【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 2冊目

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840名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 12:07:25 ID:jW9cfP0P
>>827-830
ジュウ様はやはり萌えキャラ。
いや、雨も可愛いけど。
841名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 18:52:09 ID:g3jkh+S8
>>831 >>838二人ともGJ!

ジュウ様が萌えキャラなのは激しく同意
842名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 06:10:43 ID:IYnEQ3VE
お二方ともGJ!!
843名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 14:20:40 ID:P+Kzolca
お二人ともG☆J
844名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 23:17:47 ID:Dnz9Nt7q
雨寝起きのダブルパンチ食らいました………最高っす
GJ!!!!!!!!!!!
845名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 23:27:46 ID:GbDFp8bQ
GJ!!
早く真九郎出てこないかな
846名無しさん@ピンキー:2008/03/20(木) 01:23:48 ID:f0+oRpK9
ロリコンが絶奈に拷問(性的に)されるSSマダー? 
847名無しさん@ピンキー:2008/03/20(木) 14:39:32 ID:FL0T8O7V
むしろショタジュウ様が絶奈に調教される展開マダー?
848名無しさん@ピンキー:2008/03/21(金) 02:49:07 ID:WfoM52t5
むしろジュウが絶奈をやっちゃうってのはない?
849名無しさん@ピンキー:2008/03/21(金) 23:12:41 ID:/OS6Lziv
紅香とかが助けに来たらすでに絶奈調教済みで何の脅威もなくなっていたと。
根っからの裏十三家キラーだなジュウ様w
850名無しさん@ピンキー:2008/03/22(土) 00:06:28 ID:4XqFtKMd
ロリコン殴られ損かよw
851名無しさん@ピンキー:2008/03/22(土) 00:57:31 ID:BBna81hp
>>849
オイオイ、ジュウ様まだ小学生だぞ


ん?別にいいのか
852名無しさん@ピンキー:2008/03/22(土) 12:35:53 ID:C31p2GEX
もしそんなルートに突入したら将来絶奈と雨が喧嘩しちゃいます!!><
853名無しさん@ピンキー:2008/03/22(土) 16:49:38 ID:CKAiVj51
久しぶりにきてみたら、みんな変な話題で盛り上がっててワロタwww
854伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2008/03/23(日) 01:25:38 ID:I/8T/Tn/
「Radio head Reincarnation〜黒い魔女と紅い魔女〜」

X.
 物心がついた時には父親はいなかった。
 母親は父親について語ろうとはしなかったし、また彼女もその事を知ろうとは思わなかった。ただ、周りの子供達が父親に抱き付いては甘えるのが羨ましかった。

 まだ彼女が十歳を過ぎたばかりの頃に母親は心を病んでしまった。
 母親は自分の事について何も言わなかったし、また彼女もその事を知ろうとは思わなかった。ただ、周りの子供達が母親に笑いかけられているのが羨ましかった。

 彼女が十二になるかならないかの頃に売春宿の主が彼女を買いに来た。
 母親はもう働けるような状態ではなかったし、また彼女もその事を責めようとはしなかった。ただ、周りの子供達が友達同士で遊び回っているのが羨ましかった。

 斯くして彼女は十二になるかならないかの頃に男を知った――と言うよりは男という者を思い知らされたと言うべきか。
 幼児性愛好者の為に特別に用意された商品として彼女は“管理”された。
 己の体の磨き方を教えられた。
 立ち居振る舞いを教えられた。
 媚びる為の仕草を教えられた。
 男を悦ばせる術を教えられた。
 それから数年経った今――かつての特別商品としての価値は消えてしまったが未だ看板商品だった――彼女は考えた。
 街を歩く親子を眺め、笑みを浮かべる恋人達を眺め、自分を買いに来る男達を眺めて。
 ――幸せってなんだろう?
 あまりに素朴な疑問はしかし、消えることなく彼女の中で膨らんでいった。
 そうして考えて、考えて、考えて。
 ようやく彼女は、自分が幸せを知らないのではと思った。
 詰まるところ。

 ――私は生まれてこの方一度たりとも、これっぽっちも幸せというものを感じた事がなかった。

 そう、彼女は思った。

 幸いと言うべきか。周りには似たような境遇の女達が居たから、意見を集めるには困らなかった。
 あらゆる意見を聞き、思索し、吟味し、彼女は一つの考えを抱いた。
 その考えが彼女を変えた。
 それは彼女にとって魔法のような、素敵な考えだった。
 彼女は魔法を使えるようになったのだ。

 そうして――


 ――彼女は魔女になった。


 † † †

「ねえ、闇絵さん」
「……なんだね?」
855伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2008/03/23(日) 01:27:03 ID:I/8T/Tn/
「私は幸せになりたいの」
「みんなそうさ」
「私は幸せを知らないの」
「それは錯覚だ」
「邪魔をしないで欲しいの」
「……悪いが、君の理由なんか知らないし、願いを聞き届ける理由もない」
「そう」
 一子が腕を振るう。銀の光が一直線に闇絵に向かって疾走る。それが闇絵の顔面に辿り着く刹那――。
「それで寝てる私を刺し殺すつもりだったのか?」
 甲高い音がして、天井に銀刃――食器に使うナイフが突き刺さった。
 一瞬でナイフの軌道の直上に立った紅香が蹴り飛ばした結果だった。
「そう簡単には行かないと思ってましたけどね」
 一子は冷笑を浮かべながら肩を竦めて見せた。
「さて、どうにも拍子抜けな感があるが王手のようだ。観念してくれるとこちらとしては楽なのだが」
「観念? ――笑えない冗談だわ」
 一子はまだ笑っている。自らの正体が暴かれ、退路もなく、絶対的な戦力差があるにも関わらず、変わらぬ笑みで佇む。
「私の魔法は終わらないわ。私が満たされるまで、世界で一番幸せになるまでは。そう――」

「この街が滅んだって」

 閃光、衝撃、爆音――業火。
「っ!?」
 突然の爆発。闇絵達が、それが宿の隣の部屋で起こったものだと気付く頃には、吹き飛ばされた壁を越えて一子は姿を消していた。
「しまった……!」
 紅香が、彼女を知るであろうものなら想像しえない苦鳴を漏らす。
 もうもうと立ち込める粉塵、黒煙が視界を塞ぎ一子の姿を覆い隠す。緞帳のような煙の向こう。
 闇絵には、一子の嘲笑う声が聴こえた気がした。

 † † †

 走る。走る。走る。
 表通りを、裏路地を、街の中の道という道を。
 ――幸運だった。
 そう一子は考える。
 保険にと、隣室の壁に爆薬を仕掛けたのは自分だが、その爆発の仕方を計算していたわけではない。
 自らも巻き込まれる事を覚悟しての起爆だった。
 そして、咄嗟に三階の窓から――飛び降りた。
 ――やっぱり、私は間違えていない。
 これも“日頃の行い”のおかげだ。
 幸せを集めて、蓄えた結果。
 ――でも、少し幸運を使いすぎたかな?
 そこまで考えて、失笑する。
 これから集まる幸せを考えればこの程度、大事の前の小事だ。
 なにせこれから街一つ分の幸せを自分は得るのだから。
 ――幸せになれる。幸せになれる。幸せになれる。
 熱に浮かされた思考に浮かんでは消える想い。
 ――私は幸せになれる。
856伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2008/03/23(日) 01:28:21 ID:I/8T/Tn/
 知らず、笑みを浮かべる。
 笑い、走る。
 疲労はない。体は信じられない程に軽い。
 これもきっと蓄えた幸福のお陰。
 全てが順調だ。何もかも上手く行っている。いくらかの誤算はあれど、それすら厭わない。
 あの日――魔法に気付いた日に始まり、あの日――私の魔法に賛同してくれた“あの人”が現れてから、全て順調だ。
「幸せに……なれるんだわ」
 呟き、走る。
 走る先は街の外。“あの人”の元。

 ――嗚呼、今逢いに往きます。私に幸せをくれる、貴方の元へ。

 駆ける一子。その姿は自らの血に濡れて、しかし一子はそれに気付かない。
 傷つき尚、痛まぬ体は、ただ一子の想いを成す為に動くのみ。

 † † †

「……してやられたな」
 土煙の中、闇絵が呟いた。殊更ゆっくりと立ち上がり、漆黒の衣装に付いた埃を払う。
「全く、こんな自爆同然の策に打って出るとは思わなかったよ」
「自爆は兎も角、本当に爆破するのは予想外だったな」
 口端から微かに血を滴らせ紅香は瓦礫に寝そべったまま溜め息を吐く。
「街がどうのと言ってたが、正気か?」
「正気ではなかろうさ。本気ではあるとおもうがね」
 闇絵の答えにやれやれと紅香は首を振る。
「爆破……か。一体どうやったのかね?」
「簡単な魔具を使ったと見るが」
「魔具?」
「遠隔で着火する類のものだろう。それさえあれば若干ならば、離れた位置の爆薬を炸裂させる事も出来る」
 簡単な魔術を付与し、所持者の意志をもって発動する魔具は確かに存在する。
「もっとも、身に着けて目立たぬ程度の大きさなら精々五メートルの距離が限界だ。だが、先の爆発にはそれで十分」
 ふむ、と呟いて紅香は考える。
「ということは、爆薬を街中に仕掛ければそれを片っ端から爆破して回る事で街一つを滅ぼす事も出来るわけだ」
 紅香の言葉に、環が異を唱えた。
「でも、それってかなり準備が大変なんじゃ?」
「できるさ」
 闇絵が言う。
「彼女はこの街に長く、時間はある。そして街人の中には仲間もいる」
「……そう言えば、飲みに来てた人達から襲われた」
 環が先の事を思い出しながら言うと、闇絵が頷いて言葉を繋いだ。
「それだけじゃない。私も何人かに襲われたが、こちらはこの宿の従業員――娼婦達だったよ」
 十数人の若い女達に囲まれた時、その全てが宿の者であったことに闇絵は気付いていた。
857伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2008/03/23(日) 01:29:52 ID:I/8T/Tn/
 彼女達が素人であったからこそ闇絵は子供だましのような手法で逃げ仰せる事が出来たのだ。
「時間があり、地理に詳しく、人手もある。条件は十分、か」
「でも、なんでこんな事に手を貸すの? 私を襲った連中は脅されていたけど、この宿の子達にそんな事はないでしょう?」
「いや、男達を脅すよりも簡単だろうさ。彼女達には共感(シンパシー)がある。それがあれば、説得して仲間に引き込むのは容易い」
 元からある仲間意識をねじ曲げてしまうのは簡単だ。だから一子はそこにつけ込んだ。そう闇絵は考えていた。
 そして、口にはしないが更なる協力者――魔具を一子に与え、街一つを爆破できる程の爆薬を用意した人物の存在も闇絵は予感していた。
 いよいよ信憑性の増した街の破滅に、三人の表情に真剣味が宿る。
「急ごう。彼女を止めなくては」
「でも、どこに行ったか分かるの?」
 そう、環が疑問を投げかけた時だった。
 宿の吹き飛んだ窓から、閃光と爆音が飛び込んできた。それに反応して目を向けると、街の一角から火が上がる様が見えた。
 業火に包まれ、建物が燃え崩れる。それが完璧に崩れ去る直前、少し離れた場所で再び爆発が起こった。
 その距離は、丁度人が走る速さに近い。まるで、誰かが火を付けて回っているかのようだった。
「あっちだ」
 紅香が指すと同時、三人は互いに目配せしあい、宿から駆け出した。

続く
858伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2008/03/23(日) 01:34:51 ID:I/8T/Tn/
 今週も毎度、伊南屋で御座います。

 うっかり今週分の投下を忘れる所でした。
 取りあえずは思い出したので良かったです。

 そろそろ物語はクライマックスに向かっております。
 両方の連載終わったら、また短編でも鍵だいと思ってます。
 夕乃さん純愛(ネタ要素なし)とか

 取り扱い今週はこの辺で。それではまた。伊南屋でした。
859名無しさん@ピンキー:2008/03/24(月) 12:00:48 ID:Y7LSUZ8V
>>858
GJでした伊南屋さん!
さぁそろそろとんでもねー女共のお仕置きタイムが始まる頃合ですが楽しみにしてます!
860名無しさん@ピンキー:2008/03/26(水) 11:30:42 ID:RnQiTyVL
GJ!!
861名無しさん@ピンキー:2008/03/28(金) 10:24:58 ID:8ZGjBvD0
遅ればせながら、G☆J
862名無しさん@ピンキー:2008/03/28(金) 19:12:11 ID:J5TP7X7N
GJなんたぜ!
863伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2008/03/29(土) 12:06:13 ID:/SChxdSF
今週の投下。開始。
864伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2008/03/29(土) 12:08:30 ID:/SChxdSF
『彼と彼女の非日常・Y』

 「お姉ちゃん、いるでしょ?」
 そう言って切り出したのが光だと分かって、ジュウは確かに自分が安堵するのを感じた。
 紫とは関係のない来客だと――そう思った。
「居るんでしょ? お姉ちゃん出して」
「どうしたんだ一体?」
「良いから早くっ!」
 鬼気迫る、と言うよりは単純に切羽詰まって狼狽えた様子の光に押され、仕方無く中に居る雨を呼ぼうと振り返る。
 だが、そうするより先に雨はジュウの意志に応えたように、玄関へと現れた。
「雨……こいつ」
 ジュウが光を指すと、雨は分かっている。と言うように頷いて見せた。
「聞いた声がすると思えば……どうしたの? 光ちゃん」
 雨の姿を確認して、光の張り詰めた雰囲気が若干和らいだ。
「……お姉ちゃんに、助けて欲しくて」
「……何があったの?」
 縋る瞳の光に、雨が問い返すと光は背後から人を呼び寄せた。
 ――現れた女性の、胡乱な表情の中にジュウは既視感を感じた。その表情にではなく、それが醸し出す危うさに。
「どうも……」
 ぼそりと零すように挨拶して、彼女は小さくお辞儀をした。
「人を探してるの。昨日からずっと探してて、だけど見つからなくて……」
865伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2008/03/29(土) 12:09:45 ID:/SChxdSF
「人を探しているというのは、こちらの方が?」
 雨が光が連れた女性を指すと、光は頷いて答えた。
「探しているという人はどういった方なのかしら?」
「えと……それが」
 次いだ雨の問いに、光は説明を始めた。
 まず、彼女とは昨日、街で会ったばかりであるという事。そこで人捜しに手を貸す約束をした事。それが行き詰まった事。
「最初は名前聞いても分からないと思って特徴だけ聞いて捜してたんだけど、行き詰まったから他に手掛かりは無いのって聞いたら――」
 そこで光は不意に表情を曇らせ、困惑を浮かべた。
 言うか、言うまいか散々悩んだ挙げ句、あくまで連れてきた彼女が言ったことだと前置きをした。
 そうして一度深呼吸をしてから、躊躇いがちに口を開いた。
「――九鳳院財閥のお嬢様だって……」
「……っ!」
 唐突に、紫へと繋がった。
 女性が――光の連れて来た彼女が舞台の外ではなく内側の人物であった。
 そして、彼女が自分達にとって敵になり得るのか、味方になり得るのか。
 それこそが今この場においてジュウの思考を占める事柄だった。
「そう。それで、どうして探しているのですか?」
 雨があくまで平静に尋ねる。
「私も、頼まれただけですから」
「あなたに頼んだ人はどうして?」
「……決着を付けるんだと、そう言ってました」
「決着?」
 ジュウが漏らした言葉に、女性は答える。
「いえす。大切な――とても大切な事だと言ってました」
「大切な事……」
 それが何であるかをジュウが問おうとして、しかしそれを妨げるように声があった。
「柔沢、どけ!」
 常にはない、切迫した声。焦ったような、追い詰められたような余裕のない声――。

「そいつ――殺せないっ!」

 ――斬島雪姫が叫んだ。

 † † †

 飛来するそれは真っ直ぐに、唯真っ直ぐに“彼女”を目掛け虚空を駈ける。
 主の意志を――殺意を成す為に。
 迅雷の如きそれが目指すのは、眼球。抉り、光を奪うその軌道は冷徹なる一撃。
 最短を高速で抜ける刃。それを“彼女”は受け止めた。事も無げに、その指で。

 刃は語り掛ける。
 ――刺せ。
 ――貫け。
 ――斬れ。
 ――刻め。
 自然と浮かぶ陶然とした笑み。躰の芯を熱くする衝動。
 彼女は酔う。彼女の深くに響く声に。彼女の深くに流れる血に――。
866伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2008/03/29(土) 12:11:44 ID:/SChxdSF

 事態が呑み込めず、故にジュウは動けない。
「雪姫、これはお前が思っている事とは違う」
 紫が前に進み出て、雪姫から包丁を奪う。
「お前っ……危ないだろ」
 無造作と言える程に乱雑に包丁の刃の側をつまんだ紫を見て、ジュウは冷や汗を流す。
「……本当に優しいのだなジュウは」
 場違いな台詞と笑顔で紫が言う。
「とりあえず中に入ろう。少々騒いでしまったから人が来るかも知れん」
 早々に紫が部屋に戻る。
 ジュウ達は一度、互いの顔を眺め合いながら、何故か有無を言わせぬ紫の言葉に従い中へと入っていった。

 † † †

「私を探しに来たのだな?」
「いえす。その通りです」
 ふう、と紫は溜め息を漏らす。
「誰から頼まれたかは、まぁ察しがつく」
「……お前を追っているって奴か?」
「まぁそうだろうな。こいつに――切彦に“不殺(ころさず)”を強いる事が出来るのはアイツくらいのものだ」
 不殺――逆に言えば、それを強いらなければ殺すというのだろうか、この切彦と言う女性は。
 眉根を寄せるジュウが何を考えているのかに気付いたのか、紫は言った。
「ジュウは知らなくても良い――いや、知ってはならない事だ」
「……それは良い。納得は出来ないがな。でも、それよりも雪姫だ。なんであんなに……」
 雪姫はもういない。切彦とは一緒には居れないと言って帰ってしまった。
 居ないから、だからこそ気になる。あの雪姫があそこまで狼狽える理由を。
「それも含めての話だ。仮にそれを知るとして、私から聞くべきではないしな」
「雪姫に聞けってことか」
「まあ、そうなる」
 これ以上話す事はないと言うように紫は言葉を切った。
 ジュウはそれ以上聞けない。紫の意志の現れと、雪姫への誠意――無用な干渉をして彼女を傷付ける事を考えれば、そうするより他なかった。
「――さて、切彦」
 紫が再び、切彦に視線を向ける。
「お前は私をどうする?」
「……正直どうしようとも」
「ほう?」
「私が見つけなくともあの人はあなたを見つけ出します。というよりはもう見つけ出してるでしょう。だから私はこれ以上なにもしません」
「……なぜ?」
「見つけ出してくれとしか言われてませんし」
 契約は完了です――少し不機嫌そうに言って切彦は口を閉じた。

 † † †

「なんだったんだ?」
 立ち去った切彦を見送り、ジュウは呟いた。
「あいつも……一人の人間と言うことさ」
867伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2008/03/29(土) 12:12:35 ID:/SChxdSF
 紫の言葉の意味を計りかね、ジュウは首を傾げる。
「人と仲良くもなるし、恋だってする。勿論、失恋だって」
 ――それを認めたくないとも思うだろうさ。
 紫はそう言って、目を伏せた。
「これだからアイツはダメなんだ。鈍感で無神経。何年経っても変わらない」
「――なぁ」
「なんだ?」
「そろそろ教えてくれないか。お前を追っているって奴を」
 ジュウの問い掛けに紫は躊躇う。
「……別に構わないが。あらかじめ言っておこう。お前が思う程、事態は深刻ではないぞ?」
 それに雨が答える。
「それは、今までの違和感から薄々感じてはいました。貴方は追手とまるで旧知のような言葉を零していましたし」
 紫は鼻の頭を掻いて照れくさそうにする。
「――ならば洗いざらい吐こうじゃないか。正直、本当の事を言わないでいるのはこちらも気分が悪い」
 そこでちらとジュウを見て、紫は溜め息混じりに続ける。
「特に、命でも賭けるんじゃないかってくらい悲壮な表情の奴がいるからな」
 ジュウの頭を真っ直ぐ見て、紫は話しだした。
「少し……痴話喧嘩の愚痴に付き合ってくれないか?」

 続く
868伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2008/03/29(土) 12:16:30 ID:/SChxdSF
 はい、という訳で毎度も毎度、伊南屋に御座います。

 今回の反省。
 ――切彦物語の進行上必要なかった……orz
 好きだからという理由だけで出したのは失敗。上手く絡められんかった……。
 もっとちゃんと考えて書かねばならないですね。

 さて、彼と彼女の〜については次回あたり最終回な予定。
 RRもそろそろ終わることを考えれば最終回は同時投下になるやも。

 それでは今週はこの辺で。
 以上、伊南屋でした。
869名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 23:05:03 ID:VcgK1s3c
GJです
870名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 02:17:54 ID:N1BxJGar
真九郎と蓮丈との対決が終わり、紫は屋敷に戻っていた。
蓮丈「紫」
紫「は,はい?!お父様」
蓮丈「お前にとってあの崩月の小僧はなんだ??」
その質問に少し戸惑いを見せる紫、だけど・・・
紫「私にとって真九郎は大切な人です」
その答えを予想してたかのように蓮丈は呆れた感じで
蓮丈「ふん,勝手にするがよい」
そうして自室に移動する蓮丈に電話が鳴る。

さらば〜地〇よ〜から始まるあの着うたが♪

画面には 「柔沢紅香」の文字が
871名無しさん@ピンキー:2008/04/01(火) 05:20:55 ID:ephGlYuJ
あんまり雨のSSってないのな
872名無しさん@ピンキー:2008/04/01(火) 11:49:38 ID:shfqgpPC
伊南屋さんGJ!!!
873名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 00:15:35 ID:nkQxew/y
「どうして私はみんなに嫌われてるの??なんでこんな目に合わなきゃいけないの??」
少年A「おめぇ気持ち悪いんだよ!!」
少年B「そうだそうだ!!妖怪みたいな前髪してんじゃねぇよ(笑)」
少年C「貞子みてぇ(笑)」
一人の少女はよってたかって少年達にいじめられていた。

その少女は少年達が去った後、ベンチで泣きじゃくっていた。
「もうやだ。学校なんて行きたくないよ、なんで??なんで私ばっかり・・・」
そんな時、頭に何かが乗った。
(え??!また誰か来たの??)
恐る恐る顔を上げると、見知らぬ男の子が頭を撫でている。
(誰だろう??)
男の子は優しい笑顔で私を見てくれている。
(なんでだろう?どうしてか落ちつく)
それから男の子にいろんなことを話した。男の子はその時なぜだからアニメや漫画の話をしてくれた。
嬉しかった。こんな私に楽しい話をしてくれた。



だいぶ時間が経って日も沈みだし、二人は家に帰ることになり、
少女「そういえばお名前はなぁに??」
男の子「俺は×××だよ」













それから何年経ち、とある公園で。

雨「・・・ということがあったんです。」
ジュウ「そんなことあったんだな」意外な表情を浮かべるジュウ 。
874名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 00:38:04 ID:nkQxew/y
雨「それから私はいろんなアニメや漫画を見て、今の雪姫や円のようにアニメや漫画好きなったんです」
ジュウ「へぇ。」
雨の顔はとても嬉しそうな表情をしていた。なぜだかジュウもその表情を見てなんとなく笑ってしまった。
ジュウ「そういえばその男の子とはどうなったんだ??」何気なく聞いた質問だったが、対する雨は。
雨「今でも会ってますよ」
内心ジュウとしては少し嫉妬心のようなものがあったが、あえて口に出さず、
ジュウ「そっか」 とそっけない返事をした。

ジュウ「んじゃ行くか。明日は円堂の誕生日プレゼント買いに行くんだっけ??」
雨「はい。ジュウ様に付き合っていただくなんて申し訳ないです」
ジュウ「まぁ暇だったし、それに・・・」少し顔を背けながら
雨「??」
ジュウ「いつかお前に買ってやるプレゼントの参考に・・・」ボソボソ言ったので雨に聞こえなかった。
雨「どうしました??」不思議な感じで聞いてくる雨。
ジュウ「な、なんでもねぇ。帰るぞ」

そそくさ歩き出すジュウ。
雨「はい。参りましょう」笑顔で後ろをついていく雨。
ジュウについていきながら雨は思った。
(ジュウ様が覚えていなくても私は忘れていませんよ)
875名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 00:45:02 ID:nkQxew/y
あの日の夕方・・・・

少女「そういえばお名前はなぁに??」

男の子「俺は柔沢ジュウだよ」


不良のジュウと奴隷の雨。
いつもと変わらず二人はいつもの道を帰っていく。























近くの電柱から覗く人影。
光「お姉ちゃん、またあんな金髪不良男児と帰ってる!!」「・・・・・・・・・・私も誘えばアイツと・・・・・・・・」

光の日々も続いていく。


【完】
876名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 01:15:26 ID:IKpugPGZ
>>875
おつかれ
後日、光がデートに誘うのですな。
その帰りの電車の中でまた柔が痴漢に間違えられて光が・・・
877名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 01:19:00 ID:nkQxew/y
この話の展開はボツかな??なんとなく書いてみたんだけど。やっぱクソ話??
878名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 01:26:57 ID:Icvl/zeH
>>875
こうだろうが

『じゃあお前この首輪なんてどうだ』『ああ、ジュウ様素敵です……』
        

   そんなの、ご褒美になっちゃう!!」
879名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 07:05:54 ID:Zo8YPJ0H
>>878
光はまたネタかよ!!
880名無しさん@ピンキー:2008/04/03(木) 01:54:32 ID:2bB3whWN
光ほど愛されてるネタキャラはいない
881名無しさん@ピンキー:2008/04/03(木) 19:44:26 ID:yYMP0XyD
そろそろ新スレ立てる?
あと一週間くらいは保ちそうだけど、職人さんに残量を気にさせるのも悪い気がして。
誰かできる人いる? たぶんこっちで出来ると思うけど、スレ立てたことないんで…。
882名無しさん@ピンキー:2008/04/04(金) 00:21:58 ID:Ca59va6X
この勢いなら950くらいからでも充分だと思うけどな。
883名無しさん@ピンキー:2008/04/04(金) 00:23:00 ID:FJLdNpHj
容量がやばくない?
あと7kbで次スレまで持つかね
884名無しさん@ピンキー:2008/04/05(土) 23:49:20 ID:insHwkzu
ちょっと立ててみた。
885884:2008/04/06(日) 00:11:32 ID:XTY0lBTp
【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 3冊目
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1207406903/l50
肝心なとこ忘れてた。
886伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2008/04/06(日) 00:39:12 ID:0T5nahuO
新スレの方にRR外伝第六回投下しました。
887伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2008/04/06(日) 00:39:51 ID:0T5nahuO
>>885
すいません忘れてました。

GJ!
888名無しさん@ピンキー:2008/04/06(日) 07:04:01 ID:C7WXaiDh
んでは埋めに>827の続きでも。やっぱり青臭いジュウ雨。


 恣意的な解釈の入り混じって不安定な記憶を頼りにするならば、甘ったるい幻想に浸ったことなど
少なくとも中学以降は確実にないと思う。控え目に言っても高校以降。だと言うのに俺の寝覚めは
奇妙に安らいでいて、それは正しく甘ったるい眠気だった。起こした身体には寝汗もなく、ぼうっとする
頭も不快なほどのそれじゃない。十分な睡眠の後で自然と覚めた目、覚めた身体。どうしてこんなに
落ち着いているのか、どうにも理解が追い付かない。
 起き抜けは脳みそが情報をどこかに置き去りにしている、と俺はよく感じる。基本的な、刷り込まれた
ように染み付いたパーソナルデータこそ簡単に引き出せるが、それ以外となるとからきしだ。
具体的には、自分の名前は言えても、寝る直前の行動は思い出せない――とか。今日が何曜日
だったか。何時に寝たか。窓から入り込む日差しは明るく、太陽は中天に差し掛かっている。
学校はどうしたんだろう。そうか、今日は休みだ。週末。ならば俺は寝過したのだろうか。
それとも知らず、二度寝でも。

 目覚ましか携帯電話がないかと、シーツの上を手で探る。
 ふにゅりと生暖かいものに触れた。
 視線を下ろす。

 堕花雨が眠っていた。

 ああ俺が感じた甘ったるい安堵感はこいつの体温から来るものか。そんな理解を押し流すように、
怒涛の不理解が言語中枢を侵食して舌を痺れさす。なんだって俺の部屋の俺のベッドのしかも壁側に
堕花雨が横たわっているのか、なんだって俺は上半身に服を着ていないのか、なんだって俺の手は
雨の胸に触れているのか。最後の一つに関しては不可抗力に触れただけだと気付き、慌てて俺は
腕を上げる。柔らかい感触が微妙に手のひらに残っていて、顔いっぱいに熱が広がった。耳まで
茹でられたような気分になる。女の胸を触ったのは初めてだと気付いて、更に混乱が加速した。
なんだ。これは。どういう状況、だ。

「中々大胆な行動をするもんじゃないか、童貞の分際で」
「ッ!?」

 唐突に背後から強いニコチン臭が這い寄って来て、俺は慌てて振り向いた。
 佇んでいるのは、解り切っていたことながら、お袋だ。少しばかり皺が寄った赤いスーツ姿、
口元には火のついていないタバコが咥えられて、シニックな笑みすら浮かんでいる。肩を揺らして
可笑しそうに喉を鳴らしたお袋は、がっしと俺の前髪を鷲掴みにして顔を引き寄せた。煙草の先端が
鼻先に擦れるムズ痒さに、俺はやっと頭を醒まして腕を突っ張る。が、その腕はびくともしない。

「どんな感触だった? 着替えさせるのにブラ外させたからな、ノーブラだぞノーブラ。
柔らかくて照れちゃったか? まだ耳まで赤いぞ、青少年」
「う――うる、っせ! なんだこれ、どーなってる!?」
「騒ぐな馬鹿が、堕花が起きるぞ」

 容赦ない右ストレートで強制的に黙らされた。
 寝起きには流石に効いた。
 お袋はフンと鼻を鳴らしてから、思い出したように煙草に火を点ける。

「大体状況の所以を聞きたいのは私の方だ。朝に来てみたらお前が堕花に寄り掛かって眠っていた
んで、堕花に説明を求めたんだが、お前が求めたとしか言わなかったぞ。体勢が寝苦しそうだったんで
とりあえずベッドに寝かせて、堕花を適当に言いくるめて着替えさせてお前の隣に寝かせたのは私だが」
「結局あんたかよ。しかも雨が着てるの俺のシャツだな」
「そうだ。お前のシャツを堕花がノーブラで着てる」
「…………」
「ああ、残念だがノーパンじゃあないぞ。流石にそれは警戒された」
「誰も期待してねえよ」
889名無しさん@ピンキー
 むしろ脱がそうとしたのか。
 にやにやと笑うお袋を無視して部屋を見渡すと、なるほど机に向かう椅子の上に、綺麗に畳まれた
セーラー服が置いてあった。その上にはシンプルな下着がくるりと丸められている。思わず視線を
逸らして、俺は殴られた頬を押さえた。熱をじんじんと溜めて行く皮膚とは別に、頭は冷静になっていく。
そう、思い出してきた。朝に眼を覚まして、雨が来て、そして、一緒に。
 思い出してみれば何の疑問もない。隣に眠っていたから何事かと動揺しただけのことだ。ふうっと息を
吐いて、俺はお袋を見上げる。携帯用の灰皿をポケットから出す途中だったお袋は、俺の目に気付き、
一瞬逡巡してから――煙草を指に挟み、あろうことか煙を思いっきり吹き掛けてきた。

「ッ、何すんだ」
「可愛げがなかったんでついな」
「この年でそんなんあるか。そもそも誰の子だと思ってんだよ」
「だからに決まってるだろ」

 くっくっく。お袋は笑う。

「私の息子の分際で、私の手より堕花雨に擦り寄ったんだ。そんな可愛げのない息子には、
煙ぐらい吹き掛けてやりたくなるね」

 昼食と夕飯の用意はしてあるから、二人で仲良く食うが良い。お袋は言い残してひらひらと手を振り、
部屋を出て行った。間もなく玄関の開閉音もあったから、恐らくはまた出て行ったんだろう。どこまで
気まぐれな女だと、呆れるよりも先に、俺はその言葉の意味を咀嚼する。
 お袋の手よりも堕花雨に擦り寄った。まさかあの女、寝てる俺に付き添っていたのか。あまつさえ
手でも伸ばしていたのか。子供扱いするように。子供のように。いつかのように怪我をしているわけでも
ない、休日の二度寝に浸る俺に。
 そして俺はそっちじゃなく、雨に擦り寄ったらしい。
 部屋にはお袋が残して行った煙草のニオイが広がっている。傍らを見下ろせば、雨は少しも呼吸を
乱さずにぐっすりと眠っていた。前髪が散って長い睫毛に縁取られた目元が覗ける。眼を閉じていても、
その端正さが解った。大きなシャツは肩幅が合わず、襟元からは胸が見えそうになっている。広がった
髪からは、シャンプーの甘い匂いが微かに香った。まどろみに感じた安堵感と、多分同じの甘ったるさ。

「……あー」

 込み上げる気恥かしさに、俺は意味のない唸り声を漏らす。

「雨、起きろ。昼飯にするから」
「ん……ん〜……」
「おい。……おーい、起きろー」
「んぅう……」

 ごろごろとむずがる雨の肩を揺すり、俺は声を掛ける。いやいやするように繰り返される寝返りは、
動物の匂い付けを連想させた。今夜ももしかしたら、雨の匂いは残るのかも知れない。体温はなくても、
その存在の確かな残滓として。煙草の匂いよりも、少しだけ強く。
 洗う予定だったシーツは、もう少しこのままにしようか。
 目を覚ました雨が寝てる間置き去りにしてしまった情報をもう一度脳に取り戻すまでの間、一通り慌て
ふためきながら布団に潜り込むのを見て、俺はそんなことを思った。

終わり。朝、昼と来たから、夜でエロまで持って行きたい かも