普通に貴方…秋月さんと一緒に家に入っただけよ」
「えっ…?」
「だって秋月さん、私が声をかけようが、手を翳そうが気付かなくて…」
「ごめんなさい…」
「いいのよ。そのおかげで灘神影流奥義・脱骨術を駆使したフタナリ美少女によるアクロ
バティックオナニーショーを見ることが出来たのだから」
 そう言って、凛はニッコリ笑う。そう言われて、否命は心の中で絶叫をあげる。
(神様、私、泣いてもいいですか?)
 否命は既に半べそをかいていた。
「それと秋月さんに話したい事が後二つあるのだけど、いいかしら?」
「うん…」
(まだあるの?)
 否命は、もし下が地面であれば、必死になって穴を掘って埋まろうとしていただろう。
「秋月さんには残念だけど……」
 凛は始めて視線をマラから逸らして…、
「どんなに頑張っても、貴方とゴミ箱の間に子供は出来ないわよ」
ゴミ箱に積まれたティッシュの山を見ながら言った。
「あ、愛は性別や年齢、有機物と無機物の壁だって超えられるって沙紀さんが…」
「それと、もう一つ!これが本題よ!!」
 否命の抗議…ではなく反論を突然、凛は大声を出して遮った。
「なっ、何?」
「財布、返して頂戴」
 そう言われて、否命は自分が凛の(?)財布を持っていたことを思い出した。
「………」
「今度は聞こえているのでしょう?さぁ、財布を私に渡しなさい」
「………」
「なんで黙っているの?」
「………」
「秋月否命さん、ちゃんと聞こえているわよね?じゃあ……財布を渡せ!今すぐに!」
450しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA :2007/04/10(火) 02:39:52 ID:vgC7m8Qf
 最後に込められた言葉の力強さは、衝撃的でさえあった。それは相手の意思を一切、認
めない命令だった。否命はあまりの凛の変貌ぶりにただ呆然とした。凛の目は見開き、異
様な輝きさえ帯びえている。
 二人の間に沈黙が訪れた。しかし、先ほどの沈黙とは違って凛の顔にニヤニヤ笑いは浮
かんではいない。代わりに凛は否命に、爬虫類の如き冷酷な視線を向ける。
 戯れの時間は終わったのだ。
 凛と目を合わせられた否命は、自分の背筋が凍えるのを感じていた。否命は、ほとんど
反射的に目を逸らそうとしたが、どうしたわけか否命は凛の瞳から…この可憐な少女には
似合わない、何処か汚い瞳から…目を逸らす事がどうしても出来ないのだ。
 そうして否命は、凛の瞳が本当に爬虫類と同じ金色をしている事に、気がついた。
 恐怖があった、否命の中に、この瞳から目を逸らしたら、何か起きるではないか…とい
う予感にも似た不安が渦巻いているのである。
 凛の視線にはある種の鋭さがあった。人にまるで、喉に刃を突きつけられているかのよ
うな威圧をかける類の鋭さである。そして凛の様相は相手の態度によっては、その刃を喉
に突きつけるだけでは終わらないと、確信させる凄みがあった。
 否命と同年代の少女にしては異様なものがある。凛は恐らく、何度もこういった事をし
ているのだろう。そうでなければ、このような目を意図的に作る事が出来るはずもない。
そして、その経験こそが凛の金色の瞳に凄みを与えているのだ。
 しかし、それでも尚、否命はオドオドしながらも
「やっぱり駄目だよ…、この財布はあの人の…地回りさん(?)ものなんだから」
 っと、凛の要求を突っぱねた。凛の顔が驚きで歪んだが、それは一瞬の事である。凛は
腰掛けておいたソファーから立ち上がり一歩、否命へと距離を縮めた。
「今は私のものよ」
「でも………」
「渡さない…というのね」
「………うん。ね、ねぇ、凛ちゃん、この財布、あの人に返しに行こう?」
「貴方は…」
 そう言って凛は、また一歩、否命のほうに歩む。
「そんな事して、五体満足で帰れると本気で思っているのかしら?」
「でっ、でも、やっぱり、こんなのおかしいよ」
 消え入りそうな声で、泣き出しそうな目で否命は言う。否命の姿はこれ以上ないほど、
脆弱で、今にも崩れてしまいそうである。
 それでも健気に頑張る否命の微笑ましい姿を見て、凛はつい口元が歪んでしまう。凛は
否命に好意を感じ始めていた。否、凛は否命をからかった時の反応を見て、はっきりと心
が和むのを感じていた。もっとも、本人には迷惑な話であろうが…。
 そして凛がこのような気持になれるのは、この場の支配権を完全に握っているからであ
る。だからこそ、凛は余裕をもって否命の事を観察し、可愛いと思えるのだ。
 だが、これとそれは全くの別問題である。凛は直ぐに、歪んだ口を直して言った。
「そう、貴方はどうしても私に財布を渡さないというのね」
 それから一拍おいて、クスリっと凛は悪戯っぽく笑うと、
「私に、貴方とゴミ箱の×××な関係を公表されても?」
 と、問いかけた。
 それは一見、冗談のような言葉でありながら、



その言葉が否命に与えた影響は、凛の想像の及ぶ域を遙に超えていた。
451しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA :2007/04/10(火) 02:41:45 ID:vgC7m8Qf
 その言葉を聞いた否命は、身体が電気を打たれたように痙攣し、小刻みにガクガクと震
えだした。否命の顔色がまるで死人のように、みるまに白くなる。否命の歯の鳴る音は凛
にも聞こえるほどであった。
 凛の言葉は詰まる所「貴方がフタナリだっていうことを、バラされても?」と言ってい
るのである。しかし、冷静に考えれば凛は否命の人間関係など知らないはずだし、、まし
てはメガホンを片手に、通行人に片っ端から否命がフタナリであることを叫ぶことなど出
来るはずもない。
 だが、否命が冷静に考えられない理由は二つあった。
 一つは、否命が凛に迫られ、精神的に磨耗し正常な思考能力が低下しつつある事。
 そしてもう一つは、否命の忌まわしい過去が蘇ったことにある。
 否命の脳裏に走馬灯のように浮かぶのは、自身の股間に生えているマラ故に、自分の元
から去っていった家族、あるいは家族同様の人間達。
 姉の梓…、親戚達…、もう一人もやはり、否命の元から去っていった。
 その走馬灯の後、否命の元から去っていなく、そして否命の身体の事を知らない、今や
唯一人の家族同様の人間である沙紀の顔が浮かんだ。
 否命が家に厳重な防犯体制を強いているのは、全ては沙紀に自身の秘密を知られたくな
いが故であった。
 その秘密をばらされる…否命は、つい頭の中で未来をシュミレートしてしまった。
 それは頭で考えるだけで、耐えられない悪夢の光景であった。そしてこの悪夢は現実に
なってしまうのだろう…、沙紀に自身のマラの事を知られれば……、否命はそう考えてし
まった。
 そして一度考えると、もうその悪夢から逃れる事は出来なかった。悪夢はヘドロのよう
に落とそうとすれば、落とそうとするほど、より内部へ、より深く染み込んでいった。
 否命のその想像は明らかに飛躍しすぎたものであったが、忌まわしい記憶が明確に蘇り
強迫観念にも似た感情が身体を支配している中、否命はそれが飛躍した考えに過ぎないと
気付くことは出来るだろうか?
 否命の背から恐怖が生温い汗となって滴り落ちる。不安が震えとなって身体を揺らす。
悲哀が冷たさとなって体温を奪う。
452しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA :2007/04/10(火) 02:42:37 ID:vgC7m8Qf
「ちょ、ちょっと秋月さん、大丈夫なの?」
 明らかに戸惑っている凛の声。その凛の声に振り向いた否命の眼を見て、更に凛は驚愕
した。
「凛ちゃん…、お願い」
「………」
「お願い…、沙紀さんには…絶対に言わないで」
 否命は、まるで命ごいするかのような眼をしていた。その顔も形が変わるほ、歪んでい
る。
「だ、だったら、早く財布を渡しなさい」
 それでも凛は不安を隠し、虚勢を張った。これは凛の望んだ通りの展開であったが、こ
こまで劇的な変化を否命にもたらすとは、予想だにしていなかった。
「ねぇ、絶対に言わない!?」
「だから財布を…」
「ねぇ!!」
 そう言って否命は凛の腕を掴む。それは少女の力とは思えないほど力強く、そして今に
も折れてしまいそうな程、脆かった。
「お願い…、私の身体のことは、沙紀さんだけには…」
 否命の声は弱弱しく、言葉は凛の慈悲を請うものである。それなのに、それは凛に対し
て圧倒的な強制力を持っていた。
「他のなにをしてもいいの!だけど…」
「分かったわよ、貴方のことは誰にも言わないわ」
「本当に!本当だよね!?」
「ええ、本当よ」
 途端、否命の顔がパァーっと明るくなる。
「凛ちゃん…有り難う」
「どういたしまして…?」
 否命の、あまりに純粋な喜びと感謝の笑顔に思わず凛は気が抜けてしまった。
「それで…」
 っと、その時、言い掛けた凛の言葉を遮るように玄関に仕掛けられた防犯が鳴る。
 沙紀が帰ってきたのだ。

投下終わります
453名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 08:05:19 ID:yIJWsQe3
自分がナニしている現場を見られたって……俺だったら立ち直れないよorz
454名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 11:00:26 ID:rqFERMGb
百合板でやったればええやん(´・ω・`)
455名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 15:06:26 ID:LIP3Yfkf
>>454

頼むから、某スレに帰ってくれ。

ここは初期の頃から百合モノ投下OKなんだよ。
456名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 15:58:01 ID:rqFERMGb
ふーん、専用板があるのにね。
457名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 16:03:46 ID:LIP3Yfkf
百合板にSSスレなんて有ったっけ?
SSを語るスレしか見たことないぞ?
458名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 16:13:17 ID:rqFERMGb
801は隔離されて何故百合はOKだというのだ
ワガママにしかならんけど苦手な人もいるってことを知って欲しい
459名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 16:19:43 ID:KIfivyrL
角煮に関連スレがたったので報告

ヤンデレ総合スレ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1176178896/
460名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 16:22:47 ID:LIP3Yfkf
>>458
◆HrLD.UhKwAの部分を選択 → NG処理
はいこれで終了。
あなたのブラウザ上には表示されなくなりました、っと。

>>459
thx
461名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 16:33:42 ID:rqFERMGb
百合板にSS投稿したらいかんちゅうルールはないでしょ?
数字板みたくヤンデレ百合ーとかスレ立てやって好きなだけやりゃあいいのに
住み分けってできないのかな、801の人とは違って

言いたいこと言ったからもういいや
ここまでの俺の発言なかったことにして
すまんかった
462名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 17:02:27 ID:umqJ4Mab
>>461
ウセロカス
463名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 18:19:11 ID:PwvTECI2
俺も特別に百合が好きなわけじゃないが、テンプレにヒロインって書いてあんだろ?だから百合はおk
なんでそこでやおいが出てくんだよ
464名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 18:20:56 ID:9jBB63c3
>>463
あれよおいちゃうねん
見苦しいホモ小説ハムニダ
465名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 18:38:52 ID:rqFERMGb
別にやおいと変わんねえと思ったもんでwwwwww
女だったらいいんすねwwwwwwサーセンwwww
466名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 18:41:04 ID:coJAkc59
百合って分かってんだから読まなきゃいいじゃん
467名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 18:50:10 ID:jAa2jYt2
ヤンデレ喫茶で、自分を監禁してくれるメイドさんを見つける方法。

友人と一緒に喫茶店に行き、ワザとコーヒーなどをこぼさせる。
それを見て、上書きしようと、自分もコーヒーをかけようとするメイドが、あなたの運命の監禁主(ひと)です。
468名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 18:56:33 ID:k7sjF5at
>>467
それなんていう「上書き」の加奈?
469名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 19:12:00 ID:+563xTiT
ヤンデレ喫茶の女性視点も読みたいが・・
まあ、楽しみに全裸で待っています
470名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 19:24:01 ID:RBYrLGuO
女の子がヤンデレしてりゃ何でもいいってのか。
そりゃ権利の濫用ってもんだろ、アホらしい。
471名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 20:33:07 ID:OJ73W12z
ヤンデレは何も気にしないからヤンデレなんだよ
472名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 22:55:24 ID:rqFERMGb
>>471
そいつは微妙に違うな

「わたしのこと以外、なんにも気にしちゃ駄目だよ……?」

つまりどちらかといえばヤンデレの獲物の方こそが何も気にしなくなるものなんだよ!!
473名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 23:19:22 ID:w5ohQDxF
>>448
 ゴミ箱に二回やられたw GJ
 それと名前と言葉遣いと行動及び今回の(爬虫類)と(金色の目)で確信したんだけど、凛のモデルってグリーヴァス将軍?
なんか、気になってしょうがない。
474名無しさん@ピンキー:2007/04/11(水) 13:57:41 ID:iu2pnztU
スレの雰囲気…まことに悪うなり申した 
475名無しさん@ピンキー:2007/04/11(水) 15:57:55 ID:0B3EMRDf
空気悪い空気悪い言うよりその悪い空気をズバッと変えるような話題を提案する方が有意義だと思うんだ兄さん!
476名無しさん@ピンキー:2007/04/11(水) 16:16:42 ID:lVF54DiY
>>475
あまり上手くないけど、ネタ投下

「ヤンデレについて」 南條範夫


ヒロインの感情が極端にはしるところにヤンデレはうまれる。

問題が無く、日常生活が平穏に営まれているところにはヤンデレはあらわれない。
しかし、ひとたび問題が起こり、社会や世間、とりわけ人間関係がその問題を
和らげることができず、その状況の中で人間の感情が極端にはしる時、
あらわれてくるのはヤンデレだ。

ヒロインの感情が極端にはしる場合はさまざあって、例えば三角関係などもそうである。
私がヤンデレの女房などを小説にする場合には、三角関係を描くことになるが、男の、ヘタレの問題を
小説にする場合には、修羅場を描くことになる。私は、男の、ヘタレのことを多く小説に描いて
いるので、「ヤンデレ」が当然多くなる。

ヒロインの感情がはっきりと判るのは、病んだ時である。
ヘタレ男も一応の優しさを示す。しかしそれはどこか的外れもの、かえってヒロインを傷つけるものになる。男の場合、ヘタレになる時
その本性、読者すら敵に回すウザサが出てくる。だから男の世界を現実につかみだすとすれば、それはヘタレだ。
今も、昔からもずっと、世界中のどこでもそうだ。歴史上の問題を何か一つつかんでみるとよい。
そこを突き詰めると必ずヒロインが病んでいくような状況があるだろう。

私は主にヤンデレ小説を書いて来たが、昔の社会というものにはヤンデレがあらわれやすい。
そこでは何もかも病んでいるのだ。戦国時代の武将達のように、対立を和らげる組織がないとことでは、
それぞれが敵対者、泥棒猫と直接にぶつからねばならない。自分が勝つか相手に殺されるかだ。
また一方で、今も、昔も人々は上のものに対しても仲間に対しても、普段は感情を抑えて生きていたから、
一旦それが破れると普段抑えていたものが、みなぶつかり合う。嫉妬、独占欲、変態性欲、狂気、様々なものが一気に噴出し、
感情は極端にはしる。ヤンデレになる。

人間はヤンデレなものである、などということではない。
何か問題が発生した時、それが対立に向かわないように取りまとめようとする人ももちろんいる。
穏やかで、ヤンデレが表面化してこない社会も、歴史上いくらもあった。ヤンデレが表面化しないように
しっかり抑えるのが、そもそも恋愛物語の主人公の使命だともいえる。

しかし、問題のない物語、あってもその問題を受け入れ何も事を起こさない、マグロ、
というものは小説にならない。私はそうしたものに興味はない。

私が取り上げるのは、何か問題が生じた時、それを抑え和らげようとするのではなく、むしろ
カンカンになってしまう人間、感情を極端にはしらせる、つまりヤンデレである。(談)
477名無しさん@ピンキー:2007/04/11(水) 17:19:58 ID:N23Uq9oZ
>476
ヤンデレ道はシグルイなり。
478名無しさん@ピンキー:2007/04/11(水) 19:09:40 ID:DwY+RYEG
>>476
新規にヤンデレキャラを産み出すよりは既存のヤンデレを探した方がいい、まで読んだ。
479名無しさん@ピンキー:2007/04/11(水) 19:18:18 ID:OxTDTRQy
わからぬか

その者にとっては ヤンデレなど三次のごとき萌えないゴミに過ぎぬと・・・
480名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 22:10:59 ID:MSuSMdO5
>>479
二次オタ・・・・三次もいいぞ・・・・
481名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 22:24:55 ID:lWsKybgf
三次ヤンデレか……俺が常駐しているスレのスレ主が
そういったタイプの女の子に好かれてやすくてウラヤマシスなんだが。
ちなみに本人「超」がつくほどのお人よしで
やはりそういう男に惹かれるものなんだろうか
482名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 22:37:07 ID:XonC/nqr
エロパロのスレで三次の良さを語られてもな
483名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 22:38:40 ID:lWsKybgf
それもそうだな
すれ違いスマソ
484名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 23:00:43 ID:vNLhR3/+
さっきほど、
「男側が病んでるってどうだ!?新しいな!!スゲー!」


と思って書いてみたら、ただの変態SSになったorz

485名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 23:05:29 ID:VBFDIWWX
読みたい・・・
投下しないか?
486名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 23:10:18 ID:nu2K3tEq
男側を病ませるという発想は前からあったが、いざ書くとなると難しいもんな。
だが誘い受けは勘弁だ、今すぐ投下すんだ、さぁ早く。
487名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 23:36:03 ID:nFzbdN4X
男側が病むと「キモイ」「ムカつく」になりかねないからなぁ。
変態ではなく、狂人方向にもっていければあるいは…
488名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 00:25:44 ID:C7YrzPfn
女ヤンデレ化→女と一緒にいるため男も病む。
とかなら大好きだけどな。
少し違うかもしれんが沙耶の唄のカップルなんか最高。
489名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 00:48:28 ID:wP/DDkd+
>>488
「上書き」なんかは主人公もいい感じに病んでいたな。
490名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 01:18:52 ID:f7lY9HEd

「起立、礼」
「ありがとうございました。」
皆が担任の田並先生に礼をすると一日の終わりだ。

いや僕にとっては一日の『始まり』だろうか、100m走も万年ビリから数えて四人目な僕がカモシカに変身したが如く、全速力で家

路に着く。部活の準備をしたり、仲間とぺちゃくちゃと話をしている連中の間をすり抜け、人が廊下に出てくる前に、無人の野を行く

ように、って、無人だからそのままだったっけ、下駄箱へ行く。で、そこから愛用の自転車に乗り、後は十五分間いつもの道を走り

続けるだけだ。

説明すると長いのだが、とにかく今日も全速力で帰るとしますか。
と言うわけで、前述の通り、教室を神速で出て、廊下を走り、下駄箱に・・・、ってところで僕より先に来ていた、北方さんに腕を掴ま

れた。

北方さんは僕の隣の席に座っているクラスメイトで、妙に落ち着いているというか、クールな感じで、僕からするととっつきにくい人

だ。そのため、この人とはあまり口を利かない。

「な、なんですか。急いでいるんですよ、僕は。」
急に思わぬところで、思わぬ人に足止めを食らわされて狼狽してしまったのだろう、声が裏返ってしまった。
そんなこちらの様子を見て、彼女はクスリと小さく笑うと、「図書室の片付け手伝ってくれないかしら?」とのたまった。

は、はい?今、なんていいました?図書室の片付け?
僕は今すぐ家に帰って、漫画を読んで、アニメを見て、ネットゲームをやると言う責務が待っているというのに!
なんてひどい人だ。
491名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 01:19:58 ID:f7lY9HEd
どう扱ったらいいか分からないので、適当に用事があることにしてしまおう。
「え、ちょっと今日は用事があって無理。」
すると顔を近づけてきて、無表情な目をこちらに向けて、
「今、適当に用事のせいにしてしまえ、って思ったでしょう?」

やべぇ、顔に出ていたようだ。まずいな、何とかしなければ。
「いいのかしら?あなたが学校にいろいろと持ち込んでいるの、私、知っているわ。誰に告げ口されたい?」
独特の落ち着いた声に、氷のような冷たさが混じる。
下駄箱に生徒が随分と来ていたようで、北方さんが早く答えてくれないか、と促した。

しかたない、学校に持参しているアレをばらされるよりは、彼女の手伝いもするほうが賢明か。
なんだか、女子に負けてしまってみっともないような感じがするが気にしないことにしておこうか。
「わかったよ、じゃ、手伝いますから、はい。例の事は・・・・。」
「ええ、黙っておいてあげるわ。じゃ、そのまま図書室に来て。」そういうと、下駄箱の近くにある階段を登ろうとしたが、ふと思い出

したように立ち止まり、踵を返した。彼女長い黒髪がフワリとゆれる。
そして「案外に松本君、素直なのね。」と言った。

まったく、人を脅しておいて、何が『素直なのね。』だ・・・。実にこっちはひやひやしたものだ。
ここで、いきなり約束を破って、変えるというのも手なのだが、男に二言はない、だ。
なんて、格好をつけてみるが、単に僕って脅されて使われているだけだよな。


・・・・・。をいをい、いいのか、これで。
どうするんだ、俺!
492名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 01:20:47 ID:f7lY9HEd
というわけで、そそくさと四階にある図書室に向かった。
荷物を持って、四階まで上るのは実に気が引ける。万年文化部の僕の場合、息すら上がる。
ひいひい言いながら、図書室のドアを開ける。放課後、いつもは鍵がかかっているのだが、図書委員の北方さんが先に来ている

ので当然すんなりと開くわけだ。

図書室の隅に鞄や荷物類を置いた。
「で、何をすればいいんですかね、図書委員さん。」
「返却された本を私は戻したり整理するから、松本君は箒がけをして。」

素直に掃除用具箱からT字箒を取り出し掃除を黙々と行った。
というのは、最初の数分だけの話。僕にそんな集中力があろうはずも無く、適当なことを考えながら適当に仕事する。
北方さんが図書準備室にいて、こちらの様子が分からないときは箒を動かす手を止めて、こちらに来て、本の整理をし始めたら、

手を動かす。そんな感じだった。

ふと、不覚にもさっき顔を近づけてきた北方さんの容姿を想像した。
よくよく考えると、腰にまで届こうかというほどの長い瀬戸黒の髪に、目鼻立ちの整っていて、人形のように繊細で、落ち着いた容

姿から言えば、かなりがつく美人なのだろう。まあ、顔が良くとも、性格についてはどうか分からないのだが。彼女はあまり他人と

話さないようだが、どうも人の弱みをきちんと握っているようで、あまりよいとはいえないかもしれない。
現に今だって、僕は脅されていたのだから。

いずれにせよ、実に女と言うのは扱いにくい生物だな。
持論を力説し、自己完結させて、頭を上下に動かして頷くところを北方さんに見られていたようだ。

「あら、終わったのかしら?こちらは終わったのだけれど・・・。」
おお、相手が終わったのなら、こちらも無理に掃除を続ける必要はない。
やったぜ!農奴解放令が出た!我々は長年にわたる闘争を終え・・・、北方さんは、こちらを不機嫌そうに切れ長の目で見ている


「・・・・・嬉しそうね。」
無言のままでも強い圧力を掛けられているようだったが、口を開けば開いたで実に刺すような痛みが感じられた。
493名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 01:21:30 ID:f7lY9HEd
ああ、やってしまったか・・・。そう思ったが、彼女が口にしたのは予想とは別物であった。
「仕事、無理強いしてごめんなさい。私の家、この学校のすぐ傍だから、寄っていかない?お礼させていただくわ。」
「お、お礼?」
思わぬ言葉に鸚鵡(おうむ)返しにしてしまった。
「ええ、そうよ。」
ふと、図書室の時計を見ると・・・・南無三。見たかったアニメの時刻をゆうゆう過ぎてしまっている。それなら、特に断る理由がな

いと思って、彼女についていくことにしました。

図書室の鍵をかけ、その鍵を二回の職員室に返しに行き、校門を出た。
僕は自転車を転がしながら、北方さんについていく。いままで、彼女の家については実際に見たことはないのだが、仲間から聞い

ていて、それは随分と大きい家らしい。
北方さんの家は学校から歩いて五分ほどのところにあった。
学校の東は小高くなっており、閑静な住宅地になっている。ここは市内でも裕福な人が住んでいる場所の一つだ。

立派な門が堂々と立っており、門柱には重々しく北方と書かれた表札が掲げられていた。
門は開いたままで、内側の様子が見えていたが、手前に池のある広々とした庭があり、その奥に純和風の母屋があり、落ち着い

た佇まいを見せていた。
「さ、自転車は適当にその辺に停めて。」
門の前に言われるがままに停める。そうしているうちに当たり前のように北方さんは庭には目もくれずに、ずんずん母屋のほうへ

向かっていた。まぁ、彼女の家なのだから当たり前なのだけれども。

「ち、ちょっと待って。」
こんなところに取り残されたのでは困る。あわてて、彼女の後を追いかける。

まず、母屋の中に入ると客間に通された。さっきの庭に面しており、池とその横の木々が見えた。
十畳ほどの部屋にはテーブルと腰掛がいくつかあり、床の間には掛け軸がかけられ、高そうなつぼが置かれていた。
「へぇ〜、北方さんの家って、随分広いね〜」と喉元まででかかったが、さすがに失礼だと思ってやめておいた。
それを見透かしてか、クスクスと彼女は笑っていた。
あいも変わらず無表情な笑いであったが、学校でのそれとは違う感じがした。
494名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 01:22:06 ID:f7lY9HEd
腰掛に腰掛けると、彼女は学校のこと、家族のこと、趣味のこと、様々な話をしてきた。学校の彼女とはまた違った一面を垣間見

れたような気がする。
あ、よくよく考えてみると、こんな風に女子の家に行った事って、これが初めてだったっけ。
そう意識してしまい、なんとなく途中から話しにくくなってきた。
「あ、適当にお菓子とお茶持ってくるわ。」
「いや、結構です。気にせずに。」

「そうは言っても、喉、渇いたでしょう?」
「それはどうも。」
「この家に呼ぶ人、そう多いわけじゃないし、たまにだから。」
あまり良く理解できない理由のような気がしたがそれはおいておくことにしようか。
彼女がお菓子を持ってくるまでの間、読書でもしようと、鞄の中にある、本を読む。
マンガ好きな僕もたまには活字の本だって読むことがあるのだ。それもラノベだが。
・・・・。
・・・・・・・・・。
七、八分するとお茶と茶菓子を持ってきた彼女が戻ってきた。
「持ってきたわ、和菓子と洋菓子でどちらにしようか、迷ってしまって・・・。」
「え、気を遣わなくて良いのに。」
「で、どっちが好き?」
「へ?」
「だから、和菓子と洋菓子。」
「ああ、お菓ね・・・。うん、洋菓子。」
「そう、残念だわ。」
そういうと、彼女は本当に残念そうな顔をして、緑茶とお茶請けの羊羹を僕の前に置いた。

黙々と北方さんは羊羹を食べ始めた。
テンションはかなり低いようだ。というより、いつもの無表情に戻ったと言うべきところだろうか。
それからいくらか羊羹をつまみ、お茶を飲んだりしながら、いくつか話題を振ってみたのだが、北方さんは「ええ」や「そうね」としか

返さなくなったため、なんとなく気まずい感じになってしまった。

何か彼女の機嫌を損ねるようなことをしてしまったのは確かだろうが、それは何であろうか?
さっきの和菓子と洋菓子の質問くらいしか思い当たらない。しかし、何だってそんなことが関係しているのだろう?

ふと、彼女の視線が僕のさっきまで読んでいたラノベにいっている。
興味がありそうなので、このラノベについて話題を振ってみた。
話題に食いついてきたので、ノリでいくらか話し続けて、時計が六時半をさしたころに帰途につくことにした。
そとは暗くなっていたので、随分と長居したことが改めて感じられたが、まあ、たまにはよかろう。
しかし、アニメ録画予約してたか、激しく気になった。
495名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 01:22:50 ID:f7lY9HEd
女子の部屋とは思えないような瀟洒な部屋に一人、北方時雨は佇んでいた。


松本君と話していた時間は夢のように早く過ぎていった。
彼が洋菓子のほうが和菓子より好きだとは調べが不十分だった。
私が作った羊羹をほめてくれて、彼の優しい心遣いには涙すらとめどなく出てくるが、本当に彼の好きなケーキかプリンかを作っ

てあげればよかったと後悔している。
それにしても、あんなにも人と話をして楽しい、そう感じられたのは久しぶりだ。

私は生まれつき人と話をするのが苦手だ。
だから、学校でも話をしない。
ごくごく規則的なつまらない毎日を消費するだけ。

こちらから話さなければ相手からも話されず、自然と距離が生じてくるものだ。
でも、そんな私にさえ、隣の席に座っている彼は話しかけてくれた。
彼は私にとってのオアシスのようなものだ。

だから、自然と私は彼に惹かれていった。好き、という言葉では言い切れない感情。当然、こちらから話しかけたいと言う気持ちが

無かったわけでもないが、それでも、話しかけることができず、三年間もの間、同じクラスでありながら無為に過ごしてきた。

引き出しから、今のクラスの全体写真を取り出す。
その写真のただ一点のみを眺めているその写真に写っている松本君、そうそのただ一点。
それ以外の人間なんて要らない。
さらに言うと、彼だけしか写っていない写真がほしいのだが、私にとっては度の過ぎた贅沢というもの。
496名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 01:23:19 ID:f7lY9HEd
今日、彼は私に自身の妹について話した。
彼に対して異常なまでに粘着質であり、世話焼きであるため、自分からはなれず困っているといっていた。
妹の存在については話される前から知っていた。
一学年違いなので、学校で本人を知っているのだ。

みるからに脆くはかなげな感じの子で、えらく、おとなしく従順そうな、寧ろ誰かの従属的なポジションにいたいという感じがした。し

かし、同時に直感で彼女が内に黒々したものを秘めているのを感じた。
私はあまりああいう子は好かない。
そして、あんな魔女の大鍋のような醜い心を持った害毒があの心優しい、松本君の傍に、私よりもはるかに近いところにいること

が許せなかった。本当に許せない、許せない、許せない、許せない。あんな子に彼が毒されることがないと祈りたいが、彼から私

に相談してくるくらいなのだから、かなり彼女のいわば寄生によって病状は悪化しているようだ。

あんな子は松本君から相手にされず、クラスでも苛められても自分の深い罪に気づかないだろう。百歩譲って、その罪深さに気

づいて自分の罪を贖ったところで、到底、贖いきれるほどのものではない。
現に彼女はその罪に気づいていない。そんな害毒は誰かの手を借りて滅せられなければならない。それが社会のルールにのっ

とっているというものだ。
497名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 01:24:03 ID:f7lY9HEd
本当にあんな毛虫か寄生虫のような子、死んでしまえばいいのに。それも、尋常じゃない殺され方で。
だって、そうされても仕方ないことをしたんだもの。
私の大切な命にも代えがたい松本君を穢して、寄生して、あそこまで追い詰めているのだから。

いけない、いけない、感情的になりすぎたようだ。

確かに今から、とっくの昔から位置を知っている、彼の住む家に武器を持っていって、ごくごくわずか、千数百秒のうちに彼を解放

してあげたい。
でも、それは重病患者に手術を強いるようなもの。決して賢明ではない。彼にとっても、あんな寄生虫でも肉親ということになって

いるのだから、彼を悲しませるようなことは私にとっては絶対のタブーだ。

だからといってこのまま放置しておいたのでは、取り返しのつかないことになってしまうだろう。
それを防ぐためには、積極的ならなくてはならない。話すのが苦手だとか言っている場合ではないのだ。
彼を守れるのは私だけ。そして彼に心から尽くすことがふさわしいのも私だけ―。
498名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 01:25:02 ID:f7lY9HEd
読みずらくなってしまって、すみません。
とりあえず、続くかもということで。
499名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 02:15:08 ID:DsThKMK7
>>488
ナカーマ
俺も沙耶の唄の主人公カップル大好きだ。
500名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 02:30:23 ID:YoRHa50v
乙!
501名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 07:57:32 ID:F/Sg7DcP
>>498
内気なお嬢様と、ブラコンの妹。
俺的には両方ともとりたいところだが、果たして松本君はどちらを選ぶ、
もとい、どちらを選ばされてしまうのだろうか。wktkだな。

あと、次回からタイトルをつけることを推奨する。
502484:2007/04/13(金) 08:12:19 ID:yENYCBb5
>>498 超乙!!



オレ、携帯厨だから連投出来ないんだよ………orz
503名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 10:38:32 ID:lhh8o4NS
>>498
…グッド!
504名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 14:52:23 ID:ulgq1hJz
>>498
ナイスだ!!
505名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 15:09:45 ID:p7/wCqYe
真面目なかんじでいいね。
506名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 17:43:26 ID:EBozwjHw
>>502
はやく投下するだ
507トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/04/14(土) 01:07:24 ID:2xtY9pJZ
では久々に投稿致します

508黒の領域 最終話 ◆J7GMgIOEyA :2007/04/14(土) 01:11:08 ID:2xtY9pJZ
 始めての唇を奪われてから、僕と英津子さんの関係は否応にも深まって行った。
寂しさと孤独に耐えられない英津子さんは更に僕を求めるようになった。

愛玩動物の役割を果たしているとしても、僕は彼女の手厚い看病をなしでは生きられない体だったし、
愛情を同情として向けることしか僕にはできなかった。
 監禁生活が長引くと監禁犯に対して被害者は親近感が沸いてしまうという心理学的な内容はあるかもしれないが、

僕の場合は親近感よりも大根自体が畏怖の対象になってしまっていた。
そうである。もう、僕は大根おろしや大根の具が入った味噌汁
おでんの中に入っている大根、そして、大根を焼くという焼き大根すらも
僕は見るだけで鳥肌が立って、失神してしまうのだ。それが一番の難関である。

ひきこもりやニートよりも立ち直ることはどんな精神科医でも治療するには首を傾げることであろう。
大根は日常的に様々なところで使用されている食材だ。
これがトラウマになるってことは、日常生活にいろいろと支障が出ることは間違ない。

 さて、僕は大根トラウマ物語は本当にどうでもいいのだが。
 本題に入ろう。

 英津子さんと僕の共同生活の終わりがようやくやってきた。


「あ、あ、あなたたち誰ですかっっ!!」
 今日も僕と英津子さんはのんびりと一緒に居る一時を充分に楽しんでいた。
骨折して退屈な僕を退屈させないように英津子さんは頑張って面白い話をしている最中に

インターホンが鳴り響いたのだ。僕もこんなお日様が昇って洗濯日和な日に友人もいない
英津子さんの家に尋ねてくるのはどこかの集金人ぐらいだと思っていた。
 だが、英津子さんの取り乱した様子に僕は真剣に玄関の方向に耳を傾けた。

「須藤英津子。河野京介を拉致監禁及び暴行罪の容疑で逮捕する。ちゃんと礼状は出ているからな」
「い、い、いやぁぁああ。来ないで!! 私から京介君を取らないでぇぇぇ!!」
「容疑者をさっさと確保して、被害者を保護しろ」

 刑事らしい人間が数人で発狂して暴れる英津子さんを取り押さえていた。
その間に僕の所にももう一人の若い刑事さんがやってきて心配そうな表情を浮かべて言った。

「京介君。もう大丈夫だよ。監禁犯はもうすぐ逮捕されて署の方に連行するから」

 その大きな手で僕を気遣うように髪をぐしゃぐしゃと撫でてくる。
僕は何も答えることができなかった。
この場所から解放されるということが全く理解ができずに、英津子さんが顔を真っ赤にして
僕の名前を悲鳴のように叫びながら呼んでいる光景に呆気に取られていた。

 この状況を僕は渇望していたはずであった。
 電波女から解放される瞬間を望んでいたのに。

予知することもなく英津子さんと僕の共同生活が終わってしまうことに寂しさを覚えてしまっていた。

「き、き、き、き、京介くぅぅぅんんっっ!!」

 数人がかりで英津子さんを抑えた刑事さんたちが彼女の細い手首に手錠をかけた。

金属の冷たい閉じる音が僕達の奇妙な監禁生活の終わりを意味していた。

 こうして、僕は英津子さんから強制的に解放されてしまった。
509黒の領域 最終話 ◆J7GMgIOEyA :2007/04/14(土) 01:14:10 ID:2xtY9pJZ
 警察に通報したのはアパートに住んでいる住人であった。
とある日から男の子の悲鳴が聞こえるようになってきたので大家と相談して警察に通報した。
僕の両親が僕を拉致されてから数日後ぐらいに警察に行方不明者だと届けを出したそうだ。

たまたま行方を捜査していた警察が男の子の悲鳴がうんぬんの報告を呼んで、
容疑者である英津子さんのアパ−トと僕の家が近いという接点に気付いた。
もし、自宅の途中で拉致されたと考えるならば、これ以上容疑者に相応しい人物はいない。

須藤英津子の行動を常に監視していれば、一人暮らしなのに明らかに一人では食べる量ではない食料を買い込んでいる。
更に男性用の下着まで買っているのが極め付けであった。
あっさりと礼状が降りて英津子さんは逮捕されて、僕は病院に搬送されていた。

 長い監禁生活で身体がやつれてしまった僕は骨折していた足を適切な治療を受けて
病院のベットで天井を眺めている日々が続いていた。

心配した担任やクラスの友人たちは見舞いにやってきてくれたが、
両親は最初にやってきただけでそれ以降は全く来る気配もなかった。

 こうして、一人でいるととてつもない不安だけが襲ってくる。
あの両親は僕が誘拐や拉致をされたとしても、結局は何の心配もしてなかったことだ。

世間体のことを考えて、行方不明になった僕の捜索を警察に届けただけ。
他は何にもやってない。
拉致から解放した僕を元気付ける言葉をかけてもらったこともなかったんだ。
 
(京介君。今日は何が食べたい?)

(お姉ちゃんは京介君が傍に居てくれるだけで嬉しいんだから)

(京介君がいないと私は本当にダメになっちゃう。一人は本当に寂しいんだよ)

 僕を拉致した英津子さんとの日々が自然と思い出した。

どんな時も笑顔を絶やさずに俺と一緒に居ることで自分の孤独と寂しさを紛らわした人。

だが、不思議なことに拉致監禁されていたというのにあんな日常が夢のようで楽しかった。

「大人しく病院で入院している場合じゃないぞ」
 
 悪夢の日々から解放されてから始めて気付いた。
英津子さんが僕にとって大事な人だったんだと。
僕も英津子さんと同じで孤独で寂しがり屋。

同じ痛みを持っていた二人が傷口を舐め合う関係こそが僕らに相応しかった。
狭いアパ−トの一室で一緒に暮らして、英津子さんが寂しさの余りに

僕に甘えてくるような今までの生活こそが僕達が望んでいた物なんだと。



 だから、取り戻そう。


 あの素晴らしき監禁生活をっっ!!
510黒の領域 最終話 ◆J7GMgIOEyA :2007/04/14(土) 01:17:10 ID:2xtY9pJZ
 すぐに警察へ告訴の取り下げを僕は求めた。
 あの監禁生活の真実は僕がとある場所で転んで頭を打って、
 一時的な記憶喪失を陥った所を英津子さんに保護された。

 足を骨折して、精神的に病んでいた僕の様子を気遣って
 警察や病院に連れて行くのを躊躇している間に警察官たちが勝手に部屋へと踏み込まれたと言った
 辻褄が合うような弁解を僕は警察側は主張した。

 さすがに容疑者を庇う被害者の僕が監禁されている間にマインドコントロ−ルを受けた可能性が
 あると精神科で強制的な精神鑑定を受けた結果。精神的に正常だと認められた。

 その主張と腹黒い取引を繰り返したおかげで、英津子さんは証拠不十分で釈放されることなった。
 僕は英津子さんが釈放されるまでの間に……親と勘当して、学校には退学届けを提出していた。
 今まで大切にしていた全ての物を失っていても、それに勝る価値がここに存在している。

「京介君っっっ!!」
 感動の再会を果たされる英津子さんが釈放される日に
 僕は拘置所まで松葉杖で必死に目的の場所まで歩いた。
 今日は僕と英津子さんの新たな旅立ちを祝うかのようにどこまでも澄み渡る蒼い空が限りなく広がっていた。

「うぇぇっっんん。助けてくれてありがとう。本当にありがとうっ」
「そんなの大したことじゃないですよ」
 久々に再会した英津子さんは監禁されてあの頃と比べると痩せ細っていた。
 拘置所の生活がそこまでも過酷だったのだろうか。
 顔には生気が篭もっていないが、その瞳の輝きは僕と再び出会ったことで光を取り戻していた。

「私、思ったんです。薄暗い牢獄でずっと京介君の事を想っていたけど……。
 私が京介君を監禁してしまったことは自分勝手で酷いことをしたんじゃないのかなって」

 いや、酷いってレベルじゃねぇぞ……。
 あえて、口は出さないけど。


「最初からこうしておけば良かったんです」

「えっ?」
 英津子さんは衣服の中から取り出した大根を手慣れた仕草で僕の頭に素早く叩きつけた。
 予想すらできなかった事に反応できない僕は間抜けな声をあげて、その場に倒れ伏せた。

「監禁生活は犯罪ということはよ〜くわかったので。
 次は私が京介君にちゃんと首輪をしておけば大丈夫だったんです」

 いつものように優しい微笑を浮かべる英津子さん。
 僕は薄れゆく意識の中で頬が少しだけにやついていた。


「今日からまたよろしくね。京介君」

 また、英津子さんによる監禁される日々が始まった。

 次は首輪を付けてワンちゃんプレイに走るらしい……。
 
 やっぱり、僕は早まったことをしてしまったのかな。




 黒の領域 完
511トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/04/14(土) 01:20:19 ID:2xtY9pJZ
以上で投下終了します。

黒の領域はこれで完結です
前回から日が空いてしまいましたが・・
ついに書き上げる事が出来ました。

では失礼致します

512名無しさん@ピンキー:2007/04/14(土) 01:21:06 ID:sJTwUeE4
おおお、久しぶりに来たらすごいことに・・・
何でこんなに盛り上がっているんだ、ここ。
513名無しさん@ピンキー:2007/04/14(土) 01:25:44 ID:/9PFfCb+
すげー!
良かったよ、またきてくれ!
514ヤンデレ喫茶の、ある一日 ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/14(土) 06:52:59 ID:2tUI6eH6
投下します。
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 私は、少し変わった趣のある喫茶店で従業員をやっています。
 なにせ、女性の従業員・アルバイト全員がメイド服を着ているのですから。
 店員がメイドさんだと言えばわかるでしょう。つまり、メイド喫茶です。
 そして、そここそが私の勤める、愛すべき喫茶店です。

 私がこの喫茶店に勤めはじめたのは、喫茶店がオープンした初日からでした。
 オープンしてから今まで、私は一日も欠かすことなく出勤しています。
 つまり、皆勤賞に値する勤務姿勢を維持し続けているのです。
 だというのに、いままで手書きの給与明細に『皆勤手当』の項目が記されたことは一度もありません。
 労働組合があれば手当てを要求することも可ですが、この喫茶店にそんなものは存在せず、
本来要求すべき相手である店長は副店長の春香のいいなりであるため相手にならず、
それならばと春香に話を振っても首を縦には振りません。
 従業員の意思を汲んでくれない雇い主です。

 春香の父親であるオーナーに直訴してやろうとも思いましたが、
私が勤めてきてからこれまで、一度も顔を見たことがありません。
 そのため、誰にも訴えることができない状態にあるわけです。
 いっそのこと、私が経理担当になってしまおうかと思ったこともあります。
 とはいえ、春香が譲ってくれない以上、経理の椅子には座れそうもありません。

 私にとって、この喫茶店はとても愛着のある場所です。
 不満点は、給与明細の中身を除いては一つもありません。
 店長は椅子に座っているだけでうるさくはないですし、
春香は副店長であると同時に親しい友人でもあるし、アルバイトの女の子もいい子ばかりです。
 メイド服のデザインも私は気に入っています。
 ワンピースタイプではなく、ブラウスとスカートとエプロンが別々になっているので、
少々着るのが面倒なのが難点ではありますが。
 
 この喫茶店の変わっているところは、お客様へのサービスにあります。
 どのようなサービスか具体的に言いますと、10回お店に来られた男性に対して、
その男性を愛している女性をプレゼントする、という内容です。
 そのため、女性達全員がアルバイトの子です。
 全員が自分を男性にプレゼントすることを目的にして働いています。
 
 つまり、この喫茶店は女の子たちの恋の橋渡し役を担ってもいるのです。
515ヤンデレ喫茶の、ある一日 ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/14(土) 06:55:16 ID:2tUI6eH6

 喫茶店での一日は、店内の掃除から始まります。
 厨房の掃除から始まり、カウンター、店内の床やテーブル、お店の窓拭き、
トイレの掃除まで私が全て一人で行っています。 
 働き始めて何年も経とうというこのお店の掃除にはすっかり慣れてしまいました。
 そして、店長はともかく春香さえ手伝おうという素振りを見せないことにもすっかり慣れました。

 その次は仕込みです。
 店内で出す軽食メニューに使用する食材を、調理しやすいように加工しておきます。
 食材は私がいないうちに春香が仕入れているようで、準備する必要はありません。
 仕込みの作業は春香が手伝ってくれるので、楽なものです。

 仕込みが終わったころ、アルバイトの女の子たちがやってきます。
 年の頃は10代後半から20代前半。
 子供っぽい子もいれば、私より大人に見える子もいます。
 彼女達全員がお店にやってくる男性に、お店に勤める以前から好意を寄せています。
 好きな男性に「ご主人様」と言えるということに、彼女達もまんざらではない様子です。
 
 しかし、(これは私も疑問ですが)都合良く好きな男性がやってくるのはどういうことでしょう?
 それも、一度喫茶店に来た男性はその後も必ずお店にやってきます。
 こんなに上手くことが運ぶことは、現実主義者の私には理解できない状況です。
 以前春香に疑問をぶつけてみたところ、
「それはきっと、運命の赤い糸で結ばれているからですわ」
 という答えが返ってきました。
 それだけの理由で納得できるほど、私は夢を見ていません。

 その後で、アルバイトの女の子にお店で働くことになったきっかけを聞いてみました。
 すると。
「私が彼のことを考えながら歩いているとき、おじいさんがやってきたんです。
 おじいさんは私の気持ちを全て見抜きました。
 そして、彼が欲しいのなら奪ってしまえばいい、と言ってこの喫茶店の連絡先を教えてくれたんです。
 続けて、彼を独占したいのならばそこのお店で働きなさい、と言うとおじいさんは立ち去りました。
 最初はどういうことかわからなかったけど、せっかくだからとりあえずアルバイトすることに決めました。
 お店に来て、店内に彼がいたときはびっくりしました。
 彼は硬派な人で、メイド喫茶には来そうになかったから」
 
 どうやら、そのおじいさんが女の子たちを勧誘しているようです。
 同時に、(これは予測ですが)おじいさんが男の子を喫茶店に連れてきてもいるようです。
 一体どうやればそんなことができるのか分かりませんが、状況は理解できました。

 そのおじいさんが現れてくれれば全ての謎が解き明かされるのですが、
アルバイトの女の子はそのおじいさんに二度と会うことはなかったそうです。
 春香にそのおじいさんの話をしてみたところ、
「きっと、そのおじいさんは恋のキューピッドさまですわ」
 と言って、得意の癒しの微笑みを浮かべていました。

 本当に恋のキューピッドであるならば、私の恋を実らせてほしいものです。
516ヤンデレ喫茶の、ある一日 ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/14(土) 06:56:39 ID:2tUI6eH6

 私の失恋話をします。
 と言っても、振られたわけではないですし、そもそも告白すらしていません。
 彼の名前は南君と言って、21歳の大学生の男の子です。
 短期間のアルバイトということで、一ヶ月間だけこの喫茶店のウェイターをやっていました。
 アルバイトにやってきた回数は、9回。
 あと1回で誰か他の女の子とくっついてしまうのか、と不安に思っていた私としては嬉しくもありましたが、
もう南君の顔を見られないと思うと、胸が張り裂けそうになりました。

 私が南君を好きになったきっかけは、閉店時の掃除のときに起こりました。
 いつも閉店時間がくると、春香がアルバイトの女の子達を帰してしまうので、
店内の掃除は私一人でやっています。もちろん春香は手伝いません。

 一人黙々と掃除を続けていたとき、突然お店のドアが開きました。
 ドアを開けて、そこに立っていたのは南君でした。
 私がじっと見つめていると、彼は口を開きました。
「忘れ物を取りに来たんですけど……あの、いつも一人で掃除をしているんですか?」
 私が無言で頷くと、彼はこう言いました。
「僕も手伝いますよ」

 南君は、一人だけで喫茶店の掃除をしている私を見かねて、手伝ってくれると言ったのです。
 そのときの私は、初めて掃除を手伝ってくれる人が現れた喜びと、
彼の優しい言葉に胸を打たれて、思わず泣いてしまいました。
 涙を流す私に、南君はハンカチを差し出してくれました。
 そのハンカチで涙を拭いて彼の顔を見ると、何故か目を離せなくなっていました。

 彼のくせのある短い黒髪と、首から突き出している喉仏と、
嫌味のない瞳を見ているうちに顔が熱くなり、同時に胸の奥と下半身も熱くなりました。
 私は、南君の優しさの虜になってしまったのです。
 
 それからというもの、南君と二人きりで閉店時の掃除をするのが楽しみになってしまいました。
 掃除の時間だけは二人だけの世界。
 私がテーブルを拭いていると、南君が床を掃いてくれて。
 南君が食器を洗っていたら、私がそれを拭いたあとで食器棚に収めて。
 まるで二人だけのお芝居をしているような気分でした。

 そんな楽しい日々は彼が突然アルバイトを辞めたことで終わりをつげました。
 なんの挨拶も無いまま辞めてしまったことを不審に思い、店長を問い詰めると、
「怒るなよ? 絶対に怒って手を出したりするなよ?
 ……実は、………に命令されたから、俺がやめさせたんだ。勤務態度がわるかったからってことで……」
 その言葉を聞いているうちに頭に血が上り、その怒りが頂点に達した瞬間意識が暗転し、
意識が戻ったときには顔を腫らした状態でテーブルに伏せている店長が目の前にいました。

 そんなことがあって、楽しい日々と同時に私の恋は終わりをつげたのです。
 もしキューピッドがいるのならば、あの恋も実らせてくれてもいいのではないでしょうか。
517ヤンデレ喫茶の、ある一日 ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/14(土) 06:58:31 ID:2tUI6eH6

 しかし、実際はそうなるはずもなく、今日もお店は普段どおりに営業しています。

 アルバイトの女の子達は嬉々とした様子で憧れの男性の接客をして、
突然床に倒れた男性に対しては満面の笑みを浮かべたまま店の奥へと連れ込みます。
 私はその光景をカウンター越しに、時々厨房越しに観察します。
 皆、うれしそうです。でも、私は……。
 
 ステンレスでできた調理台の上に涙が落ちて、跳ねました。
 落ちたときの勢いで、涙はつぶれて四方に飛び散りました。
 下あごが震えて、歯が音を立てます。
 頭の中から、どんどん、どんどん悲しみが沸いてきます。
 
 両手で顔を覆いました。
 けれども、涙は指の間を伝って溢れてきます。
 手のひらを伝って顔を濡らし、腕を伝って袖を濡らします。
 嗚咽が短い間隔で、しゃっくりのように繰り返し起こりました。
 
 寂しい。寂しくて、耐えられない。
 すぐ近くで恋を実らせている女の子がいて、男性と二人きりでいるというのに、私はひとりぼっち。
 彼がいれば、南君がいれば私の目からあふれ出す涙を優しく拭ってくれるのに。
 それなのに、南君はここにはいない。
 そして、きっとここには戻ってこない。
 もう二度と彼には会うことができない。
 私なんか、もうこのまま消えてしまえばいいのに――――

 
「……起きて………起きて…ださい」
 その声に聞いて目を覚ますと、春香が目の前にいて、私の肩を揺すっていました。
 私は厨房の床に倒れていました。
 きっと泣いたまま眠ってしまったのでしょう。
 
「……もう閉店時間ですから今日はお帰りください。
 今日の掃除は私がしておきますから」
 私は首を振りました。
 閉店時の掃除の時間は私にとって南君との思い出の時間です。
 まだ、私は彼を忘れられないんです。
 南君が後ろにいるかもしれない、と思いながら掃除することが私の心のよりどころなんです。

「……わかりました。では、いつも通りお願いいたしますわね」
 その言葉に対して頷きを返して、立ち上がります。
 そして、掃除棚から箒を取り出してから、掃除を始めることにしました。
518ヤンデレ喫茶の、ある一日 ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/14(土) 07:00:56 ID:2tUI6eH6

 箒で床を掃く音だけが聞こえます。
 木目の床と箒の繊維が擦れあい、しゃ、しゃ、しゃ、という音を立てます。
 他の音は聞こえません。人の気配もしません。
 私一人だけがこの喫茶店にいます。

 それだけのことなのに、なぜこんなに心がからっぽなんでしょう。
 それだけのことなのに、どうして涙が流れて止まらないんでしょう。

 ほこりをちりとりに掃きこみ、ゴミ箱に入れます。
 次にやることはなんでしたっけ――ああ、テーブルの拭き掃除でした。
 布巾を持った手をテーブルに置きました。
 ふと、南君のことが思い浮かびました。
 以前はいつも私が箒を持って掃いている間に、テーブルを拭いてくれました。
 けれども、今は南君がいないから全て一人でやっています。

 不安が襲い掛かってきて、視界を大きく揺らしました。
 こうやってずっと、私は一人ぼっちで過ごすのではないか。
 南君の影を忘れられないまま、ずっと泣いたままでいるのではないか。

 膝から力が抜けて、床にへたりこみました。
 顔が下を向いているから、涙が頬を伝うことなく、スカートの上に落ちました。
 スカートに黒いしみが浮かぶ様子をぼんやりと眺めます。
 いくら待っても涙が止まることはありません。
 ずっと涙が落ちつづけます。
 
 このまま泣き続けてしまえばいい。
 そうすればきっと、体中の水分が抜けて脱水症状になって、気絶する。
 ここにいれば朝までは発見されないから、上手くいけば死ねるかもしれない。
 南君がいないのなら、そのほうがいい――――
 
 すると。

 カランカラン、という鈴の音が聞こえて、その後に誰かが喫茶店に入ってきました。

 ……このタイミングで来るということは、まだ死ぬな、と誰かが言っているのでしょう。
 恋のキューピッドでしょうか。
 もしそうなら、声をかけるのではなくて私の恋を実らせてくれればいいのに――
519ヤンデレ喫茶の、ある一日 ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/14(土) 07:03:57 ID:2tUI6eH6

「あの……大丈夫ですか?」
 その遠慮がちに発せられたような声は、男性の声でした。けれども、店長の声とは全く違います。
 この声に私は聞き覚えがありました。
 そして、その可能性を否定しました。
 彼がこの喫茶店にくるはずがありません。彼は店長からクビを言い渡されたのですから。

「どこか怪我でもしたんですか?」
 また、耳に覚えのある声で話しかけられました。
 いたわるような、優しい声でした。まるで、あの人のようです。
 そうだったらいいな、と思いながらやってきた人の顔を見ると。

 そこに居たのは、何度も会いたいと夢に見る人でした。
 その人と二人だけで力を合わせて掃除をしたいと、何度も願った相手でした。
 そこには、いつでも私が一番会いたい人――南君がいました。
 
 嬉しさのあまり素早く身を起こすと、ふらついてしまいました。
 前のめりになる私の肩を掴んでくれたのは、南君の大きな手でした。
 その手を握ります。とても柔らかくて、温かかったです。
 
「……どうして泣いているんです?」
 私の顔を見て、南君は怪訝な表情で聞いてきました。
 私は首を横に振って、心の底からの笑顔を作りました。
 嬉しくて、悲しみなどなくなってしまいました。
 涙はもう、あふれてきませんでした。

 南君がハンカチを取り出して、目と頬に残っていた涙の後を拭いました。
 その手つきは壊れ物を扱うような繊細さで、大事にしたいという思いがじんわりと伝わってきました。
 今の私にその優しい刺激は強すぎました。
 南君の背中に手を回して抱きついて、彼の胸に顔を当てます。
 頬に、くすぐったい感触があらわれました。
 柔らかい。そのくすぐったさも、彼の肉体も。

 抱きついたまま、私は口を開いて自分の胸のうちを明かしました。
 閉店後の掃除時間に手伝ってくれたときに感じた喜び。
 二人きりで過ごした、短い時間だけれど心を占める大事な思い出。
 南君が居なくなったときに感じた、息が詰まるほどの喪失感。
 今までずっと心の中で暖め続けていた強い恋慕。
 私は彼にはっきりと伝えました。――南君のことが好きです。と。

 南君の胸板にある私の目線からは、彼の顔は見えません。
 喜んでいるのか、顔をしかめているのかはわかりません。
 すると、南君の腕が私の頭を包み込み、ぎゅっ、と抱きしめてきました。
 
「また会えて、本当に嬉しいです。それに、同じ気持ちでいたってことも。
 ……はい。僕も好きです。僕はあなたのこと、誰よりも想っています」

 そう言うと、南君は私の唇にキスをしました。
 また涙がこぼれました。――幸せすぎます。こんなの。
520ヤンデレ喫茶の、ある一日 ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/14(土) 07:06:44 ID:2tUI6eH6

 体全体を南君の体に当てて、密着します。
 すると、突然南君が腰を引きました。
 当然、私は物足りないので自分の腰を再度押し当てます。

「ちょ、ちょっと待ってください。少しだけ……」
 待つわけがないでしょう。
 今まで何日、何ヶ月おあずけを食らったと思っているんですか。
 というわけで、逃がしません。うふふふふ。
 
 南君の腰に手を回し、両足の間に体を滑り込ませます。
 すると、おへそに何かが当たるのを感じました。
 メイド服越しですので、何があるのかは分かりませんが。
 お腹を離すと、そこには南君の穿いている綿パンがありました。
 そして、ベルトのバックルの下だけが突き出していました。

 なるほど。だから腰を離そうとしたんですね。
 嬉しいです。私と抱き合っているだけで興奮してくれるなんて。
「ぇ……」
 大丈夫ですよ。……私の体を使って、鎮めてあげます。

 膝を床についた状態で、南君が身に着けているベルトを外し、
続いて突き出したモノの上に伸びているチャックを下ろします。
 綿パンを下ろすと、薄布に阻まれた状態のイチモツがでてきました。
 私の顔に、先端が真っ直ぐに向けられています。
 ――うふふ。そんなに慌てなくても、きっちりと面倒を見てあげますよ。

 南君の突き出したモノを避けるように下着をずらしていきます。
 ほどなくして、南君の突き出したペニスがあらわれました。
 ときどきビクン、と上に跳ねていて、我慢できない様子でした。
 ――いただきます。南君。

 鈴口の先端にキスをします。
 南君がうめき声をあげて、ペニスが大きく揺れました。
 陰茎を右手で握り、再度くちづけます。
 今度は舌の先端で切れ目、出口を責めます。
 そうしているうちに、ぬめりを持った液体が出てきました。
 
 くちづけた状態から、そのまま首を前に動かして肉棒を口の中に含みます。
 傘の裏に唇の裏を合わせて擦り、同時に舌も動かします。
「あ、はぁぁぁ……」
 より深く肉棒を咥えて、全体に舌を這わせます。
 とても熱くて、固くて、そのせいで無性に体が熱くなってきます。
 続けていくうちに、陰茎が脈を打って膨らみ始めました。射精の兆候です。
 その瞬間に合わせて、肉棒の先端を強く吸引します。
 南君の声とともに、精液が口の中に大量に発射されました。
 鼻から漏れる匂いは、とても濃くて臭くて――つい、一気に口の中のものを飲み下してしまいました。
521ヤンデレ喫茶の、ある一日 ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/14(土) 07:08:33 ID:2tUI6eH6
 
 気持ちよかったですか?南君。
「……ええ。とっても」
 うっふふふふ。嬉しい……じゃあ、もっといいことさせてあげます。
 いい子の南君への、ご褒美です。

 私はエプロンを外し、スカートも脱ぎ、ブラウスも外しました。
 今はブラとショーツとソックスだけしか身に着けていません。
 仰向けに寝転がります。膝を立てて、ふとももの裏側を南君に見せ付けます。
 南君はハイソックスを脱がせると、私の体の上にきました。

 私にキスをすると、唇を這わせながら顎、首筋、鎖骨まで下っていきます。
 胸の谷間を通過しておへそまでたどりつくと、また往復してきました。
 南君は手を動かして、ブラの肩紐をずらし、全体を下にずらしていきます。
 隠すものが一切なくなって、私の胸がさらけだされました。
 南君の唇が右の乳首に触れました。
 彼の両手は私の左右の乳房を揉んでいます。
 くちづけていない方の乳首は指でこねて、次は左右を入れ替えて同じことをします。
 
 私の腕で、南君の頭を強く抱きしめます。こうすると、彼をより強く感じられました。
 乳首を歯で甘噛みされました。噛みながら、舌の表面は肌を往復しています。
 甘噛みをやめたと思ったら、唇の先端でついばまれました。
 乳首を挟んで、軽く引っ張りながら離す。南君はそれを左右の乳首で繰り返しました。
 
 南君が体を移動させて、私の両足の間でとまりました。
 指でショーツの上から秘裂を撫でられました。
 その途端、びくり、と自分の背中が跳ねます。
 今度は二本の指が割れ目に当てられて、円を描くように動き出しました。
 だんだんショーツが濡れていくのがわかります。
 それなのに、南君の指はますます加速します。
 くちくちくち、と肌と濡れた布が擦れたときの音がしました。

 その音が繰り返されたあと、南君の手がショーツの横に当てられました。
 段々とショーツをずらしていくので、私もそれに合わせて足をうごかします。
 そして、南君の手が肌から離れたとき、濡れきったショーツは私の足から脱がされていました。
 
 私の秘所は、南君の前に隠すものの無い状態でさらけだされています。
 彼は私の足を広げると、両手で割れ目を広げて、舌を入れました。
 一定の間隔で舌が往復します。入り口も、奥まった場所も舌の届く限り舐められました。
522ヤンデレ喫茶の、ある一日 ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/14(土) 07:19:27 ID:2tUI6eH6
 
 南君は私の体から顔を離して、両足を掴んだ状態で私を見つめています。
 その目は私の反応を見ているようでした。
 こんなときでも、彼は私のことを想ってくれる。そう思うと、自然と笑みがこぼれました。
 
 その笑顔を見た南君は私から目を反らし、下を向きました。
 少し遅れて、秘所に固いものが当たりました。
 南君の熱いペニスが、私の中に侵入していきます。
 腰が密着した瞬間、私の顔が大きな喜びに満たされて、微笑を作りました。
 
 腰が離れて、肉棒の感触が遠ざかります。口から小さな声をが漏れました。
 しかし、すぐにまた貫かれました。腰が触れて、歓喜の声が漏れます。
 肉棒を出し入れされるたびに、私の口は同じことを繰り返します。
 南君も同じでした。彼は荒く、断続的な呼吸を繰り返しながら腰を動かしています。
 打ち付けられるたび、膣壁がこすれて、奥にペニスの先端が触れます。
 ときどき浅くついたときは奥の手前で寸止めされた気分になり、身がよじれました。
 
 もう、快感と南君の熱しか感じられません。
 強い快楽に脳をかき回されて、前も後ろもわかりません。
 ただ、南君から注がれる熱だけが変わらずにそこにありました。

 喉の奥から、だんだん耐えようのない波が押し寄せてきました。
 それがもっとも大きな快感であるとわかっていた私は、それを受け入れました。
 同時に南君の動きが止まり、とびきり熱いものを注がれて、
私は喉から大きな声を絞り出して――そのまま、脱力してしまいました。


 呼吸が落ち着いてから目を開けると、南君の顔が私の目の前にありました。
「…………」
 彼は口を開きませんでした。
 何も言わずに、そのまま顔を近づけて私にキスをしました。
 強くもなく、弱くもなく、お互いの唇が重なり合いました。
 
 唇を浅く当てて、離して、またくちづける。
 しばらくそれを続けた後に顔を離した南君は、目を細め口の端を軽く上げて微笑みました。
 ――ああ、満足してくれたんだ。
 私も、同じ顔を作りました。
 けど、上手く笑えたかどうか自信はありません。

 ただ、南君に私の気持ちが伝わればいいな、とだけ思いました。
523ヤンデレ喫茶の、ある一日 ◆Z.OmhTbrSo :2007/04/14(土) 07:26:44 ID:2tUI6eH6
 
 翌日。
 いつものように喫茶店へ行くと、私の部屋に泊まっていって、
まだ寝ているはずの南君がウェイターの姿をして待っていました。
「おはよう……じゃなくて、おはようございます」
 唖然としている私に向かって、南君が礼をしました。
 反射的に、私も「おはよう」と言ってから頭を下げました。

「おはようございます。……どうされましたか? 呆けた顔をされていますよ」
 メイド服を身に着けた春香が店の奥からやってきました。
 私は朝の挨拶もそこそこに、これはどういうことか、と春香に問いました。
「実はお父様から、彼をもう一度雇うように頼まれたのです。
 彼はこの喫茶店に必要な人材だ、と言っておられましたわ。
 ……それに、実際にそのようですし、ね」
 春香は私と南君を見た後、誰に向けているのかわからない笑顔を浮かべました。
 
 春香が立ち去った後、私と南君の二人で開店前の掃除をすることにしました。
 毎日のルーチンに組み込まれているから、いつも短く感じていましたが、
今日はあっというまに終わってしまった感覚までしました。

 不思議です。
 南君がいるだけで心が浮かれて、時間が短く感じられます。
 春香のお父さんに感謝です。
 もしかしたら、春香のお父さんが恋のキューピッドなのかもしれません。

 幸福のあまり、ふらふらとおぼつかない足取りで歩いていると、後ろから肩を支えられました。
 まるでソファのように体を柔らかく包み込む腕でした。
 こんなに優しい感触を持った人は、一人しかいません。

「大丈夫か? 気分が悪かったら言えよ。
 お前に怪我してもらうのはなんか、その……嫌だからさ」

 私にここまで優しくしてくれる人は、恋人の南君だけです。
 
 ――ね、ずっと、ずぅっと、私と一緒にいてね?
 ――もう私の前から消えたりしないでね。
 ――離れたりしたら、ひどいことしちゃうから…………。

 終

-----
終わりです。
南の元ネタは、>>373です。
524名無しさん@ピンキー:2007/04/14(土) 08:13:20 ID:xBmeTw/t
GJ!なんとなく病んでる感じがいいね〜
おかげで朝同僚に「やばいくらい顔にやけてるよ。」と言われてしまった。
オーナーは俺の中では英国風紳士に脳内補修された。

それにしても、>>373からあれ以来恋愛がない………………まさか!?
525名無しさん@ピンキー:2007/04/14(土) 08:15:36 ID:xBmeTw/t
>>524 あれ以来恋愛×
あれ以来連絡○
何やってんだ俺 orz
526名無しさん@ピンキー:2007/04/14(土) 12:50:09 ID:nLumqhtu
>>511
完結乙でした。
世間には理解されなくっても二人が幸せならそれでいいのさ
まあ、京介君はまだ吹っ切れてないみたいですがw

>>523
純愛だなあ……しかし
> ――離れたりしたら、ひどいことしちゃうから…………。
ぜひ南君には再度離れてもらって彼女をどん底に病ませて欲しい
と思ってしまった俺はもう駄目かも分からんね
527名無しさん@ピンキー:2007/04/14(土) 13:02:54 ID:e/IWOR+b
>>524-525
心配するな。きっと元気でやってるさ。
何しろ>>373は、180cm余りの身長に人類史に前例を見ない150kgの筋肉を搭載したアンチェインだからな!
528名無しさん@ピンキー:2007/04/14(土) 15:17:58 ID:4ShENLdu
>>511
完結乙です。
最後までヤンデいるのが良い感じ。
ヤンデレって本当素晴らしいですね。

>>523
新作乙です。
ひどいことをされる南君を希望する。
529名無しさん@ピンキー:2007/04/14(土) 18:14:28 ID:8WiwnQbw
作者たちに感謝しつつ萌えるとする
530名無しさん@ピンキー:2007/04/14(土) 23:16:01 ID:JA96F4K9
一週間の疲れも吹っ飛ぶような作品を有難う、有難う。
これでまた一週間頑張れるような気がするよ
あ〜どっかにヤンデレいないかな…
531名無しさん@ピンキー:2007/04/14(土) 23:50:08 ID:7U4afUzh
>>530
YOU作り出しちゃいなYO
532名無しさん@ピンキー:2007/04/15(日) 09:08:39 ID:p1DwZiHa
おまいら!既に480KB逝ってるぞ!
533名無しさん@ピンキー:2007/04/15(日) 11:56:45 ID:udCC2KtL
じゃあスレ立てしてくる
534名無しさん@ピンキー:2007/04/15(日) 11:59:26 ID:udCC2KtL
立ててきました

ヤンデレの小説を書こう!Part6
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1176605863/
535名無しさん@ピンキー:2007/04/15(日) 15:39:48 ID:aJYi9tgO


おはようございます、お兄様。
え?何故お兄様がベッドに縛り付けられているのか、ですか。
それは御自分の胸に手を当てて良く考えてください。
あ、縛られていては手を動かせませんね。
クスクス・・・でもお兄様がいけないんですよ?
私が一生懸命尽くしてきてさしあげたのに・・・他の女の所に行こうとするから
お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様
お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様
お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・
でもね、お兄様?
こんな事するのもお兄様のことを思ってなんですよ?
私気付いたんです。お隣の修羅場家の御兄弟を見ていて・・・
「愛とは縛り付けるものなんだ・・・って」
お兄様が外の雌豚に穢されないよう、誘惑されないよう、変な想いを抱かないよう・・・
せっかく一ヶ月前に害獣から救ってさしあげたのに
あら、どうしたんですかお兄様?そんなに驚いた顔をなせって

お兄様、これからはずっとずっと私がお兄様の世話をしてさしあげますわ
ウフフ、大丈夫。何も怖がることはありませんわ。
あぁ、お兄様お兄様お兄様お兄様・・・

536名無しさん@ピンキー:2007/04/15(日) 20:39:34 ID:ZMrktNJ5
だけどすぐに姉に七氏君を盗られてしまう妹……と
537名無しさん@ピンキー:2007/04/15(日) 20:40:53 ID:ZMrktNJ5
あ……違う! 妹じゃ名無し君は成立しない! ゴメ今のナシ
538名無しさん@ピンキー:2007/04/15(日) 23:26:27 ID:k+Swyyig
最近常連さんが来ない

巫女さんの話の続きマダー
539名無しさん@ピンキー:2007/04/15(日) 23:48:01 ID:cVONe1Wn
ヤンデレ喫茶と>>538の話を受けて、ヤンデレ神社という小ネタを思いついたんだが、容量的に次スレに投下したほうがいいだろうか?
540名無しさん@ピンキー:2007/04/15(日) 23:55:37 ID:Xq+m85Sd
>>539
小ネタなら埋めネタになっていいのでは
まあ、やはり容量次第ですが
541名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 00:53:25 ID:V2e0VOOK
ん〜、まだ考えがまとまらないし、いつ投下できるかわからないから次スレにするよ

>>540 アドバイスありがとう

それにしても小ネタで悩む俺っていったい…… orz
542名無しさん@ピンキー:2007/04/18(水) 13:48:25 ID:GSYvBZtm
後残りわずか

埋めネタか雑談で埋めればいいのかな?
543名無しさん@ピンキー:2007/04/18(水) 16:07:23 ID:yG92ZErN
まあ埋めヌタ推奨だな
544Part4 671の埋めネタの続き:2007/04/19(木) 01:18:18 ID:9e8kdSYE

名無し君! 見つけたっ♪

酷いよ、名無し君……
一緒に埋まろうって、前スレで言ったのに、どうして逃げちゃったの?
逃げても、無駄なのに……

え? 一人で埋まれって?

あははははははははは!
何言ってるか、意味が解んないよ? 名無し君
二人で埋まらないと意味がないじゃない

え? 解んないの? 本当に?

しょうがないなぁ、名無し君は!
じゃあ特別に教えてあげる!

二人で埋まれば、ずっとずーっと一緒にいられるんだよ?
二人だけの世界だよ?
誰にも邪魔されないんだよ?

ね、ね、ね! 素敵でしょ? 素晴らしいでしょ? 最高でしょ!

だから、一緒に埋まろう♪


え? まだそんなこと言って…
どうしてそんなに聞き分けが悪いのかなぁ、名無し君は

これは決められたことなの! 決定事項なの!
え? 誰が決めたかって?

それは…… 勿論、運命だよ!

もう、そんなことも解んないなんて、名無し君はダメダメだなぁ♪


あれ〜? どうしたのかなぁ? 名無し君
身体が痺れる? 動けない? お前がやったのかって?

うん、そうだよ
だって名無し君、逃げようとするんだもん♪

…よいしょっと
仰向けなら苦しくないよね?

ねぇねぇ、膝枕、してあげよっか?
ふふふ… 照れなくてもいいのに
545Part4 671の埋めネタの続き:2007/04/19(木) 01:18:55 ID:9e8kdSYE

……じゃあさ、名無し君 もっと、イイコトしよっか?

大丈夫だよ、もう誰もいないから
だって、みんな新スレに引っ越ししちゃったもん

服なんて邪魔だよね、ね じゃあ脱がすね、脱がしちゃうよ…
うわー、どきどきする…


…やっぱり、恥かしいね
あ! ゴメン! 名無し君だけ裸じゃ、ズルイよね
今、あたしも脱ぐね…

うー、恥かしいぃー……

……ね、名無し君 ぎゅってしていい?

あー! 名無し君、顔赤いぞ!
あたしも赤いって? 当り前だよ、好きな人とぎゅってしてるんだもん!
…それに裸だし


!! ……名無し君、その………

そうだよね、裸でぎゅってしてたら当然だよね
男の人だったらそうなっちゃうよね
うん、解ってる あたしの所為だよね

あたしの所為だもん、ちゃんとしてあげる…


あむぅ… んっ… ぅむ… ちゅ… んん…

ね、気持ちいい? ここ、気持ちいい?
すっごく熱いよ、ぴくぴくしてる

……名無し君 名無し君のしてたら、熱くなってきて…
ぬるぬるだよ ほら、こんなになっちゃった…

え? 跨ぐ、の? …こう?

あぁっ! ひゃ、あっ! あぁんっ!
やっ、そんなっ… 舐めちゃ、だめぇ!
ぁああんんっ! そこっ …あっ! くりくりしちゃっ! ああぁっ!
吸っちゃ… あぁぁっ! 吸っちゃ! ひあぁあっ!

もう… もう… あぁぁぁあああっ!!
546Part4 671の埋めネタの続き:2007/04/19(木) 01:19:32 ID:9e8kdSYE

はぁ、はぁ、はぁ………
名無し君、激しすぎ…

ん、名無し君も… 気持ちよく、なって…


見て、名無し君
今からあたしのここに、名無し君のが入っちゃうんだよ…

ぅんんんんんんんんっ!
…あ はっ… ふぅっ……
入ってくるよぅ… 名無し君のっ… あたしの中に、入ってくるぅ…
大… 丈夫っ へいき… だよ んんっ!
はぁはぁっ… んんんんんんんんんっ…! 

…ほら、全部… 入った、よ……
気持ちいい? 名無し君、あたしの中、気持ちいい?

よかったぁ… じゃあ、もっと気持ちよくなって?

ぅうんっ! んんっ! …っ! んぁっ!
いい、の…… 名無し君が、気持ちよくっ… なってくれればっ…
あたしっ、あたしっ… 名無し君ので… いっぱい、いっぱいなのぉっ!

ぅうぁんっ! …いいよっ 出して、出してっ!
いっぱい名無し君のっ… 出してぇ!
あたしの中にぃ… 奥に… 一番奥までっ、…出してぇっ!

あっ、ひぅぅぅぅぅんっ!!

はぁ… はぁ… はぁ… はぁ…
いっぱい… 出たね、名無し君
中が名無し君ので、いっぱいだよぅ……
んんっ… 溢れてきちゃうよ…

あっ! 名無し君、また…… 大きくなってきたよ…
ふふふ…… も一回、しちゃう?

あ、その前に
ほら!
もうこんなに埋まってきたよ

もう直だね もう直、二人だけの世界が完成するね!


繋がったまま、こうして、二人で、埋まろうね……
ずっと、ずーっと、一緒だよ?
ね、名無し君………
547名無しさん@ピンキー:2007/04/19(木) 06:40:08 ID:OC1NL07z
不覚にもオッキした。
548名無しさん@ピンキー:2007/04/19(木) 08:15:41 ID:YtKDSJWq
ごめんみんな、俺はこっちの世界で埋まってるわ ノシ
549名無しさん@ピンキー:2007/04/19(木) 09:59:33 ID:1OGQLC+4
そうか、じゃあ俺は餞別として生コンを流し込んでやるよ
550名無しさん@ピンキー:2007/04/19(木) 12:54:51 ID:UbUmVZN8
あと十キロバイトか……
551名無しさん@ピンキー:2007/04/19(木) 22:04:02 ID:iCBaAwMl
埋めるのはいいんだが、保管庫の管理人さんは追いついているんだろうか?現行スレがPart5のままだし……
552名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 05:24:43 ID:zHWKhTYh
保管庫更新キタ━━━━━ヽ(゚∀゚)ノ━━━━━!!!!
管理人様乙!
これでこのスレも埋めて大丈夫かな
553名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 13:17:02 ID:IxgvNTX3
保管庫君は更新されたわ。
もうあなたなんか用済みよ
あははははははははははははははは
埋めてやる
あははははははははははははははははははははは
554名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 18:28:36 ID:VFBMaF3L
>>553 あんたなんかにこのスレは埋めさせないんだから!!
この卑しい雌豚が!
あんたなんかね、一人寂しく過疎してりゃいいのよ。
何よ、その目は?
ふふ、大丈夫。私だけが一緒に埋まってあげるの。
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずぅ〜〜っとね
555名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 21:20:31 ID:QCALM4aJ
ヤンデレkoeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee
556名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 21:31:39 ID:l9Kjchlk
ふふふっ、555さんは私といっしょに行くの。
553、554さんは二人で埋まっててね。
後で掘り返してあげるから、待っててね、555さん。
557名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 21:34:23 ID:ASdejwRJ
埋め
そして次スレに・・
558名無しさん@ピンキー:2007/04/22(日) 00:00:53 ID:tAGMvFoY
ここは558
559名無しさん@ピンキー:2007/04/22(日) 01:13:55 ID:Q28PM51b
保管庫更新キタコレ!
保管庫管理人さん、お疲れ様です!

埋め埋め手伝うぞコラ!
560名無しさん@ピンキー:2007/04/22(日) 08:28:01 ID:xryv25wr
見つけた…
見つけた…Part5ちゃん
どうしてあなたは…私の大切なスレ住人を奪おうとするの?
ずるいよね…ずるいよね…?
Part6の私なんかより、ずっとスレ住人の側にいたくせに…
いらない…あなたが一番いらないっ!
Part5なんか埋まっちゃえ!きゃははははは!!
561埋めネタ:2007/04/23(月) 14:19:55 ID:zZqFCD+j
 最近弟が冷たい。

 姉弟のスキンシップがやけに少なくなっているのだ。
 以前から弟は私に肉体的接触を持とうとはしなかったが、最近は特にその傾向が強い。
 
 風呂上りの体にバスタオルを巻いて、「このほてった体をさらに熱くして!」と迫ったら、
以前は顔を紅くして部屋に閉じこもるという行動をとっていたのに、最近では私が風呂から出てくると
必ず部屋に閉じこもっていて、顔も合わせてくれない。

 部屋に入れずにドアの前で弟の名前を呼んでも、喋りかけても、泣き続けても、ドアを開けてくれない。

 弟が居ないときにこっそり忍び込んでいるのがばれたときには口もきいてくれなくなった。

 何をやっているのだろう?もしかしてナニをやっているのだろうか。
 それなら私の体を見ながらしてくれればいい。
 むしろその滾ったモノで私を貫いてほしい。こちらとしてはオールタイムでバッチコイだ。

 弟が何をしているのか探るため、私は弟の部屋に忍び込むことにした。

 深夜3時。すでに弟は寝静まっているだろうと思ったが、弟の部屋のドアの隙間からは光が漏れていた。
 鍵はかかっていない。……なるほど、私を誘っているわけか。
 ならば私も48手の性技をもってそれに応えることにしよう。弟よ、今夜は寝かさないぞ。

 ドアを開けたら弟がベッドの上で待っている様子を想像していたが、それは裏切られた。
 弟は机に顔をつけて眠っている。そして弟の頭の上にはノートパソコンがある。
 一体どんなものをズリネタにしているのか気になったので、画面を覗き込む。
 画面に表示されているのはテキストエディタだった。なにやら文章が書いてある。なになに……



 深夜の3時に目が覚めた俺は、姉が目の前にいることに驚いた。
 何をしにきたのかと問うと、
 
「たまには一緒に寝ましょう」

 という応えが返ってきた。
 起きるのがめんどくさかった俺は姉が眠れるよう、スペースを作った。
 すると、姉が子供のころのような無邪気さで俺の体を抱きしめてきた。
 姉のふくよかな胸と、温かな体温を感じているうちに、だんだん欲望が強くなってきた。
 たまらず、姉の胸に手を伸ばす。揉むと手を動かしたとおりに形を変える。
 姉の顔を見る。その表情に拒絶の色はなく、より強くしてほしいと訴えていた。
 ブラをめくり、直に触ると姉は声を漏らした。その声は俺をさらに興奮させる。
 力任せにもみしだくと優しくしてほしい、と言われた。
 誘っておいてそれはないだろう。さらに激しく乳房を弄る。
562埋めネタ:2007/04/23(月) 14:23:37 ID:zZqFCD+j

 そうやっているうちに、溜まりだした欲望をこらえきれなくなった俺は、
姉の乳房に肉棒を挟みこんで強くしごいた。
 そして、たっぷりと姉の顔と胸に精液を放った。
 射精した後も俺の肉棒は衰えることなくそそりたっていた。
 目の前には姉の白濁液にまみれた、あられもない姿があった。
 嫌がる姉のショーツを脱がし、一気にその体を貫く。
 腰を動かしだすと姉は嫌がるそぶりを見せず、自分から腰を振ってきた。
 我慢の限界を迎えた俺は姉の中に精液を注ぎこんだ。
 
 二度の射精では俺の欲望はおさまるはずもない。
 続けて、脱力した姉の腰を掴み後背位の体勢にして挿入する。
 腰を打ち付けるとまるで犬のような声を上げだした。
 いつも俺をからかっている姉から想像もできないような姿に、ますます俺の肉棒は盛る。

「ああ、あ、いっちゃう! いっちゃう! いっちゃうよぉ!」
 
 姉の絶頂が目前に迫っていた。
 その声を聞いて、俺は肉棒を引き抜いた。

「あぁっ! いやぁぁ! 抜いちゃだめぇぇぇ!」

 切なげな叫び声をあげ、俺に再度挿入するように懇願してきた。
 俺は姉に条件を出した。そうして欲しければ、これから俺の性奴隷になれ、と。
 姉はその言葉を聞いていないようで、何度も首を縦に振っていた。
 その行動がこれから先にどんな結末をもたらすのか、考えもせずに。
 姉の中に再度挿入すると、歓喜の声があがった。
 
「いいよぉ! だしてっ! どろどろの精液、全部ちょうだい!」

 射精の感覚をとらえて、深く腰を突き入れる。
 そのまま、姉の子宮に向けて子種を放つ。
 
「ああ、あああああぁぁぁぁぁっっ!!」

 一際大きな叫び声が響き、のけぞった姉の体はベッドに倒れ伏した。
 姉を犯しているという自覚と、いままで自身に課していた近親相姦を破ったという事実。
 横たわる姉の白い体を仰向けにして、衰えることを知らない肉棒の先端を秘所にあてがう。

「もう、堪忍して……お願い……」

 そう訴える姉の姿は、さらに俺を欲情させる。
 腰を打ちつけ、再度姉の体を貪る。
 姉の体は豊満な乳房を上下させながら、俺の欲望を受け入れている。
 そうして、俺は姉の体を日が登っても、次の夜が来ても貪り続けた。
                              
                                埋め』
563埋めネタ:2007/04/23(月) 14:24:50 ID:zZqFCD+j

 ふくく、くく……あははははははははは、うぁははははっはぁ!

 そう、そういうことだったの。
 近頃私に近寄ろうとしなかったのは、この妄想を私に叩きつけてしまいそうな自分を抑えるためだったのね。
 ふくくくくく。本当、おかしくて嬉しくてたまらない。
 まさか弟も私と同じ事を考えていたなんて、ね。
 
 この妄想を叶えるためには……ベッドに忍びこんで抱きつけばいいのね。
 すぐにまぐわいたい気分だけど、やめておくわ。
 だって、弟の性欲を全部受け止めるなら、私もいろいろと準備しなきゃいけないし。
 うふふ……赤ちゃん、できちゃうかな?

「う〜〜ん……埋め……早く、埋め……」
 
 やん、そんなに急かさないでよ。焦らなくても、すぐにできるわよ。
 明日から毎晩、夜通し愛し合いましょう。そうしたら、来年には……うふふふふ。
 あはははははははは、あぁっははははははははははははははは!

 おわり
564名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 23:49:35 ID:ZSuPWYcO
それでも、好きなんだよ

夜の道でぽつんと呟く。昼間はそれなりに人通りのある道も今は私と月しかいない。
独り、2人、2人ぼっち。あなたと私。白い月に話しかけながら私は笑う。
悲しいような、寂しいような。それでいておかしくてたまらない。
不思議な気持ちで私は笑う。

好きなんだよ どうしても

足は自然にステップを踏む。ワン、ツー、スリー、アン、ドゥ、トロワ。
一緒に踊っていただけませんか?私の愛しい人が私にそう手を差し伸べることは無い。
私は独りで月の光と踊るから。あの人の相手は出来ないから。
でたらめなステップでワン、ツー、スリー、アン、ドゥ、トロワ。

好きなのに

月は私を見ているけど。私も月を見ているけど。私が見たいのは月じゃない。
目をつぶれば愛しい人の顔。目を開ければ柔らかな月の光。
手を伸ばせば届くところにあっても、決して触れることは無い。
涙がすっと一筋流れた。

「悪魔でもいいわ。あの人を私にくれるなら何でもするのに」
「本当ですか?」

振り返ると白いコートの背の高い男性が立っていた。黒いシルクハットを被っている。
奇異な存在であるのは確かだったけど今の私には普通に見えた。
きっと月が見せた幻だ。

「ええもちろん」

私はにっこり微笑んだ。
565名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 23:51:35 ID:ZSuPWYcO
↑病めてる?
566名無しさん@ピンキー:2007/04/24(火) 04:39:12 ID:1ATfAhUY
>>565
何か綺麗な病み方でつね
続きキボン
567名無しさん@ピンキー:2007/04/24(火) 12:22:33 ID:qGV5j/89
こいつでとどめだ!ヤンデレスレよ!

埋                  
め                  
え                  
ぇ                  
!                
568名無しさん@ピンキー:2007/04/24(火) 12:40:06 ID:cDOciTsT
残念だが最後のレスは私がいただいた。
病み埋め病み埋め…
569名無しさん@ピンキー:2007/04/24(火) 14:18:13 ID:xNL7phBJ
ふふ、わたしを忘れて貰っちゃ困るわね
これで最後よおおおおおおおおおおおおおおおお
埋めええええええええええええええええええええええええ
570名無しさん@ピンキー:2007/04/24(火) 14:36:20 ID:tdEgibxf
わはわは
571名無しさん@ピンキー:2007/04/24(火) 14:48:19 ID:cDOciTsT
病み埋め病み埋めキモ姉は俺の嫁…
572名無しさん@ピンキー
   <三>=========∩===========
              /=l   ∩     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
            .///     |=l   ∠  待ってよ〜ン
           / '/^'`'"l  | ll|    \_______
          ,./ ソ'(^)''lノ ./Y/ ハァハァ
          ( ノ/*´Д`)ン. /
          | コ-v-l^ /
    - =    |ヽ  Y /
          |ヲー/l⌒l
 = 三       |ー/ ./ ̄|
           ヽ ノ | /
    ニ      | ゙ー'| L
           |  /(_  ヽ
           ノ__/   ゙し'             キモイヨー
      ( ( /ヽノ 彡         ((( )))   / ̄ ̄ ̄ ̄
        / /          三   ( ´Д⊂ヽ < なんで追ってくるんだよ〜
       / ./           三   (つ  ノ    \____
       ( `ヽ        三    人  Y
       ヽ、_)              し'(_)