需要あるか微妙だけど…
しきみ×あざみ お風呂でそれとなく激しくイチャイチャきぼん
>>3 あら?私ったらいつの間に書き込んだのかしら
とりあえずしきみ×あざみお願いします
俺がいっぱいいる…いやいや、あざみ×しきみでおながいします。
6 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 21:01:57 ID:KF/AM7Ps
あざみ→縄跳先生でお願いします><
7 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 23:18:11 ID:KxmRiKgT
エロパロではあざみたん大人気><
最初しきみがあざみにいたずらしてて(性的な意味で)、勢いでアハンな場面に突入
途中あざみの歯止めが効かなくなってあざみ攻めで何度も何度も・・・
で最終的には「私の情報によればしきみは今日は危険日でした」なオチが読みたい
ごめんなさい
いや、つーか、そういうの書く気満々なんですがw
>>9 ………!!!!!!!!!!!奇跡!?
楽しみにしてます!!
くそ、自分にも文才があれば……!何で絵に偏っちゃったんだ…
すごい正座して待ってる俺がいる…
なんか書こうかなぁ
ナナフシ×あざみ×しきみの3pが読みたいです><
(∩゚д゚)<先生! 三人称はやっぱりアレでソレでナニだからマズーですか?
いや、三人称のエロパロってあんまない気がしたもんで。
面白そうだが難しいそうだな、絡ませ方が
個人的にはしきみが善がればそれでイイ
しきみとあざみってお互いに何て呼んでるんですか?
このままだと妄想する時に弊害が…アニメちゃんと見てなくてすみません…
普通に名前で呼んどるよ
>>17 そうなんですか。ありがとうございます
うわっ何か色々浮かんできt
裸で待ってる俺がいる
催促して悪いんだけど、今執筆中の人っているの?不安になってきたんだ・・・
大丈夫、書いてるノ
ここって絵の需要あります?
自分では絵描けないので、漏れはホスィ。
前スレのあざみ×ひめじが好き(^_^)
誰か保管庫作ってくれたりしないすか?
保管庫できたら前スレのナナフシ×あざみをおいといてもいいかね?
鼻血でた…えろい…エロ過ぎる…
>>28 絵師キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
元気出たよ思わずシャキーンしちゃうくらい。
超GJ!!
32 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 23:22:20 ID:1slxHtCY
>>28
すみません(汗)見かたがわからないんですけど
おしえてくださいませんか??ごめんなさい;
2個あるバナーの内、上の方のバナーの真下に小さくダウンロードとあるのでそれをクリックです
でいいのかな・・・?
くの一五人組(一人は男だが・・・)×ハヤトが読みたい!
ゴメン…ちょっとキモイ…
同志たち活躍乙だ
この辺で華麗にSS登場と期待したいところだ
41 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 21:32:03 ID:chPOLTaw
小説希望!!小説希望!!
誰か小説キボン!
>>42 落ち着けww
つか書いてる誰か人いる? あざみ×しきみ以外で。
オオカミ並に書いてほしい!
女の友人との会話に「間接ディープキス」って出てな
チュッパチャップスを女友達同士で間接キスだ(日本語おかしい)
まぁそれはどうでも良いんだが、あざみとしきみでそれを妄想したんだけど文才がないんだよな…
今までのやつ、誰か保管庫に置いてくれないかなぁ…
フ・・・ファ・・・ファーーー( ̄□ ̄)
テラGJ!
GJ!!まさかまさかこんな良いあざみとしきみが見れるなんて…!
あああああああGGGGGGJ!!!
最初の4行の時点で萌え死しましたよ
>>46 ラブラブで理想的ですね、GJ!
久々に興奮しました、ありがとう
>>46 ペタGJ!!!!
粗茶ですがドゾー。
∧_∧
( ・∀・)
(つ旦と)
と_)_) 旦~~
52 :
46:2007/02/05(月) 19:36:50 ID:lvVNvS7T
なんか書こうと思ってるんだけど、何も浮かばん(;・∀・)
だれかネタとかくれー。
執筆速度は亀だけどね…
>>52 妄想出来ても割とありきたりな内容になっちゃうんだよね…
俺も他に思いつかないから>45の間接ディープキスネタで何とかならないものか…
>>46
萌えたぜ、萌え尽きた。やばい、下が熱い
イ・・イキそう・・あぁ・・はぁん・・ぅ・うあぁぁぁぁぁ!!!!
やばい、親が来そう。出したの見られる・・・。
55 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 23:23:54 ID:Uxywwc27
誰か、あざみがしきみを押し倒してたらナナフシが来て、あざみがナナフシに「あんたも混ざる?」的な事を言う小説書いてくれまいか…
途中であざみもナナフシに食われると尚良し。
>>56 ナナフシってエロに入れ辛くないか?
それならヒメジかゆすらがペニバンでうわ何をするやめr(ry
>>56 その文章だけで興奮したぜ
ただ、あざみがどんだけしきみの事大切してるかによるなぁ>「あんたも混ざる?」
あざみがしきみの事溺愛してるのが好きなんだ…勿論あざみはしきみの性感帯の場所全部把握してるよな?
「あんたも混ざる?」
をしきみがナナフシを思うが故の思いやりとか…。
あざみ→しきみ→ナナフシで実は切ない系
日本語おかしかった…
ごめそ
せめて最後の一行は変換しとこうでありんす。
>>59 凄く切なすぎるよあざみたん
その構図で何種類か話想像したけど、あざみ→しきみの強姦っぽいのが真っ先に浮かんだ
ごめんなさい
63 :
46:2007/02/07(水) 10:30:00 ID:NINrDG2P
皆のその妄想を頂こうと思ってますよヽ(°▽、°)ノエヘヘヘヘ
どうなるかは自分でもわからんがw
だが自分もあざみはしきみ溺愛状態なんだorz
エロじゃなくて良いのならエロ書き終わるまでのおつまみとして出すけど…
需要ある?
ぶっちゃけしきみが喘ぐよりあざみたんが喘いだほうがモエス
20KBくらいになっちゃったんだが、これって普通にレスとして貼り付けていいの?
大作キタコレ
分割して貼り付けたら多分大丈夫だとオモ
それか↑の人みたくうpろだ使うか。
>>65 気にしなくていいよ(^-^)
みんな君の投下をまってるんだ。
>>63 >だが自分もあざみはしきみ溺愛状態なんだorz
( ・∀・)人(・∀・ )ナカーマ
おつまみ投下是非よろしくお願いします
>>66 普通にでもうpロダでもどっちでも大丈夫かと
wktkしてます
あざみタンの喘ぐのも見てみたいからあざみ受け希望!!
投下します。長いのでマターリ待ってやって下さい。
あざみ×しきみ、たぶんあざみ攻めです。
冗長なのは仕様で(ry
薬研が草をすりつぶす音がする。志能備学園女子寮の一室、しきみの部屋からである。
彼女の周りには大量の古びた書物と見慣れない草、何やら黒っぽい粉末、それにヤモリをはじめとした各種黒焼きの欠片が山と積まれていた。
(ふう。後は混ぜ合わせて固めるだけね)
一息つくと、額ににじんだ汗を拭った。
窓より差し込む月明かりは、既に傾きを増し始めている。
(もうこんな時間か)
本来ならわざわざ深夜、人目につかないようにする必要などなかった。忍びが薬草の調合をして咎められるわけがないからである。
ただ、今回は少々事情が異なる。使う草に問題があった。
あまり大っぴらにすべきではないものが混じっている。
(ふふ。門外不出の秘薬、効果は如何なものかしら……?)
すりつぶした粉末を混ぜ、少しばかりの水にその他諸々を加えて丸薬とする。
この辺りは手馴れたものである。
(興奮剤ににているけど……)
薬の効果のほどに思いを馳せながら、しきみは黙々と作業を続けていた。
翌朝、しきみは珍しく授業中に居眠りをしていた。一限はハヤトの一般教養であったから、気が緩んでしまったのかもしれない。
その気持ち良さそうな寝顔を、ヒメジ達が興味深げに眺めていた。
「しきみが居眠りなんて珍しいでありんす」
「本当、正座するペンギン並にレアねー!」
ペンギンが正座出来るのか、は禁句である。
「私の情報によれば、しきみ。昨日の夜、遅くまで起きて何かを作っていたみたいね」
「何かってなんでありんす?」
「……さあ、そこまでは」
「そこが分からないんじゃあ、意味がないでありんすよぅ」
「きゅうりのぬか漬けかしらー?」
それはない、とあざみとヒメジが声を揃えていった。
「もう、皆さんハヤト殿の授業もちゃんと聞かないとダメですよっ!」
ヒメジ達の雑談が止む気配のないのを見かねて、ひまわりが小声で注意した。
が、それで真面目に授業へ取り組むようなヒメジ達ではない。
「ひまわり、牛丼の作り方をそんな熱心に聞いてどうする気でありんす?」
「もちろんいっつもお腹を空かせてるハヤトに作ってあげるのよねー。愛だわー!」
「ちち、違いますっ! 私はただ立派な忍者に……」
「わらわは牛丼なんかよりRPG七型でも貰った方が嬉しいでありんす! あれさえあればもう何でも木っ端微塵でありんす!」
「ヒメジ、あんた……。忍者があんな目立つもん持っててどうしようって言うの?」
「私も米澤君に牛丼作ってあげようかしらー?」
「牛丼よりカラシニコフさん木製ストックのがいいでありんす!」
「いや。だからヒメジ、あんた自分が欲しいもんから離れなさいよ?」
「あのー。皆さん、だから授業を……」
「でも牛丼よりもやっぱりきゅうりよねー! 今度は何漬けにしようかしらー?」
ひまわりの抗議も空しく、ヒメジ達の雑談は終鈴が鳴るまで途切れることはなかった。
その日の夜。
あざみは件の煙筒の下、ハヤトが掘った温泉に来ていた。一日の授業が終わった後、しきみに呼び出されたのである。
口上は単刀直入、温泉に行きたいから付き合え、であった。
しかし、肝心のしきみの姿が見えない。約束の刻限はもう過ぎているはずである。
「まったく、人を呼んでおきながら遅刻するなんて」
あざみは一通り愚痴をこぼすと、物陰で装束を解きはじめた。どうやら先に浸かっていることにしたらしい。
素肌の上に一枚、大きな布を巻きつけた。こうしてみると案外華奢なのが分かる。
「ま、先に浸かってるくらいは良いよね」
足取りも軽く温泉の隅へ近づくと、ゆっくりと足先より入った。
「やっぱ、寮の風呂より広いから気持ちいいなぁ」
そう呟くと、両腕を大きく広げて伸びをした。
空には満月を少し過ぎた月が浮かんでいる。山の端から顔を出したばかりの月は、まだ少し赤みがかっていた。
あざみはそのまま暫く月に見入っていたが、あるとき湯が不自然に揺れているのに気が付いた。
「……遅くなってごめんなさい」
「うわぁっ!!」
驚いて振り向いた瞬間、しきみが景色の中から浮かび上がってきた。
何のことはない、見慣れたしきみの隠形なのだが、油断している時にやられたら流石に驚くのが人情というものである。
「し、しきみぃ。脅かさないでよー」
「あら、そんなつもりはなかったんだけど?」
と、しきみが少しずれていた眼鏡を直しながら答えた。
「もう、わざわざ姿を隠して背後に寄るなんて悪趣味だよ」
「爆竹でも鳴らして脅かすよりはいいでしょ」
「あんた……ヒメジじゃあるまいし」
「たとえば、の話よ」
二人はそのままヒメジやゆすら、ひまわりに関する他愛もない話を続けた。
しかし話の途中、しきみは切れ長の目を細めてあざみを見た。
「そういえば、あなた」
「ん、なに?」
「胸」
「……胸が、どうかした?」
「前から思っていたのだけど、ちょっと無さすぎる気がするのよね。ゆすらより小さいでしょう?」
全く無いとも言うけど、と心中で思ったのは秘密である。
もちろんその理由などしきみは百も承知であったが、今はさも怪訝そうな表情を作りながら水面の下より手を伸ばした。
が、あざみの体を覆う一枚布の目前で彼女の手は阻まれてしまった。
「うるさいなぁ。どうせ私は胸、小さいよぅ」
あざみは少し拗ねたような色を浮かべると、しきみの手を押し戻した。
羞恥ゆえか、頬の赤みが増しているようにも見える。
「ふ〜ん?」
今が良い、としきみは思った。横座りのまま、あざみの方へゆっくりと擦り寄っていく。
両の二の腕に挟まれた柔肉が仄かに色付き、殊更女を強調しているようにみえた。
それに気が付いたのか、あざみが小さく後ずさった。
「あら、なんで離れるの?」
「あ、あんまりくっつくと……その、うん。のぼせちゃうでしょ」
「そう? だけど、もっとくっつかないとよく触れないじゃない?」
「えぇ? 触るって――」
言い終わるより早く、あざみの首にやわらかな二本の腕が絡みついた。
緩やかにしなだれかかるしきみの柔肉が、あざみの腕へ体へと押しつけられている。
あざみは耳の先まで真っ赤に染めているが、敢えて振り払おうとまではしなかった。
恐らく、動きたくても動けない状態になってしまっているのであろう。
変に初なところが可愛い、としきみは思った。或いは「そういう」経験が殆どなかったのかもしれない。
「ししし、しきみっ! ええと……その。暑いから、ちょっと離れてくれない?」
「嫌よ」
しきみは左手を水面の下へと沈めると、布越しにあざみの体を撫で始めた。
「ひぁっ!」
「ずいぶんと敏感なのね」
「わわわ、私はそういう趣味はないってばっ!?」
「あら? そうなの……」
些か芝居がかった悲しげな語調で――表情はその限りではないが――しきみが小さく呟いた。
しかしその間も指先はあざみの引き締まった太ももをなぞり上げ、固く閉じられた内股を掠めるように撫で上げている。
止める気は毛頭ないらしい。
「ところで、そういう趣味って具体的に何のことか教えてくれない?」
「……何のって。お、女の子同士で……あぅっ」
「――そうね。女性同士で、というのは一般的ではないかもしれない」
意味深な笑みを浮かべながら、あざみの眼を覗きこんだ。
「分かってるなら……んぁっ、止めてって……!」
「あら、止めちゃっていいの?」
あざみの内股に触れるか触れないかといったところを柔らかな指先が滑ると、彼の体全体に痙攣にも似た震えが駆け巡った。
「もっとしたいでしょう?」
「そんな……んぅっ、そんなことな……ひゃあっ!」
「うそつき」
しきみがあざみの耳元で囁いた。
耳元と内股を同時に責められ、息も絶え絶えといった風にあざみが喘ぐ。
「し……あぅ、んっ、はぁっ……しきみっ、お願いだから……!」
「大丈夫よ、止めないから」
しきみはあざみの首筋に舌を這わせると、同時に布の合わせ目から手を滑り込ませて直に体を弄び始めた。
「ち、ちがうっ……! しきみっ、本当に……あっ、だめだって、あぁぁっ!」
あざみの嬌声が一際甲高くなった瞬間、しきみの指が一切の動きを止めてしまった。
同時に、首筋から顔を離した。
「あふぅ、ふぁ……し、しきみ? どうしたってのさ、なんか変だよ」
その問いには答えず、しきみは自らあざみの唇を奪った。
「――!?」
あざみが驚いて何か言おうとするも、唇を塞がれていてはどうしようもない。
やがて苦しげな呻きは熱っぽい吐息へと変わり、眼からは微かに残っていた抵抗の意思が消えていった。
しきみの舌があざみの舌を絡め取り、口腔中を嬲り尽くしている。
少しやり過ぎかしら、と最初しきみは思った。しかしあざみの様子からすると、特にやり過ぎといったことはないようにも思われた。
あざみの方から舌を絡めてくることはなかったが、さりとて拒む様子も見られないのである。
恍惚としたあざみの吐息が、何よりの受容の印であった。
しばらくして、しきみがゆっくりと唇を離した。
あざみの唇から溢れた唾液が、口許を淫靡に彩っている。
「ぁ……」
「どうだった?」
「え。えと……その、すごい甘かった。本当に、ものすごく」
「そうね、そういう味がして然るべきだもの」
「――?」
「結構苦労したのよ。そのままだと不味くて――ううん、それより」
「しきみ……わ、私」
あざみが細い腕を伸ばし、ゆっくりとしきみを抱き寄せた。だけでなく、その体を隠す布の合わせ目を解いてしまった。
「あ、あざみっ?」
「私、もう我慢出来ない、かも……」
そう呟くと、しきみの股間に手を伸ばした。
「やっ、止めっ」
指が触れた瞬間、あざみが少し驚いたような表情を浮かべた。
「しきみ……もしかして、つるつる?」
「――っっ!」
しきみの顔が一時に赤くなる。
「ここここ、このばかっ、わざわざ言うなっ!!」
「可愛い」
あざみが愛おしげにこぼすと、しきみを抱く腕に力をこめた。
最初は暴れていたしきみであったが、一分も経つうちには大人しくなった。
「しきみ。その……」
言い淀んだあざみであったが、しきみはただ一度だけ小さく頷いて返した。
野暮なことは聞くな、といったところであろうか。
あざみはもう一度強くしきみを抱き締めてから、ゆっくりと彼女を抱きかかえて立ち上がった。
-----------------------------------
あざみは覚束ない足取りで温泉の縁まで歩くと、柔らかな苔に覆われた大きな岩の上にしきみを下ろした。
一糸纏わぬしきみの体を、柔らかな光が包んでいる。
元々色白な肌が、ますます以って白く透き通って見えた。
「綺麗……」
あざみが呆けた風にこぼすと、しきみは照れくさそうに視線を逸らした。
(本当に綺麗……)
張りのある胸にそっと手を添えると、しきみの体が小さく一度だけ震えた。
首筋にくちづけを降らせ、胸をそっと撫でる。声こそ出さなかったが、しきみは時折体を震わせて応えた。
しきみの紅潮した首筋があざみの劣情を激しくそそり、愛撫の熱は徐々に高まっていった。
「ん……しきみ。足、開いてよ?」
しきみは顔を赤らめ、いやいやと頭を振るばかりである。
それだけでもあざみは堪らない思いがしたが、しかしこのままでは続きのしようがない。
(……そうだ)
しきみの首筋に舌を這わせ、同時に脇腹を指先でくすぐるように撫で上げた。
「ひゃっ!?」
しきみの足から力が抜けた瞬間を逃さず、あざみは自分の足を滑り込ませた。
「あ、あざみっ!?」
「へへ、私の情報によれば……」
と、再度しきみの脇腹を撫で上げる。
「あぅっ!」
「しきみはここが弱いかもしれないって、ね?」
と、更にもう一度撫で上げた。どうも反応が気に入ったらしい。
「もう、バカっ」
しきみは顔を真っ赤にして抗議したが、こうなってはもう後の祭である。
あざみはゆっくりと体の位置をずらしながらしきみの足を押し広げると、濡れそぼった彼女の芯へ舌を這わせた。
「あっ、ちょっと待っ……んっ!」
「さっきのお返し」
顔を上げて無邪気に笑むと、今度は肉芽を舌先で軽く突っつき始めた。
「んぁっ! あっ、んぅっ、やっ、だっ、だめぇ!」
あざみは更に舌の動きを早めた。卑猥な水音としきみの嬌声だけが、場に満ちている。
そうするうちに、しきみの声音が徐々に切迫したものとなっていった。あざみは半ば本能的に、しきみのなだらかな曲線を描く腰を押さえつけた。
しきみは腰をくねらせて逃れようとしたが、あざみの劣情を掻き立てる以上の験は得られなかった。
肉芽の上を這い回る舌の動きがさらに激しくなる。
「んんぅ、ひぁ! やっ! あっ、あぁっ、あぅ――っ!」
嬌声が途切れると同時に、痙攣の波がしきみの体を襲った。背を仰け反らせ、無意識にあざみの頭をぎゅっと押さえつける。
いくつかの大波小波が過ぎ去った後、糸の切れた傀儡人形のようにしきみの体から力が抜けた。
「はぁ……あざ……みぃ……」
しきみが湿った声で呼びかける。その相手は、もう限界をとうに超えていた。
共に、蕩け切った眼をしている。
「……いい、よぅ」
しきみの精一杯であろう一言にあざみは軽いくちづけを返してから、既にこれ以上ないほど濡れきったしきみの芯に己を擦り付けた。
「ん、ちが……もうちょっと、下……」
手で導いてやった刹那、あざみの男がしきみを一気に貫いた。
二人の口から歓喜の吐息が漏れる。そうしてもう一度しきみにくちづけてから、あざみは動き始めた。
「あ……あっ、あぁっ、待っ……もっと、ゆっく、り……ひぁぁ!」
しきみの懇願もむなしく、あざみは一心不乱にしきみの中を掻きまわし続けた。
この期に及んであざみに加減を期待するのは、些か酷というものであったろう。それほどに、彼の頭の中は白濁としていた。
「はぅっ! やっ、ひぁっ、あぁっ! だめっ、あっ、あぁぁっ!」
あざみの腰にしきみの足が絡みついた。加えてしきみの中が急激に狭くなり、あざみの男を淫らに締め上げ始めた。
「んっ、しきみっ……そんな締め付けたら……っ!」
「んぁっ、いっ、いい……からっ! はぅっ、あぁっ……のままっ、来て……あふぁ! ああぁぁぁっ!」
その願いを聞いた刹那、神経を焼け切りそうな電流があざみの脳髄に走った。声にならない喘ぎが漏れ、迸りをしきみの奥へと放った。
数度では終わらぬ、長い余韻があざみの脳髄を焼き続ける。
「ふぁ……っ、熱……いぃ……」
焦点の定まらない目でしきみがこぼす。結合部から自然と溢れ出すほどの子種が、彼女の内奥を満たしていた。
その上に、あざみが力尽きたように覆い被さってきた。
気こそ失ってはいなかったが、会話も出来ぬほどに疲弊している。その点はしきみも同様であったらしい。二人はしばらくそのままでいた。
その間も繋がったままである。
しばらくしてどちらからともなくくちづけを交わし、互いの唇を貪りあった。
「ん……あざみ、意外と激しいのね……」
「あはは、我慢出来なくって。しきみの中、すっごく気持ち良かったから」
「……ばか」
顔を背けたしきみの頬にくちづける。
そうやって戯れ合っているうちに、あざみは再び満ちてくるのを感じた。
「えーと……。あー、もう一回、してもいい?」
どこか気恥ずかしさの混じった声であざみが言った。しきみは目を背けたまま、顔を真っ赤にしながら小さく頷いただけである。
それを見てあざみはしきみの腰と頭に手を添えて抱き起こすと、座ったままの自分に跨らせた。
「あ、あざみ?」
しきみが問うのに耳を貸さず、あざみは下から突き上げ始めた。だけでなく、胸を舌で愛撫もした。
透き通った肌と淡い桜色を舌先でころがしながら味わう。少し白濁の晴れた頭の片隅で、あざみはこの上ない充足感を覚えていた。
「んぅ、胸、ばかりぃ……くぅ……ん、もう!」
と、しきみが俄かに腰を使いだした。これにはあざみが驚いたが、同時に激しく想念が燃え上がるのも感じた。
しかしあまり余裕は無い。気を抜けばすぐにでも達してしまいそうな快感が彼を追い込んでいく。
「し、しきみっ!?……うぁ……ああぁ……!」
彼女の下半身は恐ろしいほどに滑らかに動き、淫らな舞を舞っているようにすら見えた。
結合部は二人の愛欲に塗れ、体はうっすらと汗ばんでいる。
月明かりに隈取られたしきみの肢体すら、今のあざみには危険極まりない刺激をもたらしていた。
「あぁっ、うぁ、しきみぃ……! あぁぁっ!」
達する瞬間、無意識にしきみの腰を押さえ込んだ。
既に子種と愛液で満ち満ちていたしきみの奥へ、さらに自身の欲望を吐き出す。
二度目というのに、その勢いも量も一度目に引けを取らないほどであった。
行き場をなくした愛欲が溢れる音と、しきみの嬌態のみが頭の中を占めている。気の狂いそうな思いがした。
「はぁ……ふふ、まだまだ、ね……」
しきみが肩で息をしながら、あざみの額にくちづけた。
しかしあざみの男は殆ど勢いを失わずにいた。いや、くちづけを受けて再び勢いづいたと言うべきか。
あざみの負けず嫌いに火がついた。
「しきみ、そのまま後ろ向いてくれる?」
「?」
「いいから」
しきみは不審そうにしていたが特に何か問うこともなく、体勢を変えようと動き出した。
すぐに済んだのは運動神経の良さゆえであろうか。
ともかく、あざみがしきみのことを後ろから抱きかかえるような体勢になった。
「……?」
「大丈夫。じゃ、前に手をついてみて?」
要は後背位をとろうとしているのである。
ようやくしきみも気が付いたのか、耳朶を真っ赤に染めながら抵抗を始めた。
「ちょっと……! やだっ、あざみ!?」
「ダメダメ。このままじゃあ私の気が収まらないもん」
単にまだしたいだけなのか、それとも遣られっぱなしでは気が収まらないのか、どちらとも取れる。
我ながら変な台詞だな――とあざみは口許に小さく苦笑を浮かべると、ゆっくり体を前に倒した。
一転して下になったしきみであったが、手をつかなかったので腰だけを高く突き上げる格好となった。
しきみは身をよじって抵抗を続けていたが、あざみは気にせず丸く肉付きの良い尻肉をゆっくりと突き始めた。
時に浅く、時に深く突き上げる。
「あぅっ! んっ、だ、だめぇっ!」
恥ずかしいと途切れ途切れに漏らすも、あざみが聞き入れるはずもない。
しきみを苔の上に組み敷いたまま、尚も激しく責め立てる。
「はふぅ、あぁっ、やっ……、あざ、み、あざみぃ!」
何度も名前を呼ばれるうち、あざみは無意識に責めをさらに加速させていった。
そうして限界に達しようとしていた時、不意にあざみの男がしきみの芯から抜けてしまった。
開いたままのしきみの芯から、二人の愛欲が止めど無く溢れ出してくる。
あざみはそのまま続きを為そうとしたが、
「ん……待ってぇ……」
しきみはそれを拒むと、気だるそうに体を起こして仰向けになった。
「やっぱり、前から……お願い……」
蚊の鳴くような声で言うと、自分の腕で顔を隠した。
あざみは自分の動悸を聞いたような気がした。脳が沸騰する、とはこのことかもしれない。
自分でも驚くほどの弾んだ声でしきみの名を呼ぶと、顔を隠す腕をそっとどかした。
額に、先ほどのくちづけの返礼をする。
今度もすんなりとしきみはあざみの男を受け入れた。愛欲越しに粘膜が擦れ合い、堪え難い快感を双方にもたらす。
しきみの唇を貪りながら、あざみは同時に彼女の奥の奥を掻き回した。
「あっ、ふぁっ、死ん、じゃうぅっ!」
唇を離したしきみは、あざみの首に腕を腰に足を絡み付けた。
あざみもそれに応えるかのごとく、彼女を抱く腕に力をこめた。細いしきみの体が、腕の中で小さく痙攣しているのがわかる。
共に限界は近かった。
数瞬の後、しきみが先に達した。今までにないほど強烈にあざみを締め上げ、意識が飛びそうになるほどの快感をもたらす。
しかし、あざみは堪えた。少しでも長くこのまま繋がっていたいと思った。
が、それも長くは続かない。
「あ……ん、ふぁぁっ! あぁっ、待っ……あぁっ! あざみぃぃっ、らめぇぇぇっ!」
しきみが呂律の回らなくなった喘ぎをあげる。
全身を震わせての嬌態に、ついにあざみの我慢も限界に達した。
「んんっ、しっ、しきみぃぃぃっ!」
しきみの最も深いところで、あざみは三度目の迸りを放った。
前二回よりも多いのではないかと思うほどの量が、しきみの子宮を焼いていく。夢現で、あざみは今日何度目かのくちづけをしきみに与えた。
「ん……」
「目が覚めた?」
大きな苔むした岩の上で、あざみが目を開けた。
「あれ、しきみ……?」
傍らに座るしきみは既に服を着た後であった。気を失っている間にしきみが着せたのか、あざみも普段の忍装束姿となっている。
「まったく、加減を知らないんだから」
「え?」
「あんなに激しくしたら……その……気も失うってものよ」
あざみはしばらく呆けたように虚空を見つめていたが、やがて合点がいったのか気恥ずかしそうに頬を掻いた。
「えー……しきみ? その……」
「余計なことは言わないの」
野暮ね、とは口に出さない。代わりに頭を撫でてやった。
「でも、次はもっと優しくしなきゃダメよ?」
嫋やかに微笑むと、あざみに寄り添うように寝転がった。
(まあ、いいか……)
薬の効果のほどは分からなかったが、結果的には良かったのかもしれない。
「しきみ」
「ん?」
「……いまさらだけど、大好きだよ」
改めて、長いくちづけを交わした。
<おしまい>
リアルタイム遭遇!!!キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーgjgjgjgjgjgjgjjgjjgjgjjgjjgjgjjg!!!!!!!
あざみは机に突っ伏し、いかにもだるそうな風体であった。妙に元気なしきみとは対照的である。
「あら、あざみ大丈夫?」
しきみがやけにつやつやした顔で問い掛けるも、その返答に普段の力はなかった。
「あ、あざみちゃん! 顔が土気色してますよ!」
「某漫画で言うところの死体の顔、ってところでありんすなぁ」
「某漫画ー?」
「ふむ、つまりこれだな」
と、いきなり月夜姫が現れた。どこから出てきたのかは愚問である。
ゆすらが味噌汁を覗きこむと、そこには某さいとう氏の漫画のある頁が映り込んでいた。ゆすらが二度、三度と納得したように頷いて見せる。
「へぇ、これのことなの。確かにアユモドキ並にそっくりねー!」
「ヒメジ……あんたなんでそんなこと――」
しきみが怪訝そうに問い掛けたが、途中で止めた。聞くまでもない、と思ったのであろう。
「イェーッヒャッヒャッヒャッヒャッ! わらわもあれくらい強くなりたいもんでありんす!」
「皆さん! それよりあざみちゃんが!」
「大丈夫よ、ひまわり。……死にはしないから」
よもや荒淫でへばっているだけとは言えない。しきみが普段通りの声音で諭した。
「そうでありんすよひまわり。あざみはちょっとしきみに搾り取られすぎただけでありんす」
「そ! 猿並に盛っただけだもんねー!」
と、ヒメジとゆすらがとんでもないことを喋り始めた。
「ああああああんた達っ、なっ、なんで!?」
珍しくしきみが取り乱した。
が、ヒメジとゆすらはにやにやしながら尚も暴露を続ける。
「何のことはないでありんす。ただの勘でありんすよ?」
「私はモモ太の報せーっ! えへへへへ?」
「盛るってなんですか?」
「って言うかあざみは激しすぎでありんす。いくら薬を盛られてても、あれはやりすぎでありんす」
「激しい? 何がですか?」
「ああん、若いって素晴らしいわぁー!」
「あ、あのー。お話がさっぱり……」
「この……こんのっ、変態出歯亀がーっ!」
しきみが焙烙玉に手裏剣、目潰しなどの武器をありったけ取り出し、ヒメジ達に向けて投げつけた。
が、肝心のヒメジとゆすらはさっさと逃げてしまい、話が分からず右往左往していたひまわりだけが巻き込まれてしまった。
「ひ、ひまわりっ!?」
「はぅあー、何でぇ……?」
しきみはしまったと思ったが時既に遅し、黒焦げひまわりがばったり倒れこんだ。
介抱しようか出歯亀を追おうか迷うしきみであったが、その顔はどことなく楽しそうであった。
<今度こそおしまい>
GJを超えるぜ!!!!!!!!
良い物読ませてもらった!!!!!!!!
マジで萌え死ぬかと思った!!!GJ過ぎる!!
よだれが止まらないわ!!!!
長文失礼しました。
場面で性格変わり杉とかその辺はヌルーして下さい。つうかして。
タイトルを付け間違えた気がしますが、まあそれはそれってことで。
じゃノシ
>>84 おお!またもキタ――――!!!可愛すぎる!!
こういうお話も大好きです!GJ!!
今日は幸せだ…!!!
神々の所為でアニメ観るのに支障が出そうだ
>>84 >>87 非エロもイイ!!
あざみたんかわいいよあざみたん。
つテラGJ!!!!
騎乗位に見えるのは漏れだけですか
作品を書くためにマンガを読もうと思うんだか、
まだ発売されてないとかいうオチか?
大人気テレビアニメ「ひまわりっ!」コミカライズ、「ひまわり伝っ!」
2007年2月28日発売!よろしくねっ!!
アニメに汁。DVDを買うんだ!( ゚д゚ )
まあ漏れは買ってないけどw
つか漫画見たことあるヤシいる?
漫画のあざみはやばすぎる
えろす
そしてゆすらとありんす空気
94 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 21:45:56 ID:wWGqO+xR
そうか、やっぱりまだだったか・・・・・・
狽、おぅ!sage忘れてた。すまんm(_ _)m
>>96 >38でまとめ作ってくれてあるから、そっちに貼ってみたらどうだろう
>>93 ほお、エロいのか。
……べ、別に興味なんてないんだからねっ!
>>96 携帯なんでよくわからんが乙。
>>97 ウチそういうの操作とかが一番だめなんだ。
かんにんしてな〜
100 :
100get:2007/02/11(日) 01:17:09 ID:HmDoHTVk
椿なんて記念に書いてもらいたいかな〜とか言ってみる
いやネタも難しいですね。×武智でしょうか?椿が縋る感じで
もしよければ、お手隙の職人さんよろしくです
椿のイメージがほとんどない漏れ負け組('A`)
おっぱいおっぱい!なひまわりでFA?
>>100 おめ。
結構伸びるの早いな。
保管庫に過去スレのやつ載せといたんで、報告までに。
ついでにエロ全くないけど投下。前半ってことで。
ひまわりは布団に突っ伏して懊悩していた。
先ほどから唸り、丸まり、伸び、転がり、また唸りを繰り返している。悩みの種は、他ならぬハヤトのことであった。
ハヤトに言い寄る女性はあれで意外と多い。椿などは――言い寄る理由はさておき――その典型である。
主従の誓いがあるとはいえ、不安になることがないと言えば嘘になる。
いつかハヤトを他の誰かに取られてしまわないだろうか、と考えると不安で堪らなかった。
「はぁ。ハヤト殿は私のこと、本当はどう思っているんだろうなぁ……」
そう思うと、無意識に溜息がこぼれてくる。
机の上のPCから流れる電蔵の長口上――お気に入りの場面にも、殆ど関心が向かなかった。
相変わらず、布団の上を転げまわっている。
15歳の少女がうんうん唸りながら布団の上を転げまわるのが健康的かどうかは置いておくとして、ともかくひまわりはこの日、朝から唸りっぱなしであった。
が、いい加減唸り飽きたのかやおら跳ね起きると、両頬を自分でぴしゃりと叩いた。
「ううんっ、悩んでてもダメっ。まずは行動しなくっちゃ!」
そう自分に言い聞かせると、勢い良く部屋から飛び出していった。
「……ハヤトの気を惹く方法、でありんすか?」
ヒメジが訝しげに首を傾げる。
ひまわりはまず、ヒメジの部屋を訪ねていた。
相談を受けたヒメジはどことなく怠そうにも見えるが、ひまわりは気が付いていない。眼を眩いばかりに煌かせ、やる気十分である。
「食べ物でも与えたらどうでありんす?」
が、ヒメジからはものすごい投げやりな答えが返ってきた。しかし至極真っ当な答えとも言えるから困る。
「そ、そういうのではなくて……」
「うーん、わらわにそんなことを言われ……そうでありんすっ!」
ヒメジがイェーッヒャッヒャッヒャッといつもの胡散臭い笑いを上げると、何やら机の引出しを漁り始めた。
彼女がこの笑いをする時は、大概変なことを考えているのは所謂お定まりである。
ひまわりは得体の知れない寒気を覚えたが、しかしその場を立ち去るわけにもいかず、ただじっとヒメジの様子を窺っていた。
するとほどなく「何か」の捜索を終えたのか、ヒメジが満面の笑みを浮かべながらひまわりの方へ向き直った。
「あ、あの……ヒメジさん?」
「ひまわりっ!」
「は、はいぃっ!」
「脱ぐでありんすぅっ!!」
「え、えぇぇぇ!?」
と、驚いてる間にセーラー服の上を剥ぎ取られてしまった。ある意味ではすごい技術である。
「なななっ、何するんですかヒメジさんっ!?」
驚いて胸を隠したひまわりであったが、何か感触がおかしい。素肌の感触がするのである。
(これは……もしかして……)
恐る恐る胸に視線を落とす。
案の定、手と胸の間にあって然るべきもの――下着が、なくなっていた。
「ひぇー! 下着もなーい!!」
「ヒャッヒャッヒャッ、わらわの手に掛かればチョロいもんでありんす!」
ひまわりが目線を上げると、彼女の下着――ちなみに白――を持ったヒメジが誇らしげに佇んでいた。腰に手を当て見栄を切るおまけまでついている。
「男を落とすには色気、エロスが一番なんでありんすっ!」
「いえ、あの、だからそういうのではなくてぇ〜」
「でもひまわり、あんまり色気ないでありんすなぁ。エロスならぬヘボスって感じでありんす」
ものすごい失礼な言であるが、本人に自覚はないらしく悪びれる様子もない。
「わらわみたいに出るとこ出てないと、男は落ちないでありんすよ?」
これじゃあ脱がせてがっかりでありんす、と追い打ちするのも忘れていない。
何か泣きたくなってきた、とひまわりは思った。
「う〜ん……こんなつるぺたで効果があるか分からないでありんすが、とりあえずやってみるでありんすよ?」
と、言い終わる前にヒメジがひまわりのスカートを下着と一緒にひっぺがした。
「いやぁぁぁっ!?」
「ヒャッヒャッヒャッ、きぇぇぇぇぇい!」
間を置かず気合一閃、どこからか取り出した赤いリボンをひまわりの体に巻き付けてみせた。一応、隠すべきところはきちんと隠している。
とはいえきちんと隠れているのは乳首と股間くらいのもので、見た目は露出狂そのものである。
「なっ、何ですかこれっ!」
「ラッピングでありんす」
「あ、なるほど。……って、何で私がリボンで縛られなきゃいけないんですかっ!」
「これで私を食べてぇ〜とか言えば、きっとハヤトは良いではないか苦しゅうないって感じで飛び掛ってくるでありんすよ?」
どうも時代劇における悪代官御乱行のような想定をヒメジはしているらしい。
それなら和服を着せるのが筋であるが、ヒメジにその辺の正確性を期待してはいけない。
ひまわりは一通り想像してみたが、あまりの恥ずかしさに卒倒しそうになった。
「あ……ありがとうございました。参考にさせてもらいます……」
「困ったらいつでも相談にのるでありんすよ〜」
妙に明るいヒメジと対照的に、ひまわりは異常に重たい足取りで部屋を後にした。
なんか放っとくといつまでも終わらなさそうなので、自分で尻に放火してみるテs(ry
最終的には微エロくらいになることを祈る。
>>105 来た来たー!続きwktk!
ヒメジまじ親父www
>>106 韻踏んでるのがワロタwwwwwwwww
まじだwwwww
>>101 あのおっぱい使ってハヤトに逆レイプとかイイ!
あざみ攻めか受け書いてください><
誰かバレンタインネタで頼む!
さびしいバレンタインだな
今執筆中の人っていますかね…?カップリング問わずで
ほしゅ
>>116 良かった。エロなしバッチ来いなんで楽しみにしてまつ
なんかスレがどえりゃあさみしいことになってるので前回の続き投下。
バンアレn(ry物も土曜日中には……げふんげふん。
相変わらずえちくないけどそれでもいいって方はどぞ。
ひまわりは続いてゆすらの部屋を尋ねた。
「ゆすらちゃ〜ん……」
「ひ、ひまわりっ! 何その格好!?」
「ふえ?」
と、自分の格好を見直してみて死ぬほど驚いた。そういえばヒメジから服を返してもらっていない。
素っ裸にリボン一本を巻き締めただけ、というなんだかいろんな意味で危ない格好のままである。
「いやぁぁぁぁ!?」
ひまわりは脱兎の如く駆け出すと、五分ほどして戻ってきた。
ヒメジから返してもらったのか、平素身につけているセーラー服に戻っている。
「はぁ、はぁ、すみません。お騒がせして……」
「……ひまわり、大丈夫?」
どういう意味でですか、とは流石に聞けない。
気を取り直し、ひまわりは手短に事情を説明した。曰く、ヒメジに相談したら何だかすごい助言を頂いた等々。
「あはははは! もう、ヒメジったらアメリカクロクマ並にクレバーねー!」
「笑い事じゃないですよぅ」
「ふふふ、いいじゃない。あの子もあの子なりに一生懸命考えてくれたんだし!」
「ゆすらちゃぁ〜ん」
ひまわりは今にも泣き出しそうである。
ここに至ってようやくゆすらも真面目に考え始めた。ひまわりの様子を見て不憫に思ったのかもしれない。
自室でのひまわりよろしくうんうん唸っているところからすると、かなり真面目に考えてくれているのかもしれない。
(ああ、ゆすらちゃんに相談してよかった……!)
ひまわりが一人悦に浸っていると、ゆすらがものすごい大声で出来た、と叫んだ。
一瞬ゆすらの頭上に巨大な電球が見えたものの、ひまわりは見なかったことにしている。
襟を正し姿勢を正し、ゆすらの声に耳を傾ける準備を整えた。
「名付けて『乙女は薔薇の中で大人になるのっ』作戦っ!」
やっぱり相談しない方がよかったかな、とひまわりは思った。
(ううん、そんなこと考えちゃダメっ。ゆすらちゃんがあんな真面目に考えてくれたんだもん!)
「作戦は簡単よー。まず、ひまわりはすーっっっっごく着飾るの! もうフリフリのキラキラッ!」
心底楽しいのであろう、これ以上ないくらい輝きに満ちた目をゆすらはしている。
衣装の説明をし始めたものの、ひまわりの知らない単語が目白押しなため当の本人は殆ど理解できずにいた。
(ご、ごしっくって何? びすちぇ? おーぷんなはーふばっくでえれがんすに誘惑? 一体何!?)
が、ゆすらはひまわりの混乱に頓着することなく説明を続けていく。
「じゃあ早速着てみよーっ!」
あっという間に下着とワンピース合わせて十着ほどを衣装箪笥から選びだし、ひまわりの前に並べて見せた。
下着は三着、ワンピースが七着である。
「下着はこれかこれ、思い切るならこれねっ! ちょっと大胆だけど、そのギャップがまた良いのよー!」
「はあ……」
ゆすらの指し示した三つはいずれも、妙にフリルの多い下着である。うちのひとつはビスチェだが、ひまわりはその呼称を知らない。
(ゆすらちゃん、なんでこんなの持ってるんだろう?)
小首を傾げながら眺め回していると、不意にひまわりの目線がある箇所に釘付けとなった。
(あ。これ、穴開いてる)
最初は虫食い穴かと思ったが、それにしては開き方がおかしい。虫食い穴なら丸くあって然るべきだが、この穴はスリットのような趣をしているのである。
それも、何故か穴が開いてはいけない場所にばかり開いている。不思議に思い手にとってみたが、やはり虫食い穴とは思えなかった。
「ひまわり、それ気に入ったの?」
「え? あ、いや、その……えぇっ?」
ショーツの後ろ半分がメッシュになっていることに、ひまわりが驚きの声をあげた。
「ゆすらちゃん、これ……」
「メッシュのハーフバック、それでもってオープンな大胆な一品よー! もうハヤトもメロメロっ!」
ひまわりってば意外と大胆、とゆすらは一人で盛り上がっているが、そのひまわり本人は相変わらず置いて行かれっぱなしである。
しかも残り二つのうち片方は似たような形、もう片方のビスチェは胸のところに生地が一切ない代物ときている。
抗弁と選択の余地がない。
「ええと、ゆすらちゃん。服は後でゆっくり見させてくれない?」
「もう決めたのー?」
「ううん、そういうわけじゃないんだけど……」
適当に宥めすかしてこの場を辞そうと試みたひまわりであったが、
「それじゃあ次は具体的な中身のお話ねっ!」
と、一瞬で逃れる機会を失ってしまった。
ひまわりは本日二度目の何だか泣きたくなる気持ちに包まれた。
「……まわりっ? ひまわり!」
「ひゃいっ!?」
「もう。聞いてるのー?」
どうやら呆けていたらしい。ゆすらが頬を膨らませて抗議している。
「ごめんなさい! あの、もう一度最初から……」
謝ると、ゆすらは再び機嫌良く話し始めた。
「まずねまずね、ものすっっっっっっっっごい量の薔薇を用意するの! で、その中にひまわりが横たわるのよー!」
なんだか痛そうだなぁとひまわりは思ったものの、ゆすらの演説には口を差し挟む隙がない。
「そしたら今度はハヤトねっ。ハヤトにはまず、なんでもいいから食べ物を一杯食べさせるの!」
何でも良くはないですとひまわりは言おうとしたが、ゆすらの勢いに圧倒されて結局何も言えなかった。
「で、その食べ物にしきみの薬をちょちょいと盛っちゃうのー。そしたらハヤト、ラッキョザル並に夢中になっちゃうはずよー!」
「あ、あのー」
「ああ、薔薇の中で最愛の人と結ばれるなんて……浪漫だわーっ!」
「ですから!」
「正装したハヤトが『ひまわり、お前が欲しい』なーんて、キャーっ!」
「もしもし?」
「もうこれは朝まで確定ねっ! 二人とも若いんだし!」
だからひまわり、私に任せてとゆすらは胸を張って言った。が、それではお願い致しますと言えるほどひまわりの肝は太くない。
あざみやしきみのところにも行ってから、と半ば逃げるようにひまわりは部屋を後にした。
次は一応あざみの部屋。部屋の中身がさっぱりわからんのがアレですが……。
とりあえずここまでのひまわりファンの方に一言。
. ∧_∧
(´・ω・) <正直ごめんちゃい
.c(,_uuノ
>>120 良いよ良いよー。キャラの性格も全然壊れてないし、超wktkしてる
あざみの部屋か…見当が付かないな…
バンアレンtも頑張ってください^^(何かぬーべー思い出した)
続きktkr
あざみは自室にいなくてしきみの部屋でニャンニャンだな
保守
志能備の里の外ってどんなんなんだろう…夏葉原とか、皆あんな感じの格好なのかな?
一般人のハヤトであの靴だからなぁ…
それはそうと誰かあざみ×しきみ書いてくだせぇ
うむ、貪欲にしき×あざをキボンしたいのぉ
もうラブラブは呈示してもらったんで、
マンネリ回避術とか焦らしプレイでそれぞれおねだりさせるとか読んでみたい
しきみよりあざみが喘いだ方がモエス
ここの住人はあざみ大好きなヤシばっかかww
かく言う俺もあざみハァハァ
アッー!´д`*
一応しきみ派書き込んどきますね〜
なんかあざみスレの出張所的な雰囲気だなw
居心地良すぎ(*´Д`)
一応保守age
つうかこのスレ、職人様は何人いるんだろうか。
職人というか絵描きとしてならノシ
今バレンタインネタで漫画描いてますけど需要はありますかね…
あざみとしきみで、今の所エロ無しの短いやつ
エロ入れたら凄い量になっちゃいますが…
IDが狂牛病ヽ(`Д´)ノ
まあそれはともかく、漏れは漫画めっちゃ見たいですよ。
エロの有無なんて関係なっすぃん!
>>132 エロ無しでもOKですか、良かった良かった
漫画は日曜までには出来ると思うんで少々お待ちください
ほのぼのというか砂吐くくらい甘々かもしれないですが…
他の職人さんいないんですかね…?
ひまわりサイトとか無いもんな
職人がいたらサイトもそれだけあってもおかしくないと思うんだけど
書こう書こうと思いつつ途中のSSが溜まりに溜まってるんだが
GJ!!
あざみがえろーーーーーーーーい
広告の間にある小さいダウンロードって文字リンクをクリック
142 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/28(水) 07:20:00 ID:0NDi5Y6g
本日発売!
O(><;)(;><)Oイェーイ
>>138 遅レスだがキタ━!!!!!
あざみたんがもう(*゚∀゚*)
激しくGJ! GJ!(AA略
>>138少なくとも私の中ではあざみはこーゆーキャラだわw
おなじ事考えてる人いて嬉しい!w
ほしゅん
ほしゅ
>>146 遅ればせながらGJ!
誰か…小説を…頼む…
150 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/06(火) 21:00:10 ID:E9R9PdEr
コミック版のひまわりって、大胆だな
いやいやあざみちゃんだってまけてないぞ!!
あざみ「欲情したぁ?」
だっけ?萌え―――――vV
腰布とれたとき鼻血でそうになったぜ(-_-;)
ひめじもあれだけど、しきみもサービスショット多かったな。
しきみパンモロだしね。あざみには欲情したよ
私服なるものが出たけど、みんな里の外に出る事ってあるのだろうか
あるんだったらあざみは店とかのトイレどっち使ってるのか気になるな
ナナフシと縄跳びのキャラ壊れすぎ(^_^;)
途中でぶち殺したくなったのはナイショだよ('-^*)♪
>>155 あれはあれで。
ナナフシの最初の変態っぷりは割と好感持てたんだがなぁ…最後が…
てことで誰か小説マダー?
「恋愛はするなと言いましたが、人を好きになるなとは言ってません。」だっけ?
俺の中での名言BEST3に入るぜ。
激しく萌えた!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
全俺が死んだ!!!!!!!!!!!!!
作者の、作品への愛を感じる良作。
161 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 16:24:43 ID:MX9FGMfM
>>157 ホントいつもGJです
スタッフも喜んでると思う
>>157 _, ,_ 彡
(*`Д´)彡 GJGJGJGJ!!!!11!!1!!!!1!
⊂彡
職人は途絶えてしまったのだろうかorz
職人さんは何処にいるの?
よくみるあざみサイトの人はエロかかないのかな
ひまわりスレの絵師って皆微妙じゃね?
下手とか言いたいんじゃなくてさ… アクが強すぎっていうの?
暑苦しいんだよね。
もっとすっきりした絵柄の絵師はおらんのか。
うん。スレ。
カサマツ使ってる人の絵は顔が男臭くてなんか無理
ずっと大事に待ってるの♪
どんな短いパロだって♪
笑い殺す気かwwwww
すげぇwwwww
これは酷いw
おまいがひまわりっと巨根が大好きなことはよくわかった
あざ×しきはちょっとイイ
アホスwwwwwwwwwwwwwwwww
ネ申キタコレwwwwwwwwwwwwwwwww
うえwwwっうっうぇwwww
ほすなのれす
なんか落ちそうでありんす。
ていうか笑い死にそうでありんす。
にーんーじゃ〜のがっこうは〜
あーなーの〜なか〜♪
初級者でスマソ
カサマツサンが全くみられない…
クッキー設定しても同じ。
職人様方の作品見たいっス
もう少し詳しく。
>>182 「よく探したらダウンロード押せました」オチはなしね
久々に需要ネタ投下しまつ
しきみと師匠の山の庵暮し
調教しちゃってください
奇跡信じてまつ
185 :
182:2007/04/04(水) 02:27:10 ID:VwPd6hgk
>>183・184
ダウンロード押すと、何回やっても403の赤さんに怒られまつ。。。
で、Cookieの設定確認し直したりも何度もしてるんだけど一向に…
あと自分なりに思いつくのはW-ZERO3でみてるせい?
職人さんカムバック!
新たな職人さん求む!
d&GJ!!
見れたみれたー!!!
パジャマ萌えー(*´д`*)
>>184 ひまわりっ!!で実況民化して時間減った漏れがいる。
でもまた修行してから投下するぜ! 圧縮近いらしいし。
>>185 携帯はだめ。
待ち受けとかにしたかったらPCで見てからリサイズ、その上で転送汁。
>>187 キタ━ヽ(゚∀゚)ノ━(∀゚ノ)━(゚ノ )━ヽ( )ノ━( ヽ゚)━(ヽ゚∀)━ヽ(゚∀゚)ノ━ッ!!!!
>>187 色気があるのにしっかりと男の子してるのがねぇ……
超GJ!!
192 :
184:2007/04/05(木) 23:36:33 ID:uGRy6aAv
>>190 宣言キター!
修業終わるの八頭並に気長に期待してまつ
ナナフシ×あざみの場合はあざみは敢えて髪の毛結び反対だな。
別に見たい訳じゃないけど、
その方が歪んでる。
反対 じゃなくて 真ん中
乱れ髪でいいお
ナナフシが 変態にしか 見えません
あぁ、元から変態だったけか
その先が見たかったのは秘密だ!
兎にも角にもGJ!!
ぎゃあ!
・・・・・すんません免疫無いモンで…
好奇心で見てしまいますた。
トコロで保管庫更新って、誰かしないの?
ナナフシとあざみの801(エロ)
って注意入れるの忘れてましたすみません…
d!
アレって誰でもできるの?
ほんと何も知らんでスマソ。。。
ひまわりっにはまるまでここまで2ちゃん厨じゃなかったよ…w
PINKも初めて見たしww
ひまわりっスレの住人何気にイイ人ばっかりだし(つД`)
204 :
197:2007/04/09(月) 15:10:37 ID:emeOGSSW
>>198 うわっGJGJ!!
やばいなんだかオラワクワクしてきたっぞ!
でも注意書きはちゃんと書こうな、板が板だし荒れる原因にもなりかねんからな
otosunayo
保守
修験者さんがお戻りになるまで落とすわけにはいかぬのですっ!
途中まで画像入れてきた。管理者じゃないので各種削除やページ名変更が出来ん(´・ω・`)
まあいいや。
遅くなりましたがバレンタイン記念のと801のを置いてきました。
残りは明日以降。
萌えルート! で検索したら絵師発見しますた
妄想レポート完成させてほしいねw
>>208 遅なりましたがGJ!
残りもまたりと待ってまつ
212 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 22:04:43 ID:GCuf+Hxk
保守
ほしゅ
214 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 23:36:27 ID:cCYmakII
あざみのエロみたいよ〜
圧縮ガクブル記念カキコ
あざみって毛生えてんのかな
髪の毛生えてるじゃない
ほしゅ
あざみあざみあざみ
しきみしきみしきみ
221 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/07(月) 01:18:34 ID:vdsBoefl
今までここでうpされたイラスト保管してる人いたら上げてほすぃです
>>221 まとめ方で困ってる漏れがいる。
絵師さんごとに、じゃなくレス番ごとでもおk?
おkおk&d
ついでにいうと漏れ今携帯からしか繋げなくて
コピペできんからリンクhから直でつけてくれると大変有難い。
ほしゅ
椿のおっぱいでひとつおながいします
ほしゅ
>>226 GJ!セーラー服(*´Д`)ハァハァ
髪下ろしてるのも何気にモエス。
ほしゅ
圧縮にガクブル。
231 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 01:47:11 ID:FutFPV4+
ほしゅほしゅ
タイトルだけ見て「健一レジェンド」と間違えて来てしまった記念保守
233 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 18:15:51 ID:J3ctCoTf
久々に全レス読み返すと萌えるな。
ほ
235 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 19:57:04 ID:QnWBM6PP
しゅ(>_<)
236 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 04:59:38 ID:bpiEWJpa
ありん
す
238 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 06:03:01 ID:jN1Dw2o1
私の
239 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 23:26:59 ID:Tt3i9NtE
情報によれば
はあとどどは
ありんす
並に
「ご飯三膳しか食べてないからお腹ぺこぺこでありんす
もう我慢できないでありんすぅ〜・・・」
あそこにいるのは小紫でありんすな・・・
「小紫ィイ!」
「ヒメジさん?」
がばっ!
「っなんですか!? いきなりっ!」
「童に身を少しだけ貸すであ・り・ん・す」
「へっ!?」
ばっ!!!!
ちょろりん
「見た目によらず中々の太刀でありんすなぁ」
「えっありがとうございます・・・
そりゃ〜ひまわりさんの事思って毎晩\\\ーしてますからぁ〜・・・って何僕のズボンぬがしてるんですかぁぁぁあ!!」
以下省略
一日○発をこなすことで鍛えたんですねwww
これはなんという遅漏フラグ。
それはともかく乙!
あざみ×誰かで頼む…
キャラスレ全滅追悼に、ひとつよろしく
いやいや、あざみスレは復活してるからw
暴走してるけどw
251 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/28(木) 22:59:49 ID:Qa7dhHdr
乙!いつもの絵師さん!
久々ですな〜ありがd
あしの位置関係がこえろくてGJ!!
252 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/02(月) 11:48:56 ID:ED/U/BO4
乙hosuage
hosyu
254 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 01:25:21 ID:xmu8zW79
まとめサイト更新マダーー?
マダー?
256 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 14:52:20 ID:Q3fmWqBo
ほっす
ほ
258 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 18:58:54 ID:uVe8+KmI
ちゅ
259 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/24(火) 00:26:43 ID:wWpXQ+CK
更新まだかな〜?
携帯からスマソ
あざみって女装ショタかオカマかのくくりでいったらオカマだよね?
でもホモってわけでもないのか?
それとも両刀?
ハヤト×あざみでひとつどうかなと
俺の脳内設定では両刀
やっぱひまわりは可愛いな。
263 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/26(木) 11:49:14 ID:UwcIlcW4
いや…可愛いのはしきみだろ
このスレまだ落ちてなかったのか…。
ある意味すごいな。
汁姫のエロが想像できん
266 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 16:31:04 ID:hgbVAv3l
誰か、しきみ×あざみ書いてー
267 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/29(日) 23:14:09 ID:qOOyrrF80
夏コミで……
誰か描(書)かないの?
描こうかと思ったけど、取ったジャンル違うし見つけてもらえなそうと思って……
それにぶっちゃけ、需要なs
俺買う!探す!!w
今回初めて萌え系?はまったが、
割とサークル内単一ジャンルなんだね。
漫画系とかって割と色々やってるとこ多い印象。
色々やっててもまったく違うジャンルだと、難しい。
ウチはゲーム系なんだよ……。
でも間に合ったらコピ本でも作って置いておこうかな。
ひまわりって、ジャンル的には一日目?三日目??
確実に違う二日目だけど、本出すよww
需要なんか関係無ぇ(笑)
三日間全部行くから死ぬ気で探す
ヒントを……いや、なんでもない
検索引っ掛かり易い様にしておくw
274 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/01(水) 11:25:45 ID:84Ir/aca
SS書く奴いないかな…
あざみ人気ありすぎだなw
やっぱ俺はひまわり×ハヤトが…
あざみ×しきみをだな・・・
277 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 00:49:52 ID:KwJTOzSq
あざみがある日、自室でオナをしてるところをしきみにみられて→しきみがあざみのオナの手伝いをする→そしてセクースに発展する
とゆうSSを誰か書いておくれ
ゴメン…
sage忘れた
そして携帯でごめん
同意きぼん
277の内容で誰か…
あざみ「はぁはぁっ…んっ」
ガチャ
しきみ「あざみ、コレあんt…」
あざみ「えっ!?(;゚A゚;)」
しきみ「あっ…ごめん」
ガチャ。
オワッタ\^o^/
そのまま終わらせてはなるものか!
あざみ「ちょま、し、しきm」
ガチャ
しきみ「忘れてたわ。コレ」
あざみ「うわっ!て、え、何…コレ」
しきみ「何って…」
誰か続き頼む
283 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/08(水) 23:07:05 ID:46/1Oi5S
チラシの裏に頼むわ
うざい
しきみ「何ってパンツでしょ。アンタお風呂入った時に忘れていったでしょ」
あざみ「あっありがと!」
しきみ「下隠さないの?」
あさみ「へぇ?わわっ!見ないでぇ!」
アソコを手で隠すあざみ
あざみのアソコを触りながら
しきみ「ねえ…手伝ってあげようか?」
あざみ「えぇ!?あっ…!ちょっ…やめっ…ああっ」
続きを誰か\^o^/
285 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 01:05:33 ID:i/PM8Uuy
チラシの裏に頼むわ
うざい
イイヨイイヨー。
さあ、誰か早く続きを書くんだ。
287 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 10:09:31 ID:BShFZCfK
ハヤト×誰かで 書いてください
288 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 00:10:45 ID:aT9/yBF2
あざみ「ちょっとぉ…しきぃ…みぃ…あっ…」
あざみのアソコをさわりながら
しきみ「どう?気持ちいい?」
あざみ「気持ち…ぁっ…いぃよぉ…っ。ヤバイ…しきみぃ!でるっ!」
ドピュッ!
しきみ「きゃあ!」
あざみ「ハァハァ…!」
顔についた精液を舐めとりながら
しきみ「今度はアタシにもして…」
続く
289 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 02:36:32 ID:+Td/jCNn
きゃあ がかわいいww
名前「セリフ」
っていう形式はわりと萎える…
291 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 23:24:10 ID:aT9/yBF2
じゃあどうやって書くんだ?
あざみ「ん・・・・しきみ」
熱を帯びた儘の瞳でしきみを見詰める。
「キス・・・・してイイ?」
しきみ「・・・・・・ええ」
少し戸惑いながらも素直に目を閉じる。
しきみの白い頬に、まだ残る汚れを拭い
口付ける。
頬に、瞼に、そして唇に。
「・・・・・・・・・っ」
その柔らかさと温かさに、あざみのスイッチが入った。
ごめん全然文体違う
続きムリ
書き逃げ頼んだ!
295 :
243続き:2007/08/17(金) 06:39:39 ID:LjFamyQi
「ヒメジさん何でこんなこと・・・」
「小紫の熱いので童のお腹をいっぱいにするでありんす〜!」
ヒメジさん・・・もしかして食欲と性欲がごっちゃになってる・・・?
「小紫の太刀の先っぽ、鞘(サヤ)に隠れてよく見えないでありんすぅ」
ナニの皮を剥きはじめる。
ムキッ!!
「くはぁっ・・そこはっ・・・ひめじさぁああんっ!」
うっ・・・そこスースーして・・・空気に触れてるだけで僕っ!」
「この太刀、剥いたとたん生意気に大きくなったでありんす」
そう言い小紫のナニを力強く握りしめると上下し始める。
ぎゅっ!!
「もっと(penisを)をしごいて童に熱いのぶっかけるでありんすぅぅ!」
「もげっもげちゃいますぅぅぅぅぅうう!!!」
「童の握力で(penisを)しごかれるのは気持ちいぃでありんすか?」
「ヒメジさんっもっもう僕我慢できませんんん!」
ピュッ!!
小紫のアレから物凄い勢いよく白い汁が飛び出し
ヒメジはそれに反応しカリを口で頬張り残り汁まで吸い取り始める。
ジュ!ジュ!ジュ!・・・チュポッ
「ゴク・・・フン・・・こんなちょっとじゃまだまだ腹の足しにならないでありんすぅ!」
「童の口にもっと熱いのぶっかけるでありんすぅ!」
「はぁはぁ・・・かっかんべん・・・してくださ・・くはぁぁっ!」
「これくらいで音を上げるとは軟弱な男でありんすなぁ
こんなんじゃひまわりにも男として認められないでありんす〜!」
ひまわりさん!?
「キンタマから搾り取るであ・り・ん・す」
するとヒメジは小紫の玉を握りしめる
ぐにゅうぅう!!
「くはっ!!もうっでませんよおぅ無理ですぅう!」
以下省略
「しきみ〜!校長先生が呼んで・・・ってあれ、部屋にいないのかな・・・?」
ふとベットに目をやるとベットの上に何やら白い布が置いてある。
「なんだこれ?」
不思議に思いながらも白い布を手に取り広げてみる。
「もしかしてこれって・・・しきみのふんどし!?」
それが何であるか認識した瞬間あざみの胸は高鳴り始めた。
何?・・・何なのこの気持ちは?
あざみはこの胸の高鳴りに困惑しながらも胸の高鳴りを抑えることはできない。
「なんか私、頭がぼーっとしてきて・・・」
おもむろにふんどしを鼻に近づける。
「・・・ぁ・・・しきみの臭ぃ・・・」
ふんどしからの甘ったるい女の臭いと
薬草の臭い(シップ臭いに近い)が混ざり合ってあざみの鼻腔を刺激していく。
あざみの脳はふんどしの臭いで充満され麻痺していた。
その刺激はあざみの下半身に異変を起こした。
「ちょっ・・・ちょっとナニこれっ!?」
コクン、コクンと脈を打ちながらそれは徐々にスカートを押し上げていく。
「はぁ、はぁ、おさまらないっ!・・・私はそんなんじゃっ!」
以下省略
シュンッ!
「はっ!!しきみの気配!!?」
しきみの気配を感じるとあざみは
素早くふんどしを身に付けスカートで覆い隠す。
「ちょっと、あざみ、私の部屋でなにしてるの?」
「あっ、あぁ!校長先生がしきみの事探してたみたいだから私が呼びに・・・」
「そうなの・・・ところであざみ・・・なんでそんな変な格好してるの?」
ば れ た!!?
「こっこれは、そっその私の情報によればぁ最近私冷え性で新しい腹巻をさぁああははっ!!」(意味不明)
「・・・・・・いきなし何いってんの?」
「へっ?」
「なんでさっきからそんな前かがみになってるか聞いてるのよ」
「だから・・・少しお腹痛くてぇえ・・・」
お願いだからおさまってぇぇぇええ!
「まさかとは思うけど・・・勝手に部屋にある薬草いじったりしてないわよね?」
「そんなことする訳ないじゃない」
「みつ先生にでも診てもらったら?」
「うっ・・・うんそうする!」
けどさっきから少し動いただけで私のがしきみのふんどしと擦り合って・・・
以下省略
ちょっと調子のったスマン。
さあ、許すから早くひまわり関連の純愛ものを書くんだ。
頼む省略しないで続けてくれ
このスレまだあったのかw
おっとひまわりっの時間だ
303 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/27(月) 15:55:50 ID:hIcU8KEn
間違った。
ファミリー劇場だ。
保守
あざみ受けで一つ
307 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 16:11:54 ID:7ion4Uph
保守きたぞ
308 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 16:46:33 ID:uswEmNsI
保守
ひまわり×ハヤトは?
「かずのこてんじょう」ってなんですかハヤト殿?
俺に聞くな!
「小紫ぃ〜!
いいものあげよっか?」
「なんですかいいものって?」
つ快楽天、TENGA、
313 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 20:56:36 ID:s9SXpHbU
保守しないと危ないかな
314 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 00:14:12 ID:MW3wqcO2
ほす
あざみたんハァハァ
316 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 13:55:11 ID:dh+GLPCh
保守
おっとひまわりっ見逃しちまった
干すっ!!
hoshu
320 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 17:23:07 ID:/L/kJuhQ
保守
修験者様の降臨を待ち望む
ほ
323 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 00:19:11 ID:nNshe1gZ
にゅ
ひ
ま
わ
328 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 21:34:58 ID:/ZY5fDGh
り
っ
330 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 20:23:09 ID:IoiUTYdu
!
今さらだがTENGAワロタ
まだあったのかwww
おっとひまわりっのjry
あざみファソ、そんだけスレ復活させる活力あるなら
いっちょしきみとの絡みかいてくれよんw
おっとひまわりっ見逃した
336 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 11:30:36 ID:ydzKllsE
ひまわりぅ
337 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 00:34:31 ID:ZpxhMsCD
あれ、ひまわりじゃないのがやってる
>>338 しきみが作った毒薬(何でもいいけど)を、誤って飲んでしまったあざみを介抱する
でどうよ
\(^o^)/ I'm a dreamer! ひそむ妄想ー!
ヘ(^o^)ヘ
|∧ (アニメ)故郷に戻ったひまわりとハヤトの
/ /
(^o^)/
/( ) その後の生活って見たくね?
(^o^) 三 / / >
\ (\\ 三
(/o^) < \ 三 エーロ!梵梵!
( /
/ く さぁ神よ来たれ!
341 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 22:18:16 ID:AtUaF+Se
ひまわり!!!
始まらないかなあ
家近くのコンビニにありんすの声そっくりの女性がいた
中の人じゃなくてありんすに
ひまわりっ!!!!!!!!!!!!!!
このくらいやってくんないかなー
汁姫のエロが全く想像できん
>>343 さぁハヤト殿、挿れてくれ…
そう…そうだ…もっと激しくしてもいいぞ
ん?イキそうなのか?遠慮なくイッてくれていいぞ
私もイキそうだ…ん、イク…
(全て無表情で)
こんな感じか?
結構アリだな
誰かあざみを!
348 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 15:31:15 ID:TsGEheyK
保守
349 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 20:31:37 ID:Al0r1nSl
PINK全体に来てるのか
350 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/27(木) 04:45:48 ID:P0Pn0aFj
ほ
351 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/29(土) 05:37:30 ID:xWIRTxUY
し
352 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/01(火) 15:33:58 ID:JILjXx9C
き
み
353 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 12:01:07 ID:jPFTortG
ま
354 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 20:01:54 ID:moc8WYlC
ろ
あ
ば
ば
ば
ば
ば
ば
ば
ば
ば
ば
ば
ば
ば
ば
ば
ば
3期マダー?
保管庫の更新マダー?
あざみたんのエロ小説マダー?
静まり返る夜に聞こえる叫び声・・・
あざみ「あぁぁぁぁぁ!!セックルしてぇぇぇえ!!!」
おネエ★MANSにあざみが出演してた。
hosyu
3期の夢を見た
敵と戦ってあざみが全裸になってエローい
みんなコスチュームちょっと変わってた可愛いいい
そして何故かゲーム化までしてた。RPG+アクションみたいな
たた頼むよ実現してくれよ
エロゲになっちゃうから無理でありんす
あざみたんを撫で回したい
365 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 22:45:06 ID:iKnQ24d6
あれ、お頭って男?女?
男
女
どっちだよ…(´・ω・`)
だから男だって
月が良く見える丘…そこには二つの影が。
「こんな所に呼んで一体何の用なの?」
にこにこしているあざみを見ながらしきみが聞く。
「用がなかったら会っちゃ駄目かな?」
あざみがそう返事をすると、しきみはワンテンポ遅れて真っ赤になり俯いた。
「ただ一緒にいたいだけだよ」
その言葉を聞くとますます照れてしまい、挙句の果てには怒ってしまった。照れ隠しとも言う。
どんなに酷い言葉をかけてもあざみは微笑みかけてくるので、言葉が出なくなってしまう。
するとどんどん二人の肩が近づいて、あざみの頭がしきみの肩にもたれかかった。
こんな所誰かに見られたらどうするのよ、と呟くしきみ。えへへと微笑むあざみ。
二人共幸せそうに月を見ながら保守。
373 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/28(木) 19:16:25 ID:h7kY/wLJ
保守
職人皆いなくなっちゃったのかな…
374 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/04(火) 22:11:29 ID:+Iok0pma
375 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 14:12:37 ID:Bwofu+ai
落とさせはせんぞおおおお
保管庫の更新してくれよ・・・
間違えても消せないからな、あれ
作ってくれた人いる? いたら消して下せえって頼めるからいいんだが
378 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 19:54:53 ID:LiMKXD6a
人いるのか?
という事であげ
保守
あざちんこ
ありんす
382 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/10(木) 23:16:08 ID:ifjL800e
問4 「ひまわり!」の登場人物を使い「糞ど変態同人作家が考えそうなエロい台詞」を答えなさい。
又、そこから解かる結果、結論を簡潔に答えよ。 (各2点)
しきみ「でるっでちゃいますぅうっ!しきみのお●んぽから●んぽミルク出るぅぅう」
あざみ「でるっでちゃいますぅうっ!あざみのお●んぽから●んぽミルク出るぅぅう」
ひまわり「でるっでちゃいますぅうっ!ひまわりのお●んぽから●んぽミルク出るぅぅう」
ひめじ「でるっでるでありんすぅうっ!ひめじのお●んぽから●んぽミルク出るでありんすぅぅう」
小紫「でるっでちゃいますぅうっ!ぼくのお●んぽから●んぽミルク出るぅぅう」
ゆすら「でるっでちゃいますぅうっ!ゆすらのスク水をつきやぶった●んぽから●んぽミルク出るぅぅう」
つばき「でるっでちゃいますぅうっ!つばきのお●んぽから●んぽミルク出るぅぅう」
つきよ姫「でるっでちゃいますぅうっ!お●んぽから●んぽみそ汁出るぅぅう」
結論:エロくない!こんな同人書く奴は大抵流行りに乗ってるだけで
作品を愛してない奴らがほとんどである。
383 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/23(水) 23:50:25 ID:pxQm9PE+
ひまわり
ひ
ま
わ っ!!このスレ、まだあったのか!
り
っ
389 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/15(木) 23:35:25 ID:M0gQpAkt
!
!
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
あ
り
ん
す
私
の
あ
り
ん
401 :
名無しさん@ピンキー:2008/06/23(月) 01:13:19 ID:JaUYL6Pm
す
情
報
に
よ
れ
ば
ヒ
メ
ジ
は
お
し
り
が
も
も
た
419 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/03(水) 04:51:32 ID:DNA5I6oQ
の
保管庫の更新まだかよ・・・
421 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 00:42:53 ID:+MVPiTst
フヒヒ
あ
圧縮が近いと聞いて。
ほす
職人を待つしかないのか。
ほす
427 :
名無しさん@ピンキー:2009/02/05(木) 14:03:53 ID:VT9e6DQl
ほす
ほしゅ
あざみかわいいよあざみ
ほしゅでありんす。
430 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/14(土) 17:54:58 ID:jjeWC1+G
ほしゅっ!
誰もいないしあざみたんは戴いてきますね。
ほ
す
434 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 23:08:40 ID:EjE5DCl1
っ
圧縮回避
test test
h
/⌒\
(,_,_____,_,,)
丿゚∀゚ ! にょきにょき
(_____,ノ
439 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 00:36:53 ID:K9YeNeBy
hosyu
職人戻ってきてくれ。
441 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/25(月) 01:59:18 ID:qY65tue/
test
442 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 21:13:45 ID:jTrFIPzp
やっぱ人いねぇww
|
| ̄ `ヽ
|人人) ) いるぞ!
|゚ . ゚ |人
⊂)) ))
|_l_l〉 ノ'
|∪
444 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 21:55:57 ID:jTrFIPzp
いたかw
今、自分は書いてる最中だけど、エロパロって難しいな・・・。
446 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/16(火) 11:44:51 ID:SDnzJpxz
あざみ×縄跳 (いい加減に書いた)
さて、どういうわけか俺は今あざみと風呂に入ってる。
「もうちょっとよってもいいですよ」
うるさい、そんなことできるか。
「あれぇ〜照れてるんですか?」
447 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/16(火) 12:30:39 ID:SDnzJpxz
違うぞ、断じて違う。照れてなんかない。
「じゃ、よってくだいさいよ」
いやだ。
「なんで?」
それを言わせるのか?
「納得いくようにお願いします」
…………。
おお、なんか上がってると思ったら!
乙乙。あざみ×縄跳は漫画版がヒジョーに良かったねー。
漏れも久しぶりになんか書いてみるか。
期待
450 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/22(月) 23:17:59 ID:Zy8cid7j
でけたw
でも言葉知らないし、文才ないからそのあたりよろしくwww
何書きたかったのか不明だしww
縄跳×あざみ
女子用の制服を着た少年がベットの上で横になっている。
すー、すー、と小さな寝息がきこえる。
(本当に男なのだろうか?)
ふと、そんな疑問が頭をよぎる。
寝ているときもそうだが、普段見るその姿からとても男だとは
想像できない。
(どう見ても女…だよな)
程よく締まった細い脚。それに少し興奮を覚えた。
そしてその脚に手を伸ばす。
(……何をしてるんだ俺は……)
そんな疑問より劣情のほうが大きかった。
脚に手が触れる。
(綺麗だな…)
撫でてみる。
その脚はとても男のものとは思えないほど滑らかだった。
「ンッ……」
声とともに少年の身体がはねる。慌てて手を引っ込めた。
寝返り、仰向けになる。
(…起きて…ないか)
再び寝息が聞こえてくる。
起きていないことを確認し今度は顔に手を伸ばす。
(……マズイな)
これ以上したら取り返しのつかないことになる。
そう思いながらも手は顔のほうへと伸びていく。
顔に手が触れ、指先で髪をのける。
手を顔の横へまわす。
ゆっくりと自分の顔を近づける。
(あぁ、だめだ)
そして唇を重ねる。
数秒。
少しづつ上体を起こし顔を離していく。
(……なんてことをしたんだ)
やり終えたという達成感と、後悔を感じながら急ぐようにして
ベットから離れ、部屋を後にする。
「……キスだけか」
残された部屋には、
寂しげにつぶやく一人の少年がいた。
451 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 22:00:00 ID:CT2YZR9d
sage
一人称間違えとるorz
452 :
451:2009/06/26(金) 09:33:19 ID:Dfa9IT8S
↑メールのところにsageって書くんですYO!!
test
保守
保守 職人さん・・・
保守
保守
保守
干す
歩数
461 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 02:26:20 ID:HbUDVEpW
24日からファミリー劇場で再放送あるじゃねえか!
462 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 09:27:52 ID:JqzuJAwa
じゃあエロパロも少し盛り上がるか!?
俺はいろいろ、失敗しちゃったから職人さんに…!!
463 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 11:23:27 ID:seZUHgC6
464 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/31(金) 11:34:29 ID:USx+GG+b
ファミリー劇場9月の番組速報(ソース:FAX-BOX) ・アニメ「ひまわりっ!」一挙放送 #1-13
465 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/01(土) 10:41:16 ID:htruuG6R
一挙放送キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
あざみ→縄跳
イヤほらやっぱり主人の世話はわたし達、仕える忍の役目の一つでしょ?
ありとあらゆる技を使って己の主人を満足させることって大事じゃん。
まぁ、ちょっと搾り取り過ぎたかな〜って。
別にわたしが満足したかったわけじゃないよ、うん。
ちょっとね、ほんのちょっとやり過ぎたかな〜って自覚はあるんだけど…。
まだいけるでしょ?ほらすぐに立たせてあげるからさ。
だから、ちょ、逃げないで、逃げないでってば!
え?何?死ぬぅ?
何言ってんの?死なないってば、まだほんの六回ぐらいじゃん。
無理?え?何で?
体力が、持たない。あ〜、なるほど。じゃあこれ飲めば良いよ。
何かって?しきみから貰った飲み薬。
飲まない?じゃあ塗り薬で……。
人いなから敢えて投下したぜwww
誰もおらんよな?
♪
カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン♪
キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン
♪ ____
/ (_
/ / トントントントントントントントントントントン♪
/ /∧_∧
/ / (・∀・ #) <ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ俺はいるぞぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|と.ヾ
|_________コ ,ノ キンキンキンキンキンキンキンキンキン♪
‖‖ ‖‖ ll ∪〓
‖‖ ‖‖ □⊇ _||_
人いたのかよwww
そのうちまた投下する予定だぞい。
ちゃんとした文章の奴を書くつもりだが…どうなるかな。
あざみ→縄跳を主にやっていくつもりです。
いるいるw
wktk
俺もいるぜ!
471 :
あざみ→縄跳:2009/08/19(水) 09:39:13 ID:rIZwq9nm
皆おはよう。
半分くらい投下。
期待はしないでね。
縄跳は全然わたしを使ってくれない。
使ってくれないといっても、情報収集なんかは別。
忍の役割はそれだけじゃないのに…。
わたしのご主人様である縄跳先生は今夜も一人で自分を慰めている。
気づかない?わたしずっと天井裏から除いてるんですけど。
鼻息を荒くして一生懸命に自身のモノをしごく先生。
アレが我が主か〜……なんか情けなくなってくる。
と、今日は覗きに来たんじゃない。気配を全開にして背後に降り立つ。
「…何奴!?」
反射的に縄跳が振り向いた。笑顔で屈み気味に覗き込むわたしと目が合った。
「あ、あざ、あぁあざみ」
しどろもどろになりながらわたしの名前を呼んだ。うわ〜…威厳も減った暮れもない姿。
「こんばんは〜」
わざとらしく挨拶をすると、縄跳は慌てて自分のをしまいだした。
でも、させない。
それに気を取られているうちにある物を口に含む。
思いっきり抱きついて押し倒す。ドサっと鈍い音が響いた。
「っ!!……何を」
するでござると言いかけた口を唇で塞ぐ。舌を割り込ませ口内を舐め回す。
歯の付け根。奥歯。舌の裏側。それと同時にさっき含んだ物を唾液と共に器用に流し込む。
縄跳は目を見開いて固まった。免疫無いもんね。
忍者なんだからそういう訓練受けてると思うんだけどな…。
縄跳の口内を存分に堪能してから唇を離しすと唾液が糸を引いた。
いやらしい気分になる。
「……お、おぬ、おぬしは何をしておる!!」
再起動した縄跳はかなり動揺していた。当たり前って言えばそうだ。
戸惑いと怒りが混じった眼差でわたしを睨みつけてくる、その威勢が続くのもあと少し。
馬乗りの状態で、わたしは不敵な笑みを浮かべながら顔を近づけていく。
顔が拳二つ分ほどの距離に来たとき、ゆっくりと言った。
「ご主人様を慰めに来たんですよ」
自分でも驚いちゃうくらい猫撫で声が出た。
縄跳は、わたしから逃れようとして、身を捩らせるけど、それが出来ない。
実はさっき流し込んだ物はしきみの部屋から拝借してきた薬。
効果は口唇、舌端、手足の痺れと……生殖器の機能促進。
しかも即効性。
472 :
あざみ→縄跳:2009/08/19(水) 23:11:31 ID:rIZwq9nm
「……ッ!?」
効いてる効いてる。
「どうですか?手足動かせますか〜?」
縄跳は弱弱しく、やめろと呟いた。手でわたしを押し退けようとするも、まったく意味がない。
まるで小さな子供にでも押されてるような感じだ。
凄いね、しきみ。また今度利用させてもらおう。
「それじゃ早速……」
「ッ!?…ぁ、お…まえ…」
痺れで声が出せない、身体も動かない。ちょっと可哀想だけど、こっちだって溜まってるんだし、
少しくらい別にいいよね。
剥き出しになっている男根を握って、顔を近づけた。
雄の匂いが鼻腔をくすぐる。わたしみたいなのとは違う臭い……首筋の辺りがゾクゾクした。
薬の効果で痛いほどに膨張仕切った男根に舌先から口をつける。
先端を咥え、舌先でちまちまと舐める。
上目遣に目をやると、縄跳は首を上げて、眉をひそめた顔でこちらを見ていた。
「んん〜〜……」
螺旋を描きながら口の奥まで放り込む。
さっきよりも臭いが一段と濃くなった。
上下に頭を動かす。動かすたびにジュプ、ジュプという湿り気を帯びた音がする。
ふと、口内に縄跳のモノ以外の味を感じた。
先走り汁だ。
動きを止め、唾液と交じり合ったそれを飲み込んでいく。
熱い液体が喉元を通り過ぎてゆく。飲み終え、頭を動かそうとしたとき、邪魔された。
「んっ?」
縄跳が、満足に動けない筈の体を、動かして後ろへ這いだしたのだ。
まだ逃げようとするの?往生際悪いな〜……しかたない。
逸物を咥えたまま体を回した。丁度わたしの股下に縄跳の胸元がある位置。
そこまできて腰を落とした。
「ぁ!?」
逃げようとするからさ……ちょっと重たいけどけど我慢してね。
股間を押し付け、脚で挟み込み、体を動かせないようにしっかりと固定した。
刺激を強くするつもりで、少し歯を立てて前後に動かす。
頬肉を擦り付け更に唾液を絡ませる。
「…や、めろ」
搾り出したかのような声を、無視して行為を続けた。
「うんっ、じゅっぅゅるぅぅう、んふぅっ…!」
それからすぐに、男根が一段と強く脈打った。
お湯かと思われるほど熱くたぎった、粘質性の液体が口内に流れ込み、独特の匂いが鼻を突く。
暫く出続け、やがて止まった。
尿道に残っている、僅かな液も残さないように強く吸いとる。
液体を一滴も飲まずに、口内に留め、パッと縄跳の方を向き直った。
「ぇ……」
縄跳の顔が引き攣ったのを確認してから口付け、ソレを流し込んでいった…。
終わる?
挿入までは行かないと思う。というか行けない。
俺にはこれが限界だ。
他にも一応書くつもりでいる。エロなしで……書きたい。
もしよければだけど……。
縄跳「髪が伸びたでござるな」
あざみ「ん?あぁ〜切らないといけないかな」
縄跳「いや、別に切らんでも…」
あざみ「邪魔だよ」
縄跳「…そうか」
あざみ「……え、なに?どうしたの?」
縄跳「あぁ、いや…」
あざみ「もしかして、髪伸びたわたしを見たいとか?」
縄跳「……からかうな」
あざみ「あはは、ごめんなさ〜い♪」
縄跳「………」
あざみ「………」
縄跳「……ダメか?」
あざみ「はい?」
縄跳「髪をな…」
あざみ「伸ばして欲しい?」
縄跳「……あぁ」
あざみ「ブッ…」
縄跳「笑うな!」
あざみ「ゴメッ…ごめ…」
縄跳「もういい!頼まんでござる!」
あざみ「あぁ、ごめんごめん」
なにこの縄あざラッシュ。
いいぞもっとやれ。
あざみ「伸ばしてあげますよ」
縄跳「だからもういいと…」
あざみ「伸ばしますって」
縄跳「…そうか」
あざみ「……ブッ」
縄跳「だあっ!!もういい!!」
あざみ「
ミスったorz
あざみ「何か犬みたいですね」
縄跳「お前、絶対馬鹿にしてるだろう」
あざみ「いいえ!違います」
縄跳「……そうか」
あざみ「遊んでるんです」
縄跳「帰るでござる」
あざみ「チョちょ、ちょっとまって!」
縄跳「待たん!!」
あざみ「だって可愛いんですもん!」
縄跳「どういう理由だ!」
あざみ「いいじゃないですか別に」
縄跳「良くない。お前は良いかもしれんが、拙者が良くないでござる」
あざみ「伸ばしてあげますから……ね?」
縄跳「……卑怯だぞお前。上目遣いに見おってからに」
縄跳とあざみのSS書いてる人ぜんっぜんいないのねorz
誰か他に書いてくれる方いないかナ
縄跳「それは、他の奴にもするのか」
あざみ「しませんよ。先生以外に通用しないし」
縄跳「アァ、ソウデゴザルカ」
あざみ「先生以外にしたくないしさ」
縄跳「……そうか」
あざみ「髪伸ばしたら、手入れ面倒かな〜」
縄跳「手伝えるか?」
あざみ「無理だと思いますよ」
縄跳「少しくらいもったいぶってから言え」
あざみ「冗談ですよ〜。髪を梳くのくらいは手伝ってくださいね」
縄跳「…櫛を買わんといかんな」
違うのうpしたいけど全部未完成orz
どれかひとつでも終わらせてまたレスします
wktk
あざみたんは俺の嫁と言いたいがみんなの嫁。
いい子だよなあ。
さす毛が小さな竹のへらを使って洋館を口へ運んだ。
「美味しいですか?」
そう言いながら、少し熱めのお茶を二つある湯飲み、両方に注いでいく。
薄い湯気が空気に溶け、お茶のいい香りが漂う。
「美味いでござる」
そういいながらお茶を啜る先生を、ぼんやりと眺める。
数分前、突然先生がわたしの部屋にやってきた。
理由はわからないけど、追い返す理由もないから迎え入れた。
それで今、羊羹とお茶を出して、それなりのもてなしをしているわけだ。
「どうしたんですか突然?」
先生に呼ばれることはしょっちゅうあるけど、向こうの方から来たのは初めて。
「もうすぐ女子高に潜入するが、準備はどうでござるか」
「…大丈夫です。その辺りは完璧ですよ」
あぁ、なんだそれか……ちょっと期待した自分が馬鹿みたい。
喋り方や仕草なんかは、自身を持てる。
わたしは後一ヶ月とたたないうちに、女子高へスパイとして潜り込むのだ。
この計画は男子校の首脳陣、上の偉い人達が立てたものだ。
さす毛先生はわたしが、いろいろと準備をする前から、女子高の教師を、スパイとしてこなしている。
女好きでスケベで変態だけど、ちゃんとこなせてるんだろうな。この計画に参加する気満々だったし。
でもわたしがこの計画に参加したのは、そんなさす毛先生が一緒ってところが大きいんだよな……。
「さす…シャクトリ先生はどうですか?」
「拙者はそれほど気を回さなくても良いからな。新しい名前に慣れるぐらいでござる」
ここではシャクトリでいいと付け加えてから、また羊羹を口に運んだ。
そっか、ここは女子高じゃないからシャクトリ先生で良いのか。
名前ね、わたしも男子校にいる時とは違う名前で呼ばれるんだ。
先生は縄跳さす毛という名で、わたしは……
「あざみ」
「…はい」
あざみ。それが女子高での名前だ。
女の子と名前として呼ばれる。これは喜んでいいんだよね。
「大丈夫みたいだな」
「大丈夫ですよ」
先生はわたしの顔を、ジッと見てきた。わたしは今、笑えてるだろうか。
鏡を見てみたい。部屋の反対側にあるのが悔やまれる。
「計画が成功すれば拙者もお前も…」
「わかってます」
先生は教頭の、わたしには次期情報部長の椅子が待ってるんだ。
でも、わたしの事はどうでもいい。シャクトリ先生の為にやるんだ。
「絶対成功させましょう」
先生は少し笑ってから、お茶を啜った。
わたしも一緒にお茶を啜った。少し熱い。もう少し冷ませばよかったな。
「期待してるぞ」
「はい…」
その後、先生が帰ってからすぐに笑顔を確認してみたけど、なんか変。
おかしいな。前確認したときは良かったんだけど。
前の笑顔と同じなのに、雰囲気が違う。
もうちょっと練習しないといけないか。
ちゃんとした笑顔を、シャクトリ先生に見てもらいたいな。
終わり
コミック版呼んだ人にならわかるかも。
なんかこうもっと甘いやつを、糖度高いやつ書きたいな。
文章書くの下手だけど、何とかやってみようと思ってます。
GJ!
あざみたんいい子だよあざみたん。コミック版も久しぶりに読み返してみるかなあ。
ところで一行目のようかんマンがヘーベルハウスに(ry
しまった誤字がorz
へーベルハウスwww
あざみはいったい縄跳のどこが好きになったんだろうか?
コミック版読み返してあざみの健気っぷりに萌え、悶えた。
くそ!!、縄跳テメェ!!
羨ましすぎるぞ!!!
489 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 02:54:23 ID:35dZ1M/a
ほしゅっ!
かわいいっ!
書き貯めしてないので終わるのにかなり時間がかかります
ごめんなさいm(_ _)m
固まってしまった背中をほぐす為大きく伸びをしながら、隣へ視線をやる。
「やっと終わりましたね〜」
あざみは欠伸をしながら、眠たそうに言った。
「早く帰って寝たいです」
時刻は丑の刻、2時頃。
辺りは月明かりでぼんやりと照らされており、それほど暗くはない。
時折吹く夜風が、体を冷たく包んだ。
「いつまで雑用やらされるんですかね?」
「ほとぼりが冷めるまでじゃないか?」
「冷めますかね?」
当分時間がかかるだろうな……。
あの事件から1ヶ月たった今でも、女子高と男子高の仲は以前のまま変わらず。
あざみの情報によると、女子校の男性教師が数名、謹慎等の懲罰中らしいとのこと。
男子校もそれなりの措置を取った。
始末書や減給、異動等々。
拙者とあざみには、後処理と称して誰もやりたくないような面倒な仕事が押し付…否、
回ってきたのだ。
万理小路もこんな気持ちだったのだろうか。
「大丈夫ですか?」
「…お前はどうなのだ?」
「ゼンッゼン、大丈夫です」
にこやかに笑った上目使い覗き込まれた瞬間、強く心臓が波打った。
「どうしました?」
「いや。なんでもない」
可愛い。不覚にもそう思ってしまった。
あの事件以来、拙者はあざみを相当意識してしまっているらしく、
こうして二人でいるだけだというのに落ち着かない。
そのせいか、何をトチ狂ったのであろう拙者はあざみの手を取っていた。
「へ?」
「あ?」
殆ど同時に、間抜けな声を発して立ち止まり、顔を見合わせる形になった。
手は離さず握り閉めたまま、まじまじと見つめる。
大きくも目尻の鋭い瞳、徐々に染まっていく頬、血色のいい唇、綺麗に整った眉。
その顔立ちは、本当に男なのかと疑ってしまう。
ふと思ったのは一瞬だろうが、結構長く感じるものだ。
「すまん」
誰にも謝ってはいない。ただ出て来ただけ。
思い切ってではなく、なんとなくやってしまったという感じだろうか、
覚悟をしたわけでもなく、ただ漠然としていて突然にである。
意外と冷静な自分に少々呆れつつ、手を一方的に握り締めたまま歩きだした。
手の甲に感じられるのは、指の付け根が幾らか剥け、硬くなっている感触。
少し汗ばんでいるのは、緊張しているからなのか。
ご主人様の歩みは速い。先の方を歩いていて早足にならないと追いつけない。
傍から見れば手を繋いでというより、連れて行かれる様にしか見えないはず。
もうちょっとゆっくり、合わせてくれてもいいのではないか。
「先生」
呼んでも返事は無かった。
聞こえてないのか、聞こえて無い振りをしているのか。
「ご主人様〜」
大きめにそう呼ぶと、俯き加減に横顔が見えた。
口元が少し緩んでいるところを見ると多分後者だ。
「少し遅めに歩いてもいいですか?」
あぁ、と低い声で答えてから、歩みが遅くなっていく。
丁度わたしの隣に並んだ時に、微かにくぐもった笑いが聞こえた。
「嫌だったでござるか?」
「いいえ」
嬉しいに決まってる、好きな人と手を繋いでいるんだもん。
不満があるとするなら、向こうが先に手を出してきたって事だ。
わたしが先にしてやろうと思ってたのに、先を越された。
それがちょっと悔しい。
それにしても、もう少しちゃんと女性をエスコートできないのかな。
結構乱暴だったし、優しくそっと手を差し出す〜ってのは似合わないか。
それにしても何故当然?そんな疑問が湧いたけど、すぐに振り払った。
そんなこと、口に出すことはもちろん、そんな疑問を抱くこと自体、無粋ってものだろうし。
今はただ、素直に喜べばいいか……。
今まで他人の手を握り締めたことがどれほどあっただろうか?
覚えている限りでは三、四人いた様な、いなかった様な…。
しかしこれほど気分が良かったものではなかったような気がする。
ここまで拙者を狂わせたのはあざみだけだ。
「早く、帰らないとな」
「明日もきっと忙しいでしょうね〜」
あざみはまた欠伸をした。
つられたように、拙者も同じように欠伸をする。
欠伸をしてから、拙者の呼ばれ方について考えた。
ご主人様、さす毛殿、さす毛さんもいいな。
いきなり名前からというのは、互いにまだ難しいかもしれない。
最初は無視したが、二回目で拙者は譲歩した事を、勿論あざみは知ってるはず。
自分でも阿呆な事をしたなとつくづく思った。
さらさらと木の葉の擦れる音がしてから、夜風があたりを吹き抜けた。
気が付け学生寮のすぐ近くまで来ており、あぁ、もう来てしまったか、などと残念に思った。
「ここまでだな」
そう言ってから握っていた手を離した。
掌がひんやりと冷えた。相当汗を掻いていたらしい。
手の甲が汗で濡れている。わたしの汗じゃない。
手を繋ぐって、そんなに緊張することかな。
「それじゃあ、また学校で」
「あぁ」
名残惜しい、とでも言えばいいのだろうか。
実際そんな心境だけど。
教員寮へ向かうご主人様の背中が段々と遠ざかっていく。
その背中を眺めながら、体中に熱が宿るのを感じた。
考えてみれば結構恥ずかしい事をわたしとご主人様したんじゃないかと思う。
後から、後から恥ずかしさが押し寄せてきた。
少し外にいようと思う。
夜風が、火照った体を冷やすのには丁度いい。
一応これで終わります。
縄跳は教員寮の自室で枕に顔を埋めて「あぁぁあぁ」とか「うぅぅうううぅう」とか
「おぉぉおおぉお」とか唸ってると思う。
やっぱし文章って難しい。
ほ
>>491〜
>>497 があまりにも酷いのでリベンジを込めて投下。
やっぱり縄あざです
何となく思う浮かんだ事を実行してみた。
目を開けてみると、そこには見慣れた顔が、驚きを浮き出させたまま固まっていた。
それを確認してからもう一度同じ事をしようとしたら「待て」と肩を掴まれて止められた。
「何だ?」
何だと聞かれても、特に理由は無いから返答に困る。
壁を背に凭れ掛かり座っている主人の目を見詰めて、首を傾げた。
「さぁ?」
「さぁ?、では無いだろう」
困ったような、呆れたような顔をして溜息を一つ。
お昼に食べた味噌汁やら魚やらゴボウの煮つけやら、いろんな臭いがした。
自分の口の中も今は同じ臭いがするかもしれない。
そういえば、ひまわりとハヤト先生はラーメン食べにいくって言ってたな。
誘われたけど、ご主人様と一緒の方が好かったから断った。
「まぁ、いいじゃないですか〜」
猫撫で声を出しながら、主人の硬く引き締まった胸に顔を埋めた。
少し汗臭いかも。
ご主人様は仕方がないといった感じでわたしの頭を撫でてくれた。
背中に回さた方の手は添える様に置かれている。
「な〜んか、眠くなってきました」
「寝るな、放り出すぞ」
仏張面でサラッと酷い事を言うなと思いながらも、言い返す気にならなかった。
それよりも眠気の方が強い。
仕方ないよ、お昼食べた後は眠くなるもんだよ。
体の力が抜けていく。寝ちゃ駄目だ、そう思いつつも視界が徐々に狭くなり、閉じられていく。
暗闇に落ちていきながら、ご主人様の汗の匂いと、内側から聞こえる規則正しい音が薄れていくのを感じた。
目が覚めたてから一番最初に、目に飛び込んできたのはご主人様の顔。
ぼんやりとしていても、ご主人様だと気が付いた。
すやすや寝息を立てながら、気持ちよさそうに眠るその顔がすぐ近くにある。
いつの間にか二人して横になって寝ていたようだ。
なんだ、ご主人様も寝ちゃったのかと、まだ半分しか起きていない頭で思った。
「……どうしよう」
起きようか、寝ていようか、どうでもいいような葛藤。
身を捩じらせて壁掛け時計に目をやると、針は2時を指している。
思ったよりそう長くは寝ていないみたいだ。
「…いいか」
まどろみの中にいる意識を無理やり起こして、立ち上がる。
ご主人様を起こそうかと考えたが、寝顔を見てたらそんな気がうせた。
さて……特にするがない、したい事といえばご主人様にちょっと甘えたいだけなのだが、
当の本人は気持ち良さそうに寝てしまっている。
部屋の掃除をしようとしたけど意外と綺麗に、整理整頓、片付けられている。
どうしよう、本当に何もすることが無い。
ふと、寝る前にした事を思い出した。
別にこれをすることに執着があるわけじゃない、ただ何となくだ。
ゆっくり顔を近づけていく、何故だかいつもは無い緊張感。
普段起きてるときにするのは何とも無いのに、今はイケナイ事をしているような
気がして興奮してしまう。
静かに、ゆっくりと近づけて、息がかかる距離にきたそのとき、ぱっと目が開かれた。
鋭く睨まれて弾かれた様に顔との距離をとり、尻餅をついてそのまま動けなくなった。
一回、二回と瞬きの回数を数えた。
「何してる?」
「あ、掃除で、おぅはよ……」
動揺しすぎてうまく言葉が出て来ずに繋げない。
ご主人様は上体を起こし、大きくわざとらしく、欠伸をしてから辺りを見回した。
畜生、寝たふりだ。
「片付いているでござろう」
そう言いながらご主人様はわたしに覆いかぶさってきた。
「い、いや!待って!」
何で気づかなかったのか、今更後悔した。
この状態では抵抗しようにも手足をバタつかせる事しか出来ないが、
両手首を掴まれてそれすらも封じられている。
ただでさえ近くにある顔がさらに距離を縮めようと迫ってくる。
いつもはわたしが一方的にしてるのに、ご主人様からなんて初めてだ。
なんというか、どうもご主人様からというのは慣れていない、というか嫌だ。
なんて都合のいい我侭なんだと思いつつ、目を閉じ、されるのを待った。
「…………」
けれども、いつまでたってもこない、何をしてるのと思い薄く目を開けた。これが間違いだった。
ご主人様はニヤつきながら、待っていたぞと言わんばかりにわたしの口を塞いだ。
お昼に食べたやつの味が微かにした。
「何時もされてばかりでござるからな。仕返しだ」
行為が済んだ後はさらっと、なんでもない風に言われた。
なんか悔しい。
終わり
まだ書き足りないのでずるずると投下していく予定。予定調和的願望。
ちゃんとした職人さん来てくれ、頼むから。
何でもいいから。
502 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/05(月) 21:55:37 ID:rEBi2Q8k
ゆすら×米沢くんは無いのかorz
そういえばゆすらのエロパロって見たことない。
504 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/06(火) 11:46:47 ID:Gs2/ON/4
ハヤト×ひまわり ナナフシ×しきみ 米沢くん×ゆすら 縄跳×あざみ
ふと思いついたカップリング
ヒメジとかつきよ姫とかは…どうだろう
妄想力があればカップリングは何でもいけるだろ
誰もいない・・・
再放送があってもマイナーだからな、いるわけない
最低でも三人はいるようだ
三人しかいないのね……
hosyu
511 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 01:03:05 ID:cfN42KGi
祈願age
まだ人がいるのかよ……
いや、勿論そのほうがいいけどね。
やっぱり3人しかいない
三人って多いほう?
世間での作品の評価考えると多い気がする
壊滅してないところがすごい的な
オリジナルアニメはロボット出したりシリアスな路線でやったりしないと人気出ない気がする
それでも俺等はひまわりっ!が好きだ。
誰か書ける人いないの?
駄文でよければ。
即興で
この人とはお友達にはなれないよな〜、と初めて会ったときの感想を心の中でぼやいた。
「あ〜……縄跳先生?」
「何だ?」
「あの……今日、お呼び出しいただいたのは何故かと思いまして」
恐る恐る訊いてみる。駄目だ、気まずさに負けそうだ。
苦手だ。脚に怪我もさせたし。
あの状況じゃ仕方がないって言っても、引け目を感じるっていうか。
「気になることがあるんでな」
気になること?何だ?俺何かしたか?
いや、ない。何もヘマしてない。そりゃ以前はここの生活に慣れなくていろいろと
失敗もしたが、今ではまったくといっていいほど、順調だ。
いや、まてまて。
もしかして俺が気づいてないだけで何かとんでもないことを、やらかしてたのか?
「……お主にとっても大事なことだからな」
あ、何かしたんだな俺。
ふぅ、と息を吐いて身構えた。
しきみが気持ち良さそうにお漏らししてる夢見た
あの南瓜パンツからジワジワ染み出る様子は壮観だった
3期さえあればな〜……
誰か伝の続き書いてくれ
524 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 23:40:10 ID:MkwY2Ggt
ありんすで雪見オナニー
fxtgujfgyuj
hosyu
527 :
名無しさん@ピンキー:2010/01/05(火) 10:18:35 ID:Tp59Sqxf
528 :
名無しさん@ピンキー:2010/01/27(水) 18:08:26 ID:/vif6w5S
捕手でありんす
「……ありんす」って、遊女の言葉遣いなんだよな。
530 :
名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 07:28:39 ID:HE2Esnfc
てすと
この物語は「ひまわり!!」のエンディングで語られた彼女たちの未来とは関係ない、別のパラレルワールドが舞台となる。話は製薬会社の陰謀が瓦解した時点に遡り、彼らによる多額の賠償金で志能備学園は男女校ともに再開、捕えられていた教員も元通り復職を果たしている。
モノローグ
ばっちゃ、お元気ですか?
こちらは学校のゴタゴタが解決し、ようやく平穏な毎日を過ごせるようになりました。
といってもそこは“くノ一”養成学校…相変わらず妙な薬物や手裏剣が飛び交い、バズーカ砲も炸裂していて別な意味で賑やかではありますけど…。
ばっちゃも知ってると思うけどハヤト殿…いや、万里小路先生も相変わらず借金返済のため学校に残り頑張っています。あ、そうそう例の梅干しですが、もし分けてあげられるようでしたらまた送ってくださいね。先生も楽しみにしてくれると思います。
草々
第1幕 武蔵坊の宿題
第一場。
場面は校庭、ランチタイム…。製薬会社の治療で「異能力」から解放され晴れて志能備学園の教員に復職した武蔵坊が、お好み焼きを頬張るひまわりに近づく…。
「日向さん…」
「あ、はい…武蔵坊先生…」
「相変わらず好きなのね、お好み焼き…」
「はぃっ!すみませんっ!」
彼女の授業では「女の武器」に妨げとなる「前歯に青海苔」の弊害から、くノ一に適さない食べ物として注意を促されていたのを思い出し、少し緊張するひまわり…。
「別に作戦中でなければ構わないのよ、ところで例の『お相手』…もう決まったのかしら?"実施予定表"の提出がまだなのは貴方だけなのよ?」
「そ、それは〜〜〜〜〜」
ばつの悪さと同時にその内容を思い出し頬を紅らめるひまわりだったが、事が事だけにそう簡単に決められるものではなく、いたずらに提出期限は迫る一方になっているのだった。
「ま、まだ期限には余裕ありますよね?必ず て、提出します…」慌てて喉を詰まらせそうになる。
「女にとって大事なことなのは理解しているわ…、でも、くノ一にはプライバシーなんて無いの…、踏ん切りがつかないのなら残念だけど学園を去ることになるのよ?
良く考えなさい…」
そう言い放つと武蔵坊は艶めかしいヒップを回転させ、校舎の方に歩み去った。
「え〜ん、ど、どうしよ〜〜〜う」
武蔵坊のせいで先ほどまであった食欲もなくなりガックリと項垂れるひまわりだった。
第二場。
学園女子寮、しきみの部屋。
ゆすら、ヒメジが「そのこと」で話し合っている。
「あ〜あ〜、いくら手段とは言えこの若い美空でバージンの安売りを強要するなんて
フンコロガシ並みに外道よね〜」
「わらわは別に構わんでありんす、だいたい処女膜なんて鬱陶しくて早くどうにかしたいくらいでありんすよ」
「まじで言ってるの〜?ほんと肉食系の血ってライオン並みにワイルドよね〜」
「本物のくノ一になりたいなら、仕方がないじゃない…」しきみは相変わらず薬草をこそぎながら冷めた口調で続ける…。
「いずれにせよ、男に抱かれることになるのなら、早いうちに慣れ、くノ一としての技を磨くためにいろいろと学んでおくのは悪いことじゃないわ」
「そんなこといったって〜『恋はご法度、相手には恋心を抱かない者を選ぶべし』とか『同年代の男子、特に男子校の生徒は選ばぬべし』とか条件つきなんだよ〜、しきみ…ナナフシは選べないんだよ〜それでもいいの?」
一瞬、顔が曇り薬研(やげん)を捏ねる手が止まるしきみ、
「べ、別に彼には何も感じてはいないわよ…だから構わないワ…」
「ほんと〜〜〜〜、考えられな〜い、好きでもない男に抱かれるなんて〜」
「いやなら、無理にすることもないわ…こっそりあの河童とやっちゃって嘘の『実施レポート』を提出すればいいだけのことよ」
「ええ〜〜〜〜っ?そんなこと許されるでありんすかぁぁぁ〜」
「あの武蔵坊を騙せる自信があるなら…ね…」
「それはカメレオン並みにスキル必要よね〜、あの人ってばぁ場数は相当踏んでそ〜だし〜」
諦めの表情で肩を落とすゆすら。
「さっきから何を作ってるんでありんすか?」
「秘伝の『媚薬』よ…、『棄嫌歓来』と呼ばれる一種の幻覚剤…、これを一粒飲めば相手がどんなに憎むべき男であってもその思いを進んで受け入れ、快感を呼び、破瓜の痛みさえもなくなるという、くノ一には欠かせない秘薬…」
「『破瓜』ってなんでありんす?」
「女の子のアレが破れることよ〜」(桃太:キシシ)
「なるほど〜これを飲めば痛くないんでありんすね〜」
「ヒメジにはそこがポイントなわけぇ?」(桃太:ウシシ)
「古くから、くノ一はこれを使うことで精神を保っていられたんだとお師匠様が仰っていたわ。これの効能で抱かれる相手は誰であろうと自分の理想の男に見え、終わってから一晩眠りにつけば全て忘れるという…。」
しきみの摘みあげた焦げ茶色の丸薬がきらりと光る…。
「良かったら、貴方達の分も処方してあげるけど?」
「本当でありんすかぁ〜できれば1ダースほど欲しいでありんす」
「ヒメジったら〜あなたハツカネズミ並みに繁殖浴旺盛〜〜〜〜」
瞬間空気が淀み部屋の奥に振り返るしきみ…
「ん、誰?」声にする間もなく部屋の隅に現れたつきよ姫…
「ど う や ら そ の 秘 薬 が 必 要 な 者 が 他 に も お る よ う だ…」
一同、例によってお椀を覗き込む…。
そこには項垂れた顔で、すっかりしょげかえっているひまわりが映し出されていた…。
第三場
放課後、課外活動のソフトボール部で練習中のひまわり。顧問兼監督の武智がノッカーを務める。
鋭い打球がサードの守備位置に並ぶ内野手達に襲いかかる。ひまわりの番…
強めだが普通に捌けない打球ではない、が、最初の一歩が遅れたため後ろにそらす…。
「こらー!日向ぁ!何をやっている〜〜〜っ、早くボールを取ってこーい」
武智が容赦なく怒鳴りつける。
「すみませ〜ん」
「何やってんだ?あんな簡単なゴロ…」いぶかしがる捕手姿のアザミ・・・。
「奴は何か悩みごとでもあるのか?」武智が傍らのアザミに問う。
「さ〜、私の耳には何も入っていませんが〜、もともと抜けたとこがありますからねぇ〜」
「ふむ…」打球を追う短パン姿のひまわりを見つめる武智…。
「それにしても、いい脚だ…」
「はい?」
「い、いやなんでもない!」アザミの問いかけに一瞬キョどりながらも、再びノックに専念する武智…。
(できれば奴を…)そう心の中で呟く武智だった。
第四場
教員宿舎、万理小路の部屋。
筆の子先生が、万理小路の猛り狂った男茎を咥えフェラチオに酔い痴れている。それに身を委ね極楽気分のハヤト。
「ハァハァ、ふ、筆の子先生〜っ…い、いつも、わ悪いっすねぇ〜」
件の混乱に乗じ、邪気に操られたとは言えハヤトとひまわりを始末しようとした罪悪感から、いつしか筆の子はハヤトの性欲処理担当を買って出ていたのであった。
ハヤトはどちらかというと保健担当のみつ先生を希望していたが、一旦関係を結ぶとむしろ虜になってしまっていた…。
一心不乱に頭を振る筆の子が、ハヤトの分身の敏感な部分に舌先を這わせながら言う
「おららいさまれすわ、わらしらっれこうれもしらきゃ身がもらない…」
舌を使いながら喋ってるからハッキリしないが大意は汲み取れる。全寮制の学園生活で半ば禁欲状態に強いられて辛いのに教師生徒や男女の差はない。
言い終わらないうちに筆の子はハヤトの腫れあがった先端を喉の奥に宛がう様に吸い込み…というか飲み込む
「おわっ!、がっ、」快感で目眩がしそうなのを堪えながらも、ついつい嗚咽を漏らすハヤト。こんなバキュームフェラは今までに経験がない…。
「ふ、筆の子先生っ、お、俺にも舐めさせてくれ…」
「万理小路先生ったら〜そんなことされたら私集中できませんわよ?」
「い、いいんだ。我慢できない」
そう言うとハヤトは彼女の腰を引きよせ仰向けになった顔の上に股間をあてがう。
すでに筆の子の秘溝には女蜜が溢れんばかりに湧き出ており、隠微な香りを解き放っていた。
ハヤトは巧みに舌を尖らせると、小振りながらも既に半ば開き加減の花びらをこじ開け、今は尻を向けている筆の子の、その部分の下側に位置する「女の突起」を舐め上げた。
瞬間、ハヤトの肉茎を握る筆の子の左手にかすかな反応を感じると、続けざまに舌の先端を躍らせる。ビクンっビクンっとその度に反応する腰を、まるで無視するかのように筆の子も口と舌と手でハヤトの下腹部を攻め立てる。
これは戦いである…とでも言いたげに。
やがてうねりも最高潮に達し、ハヤトは股間が徐々に熱をおびてくるのを感じてくると、舌と顎の反復運動を更に激しくし、舐めるというよりはむしろ舌を押し付けるような感じで反撃する。
やがて筆の子の方が我慢できずに股間を激しく上下させ、果てるのを察したハヤトは、機を得たりとばかりに、思いっきり筆の子の口腔内に生命の流体を放出したのだった。
第一幕終了
536 :
名無しさん@ピンキー:2010/02/02(火) 18:05:29 ID:vSBa30w/
第二幕 忍者さん
第一場
夕刻、ソフトボール部のロッカールーム。
ひまわりは練習後の汗を流すためシャワールームにいる。
といっても、胸から腰辺りがようやく隠れるようなドアに囲まれた作りのものだから、アザミにはどこに彼女が居るのかを見つけるのは簡単なことだった…。
「よっ!ひまわり〜」
「あ、アザミちゃん…、待って、もうすぐ上がるから」
「サンキューあ、でも私はいいよ〜寮の部屋でお風呂入るからさ…。
それより今日アンタちょっとおかしくない?」
ドアに両手を添えながら覗き込むように問いかけるアザミ。彼女にはひまわりの身体が少し眩しく映る。
「そ、そうですか?…そういえばミスが多かったかな?へへっ」相変わらず誤魔化しが下手糞なひまわり。こんなんでまともな"くノ一"になれんのかな?そう思いながらアザミは本題に入る。
「ま、いいか、で、武智に伝言を頼まれたんだけど〜着替えたらすぐ顧問控室に来るようにって…。私の情…ってか勘によればぁ〜アンタ間違いなく絞られるよ」
「え、えええっ〜〜〜〜そんなぁ〜」
今日は先生に叱られてばかりの日〜〜〜と、自己嫌悪に陥りかけるひまわり…。
「アハハ、そうしょげなさんなって、私の情報によればぁ〜武智はひまわりがお気に入りだから、そう怒鳴れるようなことはないと思うねぇ〜、まぁアンタの出かた次第でもあるけどさー」。そう言い残すと出口の方へ向かう…
『うひょ〜ひまわりってば前より少し胸が膨らんでた〜』内心そう呟くアザミも男である…。
「お気に入りって?どういうこと〜」ひまわりは武智には風間椿という「従人」が居ることを思い出しながら、アザミの言ったことに矛盾を感じざるを得なかった。
制服に着替え、ひまわりは武智のいる顧問控室に向う。途中、そもそも武智が自分を助けたことが切っ掛けで、この里に来る運命が開けたことを今更ながら思い出し、一瞬閃光が閃いたかのように一つの考えが浮かんだ…。
『そうよ、そうするしかない!だってハヤト殿をお相手に選ぶことはできないんですもの!』
そう心中で叫ぶと、一目散に駆け出すひまわりであった。
第二場
ハヤトの部屋。
汗だくになって絡み合う筆の子とハヤト…。
既にお互い一度果てたというのにまるで十年振りでセックスをするかのように貪り合う二人だった。
正上位、帆掛け舟、松葉崩しに対面座位と一連のラーゲを楽しんだのち、フィニッシュを後背位で迎えようという状況だった。
「筆の子先生っ、筆の子先生っ、ハァ〜、ハァ〜、おおぉぉぉぉ俺もう…」
「い、いいわっ〜来て、来て、万理小路センセ〜来てぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜っ」
筆の子の腰を引き寄せる手に力が加わり、挿入した肉茎の先端が深く子宮口の側面を撫でるように抉ると、快感が一気に押し寄せ本日二度目の脈動を感じることとなった。
ハヤトは、半開きになった口から涎が滴り落ちんばかりの恍惚の表情。その刹那、筆の子の方も、膣壁は小刻みに収縮を繰り返し、まるでポンプのようにハヤトの漢汁を吸い込むのだった。
「ハァ、ハァ、筆、ハァ、の子、ハァ、ハァ、〜センセ〜ハァ、ハァ、中出しハァ、ハァ、っしちゃいましたけど、ハァ、ハァ、だ、ハァ、大丈夫で、ハァ、すか?」
「はぁ、はぁ、はぁ、だ、大丈〜夫はぁ、あ、安・全・日〜はぁ、だから…」
「ハァ、ハァ、それにしても、ハァ、筆の子先生のま●こって気持ち良いっすね〜…」
「はぁ、はぁ、わ、私だって一応 くノ一…はぁ、それなりの訓練は はぁ、受けてますわぁ…、ハヤト先生の はぁ、 教え子たちも、いずれは…」
「ハァ?、そ、そうか〜 ハァ、そうでしたねぇ〜それは失礼…」
そういいながら、ハヤトはあのあどけない顔のひまわりも、こうやって男に抱かれて喜声を上げるようになるんだなぁ〜と考えながら複雑な気持ちになるのだった…。
その時、は?っと思うと、ベッドに上半身を預けながら事後の陶酔感に浸りきった表情の筆の子を抱えあげると彼女を引き寄せてこう言った…
「せ、先生っ、その訓練て?どんな?」
まだ"ハヤト自身"は筆の子の胎内で半分怒張し続けたままだが、そんなことも忘れたかのような真顔で聞く。
「あぁんっ!」
まだ痺れが続いてる秘腔の入口に快感を覚えながらも筆の子は答える。
「そ、そんな、学園の極秘中の極秘、授業内容は担当外の万理小路先生にも話せませんわ…」
「そ、そんなぁ〜ひまわりたちはどうなるんだ?」
意図せぬものの、筆の子の膣内で怒張を取り戻したハヤトの如意棒が、これまた意図せぬに関わらず、筆の子の秘孔を衝いたらしい…
「あぅぅ!いや止めてくださいっ!そ、そこは…とても」
何だかわからぬが有意なポジションを得たらしいことは、ハヤトでも察しがついた。
「じゃ、話せ、ひまわりたちはどうなるんだ?」そういうとハヤトは腰を捻った。
「あぁぁぁぁ、わ、わかったわ、話す、話すわよ〜但し技以外のことにしてっ」
筆の子は背後からハヤトの「真剣」に刺し貫かれたまま、上半身を羽交い絞めにされ身動きが取れない状態だ。
「あの子たちは、武蔵坊先生の授業で、初体験の相手を決めさせられ、その相手に処女を捧げるの…」。
「それからその内容を詳細に報告させ、「男を陥れるためにはどうすればいいか」というテーマでその具体策を研究させる…、これが「女体奸計学」の導入カリキュラムなの…」
聞くか聞き終わらぬうちにハヤトは余りの驚愕で筆の子から手を離す…。
振りほどかれた彼女はドサっとベットに身を崩すとその拍子にハヤトの肉茎が『ゴボっ』と音を立てて女陰から抜けた。解き放たれた筆の子は上目使いにハヤトを見やる。
「そ、そんな、相手は誰が決めるんだ?」
「だ、だから本人に決めさせるって…そう言ったでしょ?。自由度は低いの、本来誑かす相手をシミュレートするわけだから好意を寄せている相手や理想の相手はご法度…」
大きく口を開いた筆の子の欲深い洞窟から先ほどハヤトが放ったばかりの滴りがこぼれ出る…
「これ以上は言えないワ…」
大胆にも男の眼の前で股間の粘液を指で絡め取ると、その指をペロリと舐め、悪戯っぽく微笑む筆の子を見下ろしながらハヤトが答える…
「それだけ聞いたら十分だよ…」
第三場
既にすっかり陽が沈み、里にも夜が訪れようとしている。
体育館と同じ棟にある、各運動部顧問の事務室が並ぶ通称"顧問控室"、その「ソフトボール部担当」と書かれたドアの前で一人佇むひまわり…。
考えるより行動が先走る彼女、果たしてここまで一目散に跳んできたが、ノックをする前で今一度逡巡する…。
「どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、ど〜〜〜しよ〜〜〜〜う」
愚にもつかない独り言を呟くひまわり、だが、そこまでうろたえていては気配を悟られぬどころか、ドアの向こうの武智には「丸見え」だった。
「日向だな?何してる入れ!」
いっけないっ!彼はただの教師ではない。超一流の忍者だったことを思い出し、ひまわりは我に返った。
「は、はいっ!」
ドアを開け、恐る恐る武智を見やる…、まず、何よりもここへは武智から呼び出されたのだ。叱られるために…、とりあえず自分の思いをどうするかは、それが済んでから考えるとしよう…。
そう思ったひまわりは幾分気も楽になり、ふうっっと一息つくと
「た、武智先生!日向向日葵只今出頭いたしましたぁっ!」
と半ば叫ぶように直立不動の姿勢を取る。
机に向かってPCのマウスを握ってた武智はひまわりの方を振り向いた…。
「休め!」
どうやら表情を見る限り怒ってる様子はない、またひとつ緊張の材料が消えた。
武智はひまわりに傍らの椅子に座るよう促すと、後ろ手にドアを閉めた。ただし女生徒と1対1になったときの礼として、2cm程空けた状態で完全に密室にすることはしなかった。
(武智先生って紳士だなぁ〜)そう思うと同時に(あ、こんな私でもレディとして扱ってくれてるのかな?)などと浮付いた考えも頭に擡げたのに気付き、勝手に頬を紅らめるおバカぶりだったが…。
「日向…、今日のあのざまは何だ!お前は一応「4番サード」を任されたチームの旗頭だぞ?」
「あんな身の入れ方では他のメンバーに示しがつかん。一体何があったというのだ?」
「あぁぁ」(やっぱりお小言が始まったぁ〜)心中でそう溢しながら
「す、すみませんっ!ちょっと考え事をしてしまってぇ〜本当にすみません!」
(え〜ん泣きそう…こんなんじゃ、例の頼み事も、云うに云えない〜〜〜っ)
第三場(続き)
いつになく落胆したひまわりを見て武智は
(カワイイ…なんて可愛いんだ…あ、いや!これは只事ではないな)と思った。
「か、考え事って…深刻な問題なのか?」
(当たり前だ、あ〜〜〜何を聞いてるんだ俺という奴はぁぁぁぁぁ)内心では頭を抱ながら武智はひまわりの方を見やった…。
「ば、ばんでぼがりまぜんぅぅぅぅぅぅぅ(何でもありません)」
半泣きだった…。
「おぉぉぉ、おい、泣くな!誤解されるではないか!」
柄にもなく狼狽える武智…。もう遅い、ひまわりは堰を切ったように号泣し始めた…。
「あ〜判った判った、判ったから泣くな」
こうなったら紳士協定も糞もない、武智はドアを閉め、ひまわりの声が廊下に響くのを防いだ。
「お、俺に話せることなら聞くぞ?ん?」
一息ついたひまわりにティッシュBOXを渡すと、武智は優しい声でそう言って彼女の顔を覗き込んだ。涙にうるんだ愛くるしい大きな眼が自分を映していた。
(ああ、なんて美しい眼をしてるんだ…)武智は今にもこの少女を抱きしめたい欲望に駆られ下腹部に血液が集まるのを自覚した…、だが手は出せない…。
「そんば、ぜんぜびにがだぜどぅぼどでばばでぃばぜむ!」
「え?」
「ぜんぜいにはだぜうおどでばがりばぜんっ!!!」
多分『先生に話せることではない』って言っている(あ、そうか、そうだな)
「話せないのか?」
ひまわりはこくりと頷いた…。
「よし、判った、今日のところはもういいから、寮に帰れ。いいな」
「ばい、ぜんぜび…」
ひまわりはそう言って立ち上がると、瞬間捲れ上がったスカートの奥が武智の眼を射ぬいた。
「じづでいじばず」
そう言ってぺこりと頭を下げるとひまわりは部屋を出て行った。
「ああ、堪らん…」
そういうと武智は電話の受話器を取り、掛けなれた番号を押した。
第四場
寮へのわずかな距離の帰り道、一通り泣きじゃくって少し疲れたひまわり…
「本当にどうしよう…好きでもない人とエッチするのなんか嫌だよう…」
思わず本音を漏らしたひまわりだった、だが直ぐに
(あ、しまった)と、溢した本音を後悔した。何故なら自分の部屋の前にしきみが立っていたのに気がついたからだ…。流石しきみ…気配の消し方が半端じゃない。
「しきみさぁん…」
「日向向日葵…待ったわよ」
第五場
部屋にしきみを通すと、洗面所に行き顔を洗いながらいつものように溌剌とした声で
「今〜お茶入れますね〜」とひまわり。いくら優等生のしきみだからといって、自分の悩みを悟られるようなことはすまいと、気合いを入れ直す。
「お構いなく…宵の口のお茶は体に良くない」
「宵の口って、まだ7時前ですけど…」
「ふふ、そうだったわね…そういえば、まだ夕ご飯も食べてない…ってそんな事どうでもいいのよ!」
「しきみさん、最近ノリ突っ込み上手になりましたね〜」ひまわりに笑顔が戻った。
「バカ!そ〜じゃなくてぇ〜、話があるのよ」
(あ〜何でこの娘と話すとこうイラつくのかなぁ…修行が足りないワ)
「はい、何でしょう?」
ひまわりは屈託ない顔でしきみを見つめると、幾分罪悪感を感じたのかしきみは眼をそらし、彼女の顔を見ずに云った。
「私の処女は万里小路ハヤトに捧げることにしたの、だから貴方に一言断っておこうかと…」
「・・・・・・・・・」
ひまわりは声も出ず、ただ唖然と口を開けて放心状態に陥った…。
「正直すまないと思っているのよ…貴方の彼を想う気持ちを知らないわけじゃなし…」
「・・・・・・・・・」
「でも、誑かす相手として、抱かれても私が絶対に気持ちの動かない相手として彼しか考えられなかったのよ…、あ、悪口言ってるわけではないのよ、ごめんなさい…でも…」
「いいでずよ(グスッ)」枯れたはずの涙がまた湧き出てくる…。
「わだしはぁ〜ハヤトどどとは主従のがんげいでず!ガレがぁだでのジョジョをうばぼうと、ばだじのじった事でばありばぜん!」大粒の涙がひまわりの頬をつたって落ちる。
内心去来するものをぐっと堪え、しきみはひまわりの手を取ると
「解ってくれてありがとう…ひまわり…」
そう言って立ち上がる…。
第五場(続き)
「しきびざんっ!ばってくだざい!」
ひまわりは鼻声ながらも、かなり大きな声で、自室に戻ろうとするしきみを呼び留めた、
驚いて振り向いたしきみだったが、そこには厳しい視線を向けながらティッシュペーパーで顔を覆ったひまわりが座っている!次の瞬間「ジュルジュルル〜〜〜〜〜」っと鼻をかむ余り愉快でない音が部屋を満たしたかと思うと間断なくひまわりが口を開いた…。
「しきみさん!誓ってください!絶対にハヤト殿を好きになったりしないですよね?
いくらタイプじゃないって解ってても、でも、でも、女の子が初めての相手を絶対に気にならないなんてこと、私には想像できません!」
「もし、もし、しきみさんがハヤト殿を好きになったりしちゃったら、私なんか、私なんか絶対にかなわない!敵うわけない!」
「だから、だからここで誓ってください!お願いしますっ しきみさん」
言い終わると、また号泣が始まった。
こんな迫力あるひまわりを見るのは初めてだった…、正直、しきみ自身も驚くほど感情的なひまわりの訴えだった。
しきみはワンワンと泣いているひまわりに正対し、
「ひまわり、ちゃんと見て…」そういうと右手を上げ、
「私、しきみは何が起ころうと絶対に万里小路ハヤトに恋愛感情を抱くことがないと
ここに誓います」とハッキリと言った…。
「ひまわり、これでいい?」
しゃくり上げながら一回こくりと頷くと
「ばりがどう」と一言だけ口にした…彼女には精一杯だった。
「でもね、ひまわり…あなた甘いわよ…」
ひまわりには彼女が何を言っているか解らなかった…。涙が止まらない…。
「私にだって…本当に心から抱かれたいって、望む男が居ないわけじゃないんだから…」
「これで貴方との友情もこれっきりになってしまうのだって…私には受け入れ難いことなのよ?それだけは解って…ひまわり」
そう言ってしきみは部屋を出て行った。
云われて、ハタと気付いたひまわりだったが、謝罪を受け入れてくれる人はもうそこには居なかった。
第二幕 終わり
乙!!
wktk
第三幕 オリエンテーション
第一場
新造なった志能備学園本校舎、校長室。既に時計は21時を回ってると云うのに、
件の話で校長に抗議に来たハヤトだったが全く受け入れてもらえない…。
「万里小路先生ぇ、先ほどから何度も申し上げている通り、ここはくノ一養成学校です。世俗的なモラルとか道徳とか社会規範とは乖離した独自の教育方針があるのですよ?」
「だぁ〜〜〜っもう、そうじゃなくてですねぇ、実践を無理強いするような、その人権を無視するような方法をとらなくとも、何かやりようがあるじゃないですか〜〜〜〜」
「具体的に仰ってください」
「あ〜…だからそのビデオを見せるとか、武蔵坊先生が実演して見せるとか実施以外でも伝える方法が…」
「ビデオなら既にハイビジョン映像のブルーレイディスクを配布済みです…。ですがあくまでも教材の一つに過ぎません…、こと男女の交わりに関しては実際に経験する以外に最良の道はないのです。万里小路先生?貴方も童貞でなければお解りではないですか?」
そういうと一口お茶を啜る。
「だぁぁぁぁぁっ、そ〜じゃなくてですねぇ〜」
頭を掻き毟りながら、同じフレーズを繰り返し、この取り付く島のない状態で悪あがきを繰り返すだけのハヤトだった。
こういうときの問題解決能力が全くないこの男の、一体どこに織田信長のDNAが存在するというのであろうか?
「ところで先生ぇ、本件は極秘中の極秘の筈…。特に男性教員に対しても特別の権限レベルを持った方しか知りえない情報…。一体どこで耳にしたというのです?事と次第によっては厳重処分を考慮せねばなりません…」
しまったぁ〜と気付いた時には遅かった、筆の子に聞いたとは死んでも云えない…
「あぁ、っとそれは〜(くそっどうしよう〜〜〜)女子更衣室の窓から話声が漏れていたのをですね〜その〜」
キラリとやつがしらのメガネが光る…
「万里小路先生ぇ?まさか更衣室を覗き見していたとでも云うのでしょうか?破廉恥な…」
「えぇ、まぁ(この際仕方ないか…トホホまたこれで減俸かぁ〜)」
でも、あんなカリキュラムの学校で覗きが破廉恥とか…云えるかよぉ〜。
「まぁいいでしょう。貴方も独り身で寂しい夜を過ごす身です。性欲の赴くまま多少のハメを外すのも構いませんが、見つからないようにしてくださいね…。一応貴方も教職にある身…生徒に示しがつきませんから」
「は〜い、以後気をつけます…」(よかった〜処分はなしだ〜)
「話は以上です。おやすみなさい万里小路先生ぇ」云い終わらぬうちに やつがしら は台座のカラクリ人形共々姿を消した。
「ちぇ〜、結局はイイ様に丸めこまれちゃったかぁぁぁぁ」
校長室を追い出されたハヤトは、自分の無力さに今さらながら落胆したのだった…。
「ひまわり…ごめんな…」
そう呟くハヤトだが、これから始まるとてつもない事には当然気付くわけもないのであった。
第二場
霞の里の駅前にあるラブホテル「霞隠館」5016号室…。
既に一戦交えた後の若い男女がベットに横たわってた。
「ふーっ、ご主人様ぁ、一体どうされたのですぅ?…今日のご主人様ったら濃厚で椿はもう腰が抜けそうです」
「そんな商売女のように情事の内容を反芻するでない!…」
鬱陶しそうに椿の手を振りほどくと、武智は傍らのコップにビールを注ぐとグイッと一気に飲み干した。ええい、俺が抱きたい娘はお前じゃないんだ!そう言いそうになるのをこらえて
「お前は俺と婚わうのが望みであったのだろう?その望みを叶えてやってるだけだ…」
毎度の台詞に答えもせず、椿は
「私も喉乾いたな〜、飲んじゃおうっと」そう云うとグラスを手に取った…。
「ダメだ」そう怒鳴ると彼女の手からグラスをもぎ取ると、彼女はもんどりうって床に倒れる…。
「お前はまだ未成年だろう!」
(って、未成年とsexしておきながらその言い草はないな…俺は鬼畜だ)武智はそう思うと自嘲気味に笑った。
「す、すみませんご主人様〜」
椿は尻餅をついた恰好で上身を起こすと、M字に開いた脚と秘部に武智の視線を感じた。
「ご主人様…」
そう言って艶めかしい目つきと半開きの唇から桃色の舌をチョロりと覗かせると左手で陰唇を開いて見せた…。
「まるで隠売女だ…」
武智は椿の股間に跪き、既に淫液があふれた秘腔に舌を這わせる…
『そして俺は外道だ…』心の中で続けると、今抱いてる少女は「ひまわり」だと心に言い聞かせるのだった…。
快感に眉間をこわばらせ小刻みに震える椿…。
彼女は自分だけが武蔵坊の宿題に呵責なく回答を出せると云う事を、よく理解していたのだった…
「ご主人様ぁぁぁぁぁ」やがて激しい唸りに少女の声はかき消される…。
第三場
ひまわり自室。テレビの映像をじっと見つめる…。ブルーレイディスク再生機能付きの薄型42インチだったが、こんなものを見るためにばっちゃが買ってくれたんじゃないっ…。
そう思いながらひまわりは画面で繰り広げられている男女の交わりを見つめてる。
しきみが帰った後、寝つけずにいる彼女は、ついに決心を固め、配布されたくノ一SEXテクニックのビデオ教材を見ることにしたのだ…。
最初は気持ち悪い…ただそう思うだけだったが、無修正の映像は思春期の少女には刺激的である一方、内に秘めた好奇心を掻き立てるには充分すぎる内容だった。
それにこの女優たちの快感に身を投げる表情に、演技と言うには余りにもリアルなものを感じざるに居られなかった。
物心ついた頃から ばっちゃ の女手一つで育てられたひまわりにとって、男性性器そのものが神秘だったし、ましてやそれが怒張し、勃起し、女性器と結合する映像を繰り返し見せつけられれば、嫌でも眼が釘付けになる…。
ひまわりは先ほどから、冒頭の「尺八攻め」のパートを繰り返し、繰り返し見ていた…。
『「男性のペニスは最もかつ直接的に相手の性感に寄与する器官です。貴女はこれをあらゆる手段を講じて刺激し、その技で男性を虜にしなくてはなりません。
さすれば、相手はその技の要求を繰り返すことで貴女の支配下に落ち、必要な情報を獲得したり、思い通りの行動に誘導することが可能となります。』
画面はよく日焼けした筋肉質の男がそそり立つペニスを女優の前に突き出している。
(ハヤト殿もこんなになってるのかなぁ)
ひまわりは画面を見つめながら男優の画像がハヤトの映像に重ねて見えてきた…。
無機質なナレーションが続く…。
『貴方はまず濃厚なキスで男性をその気にさせる必要があります。キスの方法に関しては
第3巻疑似愛編で詳しく述べられていますので参考にしてください。この場面ではディープキスという技法が用いられています』
画面の男女はキスと言うより舌の吸い合いといった感じだったが、何故か判らぬが、女優の舌の周囲を男優の舌がグルグルとまるで生き物のように巻きついている映像を見て
「気持ち良さそう…」そんな風に感じた…。
『キスで刺激された男性の脳は、勃起中枢に信号を送ります。ですが、手慣れた男性はその程度では勃起しません。
そこで貴女は左右どちらの手を使用しても構いませんが、まず着衣の上から股間を刺激しましょう』
第四場
放課後の筆の子との情事のこともあって少々疲労したハヤトだったが、校長との交渉でさらに疲弊していたので部屋に着くなり着替えもしないでベットに崩れ落ちていた。
「ひまわり〜…むにゃむにゃ」
一体この男の彼女への想いは、どこまで真摯なものか測りかねる…。
いつしか夜も明けようとしている。
朝が来ればまたいつもと変わらぬ学園の日常が始まる…。
武蔵坊への「実施プラン」提出期限までは3日…。
「実施レポート」提出期限までは13日を残すのであった…。
第五場
志能備学園の一日が始まる。しきみはいつものように早めに来て教室の隅々まで点検を行い、異常がないことを確認する。
こうして授業に備えるのが彼女の日課となっていた。この辺の抜かりなさは級長としての義務感からではなく、彼女が真のくノ一であることの証しだ。
間もなくクラスメイト達が登校してくる…。
ドヤガヤと現れる級友たちに中にひまわりの姿をみとめると、しきみは彼女の席に歩み寄った。
「あ、しきみさん…おはようございます…」
蚊の鳴くような声でひまわり…。いつもの明朗さは消え失せていた。しかも目を合わせようとしない…。
「おはよう…。ひまわり、大丈夫?かなりやつれて見えるけど?」
「あ、そうですかぁ…でもぉ、大丈夫。昨夜は眠れなくて…で、ビデオを見ていたら夜が明けてしまいましたぁ」精一杯の微笑みを返すひまわり…。
ビデオ?しきみは訝った…いつものビデオ映像のことであれば、ひまわりなら「電蔵さんのDVD」という筈だった…まさか…。
「そう、ならいいけど…昨日の今日だから…余り無理はしないで」穏やかにそう言うと しきみは自席に戻った。
”パン、パン、パン!”と手をたたく音とともに一時限目の教師が現れる…。
「さーみなさん、お喋りはその辺にして席につきなさ〜い」
今日の一時限目は武蔵坊の「一般教養B」だった、聞こえはいいが単なる「女向け色情事」の手ほどきに過ぎない…。
「起〜立、礼っ!、着席!」しきみがハキハキと礼式を進める。
「出欠を確認します…」武蔵坊はそう言うといつものように『いろは順』に生徒を呼び始め出席者を確認すると授業が開始される。
例によって つきよ姫 は居なかったがいつものことだ、誰も気にしない。
「みなさん、今日からはいよいよ奸計学実践のためのオリエンテーションプログラムが始まりますぅ〜。
今回は、やつがしら校長先生自らお越しいただいてお話を伺います。いいですか?みなさん心して拝聴するのですよ…」
噂には聞いていたが、これから やつがしら の「集団睡眠術」が開始される…しきみは姿勢を正した。
かってのナチスドイツのヒトラーの演説を例とするならば、人は大きな嘘ほど騙されやすい…。
これから やつがしら の話すことの真偽はともかく、我ら生徒が術中に落ちるのは火を見るよりも明らかだ、結果は決まっていた。
どうせ避けられぬ道、催眠でも何でも構わないから心の中の蟠りを取り除いてくれるのなら大歓迎だわ…しきみはそう思うのだった。
第三幕 終わり。
第四幕 それぞれの決意
第一場
あの一日が過ぎてから2日が経過した。昼休み、ひまわりはここ2日間で仕上げた「実施プラン」を手に職員室に向かっている。いよいよ今日が提出期限であった。
職員室。といっても世間の中学、高校で見られる教職員が一同に詰めた大部屋ではなく、個々にパーティションで区切られプライバシーが保護されている。また、それぞれが大会議室を囲むような配置になっており、スイッチ一つでそちらへ移動できる構造になっていた。
”トントン”ドアをノックする音に武蔵坊が答える。
「どうぞ」
「失礼します」
「日向さん、待っていたわ…」しぐさで中に入るように促す。
「お待たせしてすみません…、あの、こ、これをお持ちしました…」
1枚のコンパクトフラッシュメモリーの入ったケースを差し出す。武蔵坊はそれを受け取ると自動暗号処理装置つきであるメモリカードリーダのスロットにそれを差し込んだ。
内容が内容だけに校内LANを使っての、メールに添付して提出できるようなものではなかった、提出は手渡しすることになっている。
しばしPCのモニターに視線を走らせると、武蔵坊はひまわりに振り向き、派手なキャンディカラーで彩られた艶めかしい唇を開いた、
「どうやら決心は固まったようね…日向さん。貴方また一歩成長したのよ…先生うれしいわ」
心よりの賛辞と微笑みを示す。
「あ、ありがとうございます…。」
ただ、宿題を提出しただけなのに〜と、武蔵坊の対応にいささか戸惑うひまわり。
「さてと、問題はこれからよ。ちゃんと実施できる? もし、何か分からないことがあれば、先生、力になってあげるから、なんでも聞きに来て…いい?」
武蔵坊は両手でひまわりの手をつかむと、それを優しく包み込むようにして諭した。
「はい、わかりました…」
ひまわりは同性であるにも関わらず、彼女の優しい応対に少し胸を高鳴らせてしまった、初めて感じた「官能」であった。
(お姉さま〜ってこんな感じなのかなぁ)職員室を後にし廊下を歩きながらそんなことを考えるひまわりだった。
第二場
ここはロンドン、MI-6の本部がある王立国防統合庁舎。その最高責任者の執務室でインターカムが鳴る。
「なに?」
「ミセスM、プリンセス・ロドネイからご連絡が入っております。」秘書が伝える。
「あぁ〜、いけない、すっかり忘れていたワ…。こちらで受けます繋いでちょうだい」
「かしこまりました」
インターカムが切れると、Mは抽斗を開け(紫色の)『専用線』の受話器を取る。
「私です…、ここへは連絡してはだめだと言ってあるでしょう・・・・」
「・・・・あぁそれは済まなかったと思っています。・・・・こちらもお国の用事で多忙なのです」
「・#$%&()〜※〜※〜skjfばlk$bf*jbdk!jbfck」
相手側はかなり大声でまくしたてている。
「わかりました…すぐに手配するから…、追って連絡を入れますからね、いいですね?もう切りますよ」
受話器を戻し、通話を半ば一方的に切ると「ふ〜っ」と一息大きなため息をはく…。
コード名"プリンセス・ロドネイ"…彼女が本職に就任してからというもの、この決して大きくはないが小さくもないお荷物には、度々手を焼かされていた。
だが、大抵の事は議会や国防委員会の稟議が必要な大事には至らないで済んでいる。それに、それ位のことをしてやっても当然の義理が大英帝国にはあった。
しばし正面に飾ってあるアドミラル・ネルソンの肖像画を睨みながらMは思惑を巡らせると、インターカムのボタンを押した…。
「ミス・ペニー…大至急"Double-OH-Five"の消息を教えて頂戴…」
第三場
志能備学園男子校。放課後。校庭にある大きなクヌギの木陰で薬学の本に眼を通してるナナフシがいる。
「そこにいるのはアザミだろ?…隠れてないで出てきたらどうだ?」
「あっは〜、ばれた〜?」
幹の向こうからアザミが現れる。男子校生スタイルだった。と言っても余り区別はつかないが…。
「何か用か?」
「用がなきゃ声もかけられないのかねぇ〜…、冷たい御学友だね〜」
「今、新薬の研究で忙しいんだよ…、お前とバカやってる余裕はないんだ…」
「あ、そっ…。折角しきみに関する最新情報を手に入れたってのに…聞く余裕はないってか?、じゃぁ〜かえろっかなぁ〜」
ページから顔を上げるナナフシ、その瞳孔はカッっと開かれていた。
「どどどどんな情報かによる…」
聞きたいんだね?そう表情で確認するとアザミが続けた
「私の情報によればぁ〜近々 しきみはある男性に処女を捧げるらしいよ〜」
「な、なんだって〜っ」
余りの大声に、周囲の者たちが一斉に視線を向ける。
「あはっ〜ビックリしたぁ?ね、すごいでしょ〜、もちろんその『お相手』はぁナナフシクン、君じゃないよね〜」
「バカ言うな、だったらぁ、お、驚くもんか…」
伏し目がちに項垂れるナナフシ…。
「そ、その情報は間違いないんだろうな? お前の持ってくるネタは何かと問題が多いと聞いているが…」
「ところがどっこい、間違いようがなんだなぁ〜これが…何故だかわかる?へへ〜」
第三場(続き)
「ええいっ、じれったいな早く申せ!」
「それは〜武蔵坊の授業でぇ〜全員が課せられた課題だからで〜す」
「か、課題って、課題でエッチさせられるのかよ女子高はぁ〜〜〜?」
「そだよ!、くノ一養成学校だもん…。色仕掛けができないくノ一なんて
殆ど役に立たないじゃんかさ?」
愛用のライフルを背中から肩に掛け直すと、アザミはナナフシの隣に座り直す。
「まぁ、既に内緒で済ましちゃってる娘もいるからねぇ、どうということもない生徒が実際1/3は居るんだけどさ…。場合によっちゃ私もその一人だけど…」
男子校は強制されなくても、かなりの生徒が初体験を済ませている。もとよりカリキュラムが用意されているわけもない。おまけに男であれば実地レポートに『どこを、どうされれば、どうなるか?』などの内容は隙の無いものを書き連ねることができる。
「しきみを始め、ヒメジ、ゆすらは純粋培養の試験官ベビー…だから、こういう機会が必要なのかもね」
「そうか…、そう言えばそうだな。そんなこと、すっかり頭から消え失せていたよ」
「あんた、しきみのこと好きなんだろ?」
「あ、(一瞬躊躇うように視線を泳がせる)そうだよ、薬学に通じた友達としてな…」
「ゆ うじん…ねぇ」
アザミは脚元の芝生を撫でながら、ナナフシの精一杯の強がりに、敢えて逆らうことを堪えた。
「なぁアザミ…、この世には白黒とハッキリ分けられるようなことが一体どれだけあると思う?」
突然何を言い出すんだこいつはと思った。
「さ、さぁ〜」
「しきみは『物』じゃない…ちゃんと考えて行動する女だ…俺はそれだけは確信している。
だから、しきみが選んだことならば、それが正しいと、俺はそう思う…それに…」
ナナフシは本を閉じるとスッと立ち上がり、アザミを見て続ける…
「処女性なんて、そんなもの何のアテにもならないさ…」
第四場
志能備学園女子校に戻る。ソフトボール部の練習紅白試合、レギュラーチーム先攻でゲームが開始された。
初回表、早速1死走者1,3塁のチャンス到来。
『四番、サード 日向』
ネクストバッターズサークルから打席に向かうひまわり…
「ひまわりー!かっ飛ばせ〜〜〜〜!頼むぞ〜!」ベンチからアザミの声。
「こら、アザミ!一体どこへ行ってたんだ?」
バックネットで観戦する武智が怒鳴りつける。
「てへ〜すいません〜すっかり遅れちゃって…俺?いつもの打順?」
傍らのスコアラーに聞く。
「アザミさん、6番キャッチャーです」
試合前の練習中にこっそり抜け出したのがバレバレだったが、実戦で結果を残すスラッガーかつ鉄壁の捕手を務めるアザミにはみんな甘い…。
「ちぇ〜また〜DHだと助かるのになぁ〜、だいたい左利きのキャッチャ〜ってどうなのよ?」
愚痴りながら自分のヘルメットとバットを探す。
「アンタ程 盗塁阻止率の高い捕手が他に居ればね」他のチームメイトが返す。
「言ってくれるね〜やる気がでるよ〜」ウインクして応えるアザミ…。
その時だ、
”カァァァァァ〜ン”と乾いた快音がとどろくと、打球はレフトの金網を遥かに超えてグラウンドの外に消えた…。ホームランである。
「いぁやっっっっっっったぁ〜〜〜〜〜〜!」
「ナイバッチ〜〜〜〜!」
ベンチの全員が叫んだ。
ひまわりも一塁を回ったところで3塁側ベンチへ向け、軽いガッツポーズと笑顔を見せた。
「どうやら問題は解決したみたいだな…」
相変わらずエロ目線でひまわりの短パン姿を追いながら武智が呟いた…。
傍らで観戦している やつがしらが言う…。
「どうでしょうか、まだ予断は許されませんよ…」
「はい?」武智は訝しげに問う。あの号泣の件を校長は知らない筈…。
「なんでもありません。こちらのことです」
そう言ってやつがしらは淹れ立ての玉露を啜った。
第五場
放課後の雑用の片付けも終わり、そろそろ帰宅しようと荷物を整えるハヤト。そこへ突然武蔵坊が訪ねてきた。
「ハヤトくん、まだ残っていたのね?」
「わぁぁぁっ!ビックリしたぁぁ!」
実のところ、"例の件"でハヤトなりに隠密活動中だったところに彼女が現れたものだから本当に驚いている。
「何してたの?エロ画像検索?」
「ちちち違う違う! そ、それより何の用だぁ?」
「忘れたのぉ?今日一緒にお食事する約束よ〜」
「あ、(すっかり忘れていた)そ、そ、そう、だから今迎えに行こうと思ってたところでぇ〜」
それを聞いた武蔵坊、ハヤトの腰に手をまわし、軽いハグの姿勢で大きな胸をハヤトの背中に押しつけながら耳元で囁く
「嘘、私の事なんか、頭の隅にもない癖してぇ〜」
「む武蔵坊先生〜ちょっと、ここはまずいでしょ〜〜〜〜〜」
言いながら背中の感触を喜んでいるハヤト…
「二人だけのときは『ミサ』でしょ?」
「あぁそうでしたっけ? と、とにかく離れて…」
武蔵坊の腕の中でくるりと反転すると両腕で武蔵坊を押しのけた…。すごい香水の匂いだおそらくはシャネルかブルガリか何かだろう…。
「私〜何だかとっても『したい』のよね〜アレが…」
生徒の『実施プラン』を連日連夜読み続けで、スケベな妄想が頭の中で渦を巻く毎日が続いている…なんてことは口が裂けても言えなかった。
考えたら4〜50人は居る生徒の「秘事」をデーターとして扱わなくてはならない立場も、それはそれで大変な苦労がある。
「あ、あ、アレって、まさか…」
「そうよぉ〜コレを使ってすることぉ〜」
そう言うとハヤトのズボンの前を触り、掌を男根部分にあてがい上下させてきた。
もう、武蔵坊の眼はウルウルで、まるで準備万端たる"秘貝"を代弁しているかのようだ。
ハヤトもその僅かしかない理性が崩壊しかけてきた。と、その時だ「名案」が浮かんだ、
いや、成否が判らぬ以上そう結論付けるのは気が早いのだが、この状況下では試す価値ありだ…。そう思いながら武蔵坊の唇を自らのそれで塞ぐのだった…。
第六場
霞の里の森の奥。カクノシンの洞窟。
「ゆすらもうアホロートル並みにわけわかんな〜い」
「そんなこと言ったって〜」米澤が答える。
「第一、いくらゆすらちゃんが操を通したいって思っても〜僕は森の妖精みたいなもんだから〜ゆすらちゃんと交わることなんてできないんだよ〜」
「あ〜ん、どうしよー」
しばらく沈黙していたが、不本意ながらといった表情で米澤が口を開く
「こうなったら、その『プラン』どおりに、人間の男性と…」
「止めて!」キッと米澤を睨みつけるゆすら…。
「米澤君はゆすらが他の男に抱かれちゃっても、なんとも思わないわけぇ〜?」
「しかし、僕にとっては最初から必要のないものを『取られる』とかって…概念がありませんから〜僕が愛するのはゆすらちゃんの存在そのものなんです…」
「納得できない…」
「な ら ば 何 も せ ん で も 良 い で は な い か」
「だぁぁぁぁ〜」驚いて頭の皿がずれる米澤。
「つきよ姫〜、酷いわ盗み聞き〜」
「酷 い の は そ な た 達 の 痴 話 喧 嘩 じ ゃ、
森 中 の 妖 精 た ち の 耳 に 届 い て お る」
二人の恥らいが表情に現れる。
「そ の 問 題 、
わ た し が 手 を 貸 し て や っ て も よ い の だ が?」
二人は顔を見合わせると、再びつきよ姫の方を見やる…沈黙の中、地下水の滴り落ちる音が響いた。
第七場
夕刻、紅白戦の振り返りミーティングを終えたあと、各々が下校の途に就く。シャワーと着替えを済ませたひまわりが、ロッカールームのベンチに腰をかけキャッチャーミットを磨いているアザミを見て止めた。
「アザミちゃん、まだ着替えてなかったんですね…お先にすみません」
「あ、いいよ〜アタシこれ済んでから帰っから〜」
何となくその姿に見とれてしまったひまわり、何となく彼女と話していたい…そんな風に考える。なんでだろ?
「アザミちゃん、ミットいつも大切にケアしてますよね?なんかカッコいいです」
それを聞いて眉間に皺をたててアザミ
「何よそれ〜、なんか気持ち悪いぞ、あ〜背筋がゾクッと来た」
顔は笑ってる。
「カッコいいってのは今日のアンタのホームランみたいなのを言うんだよ〜凄かったな〜」
「あはぁ、でも練習試合ですから〜」
「オイオイ、アタシも3打席連続二塁打の大活躍だったんですけど〜?それにケチつける気ぃ?」
「あ、いえいえ、そんなつもりは…」
「ひまわり、最近変わったな」
アザミはオイルをウェスに染み込ませながらひまわりを見て言った。
「え?」
「なんか大人になった」
「や、やめてくださいよ〜(頬が紅らむ)アザミちゃんこそ気持ち悪い〜〜〜」
「あ、そうだ夕方から電蔵さんのスペシャル再放送があったんだ、私、先に帰りますね」
「はいよ、いい週末をね〜」
笑いながらアザミは見送った。
一通り作業を終え、部屋の蛍光灯にミットかざしながら塗り残しがないか確認しながら…
「あいつ、可愛いよなぁ〜〜〜」
第四幕 終わり
第五幕 Execute
第一場
既に人っ子一人居ない筈の志能備学園女子校々舎。だが下げれたブラインドの微かな隙間から室内の明かりが漏れている部屋が、一つだけあることが判る。
さすがに音波盗聴装置さえも効かぬように工夫された職員室の一つだ、外部からでは中で繰り広げられていることの断片すら伺えることができない。
そこで男女の秘め事が行われていようと、もはや誰にもわからない…。
「あぁぁぁん、いっ、いっ!いいわぁ〜ハヤトく〜ん」
そのことを知ってか知らぬか、ハヤトの舌技に応え、武蔵坊ミサは大きな声で遠慮なく叫ぶ。
机の上に後ろ手で上体を支えるように着座し、大きく開脚して局部をさらけ出し、
ハヤトのクンニリングスに悶絶しながら、彼の頭を片方の手で掻き毟って快感に身を委ねている…。
息も絶え絶えに…。
「も、駄目、も、駄目、も〜〜〜〜〜駄ぁぁぁ目ぇぇぇぇっ〜」
ハヤトはレロレロと鋭く尖らせた舌先を、時に強く押しつけながら、
時に素早く円を描くようにして、包皮と陰核の境目をなぞる様に刺激を繰り返す。
「い、いっちゃう〜」と叫んだその時だ、ハヤトはぴたりと動作をやめた。
「え〜〜〜〜〜〜〜っ何でぇ〜〜〜〜?」
腰をくねらせながら抗議する武蔵坊ミサ…。
「お願いだ!続けて欲しいならっひまわりの提出した資料を見せてくれ、ミサちゃん!」
「あ〜〜〜〜んそれだけは駄目ぇ〜〜〜」
ミサは逝きかけた身体の状態を取り戻そうと、自分の指でコトを続けた…。
「うううんっ!」とうなると股を閉じるように太ももを重ねて肩を2,3回大きく振動させ…絶頂に達した。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
心拍に呼応するようなテンポで激しく呼吸を繰り返すと
「駄目、絶対に見せられない…あ、あれは生徒たちの『操』の『死刑宣告書』だもの…はぁ、はぁ、」
そう言って机の上にガックリと倒れこんだ…。
第一場(続き)
「何だって?…」
「はぁ、はぁ、ハヤトくんに、はぁ、はぁ、その意味が解る?、解る訳ないわよね、…はぁ…」
「ど、どんな事情があっても…はぁ、はぁ、同じ"くノ一"の私からは…絶対に見せられないわ…」
「くそぉ〜、もういい!わかったよ!」
作戦は失敗した。
そう悟るとハヤトはブリーフを下ろし、赤黒く猛り狂った己の怒張を、目の前の濡れそぼった紫色の肉の合わせ目に向け、
先端を『ヌルリ』と潜り込ませると、
一気に刺し貫いた。
次の瞬間、溢れた肉汁が、彼女とハヤトの大腿の触れあう場所にまで滴り出るのを感じた。
「あぁ、いゃ〜ん…」
背骨を伝わって感電するような快感が走り、ミサはハヤトの動きに合わせて細やかに腰を揺する。ピチャピチャと淫らな音が無機質に響き渡る。
ハヤトは片方の脚だけを抱きかかえるようにして腰をグラインドさせミサの自由を奪う。
その脚の太腿から脹脛が一直線に伸び、ハヤトの顔の脇でラメ入りパンプスを履いたままの足がクルクル踊っていた。
ハヤトはガチガチに固まった己の分身が、ミサの女陰の秘肉を巻き込みながら
『ゴッポゴッポ』音を上げて抜き差しされる「絵」を眺めつつも意識は別にあった…。
やがて動きに速度を増したハヤトの腰が、今一度捻るようにしてひと衝きを加えた時、
誇らしげに張り出している彼の雁首が、激しくミサの膣壁を抉った。
その瞬間彼女は悲鳴に近いような大声で果てた事を告げたのだった…。
ハヤトは熱く膨れ上がった肉茎を『バフっ』という音と共にミサの胎内から抜き去ると、
間断なく、机から半分ダラリと垂れ落ちそうになっていた彼女の頭をつかみ、
その赤く潤んだ唇を己の亀頭でこじ開けた。
彼女が肉茎に手を添え、ミサの舌腹が先端の柔らかい部分に吸いつくのを感じると
『ブルッ』と腰を震わせた。
「ンぐっ、ンぐっ、ンぐっ、ンぐっ」
ミサは喉を鳴らしながらハヤトの脈動に呼応する。
言い知れぬ快感に酔いながらハヤトは思う。
『本当、どうしよう…』
第二場
明けて土曜日の朝。本日は休校日である。久しぶりの土日連休とあって、各自思い思いの週末を過ごすであろうことは想像に難くない…幾人かの問題を抱えた者達を除いて。
しきみの部屋。
彼女にとって、これから起ころうとしていることは、云わば「作戦」の遂行にすぎない。したがっていつものように冷静沈着に事を運べばいい…ただそれだけのことの筈なのに、何故かうまくいかない…。
既に左目のアイライン…3度もしくじっっている。
「嫌だわ、私、緊張している…」(柄にもないじゃない!しっかりして しきみ!)
武蔵坊の授業では誰よりも早く丁寧で美しいメーキャップをして見せた…その力を実戦で発揮できないなんて…意味ないじゃないの!
気合いを入れ直し、何とかルージュを仕上げるところまでたどり着く…。
しまった。メークに20分も使ってしまった。
クローゼットから普段滅多に使わないブラックのスーツを取り出すと壁にかけ、一呼吸置くと下着を収納してある抽斗を開けた…。
かなり派手目のフリルのついたショーツと揃いのブラを手に取ると、つい口を開いてしまった…。
「こんな日に、着けるつもりで買ったわけじゃないのにね…」
何故かフッっと笑いがこぼれるのだった。
第三場
ここは霞の里を何百kmと離れた土地、アジア最大のカジノ街を有する中華人民共和国の経済特区マカオ。
メインストリート沿いにある大きなホテルのロビー・ラウンジ。すぐそばではカジノの入り口にスロットマシーンが居並ぶ…。朝の8時だというのに既に混雑は始まっていた。
ボリオーニのスーツをナチュラルに着こなしているその男は、香港版ニューズウィークを眺めながら、左腕にはめたオメガ・シーマスターの針の位置を気にしている。
もう予定の時刻は1時間も過ぎている…。『客』の飛行機は定刻通り到着…、遅れていない筈だった。
傍をギャルソンが通りかかると、男はドライマティーニのお代わりを注文した。
カジノのいいところは朝っぱらからスピリッツをたしなもうと、とやかく言われることがない点だ。
だが、このペースじゃぁ昼飯の前にほろ酔い加減になっちまう…。
すると『フォン、フォン、フォォォォォォン』と、聞き覚えのあるイタリア製3.6リッターV8エンジンの甲高い音が近づいてきた。彼は職業柄、悪い予感を察した…。
音の方に眼をやると、ドギツイ紫色の360モデナが、その後輪をけたたましくホイルスピンさせながらホテルの車寄せに滑り込んできた。
駐車係がドアを開けると、これまたパステルカラーの薄いパープル地に、濃い紫のチェックが入ったボディコンシャスのマイクロワンピースを身につけ、今時どこで買えるのかといったサイズの鼈甲フレームのサングラスをかけた浅黒い肌の大女が降りてきた。
「なんて趣味の悪い…」
云うまでもない、この評価は運転の仕方から始まり彼女の全てを示すものだ。
男は悪態をついた後、残りのマティーニを一気に飲み干し、米ドル紙幣を数枚テーブルに置き立ち上がった。
「だぁ〜かぁ〜らぁ〜 わらわはちゃんとフェラーリが運転できない駐車係には、車を預けられないと、そう言ってるんでありんす〜〜〜〜」
「ですがマァム…こちらに停められたままでは、他のお客様に御迷惑になりますんでぇ」
何やらホテルの前で騒ぎを起こさんとしている大女が件の「ゲスト」である事に間違いないことを確認すると、男はやれやれといった表情でポーターと女の間に割って入った。
「失礼…」甘いマスクを彼女に向けるとポーターに振り向いて男は云った。
「あ、君…悪いんだけど、ミスター周を呼んでくれ、彼ならセミオートマのフェラーリを扱えるから…」そういって1$紙幣をさりげなく渡す…。
「かしこまりました、ミスター…」
「マックスウェル…、ジェームス・マックスウェルだ…」
「ご親切にどうも、マックスウェル様」
ポーターは深々と頭を下げ早足で立ち去った。
「ふ〜っ」溜息もつかの間、紫色の大女に近寄る…
「今ので、自己紹介は省略させてもらっても…いいかな?プリンセス・ロドネイ…」
突然現れてこともなげにトラブルを片づけてくれた紳士に、半ば茫然としていたプリンセス・ロドネイことヒメジ…。
「あ、じゃぁ、貴方がわらわのお相手でありんすか〜〜〜?ヒャ〜〜〜〜滅茶カッコいいでありんすぅぅぅぅ〜」眼がハートマークになっている。
おまけに声が大きい。
何事が始まったのかと人垣が出来かかってきたホテルのメインゲート…、ジェームスは周りに笑顔を振りまきながら、ヒメジを抱えて強引にホテルの回天ドアに彼女を引っ張り込む…。
(いったい何なんだこの娘は〜〜〜〜)
「きゃ〜いきなりホテルでありんすか〜〜〜〜わらわは観光とかもしたいで あ り ん す 〜〜〜〜」
(頼むから静かにしてくれよぉ)
ジェームスのハンサムな顔が、いささか引きつり気味に曇っていくのだった。
第四場
霞の里。ダウンタウンに相当する駅前通りにある喫茶店。
目立たない奥のテーブルで一人待つしきみ…。
注文したコーヒーは、既にすっかり冷めきっていた。
「遅い…」
待ち人の時間観念の無さには既に慣れているつもりだったが、いつもとは状況が違うだけに余計に苛立ちが募る…。
"チリーン、チリーン"
「いらっしゃいませぇ〜」
どうせまた違う人物だろう…、もう5回は裏切られている…、期待せずに入口の方に視線を向けると、そこには待ち望んでいた見慣れた男の姿があった。
万里小路ハヤト である…。
「いやぁぁぁぁ、スマン、スマンすっかり寝坊しちまって〜まぁ〜慌てて走ってきちゃったから…あ、この水いいかな?」
しきみが返事をする暇もなく、ハヤトはオヒヤの水をゴクリゴクリと一気に飲み干した。
(こんなデリカシーの無い奴…滅多にいない…)悪態をつきかけたがぐっと堪えた。
「ひゃーホント、こういうとき自転車でもあれば便利なんだけどなぁ〜〜〜ゴメンゴメン」言い訳ばかりでしきみに話をする切っ掛けすら与えないハヤト。
「いらっしゃいませ」いい具合にウエイトレスが現れた…。が…
「あ、ひょっとしてモーニングサービスってまだある?ある?あっそっ!じゃそれ、
あ〜慌てて出てきちゃったもんだから、何も食ってなくてさ、しきみぃ いいよな?」
「か、構いませんっ」(殺意が湧いてきた…)
しばらくハヤトが落ち着くのを待ってから話を切り出そう…そう思いながら
ハヤトのコーヒーとモーニングセットが来るまでの時間、彼の話に聞き入るふりをして過ごすことにした。
一方のハヤトは、昨夜は校舎での続きを、深夜まで武蔵坊のアパートでハメ狂いながら過ごしていたために寝坊したとも云えない事情があるにはあったので、必死に弁解をでっち上げて話している…そんな必然性は全く無いにも拘らず…。
第四場(続き)
「ところで〜俺に用事って…何だ?」
コーヒーをずずっと啜りながらハヤトが聞く…。
「せ、先生を男と見込んで頼みたいことがあります…」
「ふん、ふん(トーストにサラダのトマトとレタスを載せている)」
「実は、武蔵坊先生の授業で必要な『関連知識』を得たいので、一回ラブホテルというものを見学したいのです」
「な、なぁにぃぃぃ?」
(ったく、武蔵坊の奴ってば一体生徒に何を教えてるんだぁぁぁ)ハヤトは天井を仰ぐ…。
「早い話、一人では無理…だから万里小路先生にカップルを装ってご一緒して頂こうかと…」
「・・・・」もぐもぐと口を動かしながらハヤトは頷く…。
「あ、あれは?」しきみは窓の外を見やりながら云った…
「ん?何だ」ハヤトが振り返った隙に、しきみは素早く2つの丸薬をハヤトのコーヒーに投げ入れた。
「すみません、学園の方向に狼煙が見えたような気がして…」
「んん、そうか〜気のせいだろう?今日は他の先生たちも出払ってるはずだし…」
そんなことはお前に云われなくても分かっているわよ…そう思いながらハヤトがコーヒーを飲む口元を確認するしきみ
「それはそうと…ご一緒して頂けるのでしょうか?」
ハヤトは暫く考え込むと、ある想いが浮かんだ…これはひょっとすると『件の実施プラン』と何か関係あるかも知れないな と…
(んん、そういえばぁしきみの奴…薄化粧なんかしちゃって、しかも今日はコンタクトか?眼鏡もしていない…それにパリッとスーツなんか着込んじゃって…とても女子高生には見えない…まるで女子アナって感じだ…)今頃気づくアンポンタンぶりだった。
「OK!いいよ。ただし、ホテル代はそっち持ちだぞ〜」
「当然です…私からお願いするわけですから…」
(ったく、お金のことだけはしっかりしてるんだから…)
「では…それを飲んだら行きましょうか…」
ハヤトのカップにはまだ3分目くらいコーヒーが残っていた…。
第五場
ここは霞の森。つきよ姫の東屋…。
相も変わらず御膳の前で味噌汁を啜っているつきよ姫が居る。
「 来 た か ・・・」
そう云う間もなく、ゆすらが二羽の大鷹の脚にぶら下がりながら飛来すると屋根にさしかかったところで手を離した。
「大鷹さんたち〜サンキュ〜〜〜」
ガサガサっと藁葺きをかき分け、ゆすらが天井から顔を突き出す…。
「お待たせ〜〜〜〜」
「こ ら、ワ ザ ワ ザ 人 の 家 を 破 壊 す る よ う な 手 段 で 訪 ね る で な い …」
「ゴメン〜、約束の時間に遅れそうだったんで〜つい…ハイ!持ってきたよ、これ」
ゆすらは毛皮のブーツからSDカードの入った小さなケースを取り出す…。
「そ こ へ 置 け」
つきよ姫は御膳の向こうにあるヒノキの盆を指差した。
云われるままに、ゆすらはそれを置いた…。
「で?どうするわけ?」
「 見 届 け あ れ 」
そう云うと、人差し指を立て左手を正面に、右手を天にかざすと念仏のようなものを唱え始めた…
「 オン ア ウン ラ ケン ソウ カ、 オン ア ウン ラ ケン ソウ カ、」
「 オン ア ビラ ウン ケン、 オン ア ビラ ウン ケン、」
「 ナウ マク サ マン ダァ バァ ザラ ダン カン、
ナウ マク サ マン ダァ バァ ザラ ダン カン、
ナウ マク サ マン ダァ バァ ザラ ダン カ〜〜〜〜〜〜〜ンっ 」
「 やぁぁぁぁっぁ〜!」
次の瞬間稲光が走ると、青白い閃光が藁ぶき屋根を貫いてSDカード目がけて突き刺さる。
「ひゃー〜〜〜なにこれ〜〜〜ホワイトタイガー並みにイリュージョ〜〜〜〜ン」
「 終 わ っ た 」
「 そ れ を 武 蔵 坊 の と こ ろ に 持 っ て い け 」
「ホント〜ホントに大丈夫なの?このメモリー?」
「 信 じ ろ 」
つきよ姫はそう言うと、また一口味噌汁を啜るのであった。
第六場
ここは志能備学園の旧校舎管理人室…。新校舎再建なる以前、臨時校舎として半年ほど再び使用されてはいたが、新校舎も半分が竣工なった今はまた、再び元の資料館としてのみ存在する建物に落ち着いている。
武智はここの責任者として夜半及び休校日にはここで暮らしていたのであった…。
後付けの設備だけあって、管理人室だけは一応近代的設備が充実しているので、教職員宿舎よりは便利が良かった。
志能備学園の教諭陣の中にあって、特にストイックさにおいては群を抜く武智だった。
毎朝のジョギングは日課になっていたし、休校日の土曜も例外ではなく、もちろん忍術の修練にも余念がない。
一通りのメニューをこなし終えたところで、シャワーで汗を流そうと部屋に戻る途上、旧校舎の校門前にひまわりが膝を抱えて座っていたのに気付く…。
「あ、武智先生っ…」ひまわりは立ち上がると
「おはようございます」
スウェット姿の武智に丁寧に挨拶をした。
立ち上がる際、またしてもスカートの奥が武智の眼を貫く…。この娘ときたら、そのような所作には全く無防備がすぎる…。
「うむ、おはよう…。 こんな所で何をしている?」
「先生をお待ちしていました…本当はジョギングに出かけられる前に来るつもりだったんですけどぉ、…寝坊しちゃって…」
ニコリと微笑むとそう言って舌を出した。
(か、可愛い…)
「俺に何か用か?」
「はい、実は…先生にお願いしたいことがあって参りました…」
「ふむ…何だ? 申してみよ」
「ここでは〜ちょっと〜」
何だかモジモジしている。
「では、中の応接室に通す…シャワーが済むまで待てるなら、そこで聞こう、それでよいか?」
「は、はい。待ちます!何時間でも!」
まるで宝くじでも当たったかのような破顔ぶりだ…。
こういう喜怒哀楽が屈託なく出せるところがこの娘の最大の魅力だった…。
だが、それはくノ一を目指す者には聊か弊害であることも事実…。
「では、付いて来るがいい…」
そう言うと武智は校門脇にある通用口のカギを開けにかかった。
第五幕 終わり
第六幕 初体験
第一場
ここは霞の里では最もリッチなラブホテル"ラ・ミラージュ"(と言ってもこの町には武智と椿が常用する「霞隠館」と2軒しかないが)のフロント。
さすがに土曜の朝とあって設備のいい部屋でさえも全て空いていた。
「さ、どれにする?好きなのを選ぶんだ…」
ハヤトが部屋の写真と値段が示された格子状のパネルの前でしきみに尋ねる。しきみは最も煌びやかそうで値段の高い部屋のパネルを指差した。『3H:\7800』と書かれている。
「こ、ここがいいわ…」
「ふん、じゃぁ、まぁ〜参りますか…」
そう言うとハヤトはその「715」と書かれているパネルのボタンを押す。するとパネルの下に設けられたスロットからカードキーが『スっ』と出てきた。
「これで、チェックイン完了〜な、簡単だろ?」
「そうね…」
実は武蔵坊の授業で知っていた初歩的な知識だが、ハヤトが彼なりに親切を示しているのに、わざわざ水をさすようなしきみではなかった。二人はエレベータに向かう。
最上階…、715室のドアを慣れた手つきで開けると、ハヤトは さ、どうぞ とばかりにしきみに促した。
しきみがハヤトのすぐ傍を横切り入室する時、ほのかなファンデーションの香りが彼の嗅覚に刺激を与えた。
おそらくは肩紐で吊るだけのタンクトップ型なんであろうブラウスかキャミソールの胸元からは、透き通った肌の彼女の胸がチラリと覗いている。
しきみはサラシで胸の膨らみを隠すことが多かったが、今日はいつもと違って見えた。
何だろう?こんな気持ちは彼女に感じたこと一度もなかったのに…なんか変だ…。
みるみる下腹部が熱をおびてきた…。
『なんかヤバそう…』
ハヤトにはそれが、しきみの飲ませた2つの丸薬のうちの一つ『筒立たせ』の薬効のせいであるとは思いもつかなかった。
成分は殆どバイアグラと同じ…それに理性をつかさどる脳の働きを抑制してしまう効能も持ち合わせていたのだから彼の反応は当たり前だった…。
TV、音響/照明調整、カラオケ、ベッドの機能など設備の案内を一通り済ませる…
「まぁ、だいたいはこんなところかな?」
第一場(続き)
「これは?」
しきみが指差した方向にはハヤトがわざと案内を避けた自動販売機があった。
「あぁぁ、そ、それはだなぁ(チクショ〜まいったな)自販機だよ…」
「このイボイボの付いた奴…何だか男性性器がモチーフになってるみたいですね…」
こんな分析をこともなげに言ってのけられるのはしきみくらいだろう…。
「そ、そう? 何だ、解ってるんじゃないか…」
焦るハヤト。
「この奥にあるのも…」
そう言うと、床に四つん這いになり自販機の奥を覘こうとするしきみ。
だいたいこの手の自販機は床に直置きなのだった。
ハヤトはしきみの姿に眼を奪われる、何故なら彼女の黒のミニスカートからは、
際どい状態でスレンダーな太ももが露出しているのだ。
さらに驚いたのは彼女が履いているのはパンティーホース型ではないガーター式のストッキングであることが判明したことだった。ハイティーンの子の趣味にしてはエロが過ぎる。
ハヤトは視点を高くしているとマズイと思い、同じく四つん這いになって覗き込む。
「どどど、どれ?どれ? あ、これ?これはぁ まぁ ある特殊な趣味のカップルが使う〜」
「涎玉…ですよね」
「・・・・・ あ、そう、そうそう、それ・・・・」
(武蔵坊め…俺の生徒を汚しまくってるなぁあいつは〜〜〜)
自分も武蔵坊を性奴隷のように扱っててよく言えたものである…。
「さて…」
しきみは起き上がると…部屋を見回し…
「お風呂って?どうなっているのかしら…?」
「あ、そーかーぁ忘れてたな〜風呂風呂〜確かこっち…アレ」
しきみは既にバスルームの中を覗き込んでいた。
「フーン、結構広いのね…それに、ジャグジー付だわ…」
「そうそう、結構気持ち良いんだ、これが〜」
向こうむきにしゃがんでるしきみだったが、ハヤトの眼には鏡に映ったスカートの中身が丸見えだった。ピンクゴールドの「三角形」が彼の眼を射る。
(うぁ! まいったなぁ…)
「先生、つかって見せてください」
一瞬きょとんとするハヤト…。
「え?…俺が?」
「はい」
「な、なんで?」
「実際使って見せてくれなければ、いろいろ判らないことを探せないと思いますから…」
(くそまじめな奴だ…)
「わかった、わかった…じゃ脱ぐから外で待っててくれ」
(ほんとにもーメンドくさいなぁ〜)
第二場
再び場面は旧校舎に戻る。応接室。
と言っても月の輪熊だの、白頭鷲だのの剥製が立ち並んでて、かなりの薄気味悪さである。
武智がバスタオルで頭を拭き掻きながら現れた。
普段は鬢付油で異様なヘヤースタイルを維持している武智だが、洗いざらしの髪は自然な流れをたなびかせていて新鮮に見える。
「すまぬ、待たせたな…」
「あ、先生…お疲れ様です」(一体何が?)
「で?話というのは何だ?」
「あの〜…、せんせ…武智先生…男の人って、好きでもない女の子とでもエッチできるって本当でしょうか?」
「ブ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ」
武智は飲みかけたコーヒー牛乳を吹いた。
「だぁ!出し抜けに何だ?もう〜〜〜〜〜〜?」
「すみません、すみません、すみません」
ハンカチを差し出すひまわり…。
「そ、そうだなぁ…男って『生き物』は多分にそういう点があるな…」
濡れた口元をバスタオルで拭いながら言う…
「だ、だが〜相手がその男にとって『魅力的な場合』…だろう、たいていは…」
「誰でもいいって奴は〜少ないと思うぞ…」
大きな眼を瞬かせてひまわりが訊く…
「せんせ、先生に 私はぁ〜魅力的に見えますか?」(顔から火が出そ〜〜〜ぅ)
「ブ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ」
武智は再び飲みかけたコーヒー牛乳を吹いた。もう瓶には何も残っていない。
「・・・・・」涙目でひまわりを振り向く武智…。言葉も出ない。
「す、すいま せん」
しばしの沈黙…。
ひまわりはまるでリンゴのように顔を紅らめてうつむいている。
「あ、あのな、日向…どんなに鈍い男でも、それだけ言われたらお前が俺に『抱いてくれるか?』って聞いてるのだと…そう思うぞ…」
「そ、その通りです…」
「そのとおりじゃな〜〜〜〜〜い!」バンっ!とテーブルをたたく武智…。
なんか興奮している。そう、嬉しいのだ。喜ばしいのだ。夢が叶うまでそう遠くないのだ…。
考えてみれば、この娘を爆発寸前の保育装置から救い出し、命を繋げたのはこの自分だ…自分がこの娘の柔肌に最初に触れた男なのだ、さすれば抱く権利があって当然だ!
あああああ、何を躊躇することがある!さぁ抱け!今すぐにでも!
突っ込みどころ満載だが、考えだけが独り歩きしていた。
第二場(続き1)
「じ、事情があるんです〜〜〜。」
「ああ、聞いている…。武蔵坊の科目のことだな…違うか?」
武智の持つ極秘情報アクセス権限は校長と同じレベルだった。
「はい…」こっくりと頷いたひまわり…。
なるほど、件の号泣はこれが原因だったんだな…そう武智は納得した。
こうなるとちょっと事情が変わってくる…武智は喜んでいる場合ではなかった…。
「と、いうことはだ… 貴様は『恋愛対象から俺を外してる』と宣言してるわけだ?違うか?」
「・・・・・」
「違うか?」
「すみません」
「ふ〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
そうか、そうなのか…そう心の中で呟くと少し落胆した。深々とソファーに腰を沈める。
くノ一に恋はご法度!とかなんとか押し付ける側にあって、
それでいて自分が密かに想いを寄せている『くノ一のタマゴ』が、自分を全く度外視している事実に失望するとは…。
矛盾を通り越して外道の域に達している…。
「で、でも…武智先生は命の恩人です。別の意味でお慕い申しております…ですから恩返しの意味も込めて…、その〜私の…」
「みなまで言わんで良い!」
武智は心臓が爆発するくらいの羞恥心を押し殺して、精一杯必要なことはハッキリ伝えようとするひまわりの健気さに感動を覚えた…
言葉を遮る形で助け船を出す位の気を利かせてやりたかった。
第二場(続き2)
「よし…わかった。抱いてやろう…」
「ほ、本当ですか?」
「だが、俺にとってこれで『最初で最後』になる。しからば完全な形で行いたい…意味わかるな?」
「はぁ…何となく…」
「最後の『月のもの』が訪れた日を申せ…」
武智はテーブルの上のカレンダーを突き付ける…。
「こ、この日が最後です…」
ひまわりはその日付に指先を置いた…。
「お前は順調な方か?」
「は、はい、いつも28日間隔で…」(恥ずかしいっ!)
武智は指を折って数える…。
「よし…、次の水曜日…練習が終わった晩ここへ参れ…。もちろん他言無用、よいな?」
「はいっ!」
「では…」武智が立ち上がりかけると
「あの、お願いがあります!」
「まだ何かあるのか?」
「・・・・・」
「ハッキリ申せ!」
「で、できれば その、ハヤ…いえ、万里小路先生に変装して頂いて…はだめでしょうか?」
武智はフライパンで後頭部を殴られたような衝撃を覚えた…
(や、やっぱりそうか…。
この娘は、主従、主従と言いながら、実のところ間違いなく万里小路を愛しておるのだ…。
何たる侮辱…、えええぇい此処までバカにされたことが、かつてあっただろうか?
今すぐこの場で犯してその首掻き切ってしまおうぞぉぉぉぉ〜)
あ、いや、本来抱かせてもらう権利すらないんだからそれは言い過ぎだ…。
武智はすばやくソファーの背後に回り、ひまわりをの頭をつかんで上を向かせ、思いっきりのディープキスをくれてやった。
彼女は驚きのあまり身動きができず、武智の太くて長い舌を挿入され、貪られるようにしてキスを受け入れた。
(あ〜これが〜…何だか気持ち良い…)
同時に下半身に熱いものを感じ、あのビデオを見ながら感じてしまった感覚が再び呼び起されるのを覚えた。
武智は彼女の唇を解放すると、再び出口に踵を返し背中を向けたまま告げた。
「お前の願いについては承知した…完璧な変装で迎えてやろう…」
ひまわりは惚けたような顔でまだ天井を見ている。
「に、にんじゃさぁん…」
第三場
ホテル"ラ・ミラージュ"。715号室。浴室。
ハヤトはタオルを腰に巻きつけたままの姿で、浴槽にお湯が溜まるのを待っている。湯温はいつもの通り38℃…。湯加減を確かめるように手を浴槽内でぐるぐる回す…
「あ〜あ、ったく何やってんだ俺は〜〜〜〜」
そう言いながらも、脳内では先ほど来からのしきみの『お宝画像』を反芻しつつ涎が出てくるのを必死で拭う。ハヤトの『逸物』は既にカッチンカッチンに固まってしまっていた。
普段なら別のことを考えれば直ぐに治まるのに…今日はいつもと違うな…
「でもまぁジャグジーなら泡で隠せるし、いいかぁ」そう独り語散るとドボーンと浴槽につかり、ジャグジーのコックを"H"の印に合わせて捻った。
二つの穴から勢いよく噴流が沸き立った。浴槽が見る見るバブル状態になっていく…。
「ひょ〜極楽〜〜〜、お〜い、しきみ〜〜〜もういいぞ〜〜〜」
ガチャリと扉が開くと、驚いたことに しきみはシルバーグレイのキャミソールに、先ほどのピンクゴールドのビキニショーツといった恰好で現れた。
髪は後頭部でまとめている。
「おあぁぁぁぁぁっ!」
驚いて浴槽に沈みかけるハヤト。
「なんだ、なんだ、なんだぁ〜〜〜〜」
「はい?」
「か、か、仮にも女生徒がだなぁ〜そんな恰好で…教師の前を〜」
「あら、先生とは以前皆と交えて温泉にご一緒したことがあった筈…、半裸の私を見るのは初めてではないでしょう?」
確かにそうだが〜
「折角ですから、お背中でも流そうかと…」
しきみも例の薬が効いてきたのか、だんだんすることが大胆になってきた。
(ふ、不覚…、ハヤトがイケメンに見えてきたわ…)
というか、もともとハヤトは別に醜男ではないのだが…。
しきみは圧縮されたスポンジの入った封を破くと、それにボディシャンプーを付け、
蛇口からお湯をまぶす。
その一連の動作をハヤトは浴槽から見上げ、彼女の下着姿に魅了されていた。ひまわりもそうだが、しきみの脚線美もなかなかのものだった。
(あいや〜〜これじゃまるでソープランドだ…)
第三場(続き)
「はい、せんせい立って、お背中をこちらに…」
(立って…て、もう立ってる…あ、いや、立ち上がったら起ってるのがバレル…)
仕方なく中腰になり、クルリと背中を向けた。
「これでいいか?」
返事はなかったが、浴槽の淵に腰をかけると、しきみは丁寧にハヤトの背中を擦り始めた。
しきみの左手は彼の肩に掛けられて支えている。
ハヤトは腰に巻いたタオルが妙な形になっていないかとチラチラ確認しながらも、しきみの心地よい『サービス』に身を預けた…。
「先生の背中、結構逞しいわ…」
しきみは本当にそう思った。
「た、逞しいったって…さ、サルトビ先生なんかの方が…」
「あれは駄目…、あんなにマッチョじゃ隠密活動には向かない…その点、先生の方が実戦向きよ…」
スポンジは段々と下の方に場所を移動してくる。
「そ、そうかなぁ〜ダハぁ〜でも〜俺、忍者に興味ないしぃ〜」
「でも、くノ一には興味があるんでしょ?」
その時…、浴槽の淵に立てていた入浴剤のミニボトルが、しきみの肘に当たりドボンと泡で覆われた水面に消えた…。
「あ、いけない…」
「おぁっと」
すばやい反応でハヤトがボトルをつかんだとき、同じ意図で左手を浴槽に差し入れたしきみは、タイミングが悪かったのか『別の堅いモノ』をつかんでしまった…。
「・・・・・」
想像を遥かに超えた弾性と剛性を掌に感じたしきみは一気に身体の中に炎が立ち上がるのを覚えた。それは逞しく脈を打っている…。薬効のせいか本能のせいか判断がつかないが未経験の筈のしきみであってさえ『これが欲しい』そんな気分にさせられた…。
「そ、それは…ボトルじゃない…」
見つめ合うハヤトとしきみ…。お互いの鼓動を感じ合った二人は、激しいキスへとなだれ込んだ…。
第四場
場面は再び遠くマカオに移る。ホテルのスカイラウンジではMI-6エージェント、コードネーム"Double-OH-Five"がヒメジに少々早めのランチをふるまっている…。
「うっ、ひゃ、ひゃっ、ひゃ、(パクパク、モグモグ)うっ、ひゃ、ひゃっ、ひゃ、」
「うぉぉぉぉぉ〜〜〜〜い し い〜〜〜〜で あ〜り〜ん〜す〜〜ぅ」
既に3皿目のカモの照り焼きを食い散らかしている…。
ジェームスは疎らではあるが何人かの客が他に居ることもあって、周りに気を使いながら、少し彼女の方に身を乗り出すようにして小声で話しかける…。
「ちょ、ぷ、プリンセス・ロドネイ…頼むから、もう少し静かに召し上がってくれると助かるんだけどな…」
「わ ら わ は 食事中は周りが眼に入らないんで あ り ん す よ 〜」
「いや、それは分かってるんだけどね(しょうがないなもう…)、第一、そんな食べ方じゃ身体に良くないよ…」
言ってる傍から、飲茶の笊が12段重ねくらいの量で運ばれてきた…。
彼はそれを眺めながら、あ〜しまった〜ルームサービスにしときゃ良かったなぁ〜と後悔するのだった…。
スカイラウンジで景色を楽しんでもらうつもりだったが、ヒメジには食事が全てだった。
考えたら、今回の任務…。理解に苦しむ。この娘と会って寝るだけで良い…なんて…。
「どうかしてるね…全く…」
「(もぐもぐ) う?、何か言ったでありんすか?」
「いや、こっちのこと…」
ジェームスはすっかり食欲を失い、仕方なくワインを口に注ぐ…。通りかかった日本人らしきカップルがヒメジの食いっぷりを怪訝そうに見てるのに気付くと…
「彼女の顔に何かついてるかい?」
そう言って追い払った。
アレで人のマナーを批判してるつもりだろうが、それこそがエチケットに反することを彼らはまるで理解していない。
知らん顔して通り過ぎられない彼らの行動原理そのものがイギリス人の彼には全く理解できなかった…。
彼女の食うに任せてそんな事を思っていると、ヒメジが突然唸りだした…
「なんだ?」
ヒメジは眼を丸く見開いて、必死に胸ををドンドン叩きもがいていた。どうやらチキンを喉に詰めたらしい。ジェームスが慌ててスパークリング・ウォーターの入ったグラスをつかむと、一秒早くヒメジは既にワインボトルを手にしてラッパ飲みし始めた。
「うぁ〜そ、それは〜〜〜〜」
「ゴキュン、ゴキュン、ゴキュン」
ヒメジの喉が脈打ってるのを見て、どうやら危機は脱したことを確認するにはしたのだが…
「ぷっはぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜」
「く る し か っ た で あ り ん ・・・・」
そこまで言うと、『ドサッ』っという音を立てて、このブロンドの大女はそのまま床に転がった…。
ジェームスは腰を下ろすと頭をたれ、眉間を撫でながら上目使いにその方向を見やった…。
「だからよく噛んで食べろと…」
第五場(1)
ハヤトとはしきみを両腕で抱きかかえると、いわゆる「お姫様だっこ」のままベッドの上に降ろした。
既にキャミソールは脱げかかっており、浴室での激しい抱擁の所為でところどころ濡れている。ハヤトは腰に巻いたバスタオルを外すと、それでしきみの身体を拭ってやった。
露わになったハヤトの「男の主張」を薄目越しに見入るしきみ。生で臨戦態勢のソレを見るのはもちろん初めてのことである。なぜか生唾が溢れる…。
「せんせい…や、やさしくしてくださいね」
おそらく彼女からは一度もリスペクトされたことのないハヤトだったが、しきみのこの物言いには聊か驚きを隠せない。第一俺を先生なんて言うのだって極めて稀なことなのだ…。
「あぁ、分かってるよ」そう言うと横になって彼女の髪の毛を解いてやった。
「本当に、俺なんかでいいんだな?」
「・・・・は・・・い」
僅かに震えてるしきみの腹に手を置くと、薄いシルクの生地の上からツツーと小指と薬指だけを使い胸に向かって滑らせる。やがて胸の谷に達すると、小ぶりだが確かに膨らんでいる二つの丘の一つを優しく手で包むように撫でる。
指先で感じるブラジャーの形を確認すると、ちょうど乳首の収まるあたりに指を這わせてみた…。
ハヤトの経験では、しきみが今身につけてるショーツのデザインから、おそらくペアであろうブラのその部分は、間違いなく薄手の生地になっている筈だった。
その予想通りキャミソールの上からであってもハッキリとその「隆起」を感じ取ることができた。しきみの乳頭はすでに興奮を表すに充分の状態を示している。
ハヤトは高まる興奮を何とかこらえながら指先でそれを捏ねる。
「はァァァァんっ」かすかで控えめだがしきみが反応の声を上げた。
初めての異性の愛撫を受けて快感を覚える自分の体が憎らしかった…。
愛撫を続けられる間、しきみは身体を捩じらせ太ももをぐっと捻らせながら悶える…。
「我慢するな…声を上げてもいいんだぞ」ハヤトは少し意地の悪いことを云う…。
指は既にキャミソールを潜り、ブラジャーの中に入っていた。
「そ、そんな、恥ずかしい…」
「もう、そんな仲じゃないだろう?」そう言ってまた彼女の柔らかいプリンのような唇を吸いにかかる。
キスの官能的な味を知ってしまったしきみは進んでハヤトの舌を迎え入れ、自分の舌で彼の唾液を絡め取る。
(上手いもんだ…、頭の良い女ってのは、何にやらせても直ぐコツを掴むんだな…)
ハヤトはそう心中で呟くと、右手をしきみの背中にまわし巧みにホックを外した。
しきみもしきみで先ほどから左手をハヤトの『子袋』を弄っている。
(垂れさがったり縮みあがったり面白い器官だわ…)
その行為がまた一つ、ハヤトの理性の箍を外しにかかる。
第五場(2)
ゆっくり時間をかけてしきみの緊張を解きほぐしてやるとハヤトはショーツの脇に両手を滑らせて素早く脱がせにかかる。
しきみは眼をつぶってじっと横を向いている。
僅かに茂った陰丘は、贅肉の無いすらりと平らな下腹部からみれば、まるでフェアウエイから望むグリーンといった感じだった。
(さて、いよいよだな…)そう心中で呟くと、彼女の膝で8の字になったショーツを膝の向こう側に滑らせる。立膝の恰好だったからあとは引力が面倒を見てくれた。
しきみは足首にストンと落ちたショーツの感触を知ると、自分でそれを蹴り飛ばした。文字通り彼女は一糸まとわぬ姿になった。
ハヤトは、揃えていた彼女の膝を引き寄せつつ左右に割る。俗に言う「半マングリ返し」の状態を作ると、遠慮なくその僅かに濡れそぼったクレバスに舌を這わせてやった…。
「うっ・・・くぅ・・・」
一瞬こそばゆい感覚に襲われながらも、云い知れぬ快感を覚えると、しきみは思わず唸った。
(ハヤト…恐るべし…)
両ももを閉じて悶絶したい位の激しい快感の波が押し寄せる…。
だが両膝はがっちりとハヤトが掴んでおり、しきみは腰を前後に揺らすくらいしか動きようがなかった…。
それでもハヤトの舌は的確に狙いを外すことなく追従してきたのだった…。
(な、何とかしないと…)
一体何と戦っているつもりなのか、しきみは受け身に任せてる状況に抵抗感を覚えた。
左手は既にハヤトの化身をまさぐっていた。
竿をしごきつつ親指で先端の柔らかいところを弄ればよい、そう教えられた通りに実行しているが、ハヤトの反応では効果が判断できない…。
そんなことを想いながらも、しきみの脳の快楽中枢は股間からの刺激で満たされつつあった。
(く、悔しい)
第五場(3)
(こ、こうなったら)
処女であり、かつ、これまで男女の性交渉が如何なるものであるかに興味すらなかった少女にとって、オーラルセックスほど嫌悪感を覚えるものはなかった…。
だが、教材の映像や、歴史的背景から始まるあらゆる資料に眼を通してきた結果、それを論理的にも
『とても良いものである』
と認めざるを得ない…。そう考えていたしきみだった。
そうであってもやったことがなければ、やはり抵抗がある。
だが、一方ではハヤトは私の性器を舐めている
。そしてその快感に身を震わせている自分が居る…。
しきみは快感を堪えながら、少し上半身をひねり起こすとハヤトのそそり立ったペニスを見た。
(あんなの、普段から触ってるトカゲや蛇に比べたら…グロテスクでも何でもないわぁ)
その瞬間、しきみは器用に上体をくねらせると、頭をハヤトの股間の下に潜り込ませる。
勢いでハヤトの右手がしきみの膝から離れると、バランスを崩した彼は頭を太腿にサンドイッチされた格好で横臥位の態勢にさせられてしまった。
眼の前に長いペニスが突きだされる格好になると、しきみは躊躇なく両手でそれを掴み、
眼を瞑って思い切り口に咥えこんだ…。
「おぁぁぁぁ痛い痛い痛い!」ハヤトが叫ぶと。慌ててそれを吐き出すしきみ…。
「ご、ごめんなさいっ」
ペニスを握ったままハヤトの方を向き直って謝るしきみ
「ち、違う違うコレ、コレっ…」
ハヤトは左腕が妙な方向で捻れてその先にしきみの腰が乗っかってるのを指差した。
「『69』するんなら、ちょっと態勢変えよう」
そう言うと、今度はハヤトがしきみの股の間に潜り込むようにして仰向けになった。
自分のフェラチオが失敗だったわけではないことに安堵したしきみは、下半身をハヤトの顔面に丸晒ししていることも忘れて、今度は上からやり直すのだった。
右手で茎の根元を固定し、余り向こう側へ倒さないように気をつけながらまずは舌の腹に亀頭を載せるような感覚で頬張る…ここまでは教科書通り。
上唇を伸ばして歯を立てないようにカバーする…、そうしてゆっくり吸い込むようにする…。
(「入れ歯を外したお婆ちゃん」の顔を連想してやるんだったけ?)
「ん、んんっ」
「ああ、気持ちいいぞぉ しきみ…」
(やった!)しきみは脳内でガッツポーズを決める。
(あとは空いてる手で『子袋』を刺激したり、竿をしごくんだったっけ?)
しきみは必死に教材ビデオで見た通りの技を反芻して実施した。
ハヤトも負けじと舌と指とで応戦する。
やがてしきみは「尿意」に似た不思議な感覚が高まってくるのを感じた。
それを一生懸命に振り払おうとしきみも頭を振る
第五場(4)
(だめ…眼が回る…)
そのうち、ハヤトの腰の方が勝手にグラインドするようになってきた…その動きが徐々に速度を増す。しきみはただ口と舌をそれに合わせてポジションするだけで、頭の中は股間の感覚に支配されるに任せた…。
(あ、な、ななにコレ…変よ、変…)
ハヤトももう口での愛撫は放棄しており、股間の感触を楽しみながら指で内と外からしきみのクリトリスとGスポットを刺激しているだけだった。
「あはぁ、しきみ で、出そうだ、出すぞ…」
(え?なになに、あ〜〜〜〜〜〜〜っ)
その瞬間、尿道口のあたりからジワーっとした高まりが一気に押し寄せてしきみの頭の中は真っ白になった…。
次の瞬間口腔内を熱い粘液が満たし、ハヤトが射精したことに気がついた。
反射的にペニスを奥に引き込んでしまったため殆どの精液を飲み込んでしまっていた…。
おそらくは、「オルガスムス」というものをフェラチオと局部への愛撫で感じてしまったことに驚いたしきみには、そんなことは二の次三の次だった…。
(私って淫乱??? ち、違うわ…これはきっと薬の所為よ!)
振り返るとしきみの尻の向こうに、天井を仰ぎ恍惚の表情を浮かべているハヤトの顔が見えた。次の瞬間しきみは気を失った…。
第五場(5)
しきみは眼を覚ます、先ほど逝ったばかりで敏感になっている部分に、さらなる快感を感じているからだが、案の定、彼女の股間には必死の形相でクンニリングスを続けているハヤトの顔があった。
「き、気が付いたか?」
(頭がボーっとしている)
「最初のペッティングで同時に果てるなんて、あ、お前逝ったんだよな?…そう、何か俺達身体の相性いいみたいだ…それから...逝った後なら処女膜破れても痛くないって…
だから、時間置かずに行くぞ!いいな?」
(頭がボーっとしている)
ハヤトは返事も待たず、ペニスにコンドームを装着するとしきみの上に重なった。
「しきみ〜愛してるぞ…」
いい加減なことを言うな〜〜〜
(頭がぼーっとしている)
「うっ…」ハヤトが一言唸る…
股間に異物感を感じたしきみだったが、ペニスの先端が雁首のあたりまでツルンと入ってしまうと、その感触がたまらなく気持ちよかった。
(すごい…痛くないわぁ)
やがてヌルヌルヌルっとゆっくり本体の方が入ってきた、一瞬ピリっと違和感が伝わったが直ぐに消えた…。
(き、気持ちいいわ…)
はやる気持ちを必死で堪えハヤトはゆっくり、ゆっくりと、歩を進めた。ハヤトの方も十二分に快感を得ていた。流石に処女…少し巨根気味のハヤトには狭い膣腔だった…
充分差し込んだと思われるところから、退きにかかる。コンドーム越しだが開いた雁がしきみの膣壁をまんべんなく引っ掻いていく。
「あうぅぅっ」
「大丈夫か?」少し心配になって動きを止めた。
「や、やめないで…、もっと動いて…」
(感じてる…こいつ…初めてなのに感じてる)
ならばと、遠慮なくハヤトは徐々に腰のスピードを速めて行った…。
第五場(6)
「あぁ、あぁ、あぁ、あぁ、あぁ、あぁ、あぁ、あぁ、」
ハヤトが突くたびにそれに呼応してしきみは声を上げる。ハヤトは昇り詰めかけるとペースを下げ、また上げ、を繰り返し、この成熟を迎えつつある少女の肉体を堪能した。
彼はしきみの股間を突きながらも、キスや乳房への愛撫をも丹念に行う。
時々薄目を開けてこちらの表情を見ようとするしきみに、微笑みかけ、そのたびに深く突きたてると、しきみは眼を閉じて眉間に皺を寄せて悶絶する。それを繰り返し繰り返し楽しんだ。ハヤトの腰に巻きついたしきみの手に力がこもる。
「あ、だめっ!いっちゃうぅ…」
「もう少し、もう少し」ハヤトも追いかける。
「ダメ…、ああぁいやん…」
「ううう、し、しきみ」
しきみの下腹部にかかる力を感じる。
「あぁぁぁ、おれ、もう」
「はぁ、は、はやとぉ…せんっ」
そこまで言いかけるとしきみは下腹部を突き上げるような感じで海老反った…。
「せいっ!」
「むぅうううううっ」
大量の精液が放たれた。しきみはその脈動を膣壁で感じると、先ほどとはまた違った快感で果てたのだった。
ハヤトは、とてつもない愛おしさを感じると、彼女をきつく抱きしめた。
しきみも彼の腕に抱かれて心地よい疲労感に暫し、身を浸した。
第六場
物語はリアルタイムに進行する…。
っというわけではないが、マカオ、ヒメジ達にアサインされたロイヤルスイートルーム。
ようやく午後の眩しい太陽が、オープンスペースに設けられたプールに心地よい日差しを投げかける時刻となった。
ヒメジの診察を終えた医師を帰したあと、この後の算段を練るMI-6エージェント…、ジェームス・マックスウェル…。
『まったく、とんだお荷物を預けられたもんだ』
ハバナ産の葉巻を燻らせて柄にもなく悪態をつく…。
ドアのチャイムが鳴る。
ドアの方を振り向くと、彼はアロハシャツの裏、スラックスの腰に挿してあるベレッタを手にした。
スライドを数ミリ後退させ、装弾を確認する。
用心するシチュエーションではないが、もはや習慣づいていたのでしかたがない。
「どなた?」
「Mrマックスウエル…、ご注文のビールをお持ちしました」
「御苦労…」
知った声とカメラの映像で危険の無いことを確認するとドアを開けた。
見慣れた顔が笑みを浮かべて立っている。
銃を腰に仕舞いながらジェームスが言う
「わざわざ済まない、Mrフェイ…ちょっと待っててくれ」
その香港人男性は笑顔を返し軽く会釈で答えた。
「このラップトップに入ってる全ての情報を読めるようにしておいてくれ、殆どが日本語で書かれていて俺にはさっぱり解らん…。一部は結構高度なセキュリティが掛けられている…見たことないコードだ…どのくらいでできる?」
「ファイルの総容量は?」
「大したことはない、5〜6GBもないだろう…」
「かしこまりました、夕刻…そう1800にはお持ちできるかと…」
「OK、それでいい」
Mrフェイは、ビールの瓶とグラスをテーブルに置き、代わりにラップトップを盆の上に載せてその上にクロスをかぶせる。
「それではマックスエル様…また、後ほど」
「ああ、たのむよ…」
第七場
しきみはベットに腰を掛けながら乱れた髪を直していた。既に下着を身につけている。時計の針は入室してから有に2時間半を経過していた。
とりあえず此処まではうまく運んでいる…。
しきみは自分の立てた計画の完璧性を実施で証明できていることが何よりも気分が良かった。だが、まだ最後の難関は越えていない…。
ハヤトに飲ませたもう一つの白い丸薬…。通称『白昼夢』…その薬効を確かめる時が来た。
服用し効果が始まってから最初の睡眠に入るまでの体験や記憶が、全て意識下の奥に消えて取り出せなくなるという優れものだ。
仮に断片的に思い出しはしても、睡眠中の『夢』と全く区別がつかないことからこの名が与えられた秘薬だった…。
本来は自白剤対策の薬、万が一任務中に捕えられても瞬時に睡眠薬を飲んで眠りについてしまえば、敵方の拷問にあっても自白させられることがない…。何しろ本人は覚えていないのだから。
スカートを履き、ジャケットを羽織ると、腰にタオルを巻いた姿でベットに横たわるハヤトの顔に気つけ薬の匂いを嗅がせる。
「うっ…、うぅぅ」
「気がついた?…」
「う、あぁぁぁぁぁ〜〜〜〜しきみ????」
しきみを見て驚くハヤト…
「あ、あっれぇぇぇぇ…ここは〜」
「ラブホテルです…覚えてないの?」
「あ〜そうだったっけ?…あれ〜」
何となく部屋を案内していた辺りまでのことは記憶にあった…だがそこからのことが全く覚えにない…。
「お、おれ〜何でこんな恰好…」
「先生、バスルームで転倒されたみたいですよ…、で、気絶を…私がジャグジーの実演をお願いしたばっかりに…申し訳ありませんでした」
「そ?そうなの?」
その割にはどこにも打ちつけた痕跡がないのに、しきみの言うことだからと…疑いもしないハヤト…。
しきみは(よかった、うまくいきそうだわ)と内心で安堵した。ハヤトを利用して処女を捨てることに対する抵抗感の殆どは、『ハヤトがしきみを抱いたことを覚えている』ということが嫌だったからだ…。その記憶さえなければ、事実はしきみの中に残るものだけだ。
「そろそろ時間です、帰りましょう…」
残る仕事は武蔵坊へのレポートだけだった。
第八場
霞の里のもんじゃ屋。
アザミは遅めの昼食にお好み焼きでもと来店、ゆすらも一緒だった。
相変わらずアザミはその「裏返し技」にてこずっている。
「アザミったら〜本当、いつまでたってもヤンバルクイナ並みに不器用なんだから〜」
「文句言うならゆすらがやんなさいよ〜、もう、いつもはひまわりかしきみに任せっきりだからしかたないじゃ〜ん」
はみ出た具をコテで戻しながら
「そういえば、ヒメジは?昨夜から見かけないけど…」
「武蔵坊のレポートを口実に外出許可もらったらしいよ〜ゆうべ出かけたみたーい」
「ふーん…、そうかその手があったよね〜アタシもそうすりゃよかった」
「ほーんと、コウモリ並みに抜け駆けよね〜」
アザミは焼きあがった豚玉チーズを8等分すると、一切れを齧った。
「今頃、どこかのイケメンと〜ラブラブなひと時ね〜」ゆすら眼がハートマーク。
「どうだろ〜? ところでゆすら、アンタどうするの?」
「ナイショ〜〜〜」
「そういうアザミは〜〜〜?」
「ないしょ〜〜〜」
引きつった笑顔で見合う二人…。
第九場
(日本時間夕刻)
ロンドン。MI-6本部のある統合庁舎。Mのオフイスにちょうど彼女が出勤してきたところだ。もちろん一般のオフイスワーカーなどよりもべらぼうに早い時刻である。
「おはようマニー」
「おはようございますマァム」
「今日の予定は?」
「10時に国防副長官とそのスタッフを囲んで会食、そのあとは午後の参謀本部会議まで予定はございません」
「あそう、今日はゆっくりできそうね…」
そう言って自室のドアノブに手をかけると
「あのぉ、」ばつの悪そうな表情を見せる秘書…。
長い付き合いなのでMはおおよその見当はついた…
「マック…いえ、マックスウェル中佐からお電話が入ってます…」申し訳なさそうに言う。
Mはしばらく固まった状態で秘書の顔を見つめると言う…
「繋いで」
勢いよくバタンとドアを閉める。
「私です」
「マァム!!何ですかありゃ、なんとかしてください、一体今回の任務は…」
「落ち着きなさいマック!順序立てて解るように話しなさい」
(Mは彼をジェームスとは呼ばない、他にもう一人居るから区別するためだ)
「『客』は倒れました…任務遂行は不可能です」
「倒れたって、マック!貴方まさか?」
「殺してませんよ!勝手にワインをがぶ飲みして急性アルコール中毒になったんです!(まったくもう)」
「マック!貴方、彼女は未成年なのよ!」
「判ってますよもー(泣きたくなってきた)」
「で?容体は?」
「大丈夫です。胃洗浄して、点滴打って一晩過ごせば回復するとホテルの医者は言ってました」
「そう、(Mはとりあえず安堵の胸をなでおろした)それは良かった…」
「良くないです。任務はどうするんです?」
「彼女は何か問題を抱えてるようだわ、それを突き止めなさい」
「ちょ、何・・・・(ブツッ)」
Mは回線を切った。
マカオでは、途方に暮れたジェームス・マックスウェルが、虚しい信号音だけを放つノキア製セルラーフォンを片手にして、傍らのベッドで横たわる色黒の大女を眺めているのであった。
「いいですよ…こっちは既に手は打っていますから…」
そう言うと、彼は電話をポケットに仕舞った。
第六幕 終わり
第七幕 それぞれの結末
第一場(1)
"トゥルルル、トゥルルルル…"
優しくそれでいて無機質な電子音の方向に浅黒い腕が伸びる…。
その音で始めて深い眠りから起こされたらしいことは、ヨロヨロと覚束ない動作のため一目でわかる。
「…はぁい…、な ん で あ り ん す ?」
寝ぼけ眼を擦りながら右手の子器に話すヒメジ。
「おはようございますマァム。 マックスウェル様からのお託で、この時間になったらお部屋に電話を差上げるようにとのことでして…」
「あい…?」
部屋を見渡すと彼の姿はなかった…。
「お支払いの方は既にお済みになられておりますが、何かございましたらお申し付けください」
「そうでありんすか…どうもありがとうでありんす」
子器を置く、その手の甲になんやら点滴のチューブが付けられているのに気付くと、ヒメジは絆創膏を剥がし、無造作にそれを引き抜いた。手が冷たい…。
「一体どうなっちまったんでありんす〜〜〜」
ベッドから立ち上がるとテーブルの上に自分のパールマイカパープルに彩色されたラップトップと、一枚の8cmDVDが置かれているのに気付く…。
添えてあるメモには「see me」と走り書きがある。
第一場(2)
「ふん、ふん」
ヒメジは部屋に備え付けてある60インチフラットTVの内臓プレイヤーにそれを掛ける…。
やがてそこにミニバーのカウンターをバックに彼が映し出された。
出かけるにおよび、すでに身支度を整えた…といった感じだ。
「おはようプリンセス…。気分はどうかな?」
(ありゃりゃ?何でありんす?)
「短かったけど、楽しい時間を過ごさせてくれて感謝するよ、お礼と言ってはなんだけど、君の『宿題』はなんとか僕が『でっちあげて』おいた…。あとは日本語で君が書き直せばOKの筈だ」。
(え?え?え?〜〜〜〜〜〜〜)
「いつの日か、また会えたら…そこに書かれてるような刺激的でロマンティックな一日を君と過ごしたいと思う…、でも、今の君には そぉ〜う、まだまだ早いかな?…」
「い、いや、悪く取らないで…、君は…、美人だしスタイルも抜群…きっとそのうち魅力的なレディになれる…それは保証するよ。まぁダイヤの原石っといったところかな?」
ポーっと耳が熱くなるヒメジ…。
「学校…大変そうだけど、これからもじっくり時間を掛けて、一人前になれるよう頑張って…影ながら応援してる…。(腕時計に眼をやり)そろそろ空港に行かないと…じゃ、…」
最後に彼の『投げキス』の映像で動画が終了した…。
ヒメジはガックリと肩を落とすと
「やっちまったで ありんすね〜〜〜ぇ」
そう言うのが精いっぱいだった。
彼女はラップトップにログオンし彼の残してくれたファイルを開けてみた。
そこにはまさしくヒメジが夢に描いていたような、大人の男女が過ごす煌びやかで充実した週末が書き綴られている。
彼と一緒のスナップまで数枚偽造してあり、このままでも武蔵坊を納得させるには充分すぎる内容だった…。
ヒメジは彼の残したDVDを胸に抱きしめると、ひとつ大粒の涙をこぼしたのだった。
第二場
日曜の昼下がり。
自室のベッドで丸くなっているしきみ…。昨夜は、あれから帰宅した後、深夜まで例のレポートの仕上げに躍起となっていたため、かなりの寝坊をした。
眼がさめてからもずっと布団にくるまって考え事を続けている。
いつもの日曜なら早起きし、山まで薬草の採取を兼ね散策に出かけるのが常であったが、サボってしまった。
それだけ疲弊しているのもあったが、山でもしナナフシに出会ったりしたら…。
それが怖くて仕方がない…。
昨夜から何も口にしていない…だが食欲もなく、ベッドから出る気にもなれず、しきみはこの先のことを考える…。
ナナフシ会ったらなんて言えばいいの?
もちろん彼との関係は薬活に長けた者同志、それ以上でも以下でもない、操を立てる義理はないのだから、本来何も言う必要はなかったが…。
「私、この先こんな風にして…どんどん嘘の上手な女になっていくのね…」
彼女の頭の中にはナナフシの笑顔に交じってハヤトの逞しい裸体が浮かんできた…。
「いやだわ…」
そう呟くと、右手をショーツの中に忍び込ませる…。
人差し指で昨日、ハヤトがしてくれたことを思い出しながら自分で刺激する…。
(ハヤト…優しかったなぁ…)
しきみはそのまま、思うに任せて指を動かし続けた。
第三場
武蔵坊は日曜日も職務に追われている。
なにせ40余名もの生徒を抱え、それらの『実施レポート』が集まりつつあった時期だから、それなりのペースで提出された順にでも評価を進めないと、成績発表までにとても終わらせる事など出来ないからだ。
その中にゆすらの分も含まれていた。
提出封筒の中からSDカードを取り出すと、例によってデコーダー内臓の読み取り装置に差し込む。
立ち上がった専用アプリケーションがデータを受け取るまで数秒待つと、ゆすらの『実施レポート』ファイルが開いた。
武蔵坊は内容に眼を通す。
そこにはゆすらが学園の物とは違うセーラー服を身に着け、『禿げあがった変態ロリコン中年オヤヂ』とどこぞの遊園地やら、カラオケBOXやらにて撮ったであろうスナップを含め、援助交際風の作戦をシミュレートしたと思しき痕跡が見て取れた…。
生々しい性体験のレポートも確かな内容に思える。
『ふぅん…まぁまぁね、あのおチビちゃんにしては上出来だわ…』
そう言うと評価の欄のコンボボックスから「Aマイナス」を選択した。
だが、彼女の後ろにある窓に映し出された反射像のPCモニターには、見慣れぬ梵字がただ一つ浮かんでいるだけであった…。
第四場
霞の森某所。
ハヤトは待ち人来らずっといった風体で退屈そうにしている。彼自身15分は遅刻してきたのだから言えた義理ではないが、相手はその上をいっている…。
そこへ『シュッ!』っといった音とともに一人の忍者が現れた。
「ま、待たせたな…」っと言ったきりその場でコテンと倒れる…
「お、お頭ぁ!」駆け寄るハヤト…。
「す、すまぬ、少し目眩が…」
「大丈夫か?」
言われてみればお頭の顔は少しやつれていた。
「かたじけない…」
「で、首尾は?」
「かたじけない…」
・・・・
「いや、だから…」
「かたじけないと そう 申 し て 居 ろ う がぁ〜〜〜」
「ぐっ(逆切れかよ〜〜〜〜)な、なんだよ〜その言い草〜」
「武者小路とやらの部屋にはたどり着いたのだが…」
「(あ、いや’武蔵坊’なんだけど…)…だが、なんだ?」
「侵入する前に…誰だか知らんが酒臭い巨乳女に見つかってしまった」
(げぇ、桂垂のれん か?)
「警備に突き出されたくなかったら…いうことを聞けと…その」
「あぁぁ、やっちゃったんだな?」
コクリと頷くお頭…。
「あの女、俺の精を最後の一滴まで絞りとっていった…」
「そっか…(苦笑い)」
ハヤトはお頭にまたがって、瓢箪から酒を啜りながら半狂乱で腰を振る のれん の画を想像してしまった。
「気持ちよかったぁ…」
(なんだよそれ〜)
ハヤトは半分、いや1/3くらいはアテにしていたのに…。
「しょうがないな、まぁ協力には感謝するぜ…お頭…」
「かたじけない…」
この「甲羅者」でも盗み出すことができなかった『ひまわりの実施計画』に、ますます執着が募るが、ハヤトに残された手段はもう何も残っていなかった。
霞の里もそろそろ日が陰る…。
「今日の夕日は…何だかとっても黄色いなぁ…」お頭が死にそうな表情でこぼす…
そうだな…
夕日をバックに飛ぶ、小さくはない物体を眼で追いながら、ハヤトは心の中でそう答えた。
第五場(1)
志能備学園、宿直室。航空管制用周波の自動応答装置の警告ランプが点滅する。
「はい、こちら霞の里管制管区、コード:チャーリー・ナイン・ワン・デルタ(C91D)…」
当直の小葉きゅうりが応答する…。
『C91D!こちら合衆国海兵隊のCH-53E、#02…、イギリス政府の極秘要請でVIPを護送している。着陸許可を頂きたい』
あ、あ〜またか…といった表情で予定表を見る小葉きゅうり…。
「了解CH-53#02、いつもの場所が空いています。そちらへどうぞ〜」
『了解、C91D』
3発ターボシャフトエンジンの排気と、その絞りだす出力を一気に受け回転するローターブレードの空気を切り割く轟音が学園に近づくと、幾人かの生徒たちは窓から様子を伺うが、殆どの生徒はもう何事かを理解してるため大した騒ぎにはならない…。
ライトゴーストコンパスグレイで塗られた大きな輸送ヘリは、側面を夕日に照らされた状態でけたたましく校庭上空に現れた。
ローターブレードの叩きつける風で吹き飛ばせるものは何一つ残さず消し去ると、ドスンといった感じにランディングギアの緩衝装置を軽くバウンドさせ、巨大で山のような機体(おそらくは世界最大のヘリコプターである)が着陸を終える…。
パイロットは安全手順に従い、テイルローターのクラッチを切り、メインローターのピッチを落とすと、後部に設けられたカーゴベイ・ハッチの開閉操作に入った。
M11短機関銃を手にした黒服に黒メガネの男たちと、迷彩服を纏いM4カービンを抱えた兵士が数人降り立って警戒する中、紫色の360モデナがバックで降りてくる。
そのド派手な彩色のフェラーリが安全区域まで離れると、降ろした兵士たちを再び載せ、MH-53Eスーパースタリオンは轟音とともに灰色の機体を光らせて飛び去って行った。
この間約8分…、学園に静寂が戻る…。
第五場(2)
校庭の隅に残された紫色の360…、そのドライバーズシートに座っているのはもちろんヒメジだ。
アザミとひまわりはちょうど訓練から帰る途中でその場面に出くわした、が、いつもなら裏のガレージに一直線に飛んでいく筈だった360が、微動だにしないのに少し気になって二人は駆け寄った。
「ヒメジ〜」
「ヒメジさぁん」
ドア越しに二人をみとめると気の無い声でヒメジ…
「ただいま で ありんす」
「ヒメジ!どうだった?」如何にも〜といったニヤついた表情でアザミが聞く。
「どう…って何がでありんす?」
二人の顔を見もせず口を尖がらせて言う…
「中華は美味しかったでありんす…」
「いや、さ、そうじゃなくて〜」
「ヒメジさん、その〜男の人とぉ〜一緒だったんですよね?」
「とっても、とっても、カッコいい人だったんでありんす…だから、はしゃぎ過ぎたでありんすよ」
「へぇ〜良かったじゃん〜じゃ、何でしょげてるのさ?」
「振られたでありんす…」
「おまけに…軽く窘められたでありんすよ…わらわは本当にデリカシーがないんでありんす…」
顔を見合わせるひまわりとアザミ…
「わらわはまだまだ子供なんでありんすっ…」
少し鼻声でそう言うとステアリング・ホイールの右裏側のシフトパドルを押し、車をガレージに向け走らせた…。
ただ、いつもの豪快なホイールスピンがなかった…。
「子供はフェラーリの運転なんかできませんよねぇ?」
「あぁ、いやぁ、そ、そういう意味じゃ〜ないと思うんだけどぉ〜」アザミが苦笑する。
真っ赤な夕陽が静かに日曜の終わりを告げようとしていた。
第六場
学園に新しい一週間が訪れた、その中にあっていつもと様子が違う生徒が数人いた…。
ひまわりとしきみだ…。
ひまわりと言えば、やけに落ち着きがないし。一方でしきみは何時にも増して独りでいる時間が多くなっている。
他方ヒメジといえば、一晩寝たらまた元の大食漢…いや、大食い女に戻っていたが…。
その日、二時限目の武智の授業が終わると、ひまわりは職員室に向かう武智についていった。
「せんせー」
「ん?なんだ 日向…」
武智は制服のミニスカートからすらりと伸びた、ひまわりの脚の方から見上げつつ彼女の顔に視線を移す…。スケベな男だ…。
「先生…どうして授業中、私の顔を見てくれないんですか?不自然じゃないですか?」
(バカ者が…そんなこともわからいでか?)
「いや、気の所為だろう?(ちゃんと脚は見ていたからな…)」
「そうですかぁ?」
「そうだ日向…、お前に渡すものがある。放課後職員室に取りに来てくれ…」
「なんです?宿題ですか?」
「まぁ、そんなところだ…」
第七場(1)
この全寮制学園の良いところは、学び舎と宿舎の距離が近いことだ。生徒は空いた時間に自室に行きちょっとした用事を片づけたりすることができるし、また忘れ物をしたとしても直ぐに取りに戻れる。
アザミもそのクチで、昼休みに気に入ったメニューが食堂で見つからないときなど、部屋に戻ってホットドッグなどを作って食べたりする。
今日もイマイチだったので冷蔵庫のチーズバーガーか中華饅頭を「チン」して喰うか〜とばかり部屋のドアを開いた。
ドアを閉めた途端、云い知れぬ「殺気」を感じたが、時すでに遅かった。後ろ手に羽交い締めされ、その片方の手に握られたクナイが喉元を狙っている。
「し、しきみっ!???? な、何の真似〜〜〜?」
長い付き合いだからクナイのデザインと腕の感触や匂いと息遣いでアザミには直ぐにそれが誰だか判る。
「流石ね、アザミ…」
「は、はなせってば苦しいじゃないよぉ」
「ふん、あなたが男だっていうのはみんな知ってるワ、いい加減その女言葉にもウンザリしてきた」
「な、何のこと????一体何が…」
「死にたくなかったら私の言うことを聞くのよ…」
「と、とにかく離せってばぁ〜しきみどうしちゃったのさぁ〜」
「今すぐ、私を抱いて!」
「はぁ〜〜〜〜?」
「今すぐ、私とエッチするのよ!…私、もう我慢できない…」
そう言うと、しきみは左手の方をアザミの股間に突っ込んだ…
そこには逞しい、カチンコチンに固まったペニスが…
「きゃぁぁぁぁぁぁ〜ちょっと何すんのよぉぉぉ!」
あるはずだった…
しきみは茫然と立ち尽くすとクナイが『チャリーン』と音を立てて落下した。
「このぉ変態ぃ〜!バカバカバカ〜〜〜〜〜」
アザミはしきみに向かって罵倒すると下腹部を両手で押さえてしゃがみ込んだ…。
「な、何故…。」しきみは惚けた顔で言う…。
「何を勘違いしてんのよ〜〜〜〜〜。アタシはれっきとした『女の子』〜〜〜!」
「アタシが騙してる相手は男子校の生徒ぉぉ〜」
「じゃ、じゃぁ…決して裸を見せなかったり、部活のシャワールーム使わなかったり…
時々『俺』って言ったりしてたのは…」
「演技だよ、エ・ン・ギ! その方がリアル感増すでしょうがぁぁぁ!」
「胸もないし…」
「大きなお世話ぁ!」(ったくもう、スッゲ〜〜〜〜気にしてるのにぃ〜〜〜〜〜)
「じゃぁ何で、みんなが武蔵坊の宿題でてんやわんやなのに、一人涼しい顔してたの?」
「だってアタシもうとっくの昔に『済ませてる』もん…」
「そ、そんな…」
最後の望みが断たれてしまい絶望したしきみはヘナヘナとその場に崩れ落ちた…。
第七場(2)
「ねぇ、一体何があったのさ、らしくないよぉ しきみぃ…」
しきみは柄にもなくめそめそと涙ぐみ始めた…。
「私(グスっ)、色情狂みたい…(グスン)…」
「え〜〜〜〜〜〜?、もう、益々訳わかんないだけどぉ〜〜〜?」
「武蔵坊の…(グズっ)宿題で…体験したの…」
「ふん、ふん…」
俄然興味が湧いてきて股間の鈍痛が消えるアザミ
「そうしたら、余りにも良かったんで、またしたくて したくて たまらなくなっちゃって」
そこまで言うとアザミの胸に飛び込んでワンワン号泣し始めた…。
「アラアラ…ガリ勉優等生にありがちな…、よし、よし…泣かないでよ、しきみちゃ〜ん」
アザミは彼女の震える背中をさする。
「ま、毎晩オナニーしてるの…勉強が手につかないのよぉぉぉぉぉ〜」
「うぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜ん、誰か何とかしてぇぇぇぇ〜」
かなりやばいなぁ〜アタシん時もそうだったけど…最初がイイと女って人生狂っちゃうんだよな〜。
「と、とにかくぅ〜落ち着こうよ…ね、しきみ?」
「うん…」
「あのさ、しきみ、なんか、そういうの抑える薬って無いの?」
「ある…けど使えない…習慣性があるから…最後は薬物依存症になっちゃう…」
あちゃ〜SEX依存症もまずいけど、そっちももっとヤバイよなぁ〜特にくノ一にとっては…。
「ちょっと立ち入った事聞くけど…、な 『中イキ』したいんだよね?」
コックリと頷くしきみ…顔が真っ赤。
「だとするとぉ〜手がないってわけじゃないんだよね…」
そう言うとアザミは不敵な笑いを浮かべた。
第七場(3)
「アタシってばぁ〜男装をするのは〜ある種の性的嗜好の捌け口でもあってさ〜」
「え?」
「アタシ バイ なわけよ…」
「バイ?」
「しきみも知らないことあんだねぇ(笑)…バイセクシュアルのこと…」
「それ、ほんと…?女の子と…どうやってするの?」
「専用の道具があんのよ…、見る?」
しきみはエロエロな好奇心の塊になってしまっていたから拒否するわけがなかった…。
アザミは奥に引っ込むと、バスルームの天井にあるメンテナンスハッチを開け、中から鍵突きの箱を引っ張りだすとそれを持ってきた。
「ちょっと待ってね」
アザミがカギの番号をカリカリっと回すとガチャリと蓋を開けた。
「ほら、これ」
アザミは中のものを持ち上げると、しきみの眼の前にそれを突きだす。
それは黒い革製のヘッドギアみたいなものに、恐ろしく巨大な男根そのものといったデザインの肌色のディルドが生えている…っというか、全体のバランスから言えば『ディルドに革バンドが着いている』といった方が適切だ…。
「す、すごいわ…」
しきみは一瞬ハヤトの逸物を思い出し、女陰が濡れるのを覚える…。
第七場(4)
「凄いでしょ〜『ペニスバンド』っていうんだよ…」
「裏側がね、こんな風になってて〜男役の方も気持ちいいんだ…アタシは『クリ逝き』型だからね、これで逝っちゃうの…」。
「そぅ、それからね、ローションを仕込むことができてぇ、このスイッチで『疑似射精』する機能付きの超スグレモノ〜、へへっ」
なんだか分からんが得意顔で話すアザミ…。いやはや…である。
生唾を飲み込んで、しきみが話す…
「あ、アザミはこれを何時?誰と?使ってるの?」
「あ〜、ここまで話しちゃったから言っちゃうか…」
「内緒にするわ…」
「ミツ先生…」
(どぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜っ)
声が出たならそのくらい驚いたろう...しきみは顎が外れかかった。
あの、超純情そうな保健の先生がぁ〜、し、信じられない…しきみはそう思った
「彼女レズ…、最初見たときすぐ判ったけどね〜」
「ど、どうして〜」
「さぁねぇ〜こんなモンで出来るんだから男相手でもって思うんだけど…
アタシの情報によればぁ〜彼女は『超』がつく『潔癖症』らしいよ〜」
その時昼休みが終わるチャイムが鳴った…。
「おおっと、教室に戻らなきゃ〜、さ、立ってしきみ…」
「う、うん」
「あ、いけね…お昼、食べ損ねた」
「ご、ごめんね」
「いいってこと、授業中パンでも齧るよ…」
そう言って笑いあうと、二人は小走りに校舎に戻っていった。
第七場(5)
放課後、今日はサッカー部がグラウンドを使用するためソフトボール部は練習がなかった。
自室で一人、ああでもない、こうでもないとブツブツ言いながらひまわりは姿見の前で色々とポーズをとっている。
というのも、先ほど武智から受け取った包みの中に入っていたランジェリーを試着しているのだ。おおよそひまわり自身が自分の選択肢に含めたこともないデザインのブラにショーツにガーターにストッキング…。手に取っただけで身体が火照る…。
ところがである…いざ試しに身につけてみるとこれが意外とピッタリくるのであった。
「うん、うん、まんざらでもない! うん!」
そう、自画自賛しながらさっきの武智に云われたことを脳内で反芻する…。
『せっかくだから例の晩はこれを身に着けてきて欲しい…、それから、俺にもプライドがある…、事の最中に決して俺の本当の名前を呼ぶことはやめてくれ…いいな?』
『それじゃ、忍者さん…って言うのはOKですか?』
『お前はアホか?アホなのか?』
『いやぁ…ダメもとで言ってみただけですぅ〜』
確かに、本来ならハヤトにどうにかして貰いたかったというのは本音である…。
だが一旦決心がついてしまうと複雑なもので、ひまわりは武智に抱かれることを待ち遠しいと思う感情を否定することができなくなっていた。
第七幕 終わり
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(次回から、いよいよ最終幕です、もうちょっとだけお付き合いください)
-------筆者注-----------------------
すみません。
第七場(5) →第八場に読み替えてください
------------------------------------
再終幕待ち
最終幕 運命(さだめ)
第一場(1)
しきみは自室の勉強机に突っ伏し、先ほどからジ〜〜〜ッとPCのモニターに映し出された化学式を睨んでる…。
「あ〜やっぱりテストしないでぶっつけ本番はまずかったのね…」
そう、独り語散ると、組まれた腕の上で頭を振った…。
秘薬『棄嫌歓来』を処方するとき、記憶の消去に寄与する成分を少なめに配合したことがまずかったことに気がついたからであった…。
しかしながら、事後にレポートを作成しなければならない都合上、その判断は決して間違っていなかったわけだが…。
こうなるとその決断に後悔する。
だが、今回の場合ぶっつけ本番になってしまうのは仕方がない筈だった。
しきみはハヤト…というより、『ハヤトのペニス』が忘れられない…。
(感情的な想いは消去し、論理的な記憶だけが残るような薬があればいいのに…)
そんな薬は当分実現しそうにない…。
そんな愚にもつかぬ想いを巡らせてると何やら気配を察した…
「こんばんは〜」
ドアも開けずにアザミが室内に侵入してきた…。背中にバックパックを下げていた。
何が入ってるかは歴然だった。
彼女はベッドサイドにそれを下ろすと悪戯っぽい表情で言った。
「待ったぁ? ボクのかわいこちゃ〜ん」
笑みを返すしきみ…。
第一場(2)
女子校の制服を着た美形のアザミが『ボク』などという一人称を使うとワケもなく萌えてしまう輩も多いだろう…。しきみは別の意味でその彼女の『演出』に興奮した…。
「どうしたの?…そんなとこじゃ〜何もできないよ…」
しきみは『あぁ!』とばかり、椅子から立ち上がりアザミの方に歩み寄った…。
アザミはしきみの肩を抱くとそっと引き寄せる…。
「怖がらないで〜」彼女はそう言うとしきみのメガネを丁寧に外す…。
「前から感じてたけど〜しきみの素顔…っとっても色っぽいよ…」
しきみは先ほどからうるんだ目でアザミを見つめてる…
アザミの顔をこんなに近くで見ることなんて初めてだから…
(しきみってば宝塚女優みたい…こんなにハンサムだったかしら)そんな風に思いながら彼女は眼を閉じる…。
二人の唇が重なる…。最初は軽く…、僅かに交差させるとアザミは静かに、そ〜っと舌でそれを抉じ開ける…。
互いの舌で押したり引いたりを繰り返し、やがて互いの興奮が高まるとそれを激しく吸い合う様になる。
息遣いが荒くなる…。しきみは既に下半身に熱い火照りを覚えた…。
アザミも気持ちの高ぶりが隠せないよ、きつく しきみを抱きしめると、彼女の耳や項を舌で責め始めた…。
「ああ、しきみ…奇麗だよ…たまんない…」
アザミは荒々しい手つきでしきみの制服のトップスをたくしあげ、左腕を潜り込ませるとブラジャーを外しにかかった(言うまでもないがアザミは左利きだ…)。
まるで男にされているような感覚で、興奮が高まる…しきみは声が出ない…。
白い乳房を露わにすると、アザミは激しい息遣いでそれを掴んで貪った…。
「ああぁ いゃん…」
まるで猫がミルクを飲むかのように、彼女の舌は高回転でしきみの乳首を掬いまくる…。
その攻撃に耐えられなくなったしきみはヘナヘナと腰の力が抜け、バランスが崩れた二人はドサッとそのままベッドに転げ落ちた。
アザミは横たわるしきみの腰のあたりにぺたりと尻をつけて座ると、しきみの胸を愛撫しながら自分のスカートをたくしあげ、ショーツに右手を突っ込んだ…、
「ぅんっ!」っと声にならない程度に一瞬唸って頭を振ると、左手でしきみのスカートのホックを外し、スカートと腹の間に隙間を設けそこへ其のまま手を差し込んだ。
下着越しに微かな茂みの感触を楽しむと、さらにその『向こう側』へと指を進める…。
そうしながらも自身の右手はアザミの最も敏感な部分を弄り快感を全身に送っていた…。
第一場(3)
しきみはふと薄目を開け、その仕草を見つけるとアザミの太ももに手を置き意思を伝達する…。
「…はぁ、はぁ…、し、しきみ は、まだ何もしなくていいよ…」
アザミが掠れがちな声で言い笑みを投げる。
彼女の指は、既にしきみのクレバスに届いており、そのフチの凹凸を確かめるように何度も何度もなぞっていた…。
「ア、アザミ早く、来てぇ…」呻くように言うと、しきみは彼女の手を股に挟むような格好で右ひざを立て、腰をひねる…。
返事もせず、アザミは股間の愛撫のテンポを増す…。
下着の上からの愛撫は、それ自身乾いているからこそ、滑らかに指を滑らせることが可能なため効果が得られるが、しきみの泉は既にその意味を失わせるに十分な湿り気を与え始めている。
それを察知すると、アザミの指はショーツの脇から中にもぐりこみ、ウネウネとまるで蜘蛛が這うかのような指遣いでしきみの花弁を弄び始めた…。
「…どう?…気持ちいでしょう…」
その筈だ、同性の行う愛撫に間違いがある筈がない…。
微かではあるが、荒い息遣いと、「チャクッ、クチュッ」っといった音だけが隠微に響き渡る。
「しきみ、だから…」
「ダメダメ、ここで入れたって詰まんないよ…もっと楽しもう…」
「で、でもぉ…」しきみは眉を寄せて拗ねる…。
しきみはまだ一度しか体験がない…それしか知らなければそれだけを欲しがる…
だからアザミはもっと他にも美味しいものを食べよう〜といっているんだが、しきみは我慢できない。
ベッドサイドに転がってるバックパックに手を突っ込むと、アザミが持ってきたペニスバンドのディルドを引っ張りだした…。
「アハー…しきみってば〜大胆〜」
それを面白がって茶化すアザミ…。左手の指先はグショグショになったしきみの肉壺を掻きまわし続けている。微かに指先の皮膚がふやけてきていた。
『ジュップ!ポップッ!』
堪らぬしきみはディルドを口に入れる…無意味な行為に見えたがこれは紛れもなく『代理行為』として成立するものだった。
第一場(4)
皮膚に浮かんだ血管一本一本までリアルに再現されたその『張形』は薄明かりの部屋で見れば本物と見紛うばかりの仕上がりであり、
それを少女が美しい顔を歪めてフェラチオしている絵を見せられれば誰でも興奮を覚えるだろう…アザミとて例外ではない。
しきみは下腹部から快感を送られ続けながらも、執拗に この疑似ペニスに愛情を注ぎこんだ…。
(ああ、愛おしい…、コレがとても愛おしいワ…)
そんな想いだけが脳内を満たす…。
他のことなどどうでもいい…早く誰か私にブチ込んでぇ〜。なんて乱暴な言葉…、心の叫びでしか使えない…
「ぁ…あ…ふ〜ぅんっ…」
しきみが悶え狂う中、アザミは先に軽く逝ってしまった…
微かに左手の動きがフリーズしたことでしきみがそれに気づく…
「ご、ごめ〜ん…、なんか久しぶりだったんで…」ペロリと舌をだす。
「それに、しきみの顔〜物凄く色っぽいんだもん〜感じた〜」
しきみはいいから早く〜といった顔でアザミを見つめる…
アザミはショーツとスカートを脱ぐと、しきみの口からそっとペニスバンドを奪い、
その裏側に突出している衝撃吸収型ゴムで覆われた突起が、自分のベストポジションに来るように丁寧に装着した。
そしてしきみの胸のあたりにまたがる…
「どう?男みたい?…」
「…う…うん…凄いエッチな眺め…」
実際そうだろう、168cm程度の華奢な美少年に丸太のようなペニスがぶら下がっていたとしよう…そんな絵は世界中の「ショタコン」に絶賛される筈だ…。
(いや、どうだろう?)
第一場(5)
「舐めて…」
アザミが言うよりも早く、しきみはそれを口に含み、音を立てながら吸いまくってる。
行為の際伝わる振動は、的確にアザミの局部を刺激している…。
先ほど『カル逝き』したアザミには結構な刺激だった。
「あ〜〜感じるよ〜しきみちゃ〜ん」
アザミも自分の良いように腰を使い始める…。
一通り楽しむと、アザミは態勢を変え、しきみの着衣を全て取り去った。
「本物と違うからね…ちょっと準備が要るんだ…」
そう言うとアザミはしきみの両腿を割り、すっかり様子の変わってしまった彼女の肉壺を眼にした。
普段はバイ菌や異物の侵入を防ぐためにしっかりと閉じる構造の器官も、これから繁殖のための行為に及ばんという状況に合わせ、ぱっくりと開いてそのピンク色の入り口をのぞかせていた…。
彼女はそこへそっと舌を這わせる。
一瞬大きく眼を開いて衝撃を受け取ったしきみだが、その表情は数秒を待たず陶酔の表情に変わっていく…。
「あぁん、あぁん、あぁん、あぁん、あぁん、あぁん、あぁん、あぁん、」
アザミの舌使いにイチイチ声を上げるしきみだったが、正直にいえばハヤトのそれを上回る気持ちよさだった…。
ハヤトは舌先でクリトリスを包み込むような圧迫型だったが、アザミはおそらく舌先を極端に尖らせることができる体質らしく、ピンポイントで攻撃する擽り型だった…。
これでは『イク』ことは出来ないだろうが、しきみにはこちらの快感の方が心地よかった…。
さらなる快感で泉が湧きたつ…このぐらい濡らせてみないことには、軟化型合成樹脂製のペニスだと激しく摩擦ができない。
「さぁて、お待たせしました〜」
そう言うとアザミは自分の『仮のモノ』をしきみの玉門にあてがい、その雌汁を先端にまぶすように付けながら、彼女の陰核のまわりをグルグルグルグルと捏ねる。
「しきみお譲ちゃ〜〜ん、どう?気持ちいい?…気持ちよかったらちゃんと口に出して言うんだよ〜〜〜」
『お前はエロオヤジか?』そう突っ込みたくなるようなアザミの振る舞いに、可笑しさがこみ上げてくる。
「はやく〜〜〜〜」
「入れて〜〜〜イレテ、イレテイレテイレテイレテイレテイレテ〜」
もう、クラス委員とか、学年首席とかのいつものしきみはそこにいなかった…。
第一場(6)
「でへへへぇ〜〜〜〜、何、何を入れて欲しいか ちゃんと言ってくれないと〜
アタシどうしていいか判んないな〜」
もう、完全にオヤヂである…。
普段は何事につけ『仕切り役』は しきみだったが、ベッドの中ではオレ様の出番ヨ!とばかり微妙に立ち位置が入れ換わったことを楽しんでいるアザミだった。
「アザミ!いい加減にしてぇ〜〜」
「やだよ…言わないと入れてやんない〜〜〜」
「も〜〜〜」
ウリウリどうすんだ、どうすんだ、とアザミはさらにこねくり回す…。
「その…オチ○チンみたいなのを…入れてください…(きゃ恥ずかしい)」
「だめ『みたい』余計…ちゃんと丁寧に『ご主人様の、その逞しいチ○ポコを私のオ○ン○に入れてください』っていうの!」
安物のAVの見過ぎである…。
「アザミ〜〜〜」
一瞬だけ普段のしきみが顔をだす…が、すぐにグリグリされると腰が蕩けそうになり、しきみは観念した…。
「ご、ご主人様…の…、その逞しくそそり起った見事なポ○チ○を、この下等動物の淫らに濡れそぼった腐れマ○コにブチ込んでください…」
かなり細部が違ったが、出来はアザミのリクエストした内容より、洗練されかつ秀逸だった…、流石は学年首席だけのことはある。
「よ、よし、よく云った!」
アザミは早速グチョグチョと、まるで煮立った『モツ煮』のようにドロドロになったしきみの秘貝を、先端で分け入る様にし、雁首の入るところまで没入させた。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜んっ」
しきみは(これよ!この感触!)そう叫びそうになるのを堪えてディルドを受け入れた…。
思えばしきみは「生の陰茎の感触」を知らない…。
ハヤトのモノはあくまでもコンドーム越しだったからだ…。
第一場(7)
「気、気持ちいい?」
そう言うとアザミはより深く挿入する…。もちろん先端に神経があるわけではないから、アザミには中の感触を楽しんだり、臨界点を感じたりすることは叶わぬが、根元の圧迫間でどこが限界かはおおよその見当がつく…。
何度か抜き差しし、ストローク可能な範囲としきみがより反応を高める部位のデータを蓄積したアザミは、徐々に腰の回転速度を高めていった。
その運動は、しきみの感じるものとは異質であるがアザミの性器にも快感を与えている。
アザミは暫く上体を立てて抽送をしていたが、やがて上体をしきみの方に重ね、肘で支えるようにして脇の下から手を差し込み彼女を抱いた。
小ぶりだったアザミの乳房も引力の手を借りて聊か目立つようになり、当然のように存立した乳首が時々しきみのそれにぶつかると、背筋に電気が走る…。
『グッポ、ジュッポ、グッポ、ジュポ』
というしきみの股間が発する淫音と、ベッドがきしむ
『ギッ、ギッ、ギッ、ギッ、ギッ、ギッ、ギッ、』という二つの音だけがリズミカルに響き渡る…。
「はぁ、はぁ、いい?、いいの?しきみ…」
快感に酔いながらも気遣ってアザミが問えばうんうんとばかり頷いて見せるしきみ…。
アザミの細い体にはしきみの腕がしっかりと巻きついて離さない…。
大きく開かれた両足は、まるでカエルを裏返したような形になり、膝から下はアザミの動きに連動して、ただ、ただブランブランと振り回されているだけだった。
間にディルドを介してお互いの恥骨をぶつけ合う二人…。
アザミは自分があと数分もしないで達するだろうなと…そう思うとラーゲの変更をしたい衝動に駆られたが、しきみがこれだけ感じていて、しかもアザミの体をしっかり抱きしめてるので、このままフィニッシュすることにした…。
(まァいいよね…いずれまたチャンスはある…)
そう思うと、ベルトに装着された「疑似射精装置」のスイッチボックスを手にし、収納されたリモコンのリード線を引っ張ると、また再びしきみの首の下にまわす…。
しきみの胎内では、精巧に作られた人工雁首が、退く度にめくれ上がりながら膣の『引っ掛かるところ』を掻き毟る…。
そうして蓄積された快感の波はほぼ臨界点に達しつつあり、彼女のバルトリン氏腺液の放出は止め処が無く、あふれ出たそれらは肛門のあたりで白く泡立ちながら毀れ、既にシーツに染みを作るまでに達していた。
第一場(8)
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あ〜〜〜〜〜っ!」
「いっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 くっっぅ〜〜〜」
大きく声を漏らすと、アザミが慌てて口でそれをふさぎ、その時の腰のひねりが留めを指す形でアザミ自身も大きく腰を震わす。自然に「疑似射精装置」のスイッチも押してしまった。
瞬間、人工的とは思えない自然なさざ波を伴ってしきみは胎内に熱い流動を感じる。
(あぁ、なんて気持ちいいんだろう…)
疑似とはいえ初めての「中だし」である。温かい液体が、子宮と膣壁の作る「死角」にでさえ毛細管現象を持ち出すまでもなく浸み込みわたり、ペニスが行き渡らず相手にされなかった残りの感覚細胞に、まるで感謝でもするかのごとく快楽を伝える…。
妊娠する危険を顧みず、それでもなお女性の殆どが「中出し」を好む理由はそこにあった…。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」
「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、」
呼吸が整うまで二人は体を重ねたままベッドに突っ伏したままでいた。
アザミは汗びっしょりだ、男役もつらい…。
壁の方を向いていた彼女は枕の上でくるりとしきみの方を見やると
脇下の向こうに、腕を額に当てて眼を閉じ、事後感に浸ってる彼女の顔が見えた…。
「どう?…」
「・・・・わ、悪くない…」
そう言ってしきみは横目でアザミを見つめる…。口元は笑みを浮かべていた…。
第二場(1)
同じころ、夜の闇に包まれて不気味な佇まいを見せる旧校舎前。
下手な化粧で「チンドン屋」のような顔になってしまったひまわりが、キョロキョロと周りを伺いながら通用口の扉の暗証番号を押す。
もちろん武智から聞いた清掃業者が使用するコードだ…。
ここさえ超えれば後は宿直室に直行するだけだから簡単だった。
約束の時間は30分も過ぎていた…。
ひまわりは言いつけどおり、忍者服から、武智の用意したオレンジイエローのニットのワンピースに着替えた。
サイズが合ってない…。ひざ下3cmくらいだし、ピタッとしている…。
そうひまわりには思えたが、彼女に武智の趣味は判らなかったのだろう…。
これまたリクエストにあったストレートロングのヘアピースを被ると、それらを入れていた鞄を木陰に隠した。
コンコンっとドアをノックして彼が出るのを待っていたが一向に開く気配がない…。
窓から中を除くと、しっかりハヤトに変身していた武智が布団の中で横になっているのが見えた。
「いっけな〜い、遅刻したせいでぇ先生…寝てしまったんだわ〜」
そう思うと、泣きそうになりながらしゃがみ込んでしまった。
「そうだ、こういう時こそ『くノ一の腕』が試されるんじゃない!」
「『忍びの者たち』第19作:『据え膳食わぬは男の名折れ』でもこのような場面で電蔵さんが…」
そう言うと、ひまわりは勝手口に回り、ヘヤピンで鍵穴を抉じ開けようとする…。
「あれ?」
隙間から見える筈の鍵のロッドが出ていないことを見てとる。
「不用心ですよ…お勝手のカギが開いています…」
そう独り語散て中に入った…。
第二場(2)
ひまわりは台所の照明を点けると、廊下に出て寝室に向かった。
「へー結構中は奇麗なんですね…」
これからしようとすることを考えればなんか余裕の発言だ…。
和室とリビングを隔てている襖を開けると、微かな鼾をかいて武智が…
というかどこから見ても万里小路ハヤトが眠っていた…。
最初はこちらを向いていたが「うう〜ん」と唸ると窓の方に寝返りを打った。
「センセ…」っと言いかけて、武智との約束を思い出し、慌てて口を塞ぐ…。
「ハ、ハヤト殿…」
目覚める様子がない…。
「ハヤト殿〜!日向向日葵、只今操を捧げに参上しました〜〜〜〜」「た〜〜」「た〜」
今度は山にコダマするほどの大声で言った。
「ぬなぁ〜〜〜〜〜? 何だ何だ何だぁぁぁぁぁぁ〜」
跳び起きたハヤト。凄い…リアクションまでそっくりだ、武智先生って本当にすごい…。
「あ〜〜〜〜〜〜〜っ、ひ、ひ、ひ、ひまわり? 何だお前?何してんだ?仮装パーティか?」
マジで凄い…、まるで本人だわ…自分で指示しておきながら、本当に何も知らなかったような演技…。
「ハ、ハヤト殿…、遅くなって大変申し訳ありませんでした…、その、お化粧に時間がかかり過ぎてしまってぇ」
ひまわりは正座すると深々と頭を下げて謝罪する。
「な、何を言ってんだよ遅刻とかって…俺は〜」
そこまで言うと、正座したひまわりの丸見えになってる真紅の下着に目線を奪われる…。
「そ、そ、それに何だそのフィリピン・パブみたいな恰好はぁぁ」
言いながら、目線はさっきから1mmも動いていない…。
第二場(3)
なんか様子が違うな〜と思いながらも…ひまわりは、ハヤトに成り切ってる武智を傷つけまいと即興で合わせることにした。
「こ、これは、秘密を握ったエロ工作員を誑かし、見事に毒牙にかけ絡め取って任務を果たすように派遣された女スパイの格好です!」
「それ、おまえ絶対趣味が悪いっての…俺の母親が20代の頃流行ってた恰好だぞ?」
「でも〜」
「しかもその『エロ工作員』って何だよ!」
ひまわりはハヤトを指差した。
「んがぇええええええぇ〜〜〜〜っ! お、俺かぁ〜〜〜〜」
「ですからぁ、始めますよ!」
ひまわりはキッとハヤトを見つめると、膝立ちになってワンピースを脱ぎ始めた。
「んん、ちょ、ん、脱ぎにくいなぁ」
普通は大きく開いた背中のクビレを利用して肩から脱げば簡単なのに、ひまわりはTシャツと同じ方法で脱ぎにかかったから上手くいかない…。
腰のあたりでストリングに繋がる部分だけが黒く彩色された、小さなフリルのついた真っ赤なシルクのショーツが、艶めかしくハヤトの眼の前で踊っている…。
「お、おぉ〜い、ひまわり、一体何をやってんだよぉ〜〜〜」
眼はしっかりひまわりの股の膨らみを追いかけている…。
「なこと言ってないで〜〜〜ぇ、ハヤト殿も手伝ってくださぁぁい!」
シチュエーション無視でヘルプを要求するひまわり。中で鬘が脱げかかって収拾のつかない状態になっている…。
「ホントにも〜何なんだよ〜」
ハヤトは跳び起きると仕方なく詰め寄った。
「とにかく、落ち着けひまわり…まず袖から抜いてみろ…」
一旦頭をだして、肩をすぼめて右、左と袖から腕を抜いた…。
オレンジ色のワンピースがクシャクシャになって、まるで腹巻のようになっていた。
露出した部分は真赤なブラとショーツに薄橙色のストッキングがガータベルトのクリップに吊るされている…。
筆舌に尽くし難い異様さを呈していた。
第二場(4)
「プッ……、うっ ひゃひゃひゃひゃ 」
堪え切れず爆笑するハヤト。
「何 はぁ〜んだぁ、そ の 格 好 はぁぁぁ〜 うひゃ、うひゃ、うひゃひゃひゃひゃ…」
「酷い…、あ、あんまり…よ…、酷い…」
ひまわりはそのままヘナヘナと崩れ落ち、ペタンと尻をついた。股は丸見えである。
都会で暮らし、当たり前のように婦人向けファッション雑誌に眼を通す、標準的な女子学生ならば、武智に渡された妙なマテリアルであっても、それなりに微調整を入れて見られるようにして来ただろう…。
だが、ひまわりにはそこまで要求するのは少し荷が勝ち過ぎていた…武智の思惑は見事に逆の目に出てしまった。
「グズっ…」
泣きだすひまわり…。
「うひゃ・・・・ってか、ひまわり…」
「ぜっがぐ、がんばっで、おしゃでじでぎたのび…」
大げさに引いたアイラインとマスカラの所為で眼の周りがパンダになっている…。
「う、ぁ、あああ、す、すまん!笑い過ぎた…」
「ぜ、ぜんぜいに…いばれだどうでぃでぃび…、しでぎだんでずよ…そでをぉ…」
「ってか、俺全然関係ないだろう?…おれは、た、武智先生が〜夜の街に〜内緒で繰り出すからってんで代わりを頼まれたんだよ〜」
「びぇ?」
「いや、だから〜留守番頼まれたんだ…」
「だげじぜんぜびど へんぞぶでば だいどでずが?」
解読が面倒くせぇから先ずは鼻をかめとばかり、ティッシュを渡すハヤト。
「おれは本物だよ、ほれ〜」そう言って首のアザを見せる。
ハヤトの手裏剣模様は真っ直ぐな十字形、もし武智だとするならば、それは少しカギ十字のように曲がっていたはずだった…。
「うぁぁぁぁぁ!ホ、ホンモノ〜〜〜〜〜〜!」
第二場(5)
「ピ〜〜〜〜ヒュ〜〜〜〜〜〜っ」
ヤカンがお湯を沸騰させたことを告げると、ハヤトはコックをひねって火を消す。
ココアの粉を入れてある二つのマグカップに湯を注ぎこみながら…
「そうか〜…それで武智先生は一杯喰わしたってことだな…」
「・・・・・・・」
ひまわりはハヤトのカッターシャツを着て体育座りしてうつむいている…。
「からかわれたんだな…、あんまり人をバカにした要求だったんでさ…」
「どうしてですか〜〜〜〜?」
「男の人って…、好きではなくても女の人から誘われたら…エッチできるんですよねぇ?」
「『忍びの者たち』』第19作:『据え膳食わぬは男の名折れ』でも電蔵さんが…」
「た、武智先生が、もし、おまえを好きだったとしたら話が違うだろうがぁ?」
ハヤトは少し語気を荒げた…。
「ぁ…」
ひまわりはただでさえ大きめの眼をさらに見開いて愕然とした…。
「お前はまだぁ、高校性だからぁ、そう言う『機微』に疎いのも仕方がないけど…
忍者になりたいってくらいの奴がぁ、あらゆる可能性を考慮しないで行動してどうする…」
ひまわりにココアを渡すハヤト。
「あたし…、しきみさんにハヤト殿を取られるかもしれないって思って… そんな考える余裕もなくって、なんかヤケッパチになっちゃって…」
一筋、涙が頬を伝う。
「俺はしきみとは寝てない!」(嘘だったが本人は全くその自覚がない…)
「えぇ?、本当ですか〜〜〜〜?」
「いやまぁ〜今思えばぁそれに近い状況には誘い込まれたんだろうがぁ〜なんか、奴も途中で嫌になったんじゃないかなぁ〜」(風呂場で転倒したもんなぁ…)
「とにかくぅ〜俺は、しきみに指一本触れてないからな!」(嘘である…、以下同文…)
「ハヤト殿ぉぉぉぉ」
喜びのあまり、飛びついてハヤトに抱きついたひまわり…。
ドサリとそのまま布団に転がる二人…。
第二場(6)
「こら、よせぇ〜」
ハヤトはひまわりの下敷きにされ、もがく。
「わたし、スッゴク嬉しいです、うれしー、うれしー、うれしー、うれしー、うれし〜〜〜〜ぃ」
ハヤトの上で脚をバタつかせて喜ぶひまわり、シャツがはだけ、赤い下着が丸見えになっている。もちろんTストリングスのボトムだから尻は殆ど丸見えだった。
「ちょ、ちょっと、よせ、静かにしろ!ひまわり〜〜」
「ごしゅじんさまー スキスキスキスキ、だい好きぃぃぃぃ〜」
ハヤトの顔にキスの乱れ撃ちをする。
「ばかやろー」
そう怒鳴ると、一転ひまわりの肩を掴んで押しのけると、逆にひまわりの方を仰向けにして布団に押しつける…。
「そんなことすると…俺だって…俺だって…」
「お前を ど う に か したくなっちまうじゃないかよっ!」
両肩にハヤトの力を感じても、そのまま黙って見上げるひまわり…。
「お前は、お前は、…男の気持ちなんて…これっぽっちも理解してない…」
見つめ合う二人…。
「…じゃ ぁ… わたしに それを 教えてください ハヤト殿ぉ… 」
そう言うと大きな瞳を閉じるひまわり…。
その意味を理解したハヤトは、彼女の唇に自らのそれを合わせた…。
やがてそれは激しい抱擁になり、ひまわりもいつしかハヤトの背中に手をまわして互いの舌を絡めあう…。
第二場(7)
長い、長〜い口づけが終わると、ひまわりのか細い体を抱きよせハヤトが言った…
「今日で、主従の関係は終わらせよう、ひまわり…いいよな…」
「…ハ イ…」
「俺はお前を愛している…」
「 は い 」
「だが、俺は教師でお前は生徒だ…」
「は…い?」
「今、お前を抱いたら俺は一生後悔するかもしれない…」
「はぁ…?」
そこまで言うと、ハヤトはひまわりを座らせて、自分も正対して正座した。
「お前が今日覚悟を決めてきたのはよく分かってる…。だがな、お前も俺が好きならこんな大事なことはちゃんと相談してから行動に移せ…」
「それに…いくら"くノ一"の授業の課題だからって、身も心もズタズタにしてまで、やることはないよ、お前だって…最初は悩んだんだろう?」
「はい…」
「とにかく、こんな形で、チャンスとばかり飛びつけるほど、お前は俺には軽い存在じゃない…」
「先の事は分からないけど、俺だってまだまだこんな食うや食わずの生活だし、お前にふさわしい男か?と言われたら…正直、自信はない…」
「でも、将来もお前が俺を今のまま好きでいてくれるなら、それに応えられるように頑張るよ…そしたら、その時こそ『本当の契り』を交わそう…」
「…俺はそう思ってる…」
(ハヤト殿〜)ひまわりは彼の本心を聞いて心底、彼を慕ってきた自分に間違いはなかった…そういう確信を持てたことが嬉しかった…。
しばし和みの空気を楽しむ二人だったが、暫くして ひまわりはココアを啜りながらあることに気がついた…
「あ〜〜〜〜〜〜〜っ!」
「っんな、なんだぁ〜急にぃ〜」
「…武蔵坊先生に出すレポートが〜」
しょげ返るひまわり…。
「な、なんだぁ〜 そんなことかぁ〜 そんなもん、俺が手伝ってやるよぉ…」
「いいんですか?先生がそんなことをしてぇ…」
「構わん、もともと無茶苦茶な宿題なんだから、こっちも無茶苦茶してやればいい!」
そう言うと、ハヤトは大声で笑う…
ひまわりも笑顔で応える
第三場
あれからひと月が過ぎた…。例の成績表をまとめ、既に校長に提出済みだった武蔵坊がその承認を貰うために校長室を訪れた。
「今年も全員が無事提出したわけですね。大変結構な指導ぶりですよ武蔵坊先生ぇ…」
抹茶を啜りながら、やつがしら が言う。
「いえ、全員ではありませんワ、つきよ姫が未提出です…」
「彼女は特待生です…だいたい『妖術』が使える特殊なくノ一ですよ?色仕掛けの修練など元々不要な生徒…問題ありません…」
「数人、事実とは違うと思われる内容のものを提出した生徒が居りましたが…如何いたしましょう?」
「武蔵坊先生ぇ…。内容の真偽より、本来、生徒の問題解決能力を見定めるための課題です…」
「くノ一にとって、手段より結果が全てです…提出した生徒には全てB+以上の評価を与えるのは当前です。その中で甲乙つけるのは先生のお仕事です…」
「真剣に身を捧げた生徒がいることを思うと、少々納得がいきません…」
キラリと やつがしら のメガネが光る…。
「全ては、生徒一人一人の対応能力の現れです…。貴方の仕事はそれを見極めて個々の進路指導に生かすことだけですよ…」
「本校の卒業生全てが、諜報活動に従事するわけではないのです…、要人護衛官、特殊工作部員、麻薬捜査官…彼女たちをリソースとして必要とする政府機関は腐るほどあるのですから…」
「承知いたしました、過ぎたことを申し上げて、済みませんでした…」
第四場
「ええぃ! やぁ〜! たぁーっ」
『カッ カッ カッ カッ』乾いた音を立てて手裏剣が的木を噛む…。
修練場で汗を流すひまわり…。今日は調子がいい…。
「ひまわりー」
ハヤトが自転車を押しながらやってきた。
「ハヤト殿〜」
シュタタタと素早くハヤトのもとに移動し、しゃがんで首を垂れる…。
「これからぁ〜もんじゃ屋に行くんだが〜一緒にどうだ?」
「ハイ、是非お供させてください!」
荷台に腰をかけるとしっかりとハヤトに掴まるひまわり…。
「じゃ、行こうか…」そう言うと、ハヤトはゆっくりと漕ぎだした。
新緑の香りが心地よい穏やかな風が
まるで二人を後押しするかのように吹いていた。
最終幕 終わり
エピローグ
ばっちゃ、お元気ですか?
梅干し、ありがとう!さっそく万里小路先生にお分けしたら、とっても喜んでいただけました。
お友達の しきみさん、アザミちゃん、ゆすらちゃん、ヒメジさんもよろしくお伝えくださいって…。
あ、そうそう、先週、東京にある強豪女子校との対抗戦で私とアザミちゃんがアベックホームランを打ってで快勝したんだよ!凄いでしょ?
その時に珍しくしきみさんが応援に来ていてとても喜んでました。何故か抱きつかれたのはアザミちゃんだけだったけど〜。
皆、いつかはばっちゃのお家に遊びに行きたいって言ってます。その時が来たらよろしくお願いしますね、一人物凄く食べる子がいるんで大変だとは思うけど…。
では、また。
日向 向日葵
完
終わっちまったか……GJ
楽しかったぞ
ありがとうございます。
とんだ大作になってしまって…
校正ミスも多く読みにくかったと思いますがご了承ください。
GJ
御かしらワロス
あざみはやっぱ女の子設定のがいいな
保守
一緒に風呂入って何故乱交にならないのか不思議。
さくら姫の回の話?
そこは教師と生徒…カッパもいたし
さくらと椿の声優が同じ人らしい
んなこといったら、カッパとナナフシも同じ
おれ、この二人が掛け合うシーン出てきたらどうすんだって?勝手にドキドキしてたなw
落ちる前に誰か書いてくれ
>>618さん
続編でも新設定でもいいから
アザミ中心で短編ネタはあるんですが需要ありますかねぇ…
同じく
>>629 あるぞ。少なくとも俺は需要ありまくりだぞ。
(1)
霞の里、志能備学園では第二学年の実技教科から本格的な自動車、バイク、航空機の操縦訓練が加わる。忍者とて実技では近代的な乗り物を駆使できなければ任務の遂行に憚るというわけだが、ただ操縦や運転ができればいいというわけではないからそれ相当の厳しさを伴う。
自動車運転の場合、卒業までにはいわゆる国際A級ライセンスに近い技量を要求される程であった。
「あ〜あ、明日の検定走行…自信ないなぁ〜」
ひまわりがしょげ返る…。
「とか言ってぇ、あんた結構いいタイム出してたじゃん?」
アザミが意外ね〜といった調子で…
「わらわは運転は大好きでありんす、待ち遠しいでありんすよ〜」
例によって状況に関係なく刀を振り回しながらヒメジ・・・。
「ヒメジ、明日使うクルマは乗りなれたフェラーリじゃないんだから…あんまり調子に乗らない方がいいわよ…」
しきみが釘を刺す…。
「わかってるでありんす、そこらに転がってる車で如何にタイムが出せるか…そうでなくては真のくノ一ではない…でありんすね〜」
「授業でのトライアルなら、そこそこリラックスできるんですけど〜、明日はハヤト殿が隣に座るんで〜なんか緊張しちゃって〜」
「あら〜いいじゃな〜い…オシドリ並みにラブラブドライブ〜」ゆすら、眼がハートマーク。
「そう言えば…、担当ナビゲータ…アザミもハヤトが乗るんだったわよね?」
配車表を見ながらしきみが言う。
「そ〜なのよねぇ〜、あいつったらぁ、きっと静かに座ちゃ〜ないよねぇ〜」
アザミのアグレッシブでリスキーなドライビングテクニックは評判だった。知ってる者だったら誰も助手席には乗りたがらないだろう。
「アザミは無駄にドリフト走行するから…、」
オートマのFF車でドリフトするなんて無駄以外の何物でもない…とでも言いたげにしきみ。
(難易度が高い技術をして見せたところでタイムに結びつかなければ意味がないじゃない…)。
「その点、しきみさんはタイヤに優しいアラン・プロスト走行ですもんね〜」
このひまわりの喩えはいつもながら渋すぎてしきみは(誰?それ?)といった表情…。
「とにかく、明日のトップタイムはアタシが頂くわ〜」
アザミは負けじと言い返す。(本番はちゃんとやるわよ!)
「無理無理、私かひまわりがイイ勝負してブッチギリでしょうね…」
しきみが眼鏡を直しながら自信満々に言う。確かに『脹らまない滑らない無駄がない』走りはこの2人が一、二を争う。
「いやいや、わらわでありんす〜〜〜」
フェラーリに乗れないとトップタイムは彼女にはつらいかも…。
だが、実際のところ、この5人の腕前は校内でもトップクラスで群を抜いていた、流石に『純粋培養の試験管ベビー』というのは伊達じゃない…。
話は最もタイムが遅かった者が、残りの者にお好み焼きを奢るということで纏まった。
(2)
翌日、今日は土曜日だが、丸一日かけて第3学年と第4学年全員の運転技術検定試験が行われる(志能備学園は4年制の高等専門学校に分類されている)。
と言っても、ジムカーナやダート・トライアルといったものではなく、蓬莱山々麗を望む場所にあるドライブインの駐車場を起終点に、蓬莱山を周回する舗装路の一部を使用した約10kmに及ぶ2車線のワインディングロードをコースとしたタイムトライアルである。
前半は2合目ほど下り、後半は来た道とは別のコースを使った登りでスタート地点に戻るまでを計測する。この間、霞の里はこの公道を使用禁止となる。
「本日は天候に恵まれ、路面温度も良好…。いいドライビング日和になりました。みなさんには日頃の修練の結果を大いにアピールされんことを期待します…」
やつがしらの開会宣言でまさに「レース開始」といったところである。
コースの拠点拠点では町中の人たちが手弁当で見物に訪れている。
それもそのはずで、今日は里にとっては一年に一度のモーターパフォーマンスが無料で見られる『お祭り』になっていた。
例によって見物客の存在は一目ではそうと分からない。もんじゃ屋のマンサクは堂々とブックメーカを気取ってノミ行為に及ぶ始末だった。
コースの誘導や、運転の実技を観察するために各車に教員たちが同乗することになっている。生徒70余名に対し、車は8台が用意されており、それぞれが出走順抽選で配車されていた。
万里小路ハヤトは4号車…9人の運転に付き合わされることになっていた。
「4(死)号車かぁ〜、なんか不吉だよなぁ〜」
天を仰ぎながら配車表を睨んでブツクサ言う…。
救いがあるとすれば、愛しのひまわりの横に座れることだけだったが、一方で『峠の暴れん坊』ことアザミも控えているので何の慰めにもならない…。
「ハヤト殿ぉ!」
「うぁぁぁぁ!な、なんだ〜、脅かすなよ〜」
すっかり気落ちしたハヤトの後ろに、黄色いドライビングスーツを着たひまわりが立っていた。
(2.2)
「今日は、ハヤト殿に私のナビになって頂いて、なんか嬉しいやら緊張するやらで…、あ、
でも、よろしくお願いします!」
「あ、あぁ、そうだな…よろし く…」
ドライビングスーツが妙に似合っていた。身体の線が出ていて色っぽく見えた。
「それにしてもハヤト殿ぉ〜、どうしてそんな具合が悪そうなお顔をしてらっしゃるのでしょうか?」
「・・・だって、これ・・・」
ハヤトは配車表の先頭にある名前を見せる…。
「なぁ〜によ…、アタシと乗るのは嫌だってわけぇ?」
横から割りこんでアザミが言う。
「あぁぁぁぁぁ、い、居たのかよ〜・…、だってお前〜」
「そんなにアタシの運転怖いかなぁ〜」
「・・・・ハッキリ言って・・・そうだ・・・」
下をみてハヤト…。しかも初めてだから想像もつかないだけに余計に心配だ。
「あ、だ、大丈夫ですよ…今日はリタイアしちゃまずいから無理しないよね?アザミちゃん…」
「そうね〜、でもぉ、残念ながら〜走行順一番目だからベスト尽くさないとトップは狙えないからどうかね〜」
アザミのスカイブルーのツナギ姿もなかなかの艶めかしさだ…こいつ本当に男なのか?ハヤトは状況と食い違う想像で現実逃避をする。
「そろそろ時間よぉ〜、さぁ、観念して乗った、乗った!」
ハヤトの尻を叩くアザミ。
「いってらっしゃーい」
ひまわりが少し心配そうに笑って見送る。
(2.3)
走行順抽選で[1]番を当てたゆすらの運転する1号車が、既にグリッドを勢いよく飛び出していた。
運行前点検を型どおり済ませ、ヘルメットを被ってシートにつきベルトを装着するとアザミはエンジンスイッチを入れる。
クルマはルノー406、『仕事場』は東ヨーロッパから中国を含むユーラシア全域が想定されているのだから当然左ハンドルの欧州車になる。
しかもトランスミッションはオートマチックで一般的な前輪駆動車…。ロールバー、シート、など安全装備だけがレース仕様であり、エンジン、タイヤなど全てがノーマルなものでハッキリ言って運転が楽しいクルマではない。
つまり、任務中に調達可能な、極めて平均的なクルマを如何に速く走らせることが出来るか?を問われたテストだったからだ。
アザミはエンジン音を確かめるように軽く吹かすと、チェンジレバーを2ndポジションに叩きこんだ、
「じゃ、いきますよぉ」
そう言ってグリッドで待機する3号車の後ろにクルマを付ける。
「あ、ああいいぞ、前が出て5分たったら旗の合図でス、スタートだ」
「あいよ〜」
すぐそのあとで3号車が飛び出す。
待ち時間、アザミは助手席のハヤトを見る。まだ走ってもいないのに両足を床に突っ張るような姿勢で前を凝視している。
(なんか、カワイイ〜)アザミはそう思った。そう言えばハヤトが赴任以来、彼と同じ空間で2人きりというシチュエーションは初めてのような気がする。
(こういうの久しぶり〜なんか新鮮〜)そんな風に思いながらそろそろかな?と前を向く。
ちょろぎ教頭が白旗を振り降ろしてスタートの合図を送ると、アザミは思い切りアクセルペダルを蹴った。
軽く前輪をホイールスピンをさせて大きくテールを振った4号車は脱兎のごとく山道に躍り出る。
(2.4)
前半は下り坂で殆どがヘアピンカーブになるコース。アザミは2ndレンジとLレンジを使い分け、左足ブレーキ操作で巧みに切り抜ける。速い、速い、見る見るうちに3コーナ程先の5分アドバンテージがあった筈の3号車のテールランプが見えるまで追い上げた。
多分あと500mもない。仮に時速100kmだと17秒程の差だ。
ハヤトは無線でオフィシャルに向け、自車が3号車に接近することを告げる。
(結構冷静じゃん…)アザミはハヤトの意外な仕事っぷりに感心する。
と、その時だ、僅かな左曲がりのカーブを出かかったとき、目の前を小鹿が横切ろうとしていることに気付く…
「あ、あぶな〜〜〜〜〜い!」
ハヤトがそう叫ぶより先に、アザミは素早くギアをニュートラルに叩きこんだあと軽くブレーキをかけ、瞬間的に『フロント過重』の状態を作ると思い切りサイドブレーキを引きステアリングを切った。
けたたましく後輪が悲鳴を上げて180度旋回したクルマは小鹿をよけることには成功した。
この判断は正しかった、4輪ブレーキではタイヤがロックし、そのまま真っ直ぐ進行するのは歴然で、それだと確実に小鹿を撥ね殺すことになっていただろう。
しかしながらスピードを殺しさらに反転してノーズを戻すには聊か直線距離が足りなかった。次のカーブに差し掛かったところでクルマはセンターラインを横切りそのままガードレールをへし曲げて谷側に転落する…。
「コードレッド!コードレッド!」
大会本部に連絡が入った。
「どうしました?」やつがしらが訝しげに問う
「今、コースマーシャルから連絡が入り、4号車がコースアウトを…」
「誰のクルマです?」
「万里小路先生とアザミが…」
「ええ、そ、そんなぁ」傍で聞いていたひまわりの顔が青ざめる…。
(3)
大きな衝撃音とともに、枝を折り散らかしながらクルマは後ろ向きに谷に滑り落ちていく。
幸い岩盤ではなく雑木林になっている緩傾斜の土面の坂なのでクルマはその間をなぞるようにして走り落ち、大破せず道路から30m程下ったところで停止した。
右のサイドミラーがピボットの所から丸ごと飛んで行ってしまっていた。
「うぅ〜 いってぇ〜〜〜〜〜 」ハヤトが唸る…。
「だ、大丈夫?センセ…」
申し訳なさそうな顔でアザミがハヤトの顔を覗き込む。
「・・・だ、大丈夫だ…ちょっと口の中噛んじまって…」ぺっと血を吐く。
「血が出てる・・・ごめんね〜」
アザミは窮地で自分のテクニックが生かされなかったことを悔いていた…。
「・・・気にするな・・・それよりお前の方こそ怪我はないか?」
アザミのレーシングスーツの胸のファスナーがはだけていた…。ブルーグレイのタンクトップが覗いている。
「アタシは大丈夫・・・、ホントごめんなさい…」
アザミは項垂れてエンジンスイッチを切った。
「し、しかたないさ、不可抗力だ…それより…」
「む、無線で皆に知らせなきゃ…」
ハヤトが無線で本部に問いかける。が、しかし応答がない…。
「変だな…、壊れてるとは思えないが…」
ケンウッド製車載無線機のチャンネルを確認しながら繰り返し操作するが、聞こえるのは『ザー』っといったノイズだけであった。
「きっとアンテナだよ、壊れたんだワ…」
「そ、そうかな…」ハヤトは納得がいかない…。
「センセ…歩ける? とりあえず上がってみようよ…」
アザミはハヤトの4点式シートベルトを外すのを手伝いながら言う…。
緊急事態だというのに、久しぶりに『男の身体』に手を触れることに少しだけ胸が高鳴った…。
(3.2)
二人は少々ふらつくのを覚えながら、道路のある方向に緩やかな崖を登る…。
何だか様子が妙なことにすぐ気がついた…。
いくら人里離れた山道とはいえ500mごとに1,2年生が務めるコースマーシャルが控えていたのに加えて、身を潜めて見物している町の連中だっていた筈だから、ちょっとした騒ぎになっていても良さそうだ…、だが、人の気配が全くない。
道路にたどり着いたところで、更に妙なことに気がついた。確かに2人のクルマが激突し破損していた筈のガードレールが傷一つなかった…。道路にはタイヤ痕もない。
「あれ〜? 一つ先のカーブに出ちゃったかな?」
「違う…。此処じゃないわ…」
アザミが見上げてる立木にはどれも葉が付いていなかった…。枯れているように見える。
「ここ、一体どこだ…?」
(3.3)
『アザミが事故った』しきみはそう聞いて少し胸が掻き毟られる想いがした、
「で、現場はどこ?」
「中腹の第2セクターに差し掛かったところでありんす…。いま縄跳達が向かってるようでありんす。わらわたちも行くでありんすか?」
「あたりまえじゃない!」
しきみはそう吐き捨てると、ひまわり、ヒメジ、を伴ってマーシャルカーに徴用されていたヒメジの360モデナに乗り込んだ。2シーターなのでひまわりと抱きあって助手席に座るしきみ…。
「ちょっと窮屈だけどすぐそこだから我慢するでありんす」
「いいから出して!」
語気を少々荒めていうしきみ。
「行くでありんすっ!」
そう言うとヒメジは2ndギア発進で360をコースに向けた。
(4)
ハヤトは木立の風景が、確かに先程と全く違うことに気付いた。夏真っ盛りの筈だった蓬莱山山麗にしては殺風景過ぎる。
確かに、道路はちゃんと舗装されていて、見るからに先程まで走っていた山道と同じものだとは判る。
しかし、この雑木林は針葉樹だから季節が変わったとしてもこれほど葉が付いていないというのはどう考えてもおかしい…。
それに、全ての植物が枯れているわけでもなく、樹齢の長い木だけが枯れ、雑草やコケ、シダ類や一年草の類は変わりなく生い茂っているのも妙だ。
「お、俺たち、なんかとんでもない所に飛ばされちまったみたい…だなぁ…????」
「おかしいのは場所よりむしろ時間なのかも…」
アザミはそう言うと町の方を指さして見せた。
木の葉がないために、遠く町の様子が伺える。が、一見いつもと同じように見える建物も一つ一つが何だか古く、寂れて見えた。
「とにかく・・・学校に戻ってみない?」
「そ、そうだな・・・」
そう言うと、ハヤトはアザミの後を追って道路を登る方向にむけて歩きだした。途中の三叉路を山側に折れるとその先数キロも歩けば学園がある。
アザミの後姿は身体の線にフィットしたドライバーズスーツのせいで一層美しく見えた…。
コークボトルのように綺麗にくびれたウエスト、歩くたび左右に振れる小振りだが形のいい尻、そこからスラリと伸びた長い脚が妙に艶めかしい。
(バカ…こんなときに何考えてんだよ!しかも、相手は男だぞ…)
(5)
縄跳と小葉きゅうり達に続いて現場に到着したしきみ達は飛ぶようにしてヒメジの360から降り、無残に大破したガードレールのあるカーブに駆け寄った。
「先生!ハヤトとアザミは?」
「お、おう、お前たちか・・・いや、それが・・・」
なんとも不可解…といった表情で縄跳が答えた。
「確かにここが現場なんですが…」
小葉きゅうりはラップトップの画面に各コース設置の監視カメラからの映像を映しだすと、二人のクルマのコースアウトするシーンを何度も繰り返し再生して見せた。
ディスプレイにはガードレールに後ろ向きで突進して乗り上げるアザミ達の4号車が確かに見て取れたがその先は立木の枝の影になっていて確認できない。
「崖の下にそれらしい痕跡が見当たらないんですぅ」
「ええ?なんですって?」
しきみはシュタッ!っと立木に身を翻し、壊れたガードレールの先に向かう…。
「何にもないでありんすねぇ」
「ほんとだぁ、クルマが落ちたならそれなりの痕跡があってもいい筈なのに…」
そこへ1号車が上り車線を掛けあがってきた。ドライバーはゆすらだった。
「どーしちゃったの〜、無線で聞いてシマウマ並みに慌てて引き返してきたんだけど〜」
「アザミとハヤトが・・・消えちゃったのよ・・・」
しきみは林の中にどこともなく視線を彷徨わせながら呟いた。
(6)
アザミとハヤトは小一時間ほど歩き、志能備学園にたどり着く。一見して変化の無い様子だったが、建物に近づくとそうではないことが判った。
「誰もいない・・・」
「・・・いったい・・・どうなってんだ?」
ハヤトは校庭脇の水飲み場を見つけると蛇口をひねってみた。いつもの通り冷たい水が出てきたが、それは軽く茶色に濁っている…。長い間使用されていないらしいことがわかった。
「どう?」
アザミが訪ねると、ハヤトは水を口に含み、味を確かめてから吐きだした。
「・・・長いこと使ってなかっただけで、飲むのは大丈夫みたいだ…、しばらく出しっぱなしにしておこう…」
「OK…水はなんとかなりそうね…」
アザミも同じようにして確認する。
「問題は食糧ね…」
「・・・ったく、俺はどこへ行っても食いものに恵まれないんだよなぁ・・・」
考えてみれば、誰が指示したわけでもないのに自然に『サバイバルシーケンス』に則った行動をとってる自分に少し驚いた。ハヤトもすっかり学園に染まっていた。
項垂れるハヤトを見て、少し微笑むアザミ。
「フフ、でもぉ、運が良ければそれも何とかなりそうよ・・・」
「ええ?」
ハヤトが顔を上げる間もなく彼女は校舎の方に飛んで行った。
(6.2)
校舎の地下にあるシェルターにたどり着くと、アザミは入口のボタン暗号式のドアロックがまだ通電して作動中だったことに安堵した。
少なくとも緊急用の自家発電装置は作動している。
つまりは『何かが起こってから』少なくともそんなに時間は経っていなかったことを意味し、そうでなければインフラの内、電源も水道と同じでOKということになる。
「どうすんだ?」
しばらくおいて息を弾ませながらやってきたハヤトがレーシングスーツの胸元を更に大きく開けながら聞く…。
鍵かかってたらだめじゃん?っといった感じで情けない表情のハヤト…。
「まぁ、見てて」
アザミはそう言うと、脚に巻いていたクナイの尻を使ってスイッチのあるケースを破壊した。
「お、おぉい、だ、大丈夫かぁ」
返事もせず、アザミはその中のプリント基板をごっそり抜き出し、奥にのたくっていたリード線の束を引っ張り出す。
その内の何本かを選り、クナイで切断すると、また別のコードを数本引きちぎって刃で剥き、一本ずつ接触させ始めた。
何組目かを接触させた時バチッっと火花が散り、ゴトンと扉が音を立てて反応した。
「開けてみて…」
ハヤトは半信半疑ながらもアザミの手際の良さに圧倒され、言われるまま扉に開いた僅かな隙間に指を入れると力任せに左右へ押し広げた。
多少の重みはあったものの、空転するはずみ車のような動作感を伴いながら比較的スムーズに開けることができた。
(6.3)
「やったぁ〜」
アザミは無邪気に笑いながらハヤトに抱きついて歓喜の声を上げる、ハヤトも『彼?』の腕を抱えるように応じた。僅かだがアザミの胸に柔らかな膨らみの弾力を感じた…。
「あぁ、やったなアザミ、す、すげえよ〜」
あまり接触し過ぎたことに少々照れる二人…あっ といった感じで離れる…。
「こ、こんなの・・・いとも簡単に開けられちまうんだな…アザミ、お前すげぇよ…」
「うちの生徒ならみんな出来るよ、もっともぉ、乱暴なやり方だから警備システムの厳重な『実戦』でこんなことしたら、今頃二人とも蜂の巣にされてるけどね…」
言いながら、中を物色するアザミ、入ってすぐ横の壁に備え付けてあった懐中電灯のスイッチを入れ、掌に当てて使用可能であることを確認する。
奥を照らすと、そこには『非常用糧食(50食)』と書かれた段ボール箱が壁面いっぱいに積まれていた…。
飲料水も2リットル入りペットボトルが9本づつ纏めてシュリンクされたものが何組も並んでいた。
「す、すげぇ…」
「ハヤトせんせぇ〜知らなかったの?ここ?」
製薬会社の陰謀事件をきっかけに、学園そのものに対する攻撃から生存率を高めるための対処の一環として、新たに設けられた施設だったが、非常時に備え教師たちには周知の事実の筈だったのだが…。
「わかんねぇ、聞いてたのかも知れんが覚えてない…それよっか、早速食おうぜ…」
そう言うと段ボール箱を引っ張り出そうとするハヤト。
「あぁ、だめだってば〜」
アザミが言うより早く、手近の山から1個を抜きにかかったものだから、その上から一部がバランスを失い雪崩のようにハヤトに降り注いだ。
「言わんこっちゃない…」
アザミが呆れた顔で言うと、ハヤトの顔が段ボールの山からニョキっと現れた。
笑い合う二人…。
(7)
「これは〜紛れもなく超常現象…ですね…」
例の蚊の鳴くような調子で、静かに小葉きゅうりが呟く・・・。
学園では緊急職員会議が招集され、事件の初期調査をまとめた小葉と縄跳の報告がなされていた。
「古くは、イアハート事件やバミューダートライアングルなどが有名ですが、これもその類かと…」
「人為的には第二次大戦後にアメリカ海軍がフィラデルフィア沖で実験を試みています…。あいにくその実験艦は帰ってきませんでしたが…」
縄跳が資料映像をプロジェクターで投影させながら説明を加えた。
緑茶を啜りながらやつがしらが問う
「救出はできないのでしょうか?」
「もしも…の話ですが、量子力学や相対論的に仮説が立てられているマイクロ・ワームホール現象だとすれば〜、出たときと同じエネルギー効果を与えることで、『出口』を開けることで元に戻ることは理論上可能だそうです…」
「つまりこちらからは何もできない…そういうことですね…」
「はい…残念ながら…」
職員会議室に重苦しい空気が満たされていく…。
(8)
ハヤトとアザミは学園内を隈なく調べ、最も状況のいい生活空間を決めると、とりあえず今夜はそこでしのぐことにした。何のことはない、そこは教員宿舎のハヤトの使っていた部屋だった…。
とはいっても、彼の私物らしきものは見当たらず、おそらくは別の男性教員の誰かが使用していたと思しき状況が見てとれるだけ…。
とにかく居住者がいたらしいことだけは、残されていた食品や雑誌、衣類などの雑然とした散らかり具合で良く判った。
建物は宿舎、校舎の別なくただ寂れていただけで、外部からの攻撃や破壊工作によるダメージのようなものは一切何もなかった。人手のメンテナンスを受けずに数年放置されていたと言うのが適切な表現になる…。
幸いなことに、ガス、水道、電気といったインフラが機能していたのが救いだった。
ハヤトは残されていた新聞や雑誌の日付を確認しようとしたが残念ながら手に取ると全てバラバラと崩れてしまい読み取れる情報は何一つなかった。
「変なのよね…」
アザミが自分の部屋(と同じ場所の誰かの部屋)から持ってきたラップトップを弄くりながら呟く。
「どうした?」
応えながらハヤトはハヤトで、浴室のコントロールパネルのボタンをさっきから押しまくってる。普通なら聞こえる筈の電子音が鳴らない。
「パソコンが起動しないのよ…、他の家電類もみんな駄目…うんともすんとも言わないの…壊れてるようには見えないんだけど…」
アダプターの電源ユニットはちゃんとグリーンのランプが点灯し、PC本体のバッテリーマークも光っていた。
「こっちもだ…これじゃ風呂は沸かせないな…」
「さっき、お湯は出たけど?」
そこまで言うとアザミはハッと思った。物理構造や化学反応だけで機能するものは問題がなく、電子回路に依存した装置だけが機能していない…これって…。
(8.2)
「EMP攻撃…」
「な、なんだって〜?」
ハヤトも学園に赴任以来、それなりに最低限必要な軍事知識や科学知識は身に着けていたから、アザミの言ったことの意味を直ぐに理解した。
「そんな馬鹿な…霞の里が核攻撃を受けたってことかよ…」
「分からない…ただ、現象を考慮すれば極めて可能性が高い…ってこと…」
「ということは住民は被曝を免れた者が居たとしても町を放棄するしかなかったってわけか…」
「分からないよ…(アザミの眼に何故か涙が溢れる)、そうかもしれないってだけで…」
「でも、もし中性子爆弾併用型の戦術核兵器だったら、あの枯れ木の説明もつくじゃない!」
「あぁ…」
ハヤトは茫然とした…。そんな、まさか核戦争?、そんな…。
「お、お俺たちも被曝したことに?、あの食糧や水は…」
「地下シェルターの中の物は大丈夫よ…。外も…中性子爆弾だったとしたら…たぶん半減期はとうに過ぎてると思う…」
「ハヤトぉ…一体何があったんだろう…アタシ、なんだか怖いよぉ…」
半泣きの顔でハヤトを見上げるアザミ…。
(8.3)
ハヤトはそんな状態のアザミを見て驚いた…。
いつも自信満々、件の陰謀で学園が傾きかけた時だって変わらず元気でいた彼女(いや彼か?)が、心の底から恐怖を感じているのが見て取れた。
しきみたちが居ないので心細いというのもあるのかもしれない…俺に彼女たちの代わりは務まらない、それはよく分かっていたが…。
「し、心配すんな…此処がどうなっていようと、多分…俺たちの里…じゃない筈だ…とにかく今日は疲れてるし休もう…」
「明日から…ど、どうすんの?」
「そ、そうだな…なんとか『元居た世界』に戻れるかどうか…考えよう…」
「そ、そうね・・・入ってきたんだから…きっと出る方法もある・・・よ ね・・・」
ハヤトが「乏しい知識」にも関わらず精一杯勇気づけようとしてくれた事に対し、アザミも精一杯の言葉を絞り出して応えた…。
「じゃ、じゃ〜オレ、先にシャワー浴びて汗流すワ!ナハハ…」
乾いた笑いを上げてハヤトは浴室に向かった…。
「わかった、着替え 出しておくね…」
「あ、そうか、悪い頼む…」
引き攣った笑みを浮かべながらバスルームに入るハヤトを見送りながら、アザミは先ほど運んできた数箱のダンボールの山から、寮内を物色して集めてきた衣類の入った箱を担ぎ出す…。
適当な下着やパジャマ代わりになりそうなモノを探しながら、
(しきみに早く会いたい…)
アザミは心の底からそう思った…。
(9)
しきみは、アザミの部屋へ来ると月明かりだけが差し込む薄暗いその場所に入り、後ろ手でそっとドアを閉じた。
いつもなら、笑顔を浮かべてしきみを迎える美少女はそこに居なかった。
部屋は、彼女が慌てて着替えたのだろう、脱ぎっぱなしのパジャマとか、開いたままのラップトップがそのままになっていた。
「アザミ…、いったいどこへ行っちゃったの?」
そう、呟くと溢れた涙が頬を伝って下足場の大理石に落ちた。
ポンっという弾けた音がするように、そこにつきよ姫が現れた。
「見 る か ?」
そう言ってお椀をつき出す。
少しの希望を抱きながらそれを覗き込むしきみ…。
「なにも…見えないわ…」
「な ら ば 二 人 は 無 事 だ …。少 な く と も ど こ か で 生 き て おる …」
そんなの!なんの慰めになるのよ!…そう怒鳴りたい心境になったが、つきよ姫は彼女なりにしきみを落ち着かせようとしているのだ…、いや、これは何かの暗示かも知れないっと思い聞かせて冷静を取り戻した。
つきよ姫は、椀を一口すすると、言った…
「 こ れ も 森 の い た ず ら … 」
しきみは何も答えず、その言葉を聞き流した…。
(9.5)
同じころ、二人が消えた朝からずっと泣きとおしてるひまわりの部屋で、ヒメジとゆすらが自分たちのアザミやハヤトを案ずる気持もどこかに彼女の狼狽ぶりに右往左往していた。
「もう、いい加減泣くのはやめるでありんす〜〜〜。まだ、二人が死んでしまったとは限らないでありんすよ〜〜〜ぉ」
「きっとどこかに無事でいるかも知れないでしょ? ゆすら、森の動物たちに何かあったら知らせるように頼んでおいたから〜」
「ハヤトどど〜〜〜〜」
二人の言葉には反応せず、ただ、ただ号泣するひまわり…
「少しは〜しきみを見習うでありんすよ〜、わらわだってアザミ達が心配なのは同じでありんす。」
相変わらずデリカシーに欠けるヒメジ。
「うるさ〜〜〜〜〜い!」
ひまわりは涙でぐしょぐしょになった顔を上げて怒鳴った。
「みんなキライ〜〜〜!、キライ!、キライ!だぃぃっキライ!〜〜〜ワぁぁぁぁぁん〜〜〜〜〜〜」
ベッドに突っ伏して泣くひまわりを見つめていた二人は、項垂れて静かに部屋を出た…。
初恋の相手、しかもほぼ将来を誓い合った男性であるハヤトと、級友としてのみならず良きチームメイトとして親密だったアザミの2人を一度に失った悲しさは、ヒメジとゆすらのそれとはまた格別なダメージであろうことは二人には痛いほど分かっていた…。
(10)
「いやぁ〜〜〜〜さっぱりした〜〜〜〜!」
シャワーを浴び終えて、腰にバスタオルを巻いたままの姿で出てきたハヤトを見て、アザミがクルリと背を向けた。男の身体を生で見るのは本当に久しぶりだった。それも、この前見たときもハヤトだったんではないだろうか?
「おまちどー、もういいぞ〜」
タオルで髪の毛を拭きかきながらアザミに告げる。
「しっかし、お湯が使えるってのは不幸中の幸いだな〜」
「そ、そうね、じゃぁ…、あ、着替え そこに出しておいたから〜」
アザミは自分の着替とタオルを抱えていそいそと浴室に向かう。
「おお、サンキュー〜」
ハヤトは、髪の毛を後ろで纏めているアザミの後ろ姿を見て
(なんだよ〜男のくせに、気持悪いな〜)そう思い、ちらりと洗面台の鏡を介して脱衣場のアザミを覗き込んだ。
そこには背を向けてちょうどブラジャーを外そうとしているアザミの姿が見て取れた、形のよいヒップが白地にブルーの横縞模様のショーツに包まれている。それが、か細くくびれた美しい腰の下で振れている…。
「え?、えぇぇぇ?」
アザミがショーツを脱ごうと上半身をかがめたとき、大きくはないが確かに女のものとしか思えない胸の膨らみが、引力に逆らわず美しく湾曲したラインを見せながら揺れているのを目にした…。
「あ、あいつ…女じゃん・・・・」
そう呟いて後ろを振り向いた…。
(10.2)
アザミは髷を解きセミロングの髪をなびかせると、そのまま頭から湯を浴びた…。
シャワーの心地よい感触を全身に受けながら暫くそのままの姿勢で考える…。
(このまま、ここでハヤトとずっと2人きりになるかも・・・)
ハヤトが彼女を女だと一旦意識しだしたら、成り行きで男女の関係になるのは絶対的に明らかだった…。いや、それ以前からアザミ自身がそう感じていた。そもそも、ハヤトのことは彼が赴任してきたときから気にはなっていた彼女だったのである。
そう、ひまわりの気持を知るまでは…。
彼に迫られたら拒めないな…、アザミ自身、口では『借金男』だの『ダメンズの権化』だのバカにしていても、それはひまわりの手前の虚勢に過ぎず、ハヤトが自分の好きなタイプの男なのは否定できなかった。
(ま、いいか・・・)
アザミはどうにでもなれ…そんな決心に似た思いで考えに区切りをつけるとシャンプーを手にして髪になでつけた…。
(11)
ロンドンのMI-6本部。情報分析セクションのオフイスに、Mが少し大股で歩きながら現われた、上級分析官のロビンソンのところに歩み寄る。
「マァム…こんな家畜小屋に…珍しいですね?」
少々皮肉っぽい挨拶に微動だにせず、右手に掴んだ紙片を彼に突きつける。
「ミスター・ロビンソン…、この座標について、この時間帯の衛星画像を動画にして私に送って頂戴・・・」
「はい?」
訝しげに紙片を受け取るとそのGPSコードを端末のキーボードに打ち込んだ。
数秒も待たずにディスプレイにはヨーロッパを中心にメルカトル式に書かれた世界地図が表示され、最も右端のグリッドが赤く光り、クローズアップされる。
「日本・・・ですね。こりゃまた何で…」
「いいから可及的速やかに処理して頂戴!」
「し、しかし、この時刻だと…あいにくうちの衛星では無理です…。CIAの協力が必要ですよ…」
「なら、そうしなさい!」
すでに後ろ向きで出口に向かいながら、Mは吐き捨てるように言って部屋を出た。
(12)
ハヤトはベッドに横になって壁を睨んでいた…。
アザミが女かもしれない…そういう事実と、これからどうやって『元居た世界』に戻ればいいかの思いが頭の中で交錯して目眩がしそうだった。
「なぁ〜に よぉ〜? 先に寝ちゃったの?」
振り向くと、頭をタオルで包み、大きめのTシャツ一枚だけを羽織ったアザミが笑って立っていた。レーシングスーツの時より明らかに胸の膨らみは目立っていた。裾からは僅かに上気しているが白くて細長い脚が露わになっていた。ハヤトは生唾を飲み込む。
慌ててまた壁のほうに振り向くとハヤトは堅い口調で言った・・・。
「お、おまえ、何だよその格好は…」
「え?何だよって?・・・何が?」
アザミは頭に巻いたタオルを解き、それで髪の水分を拭いながら横目でハヤトを見る。
Tシャツの襟がずれて露出している少し日焼けした肩が色っぽかった。
「お、男なんだろ?だったらもっとそれらしい格好をしろよ!、き、気持ち悪いじゃないかよ・・・」
アザミは何も応えず、そのままベッドに滑り込んでハヤトの左手を掴むと、自分の胸に当てた・・・。ブラジャーをしていない女の胸の感触だった。
「ぅあぁぁぁ、だぁっ、な、何の真似だ〜〜〜」
慌てて飛び起きるハヤト。
(12.2)
「あたし…男じゃない・・・って」
「ええ?」
アザミは毛布をはだけ膝立ちになって、ハヤトの目の前でTシャツを捲って見せた。
ライトグレイのチェッカー模様が入った木綿のビキニショーツに包まれた女の下半身が現れた。
暫く眼を釘付けにされたハヤトは慌てて目線を天井に向けると言葉に詰まった。
「ね?、オチンチンついてないでしょ?」
「わ、わかったから、ちゃんと着ろ…」
「何?ドキドキしちゃった?」
アザミは悪戯っぽい表情でハヤトの顔を覗き込むようにして上半身を回り込ませた。
湯上りで上気した顔が色っぽかった。仄かに香る石鹸の匂いがハヤトの劣情を煽った…。
その時、アザミは左手でハヤトの股間を軽くなでた。ハヤトの部分は正直に欲情の意思をその硬度で示している。
「お、ぉ〜〜い! ふ、ふざけんなっって!」
ハヤトは体を丸めて防御に出た。
「きゃッはぁ〜、カワイイ〜照れてんの〜?」
「バカ野郎!大人をからかうんじゃない〜」
「そっちこそ何よぉ〜本当にあたしを男だって思ってたの?失礼しちゃうわね〜」
「だ、だって…しきみがそう言ってたし、お、お前だって『アタシは男子校の生徒でもある!』とかなんとか言っちゃってたくせして…(ブツブツ)」
そりゃ、もう二年も前の話だ…。
「常識的に考えて、第二次性徴過ぎた男の子がこんな美少女に変装できると本当に思ってんの?」
「18歳の男子が、ヒゲも生えないし声変わりもせず…そんなことあるわけないじゃんかさぁ」
「見てよこの綺麗な脚〜、脛毛の一本だって生えてないでしょ?」
アザミは片方の脚をつま先立ちさせて手で撫でて見せた。
「そ、そりゃ忍者だったらそのくらいの変装は…、それにお前だってそれらしく振舞ってたじゃないかぁ…」
「だから〜『敵を騙すにはまず味方から』って言うじゃない?・・・二重スパイのイロハでしょうよそんなの…」
「わ、分かったよ…だから、その、少し離れろって・・・」
「どう?私に女を感じた?」
そんなことは先ほどの股間の硬度で承知の上だった。
ハヤトの言うことは無視して身体を寄せ付けるアザミ…。根っからの『S』体質の彼女がこのハヤトの反応に刺激されない筈がなかった。徐々にエスカレートしていく。
「あ、ぁぁぁ、か、感じた、感じた、だ、だから離れろって」
「ひまわりと比べたらどっちが好み?」
「ば、バカなこと聞くな」
「ハヤトせんせ〜…せっかく2人きりになれたんだよ?・・・もっと仲良くしようよ…」
そう彼女は独特のハスキーボイスをさらに掠らせる様な口調でそう言うと、ハヤトの頸筋に頬を擦り寄せる。
「こんなことになっちゃったの・・・アタシの所為だもんね・・・だから、お詫びしてあげる・・・」
(12.3)
ハヤトはとうに理性の箍が外れかかっていて抵抗する気がどこかに行くのを悟った。
アザミの左手はいつのまにかハヤトのブリーフの中に潜り込んでいて、巨大に膨れ上がった『欲棒』を掴んでいた。
先走り汁を親指の腹で掬うようにして亀頭全体をグルグルと弄んでいる。
(お、おっきい〜)
アザミはハヤトのそれが想像を超えた逸品であることに気づくと、好奇心と旺盛なスケベ心が、はやる気持ちを抑えきれずに行動へと押しやるのに抗えなかった。
しかも、久しぶりの『男』の感触だった。
「あ、うぅぅ」
ハヤトは曇るような小声で唸ると股間に感じる快感を素直に受け入れた。
アザミは暫く彼の項や耳を舐めるようにキスしながら『手コキ』を続けるとハヤトが声を荒げて反応を示し始めたことで意を決し、スウエットのズボンを脱がせ、上半身をクルリと翻すとハヤトのペニスに舌を這わせる。
「センセ・・・おっきい〜」
「あ、アザミぃ〜〜〜〜」
アザミの鋭く尖った舌先がハヤトのペニスの先を這いまわり、言い知れぬ快感に声を上げるハヤト・・・。やがてそれは茎の腹から子袋の裏側にまで及び、ついには肛門まで辿り着いた。
アザミほどの美少女にこんな風にされて抵抗できないのは仕方がねぇよな!いいよな!俺が悪いんじゃないよな!などと自分に言い訳をする・・・。
アザミは存分に舌技で攻めた後、今度はその柔らかな唇で亀頭をパクリととらえ、これまた抜群の吸引力を駆使したフェラチオを始めた。
(ハヤトったら〜すっごい〜すっごいよ〜コレ〜)
脳内で感嘆の声を上げながら彼女も興奮が高まってくるのを感じた、舌や唇や口蓋の奥でこの逞しい肉茎の味を堪能した。
ハヤトも膝立ちで高くそりあがったアザミの下半身を見ながら、左手で太ももの内側の柔らかい感触を楽しんだ後、ショーツ越しに彼女のプクリと膨らんだ敏感な部分を指でなぞって刺激する。
薄らとした湿り気を確認すると、ショーツの腰ひもに指をかけ丁寧に下げ陰部を露出させた。
アザミのそこは小陰唇が隠れ閉じていたもののテラテラと光るものが満ちていた。
ハヤトは優しく撫でるようにして上下させると、ゆっくりと指でそれを割った。
(12.4)
「ムムンっ!」
ハヤトのペニスを口に含みながらアザミが腰をゆすって悶えた。アザミは右足を器用に上げるとハヤトの上半身を跨ぐように姿勢を変え、彼の顔の正面に股間が来るようにした。
ハヤトも長い舌を伸ばし、クンニリングスで応じる。
(あぁぁぁぁ、)股間に痺れるような衝撃を感じる、(オシッコ漏れそう〜)そんな感触で暫くフェラチオを中断するアザミ。
(こ、こんな・・・久しぶりっ)頭の中で快感を噛みしめる。もうひまわりに遠慮なんかできない…。
ハヤトは可能な限り接触面を小さくとりながら舌先で転がすようにアザミの『突起』を刺激した。そうかと思えばグイグイと押し込むように強く舐める。それを交互に繰り返しつつ、指で『もうひとつの穴』を攻めた。
アザミはペニスを頬張りながら、背筋に感じる涼しい電撃で何度も逝きかける…。フェラチオもハヤトの腰の突きあげを受動的に合わせるだけの半ばイラマチオ状態だった。
たまらなくなったアザミはペニスを吐きだすとハヤトに振り向いて懇願した・・・。
「せんせ、これちょうだ〜い・・・
(13)
アザミは仰向けになったハヤトの腰の上にまたがり、薄目がちに開いた眼で彼を見つめながら、左手を添えてペニスを股間に当てがい、2、3度前後に揺すると雁首までをヌルリと咥えこませる。
「あぁ・・・はぁっ」
美しい顔を歪ませ、掠れた声を漏らしながら腰をゆっくり沈めると、ジュクジュクと淫らな粘液を溢れさせながら胎内にペニスを飲み込ませていった。
ハヤトは両手を伸ばして小ぶりだが形のいい乳房を揉みしだきながら、亀頭が柔らかな肉壁を押し広げていく感触を楽しんだ。
「あ、す、すごい〜〜〜〜届く〜〜〜〜っ」
「こ、こんなのは じ め て ぇ〜〜〜」
すっかり腰を落としこんだところで、アザミは腰を前後に揺する。
彼女の恥骨のあたりを支点にして、テコの要領でハヤトの『先端』が大きくアザミの膣内で振れる。
先端が子宮口を弾く様な動きで刺激する。単なるピストン運動では得られない快感で互いに気が狂いそうなくらいに感じ合う。
極度にクリトリスが感じ易いアザミはハヤトの根元で擦りあげられて一足先達すると、その快感は大きな波になって何度も何度も押し寄せてきた。
「せ、ん、せ!、・・・せ、ん、せ!」
「あざみぃ〜〜〜、あざみぃ〜〜〜」
必死に互いを呼び合う二人・・・。
一度『逝った』アザミの膣は、まるで吸盤のようにハヤトのペニスに吸いつき、心地よい圧迫感を与え続けている。
また、時折亀頭の敏感な部分で感じるザラザラとした感触が筆舌に尽くしがたい刺激で追い打ちをかける…
(こ、これってカズノコ天井じゃん?)
そうこうしてるうちにハヤトの高まりも限界に達しつつあった。
(13.2)
「で、出そうだ〜〜〜〜」
アザミは何も言わなかった、その代わりに上体をハヤトに被せ、キスをせがんだ・・・二人の腰の回転がさらに激しくなる・・・
ハヤトは、彼女の柔らかく細い舌を吸いながら、それが『中出しの了解』だと受け止め、
身体を起こすと彼女を抱き絞め体面座位の姿勢でさらにグラインドを激しくして突きあげる。唇は離さなかった。
もう、だめだよ〜とばかり、彼女に激しく舌を吸われたとき、ハヤトは手でアザミの尻を思い切り自分の股間に押しつけるようにして腰を突きあげ、熱い迸りを一気にぶちまけた。彼の頸に回してるアザミの細い腕が強張り震える。
自分の送った体液が、まるでアザミの口を介して戻ってくるような不思議な絶頂感で二人は同時に果てたことを知った…。
その晩、ハヤトはアザミの体内に『生命の絆』をあと二度程送り込むことになった・・・。
(14)
自分たちの居た世界からのスピンアウトへの対処と、その後の激しい情交の疲労からハヤトとアザミは普段より深く長く睡眠に落ちた。
本来なら日曜の朝になる筈だったその日、ハヤトが目覚めたとき傍らに居る筈だったアザミの姿がないことに気がつくと、一瞬自分は悪い夢を視ていたんではないだろうか?という妙な感覚に襲われた、だが、それが違うと判るまでそう時間は掛からなかった。
キッチンで鼻歌を歌いながら、朝食の支度をしているらしいアザミの姿を目にしたからである。
「おはよ〜、よく寝てたね〜」
アザミが美しい顔を綻ばせて振り向いた。
「おぉぉ、おぁよ〜〜〜」
ハヤトは欠伸混じりに応える。アザミは昨夜と同じ、下着の上に大きなTシャツを被せた姿にエプロンをかけているだけだった…。白い太股が露わになっていてハヤトを扇情する。
「なんか、新婚夫婦みたいだ・・・」
ハヤトはそういうとキッチンに立つアザミの背中に覆いかぶさるようにして抱きしめる。
「きゃはぁ〜 ハヤトったら〜ヒゲがくすぐったいよぉ〜・・・ダメぇ〜まだ、朝だよ〜」
アザミの細いが弾力のある尻がハヤトの股間を擦り上げるように密着している。
彼の腕の中で肩を窄ませて笑いながらアザミもまんざらでもなさそう。いつの間にか『ハヤト』と名前を呼ぶようになっている・・・。
(14.2)
正面を向いてアザミもハヤト抱き返すと、ドウドウっといった感じでなだめるように彼の背中を軽く叩く。Tシャツをめくり上げてショーツの上から尻を撫でまわす彼の手をどけるとそこから離れる、とても楽しそうに笑いながら・・・。
「も〜、お腹空いてるんだから〜、お預け〜」
「何作ってたんだ?」
「乾燥サラダとチキンがあったからお湯で戻しただけだよぉ、後はトーストとコーヒー」
「そうか、そんでも俺が毎日食ってる朝飯より豪華だ…」
「野菜ジュースもあった、飲むでしょ?」
「うん、もらおう…」
「冷蔵庫が壊れてなくてよかったよね〜」
アザミはそう言いながら昨夜から冷やしておいた缶詰をいくつか取り出して、そのうちの緑色の缶を2本持ってきた。
ハヤトは何となくこの2人だけの世界に幸せを感じた、昨夜肌を合わせるまでは、すっかり『男』だったと思っていたこの少女に、たまらなく愛おしさを感じている…。
アザミもアザミで普段のボーイッシュな立ち居振る舞いを一切忘れ、ヘアースタイルも例の「髷」を結わず、セミロングの髪を可愛いらしくカチューシャで揃えてるだけだった。
モグモグとトーストを頬張りながらアザミが聞く
「今日はどうするの?」
「・・・ん〜、とりあえず今が何年の何月何日かを知りたい…」
「知ってどうするわけ?」
「パラレルワールドなのか?自分たちの未来なのか?…とにかく仮説を立てるには情報が少なすぎるだろう?」
「じゃぁさ〜、図書室に行ってみない?あそこなら新聞があるよ…。」
「そ〜か〜…、名案だな…よし、そうするか…」
そういうと笑ってお互いの顔を見つめあう…、事情を知らない誰かが見たら、本当に仲の良い新婚夫婦か恋人同士にしか見えないだろう…。
(15)
ハヤトとアザミが失踪してから1週間ほど過ぎた。学園も次第に落ち着きを取り戻しつつあった。数人の関係者を除いてではあったが…。
「日向…、日向はどうした…。」
禿飛が出欠を確認している。
「日向さんは体調が悪くて休みだそうです」
しきみも居ないため、級長代理の風間椿が応える…。このところ毎日同じセリフを言わされていた。
「そ、そうか…日向は今日も休みか…」
そう、呟くように言うと何事もないように授業に入る禿飛…。
アザミ、ひまわり、しきみの席が3つ並んでポカリと穴が空いたような状態だった…。それを悲しい眼で見つめるゆすらとヒメジ…それ以上のことは何もできない2人だった…。
ひまわりはここのところすっかり憔悴しきっていた、食欲もなく体重が落ちる一方で、最近は誰とも口を利かなくなっていた。
しきみも落ち込みかたはひまわり程ではないが、同じ様な状態といってよかった。ただ、彼女の場合、ひまわりを気遣ってときどき様子を見に行ったり、元気を取り戻せるような薬を処方したりといった世話を焼くことで気を紛らわせている…。
また、授業を休んでいても、それは何とかしてアザミとハヤトの救出方法を模索するため研究室で小葉きゅうりを手伝っているからでもあった。ひまわりは絶望していたが、しきみはまだ前向きだった。
(16)
「問題はこちらからは何も仕掛けられないってことなんです…」
小葉きゅうりが蚊の鳴く様な声で溢す。
「パラレルワールドにしろ、同一時間軸の未来に消えたにしろ、何らかの手段で脱出方法を伝えることができる筈よ…」
しきみが分厚い時空力学の洋書を捲りながらつぶやく。その顔はかなりやつれていた。眠れない日が続いている。
「しきみさん…今日はこの辺で、休んだほうが良いんじゃありませんか〜」
小葉も相当疲労がたまっていた。時計を見るとすでに日付けが変わっていた。
「すみません先生…、先生こそ先にお休みになってください。私、このシミュレーションプログラムを仕上げたら帰ります…」
「わかりました〜」
そういうと小葉は研究室のカギをしきみに預け、部屋をでた…。
その様子を天井裏でうかがっていたヒメジ…。何かを思いつくとスッとその場から姿を消した…。
(17)
校舎を出ると、真っ暗な通路を教員宿舎の方によろよろと向かう小葉きゅうり…。
「二人が消えたことは、我々の未来にとっても何らかの影響が出る筈なんですよね…それが予想できたら少しは明るい兆しも見え・・・」
そう一人語散ていると突然大きな人影が彼の前に現れる。小葉とて『忍』、反射的に後ろへ飛ぶ。
「何奴!」そう言って手裏剣を構える。
「小葉先生!・・・わらわでありんすよ…」
「ひ、ヒメジ さ ん ?・・・お、脅かさないでください…」
「すまなかったでありんす…でも、先生に、聞きたいことがありんすよ…」
「な、何です・・・」
「どうすればアザミたちが戻れるのか…知りたいんでありんす…」
「難しい物理学や量子力学の話になるんですが〜」
小葉はヒメジが物理や数学が苦手なことをよく知っていた。
「簡単に教えてくれればいいでありんすよ」
「簡単に…ですか?」
暫く考えた後、
「そうですね、入ったときと同じ条件で時空にエネルギーを与えて特異点を生み出すことができれば…それが反作用である場合に限って、元居た時空に戻れる…という話です、あくまでも理論上の話ですけど・・・」
「アザミたちがそのことに気づけば良いんでありんすね・・・」
「それは難しいと思いますよ…万里小路先生とアザミさんでは・・・あ、別にこれは悪口ではありませんけどぉ〜」
「そのエネルギーっていうのは、バズーカ砲の爆発でもOKでありんすか?」
「えっと、そうではなくて、その特異点をもたらすための必要最低限で良いんです。ただ、鍵穴に合う鍵があるように、その値は特異点ごとに個体差があるんで・・・」
「一般には質量と運動エネルギーの総和で求められますが、今回の場合、今のところ正しい数値は出ていないんですよね・・・」
「仮説も立てられないんでありんすか?」
「おそらく二人の体重、乗っていた車の総重量、それにスピード…その辺りに、あとどれだけの変数を必要とするのかが…、また、誤差がどの程度許されるのか〜とか、いろいろ大変な計算になるんですよね・・・」
「よく分かったでありんす・・・」
ヒメジは少しばかり荷が重いことを察し、気を落として俯く…。
「どうもでありんす おやすみなさいでありんす」
そう言ってトボトボと寮の方に姿を消した。
小葉きゅうりは、彼女の後ろ姿を見つめて胸に去来する思いを感じながら
「そうなんですよね、私が同じようにして向こうに行ければ…簡単なんですよね…」
そう呟いて、また自室に戻る方向に踵を返した。
(18)
ハヤトとアザミは平服に着替えると、昼下がりの心地よい日差しを浴びながら校庭を横切って校舎に向かった。途中、ハヤトは何とはなしにアザミがなんでくノ一なんぞを目指しているのか理由を聞いてみた。
「う〜ん、何でってって聞かれてもね〜、生まれてからずっとお師匠さんに言われてたし、その為に生まれてきたようなもんだから〜、何の疑問も感じないで修行してきたなぁ〜」
「その、なんだぁ、考えなかったのか?普通の人生とか…」
「普通にOLさんとか〜?・・・詰まんないよ、そんなの…、アタシ『刺激』がないとだめな人間だから〜きっと不良になっちゃうな…」
ハヤトは昨夜の激しいセックスを思い返した…。
「それにさ〜、『オペレーター』って高給取りなんだよ!危ない事してお金儲かるなんていいじゃない?」
「金なんか稼いでどうすんだよ…」
「クルマ買うの〜シルバーのアストンマーチン!」
無邪気に美しい顔を綻ばせるアザミをみてハヤトも微笑んだ…。何だかんだいってもまだハイティーンの娘だ…。
(18.2)
エレベーターは使えないのでバルコニーに続く階段を上る。元気なアザミは飛ぶように駆け上がっていく。
彼女は寮に残されていた衣類の中から白いサマーセーターとデニムのミニスカートを選んでいた。
下から見上げれば薄いブルーのショーツが丸見えであったが、もちろん彼女はそんなことを一切構わない。
「ね〜何してるの〜はやくってば〜」
アザミは踊り場で跳ね上がってハヤトに手招きをする。すっかりデート気分の女の子になっていた。
実際アザミはこのシチュエーションを楽しんでいた、くノ一の身分を忘れ、普通の恋する少女気分を味わっている…。ずっとこのまま続くのも悪くないかも…そう思い始めていた。
「なんだかあいつ、変わっちまったなぁ」
ハヤトはそう言いながらも、ひまわりとこんな風に過ごしていた週末を思い返しながら、また、彼女とは違うアザミの可愛さに魅了されている自分を嬉しく感じていた。
踊り場まで1段跳びで駆け上がってきたハヤトに抱きつくと、アザミは唇を彼のそれに重ねた、ハヤトも応じる。甘酸っぱい香りがした。
「エへぇ〜」
アザミはキスのあとで照れ笑いを浮かべると、ハヤトの手をとって『こっちこっち〜』と図書室のある方へ彼を引っ張った。
こんなに可愛らしい子だったんだなぁ〜とハヤトはいちいち驚かされた。
図書室は一見して何の異常もなく整然としていた。
何があったにせよ、それから誰一人としてここには訪れていないらしいことは、校舎や寮のそれと同様だった。照明のスイッチを入れると問題なく天井の蛍光灯が点灯した。
「あ、あったあった、あそこ〜」
アザミが指差したところに各社の新聞が木の枠に挟んであり、それぞれがスタンドに掛けられている。
紙面はすっかり酸化して黄色く変色していたが、文字を印刷しているインクは黒々と残っていた。日付を確認する、
『平成XX年6月17日・・・』そこにはハヤトたちが暮らしていた時代から16年後の日付が印字されていた…。
「俺たちは未来に来てしまったんだ・・・」
「・・・ねぇ、なんかヒントになりそうな記事はありそう?」
アザミが聞くと、ハヤトはスタンドから新聞を外し、テーブルの上に広げてみた…。
戦争が起こりそうだとか、内乱が勃発しそうだとか、その手の記事は一切なかった。
少なくともこの新聞が置かれていた日までは、日本は平和だったようだ…。
(18.3)
片っぱしから新聞に目を通しているハヤトをよそに、アザミは隣の視聴覚室へ入り、やはりTVやラジオが機能しないことを確認する。
外界からの情報が遮断されたままなのは、依然として昨日と変わらなかった。
アザミは図書室に戻ると『ある事』を思い出した。早足で新聞の縮刷版を格納してある棚に行き、その場所を求めて移動式の棚を動かすためのハンドルをグルグルと回した。
19XX年7月…。
そう書かれた一冊を手に取ると、その『決められた場所』に隠された紙片を見つけた。
その紙片があることだけでも今のアザミには驚嘆モノだった、一瞬その所為で目眩がしそうになるのを何とかこらえ、その4つ折りの黄ばんだ紙片を開く。
内容を一読しアザミは心臓が止まりそうな衝撃を覚える。時が止まった。
「アザミ〜何してるんだぁ?」
ハヤトが50cmほど空いた移動棚の間でしゃがんでいる彼女を見つけると声をかけた。
アザミはとっさに紙片をスカートのポケットに入れると、彼に笑いかけて
「ううん!何でもない…誕生日の出来事…調べてたんだ…変わってないか心配だったんで〜」
パタンと縮刷版の分厚い冊子を閉じると元に戻す。
「それより〜なんか分かった?」
「いや、特にこれといって…ただ、ちょっと気になるものを見つけたんだが…」
アザミはそう聞くと立ち上がり、縫うように書棚を出てハヤトが指差す新聞の一面広告を見た…。
「こいつ…見覚えないか?」
そこには製薬会社の広告があり、『明日への希望○○製薬』と大見出しが書かれ、代表取締役社長と書かれたところに丸抜きで男の顔写真があった。あの男だった…。
「こいつが、なんで?」
アザミはハヤトの顔を見返したが、かれも同じ心境を表情で示すだけであった。
(19)
ヒメジはロンドンからMが送ってくれた衛星写真の動画を繰り返し繰り返し見ていた。
そこにはアザミが運転していた『4号車』が西から現われて5コマ目でスピンターンし、そのままバックでヘヤピンコーナーに突っ込んでいく映像がはっきりと映し出されていた。
だが、車が反対車線を越えガードレールに突っ込んだところで白く稲光のようなものに包まれ、2コマも進まないうちに車は姿を消した。
「ひょっとして同じように突っ込んだら、同じように行けるかも知れないでありんす…」
そう、言うと、これだ、これしかないんでありんすよ!とばかり立ち上がり、クローゼットから紫のレーシングスーツを取り出した。
(20)
ハヤトとアザミは図書室のある第2校舎のバルコニーで部屋から持ってきていた軍用ビスケット(いわゆる乾パンである)と缶ジュースでランチを摂っていた。
おそらく季節は春。長閑で暖かい日差しが心地よかったが、二人にはさっきの男の写真が気がかりでそれを楽しむ気にはなれなかった。
「なんで・・・刑務所に居る筈のあいつが…シャバにいて、しかもあろうことか社長なんかに返り咲いてるんだよ・・・」
アザミはビスケットにチョコレートペーストを塗ってそれをハヤトに渡しながら言う。
「わかんない・・・さっぱりだわ」
その男のこともさることながら、アザミはあの紙片の件をハヤトに切り出すか、切り出すまいか迷っていた。
「いずれにしても、あれが俺たちを襲った黒幕のアイツだったら、ここに長居するのは考えた方がいいかもな・・・」
「え?」
アザミはハヤトと楽しい生活を送れるかもしれないじゃん?という『プランB』の期待を壊す材料が次々と現れることに少しガッカリした…
でも、(本当はそうじゃいけないんだよね〜)そう、自分に言い聞かせてその気持ちを押し殺した。
「だけど、どうするの?ここを出ても無事でいられるかどうかは分からないんだよ…」
「おそらく、おそらくだけど里がこうなったのは奴が関係してると考えた方が良い…。だけど里を出ようにも足がないよなぁ…」
アザミはアシなら自分たちの『4号車』があるじゃん?と言いかけてやめた。確かめてはいないが、大破していなかったからきっと動くはず…彼女はそう思っていた。
アザミは仄かに湧き上がってきたハヤトへの意外な気持ちを優先したかった。何よりここには自分と彼の二人きりしかいない、彼をもう暫く独占していたかった。
(20.2)
「ゆっくり考えようよ、暫くここに落ち着いて…だめ?」
そういうと甘えるようにハヤトにすがりつくアザミ…。唇を微かに開けて薄眼でハヤトを見上げる…。アザミは自分のこの表情が男の劣情を誘うのに効果的であることを知っていた。ハヤトはアザミの顔を手で寄せるとその柔らかく濡れた唇を吸った。
アザミはサマーセーターの襟にあるファスナーを下し、胸元を解放するとハヤトの手を自分の太股に引き寄せた。
「抱いて・・・、アタシ一度校舎でしてみたかったの…」
掠れるような声で囁くとハヤトは一気に興奮が高まった。再び荒々しいキスと抱擁が始まると、ハヤトはアザミの細い体を抱き上げバルコニーのテーブルに乗せるとショーツを穿いたままの彼女の股間に顔を突っ込んで乱暴に鼻先と口で愛撫する。
アザミはテーブルの上に寝てM字開脚で彼に身を任す。
「ぅぅんっ!」
アザミは呻くようにして身体を捩ると、自分でサマーセーターの裾をたくし上げ、ブラジャーをずらすと、現れた乳房と乳首を自分で慰め始めた。
それを見てハヤトは彼女を抱き起こすと、胸元に顔を突っ込む。すでに隆起したピンク色のつぼみを舌先で転がすようにして弄ぶとアザミは自分からショーツを膝まで降ろし巧みに左足を抜いた。
呼吸を荒げながらハヤトは少女の胸を貪りながらベルトを外し、コットンパンツのジッパーを下げる、アザミはすばやくそこに手を差し込み、堅くそそり立った赤黒い肉棒をしごくようにして掴み、テーブルを降りて膝まづくと、それをパクリと口に含んだ。
(20.3)
「おぁぁぁあぁっ…」
ハヤトも軽く呻くと、アザミの巧みな舌技に応え、下半身に回す血流をどんどんと増加させていった。
アザミは、『こんなのがアタシの中に入ってくるんだ〜』と、昨日確認したばかりなのに、またもその期待で胸が膨らむ…というか子宮が降り下っていくのを感じた。
ハヤトはもう待てないとばかり、アザミの頭をそっと外すとクルリとアザミを反転させテーブルに手をつかせる格好にして後ろからアザミの股間に自分の『欲深い肉塊』を割り込ませた。
ヌラヌラと充分に濡れそぼったアザミのクレバスに極太の分身をあてがい全体にまんべんなくその淫液を塗し、潤滑性を利用して先端をヌルリと潜り込ませると間髪を入れずに奥まで差し込んだ。
「あぁあぁぁぁあんっ!いやんっ!」
突如『ぐわっ!』っと股の肉を押し広げられるような荒っぽさでハヤトの侵入を感じたアザミは頭から血の気が引く様な快感で失神しかけるかのように感じた。
(20.4)
「はぁ、はぁ、はぁ」
ハヤトが荒々しく抜き差しを始めると、膣壁全体をかき回されるような感触を与えられ、背中がゾクゾクとする痺れるような快感で気が狂いそうになる。
「ハヤト〜〜〜凄い、凄いよ〜〜〜、気持よすぎて死んじゃう〜」
後ろから突かれまくりながら、思いのたけを口に出してヨガるアザミ…。
ハヤトは昨夜3回も射精させられたこの少女の肉壺にすっかり虜になっていた。
おおよそ日本人の場合5人に一人くらいの割合でしか居ないといわれている『カズノコ天井』の気持ち良さに久々に巡り合ったというのもあるが、
アザミの場合その入口の傍の内壁にもザラザラとした独特の刺激を与える機能を備えていることを知ってしまったからであった。
さらに加えて、巨根気味のハヤトには、その長さゆえ奥まで挿入できる相手は限られていたが、このアザミの膣はその長さがハヤトにぴたりと合うのである。
下手をすれば事の後お腹が痛くなる女さえいたが、170cm近い長身のせいか、アザミは奥に達しても降りてくる子宮口の脇が深く、ハヤトのペニスでも十分に余裕があった。
おまけにその子宮口が中で縦横無尽に動き回り亀頭を舐めるように刺激するのだ。
恐らく彼が今まで経験してきた中でも比類なき名器の部類だろう。
(20.5)
「あ、アザミのおま○こ…す、すごくいいよ〜、中でなんか動いてるし〜」
「そう、アタシ・・・わかんないけど〜 わかんないけど〜 なんかぁ〜 裏側を 擦られてるみたい〜 すっごいイイよぉぉ 」
周りに人がいないと分かってて大胆になってる二人だったが、互いの声は山の向こうにこだまするようだ。やがて二人は絶叫を上げるようにして同時に果てる…。
ハヤトの送る律動に呼応してアザミの細い腰が揺れる。テーブルの上に折り重なるようにして崩れる二人、やがて互いの呼吸が整うと、見つめあって口づけを交わす。
結合したまま折り重なってる二人の股間からボタボタとハヤトの放出した粘液が垂れ落ちる。凄い量だった。
「昨日、あんなに出したのにぃ・・・」
掠れた声でアザミが感嘆する。
「俺の本能が、お前に子供を産ませたがってるってことだよ…」
「ふぅ〜ん…そんなこと…判るんだ…」
実際そうだった、男は浮気相手の時ほど精液とその中に含まれる精子の量が多く、すでに子供を設けた同居の妻に対しては本能が安心してルーチンセックスでは一定量以上の精子を送らなくなる。
これは医学的に証明されていた。
ハヤトはもう少しこのままでいたい気持ちを我慢して、ゆっくりとペニスを抜いた。
『うぅん』と声を漏らし、テーブルに突いた手を突っ張るようにしてエビぞりながらアザミは快感をこらえた。退く時が凄く気持ちいいのだ…。
井戸のポンプが水をかき出すのと同じ理屈で、ハヤトの雁首が膣口近くにあふれてた精液をかき出しながら姿を現した。それらがボトボトと床に垂れる。
ハヤトはプルンと振って滴を飛ばすと目の前にあるポッカリと口をあけているアザミの秘腔を見つめた。
自分のペニスを咥えこんでいたために大きく開口しているそれは、ピンク色の小さな花弁を開いて、淫らに輝いていた。
暫く見てると徐々にではあるが形を窄めつつありまるで生き物のようだった。この『花』を誰にも渡したくない…そんな風に思った。
(20.6)
「いやぁね、センセ〜そんな『ガン見』しないでぇ〜 恥ずかしいよぉ〜 」
からかう時だけ『せんせい』というようになった、そんなアザミが可愛かった。
「いつまでそんな恰好してる…風邪ひくぞ」
「だって〜、これじゃパンツ穿けないもん…」
「そ、っか」
そういうと持ってきたウェットティッシュを取り出し優しく拭いてやった。
「ひゃ〜スースーする〜〜〜」
「我慢しろ」
そういうと笑いながら拭い続けた。喜んでるアザミが愛おしい。
「ありがとう〜」
そういうと立ち上がりショーツを穿き、捲れあがってたスカートを下して身なりを整えるとアザミはハヤトの左腕にまとわりつくようにして寄り添った。
「さ、とりあえず一旦部屋に帰ろう…」
二人はぴったりと身体を寄せ合って、階段を一段づつゆっくりと降りて行った。
アザミは今まで感じたことがない暖かい高揚感に身を浸せながら、ハヤトが言った
『お前に子供を産ませたがってる』というセリフを反芻し、子宮が暖かくなる心地よさに酔う。
「アタシ、このままじゃどんどんハヤトのことが好きになっちゃうよ…」
「お、俺もだよ・・・」
ハヤトも正直に胸の内を吐露した。
『ひまわり…ごめんな…』そう心の中で呟きながら…。
(21)
その朝、昨晩は研究室で午前様だったにも拘らず早めに目が覚めたしきみは、ひまわりの部屋を訪れてみた。ここ数日はずっとそんな感じだ、深く眠れない。
「ひまわり…入るわよ…」
鍵の掛かっていないドアを開け、いつものように声を掛けると、ひまわりがベッドから半身を起して精気の無い目線をしきみに向けた。
「・・・しきみさん・・・おはようございます・・・」
「具合はどう? 今日は授業に出られそう?」
「すみません・・・私・・・」
「・・・・」
起き上がって背中を丸めた格好で布団の上に正座したひまわり。しきみの眼をみる…。
「私、学校を辞めようかと・・・」
微かに聞き取れる微細い声でひまわりが告げた…。
一瞬、(甘ったれんじゃないわよ!)そう怒鳴りそうになるのを堪えてしきみは口を開いた。
「ひまわり…、あなたにとって此処で学ぶということは、そんなに簡単に諦めたり捨てちゃったりできるような、その程度のことだったの?」
「で、でも、ハヤト殿が居なくなった今…」
「悲しいのは解る(そう、私だって痛いほど解るワ)、でも、それで辞めて何になるの?」
「あなた、言ってたじゃない『誰にも負けない立派なくノ一になって見せる』って!」
そこまで言うとしきみの眼から涙が頬を伝って落ちた。
しきみはベッドに腰を掛けてひまわりの肩を抱いた。ひまわりは申し訳なさそうに頭を彼女の胸に預けた。
「しっかりしなきゃ、ハヤトだってアザミだってひまわりがそんな風になるのを望んでないわよ…」
しきみは強い調子で自分にも言い聞かせるかのように言った。
(22)
霞の森、つきよ姫の東屋。いつものように朝食の御前を前に味噌汁を啜る。
「 ふ む 、 こ の 味 ・・・ 」
次の瞬間、椀の中に映る映像を見て(ハッ)と表情が強張るつきよ姫…。
「 い け な い 、 は や ま る な … 」
そう言うとひらりと身を翻し、姿を消した…。
(23)
木漏れ日を浴びながら校舎裏の庭園を散策しているハヤトとアザミ…。元居た世界で起こっているひまわりたちの悲劇とは対照的に『関係』を深めていく二人…。手を繋いで歩く…まるで恋人同士だ。
そんな風に、半ば、元の時空に戻ることに執着していないかのようにさえ見える…、他に誰もいないことさえ、むしろ二人にとっては好都合にさえ思えてきた…。
「このまま〜この里で二人で暮らすか〜」
「な、 何 言ってんのよ〜」
いろいろ想像して、頬を紅らめて照れるアザミ…。
「ハヤトは〜ひまわりのところに帰りたくないの?」
伏し目がちに彼の顔を見ずに聞いた。ハヤトの手を握る掌に少し力がこもった。
「ひまわり・・・か、そうだな…、」
「アイツ、きっと心配して泣いてるよ…」
そう言うと、自分も少しだけしきみのことを思い出した…。でも彼女のことだ、感情を表す事を極端に嫌う女だから、きっと気丈に振舞っているに違いなかった…。
(そう、それでいいのよ、しきみ…くノ一なんだもの…)。
「まぁた、例によって顔面くしゃくしゃにして涙声で何言ってっか解らん状態なんだろうな…」
そこまで言うと、ハヤトもそれまでの明朗さを失った。
(やっぱり、ハヤトはひまわりのこと 愛してるんだな…)少し、複雑な気持ちになりながらもアザミは切り出した…。
「やっぱり、こんなの・・・変だよ ね・・・」
「え?」
「なんとかして、帰ろう!元の世界に・・・」
「あぁぁ、でも、どうやって・・・?」
その時、里の上空に一機の航空機が近づいてきた。どうやら戦闘ヘリのようだ。
「まずい、隠れよう!」
そう言うとハヤトはアザミの身体を抱えて木陰に引っ張り込んだ。
ギューーーーーーンっという轟音とともにオリーブグリーンに塗られたAH-64型戦闘ヘリが二人の上空に現れ、二度ほど旋回すると、再び上空に上がり暫くホバリングしたあと飛び去って行った。
「なんかヤバそうだな・・・」
「『陸上自衛隊』って書いてあった、敵とは限らないんじゃない?」
昨日、二人が此処に現れたことによって誰かに異常を察知されたのかも、それともたまたま通りかかった訓練中のヘリが、里に人影のようなものを見つけたので確認しに来ただけか…、全くわからない。
「とにかく、これから昼間は人目につかないようにしないとね…」
「そうだな・・・」
二人は木陰を辿るようにして寮へ急いだ。
(24)
志能備学園、始業前の校庭を独り急ぐヒメジ。紫のレーシングスーツに身を包み、脇に人型のダミーを抱えている。どうやら裏のガレージに向かっているらしい。
ヒメジはガレージのシャッターをガラガラと乱暴に開けると、中に並んだ多種多様のクルマの配列を見渡し、例のタイムトライアル用のルノーが何台か並べられている場所に歩む、そこの『4』と書かれたスペースにクルマはなかった。
5号車の助手席のドアを開けると、ヒメジは丁寧にダミーを座らせて、4点式シートベルトを締める。
「お利巧さんにしてるんでありんすよ〜」
応える筈の無い人形にそう話しかけると、自分も運転席に座る。
ふ〜っっと一息深呼吸を入れ、イグニッションスイッチを押した。
ブルルルルンっとフロントにあるエンジンが震えると、ヒメジはDレンジにチェンジレバーを叩きこんでゆっくりと進みガレージを出た…。
ガレージの扉を出たところで右折すると、そこにつきよ姫が立っていた。
「 何をする気だ? 」
幾分、いつもよりは早い口調でヒメジを睨みつけて言う。
「 わらわがアザミのところに行って戻る方法を伝えるんでありんす! 」
ヒメジも険しい表情を向けてつきよ姫に言う。
「 やめろ! 死ぬぞ ! 」
つきよ姫は助手席側のドアに手を掛けるとヒメジの顔を覗き込んで睨んだ。
「 これしか、これしか・・・方法がないんでありんすっ! 」
ヒメジはアクセルペダルを踏み込み、砂利道の小石を飛ばしながら発車させた、
もんどりうって地面に座りこむつきよ姫。
起き上がって暫く走り追いかけるが、所詮クルマのスピードには追いつけない。
ヒメジの5号車はけたたましくホイールスライドをさせて校門から山道に出ていった。
踵を返すとガレージに戻り、つきよ姫は草履を脱ぎ捨て例の和服姿のまま、1号車のドライバーズシートに乗り込みエンジンを掛ける…。
「 先 廻 り す る し か な か ろ う …」
そう呟いて、白足袋をアクセルペダルに叩きつけた。
(24.2)
ヒメジはダートトライアルそこのけのドライブで一気に例の駐車場までたどり着くと、アザミたちが駆け下りて言った峠に続くコースに向けクルマをターンさせた。
アザミの辿ったラインは頭の中に叩きこんであった、同じラインをトレースするように走る。だが、アザミの区間タイムより数秒遅れている。
「もっと早く走るでありんす〜〜〜〜」
アザミのそれよりさらに『ドリフトキング』(しかもFFで…)だったヒメジの運転は、どうしてもコーナリングでロスが出る。
それを取り戻そうと直線で飛ばすから、またコーナーリングで膨らむ…。悪循環だった。
「同じ速度じゃないと駄目でありんす〜」
グワ〜〜〜〜ンっと音を上げて高回転で引っ張る。
ヒメジのクルマが最後の直線に差し掛かった時、今まさに坂の途中でコースに合流せんとするつきよ姫は、そのDのゼッケンを付けた白のセダンが横切るのを見てとめた…。
「 しまったっ! 遅かった! 」
そのまま追うが、緩やかな左コーナーに差し掛かったところで一旦ヒメジのクルマが視界から消える…。
「こ、ここでありんすっ!」
そう言うとヒメジはサイドブレーキを目いっぱい引き、ステアリングを大きく左に切る。
クルマはものすごい摩擦音を上げながら180度反転すると、ヒメジは巧みにステアリングを戻し、サイドブレーキを降ろす…。
「このまま一直線に行くでありんす〜〜〜〜〜」
クルマは激しい衝撃音を上げてガードレールを蹴散らし、衝撃で外れたリアバンパーがそのままソリの様な役目をはたして左後輪を斜め上に跳ね上げる。
車体はそのままクルクルと縦に回転しながら谷に向かって飛び出し、立木の枝を巻き込みながらコマのようにフロントを下にして地面に落下した。
「 ああ、神様っ! 」
思わず叫ぶと、土ぼこりを上げて回転しながら落下するヒメジのクルマをみて、つきよ姫はブレーキを踏み込む。
次の瞬間、落下したクルマが炎を上げて燃えだした、つきよ姫は脱兎のごとく飛び降りて、ヒメジの元へ駆けつけると、持っていた脇差しでベルトを切断し、逆さまになったキャビンの中からヒメジの大きな身体を引き出した。
10m程離れたところにある木陰に隠れると、ボワン!と大きな音を立てて燃料タンクが爆発した。間一髪だった。
「ヒメジ!、ヒメジ! おい、しっかりするのだ!」
額が切れて耳と鼻から出血していた。辛うじて呼吸はしているが瞼を閉じたまま微動だにしない…。
つきよ姫は、彼女の反応がないことに一瞬眼をつぶって下唇をかみしめると、直ぐに抱きかかえて自分のクルマに引き返した。
かなり重い筈だったがそんなことを言っていられる状況ではなかった。
(25)
ゆすらと桃太は息堰切って走る、しきみ達を探した、クラスメイトからひまわりの部屋にいると聞き、ノックもせずドアを開けた。
「た、大変よ!ヒメジが、ヒメジが 事故ったってぇ〜〜〜〜」
涙目で飛び込んできたゆすらを見て、ただ事ではないと悟ったが、しきみには全く状況が見えない。
「ヒメジが事故ったって?どういうこと?」
ひまわりはしきみに諭されてやっと登校する気になったのか制服に着替えているところだった。
「わからない?ゆすらにもわからないよ!とにかく今、里の総合病院に運び込まれたところだって〜」
「と、とにかく行きましょう!」
「は、はい!」
ひまわりも驚いてアドレナリンが高まったのか、先程まで感じていた気だるさがどこかに行ってしまった。
(26)
手術中のランプが消え、中から担当の主任医師が姿を現した、大きな事故の割に早く終わったのに一同は不安を感じながら医師を見つめた。
椅子から立ち上がるつきよ姫とちょろぎ、それに副担任の縄跳。
「お気の毒ですが…、かなり広範囲に及んで内臓が損壊しています。手の施しようがありません」
「 た、助 か ら な い と・・・?」
眼を潤ませてつきよ姫は聞いた…。
医師は黙ってうつむくだけだった…。
「な、なんと…」
愕然とする縄跳にちょろぎ…。アザミとハヤトを失ってしまったその幾日も開けずに、また一人生徒を失うのか…。
「こんな状況で、恐縮ですが、意識は取り戻しました…今のうちにご家族の方に…」
そこへダダっとしきみ達がなだれ込んできた。
(26.2)
「ひ、ヒメジは?」
眼鏡の奥の大きな眼を潤ませてしきみが問う。
「・・・・」
つきよ姫が俯き、無言で首を振る。
「そ、そんなぁ〜〜〜〜〜」
ひまわりは眼に一杯涙を浮かべて泣き出す。
「嘘でしょ!先生!嘘だって言って、つきよ姫さぁん〜も〜」
つきよ姫の両腕を掴んで振り回す、
「ヒメジさんは〜、ヒメジさんはどこぉ〜どこなの〜」
ひまわりは叫びながら、ほぼ半狂乱に近くのドアを片っ端から開く、
見かねたちょろぎがひまわりを掴み、案内されていた集中治療室につれていった。
「ひ、ヒメジさ〜ん!」
ベッドに横たわるヒメジを見て、更に涙があふれるひまわり…。
ヒメジは僅かに首を傾けると、左手を震わすように持ちあげてひまわりの手を取ろうとする。
ひまわりは彼女の手を取るとじっと見つめて言った。
「なんだ、元気ぞうじゃないでずが…、ヒメジざんったら、おどろがざないでぐだざいびょ…」
「ひ、ひまわり〜、ごめんなさいでありんす…。失敗しちゃったでありんすよ…」
ヒメジも泣いていた。
「ひまわりには…、いつも笑っていて欲し かったで ありんす。だから、ちょっと頑張りすぎちゃったであり ん・・・はぁ うっ 」
ヒメジはそこまで言うと突然意識を失い、それまで一定のリズムを保っていた心拍計の音が『ピー〜〜〜〜〜』っという音に変わった。
(26.3)
「心停止!」
「ちょっとごめんなさいね」
傍にいた看護師たちがひまわりたちに割り込む、慌ただしく蘇生処置に動き出した、
しきみはひまわりに下がるようにと抱きかかえて後退させる。
「先生を呼んで」
医師が駆けつけると聴診器をあて、除細動器の使用を指示した。
ドスンっといった音がすると、ヒメジの上半身が跳ねる、何回か試すが心音は回復しない、
強心剤を投与し、また何回か繰り返したところで医師は死亡時刻を確認する手続きに入った。
ヒメジが死んだ・・・。
「そんな、イヤァァァァアァァアァァ〜ッ、ヒメジさん〜」
蘇生処置を後ろで見守っていたひまわりがベッドに駆け寄る。
「ヒメジのバカ〜〜〜〜〜〜!」
その場で泣き崩れるゆすら…。
しきみは無言で立ち尽くすと、唇を噛みしめて必死で涙を堪えてる、だが、どうしてもあふれる涙は留めようがなかった。
(アザミのバカぁ!アンタの所為で、アンタの所為でぇ・・・もう みんな滅茶苦茶だわっ)
集中治療室は暫く阿鼻叫喚の修羅場と化した…。
(27)
ハヤト達の失踪に、それを何とかせんがために自らの命を賭したヒメジ…。3人もの大切な人を失ったひまわりには、絶望感しか残されていなかった。
ゆすらとて、そのショックはいかばかりか…察するに余りある。寮を飛び出したきり、桃尻とともに森に消えていってしまった。
行方不明のハヤトとアザミの場合とは別に、純然たる死が確定しているヒメジに関してはその勇敢ともいえる行為に敬意を表し学園葬でもって送り出すことが決められた。
悲しくも厳しくも、級長という立場のしきみにその主催を依頼するやつがしらだった。
「もし、あなたにとって心苦しいところがあれば、風間さんに代行をお願いしてもよいのですよ…」
「い、いえ、ヒメジは入学以来の親友ですから…。私が責任を持って…」
そこまで言うと込上げてくるものがあったが、耐えた。
「わかりました、必要なことはなんでも申し出なさい…よろしくお願いしますよ・・・」
「ありがとうございます…」
しきみは、校舎を出たところで外がすっかり暗くなっていることに気がついた。
「長い、本当に長い一日だった…」
しきみはひまわりほど悲しみに没頭できない。自分の美学として常に冷静沈着であれとのモットーがあったからだ。それを例え『クール』と揶揄されようと、それが『くノ一』としての彼女自身の理想だった。
『これは天が与えたもうた試練なのだ…』しきみはそう考えるように努力した。ここを卒業し、エスピオナージに生きる人生を選択したら、友や仲間を失うのはおそらく日常茶飯事になるだろう…。
さりとて、しきみ自身全てを『運命』と割り切る程悟りを開いてるわけではない、自分が納得できない運命などには断じて抗ってみせるタイプだった。そうでなければ思い通りの人生など切り開けるものか!そういう信念の持ち主だった。
ヒメジの『方法』は乱暴だったが、しきみにはいいヒントを与えた、アザミと彼女だけが知っている秘密…。あれを使えば少なくとも「未来に飛ばされたアザミ」なら助けられる。いや、戻る方法を伝えられる…。
確率はずっと落ちるが、『時間軸のカスケード理論』・・・その仮説が正しければ絶対に成功する筈だ…。もとよりそれが万に一つの確率でもそれに賭ける価値はあった。
しきみは早足で、図書室がある第二校舎に向かった。
(28)
夕食で腹ごしらえを済ませたハヤトとアザミは、一緒にシャワーを浴び、また互いの肉体を貪った。
激しい情交の余韻の中、ハヤトの厚い胸板の上に頭を載せて心地よい疲労感にまどろみかけていたアザミだったが、意を決して起き上がると、肩越しに振り向いてハヤトに言った。
「もう、これで終わりだよ…」
何?何の話?っといった顔でアザミを見上げるハヤト。
「実は…、見せたいものが あんのよ…」
そう言って立ち上がると脱ぎ散らかした衣服の山からデニムのミニスカートを掴み上げた。ポケットから黄ばんだ紙片を取り出すとハヤトに投げた。
「それ、読んで…」
「な、何だ…」
そう訝しげに言うと、ハヤトは紙片を開き、濃いめの鉛筆で書かれた『どこかで見た』筆跡の文字を追う。
(アザミへ、もし、あなたが今いる世界が『あなたの世界』でないならば、飛び込んだ時と同じ状況、同じ方法で戻ってきて、お願い、私を信じて… しきみ)
「こ、これは…」
「アタシ達、みんなに内緒で里を抜け出したりするとき、秘密の場所に手紙を置いて情報を交換してたんだ」
「なんで?そんな…」
「理由は内緒、聞かないで『女の子同士』の約束だから…」
「そんでぇ、今日〜図書室に行ったでしょ?、その時、もしかしてって思って調べてみたら…」
ハヤトは、ああ、あのときか…と、思い出した…。
(28.2)
「こ、これ、信じるのか?」
「だって、その字、間違いなくしきみの字だよ…」
「それに…嘘をつく理由なんてないじゃないの…」
「し、しかし、同じ方法、ったってクルマがないぞ」
「さっき、調べに行った。」
「エンジン掛かったよ…、後ろがへしゃげててミラーとかどっか行っちゃってたけど多分修理すれば走る…」
「そ、そうかぁ…」
ハヤトは実のところ殆ど絶望していた、だが、このしきみの手紙とアザミの態度に気持ちを動かされた…。先程の激しい情交も『アザミの最後の晩餐』だったのだ…。
失敗すればおそらく二人とも死ぬ…。だが、ここで何やら解らぬ状況に身を置いて、二人ひっそりと人目を忍んで暮すような人生よりはマシだと…。そう覚悟を決めたのだ。
「よし!判った、で、どういうプランだ?」
「朝になったら町に降りて必要な部品を探すワ、そうしたらクルマを今ある所から下の道に出して修理する」
「準備が整ったら、即実行よ」
もう、お前を抱けないんだな…ハヤトは正直にその気持ちを顔に現した。
想いを察したアザミは、ハヤトに向かって笑うと。
「もし、ちゃんと、元に戻ったら…」
一回何かを飲み込むように顔を震わせた後
「ここであったことは、二人だけの秘密…だよ」
少し鼻声でハッキリと言った。
「あぁ、約束だ」
そう言うと、ハヤトは小指を突き出して指きりの格好をして見せた、
(指きり拳万、嘘付いたらハリセンボン飲〜ます!指切った!)
二人は小指を絡ませて合唱する、アザミは後半鼻声で半ベソをかいていた…。
(29)
翌朝、ハヤトが眼を覚ますと、アザミは既に出かけていた。
テーブルの上に朝食の支度が整っていて、椅子の上に彼のレーシングスーツが畳んで置いてある…それを着て来いということだ…。
走り書きの置手紙があった。
(おはよう万里小路センセ。眼が覚めたら、慌てなくてもいいけど、クルマのところまで来て待っててね)
ファーストネームは書かずに『万里小路センセ』か…、そう思うと少し寂しさを覚えるハヤトだったが、彼女の精一杯の努力を思うと仕方がなかった。
ハヤトはアザミの焼いてくれていたトーストを齧りながら部屋を見渡した。ここも、俺が使ってた頃から16年たってたわけか…。
殺風景なのは同じだったが、ここでの数日間は、アザミという美しい花が咲いていた。
自分という男はなんて情けないんだろう…。
戻ることに考えも巡らさず、目の前の欲望の赴くままアザミを抱いた…。
二人の関係に何の保証もせずに…。
可哀想なことをしてしまったと自分を責めた。
ハヤトはレーシングスーツに着替え、1時間ほどかけて徒歩で例の場所にたどり着くと、クルマが元あった場所から15mほど下の道路脇に移動してあったのに気がついた。
傍にオンボロの軽トラックが横付けしてある。どうやら町で動くクルマを見つけたようだった。確かにキャブレター式の吸気システムなら電子機器に面倒は掛けないから、古いものなら稼働するクルマは何台かある筈だった。
トラックの荷台には数個の段ボール箱、そして新品のツールボックスに缶入りのガソリンなどが載っている。
これを一人で一所懸命に彼女が集めていたとき、オレは寝てたんだよな?…そう思うとさらに情けない想いになった。
(29.2)
「おはよ〜センセ」
二人の『4号車』の下に潜ってたアザミが顔を出した。例のレーシングスーツを袖を腰のあたりで結んで着ていた。タンクトップだけの上半身が眩しい。鼻と頬にオイルの汚れが付いていた。
「おはよ、あ、朝飯、ありがとうな…。で、どんな感じだ?」
ハヤトは心配そうに訊いた。
「大丈夫、ここまで自走して出せたよ」
「マフラーがすっ飛んじゃってて、音がうるさいんだけど…まぁ我慢して」
「今視てたんだけど燃料もオイルも他のハイドロ系も漏れは見当たらなかった…」
「アライメント狂っちゃってないか?」
「多分…少しはね…でも、大丈夫っしょ!」
アザミは地べたに座って鼻を掻きながら笑って言った。
ホントに可愛い、今すぐにでも抱きしめたい…そんな風に感じたが必死で堪えるハヤトだった。
「なんか 手伝うか?」
「そうね、じゃぁガソリンを一缶分入れといてくれる?」
「分かった…」
そういうと軽トラの方に歩いた。
(30)
図書室での用事を済ませたしきみは心配になってひまわりの様子を窺うために彼女の部屋を訪ねた。薄暗い中でスポットライトのように僅かの照明のついた部屋の真ん中にポツンと座っているひまわり。
傍らに開いた状態でトランクが置かれていた。彼女は死人のような表情で丁寧に衣類を纏めてそこに詰めていた。
「ひまわり、あなた何してるのよ・・・」
立ち竦み、震える小声でしきみが言う。
ひまわりは薄ら笑いをひきつらせたような顔で振り返ると、また、荷造りを始めた。
「何してるのって、聞いてるのよっ!」
今度は怒鳴るようにして言い、ひまわりに詰め寄ると肩を掴んで大きく揺すって怒るようにして続けた!
ひまわりは俯いて眼を合わせようとしない。
「今度はひまわり?、アナタまで消えるつもりなの?」
そこまで言うとしきみは大粒の涙を溢れさせてさらに怒鳴る。
「アナタまで消えちゃって、一人ぼっちになったらワタシは、一体どうすればいいのよっ!」
ひまわりはそれを聞くと乾いていた涙をまた溢れさせ、しきみに向き合うとまた号泣し始めた、しきみももう我慢の限界を悟り、同じように号泣した。
二人はその晩涙が枯れるまで泣き明かした。
(31)
アザミはエンジンをかけ、状態を確かめるように静かにアクセルを吹かし、ゆっくりゆっくりと回転を上げていった。
『ブオォォォン、ブオォォォン、ブオォォォン』
エンジンは異音を発することなく吹けた、死んでるシリンダーはない。
マフラーが一つ外れてた所為でかなり音がうるさいが、エンジンの診断をするにはむしろその方が都合がよかった。
車重が変わるのを嫌ったアザミは拾ってきたマフラーとサイドミラーの残骸は後部座席に乗せておいていた。
チェンジレバーをニュートラルから2ndレンジに変えるとゆっくりと道路に出す…。
「OK〜、じゃ、行くわよ」
助手席のハヤトがうなずく。
リアセクションをトランクの半分までクシャクシャにした車を山頂に向けて走らせる。
スピードが乗ったところでDレンジに固定すると、アザミは後で下ることになる予定の道路を確かめるように観察しながら運転した。
途中『あの小鹿』が飛び出したストレートにさしかかる。
「なんか、目印とか置いておかなくて大丈夫か?」
不敵な笑いを浮かべてアザミは彼の顔を見ずに応えた。
「大丈夫よ、私の記憶力を甘く見ないで…」
悲しい事に彼女の記憶力は、ハヤトと『一緒に過ごした数日』についても同様にはたらく…。
コーナリングがきつくなる中腹にさしかかったところで再び2ndレンジでの高トルク運転に変える、いよいよスタート地点のドライブインにさしかかるころ、聞き覚えのある轟音を伴って上空を緑色のヘリコプターが追い抜いて行った。
「やばい!昨日の戦闘ヘリだ!」
「んっもう! こんな時にぃ〜」
(31.2)
アザミは悪態をつくと急いで『スターティンググリッドが設けられていた場所』に車を止め、髪止めを外して窓から投げ捨て、ヘルメットを被った。
ハヤトもそれに続く、彼女が落ち着いていたのは『陸上自衛隊』のヘリだと判っていたからだった。
知る限り『実戦経験がない』世界で最も見かけ倒しの軍隊…、そういう認識だった。
「あ、そうだ!」
アザミは思い出したようにポケットから町の運動具屋で入手したマウスピースを取り出すと、ハヤトに突き出して
「これ、はめて…」
なぬ?っといった顔でハヤトが口を開けた時、アザミはそこにマウスピースを押し込んだ。
「せっかく戻れても、舌噛んで死なれたら意味ないでしょ?」
そういうとハヤトのヘルメットを小突いて笑った。
「さぁ〜出発よっ」
思いきりアクセルを蹴飛ばすと、傷だらけのルノー406は『あの朝』と同じように軽く前輪を空転させ、テイルを引っ張り回すようにスイングさせながら道路に飛び出した。
『そこの乗用車に告ぐ、今すぐ停車させて待機せよ』
旋回して戻ってきたAH-64が拡声器で呼び掛ける。通常、ヘリの使う拡声器はかなり音が大き目である。
「おおい、なんか言ってやがるぜ」
『繰り返す、そこの乗用車の運転者に告ぐ、即刻停止しなさい、我々は陸上自衛隊所属の…』
「無視無視!」
そう言ってアザミは巧みにヘアピンをすり抜けていく、速い、速い、その時だ
バリバリバリと乾いた連射音とともに30mm機銃弾が彼らの鼻先の崖面に降り注いだ。
「あわわわわ〜うう、撃ってきたぞ〜〜〜」
「威嚇だよ!当たりゃしないって!」
練度の低い技術で空中を飛びながら旋回機銃を使い、走ってる(しかも曲がりくねった山道を)クルマを狙うのがどれ程難しいか、アザミは知っていたから威嚇にもならないのだが…。
そろそろ例のポイントだ…
「行くよ〜〜〜〜」
アザミは慎重にサイドブレーキに手をかけた。
(32)
その日は志能備学園の、年に一度行われる3,4年生合同の「運転技術試験」日だった。
1,2年生たちはボランティアでコースマーシャルとして拠点拠点で安全管理の責務を負うことになっている。
みな、先輩たちのドライビング・テクニックが見られるとあって真剣に任にあたっていた。
そのコーナー脇に待機していた2年生の小村果絵梨は、物凄い勢いで駆け下りてくるゼッケン4番の白いルノーが迫ってくるのを見て(すげ〜)と声を上げそうになる。
間もなく耳に挿したイヤホーンに、万里小路の声で『こちら4号車〜現在前方の3号車に接近しつつあり〜注意を要す〜以上』と入った。
「あの分じゃ〜ゴール手前で追い抜くわね〜」果絵梨は呟いた。
と、その時だった、道路に小鹿が飛び出したのを発見すると
「ああ、いけないっ」
そう叫んで無線機の送波ボタンを押し危険を告げようとしたが間に合うわけもなく、次の瞬間そのクルマがけたたましいブレーキ音を上げてスピンターンすると、
そのまま次のコーナーに車体後部から突っ込んでいくのを見届けるのが精いっぱいだった。
瞬間白い光を見たかと思うと車は一瞬消えたように感じた…時間にして1秒あるかないかといった程度だったがすぐに眼の錯覚だと感じた。
車はそのまま谷の雑木林に飛び出し、ガサガサと枝を折り散らかしながら谷側へ滑るように転落していったのを確認したからだ。
「コードレッド!コードレッド!4号車コースアウトです、繰り返します!
こちら第二セクター、ポイントNo.1、コードレッド!、コードレッド!4号車コースアウト!」
(33)
「うふぅ〜いってぇ〜〜〜〜〜 」
背中で受けた衝撃のため、鈍痛を感じながら呻くハヤト。
クルマは雑木林を縫って坂を30m程バックで走り抜け、下の道路の手前まで来て止まった。アザミが自走して出し、今さっきまで修理を行っていた場所のすぐそばだった。
「大丈夫か?」
ハヤトはマウスピースを吐きだすと、運転席のアザミを見た。今度は口の中を噛まずに済んだ。
「だ、大丈夫・・・それより・・・」
そこまで言うと周りを見渡して、木に青々と針葉が茂っているのを確認すると
「やった、成功したみたい・・・」
『コードレッド!コードレッド!』無線機から音声が聞こえる。
ハヤトは『信じられない』っといった顔でアザミを見つめた…。
「あは、ははははは、」
「ハハッ ハハハハっ」
二人は何とも言いようがなく、事情を知らぬものが見たら気が違ってしまったのかと誤解されそうなくらい笑いあった。
「だ、大丈夫ですか?」
窓から中を覗き込むコースマーシャルの下級生たちが心配そうに二人を見つめている。
(34)
『アザミが事故った』しきみはそう聞いて少し胸が掻き毟られる想いがした、
「で、現場はどこ?」
「中腹の第2セクターに差し掛かったところでありんす…。いま縄跳達が向かってるようでありんす。わらわたちも行くでありんすか?」
「あたりまえじゃない!」
しきみはそう吐き捨てると、ひまわり、ヒメジ、を伴ってマーシャルカーに徴用されていたヒメジの360モデナに乗り込んだ。2シーターなのでひまわりと抱きあって助手席に座るしきみ…。
「ちょっと窮屈だけどすぐそこだから我慢するでありんす」
「いいから出して!」
語気を少々荒めていうしきみ。
「行くでありんすっ!」
そう言うとヒメジは2ndギア発進で360をコースに向けた。
現場にさしかかると、100mほど先にハヤトとアザミがガードレールに腰を掛けて休んでる姿が目に入った。ハヤトは縄跳からペットボトルを受け取りゴクゴクとそれを飲んでいた。
「どうやら、無事でありんすね〜」
そういうとヒメジは滑るように路肩にモデナを寄せると事故現場のすぐそばに停車させた。
(34.2)
「アザミ〜〜〜」
「ハヤト殿ぉぉぉぉ〜」
しきみとひまわりが飛び出すようにして車を降り、二人の元に駆け寄った。
ひまわりを見てハヤトが笑って出迎えた、彼に触れて無事を喜ぶひまわり。
アザミはわざと眼をそらしてその光景を見ないようにした。
「大丈夫だ、何ともないよ、アザミの緊急回避能力のおかげだ…」
ハヤトは彼女を気遣い、ひまわり手をそっと払いのけるようにして身体を離すとアザミの方を見やった。
それを聞いてひまわりはアザミの方を振り向くと一礼して
「アザミちゃん、ご主人さまを庇っていただいて、どうもありがとうございます。あ、それより怪我はない?」
といった…。
「うん、 大丈夫…(身体はね…心はズタズタ…)」
そういうと、ばつの悪そうな眼でひまわりを見た。
「一体、何があったの?」しきみが腕を組んで訝しがる。
「 なんか急にバンビちゃんが出てきちゃって… 」
「ゆすらの事前告知…里の全動物には行き届かなかったでありんすねぇ〜」
紫色のツナギを着たヒメジは、クルマを降りずにドアに腰を掛けルーフに身を乗り出した恰好で笑いながら言った。
「そんなの… 最初っからアテになんかなるわけないじゃないの〜」
眉をひそめてしきみが続けた。
「それより〜 アザミ、髷はどうしちゃったの?」
顔も汚れてるし…、しかも何でオイル汚れ?…しきみはハンカチでアザミの顔を拭ってやった。
「えぇ?あ、(慌てて頭を触って)と、とれちゃったのかな?」
「そういえば〜、ハヤトどのぉ、その髭〜」
「なんか変でありんす…さっきはそんなに伸びてなかったような気が〜」
「ばばばばば、バカ言うな今日は寝坊して剃り忘れたんだって!お前ら気づくのが遅いんだよぉ!」
「そぉ〜ですかぁ〜」
何となく腑に落ちないっといった印象は残ったものの、何とかその場は切り抜けた。
ハヤトとアザミはやれやれといった表情で顔を見合せた。
二人が消えてから大きく影響を受けたタイムラインは完全に修復された…。
(35)
2時間の中止があったが、検定走行は全て最初からやり直して無事全員がセッションを終えた。
学年区別なく総合優勝はひまわり、僅か3秒遅れで2位がしきみ、さらに23秒遅れで3位はヒメジが獲得した。
5人のうちで何と最下位は総合6位のアザミだった。
ハヤトは軽い背中の痛みを訴えていたので同乗試験官をちょろぎに代わってもらい医務室で検査を受けた。
様子を見るためにその日は医務室泊まりになった。
「やったなぁ、ひまわり、おめでとう」
「ありがとうございます!ハヤト殿〜」
ひまわりが優勝トロフィーを見せに医務室のハヤトを訪ねてきていた、屈託のない笑顔で一生懸命話をするひまわり…。ハヤトはやっぱりこの少女の笑顔に一番癒される。そう思うと『戻れた』ことに感謝した…。
ふと気がつくと、入口に寄りかかり腕組みをしてアザミが二人を眺めるように立っている。
「アザミ・・・」
「アザミちゃん…」
「ひまわり何やってんのよ〜祝勝パーティーの主役が居ないって、みんな騒いでるわよ〜」
「あ、ごめん、ごめん…(ハヤトに振り向き)じゃハヤト殿〜また、後で来ますね」
そういうとペコリとお辞儀をして医務室を出る。
(35.2)
アザミは同じ姿勢でひまわりが去るのを見届けると、ゆっくりと中に入ってベッドの傍らにある先ほどまでひまわりが座っていた椅子に、背凭れを反対にして腰かける。
「・・・背中…どう? 」
例の掠れがちの声で優しく問いかける。
「単なる打ち身だ…もうだいぶ良くなったよ…」
それは良かった と表情で示すと、暫く俯いて思索を巡らせるアザミ。
顔を上げてハヤトの顔を見ないで言う…。
「ちゃんと、 戻れたね…」
少し寂しそうな表情に見えた。
「そ、そうだな…信じられないけど…本当に…」
「アタシ、タイムラインが戻ったら、記憶は無くなっちゃうって思ってたんだけど・・・」
「・・・ちゃんと覚えてるな・・・」
「うん」
二人は瞬間、あの激しく『愛し合った』光景を同時に反芻した…。そう、確かに間違いなく互いに愛し合っていた時間がそこにあった。
暫く無言が続いた。アザミは下を見てグルングルンと椅子を左右に振っている。
「検定…残念だったな」
「はは、聞いた? アタシ ゆすらや椿より遅かったんだよ…やんなっちゃう…ハハハ」
「事故の所為だ、気にするな…来年挽回すればいいさ・・・」
だけど総合六位なんだから充分じゃないか…などと言えるわけはなかった。
会話が途絶える。
「…なんだか…ややこしい関係になりそうだね…」
「悪かった、俺が無配慮だった…本当に…」
「違う!興味本位で挑発したの 私だし…私がバカだった・・・なんか男扱いされて、意地になっちゃって…ホント、バカ・・・」
ハヤトは返してあげられる言葉が見つからない…。
「じゃ、もう行くね」
そういうと立ち上がってハヤトを見つめる…、今にも泣き出しそうな顔をしている。
「・・・ああ、わざわざ…ありがとう な」
ハヤトは『話せて良かった』っと続けるのは止めた。
アザミは返事を返す代わりにハヤトの唇にキスをし、駆け足で出て行った。
(36)
食堂での祝勝会も早々に抜け出し、しきみは部屋で今日の検定走行の問題点を整理し、PCにデータを入力していた。
3秒落ちの二位なら充分じゃないかと凡人なら思うだろうに、どこまでもクソ真面目な優等生だった。
遠く食堂からはみんなの笑い声が聞こえる。
一息つくと、時計を見て、そろそろアザミが尋ねに来てもいい頃なのに…と考える。
週末はだいたいそんな風にして夜を供にすることが多かったからだ…。
肌を合わすこともあるが、しきみには彼女とお喋りし、添い寝をするだけでも楽しい時間…、アザミの方もそう思っていた筈だった。
しきみはそっとアザミの部屋のドアを開け、中を覗いてみた。
部屋は真っ暗で、彼女はベッドに横になっていた。
「アザミ? もう寝ちゃったの?」
タオルケットを抱きかかえるようにして丸まって寝ている彼女の顔を覗きこむ。
アザミはニキビひとつない綺麗な横顔を見せスヤスヤと寝息を立てていた。
「あらあら、今日は疲れちゃったのかな?」
事故のこともあるしね…しきみはそう思うと苦笑いして、捲れてるナイトシャツを整えてあげた、
珍しく女の子っぽい恰好で寝ていたのでつい見とれてしまう、暫くしていけない、いけないっといった感じにそっと部屋を出た。
「 しきみ・・・ゴメンね・・・」
寝たふりをきめていたアザミは、ドアが閉まる音を聞いた後にそう呟いた。
(37)
次の日、日曜の早朝、誰もいない第二校舎。
バルコニーに続く階段を駆け上がるアザミ。あの日、ハヤトと手をつないで降りた階段だ…。
激しく後ろからハヤトに突かれ快感の漣に身を浸した場所には、その時と全く同じようにテーブルとパイプ椅子が並んでる。
思い出すと耳が熱くなる、その思い出を振り払うようにして駆け足で図書室に向かった。
いつものように例の縮刷版を手にすると、アザミはスカートのポケットから、あの黄ばんだ紙片を取り出した、暫くそれを見つめながら考え込んでいたが、意を決するとそれを『取り出した場所』に戻した。
「しきみにはもうここを使わないように言っておかなきゃね」
そう呟くとパタンと本を閉じ、胸にひしっと抱きかかえる。
好きな歌のフレーズが口をついた・・・
『こんな素敵な毎日が〜この世界にあるぅってことぉ…』
『そっと教えてくれたのは〜 私の一番 好きなひ と 』
小声で歌いだす。
『ふったぁり 一ぃ緒ならば〜 どんな時も笑 え る の ・・・(涙があふれる)』
『だっから〜 となりに い〜て〜ぇぇぇ 私を見ていてねぇぇぇ・・・』
掠れ声でそこまで歌うと小刻みに肩がふるえる。
アザミはあふれる涙を必死で堪えるが、一筋の線を引いてそれは零れ落ちた。
彼女の静かにすすり泣く声だけが、誰もいない図書室の奥に響いていた。
----- 終 ------
短編とか言って、結局60レス強使ってしまいました、ごめんなさい。
途中サイバーテロ騒ぎで書き込めませんでした。ご了承ください。
超絶乙!
乙!!
切なすぎて泣いた…。
おもしろかった
乙!
ほしゅ
俺も保守
え〜誠に僭越ですが、アザミがあまりにも可哀そうなので責任を取らせてください。
これにて前2部作の集大成となりますのでかなりの長編になりそうですが、
需要を無視して書き込ませていただきます。
しばし我慢してお付き合いいただければ幸いです。
全裸待機
>>708 できればアザミは「あざみ」でお願いします。
はいw
すみませんw
じゃ、始めます。
(1)
ここは志能備学園。蓬莱山々麗を望む高地にある、四季を通して非常に過ごしやすい場所に位置した、勉学には最適な環境である。
既に第三学期も終わろうとしており、ひまわりたちは最後の第四学年を迎えるまで残すところ1月足らずというところだった。
しかしながら、一般的な高等専門学校とは違い、学年末試験の終了から一気に春休みに突入するような温さはなく、最後の一年を迎えるにあたって生徒たちは進路指導の名の下にそれぞれの『将来の配属先』が確定されつつある厳しい時期である。
忍びの世界はまさに『戦場』そのものであった。
入学時に80余名居た生徒も、既に43名に減っていた。厳しい修行に耐えられず落伍したもの、訓練中に事故にあい命を落としたもの、または負傷して退学を余儀なくされたもの、落第したもの、禁忌を犯し退学させられたもの…、さまざまな理由で…。
既に第四学年に進級しただけでも『エリート中のエリート』といえたが、中でも学園創立以来ともいえる『五大輪』とあだ名された、とび抜けて優秀な生徒達がいた。他でもない、ひまわり、しきみ、あざみ、ゆすら、ヒメジの5名である。
日曜日、誰もいない筈の校長室ではやつがしらが、特別海外研修制度の対象者16名を選抜するための資料を睨み、最終選考に残ったものから除外する4名を決める最後の決断を行っていた。
最後の1名を決め終わったところで大きくため息をつき、PCをログアウトすると抹茶を一口啜る。
「また、今年もこの季節になりましたか…」
窓から校庭の梅の木に眼を落とす。既に桃色の花が咲きほころんで春がもう直ぐそこまで訪れていることを知らせていた
(2)
その翌日、校内掲示板に『海外研修生』に選抜された新第四学年生の名簿が張り出された。群がって自分の名を探す者、そこに自分の名が書かれていなくて落胆する者、悲喜こもごもの生徒たちで朝から大騒ぎだ。
「あった、あった、あった〜〜〜〜ありましたよ!しきみさん〜〜〜〜!」
ひまわりが自分の名を確認すると隣のしきみの肩を叩きまくって喜ぶ。
「何よ今さらぁ…学年トップのアンタが選ばれないわけないでしょう?」
当然学年次席のしきみの名前も書かれてる、というか『五大輪』全員の名が書かれているだろう事は発表される前から間違いなかった。
「問題は〜、それぞれの派遣先…よねぇ〜」
あざみはカリカリと鼻を掻きながら呟く…。
「わらわは当然大英帝国でありんす〜〜〜」
相変わらず状況と関係なく、しかも人ごみの中で刀を振り回すヒメジ…。
「ゆすら、当分米澤君と会えなくなっちゃうのね〜」
「 な ら ば か っ ぱ も 連 れ て い け ば よ い … 」
こちらも人ごみの中で味噌汁を啜りながら…。
「あれ?、つきよ姫さん…、つきよ姫さんの名前がありません…」
「 あ る わ け が な か ろ う ? 」
「 落 第 し た か ら の う 」
「アタシの情報によればぁ〜、つきよ姫殿は〜期末試験を全教科白紙答案したらしい〜」
「いったい何を考えてるんだか?」
しきみは訝しげに、またもう一年、第三学年をやろうという『変人』を眺めながら言った。
彼女等が入学時、既に二歳年上だったつきよ姫…、これからは年上の下級生となる…、一体何年この学園に居るつもりなんだろうか?
「さ、授業が始まるワ…、行きましょう」
しきみがそういうと、生徒たちはそれぞれ各々の教室に向かって散って行った。
(3)
発表があったその日、それぞれがちょろぎ教頭に呼び出され『派遣先』の国家と研修中に帰属する国家機関と選考理由並びに研修の概要を聞かされる。
ひまわり、しきみはアメリカ、ヒメジとあざみがイギリス、ゆすらがフランス、ついでに言えば同じく選抜された風間椿はドイツと決められていた。
5人はしきみの部屋でそれぞれが渡されたパンフレットや身分擬装用の資料、偽造パスポートの記載予定内容その他を広げながら騒いでいる。
「見てみて、アタシ『アカネ・ティモシー・ウインタース』だって〜〜〜変なの〜〜』
あざみが資料を見ながら笑って言う。
派遣中、彼女等は日本人ではなくなる規則になっていた。派遣先の国籍が与えられることになっている。年齢、経歴など全て擬装されたものであった。といっても人種的に不自然がないように日系人ということにはなっている。
「私は、『ヒロコ・ミシェル・ライト』です。海兵隊少尉ですって」
ひまわりも同じように続けた。便宜上ファーストネームのイニシャルが本名と一致するように配慮されていた。
同じ国に派遣されても、帰属組織が違う場合が普通で、しきみは同じアメリカでも海軍少尉、あざみ、ヒメジがそれぞれイギリス海軍少尉と陸軍少尉。ゆすらがフランス海軍少尉だった。
「しきみやゆすらは海軍?ってことは船に乗るんでありんすか?わらわは『特殊空挺部隊』てところでありんす」
「あいかわらず呑気ねぇヒメジは…、イギリス陸軍の特殊空挺っていえば『SAS』の事でしょそれ?…もぉ〜超有名じゃないのよ…」
苦笑しながらしきみが続ける、
「私たちはくノ一、それぞれ組織は違ってもやることは一緒よ。特殊任務部隊…私はSEALsよ」
「ゆすらはGCMC〜」
「アタシは〜所属は海軍だけどSBSって所に派遣されるみたいよ〜」
あざみは資料を見ながら一気に憧れのMI-6に…などと変な妄想を込めて言った。
とにかくイギリスへ…という希望は叶った。
「そうですか〜わたしは何も書いていません。現地で決められるみたいです〜」
みんな具体的なのに自分だけなんか適当なのに少しがっかりするひまわり。
「ま、アメリカの海兵隊って、存在自体が特殊部隊みたいなとこだからイイジャン!」
適当なことを言ってなだめるあざみ。
「これから半年間みんなバラバラになっちゃうんですね〜、日本語も話せなくなっちゃうし何だか寂しくなります…」
ひまわりは特に仲が良かったあざみがイギリスに行ってしまうのが何だか寂しかった。
「私が同じサンディエゴに居るから寂しくないわよ、ひまわり」しきみが微笑む。
転入時は『雑草』と揶揄していたしきみも、学年が進むにつれ頭角を現し、ついには自分を押しのけて首席の座を奪った彼女にはすっかり降参していた。今やいいライバルであり親友であった。
「ゆすらもパリかシェルブールだから、暇な時ロンドンに遊びに行くね〜」
「バカね〜アタシはロンドンには居ないよ〜」
あざみはドーセット、ヒメジがクレデンヒルだと言うのを思い出して一同笑いあう。
その後は深夜まで新しい世界への旅立ちに胸躍らせて歓談する5人だった。
(4)
新学年も始まり、数週間が過ぎたある日の朝、校舎に向かうひまわりを追いかけるあざみ。
「ひまわりっ! おはよ〜」
「あ、あざみちゃん。おはようございます」
「ちょっといい?」
「え、あ、はい。 何でしょう?」
あざみはひまわりの手を引いて傍の木陰に引っ張りこむ。
「あのさぁ、他でもないんだけどぉ〜、今朝、材料の量〜間違えちゃってぇ〜お弁当作り過ぎちゃったんだ…」
「はい…」
去年からあざみが急に料理に凝りだしたことはみんなよく知っていた。
「これ、ハヤト先生に食べさせてあげたらどうかな?って持ってきたんだけど〜」
そう言って包みを見せた。
「あ、ありがと〜あざみちゃ〜ん。ハヤト殿〜きっと喜んで食べてくれると思います〜給料日前だし〜」
そう言って包みを受け取ると笑って言った。
「そ、そう…よかった、じゃお願い」
そう言って微笑むと立ち去ろうとする。
「待ってください!」
振り向くと、少し困惑したように笑っているひまわりが続けて言う。
「今日は、校長先生との会食で、ハヤト殿とお昼ご一緒できないんです。だから〜あざみちゃんが直接〜」
(そうか〜忘れてた)海外研修に選抜された生徒は一人づつ校長と面談を兼ねた会食をすることになっていたのだった。
「え?、でも…イイの?」
あざみは内心『あの事件』以来、久しぶりにハヤトと二人きりのシチュエーションになれるかもという期待で胸が高鳴るのを感じたが、嬉しさを押し殺しながら一応配慮して聞いてみた。
「何がです?」
ひまわりは全然気にもしていない。
「あたし…これでも女だし〜、厭じゃないの?」
『五大輪』の仲間には『彼』が女だということはバレていた。
「とんでもない〜むしろ私の代わりにハヤト殿とお昼ご一緒にしていただければ安心です。ほらぁ、それに、あざみちゃんに見張ってて貰えれば変な女にちょっかい出されなくてすみますもん〜」
全く屈託がない。
(あちゃ〜…アタシがその『変な女』をやっちゃったんだけどな…)すこし気まずくなるあざみ。
「そう、ひまわりがそういうなら〜」
「後でお味のこととか聞かせて貰いますね〜」
話がまとまると、二人は並んで校舎に向かい始めた…。
(5)
「そうか、西海岸か…」
ナナフシはそう呟くと、ガックリと肩を落とす。
始業前の逢瀬ではないが互いの留学先を知らせあうために、久しぶりに人目を忍んで顔を合わすしきみと彼は、互いの任地が遠く離れていることを各々が今知ったばかりだった。
前後するが男子校も同様の海外研修システムがあった。
「あなたがドイツじゃ、こうして会うのも当分無理みたいね…」
しきみは彼ほど落胆していない。離れたら離れたで愛情を確認するにはいい機会だ。
それに向こうで気に入った男が居たらどうなるか分からない…そう思っていた。
既に一人前の『くノ一』的思考回路が育っていた。
「半年の我慢…だな」
「我慢…することなんかないワ…」
しきみは彼の手を掴むと自分の乳房に当てる。眼を潤ませてナナフシを見上げる。
「抱きたいんでしょ? いいわよ。好きにしても」
「よ、よせ!」
しきみの腕を振りほどき後ろに飛び退く。手には制服越しではあるが柔らかな乳房の感触が残る…。下半身に血が集まるのを感じた。
「…しきみっ、肉欲におぼれたか…」
「なにそれ? 肉欲?…したくてウズウズしてるくせに…」
しきみは毒づいたが、内心安心した…。これなら逢わない間も並みの女のちょっとやそっとの誘惑には動じないだろう…そう思ったからだ。
「拙者は我慢できないから抱く…そういうのが気に入らないだけだ…」
「たった今、そう言ったじゃないの! それに他に何があるの? 私はナナフシに抱かれたくて…傍に居るのよ…」
「…それは、今でなくてもいい…」
そう言い残して飛び去った。
「バカ…ね…」
しきみは自分以上にクソ真面目な彼にあきれながらも、表情は嬉しそうにして学園の方に踵を返した。
(6)
昼休み、それぞれが食堂、校庭、または宿舎に戻り食事をとる。このひと時だけは万国共通で楽しい時間だ。
校舎から少し離れた庭園のベンチ。ログテーブルに備え付けられたそこにハヤトが座っている。いつもひまわりと一緒に過ごす場所だ。人目も少なかったから、しばし『好き合った男女』で居られる。
「お待ちどぉ〜」
現れたのは掠れ声のあざみだった。
「のぉ〜わぁぁぁぁ! な、なんだ、あざみ〜〜〜」
そこまで驚くことはないと思うが、現れたのはひまわりではなくあざみだった。髷を解いてカチューシャで揃えている。『あの時』と同じだった。
「今日は〜ひまわりの代打〜あざみちゃんでーす」
「はい!手作り弁当だよ〜」
そう朗らかに言って紙袋から大小のランチボックスを2つ取り出すと大きい方をハヤトの前に置いた。
「センセ、手を出して〜」
ハヤトが言うとおりにするとトングで掴んだおしぼりを渡す。
「あおあぁ、ありがとう…」
「こ、これ全部あざみが作ったんか?」
「そうよ〜、感謝してね〜偶然間違えて多めに作っちゃったんだから…」
あざみはそれぞれの蓋を開けて、他に持ってきた惣菜を並べ、紙コップに水筒からお茶を注ぐ。
「そうか、う、美味そうだ」
「いただきま〜す」
ハヤトは関係が微妙なあざみと一緒であることを忘れ、彼女の手料理に舌づつみを打つ。
(7)
校庭にある大きなクヌギの木陰ではしきみ達がそれぞれランチを摂っている。あざみとひまわりが居ない代わりに珍しくつきよ姫が一緒だった。
「 ふ む 」
椀を覗きこみ表情が変わるつきよ姫。
「あ〜」
つられて覗きこんだゆすらが声をあげた。
「何でありん…あ〜〜〜〜っ」
「ちょ!・・・これって・・・」
ヒメジ、しきみも続く。
椀には楽しそうにあざみの手作り弁当を食べながら談笑している彼女とハヤトが映っていた。
「あざみ…ナニ『女の子』しちゃってんでありんす?」
髷を解き、どう見ても『恋する乙女』モードである。同じ女の目から見たらただ事じゃないと思わない方が不自然だった。
映像はハヤトの口元についた汚れをあざみがハンカチで拭ってあげてるシーンへと続いた。
「これ、初めてじゃないわよね…」
しきみが言った意味は、この二人は以前もこういう状況を過ごしてる関係だ…ということだった。全員が頷いた。
「みなさん…なにしてるんです?」
皆が振り向くとそこにひまわりが立っていた。校長との会食は早めに終わったらしい。
「あ、いや、なん・・・でもないわ」
冷や汗を垂らしてしきみが苦笑する。どうするか判断に迷っている。すると、
「 見 る か ? 」
そう言って、情け容赦ない つきよ姫が椀を突きだした。彼女はハヤトに対し、内心で少々怒っていた。
「あぁ、あざみちゃんですね?これがどうかしたんですか?」
「どうかしたって!ひまわり〜プロントザウルス並みに鈍いわね〜」
「どうもこうも…、私があざみちゃんにお願いしたんです…。ハヤト殿とお昼ご一緒してくださいって…」
一同、拍子抜けして納得。だが、あざみの様子が変なのだけは合点がいかない。だが、その場はそれで落着した。
(8)
みんなに見られているとは知らないハヤトとあざみ。他愛ない雑談で見た目は自然に見えたが、互いに内心は『あの日』の事を度々反芻していた。
談笑しながらもあざみは胸が高鳴り下腹部が充血するのを感じた。今にも彼に飛びつきたい…。
「いや〜美味かったぁ〜あざみ…ごちそうさま、ありがとうな」
「そう?よかった…お腹一杯になった?」
「うん、また…」
と言いかけてハヤトは止めた。
「ん? なぁに」
あざみが言いかけた言葉を聞き逃さず聞いた。
暫く俯き加減で考えていたハヤトだったが
「また、…はないんだよな?俺達…」
と続けた。
片づけをする手が止まるあざみ。
「…その話は、なしでしょ? 約束…忘れたの?」
あざみは急に表情を強張らせ、眼を瞑って静かに言った。
「お、お前は…もう、大丈夫なのか?」
そう聞かれて一瞬泣きそうになったが、何とか飲み込んで考える。
思い切って言ってみる。
「アタシ…、ひまわりのことも大好きなんだよね…」
「だから、彼女を裏切るようなことはできない…」
そうだったからこそ、今日は彼女を介して彼に弁当を渡すつもりだったのだ。
「答えになってないぞ…」
「やめて、ここでそんな話…誰かに聞かれたら大変よ…」
そう言ってハヤトを睨むと少し急いで片づけを終わらせようとする。
「続きは…今晩…部屋に行くから…」
そう言い残して早足で去って行った。
(え〜〜〜〜)
(そいつはちょっと困る〜〜〜)
今晩は、筆の子とやりまくる性欲処理日の予定だった…。
「しょうがない…か」
何がしょうがないか っだ!バカチンが!
(9)
午後の授業も終え、放課後の予定もない者たちはそれぞれが自由に過ごす…。とはいえ、海外研修組は各々が準備に追われ遊んでいる暇などなかった。
しきみはアメリカに行くと決まってからは、英会話の課外コースを『最終仕上げ』とばかりに熱心にこなしていた。
外国人講師に受ける必要性から、里から離れた場所に設けられている外国語学校に通うわけだが、専用のマイクロバスに乗って往復するために小一時間を要した。
今日もそのプログラムをこなし帰途についている途中だった。
車窓から流れる景色を眺めながら昼間あった出来事を思い出した。
「あざみ、凄く幸せそうな顔してたな…」
ハヤトに処女を捧げたのをきっかけに『思わぬスイッチが入ってしまった』しきみの『色欲の治め役』はずっとあざみが勤めていてくれていたが、実のところ、彼女が自身で制御できるようになった頃から間隔が空くようになり最近ではずっと途絶えていた。
だから嫉妬のようなものは感じることはなかったが何となく気になった。
(そういえば…)あの事故の時と、あざみが遠のく時期が重なったのだっけ?
今さら彼女に未練はない。だが、生来の『分らないことがあると気持ちが悪い』という感情がしきみの行動原理を支配していた。
「くノ一に恋愛は御法度…」
しきみは静かにそう呟いた。
(10)
同じころ、学園の地下射撃演習場。
ひまわりとあざみがダイナミック・ターゲット・プログラムに勤しんでいた。
「なんでぇ? 急にまたぁ?」
愛用のSIG SAUER P220のマガジンにカートリッジを詰めながら3パーティション左のひまわりに聞く。
サウスポーのあざみだったが銃だけは右手で扱う。世界中の殆どの銃がそう設計されているからだ。もちろん左手でも撃てる。
「今日、校長先生に言われたんです〜。派遣までに銃火器の扱いに慣れておくように…って」
同じくスミス&ウエッソンM4506のマガジンを差し替えながらひまわりは答えた。
「なぁんだ、そうなの…」
マガジンをSIGに差し込むとスライドを引いて言った。
「実は、私もなんだぁ」
二人はヘッドセットをつけ防護メガネをかけると揃って立て続けにランダムに現れる標的に向けて連射する。
全弾撃ちつくすと手元のプッシュボタンを押す。ブザーが鳴り得点が表示された。
「あちゃ〜一発外したワ〜」
そう言い、ヘッドセットを外しながらあざみは左のスコアーボードを見た。15/15と表示されていた。全弾命中だ。
「やるわね〜」
ひまわりは何も言わず微笑んで返した。
あざみより重い銃をいとも簡単に使いこなしている…
(何から何まで凄い子だわ〜)
あざみはそう内心で呟きながら、彼女がパートナーだったらどんな任務もこなせそうなのになぁ〜と今回派遣先が分かれてしまったことが残念に思えた。
割り当て分の全弾を使いきったあと、ロッカールームのそれぞれのガンケースに丁寧に銃を仕舞い、キーダイアルを回してお互いに施錠の確認を規則通り行う。
二人はシャワーで汗を流した後、お腹が空いてきたのでこれからお好み焼きでも食べる?っと話がまとまり、夜道をもんじゃ屋に向かった。
「しきみさん達も誘いましょうか?」
「いいよ〜、たまには二人だけで、話したいこともあるしさ…」
「そ、そうですね…たまにはイイですよね!」
そういうとひまわりは笑って小走りに駆けだした。
銃を握って照準を合わせ的確に引き金を引く時の精悍な表情…それとのギャップが凄すぎる。ひょっとするとこの娘は多重人格者ではないのか?あざみはそんなことを思った。
「ちょ、ちょっと待ってよ〜〜〜」
慌てて後を追う。
この光景だけを見れば無邪気な女子高校生だ、だが内実は想像を絶する「殺し屋」であり「オペレーター」であった。
(11)
場面は遠くユーラシア大陸の小国パルティメニスタン共和国。旧ソビエトの構成国で崩壊後はその豊富な石油資源で国家財政を支えていた。
黒海に面しトルコ、アルメニアに近接する東西に長い地域を有する小国だが、ここを通るパイプラインは幾本にも及び、政治的には重要な鍵を握っている存在だった。
旧共産党の幹部から大統領に就任した男は、通称「総統閣下」と称される程の独裁権力を有していた。
といっても決して悪人ではなく、ともすれば民族間問題で不安定になりがちな内政の舵取りを、フットワークの良い独裁的政治システムを駆使して行っていると言った方が適切だった。
かつてのチトー大統領にイメージが近い。
その名をウラジミール・ゴスコフといい生粋のスラブ系ロシア人だった。
ゴスコフ大統領は官邸で昼食後のコーヒーを楽しみながら僅かばかりの私人の時間をくつろいでいる。
そこへ国家警察局の局長が訪ねてきた。
「閣下…」
「いやぁナターシャ…、ま、かけてくれ」
大統領はソファを勧めると彼女は遠慮がちに座った。
「で、娘の…、エドナの行方は…」
ゴスコフが一瞬『父親』の顔を覗かせて尋ねる。とても心配そうに。
「申し訳ありません…残念ながら…依然として掴めておりません…。」
「以前申し上げた通り、誘拐ではなさそうだということは今現在犯人からの脅迫がない事で確定しつつはありますが…」
「誘拐でなかったら、監視役の護衛官は一体誰に殺されたというのだね?…」
「その件に関しても…現在調査中です…」
内心期待はしていなかったが、やはりその想いが正しかったことを知らされるとそれはそれで無念ではある。
定期的に匿名のメールアドレスで無事を伝えてきてはくれるが、本人のものか否かは正直疑わしかった…。
「公式に発表されては…」
「Het、Het…」
鋭く左手の人差し指を彼女の床に突きつけるようにして、厳しい表情で否定するゴスコフ。
「君は解かっていない…。そんなことをすれば、この国をつけ狙う悪人たちの思う壺だ…」
彼は、万に一つでも娘が『ただ放浪しているだけ』という望みがあるのなら、そのことをワザワザ公表し世間に知られるのはまずいと考えていた。
「では、モスクワのご友人に…」
彼女の提案は一見常識的だが、それも非現実的だ…。ソヴィエトが崩壊し、やっと自由になった国をまた連中の支配下に戻すような真似をできるほど自分は老いぼれではない…。
簡単な話じゃないか…娘を人質に私を辞任に追い込めばこの国はた易く内部崩壊する、何かと理由をつけてロシアが軍事介入する理由を与えるようなものだ…。
「よろしい、今日はご苦労だった…。下がってくれたまえ…」
国家警察局長を帰すとしばし思索を巡らせる。尊敬するユリウス・カエサルだったら、こんな時どうするだろうかと…。
(12-1)
「いよいよですね〜」
もんじゃ屋。豚玉チーズにソースを塗りながらひまわりが口を開いた。
「うん、お互い寂しくなるよね〜」
あざみは素直に本心を吐露した。
「あ、でもぉ、メールのやり取りぐらいは、しましょうね、あざみちゃん」
ひまわりは丁寧にコテを使ってお好み焼きを8等分する。
「そんな暇あるかなぁ〜、それに、ホームスティってわけじゃないからメールすら打てないと思うよ。秘密厳守だからね」
「そっか〜、それもそうだよね〜」
聊か考えが浅かった、確かに行先は各国の防衛を担う所だ…派遣社員が派遣先企業に行くわけではない。ちょっぴり肩を落とすひまわりだった。
「でもさ、秋になるころには帰ってこられるし、『今生の別れ』ってわけでもないから…」
笑って見せる。しかし(だったら何でこんなに寂しいのあざみは?)そう内心自問する。
「それでさ、ひまわり…、ハヤト先生とは…どうするの?」
「どうって?何がです?」
「何がって…、『契り』とか…いろいろ…」
「あぁ、そうでした…全然考えていませんでした」
「バカね…、それでも仕えてるつもりなの?」
「アタシ達はくノ一なんだよ〜、これから先世界中を飛び回るし『結婚』なんかできないの…、だから、彼の事もちゃんと考えなきゃダメじゃないさぁ〜」
自分の想いとは裏腹に、呑気なひまわりを半ば叱るような気持ちで言う。
(12-2)
「子供じゃないんだから…それに彼だって男よ?男の『生理機能』のことだって考えてあげないと…」
「わかっています…」
急に姿勢を正してキリッとした表情でひまわりが答えた。
「だからぁ〜私だって涙を飲んで〜武蔵坊先生や〜筆の子先生がぁ〜その、ハヤト殿のお相手をするのを見逃してあげているんです!」
「はぁ?」
あざみは一瞬目眩がした。あの巨根を楽しんでる女が他にもいたとは…。
それにしてもなんちゅう男だ…。
「な、な、なによそれぇ?」
「ハヤト殿は…自分が私にふさわしい男になるまで、私とエッチしないって…そう宣言したんで〜」
「で、じゃあその間〜他の女の相手をするのは良いっていうのぉ?」
「はい…だって、恋愛と性的欲求は別ですから…」
呆れてモノが言えない…。
「それ?世間では『二股』とか、『浮気』とかいうんじゃないの?」
「そうなんですかね?」
ひまわりは何だかわからないが絶対的な自信があるのだろうか?全く意に介さない様子だった。
「それに、ハヤト殿は『自分から誘ったわけじゃない!勝手に向こうからやってくるから拒めなかった』って言ってました」
「忍びの者たち第17話『据え膳食わぬは男の名折れ』でも電蔵さんが同じことを…」
ニコリと笑って言う。
(確かにそうだワ…)あざみも内心で相槌を打つ。いやいやそんなこと考えてる場合じゃない。
「で、でもさぁ、ひまわり…は、その、…したくな い の?」
ひまわりは数秒間天井を見上げて考える…。
「そういうの、まだ…わかりません、まだエッチしたことがないんで…」
(あちゃ〜〜〜〜じゃぁバージンのまま海外研修へ?信じらんない〜〜〜)
驚きの連続だったが、ハヤトがひまわり以外の女を抱くことに彼女がそれほどの嫌悪感を示さないことに少し安堵した。
(12-3)
「あざみちゃんは、その〜〜〜どうなんですか?」
(げ!)
「あ、いや〜正直〜いろいろと…苦労してるよ…恋愛御法度…だからね」
苦笑いして答えるが、ふと、思い切って言ってみようと続ける…
「今度〜ハヤト先生借りちゃおうかな〜」
一瞬、ひまわりの顔が凍りつくように感じた。
「ダメです!もうこれ以上ハヤト殿を他のヒトには貸せません!」
「じょ、冗談だってば〜」
「でも〜あざみちゃんがハヤト殿と…その〜エッチしたいって思うってことはぁ〜」
「だっ、だから冗談だってば〜もう〜」
あざみは心中を見透かされまいと抵抗するが耳や頬が熱くなる。ひまわりはどう思ったろうか?
「もし、もしもの話ですけど…私に万が一のことがあったら…あざみちゃんに…その〜ハヤト殿をお願いしてもいいですか?」
ひまわりの突然の申し出に、豚玉を喉に詰めかける…。
「ちょ、ちょっと待ってよ〜」
あざみはゴクゴクと水を流し込んでから続けた
「アンタ急に何言うのよぉ〜〜〜」
「私たち…くノ一ですよね? 任務中に命を落とすことも考えに入れておかないと…だから」
「大丈夫だって〜、今回の研修でそんなヤバイ任務はないから〜」
「そうでしょうか?でもぉ〜」
「第一、失礼だわ〜このあたしに『2号』さんになれって言うのぉ?」
「そういう意味では…」
暫く考え、あざみはコテを置くと少し姿勢を正して静かに話しだした。
「アタシはぁ〜 もう一生独身って決めてるの…誰かを好きになってもどうにもならないんだもん…」
少し表情に影が窺えた。
「あざみちゃん…」
「ときどき、任務中に知り合ったイイ男と、つかの間ベッドを供にできたら…そんなので十分かなぁ〜 そんな風に思ってんのよ…」
「それに、その方がカッコよくない?」
これは本心…というより左脳が導き出した結論だった。真のくノ一なら大同小異であれ、みんなそう思う。一方で激しく抵抗する右脳の『感情』を圧し殺して。
「さ、深刻な話はこれくらいにしてぇ〜今日は食べようよ! 向こうに行ったらもうお好み焼き食べられないんだしさ」
そういうとまた元の笑顔が美しいあざみに戻った。
「マンサクさぁ〜ん、ここ海鮮ミックス追加ね〜!」
霞の里の宵の口はまだまだ先だった。
(13-1)
男性教員寮。ハヤトの自室。
筆の子の身体で性欲を解放したハヤトはその余韻もさめないうちに彼女を追い返した。
彼女は不平を言ったが、どうでもよかった。それだけ大事な『お客様』が訪れることになっていた。
シャワーを浴び、汗と筆の子の匂いを落としてる最中、あざみは音もなく部屋に侵入した。いつもの忍者服ではなく、臍のあたりまで前が切れ込んだデニムのマイクロジャンパースカートに白のブラウスといった平服だった。
ハヤトはベッドに腰かけたあざみを見つける…。
「そうやって音もなく忍びこんで、鮮やかに人殺しをやってのけるんだな…」
ハヤトももう驚かなくなっていた。
「そういう任務は…もう少し先よ…」
あざみは不敵に笑うとベッドから立ち上がり、ジャンパースカートの肩ひもを落とす。左肩、そして右肩…。
すとんと落ちたスカートから脚を抜くとハヤトに歩み寄る…。
ブラウスのジッパーをゆっくり下げ、それを脱ぐと白いレース地のブラジャーとショーツだけの姿になった。
上目使いにハヤトを見上げると悪戯っぽい笑いを浮かべて言う…
「ランチの続きをしよぉ…」
この半日であざみはすっかり大人の女に成長した。
最初に『来る』と言ったときはこうするつもりはこれっぽちもなかったが、夕刻のひまわりとの話で考えが変わったのだ…。
好きな男が居るなら、抱かれるだけで良い…そういう割り切りができるようになってしまった。
ハヤトはあざみの見事なまでのプロポーションを見せつけられて劣情を抑制することができなくなった。先ほど筆の子の胎内で暴れたばかりだというのに彼の欲望は再び力を漲らせていく…。
(13-2)
あざみは立ち尽くすハヤトの前に膝まづくと彼の腰に巻かれたバスタオルを外す。
現れた『未だ道半ば』状態のペニスを両手で支えるとそれを口に含んだ。
舌で味わう数か月振りの感触だった。
あざみが舌で先端を転がすようにすると、それはみるみる大きさを増していった。
「もう、約束は忘れたのか?」
あざみは返事もせずハヤトの怒張を頬張り続けている。
ハヤトはあざみの頭を荒々しく掴むと、自分の顔に近づけた。
「始めるなら…ちゃんとキスからにしよう…」
そう言って唇を重ねる。
あざみもハヤトの背中に腕を回して応じた。激しく抱擁し合うとそのままベッドに転げ落ちる。
荒々しくブラジャーをはぎ取り、ショーツを脱がしにかかったとき掠れ声であざみが言う…。
「今日は危ないの…これつけてね…」
ハヤトは分かったとばかり、彼女が事前に用意していたと思しき小箱を手に取った。
クンニリングスで場繋ぎをしながら巧みにそれを装着する。
ことセックスに関しては手際が良いハヤトだった。
充分に潤いを与えると、ハヤトはあざみの秘華にペニスを突きたてた。ハヤトはスレンダーなあざみの身体に覆いかぶさるようにしてのしかかるとまた唇を求めた。大きく開いた彼女の両足がハヤトの尻の上で交差する。
「ああぁんっ…」
ハヤトの怒張があざみの秘肉を割り、深々と侵入すると彼女は歓喜の声を上げる。
「ハヤトせんせっ…」
やがてベットの軋む音がリズミカルに繰り返され、二人は激しく恥骨をぶつけ合った。あざみは何度も何度も達するとハヤトが射精するころには失神しかかっていた。
久しぶりに互いの愛に目覚めた二人は翌朝近くまで繰り返し繰り返し求めあった。
(14-1)
「い、今…何時?」
心地よいけだるさを何とか払拭し、あざみはハヤトに問う。
「5:18…」
ハヤトはサイドテーブルに置かれたSWATCHを掴み見て応える。
「いっけな〜い、長居しすぎたわ〜」
当り前である、逝っては眠り、起きては求め の繰り返しで6個入りのコンドームを全て使い果たしていたのだから。
「帰るのか?」
「だって…同伴通勤する気?」
あざみは笑いながら からかう様に言うと、ハヤトの厚い胸の上に顔を擦りつける。
「大好きよ〜」
「なんだ、昼間の返事か? 今頃…」
「違うよ…、ハヤトも相当の『ワル』だって判ったし…アタシね、割り切ることにしたんだ…」
「お、俺が?ワル?」
「ひまわりから聞いたの…ミサ先生や筆の子先生のこと…学園で一、二のセクシー系の同僚をセフレにしてて…、一方で『本命』は大事に取っておいて…」
「そんなことする奴がワルじゃなかったら一体何なのよ?」
(げぇ、話したのか〜)
「い、いやアレは〜、持ちつ持たれつってことで…『恋愛感情』とかぁ、そんなのは無いから〜」
苦しい言い訳だった。
「だから、アタシのこと愛してなくても抱けちゃうんだよねぇ?…」
(い、いや、そんなことは…)
「もういいんだ、たまにこうやって可愛がってくれるんなら…、何もないよりマシかな?って、そう思うことにしたの…」
「そ、それって…悲しくないか?」
お前が言うか?
「アタシ『くノ一』なんだよ? もともと恋愛系はどう転んだって『悲劇』で終わる運命なの…」
あざみはブラジャーをつけながら、少し拗ねたような口調で言った。
「もし俺が…お前に惚れてるって言ったら?」
「そんなバレバレな嘘…だれも信じないよ…」
脱ぎ散らかした衣類からショーツを探しながら笑って言う。そんなこと言ってくれるだけでも彼女は嬉しかったが…
「無理しなくていいよ、アタシのココが気に入ってるだけでしょ?」
そう言って股を指差す。すっかりスレっからしを気取っていた。
「い、いや…」
確かにそれもあるが、あざみには筆の子やミサには感じてない『気持ち』を抱いてるのは事実だ、だが伝える術が分らなかった。
(14-2)
「図星? それにね 誰かが言ってたけど『身体が合い過ぎる』のは良くないって」
ハヤトには理解できなかったが、何となくそんな気はする。
あざみは丁寧に尻の肉をその中に整えるようにショーツを穿くと、ブラウスに袖を通しながら続けた。
「何でひまわり…抱いてあげないの?」
「理由は聞いてるんだろ?」
「バッカみたい…、今のハヤトが ひまわりの成長になんか追いつけるわけないじゃないのよ…」
的確に痛いところを突いてきた。
ひまわりは、いや、ひまわりだけではない、あざみもしきみも、この3年間でハヤトができないことを次から次へとマスターしていっている。
(俺は何ができる?借金は減らないし自分ひとり喰うので精一杯だ…)
そう考えると情けない顔になった…。
「何よその顔〜、少しは言い返しなさいよ〜」
あざみも言い過ぎたことを後悔した、でも虚勢を張って反論するような男じゃないって所がハヤトの「良さ」なのも理解している。
あえて煽ってみただけだった。
それに、彼が毎朝早くから、密かに武智の特訓を受けているのも知っていた。彼なりに『努力』はしているのだ。
「いや、お前の言うとおりだ…情けないが事実だ」
「じゃぁどうするの?ひまわり一生バージンで終わるわけ?」
「そんなんだったらアタシ〜小紫でもけしかけちゃうワよ?、マジ可哀そうよ、ひまわり」
小紫がこの2年でかなり背も伸び着実にイケメン化しつつあるのは周知の事実だった。
「そ、そうだな…考えないとな…」
「考えるって、どう?」
返事ができない。
「じゃ、アタシ帰るね…また今晩来るから…」
「ええ、ちょ、ちょっと待て、今夜もか?」
驚いたように聞く。
「そうよ、明後日には出発だもん…、ヤリ貯めしておかないとね…」
笑ってそういうとあざみは『シュタっ』と姿を消した。
「コ、コンドーム買いに行かないと…」
なけなしの給料からではあれ、そのくらい負担するのは当たり前だろうが…。
(15-1)
いよいよこの日がやってきた。志能備学園女子校では放課後の体育館にてイギリス・アメリカ向け選抜メンバーの壮行式が厳かに行われていた。
ステージ前最前列に並べられたパイプ椅子には今日出発するメンバーが既にその配属機関の制服を身に纏って座っていた。
その中にひまわり、しきみ、あざみ、ヒメジが含まれている。ヒメジはすっかりSAS女性士官らしくトレードマークのツインテイルをアップに纏め、まるで別人のように見えた。
ゆすらとつきよ姫は傍らで見守っている。フランス、ドイツなどNATO大陸組は2日後に同様の式典が予定されていた。
やつがしらの神妙な祝辞のあと、一人ひとりが壇上に呼び出され任命証を受け取る。まるで卒業式のようなノリであった。
「アメリカ合衆国海兵隊少尉ヒロコ・ミシェル・ライトこと、日向向日葵!」
「ハイっ!」
ちょろぎの呼び出しに大きく返事をして、海兵隊女性将校のユニフォームを着たひまわりが壇上に向かう。これもヒメジ同様に髪型はフォーマルにアップとし、特徴的な円筒形の帽子を被った姿は精悍で別人に見えた。
幼さの見えた顔も適度な化粧が施され全く違和感のようなものは窺えない。実年齢より2〜3歳は大人に見えた。これも武蔵坊の教育の成果である。
壇上で綺麗に『左向け左』で校長に向かうと、見事な海兵隊式の敬礼を決めるひまわり…。
(カッコいい!)教員席で見ていたハヤトは思わず叫びそうになった。
そうして次々と呼び出される。
各々、それぞれの帰属する軍隊の礼式をキチンと決めて既に任務に入っていることを意識し、間違いなくやってのけることを最終確認する場でもあったが、
ここにいるメンバーにとってはそんなことは朝飯前だった。
イギリス海軍少尉の制服を着たあざみが階段を降りるとき、規則より少し短めのスカートから覗く脚線美には全ての男性教員が眼を奪われた。
したがって彼女がハヤトに向けてウインクしたのには誰も気づかなかった。
しきみはクソ真面目に正規のひざ丈スカートだったが、左胸に付けた『三叉鉾とライフルを掴んだ白頭鷲』を模したSEALsの徽章が誇らしげに光っていた。
式典が終わると、それぞれがそのまま校庭で待機している自衛隊のCH-46輸送ヘリに乗り、まずは厚木のアメリカ海軍航空基地に向かう。そこからC-2中距離輸送機で嘉手納空軍基地に飛び、長距離機に乗り換え、ひとまずは西海岸のエドワーズ空軍基地を目指す段取りだった。
嘉手納では韓国、台湾からの同様のプログラムの『研修生』達も合流する。ちなみに男子校のアメリカ・イギリス組とは厚木から同行することになっている。ここから先は志能備学園の校則は適用外になる。
(15-2)
ボーディング前に各々が見送りのクラスメイトや教師たちにつかの間のお別れをする。
ハヤト、ゆすら達の前にはひまわり達が居た。
「ひまわり、見違えたぞ…頑張ってこいよ…」
「ハヤト殿〜」(泣きそう…)
それを横目にあざみがハヤトに軽くハグをする。みんな唖然とする…。
ここ2晩続けて10回以上『ハヤトから精を抜いた』のにも関わらず、まだ名残惜しい…。
「お、お、おい…あざみ〜」
「いいじゃん!、アタシ、誰も見送ってくれる人居ないんだから〜」
笑ってごまかす。でも嬉しかった…。
「じゃ、私も〜」ひまわりが続いた。
「わらわもでありんす〜」
そう言ってしきみの方を振り返る2人。
「わ、わかったわよ」
苦笑してしきみもそこに加わる。3人の美女にハグされて幸せなんだかそうでないのだか…、困惑顔のハヤト。
「と、とにかく…みんな達者でな…」
「あたしも、あとで追いかけるからね〜」
ゆすらが少し眼に涙を溜めて言った。
「お互い頑張りましょう!」
しきみがゆすらにもハグをしてその場を締め括った。
ヒメジはレイバンのサングラスをかけて涙眼を隠す。
時間が来た…。
最後に残っていた4人が手を振りながらCH-46に乗り込むと、クルーがステップを上げドアを閉める操作を始めた。それと同時にスターターの音が聞こえ2基のメインローターが静かに回り始める…。
やがてそれが轟音に変わると、機体はふわりと持ち上がった。
『がんばれ』そう、心の中で呟くハヤト…。
どうせ何事もなく、また会えるさ…。そう思いながら、遠ざかっていくヘリコプターを見送った。
(16-1)
厚木の海軍航空基地には1時間もかからずに到着した。
ひまわり以下8人を乗せたCH-46は自衛隊用ではなくアメリカ海軍用ヘリポートに着陸すると、そこへ2台の高機動多用途装輪車:通称『ハンビー』が横付けされた。
サンディブラウンの制服を着たアメリカ海軍の女性下士官が降りてきた。
「こんにちは皆さん、私は本日嘉手納までのご案内役を仰せつかりましたキドリッジ特務兵曹です」
テキパキとした敬礼の後、そう言って簡単に自己紹介をした。
見るからにひまわり達より年上だったが、通常通り丁寧に士官に対応するように話す。
「それでは、これから嘉手納に向かうためにC-2輸送機へ乗り換えていただきますので、皆さんご乗車願います」
そう言って乗車を促した。
5分も走らないで離陸準備を整えてるC-2機に到着すると、既に男子校生徒を乗せてたであろう別の2台がそこを離れようとしていた。
「男子…誰が一緒だと思う?」
意味ありげにあざみがしきみに向かって言う。
「さぁ?興味ないワぁ」
しきみは気のない返事をする。ナナフシが居ないのは既に知っていた…。
「あれ?小紫君?…」
ひまわりは最後に乗った一人を指差す。
「どうかしら?」
「じきに判るわよ…」
(16-2)
C-2輸送機は双発ターボプロップの艦上輸送機だが、カーゴベイは簡単な機材の入れ替えで旅客型にも変更可能な汎用性の高い航空機だ。
左右並列に並んだ3座式の座席は前二列が既に男子生徒で埋まっていた。どの顔を見てもみな優秀そうな連中で、少なくともあざみが親しくしていた顔は誰もいなかった。ただ一人小紫を除いて…。
(小紫君!)
ひまわりは一瞬名前を叫んで手を振りそうになったが、すぐに控えた。そう、既に任務中…。我々はもう公然と本名で呼び合うわけにはいかないのだ。
小紫は座席に腰を掛けるとき、わずかに彼女たちに向かってウインクした。彼はもう判っていたのだった。
ひまわりは順番に座席に着くつもりでいたが、あざみが数少ない右舷の窓側を譲ってくれた。
「あ、ありがとう…」
あざみは3座の真ん中に座るとシートベルトを締めながらひまわりに向かって言う、
「狙撃されるから、普通〜将校は窓際には座っちゃいけないんだよ」
ええぇ〜〜〜っといったひまわりの表情を見て
「冗談よ」
そう言って意地悪そうに笑った。
全員が着座し、ベルト装着を確かめるとキドリッジ兵曹がコクピットに安全確認シーケンスを伝える。やがてエンジンが唸りだしC-2機は滑走路に滑り出ると一気に加速して離陸した。
水平飛行に入り5分もするとひまわりの望む窓にまだ残雪を頂いた富士山が見えてきた。
彼女はあざみをつつくとそれを教えてあげた。
「綺麗ね…」
あざみがそういうと二人は訳もなく感動して涙を流した。
(17-1)
嘉手納空軍基地。国内世論でのタブーもあり、この基地からスパイ機が発着している事実は公表されていない。
しかしながら実際は朝鮮半島問題や中国軍情勢把握などを考慮すれば、ここが重要拠点たる事実は誰が考えても否定できない。
口には出さないが誰もが周知のことではあった。
ひまわり達は空軍のリムジンバスに乗せられ、これから乗るボーイングB-707が隠されている格納庫に向かっている。
傍らの滑走路を合衆国戦術空軍のF-15Cが2機揃って物凄い轟音を引いて離陸していくのが見えた。
「どう?、こういうの…血が騒がない?」
あざみはそっとひまわりに耳打ちする。
「はい、凄く興奮します…」
ひまわりは始めてみるアクティブで本格的な軍用基地に自分が『任務』でいることの気分を素直に口にした。
今度は逆方向に海兵隊のF/A-18Cがアプローチしてきた。
「あの子…見てよ…」
あきれ顔でしきみがヒメジの方を顎で示す。
そこには、車窓にへばりついて戦闘機の姿を追うヒメジが居た。今にも涎を流さんばかりで眼が『逝っちゃって』いる。
バスが格納庫脇の建物に横付けにされると、全員が大型エレベータで二階のラウンジに案内された。
キドリッジ兵曹が全員にお別れを言うと、次の案内役の空軍下士官にバトンタッチをする。
下士官は軽く館内と、これから搭乗する機材(B-707)の説明をし、それぞれに座席番号の書かれたボーディングチケットを配った。
搭乗10分前になったら再びこの場所に集まるよう告げると、しばし休憩時間をとるように促し一時解散となった。
(17-2)
「お久しぶり!」
ひまわりが振り向くとそこにはアメリカ海軍のブレザーを着た小紫が居た。胸にはしきみと同じSEALsの徽章がついている。
おチビちゃんだった彼も、見るたびに背が伸びているように感じた。
6cmヒールのパンプスを履く167cmのひまわりよりも既に高くなっている。
飛び級入学の天才児だったからまだハイティーンになったばかりだというのに既に青年士官といった風体に彼女は驚いた。
それほど久しぶりに見たわけでもないのに、軍服のせいもあるのだろうかすっかり男っぽくなった…そう思った。
「あ、アタシ、ちょっとコーヒーでも買ってくるワ、じゃぁね〜」
そう言ってあざみは席を外す。完全に『気を利かせたわよ〜』と眼で合図している。
小紫は微笑んで彼女を見送ると、振り返ってひまわりに話しかける。
「ひまわりさんと一緒に研修に参加できるなんて、僕、凄くうれしいです…」
「あ、あ、そうだね…へへ」
なぜか照れる。(だって、凄いイケメン君なんだもん…小紫君ったら…)
「もし、むこうで暇ができたら、是非デートしてくださいね」
(そ、そ、そんな〜困る〜〜〜)
「あ、でも、しきみさんとかも居るし〜」
「大丈夫ですよ(もう話はつけてます)…じゃ、むこうで仲間がうるさいから戻りますね」
そういうと小紫はひまわりの手をとって軽くキスをした。
やることがマセている。だがイケメンだからサマになってしまう。
「あっ…」
言葉を返す暇もなく、完全に主導権を握られたアプローチを受け、ひまわりはタジタジになる。頬を紅らめて困惑しボーっとただ座ってるだけだった。
そこにコーヒーの紙コップを持ってあざみが戻ってきた。
「いや〜ね〜、さっそくナンパされちゃったわよ…韓国軍のイ・ビョンボンみたいな奴にぃ〜」
ひまわり、ぼけ〜っとして…
「え?、な、何?」
「何よ〜?ボケーっとして〜、小紫どうしたの?」
「行っちゃいました。」
ずずぅ〜っとコーヒーを啜りながら(どうしちゃったの?)という視線のあざみ。
「デ、デートに誘われちゃいました…」
「や、やったじゃんw」
(アンニャロ…ガキのくせに まぁ〜色気づいちゃって…)あざみはそう思った。
言えた義理ではない…。
(17-3)
休憩時間も過ぎ、各自がゲートからタラップを伝って機内に乗り込む。タラップの大きな窓から見える全面白塗装の機体には、例のブルーとオレンジの配色で『FedEx Express』と大きく書かれていた。
見かけだけのこの『運送会社の機体』は、内部が完全に電子化されたスパイ機であり、要員輸送や偵察任務に就くための間違うことなきアメリカ戦略空軍(SAC)所属機である。
入口でパーサー任務の空軍下士官から、電子式パッドに自分のサインを求められる。続いて指紋読み取り欄が表示されると、そこに右手の親指をスキャンさせブルーの背景色に変われば搭乗許可となる。
ときどきすれ違うクルーたちがみな笑顔で『welcome aboard!』と声を掛けてくれるので緊張が和らいだ。
座席のあるデッキは広々としていてホテルのラウンジみたいだった。フカフカの絨毯にビジネスクラスのシートに似たもので最大160度の水平リクライニングが可能なレカロ製シートが並んでいた。
ひまわり達『日本組』はまとまったエリアに席が割り当てられていた。
3x3配列だが中央にパーティションが設けられ、右舷側が女性、左舷側が男性と分けられている。
民間旅客機のそれと違い、各座席は充分に離され、それも少しずつ前後方向でオフセットされた配置になっていた。トイレに立つため通路側の者に席を空けて貰うといった面倒はありえなかった。
「これ、渡されたとおりに座んないと怒られンのかなぁ?」
あざみがそういうと、ひまわりは彼女のチケットを自分のと交換し、窓際を譲る。
「サンキュー」
そういうとあざみは窓側に座る。実にゆったりとした座り心地のいい座席だった。
搭乗状況を確認しに来た黒人のパーサーが通りかかったとき、座っているせいで今にもショーツが見えそうなあざみのスカートに思わず視線を落とすと(ヒュー)っと微かに口笛を吹く。彼女が魅惑的な笑みでそれに応える。
それを見てしきみが立ち上がり、自分のスカートのウエスト部分をクルクルと巻き上げ、あざみのと同じくらいのミニスカートに『改造』した。
アタシだって〜っといった顔であざみを見返す。
「な、なに対抗意識燃やしてんのよぉ〜」
あざみが笑いながら溢す。
「二人とも〜いい加減にしてくださいっ、風邪ひきますよ〜」
ひまわりは苦笑して二人の膝にブランケットを掛ける…。
後ろの席では既にヒメジが寝息を立てていた…。いろいろと興奮しまくりで疲れが来たらしい。
機は間もなく日本を離れる…。
(18)
FedExに化けたボーイングB-707型機は薄暮に乗じて嘉手納基地を飛び立つこと30分後。
既に水平飛行に入り安定した状態で徐々に上昇を続けている。
シートベルト着用のサインも消えてから暫く経っていた。
丁寧に豪華な機内食がサービスされ、食べ終えた所で各々が眠りに就く。到着は現地時間で朝にになるからちょうどいい筈だが、ひまわりは何だか興奮して眠れない。あざみをみるとiPodのイヤフォンを嵌めて何とか眠ろうと頑張っていた。
そこへ赤毛のジリアン・アンダーソン似の若い女性下士官が現れ、しきみとひまわりの座る列にしゃがみ込んで言った。
「Excuse me… Ensign Mitsui, SecLieutenant Wright… we've something to tell you. … Please follow me…」
慣れないからつい油断をしていると脳内にそのまま横文字が入ってきた。
ミツイ というのはしきみの『役名』だった。『サラ・ミツイ海軍少尉』これが彼女の官姓名である。
何事かしら?といった顔でひまわりを見るしきみ。
二人はベルトを外して静かに立ち上がると女性下士官の後に続いた。
残されたあざみは心配そうに二人の姿を眼で追うだけだった。
(19-1)
しきみとひまわりは機内に幾つか設けられているミーティングルームに案内された。
既にスーツ姿の男が数名と、アメリカ陸、海軍の将校が着座していた。
部屋の隅にはなんとナナフシが立っていた。
黒の上下、ダークグレイのシルクのシャツに黒のネクタイっといった服装だった。
一瞬、驚いた2人だったが、ナナフシがそっと手で(抑えろ)と合図するのを見て何とか平静を保つ。
「寛いでいる所を大変申し訳ない、ミス・ミツイ、ミス・ライト…」
「私はNSA(国家安全保障局)中央アジア担当のアンダーソンだ、後のメンバーはその都度紹介しよう…我々は一応文民なので敬礼は必要ない…」
中央の席に座るジョージ・クルーニーに感じが似た男が口火を切った。
「さっそく本題に入る(君!といって下士官にプロジェクターの操作を依頼する)」
スクリーンに映し出されたのは正装した若い女性の胸像だった。
「こ、これは…」
映し出された映像は、どことなくヨーロッパ系の特徴を見せるものの、驚くべきことに顔がひまわりと瓜二つの若い女性だった。
「この女性は、旧ソ連の構成国パルティメニスタン共和国の大統領、ゴスコフ氏の一人娘で名前をエドナという…」
しきみとひまわりは固唾を飲み込んだ。
(19-2)
「ゴスコフ氏はソ連崩壊後の最初の大統領選で当選時まで独身を通していたが、傍で選挙参謀として彼をずっと支えていたウイグル出身の女性と結婚し彼女を設けた」
「ところがこの御令嬢はひどい放浪癖があり、度々お忍びで国外に出かけることがある…」
画面には彼女が各国を訪れたと思しき映像が次々と映し出されていく。パリ、ローマ、マドリード、そしてモンテカルロ…。
「その都度監視役の要員が陰ながら護衛を務めており大事に至ることは無かったのだが、プラハ市内でその監視役が2人とも射殺死体で発見された」
しきみはゾクゾクとする感触を背中に覚える。ひまわりも映像の中の眉間に銃創を負った男の死体に眼が釘付けになった。
「しかしながら、本件は失踪発覚以来2ヶ月間程内密にされていて、我々西側の情報部も事実を知らなかったわけだ…(傍らのCIA局員と思しき男をチラリと見やる)」
「ところが、ゴスコフ氏自らがイギリス政府に救いの手を求めてきた…。彼は今の英国内閣の内務大臣とは旧知の仲だったというのがその理由だ…」
「MI-6が調査を進めた結果、現在、彼女はブダペスト郊外の、あるテロリストグループのアジトにかくまわれていることが判明している」
アンダーソンの隣に座ってるハンサムな男が微笑んで手を上げた。どうやらMI-6の職員のようだ。
「目的はゴスコフ氏を辞任に追い込み、彼に支えられているパルティメニスタンの政情バランスを崩すことで内紛を再発させ、原油市場の混乱とパイプラインの遮断で西側経済にパニックを起こそうとするものらしいと判明している…」
アンダーソンがここまで話すとプロジェクターの映像が切れ、照明が元に戻る。
しばしの沈黙が訪れた。
(19-3)
「分かりました…で、我々を呼ばれた理由は?…」
しきみは鮮明な英語で尋ねた。
「救出作戦を行うのはこのジョンブル達に任せてある…(隣のハンサムに視線をやる)」
「そのあとが問題だ…。時を待たずしてゴスコフ大統領はこの御令嬢を伴いチェコを表敬訪問する手筈になっている…、連中は再度奪還を図ると我々はみている…」
「その際、連中に、ある『トラップ』を仕掛け、黒幕を含め一網打尽にする作戦だ…これはゴスコフ氏自身の要求でもある…」
この場合の『一網打尽』とは逮捕ということではなく『皆殺し』という意味だった。
ここまで言うと、聊か遠慮がちな口調になり、アンダーソンは静かに続けた…、
「その際、…ミス・ライト…君にエドナの影武者になって欲しい…ミス・ミツイは現地の指令所でサポートに回ってもらう…ミス・ライトの行動原則に非常に詳しいと資料に書かれてる通りならば…だが…」
やはりそう来たか…しきみは頷いた。
考えてみれば、海兵隊って事以外、ひまわりの所属が未定だったのは全てこの作戦のためだったのだ…。やっと合点がいった。
「言っておくが…状況から、我々は君たちに命令はできない…あくまでも君らの志願が前提の作戦だ…」
「テロリスト達はなぜゴスコフ氏に直接手を下さないのでしょう?」
ひまわりの質問は最もだった…。
アンダーソンはネクタイを少し緩めると、二人に向き直って静かに口を開いた、
「…彼を『殉教者』にできないからだ…」
「そんなことをしてしまえば『イエス・キリスト』や『カエサル』を作ることになる…」
「しからばその体制を維持しようと次から次へ『聖ペテロ』や『アウグストゥス』が現れて体制がむしろ強化される…そう分析しているらしい」
事実、ゴスコフの後継者養育に熱心な癖は内外に知れ渡っていた。
「あくまでも『彼自身が国を捨てた』… そういう結果でないと意味がないのだよ…」
一同は二人の返答を待つために、暫くの静寂を作った…。
(19-4)
「わかりました…私、やります!」
ひまわりはしきみを見て言う。しきみも頷いた…。
アンダーソンは一つ深くため息をつくと微笑した。彼の任務の『ヤマ』はここまでだったのだろう…。
「よく決意してくれた…、成功すれば世界中が君達に感謝するだろう…」
一番感謝してるのは彼自身かもしれない…。
「そこでだ、作戦を説明する前に、ミス・ライト…もう一人メンバーを指名する権限を君に与える…誰か信頼できる『護衛役』を知っているかね?」
はっとして、ひまわりはしきみを見つめた…しきみが再び頷く…。
「はいっ!、居ます、最も信頼できる人が…」
(20)
ヒメジは離陸前から眠りについてしまっていたため、配られた機内食にありつけないでいた。
空腹が彼女を目覚めさせると、そのことに気付いたパーサーの空軍下士官が笑いながらやってくる…、すぐ食事を用意する旨彼女に伝えた。
ふと気がつくと、しきみ達三人の姿がない…。
「ふん?、連れションでありんすね?」
相変わらず品がない…。そんなわけがあるか…。
三食目の機内食を平らげる頃、まず、ひまわりが戻ってきた。
「みんな どこへ行ってたでありんす?」
「う、うん、ちょっとね…」
何気ないひまわりの態度で、それ以上は聞かない方が良いと悟ったヒメジは
「わかったでありんす…」
それだけ言うと手元のコーヒーを啜った。
(どうやら仲間外れにされたようでありんす…)
そう思うと少し面白くない気持ちになったが、任務が理由の筈だからそれ以上考えることは止めにした。
(21)
しきみはミーティングが解散になった後、部屋の外でナナフシが出てくるのを待った。ナナフシがネクタイを緩めながら現れると、彼女はやおら彼の腕を掴み、隣のブースにあるレストルームデッキに引っ張りこみ通路との仕切りになるカーテンを乱暴に閉める。
振り向きざま思いっきりのビンタを彼に食らわした。
「一体どういうことよっ!」
しきみは怒っているようで冷静だった。英語で怒鳴ったからだ。
「…すまない…、秘密厳守だったから…」
ナナフシも静かに英語で返す。
「秘密ですって?…私は全部話したでしょ?…何よ『僕はドイツ組』だとか嘘突くなんて…」
「いや、それは嘘じゃない…」
「じゃ、何よコレ?これがドイツ連邦軍の制服なの?バカにしないでよ!」
しきみはかなり荒々しく彼のスーツの襟首をつかんで言った。
「い、いや…僕の研修先はBND(ドイツ連邦情報庁)なんだ、軍じゃない…」
「何ですって?」
研修先が軍組織ではなく、諜報機関そのものであるということは、かなり優秀だと受け入れ先が認めた証拠だった…。SEALsで有頂天になっていたしきみはプライドがズタズタにされたような気分になった…。
「だから…あの時点で君に話すことは…どうしてもできなかったんだ…」
「信じられない…」
しきみはワナワナと震えると、怒りが収まらない…。もう一度殴りにかかるが今度は彼の手がそれを阻んだ。ナナフシは彼女の両腕を掴んで、静かに降ろすと、そのまま唇を彼女のそれに重ねた…。しきみの怒りを鎮めるには、もはや『この手』しかなかった。
あざみがシークレットサービスの担当官と護衛任務についての簡単なブリーフィングを終えて戻る途中、トイレに立ち寄ろうとしてレストルームデッキのカーテンを開けると、中で見覚えある男女が激しいキスシーンを演じてるのを目撃する。
(やばっ!)
そう思うとサッとカーテンを閉じ、苦笑いを浮かべてその場を去った。
座席に戻るとひまわりが怪訝そうな顔で聞いた。
「あれ? しきみさんは?」
「あ、ああぁ〜、ちょっと野暮用で…時間かかりそう…みたいよ…」
あざみは半笑い顔をしてスッとぼけた。
「みんなしてコソコソと…わらわは面白くないでありんす…」
座りかけたあざみを見上げて口を尖がらせるヒメジ…。
「シ〜っ(指を口元で立て)、任務のことは例え親でも部外者には話せないんだから、子供じみたこと言わないのぉ!」
「そんなこと…分かってるでありんす!」
いや、解かってないからそんな精神状態なのだ…。
(22)
機内の狭いトイレに二人して入ったしきみとナナフシは互いの衣服をあわただしく脱がせにかかる。といっても全裸になるわけにいかないから『必要最低限』ではあった。
便座の蓋を閉じ、しきみはその上に座るとスカートをたくし上げショーツの脇に手を差し込むと一気に降ろす。彼女は『3in1』の下着構成だったから、ストッキングを脱がずにそれだけで済んだ。
露わになったしきみの股間に鼻先を突っ込んでナナフシがその匂いに感じいると彼女の脚を肩に乗せるようにして陰部に唇を這わせた。
長い事待ち望んだしきみの秘部を味わう時が来た。既にそこはテラテラと輝き、隠微な匂いをとき放っている。
しきみは彼のクンニリングスもそこそこに、早く見たいとばかりに上体を起こすと、ナナフシの股間を必死でまさぐり、ベルトを外してジッパーを降ろす。
ハヤトほど大きくはないが充分に怒張したソレを眼にすると生唾を飲み込む。
フェラチオをしようとするがナナフシは今は時間がないとばかり、彼女の想いは無視し、しきみを立たせ片方の脚を大きく持ち上げたかと思うと体面立位の形で、いきなり突っ込んできた。
「あぁ!ナナフシっ!」
突然中を抉られるような快感で、思わず声を上げたしきみの口を手でふさぎ、ナナフシは大きく腰をしゃくりあげて抽送を始める。いくら飛行機の中とはいえ奇声を上げれば周りにバレてしまう。
しきみは久しぶりの『かゆいところを掻いてもらう』感覚を膣内で感じると快感で狂いそうになった。
荒い息使いの中、ナナフシが中に出せるのかを問うと、しきみはイヤイヤをするように首を振った。
それを見て腰の動きに速度を増すと、ナナフシはやおらペニスを抜き、しきみの口にそれを捻じ込むと『むっ!』っと唸って大量の精液を放出した。
しきみはすんでの所で逝けなかったが、彼の体液を喉の奥で感じ、この場はそれで我慢した。
「はぁ、はぁ、はぁ… ご、ごめん…」
ナナフシは自分だけが逝ったことをすまなく思った。
「ハァ、ハァ、いいわよ…気にしないで…感じちゃったんでしょ?」
きっと経験不足のせいよ…若いんだから仕方がないわ…。
そう思いながら、ティッシュボックスに手を伸ばすと何枚かをとりだした。
太股の内側を彼女の淫液が垂れ伝っていた。
(23)
『おみそ』にされたような煮え切らない気持ちを食べることで紛らわそうと自販機ブースにやってきたヒメジ。キャンディバーやポテトチップ等の小袋が並んだ機械の前で思案している。そこへスーツ姿の背の高い男がやってきた。
「失礼…」
彼はそう言ってヒメジの後ろを横切るとドリンク・ディスペンサーのボタンを選び始めたが、数秒してのち、その男が固まったのがハッキリ分かった。
ヒメジはチラリと男の横顔を見る…。男も横目でヒメジを見ると眉をひそめた。
互いにゆっくりと顔を向き合わせる…。
「あ〜〜〜〜〜〜っ」
「ぷ、プリンセス…?」
一年数か月振りの再会であった。
(24)
立ち話もなんだからと、ヒメジとマックスウェルは空いている席に並んで座った。
「あ、あ、あ、あの時は『宿題』…やっていただいて、ありがとうございました…でありんす」
頬を紅らめて完全にあがっているヒメジ。
「で、どうだったの?」
「え?、あ、『A』を貰ったでありんす…」
苦笑して更に頬を紅らめる…。
「そいつは良かった…」
彼も彼でこんなところであの『じゃじゃ馬』と会うなんて想定外もいいところだった、正直困惑していた。
「あの君が…ここに居るなんてねぇ〜」
素直に感想を言う。
「へへ…」
大きな図体で照れ笑い…。
「あ、あの、ミスター・マックスウェルは…何でここに?」
「『マック』でいいよ、職場じゃみんなそう呼んでる…」
ヒメジはただ照れている…。
「ここへは次の任務のために同乗させてもらってるんだ…」
もちろん嘘である。例のひまわり達とのミーティングに参加していたのだから…。
彼は3人とヒメジの関係をまだ知らなかったから当然である。
「さっきはなんか偉く仏頂面していたけど?」
「な、なんでもないんでありんす…、ただ…」
「ただ?」
「ただ、仲間外れが寂しかったんでありんすよ…」
「え?」
「仲間の3人だけが…なんか『任務』を与えられたみたいなんでありんす…」
(はは〜ん…そういうことか…)
「そりゃ仕方ないな…仕事なんてそういうもんだ…割り切らないと…そんなことはこの先しょっちゅう起こる」
(俺なんかだいたい独りだけど…)
「さって っと、もう寝ておかないと…明日大変だぞ?」
「そ、そうでありんすね…」
二人は立ち上がるとそれぞれの席の方向に分かれる。
「あ、また会えて嬉しかった でありんす…」
ヒメジは笑って彼に伝えた。
「僕もだ…(Vサインを作って敬礼のしぐさをする)、お休みプリンセス!」
「おやすみなさいでありんす…」
(25)
旅客キャビンは既に照明が落とされていた。各自ほとんどが眠りについている。
あざみはiPodのメニューから、これを聞けば必ず眠れるという「モーツアルトの弦楽協奏曲プレイリスト」を選ぶと、それらを聞きながらブランケットに包まって横になった。
が…、なかなか寝付けない。
そこへヒメジが先ほどとは打って変わって恍惚の表情で戻ってきた。
あざみは片目を開けてそれを見届けながら(なんにしても機嫌が戻ったんなら良いやね〜)と思った。
続けて少し腰をふらつかせながらしきみが戻ってきた…
(以外に早かったな? ナナフシ…ひょっとして淡泊?)等と下世話な想像を脹らます。
しきみがけだるそうにしてシートに腰を掛けると、あざみは意地悪く
「おつかれ〜」
といった。
「何がよ?!」
背を向けて寝てるあざみに少々尖った口調で聞き返す。
「あ、いや…何となく」
(げ〜 良くなかったんだワ やっぱ…)そう内心で呟き、思わず舌を出すあざみ。
「おやすみなさ〜い」
あざみは腫れものには触るまい…そう思って眠ることに傾注した。
(26)
ひまわり達を乗せたB-707は定刻通り西部標準時0930にエドワーズ空軍基地に着陸した。
長い事タキシングしたあと大型機専用格納庫に収納され、そこへタラップが接続する。
「君達3人は先に降りてくれ、下で私の部下が待っている」
アンダーソンがこれから別行動となるひまわり達に段取りの再確認をしに席まで来て言った。
「分かりました」
しきみが代表して返答をすると、あざみとひまわりにアイコンタクトをする。
「ヒメジ…悪いけど、ここでサヨナラするわ…」
そう言って右手を差し出した。
「気にしないで良いでありんす…頑張ってくるでありんすよ!」
そう言ってしきみと握手するとみんなにウインクして見せた。
マックスウェルの一言が効果的だったようである。
ひまわりとあざみもそこに手を乗せた。
「外で見送るでありんす…」そう言うと、ヒメジはひまわりの荷物を掴んだ。
事のやり取りを1ブロック向こうで韓国軍の幼年将校たちが怪訝そうに見ている…。まるで『どうしてあの日系人将校たちが特別扱いなんだ?』とでも言いたげだった。
あざみはその中のイ・ビョンボン似のナンパ野郎に向けて軽くウインクしてやった。
タラップを降りると、カリフォルニア・ハイウェイパトロールのカワサキ・ポリス1000 4台に囲まれた白いフォードエクスプローラーが3台並び、要員たちの乗車を待ち構えている。
しきみ達は真ん中の1台にアンダーソンと供に乗車、先頭の車両にはナナフシが既に乗り込んでいた。
最後尾の1台にマックスウェルが乗り込もうとしたとき、彼は車両の窓越しにタラップの前で寂しそうに立って見送っているヒメジをしばし見つめた…。
3人が彼女のクラスメートなら、まだ10代の子供たちを作戦に使うって事になる…。
そんな話はMからは聞いていなかった。
全ての要員が乗り終えると、やがて車列は静かに格納庫の外へ流れ出て行った。
車内の助手席に座ったアンダーソンはフォルダから紙片を取り出すとそれを見ながら携帯を操作している。
「こちらアンダーソン…子猫は餌にありついた。繰り返す…」
「子猫は餌にありついた。X Day-6 0947 継続! 以上!」
それだけ言うと電話を切る。ルームミラー越しにひまわり達を見るとニコリと笑った。
X Dayダッシュ6…つまりマイナス6…、作戦決行まであと六日という意味だった。
(27-1)
ブダペスト郊外、ドゥナ・イポイ国立公園近郊にある旧邸。
エドナはその二階の窓のない一室に軟禁状態にあった。
ここへきて既に1ヶ月以上は経っている…。それも恐らくだが、彼女には既に曜日の感覚がなくなってきている。
テロリスト?なんだか判らない連中に拉致され、ここに連れてこられたが、今のところ丁寧な扱いだった。
だが食事を差し入れに来る男達には何を聞いても『言葉が分らない』の一点張りで何も答えてくれない。
食事や睡眠、衣類のクリーニングに入浴までさせてはくれるが、いい加減憔悴しきっていた。このままでは気が変になりそうだ…。
こんなことになるのが分かっていたら、父親の言うとおり祖国で大人しく暮らしているべきだった…。今更ではあるが、そう反省する彼女だった…。
もう長い事太陽を見ていない…。
だが、それも今夜までだった…もちろん今の彼女がそれを知るすべはなかったが…。
「遅いぞ、ジェームス…」
別ルートで邸内に侵入した黒いジャンパースーツ姿のジェームス・マックスウェル中佐は遅れてきたパートナーに言う…。
いつものことだが同じファーストネームの相棒をそう呼ぶのは違和感がありまくりだった。
「すまん、ちょっと寄り道をした…」
同じくジャンパースーツ姿の相棒は愛用のワルサーPPKにサイレンサーを嵌めながら適当なことを言う。毎度のことだった。
「首尾は?…」
相棒は左手の超小型無線スイッチを見せる、青いパイロットランプが微かに点滅していた。
「OK…」
(行くぞ)っと合図で告げると二人はそれぞれ別々の方角に静かに、そして素早く移動した。
(27-2)
マックスウェルは二階に続く階段を用心深く上がる。一人の見張りがドアの前でハンガリー版PLAYBOYを眺めてニヤついていた。AK47は膝に乗せたままだ。
プシュン!という静かな破裂音と同時に中佐が放った9mmパラベラム弾がその男のこめかみを直撃する。
周りに気を配りながら男の死体が転がる部屋の前まで進み、男のひざからAK47を取り上げるとマガジンを抜いてヌードピンナップのページ上に静かに置きPLAYBOYを閉じた。
慎重にドアを開け、彼はしゃがんで中を窺う…。
(クリア!)
エドナは食事の時間でもないのに、誰が入ってきたのか不安げに彼の方を見た。
「静かに」
そういうと彼女の傍に忍びより、自分は英国諜報部員であることを告げた。
「じきに『騎兵隊』が来ます…暫くお待ちを…」
そういうと、ヘッドセットのマイクを掴み
「ジェームス! ターゲットを確保…オールクリアだ…」
と告げる…。
数秒も経たない間に、遠く爆発音が鳴ると邸内の電灯がすべて消えた。相棒がブレーカーに仕掛けたC4がさく裂したのだ。
『なんだ?〜〜〜〜』
『停電だ〜停電っ〜〜〜』
男達が騒ぎだしたかと思うと正門の鉄柵をぶち破り装甲車が突入し、邸外に待機していたハンガリー警察の特殊部隊に扮したMI-6の支援チームがなだれ込んできた。
バリバリバリっという銃声がところどころで5〜6分程続いたかと思うと次々に『クリア!』の声が発せられる。
死に物狂いで階段を掛けがってきたテロリストの一人が、エドナの部屋のドアを蹴破ってMP5Kを乱射し始めたが、すぐさまマックスウェルの連射を頭部に食らって即死した。
それでも彼は、ドアに向かってベレッタM92Fを構えたまま膝まづき待機の姿勢を崩さない。
エドナがベッドの下にうつ伏せになって耳を塞いで震えている。
そこへ相棒が駆けつけてきた。
「マック!無事か?」
「ここだ!」
そう叫ぶと初めて銃口を下げた。相棒は床に倒れているテロリストのMP5Kを拾い上げ、男の死体を改め部屋に入ってくるとマックスウェルを見て左の眉を吊り上げながらいう。
「やっこさん、腹にTNTを巻いていた…お見事…Double OH Five…」
頭を狙ったのはこういう場合テロリストを相手にする時の鉄則だった。
相棒に肩を叩かれ、ふ〜っと一息つくと、マックスウェルは立ち上がり銃をホルスターに収めた。
「だけどまぁ…楽だったな…」
そう言うと相棒はベッドの下を覗き込んで手を差し伸べる。
「済みましたよ、お嬢さん」
エドナは大きな目を白黒させてそこから頭を出した。
(28)
ロンドンのMI-6本部、オペレーションルームでは偵察衛星から送られてくる赤外線ライブ映像で一部始終を観察していたMが満足げにスクリーンを眺めていた。
「ミスター・タナー 至急、内務大臣にお知らせして…。『作戦成功』と…」
傍らの男が軽く頷くと部屋を出て行った。
映像では一人の男が女性を抱きかかえるようにして部屋を出る映像が映し出されていた。
「相変わらずね…ジェームス…」
そう言って微笑むと彼女も部屋を出た。
(29)
数日後、トルコ東部のとあるイギリス領事館。
屋上のヘリポートに一機のベル206Bジェットレンジャーが着陸する。
海兵隊員がドアを開くと中から若い女性が飛び出してきた。
「エドナ!」
「お父様〜!」
久方ぶりの親娘の再会であった。
「心配掛けてごめんなさいお父様…私、凄く怖かったワ!」
そう言って父親の胸の中で涙ぐむ…。
「もう、いいんだエドナ…、済んだことだ…」
そう言って娘を抱きかかえながらゴスコフは向き直り
「大使閣下、領事閣下…この度は本当に…何とお礼を述べてよいやら…全く言葉が見つかりません。ご助力いただいたお国の方々に暮々もこのゴスコフが感謝をしていたとお伝えください」
「承知いたしました、大統領閣下…」
全く何もしていないトルコ駐在英国大使は罰が悪そうに答える。ヘリを降りながら、思わず噴き出しそうになるのを我慢するマックスウェル…。
「さて、エドナ…、早速だが、今回の件で お前にも少しは『責任』をとってもらうぞ、いいね」
「はい、お父様…私ができることなら…
(30)
数日後、霞の里。男性教員宿舎。
ハヤトはうつ伏せになった武蔵坊の上に覆いかぶさり、彼女の尻の肉の間に潜り込ませた『己の分身』で彼女の気持ちの良い肉壺を楽しんでいた。
つけっぱなしのTVではワールドニュースが流れている。
「万里小路君ぅ〜ん、イイ、イイわぁ〜〜凄くイイのぉ〜」
股間からクッチャクッチャと音をさせて恍惚の表情を見せる武蔵坊…。
ハヤトは(ミサちゃんはやっぱバックからが一番だな〜)などと考えながら腰を振り続ける。
「今日は…な、中で出していいわ…」
(んなこと〜聞くまで黙ってろよ〜)とは言え性欲処理のsexだから、そういうムードのなさは致し方なかった。
そろそろ込み上がってくるなぁ〜っと思った時、それまで気にも留めていなかったTVの画像が目に飛び込んできた…。
「ひ、ひまわり?」
「え?」
思わず武蔵坊も向き直る。
『今日、パルティメニスタン共和国のゴスコフ大統領がチェコを表敬訪問しました。体調不良のため同行できない夫人の代わりを務めるのは御令嬢のエドナさんで、プラハ市民は大歓声でお二人の訪問を歓迎している模様です…』
「違うじゃな〜い。驚かさないでよ〜」
画面では伝統ある市民会館のテラスから観衆に向かって手を振るゴスコフ大統領とそのエドナ嬢の映像がアップで映し出されていた。髪の色を除けば、背格好から顔かたちがひまわりそっくりだ…。とその時だった…
「え?、あ、あざみ?」
ハヤトはさらに驚く…。
令嬢の傍らにぴったりと寄り添うようにして立つ女性護衛官の姿を見たとき思わずそう叫んだ。ブルガリ6012Bのサングラスにディオールの黒のスーツとストッキング…、他でもない、スカートが膝上20cm位のミニ仕立てなのが、何よりも『あざみ』の個性を物語っていた。
「え〜、そんなわけないじゃない〜人違いよ〜」
情事を中断され不服そうにしている武蔵坊。
確かにサングラスのせいで顔は判らない、だが仕草やその姿勢で間違いなくそうだと彼は思った…。自分の抱いた女である。自信があった。
「あいつら一体何してんだ…」
武蔵坊に挿入している事も忘れ、ハヤトは一人語散た…。
果せるかな彼は間違っていなかった。二人はまさにひまわりとあざみなのである。
(31)
プラハ。旧王宮にある迎賓館に向けヴァルタヴァ川にかかるマーネス橋を黒のロールスロイスが儀仗警官の乗るドゥカティに先導されて走っている。
「なかなかの演技力じゃないかね?ライト少尉…」
見るからに顔を強張らせて緊張してるひまわりに向け、ゴスコフが流暢な英語で話しかける。
「は、はい閣下!…光栄です…。で、ですが…油断なさらぬよう…、その、会話はロシア語でお願いいたします…」
車内では少々大きすぎる声でひまわりは答えた。かなり緊張している様子だ。
「ワッハッハッ…、そうであったな…申し訳ない…」
彼はこのシチュエーションを半ば楽しんでいる様子だった。
そのやり取りを聞いて前の座席で笑うあざみ。左耳にはめたイヤホンには『〜〜を通過…』と逐次SPからの報告が入る。
「間もなく到着いたします。閣下」
あざみはパーティション越しに後部のゴスコフ達に向けて綺麗なロシア語で伝えた。
ロシア語と中国語はあざみの十八番だった。
旧王宮内の大統領官邸の隣にある迎賓館の車寄せには既にチェコの大統領夫妻が出迎えていた。
「ようこそいらっしゃいました。閣下…」
「こちらこそ、手厚いご歓迎に感謝いたします。閣下…」
ひまわりは支障なく上流階級式礼節を披露し、大統領夫人に丁寧に迎えられた。先ほどの車内とは大違いである。
あざみはその姿を眼を離さず観察し(やっぱこの子…多重人格だわ…)そう脳内で呟いた。
手短な挨拶を交えたあと、大統領夫妻はゴスコフ親娘を官邸に迎え入れた。
あざみ達護衛官もそれに続いた。
だが、彼女らが職務を遂行できるのはそこまでで、貴賓室から奥には入れなかった。
ひまわりを見送ると、あざみは『頑張れ!』そう言って励ました…。
(32)
プラハ郊外。人気のない路地裏に青色のフォルクスワーゲンT2バンが停まっていた。
その後部荷台に設けられた通信ブースで一人のアラブ人が苦虫を噛み潰したような顔で思索を巡らしている。
この男、ムバラク・ナジムはエドナ拉致チームの責任者だったが、自分がアジトを離れた僅かの時間にMI-6の連中に踏み込まれ、彼女を奪還されるという『大失態』を演じてしまっていた。
通信機の相手はその失態について容赦のない叱責をしている。
『ナジム…貴様のミスは本来なら銃殺刑に値するものだ…。すなわち次回また失敗すれば、お前とお前の家族はみな死ぬ、解かるか?』
「は、はい…、熟知しております…主宰殿…」
『幸いにも、ゴスコフは今プラハに居る…しかも側近に我々の協力者を携えてな…』
『その者が逐一報告を入れてくれているというのだ、この好条件を生かすも殺すも貴様の裁量にかかっている。今度はしくじるでないぞ…』
「はい、ご期待を裏切るような真似は絶対に致しません…」
冷や汗が頬を伝う…。
『補充の要員は今朝ケルンから陸路そちらに向かった。合流次第速やかに実行に移すのだ…』
「了解いたしました…」
そういうと通信は切断された。
ナジムは一息大きくつくと、眼にメラメラと復讐の炎を燃やした…。
命を落とした弟と幼なじみの仇はきっととってみせる…そう、彼の神に誓うのだった。
(33)
ミュンヘン。BND(ドイツ連邦情報庁)情報収集分析センター。
衛星通信モニターチームが慌ただしくなってきた。
主任分析官のシュナイダーはセンタースクリーンに『例の回線』に関わる周波特定プログラムの出力を転送する。
「ミスターアンダーソン、そちらの興味ある『例の回線』が開いたぞ…、そっちにモニターをつないだ…確認できるか?」
ウィーンのアメリカ大使館。
その地下にある情報指令センターではアンダーソン以下、今回のオペレーションに携わるメンバーが任務に就いている。しきみとナナフシもそこに居た。
BNDの専用機材を持ち込み、その操作を任されているのは他でもなくナナフシだ…。
彼はセットアップ終了の合図をアンダーソンに送る…。
「シュナイダー…今届いたぞ…(照合プログラムのアウトプットを待つ)」
「…ああ、間違いない。北朝鮮製通信衛星Mk1の特徴に一致した…」
テロリスト達が年間百万ドル前後の『使用料』を払って北朝鮮の軍事通信衛星を利用しているのは最近のトレンドだった。
質の悪い暗号化システムのおかげで内容がほぼ丸裸にされているため、西側はわざと放置していた。
幾つかの端末機の固有デコードパターンが把握できており、それを使用している限りターゲットの位置特定が可能になっている。ただしそのパターンが『生きている』のは端末と衛星の間だけになる…。
端末機の情報が不明な通話相手の位置特定には今一つ『細工』が必要だった。
ディスプレイには東ヨーロッパの地図上に、大きく赤い円が点滅して現れる…。
その円は徐々に小さくなるとプラハ郊外で赤い点になった。
アンダーソンはしきみの顔を見つめるとニヤリと笑いウインクをした。
しきみもほくそ笑む。
「OK〜、現在位置を特定した。今後も観察を怠らんでくれ…以上」
そう言って電話を切った。
「さぁて、いよいよだ…」
(34-1)
その日は、朝からゴスコフ大統領がチェコ陸軍士官学校の閲兵式に、エドナ令嬢が午後から市内の養護福祉施設の子供たちを訪れる公式日程だった。
「お父様、行ってらっしゃいませ…」
ひまわりは丁寧に『父親』を送り出す。傍らにはぴたりと『ウィンタース護衛官』が寄り添っている。
ゴスコフのロールスロイスを見送るとひまわりは澄ました顔で言う。
「ウインタース少尉…、たまには同世代の女同士、お茶でもご一緒していただけなくて?」
少し離れた所に立つ男性護衛官は振り向くとあざみに向かって頷いた。
「ええ、喜んで…」
あざみはそういうとひまわりの後に続き奥に向かう。
ひまわり…いやエドナに割り当てられた部屋に入るやいなや、あざみはクローゼットのルイ・ヴィトン製ラージトランクを開け、ブローニングを取り出すとマガジン2本と一緒にひまわりに投げる。
ひまわりはベッドの上に脚を乗せるとスカートを託し上げ、太股にホルスターを巻きあざみの投げてよこした銃をそこに滑り込ませる。
「いい、それは万一失敗した時の護身用だからね、段取り通りなら捨てるんだよ」
「了解…」
あざみはひまわりの返事に頷くと(はいこれ)とばかり極薄防弾チョッキを渡す。
ひまわりは急いでブラウスを脱ぐとブラジャー一枚になった上半身にそれを被せようとする…。
「ちょっと待って!」
あざみは(それが先…)とばかりにベッドの上に置いたブラジャーを顎で示す。
ひまわりは(いっけない…)とばかり今つけているブラを外しそれに付け替え、改めて防弾チョッキを被る。
「9mmや38口径くらいなら至近距離でも大丈夫…よく出来てるよね…」
あざみはそう言って自分もブラウスを脱いだ。
「急いで…『彼女』が来るワ…」
ひまわりが戸の向こうの気配を悟って言った。
あざみは頷くと、同じチョッキを着込んですぐまたブラウスの袖に腕を通した。
(34-2)
コンコンっとノックがする。
「どなた?」ひまわりが言うと
「リトヴィネンコです…」
ドアの向こうで応えがあった。
「あぁ〜ナターシャね?どうぞ、入って」
いかにも公人の令嬢っといった声で入室を促した。
「失礼します…」
あざみとひまわりは先ほどまでの、慌ただしさの気配も見せずにテラスの前のテーブルで紅茶を飲んでいる。
「ナターシャ…こちらは新しい私の護衛官でイギリス海軍のウインタース少尉…」
あざみが軽く会釈する。
「少尉…こちらは祖国の『国家警察局々長』のミセス・リトビネンコ…」
「よろしく…少尉…」
「女性だてらに『やり手』で通ってますのよ」
皮肉っぽくひまわりが言う。まるで10年前からの旧知の仲といった風だ。演技が真に迫っていた。
「エドナお嬢様…早速ですが、コースの確認を…」
ひまわりは差し出された書類を手にしながら
「いやぁね…いつものように『エドナ』でいいのよ…」
そう言って暫く眺めた。目的地までのコースがプラハ市内の地図に書かれている。
「そうねぇ〜どうだったかしら…ちょっと見てくれない?」
紙片をあざみに渡す。
「間違いありません…」
あざみはそう言って彼女に返した。
「あなたも一緒に来てくれるんでしょう?」
既に返事は判っている質問をあえてするひまわり…。
「いえ、私はちょっと局の者と2〜3電話で打ち合わせする用事がございますので…」
「あら、そうなの…残念だわ…」
そう言って彼女の顔を見上げると笑った。
「それでは…失礼いたします…」
リトヴィネンコが退室してドアが閉じられると
(調子に乗りすぎでしょ〜)とばかり、あざみはひまわりを小突いた。
ゴスコフの側近でさえ全く気が付かない…。
トルコでの2日間、エドナ本人につきっきりで取材した成果だった。
(35)
軽く昼食を済ませた後、ひまわりは車寄せに滑り込んできたメルセデスに乗り込む。助手席に乗り込むあざみ。それを挟むようにして停まっているチェコ警護隊のジープと、シークレットサービスのBMW530にもそれぞれ警護官が乗り込む。
見送りに出たリトヴィネンコだけがそこに残った。
あざみがジャケットの襟にあるマイクに向け『出発して』というと、車列が静かに動き出した。
3台の車が門を出るのを見届けたあと、リトヴィネンコは携帯を取り出すと通話履歴から番号を選びそこに掛けた。
「今出たワ…そう、コースは3番目…間違えないでね…」
そういうと電話を切った。
次の瞬間背中に覚えた感触で彼女の顔が強張った…。
彼女には経験からそこへ突きつけられているのは拳銃であることがすぐ分かったのだ。
言われるまま手を上げて頭にのせると、さらに別の男が2人現れて彼女の右手から携帯を奪った。
「パルティメニスタン政府の要請であなたの身柄を拘束する…」
男はそういうとCIAの身分証明書を見せた。左手に手錠が嵌められる…。
リトヴィネンコは体中の血の気が消失するのを感じた…。
男社会で遮二無二働いてここまで築き上げてきた彼女のキャリアは、たった今、終焉を迎えた。
(36)
ひまわり達を乗せたメルセデス他2台はヴァルタヴァ川に沿った車道を順調に走行していた。
「来た…」
あざみがいち早く気づく…。ひまわりが眼をやるころにはボルボの大型トラックが前を走るBMWの横腹に突っ込んでいた。
轟音を上げながらBMWのボンネットに乗り上げるとそのままガードレールを破壊して停止した。
メルセデスもその脇に滑り込むようにして止める。そこしか行き場がなかった。
そこへ2台のアウディが飛び込んでくると、UZIやMP5を携えたアラブ人達が次々とそれらを乱射しながら降りてきた。
各車から護衛官が出て来るが次々となぎ倒される。あざみは助手席から降り、ひまわりを後部座席から引っ張りだす。
背後はヴァルタヴァ川…逃げ場はなかった。
ほとんどの護衛官が倒されたところで、もはやこれまでとあざみは手を上げて立ち上がった。
「ひまわり!」
あざみが促すと、彼女は太股のホルスターを外し、ガードレール越しにそれを川に投げ込んだ。
遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。
「何してる!早く連れてこい!その女もだ!」
眼を文字通り『目玉焼き』のように見開いてナジムがアウディの運転席から身を乗り出して怒鳴る。
男達はひまわりとあざみを荒々しく抱えて車に押し込むと、けたたましいホイールスピンの音と供に2台のアウディが走り去っていく。
プラハ警察のBMW320が数台到着する頃、血まみれになっていた護衛官達が次々と起き出した。死んだふりも命がけだ…。
ボンネットをグシャグシャにされたBMWの運転席で、衝突で受けた鈍痛に耐えながら護衛官は無線機のマイクを手にする。
「こちら『王立劇団』…。作戦成功…」
(37)
世界中のメディアが色めきたった。
『今日の午後、普段ならば静寂で古式ゆかしい歴史ある街ここプラハにおいて、想像を絶する拉致事件が発生しました』
レポーターの声に乗せて、偶然居合わせた旅行者の撮影したと思しきホームビデオ映像が被される。
『…大胆なことに犯人グループは昼日中にゴスコフ大統領の御令嬢が乗る車を襲撃し、令嬢と一名の護衛官を連れ去ったのです』
現場には11名の護衛官が射殺体で残され、連れ去られた2名はエドナさんとその専属だった女性警護官とみられ、いずれも現在消息不明という事態です…プラハ警察当局は…』
街のラーメン屋『草喜軒』でTVを見ていたハヤトは唖然となって箸が止まった。
『アルジャジーラの報道では、いずれのテロ組織も犯行声明を上げておらず、この拉致事件へのイスラム原理主義者の関与については否定的見解ですが…』
「あれが…あざみとひまわりなら…」
ハヤトは目が回るのを感じた…(大変だぁ〜〜〜)
まだ1/3も食べていないラーメンを残し、ハヤトは慌てて店を出た。
釣銭を受け取らずに店を出たハヤトの様子を怪訝そうにして店主がTVを見上げる…。
『喧騒冷めやらぬここプラハからCNNのジェフリー・ハンターがお伝えいたしました…』
(38)
プラハ郊外にある再開発予定地には、近く取り壊される予定のビルが立ち並んでいる。東西冷戦時代の遺物ばかりで既に耐用年数もとうに過ぎ、まさに廃墟…であった。
その誰も居ない『ゴースト・タウン』に40ft海上コンテナをけん引する1台のスカニアR143トレーラーが現れる、暫く走ると角に立っている10階建てのビルの前で静かに停止した。
コンテナの中は明るい照明がつけられており、そこに先ほど襲撃に使われたアウディが2台並んでいる…。
先頭の後部座席ではひまわりがブルブルと震えて涙を流していた。あざみが肩を抱くようにして寄り添っている。隣に大男がAK47を突きつけていた。
「お父様ぁ〜〜〜」
そういうと声を上げて泣き出した。もちろん演技である。
「あなた達!いったい何者なの?私達をどうするつもりです?」
あざみも半泣き顔を装って『虚勢を張る女護衛官』を演じる。
運転席のナジムは振り返りもせず、人差し指を立てた右手を後席から見える位置に突きだす。
「…今度…何か言ったら…お前は殺して川に捨てるぞ…」
そう言って凄んだ。
スキンヘッドのトレーラーの運転手は、工事現場特有の大きな扉が開けられ中の男が手引きするのに従い、その中に向けて再び車を動かした。
トレーラーが止まると、そこでコンテナの扉が開放された。
二台のアウディは次々にバックでそこを降りる。荷物を下ろしたトレーラーは再びどこかに向けて走り去った。
荒々しく降ろされたひまわりとあざみは抱き合って怯えた女を演じながら男達の人数をカウントしそれぞれの特徴を記憶する。
停められた車の場所、さらにもう一台青いフォルクスワーゲンT2を確認、今入った扉が南の道路に面し、先に降りた男達がこれから向かう建物との間の距離を測る…。
「女を監禁しろ!」
「いや待て!、そいつらは別々にしておけ…こいつは地下室だ!」
ナジムはそう言ってあざみをUZIの銃身で指した。
「やめて〜〜〜ひとりはイヤ〜〜〜〜」
ひまわりは泣き叫んだが、これも演技でむしろ別々に監禁される方が都合が良かった。
「黙れぇ!(傍らの部下に向かい)さっさと連れていくんだ!」
またも両目を見開いてナジムが怒鳴った。二人は彼に『目玉焼き』という暗号名を付した。
「私は『主宰』殿に連絡を入れる…」
そう言って青いバンに向かって歩き出した。
あざみとひまわりはそれを見届けると、二人して静かにほくそ笑んだ。
(39)
志能備学園校長室。晩飯のラーメンを食いそびれたハヤトが、やつがしらに直談判にやってきていた。もちろん今からチェコに出向こうという魂胆だ…。
「なりませぬ…」
「それが確かにひまわりさんやあざみさんだという確たる証拠もない上に…第一、シロウト同然の貴方に、一体何ができるというのです?」
「んがぁぁぁぁ〜! 言いにくい事をハッキリと言ってくれちゃっても〜〜〜〜〜っ」
やつがしらの言い分は非の打ちどころがない。
「それにです…、お金もない貴方が…どうして航空券を購入できますか?」
「だ、だからぁ〜」
当然、校長に借りるかボーナスの前借りを願い出るつもりだった。
「彼女等は海外研修に出たときから、もう学園とは手が切れたのです…例え一時的にせよ…」
「これからは何が起ころうと、我々は手を出せません…。全ては彼女等自らの力で乗り越えなければならぬのです」
「それが、この志能備学園の教育方針…お解かりですね?万里小路先生ぇ」
「は〜ぃ…わかりましたよぅ もぉ…」
ガックリと項垂れてハヤトは校長室を出た。
「もちろん…貴方のお気持ちは充分に理解できますよ…」
やつがしらは彼が出た後で そう一人語散るとプーアール茶を一口啜った…。
(40)
ウィーン。アメリカ大使館。
「信号が入りました…」
ヘッドセットに手を添えながら、慎重に装置を扱いナナフシが言った。
「現在位置…特定…再開発区です…」
次の瞬間フロアー正面のメインスクリーンにその場所がポイントされた地図が映し出された。
アンダーソンは受話器をとる。
「私だ…、支援チームを送れ…」
しきみも同行したい気持に駆られる…だがここはウィーン…プラハは200km北だった。
「そう焦るな…君の出番は じき訪れる…」
アンダーソンは見透かしたように言うとしきみの顔を見上げて微笑み、コーヒーを一口啜った。
(41)
ハヤトは自室に戻ると、学生時代に作った赤いパスポートを探し、やっとの思いで引き出しの奥からそれを見つける。
卒業旅行で使ったきり、新しいイミグレーションスタンプは押されていない。
ベッドの上に貯金通帳も置かれていた。
「こんなんじゃ〜とてもいけないよなぁ〜」
残高は\53,675-と印字されていた…。じきに公共料金の引き落としがあるからこれに手をつけるわけにいかなかった。
情けなかった…。
ため息とともに後ろ手に頭をかかえてベッドにひっくり返る。
そこに(コンコン)とノックがした…。
「ハヤト…、入るぞ?」
武智だった…。
「どぉ〜ぞ〜」
ぶっきら棒にハヤトが答える前に既に彼は入ってきていた。
武智は手にした書類袋をハヤトの顔の上に投げる。
「ぶわっ・・・・な、何だよ?もう〜」
起き上って鼻を押さえながら怒った。
「それが必要なんだろう?ワザワザ持ってきてやったんだ感謝しろ…」
「え?ええ?」
慌てて袋の中を見ると(はっ!)として中の物をベッドに広げた。
オーストリア航空と書かれたボーディングパスにパスポート、ホテルのバウチャーなど旅行に必要な資料一式だった。
「OS52便、明日一番のウィーン直行だ…11時間で着く…」
「絶対に寝過ごすなよ…」
毎朝の特訓に突き合わされている彼だったが、ハヤトの遅刻癖には辟易していた。
立ち去ろうとする武智の背中に向かってハヤトが問う
「こ、こんなもんどうしたんだ? そ、それに俺…金なんかないぞ?」
「気にするな…」
「それに〜これは何だ?」
ハヤトは入っていたパスポートを掴み見せて言った。
(パスポートくらい持ってるぞ?)
「いちいち察しの悪い奴だな…」
そういうと天を仰いだ。
「偽造パスポートに決まってるだろうが?」
「そのパスポートナンバーの1,4,7桁目の組み合わせはイミグレーションの時に『別のデータベース』に照合に行く番号だ…」
(はぁ?)
「それだけ言えば解かろうが?」
そう言い残して帰って行った…。
(42)
プラハのアメリカ大使館では、テロリストの内通者として逮捕されたリトヴィネンコ『前』国家警察局々長が尋問を受けている。
彼女は先ほど怒れる大統領と謁見したばかりでスッカリ憔悴しきっていた。
彼の叱責が原因ではない。
傍らで『裏切り者』と悪態をついたエドナの姿を見たからであった…。
あの『影武者』をそれと見抜けなかった己の粗忽さを恨んだ…。
「君から聞き出したいことなど…何一つないんだ…」
正面に座る尋問担当のCIA局員が冷たい視線を投げて言った。
「君が協力すれば…我が国の証人保護計画の恩恵が受けられる かもしれない…」
「だが…、何もしなければ君は一生祖国の刑務所を出られない…間違いなく…」
「刑務所がふさわしいのはゴスコフの方よ!」
いきなり爆発したかのように怒鳴った…。
「あの男こそ!『独裁者』じゃないの 彼さえいなければ我が民族が冷や飯を食べさせることもなくなるのよ!」
マジックミラーの向こうではその様子をゴスコフが眺めている…。
気の毒に…そういう表情だった。冷や飯だと?
だったら何故君が国家警察局長の地位を得られたというのだ?
これ以上見るべきものはない…そう判断したゴスコフは観察室を出る。
残された二人の『Double OH』要員が語り合う。
「どうやら…彼女の協力は得られそうもないな…」
マックスウェルがそう呟くと、荒れ狂うリトヴィネンコを腕組みして見つめている相棒も頷いた。
「さぁて、それじゃぁ〜そろそろ準備にかかるとするか…」
相棒が彼の肩を叩くと(行くぞ)と合図してドアノブを握った。
使用する『機材』の関係で、二人は一旦ドイツに入国せねばならない。
計画では彼女にテロリストのリーダーを呼び出させ、アジトの指揮系統が手薄になった頃を見計らって作戦決行の予定だった…。
だが、この程度の『捩れ』は大したことではなかった。
(43-1)
カリフォルニア州キャンプ・ペンドルトン。すなわち合衆国海兵隊第1海兵師団の本拠地である。
敷地内を小紫ことケン・タナカ少尉と大隊付きの偵察隊評価担当の海兵中佐が並んで歩いている。
小紫は海軍のサンディブラウンの夏服に将校帽を被り、中佐は砂漠用迷彩服に略帽姿である。
大柄の中佐の横で細身な小紫…まるで親子のような感じに見えた。
「朝早くからご苦労、ミスター・タナカ」
「いえ、早起きは苦になりません、中佐(Sir)…」
中佐は、このハキハキと返答する若造を一目で気に入った。
「ブートキャンプではうちの教官を2人もノシたそうだな…」
「申し訳ありませんでした…」
「はは、何を言うか…私は褒めてるんだぞ?少尉…」
「恐れ入ります…」
小紫は中佐とは眼を合わさず、横に並んでるM1HAエイブラムス戦車の車列に眼を奪われながら返答する。アカデミーを出たばかりの少尉を演じては居ても、心根にはまだ『少年』が残っていた。
昔、プラモデルで作った、この角ばった特徴的な砲塔のMBTを実車で見るのは初めてだった。(かっこいい〜)そう心中で呟く。
「サンディエゴからワザワザSEALsの君に来てもらったのには、臨時にうちの『スカウト』どもを見てやって貰いたかったからだが…」
「はい、そう聞いてます…」
スカウト…つまり偵察隊要員の事だ。海兵隊の偵察隊というのは『腕に覚えある』選り抜きの連中が集まる、いわばエリート集団である。
M1戦車の車列が途切れる場所に、6人の海兵隊員が休めの姿勢で並んで待っていた。
(43-2)
中佐と小紫をみとめた一等兵曹が叫ぶ。
「気を〜つけ〜っ!」
「K中隊第二小隊第3分隊っ6名!命令により出頭いたしましたぁ!」
「やすめぇ!」
中佐が言うと(ざっ)っと従った。足並みが完璧に揃っている。
「紹介しよう! 彼は(小紫を見やる)今日から一週間、君らの特別訓練の指導に当たるSEALsのタナカ少尉だ、任務のため来られなくなったクーパー中尉の代行である…」
一同、各々が小紫を見て噴き出しそうになる…。
(このガキが?俺達を鍛えるだと?)
そういう表情だった。その反応を見た中佐が別の意味でにやけた…。
だから海兵隊員は『チ○ポ頭』とか言われるんだよ、と…。
小紫は分隊長の前に歩み寄ると彼の右胸の名前を見ながら言う。
「ガルニア…兵曹?…何か言いたいらしいな」
「いいぇ…その、少尉殿が…あまりにも…」
兵曹は眼で嘲笑する…。
「ガキっぽい…か?」
彼は眼で(そうだよオチビのNIPちゃん…)と答えた。
小紫は再び一歩下がると、顔色一つ変えずに言う。
「戦場で生き残るために必要なこと…それは『眼に見えない敵』をいかに正確かつ迅速に把握できるかである…」
「諸君にその能力があるか見せて貰う…」
6人は白けた顔で『演説』を聞いている。
「この中で、私をKOした者に…今日のディナーをご馳走しよう」
「そのかわり、私が勝てば諸君にはこれからフル装備で基地内を10周してもらう」
「無論分隊責任でだ、ただし…いきなりでは気の毒だから、ハンデをやろう…」
「…誰でもいい、指一本でも私に触れられたら君らの勝ちとする…」
一同、唖然として彼を見つめる…。
(何言ってやがる…頭オカシイんじゃねぇの?かこのイエローは…)
ガルニアはまたもニヤける。
中佐は首を振って(あ〜ぁ…少尉を怒らせたな…)と呆れた。
(43-3)
「んじゃ、遠慮なくいきますかね!」
そういうとガルニアが殴りかかろうと腕を振り被った…
「貰ったぜ!」っと思った瞬間、小紫の顔面を捉えた筈の拳が空振りになる…。
「えええええええ?」
小紫は彼の頭上をおおよそ3m程跳ね上がり、そのまま上空でクルリと後転するとM1戦車の主砲の上に『スタンっ』と立った。
「え?ええええええ〜」
思いっきりの空振りでバランスを崩したガルニアはM1戦車の方に向き直る。が、既に小紫はそこに居なかった。
次の瞬間 背中のある部分に小紫の拳が突かれると、全身に痺れるような衝撃を感じ、身体が言うことをきかなくなった。
「はい、君は死んだ…」
背後から彼の首に肘を巻き付け、奪った銃剣を突きつけると小紫は耳元でそう囁やいた。
実戦だったらもうガルニアの首は切りつけられ鮮血が吹き出している筈だ。
そこへ黒人の伍長が小紫の背中に隙あり!とばかり踵蹴りを試みると、クルリと反転した小紫がガルニアの顔をそこへ向ける。
慌てるがもう遅い、伍長は(兵曹を殺してしまう)と悟ったが、小紫は少しずらせてガルニアの首の付け根でそれを受けた。
ガルニアはその衝撃で失神しその場にへたり込む…。
前後して小紫はガルニアの肩越しに、右手で伍長の足首を掴み、左手をつま先にそえるとそれをグルッっと回した。
伍長は簡単に背骨を軸に空中を一回転し、そのまま激しく地面に顔面を叩きつけ気絶した。
小紫は残りの者たちに向き直ると、空から降ってきた将校帽を見もせずに左手で受け取り、また被りなおした。
この間10秒もない。彼は汗一つかかず、瞬時に音もなく大男2人を片づけた。
「次は誰?」
残りの4人は、(昼飯の時間までに基地内をフル装備で10周し終えるだろうか?)と考えるのが関の山で、固唾を飲んで先程と同じ『休め』の姿勢のまま立っているだけだった。
「すっっ げ〜ぇぇぇ 『マトリックス』みてぇだ…」
ニューメキシコ出身の三等兵曹が眼を丸くして感想を漏らすと、隣の同僚に後頭部をひっぱたかれた。
「よ〜し、それまで」
中佐がゲームセットを宣言する。
「二人が目を覚ましたら全員装備を取ってこい…今から基地内10周だ!…解散!」
ウンザリするような表情の分隊員を後に、中佐について歩き小紫が言う。
「2人だけだったから1/3の3周にマケてあげましょうよ…」
「構わん!いい薬になる…」
そう言って中佐が笑った。
(44)
地中海。フランス海軍原子力空母シャルル・ド・ゴール。
艦上に4機のラファールMが爆装を整えて待機中だ…。
現大統領から再びNATOの実力部隊に参画することになったフランスも今回の秘密作戦に参加している。
艦長は通信士官から電文を受け取ると傍らの提督にそれを見せる。
「ようし…『上空待機命令』発令だ…」
それを受けて艦長が管制室に命令を伝える。
既にカタパルトに装着されたラファールMは甲板士官の合図でフルスロットルにすると瞬く間に甲板を滑るようにして発進していった。
同じ時刻、パキスタン沖のアラビア海でもアメリカ海軍のF/A-18F(通称ライノ)が、そしてトルコのコンヤ空軍基地ではアメリカ空軍のF-15Eとドイツ空軍のトーネードが同じように進空していた。
(45-1)
あざみは殺風景な地下室の真ん中に、背凭れの外側に両腕を後ろ手に縛られ、両足首を椅子の脚に縛りつけられた状態にされている。
時計の針は既に深夜1時を回っていた。そろそろ作戦開始の時刻である。
拉致されて既に半日近く経つのだが、まだ尋問も拷問も受けていない…。段取りの悪い連中だと彼女は思った。
時間の使い方がまるで成っていなかった。おそらく場当たり的なプランなんだろう。
見張りは一人、正面の壁を背にし、椅子に腰を掛けて彼女を見張っていた。AK47が傍の壁に立てかけてあるが、その手にはしっかりと拳銃が握られていた。
恐らくドアの向こうにも一人、居る筈だった。
テロリスト…といっても士気は低そうだ…それが証拠に この見張りは度々『船を漕いでいる』。隙だらけだった。
あざみはスーツの袖に仕込んであったステンレス製の『紐鑢』で、先ほどから慎重に手首の縄を切断しにかかっていた。
間もなくすると縄は数本の糸だけで繋がる頼りない状態になった。
「んンっ」
あざみが咳払いをすると、見張りは頭を振って半眼になっていた眼をしばたたかせ意識を戻した。
「ちょっとぉ…お兄さん…頼みたいことがあるんだけどぉ…」
あざみは苦手のペルシャ語でそこの『髭モジャ』男に話しかける…。
「なんだ?…」
「ちょっと寒いんだけど…靴下直してくんない?」
左の太股を顎で示す。ガーターベルトのクリップが外れ膝のあたりまでずり落ちていた。
もちろん外したのはあざみ自身だ…。
「ちぇ…」
舌打ちをすると男は拳銃をズボンの腹に挿しあざみの前に膝まづいた。
彼女はわざと股を開いて、黒いレースの下着がよく見えるようにした。
男はニヤニヤしながらそこに手を入れて、ショーツのクロッチ部分の前でのたくっていたリボンを取るとその先のクリップに靴下を噛ませた。
ついでとばかりに太股の内側を揉みしだく…。
その間、じーっとあざみを見つめて反応を観察している。
あざみも『満更でもないわよぉ〜』っといった風に笑う。
「へ、オマエさん…言葉、わかんだな…」
「そうよぉ…」
次の瞬間あざみの手刀が男の喉に飛ぶ。
呼吸を失って男がひるむ…あざみはすぐさま男の顎と後頭部を掴み、思いっきりグルッっと捻る。
『グキ』っという鈍い音をたてて首の骨が折れると『髭モジャ』はあっさりと息絶えた。
(45-2)
「私とやりたいってか?…百年早いんだよねぇ…」
そう悪態をつくと素早く脚の縄を解き、男の拳銃を奪う。
「何よコレ〜…せめてグロッグくらい買ってもらいなさいよぉ〜」
銃が粗悪な北朝鮮製68式だと知ると不満を口にした。暫く外の見張りの動向を窺う…
そいつも寝ているのだろう…誰も来ないと判断するとあざみは部屋を見回す。
素早く両足のパンプスを脱ぎ、左右それぞれの『かまぼこ型』のヒール部分を90度捻って外し、中から折りたたみ式のヘッドセットと小型無線機を取り出して装着した。再びパンプスを元の『プレタ』に組み立て直しながら、ひまわりに呼び掛けてみた…。
「こちら『子猫2』…、ステップ1終了…そっちはどう?」
「『子猫1』了解…、現在ステップ2進行中…」
ひまわりの返答にひとまず安心するとあざみは靴を履きなおし、ドアの向こうの見張りを片づけにかかった…。
同じころ、ひまわりは既に音もなく見張り2人を処理し、廊下にある出窓から外に伝い出てシュタっと外の地面に飛び降りていた。
そして目標の青いバンに向かって急いだ。外の見張りは誰もいなかった。
「なんて杜撰なのかしら…」
思わず感想を漏らす(これなら訓練の方が厳しい)そう思った…。
「なあに?独り言ぉ?」
あざみが現れた。タイミングがピッタリだった。
二人は眼で合図するとあざみが慎重にバンの中を覗く…。
(クリア!)そう『ハンド・サイン』で伝えると、ひまわりが静かにバンの後部ドアを開けた。
二人は乗り込むとそれぞれブラウスの胸元からブラジャーに手を突っ込んでツールを取り出す。ひまわりは薄い4cm角のアルミ箔のようなものをそこから取り出すと噛みちぎって中からチップを取り出した。
『プラクティス…何分だったっけ?』
『平均2分18秒です…』
あざみが聞き、ひまわりがそう答えると彼女は腕の時計を見た。
「じゃ、目標2分フラットね!」
そう言うと、ピックのような形をした超小型ドライバーを使って通信装置の裏ぶたを開けにかかった。
あざみが手際よく左から3枚目のプリント基板を抜き出すと、そこに付いた小さなスロットからマイクロメモリーカードのようなものを抜き、ひまわりに渡す。
既に待機していたひまわりが先程ブラジャーから取り出したチップを渡すとあざみはそれに差し替えた。
そして元通りに裏蓋を閉じる。
「1分47秒…」
あざみが勝ち誇ったように笑う。
プラクティスで手を抜いていたわけではない、手順を間違えなく覚えるのを優先したためである。素早くできてもチップを逆に挿入したのでは意味がないのだから…。
「行きますよぉ!」
ひまわりはそういうと、また改めて(連中から奪った)コルト・ガバメントの装弾を確認し車外に出た。
あざみが(イイナーそれ)っといった目線をひまわりの銃に送った…。
(46)
ドイツ・チェコ国境上空。漆黒の闇を2機のMH-60Gがプラハ再開発区に向けて飛んでいる。ドレスデンで拾った2人の要員を乗せ、今まさにひまわり達を回収するために向かっていたのだった。
「これで何回目〜〜〜?」
大声で相棒が問うた。
「さぁ〜ね…いちいち数えてないからなぁ〜〜〜」
マックスウェルが手にしたM4カービンを調整しながらやはり大声で答える。
奴と組んだ回数なんかのことよりも、とにかく彼女達が心配だった…。
まだ20歳にも満たない『子供』を作戦に使っている…その罪悪感で胸が張り裂けそうだった。
(47)
胸騒ぎがして眼が覚めたナジムはひまわりの居る筈の部屋に向かうと廊下に倒れている2人の部下を見つけて血の気が退いた…。
確かめるまでもなく部屋はもぬけの殻だった。
またしても『目玉焼き』になってトランシーバーで部下に呼び掛けるとあらん限りの悪態をつき罵った。
自分だって寝ていたくせに…。
「うぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜っ」
ナジムは気が狂ったように喚くと天井に向けてUZIの引き金を引いた。
『バリリリリリリリっ』
空気を劈く銃声が闇夜に響きわたると、蜂の巣をつついたような騒ぎでテロリスト達は眼を覚ました。
ひまわりとあざみは瞬間(しまった)っと思った。これでは屋上でマックスウェル達を待機できない。
「計画変更(plan-B)!」
あざみがそういうとひまわりはコクリと頷いた。
駐車してあるアウディに乗り込む…思った通りキーは挿しっぱなしだった…。
せめてバイザーの裏にでも隠せよと…あざみは苦笑いする。
後部座席にひまわりがAK47を2丁抱えて乗り込むとあざみはエンジンを掛けて出口に向かって走らせた。
「うぉのれぇぇぇぇぇぇ!」
走りだした銀のアウディを見つけると、それに向けてUZIの引き金を引くナジムだったが弾が出ない。
先ほどのヒステリー行為で全弾撃ち尽していたからだ。間抜けもいいとこだった…。
改めてAK47で撃ち始めるころには、今まさに車は外に出ようと門に衝突せんとしていた。
「何をしているぅぅぅ!〜追え!、追うのだぁぁぁぁ!」
2階から叫んで指示を送る。間抜けな部下達が慌てて、残っている白いアウディに乗り込む。
一度の衝突では門は開かなかった。あざみはバックするともう一度試みようとする。
「あざみちゃん待って」
そう、言い終わるか終わらないうちにひまわりがAK47を構えると門枠を繋いでいるチェーンを狙い撃って破壊した。
今度は軽くぶつけるだけで門が開いた。右のヘッドライトが壊れる。
僅か2〜3秒遅れてテロリストの車が続いて出た…。
「ちぇ…追いつかれちゃうよ…」
あざみはまずい流れになったことを感じる…。
(48)
「中佐〜、予定の場所に『子猫』が居ません!」
副操縦士が叫ぶ。
「マック!見ろあそこだ!」
サイドドアーを全開放し、むき出しになったデッキから身を乗り出して相棒が下を指差す。そこに2台のアウディがジグザグに走っているのが見えた。後ろの白い方からは火花が放たれている。銃撃しているのだ。
「彼女等を援護するぞ!」
マックスウェルはパイロットに指示を送るが、当分は無理だ。高い建物がある所では高度を落とせない…。
『頑張れ…』
彼は心中でそう 呟いた。
(49)
一人、現場に残されたナジムは、上空を飛び去っていくヘリの姿を虚ろな目で追っていた。
やがて跪いて崩れ落ちる…。『これでもう終りだ…』そう思うと頭を掻きむしって半狂乱になった。
4〜5分ほど放心状態でいると、やがて拳銃を手にし、静かにこめかみに当てる…。
ダメだ…引き金を引けない…。
『そうだ、まだ終わったと決まったわけではない…間抜けだが、キャンプで寝食を共にしてきた仲間達だ…見事に2人を連れ帰るかも知れないではないか…』
そう、前向きに考えなおすと『とにかく報告だ…』そう思ってバンに向かった。
(50)
ウィーン。アメリカ大使館…。
昨日から睡眠を取らずにナナフシはモニターを睨んでいた。彼の面前にコーヒーの入った紙コップがつきだされる。しきみが微笑んで立っていた。
「あぁ…すまない。ありがとう」
彼が一口啜ると、装置が「ピー」っと鳴り衛星回線が開かれた事を告げる。
慌てて座りなおすとナナフシは慎重に確認作業に入る。
ひまわり達が命がけで成し遂げた成果だ。慎重に確認したかった…。
「やった…」彼は里を出て初めて日本語で呟いた。
「成功です!」
それを聞いてアンダーソンは席から跳ねるように立ち上がると受話器を取り、ナナフシに座標送れと手で合図する。
「提督!成功です。相手の座標が分りました。今各機に送信中です」
後はペンタゴンに任せたとばかり電話を切ると しきみ達に向き直りウインクをした。
理屈は簡単だった。
ちょうど携帯電話のSIMと同じような働きをするチップに、デジタル化する音声信号に紛れて『マーキング』をプロトコルヘッダーに書き込むプログラムを組み込ませ、それをひまわり達の手で連中の端末に仕掛けたのだった。
『マーク』は衛星の回線接続装置には当然音声を運ぶパケットのデータと解釈されるから、そのまま相手の端末機にも送られる。
後はその『マーク』を受け取った受信機側が、再びそれを乗せたパケットを衛星に戻すのをモニターするだけだ。
IBMフェデラルシステムズの協力でCIAのデジタル兵器開発部門が生み出した傑作だった。
(51)
「スネイク・ワン、こちらイーグル・ネスト…荷物は届いたか?」
「イーグル・ネスト、スネイク・ワン受信完了。現在『飼い犬』に『喰わせて』いるところだ…」
アラビア海の空母CVN-69ドワイト・デービット・アイゼンハワーから飛んだF/A-18Fライノのエビエーターが答える…
「ターゲットには君らが最も近い、これより『フェーズ2』を開始せよ」
「了〜解、イーグル・ネスト…」
通信が切れるとエビエーターはインターコムに切り替え後席のRIOに告げる。
「ジャック!聞こえたろ。フランス野郎どもはお帰りあそばしたと〜」
最も遠いラファールMのエレメントは帰還したという意味だった。
RIOは笑いながらJDAM弾の全てにGPSデーターがアップロードされたことを確認した…。
(52)
『ナジム…貴様には本当に失望させられたぞ…』
無線機の向こう側でコメカミに血管を浮かび上がらせて憤怒する『主宰』の顔が頭に浮かんだ…。
「け、結論をお急ぎにならないでください…。部下が二人を捕らえ戻ってくるやもしれません…」
この状況では精一杯の弁明だった。
『貴様のその楽観的な思考回路が今回ばかりか前回の、そのまた前回の、そのまた…』
『…いや、とにかくお前の失態全ての源泉だということが解かっておらぬようだな?…』
「・・・・」
『まぁ何にしてもだ…、部下が戻り次第 アジトで待機していろ…迎えを寄こしてやるワ…』
「…解かりました…、し、しかし万が一事態が好転した場合には…」
『くどい!…』
「・・・」
『それからナジム…』
「は、はいっ」
『今使用してる通信装置は処分しておけ…解かったな…』
この言葉は重かった…、連絡はしない…ということは『もうお前は用無しだ』という意味だった。
「わ、わかりました…」
返事も返さずに相手は回線を閉じた…。
ナジムは暫くフォルクスワーゲンT2バンの床に座り込むと、虚ろな眼で通信機を見上げた…。
万事休す…。そう思うと頭を抱え込んで大声で喚き散らす。
ひとしきり騒いだ後、やおらフォルスターからトカレフを抜くと(バンっ!)っと一発通信機に放つ…。
こうなったら地獄の果てまで逃げ切ってやる…。そう思うのだった。
(53)
「バシュ!」
弾丸が命中し鈍い破裂音を上げて後輪のタイヤがバーストした。前輪駆動車だからまだ走れるがとてもスピードは上がらない。
「あざみちゃん!もう弾切れっ!」 後席で応戦していたひまわりがガバメントを投げ捨てて叫ぶ。
「クソっ!」
あざみは瞬時に考え、MH-60Gが近づけ易そうな場所で、かつ階数の低い建物を探すと素早くそれを見つけ、ステアリングを左に切って、飲食店か何かだったと思しき3階建ての廃屋に正面から突っ込んだ。
車は中のショーケースやらテーブルやらのガラクタに乗り上げて止まると、うまい具合に穴だらけの天井の下にキャビンをポジショニングできた。
「ここの屋上から拾って貰いましょ〜!」
あざみはサンルーフを開けると、運転席に備え付けの発煙筒をひまわりに渡し、先に行くように言って拳銃を手にする。
ひまわりは発煙筒を口に咥え、素早くサンルーフから車の上に乗り出す、手を差し伸べてあざみを引き上げると二人は天井裏を経由して2階に辿り着き、すぐに階段へ急いだ。
逃げながらあざみは判断のまずかった事を悔やむ。逃げ切れてこその現場離脱だったのだ。
ここでは地上支援チームの援護は期待できない…。
「居たぞ〜、上だ〜、上に行ったぞ〜」
テロリスト達がペルシャ語で喚き散らしている。
上空にMH-60Gの爆音が迫ってきた。これなら発煙筒は不要だった…。
屋上の出入り口にひまわり達を発見し、マックスウェルが叫ぶ。
「居たぞぉ!あそこだ〜」
間髪入れず、備え付けのM60D機銃のボルトを引いて相棒が待機する。
ヘリの起こす爆音と強風の中、二人が駆け寄ってくる。そこへ敵の銃弾が降り注ぐと上空からマックスウェル達も援護する。相棒は険しい顔でテロリスト達に向けてM61Dを連射した。
コンクリートの破片やその粉塵が夥しく舞い上がる…。
無造作に置かれたドラム缶や木箱の陰であざみも拳銃で応戦する。粗悪な北朝鮮製68式は弾が左に逸れる癖を持っていた。
「ひまわりっ!弾があるうちに早く行って〜」
あざみが絶叫すると、ひまわりは寄ってきたMH-60Gブラックホークの特徴的な大きなタイヤを剥き出しにした主脚に『えぃっ』っとばかり飛びついた。
「つかまれ〜」
マックスウェルが彼女の腕をつかみ引き上げると、テイルローターの僅か1〜2メートル上をロケット弾がかすめて隣のビルに命中した。
(まずい)彼がそう思うと、相棒がパイロットに叫ぶ。
「スティンガーだ!〜〜〜〜、早く出せ〜〜〜」
あざみを残してMH-60Gは素早く連中の視界から退避する。仕方がなかった…。
「あざみちゃ〜〜〜〜〜〜〜ん!」
ひまわりが泣きながら叫ぶ。
下では事態を受け入れたあざみが笑って見上げていた。すでに両腕を上げて『降参』の意思表示を敵に示している。
「ひまわり…元気でね…、ハヤト先生に伝えて『愛してる』って…」
ヘッドセットに彼女の最後の声が日本語で伝わった。2つ目のセンテンスには力がこもっていた…
「いやぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜あ ざ み ち ゃ〜〜〜〜ん〜〜〜〜〜っ!」
泣き喚くひまわりを抱きしめてあざみを見やるマックスウェル…今はどうしようもなかった…。
(54)
ひまわり等の乗ったMH-60Gは今、充分な広さをもった空き地に着陸するところだった。
既にプラハ警察や、CIAのセダン、SWATのバンなど様々な機関の車両がひしめいている。再開発区が騒然としている。
マックスウェルが地上の支援チームに、あざみが残された建物を包囲するように様に既に命令してあったが、間に合わなかった。現場には追跡に使われた白いアウディが乗り捨ててあり、連中の足取りはつかめなかったと報告が入った。
「クソ! 一体どこに消えやがったってんだ!」
柄にもなく悪態をつく彼の肩に手を置いて『もう一人のジェ−ムス』がなだめる。
ヘリがドスンと着地する、次の瞬間、ひまわりは飛び降りると一目散に駆けだした。
「おいっ!君っ!」
マックスウェルが叫び、追いかけようとするが『相棒』がその腕をつかんだ。
ひまわりは(ごめんなさい!)っと言って警官からドゥカティ・ストリートファイターを奪うとミラーに掛けてあるヘルメットを被り、スターターを蹴飛っばして1.1リッター2シリンダーエンジンを始動させる。
高回転のまま乱暴にクラッチを繋ぎ、左足を軸にしてターンさせると、彼女は激しくウィリーさせて発進し闇の中に消えていった。
「好きにさせてやろう…」
そういうと憂いを湛えた眼で彼女を見送った。
(55)
アフガニスタン…。遠く北方にトルクメニスタン共和国を望む高地。人里離れたその山脈に『主宰』の本拠地が隠されていた。辺り一面に天然の牧草が生え、4〜50頭のヤギ達が呑気にそれを啄んでいる。
女達が井戸から水をくみ出し、朝食の支度に勤しんでいた。
その傍らでは子供たちがヤギ相手に無邪気に遊んでいる…。
『主宰』は天然の洞窟を利用してここに地下基地を築き、そこで暮らしていた。
単なるアジトではない。100人からなるテロリスト達の養成施設でもあった。
みな家族とここで暮らしていた。
ナジムとの不愉快なやり取りの後、イライラして寝付けなかった『主宰』は気分を変えるために外に出てきていた。
明けたばかりの朝…太陽がまぶしい…、今日もいい天気になりそうだった。
傍を5歳ぐらいの男の子がイッパシのテロリストを気取り、機関銃に見立てた木の枝で彼を撃つマネをする。
『わ〜やられたぁ〜』っといって『主宰』は撃たれた真似をすると、男の子はキャッキャと笑う。
しゃがんで男の子の頭を笑いながら撫でている時だった…。遠く『ひゅ〜〜〜〜〜』っと口笛を吹く様な音が近づいてくるのに気がついた。
悪い予感に(はっ)として立ち上がった時には、彼はもう『この世』の存在ではなくなった…。
(56)
ロンドン。MI-6のオペレーションセンター。
標準時で午前1時を過ぎていた。
イギリスの偵察衛星が西側各国の情報機関へ配信している映像が、今センタースクリーンに映し出されている。
まだ現地は明方のため赤外線映像だが、角度の関係でそこに居る人物達の姿形が手に取るように分かった。女、子供達が居ることも全て判かっていた。
Mは顔色一つ変えないでその映像を睨んでいる。
次の瞬間、4機のF/A-18Fがそれぞれ4発づつ投下したJDAM弾が着弾する瞬間が訪れると画像は激しい爆発の閃光でホワイトアウト状態になる。
暫くすると映像が復活し、夥しい破壊の惨状を伝えてきた…。
そこにあった山腹の草原は『大きなクレータ』に変わっていた。
生存者らしき者はどこにも見えなかった…。
ヤギの半身らしき『肉塊』が転がっているのが見える…。
『主よ、汝が過てる子羊を許し給え…』
Mはそう胸の内で呟くと踵を返し仮眠をとるために自分の執務室に向かった…。
23分後、さらにF-15Eとトーネードが『バンカーバスター弾』で止めを刺すことになっていた。
(57)
ウィーンではロンドンと同じ映像をしきみやナナフシ達が見つめていた。作戦は大成功に終わった…。
だが手放しで喜べるような画像ではない…。作戦は女子供にも容赦がなかった…。
ただ『テロリストと一緒に暮らしていた』それだけの理由で大勢の罪もない人間が死んだのだ…。
「慣れておけ…。これが『実戦』だ…」
アンダーソンがスクリーンから眼を離せないで居る二人の肩を叩き、そう言った。
後方で分析官が受話器を抑えて彼を呼ぶ。
アンダーソンが向き直って(こっちに回せ)と合図し、受話器を取った。
しきみは振り向くと、彼の表情から『良くない知らせ』だとハッキリ悟った…。
「そうか…、了解した…」
そう言って電話を置くと、両手をコンソールに突いたまま俯く…。
暫くしてしきみ達の方に顔をあげて言う…。
「ウインタース少尉が脱出に失敗した…」
しきみとナナフシは言葉が見つからなかった。
(58)
ひまわり達がヘリを降りた、ちょうど反対側の森林公園のフェンスに沿った道路に、スカニアR143トレーラーが待機している。運転席に座ったナジムがステアリング・ホイールの上に両腕を組み突っ伏していた。闇夜に二つの『目玉焼き』が光っている。
一度は逃げようと思っていた彼だったが、部下達から2人のうち護衛官を捕まえたと連絡を受け、その前に『一仕事』試みるつもりだった。
既に『主宰』はこの世には居ないという事実を知らなかった彼は、一縷の望みをかけて『名誉挽回』の策を練っていたのだった。
トレーラーの下に隠されたマンホールの蓋が開く。そこから浅黒い顔の男が注意深く周囲を見渡す。トレーラーのフェンダーの陰で待っていたスキンヘッドの男が合図を送ると、男はそこを這いあがってきた。
サイドミラーに写ったナジムに向け、スキンヘッドが合図する。男が次々と現れると最後の一人があざみを後ろから追いたてるようにして上がってきた。あざみの腹にはC4が巻きつけてあった。逃げたら無線起爆装置でドカン…それで終わりだ。
車を降りたナジムは、あざみの細い首を掴むと、あらん限りの力で彼女をコンテナに押しつける。苦しみで顔が歪む。
「きさまぁ〜〜〜。よくもこの俺の顔に泥を塗ってくれたなぁぁぁぁぁ〜」
減らず口を叩き返したいが苦しくて声が出ない…。
「兄弟の恨みは貴様で晴らす…。だが、今一つお前には聞きたいことがあるんでな…」
まだ殺さない…そういう意味だった。
(59)
ハヤトは本当にこれからヨーロッパに行くのか?っといった軽装で、成田国際空港のチェックインカウンターに並んでいた。
平日、しかも旅行シーズンではないので空港は空いていた。
「お荷物は?」
「い、いえ…ありません、これだけ…」
彼は手荷物を見せると預け入れの物はないとカウンターの女性に告げた。
彼女は訝しげに微かに首を捻ったが、テキパキと端末を叩き、左手にある専用ディスペンサーにボーディングチケットを吐き出させる。一緒に吐き出されたバゲージクレームのタグはそのままゴミ箱に投げ捨てられた。
「第一ターミナル南ウィングのこのゲート番号になります。出発時刻30分前までには搭乗ゲートにいらしてください」
「あ、ありがとう…」
型どおりの説明を受け、ハヤトは引き攣った笑顔を返すとすぐさまゲートに向かった。
何しろ5年ぶりくらいの成田だったので手順を思い出すのに一苦労だ…。
案の定、持っていたエビアンのペットボトルをセキュリティで没収されて苦笑いする羽目に陥った。入口の注意書きをしっかり読んでいればいいだけの話である…。
「ったく、これで生徒に『一般教養』を教えてるってんだから笑っちゃうよ…」
ハヤトは悪態をつくとイミグレーション・フロアーに急いだ。
(60)
ひまわりはまるでGPライダーのようにドゥカティを飛ばす。霞の里に来るまでバイクに触ったこともなかった少女が、今やこの警察仕様のイタリア製怪物バイクを自由自在に駆っているのだから驚きである。しかも完璧に…。
彼女は碁盤の目のような再開発区を縫うように走り、瞬く間にあざみを見失った現場に辿り着いた。その土地勘も驚異的だった。
「Policie」と大きく書かれてるバイクを降りて荒々しくこちらに近づいてくるピンクのスカートを履いた女を見て、現場警備についていたSWAT隊員が警戒感を強めて眺めている。
「君!彼女は良いんだ…通してやってくれ…」
既に顔見知りのCIA局員が警官に告げた。
「ご苦労様です…現場保存は?」
「完璧だ…誰も入れてないよ…じきに『CSI』がくる…」
CSIとは科学捜査チームにフォーカスした有名なTVドラマの事だ。
「すみません…着替えたいんですけど、なんかありますか?」
ひまわりはバイクに跨ってる間、パールピンクのショーツとガーターベルトを剥き出しで走っていて、いい加減ウンザリしていた。
恥ずかしいのではなく、迎え来る疾風を股間と脚で受けて凍える思いだったからだ。
4月とはいえプラハの夜はまだまだ寒い。
「おい君!(傍らのSWAT要員を呼び寄せる)」
「少尉に、なにか服を貸してあげてくれ…」
警官は頷くと彼女をSWAT隊のバンに案内した。
その途中思い出したように彼女は変装用のカラーコンタクトを外しポケットに入れた。
(61)
ウィーン、アメリカ大使館…。作戦成功でチームは一時解散となり、必要最低限の要員だけを残しオペレーションルームは静寂が支配している。
しきみとナナフシはまだ席に座ったままだ…。
「ミスター・サイトウ…少しでいいから今の内に寝ておいた方が良くてよ…これから長丁場になるワ」
しきみは英語で彼の『芸名』を口にして優しく言った。
「わかった…そうする…」
彼は素直に従って立ち上がる。ここ24時間ろくに眠っていなかった。
「何かあったら…直ぐ起こしてくれ…」
そう言って部屋を出た。
奥のコマンダーズ・ルームから微かにアンダーソンの声が漏れていた。
何やら電話の相手に喚いているらしい。
しきみは少しその様子を気にしながら、早くも『あざみ救出作戦』に関し、自分なりにいろいろと思索を巡らしていた。
(62)
成田空港の第一ターミナル南ウィング。
ボーディングまでの時間、ハヤトは何もすることがなくまだ誰も居ない待合ブースのTVの正面に陣取ってNHKを見ていた。料理番組で口やかましいおばさんが何やら料理を作っている。すると(ポーン、ポーン)っというチャイム音に続いて画面上部にテロップが流れた。
『プラハ誘拐事件。人質のパルティメニスタン大統領令嬢エドナさんを無事保護。犯人グループは1名を除き全員射殺』
と繰り返し2回流れた。
「や、やった〜〜〜〜」
思わず立ちあがって叫ぶ。
ハヤトは安堵した。
愛するひまわりは無事なのだ…、だが待てよ…。
あざみはどうなったんだろう?一緒に助け出されたんだろうか?…。
2分後に料理番組が打ち切られ、報道センターのアナウンサーが映る画面に切り替わった。
(63)
ひまわりはSWATのバンの中で警官の用意してくれた黒のジャンパースーツに着替えた。
『マイアミバイス』で主人公が愛用してたのと同じアッパーバレル式のホルスターを下げると、同じく貸してくれた拳銃を手に取った。
あざみの愛用しているものと同じSIGのP220だった…。
暫く銃を眺めながらあざみの顔を思い浮かべ、物思いに耽りかけるが(はっ)っとして我に返り、マガジンと装弾を確認するとハンマーを軽くコックさせてセーフティを掛ける。
ひまわりは目線を遠くに見つめながら、ホルスターに銃を収め、しっかりとホックを掛けた。
感傷に浸るにはまだ早い。今はするべき事をするだけだ…。
以前の涙もろい彼女はすっかり影を潜めていた。
ひまわりは改めて決意を決めるとマガジン4本を手にしてバンを降りた。
ちょうどそこに『科学分析チーム』が到着してきた。
ひまわりは許可を取り、立ち合せて貰うことにした。
東の空が微かに白んでいた。もう直ぐ夜が明ける…。
(64)
成田国際空港。プレミアム/ビジネスクラスの搭乗が終わり、ハヤトはソファーを立つと改札ゲートに向かった。可愛らしい顔の係員がハヤトのチケットをレジストレーションマシンに潜らせて座席番号の入った半券を返してくれる。
搭乗口で中年のキャビンアテンダントがその紙片を見て
綺麗な日本語で(こちらです)と笑顔で通路を教えてくれた。
いそいそと中に急ぐと、ハヤトは身体が固まった…。
(んな、まさかぁ〜)ハヤトは笑いながらそんなことがあるわけがないと否定する。
だが、どうしてもそれが『確実にそうではない』ことを確かめずにはいられずに、次々と押し寄せる後続の客達に詫びを入れながら、ビジネスクラスのデッキに戻る。
やはり、勘は正しかった。
「つ、つきよ姫ぇぇ〜〜〜〜〜〜ぇっ????」
いつもとは違う服装でいたからすぐに気がつかなかったが、何といっても味噌汁の香りがハヤトにそれを気付かせたのだ…。
「 公 衆 の 面 前 で … 」
「 大 き な 声 を 上 げ る で な い … 」
そう呟くと、CAから持ってこさせたお湯の入った紙コップに茶色い粉末を入れて割りばしでかき混ぜる。
「な、なんでお前がぁ、ここにいんだよ…?」
つきよ姫は頭に黒のバンダナを巻き、巧みに耳の形を隠している。スタートレックのMrスポックが映画でそんな風にしていたのを思い出した…。
一緒に温泉に浸かったときのバスタオル姿を除けば、大仰な着物姿以外の彼女を見るのは初めてだった。
薄紫のタンクトップに白のジャケットを羽織り、黒いスウェードのミニスカートから伸びた綺麗な生脚の先にシルバーのミュールをひっかけていた。
「 一 度 、 ビ ジ ネ ス ク ラ ス の 機 内 食 を … 」
「 食 し て み た い と 思 っ て い た の で な … 」
そう言って味噌汁を啜るのだった…。
それを聞くとバカらしくなってハヤトは自分の席に引き返した。
「 ん 〜 た ま に は イ ン ス タ ン ト も 良 い … 」
そのやり取りを反対側のビジネスクラスのシートで新聞を広げながら窺っている男がいた。
他でもない武智吾郎である。
(65)
あざみは目隠しをされたまま車から降ろされると、またしてもどこかの地下室に連れ込まれた。
トレーラーにはおおよそ30分ほど揺られていたろうか?それから別のクルマに乗り換え、さらに同じくらい走った。
だが正確な時間と車のスピードが分らなかったために全く居場所の手掛かりになる情報が揃わなかった。
目隠しをされたまま、あざみは両手両足を縛られ、壁に「大の字」に貼り付けにされた。
何も見えないため不安感が募る。
やがて男達は立ち去ると鉄の扉が閉まるような音が聞こえた。続いて、明らかに施錠していると思しき音がすると、それを最後に静寂が訪れた。
(アタシ、どうなっちゃうんだろ…?)
そう思うと、あざみは正直に『恐怖感』を受け入れた…。
着ている服には、もう脱出用のツールは何も残っていなかった…。
物凄く水が飲みたい…。
(66)
手掛かりを求め、科学分析チームのメンバーが注意深く現場を探っている。
ひまわり達が監禁されていた廃屋にも同じ対応がなされている筈だった。
だが、ひまわりには『あざみが最後に居た』この場所が最優先だった。
なぜならあざみの事だ、絶対に何かの痕跡を残しておいてくれていることは間違いないからだった。
ひまわりはあの製薬会社の『空母』に侵入したときのことを思い出した…。あざみが先行して侵入し、彼女がリセットしたドアの暗号ナンバーを言い当てたのは他ならぬ自分だった。あのとき以来、彼女とは何でも以心伝心だった。
「ライト少尉!」
ひまわりを呼ぶ声の方に足早で向かう。
「これを…」
係官が指差す地面には、恐らくパンプスの先でなぞって書いたのだろう、『->』と矢印がハッキリ書かれていた。
その示す先に下水道につながっているマンホールの蓋が見えた…。
現場捜索開始から4時間…。やっと『目的のモノ』を発見した。
ひまわりはしゃがみ込んで暫く矢印を見つめていたが、係官に撮影を願うと立ちあがり、ポケットから情報部員だけが持ち歩くことが可能なノキア製高性能携帯電話を取り出した。
(67-1)
『ピリピリピリ〜〜〜〜』っという耳障りな音でしきみは眼を覚ました。
(いっけない…)つい眠ってしまっていた…。
時計の針はウィーン標準時で05:21を示していた。
ちなみにオーストリアとチェコに時差はない。
携帯の受話ボタンを押すと聞き覚えのある声が流れてきた。
『しきみさん!ひまわりです!』
「(しょうがないわねぇ〜とばかりに)this is Mitsui speaking…」と応じた。
ひまわりは(ああ、しまった〜)とばかりに『英語モード』に切り替えた。
『現場で手掛かりを発見しました…あざ…いえ、ウィンタース少尉が現場にサインを残してくれて、連中は恐らく下水道を使って脱出したと考えられます…』
「ちょっと待って」
しきみは色めき立って、モニターにプラハ再開発区の地図を表示させ、さらにそこからマンホールをルックアップするように操作をする。
「今確認したわ…半径6キロ以内に…ざっとみて300個はある…」
ひまわりが続ける。
『今、アメリカの衛星はここをモニターできるんですよね?だったらウィンタース少尉が消えた時刻、ここら一体の画像をかき集めれば、マンホールの位置に近い場所に停車してる車両や家屋の存在が軒並み洗い出せませんか?』
それを聞いてしきみは一気に眼が覚めた。
車両どころか上手くすれば連中の姿が映ってる映像だって見つかるかも知れなかった…。
「言いたいことは解かったわ!(流石よひまわり…)」
『よろしくお願いします…』
ひまわりはそういうと電話を切った。