ハケンの品格でエロ2

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1名無しさん@ピンキー
ここはドラマ「ハケンの品格」のエロパロスレです。
とりあえずエロじゃなくてもカモンベイベー
職人さんの投下お待ちしております
2名無しさん@ピンキー:2007/03/19(月) 08:02:34 ID:Q6r5S2Ph
おらおら、WWF(World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金)の
愛くるしいパンダ様が>>2ゲットだぜ! 頭が高いんだよ、ボケ!

.         ,:::-、       __     >1 クソスレ建ててんじゃねーよ。ビンスみてーに裁判で潰しちまうぞ。
    ,,r   〈:::::::::)    ィ::::::ヽ    >3 >>2ゲットも満足にできねーお前は、俺の着ぐるみ着てプラカード持ってろ(プ
  〃   ,::::;r‐'´       ヽ::ノ     >4 お前はカキフライのAAでも貼ってりゃいいんだよ、リア厨ヒッキー(プ
  ,'::;'   /::/  __            >5 汗臭いキモヲタデブは2ちゃんと一緒に人生終了させろ、バーカ。
.  l:::l   l::::l /:::::)   ,:::::、  ji     >6 いまさら>>2ゲット狙ってんじゃねーよ、タコ。すっトロいんだよ。
  |::::ヽ j::::l、ゝ‐′  ゙:;;:ノ ,j:l     >7 ラッキーセブンついでに教えてやるが、俺はストーンコールドが好きだぜ。
  }:::::::ヽ!::::::::ゝ、 <:::.ァ __ノ::;!     >8 知性のねーカキコだが、お前の人生の中で精一杯の自己表現かもな(プ
.  {::::::::::::::::::::::::::::`='=‐'´:::::::::/      >9 つーか、自作自演でこのスレ盛り上げて何が楽しいんだ?
  ';::::::::::::ト、::::::::::::::i^i::::::::::::/      >10-999 WWEなんか見てるヒマがあったら、俺に募金しろカスども。
.   `ー--' ヽ:::::::::::l l;;;;::::ノ       >1000 1000ゲットしたって、WWF時代の映像物に販売許可は出さねーよ。
        `ー-"
3名無しさん@ピンキー:2007/03/19(月) 15:58:12 ID:cSpeh0P+
それが何か?
4名無しさん@ピンキー:2007/03/19(月) 18:21:44 ID:th+WSPLV
スレ立て乙〜
5名無しさん@ピンキー:2007/03/19(月) 23:59:24 ID:ycBE9K02
スレ立てお疲れ様ですー!
Thanks>>1
6名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 02:08:14 ID:uXk5IQhy
>>1乙華麗!
7嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:27:10 ID:sZ5lhQ/G
ちょっと今回も無駄に長いので新スレの方に落とさせて
いただきます。

東海林×春子でエロありです。
タイトルは「愛の流刑地」ですが、あの愛の流刑地とはまったく
関係ありません。
ただ、左遷された名古屋を流刑地と見立てて、とっくりと愛を・・・
みたいにしてみました。
ではよろしくお願い致します。
8嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:28:10 ID:sZ5lhQ/G
「愛の流刑地」




とっくりが福岡へ発って翌日、荷を降ろし積み込んでもう一時間足らず
で帰ってくるだろう。


あいつなら・・・たぶん・・・、いや絶対に社長賞を
俺に取らせるぐらい分けないんだろうな・・・、と俺は物思いにふける。

いいのか・・・俺!
好きな女にそこまで言わせて!!
正直死ぬほど嬉しかったけど・・・。
でも本当なら俺が自分の力で本社に返り咲かなきゃいけないのに。

もうすぐ夕方の六時・・・、オレンジ色の空を見上げ自分の情けなさを身にしみて
感じた。
「はぁ〜、情けないな俺」
長い長いため息をつく。
「・・・なにが情けないんですか?」
突然後ろから声をかけられ、その声の正体に僅かながらの気まずさで恐る恐る俺は
声の主に振り返った。
9嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:30:58 ID:sZ5lhQ/G
2 

「と・・・とっくり」
「天パが悩むとますますクルクルまいちゃいますよ」
とっくりの口から、いつもの嫌味が飛び出す。
「あのな〜、お前ってヤツは・・・・・・」
ムカッとしたが、それを堪えて再び、ため息をついた。
これ以上、とっくりに情けない俺の心情を吐露したくなかったから。
「・・・・・・」
いつものように喧嘩に乗ってこない俺を不思議に思ったのか怪訝そうな顔で
ちろりと俺を見て背を向けた。
「・・・何を悩んでるか知りませんが、あなたは情けなくなんかないですよ」
背を向けたまま、とっくりが言った。
「・・・とっくり」
ちょっと涙が出そうになった、嬉しくて・・・でもやっぱり少し情けなくて。
そしてそのまま、とっくりを後ろからぎゅっと抱きしめようとした。
「セクハラですよ、東海林所長」
するどく何かを察知したとっくりが俺の行動を封じる。
「おまっ・・・!!セクハラっていうなよ」
「会社で業務時間中に女のハケンを後ろから襲うことはセクハラ以外になんと言えば
よろしいんでしょか?東海林所長」

「まったく・・・ああ言えばこう言う。へらず口っていうのはこのことだな!!」
抱きしめようとしていた行き場のなくなった両手をグッと握り締める。

ああっ・・・、また泣きたくなってきた。
まったく涙が出そうだよ。

10嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:31:36 ID:sZ5lhQ/G
3 

鼻の奥がツンとして来た時、タイミングよく終業のチャイムがなった。



「東海林所長・・・、終業時間ですが」

とっくりが毎度のごとく切り出した。

―――ああっ解かってるよ、残業はしない主義なんだろ

心の中で毒づく。

「・・・・・・帰っていいぞ」
そしてぶっきら棒に俺はとっくりに言い捨てた。
その言葉にとっくりは少し悲しそうに眼を細めたような気がした・・・どうせ
俺の気のせいだろうけど。

―――今、俺は完全にすねている、だからさっさと帰ってくれ

「いえ・・・、ぞうじゃなくてお願いがあるんですが」
予想に反した答えが返ってきた。

とっくりのありえない「お願い」という言葉に俺は目を剥いた。
げんきんな俺は今まですねていた心が急に浮上した。
「なっ・・・なんだ!?」
ここは頼りになる男というのをとっくりに印象付けなければ・・・、と
密かに気合を入れるあまりにとんでもない声が出てしまった。
「・・・声、裏返ってますよ」
「ううっうるせーよっ、でなんだよお願いってッ!!」
とっくりの鋭い指摘が痛い。そして怒鳴るようにとっくりに再度「お願い」を
聞いた。
「・・・泊めて欲しいんです」
11嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:32:22 ID:sZ5lhQ/G
4 

・・・は?今なんとおっしゃりました、だいぜんしゅんこさん
泊めて欲しい?
止めて欲しい?
・・・・・・ホッチキスで留めればいいのか?

体も思考も固まった俺にとっくりはため息をつく。

「なんの用意もせずにここに来てしまったので住むところもまだ決まって
おりませんので、今週中には何とかしますのでここの営業所の仮眠室に
泊まらせていただきたいんですが?」
「・・・仮眠室にか」

・・・なんだ、ここの仮眠室にね、ハハハ、ノープロブレム。
好きにしたらいい・・・・・・ってオイ!!
それはイカンだろうっ!!ここは荒くれモノのトラックの運ちゃん達も
使うんだから、いくらとっくりでも飢えた狼の群れに放り込まれるような
もんだろうがッ!!
「アホかオマエっ!!そんなの駄目に決まってるだろう」
「何故ですか?」
不機嫌そうにとっくりは怒鳴り始めた俺を一瞥する。
「おまっ・・・頭いいのに頭悪いヤツだな」
「シツレイな」
「わかんないのかよっ!嫁入り前の若・・・くはないか、女がごっつい男も
寝泊りするところで寝泊りしたらアブネーだろうがっ!!」
俺は察しの悪いとっくりにイラつく。
「確かに・・・若くはない女ですが、そんな方達のあしらいには慣れてますから」
「そんなことじゃなくて・・・」
こともなげにとっくりは言葉を続ける。
「それに・・・襲ってくる蝿はあなたくらいなもんですよ、トウカイリン所長」
12嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:33:21 ID:sZ5lhQ/G


さすがの俺も臨界点に達した。
久しぶりに聞く憎まれ口が痺れたのは昨日までだ。
「バカヤロウっ!!好きな女をそんなところに寝かせられるわけねーだろうがっ!!」
今までにないくらい真剣にとっくりに怒鳴った。
そんな俺にとっくりはビクリと肩を震わせる。
「・・・心配なんだよ」
俺はそう言うととっくりの細い腕を掴み、ずんずんと歩き出した。


営業所をでて、お互い無言のままで、そして俺はとっくりの腕を掴んだまま離す
ことなく歩く。

十分ほど歩いて俺はあるマンションの前で足をとめ、そのままそのマンションの
エントランスへ足を踏み入れる。



ブルーのドアに鍵を差込み、部屋へととっくりを招き入れる。
「・・・・・・」
無言のままでとっくりは招き入れられた部屋を見回す。
「・・・今日からここがあんたが住む部屋だ、ちなみにここは俺の部屋でもある」
「・・・・・・」
「おいッ、なんとかいったらどうなんだ」

相変わらず無言のままでなんのリアクションもないとっくりに焦れる。
たぶん拒否されることは解かっていた。
だけど俺はかすかな期待を拭い去れずに息をとめてとっくりの返答を待った。
13嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:34:13 ID:sZ5lhQ/G


「・・・・・・お世話になります」

・・・んぁ?空耳か
自分の耳がおかしくなってしまったのか?
おそらく恐ろしくバカ面をとっくりに晒しているんだろう俺。
あきれた顔のとっくりがため息をついてこっちを見ている。

「本気か―――?」
「そのバカ面どうにかしてください」
頭がパニックでイヤミを言われても理解ができない。
「今―――、お世話になりますって言ったか?」

言ったか?言ったよなっ!!とっくりの肩を掴んで確認するように強く
揺さぶる。
「な〜んて冗談でした・・・なんて今更言っても受け付けないらなッ!!」
嬉しさのあまりに俺はとっくりの細い体を折れるほど力いっぱい抱きしめた。


いけね・・・マジで涙出てきた。
嬉しくて泣くなんて大人になって始めてだ。

とっくりに涙を見られたくなくて、抱きしめたまま離さない俺の背中にとっくりの
手が回される。
「バッカじゃなかろうか」
耳元でとっくりが色気もそっけもないことを囁いた。
俺にはそんな言葉すらもひどく甘い言葉に聞こえる。

「ハハハ・・・相変わらず痺れるなぁ」
鼻腔を擽るとっくりの甘い香りを胸いっぱいに吸い込む。

こっぴどく振られに振られて、もう望みもないって思ってたのに・・・・・・
俺は・・・
俺は・・・

幸せだ。
14嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:35:11 ID:sZ5lhQ/G


「俺・・・もう、お前のこと好きすぎて・・・、どうにかなりそうだ」

キスがしたくてどうしようもなくなって、俺は泣いてる顔を隠すことなく
とっくりに向き合った。
「・・・いいよな?」

今度こそ蝿にはなりたくないからとっくりに了承をとる・・・、まぁ拒否されても
止められないけど・・・・・・な。

返答はない・・・・・・、その代わりに俺の好きなとっくりの長い睫に縁取られ
た理知的な瞳がゆっくりと閉じられる。

俺の手でとっくりの首裏を抑えて、 逃がすまいと舌先で深いキスを促がした。
俺は恐る恐る自分の舌を差し込むと、最初は軽く・・・段々と深く

融けてしまいそうなキスをどの位交わしていたのか・・・、名残惜しむように
銀糸をひいて唇を開放した。
俺はとっくりの顔を覗き込む。
駄目もとで、「このまま寝室に行くか?」ととっくりの耳元に吹き込んだ。

とっくりのほんのりとピンク色に上気した頬が、カッと赤く変わった。
「・・・・・春子」
普段は呼ばない名前を更に耳元を擽るように呼んだ。

だけど今までおとなしく俺の腕の中に納まっていたとっくりがもがき出す。


―――やっぱり、まだ駄目か。

諦めてとっくりを開放してやって、自分の性急さに苦笑する。
「悪かったな・・・・・・」
とっくりの頭をくしゃりと撫ぜて、自分を落ち着かせようとキッチンへ
自分ととっくりの分のお茶を入れに背を向けた。
15嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:36:05 ID:sZ5lhQ/G


「・・・昨日・・・からお風呂入ってないから・・・」
開放されたとっくりは真っ赤な顔で俯いて聞こえるか聞こえないかの言葉をいった。

―――だから・・・、えっ?俺の都合のいいように解釈していいのか?

俺は「ぐりん」という日常では聞こえない効果音が聞こえるくらいの勢いで
とっくりを振り返った。

「「・・・・・・」」
そしてお互い無言のまま見つめあうことしばし・・・すごく長い時間に感じる
この沈黙。

先に口火を切ったのはとっくりだった。
「・・・だからお風呂貸して下さい」
「お・・・おぅっ、風呂は入れよ」

今、俺どんな顔してんだろ?
多分、顔が熱いから赤い顔してんだろな・・・、でもって嬉しくってニヤけてる
な・・・絶対!!

とっくりにワザとぶっきら棒にタオル類を差し出して再びキッチンへ逃げるように
引き込んだ。


パタンとバスルームの扉が閉まる音がきこえた。


ああっ俺・・・血が沸騰してもう死にそうだ・・・

「ああっ・・・どうしよ俺、髪の毛巻いてきた」
自分の天然パーマの髪の毛をおもいっきりかき回す。

そして俺はとっくりが風呂に入ってる間、あっちへうろうろ、こっちへうろうろ
自分でも「落ち着きのない男だな」と思うくらい落ち着かなかった。
16嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:36:49 ID:sZ5lhQ/G


それから一時間
うろうろしつくして精神的に疲れた・・・、なのにとっくりはまだバスルーム
から出てこない。

ひょっとして俺のことが嫌で逃げる口実で「風呂」なんて言ったんじゃないだろうか
と嫌な考えが頭の中をめぐり始める。

バスルームの扉の前で考え込むこと数分・・・。
俺は突入することにした。

もしかしたら倒れてるかも知れないし・・・、この部屋はユニットバスだ。
だからトイレだといえば許されるかも・・・しれない。

意をけっしてドアノブに手をかけようとしたところ、俺が触れる前に勝手に
ドアノブがガチャリと回った。

でてきたのは石鹸のいい香りのする濡れ髪が色っぽい、俺のパジャマの上着
だけを身に着けたとっくり・・・・・・。




これは・・・来るッ!来る来るっ!!
下半身に来るッ!!


俺のパジャマを着てるってだけでもヤバイ
ぶかぶかな首周り、普段見れない鎖骨が・・・
しかも下は着ていないときた。
すらりとした美脚がダイレクトに俺の目に飛び込んでくる。

極めつけは、風呂上りのけだるい表情と上気した頬

なんだこの色っぽさはヤバすぎるよ、これはもうとっくりが泣いて嫌がった
としても俺は止められない。
17嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:37:36 ID:sZ5lhQ/G
10

「お風呂・・・ありがとうございました」
「・・・とっくり」
俺はそのままとっくりを抱きしめた。
風呂に入る前もいい匂いだったけど、今は俺と同じシャンプーの香りがする。

その香りだけでとっくりが自分のものになったような気がした。

「・・・寝室・・・・・・、行くか?」
そして今度こそ・・・と意を決してとっくりの耳元で囁いた
「・・・・・・」
とっくりは無言のままこくりと頷いた。
「さんざん焦らしたんだから、覚悟しろよ」
はやる気持ちを抑えなければ・・・、と思うのだが抑えられるはずもなく、
俺はとっくりを抱きかかえて寝室に向かった。
18嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:43:38 ID:sZ5lhQ/G
11

「もう俺のモノだからな・・・とっくり」


俺は衝動のままにベットへととっくりを押し倒した。
そしてその白い喉もとにすがりつく。
胸元を強引に広げると、真っ白な乳房が月明かりに浮き上がる。

大きくはだけたハジャマから覗く白い乳房。
まぶしく浮き上がるその膨らみがふるふると上下に揺れる。
「もう、離さない。」
とっくりの口元にかかる髪を指でずらしやり、顔を近づけ、唇を塞ぐ。
ふくよかな気持ちよさに思わずもっと吸い付きたくなる。
「もう俺のモノだからな・・・とっくり」
何度も何度も・・・自分に言い聞かせるように俺はこの言葉を繰り返した。


「ん・・・・ぅ」
俺の舌がとっくりの首筋をたどりそ胸元の愛らしい突起を攻め立てた。
「え…な…ああっ…ン…」
とっくりが吐息を漏らし始めたのを合図に 下着の隙間から手を差し入れ
そっと茂みの下をこするととっくりはひくん、と身を跳ね上げた。
「ぁあっ・・・そこ、だめ」
何度も尖りをこすると、その度にひくん、ひくんと反応する。
自分の行為に快楽を覚えるとっくりが愛しくてたまらない、いつもは見せること
のない表情を今・・・俺だけが見ている。
19嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:44:22 ID:sZ5lhQ/G
12

―――たまんねぇ




俺は限界に近い状態のとっくりの肉芽をはじくように快感を促してやる。
「いーーぁぁ・・・・、あぁっ」
迎えた絶頂感に戸惑いの表情を残したまま、とっくりは震える手で口元を押
さえてヒクヒクと太股を痙攣させている。
とっくりの潤んだ瞳が俺を見ている。
そして欲望はますます膨れ上がってくる。
すぐにでも入れたいのを抑え、足を大きく開いて下着をめく、舌を這わせる。
「あ、あああ、ん、あッ・・・あああっ・・・」
「・・・ん・・・、は・・るこ」
わざとじゅる、じゅるっと卑猥に音を立てて聴覚からも犯す。
「・・・やめ・・・ああっ!」

舌でヒクつく蜜壷の入り口と陰核とを交互に弄ばれて、とっくりはあらげもなく
声をあげる。
「溢れてくるぜ・・・どんどん」
「ひあぁっ、言わな・・・いで・・・!」
「・・・春子」
「んぁ・・・・っ」
再びとっくりが絶頂を迎えたのを確かめると、俺は今度は指を差し入れた。
食いつくようにねっとりと締め付けてくる膣の感覚にますます興奮が高まる。
しかし、いましばらくの我慢、となんとか耐える。
「もっと感じてくれ・・・春子」

手前へクイクイと角度を変えて弄ると、とっくりは体をくねらせる。
そして俺を探すようにとっくりの腕が伸ばされて、俺は指を抜いてその腕に捕ら
えられてやる。
そのしぐさが可愛くて自分も限界を感じ、ゆっくりと自分の杭をとっくりの中へ
埋め込んでいった。
「ぁぁ・・・・・はぁぁ・・・ん」
20嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:48:37 ID:sZ5lhQ/G
13

腰が自然と動いてしまう。

落ち着け・・・俺と思っていても 濡れていたとっくりの中は食らい付いて離さな
いほどに締め付け、俺は我を忘れて繰り返し繰り返し、夢中で腰を打ちつけた。
「・・・ぁぁあああッ!!」
とっくりも絶えず甘い吐息を漏らしている。
お互い・・・あともう少しというところで、俺はとっくりから「すき」という
言葉を聴いていないことに思い当たった。
それをとっくりの口から聞きたい・・・、そして動きを止める。
「やぁ・・・なんで?」
とっくりが恨めしそうに俺を見上げた。

「・・・俺のこと好きか?」
「・・・・・・」

無言・・・ってなんだよ、むっとしたが再度とっくりを見つめた。
「・・・好きだよな?」
「・・・・・・」

無言
でも、次の瞬間とっくりが俺の上に馬乗りになってきた。
「お・・・ぉい、何だよ」
突然のことに焦った俺は素っ頓狂な声をあげてしまった。
「あなたは・・・そんなこともわからないんですか?」
先ほどの甘い雰囲気は何処へやら・・・とっくりは俺を睨みつけてきた。
21嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:50:09 ID:sZ5lhQ/G
14

―――わかるよ・・・、わかるけどもさ

「俺はお前の口から聞いてみたいんだよ」
「・・・そんなことも分からないクルクルパーには行動で思い知らせてあ
げます」

これを形勢逆転というのだろうか・・・、まさにその言葉がぴったりだ。

俺の上に馬乗りになったとっくりが俺に思い知らせるために淫らに動き出す。

俺はとっくりに上から蹂躙されるのを楽しみながら、ただじっとその振動を味わう。
「ん、んっ…んっんっ…あっ…は、あっ、はぁっ……っん!」
腰を揺らし、 堪えきれずに漏らしてしまう声を塞ごうと手首で口元を押さえていたが、
徐々に気持ちよさに我を忘れて乱れ始めていた。
「んっ!ん…っ…ふはっ、はあっ…あっ……ああっ…」
「・・・とっくり」
天を仰ぎ、胸を弓なりに反らせ喉仏を露わにしてのけぞり、とっくりは、はあっ!と
高く啼いて両手を後ろに付いた。
その腕でしなやかな自らの体重を支え、腰を高く跳ね上げては下ろし、また引き抜く
寸前まで引いては押し付ける。
もはや理性が吹き飛んでしまったかと思うほど、夢中で腰を動かすとっくり・・・。
想い伝わってくる。
22嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:50:47 ID:sZ5lhQ/G
15

もっとその淫らな部分が見たくて、ぐいととっくりの膝を立たせた。
俺も後ろに手をつき上半身を起こして、じっくりと舐めるように眺める。
じゅぶじゅぶと液を絡めながら繋がる卑猥な部分が丸見えになる。
その様子にぶるりと武者震いがして興奮が高まった。
「あ・・・んぁ・・・はぁぁぁん」
「・・・はる・・・こっ」
下から動きを手伝って、ぐい、ぐい、と突き上げる。
「・・・ひぁ・・・・っバ・・・カ」
「くっ・・・バカってなんだよ」
仕返しとばかりに奥まで突いたものを更にぐ、ぐ、と押し上げる。

「ひぃぁぁーーぁっ・・・あぁっ」
とっくりがひくひくと震えて崩れてしまい、絶頂へと達したことを知らされた
俺は今度は上から押さえこんだ。
膝を抱え上げて局部を大きく広げさせ、どくどくと膨れ上がっていく欲望を奥まで
グッと突き進める。
「も・・・ぅだめぇ・・・しょう・・・じ・・・しょ・・・」
「だめじゃねぇだろ・・・、ホラ」

首筋に這わせる舌を乳房へと下ろし、そのコリコリと固くなっている頂きにキリリと
噛み付いた。
「ぁあああっ・・・っ」
「なぁ・・・?好きって言ってくれよ」
とっくりの何度目かの絶頂を確認して俺は半身を起こし、塊を一気に押し込んだ後、
引き抜き、限界を迎えていたモノをとっくりの白い肢体に白濁した精液を解き放った。
23嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:52:06 ID:sZ5lhQ/G
16

激しい情事で荒い息を整えながら、とっくりの隣にごろんと寝転がる。
「大丈夫か?」
そしてとっくりを気遣うようにゆっくりと抱き寄せた。
相変わらずとっくりは何も言わないまま小さな頭を俺の胸に擦り付けてくる。


―――しばらくはこのままでも・・・でも絶対いつか「好き」って言わせてみせる
からな覚悟しとけよ。

そんなことを思いながら、俺はクスリと笑みをもらした。
「なんですか?」
とっくりが怪訝そうに俺の顔を伺う。
「いや・・・相変わらず、お前って言動と行動がちぐはぐだと思ってさ・・・」
俺は笑いながらとっくりの形のいい鼻を摘んだ。
「ふぁにふるんでふか・・・」
「・・・可愛いなぁと思ってさ」
そういうととっくりの顔が朱に染まった。

―――ホント・・・、可愛いな。
こんな強情で態度のデカイ女・・・、可愛すぎて俺だけしか扱えねぇよ

とっくりの指が伸ばされて俺の髪に絡む、暫く弄んで軽く引っ張られた。
「イテッ!」
俺は抗議しようとしてとっくりをにらみつけた。
「・・・好きですよ」
とっくりの口から出た意外な言葉に、その勢いをなくす。
「・・・・・・」
「・・・好き・・・ですよ、あなたのそのクルクルパーマ」
そしてとっくりの顔に花がほころんだ様な笑みが浮かんだ。


俺は言葉も忘れて、その笑顔に見入った・・・。

この流刑地で・・・、俺は暫くはやって行けそうだ。
24嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:52:55 ID:sZ5lhQ/G
17 

オマケ

「・・・なぁ、腹へらねぇか?」
情事の後、暫く寝転んでいたが考えてみれば夕食も食べていない。

激しい運動した後だしさすがの俺も腹が減って死にそうだ。
それはとっくりも同じだったようで、こくりと頷いた。

「・・・やきそばパンならあるけど・・・くう・・・」
「そんなもの食べません」
言い終わる前に間髪いれずにつっこみが入った。

「じゃあ、何食うんだよ?外行くか」
「・・・・・・」
とっくりは無言で立ち上がり、自分の荷物から何かを出してきた。
「なんだそりゃ」

何をするんだと不思議に思いながら近づく。
「おわっ!!」
次の瞬間、ギラリと良く研がれた包丁が俺の眼前に突きつけられた。
「あなたが河豚河豚言うから食べたくなって帰りに仕入れてきました」
「は・・・?」
「ですから今から捌きます」

―――はぁぁぁ〜?捌くってオイ・・・そういえば河豚調理の資格持ってるって
言ってたよな・・・

「ハハハ・・・」
もうなんでもありなんだな・・・もう驚かないぞ、俺は・・・。

そうこうしている間に、家にあった粗末な皿に河豚の鶴が舞い、暖かそうな
てっちりが湯気をたてていた。
唐揚げも旨そうだ。
25嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:53:34 ID:sZ5lhQ/G
18

「どうぞ・・・・・・」
「いただきます」
二人で始めて同じ釜の飯を食べる。

「くぅぅぅ〜、旨くて痺れるな」
「ばれましたか・・・、死なない程度に毒入れときました」
ぐふっと息が詰まって涙目でとっくりを見る。
「・・・冗談ですが・・・何か?」
「あんたの冗談は洒落にならねーんだよっ!!」



ああっ、俺は幸せ者だ・・・このまま死んでもいいくらいだ。
ただし、河豚毒では死にたくないな。



終わり
26嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 18:56:26 ID:sZ5lhQ/G
長々とお付き合いありがとうございました。
東海林目線だとどうもギャグを入れないと気がすまなくなってしまって
・・・くだらないことばっかでトホホです。

私のハケン熱はまだまだ冷めそうにありません。
この2スレ目も職人さんでにぎわう事を願ってやみません。
27名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 18:58:39 ID:LJdkQGhQ
GJ!
28名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 18:59:29 ID:w0U0jTYR
>>26
GJ!
二人とも可愛いすぎてかなり萌えました!
29名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 19:13:35 ID:8q6+Q5a1
>>26
GJGJGJGJ!!!!
ありがとうございます…
きちんと話としてまとまってて面白く尚且つエロい!
本当ごちそうさまでした。
今後も期待しております!
30名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 19:18:10 ID:w1j9sXQl
嫉妬さんGJ!
萌え死ぬかとおもた…(*´▽`*)
>俺はとっくりを抱きかかえて寝室に向かった。
お姫様だっこと思ってもいいですか!w
31嫉妬深い蜂:2007/03/20(火) 19:25:02 ID:sZ5lhQ/G
読んでくださってありがとうございました。
ちなみに30 さんのご指摘どおり、「お姫様だっこ」でございます。
32名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 19:31:35 ID:ZrWgjjgi
>>31
GJ!最高でした。あの2人っぽい!

正直2スレ目はどうかな?(最終回も迎えていたし)
って思っていたんですが、そんなことはなかったですね。
嫉妬深い蜂様ありがとうごさいます!
33名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 20:20:31 ID:uduck956
GJ!!
2人らしい掛け合いに笑ってしまいました。
ヤッパリあの2人にはギャグがないと(笑)
嫉妬深い蜂様ありがとうございました(^O^)
34名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 20:25:24 ID:kGmIRmOq
>>31
GJ!禿もえた

35名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 20:38:51 ID:UJwv7RgA
GJ!!
東海林が春子の鼻摘む・・・ここ凄い萌えました!
東海林のパジャマを着る春子も可愛いですね。
ありがとうございました!楽しかったー。
36名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 20:53:03 ID:XMCm6CNJ
GJGJGJGJGJGJGJGJ!!!!!!!!!!

「・・・好き・・・ですよ、あなたのそのクルクルパーマ」
この後に及んで素直になれない春ちゃんに禿萌えだああああああ
37名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 21:33:37 ID:VT+uywiG
春子と東海林が大好きです!!!(≧▽≦)
職人さん、いつも本当にありがとうございます♪♪♪♪
38名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 22:05:31 ID:jKp5eeoa
萌 え 氏 ん だ ! !
職人さん本当にGJです
39不似合いな手:2007/03/20(火) 23:12:35 ID:4qmeTCbL
いやー蜂さん、笑うやら萌えるやらほのぼのするやら、
お見事でした!!!有難うございました!
40名無しさん@ピンキー:2007/03/21(水) 00:27:44 ID:go9RIzCL
嫉妬深い蜂様、
こんな素敵な春子×東海林の濃い〜ラブは投下有難う!


41名無しさん@ピンキー:2007/03/21(水) 01:43:23 ID:MbtvdA4W
「ふぁにふるんでふか・・・」

 か、かわいいw
42名無しさん@ピンキー:2007/03/21(水) 02:19:17 ID:/iKwRLVw
嫉妬さん相変わらずグッジョブすぎです!
萌え死んだ…

東海林の台詞もいつもツボですーww
43名無しさん@ピンキー:2007/03/21(水) 02:51:08 ID:ql+VKsj6
嫉妬深い蜂様!GJすぎます!
ツボは情事の最中に「バカ」と言う春子と、
「ふぁにふるんでふか・・・」(これは真顔で言ってるはず、と勝手に妄想)です。

それにしてもエロももちろんですが、二人の会話のテンポだったり
笑えるポイント、文体や話の流れとめちゃくちゃ素晴らしいですね。
2スレ目も沢山お話読みたいです!
44名無しさん@ピンキー:2007/03/21(水) 03:31:39 ID:YDslB5Lj
ヤバイ 萌 え 死 ん だ あ あ ぁ 〜 ウヒョー
前スレの作品もろもろ、職人さんGJ!
嫉妬さん、最後のフグネタのお約束、笑いましたw良かったッス〜
45嫉妬深い蜂:2007/03/21(水) 14:04:29 ID:yB+qzGzv
皆様・・・GJありがとうございました。
ホントはエロ部分をお風呂で・・・と考えていたのですが、ユニット
じゃあやりにくそうだったので急遽、急ぎで書き換えたものだったので
どうかと思っていたのですが読んでいただけて嬉しいです。
また機会があれば投下させていただきます。
46名無しさん@ピンキー:2007/03/21(水) 19:35:46 ID:qNTEniHR
きもい・・・・
47名無しさん@ピンキー:2007/03/21(水) 22:53:09 ID:1XlITcF7
製作中ですが、ログ置き場作ってみました。

色々まずかったら言ってください。

ttp://wasabimaru.h.fc2.com/haken/
48名無しさん@ピンキー:2007/03/21(水) 23:05:05 ID:zF/sS0C7
おぉ〜乙です!ネ申だ!!
49名無しさん@ピンキー:2007/03/21(水) 23:12:05 ID:a4i0nPGQ
50名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 00:32:23 ID:7gBCw5pu
>>47さん乙です!
ありがとう

>>蜂様
まじグッジョブ!!
51名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 00:49:35 ID:i2i/NkGz
>>47
乙!
52名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 01:38:13 ID:PgRzID2R
>>47
ありがとう!乙です!!
53名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 01:52:28 ID:AMKYeGXh
>>47
スゴイ!ありがとう!
54名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 04:16:12 ID:RhcNTkw8
ふぐ食いてーw
55名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 04:17:55 ID:RhcNTkw8
ああそれと

ユニットじゃ狭さもあるけど、普通の風呂で立ったまま後ろからやるより
蓋閉めた便座で座ってやった方がはるかに楽だと思うがどうかw
56名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 10:27:41 ID:opLIoSV5
>>55

蓋閉めた上に乗って、ギコギコしてると、蓋割れちゃう可能性大。体重かける
部分を選ばないとね。ただ上に座ってるのとじゃ、訳違うから。
マジレス、スマソw
57名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 20:40:03 ID:g2cqqizP
やたらスレが伸びてるから、新作か!?とワクテカして来たら、便器のフタの話かよww
58名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 21:40:36 ID:j+c1jEdu
>>56
割れるのあれ?!
マジレスd
意外と脆いのか

そして脱線スマソ
59嫉妬深い蜂:2007/03/22(木) 22:16:39 ID:Co7GneYq
便器じゃなくて申し訳ないのですが・・・番外編を
ちょっと書いちゃいました。
東海林×春子でエロです。
ちょっと東海林がヤバイ人・・・かな?
60嫉妬深い蜂:2007/03/22(木) 22:17:17 ID:Co7GneYq
「濡れた流刑地 〜愛の流刑地番外編〜」




「・・・昨日・・・からお風呂入ってないから・・・」
開放されたとっくりは真っ赤な顔で俯いて聞こえるか聞こえないかの言葉をいった。

―――だから・・・、えっ?俺の都合のいいように解釈していいのか?

俺は「ぐりん」という日常では聞こえない効果音が聞こえるくらいの勢いで
とっくりを振り返った。

「「・・・・・・」」
そしてお互い無言のまま見つめあうことしばし・・・すごく長い時間に感じる
この沈黙。

先に口火を切ったのはとっくりだった。
「・・・だからお風呂貸して下さい」
「お・・・おぅっ、風呂は入れよ」

今、俺どんな顔してんだろ?
多分、顔が熱いから赤い顔してんだろな・・・、でもって嬉しくってニヤけてる
な・・・絶対!!

とっくりにワザとぶっきら棒にタオル類を差し出して再びキッチンへ逃げるように
引き込んだ。


パタンとバスルームの扉が閉まる音がきこえた。

61嫉妬深い蜂:2007/03/22(木) 22:17:55 ID:Co7GneYq
2 

ああっ俺・・・血が沸騰してもう死にそうだ・・・

「ああっ・・・どうしよ俺、髪の毛巻いてきた」
自分の天然パーマの髪の毛をおもいっきりかき回す。

そして俺はとっくりが風呂に入ってる間、あっちへうろうろ、こっちへうろうろ
自分でも「落ち着きのない男だな」と思うくらい落ち着かなかった。

そして我慢できなくなってバスルームのドアの前に立つこと数回・・・
四回目にしてそのドアノブを握った。

意を決して俺はドアノブを回した。

バスルームはシャワーの熱気で蒸気が立ち込めていた。
そして俺の目に飛び込んできたのは、服を着たままで風呂の縁に座った
とっくりだった。

「おい・・・・・・風呂入るんじゃなかったのかよ」
俺の問いかけにハッとした様にとっくりが顔を上げた。
「・・・・・・覗きとはいい趣味ですね」
動揺を隠したとっくりが言い放った。

「嫌・・・なのか?俺が強引だったから仕方なく・・・なのか?」

―――俺のことが嫌なんだ・・・
そう考えたら、理性が飛んでいた。
62嫉妬深い蜂:2007/03/22(木) 22:18:43 ID:Co7GneYq


「ちがっ・・・!!」
とっくりの言葉も耳に入らない俺はとっくりをバスルームの壁に押し付け
無理やり唇を貪る。
とっくりは抵抗して俺の腕から抜け出そうとしたが、所詮男の力に適う筈
なんてなく、次第に大人しくなっていった。


「ふざけないで・・・・・・」
「ふざけてなんかないよ」
俺の真剣な口調に、とっくりはそれ以上何も言えないまま俯いた。
密着したままで互いの鼓動が高鳴り、互いに感じる体温が生々しい。

俺は辛くて、怒りだしたくて、泣きたくなるような……いろんな感情を押し
止めてとっくりを見つめる。。
「しょ・・・うじ・・・しょ・・・・・・」
「俺の思いに答えてくれよ・・・とっくり」
俺はゆっくりと、とっくりの服を脱がしていった。

・・・・・・パサリと服が床に落ちた。
とっくりは抵抗することなく、流されるまま服を脱がされていく。
「・・・・・・」
下着にかけられた俺の手を押さえて、これ以上はと止めようとしたが、
俺は優しくその手をどかして全てを剥ぎ取った。


「・・・・・・とっくり」
「・・・・・・」
俺は不安に揺れるとっくりの瞳を覗き込むように手のひらで頬を包み込んだ
「・・・俺は・・・もうどうにかなりそうだよ」
言いながら、俺はそっととっくりに口づける。
柔らかい唇の感触を縫って、生暖かいものをとっくりの口に侵入させた。
思う様とっくりの口内を味わう。
「う・・・ぁん」
「もう・・・俺を拒否しないでくれ」
唇から離れそのまま首筋を舌でそっとなぞると、とっくりの身体がびくびくと反応した。
「はぁ・・・・・・んんっ」
首筋から胸元へと俺の舌が滑っていく。
「好きなんだ・・・・・・」
63嫉妬深い蜂:2007/03/22(木) 22:19:28 ID:Co7GneYq


出しっぱなしだったシャワーの舌にとっくりを突き出した。
そして俺も服のまま気にすることなく、シャワーの下に身を投げ出す
「ひゃっ」
ちょうどよい温かさのお湯が、二人に降り注ぐ。

着ていた白いシャツが、びしょ濡れになって肌に張り付く。
「・・・・・・」
無言のままで まとわりつく煩わしさにイラつきながら俺は荒々しくネク
タイを緩め、床へと投げ捨てた。


水気を吸ったネクタイがビシャリと音をたてる。

俺・・・嫌われたかもしれない・・・・・・。
嫌われたくなかったなぁ。




「ごめんな・・・さい、久しぶりだったから」
ぽつりと、とっくりが言った。
「え……?」
「どうしていいかわからなくて・・・」
その言葉の真意を図りかねて、聞き返した。
「・・・嫌なわけじゃないんだな・・・・・・?」
「・・・・・・」
とっくりがコクリと頷いた。
その瞬間、どん底だった気持ちが急上昇した。

濡れたなまめかしい肢体のとっくりを見つめる。
「もう・・・抑えられないぞ」
「・・・好きにして」
その言葉をきっかけに、俺はとっくりをきつく抱きしめた。
胸を痛いほど吸い上げ、とつくりに鮮やかな俺の所有印を残す。
64嫉妬深い蜂:2007/03/22(木) 22:20:10 ID:Co7GneYq


「んぅ・・・っ」
痛いのか快感なのか分からないようなとっくりの声があがった。
その声を無視して俺は唇はを下腹部へと滑らし、太股を割ってそこに到達する。
「あはぁっ……はぁぁんっ」
かぶりつくように吸い、思う様、舐る。

ざらついた舌を激しく動き回らせる。
とっくりはびくびくと身体を震わせながらその快感に支配されている。

「はぁぁぁっ!だめ、だめぇ!」
あっという間に昇りつめようとするとっくりの身体を俺は離そうとしなかった。
「だめ・・・あぁぁっ!許して・・・っ!」
頭が真っ白になるほど責められて、とっくりは俺に訴えるような眼差しをよこした。
その視線を受け取ると、俺は身体を起こし、とっくりの顔に張りつた髪を耳に
かけてやる。

「しょ・・・うじ・・・しょ」
シャワーで濡れた髪、肌を滑り落ちる水滴、切なげな眼差し。
たまらなく妖艶なとっくりの身体。
「いいか?・・・春子・・・」
「・・・きか・・・ないで」
65嫉妬深い蜂:2007/03/22(木) 22:22:05 ID:Co7GneYq
6 

とっくりの言葉に、俺は安堵して、優しくとっくりの額にキスを落とした。

とっくりの足を腕に抱えて立ち上がると、不安定な体勢を浴室の壁に押し付けて
安定を図る。
とっくりが不安げな顔をして俺の首にしがみついた。
「俺が・・・支えてるから安心しろ」




俺ははとっくりの呼吸に合わせるようにして、ゆっくり腰を押し進めてすべてを
とっくりの中へと収めきる。

「ん・・・はぁぁ・・・ぁっ」
とっくりから思わず声が漏れた。

愛しさで胸がいっぱいになる。

ゆっくり、優しく、その感触を確かめるように、俺は挿入を繰り返す。
「好きだ・・・好き・・・だ・・・春子っ」
だんだんと激しくなる動きに、とっくりの声も高まっていく。
「あぁぁぁぁ・・・・・っ」
「は・・・るこっ」

熱く絡み合って・・・溶けて・・・弾けた。
66嫉妬深い蜂:2007/03/22(木) 22:22:46 ID:Co7GneYq


ってオイ・・・今俺なんてこと考えていたんだ・・・?
バスルームのドアノブを握り締めたまま妄想に耽ってしまった。


・・・・・・俺・・・、もういい年なのに・・・、ガキみたいだ。

それから一時間
うろうろしつくして妄想で精神的に疲れた・・・、なのにとっくりはまだバスルーム
から出てこない。

ひょっとして本当に俺のことが嫌で逃げる口実で「風呂」なんて言ったんじゃな
いだろうか
と嫌な考えが頭の中をめぐり始める。

バスルームの扉の前で考え込むこと数分・・・。
俺は本当に突入することにした。

もしかしたら倒れてるかも知れないし・・・、この部屋はユニットバスだ。
だからトイレだといえば許されるかも・・・しれない。

意をけっしてドアノブに手をかけようとしたところ、俺が触れる前に勝手に
ドアノブがガチャリと回った。


終わり

本当のタイトルは「妄想の流刑地」ということで・・・失礼いたしました。
67嫉妬深い蜂:2007/03/22(木) 22:24:20 ID:Co7GneYq
東海林の妄想という形でお風呂エロを書いてみました。
はっきりいって東海林がイタイ人っぽくて・・・すみません。
68嫉妬深い蜂:2007/03/22(木) 22:28:08 ID:Co7GneYq
たびたびすみません。
>>47様、お疲れ様でした。
69名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 22:49:10 ID:0Rf7poJO
GJ!
東海林妄想激しすぎww
70名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 23:29:16 ID:C9uLQUEF
>>60
天才!これからも萌えさせて下さい!!
71名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 23:47:25 ID:wcDl2X3x
東海林さん妄想激しすぎ(笑)
またしても笑いあり、萌えありで素敵でしたょ☆★
嫉妬深い蜂様ありがとうございました。
72名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 23:55:45 ID:QRjZJDFu
さすが嫉妬深い蜂様!超GJ!!!!
妄想の東海林めちゃくちゃ可愛い♪♪♪
萌えさせていただきました!
73名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 00:35:39 ID:IET6YE0O
GJ!
東海林可愛いw
74名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 01:57:55 ID:8eEq0SYd
番外編お疲れ様です
7を読んで思わず「妄想かよ!」と口にしてしまったw
激しい妄想だなぁ笑わせて頂きましたw今後も楽しみにしてます
75名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 02:33:54 ID:BchophXh
蜂様、今回は萌えつつ、大変笑わせていただきました、グッジョブですww
76名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 02:21:50 ID:XEgOl9PW
嫉妬深い蜂様GJです!!
東海林さんサイコー!!
77不似合いな手:2007/03/28(水) 05:58:42 ID:IaThaNw4
蜂さん、笑いあり萌えありの傑作ぞろい、いつも有難うございます!

2スレッド目も盛り上がることを祈りつつ、私もまた東海林×春子で書いてみました。
ただ、どうもエロを語彙豊かに書く能力がないため、又してもエロはほとんどなく、
しかもとびきり暗いものが出来てしまいました。
何だか無駄に長い上、誰目線なのかもごちゃごちゃで甚だ心もとないのですが、
取り敢えず投下します。
朝っぱらから切なモードですみませんが、苦手な方はスルーして下さい。
よろしくお願いします。
78不似合いな手:2007/03/28(水) 05:59:07 ID:IaThaNw4
〜「月夜のうわごと」(1)〜

大前春子が名古屋に来て1ヶ月ほど経った、ある金曜の夜。
東海林武は、片手にスーパーで買い込んだ食材の袋を、
もう片方の手にカバンと地図を持って、足早に歩いていた。
月が出ている方角に進めば、間違いはないはずだ。

「――ここか・・・」
あるウィークリーマンションの前にたどりつくと、ゆっくりと階段を登る。
「201・・・あった」
201号室。表札は空欄のまま。だが、ここに間違いない。
東海林は大きく息を整え、呼び鈴を押した。
1回。2回。
返事がない。中に人がいるのかどうかはわからないが、
昼間のあの状態を考えると、出かけているとはとても思えない。
もう2回、押してみる。
「とっくり!俺だ。開けろ!」

中の気配を窺いながら待っていると、ごそごそと物音が聞こえ始めた。
奥の方から足音がして、次第に近くなり・・・、
やがてドアの向こうから、くぐもった声がした。
「・・・何の御用ですか」
「起こして悪いな。見舞いに来たんだ。大丈夫か?」
「自宅を訪ねてくるなんて、職権濫用ですよ」
「あんな高熱出したんだ、非常事態だろ。食料買ってきてやったぞ。開けろ」
「お帰り下さい」
いつもと同じ、つれない返事。だが、返ってくるテンポが遅い。声が細い。
「お前、ふらふらなんだろう。こんな時まで意地はるなよ。開けるまで帰んねえぞ」
「勝手にしなさい」
「開けてくれたら帰るって言ってんだよ」
「・・・」
「なあ、早く開けろ。メシやら薬やら、沢山買い込んで重いんだよ、こっちは」
「・・・」
「・・・とっくり?おい、大丈夫か?・・・生きてるか?」
「・・・」
――ようやく、ドアが開いた。
79不似合いな手:2007/03/28(水) 05:59:31 ID:IaThaNw4
〜「月夜のうわごと」(2)〜

大前春子は、寝巻きの上にカーディガンを羽織って立っていた。
青白い顔に頬だけが紅く、目は少し潤んでいる。
唇は青く、よく見ると小刻みに震えていた。
険しい顔でにらみつけてくるものの、どう見ても高熱を出した病人だ。
震えながら上目遣いに睨むこの表情に、東海林は見覚えがあった。
――そういえばあの時、カンタンテの裏手でも・・・。
「大丈夫か?」
「月曜までには治します」
「――上がるぞ」
「え?」
東海林は春子を押しのけ、強引に部屋に上がりこんだ。

「ちょっと・・・やめなさい!」
慌てる春子を無視し、東海林は台所に荷物を置くと、上着を脱いで
袖まくりをし始めた。
「何してるんですか。人を呼びますよ」
「俺は病人の寝込み襲うほど飢えてねえの。お粥作ってやっから、黙って寝てろ」
「・・・」
少し戸惑った顔でにらみ続けている春子に、東海林は作業の手を止めて向き直った。
「――お前にメシ食わしたら帰るよ。約束する」
そのまっすぐな視線から目をそらすと、春子はうめくように呟いた。
「・・・余計なことを・・・」
「いいから寝てろ。熱、上がるぞ」
「・・・」
スーパーの袋をあさり出した東海林を見て、春子は諦めたようにベッドに戻る。
その様子を尻目に、東海林はさりげなく部屋を見回した。
80不似合いな手:2007/03/28(水) 05:59:55 ID:IaThaNw4
〜「月夜のうわごと」(3)〜

シンプルで小ぎれいな部屋。家具は備え付けらしい。
玄関を入ると8畳程度のDKがあり、奥に6畳ほどの寝室がある。
無駄なものは何もない。仮のすみか。お行儀のいい学生の下宿先のような部屋だった。
東京で働いていた頃、春子にはカンタンテという「家」があったが、
名古屋には東海林以外知り合いがいない。
最初の頃、東海林は春子の住居を心配してこう持ちかけたことがある。
「何なら、俺の部屋に来ないか。いや、単なるルームシェアだよ、誤解するな」
だが春子はにべもなく申し出を断った。
確かに東海林にとっても、プロポーズまでした相手のこと、
一緒にいたいからと言わなければ嘘になる。
だがその時はとにかく、春子の金銭的負担を少しでも減らしてやりたかったのだ。
――ま、信用されなくても仕方ない、か・・・。

それに、と東海林は考える。
今の自分は、春子に面倒ばかり掛けている。
一緒に暮らしたら結局、プライベートな時間にも面倒をかけるだけなのではないか・・・、
そんな自虐的な不安が頭から離れない。

2人分働いて、時給3千円――そう宣言した春子は、自主的なサービス残業を繰り返した。今回の風邪も、過労から来ているに違いない。
今日の昼間、春子が高熱をおして働いていることに気がつくと、
東海林は「早く帰れ」と言った。
春子は今にも倒れそうな体を支えながら「この程度の熱で休んだことはありません」
と言い張り抵抗を続けた。
「去年だって、あなたが風邪で倒れた時も、私は休まず働いたんです」
結局、東海林が帰宅「命令」を出し、タクシーを呼んで乗せてやった。
そのドアが閉まる直前。
「お互いそんなに若くないんだから、無理すんな」
「私としたことが・・・、すみません、東海林所長」

遠ざかるタクシーを潤んだ視界で見送りながら、
東海林は自分の不甲斐なさに打ちのめされそうだった。

――去年の風邪も、そういえば俺のせいだったな。
自嘲しながら粥を作る。
あの時。カンタンテの裏手で、寒風に震えながら東海林をにらみつけていた、頑なな瞳。
春子の険しい表情の裏に、どうやら別の顔があるらしいとはっきり気づいたのは
本当に最近のことだ。

夜、縁もゆかりもない街で、旅の枕の仮のすみかで。
弱った体で、たった独りで。
――心細くないはずがない。
そう思うといたたまれなくなって、東海林はこの部屋を訪ねてきたのだった。
81不似合いな手:2007/03/28(水) 06:00:20 ID:IaThaNw4
〜「月夜のうわごと」(4)〜

東海林が料理をしている間、春子はその後姿をちらちらと盗み見ていた。
天然パーマの髪。広い背中。
意外に手際はいいが、いかにも男の料理といった豪快さをかもし出している。
何だか妙にほっとして、まぶたを閉じた。
水音がする。包丁の音がする。
誰かがそばにいて、自分のために料理を作ってくれている。
自分を気にかけてくれている・・・。

できあがった粥がベッドまで運ばれた時、春子は眠りに落ちていた。
東海林はその寝顔を見つめながら、しばらく逡巡した後、声をかけた。
「おい。できたぞ」
「ん・・・」
「ちゃんと食って、薬飲め」
「うん・・・」
寝ぼけ眼のせいか、やけに素直に返事をした春子のそばに座り、
東海林は粥を一さじすくうと、ふー、ふーと冷ました。
春子はようやく気がついて、慌てて体を起こそうとすると東海林に止められた。
「おい何してんだ、寝てろ」
「自分で食べます」
「病人のくせに突っ張るな。いいから口開けろ」
「・・・」
「ひとの面倒ばっかり見てねえで、たまには俺にもお前の面倒みさせろよ。ほら食え」
「・・・」
「食えって」

――頼むよ。

すがるような眼。
「・・・」
春子がこの眼差しに弱いことを、東海林はまだ知らなかった。
82不似合いな手:2007/03/28(水) 06:00:39 ID:IaThaNw4
〜「月夜のうわごと」(5)〜

「あ、食った!」
「・・・」
差し出されたスプーンを受け入れた春子が、粥を黙々と噛む。
「――うまいか?」
「・・・全然」
「ぜいたく言うな」
東海林は苦笑して、もう一さじ冷まし始める。

二口目から、春子は東海林の促しに素直に従った。

本当は、温かなお粥の味が春子の心にしみていた。
ゆっくりと味わいながら、次の一さじを冷ます東海林の横顔を盗み見る。
粥を春子の口へと運ぶたびに東海林が注ぐ眼差しは、切ないくらい優しかった。
その瞳から目をそらさず、春子は一さじ一さじ受け入れる。

穏やかな時間。
いつも心にもないことばかり言い合っているのに、
二人は今、ただ黙って見つめあっていた。

「おっ」
春子の口角から、濡れたご飯粒がこぼれた。
東海林はごく自然にそれを指先でぬぐうと、自分の口元に運ぶ。
そんなささいな仕草に心乱されていることを必死で隠しながら、
春子はこの安らかな時間に身を委ねていた。
83不似合いな手:2007/03/28(水) 06:01:01 ID:IaThaNw4
〜「月夜のうわごと」(6)〜

だが・・・。

なぜだか、胸が詰まる。

胸がいっぱいになって、次の一さじが食べられなくなってしまった。
「・・・」
「もういいのか?」

――泣いたりするのを見られたくない。でも、もうちょっとこのままでいたい。
「・・・もう少し」
やっとの思いで口にすると、春子はもう一さじ受け入れた。
何とか我慢し通すつもりだったのに、意に反して眼が潤んでくる。
――泣いちゃ、駄目。
それでもいつのまにか溢れてしまった涙が、春子の頬を伝う。
――駄目。このひとの前で泣くなんて。

春子の頭がパニックになっていることを知っているのか、知らずにいるのか・・・。
東海林は黙ったまま、涙を優しく指でぬぐう。
そして、ティッシュを1枚差し出した。
「・・・鼻、かむか?」
「うるさい!」
春子は差し出されたティッシュをひったくり、布団をかぶる。
「帰って」
「・・・」
「帰って!」
「・・・」
東海林はじっと春子の背中を見つめている。

やがて、布団ごしに春子に寄り添うと、震える声で耳元にささやいた。

「春子・・・、ごめんな」
「・・・」
「俺・・・頑張るから」
「・・・」
「お前にいつまでもこんな思い、させねえから」
「・・・謝るな」
「・・・ごめん」
「・・・」
――謝ったりしないでよ。私はただ。
・・・あなたのそばに、いたいだけなのに。

こみあげる愛しさに、春子は自ら腕を伸ばして東海林を抱きしめた。
84不似合いな手:2007/03/28(水) 06:01:45 ID:IaThaNw4
〜「月夜のうわごと」(7)〜

肩口に顔を埋め、柔らかい髪をなでる。
東海林の体温が伝わる。
――暖かい・・・。
熱で力の続かない春子を、東海林の腕が力強く抱きしめて支える。
東海林はふと体を離し、切なげな瞳で春子の顔を見つめると・・・。

ゆっくりと、口づけた。

「・・・寝込みは襲わないって言ったくせに・・・」
「お前が悪いんだぞ・・・あんな顔するから・・・」

もう一度、触れるだけのキスをする。

「・・・風邪がうつる・・・」
「知るか、そんなの」
「・・・倒れても、看病しないから」
「可愛くねえな、病人のくせに」

互いの額を寄せて、笑いあう。

「・・・やっぱり熱いな。薬買ってきたから飲んで寝ろ」
「うん・・・」
「素直で結構」
「・・・熱のせいだから」
「ん?」
「熱に浮かされて、おかしくなって・・・うわごと言ってるだけだから・・・」
「・・・そうか」
「うん・・・」
――ごめんね東海林くん。そうでも言わないと、私は。

「じゃあ、熱のあるうちはさ・・・いくらでも言えよ、うわごと」
「・・・」
「月曜には忘れてやっから」
――こうでも言わないと、お前は。

「・・・そばにいて」
「・・・」
「今夜だけ・・・」
「――わかった」

その週末、東海林は春子のそばで甲斐甲斐しく世話を焼いた。


そして月曜の朝。

すっかり熱の抜けた春子が目を覚ますと、東海林はもういなかった。
テーブルには一人分の朝食が用意されており、
東海林が使っていたマグカップは洗いかごに伏せられていた。

春子は少しだけ泣いた。
それから、顔を洗って出勤の支度を始めるのだった。

〜終わり〜
85不似合いな手:2007/03/28(水) 06:02:21 ID:IaThaNw4
以上です。何でここまで二人をいじめなければならないのか、
また果して東海林にこんな甲斐性があるのかどうか、
「私にも訳がわかりません」が、ご容赦下さい〜。
最後まで読んで下さった方、有難うございました!
86不似合いな手:2007/03/28(水) 06:05:44 ID:IaThaNw4
たびたびすみません。おくればせですが
>>47さん、お疲れ様です!有難うございました。
87名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 06:57:03 ID:TbYDyFJ+
好き同士なのに切ないというか辛いね・・・でもGJ!
「あ、食った!」 のところ、東海林が言いそうな感じw
春子の「・・・全然」 も言いそうだね
88名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 12:36:59 ID:QhippWfK
>>85
毎度GJです!
「不似合いな手」さんの作品大好きです。
なんか春子の心情も東海林の心情もダブルで切なくて…。
>>87
確かに二人とも言いそうですねw
89名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 13:07:34 ID:IIRRru1u
素敵〜〜♪ GJでした!

願わくば、汗をかいた春子の体を、
東海林が熱いタオルで拭いて、いけないところも念入りに拭いてそのまま・・・(;´Д`)ハァハァ
90名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 15:13:37 ID:9I5ZnYO8
久しぶりのGJだ!
看病ネタはやっぱり萌えるなぁ

ありがとうございました!
91名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 20:48:47 ID:/uK4jLyl
前スレまだ残ってるよ
92名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 21:21:36 ID:6iaVrOGe
GJです!
身も心も弱った春子でもいつものように強がってしまう・・・とても可愛いです。
ちょっと切なくて素敵でした!ありがとうございました!
93名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 21:57:49 ID:GQ3oBuFS
GJGJ!不似合いな手さんの作品は本当にツボを押さえてて大好きです!
ぜひまた読ませていただきたいです
94名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 23:57:45 ID:DY1P9jJz
職人さんグッジョオオーーーブ!!!!
凄く素敵でドキドキしながら読みましたー
自分も「あ、食った!」で笑った・・・犬かいw
激しいのも良いけどこれ位のソフトめな話も胸キュンでイイ・・・!
95名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 00:17:46 ID:VCngnSnT
不似合いな手様、グッジョブです!!
かたくななのに、惹かれあってる二人が素敵すぎます!
96名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 03:36:54 ID:0genyndo
東海林くんは「今夜だけ」と春子に言われたのに、
結局金曜の夜から月曜の朝まで(通いかもしれませんが)
いたんですね。素敵過ぎます。
いいお話をありがとうございます。
97名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 10:25:17 ID:cRARS5Gk
GJです!!
お互い想いあってるのに、せつない(泣)
東海林さんの想いと春子の想いがとても切なく、また可愛らしく書かれてて素張らしかったです。
不似合いな手様ありがとうございました(^O^)
98嫉妬深い蜂:2007/03/30(金) 18:18:48 ID:atSaGa0m
ほわわ〜♪不似合いな手様っっ!!
せつなグッジョブでございました。東海林さんのすがるような眼に
キュン死です。
99名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 16:27:42 ID:SeQo1rJu
いいもの読ませていただきましたっ
あわよくば、熱で抵抗できない大前さんが東海林に
頭をくしゃくしゃ撫でられる
なんてのもいいかも・・・
「・・・私は犬ではありませんが」みたいな
100不似合いな手:2007/03/31(土) 23:25:07 ID:iwb/PdOs
コメント下さった皆様、有難うございました!
101名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 04:03:42 ID:/tpi9uYb
>>98がキモい件
102名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 11:22:51 ID:ImPH5U+q
>>101
いや、キモくないから。スルースルー
103名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 21:15:12 ID:G9asehaf
キモイが、スルースルー
104名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 21:26:06 ID:3eja69w9
ドラマ本編が終わってしまうと、やはり萌える
シチュエーションがなかなか思い浮かばないな・・・
105名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 22:54:03 ID:gMDMDQKv
10月に続編だってさ
106名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 22:57:44 ID:9NGeejj6
10月期篠原はフジ連ドラ
107名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 20:38:49 ID:j8LbF0hE
スペシャルやってほしいな。
また可愛らしい絡みで萌えられたらいいな。
108風と木の名無しさん:2007/04/03(火) 21:38:58 ID:5cVSVNW8
お昼の休憩中、焼そばパンを食べている東海林の前に
ケーキを持って現われる春子。
「何だ、お前俺の誕生日知ってたのか?」
「ケーキが食べたかったので作ってきましたが何か?」
一人でケーキを食べ始める春子。
「…ちぇっ、俺のために作ってきたんじゃねえのかよ」
「…お腹がいっぱいになったので残します。」
食べかけのケーキを残して去る春子。
「だったら最初からこんなに大きいの作るなよ…あれ?」
お皿の春子が食べた部分の所には
”東海林くんお誕生日おめでとう”
「…とっくり」
109不似合いな手:2007/04/04(水) 01:46:06 ID:XDTIMgxH
>>108
二人とも可愛いですね!
名古屋でのバレンタインとかホワイトデー(春子の誕生日)はどんなかな、
などとあれこれ考えてしまいます。

さて、それとは別に、性懲りもなく東海林×春子の非エロを投下させて下さい。
本当は全部できてからアップしたかったのですが、少し時間がかかりそうなので、
とりあえず途中まで出して「つづく」ということで・・・。
今回は暗くはありません。辞めたはずのドライバー・土屋さんが出てきますが、
「辞めた」と言ったのは一時の買い言葉で、後で戻ってきたという設定です。
よろしくお願いします。
110不似合いな手:2007/04/04(水) 01:47:21 ID:XDTIMgxH
〜「東海林VS土屋」(1)〜

大前春子がS&F運輸名古屋営業所に着任して一ヶ月余り。
ドライバー連中のボス・土屋は、東海林のことは相変わらず軽視していたが、
春子の言うことは聞くようになっていた。
始めは春子のことを生意気な女とくさしていたものの、春子の確かな仕事ぶりや
肝の据わりぶりに一目置かざるをえなくなったのだ。

大きな転機は二週間前。
春子と土屋との衝突が決定的となり、春子は勝負を申し出た。
敢えて古風な「決闘」を挑み、剣道三段の腕で見事に土屋を負かした。

それ以来、土屋とその仲間たちは次第に春子に心を開くようになり、事務所で春子が
東海林をやりこめる様を小気味よさそうに眺めるようになった。
春子は相変わらず東海林と丁々発止のやり取りをしながら、忌憚のない意見をぶつける
一方で、合理的な命令には素直に従い、積極的に土屋たちを説き伏せた。
そんな春子に触発された東海林は、それまで以上にスタッフの懐に入って行こうとしたし、
土屋たちも又、春子が間を取り持つことで、東海林の言い分にも一分の理があることを
理解するようになった。
もっとも、それを素直に認めるような土屋ではなかったが。

――そんな中。
土屋にとって春子は、大いに気になる存在となり始めていた・・・。

「春ちゃん、あのネクタイと前から知り合いなのか?」
「うん・・・。前に本社に派遣されたことがあって、そのとき隣の課の主任だったんだ」
「ふん。あいつ、どう見ても左遷だよな。何やらかしたんだ?」
「・・・さあ」
「知らねえのか?」
「まあ、詳しいことは。興味もないし」
「はは、ま、そうだよな」
「・・・でも・・・、友達をかばって上司に楯突いた、って聞いたけど・・・」
「友達をかばったぁ?あのネクタイが?」
「うん・・・」
「はっ、嘘だろそりゃ。そんなタマかよ」
「でも・・・ほんとらしいよ」
「ふーん。ほんとかね。ま、どーでもいいけどよ」
「そうだね・・・」
「――しかしさ。春ちゃん、何でわざわざ名古屋に来たんだよ」
「え?」
「・・・もしかして、さ・・・オトコがこっちにいる、とか?」
「・・・え?」
「やっぱり・・・オトコ、か?」
「・・・」
「・・・(ゴクリ)」
「・・・うん、まあ」
「えっ・・・」
「え?」
「いや・・・そ、そっか・・・やっぱりな、ははは」
「・・・」
111不似合いな手:2007/04/04(水) 01:47:57 ID:XDTIMgxH
〜「東海林VS土屋」(2)〜

「おい、ネクタイ」
「はい?」
「ちょっと顔貸せ」
「・・・は、はい?」
「いいからこっち来いっつってんだよ」
「いやあの・・・、わかりました、わかりましたから!引っ張らないで!」
「お前・・・本社でも春ちゃんと一緒だったらしいな」
「え?・・・ええ」
「春ちゃんが何で名古屋まで来たのか、お前何か知らねえか?」
「・・・」
「何か聞いてねえかって言ってんだよ!こっちにいるオトコの話とか」
「・・・お、おとこ?・・・ですかぁ・・・?」
「・・・おい。何だよ。お前何か知ってんのかよ」
「い、いやぁ・・・」
「何か知ってんだろ、お前」
「いや、し、知りませんよ・・・。あ、あの・・・大前さんは、何て・・・」
「・・・オトコか、って聞いたらよ。そうだ、ってよ」
「・・・はー。はー・・・そう、ですか・・・」
「何か噂ぐらい聞いてるだろうがよ」
「んー、いやー、あの、僕・・・基本的に仲、悪いんで・・・」
「・・・」
「っていうか・・・知ってますよね、土屋さんだって。いつも見てるでしょ、
僕らのケンカ」
「ありゃケンカじゃねえだろ」
「(ぎく)・・・えっ」
「ケンカってのは対等な場合だろ。お前と春ちゃんは完全に春ちゃん優位だろうが」
「・・・あ、そ、そうですね(ほっ)」
「・・・ま、そうだな。春ちゃんのプライバシーをお前みたいなヘタレが
知ってるわけないか」
「そ、そうですよぉ・・・知るわけないじゃないですか、とっくりのプライバシーなんて」
「とっくりなんて呼ぶんじゃねえ!」
「は、はい・・・」
112不似合いな手:2007/04/04(水) 01:48:53 ID:XDTIMgxH
〜「東海林VS土屋」(3)〜

「・・・とっくり!大変だ」
「何ですか所長」
「土屋の奴、お前に気があるぞ・・・ってか、わかってはいたけど、あれ相当来てるぞ。
 ぞっこんLOVEだぞ」
「・・・何ですか、その下らない言い回しと下らない話題は」
「おい大丈夫か?変なことされてねえだろうな」
「されるわけないでしょう。あの人は誰かさんとは違うんです。
というより、普通の人はあなたとは違いますから」
「・・・。そ、そうかぁ〜?!」
「第一、あの人は私には手出しできません」
「そりゃーな。確かにお前は剣道三段の技であいつを黙らせたけれども。
それ以来あいつ、妙にお前になついちゃってるじゃねえかよ。
ああいうマッチョなタイプはなあ、意外にドMが多いんだよ、ドMが。
お前にはな、男のM心を吸い寄せる魔性があるんだよ」
「・・・(ぷぷぷ)」
「な、何だよ」
「土屋さんのそういうところは、誰かさんに似てますね(ぷぷ)」
「!・・・わ、笑い事じゃねえんだよっ。大体なあ、あいつお前に興味深々で、
あれこれ嗅ぎまわってるぞ。何で名古屋に来たのかとか」
「そのようですが、何か?」
「・・・オトコのためだ、って言ったのか?」
「オトコか、としつこく聞かれたので仕方なく、はいと答えました」
「あいつ、そのオトコにめちゃめちゃ敵愾心燃やしてるぞ」
「それが何か?」
「バレたらどうすんだよ!」
「はあ?」
「はあ?じゃねえよ。俺のためだってバレたら・・・、」
「・・・」
「いや、その・・・」
「・・・怖いんですか?」
「――ああ、怖いよ」
「・・・情けなっ」
「土屋に半殺しにされるのはまだいいよ。いやまあ、いいって言ったら嘘になるよ、
よくないけどさ。でも、もっとまずいのはさ・・・、今まで必死に公私の区別つけて
きた俺たちの努力が、水の泡になるかも知れねえってことだよ」
「・・・」
「お前が言ったんだよな。俺とお前ができちまったら、まとまる職場もまとまらないって」
「・・・」
「もしお前が俺のために来たってわかったら・・・、周りの奴は九分九厘疑うだろ、
 俺たちの仲を」
「・・・」
「・・・俺たち・・・こんなに苦しい思いして職場まとめてきたのに・・・」
「・・・。――大丈夫。問題ありません」
「え?」
「そのオトコの正体は絶対に土屋さんには漏れませんので、ご心配は無用です。
では業務に戻らせて頂きます、所長」
「おい!」
「下らない心配してないで、あなたもとっとと、働きなさい!」
「おい、とっくり!・・・ったく」

〜つづく〜
113不似合いな手:2007/04/04(水) 01:51:30 ID:XDTIMgxH
中途半端なところで切ってすみません。
放送も終わっちゃったし、あんまり投下が減るのもよくないと思って出しちゃいました。
1週間以内にはアップしたいと思っておりますのでよろしくお願いします。

次回は、倉庫で積荷が崩れる事故があり、東海林が春子をかばって危機一髪!
の予定です・・・ベタですみませんw
114名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 02:20:17 ID:mGEHiHOa
不似合いな手様、ありがとうございます!
めちゃめちゃ続き気になりますよ!
楽しみに待ってますww
115名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 05:58:43 ID:ldPO0oLd
いつもありがとー!
次回予告まで書いてくれたからワクワク感がある。
楽しみにしてます。
116風と木の名無しさん:2007/04/04(水) 12:45:52 ID:7qJ3ykZa
不似合いな手さん、GJです!
職場ではデキてることは内緒というシチュエーションが
萌えます。

ちなみに108を書いたものですが
中の人の誕生日だったということで
小ネタのつもりで書いたのに感想まで下さって感謝です。
117名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 13:05:28 ID:XACPiFnw
GJです!!
次回予告が良いです(笑)
ワクワク、ドキドキしながら待ってますね☆
ありがとうございました(^O^)
118不似合いな手:2007/04/08(日) 23:12:16 ID:/hQ/RISR
半端な投下にレスを下さった皆様、有難うございました!
ようやく続きができましたので、投下させて頂きます。
無駄に長いですがご容赦下さい。エロなし、暗くない東海林×春子です。
119不似合いな手:2007/04/08(日) 23:13:01 ID:/hQ/RISR
〜「東海林VS土屋」(4)〜

そんなある日――。

名古屋を震度5弱の地震が襲った。

「うわっ!」
地震嫌いの東海林をはじめ、オフィスの面々は慌てて机の下に入る。
――とっくり・・・どこだ?
東海林は気が気ではないが、揺れが怖くて外に出られない。

地震はほどなくして収まり、うずくまっていた者たちも三々五々、表に出てきた。
「結構でかかったな・・・。皆さん、大丈夫ですか?!」
東海林が声をかけた。どうやらオフィスにケガ人はなさそうだ。
「誰かテレビつけてくれ。それと吉崎さん、有川さん、手分けして倉庫の方に
異常がないか、チェックしましょう」
東海林はスタッフを引き連れて足早に倉庫へ向かった。
ケガ人がないか、積荷が無事かはもちろん気になっていたが、春子の顔が見たかった。

倉庫内はざわついてはいたが、ケガ人はないらしい。
スタッフたちは、早くも崩れた積荷やフォークリフト用の荷台(パレット)を
片付け始めている。その中には、甲斐甲斐しく働く土屋の姿もあった。
それもそのはず――。
倉庫にいた春子が、てきぱきとその場を仕切って指示を出していたのだ。
「とっくり!大丈夫か?」
「ご覧の通り、大勢に影響はありませんが、何か?」
「・・・だったらいいんだ」
「こちらは問題ありません。所長は他を・・・」

と、言いかけた時。

春子のそばに積まれていたパレットの山が、がらがらと音を立てて崩れ始めた。
「あぶねっ!」
東海林は思わず駆け寄り、春子を突き飛ばす。

崩れ落ちたパレットが東海林の頭を直撃した。

衝撃で東海林の長身がはじき飛ばされ、倒れた体の上に後続のパレットが
バラバラと折り重なった。

「何だ何だ!」
「どうした!」
「大丈夫か?!」
スタッフの男たちが続々と集まってくる。
突き飛ばされた春子が起き上って振り向くと、男たちがパレットをどけ、下敷きになって
いた人間の形が現れ始めた。

春子の目に飛び込んだのは、うつぶせで倒れている東海林の姿だった。
120不似合いな手:2007/04/08(日) 23:13:24 ID:/hQ/RISR
〜「東海林VS土屋」(5)〜

――東海林くん!
叫びだしたいくらいなのに、喉がひきつって声が出ない。

春子はふらふらと起き上がると、東海林のそばへ寄る。
駆け寄りたいのに、怖くて思うように進めない。まるで悪い夢でも見ているようだ。
近寄って見ても、東海林はぴくりとも動かない。後頭部をパレットに直撃されたのか・・・。
「救急車!救急車呼べ!」
男たちの怒号が聞こえる。春子はようやく少しだけ、我に返った。
「・・・どいて下さい。ケガ人にさわらないで。頭を打ってるかも知れません」
春子は努めて冷静に声をかけた。
「みんな、春ちゃんに任せろ。看護師の資格持ってんだ」
土屋が周囲を制し、春子に場所を作ると、手を貸すために隣に陣取った。
「・・・土屋さん、なるべく頭を動かさないように、ゆっくり、仰向けにして下さい」
「わかった」
土屋が慎重に東海林の体を裏返す。春子はジャケットを脱ぐと枕にしてあてがってやり、祈るような気持ちで頭を支えた。
「ゆっくり・・・そっと・・・そう・・・」

仰向けにされた東海林の顔は、蒼白だった。頭から額に一筋、血が垂れている。
――まさかそんな・・・いや!
春子の動悸が激しくなる。手を鼻から口元に当て、呼吸があるかを確かめる。
その手は、わずかだが震えていた。
土屋が思わず春子の顔を見たが、春子は気づかない。

・・・幸いにも、東海林の鼻先から呼気を感じる。

春子は頭の血がどこから出ているかを確かめた。側頭部のようだ。傷は浅い。
――神様・・・!
「・・・しょ、しょうじ・・・さん・・・」
声がうまく出せない。春子は無意識に咳払いをする。
「東海林さん!聞こえますか?!東海林さん!」
反応が返ってこない。
121不似合いな手:2007/04/08(日) 23:13:53 ID:/hQ/RISR
〜「東海林VS土屋」(6)〜

――起きて・・・!起きなさい・・・!
「・・・起きなさい!このくるくるパーマ!」
春子は思わず叫んだ。

何もこんな時にその呼び方を・・・、と周囲の空気が一瞬固まるなか、
春子は全く意に介さず、ただ東海林だけを一心に見守っている。
その横顔が青ざめているのを、土屋は見逃さなかった。
「・・・ん・・・」
東海林がわずかにうめく。
――東海林くん・・・!
本当は人目もはばからず取りすがって名前を呼びたい。でも、今の春子にそれはできない。
「・・・東海林さん!聞こえますか!しっかりして下さい、聞こえますか?!」
周囲が固唾を飲んで見守る中、東海林がゆっくりと目を開けた。
「気がついたぞ!」
誰かが叫ぶ。
東海林は焦点の定まらない目でしばらく見回すと、ようやく春子をとらえた。
「・・・東海林さん・・・わかりますか?」
東海林の唇が、わずかに動く。

――はるこ。

「何だ、何て言ったんだ?」
周りの男たちが騒ぐ中、声なき声を聞き届けた春子は、思わず東海林の冷たい手を
握り締めた。
「・・・大丈夫。もうすぐ救急車が来ますよ」
その声はとても柔らかかった。春子は涙目になるのをこらえながら、懸命に気丈を装った。

さすが看護師・・・と周りが感嘆する中、一番近くで一部始終を見ていた土屋は、
複雑な表情で二人を見つめていた。
122不似合いな手:2007/04/08(日) 23:14:39 ID:/hQ/RISR
〜「東海林VS土屋」(7)〜

「う・・・ん・・・」
東海林が再び目を覚ますと、そこはベッドの上だった。
「所長・・・」
ベッドの脇には、すっかり平静を取り戻した春子が付き添っている。
「とっくり・・・、ここ、どこ?」
「病院です。気分はどうですか?」
「・・・頭いてえ・・・」
「頭を二針縫いましたけど、脳しんとうで済みました。MRIでも大きな異常はないそう
ですから、大丈夫。他にもあちこち打撲はありますが、骨に異常はありません」
「俺、どうしたんだっけ・・・」
「地震でパレットの山が崩れたんです。・・・私をかばって・・・、下敷きに」
「・・・あーそっか、思い出した・・・って、おい!お前、大丈夫か?」
「・・・大丈夫です」
「そっか。良かった・・・いて」
人の良い笑顔を見せる東海林に、春子は何だか腹が立った。
「・・・。――バカ」
「へ?」
「何が“良かった”だ、バカ!」
「・・・はい?」
――心配させて・・・。あんなに心配させたくせに、ひとの心配なんかして!
ほっとしたせいなのか、悔しいからなのか、よくわからない。
何だか涙が出そうになって、春子は足早に部屋を出た。
「どこ行くんだ、おい!とっくり!何なんだよ、ったく・・・。――!」
突然、東海林が絶句した。

春子と入れ違いに現れたのは、土屋だった。
123不似合いな手:2007/04/08(日) 23:15:27 ID:/hQ/RISR
〜「東海林VS土屋」(8)〜

土屋はむすっとしたまま入ってくると、さっきまで春子が座っていたイスに腰を下ろした。
「・・・調子はどうだ」
「はい・・・大丈夫です」
「・・・」
「・・・あのー、土屋さん・・・」
「お前な・・・」
「は、はい・・・」
「春ちゃん泣かせてんじゃねえよ」
「――!」
「何でおめーみてーなヘタレが春ちゃん泣かすんだよ。間違ってるだろ、世の中」
「え・・・」
「お前が倒れた時、春ちゃん真っ青な顔して必死で看護したんだぞ。・・・手が震えてたよ」
「・・・」
「近くで見てない奴は気づかなかっただろうけどな。俺も決闘で負けた時、手当て受けて
るし・・・普段の春ちゃんならどんなに冷静に対処できるか、知ってるからな」

東海林にも覚えがあった。去年のバレンタインの夜。
取引先の娘が突然産気づいた時、助産師・大前春子は有無を言わさない冷静さと、
妊婦を包み込むような余裕の表情で、見事にその場を仕切っていた。
――その大前春子が、震えていたなんて。

「・・・でも土屋さんのあれは、かすり傷でしたし・・・」
「てめー、俺をコケにするつもりか?!」
「・・・」
「今だって春ちゃん、泣きそうな顔して出てったじゃねえか!」
「え・・・」

――あいつ。泣いてたのか。

「お前、俺をバカにしてんのか?それともお前がバカなのか?」
「・・・たぶん、俺ですね・・・」
東海林は自分の鈍さにうんざりしながら、力なくつぶやいた。

「――春ちゃんが名古屋来たのは・・・お前のためだったんだな?」
「・・・」
「どうなんだ」
土屋が険しい顔で問い詰める。
いつもならその剣幕にたじろぐ東海林だが、今はなぜか、腹が据わっていた。
124不似合いな手:2007/04/08(日) 23:15:57 ID:/hQ/RISR
〜「東海林VS土屋」(9)〜

「土屋さん――」
「・・・」
「あいつと俺は・・・あなたが思ってるような、そういう仲じゃありません。
 少なくとも今は・・・まだ」
「・・・」
「でもあいつは・・・、俺の人生を変えた女です」
「・・・!」
「本社からはドロップアウトしたけど、あいつのお蔭で俺は自分の中の良心と向き合う事ができた。大事なものを忘れずに済んだんです。それで十分だと思ってました・・・。でも、あいつはここまで来てくれた」
「・・・」
「だから俺は、あいつの励ましに応えなきゃならない。
名古屋事務所をまとめて、結果を出す――今はそれだけです」
「・・・」
「それができたら、今度こそあいつを・・・」
「・・・」
「・・・ははは。なんちゃって」
「・・・ヘラヘラすんな、このヘタレが」
「すいません」
不思議な感覚だった。
東海林にとって土屋は、あれほど分かり合えずに手を焼いた相手なのに、今は全然
怖くない。
土屋もまた、目の前で穏やかに微笑んでいる細身の男を初めて見るような気持ちで
見つめていた。
「――友達をかばって上司に楯突いた、って本当か?」
「え?」
「春ちゃんが言ってた。興味ないからよく知らないけど、なんて言いながらな」
「・・・」
「それで飛ばされたのか」
「・・・そんなかっこいいもんじゃないですよ。自業自得です」
「・・・。お前よ・・・」
「はい」
「――やっぱ、むかつくな」
「・・・」
「かっこつけんじゃねーよ、ヘタレのくせに」
「すいません」
「春ちゃん泣かせたら、ただじゃおかねえぞ」
「はい」
「結果出したいなら、いつまでもこんな所で寝てねえで、とっと治せ」
「・・・はい」
「じゃあな」
「土屋さん」
「あ?」
「――有難うございました」
「・・・言っとくけどな。お前のためじゃねえぞ。春ちゃんのためだからな」
「わかってますよ、土屋さん」
土屋が病室のドアを開けると、ちょうど春子が戻ってきたところだった。
土屋は「よお」、と声をかけると、何も言わずに出て行った。
125不似合いな手:2007/04/08(日) 23:16:31 ID:/hQ/RISR
〜「東海林VS土屋」(10)〜

「――何を話してたんです?」
「・・・俺、あの人見てて思い出したよ」
「?」
「ホッチキス対決」
「・・・。土屋さんに比べると、随分ヘタレな対決方法でしたね」
「勝負には辛うじて勝ったけど、凄い女だって思って、それで・・・、
 翌朝、エレベーターで乗り合わせてさ。覚えてるか?」
「・・・」
「一応敬意を表して大前さん、って呼んだらさ。お前、笑ってみせたんだよ、俺に」
「・・・」
「今思えば・・・俺あの時もう、惚れてたのかも知れないな・・・」
「・・・」
「お前はいつから俺のこと・・・」
「バカ話はやめて、休みなさい」

――まあいいや。でもいつか白状させてやるからな。

「なあ」
「?」
「心配かけて、悪かった」

――東海林くん・・・。

「・・・きっと、そのくるくるパーマが緩衝材になったんですね」
「なるわけねえだろ、そんなの!いてて・・・」
ムキになる東海林を、春子は笑って見つめた。

――助けてくれて、有難う・・・。いつも素直に言えなくてごめんなさい。

春子の手が、東海林の髪を優しく撫でる。
「でもやっぱり・・・柔らかいですよ」
「・・・」

――お前の手の方が、よっぽど柔らけえし気持ちいいけどな。
そう口にしたら怒られることは目に見えていたので、東海林はただ黙って目を閉じた。


翌々日。東海林は職場に復帰した。
「じゃあお願いします、土屋さん」
「わかったよ・・・所長」
東海林の指示に素直に従う土屋の姿を見て、ドライバー仲間は面食らっていたが、
理由を追及すると怒鳴られるので大人しく追随した。
そして――。
他ならぬ春子も、突然の変化に戸惑っていた。

「東海林所長。あの時、土屋さんと一体何を話したんです?」
「別に。大前春子はすげー女だな、って話だよ」
「は?」
「うそうそ。何でもねえよ」
いぶかる春子の追及をかわしながら、東海林は一人苦笑した。
――何だかんだ言って、一番かっこつけてんのはあんただろ、土屋さん・・・。

大前春子に惚れると、男はみんなええカッコしいになる。
そしてどうやら土屋は、とても口の固い男らしかった。

〜終わり〜
126名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 00:23:21 ID:b/6gwvA/
GJデス↑↑
ワクワクしながら待ってたかいがありました♪♪
東海林さんも土屋さんもカッコイイっす(笑)
ありがとうございました(^O^)
127名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 01:23:40 ID:nF7R0UIO
GJ!!
ちょっと泣いてしまったよ・・・
128名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 17:09:29 ID:Y8zYPqSB
GJ!!
ドラマのキャストが違和感なく頭の中で動いたよ。
凄く良かったです!
129名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 20:56:19 ID:Aw6zmgCr
GJです!
確かに、春子はいつから惚れたんだろう…?
130名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 21:00:31 ID:wqE7XRuF
続きGJでした!
くるくるパーマが緩衝材、てワラタ
131名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 19:50:44 ID:q2OL1EtT
>>129
東海林さんが好きになってく描写は、ドラマ内で描かれてるけど、
大前さんが惚れたキッカケってわからないよね。
東海林がロシア勤務だったころ出会ってたりして。
大前さんは最初の面談で気がついてたけど、
東海林は全然気付かなかったとか…
そうなるとまた話がややこしくなっちゃうか
妄想失礼シマシタ
132風と木の名無しさん:2007/04/10(火) 21:18:14 ID:E1z8EZSB
どうも、108です。

皆さん傑作を投下される中
こんな未熟な作品を投下するのもどうか…と
思いましたが、よければ投下させてください。

マイナーですが東海林×匡子です。
エロありです。
表現力が未熟なので判りづらいところが
あったら申し訳ありません。
133風と木の名無しさん:2007/04/10(火) 21:21:27 ID:E1z8EZSB
東海林×匡子 1


ー午後十時。


誰もいないオフィスに黒岩匡子は居た。
あたりは薄暗くパソコンの光が匡子の顔を照らしていた。

パソコンの画面にはコンペの企画書らしき文書が
表示されている。
匡子はそれを閉じ、ファイルをゴミ箱にドラッグして消去した。

一ヶ月前、匡子は部長から新しくオープンするフランス料理店の
コンペの企画を任されていた。
初めて企画を任されたとあって
毎日残業づけで仕事をして絶対に勝ち抜ける自信をもっていた。
しかし、結局ライバル会社に企画を持っていかれてしまったのだ。

部長から結果を聞かされたとき、部長や周りにいた
人間は口を合わせて「よく頑張った」と言ってくれた。

けれど、匡子はそんな生易しい言葉で慰めてはほしくなかった。
仕事は結果が全て。
いくらどんなに頑張っても、それに結果がついてこなければ意味がない。

ー結局私はコンペを勝ち取れなかった、敗者なんだ。

夜、一人のオフィスでそんなことを考えていたら
ずっとこらえてきた涙が溢れそうになった。

悔しい、悔しい。

誰も見ていないしこのまま泣いてしまおう。
そう思い頬に涙が伝わった、ーその時。

134風と木の名無しさん:2007/04/10(火) 21:22:49 ID:E1z8EZSB
東海林×匡子 2


「匡子、いるのか?」

聞き慣れた声が奥のほうから聞こえて、匡子は慌てて
手で涙をぬぐった。


「東海林くん?」


「やっぱり、まだいたんだ。」
「なによ、いたら悪いの?」
「いや、ちょうどよかった。コンビニでおにぎりかってきたんだけど食べる?」
そう言って東海林は右手に持っていたコンビニの袋を
匡子の机の前でひっくり返した。

「…あ、種なし梅干私好きなんだ。」
「やっぱり?たしか前にも食べてたなーと思って買ってきたんだよ」

私が食べてたもの、覚えててくれてたんだ…。
そう思うと嬉しくて、匡子の顔から笑顔がこぼれた。
「じゃあ、いただきます。」
「おう、食え食え。」
東海林も隣の椅子に腰掛け一緒に買っていたお茶を飲んでいた。
匡子は東海林の優しさに少し心が和んだのか
「これ、おいしいね」
そう言いながらおにぎりを頬張っていた。
すると、東海林の口から
「…今日のコンペさ、残念だったな」

思わず匡子の手が止まった。

「…そうね、悔しいけど負けちゃった。」

「確かに、今日俺も参加してみてたけど
あの企画は凄過ぎる、相手が悪かったかもな。」

「ううん、相手が悪いんじゃない。私が力不足だっただけよ。」

そう言った匡子をじっと見つめる東海林。

「…そうだな、匡子の企画がまだまだだったって事だよな。でも…」

「でも?」

「お前は悔しさをバネにできる女だよ。今度はもっとでかい仕事成功させろ。
絶対結果出すんだぞ。」

東海林は匡子の目を見つめてそう言った。
さっきまでのおどけた顔ではなく、仕事の時と同じ
真剣な表情で。
135風と木の名無しさん:2007/04/10(火) 21:23:52 ID:E1z8EZSB
東海林×匡子 3



…なんで、何でこの人はいつもこう偉そうなんだろう。
だけど、私のことを一番よくわかってくれている。


―ああ、私はこの人のこういう所が好きなんだ。

ただの優しい言葉じゃなくて、私の事を理解してくれて
私を力づけようとしてくれている。
この人の前だけなら素直な私でいられる気がする…。



すると匡子は東海林の腕を握り締めて
「私…次は絶対負けないから」
そう言って東海林の胸に顔をうずめた。
「ごめん、このまま少し泣かせて…」
東海林のワイシャツに匡子の目から溢れ出す涙が
どんどん滲んでいく。
東海林は今まで見たこともなかった匡子の泣き顔に
戸惑いながらも、そっと頭を優しく撫でた。



「お前女なんだからさ…無理に強がらなくていいんだぞ」

そう言うと東海林は匡子の背中に手を回し
ぎゅっと抱きしめた。
かすかにタバコの香りがする…鼓動がどんどん早くなるのが判った。



夜、誰もいないオフィスで好きな男に抱きしめられている。
このままこの雰囲気に流されてしまいたい。
いつもの匡子ならそんな姑息な真似はしない。
…けれど今は、匡子の中にいる女の部分が目覚めているからなのか。



匡子は東海林の唇にそっとキスをした。
136風と木の名無しさん:2007/04/10(火) 21:26:20 ID:E1z8EZSB
東海林×匡子 4



最初に唇を離したのは東海林だった。

東海林は突然のことに目を見開いてびっくりしていた。

「匡子…お前なにするんだよ、いくらなんでも俺なんかと…」
そう言いかけている途中、再びキスをする。
今度は舌を入れて深いキスをする。
「…んっ」
最初は戸惑っていた東海林だったが
顔を傾け舌を絡め合わせた。
そうして気が付けば二人お互いをきつく抱きしめあいながら
深いキスを息ができなくなるまで続けていた。



唇を離すとお互い呼吸困難のように息を切らしている。
匡子は複雑な表情の東海林をじっと見つめて
「…ねえ、このまま抱いて」
「匡子…」
「あたしのこと、女として見て。」


そう言うとしばらくお互いを無言のまま見つめあっていた。
暗闇の中、長い沈黙の後に東海林は匡子に告げる。



「後悔しても、遅いからな」
137風と木の名無しさん:2007/04/10(火) 21:27:35 ID:E1z8EZSB
東海林×匡子 5


東海林は匡子の体を床に押し倒し
シャツのボタンを外していった。

ジャケットとシャツを脱がすと背中に手を当て
ブラのホックを外す。
スレンダーな匡子の体に食い込んでいたそれを外すと
二つの胸が震えて飛び出す。
ほんのりピンク色の乳房が誘うように揺れている。

東海林は片方の乳房を口に当て、もう片方の胸を
手で優しく愛撫した。

「あっ…いやっ…」

東海林が乳房を吸い込むように舐める度に
匡子は体をひくひくさせながら声を出した。

「ずるいっ…しょっ、東海林君も脱いでっ…」

愛撫されながら匡子は東海林のネクタイに手を当て
しゅるっと解いていく。
ボタンを外しスーツとシャツを一緒に脱がそうとすると
東海林は自分で服を脱いだ。

初めて見る東海林の体は、思ったよりも
筋肉がついていてウエストもしゅっとしている。
匡子はその体を見て、下半身が疼き出している事に気づく。


それを見抜かれてしまったのか、東海林ノ手は匡子の胸を離れ
パンツのボタンを外し、下着の中へ手を入れた。
匡子の中に指を入れ、指を激しく動かす。
すでに濡れていた中は卑猥な音を立て
静かなオフィスの壁に跳ねて二人の耳に響く。


「ああっ、…んっ、いゃ…あん」

「匡子…こんなに濡れてるぞ…」

「だって…感じ、るっ…」

お互いどんどん息が荒くなっているのが判った。

「…もう、入れていいか…?」
「だめっ…」

「東海林く…んも…感じさせてあげる…っ」
138風と木の名無しさん:2007/04/10(火) 21:29:05 ID:E1z8EZSB
東海林×匡子 6


そう言うと、体を起こし東海林のベルトに手を当てる。
ズボンのファスナーをおろし、下着から
突起物を取り出す。
それを口に咥えると顎を上下に動かし優しく舐め回した。

「…あっ、きょう…こっ」

そう囁かれる事がなぜか心地よくて
どんどん吸い付くように口を動かした。

口の中でどんどん硬くなっていくそれは
東海林の体中を痙攣させるような快感を与えて
やがて匡子の口の中に白い液体を排出した。

口の中の液体を一気に飲み込み、苦そうな顔をする匡子。


「…ごめん」

「東海林君、早いよ」

「だって、お前上手過ぎるよ…」

そう言うと東海林は匡子のひざを掴み足を広げさせる。

「あっ…」

匡子の中に深く入り込んでいく東海林。
激しく腰を動かす度に匡子の胸が激しく揺れる。
139風と木の名無しさん:2007/04/10(火) 21:29:45 ID:E1z8EZSB
東海林×匡子 7


「ああっ…あんっ、はぁっ…!」

激しく体を動かして、汗ばんでいる東海林の背中を抱きしめる。

「きょ、うこっ…あっ…立って…」

すると東海林は匡子の足を支えて立ち上がる。
視界が変わり見回すと、いつものオフィスの風景。
反対側を見ると窓にうっすら裸の二人の姿が映し出されていた。

「やだっ、窓に映ってる…」

「…誰か来たらどうしようか?」

「大丈夫、まだ警備の人も来ないわ…」

体の全てを東海林に委ねて腰を動かす。
体を密着させているからか、お互いの体温が
重なって体が熱くなる。


自分が毎日戦っている城でもあるオフィスで
こんな淫らな事をしている。

いけないことと判っていてもそれがかえって快感に変わっていた。


そしていつしかお互い絶頂に達して
力尽きた。
140風と木の名無しさん:2007/04/10(火) 21:32:36 ID:E1z8EZSB
東海林×匡子 8

ー午前零時。

身なりを戻し、床に座り込むふたり。

「…やっちゃったな」
「…やっちゃったね」


匡子の心中は複雑だった。
勢いで抱いて欲しいと言ったとはいえ
密かに想っていた東海林と繋がる事ができて
嬉しいはずなのに…。

どこか空しさが残るのは、きっと愛されて
繋がったわけではないから。

ううん、もしかしたら彼は私を愛していて抱いてくれたのかもしれない。
でも、それを確認する勇気がない…。

「……ごめんな、匡子。」

「えっ…何で東海林君が謝るの?」

「何かさ、雰囲気に吸い込まれてって言うか…理性がきかなかったっていうか…」

「うん、判ってる。今日のことは忘れて。」

「へ?」

「明日になったらいつもの同僚でね。今日の事はただ雰囲気に流されて
しちゃっただけ、そうしてくれないかな?」


「…そうだよなぁ、でなきゃ匡子が俺なんかと…ははっ」

東海林は髪を掻き毟りながらいつもの笑みを浮かべている。


匡子は自分から繋がりかけた糸を切ってしまった。
仕事に関しては何でも言い合える関係なのに
恋に関しては弱さとプライドが邪魔して素直になれない。


でも、いつか素直に貴方に好きだと言える日が来たら…。
再びあの腕の中で愛されて抱かれたい。


窓に見える、曇った空に反射した微かな光を見つめながら
匡子はそっと微笑んだ。


……けれど、この時の匡子は知る由もなかった。
それから数ヵ月後に強力なライバルが現われることを。
そしてその相手というのが、今回のコンペで負けた企画を
発案した張本人、大前春子だということを…。

〜終わり〜
141風と木の名無しさん:2007/04/10(火) 21:39:11 ID:E1z8EZSB
以上です。
本当に未熟で自己満足な出来で申し訳ありません。
書き忘れていましたが春子がハケンで来る前の話だと
思って読んで頂けると幸いです。

では皆さんの作品も楽しみに待っています。
142名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 22:04:32 ID:yClwtMzF
>>108
GJ!!匡子姐さん切ないよぅ(TдT)
仕事でも恋でも春ちゃんには勝てないのね…
匡子姐さん結構好きなキャラなんだけどな〜
143不似合いな手:2007/04/11(水) 01:24:10 ID:UJZoaDLC
>>108さん
春子が来る前にあの二人がこんなことに・・・新鮮でした!また新作がありましたら是非!

拙作にレス下さった皆さん、有難うございました。
「春子はいつから東海林が好きだったのか」、確かに謎ですね。
個人的には決定打はやはり4話の告白だったのではないかと思いますが、
意外と2・3話のラストで東海林が垣間見せた素直さに
「あら?案外かわいい所があるじゃないの」ぐらいは思ってたような気もします。
いずれにしても「ハエ」「ばっちぃ」は完全なるカモフラージュであると妄想しております。
それに関連して、大分前に書いて放置していた春子目線の短文、アップします。
いつもいつもエロなしですみません。
144不似合いな手:2007/04/11(水) 01:24:34 ID:UJZoaDLC
〜「最終回・スペインにて」(1)〜

――何かをこんなに迷ったのは、何年ぶりだろう。

「くるくるパーマのケイタイ」。
さっきから、手元のメモをずっと見つめ続けている。
あのまま捨てておいたなら、迷うこともなかったのに。
こんなところにしゃがみ込んだまま、いつのまにか陽もすっかり傾いてきた・・・。

あのひとは、今どうしてる?

オフィスで偶然、電話を取ったとき。
「森美雪にかわってくれ」――懐かしい声が聞こえて、心臓がトクンと跳ねた。
気がついたら、森美雪になりすまして受け答えしていた。
「ハイ、モリデス」
もし誰かに見られたとしたら、完全にバカだ。バカ以外の何者でもない。
「私としたことが・・・」
つい、一人ごちる。

そのとき、里中主任に宛てられた彼のメールを読んでしまった。
うるさいほど生き生きとしていたあの「くるくるパーマ」が、
遠い名古屋の地で一人、耐え難い孤独に苛まれているなんて。
完全なる「よそ者」の身は辛いだろう。
「俺は家族と働きたいんだ」と言っていた、あの男には・・・。
俺がハケンの気持ちをわかっちまうなんて、と、そこには書かれていた。

「一緒に働くってことは、一緒に生きるってことだろ?」
あの時の彼のまっすぐな瞳が忘れられない。
だから結局、このメモを捨てられなかったのだ。
彼とのつながりを、断ち切ることができなかった。
「バッカじゃなかろうか・・・」
つい、自分で自分につぶやいてしまう。

「ヨチヨチ歩きのハケンにはよくあることです・・・転んで泣かないように」
あれは実感からくる忠告だった。
正社員との恋愛沙汰なんかに、振り回されてはいけない。
若い頃には、よくあること。でも、二度と浅はかな過ちは繰り返さない。
――その決意と分別は、絶対に揺るがないと思っていたのに。
今の自分のテイタラクは、森美雪にすら笑われそうだ。

あからさまなハケン蔑視。俺様主義。見境いのない上昇志向。
直情型ですぐキレて、偉そうで暑苦しくて。
鼻持ちならない、憎たらしい奴。

――友達や身内には、人一倍優しいくせに。
たぶん、恋人にも・・・。
145不似合いな手:2007/04/11(水) 01:24:57 ID:UJZoaDLC
〜「最終回・スペインにて」(2)〜

大体、あの男は矛盾している。
単純なくせに、あいつの罵倒はなぜか誰よりも図星をさしてくる。
(ヒューマンスキルゼロ。ええ、そうですとも。それが何か?)
普段は偉そうにしているくせに、時々やけに素直に頭を下げてくる。
小さなミスはハケンになすりつけるくせに、大きな責任は自分で背負い込む。
お前なんか知るかと言いながら、いつも気がつくとそばにいる・・・。
――人の心の一番柔らかい部分にずかずか踏み込んでくる、うるさい「ハエ」。
心を鬼にしてスパッと振ったのに。

いつのまにか、彼とのやり取りを楽しんでいる自分がいた。
憎まれ口をききあって、罵倒しあっていれば深入りしないで済むと思ったのに。

どうしても、憎めなかった。

彼がハケン弁当の企画を里中主任に返すことを、私は心のどこかで信じていた。
長いものに巻かれ続けてきた彼が迷子になりかけていることを知っていたから。
あなたの中にある優しさを思い出して・・・。
そう祈りながら、携帯番号を書いた。
そして私の願いは、どうやら届いた。その代償は余りにも大きかったけれど。

それにしても、やっとの思いで書いた携帯番号を捨てるなんて。
あの、バカ男。本当にハエ以下。

なのに、いなくなってみたら。
オフィスの灯が消えたようだとみんなは言った。
私はといえば・・・胸にポッカリと穴が空いたよう、な・・・?
こんな寂しさも、一時の気の迷いだと思おうとしたけれど。

――もう、限界かも。

S&Fでの任期が終わった今、社員とか派遣とか、
あのひとと私を隔てる溝は何もない。
今さら追いかけても、彼は振り向かないかも知れないけれど。
そうなったら、また傷つくのよ?それでもいいの?大前春子。

でも・・・。
あのひとは全てを投げ捨てて、ひとりで傷ついている。
放っておけるの?
――今度は、私の番じゃないの?


そばでは、仲間たちが踊っている。子どもたちが笑っている。
ここは日本にいるよりずっと安らげる、私の居場所。
・・・の、はずだったのに。

「フリオ、マリア」
「何だい、ハルコ」
「ごめんね。私・・・、あした日本に、帰らなきゃ」
フリオとマリアが一瞬、驚いたような顔をした。
いつもの私なら「ちょっと出稼ぎに行ってくる」、としか言わなかったから。
「わかったよハルコ・・・離れていても祈っているよ、いつものように」
「有難う・・・」

――本当は、少しこわいの。だから祈っていてね。くじけそうな私のために。


〜終わり〜
146名無しさん@ピンキー:2007/04/11(水) 01:42:30 ID:DQY7B6g/
お二人さんGJです。

>>108さん
おおおお!くるくるのくせに生意気だ〜。
匡子さんにはこの先本当に幸せになって欲しい。

>>不似合いな手さん
春子がけなげでもう…泣けそうです。
147嫉妬深い蜂:2007/04/12(木) 10:30:22 ID:/raSSkPv
108様も、不似合いな手様もGJでございました。
これからも素敵な作品を!!!

で凝りもせず東海林×春子前編はエロなしですが投下させていただきます。
ベタな設定とあんまりハケンの内容とはかけ離れているモノですので
イメージが壊れるという方はスルーでお願い致します。
148子猫の眠る場所:2007/04/12(木) 10:31:11 ID:/raSSkPv
「子猫の眠る場所」


1 

なんか今、視界の端にありえない光景が映った。
気のせいだろう・・・とそのまま通り過ぎようとしたけど
俺の足は意に反してそのありえない光景の方に向いた。

俺はその光景から隠れるように身を潜めながら近づき、様子を伺うことにした。


―――大前春子・・・?

つい先日、こともあろうに俺を「蝿」扱いした女だ。

つっけんどんで、おおよそ人間らしい感情・・・例えば人を思いやるだとかなんか
そういう温かい感情が欠如した・・・カンジの悪い女。
でもまぁ、意外とそればかりではないことも分かってきたけど・・・・・・。

尾行する刑事の様に物陰に身を潜めて俺ってヤツは何してるんだか・・・とっく
りに未練はないはずなのに、素通りできなかった自分が情けない。


大前春子が汚らしい路上に放置されたダンボールの中に手を伸ばし、なにか小さく
丸っこいほわっとしたものを抱き上げた。

「みにゃー・・・・・・」
か細く泣いた、そのほわっとした物体は大前春子の胸の中に納まりプルプルと震え
ていた。

―――子猫だ・・・・・・
149子猫の眠る場所:2007/04/12(木) 10:31:56 ID:/raSSkPv


意外だった・・・、とっくりなら子猫なんて気にも留めずに素通りすると思ってた。
そんな温かい感情なんて・・・あったんだと俺はちょっと嬉しくなった。

「お前・・・捨てられちゃったの?」
「ぴにゃー」
「よしよし・・・」

とっくりはその子猫に優しい笑顔をむけ軽いキスを落とした。

俺も触れたその唇が、猫にはやすやすと奪われた。

未練はない・・・はずなのに猫相手にチリリと胸が焦げるみたいな微かな嫉妬を感じた。

―――俺は猫相手にバカか・・・

「お前も一人なんだね・・・」
泣きそうな顔でとっくりは子猫を優しく・・・優しく撫でる。

―――・・・おまえもって・・・もってなんだよ。お前も一人なのか・・・とっくり?
今度はなんか切なくて胸が痛くなった。

「・・・つれて帰ってあげたいけど」
とっくりは子猫をだきしめ頬摺りをする。
「ぴゃー」
「30分・・・・・・ううん10分待ってて、その間に拾われなかったら一緒に帰ろう」
とっくりは名残惜しそうに子猫にキスを落として足早にその場を後にした。
多分10分後に戻ってくるだろう。
150子猫の眠る場所:2007/04/12(木) 10:32:34 ID:/raSSkPv


とっくりがいなくなってから潜めていた物影からでて、子猫の入った箱の前にしゃがみ
込んだ。
そして俺もなぜか無視できなくて、その猫をとっくりと同じようにゆっくりと抱き上げ
キスを落とす。
「間接キス・・・だな」
少し嬉しくなって何度もキスを子猫に落とした。
今まで抱いていたとっくりのぬくもりが子猫にまだ残っているようで・・・手放せない。
「んにゃー」
子猫は迷惑そうな非難の声をあげる。

「なんだよ・・・ちょっとくらいいいだろ」
顎を擽るように子猫を撫でると、一丁前に気持ちいいのかゴロゴロと喉をならし、俺の
指を小さいざらついた舌でぺろりと舐めてきた。

とっくりは居候してカンタンテに住んでいる・・・、ペットはさすがに飼いにくいんだ
ろうな・・・たぶん急いで駆けていったのはカンタンテで了承を貰うためだろう。

―――だったら・・・

もう可愛くて手放せなくなった俺は、寒くないようにコートの中に子猫を入れた。
「悪いな・・・とっくり、早い者勝ちだ」
数分後に戻ってくるであろうとっくりに見つからない為にコートの中の子猫が落ちない
ように気をつけてゆっくりと立ち上がった。

「やっぱり・・・俺はとっくりのことまだあきらめらんねぇな・・・」
不安そうに俺をコートの中から見上げる子猫に笑いかける。
「俺は・・・お前も、大前春子も一人にはさせねぇから・・・安心しろ」
「にゃー」
子猫はその言葉に安心したように、鳴いて暖かい俺の胸の中でうとうとと眠りについた。
151子猫の眠る場所:2007/04/12(木) 10:33:05 ID:/raSSkPv
4 

・・・・・・勢いで拾っちまった子猫
後悔はしていないけど、実は俺は猫といわず動物を飼った経験が一度もない。
むしろ動物は苦手かもしれない。

「どうするべ・・・・・・」
家に子猫を連れて帰ったはいいがどうしていいかわからずに途方にくれる。
そんな途方にくれている俺に腹を空かせた子猫は擦り寄ってくる。

「とりあえず・・・、エサだな」

でも何をあげたらいいのか検討もつかない。
賢ちゃんに電話して助けを求めようと思ったけど、賢ちゃんは子猫というより
子犬だしな・・・と意味不明な理由で思いとどまった。

ましてや苦手な子猫を拾った理由なんて聞かれたら、恥ずかし過ぎる。

ここは自分で何とかせねばなるまい
冷蔵庫をあけて物色するも牛乳すら入っていないことに愕然とした。

「ちょっと待ってろな・・・子猫ちゃん」
しかたない・・・と、俺はコートと車のキーを引っつかんで子猫をおいて外に
飛び出た。
24時間やっているディスカウントストアなら確かペットフードも売ってた筈。

案の定、あったペットフードと御誂え向きにおいてあった「子猫の飼い方」とい
う本をみながら必要な猫トイレだの猫用ミルク・・・またたびetcをゲットし、
家路に急いだ。
152子猫の眠る場所:2007/04/12(木) 10:34:09 ID:/raSSkPv
5 

「ごめんな・・・腹減っただろう」
か細く鳴き続ける子猫を抱き上げ、安心させるように撫でる。
本を読んでみると、おおよそコイツは生後二ヶ月くらいで子猫というほど子猫では
ないようだ。
軽くあっためたミルクに猫缶を混ぜたものとそのままの猫缶を置いてどちらを食べ
るか見てみる。
「おおっ食べたッ!!」
離乳食ではない猫缶にがっつく子猫に安堵して、ちょっと感動した。

「かわいいなぁ」
思わず言ってしまうほど子猫ってもんはかわいい。
とりあえず、トイレだ何だと、子猫の住環境を整えて、破裂しそうなほどのお腹を天
に向けて満足そうに眠る子猫を見る。

―――そういえば、名前考えてなかったな・・・、どうするべ

一応考えてみたものの一つしか名前は浮かんでこなかった。
「とっくり・・・」
その一つしか浮かばなかった名前を口にする。

とっくり・・・、アイツがきっかけだからな・・・別にアイツがまだ好きってわけじ
ゃないぞ。
メスだし・・・な。
誰も聞いてないのに必死に名前の言い訳を考えている馬鹿な自分が滑稽に思えてくる。
「結局・・・、俺はまだとっくりが好きなんだ」
そう・・・、子猫の名前まで「とっくり」にしてしまうほど・・・。
自覚して頭を抱える。
153子猫の眠る場所:2007/04/12(木) 10:35:11 ID:/raSSkPv


眼を覚ました子猫が俺の膝に擦り寄ってきた。
「どうした?とっくり・・・」
「うにゃー」
子猫は自分の名前を「とっくり」と認識したのか返事をした。

こうなったら名前もかえらんねぇな・・・・・・とっくり
「お前も・・・奇特なヤツだな、こんな変な名前で満足か・・・とっくり」
「にゃー」
「よしよし・・・・・・とっくり」
猫のとっくりを人間のとっくりに重ねる・・・、愛おしい気持ちが俺の心を占拠した。

再び眠りについた子猫を抱えベットに入る。
子猫の体温が暖かくて眠りの世界へと俺を誘った。
154子猫の眠る場所:2007/04/12(木) 10:35:45 ID:/raSSkPv


それから一週間後・・・、俺はとっくりにめろめろになっていた。
とっくりといっても猫のとっくりだけど・・・・・・、まぁ人間のとっくりにもだけど。

携帯の待ち受けをとっくりにして時間があれば眺めている。
このとっくりの可愛さをみんなに見せて周りたい衝動に
駆られる・・・けど「名前なんていうの?」なんて聞かれたらと思うと・・・、これが
ジレンマというヤツ。

完全な親バカだ。


そんな自分にため息をついて会社の廊下を歩いているととっくりとすれ違う。
このまま、無視されて行ってしまうかと思ったとっくりが足をとめ、俺を振り返りツカツカ
と俺に近づいてきた。
「ペット・・・飼ってらっしゃるんですか?」
「ま・・・まあな」
唐突な質問にしなくてもいい動揺をしてしまった。
「そうみたいですね・・・」
とっくりの白い手が俺の肩に触れた。

俺の心臓がドクリと激しく波打つ。
ゆっくりと俺の肩からとっくりの手が離れていく。
そのことに寂しさを感じてしまう俺も・・・とことんバカだ。
155子猫の眠る場所:2007/04/12(木) 10:36:21 ID:/raSSkPv


「毛がついてますよ」

眼前に俺の肩に付いていたであろう毛を突き出してきた。
「仮にも営業なんですから気をつけたほうがいいですよ・・・、まぁ私には関係のないこと
ですが」

そしてとっくりはくるりと踵をかえして、歩き出した。
「ありがとな・・・」
俺はちょっとうれしくて去り際のとっくりに礼をいった。
その声にとっくりは再び足を止め俺を振り返る。
「ペットはクルクルパーマじゃないんですね」
口の端だけをクイッとあげてバカにしたように笑った。
「お前・・・言いたかったことはそれかよっ!!」

これが俺の礼に対しての照れ隠しだったということが分かるのはもっと後になってからだった。




                        後編へ続く
156嫉妬深い蜂:2007/04/12(木) 10:38:25 ID:/raSSkPv
以上です。
後編は多分名古屋編になるかと・・・。
157名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 11:17:39 ID:yioGIWCN
嫉妬深い蜂さんGJです!
仔猫と戯れる東海林可愛いですな〜とっくりなんて名前つけちゃって
しかし最近職人様達の投下ラッシュでプチ祭りですね。うれしいかぎりです。

158名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 15:17:44 ID:OVic82fc
東海林さん可愛いです(^_^)v
続きが気になります☆
ワクワクしながら待ってますね!!
159名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 21:32:43 ID:tv0gTVep
嫉妬深い蜂様といい、不似合いな手様といい、108様といい…
ラッシュですばらしいです…!!
160名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 22:53:48 ID:8wgQvoxW
東海林の中の人は猫が苦手なので
想像したらちょっと笑っちゃったけど…
GJです!子猫ちゃんにメロメロの東海林さん可愛い!
161名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 23:31:02 ID:kkz5UjdS
GJ!相変わらず素敵な文章に脱帽です
続編も期待してます
162名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 14:31:27 ID:jh5LHkxS
いつも素敵なストーリーありがとうございます!
続編楽しみにしてます!! o(^▽^)o

163名無しさん@ピンキー:2007/04/14(土) 11:14:18 ID:ukQETrP6
子猫のとっくりをメロメロにいとおしむ東海林萌え・・・
その現場をこっそり見てドキドキする春子希望・・・
164風と木の名無しさん:2007/04/14(土) 21:00:47 ID:eKTJorVA
GJです!!
子猫に何度もキスをして間接キッスだと
興奮する東海林可愛い…!
続きも楽しみにしております。
165名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 14:05:04 ID:8tegV5UA
春子「…私も可愛がってください」
166名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 17:08:35 ID:zkX0/96K
素晴らしいスレ発見!
嬉しいよー。
167とかげみず:2007/04/16(月) 21:01:23 ID:zkX0/96K
名古屋に行く前設定で
168とかげみず:2007/04/16(月) 21:03:02 ID:zkX0/96K
長い、長い、くちづけ。
それは、永い夢。永かった夢。
夢を現実に戻すのは、鉄の味。
そして、罵倒の言葉。

『この、外道…っ』

言葉の主は、オオマエハルコ。
唇の鉄の味を、確認するかのように舌舐めずりするのは、
ショウジタケシ。
ハルコは、目の前の男の部屋に拘束されていた。
右手。左足。首。
それぞれに、チープだが女性の力では千切る事の出来ない
鎖のついたラバーの拘束具が嵌められている。
「今って、何でも売ってるのなー」
ショウジは、先ほどの言葉が聴こえているのかいないのか、
ハルコの首から垂れる細い鎖を片手で玩ぶ。
「ねー、ハルちゃん」
目の前の女に笑顔で微笑みかける。
その笑顔の瞳は、少し焦点が合ってないようにも見える。
ハルコは、冷静になろうと深呼吸をした。
―…、もし気が違ってたら何をしでかすか、わからない―
できれば、事は避けたい。
169とかげみず:2007/04/16(月) 21:04:24 ID:zkX0/96K
彼の部屋。簡素なハルコの部屋と違って、散らかったオトコの部屋。
ハルコの拘束具は、全て、彼のベッドの脚に繫がれている。
ベッドの脇に背中を凭れさせるハルコに、男は膝を着いてまた、くちづける。
「あのさ、俺って会社のイヌとか、上司のイヌとか思われてんじゃん。
その上さー、あんたにまでお預け、喰わされてさー。何処まで『犬』なのかなって思ってさ」
ショウジはハルコの細い指に、自分の指を優しく絡ませながら言葉を続ける。
ハルコの右手首の枷から、チャリと鎖の安っぽい音がした。
「…、あんたくらいは俺の『犬』になってよ。尻尾ふってさ、キスを求めて、
俺のことを一番好きで、ちょっと構わないと拗ねちゃう様な『犬』にさ…」
―んなこたぁ、子犬主任の方が適任だろう―
と、ハルコは心の中で毒づいたが、口には出さない。
狂人と化した彼は、何をするかわからないから。
170とかげみず:2007/04/16(月) 21:05:25 ID:zkX0/96K
風邪をひいていた。
鼻が利かなかった。
油断していた。
お茶を飲んだ後、意識が朦朧とした。

『あたしが、ハルコ先輩を送っていきます!』
『それよりも、男手の方がいいだろう』
『カンタータまでだろ?』
『そうしなよ、モリちゃん。』

ぼんやりと意識が戻ったときには、彼女は自分の部屋ではなく、
男の部屋に拘束されていた。
―なんて、単純で稚拙なのか―
ハルコは先ず、衣服を確認した。
そして、乱れていないことに一先ず安堵した。
しかし、直ぐに身体に嵌められた枷に気付き、項垂れた。
体操座りをするかのような姿勢の彼女にくちづける、事の犯人。
鉄の味。
171とかげみず:2007/04/16(月) 21:20:26 ID:zkX0/96K
絡めた指に何度も何度も、子どものようなキスの雨を降らせる。
嬉しそうに。
「な、腹とか減ってない?俺、こー見えて結構上手よ?あ、寒かったら、
毛布とか上着とか…」
かける言葉は普通に聞こえるが、環境が尋常じゃない。
どう、声をかけていいのかわからない。
何が地雷になっているのか…。
ハルコは珍しく、戸惑った。
「なんでも、言ってな」
両の手でハルコの細い指を握り締める。
―帰りたい、と言ったら帰らせてくれるだろうか?―
「…鎖はトイレまでの距離はあるから。玄関まではないけどな」
背筋が、ぞっとするというのはこういうことか。
ハルコは身をもって経験した。

ニュースで報道される悲惨な他人事。
そんなことより、もっと怖いこと。

172名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 22:25:53 ID:C380yiCr
少々マニアックっぽいですが、たまには良い!!
続きを楽しみにしております!(≧▽≦)ゞ
173嫉妬深い蜂:2007/04/17(火) 01:06:13 ID:+zRr038D
>とかげみず様、GJでした。続きお待ちしています。


それと、「子猫の眠る場所」後編が出来上がりましたので投下させていた
だきます。前編と同様、東海林×春子で舞台は名古屋です。
今回はエロ有りです。
174子猫の眠る場所:2007/04/17(火) 01:07:05 ID:+zRr038D
「子猫の眠る場所」後編




9 

3月も半ばに近づいたある日、俺は引越しの準備に追われていた。

名古屋行きの・・・。

後悔はないといったら嘘になるけど、後悔を差し引いてもおつりがくるほどのすがすがしい
気持ちに嘘はない。
ただ、ひとつ心残りなのは「大前春子」のことだけだ。
もうきっぱり振られている・・・、諦めなきゃいけないけど見ることのなかったアンケート
の裏の携帯番号が俺を未練タラタラの情けない男にする。


あの時、まだ希望はあったのに・・・・・・と。


荷物を詰めたダンボールにガムテープを貼り、ため息をついた。
「にゃー」
元気のない俺を心配したのか猫のとっくりが俺の顔を覗き込んで鳴いた。
「なんでもねーよ」
いつもと違う様相になってきた部屋で落ち着きなく動き回ってたのに、飼い主の異変に敏感
に反応するとっくりがいじらしくて堪らなくなって抱き上げた。

拾ってから一ヶ月もたたない内に一回りは大きくなったとっくり。
最初,動物は苦手なのに勢いだけで拾ってしまった子猫。
今は可愛くてしかたがない。
175子猫の眠る場所:2007/04/17(火) 01:07:46 ID:+zRr038D
10 

今回の名古屋行きには、実家に預けていくか連れて行くか、迷ったけど結局連れて行くこと
にした。
当然だ・・・、俺はすげぇ「寂しがりや」だから・・・慣れ親しんだ会社を離れ、親友と離れ
とっくりと離れ、さらに猫のとっくりも手放したら俺は名古屋でやっていく自信はなかった
から・・・・・・。

そんな自分の弱さにまた一つため息をついた。


春の暖かさと冬の冷たさを繰り返す不安定な今の季節のように俺の心は不安定で、でも俺は
名古屋へと出発した。


それからもう九ヶ月近く達とうとている。

今では猫のとっくりは一人前の成猫だ。

去年に比べて今の自分は、すがすがしい気分の欠片もない。
本社では自分が中心に回っているようなそんな気分だったのに、名古屋では中心どころか
一人、耐え難いほどの疎外感を味わっている。
しかもネクタイなんて呼ばれて・・・、これならクルクルパーマとあいつに言われていた頃の
ほうがマシだ。

―――自分だけ取り残されたような・・・、そんなやり切れなさが今の俺の心を支配している。

こんな寂しさを埋めるために彼女でも作ろうかとも考えた。
けれど大前春子以外の女はもう俺の中で眼中にはなかった。

だから猫のとっくりを大前春子に重ねて愛情を注ぐほかなかった。
176子猫の眠る場所:2007/04/17(火) 01:08:29 ID:+zRr038D
11

一月になり、名古屋の東京にいたときとたいして変わらない朝の寒さにブルっと身を縮める。

今日最初に取り掛かった仕事は人材不足の為の求人募集のポスターの作成。
こんな時でも俺は大前春子を思い出してしまう。

求人には大前春子を否定する募集要項を書いておいて、大前春子以外を求めていない。
こんなところに・・・アイツが来るはずなんてないのに。

書き直そうと思ったけどやめてヤケクソで入り口に貼り付けた。


そして午後・・・

「仕事しましょうよ・・・土屋さん」
「お前の下でなんか働けねーっ」
言い捨てるように土屋さんが出て行ってしまった。

あ〜〜もうなんかどうでも良くなってきた。

いっぱいいっぱいの人手不足の配車表・・・土屋の仕事放棄。

爆発寸前だ。

頭を掻き毟りたい衝動を抑えて投げ捨てられた配車表を拾おうとしたところ白い手が
すっと伸びて配車表を拾って俺に差し出してくれた。

「あ・・・」
ありがとうと礼をいう前に、俺は目を疑った。
「とっくりっ」

目の前に立っているのは幻か?
アイツに会いた過ぎて、とうとう俺おかしくなっちゃったのかっ!!

目頭を擦ってから、もう一度とっくりを見た。

やっぱり、大前春子だ。
まちがいないっ
177子猫の眠る場所:2007/04/17(火) 01:09:09 ID:+zRr038D
12

「とっくり・・・どうしたんだよこんなところで」

懐かしくて嬉しくて擦った目頭が熱くなって泣きそうになった。
アイツが社長賞を俺に取らせるとエラそうな事をのたまっても・・・
眉毛を抜かれてもなにをされても・・・

俺は怒ったフリをして、心中では嬉しくて飛び上がりそうだった。

福岡に出発したとっくりを止めたくて仕方なかったけど、賢ちゃんの手前グッと堪えた。



そしてもうすぐとっくりが帰ってくる。

俺・・・自惚れてもいいんだよな?
アンタの事・・・、好きでいていいんだよな?
帰ってきたら真っ先にこの質問をぶつけたい。

早く帰って来い・・・祈るような気持ちで車庫で待っていた。
178子猫の眠る場所:2007/04/17(火) 01:10:11 ID:+zRr038D
13

そこに一台の「ハケン弁当」のロゴが入ったトラックが滑り込んできた。
「とっくりっ!!」
駆けていって、ゆっくりとトラックから降りる人物を抱きしめた。

・・・誰かも確かめずに。

―――んんっ?やけにガタイがデカイな?

それは「やめた」と出て行った後に無理やり俺から配車表を奪ってトラックに乗り込んで
昨日出発した土屋だった。
「てっんめぇ〜っ何しゃがんだっ!!ホモかあんた?」
「・・・あぁっ!!すっすいません間違えました」
自分のとんでもない失敗に慌てて土屋から体を離す。
「はぁ〜っ?間違えましただぁ〜それで済むと思ってんのかよっ!!!」

避けるまもなく土屋の鉄拳が俺めがけて飛んできた。

バキッ!!!!

格闘家バリのマッチョな土屋から繰り出された鉄拳は結構な威力だった・・・。
そして俺はそれにクリーンヒットし情けないことにバタリと倒れた。

薄れ行く意識の中で一発でまさかのされる思ってなかった土屋の慌てた声ともう一台のトラック
が入庫してくる音が聞こえた。

それから倒れた自分を取り囲んで「救急車だ」なんだと騒ぐ喧騒を抑えて誰かが割って入ってきた
ようだ。

―――ああっもう駄目だ・・・意識が飛ぶ。

その寸前に聞こえた言葉

「看護師の大前春子ですっ!!」

そして俺の意識は途切れた。
179子猫の眠る場所:2007/04/17(火) 01:11:01 ID:+zRr038D
14

ズキズキと広がる頬の痛み・・・口の中も切れたようで鉄の味がして、その味に少し吐き気を催して
少しづつ意識が覚醒していく。

「おおっ痛ってぇ・・・」
ぼやけた頭を振りながら半身を起すと、頬を冷やしていたらしいタオルがポトリとずり落ちた。
ここは何処だと辺りを見回すと、見覚えのある室内に心配そうに俺に擦り寄ってくる猫のとっくり・・・。

「お・・・俺の部屋か」

そして何があったか順々に思い出していく。

―――確か・・・、土屋に殴られて気絶して・・・そんでアイツ・・・大前春子の声が聞こえた。

「・・・そうだっ!!とっくりは?」
「ここにいますが・・・何か?」
台所の方から声がして、慌てて立ち上がり声の主に近づいていく。
「イテテ・・・おいっとっくり、どうしてここにいるんだ」
「看護師の資格を持っていましたので看病のため仕方なく・・・ちなみにここへは土屋さんたちが
運んでくれました」

土屋の意外な行動に驚きながらもとっくりが俺を看病してくれていたことが純粋に嬉しい。
「アンタが看病してくれたのか・・・・・・ありがとうな」
「ええ・・・仕方なくですが」
そう言ってとっくりが素直に礼を言った俺に背を向けた。

―――・・・仕方なくか
と苦い気持ちでとっくりの後姿を見つめた。
ちらりと見えたとっくりの耳は真っ赤だ。
そのことに気づいて俺はとっくりの正面に回りこむ。

顔も赤く染まっていた。
「ひょっとして・・・仕方なくって・・・照れ隠し?」
俺の言葉にとっくりは更に赤くなって再び俺に背を向けた。
180子猫の眠る場所:2007/04/17(火) 01:11:41 ID:+zRr038D
15

―――そういえば本社にいた時、とっくりがとっくりの毛をとってくれて俺が礼を言ったときもこんな
カンジだったな・・・。

思い出して笑みがこぼれた。
「可愛いな・・・とっくり」
そしてそのまま、後ろからとっくりを抱きしめた。
ビクリととっくりの体が反応して固まったのを感じたけど、それを無視して思っていたよりも小柄な
とっくりの首筋に顔を埋める。
「やめ・・・て」
「やめない」
俺を拒否する言葉を遮る。

「俺・・・アンタのことまだ忘れてない、アンタが名古屋に来たこと・・・嬉しくて自惚れてる」
「・・・・・・」
無言のままのとっくりを正面に向かせ、ゆれる瞳を覗き込む。

とっくりの気持ちを探るように・・・・・・奥まで。
「好きだ・・・、あの時したプロポーズの返事を聞かせてくれ」


断るなっ
断るなっ
断るなっ

とっくりが何度断ったとしても・・・何度でも俺はあきらめない。

アンタもとっくりも・・・一人にしないと心に誓ったから。
181子猫の眠る場所:2007/04/17(火) 01:12:39 ID:+zRr038D
16

一瞬、とっくりの顔が泣きそうに歪んで、ゆっくりと瞳が閉じられた。
そこに一筋の涙が頬を伝う。

「バカ・・・・・・ですね・・・、あなたは」
再び開かれたとっくりの瞳は揺れることなくまっすぐ俺を貫く。
そしてとっくりの手が俺の腫れた頬を包み込み・・・・・・、軽く抓った。

「イッテーっ!!なにすんだっ」
「・・・面白いくらいに腫れてたので・・・つい」

これも照れ隠し・・・なんだよな多分?

仕返しとばかりに強くとっくりを抱きしめる。
「返事は?」
「・・・春になったら」

一言返ってきた。
「春になっても・・・いい返事しか俺は聞かないからな」
「それは・・・ど・・・」
何かを言おうとしたとっくりの唇を指で押さえた。
「黙れ」

くちづけた。

ゆっくり
長く
静かにくちづける。

とっくりは逃げない。
はじめこそ目を見開いていたが次第に瞳が閉じられ俺を受け入れた。。
ゆっくり唇が離れ俺達は大きく息をついた。
182子猫の眠る場所:2007/04/17(火) 01:13:50 ID:+zRr038D
17

その時俺達の足元で猫のとっくりがじゃれるようにまとわり付いてきた。
「どうした?とっくり」
「にゃー」
かまって欲しいのか、エサがほしいのかその場をとっくりは離れようとしない。
「あとで遊んでやるからちょっとあっち行っててくれな」
「うにゃー」
言葉を理解したように猫のとっくりは自分のお気に入りの場所に戻って眠りに付いた。

「・・・とっくりって猫の名前?」
「ああ」
吃驚したようにその様子を見ていた人間のとっくりが俺を睨む。

「去年のバレンタイン前に十分間の間に拾った」
そう言うととっくりは眼を大きく見開いた。
「もしかして・・・あの時の・・・・・・?」
「そう・・・アンタが拾うはずだった子猫」
思い出したように部屋の片隅にまどろむ猫を見詰める。
「・・・・・・大きくなったわね」
「まあな・・・、あの時゛おまえも一人なんだね゛って言っただろう?」
「・・・・・・」
こくりととっくりが頷く。
「その言葉が頭から離れなくなったんだ・・・゛お前は一人なのか?゛って・・・、
で思ったんだ大前春子を一人にさせないって」
183子猫の眠る場所:2007/04/17(火) 03:37:26 ID:+zRr038D
18

「・・・・・・」
互いが無言のまま、もう一度くちづける。
薄く開いたとっくりの口内に舌を入れ、今度は深く、深く・・・・・・。

何がなんだかわからない。
身体が熱い。

とっくりの舌を自分の舌でからめとる。
俺の傷から滲む血の鉄の味が互いの口内に広がり、その血の味に酔っていくようだ。
気がつくととっくりの腕が俺の首にしがみつく様にまわされていた。
綺麗な黒髪が俺の頬をサラッと擽る。

「・・・ん」
どちらのものか判らないような吐息が漏れた。



唇が離れる。

黒くて深く・・・・・・吸い込まれそうな瞳が、俺を見詰めて心を掴む。


184子猫の眠る場所:2007/04/17(火) 03:40:44 ID:+zRr038D
19

唇でとっくりの首筋を辿り 軽く震えたとっくりの背中を撫でる。
俺の手が恐る恐るとっくりの胸を服の上からなぞると、とっくりの微かな抵抗を感じた。

「あ・・・だめっ」
俺の胸を押し返して逃げようとするとっくりを、逃がさないようにきつく抱きしめる。


―――春までなんか・・・俺は待てない


今、とっくりを離す気はなかった。


俺を見ろ。
他のことは考えさせたくない。

逃がさない・・・絶対に。



「・・・くる・・・しい」

きつく抱きしめ過ぎて、とっくりが苦しそうに息をついた。

「俺は・・・止まらないから」

とっくりのジャケットを剥ぎ取り、タートルネックのセーターに手をかけた。

とっくりの制止はない。
185子猫の眠る場所:2007/04/17(火) 03:43:46 ID:+zRr038D
20

セーターの中に挿し入れた手を直接とっくりの滑らかな肌に滑らす。
「あぁ・・・っ」
押し殺したとっくりのあえぎ声に背中にゾクゾクとした感覚が走った。


セーターも剥ぎ取られて乱れた髪をかきあげ、上目で俺を見つめてくる。
「好きだ・・・」
「・・・・・・」
ブラジャーのホックをはずし、こぼれ出た豊かな胸に感動を覚えた。


胸の先端を舌で転がし、もう片方はやんわりと手のひらで揉み上げる。
「ん・・・はぁぁっ」

とっくりが身体をよじらせ俺の頭をかき抱いた。


そのことが俺は嬉しくて思わず強く胸をもみしだき、乳首を思う様吸い上げた。

「はぁぁぁっ・・・あっいぅぅ・・・っ!」
ビクビクっととっくりが反り返り、俺の腕の中で甘く暴れた。


もっと。
もっと俺を求めてほしい。

とっくりの着ているものを全て剥ぎ取り、自分もシャツをボタンを引きちぎるように脱ぎ捨てた。

もういつもの自分じゃないのを感じる。
飢え・・・のような飢餓感をとっくりで満たしたくて

狂いそうだ・・・・。
186子猫の眠る場所:2007/04/17(火) 03:46:48 ID:+zRr038D
21

一糸まとわぬ姿のとっくりをベットに寝かせ、上から見下ろした。

早く自分のものにしたくて堪らない気持ちを何とか抑えて、とっくりの頬に手を添え何度も何度
もキスを落とし、その度に溶けそうな甘さが俺の体を痺れさせる。

首筋に、背中に、ウエストに唇を這わせ、舌で擽る。
「あっ・・・・やぁぁぁっ」


感じて潤いを持ち始めた秘所を指でなぞると指は抵抗もなく、ぬめりの中を自由自在に動き回る。
「もう濡れてるな・・・とっくり」
「ああぁっ・・・」
耳元で囁かれた声にも敏感に反応した。
もっと乱したくてとっくり肉芽を軽く擦る。

「ひぃ・・・!ああっ・・・・っ」
びくびくととっくりの身体が痙攣する。

軽くいったとっくりの少し脱力した足の間に身体を入れて、充血した肉芽にくちづけ更に快感を促した。

「ひゃ・・・・あぁぁっやめ・・・」
鋭い快感に耐え切れないのかとっくりが俺の頭を押しのけようともがく。
「やめないよ」
俺は敏感に反応する部分に息を吹きかけてペロリと舌先で溢れてる蜜をなめとった。

「はぁぁぁ・・・・ん」

ワザとぴちゃ、ぴちゃ…と子猫がミルクを飲むような音がさせ、 聴覚をも犯す。
絶え間なくもれるとっくりのあえぎ声に俺の我慢の限界が近づく。
そして汗ばんだ互いの体を重ね、ぎゅっと抱きしめた。
187子猫の眠る場所:2007/04/17(火) 03:49:34 ID:+zRr038D
22

たまらなく、愛しい思いが込み上げる。
欲しい。
全部が欲しい。

揺らめくとっくりの腰を押さつけ、とっくりを見つめた。


秘所に自分の熱くそそりだったモノをあてがい ゆっくりと押し入る。

「あぁぁぁ・・・・・・んんんっ」

全部をとっくりの中に入れてすぐに動きたいのを我慢して、長いキスをする。
俺は息をついてとっくりの顔を見つめるとせつない顔で少し笑った。

「・・・春子」

涙を浮かべたとっくりがコクリと頷いたのが合図のように、俺は慣らす様にゆっくりと動きはじめた。


「ああっ・・・」
とっくりが髪を乱して俺の動きに答える。

俺の段々早くなる動きに合わせてとっくりの腰が動き、より深く俺を受け入れようとする。
そんな痴態を見下ろしながら愛しさでいっぱいになる。


こうして自分の動きに合わせて彼女が感じて、狂乱している姿を見ると、 とっくりが自分のものに
なったという征服感が俺の中に芽生える。
188子猫の眠る場所:2007/04/17(火) 03:52:25 ID:+zRr038D
23

―――もっと…もっと喘いでほしくて。
俺を欲しがってほしくて。
もっともっとと欲張りになっていく自分に苦笑する。

腰を動かしながらとっくりの顔から目が離せない。
胸も愛撫しながら乳首を吸うと とっくりの中がキュッと俺を締めつけ、射精感が高まった。


「・・・春子っ」
「ん・・・ふぁぁ・・・」
深く貪り合うようなキスを交わす。
とっくりの舌はもう、俺のそれと一緒に絡み合って、どちらがどちらの舌かわからない。


激しく打ち付けるように腰を振った。
身体が痙攣して、頭の中が真っ白になる。


「い・・・ぁぁぁぁぁああっ・・・も・・・いっ・・・く」
体を震わせ今まで以上にキュと俺を締め付けた。

とっくりがいったのを確認して奥の方で、大きく膨らんで弾けそうになる寸前で引き出しビクビク
と脈打つ自身をとっくりの白い肌に弾けさせた。
189子猫の眠る場所:2007/04/17(火) 03:55:29 ID:+zRr038D
24

「なぁ・・・とっくり」
「・・・なんですか?」
情事の後の甘さを引きずることなくとっくりがそっけなく対応してきた。

―――まぁ・・・睦言がないっていうのもとっくりらしいけど
と心の中で苦笑しながら話を続ける。

「・・・一緒に住んでくれないか?」
「・・・・・・」
無言のままで反応がない
「お願いだ・・・、OKしてくれなきゃ俺がお前の家に押しかけてやる」
俺は一か八かで強引な賭けに出た。
「それはお願いではなく脅しというんです東海林所長・・・」
「ああっもうッ!!脅しでも何でもいいから答えてくれ」

これで駄目なら泣き落としで迫ってやる・・・と決意したとき、とっくりがコクリと頷いた。
「・・・へっ?マジで」


―――信じられないようなモノでも見たような・・・こういうのを狐に摘まれたとでも言うんだろうか


「ホントにホントだなっ!」
何度もしつこいくらいに確認してしまう。
「・・・しつこいですね、やはりやめま・・・」
「わぁぁぁ・・・・っ悪かったって」
とっくりがため息をついて言いかけた言葉を、俺は慌てて抱きしめて遮った。
190子猫の眠る場所:2007/04/17(火) 03:58:00 ID:+zRr038D
25

「嬉しいよ・・・とっくり」
思わず笑みがこぼれる。

これからずっととっくりと一緒にいられる・・・、嬉しくて嬉しくて・・・

「とっくりーーーっっっ!!」
叫んでしまった。
うるさいとしかめっ面をしたとっくりの横をするりと通って自分の名前が呼ばれたと思って猫のとっくりが
顔をだした。
「ぅにゃー」
小首をかしげて俺達を猫のとっくりが見上げる。

「「―――プッ・・・・あははははっ」」

その仕草が可愛くて可笑しくて人間のとっくりと顔を見合わせて爆笑した。
「クルクル天パが紛らわしい名前つけるから・・・・・・ねぇ、ダメな飼い主ね」
とっくりがとっくりを撫でながら話しかける。
「次からとっくりのこと春子って呼ぶことにしたからいいんだよ」
言った途端、春子の顔が赤く染まった。
「やっぱり春子は照れ屋だな」
俺は一人と一匹を包み込むように抱きしめた。



こうして俺とかわいい猫と照れ屋な女・・・二人と一匹の生活が始まった。
春が過ぎても・・・・・・何度も冬を越えても、絶対に一人にはしない・・・。

俺のそばはいつもアイツらが安らげる場所でありたい。
 


                               終わり
191名無しさん@ピンキー:2007/04/17(火) 04:01:21 ID:t1Cndzh8
うあああああああああああああ!!!!!
初めてリアルタイムで遭遇しますた…
ネ申よ〜〜〜〜ありがとうございます!!!!!!!!
メインの二人が激しくツンデレで大好きですが、猫のとっくりもカワユス(*´∀`*)
192嫉妬深い蜂:2007/04/17(火) 04:02:58 ID:+zRr038D
長々とすみませんでした。規制が入ってしまって・・・トホホ
やっと投下できました。
今回、少々東海林がヘタレになってしまって・・・お気にさわったら
すみません。

あと前編にレスを下さった方、ありがとうございました。
193名無しさん@ピンキー:2007/04/17(火) 04:33:25 ID:7xBS3FC3
すごい萌えました。ほんと毎回、素晴らしいです!
ありがとう!
194名無しさん@ピンキー:2007/04/17(火) 05:05:11 ID:fKcLDlvo
>>192
GJです!!
続編ワクワクしながら待っていました(*^_^*)
春子も猫のとっくりも可愛かったです☆
東海林さんと春子のやりとりがドラマの雰囲気のままでとても良かったです!!
素敵な作品ありがとうございました(^O^)
195名無しさん@ピンキー:2007/04/18(水) 19:32:30 ID:D9U5UebU
>>192
GJでした!!!
春子のことが愛しくてしょうがない東海林、素敵でした!
すごく萌えました。これから春子と猫のとっくりと東海林の生活・・・
いつものように子供みたいな言い合いがありつつ凄く幸せな時間が流れて行くんでしょうね〜。
196とかげみず:2007/04/18(水) 23:05:20 ID:6HyYBYHa
これからを考えると、不安に俯いてしまうハルコに
ショウジは髪をやさしく掬い上げながら、心配そうに問う。

「元気なさそうだな。いつものは、どーした?」
「…どうしたら、ショウジ主任は、気が済まれるのでしょうか?」
俯いたまま、ハルコは問い返す。
ショウジが怪訝そうな顔をする。
『…気が済んだら、『終わり』なのか?』
髪を掬ってた手が、頬に触れる。
ひどく汗ばんだ大きな手。
ハルコは気付いたが、気付かないふりをした。

―情けない男―
197とかげみず:2007/04/18(水) 23:06:54 ID:6HyYBYHa
膝を着いたままのショウジに、ハルコからくちづける。
やはり、鉄の味がする。
咄嗟のことにショウジは身動ぎ、真っ赤になって唇を押さえた。

確信した。

ハルコは、いつもの笑みでショウジに言う。
「私が鎖をつけていても、あなたが犬なことには変わりありません。
おいで」
そう言って、ハルコは大きな犬を抱き寄せる。
「困った、クルクルね」
目を丸くするショウジの髪を撫でながら、耳元で囁いた。
彼の耳が真っ赤になっていくのが、ハルコには面白い。

「…、クルクル、待て。」
ハルコの腹部に硬いモノが当たっている。
ショウジが真っ赤のまま、ハルコを睨む。
「待て、って、またお預けかよ。俺は―」
「犬よ」

言葉を遮って、すっくと立ち上がり、ベッドに腰掛ける。
「イイコに待て、が出来たら、ご褒美があることを
知らないのですか?」
鎖の音を鳴らしているのは、ハルコなのに
これでは、どちらが犬かわからない。
ベッドに腰を掛け、微笑むハルコ。
膝まづいて、ハルコを見上げる形になってしまったショウジ。
198とかげみず:2007/04/18(水) 23:07:46 ID:6HyYBYHa

「はずしなさい」
自分を拘束する鎖を、ショウジの鼻先にぶら下げる。
ショウジは、顔に当たるのではないかと、少し怯んだが、
焦って鎖を握り返す。
「はずしたら、あんたは、あんたは俺の前からいなくなっちまうだろ」

「いいから、はずしなさい!」
ハルコの喝に、犬のようにびくりとし、ショウジは急いで
ベッドの脚に嵌めた鎖の鍵をはずした。
「…、そっちをはずすのね。まぁ、いいわ」
ショウジは命綱かのように、ハルコからのびる鎖を握り締める。

「おいで、クルクル」

199名無しさん@ピンキー:2007/04/19(木) 03:37:23 ID:dubzrwWd
 
200名無しさん@ピンキー:2007/04/19(木) 05:22:20 ID:/hg89uhh
とかげみずさま
GGGGGJ!!
続き気になります、待ってます!
201名無しさん@ピンキー:2007/04/19(木) 22:08:44 ID:4goZ6c2G
春子カッコ良いww
続き楽しみです!!
202とかげみず:2007/04/20(金) 00:58:01 ID:KFnV/7Dz
まるで本当に犬を呼ぶように手招きをする。
「だから、犬じゃねーし!さっき、突っ込み忘れたけど、
クルクルって何だよ!!てか、…行ってもいいのかよ…」
「…パー………ま、も、つけましょうか?」
「何だよ、その間は!いや、そこじゃなくて!!」

いつの間にか、ショウジは立ち上がり、すっかりハルコの
ペースにはまってしまっていた。
「行くからな。もう、ガマンきかねーかんな!」
言うが、早いか、ショウジはハルコに覆い被さる。
顔は、真っ赤のままだ。

「イイコね」
ハルコは、大型犬を扱うかのようにショウジの頭を何度も撫でる。
決して悪くはない。
しかし、明らかに形勢が逆転している。
悪くはないのに、納得のできない顔のショウジ、ハルコは満足気に
見つめてから軽く口づけた。

203とかげみず:2007/04/20(金) 00:59:17 ID:KFnV/7Dz
「クルクル、ヨシ」
生唾をごくりと飲み込む音が聞こえた。
ハルコの下腹部には、硬いものが先程から、ずっと当たったままだ。
我慢の限界。
言葉のとおり、貪る様にハルコの小さな口腔を犯す。
赤い舌は抵抗することなく、透明を絡める。
「クルクル、乱暴はダメ」

相変わらず、犬に接するかのようなハルコ。
ぺし、と額を軽く叩いて、服の上から胸を鷲掴むショウジを優しく制す。
それから、ゆっくり上半身を起こし、タートルネックをたくし上げる。
容好く下着に包まれた胸が、露わになった。
「ほら、こんなものが付いてるから脱ぎにくくて仕方ない」
衣服を脱ぎ捨てると、鎖が衣を纏うように絡んでいる。

「…ずいぶん、色気のないブラだな」
瞬間、思い拳がショウジの頬に飛んだ。
204とかげみず:2007/04/20(金) 01:00:10 ID:KFnV/7Dz
「あなたには、これでも十分です!」
「いや、なんかもっと可愛いのとかあるだろ?
なんつーの?こーゆーんじゃなくてさ」

フリル。レース。紐。可愛い刺繍、柄。アクセサリ。

そんなものとは、無縁なハルコの下着。

「わかった!今度、俺好みのを買おう!!」
第二の拳は、勢いが良過ぎて鎖のおまけ付きだった。

「こういうのは、ちゃんと着けられれば良いのです!」
今度は真っ赤になって、ハルコが怒鳴った。
怒鳴るハルコの首筋に口付け、器用に背中のホックを外す。
「まぁ、なに着けていようと取っちゃったら一緒なんだけど、
こー、エロさっつうの?」
しかし、下着を脱がせてしまうと、首輪と手枷から鎖が垂れ下がる
ハルコの姿は、いやらしいことこの上ない。
色白の豊満な胸の谷間に挟まれる鎖をつい、本能で引っ張ってしまったら、
ショウジは右手の鎖で打たれた。
細くても痛い。

「いや、やるだろう!」
「この、バカパー!」
「何?そのスカパ−みたいなの!!」
溜息が出る。

205名無しさん@ピンキー:2007/04/20(金) 21:58:11 ID:ZnksMmIv
嫉妬深い蜂、本当に毎度毎度グッジョブすぎです!!
相変わらず文もうまいし、話もいいし……プロのようです!!
(もしやプロ!?)
本当にありがとうございます

そして、とかげみず様続き楽しみです!
ちょっとマニアックなのがかなりいいですwwww
206名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 14:11:48 ID:T2sGtTfq
>「いや、やるだろう!」
 「この、バカパー!」
 「何?そのスカパ−みたいなの!!」

ちょwwwありそう、そのやりとりwww
207名無しさん@ピンキー:2007/04/22(日) 13:51:44 ID:vv0m1oIS
(・∀・)ツヅキマダァ?
208とかげみず:2007/04/23(月) 12:54:32 ID:sjezwVBk
「あー、もうあんたって女は、全然調子崩さねーのな」
溜息を吐きながら、ショウジはハルコのキュロットに手を掛ける。
「あっ、こら…」
「でも、だから崩したくなる」
制止しようとする手を、撥ね退けキュロットを脱がす。
羞恥に逃れようと身を捩らせようとすると、鎖で制され身動きが取れない。
鎖を握ったまま、ショウジはハルコの白い肌に赤い痕を散らした。
まるで、犬が自分の所有物と主張するためのマーキング。

ショウジは、ハルコの下着に鼻を押し付け、わざと大袈裟に匂いを嗅ぐ仕種をする。
それだけで、ハルコは恥ずかしくて恥ずかしくて泣きそうになってしまう。
「やだぁ…、やめて……」
匂いを嗅ぐ仕種だけで、下着は湿り気を帯びている。
下着の上から、ショウジは舌で舐め上げる。
ハルコは敏感になってしまって、下着の上からでも吐息が漏れる。
「わん」
衣を銜えて、簡単に脱がせてしまう。
一糸纏わず、鎖をぶら下げたハルコの姿は、犬を一層欲情させた。
恥ずかしさに、シーツを纏おうとするハルコをショウジは逃がさない。
腰を引き寄せ、肩に膝をかけさせ、固定する。
秘部に、唇を寄せ中心を下から上に舐め上げる。
「ひぁっ!」
やめさせようとするが、どうにも手が届かない。
ショウジは、ハルコをぐちゅぐちゅに舌で掻き回し、紅く潤んだ突起を甘噛みする。

209とかげみず:2007/04/23(月) 12:55:59 ID:sjezwVBk
「わんわん、ハルちゃん涎垂らして、はしたないなー。」
秘部から、尻を伝うのは自分のものなのか、ショウジのものなのか、もうわからない。
火照った身体が熱い。
下半身が熱い、の間違いかもしれない。
「…、欲しい?」
「欲しい」
即答。
あまりに、素直すぎてショウジは戸惑ったが、首からのびる鎖を掴み、
「欲しいって、鳴いて?犬みたいに…」
ショウジの牡はもう、スラックスから取り出されている。
「……、よかったら、いくらでも鳴いてやるわ」
火が点いた。
情欲が、ハルコに捻じり込まれる。
すぐに、達してしまいそうになるが、鳴かせたくて我慢する。
ギリギリまで抜き、また根元まで埋め込む。
断続的に突き上げてくる、ショウジの熱い牡に嬌声を吐露してしまう。
動かされるたびに鎖を鳴らし、犬の熱を全て呑み込もうとする自分の痴態にハルコは眩暈がした。

「わりっ、もうやばいわ」
ずるりとハルコから抜き出し、白濁した己をハルコの腹にぶちまけた。
「…、ミ、ミルクだよー」
「さむっ」
ハルコは吐き捨てたが、それを一掬いし、小さく不味いと呟いた。
ショウジはそのまま、ハルコに傾れ込む。
「重いっ!」
何度もくちづけするショウジをうざがるハルコ。
でも、決して押しのけはしない。
そんなに悪い心地ではない。
「…、どうしてこんな犯罪じみた真似を?」
ショウジはばつが悪いように、毛布に潜り込む。
「こら」
「…だって、こーでもしないとあんたはさー」
「だからって、人としてやっていいこと悪いことがあるでしょう?」
「………」
「まったく、躾のなってない困った犬です」
「わんわんわんっ」
「こら!何処触ってるの!!舐めるなー!」

210とかげみず:2007/04/23(月) 12:57:43 ID:sjezwVBk


翌朝、ショウジの隣にハルコいなかった。
不安に不覚にも泣きそうになってしまう。
「どうしたの?クルクル?」
ハルコは、いつもどおりのきちんとした佇まいでベッドの脇に座った。
いつもどおりの。
ハルコは昨夜の姿のままのショウジにくちづける。
「クルクル、ちゃんと躾てあげるね」
ハルコには、鎖はもうない。
ショウジには、
「何、これ!」
首から鎖がぶら下がっている。
「ちょっ、おまっ、これっ、どー…」
ハルコは、首からのびる鎖を引き寄せ、カードを提示する。
「日本錠前技師のオオマエハルコですが、何か?」
鍵師の資格まで持っている。
鎖は最初から外す事ができた。
犬は、顔をくしゃくしゃにして笑った。
211とかげみず:2007/04/23(月) 13:00:01 ID:sjezwVBk
長々と御目汚しもうしわけありませんでした。
読んでくださった方、レス、下さった方、
どうもありがとうございます。
212名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 16:14:26 ID:r/T67bWk
とかげみずさん、すごく萌えました!
即答する春子にウケた…!
ありがとうございました!
213風と木の名無しさん:2007/04/23(月) 20:13:04 ID:sdi2tBtQ
とかげみずさん、GJです!
「ミルクだよー」「さむっ」のやり取りにウケました。
それにしても春ちゃんはセックスになると
可愛くなっちゃうのね。
214名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 20:34:36 ID:PJiFCctH
鎖のハルちゃんに興奮しましたww
素敵な作品ありがとうございました!!

またお願いします!!m(_ _)m
215名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 23:05:37 ID:dAi2ok8o
とかげみずさん、かなり萌えました!!
また是非書いてくださいね!
216名無しさん@ピンキー:2007/04/24(火) 04:26:18 ID:5Y3prqm6
錠前技師wwwwwwwwwwwwwwwwwwww
217名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 01:33:16 ID:VPwPp07i
こんばんは、108です。
コテハンにしたほうがいいのかもしれませんが
名前が思いつかないので108のままで行かせて頂きます。


調子に乗って又書いてしまいましたが…。
春子X東海林の名古屋でのバレンタイン編です。
短いですが投下させて頂きます。



2月14日

名古屋ではバレンタインは無縁のイベント。
男だらけの職場に、唯一女であるとっくりは
アンチバレンタイン派。
去年義理チョコをたくさん貰ってウハウハしていた
あの頃は何処に…。

「はぁ〜、今ごろ賢ちゃんは沢山チョコもらってるんだろうなぁ」

デスクで一人事をつぶやく東海林。
すると横から突然
「仕事中に独り言を言うのはやめてください」
春子がひょこっと顔を出す。

「とっくり!?また瞬間移動かよ。びっくりするじゃねぇか」
「東海林主任…今から京都へ向かいますので20時頃には戻ってきます。」
春子はそう言うと、トラックのカギを持ち出し去っていった。


「…やっぱり、チョコなんて用意してるわけねーな」
218名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 01:33:58 ID:VPwPp07i
18時。


ちょっと休憩しようと仮眠室へ入る東海林。
すると誰もいないのにテレビがつけっぱなしになっていた。
「誰だよ、つけっぱなしにして電気代勿体ないなー」
東海林がリモコンで電源を切ろうとすると
「名神高速道路は大雪のため一時通行止めに…」
テレビのアナウンスに一瞬手が止まる。
画面には雪で真っ白に覆われた高速道路。



「名神って…名古屋までの高速か?」
そう言えば春子が向かったのは京都。
20時に帰って来るといっていたから…ちょうどこの
通行止めに巻き込まれているんじゃないだろうか。



心配になり、携帯を取り出して春子に電話しようとする。
「あ、電話番号いまだに知らねぇや・・・」
携帯を閉じがくっと肩を落とした。


すると、会社の電話が鳴り出した。
もしかしたら、春子からかも…。
そう思うと、いてもたってもいられず
真っ先に電話を取る。
すると案の定、電話の主は春子だった。

「もしもし、大前春子です。雪で道路が通行止なので今日は
伊賀のSAで一晩過ごしてから帰ります。」

「そうか、気をつけろよ、それより今日…」
東海林が何か言いかけているのにもかかわらず
電話をブチッと切る春子。


「あいつ…人の話は最後まで聞けよ。」


壁に掛けられた時計を見る。
針はすでに18時半を指していた。
219名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 01:34:43 ID:VPwPp07i

22時。


SAの駐車場にトラックを止めて
春子は毛布に包まり寝る準備をしていた。
エンジンを切っている為、中は外と変わらない温度。
さっき買ったココアももう冷めてしまった。

「寒い…」

体を震わせながら、眠ろうと眼を閉じたその時。


ドンッ、ドンドンッ。


ドアを叩く音。

何事!?と思い曇った窓を手でこすり外を見ると…。





「とっくり、開けろ!!」



そこにいたのは東海林だった。
220名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 01:35:27 ID:VPwPp07i
何も言わずドアを思い切り開ける春子。
すると東海林の顔面にドアが思い切り当たった。
謝りもせず無言のままトラックを降りる春子。


「いってー!わざとだな、お前!!!」
「大前春子です!」
「そのギャグはもう飽きたんだよ!ほら、折角俺が来てやったんだ
もっと喜べよ」
そう言って両手を広げる東海林。
「誰も頼んでいませんが。何か?」
「つれないなぁ〜、新幹線とタクシー使ってここまで来てやったんだぞ
新幹線はすごいなぁ、雪が降ってても走るんだから…」
「一体、何をしに来たんですか!?」


春子は東海林を睨み付けて叫んだ。
その表情を見て、東海林もさっきまでヘラヘラした顔をやめた。





春子を真剣な眼差しで見つめ
コートのポケットに手を入れる。
「…どうしても、今日言いたかったんだ。」



そう言って東海林はあるものを取り出した。


そこから出てきたのは銀色の輪。
中央には小さな宝石がキラリと光っている。


その輪を東海林は春子の細い指にすっと滑り込ませた。


「誕生日、おめでとう」

春子の薬指に光る指輪。
2月14日はバレンタインでもあり、春子の誕生日でも
あったことを東海林は覚えていた。
221名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 22:56:08 ID:W9/oBODA
…春子は雪で体が凍りついたかのように動かない。
春子の反応が不安でたまらない東海林は
「おい、何か言えよ」と
いつものように偉そうに返事を要求する。


「…」

すると春子ははめられた指輪を外しポイっと雪の中に投げつけた。


「うおーーーーーっ、なにすんだお前!?」
東海林は慌てて指輪が飛んでいった方へ駆け出した。
雪の中に埋もれた指輪を素手でかきだす。
「おいっ、これいくらしたと思ってんだ!?見つからなかったら
弁償しろよっ…」
雪の冷たさでどんどん手が赤くなっていく。
それでも指輪が見つかるまでその手を止めず
雪をかきわけていく。
すると、やっとのことで指輪が見つかった。

「あった〜!!よかったなとっくり、見つかった…」

「何やってるんですか?」


地面の雪よりも冷たい目で春子は東海林を見つめていた。
まるで一年前、カンタンテの裏で話をしていた時のような
冷たい目。
222名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 22:59:16 ID:W9/oBODA
「私は指輪をくれだなんて頼んでいませんし
誕生日を祝ってくれとも言ってません。
勝手にこんなところまで来て人に指輪を押し付けるなんて
自己中にもほどがあります。」

春子のきつい言葉にカチンときたのか、東海林も負けずに反論する。



「…あぁ、俺は自己中だよ!でもお前もここまでしてもらってるんだから
ちょっとは喜んでみろよ、可愛くねー女だな!!」

「どうして私が嬉しくもないのに喜ぶ振りをしなければいけないんですか?」


「うるさい!あんたは何でいつも素直じゃないんだ
お前のそう言う所が一番むかつくんだよ!!」

「むかつくのなら最初からこんな事しないで下さい!!迷惑です!!」




「迷惑だろうが、好きなんだよ!」
223名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 23:01:12 ID:W9/oBODA
いつものバトルが、その言葉によって強制終了された。
険しい表情のまま無言で立ち尽くす春子。
東海林は、自分の発した言葉に少し照れながら
目を泳がせている。



東海林はもう一度春子の指に指輪をはめた。
そして今度は外されないよう、春子の左手を両手でぎゅっと握り締めた。


かじかんだ手はしばらくすると熱がこもり春子の手は
東海林の手のぬくもりに包まれていた。
その熱が、春子の中にあった雪を溶かすかのように
冷たい目から、涙が零れ落ちる…。


東海林は初めて見る春子の涙に少し戸惑っていた。

すると春子が口を開く。

「…私としたことが、貴方の前で泣くだなんて…」

「貴方は…チョコのことしか頭にないと思ってました」

「そんなことないよ…って言ったら嘘だけど…
俺にとって、2月14日は大前春子の誕生日だ。」

自分のセリフが恥ずかしかったのか「あははっ」と、少し照れ笑いを浮かべる。


春子は、右手で涙をぬぐい
「もう外したりしませんから、離して下さい。」
そう言って東海林の手を振り解いた。

春子はトラックに戻り飲みかけのココアを東海林に差し出した。

「バレンタインのチョコのかわりです。」

東海林がすっかり冷え切ったココアを一口飲むと
あまりの冷たさに思わずペッと吐き出した。

「まずっ…何だこれ、冷たいじゃねーか。
あっ!?でもこれって間接チュウ…」





その時だった。

今度は間接ではなく、直接春子の唇が
東海林の唇に触れた。
224名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 23:04:02 ID:W9/oBODA
25時。


二人はトラックの中で寄り添っていた。

「もうちょっと離れてください。くっつき過ぎです。」
「しょうがないだろ、毛布一つしかないんだから。
それにくっついてた方が暖かいぞ、なんなら脱ぐか?」
「…冗談はクルクルパーマだけにしてください。」
「冗談に決まってるだろ。」


いつもの口調で会話を続ける二人。

でも、今までの二人とは少し違っていた。


しんしんと降る雪を見つめて東海林がつぶやく。
「そう言えばさ、初めてキスした時も雪だったよな。」
「…あれは、貴方が勝手に口に飛んできただけです。」

「またハエ呼ばわりかよ…」
チッ、と舌打ちする東海林。


会話は相変らずの二人だけど
毛布の中では、お互いの手をしっかりと握り合っている。


その手は、朝が来るまで離れることはなかった…。
225名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 23:10:07 ID:W9/oBODA
108です、話は以上です。
昨日投下している途中、規制中になり書き込めなくなったので
文章を携帯メールに転送して携帯から投下させて頂きました。

ツッコミ所満載な話で申し訳ありません。



orz
226名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 23:20:20 ID:JDXgbQDX
108さんGJです!
言い合いしててもこの二人はココアよりも甘い。
だいすきだー。
227名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 23:23:49 ID:moBFkKmK
GJ!
なんだかんだ言ってもラブラブな二人に感動いたしましたw
228名無しさん@ピンキー:2007/04/26(木) 00:47:06 ID:tgaiygio
108さん、グッジョブです!
誕生日でしたねそういえば…
やっぱこの二人最高!ww
229名無しさん@ピンキー:2007/04/26(木) 07:17:21 ID:eUNQ1plT
108さんGJデス☆
思わず本音がポロリの東海林さんが良かったです(笑)
そして、東海林さんの気持ちを知って涙する春ちゃんが可愛いかったです(*^_^*)
素敵な投下ありがとうございました。
230とかげみず:2007/04/26(木) 09:41:46 ID:hOM+lCbt
すみません、性懲りもなく投下させていただきます。
前回よりは、マニアックではないかと…。
231とかげみず:2007/04/26(木) 09:42:45 ID:hOM+lCbt
久しぶりのキスは、不覚にも温かく感じた。
相手の体温が直接伝わる感じ。
でも、それの心を蕩けさせちゃいけない。
自戒の言葉。
バスに駆け込んだ。

そうだったはずなのに、
私は彼の部屋で彼のベッドの上で薄掛けに包まっている。
東海林くんの匂い。
落ち着く。
そのまま、眠ってしまいたい。

湯気の匂い、彼がどたどたと慌ただしく、ベッドに滑り込む。
彼の体から滴る水滴が冷たい。
「…ちゃんと、体を拭いてください」
「いや、慌てて拭いてきたから」
「慌てる意味がわかりません」
「なぁ、ほら冷えるから、そっち入れろよ」
無言。
意地悪く、そっぽ向いて小さく丸まる。
ちょっと、照れも入ってるかもしれない。その顔が見られたくないから。

232とかげみず:2007/04/26(木) 09:43:41 ID:hOM+lCbt
「がぉーっ」
「ぎゃっ!」
変体天パ全裸男が、後ろから抱きついてきた。
今、絶対顔が赤い。絶対、振り向かない。
「…、これね、背中さむい」
「それが、何か」
「ケツもさむい」
「知らん!!」
「知っといてよ」
そう言って、薄掛けを剥ぎ取る。
「ぎゃー!追い剥ぎっ」
「叫び声が可愛くねぇよ。じゃなくて、追い剥ぎじゃねーし、
俺の部屋で俺のものだし!」

いい年下男女が、子供みたいに、どったんばったん。
無理矢理、包まってた薄掛けに潜り込んで、だらしない笑顔を向けてくる。
「不細工」
恥ずかしくて、彼の顔を手で押し退ける。
それなのに、彼は満面の笑みでクルクル頭をこすりつけてくる。
まるで犬のよう。
主任より、犬気質なんじゃなかろか。
「何、見惚れてんの?」
「寝言は寝てから言ってください」
「寝かせないし、寝ないから当分無理だな」
へらへら笑いながら、抱きしめてくる。
本音、これだけで充分。
人って、触れ合うと温かいんだなー。あぁ、だから、雪山とかで
遭難する人は肌を寄せ合うんだ。でも、私はレスキューする側かな。

うつらうつらと、取り留めのないことばかり考える。
身体は温かいし、湯気の匂いと東海林くんの匂いが混ざり合って、
なんだか、眠いし。

東海林くんは、許してくれるかな。
233とかげみず:2007/04/26(木) 09:46:54 ID:hOM+lCbt
短くて、ごめんなさい。
この先は東海林視点で、頑張れたらえろです。
234名無しさん@ピンキー:2007/04/26(木) 20:10:40 ID:prCvkfTl
待ってますよー。
とかげみずさんの文好きだ
235名無しさん@ピンキー:2007/04/26(木) 23:08:53 ID:GwLhQnFP
とかげみずさんGJですー。
つづき待ってます。
236名無しさん@ピンキー:2007/04/27(金) 00:25:06 ID:7pMxf3Mq
とかげみずさんの書く二人イイですねー!
つづき待ってます!
237とかげみず:2007/04/29(日) 11:16:57 ID:mlsIfcGR
遅くなりましたが、東海林視点です。
238とかげみず:2007/04/29(日) 11:18:18 ID:mlsIfcGR
心臓がばくばくする。

俺の胸の中で、小さく丸まっている大前春子。
可愛くないはずなのに、すげー可愛い。
死んでも、言わねーがっ。
ああぁ、手とか、ぐーにすんなっ。
きゅんとか、きゅんとかしちまうだろ(二回言う必要はありません)
しかも、じっと見つめてくるし!

『何、見惚れてんの?』

お約束の突っ込み。でも、寝かせないのは本当。
俺的プランは、こうだ。
まず、ロマンチック且つ素敵テクでメロメロにさせる。
そして、とっくり(着てないけど)は俺を激しく求めて………、
あぁっ、めくるめく、らぶいずおーるおーばーざわーるどっ!
意味、わかんねー!!
落ち着け、俺。

239とかげみず:2007/04/29(日) 11:19:12 ID:mlsIfcGR

あー、憎まれ口ばかり叩いてるけど、寝顔はこんなに可愛い…って、
「起きてー!起きてくださーい!!」
「うにゃ…、しょおじしゅにんにわたしのあんみんを
ぼおがいすぅけんりは…むぅ…」
「何、そのねむねむな可愛さ!じゃなくて、権利とかいいから、起きろ!」

胸ん中で、もぞもぞするこいつは可愛い。
それは認める。
だが、それは事後でもいーんでないの?
はっきり言って、俺はこのままじゃ寝られない。

「ひゃはっ」
擽り攻撃。
丸まってた背筋が、ぴんとした。
「…やめなさいっっ」
起きるまでやめない。
くすぐったいのを必死で堪えてて面白い。
面白くて、『ひひひ』なんて、思わず、悪いやつの笑い声になってしまう。
240とかげみず:2007/04/29(日) 11:22:19 ID:mlsIfcGR


「…ひぁ、…やめっ……っ」
伸ばしてた背筋が、また丸まり、両腿を擦り合わせている。
指を伸ばして、腿の内側に差し挿入れてみる。
指が濡れて、つるりとすべる。
嬌声があがった。
「…起きた?な?」
びくんびくんと波打つ身体を抱えるとっくりに囁く。
そのまま、指を増やすとすぐに、水音が聞こえていやらしい気分になる。
2本指で拡げてみせると、冷たい外気が直に触れるらしく、
か細く制止の声。
「やめんの?」
濡れてふやけてしまった指で、胸の先を抓むとまた可愛い声で誘う。

「やぁ…、ん…」
俺の首に腕を絡ませて、甘える強気な女は、俺だけのもの。
二つのふくらみを交互に吸い付いたり、揉みしだくと涙目でぎゅっと
抱きついてくる。
いとしくて、仕方ない。
漆黒の乱れたストレートをわしわしと掻き撫でる。
とっくりは、きょとんとした顔でまた、みつめてくる。
猫みたいだ。
そっぽ向いたり、甘えてきたり…。
子犬ケンちゃんと、我侭猫ハルコ。
俺、変なのばっかに囲まれてんのな。苦笑。

こいつの髪、指で梳かしてても気持ちいい。
春子も気持ちいいみたいで穏やかに寝息を
って、ダメだろ!寝かせつけちゃ!!
俺の気持ちを何処まで知ってるのか、この我侭猫。

あー、このちんこどうしてくれよう。
241とかげみず:2007/04/29(日) 11:45:36 ID:mlsIfcGR
一応、今回はここまででおわりです。
御目汚し、失礼しました。
ありがたいレス、読んでくださった方ありがとうございます。
242名無しさん@ピンキー:2007/04/29(日) 14:12:16 ID:OZvBrOuP
>あー、このちんこどうしてくれよう。


ちょwwwわろたwww
243名無しさん@ピンキー:2007/04/29(日) 14:27:06 ID:sBPFtfse
いつも可愛い2人を読ませてくれてありがとうございます♪
これからも楽しみにしてます!
244名無しさん@ピンキー:2007/04/29(日) 22:56:34 ID:X3yW6vlU
とかげみず様、面白いww
しかも二人とも可愛いし!
最高!!!
245不似合いな手:2007/04/30(月) 01:41:52 ID:nHQ0zL1d
108さん、とかげみずさん、GJでした!

さて、私のほうは又してもエロなしですが、春子×東海林 with里中でお送りします。
春子の前で弱音を吐くヘタレな東海林なんか嫌、という方はスルーして下さい。
本編で個人的に凄く気になっていることについて、自分なりの決着をつけてみました。
246不似合いな手:2007/04/30(月) 01:42:52 ID:nHQ0zL1d
〜「秘密」(1)〜

午後7時。
大前春子が店に着いた時、里中賢介は既にテーブルにいた。
思いつめたような、ここではないどこかを見つめているような、遠い目。
課長昇進が決まったばかりだと聞いたのに、なぜか浮かない顔をしている。
――何か訳ありなようね。
春子は、不審に思ったことを気づかれぬよう、少し離れたところから声をかけた。
「里中さん」
ふっと我に返った里中は、春子の顔を見て少し驚いた様子だったが、
いつもの人懐こい笑顔を見せた。
「大前さん」
「東海林所長は仕事で30分ほど遅れるそうなので、私だけ先に参りました」
「そうですか・・・東海林さん、忙しそうですね。急に迷惑だったかな・・・」
里中はその笑みは絶やさずに、微妙に表情を曇らせる。
「大丈夫です、到着便が一台、少し遅れただけですから」
東海林は「三人で旧交を温めようぜ」、などと無邪気かつ強引に春子を誘い入れたが、
里中の方には何か大事な話でもあるのかも知れない。
春子がそんなことを考えたのもつかの間、里中は再びにこやかに微笑んだ。
「でも、驚いたな・・・いや、って言うか・・・嬉しいです。本当に大前さんが
来てくれるなんて」
「本社の課長をお待たせするわけには行きませんので」
「やめて下さいよ大前さん・・・それに正式な辞令は来週ですし」
「おめでとうございます」
春子の祝福に、里中はなぜか答えずこう言った。
「・・・何か頼みましょうか」

二人だけで先に乾杯をすませた後、里中は、この店が「ようじ屋」に似ているということ、
今も時折カンタンテに顔を出しているということ、森が正社員として本社に残れそうな
ことなどを話した。
ひとしきり報告が終わると、里中はしばし黙りこみ、そして・・・再び口を開いた。
「――東海林さんは・・・元気ですか」
「昼間事務所でお会いになったでしょう?」
「ええ・・・。最初のころ結構やつれてたけど、大前さんが来てから少しは元に
 戻ったのかな」
「・・・まあ確かに忙しくはしていらっしゃいますが、本社時代から残業がお好きな方
でしたし、余り変らないんじゃないですか」
「そうですか・・・」
とはいえ、やはりやつれていることは春子が一番よく知っていた。
里中もごまかされてはいないのだろう。ふいに、眉間にしわを寄せたまま黙りこんだ。
「――里中さん。今日はなぜいらしたんですか」
「え・・・」
「東海林さんに何かお話でもあるんじゃないんですか」
「・・・」
春子の視線から逃れるように、里中は俯いた。
言うべきか、言わざるべきか。
心中で葛藤しているのは明らかだった。
247不似合いな手:2007/04/30(月) 01:43:26 ID:nHQ0zL1d

〜「秘密」(2)〜

「・・・大前さん」
「はい」
「実は・・・迷っているんです。東海林さんに何て言うべきか」
「何をですか?」
「・・・大前さんだったら・・・先に聞いてもらったほうがいいのかな」
「・・・」
「――大前さんは何か聞いてますか?東海林さんから・・・、左遷のいきさつを」
「いいえ」
それは本当だった。
春子も尋ねたことはないが、東海林から左遷に関するボヤキや愚痴は一切、
聞いたことがない。
「なぜ今頃、そんなことを?」
「・・・僕は・・・知らなかったんです」
「・・・?」
「本当は・・・名古屋に飛ばされるのは、僕のはずだった、ってことを・・・」
「――!」

初耳だった。
春子は思わず里中の顔をまじまじと見つめた。

「やっぱり、大前さんも知らなかったんですね・・・」
「――誰がそんなことを?」
しかも、今さら。
「霧島部長です」
「なぜ、そんな・・・?」
「思わず口が滑ったんでしょう。課長の内示が出た日に、言われたんです。
 まさかお前がここまで出世するとは思わなかった、危うく名古屋に飛ばされるところ
だったのに・・・って」
――ひどい。
春子は心の中で憤慨した。何てデリカシーのない上司だろう。

「それを聞いて、全ての謎が解けたんです。あのプレゼンの日、東海林さんがどうして
 企画を僕らに譲ってくれたのか」
「・・・」
「きっと僕との友情のためなんだろう、とは思ってました。多分少なからず
僕のせいなんだろう、って。でも、まさかそんなこととは・・・」
「・・・」
――あのひと。そんなこと、一言も言わなかった。
春子は思わず目を閉じた。

「プレゼンの日・・・僕が顔に青タン作ってたの、覚えてますか」
「ええ」
「前の晩、東海林さんとケンカしたんです」
「――そのようですね。わけは知りませんが・・・」
「あの夜の東海林さん、変だったんです。大事なプレゼンの前でナーバスになってる
 んだろうって思ってました。でも東海林さん、俺の心配なんかしてんじゃねえって、
歯がゆそうに、いらいらして・・・」
「・・・」
「僕の胸倉つかんで、もっとうまく立ち回れよ、って・・・涙流してくれた・・・」
「・・・」
「今思えば・・・あの時、東海林さんは知ってたんです。僕が飛ばされるってことを」
「・・・」

――そうだったの。

――ああ、そうだったの・・・。
248不似合いな手:2007/04/30(月) 01:44:06 ID:nHQ0zL1d

〜「秘密」(3)〜

春子の脳裏に、ふいにあの頃の東海林の姿が甦った。

「部長命令だ」と春子をプロジェクトルームに駆り出し張り切ってみせてはいたものの、
時折そっとこちらを窺う目が、とても心細げに揺れていたこと。
見合いの帰りに突然カンタンテにやってきてプロポーズした時もそうだった。
気が付いたら、知らないうちに人生の岐路に立たされていたのだろう。
東海林が人知れず迷子になりかけていることが、春子の目には明らかだった。
「友だちを思いやる心」すらも失くしてしまったようですね、と責めたてたのも、
「ハケンの敵とは結婚したくありません」とアンケートの表に書いたのも、
春子が東海林に、今こそ道を踏み誤って欲しくないと願っていたからだった。
だが・・・。
あのとき東海林が置かれていた本当の状況がわかった今、その胸中を思うと
春子は改めて胸が痛んだ。

そういえば。

この前の2月14日。名古屋に来て初めてのバレンタインデー、春子の誕生日。
いつもは東海林の会食の誘いをすげなく断る春子だが、その日は特別に部屋に招いて
誕生パーティをした。
春子が腕をふるったご馳走を前に、東海林が感慨深げに呟いた。
「二度目だな。お前の手料理」
「・・・」
「もっとも・・・前のハケン弁当は食えなかったんだ。前日、賢ちゃんと乱闘してボッコ
ボコにされてさ。お蔭で遅刻するわ、口開けると痛いわ、もうさんざんだったよ」
いつものように茶化してぼやいてみせるが、どこか痛々しい。
「・・・」
「お前にもてっきり振られたと思ってたしな・・・」
「・・・」
東海林は遠い目でしばし物思いに耽った後、ことさらに明るい声で言った。
「――それじゃ、いただきます」

249不似合いな手:2007/04/30(月) 01:44:43 ID:nHQ0zL1d

〜「秘密」(4)〜

「さすがうまそうだな、ほんとに・・・。どれどれ。――うめーな・・・」
「そう?」
「うん・・・」
そのとき。
上機嫌で春子の手料理を口にしていた東海林が、ふいに言葉を詰まらせた。
「・・・」
「・・・どうしたの?」
「・・・あれ?・・・やべーな、俺・・・」
「・・・」
「お前の料理がうま過ぎんのかな、はは・・・」
「・・・」
無理に笑ってみせるが、いよいよ何かがこみ上げている。
それを抑えることができず、東海林は目を赤くしていた。
「・・・なんか・・・いろんなこと思い出して・・・」
「・・・」

春子の胸にもまた、様々な思い出が押し寄せた。

同期の出世頭として、うるさいくらい生き生きとしていた頃の東海林の姿。
反発し合っているのにどうしようもなく惹かれてしまい、自分を戒め続けていた日々。
プロポーズを受けたこと。アンケートの裏に電話番号を書いたこと。
東海林がプレゼンを辞退したと聞いた時の感慨。
そして・・・その後の、名古屋の日々。
春子が来るまでの一年をどんな思いで過ごしたのか、東海林は決して語らなかったが、
辛く孤独な道のりだったことは容易に想像がついた。
――ごめんなさい。自分の気持ちから逃げないで、もっと早く名古屋に来ればよかった・・・。

「・・・かっこわりーな、俺」
東海林はこみ上げるものを懸命にこらえながら、春子から顔を背ける。
「・・・いいのよ」
「・・・」
「あなたは良心に恥じない行いをしてここに来たんです。胸を張るべきです」
「・・・ちがうよ」
東海林は自嘲するように鼻で笑った。
「俺はただ、横取りしたものを返しただけだ」
「――誰にでもできることじゃない」
「何だよ。何でお前が俺をかばうんだよ。調子狂うな全く」
「肝心なことを一人で抱え込むのは、あなたの悪い癖です」
「・・・お前に言われたくねえよ」
「そうですね」
「・・・」
「でも、もう・・・一人で抱え込まなくていいの」
「・・・」
東海林の横顔が歪んで、震える手がその目を覆った。
春子は立ち上がるとそばへ行き、東海林の髪にそっと手を差し入れる。
「いいの。いいのよ」
「・・・う・・・」
とうとうこらえきれなくなって、東海林が嗚咽を漏らした。
春子は、胸が引き裂かれるような思いに目を潤ませながら、優しく東海林の頭を抱いて
背中を撫で続けた。
「・・・いいのよ」
「う・・・」

今思えば、春子にすがりついて男泣きしたあの日ですら、東海林は深い事情を
明かさなかったのだ。
250不似合いな手:2007/04/30(月) 01:45:12 ID:nHQ0zL1d

〜「秘密」(5)〜

「知ってしまったら、いたたまれなくなって・・・気がついたら有給取って、
新幹線に飛び乗ってました」
里中が言葉を継いだので、春子はふと我に返った。
「・・・そうでしたか」
「でも、迷ってるんです。今さら東海林さんに何を言っても却って迷惑かも知れないし・・・」
「――そうですね」
「でも・・・知らん振りなんてできない・・・」
「・・・」
――変わらないんだなあ、この人も。
春子は心の中で呟いた。
迷子の子犬のようだった以前の顔より、ずっと自信に満ちたいい顔つきになった。
だが、純粋で優しいところは何も変っていない。変わらないまま会社の利益と折り合いを
つけ、成功してきたのだ。

「里中さん」
「はい・・・」
「何も言わなくて、いいんじゃないですか」
「・・・」
「何も言う必要はありません。あなたのせいじゃないんですから」
「でも」
「あなたもご存知のとおり、あのひとは・・・東海林さんは、組織の垢にまみれた会社
人間のようでいて、その実、バカがつくほど純粋な人です」
「・・・」
「要領よく立ち回る調子のいい人間に見えますが、本当はアホで不器用極まりない」
「大前さん・・・」
「だから・・・いつかはそんな自分と、向き合わなくてはいけなかったんです」
「・・・」
「自分の中にある一番大切なもの。あのひとはそれを守りました。それは、あのひとに
 とって必要なことだったんです」
「・・・」
「あなたが気にやむことはありません。純粋で心優しいあなたが、組織の常識に負けずに
 道を切り開いて行くことが、あのひとにとっても励みになるはずです」
「・・・そうでしょうか・・・」
「あなたが出世するずっと前から、あのひとはきっと、あなたのその真直ぐさが
 うらやましかったんじゃないかと思いますよ」
「え?」
「最初からあなたのように生きられたら、あのひとも楽だったかも知れません。
でも、これからでも遅くはない。私はそう思っています」
「・・・」
「だから・・・黙って見守ってあげて下さい」
「・・・。東海林さんは、幸せ者ですね。大前さんみたいな理解者がそばにいて」
「・・・」
「あなたに話して良かった・・・。何だか、少しだけ・・・安心しました」
「・・・」
「大前さんがいてくれたら、東海林さんはきっと大丈夫ですね。また本社に戻ってきて
くれるって、信じてます。僕の後ろめたさが減るわけじゃないけど・・・。
でも、東海林さんに謝って楽になろうとするなんて・・・俺、やっぱりダメダメですね」
「・・・」
「東海林さんが胸にしまってくれていたように、僕も・・・自分への戒めとして、
 このことは胸に抱えておきます」
里中のまっすぐな視線に応えて、春子はにっこりと微笑んだ。
そのとき。
「賢ちゃん!ごめん!」
東海林がやってきて、座が一気に賑やかになった。
251不似合いな手:2007/04/30(月) 01:45:43 ID:nHQ0zL1d

〜「秘密」(6)〜

東海林が合流した後、里中の昇進祝いや互いの近況報告、たわいのない思い出話に花が
咲き、最終の新幹線の時間がやってきた。
名古屋駅の改札口を通った里中は、並んで見送る東海林と春子の二人を振り返り、
ほんの一瞬、感極まった顔をすると、大きく手を振って去って行った。

「・・・帰るか」
東海林がふと見ると、春子はじっと東海林の顔を見つめて穏やかな笑みをたたえていた。
「――何だよ?」
「あなたは本当に・・・友だち思いのいいヤツですね」
「・・・え?」
「今日は、ほめてあげます」
「何?賢ちゃんが何か言ったのか?」
「さあ」
「何だよそれ!大体な、俺が来たときお前ら妙にいいムードだったぞ」
「そうですか?」
「あんな笑顔、滅多に見せねえじゃねえか」
「妬いてるんですか」
「妬いてねえよ」
「・・・あなたは本当にバカですね」
「バカってなん・・・」

春子の唇が、東海林の口を塞いだ。


〜終わり〜
252名無しさん@ピンキー:2007/04/30(月) 02:08:11 ID:YAu/NtN0
名古屋へ至るまでの総括が明快!とにかく、うま杉ます。
東海林の左遷のいきさつを春子に話す里中、
そんな里中にかける春子の言葉。不似合いさん、素晴らしい…

8話終わってヒドスだのカワイソスだのギャーギャー騒いでた
本スレのわからず屋さんたちにまとめて読ませたいくらい。
こういうことなのよと。
253名無しさん@ピンキー:2007/04/30(月) 02:49:58 ID:KsgmaaUu
不似合いさんいいまとめです!
このままテレビでやってほしかった位だー…
254名無しさん@ピンキー:2007/04/30(月) 04:27:09 ID:1bYwBFOw
大泉さんの飲尿プレイ希望
255名無しさん@ピンキー:2007/04/30(月) 09:36:42 ID:lMj3l9VC
不似合いな手さん、良かったー…
読んですっきりしちゃったぐらいだw
自分もその辺のところもやもやしてたので。
GJ!!
256名無しさん@ピンキー:2007/04/30(月) 20:34:34 ID:wZwcNWOW
不似合な手さんGJ!!
情けない東海林も優しすぎる賢ちゃんも
母のような春ちゃんもみんな大好きだー!

ここで皆さんの話を読んでいると
本当に続編やってほしいと思えてきました…。
257名無しさん@ピンキー:2007/05/02(水) 00:10:38 ID:FwuUKlce
初投下です。
東海林×春子でエロなし、しかも長いですがしばしおつき合いください。
春子が名古屋に来て、新しい部屋に越してきたところ、という設定です。
258名無しさん@ピンキー:2007/05/02(水) 00:11:32 ID:FwuUKlce
がらんとした部屋で思う。

何をしているのだろうか。

感情など、持つまいと誓ったのに。
つらい思いをするのは派遣の自分だと、そう悟ったはずだったのに。
ヒューマンスキルゼロ?ええ結構。
一人きりで生きてきて、軋轢、裏切り、別れ、たくさん味わって、結果至った生き方。

それなのに、だ。

あのクルクルパーマを追いかけて、気がついたら既に名古屋での一週間を終えていた。
全く森美雪に何と説明すれば良い。
彼女に語ったハケン道からはかなり逸れてしまった私の姿を。
というかハケンですらなくなった。
ハケンでない私、か。
迷いはない。迷いはないが、怖い。
259名無しさん@ピンキー:2007/05/02(水) 00:13:09 ID:FwuUKlce
今までいた場所が寒くて寒くて、たくさん着込んだはいいが今度は暑い、そんなような。暑いのに、次の寒気を恐れて着込んだものを脱げない、ような。
ここにはママやリュートはいない。
あいつしか、いない。
こんなとこまで来て、本当に彼を信じてよいのだろうか、なんてバカなことですくみ足になっている。
(私としたことが…)
だって今まで寒かったんだ。
さむかった。

取りあえず働こう。
そう、社長賞を取ってもらうために来た、と言ったのだった。(まあこれは表向きの台詞であるのだけど)(はたしてあの天パ真意に気づいているのだろうか)
二人分働いて、彼の尻を叩かなければ。
やることは山積みなのだ。
260名無しさん@ピンキー:2007/05/02(水) 00:16:01 ID:FwuUKlce
――ピンポーン。

「とっくりー、俺だー」

チャイムの音と共に彼の声が聞こえた。
ドアの鍵をあけ、チェーンを外し(用心に越したことはない)、そっとドアノブをまわす。
「引っ越しソバ、買ってきた」
まだスーツ姿で、息を切らせていて。
「頼んでいませんが」
「調理道具ないだろうと思ってこうやってやって来た俺にいきなりそれか」
「夕飯の支度くらい自分でどうにかします」
「まあとっくりならどうにかしちゃうかもと思ったけどさ、いいじゃねえか、お前があのまま福岡行っちゃったからできなかった、食事でもしながらゆっくり、を引っ越し祝いにからめてさ」

どうしよう。
今までのように、そんな馴れ合いは社員同士で、なんて言えない。
私は名古屋に来てしまったのだから。
でもまだ受け入れることも、着込んだものを脱ぐこともできない。
261名無しさん@ピンキー:2007/05/02(水) 00:19:57 ID:FwuUKlce
黙りこくった私に彼は、

「あれ、いつものはどーした。まあ俺はこのソバを食うまでは頑として帰らねえから何を言っても無駄だぜ」

ああ、そうか。彼は北風だ。北風と太陽の。
暑くて暑くてかなわなかったのは、マーケティング課。
彼は、北風。
でも、何度も何度もあきらめなくて、凍えるような、あの寒さじゃなくて――。


のびちまう、のびちまうなんて言って袋の中のソバを確認する彼を見て、私はほころぶように笑った。



以上です。
なんとも微妙な話ですみません。
今後エロを書ければよいのですが完成するかどうか…。
他の方の作品も楽しみにしています。
おつき合いありがとうございました。
262不似合いな手:2007/05/02(水) 00:36:44 ID:OeeNMdyu
>>261
GJです!北風さんな東海林についつい負けてしまう春子、いいですね〜。
私もいつもエロがなくて肩身は狭いのですが(笑)、
個人的にはエロなしのこういう感じも大好きです。
よかったらまた続きや新作も投下して下さい。お待ちしております。

それと、拙作にコメント下さった方々、有難うございました!
263名無しさん@ピンキー:2007/05/02(水) 01:50:19 ID:T5sh0VbS
ここはクオリティ高くて皆様本当に素晴らしい!!!
篠原の旦那が怒るだろうが、
ぜひ続編があるなら、とっくり&くるくるの激萌えベッドシーンをお願いしたいね〜。
264名無しさん@ピンキー:2007/05/02(水) 21:59:39 ID:yF7Z6qJR
こんにちは、108です。
ここ最近素晴らしい投下が増えていて嬉しいです。
ただ自分の文章はいまだに未熟で申し訳ないのですが…。

ものすごくマイナーですが、近君と東海林小ネタを
投下させて頂きます。
この二人絡みが少なかったので
あえて絡ませてみました。
265名無しさん@ピンキー:2007/05/02(水) 22:19:07 ID:yF7Z6qJR
東海林主任は嫌いだ、偉そうだし派遣を馬鹿にするし
人の手柄をパクるし…。
あーうざー。
すると僕が乗っていたエレベーターに東海林主任が乗ってきた。
「おはようございます。」一応挨拶。
「ああ、おはよう」相変らずえらそーに。
早くマーケティング課につかないかなぁ…。

すると聞いたことのあるメロディーが流れ出した。
…これは!?うちの子供が大好きなピタゴラスピッチの
「マルゴリズム体操のうた」じゃないか!?
どこからこのメロディーが…?と音の出先を見ると
なんとそれは東海林主任の携帯からだった。
「ん?メールか」携帯を取り出した東海林主任に
「東海林主任もピタゴラスピッチ好きなんですか!?」
と、思わず言ってしまった。
「ああ、何だ?君もしってるのか。今あれにはまっててね
毎日録画してみてるんだよ〜いや、あれは大人が見ても面白いね。」
「そうでしょう!僕も毎日子供と一緒に体操踊ってるんですよ〜。」
するとエレベーターが開き出した。
開いた先には桐島部長ら重役さんたちがいた。
僕が挨拶をしようとすると、東海林主任が率先して
「部長、おはようございます!ささっどうぞお乗りください。」
エレベーターの入り口を抑えて部長達を案内する。
すると僕に向かって
「君、早く出なさい。部長達がお乗りになるんだ。」
「でも、僕が先に…」
「ハケンは階段であがって来い。」
そう捨て台詞を残して、東海林主任は部長達と一緒にエレベーターで
上がっていった。
一人取り残された僕はぽつんと立っている。
…。
一瞬でもあの人と話が盛り上がった自分に腹が立つ。
やっぱり東海林主任は嫌いだ!
そう思いながら僕は思い切り階段を駆け上った。
266名無しさん@ピンキー:2007/05/02(水) 22:25:13 ID:yF7Z6qJR
某NH●の番組をもじってすいません…。
この二人、何かきっかけがあればすごく仲良くなりそうな
気がしたので。

ここはエロありでもエロなしでも
いろいろ楽しめる作品があって楽しいですね。
皆さんの投下も楽しみにしています〜。
267名無しさん@ピンキー:2007/05/03(木) 00:58:24 ID:dFheExoM
こんばんは、>>157です。
108さん、私もピタゴラスイッチ好きですw
前回は拙い文章を勢いで投下してしまい非常に反省しているのですが(レスくださった不似合いな手さんありがとうございます)、今回は絵を投下させて頂きたいと来ました。
文章でない上にエロでもない絵は甚だスレ違いだと思うのですが、前スレでもイラストを幾つか投下されている方がいて羨ましかったもので。
東海林×春子です。(白黒、しかも携帯の写メで本当すいません)
http://imepita.jp/20070503/014050
不快に感じる方がいたら申し訳ありません。今回だけに留めておくつもりなのでご容赦ください。
268名無しさん@ピンキー:2007/05/03(木) 01:03:38 ID:dFheExoM
すみません>>267ですが、私は>>257でした。
あー、本当申し訳ない
269名無しさん@ピンキー:2007/05/03(木) 09:03:27 ID:U71eiR7Q
上手い

ウザい
270名無しさん@ピンキー:2007/05/03(木) 16:43:41 ID:W0WC39rz
>>267
とてもお上手ですね☆
今回だけなんて勿体ないです!
良かったら、次も是非投下して下さい(^_^)v
271名無しさん@ピンキー:2007/05/04(金) 17:21:34 ID:U4rR2UvU
めちゃめちゃお上手です!
是非これからもUPしてくださいー(;´Д`)
似てるし、本当うまいです!

>>108さんの話もイイ!
ありがとうございます、斬新な組み合わせだけど、
なんかほのぼのしちゃいますねww
272名無しさん@ピンキー:2007/05/04(金) 17:26:51 ID:U4rR2UvU
>>261さま

北風の例えいいww
素敵です!
273とかげみず:2007/05/05(土) 10:26:44 ID:3YiVpbyl
皆様、素敵な作品ばかりでGJすぎです。
いっぱい、東海林と春子が読めて嬉しいです。

えろでないですが、
ぬるいのをひとつ、失礼させていただきます。
274とかげみず:2007/05/05(土) 10:28:04 ID:3YiVpbyl
なんにもできない、ドロシー。
夢見がちで、ひとまかせで、泣いてばかりのドロシー。
ドロシー?仲間は見つけた?

『森美雪!さっさと泣き止んでトイレから出てきなさい!!
まだ、業務時間内!!働きなさいっ…』

泣き虫ドロシーは、ブリキ人形に怒られる。
ブリキ人形は、人の心がない。
カラダを開けると真っ暗で、ドロシーはハートを入れてあげたくて
仕方ない。
やさしい案山子は、ドロシーをいつもなぐさめてくれる。
新しい場所での心の拠りどころ。
でも、案山子は純粋で真っ直ぐしか見えてなくて、どこかもどかしい。
臆病なライオンは、虚勢を張ってはしょっちゅうブリキ人形にちょっかいを出す。
心無いブリキ人形は、ライオンを相手しない。
きっと、ブリキ人形が好きなのだろう。

ドロシーは、泣きながら少女から大人の道を歩く。
甘ったれのドロシー。
仲間に背中を押されて。
275名無しさん@ピンキー:2007/05/05(土) 22:50:45 ID:HjQ18x6X
なんというオナヌーSS
276名無しさん@ピンキー:2007/05/05(土) 23:47:35 ID:JBENMsH9
267さん、GJです。
絵もとてお上手なのでぜひまた投下してください。

とかげみずさんもGJです。
ドロシーは森ちゃん、ブリキ人形は春ちゃん
案山子は賢ちゃん、ライオンは東海林なんですね!
277名無しさん@ピンキー:2007/05/05(土) 23:47:46 ID:F+J+rAK/
>275
正直同意する
こういうポエムはブログかファンサイトでも作って
そこに載せてくれ
ここは一応エロスレなんだから
278名無しさん@ピンキー:2007/05/06(日) 00:00:43 ID:zcWd+q/V
投下作品が気に入らなきゃスルーすればいい。
叩くと投下しにくくなって過疎るぞ。
279とかげみず:2007/05/06(日) 07:38:56 ID:22Cw8wqV
自己満足、失礼いたしました。
これからは、もっと考えてから投下します。

不快に感じられた方、申し訳ありませんでした。
280名無しさん@ピンキー:2007/05/06(日) 10:13:23 ID:ARrAzQ4d
でも良かったとは思うよ?
281名無しさん@ピンキー:2007/05/06(日) 10:58:52 ID:bxUh/0Mq
うん。例えがうまかったと思う。

>>278さんの言う通り、気にいらなかったらできるだけスルーで。
只でさえ本編終わって、作品が少なくなってもおかしくない状態だし。
282名無しさん@ピンキー:2007/05/06(日) 11:46:04 ID:UDIYgG5n
そうそう、とかげさん、謝ることなんかないよ。
これにこりずまた投下してね!
283名無しさん@ピンキー:2007/05/06(日) 13:02:16 ID:BX1Us78Y
とかげみず様、かなりよかったですよ!
作品として、本当レベル高いです。

大体最初に「エロなし」とことわりいれてくださってたし…
284名無しさん@ピンキー:2007/05/07(月) 23:30:39 ID:53FQehiH
こんばんは、108です。
また投下させて頂きます。
またしても東海林X匡子です、しかも微妙に
SMチックなので抵抗のある方はスルーしてください。

いつも無題なので今回はタイトル考えてみました。
285名無しさん@ピンキー:2007/05/07(月) 23:34:11 ID:53FQehiH
恋人じゃない人 1


「東海林くん、飲む?」
そう言って私は彼にブラックのコーヒーを渡す。
「ああ…ありがと、匡子。」
彼はコーヒーを受け取り、飲む。


それが合図。






その日の晩。
会社から少し離れたラブホテルの一室。






ベッドに装備されている鎖。
なぜか鞭と蝋燭まで親切に置いてある。


ちょっと、刺激が欲しくて
SMルームなんて選んでしまったけど
実際入って見ると何だかドキドキする。

彼は子供のように鞭を伸ばして遊んでいる。
「うわ、すげー。俺こんなの初めて見たよ。…で
どっちがM?」

「もちろん東海林くん、あんたに決まってるでしょ?」

「え〜〜俺かよ!?」

「あったり前でしょ!!ほら、早く脱ぐ!!」

「はいっっっ!!」

286名無しさん@ピンキー:2007/05/07(月) 23:35:16 ID:53FQehiH

恋人じゃない人 2



そう返事すると彼は背広を脱ぎ出した。
上半身裸になると、私は彼の手首をベッドの鎖に固定する。
そして床に脱ぎ捨てた服の中からネクタイだけ取り出して
目隠しした。

「ちょっと待って、目隠しはやりすぎじゃ…」

「いいの、この位しないと面白くないでしょ?」

「でも、何されるかわからないって言う不安が…」

「それがいいんじゃない。」

なんだか面白くなってきた私は、ベッドの横にあった蝋燭を手に取り
火をつけて彼のお腹に垂らしてみた。

すると彼はびっくりして
まな板の鯉のようにお腹を冷やそうと必死で体を動かす。


「あっつ!?おい、何すんだよっっ!!」

「あはっ、お笑い芸人の罰ゲームみたいー」

彼の反応が可笑しくて、つい笑ってしまった。

「笑い事じゃないだろっ、俺は蝋燭垂らされて興奮するほど
変態じゃないぞ!!」

「ほんとに?最初この部屋に行こうって言ったのは東海林くんでしょ?」

「そりゃそうだけど…」

「じゃあ蝋燭はやめてあげる。その代わりあんたは今から
私の下僕よ。」

「ああ…わかったよ」

「下僕はタメ口じゃなくて敬語で話しなさい!!」

「はいっっ!!よろしくお願いします…ってすごいプレイだな」

彼はぼやきながらも私の言葉に従う。
287名無しさん@ピンキー:2007/05/07(月) 23:35:58 ID:53FQehiH

恋人じゃない人 3



会社では、いつも部下に偉そうにしているこの彼が
ラブホでSMプレイを楽しんでいるなんて。
会社の人たちが彼のこんな姿を見たらどう思うかね?
なんてことを考えてみる。


東海林くんと私は会社の同僚でもあり仲のいい友達だった。
だけど、一年前ぐらいだったかな。
二人で飲みに行った帰り、終電に乗り遅れて
仕方なく入ってみたラブホテル。
お互い何もしないと約束して入ったものの
薄暗い照明に、ピンクのダブルベッドの雰囲気に負けたのか
最初は離れて寝ていたのが、気が付けば裸で抱きあっていた。


その日以来、時々会社帰りに会っては
セックスしている。
仕事中にどちらかがブラックのコーヒーを
差し出して飲み干したら今日はやるぞ、の合図。
いつのまにか出来た私達の約束。

だけど、お互い恋愛感情はない。いわゆるセフレ。
二人とも恋人はいないし
仕事でたまったストレスを発散するために
やっているようなもの。

でも、最近はただセックスするだけじゃ物足りなくなってきていた。
それはきっと東海林くんも同じだったのかも。
だから今日も普通の部屋を選ぼうとしていたら
「なぁ…今日はちょっと冒険してみないか?」
なんて言ってきたんだと思う。
288名無しさん@ピンキー:2007/05/07(月) 23:37:45 ID:53FQehiH
恋人じゃない人 4


そういう訳で、ベッドに繋がれた男とそれを笑いながら見る女。
今までのセックスはどっちかっていうと
彼が主導権を握っていたけど
今日は私が女王様。
そう思うとなんだかちょっと興奮してきた。
私ってSのケがあったのね…。


「ねぇ…どこ舐めて欲しい?」
服を脱ぎながら彼に問い掛ける。
「え…どこでも…」
「どこかちゃんと言わないと舐めないわよ」
「じゃあ、首から…」


私は彼の首に跡がつかない程度にキスをしていった。
すると彼は小刻みに体を揺さぶる。
首からゆっくり胸まで舌を下ろしたところで
目隠しされているのをいいことに
不意打ちで今度は腰周りをぺろっと舐めいてく。

「あっ…ああっ」

彼は声を出して喘ぐ。
腰周りを舐めながらゆっくりと手を
彼のズボンに伸ばす。
太ももから…滑らすように上へ、上へ。
ファスナーの部分まで到達すると
そこはもうヨットの帆のように張っていて
触るとすでに硬くなっていた。
ズボンの上から、焦らすように優しく触る。

「ねぇ、もうこんなに立ってるわよ」

「はぁっ…やだっ」

「なに女の子みたいな声出してんのよ、ここをどうして欲しいの?」

「な、舐めて…くだ、さいっ…」

「よしよし、いいコね」

私はベルトを外しゆっくりズボンをずり落とした。
パンツも一緒に、なんて下品なことはしない。
パンツの上から優しく撫でてあげる。
撫でるスピードを上げれば挙げるほど、彼の息がどんどん荒くなる。
するとパンツに小さなシミができた。
そろそろ焦らすのもやめてあげようと、パンツを脱がす。
少し先が濡れた彼の性器を私は飴を舐めるように
口の中で転がしていく。

「あっ…はぁっ…気持ち、いいっ…」

彼は首を横に振りながら喘ぐ。
そんな姿を見ていると私も興奮してきた。
289名無しさん@ピンキー:2007/05/07(月) 23:38:29 ID:53FQehiH
恋人じゃない人 5


「ねぇ、私のも舐めて。」

「え…」
私は自分の体を180度回転させて
彼の頭上で股を広げた。

普段は上から舐めてもらうなんて、恥ずかしくてしないけど
今は目隠しされて見られてないし。
そう思うといつもより大胆になってしまう。
「ほらっ、早く。」
そう言って私は自分の膜を彼の口の前に差し出した。

彼は舌を伸ばしゆっくりと舐めはじめる。
「やんっ…」
生暖かい感触が余計に刺激を与えて私は声を出してしまった。

「もっと、気持ちよくさせなさいよ」

そう言うと私は彼のものを舐めるスピードを上げ
手も使ってどんどんと刺激を与える。

彼も私の中を舌でかきまわす。唾と液が混じりあい
ピチャピチャといやらしい音を立てる。


「ああっ…出そうっ…」

彼がそう言うと、私は動かしていた手と口を止めた。

「だめよ、我慢しなさい。」

「えっ…?」

私は体制を元に戻し、ベッドの上にあるコンドームを取り
つけてあげる。

「いい、私がイクまでイッちゃだめよ。もしイッたりしたら…」

「し、したら…?」

「また蝋燭垂らすからね。」

「いや、それだけは…」

「わかった?わかったら返事する!」

「はいっ…!」
290名無しさん@ピンキー:2007/05/07(月) 23:39:29 ID:53FQehiH
恋人じゃない人 6


何だか素直に従う彼が少し可笑しくて
笑いつつも、私は彼と接続する。
最初から上位にいるのは初めてだ。
とりあえず体を上下に動かしてみると、ベッドが
ギシギシと音を出してシーツが揺れる。
私の中も振動によってなんとも言えない快感が。

「あっ…ああんっ…」

声がしらずしらず出てしまう。

「きょう…こも、気持ち…いいのか?」

「うんっ…感じるっ…」

下でマグロ状態になっている彼に私は言う。

「あんたっ、拘束されてるんだから…ちょっとは
抵抗しなさいっ」

そう言って私は彼のお腹をつねった。

「いたっ…はっ、はいっ…」

彼は腕を動かし鎖を引っ張る。
けれど鎖は外れることはなくただジャラジャラと音を立てる。

「いやっ…あっ、やめてっ…!やめて、下さいっ」

大根…どこのしょぼいAVよ。
けど彼も一生懸命やってくれてるんだろうし
そんな姿がちょっとかわいい。

「ダメよ、そんなに抵抗したって」

そう言うと私は上下に動かしていた体を
さらに左右へ動かす。
私の中で彼が暴れているように動く。
私は彼を締め付けるようにぎゅっと下半身に力を入れる。
すると彼は息を荒くして、自分の腰も動かしはじめた。

二人の荒い息に、ベッドの軋む音、そして鎖の音。
全てが交じり合って何か不思議な感覚に落とされる。

「あっ…イキそう…」

「おっ、俺も…」

全身に痙攣が起こったような感覚に犯されて
私は一線を超えた。

中でビクビクと反応する彼。
私は息を整え、中のものを外した。

すると包まれたコンドームの中で白い液がたまっていた。

………。
291名無しさん@ピンキー:2007/05/07(月) 23:40:18 ID:53FQehiH
恋人じゃない人 7


先にイクなと、言った筈なのにこの男は…。


私は少し汗ばんだ彼の体の上に再び
蝋燭を垂らす。

「うわっっっ、熱いって!!ちょっ、やめて!!」
また体を動かしじたばたする彼。

「あたしより先にイクなって言ったでしょ?」
遠慮なくもう一滴垂らす。

「ちがっ…先にイッてないって!?同時、同時進行だってば」

「ほんとに!?嘘だったらこのままほったらかして一人で帰るわよ!」

「えっ!?それだけはやめて下さい!!っていうか早く外して…痛い…」

泣きそうな声で彼は私に訴える。
そんな彼を見て、やっぱり可笑しくってまた笑ってしまった。




私は彼を拘束していたものを外してあげた。
手首には少し後が残っている…。
明日までには消えるかしら?
身なりを整えながら、彼は冷蔵庫からビールを取り出す。
すると私の素肌にぴたっと当てた。

私は思わず「ひゃあっ」と変な声をあげてしまった。

「ちょっと何すんの!?」
ぎろっと睨むと彼はちょっとびびったのか
「ごめん、もうしないから…」

そう言った後、ぽつりとぼやく。
「これから匡子に無茶な仕事を押し付けるのはやめよう…」

「待ちなさい、何でそうなるのよ!?」

「だってまたお仕置きされる…」

「そんなこともうしないわよ!SM嬢じゃあるまいし」

「いや、あの時の匡子の声は本気だった!」
292名無しさん@ピンキー:2007/05/07(月) 23:40:50 ID:53FQehiH
恋人じゃない人 8


そんな会話を続けながら私達はしばらく話しつづけた。
私達の事後にピロートークなんて甘いものはない。
大抵仕事の事とか、愚痴とかたわいもない会話が続く。

ビールを飲みながら今日あったことを話す。

「そういやさ、今日派遣の子達が仕事中にチャットしてて
注意したのね。そしたら泣き出してさぁ…もうほんとやんなっちゃう」

「あーまたあいつらか。ほんっと派遣はやる気ねーなー。
部長も何ですぐクビにさせないんだろう?」

「まぁ、派遣会社との関係もあるからすぐに切れないんじゃない?」

「そうか?俺だったら派遣なんか入れずに正社員しか雇わないんだけどなぁ。」

「だったら早く部長まで昇任してよね、東海林くん」


「おう、でも匡子より先に出世したら後が怖そう…」

「何ですって!?」




友達以上だけど、恋人でもない不思議な関係。

でも、今はこの状態が心地いい。

それでも時々は刺激のあるセックスがしたいと思う。
ああ、やっぱり私って生粋のSなのかしら…。
293名無しさん@ピンキー:2007/05/07(月) 23:45:42 ID:53FQehiH
…以上です。何だか中途半端な話ですみません。
最後まで読んでくださった方ありがとうございました。
294名無しさん@ピンキー:2007/05/09(水) 21:40:17 ID:mHMkVFD+
お疲れさまでした
295名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 23:26:23 ID:iqvkkj1a

キマ
296不似合いな手:2007/05/14(月) 00:37:03 ID:dDI0tbFX
とかげみずさん、108さん、GJでした!
また新作お待ちしています。

さて、いーかげんちゃんとしたエロを書かねばと思いチャレンジしたのですが、
何の前フリも、オチも、意味も、なくなってしまいました。
今まで書いたものとは全く何のつながりもありません。
名古屋でラブラブな設定の東海林×春子、エロありというよりエロのみです。
春子に振り回されてばかりの東海林なんで、たまにはちょっと鬼畜な感じにしてみました。
よろしくお願いします。
297不似合いな手:2007/05/14(月) 00:37:30 ID:dDI0tbFX
〜「欲情」(1)〜

夕飯後。
二人で洗った皿を、春子が拭いているその時だった。

流しに立っていた春子の両の手を、東海林の両手が包み込んだ。
東海林は春子の背中にぴったりと寄り添っている。

「・・・何してるの」
「手伝おうと思ってさ」
「邪魔してるだけでしょ」
「邪魔?これが?」

東海林は春子の耳に囁くと、甘く噛んだ。
こうされると弱いことを知り尽くしている。

「っ・・・、やめなさい」
「やめる?どうして?」
「・・・」

東海林の右手がシャツの上から春子の胸を愛撫する。
指の腹だけでなく、指の背、関節、様々な角度を付けて焦らすように優しく愛でる。
ブラジャーを付けていないので、その頂がぷっくりと立ち上がったことは
布ごしにもはっきりと伝わった。
春子はついに目を閉じた。

298不似合いな手:2007/05/14(月) 00:37:51 ID:dDI0tbFX
〜「欲情」(2)〜

「何か言えよ・・・」
「・・・うるさい」
顔だけ振り向いて、噛みつくように東海林の唇を塞ぐ。

唇をむさぼり合う間にいつのまにか、東海林の手は春子のシャツのボタンを外して
中に滑り込んでいる。

東海林の指が春子の胸の果実に直接触れた。

「あ・・・」
触れられた箇所に甘い電流が走る。
東海林はもう片方の手で春子の腿をなぞり、スカートをたくし上げて
下着の中に侵入した。

そこは既に、熱い蜜で溢れている。

東海林の長い指が蜜をからめながら春子の秘所を撫でさする。
二人の息が次第に荒くなっていく。
東海林は両手で春子を嬲りながら、掠れた声で耳元に囁き続ける。

「白状するけどさ・・・ゆうべ夢見たんだよな・・・」
「ん・・・」
「夜の会社でさ・・・積荷の陰にお前連れ込んで・・・立ったまんまつながる夢」

ちょうど、今のように。

「・・・へんた、い・・・」
「お前が声あげないように必死でこらえてる顔が・・・妙にリアルでやらしくてさ・・・。
 今日会社でお前見るたんびに、その顔思い出してた・・・」
「あっ・・・」

淫らな言葉で嬲られると、春子の秘所はますます熱くとろけてしまう。
東海林は愛撫の手を休めず指先で、掌で、唇で、言葉で嬲り続ける。
腰の後ろに熱く固い感触が伝わり、春子は小さく震えた。

「・・・お前にもあるのか・・・そういうこと・・・」
「あんっ・・・」
「涼しい顔で仕事してる時にさ・・・ほんとはすげー欲情してたりするのかよ・・・」
「・・・」
「・・・なあ・・・どうなんだ・・・?」
「・・・黙りなさい・・・」
「否定しないのか・・・」
「・・・んっ・・・」
「・・・ほんとのこと言えよ・・・」
299不似合いな手:2007/05/14(月) 00:38:13 ID:dDI0tbFX
〜「欲情」(3)〜

例えば、デスクに向かっている春子の背後から、東海林が長身を折り曲げて
PC画面を覗くとき。
東海林の体温や吐息を感じる距離になると、甘い痺れが走ることがある。
東海林の唇や長い指が目に入るたび、それが自分にすることをつい、思い出してしまう。

――言えない。そんなこと・・・。
だが、春子の疼きはもはや限界だった。

「・・・はや、く・・・」
「ん・・・?」
「はやく、きて・・・」
「・・・だめだ」
「いや・・・」

春子の右手が後ろに回り、東海林の柔らかな髪をかき乱す。
だが陥落寸前の春子を前に、東海林の淫らな追及の手はいっこうに止まらない。

「言えよ・・・」
「あ・・・だめ・・・」

下着を下ろされた春子の秘所は、とけたバターのようにとろとろになっている。
背後でズボンのジッパーを下ろす音がして、春子は身を震わせた。
東海林は怒張した自身を取り出しコンドームを付けると、春子の泉に押し当てる。

「勤務中に欲情すること、あるんだろ・・・?」
「・・・あん・・・」
「言えって・・・」
「・・・る・・・」
「ん・・・?」
「・・・ある・・・あるわ・・・ああっ!」
東海林は春子の体を自分に向けさせると、一気に貫いた。

立ったまま、つながる。

「んっ・・・はるこ・・・」
「・・・ああっ・・・東海林くん・・・しょうじ、く・・・あぁ・・・」

もう何も考えられない。
二人は互いの名前を何度も呼び合いながら、激しく愛し合った。


〜終わり〜
300名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 13:46:01 ID:lg8uJxHH
キャー!ステキにエッロイ!!GJ!
301名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 21:22:55 ID:sDox3UR6
やっぱり春ちゃん可愛いwww

GJです!これからも期待してます!!(´∀`)

302名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 18:41:49 ID:cRcCwDuk
不似合いな手サマ、凄く素敵です!
またお待ちしてます〜!
303名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 21:41:05 ID:voTiMthl
GJです!!
攻め立てる東海林に強がる春ちゃんかわいかったです!
304不似合いな手:2007/05/17(木) 22:10:55 ID:HlfIXGHY
コメント下さった皆様、有難うございました。
エロ強化週間(?)として、東海林×春子、もう1本投下します。
例によって前後のつながり全くなし、名古屋ラブラブ設定です。
よろしくお願いします。
305不似合いな手:2007/05/17(木) 22:11:35 ID:HlfIXGHY
〜「眠れぬ夜」(1)〜

午後10時半。大前春子は広島の宿にいた。

携帯が鳴って、見慣れた番号を表示する。

「はい」
「お疲れさん」
「・・・どうも」
「今、宿か?」
「はい。明朝6時に出発します」
「うん」
「・・・まだ会社ですか?」
「いや。家だ」
――良かった。
恋人の体を人知れず気遣っている春子は、心の中で安堵した。
「あなたもたまには早くハウスできるんですね」
「犬じゃねえんだ、俺は」
憎まれ口を叩きながら、お互い声に出さずに笑い合う。
「・・・なあ」
「はい?」
「ずっとお前のこと考えてた」
「・・・ばっかじゃなかろうか」

二人は昨夜、結ばれたばかりだった。
今日、お互い会社では何食わぬ顔で仕事をしたが、春子が広島行きの
トラックに乗り込む直前、東海林が人目を盗んで春子の手を握り締めた。
それだけで甘い感覚に囚われて、運転に集中するのに苦労したことは
春子の秘密だ。

「明日の朝早いんです。用事がないなら切りますよ」
こうでも言わなければ、本当は自分の方も電話が切れそうになかった。
「冷たいなあ、お前」
「私は前から冷たいんです、それが何か?」
「・・・昨夜はそうでもなかったぞ」
――ばか。
「本当に切りますよ」
「わかった。でも俺、きっと眠れねえや・・・」
――何言ってるの。
「・・・早く寝なさい」
「俺、どうかしちまったのかな・・・」
「今頃気がついたんですか?」
「お前が好きだ」
「・・・」
「もう、お前なしじゃ・・・」

――生きていけない。

最後までは発せられなかったその言葉が、春子の胸にきゅん、と響いた。
「・・・ばか」


306不似合いな手:2007/05/17(木) 22:12:06 ID:HlfIXGHY
〜「眠れぬ夜」(2)〜

「春子・・・」
二人きりの時だけ、春子だけに囁かれる低い声。
この声を聞くと腰骨が甘く痺れて、春子は何も言えなくなってしまう。
――だめ。何か言わなくては。
「少しは俺のこと、考えたか・・・?」
「・・・」
「昨夜のこと・・・思い出したか?」
「・・・」
「何か言えよ・・・」
「・・・」
「それとも言えないようなこと、考えたのか・・・?」

――何か言わなくては・・・。

「・・・考えたわ」
「・・・」
「私もずっと、考えてた・・・」
――ああ・・・私としたことが。
「どんなことを?」
「・・・」
――言えるわけない。

「俺は全部覚えてる・・・お前の顔、声、息づかい・・・」
「・・・」
「お前の感じやすいところ・・・」
「・・・」
「お前の手触り・・・お前の・・・なか・・・」
――だめ。やめて・・・。
「はっきり覚えてる・・・今もお前に・・・触れてるみたいに・・・」
――おかしくなる・・・。
「なあ・・・俺の代わりに触ってくれ・・・」
「・・・」
「お前の唇・・・」

春子の中で、何かがこわれた。

自分の指でそっと唇に触れる。
春子は自ら唇を撫でると、その指に口付け、くわえ、そして――しゃぶった。
「お前の首すじ・・・やわらかい胸・・・」
浴衣の合わせ目から手を差し入れ、周辺から優しく愛撫していく。
「お前の・・・さくらんぼみたいな甘い実も・・・」
そこは既に硬く立ち上がっている。
「・・・んっ」
「お前のいいようにしてやる・・・」
「・・・あっ・・・あぁ・・・」
とうとう声が漏れる。


307不似合いな手:2007/05/17(木) 22:12:33 ID:HlfIXGHY
〜「眠れぬ夜」(3)〜

「お前・・・その声、隣に聞かれんなよ・・・他の男なんかに・・・」
「・・・んあっ・・・」
「俺・・・すげえ硬くなってる・・・」
「んん・・・」
「聞こえるか・・・?」
にちゃっ、にちゃっ・・・。
水音を絡めながら、長い竿をゆるゆるとしごく音がする。
春子はごくりと息を飲んだ。
「ああ・・・私・・・も・・・」
「まだだ・・・まだあそこは触るな・・・」
「あん・・・」
恨めしげに甘えた声を上げる。

自分が信じられない。

「ああ・・・そんな色っぺえ顔すんなよ・・・」
「あっ・・・」
「お前の乳首も・・・立ってる・・・」
「ああっ・・・」
「きれいだ・・・しゃぶってもしゃぶっても甘い・・・」
春子は東海林の唇の代わりに、自分の手で屹立した乳首を嬲り続けた。
本当はあの柔らかな頭を胸にかき抱いて、離したくない。
下腹部が甘く疼いて、春子を追い詰める。
「んんっ・・・はや、く・・・」
「ん?」
「はや、く・・・さわって・・・」
「――どこに?」
「・・・濡れてる・・・溢れてるの・・・」
「可愛いな、お前・・・」
「おねがい、・・・はやく・・・」
「・・・」
「・・・そのながいゆびで・・・、さすって・・・!」
「・・・こうか・・・?」
待ちわびた愛撫。
――違う、あのひとの手じゃない。あのひとはもっと・・・。
それでもそこは、ふしだらに蕩けきっている。
「ああっ・・・!ああん・・・」
「お前・・・こんな、に・・・こんなに濡らして俺を・・・」
「・・・あん・・・あっ・・・」
「・・・ああ・・・たまんねえよ・・・」
「・・・しょうじくん・・・あっ・・・」
「・・・入れるぞ」
「ああ・・・来て・・・はや、く・・・!」
春子の秘所は、三本の指をするりと呑み込んだ。
「んっ・・・はっ・・・はるこ・・・」
「あんっ・・・しょうじ・・・く・・・」
「あぁ、絞まる・・・だめだ・・・そんな、に・・・」
「んっ、んん・・・あんっ・・・」
「・・・も・・・う・・・」
「いっしょ・・・に・・・あああっ・・・!」
「んんっ・・・!」





308不似合いな手:2007/05/17(木) 22:13:05 ID:HlfIXGHY
〜「眠れぬ夜」(4)〜

しばらく、互いの荒い息遣いだけが聞こえていた。

――私としたことが・・・。
ぼうっとした頭で息を静めながら、徐々に己を取り戻す。

「・・・燃えたな・・・」
「・・・ヘンタイ」
「ヘンタイじゃねえよ」
「こっちは出張中で明日も早いって言うのに、何の電話掛けてるのよ・・・」
「うるせえ。こんなつもりじゃなかったんだよ・・・」
「・・・」
「こんなこと、したことねえよ。お前はやっぱりブラックホールだ、大前春子」
「バカ言わないで。こっちだって初めてよ、こんなの」
電話の向こうで東海林がふっと笑った。

「・・・お前、今その顔で廊下うろうろすんなよ。絶対襲われるからな」
「――うるさい!」
「くそー、いろっぺえ顔してるんだろうなあ・・・!」
「・・・私は明日早いんです。もう遅いので失礼します」
「お前、眠れんのかよ」
「当たり前です」
「俺は眠れねえぞ。どうしてくれんだよ」
「・・・知りません」
「お前、帰ってきたら覚えてろよ」
「とっとと寝なさい」
「待て!」
「?」
「――早く帰ってこいよ。ぐっすり寝て、安全運転でな」
「・・・はい」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい・・・」

電話を切った。

本当は春子にも、眠れるかどうか自信はない。
だが明日、自分には帰るべき場所がある。

――眠ろう。眠らなくては。

甘い余韻に浸りながら、春子は目を閉じた。


〜終わり〜
309名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 23:23:16 ID:yoTnJ/Xz
GJ!ありがとうございました!!

エロ強化週間最高!出来れば月間で…(笑)
310名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 00:21:47 ID:xaguzkWP
GJデス☆
エロ強化週間ナイスです(^_^)v
311名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 10:58:37 ID:c5c2ZXeE
     *      *
  *     +  グッジョブ!
     n ∧_∧ n    グッジョブ!
 + (ヨ(* ´∀`)E)
      Y     Y    *
312名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 23:13:00 ID:XxMgNW7e
GJでした☆次の最新たのしみにしてまーす。頑張ってください
313名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 04:01:35 ID:UFdkaDdk
さすがの切り口で来ましたね。楽しめました。GJ!

しかし、水をさすわけじゃないんですが、
「東海林くん」て呼び方に違和感があるのは私だけ?
314名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 09:39:23 ID:YaKIywUP
うっかり呼んじゃう「たけし」の方が萌える。
でもそこは人それぞれなので話が面白ければ別に気にしない。
不似合いな手さん、GJでした。またの投下を楽しみにしておりますよ。
315名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 16:13:59 ID:LV06Hv0+
甘い雰囲気の中でも「くるくるパーマ」「とっくり」呼ばわりでも、それはそれで萌えるw
316名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 12:44:30 ID:0hWBemih
317不似合いな手:2007/05/22(火) 21:25:31 ID:C4/0jXvl
コメント下さった皆様、有難うございました!
エロの語彙やら何やら、バリエーションが非常に貧弱ですが
また機会があれば頑張ってみます。

春子が東海林を呼ぶ呼び方、色んな好みがありますね〜。
個人的には、邪道だとは思いつつもなぜか「東海林くん」がしっくり来るんですよね。
職場では「主任」だの「所長」だの肩書きで呼んでいても、
関係としては同級生みたいに対等で、しかも東海林の方が年下で・・・。
だったら「武」でよさそうなもんなんですが、
いまだに東海林の下の名前が「武」だってことがピンと来てなくて。
自分でも不思議です。
318名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 23:58:07 ID:AI6gRU11
まあ、確かにハルちゃんがクルパーをどう呼ぶかは迷うよね。
個人的には東海林くんも東海林さんも武も全部ひっくるめて名前呼びがピンと来ないんだが、
かといって主任だのの役職呼びもプライベートじゃなぁ。
どうもそこがネックになって2次が書けない。ネタだけは浮かぶんだが。

東海林の方は春子でもハルちゃんでもなんでも違和感無いんだがなぁ。
319名無しさん@ピンキー:2007/05/23(水) 01:09:12 ID:tTtMxruj
たーちゃんで
320名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 08:33:37 ID:5ZDRe85P
春ちゃんが照れながら「…武」と呼ぶ姿を想像すると
萌える。
で、言った後やっぱり「くるくるパーマ」と訂正。

妄想のみでスマソ…。
321名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 01:43:28 ID:4qnRjs8E
便乗して自分も妄想してみた。スマソ。

くるくる (少し照れながら)「たまには名前で呼んでみたらどうなんだ」
とっくり (小さな声で)「……さん」
くるくる (ちょっとニヤケながら)「何? 何て言った?」
とっくり 「…ぶさん。とうかいりんぶさん」
くるくる (しばらく間をおいて)「…って、おい!ぶって武のことか!
      苗字だけじゃなくて名前まで音読みするのかお前!! おいちょっとまて!!」
322名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 08:44:26 ID:YxiDk7jt
 笑ったw

 その流れであだ名が「ブー」とか「ブーちゃん」になる東海林
323名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 23:33:27 ID:fseZ7tcx
自分も妄想を広げてみましたw

とっくり「東海林武さん」
くるくる「なんだとっくり、いきなりフルネームで呼んで」
とっくり「東海林…武…た、たけ……しいたけ。」
くるくる「け?ケンタッキー…ってしりとりかよ!?
照れないで俺の名前を呼んでみろ!」
とっくり「照れてなんかいません、貴方の名前は
言い辛いんです。」
324名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 00:45:39 ID:wTwTGjrw
春子「…」
東海林「なんだよ何見てんだよ人の股間見て!」
春子「…たけ…タケノコ…」
東海林「はぁ!?」
春子「武のムスコを略しただけですが何か」
東海林「なんなのそれ!てかさりげに武て呼んでるし!」
春子「!」『しまった、私としたことが』
325不似合いな手:2007/05/27(日) 03:33:48 ID:SKzV9ovj
呼び方ネタ、いろいろ膨らんでますね〜。
「とうかいりんぶ」、ありそうで笑えます。

さて、久々に名古屋編ではない東海林×春子を書いてみました。
又してもエロ強化の試みで、3話の終わりを受けてのものです。
仲良く喧嘩するようになった二人もいいですが、いがみ合っているくせに何か
気になる・・・という関係も好きでした。
ドラマ本編では専ら東海林の一方通行でしたが、春子も実は・・・という設定で
考えてみました。よろしくお願いします。
326不似合いな手:2007/05/27(日) 03:34:09 ID:SKzV9ovj
〜「ハケンの敵」(1)〜

日々いがみ合っている、憎たらしいハケンの敵。
昨夜、バス停であいつに唇を奪われた。

横柄で、要領と調子がいいだけの男だと思っていたら。
やけに素直で、まっすぐで、熱っぽくて、切なげで。
押しが強いくせに、随分と繊細なキスをして。

派遣先で言い寄ってくる男、セクハラまがいの行為には、
免疫も対策も完璧なはずなのに。

・・・おかしな夢を見てしまった。


エレベーターの中。
「挨拶くらいしたらどうなんだ。・・・大前さん」
「お早うございます。――東海林主任」

そして――どちらからともなく、噛みつくように口付けた。

あの不遜な男のくるくるパーマをかき乱す。
うるさい口を塞ぐようにむしゃぶりつくと、
大きな手が私の頭をがっちりと押さえ込んで、
息もできないほどに舌を絡めて蹂躙してくる。

男の掌が無遠慮に私の乳房を鷲掴み、
思いのほか繊細な指先で敏感な頂を弄(もてあそ)ぶ。

「・・・とっくり」
欲情の余り掠れた声が、耳元で囁く。
熱く湿った吐息。
ハイネックの襟を乱暴に押し下げ、首筋を唇で嬲られて気が遠くなる。

男は膝まずくと、私のセーターの裾とブラジャーを一気にずり上げ、
乳房にしゃぶりついた。

男は私を見上げ、勝ち誇った笑みを浮かべると、痛いほど立ち上がった私の乳首をねぶる。
感じやすいそこを、舌で転がし、甘く噛み、小刻みに口付ける。
甘い痺れが、電流のように下腹部を刺激する。
目を閉じた男のまつげが、やけに長く見えた。
「あぁ・・・」
思わずその頭をかき抱く。柔らかい巻き毛が私の肌をくすぐる。
「ずいぶん素直だな、大前サン・・・」
「んっ・・・」


327不似合いな手:2007/05/27(日) 03:34:30 ID:SKzV9ovj
〜「ハケンの敵」(2)〜

男の手が腿を伝って、熱く息づく秘所を侵す。

「こんなに、はしたなく濡らして・・・勤務態度が悪いぞ・・・」
「んあっ」
卑猥な言葉で辱められているのに、後から後から蜜がこぼれる。
整った長い指が、溢れる蜜を塗り広げるように擦りながら、そこを嬲る。
切なく疼く最奥を焦らすように、入口を犯す。

「・・・ほんとのこと言うよ・・・ずっとこうしたかった・・・」
「・・・んんっ・・・」
「乱れたあんたが見たいって・・・、ずっとそう思ってた・・・」
「・・・はっ・・・あぁ・・・」
「・・・俺が欲しいか?」
「誰があんたなんかっ・・・ん・・・」
再び唇を塞がれた。

硬くなった下腹部を押し付けられる。
男のベルトを外し、ジッパーを下ろす。
硬く立ち上がったそこを撫で上げると、低いうめき声が私の耳を犯した。

着衣のまま、貪りあう。
――めちゃくちゃにして。
気がつけば、うわごとのように繰り返している自分がいた・・・。


そして、目が覚めた――。

私としたことが、全くどうかしている。

あの憎らしいハケンの敵に、
組み敷かれて、
貫かれて、
乱されたいなんて・・・。

――しっかりしなさい、大前春子。
忘れよう。なかったことにしよう。
あの男は、敵なのだから。

甘い火照りに蝕まれた身体を持て余しながら、私は必死で目を閉じた。
契約終了まで、あと60日あまり・・・。


〜終わり〜
328名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 09:12:01 ID:ADuw4njT
不似合な手さんGJです!!
放送中はあまり意識してなかったのですが
最終回後に二話三話を見直すと
春ちゃんもくるくるに気があるように
思えてしまいます。
329名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 02:51:41 ID:XBmpmqcE
うわああ久々に来たら、不似合いな手さんGJ!!
夢で妄想しまくりの春ちゃんに萌えます(´∀`)
330名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 20:38:58 ID:RJz1Sazp
自分の子供にもクルパー呼ばわりされてる東海林萌え
331名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 22:55:46 ID:vDRX6LC+
こんばんは、108です。
いいかげんコテハン考えろって感じですね…。
不似合な手さんのエロ強化月間GJです。
プラトニックな二人もいいけどエロい二人も大好きです。

そんな中またしても投下させて頂きます。
懲りない奴ですいません…。
気に入らなければどうぞスルーしてください。
332名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 22:58:26 ID:vDRX6LC+
花の中の蕾 1


「あはは、似合ってねー!」
腹を抱えて笑う東海林。
「…うるさい」


東海林の部屋で、春子はいつもと違った格好をしていた。
白のレース付きブラウスの上に
グレーのスモッグを重ね着。
下はピンク系の花柄のプリーツスカート。
まるで森美雪のようなスタイル。

勿論春子が好んでこの服を買ってきたわけではない。

春子の服には色気がないと、東海林が買ってきたものだった。


「貴方のセンスのなさが伺えますね。」
春子は顔を歪めながら東海林を睨んだ。
「うるさいな、マネキンが着ていたのをそのまま買ってきたんだぞ。
森美雪もこんな感じの服着てたじゃないか」
「じゃあ森美雪にあげなさい」
「なんだそれ、可愛くねーなぁお前は。だからそんな可愛い服も似合わないんだよ」
その言葉に腹が立ったのか
春子はぷいっと顔をそむけ隣の部屋へ向かおうとした。
「もう二度と貴方の買ってきた服は着ません。着替えてきます。」


「…!ちょっと待って」
東海林は春子を引きとめようと、思わず後ろから抱きしめる。
大きな手で腕を包み込まれて、思わずドキッとする春子。
力強く抱きしめられたわけでもないのに、なぜか体が動かせない。
333名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 22:59:14 ID:vDRX6LC+
花の中の蕾 2

「ごめん、可愛くないなんてい言って。…似合ってるよ、とっくり。」
「今日はとっくりは着ていませんが?」
「…そうだな、は…春子。」
後ろから耳元で名前を囁かれる。

春子は思った。
抱きしめられたのが後ろからでよかった。
こんな赤い顔を見られなくて済んだから。
自分の名前を呼んでもらうのがこんなに恥ずかしくて嬉しいものだなんて…。




すると、東海林の手が春子の腕から胸にゆっくりと移動して
服の上から優しく撫でられる。
「…あっ」
思わず吐息が漏れる。
春子の体がかすかに震えだした。
「春子、こっち向いて…」
東海林は春子の頬を引き寄せキスをした。
お互い吸い付くように唇を合わせて
その中では舌を絡ませている。
絡ませる速度が速くなるほど、東海林の手は
春子の胸を激しく揉みあげた。


東海林の下半身はどんどん硬くなり、春子も下着の中が
濡れていた。


そんな春子に気付いたのか
東海林はスカートの中に手を入れて
春子の中を指で掻き乱す。


「…いやっ、あん…」
「どうした…?今日はやたら可愛い声出すじゃないか」
着ている服が可愛いと、気持ちも少女の様になるのだろうか。
いつもより甘えた声になってしまう。

私としたことが…でも、なぜか可愛いといわれて嬉しい自分がいる。
春子は両手を壁に当てて前屈みの体制になった。
334名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 23:00:06 ID:vDRX6LC+
花の中の蕾 3

東海林はズボンを脱ぎ、春子の中に挿入し
ゆっくりと左右に腰を振る。

「春子…気持ちいいよ…」
「はあっ…私もっ…」
「……名前、呼んで」



「………武」


繋がったまま、東海林は春子をぎゅっと抱きしめる。

とっくり。
くるくるパーマ。

いつも互いを仇名で呼んでいたからか
名前で呼ばれると
何だか恥ずかしくて、くすぐったくて
初めて裸を見られた時のような気持ちになる。

「春子…好きだよ」
東海林が春子のぐしゃぐしゃになった髪をかきあげ耳元で囁く。
そんな臭いセリフも、今はとても愛しく思えて
春子も思わず呟いた。
「私も、す…きよ」
春子は腕を後ろに回し、東海林の髪を触る。
撫でるほど東海林の天然パーマが
春子の指に絡まった様に
いつしか二人の心と体が絡みつく。


力尽きると、二人は床に座り込んだ。
ずっと膝を曲げていたので
間接が痛くてなかなか立ち上がれない。
荒れた息を整え、春子は東海林に言う。
「もうとっくり以外の服は着ません。」
「どうしてだよ、もっと着ろよ…それとも名前で呼ばれるのが嫌なのか?」
「嫌ではありません…恥ずかしいんです。」
下を向きながら、口を尖らせて言う春子がとてもかわいらしくて
今度は前からぎゅっと抱きしめる。
「可愛いところあるじゃねーか、とっくり」
「…もうとっくりですか。」
「なんかとっくりって呼ぶと安心するんだよなぁ。ミドルネームみたいなもん?
大前とっくり春子みたいな。」
「何ですかそれ…」



春子は苦笑しながらも、東海林の背中をそっと包み込む。


花柄のスカートには小さな染みがついていた。
335名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 23:02:16 ID:vDRX6LC+
…以上です。
相変らずタイトルが適当ですいません…。

名前ネタに便乗させていただいたのですが
中途半端で申し訳ないですorz
336不似合いな手:2007/05/31(木) 23:21:41 ID:h1qu4AEr
108さん、GJでした!
「大前とっくり春子」・・・「ミドルネーム」に笑いました。

それと、拙作にコメント下さった皆様、有難うございました。
337名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 23:44:12 ID:FRe76F7j
みんなプロのようですね夢のようです!!
ところで1のすれは見れないのでしょうかここみてはまってしまって
とても見たいです。
338名無しさん@ピンキー:2007/06/01(金) 01:50:06 ID:sFqQU0EV
108さんGJです
たしかに中の人は可愛いから似合うはず…ですよね、花柄w

>>337
>>47 にまとめページのアドレスがありますよ。職人の皆さんすごいですよね
339名無しさん@ピンキー:2007/06/01(金) 21:23:57 ID:nVjen8wF
本当に凄いですね!
職人の方々いつもありがとうございます!

340名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 23:15:39 ID:FN6ArDPq
108さんGJでした!!
花柄春ちゃんに萌えますね〜。
からかう東海林も可愛らしいです。
341名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 23:07:15 ID:3invNkCJ
こんばんは、108です。
コメントくださった方々いつもありがとうございます…。

DVDが出るまではどうしても保守したいので
連続で申し訳ないのですがまた投下させて頂きます。

エロなしの、森ちゃん視点で
9話のプロポーズのアンケートをシュレッダーにかけた後の話です。
録画していなくて内容が確認できない為
実際の放送と異なるところがあるかもしれませんが…。
342名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 23:09:40 ID:3invNkCJ
1

「ねえねえ、森ちゃんっていつから東海林主任と付き合ってたの?」
トイレで島田さんと竹井さんに鉢合わせしてしまい
すかさず聞かれてしまった。

…もちろん、私と東海林主任は付き合うどころか
ろくに話もしたことはない。
けれど、私が「実は嘘です」と言ってしまうと
プロポーズの相手が春子先輩だとばれてしまう。


「うん、実は入ってすぐ…」
とりあえず当り障りのない返事をする。
すると
「へぇーだから合コンそっちのけで東海林主任の仕事手伝ったり
してたんだぁ。」
竹井さんに、何だかちょっと嫌味っぽく言われてしまった。
「お昼一緒に食べてたのも東海林主任がいたからなんだね。
…でも途中で里中主任に乗り換えたんだぁ?」
「…え?」
「結構森ちゃんって男好き?みたいな。」
島田さんはそう言うとハンカチで手を拭きながら
トイレから出て行った。
後から続けて竹井さんも出て行く。



…一人になったトイレで、頭を抑えながらしゃがみこむ私。
「違うんですぅ〜!!あれは春子先輩へのプロポーズだったんですぅ〜〜〜
…って言えたらいいのに…」
…でも、あの二人の関係が周りに知られて
話のネタにされるのは、なぜか嫌だった。
343名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 23:10:29 ID:3invNkCJ
2

すると、後ろのドアから”ジャー”という音がした。
………え?
ちょっと待って、もしかしてまだ誰かいたの…?

どうしよう!今の独り言聞かれたのかも!?
うわーん、あたしのバカバカ!!!

そして
バン!!!
と、開けられたドアの先にいたのは
何と黒岩さんだった。


「…森さん、ちょっと顔貸してもらえるかしら?」
黒岩さんの顔は笑顔なのに、なぜか後ろから黒いオーラが出ている
ような雰囲気で、私は怖くて
「はい…」
そう答えるしかなかった。



人気のない資料室に移動して、(というか私が黒岩さんに引っ張られて)
話を始めた。
とりあえず東海林主任が春子先輩にプロポーズした現場を
見てしまった事、だから小笠原さんが拾ったプロポーズのアンケートが
春子先輩当てだとすぐわかったことを話す。
すると黒岩さんは大きなため息をついた。
「…やっぱりあっちだったのね。まぁ気付いてたけど、やたら
マーケティング課に行ったり何かある度に”とっくりが〜”とか言って
絡みに行くし。」
え!?気付いてた?
私は全然気付かなかったです…。それだけ周りが見えてなかったって事だったのかな?
さすが黒岩さん、人を見る目があるんだなぁ…と感心しながら見ていると
睨みつけるように黒岩さんが私に話す。

「でも、どうしてあんたが身代わりになったわけ?」
「え?何でって…」
黒岩さんには、全部ばれちゃったし自分の思っていることを話しても
大丈夫かな?と思い私は口を開いた。
344名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 23:12:08 ID:3invNkCJ
3

「私…春子先輩は東海林主任のことそんなに嫌いじゃないと
思うんです。プロポーズされたときも、いつもなら冷たく交わすはずなのに
何だかすごく動揺してて…。」

――「バッカじゃなかろうか」

あの時、そう捨て台詞を吐いて部屋へ行く春子先輩を引きとめようと
私は張る子先輩の手を掴もうとした。
その瞬間。

春子先輩の手が震えていたのだ。
私はびっくりして思わず手を離してしまい、先輩は
そのまま階段を上って行ってしまった。
さすがの春子先輩も、プロポーズされると動揺するのか…。
そう考えながら春子先輩の背中を見送っていると
カンタンテのオーナー、眉子ママが
「あの二人、どうなるのかしらね」
とても優しい笑顔でそう言った。
今思えば眉子ママも、二人の関係に気付いていて
そうなる事を予感していたのかもしれない。

「あんな真面目な顔した東海林主任、初めて見たんです。
それできっと、春子先輩も心を動かされたんじゃないかなぁって思って。
だからアンケートの裏に番号書いたりして。
そんな、二人の真剣な気持ちを周りに冷やかされるのは嫌だって思ったから
とっさに嘘をついて…」

「そういうことなのね、わかった。
ありがとう、本当の事が知れてちょっとほっとしたわ。」
私が言い切る前に、黒岩さんが話を締めた。

「あんたに噂のしわよせが来ない様、あたしが皆にうまく言っといてあげるから。
勿論本当のことは内緒にしてあげる。」
…よかった、聞かれた相手が黒岩さんでよかった。
そう言えばこの間ハケン弁当の件で泣いていたときも
もさりげなくフォローを入れてくれたり、この人
そんなにキツい人じゃないのかもしれない。
私はほっとしたのと、本当のことを誰かに話せて
気持ちが楽になったのもあって、ほっと胸をなでおろした。

…すると、突然黒岩さんの表情が変わり
ぽそっとつぶやいた。
「お見合いを蹴ってまで、プロポーズしたのかぁ…」
そう言った後の黒岩さんの顔は
何だか切なげな表情で、私は一瞬ドキッとしたけど
私はまだ周りを見る目がなかったから
その言葉の真意には気付かなかった。
345名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 23:12:51 ID:3invNkCJ
4

資料室を出て、私はいつもどおりデスクに戻り仕事をする。
横には、ものすごく早いスピードでキーを打つ
春子先輩がいた。
相変らずの無表情。

私はずっと気になっていた。
どうして電話番号を表に書かずに裏に書いたのか。
本当に番号を教えたければ表に書くはずなのに。
現に東海林主任は裏に番号が書いてあるのを気付かずに
捨ててしまったんだろう。
でなきゃあんなにくしゃくしゃにするはずがない。


春子先輩に本当のことを聞きたい…けど
聞いても答えてはくれないだろう。
そう思ったから私はあえて何も聞かずにいた。


するとプレゼンに出ていた里中主任が帰ってくる。
浅野さんや近くんたちがどうだったか聞くと
「プレゼンは無事成功しました。今度試食会をすることになったので
皆さん協力してください。」
そう言う里中主任。
でも、なぜか少し浮かない顔をしていた。
どうしたんだろう?そうは思ったものの
自分の考えた企画がこんなに大きくなったことに
喜びを感じた私は素直に
「おめでとうございます!里中主任」
手を叩きながらプレゼンの成功を祝った。
すると里中主任は笑顔で
「いや、この企画は森くんが考えたものだから…森くんの
おかげだよ」

そう言われて私はなんだかすごく浮かれてしまった。
ああ、やっぱり里中主任は最高の上司だわ。

そんな風に一人舞いあがっている私の横で
春子先輩のキーボードを叩く速度がどんどん遅くなっていることや
マーケティング課の先に見える
東海林主任の机を切なそうに見つめる里中主任。

この時。
私はまだ経験値が浅くて、それぞれが抱えている
思いに全く気付くことが出来なかった。
346名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 23:19:43 ID:3invNkCJ
以上です。
なんかセリフが説明的で読みづらいですね…。
しかも読み返したら3で張る子先輩と打ち間違えてましたorz

しかしこれじゃあ森ちゃんがただの鈍い子ですね。
森ちゃんファンの皆様すいません…
347名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 23:52:11 ID:RsDe4jlA
GJ!!
348名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 23:58:26 ID:x35mP2LD
GJです!!
こういう本編の補完的な話かな〜り好きです
349名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 23:35:24 ID:5AFKD8hT
ほしゅ
350名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 21:36:52 ID:AT0eyIMu
保守しますが、何か?
351名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 18:08:46 ID:lCTU99F+
保守ついでに小ネタ。


「とっくり、今日の飯は俺が作ってやるよ」
「くるくるパーマも料理はできるんですね」
「ちゅうかどんいっちょおおおおおおお!!!」


「……」

「どうだ、食ってみろ」
「…まずい」
「なんだと!?俺が手間隙かけて作ったんだぞ!!」
「お湯であっためたのをご飯にかけただけじゃないですか
こんなの食えたもんじゃないわよ」
「謝れ、グ●コに謝れーーーー!!!」
352名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 21:57:16 ID:twEFpL4i
>>351
GJ!
こういうの好きw
353名無しさん@ピンキー:2007/06/13(水) 01:51:34 ID:2jRARhn0
>>351
噴いたwww
354名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 22:38:22 ID:gjEi8qdn
保守小ネタ、初夜。


「…早く脱げよとっくり」
「脱ぎません」
「脱がないと出来ないだろ?それとも脱がして欲しいのか?」
「あなたこそその被り物を早く脱いだらどうですか?」
「これはカツラじゃねぇ、地毛だ!!ああもうこうなったら
俺が脱がしてやる!うらぁーパンツ見せろー」

ばっ

「…とっくり、お前毛糸のパンツなんてはいてるのか?」
「私としたことが…」
355名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 23:36:15 ID:wwDQ/Jj2
「人のこととっくりとっくりと呼ぶけど、あなたは股間がとっくりなんですね」
「言うなよ、それは!」
356名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 00:09:19 ID:+krayMJN
小ネタ良いね〜

短編でも2人の姿が十分想像出来るww
357名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 00:49:00 ID:5qzTNV2V
前スレ探してるんですけど、どこでみれますかね。
358名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 14:09:18 ID:BzwJxZ+8
夏コミ受かりました。
ハケン本、出します。
えろです。
359sage:2007/06/15(金) 18:39:37 ID:XJHlgWhf
>>358
買いに行くのでカタロム登録お願いします
うちもエロじゃないけど東春本ある(予定)
360名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 21:33:04 ID:m6naBYs4
>>357
どこにもないですよね。
361名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 23:29:43 ID:qU3b/sKu
>>357

>>47参照
362名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 23:40:57 ID:fHl3Lifn
ハケンの同人サイトとかないのかな?
でも下手な絵はあまり見たくないなぁ…。
363名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 03:40:06 ID:ZmO/pkE/
ハケンの同人サイトは東春などのノマカプしか回ってないが、10近くある。
大半がテキスト系。
364名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 11:05:11 ID:o8j3Vy10
>363
ありがd。同人というと漫画のイメージがあったけど
小説系のが多いのかー。
ここの職人さんたちもサイト持ちだったりするのかな?
とりあえずググッて見ます。
365名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 21:54:03 ID:o8j3Vy10
後10日でDVD発売ということで記念小ネタ。


「とっくり、俺たちのDVDが発売になるらしいぞ!!」
「そんな事とっくに知っていますが何か?」
「いやー一話から見返すと相変らず変な女だなとっくりは」
「あなたのビッグバンも最初から大爆発していますね」
「…ん?とっくりお前クレーン車なんか運転していたのか?」
「それが何か?」
「このクレーン車どこから持ってきたんだ?それに許可貰ってるのか?」
「……そんなことはどうでもいいんです。それより東海林主任
私のいない所で陰口を散々言っているのはどうことですか?」
「え?俺そんな事言ってたっけなぁ?」
「あ、チューした所だ!」
「……」

ブチッ

「こらっ、いいとこなのに突然切るなよ!!…ん?
とっくり、もしかして照れてるのか?」

「……私としたことが」
366名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 09:42:47 ID:VO6PofZa
春ちゃん可愛いww
367名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 19:50:59 ID:/Etq2IhG
DVD発売記念小ネタその2

賢ちゃん森ちゃん編

「里中主任、ハケンのDVDが出るみたいですよ」
「うん、そうみたいだね。」
「里中主任は一話からとても優しかったですよね。」
「いや、そんな事ないよ…あ、ここの大前さんの入れたお茶
おいしかったなぁ」
「やっぱり春子先輩はすごいですよね」
「大前さんのマグロの解体ショーまた見たいなぁ」


(里中主任、春子先輩の話ばっかり…)
(´・ω・`)
368名無しさん@ピンキー:2007/06/20(水) 06:54:00 ID:2unl3qFR
森ちゃんww何か切ない(⊃Д`)
369名無しさん@ピンキー:2007/06/20(水) 20:39:15 ID:GjGIcKHE
小ネタGJ!
便乗

ナスダ「あ、主任何みてるんスか?」
黒岩 「新人には関係ないわよ。いいから向こう行って」
ナスダ「何か面白そうなドラマっすね。…ああ、このクルクルした人とタートルセーターの人
    俺の予感だとデキちゃいそーっすねー
    けんかするほど仲がいいっていうかーツンデレカップルの法則っつーか」
黒岩 「五月蝿い!」(往復ビンタ)「今日中に伝票整理終わらせといて!!」
ナスダ「姐さん…ひどいっス」(´・ω・`)
370名無しさん@ピンキー:2007/06/20(水) 23:22:14 ID:IDv0+3FE
GJ!黒岩姉さん嫉妬カワユスww

調子に乗って浅野&近編

「近くん、僕達もDVDを見ようか」
「ああ、僕は二話から登場したからね。一話はどんな話か
知らなかったんだよ」
「森ちゃん、かわいいなぁ〜」
「僕の活躍を子供にも見せてあげよう〜」

「…いや、僕らそんなに活躍してないよ…」
(□д□)…
371不似合いな手:2007/06/23(土) 02:29:06 ID:PwX6M3fK
小ネタ集、楽しませて頂いてます!
DVD発売、待ち遠しいですね。

さて、「エロ強化週間」から一転して、なぜか突然「大悲恋週間」へと
(勝手に気分で)突入してしまいました。
とりあえず第一弾として、連続ものの前半をアップします。
後半どうするかちゃんとは決まってないのですが、アップを始めれば
何とか書きつなげられるかなー、という見切り発車です(殴)。
東海林×春子で、暗いです。
一応最後はハッピーエンドのつもりなんですが、それにしても
追い詰められる二人なんか見たくない、という方はスルーして下さい。


〜「スタンド・バイ・ミー」(1)〜

「大前さん、ちょっといいかな」
その日、S&F運輸名古屋営業所のオフィスで、
東海林武が大前春子を別室に呼んだ。
東海林の先導につき従いながら、春子は、
いつになく無口なその背中を訝しく眺めていた。
東海林がミーティングルームのドアを開けた。
「どうぞ」
促され、春子が先に中に入る。

会議用に2列に並べられた長机が6本。
東海林は春子を奥へ通すと、向かいの席に座ってファイルを広げ、
目を落とした。
資料を読んでいるというよりは、どう口火を切るか考えているように。
――でも、何を・・・?
東海林の顔は明らかにやつれていた。春子は改めて胸を痛めた。

一週間前の雨の夜。
配送から戻った春子は、喪服姿の東海林を見つけた。
人気のない暗いオフィスで、東海林は両手で顔を覆っていた。
辞めてしまったスタッフの代わりに雇ったばかりの運転手が、
飲酒運転で人身事故を起こしたのだ。
被害者には妻子がいた。
東海林が告別式で見かけた娘は、中学生だったという。
あなたのせいじゃない、と必死で慰めようとした春子に、
東海林はただ「轢いたのは会社の車で、運転手は俺の部下だ。俺の責任だ」
と抜け殻のような表情で答えたのだった。

心無い従業員のせいで東海林の本社復帰の見込みは先送りになった。
あれからずっと、自分の将来や身の処し方を考えていたのだろうか・・・。
今、春子の目の前の東海林の顔は、やつれてはいるものの、
何かを吹っ切ったように穏やかだ。
春子にとって、そのことが何よりも訝しかった。

「――ご用件は何でしょう」
待ちかねた春子が尋ねる。東海林は顔を上げ、春子の目を見て言った。
「・・・大前さん」
「はい」
「ここへ来て2ヶ月半。よくやってくれた」
「いえ」
「でも・・・そろそろ後任を探そうと思う」

――え?
春子は一瞬、自分の耳を疑った。

372不似合いな手:2007/06/23(土) 02:29:33 ID:PwX6M3fK
〜「スタンド・バイ・ミー」(2)〜

「後任の運転手と事務、募集をかけるから、残り半月の間に引継ぎを頼む」

――ちょっと待って。何、それ?

「・・・どういうことですか」
冷静に業務用の口調で返したつもりだが、声が微妙に掠れた。
――私としたことが。
春子は心の中で舌打ちした。
「延長の意思があるかどうか、私に聞かないん・・・」
「悪いと思ってる」
東海林がさえぎった。
「でも東京に帰れ」
「・・・」
「――帰ったほうがいい」
「それは私が決めることです」
「雇うかどうか決めるのは俺だ」
「・・・」

――お払い箱ってこと・・・?どうして・・・?
胃のあたりがすーっと冷えていく。
春子は東海林を見据えた。東海林の真意が見えない。

「・・・あんたには感謝してる。これは本当だ」
「・・・」
「今まで支えてくれて・・・有難う」
東海林は深々と頭を下げた。
「――もう十分だ。東京に帰れ」
「・・・」

春子は二週間前のあの夜を思い出した。

憔悴した東海林がつぶやいた言葉。
「俺の船は泥船だ」
こうも言った。
「お前みたいに優秀な奴がいつまでもこんなところにいちゃいけない。
せっかく積んだキャリアやスキルをドブに捨てることはないよ・・・」
余計なお世話です、と春子が一蹴して、その時は終わった。
だが、東海林はあれからずっと、考えていたのかも知れない。
熟慮に熟慮を重ね、逡巡し尽くした果ての、穏やかな顔・・・。
この二週間の東海林の心の内を思うと、春子はやるせなかった。

373不似合いな手:2007/06/23(土) 02:29:50 ID:PwX6M3fK
〜「スタンド・バイ・ミー」(3)〜

――どうしてそんな、悲しいこと言うの?
以前、同じ台詞を東海林に言われたことをぼんやりと思い出しながらも、
春子の目が潤んだ。
東海林は思わず目をそらす。
春子はおもむろに立ち上がると、ゆっくりと東海林に歩み寄り・・・、
すぐそばに立って、見下ろした。
東海林も春子を見上げる。

「――東海林武」
「・・・」
「それは・・・あなたが私を必要としていない、ということですか?」

東海林の瞳が揺れる。
だが、目をそらしたら負け。今度はそらさない。

一瞬なのに、永遠のような沈黙が二人の間に横たわった。

「――そうだ」
「・・・」
「すまない・・・」

東海林の目が赤い。
春子はじっと東海林を見つめ、隣の椅子に座った。

「うそつき・・・」
「・・・」
「心にもないことを言うもんじゃありません」
「事情が変わったんだ」
「変わっていません」
「・・・」
「何も変わっていません。・・・あなたの私への気持ちが、変わったというなら別ですが」
「・・・」
「少なくとも・・・私の方は何も変わっていない」
「・・・」
「一緒に働くことは一緒に生きることだって・・・そう言ったのはあなたでしょ?
一緒に生きようって、先に言ったのはそっちでしょ?」
「・・・」
「だから私はここへ来た・・・。今さら追い払おうとしても無駄です」
「・・・とっくり・・・」
「あなたは家族と働きたいと言った。私はあなたの家族のつもりですが?」
「・・・」
「もう一度聞きます。――引き続き・・・、私を雇って頂けますか?」
「・・・」
「・・・」
初めて名古屋に来た日、同じ質問をした時と同じように、体が震えそうだった。
それでも春子はまっすぐに東海林を見つめる。

一瞬、東海林の瞳が揺れた。


374不似合いな手:2007/06/23(土) 02:30:19 ID:PwX6M3fK
〜「スタンド・バイ・ミー」(4)〜

だが次の瞬間、突然立ち上がり背を向けて、強い口調で言い放った。

「俺は雇わねえぞ」

「東海林くん」
春子の声がつい大きくなる。
「あんたは家族なんかじゃない」
「・・・」
「あんたもよく知ってるだろう。派遣だのバイトだのは所詮、使い捨てだ」
「・・・私の目を見て言って」
ぐっ、と言葉に詰まる。だが東海林はすぐに春子を見据えてみせた。
「――利用するだけ利用して捨てるもんだ」
「・・・」
――どうして・・・。
「あんたみたいに時給の高いバイト、これ以上雇えない」
「・・・二人分の働きはしてきたつもりです」
「でも体は一つだろ。こっちだって色々気遣ってんだよ」
「・・・」
「俺はもう自分のことで手一杯なんだ。あんたに気を遣っていられない」
「・・・」
――どうして?
「東京に帰ってくれ。・・・話はそれだけだ」
「東海林くん!」

取り付く島もなかった。

東海林の出て行ったドアの音だけが部屋に響いた。

気がつくと、春子は涙を流していた。
業務中に泣くなんて、決してあってはならないことなのに。
「わ・・・たしと、・・・したことが・・・」
そうひとりごちた声がいつのまにか震えていて、
春子はとうとうこらえきれずに嗚咽した。

〜つづく〜
375不似合いな手:2007/06/23(土) 02:32:53 ID:PwX6M3fK
あ、言い忘れましたがエロなしでした!
暗いだけですみません・・・が、近々また続きで
お邪魔します(脱兎)。
376不似合いな手:2007/06/23(土) 02:40:33 ID:PwX6M3fK
たびたびすみません。
今読み返したら、事故が起こったのが一週間前になったり
二週間前になったりしてました・・・申し訳ありません。
一応、二週間前で統一させて下さい!
377名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 17:19:09 ID:Ozfqsr6Y
GJ!!
暗い話しだけど2人の思いが伝わってきました…
378名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 21:02:14 ID:lNHd1qv5
不似合な手さんGJ!!
最近飲酒事故が増えているから
いろいろ複雑ですね。会社にも責任がのしかかってくるし
それを思うと春ちゃんを東京に戻すのは
春ちゃんを守るためなんでしょうか…;;
379名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 02:23:52 ID:PJibO+Id
wktkです! 得ろ有り無しは置いといてそれ以上に本編補完ストーリを楽しませてもらってます
中園タンもキャストさんも+αの創作屋さんもみんないいキャラ創ってますよね ほんといいドラマだったなあ…
380名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 14:15:56 ID:OZjGH8mi
不似合いな手さんいつも素敵なストーリーありがとうございます!

続き楽しみ♪(´∀`)
381不似合いな手:2007/06/25(月) 01:03:23 ID:VCSBcAdu
こんな暗い話にコメント下さった方々、有難うございます!
まだまだ未完ですが、東海林目線の続きで、エロなしをアップします。
以前書いた「東海林VS土屋」など、プラトニック名古屋ものの流れを
汲んでおります・・・。
土屋は東海林と春子の隠れた絆を知っている、という設定です。
382不似合いな手:2007/06/25(月) 01:04:47 ID:VCSBcAdu
〜「スタンド・バイ・ミー」(5)〜

東海林は逃げるように廊下を歩いていた。
今はただ、春子からできる限り遠ざかりたかった。
しかし、名古屋事務所はさほど大きくはない。
本社にいた頃なら、一人になれる場所はいくらでもあったのだが。

顔を強張らせたまま足早に裏口へ向かうと、何人かのスタッフとすれ違う。
無視するわけにもいかず、通りいっぺんの声をかける。
「お疲れ様です」
その声は小さく、とても低かった。

本当は、壁に頭を叩きつけて、叫びだしたい。

東海林は何とか人けのない物陰を探し出すと、ファイルを放り投げて
もたれかかった。
そのまま顔を覆って、うずくまる。

この二週間、熟慮を重ねたことのはずなのに、東海林は混乱していた。

事故があってから、春子が常にさりげなく自分を気遣ってくれるのを、
東海林は感じていた。
感じていながら、遠ざけていた。
春子の優しさにすがってしまったら、二人の間の取り決めを破って一線を踏み越えて
しまいそうだった。
東海林はそれほどに打ちひしがれていたのだ。
しかし。

私はあなたの家族のつもりです――。

あの大前春子が、あそこまで言ってくれるとは思わなかった。
最愛の女にあそこまで言わせておきながら、ひどい仕打ちをしてしまった。

だが、今の自分に他にどうしてやれるだろう。
彼女の支えにこれ以上甘えてしまえば、スーパーハケン・大前春子の
キャリアや将来はスポイルされてしまう。
これ以上、ここに縛りつけておくことはできない・・・。

――これでいいんだ。
泣きたい気分になるのを懸命に堪えながら、自分に言い聞かせる。
「・・・バカだなあ、俺・・・」
情けなさとやりきれなさに、胸が張り裂けそうだった。

だがふと、被害者の遺族の姿が脳裏をよぎる。
最愛の、本物の家族を失った妻子の姿――。
それを思うと、東海林にはやるべきことが山ほどあった。
いつまでもこんなところにうずくまってはいられない・・・。

東海林は、そばに捨て置かれていたファイルを拾い上げ、よろよろと立ち上がった。
事務所に戻ろうとして振り返る。

と、大きな人影が視界に入った。

ドライバーの土屋だった。
383不似合いな手:2007/06/25(月) 01:05:27 ID:VCSBcAdu
〜「スタンド・バイ・ミー」(6)〜

「・・・何してんだ、お前」
「・・・」
「――春ちゃんの首切るって本当か」
「・・・契約期間が終わるだけです」
「人手は足りてねえだろ。何で辞めさせるんだ」
「最初から三ヶ月の約束だったんだ」
「前に言っただろう。春ちゃん泣かせたら承知しねえって」

――そうだ。俺は最愛の女を泣かせた。
東海林は思わず目を閉じた。

あの減らず口の大前春子が、素直に優しい言葉を吐いて、拒絶されるとただ涙ぐんでいた。
せめて、最低な奴だとなじって欲しかった。
平手でもグーでもいいから、張り倒して欲しかった。

この際、誰でもいいから・・・。

「・・・余計なお世話だ」
「――なに?」
「あいつはあんたなんかの手に負える女じゃねえんだ。ひっこんでろ」
「・・・」
「あんな女、めんどくさくて気に障るだけだ。いなくなればせいせいするよ」
「おい、ネクタイ!」
土屋が東海林の胸倉を掴む。

――やれよ。
東海林は敢えて不遜な顔つきで土屋を見返した。
土屋も険しい表情で東海林をにらんでいる。

だが、そのまま手は出さなかった。

「・・・何だよ。やれよ」
「――何ヤケ起こしてんだ」
「・・・」
「あんな飲酒運転のバカ野郎に、人生狂わされたってか?そのうえ泣き寝入りか?」
「・・・」
「春ちゃんまで巻き込んどいて、そりゃねえんじゃねえのか」
「あいつはもう関係ねえ。今月いっぱいでおさらばだ」
「・・・お前、またかっこつけてんのか」
「そんなんじゃねえよ」
「アホか、ボケ」
土屋が手を放した。
「とっとと仕事しろ。所長さんよ」
「お前に言われたくねえな」
「・・・悪いが、俺はお前みたいなアホ殴るほどヒマじゃねえんだ」

そして、土屋は去って行った。

「・・・バカ野郎」
東海林は吐き捨てるように呟いた。
誰に向けて言えばいいのか、自分でもわからなかった。

〜つづく〜
384名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 22:52:28 ID:GTALDWZO
続きが気になります
絶対ハッピーエンドにしてください
385風と木の名無しさん:2007/06/27(水) 20:30:49 ID:SgN5+mPj
私も続きが気になります!
続きがアップされるのを楽しみにしています。
386名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 22:26:36 ID:6kpRheBc
みんなー、DVDみた〜?
387名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 00:54:03 ID:tpBtnhKS
>>386 見たよ!特典少なすぎ!サービス精神ねぇなさすが日テレ!
雑誌ドラマの脚本と見比べて、#4で「働かねぇ会社だな!」と放送時自分がすごく心に残った
東海林のセリフがアドリブだとわかって改めて爆笑 元の中園タンもすごいけどキャストさんも
みんないいかんじでキャラを大事に思ってふくらませて育てて作ったドラマだったんだなと実感

全話の元脚本も見たかったし、いろんな分岐の続編も読んでみたいと改めてオモタ
388386:2007/07/01(日) 15:07:49 ID:jfrTGQMC
>>387
たしかに、全話分の脚本見たかった!
アドリブ部分も楽しいけど、自分は逆に
「思ったよりもアドリブ少ないんだー」というのが発見だった。
しかし何度見ても面白いな。当分楽しめそうだ。
389名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 18:52:49 ID:XG/y4DIg
>>387
あれアドリブだったのかー!ワロスww>「働かねぇ会社だな!」
東海林の中の人、GJ!
390名無しさん@ピンキー:2007/07/05(木) 16:35:35 ID:BxHb9hVE
こんなスレがあったとはw
どなたか「スタンド・バイ・ミー」の再うpお願いしますorz
391名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 16:48:39 ID:Wg8PqxGi
>>390
エラーかなんかで見れなかったのかな?多分もう見れるから過去ログよんでね。

あとそれからsageようね^ ^;
392風と木の名無しさん:2007/07/10(火) 22:55:34 ID:TDzH+8Fw
話豚切ってすいません。

賢ちゃんの中の人が本日誕生日ということで
小ネタ投下させてください。


「誕生日おめでとう!賢ちゃん」
「里中主任、おめでとうございます〜」
「里中主任おめでとうございます」
「ありがとう、皆さん。プレゼントあけてもいいですか?」

…東海林から仔犬のプリントパンツ。
…森ちゃんから仔犬のぬいぐるみ。
…春子から仔犬の木彫り。


「……」
393名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 00:21:27 ID:RUNtRK0U
>>392
久しぶりに来たら賢ちゃんの中の人誕生日だったのか。
めでたい。

春子はきっと自分で彫ったに違いない。
「仏像修復家の資格もございますが、何か?」
「仏像かよっ!」
394名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 18:07:42 ID:WqXZ1blC
スタンドバイミー待ちほしゅ
395名無しさん@ピンキー:2007/07/20(金) 12:27:26 ID:fvcpUg0D
スタンド

バイ

ミー!!
396名無しさん@ピンキー:2007/07/20(金) 23:44:05 ID:zq3RR4SE
保守ついでに小ネタ

とっくりとくるくるの7日間


春「俺とっくりになっちまったのかよ!」
東「…私としたことが」
春「俺もこれでマグロ解体したりトラック運転したり
何でもできるんだな!!」
東「あなたのくるくるパーな頭では無理です」
春「なんだと!じゃあ俺の体でお前が運転してこい!」
東「あなたは資格がないので運転できませんが何か?」


賢「東海林さーん、お久しぶりです〜」
春「賢ちゃん!!会いたかったよ〜」
賢「ええっ!?大前さんどうしたんですか?」
春「賢ちゃん、俺とっくりになっちまったんだよ」
東「どうやらそのようですが何か?」
賢「ええっ!」




…続きません。
397名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 09:48:56 ID:CeJF/PbB
>>396
吹いたw ぜひつづけて欲しい
398不似合いな手:2007/07/21(土) 18:54:45 ID:O4FM3EGI
>>396
笑いました。続きが読みたいです!

ところで、「スタンドバイミー」、
すっかりご無沙汰してしまいすみません。
続きが見たいとおっしゃって下さる方がいて
嬉しいやら恐縮するやら・・・。
ちょっと時間はかかっておりますがいずれ
アップさせて頂きますのでよろしくお願いします。
399名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 22:13:56 ID:WHM0HzHr
不似合な手さん、楽しみにしているので
また続きアップお願いします。

で、396の小ネタは思いつきで書いたのですが
続きを希望してくださる方がいたので
調子に乗ってアップさせて頂きます。


とっくりとくるくるの7日間 2


賢ちゃん「どうして入れ替わったりしたんですか?」
春「とっくりとぶつかって気が付けばこうなってたんだよ」
東「あなたはいいかもしれませんが私はこんなくるくるパーマに
なってしまってもう生きていく自信がありません」 
春「賢ちゃん、とっくりの奴あんなこと言いやがって生意気だな」
賢「東海林さん、今は東海林さんが大前さんでしょ?
あと大前さんの姿でくっつかれると照れちゃうよ…」
春「そっか、おれ今とっくりなのか…
それが何か!?、って一回言ってみたかったんだよなー」
東「人の体で遊ばないで下さい!とりあえず私はあなたの仕事を
こなしますのであなたは私の仕事をやってください。」
春「わかったよ、それでこれからの仕事はなんだ?」
東「スーパーで新製品のウグイス嬢です。」
春「…ウグイス嬢?」



気まぐれでまた書くかも知れません。
スレ汚しスイマセンでした。
400名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 02:57:28 ID:NBvSPlvh
入れ替わりネタおもろい!
春子の体になった東海林は、風呂入るのにテンション上がってそうww
で、春子に怒られると…
スタンド バイ ミーとWで続き楽しみにしてますよ!!
401名無しさん@ピンキー:2007/07/23(月) 04:26:06 ID:CkWjSdc/
>>396
intelのCMパロネタかとおもた
402名無しさん@ピンキー:2007/07/23(月) 05:13:44 ID:J2enpGNp

もしあなたの中に大前春子が入っていたら
403名無しさん@ピンキー:2007/07/23(月) 23:00:47 ID:6VxXIBvP
とっくりとくるくるの7日間 3


賢「大前さんの東海林さん、ウグイス嬢大好評だったね」
春「まぁな、マツケンのモノマネなんかおばちゃんに大ウケだったな」
賢「篠原涼子の歌マネもすごい面白かったよ」
春「女の声だと歌いやすいんだよ。女でいるのも結構悪くないなぁ」


東「私は大迷惑ですが、何か?」
春「びっくりした!お前なぁ俺の体で瞬間移動するんじゃねえ!」
東「たまっていた仕事全部終わらせましたが何か?」
春「早いねぇ〜さすがとっくりだな、このまま俺の体でバリバリ
働いてくれよ」
東「嫌です」
賢「まあまあ二人とも、僕もそろそろ帰りますね。
あ…そう言えば家はどっちに帰るんですか?」

春東「家!?」

404名無しさん@ピンキー:2007/07/24(火) 01:00:17 ID:fDeKv2Yg
こ、これはまさかエロスの予感…?
405名無しさん@ピンキー:2007/07/24(火) 01:55:57 ID:udMiMffT
入れ替わりネタすごい面白いっす!!
406名無しさん@ピンキー:2007/07/24(火) 23:06:51 ID:5JLZpitR
とっくりとくるくるの7日間 4

春「わりぃ、ちょっと用事思い出したからその話は後で!」
賢「ちょっ、東海林さーん!じゃない大前さん!」
東「……」


スーパー銭湯


春「いや〜俺って頭いいなぁ。とっくりの体で
女風呂に入ったら裸見放題じゃないか!」
店員「いらっしゃいませ〜何名様でしょうか?」
春「あ、あの〜女性、一名で」
店員「後ろの方も一名様ですか?」
春「へ?後ろ?」




東「あなたはこんなときに何をしているんですか?」
春「とっくり!?」
東「あなたの考えそうなことはお見通しです!さっさと家に帰りますよ!!」
春「はいっっっっ!!!」


とりあえず春子の家へ向かうことになった二人…。




なんだかもうネタ切れ感ありありですが。
エロスレだしエロに持っていくようがんばります。
407名無しさん@ピンキー:2007/07/24(火) 23:23:17 ID:+TZJmKQn
>>406
いやいやネタ切れなんてとんでもない
とっくり(中身くるくる)が馬鹿すぎて可愛い
このまま突き進んでください
408名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 23:07:32 ID:ws+e17Xf
とっくりとくるくるの7日間 4

東「本当にあなたは思考もくるくるパーマですね」
春「今くるくるパーマなのはお前だろ…折角いいところだったのに」
東「…」
春「どうした,急に立ち止まって」
東「トイレ…」
春「ん?トイレなら行ってくればいいじゃないか」
東「どっちにはいれば良いんですか…」
春「どっちって、そりゃお前は今男なんだから男子トイレだろ」
東「そんな男ばかりのところでトイレだなんて私としたことが…」
春「いいから早く行って来い!!!」




ジャー。



東「……」
春「おお、スッキリしたか」
東「あなたは…」
春「なんだよ、まさかちびったのか?」
東「あなたは態度がでかい割にはあそこは小さいんですね」



春「ちょ、おま見やがったなーーーーー!!!」
東「プッ」



409名無しさん@ピンキー:2007/07/26(木) 22:28:19 ID:wsErXVZ0
おもろい!可愛らし〜。
次は東海林が春ちゃんの体を見る番!?
410名無しさん@ピンキー:2007/07/29(日) 00:08:27 ID:GAE+YvwB
age
411名無しさん@ピンキー:2007/07/29(日) 02:44:10 ID:yjSnOS5E
とっくりとくるくるの7日間 5


―とっくりの家。

東「どうぞ。」
春「お邪魔します…ってお前の部屋殺風景だなぁ。
もっと女らしく花とか置かないのか?」
東「余計なものは置きませんが何か?とりあえずお茶でも入れてきます。」
春「ああ、ありがと」


部屋を離れるとっくり。
その間に部屋を物色するくるくる。

春「しかしこの部屋資格の本と服しかないってつまんねーな。
どっかに下着でも…っていや、だめだだめだ!」
ちらりとタンスを見るくるくる。
春「いや、でも今とっくりなのは俺だし…そうだそうだ
汗かいたし服でも着替えたいなー…」
そう言いながら引出しを開けるくるくる。
するとその中には下着が。

春「うおーーーっ!!!あいつ…結構かわいい下着つけてるじゃねぇか…」
東「何やってるんですかーーーーーーーーー!!!!」
春「うわっ!?」

びっくりして思わず引出しを思い切り閉めるくるくる。
その拍子にタンスの上にあった箱が落ちる。


春「いや、これは違うんだ…そうそう箱が落ちちゃったな」
東「ごまかさないで下さい!ほんっとにあなたは最低ですね」
何とかごまかそうと落ちた箱を拾うくるくる。

すると箱の中からひらりと何か紙が出てきた。

春「ん?なんか落ちたぞ…」
東「…あ!?」


その紙を見て思わず硬直するくるくる。
春「おい、これって…」


オチばればれですが
とりあえずまだ続きます…長々とスイマセン;
412名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 11:05:36 ID:QECx6ATU
いいよ〜。
楽しんでますので、どんどん書いちゃって下され〜。
413名無しさん@ピンキー:2007/07/30(月) 22:47:53 ID:yLrFtHPH
とっくりとくるくるの7日間 6


―東京。

賢「東海林さんと大前さん、大丈夫かなぁ」
家に帰っても二人の事が気になっている賢ちゃん。
賢「でもぶつかって入れ替わるなんて
一体なにしてぶつかったんだろう?…そういや
昔同じような映画があったなぁ…」
その映画のことを思い出してネットで検索する。
賢「あ、あった!映画ではどうやって元に戻ったんだろう?
そうだ、東海林さんにも教えてあげよう」

携帯を取り出して東海林に電話する。

プルルル…プルルル…



賢「あれ?出ないや…お風呂にでも入ってるのかな?」
電話を切り、また後でかけなおそうとする。


賢「お風呂…ん?そういえばお風呂はどうするんだろう…?」






まだ続きます。
なんか遠回りしている気がしますが…。
感想くださる方ありがとうございます。
414名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 22:40:56 ID:RHlAgH51
こちらこそ有難うございます。楽しんでます。
まったり行きましょー。
415名無しさん@ピンキー:2007/08/01(水) 07:04:06 ID:Qsr9/KCK
内容は面白いんだろうが
タイトルで拒否反応が生じて読む気がしない

あのドラマ親子が入れ替わるって時点で気持ち悪くて見てない…
416名無しさん@ピンキー:2007/08/01(水) 23:16:09 ID:u1RtNGi4
楽しみにいつもみてます!
変なのはスルーで。
417名無しさん@ピンキー:2007/08/02(木) 19:10:14 ID:4qLlv3Wq
話豚切って申し訳ないんですが、ハケンの同人誌とかってありますか?
健全でもエロでも構わないんで。
どこで探したら良いのか分からなくて…スレチだったらすみません。
418名無しさん@ピンキー:2007/08/02(木) 20:32:48 ID:yiEUYbrR
>>417
コミケに行けば確実にあると思いますよ。
それ以外だと派遣の同人サイトでの通販になると思います。
同人サイトは基本検索避けされているのでググッても
出てこないと思うから、見串や同人サーチで探すしかないかと。
419417:2007/08/03(金) 19:17:52 ID:r/GJtV4A
ありがとうございます。
同人サイトもあったんですね…、頑張って探してみます。

ここの新作投下も楽しみにしてます。
420名無しさん@ピンキー:2007/08/03(金) 21:43:20 ID:aQmne1vh
とっくりとくるくるの7日間 7

―名古屋


くるくるが落とした箱の中に入っていた紙。

見覚えのある、くしゃくしゃに丸めて広げたような紙は…

春「これ、俺が渡した電話番号じゃねぇか」
東「…」
春「まさか、ずっと取っておいたのか?」
東「…違います、その箱はゴミ箱です。」
春「嘘をつくな、嘘を!どこにこんなちっちぇごみ箱があるんだ!」
東「…」
春「ほんと、訳わかんねぇ女だな。今日だって番号知ってたなら
さっさとかけてこいよ!そしたらあんなややこしい事にならずに済んだのに…。」
東「あんなトラブルを一人で解決できないあなたが無能なんです。」
春「はぁ!?…お前のそーゆーとこがムカつくんだよ!俺の姿で
淡々とバカにしてんじゃねぇ!!」


すると、くるくるの携帯が鳴り出す。
東「電話ですよ。」
春「今はお前が俺なんだからお前が出ろ!」
東「わかりました」


東「もしもし」



…なんだか無駄に長くなりそうな気がしてきました。
素人の書いた文章なのでうっとおしい方はスルーしてください。
421名無しさん@ピンキー:2007/08/03(金) 22:11:29 ID:H4ENdXId
そんなことないです
いつも見てるだけだけど楽しみにしてます続き
ドラマの登場人物が動いているみたいですごいです
422名無しさん@ピンキー:2007/08/04(土) 02:03:10 ID:/kD+S+om
普段ロムばかりだけど、楽しみにしてるよー。
いつも投下ありがとう。続きも楽しみだ。
423名無しさん@ピンキー:2007/08/06(月) 22:44:27 ID:PQqtcJFg
とっくりとくるくるの7日間 8


賢「東海林さん…じゃなかった大前さん」
東「里中主任、お疲れ様です」
春「賢ちゃんか!?」
賢「大前さん、僕、二人が元に戻れないかと
いろいろ調べてみたんです」
東「そうですか、ありがとうございます」
賢「それでもとに戻る確率が一番高そうなのは…入れ替わった時と
同じ事をするようなんです、確かぶつかった衝撃で入れ替わったんですよね?
だったらまたぶつかってみてはどうかな、と思いまして。」
東「同じ事…」
賢「ちなみにどんな事をしていてぶつかったんですか?」

東「……」
春「賢ちゃんと何話してるんだ、替われよとっくり」


東「このくるくるパーマが私を押し倒そうとしたので
思い切り蹴ったら倒れこんできて頭をぶつけてしまったんですが
それをまた再現しろというんですね。」

賢「ええっ!?」

春「とっくりーーーー!!お前賢ちゃんに嘘言ってんじゃねぇーーー!!」

東「嘘ではありません」
賢「いや…余計なこと聞いてスイマセンでした。じゃあ今日はこの辺で…」
春「待って、賢ちゃん違うんだ…」

プープー。

春「とっくり…お前」
東「じゃあ、しますか?」
春「え?」
東「入れ替わる前と同じ事です。言っておきますが
元に戻るためにするんですからね。」



ドサッ。
424名無しさん@ピンキー:2007/08/06(月) 22:57:54 ID:PQqtcJFg
とっくりとくるくるの7日間 9


―入れ替わる前の話


名古屋の養鶏場。
本社に送る名古屋コーチンを視察しに行ったとっくりとくるくる。
東「それにしてもすごい数の鶏だなぁ」
春「そのくるくるパーマとトサカがなんとなく似ていますね。」
東「似てねぇよ!!無理やりネタにするんじゃねぇ!」

すると、養鶏場の人が慌てて駆け出す。

おじさん「た、大変だーー!!オスとメスに分けていたひよこが
混ざっちまったーーー!!!」

養鶏所社長「何ぃーーー!!今日は鑑定士さんがいないんだぞ!?どうするんだ」


春「ヒヨコ…」
東「ヒヨコ鑑定士…どっかで聞いたような…」

バッグから認定書を出し
春「ひよこ鑑定士の大前春子です!!!!」



続く…



すいません、二回一気に打ち込んだのですが
過去と現在がごっちゃでわかりにくいですね。
というか養鶏所にひよこっているんですかねぇ…そこんとこ
いいかげんでスイマセン。
425名無しさん@ピンキー:2007/08/07(火) 14:56:03 ID:OQVONjUY
ハケンのドジンシ出すよー。
三日目だよー。
426名無しさん@ピンキー:2007/08/07(火) 20:42:32 ID:iWB7hhsX
カタロムに登録してる?
してないなら場所のヒントだけでもプリーズ
427名無しさん@ピンキー:2007/08/07(火) 20:44:10 ID:iWB7hhsX
入れ替わり話すごいwktkだ
妄想かきたてられるなw
428名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 09:41:09 ID:c7YKlkBN
>>426
したよー。
くるくる×とっくり。
429名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 23:12:24 ID:By90PpBG
とっくりとくるくるの7日間 10

入れ替わる前の話 2


一人車で会社に戻る東海林。
春子はひよこの判別をする為後で電車で帰ってくるといって
東海林を追い返した。
東「はぁ…主任のくせに何も出来ないなんて情けないよなぁ。
俺もとっくりみたいになれたら…って、いやあんなブアイソな
女には絶対なりたくねー!」
一人ブツブツ言いながら会社に戻る。

会社に戻ると、もう出発しなければいけないトラックがまだ
残っていた。
東「あれ?まだ出てないのか?また博打に夢中になってるな…」
すると運転手が東海林に駆け寄り
運「大変だー!山さんが腹壊して広島に荷物が届けられねーよ!」
東「何ー!?」

東「よしっ!!ここは俺が替わりに運転…って免許もってねーー!?
…仕方ない、もうすぐ福岡へ配送に出るはずだからそっちに入るだけ荷物押し付けて
途中で寄ってもらってくれ、後は何とか遅らせてもらうよう頼むから。」

東(ああ、こんな時とっくりだったら自分で運転して持っていくんだろうなぁ…)

その後電話をするも、取引先は怒ってしまい結局
取引は止めさせてもらうといわれる東海林。

東「はぁ…また一つ大事な取引先が消えた…」
ため息をついて、休憩室で一服する東海林。
東「そういやとっくりの奴またひよこやってるのか?」
テレビの上にある時計を見て、とっくりの事を気にする東海林。
すると休憩室のテレビからニュース速報が。


―16時頃、名古屋の地下鉄で脱線事故


東「へー?こんな近くで脱線事故かぁ、怖いよな………!?」



なんか行き当たりばったりで書いていたら
えらく風呂敷がひろくなってしまったような…
ギャグなしエロなしが続いてスイマセン
430名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 01:09:15 ID:Z+68LXFa
いいよいいよ〜、つづき希望!
431名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 21:06:37 ID:ai2MNbND
とっくりとくるくるの7日間 10

入れ替わる前の話 3


地下鉄での脱線事故。

そのニュースを受けて春子が電車で帰ってくると言ってた事を思い出す。
養鶏場は地下鉄に乗らないと戻ってこれない。

不安になった東海林は養鶏場にに電話する。
しかし1時間ほど前にひよこの判別を終わらせて
帰ったと言う。

東「まさかあいつ、脱線事故に巻き込まれたんじゃ…と、とりあえず
携帯に連絡を…あ、番号しらねぇ!!」
携帯を片手にオロオロする東海林。
東「とにかく病院に…じゃなくて電鉄会社に連絡を…」

ピピピッ


電「もしもし」
東「さっきの脱線事故の車両に大前春子って女が乗っていないか
調べてくれないか?」
電「今の段階ではわかりません、現場に行って確認してください」
東「そんな、今現場に行っても邪魔になるだけじゃないですか?」
電「じゃあ連絡が来るまで待っていてください」
電鉄会社の対応にイラっとくる東海林。

東「待ってられないからこうやって電話してるんじゃないか!
とっくりがあの電車に乗っているかもしれないんだぞ!とっくりに
何かあったらどうしてくれるんだ!!」



「とっくりがどうかしましたか?」
東「うるさい!今とっくりが大変なんだ…ん?」
春「とっくりこと大前春子ですが、何か?」


東「とっくり……?」
432名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 21:35:13 ID:ai2MNbND
とっくりとくるくるの7日間 12

入れ替わる前の話 4


東「と、とっくり…お前無事だったのか?」
春 「地下鉄が止まっていたので競歩で帰ってきました。」
東「競歩って何だ競歩って!!遅くなるなら連絡ぐらいして来い!」
春「さっき事務所に電話したら出ませんでしたが?」
東「さっきまで休憩室にいたんだよ、つーか誰か電話に出ろよ!」
春「で、私に何かあったらどうするんですか?」

東「そ、それは…お前のこと心配して…」

春「さっき聞きましたが広島に運ぶはずの荷物は
私が運んで謝りに行ってきます。」
東「って、聞いたくせに無視してんじゃねー!」

そう言うと颯爽と荷物を運ぶ準備に取り掛かる春子。
その春子を遠目に一人呟く東海林。

東「ちぇっ、心配して損したな」


―次の日。

広島の取引先から電話が。
広「いやー荷物も無事届いたことだしまた取引続けさせてもらうよ」
東「えっ!?ありがとうございます」
広「それにしても、あの大前くんだっけ?女性なのにしっかりしていて
いい従業員じゃないか」
東「とっく…うちの大前が何か?」
広「遅れたお詫びと言ってうちの梱包の仕事を手伝ってくれたんだか
これがものすごく早くてね、正直うちの従業員よりできるね、彼女は
どうだい?ぜひ大前くんをうちの会社に…」
東「いえ、大前はうちにとって必要な人材ですから」

そう言って電話を切る東海林。

東「はぁ…情けな」
春子がいないと何も出来ない自分に嫌気がさす東海林。



…すいません、一個前の通し番号11でした…。
それにしても進み具合が遅くてすいません。
過去の話はもうすぐ終わると思いますので…。
433名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 17:17:20 ID:3wZ+ShFu
ありがとです。楽しんでます!
競歩で帰ってきた春ちゃんカワユス
434名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 22:21:13 ID:riiMj+8l
とっくりとくるくるの7日間 13

入れ替わる前の話 5


次の日、春子に用事を頼もうとデスクへ行くと
春子は席を外していた。
東「あいつどこにいったんだ?…ん?携帯おきっぱなしじゃないか」
周りをキョロキョロ見回し、誰もいないことを確認すと
東「いいよな、ちょっとだけ…」
こっそり春子の携帯を開ける東海林。
東「何だこの待ち受けのアホ面した犬は…それより
電話帳に俺の番号入れてあるのかな…」
昨日自分の携帯に連絡がなかったことを気にしていた東海林。
電話帳のサ行を開く。
東「…あれ?賢ちゃんの名前はあるのに、俺の名前ないじゃないか!!
なんだよあいつ、俺の番号教えてやったのに登録してねーのかよ!」

春「人の携帯勝手にいじらないで下さい!!!」
東「うわっっ、とっくり!!携帯勝手に見たのは悪かったよ
でもお前なんで俺の番号登録してねーんだ」
春「登録しようがしてなかろうが私の勝手です」



東「…ちっょと来い」
とっくりの腕を掴んで奥に連れて行く東海林


…すいません、行き当たりばったりで書いてたので
今気付いたんですが、7でこの出来事を「今日」と言っているんですが
皆さん「この間」に脳内変換していただけますか…。
これからはメモ帳にまとめて書こうと思います、ほんと不似合な手さん
達に比べたら文才ないのがバレバレで申し訳ないです。
435名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 17:56:51 ID:yBGlMJQ0
いやいや、楽しませてもらってますよー。
436名無しさん@ピンキー:2007/08/16(木) 00:28:36 ID:rpvg5cdO
とっくりとくるくるの7日間 14

入れ替わる前の話 6


―会社の奥の倉庫前

春「もうすぐ出ないといけないので、用件は手短にお願いします」
東「…あのさぁ、お前って俺のためにここまで来たんだろ?」
春「…」
東「なのに相変らず無愛想だしえらそうだし、東京にいた時と
ぜんぜん変わってないじゃないか。携帯の番号だって
登録してないし…なんでサ行に賢ちゃんがあって俺が登録されてないんだよ」


春「サ行………
…あなたはほんとにバカですね」

東「バカ!?」

春「私はあなたのためだなんて一言も言ってません。あなたに社長賞を
取っていただくために来たんです。勝手に捏造しないで下さい
あなたが社長賞を取って本社に戻ってもらわないと
私が困るんです」

東「何でお前が困るんだよ!俺が左遷されようがお前には
関係ないだろう」
春「元派遣先の上司が左遷されたまま一年も戻って来ないだなんて
私の経歴に傷がつくからです、だいたいあなたも戻る気があるんですか?
こんな子会社でいつまでもくすぶっていて…そんなんじゃいつまでたっても
社長賞どころか一生運転手にバカにされて終り…」



バンッ!!

春子が罵倒している途中、春子の肩を押さえつけて
壁に押し付ける東海林。

突然のことに驚いて硬直する春子。



…だらだら続いてスイマセン、過去話は次で最後になると思います。
なんか強引な展開ですが、どこまで続くが自分でもわからなくなってきました。
437名無しさん@ピンキー:2007/08/16(木) 00:53:44 ID:iNvEGPRJ
いいぞいいぞ!
続きが楽しみだ!
438名無しさん@ピンキー:2007/08/16(木) 08:52:07 ID:/l5d3noy
待ってましたー!!これからどうなるんだろう(*´∀`)
439名無しさん@ピンキー:2007/08/17(金) 21:39:20 ID:+4c4dN1j
とっくりとくるくるの7日間 15

入れ替わる前の話 7

春子の手首をきつく抑える東海林。
振りほどこうとするけど、力が強くて動かすことが出来ない春子。

春「離して下さい…」
東「…女のくせに、偉そうに言ってんじゃねーよ」

春「ハケン差別の次は男女差別ですか?」

東「所詮女なんて男の言い成りだ
逃げれるもんなら逃げてみろ」

そう言うと、片手で手首を抑えて
もう片方の手で春子の体に触れる。

春「…ちょっと、今仕事中ですよ…」
東「そんなの、どうでもいい」

スカートの中に手を入れようとする東海林。

春「…ちょっ…やめ、やめな…さいっ…」



…プツッ。


春「この、変態クルパーがっっ!!!!!!!!!!!」

ガンッッッ!!!!

東海林の股間を思い切り蹴り上げる春子。
東「ぎゃーーーーーーー!!!!!!」

急所を蹴られてフラフラになる東海林。
東「おまっ…何てことするん…だ」


すると、フラフラになった東海林が春子に倒れこむ。
春「きゃっ、ちょっと危ない…」

すると倒れてきた勢いで、壁に頭を打ち付ける
春子。
440名無しさん@ピンキー:2007/08/17(金) 21:49:47 ID:+4c4dN1j
とっくりとくるくるの7日間 16

入れ替わる前の話 8

二人とも頭を打って気絶。
しばらくすると目を覚ます東海林。

東「…あいたたた…こいつあんな所蹴りやがって」
そう言って股間を触る。
すると、ある異変に気がついた。

東「……?ん、何かスースーするぞ」
春「東海林主任…」
東「おい、とっくり!!!お前何てこと…」


春子のほうを振り返って、思わず固まる東海林。


東「あれ……?俺?」
春「私がそこに…」


頭を触る東海林
東「クルクルパーマじゃねぇ…」
首筋を触る春子
春「とっくりじゃない…」

東「俺とっくりになっちまったのかよ!」
春「私としたことが…」



441名無しさん@ピンキー:2007/08/17(金) 22:07:59 ID:+4c4dN1j
とっくりとくるくるの7日間 17



――入れ替わる前のことを思い出す春子の中のくるくる。
東「何ボーっとしてるんですか?」
東海林の中のとっくりに押し倒されて固まっていたが
ふと我に返るくるくる。


東「早く蹴ってください」
春「…ちょっと待て、一日に二回も蹴ったら
俺のあそこが機能しなくなるだろ!!」
東「そんなのどうでもいいです、早く元に戻りたいんです私は!」
春「いや、もうちょっと考えよう…変な汗かいたし俺
風呂入ってくるわ」
東「お風呂…その体で!?」



洗面所で服を脱ぐくるくる。
春(俺、昼間あいつに何てことしたんだろう…今になって
すげー恥ずかしくなってきた…だって、さっき押し倒されたときに見た
俺の顔…)

春(すっげーブサイクだったじゃねーか!!!
…俺あんなツラでとっくりに迫ってたのか…恥ずかしすぎる…)

ブツブツいいながら服を脱ぐ。
すると目の前の鏡にはブラジャー姿の春子の体が。


春「…そうか…今はとっくりの体だから…」
興奮しながら胸に手を当てるくるくる。

春「こんな事したりして…」

もみっ

春「ブーーーーーーーーッ!!!」
東「何やってるんですかーーーーー!!!」

鼻血を出して倒れるくるくる…。



…過去話が長くてスイマセンorz
自分でも現在がどうなってるか忘れかけていました。
長々続いてうっとおしいとは思いますが
よければまだ書かせてください。
もちろん他の方の投下も楽しみにしています。
442名無しさん@ピンキー:2007/08/18(土) 14:38:25 ID:8le5NxQe
今回、ハケンの同人誌あったー?
443名無しさん@ピンキー:2007/08/19(日) 01:45:28 ID:cIDHLuZO
数冊ゲトしてきたよー。


今から読むの楽しみ。
444名無しさん@ピンキー:2007/08/19(日) 01:49:55 ID:bzSzzAbN
何冊みつかった?
445名無しさん@ピンキー:2007/08/20(月) 22:01:45 ID:2lsK7y72
とっくりとくるくるの7日間 18


気がつくとベッドに寝かされていたくるくる。
春「あれ、そういや俺…」
東「あなたは私の胸をもんで鼻血を出して倒れたんです」
春「ああっ!!お風呂…」
東「さっき私が拭いてあげたので入らなくても結構です
とりあえず遅いのでもう寝ます」
春「そうか…このベッド使うよな?なんなら二人で一緒に…」
東「私はソファで寝ます」
春「あ、そう…ちぇっ」

ギロッ
東「何か言いましたか?」
春「いえっ、なんでもないです!」


―次の日。

足にわざと包帯を巻くくるくる。
トラックの運転が出来ないことをごまかす為に
考えた策だかこれもいつまでごまかせるか…。
そう考えると気が重いくるくる。
事務所につくととっくりがもうデスクに座って仕事をしていた。

しかし、よく見るとドライバーの土屋ともめている。


土「おいネクタイ!このシフトきつすぎるだろ!」
東「大前さんが運転できないんだから仕方ないでしょう?
働かないくせに文句ばっかり言ってますね」
土「なんだとー!?お前さっきから偉そうに…」

東「ガタガタ言わずにヒゲはさっさと出かけなさい!!!」

土「…わかったよ…急に強気になりやがって」

ブツブツ言いながらも事務所を出て行く土屋。


そのやり取りを見てボーゼンとするくるくる。

春「……おい、おれはそんな偉そうな奴じゃないぞ」
東「あなたが運ちゃんたちにびびって何もいえないから
代わりに言ってあげただけです」

春「なんだよ人をヘタレみたいに言いやがって…っていねぇ!!」

気がつくと奥のファイル棚に移動していたとっくり。
春「また瞬間移動かよ!」
東「もう就業時間ですよ、あなたもさっさと働いてください」
春「わかってるよ、そんな事!」
446名無しさん@ピンキー:2007/08/20(月) 22:11:30 ID:2lsK7y72
とっくりとくるくるの7日間 19


とっくりのデスクで仕事をするくるくる。
机の上も引き出しの中もきちんと整理されている。
春「キレイにしてるなぁ…一応あいつも女だしな
さて、仕事するか」
そう言ってパソコンを開くくるくる。
しかし、開こうとしたらパスワードの画面になり
手が止まる。

春「おい、とっくー…東海林主任、パソコンのパスワード
教えてください?」
周りに人がいるのに気がついて慌てて春子になりきるくるくる。

東「パスワードですか?…”ケーオーアイエヌユー”です」
春「あ、ありがとうございます」

パソコンにパスワードを打つくるくる。
すると、あることに気がついた。


春「K、O、I、N、U…仔犬!?」
447名無しさん@ピンキー:2007/08/20(月) 22:44:30 ID:2lsK7y72
とっくりとくるくるの7日間 19


―昼休み

一人デスクでノートにあることを書き込んでいるくるくる。

春「昨日入れ替わってからの出来事…」

・俺が渡したメモが残ってた→でも携帯の記録がない
・押し倒された→元に戻る為で別に欲情されたわけじゃない
・乳もんだ→結構でかかった
・パスワードが”KOINU”だった→賢ちゃんのパスワードと一緒


春「……頭で考えてもわからねぇからノートに書いたけど
それでもわけわかんねぇよ!!」

ノートを叩きつける東海林。

春「あ〜もう頭巻いてきた!!って今はストレートだけど…
だから、携帯のメモが載ってたのは俺に電話したかったけど
恥ずかしくて電話できなかったって事で…いや
ただほったらかしにしてただけかも…つーか何で携帯にも賢ちゃんで
パスワードも賢ちゃんと一緒なんだよ!…賢ちゃんのパスワード知ってたのなんて
俺くらいだぞ…」


その時ふっと思いつく。


春「そうか…何で気がつかなかったんだ…
あいつは本当は賢ちゃんが好きなんだ!!」

春「パスワードだってきっと賢ちゃんとおそろいにしたくて…
それに俺を本社に戻すのは、賢ちゃんが寂しがってるからで
昨日電話に出たときもなんかちょっと嬉しそうだったぞ…」

一人でブツブツ考えをまとめるくるくる。

春「そっか…やっぱりとっくりは賢ちゃんが好きだったんだな…
一人勘違いしててバカじゃねぇか」

バサッ

ゴミ箱にノートを捨てて事務所を出るくるくる。




…コミケ話中に豚切ってスイマセン。
なんかコメディなのかシリアスなのかよくわからない話で…orz
448名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 00:46:24 ID:Y/vCLfr8
楽しく見てますよ
話が動いてきましたね
くるくるが勝手に暴走しそう
449名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 20:37:03 ID:8+m0ydM2
とっくりとくるくるの7日間 20


くるくるが休憩から戻るととっくりが
本社から届いたFAXを差し出した。

東「本社の企画課からの依頼です。来月開催されるご当地フェアで
名古屋コーチンを使ったメニューを考えているので
協力してくださいとの事です。」
春「協力?この間見に行った鶏はこのためか…。
でもここは運送会社だぞ、何で企画に協力するんだ」
東「そんな事知りません、きっと里中主任があなたに手柄を
取らせようとしてるんじゃないですか?」

春「また賢ちゃんかよ…」
東「はい?」
春「いや、何でもない…でも俺企画立てるの苦手だしな…お前が考えてくれよ」
東「…どっちが解体うまいでショー…プッ、確かに」
鼻で笑うとっくり。

春「うるさい!!そんな昔のこと持ち出すな!!」
東「とりあえず考えるだけ考えてください」

春「急に言われてもなぁ……あーもう
パンに手羽先はさんで売ればいいんじゃねーか?」

東「……」

春「何だよ、もっと真面目に考えろってか?」


東「いいですね、それ。」
春「へ?」
450名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 20:37:56 ID:8+m0ydM2
とっくりとくるくるの7日間 21


超高速でパソコンを打つとっくり。
東「出来ました!」
そう言って企画書を差し出す。
春「もう出来たのか?早すぎ…」
企画書をパラパラめくる。


春「…おい、これ原価がめちゃくちゃ安い設定じゃねーか。
これじゃ利益は…」
東「それはあなたが営業で安くかけあってください」
春「俺が?」
東「あなたの口の上手さは私も認めています。この企画が
成功すれば社長賞にも一歩近づけるかもしれませんよ」


春「ああ…いいよわかった、じゃ今からかけあってくるわ」
東「よろしくお願いします」

そう言って事務所を出て行くくるくる。


春(でもあいつの姿で交渉していいのか…まぁいいや)


その後事務所で仕事を続けるとっくり。

すると、事務所の入り口からどこかで聞いたような
声が聞こえた。

「おーい、東海林はいるか?」


声のする方を振り返るくるくる。
するとものすごい速さでキーを打っていた手が止まる。


「久し振りだな、元気にしてたか?」

東「桐島部長…」
451名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 20:38:51 ID:8+m0ydM2
とっくりとくるくるの7日間 22

―会議室

桐島部長にお茶を差し出すとっくり。
東「どうぞ」
桐「ああ、悪いな…そういや大前さんはどうした?」
東「大前、ですか?」
桐「噂じゃお前のためにここへ働きに来たんだろう?
びっくりしたよ」
東「東海林主任のためではありません!私のためです!」
桐「…何言ってるんだ?」
東(はっ…私としたことが)
東「それより用件は何ですか?」
桐「いや、近くに用事で来てたから寄っただけだよ」
東「そうですか、ではすぐお引き取りください」

桐「…冷たいな、お前をここに飛ばした事を根に持ってるのか?」
東「いえ、自業自得だと思っています」

桐「…まぁ今思うとお前には酷な事をしたと思うよ
…プレゼンの前日に里中を飛ばすだなんて言ったりして」




東「え……?」


桐「だからってプレゼン放棄して辞表を出されたときはびっくりしたが…
そこまで里中の方が大事だったんだな」

東「……」

桐「里中も本社で頑張ってる、お前も頑張って本社に戻って来いよ
…懐いてくれる部下がいないと寂しいもんだ」

東「はい…お疲れ様です…」


先に会議室を後にする桐島部長。




―数分後、会議室を出るとっくり。

すると通路で運ちゃんたちとすれ違いにぶつかりそうになる
運A「おおっと、あぶねぇな…ん?」
運B「どうした?」

運A「おい、あいつ見てみろよ」



運A「男のくせに泣いてるぜ」
452名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 22:51:08 ID:wNDooQA3
楽しく読んでます!続き期待!!

スタンド バイ ミーはどーなったんでしょう?

どちらも読みたい!
453名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 18:49:37 ID:kBNd/Iey
おもしろいですねドラマみたい!
がんばってください!
454名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 20:19:38 ID:OnqPWobt
とっくりとくるくるの7日間 23



トイレで顔を洗うとっくり。
上を向いて鏡をのぞくと
目が少し赤くなってはいるが
涙は止まっていた。
東「……」
そのまま立ち尽くすとっくり。


東(里中主任は…きっとこの事は知らないはず
…だとしたら、ずっと一人で抱え込んでいたの?)

一年前のことを思い出す。

ハケン弁当プレゼンの日。
あのまま自分がプレゼンをしていたら
里中主任は確実に飛ばされていたはず。

それを止めるには、企画を譲って会社も辞めてしまえばいい。

彼は、自分を犠牲にして里中主任を守った。

その決断にたどり着くまで、きっとジレンマに押しつぶされそうに
なりながらも一人で悩んでいたはず。

…それなのに、あの時私はやさしく手を差し伸べるどころか
冷たい言葉で突き放してしまった…。


思い出していると、また目から涙か滲んできた。

東「…私としたことが…」

とっくりは手で涙をぬぐい、鏡に映った顔を睨みつけた。
東(…でも、入れ替わらなかったらずっと知ることのなかった事。
…そう考えたら入れ替わった事も何か意味があるのかも…)

とっくりは何時もの凛とした表情で
事務所に戻った。



運「お、来た来た。お前これからはネクタイじゃなくて泣き虫…」
東「うるさい!目にゴミが入っただけです!!人をからかう暇があれば
さっさと働きなさい!!!」


運転手を怒鳴りつけ、デスクに座り
再び超高速でパソコンを打ち出すとっくり。

東「…絶対に社長賞とらせてみせます…」


すいません、今思えばこのネタ不似合な手さんとかぶってました…orz
あと心理描写って難しいですね…。
455名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 19:53:16 ID:mjlc/v8u
とっくりとくるくるの7日間 24


この間の養鶏場。
仕入れの交渉をしているくるくる。

春「社長、どうかお願いします」
社「ん〜この額じゃ難しいなぁ。あんたにはこの間の恩があるけど
…もう一度出直して来てもらえるかい?」
春「そこを何とか…こちらの鶏を東京で売れば
きっと全国から注文が殺到するはずです。いえ、させてみせます!
…ですからどうかお願いします!!」
深深と頭を下げるくるくる。


社「…わかったよ、この額で行こうじゃないか。
そのかわり今の言葉通りにならないと承知しないよ」

春「…はいっ、ありがとうございます!」


―上機嫌で会社に戻るくるくる。
車が使えないので地下鉄に乗り込む。
春(そういやこの間事故があったばかりなんだよなぁ…
でも大した事故でもなかったようだから大丈夫か)

電車に乗りながら契約を取れた時の感触を思い出す。

春(…ああ、この感じ久し振りだなぁ。営業で走り回ってた
事が昔のことみたいだ…やっぱり俺はこういう仕事がしたいんだよな…)

そしてふと新入社員の頃を思い出す。
456名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 19:54:01 ID:mjlc/v8u

とっくりとくるくるの7日間 25


―新入社員の頃。

営業部に配属されたくるくると賢ちゃん。
入社当時、一日で100枚の名刺を貰って来いと
上司に言われて朝から晩まで二人で走り回った。
東「賢ちゃん、また断られたよ。やっぱり一日に100枚なんて無理なんだよなぁ…」
賢「そんなことないよ、頑張ればきっとできるはずだって。頑張ろう、東海林さん。」
東「……そうだな、よしっ!次行くか」

賢ちゃんに励まされながら何箇所も走り回り
何百回も頭を下げ、日付が変わる直前にようやく100枚目の名刺を貰えた。

そして急いで会社に戻ると、上司がずっと待っていてくれたのだ。

他の同期は途中でリタイヤして戻ってきたが
100枚集めて戻ってきたのはお前達二人だけだ、と
肩を叩いて誉めてくれた。


その時、この会社で働きたい。
毎日営業で頭を下げても、残業で帰りが遅くなっても
ずっとこの会社で、S&Fで生きていきたい。


本社にいたころは、そう思っていた…。


電車の中で、思い出しながら涙ぐむくるくる。

春(…俺がしたい仕事はやっぱり本社にあるんだな。
とっくりの言うように社長賞目指して頑張るか…)

目を手でこすり、そう決意を固めたくるくる。

春(そうと決まったら今日は徹夜で仕事を…)


すると、ある異変に気がついた。

春(ん?今何か当たった…)

何かがお尻に当たった。
最初は荷物が当たったのかと思っていたら
その感触はやがて上下に動き出し
くるくるの春子の体を触りだした。


春(……これって…まさか、痴漢…)
457名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 16:06:37 ID:j9snEXWN
おっ!どうなる!!
楽しみにしてます!ありがとです!
458名無しさん@ピンキー:2007/08/25(土) 00:26:11 ID:ftviLDph
>444

亀レスだが三冊ゲト。
ノーマル、エロ、801。
エロはここでハケン本出すと言っていた方だと思う。
それと前スレで絵を投下してくれた方だと思われるのもあった。

結構ここ見てたり書き込んでたりする人がいるんだなーとびっくりしたよ。
459名無しさん@ピンキー:2007/08/25(土) 22:53:44 ID:JlUPWpEM
とっくりとくるくるの7日間 26


生まれて始めて痴漢に遭遇し、硬直しているくるくる。
そうしている間にもその手はどんどん強く揉みだしてくる。

春(なんだこれ…すげー気持ち悪い…
はっ!?でも今はとっくりの体なんだよな?
俺もまだとっくりの尻揉んだことないのに…)

後ろを振り返りその手を掴むくるくる。

春「気安くとっくりの尻触ってんじゃねーー!!!!!」
車両にくるくるの声が響き車内は騒然とした。


駅の事務所で痴漢を引き渡すくるくる。
犯人は50代のサラリーマンだった。
どうやら最近頻繁に出没していたらしい。

駅員「いやーどうもありがとうございます。女性なのに
犯人を押さえつけるだなんて…勇気のある方ですね」
春「いえいえ、当然のことをしたまでです
それにしても女性はこんな目にあったりして大変ですね」
駅「はい?」
春「あ!?いえ、何でもないです」

駅員や周りの人から拍手されちょっといい気分になったくるくる。


春「いやーびっくりしたけど俺もたまには役に立つじゃん
さて、早く事務所に戻るか」

くるくるは上機嫌で事務所に戻った。


460名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 18:20:32 ID:KiiuHGm0
くるくるかわいいw
461名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 21:43:15 ID:A4i+OEZF
とっくりとくるくるの7日間 27


―仕事中のとっくり。
するとポケットの中の携帯が震えだす。
取り上げ発信先を見ると里中主任からだった。
くるくるの携帯なので、知らない人からの電話にはできるだけ
出ないでおこうと思ったが、里中主任なら事情も知っているし
差し支えないだろうと、電話に出るとっくり。

東「もしもし」
賢「お疲れ様です、里中です。大前さんですか?」
東「そうですが、何か?業務のことなら会社の電話でお願い…」
賢「いえ、私情なんですが…仕事中すいません、ちっょといいですか?」

里中主任の言う私情が入れ替わった件だと思ったとっくりは
事務所で話すのは気がひけるということで
事務所を出て、入り口近くの通路に移動した。

東「お待たせしました、用件はなんでしょう?」
賢「昨日は突然切ってすいません…それであれからもいろいろと
調べてみて、元に戻りそうな方法を考えてみたので
長くなるから、会社のメールで送らせて貰おうと思うんですが…」
東「…そうですか、ありがとうございます。」
賢「…それから…こんな事聞いて失礼かと思うんですが
大前さんて…その…東海林さんと、付き合っているというか…」

東「……あの人がそう言ったんですか?」

賢「いえ、東海林さんは僕に気を使ってるのかそういうことは一切
話さないんですよね…だからちょっと心配で…」

東「…」

賢「大前さんは……一年前にカンタンテで僕が言った言葉を
削除できなかったから、名古屋へ行ったんですよね?」



東「……そういう事は、本人に言います」

賢「そうですね、余計なこと聞いてすいませんでした…
あ、話は変わるんですが名古屋コーチンの企画は進んでますか?」
東「ええ、今東海林主任も養鶏場へ行っている所です」
賢「そうですか、頑張って下さいね。もしこの企画が成功すれば
社長賞に一歩近づけるかもしれませんし…早く二人で
こっちに戻ってきてくださいね」

東「そうですね、二人で……あなたの所に戻ります」

賢「あ、でもその前に元に戻らないとですね。
じゃあまたメールチェックしてください、失礼します」

東「失礼します」

少し微笑みながら携帯を切るとっくり。
462名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 22:07:11 ID:A4i+OEZF
とっくりとくるくるの7日間 27


―地下鉄を出て事務所へ戻る途中のくるくる。
春「いやぁ、今日は契約も取れたし痴漢も捕まえるし
いい一日だなぁ」

すると
「あのー、ちっょといいですか?」
春「はい?」
「日本テレビの者なんですが…ちっょとインタビューさせて頂いても
よろしいですか?」

春(ええっ!?テレビのインタビュー!!!)

レポーターの人がマイクを向ける。
レ「名古屋の美人女性にインタビューしているんですけども
失礼ですが、あなたはご結婚されてますか?」
春「いえいえ、してません」
レ「じゃあ結婚を考えている恋人はいらっしゃいますか?」


春(…恋人…?まぁでも放送されるかわかんねーし
ここは勝手に妄想話でもしておくか)

春「ええ、います!同じ会社の上司で
髪の毛が天然パーマなんでくるくるパーマって呼んでるんですけど
これは愛情の裏返しって言うか、本当はウェービーなタフガイなんですよ〜」

レ「くるくるパーマ!?面白いですね〜名古屋巻きの次は
くるくるパーマが流行ってるんでしょうか?」

春「そうですね、そのうち名古屋中の男がコテ持って
トイレで巻いてますから」

レ「そうですか〜いやーいい情報を頂きました
ありがとうございます〜!」


インタビューを終え、その場を去るくるくる。

春(いや〜緊張したなぁ。テレビのインタビューなんて始めて受けたよ
それにしても美人女性って…まぁなんだかんだ言ってとっくり美人だもんな)


自分の発言を全く気にしていないくるくる。
ちなみに、このインタビューは生放送で
全国に放送されていた。


…いつも読んでくださってる方ありがとうございます。
自分ひとりが書き込んでばかりで申し訳ないんですが。
ちょっと強引な展開ですいません…。
463名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 22:18:46 ID:A4i+OEZF

とっくりとくるくるの7日間 28



―場所は変わって東京。

あるラーメン屋で食事をする女性二人。

「ここのラーメンおいしいですね〜」
「そうね、何処も混んでたからとりあえず入ってみたけど
結構いけるじゃない」

森美雪と黒岩匡子だった。

そのラーメン屋はほとんどがサラリーマンで
BGMはテレビの音。

そんな所でも気にせず食事をできる仲に二人はなっていた。

黒「ごちそうさまー」
森「ええっ、もう食べちゃったんですか?早すぎますよ」
黒「あんたが遅すぎるのよ、いちいちレンゲに麺乗せて食べてたら
休憩終わっちゃうわよ」
森「すいませ〜ん、すぐ食べます!」

先に食べ終わった匡子はコップの水を飲みながら
暇を持て余そうと、テレビの画面に目を向けた。


…すると、どこかで見た事のある人物が画面に映った。


その人物が誰か気付いたとたん、びっくりして思わず水を噴いた。

黒「ブーーーッ!!!!」
森「ええっ!?黒岩さん、どうしたんですか?」
びっくりする森美雪。

黒「ちょっ、あんた食べてないでテレビ、テレビ見なさい!!!!」
森「テレビがどうかしたんですか?」

美雪は振り返りテレビを見る。


森「あーーーーーっ!!!!春子先輩!!!!!」



すいません、アップしている途中にコメント入れてしまいました…。
とりあえず今日はここまでで…。
464名無しさん@ピンキー:2007/08/27(月) 22:36:12 ID:STqKGZSW
とっくりとくるくるの7日間 29


テレビに春子が出ていることに驚く二人。
けれど中身がくるくるだということは知る訳もなく
気安く話している姿にただぼーぜんとする。

森「なんだか春子先輩…感じ変わりましたね」
黒「ちょっと、しゃべり方が東海林君に似てるんですけど!」

くるくるパーマが恋人だと話す春子の中の東海林。
二人はすぐにそれが誰のことなのか気付いた。

森「黒岩さん、くるくるパーマって…東海林主任のことですよね?」
黒「そうみたいね…」
森「でもなんか幸せそうですね、やっぱり恋をしたら女は変わるんですね〜」
黒「ふぅ〜ん、ずいぶんのろけちゃって!!」

森「あれ?黒岩さん、眉間にシワ寄ってますよ?」

黒「うるさいわね、さっさと食べないと先に戻るわよ!!!」
森「何でそんなに怒ってるんですか〜?」


…遠く離れた東京でこんな騒ぎが起こってるとは
全く知りもしないくるくる。

ちょうどその頃、事務所の前まで戻っていた。

春(さっきのインタビューとっくりが見たら怒るだろうなぁ。
でもあんなにバカなことも言ったしOAされないだろう。)

所詮、自分と春子が恋人だなんて
でっちあげの妄想話。
そう考えるとなんだか空しくなってきたくるくる。


一人ため息をつきながら、入口のドアを開けようとすると
誰かの声が聞こえてきた。


「で……あなたの所に戻ります」


春(……とっくり?)

とっくりが携帯で誰かと話していた。

「失礼します」
そう言って携帯を切るとっくり。
その表情は見た事のない、穏やかで優しい笑顔だった。



春(……)

くるくるは何となく誰と話していたのか判った。
465名無しさん@ピンキー:2007/08/27(月) 22:52:40 ID:STqKGZSW
とっくりとくるくるの7日間 30


春「おい、戻ってきたぞ」
東「お疲れ様です。で、どうでしたか?」
春「おう、俺の口の上手さで何とか契約してきたよ」
東「自画自賛は気になりますが…それはよかったですね。」
春「ところでさ、今誰と話してたんだよ」
東「里中主任ですのでご安心下さい」
春(ああ、やっぱり…)

東「ところで、あなたが出ている間に桐島部長が訪ねて来ましたよ」
春「ええ!?部長が!……いや、でも俺合わす顔がないしな…
ちょうど出かけている時でよかった…ってお前余計な事言ってないだろうな!?」
東「…いいえ、言ってません。」
春「まぁいいや、今日はいろいろあったしな…これから頑張って仕事するよ」

東「そうですね、あなたには早く社長賞を取って頂かないといけませんし」


春「…お前も、早く東京へ戻りたいんだろう?」
東「…そうですね、でもその前に早く元の体に戻りたいです」


春「ははっ、そうだな…とりあえずそっちが先か」


―社長賞を取って東京に戻りたい。
お互い目指すところは一緒なのに
互いの気持ちがすれ違っていることに、まだ二人とも気付いていない。


…すいません、27でありえない間違いをしていました。
「ちょっと」が「ちっょと」に…orz
日本語勉強してきます。
466名無しさん@ピンキー:2007/08/28(火) 23:50:12 ID:LgjH/wyD
すれ違いがもどかしくてまた!
黒岩さん森ちゃん登場も楽しかったです
467名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 10:46:52 ID:XqnQyiGC
とっくりとくるくるの7日間 31


通常の業務を終了した後も会社に残り名古屋コーチンの企画を練る二人。

春「でも…手羽先にパンって骨のままはさむのか?」
東「骨がついたままはさんでたら食べにくくて誰も買いません
だからといって骨を取ってしまったら
手羽先の旨みが消えてしまいますし骨を抜く手間もかかってしまいます
要するに骨をつけたままでなおかつ食べやすい方法を考えればいいんです」
春「ええ〜そんなのわかんねぇよ…」
頭を悩ませながらペンをくるくる回すくるくる。
東「わからないんじゃなくて考えようとしていないのでは?」
とっくりににらまれて思わずペンを回していた手を止めるくるくる。

春「判ったよ、考えるよ…えーとだな………
あ〜考えすぎて頭巻いてきた!!!」

東「私の頭は巻いてません!!!」

そんなやり取りが延々続く…。


春「…今日はここまでにしようぜ、なんかもう疲れた…」
考えすぎてぐったりしたくるくる。
とっくりが作成した企画書をくるくる巻いて
鞄に入れようとする。

その時―

春「あーーーーーーーーーっ!?思いついた!!!」
468名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 10:47:31 ID:XqnQyiGC
とっくりとくるくるの7日間 32


何かいいアイデアが思いついたらしいくるくる。

春「あのさ、ピザの生地みたいなうっすいパンがあるじゃん
あれをくるくる巻いてみるってのはどう?」

東「…トルティーヤですか?」
春「なんだそれ?スペインの食べ物か?」

東「元々はメキシコで食べられていた薄い生地のパンで
トラスカリと呼ばれていましたが、スペイン人がこれを見たときスペイン料理の
トルティージャという食べ物に似ていることからトルティーヤと呼ばれるようになりました
材料はトウモロコシの粉で作られていますが、日本ではトウモロコシの粉と小麦粉を
合わせて作られたものがポピュラーになっています
肉や野菜を二つ折りにして食べるものはタコス、具を巻いたものはブリートと呼ぶそうです」

春「長っ、しかも説明調…でもお前なんでも知ってるんだなー」
東「感心してないで構想をもっと膨らましなさい」

再び企画書を開きアイデアを膨らますくるくる。

トルティーヤで手羽先を巻き紙に包み
残った骨は上にくるんで捨てられるようにしたりと
いろいろアイデアを出して再び企画書を作成。

そしてその日のうちに本社にFAXで送った。


春「…はぁ、疲れた企画考えるのも体力使うなー」
東「普段から脳みそを鍛えてないからです」
春「うるさいな、余計なお世話だよ!とりあえず今日はもう帰るぞ!!」
東「…そうですね、じゃあ今日は貴方の家に行きましょうか」
春「え、俺んち!?」
東「里中主任が元に戻る方法を考えてくれたので
それを実践します」
賢ちゃんが送ってくれたメールをプリントアウトした紙をとりだすとっくり。
春「…賢ちゃん、俺のためにこんなに考えてくれたのか…」
東「そうですね、貴方はいい友達をもって幸せですね」


春「………」

その言葉に一瞬切なくなるくるくる。

春「そうだよ、大事な友達なんだから裏切れねーよ」

東「はい?」
春「じゃあ早速帰って早く元に戻るぞ!!ゴーゴーゴー!!」


変にテンションの高いくるくる。
二人は会社を出てくるくるの家へと向かった。
469名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 01:59:10 ID:DbQt2Ipt
あ、7日間の続きがアップされている
ありがとうございます。これからも期待してます
470風と木の名無しさん:2007/09/08(土) 23:04:46 ID:pPxSQ08z
とっくりとくるくるの7日間 33

東海林の部屋にいるとっくりとくるくる。
賢ちゃんから貰ったメールに書かれた元に戻る作戦を実行しようとする。

東「その1・・・頭をぶつける」
春「ベタだなー」
東「ハイっ!!!」
春「いてーーーーーーー!!いきなりぶつけんなよ!!」
東「やっぱりそんなに簡単に戻らないようですね・・・。」

東「その2・・・電気ショック」
春「待て!?それじゃ元に戻る前に死ぬぞ!!」
東「このかぶりものは電気ショックでくるくるになったんじゃ
ないんですか?」
春「違うよ、バーカ!」

東「その3・・・階段から落ちる」
春「・・・それも怪我しそうだけど、まぁ一番元に戻りそうな作戦だな」
東「じゃあ落ちましょう」
春「マジで!?でも、もし打ち所が悪かったら・・・」
東「いいから早く!!!」
とっくりに引っ張られマンションの階段へ向かう。
471風と木の名無しさん:2007/09/08(土) 23:25:23 ID:pPxSQ08z
とっくりとくるくるの7日間 34

マンションの階段。
段数は多くないものの、コンクリートなので
打ち所が悪ければ大怪我をするかもしれない。

春「ちょ、本当に落ちるのか?」
東「落ちます!!いきますよ、せーの・・・」
春「わーーーーーーーっ!?」




・・・。
「いてぇ・・・」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃねえよ、体中が痛い・・・」
「起きて早く私の顔をみてください」
「とっくりの顔・・・?今は俺がとっくりで・・・」

春「元に戻ったんですよ」

東「え・・・」

髪の毛を触るとふわふわのくるくる頭。
胸を触るとさっきまでのふくらみはなくゴツゴツしている。

東「やったーーーー!!!元に戻ったぞーーーよかったなとっくり!!!」
春「どさくさにまぎれて抱きつかないでください!!!」


こうして無事に元に戻ったとっくりとくるくるでした。


―完―
472風と木の名無しさん:2007/09/08(土) 23:56:17 ID:pPxSQ08z
とっくりとくるくるの7日間 35

「いやー・・・よかったなぁとっくり・・・」
「・・・なさい」

「さっさと起きなさい!!!!」
「うわっっっっっっ!!!!」



がばっと起き上がるくるくる。

春「あれ?階段は?何で俺ベッドに・・・」
東「私が運びましたが何か?男だと人一人持ちあげるのも楽ですね」
春「そうそう、男だと・・・ん?」

よく見ると自分の姿が目の前にある。

春「・・・もしかして、元に戻ってないとか?」
東「そうですよ」

春「なんだ夢かよーーーー!!!」
がっくりと肩を落とすくるくる。

東「私の方がガッカリです、頭を打つし・・・なのにあなたは無傷ですし」
おでこがぽこっと膨らんでいるとっくり。
春「おいおい、あんまり俺の体を傷つけんなよ。それにしても
無傷だなんてお前の体一体どんな構造になってるんだよ」
東「私の体は不死身ですから、なんせ100歳ですし」
春「嘘をつくな嘘を!!」

春「あ〜あ、しょーもない夢見ちゃったし俺今日はもう寝るわ・・・」
再び布団に潜るくるくる。

東「・・・」



・・・すいません、しょーもない夢オチで・・・。
最近忙しくて続きがスローペースになりそうですが
よければ読んでいただけるとうれしいです。
473名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 10:59:48 ID:J3NzVvBu
楽しみに待ってますからね!
自分の体なのに容赦ない春ちゃんにぐっっジョブ!!
474風と木の名無しさん:2007/09/16(日) 00:02:21 ID:txCc5z5e
とっくりとくるくるの7日間 36

―夜中に目が覚めたくるくる。
春「ん…今何時だろ…」
手で眠い目をこすり、ふと目をあけて前を見ると…

春(!?)

くるくるが寝ていたベッドにとっくりが
寄り添って寝ていたのだった。

春(ととと、とっくりーーー!!)

びっくりして声も出ないくるくる。
春(ちょちょ、なんでとっくりが一緒に寝てるんだよ!
何だこれは、夢か!?)
その時、ふとさっき見た夢のことを思い出す。
…もしかして、これも夢か?
そう思いだしたくるくる。
春(そうか、これは夢だ!!そのうちとっくりにたたき起こされて
現実に戻るんだ…)
すると、寝返りをうったとっくりが
くるくるに抱きつくように密着してきた。

春(おい!何で俺自分の顔にドキドキしてるんだ!?)

本社でやりあっていた頃はしょっちゅう顔を近づけて
睨みあっていたのに、こういう場で顔を近づけられると
どうしていいのかわからず、目をそらしてしまうくるくる。


春(…でも、どうせ夢だし折角だからキスしちゃおっかなー…
あーでも自分の顔ってのがなぁ…)


なんだか下のあたりがムズムズしてきたくるくる…。



…続きます。しばらくフツーの話だったので
ここらで少しはエロ風味を出さないとと思ったんですが。
475名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 10:57:20 ID:NbU9/EhX
お願いします!楽しみにしてますから!!
476名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 22:17:09 ID:do40bdPV
きましたねー!!正座して楽しみに待ってますんで♪
477風と木の名無しさん:2007/09/17(月) 21:35:17 ID:uZsZ/E+f
とっくりとくるくるの7日間 37


―夢の中のくるくる。
ベッドの中でとっくりと至近距離で向きあっている。
まるで自分の欲望がそのまま再現されたような夢の中で
くるくるは何も考えずに自分の元の体に唇を重ねた。

春「………」

春子の体でするキスはなんだか不思議な感覚で
いつもの女性の唇と比べると、男の唇は硬くて
ヒゲがゴワゴワしている。
春(女ってこんな気持ちでキスしてるのか…)
東「…ん…」

すると、突然とっくりが寝息を立て体を動かした。
くるくるはびくっ!!と肩を震わせて
とっさに重ねていた唇を離した。

もしかしてキスのせいで目が覚めてしまったのか…?
くるくるに緊張の糸が張り詰める。

しかしとっくりはそのまま寝返りを打ち再び
熟睡し始めた。
くるくるはほっと胸をなでおろし
自分も寝ようと瞼を閉じた、その時。

また、下のあたりがムズムズしてきた。

春(…なんだこれ?)

下半身の違和感に気付きだしたくるくる。
股の間がなんだかムズムズする…くるくるは恐る恐る
下着に手を当てた。

春(…何だこれ?濡れてるぞ……これって、男で言う
立つって現象か!?)

初めてのことにびっくりして戸惑うくるくる…。
478風と木の名無しさん:2007/09/17(月) 21:46:50 ID:uZsZ/E+f
とっくりとくるくるの7日間 37


キスをしたせいで下が濡れてしまったくるくる。

男だったら、このまま自分のアレを触って自己発散するけれど
女はどうしたらいいんだ??
初めてのことに戸惑うくるくる。

けれど、触ったままの手を動かすと何とも言えない
感覚がくるくるに巡って来た。
春(あ…この感じ……!)

くるくるはその手を下着の中に移動させ、指先を
秘部の中へと押し込めた。

…目を閉じて、自分と春子がセックスしているかのように
指を自分の物のように中で掻き回していく。
春(とっくり…とっくりはこんな風に感じるのか…)
気付かれないように必死手声を殺しながら
とっくりの横でひとりエッチをするくるくる。

―ここから後はくるくるの妄想。
479風と木の名無しさん:2007/09/17(月) 22:09:42 ID:uZsZ/E+f
とっくりとくるくるの7日間 39


「…とっくり、お前すげー濡れてるぞ…」
「濡れてなんかいませんが、何かっ…」
「こんな時まで、その言い方やめろよ…かわいくねぇな」
「かわいくないなら、もうやめなさいっ…」
「…嘘だよ、かわいいよ…」
「………」
「何照れてんだ…」
「うるさいっ、このくるくるパーマが…あっ」

「とっくり……春子、気持ちいいのか?」
「やだ、そこは…だめっ…もっと濡れちゃう…」
「いいよ…もっと感じて、何処が気持ちいいんだ?」
「あんっ…今の…とこ、ろ…もっと…」


「あっ…イキそう…やっ…ああっ!!」



春「…………はぁっ、はぁ―…」
妄想と指でイッてしまったくるくる。
春子の体を使って、はじめての女としてのオナニー…。
指はぬるっとした液体でぐしょぐしょになっていた。
くるくるはベッドの上に置いてあるティッシュに手を伸ばし
指と濡れてしまった下着を吹く。

春(どうしよう、俺…とっくりの体でオナっちまうなんて…)

終わってしまった事とはいえ激しく後悔するくるくる。
しかしこれが夢だということを思い出すと
早く現実に戻ろうと、再びベッドにもぐりこんだ。




…エロ初体験なので、描写があまりにも陳腐で
申し訳ありません…後もう一つ
前の番号が37のままでした…すいません;
そしてまだまだ続かせていただきます…。
480風と木の名無しさん:2007/09/18(火) 21:50:37 ID:GlEvbHxc
とっくりとくるくるの7日間 40


その後太陽の光で目が覚めたくるくる。
春「……」
横を見てみるととっくりはいなかった。
起き上がり、ふとゴミ箱を見てみる。
あの時に拭いたティッシュが残っていたら
あれは夢ではなく、現実ということになる。

しかしゴミ箱は空になっていた。
するとドアが開く音がした。
東「おはようございます、早くしないと遅れますよ」
朝だというのに機敏として、すでに身支度もすませた
とっくりが立っていた。
春「…おはよ、お前起きるの早いな」
東「それと、今日はゴミの日なのでゴミ集めておきましたよ」
春「え!?」
東「はい?」
春「…いや、何でもない…悪いないろいろさせちゃって
…そ、そうだコーヒーでも入れようか?」
東「もう朝食の用意は出来てますが?」
春「じゃあ、肩でも揉んでやろうか?なんかあったら遠慮なく言ってくれよな」

東「気持ち悪い……何なんですか急に、何か後ろめたい
ことでもあるんですか?」

そう言われて思わずドキッとするくるくる。

春「あ!?いやー別に、何もないよ…そうだ、早く用意しないとなー」


夢の中とはいえ、とっくりの体であんなことをしてしまって
後悔しているくるくる。

春(ってか本当に夢だよな…確認できなかったけど…
なんか怖いから夢ってことにしておこう…)

くるくるはそう自分に言い聞かせた。
481風と木の名無しさん:2007/09/18(火) 22:10:47 ID:GlEvbHxc
とっくりとくるくるの7日間 41


会社へと向かったとっくりとくるくる。
いつものように事務所へ向かいデスクに着くと
なんだか妙な視線を感じる。

…よく見ると、運転手たちがこっちを見てニヤニヤしているのだった。
すると運転手のひとりが、とっくりに話しかけた。

運「おい、お前いつからデキてたんだよ」
東「はい?何のことでしょうか」
運「何って、お前あの姉ちゃんと出来てるんだろ」

その言葉に思わず固まるとっくりとくるくる

運「昨日テレビ見てたら名古屋駅で姉ちゃんがインタビュー
受けててさ、お前のこと彼氏だって嬉しそうに言ってたぜ」

すっかり忘れかけていた昨日のインタビューのことを
思い出し、体が凍りつくくるくる。

春(…あれって…生放送だったのか!?)

運「お前らしょっちゅう喧嘩してて仲わりぃーと思ってたら
実は痴話喧嘩だったんだな」
東「そんなんじゃありません!!!」
はっきりと否定するとっくり。
春「そうだそうだ、あれはただの冗談だよ!!
誰がこんな奴と…」
東「それは私のセリフです!!誰が貴方なんかと…」
運「おっ、早速夫婦喧嘩か!?朝からいちゃついてんじゃねーよ」

二人をからかい笑っている運転手達。
とっくりはそれを睨みつけくるくるの首を引っ張り
奥の部屋へと連れ込んでいった。
482名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 23:07:10 ID:5/Eq3bd7
おぉ〜!!凄い進んでる!
いつもありがとうございます。楽しい!
483名無しさん@ピンキー:2007/09/20(木) 10:06:08 ID:mscP3H9s
おもしろいです!
くるくるが、とっくりの体で鏡オナニー
とかも、ありですよね!!
484名無しさん@ピンキー:2007/09/20(木) 18:19:50 ID:UVpt7n+B
保管庫読ませていただきました。
もう嫉妬深い蜂さんや不似合いな手さんは投下されないのかなぁ?
485風と木の名無しさん:2007/09/20(木) 23:07:24 ID:qNZ+xn1D
とっくりとくるくるの7日間 42

くるくるをシメているとっくり。
春「ちょっ、とっくり苦し…」
東「どうりで今日よそよそしいと思ったらこのことですか!?」
春「いや、このことじゃ…あっ、違う別によそよそしいことなんて…」
東「どういうことかちゃんと説明してください!」
春「いや…その、昨日養鶏場から帰ってくる途中に
テレビのインタビュー受けて…彼氏はいるんですか?って聞かれたから
ついノリで恋人はくるくるパーマですって…」
東「はい!?…私の姿でそんな事言ったんですか?」
春「だって、お前もいい年して彼氏はいませんなんて言ったら
恥ずかしいじゃないか、俺はおまえのことを思って言ったんだよ」
東「余計なお世話です!!貴方が恋人だなんて会社で噂になるくらいだったら
一人身で寂しい奴だと言われる方が何千倍もマシです!」
春「な、なんだと!?…じゃあ相手が賢ちゃんだったらどうなんだよ」

東「そうですね、貴方よりも里中主任と噂になる方がよっっっぽど
嬉しいです」



春「…………」

東「…何なんですか、いきなり黙って」

春「…わかったよ、しばらく会社で話すのはやめよう
仕事終わったらとりあえず一人で俺んちに来いよ」

そう言って仕事に戻るくるくる。
486風と木の名無しさん:2007/09/20(木) 23:26:02 ID:qNZ+xn1D
とっくりとくるくるの7日間 42

仕事に戻ると、とっくりとくるくるはほとんど口を利かずに黙々と
仕事をしていた。
しかしそれがかえって不自然で、運転手達の注目を余計に浴びていた。


しばらくして、在庫の確認をする為に倉庫へ向かったくるくる。
正直くるくるはさっきの言葉に大きなダメージを受けていた。

賢ちゃんのことを持ち出したのは自分だが
ああもはっきりと言われるとやはりシッョクも大きい。
ため息をつきながら倉庫に入り在庫を確認しようとするが
なんだかやる気が出ず、思わずその場に座り込んでしまう。

春(あーあ、何だかなぁ…自分で自分の首を絞めた気分だよ…)
くるくるは頭を悩ませながら髪をしくしゃくしゃにしていた。

―その時

後ろから突然腕を引っ張られた
487風と木の名無しさん:2007/09/20(木) 23:36:56 ID:qNZ+xn1D
とっくりとくるくるの7日間 44

プルルルル…
事務所に電話が掛かって来た。
いつもなら春子になったくるくるが出ているが
よく見たらどこかへ出ているので、仕方なくとっくりが出る
東「もしもし……お疲れ様です。はい、私ですが
……そうですか、ありがとうございます
………判りました、お待ちしています。こちらこそよろしくお願い
いたします、では失礼いたします。」

淡々と電話を切るとっくり。
そして近くにいた運転手にくるくるの行き先を尋ねる。
運「何だ、仕事中にいちゃつく気か?」
東「業務連絡です!!知ってるなら早く教えなさい!!!」
運「しらねーよ、ってかトイレにも行ってんじゃねーのか?」

東「……」
くるくるにどうしても早く伝えたい事があったが
仕事中に話をするなと言われたこともあり
あきらめて仕事に戻るとっくり。
488名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 22:01:59 ID:3iuG4LGc
とっくりとくるくるの7日間 45


突然誰かに腕をつかまれたくるくる。
そしてそのまま床に押し倒された。
春「ちょっ…誰だよ!!」
くるくるが顔を見上げると、それはさっき自分たちを茶化していた
運転手達だった。
春「何するんだよ、離せっ…」

運「あんたさぁ、あいつとしょっちゅうヤッてんだろ?
だったら俺たちも相手にしてよ」

春「は…?何で男とヤらなきゃいけないんだよ…!」

そうだ、今は女の体なんだ!?と思い出すくるくる。
今の状況がまずいと感じてとっさに逃げようとするけれど
つかまれた腕の力が強すぎて、ふりほどけない。
とにかく抵抗しようと、足をヒールで思い切り踏むくるくる。

運「いてっ、こいつ何すんだよ!」
足を踏んだ衝撃で、掴まれていた腕が離れて
その隙に逃げようと走り去るくるくる。

ところが、履き慣れないブーツのせいで、ドアの手前で躓いて
転んでしまう。


床に倒れこんだくるくるの前に立ち、ドアのカギを閉める運転手たち。
489名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 22:04:57 ID:3iuG4LGc
とっくりとくるくるの7日間 46


この間は自分が春子を押し倒そうとしていたくるくる。
まさか今度は自分が押し倒されるとは夢にも思っていなかった。

転んでしまい、逃げそびれたくるくるを再び
床へ押し倒す。手首を掴む力はさっきよりも
もっと強くなってくるくるを押さえつける。

春「離せよ!これ以上やったらクビにするぞ!!」
運「別にこんな所クビになったってかまわねーよ」
そう言うとくるくるの上着を剥ぎ取る。

春「ちょっと…誰か、誰か―」
なんとか抵抗しようと、声を出して助けを呼ぼうとするが
手で口を塞がれて、それさえも出来なくなっしまった。
どうしようもない状況に、恐怖心が芽生えて
体が震えだすくるくる。

そんなくるくるの体に手を伸ばし、とっくりセーターを
脱がそうと腰に手が入り込む。

春(ああ…男だったらもっと抵抗できたのに…
とっくり、ごめん――)


もうだめだ、と思ったその瞬間――


昨日、書き込んでいる途中で人大杉になってしまいました…orz
私も他の書き手さんたちの話を楽しみにしているんですが…。
490名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 00:34:26 ID:wQL+BlCB
今は七日間に夢中です!!
がんばってください!
落ち着きましたら、投下したいと思います。
491名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 09:45:31 ID:SzyUOsFi
エロきた〜!(´∀`)
続き期待!!!!!
492名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 01:21:50 ID:UyWDzyR5
とっくりとくるくるの7日間 47


その瞬間―

カギがかかっていたはずのドアが開いた。
バン!!という音に思わずそっちに視線を向けると
そこに立っていたのは…

春(とっくり…)

東海林の中のとっくりを見て、とっさに
くるくるの体を離す運転手達。

春(とっくり…助けに来てくれたのか?)


ところが。


とっくりはくるくる達をスルーして
ダンボールの数を数えはじめた。


春「はあ!?」

とっくりの思いがけない行動に唖然とするくるくる。

春「…ちょっと待てーーーー!!お前助けに来たんじゃないのかよ!!!」
東「はぁ?仕事中に話し掛けるなといったのはそっちでしょ?」
春「時と場所を考えろ!!ここで無視してどうするんだよ!!」
東「そんなの自分で何とかしなさい」
春「自分でって…これお前の体だぞ!!」
東「今は貴方の体ですが、何か?」


運「……」
493名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 01:43:42 ID:UyWDzyR5
とっくりとくるくるの7日間 48


運「…バカバカしい、行こうぜ」
二人のやり取りを見て萎えてしまったのか
倉庫を出て行こうとする。

東「貴方達!!今度業務時間内にこんなことをしたら
即クビですよ。働かない従業員を雇うなんてドブに
お金を捨てるようなものです」

いつものとっくりの口調でキツイ口調を吐く。

運「わかってるよ、偉そうに言いやがって」
その言葉に腹が立ったのか、近くにあったファイルを
とっくりに投げつける。

そのファイルはとっくりの額に命中し
足元にバサッと落ちた。

春「うっせーバーカ!!…それよりとっくり、よくここにいるって
判ったな…」
助かって気持ちも落ち着いたのか、いつもの口調に戻ったくるくるが
春子に話し掛けた、その時。

突然くるくるに倒れこんできた。

春「え?ちょっと、とっくり…」
一瞬抱きつかれたのかと思って動揺するくるくる。
しかし抱きついたのではなく、倒れこんできたのだ。
春「どうしたんだよ、とっくり。いきなり倒れこんでくるなんて…」
とっくりの体を何とか持ち上げたくるくる。

ベタッ

くるくるの手に生暖かいものがついた。
最初は汗かと思ったが、よく見てみると
手のひらには赤い液…。

春「これ…血…?」
くるくるはとっくりの顔を見上げ呆然とした。

意識を失ったとっくりの額から血が流れるように爛れていたからだ。

春「嘘…なんで?おい、しっかりしろ…とっくり!?」



…いつも読んでくださってる方々ありがとうございます。
一体いつまで続くのか判りませんが頑張りますorz
494名無しさん@ピンキー:2007/09/24(月) 22:01:12 ID:0jJVxiqY
楽しみにしてます。
いつもありがとうございます!
495名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 22:23:05 ID:rIkZ/mmr
こんばんは、7日間を書かせて頂いているものです。

一身上の都合によりしばらくパソコンに向かうことができない
状態になりました。

ということでしばらく投下を休止させていただこうかと思います。
ダラダラ長く書いてしまってほんとにすいません。

携帯でロムることはできるので、ぜひ他の職人さんたちの
投下も楽しみにしています。

もし時間ができればまた投下させていただきたいと思います…。
読んでくださった方ありがとうございました。
496とかげみず:2007/09/28(金) 15:25:26 ID:gi+ieAyw
七日間、書いてくださった方、お疲れ様でした。
続きが読めることを楽しみにお待ちしております。

ひとつ、投下させていただきます。
497とかげみず:2007/09/28(金) 15:27:05 ID:gi+ieAyw
『げぇっ』

何とも色気も何もあったもんじゃない、この声。
「お自給3500円」のハケン様だ。
無理やり、小さな口に俺のムスコを捻り込ませた。
噛み千切られるかもしれないと、内心冷や汗を
掻きながらも、ハケン様は上手く苦しくならないよう、
口腔で俺のムスコをしゃぶる。

後ろ手にネクタイ。
痣は多分つかない。…ようにした。
胡坐を掻く俺に、跪くようなハケンのエキスパート。
ケンちゃんにも、見せてやりてぇぐらいだ。

口いっぱいに頬張って、やらしい音ともに、
涎なのか、先走り汁なのかわからなくなってる液を
呼吸と一緒に飲み込む。
胡坐のまま、右手で忌々しいハケン様の尻たぶを
鷲掴む。
悲痛な叫びとともに、ずるりと口からムスコがこぼれた。
左の手でもう一度、しゃぶらせる。
498とかげみず:2007/09/28(金) 15:28:05 ID:gi+ieAyw

後ろ手にネクタイ。
痣は多分つかない。…ようにした。
胡坐を掻く俺に、跪くようなハケンのエキスパート。
ケンちゃんにも、見せてやりてぇぐらいだ。

口いっぱいに頬張って、やらしい音ともに、
涎なのか、先走り汁なのかわからなくなってる液を
呼吸と一緒に飲み込む。
胡坐のまま、右手で忌々しいハケン様の尻たぶを
鷲掴む。
悲痛な叫びとともに、ずるりと口からムスコがこぼれた。
左の手でもう一度、しゃぶらせる。

咥えさせたまま、右指でぐちゃぐちゃに濡れた場所を掻き混ぜる。
その度に、喘ぎ声が小さく聴こえた。
ムスコで口に栓をしているようなものだ。
大きな声を出されては困る。

そのまま、唇に左指を咥えさせ、元気におっ勃ってる
俺のムスコに串刺しのように座らせた。
何度も何度も、奥を突いて、
出なくなるまで射精し続けた。

一度も視線は合わなかった。
合わせられなかった。
合わせて貰えなかった。

くちづけもできなかった。

彼女の立ち居振る舞いは変わらない。
ただ、視線も合わない。
これ以上の罰はない。



499とかげみず:2007/09/28(金) 15:29:50 ID:gi+ieAyw
御目汚し、失礼しました。
バッドエンドで。
500とかげみず:2007/09/28(金) 20:02:29 ID:gi+ieAyw
すみません。重複してメモからコピペしてる
ことに今、気づきました。すみませんでした。
501名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 22:53:08 ID:pzY7cCPM
とかげみずさんお久し振りです!!

相変わらずGJ!
楽しみにしてたので嬉しいです♪

これからもよろしくです!
502名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 07:28:47 ID:SXKn4EaL
やっと読める
503名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 23:06:31 ID:Z7X9oNiv
7日間ありがとうございました!おつかれさまでした。
504名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 00:34:53 ID:jJsqPVrd
ほす
505名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 16:00:09 ID:/APpLdCW
関東で再放送記念age
506名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 15:20:09 ID:U31fFQya
関西でも再放送記念age
507名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 18:44:39 ID:NkYe19E3
春ちゃんのパイズリ希望!!
508とかげみず:2007/10/10(水) 17:47:25 ID:2PZzAg4m
仄暗いオフィス。
デスクチェアに凭れる俺はまるで、
社長か王様のように踏ん反り返ってる。
理由は一つ。

オオマエハルコが、とっくりをたくし上げ、
零れんばかりの胸で、俺のムスコに奉仕している。

両の手で自分の胸を支え、俺のムスコを挿み、
小さな紅い舌で、屹立したムスコの先を丁寧に舐めあげる。
ガマン汁でべたべたで、汗と汁で滑らせ、頬まで汚す。

残業。
509とかげみず:2007/10/10(水) 17:48:19 ID:2PZzAg4m
跪く、オオマエハルコは頬を紅潮させながら、太腿を
もじもじと擦りあわせる。
胸の先の尖りが紅く熟れてるくせにかたくなって、
それがまた、俺のムスコを刺激する。
まぁ、刺激されてるのは、俺だけじゃなさそうだけど…。
その表情だけで達してしまいそうになる。
『顔にぶちまけて、イイ?』
『全力でお断りします。』

でも、意思はもう決まっていて、デスクにティッシュだって
用意してあるんだ。
勢いよく、顔と二つのふくらみに発射。
ぶるんと震えて、胸が気持ちいいらしい。
出続ける精液をぺろりと舐めて、
お決まりの文句。
『不味っ』

目も口もとろんとさせて、大満足。
張り付く前に、拭かないと。


今日の同じ釜の飯は、財布が心配。
あの、ふぐ料理屋、カード使えたっけ?

510名無しさん@ピンキー:2007/10/12(金) 00:26:48 ID:5DUcqQfI
パイズリきたぁ〜!!(´∀`)

とかげみず様ありがとうございました!!

とっくりをたくし上げるってのがまた……GJ!!
511108:2007/10/14(日) 10:26:50 ID:YU3S0N4I
こんにちは108です。
忙しくてなかなか来れなかったのですがまだこのスレがあって
嬉しかったです。
久し振りに投下させていただきます。
6話あたりの東海林で。



―もてない社員の癒し係ではありません。
なんでハケンにそこまで言われなきゃいけないんだ。
あのとっくり、お時給3500円も貰ってるくせに
チョコも配らねぇし…ああうぜぇ。
賢ちゃんに頼まれたから仕方なくバースデーカードに
メッセージなんか書いちまったけど、書くんじゃなかった。
どうせあいつのことだからゴミ箱にでも捨ててるだろうし。
そうだ、あいつはいつも人が親切にしてやっても礼も言わない。
エレベーターで落ちそうになったときも
助けてやったのに、俺の手が汚いとか言いやがって…。
ああ、思い出したらまた腹立ってきた。

こんなに偉そうで生意気なハケン、大嫌いなはずなのに…。

バレンタインの日、とっくりと言い合ったせいで
チョコが売れ残ってしまい、シルスマリオに謝罪へ行った時
なぜかとっくりもついてきた。
もう6時も過ぎていて、あれだけ残業はいたしませんって
言ってたとっくりが…。
邪魔だからでしゃばるなと冷たく言い放しても
でしゃばらせていただきます、とついてきた。
512108:2007/10/14(日) 10:51:26 ID:YU3S0N4I
シルスマリオへ向かうタクシーの中で、聞いてみた。
「どうしてお前まで謝りに行くんだ?」
「…これは業務の一環です」
そう言ったとっくりの顔は少し不安げな顔で
うつむいている。

俺達の会話が外に漏れていたせいで、チョコが売れなかった事に
責任を感じているようだ。

…なんだか抱きしめたくなった。

いや、そんなことしたらまたハエがぶつかってきて
なんて馬鹿にされるだけだ…っていうかこんな非常事態に
何考えてるんだ俺。


その後なぜか店で子供を取り上げたとっくり。
助産士の資格までもっていたなんて、本当あいつ一体いくつだよ。
でも、取り上げた子供を抱きかかえている姿を見て
女らしいというか、綺麗に見えてしまった。

…どうしよう、俺やっぱりとっくりの事が好きだ。
でも、また押していって冷たくあしらわれたらかっこ悪いし
賢ちゃんにも恥ずかしくて言えない。


仕事用のファイルが、マーケティング課の入口に
並んであるからそれを取りに行くフリして
とっくりにちょっかいを出す。
小学生か、俺は。



再放送でまた見ていますがやっぱり面白いですね。
お目汚し失礼いたしました。
513名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 11:59:10 ID:G0XDRhGy
とかげみずさん、108さん、お帰りなさい
そしてGJ。
514108:2007/10/14(日) 23:50:39 ID:YU3S0N4I
調子に乗って再び投下させていただきます。
春子の独り言です。


私はいつも勤務は三ヶ月と決めている。
どんな職場でも振り返らずに去っていく。
だけど、今度はあの人が私の元から去っていく。


「六時になりましたので、失礼いたします」
「大前さん、待って下さい」
「何ですか、里中主任」
「明日から東海林さん、名古屋へ転勤になるんです
だから一言挨拶を…」


「しません、では失礼いたします」
「あっ、大前さん…」

何で私が挨拶しなくちゃならないのか。
明日からあのうるさい天パがいなくなる思うと
せいせいする。
私はマフラーを巻いてエレベーターへと向かった。
515108:2007/10/15(月) 00:00:34 ID:i+WRWo+Q
エレベーターホールで下へ向かうボタンを押し
一人で待っていた。
するとうしろから聞きなれた足音が聞こえてきた。
あのズカズカとうるさい足音は…

「とっくり!」

東海林主任、いや…くるくるパーマだった。

その呼び声と同時にエレベーターのドアが開く。
私は後ろを振り返らず、エレベーターに乗り扉を閉めた。
だけど、閉まりかけた扉を無理やり手で抑え
中へと入ってきた。

エレベーターの中で、二人きり…。
確か前にも一度こんな場面があった気がする。



「大前さん…俺今日付けで転勤になるんだ」
「そうですか」
「つめてーな、お世話になりましたぐらい言ったらどうだ?」
「世話にはなっていませんが、何か?」
「…まぁ、いいや。最後に言いたい事があってさ」
「何ですか…?」
516108:2007/10/15(月) 00:28:14 ID:i+WRWo+Q
「賢ちゃんの事…よろしく頼むな」
「…何で私が?」
「何でって…お前も賢ちゃんの事好きなんだろ?」
「……」
「それだけだから。じゃ、元気でな」
タイミングを見計らったかのようにエレベーターのドアが開く。
私は何も言わず外に出る。

くるくるパーマはそのまま扉を閉めて
上へ戻っていった。



―このまま何も言わないで、いいの?



私は振り返って素早くボタンを何度も押した。
けれど、扉は開くことなく上にある数字が
3、4、5と続けて光っていく。
もう登っていったエレベーターは戻ってこない。


「…バッカじゃなかろうか」
そう呟いて、その場を去った。


いつものバス停までの帰り道で今までの事が走馬灯のように蘇った。

―いきなりとっくりと呼ばれたこと。
―ホチキスで勝負を挑まれたこと。
―突然キスされたこと。
―一緒にいい仕事がしたいと言われたこと。
―エレベーターで助けられたこと
―ハートのかぶりものをかぶらされたこと
―プロポーズされたこと


…いつものバス停に着き、ベンチへ座る。

気がつくと、周りが滲んではっきり見えなくなっていた。

別れることに慣れていた筈なのに、どうしてこんなに
淋しさがこみ上げてくるんだろう。


オチなしですいません。
転勤までのくだりが全くなかったので勝手に妄想しました…。
517名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 02:20:29 ID:9mV54Xot
108さん、GJ!
春子→東海林が垣間見えるこういう感じ、好きです!
518108:2007/10/17(水) 08:49:17 ID:R6cNQgDN
読んで下さってありがとうございます
何度も投下して申し訳ありません

最終回から一日後の東海林X賢ちゃんの電話



「もしもし、東海林さん?遅くにごめんね」
「賢ちゃん、どうしたんだこんな時間に」
「いや、あの後大前さん無事に帰ってきたのかなぁって」
「…ああ、帰ってきて採用の手続きとかしたんだけど…」
「そっか、じゃあまた一緒に働けるんだね
よかったね東海林さん」
「ああ…いや、その、賢ちゃん…聞いてくれるか?」
「ん?どうしたの」
「とっくりの事なんだけどさ、実は…今いるんだ」
「え!?東海林さんの家に?」
「うん…っていうか、隣で寝てる」


「ええ!?じゃあ東海林さん…」
「ああ…そういう事になったって言うか…」
519108:2007/10/17(水) 20:05:45 ID:R6cNQgDN
「福岡から名古屋に戻ってきてさ、いろいろ事務所で話した訳よ
で、一段落ついたから今日はもう帰っていいよって話してたら
…そうだ、お前家はどうするんだって話になったんだ
そしたら…”もう決めてありますので大丈夫です”って言うから
マンション借りたんだーへーと思ってたんだよ
……そしたらいきなり”あなたの家でお世話になります”とか言いだして…」

「大前さん…」

「もうビックリして飲んでたお茶吹いちゃったよ
いくらなんでも急に同棲なんてさ!」

「でも、うれしいんでしょ?」

「…ま、まぁそりゃ嬉しいけど…いきなり会いに来られた上に
一緒に住むなんていわれたら…俺でも戸惑うわけよ
でもさ、男だったらちゃんと受け止めるべきじゃないか」
「うん…大前さんもいろんな覚悟を決めて名古屋へ行ったんだと思うよ」

「って事で一緒に家に帰ってきたんだけど…一緒に住むって事は
…あれじゃないか?そーゆーのやってもいいと思うじゃん?」
「東海林さん、照れてる」

「だから…勝手に体が動いてとっくりを抱えてさ、ベッドへ
いったんだよ、そしたら…」

「そしたら!?」
520名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 22:25:58 ID:HHZ6QGLX
ヲイヲイヲイ!
つ、つづきは・・・?!(ゴックン)
521108:2007/10/17(水) 22:47:30 ID:R6cNQgDN
「あいつ、ベッドに寝かせたとたん…爆睡しやがった…」

「…………え?」


「じゃあ、結局何もないの?」
「ないよ…今もグースカ寝てやがる…」
「大前さんもきっと疲れてるんだよ。焦らなくても
大丈夫だって、東海林さん」

「ごめんなぁ、賢ちゃん…こんな事相談しちゃって」
「そんな、謝らないでよ」

「あっ…とっくり起きそうだから切るわ、じゃあ…おやすみ賢ちゃん」
「うん、おやすみなさい」






「…何一人でブツブツ言ってるんですか?」
「独り言じゃねぇよ!電話だ、電話!お前こそいびきがうるさかったぞ」
「いびきなんてかいてませんが…」
「それより…疲れてるんだろ?
何か食べたいものとかあるか?それとも先にコーヒーでも飲む?
欲しいものがあったら遠慮なく言えよ」

「…………」

「…ん?ちょっ、人のこと指さしてんじゃねぇよ」

「これ」

「へ?」




「私が欲しいもの」







……これより先はご想像にお任せします。
まとめて書いてあったのに、人大杉になってしまい
中途半端にアップしてしまって申し訳ありません…。
522名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 02:15:25 ID:7v1pyMK/
108さんありがとう!
再放送見てこのスレみてやっぱハケン最高
523名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 13:40:05 ID:UpcqOnHB
ハケン最強
524名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 01:58:29 ID:zW3iuYxh
○赴任当日

金子「よし! 今日からお前はネクタイな」
くるくる「・・・おい。ちょっと待てよ。なんで、お前に命名権あるんだ?」
金子「ここの現場を仕切ってるのが俺だからさ」

○数ヶ月後
とっくり「大前春子です。事務とトラックの運転ができますが何か?」
金子「あんた、俺の代わりに福岡行ってくれたんだってな
  そいつはありがとうよ。だがな、あんまり出しゃばられると困るんだ」
とっくり「私は業務の一環でやってることですが何か?」
金子「そうかい・・・まあ、何か仕事上でトラブルがあったら言ってきな
  ここの現場を仕切ってんのは俺だから」
525名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 02:09:13 ID:KLlnhJ4O


とっくり「状況把握のために聴きます。あのボス猿なんなんですか?」
くるくる「ボス猿とか言うなよ・・・土屋さんだよ」
とっくり「金子さんかと思いました」
くるくる「そういうこと言うなよ! たしかに似てるけどよ」
とっくり「でも工事現場ならともかく輸送業務で現場を取り仕切るっていうのは
     普通、東海林所長のような立場を言うんじゃないですか?」
とっくり「そうだけどよ。土屋さんの言ってるのも嘘じゃない
     なんというか、仲間の運転手たちに影響力があるってのかな」
526名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 15:27:37 ID:68rZ/KNS
いいねー、つづけてつづけて!
名古屋ネタ歓迎!
527名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 03:32:49 ID:fc/zvSlx
○ 事務所

くるくる「おい。何してんだ?」
とっくり「書類に目を通してますが何か?」
くるくる「何かじゃねえ。他のみんなは?」
とっくり「出払ってますが」
くるくる「そうか・・・行ってくれたか」
とっくり「当たり前じゃないですか。一件いくらの契約で
     そうそうサボタージュもできないでしょう」
くるくる「そんなに簡単な問題じゃねえんだ。現に・・・」
とっくり「お帰りなさい」
ボスざる「よう。いま、東京から戻ったぜ」
とっくり「これ、本日の日当です。お疲れさまでした」
ボスざる「ツレないじゃねえか。茶あぐらい頼むよ」
とっくり「・・・・・・」渋々お茶を淹れにいく。
ボスざる「あいつを雇った甲斐があったじゃねえか」
くるくる「はあ?」
ボスざる「女に仕事を取られるわけにはいかねえからな
     イヤでも張り切らにゃならんてこと。もちろん、おれもな」
くるくる「・・・そういうことですか・・・」
ボスざる「けどなあ、決して女向きの職場じゃないと思うがな、ここは」
くるくる「そんな・・・女の事務員なんてどこにもいるじゃないですか」
ボスざる「事務員ならな。だけど、あいつは出しゃばるだろう、なにかと?
     トラックの運転はできても、俺らの仲間というわけでもないし」
くるくる「・・・・・・」
ボスざる「何かないうちにやめてもらったほうがいいと思うがな
     もちろん、これは参考意見というやつで、実際に決めるのはあんただ」
528名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 02:56:24 ID:rGq4uMdg
○ 事務所

ボスざる「御馳走さん。茶あ、おいしかったぜ」と言って去る。
とっくり「私のいない間、なにを話してたんです?」
くるくる「あんたをやめさせた方がいいんじゃないかってさ
     でも、あの言い方じゃ忠告だか警告だかわからんな」
とっくり「おめでたい人ですね。それは多分、脅迫よ」
くるくる「いくらなんでも、そりゃあねえだろ」
とっくり「それより、土屋さん、あのお茶よく飲めましたね」
くるくる「やっぱり、ただのお茶じゃなかったんか?」
とっくり「やっぱりってことは薄々気がついてたんですね」
くるくる「あたりめえじゃねえか。イヤそうにしてたからな」
とっくり「私の淹れたお茶は評判が悪くて、そのまま保健所に
     持ち込まれたこともあるんですよ。毒とかは出ませんけどね」
くるくる「なにを入れたんだ、いったいなにを?」
とっくり「なにをって、お茶本来の苦味を増幅する技法を開発しただけですよ」
くるくる「開発するんじゃねえよ、そんな技法をよ」
とっくり「薬効成分はむしろ増してますから、分析されてもかまいません」
くるくる「でも、飲めないほど、まずいんだろ? 漢方薬じゃないんだからさ」
とっくり「あれを顔色ひとつ変えずに飲み干すとは、敵ながらあっぱれです。
     土屋さんはただものじゃないですね」
くるくる「だから、なんでそんな展開になるんだよ!
     追い出されるどころか、お前のほうが追い出しにかかってんじゃねえか!」
529108:2007/10/27(土) 00:22:57 ID:EWFdpQyo
名古屋ネタ面白いです!
なぜか土屋がボスざるになってるところが笑えますw
530528:2007/10/29(月) 02:24:32 ID:AZ7qsBhI
いやあ自分的には自然な流れ
前夜の酒が残ってたんだろうなorz
531名無しさん@ピンキー:2007/11/02(金) 01:41:00 ID:k7xXtEtS
苦味増幅技術wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
中途半端な温度でひたすら長く抽出し続けたりとかそんなんかwww
532名無しさん@ピンキー:2007/11/07(水) 14:56:56 ID:ME0XN301
やっぱ篠原おめでただったね(*^_^*)
ハケンのスペ化は当分むりだよなぁ(@_@;)
でも、くるくるの子を身籠った役ならできるね
533sage:2007/11/07(水) 23:04:40 ID:9Mxwizjj
妊娠しましたが何か?

って言うんだろうなwww
534名無しさん@ピンキー:2007/11/10(土) 21:15:57 ID:o8fyA3vI
冬コミ、受かりましたが何か?
エロハケン本、新刊予定ですが、何か?

頑張らせて頂きます。
535名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 03:44:22 ID:KGreOH7f
同人は小説誌でも挿絵が綺麗なんでしょうね
期待してます
536名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 16:58:12 ID:peDeOron
534って夏も出てた人?
だったら小説じゃなくて漫画の人だよね。
他にもいるのか?
537名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 16:10:03 ID:looop/VO
>>534
通販とかはやってないの?kwsk。それと同時にエロにwktk(´∀`*)
538名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 00:25:56 ID:aMiwR0gF
2代目大前春子は山本モナにケテイ!
539名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 02:13:46 ID:B5FE/UuF
>>536
そうです。
>>537
カタログにも、カタロムにもハケンと
登録しておりますので、よろしければ御覧ください。
エロまんがです。エロしかありません。
540名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 12:03:33 ID:Oayjt+1s
541名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 21:08:03 ID:aw+BFRNa
「あ・・んっ・・リュート・・」
「春子、今日はどうしたの?いつもと燃え方が違うね」
「う・・るさ・・い・・はや、く・・」
「――欲しい?」
「・・はや・・く・・」
「わかったよ」
「ああっ・・!」
「――春子・・今日は特別に色っぽいね・・」
「・・んっ・・」
「俺と春子がこんなことしてるとこ・・あいつが見たらどう思うかな・・」
「・・?」
「あいつのこと考えてるんだろ・・」
「・・」
「ほんとはあいつとしたいんだろ・・春子・・」
「・・!」
「ほんとに欲しいのはあいつなんだろ・・」
「・・訳のわからないことを・・やめなさい・・」
「いいよ・・もう一度目を閉じて・・あいつのこと考えなよ・・」
「やめなさい・・!」
「俺をあいつだと思えよ・・」
「・・やめ・・」
「ほら・・名前を呼んで・・何て呼ぶの?」
「やめて・・!」
「やめていいの・・?こんなに濡らしてるのに・・ほら」
「あんっ・・あっ・・」
542名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 21:08:36 ID:aw+BFRNa
「吐いちまえよ・・ほら・・どうした・・?」
「ああっ・・!」
「楽になるぜ」
「あ・・んっ・・」
「ほら・・!」
「・・誰が・・あんたなんかに・・」
「・・」
「誰があんたなんか・・っ・・!」
「あんたって誰のこと?言いなよ」
「・・い・・や・・、あ・・」
「・・悪態つきながらそんなに締めつけて・・あいつのことなんだろ?」
「ああっ・・!」
「あいつが憎らしいよ・・春子をこんなに乱して・・」
「んんっ・・!」
「呼んじまえよ・・名前を・・」
「あ・・ん・・」
「呼べよ・・!」
「・・あ・・しょう・・」
「聞こえない」
「・・しょう・・じ・・ああ・・しょうじ・・しゅにん・・」
「へー・・いつもそうやって呼んでるんだ、心の中で・・」
「・・やめて・・」
「自分でする時もそう呼んでたの・・?」
「い・・や・・」
「じゃあ行くよ、春子・・!」
「ああっ・・あん・・あっ・・!ああんっ!」
「春子・・っ!」
「・・しょうじ・・しゅに・・、東海林主任っ・・ああっ・・!」

「――ねえ、春子」
「・・うるさい」
「今の、テープにとったんだよね」
「え?」
「あいつに聞かせたらどうなるかな」
「――リュート!!」
543名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 01:55:56 ID:FuCsgmW+
つづき!!つづきをおながいします!
544名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 03:07:44 ID:yTySekeq
数日後。

「いらっしゃい。来ると思ったよ」
「・・」
「あいにく春子はまだ帰ってないけど」
「お前か」
「ん?」
「こんなもの送りつけたの、お前か!」
「――気に入った?」
「・・外で話そう」
「いいけど」

「・・どういうつもりだ」
「全部聞いた?面白かっただろ?」
「どういうつもりだって聞いてるんだ」
「春子、意地っ張りだからね・・俺がキューピッドになってあげようってわけ」
「・・」
「声だけでも十分、いろっぽいだろ?たまんなかった?」
「お前・・おかしいんじゃねえのか」
「春子があんたの名前呼んでよがってるの聞いて、どうだった?」
「・・いいかげんにしろ」
「あんたの名前呼ぶたんびに、いつにも増して締め付けんだよね」
「やめろって言ってるんだ!」
「なんで?あんたが聞きたがってるものを聞かせてあげたのに」
「お前は・・イカレたクズ野郎だ」
「何怒ってんの?大丈夫、俺と春子はただのセフレだから。
 春子があんたのこと考えて悶えてる時に、俺のもの使うだけだよ」
「やめろ!」
「抱いてやりなよ、ショウジシュニン。どうやって手なずけたか知らないけど、
 春子、あんたに抱かれたら泣いて喜ぶよ」

 
545名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 14:48:25 ID:FuCsgmW+
二人がどうなるのか、気になります!
続きを、是非
546名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 20:59:31 ID:+N4afETZ
久しぶりに覗いたらなんて素敵な……


続き期待!!

547名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 22:19:33 ID:4naNPx/w
黒リュート…!!


素敵!!!
548名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 02:41:59 ID:NZfjTkgI
目が覚めると、そこは見知らぬ部屋。
あの後、リュートの胸倉をつかんだ後の記憶がない。
みぞおちに鈍い痛みが残っている。
「くそっ・・デカイ図体しやがって、イカレ野郎が・・」
ドアが開いた。
大前春子が入ってきた。
「・・とっくり・・?!」
「気がつきましたか。それにしても迷惑ですね、階段から落ちるなんて」
「・・え?」
「幸い頭に損傷はないようです。落ちる前のことは責任持てませんが」
「――おい、ちょっと待て。階段から落ちたって?」
「そう、私が疲れて帰ってきたら、あなたが階段から落ちて気絶したので
 介抱してやれと、押し付けられたんです」
「・・あいつにか?」
「リュートのことですか?」
「・・あいつ・・」
「目が覚めたなら、お帰り下さい」
「ああ・・すまなかった」
「本当に迷惑です」
「・・」

――そんなこと言ってるけど、おまえ・・。
考えまいとしても、テープで聞いた声が頭からはなれない。
『ああっ・・しょうじ・・しゅにん・・』
あの声は本当に大前春子の声なのだろうか。
『いつもそうやって呼んでるんだ・・自分でするときも?』
やめろ。やめろやめろ。
あれは何かの間違いだ。イカレ野郎の陰謀だ。まさか、この大前春子が・・。
『ああっ・・あんっ・・あ・・東海林主任・・!!』
549名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 03:16:46 ID:iu/GbvUx
最初にテープを聞いた時も、いけないと思いながら、
気がつけば最後まで聞いていた。
ニセモノだ、何かのいたずらだと頭では否定し続けながら、
大前春子の声に欲情した。
他の男と絡んでいることに激しい嫉妬を覚えながら、抑えがたい劣情にさいなまれた。
そして自分の名を呼びながらよがる声・・。
信じられない、間違いだと思いながらも、その肢体と表情を夢想した。
フラメンコを踊っている時のように、汗で光る火照った体が一糸まとわずに
男の体と絡み付いている。
あるいは服を脱ぐのももどかしいまま、黒いドレスをはだけて
男のなすがままに弄ばれ、後ろから貫かれている。
あるいは、一人ベッドで声を殺しながら自慰にふけっている・・。

もしも本当に、大前春子がそんな姿で自分のことを考えていたとしたら・・?

頭がおかしくなりそうだった。
下腹部が熱い。

テープを聞いた後、ついに夢想の中で大前春子を陵辱した。
誰もいない会社のデスクに押し倒して、体を貪った。
『誰が・・あんたなんか・・』
辛うじて憎まれ口を叩く彼女を責め立てて、よがり声を上げさせ続けた。
上の口で悪態をつきながら、下の口では決して離すまいと締め付ける。
その感触を夢想しては、何回も達した。

――その大前春子が、今、目の前にいる。
550名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 17:03:59 ID:43psx1Dl
久しぶりに嬉しい
続き待ってます!
551名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 21:09:23 ID:S7oTYVuu
面白いwww

続き待ってます!!
552名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 21:51:07 ID:3Cz4yha8
帰宅して、自分の部屋に運び込まれた東海林を見つけた時、
息が止まりそうだった。
「階段から落ちたんだ。しばらく休ませてやってよ」
リュートが真顔で言う。
少しでもからかうようなそぶりがあったなら、断固拒否しただろう。
だが、リュートの口調には本当かも知れないと思わせる何かがあった。
それでも疑いと恐れは消えない。
リュートが何か企んでいるのではないか。
東海林に何か恐ろしいことを教えてしまったのではないか。

もし、あのテープを東海林に聞かれたら・・。

それを思うと、気が狂いそうだった。
部屋の外に出て、必死で冷静になろうと試みる。
「私としたことが・・」
だが東海林はなぜ今夜、一人でここに来たのか・・?
考えるほど最悪の結論が頭をよぎってしまう。

もう、考えないことにして、ドアを開けた。

目覚めた東海林は、置かれた状況を理解するのに手間取っているようだった。
「目が覚めたなら、お帰り下さい」「本当に迷惑です」
いつものように畳み掛けて、体よく追い返そうとした、そのとき。
――顔をそらしていた東海林と、眼が合った。

初めて見る顔。
男の眼をしていた。

ああ、まさか。

東海林がゆっくりと立ち上がり、ドアの前の自分に近づいてくる。
じっと見すくめられて、動けない。
眼だけではなく全身を、舐めまわすように見つめながら、
東海林が目の前にやってきた。
体じゅうを愛撫されているような錯覚に陥り、めまいを感じる。
「とっくり・・」
「・・」
「俺・・聞いちまったんだ・・お前が・・」
「――!」
「お前が、俺を・・」
カーッと顔が熱くなり、体が震えた。
逃げなくては。
とっさに部屋を出ようとして、腕をつかまれた。
ドン、とドアに押し付けられる。

――ああ、そういえば。この男はこう見えても、私を片手で引き上げたんだった・・。
それは、リュートにテープをとられたあの日のことだった。
553名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 22:34:15 ID:6hvk/HOh
続きまってます。
がんがってください!!
554名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 22:55:14 ID:3Cz4yha8
「逃げるな・・逃げないでくれ」
東海林が耳元に顔を埋め、ささやく。
熱い吐息。初めて聞く、掠れた声。
東海林の唇が、耳元をかすめる。
いつもの自分なら即座に張り倒すはずなのに、体に力が入らない。
「俺はお前が好きだ。知ってるだろう?」
「・・」
「もしお前が本当に俺を・・俺を好きなら・・」
「・・何を聞いたのか存じませんが、セクハラです。やめて下さい」
辛うじて言い返すと、東海林がもう一度自分をドアに押し付け、
顔を覗き込んできた。
「・・俺の眼を見ろ」
「・・見ています」
「・・もう一度聞く。俺のことが好きか?嫌いか?」
「・・とっくにお答えしたはずですが」
「だからもう一度聞いてるんだ。俺の眼を見て答えろ」
「・・」
「――俺が嫌いか?」
「・・」
東海林の顔が近づく。
「・・なんにも聞こえねえぞ」
東海林の吐息がかかる。
「・・あなたが・・」
もう、お互い眼ではなく唇しか見ていない。
「・・なんだって?」
「・・」
鼻先が触れ合う。
「・・聞こえねえな、なんにも・・」
「・・きらい・・」

だから、自分から噛みついた。

東海林の口内を蹂躙して、くるくるパーマをかき回してやる。
熱い。息が苦しい。体中の血が煮えたぎりそうだった。

――もう、どうなってもいい。
555名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 18:15:58 ID:aDt/RFZZ
頑張って!!
556名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 01:01:31 ID:7InsYFcK
「・・お前・・激しいな・・」
東海林は私の頭を両手で押さえこむと、荒い息を鎮めながら
顔を覗き込んで言った。
「・・やっぱりお前の声だったのか・・」
ついさっきまで一番恐れていた言葉なのに、もう何も怖くない。
「・・それが何か?」
体が熱い。
耐え難いはずの羞恥は、もはや欲情に注がれる油でしかなかった。
テープの声の主が私だと知って、東海林が下卑た笑いを浮かべて勝ち誇ろうが
私を蔑んで陵辱しようが、構わなかった。
――私もあんたを奪ってやる。
今、体の底から、この男が欲しかった。

東海林は、じっと私を見つめると――

・・突然、ひざまずいた。

想像していたよりずっと繊細な手つきで、私のハイネックセーターを
ゆっくりとまくしあげる。
ひんやりした空気が素肌を徐々にかけ上がる。
東海林の指がブラジャーのホックを外し、背中をそっと撫でる。
その感触に、私は思わず震えた。
自ら邪魔な衣服を脱ぎ捨てる。

あらわになった私の乳房に、東海林の視線が注がれる。
東海林の顔が近づくにつれ、頂が硬く立ち上がって行く。
東海林は、先端を焦らすように乳房の周りに指を滑らせた。
「・・きれいだ・・」
すっかり敏感になった先端に熱い吐息を感じて、めまいがする。

次の瞬間、東海林の唇が左の蕾を捕らえた。
「・・あ・・」
声が抑えられない。
東海林はそこを甘く噛むと、優しくしゃぶった。
右の蕾は、指先でもてあそばれる。
甘い刺激に、思わずその頭をかき抱いた。
「・・あっ・・ん・・ああ・・」
「・・もっと啼けよ、とっくり・・」
557名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 15:57:22 ID:EVrx1ICt
おー!続き期待です!
558名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 19:00:40 ID:Jk2zhevo
続き…(´・ω・`)

頑張って下さい!!

559名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 08:41:02 ID:qQRe8GnN
固唾を呑んで、待ってます。
560名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 00:33:25 ID:ACdtA0TE
「あっ・・ん・・あ・・」
この声だ。
あのテープと同じ・・。
――お前・・こんな顔して喘いでたのか・・。
すぐにでも犯したいのをぐっとこらえる。
甘い果実をねぶって攻め立てながら、スカートをたくし上げる。
ゆっくりと焦らすように、ストッキングとパンティを下ろして行く。
とっくりが待ちきれないように身をよじり、内股をすり合わせる。
「はや・・く・・」
指で花びらの輪郭をたどる。
溢れかえっている蜜で、指が滑る。
滑るままに指を走らせ、ずぷ、と挿し入れた。
「ああっ・・!」
とっくりが大きく背中を反らせ、俺の頭を強く抱く。
立っていられないのか、膝から崩れ落ちそうになるのを
抱きとめ、ゆっくりと着地させた。
この女が俺の愛撫に悶えるさまを、もっと近くで見たい。
目をとろんとさせ、頬を紅潮させてなまめかしい唇を半開きにしたとっくり・・。
指でぬるぬるとした感触を味わいながら蜜壺を攻め立てると、
ますます淫らに喘ぎ悶える。
「あなたも脱ぎなさい・・」
とっくりがもどかしげに俺のネクタイを外す。

とっくりの反撃が始まった。
561名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 22:38:47 ID:XDzP5z4Z
やったー!
続き期待アゲ
562名無しさん@ピンキー:2007/12/11(火) 08:52:51 ID:iuUQLRC3
楽しみに待っています
563名無しさん@ピンキー:2007/12/15(土) 14:46:23 ID:g3/9q9tI
百合の書きかけがあるんですが…百合はこっちのスレじゃない方がいいですよね?
564名無しさん@ピンキー:2007/12/15(土) 15:26:15 ID:ZXuakHHv
それ以前にsageたら?
565名無しさん@ピンキー:2007/12/16(日) 09:42:11 ID:vRskESd6
>>563
こっちに書き込んでもいいんじゃね?
百合投下wktk
566名無しさん@ピンキー:2007/12/17(月) 20:15:37 ID:DISq44lQ
ハケン同人誌て、ねーのかなー
567名無しさん@ピンキー:2007/12/19(水) 03:50:27 ID:Pe9LSLAe
>>563
ハケンの品格で百合
http://sakura02.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1168439201/

過疎っているけど、スレがあったよ。
568名無しさん@ピンキー:2007/12/19(水) 06:06:17 ID:D/nEY4QR
すみません、なかなか来れずにいました。しかも、前回sage忘れてた…。
百合スレ、あったんですね。
もうちょっと書いたらまとめてそちらにこっそり投下します。
一応東海林主任も出てくるんですが、やっぱりこちらだとちょっとジャンル違いかなと思うので。
レスありがとうございます。
569名無しさん@ピンキー:2007/12/22(土) 11:35:37 ID:Id3Uam14
>>566
アンソロ出す人いるみたいだね
570名無しさん@ピンキー:2007/12/22(土) 18:59:30 ID:FE2XY8t4
エロで?<アンソロ
571名無しさん@ピンキー:2007/12/24(月) 19:34:51 ID:LLHi3i/x
アンソロは性的描写禁止みたいだよ。
いろんな人が参加するみたいなんで
ちょっと楽しみ。
572名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 21:13:11 ID:M+useQKk
hssh
573名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 00:27:19 ID:GIK/toF3
戦利品報告ヨロ
574名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 00:52:31 ID:SFqs/UUV
すげ、きつくて吸い付いてくるぞ。ほら、すぐに奥に届いた。とっくり、エロいな。こんなに、俺のチンポ締め付けてるぜ、わかるか?子宮に精子全部流し込んでやるからな
575名無しさん@ピンキー:2008/01/29(火) 19:01:52 ID:VMNlZ0F+
ほしゅ

書き手さん現われないなぁ・・・
576名無しさん@ピンキー:2008/01/29(火) 22:29:15 ID:BWJu66V1
アンソロは書き手増えてるみたいだけど…、
こっちには来ないのかな。
577とかげみず:2008/02/04(月) 01:24:38 ID:tLvMKEYK
清掃員のバイトをしている。
夜とかだと、割当てがいい。
学校が終わってから、バイト仲間の
急なシフトチェンジのため、現場に向かう。
持ちつ、持たれつ。
いつもと違う現場。持ち場じゃない、慣れない現場。
きれいなオフィス。
そして、女の喘ぎ声。
耳を疑った。

廊下から、仄暗いオフィスを覗けば、
有名銀行の受付嬢が制服のまま、男とシている。
無理やりとかじゃないみたいだから、犯罪とかじゃなくて、
たぶん発情カップル。
あー、あー、いい御身分ですな。
俺も、早く社会人なりてー。
気まずくて、立ち去ろうにも女の声がえろくて、やばい。

勝手に利き手が、股間にいってしまう。
やべ。
気がつけば、声をオカズに扱いてた。
声を抑えながら、漏れる嬌声に興奮する。
程なくして、女の声が荒い息遣いに変わった。
様子を覗こうとしたら、男と目が合った。
「ナニシテンノ?」
578とかげみず:2008/02/04(月) 01:25:44 ID:tLvMKEYK
ちんこを出したままの間抜けな姿で、彼女の近くに連れてかれる。
上司には言わないという約束だ。
仄暗い部屋で間近に見る彼女は、俺とあんまり変わらないくらいの
年に見えた。
でも、シャツから見える胸と、たくし上げられたタイトスカートと、
膝までおろされたストッキングと下着がこの上なくいやらしい。
先ほどで乱れたであろう、長い髪を細い指で梳かしながら、
俺に微笑む。
「君が、お相手してくれるの?クルクルパーマくん」
髪のことを言われて、はっと自分の頭に手をやった。
「ほら、早くハルコをイかせてあげてくれ?」
男にせっつかれる。
でも、俺は…
「…す、すみません、俺、はじめてで…」
恥ずかしい。なんで、知らない奴にこんなこと言わなきゃいけねーんだ。
断れない、俺が悪い。
案の定、男が爆笑しやがる。
「いい、いいよ。面白い。バイトくんの筆下ろしじゃないか。
シロートで男になれんだぜ。よかったじゃん」
うるせー。
彼女が背伸びして、細い指を俺の髪の毛に絡めてきた。
「誰にだって、はじめてはあるわよ。ねぇ、クルクルパーマくん」
「…いいんすか?」
そのまま、頭を抱きかかえられるように引き寄せられた。
「はじめてが、私でいいなら」
そのやりとりで、男が少し苛立ったように、早くやれという。
耳元でごめんね、と小さく囁かれた。
それだけで赤くなった。
579とかげみず:2008/02/04(月) 01:26:39 ID:tLvMKEYK
男が、もう、濡れてるからそのまま入れろ、なんていう。
ムードも何もあったもんんじゃない。
先端をあてがうと、それだけでぬるぬるしたのが締め付けてくる。
全部、入れたら俺、どーなっちゃうんだろ…。
ずぶずぶ、先に押し進めてゆくと彼女が甘い声を出しながら、なかを
締め付けてくる。
驚くほどに簡単にイってしまった。
俺が。
「わーっ、すいません!!ほんとにすいません!!」
土下座。その前に抜け、俺。
男が、これだから童貞は、とかほざきながら嘲笑いながら言いやがった。
「へーきだよ、そいつ。ピル飲ませてっから。生じゃねーとな」
むかつく男だな。彼女は、優しく微笑みながら頭を撫でてくれる。
キス。
キスがしたい。
思い切り、抱きしめたい。
愛おしさで胸が、いっぱいになる。なのに、
「脱童貞、おめでとー。さっさと抜いて、もう行っていいよ」
平坦な口調で、男に引き剥がされてその場を出された。
「ばいばい、クルクルパーマくん…」
少し、さびしそうに見えたのは俺の自分勝手なエゴだと思う。
俺は何にも知らなくて、でも、彼女が幸せかどうか気になった。
でも、二度とその現場に行くことはなくて、学校もバイトも卒業して、
名前も知らない彼女はどんどん朧気になってゆく。
幸せになってください。
大好きでした。


社会人になって、新人から中堅。人事部も経て、今度は営業の主任を
任されることになった。

「特Aのハケンが来るんだって」

「なんですか!このクルクルパーマは!!」

最近、聞かないね。
聞かなかったね。

また、聞けたね。


580とかげみず:2008/02/04(月) 01:28:01 ID:tLvMKEYK
ちぃと、あげます
581とかげみず:2008/02/04(月) 02:07:40 ID:tLvMKEYK
お目汚し、失礼しました。
582名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 22:19:20 ID:vijakhZ+
とかげみずさん、GJ!!!!
クルクルパーマ君に萌えた・・・
583名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 11:07:14 ID:Rruqs0/0
123 :名無しさん@秘密の花園:2008/02/05(火) 22:05:53 ID:Mz9+eNgp
美雪 「春子先輩・・・どうしたらいいんですかぁ? 私、わからくなっちゃってぇ」
春子 「今すぐ此処でパンツを脱いでバイブを装着しなさい」
美雪 「そ、そんな大きいの入りません!」
春子 「だったらビアンなんか辞めなさい。あなたがビアンを辞めても誰も困りません」
美雪 「そんなぁ〜」
春子 「あれもできませんこれもできませんではビアンなんか務まりません。男の汚いチンポを入れられてあんあん言ってるのがあなたにはお似合いです」
美雪 「先輩には私のアソコがどうなってるかわからないんです!」
春子 (・・・だったらはじめから抱かれたがるな!)
584名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 20:59:38 ID:NPYLFLsY
これは?携帯だけだけど
ttp://courseagain.com
585名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 22:02:35 ID:+TN09UQo
久しぶりに来たら
とかげみずさんありがとー
586風と木の名無しさん:2008/02/14(木) 22:44:16 ID:9HuIDLps
島倉チヨコの日。

「そんなに私からのチョコが欲しいんですか?」
「…欲しいに決まってるだろ!!」

「どうぞ。」

「えっ!?くれんの…って何だこのへったくそな絵は…大仏か?」
「貴方の顔です!!」
587はっけん:2008/02/21(木) 16:40:16 ID:4V77a8J3
これはアメリカのゲームです。1度やってみてください。
これは、たった3分でできるゲームです。試してみてください。 驚く結果をご覧いただけます。
このゲームを考えた本人は、メールを読んでからたった10分で願い事が
かなったそうです。このゲームは、おもしろく、かつ、あっと驚く結果を 貴方にもたらすでしょう。
約束してください。絶対に先を読まず、1行ずつ進む事。 たった3分ですから、ためす価値ありです。
まず、ペンと、紙をご用意下さい。 先を読むと、願い事が叶わなくなります。
@まず、1番から、11番まで、縦に数字を書いてください。
A1番と2番の横に好きな3〜7の数字をそれぞれお書き下さい。
B3番と7番の横に知っている人の名前をお書き下さい。(必ず、興味の
ある性別名前を書く事。男なら女の人、女なら男の人、ゲイなら同姓の名
前をかく)
必ず、1行ずつ進んでください。先を読むと、なにもかもなくなります。
C4,5,6番の横それぞれに、自分の知っている人の名前をお書き下さ
い。これは、家族の人でも知り合いや、友人、誰でも結構です。
まだ、先を見てはいけませんよ!!
D8、9、10、11番の横に、歌のタイトルをお書き下さい。
E最後にお願い事をして下さい。さて、ゲームの解説です。
1)このゲームの事を、2番に書いた数字の人に伝えて下さい。
2)3番に書いた人は貴方の愛する人です。
3)7番に書いた人は、好きだけれど叶わぬ恋の相手です。
4)4番に書いた人は、貴方がとても大切に思う人です。
5)5番に書いた人は、貴方の事をとても良く理解してくれる相手です。
6)6番に書いた人は、貴方に幸運をもたらしてくれる人です。
7)8番に書いた歌は、3番に書いた人を表す歌。
8)9番に書いた歌は、7番に書いた人を表す歌。
9)10番に書いた歌は、貴方の心の中を表す歌。
10)そして、11番に書いた歌は、貴方の人生を表す歌です
588名無しさん@ピンキー:2008/03/03(月) 20:17:21 ID:e/WRlVHj
ほしゅ
589名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 02:27:29 ID:rQt7LeOC
hoshu
590名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 13:03:35 ID:ZPDfPCmQ
女とヤってお金が貰える♪
まさに男の夢の仕事!
出張ホストっておいしくない?
ttp://rootinghost.com/2ch/01_info.html
591名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 19:46:20 ID:Y+u0r3nl
保守
592名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 23:09:00 ID:nBNXXUwH
あげ
593名無しさん@ピンキー:2008/03/23(日) 01:42:44 ID:hfYhQd3f
保守
594名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 19:55:07 ID:T3SLIpRZ
保守
595名無しさん@ピンキー:2008/04/01(火) 16:25:24 ID:/Kqy9/ir
相変わらず大泉ヲタが必死
596名無しさん@ピンキー:2008/04/08(火) 19:14:29 ID:75RwUvPk
保守
597名無しさん@ピンキー:2008/04/22(火) 17:44:51 ID:+QpPg2SO
hosyu
598名無しさん@ピンキー:2008/04/24(木) 18:52:34 ID:DrNrGcYC
@
599名無しさん@ピンキー:2008/05/18(日) 21:21:08 ID:t3HGdYyr
age
600名無しさん@ピンキー:2008/05/31(土) 23:04:15 ID:E6Wxp6dh
東春600!
601名無しさん@ピンキー:2008/06/10(火) 14:55:17 ID:d8L1R4JG
保守
602名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 13:50:03 ID:037hUuXw
>>567
ハケンの品格で百合
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1168439201/

スレが移転したね。
603名無しさん@ピンキー:2008/07/27(日) 19:14:07 ID:3Mae/t2i
hosyu
604名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 03:29:57 ID:xuzk+kWi
保守
605名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 16:42:46 ID:UC/70jRK
保守
606名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 18:39:53 ID:/mASl7rl
保守!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
607名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 20:31:38 ID:bMH1KCXp
保守
608名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 23:14:58 ID:hUzxJjlz
ヤスケンとカトアイ
609名無しさん@ピンキー:2008/09/03(水) 23:46:54 ID:b5ej6rE6
んだ保守
610名無しさん@ピンキー:2008/09/05(金) 07:08:50 ID:tMz51EoA
【ドラマ】ハケンの品格 3人分働くハルコ
http://money6.2ch.net/test/read.cgi/haken/1174732245/
より
某魔法少女風に描いてみた。時間かかった割に色々とおかしい。
携帯から見ると更にグダグダだなぁ・・・
ttp://image14.bannch.com/bs/M302b/bbs/241289/img/0106476436.jpg

611名無しさん@ピンキー:2008/09/08(月) 06:18:31 ID:xXGRMuRw
久しぶりに保管庫行って読んできた。
スタンドバイミーがつらいところで未完になってるのが悲しすぐる(´;ω;`)
612名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 21:00:38 ID:PfNj4djL
まだ人いるのかな?保守ついでに東海林×春子エロなしです。

「最終回翌日のこと・上」

プルルルル。呼び出し音が鳴っている。
初めてかける、とっくりの携帯電話。
「あとで電話する」と言っておいたのに、もう20回も鳴ったまま
一向に出る気配がない。
どうしたんだろう。
まさか、気が変わって東京に・・・いや、そんなわけない。
とりあえずマンションに戻ってみよう。時刻は夜7時。

大前春子は昨日、何の前触れもなく俺の目の前に現れると、
いきなり福岡便の穴を埋め、大型トラックで去って行った。
やっぱり幻だったんじゃないか・・・と心配せずに済んだのは
賢ちゃんが一緒に見ていたからだ。
そして昨夜、福岡のとっくりから俺の携帯に電話があった。
――あいつが俺の電話番号を捨てずにいたなんて。
かくして、俺の携帯にあいつの番号が残った。
捨ててしまったアンケートの裏に書いてあったという、幻の携帯番号。
露と消えないうちに番号を登録しながら、俺はこの後のことを考えた。
家に戻って、下の階を気にしながら夜の大掃除を始めた。

翌日、ルームシェアを提案すると、とっくりは意表をつかれたのか
しばらく黙って聞いていた。
下心はない、あんたにこれ以上負担をかけたくないんだ、見てみてから
返事してもらっても構わない・・・。俺は誠意をこめて説明した。
「物件を見なくては何とも言えませんね」。とっくりは言った。
ちょうど昼休みだ、今見に行こう・・・俺はとっくりを車に乗せて
走り出した。
613名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 21:01:12 ID:PfNj4djL
「最終回の翌日のこと・中」

とっくりは名古屋駅に寄って欲しいと行った。荷物を置いてあるという。
ロータリーで待っていたら、バックパック一つ背負って戻ってきた。
「随分身軽だな」俺は思わず呟いた。
「雇って頂けなければそのまま帰るつもりでしたので」
そう答えると、とっくりは再び助手席に乗り込んだ。
あいつがどんな気持ちで名古屋に来て、この荷物をコインロッカーに
詰めていたのか・・・ふとそれを考えた。
抱きしめたくなった。
「下心はない」と言った手前、ぐっとこらえたけど。

車が発車しても、俺は饒舌になれず、沈黙が続いた。
助手席にいるとっくりを確かめたくて、信号待ちの時にあいつを見ると、
あいつも俺を見つめていた。
大前春子。
胸がいっぱいになる。
ふいにあいつが視線を外し、「青ですよ」と言った。

マンションについた。
俺は今朝干したばかりの布団をベランダから取り込むと、とっくり用に空けた部屋に
運び込んだ。
「ルームシェアのことはゆっくり考えてくれればいい。疲れただろう。
 仮眠でもとったらどうだ。これ、シーツも枕カバーも洗ってあるから。
 家を探しにいきたければ、休んでから行けばいい。いいところが見つかるまで
 荷物を置いてもらっても、泊まってもらっても構わない。
 スペアキーはここに置いておくから、いらなければ後で返してくれ。
冷蔵庫のものは何でも飲み食いしていい。寝巻きはあるか?
あ、風呂入るならガスのスイッチはここで・・・」
一通りまくし立てる間、とっくりは一言も喋らなかった。
「腹へったか?昼メシは?」
「ご心配なく」
「夜は歓迎会させてくれよ。フグでも食べに行こう、な。後で電話するから」
「・・・わかりました」
「・・・じゃ、・・・俺は社に戻るから・・・ごゆっくり」
俺が玄関に向かうと、とっくりはついてきた。そして外に出た時、あいつが誰かを呼んだ。
「東海林くん」
――え?・・・俺のこと?
「いろいろ有難う」
――何だって?
ドアが閉まる直前の俺は、さぞやマヌケ面だったろう。
614名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 21:02:02 ID:PfNj4djL
「最終回翌日のこと・下」

プルルルル。応答なし。
大前春子はまだ電話に出ない。
一抹の不安を抱えながらマンションに戻ると、部屋の中は昼間あいつを連れてきた
そのままだった。
だが、何かが低い音で鳴っている。
居間のテーブルを見ると、見慣れない携帯がサイレントで振動していた。
携帯を置き忘れたまま、部屋にでもいるんだろうか。
俺はあいつに提供した部屋の半開きのドアをそっと押した。
暗がりに居間からの漏れ灯りが差し込む。

大前春子。

大前春子は眠っていた。
昼間、俺が部屋の隅に積んでいった布団を枕に、コート姿のまま丸くなっていた。
よほど疲れていたんだろうか。
バックパック一つ背負って、見知らぬ土地にやってきた女。
断られたら帰るつもりだったとこいつは言った。
落ち武者みたいにいつも鎧をまとっているくせに、こんなに小さな女。
初めて見る寝顔。
猫のように丸くなって眠るその姿のいじらしさに、俺の視界は潤んだ。
――こんなところで寝て。風邪引くぞ。
起こそうと思ったが、思い直して毛布をかける。

時刻は夜7時半。
フグは明日までお預けだ。
今夜は東海林武特製スペシャル焼きそばでガマンしろ。
味に文句は言わせねえぞ。

おわり
615名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 21:38:37 ID:Q0t321/7
>>612-614さん
見てます見てます!
うれしい!
これからも是非続きを!
616名無し:2008/10/02(木) 07:29:23 ID:ytYVwlHj
ふぉぉ東海林武かわいいぜ…
617612:2008/10/03(金) 00:07:37 ID:QMgPv9yV
まだ人、いましたね。
コメントして下さった方、有難うございました。調子に乗って続編です。


「最終回翌日のこと・春子編・上」

目を覚ますと、すっかり夜だった。
「私としたことが・・・」
――後で電話するから。
いけない、今何時?
私は慌てて飛び起きて、寝ぼけ眼でドアを開けた。

居間には灯りがついていた。
何かいい匂いがする。
視界の先で、奥のキッチンから、懐かしいシルエットをした長身の男が振り向いた。
「起きたか」
「・・・」
「ちょうど良かった、今できたとこだ」
東海林武はフライパンから皿に何かを盛り付けた。
「どうした?コート脱いで座れよ」
――私としたことが。
よほど間抜けな顔で突っ立っていたらしい。
私はコートを脱ぐと、テーブルにつく。隅に携帯が置いてあった。
不在着信。確かめると、全て目の前の男からかかってきたものだった。
「長旅続きだったからな。疲れてたんだろう。今日はもう遅いし、泊まってけよ。
フグは明日にするから、これ食って早く休め。うまいぞ〜。
俺様特製スペシャル焼きそばだ。これ賢ちゃんも大好きでさ」
「・・・」
「食おう!さ、どうぞ」
東海林はビール缶を私に向かって傾けた。
私がグラスを差し出すと、かすかに微笑んでそれを満たす。
素直で邪気のない笑顔。いつも小うるさくて激しやすい性格のくせに、
この男は時々こういう顔をする。

憎らしい。

東海林が手酌をしようとしたので、私は缶を取り上げた。
彼は嬉しさを隠せない様子で返杯を受けている。
――これしきのことで。バッカじゃなかろうか。
いつの頃からか、この男への悪態のネタを探すことが習い性になっている。
一人のとき、思わず表情が緩むのを抑えることも・・・。
618612:2008/10/03(金) 00:09:41 ID:QMgPv9yV
「最終回翌日のこと・春子編・中」

「東海林くん。いろいろ有難う」
昼間、素直にそう言ったらひどく驚いていた。
でも彼は本当に甲斐甲斐しく私の世話を焼いた。
この部屋に向かうために二人で車に乗った時、私の名古屋での新しい生活が
始まろうとしていることを実感した。
名古屋駅のコインロッカー。追加分の百円玉を入れながら、昨日からのことを反芻した。
荷物を預けた時は、一寸先は闇だった。
「私を雇って頂けますか?」
断られても仕方がないと思っていたのに、あの不遜な男が私を受け入れ、
「よろしくお願いします」と頭を下げた。
荷物を積んで駅を出ると、
突然、彼が無口になった。横顔を盗み見る。

東海林武。

どうしてあなたはこんな可愛げのない女を見放さなかったの。
信号が赤になり、彼と目が合った。
どうして私はあなたを忘れられなかったんだろう。
どうして私はここにいるんだろう。
・・・いえ、答えはとっくにわかっている。
ふいに愛しさがこみあげて、どうしていいかわからなくなった。
視線を外すと、信号が助け船を出した。
「青ですよ」
何食わぬ顔で言えただろうか。

東海林の部屋はやけに片付いていた。会社の割り当てだという2DKのマンション。
仕事中毒だからなのか、まだ仮住まいの感覚が抜けないからなのか、
調度の類はごくシンプル。まだ開けていない段ボールも残っていて、やや殺風景だった。
この一年、彼がどんな思いでここに暮らしたかに思いをはせる。
ここを使ってくれ、と通された部屋は、小さなタンスとハンガーラック以外、
きれいに空けられていた。
東海林はベランダから布団を取り込んで次々と運びこみながら、あれこれとまめまめしく
私を気遣うと、慌しく事務所に戻って行った。

――ここが名古屋の家。今日からここで新しい生活が始まる。
東海林は拒絶を恐れているらしかったが、実のところ、とっくに心は決まっていた。
ふと体じゅうの力が抜けて、私は布団の山にもたれかかった。
太陽の匂いがする。温かい。

何だかほっとして、私はそのまま目を閉じた。
619612:2008/10/03(金) 00:10:49 ID:QMgPv9yV
「最終回翌日のこと・春子編・下」

意外なことに、「俺様特製スペシャル焼きそば」はなかなかのものだった。
この男の焼きそばパン好きはダテではなかったのだ。
「・・・さすが焼きそばまで天パなんですね」
「天パ言うな!っていうか焼きそばはみんな天パなんだよ!」
ばかばかしくも、懐かしい応酬。
思わず口元が緩む。
彼の前では初めてのことだ。私としたことが・・・。
東海林は不意に神妙な顔つきになり、穏やかに尋ねた。
「うまいか?」
――うん。
そのまま口にした。
「そっか・・・よかった」
――同じ釜のメシ。
東海林の好きな言葉。一年前初めて誘われた時、私はひどい言葉で撃退した。
いえ、撃退したつもりだった。なのに、今は・・・。
「美味しい」
もう一度、素直に言った。

――名古屋に来てよかった。
・・・これは、まだ胸にしまっておく。

おわり
620名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 00:58:52 ID:0Wc7CKuI
>>612
GJです。
ついに、鉄の女(?)陥落ですね。とっくり最高!

しかし、このドラマは本当に面白かった……
地味に上地も出てたなぁ。
621名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 22:06:41 ID:dH8AXJC3
超うれしい春子編まで!
二人ともかわいー
622名無しさん@ピンキー:2008/10/06(月) 22:33:35 ID:+46m2H4E
このスレさっき発見した……。
今更過ぎると思いますが「愛の流刑地」、死ぬほど萌えました。
ショージ主任のキャラが最高です。本当にドラマの中から抜けてきたみたいで。
いいものをありがとうございました。
623名無しさん@ピンキー:2008/10/21(火) 21:58:47 ID:4f8xf7oY
このスレの小説全て読んだ!

東海林と春子がブラウン管から出てきた感じ!GJ!

職人さん次作楽しみにしてるよ
624名無しさん@ピンキー:2008/10/23(木) 00:14:42 ID:4AfbDyvB
再放送で見たがハマってしまった
まだ最後まで見てないからここも我慢しようとしたができなかった
みんなGJ!
625名無しさん@ピンキー:2008/11/11(火) 15:47:33 ID:z2FfFilt
ほし
626名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 00:35:12 ID:Rkv3UZcP
こんな時代だからこそ何か一つ。
627名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 11:00:24 ID:MRD8P/85
つまみ食い


本社からシルスマリオのバレンタインのコラボ企画の試食品がここ、名古屋営業所にも届いた。
(実を言えば賢ちゃんがこっそり現品を送ってくれたのだが。)

そんな訳で東海林はご機嫌な様子でチョコを食べながら


「トックリ、お前も食う?」


「結構です。」


しかしながら甘い香りが大前の本能を負かした。


きゅるるる・・・


「・・・///!!」


「なんだ、腹減ってんならやるよ。」


「だから結構ですと・・・」


肩を掴まれ、唇が重なり合う。


そして甘い誘惑の舌が大前の本能をくすぐる。


(・・・なんかずるい。)


大前は東海林の舌にまだ固形で残っていたチョコレートを奪った。


「ずるいなお前。」


「大前です。」


つまみ食いしたチョコレートは、ミルクチョコなんかよりもっと甘い恋の味だった。



END
628名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 11:17:15 ID:Pfe+Ch3/
>>610
【ドラマ】ハケンの品格 3人分働くハルコ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/haken/1174732245/
板移転したよ。
629名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 09:01:33 ID:X876zJsZ
関連スレ
【幻のSP案】ハケンの品格36社目【柏崎原発派遣】
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/natsudora/1218953442/
「ハケンの品格」のセリフだけで1000目指すスレッド
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/tvsaloon/1178668505/
630名無しさん@ピンキー:2008/12/28(日) 01:03:38 ID:j7S0YDGA
どなたか投下を〜!
631627:2008/12/28(日) 18:40:11 ID:I3Gzvvii
はちあわせ


春子の次の派遣先は・・・会社近くの神社の巫女。

元日。

春子はおみくじの販売担当になった。

一方そのころ東海林は名古屋で2度目の初詣に出かけていた。

賽銭をすませ、新年の運試しにと、おみくじの場所へと足を進めた。

「おみくじ1回。」
「105円です。」

聞き慣れた声・・・

「トックリィ?!」

「こんな所でクルクルパーマに会うなんて・・・」

「と、とりあえずひかせろよっ。」

ゴソゴソ・・・・・

ひいたおみくじを春子に手渡し、読み上げてもらう。

「大凶。今年こそはクルクルにねじ曲がった髪をストレートにした方が安泰でしょう。とのことでした。」

「乱暴な嘘をつくなっ!貸せトックリ!」

みると恋愛運が大吉だった。

「正直に言えばか。」

「ちなみに私も・・・///」

みると春子も恋愛運が大吉だった。

「今年も一年よろしくな。」

「こちらこそ。」


さぁ、入籍も秒読みな、お二人でした。


グダグダですみません。。。
632627:2008/12/28(日) 18:41:39 ID:I3Gzvvii
春子も先におみくじひいてた設定です。
633名無しさん@ピンキー:2008/12/31(水) 20:53:02 ID:xtcKitz5
投下だ〜!!
ありがとうございました!
みなさんに来年も幸あれ(^O^)
634名無しさん@ピンキー:2009/01/07(水) 17:50:51 ID:AxUj9or2
ここにはもう誰もいないのでしょうか?
東海林×春子の新作も読みたいし、
以前あった途中のままで未完結な作品も気になります。
どなたか投下をー。
635名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 23:46:15 ID:fOyCDoNe
ほしゅ
636名無しさん@ピンキー:2009/02/01(日) 02:40:17 ID:+C4GqcRz
ほっしゅん。
637名無しさん@ピンキー:2009/02/06(金) 22:01:33 ID:BtCD+7p2
ほしゅ
638名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 20:53:42 ID:rgaU/tsm
とっくり〜
639名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 21:34:58 ID:hgsViMk/
なにか?
640名無しさん@ピンキー:2009/02/25(水) 15:42:58 ID:mTdy0EDr
春子の血液型って何型だと思う?

自分的にはO以外のどれかやと思うけど・・・
641名無しさん@ピンキー:2009/02/25(水) 18:14:20 ID:YDNggpCa
本人の血液型でいうと
春子=B
東海林=B
里中さん=AB
森ちゃん=O
なんだね

春子と東海林と里中さんはそのままのイメージだなあ
森ちゃんはAとかABっぽい感じするけど
642640:2009/02/25(水) 18:31:21 ID:mTdy0EDr
>>641
なるほど。
春子はA型な感じもしないでもない感じがする。
でも大体そんな感じってのは分かる。
643名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 18:59:51 ID:3Cg9ng+R
【最終回から3ヵ月後】

「契約は3ヶ月ということで」

――あれから3ヶ月
今日で私は、この営業所を去る。 同時にそれは、東海林のマンションを去ることを意味していた。

午後6時。
「時間ですのでこれで失礼します。」
誰に言うともなく挨拶をし、いつも通りに事務所を去ろうと立ち上がる。 なぜだか今日は、いつも居るはずの東海林の姿はなかった。
不意に、運転手たちのリーダー的存在である土屋が、 ストーブを囲んで集っていたところからおもむろに立ち上がり、 こちらへ歩み寄ってきた。それに他の運転手たちも続く。
「お疲れ様。この3ヶ月間いろいろあったけど、俺ら、あんたと一緒に働けてよかったよ」
この3ヶ月間、土屋たちと対立することもあった。 だが、彼らも日々の春子の生き様を見て、現在では春子のことを認めるようになっていた。
微笑み、差し出された手を取り握手すると、その場を後にした。

―――
マンションに帰ると、電気はまだついていなかった。 …東海林は一体どこへ行ったのだろう?
合鍵でドアを開けて中へ入り、ブーツを脱ぐ。 壁の電気のスイッチを手探りで探す。
「お疲れ様〜!!とっくりィ〜!!」
クラッカーの音と同時に、聞き覚えのある声が耳に響いた。 一瞬驚いて、何が起こったのか分からなかった。
部屋には即席ながらも、色紙の輪で作られた飾りが施されており、 目の前のテーブルには、ケーキやから揚げ、フグ刺しに東海林…もとい、焼きそばパンが並んでいた。

「今日でお前、契約終了だろ?」
「大前です」
「ん、だからほら、送別会!ほら、ここでだったらさぁ、“業務時間外”の付き合いじゃなくて“プライベート”な時間だろ?」
―“俺、考えただろ〜?”と、したり顔で自慢げに話している。
「…それで、業務時間内にサボってこんなことをしてたんですか?」
うれしさを抑えようと、わざとしらけたような口調で言い放つ。
「だってさぁ〜、運チャンたちが早く帰ってお前を驚かせてやれ、って言うもんだからさぁ〜、ね?」
「…ふ〜ん…」
「…すいません。 ――でもさぁ、今日でお前、ここ居んの最後なんだからさぁ、…いいじゃねぇか、な?」
東海林の“最後”という言葉が寂しく響いた。
今日でここに居るのも最後…
もしかしたら、この男に会うのも―…

「ほ、ほらこれフグ!お前死ぬほど好き、って言ってたよな?高かったんだけど奮発しちゃったよ〜!本場下関のやつだぞ〜?」
東海林はわざと明るく振る舞い、おどけて見せている。
それは彼なりの優しさなのだろう。

「…洗面所で手を洗って来ます」
「ぉ、おう!うがいも忘れんな〜?…っておい!そっちはトイレだぞ?とっくり〜?」
――
足早にトイレに向かい、鍵をかける。
途端、頬を伝う一筋の滴。

誰かに何かを祝ってもらうのはこれで二度目だ。
うれしい…
うれしい うれしい…
でも だめだ…
このうれしさに慣れてはいけない…
もうこれ以上傷つきたくない…
いつも心にブレーキをかけてしまう。                               ――つづく

》612さんの話の続きとして書かせていただきました。
644真実の月:2009/03/02(月) 16:33:12 ID:HmwLd5re
【最終回から3ヵ月後】A

―――
「お前さぁ、洗面所はそっち――…」
「……」
台所に戻ると、自分に振り向いた東海林と目が合った。彼は、私の目が赤くなっているのに気づいただろうか。
「…まぁ、いいや。じゃあさ、始めよう!な?まずは乾杯だ!!ほら、これ、グラス持って!」
彼がグラスにワインを注ぐ。甲斐甲斐しい働きぶり。さすが、「元」本社主任の営業マン。慣れている。

春子はビールよりもワインが好きだった。東海林はそれを知っていて買ってきてくれたのだろうか。そんな小さなことまでもがうれしかった。

「乾杯〜!!」
「……」
「…お前さ、もっとこう盛り上がれよ!わ〜 とかきゃ〜 とかよ」
「…わー」
「何だよ!その棒読みのわー ってよぉ!」
「言えと言われたので言ったまでですが、何か?」
フグ刺しを食べながら対抗する。流石下関、美味しい。
「いや、確かに俺は言えって言ったよ?!だけどさぁ、もっと楽しそうに笑って笑顔で言えよ!」
「わ〜!すごくうれしいです〜ありがとうございますぅ〜!!」
「裏声やめろって…ん?あれ?待てよ、その声どっかで聞いたな…あ!!お前、俺が賢ちゃんへのメール削除頼んだときの…!あの電話のときの森美雪…!!」
「…今頃気づいたんですか?遅っ」
「何か違うと思ったんだよな〜、ちっくしょ〜!!やっぱお前か!」
「大前です!」
「あ、でもさぁ。あの電話のとき、俺にお前と替わるかしつこく聞いてたのってもしかして―…俺がお前のことをまだ好きか試したんじゃ―…?」
「……」
テーブルを挟んで、東海林の顔をじっと見つめ、徐々に自分の顔を近づける。
「え…?何…?!まさか…ホントに…ッ?!」
東海林はうれしさで完全に動揺し、姿勢を正して目を閉じ、こちらに顔を近づけてくる。

――東海林の顔に付いた揚げ物のカスを取ってやる。きっとから揚げを作るときに飛んだのだろう。
「…付いてましたよ」
「…え?あ、あぁ、ありがとう」
目を開けた彼は、間の抜けた顔をしていた。少し意地悪だっただろうか。


645名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 23:08:19 ID:lZyuDk78
続きをお願いします!!
646名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 07:36:51 ID:FJbMUxw7
きゃぁぁちょううれしい!
647名無しさん@ピンキー:2009/03/07(土) 03:14:18 ID:MEeuLvWW
続き楽しみにしてます!
648名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 10:06:35 ID:MQWekB0F
里中×森チャン読みたい
649真実の月:2009/03/13(金) 22:05:33 ID:Gn92OHr0
【最終回から3ヶ月後】B

「…あ、あのさぁ、実はまだお前に話してないことがあってさぁ…」
「…何ですか?」
「……」
「……?」
いつになく真剣な顔の東海林。予期せぬ言葉に備えて、こちらも思わず身構える。
「実は――…」
「何ですか、さっさと言いなさい!」
「あぁ…、悪い。 実は俺――…本社に戻れることになりました〜〜!!」
東海林は満面の笑みで両手を上げて、万歳のポーズを取っている。
「…そうですか」
言葉こそそっけなかったが、うれしくて、瞬間微笑んでしまった。
――私としたことが…。
よかった… うれしそうな東海林の顔を見ると、心からそう思った。
「だーからもっとこうリアクションとかしろよ!…あれ?ってーか今、あんた笑った…?笑ったよな?!」
追求する東海林を無視してから揚げを頬張る。少し揚げすぎだったが、普段料理らしい料理をしない彼が、自分のためにそれを作ってくれたことがうれしかった。
「ちょっと!なぁ、今笑ったよな?ほら、もう一回!もう一回だけでいいから笑ってみろって!な?」
「嫌です。業務時間は終了しました。私に、もうあなたの指示に従ういわれはございません。」
「おまッ…!お前がいつ俺の指示に従ったよ?!えぇ?」
「お自給の分はきっちりと働きましたが、何か?」
「ま、まぁあんたの働きっぷりは認めるよ。3ヶ月前の宣言通り まぁ、社長賞とまではいかないけどさぁ 俺が本社に戻れるように動いてくれてたんだろ?…ありがとう」
思わず、まっすぐな彼の視線から目を逸らす。
見てはいけない… 今見ると、別れがまた辛くなる―…
「…バっカじゃなかろうか!私は別にあなたのために動いていたわけではありません。お自給の分の働きをしたまでです!」
言い切ると、傍にあったグラスを取り、ワインを飲み干した。
精一杯の照れ隠しだった。いつものように、東海林が言い返してくるのを待ち構える。だがそれは、違う形で返ってきた。
「フンっ…可愛くね〜女だな。でも俺はそんな女に惚れちゃったんだよな〜…」
彼は、背に体重を預けたまま、天井を仰ぎ見ている。
どう答えればいいのか分からなかった。この男はいつもそうだ。人が思いつめて言えない言葉を正面からさらっと言ってのける。この男はズルい。

650真実の月:2009/03/13(金) 22:06:29 ID:Gn92OHr0
【最終回から3ヵ月後】C

「…俺、考えたんだけどさぁ、俺がずっとお前と一緒に居られる方法」
「……」
「やっぱりこれしかないと思うんだよな〜…」
彼はスーツの内ポケットから小さな箱を取り出し、開けた。
――婚約指輪。
「冗談はそのくるくるパーマだけにしてくださいと、以前にも申し上げたはずですが。」
「――…前にも言ったけど俺は本気だ!俺と結婚してほしい…!!」
視線がぶつかる。――二度目のプロポーズ
彼はどんな思いで私に二度も結婚を申し込んだのだろう。
でも…断らなければ。この人にはこの人の人生がある。私にはそれを奪う権利はない。どこかの頭取の令嬢と結婚した方が、幸せな人生を送れるに決まっている―…
そんなことを巡らすうちに、東海林が私の隣に座った。指輪を持っている。
「…結婚しよう、とっくり …いや、…春子」
初めて呼ばれたファーストネーム。
「な…?」
思いつめたような表情の東海林。でも、ここで振り切らなければ――…この人のためにも
「駄目です」
言った瞬間、東海林の表情がみるみるうちに曇る。こんな顔をさせたい訳ではない。でも―…
「どうしてだよ…?!」
「あなたのことが好きではないからです」

不意に体に衝撃があった。気づいたときには、東海林に抱きしめられていた。大きな背中――温かい
「―…じゃあなんでそんな顔してんだよ?」
耳元で響く優しい声。
瞬間、温かい滴が一筋頬を伝う。
人前で泣いてはいけない。弱さを見せてはいけない。こと、この男の前では――…
悟られないように涙をぐっとこらえる。一滴の涙は、東海林のスーツに染み込んで消えていった。まるで、悲しみを吸い取ってくれるかのように。

今日は月がやけに明るい。
彼の腕の中で、窓越しに見える月だけが真実を知っていた――

651真実の月:2009/03/13(金) 23:35:56 ID:llpXU9f0
―――
翌朝5時
辺りはまだ薄暗い。
まとめた荷物をバックパックに詰め込む。そして全て詰め込み終えると、忘れ物がないか辺りを見回す。
ふと見ると、テーブルの上には昨晩のまま指輪ケースが残っていた。
夕べのことが脳裏をかすめる。

「―…じゃあ何でそんな顔してんだよ?」

彼はそう言った。私はあの時、どんな顔をしていたのだろう。東海林に抱きしめられた時の感覚がよみがえる。
温かく大きな背中――
でも今日、私はその男の前から居なくなる。こうなることは初めから分かっていたはずじゃないか。大丈夫。3ヶ月前に戻るだけだ。
手紙と合鍵をテーブルの上に置くと、その場を後にした。

“ お世話になりました。       大前 春子 ”

652名無しさん@ピンキー:2009/03/14(土) 00:02:41 ID:gXyhwNHL
支援カキコ

wktk
653真実の月:2009/03/14(土) 00:19:59 ID:JiqQLOv+
――――――
【東海林 武 編】
―――大前 春子が去ってから半年後
10月1日。
今日は、東海林 武がS&F本社に戻る日だ。大前 春子の働きかけのおかげで、異例の早さでの本社復帰となったのだった。
少し緊張した面持ちで、本社ビルに足を踏み入れる。みんなは自分をどんな顔で迎えるのだろう。そんなことばかりが気がかりだった。
エレベーターが着いた。廊下を歩いていくと、懐かしいフロアが見えてきた。パソコンのキーボードを叩く音に、話し声が聞こえる。自分は戻ってきたのだ、と実感した。
ドア付近で中の様子を覗いていると、背後から聞き覚えのある声がした。
「ちょっとあなた、早く入んなさいよ!そんなとこに突っ立ってたら邪魔でしょー」
振り向くと、そこには同期の黒岩 匡子が立っていた。彼女は驚いた様子だった。
「…え?ちょっと、東海林君?!」
その声を聞きつけた他の社員たちがこちらに集まってくる。
「え?!東海林先輩…!?」
「東海林先輩…!お帰りなさい」
みんなは温かく自分を迎え入れてくれた。思わず涙腺が緩む。が、俺は男だ!ぐっとこらえ,平静を装った。
「お〜う、みんな!ただいま!」
「東海林さん!お帰りなさい!」
賢ちゃんも駆けつけてくれた。まるでご主人の帰りを待ち構えていた子犬のようにうれしそうな顔をしている。
小笠原さんと、浅野(…だっけか?)と、(派遣…じゃなく正社員になったって賢ちゃんがメールで言ってたっけ?…の)森 美雪もいる。
「賢ちゃ〜ん!ただいま!」

「お、東海林!着いたか、お帰り」
「部長〜!!ご無沙汰しております〜」
「いや〜、みんなを驚かせようと思ってね。お前が帰って来ることは内緒にしておいたんだよ」
部長の前ではスイッチが切り替わり、自然と営業マンモードになっていた。悲しき性だ。
「あ、そうだ。それからねぇ、今日はお前ともう一人、派遣が増えることになってるから」
「…派遣?」
「お!ちょうど来たよ。こっちこっち」
部長が手招きして誰かを呼ぶ。瞬間、まさか、という期待が生まれ振り返る。
みんながぽかんと口を開け、その人を見ていた。

654名無しさん@ピンキー:2009/03/17(火) 02:04:24 ID:FllAYlhC
早く続きをっっっ
655真実の月:2009/03/17(火) 13:48:03 ID:ZT25sX+B
―――
大前 春子だった。
半年ぶりの再開。
「とっくり…!!お前…ッ何でここに居るんだよ!」
これは夢なのか?! 心底驚いた。とっくりは俺を一瞥すると、部長に向き直った。
「ちょッ…お前!無視すんなよ!」
「…部長、私が働くのはどちらの課でしょうか?」
「あぁ、君にはこの営業二課で働いてもらうから。主任は里中だ。」

「大前さん、今日からまたよろしくお願いします。」
「お久しぶりです。里中主任。」
なんだよ、賢ちゃんの名前は呼ぶのかよ!
「だからスルーするなっつってんだろ!オイっ!」
半年前の俺のプロポーズなどまるで無かったかのように、とっくりは平然としていた。再開できて一人でこんなに興奮してる俺がバカみたいじゃねーか…

「あぁ、東海林も大前君と同じ課に就いてもらうから。それじゃあ二人とも、よろしく頼むよ」
「はい!部長」
部長はそう言うと、デスクから立ち上がり、フロアを後にした。

「東海林さん、また一緒に働けるなんてうれしいよ、よろしくね」
賢ちゃんは相変わらずいい奴だ。
「お、おぉ、賢ちゃん!またよろしくな!」
そう言いながらも、実は上の空で、先ほどからずっととっくりを目で追う俺がいた。
話したいことは山ほどあった。手紙だけ残して出て行ったこと、プロポーズのこと――はここでは話しづらいだろうし…、「用があれば、私からかけます」とか言いながら、結局一回もかかってこなかったから、あいつの携帯の番号だってまだ知らないままだ。
そして今、一番分からないのは、どうしてあいつがここに戻って来たのか、だった。
森 美雪が離れる隙を見て声をかけよう。よし、今だ…!

「おい、とっくッとっくり…!ちょっ、ちょっと」
――と、ちょうどその時、フロアに9時のチャイムが鳴り響いた。
「業務時間です。 里中主任、私は何をすれば?」
「あぁ、じゃあ―…この統計をグラフにまとめて下さい。」
「分かりました。」
肩透かしをくらった気分だった。しょうがない。昼休みまで持ち越しだ。
656真実の月:2009/03/17(火) 14:38:22 ID:ZT25sX+B
昼休みまでの間、俺は時計と、自分のデスク右斜め前の女のことばかりが気になって仕方が無かった。
――昼休みを告げる12時のチャイムが響く。
待ってました!
とっくりが席を立つのを確認すると、周りに悟られないように自分も席を立つ。――と、後ろから声がかかった。
「東海林さん、お昼食べに行こうよ!」
賢ちゃんだった。
「賢ちゃん、ごめん!俺ちょっと用事あるから先行ってて、な?」
「うん」
急いでとっくりを追いかける。エレベーターの前に姿はなかったが、俺にはあてがあった。
きっといつもの定食屋に違いない。あいつはさばの味噌漬けが好物だ。

――――定食屋
勢いよく定食屋のドアを開け、店内を見回す。――が、そこにとっくりの姿は無かった。
…あれ?どこ行ったんだよ、あいつ。やっぱり瞬間移動か…?!

――――S&F
結局、昼休みも話せなかった。あいつは12時59分に戻ってくると席についた。そして、俺が何か口走ろうとした瞬間に1時のチャイムが鳴り響いた。今日はどうなってるんだ?タイミングが悪い。
こうなったら、仕事帰りにcantanteに行こう。夜にはあいつも帰ってきて、ステージでフラメンコを踊っているはずだ。あいつのフラメンコは綺麗だ。正直、俺は何度か見とれてしまった。

――――cantante
仕事を早く切り上げ、バスに飛び乗る。これでやっと話せる。胸の高鳴りを抑えながらドアを開け、店内を見回す。
ステージでは女がフラメンコを踊っている。とっくり?
――が、振り返った女の顔は彼女ではなかった。
「あら〜、クルクルパーマちゃん。いらっしゃ〜い。お久しぶり。1年ちょっとぶりかしらねぇ」
店主のママが久しぶりの再会を喜びながらこちらへやって来た。でも俺は今、それどころではない。
「お久しぶりです。…あの、とっくり―…春子さんは?」
「今日はまだ帰ってないのよ〜、ごめんなさいね。いつもならもうとっくに帰ってる時間なのに。何処行っちゃったのかしら?」
まだ帰ってない…?おかしい。今日もあいつは定時きっかりに帰ったはずだ。もう8時過ぎなのにどこ行ったんだよ?
その後、ママに勧められてワインを飲んで待つことにしたものの、俺が店に居る間中、あいつは一向に姿を見せなかった。
657真実の月:2009/03/17(火) 15:44:42 ID:ZT25sX+B
【大前 春子 編】
―――
春子は、東海林のマンションを出てきたものの、特に行く当てが決まっている訳ではなかった。
公園のベンチに座り、朝食を取る。早朝の公園にはまだ誰も人がいなかった。サンドイッチを食べ終えると、不意に携帯が鳴った。名前の表示を見ると、ハケンライフ マネージャーの一ツ木さんだった。
「…はい、大前ですが、何か?」
「あぁよかった、出てくれて〜。いや、大前さん、確かあなた初生雛鑑別師の資格持ってましたよね?」
「持ってますが、それが何か?」
「いきなりで申し訳ないんですけれども―…明日から3ヶ月間の仕事なんですが―…今日―…出て来られますでしょうかねぇ…?」
「…分かりました」
この人はいつも腰が低い。でもそれは会社と派遣社員を繋ぐためには必要な姿勢なのかもしれない。
「ホントですか?!いや〜、ありがとうございます!あ、じゃあ私、今から迎えに行きますんで。今、大前さんどちらですか?」
「名古屋ですが、何か?」
―――
かくして私は、4月から6月までの3ヶ月間、保科養鶏場で働くことになった。
春子は手早くひよこのオスとメスを分別していく。その速さはまさに神業だった。それは、経営者のタツさんこと保科 達三も関心するほどだった。
この職場には、年配の社員が多かった。最年少でも、春子のふた回りほど年上だった。
「春ちゃーん、そろそろ上がってー?昼にしよー」
「はい」
都会からほんの数分の場所にあることを忘れてしまいそうになるほど、和やかだ。
3時には決まって、タツさんの奥さんがみんなに和菓子を振舞ってくれた。
春子には、そんな職場の雰囲気が、どこかツネさんたちのいる魚河岸と重なって見えた。
だからこそ、この雰囲気に馴染まないように、社員たちとは距離を置いてきたつもりだった。
でも、彼らはそんな私を受け入れてくれた。
―――
午後6時。
「契約終了です。では私はこれで」
あくまでも事務的に挨拶をして、いつも通りに職場を去る。そうしなければ、涙が零れ落ちそうだった。
「おう、春ちゃんお疲れ様。あんたが来てくれてほんと助かったよ。またいつでも来な」
背中越しの声は温かかった。振り返らない――つもりだった。
「…お疲れ様でした」
口元を緩めてみんなを見る。ありがとうございました。
いつか森 美雪が言っていた言葉が浮かんだ。「こんな思いするぐらいなら私、派遣、辞めます…!」
確かに別れは辛い。でも私は歩んでいかなければならない。それがわたしのルールだから――…

658真実の月:2009/03/17(火) 16:54:38 ID:ZT25sX+B
―――
養鶏所からしばらく歩いた所で、携帯が鳴った。着信表示を見ると、一ツ木さんだった。
「…はい、大前ですが、何か?」
「あぁ、大前さん!確か今日で養鶏所の仕事、契約終了でしたよね?お疲れ様です。」
「それが何か?」
「実は―…明後日からのウエディングプランナーの仕事に空きが出てしまって困ってるんですけど――…大前さん資格持ってましたよね?それでですねぇ――…3ヶ月間空きを埋めてもらいたいんですけど――…」
「…分かりました」
「ホントですか?!いや〜、ホント助かります〜。では明日14時に、うちの事務所にいらして下さい。それじゃあ、よろしくお願いします〜。」
―――
かくして7月から9月までの3ヶ月間は、結婚式場アンジェで働くことになった。
そこには、新人からベテランまで様々な年齢層の女性スタッフが計7人いた。オーナーの沢崎 敏彦は、中肉中背の人のよさそうな男だった。だいたい50代後半ぐらいだろうか。
春子の働きは、ベテランスタッフをも圧倒するものだった。
予定よりもお腹が大きくなってしまった新婦のドレスを、見事な手さばきでアレンジして応急措置をとったり、ウエディングケーキが渋滞に巻き込まれて届かない時には、新郎新婦が発注したのと同じものを、式場の調理場で自ら見事に作り上げた。
その活躍に、オーナーの沢崎は春子を正社員として迎えたがった。
―――
午後6時。
「契約終了ですので、私はこれで。」
「大前さん、やっぱり気持ちは変わらないのかな?君さえよければ是非うちのスタッフとして迎えたいんだけど…」
「…残念ですが」
「…そっか、それなら仕方ない。まぁ、また気が変わったらいつでもおいで。」
「…失礼します」
“いつでもおいで”と言う言葉は残酷だ、と思う。今まで何もすがるものが無かったから、私はここまでやってこれた。
期待を持たせるより、むしろそこできっぱりと終わってくれる方がいい。
―――
アンジェを出てしばらくすると、携帯が鳴った。いつものパターンだ。着信表示を確認せずとも誰からの電話かは分かった。一ツ木さんだ。
「…また空きですか。」
「あぁ、大前さん。契約終了お疲れ様です〜。今度は空きじゃないんです。実はねぇ、またS&Fの方からあなたの指名依頼が来てるんですけど――…どうしますか?」

659真実の月:2009/03/17(火) 17:23:54 ID:ZT25sX+B
―――――
10月1日。
私は今日付で、再びS&F本社に配属となった。契約期間は3ヶ月。
フロアに入ると、見慣れた後姿があった。東海林 武――。部長と話しているらしい。
――と、部長が私に目を留め、呼び寄せた。彼は驚いた様子で私を見ている。
「とっくり…!!お前…ッ何でここに居るんだよ!」
彼を見ると、いつもの様に平然としていられそうになかった。顔を背ける。
「…部長、私が働くのはどちらの課でしょうか?」
「あぁ、君にはこの営業二課で働いてもらうから。主任は里中だ。」
彼は私に何か聞きたそうな様子だった。でも、私はきっとそれに応えることは出来ない――

「春子先輩!また一緒に働けるんですね!!あ、私、ここの正社員になったんですよ?」
森 美雪は相変わらずだった。
「それは前に聞きました。」
彼女は私の携帯の留守番電話に時々メッセージを残していく。それも、時間いっぱいまで。
「ちゃんと聞いてくれてたんですね、留守電!あ、そうだ!私、お茶淹れるの前より上手くなったんですよ?淹れてきますね!」
彼女が給湯室へ行くと、立ち代りに東海林がやって来た。
「おい、とっくッとっくり…!ちょっ、ちょっと」
――彼が私を呼んだ瞬間、就業開始のチャイムが鳴り響いた。
助かった…。
「業務時間です。」
それを口実に、私はデスクについて仕事に取り掛かった。東海林は口惜しそうな表情を浮かべ、渋々自分のデスクについた様子だった。

「あ、そうだ。東海林さん、今度企画募集があるんだ。これ」
「企画募集?」
東海林は主任から社内通知の紙を受け取り、それを見ていた。
「うん。東海林さんも出すでしょ?」

企画募集――…
東海林の企画が勝ち上がって社長賞を取れば、彼は以前のように部長の信頼を取り戻せるだろう。
おそらく里中主任もそれを望んでいる。

660名無しさん@ピンキー:2009/03/21(土) 04:55:53 ID:PcEX8EdN
続きお願いします!!
661真実の月:2009/03/21(土) 15:11:10 ID:NynfNVWa

―――
【東海林 武 編】

あいつ…結局店に顔見せなかったけど、どうしたんだろ…?
――って、ダメだ!せっかく本社に戻ったんだから企画考えないとな。うん、企画企画。
バスに乗り、つり革につかまりながら、窓の外を眺める。

「ねーねー、彩香はクリスマスどうすんの?」
「あ、やっぱり津田君とデート?!」
「まぁーね」
女子高生たちの会話が耳に入ってきた。何やらクリスマスの予定を話しているらしい。
「いいな〜。あたしも彼氏欲しい!!」
「その指輪も津田君から貰ったんでしょー?うらやましー」

…クリスマスねぇ もうそんな時期か。今年は久々に賢ちゃんとパーティーでもするか。
そうだ…! 瞬間、閃きが浮かんだ。

――――S&F
「賢ちゃん、俺、思いついたんだよ!」
「え?どうしたの、東海林さん?」
「クリスマスケーキだよ!」
「クリスマスケーキ?」
「この間、テレビで見たんだよ。ほら、イギリスかどっかの国のクリスマスケーキで、中から指輪が出て来た人が幸せになれる――って奴!あれをヒントにしてケーキを作る――ってのはどうかな?」
「あぁ、プラム・プディングだね?それいいよ、東海林さん!」
「だろ?!それでさ、生地は得意先のシルスマリオのチョコを使えばいいんじゃない?」
俺は、俺の企画に賛同してもらえたことがうれしかった。やっぱり賢ちゃんは分かってくれてるよな。うん。
「でも――、クリスマスケーキって、どっちかって言うと生クリームに苺が乗ってる、っていうイメージがありません…?」
俺たちの話を隣で聞いていた浅野が話に入ってきた。入社2年目のくせに。
「ん―…言われてみれば確かにそうかも。クリスマスだからみんな見た目に華やかなケーキを買っていくかもしれない…」
賢ちゃんも浅野に同意を示した。俺としてはおもしろくない。
「じゃあ―…どうすんだよ?普通のケーキじゃ企画にならないんじゃない?」
少しふて腐れた態度で質問を返し、様子を伺う。
662真実の月:2009/03/21(土) 15:58:23 ID:NynfNVWa
「…あの!小さなショートケーキをいくつか組み合わせて、1つのホールケーキにする、っていうのはどうでしょう?」
今度は森 美雪だった。
「ショートケーキ?」
「はい…。私、ケーキバイキングによく行くんですけど、その店、いろんな味の小さなケーキが少しずつ食べられて、女性客にもすごく人気で―…」
「それ面白そう!いろんな味が楽しめた方がお得感もあるし!」
「うん。森君、そのアイディアすごくいいよ。」
「ホントですか…?!」
浅野と賢ちゃんが立て続けに森 美雪の意見に賛同した。どうして元マーケティング課のメンバーたちはこうも人の企画に口を挟みたがるのだろう。発案者は俺だぞ?
「でもさ、それだといろんな種類がある分、コストが掛かっちゃうんじゃないの?」

「スポンジ生地をチョコとプレーンの2種類に限定したらどうかな?それで大量に小麦粉や卵を買い込んだら、少し割り引いてもらえないかな…?」
「そうですね!スポンジ生地が同じ方がホール状にした時、綺麗に円くなります!」
「あ、でも―…カップルで食べるにはショートケーキが2つでホール状にはなりませんよね…?」
「そっか―…、そうですね…」
俺の企画が動いていく。次々にアイディアが生まれては、次第に形作られていく。それは俺にとって、今までにはない経験だった。自然とみんなが1つになっていく。こんなのも悪くはない。
「何もホール状にこだわることないんじゃないか?そうだな、例えば―…ケーキを四角にしたらどうかな?」
「四角…ですか?」
「ほら、四角なら生地を切るときに無駄がなくて済むし。そうだ…!小さな長方形のケーキを2つ組み合わせて正方形になるようにすれば、2種類の味が楽しめる!」
「いいですね、それ!」
「それに生地は2種類でも、トッピングやクリームの味を変えればいろんなバリエーションが楽しめますね!」
「好きな組み合わせが選べる、自分だけのMYケーキですね!」
俺の提案に浅野、賢ちゃん、森 美雪が次々に賛同した。なぜだろう?部長に褒められるよりもうれしいような気がした。

「MYケーキ?MY……」
「…どうしたの?東海林さん?」
「…え?あぁ 賢ちゃん、生地にさぁ、米粉を使ってみたらどうかな?」
「米粉を…?」
「うん。なんかこう、もっちりした食感が出てさぁ、珍しいんじゃないかな?」
「うん、面白そう」
「だろ?でさ、名前は――…」
手元にあったメモ帳に書き記し、それをみんなに見せる。
「バーン!“米(MY)ケーキ”!!――どう?」
「…またダジャレですか」
とっくりが一瞥してきた。懲りないですね、という目だった。
「うっせーよ、とっくりッ!って聞いてたのかよ!お前は黙ってろ!」
「大前です」
「東海林さん、早速メニューの街頭アンケート採ろう」
「よし、分かった。じゃあ俺今からアンケート、作るわ」
「出来ました」
「え?」
とっくりは最後のキーを打ち終えると、パソコンの画面を見るように示した。俺たちはとっくりの席を囲み、そのパソコン画面を覗き込む。
「…出来てる」
「流石…大前さん」
「春子先輩すご〜い」
「大前さん、ありがとうございます」
俺たちの驚きを物ともせず、とっくりは平然としている。
「…ところで、ケーキの中に入れる指輪の件はどうするんですか?」
「あ〜…、指輪か―…」
「ブランド物だと―…コストが掛かりますよね。全部のケーキに入れるのは無理ですね…」
「でも、ブランドとコラボすれば、売り上げはかなり見込めるかも」
「じゃあさ、24日に売るケーキ1つだけにブランドの指輪を入れる、っていうのはどう?宝くじ感覚でおもしろいんじゃない?」
「それならコストも抑えられて、かつ売り上げも見込めます!」
「よし!じゃあ決まりだな!」

663真実の月:2009/03/21(土) 16:00:19 ID:NynfNVWa
――
アンケート1000部の印刷が完了した。
「それじゃあ街頭調査に行きましょう。みんな席をはずすとマズいので、大前さんと東海林さんは残ってください。」
「え…?俺も残るの?!でもこれ俺が発案者だし、俺行かなきゃ――」
「じゃあ、森君、浅野君、行こう」
「はい!」
「行きましょう!」

賢ちゃんは俺の言葉を遮ると、部下二人を促した。きっと俺に気を使ったのだろう。三人は、何やら意味あり気な顔で微笑むと、フロアを後にした。そんな気、使わなくていいのに。
とっくりを見やると、パソコン画面をにらみ、黙々と作業を続けている。全く、この女は分からない――
そんな事を考えている間にも、「俺たち」の企画はどんどん動き出す。俺一人ではなく、みんなの力で。それが何だかうれしかった。

664真実の月:2009/03/21(土) 17:39:24 ID:NynfNVWa
―――
【大前 春子 編】

「主任、小麦粉確保できました。」
「ありがとうございます。早いですね」
「それから明日、保科養鶏場へ向かってください。卵を安価で分けてくれるそうです。」
先ほどコピーしておいた地図を渡す。
「分かりました。大前さん、ありがとうございます。」
里中主任は、私が協力的な事に一瞬驚いたような顔を見せ、次には笑顔になった。彼は、東海林と再び一緒に仕事が出来ることがうれしいらしかった。

「それじゃあ、あとは指輪ですね!」
浅野も妙にやる気だ。
「アンケート結果では――ペティットが人気ですね」
「ペティット?何それ?」
東海林が焼きそばパンを頬張りながら尋ねた。食べるかしゃべるかどちらかにすればいいものを。
「今流行の、新人デザイナーのブランドです。ハートをモチーフにしてる作品が多くて、すごくかわいいんですよ?」
森 美雪が答えると、東海林は曖昧な返事を返した。

「森 美雪!」
資料作成の仕事が一段落つくと、すっくと立ち上がり、森美雪を呼ぶ。
「…はいッ!何ですか、春子先輩?」
「外回り、行くわよ」
私はこのところ、森 美雪と営業の外回りの仕事に出ている。流石に派遣社員単独で営業に出るわけにはいかない。そこで、正社員の彼女を同行させている、という訳だ。
「え、あ、ちょっと…!待ってくださいよ、春子先輩〜!!」

665真実の月:2009/03/21(土) 17:41:16 ID:NynfNVWa
―――
【東海林 武 編】

――――ペティット本社
正面玄関はガラス張りで、中央には、何やら現代的な赤いパブリックアートが設置されていた。
それほど大きな建物という訳ではなかったが、入り口前には警備員が2人配備されていた。
受付でアポの確認を済ませると、俺は会議室へ通された。
薄いクリーム色の壁は、貼りかえられたばかりの、真新しいのりのにおいがした。がらんとした部屋に円形のテーブル。
俺は、入り口付近の椅子に座った。
「お待たせして申し訳ありません。」
10分後、お詫びの言葉を述べながら一人の男とその秘書が入ってきた。男は30代前半くらい、といったところだろうか。やや派手な紫色のネクタイを締めている。こちらも椅子から立ち上がり挨拶をする。
「いえいえ、そんな。お気になさらないで下さい。あ、どうも初めまして。私、株式会社F&S営業二課の東海林 武と申します。本日はお忙しい所、お時間をいただきましてありがとうございます。」
「ペティット社長の沢崎 克也です。」
お互いに名刺を交換し、席につく。
「それで、今日はどういったご用件でしょうか?」
「はい。実はですねぇ―、この度わが社の企画でクリスマスケーキを作る、というものが出ておりまして」
「…ほう、クリスマスケーキ?」
「はい。イギリスのプラム・プディングをイメージしたものなんですが――中から指輪が出てきた人には幸せが訪れる、というもので――それでですねぇ、その中に入れる指輪に、是非とも社長のデザインされた指輪を使いたい、と考えている次第なんですが―…」
「ハハハ… ご冗談でしょ?ケーキに指輪を入れるなんて。指輪が油で汚れてしまうことくらいあなたにもお分かりでしょう?」
「企画にはどうしても御社の指輪が必要なんです!どうか、是非御社の指輪を――」
「せっかくの私の作品をケーキの中に放り込む…?冗談じゃないですよ、お断りします。私はこれで失礼させてもらいます。」
「いや、待ってください社長…!そこを何とかお願いしますよ!私たちは真剣なんです!社長…!!」
「お引取り下さい」
社長は会議室を出て行った。秘書もそれに続く。ドアの音が静かな会議室に無常に響いた。

――――
その日の夜。
俺と賢ちゃんは、フロアでビールを飲みながら、近況報告をしあった。
「賢ちゃん…ペティットの指輪、交渉に行ったけどダメだった… “ケーキに私の指輪を放り込むなんて冗談じゃない!”――って断られちゃったよ…」
「…そっか――…でも大丈夫だよ。東海林さんの思い、きっと社長さんにも伝わるよ」
「…そうだよな?こんなに頑張ってるんだもんな、俺たち」
「うん、そうだよ」
「じゃあ――…明日も頑張ってみますか!」
「うん。頑張って、東海林さん」
「賢ちゃん…、ありがとな」
賢ちゃんはいつだって俺を励ましてくれる。仕事でミスした時も、女に振られた時も、ずっと傍に居て俺の話を聞いてくれた。その励ましに何度救われたことか。
ありがとう、賢ちゃん。

666真実の月:2009/03/22(日) 13:00:53 ID:N2EDWVct
―――
【大前 春子 編】

今日も外回りの仕事をこなす。オフィス街はサラリーマンで溢れている。今日はいつもより少し寒い。森 美雪は缶コーヒーを買いに行ったっきり戻ってこない。
一体何処まで行ったんだか。

「社長…!!お願いしますよ、社長…!もう一度お話を―…!」
「いい加減にしてください!」
耳慣れた声が聞こえた。声の方向に目をやると、それは東海林 武だった。彼は、ペティット本社前にタクシーで乗り付けた社長を待っていたらしい。
必死に社長に話しかけるものの、社長は聞く耳持たない様子だ。ほどなく警備員に抑えられ、社長から引き離された。

「……」

「春子先輩、お待たせしました!遅くなっちゃってすいません!これ、春子先輩の分です。 …?どうしたんですか?」
「…行くわよ」
「…?はい」

――――
夜。
春子は今日もカレンダーの日付を斜線で消す。あと1ヶ月と8日…。もうすぐ12月だ。
街はクリスマスムード一色、イルミネーションで輝き、みんな浮かれている。そんな中、自分だけが置き去りにされているような感覚だった。
幼い頃に両親を亡くした春子にとって、クリスマスは昔から苦手な存在だった。
眠る前に、机の引き出しから指輪を取り出し、それを眺める。東海林からもらった婚約指輪――。
それは、再びF&Sへの派遣が決まり、Cantanteに着いた夜、荷物を整理していた時にバックパックの奥から出てきたのだった。
そして、いつしかこの指輪は無自覚のうちに、春子の心のよりどころとなっていた。
667真実の月:2009/03/22(日) 13:01:42 ID:N2EDWVct
――――
翌日 朝。
最近会社へ向かうバスの中で、つい睡魔に襲われる。
その日、春子は睡魔と闘っている最中に、自分の左手に婚約指輪がはめられたままであることに気がついた。昨夜はめたまま寝てしまったのだ。途端に目が冴える。
「大前さん、おはようございます」
バスの後方から声がかかった。里中主任だった。この人はどうしてこういつもタイミングが悪いのだろう。
里中に見つからないように急いで指輪を外すと、ポケットにしまい込んだ。
「…どうかしましたか?」
私の動揺を感じ取ったのか、主任が不思議そうな顔で尋ねてきた。
「…いえ、別に」
この人は変なところで鋭い。言葉を濁して誤魔化すと、バスがちょうど停留所に着いた。
助かった…
バスから降りると、後ろで自分の名を呼ぶ主任の声を無視して、早足で会社へ向かった。

――――cantante
その日店に戻ると、ポケットに入れていたはずの指輪が無いことに気づいた。
大変だ…!!どうしよう…、何処で落としたのだろう…?見当もつかなかった。
そしてとりあえず、会社へ向かうことにした。

――――S&F
午後10時12分。
誰もいないフロアはしんと静まり返っていた。照明は僅かしかついていない。デスクの下を懐中電灯で照らしながら探すも、なかなか見つからない。
あんなに大切なものを無くすなんて 私としたことが――…
「残業はしないんじゃなかったの?」
不意に頭上から声がした。デスクの下から見上げると、そこには黒岩 匡子が立っていた。
「探し物はコレ?」
見ると、彼女が持っていたのはまさに春子が今探している指輪だった。
「…違います」
「ふ〜ん?じゃあコレ、明日の朝、みんなの前で誰の落し物か聞いてみようかしら」
彼女はいつも以上に挑発的な態度だった。どこか苛立ちすら伺える。
「なぜコレがあなたの指輪だって事を隠すの?」
「……」
「私、コレがあなたの上着のポケットから落ちるところを見たのよ?」
指輪が落ちた瞬間、黒岩は私を追いかけようとした。が、森 美雪と営業の仕事に出て行ったため、渡せずにそのまま持っていたらしい。
「――そういえばあなた、最近ずっと東海林君のこと避けてるわよね?…どうして?」
「…構うのが面倒なだけです」
彼女は私の反応を伺うように、次々と質問を投げかけてくる。
「…東海林君から貰ったんでしょ?コレ」
「……」
「否定しないんだ…?」
「あの人は部長の言うとおりに、どこぞのご令嬢と結婚するのが幸せだと思いますが」
「…は?何それ…?!何言っちゃってんの?変な気ぃ使ってんじゃないわよ!こんなの大事そうに持っちゃって…よくそんな嘘つけるわね…!」
「……」
何も言えなかった。彼女の言うことは正しかった。そしてそれは、彼女が彼女自身に宛てた言葉でもあった。
「好きなら分かるでしょ?!…彼にとってのホントの幸せが何なのか」
「……」
「…好きなんでしょ?東海林君のこと」
私は黙ったまま彼女を見つめた。それは同意を意味していた。彼女も真剣な表情で私を見つめる。暫しの沈黙。
瞬間、彼女は何かを吹っ切ったような表情をした。
「…がんばんなさいよ」
彼女は私に指輪を返すと、背を向けて歩み去った。
668名無しさん@ピンキー:2009/03/22(日) 21:45:34 ID:uPiWaTbV
支援&期待カキコ!
669名無しさん@ピンキー:2009/03/26(木) 17:28:49 ID:b9B+oLXG
続き!!続き!!
670真実の月:2009/03/27(金) 15:46:44 ID:+1hetwAC
【東海林 武 編】

最近(――というより、本社復帰初日以来ずっと)、とっくりと話す機会がない。
事あるごとに話そうと試みるも、何かと邪魔が入ってできなかった。
それに、こいつは仕事の事務的な話こそするものの、プライベートな話をしようものなら、「業務時間中です」か「業務時間外です」の一言で切り捨てた。
じゃあ、いつ話せってんだよ!
もしかして俺、避けられてる…のか?っていうか、そもそも何で避けるんだ…?
―…やっぱり半年前のプロポーズのことか?でもこいつは、俺のことを意識しているような素振りは一切見せない。全く、この女は分からない―…
俺は、自分のデスクと対面する、右斜め前の席の女を見ながらそんなことを考えていた。
その視線を感じたのか、大前 春子はパソコンでの作業をやめ、睨みをきかせながらこちらを見た。
「――何か?用があるならさっさと仰ってください。」
「…えッ?!あ、いや。別に用はないんだけど――」
彼女の急な反応に、少々しどろもどろになってしまった。
それを聞くと、彼女は再びパソコンの画面に目線を戻し、作業を再開し始めた。
「ぼーっとなさるのは結構ですけど、鬱陶しいのでどこかよそでやってください。仕事の邪魔、迷惑です」
「邪魔…?!ちょっ、今お前邪魔っつった?」
「本当のことを言ったまでですが、それが何か?」
「本当のことって…おまッ…!」

「まぁまぁ東海林さん、落ち着いて」
賢ちゃんが心配して止めに来てくれた。
「賢ちゃん、だってとっくりが…!俺のこと邪魔って――」
賢ちゃんはとっくりの方をそっと盗み見た。彼女は、あからさまに不機嫌な顔で作業を続けている。それを見るなり、困り顔になった。
「…ほら 業務時間中だし。仕事しよ、東海林さん、ね?」
「何だよ…、賢ちゃんまで“業務時間”って…」
賢ちゃんに促されるままに仕方なくデスクへ向かい直す。再び斜め前を見ると、そこに彼女の姿はなかった。
「…あれ?いない――」

「里中主任、書類のチェックお願いします」
背後で声がして振り返る。
「とっくり…?!いつの間に?また瞬間移動か…?」
とっくりは賢ちゃんに書類を渡すと、俺を一瞥もせず自分の席に戻り、次の仕事を始めた。
どうやら、完全無視を決め込んだようだ。何なんだ、一体―…?!本当にこの女は分からない――

そんな中、俺の企画「米(MY)ケーキ」は選考を勝ち上がり、最終選考にまで残っていた。
そして、それと比例するように部長の信頼を取り戻しつつあった。

671真実の月:2009/03/27(金) 17:18:30 ID:+1hetwAC
【大前 春子 編】

―――
午後6時36分
春子はペティット本社前に立っていた。昼間、今日もあの男がいた場所。
東海林はコンペが明後日に迫り、かなり焦っている様子だった。そんな様子を見ていると、なんとなく足が向かってしまったのだ。ビルを見上げる。東京の空に星はない。

「…大前さん?」
その時、不意に声をかけられた。沢崎 敏彦だった。彼は、S&Fの前の派遣先である結婚式場アンジェのオーナーである。会釈をして立ち去ろうとするが、さらに話が続けられる。
「大前さん今、ここで派遣やってるの?」
「…今はS&Fでハケンをしておりますが、何か?」
「そうなんだ?あ、ここねぇ、うちの取引先。式場直属のエンゲージリング取り扱い店なんだ」
「…直属の?」
思わず相手を見る。
「え、何?大前さんもここの指輪好きなの?そっか〜、克也も喜ぶよ。あ、よかったら今から新作の打ち合わせに行くんだけど大前さんも一緒に来る?」

―――
妙なことになった。こういうことをまさに棚から牡丹餅というのだろう。
「こちら、大前 春子さん。前にうちの式場で働いてくれてたんだ。それでさっき偶然そこで会ってな。彼女、お前の指輪のファンらしくて連れて来たんだ。」
とりあえず会釈をする。
社長という男は、背はそれほど高くはないが、がっしりとしていた。そして派手なネクタイを締めていた。
「どうも。 …しかしオーナー…一般の方が立ち会うのはマズいのでは――…」 
「大前さんにはお世話になったんだ。別にいいだろ?それにな、お前の指輪をうちで扱うようになったのは、この人のお陰なんだぞ?」
「…え?この人の…?」
二人が私の方を見た。だが、私はこの人のために何かした覚えは一切なかった。
「彼女はペールの粗悪品の指輪を式の直前に見抜いた。それでお前が持ち込みで置いてった指輪を抜擢したんだ。」
そういえば、そんなこともあった。彼の指輪は無名のブランドではあったが、良質のプラチナでできており、表面にはハートが薄く浮かび上がっていた。ハートの中央には三つの大きさの異なるダイヤが埋め込まれている。
デザインとしては、客観的に見て、女子一般に喜ばれるであろうものだった。
「それで新郎新婦に急遽提案してOKもらったんだよ。なんとその時の新婦がモデルのMAIKAだ。彼女、身内だけのお式でねぇ、お前の指輪のデザインが可愛い可愛いって気に入ってな。それがファンたちの間で広まって今に至るって訳だ。」
「そうだったんですか…、ありがとうございます。大前さん、あなたは恩人だ」
「…私はオーナーに提案をしたまでですが」
「そうだ、克也。彼女にデザインを見てもらうといい。彼女、絵はダメだけどカラーコーディネーターの資格持ってるから色彩センスはあるし――」
「オーナー…!ここではその呼び方はよしてください、と言ってるでしょ?」
「別にいいだろ、親子なんだから」

「…親子?」
驚いた。聞き違いかと思い、思わずもう一度聞き直した。
「…?そうだけど?」
「…?そうですけど?」

―――
1時間後。
ペティット新作のデザイン案が仕上がった。
「それじゃあこれに決まりですね」
「はい、お疲れ様〜」
「大前さん、ありがとうございました」
「…いえ」
「そうだ!何か御礼がしたいんですけど」
「――御礼?」
「はい、何でも言ってください。」
「何でも―…? では―――」

こうして、東海林の預かり知らないところで、ペティットとの契約は結ばれたのであった。

672真実の月:2009/03/27(金) 17:54:48 ID:+1hetwAC
【東海林 武 編】

―――コンペ前日
「東海林、明日のコンペ、期待してるぞ」
部長は笑顔で俺の肩をポンと叩くと去っていった。期待されている。とても誇らしい気分だった。でもその誇らしさは、以前のそれとは違っていた。
――
午後6時。
「定時ですので失礼します」
今日もとっくりはいつも通りフロアを去る――はずだった。
俺の背後で鈍い音がした。
「…とっくり!!」
振り向くと、とっくりが倒れていた。
「おい…!とっくり…!大丈夫か!?」
急いでとっくりに駆け寄る。顔が赤い。額に手をかざすと、熱かった。熱がある。
「…大丈夫ですから」
「大丈夫ってお前…すごい熱じゃねぇか!ほら、つかまれ」
立ち上がろうとする彼女に肩を貸す。

――――cantante
「わざわざうちまでありがとうございました。」
「いえ…」
とっくりを部屋に寝かせると、店主のママは一階に降りてきて、俺に礼を言った。
「…あの子、最近何だか張り切ってたみたいで。昨日も帰りが遅かったの。きっと頑張り過ぎちゃったのね」

――――S&F
「あれ?賢ちゃん、まだ残ってたんだ?もしかして待っててくれた?」
「うん…、何だか心配で。大前さんの様態どうだった?」
「…薬飲んで寝てる。ったくあんな高熱で平然と仕事して…熱あるんなら言えってーの!ほんっと可愛くね〜女だよな…あいつは」
「…大前さんまた我慢してたんだ」
「また…?」
「あぁ…、東海林さんは前に大前さんが倒れた時、風邪で休んでたっけ?」
「え?!前にも倒れたのか?あの女。初耳だな」
「うん…、ほら、東海林さんが交渉担当してたロシアの取引先の―…あの時も大前さん、熱があったのにロッカーの鍵探しに走り回ってくれて」
「…そっか」
おんなじ様に熱出しても、あいつは仕事してたんだな…

「…実は大前さん、東海林さんの分の営業の仕事、森君と一緒に片付けてくれてたんだ」
「…え?」
「毎日、店舗回ってくれてたみたい。東海林さんにはコンペの準備に集中して欲しかったんじゃないかな…?」
「あいつ… 俺の企画の仕事だけじゃなくて営業の仕事まで――…」
全く知らなかった。あいつにそこまでさせていた自分が情けない。

673真実の月:2009/03/27(金) 21:20:25 ID:++SeCt3J
―――翌日。コンペ当日
「まぁ―…指輪は代わりのブランドでいくしかないけど、今更言ったってしょうがないもんな!ん、よし!それじゃあ今日のコンペ、勝ち取るぞ!」
「お〜〜!!」
「東海林さん、がんばって」
「絶対勝ってくださいね!」
会議室へ向かう前に、気合を入れる。今日は大事なコンペだ。今まで積み上げてきたことの集大成。絶対に負けられない。昨日の夜、もう一度ペティット本社へ交渉に向かうつもりだったが、とっくりが倒れ、それどころではなかった。あいつ、大丈夫かな…

「おはようございます」
俺の心配をよそに、彼女はいつも通りやってきた。
「とっくり…!お前、風邪は?」
「治りました」
「え、もう!?」
「それから、これ」
とっくりは一枚の紙を俺に手渡した。何やら絵が描かれている。
「ん?何だ? …お前…これ――」

「これ、もしかして――…」
「P・e・t・i・t・e――って…わっ…!これ、ペティットの指輪のデザイン画じゃないですか…!!」
「えッ?!春子先輩、どうやって手に入れたんですか?!これ」
賢ちゃんも浅野も森 美雪も、口をぽかんと開けて驚いていた。もちろん俺も驚いていた。
とっくりが差し出したのは、ペティットの指輪のデザイン案だった。しかも、紙の右上には“クリスマス限定品”と書かれている。あの社長、何度交渉しても話すらまともに聞いてくれなかったのに――…一体、どんな手を使ったんだ?
「プレゼントですが、何か?」
「プレゼントって…お前 これどうやって――」
「言ったはずですが?あなたには社長賞を取っていただく、と」
「…え?」
突拍子も無い言葉に、また驚かされた。
「あなたとの契約内容はまだ完了していません。それでまたここへ戻ってきましたが、何か?」
「…とっくり」
泣きそうになった。たとえ部長に頼まれても3ヶ月きっかりしか契約しないこの女が、俺のために戻ってきてくれたなんて―― それがすごくうれしかった。
「ありがとな…」
「あなたに御礼を言われる筋合いはありません。私は自分の仕事をしたまでですが、それが何か?」
ほんっと可愛くね〜女。いや、そこが可愛い。
目が合う。俺は微笑んだ。とっくりは不敵な笑みを返す。その瞬間、俺たちの心は通じ合っていた。確かに―――

674真実の月:2009/03/27(金) 22:35:28 ID:++SeCt3J
―――
結局、俺たちの企画はコンペに勝った。米(MY)ケーキ販売会は12月24日、大盛況のうちに幕を閉じた。そして、行事ごとの米ケーキの販売が決定した。その功績は認められ、年末の今日、この企画は社長賞を取った。

「いやぁ東海林、社長賞おめでとう」
部長は満面の笑みで俺の肩をバシッと叩いた。営業部とマーケティング課のみんなが拍手で俺を讃えてくれた。
いつもの俺なら、ここで「ありがとうございます、部長!こうして賞が取れたのも、部長のお力添えのおかげですよ〜」などと、調子のいい事を言うのだが、今日の俺は違った。
「ありがとうございます!でも、賞が取れたのは、ここにいるみんなが協力してくれたお陰です!ありがとう、みんな!」
「東海林さん――…」
「東海林先輩…!俺、一生先輩に付いていきます!」

「そうか…」
部長は微笑を浮かべて頷いた。東海林の人間的な成長を感じ取り、満足した様子だった。そうして再び会議室に戻っていった。

振り返ると、給湯室にいるとっくりに目が留まった。やや緊張気味に、どこかぎこちなく彼女の元へ歩み寄る。
だが、彼女はこちらを見ない。俺はわざとらしく咳払いをした。
「…何か?」
「ここにいたんだ?…いや、おれ、部長に褒められちゃってさぁ〜…。まぁ今回、俺たちの企画が社長賞を取った訳なんだけどね、なんて言うの?それは俺一人の力じゃないっていうか――」
「長い」
俺の要点のはっきりしないピンぼけた話に、とっくりが呆れて立ち去ろうとした。それを必死に食い止める。
「あ!ちょっ、ちょっと待って!分かった。言う。言うから!」
少し顔がこわばる。
「――とっくり…いや、大前 春子さん。ありがとうございました」
俺は彼女に深々と頭を下げ、心からの感謝の気持ちを示した。そして手を差し出した。彼女がそれに応えてくれるか不安だったが、次の瞬間、その不安は吹き飛んだ。彼女は俺の手を取ったのだ。握手。その手は小さかった。
――と、一部に違和感があった。見てみると、彼女の薬指には、半年前に俺がはめそこねた婚約指輪が光っていた。ケースこそあるものの、中身は行方不明になっていたのに、まさかこの女が持っていたとは…。
「とっくり…お前、その指輪――…」
「“私の”指輪ですが、何か?」
彼女は不敵な笑みを見せた。それは、彼女が俺のプロポーズを受けたことを意味していた。
「…とっくり」
次の瞬間、俺は彼女を引き寄せて抱きしめていた。
675真実の月:2009/03/27(金) 22:46:56 ID:++SeCt3J

―――2年後

目覚まし時計が6時を告げる。
「ん…?おはよー…」
寝ぼけ眼でベッドから起き上がると、俺はリビングへ向かう。が、そこに春子の姿は見当たらない。
「あれ…?春子〜? ん…?」
テーブルの上に手紙があるのを見つけた。

“3ヶ月間留守にします。    春子”

「…ったく、また出てったのかよ、あいつ。しょうがねぇな…」
でも、それがあいつ“大前 春子”だ。
まぁ、今は東海林 春子だけど。
あいつは派遣先で自分のことを「派遣の大前 春子」と名乗っている。それは彼女にとって、いわゆる芸名みたいなものらしい。しっくりくるのだ。俺としては東海林 春子の方がうれしいけど。

――――原子力発電所
「大変だ!プログラムが誤作動を起こした!」
「どうするんだよ?!」

「そこ、どきなさい!」
逃げ惑う人ごみの中、一人の女がその流れとは逆方向に向かってきた。
そして華麗な手さばきで、プログラムの支障原因を突き止めると、赤のエラーボタンを、次々に正常を示す緑に変えていく。
「完了しました。もう大丈夫です」

「あんた…一体何者だ?」
社員たちは呆気に取られ、驚いたような表情でその女を見ていた。

「派遣の大前 春子ですが、何か?」


大前 春子は今日も派遣の仕事を続けている。
“働くことは生きること”という彼女自身の志を胸に―――

                                              【終わり】

※この物語はフィクションです。

676真実の月:2009/03/27(金) 22:49:19 ID:++SeCt3J
一応、完結しました。
今まで読んでくださっていた方、どうもありがとうございました。
677名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 00:13:32 ID:ztermk5K
GJ!
長い間、お疲れ様でしたー
678名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 03:46:09 ID:JwwCDEcS
ありがとうございました!
いつもこのスレに来るのが楽しみでした。
「米ケーキ」の案は普通に使えそうだと思ったし、
何よりドラマでの二人そのまんまで、読んでいてもなんの違和感も無く楽しめました。
機会があればまた書いてくださると嬉しいです!
679名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 20:30:48 ID:LKOgSpGs
>>676
超GJ&お疲れさまでした!
2人がふたりらしく幸せになっていて、本当に感動しました!!
680名無しさん@ピンキー:2009/03/29(日) 00:57:31 ID:Un+KoJKf
キャー!お疲れ様です
お前実は脚本家本人だろう!
681真実の月:2009/03/31(火) 20:34:56 ID:TcucRrgl
感想、ありがとうございます。
拙い文章を最後まで読んでくださってうれしいです。

また、みなさんの作品も読んでみたいです。
ぜひどなたか投下を^^
682真実の月:2009/04/03(金) 22:33:59 ID:rZ96SvFb
今日は東海林 武の中の人の誕生日らしいので誕生日ネタで書いてみました。↓

――F&S
「おはよ〜、諸君!いや〜、今日もいい天気だねぇ〜!」
今日も東海林 武がマーケティング課にやってきて顔を出す。
入り口に対して反対側を向いていても、その声は、すぐにあの男のものだと分かった。
朝から異様にテンションが高い。いつも以上に。
「お、とっくり〜!今日もまた変な体操やってんのか?よし!俺もやろっかな〜」
9時の就業時間前に、日課である体操をしていると、彼が隣で私の真似を始めた。
「…鬱陶しいので隣でやらないで下さい」
「いいじゃね〜かよ!なぁ、賢ちゃん?」

「…東海林主任、なんだか今日、機嫌いいみたいですね」
「…うん、そうみたいだね」
後方では、森 美雪と浅野が、小声で東海林のいつもと違う上機嫌な態度をいぶかしんでいた。

「あれ?!君たち、分かる〜?」
すかさず東海林が小声で話す二人の会話を聞きつけて、話に割り込む。
「東海林さん、今日誕生日なんだ」
里中主任が東海林の行動の理由を補って付け加えた。

「…誕生日で浮かれるなんて、あなたは小学生以下ですね」
「いいじゃねーか!年に一度しか来ねーんだぞ?誕生日は!」
「それが何か?犬は年に何度も誕生日が来ますが」
「俺は犬じゃねーよ!」
「そうでしたね、犬の方が優秀でしたね」
「お前ッ…!!」

「まぁまぁ。東海林さん、落ち着いて」
里中主任が怒り出した東海林を制止した。
東海林は怒りを覚まし、落ち着くと、瞬間、真剣な眼差しで再びこちらへ向かってきた。
「…今日、店 行くから」
小声で告げると、東海林は営業二課の自分のデスクへ戻って行った。
それと同時に就業時刻を告げるチャイムが鳴り響いた。
私はデスクに付き、パソコン画面に向かって書類作成に取り組む。だが、頭の中は、先ほどの言葉でいっぱいだった。
相変わらずあの男は分からない―― ふざけていたかと思うと、とたんに真剣な表情になったりする。
それにしても――…
今夜、あの男は確実に店にやって来る。いっそ今日は顔を出さないでおこうか、などと考える春子であった。

683名無しさん@ピンキー:2009/04/04(土) 09:03:49 ID:YJk9r0Cc
>>682 GJ!!
続きを期待してみる
684真実の月:2009/04/04(土) 23:48:09 ID:2j+kgz9z
読んでくださってありがとうございます!
↑のは一応、読みきりです。その後はみなさんの想像にお任せで…。
――その代わりといっては何ですが、また読みきりを投下します。

【犬のホンネ 猫のウラガワ】〜犬 篇〜

―――S&F
「賢ちゃんはホント“子犬”って感じだよな〜…」
「子犬…?」
「こう――目をウルウルさせて、尻尾振って追いかけて来る感じ?」
「そうかな?僕は東海林さんも犬っぽいと思うけど…」
「人に対して真っ直ぐなところとか」
賢ちゃんはいつだって優しい。そんな優しさに浸る俺に、邪魔が入った。

「部長の命令に従順なところとか。――でも、頭の被り物は真っ直ぐではありませんね」
「これは被り物じゃねぇ、っつってんだろ!地毛だ!地毛!!」
怒る俺を一瞥すると、とっくりはいつものポジションに付き、例の変な体操を始めた。
「アンタはな、犬じゃなくて猫だ!いっつも自分のペースで!ちょっとはなぁ、上司に従順に従ってみろ、ってんだよ!」
「私の直属の上司は里中主任です。指示には従っておりますが、それが何か?」
とっくりは手を腰に当てながらふざけた態度で応対してくる。
「直属じゃなくてもな、俺は会社ではアンタより上の人間だ!」
――と、彼女が顔をこちらに向けた。俺を見ている。
「…な、何だよ?」
少したじろいだ。…怒ったのか?

「…ビション・フリーゼ」
しかし、俺に帰ってきたのは意味不明の言葉だった。
「…は?」
「原産国フランス――もこもこしていて、ちょうどあなたの被り物のような格好の犬です。…あなたを犬に例えるとこれかなーと思いまして」
「…犬?!」
言い終えると、彼女は再び体操を始めた。

「あ!私、その犬知ってます!!“アフロ犬”って呼ばれてる犬ですよね?」
「アフロ犬!!?」
はしゃぐ森 美雪の、“アフロ”という言葉に反応する。
「お前ッ…!じゃあお前は…あ、アレだ…!あ…アメリカンショートヘアだ!」
俺はとっさに知っている猫の名前を出した。
「…ヘア―― 髪つながりですか…」
「ちが…ッ!」
反論しようとした瞬間、9時のチャイムが鳴り響いた。
「就業時間です」
彼女は俺を一瞥すると、パソコンに向かった。仕方ない。この争いは持ち越しだ。
「猫なんかだいッ嫌いだ!」
捨て台詞を吐くと、俺はマーケティング課を後にした。


685真実の月:2009/04/09(木) 16:47:05 ID:NdgojWnX

【犬のホンネ 猫のウラガワ】〜猫 篇〜

―――S&F
「賢ちゃんはホント“子犬”って感じだよな〜…」
「子犬…?」
「こう――目をウルウルさせて、尻尾振って追いかけて来る感じ?」
営業二課のフロアに着くと、東海林と里中主任が話しているのが聞こえた。
確かに里中主任は子犬だ。種類でいうと、チワワといったところだろうか。困ったことがあれば、迷子の子犬のような顔をする。

「そうかな?僕は東海林さんも犬っぽいと思うけど… 人に対して真っ直ぐなところとか」
「…賢ちゃん」

「部長の命令に従順なところとか。――でも、頭の被り物は真っ直ぐではありませんね」
マーケティング課に足を踏み入れながら、里中主任の言葉に続けて「くるくるパーマの東海林主任」をからかった。
「これは被り物じゃねぇ、っつってんだろ!地毛だ!地毛!!」
案の定、彼は私の言葉に反応し、乗ってきた。なんだかこのやりとりが、最近の朝の日課となっている。

「あ、大前さん。おはようございます」
コートをフックにかけながら里中主任に挨拶を返すと、体操の定位置に付く。

「でも」ということは、里中主任が言った“人に対して真っ直ぐ”という部分については否定していない。知らず知らずに思わずホンネが出ていた。しかし春子自身、それには全く気づいていなかった。

「アンタはな、犬じゃなくて猫だ!いっつも自分のペースで!ちょっとはなぁ、上司に従順に従ってみろ、ってんだよ!」
そうかもしれない。私はご主人様に従順な犬ではない。 ――ご主人様はいつか裏切るのだ。
それならいっそ猫がいい。
少し離れた立ち位置から相手を観察する。一定の距離を置くのだ。
深く関わってはいけない。信用してはいけない。自分が傷付かないために―― そう心に決めていた。
――しかし… 最近の私はどうも変だ。ペースが崩されているような気がする。
そして、その現況はきっと―――…

彼に向き直る。
「…ビション・フリーゼ」
「…は?」
「原産国フランス――もこもこしていて、ちょうどあなたの被り物のような格好の犬です。…あなたを犬に例えるとこれかなーと思いまして」
「…犬?!」
こんなやりとりがあとどのくらいできるのだろうか。契約期間は残り1ヶ月。
この時間がなぜか心地よい。 そして―― 哀しい。

「猫なんかだいッ嫌いだ!」
子供じみたセリフを吐くと、彼はマーケティング課を去っていった。
そんな彼を横目で見る。
それでいい。それでいいのだ。私はもうすぐここを去るのだから――


―――それは、東海林が名古屋へ行く少し前の話。
その名古屋行きが、自らの気持ちに気づくきっかけになるとは、春子はまだ知る由もなかった。


                                              【終わり】
686名無しさん@ピンキー:2009/04/11(土) 03:25:27 ID:B/ni3OX6
ずっとロムってましたが一言言わせてください
真実の月さんGJ!
東海林さんの中の人の「猫嫌い」をネタに持ってくるあたり、グッと来ましたw
またいつでも投下してください!待ってます!
687真実の月:2009/04/13(月) 12:13:47 ID:dBRLxf5N

>>686さん
感想、どうもありがとうございます^^
読んでいただけてうれしいです。
また思いつき次第で投下するかもしれませんので、
そのときは、また読んでいただけるとうれしいです。
688名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 13:08:10 ID:0K1NpmbG
支援カキコ☆
689真実の月:2009/04/18(土) 00:02:58 ID:0K1NpmbG
またまた投下します。
今回の話は、最初に投下させていただいた話の時間軸で進んでいます。
(時期的には11月下旬の設定です。)
よろしければ是非、読んでみて下さい。


【 Spring has come 】

――

東海林 武はすこぶる不機嫌に、目の前の運転席の女を眺めていた。
全く、何なんだよ!
「東海林チーフが助手席に座るなら、私は運転致しません」ってよォ。
賢ちゃんだったらいいのかよ…!

今日は、米ケーキに使う米粉の試作品を調達するため、S&Fの車を借りてきたのだった。
実のところ、4人も来なくても事足りていたのだが、気を使った里中が、東海林をセッティングしたのだった。
案の定、車内の空気は春子と東海林を中心として重苦しい。

「な、何か前にもありましたよね。このメンバーで車に乗ったこと」
そんな空気を打開しようと、森 美雪が堰を切って話し始めた。
「あぁ…!そう言えば乗りましたよね」
里中もそれに続く。
だが、二人の発言は明らかにわざとらしい。

「あ〜、そうだ。前乗った時はホントひでぇ目にあったよな〜 誰・か・さ・ん・の・せ・い・で!」
「…過去のことをグダグダと。みみっちい男」
「…ちょッ!お前今俺のことを“みみっちい”っつったか!?」
「…私の運転に文句があるなら降りて下さい。それから。先日自動車整備士の資格も取ったので、万が一車が故障した場合にも対処できますが、それが何か?」
「え?!春子先輩また資格増えたんですか?!すご〜い!」
「すごいですね、大前さん」「…フンっ!資格取るのは結構だけどな、その前にヒューマンスキル身に付けろってんだよ!人間な、腹割ってありのままの自分で話し合うことも必要なんだよ!」

ここのところ、俺は、本心を見せないばかりか、仕事以外では全く関わろうとしないとっくりに苛立っていた。
そんな本音が思わず出てしまった。

ふと見ると、とっくりがミラー越しに俺を凝視していた。
「…っツ!な、何だよ?」
…怒ったのか?
俺は思わずたじろいだ。だが、そのたじろぎを悟られないよう、平静を装いながら応えた。 


690真実の月:2009/04/18(土) 00:04:59 ID:0K1NpmbG
「…ありのまま――そういうことは、その頭の被りものを取ってから言って下さい」
「これは被りもんじゃねぇ!地毛だ地毛…!」
前のめりになって、自らの髪を引っ張りながら抗議する。
「気が散るので、運転中に話しかけないで下さい」
「さっき普通に話してたじゃねーかよ!」
「“東海林チーフと話すと、うるさいので気が散る”という意味ですが。それが何か?」
「はぁぁ?!おまっ…!」
さらに前のめりになった所で、俺はシートベルトによって、後方のシートに連れ戻された。
とっくりがブレーキを踏んだのだ。
「…ちょっ何やってんだよ!急にブレーキ踏んだら危ねぇじゃね〜かよ!」
「信号が赤なので止まりましたが、それが何か?」
とっくりが勢いよく右に振り返った。
「だからって もっとこう、踏み方ってもんがあるだろ!」
「それならあなたが運転なさったらいかがですか?」
彼女は、今度は左に振り返る。
「あぁ、分かったよ!俺が運転してやるよ…!ちょっと待ってろ!」
シートベルトを外そうと前かがみになった瞬間、俺は再びシートに連れ戻された。
「…痛ぇっ!わざとだろ?!絶対わざとだろ?今の…!」
「信号が青になったので発車させましたが、それが何かか?」
「それが何か、って お前…っ!」
「大前です」

「まぁまぁ東海林さん、落ち着いて」


691真実の月:2009/04/18(土) 00:11:10 ID:bs0xWrlS

―――

午後4時
S&F地下駐車場


車から米粉の入ったダンボール箱を降ろし、それを食堂の調理室へと運ぶ。

「何だかんだ言って、春子先輩たちって気が合ってますよね」
「そうですね」
美雪と里中は、東海林と春子のやりとりを二人からやや離れた後方で見ていた。
ともすれば、痴話喧嘩のようなやりとり。
二人とも、そんなやりとりが自分のことのようにうれしかった。


「森君、今日は付き合ってくれてありがとうございました」
「え?あ、いえ。私はついて来ただけで、特に何のお役にも――」
「森君がいてくれて、本当に助かりました」
「主任… 」
その時、美雪が持っていたダンボール箱のバランスが崩れた。それを里中が支える。
「大丈夫ですか? ――…森君?」
「…へ?あ、あぁハイ!大丈夫です。ありがとうございます」
「これは僕が持ちますね。森君はそっちの小さい方をお願いします」
「…わかりました」
頷くと、美雪は自分の持っていた少し大きめのダンボール箱を里中に渡した。

里中 賢介――彼は、気遣いはできるのに、鈍感な男だった。先ほどの美雪の反応にも全く気付いていない様子だった。

「あ、あの…!」
「?」
「――…米ケーキ!成功するといいですね!」
「そうですね。絶対成功させましょう」

その笑顔に美雪がうっとりしたのはいうまでもない。
一度は邪念を捨てた、と春子に宣言した彼女だったが、再びその蕾がほころび始めようとしていた。


まだ雪も降らない11月。
でも
春はそう遠くないのかもしれない―――


                  【終わり】


692名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 04:16:51 ID:Ln6UIQhS
おおおおおすてき!!!
森ちゃんまでktkr!!!!

早くこないかなあぁ春。。。
693640:2009/04/20(月) 18:39:40 ID:9KEuzv79
ほしゅーくりーむ
694名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 23:16:32 ID:EABeFKWu
里中×森が読みたい
出来れば、甘エロで…!
695真実の月:2009/04/22(水) 17:50:32 ID:nBg4FEYG
感想、ありがとうございます。
毎回読んでくださる方がいて、
うれしいです。
696真実の月:2009/04/22(水) 17:52:27 ID:nBg4FEYG
今回は、里中×美雪で書いてみました。
時間軸的には、【Spring has come】の後の話です。
美雪視点で書いてみました。


【六花のひとりごと】

―――

S&F 営業二課

12月3日
今日も寒い。

正社員になってから9ヶ月目。
ようやく落ちついてきた…かな?

私の憧れは、春子先輩。
相変わらず先輩はすごい。
でも、最近あんまり東海林チーフと話してないみたいだけど、どうしてだろう…?

そんなことを考えていると、東海林チーフが急いでフロアに入ってきた。

「賢ちゃん!ちょっ賢ちゃん!」
「どうしたの、東海林さん?」
「部長が、前話してたお見合いの件で話がある、って」
「え?あの話は断ったはずだけど――」

―――主任がお見合い!?
私は気が気でなかった。仕事も手に着かず、会話に耳を傾ける。

「部長、もうそこまで来てるぞ」
「どうしよう…」

「里中、この間の見合いの話だが――」
桐島部長が現れ、里中に声をかけた。
「部長、その話ならお断りしたはずです」
「まぁそう言うな。な?里中。会うだけでも会ってみたらどうだ?」
「はぁ…でも」
見かねた東海林が助け舟を出す。
「あのー部長、里中にはもう恋人がおりまして――」
「恋人?本当か、里中?」
「え、あぁ…はい」
東海林が頷け、というサインを送っているのを見て、里中は話を合わせる。

―――主任に恋人?!


697真実の月:2009/04/22(水) 17:57:43 ID:nBg4FEYG

「そうか――それじゃあしょうがないか…。ちなみに相手は誰なんだ?うちの社員か?」
「え、えっと…」
答えに窮する里中。
「彼女です!」
代わりに答えたのは東海林だった。


「へ…?」
指されたのは私だった。
「…君が?」
桐島部長の追求の目が私に向けられる。
その後ろでは、東海林チーフが頷け、とサインを送っている。
「あ、は、ハイ!私、里中主任とお付き合いしてます!」
思いのほか大きな声で答えてしまった。
その声で、私たちの方にみんなの注目が集まった。
「そうかー…。いや、悪かったねぇ。うん。じゃあ、お幸せにね」
部長は主任の肩をポンと叩くと、フロアを後にした。


「いやー…なんとか乗り切ったな、賢ちゃん」
「うん。あ、森君。ありがとうございました。本当に助かりました」
「あ、いえ。お役に立ててよかったです」
「あの、何かお礼をしたいんですけど…」
「え?いえ、そんな…!お礼だなんて」
「そうだ、じゃあ今晩ご飯でもどうですか?」
「え…?」

――え、うそ?!本当に?主任とご飯?
どうしよう

「…あ、予定とかありましたか?」
「いいえ!ないです、予定なんて」
「そうですか。じゃあ今晩」
「はい!」

信じられない。主任と二人でご飯なんて―― 神様、ありがとうございます!


698名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 18:17:28 ID:5XqPG8DX
キャー里中かわいいっ

一人指示出しまくる東海林くんも目にうかぶ。。
699真実の月:2009/04/22(水) 23:15:27 ID:nBg4FEYG
――――

午後8時

いい雰囲気のバー
里中主任の笑顔。

「美味しいですね、コレ 森君――…?」
「へ?あぁ、ハイ。そうですね」

その時間が楽しくて、うれしくて
食べたものの味なんて覚えていない。

―――

午後9時

小さな雑居ビルが建ち並ぶ小路。
街灯に照らされて、二人の影が伸びる。

「今日はごちそうさまでした。」
「いえ。美味しかったですね」
「そうですね」
答えたところで、彼と目が合った。
思わず目線を逸らす。
そして、違う言葉を見つける。
「――あ、月!綺麗ですね」
「ホントだ。今日は満月ですね」

主任の瞳に月が映る。
綺麗…
そんなことを考えながら、隣で見上げる里中主任を盗み見る。

そんな美雪の視線に気づくと、彼は彼女に向き直った。

「――今日のアレ、迷惑でしたよね?すいません」
「へ…?」
「森君の様子がいつもと違うのは、今日の事のせいですよね」
「え?違います!そんな、迷惑どころかむしろうれしかったです! …あ。って何言ってるんでしょうね、私…」

笑って誤魔化すも、その笑顔は哀しい。

「森君… 目を閉じて下さい」
「…え?主任――…」

主任の顔が近づいてくる。
何て綺麗な澄んだ瞳。

私は目を閉じた―――


700名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 07:49:38 ID:PqQLDhPf
続き期待wktk
701真実の月:2009/04/24(金) 12:24:31 ID:9aeZcrb1
―――

「森 美雪!」
頭上から降ってきたのは、聞き覚えのある声だった。
目を開けると、そこはS&F営業二課のデスクだった。

―――あれ?何で?さっきまで主任と…

「起きなさい、森 美雪!」
「…ふえ?春子先輩…」
「就業時間中に寝るとはいい度胸ね」
「就業時間…えっ、あ…!すいません…!私――寝て…?」
「行くわよ!」
「え?あ、は、ハイ!」

「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
主任の見送りに、先ほどの光景が脳裏をかすめ、はにかみながら言葉を返す。

そして私は、今日も前へ進む。
主任の隣で歩く「いつか」を夢見て―――


 【終わり】
702名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 19:27:04 ID:SJX+4HtZ
夢オチΣ(´Д`lll)
703真実の月:2009/04/27(月) 14:37:01 ID:hHaIvaiY
以上、夢オチでした。

里中主任はいきなり
あぁいう行動には出ないかな、
ということで(^_^;


別ルートの話も考えてみました。
よろしければどうぞ。↓

―――

午後9時

小さな雑居ビルが建ち並ぶ小路。
街灯に照らされて、二人の影が伸びる。

「今日はごちそうさまでした。」
「いえ。美味しかったですね」
「そうですね」
答えたところで、彼と目が合った。
思わず目線を逸らす。
そして、違う言葉を見つける。
「――あ、月!綺麗ですね」
「ホントだ。今日は満月ですね」

主任の瞳に月が映る。
綺麗…
そんなことを考えながら、隣で見上げる里中主任を盗み見る。

そんな美雪の視線に気づくと、彼は彼女に向き直った。

「――今日のアレ、迷惑でしたよね?すいません」
「へ…?」
「森君の様子がいつもと違うのは、今日の事のせいですよね」
「え?違います!そんな、迷惑どころかむしろうれしかったです! …あ。って何言ってるんでしょうね、私…」

笑って誤魔化すも、その笑顔は哀しい。

里中はその表情を見逃さなかった。

「――森君、僕でよければ力になりますから 何でも言って下さいね」
「主任… 」
どうしてこの人はこんなにも優しいのだろう。
いつでも、自分のことよりも他人のことを優先して考えている主任。
自分は、彼のそんなところを好きになったのだ。
美雪は、目の前の男を見つめながら、ふとそんなことを思った。

「僕なんかじゃ力になれないかもしれないけど――1人で考え込むよりは、少しでも気が楽になると思うので…」

主任はちゃんと私のことを見てくれていたのだ。それがとてもうれしかった。

704真実の月:2009/04/27(月) 14:42:07 ID:hHaIvaiY
「ありがとうございます。でも、もう大丈夫ですから」
そう言うと、美雪は先ほどの憂い顔はどこへやら、晴れやかな笑顔を向けた。

「――そうですか」
その笑顔に、里中は少し安心した。

「それじゃあ、失礼しま――」
次の瞬間、美雪は里中の腕の中にいた。

―――え?!何が起こったの?!

タクシーが勢いよく彼女のすぐ横を通り過ぎていった。
その道は、車二台がすれ違うだけでもやっとの細い路地だった。
里中は、とっさに美雪を引き寄せて守ったのだ。

「…大丈夫ですか、森君?」
「へ…?あ、は、ハイっ…!あ、ありがとうございます!」
「よかった」
至近距離で里中が微笑む。
もうダメだ。頭がクラクラする。
美雪は、今次々に起こっている出来事を頭の中で処理仕切れずにいた。

「そ、それじゃあまた明日!今日は本当にありがとうございました!失礼します!」
一息にしゃべり終え、勢いよくお辞儀すると、美雪は足早に歩き出した。
顔が火照って熱い。
主任には気付かれていないだろうか。
明日、どんな顔で主任に会えばいいんだろう。
歩きながら、そんなことが頭の中をぐるぐる回っていた。

そんな美雪の後ろ姿を、不思議そうに見つめる里中だった―――


              【終わり】

705名無しさん@ピンキー:2009/04/28(火) 03:19:03 ID:NttyrpJ/
里中ァ!
気付いてあげてっ
いつもお疲れ様です
GJー!
706真実の月:2009/05/01(金) 17:14:40 ID:DzW6Jnb+
感想と励まし
どうもありがとうございます。

美雪に春はやって来るんでしょうかね…
707名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 12:10:32 ID:8r0xHwUv
くるくる×とっくりのエロが読みたいです。
どなたか神いませんか?
708名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 00:14:38 ID:XX91DmOn
保守!
709名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 08:23:15 ID:LXhF5wjT
保守
710名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 23:48:07 ID:7z8imBC+
age
711名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 18:02:17 ID:BOKlsD+T
ほしゅ
712名無しさん@ピンキー:2009/06/18(木) 21:53:40 ID:v9aohqmh
ほしゅ

はるはまだか
713名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 01:19:22 ID:xD3vsiEh
hosyu
714名無しさん@ピンキー:2009/08/10(月) 12:00:38 ID:rkedPok3
ほしゅ
715真実の月:2009/08/21(金) 17:50:03 ID:CIutX68A
久々に書いてみました。
よろしければ読んで下さい。

―――
【大前 春子 編】

「先輩!春子先輩!!」

――S&F玄関口
振り返ると、森 美雪が息を弾ませながらこちらへ向かってやって来た。

「おはようございます!春子先輩」
「……」
彼女を一瞥すると、私は足早にエレベーターへ向かう。
「あ、ちょっと…先輩。待って下さい」
「…朝から大声で名前を呼ばれる覚えはありませんが」
「…すいません。あの… 私、先輩に相談があって―…」
「…里中主任のことですか?」
「えっ?――…はい。邪念は捨てて仕事をがんばろう、って思ってたんですけど――主任は仕事でもプライベートでも尊敬できて――
この間も、遅くまで仕事を手伝ってもらっちゃったんです。…それで、また気になって―…春子先輩、私、どうしたらいいんでしょうか?」

「自分で決めなさい」

―――チ―ン
ちょうど森 美雪の目の前で、エレベーターのドアが閉まった。彼女は何か言いたげだったが、その声はかき消された。

仕事上でもプライベートでも尊敬できる―― 彼女はそう言っていた。
以前の彼女は、ただ優しい、という理由で里中主任を好きだった。
だが今の彼女は違う。1人の人間として、里中主任の本質を好きになったのだ。

敢えて彼女を突き放す。
彼女は会わないうちに随分と成長した。きっと自分で決められる。
716名無しさん@ピンキー:2009/08/21(金) 20:11:39 ID:S9APxMZx
きゃーーーうれしい!
717名無しさん@ピンキー:2009/08/22(土) 08:42:16 ID:VR69PXZC
続き期待!
出来ればエロまで行くことを期待…!!
718真実の月:2009/08/23(日) 21:49:52 ID:4lAMXS3j
【流れ星に願いを】

※これは【六花のひとりごと(別ルート)】翌日(12月4日)の話です。
時間軸は、【Spring has come】(11月下旬)→【六花のひとりごと(別ルート)】(12月3日)→【流れ星に願いを】(12月4日以降)です。
ベースは最初の長編(仮タイトル【ハケンの品格 〜continue〜】)です。ややこしくてすいません。
――――


―――S&F 営業ニ課

「森君、おはようございます」
「え、あ、しゅ、主任…!お、おはようございますっ!!」
森 美雪は、フロアに入って来るなり、今、まさに彼女の頭の中の役9割を占めている相手である里中に声をかけられ、心底驚いた様子だった。
相手の顔もろくに見ず、一息に挨拶を返す。そうして、壁際で体操する春子の姿を見つけるなり、急いで側に駆け寄り、小声で話しかけ始めた。

「春子先輩…!助けて下さい!もう…私、どうしたらいいか…」
「…体操中です。話しかけないで下さい」
「そんなこと言わないで助けて下さいよ〜、お願いします…!私、先輩だけが頼りなんです!」
「…自分で決めるように言ったはずです」

美雪の必死の呼びかけに対し、春子は聞く耳持たず、といった様子だ。里中主任のデスク側に背を向け、腰に手を当て、体操を続けている。
そんな中、東海林 武が出勤してきた。

「おう、賢ちゃん、おはよー!」
「――…あぁ、東海林さん。おはよう」
「ん?賢ちゃん、どうかした?元気ないな」
「え?…いや、そんなことないよ」


里中主任は明らかに元気がない様子だった。おおかた、先ほどの森 美雪の態度が自分のせいなのだと思い込み、独りで考え込んでいるのだろう。
そんな主任の様子を見た東海林 武は、恐らく、私が主任に何か言ったことが原因だと思っているのだろう。
彼の考えは容易に想像がつく。単細胞だからだろうか、自然と分かってしまうのだ。そうして案の定、背後に気配を感じる。もうすぐこちらへやって来る。
あと三歩…二歩…一歩――
そして、すかさず彼の歩み寄って来た方へ向き直り、その先の給湯室へ向かう。
東海林 武をからかえば、彼はきっと自分に突っかかって来る。そうすれば、森 美雪はもう私に相談ができなくなるだろう。
それは、森 美雪を1人にして、彼女自身と対峙させるためだった。頼りがなくなれば、彼女もきっとそれができるはずだ。

「な…、何だよ!急に振り返って!ビっ、ビックリするじゃねーか!」
「……」
「ちょっ、無視かよ!オイ、ちょっと!とっくり!聞いてんのか?!」

「せんぱぁい…」
美雪は、給湯室へ向かう春子の背に向かい、恨めしそうに呟くと、仕方なく自分の席に座った。
そして、意味もなく書類の整理を始めた。しかし、その動作は明らかに挙動不審だった。里中は里中で、そんな美雪の様子を心配そうに眺めていた。


「ちょっ、無視かよ!オイ、ちょっと!とっくり!聞いてんのか?!」
「…まだ就業時間ではありません」
「とっくり!お前、また賢ちゃんの傷付くようなこと言っただろ?!」
「…覚えがありませんが?」
「嘘をつけ、嘘を!だってほら、賢ちゃん、またあんな迷子の子犬みたいになっちゃってんじゃねーかよっ!!」
「……」

この男は本当に里中主任のことが心配なのだ。森 美雪のことは彼女自身の問題として、問題は里中主任だ。
あの人はすぐに何でも自分の責任として抱え込んでしまう。先ほどのことだってそうだ。でも、この東海林 武という男なら、主任の支えとなってくれるだろう。

「な…、何だよ?」
「邪魔です」
東海林の脇をすり抜けると、淹れ終えたコーヒーを持ち、自分の席へ戻る。
719真実の月:2009/08/23(日) 21:51:28 ID:4lAMXS3j
美雪は、今日ほど里中の席から最も遠い席でよかったと思ったことはなかった。
美雪の席は、春子の右隣、対面する東海林の席の前だった。つまり、里中と美雪は端どうしなのだ。
――と、春子が給湯室から戻って来た。美雪はそれを見るなり、すかさず、再び彼女にすがりついた。

「――っ…!ってまた無視かよ!オイ、ちょっと!とっくり!」
東海林 武の反論の声。

「先輩、少し!少しだけでいいんです!話を聞くだけでも――」
森 美雪のすがる声。

その時、絶妙のタイミングで就業時刻を告げるチャイムがフロア内に鳴り響いた。
「…就業時間です」
私はそう言い放ち、2人から逃れると、パソコン画面に向かい、書類作成を始めた。



―――cantante
深夜。
今日も、カレンダーに赤ペンで斜線を入れる。1日の終わる印。
そして、ふと窓の外を見る。
「…あ!」
一筋の流れ星が流れるのを見た。流れ星を見るのなんて何年ぶりだろう。願い事を3回唱えると願いが叶う、なんて非現実的だとは分かっていた。
だが、無意識のうちに森 美雪の幸せを祈っている私がいた。私が誰かの幸せを祈るなんて、考えられないことだった。そんな自分が何となくおかしかった。
そして次の瞬間には、不意に東海林 武の顔が思い浮かんだ。
720真実の月:2009/08/23(日) 21:53:29 ID:4lAMXS3j
【東海林 武 編】

―――S&F営業ニ課

今日も俺が出社すると、既に賢ちゃんたちが到着していた。

「おう、賢ちゃん、おはよー!」
「――…あぁ、東海林さん。おはよう」
「ん?賢ちゃん、どうかした?元気ないな」
「え?…いや、そんなことないよ」

そう言うと賢ちゃんは笑った。
賢ちゃんがそう言うなら、余計な詮索はしない方がいいんだろうけど…やっぱり親友だし、心配だ。

東海林は原因を探ろうと、さり気なく辺りを見渡してみた。壁際の方では、森 美雪が春子に対し、何やら里中の方をちらちらと見ながら小声で話しかけている。
だが、春子は春子で、そんな森 美雪の話を聞く耳持たず、といった感じで、相変わらずのいつもの変な体操をしていた。

…もしかしてとっくり か?あいつ、また賢ちゃんの傷付くようなことを言ったんじゃ――…

東海林は壁際で体操する春子に近づき、彼女に一言言ってやろうと身構えた。が、その瞬間、彼の気配を感じた春子は、急にくるりと東海林の方に向き直った。

「な…、何だよ!急に振り返って!ビっ、ビックリするじゃねーか!」
「……」
俺の反論を一瞥すると、無言のまま、とっくりは給湯室へ向かった。
無論、このまま無視される訳にはいかない。俺は少々ムキになって、とっくりの後を追った。

「ちょっ、無視かよ!オイ、ちょっと!とっくり!聞いてんのか?!」
「…まだ就業時間ではありません」
コーヒーを注ぎながら、“話しかけないで下さい”というように彼女が答える。
彼女の言葉を遮るように、俺は抗議を続ける。

「とっくり!お前、また賢ちゃんの傷付くようなこと言っただろ?!」
「…覚えがありませんが?」
「嘘をつけ、嘘を!だってほら、賢ちゃん、またあんな迷子の子犬みたいになっちゃってんじゃねーかよっ!!」
「……」
不意にとっくりが振り返り、至近距離まで歩み寄って来た。

怒った…のか?
俺は少し怯んだ。でも、それが彼女にバレないよう平静を装った。

「な…、何だよ?」
「邪魔です」
春子は東海林の脇をすり抜けると、淹れ終えたコーヒーを持ち、自分の席へ戻って行った。
「――っ…!ってまた無視かよ!オイ、ちょっと!とっくり!」

その時、就業時刻を告げるチャイムがフロア内に鳴り響いた。
「…就業時間です」
とっくりはそう言い放つと、パソコン画面に向かい、書類作成を始めた。
仕方ない。この話は持ち越しだ。
721真実の月:2009/08/23(日) 21:54:05 ID:4lAMXS3j

―――
その日の深夜。

俺と賢ちゃんは、フロアでビールを片手に語り合った。
S&Fに入社して依頼、俺たちは、どちらか一方が落ち込むと、自然とこうして語り合う習慣があった。まぁ、でも、俺が落ち込んで、賢ちゃんが励ましてくれる、というパターンの方が圧倒的に多いけど。

「賢ちゃん、何で今朝元気なかったんだよ?やっぱりとっくりか?またあいつに何か酷いこと言われたんだろ?可哀想に…」
「…え?あぁ、違うんだ」
「…違う?じゃあどうして?」
「実は――…森君の様子が変なんだ」
「――森 美雪の?」
「うん…。昨日の帰りもちょっと様子がおかしくて…。それに今朝あいさつした時にもぎこちなくて…。―…やっぱり昨日のことが迷惑だったんじゃ―…」
「…昨日のこと?」
「ほら…、昨日、部長のお見合い話を断るために、森君に彼女役になってもらったこと――」
「いやー、だからって。っていうか彼女、むしろ嬉しそうだったような―…?」
「明日、もう一度謝ってみるよ」
「そうか―…?ま、賢ちゃんがそう言うならいいけどさぁ」
「うん。心配してくれてありがとう、東海林さん」

賢ちゃんはいつでも、誰に対してもこうだ。真剣に向き合う。少しは肩の力を抜けばいいのに。肩凝るぞ。でもまぁ、それが賢ちゃんの良いところだ。
今日は俺も、少しぐらいは賢ちゃんの役に立てただろうか。“ありがとう”と言う賢ちゃんを見ながら、ふとそんなことを思った。

「あっ!流れ星…!」
「え!?ホント?」
窓の外には一筋の流れ星。
“賢ちゃんが早く元気になりますように”
俺はそっと心の中で願った。

722名無しさん@ピンキー:2009/08/24(月) 06:13:19 ID:nxE2uaWR
支援
723名無しさん@ピンキー:2009/08/24(月) 22:42:45 ID:y704Ty8h
続き待ち
724真実の月:2009/08/27(木) 16:52:09 ID:HtnhrP1b
【森 美雪 編】

―――S&F玄関
翌日。

「あの…!あの!すいません。これ、落としましたよ」
「え…?あぁ、すいません。ありがとうございます。」
「あ、いえ…」

正面玄関前で聞き慣れた声がした。私は、その声が誰のものなのかすぐに分かった。里中主任だ。
私の少し先を歩く主任は、女性の落としたハンカチを拾い、届けてあげていた。ハンカチの持ち主の女性から感謝され、
なぜか主任の方がはにかみながら、頭をペコペコ下げている。そしてその直後も、清掃カートを押しながらやって来た清掃員のおばさんに、
「どうぞ」と言ってエレベーターを譲っていた。
その光景を見て、美雪は、思わず優しい気持ちになった。


―――営業二課

就業時間になっても、私はどこか上の空だった。
昨日も今日も、春子先輩は相談に乗ってくれなかったし…。どうしよう…私、どうしたらいいんだろ…。
そんなことを考えていると、ふいに背後から声がかかった。
里中主任だった。

「森君、あの…ちょっといいかな?」
「…は、はい」

主任は、少し緊張した面持ちで私を呼ぶと、給湯室へ向かった。私もその後に続く。

何だろう… どうしよう…
主任は私に何を言うつもりなんだろう…
一昨日のディナー以来、私はまともに主任の顔を見ることができなくなっていた。何となく少し気まずい。


「ごめんなさい」

が、投げかけられたのは全く想定していない言葉だった。

「…へ?」
私は思わず、きょとんとして直立不動になってしまった。

どうして主任が私に謝ってるの?むしろ、謝らないといけないのは私の方なのに…
私は、この間のことが何となく恥ずかしく、結果的に主任を避けてしまっていた自分を思い返した。


「やっぱりこの間のこと、迷惑でしたよね?ごめんなさい。だから森君、昨日も様子が違ったんですよね?部長には僕からちゃんと言っておきますから――」
「あ、あの…!違うんです!」
「…え?」
「迷惑というより、むしろ夢のようというか…。いや、そうじゃなくて…―――あのッ…!…私、主任のこと――」

「里中君〜?ちょっと、どこ行ったのー?あ、いたいた!里中君、予算の見積なんだけど――ここの集計間違ってない?」
美雪が何事か言おうとした瞬間、現マーケティング課主任の黒岩 匡子がやって来た。手には書類を持っている。
主任は“少し待っていて下さい”という様に、私の方を申し訳なさそうに見た。
725真実の月:2009/08/27(木) 16:53:07 ID:HtnhrP1b

「…え?あぁ、どこですか?」
「ほら、ここ。東海林君の企画で疲れてるのは分かるけど――しっかりしてよー?」
「すいません…」


黒岩さんと主任のやりとりが聞こえる。
予算の見積――…昨日私が作った書類だ。
謝らなくちゃ

そして、美雪が2人の元へ向かおうとした時、ちょうど話が終わり、主任が給湯室へ戻って来た。
「すいません、主任!あの書類、私のミスなのに――…」
「…え?」
「だってあの見積の書類、私が作ったものですよね?」
「あぁ、違いますよ。あれは僕のミスです。最終確認するのは僕なんですから。気付かなかった僕の責任です」
主任は少し困ったように微笑みながら応えた。どうしていつも主任は他人のためにこんなにがんばるのだろう。優しくするのだろう。
その時、ふと今朝の正面玄関でのことを思い出した。
そうだ。主任はいつでも、誰に対しても優しいのだ。“私にだけ”でなく、誰にでも――

「…主任は誰に対しても優しすぎます」
気付いたときには、その言葉は口に出ていた。その言葉に自分自身でも驚く。
「…あ、すいません!あ、あの、私、資料室行って来ますね!」

逃げるようにして近くの女子トイレに駆け込み、洗面台の鏡の前でへたり込む。
またやっちゃった…。主任、きっとまた変に思ったよね…。

「今ので確実に嫌われちゃったよねー…私のバカ」
「そうね」
独り言のつもりの言葉に、予期せず返事が返って来た。声のした方を見れば、女子トイレの入口に大前 春子が立っていた。
「…春子先輩」
「まだ業務時間中よ。さっさと席に戻りなさい」
「嫌です…戻れません。だって私――」
「じゃあいつまでもここでそうやってるつもり?」
「それは――…」
そんな事ができるはずないことは分かっていた。でも…

「里中主任がどういう人なのか、あなたが一番よく知ってるはずよ」
そう言うと、春子先輩は歩み去って行った。その背中は、“あなた次第よ”と言っていた。

目の前の鏡を見る。そこには、情けない自分の顔が映っていた。
このままじゃダメだ。行動しないと何も変わらない。
「――よし…!」
頬を両手でパンっと叩くと、私もその場を後にした。

726名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 17:05:42 ID:tn6nlTOi
wktk!
727名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 16:01:34 ID:foqGDr0h
つ、続きは?
728真実の月:2009/08/31(月) 20:36:26 ID:Ko1qd7a+

―――
フロアに戻ると、心配顔の里中主任と目が合った。
「…あ、森君。あの…」
「あ、主任。私、資料室でこんなの見つけたんですよ。ほら、これ」
まるで先ほどのことがリセットされたかのように振る舞う。
里中は一瞬、美雪の振る舞いに驚いたような表情を浮かべたが、すぐにいつもの調子で美雪に話し始めた。
「――秘伝のフルーツソース…ですか?」
美雪の差し出した過去の資料を見ながら里中が応える。
「はい!米ケーキに使えるんじゃないかな、と思って。でも、どんな味なんでしょうね〜?」

「“秘伝”って言うぐらいだからさ、きっとすっごく美味しいんじゃないですか?」
「単純だな〜、お前」
浅野さんと東海林チーフも交じる。いつもの会話。主任も笑っている。
私は少し安心した。

「材料は――砂糖、豆乳にバナナ、金時豆に―…味噌?!」
「みっ、味噌ォ?!」
「いや〜、味噌はナシでしょー?ねぇ、森ちゃん?」
「そうですよねー…、味噌はちょっと…」

「合いますが、何か?」

「…え?」
一斉に、みんなの視線が春子の方に集まる。
「とっくり!おまっ、味噌だぞ?!フルーツソースに味噌はねぇだろ?お前、いくらサバ味噌が好きだからってそれはねーよ。
 なぁ、賢ちゃん?」
「うん…、僕も食べたことないから分からないけど…どうなのかな…?
 あ、でもほら。味噌も豆からできてるんだし、そら豆や豆乳で豆つながり――ってことで意外と合うんじゃないかな?」
東海林の問いかけにより、正面から春子の視線を浴びる里中。言葉を選びながら曖昧に応えた。まるで猫に気を使う小型犬である。
729真実の月:2009/08/31(月) 20:38:32 ID:Ko1qd7a+
「開発者の私が言うんですから、間違いありません!」
「… 開発者ぁ?!お前が?」
「大前です」
「ハッ、嘘つけ!そんな訳――」

「あ!ホントだ!ほらここに、大前さんの名前が…!」
「…確かに。書いてある。ほら、東海林さん、ここ」
「……マジかよ」
東海林はやや前のめりになりながら、浅野と里中に促されるままに、資料を見、次には春子を見上げた。

「で、でもどうせさぁ、ボツ案だろ?それ」
悔し紛れにそう言うも、東海林の言葉はすぐに浅野の言葉によって覆された。
「…いえ。このソース、商品化…されてます」
「え?商品化?!すご〜い!さすが春子先輩ですね!」
「すごいですね、大前さん」

「で、でもさ!今、そんな商品ないじゃん?ってことはさほど売れなかった、ってことだろ?
 ――まぁ、しょうがないよなぁー?やっぱり味噌じゃあ客は買わないよなー?」
得意気に、ニヤつきながら言う東海林だったが、またしてもその発言は一瞬にして覆された。大前 春子によって。
「そのソースはパン工房と共同で企画された“期間限定品”です。
 初めから売り出す期間が決まっていましたが、それが何か?…トウカイリンチーフ?」
「…トウカイ…―って俺のことかよっ!分かんなかったよ、今!っていうか、音読みすんなよ!」
730真実の月:2009/08/31(月) 20:40:32 ID:Ko1qd7a+
「――あれ?でもこの日付、5年前になってる…。間違ってますよね?」
「5年前にもこの会社で3ヶ月間派遣をしていましたが、それが何か?」
「えぇえー?!そうなんですか?」
「5年前…っていうと、東海林さんと僕はいたはずですよね」
「私はその頃、霧島部長のいた総務課担当で、奥の部屋で1人仕事をしていました」
「なるほど。だから会わなかったんですね」
里中の問いかけにこくり、と頷く春子。

「――あ、ということは、部長の弱みとか握ってたりするんですか?」
「…霧島部長とは長い付き合いになりますから」
浅野の質問に一瞬、間を置くと、春子は意味深に言葉を濁した。
「…大前さんって、やっぱすごいですよね」
浅野が感心したように呟く。里中も美雪も頷きながら、その言葉に同意を示した。
「…だ、だから何だって言うんだよ?!それはそれ、これはこれ、だ!
 俺は味噌入りのフルーツソースなんて認めねぇからな…!」
「そういうセリフは試食してから言って下さい」
「あーぁ、いいぞ?望むところだ!食わせてもらおうじゃねーか!」

「それじゃあ一度、試食してみましょう。大前さん、作ってもらってもいいですか?」
「…分かりました」
「ありがとうございます。じゃあ僕は、調理室の使用許可もらって来ますね」
「どんな味か楽しみだな〜。ね、森ちゃん?…森ちゃん?」
「――え…?あぁ、そうですね」
気付けば、私はずっと主任を目で追っていた。浅野さんの問いかけで、ふと我に返る。
主任は、いつもの様に優しい笑顔で笑っていた。これで普段通り、元通りだ。
でもその一方で、“いつも通り”に戻りたくない自分がいた。


731名無しさん@ピンキー:2009/09/01(火) 10:36:17 ID:b6b6f3RP
GJ
お疲れ様
732真実の月:2009/09/02(水) 13:14:22 ID:wfKdsTdc
―――

【東海林 武 編】

それから2日後。
―――調理室

調理室へやって来るなり、東海林と春子は、お馴染みのやり合いを始めた。

「さぁ、作ってもらおうじゃね〜か」
「……」
とっくりはじっと俺を眺める。
目が怖いんだよ、目が…!
「…な、何だよ!」
「もしこのソースが美味しかったら――腹踊り、して下さい」
予測のつかないとっくりの言葉に少し驚いた。ってか、腹踊りってなんだよ!
「はぁ?!何で俺がそんなことしなきゃなんねーんだよ!」
「…自信がありませんか?」
図星を付かれ、俺は少し動揺した。
この女の料理が不味い訳がないと、どこかで思っている俺がいた。それがなんだか悔しかった。
なにせ、とっくりは「スーパー派遣」だからな。でも、ここで引き下がる訳にはいかない。俺も男だ。
「…あ、ああ、あるよォっ!いいよ、分かった!やりましょー?そこまで言うなら!腹踊りでも逆立ちでも!その代わり、もし不味かったら、お前には1日俺の言うことを聞いてもらうからな!」
「…分かりました」

とっくりは不敵な笑みを浮かべると、厨房に立ち、手際よく調理を始めた。
そして僅か20分足らずで、パウンドケーキと、その上にかける、本日の主役であるフルーツソースを仕上げた。


「…どうぞ」
目の前に綺麗に盛り付けられたケーキが出された。
ヤバい、美味そうじゃねーか…!
そんな動揺を悟られないように、俺は平静を装いながらフォークを手にした。
「…いただきます」

東海林が恐る恐る口にフルーツソースを含む。その動作は極めて慎重だった。

「――…どう、東海林さん?」
みんなの視線が俺に集まる。しばしの沈黙。緊張が走る。

…美味い!
でもここで「美味い」と言ったら、俺は腹踊りだ。しかもとっくりに1日、俺の言うことを聞かせる計画が潰れてしまう――…。いやいや、よく考えろ、俺!嘘はいけない、嘘は。そんな事したら、みんなを裏切ることになる。いや、でもなー…。
ちらっとみんなの顔を見る。 …期待されてる。 んー… ……

733真実の月:2009/09/02(水) 13:15:19 ID:wfKdsTdc


「………美味い」


葛藤の末に俺は応えた。蚊の鳴くような声で。瞬間、沸き起こる歓声。
勝ち誇ったかのようなあいつの顔は満足げだった。

「…約束通り腹踊り、して下さい」
「分かってるよ!やりゃーいいんだろ?やりゃー!」

そう言って、俺が上着とシャツを脱ぎ始めると、突然調理室のドアが開いた。そこには、2人の女子社員が直立不動で立っている。俺は俺で、ボタンに手をかけたままの姿勢で静止している。
あまりに突然のことだったため、俺は状況を理解するのに2、3秒かかった。

「――っ…キャーーッ!!」
「変態ー!!」

「…ちょっ、違うッ!違うんだ!これは、腹踊りをするために――…!え、あ、ちょっ…!」

必死に状況を説明しようとする東海林だったが、女子社員たちは聞く耳持たず、走って逃げていってしまった。
その後数日、そんな東海林の噂がたったのは言うまでもない。

734名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 02:15:38 ID:d0F45gb+
ギャグ盛り沢山
支援っ支援っ
735名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 05:23:13 ID:8KM8WXp8
いつも楽しみにしております
支援!
736真実の月:2009/09/03(木) 07:37:11 ID:a65ATqmB
―――

【大前 春子 編】

―――Cantante

その日の夜。
営業二課の面々はCantanteにやって来ていた。春子のフルーツソースが
米ケーキの材料として採用されたことのお祝いをするためだった。
テーブル席には里中と東海林と浅野が、カウンター席には美幸と小笠原が、それぞれ座っていた。
春子はカウンターに立っている。

「それでは大前さんのソースに、乾杯〜〜!!」
「乾杯〜〜!」

「どうしたんですか、春子先輩?せっかくのお祝いなんですから、ほら、ね?グラス持って下さい」
「そうだよ〜、春子ちゃ〜ん」
「…祝ってほしい、と言った覚えはありません。こういうことをされるのは、はっきり言って、迷惑です。
 …それから、小笠原さんが何故ここに?」
「あ、バレちゃった?」
「正面玄関のところで一緒になって。せっかくだから、ってことでお誘いしたんです」
「いいじゃねーか!ねぇ、小笠原さん?さ、飲みましょ飲みましょ、ね?」
東海林 武がグラスを片手にカウンターへやって来た。今日の調理室での一件のせいか、いつもよりも飲むペースが早い。
彼の言葉を借りれば、“飲まなきゃやってらんねー”という感じだ。彼は小笠原さんの右隣の席に座ると、
自らのグラスを小笠原さんのグラスに合わせ、小さく乾杯した。

一方、小笠原さんの左隣の席の森 美雪は、先ほどまでの笑顔とはうって変わり、浮かない表情をしている。
彼女は、私が見ているのに気付くと、慌てて笑顔を作った。
大方、里中主任のことでも考えていたのだろう。彼女は、ここのところ空元気だった。
でもそれは、周りに心配をかけないための彼女なりの頑張りなのだろう。少なくとも浅野と東海林は気付いていない。
私たちは、フルーツソースの件で、店舗調査に出ることになっていた。そのため、昨日はほぼ1日中、外回りだった。
そのせいもあってか、彼女は主任と顔を合わせる機会がほとんどなかった。

737真実の月:2009/09/03(木) 07:38:20 ID:a65ATqmB

「大前さん、ソースの件、ありがとうございました」
「…私はお時給の分の働きをしたまでです」
「もー、大前さん素直じゃないんだからーー…すいません」
お酒の力を借りて、気が少し大きくなっている浅野を目で制す。

「それから森君も、ありがとうございました。」
「…え?私…?あ、いえ、私は何もしてません。全部、春子先輩のお陰ですよ」
「ソースのアイディアになる資料を探してきてくれたのは森君ですから。」
「主任…」

切なげに里中を見つめる美雪。その横顔を見ながら、小笠原は何やら気付いた様子だった。

「…それじゃあ、僕はそろそろおいとましようかなー」
小笠原さんが席を立つ。軽い口調とは裏腹に、いつになく、どこか真面目な顔をしている。
「え?もう帰っちゃうんですか、小笠原さん?」
「…うん。あんまり遅いと、女房が寂しがるから」
美雪が寂しそうに言うも、小笠原はコートを羽織り、身仕度を整えた。
それは、飲み会が大好きないつもの小笠原からは想像もつかないことだった。

「じゃあ僕、送っていきます」
「いや、里中主任に送っていってもらうわけにはいかないよぉ〜。今日はね、浅野君に送ってもらうから、ね」
「えぇ?!俺ですか?」
「それじゃあ、また明日〜」

小笠原さんがちらりと私の方を見て、軽くウインクした。おそらく“後は頼むよ”と言っているのだろう。

「え?ちょっ、ちょっと待って下さいよ!小笠原さん!あ、お疲れ様でした!!」
Cantanteを後にする小笠原。その後を、訳が分からずに追う浅野だった。
738名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 10:11:40 ID:8KM8WXp8
やった!続きキター!

言葉遣いだけで誰が話してるかわかるのがすごいw
脳内でリアルに再生されるw
続きwktkして待ってます
739名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 17:55:45 ID:jo0XkA31
楽しみだ!
740真実の月:2009/09/04(金) 22:39:11 ID:UEZ2YsTr

なるほど――。ナマコ先輩も、たまには気が利くようですね。

「どうしたんだろ、小笠原さん…」
「ん?――あぁ、あいつに人生の何たるかを教えてやってるんじゃねーの?さっすが、小笠原さんだな」
カウンター席から、テ―ブル席の里中に向かって東海林が応える。
「こっち来いよ、賢ちゃん。ほら、ここ、な。一緒に飲もう」
「うん…」

小笠原の席が空いたため、里中はグラスを持ってそこに移動してきた。
そうすることにより、必然的に美雪は、里中の左隣になった。突然のことに絶句する美雪。
それは、現在の美雪にとって耐えきれないほどの緊張を意味していた。

「そ、それじゃあ私も――そろそろ帰ろうかな…。みなさん、お疲れ様でした。」
いたたまれなくなったのか、里中が席に付いてから、ほんの僅か2、3分で美雪は席を立った。
そして、深々とお辞儀をした。そんな美雪を、里中はじっと見つめる。

「あれ?キミも帰るの?」
「はい。明日の朝、寝坊しちゃうといけないので…」
美雪は東海林の問いかけに、困ったように笑って応えた。

「春子先輩、お会計お願いします」
森 美雪は笑顔で言った。でも、私はその顔に覚えがある。それは、泣きそうなのを必死に我慢する時の顔だった。

「それじゃあ、また明日。お疲れ様でした」
「あぁ、お疲れー」
会計を済ませると、美雪は足早に店を出ようとした。
――その時だった。

「森君、送っていきます」

「…え?」
「さ、行きましょう」

戸惑う森 美雪をよそに、その時の里中主任はいつもとは違い、少し積極的だった。
急いでコートを着ると、私に、お会計を頼んだ。
741真実の月:2009/09/04(金) 22:45:09 ID:UEZ2YsTr

「えー…、賢ちゃんまで帰っちゃうのかよー?あ、そうだ!俺も付いて行って、後で飲み直そっか?よーし!じゃあ俺も帰ろ」
「…東海林チーフ、相談があるので残って下さい」
私は、すかさず東海林 武を引き止める。
この単細胞男。全くどこまで空気が読めないのだろう。やっぱり犬以下だ。

「…え?相談?お前が…俺に? ――ま、まぁいいや。
じゃあ、賢ちゃん。そういうことでさ、ごめん。俺、残るわ」
東海林 武はどこか嬉しそうだった。しきりにちらちらとこちらを伺ってくる。

「うん…。じゃあまた明日ね、東海林さん」
「おう、じゃあな」

そうして、森 美雪と里中主任は店を後にした。
私は私で、目の前に嬉々として座る、くるくるパーマ男の相手に追われることになった。
森 美雪と里中主任を2人にするため、ついこの男を引き止めてしまった。
私としたことが――…


742名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 02:54:18 ID:iKNz0xTv
GJ
743名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 11:05:55 ID:fUxsohJ+
投下乙
GJ
744真実の月:2009/09/08(火) 17:04:02 ID:QR305/qs
―――――

【森 美雪 編】

夜中。
人通りの少ない路地。
Cantanteを出て、私はなぜか、里中主任と2人で歩いていた。
靴音が響く。
さっきから一言も会話がない。何だか少し気まずい。
えっと…どうしてこんなことになったんだっけ――…?と、とにかく何かしゃべらなきゃ。


「森君」
「へ?あ、ハイ」
私が話しかけようとした当にその時、逆に主任に話しかけられた。突然のことに驚き、素っ頓狂な声で返信をしてしまった。
「この間からずっと考えてたんです。森君のこと――」
「――はい……っえ?!わ、私のことッ?!」

主任が私のことを…?!
驚いて、思わず聞き返してしまった。

コクリと頷くと、主任は話を続ける。
「ほら、森君この間、僕は“誰にでも優しすぎる”――って言ってくれましたよね?」
「すいませんでした…!…私、失礼なこと――」
「いえ、感謝してるんです。僕はあの言葉で気付いたんです。僕が動くことで逆に傷付く人もいるんだ、って。…すいませんでした。僕は森君の仕事を奪ってしまっていました」
「主任、そんな…謝らないで下さい!悪いのは私なんです!私が勝手にヤキモチ焼いて言っちゃっただけですから!だから――」
「…ヤキモチ?」
「…あ、いや。えっと…それは――」
しまった。私ったら、どさくさに紛れて何言っちゃってるの?!もう!私のバカ〜!
何とか言い訳しようと顔を上げると、ちょうど真正面の里中主任と視線がぶつかった。
…ダメだ。こんなに綺麗な目でじっと見つめられたら、もう逃げ場はない。嘘はつけない。

「―…好きです、里中主任のこと」

里中は一瞬驚いたような表情をしたが、次にはいつもの笑顔に戻った。

「ありがとうございます。…僕も好きですよ、森君のこと」


745真実の月:2009/09/08(火) 17:05:58 ID:QR305/qs

――ウソ?!主任も私のこと――…?
夢みたい…。

「それに信用もしてます。東海林さんも大前さんも、浅野君も。それから小笠原さんも。」
そう言うと、里中は優しく微笑んだ。

「え…?みんなも…?」
ということは、これは「love」ではなく、「like」という意味の好き…ってこと?
「はい。みんな大好きで大切な仲間です」

主任は、無垢な笑顔でそう言った。
大好きで大切―…か。

「そうですね…」
どうしてだろう。主任の言葉1つで、こんなにも幸せな気持ちになれる。
私は驚くくらい穏やかな気持ちだった。

まぁ、いっか。今日はダメでも、またいつか絶対、里中主任に伝えよう。

美雪は空を仰ぎ見る。
火照った頬を掠めていく風が冷たくて気持ちいい。
空には半月が浮かんでいる。
満月まではあと半分。
何だか私と主任の関係みたい。…少しは進展してる…よね?気持ちも伝えたし。
…まぁ、主任にはちゃんと伝わってなかったけど。でも、少し変われた気がする。
上手く言えないけど、積極的に動けるようになった…というか。成長できた。


746名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 01:10:49 ID:yJ7D9d58
おー!こっちの方向もありだ!
次もwktk
747真実の月:2009/09/11(金) 17:16:32 ID:3aeh0lUv

「あ、流れ星…!」
美雪の目線の先に、一筋の流れ星がすっと伸びる。見つけたことが嬉しくて、私は思わず子供のようにはしゃいで言った。
「え?!」
「ほら、あそこです!あ〜…、もう消えちゃいました。流れ星ってほんと一瞬ですよね」
「そうですね。実は僕、この間も見逃しちゃったんです…流れ星。見たかったな…」
残念そうに微笑む里中主任。
流れ星、見せてあげたいな…。

その時、私はあることを思い出した。
「そうだ!主任、見れますよ、流れ星!」
「…え?」
「確か今度、オリオン座流星群が来る、ってニュースで言ってました!!」
「ホントですか?!」
「はい!流星群ならたくさんの流れ星が見れますね!」
「そうですね。それで、いつなんですか?その流星群が来る日って」
「12月24日のクリスマスイウ゛です!」
「24日――米ケーキの販売最終日ですね。あ、せっかくだから、仕事の後、一緒に見ましょうか。みんなで」
「…みんなで。はい、そうですね」
正直なところ、私は、“2人で見ましょう”と言われるのを期待していた。そんな自分が何となく恥ずかしくて、それを悟られないように、続けて同意した。

「…あ、すいません。クリスマスだし、みんな予定がありますよね?」
美雪の同意までに少し間があったため、里中はその原因に思い当たった。

「い、いえ。予定なんてないです!ホントに」
「大丈夫ですよ」
主任は少し寂しそうに、でも、優しく笑った。

私は立ち止まった。主任が何事かと心配し、振り返る。

「私は…主任と一緒に見たいです!…流れ星」
気付けば口走っていた。

748名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 02:21:00 ID:utpKr1pj
続きwktk
森ちゃん頑張れー
749名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 23:50:50 ID:ZzQtShEC
wktkwktk
750名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 08:58:28 ID:DNdE4wTm
ワッフルワッフル
751真実の月:2009/09/14(月) 16:51:01 ID:NWkobuzy

【大前 春子 編】


数日後
―――Cantante

午後10時35分
その日、里中 賢介はひとりで店にやって来た。

「…こんばんわ。ここ、いいですか?」
「…どうぞ」
彼は律儀に、カウンター席に座ってよいか私に尋ねると、そっと腰掛けた。
きっと何か私に話すことがあって来たのだろう。彼がひとりでこの店に来るときは、いつも決まってそうだったから。
だが一つ、いつもと違っていたのは、今日の里中主任はどこか落ち付かずそわそわしている、ということだった。
話の内容はだいたい検討がついたが、私は主任が話し出すのを待った。
グラスにアイスピックで削った氷を入れ、水を注ぐ。それを差し出すと、主任は“ありがとうございます”と言ってひと口飲んだ。
それを契機に話す決心がついたのか、彼は真剣な表情になった。

「大前さん…、大前さんは森君のこと――どう思いますか?」
「…は?」
「あ、いえ…。ちょっと聞いてみただけです。すいません」
主任は困ったような顔で笑った。
仕方ない、今日は付き合うことにするか…。私は彼の質問に応えることにした。
「――…無鉄砲で天然。マヌケ。ドジ。…でも、一途な人間だと思います」
「…そうですね」
里中は一瞬驚いたような表情をしたが、次には美雪の姿を思い浮かべるようにして、優しく微笑んだ。そんな里中の様子を春子はじっと見つめる。
主任は恐らく森 美雪のことについて、無自覚なんかじゃない。無意識のうちに自分自身を制御して、気付かないフリをしているだけだ。
主任と森 美雪がどうなろうと、私には全くもって関係のない話。でも――…

「…あなたにとって、森 美雪とは何ですか?」
「何…って――もちろん大切な仲間です」
「…では、あなたは“彼女の何”ですか?」
「え…?それは――…」
口ごもる里中。
「…主任。あなたは以前私に“自分のことが一番分かってないのは私”だと言いました。でもその言葉、今のあなたにそっくりお返しします」
そう言うと、私はカウンターの奥の部屋へ引っ込み、主任の前から姿を消した。
…私としたことが。
少し立ち入り過ぎた。いつからだろう。こんなふうにもう一度、他人の事情に介入するようになったのは。
主任は今、恐らくカウンター席で、また迷子の子犬のような顔をしているのだろう。でも、もうこれ以上は私がどうこう言うべきではない。主任が自分で判断すべきことだ。

「……」
春子が去った後、案の定、里中は少しうつむき、困ったような顔をしていた。迷子の子犬のような顔。
静かに、自覚という名の花の蕾がほころび始めていた。

752真実の月:2009/09/14(月) 17:00:54 ID:NWkobuzy

【里中 賢介 編】

深夜。
その日、東海林さんと僕は、残業していた。とりあえずの仕事の目途が付き、缶ビールで乾杯する。
「くーーっ、うまい!」
東海林は美味しそうにのどを鳴らす。
一方里中はといえば、昨夜、春子に言われたことを思い返していた。

「ん?賢ちゃん、どうかした?」
黙り込む里中が気になり、東海林が訊ねる。
「…東海林さん」
「ん?」
「東海林さんにとっての僕って、何なのかな?」
「…あ?何だよ、賢ちゃん。恋人がするような質問しちゃってさぁー。…あ、あいつか!またとっくりに変なこと言われたんだろ?」
東海林の言葉に、里中は、たっぷりと間を置いて応えた。
「…分からないんだ。今まで人からどう思われてるかなんて、あんまり考えてこなかったから…」
正直に言えば不安だったのかもしれない。東海林さんが僕のことをどう思っているのか。自分は今まで親友だと信じて疑わなかったから。
でも、そう思っているのは、もしかしたら僕だけなのかもしれない…。大切に思う人であるだけに、不安になってしまう。
だが、彼の答えはもっとシンプルなものだった。
「――決まってるだろ?親友だよ」
「東海林さん…」
「でもさ、別に他人からどう思われようがいいんじゃねぇの?たとえかっこ悪くてもさ、それが俺の生き方なら俺はいいと思ってる。
大事なのはさ、“自分に正直に生きる”ってことなんじゃないかな。…な〜んて、ちょっとクサかった?」
東海林さんは話し終えると、おどけて笑った。でも僕は、その言葉に救われた思いだった。
自分に正直に生きる…か。
「…ありがとう、東海林さん」
「何だよ賢ちゃん、そんなマジな顔してー。照れるからやめろって。ほら、な、飲も飲も。」
「うん」

僕は答えを見つけたような気がした。そして、少しぬるくなった残りのビールを一気に飲み干した。


753名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 22:19:40 ID:QYOo1xk+
続きwktk
754名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 16:16:03 ID:v4jkOJt6
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +
 と__)__) +
755真実の月:2009/09/17(木) 21:16:32 ID:UqUmqvFz

【森 美雪 編】


―――12月24日 クリスマスイウ゛

今日はいよいよ米ケーキの販売最終日だ。ケーキは、クリスマスの一週間前から、営業ニ課の東海林チーフ率いるプロジェクトチームで販売している。
売れ行きは好調。でも今日は、人気ブランド ペティットの指輪が抽選で1つケーキの中に入る日ということもあってか、いつもの3倍ぐらいのお客さんで大忙し。会場はごった返していた。

春子先輩は、今日もウグイス嬢として、お客さんを集めている。やっぱり先輩はすごいなぁ〜。

「今日は、年に一度のクリスマスぅ〜。恋人と食べる甘ぁい苺ケーキ、家族と食べるだんらんマロンケーキ、ひとり会社で食べるツラぁい不景気〜…」
春子はそこまで言い終えると、少し離れた位置からこちらを見ている東海林を睨んだ。また親父ギャグだ。東海林は、そんなのお構いなしに、にこにこしながら春子の方を見ている。


「森君、そろそろ休憩して下さい」
「ハイ。あ、でももう少し。もう少ししたら休みます」
「無理しないで下さいね」
主任は私に微笑むと、去っていった。
あの笑顔だけで、私の疲れはどこかへ飛んでいってしまった。

春子は、いつもより張り切っている美雪の様子を見て、今日の美雪の予定を察した。そして一言“分かりやす…”と呟くと、口の端を少し緩めた。


―――

夕方、5時40分

すべてのケーキを売り終え、みんな充実感に満ちた顔をしている。
「みなさん、本当にお疲れ様でした」
「何かやりきった、って感じですよね」
主任と浅野さんは嬉しそうだった。
「ホント。大盛況でしたね」
もちろん私も嬉しかった。2人に同意し、応える。
「それじゃあ今日はみんなでパーっと打ち上げでもいきますかーっ!?」
「あ、いいですね!行きましょう!」
東海林チーフが言った。浅野さんも乗り気だ。
どうしよう…。確か、ニュースでは、オリオン座流星群は7時過ぎごろから徐々に流れ始めて、8時にはピークを迎えるって言ってたし―…
なんとか間に合うかな?でも、打ち上げをしてたら途中ではなかなか抜けられないだろうし…
756真実の月:2009/09/17(木) 21:17:32 ID:UqUmqvFz
「今日はクリスマスイウ゛なので、うちの店は休みですが、何か」
私がひとり、頭の中でぐるぐると考えていると、春子先輩が助け舟を出してくれた。
「クリスマスなのに休み、って…そんなことある訳ないだろ!かき入れ時だぞ?!かき入れ時!
 あ、とっくり。お前、俺たちがまた店に行って騒ぐのが面倒だからそんなこと言ってんだろ?!」
「…それが何か?」
「やっぱりそうか!店、開いてんじゃねーかよ!」
「…それだけ分かってるなら来ないで下さい。迷惑です」
「かー…!!こいつと話してても埒があかねぇー!おい、賢ちゃん、乗り込むぞ!」
東海林がコートを羽織り、鞄を小脇に抱えて里中を促す。だが、里中は困り顔だ。
「…あの…東海林さん、ごめん。今日はちょっと予定があるんだ」
「え、予定?」
「あれ〜?主任、デートですか?」
浅野がにやけながら尋ねるのを、里中は困ったような微笑みでやり過ごす。
そんな浅野を東海林が制す。
「あのな、賢ちゃんが予定っつったら家族に電話するとか、何かそんなのに決まってるだろ?」
「…ですよね」
「それにしても賢ちゃんがいないんじゃあなぁ…。じゃあ打ち上げはまた後日、ってことにするか。な?」
「そうしましょう!みんな揃ったときの方がいいですよ!」
ここぞとばかりに私は東海林チーフに同意した。ちょっとわざとらしかったかなぁ…?
「…そうですね、そうしましょう」
「よし、じゃあそういうことでっ!」
結局、打ち上げはまた後日、Cantanteで行うことになった。最も、春子先輩はそれに納得してなかったみたいだけど…。
757真実の月:2009/09/17(木) 21:18:55 ID:UqUmqvFz

「それじゃあ、また明日」
「お疲れ様でした」

「森 美雪!」
みんなに挨拶をして、コートを羽織ろうとした瞬間、私は春子先輩に呼び止められた。
「…?はい」
先輩は私に歩み寄って来る。
「…後ろ」
「へ?」
「後ろを向きなさい!」
「は、ハイっ!」
「…コレ。付いてました」
先輩は白い糸くずを摘んで見せた。
「あ…、ありがとうございます」
「じゃっ」
そう言うと、春子先輩は回れ右をして歩み去って行った。
「おっ、お疲れ様でした!」
私は、その後ろ姿に挨拶を返した。

「それじゃあ、行きましょうか?」
「ハイ」
そして、主任と連れ立って歩き出す。
もうそれだけで嬉しくて、心臓の鼓動がいつもの2倍くらい早くなっているのが分かった。
758名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 22:22:29 ID:iPvrBZig
投下乙です!
続きwktk
759名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 22:22:41 ID:MSMY9VXe
がんばれ森ちゃん!
760名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 22:39:43 ID:n5AjaHEV
wktkwktk
761真実の月:2009/09/20(日) 15:38:12 ID:E9rt5iGM

―――
腹が減ってはなんとやら。
私たちは、星を見る前に夕食をとることにした。さすが、クリスマスイウ゛。ガラス張りの店内の様子を外から眺めるも、どの店も混み合っている。
「どこも混んでますねぇ…」
「クリスマスイウ゛ですからねぇ…」
「とりあえず、中に入りましょうか」
「そうですね」

美雪たちは、近くのレストランに入った。親子連れやカップルの客が多い。
順番待ちの名前を記すメモには、既に8組ほどの名前が書き込まれている。そして顔を見合わせると、9組目の客となることにした。

762真実の月:2009/09/20(日) 15:42:55 ID:E9rt5iGM
―――
40分待ちの末、私たちはその約半分の時間で夕食を済ませ、レストランを後にした。
そこから小走りで約30分。
私たちはようやく目的地に到着した。

午後7時48分
美雪たちの頭上では、もうオリオン座流星群がピークに近づいていた。

「やっと着きましたね」
裏路地にある古いビルの屋上。
そのビルは8階まであり、それぞれの階に、弁護士事務所やヨガ教室などが入っていた。屋上への入口の扉は、鍵が錆びついて壊れているため、
誰でも簡単に立ち入ることができた。それほど高いビルという訳ではなかったが、星がよく見える。
この辺りは、商店街が近くにあり、それらはいつも8時には店を閉めていた。だが、今日はクリスマスイウ゛ということもあり、
いつもより早く店を閉めたようだった。そのため人通りは少なく、灯りといえば、ほんの申し訳程度に、街路樹の枝に青と白の電球の飾りが巻きつけてあるくらいだった。

「すごい…、東京にも星がこんなに綺麗に見える場所があったんですね」
里中は上を向いたまま、ポカンと口を開け、感慨深げにそう言った。
そんな里中の横顔を見ながら、美雪は微笑む。
「私、このビルの1階にあるパン屋さんによく来るんです。特に食パンがふわふわで美味しいんですよ」
「そうなんですか。それじゃあ、僕も今度買いに来ようかな」
主任が嬉しそうでよかった…。
美雪は、そこに設置されていたベンチに腰を下ろす。
763真実の月:2009/09/20(日) 15:44:24 ID:E9rt5iGM
――と、主任がくしゃみをした。
「どうしよう…すいません。もっと温かいところにすればよかったですよね。あ、そうだ!私、ひざ掛け持って来たんです。よかったら使って下さい」
美雪は鞄から、ひざ掛けを取り出すと、それを里中に差し出した。
「え、いや、いいですよ。僕なら大丈夫ですから。森君が使って下さい」
「ダメですよ。主任が風邪引いちゃったらどうするんですか?!」
「…それじゃあ、2人で使いましょうか」
「へ…?」
「迷惑…でしたか?」
「い、いえ!そんな…!」
里中は美雪の隣に座り、ひざ掛けを受けとると、少し美雪の側に多めになるようにそれを掛けた。

「寒くなったらいつでも言って下さいね。すぐに返しますから」
「いえ、私なら大丈夫です。――というか、何だかさっきから背中が温かいような気が…?」
背中をさすると、何かが貼り付いていた。
「あれ?カイロ…。私、カイロなんて貼って来なかったのに、どうして…
――あっ!あの時!あの時、春子先輩が付けてくれたんだ…!」
帰り際、春子先輩は糸くずを取るふりをしてカイロを貼ってくれたんだ。
「大前さんらしいですね」
「そうですね」
私たちは何だか可笑しくて、思わず顔を見合わせて笑ってしまった。
764名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 16:21:48 ID:hTz3A+OD
や、やべえ(*´Д`)
765名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 21:49:00 ID:wf9Sqq5H
二人とも可愛い…!
続きwktk
766真実の月:2009/09/22(火) 14:18:48 ID:vT4L2BYN

【東海林 武 編】

―――12月24日 クリスマスイウ゛

クリスマスといえばケーキ、ケーキといえば米ケーキ。今日は米ケーキ販売の最終日。大忙しで、嬉しい悲鳴だ。
さすが、俺たちの企画。ま、もともと考えたのは俺なんだけどね。――ん?ってことはアレか?俺がスゴいってことか?!
そんなことを考えながら、東海林は1人、にやにやしていた。端から見ればちょっとした不審者だ。

「邪魔です。ぼーっとなさるのはあなたの勝手ですが、どこか人目につかないよそでやって下さい。会社の品位が疑われます」

とっくりだった。サンタクロースの衣装を着ている――というより、着せられている。正確には俺が着るように指示したのだった。
その衣装が気に入らないらしく、あからさまに不満顔だ。

「俺に品がねぇーって言うのかよ?!だいたいな、そんな格好したやつに言われたかねぇーんだよ!」
「こんな格好をしろと指示したのはあなたですが、それが何か?」

サンタクロースと言えば、子供にプレゼントを配る、言わば夢のある存在だ。それなのに、そんなメルヘンなものに全く縁遠いこいつがそんな衣装に扮しているのが何だか可笑しかった。
まぁ…自分で指示しといて何だけれども。

「ま、まぁそれはその…そうなんだけど…。ほ、ほら!お前もさ、1週間の間に段々とそのサンタの格好も様になってきたし、いいじゃねぇーか、な?」
「……」
俺は言葉を濁しつつ、見え透いた嘘を言う。するととっくりは、無言で近寄って来た。ヤバい、怒らせたか…?
「な、何だよ?」
「…コレ」
とっくりは俺に、ピンクの包みを差し出した。
「ん?何だよ、コレ?――…待てよ?え?まさかコレって、プ、プププ――…」
「…プレゼントです」
こいつが俺にプレゼントをくれるなんて、予想もしてなかった。何だよ、可愛いとこあるじゃねぇか。
「あ、ありがとう。あの…、開けてもいいかな?」
春子は口の端を緩めながら、ゆっくりと頷いた。
767真実の月:2009/09/22(火) 14:20:38 ID:vT4L2BYN
東海林は嬉しさのあまり、いつもよりも言葉が柔らかくなっていた。だが、自身ではそれに気付かずにいた。
俺は、ワクワクしながら包みの中身を確かめた。彼女は俺のために、一体何を選んでくれたのだろう。
覗き込むと、まず、茶色いフェルト生地が見えた。
――ん?マフラーか?
更に探ると、今度は、赤い円が見える。
――何だ?益々分からない。
俺は包みから“それ”を取り出すことにした。
「――ん…?何だ、コレ?」
「…トナカイの被り物です」
その被り物は、顔の部分だけが丸く空いており、頭部には耳や角、そして真っ赤な丸い鼻が付いていた。
「はぁあ?!」
「クリスマスぐらいその被り物を違う被り物で隠してあげればどうかなーと思いまして」
とっくりは、俺の頭部に視線を向けている。
「これは地毛だ!被りモンじゃねぇー!」
「それにこの間、私の衣装を見て羨ましがっていらっしゃった様なので」
「…あ、アレは―…!」
思わず口ごもる。
こいつ…、この間俺がサンタの衣装をからかったのをまだ根に持ってるな。
それともアレか?俺のダジャレの利いた台本が気に入らなかったからか?!いずれにしても、これは絶対報復だ。
俺にこれを被せて、みんなの笑いものにしようとしてるんだ。これじゃあ“真っ赤なお鼻の東海林チーフ”じゃねぇーか…!
768真実の月:2009/09/22(火) 14:21:29 ID:vT4L2BYN

「里中主任、今日は東海林チーフも加勢してくれるそうです」
「ホントですか?ありがとう、東海林さん!」
とっくりが側を通りかかった賢ちゃんを呼び止めた。すると、賢ちゃんは嬉しそうにこちらへ駆け寄って来た。
まるで尻尾を力一杯振った子犬だ。
「へぇ〜、かわいいね。トナカイ?」
「いや、違うんだ、賢ちゃん。こいつが勝手に―…って、あれ?いない」
だが、そこには春子の姿はもうなかった。
あいつ、いつの間に…?また瞬間移動か?!
そして、改めて東海林が里中に事情を説明しようとしたとき、ちょうど浅野が里中を呼んだ。
「主任、ちょっといいですか?」
「あ、はい。――じゃあ頑張ってね、東海林さん」
そう言うと、賢ちゃんは行ってしまった。
「ちょっ、賢ちゃん…!」
どうしよう…、賢ちゃんめちゃめちゃ期待してたよな、このトナカイ…。
俺は1人立ち尽くしたまま、右手に持った被り物に目をやる。そして、溜め息混じりに呟いた。

「…やってみるか」


769真実の月:2009/09/22(火) 14:23:00 ID:vT4L2BYN
―――
夕方、午後5時40分
遂に米ケーキ完売。

「みなさん、本当にお疲れ様でした」
「何かやりきった、って感じですよね」
「ホント。大盛況でしたね」

「それじゃあ今日はみんなでパーっと打ち上げでもいきますかーっ!?」
俺はみんなに提案した。場所は勿論Cantante。それは言わずと知れた俺たちの間の暗黙の了解だった。
打ち上げ=Cantante。そういう式が成り立っていた。
「あ、いいですね!行きましょう!」
よし!これで今夜はどんな形にせよ、とっくりと一緒にいられる。俺の心は躍った。

「今日はクリスマスイウ゛なので、うちの店は休みですが、何か」
その時、とっくりがそう言い放った。…ウソだろ?!休み??!
俺は内心焦りながらとっくりに詰め寄る。
「クリスマスなのに休み、って…そんなことある訳ないだろ!かき入れ時だぞ?!かき入れ時!
 あ、とっくり。お前、俺たちがまた店に行って騒ぐのが面倒だからそんなこと言ってんだろ?!」
「…それが何か?」
「やっぱりそうか!店、開いてんじゃねーかよ!」
「…それだけ分かってるなら来ないで下さい。迷惑です」
「かー…!!こいつと話してても埒があかねぇー!おい、賢ちゃん、乗り込むぞ!」
俺は賢ちゃんを誘って、強引に店に乗り込むことにした。でも、賢ちゃんから返って来たのは、俺が予想したのとは違う応えだった。
770真実の月:2009/09/22(火) 14:23:49 ID:vT4L2BYN
「…あの…東海林さん、ごめん。今日はちょっと予定があるんだ」
「え、予定?」

「あれ〜?主任、デートですか?」
浅野が賢ちゃんに探りを入れている。
「あのな、賢ちゃんが予定っつったら実家に電話するとか、何かそんなのに決まってるだろ?」
「…ですよね」
「それにしても賢ちゃんがいないんじゃあなぁ…。じゃあ打ち上げはまた後日、ってことにするか。な?」
「そうしましょう!みんな揃ったときの方がいいですよ!」

仕方ない。打ち上げは延期だ。
それにしても、今夜はどうしよう…。
これで、あいつの店に堂々と行く口実がなくなってしまった。
せっかくのクリスマスイウ゛。
確か、今日はナントカ座流星群も来るらしい。あいつは知ってるのかな?


771名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 04:32:15 ID:3gft52hm
赤鼻のセンセイキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
772名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 23:02:27 ID:Occv4Opk
続き期待

てか、働くゴンにハケンの品格出演者勢揃いで笑ったw
773真実の月:2009/09/23(水) 23:15:01 ID:ZQZZ6l5/

【大前 春子 編】

午後7時12分
Cantante 帰宅。
店に着き、扉を開けると、見知った頭部――もとい、見知った顔の男がいた。

「あら、春子。お帰りなさい」
ママの声に、その男がこちらへ振り返る。目が合った。相手は私を見るなり、手をひらりとさせて挨拶した。
「よぉ!」
その顔を見て、私はもう一度、扉を閉めようとした。
「ちょっ、待て待て!何でもう一回、出て行こうとしてんだよ!?」
「…用事を思い出しました」
「ウソをつくな、ウソを!」
「…今日の打ち上げは無しになったはずですが」
「…そ、それは――…。ま、まぁ細かい事はいいじゃねぇーか、な?」
「…失礼します」
「オイ、ちょっと待てよ…!…一緒に飲まないか?」
「…ここはキャバクラではありません」
「そんな仏頂顔のホステス、いねーよ!」
「……」
相手をじろりと見やる。
「…いや、あの、そういうことじゃなくってさ…。つまりその…お前と話がしたいんだよ」
この男の言葉はいつもストレートだ。
なぜか胸にズシンと響く。
でも、今日は誰とも一緒に居たくない。今日はクリスマスイウ゛…。私は何となくこの日が苦手だ。
「…私は話すことなんてありません」
そう言って奥の部屋へ立ち去ろうとした時、不意に左腕に衝撃があった。
東海林 武が私の腕を引っ張ったのだ。
「ちょっと来い…!」
彼はいつになく真剣な顔で私を店の外へ連れ出す。
リュートとママは目配せして、やれやれという顔をしていた。

774真実の月:2009/09/23(水) 23:29:37 ID:ZQZZ6l5/
―――
店の外
勝手口付近に回る。

「…何かここ、懐かしいな。ほら、俺がお前に告白して、次の日風邪ひいてさ」
「……」
「あの日、お前も風邪ひいてたんだってな。なのに俺の代わりに頑張ってくれて――。
 今回のコンペだってそうだ。俺の分の営業の仕事、やってくれてたんだろ?――俺ってホント、お前に助けてもらってばっかりだよなぁ」
「……」
そんなことはない。私は彼の真っ直ぐな言葉に、どれだけ救われたことか。

「…ありがとな」
東海林の言葉が優しく響く。
「…あなたは変わりました」
「変わった…?俺が?」
「あなたは変わりました」
「変わった…?俺が?」
「あなたは、人を思いやれるようになりました。出会ったころに比べると、随分成長しましたね」
「お前に褒められるなんて…何か落ち着かねぇな。雪でも降るんじゃねぇか」
彼は照れながらそう言った。そして、星空を見上げる。
「あ…!流れ星!」
私も次いで、空を見上げる。
「雪じゃなくて、流れ星が降ってきちゃったよ。そういえば今日、ナントカ座流星群が来るってニュースで言ってたな」
「…オリオン座流星群です」
「何だとっくり、お前知ってたのか。…そうだよな、知ってるよな。――いや、もし知らなかったら教えてあげようかな〜…とか
 思ってたんだけど…そっか、知ってたか」
ちらり、と隣の東海林 武を見る。彼はまだ空を見ている。もしかして、それを伝えるために来てくれたのだろうか…。
「…ありがとうございます」
気付くと、何となく素直にその言葉が出ていた。次の瞬間、私は我に返ると、自分の言葉が何となく恥ずかしくなり、目線を空に切り替えた。
春子が目線を移したのに一呼吸遅れて、東海林は春子を見た。いつになく素直な春子に少し驚いたような表情をして、それから微笑む。

サンタクロースから赤鼻のトナカイへのクリスマスプレゼント――それは、自分のコンプレックスを良いと認めてくれたサンタの「言葉」だったのかもしれない。
星を見ながら、ふとそんなことを思う東海林だった。
775真実の月:2009/09/23(水) 23:36:18 ID:ZQZZ6l5/

【森 美雪 編】

「――あ、流れ星!」

主任の声に、次いで私も空を見上げる。
深い藍の空。まるで宝石のような星々が、あちこちに散りばめられて輝いている。
「あー…消えちゃったみたいですね」
流星を見てはしゃぐ主任は、子供のように無邪気な横顔をしていた。
「――よかったですね、主任」
私の言葉に応じるように、里中主任は柔らかな微笑みを浮かべた。
「森君のおかげです。ありがとうございます」
「いえ、そんな…!私は主任と一緒に流れ星が見たかっただけで―…あっ!いや、その…そういうことじゃなくって
 ―…あ、そうだ!」
美雪は鞄の中から、綺麗にラッピングの施された包みを取り出した。赤や緑のリボンが掛けられている。
「あの、これ。クリスマスプレゼントです」
そしてそれを里中に差し出す。
「…僕にですか?」
「はい。あの…全然大したものじゃないんですけど…」
「ありがとうございます。開けてもいいですか?」
「あ、はい。どうぞ」
微笑みながら包みを開ける主任。
「マフラーだ」
里中は無邪気な微笑みを美雪に向ける。
「…あの、主任もうマフラー持ってるし、どうしようかなと思ったんですけど…。
 やっぱり違うものの方が―…」
美雪が言い終わらないうちに、里中は早速、自分の巻いていたマフラーを外すと、美雪からもらったそれを首に巻いた。
「すごく温かいです。ありがとうございます」
「主任…」
嬉しくて嬉しくて、涙が出そうだった。

776真実の月:2009/09/23(水) 23:37:29 ID:ZQZZ6l5/

「僕からも、森君にプレゼントがあるんです」
主任は鞄の中から、長方形の藍色の小箱を差し出した。
「…えっ?!…私に――ですか?」
「はい」
「ありがとうございます。あの…、開けてもいいですか?」
「どうぞ」
私は受け取った小箱を開く。中には、ハートのモチーフが付いたペンダントが入っていた。
「わーっ、かわいい!これ、もしかしてペティットの―…?」
私の問い掛けに主任が頷く。
「どんなものがいいか、全然分からなかったんですけど…森君に似合うんじゃないかなと思って」
主任が私のことを考えて選んでくれた、それが何より嬉しかった。
「私、大切にします!本当にありがとうございます!」
「喜んでもらえたみたいで、よかったです」
里中は優しく微笑んだ。そして、しばし嬉しそうな美雪を見た後、真剣な表情に変わった。
「――森君。僕の話、少し聞いてもらってもいいですか?」
「へ…?あ、はい」
「ありがとうございます」
主任が私に話…?何だろう?
私は再び主任に向き直ると、どんな話が始まるのかと、少し緊張して待った。期待と不安が交錯する。
777真実の月:2009/09/23(水) 23:38:36 ID:ZQZZ6l5/
「僕はこれまで、自分に嘘をついて生きてきたのかもしれません…。」
「…嘘…ですか?」
「はい。いつも自分の気持ちは置きっぱなしで――…きっと、本当の自分が見れていなかったんだと思います」
「――私が見てました。私、いつも頑張ってる主任のこと、ちゃんと見てたから知ってます」
「森君…」
「主任、自分にもっと自信を持ってください。主任は素敵です」
主任は少し驚いたような顔をして、それから微笑んだ。“そうですね”と言いながら。
「だから… これからは、僕は自分に正直に生きることにします」
「主任になら絶対、できると思います」
私には、その話の具体的な内容は分からなかったけど、主任が自分に何か大切なことを話してくれている、
というのは分かった。それが嬉しかった。
そんな美雪を、里中は真剣な面持ちでじっと見つめる。そして一呼吸置くと、決心したように口を開いた。

「…僕は、森君のことが好きです」

778名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 23:50:42 ID:yup6CD/a
里中かっけー!続きワクテカ(・∀・)
779真実の月:2009/09/23(水) 23:59:48 ID:ZQZZ6l5/

美雪は、その言葉に一瞬驚いたが、先日の一件のことを思い出し、少し残念そうに笑った。
「――あぁ、ありがとうございます。“仲間として”ですよね。私も主任のこと――」
“好きですよ”と言おうとした瞬間、その言葉は遮られた。
「違うんです」
「へ…?」
「…僕は森君のことを“1人の女性として”好きなんです」
一瞬、何が起きたのか、私には分からなかった。思考停止状態が5秒ほど続くと、私はようやく状況を飲み込んだ。
真剣な表情を通り越して、少し困ったような顔の里中主任。どうやら私が応えるのを待っているようだ。
「ほんと…ですか?」
それは、私の搾りだした精一杯の言葉だった。
「…はい」
主任は尚も、私を見つめている。澄んだ綺麗な瞳。
それがなんとなく恥ずかしくて、私は少し、目を逸らしてしまった。
「あの…ありがとうございます」
「いえ…」
「…私も…、私も主任のことが好きです…。もちろん“1人の男性として”」
そう言いながら、主任に向き直る。嬉しくて、思わず目が潤んでしまった。
「――ありがとうございます」
そう応える主任の笑顔は優しかった。それは、見ていて安心できる微笑み、幸せになれる微笑みだった。
里中と美雪はしばしの間見つめ合った。お互いに微笑みながら。


「あ…!また流れ星!」
「あ!あっちにも…!」

午後8時12分
オリオン座流星群の流れる頻度はピークを迎えている。

夢に見た奇跡が今、目の前で起こっている。サンタさん、最高のプレゼントをありがとう。


780真実の月:2009/09/24(木) 00:03:05 ID:FsQ2DpXD

【浅野 務 編】

時刻は午後8時過ぎ。
街にはクリスマスソングが流れ、赤や青の電飾を巻かれたツリーが至る所に立っている。人ごみの半数以上がカップルで占められている。そして、それらの人々はみな、一様に空を見上げている。

テレビにはそんな映像が映し出されていた。それは生放送らしく、中継先のキャスターは人々の波に押され気味だ。

「ん〜ン、美味しい!」
浅野 務はケーキを一口フォークですくい、口へ運ぶ。自分で予約しておいた米ケーキ。何となく寂しいが、気にしない。
そして、テレビ画面に目をやる。
「…あれ?このキャスターの人、何かちょっと大前さんに似てるような…?――ま、いっか」
一瞬、手を止めるものの、すぐに再びケーキに夢中になった。
テレビでは、流れ星が映し出されている。
781真実の月:2009/09/24(木) 00:04:03 ID:FsQ2DpXD

【小笠原 繁 編】

「お〜ぉ…、寒い。やっぱり年寄りに冬の夜はこたえるねぇ〜…」
縁側に座り、じっと空を見上げる1人の年老いた男。

「あなた、どうぞ」
「あぁ、ありがとう」

小笠原 繁は声の方へ振り返り、妻からほうじ茶の入った湯のみを受け取ると、微笑んだ。
そのとき、彼の背後に一筋の流れ星が通り過ぎていった。
782真実の月:2009/09/24(木) 00:05:14 ID:FsQ2DpXD

【黒岩 匡子 編】

「あー…、寒っ!今日は一段と冷えるわねぇ〜…」
黒岩 匡子は仕事を終え、帰宅途中にあった。煌びやかなイルミネーションの輝く、楽しそうな街中を独り歩く。
が、ふとショーウィンドーの前で立ち止まり、その中に飾られたウェディングドレスをじっと見つめる。そして、小さく溜め息を漏らした。
憂い顔で何気なく空を見上げると、たまたま一筋の流れ星が目に入った。
「…あ、流れ星」
匡子はそっと微笑むと、再び家路へと歩み始めた。
783真実の月

【一ツ木 慎也 編】

「あー…、そうですか。でもね、佐々木さん。もうちょっとだけー…頑張ってみましょうか?ね?
 ――いやいや、あなたならできますよ、ね?――いやー…、そんなこと言わないで、ね?」
一ツ木 慎也は、今日もハケンライフのマネージャーとして奮闘している。
携帯の相手は、派遣先の会社を辞めると言い出した。それをなだめるのに必死だ。
「あ、ちょっと!佐々木さん?! ――あー…切れちゃったよ…」
“あちゃー…”という顔でゆっくりと携帯を閉じる。そして、上を向きながら、溜め息をついた。
「…あ」
一瞬のうちに、一ツ木の目の前を、流れ星が通り過ぎていった。