ゼルダの伝説でエロパロ 【3】

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1 ◆JmQ19ALdig
このスレはゼルダの伝説について語ったり、SSを書き込むスレです。マターリして下さい。
荒らしはスルーでお願いします。

<前スレ>
ゼルダの伝説でエロパロ 【2】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1147879180/
2 ◆JmQ19ALdig :2007/01/27(土) 14:34:35 ID:7J3jYnHY
うかつにも容量オーバーに気づいていなかった。
まことに申し訳ありません。
ということで次スレ立てました。

どうしよう。最初から投下し直した方がいいですかね?
3名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 15:35:09 ID:g+Vi+bOU
続きwktk
4名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 15:43:01 ID:+pUX+/cR
は、早く続きを投下してくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
5 ◆JmQ19ALdig :2007/01/27(土) 16:54:58 ID:7J3jYnHY
では続きから投下します。
61-9 Malon II (11/12) ◆JmQ19ALdig :2007/01/27(土) 16:56:03 ID:7J3jYnHY
 リンクは動けなかった。言葉を発することもできなかった。
 近づいてくる、マロンの顔。
 キス?
 いいのか?
 もっといいこと? 何だそれは?
 股間を襲う、あの感覚。いけない感覚。でもそれは、ゾーラの里ではいけなくはない常識であって……
 マロンの顔がさらに近寄る。いつの間にか、ぼくはマロンと手を重ねていて……
 年下のマロン。明るいマロン。話していると気が休まるマロン。いまは逆にぼくをどきどき
させているマロン。
 目を閉じたマロンの顔が見える。近づく。近づく。ぼくはそのままマロンの肩に手をやって……
 あれは? あれは何だ?
 何かを感じる。マロンじゃない。その後ろから近づいてくる何か。
 おかしい。でもただおかしいじゃなくて……この感じは……
 危険!

 リンクはマロンを横に突き飛ばした。小さく悲鳴をあげるマロン。
「なにするのよ!」
 しかしそっちには目もくれず、リンクは暗闇を凝視する。
 来る……来る……
 来た!
 それを目に捕らえるよりも早く、リンクは居合いよろしく剣を抜き放ち、
「たぁッ!!」
 正面から斬りつけた。
 手応えがあった。
 同時に耳を襲う、醜いしわがれた叫び声。地面に何かが落ちる音。
 リンクはそれを見た。両断された死体。全身が真っ黒な、巨大な鳥。
「グエーだわ」
 異常を察して近寄ってきたマロンが、その鳥を見、緊張した声で言った。
「牧場にはめったに来ないのに……それにこんな大きなの、見たことない……」
 やはり……とリンクは思う。ここでも異変は起こりつつある。その異変をとどめる使命が、
ぼくにはある。なのにぼくは……こんな所で……
『どうか……お願いします』
 頭を垂れるゼルダの姿。ぼくはそんなゼルダに何と言ったか。
『ありがとう……』
 かすれた声。目にあふれる涙。ゼルダ……ぼくは……ぼくは……
 のんびりしている暇はない!
 リンクは傍らのマロンに向かい、決然と言った。
「ごめん、マロン、ぼくはもう行くよ」
71-9 Malon II (12/12) ◆JmQ19ALdig :2007/01/27(土) 16:57:20 ID:7J3jYnHY
 突き飛ばされた時には、何が起こったのかわからなかった。でもその直後……
 怖いほど真剣な、あの表情。一瞬で剣を抜き、グエーを斬って捨てた、あの躍動。
 突然のグエーの出現に驚きながらも、マロンの目には、いまのリンクの勇姿がしっかりと
焼きついていた。
 リンクが……こんなに……かっこよかったなんて……そんなリンクが……
『あたしを助けてくれた』
 マロンは酔った。何も言えず、ただリンクの顔を見つめているばかりだった。
 でも、リンクはいま何て? もう行く? どうして?
「詳しいことは言えないけれど……ぼくには使命があって……」
 使命? 何のこと?
「この世界には、いま、悪いことが起こり始めていて……」
 悪いこと? あたしにはわからない。でも……リンクの、変わらないこの真剣な顔……
「ぼくはそれを防がないと……だからいますぐにでもぼくは……」
 引き締まった口元……すべてを見とおすような力強い眼差し……
「行かなきゃならないんだ。さよなら、マロン」
 訴えかける力に押され、マロンは機械的に頷いた。最後の言葉の意味が理解できていなかった。
 リンクが駆け去ってゆく。
 マロンは、はっと自分を取り戻した。
 リンクは行ってしまう。何か、何か言わないと。このままリンクと別れるなんて。
「リンク!」
 思わず呼びかける。リンクが立ち止まる。ふり返る。
 何と言おう。何と言おう。
「また来てくれる?」
 短い間をおいて、軽く手を上げるリンク。その顔には……ああ、そこには……
 リンクが背を向ける。走り出す。遠ざかる足音。闇に溶けてゆく後ろ姿。そして……あとに残る静寂。
『行っちゃった……』
 マロンは、ぺたんと草の上に腰を落とした。
 何てこと。昼間、再会した時には、リンクに口を切らせるだけの余裕があったのに。いまは
自分の方から「また来てくれる?」だなんて……
 マロンは首を振る。
 どっちが言ったって、いいじゃないの。大事なのはそんなことじゃなくて……
 別れ際の、リンクのあの表情。
 暗くてよく見えなかったけど……あれは……リンクは……笑ってたよね。それはきっと……
「うん」っていう意味よね。
 そうに違いない。マロンは自分に言い聞かせる。
 いつ会えるだろう。
 あそこの奥が、じゅん、とする。遮られた企みへの渇望が、再びマロンの身体を支配し始める。
 今度リンクと会った時には……
 手が伸びる。下着をくぐって。濡れそぼつその場所に。まだ叢の気配もないその場所に。
 ……リンク……リンク……
 降るような星の光を浴びながら、マロンは快楽に没頭していった。
 ひとりきりの行為。いつもの行為。
 しかしそれは不思議に、いままでになく身体が震え心が震える、この上ない喜悦と満足の時間だった。


To be continued.
8 ◆JmQ19ALdig :2007/01/27(土) 16:59:12 ID:7J3jYnHY
スレ移行の不手際を改めてお詫びします。

さらに絶妙な所で切ったあげく、いつものごとく寸止めですみません。
事を遮る状況の案も出尽くした感あり。前置きの長さもアレですが
先に投下した大人マロンの設定につなげる必要上なので、どうかお許しを。
次はルトが登場します。
9名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 18:24:58 ID:+pUX+/cR
>>8
イインダヨーGJダヨー
10名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 20:42:21 ID:g+Vi+bOU
>>8
GGGGGGGJ!
11名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 00:35:31 ID:jimhEm9u
>>8
ぐっじょぶ!寸止め大いに結構!
でも、立てたフラグは七年後に必ず回収して頂きますよ?
12名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 01:52:28 ID:7e457JEW
携帯だとやはりつらいことを実感するぜぇ…

まあそれは置いといてGOOD JOB!!
13名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 12:39:24 ID:u1zkGMlX
>>8
GJ!!

それから一応保管庫
http://red.ribbon.to/~eroparo/
ゲームの部屋その15になります
つっても大分前から保管されてないけどな
14名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 13:42:43 ID:J0ktWrCI
元々15だった気がしたけど気のせいか
15名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 03:07:08 ID:2LOGZApX
毎回寸止めだなおい
いつになったら本番になるんだ?
16名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 13:21:45 ID:4Ytaat80
本番はもうやっちゃったからかなり後だな
17名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 18:05:10 ID:jSfPk1Vy
ルト様は、ルト様は引く位の妖絶さでお願いします。
もう辛抱溜まりません。
18名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 23:16:23 ID:Sr15Z5N7
>>13
前スレの分、そのまま落ちてしまうのは勿体ないな…
投下して下さった方々の了承が得られれば保管依頼しようと思うんだが
19名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 09:12:33 ID:MAd8Kchg
>>18GOGO!!
20名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 09:15:38 ID:OcMsMMev
前スレ>>650>>661>>697の続き投下します。
リンク×ミドナ(大)、EDまでのネタバレ注意。のっけからエロシーンでスマン。


どちらからともなく目を閉じ、唇を重ね合う。
ただそれだけの行為が、ひどく切なく、そして心地よかった。
「んっ…」
唇を離し、瞳を開いたすぐ傍にあるのは、照れたような笑みを浮かべるお互いの顔。
「何か…照れくさいな」
「…さっきはそっちからしてきたのに?」
「ウルサイ」
軽口を叩きあいながらも、どこか緊張感が漂う空気。
僅かに黙り込むだけで、一気に鼓動が加速していくのが判る。
それは、未知の世界へ踏み込む事への不安? 恐怖? …いや、勿論それだけでは無い。
先に動き出したのはリンクだった。
ミドナの肩に手を回し、深く口付ける。―――ここまでは、先ほどと同じ行動だ。
だが、今度はそのまま己の舌で強引にミドナの唇を抉じ開け、そのまま口内に侵入する。
「ん…んんっ!?」
突然の事に驚いたミドナが身を引こうとするが、肩に回された手がそれを許そうとはしない。
鋭い犬歯や付け根に舌を這わせ、やがて、ひときわ柔らかい部分―――彼女の舌を捕まえた。
「―――んううっ!」
唇を塞がれたまま、ミドナが声にならない悲鳴を上げた。
そのまま動きが止まった事を良いことに、リンクは己の舌を絡ませ、その弾力を思うままに蹂躙する。
己の体温よりも低く、しっとりした不思議な感触に、脳髄に鈍い痺れが走る。
「………ふぅ」
「………ぁ」
重ねた唇を離すと、唾液の残滓がつう、と銀の糸を引いた。
「……何だよオマエ、ひょっとして結構慣れてるのか?」
ほんのり潤んだ瞳に微妙な嫉妬心を乗せ、不満げにリンクを睨む。
コイツが誰かを抱いている姿なんて、想像したくないが……やっぱり幼馴染か?
が、当の本人は困ったように肩を竦め
「そんなわけないだろ……まあ、酒場に出入りしてた時、いろんな話は聞かされたけど」
そういえば、共に旅をしていた時も、情報収集の為城下町の酒場に足繁く通っていたのを思い出す。
酔ったオヤジに絡まれ、強引に猥談に縺れ込まれる彼があっさりと連想され、ぷっと吹き出した。
笑うなよ、と拗ねたように口を尖らせる子供じみた仕草に、やっとミドナは普段の余裕を取り戻す。
「じゃあ何だ。…オマエ、まだ童貞なのか?」
ごく至近距離で、意地の悪い笑みを浮かべて青い瞳を覗き込む。
「………悪かったな」
さすがにバツが悪そうに視線を逸らし、頬を赤く染めて俯くリンク。
「そっか。なら……」
心を決めるように瞳を閉じ、ゆっくりと開いた。
そこに浮かべた笑みは、先ほどとはまるで違う、聖女の様に穏やかな微笑み。
「―――ワタシの初めてはオマエにくれてやる。だから、オマエの初めてを、ワタシによこせ」
2120:2007/01/30(火) 09:22:10 ID:+bH4OPuJ
携帯から失礼。
何か急に書き込めなくなったので、続きはまた後ほど。
22名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 10:54:59 ID:av4McUQ1
こ、こんないいとこで寸止めとは殺生な…
取りあえずGJ
23名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 12:31:53 ID:Fiez460y
小出ししすぎ
もうちょっとまとめて投下してくれ
24名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 13:23:20 ID:mwxz+vji
今回はしょうがないだろ
2520:2007/01/30(火) 16:34:39 ID:+bH4OPuJ
>>23
スマン。
このまま自宅から投下できんかったら漫喫あたりで投下するんで
もーちょっと待ってくれ。
26名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 17:38:17 ID:2sLcXEJs
wktk
27名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 20:34:50 ID:UWnV3FKg
もーちょっとて何時間ー?
28名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 22:37:23 ID:8O/f3+ni
わからんでもない
マン喫やネカフェは店ごと投稿規制対象だったりするし
けどやっぱ辛抱たまらん
頼む、頼むからぁぁぁ
29名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 09:09:17 ID:PRbwjh4B
前スレ>>650>>661>>697、今スレ>>20の続き投下します。
リンク×ミドナ(大)、EDまでのネタバレ注意。
……これで投下できなかったら、もう職場の上司のパソコンを使うしかない。



「……脱がすよ?」
その問いに、僅かに躊躇うが…小さく首を縦に振り、了承の意を見せる。
丁寧にローブとマントを外す手が素肌に直に触れるたび、その温かさに心が跳ね上がる。
瞳を閉じ、その行為に身を委ね―――
「……なあミドナ。これって、どうやって脱がせるんだ?」
―――委ねようとしたところで、そんなすっとぼけた事を言われた。

「いいか、絶っっっ対、こっち見るなよ!」
ぴしゃりと強い口調で言われ、仕方なくミドナに背を向け、ベットの縁に腰掛ける。
後ろから「まったく、もう少しムードというやつを…」と不機嫌そうにブツブツ呟く声が聞こえるが、その
原因が自分であることが明確な以上、反論は許されていない。
―――いや、だって、あんなにぴったりくっ付いた服、下手に脱がすと破けそうだし。
その思いは言葉に乗せず、ただ、黙って後ろから聞こえる衣擦れの音を聞いている。
装飾具を外しているらしい金属音が聞こえ、そして
「………もう、いいぞ」
ミドナの声に振り向き、そして―――息を呑んだ。
すべての衣類と装飾具を外し、一糸纏わぬ姿となった彼女が、ベッドの上でぺたりと座り込んでいる。
止め具を取られ、解かれた夕日色の髪に覆われながら、それでも隠しきれない豊かな乳房。
ほっそりとした印象なのに、出るべき場所はきっちり出た、見事なまでのプロポーション。
自分とは違う青白い肌は、むしろ次元の違う神々しさすら感じさせる。
女神、と喩えてもきっと過言では無い―――それほどに、圧倒された。
「…おい。なんで黙り込むんだよ」
さすがの彼女も、今ばかりは『綺麗すぎて言葉がでないか?』なんて茶化す余裕は無かった。
向けられた視線に居心地の悪さを感じ、己の両腕で抱きしめるように胸元を隠す。
……それによって谷間がより強調される形となるが、当の本人は気づいていない。
両腕に圧迫されたその柔らかそうな膨らみに、ゴクリと生唾を飲む。
「リンク…?」
座り込んだ体勢で、不安げに名前を呼ばれ、そこでやっとリンクは我に返った。
「あ、ご、ゴメン。 ………じゃあ、触るよ…?」
「………好きにしろ」
気恥ずかしげにそっぽを向きながら、そろそろと組んだ腕を下ろす。
剥き出しになった乳房を、震える手で、そっと触れてみる。
口内と同じように、己の手よりひんやりしているが、決して冷たい訳ではない。
その柔らかさを確かめるように、ほんの少しだけ手に力を加えた。
「うぁ……」
両手でも持て余すボリュームを、下から掬い上げるように、ゆっくりと揉みしだく。
「ふ…ぁ、あぁ……」
ミドナの口から、今まで聞いた事も無いような、頼りなさげな声が漏れる。
与えられるゆるやかな快楽に、どうしていいのか判らず、戸惑っているようだった。
自身では持ち得ない柔らかさと弾力に酔いしれている内、ふと、己の手のひらの中で小さな突起が
少しずつ硬くなっていく様子に気が付いた。
右手を離し、青白い乳房の中央にある、桜色の乳首を親指と人差し指で軽く摘まんでみる。
「ひあぁっ!?」
そのまま、指の腹でふにふにと弄ぶ。
「ば、バカ、やめっ…あぅぅ……!」
なまじ今までが緩やかだった分、一転変わってダイレクトに伝わる刺激に身悶える。
胸の奥が熱い。キスしていた時の満たされた熱さではなく、もっと―――

……もっと先を、求めているというのか。このワタシは。ワタシの、身体は……
30名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 09:10:16 ID:PRbwjh4B
呆けた頭が一瞬我に返り、ミドナは己の感情に愕然とした。
浮かんだ淫らな考えを、必死で否定するように、ぎゅっと目を瞑り頭を振る。
「あ…ゴメン、痛かった?」
その仕草を拒否の態度と受け取ったのか、ふと指の動きを止め、今度は宥めるように
そっと撫でるものへと変える。
どこまでも優しい感触は―――むしろ、今の彼女を焦らしているも同然だった。
物足りないような、むずむずとした感覚。もっと強く、はっきり触れていて欲しい―――
「………変な気を使うな。オマエの好きにしていいって言ったろ」
さすがに本音は言えず、遠まわしなねだり方をしてみる。
「でも……」
「ワタシが痛かったら痛いって言う奴だって事ぐらい、オマエは知ってるだろう?」
その言葉に納得したのか、もしくは反論を許さない何かを感じ取ったのか。
リンクは「じゃあ…」と頷くと、先ほどよりも力を込め、胸への愛撫を再開した。
「んんぅ……うぁ…あ、あぁ…」
焦らされて高められた感度が、その刺激をより強く感じさせる。
温かい手で、じわじわと触れられた部分が融けていくような錯覚を覚えた。
瞳を潤ませ、荒い吐息を溢す。
「ミドナ…すごい、可愛い…」
目の前の官能的な光景と、手の中の吸い付くような柔らかな感触に沸騰しそうな程に
熱くなった頭の中で、ただ、思ったことをそのまま口にする。
「んぁっ、ば、バカ…と、年上に、言う、セリフじゃ…ひぁんっ!」
髪の一房を甘噛みされ、ビクリと身体を震わせた。
それを口に含んだまま、チロチロと舌先で一本ずつ刺激してみる。
「や、やめ……ん、うぁっ…ふぁぁっ……!」
わずかな制止は、すぐに甘い響きへと変わる。
「…なあ、これって、ひょっとして結構敏感なものなの?」
「し、知るかぁ…っ!」
リンクからすれば、それはただの好奇心からの質問だった。
それは彼女も判る。だが…
―――まさかコイツ、ワタシを困らせて楽しんでんじゃないだろうな…
以前の自分は棚に上げ、妙に恨みがましい思いを込めて睨みつける。
「……もうそろそろ、いいかな」
ふと呟くような、声。
え? とミドナが尋ねる間も無く。
いつの間にか胸元を離れていたリンクの手が、彼女の肩を掴み、そのままベッドへと押し倒した。
ぼすん、と身体を受け止める柔らかい音。解いた夕日色の髪が、シーツの上に散らばる。
「…じゃあ、今度はこっち、触るよ」
言うなり、両の太腿に手を当て、閉じていた足を少し強引に開く。
「ち、ちょっと待っ……!」
やっと意図を掴んだミドナがその行動を止めるよりも早く。
腿の付け根に顔を寄せ、すでに綻び始めた紅い蕾をぺろりと舐め上げた。
「ひっ、ひゃああああぁぁぁっ!!?」
驚きとも嬌声とも取れる悲鳴を上げ、
「な、ななな、何やったんだオマエ今っ!!?」
顔を真っ赤にした、半泣きの目で怒鳴られる。
「何って…始めは指で触れるより、こっちの方が良いって聞いたから」
誰に聞いたのか今更聞くまでもない。ミドナは怒りと呆れ、羞恥でぐらりと眩暈を覚えた。
が、何とかそれを踏みとどめる。
「聞いたからってあっさりやるな! 汚いだろうがこんな―――」
「―――汚くなんて、ない」
不意を付くように、急に真面目な声になるリンク。
「ミドナの身体に、汚いトコなんか無い。……全部、ぜんぶ綺麗だ」
嘘も偽りも感じさせない、はっきりとした口調。
愛する人にそこまで言われ、ミドナは感動で胸の奥がジンと熱くなるのを感じた。

だから―――つい、目の前の脅威に対する警戒を解いてしまったのも無理は無いだろう。
31名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 09:11:04 ID:PRbwjh4B
動きが止まった隙を付き、濃桃色に色づいた裂け目にそっと舌を這わせる。
「うあぁぁぁっ!!」
完全に無防備となっていた所への刺激に、全身がビクリと引き攣った。
「ひ、卑怯、だろう、が……」
「……え、何で?」
怒りを込めて睨みつけるものの、その張本人は自覚がなく、不思議そうに首を傾げるだけ。
………まあ、あんな嘘をつく奴で無い事は解っていたが。
何となくしてやられた感を残していたが、その思考は、与えられる快楽であっさり塗りつぶされた。
リンクの舌が、彼女の陰核を丹念になぞっていく。
「はぅ、んうぅ…っ、うぅっ……ふぁぁぁっ!」
ぴちゃぴちゃと断続する水音と、甘く甲高い、今にも泣きそうなミドナの嬌声。
……それだけで、どうにかしてしまいそうだ。すでに自分の物は、痛いほどにズボンを張り詰めている。
だが、まだ早い。彼女が自身を受け入れるには、まだ、ここは狭すぎる。
唾液と愛液ですっかり濡れそぼった紅い割れ目に、人差し指を第一間接まで埋没させる。
「んくぅ…っ!」
突然自分の中に進入した異物に、僅かに顔を歪ませる。
「…痛い?」
「い、いや、変な感じはするけど……別に、さほど痛くはない…」
その答えに安堵し、指をゆっくりと奥まで差込み、周囲を少しずつ揉み解していく。
ぬるぬるとした内側の襞が、圧迫するように指に絡みつく。
「ひぅっ……な、何か、キモチワルイ・・・」
あんまりにも率直な感想に、さすがに申し訳なくなるが、
「……ごめん。でも、もう少し我慢して」
指を上下に動かし抵抗感が無くなってきたのを確認し、今度は中指も同時に入れる。
「痛…ぃ……っ!」
初めてミドナの口から、明確な苦痛が漏れた。
その声に、慌てて指を引き抜こうとするが―――
「…やめろ。この程度で痛がっていたら、到底オマエなんか受け入れられないだろう?
出来るだけ我慢するから……だから、そのまま、続けてくれ」
普段の彼女からは考えられない―――なんて言ったら怒られそうだが―――優しげな口調で、
ミドナは彼に行動を促す。
そんな健気なことを言われて、引き下がれる訳もない。抜きかけた指を、もう一度膣内へ挿入する。
「く、うっ……!」
ふたつの指が入った膣には、わずかな隙間すら存在しない。
形の良い唇からこぼれた苦痛に罪悪感を覚えながら、それでも指を動かし、膣内をほぐす。
今だ乾かぬ愛液に助けられながら、少しずつ、指の動きがスムーズになっていく。
「ど、どう……? 痛くない?」
両指が抵抗無く出し入れできるようになってから、遠慮がちにミドナに問う。
「あ…ああ、もう平気だ。 だから、その…」
わずかに言葉を切る。一瞬の躊躇。……だが、今更止まる気はない。
「……そろそろ、しよう」
「………大丈夫なのか?」
言葉とはうらはらに不安げな表情のミドナを、気遣うように問う。
その優しさが嬉しくて、
「そ、その…『好きにしろ』とは言ったが……出来れば、優しくして、ほしい」
つい、自分らしくもない事を口走り、言った直後に後悔して赤面する。
「……ああ。勿論」
そんな彼女が可愛くて、もう一度、ぎゅっと抱きしめて口付けた。
32名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 09:12:49 ID:PRbwjh4B
「じゃあ……行くよ」
「………ああ」
頷いたのを確認してから、彼女の処女孔に、そっと自身をあてがう。
瞬間、ビクリとミドナの身体が震えた。
「あ…す、スマン」
申し訳なさそうなミドナに、微笑みだけを返す。―――たぶん、今は余計な言葉はいらない。
意識を戻し、そのまま、濡れた入り口に先端を埋めていく。
「んんぅ…っ、くぅ……!」
苦しげな声。普段の強気さを知っている分、その声はひどく罪悪感を覚える。
ゆっくり入れていくべきか。それとも、一気に貫くか。
動きを止めて悩むリンクに不安になったのか、ミドナが弱々しく尋ねてくる。
「な、なあ……今、どのくらい進んだんだ…?」
「…ゴメン。まだ、先っぽだけ」
「………」
はっきりと顔をしかめた。あれだけ痛かったというのに、まだそれだけというのか。
「………いい。一気に入れてくれ」
ほんの僅かな逡巡の後、あっさりと思い切ったことを言う。
「いいのか? ……絶対、痛いぞ」
「ゆっくりだって痛いんだよ。…だったら、早く済んだ方がマシだ」
まっすぐ見つめ合う目と目。彼女の決意の固さを理解し、「わかった」と小さく頷く。
「…躊躇ったりするなよな。出来れば、一瞬で終わらせろ」
「……努力するよ」
ミドナの腰を掴む手に力を込める。それに気づき、彼女もギュッとシーツを握り締める。
「…行くぞ」
言って―――全力で、己を強引に捻り込んだ。
「あああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」
耳を劈くような絶叫。それを聞きながら、進行を拒むように締め付ける肉壁を引き剥がす
ように突き抜ける。
指の挿入と似た、だがあまりにも格の違いすぎる痛みに、ミドナは全力で後悔していた。
身体を真っ二つに裂くような痛み―――いや、実際裂いているのだが―――に、意識は
すべて埋没し、他のことを考える余裕は一切ない。
己の顔が涙でぐしゃぐしゃになっている事にも気づかず、喉の奥から溢れる悲鳴を叫び続
け―――
「……入った」
―――その言葉に、やっと我に返った。
激しい痛みに耐えながら、自分の下腹部を覗き込む。
「っ……、よ…よく、入った、な…」
己の女性器がぎっちりとペニスをくわえ込んでいる様子を、にわかには信じられない思いで
見下ろした。
だが、確かに自分の中に、痛みと共に別の脈を打つ何かを感じる。
信じられないほどの熱をもったそれが、自分と同じ様に激しく脈動している。
猛烈な痛みの中、それでも、その事実が酷く嬉しかった。
33名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 09:13:30 ID:PRbwjh4B
柔らかい襞のひとつひとつが、己に絡みついてくる。
指ひとつの余裕すらない強引に抉じ開けた膣内が、異物を拒むようにぎゅうっ、と締め付ける。
初めて味わう女性の体内。そのあまりの気持ち良さに、今にも理性を放り出して激しく突き動かしたい
衝動に駆られた。
だが、『優しくしてほしい』というミドナの言葉を思い出し、なんとか衝動を押さえ込む。
彼女は今、ボロボロと泣きながら、必死で痛みを堪えているのだ。
……そんな事をしたら、きっと、彼女は壊れてしまう。
体外に溢れた愛液はすでに乾いてしまっている。リンクは己の指に唾液を絡ませ、剥き出しとなった
彼女のクリトリスを軽く擦ってみた。
「ひゃあぁぁっ!?」
過敏なままになっていたそこは、赤く充血し、わずかな刺激にひくりと蠢く。
「り、リンク、何を……!」
「…ミドナ、もう少し、力を抜ける?」
我ながら無茶な要求に、それでも彼女は黙って頷き、シーツを握り締める手を離した。
挿入したままの自身を動かさないように、そのまま、唾液を含ませた指を小刻みに動かす。
「…んぅっ、ふぁ、ひゃぅん……」
躊躇いがちに漏れる吐息に、少しずつ、甘いものが混じっていく。
「はふぅ…ん…ぅあ、あっ…!」
トーンが上がるにつれ、少しずつ、指に加える力を増していく。
「……あれ?」
ふと、指に唾液よりも粘度の高い感触を覚えた。
…それは、彼女の愛液。乾き始めた蜜壷が、リンクの指に反応して、再び潤い出したのだ。
くちゅ…ちゅ……
指に愛液を馴染ませ、淫猥な音を立てながら、敏感な一点に刺激を与え続ける。
「はぁ…っ、ふぁっ、ああ―――!」
今まで以上に跳ね上がった声。
それを合図に、擦っていた指できゅっと陰核をつねった。
「ぁあああああっ――――……!!」
甲高い、動物の鳴き声のような悲鳴。
ビクリと大きく身を震わせ、そのままくたり、と力が抜ける。
「はぁっ、はぁっ、はぁ………」
絶頂の余韻を残しながら、肩で荒い呼吸をする。
「……ってか、何やってんだよ、オマエ…」
ふと我に返ってみると、奥深くまで挿入しながら、この男は、まだ一度も動いていない。
何のつもりだと言いたげに、半眼になってリンクを睨みつけた。
「いや、だって痛そうだったし…優しくするって約束しただろ」
「…だから、いらん気を使うなって言っただろうが……」
はあ、と深い溜息をつく。
…言うだけ無駄だという事はわかっていた。どこまでもお人よしなのだ。この馬鹿は。
それに、コイツは別に興奮してない訳では無い。…それを、彼女は知っている。
にまり、と彼女らしいからかうような笑みを浮かべ、
「………でも…オマエのそこは、もう限界なんじゃないのか?」
ミドナは気づいていた。己の中で激しく脈打つ存在が、さらに強度を増していく様子に。
「ワタシはもう大丈夫だ。……だから、オマエに合わせてやるよ」
今だ強く残る痛みを自覚しながら―――それでも、彼女らしい言葉で、行為の続きを促した。
34名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 09:17:22 ID:PRbwjh4B
『大丈夫』という言葉が強がりだということは、すぐに判った。
「う、くぅっ……!」
僅かに動かしただけで、ミドナの表情に苦悶が走る。
眉根を寄せてぎゅっと目を瞑り、歯を食いしばる様子は、一見するだけで痛々しい。
でも―――それでも、決して彼女は「痛い」という言葉を発しようとはしなかった。
それはまるで、聞いた瞬間、躊躇ってしまうだろう自分の感情を見透かされている様で。
「んんっ…くっ…かはぁ……!」
絡みつく肉壁から、ゆっくりと自身を引き抜いていく。
潤った蜜で大分動きやすくなっているものの、それでも、締め付けるキツさはあまり変わらない。
快楽に身を任せ、思い切り突き上げたくなるのを堪えながら、抜いた時と同じペースで挿入する。
「…っ、何…遠慮なんかしてんだよ」
苦しげながらも、不満を露にした声をだす。
「べ…別に、遠慮なんてしてないって」
「………」
黙って睨みつけること数秒。
今まで仰向けに寝そべってされるがままだったミドナが、突然リンクの両肩をひっ掴んで身を起こした。
「……えっ?」
驚くリンクを無視し、そのまま座位、と呼ばれる体勢にする。
「お、おい、ミドナ!?」
「ウルサイ…! オマエが動かないんだったら、ワタシがやってやる……!」
言うなり、座り込むように体重をかけ、入りかけだった陰茎を強引に自身に押し込んだ。
「―――――っぅぅぅ!!」
激痛でこみ上げるを悲鳴を、唇を噛んで押し殺す。
食い込んだ犬歯によって、ぽたり、と紅い血が雫となって零れた。
「ば、バカ、やめろっ!」
掴んだままの肩に力を込め、腰を上げようとした彼女を、抱きしめる形で強引に止める。
「……オマエに、馬鹿呼ばわりされる覚えはないっての」
どっちが馬鹿だよこの鈍感、と呟き、己の表情が見えない様にリンクの首筋に額を埋めた。
「ワタシは、オマエに気持ちよくなって欲しいんだよ。……どれだけ自分が痛くても」
経験の無い自分では、痛いことぐらい始めから判っていた。
でも、せめて相手には、…自分がここまで愛した、コイツには―――
「オマエの初めてを貰ったんだ…だから、ちゃんとワタシが、オマエを感じさせたい」
―――初めての女として、満足してもらいたい。
決意を込め、顔を上げた。ルビーの様な瞳が、戸惑う青年の顔を映し出す。
そこにあるのは揺ぎ無い強い思い。、リンクは、ぎゅっと心が締め付けられるのを感じた。
抱きしめたままの手で、そっと、髪を撫でる。
「……ゴメン。次はちゃんと、優しくするから」
「…そうだな。じゃあ次は、ワタシが気絶するまで頑張ってもらうか」
ミドナは冗談めいた口調で、軽く肩を竦めてみせた。
35名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 09:18:35 ID:PRbwjh4B
そのままリンクの肩から手を離し。繋がったまま、もう一度ベッドに横になる。
「……さぁ、来い」
おどけた雰囲気から一転、驚くほど優しげな微笑みと口調。
それに誘われるように無言で頷き、そして、深く結合していた陰茎を直前まで引き抜いた。
「ふぁ、あああぁっっっ!」
「…く……っ!」
ねっとりと食い込む肉襞を、強引に引き剥がす感触。
長らく待ち望んでいた快楽で、脳の一部に擦り切れそうなまでの熱が走った。
苦しげなミドナの声。だが、ここで止めては彼女を侮辱する事になる。
そのままの勢いで、一気に挿入する。
「んぅ…っ、ぅあ、ああっっっ!!」
何度も何度も、繰り返す。
結合部から零れる互いの分泌液の中に、紅いものが混じっているのが見えた。
それでも―――すでに理性は、快楽の前にあっさり沈められていて。
気持ちよさと、自身を受け入れる彼女への愛しさ、それしか頭の中には残ってなかった。

薄れ行く意識のなかで、ぼんやりと、だがとても大切な事を聞いた気がする。
だが、それが何かを聞き返すより早く、頂点に達した欲望が、彼女の膣内で弾け飛んだ。




日付変わってから帰宅し、疲れてそのままぶっ倒れてました。マジスマン。
もう少し見直したいので、エピローグ分は帰ってきてから投下します
あと、ついでにオマケつhttp://0bbs.jp/midona/img74_1
ぶっちゃけこのシーンを書きたいがためにこの話を書いた。今では後悔している。
つか、まさかここまで長くなるとは夢にも思ってなかった。精進しよう色々と・・・・・・
36名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 12:03:33 ID:pWmvyWYp
いやいやGJ!!!
二人とも初々しくって良かった
何やら忙しいのに急かしたようでスマンね
37名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 18:11:13 ID:PN64kMAM
>>35
なんというSS
絵と合わせてGJ過ぎる
この作者は間違いなく神
38名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 18:35:07 ID:+UMYI194
絵は違うと思うぞ
39名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 23:40:47 ID:cIeF8YrA
なぜ髪プレイが無いんだ!
あんなことやこんなこともできるのに!
40名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 03:27:48 ID:qHU/LEKn
>>38
ごめん本人。
>>39
最初はパイズリ髪コキ書いてました。
が、『素人童貞と教えられないおねーさん』というスタンスで書いていた為、その部分が
異様なまでに浮いてしまって、悩んだ末お蔵入り決定。そんなシーンばっかだ…


はい、やりました。やってしまいました。

よりによってリンク脱がすのを全力で忘れてたorz...


SS初心者ってのを差し引いても拭い去れないアホっぷり。
毎度毎度見直してから投下してる意味がねぇ…
>>32あたりですでに脱いでいるものと脳内保管しといて下さい。


気をとりなおして投下します。
41名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 03:45:04 ID:67457Q5N
行為の余韻を残しながら、寄り添ったままぼうっと窓の外の黄昏の空を眺めている。
火照った身体にミドナのひんやりした体温が心地いい。
最初は「暑苦しいから離せ」と愚痴っていた彼女も、今はおとなしくリンクの腕の中にいた。
―――単に諦めただけかもしれないが。
「………なあ、リンク」
「何?」
「そういえばオマエ、どうやってこっちに来たんだ?」
今更ながら、ふと脳裏に浮かんだ疑問をミドナはそのまま口にした。
そもそも、本来それがいちばん大きな問題の筈だ。王族として、その手段は管理する必要がある。
だが、あの時は理性的な考えが出来る余裕が無かったのだ。…理由は割愛するが。
「あー…うん。まあ、色々と。手間取って3年も掛かったけど」
言葉を濁しながら、おかげで伝説の勇者と同い年だよ、と困ったように苦笑するリンク。
だが、一瞬だけ、酷く遠くを眺めるような目をしたことにミドナは気づいた。
……多分、コイツはもう帰る手段は無いのだろう。なんとなくそれを確信する。
だから、あえてそこは触れないことにした。
…そういえば、本当に3年間も旅をしていたのか。しかも
「『大事な相棒』に会うために3年も費やしたのか? …アホだろ、オマエ」
「…ミドナ。ひょっとして、まだ根に持ってる?」
一部やけに力の込められた物言いに、妙なトゲを感じたものの
「…フン、べっつにー」
そう言ってプイとそっぽを向かれた。
―――無論、今更そんなことを気にする彼女ではない。
純粋に、嬉しかったのだ。それだけの年月を、己の為に使ってくれたという事が。
…まあ、出来ればそこにもっと特別な感情を含めてほしかった本音もあるが。

―――いつからだろう。こんなにも、彼を愛しく感じているのは。
だが、きっかけなら解っている。今でも鮮明に思い出せる。
ザントに闇の結晶石を奪われた時、身を挺して自分を庇ってくれた瞬間。
利用していただけの存在だった彼に抱いた、それまでとはまったく別の感情。
何となく身体を眺めるが、その時の傷跡は、時間の流れが消し去ってしまいすでに見えなく
なってしまった。
それに安堵し―――それでも、なぜかちょっぴり悔しくて。
傷があったはずの場所に、そっと唇を寄せ、自分の証をそっと残した。



「………は?」
「何だよ。ボーっとしてないでちゃんと聞けっての」
「いや、聞いてはいたけど…」
翌日の昼下がり―――影の世界に明確な昼夜は存在しないが、時間によるソルの加護の強弱
によって、概念的にそう呼ぶらしい―――の穏やかな時間、ミドナの自室で出されたお茶に口を
つけながら、リンクは驚くべき問題に直面していた。
「『既婚者の夫婦間以外での性交渉、および婚前交渉は禁ずる』…だとさ。
まさかこんな法律があったとはな」
広げていた辞書ほどに分厚い本をバタンと閉じ、ベッドの上にぽいと投げ捨てる。
姫君らしからぬ謹みもへったくれもない行動だが、それが普通なリンクはとくに指摘もしない。
…というか、そんなことを気にしている余裕が無い。
「と言っても、今更だれも気にしてない事だし…せいぜい親告したってブタ箱3日ってトコだろ」
「…そんな適当でいいのか?この世界の法律って」
「まあ、何せここ10年以上、裁判沙汰すらなかったからな」
どうやら、ここの平和ぶりは聞いて想像していたものを軽く超えているらしい。
ザントが例外、と言った彼女の言葉を、ここに来て初めて理解した気がする。
42名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 03:46:15 ID:67457Q5N
「でも……まあ、そのぐらいなら良かったよ」
明らかにほっとした顔になるリンクに、頬をポリポリと掻きながら
「……あー、まあ、ワタシはな」
「…………?」
何故か歯切れの悪いミドナ。
「あのな、ホントにワタシも知らなかったんだ。…ゴメン。許せ」
珍しくしおらしいとも取れる態度に、リンクは猛烈に嫌な予感がした。
そしてその予感は現実となる。
「…『王室侮辱罪』ってのがあるんだとさ」
言いながら、先ほどとは別の本を掴んでぱらぱらと捲りだす。
「王族相手に犯罪を行ったヤツに適用される法なんだが…
これが意外と重くてな。いちばん軽くて終身刑」
「終…身……」
サラリと言われているが、内容はとてもシャレにはなっていない。
「で、重けりゃ死刑。しかも磔刑だ。
…すごいぞリンク。もし執行したら80年ぶりの快挙だな」
感嘆を上げる。……どうやら、それは執行記録らしい。
やけに薄っぺらいのが気になるが―――いや、今はそんな事を気にしている場合ではない。
「い、いやでもまだ死刑って決まった訳じゃ……!」
「一国の王女の純潔を奪っておいて、軽罪なんて言うと思うか?」
「う……」
そうだ。時々忘れそうになるのだが、彼女はまぎれもなく『影の世界』の姫君なのだ。
…いや、判ってはいるのだ、やはり共に旅をしてきた印象の方が強いというもので。
「…って、そうだ!!そもそも親告しなければ―――」
「それは無理だな」
一筋の光明をあっさり潰すような、ハッキリとした口調。
「昨日オマエを部屋に運んだ時、手伝わせた侍女たちが城内で言いふらしまくったそうだ。
…今頃は外まで流れてるかもしれないな」
「俺は逃げ場すら無いのかぁぁぁぁっ!?」
まさに四面楚歌。血の気の失せた顔で、頭を抱え込んで激昂する。
それでもミドナを責めないのは、彼なりの優しさかあまりの混乱ゆえか―――たぶん後者だろう。

……実は、ひとつだけ、彼を無罪とする方法がある。
それは、彼女の純潔を穢すことを許される、この世でたった唯一の存在になること。

「ところでリンク、オマエが助かる手段がひとつだけあるんだが……」
「……! 本当かミドナ!?」
目の前で頭を抱えて苦悩していた青年が、一転して目を輝かせて飛びついてくる。
…これを言ったら、コイツはどんな顔をするのだろう。
もうほんの少しだけ未来の展開を想像し、ミドナは己の口元が緩むのを堪えられそうになかった。



以上でおしまい。
あまりに切なすぎるEDに、もうこんなエロゲ展開でいいから幸せになってくれ、という思いを込めて
書き始めた。今でも微妙に後悔している。
最初5レス程度で終わらせるつもりだったものが、なぜここまで長くなってしまったのか。
簡潔にまとめられる職人たちはマジ神だと思った。というかSS職人そのものが神だ。
2週間お目汚し失礼そしてお付き合いありがとうございました。

…この後増えるといいなぁ…おっきいミドナ様好きの職人……
43名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 06:36:15 ID:XITQY3ga
超GJ!
やばい、これはイイ!
素敵すぎる。
44名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 08:58:45 ID:i85wQnmO
>>42
GJGJGJ!!!
素晴らしいSSをありがとう!!

ミドナ様も大好きだが、幸せになったミドナ様を描いて下さる素敵な貴方にも惚れました
45名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 22:55:57 ID:vnJ53W1H
>>42
完結しましたか
やっとレスできる
ありがとう。ごちそうさまでした。

初めてエンディングを見て一ヶ月半、心に空いた風穴がいまだに塞がらない。
まさかゲームでこんな目に合おうとは!
そんなキズにしみるわぁ

別解にも期待したいけど案外この板では難しいかもね、エロ主体となると。
しかしミドナスレはエロ禁だし悩ましいわ…

ミドナ様にメロメロに惚れ込んじゃった奴(ミドナ脳と勝手に命名)は少なくはないけど
けして多数派という訳でもないみたいだしな…



それと、今度は書き上げてから投下よろ
おながいね
46名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 21:06:04 ID:a6++jbDd
どうしてゼルダの女キャラは脱がし難い服ばっか着るんだろうか
47名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 22:04:47 ID:Lr/yBa0J
       、--‐冖'⌒ ̄ ̄`ー-、
     /⌒`         三ミヽー-ヘ,_
   __,{ ;;,,             ミミ   i ´Z,
   ゝ   ''〃//,,,      ,,..`ミミ、_ノリ}j; f彡
  _)        〃///, ,;彡'rffッ、ィ彡'ノ从iノ彡
  >';;,,       ノ丿川j !川|;  :.`7ラ公 '>了   >>46なに?
 _く彡川f゙ノ'ノノ ノ_ノノノイシノ| }.: '〈八ミ、、;.〉    どうしてゼルダの女キャラは脱がし難い服ばっか着る
  ヽ.:.:.:.:.:.;=、彡/‐-ニ''_ー<、{_,ノ -一ヾ`~;.;.;}   
  く .:.:.:.:.:!ハ.Yイ  ぇ'无テ,`ヽ}}}ィt于 `|ィ"~  それは無理矢理フラグを昇華しようとするからだよ
   〉:.:.:.:.:|.Y 〉: :!    `二´/' ; |丶ニ  ノノ    
    〉 :.: ト、リ: :!ヾ:、   丶 ; | ゙  イ:〉  逆に考えるんだ
   { .:.: l {: : }  `    ,.__(__,)   /ノ   
    ヽ !  `'゙!       ,.,,.`三'゙、,_  /´    「服は破るためにあるものだと」
    ,/´{  ミ l    /゙,:-…-〜、 } |       考えるんだ
  ,r{   \ ミ  \   `' '≡≡' " ノ  
__ノ  ヽ   \  ヽ\    彡  ,イ_
      \   \ ヽ 丶.     ノ!|ヽ`ヽ、
         \   \ヽ `¨¨¨¨´/ |l ト、 `'ー-、__
            \  `'ー-、  // /:.:.}       `'ー、_
          `、\   /⌒ヽ  /!:.:.|
          `、 \ /ヽLf___ハ/  {
48名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 22:06:04 ID:Lr/yBa0J
ごめん。結構失敗した。
49TNT ◆tooysx0RJ. :2007/02/03(土) 04:36:13 ID:aTnO06OA
◆JmQ19ALdig氏の書き込みが途中で止まったと思ったら容量オーバーだったのね……
今更ですが新スレ&SS投下乙です。

それと、私が前スレ1で書いた「マターリして下さい。」という表現がイマイチだと思ってたので、
できればその部分は変えて欲しかったw
50TNT ◆tooysx0RJ. :2007/02/03(土) 04:39:35 ID:aTnO06OA
と思ったら「マターリして下さい。」は初代スレの人が書いてたのね

ゼルダの伝説
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1096633379/l50
1 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 04/10/01 21:22:59 ID:VPjd8gZO
このスレはゼルダの伝説について語ったり、SSを書き込むスレです。マターリして下さい。

2 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 04/10/01 21:26:24 ID:VPjd8gZO
忘れてました801は禁止、保守以外はsage進行。
51名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 17:22:21 ID:gIsqZ9GK
なんか5日間待っても誰も書きこまねえな〜・・・と
思ってたら新しく建ってたのね。
52名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 22:22:41 ID:eZ7aBBBv
>>46
ミドナは簡単そうだしルトは最初から全裸だぜ?

ただ、ゼルダは手間が繋かりそうだな。ラスボス戦、戦闘そっちのけでスカートのな
53名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 00:55:14 ID:ALGaO2Mc
イリァ
54名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 02:39:42 ID:ygRS+fWf
>>52
でもトワプリでは胸元や背中がかなり開いてるので、
肩の装飾品を何とかすれば結構簡単にいけそうだw
55 ◆JmQ19ALdig :2007/02/04(日) 03:54:23 ID:q9/H959Y
時オカ/ルト編その1、投下します。
ゾーラ族はハイリア人という設定ですが、半魚人のルトがいいという方は脳内補正して下さい。
本番なし。
561-10 Ruto I (1/16) ◆JmQ19ALdig :2007/02/04(日) 03:55:51 ID:q9/H959Y
 ハイラル平原から小道に入ってしばらく行くと、そこがハイリア湖だった。円形に近い大きな
湖で、周囲はぐるりと切り立った崖に囲まれている。向こう岸は霞んでいてよく見えないが、
いまリンクが通ってきた北からの道の他には、湖岸に接近できる所はないようだった。流れ出る
川もない。ただ一本、右手の山あいから湖に流れこむ川があるだけだ。それがゾーラ川の最下流に
違いなかった。
 湖には小さな島がいくつか浮かんでいた。リンクがいる所に近い湖岸から、そのうちの一つに
向けて細長い橋が架かっており、そこからはさらにもう一つの島へと橋が延びていた。
 リンクは岸に近づいた。遺跡のような石柱の立つその場所から湖を見渡す。水は青く澄み、
広々とした湖面を渡る軽い風に、ささやかな波を立てていた。しかしリンクにとっては、その
程度の波さえも観察の障害としか思えず、じりじりしながら、波間に何かが見えないかと目を
凝らすのだった。
 ロンロン牧場から夜を日に継いでここまで歩いてきたが、ゾーラの里を出発した時点から
数えると、すでに一週間が経過している。早くルトを見つけなければならない。
 気はせくが、水面には何も見えない。リンクはため息をついた。
 だが諦めるわけにはいかない。橋を渡って島から見てみれば……いや、その前に……
 橋のたもとに一軒の家がある。人が住んでいるのなら、会って話を聞くのが早道かもしれない。
 リンクは家の前まで行き、戸を叩いた。返事はない。ノブに手をかけたが、戸は開かない。
留守のようだ。
 あてはもう一箇所あった。湖の東岸近くの崖に戸が設けられている。リンクはそこまで走った。
戸の傍らには看板があり、「釣り堀、食いつき抜群」と書かれている。リンクには意味が
わからなかったが、かまわず戸を引いた。ここの戸は開いた。
 中に入ると、いきなり声をかけられた。
「えっと……釣り、20ルピーでやる?」
 右手のカウンターの中に、怪しげな格好をした中年の親父が立っていた。リンクが返事も
できずにいると、親父は、
「なんや、冷やかしかいな。兄さん、かんべんしてや。ホンマに」
 と一方的にしゃべり、そっぽを向いた。
 聞いたことのない訛りで、会話が通じるかどうか心配だったが、いまはどんなにわずかな
手がかりでもいいから欲しいところだ。リンクは思いきって親父に話しかけた。
「訊きたいんだけど……湖でゾーラ族の女の子を見なかった?」
「ゾーラ族の女の子、やて?」
 親父は奇妙そうな表情でリンクを見た。
「ケッタイな質問やな……けどゾーラ族なら、たまーに見かけることあるでぇ。マジで」
「ほんとう? いつ? どこで?」
 リンクは勢いこんでさらに訊いた。会話が通じただけでなく、有力な情報が得られそうだ。
 しかし親父の返事は頼りなかった。
「うーん、いつやったか……ワイが見たんは、もうかなり前やさかいな」
 最近のことではないのか。リンクはがっかりした。
「けど、みずうみ博士なら何か知ってるかもわからんでぇ。ワイは商売あるさかい、こっから
あんまり離れられんのや。ま、客はめったに来んけどな。マジで」
 最後は小声だった。が、リンクは親父の出した名前に飛びついた。
「みずうみ博士って?」
「湖の岸に家があるやろ。あそこに住んでる爺さんや。なんやいろいろ研究しとるらしいわ。
ゾーラ族のことも詳しいんちゃうか」
 再びリンクの心を失望が満たした。
「……留守だったよ。戸が閉まってた」
「さよか……あの爺さん、しょっちゅうどっかへ出かけてんねん。けど、そんなに長いこと、
うちを空けることはないはずや。何日かしたら戻ってくるて。マジで」
「そう……ありがとう」
 どうやら、みずうみ博士の帰宅を待つか、あるいは自力でルトを見つけ出すしかないようだ。
大して助けにはならなかったが、それでもリンクは親父に礼を言い、その場をあとにした。
571-10 Ruto I (2/16) ◆JmQ19ALdig :2007/02/04(日) 03:56:43 ID:q9/H959Y
 橋を渡って第一の小島に行き、さらに第二の島へも渡ってみたが、何も発見することは
できなかった。
 リンクは第二の島に立つ木の根元に腰をおろし、今日何度目かのため息をついた。
 陽が徐々に翳ってゆく。もう間もなく日が暮れる。
 だが焦ってみてもしようがない。水面に見えるとは限らないじゃないか。ゾーラ族は泳ぎが
得意だ。水中を泳いでいる可能性もある。もう少し待って、探してみよう。
 気晴らしにオカリナを取り出して、知っている曲を気ままに吹いてみる。『ゼルダの子守歌』、
『エポナの歌』、そして『サリアの歌』……
 オカリナの素朴な音色が、静かな湖面を渡ってゆく。それぞれの曲にかかわる人の姿が、
リンクの脳裏に浮かんでは消える。
『そういえば、女の人ばかりだな』
 ふとリンクは気づき、思わず軽い笑いを漏らした。オカリナの曲に関しては、サリア、ゼルダ、
インパ、マロン。他に旅の途中でかかわったアンジュとダルニア。
 キングゾーラやタロン、インゴーといった例もあるが、これまでの旅で記憶に深く残って
いるのは、女性ばかりだ。
 リンクは思う。女性。女。なぜか自分を動揺させ、突き動かしそうになる、不思議な存在。
そしてあの感覚。股間に集中し、わだかまる、あの感覚。女性という存在と、自分の持つあの
感覚に、どういうつながりがあるのか。どういう意味があるのか。
 愛。
 アンジュが言った、その言葉。それが答なのだろうか。
 わからない。いつかはぼくにもわかるだろうか。「大人になったら」とアンジュは言ったが……
 リンクは頭を振る。
 いまはそんなことを考えている余裕はない。
 リンクは再び湖面に視線を走らせた。その瞬間、リンクの心臓は大きく拍動した。
 水の中から女が顔を出していた。リンクが新たに出会う女だった。
581-10 Ruto I (3/16) ◆JmQ19ALdig :2007/02/04(日) 03:58:11 ID:q9/H959Y
「その方か、笛を吹いておったのは。ぴーぴーとうるさいの」
 女が言った。
 水中にひそんでいた人間。キングゾーラに似た、女にしては奇異な言い回し。間違いない。
 リンクは口を開きかけた。が、言葉が出なかった。女が島へ上がってきたのだ。予想して
いなければならないことだったが……女は全裸だった。
 体内が透けて見えそうな青白い肌。その表面は濡れて輝き、身体中から水滴がしたたり落ちる。
 女はまだ若かった。少女といえる年頃だ。しかし二つの乳房は、遠慮がちにではあるが明瞭な
隆起を示し、下腹部の丘には、ささやかながらそれなりの密度の黒い毛が認められた。子供と
大人の中間、そんな印象を受ける。成熟度ではゾーラの里で見た女たちに及ばないが、女としての
身体の主張は明確だった。
 リンクは圧倒された。外見からして、自分よりはやや年上に見えるせいもあったが、何よりも、
生身の裸の女が一対一で目の前にいるという状況が、リンクから言葉を奪っていた。ゾーラの
里では距離をおいて望見した程度であったから。
「その方は何者じゃ」
 胸や股間を隠そうともせず、女はすわっているリンクの前に立ち、高飛車に言った。左手を
腰に当て、やや首を傾けて、明らかに見下した視線を送ってくる。整った表情だが、そこには
高慢な色がありありとしていた。
「君は……」
 股間がずきずきするような感触を自覚しながら、リンクはやっとそれだけ言った。なにしろ、
すわった自分の顔の真ん前に、露出した女の下半身が近接しているのだ。リンクの視線は、女の
顔とそことの間を行きつ戻りつした。
「わらわはゾーラの王女、ルトじゃ。じゃが身分を考えるのであれば、そちらから名乗るのが
礼儀であろう」
 やはりルトだ。見つかってよかった。だが、やけに気むずかしいことを言う。さっさと用件を
すました方がいいようだ。
「ぼくの名前はリンク。ルト、実は……」
「無礼者!」
 いきなりルトがさえぎった。
「呼び捨てにするとは何じゃ! ちゃんと『姫』と呼ばんか!」
 さすがにリンクもうんざりした。同じ姫でも、ゼルダとはかなり違った性格のようだ。しかし
話は進めなければ。
「ルト姫……ぼくは君のお父さん──キングゾーラに頼まれて、君を連れ戻しに来たんだ。
お父さんはずいぶん心配しているよ。早くゾーラの里に戻ろう」
「父上が?」
 ルトは一瞬ためらうような表情を見せたが、すぐに高慢な調子に戻った。
「連れ戻すだの、わらわは知らぬ。父上が心配しようがしまいが、そんなことは関係ない。
とにかくいまは帰れぬ。その方こそさっさと帰れ。よいな!」
 うんざりを通り越して、腹が立ってきた。でもここは我慢しないと。
「ジャブジャブ様の件で、何か調べていることでもあるの?」
「ジャブジャブ様を知っておるのか?」
 意外そうにルトが問い返す。リンクはキングゾーラに聞いた内容を説明した。ルトは目を脇に
そらし、しばらく黙っていた。顔に心配そうな色が浮かんでいた。初めてルトの内面が垣間見えた
ように思い、リンクは心を落ち着けることができた。
591-10 Ruto I (4/16) ◆JmQ19ALdig :2007/02/04(日) 03:59:20 ID:q9/H959Y
「わらわは幼き頃よりジャブジャブ様のお世話をいたしておるが……」
 ルトは低い声で言うと、リンクに視線を戻した。
「その方が聞いたとおりじゃ。いまのジャブジャブ様は、すごく変じゃ。病気のようでもあるが、
そればかりでもないような……」
「ここへはどういう用事で?」
「みずうみ博士に知恵を借りようと思ったのじゃ。何度かここへ遊びにくるうちに知り合った老人じゃが、
たいそうな物知りでの。博士なら、ジャブジャブ様の変調の原因がわかるかと思うて……」
「いま、留守みたいだね」
「……そうじゃ。それでもう数日、わらわも待ち続けておるのじゃが……」
 頼りない表情でうつむくルトに、リンクは同情と憂慮を覚えながら、一方では微笑ましい思いも
禁じ得なかった。
 偉そうな態度をとってはいても、やっぱり女の子なんだ。
 だが……それでもみずうみ博士に会うまでは、ルトはゾーラの里に戻ろうとはしないだろう。
博士はいつ帰宅するのだろうか。
 湖水を隔てて岸辺に立つ家を見やると、意外なものがリンクの目に入った。
「ルト姫! あれを見て!」
 すでに日は落ち、風景は夜に落ちていこうとしていたが、その暗みの中にぽつんと、明るく輝く
窓が見えたのだった。
「人がいるんだ。博士が帰ってきたんだよ!」
「おお……!」
 二人は顔を見合わせた。ルトの顔に笑みがあふれる。なかなか悪くない表情だな、と、リンクも
笑いながら思った。
「行こうよ」
 リンクは立ち上がり、橋に向けて走り出した。
「こら! その方!」
 後ろから厳しい声がかかった。
「わらわの前を歩くでない。それがゾーラの王族に対する礼儀というものぞ」
 すっかり元の感じに返っていた。ルトは立ち止まったリンクにゆっくりと近寄り、
「その方、わらわのことが心配ならば、特別にわらわに付き従う名誉を与える。下がってあとに
ついて参れ」
 と言うと、もったいぶった態度で先を歩いていった。
 そんな名誉など欲しくもない。だいたい、こっちが名前を名乗っているのに、呼びかけは
「その方」のままだ。人を何だと思っているのか。同情していた自分が馬鹿みたいだ。
 むっとする気持ちを抑えて、リンクはルトのあとに従った。目が自然とルトの後ろ姿に向く。
見ているうちに、胸の動悸が速くなってきた。
 ルトが歩を進めるたびに、二つに割れた尻の丸みが、くいくいと左右に揺れる。まるで自分を
誘ってでもいるかのように。
 冗談じゃない。そんなものに誘われてたまるもんか。
 リンクはおのれを戒める。が、どうしてもそこから視線が離れない。それどころか、両脚の間に
何か見えないか、女のそこはどうなっているのか、などと不埒なことを、いつの間にか考えている。
いったんは治まっていた股間が、またもいきり立ってしまっている。
 嬉しいような悔しいような、自分でもよくわからない感情に悩まされながら、リンクは
前かがみになって歩いていった。
601-10 Ruto I (5/16) ◆JmQ19ALdig :2007/02/04(日) 04:00:25 ID:q9/H959Y
 みずうみ博士は、おどろおどろしいと言ってもよい顔つきに反して、ずいぶんと気さくな老人
だった。すでに顔見知りのルトとは親しげに挨拶を交わし、初対面のリンクをも暖かく歓迎した。
 博士は夕食をふるまってくれた。三人は椅子にすわってテーブルを囲んだ。夕食の間、ルトは
熱心にジャブジャブ様の異常を博士に訴えた。博士は頷きながら聞いていたが、ルトの話が
一段落すると、飄々とした口調で言った。
「……つまり、ジャブジャブ様の変調とやらは、具体的にはこういうことか。嘔吐、腹痛、下痢、
血便と。明らかに消化管系統の疾患じゃな」
 自信に満ちた言葉に、ルトの表情が明るくなった。
「具体的には何じゃ?」
「うーむ……消化管の疾患といっても数多くあるからの。だが姫の話じゃと、寄生虫の可能性が
高いように思えるが」
「キセイチュウ?」
 ルトが訝しそうに訊く。
「微小な生物、つまり寄生虫が、大きな生物の体内に侵入して、さまざまな症状を引き起こすんじゃよ。
ただジャブジャブ様はかなり大きな魚のようじゃから、微小といってもかなりの大きさの生物じゃろうがの」
 よく意味がわからないまま、リンクは二人の会話を聞いていたが、寄生虫の話には思い当たる
点があった。デクの樹サマにひそんでいた、あの虫のような魔物。あれも寄生虫の一種と
言えるのではないか。ジャブジャブ様の中に寄生虫がいるのなら、それもまた、ガノンドロフに
よって送りこまれた魔物なのでは……
 リンクの推測をよそに、ルトは続けて博士に質問を投げかけた。
「寄生虫とかいう疾患、それは直すことができるのか?」
「虫下しの薬っちゅうもんがあるわい」
「ここにあるのか?」
「あるとも。カカリコ村の薬屋の婆さんが、時々取りにくるでな」
「それをわらわにくれ!」
 ルトが椅子から立ち上がって叫んだ。その強い態度に博士は驚いた顔をしたが、なだめるような
声で答えた。
「ジャブジャブ様に飲ませるつもりか? わしが持っておるのは人が飲む薬じゃから、そのままでは
ジャブジャブ様には効くかどうか……」
「作り直せ!」
 続けてルトが叫ぶ。あまりに強引な要求だ、とリンクは思った。博士もそう感じたのか、
黙ったまま、ルトの顔を見つめている。
 その場の沈黙で、ルトも我に返ったようだ。気まずそうに椅子にすわり直し、下を向いた。
「……もう……他に手だてがないのじゃ……」
 やがてルトの口から漏れた言葉。その悲痛な調子に、リンクは胸をつかれた。
 ルトは必死なのだ。何とかしてジャブジャブ様を助けたい。が、一人ではどうすることも
できない。どんなにわずかな可能性であっても、ルトはそれに賭けるしかないのだ。
 再びルトへの同情が湧きおこる。いや、それは単なる同情ではなく……
 世界を救うという、ぼくの使命。ルトを連れ戻すのは、そのために『水の精霊石』を手に
入れようとしての行動だ。だが使命の中には……ガノンドロフを倒すという最終目標だけではなく
……このように……目の前で苦しんでいる人を救うことも含まれているのではないだろうか。
そうでなければならないはずだ。
 博士も切羽詰まったルトの心情を理解したのだろう。ため息をつきながらも、こう言った。
「わかった。やってみるわい」
 ルトは顔を上げた。その目には、すがるような思いとともに、喜びの色があふれていた。
「でも簡単にはいかんぞい。薬の量を、ジャブジャブ様の身体の大きさに合わせんといかんでな」
「時間はどのくらいかかる?」
 せっかちなルトの声。博士はあくまでも飄々と答える。
「まる一日くらいかの。まあいずれにせよ、明日になってからのことじゃ。今日はもう遅い。
二人とも、もう休むがいい」
 安心したらしいルトは、それ以上、何も言わなかった。
 客用のベッドは一つだけだった。リンクに何の相談もせず、さも当然のように、ルトはその
ベッドを占領した。博士はリンクを気遣ってくれたが、リンクは部屋の片隅で寝ると言った。
野宿の経験を思うと、屋根のある所で眠られるだけ、ありがたいことだった。ただルトの態度に
対して、釈然としない気持ちが残るのには、どうしようもなかった。
611-10 Ruto I (6/16) ◆JmQ19ALdig :2007/02/04(日) 04:01:39 ID:q9/H959Y
 翌朝。
 博士はルトからジャブジャブ様の体格を聞き出すと、さっそく薬の調合作業に入った。リンクと
ルトは待つしかなかった。二人は昨晩と同じくテーブルに向かい、椅子に腰掛けていたが、会話は
一向に弾まなかった。リンクはルトの身体に目が行ってしようがなかったし、ルトはリンクに全く
興味がないような素振りだった。
 昼食時には対話が生まれた。しかしそれはリンクにとって愉快なものではなかった。ルトは
リンクの食事マナーのひどさをずけずけと指摘し、これは礼儀以前のことであって、リンクの
人間性の問題である、とまで言った。リンクは腹が煮えくりかえる思いだったが、かろうじて
自らを抑え、ルトの顔を睨みつけるにとどめた。
 昼食が終わるとルトは、ハイリア湖で泳いでくると──リンクにではなく──博士に告げ、
ひとりで外に出て行った。
 リンクはため息をついた。ハイリア湖に来てから、やたらため息ばかりついているような気がした。
 ルトへの気持ちが大きく揺れ動いている。頭にきてどうしようもなくなる時がある一方で、
助けてやらなければという思いに捕らわれる。ルトとはどういう人間なのか。どのようにルトと
接したらいいのか。リンクにはいまだにわからなかった。それに……
 目の前で奔放にひるがえる裸身。ルトが戸を開けて出て行ったいまも、自分の目は後ろから、
弾み踊るその尻を追っていた。
 女の裸に対する自分の関心の強さを、ルトによって思い知らされたような気がする。これまでに
出会った女性たちも、同じような、あるいはそれぞれ特徴のある、個々の裸体を持っているのだ、
と、いまでは意識してしまう。それはたとえばアンジュの成熟した乳房であり、たとえば……
夢に見る……ゼルダの……
 いけない。
 リンクは首を振る。
 ゼルダだけは、自分の中で勝手が違う。「いけない」という思い。どういうわけか、それが他の
女性たちに対するよりも強い気がして……
「ルト姫のことが気になるか?」
 突然、博士が言った。リンクはどきりとし、とっさに返事ができなかった。作業の手を
止めないまま、博士はおかしそうに言葉を続けた。
「見てないようで、わしは見ておる。お前さん、ほんの子供だと思っておったが、もう何やら
意識する年頃かの?」
 顔から火が出る思いだ。でも、そこまで見透かされているなら、いっそ腹を割ってしまった方が
いいかもしれない。
621-10 Ruto I (7/16) ◆JmQ19ALdig :2007/02/04(日) 04:02:45 ID:q9/H959Y
「ルト姫は……どうして人前で裸になっても恥ずかしくないのかな?」
 リンクは博士に訊いてみた。博士は、不思議でもないといったふうに答えた。
「裸で暮らすのがゾーラ族の流儀じゃからな。彼らにとっては、裸でいることが自然であって、
それ以上の特別の意味はない。恥ずかしがる必然性などないんじゃ。お前さんの方は、けっこう
恥ずかしがっておるようじゃがな」
 最後のからかうような口調に、反発を感じた。
「博士は恥ずかしくないの?」
「わしのような年寄りには、関係ないことじゃ」
 リンクの反撃を博士はあっさりとかわした。それ以上、リンクの追求は続かなかった。
「のう、リンク……」
 初めて博士がリンクをふり返った。
「お前さん、ルト姫にずいぶん腹を立てておるようじゃが、あんなわがままも、わしから見れば
かわいいもんじゃ。お前さんの歳では難しいかもしれんが、もう少し大きな目で見てやったら
どうじゃな」
 それができたら話は早いんだけど……とリンクは思ったが、口には出さなかった。
 場の沈黙が気詰まりになり、リンクは話題を変えた。
「寄生虫って、どんなものなの?」
「そこに図鑑がある。見てみるがいい」
 博士が壁際の書棚を指した。そこには何十冊もの本が並んでいた。博士の指示で、リンクは
一冊の本を開いてみた。グロテスクな生物の絵が色彩つきで描かれ、小さい文字で詳しい説明が
書かれていた。
「……気味の悪い生き物だね」
 リンクは正直に感想を述べた。
「確かに。だがこの世界には、もっと気味の悪い生物はいっぱいおるぞ。そこにある他の本にも
書いてあるがな」
 その言葉に興味を持って、リンクは次々に本を開いていった。見たこともない奇妙な生物の
記述が並ぶ中に、ふと見知ったものの姿を見て、リンクは驚いた。
 これは……デクの樹サマのまわりに生えていた怪物だ。こいつの名は……デクババというのか。
「この本は誰が書いたの?」
「わしじゃよ」
 リンクの問いに、博士は拍子抜けするほど単純な答を返した。
「わしは各地の生物に興味があっての。観察の旅に出ては、そうやって記録にとどめておるんじゃ。
ただ最近、生物の分布が変化しておるようじゃな。たちの悪いやつらが、人里に近い場所に
進出しておる」
 そう、ロンロン牧場のグエーのように、とリンクは心の中で頷く。異変はハイラル全土に
及びつつあるようだ。
 リンクは本を読むのに没頭した。これからの旅で出会うことになるであろう、数多くの敵の
情報を、頭にたたきこむために。
631-10 Ruto I (8/16) ◆JmQ19ALdig :2007/02/04(日) 04:03:43 ID:q9/H959Y
 ルトは夕方になって戻ってきたが、リンクとの間には冷戦状態が続いた。リンクは心が惑うのを
避けようとして、敢えてルトの方を見ないようにした。そのため冷戦はさらに長引くことになった。
 二人は前の晩と同じように眠りについたが、博士は夜っぴて作業を続けた。その甲斐あって、
薬の調合は翌日の午前中に仕上がった。
「……かたじけない」
 瓶に入った水薬を手渡され、さすがにルトは殊勝な態度で博士に言った。
「いまはこの言葉だけで許してたもれ。いずれ、この礼は、きっとするゆえ……」
「なあに、気にしなさんな」
 飄々とした博士の口調は変わらない。
「それよりも、急いでゾーラの里に戻った方がよい。ジャブジャブ様に早くその薬を飲ませて
やりなされ」
「わかった。では……」
 小走りに外へ出て行こうとするルトに、リンクはあわてて声をかけた。
「ちょっと待ってよ。どうやって戻るんだい?」
 ルトはふり返った。これまでにも増して高慢な顔つきだった。
「その方の知ったことではない」
 あまりの言葉に、リンクの頭は一気に沸騰した。しかしリンクが爆発する前に、博士がそこへ
割りこんだ。
「ルト姫、その態度は感心せんの。リンクは長い旅をして、ここまで姫を迎えに来たんじゃぞ。
教えてやっても罰は当たるまい」
 ばつの悪そうな顔で黙っていたルトだったが、思い直したらしく、それでも昂然とした態度で
リンクに向かって言った。
「ゾーラの里とハイリア湖の間には、秘密の地下水路がある。場所はわらわだけしか知らぬがな。
この水路を通れば、数時間で二つの場所の間を行き来できるのじゃ」
 キングゾーラの推測どおりだ。でも、それにしたって……数時間? 自分がここに来るのに
一週間かかったというのに。
「理由はわしにもわからんが、ある時間帯にはゾーラの里からハイリア湖へ、別の時間帯には
その逆方向へと、かなりの急流が生じるらしいの」
 博士が横から説明を加えた。それを聞いてから、リンクは再びルトに話しかけた。
「そこを通って戻るんだね」
「そうじゃ」
「じゃあさ……」
 こんなことを言うのは実に腹立たしいのだが、しかたがない。
「ぼくも一緒に……連れて行ってくれないかな」
641-10 Ruto I (9/16) ◆JmQ19ALdig :2007/02/04(日) 04:05:07 ID:q9/H959Y
「だめじゃ」
 にべもない返事だった。下手に出て頼んでいるのに、と、リンクの腹立たしさは倍増した。
「君に付き従う名誉を、君はぼくにくれたじゃないか。付き従わせてくれたって、かまわないだろ」
 思わず言葉が荒くなる。が、ルトは平然としていた。
「わらわがゾーラの里に戻れば、それで万事解決なのであろう。その方がゾーラの里に来る必要はない」
「そういうわけにはいかないよ。ぼくはキングゾーラと約束したんだから、最後まで見届けないと」
 そうだ。『水の精霊石』を渡してもらわないことには、話はすまない。それにジャブジャブ様の
ことだって、もしそれがガノンドロフの差し金だというのなら……
「その方は水の中で息ができまい。地下水路を通ることはかなわぬな」
 リンクは言葉に詰まったが、ふと思い当たった。
「じゃあ君はどうなんだ? いくらゾーラ族だって、数時間も息は続かないだろ」
「わらわにはこれがある」
 ルトは小さな平べったいものを取り出した。
「この『ゾーラのうろこ』があれば、水の中でも呼吸ができる。こうやってな」
 そう言って、ルトはその平べったい「うろこ」を口にくわえた。
「ぼくにも貸してくれよ」
「一つしかない」
 じゃあそれを二人で一緒に──と言いかけて、リンクは思いとどまった。ルトと二人で
『ゾーラのうろこ』を代わるがわる口にくわえ合う情景を脳裏に描き、頭が惑乱してしまったのだ。
 そんなことができるもんか!
 だが、その心の叫びの裏にあるのは……憤りなのか、恥ずかしさなのか……
 沈黙したリンクを小気味よさそうに見ていたルトは、
「そういうわけじゃ。ゾーラの里に来たければ、歩いて参れ。ここへ来た時と同様にな」
 と言い、戸に手をかけた。そこで動きがいったん止まり、こちらをふり返った。
「一応、礼は言っておく。その方、ご苦労であった」
 一段とお高くとまった口調で言うと、ルトは外へと駆けだしていった。
 同じ礼でも、博士に対する態度と、何という違いだろう。これでも大きな目で見てやらなくちゃ
ならないのか?
 リンクは博士を横目で見た。博士は肩をすくめた。リンクに同情するような顔つきではあったが、
内心では面白がっていることが明らかだった。
651-10 Ruto I (10/16) ◆JmQ19ALdig :2007/02/04(日) 04:06:03 ID:q9/H959Y
「気をつけてな」
 旅装を整えたリンクに、博士が言った。
「いろいろとありがとう」
 リンクは答え、博士と握手を交わした。
 二人は博士の家の前の湖畔に立っていた。ルトの姿はとうになかった。湖のどこかにある
地下水路の入口から、もうゾーラの里へと去っていったのだろう。
 だがこれ以上、ルトのことなど、考えたくもない。
 博士もそんなリンクの気持ちを察してか、敢えてルトを話題に上らせようとはしなかった。
「じゃあ……」
 軽く手を上げて、リンクが別れを告げようとした時、博士が意外そうな声で言った。
「おや、ケポラ・ゲボラが来ておるな」
 博士の視線を追ったリンクは、橋が延びている第一の小島に黒い影を認めた。
「ケポラ・ゲボラって?」
 リンクの問いに、博士はその影に目をやったまま返事をした。
「梟じゃよ。たいそうな年寄りでな。ハイラルの主とも言われておる」
 梟だって?
 影を注視する。ここからではよく見えない。リンクは走りだした。
「おい、リンク」
 博士の声を背に、リンクは橋を駆け渡っていった。
 あの梟? なぜいまここに?
 リンクは小島に到達した。やはりあの梟だ。島の真ん中にある石碑の上にとまっている。
何ものをも見とおすように、瞬きもせず、まるまると見開かれた目。なにがしかの気味悪さと、
そして奇妙な安心感を覚えさせる、その目。リンクもじっと梟を見返す。
「リンク」
 梟が言った。
 口がきけたのか!
 リンクは驚くとともに、しわがれた、しかし深みのあるその声に、畏敬の念を抱いた。
「あなたは……」
 思わず呼びかけが敬称になる。それがふさわしいだけの威厳が、この鳥にはある。
「……ぼくのことを、知っているの?」
 三度目の出会い。知っているのは当然だ。けれど、どうしてぼくの名前を?
「おぬしがコキリの森に来た時から、わしはおぬしを知っておるよ」
 何だって? じゃあ……
「じゃあ、あなたは、ぼくが実はどこの誰なのかも……」
「それは……」
 気負ったリンクの言葉をさえぎり、梟は淡々とした口調で言った。
「いずれ、わかる。デクの樹もそう言っておったじゃろう」
「え? あなたはデクの樹サマとは……」
「旧い知り合いじゃ。じゃからわしも、おぬしのことは、デクの樹と同様、よく知っておる。
おぬしの使命のこともな」
 梟はぐるりと首を回した。
「デクの樹が死んで、わしはその遺志を受け継いだ。世界を救う使命を負ったおぬしを導く者として」
 そうだ。コキリの森の出口で、ハイラル城で、この梟はぼくを導いてくれた。
661-10 Ruto I (11/16) ◆JmQ19ALdig :2007/02/04(日) 04:07:12 ID:q9/H959Y
「またぼくをどこかへ導こうと?」
 リンクは探るように訊いた。
「おぬし次第じゃ。おぬしの目指す場所は?」
「ゾーラの里」
「いいじゃろう」
 梟は石碑の上で身を伸ばした。
「わしの足につかまるがよい」
 リンクはゆっくりと梟に近づいた。梟が後方に顎をしゃくる。それに従って、梟の背後から、
細い両脚に両手を伸ばし、そっとつかむ。
 いきなり梟の足の爪が両肩に食いこみ、リンクの身体は舞い上がった。
「うわ!」
 石碑が、小島が、みるみる足元から離れてゆく。と、梟は前方へ向きを変え、橋の上を岸へと
疾走し始める。みずうみ博士の家がぐいと近づく。大きな口を開けた博士の眼前をかすめ、そこで
また、梟は空の高みへと駆け上がる。
 リンクはものも言えずに下を見つめていた。視界を占めていた湖面が遠ざかる。博士の家が、
釣り堀が、そして丸いハイリア湖の全体が見えてくる。湖はどんどん小さくなり、やがて
ハイラル平原が視野に入ってくる。
 リンクは前方に目を移した。そこには……
 世界があった。
 眩い日の光を浴びて、なだらかな起伏を繰り返しつつ、ハイラル平原は限りない広がりを
示していた。ところどころに点在する家々。それらを結ぶ細い道。
 進むうちに、平原は一方へと傾斜を増してゆき、その先には……
『ロンロン牧場!』
 あの広い牧場が、指先に乗るほどの大きさにしか見えない。マロン、君にはぼくが見えて
いるだろうか。
 右手に広がる深い森。どこまで続くのかわからない、その果てが、コキリの森に違いない。
あそこにはサリアがいる。とても見分けられる距離ではないが、いるはずだ。
 梟が左に向けて滑空し、低い稜線を越える。正面に聳えるデスマウンテン。カカリコ村は
隠れていて見えないが……ダルニアが、アンジュが、今日もそこにいて、暮らしているんだ。
 蛇行するゾーラ川が見えてきた。その北のほとりには密集する家々が。そして一段と高い
ハイラル城が。だがそれもまた、ここからだとなんと小さく……ゼルダ、君はいま、どこにいる? 
城の中? それともあの中庭? インパと一緒に?
 ロンロン牧場の牛小屋の上から、ハイラル城の塔上から、かつてぼくは風景を見渡した。
いまはそれらをはるかに上回る広さの世界が、ぼくの下に続いている。このひと続きの世界の中に、
ぼくの知る人たちが、そしてまだぼくの知らない人たちが、生きている。
『ぼくは……この世界を……』
 震える胸。高ぶる心。
 それは単なる移動ではなかった。導く者、ケポラ・ゲボラ。それはやはり、あるべきものへと
リンクを導く、意義ある空中散歩だった。
671-10 Ruto I (12/16) ◆JmQ19ALdig :2007/02/04(日) 04:08:29 ID:q9/H959Y
 ルトの帰還は、キングゾーラを安堵させ、喜ばせた。リンクや『水の精霊石』のことを
あれこれ話そうとするキングゾーラを、しかしルトはほとんど無視し、ゾーラの泉へと急いだ。
 ジャブジャブ様の状態は相変わらずよくなかった。岸に乗り上げた形で横たわる、いつもの
格好ではあったが、肌の艶は悪く、目は濁り、呼吸は不規則で、腹からはゴロゴロと嫌な音が
聞こえた。閉じた口の前には、血の混じった吐物が散乱していた。
 薬を飲ませようとしたが、ジャブジャブ様は口を開かない。ルトは泉で魚を捕らえ、口の前に
供えた。苦しそうなジャブジャブ様は、それでもゆっくりと大きな口をあけた。その機会を逃さず、
ルトは口の中へ薬を流しこんだ。
 効果があるだろうか?
 状態はすぐに変わる様子もない。ルトは焦ったが、ここは待つ以外になかった。
 待つうちに頭に浮かぶのは、リンクのことだった。
 今までに会ったことのないタイプ。これまでまわりの人間は、常に自分を王女として丁重に
遇していた。だがリンクは違う。一応こちらの言うことを聞いてはいるが、文句を言いたげなのが
ありありとしている。
『気分が悪い』
 ルトは吐き捨てたくなるような思いだった。それでも、吐き捨ててはしまえない別の思いが
残るのを、どうしようもなかった。
 リンクは時々、やけに熱い目でこっちを見る。その目が気になる。そんな目で自分を見る者は、
ゾーラ族の中にはいない。リンクはゾーラ族ではないから、態度が違うだけなのか。いや、
そればかりではない。みずうみ博士はそんな目はしない。
『どういうつもりなのか……』
 自分の言動に対するリンクの反応を思い出してみるが、ルトにはわからなかった。
 唸り声が聞こえた。ルトは、はっとしてジャブジャブ様を注視した。
 大きな身体が痙攣している。と、いきなりジャブジャブ様の口が大きく開き、中から異様な
ものが飛び出してきた。
 危険を感じ、ルトはとっさに泉に飛び込んだ。そのまま水中を潜り、泉の反対側で浮き上がって、
狭い岸辺に上陸した。ふり返ると、その異様なものは、ジャブジャブ様のまわりの水上を、
驚くほどの速さで旋回していた。
『何じゃ、あれは?』
 それはルトの身体の何倍もの大きさの、ずんぐりした物体だった。毒々しい紅色をした
表面からは、紫色の触手が何本も生えていた。
 あれがジャブジャブ様の体内にいた寄生虫?
 虫とは言えないほどの大きさだが、薬に反応して出てきたのなら、そうに違いない。
 異変に気づいたのだろう。何人かのゾーラ族が泉のほとりに姿を現した。が、触手を振り回す
寄生虫には、とても近づけないようだ。こっちを指さして、何か騒いでいる。
『わらわがあの虫に捕らわれているように見えるのかも』
 実際にはそんな切迫した気分ではなかった。寄生虫との距離が離れているせいもあるが、
舞台上の演劇でも見ているような、非現実的な印象だった。
 向こう岸に新たな人物が現れた。緑色の服を着た子供。リンクだ!
『こんなに早く、どうやってここへ……』
 不思議に思っている間にも、リンクは寄生虫の触手をかいくぐり、浅瀬を渡ってこっちへ
駆けてくる。
681-10 Ruto I (13/16) ◆JmQ19ALdig :2007/02/04(日) 04:09:41 ID:q9/H959Y
「大丈夫? 助けに来たよ」
 ルトの前まで来たリンクが言った。表情は硬い。だが、なぜかルトの胸はざわついた。
『助けに……?』
「誰も助けに来いなどと頼んではおらぬぞ」
 思わず言葉が出てしまう。リンクの顔が引きつった。
「キングゾーラに頼まれたんだよ。でなきゃどうして……」
 最後の言葉にカチンときた。
「なぜこっちへ来たりするのじゃ。馬鹿!」
「何だって?」
 リンクの声が荒くなる。
「後ろを見てみよ! その方が来るから、あの虫までが……」
 そのとおりだった。リンクの動きを追って、寄生虫がもうそこまで近づいていた。
 リンクは素早く向きを変えた。ルトの前に立ちはだかる格好だった。その手には奇妙なものが
握られている。
「それは何じゃ?」
「え?」
「手に持っておるものは何じゃ?」
「ブーメランさ。キングゾーラがくれたんだ。ゾーラ族に伝わる武器だからって」
 リンクはふり向きもせず答えた。目はじっと寄生虫に注がれ、足でタイミングを計りながら、
ブーメランを構えている。寄生虫が振り回す触手を巧妙に避け、さりとてルトの前から離れる
こともない。
 その体勢のまま、リンクが言った。
「あれがジャブジャブ様の中に?」
「そうじゃ。薬を飲ませたら口から出て来おったのじゃ」
「バリネードだな……」
 リンクの呟き。ルトには意味がわからなかった。
「バリネード? 何じゃそれは?」
「あの寄生虫の名前だよ」
「どうして知っておる?」
「みずうみ博士の本で見たんだ」
 あとは独り言のように続いた。
「本物より、かなりでかいな。やっぱりガノンドロフが……」
「ガノンドロフ?」
 またもわからない言葉。
「ガノンドロフとは何じゃ?」
「あとにしてくれ」
 リンクがぴしゃりと言った。それにむっときた。激しい言葉を浴びせようとした、その時、
触手が横から突っこんできた。リンクはルトに覆いかぶさり、その場に身を伏せた。触手は二人の
頭上をかすめてすっ飛んでいった。
 リンクは直ちに立ち上がり、再び迎撃体勢に入った。
 口から出そうとしていた言葉も忘れ、ルトは地面に横たわったまま、激しい胸の鼓動を
意識していた。
 なんだかんだ言いながら、さっきからリンクはずっと……わらわを……
 覆いかぶさったリンクの身体の重みが、まだ残っているような気がする。
691-10 Ruto I (14/16) ◆JmQ19ALdig :2007/02/04(日) 04:12:00 ID:q9/H959Y
「そなた……」
 ルトがそっと声をかけるのと、リンクがブーメランを投げようとするのが、同時だった。
タイミングをはずされたリンクが舌打ちをする。
「何だよ」
 不機嫌そうな声。向けられたままの背。それでも……それでも……訊かずにはいられない。
「わらわのことを……どう思っておる?」
「はあ?」
 リンクの声が裏返る。が、身体の向きは変わらない。視線は寄生虫に据えられたままだ。
それが無性に気に障った。
「わらわが訊いておるのじゃ! 答えよ!」
 ふり向くリンク。顔が怒りに燃えていた。
「いまどんな状況だと思ってるんだ! 姫様だか何だか知らないが、わがままもいい加減にしろ!」
 ルトは呆然とした。
 怒鳴られた……誰にも怒鳴られたことなんかなかったのに……
「あッ!」
 ルトの目に、リンクの頭上から振り下ろされる触手が見えた。気づいてかわす暇もなく、それは
リンクの頭を直撃した。
「うわああぁぁッッ!!」
 リンクが叫ぶ。火花が散る。電撃がリンクの身体を白く包み、リンクはその場に倒れ伏す。
『わらわのせいで』
 思う間もなく、寄生虫がルトに迫る。それを間近に見て、ルトは初めて恐怖を感じた。
 腐った血のような色。体表はぶよぶよと蠢き、粘液でぬらぬらと光り、何とも言えない悪臭が
漂う。旋回する触手。先端がちりちりと光って……
 動けない……動けない……追いつめられて、もうどこにも逃げ場がない……
 触手が三本、大きく振り上げられた。ルトは吐き気を催し、それでも寄生虫から目が離せなかった。
 触手の先端に閃光がきらめき、火花が空中に放射された。もうだめだ!
『助けて!』
 眼前に殺到する触手。それらが自分を打ち砕くさまを、ルトは瞬間的に想像した。 
 その時。
 一閃する風とともに、触手が宙を舞った。
 ルトは風を目で追った。それは寄生虫のまわりで大きくカーブを描き、そばに立つ人物の手に
収束した。立ち上がったリンクの手に、ブーメランが握られていた。
 ドッ! ドッ! ドッ!
 と鈍い音をたてて、寄生虫の本体から切り離された触手が地面に落下した。
 リンクは苦しげだった。髪の毛が焦げ、足がよろけていた。
 それでもリンクは剣を抜き、寄生虫の本体に向けて構えるやいなや、
「やあッ!!」
 と気合いを発し、ジャンプしながら斬りつけた。
 紅色の体表に、縦に長い裂け目が生じ、どす黒い体液が噴出した。
 ギョオオオオォォォォォォ!!!
 禍々しい叫びとともに、残った触手が瘤のようにふくらみ、破裂し、四散していった。本体は
その体色以上に鮮やかな赤い光に包まれ、やがて黒い残骸となって崩れ去った。
701-10 Ruto I (15/16) ◆JmQ19ALdig :2007/02/04(日) 04:14:00 ID:q9/H959Y
 いまだ痺れている身体をひきずって、リンクはすわりこんだままのルトの前に歩み寄った。
 ルトは何も言わなかった。上目遣いにリンクの顔を見る、その表情は、しおらしげだった。
しかしリンクは気を許さなかった。
 手を差し伸べる。言葉もかけずに。怒りは治まっていない。
 ルトがリンクの手を取り、ゆっくりと立ち上がる。立ちつくしている。
 リンクは馬鹿丁寧なしぐさで礼をし、黙ったまま、『あちらへどうぞ』とばかり、手で向こう岸への
帰還を勧めた。ルトは何か言いたげに、もじもじした様子で立っていたが、沈黙によるリンクの
拒絶の意思を感じ取ったのか、目をそらし、先に立って歩き始めた。リンクは距離をおいてあとに
続いた。
 ルトが立ち止まってふり返る。リンクも立ち止まる。
 無言のままの対峙。
 ルトは再び向きを変え、先へと歩く。リンクもそれについて行く。
 またルトが立ち止まる。またふり返る。またリンクも立ち止まる。
 やはり無言の二人。
 今度はルトは向きを変えない。そのままで、ぽそりと言う。
「そなた……なぜ……離れて歩く」
 いまさら何を。それが礼儀というものなんだろう、お姫様。
 待てよ。
 いま、ルトは何と言った?……「そなた」?
 はっとして、ルトの顔を見る。
 細められた両の目から、涙が頬を伝って流れ落ちている。
 リンクは混乱した。
 ルトが……あのルトが……
「……わらわを……わらわを……こんな気持ちにさせて……」
 ルトが近づいてくる。顔がゆがんで……くしゃくしゃに崩れて……
「……男なら……」
 目の前に立つルト。ぼくよりちょっと背が高い。そうだ、ルトはぼくより年上だから……
「……男なら……責任を取れ!」
 相変わらずの、傲慢な物言い。それに何の責任だ?
 でも……でも……言葉と裏腹の、このルトの涙は……
「……こわかった……」
 小さく言うと、ルトは声をあげて泣き始めた。声はどんどん大きくなった。しゃくり上げ、
涙が顎からしたたり落ち、それでも泣き声は止まらなかった。
 リンクの胸から、いつの間にか怒りが消えていた。
 ルトはルトなりに必死だったんだ。ぼくがバリネードを倒せたのも、ルトのおかげじゃないか。
ジャブジャブ様の変調に胸を痛めて、何日もみずうみ博士を待って、薬を作れと迫って、それを
ひとりでジャブジャブ様に飲ませて……
 リンクは悟った。
 これがルトなんだ。
 嫌味な口のききかたも、助けてやりたいと思わせる頼りなさも、いまの激しい感情の発露も、
そしてこの清冽な肢体も。全部合わせて、ルトという一人の人間なんだ。
『もう少し大きな目で見てやったらどうじゃな』
 みずうみ博士が言ったのは、こういう意味だったのか。
 ぼくだって……ルトに腹を立てながら、それでもルトを助けないわけにはいかなかった。
どっちもぼくの正直な気持ちだった。
 人というもの。相矛盾する要素の集合体。それを肯定することから、すべては始まる。
 そう、ぼくはルトを受け入れよう。
 リンクはそっとルトの両肩に手を置いた。責任を取ることになるのかどうかはわからなかったが、
それがいまのリンクにできる、精いっぱいの意思表示だった。
 泣きじゃくる年上の少女。
 その肌に触れ、目の前にむき出しの胸と股間を見て、それでもいまはなぜか、あの感覚が
リンクを悩ませることはなかった。不思議に落ち着いた気分だった。
711-10 Ruto I (16/16) ◆JmQ19ALdig :2007/02/04(日) 04:16:07 ID:q9/H959Y
 キングゾーラの指示に従って、ルトはリンクに『水の精霊石』を授けた。深い青紫色の光を
湛える三つの石が、三角形をなして填められた秘宝。ルト自身は『ゾーラのサファイア』と呼んで
秘蔵してきたものだった。
「これはわらわのいちばん大切なもの。粗末に扱うでないぞ」
 王女としての威厳をこめた口ぶりにも、リンクは動じず、率直な感謝の言葉を返してきた。
そんな態度が意外だったが、同時に自分たち二人の絆が感じられて、ルトの心はほころんだ。
「……エンゲージリングじゃからな……」
 ルトはそっとつけ加えたが、リンクの反応は乏しかった。声が小さすぎて聞こえなかったのか。
それとも意味がわからなかったのかもしれない。
『まあ、かまわぬ。これからつき合いを重ねていけば』
 別れの際、リンクの顔には笑みがあふれていた。リンクの笑顔を見たのは、出会ってからそれが
初めてだった。こちらまでが嬉しくなるような、その快活な表情を思い出しながら、ルトは固い
決意を抱いた。
 リンクと婚約した──というルトの告白を聞いて、キングゾーラは驚きあきれ、憂慮するように言った。
「ルトよ……年若いとはいえ、確かにリンクは立派な男。じゃが、彼は大きな使命を負うておる。
お前の婿にとどまることなど、とても期待できぬぞ」
 そして静かに、こう続けた。
「三つの精霊石を求めるゼルダ姫との縁が、彼の運命を決めておる……」
『ゼルダ姫?』
 リンクの運命というのが何なのか気にかかったが、それ以上にゼルダの名がルトを刺激した。
ルトも知っている、その名前。ハイラル王国の王女。全国民に慕われている、美しくも気高い少女。
『ゼルダ姫などには負けぬ。わらわとて王女。それにリンクはわらわのフィアンセなのじゃ』
 リンクの前でわんわん泣いた醜態も忘れ、ルトは自らを奮い立たせた。
 だが、意気だけではどうにもならない。
『めおとの作法を……知っておかねば……な……』
 そうひそかに思い、ルトはひとり赤面するのだった。


To be continued.
72 ◆JmQ19ALdig :2007/02/04(日) 04:17:09 ID:q9/H959Y
ルトは存在自体がエロいはずなのに、話が萌え方面に行ってしまったよ・・・
次はゼルダ再び。第一部完結編。

>>11 すべて回収します。各キャラのフラグ立てが第一部の主眼の一つなので。
>>15 第二部以降は極端な例外を除き寸止めはありません。展開のアヤでエロ無しはあり得ますが。
>>18 おながいします。書き直したい所はいろいろあるけど、いったん投下した限りは・・・
73黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/04(日) 09:16:49 ID:bZ7pdEQ8
今回は迷子にならずにたどり着いたぜ!
よし、いっそ宣言します。
今 日 中 に 投 下 ……したい。
書くって言ってからどれだけの時が……
前スレの最後の方の投下ラッシュはなんか見てて楽しかったです。

あと、ここの小説って任天堂さんになんか言われる可能性ありますか?
どこぞの事例みたくキャラクター使用料だとか。法的な。
さほど無ければ個人的に保管庫作ろうかとも思ったのですが。
74TNT ◆tooysx0RJ. :2007/02/04(日) 11:37:45 ID:m6j6HPlg
>>72
毎度乙です。
壮大なストーリ、是非完成させて下さい。
第二部はエロ多めということみたいなので、wktkして待ってますw

>>73
>あと、ここの小説って任天堂さんになんか言われる可能性ありますか?
ポケモン同人誌事件での任天堂のコメントを見た限り、
ここの小説は同人誌のようにお金を取るわけでもないので大丈夫そうです。
75名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 11:41:48 ID:Em8YzrTS
>>73
>法的
黒ネズミと黄ネズミにはうるさそうだけどな
画像の無断転用とかならまだしも、星の数ほどある二次創作に文句が来るのは稀だと思う
一応『この作品は全て二次創作です、本家とは何ら関わりありません』みたいな旨は書いておいたほうがいいかも知れん
まあ、個人的には保管庫大賛成です

ところで、SSの組み合わせは?
76黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/04(日) 12:07:44 ID:bZ7pdEQ8
TNTさん、>>73さんレスありがとうございます。
ふむ……では本気で検討します。まずはサーバーとかその辺を。探すの楽しみw

今回はリンマロです。なんか犯罪の香りが確かしそうな。
色々考えてもみたのですが、結局マロンに。
JmQ19ALdigさんに影響されてコッコ姉さんとか。
前スレに触発されてリンゼルオカリナプレイとか。
ネタとしてガノン受け(非やおい)とか。
前スレといえば「栗牛乳」って聞いたことあると思ったら私書いたやつのタイトルでしたね。

昼食とエロシーンを目前に、黒空でした。
77黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/04(日) 12:41:21 ID:bZ7pdEQ8
×確かしそうな
○多少しそうな
携帯の長所、たまに短所な予測変換。
78黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/04(日) 16:30:31 ID:+UJGZR0H
静かな朝に響く声音。
その声は猛る悦びを、辛い切なさを謳った。
今日も太陽は襲う。月を追い立て、踏み躙るかのように。

馬を囲む柵に座った少女。
少女の澄んだ声が詞のない歌を紡ぎ、空に消える。
その少女はふとこちらを向くと、明るく顔を綻ばせた。
「あ、妖精クン!」
少女は俺を見て、花咲くような笑顔で手を振った。
俺も、同じく手を振る事でその少女に答える。
「ふふっ、こんにちは!」
その少女――マロンは、くりくりとした大きな瞳で俺を見つめた。
歌声とはまた違う可愛らしい声が耳に心地良かった。
「ああ、こんにちは」
「今日はどうしたの?」
満面の笑みで俺に尋ねる。
じっと見つめると、マロンは多少不思議そうに少し首を傾げた。
この笑みの、この声の、何よりこの少女そのものの。
たぶん、俺は……会った時から虜になっていた。
79黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/04(日) 16:31:32 ID:+UJGZR0H
「ねぇ、ちゃんと聴いてる!?」
「ん? あ、ゴメン」
いつの間にか頬を膨らませて軽く目をつり上げていた。
「ちょっと話があってさ。時間、大丈夫?」
「うん、別に構わないわ。ちょうど退屈してたの!」
また元の笑顔に戻ってマロンは言った。
「陽射しが暑いね……あの辺が良いかな」
そう言って俺は、柵の中、その奥の屋根のある場所を指した。
あそこなら牧草くらいしかないし、何より見通しがきく。
「うん! 早く行こ、妖精クン!」
マロンはそう言うなり駆け出した。
「あ、ずるいぞマロン!」
俺も後を追いかける。
マロンの髪の匂いが鼻をくすぐる。
必死に後を追うが、差は開きもしなかったものの縮まりもしなかった。
……もう少し鍛えた方が良いのかもしれない。
80黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/04(日) 16:32:16 ID:+UJGZR0H
俺は色々な話をした。
幻を見せる砂漠、蒼く輝く洞窟、火山に住まう龍……
そんな別世界のような話を聞かせた。
その実、あいつが居た場合の七年後の、悪夢のようなハイラルの一端を。
驚いたり、目を輝かせたり、怖がったり、マロンは様々な表情を見せてくれた。
「マロン」
そろそろ俺は、一番聴いてほしい話をすることにした。
「なに?」
そう尋ねるマロンの唇を、俺は半ば強引に奪った。
唇を離しマロンを見つめる。
目を点のようにし、呆然と唇を押さえる。
すると見る見るうちに顔が紅くなり、うろたえた。
「なっ……妖精クン! いきなり何!?」
「俺……マロンの事が好きだ」
嘘偽りない、正直な告白。
……さすがに、言ってて恥ずかしい。体温が上昇するのがわかった。
一連のしがらみから解放された、今だからこそ安心して言える事。
81黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/04(日) 16:33:05 ID:+UJGZR0H
口をぱくぱくさせて、恥ずかしそうにうつむく。
俺はそんなマロンを見て後悔しつつあった。
恐らく早計だった。俺は本当に何をしているんだろうと全力で。
「…………………………」
マロンは小さく何か呟いたようだったが、上手く聞き取れなかった。
「え? 何?」
直後、俺の頭を左から右へ抜ける衝撃。
「……もうっ! 何度も言わせないでよ! あたしも好きだって言ったの!」
その声を聞くと共に、少し見えてはいけない世界が見えた気がした。
「……恥ずかしいんだから……」

告白の仮想練習において幾つかの結果が生まれた中で、平手は全くの予想外だった。
俺が原因である事は紛れもない真実、だが結果は良いものと言えるので不問とする。
今後、些細な言葉も聞き漏らさない集中力と聴力の養成を課題としようと思う。
……微妙に気まずい沈黙、上昇し続ける体温に反して、俺は冷静に分析していた。
自分を鎮めようと、必死かつ無意味に。
しかし昂ぶった俺のリビドーは、やはり治まりそうになかった。
82黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/04(日) 16:33:39 ID:+UJGZR0H
もう一度マロンの口を塞ぐ。
今度は舌を伸ばし、マロンの唇をなぞる。
「ひゃ……」
びくりとマロンの肩が上がる。
ゆっくりと唇をこじ開け、歯茎を舐り、舌を絡める。
小刻みに震える肩を抱きしめながら、舌で犯す。
口内を味わい尽くし唇を離すと、銀糸は伸び薄れ消えた。
「……っはぁ」
呼吸を荒げて、陶然と余韻に浸るマロン。
俺を見つめる大きな瞳は、とろりと潤んでいた。
その視線にどきっとしながらもマロンの服をゆっくりと脱がせる。
「妖精クン……」
「ん?」
「……強引……」
「……ゴメン」
少し反省する。反省しつつも手は止めない。
「でも、良いよ。……妖精クンだったら」
その言葉に、僅かに残っていた迷いが吹き飛んだ気がした。
83黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/04(日) 16:34:14 ID:+UJGZR0H
下着ただ一枚だけを残して、マロンの肌は外気に晒された。
未熟だが、明らかに存在を主張する二つの膨らみ。
まだ肉付きの薄い、多少ほっそりとした肢体。
そして何より、未だ陶然とし、紅潮した可愛らしい顔。
はにかみ笑いを浮かべたマロンが、仰向けでこちらを見ている。
まずは、というわけではないが、年齢の割にふくよかな乳房に手を伸ばす。
「っ……」
柔らかい感触が指先を包み込む。
俺の手の動きに合わせて形を変え、ひしゃげていく。
なされるがままのようでありながら、指を押し返す力が心地良い。
その美味しそうな膨らみに、甘くかぶりつく。
ただ柔らかいだけでなく、張りのある乳房。
その右側を揉み、味わった。
程なくして俺は、乳房の先の異変に気付く。
うずもれていたが、わずかに起き上がった乳首。
その可愛い突起を、軽くつねる。
「んんっ!」
マロンの体が跳ねあがった。
84黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/04(日) 16:34:45 ID:+UJGZR0H
そのまま指先でこねくり回す。
強く瞑られたまぶた、その先の睫毛がわずかに震えている。
空気を求めているかのように、口が大きく開かれる。
こねるのをやめると、そこに乳首はぴんと立っていた。
「ははっ、可愛い」
「………」
マロンはちょっとむすっとしながら俺を睨む。
……少し、意地悪したくなった。
「片方だけ立ってるね」
「それは……」
マロンは口を開きかけ、慌てて閉じた。
「それは、何?」
にやりとしながらマロンに問う。
「……妖精クンが片方だけいじるから……」
視線を逸らしながら、困ったようにぼそっと呟く。
「マロン、自分でやってみてよ」
「え!? 嫌よ!」
「そっか……じゃあ今日はもう帰るよ」
「……………」
さっきとは違った沈黙。
85黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/04(日) 16:36:01 ID:+UJGZR0H
「……やるわ。その代わり、その……」
言いにくそうに、言葉を絞り出した。
「もっと……」
内心、どきりとした。

マロンの右手が、左の乳房を揉む。
自分の手を押し付けるように、練るように。
息を荒げながら自らの乳首を摘まみ、捏ねる。
「はぁ……ん………はぁっ……」
手の先でいじられる乳首も、次第に存在を主張する。
心なしか早く、二つの突起は揃い立った。
マロンがいじっていない右側の乳首を、舐める。
「あ……」
甘噛みしながら、さらに舐る。
「んぅぅっ!」
乳房とはまた違った弾力、味が俺を魅了する。
ちろちろと小刻みに舐め、マロンの反応、歌声を楽しむ。
「や………ぁ……ん……」
それはそれはしつこく、丹念に。
86黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/04(日) 16:36:36 ID:+UJGZR0H
涙目でマロンが訴える。
「あの……妖精クン」
「どうしたの?」
「あたし、もう……」
マロンが視線を下に落とす。
その先を追うと、濡れて肌に密着し、布越しにも形がわかる割れ目があった。
実は最初から気付いていた。
脱がせた時にはもう、下着は湿っていた。
「良いの?」
暗にマロンに尋ねる。
マロンは控えめに、こくりと頷いた。
そっか、と俺は小さく返し、そこをいじることにした。
下着の上から、舌を這わせる。
多少の匂いが嗅覚を刺激する。
布越しに舌を突き入れ、割れ目を擦る。
「形、わかるよ」
「やぁ……言わないで……」
それから俺は自分の下着を下ろし、硬くなったものを取り出す。
87黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/04(日) 16:37:07 ID:+UJGZR0H
マロンの脚を上げて、上に覆い被さる。
そして竿を……下着の上から擦りつけた。裏筋が生暖かい下着に包まれる。
下着なだけあって良い肌触りと、ぬめぬめとした潤い。
腰を動かし擦りつけるごとに、俺のものはさらに硬くなっていった。
自分の腹とマロンの割れ目に挟まれ、圧力と下着の質感を楽しむ。
「妖精くぅん……」
ひどく切なげな上ずった声で、マロンは訴える。
「もう……耐えきれないよ……」
「じゃあ……そろそろ、しよう」
四つん這いになるよう促し、マロンはおずおずと従った。
肘と膝を曲げて地につけ、尻を天へと突き上げている。
股の間から、不安そうに俺を見る。
「これで……良いの?」
俺が肯いた……その時だった。

「タロンのダンナ! ……まぁた寝てやがる。グータラってレベルじゃねぇぞ!」
インゴーの怒声。牧場どころか平原中に届いたかもしれない。
マロンははっとして顔を上げ、焦ったように言う。
「そういえば、お父さんもインゴーさんもいるわ!」
ついでに言うならば、牧場の入口から真っ直ぐ先を見ると、ここが見える。
馬の柵は牧場のほぼ真ん中にあり、さらにその奥がここである。
88黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/04(日) 16:37:40 ID:+UJGZR0H
「構わないさ」
そう言って俺はマロンの下着をずり下ろす。
マロンの尻を掴み、いきり立った陰茎をマロンの割れ目に宛がった。
「ダメよ、妖せ……んんっ!」
少しだけ、俺はマロンの中に侵入する。
こちらを見るマロンは涙目だ。
「もっと叫んでもいいよ」
「やあっ……!」
例えばこれは……そう、これは交尾だ。
自分に強く言い聞かせ、一気に侵入する。
「らめぇ……らめなのおぉ……」
そうでもしないと、決意が鈍ってしまいそうな気がするから。
マロンはがくりと顔を伏せた。
膣壁に、襞に、子宮口に陰茎を擦りつける。
「あっ……」
痛みは引けないようだが、多少は和らいだのだろうか。
次第に上り詰め、腰の動きを激しくする。
「ん……」
熱い膣に、自分のものが半ば溶かされているかのよう。
「お父さんっ……来ちゃう……からあぁぁっ……!」
びくっとマロンの体が震える。
強い締め付けが俺を襲い、果てた。
89黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/04(日) 16:38:10 ID:+UJGZR0H
マロンの中に精液がドクドクと注ぎ込まれる。
溢れ出た精液が、どろっとこぼれて地に落ちた。
「はぁっ……はぁっ……」
朝露を押しのけて、精液は一面の緑を白く濁す。
赤い血と混ざった、白が。
「妖精……クン……」
「……ゴメン」
目のやり場に困って空を見上げた。
けれど屋根しか見えない。当然だ。
「違うの。……気持ち、良かった?」
冷静を装いはしたものの、結局は情動のままに行為をした。
そんな俺を……心配してる?
「……もちろん、気持ち良かったよ」
「そっか。……もちろんって付くと何だかやらしいなぁ」
いつもと変わらない笑顔が、逆に心に痛かった。
俺の内心を見透かしたように、マロンは言った。
「大丈夫。言ったでしょ? あたしも好きだって」
90黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/04(日) 16:39:21 ID:+UJGZR0H
とりあえずは、それでいいのだろうか。
マロンが納得しているのならば、それで。
そう思うと、視界が開けたような気がした。

「おーい、マローン! そろそろ牛乳届けに行くだよー」
……しまった。
「……お父さん!? あー……早く服着ないと!」
そう言い、濡れた下着を履き、服を着て整える。
「マロン。やっぱり、ゴメン……」
濡れた下着を履くのはさぞ気持ちの悪い事だろう……
「良いの! あ、その代わり……」
マロンは駆け出して、こっちを振り向いた。
いたずらを思いついたように笑うと、大声で言った。
「後で色々手伝ってもらうからねー! 仕事とか、せ・ん・た・く・とか!」
やっぱり気持ち悪いんだ……本当に、ゴメン。
「背中も流してもらおうかしら?」
……これは挑発と取って良いのだろうか?ちょっと前言を撤回したい。
91黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/04(日) 16:40:36 ID:+UJGZR0H
携帯からここを見れると知ったのは割と最近だった。
知った以上は鬱陶しいくらいマメに参加していこうと思います。
最低一日一回はのぞく方向で!場合によってはレスもする方向で!
寝る前に気軽に見れる、っていう点で携帯は良いと思う。

tokaさんを蝶・一方的にリスペクトする小説。
舐める(なめる)より舐る(ねぶる)の方がエロい気がする。
てかこれもしや暴挙?とりあえず実用に耐えられれば幸いです!

一週間くらいまえからトワプリやってます。GCにて。
これから三つ目の結晶石です。その前に精霊の泉探し。
ミドナ様が素敵過ぎます!早くアゲハさんとかにも会いたい。
92名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 22:15:00 ID:m6j6HPlg
黒空さん、GJです。
もう詩の域ですね。読んでいて何故か心地が良いですw
それと、保管庫楽しみに待っています。

身に覚えのないアク禁のせいで携帯から失礼しました。
93名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 00:36:11 ID:k7kKMqcm
>>91
こういう事あんま言いたくないけど敢えて言う

SS自体は良い出来なのにその後の痛々しい文章で台無しになってる
94黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/05(月) 02:06:24 ID:zuHYB3R1
>>92さん
ありがとうございます!詩ですかー……とても嬉しい喩えですw
保管庫も予定とか立てとかなきゃまた数ヶ月経ちそうだな……早めに動こう。

>>93さん
私が痛々しいのは仕様なので、これに関しては仕方ないと思って頂くしか……
とはいえあまりに不快を煽るようなので、私は善処しなければいけない。
95名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 21:24:30 ID:WEiPTvMo
>>18だが、未だ保管依頼できていなくて申し訳ない。
先日依頼しようとしたらどうもNGワードに引っ掛かったようなのですが、
どの言葉がいけなかったのか分からなくて…orz
もしどんな言葉がNGになるか分かる方いらっしゃいましたらアドバイスお願いします。
それから◆JmQ19ALdig様にお伺いしたいのですが、
一番初めに投下されたマロンが出てくるプレストーリーは如何致しましょうか?
後で長編の中に挿入されるんですよね?
でしたらその旨を書いて依頼すべきなのか、
或いはまた同じものを後で投下なさる予定で、自分はその分を抜いて依頼すべきなのか…。
お手数をおかけしますが、できればお返事願いたいです。
96 ◆JmQ19ALdig :2007/02/06(火) 01:44:32 ID:8J+BZKgq
>>95
お気遣い感謝します。
あのマロンのプレストーリーの内容は、この先、今の長編の一部として挿入されます。
その際には続けて読んで戴きたいですし、それまでの展開に応じて書き直しも必要になりますので
改稿のうえ決定版として再投下しようかと思っていました。
ですので、前スレの分については、保管依頼から外して戴いて結構です。
住人の方々に再投下を許して戴けるのであれば、ですが。
97名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 22:27:31 ID:f24nbHXB
大妖精様が時オカ→トワプリであれほど変化したのは驚きだった。勿論良い意味で。
いや、時オカのもいいけどね。

>>96
許可なんか要らんですよ。続きを待つのみです。
98名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 01:47:21 ID:OKj5Ln+Q
トワプリに大妖精なんていたけ?
99名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 02:11:50 ID:eB6rAf9b
試練の洞窟に居るじゃないか
100名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 04:51:57 ID:tNANT4o/
大妖精は可愛くなったけど、バタ臭さが格段にアップしたな。
10195:2007/02/07(水) 05:00:06 ID:e6ezbCIT
>>96
早々の御返答有難うございます。了解致しました。

保管依頼してきました。NGワードの方も何とか…。
大変遅くなってしまい、申し訳ございませんでした。
102名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 11:07:31 ID:2pZFoUES
>>100
うん自分も初めて見た時
なにこのメリケン少女とか思った
103名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 21:18:44 ID:rrQyJB/0
高飛車からおっとり、グラマーからやや貧乳に・・・

時系列は時オカ→トワプリでおkだとして、間に何があったんだ?
104名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 23:02:41 ID:Iuf0jYFo
きっと二代目なんだろうな
105某パクリ絵師tokaさn:2007/02/07(水) 23:32:59 ID:ATj37KLa
なんか書き込めなかったので今更になりますが、
JmQ19ALdigさんのSSが毎回楽しみで、今回のルト編の
ルトのお姫様ぶりがなんともいえなかったw
△Cでずっとルトをアップで見てた頃の記憶が蘇りましたねww
俺の周囲でそんなことやってるヤツは多分居なかったと思いますw
あとルトを投げた時の声がエロいとかね。えぇ、変態でしたよ。

>黒空さn
エロかった。途中からニヤニヤが止まらなかったのがその証拠。
そうなんですよ。
俺の中ではリンクは「結構そっち系に関して知ってるヤツ」なんですよ。
野外&人がいつ来るかわからないシチュエーションとか
「お前ら何歳なんだよ」って感じのところが素晴らしかったw
えぇ、ツボでしたよ。

あと名無しさん@ピンキーでSS投下しているSS師様は名前変えて欲しいという密かな願い。
いやいや皆さんGJですよ。
106名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 03:11:46 ID:zt5rzgIy
>>72
亀レスですが、全裸の少女(しかも生えかけ)と一緒に冒険というのは
超ツボだったので(;´Д`)ハァハァさせて頂きますた。

ルト姫がジャブジャブ様の体内でぬるぬるするシーンや
ひざを抱えたルト姫さまをリンクが頭上に抱え上げるシーンも見たかったです(;´Д`)ハァハァ
107名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 18:16:27 ID:N6ZwuNSE
>>106
そして敵に投げ付けられたりスイッチの重しにされたりするんだな?

>>105
女性キャラがいたら「C見渡す」 常識だろ
例えばアッシュとか尻とか
108名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 03:49:53 ID:lipfMQPh
時オカで大人時代にルト姫やサリアやマロンやゼルダを落としまくったリンクが
子供時代に戻ってきてから、

体は子供、心は(性的な意味で)大人な知識を悪用し、
まだあどけないヒロイン達の青い肢体を、その時点では本人さえ気づいてないが
大人時代のリンクは知りつくしている性感帯を責めまくって
子供同士なのに大人顔負けのハードなセクロスで
全員腰が抜けて立てないほどイき狂わせるところを想像しておっきした。
109名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 15:17:14 ID:IHXaeddL
まさか彼女達は7年後の自分が教えた技を使ってイかされるとは思ってもみなかっただろうな。
110名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 18:57:35 ID:pba4PRgV
7年後リンクはまだ17〜8なのに…
一体どんなテクを使うんだ
111名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 20:01:01 ID:zMQjEeoI
ハートのかけらそっちのけで別のハートのかけら(性的な意味で)集めに励んでいた
とすればどんな性豪でもおかしくない。

とか考えてたら、セクロス中腰を振ってる間ハートが減りつづけるが
ヒロインが逝くとハートを3つ出すので、弱点にロックオンして責めまくり
早めに至らしめれば永久にセクロス可能とか想像しちゃった
112名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 22:41:12 ID:A6rpjE9o
ドサンコフ夫妻を見る限り正しい考察だな
113 ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:38:33 ID:6QhCSwKt
時オカ/ゼルダ編その2、投下します。
エロは前半に少しだけ。最後2レスにちょっとグロあり。
1141-11 Zelda II (1/19) ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:39:58 ID:6QhCSwKt
 つけられている。
 しかし、こっちがそれに気づいていることを知られてはならない。
 リンクは背後に神経を集中させながら、歩調が変わらないよう注意した。
『炎の精霊石』に続いて『水の精霊石』も無事に手に入れ、ゾーラの里からハイラル城へと、
平原を横切る最短の経路をとって急ぐ旅の途中だった。いまは三日目の夜。夜通し歩けば、
夜明けまでにはハイラル城に着けるはずだった。
 だが、平穏無事というわけにはいかなくなったようだ。
 リンクはちょうど、道の両側に数本の木が集まった、見通しの悪い所にさしかかっていた。
すばやく道をそれ、木の陰に隠れる。
 一分も経たないうちに、リンクが来た方向から足音が聞こえた。
 二人……いや、三人か……
 リンクが隠れている木の前を、小走りの足音が通り過ぎた。
 さらに一分ほど待って、物音がしないのを確かめてから、リンクはそっと道に戻った。
「あ!」
 声がした。
 しまった! やり過ごせていなかった!
 一人そこに残っていた。かろうじて身体の輪郭が見えるが、風貌まではわからない。
 剣を鞘から抜く音。つつ……と近づく気配。
 リンクは落ち着いていた。引きつけておいて、デクの実を放つ。
「うぁ!」
 閃光に目をくらまされ、リンクに迫っていた人影は棒立ちになった。光の中にその姿がさらされる。
 これで数分は目がきかないはずだ。逃げ切れる。
 が、そうはいかなかった。前方から二人分の足音が聞こえた。先に行った二人が戻ってきたのだ。
リンクは再び横の木の陰に飛びこんだ。
 じっとしているわけにはいかない。いまここに隠れたのは悟られているだろう。
 リンクは腰の袋に手を伸ばした。中身は爆弾。ゴロン刀とともに、ゴロン族の特産品の一つ。
ゴロンシティを去る時、旅に役立てろと言ってダルニアがくれたものだ。通常の爆弾は持ち歩くには
重すぎたが、ダルニアは携帯用の小型爆弾をいくつか渡してくれたのだ。
 目がくらんだ仲間の所まで、二人が戻ってきた。爆弾を取り出し、点火する。わざと音を立てて、
道とは逆方向へと後ずさる。
 二人はこちらへ踏みこんできた。ぴったりのタイミングで爆弾が爆発した。
「あぅッ!」
「ぐぁッ!」
 二人分の悲鳴を聞きながら、リンクは木の後ろを回って、離れた所から道に戻った。
 小型爆弾の威力は小さい。しかし足止めには充分なだけの怪我は負わせられただろう。
 リンクは走った。背後から追ってくる気配がないことがわかっても、リンクは速度をゆるめず
走り続けた。
 なぜ自分が襲われたのか。理由は明らかだ。
 三つの精霊石。
 追っ手の正体がわからないうちは、剣を抜きたくなかった。それでデクの実を使ったのだが……
閃光の中に浮かび上がった姿──女戦士──それはインパに聞いていたゲルド族に違いなかった。
ガノンドロフが放った刺客だ!
 それがわかったからには、もう彼女らを相手にしている暇はなかった。
 ついにガノンドロフが牙を剥いたのだ。一刻も早くハイラル城に戻らなければ。
『ゼルダ……』
 心に暗い影が差す。それを振り払うように、無事でいてくれ、と強く念じながら、リンクは
一散に道を駆けていった。
1151-11 Zelda II (2/19) ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:40:52 ID:6QhCSwKt
 ゼルダは湯の中で身を伸ばした。
 伸ばしてもなお格段の余裕がある、大理石の床に掘られた浴槽。それだけで一つの部屋ほどの
広さだ。泳ぐことだってできる。三十人は楽に入浴できるであろう、その浴槽につかっているのは、
いまはゼルダただ一人だった。
 浴槽の壁側には、熱に強い植物が植わった自然の岩が積まれ、そのすき間から絶え間なく湯が
浴槽に注いでいる。城の背後の山々に続く活火山、デスマウンテンの恵みによる温泉だ。
 浴室全体はさらに広く、浴槽の部分の五倍はあった。一方の壁には、浴室には不似合いな、
横に長い大きな窓があり、曇り止めのガラスを通して戸外に臨んでいる。日中であれば、
ハイラル平原の雄大な風景を眺めることができた。
 浴室は城下町をめぐる城壁の最外層に面しており、またかなり高い場所にあって、外からは
浴室の中が見えないよう、入念に設計されていた。
 城下の西縁にある王家の別荘はゼルダのお気に入りで、月に一度は訪れることにしていた。
その最大の理由が、温泉と展望を享受できる、この浴室だった。日が落ちてしまったいまは、
風景を目にすることはできないが、そのかわり、浴室内の照明を落とせば、無数の星にあふれた
夜空が見える。
 だが、いまのゼルダには、夜空を楽しむ心の余裕はなかった。
 二つの精霊石を求めてリンクが旅立ったあと、ゼルダの生活に変化はなかった。日々は穏やかに
過ぎていくようにみえた。しかし計画発動による緊張は、常にゼルダを捕らえて離さなかった。
気晴らしになるかと思って、いつものようにこの別荘を訪れてみたのだが、緊張は去っては
くれなかった。
『リンク……』
 心を占めるのはそのことだった。
 リンクが城を出発してから、もう三週間近くになる。その間、リンクからは何の連絡もなかった。
連絡を約束していたわけではないし、また、連絡がないからといって、リンクが危地に陥って
いると決まったわけでもない。むしろ、リンクの活動が順調に進んでいることを意味するとも
いえる。が、リンクがいま、どこで何をしているのかがわからない、ということが、大きな心の
揺れをゼルダにもたらすのだった。
『待つしかない』
 そう自分に言い聞かせる。同じ思考を何度も繰り返し、そのつど帰着するのはその一点だった。
 リンクは、すべての精霊石を手に入れない限り城へは戻るまい、と考えているのだろう。
それほどの強い意志を持ったリンクであって欲しい、とわたしも思う。感傷的な心の揺れなどに
捕らわれていてはいけない。
 それでも……
 リンクの顔が目に浮かぶ。その衝動で、手が思わず、下へと伸びる。
 単なる感傷とは異なる、もっと大きな心の揺れを、感じないではいられない。
 予知。
 リンクと出会った日の夕刻、リンクと一緒にいた時、予兆の星によって喚起された、あの予知。
 わたしはそれに従った。後悔はしていない。あれは絶対に必要なことだった。
 なぜ必要だったのか。インパに言ったように、その理由は、わたしにもわからない。予知は
そこまで語ってはくれない。けれども、そうしなければならなかったということに、わたしは
絶対の確信を持っている。
 それをリンクにさえ告げてはならないということにも。
『切り札』
 ゼルダの胸に浮かぶ、一つの言葉。
 そうなのだ。いつかは切ることになるであろう、切り札なのだ。
 でも……これは……
 もっと大きな心の揺れ。
 これは結局、リンクを手段として用いてしまったことになるのではないか。わたしはリンクを
信じていないことになるのではないか……
『違う!』
 ゼルダは激しく首を振る。
 わたしは信じている。わたしはリンクを信じている。にもかかわらず、わたしはそれをリンクに
告げることはできなかったのだ。それもまた、予知の一部であったから。
 理由があるはずだ。いまはまだわからない、何らかの理由が。
『いつか、わかる』
 ゼルダは再度、自分に言い聞かせる。
1161-11 Zelda II (3/19) ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:41:59 ID:6QhCSwKt
 いつかリンクにすべてを話せる時がくるだろう。その時までは……
 そう、リンクが三つの精霊石を手に入れてここへ戻ってきたら、そしてガノンドロフを倒す
ことができたら、その時こそ、わたしは……
『リンクに会いたい……』
 さっきとは違った衝動に突き動かされ、ゼルダの指はそこに触れた。
 その目的で触れるのは、初めてだった。
 自分の中で蠢く何か。殻を破って外に出たいと悶える何か。
 その正体を見極めようと、その衝動に身を任せようと、目蓋を閉じかけた、その時。
 窓の外に輝く星の光が、ゼルダの網膜に像を結んだ。
 そこにひときわ大きく光る、あの星は……
『来る!』
 予兆の星に刺激された、あの感覚が、一つの概念を生み始める。
 予知。新たな予知。
 なぜいまここで?
 思う間もなく、それは具体的な文言となってゼルダの脳に到達した。

 タダチニ 『トキノおかりな』ヲ りんくニ ワタサネバ ナラナイ

 リンクに? 『時のオカリナ』を?
 なぜだろう。わからない。でも、わたしの予知は、はずれたことがない。それに……
「直ちに」
 この切迫した言葉の意味は何だろう。それは……
『危険!』
 間近に迫るそれを、ゼルダは感得した。
 一刻の猶予もならない。
 ゼルダは瞬時に行動した。浴槽から飛び出し、浴室から脱衣所に走り出、身体も拭かず、何も
身につけないままで、隣の部屋へと駆けこんだ。
 城の中であれば、入浴中でも複数の侍女が控えている。しかしこの別荘へは、特にお気に入りの
侍女を一人連れてきただけだ。そして自らの入浴中、ゼルダは彼女に数刻の暇を与えていた。
部屋には誰もいない。
 ゼルダは荷物の中にひそませた『時のオカリナ』を手に取った。リンクが出発して以来、常に
肌身離さず持ち歩くようにしており、今日も別荘まで持参してきたのだ。
 それをリンクに渡す意味を、すでにゼルダは理解していた。
 全身が濡れていることに初めて気づき、近くのソファの布ですばやく手をぬぐう。文机の
引き出しから紙を取り出し、机の上にあったペンを持つ。
 リンクに何を知らせなければならないか。
 ゼルダは全速力で頭を回転させ、必要な情報ともに、リンクへの呼びかけを走り書きで
したためていった。
 書き終わると、その手紙と『時のオカリナ』を持って、ゼルダは脱衣所へと戻った。部屋との
間のドアに鍵をかけることを忘れなかった。
 身体を拭きながら、ゼルダの頭は次の課題を追った。
 どうやってリンクに渡せばよいか。
 のんびりとリンクを待っている余裕はない。とはいえ、居場所もわからないリンクを、
こちらから探しに出てゆくこともできない。
『インパがいてくれたら……』
 ゼルダは後悔した。インパはゼルダについて別荘に来る予定だったが、城で外せない用件が生じ、
到着が翌朝に遅れることになっていた。別荘訪問そのものを翌朝に延ばしたら、とインパは
勧めたのだが、ゼルダはさほど気にもせず、単独行動をとることにしたのだった。別荘まで
ついてきているのは、侍女と料理人が一人ずつ、それに護衛の兵士が十人だけだった。他には
別荘番を兼ねた馬丁がいるきりだ。これほどの重大事を、彼らには頼めない。
 明日の朝、インパがここに来るのを待つしかない。
 入湯後の身体が冷えてしまうまで熟考した結果、ゼルダはそう結論した。
 バスローブを羽織り、タオルで髪を包む。手紙を細く折ってオカリナに結びつけ、それを
ポケットに落としこむ。
 結論はしたが、不安は去らない。
 部屋へのドアを開く。その瞬間、ゼルダは予知が早くも的中したことを悟った。
 ガノンドロフがそこにいた。
1171-11 Zelda II (4/19) ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:43:09 ID:6QhCSwKt
 とっさに思ったのは、さっき裸でこの部屋にいたのを見られただろうか、ということだった。
 そのはずはない。部屋が無人だったのは確かだし、窓のカーテンは引いてある。いまは
開け放たれている廊下との間のドアは、先刻は──鍵はかけていなかったが──しっかりと
閉じられていた。
 だが安心などできない。いまも状況はほとんど違わない。バスローブの下は素裸なのだ。
 襟もとを手で握る。同時に自らを叱咤する。
 何を些末なことを考えているのか。
 問題は『時のオカリナ』だ。それがいま、バスローブのポケットにあることを、絶対に
気取られてはならない。
「じかにお話しできる機会を得られて光栄です」
 ガノンドロフが言った。
 丁寧な台詞とは裏腹に、態度は尊大だった。ソファに深く身を沈め、足を組み、薄笑いを
浮かべてこちらを見ている。ハイラル城におけるこれまでの従順さは消え失せていた。
「こちらの都合も聞かずに訪ねるとは無礼でしょう」
 ガノンドロフの言葉に直接は答えず、ゼルダは努めて厳しい声を出した。声が震えないよう、
気力を奮い起こした。
「ご叱責、身にしみます」
 謝罪めいた言葉を口にしながら、態度は全く変わらない。明らかにゼルダを揶揄し、なぶろうと
している。
「出ておゆきなさい」
 ゼルダは声にさらに力をこめた。ガノンドロフは動じなかった。
「気のお強いことだ」
「人を呼びますよ」
「ご随意に」
 その時点で、ゼルダは初めて気がついた。呼んで人が来るくらいなら、ガノンドロフがこの
部屋に入ってこられるわけがない。ということは、すでに侍女や護衛の兵士たちは……
「たれか!」
 呼ばずにはいられない。が、応える者はいなかった。
 なぜガノンドロフが廊下へのドアを開け放したままでいるのか、なぜ容易に自分の姿をさらす
危険を甘受しているのか、ゼルダは初めから疑問に思っていた。答は実に簡単だった。何の危険も
ないからだ。
1181-11 Zelda II (5/19) ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:43:58 ID:6QhCSwKt
「無駄だ」
 敬語が省かれた。短い言葉だったが、そこにひそむ冷酷な色が垣間見え、ゼルダの背筋は凍った。
「『時のオカリナ』を渡せ」
 やはりそれが目的。しかしそれだけだろうか。
「そんなものは知りません」
 否定するしかない。が、ガノンドロフの表情は変わらない。見透かされている。
 それに……わたしを見る、その目。そこには……拝謁の場で感じたのと同じ……爛々と燃えさかる
醜悪な欲情が……
 犯される。わたしは犯される。
 ゼルダは恐怖した。
「その目だ」
 いたぶりの声。
「その恐怖を待っていたぞ」
 口の端が吊り上がる。残酷な笑いが湧き上がる。ついに全貌を露わにした、その本性。
 ガノンドロフがゆっくりとソファから立ち上がる。ゼルダは一歩、後ずさる。
「抵抗しても同じことだ。ゼルダ」
 その呼びかけに、身体がぴくんと反応する。
「結局、オカリナは俺が手に入れることになる」
 ──わたしをそう呼んでいいのは、お父さまの他には、ただ一人だけ。
「だから先にオカリナを渡せ。そうすれば……」
 ──リンク、あなたの勇気をわたしに……
「心おきなく、お前を味わえるからな……」
 ──たとえここで散ろうとも、ハイラル王女としての矜持は捨てない。
「控えよ! 下郎!」
 ゼルダの口から激しい罵倒がほとばしり出た。ガノンドロフの顔から笑いが消えた。かわりに
噴き上がる憤怒。
「小娘が!」
 ゼルダは廊下に続くドアへと身をひるがえした。しかしわずかに遅かった。ガノンドロフに
片腕をつかまれ、ぐいと引き寄せられる。床に組み伏せられる。バスローブの前がはだけ、
胸元がのぞく。
 かまわない。『時のオカリナ』さえ見つけられなければ。でも……
 このまま犯されたとして、そのあとは……わたしは命を保てるだろうか。保てなければ、
オカリナは……
 ガノンドロフの顔に、再び酷薄な笑いが満ちる。手がバスローブの紐を解き放つ。ゼルダの
すべてが露呈されようとした、その瞬間。
 ガノンドロフが横へ飛びすさった。同時にその場所を凄まじい風が舞った。
 戸口に剣を払ったインパが立っていた。
1191-11 Zelda II (6/19) ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:45:13 ID:6QhCSwKt
 インパの剣は、直前にそれを察知して身をかわしたガノンドロフには届かなかったが、ゼルダを
自由にするだけの時間は確保した。ゼルダはインパの足元へと転がり、身を起こした。
 剣を構えるインパに対し、ガノンドロフには応戦の方法がなかった。剣をソファの横に放置して
いたからだ。顔が怒りのために醜く引きつっていた。
「浴室へ」
 インパはゼルダにささやき、同時にガノンドロフめがけて煙幕玉を放った。
「うぉッ!」
 噴出する黒煙にガノンドロフが怯む。開いたままの脱衣所へのドアへとゼルダは走り、
すぐあとからインパも飛びこむ。即座にドアを閉め、鍵をかける。脱衣所にある家具や品物を、
手当たり次第にドアの前に積み上げる。外から荒々しくドアが乱打されるが、これで少しは時間が
稼げるだろう。
「どうしてここへ?」
「あとです」
 ゼルダの問いをインパは封じた。脱出することが先決だ。
 別荘へ行くゼルダを見送ったあと、城中で所用を片づけながら、インパは嫌な予感に襲われた。
ガノンドロフの姿が見えないのだ。ゲルド族の宿舎の様子をうかがうと、そこにもほとんど人が
いない。用事を放り出し、馬で別荘に駆けつけた。玄関前にたむろしていたゲルド族の包囲を
破って中に入りこみ、インパはゼルダの危難を救うのにぎりぎり間に合ったのだった。
 脱衣所に残されていた衣服をゼルダに渡し、しかしそれを着る暇も与えず、インパはゼルダを
浴室内に追い立てた。窓に駆け寄り、剣でガラスを割る。すき間からゼルダを押し出し、続いて
自分も外に出る。インパはゼルダを抱き、狭い窓際の縁を走った。窓を掃除する使用人のための
通路だ。複雑に折れ曲がった通路をたどり、インパは地面に到達した。ゼルダに服を着るよう
指示すると、インパはこれからの方策をすばやく考えた。
 たどってきた通路をふり仰ぐ。
 ドアを破って浴室に入ってきても、あとは細く狭い通路。しかも夜の闇の中だ。土地勘のない
ガノンドロフは、ここを追っては来られまい。だがすぐに玄関へ回るだろう。
 一刻も早く城へ戻らなければならない。そのためには馬を確保しなければ。乗ってきた馬は、
ゲルド族のいる玄関前に乗り捨ててきてしまったが、この別荘には馬小屋がある。
 着衣したゼルダを連れて、インパは馬小屋へと急いだ。駿足の白馬を選び、手早く馬具を装着する。
 馬を外へと引き出すと、玄関の方からどよめきが聞こえた。
 インパは疑問を感じた。ここへ来た時、玄関前にいたゲルド族は十人足らずだった。ところが
いまの様子では、その倍以上いるように思われる。そもそもガノンドロフについて城に来た
ゲルド族は十人だったはず。その人数が増えているとは?
 そもそも、王家のお膝元であるこの町で孤立していると言ってよいガノンドロフが、これほどまでに
大胆な行動に出たのはなぜだろう。人に知られれば即座に身の破滅になるような暴挙だ。
 何かある。ゲルド族の人数が増えているのは、それに関係があるに違いない。
 それが何かはわからない。ただ現時点で確実なのは、このまま玄関前を突破して城へ戻るのは
困難だろう、という点だった。そうなると……
 馬小屋の近くの城壁には、遠乗りのために直接ハイラル平原へ出て行ける、王家専用の門が
設けられていた。そこからいったん平原に出、外を回って正門から再び城下に入るしかない。
 インパは門の扉を開けた。その時にはもう、こちらの存在に気づかれていた。
「あそこだ!」
「追え!」
 興奮した声が飛び交っている。馬で追ってくる気配もある。
 白馬にゼルダを乗せ、自らもその後ろに跨る。即座に拍車を入れ、門をくぐり、インパは
急速力で夜のハイラル平原へと馬を駆りだした。
1201-11 Zelda II (7/19) ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:46:04 ID:6QhCSwKt
『まずい』
 ゼルダとインパの乗った白馬を単騎で追いながら、ガノンドロフは歯噛みした。
 反乱を起こす。ゼルダから『時のオカリナ』を奪う。リンクから三つの精霊石を奪う。この
三つは、ほぼ同時に行わねばならなかった。が、誤算が重なってしまった。
 第一はリンク。あの小僧だ。
 キングドドンゴが倒されたのを察知した時点で、ガノンドロフはゲルドの砦にいるツインローバに
使いを出し、反乱軍の出発を促していた。しかしリンクは、反乱軍の動きをはるかに上回る速さで、
バリネードまで倒してしまった。リンクはすでに三つの精霊石を持っている。このままハイラル城へ
戻られてはならない。だが反乱の火の手を上げるにはまだ早い。すでに仲間を少しずつひそかに
城下へ忍びこませ、手元の人数を増やしてはいるが、決起するにはどうしても本軍の到着を待つ
必要がある。リンクには刺客を放っておいたが、成功するどうかはわからない。そのため、
ゼルダから『時のオカリナ』を無理にでも奪い取るよう、行動しなければならなくなった。
 第二の誤算はインパだ。
 ゼルダが別荘を訪れる。しかもインパは一晩不在。隠密組の活動で得たこの情報は、窮地の
ガノンドロフを喜ばせた。リンクの帰還までに、という切迫した状況で、それは絶好の機会だった。
ゲルド族を引き連れて秘密裡に別荘を襲い、お付きの者全員を片づける。常に持ち歩いているで
あろう『時のオカリナ』をゼルダから奪い、そして永久に口を塞ぐ。その新鮮な肉体を蹂躙した
あとで。事件はすぐに知られるだろうが、自分たちの仕業であるという証拠さえ隠してしまえば、
反乱軍の到着まで白を切って時間を稼ぐことはできる。武芸の達人である護衛役のインパさえ
いなければ、ことは容易のはずだった。が、インパが予定外の時刻に出現したことで、『時の
オカリナ』の奪取に失敗したばかりか、反乱計画そのものが崩壊の危機にさらされてしまった。
 このままゼルダとインパが城に戻ってしまったら終わりだ。自分の行動は言い訳できない。
絶対に阻止しなければ。
 城壁の外縁に沿って、ガノンドロフは漆黒の馬を駆る。
 二人の乗った白馬はまだ見えない。だが行く先は明らかだ。城へ戻るためには正門から城下に
入るしかない。正門にはゾーラ川に架かる跳ね橋があり、夜間は橋が上がっていて通行できない。
橋を下ろさせるにしても時間がかかるだろう。その時間が頼みの綱だ。
 ガノンドロフは焦燥に駆られつつも、自らの命運を握る二人に向け、心の中で牙を研いだ。
1211-11 Zelda II (8/19) ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:47:00 ID:6QhCSwKt
 全力で疾駆する白馬の激しい振動に、ゼルダは必死で耐えていた。振り落とされないよう、
馬の背にしがみついているのが精いっぱいだったが、それでも心には安堵感があった。
 無事だった。『時のオカリナ』も、わたし自身も。
 それでも危機は去ったわけではない。何としてもガノンドロフの追撃を振り払わなければ
ならない。そしてあの予知に従い、リンクに『時のオカリナ』を渡さなければ。
 服の隠しに移した『時のオカリナ』の、物理的には小さな、しかし意義的には限りなく大きな
重みを感じながら、ゼルダはインパの御す馬の疾走に身を任せた。
 やがて馬は城下町の正門前に到達した。
「橋を下ろせ! 開門せよ!」
 インパが叫ぶ。数度それを繰り返したのち、門の上に番人の姿が現れた。
「夜は通れない。朝まで待て」
 番人は職務に忠実だった。
「ここにおわすは王女、ゼルダ様だ! 賊に追われている! 早く橋を下ろせ!」
 門の上が騒がしくなった。数人の人影が慌ただしく動き、火が焚かれた。川べりを照らす
その光の中で、ゼルダは自らの姿が明らかとなるよう、馬上で身を伸ばし、胸を張って、門の方に
顔を向けた。
 門の上でひとしきりざわめきが続いたあと、番人は言った。
「城に確かめる。それまで待て」
 王女が城外にいることに疑問を持つのは当然だ。その警戒ぶりは見上げたものだ。だがいまは
そんなことを言ってはいられない。
 背後からかすかに馬蹄の音が聞こえてきた。敵が追ってきたのだ。
「ちッ! 間に合わん!」
 そう小さく吐き捨てると、インパは馬首を東にめぐらし、ゼルダにささやきかけた。
「カカリコ村へ行きます。あそこなら……」
 インパは言葉を切った。東の方向を凝視している。ゼルダにもわかった。その方向からも馬の
駆ける音が聞こえてくる。元の方向からの追っ手も近づいてくる。
「はさまれたか」
 再びインパは馬の向きを変えた。南。その方角しかない。
「やッ!」
 掛け声とともにインパが馬に拍車を入れる。馬は大きくいなないて南へと駆け出す。
 その時、ゼルダは見た。
 左前方から走ってくる人影。初めは暗くてよくわからなかったその姿は、すぐに門の火による
光の輪の中に飛びこんできた。
「ゼルダ!」
 リンクが叫ぶ。
「リンク!」
 ゼルダも叫ぶ。
 二人の声と視線が交錯する。
 ゼルダは背後のインパをふり返った。
「だめです」
 インパは冷たく言った。しかしその顔は苦渋にゆがんでいた。
 追ってくる左右の馬蹄の音が大きくなる。白馬はリンクを置いたまま速度を増す。
『いましかない』
 ゼルダは隠しから『時のオカリナ』を取り出した。もうリンクの姿は小さくなっていた。
その方向へと力の限りオカリナを投げる。
 あなたしかいない。もう頼みはあなたしかいない。どうか……どうか……!
「リンク……すまない……」
 インパが呟く。それでも速力は落とさない。
 一瞬間の再会と別離。
『リンク……』
 いつかまた必ず、わたしたち二人の道が交わる時が……
 一心に祈るゼルダを乗せ、南へ、南へと、白馬は遠く駆け去っていった。
1221-11 Zelda II (9/19) ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:48:05 ID:6QhCSwKt
 リンクはそれを拾い上げた。馬上のゼルダが投げ放ち、草の上に落ちた、それ。
 悪い予感が当たった。ゼルダは追われている。誰に追われているかは、考えるまでもない。
 その誰か。夢の中で自分を襲った邪悪な影。世界を飲みこもうとする強大な力。
 リンクはそれを懐に隠し、門の方をふり返った。
 その相手が、もう間近に迫っていた。

 正門前の橋が上がったままなのを見て、ガノンドロフは安堵した。
 城へ逃げこまれることは免れた。だがゼルダとインパの馬はどちらへ行ったか?
 東からゲルド女を乗せた馬が三騎現れた。リンクに向けて放った刺客だ。
「ガノンドロフ様?」
 思わぬ所で会ったことに驚いているようだ。それにはかまわず、先頭の者に短く問う。
「首尾は?」
「仕損じました。申し訳ありません。ここまで追ってきましたが……」
 そう言って、問われたゲルド女は、ちらと横に目をやった。ガノンドロフはその視線をたどり、
離れた所に立ってこちらを見ている少年を認めた。
 ならば三つの精霊石は、まだ……
「白馬とすれ違わなかったか?」
 視線を動かさず、ガノンドロフはさらに問いを発した。
「いえ」
 飛躍した質問に戸惑った様子を見せつつも、女は答えた。
 とすれば、あいつらの去った方角は……
「ゼルダとインパが南へ逃げた。足の速い白馬だ。追え」
「はッ!」
「捕らえて『時のオカリナ』を奪え。それがかなわぬまでも、追いまくって絶対に城へは戻すな。
例の事を起こすまではな」
「殺しますか?」
 肯定しようとして、ガノンドロフは迷った。
「インパはかまわん。ただ……ゼルダは殺すな」
「はッ!」
 三騎は即座に駆けだした。直後、別荘からガノンドロフを追って到着した十余騎にも、同じ
命令を出してあとを追わせ、ガノンドロフは一人そこに残った。
 ゼルダを殺すなと命じたことに、ひっかかりが残っていた。
 ツインローバの言葉を思い出す。
『あんたのこれからの運命に、大きく影響してくる人物だろうってね』
 生かしておくと、厄介の種になる可能性もある。だが……
『狙った獲物は、そう簡単にはあきらめられんからな』
 これが俺の弱みなのかも……と、ガノンドロフは自嘲めいた思いを抱く。
 ゼルダを犯そうなどと考えず、『時のオカリナ』の奪取に専念していれば、今夜の襲撃は
成功していたかもしれない。が、こればかりはどうしようもない。
 欲望。それが俺のすべての原点なのだ。
 おのれを確認したあと、ガノンドロフは当面の問題に目を向けた。
 三つの精霊石。
 それを持つリンクが、こちらを睨みつけていた。
1231-11 Zelda II (10/19) ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:48:50 ID:6QhCSwKt
「そこの小僧」
 黒い馬をゆっくりと近づけながら、ガノンドロフが声をかけてきた。
 その重い低音に、リンクは底知れぬ圧力を感じた。
 黒褐色の皮膚。歪んだ口元。邪悪な笑い。夢で見たとおりの姿だ。しかし実際に目の前にいる
男は、夢の中の姿よりもはるかにどす黒い、悪の香りを発散させていた。
 怯えるな!
 リンクは自分にそう言い聞かせ、ガノンドロフを見据える目に力をこめた。
「その目……」
 薄笑いをたたえたまま、ガノンドロフが言った。
「おもしろい。気に入ったぞ」
 馬の歩みが止まる。
 地上と、馬上と。
 互いを敵とみなす二人が、いま初めてここに対峙した。地上からの激しく熱した視線が、
馬上からの醒めた余裕の視線が、ぶつかり合い、火花を散らした。
「子供にしては、なかなかの活躍だったな。だがそれも、もう終わりだ」
 ガノンドロフの目が暗い光を増した。
「三つの精霊石を渡してもらおう」
 リンクは口の中に溜まった唾を飲みこんだ。
 やはりそうか。『時のオカリナ』を狙ってゼルダを襲い、いまは三つの精霊石を狙ってぼくを……
 かなうだろうか。ぼくはこの男に立ち向かえるだろうか。ぼくは……
 忘れるな! 勇気を!
 逡巡を打ち消すように、リンクは心の中で自らに向かって叫んだ。
 眼前の巨悪から発する重圧に耐え、リンクは剣を抜き放った。
「やる気か」
 相変わらず余裕の感じられる声。
「いい度胸だ」
 その余裕の色が、さらなる圧力となってリンクにのしかかった。立ったままでいることさえ
困難だった。
『これが、ガノンドロフ……』
 震えそうになる身体を必死で制御する。
 勇気を!
 リンクは再び心で叫び、剣を上段に構え、一歩、前へと踏み出した。
「やあああッッ!!」
 喉から気合いを絞り出し、全身の力を集中して飛びかかろうとした、その時。
 馬上のガノンドロフが右手をかざした。何の気負いもない、軽い動きだった。が、そこから
放たれた白い波動は、一直線にリンクを後方へとふっ飛ばした。
 対抗のしようもない、圧倒的な力だった。
1241-11 Zelda II (11/19) ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:50:14 ID:6QhCSwKt
 地面に叩きつけられたリンクは、その際の怪我と、魔力攻撃による痺れとで、身体を動かせない
ようだった。しかしその目は、まだ戦いの意志をみなぎらせ、ガノンドロフをまっすぐに
見据えていた。
 ガノンドロフは、その目に、ふと自らの記憶が刺激されるのを感じた。
 俺はこの目を見たことがある。この俺を前にして、ひるみもせず戦いを挑んでくる、強固な
意志を宿した目を。
 身体の一部にかすかな違和感を覚える。
 右頬と、左脇腹。
 完治した古傷。だがそこに感じるこの違和感は……
 苦い過去の記憶が、リンクの姿に重なる。
 九年前。
 ──こいつの年回りは……
 コキリの森の近くの村。
 ──こいつがどこからやって来たか……
『そうか……お前が、あの時の……』
 ガノンドロフは小さく笑った。ある種の感慨が胸に漂った。
 自分を傷つけた、ただ二人の人物。その二人の血を引く者が、いま目の前にいる。
「因縁だな……」
 声に出して、そう言う。
 リンクの目が不審の色を帯びる。と、緊張の糸が切れたのか、その目から不意に力が失われ、
リンクの顔は、がっくりと前に傾く。
 ガノンドロフは嘲った。
「お前の父親は、もっと骨があったぞ」
 リンクの顔が少しずつ持ち上がる。信じがたいことを聞いたとでも言いたげな、驚きに満ちた目。
 その驚きも、もうお前には無用のものだ。
 とどめを刺そうと、ガノンドロフは馬を降りかけた。
 その時、背後で音がした。
 ガノンドロフはふり返った。正門の橋が下り始めていた。門の向こうに人馬がひしめいている
気配があった。ゼルダの失踪が知られ、軍勢が動員されたのだ。
『ちッ!』
 ガノンドロフは舌打ちした。ここで王国軍と事を構えたくはない。ゼルダを追っていたことに
ついての言い訳が必要になるし、それでも怪しまれるのは確実で、今後の行動が著しく制限される。
ましてやリンクを襲っている場面を見られたりしたら……
 一時、回避だ。
 ガノンドロフは南へと馬を飛ばした。だがゼルダを追跡する気はなかった。しばらく行った所で
馬の向きを変える。
 ゼルダは手下に任せておく。俺はあの小僧から目を離さないようにしなければ。あいつは
ゼルダと接触したかもしれない。ひょっとしたら……
 この予感は捨て置けない。
 平原をぐるりと回って、ガノンドロフは違う方角から再び正門を目指した。
1251-11 Zelda II (12/19) ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:50:59 ID:6QhCSwKt
 橋が下り、正門が大きく開かれると、それを待ちかまえていた騎兵団が、ひしめき合って平原へ
飛び出した。倒れているリンクを、彼らは完全に無視した。番人の指示に従い、ゼルダを追って、
南へと我先に突進してゆく。
 騒然となったあたりの風景をぼんやりと見やり、敗北感に打ちひしがれながら、リンクは
ガノンドロフの言葉を、心の中で幾度も反芻していた。
 ぼくの父親? 父親だって? なぜガノンドロフがそれを知っている?
 思いがけない状況で、突然に投げ出された、おのれの出自の手がかり。
 リンクは混乱した。しかし混乱しながらも、いま自分がなすべきことへと、リンクは意識を
ねじ向けた。
『時のオカリナ』と三つの精霊石。それらがすべて、ぼくの手にある。
 痛みと痺れ、そして屈辱に耐え、リンクは立ち上がった。足を引きずりながら正門へと向かう。
正門は大騒ぎで、城下町に入ってゆくリンクを呼び止める者もいない。
 無人の裏通りで、リンクは懐から『時のオカリナ』を取り出した。オカリナに紙が結びつけて
あるのには気づいていた。それをほどき、開いてみる。

 リンク
 あなたがこのオカリナを手にした時、
 わたしはあなたの前から、もういなくなっているでしょう。
 あなたを待っていたかったけれど、もう間に合わない。
 せめてこの『時の歌』のメロディを、オカリナとともに、あなたへ送ります。
 さあ! 時の神殿の石板の前で、この歌を!
 トライフォースはあなたが守って!

 その下には短い楽譜が記されていた。末尾には署名があった。その文字で、記憶が、思いが、
一挙に湧き上がった。
『ゼルダ……』
 ハイラル城の中庭で初めて見たその姿。ころころと移り変わる豊かな表情。間近に見た顔。
微笑み。涙。輝く笑い。そして馬上からの悲痛な叫び。
 もう一度、手紙を読む。最後の文章がリンクを奮い立たせる。
『トライフォースはあなたが守って!』
 やるとも。もちろん。それがぼくの使命だから。
 かつてゼルダに向かって言い切ったその言葉を、リンクは心の中で繰り返した。
1261-11 Zelda II (13/19) ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:52:13 ID:6QhCSwKt
 時の神殿の入口には、以前に会ったのと同じ二人の兵士が見張りに立っていた。先方はリンクの
ことを覚えていたようで、厳しい声で行く手をさえぎったが、リンクはハイラル城を出発する際に
ゼルダから貰った手紙を見せ、「王家のために働く者」として、神殿に入る権利を堂々と主張した。
兵士は戸惑いながらもリンクを中へ通した。
 短い通路を過ぎ、吹き抜けの広い部屋に出る。昼でも薄暗かったその部屋は、いまはほとんど
真っ暗だった。天窓から差しこむわずかな星明かりを頼りに、リンクは奥へと向かった。
 石版の上に並ぶ三つの窪みを探り当てる。懐から三つの精霊石を取り出し、それぞれに合致する
窪みへと、順にそれらを填めこんでゆく。

 三つの精霊石を持つ者 ここに立ち 時のオカリナをもって 時の歌を 奏でよ

 そう刻まれた石版の前で、リンクは『時のオカリナ』を構えた。
 サリアにオカリナの演奏法を習った経験があったので、リンクは簡単な楽譜なら読むことができた。
ゼルダの記した楽譜に従って、リンクは『時の歌』のメロディを奏でた。
 突き当たりの短い階段の上で、重々しい音が響いた。リンクは階段を登り、そこにあった青黒い
石の扉──『時の扉』が開け放たれているのを確認した。
 扉の奥へと足を踏み入れる。壁そのものが発光しているのか、そこは前の部屋よりもわずかに
明るかった。それで中の様子が見て取れた。天井がドーム状となった、八角形の大きな部屋だった。
 リンクはあわただしく視線を動かした。
 ここにトライフォースが?
 だがそれらしいものは見えない。かわりに目を引いたのは、低い壇となった部屋の中央の台座に
刺さる、一振りの剣だった。その刃は天窓から差す星明かりを反射し、美しく煌めいていた。
刃渡りはコキリの剣の倍以上あり、複雑な形状をした柄の部分は、神聖さを感じさせる深い紫色に
塗られていた。
 ダルニアの言葉が頭によみがえる。
 伝説の剣。退魔の剣。心悪しき者は触れることのできない聖剣。床の台座に刺されていて、
勇者としての資格ある者だけが、台座から抜き放つことができる。
『マスターソード!』
 それがなぜここに? デクの樹サマもゼルダも、マスターソードについては何も言わなかった。
トライフォースに関係があるのだろうか。
 あるに違いない、とリンクは確信する。
 三つの精霊石と『時のオカリナ』はトライフォースへの鍵。それらを使って入ったこの部屋が、
トライフォースにつながる場所であることは間違いない。ならばこの部屋に存在する唯一のもの、
マスターソードもまた、トライフォースへの鍵であるはず。
 リンクは台座の前に歩み寄った。そこに刺さるマスターソードの柄を、リンクは両手で握りしめた。
『勇者としての資格ある者だけが、台座から抜き放つことができる』
 ふとリンクは思う。
 勇者とは? ぼくは勇者なのか? その資格がぼくにあるのか?
 目を閉じて、自分のなすべきことを考える。
 いまのぼくは、ガノンドロフにかなわない。けれども、マスターソードを手にする資格が、
勇者たるべき資格が、もし、このぼくにあるのなら……
 いや……
 もし、ではない。なければならない。それがなければ、トライフォースは守れないのだ。
 世界を救うという、ぼくの使命。それは勇者の名に値するものである。
 奢ることなく、リンクは冷静にその結論へと達した。
『勇気を!』
 目を開く。両手に力をこめ、その力を一気に上へと解放する。力をさえぎるものはなく、
マスターソードがまっすぐに抜き放たれる。
『やった!』
 リンクの叫びは、しかし声にはならなかった。リンクのまわりのすべてのものが、急速に暗転し、
リンクを押し包んだ。
 ──これは?……ぼくは?……どうなったんだ?
 現実との絆を断ち切られ、
 ──ぼくには……資格がなかったのか?……ぼくは使命を果たせないのか?
 深遠な闇へと引きずりこまれ、
 ──ぼくは……ゼルダ…………ぼく………………は…………………………
 リンクの意識は、そこで絶えた。
1271-11 Zelda II (14/19) ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:53:04 ID:6QhCSwKt
 南へと殺到する騎兵団をやり過ごし、リンクが城下町へ入るのを確かめたのち、さらにしばらく
経ってから、ガノンドロフは馬で正門に乗り入れた。立ち騒ぐ人々を尻目に、ひとり城下町の中を
駆け、時の神殿へと向かった。そこがトライフォースの眠る聖地への入口であることは、
ツインローバに聞かされていた。
 神殿からやや離れた所で、ガノンドロフは馬を降りた。前方を行くリンクの姿が見えた。
気づかれないよう、足音を忍ばせてリンクを追う。
 リンクは時の神殿の中へと入っていった。ガノンドロフも神殿の入り口へ向かった。
「失礼ですが」
 見張りの兵士が声をかけてきた。ゲルド族の使者団の長として、王家の客人という立場にある
ガノンドロフの顔を知っているのだろう。その口調は丁寧だった。が、見張りの役割を放棄する
気はさらさらないようだった。
「ここへは王家の許可がないと入れません」
「許可はある」
 ガノンドロフは傲然と言った。だが兵士は引き下がらなかった。
「ではその証拠をお示し下さい」
 ぶった斬って押し通るか……いや、手荒な行動を起こすのはまだ早い。
「城の者に聞け。それとも……」
 そう言って、兵士を睨みつける。
「俺の言葉が、信じられぬとでも?」
 さすがに兵士は黙ってしまった。その気合いの効果が薄れないうちに、ガノンドロフは早足で
神殿の中へと歩を進めた。
 暗い吹き抜けの部屋の奥で、オカリナの音色が響いた。
 やはりゼルダは『時のオカリナ』をあの小僧に……
 予感が的中したことに満足しつつ、ガノンドロフはそっとリンクを追った。石板の上に填めこまれた
三つの精霊石を横目に見て、開け放たれた扉の陰から、次の間の様子をうかがう。
 リンクが部屋の中央で、何かに手をかけていた。
『剣……?』
 しばらく動かずにいたリンクは、やがて意を決したかのごとく、腕に力をこめて、その剣を抜いた。
 とたんにリンクの姿が消えた。地の底にでも潜ったかのように。
『何が起こった?』
 部屋の中へと駆けこむ。リンクの姿はない。トライフォースもここにはない。
 ガノンドロフは驚き焦ったが、周囲を見渡すうち、床の一部に黒々とした穴が開いているのに
気がついた。底の見えない暗黒の穴。ガノンドロフはしばしの逡巡ののち、穴の中へと足を踏み出した。
 目には見えないが、そこは下へ降りる螺旋階段となっていた。足の先で段を探りつつ、上下左右も
わからない暗黒の中を、ガノンドロフはゆっくりと下っていった。
1281-11 Zelda II (15/19) ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:53:55 ID:6QhCSwKt
 螺旋を何周しただろうか。永遠とも思える距離を進んだガノンドロフの前に、それは不意に現れた。
 ガノンドロフの背丈ほどもありそうな、大きな図形だった。黄金色に輝く三角形。その三つの
頂点に位置する形で、三つの三角形が並んでいる。
『トライフォース!』
 ガノンドロフの身体は驚喜に震えた。とともに、リンクへの加虐的な思いが胸に湧く。
 ご苦労だったな、小僧。俺の思ったとおり、トライフォースへの鍵は、すべてお前が握って
いたのだな。お前がこの俺を聖地へ導いてくれるとは……感謝するぞ、小僧。
 そのまましばらく、ガノンドロフはトライフォースを見つめていた。すぐに行動するのが惜しく
なるような、それは大きな満足感だった。
 その感動を深々と味わったのち、右腕をゆっくりとトライフォースへ伸ばす。
『俺は……世界を支配できる!』
 右手の先が、少しずつ、少しずつ、トライフォースに近づき、そしてついに、その頂点へと達する。
 右手が、がっとそれをつかんだ。その瞬間、右手は目もくらむ閃光を発し、激しい疼痛が右腕を
走り抜けた。
「!!!」
 衝撃に思わず目を閉じる。だが閉じきる前に、ガノンドロフは見た。
 おのれの右手の閃光から、二つの光が分かれ、一つは上へ、一つは下へと、無限の暗黒の中を
飛び去っていくのを。
 長い時間が過ぎていった。
 やっとのことで目を開く。閃光はすでに消え、目の前の大きなトライフォースもいまはなく、
右手の甲にのみ、わずかな光が残っていた。小さなトライフォースの印。それを構成する三つの
三角形は、しかし頂点の一つのみが金色に光り、残る二つは空白だった。
 俺は……トライフォースの三分の一しか手にしていない?
 激しい動揺がガノンドロフを襲った。
 どういうことなのだ? 失敗したのか? まさか? ここまで来て?
 さらに長い時間、ガノンドロフはそこに立ちつくしていた。
 動揺は徐々に静まっていった。
 自らの中に新しい何かが生まれたことを、ガノンドロフは感じ取っていた。

 神殿を出ると、そこには、元の見張りの二人に加え、思わぬ数の兵士が集まっていた。
「ガノンドロフ殿」
 隊長格の男が、硬い声をかけてきた。
「陛下がお呼びです。ゼルダ様の件で、聞きたいことがあると」
 視線に敵意がこめられていた。が、ガノンドロフはそれを受け流した。
「承知した」
 そう答えて、ガノンドロフは男の誘導に従い、城へと向かった。前後左右を兵士たちに包囲され、
ほとんど罪人の扱いだった。だが、ガノンドロフは爽快だった。大きく哄笑を上げたいほどに。
 そんな程度では、俺をどうこうすることは、もうできんぞ。
 肉体と精神に満ちあふれる、巨大な力の感覚。
 それをどのように解放すればよいか、ガノンドロフには、もうわかっていた。
1291-11 Zelda II (16/19) ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:54:41 ID:6QhCSwKt
 ナボールは一人でゲルド族の宿舎にいた。
 この数日、他の仲間たちは宿舎には居着かず、どこかで何らかの活動を行っているようだった。
それについてナボールは、何の説明も聞かされていなかった。敢えてこっちから仲間に問いただす
こともしなかった。ひそかに仲間の数が増え、反乱の時期が近づいていることは察していたし、
それに、ガノンドロフと密着している仲間たちとの接触を、できるだけ避けたいという思いも
あった。最近のナボールは、ほとんど宿舎に一人でこもりっきりだった。
 その間、周囲の状況が大きく変化していることに、ナボールは気づいていた。反乱のことばかり
ではなく、別の動きが進行しているのは確かだった。
 ゼルダ姫の失踪。その時期に一致した、ガノンドロフと隠密組のあわただしい動き。ナボールは
その動きからは完全に排除されていたが、そこに何らかの関係があることは容易に想像できた。
 ガノンドロフはいったい何をやろうとしているのか。
 以前からあった「やばい」という感じが、ナボールの中で、日々ふくれあがっていた。
 自分はこれからどうすればいいのか、と、ナボールは考え続けていた。
 以前はもっと単純に割り切っていた。反乱が起これば、思う存分、暴れまくる。思い切り欲望を
解放させ、快楽にふける。その後のことは、なるようになれ。その日その日に満足できれば、
それでいい。
 でも、いまはもう割り切れない。
 このままガノンドロフのもとにいて、ほんとうにいいんだろうか。自分が落とされる危険ばかり
ではない、何かもっと……そう、とてつもなく「やばい」ことが起こりそうな予感がする。
 部屋の入口に人の気配を感じ、ナボールは気を引き締めた。
 ガノンドロフがそこに立っていた。
 犯されそうになった、あの日以来、ナボールは決して単独ではガノンドロフに会わないように
していた。会った際も、できるだけ目を合わさないように努めた。そんなナボールの態度に
気づいているのかいないのか、ガノンドロフはあれ以後、ナボールに手を出そうとはしなかった。
 だが今日は?
 警戒するナボールに対し、ガノンドロフは、からかうような口調で言った。
「そう硬くなるな。今日は仕事だ」
 仕事? いまさらあたしが? ハイラル城に来てからこれまでずっと、何の用も与えられ
なかったのに?
「城へ行く。護衛しろ」
 護衛? その役目はいつも隠密組が……
 ナボールは気づいた。隠密組はみな、どこかに散って働いているのだ。護衛するとすれば
自分しかいない。だが、これまで蚊帳の外にいた自分に、敢えて護衛を命じなければならないほど、
切迫した状況なのだろうか。
1301-11 Zelda II (17/19) ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:55:55 ID:6QhCSwKt
 背を向けて宿舎を出るガノンドロフを、ナボールは追った。
 隠密組の女が足音もたてずにガノンドロフに近づき、何かをささやいた。ガノンドロフは頷いた
だけだった。女はそのまま、いずこへともなく立ち去った。
 何かが起ころうとしている。ついに決起か? それとも……
 これまで抱いていた疑惑が、一挙にナボールの胸を満たした。それに突き動かされ、ナボールは
思わず、前を行く背に向けて声をかけていた。
「ガノンドロフ様」
 答はなかった。ナボールはかまわず問いを発した。
「ゼルダ姫の失踪に、ガノンドロフ様は、何か関係しているのですか?」
 ふっ、と、ガノンドロフは小さく笑ったようだった。
「聞きにくいことを、はっきり言う奴だな」
 ふり向きもせず、ガノンドロフは続けた。
「だが、その心意気がお前のいいところだ。よかろう。教えてやる」
 ガノンドロフは背を向けたまま、歩きながら低い声で話し始めた。
「一週間前、別荘にいるゼルダ姫を、何者かが襲撃した。俺はそれを察知し、隠密組を連れて
救助に赴いた。ゼルダ姫は襲撃者に追われてハイラル平原に逃げ、俺はそれをさらに追った。
正門まで行ったところで見失った。その時には騎兵団が出動していたので、俺は城内へと引き上げた。
納得したか?」
 ナボールは黙っていた。一応の筋は通っているようだが、おかしな点も多い。襲撃者とは
誰なのか。どうやって襲撃を察知したのか。なぜゲルド族が独自にゼルダ姫を救助しなければ
ならないのか。
「城の連中は納得していないようだ。この一週間、毎日呼び出されては質問攻めだ。今日は何を
訊かれるか……」
 のんびりした言葉とは裏腹に、声にはどす黒い意思が感じられた。それは次の言葉で明らかになった。
「証拠はないからな」
 ナボールは悟った。すべてこの男の仕業なのだ。
「それにもう……弁明を繰り返す必要もなくなった」
 その意味は明らかだった。さっきガノンドロフに話しかけてきた隠密。それはこう言ったに
違いない。「準備完了」と。
 どうする? あたしはどうする?
 激しく心惑いながら、それでもナボールは、ガノンドロフについて行く足を止められなかった。
 城に入り、ガノンドロフが呼び出された部屋の前に行くまで、それは続いた。
 ナボールは部屋に入ることを許されなかった。
「心配するな。待っていろ」
 薄笑いを浮かべてそう言い、ガノンドロフは部屋の中へと消えた。
 ナボールは控えの間に残された。周囲の城の人間たちの、冷たい視線にさらされたまま。
1311-11 Zelda II (18/19) ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:56:42 ID:6QhCSwKt
「貴殿はこれまでのらりくらりと言を左右にしてきたが……」
 王国の高官の一人が立ち上がり、激した声でガノンドロフを責め立てていた。ゼルダの行方は
いまだにわかっていない。それが舌鋒を鋭くしている理由の一つでもあろう。
「今日こそは、ほんとうのことを話してもらいますぞ」
 部屋の中には多くの人数がいた。大臣や役人たちが居並んですわり、後ろには兵士たちが
立っていた。そして正面の壇上の玉座には、ハイラル王、その人が座していた。はるか手前に跪く
ガノンドロフは、完全に孤立していた。自分以外のすべての人間が敵だった。が、ガノンドロフの
心は鏡のように平静だった。
「ほんとうのことも何も……すべてはすでに話したとおりで」
「ゼルダ姫の襲撃にかかわってはいないと?」
「まさに」
「嘘だ!」
「ならば証拠を」
 いつもここで平行線になる。しかし今日は違った。
「いいだろう。聞かせてやる」
 高官の口調が皮肉めいたものに変わった。
「ゼルダ姫を救助するため、ハイラル平原に派遣された騎兵団の一人が、今朝、戻ってきた。
騎兵団はゲルド族と遭遇し、これに攻撃されたそうだ」
 あいつら、やりおったな。だが、それでもいい。
「これは明らかに、わが王国に対する反逆行為だ。この点について、貴殿はどう釈明するのか」
 ガノンドロフは黙っていた。確かに、これ以上の言い訳はできない。
「ガノンドロフ殿」
 玉座のハイラル王が声を発した。名君として知られてきた王の声は、深くその場に響き渡り、
聞く者の心を打つものがあった。
「説明して欲しい。わが娘、ゼルダに何をしたのか。そしてその目的は何か」
 言葉そのものは平明だったが、声には断固とした厳しい意志が感じられた。が、いまの
ガノンドロフには、そんな厳しい意志でさえ、何の歯止めにもならなかった。
 頃合いはよし。
 ガノンドロフは立ち上がった。
 王の前での、礼を失したこの行動に、室内はどよめいた。
「目的は……」
 ガノンドロフはハイラル王を直視した。右手に少しずつ力をこめた。
「これだッ!!」
 手のひらをハイラル王に向け、全身の力を集中させる。と、稲妻のような一条の光がそこから
放射され、玉座へと殺到した。ハイラル王の身体が破裂し、大量の血を噴き出して四散した。
 室内の全員が、凝固したように動かなかった。誰も何も言わなかった。
 奇妙な沈黙が過ぎる中、突然、部屋の扉が押し開かれ、うわずった声が響いた。
「城下町が燃えている! ゲルド族の軍勢が襲ってきた!」
 その声に、場の凝固が解けた。坐していたみなが一斉に起立し、抜刀した。背後の兵士たちも
槍を構えた。
「貴様!」
「何をした!」
 憎悪に満ちた無数の目が、ガノンドロフを突き刺した。それを平然と受け止めつつ、ガノンドロフは
自らの力に酔いしれていた。
 肉体と精神に満ちあふれる、巨大な力。それを解放することへの、絶大な快感。
『これが俺の力なのだ。誰であろうと、もう俺を止められんぞ』
 襲いかかってくる人々に向かい、ガノンドロフは再び右手をかざした。
1321-11 Zelda II (19/19) ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:57:29 ID:6QhCSwKt
 室内の異変に、ナボールは気づいた。
 奇妙な物音。その後の沈黙。
 兵士が部屋に走りこみ、反乱勃発の知らせを叫ぶ。騒然とする室内。
 ナボールは柱の陰に身を隠した。反乱が始まった以上、城内の者に見とがめられれば攻撃される。
 室内では、人々の絶叫と物の破壊音が、荒れ狂う嵐のように響き渡っていた。誰も部屋から
出てこない。何が起こっているのか。ナボールは身体の震えを止められなかった。
 音が途絶えた。
 不気味な静寂の中で、ナボールは、護衛という自らの役割を、やっと思い出した。
 おそるおそる、部屋に入る。
 瞬間、ナボールの脳は真っ白になった。
 地獄。
 それに違いない。
 かつて人間であったいくつもの物体が、無数の肉塊となって、部屋中に飛び散っていた。
床も壁も天井も、部屋のあらゆる面が鮮血に染まり、その臭気があたりに充ち満ちていた。
 すべての命が死に尽くした部屋の中で、ただ一人、ガノンドロフだけが、全身を朱に染めて
立っていた。
 その顔が、ナボールに向けられる。
 悽愴──という言葉では言い尽くせない、この世のものとは思えない笑いが、そこには浮かんでいた。
『やばすぎる……』
 こいつはもう、人として立ち入ってはならない領域に踏みこんでしまった。
 これからいったいどうなるのか? 自分は? そして世界は?
 魔王ガノンドロフの誕生を目の当たりにし、ナボールはただ、そこに立ちすくむばかりであった。


<第一部・了>

To be continued.
133 ◆JmQ19ALdig :2007/02/10(土) 23:58:20 ID:6QhCSwKt
急転する筋の説明と辻褄合わせ、しかもネタがこの時点のゼルダとあって
エロはこれが精いっぱい。すみませぬ。

ともあれ第一部は完結。
第二部は、本編にはなかった「暗黒の七年」を描きます。
主役はガノンドロフとシーク(とゼルダ)。リンクは一時退場。
ハードな展開になると思います。
134名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 00:49:42 ID:Ih2T5bD5
GJ
135名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 01:13:43 ID:Lv3dy8+K
>>133
お待ちしておりました!GJ!!
リンクとゼルダの絡みが少なかったのはちと残念だったが、話の展開上致し方ない。その後に期待
文章にスピード感が感じられ、切迫した雰囲気が伝わってきた
第二部はゲーム内では描かれていない七年間ということで、
◆JmQ19ALdigさんが考えるガノンドロフやシークの行動に今からwktkしています
136名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 01:14:47 ID:Ow2dvsIT
GJ!!!!!
137名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 03:05:22 ID:ej3gfH7X
ハードな展開…レイープの嵐のヨカーソで和姦派としてはガクブル
でもゴロンのボスが尻穴を散々責め立てられて
「気が強い女ほどアナルが弱い」状態におとされたりするかもと思うとワクテカ。


…とはいえ、そう一筋縄ではいかないストーリーにちがいないと
全裸正座で続きを待ってます。

本番なしの全裸シーンも大好きなのですが、今後シリアスになると減るのでしょうか。

シーカー族として女を捨てて生きる覚悟のため、全裸で体術を教わるゼルダとか
ゾーラ族に泳ぎの特訓を受けるため、ゾーラの集落で全裸で暮すゼルダとか
リンクが居ない寂しさを忘れようと、久々にコキリのみんなと
全裸で水遊びしたものの、ひとりだけ女になりつつある身体を
皆に興味津々の目で観察されまくり、しかし拒否しても孤立するだけなので
あえて気づかぬふりをしながら無邪気なふりを装うサリアとか
一族の子供が病気なのでめったに行かない人里に買いにきたものの、
みなの自分を見る目に憤慨する全裸のルト姫とか
日々のストレスを全裸乗馬で発散するマロンとか
個人的に妄想を膨らませてがまんします。
138名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 09:43:38 ID:OUFEuMUX
>>133
超絶乙!第二部が待ち遠しいです。ゼルダがシークを名乗る経緯とかをkwsk
>>137
カオスww
139名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 09:55:04 ID:npZHz35n
>>133
GJ!
いつも素晴らしい話をありがとう!
話を読んでるのにゲームをしてるような感覚になる
140名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 15:47:09 ID:rVBkfJqs
神!!
141名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 01:53:02 ID:vtkGDtwZ
GJ!
シークは好きなのでWktkしてます。
142黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/12(月) 02:00:00 ID:oEFyr0Do
うぁ。私、亀。
サーバーはアルテミスとかどうかなーと思っています。検討段階。
ログ、壷入ってるので大丈夫かと思いきや半端にしか取れてなかった……orz

>tokaさん
今回はtokaさんのマロン絵に触発されて書いてみたSSでした。
私の中でのリンクは姫川ゼルダの印象が強く、割とニブいというかそんな感じ。
けれど書く時はプレイした人それぞれのリンクがいる、と思いつつご都合主義。
しかし……そこまで読み取っていたのか私はw
まぁ、食い入るように観察しましたからね、あの絵(←危
シチュはあの絵ありきでした、ごちそうさまでしたw

>JmQ19ALdigさん
いやはや、第一部完結との事で。お疲れ様でした。
暗黒の七年間……すごく興味が湧きます。ハードかぁ……w
本当に読んでいて引き込まれる文章で、独自設定も輝いております。素敵すぎます!
JmQ19ALdigの書く七年間が今から楽しみで仕方ないです。
ともあれ、季節も季節ですし体調にはお気を付け下さい。
油断や無理は禁物、崩れてからでは何にもなりませんよー?

>>137さん
ちょっ……137さん含めて皆裸www

トワプリ、アゲハたんとかヘナさんには会ってきました。
アゲハ、なんか想像以上に服がフリフ
143黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/12(月) 02:09:52 ID:oEFyr0Do
途中で投稿してるよ……
けど時間がかなりキリ良かった。

アゲハ、なんか想像以上に服がフリフリしてますねwww
正 直 良 い
あとミドナかわいいよミドナ。さぁ行こう湖底の神殿へ。
噂の大妖精様は……たぶんEXダンジョン的存在か。
攻略には終盤のアイテムが必要!みたいな。試練の洞窟って。
144名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 06:12:35 ID:dSUkB8lu
大ミドナ様会いたさにまたトワプリクリアしてシマタ



ラスボス撃破後、夕暮れの中人目もかまわずミドナに青姦を挑むリンク
当然平手打ちかと思いきやあっさり応じるミドナ。
調子にのったリンクの変態プレイの要求に、
それまでのツンぶりが嘘のように進んで応じてくれる。

ビン4本分の青チュチュゼリーを分け合い、3日3晩まぐわいつづけ、
ミドナの、注がれた白濁をとめどなく溢れさす膣と対照的に、
一滴もこぼさず、軽く下腹が膨れる程の白濁を腸内に注ぎ込まれた
彼女尻穴を、リンクはなおも飽くことなく穿ち射精しつづける。

ようやく、なぜミドナは急にこんなにも尽くしてくれる気になったのだろうと
ぼんやり怪訝に思いつつ、一向に腰の振りをゆるめる気配を見せないリンク。

数え切れないアクメの嵐にとっくに腰が抜け、なにも拒むことなど
不可能なミドナだが、もとよりリンクの求めを全て受けとめるつもりで
身体を捧げよがり狂い彼にしがみつくその瞳に
時おり深い憂いがのぞいていた理由に、リンクが気づくなどまず無理な話であった。


と妄想して(;´Д`)ハァハァ
145名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 07:36:54 ID:KwAkZw1U
>>133
ちょっと乗り遅れてしまったけど、GJ!!
犯されそうになっても自分の身を顧みず意志を貫こうとするゼルダの強さや
離れていてもお互いを想っている二人にぐっときた
>この時点のゼルダ
ということは、この時点でなければ…?
第二部以降の展開に今からwktkしてます
146名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 08:17:00 ID:SsO2RvLq
>>142-143
過去ログとってあるから良かったら提供するがどうだろうか

それはそうと、スレを私物のようにして馴れ合うのは正直止めて欲しい
丁度サーバーを探してるんだからHPでも持ってそちらでやってくれ
147名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 09:46:34 ID:k6SgOZ/W
148名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 14:34:45 ID:h0e2NW/B
>>146
キヲツケル
149イリア 予感 1/3:2007/02/12(月) 22:47:15 ID:fcayCqM+
少し体調がすぐれなかったせいか、その夜は寝つきが悪かった。
だから窓の外で「カタカタ」瓦が密かに鳴った時もすぐに気付いた。
最初は風で何か飛ばされてきたのかとも思ったが、続いて窓の格子が「コツコツコツ」
ごくささやかに、規則正しく叩かれるのを聞いて確信した。
…窓の外に誰かいる
「誰?!」
あくまでも密やかに、しかし鋭く問いかける。
「イリア…、俺」
(えっ??)
返ってきた答えは彼女を驚かせ、ベッドに半身を跳ね起きさせるに十分なものだった。
念のために階下を窺い、父の鼾を確かめた上で窓へと近づいた。

「リンク…、いったいどうしたの?」
「うん、ちょっと…いいかな?」
遠慮がちな声。
こんな時間にこんな風に訪ねてくるなんて、何かあったの?
イリアは音を立てぬよう気をつけながらそろそろと窓を開ける…
装飾格子の嵌った細く縦長の窓は、一見嵌め殺しに見えるが実はそうではない。
下部の止め具を外し、押してやることで内側からのみ開けることが可能なのだ。
幼いころは叱られたときなど、よくここからこっそり出入りしていたものだ…そう、この幼馴染と共に…
イリアがそんなことを考えている間にリンクは勝手知ったる窓下の隙間に頭からその体をねじ込んで来ていた。
「ちょ、ちょっと、リンク?」
わたしはただ話を聞くつもりで…そう言おうとして、なぜだか言えなくなってしまった。
窓の隙間はごく狭いものだ、小さいころならともかく…
「よ…っと」
窓枠が軋むたびに心臓が跳ね上がりそうになる。
(…どうかとんでもないことになりませんように……!)

「ふぅ」
どうにか侵入に成功したリンクが立ち上がり、衣服の埃を払いながら照れたような笑いを浮かべている。
「月がさ、」
「…月?」
「なんか、凄くて」
そういえば深更にもかかわらず、窓から差し込む光がやけに明るい
「その、どうしても、…一人で居たくなくて」
頭に手をやり、少し困ったような顔をする。
…どう答えていいものかわからない
ただ、リンクが凄いと言ったその月を確かめてみようと窓の方へ向き直った。
150イリア 予感 2/3:2007/02/12(月) 22:48:30 ID:fcayCqM+
確かめることはできなかった。
彼に背を向けた次の瞬間、後ろから抱きすくめられていたから。
「……イリア」
耳元で聞いたのはいつものリンクとは違う、低く、掠れた声。

そう、こんな夜更け、男が娘の寝室を訪れるなら目的はひとつ、
…わかりきってる。

この地方には夜這いの慣習がある。
村社会の一員として認められた日から生涯の伴侶を定めるその時まで、若者たちのおおらかな交際は権利として認められている。
リンクを部屋に入れてしまった時点で「それ」を彼女が承諾したことになる。
もちろん家人に知られることに対しては家ごとに多少考えの違いがあり、村長ボウはもっとも「お堅い」部類といえる。
一人娘の夜間外出は認めなかったし、軽はずみな行動はしないようにと遠まわしに幾度も注意されたりもした。
そんな父親にも、もちろんリンクにも話したことはないが、夜這いをかけられたのはこれが初めてというわけではない。
「トアルの村長の娘は大層可愛いそうな」
近隣の村々で噂になっていると教えてくれたのはセーラだったか…
そしてそれから幾日もしないうちに、夜更けに彼女の窓を叩く音を聞くこととなったのだった。
でも、今まで一度として自ら窓を開けたことなどなかった。
どれほど窓辺で情熱的に口説かれようとも、隙間から差し込まれた手紙にも、窓辺に置き去りにされたプレゼントにも応えることなどなかったのに。

(だって、「あの」リンクが?)
昼間会った時にだってそんな素振りはまったく無かったのに。

男の厚い手が性急に寝巻きの上から体をまさぐっている。
両の乳房を掬い上げ、揉みしだいてくる。
うなじにかかる吐息がひどく、熱い。
「やっ…」
声が、引きつった喉元にひっかかり声にならない
…動けない

(これは、誰?)

寝台へと押し倒され、覆い被さられてようやく反応することができた。
「待って、待って…りンク、ダメ!!」
裾を割って侵入して来ようとする手をやっとの思いで押しとどめる。小刻みに体が震えるのを止められない。
「でもイリア、俺、もう…」
切羽詰まった声。腿に押し当てられた熱く、堅いもの。
一旦止まった手はすぐに動きを再開し、彼女の着衣を剥そうとする。
「ダメなの、今は。」
「今日はダメ…!お願い!!」
半泣きのイリアの声に
「えっ…」
明らかな落胆のため息、……やっと察してくれたようだ。
151イリア 予感 3/3:2007/02/12(月) 22:49:02 ID:fcayCqM+
叱られた子犬よろしくしおたれたリンクの様子に少し心が痛んだ。
(…やっぱり悪いのはわたし?)
あまりにもうかつだった。
けれど本当に、本当に思いもよらない出来事だったのだ。イリアにとっては。
「帰るよ」
身を起こしたリンクは窓へと向かおうとして、もう一度イリアを振り返りその髪にそっと触れた。
「リンク、わたし…」
「いいんだ」
微笑む顔はいつものリンクに戻っていた。
「おやすみ」
「おやすみなさい」

彼が再び悪戦苦闘しながら窓の隙間を通過してゆくのをベッドに腰掛けたまま不思議な思いで見送っていた。
まださきほどの出来事が現実感を持たずにいる。
静けさを取り戻した窓辺に近づいて外を窺ってみても、既にリンクの影も形も見当たらなかった。
かがんで夜空を見上げてみる
彼が凄いと言った満月はとても大きく、少し赤みを帯びていて
…わずかに狂気に似た昂ぶりを感じさせた。
(ああ、これが)
あの大人しい彼を煽ったというのだろうか?
確かにまだこの体に残っている、彼の触れた名残…イリアは思わず自分自身を抱きしめていた。
今更ながら頬に一気に血が昇ってくる
「やだ、もう…」
両手に夜の冷気を掬い、その頬を覆う
「もう……!」
決して嫌だったわけではない、そう彼に告げ忘れていた。
(解かってくれてるわよね?)

小さい頃からいつも一緒だった。
いつでも傍に、目の届くところに居てくれて、わたしを理解してくれていて、
だけど最近ほんの少し…時々何故か距離を感じてしまうことがあって…
イリアにとっては今までもそしてこれからも、ずっと彼と一緒に歩いてゆくことはあたりまえになっていた。
いずれはこの家を出てリンクと新しい家庭を築く。
朝仕事に出る彼を見送り、子供の世話を焼き、チーズ造りや織物をして…
ゆっくり一緒に年を取ってゆく。
なのになぜか、その前段階を想像することはあまりなかった。

祭りの夜、ハレの日の昂ぶりにまかせて体を触れ合ったことはあったけれど、
それはあくまでその場限りの事に留まっていて。
「リンク…」
こうなってしまっては考えないわけにゆかない、
あの腕が、あの体が自分を抱くということ。
生まれたままの姿で彼に身を任せ、貫かれる自分自身を幻視する。
(ここに)
下腹にそっと手を添える。
月の物に邪魔されていなければ今頃は…

明日の朝、どんな顔をして会えばいいのか。
眠れそうにない…
動き出しつつある二人の未来、
(きっとわたしは夜毎彼を待つことになってしまう)
それは気恥ずかしく、嬉しく、少し怖くもあるも予感。
ベッドに戻り掛け布を被って無理やり目を閉じ、つぶやいた。
「大好きよ…リンク」
小さい頃は毎日のように口にしていたこの言葉を、もう何年も言っていない。
これからは眠る前に言ってみることにしよう、そして再び彼が訪れたときには…きっと。
152名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 22:50:27 ID:fcayCqM+
けれどこの時既に神々の繰る運命の輪は、少女の想いなど意に介さずこの国全体を飲み込んで回り始めていた。


なんちて。

トワプリネタが読みたくて読みたくて
自家発電してみたけれど、不完全燃焼。
お目汚し失礼しました。

本編はもっと難しいんだよね、ミドナ貼り付が大ネックで。
うちのリンクは基本的にエロガキなので、下ネタ・セクハラネタには事欠きませんがエロは難しい。
三人娘に拉致られようが、アッシュに押し倒されようがご遠慮しますとしか言えないリンク(泣
いや、そのミドナを汚れキャラに設定してしまえば万事解決とは解かってるんですが。
できない…愛しちゃってるてるもんで、
主役二人で絡ますとなると終盤しかないし。


>JmQ19ALdig氏
時岡が壮大な得ろ叙事詩へと変貌を遂げようとしていますね。
今このときにこのスレ住人でよかった。
ゆっくりがんばってください。
153名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 23:27:16 ID:m2yaCtsj
>>152
ぐーーーっっっじょーーーーーぶっっっ!!!
当方イリア派なもんで、こんな話を待っていた!
月が伏線になっている所の技もよかったよ!
154名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 23:35:30 ID:vBmA+yOZ
ここは神々の住まうインターネッツですね

イリアに目覚めそうになった。悲恋なんだよなぁ。
155黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/13(火) 00:16:17 ID:zCoJ5wQq
>>146さん
あ、過去ログ是非ともお願い致します。良かったー……
馴れ合い、今後は気を付けます。
ちょうど良い距離というか、過剰にならないように。

>>149>>152さん
誇り高き獣、そして満月ですねw
あと、周期がぴったりと……ってセクハラか。
良くも悪くも素直というか純粋ですね……GJ!
156名無しさん@ピンキー:2007/02/14(水) 09:06:38 ID:x5m2cNVq
157名無しさん@ピンキー:2007/02/14(水) 12:10:39 ID:g75WUUKE
>>156
>>147
158名無しさん@ピンキー:2007/02/14(水) 13:38:27 ID:JoTUOI+y
何も言わないで貼られてもな
159黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/15(木) 00:55:30 ID:xvH71opK
>>156さん、ありがとうございました。
これで2スレ目は大丈夫です。編集等を始めようと思います。

1スレ目ですが、958レスで止まったと思うのですがどうでしょう。
確認の取れる方がいればお願いします。
160名無しさん@ピンキー:2007/02/15(木) 01:44:39 ID:kZftQB1L
みみずんで「ゼルダの伝説」(1スレ目)ログ探ししたら986まででした
画面そのまま保存なのでdat持っての確認じゃないんで不確かです
161名無しさん@ピンキー:2007/02/15(木) 11:07:35 ID:YOEUglJo
確か986でdat落ちしたんじゃなかったっけ。
162黒空 ◆hDddowMzjM :2007/02/16(金) 00:10:55 ID:M/hkOeoQ
あ、1スレ目のも半端だったんだ。
958〜986間がちょっと気になりますが、その間に作品が無ければ今はとりあえず良しとします。
まだその辺まで作業進んでませんしね!かなり牛歩ですし。
……目が痛い……
163名無しさん@ピンキー:2007/02/16(金) 00:50:16 ID:ARY6MqqN
958〜986間には、作品ありませんでした
そのスレ内インデックスや次どうしようか等
まとめあるとやはり助かりますんで、目壊さない程度でガンガッて下さい
164名無しさん@ピンキー:2007/02/16(金) 00:57:41 ID:6c5oC/Om
作品はありませんが、気になる方はどぞ
http://0server.ddo.jp/~dougakun/upload2/src/up1193.zip
passはメル欄
165名無しさん@ピンキー:2007/02/16(金) 08:13:27 ID:WKTNnvEY
>>164
だから中身なんだよ
166164:2007/02/16(金) 11:05:46 ID:tM8aX4g1
>>165
初代スレ>>958-986の部分をWordに貼り付けたものだったけど、ちょっと問題があって削除した。
スマソ
167名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 14:08:40 ID:aTJ8XVt3
>>165
一々書いてなくても流れで分かるだろ
168名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 19:19:07 ID:NFk+35Ku
つっかかりたいお年頃なんだろ、きっと
169 ◆JmQ19ALdig :2007/02/18(日) 03:40:49 ID:pqg+Ymm+
感想をどうもありがとうございます。では時オカ/第二部スタート。
予想はつくかと思いますが、第二部のキモの一つはガノンドロフの暴虐ぶり。
今回、手始めに犠牲となるのは、城下町のバカップルことハニーとダーリン。
一応、陵辱っぽいです。男×男、女×女もわずかに記述あり。
1702-1 Honey & Darling + Zelda III (1/13) ◆JmQ19ALdig :2007/02/18(日) 03:42:05 ID:pqg+Ymm+
 ハイラル城はあっけなく陥落した。
 ハイラル王国がゲルド族に対し、警戒を怠っていたわけではない。両勢力の間に和平の機運が
熟しても、王国はゲルドの谷につながるハイラル平原の西部に、かなりの兵力を駐留させていた。
ところが機動力にまさるゲルド族はその裏をかいた。西の彼方の砦から、北方の山脈を踏破して、
ハイラル城の背後にある山まで迂回し、逆落としに城へと攻め下ってきたのだった。
 完全な不意打ちであった。王国が城に残してあった兵力はさほど多くはなく、しかも王を
はじめとする指導者たちが、ガノンドロフによって一挙に抹殺されてしまったこともあり、
ゲルド族の満を持しての攻撃に、組織だった抵抗もできないまま撃破された。
 ハイラル城がゲルド族に席巻されると同時に、城下では市街戦が展開された。前もって
配置されていた隠密組の手により、攻撃開始とともに、城下の多数の場所から火の手が上がった。
ゲリラ戦はゲルド族の得意とするところで、放火による混乱の中を、彼女らは縦横無尽に
駆けまわり、分散した王国軍を散々に叩きのめした。
 城下町は阿鼻叫喚の渦と化した。戦闘自体はわずか二日で終結したが、ゲルド族による殺戮と
略奪と強姦は、その後も一週間にわたって続けられた。ハイラル王国の攻勢によって、長期間
抑圧されていたゲルド族の欲求が、一挙に爆発した形だった。これまで襲撃してきた僻地の町や
村に比べ、この城下町が格段に豊かであったことも、彼女らの乱脈行為を助長した。ハイラル
平原に逃げ落ちていった難民は少なくはなかったが、それでも城下において犠牲になった人は
数知れなかった。
 王国軍を駆逐してしまったあと、ガノンドロフは部下の乱行を放置した。それがゲルド族の
流儀であったし、彼女らの欲求不満を解消させるという意味合いもあったからだが、むしろ
ガノンドロフ自身が率先して乱行にふけっているという面もあった。

 城下町の混乱が落ち着きかけた頃になって、砦からツインローバが到着した。
 長い旅とあって、すでに合体した姿となっていたツインローバは、若々しい足取りで城下町を
闊歩し、その荒廃ぶりに満足した。
「おみごと、おみごと。よくやったわよ、ガノン」
 次いでハイラル城に入り、ガノンドロフのもとへと赴く。
「ガノンはいま、どうしてるの?」
 案内するゲルド女に向けて、ツインローバは訊いた。女はにやりと笑って答えた。
「お楽しみの最中ですよ」
「はん、やっぱりね。相手は誰よ」
「城下町の広場で、毎日いちゃついてたカップルがありましてね。ガノンドロフ様について最初に
この町に来た連中は、ずいぶんむかついてたようで──なんせ自分らは、長い間お預け食って
ましたから──反乱が起きると真っ先にとっつかまって、それ以来、仲間に嬲られどおしですよ。
いまのガノンドロフ様の相手は、その女です」
「いま……ね。その前があるって口ぶりだわね」
「ええ、まあ……」
 ガノンドロフのパートナーであるツインローバだけに、女も遠慮があるのか、言葉を濁した。
が、ツインローバは平気だった。
「別に気にしなくたってかまわないわよ。何でも言ってごらん。あたしも聞いといた方が
そそられるからね」
「じゃあ、言いますが……」
 女はツインローバの目をうかがうように、しかし露骨な打ち明け話も満更ではない、といった
調子で、にやにやしながら話し始めた。
「最初は城の女どもを次々と。城にいるだけあって、けっこう上物がそろってましたよ。あとは
町の女で……めぼしいところだと、ボムチュウボウリング場の店員ですかね。初めはぎゃあぎゃあ
泣きわめいてましたが、そのうち自分から腰を振るようになりました」
「ふうん、やるもんだわね。で……」
 真面目な表情になって、ツインローバは女を注視した。
「ゼルダ姫はどうなったのよ?」
「ゼルダ姫は……」
 自分のせいではない、といったふうに、女はツインローバの視線を避けながら言った。
「逃げました。反乱が起こる一週間前のことだったそうで」
「逃げた?……はあ、もう……肝腎なところで詰めが甘いねえ」
 嘆息しながらも、ツインローバはくつくつと笑った。
「まあいいわ。それもまた、ガノンとお姫様の運命なんだろうよ」
 その言葉に、女は不思議そうな顔でツインローバを見たが、ツインローバはそれ以上、説明は
しなかった。
1712-1 Honey & Darling + Zelda III (2/13) ◆JmQ19ALdig :2007/02/18(日) 03:43:37 ID:pqg+Ymm+
 ツインローバをある部屋の前まで案内すると、女は去った。ツインローバは扉を開け、部屋の
中へ入った。
 入った瞬間、古い血の臭いが鼻を刺した。床はきれいに掃除されていたが、壁と天井には、
乾いた血液が一面にどす黒くこびりついていた。
『派手にやったもんだわね』
 部屋の奥の、数段高くなった壇上。玉座であろう、複雑な装飾を施された大きな椅子に、
ガノンドロフはすわっていた。その着衣のままの姿とは対照的に、膝の上には全裸の若い女が
抱かれていた。
 ツインローバはつかつかとそこに近寄った。
「来たか」
 何の感情もまじえない声で、ガノンドロフは短く言った。
「来たわよ。久しぶりね。まずはお祝いを言っておくわ。もっとも……」
 ガノンドロフと膝の上の女を等分に見比べながら、ツインローバは言葉に皮肉をこめた。
「あんたはそれどころじゃないようだけど」
 女は背後からガノンドロフに貫かれていた。大きく広げられた両脚のつけ根では、巨大な肉柱が
陰門に深々と埋めこまれ、ゆっくりと抽送が行われるたびにそこからしみ出す愛液が、二人の
接触する部分をてらてらと光らせていた。笑えば愛嬌があるであろう、女の顔は、いまは涙に汚れ、
口からは嗚咽とも喘ぎともつかぬ動物的な声が漏れ続けていた。
「あんたは好きなだけ女を抱けてご機嫌なんでしょうけど、我慢続きだったあたしは、たまった
もんじゃない。一緒に楽しませてもらうわよ」
「好きにしろ」
 ガノンドロフの返事も終わらぬうちに、ツインローバは女の股間へと右手を伸ばした。ねとつく
愛液に指を浸し、こりこりと固まった陰核を手荒く刺激する。
「あッ!……うう……」
 女の顔が苦痛と快感に歪む。ガノンドロフの膝の上で女の上半身が震え、小ぶりの乳房が怪しく
揺らぐ。ツインローバは右手を陰核に置いたまま、左手で片方の乳頭をねじった。
「ひッ!」
 短い悲鳴が女の口から飛び出し、次いで泣訴の言葉が漏れる。
「……お願い……もう、許して……」
「ふざけるんじゃないわよ。あんた、町の広場で毎日、男といちゃついてたんだって? そんな
淫乱な女には、相応の罰を与えてやらなくちゃね」
 厳しい言葉を女に投げてから、ツインローバはその場で衣装を脱ぎ捨てた。豊麗な胸と濃密な
恥毛を含む、完熟した肢体が露わとなった。淫欲に目を光らせながら、ツインローバは
ガノンドロフに言った。
「顔をよこして」
 結合を保ったまま、ガノンドロフは女の上半身を前方へと押し倒した。両手で肩をつかみ、女の
身体を水平に保つ。前に突き出された女の顔の前に、ツインローバは傲然と立った。
「さあ、舐めるんだよ」
 両手で顔をはさみ、おのれの秘部へと押しつける。恥毛に息をさえぎられながらも、女は
おずおずと、充血した陰唇、濡れた膣口、そして勃起した陰核へ、舌を這わせた。
「……く……いいわ……なかなか上手だよ」
 ツインローバは息を荒げ、自らの胸を揉みしだきながら、ガノンドロフに声をかけた。
「そのまま突いてやって。そうすりゃこいつもその気になって、もっとうまくやるだろうからね」
 ガノンドロフの抽送が速度を増した。それに応じて女の顔も規則的に前後し、その舌と唇が、
ツインローバの秘所にも律動的な刺激を与える。
「……あぅッ!……くううぅぅッ!……久しぶりなんで……もう……我慢できない……
このまま……このままいかせてもらうよおおぉぉぉッッ!!」
 両手に力をこめて、女の顔を股間に思い切りこすりつける。同時に腰を前へと突き出す。
 女の呼吸のことなど微塵も考えず、ひたすら自分の快楽のみを追い求め、ツインローバは
絶頂していった。
1722-1 Honey & Darling + Zelda III (3/13) ◆JmQ19ALdig :2007/02/18(日) 03:44:31 ID:pqg+Ymm+
 ガノンドロフの見るところ、一時の快感にツインローバは満足してはいなかった。
 いまだ達していないガノンドロフの膝の上で、ぜいぜいと息を荒げる女を見ながら、案の定、
ツインローバはさらなる懲罰を宣告した。
「あんたの男を連れてきてやるよ。恋しい彼氏に自分の浅ましい格好を見てもらえたら、あんたも
気分が出るだろう。あたしにも男が要るしね」
 ツインローバの淫液で塗りたくられた女の顔が、驚愕のために激しく歪んだ。
「やめて! いやよ!」
「面白いな」
 女の悲痛な叫びを、ガノンドロフはさえぎった。ツインローバは淫らな笑いを浮かべると、軽い
足取りで部屋を出て行った。
「それだけは許して!……どうか!……お願い!」
 女の哀願は、しかしガノンドロフの残酷な悦びを強めるだけだった。膣に埋めた男根を
脈動させると、女の言葉は途切れ、口から喘ぎが絞り出された。止めようとしても止められない
喜悦感が、そこには疑いようもなく現れていた。
「実はお前も、見られたいのだろう」
「そんなこと!」
 言葉とは裏腹に、女の膣が激しく収縮した。
「身体は嘘をつけないものだな」
 ガノンドロフの冷笑に、もはや否定する力もなく、女はただ喘ぎ、身体を蠢かせるだけだった。
 扉が荒々しく開かれた。
「さあ、連れてきてやったよ。あんたのよがりっぷりを、たっぷり彼氏に見せつけておやり!」
 ツインローバはそう叫ぶと、手を引っぱってきた全裸の若い男を、部屋の中へと突き放した。
「ハニー!」
 男は玉座の二人に向かい、二、三歩、歩みかけたが、自分の恋人が陵辱されている光景に
打ちのめされたのか、その場にへたりと蹲ってしまった。
「いやあぁッッ!! 見ないでえぇッッ!! ダーリン!! お願いぃぃッッ!!」
 女が絶叫した。
 同時にガノンドロフは女の腰をがっしりとつかみ、激しく下から突き上げた。
「あぁッ!……うぁッ!……いやッ!……いやよぉッ!……」
 口では拒否の言葉を漏らしながら、いつの間にか、女の腰は自発的な上下動を始めていた。
それを察知したガノンドロフは、にやりと満足の微笑を口の端に浮かべ、女の背後から、左手で
乳房を、右手で陰核を、それぞれ巧みに刺激した。
 茫然とそれを見守る男の傍らに、ツインローバが歩み寄った。
「ほら、ごらん。あんたに見られて、あの娘は感じてるよ。さっきまでとは大違いの乱れようさ」
「嘘だ……」
 男の否定の言葉は弱々しかった。恋人の目から見ても、いまの女の痴態は、ツインローバの
言葉を裏書きしているとしか思えないのだろう。
「嘘なもんかい。あんただって……」
 ツインローバの手が、男の陰茎をつかんだ。
「こうやって、おっ立ててるじゃないか。自分の女が犯られてるのを見て興奮するなんて、
あんたもけっこうなタマだね」
「うぅッ……!」
 隆々と勃起した陰茎をツインローバにしごかれ、男は恥辱の呻き声を上げた。
「さあ、おあいこだ。あたしがあんたを犯してやるから、それを彼女にたっぷり見てもらいな!」
 荒々しく男を床に蹴転がし、仰向けにすると、ツインローバは間もおかずその下半身に跨り、
怒張を一気に恥孔へとくわえこんだ。
1732-1 Honey & Darling + Zelda III (4/13) ◆JmQ19ALdig :2007/02/18(日) 03:45:53 ID:pqg+Ymm+
「くうううぅぅぅぅッッ!!」
 ツインローバの喉から、満足の呻きが深々と吐き出された。
「……やっぱり……男って……いいもんだね……」
 腰を激しく前後させ、回転させ、上下させながら、ツインローバは男を言葉で嬲った。
「あんたも散々……仲間に絞り尽くされたんだろうが……それでもまだ……こんなに硬くできる
なんて……やっぱり彼女がそばにいると……気分が出るのかい?……それともあたしの身体が……
いいのかい?」
 男は答えず、顔を歪め、下半身を襲う快感に必死で耐えているふうだった。
「そうそう……あたしがいくまで……我慢するんだよ……先にいったりしたら……承知しない
からね……あんたの尻を……引き裂いてやる……」
 静かな、しかし恐ろしい脅迫の言葉に、男の身体は震えた。ツインローバは凄みのある淫笑を
顔に満ちあふれさせ、ガノンドロフに呼びかけた。
「ガノン、その女とこっちに来て。四人で一緒に楽しみましょうよ」
 ガノンドロフは、後ろから女の両脚を抱きかかえて立ち上がった。巨根を膣に突き刺したまま
女の両脚を広げ、その恥ずかしいさまを見せつけながら、他の二人のもとに歩み寄る。仰向けに
なった男と互い違いになるように、女を四つんばいにする。その背後に膝をつき、両手で女の腰を
つかんで、激しい抜き差しを開始する。
「ひぃッ!……ひぁッ!……はぁッ!……うぁッ!……」
 女はもはや拒否の言葉もなく、ガノンドロフの攻めを受け入れていた。恥部からはとめどなく
愛液があふれ、下にいる男の顔面にしたたり落ちた。男はそれを舐めとりながら、目の前で
蹂躙される恋人の愛しい部分を、なすすべもなく見つめていた。
「はっ! こいつやっぱり、彼女が犯られるのを見て感じてるんだ。ペニスの張り切りようで
わかるよ。あんた……」
 眼下に突き出された女の顔、その顎に手をかけ、ツインローバは冷ややかに言った。
「いい彼氏を持ったねえ。あんたが犯されるのが嬉しいんだとさ。もう我慢することはないよ。
思い切りいっちまいな」
 そのまま女の顔を、豊満な胸へと押しつける。女は何も言われないのに、ツインローバの乳首を
舌で愛撫し始める。ツインローバが低く呻く。その膣に締めつけられたためか、男の喘ぎが
激しくなる。
 頃合いと見て、ガノンドロフは女への攻めを激しくした。女の膣が絞られた。
「あああぁぁッッ!……いいッ!……いいのぉッ!……ダーリン!……見てぇッ!……悪い
わたしを見てえぇぇーーーーッッ!!」
 それまでとは正反対の、しかし真実の絶叫が、女の口からほとばしり、その全身が痙攣した。
大量にしぶく愛液を顔面に受け、男も遂情の叫びを上げる。
「うおおぉぉッ!……ハニー!……許してくれぇッッ!!」
 わずかに遅れてツインローバの口からも、喜悦の声が高らかに響いた。
 それらを聞き、みなの恍惚の表情を確認してから、ガノンドロフもまた、女の体内に、溜まった
精を吐き出した。

 ツインローバの欲望は、それでもまだ果てなかった。
 わずかではあっても、自分より先に絶頂したことを言い立てて、ツインローバは男に刑を宣した。
恐怖に引きつる男の顔を、嗜虐の笑みで見やりながら、ツインローバはゲルド族の愛用品である
ベルトつきの張形を装着して、男の肛門を激しく犯した。同時にガノンドロフも、まだ処女で
あった女の肛門を、その雄大な屹立で強姦した。
 肛門に張形を埋められたまま、ツインローバの手によって射精させられた男は、次に
ガノンドロフの餌食となった。同性に犯される屈辱に男は涙を流し、それが女を歪んだ快感へと
誘った。ツインローバの張形は、そんな女の二つの肉穴を、余すところなく犯し尽くしたのだった。
1742-1 Honey & Darling + Zelda III (5/13) ◆JmQ19ALdig :2007/02/18(日) 03:46:49 ID:pqg+Ymm+
「ガノン、あんた、幸運だったわね」
 性欲を満たしきったのち、ガノンドロフからいきさつを聞いたツインローバは、開口一番、
まずこう言った。
 犠牲となった哀れな男女が部下たちに引き渡されたあと、ガノンドロフとツインローバは最後の
交合を行い、いまは部屋の真ん中の床に二人で横たわっていた。
「時の神殿にマスターソードがあって、しかもそれがトライフォースへの最後の鍵だったなんて、
あたしも知らなかった」
「マスターソード?」
 ガノンドロフが初めて聞く言葉だった。
「何だ、それは?」
「ハイラル王国に伝わる伝説の剣。時の神殿で、そのリンクとかいう小僧が引き抜いたのがそれよ。
床の台座に刺さってたんでしょ? 間違いないわ」
「幸運というのは?」
「その剣はね、心悪しき者は触れることのできない聖剣とか、魔を退ける退魔の剣とか
言われてるのよ。この意味がわかる?」
 ガノンドロフは黙っていた。答を期待はしていない、とでも言いたげに、ツインローバは
揶揄するような口調で続けた。
「あんたには決して触れられないものだってこと。もしあんたが『時のオカリナ』と三つの
精霊石を持っていたとしても、マスターソードが台座に刺さっている限り、あんたはどうにも
できなかった。幸運にもリンクがそれを引き抜いてくれたおかげで、聖域への道が開いて、
あんたはトライフォースを手に入れられたのよ」
 つまり俺は、心悪しき者であり、魔であるということか。
 ガノンドロフは苦笑した。
 一向にかまわん。当たっている。だが……
「俺はトライフォースの三分の一しか手に入れていない。それでも幸運か?」
「ああ、それについちゃ、あたしも当てがはずれたわ」
 ツインローバは肩をすくめた。
「トライフォースは、力、知恵、勇気の三つからなっている。どうやら、その三つを兼ね備えた
ご立派なお方でないと、完全なトライフォースを得るのは無理だった、ってことらしいわね。
あんたの手にあるのは……」
 ツインローバがガノンドロフの右手をとる。その甲に宿る三角形。その三つの角の部に、さらに
小さな三つの三角形が位置し、頂点の一つだけが金色に輝いている。
「力のトライフォースね」
 力。それは確かに、俺が唯一、信じるものだ。
「あんたにはぴったりよ、ガノン。そのおかげで、あんたは魔王になれた。それでよしとは
思わない?」
「馬鹿な……」
 ガノンドロフは鼻で嗤った。
「満足できるものか。世界の支配を完全にするために、俺は残りのトライフォースを手に
入れてやる」
1752-1 Honey & Darling + Zelda III (6/13) ◆JmQ19ALdig :2007/02/18(日) 03:47:32 ID:pqg+Ymm+
「それでこそ、あんただわ。あたしが見込んだとおりの男」
 ツインローバはガノンドロフの頬に軽く接吻し、
「となると、問題は、残りの二つのトライフォースがどうなったか、ってことだけど……」
 そう言って、ガノンドロフの目をのぞきこんだ。
「あんたと同じで、いま、他の誰かに宿っているはずだわね。あんたがトライフォースを
つかんだ時、光が上と下へ飛んでいった。それが鍵だと思うけど……あんたには心当たりがある?」
「上へ飛んだ光の方だが……」
 とガノンドロフは応じた。
「仲間の中に見た者がいる。ちょうど同じ頃、時の神殿の上空から南の方角へ、光が飛び去って
いったと」
「南ね……」
 ツインローバは腕組みをして、しばし考えるふうだった。
「……誰かさんが逃げた方角だわね……あり得ることだわ。確かに、あのお姫様なら、知恵の
トライフォースがお似合いかも。なにせ……」
 悪戯っぽい目でガノンドロフを見、ツインローバは続けた。
「あんたを出し抜いて、まんまと『時のオカリナ』を守ったわけだし」
 別にあの小娘の知恵にしてやられたわけではない、と、ガノンドロフは反発を感じたが、それを
口には出さなかった。
「ともあれ、ゼルダの方は、話は簡単だわ。草の根分けても探し出して、とっつかまえること。
で……」
 ツインローバは簡略に結論を述べ、またもガノンドロフの目をのぞきこんだ。
「勇気のトライフォースの方の心当たりはあるの?」
「お前にはあるのか?」
 ツインローバの問いに秘められた匂いを感じ、ガノンドロフは反問した。
「あるわ」
 自信ありげにツインローバは言った。
「マスターソードは、勇者としての資格ある者だけが、台座から抜き放つことができる、
と言われているのよ。リンクにはそれができた。勇者──つまり勇気のトライフォースが
宿るべき者」
 あの小僧が勇者だと?
 せせら笑いかけたガノンドロフは、しかしその思いを冷静に抑えた。
 奴はほんの小わっぱだ。城の正門前で会った時も、全く相手にならなかった。だが、奴の目に
満ちていた、ひるみなく戦いを挑む強固な意志──あれは確かに「勇気」と呼ぶべきものだろう。
ゴーマ、キングドドンゴ、バリネードの三体を倒した実績もある。
「それはいいとして……そもそも、あの小僧はどうなったのだ? マスターソードを引き抜いた
瞬間、どこかへ消えてしまったが……」
「早すぎたんじゃないだろうかね」
 飛躍した答。
 ガノンドロフの疑問の表情に、ツインローバは説明を補足した。
「つまり……勇者としての資格はあったが、実際に勇者として活動するには、リンクはまだ
幼すぎた。そのために、存在が封印されてしまった、ということじゃないのかね」
「想像力が豊かだな」
 からかうようにガノンドロフは言ったが、ツインローバは熱心に言葉を続けた。
「光が下へ飛んでいった、というのが重要なのよ。あそこの地下には光の神殿があるからね。
リンクはそこに封印されたに違いない。ラウルの奴が考えそうなことさ。マスターソードの
ことだって、トライフォースが三つに分かれたことだって、あたしの知らないうちに、ラウルが
やった小細工に決まってる」
1762-1 Honey & Darling + Zelda III (7/13) ◆JmQ19ALdig :2007/02/18(日) 03:48:27 ID:pqg+Ymm+
「ラウル?」
 ガノンドロフは短く訊いた。
「『光の賢者』──光の神殿の主よ。ハイラルの守護者を気取ってる、いけ好かない奴さ。
もっとも身体の方は大昔に滅びてしまって、いまじゃ精神だけが生き残っているんだけどね」
「知り合いらしいが……仲がよくないようだな。恨みでもあるのか?」
「大ありよ!」
 ガノンドロフから目をそらして吐き捨てるよう言い、
「いい機会だから、ガノン、あんたに教えといてあげるわ」
 と、ツインローバは声を低くした。
「あたしは──このツインローバは──昔、ハイラルを守る賢者だった。ところがちょいと色気が
出ちまって、自分が守るべきトライフォースに手を出そうとした。それが賢者の長であるラウルに
ばれて、あたしは追放されてしまったのさ」
 ガノンドロフは思い出す。
『堕ちた賢者』──ツインローバはかつて、自らのことを、そう呼んでいた。
 ツインローバの声が、さらに低くなった。
「実はあたしは……あたしらは……双子じゃない。三つ子だった。コマツという姉がいた。
その姉を……追放の際、ラウルは闇の世界に封印しやがった!」
 最後の言葉には、血を吐くような激しさがあった。
「自業自得っていや、それまでだけどね。肉親──自分自身の一部──それを奪われた恨みは、
忘れやしない」
 ツインローバはそこまで言うと、ガノンドロフの顔をふり返った。
「あたしがあんたに肩入れして、トライフォースを手に入れさせようとしたのも、正直なところ、
ラウルの奴にぎゃふんと言わせてやりたかったからなのよ」
 しばしの沈黙のあと、ツインローバの感情など無視するかのように、ガノンドロフは冷静な声で
言った。
「あの小僧から勇気のトライフォースを奪うには、光の神殿へ行かなければならないわけだな。
時の神殿の地下にあるとのことだが、どうやって行くのだ?」
「生身の人間には行けやしないよ」
 ツインローバはあっさりとガノンドロフをいなした。
「精神だけのラウルなら出入り自由だし、ラウルの助けがあれば──リンクのように──普通の
人間でも到達できるだろう。でも、あんたには行けないわよ、ガノン」
「ではどうする?」
「誰だい!?」
 突然、ツインローバが叫んだ。壇上の玉座の方を鋭く睨む。妖艶な一人の熟女が瞬間的に分裂し、
箒に乗った二人の老婆が現れる。と思うと、とても老婆とは思えぬ俊敏さで、二人は玉座の前に
殺到した。
「おかしいね」
「誰かいると思ったんだが」
「気のせいかね」
「そのようだね」
 そのまま玉座の周囲をゆるゆると飛んでいた二人は、やがてガノンドロフのそばへと戻ってきた。
「驚かせて」
「すまないね」
「で、勇気のトライフォースを」
「手に入れる方法だけど……」
1772-1 Honey & Darling + Zelda III (8/13) ◆JmQ19ALdig :2007/02/18(日) 03:49:23 ID:pqg+Ymm+
 ツインローバはそこで再び合体し、若返った声であとを続けた。
「リンクの封印が解けて、この世界に戻ってくるのを待つしかないわね」
「いつだ、それは?」
「わかるもんかい。五年先か、十年先か……あるいは、このままずっと戻ってこないかもしれない。
でも……いつかは戻ってくると、あたしは思う。勇者にふさわしい歳になったら、ね。ラウルは
絶対、そうするつもりでいるわよ。リンクにあんたを倒させるために」
 もし、奴が成長し、それなりの年齢となって俺の前に現れたとしたら……と、ガノンドロフは
考える。
 せせら笑ってすむ相手ではない。なにしろ……
『あいつの血を引いているのだからな……』
 ガノンドロフは思わず、右頬に手をやった。
「勇気のトライフォースについては、そういうこと。待つしかないわ」
 再び結論を述べたあと、ツインローバは話を進めた。
「でもこの先、簡単にはいかないかもよ、ガノン。賢者の力を侮っちゃいけない」
 ツインローバが、戒めるように言い出した。
「ラウルのことか?」
「ラウルと、あと五人。ハイラルには、ラウルを含めて六人の賢者がいるのよ。そいつらが力を
合わせれば、あんたを闇の世界に封印することだってできる。あたしらの姉が、やられちまった
ようにね。それがラウルのやり口なんだ」
 ガノンドロフは訊ねた。
「ラウル以外の五人の賢者とは誰だ? そのうちの一人は、お前だったとのことだが」
「知らないわよ」
 再びツインローバは、ガノンドロフの問いをいなした。
「賢者の長であるラウルだけは、いまもその地位にあるだろうけど、他の賢者は時代によって
代替わりするんだ。例えば、あたしは昔、『魂の賢者』と言われていたが、いまの『魂の賢者』が
誰なのか、あたしは知らない。当の賢者本人でさえ、自分が賢者だとは気づいていないはずよ」
「ならば賢者の力など、心配するには及ぶまい」
「そうはいかないわよ。世界がよほど大きな危機に陥った時──あいつらにとっては、ちょうど、
いまのような時さ──そういう時こそ、賢者の力がものをいう。そこで登場するのがリンクなんだ」
 ツインローバはガノンドロフに向き直った。
「勇者であるリンクが、ハイラルに眠る賢者を目覚めさせる。それがラウルの計画なのよ。
リンクがこの世界に戻ってきて、賢者となるべき人物に出会ってしまうと、面倒なことになる。
だから先手を打って、それまでに……」
 見る者が凍りつくような不気味な笑いを、ツインローバは頬に浮かべた。
「賢者を皆殺しにしておくんだ」
 その笑いを見るガノンドロフの表情は、やはり冷静だった。
「だが、賢者がどこの誰かわからぬのでは、殺しようがあるまい」
「あたしにはわかる」
 ツインローバが、かぶせるように言った。
「いまこの時点で、賢者となるべき人物がリンクと出会っていたら、賢者として目覚める前で
あっても、そいつはすでに未来の賢者としてのオーラを発しているはずだわ。昔は賢者の
端くれだったあたしだ。そいつに会えば、あたしにはそのオーラがわかる」
「会えばわかるといっても、ハイラルは広いぞ」
「大丈夫よ。賢者の居場所は、だいたい見当がつく。賢者はハイラルの各地にある神殿の主に
なるんだから、その神殿に関係のある場所にいるはずなのよ。ゲルド族のあたしが、砂漠の
果てにある魂の神殿──ほら、あの巨大邪神像のことさ──あそこの主だったようにね」
「なるほどな……」
 ガノンドロフは口の端でかすかに笑った。
1782-1 Honey & Darling + Zelda III (9/13) ◆JmQ19ALdig :2007/02/18(日) 03:50:28 ID:pqg+Ymm+
「ともあれ、賢者の抹殺、それがあんたのやるべきこと。残り二つのトライフォースを奪い取る
ことに加えて、ね」
 そうまとめると、ツインローバはガノンドロフに問いかけた。
「ところで、ガノン、ゼルダにせよリンクにせよ、あんたがトライフォースの持ち主を見つけたと
して、それからどうするつもり?」
 またも答を誘導するような調子が感じられた。
「賢者と同じことだろう。殺すさ」
 それ以外に何をすることがあるのか、という意思をこめて、ガノンドロフは答えた。しかし
ツインローバは首を振った。
「たぶんそれじゃだめね」
「では、どうしろと?」
 ツインローバはしばらく黙っていたが、やがて慎重な口調で言い出した。
「いままでトライフォースが人間に宿った例はない。だからこれは、あたしの想像に過ぎない
けど……トライフォースがある人物に宿る、その理由は、その人物の肉体じゃなく、精神に
由来するものなのよ。だから肉体的に敗北させるだけなら──つまり殺すだけなら──そいつは
トライフォースを持ったまま死んでしまって、それを取り上げることはできなくなる。
トライフォースを奪うなら、そいつを精神的に敗北させなくちゃならないと思う。そうすれば
そいつから、トライフォースが離れていくはずよ。ただそのままだと、トライフォースはいずれ
そいつに戻っちまうだろうから……離れたあとで、そいつを殺しておく必要はあるけどね。
そうすれば、行き所を失ったトライフォースは、そいつを倒した側に宿り直すでしょうよ」
 精神的に敗北させる、か……
 ガノンドロフは腹の中で冷ややかに笑った。
 確かに……ただ殺すだけでは面白くない。その前に……
 ゼルダ。
 リンク。
 さらには、まだ見ぬ賢者たちも。
 おのれの前に並べられる、獲物の数々。
 その美味を想像し、ガノンドロフの心は怪しく震える。
『とりわけ、ゼルダだ』
 いまにも犯されようかという、あの場面で、俺を罵った度胸。
『さすがは一国の王女よ……』
 あの時は頭に血が上ってしまったが、いまは率直に、そう賛嘆できる。
 だが侮辱を忘れたわけではない。賛嘆もただの賛嘆ではなく、いずれ自分の前に供される獲物の
味を深めるための調味料に過ぎないのだ。
 その度胸を踏みにじり、王女としての誇りをずたずたにして、俺の前に跪かせてやる。
「そうよ」
 ツインローバも、陰惨に笑う。
「精神的に敗北させてやること。あんた流のやり方で、徹底的にね」
 それはあたかも、ガノンドロフの思考を読み取ったかのような──いや、まさに思考を読み取る
ことのできる者にしかできない会話だった。
1792-1 Honey & Darling + Zelda III (10/13) ◆JmQ19ALdig :2007/02/18(日) 03:51:29 ID:pqg+Ymm+
 ハイラル平原の南端は、人の住まぬ荒野であった。
 平原の他の地域と比べると、ここは地面の起伏が大きく、草木も生えない痩せた土地が
広がっていた。場所によっては小さな池沼が点在し、周囲に灌木の茂みが見られたりもするのだが、
そんな貧弱な命の徴が、かえって風景の荒れ果てた印象を強めていた。標高の高い所では、大小の
岩が猛々しくそそり立っていた。雨水や風の浸食が長い時間をかけて作り出した、その自然の
オブジェは、回りを険しい崖や奥深い穴に囲まれ、岩肌にはいくつかの洞窟が穿たれていた。
 そうした洞窟の一つに、いま、ゼルダは身を隠していた。
 ハイラル城を脱出したゼルダとインパは、ゲルド族に追われて南へと逃げた。運の悪いことに、
その方面には王国軍が展開しておらず、追っ手に対抗できる兵力の助けを得ることができなかった。
途中の村に身を隠そうにも、ゲルド族の追跡は急で、その時間的余裕はなかった。村人を
巻き添えにするのも憚られた。やむなく二人は、数日にわたって馬を飛ばした末、この南の荒野に
たどり着いたのだった。さすがにこの最果ての土地にまでは、彼女らも足を伸ばしてはこない
ようで、二人はやっと息をつくことができた。だが、当面はそこから動くことはできなかった。
 ハイラル城下のゲルド族の人数が増えていたことを、インパはずっと気にしていた。
ハイラル城の状況が気がかりだと言っていた。情報収集と食料確保の目的で、インパは馬で近くの
──といっても往復二日はかかったが──村へ出かけていった。幸い追っ手に遭遇することは
なかったが、そこで得られた情報は、ゲルド族が反乱を起こし、ハイラル城が攻撃されたという、
驚くべきものだった。インパはゼルダのもとへ取って返し、ハイラル城へ偵察に赴くと言って、
直ちに荒野を去った。
 それから数日が経っていた。
 ひとり洞窟に暮らすゼルダの心は、さまざまな思いで沸きかえらんばかりだった。
 ハイラル城の運命は? 国王である父の安否は? 城の臣下たち、城下の市民たちはどう
なったのか?
 何より気にかかるのは、リンクのことだ。リンクはどうしているのだろうか? そして……
『トライフォース……』
 ゼルダは右手の甲を見つめた。そこに浮かび上がったトライフォースの印。三角形の各頂点に
位置する、三つの小さな三角形。その左下の一つだけが、金色に輝いている。
『……知恵のトライフォース……』
 それはインパとともに南へと逃げる途上のことだった。天から差す一条の光が疾走する馬を
包みこみ、その背にしがみつくゼルダの右手を激しい痛みが襲った。その時には、何が起こったのか
わからなかった。ようやく落ち着ける所まで来て、ゼルダは初めてそれに気づいたのだった。
 三つのトライフォースのうちの一つだけが、わたしに宿っている。
 これはどういうことなのか? わたしはリンクに『時のオカリナ』を託し、トライフォースを
守ってくれることを期待した。それを手にして、ガノンドロフを倒してくれることを期待した。
リンクならそれができると、わたしは信じていた。なのに……
 洞窟の入口に気配がし、ゼルダは身を固くした。
 敵? それとも……
1802-1 Honey & Darling + Zelda III (11/13) ◆JmQ19ALdig :2007/02/18(日) 03:52:29 ID:pqg+Ymm+
「姫……」
 インパだ! 危険な旅から、よくぞ無事に……
 喜びに胸を弾ませながら、ゼルダはインパに駆け寄った。しかしその顔を満たす苦悩の色を見て、
ゼルダの心は一転して暗澹となった。
 インパは慎重にゲルド族の探索の動きを避けながらハイラル城へと向かい、途中で出会った
難民や敗残兵から、何が起こったかを正確に聞き取っていた。
 ハイラル城の陥落。父王の死。城下町の悲劇。
 ゼルダは悲嘆の底に突き落とされた。だがそれらはまだ、考えたくはなくとも、予想はできた
ことだった。
「リンクは? リンクはどうなったの?」
 急きこんで訊ねるゼルダに対し、インパはさらに苦渋の告白をせざるを得なかった。大胆にも
インパはハイラル城に侵入し、玉座の背後にある武者隠しにひそんで、ガノンドロフと
ツインローバの会話を盗み聞いていたのだった。
 ゼルダは茫然となった。
 リンクが『時のオカリナ』と三つの精霊石をもって、『時の扉』を開いたところまではいい。
ところが、トライフォースへの最後の鍵であるマスターソードに触れたリンクは、勇者としての
資格を持ちながら、あまりにも幼すぎるという理由で、光の神殿に封印されてしまったという。
そして開け放しになった道をたどって、ガノンドロフが聖地に侵入し、トライフォースを手に
入れてしまった……
 それを不幸な偶然ということもできるだろう。でも……
 ゼルダの心を、激しい悔恨の情が襲った。
 トライフォースを手に入れることができれば、ガノンドロフを倒せると思っていた。それが
何という思い上がりだったことか。
 浅はかだった。おのれの未熟さを顧みず、聖地を、トライフォースを制御しようなどと……
 すべて自分の過ちだ。
 それに……
「……封印されたリンクは……どうなるの……?」
 ゼルダは声を絞り出した。インパの答に救いはなかった。
「……わかりません……ツインローバに気配を悟られ、私はそれ以上、そこにとどまっては
いられませんでした……」
 ゼルダは胸を抉られる思いだった。
 ……リンク……他でもないあなたを、わたしは、自分自身のせいで、この世から失って
しまった……
 どうすればいいのだろう。わたしには何が残されているだろう。
 絶望──という言葉が頭に浮かぶ。
 いや……
 首を振る。
 たった一つだけ、わたしにはまだ、すがるものが残っている。
 ゼルダは洞窟の外に歩み出た。
 時は夕刻で、あたりはすでに暗く、冷たい風が荒野を吹きすさんでいた。うち沈んだ心をさらに
鞭打つような光景だった。が、ゼルダの目は、いまだわずかに暮色の残る西の空へ、しっかりと
向けられた。
 そこに輝く、一つの星。
 これまでわたしは、常に予知を待ち受ける立場だった。夢のお告げ。そして予兆の星による喚起。
でもいまは……いまだけは……わたし自身から、未来の知らせに望みを馳せる。
 予兆の星に向け、ゼルダは跪き、祈った。全霊を捧げて。あらゆる思いをこめて。
 長い時間が過ぎていった。
 西の空が闇に満たされ、完全な夜が天空を支配してしまっても、ゼルダの祈りは続いた。
 星々が大きく座を動かした夜半になって、ようやくゼルダは集中を解いた。
 確かな概念を、ゼルダは得ていた。
1812-1 Honey & Darling + Zelda III (12/13) ◆JmQ19ALdig :2007/02/18(日) 03:53:42 ID:pqg+Ymm+
 ゼルダが祈っている間、インパはその背後に立ち、ひたすら待っていた。一心に祈るその姿を、
インパはずっと見守っていた。
 やがて立ち上がり、ふり返ったゼルダの顔からは、先刻の動揺と惑乱は消え去っていた。いま
そこには、深い沈静の色が湛えられていた。
 ゼルダは静かに口を開いた。
「リンクは、帰ってきます。十六歳となる、その日に」
 絶対の確信がある、そういう口ぶりだ、とインパは思った。
「七年後……ですか……」
「そう……まだ遠い未来のこと。でも、リンクは帰ってくる」
 インパはそれを信じた。ゼルダを信じると、すでに決めていたから。
「それまで、姫は……どうなさいますか?」
「待ちます」
 淡々とした声だった。しかしそこにはゼルダの熱い真情が秘められていると、インパには
感じられた。
「世界に残された最後の希望。勇気のトライフォースを持つ、時の勇者。それがリンク。
その希望を信じて、わたしは待ちます。でも、それだけではない……」
 ゼルダの目が力強い光を帯びた。
「リンクの使命。それは、ハイラルに眠る賢者を目覚めさせ、その力を得て、ガノンドロフを
倒すこと。そしてわたしもまた、自身の使命を果たさなければなりません」
「姫の使命……とは?」
「トライフォースがガノンドロフに奪われた、この事態の責任を、わたしは取ります。リンクが
帰ってくるまでに、賢者の居所を探し出します。リンクが帰ってきたら、わたしもリンクとともに
戦います」
 声はあくまでも平静だった。が、そこに込められたゼルダの想いと覚悟の深さに、インパは
打たれた。表情には一片の曇りさえなく、凛として立つその姿は、まさしく王女の名にふさわしい
ものであった。
「あなたに仕えることができて、私は幸せです」
 声を震わせ、インパは言った。
 ゼルダは無言で微笑んだ。
1822-1 Honey & Darling + Zelda III (13/13) ◆JmQ19ALdig :2007/02/18(日) 03:55:09 ID:pqg+Ymm+
「ですが、姫、あなたご自身の危険も考えておかねばなりません」
 冷静な護衛の役割に戻って、インパはゼルダに忠告した。
「トライフォースのことです」
 ゼルダは頷いた。
「わたしは予知とともに、啓示を受けました。トライフォースが三つに分かれた、真の理由に
ついて」
 変わらぬ平静な調子で、ゼルダは朗詠するように語り始めた。

 聖なる三角を求めるならば 心して聞け
 聖なる三角の在るところ……聖地は己の心を映す鏡なり
 そこに足踏み入れし者の心 邪悪なれば魔界と化し 清らかなれば楽園となる
 トライフォース……聖なる三角……
 それは 力 知恵 そして勇気……三つの心をはかる天秤なり
 聖三角に触れし者……三つの力を併せ持つならば 万物を統べる真の力を得ん
 しかしその力なき者ならば 聖三角は 力 知恵 勇気の三つに砕け散るであろう
 あとに残りしものは 三つの内の一つのみ……それがその者の信ずる心なり
 もし真の力を欲するならば 失った二つの力を取り戻すべし
 その二つの力……神により 新たに選ばれし者の手の甲に宿るものなり
 
 ゼルダは言葉を続けた。
「『万物を統べる真の力』……ガノンドロフには、その力がなかった。そのために、彼は力の
トライフォースしか得ることができず、勇気のトライフォースはリンクに、そして知恵の
トライフォースはわたしに宿ることになりました。この先、ガノンドロフは……」
「そう……」
 インパがあとを引き継いだ。
「ガノンドロフは、残る二つのトライフォースを奪おうとしています。王族の生き残りである
あなたは、ガノンドロフにとって、ただでさえ危険な存在。さらに知恵のトライフォースが
宿っているとあっては、ガノンドロフはこれまで以上に必死になって、あなたを探し始めるに
違いありません。これから七年間、どうやってその追及をかわせばよいか……」
 そう言いながらも、方策は浮かばなかった。七年は長い。全力を尽くしたとしても、ゼルダを
守りきれるかどうか、インパは確たる自信を持てなかった。
「それについても、わたしは啓示を受けています」
 静かにそう言うと、ゼルダは瞳を閉じ、天を仰いだ。両腕を上げ、手のひらを天に向けた。
 訝しみつつ見守るインパの前で、ゼルダの姿は突然、眩い光に包まれた。
「姫!」
 インパは叫んだ。が、ゼルダに何が起こったのかを確かめることはできなかった。あまりの光の
強さに視覚は無となり、さらにはすべての感覚が失われた。
 どれほどの時間が経っただろうか。
 再び感覚の戻ったインパは、その場に倒れ伏す者の姿を見た。
 それはゼルダであって、しかしすでにゼルダではない、一人の人物であった。


To be continued.
183 ◆JmQ19ALdig :2007/02/18(日) 03:55:50 ID:pqg+Ymm+
残虐描写は不得意なので、陵辱といってもこの程度ですが・・・
次回は場面を変えて、シークとインパ、そしてアンジュ(=コッコ姉さん)が登場します。
184名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 03:56:53 ID:XZfiDSZB
リアルタイムで乙
185名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 04:11:53 ID:f5sLMrH4
こんな時間だけど乙
186名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 05:09:17 ID:anJbSHk2
おお、投下されていたとは!
187名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 19:06:13 ID:iUbN/Hyq
>>183
GJ!!
まさかハニー&ダーリンが出てくるとは思わなかったw
男男、女女でも、こういう形でだったら個人的には全然おkでした
後半は、ゼルダは本当に芯から強い方だなー、と思えた
シークとなったゼルダ、そしてインパが次に何をするのか、
今から首を長くして楽しみにしています
188名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 21:41:29 ID:1pVKEBxs
合体して若がえる程の魔力の持ち主ならフタナリ化ぐらい簡単そうなのに
あえて張形を使うのは作者の趣味なんでしょうか(;´Д`)ハァハァ
189名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 22:08:40 ID:80s4VB8e
そんな逆ベクトルの思考ができるお前には感嘆するばかりだ。
ふたなりならありますよファンタジーやメルヘンの世界なんですから
という人ならいさ知らず
てか普通思いつかない。すげぇ
190名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 22:26:18 ID:0C/LE1RY
GJ!続き楽しみにしてるよ
191名無しさん@ピンキー:2007/02/19(月) 00:02:36 ID:HjBvV8gp
投下キテター(AAry
これは続きが物凄く気になる。
ついでにシークの性別も気になる。
192名無しさん@ピンキー:2007/02/19(月) 05:56:06 ID:eaJzXTdJ
ミドナ様(大)の耳の形と左足(GC)の色について、ずっと考え続けている。
誰か資料持ってないか?
193名無しさん@ピンキー:2007/02/19(月) 11:35:24 ID:aulGpE1s
足は普通に肌の色と同じなんじゃないの?
194名無しさん@ピンキー:2007/02/20(火) 01:29:18 ID:GgD9y8j1
よつんべでエンディング見ても
耳はフードで見えないんだ
>>192氏の足しにならないかもしれないけど
つ[ ttp://www.youtube.com/watch?v=XOEiu3L2pC0&mode=related&search= ]
本スレより甜菜
195192:2007/02/20(火) 06:53:50 ID:XeRhjNdg
あんがと
エンディングでは足先が黒く見えるような気がするですよ。
片っぽだけなんか履いてるのか地の色なのか。

そして小ミドナの獣耳は非常にチャーミングなわけだが・・
他の影の住人を見るに耳は丸いか、ひょっとしてほとんど耳たぶ無いんじゃないかとか、
ハイリア人の耳が神の言葉を聞くために長いなら、神に見放された種族の象徴としてとかなんとか・・?

設定画像とかないんかねえ。
196名無しさん@ピンキー:2007/02/24(土) 09:38:58 ID:e2l3UkjN
保管庫が更新されたな
197 ◆JmQ19ALdig :2007/02/25(日) 15:05:02 ID:ObTzBMkr
時オカ/第2部/第2章/インパ編その1、投下します。
今回はインパとシークの和姦。
註:アンジュ(仮名)=コッコ姉さん
1982-2 Impa I (1/14) ◆JmQ19ALdig :2007/02/25(日) 15:06:16 ID:ObTzBMkr
 門を出て石段を降りると、真っ暗なハイラル平原に目を向けている男の姿が見えた。
「交代だ」
 兵士は声をかけた。ふり向いた男の顔には翳りがあった。それは夜空一面の雲で月の光が
弱められているせいばかりではなさそうだった。
「もう……時間ですか?」
 疲れの感じられる声だった。兵士は頷き、それまでの男と同じように、平原へと目を凝らした。
 男が去ろうとしないので、兵士はいくぶん声を和らげて言った。
「ご苦労だったな。休んでいいんだぞ」
「ええ……」
 それでも男は動かなかった。話し相手が欲しいんだな、と察し、また自分の気を紛れさせる
つもりもあって、兵士は男に語りかけた。
「民間人のお前さんに、見張りなど頼んですまないと思っている」
「いえ……」
 男はうつむいて短く答え、少し間を置いてから先を続けた。
「住む所もない私に、この村はこんなによくしてくれるんだから……これくらいのことは
しないと……」
 感謝を表す言葉だったが、声には何の感情もこめられていないように聞こえた。それも
しかたがあるまい、と兵士は思った。
 感情を捨てなければ耐えられないような経験を、この男はしてきたのだ。
 男は目を上げて、西の方を見据えた。見えるはずのないハイラル城が、その目には見えて
いるかのようだった。
「あいつら……攻めてきますかね」
 兵士は黙っていた。心に迷いがあった。
 軍の情報を民間人に漏らしてよいものかどうか……
 そうしてはならない、という命令は受けていない。それにこういう事態となっては、兵士と
民間人を区別する意味もない。現に、ハイラル城下から命からがら逃げてきた難民の一人である
この男は、兵力不足に悩む守備隊を見かねて、見張り役を志願してきたのだ。
 迷いを捨てて、兵士は正直な意見を述べた。
「王国軍の主力は、ハイラル平原の西に集結しつつある。ゲルド族もそれに対応して動くはずだ。
ここへは来ないだろう」
「だといいんですが……」
 男の口調は変わらなかった。
「ハイラル城からこのカカリコ村まで、たった二日の道のりですよ。やつらがその気になりゃ……」
 あるいは主力軍がゲルド族との決戦に敗れることにでもなったら……
 頭に浮かんだ不吉な考えを、兵士はあわてて振り払おうとした。が、その考えは容易に頭から
去らなかった。去らないばかりか、不安は強くなる一方だった。
 ハイラル城が陥とされたのは、ゲルド族の不意打ちが図に当たったためだ。しかしそれを抜きに
しても、ゲルド族の戦闘力は馬鹿にできない。実際、過去の戦闘では、王国軍はゲルド族に
しばしば苦戦を強いられている。最近、ゲルド族を抑えることができていたのは、戦闘力よりも
政治力の効果の方が大きいのだ。それに……
 兵士は難民たちから聞いた噂を思い出した。
 ゲルド族の首領であるガノンドロフは、人知を超えた強力な魔法を使うらしい。魔王とも
呼ばれるそんな男に、王国の主力軍といえども、対抗することができるだろうか。
1992-2 Impa I (2/14) ◆JmQ19ALdig :2007/02/25(日) 15:07:37 ID:ObTzBMkr
「このハイラルは……どうなるんでしょうね……」
 男の声に初めて感情がにじんだ。悲観というその感情は、兵士の心をさらに暗くした。
「陛下も……お亡くなりになってしまって……」
 そう、このハイラル王国には、もはや国王もいない……
 絶望に打ちひしがれそうになった兵士の胸に、王家へ馳せる思いからの連想で、ふと光が差した。
その名が自然に口から漏れた。
「ゼルダ様が……」
 男が顔を上げた。
「ゼルダ様がおられるうちは、ハイラルは、まだ……」
 気持ちの高ぶりが、兵士の言葉を途切れさせた。
「ゼルダ様……」
 男はその名を繰り返した。
「……そうですね、ゼルダ様がおられるなら……」
 顔に生気が戻っていた。が、すぐに心配そうな声が続いた。
「でも、ゼルダ様があいつらに追われて城を落ちてゆかれてから──あれは反乱が起こる
一週間前でしたから──もうかれこれ、ひと月近くになります。ご無事でいらっしゃるでしょうか」
「それは……」
 言葉に詰まった兵士の耳に、小さな物音が聞こえた。
 平原の方からだ。あれは……馬蹄の音……
 男もそれに気づいたようだった。
「誰か来ます」
「しッ!」
 兵士は男の声を制した。
 敵軍? いや、一騎だけだ。こんな時刻に、いったい誰が……?
 油断なく闇を注視する。
 馬蹄の音は次第に明瞭となり、やがて兵士の目は、並足で近づいてくる白馬の姿を捕らえた。
「止まれ!」
 兵士は槍を構え、鋭く言った。馬上の人物は動じた様子もなく、低い声で答を返してきた。
「見張りの者か?」
 聞き覚えのある声だった。弱々しい月光のもとで苦労しながらも、兵士はその人物の顔を認めた。
「インパ様!」
「状況はどうだ?」
 馬を降りながらインパが訊いた。
「はい。城下から多くの難民が押し寄せておりますが、われわれ守備隊や村の者が協力して、
何とかやっております」
 答えながら、兵士は馬に乗っている、もう一人の人物に目をやった。その視線に気づいたのか、
インパはその人物を下馬させ、兵士の前に立たせた。
「私の息子だ。シークという」
 その人物──鋭い目をした金髪の少年は、黙って目礼した。
2002-2 Impa I (3/14) ◆JmQ19ALdig :2007/02/25(日) 15:08:34 ID:ObTzBMkr
「インパ様に、ご子息がおられたので?」
 意外に思って兵士は訊ねたが、インパは馬の轡をとりながら、平静な声で別のことを言った。
「来るのが遅れてすまなかった。隊長に会いたい。通らせてもらうぞ」
「は、どうぞ」
 兵士は道をあけた。シークと呼んだ少年と馬とを連れ、インパは村の入口に向かう石段を登り
始めた。
「インパ様」
 どうしても確かめたい気持ちを抑えきれず、兵士は後ろからインパに呼びかけた。
「ゼルダ様は……ご無事でしょうか?」
 インパがゼルダの護衛を務めていることはよく知っていたし、ゼルダがハイラル城を脱出した
時にインパが一緒だったということも、難民から聞いていた。
 インパ様なら知っているはずだ。
 ふり向いたインパは、短い間を置いて答えた。
「ご無事だ」
 兵士は思わず安堵の息をついた。
「いまは、さる所に身を隠しておられる。心配するな」
 インパは踵を返し、再び石段を登っていった。
 傍らで二人の会話を聞いていた男に、兵士は笑いかけた。
「聞いたか? ゼルダ様はご無事だとさ」
「よかったですね、ほんとうに」
 男も笑みを返し、インパの後ろ姿を目で追った。
「ところで、あのお方は?」
「インパ様だ。ゼルダ様の乳母だよ。カカリコ村の出身で、この村を貧しい者のために開放して
下さったんだ。村人にとっちゃ、神様みたいな人さ」
 それに自分たちにとっても……と、兵士はしみじみ思った。
 インパに対する村人たちの尊敬の念は、守備隊として村に駐屯する自分たちも共有するものだ。
武芸の達人であることも、みな知っている。インパは軍の階級に属してはいないが、この危機に
対して大きな力を奮ってくれるだろう。
「女性なのに、勇ましそうな人ですね」
 賛嘆をこめて、一方で意外な思いもまじえたように言う男に、兵士はにやりと笑って答えた。
「インパ様を女だと思わない方がいいぞ」
2012-2 Impa I (4/14) ◆JmQ19ALdig :2007/02/25(日) 15:09:21 ID:ObTzBMkr
 ゲルド族の反乱勃発後、カカリコ村には多くの難民が押し寄せていた。百人に満たなかった
村の人口は五倍以上に膨れあがり、たちまち住居や食料が大問題となった。村人や守備隊は
これに総出で対応し、難民の中からも協力者を得、かろうじて混乱をしのいできた。しかし
先行きへの不安は常に彼らを苛み、行動の目的も見失ってしまいそうな日々が続いていた。
 インパの到来は、そんな村の状況を一変させた。村人がインパに向ける尊敬が難民たちにも
乗り移り、インパは自然に彼らの指導者として認知された。守備隊も、隊長以下、すべてインパの
心酔者であり、軍事面での混乱もなかった。インパがもたらした「ゼルダ姫健在」の知らせも、
みなの士気を大いに高めた。
 インパは山積する問題に対して次々に的確な指示を出し、村の秩序を保つとともに、
ゲルド族への対抗策を練った。
 そうしたある日の夕方、インパは守備隊長と二人で火の見櫓に登り、村の様子を観察しながら、
今後の問題を話し合っていた。
「ハイラル平原の王国軍の動きについて、新しい情報は入ったか?」
「平原の西に分散していた各部隊は、すでに集結を終えたそうです。じきにハイラル城へ向けて
進撃するでしょう。反乱の知らせによほど驚いたのか、意外に手間取ってしまいましたが──
ゲルド族の方も城下の略奪に血道を上げて、ずいぶん時間を無駄にしています。その点は
幸いでした」
「決戦は近い……か……」
 インパは西の方へ目を向けた。楽観はできなかった。特にガノンドロフの魔力のことを思えば。
 隊長も同じ心境なのか、軍人にありがちな大風呂敷も広げず、冷静な意見を述べた。
「その決戦の結果いかんにかかわらず、我々は我々で準備を整えておかねばなりませんな」
 インパは頷いた。決戦で王国軍が勝てば、東から自分たちが攻めかかることで、ゲルド族を
挟み撃ちにすることができる。もし負ければ、反転して攻めてくるであろうゲルド族から、
独力で自分たちを守らなければならない。だが……いずれにしても兵力は絶対的に不足している。
「城下から脱出した兵力は編入できているか?」
「やっていますが……大した数ではありません。もともと城下には、あまり兵力を置いて
いませんでしたし、生き残った者も、多くは主力のいる西に向かったようで……」
「そうか……」
 短く嘆息すると、インパはデスマウンテンに目を向けた。
「やはりゴロン族との連携が必要だな」
 反転して、南を見る。
「そして、ゾーラ族とも」
「ゴロン族とゾーラ族?」
 隊長が不思議そうな声を出した。
「彼らはふだん、我々ハイラル王国とは、ほとんど没交渉ですよ。連携などできますかね」
「しなければならん。それに……できるはずだ」
 そう、できるはずだ。すでにリンクが彼らを訪れている。精霊石を手に入れる過程で、リンクは
ガノンドロフの脅威を彼らに伝えているだろう。
「では……使者を派遣しますか」
 隊長は素直にインパの言葉に従った。
「人選を頼む。詳細は私から伝える」
「承知しました」
2022-2 Impa I (5/14) ◆JmQ19ALdig :2007/02/25(日) 15:10:08 ID:ObTzBMkr
 二人の間に沈黙が落ちた。ややためらった末、インパは隊長に問いかけた。
「ところで、シークのことだが……どんな様子かな?」
 義勇兵に志願した村人や難民を対象に、村では戦闘訓練が行われていた。インパは隊長に頼み、
その訓練にシークを参加させていた。こんな幼い少年に……と隊長は驚いたが、他ならぬインパの
頼みとあって、快く引き受けてくれたのだった。
「ああ、シークですか。あの子は見どころがありますな」
 隊長は笑みを漏らした。
「子供ながら──いや、子供だからこそ、と言いますか──敏捷で、身のこなしが鋭い。短刀や
石礫を投げる技にかけては、大人顔負けですよ。それに利発で、一度こちらが言ったことは絶対に
忘れません。ただ……」
「体力がない」
 インパは隊長の言葉を引き取った。
「そう……子供だからしかたがないとも言えますが……それにしても体格が華奢で、剣をとって
正面から敵と立ち合う戦闘は難しいでしょうな。ですが……」
 隊長はインパに向き直った。
「このまま成長すれば、立派な戦士になれますよ。さすがはインパ殿の息子さんだ」
 インパはその賛辞に答えなかった。
 成長すれば……か。
 だが、それを待ってはいられないのだ。
「隠密行動なら、役に立つかもしれない」
 冷淡ともとれるインパの言葉に戸惑ったのか、隊長は口を閉じ、気まずそうに下界を見下ろした。
その目がわずかに見開かれた。
「おや、訓練が終わったようですよ」
 インパも下に目をやった。訓練の場所である墓地の方から、大人たちに混じって歩いてくる
シークの姿が見えた。
 一人の女がシークに歩み寄り、シークは立ち止まった。
「あの女は?」
 隊長は下に目を凝らしていたが、すぐにインパをふり返った。
「アンジュですよ。ほら、大工の親方の娘で……あの親方は侠気があって、村人のリーダー格と
して、よくやってくれていますが……娘の方も難民の世話には、ずいぶん力を尽くしてくれて
います」
 シークが、いつの間にそんな娘と……?
 インパの胸に、わけもなく小さな懸念が湧いた。
2032-2 Impa I (6/14) ◆JmQ19ALdig :2007/02/25(日) 15:11:05 ID:ObTzBMkr
「お疲れさま。お茶にしない?」
 戦闘訓練を終えて墓地から歩み出てきたシークに、アンジュは声をかけた。数日前、初めて
シークを誘って以来、この訓練後のティータイムが二人の日課となっていた。
 シークは頷くと、アンジュのあとについて庭へ入ってきた。すでにお茶の仕度はしてあった。
二人は庭の隅のベンチに並んで腰かけ、黙ってティーカップを口に運んだ。
 シークの端正な横顔を、アンジュはそっと見やった。
 インパの息子ということで、みなに一応の敬意を払われているシークではあったが、陰では、
いやに目のきつい無愛想な子供だと、批判めいたことを言う者もあった。しかしアンジュは
そんな意見に与しなかった。
 寡黙であるのは確かだ。シークの方から話しかけてくることはほとんどない。こちらの問いに
ぽつりぽつりと答えるのが関の山だ。だが、少ないながらもシークの言葉には知性が感じられたし、
別れる時には感謝の挨拶を忘れない。それに、きついと言われるその目にも、実は真摯な感情が
秘められていると、アンジュには思われるのだった。
 未来を見つめる確かな意志。
 初めはちょっとした慈悲心だった。最初にお茶に誘ったのも、大人たちに混じって訓練を受ける
幼い少年に対して、思いやりの手を差し伸べてやらねば、という義務感にも似た思いからだった。
 でもシークの目を見てから、わたしの中に別の感情が生まれた。そこに共通する純粋な思い。
表に出ている雰囲気はまるで違うけど……同じ年頃で……
「シークを見ていると、リンクを思い出すわ」
 返事を期待してはいなかった。半ば独り言のつもりだった。ところが、
「リンク?」
 アンジュが予想もしなかった反応を、シークは返してきた。見開かれた目。驚きのこもった声。
これほど感情をあらわにしたシークを見るのは初めてだった。
「リンクを知っているの?」
 アンジュも驚いて訊ねた。シークは答えず、視線をそらした。
『また、だんまりなのね』
 もう慣れてしまった沈黙。しかしアンジュはシークの反応に興味を抱いた。
 シークのことを知りたい。リンクの話が、その糸口になるのではないだろうか。
 アンジュは自分の方から、リンクの思い出を語り始めた。
 リンクがカカリコ村にやって来たのは、ひと月半くらい前だったか。大事な用でデスマウンテンに
登ると言っていた。コッコ探しを手伝ってもらって、いまと同じようにここでお茶を飲んで、
ゴロン族の話をして……
「そうそう、リンクは結婚って何のことなのか、知らなかったわ。おかしいでしょ。変わった
生い立ちのせいだと思うけど……」
 そこから記憶が広がってゆく。リンクが発した疑問。子供はどうやったら生まれるのか? 
女の胸がふくらんでいるわけは?
 そして、わたしはリンクに……
 浮遊する意識を引き戻したのは、シークの視線だった。
 こちらを見ている。でも顔じゃない。その目はもっと下に向けられていて……
 アンジュは気づいた。自分の右手が左胸に軽く触れていることに。
 あわてて手を引く。
 相変わらず無言のシーク。何を考えているのだろう。
 恥ずかしさを隠すつもりもあって、アンジュはシークに話しかけた。
「シークはリンクと、どうして知り合ったの?」
 返事はない。アンジュは苛立ちを感じた。
 どうしてそんなに自分を抑えていられるの? あなたって、ほんとうに……
「自分のことを話そうとはしないのね。シークがこれまでどんなふうに生きてきたのか、どんな
経験をしてきたのか、訊いてはいけないの?」
 言ってしまってから、後悔した。冷静に見えるシークの表情。だがそこには──かすかにでは
あるが──何かに捕らわれ、何かに苦しむ、そんな翳りが感じられて……
「お茶をありがとう、アンジュ。また明日」
 シークは唐突に立ち上がり、ふり返りもせずに庭を出ていった。
 残されたアンジュは、ため息をついた。
 ほんの子供なのに、まるで大きな重荷を背負っているかのような……
 シークのティーカップに目をやる。中身はまだ半分ほども残されていた。
2042-2 Impa I (7/14) ◆JmQ19ALdig :2007/02/25(日) 15:12:03 ID:ObTzBMkr
 インパと二人で暮らす家へと向かいながら、シークはアンジュの問いと、それに対する秘めた
答とを、頭の中で繰り返していた。
『シークはリンクと、どうして知り合ったの?』
 僕はリンクを知っている。しかしこれまで一度も会ったことはない。インパから話を聞いた
だけだ。その事情を他人には話せない。僕の使命に関わることだから。
『シークがこれまでどんなふうに生きてきたのか、どんな経験をしてきたのか、訊いては
いけないの?』
 答えたくても答えられない。なぜなら、僕自身、それを知らないのだから。
 シークは思い出す。
 初めてインパに会った時、心に大きな空白があった。言葉は話せたし、世間一般の常識、
ハイラルの地理や歴史などの知識は、しっかりと持っていた。だが、自分自身についての記憶が、
いっさい失われていた。自分が何者なのか、いつ、どこで生まれて、『どんなふうに生きて
きたのか、どんな経験をしてきたのか』を、全く覚えていなかったのだ。
 戸惑う僕に、インパは言った。記憶はいつか戻ると。僕が使命を果たすことができれば、
すべてを思い出すはずだと。
 インパが語った、僕の使命。その時の僕には、あまりにも突飛なものに聞こえた。が……
なぜかそれは、僕の心にすんなりと収まった。自分のなすべきこととして、明快に理解することが
できたのだ。
 インパの提案で、僕はインパの息子として行動することになった。シークという名も、その
部族名にちなんで、インパがつけてくれたものだ。そしてインパとともに、僕はいま、この
カカリコ村にいる。
 それはいい。納得している。でも……
 家に着いたシークは、そのまま自室へ入り、ベッドに身を投げた。
 さっきのアンジュの──おそらくは無意識の──あの行動が呼び起こした、これまで感じた
ことのない動揺。
 下腹部に手を伸ばす。硬く男を主張する器官。
 胸。女の胸。柔らかく張りつめた、みずみずしい果実。
 僕はそれを知っていて……それが男に何を訴えかけるかを知っていて……(いつ、どこで僕は
それを?)……僕はそのとおりにこうやって反応してしまっていて……
 同時に、別の疑問がシークを苦しめる。
 アンジュはリンクの話をしていて、あの行動をとった。アンジュに自らの胸を触れさせるような、
どんなことが、リンクとアンジュの間にあったのか。
 さらに感じる疑問。
 リンクとアンジュが何をしようと、僕には全く関係ないはずだ。なのにどうして、二人のことが
こんなに気にかかるのか。
 いや……二人ではなく……
 僕はこの村に受け入れられてはいるが、個人的に好意を示してくれる人は多くはない。
アンジュはその数少ないうちの一人だ。アンジュとのひとときは、僕にとって日々の安らぎだ。
だが、いまの僕のこの感情は……アンジュではなく、むしろリンクに向けられていて……
 リンクはアンジュに何をした? リンクはアンジュのことをどう思っていた?
 それが気になる。
 なぜ? リンクには会ったこともないというのに。
 そう考えるほど、考えている自分の心と、自分の身体──とりわけ、いま股間で滾っている
器官との間に、相容れない距離を感じてしまう。
 これが何かは知っている。排泄に使用する器官。生殖行為に使用する器官。こうして勃起する
ことが、性的な意味を持つことも知っている。この器官を男が女に対してどのように使うのかも
知っている。
 でも、なぜ僕にこの器官があるのか。この言いようのない違和感は何なのか。これは失われた
僕の記憶に関係があることなのだろうか。
 次々に湧き起こる疑問に苛まれ、シークはベッドに横たえた身体を動かすこともできなかった。
ただ自らを握りしめ、その快くも異質な感触の起源について、思い惑うのみであった。
2052-2 Impa I (8/14) ◆JmQ19ALdig :2007/02/25(日) 15:13:11 ID:ObTzBMkr
 王国軍とゲルド族との決戦は、意外にもすぐには起こらなかった。王国軍はハイラル城を
陥落させたゲルド族の武力を警戒し、対するゲルド族も兵力の絶対量が王国軍に及ばないことを
自覚して、散発的な小競り合いが繰り返されるだけの日々が続いた。その間に、インパ率いる
カカリコ村の軍勢は徐々に力を蓄え、ゴロン族やゾーラ族との共闘も形を整え始めていた。
両部族とも現在の危機については、深刻に憂慮していた。それは確かにリンクの行動が、
ダルニアやキングゾーラに与えた影響であった。
 だがついに、ハイラル平原において両軍が正面からぶつかる時がきた。その結果は、戦場から
脱出してきた将兵たちによって、カカリコ村にもたらされた。
 王国軍の大敗。
 人間同士の戦いならば、王国軍もひけは取らなかった。勝敗を決めたのはガノンドロフの
魔力だった。ガノンドロフ自らが奮う力と、彼の召還した魔物の暗躍によって混乱したところへ、
獰猛なゲルド族の騎馬隊が突入した。王国軍は壊乱し、全滅に近い打撃を受けた。
 カカリコ村には一気に緊張した空気がみなぎった。
 ハイラルに残る王党派の勢力として、ある程度のまとまりを持っているのは、もうカカリコ村
しかない。ゲルド族はすぐにも攻撃してくるだろう。
 そんな危機感をみなが抱きながらも、カカリコ村はまだ、共同体としての機能を保っていた。
戦闘訓練は打ち切られ、義勇兵たちは実戦に向けた種々の任務につけられた。シークもまた、
物資の運搬、そしてゴロン族やゾーラ族との連絡といった、できる限りの仕事に携わった。
 シークはアンジュと会う機会を持てなくなり、日課のティータイムも終わりを告げていた。
たまに村で見かけても、アンジュは婚約者と一緒にいることが多く──しかも二人の間には常に
緊張した感情のやりとりがなされており──シークは敢えて自己を主張する気にはなれなかった。

 ゲルド族が東に向かう準備を整えた、という情報が村を飛び交い始めた日の夜、家に戻った
シークは、インパに呼ばれた。このところシークもインパも著しく多忙で、二人きりで話すのは
久しぶりのことだった。
 居間の椅子にすわるインパの顔を見た瞬間、シークは緊張した。ただならぬ決意の色が、
そこには浮かんでいたからだった。
「これからどうするつもりだ?」
 いきなりインパが訊いてきた。試すような言い方だ、と感じながら、シークはインパの前に立ち、
思ったままを答えた。
「村のみんなと一緒に──母さんと一緒に──ゲルド族と戦います」
「だめだ」
 一言のもとにインパは拒絶した。
「お前には使命がある。それは何だ?」
「それは……」
 インパから繰り返し聞かされていた件だった。
「七年後、十六歳となる日に、時の勇者、リンクが帰還する。リンクの使命は、ハイラルに
眠る賢者を目覚めさせ、その力を得て、ガノンドロフを倒すこと。そして僕の使命は、
リンクを助け、ともに戦うこと。リンクが帰還するまでに、賢者の正体、その居所、その
覚醒方法を探求すること」
 暗唱するように、シークは言った。思い出そうと努力するまでもないはずのことが、最近の
切迫した状況の中で、すっぽりと心から抜け落ちてしまっていた。それをシークはひそかに恥じた。
 インパは頷いた。次いで目を伏せ、低い声で話し始めた。
「この二ヶ月、私はここで最大限の努力をしてきた。現状ではまだ、ガノンドロフとゲルド族に
対抗するのは難しいが……それでも私は戦わねばならない。カカリコ村は私の故郷。ここで
生きる人々のために、私は責任を果たさねばならないのだ。私は……」
 言葉が途切れる。
「この戦いで、命を全うできないだろう」
 インパの顔にかすかな感情が走った。しかしそれはすぐさま、元の冷静な表情の下に隠され、
厳しい視線がシークの目に向けられた。
「だが、お前は生き延びるのだ」
2062-2 Impa I (9/14) ◆JmQ19ALdig :2007/02/25(日) 15:14:28 ID:ObTzBMkr
 今度はシークが頷く番だった。
「お前はここを出て、一人で生きてゆかねばならない。そのために必要な最低限の知識と経験を、
お前はもう持っているはずだ」
 短い期間ではあったが、戦闘訓練以外にも、インパや他の人々から、シークは種々の
サバイバル訓練を受けていた。獣の狩り方、その調理方、薬草の探し方、飲料に適した水の選び方、
天候の見定め方、等々。
「幼いお前には、酷な生活になるだろうが……それでもお前は生きてゆかねばならないし、
生きてゆけると私は信じている。わかってくれるな?」
 再びシークは頷く。
 酷な生活。いまの僕には想像もつかない。でも覚悟はできている。
「当分は辺境にひそみ、ひたすら腕を磨け。修行しろ。できるだけ人には会うな。その間、
カカリコ村へ戻ってくることも許さん。私に何があったとしてもな。そして自信がついたら……」
 一息置いて、ゆっくりとインパは言った。
「賢者を探すのだ。リンクが帰ってくるまでに」
 リンク。
 シークはその名を胸の中で繰り返した。
 勇気のトライフォースを持つ、時の勇者。世界に残された最後の希望。
 リンクを待つ。リンクを助ける。リンクとともに戦う。
 見たこともない人物でありながら、それは動かしようのない自分の運命なのだ、とシークは
確信していた。絶対の確信だった。
 が、同時にシークの胸には、別の感情も湧き起こっていた。
 リンクという名に喚起された、あの動揺の記憶。
「質問があります」
 その解決になるような気がして、シークはかねてからの疑問をインパに向けた。
「ゼルダ姫はどこにいるのです? 安全な所に身を隠していると、母さんは言いましたが……」
 インパはすぐには返事をしなかった。哀しみとも慈しみともつかぬ、実に複雑な感情が、
インパの目には表れていた。
「ゼルダ様のことは……心配するな。お前とリンクが使命を果たしてゆけば、ゼルダ様は姿を現す。
お前にもいずれ……わかる時がくる……」
 漠然としてはいるが、インパの言葉にシークは説得力を感じた。信じられると思った。しかし
自分の感情の解決には、ほど遠い言葉でもあった。
「もうひとつ……訊きたいことがあります」
 恥ずかしさを抑えて、シークはすべてを告白した。身体と心の相容れない距離。それが
解決しないうちは、使命を果たすのにも支障をきたすような気がして。
「リンクは……僕にとって……何なのでしょう。そして僕は……僕自身は……」
 告白は混乱で終わった。
 今度もインパは黙っていた。沈黙は、先の質問の際よりも、さらに長く続いた。
「……そういうことか……」
 やがてインパは呟き、硬い表情で立ち上がった。
「来い」
 短く言い、居間を出てゆく。シークはあとに従った。インパは自分の寝室に入り、シークと
向かい合った。
「お前に女を教えてやる」
 インパは着衣を解き始めた。淡々とした事務的な調子だった。シークがその言葉も行為も
理解できないうちに、目の前には全裸となったインパが立っていた。
2072-2 Impa I (10/14) ◆JmQ19ALdig :2007/02/25(日) 15:15:29 ID:ObTzBMkr
「お前も脱げ」
 そう言ってから、インパは心の中で苦笑した。
『色気も何もあったものではないな』
 だが、そうしなければならない。
 シークの記憶の欠落には意味がある。何がそれをもたらしたのか、インパは知るよしも
なかったが──神の思し召しといえば、そのとおりだろう──今後、シークが身を守ってゆく上で、
それが重要な点であることは確かだった
 だからこそ、いまのシークの中の解離現象は大きな問題だった。肉体的な成長が引き金に
なったのだろうが……リンクを思うことで自分の存在に疑問を持ち、それが確信に変わって
しまっては……使命を果たすことができなくなるばかりか、存在そのものが危機に陥るだろう。
 シークは立ち尽くしていた。こちらの言葉が聞こえていないかのようだった。いや、
聞こえてはいるが、理解の範疇を超えているのか。
 インパは微笑み、和らいだ声で言った。
「お前はこれからも、シーカー族の男として生きてゆく。そのために必要なことなのだ」
 そう。男として。
 お前は男なのだ。それをしっかりと認識しろ。
 シークはゆっくりと服を脱ぎ始めた。白い肌が少しずつあらわになってゆき、やがて全身が
さらされた。
 いかにも中性的な、独特の魅力が感じられた。第二次性徴を迎える前の未熟な肉体。
守備隊長が言ったように、同年代の子供に比べても華奢な体格。しかしおそらくは、それだけの
理由ではなく……
 インパは手を差し伸べた。シークが歩み寄り、その手を取る。自分の胸ほどしかない身長。
インパの両腕はシークの背にまわり、抱き寄せたシークの顔が、大きく盛り上がった乳房の間に
うずめられる。シークの両手もまた、インパの身体を抱きしめる。
 二人はそのまま抱き合っていた。
 やがて身を離したインパの顔を、シークが見上げた。
「母さん……」
「インパ、でいい」
 穏やかにインパは訂正した。
「いまの私たちは、親子ではない。ただの男と女だ」
 そういうには、あまりの年齢差。だが、シークが幼すぎるとは、インパは思わなかった。
解離現象の問題を抜きにしても、シークはすでに目覚め始めている。それに、もう……
 親子ではないとは言ったが、母のような感情が、ほんとうはある。
 シークに対しても。『あなた』に対しても。
 救えるのは、私だけなのだ。すべてを知っている私だけが、シークを男にできる。
 インパはベッドに入り、シークもその脇に横たわった。
 横を向いて顔を見合わせ、互いに肩を抱く。
 顔を寄せ、唇を合わせる。しばらくその感触を確かめたのち、インパの舌はシークの唇を割り、
歯を、舌を、口腔の粘膜をなぞってゆく。シークの舌もまた、おずおずとそれに反応する。
 シークの股間に手を伸ばす。発毛の気配もないその場所で、それは幼いながらも欲望を主張して
いきり立ち、インパの手の中でぴくりと脈打つ。
『よし』
 心の中でひそかに頷き、インパは次の過程へとシークを導く。その手を取って、胸に触れさせる。
張りつめた左右の乳房の表面を往復させ、手のひらを回転させるようにして頂上の突起を刺激させ、
指でそこを攻めさせる。ひととおり指導したあとで手を自由にしてやると、シークは忠実に
それまでの行為を繰り返した。
2082-2 Impa I (11/14) ◆JmQ19ALdig :2007/02/25(日) 15:16:33 ID:ObTzBMkr
「……う……」
 インパは思わず声を漏らす。
 なかなかいい。有望だ。
 胸をシークの手に預け、舌と唇の交歓を続けながら、手にした男の証に、律動的な刺激を
加えてやる。
 シークの息が荒くなる。
 まだ早い。
 いったんシークを開放し、仰向けになって、今度はその手を下へといざなう。胸から腹へ。
そして恥毛の茂るなだらかな隆起へ。
 しばしそこで休ませてから、さらに下へ、秘めた場所へと誘いこむ。
 シークの指が、谷間に触れる。ぬ、と湿った音。
『もう?』
 インパは驚いた。すでに自分がそうなっているとは……
 若い頃にはそれなりの経験があったが、しばらく男からは遠ざかっていた。そんな自分が、
幼いシークを相手に、どれだけ女でいられるかを、実はインパは危ぶんでいた。
 だが、この調子では……
 動きの止まったインパの手を脱して、シークが自ら活動し始める。
 ねばつく左右の唇へと。熱い肉洞のとば口へと。そして感覚の凝結する小さな塊へと。
「うッ!……うぅ……あ……」
 予想もしなかった状況に、インパの口からは立て続けに呻きが漏れた。
 ……そうか……お前は(『あなた』は)……女のその場所を……すでによく知っていたのだ……
 いいことだ。男として、役に立つ。
 が、いまはそうも言っていられない。このままでは……
 拮抗させようと手を伸ばすが、身をずらせて下半身に集中しているシークのそこには届かない。
そればかりか、シークは余った手を、再び胸へと泳がせてくる。
「くぅぅ……はあぁッ……!」
 湿った音が、さらに大きくなってゆく。
 このままでは……私の方が……
 頭に軽く手を触れてやる。
「もう……いい……」
 両脚を広げる。顔を上げたシークが、問いかけるようにこちらを見る。インパが頷くと、
ぎこちなく、しかし確かな場所へとシークは移動し、両脇に手をついて、下向きになった
身体を支える。
 シークの分身が、自分の中心に自然に触れているのを、インパは感じていた。そのまま
待ってみたが、シークはそれ以上の動きを示さなかった。
『やはりな』
 片手を伸ばし、それをつかむ。さっき以上に、それは熱く怒張していた。
 そっと包皮を後退させると、意外な容易さで先端が露出した。濡れた粘膜に触れさせる。
シークの身体がぶるりと震え、喉から短い息が吐き出される。
 慣れさせるため、手を動かして、先端をひとわたり秘部に遊ばせる。初めての感覚にシークは
喘ぎ、それでもしっかりと自らを保っていた。
 その場所で、手を止める。
「ここだ」
 胸にやっと届くくらいの所から、シークの視線がインパに向けられる。
「お前の男を……くれ」
 手を離す。身体が迎えの体勢をとる。
「さあ……」
2092-2 Impa I (12/14) ◆JmQ19ALdig :2007/02/25(日) 15:17:27 ID:ObTzBMkr
 シークの目が力を持った。と同時に、急激な圧力が加えられ、それはまっすぐにインパの中へと
突入してきた。
「んんッ!……んん……ん……ん……!」
 インパは危うく叫びを抑えた。インパの容積には遠く満たないはずのそれは、しかし明確な
存在感を持って、膣粘膜を刺激した。
 満身の力をこめて、インパはそれを受け止め、絞り上げた。それ以上、動かせないようにする
ためだった。動かされると、一気に達してしまいそうだったから。
 シークは震えながらも、その圧迫に耐えた。
 一時の波が去り、インパは筋肉の力を抜いた。
 シークは動かない。それとも動けないのか。
『これからだぞ』
 声には出さず、インパは自ら腰を動かす。ゆっくりと。摩擦の快感を悟らせるために。
 シークの腰も、ゆるゆると動き始める。
『そうだ』
 そのリズムに合わせて、インパも腰を揺らし続ける。
 リズムが徐々に早くなる。
『そのまま……男の攻めで……私をいかせてみろ……』
 背中に腕をまわし、ぎゅっと抱きしめる。
 シークの顔が豊満な胸に押しつけられる。舌が肌を這い、少しずつ、少しずつ移動して、やがて
尖った乳頭に到達し、
「んぁ!」
 舐め、吸い、噛み、そこに手の、指の攻撃も加わって、
「……いッ!……おぉッ!……」
 いまやシークの腰は、激しく、力強く前後し、
「あッ!……あッ!……あッ!……あぁッ!……」
 ぱんぱんと音を立ててインパの股間に叩きつけられ、
「あぁッ!……あぁッ!……あぁッ!……ぅあぁッ!……」
 粘液がかき混ぜられる響きに合わせて、
「ぅあぁッ!……ぅあぁッ!……ぅあぁッ!……ぉあぁッ!……」
 幼くも雄々しい屹立が、中へと、中へと、立て続けに打ちこまれ、
「ぉあぁッ!……あ……あ……あああぁッ!……」
 もうそれ以上は不可能な速度で、深々と奥底へ突き刺されると、
「……い……あ……ぅあ……ああ……くぅッ……」
 声を喉頭の奥にくぐもらせ、
「…………あ…………」
 静かに、厳かに、インパは絶頂した。
 同時に、精を噴出することのない、しかし確かな男の器官が、インパの中で痙攣し、そして、
動きを止めた。
2102-2 Impa I (13/14) ◆JmQ19ALdig :2007/02/25(日) 15:18:40 ID:ObTzBMkr
 それを中にとどめたまま、自分の上に横たわるシークを、インパは抱きとめていた。
 平静に戻った声で、インパは短く言った。
「よくやった」
 シークはまだ、それに答えられるだけの力を回復していなかった。だがシークは、おのれが
男であることを立派に証明した。それを自覚することで、シークの自我は救われるだろう、
とインパは信じた。
 ぐったりとなったシークの肢体。その右手の甲は、ただ白い皮膚で覆われているだけだった。
インパはシークの身体に、別の人物の姿を重ね合わせた。
 これでシークと『あなた』は、真に一体となった。シークの男が、『あなた』を守って
くれるはず。
 そして、シーク。お前はもう大丈夫だ。
 最後に確認しておく。
「賢者の居所についての手がかりは覚えているな?」
 シーカー族の伝説。予知を聞いた時、その暗合に驚いたものだ。
 シークがゆっくりと顔を上げ、かすれた声で言った。
「五つの神殿……深き森、高き山、広き湖、屍の館、そして砂の女神……そこに五人の賢者が
関わっている……」
「それに『光の賢者』、ラウル。合わせて六人だ」
 ツインローバからひそかに得た情報も加えて、インパは念を押した。
「神殿の場所は、予想がつくものもあれば、全くわからないものもある。解明はお前の働き次第だ」
 言葉を切り、インパは自らの中からシークを開放した。
「頼んだぞ」
 別離の時が近づいていた。
2112-2 Impa I (14/14) ◆JmQ19ALdig :2007/02/25(日) 15:19:41 ID:ObTzBMkr
 インパはシークのために、シーカー族の紋章が描かれた服を用意していた。それを着て旅装を
整えたのち、シークはインパに別れを告げ、闇に眠るカカリコ村をあとにした
 インパとの行為が、不思議な落ち着きをもたらしていた。肉体の中に悶々と溜まっていた
わだかまりが発散されることによって、心の中もまた晴れ渡ったように感じられ、物事を率直に、
単純に見られるようになった気がした。「シーカー族の男として」というインパの言葉を、いまの
シークは何のこだわりもなく受け入れることができた。
 そう。男として。
 村を出る前、ふとアンジュのことを思い出した。彼女にだけは別れの挨拶をしておこうか、
とも思った。が、シークはそうはしなかった。明日の運命をも知れぬこの時、アンジュと
婚約者とが狂おしく確かめ合っているであろう、その愛を、シークは妨げる気にはなれなかった。
 アンジュへの執着はなかった。心を占めるのはリンクのことだった。
 それはしかし、以前のような動揺をもたらすことはなく、自分の使命、自分の行く道に、
ぴったりと寄り添って離れることのない、不動の存在として認識された。
『君とアンジュを比較するのも奇妙なことだが……』
 思ってから、シークはひとり微笑した。
 会ったこともないリンクに、僕は「君」などと呼びかけている。それだけすでにリンクという
人物は、僕にとって身近なものになったのだ。単に使命の対象としてだけではなく。
 この関係をどう呼ぶべきなのか。
 僕たちの間でしか成り立たない関係──と呼ぶほかはない。
 そんな僕がリンクを思うことに、何の奇妙さがあるだろうか。
 身も心も、すべてがあるべき所に収まっている。距離もなく、違和感もなく。
 先に待つ苛酷な生活。それさえも気にならないほどに、おのれの存在を確信できる喜びに
満たされ、力強い足取りで、シークは夜のハイラル平原を歩んでいった。

 深夜のカカリコ村を徘徊する影が、もう一つあった。
『どえらいものを見ちまったぜ』
 不満分子はどこにでもいるものだ。カカリコ村も例外ではなかった。ゲルド族との戦いを
目前に控え、村に暮らす人々の不安は否応なく増した。自軍の敗色が濃いとなれば、敵に通じて
生き残ろうとする者がいても、不思議ではなかった。
 指導者であるインパの秘密が探れないか……と考えたその男は、ひそかにインパの家の屋根裏に
ひそみ、寝室の様子をうかがっていた。そこで彼が見たものは──
 これが明らかになれば、インパの権威は確実に失墜する。この情報をゲルド族に売ることが
できたら……ずっと村でつまはじきにされてきた俺に訪れた、一発逆転のチャンスかもしれない。
 卑しげな笑いを浮かべながら、男は闇の中に消えていった。


To be continued.
212 ◆JmQ19ALdig :2007/02/25(日) 15:20:45 ID:ObTzBMkr
この関係をどう呼ぶべきなのか。
ショタですか? わかりません!(マジに自分でも)
次回、ガノンドロフがカカリコ村に迫ります。

保管庫の件、関係諸氏に感謝いたします。
213名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 15:26:54 ID:XycyD7+q
リアルタイムで乙
インパはやっぱりエロいなぁ
熟女×ショタは良い
214名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 17:21:22 ID:tPJXwkKe


これは良いわ
215名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 17:31:04 ID:baUTJJYx
ゼルダとシークは別人設定なのかコレは。
216名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 17:54:29 ID:/AAXrQlD


>>215
ちゃんと読め
217名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 23:20:14 ID:Ezpg5GCA
シークは男装少女派だったけどこれはいい。
むしろ良すぎ。


なんかダルニアのときといい職人さんには新たな萌えを提供させてもらってるなぁ。

しかも物語としても面白いし。
職人さん超GJ!
218名無しさん@ピンキー:2007/03/01(木) 22:45:36 ID:P6AJauCh
スレ落ち防止
219名無しさん@ピンキー:2007/03/02(金) 22:57:32 ID:cDdpGIDX
とてもいいです・・・
220名無しさん@ピンキー:2007/03/04(日) 05:09:53 ID:AAXUZtTa
>>42
亀レスだけどGJ!
221 ◆JmQ19ALdig :2007/03/04(日) 23:08:46 ID:eX+9nslO
時オカ/第二部/第三章/ダルニア編その2、投下します。
これから数回にわたり、賢者が次々に襲われ、命を落としてゆきます。(あくまで一過性にですが)
今回は、ガノンドロフ×ダルニア。陵辱→死亡。
註:この話のダルニアは「女体化」しています。アンジュ(仮名)=コッコ姉さん
2222-3 Darunia II (1/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/04(日) 23:09:57 ID:eX+9nslO
 カカリコ村に迫ったゲルド族に対して、インパが取った戦略は、「勝つことよりも負けないこと」
であった。ゲルド族とて兵力は無限ではない。会戦には出ず、ひたすら防御に徹して長期戦に
持ちこみ、機を見て攻撃を加え、少しずつ敵の戦力をそぐ。劣勢ではあっても、ゲルド族の
対抗勢力としてカカリコ村が生きながらえることができれば、状況に変化も生じるだろう、という
期待からだった。
 この戦略は功を奏した。カカリコ村は両側を山にはさまれ、攻めるにはハイラル平原に面した
狭い範囲から接近するしかない。村の王党軍はそこに防御力を集中して、騎馬で押し寄せる
ゲルド族を果敢に迎え撃ち、村には一歩も踏み入れさせなかった。
 王党軍と正面戦を繰り広げるゲルド族を、北の側面からゴロン族が攻撃した。デスマウンテンの
急斜面を転がり落ちるような速さで到来するゴロン族は、数では劣っても、雄渾な体格と無限の
体力、そして旺盛な戦意で、ゲルド族をしばしば悩ませた。またゴロンシティは軍需基地となり、
ゴロン刀や爆弾をはじめとする種々の武器が大量に生産され、王党軍に供給された。
 水を離れられないゾーラ族は、戦場での活動を期待されてはいなかったが、彼らなりの貢献を
した。それは主として、新たに切り開かれた山道を介しての、生活物資──食料としての魚類など
──の補給であり、ゾーラ川を改修することでカカリコ村への分水も行った。時には、堰き止めて
おいたゾーラ川の水を一気に放流して、ゲルド族の宿営地を洪水にまみれさせることさえあった。
 戦況は膠着した。

「開戦から三ヶ月が経ったが……」
 夜、本営となっているカカリコ村の自宅で、テーブルの前に坐した王党軍の幹部ら数人を前に、
インパは口を開いた。
「ここまでは、ほぼ我々の思惑どおりにことが運んでいる。問題はこれからの方針だ。
思うところを聞かせて欲しい」
 まず応じたのは守備隊長だった。
「我々は籠城している状態です。このまま膠着が続けば、いずれこちらの補給は尽きる。
ゲルド族を退かせるために、攻勢に出るべきかと思いますが」
「補給は大丈夫じゃないのかい。ゴロン族とゾーラ族が助けてくれてるんだ」
 大工の親方が、くだけた口調でさえぎった。
「彼らの補給が永久に続くわけではない。いまでさえ、かなり無理をして助けてくれて
いるんだからな」
 守備隊長の反論に、親方の苛立ったような声がかぶさった。
「じゃあ攻勢に出て、あいつらに勝てるあてがあるのかい。反撃されて潰されたら、村は
一巻の終わりだぜ」
「お父さん……」
 折からみなに飲み物を運んできた若い女が、興奮する親方をそっと制した。インパは女に
目をやった。
 親方の娘──アンジュだったな。
 別の男が咳払いをした。ハイラル平原の決戦で敗れ、カカリコ村へ退却してきた騎士の
一人だった。インパは目で騎士を促した。
「気になるのは、敵陣にガノンドロフの姿が見えないことです。奴のいないゲルド族は、
ほんとうのゲルド族ではない。なにしろ……」
 騎士の顔が悔しげにゆがんだ。
「あの決戦では、ガノンドロフ一人にやられたようなものでしたから」
「だからこそ、奴がいない現在が、攻勢の機会なのでは?」
 守備隊長は言ったが、騎士は首を振った。
「いつガノンドロフが敵陣に加わるか、わかったものではありません。攻勢に出るのは
時期尚早だと思います。もっと敵の内情を探るべきです」
2232-3 Darunia II (2/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/04(日) 23:10:43 ID:eX+9nslO
 ガノンドロフの不在は、インパにとっても疑問だった。
 カカリコ村など、手下のゲルド族だけで充分だと思っているのか。あるいは一局地戦よりも
さらに重要な優先事項が、ガノンドロフにはあるのか。
 ゼルダの顔が脳裏に浮かぶ。
 トライフォースの奪取。ガノンドロフの目的はそれだ。そのためにガノンドロフは、何らかの
行動を取っているのだろうか。
 いずれにせよ、三ヶ月も攻めあぐねていれば、ガノンドロフ本人が腰を上げてカカリコ村攻撃に
乗り出す可能性は大いにある。
『もう少し様子を見るべきか』
 インパが結論を出そうとした時、家の戸が開いた。兵士が一人、息を切らして立っていた。
何ごとか、と問う前に、兵士は興奮した声で言った。
「ゲルド族が撤退していきます!」
「何だって!?」
「本当か!?」
 みなが一斉に立ち上がり、一様に意外そうな声を発した。
「確かめてきます」
 いち早く守備隊長が身体を動かし、兵士とともに、夜の闇に沈む戸外へと出て行った。
 どういうことだろう。
 インパの脳は目まぐるしく回転した。
 こちらにとっては実に好都合だ。危険を覚悟で攻勢に出るまでもなく、ゲルド族の攻撃から
解放されるとは。もちろん戦いがこれですべて終わるとは思えないが、一時的にではあれ危地を
脱したとなると、今後の展開に望みが出てくる。だが……
 守備隊長が戻ってきた。
「ほんとうです。敵は陣を払いました。村の前面には、もうゲルド族はいません」
 あちこちで安堵のため息が漏れ、小さな笑い声さえ聞かれた。
「ひと安心だな」
「ここまで頑張った甲斐があったぜ」
 インパは楽観にひたれなかった。
 何かある。そういう気がしてならない。それが何なのか、全く想像もつかないのだが。
「ゲルド族がいなくなったってことだが……」
 背が高く逞しい半裸の人物が、開いたままの戸から、首をすくめて入ってきた。ゴロン族の
族長であるダルニアだった。
「もしそうなら、麓にいる仲間を、いったんゴロンシティに帰してやりてえんだが、かまわねえか? 
あいつらも、もう長いこと戦場に居続けなんでな」
 ダルニアはインパに向かって言った。インパは少し迷ったが、
「いいだろう。だが、いつでも戻ってこられるようにはしておいてくれ」
 と答えた。ダルニアは頷くと、外にいた仲間の一人に小声で指示を出し、自分は家の中に
とどまった。
 インパは場の全員に聞こえるように言った。
「敵は退いた。当面は安全となったようだ。しかし油断はできない。みんな気を抜かず、任務を
果たしてくれ。新たな情報が入ったら、また方針を話し合おう」
 一同は声を合わせて了解の返事をし、外へと出て行った。
 ダルニアだけが、その場に残った。
2242-3 Darunia II (3/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/04(日) 23:11:24 ID:eX+9nslO
「あんたと……ちょっと話がしてえんだが……」
 なりに似合わぬ、おずおずとした調子で、ダルニアが言った。インパは手近な椅子に腰を下ろし、
手で向かいの椅子を勧めた。ダルニアは窮屈そうに身を縮め、そこにすわった。
 そのまま下を向いて黙っている。しばらく待ったが、沈黙は尽きそうもない。緊張をほぐす
意味もあって、インパは自分の方から口を切った。
「いろいろと世話になるな」
「あ?……ああ……」
 別のことを考えているような、生返事だった。インパは言葉を継いだ。
「かつてゴロン族も、ガノンドロフには苦しめられたと聞いたが……いまはどんな具合だ?」
「……うむ……鉱石の方も食料の方も、いまは問題なしだ。ドドンゴの洞窟が元の状態に戻った
からな。まったく……あいつのおかげさ……リンクの……」
 そこでダルニアは顔を上げた。
「話ってのは、そのリンクのことなんだ」
 真剣で、心配げな表情だった。が、それ以上の何かがあるようにも、インパには感じられた。
「あいつは王家の使者としてゴロンシティに来た。あんたはゼルダ姫の乳母だそうだが……王家の
関係者なら、リンクがいま、どこでどうしているのか、知らねえか?」
 インパは答に窮した。
 リンクに対するゴロン族の評価はきわめて高い、とは聞いている。ダルニアがリンクを気に
かけるのも当然だ。だが、リンクが光の神殿に封印されていることを、ダルニアに明かしてよい
ものかどうか、インパにはためらいがあった。ダルニアを信頼しないわけではないが、賢者を
めぐる情報を表には出したくない。シークの身の安全にも関わる。
「リンクをあなたのもとへ送り出したのは、ゼルダ様と私だが……そのあとは、私たちが城を
抜け出した時に、ちらりと見ただけだ。いまリンクがどうしているのか、私は知らない」
「そうか……」
 虚実を取り混ぜたインパの返事に、ダルニアは大きく嘆息し、また面を伏せた。
 しばしの沈黙をはさんで、ぼそぼそとダルニアが言い出す。
「あんな小僧っ子が、と自分でも思うんだが……この苦境に、あいつがいてくれたら……ちっとは
──いや……大いに、心強いんじゃあねえかと……」
 ダルニアの表情が、苦しげに、と同時に、懐かしそうに崩れる。
「あいつはよ……どう言ったらいいのか、俺にはよくわからねえが……あいつは……『いいやつ』
なんだ。一緒にいて、気持ちがよくて……こっちも力が湧いてくる、っていうか……」
 ダルニアの言いたいことが、インパにはよくわかった。
 いいやつ。
 リンクのことを、よく言い表している。だがダルニアのリンクへの思いは、それにとどまらない
ようだった。
「俺はよ……あいつが気になって……あいつのことを考えると……なぜか知らねえが、こう……
胸が……苦しくってよ……ちくしょう、変だろ、俺って……」
 ぷいとそっぽを向き、最後を自嘲で締めくくったダルニアの顔は、真っ赤に染まっていた。
 まるで恋する乙女のようだ、とインパは思った。
 まるで、というのはあたらないか。ダルニアはれっきとした女なのだから。
 ゴロン族の族長は女である、という驚くべき事実は、すでにカカリコ村では周知のこととなって
いた。しかしそれはあくまでも「公然の秘密」の範疇であり、それを話題に出すこと、あまつさえ
ダルニア本人にその話題を向けることは、ゴロン族の習慣を重んじて、絶対のタブーとされていた。
 だが……私よりも年上であろう、この年配で、年端もゆかないリンクに対して、恋に身を焦がす
とは……しかも自分が恋していることに気づいていない?
 それをおかしいとは、インパは思わなかった。
 理由こそ違え、シークと交わった私だ。ダルニアの心情を、奇妙だとも滑稽だとも思わない。
2252-3 Darunia II (4/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/04(日) 23:12:16 ID:eX+9nslO
 インパはダルニアの混乱を察し、話題を戻すつもりで、自らのリンク評を端的に述べた。
「正直だ。リンクは」
 ダルニアは、ふっと笑った。
「正直すぎるくらいにな」
 何かを思い浮かべているようだった。
「無鉄砲でもある」
 むきになって立ち合いを挑んできたリンクを、インパは思い出していた。
「ちげえねえや」
 ダルニアの顔のほころびが大きくなる。
「だが、勇敢だ」
 ハイラル城の塔の上で見得を切ったリンクの顔が、脳裏によみがえる。
「あんた、よくわかってるじゃねえかよ」
 インパに視線を向け、ダルニアは声を出して笑った。
「そうなんだ。あいつは勇敢で……そう、『勇者』さ。あの伝説のマスターソードだって、
あいつなら引き抜けるんじゃねえかと思うくらいだぜ」
 インパは驚きをもってダルニアを見つめた。それはダルニアが期せずして真実を言い当てたから
だけではなく、ダルニアにそれだけの印象を残すほどリンクは腕を上げたのか、と疑問に思った
からだった。
 確かに、マスターソードを手にすることができたリンクには、勇者の資格があると言えるだろう。
ゼルダもリンクのことを「時の勇者」と呼んだ。ただ私の知る範囲では……
「勇者というが、私が城でリンクと立ち合った時は、まだまだの腕だった」
「何だと?」
 ダルニアの顔が硬化した。
「リンクの腕は大したもんだぞ。ドドンゴの洞窟でのあいつの戦いぶりを、あんたに見せて
やりたかったぜ」
「ほう……じゃあ、聞かせてくれないか」
 声を荒げるダルニアをいなすように、しかし心に期待を抱いてインパは言い、椅子から
立ち上がった。
「それを肴に、一杯やろう」
 インパが差し出したグラスの酒をぐいとあおると、ダルニアは熱をこめて、ドドンゴの洞窟に
おけるリンクの活躍を語り始めた。
 インパの期待は裏切られなかった。
『リンク、お前の勇気は、立派にお前自身を育てていたのだな』
 リンクをめぐる二人の会話は、さらに続いた。真夜中を過ぎる頃になって、眠気を覚えた二人は
ようやく話をやめた。連絡を仲間に任せていたダルニアは、インパの勧めに従い、翌朝まで
カカリコ村にとどまることを承知した。体格を慮って、インパはベッドをダルニアに譲り、自分は
ソファの上で横になった。
 灯りを消し、暗闇となった部屋の中で、ダルニアの声が聞こえた。
「リンクは、生きてるよな……いつか俺たちの前に、また現れるよな……」
「……そうだな」
 いま言えるのは、それだけだった。が、七年後に帰還する勇者の成長を信じ、インパの心は
暖かいものに満たされていた。
2262-3 Darunia II (5/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/04(日) 23:13:04 ID:eX+9nslO
 目が覚めた。
『いまのは……?』
 自分の目を覚まさせたものが何なのか、確かめようと記憶を探る暇もなく、それは再びインパの
身体を震わせ始めた。
 身体だけではない。椅子や、テーブルや、部屋の中の物がすべて……いや、この家そのものが……
「地震か」
 緊張した声がした。ダルニアも気づいたのだ。
「そのようだな。だがこれは……」
 活火山デスマウンテンの麓にあるカカリコ村では、地震は珍しくない。しかし、この振動は……
いつもとはどこか違って……
 いきなり家が大きく揺れ、インパはソファから床へ転がり落ちた。
「こりゃ……でかいぜ」
 ダルニアの声にも狼狽の色が混じった。
 激しい振動がひとしきり家を揉み、テーブルから落ちた瓶やグラスが割れる音、窓が
揺さぶられて発する耳障りな音が、しばらく続いた。
 生じた時と同様に揺れが突然おさまり、室内の音も絶えたかと思われた時。
 耳を刺すような金属質の音をたてて窓ガラスが砕け散り、急激な空気の流れが部屋に躍りこんだ。
『衝撃波?』
 と思う間もなく、
 ドオオォォ……ンンン……!!!
 と、全身をぶん殴るような大音響が、戸外から伝わってきた。
 インパとダルニアは、闇の中で顔を見合わせた。
 何の音なのか、すぐにはわからなかった。が、驚愕に表情をゆがませたダルニアの、
「山が……」
 という呟きが、インパにもその音の正体を悟らせた。
 家の戸が激しく叩かれた。叩く者の切迫した感情を表すかのような、急な連打だった。
 戸を開けたインパの前に立っていたのは、アンジュだった。
「インパ様!……山が……デスマウンテンが!……」
 恐怖に顔を引きつらせているアンジュを押しのけて、インパは外に走り出た。すぐあとから
ダルニアも続いた。
 デスマウンテンをふり仰ぐ。
 信じがたい光景だった。
 血のような毒々しい炎の帯が、急速に回転しながら山頂を取り巻いていた。その炎に照らされて、
デスマウンテンの輪郭が、くっきりと闇の中に浮かび上がり、山頂からは白い光跡が、あとから
あとから噴き上がっていた。
 ひゅうううぅぅぅぅ……
 と笛を吹くような甲高い音が、空から近づいてきた。
「危ねえッ!」
 インパはダルニアに突き飛ばされた。直後、そこには自分の身体ほどもある大きな石塊が落下し、
鈍い轟音をたてて地面にめりこんだ。まわりの空気がゆらめき、石塊が高温を発していることが
うかがわれた。
 火山弾だ!
 いまや笛の音は無数の合奏となって上空を飛翔し、石塊が次々に村へと着弾し始めた。
 地面に。石畳に。家々の屋根に。
 それはカカリコ村の象徴である風車にも命中し、羽根が一本、無惨にもぎ取られた。
「外はやばい!」
 ダルニアがアンジュを家の中に引っぱりこんだ。インパも立ち上がり、家へと駆けこんだ。
2272-3 Darunia II (6/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/04(日) 23:14:09 ID:eX+9nslO
 屋根に火山弾が衝突する音が、ひっきりなしに響いた。家の中にいれば、とりあえず直撃は
避けられる。だが屋根がいつまでもつかはわからない。
 不安を抑えて、インパは訊いた。
「デスマウンテンがこんな大噴火を起こしたことがあったか?」
「ねえよ」
 最も知識があるはずのダルニアが、言下に否定した。ダルニアは、ガラスがすべて抜け落ちて
空白となった窓のそばに立ち、緊張の面持ちで、デスマウンテンの頂上を注視していた。
「村にまで火山弾が落ちてくるような噴火なんて、これまでになかったわ」
 アンジュも声を震わせながら言った。
 どうして、いま、こんな時に……
 ある予感を得て、インパが考えを敷衍させようとした、その時。
「あれを見ろ!」
 ダルニアが叫んだ。インパとアンジュは窓に駆け寄った。
「……!!」
 インパは絶句した。
 デスマウンテンの山頂に、赤い光の塊が盛り上がっていた。見る間にそれは、山頂の縁を
乗り越え、太い帯となり、山の傾斜に沿って、だらだらと流れ落ち始めた。
 熔岩流!
「こっちへ来るの!?」
 アンジュの声は悲鳴に近かった。
「いや……」
 インパの見たところ、熔岩流は東の谷の方へと滑ってゆくようだった。カカリコ村を直撃する
ことはないだろう。けれども、あの方向は……
「シティだ!」
 ダルニアが大声をあげた。
 そうだ。あの方向にはゴロンシティが……
「やめろ! 危険だ!」
 身をひるがえそうとするダルニアを、インパは制した。しかしダルニアは、
「族長の俺が仲間を見捨ててはおけねえ。行かんきゃなんねえんだ。あとは頼むぞ!」
 と言うが早いか、いまだ火山弾が降りしきる戸外へと飛び出していった。
 インパも外に出た。ダルニアはすでに登山口へと全速で突っ走っていた。あとを追おうとする
インパの前に、守備隊長が走り寄ってきた。
「いま村の被害を調査中です。インパ殿、対応策を!」
 いつも落ち着いている隊長の顔が、いまは頼りなげにこわばっていた。インパは隊長に、まず
人々を安全な場所へと避難させたうえで、死傷者の有無と数を確認するよう命じた。隊長が
駆け去ったあと、インパは先ほどの予感を再び記憶にのぼらせた。
 どうして、いま、こんな時に……なんと間の悪い偶然か……
 偶然?
 インパは思い出した。
 ゲルド族の撤退。その理由が、噴火を避けるためであったとしたら?
 やつらは噴火を予測していて……いや、噴火そのものがやつらの仕業で……
 ガノンドロフ! 奴の魔力!
『とすると……』
 ダルニアが危ない。噴火だけではなく、ガノンドロフの手が迫っている。だが……
 インパの心は引き裂かれんばかりだった。
 私には、ここでしなければならないことがある……
『どうか無事で……』
 デスマウンテンを見上げる。が、見通しがきかない。空気が濁っている。
 奇異に感じたインパの顔に、生暖かい風が吹き寄せた。頬にざらついた感触が残った。
 カカリコ村に大量の火山灰が舞い降り始めていた。
2282-3 Darunia II (7/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/04(日) 23:15:26 ID:eX+9nslO
 登山道は、すでに道ではなかった。
 崖が崩れ、火山弾が積み上がり、平坦な場所などなくなった地の上を、ダルニアは飛ぶように
駆けた。降り注ぐ火山弾を、大きいものは避け、小さいものはそのまま身に受けながら、
ダルニアは休むことなくゴロンシティを目指した。乱れ飛ぶ火山灰によって視界はほとんど
閉ざされていたが、長年デスマウンテンで暮らしてきた者としての勘で、ダルニアの足は確実に
元の道筋をたどっていた。
 途中で夜が明けたはずだったが、空は一面、火山灰と噴煙に覆われ、日の光はほとんど届かず、
まるで夜がいつまでも続いているような暗さだった。
 道のりの三分の二ほども来たかと思われる地点で、ダルニアの足は止まった。
 そこから先に、地面はなかった。
 大きくふり仰いだ先に見えるデスマウンテンの山頂から、灼熱の熔岩流が滝のように流れ下り、
そこにあったはずの道も崖も、その流れの中に没し去っていた。熔岩流は途切れる気配もなく
山頂からあふれ続け、東側の谷は一面、真っ赤に煮えたぎる熔岩の海と化していた。
 全身を炙る激しい熱に耐え、ダルニアはそこに立っていた。
 ゴロンシティは……仲間たちは……
 最悪の予感。
 身を切り刻まれるような苦痛を覚え、きりきりと歯ぎしりながらも、ダルニアは先に進むのを
あきらめざるを得なかった。
 その時。
 熔岩の海がどっと割れ、巨大な生物が飛び上がった。
 竜!
 視界に捕らえきれないほどの長い体を踊りくねらせながら、竜は熔岩流を背景に宙を舞った。
表面は硬い凹凸を示す赤黒い鱗に覆われ、頭には醜くねじ曲がった二本の角が伸び、その後方には
熔岩と同色の真っ赤な炎が髪の毛のようにたなびいていた。碧色に輝く両眼がこちらに向けられる。
優雅ともいえる巧みさで竜は方向を転換し、ダルニアに迫った。顔面を二つに裂く勢いで、大きく
口があけられる。
 ダルニアはとっさに身を伏せた。その直上を、竜の口から放たれた炎の帯が疾走した。
 直撃は免れたが、ダルニアの皮膚はちりちりと燃えた。
 竜はいったん行き過ぎたが、またもや空中で複雑に身をねじらせ、再度ダルニアに向かって
突進してきた。
 このままではやられる。それに先に行けないとあっては、もうカカリコ村に戻るしかない。
 ダルニアは山を下ろうとして身を起こし、向きを変えた。が、足はそこから動かなかった。
 目の前の空中に、ガノンドロフが浮いていた。
2292-3 Darunia II (8/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/04(日) 23:16:08 ID:eX+9nslO
「かまうな、ヴァルバジア」
 感情をまじえない声で、ガノンドロフが言った。いまにもダルニアを呑みこまんばかりに
接近していた竜は、不意に向きを変え、上空へと躍り上がった。
「久しぶりだな」
 冷ややかな声が、今度はダルニアに向けられた。ダルニアはガノンドロフを睨みつけた。
『炎の精霊石』をめぐる会見で、二人はすでに顔を合わせていた。その時の嫌悪感は、いまでも
忘れていない。
「何しに来やがった!」
 ダルニアの怒りの叫びにも、ガノンドロフは表情を変えなかった。そこには不敵な笑いが
浮かんでいた。
「お前らの往生際が悪いのでな。かたをつけにやって来たぞ」
 かたをつける?
「この噴火は、てめえの仕業か?」
 ガノンドロフが右手の人差し指を立て、くいと曲げた。上に漂っていた竜が、ガノンドロフの
頭上まで舞い降り、そこで静止した。
「火山の奥深くに眠っていた邪竜を、ちょっと起こしてやっただけのことだが、なかなか壮観な
見ものになったな」
「この野郎!」
 思わず悪態をついたダルニアだったが、心が震えるのをどうしようもなかった。
 邪竜を復活させ、火山を噴火させる。これがガノンドロフの魔力……
 それだけではない。空を飛び交う無数の火山弾が、なぜかいま、ガノンドロフと自分のまわりに
は、ただの一つも落ちてこない。目に見えない結界でも張られているのだろうか。
 それに、重力を無視して空中に浮くガノンドロフの身体。この男の魔力とは……
「降りて来やがれ!」
 気を奮い起こして、ダルニアは吼えた。
 ガノンドロフはゆっくりと地面に降り立った。
 ダルニアは意外だった。自分の挑戦に、相手が簡単に応じるとは予想していなかった。
 だがこいつがその気なら、思う存分ぶちのめしてやる。腕力なら負ける気はしない。
 咆哮をあげて、ダルニアはガノンドロフに躍りかかった。重い音をたてて二つの肉体が衝突した。
ガノンドロフが数歩下がる。ダルニアは相手の胴に手をかけ、前に寄り進んだ。ガノンドロフが
じわりと崖の際へと押しやられる。
 そこまでだった。足に根が生えたように、ガノンドロフの身体は動かなくなった。腕の位置を
変え、地面に叩きつけようと力をこめたが、相手はびくともしない。
「力は、さすがだ」
 ダルニアをがっしりと受け止めたまま、ガノンドロフが言った。平静そのものの声だった。
次いで口の端がつり上がり、あの邪な色調に満ちた言葉が発せられた。
「女だてらに」
 ダルニアの胸はどきりとした。瞬間、身体に激しい痛みとしびれが走り、
「うあぁッ……あッ……」
 苦痛の呻きを漏らして、ダルニアは倒れ伏した。
 腕力ではない。自分にはうかがい知れない、未知の力による攻撃だった。
「……汚えぞ……真っ向から……勝負しやがれ……」
 必死に絞り出す言葉を、しかしガノンドロフは、邪悪な笑みを浮かべたまま、ひとことで
あしらった。
「くだらん」
 ガノンドロフが指で合図した。竜は再び上空へ飛び上がり、そこで身をひるがえすと、熔岩の
中へ沈んでいった。代わりにガノンドロフの背後から、箒に乗った二人の老婆が、湧き上がる
ように姿を現した。
2302-3 Darunia II (9/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/04(日) 23:17:26 ID:eX+9nslO
 意志に反して身を動かせないダルニアの上を、二人の老婆はくるくると飛び回った。
「見えますね、コウメさん」
「見えますよ、コタケさん」
「炎の神殿はデスマウンテンにある」
「だからそこに住むゴロン族の中にいるだろうと……」
「とりわけその親分が怪しいと……」
「思ってはいたけども」
「間違いないね」
「間違いない」
「「こいつが『炎の賢者』だよ」」
 耳障りな声のやりとりが、最後には一つに重なって、ダルニアの耳に届いた。
 デスマウンテンの神殿のことは知っている。ゴロン族の聖地とも言える場所だ。だが、賢者とは? 
いったい何のことだ?
 疑問にひたる時間はなかった。ガノンドロフが眼前に歩み寄ってきた。
「てめえら……ただじゃおかねえぞ……いまにシティの仲間が、ここへ……」
 しびれて固まった身体を恨めしく思いながらも、何とか顔だけはガノンドロフに向け、なお
戦意を失うまいと自らを励まして、ダルニアは言った。
「ホーーーーホッホッホッ! 仲間だって!」
「ヒーーーーヒッヒッヒッ! 仲間だとさ!」
 二人の老婆の奇怪な笑いが響き渡った。
「おめでたい奴だねえ」
「ゴロンシティは、とーっくに熔岩に呑まれてしまったよ」
「お前さんの仲間も、みーんな熔岩に溺れてしまったよ」
「ゴロン族は滅びたんだ」
「誰も生きちゃいないんだ」
「残っているのは」
「「お前ひとりだけなのさ」」
 やはり……
 予想はしていたものの、老婆たちの明確な言葉は、ダルニアを打ちのめした。全身の力が抜け、
意識しないうちに、がっくりと頭が垂れていた。
 ゴロン族全体が一瞬にして全滅とは……
 のろのろと首を上げ、その恐るべき敵を見上げる。
 暗く燃え盛る目。唇に宿る冷酷な笑い。
 ガノンドロフの片足が上がり、ダルニアの頭を踏みつけた。
「ぐッ!」
 顔が硬く熱した地面に押しつけられた。鼻の軟骨が割れ、鼻腔に生暖かい血液があふれた。
土砂が口の中にめりこみ、歯の折れる音がした。
 足が離れ、代わって大きな手が、後ろからダルニアの首を持ち上げた。かすんだ視野に相手の
表情を確かめる暇もなく、ダルニアの顔は再び地面に叩きつけられた。
 もう声も出なかった。
2312-3 Darunia II (10/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/04(日) 23:18:25 ID:eX+9nslO
 後ろから腰に両手がかけられ、尻が持ち上げられた。ぬらぬらしたものが、肛門に押し
当てられた。
「『兄弟の契り』とやらを結ばせてもらうか」
 嘲るような声に、ダルニアの意識は引き戻された。
 ──てめえなんぞと! ゴロン族の崇高な行為を貶めることは許さねえ!
 だが身体は動かなかった。
 必死に絞る括約筋を割って、硬い肉棒が侵入してきた。
 使い慣れた場所ではあったが、族長となって以来、他者に契りを施すことはあっても、自分が
他者を受け入れることはなくなっており、久しくその感覚を忘れていた。それに侵入者の巨大さが
加わって、ダルニアの肛門は灼けるように痛んだ。
 ダルニアの苦悶を一顧だにせず、ガノンドロフは最初から激しく腰を動かし、巨茎は直腸の中で
踊り狂った。
 ──ちくしょう……族長の俺が……こんな奴に……
 自らを罵りながら、ダルニアは反撃のために全身の力を集中させようとした。が、それは無益な
試みだった。
 ──契りを穢されて……それでも俺は……何もできずに……
 そこで気づいてしまった。崇高なはずの『兄弟の契り』。しかしそれを崇高なものと見なす
ゴロン族自体が、もうこの世には存在しないのだった。
 ダルニアの心は折れた。
 心身ともに脱力したダルニアの肛門を、ガノンドロフは延々と犯し続けた。その意思に
かかわらず、物理的な粘膜の摩擦は否応なくダルニアに快美感をもたらし、屈辱にまみれたまま、
ダルニアは絶頂させられた。

 肛門から陰茎が引き抜かれる感触を、消えかかる意識がとらえ、ダルニアは小さく息をついた。
心をひたす敗北感の中にも、やっと終わったという安堵が生まれた。
 だがそれで終わりではなかった。
 抜かれた陰茎は全く硬度を失っておらず、そのまま前方へと滑っていった。
 女の部分。
 膨張した亀頭が、粘液にまみれた秘裂をこすり上げ、親指ほどに勃起した巨大な陰核と
触れ合った。
「あぅッ!」
 契りの際には男として使ってきた器官だ。他者に触れるのは初めてではない。ところがいまは
なぜかその接触が、これまで感じたことのない新鮮な快さとなって、ダルニアを襲った。
「あ……あ……あ……ああ……」
 長大な陰茎が前後するたびに、雁首に陰核が引っかかり、そのつど小さな衝撃をもたらした。
陰茎の背面が濡れた陰唇を強く圧迫し、ぬちゃぬちゃと淫らな音を発した。
 圧迫が消えた。
 と思う間もなく、陰茎の他の部分──その先端が、膣口に押しつけられた。
「やめろ……」
 絶対に受け入れられないこと。それを意識して凍りついたダルニアの拒絶の言葉は、しかし
弱々しく口から漏れ出ただけだった。依然として身体は言うことをきかなかった。
 それは情け容赦なく突入してきた。処女膜を引き裂き、これまで何者をも迎えたことのなかった
膣を、みっしりと埋め尽くした。
「かッ!!!」
 激痛。
 ダルニアの口は大きく開かれ、喉からは声にならない空気音が噴き出した。
2322-3 Darunia II (11/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/04(日) 23:19:20 ID:eX+9nslO
 ガノンドロフの動きが止まった。
 上半身が前傾してくる。耳元で声がした。
「お前の女をもらったぞ」
 頬が、かっと熱くなった。
 ──こんな奴に……「男」の誇りだけじゃなく……俺の最後の……最後の……
「やめろ……」
 それしか言えない。もう遅すぎる拒絶。そして……
 ガノンドロフがゆっくりと剛直を引き、再びじわじわと攻めこんできた。
「ひッ……」
 痛みとともに、未知の感覚が下半身を走った。
 生まれて初めて味わう、膣の快感──そう、快感!
 自分はいま、犯されている。
 女として。
 女として。
 ダルニアの脳の中で、その言葉は、木霊のように反響した。
 並はずれた体格ゆえに、子供の頃から女と見られたことがなかった。女を捨て、男として
生きるしかなかった。ゴロン族の一員となって、やっと自分のあるべき姿がわかったと思った。
ところが、それがまやかしであるということを思い知らされる時がきた……
 ガノンドロフ。
 あの会見の時、すでにこいつは俺に欲望を燃やしていた。俺は吐き気を催すような嫌悪感を
いだき、同時に……喜びを感じていた。
 女と見られる喜び。
 いま、俺はこいつに犯されている。女として。
 屈辱と嫌悪の中に、ひそかに、だが明白にある、この喜び。
 そう感じること自体がおぞましい。でもそれを否定することはできない。
 ガノンドロフが再び、膣の中で陰茎を前後させた。先よりも速く、乱暴な動きだったが、
ダルニアを襲ったのは、痛みよりも快感が主であった。
「あああぁぁ……あぁ……んん!」
 思わず口から漏れる声。ダルニアは驚いた。
 女の声だった。
 ──こんな声を……俺が……
 いったん女になってしまうと、もう元には戻れなかった。ガノンドロフはもはや斟酌せず、
急速にダルニアを突きまくった。ダルニアは痛みも忘れ、ひたすら膣をえぐられる快感を味わった。
口からは続けざまに甲高い女の悲鳴がほとばしった。
 ガノンドロフの両手が背後から胸に回った。下を向いても垂れる余地のない、乳房とも呼び
がたい貧しいふくらみの中心で、しかしそこだけは硬く隆起している部分を、ガノンドロフの指が
とらえ、陰湿な攻撃を開始した。
「あんッ!」
 身体がびくんと震える。秘部と胸への二重の刺激に、女の意識がさらにかき立てられる。
「この程度の胸でも感じるのだな」
 ガノンドロフの言葉に、心は反発する。けれどもそれは、女としての自分を揶揄することへの
反発と気づき、ダルニアは改めて、自分が女であることを思い知る。
 ──いいんだ……女でも……
 気が遠くなるほどの快感の中で、ダルニアはそれを肯定した。それが本来、あるべき姿
だったのだ。だが……
2332-3 Darunia II (12/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/04(日) 23:20:18 ID:eX+9nslO
 どうしても捨てられない思い。
 なぜ、相手がこいつなんだ!
 女と見られたこと。それ自体はいい。でも……
 俺は決してこいつに心を許したわけじゃない。身体はともかく、心は……絶対、絶対、
こいつには渡さない。渡すとしたら……
 その姿が、目に浮かぶ。
 自分を女と指摘した、もう一人の人物。
 ──せめて……せめて……心は、お前に……
 荒れ狂うガノンドロフの攻めに、ダルニアは翻弄され、ただ快楽の渦の中に堕ちていくしか
なかった。しかしダルニアは、それをもたらす者がガノンドロフではないと必死に思いこもうとし、
そのことがダルニアを、かろうじて心の破壊から救っていた。
「あッ!……あッ!……あぁッ!……ああぁ……あぁ……ッッ!!」
 最後の時が訪れ、ダルニアの身体が痙攣し、硬直した。
 それを待っていたかのように、ガノンドロフの猛る分身がどくんと脈動し、膣の中へと大量の
精液を噴出させた。
『リンク……!!』
 薄れゆく意識の中で、ダルニアはその名を叫んだ。目から涙が流れ落ちた。
 今度こそほんとうに、全身の力が失われていった。

 ことを終え、ガノンドロフは立ち上がった。その前で、陵辱のしるしである破瓜血と白濁液を
膣口から垂れ流し、ダルニアは死んだように横たわっていた。
 上空では二人のツインローバが、勝ち誇った笑い声をあげて乱舞していた。
「たまにはゲテモノもいいものだな」
 挑発的な言葉を投げてやったが、ダルニアは反応しなかった。血にまみれた顔には、満足感の
ようなものがうかがわれた。それは肉体のみならず心まで屈服させた証のはずであったが、
ガノンドロフの心は、なぜか苛立った。
『まあいい』
 あとは片づけるだけだ。
 ガノンドロフはダルニアを蹴飛ばした。地面の上で、大柄な身体がごろりと転がった。さらに
蹴り続け、崖の縁まで転がした。
「恨むなら、賢者に生まれたお前自身の運命を恨め」
 酷薄な笑みを浮かべつつ、ガノンドロフは足に力をこめた。

 不思議に落ち着いた心持ちで、ダルニアはおのれの現状を自覚した。
 想う相手に向けての、最後の呼びかけ。

 ──剣をやるという約束……果たしてやれなかったな……

 意識は長くは続かなかった。
 ダルニアの身体はまっすぐに、燃えさかる熔岩の海へと落下していった。


To be continued.
234 ◆JmQ19ALdig :2007/03/04(日) 23:20:50 ID:eX+9nslO
今回はここまで。ああ重い・・・
次回の舞台はゾーラの里とハイリア湖です。
235名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 00:13:08 ID:qNV+0Czz
>>234
GJ!!
中々投下されないので何かあったのかと少し心配していたよ
(いや、別にいつ投下するか公言したわけではないのでそれはJmQ19ALdigさんの自由なのだが)
話はかなりシビアな展開になってきましたな
賢者達が死んでしまうというのにはガクブルだが、
一過性ということでどのように甦る(?)のか気になります
236名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 12:13:06 ID:TMNNW+b1
>>234
GJ!、しかし今までの展開からして
>次回の舞台はゾーラの里とハイリア湖
ある意味死刑宣告に近い気が。ルト姫さま逃げてー!
237名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 21:48:03 ID:r0vQhC9O
238名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 23:43:21 ID:dyHULnxj
GJです!相変わらずクオリティ高いなあ。そしてシリアス。

ダルニアと比べて贔屓するわけじゃないが(リンクに対する不器用な感情には萌えました)、
ルト姫にはちょっと手加減してあげて・・・ムリ?
239toka氏:2007/03/07(水) 15:07:35 ID:YdZR50Bz
ルト姫とか全身ヌルヌルで何処でも抜けそうな気ガス

それにしてもGJだった。
なんかもうダルニアの像が俺の中で出来てる。
240名無しさん@ピンキー:2007/03/07(水) 16:28:16 ID:w8mgKEev
俺、リンクにオカリナ吹かれると「アツイ!なんだこのビートは!」と
(>皿<)こんな顔で必死に踊りだすゴロン族長が好きなんだよなー。

小説の女ダルニアもはやく元気になって激しく踊ってホスイ。
241名無しさん@ピンキー:2007/03/07(水) 17:02:10 ID:so7rek9g
>>240
よく見ると、踊ってる時にヒき気味なんだよな、リンクw
242名無しさん@ピンキー:2007/03/07(水) 19:48:31 ID:2K4e0hRm
あげ
243名無しさん@ピンキー:2007/03/07(水) 19:54:43 ID:FTFJoUu8
投下しようとしたスレがageられた時ほどやるせないことはない。
pinkではありがちだけど。
244名無しさん@ピンキー:2007/03/07(水) 20:12:54 ID:prBFOdts
>>243
気にせず投下カモーン!!
245名無しさん@ピンキー:2007/03/07(水) 23:37:51 ID:d0cBq6Ns
>>243
気にしないで投下だ!
246名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 17:05:52 ID:QKMwUIn9
>>243
大事なのは評価じゃない。
うpする心だ!
247名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 17:52:35 ID:3HN0ICAh
みんなZ注目し過ぎだろw
・・・でも投下お待ちしてます
248名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 23:15:26 ID:QKMwUIn9
>>247
いや、そこはあえてC△注目で
249名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 12:53:43 ID:cvX3E4qy
いきなりだが!!!
俺的に風タクの雰囲気も良いと思う
250名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 04:27:24 ID:GgnKq5pK
なにを今更。
251名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 04:46:06 ID:J/WflCIO
いいけど、ゼルダと妹とメドリと…女キャラ少なくね?
252名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 06:41:59 ID:rPWgYjkl
おばあちゃん「あ、あ、あ……リンクやあぁぁ」

チャツボねえさん「え?10ルピー払えないんですって!?
            じゃあ体で払って下さい><」

ガノンドロフ「俺のケツにションb(ry」


結論:探せば結構いる
253名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 07:17:01 ID:fkjKjjMp
>>252
アッーー!!!
254 ◆JmQ19ALdig :2007/03/11(日) 14:45:12 ID:dOV8XJ7r
私本・時のオカリナ/第二部/第四章/ルト編その2、投下します。
モーファ&ガノンドロフ×ルト。陵辱→死亡。
2552-4 Ruto II (1/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/11(日) 14:46:27 ID:dOV8XJ7r
 最近、里の様子が落ち着かない。戦争が始まったのだという。みんな深刻な表情でひそひそと
話したり、里と外の間をばたばたと出入りしたりで、やけに慌ただしい。
 父親のキングゾーラに事情を訊こうとしても、常に家来たちや、カカリコ村から訪れた
客人たちと密談していて、ろくに話をする機会がない。決して里の外へ出てはならないと、
きつく言い渡されただけだ。これではハイリア湖へ遊びに行くこともかなわない。
『いったい、何がどうなっておるのか』
 まわりの者に訊ねても、詳しいことは教えてくれない。
「ルト様には関係のないことですから」
「ルト様は何も気になさらなくてよいのです」
 政治のことに口を出す気はさらさらないが、そうやって放っておかれるのも、役立たずと
言われているようで、いい気がしない。
 ルトはベッドの上で大きくため息をついた。
「失礼いたします」
 身繕いを手伝う侍女が部屋に入ってきた。だらしなく寝転がるルトを見て、あきれたように言う。
「もうお昼でございますよ。まだおやすみなのですか」
「何をせずともよいというのなら、毎日ごろごろと寝て暮らすしかないではないか」
 言葉に不機嫌さが滲み出てしまう。侍女は肩をすくめ、回れ右をして部屋から出てゆこうとした。
さすがにルトは後悔した。
「すまぬ」
 侍女は足を止め、ルトに向き直った。顔に同情の色が見えた。そこで思い切って訊いてみた。
「戦の様子はどうなっておる?」
「それは……姫様はそのようなことを、ご心配にならなくても……」
 またそれか。
 ルトの心はささくれ立った。
「そうはいかぬ。ゾーラの王女であるわらわが、国の大事も知らぬでは、面目が立たぬではないか」
 侍女は下を向き、黙ってしまった。ルトはさらに迫った。
「そもそも我らは、誰と戦っておるのじゃ? そんなことすら、わらわは知らされておらぬ」
 ちらりとルトの顔をうかがい、小さな声で侍女は言った。
「ゲルド族でございます。ガノンドロフに率いられた盗賊団で……」
 ガノンドロフ?
「これ以上はお許し下さい。国王陛下に、姫様には何も知らせるなと仰せつけられておりますので……」
 侍女は逃げるように部屋を出ていった。
 父上が、よけいなことを……と、ルトは腹立たしく思った。が、それ以上に、侍女の漏らした
敵の名が気になった。
 どこかで聞いたことがある。あれは、確か……
 しばらく時間がかかったが、ルトはそれを記憶から引き出すことができた。
 そう……ゾーラの泉での、寄生虫との戦いの最中に、リンクが漏らした言葉……
『本物より、かなりでかいな。やっぱりガノンドロフが……』
 あの時はリンクが腹の立つことを言ったので、それきり確かめることができなかった。あとで
和解した時には、もう忘れていた。
 ガノンドロフ。寄生虫を送りこんでジャブジャブ様を弱らせたのが、そいつなのか。そいつが
いまも敵として、我らゾーラ族に戦いを挑んでいるのか。
 わからないことが多い。
 ルトはいらつきながらも追求をあきらめた。もっと心が躍ることを思い出してしまったから。
2562-4 Ruto II (2/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/11(日) 14:47:31 ID:dOV8XJ7r
『リンク……』
 いま、どうしているのだろう。『ゾーラのサファイア』を渡して以来、再会は果たしていない。
「なぜ、会いに来ぬ」
 そう口に出してみる。王女の威厳をこめて、いかめしい声で。
 でも心には、いかめしさなどかけらもない。
 別れ際に見たリンクの笑顔。ただそれだけが思い浮かぶ。その笑顔を、もう一度……いや、
一度と言わず、何度でも……いやいや、ずっとずっと、いつもいつも、それを見ていられる
ようにと……なぜなら……
『そなたはわらわのフィアンセじゃからな』
 リンクの気持ちを確かめたわけではない。しかしルトはかたくなに信じていた。今度リンクが
来れば、今度リンクに会いさえすれば、想いは一方的なものではなくなると。あの笑顔は、自分に
対するリンクの愛情の証であると。
「そなたの気持ちは、わらわにはお見通しじゃ」
 もう一度、口に出す。自らに言い聞かせるように。
 が、そこに無理があることを、心の隅で感じてしまう。どうしても。
 ならば、どうしてリンクは会いに来ない?
『戦が続いている、こんな状態では……わらわに会いたくとも、リンクは来られないのであろう……』
 そう思うことにして、心を慰める。
 戦など、早く終わればいい。終わりさえすれば、リンクはここへやって来る。リンクが来たら……
 ルトはごくんと唾を呑んだ。
 めおとの作法。
 すでに初潮の際、まわりの者から教育は受けていた。リンクとのことがあってから、侍女たちに
せがんで詳しい話を聞き出したこともある。男と女が閨で何をするのか、もうあらかたのことは
知っている。
 しかし、知識だけだ。
 全裸で暮らすゾーラ族ゆえ、いまさら性器を見、想像することで、惑いが生じたりはしない。
ただ、それが自分の中に入ってくるということに、実感が持てない。どういう心持ちがするのだろう。
ある者は快いと言い、ある者は痛いと言う。確かに、試した限りでは……
 人差し指を立ててみる。リンクのそれを見たことはないが、里にいる同年代の男の子を見るに、
この人差し指くらいの大きさではないか。
 指を、そっと股間へ忍ばせる。男を受け入れる場所。
 何ともいえない感触。くすぐったい。けれどそれだけではない。快いといえば、そうなのかも
しれない。
 奥へと指を進める。
 快い? そうかも。そう呼んでいいのかも。でも……
 指がそれ以上進まなくなる。いつもそこで止まってしまう。それでも進めようとすると……
「つッ!」
 痛みがそれを妨げる。耐えなければならないのだろうか。この先にはもっと大きな快さが
ひそんでいて、痛みに耐えることができれば、それに達することができるのだろうか。
 いまはまだ、確かめる勇気がない。それでも、リンクが来たら……リンクが目の前でそれを
さらけ出したら……自分はきっと、おののきながらも、喜んでそれを迎え入れ、どんな苦痛にも……
 ノックの音がした。ルトの心臓は縮み上がった。
「な、なんじゃ」
 あわてて指を引く。戸が開いて、さっきの侍女が顔を出した。
「あの……そろそろ、ジャブジャブ様の所へおいでになる時刻でございますが……」
「そ、そうじゃな」
 必死で何気ないふうを装う。が、頬が火照っているのが自分でもわかる。見とがめられぬよう、
背を向ける。向けてどうする? 何か演技しないと。髪をなでつけ、身体の埃を払い……
「お身支度でしたら、わたくしがお手伝いを……」
「い、いや、よい、よいから、す、すぐに、ジャブジャブ様に、あ、会いにゆかねば」
 これ以上ここにいるとぼろが出てしまう。
 侍女と顔を合わせないよう注意しながら、ルトは早足で部屋を出て、ゾーラの泉へと向かった。
2572-4 Ruto II (3/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/11(日) 14:48:52 ID:dOV8XJ7r
 デスマウンテンの大噴火のあと、ゲルド族の矛先はゾーラ川上流に向いた。カカリコ村は
一時的に放置された。噴火はカカリコ村に大きな被害を与え、その戦闘力は減退していたし、
ゴロン族の全滅によって、側面からの攻撃を気にする必要もなくなっていたが、激しい噴火が
続くうちは、寄せ手の方もカカリコ村に接近することができないからだった。それにゾーラ族を
攻撃するのは、ゴロン族に続いて、王党軍の中心となるカカリコ村の両翼を潰すことになる、
という利点もあった。
 戦闘力の乏しいゾーラ族は、しかし果敢な抵抗を示した。ゾーラ川の急流は天嶮の要害となり、
攻め上るゲルド族の足は、しばしば滞った。ゾーラ族は上流の高台から、雨あられのように矢を
放ち、石を落として、ゲルド族を狙い撃ちにした。堰き止めておいた川の水を一気に放流して、
攻め寄せるゲルド族を洗い流すという戦法も、何度か繰り出された。幅の狭い川しか攻め口のない
ゲルド族は、ゾーラの里の入口である滝に近づくこともできず、ここでも戦況は膠着の様相を
呈し始め、すでに一ヶ月が経過していた。
 その間、ガノンドロフは、先のカカリコ村攻撃の時と同様、部下に戦闘を任せ、自分は他の
ことに力を向けていた。新たにゲルド族の勢力下となった地域──主にハイラル平原西方──の
支配体制を確立する必要があった。ハイラル城へ届けられる情報をもとに指令を下す一方、自ら
占領地をまわって状況を検分した。そこには常に、おのれの淫欲を満たすための暴行が付随していた。
 さらに、ガノンドロフには大きな目的があった。
 ゼルダ捜索。
 それに比べれば、カカリコ村やゾーラの里を攻めるなど、ガノンドロフにとっては些末事に
過ぎないのだった。
 手下に命じて各地を探させ、手がかりになりそうな話を住民から聞き出させた。自らもまた、
占領地へ赴いた際には、時間を見つけて足取りを追った。だがゼルダの行方は杳として知れなかった。
ガノンドロフは捜索が長期にわたることを覚悟しなければならなかった。
 また些末事とはいえ、膠着状態に陥った対ゾーラ族戦を放置することは、さすがにできなかった。
カカリコ村が再び力を持てば、今度はそちらから側面攻撃を受ける。それに、賢者のことも問題だった。
『水の賢者』はゾーラ族の中にいる、とツインローバは主張していた。ゾーラの里は水の神殿が
あるハイリア湖からかなり離れている、とガノンドロフは指摘したのだが、ツインローバは自説を
撤回しようとはしなかった。そもそもハイラルで水を司るのはゾーラ族の役割であり、自分の代の
『水の賢者』もゾーラ族であったから、というのがツインローバの主張の理由だった。
 戦局の打開も視野に置いて、ガノンドロフはその主張に乗ってみることにした。

 ジャブジャブ様の世話をするのは、いまでも変わらぬルトの日課だった。
 リンクが寄生虫を退治したあと、ジャブジャブ様の体調はたちまち回復し、今日も常のごとく、
怠惰な雰囲気の中にも、見る者に安心感を与える堂々とした巨体を、ゾーラの泉の岸に乗り上げ
させていた。その不動の安寧は、戦争が続くこの頃も変わることはなく、ゾーラ族の守り神として、
ルトにとっても、他のゾーラ族にとっても、心のよりどころとなっていた。
 いつものように魚を供え、ジャブジャブ様が大きな口をあけてそれを呑みこむのを見守る。
いかにも満足したような唸り声。肌の色つやもいい。
 ルトの心は安まった。
 が、その時、かすかな冷たい風を感じ、ルトは短く身震いした。
『氷の洞窟から?』
 ゾーラの泉の北岸には、氷の洞窟と呼ばれる深い穴があった。中には無限とも言われる大量の
氷が、一年中、溶けることなく蓄えられており、それが豊潤なゾーラ川の水の供給源となっていた。
 当然、洞窟から吹き出す風は、かなりの冷気を帯びている。しかし……
『泉の上を渡る頃には冷気も失われて、気持ちのよい風になるはずじゃが……』
 空が曇っているせいだろうか。
 そう……そうに違いない。
 胸に翳りを覚えつつも、そのようにルトは自分を納得させ、ゾーラの里に続く隧道へと足を向けた。
2582-4 Ruto II (4/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/11(日) 14:50:17 ID:dOV8XJ7r
「おお寒い!」
 とコウメ。
「大したことはないよ」
 とコタケ。
 一心同体のツインローバが、珍しく意見を異にした。
「あたしゃ炎の魔道士なんだから、寒いのは苦手なんだよ、コタケさん」
「氷の魔道士のあたしだって、デスマウンテンじゃ暑いのを我慢してたんだよ、コウメさん」
「我慢すりゃすむってもんじゃない。年寄りには寒さは腰にこたえるんだ」
「わかったわかった。じゃあ一緒になるかね。そうすりゃ寒さも中和されるだろうて」
「そうさせてもらうよ。ほら」
 二人の姿が重なり、一人の妖艶な熟女が出現した。肌もあらわな合体後の格好の方が寒げに
見える、とガノンドロフは苦笑しつつ思ったが、当のツインローバは、
「ふう……これでだいぶましになったよ」
 と、文字どおり涼しい顔で息をついた。
「落ち着いたところで、何をするのか教えてもらおうか」
 感情をまじえない声で問うガノンドロフに、ツインローバは流し目を送りながら、にやりと
笑って答えた。
「ゾーラ族は水に生きる連中だから、やっつけるには水を奪っちまえばいい。だけどここには……」
 視線をぐるりとまわす。
「……こうやって、無尽蔵の氷がある。これがある限り、ゾーラ川の水はなくならない。あたしや
あんたの魔力でも、この氷を全部溶かしきるのは無理ってものよ。でも、その逆に……」
 ツインローバは、コタケの跨っていた箒を片手に持ち、周囲に向けて軽く振った。あたりの
冷気が強さを増す。
 ゾーラ川で苦戦している仲間を尻目に、ガノンドロフとツインローバは魔力を用いて空中を
飛び──ツインローバは老婆の姿にならないと飛行はできないのだったが──いまは氷の洞窟の
内部にいた。ツインローバの箒の操作により、洞窟内の温度はぐんぐん下がり、奥から入口に
向かって、雪まじりの激しい風が吹き荒れ始めていた。
「……この調子で、外の泉や川の水をすべて凍らせてやれば、水はないのと同じことになるのさ」
 雪嵐の勢いが、互いの姿も見えなくなるほど強くなったので、二人は洞窟の入口へと戻った。
「おかしいわね」
 ツインローバは眉をひそめた。
「外はそれほど寒くない。こんなに冷気を吹き出させているのに……」
 ガノンドロフもそれを感じた。洞窟から吹き出す風は、ここに入る前に比べて、明らかに
冷たさを増している。ところが、吹き出すが早いか、その冷たさはいずこへともなく消え去って
しまい、あたりの光景には何の影響も及ぼしていなかった。ゾーラの泉の水も、相変わらず
穏やかなさざ波を立てているばかりだった。
「何かが邪魔をしているね」
 陰険な声を発するツインローバの視線が、泉の上をさまよった。その視線が、やがて一点で止まる。
「あの魚か?」
 ガノンドロフは、止まった視線の先にある巨大な影に注目した。ツインローバは頷いた。
「そう、あいつだ。ジャブジャブの奴が、ここの気候を支配しているんだね。ゾーラ族の
守り神っていう肩書きも、ダテじゃないってことさ」
 ツインローバがふり返った。
「何とかできる? ガノン」
 目に残虐な炎が揺らめいていた。
「たやすいことだ」
 ガノンドロフは平然と言い、泉の対岸に寝そべる影に向けて、右手をかざした。
2592-4 Ruto II (5/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/11(日) 14:51:30 ID:dOV8XJ7r
 背後で音がした。
 何かが破裂するような音だ、とルトは思った。
 隧道を里へと戻ってゆく途中だった。足を止め、泉にそのような音をたてる何かがあったか、と
考えてみた。が、思い当たるものはなかった。
 何だろう。わからない。でも……さっき感じた、胸の翳り。それがいま、急速に大きくなってゆく。
 ルトは身をひるがえし、ゾーラの泉へと隧道を駆けた。駆けながら、何かが起こったことを
確信した。進むにつれて、肌に迫る冷気が厳しくなっていった。
 泉の様子は一変していた。北の方から轟々と音をたてて、雪と氷のまじった激しい風が吹き
すさび、風圧と寒さとで、先に進むことはできなかった。
『ジャブジャブ様は……』
 ルトは必死でその姿を探した。しかし目をあけていることすら困難な吹雪の中で、確かめる
ことは不可能だった。
 足を浸す水の、痛いほどの冷たさに気づき、下に目をやったルトは、驚愕した。
 水が真っ赤に染まっていた。
『血!?』
 それだけではない。粉々になった多数の生臭い肉片が、流れに乗って足元を遊弋していた。
 さっきの音を思い出す。
 何かが破裂するような音。破裂……破裂……破裂!
『ジャブジャブ様!』
 思わず足を踏み出そうとした。水から引き抜いた足に、鋭い痛みを感じた。
 足首に細長い傷がつき、血が流れていた。足元の水が凍り、その氷の端で皮膚を切ってしまったのだ。
 ルトの胸は早鐘を打った。
 ジャブジャブ様は、もう助けようがあるまい。そしてこのままでは……ゾーラの里そのものが……
 ルトは再び身をひるがえし、隧道の中へと走りこんだ。水面はすでに氷結し、走るルトの足の
下でばりばりと音をたてた。
 吹雪は隧道を走るルトを追いかけ、追い越し、里の内部を襲い始めていた。
 王の間に着いた時には、もう、そこも外と変わりがなくなっていた。床を浸す水は凍りつき、
空気は極限まで冷えこみ、無数の雪粒が狂乱の舞いを舞っていた。
「父上!」
 ルトはキングゾーラに駆け寄った。その身体に手をかけ、ルトは息を呑んだ。肥満したキング
ゾーラの体表は凍りつき、座した面の氷とひとつになって、その場から動くこともできなくなって
いた。周囲には数人の家来たちが、同じく凍りついた姿で惨めに倒れていた。
「父上!」
 自らの肌が凍り始める感触に怖気をふるいながらも、ルトは再度、キングゾーラに呼びかけた。
キングゾーラは動かない。ただ目だけが、ゆっくりとルトに向けられる。
「……ルトよ……お前は……逃げよ……」
「父上も! 父上を置いては!……」
「……かまうな……ハイリア湖へ……お前の知る……道で……」
 ルトはキングゾーラの身体を揺さぶった。だが微動だにしない。ルトの目に涙があふれる。
あふれるそばから凍ってゆく。
 どうにもできないのか……
 絶望に身がくずおれそうになった、その時。
「逃げよ! 敵が来る!」
 キングゾーラが一喝した。最後の力をこめたような叫びだった。ルトはその勢いに押され、
思わず後ずさった。
 父。一族には厳格な父。しかし娘には甘い父。
 父は、いま、死に瀕している。その父の目は、厳しくも、限りない愛情にあふれ……
「……申し訳……ございませぬ……」
 張り裂けそうな胸をかかえ、やっとそれだけの言葉を別れに代えて、ルトは王の間をあとにした。
 急いで自室に戻る。部屋の中には、まだ温かみが残っており、ルトはわずかに息をついた。が、
ここが凍りつくのも時間の問題と思われた。貴重品をしまっておいた箱から『ゾーラのうろこ』を
取り出し、部屋を出る。一段と厳しくなった寒さに身を震わせながら、ルトは里の中心部へと
向かった。王の間の前を通り過ぎようとして、足が止まった。
 中から声が聞こえた。
2602-4 Ruto II (6/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/11(日) 14:52:45 ID:dOV8XJ7r
「氷の魔道士の力は大したものだな」
 ガノンドロフの賛辞に、ツインローバは胸をそらしつつも謙遜の言葉を返した。
「あたしだけじゃ、ここまではできないわよ。魔王のあんたが力を増幅させてくれてるから……
でも……」
 ツインローバの目が、傍らのキングゾーラに向く。
「まだ手加減しておいてよ、ガノン。こいつを死なせちまっちゃ、確かめようがなくなるからね」
 キングゾーラの身体は、すでに完全に厚い氷で包まれていた。しかしその目には、まだ最後の
光が残っていた。その光をのぞきこむように、ツインローバはキングゾーラを凝視した。顔に
満ちる緊張。だが一瞬ののち、緊張は崩れ、ツインローバの口から、
「こいつじゃない」
 と失望の言葉が漏れた。
「ゾーラ族の親玉のこいつに違いない、と思っていたんだけど……」
 キングゾーラの目が動いた。ツインローバはそれを追い、王の間の入口に目を向けた。
ガノンドロフもそちらをふり返った。一人の少女が、入口のきわに身を隠すようにして立っていた。
「そいつだ!」
 ツインローバが叫んだ。少女はさっと身を引いた。ガノンドロフは入口に向かって走りかけた。
「待って」
 落ち着いた声で、ツインローバがガノンドロフを引き止めた。
「焦らなくてもいいわ。いま、こいつの考えを読んだから」
 ツインローバは低い声で続けた。
「ゾーラの王女、ルト──親玉じゃなくて、その娘の方だったのね──抜け道を通って、
ハイリア湖に逃げようとしている……だってさ」
 最後は嘲るような笑い声だった。ガノンドロフも、心の中でにやりと笑った
『ハイリア湖か……』
 念のために手は打っておいた。面白い見ものになるだろう。
「さあ、これでこの王様には用なしだよ。さっさと片づけちまっとくれ」
 ついとツインローバが後ずさる。ガノンドロフは右手をキングゾーラに向け、
「はッ!」
 と気合いを発した。
 金属質の音響とともに、凍りついたキングゾーラの身体が、無数の断片となって粉砕された。
2612-4 Ruto II (7/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/11(日) 14:53:47 ID:dOV8XJ7r
 王の間の前から、かろうじて残る水の流れをたどって、ルトは駆けた。水は里の大空間へ落ち
かかる滝に続いている。
 滝はまだ水流の体をなしていた。が、空間は凍てついた暴風が吹き荒れる修羅場と化していた。
対岸の崖道には人があふれていた。突然の大寒波から逃げようとして、里の出口へと向かって
いるのだろう。しかし人の流れは一向にはけない。出口を見ると、そこで人々の動きは止まって
しまっている。
 出口の滝が凍りついているのだ。
 いまルトが立つ滝とは異なり、出口の滝の水は、直接ゾーラの泉から流れ出ている。冷気の
影響をいち早く受け、里の中よりも先に氷結してしまったのだ。
『我らにはもう、逃げ場がない』
 ルトの背筋は震えた。寒さのせいばかりではなかった。
 そうするうちにも、人々は吹雪にまかれて次々に倒れていく。崖から転落する者もひっきりなしだ。
 ルトは身を切られる思いだった。
 父を救えない。一族の危機に際して何もできない。これで王女と言えるだろうか。
『やはりわらわは……役立たずじゃ……』
 がっくりと首を垂れたルトの目が、足元の水の変化をとらえた。流れが弱くなり、滝が凍り
始めていた。あわてて滝の下を見おろす。空間の底に溜まった水は、まだ完全には凍っていない。
 ルトは意を決し、滝の上から身を躍らせた。素肌に氷雪がまとわりつき、ルトの身体は芯から
冷えた。さらに飛びこんだ先の水は、鼓動が止まるほど冷たかった。だが全身を水に包まれる
感覚は、それだけで、生き返るような奮起をルトに与えた。
『望みは、ある』
 ハイリア湖に繋がる地下水路の入口は、滝壺の奥底にあった。滝の裏に神を祀る神聖な場所が
あるため、ゾーラ族はめったに滝に近寄ることがなく、滝壺の底の水路の入口にも、これまで
気づく者はいなかった。ただ、おてんばなルトだけが、周囲の者の言うことを聞かず、滝の
まわりで遊び戯れるうちに、その入口を発見したのだった。
「みなの者! ここから逃げよ!」
 水面に顔を出し、ルトは崖の上に向かって叫んだ。二度三度と、声を限りに。
 吹雪が猛然と勢いを増した。ルトの必死の思いをあざ笑うかのように。
 崖の上から応える声はなく、水面に現れる人の姿もなかった。
 吹雪にさえぎられて、声が届かないのか。あるいは……声を聞くことのできる者が、もはや
そこには……
 滝の音が止まっていた。はっとして見上げると、もう滝はほとんど凍ってしまっていた。
このままでは、地下水路の入口も……
 涙を押しとどめて、ルトは周囲を見渡した。
 氷に埋まるゾーラの里。滅んでゆくゾーラ族。
『じゃが、わらわは生きる』
 生き延びる。生き延びて、ゾーラ族の血を残す。
 胸に固い決意を抱いて、ルトは水中に身を沈め、滝壺の底へと泳ぎ進んでいった。
2622-4 Ruto II (8/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/11(日) 14:54:50 ID:dOV8XJ7r
 地下水路の流れは、折よくハイリア湖に向かっていたが、そのスピードは速くはなかった。
ゾーラの里の水が氷結し、流れるべき水の量が減じてしまったせいと思われた。水流の速度は
徐々に遅くなり、後方の水の温度が下がっていくのを感じて、いつ自分の身体が凍りつくかと、
ルトは恐怖に襲われかけたが、行程の半ばほどまでゆくと、もう水温は下がらなくなった。あの
猛吹雪もさすがにここまでは影響を及ぼさず、ハイリア湖の水と拮抗状態になったためだろう、
と思い、ルトはやっと安堵した。
 余裕ができた頭の中に、さっきまでの里の光景がよみがえる。
 王の間で、父のそばにいた二人の人物。一人の男と一人の女。女は男に「ガノン」と
呼びかけていた。
 ガノン──あの男が、ガノンドロフなのか。
 筋肉の盛り上がった威容。どす黒い皮膚。残酷な笑いを浮かべた顔。
 ジャブジャブ様を襲ったのも、ガノンドロフに違いない。
 ルトの心は怒りに燃えた。同時に、記憶に残る表情──そこに悪そのものの匂いを感じて、
ルトの身体は震えた。水温を理由にはできなかった。

 地下水路の出口は、ハイリア湖の岸辺に残る遺跡の基部が、湖底に接する所にあった。
『暖かい』
 出口から抜け出したルトは、そう思った。水はあくまでも水であったが、酷寒のゾーラの里に
比べると、ハイリア湖の水は天国のような心地よさだった。
 これからどうするか、と、ルトは考えをめぐらした。
 頼れる人を探して……
 頼れる人? 誰?
 言うまでもなく、リンクだ。頼る相手は、リンクしかいない。
 でも、どうやって? リンクはどこにいる? たとえ居場所がわかったとしても、自分は水から
離れられない。ハイラル平原を歩いて渡ることはできない。いや、それが必要だというのなら、
ゾーラ川を遡ってでも……
 ルトは吐息をついた。
 考えばかりが先走ってもしかたがない。まず、みずうみ博士に会おう。いい知恵を貸して
くれるだろう。
 水上に身を浮かばせる。くわえていた『ゾーラのうろこ』を口から離し、あたりを見回す。
空は晴れ渡り、西に傾きかけた日の光が、湖面を美しく彩っていた。風は穏やかに舞い、岸辺では
木々の葉擦れの音が優しくささやいていた。平和そのものの風景だった。
 みずうみ博士の家は、すぐ近くの水際にある。留守でなければよいが、と案じながら、ルトは
岸に向かった。
 向かおうとした。
 身体を動かせなかった。
『なんじゃ?』
 腕は動く。足も動かせる。なのに前へ進まない。
 ぎょっとして水の中を見る。何もない。何もないのだが、胴に何かが巻きついているような……
 突然、それはルトの胴を締めつけた。
「げ!」
 口から思わず声が漏れる。もう一度、水の中を見るが、胴には何も巻きついていない──としか
見えない。でもそこに何かがいるのは間違いない。
『どうなっておるのじゃ』
 ルトは恐慌に陥った。巻きつく力は少しずつ強くなり、さらに別の何かが、右脚に、左脚に、
そして腰にと、次々に巻きついてくる。緊縛から逃れようと身体をよじるが、力は強まるばかりだ。
ルトは巻きつかれているはずの場所に手を伸ばした。何も触れない。ただ水があるだけだ。
 水面から細長いものが飛び出した。
 やはり何かがいる!
 思う間もなく、それはルトの首に巻きついた。
 これは……この感触は……水! 水そのもの!
2632-4 Ruto II (9/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/11(日) 14:56:07 ID:dOV8XJ7r
 いまや水の触手は、ルトの全身を絡め尽くしていた。液体なのか固体なのか判然としない、
しかし確かな存在感を持つそれは、ルトの動きを封じつつ、滑るようにルトの体表を撫でまわした。
「ひぃッ!」
 激しい違和感に、ルトの肌は総毛立った。
 なに? これまで感じたことのない、この感触は……痛くはない。苦しくもない。どう言い
表したらいいのか、わからない。ただ、例えるとしたら……
 触手が両脚の間を這い上がってきた。
 くすぐったい。けれどそれだけではない。そう、これは……あの……あの時の感触に似て……
 ルトの思考を読み取ったかのように、触手の先端が、つん、とそこに触れた。
「ひゃ!」
 全身の筋肉が収縮する。直後の弛緩の隙をぬって、じわりじわりと、触手が中に入りこむ。
「……は……あ……」
 快い。おそるおそる指で触れるのとは比べものにならない快さ。
 でも……このままでは……
 あそこが緊満する。はち切れそうになる。
 このままでは……いつものように……
 痛みは来なかった。限界に達する前に、触手の径がすいと細くなり、そのままずぶずぶと奥へ
伸張した。
「ひああぁぁッ!」
 内壁を舐められるような感触に、ルトの身体は強直する。下半身から脊髄、そして脳へと、
痺れるような感覚が走ってゆく。
 入口で径を細くしたまま、触手の先端は膨張し、ルトの膣を埋め尽くす。その形が、硬さが、
自由自在に変化し、膣の中を引っかき回す。すべての範囲の粘膜が、あらゆる方向から、あらゆる
強度で刺激される。もうルトは声も出せず、侵入者が自分の中で踊り狂うのを、無抵抗で許す
ほかなかった。
 触手の一端が、子宮頸部の丸い外縁をなぞり、その中心へと伸びてゆく。極限までに細められた
それが、子宮口をすり抜け、内膜に到達する。
「きゃ……ああんッ!!」
 想像もしなかった動きに、ルトの感覚は爆発した。その破片が身体中に飛び散り、染み渡って
いった。生まれて初めて味わう無上の快感に、ルトはただ、陶然と身を任せるのみだった。
 余韻を感じる暇はなかった。ルトの性器を串刺しにしたまま、異なる数本の触手が体表に迫って
いた。それは片側の乳頭をするりと撫で、
「はぅッ!」
 もう片側の乳頭をぐいと押し、
「ひぃッ!」
 次いで陰核を捻りあげた。
「きゃうッ!」
 それまで刺激を知らなかった部分を攻められ、ルトの中で続けざまに誘爆が起こった。
 結末で遂情の叫びをあげようとした口の中に、別の触手がねじこまれた。思わず歯を噛み
合わせたが、それは噛み切られるやいなや、たちまち元の形状を取り戻し、口腔を満杯にした。
のみならず、それは咽頭の奥深くまで侵入し、ルトの呼吸を妨げた。
 下の方では、もう一つの入口が狙われていた。臀裂をさまよう触手の感触に身震いして、尻の
筋肉に力をこめたが、
「ぐう……う……ぅぅ……」
 それはやすやすと肛門に侵入し、直腸を押し広げた。さしたる痛みもなく、直腸粘膜がこすり
立てられ、洗滌された。形状と硬度の変化は、膣に入りこんだそれと同じく奔放だった。
 薄い膜を介して隣接する二つの管状臓器は、暴れまわる二本の触手によって沸騰させられ、
上の口、そして両の乳首と陰核、さらには全身の皮膚までもが徹底的に蹂躙された。
 感覚の爆発が幾度となく繰り返され、もうそれ以上は不可能というくらいになっても、触手の
攻めは終わらなかった。快感を快感と認められない状態にまで堕ち果て、ルトの意識は遠くなって
いった。
2642-4 Ruto II (10/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/11(日) 14:57:29 ID:dOV8XJ7r
 頭に衝撃を感じ、ルトは目を開いた。
 自分がどうなっているのか、わからなかった。
 続けて頭に衝撃が加わった。
 それで、もう少し、はっきりした。のろのろと顔を上げる。そこに女の顔があった。
「起きたかい」
 見覚えがある。王の間にいた、あの女だ。すると……
 視線を横に移す。太い両脚が見えた。男の脚だ。
 脚から腰へ、そして胴へ、さらに顔へと、視線を動かす。
 残酷な笑い。
 ──ガノンドロフ……
 自分が草の上に横たわっているのに、ルトは気づいた。ハイリア湖の岸辺。すでに日は落ち、
あたりは暗くなっていた。
 触手の感触は、すでになかった。あの絶え間ない快感も、滓さえ残っていなかった。ただ
疲労感だけが、ルトの全身にわだかまっていた。
 ──この二人は……どうやってここへ……地下水路は通れないはずなのに……
 ぼんやりと、ルトは思った。憎むべき敵を目の前にしているにもかかわらず、心は麻痺し、
何の感情も湧いてこなかった。
「よっぽどモーファの触手がよかったんだねえ。息も絶え絶えじゃないか」
 ルトの前にしゃがみこんだ女が嘲るように言い、また手で頭をこづいた。次いで傍らの
ガノンドロフを見上げ、言葉を続けた。
「定めに惹かれて賢者が来るかもしれない、とは思っていたが……神殿を押さえておいて、
正解だったね。モーファもよくやってくれたよ」
 ガノンドロフが身をかがめる気配がした。
「やるのかい? もう達せない身体になってるかもよ」
 くすくす笑いをまじえた女の言葉に、答える声は聞こえなかった。
 両脚がつかまれ、ぐいと開かれた。ルトは抵抗できなかった。
 股間に何かが押し当てられた。それが意識を明瞭にした。
「あ……」
 男を受け入れる場所。そこがいま、まさに男を受け入れようとしている……
 受け入れようとしている? こいつを? リンクではなく?
「いやじゃ!」
 ルトは声をあげ、反射的に脚を閉じようとした。が、脚の間に割りこんだガノンドロフの巨体は、
その場を譲ろうとはしなかった。
「やめよ!」
 力を振り絞って、上半身を起こしにかかる。ガノンドロフの逞しい腕が、ルトを地べたに押しつける。
 それが侵入してきた。
「ぎゃ……」
 指など及びもつかない太さ。触手のように伸縮自在でもなく、ただ傍若無人に居場所を要求する
だけのそれは、ルトの未発達な陰門を、文字どおり引き裂いた。
「っ……たあああぁぁぁーーーーーーッッ!!!」
 ルトの口から絶叫がほとばしった。
「痛い! 痛い! やめて! いやじゃ! いやじゃあああぁぁぁーーーーーーッッ!!!」
 快さなど微塵もない。ただただ痛い。股間のみならず、全身が引きちぎれそうな激痛だった。
 叫びが痛みを和らげるものなら、と言わんばかりに、ルトは激しく泣き、わめき、吼えた。
ばたばたと手足を暴れさせた。だがすべては無駄だった。ガノンドロフは遠慮会釈なくルトを貫き、
がしがしと内部を削りたてた。
 全身を苛む疼痛は、やがて知覚の限界を超え、ルトは再び意識を失った。
2652-4 Ruto II (11/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/11(日) 14:58:42 ID:dOV8XJ7r
 ガノンドロフは委細かまわず、少女のきつい肉洞を味わっていた。悲痛きわまりない叫び声も、
残虐な快感を増幅させるだけだった。ルトの中には、先刻のモーファの侵略による潤いが残って
いたが、いまやそこには鮮血があふれ、新たな潤滑油となっていた。もっともそれは、粘度も
臭気も強く、嗜好がねじ曲がった一部の人種にしか受け入れられない潤滑油ではあったが。
 ほんのりと盛り上がる発育途中の胸を、ガノンドロフの硬い手が襲い、まだ豆粒のように小さい
乳首が捻りあげられた。恥丘の下半分を覆う未熟な叢がひき毟られた。
 しかしルトは、そんな激越な刺激にも反応を返さず、ぐにゃりと崩れた肢体を、ただガノンドロフの
暴虐に捧げるままとなっていた。
 覚醒する気配はなかった。
 それがまだしも幸せなのかもしれなかった。

 交合──とも言えない、あまりにも独善的な陵辱の末に、ガノンドロフは射精した。表情には
一片の情けすらなく、どす黒い嗜虐の笑みが貼りついているだけだった。
「お疲れさん」
 立ち上がったガノンドロフに、ツインローバが短く声をかけた。平静な顔だったが、両目に
たゆたう暗い炎が、ガノンドロフと同じ冷酷さを表出していた。
「ガノンドロフ様」
 夜の闇の中から、声をかける者があった。モーファとともにハイリア湖に派遣していた、数人の
ゲルド女たちの一人だった。
「ご苦労。このあたりの様子は?」
 いままでの暴行などなかったかのように、冷静な声で、ガノンドロフは問うた。
「橋のそばにある家は、無人でした。人の住む気配はありましたが、いまはどこかへ出かけている
ようで。釣り堀の方は、親父が抵抗したので、殺しました」
 女もまた、冷徹な声で報告した。
「殺しちまって、よかったのかい? 性奴隷くらいにはなったんじゃないの?」
 からかうようにツインローバが口をはさんだが、
「さすがに、あの親父では……あたしらにも選ぶ権利というものがあるかと……」
 女は言いつつ、苦笑した。
「まだ息がありますが」
 かがみこんでルトの様子をうかがっていた別の女が、ガノンドロフに告げた。
「そうだな……」
 もはや関心を失っていた相手だったが、生かしておくわけにはいかない。ガノンドロフは少し
考え、にたりと笑って女に言った。
「湖の底に沈めておけ。『水の賢者』が溺死というのも面白かろう」
 女は頷くと、作業に入った。
 ガノンドロフはツインローバに呼びかけた。
「ゾーラの里に戻るぞ」
「何か忘れ物?」
 ツインローバが驚いたように応じた。
「凍ったゾーラ族の奴らの身体を、すべて破壊しておく。万一、氷が溶けたら、生き返るかも
しれんからな」
 あくまでもガノンドロフの声は冷静だった。
「徹底的だねえ」
「お前が徹底的にやれと言ったのだぞ」
「それはゼルダのことで……まあいいわ。言い直しておくわよ。徹底的にね。なにごとも」
 ツインローバは肩をすくめた。
「飛んでいけば、大して時間はかからないけど……」
「だから賢者にも、あっさり追いつけたけど……」
「「年寄りには、長距離の飛行はこたえるんだよねえ」」
 いつの間にかそこには、一人の熟女の代わりに、二人の老婆が出現していた。
2662-4 Ruto II (12/12) ◆JmQ19ALdig :2007/03/11(日) 14:59:39 ID:dOV8XJ7r
 顔に刺激を感じ、ルトは細く目をあけた。
 口と鼻から、ぶくぶくと音をたてて気泡が漏れていた。本能的に、ルトは息をとめた。
 ──水の中?
 快感も疼痛もなく、すべての感覚が鈍麻した状態ではあったが、全身をつつむ水の肌触りは、
優しく、懐かしいものに感じられた。
 ──ならば……泳いで……
 身体は動かなかった。
 ──水の中なら……浮くはずなのに……
 水の中というより、水の底だった。気泡が浮き漂ってゆく水面は、月の光のせいか、意外に
明るく、ルトが横たわる湖底まで、その明るみが、かろうじて届いていた。
 それを頼りに、ゆっくりと顔を横に向ける。腕に縄が巻きつけられ、その先には、大きな石が
結びつけられていた。気がつくと、縄の感触は、他の四肢にも、胴にも、同じようにあった。
 ──これでは……浮くことはできぬな……
 なぜ自分がそのような状態にあるのか、わからなかった。わかろうという気にもならなかった。
 ──息が……続かぬ……
 水に生きるゾーラ族ゆえ、息はかなり長くとめていられる。が、もちろん限界はあった。
『ゾーラのうろこ』は、触手に襲われた際、失われてしまっていた。
 ──わらわの望みも……もはや……かなわぬか……
 王女としての最後の望み。ゾーラ族の血を残す。
 ──いや……まだ……
 どうやって? 男と契って。
 誰と? それは……
 ──リンク……そなたは……
 思い出す。寄生虫に襲われた時、リンクは助けに来てくれた。
 ──今度も……助けに来るであろうな……
 かすかな微笑み。
 ──なにせ、そなたは……わらわの……フィアンセじゃから……
 暖まる心。
 ──来るで……あろう……な……
 遠ざかる意識。
 ──待って……おる…………ぞ………………

 ハイリア湖の底から、月光に照らされた水面に向けて、小さな泡が湧き上がっていた。
 しばらくの間、それは、かぼそく、頼りなく、ぽつり、ぽつりと、続いていた。
 その間隔は、少しずつ、少しずつ、開いてゆき、やがて、見えなくなった。

 永久に。


To be continued.
267 ◆JmQ19ALdig :2007/03/11(日) 15:00:36 ID:dOV8XJ7r
以上です。ガノンドロフ相手にルトが達しないのは、せめてもの・・・という思いから。
次回、舞台はカカリコ村に戻ります。
268名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 15:19:20 ID:RpozeZVm
ルト姫(´;ω;`)

リンクと再開した暁にはガノンに汚されなかった尻穴を捧げてホスイ
モーファがアナル性感開発済みだから初めてでも安心
269名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 16:19:52 ID:CTBWcP1B
ああ…ルト姫……

せめて…せめてサリアだけはもっと優しくしてあげて下さい…
とにかくGJ!
270名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 17:30:52 ID:x53LdtiP
乙・・・
最後の文が悲しい・・・・
271名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 17:46:14 ID:9r5e45kF
乙……
さっきから涙が止まらないや……
272名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 19:04:05 ID:fDTnLzbv
・・・釣堀のおやじ・・・(´;ω;`)
273名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 19:28:51 ID:aB93ZK1F
釣堀のおやじ「せなか…かゆ…」バタリ
274名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 00:28:30 ID:9r5PNYuB
ルト姫.....
ともあれGJ
次回も楽しみにしてます
275名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 04:40:36 ID:mAmPmRGS
釣り堀の親父カワイソス………(´;ω;`)
大人リンクとは会えないのか……
276名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 08:17:41 ID:O8QVyfln
同一人物が何度も書き込んでいるのはなぜ?
277名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 08:54:23 ID:FtFIJlqw
◆JmQ19ALdig氏なら、SS投下するために何度も書き込んでいるんだよ
278名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 12:57:04 ID:EAT5WIng
ガノンがこんなに憎くなるSSは初めてだ
ミンナシンジャウヨ(´;ω;`)
279名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 08:00:14 ID:9+/8EnJ3
同一人物がID変えて何度も書き込んでいるのはなぜ?
280名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 10:49:04 ID:H4NV7qma
何でそう思うのかが良く分からんのだが…
まぁ日付け変わってからももう一度感想書き込んでいたとしても
そんな目くじら立てることじゃねーんでは
281名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 01:18:21 ID:tTbYhWcp
そういうことはスルーでいいだろ。常識的に考えて。
282名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 01:22:46 ID:YFeAhRG8
あのさ、流れ豚切りでわるいんだけど、
トワプリに後だし、
ほのぼの王道リンゼル書きたいな、ぼうしあたりで

需要ある?
あるなら書く
283名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 03:06:33 ID:ZQJgvnUK
ある
異論は認めない
284名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 11:25:39 ID:/zgJPKVS
「ぼうし」はたしか幼なじみだったな、最初にデートに誘いにくるんだよねぇ…ある意味シリーズ中一番いい関係かもね
285名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 14:21:42 ID:uvQLu5G8
確かに「ぽうし」の設定はありそうでなかったな
286名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 22:30:27 ID:ALi/5URD
>>282
俺も希望。wktk
287名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 22:48:53 ID:U86CRVRu
>>282
リンゼルはなんだかんだで王道だから、
需要がつきるってことは今後もハッキリ言ってないと思うよ

つまり、投下希望
288名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 18:07:53 ID:BzbLpwyo
289名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 20:07:10 ID:Axx6aEWX
>>282
リンクとアゲハって誰も書かないね。
ストーリーとあわせにくいってのもあると思うんですが見てみたいものです。
290名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 21:12:30 ID:IM02W56U
俺は少し捻って狼リンク×アゲハがいいな
291名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 10:29:36 ID:edSpP/93
ここは普通に巨大昆虫×アゲハかな
292名無しさん@ピンキー:2007/03/18(日) 00:44:30 ID:Rsvg0DBy
スタルチュラ×アゲハとか
293名無しさん@ピンキー:2007/03/18(日) 05:47:08 ID:efPi/t/N
アゲハのキャラが掴めねぇ
天然か、それとも演技なのか
294名無しさん@ピンキー:2007/03/18(日) 12:25:20 ID:xi0B4FLc
ああいうのほどキレたら怖そう.
295名無しさん@ピンキー:2007/03/18(日) 16:21:09 ID:Ah6NeJTZ
アゲハが夕方街に帰って行く時、リンクの側を通るとじっと見つめてくるじゃん。
当然リンクもアゲハを見るからそのまま並んで歩くとなんか妙に雰囲気があるっつーか。
GCなんでカメラ前方からにすると、もうまるっきりデェト。
296名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 18:02:29 ID:9gI20hmU
アゲハのオマムコにカブトムシの巨大な幼虫の様なやつが
ウネウネと入っていく姿を想像しておっきした。
普通にリンク×アゲハより虫系とか触手とか魔物に犯される方が向いてる。
いや狼も捨てがたいが・・・バックから・・・・あぁ・・・

誰か『羽を捥がれたアゲハ蝶』(同人誌)作ってくれなry
297名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 18:30:34 ID:/t5fvHeG
クリムゾンっぽいタイトルだな
298名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 21:33:54 ID:pEOgTkyP
くやしい…
299名無しさん@ピンキー:2007/03/21(水) 03:24:13 ID:qu0MLhOP
なんかポストマンから届けられたアゲハのお手紙に
「蝶々で空を飛んだ」とかそんな感じの内容の手紙があった気がするんだが、
俺それ見て「あぁそれで天空に行くことになるのか。」とか最初思ってた。
手紙に内容無さすぎw
300名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 13:56:13 ID:hPls7M+9
>>299
俺も。

なんだったんだろうなあの手紙
301名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 14:52:14 ID:1GFd4Vbp
あの手紙は、実は続編への布石だったんだよ!
302名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 00:09:11 ID:bO5wjug0
>>301
ちょwwwwwwwwそれ天s・・・・


そ  れ  は  無  い
303名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 13:35:32 ID:Cj8gSu/g
チンクル以外ならなんでもいいよ
304名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 15:02:27 ID:m8JWecBe
>>301
なんかアゲハってDSのゼルダにデフォルメされて出てきそうだな
305名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 21:01:09 ID:FQIcTBEJ
プリンセスアゲハの・わくわく虫さん☆キングダム
DS
シミュレーションRPG
1〜4人用
2007年下半期発売予定
306 ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:16:21 ID:qQi8XbPq
私本・時のオカリナ/第二部/第五章/インパ編その2+アンジュ編その2の合体編、投下します。
ガノンドロフ×インパ&アンジュ。陵辱→インパ死亡(一過性)、アンジュ生存。
他にも死者多数の鬱展開。最終レスにグロあり。
註:アンジュ(仮名)=コッコ姉さん
3072-5 Impa II + Ange II (1/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:18:25 ID:qQi8XbPq
 ゾーラ族とゲルド族が戦っている間に、デスマウンテンの噴火は小康状態となり、カカリコ村の
王党軍は必死で体勢を整え直そうと試みた。が、それを完全には果たさぬうちに、ゲルド族は村の
正面へと陣を戻し、息をもつかせぬ猛攻を再開した。連日の激戦で王党軍の死傷者は増え続け、
戦力は着実に低下していった。
 デスマウンテン大噴火によって、ゴロン族の消息は完全に失われていた。さらに、山道を通って
ゾーラの里へ赴こうとした使者は、里がすっかり氷漬けになっていると報告した。ゾーラ族もまた、
死に絶えてしまったと考えるしかなかった。
 カカリコ村の両翼としてゲルド族を牽制していた両部族の全滅は、単なる戦力の損失だけでは
なく、補給の途絶という深刻な打撃を村に与えた。武器の供給を受けていたゴロン族と、食料
その他の生活物資を頼っていたゾーラ族が滅びたいま、村の将来はなくなってしまったと言って
よかった。
 それでもまだカカリコ村は、孤独な戦いを続けていた。

 村の奥にある墓地では、毎日のように葬儀が営まれ、新たな墓標が増えていった。時局がら、
葬儀は簡素であったが、人の死が周囲の者に与える悲しみに変わりはなかった。いや、戦争という
理不尽な現象による死は、みなの悲しみを、常にも増して強く、やりきれないものにするのだった。
 今日もまた、墓地の片隅で、勇敢に散った戦士の魂を送る儀式が行われていた。
 アンジュは離れた所からそれに目をやり、深いため息をついた。
 コッコの世話をしていればよかった頃とは一変し、アンジュはいま、負傷者の看護に携わって
いた。そこでは医薬品の不足が問題だった。薬屋を営んでいる母親が、墓地には意外に多くの
薬草が生えていると教えてくれたので、時々ここを訪れて薬草を採るのが、アンジュの習慣と
なっていた。母親の調剤法は原始的だったが、傷薬としての効力は馬鹿にならないものだった。
 葬儀から本来の目的へと注意を戻したアンジュだったが、薬草を摘む手の動きは、どうしても
機械的になった。常に心から離れない思いが、いまもアンジュを捉えて離さなかった。
『これから、どうなるのかしら……』
 戦いが再開されて二ヶ月。開戦から数えると半年にもなる。
 不足しているのは薬だけではなかった。食糧の備蓄は底をつき始め、一日の食事は、三度が
二度になり、いまでは一度きりに制限されていた。水も足りない。ゾーラの里が氷結してしまった
ために、ゾーラ川からの分水が得られなくなり、村に一つきりしかない井戸で、全需要を
賄わなければならなくなったからだ。
 他にも足りないものは枚挙にいとまがない。武器、工具、衣料、家畜、そして……
『人も……幸福も……』
 平和だったカカリコ村が、いまは戦乱のまっただ中に巻きこまれている。あの穏やかな雰囲気も、
のどかな風景も、遠い昔のように感じられる。村の象徴である大風車は、相次ぐ火山弾の直撃に
より、緩やかで落ち着いた回転を止めてしまって久しい。噴火が小康状態となってから、火山弾の
飛来はやんだものの……
 アンジュは、薬草の葉に積もった火山灰を、そっと手で拭った。デスマウンテンに目を移す。
山頂は相変わらず不穏な炎の帯に取り巻かれ、その山容は、大気から去ることのない無数の灰の
粒子によって、頼りなくぼやけた像としてしか目に届かない。陽は薄暗く、空は一面、文字どおり
灰色に染められていた。
 ゲルド族への憎しみを放棄する気は毛頭ない。だが、村はもう限界に近づいている。この先
どこまで戦えるのか。これ以上戦ってどうにかなるのか。自分たちの未来に希望が持てるのだろうか。
 戦意を減退させぬよう、明らかな嘆きの声を口にする者はいない。けれども、日々、暗鬱な
気分が増していくのを、みなが感じている。
3082-5 Impa II + Ange II (2/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:19:10 ID:qQi8XbPq
 再びため息をついたアンジュは、葬儀に参列していた人々が、村へ戻ってゆくのに気づいた。
その人の流れから離れて、一人の男がアンジュの方に向かって歩いてきた。墓守のダンペイだった。
 アンジュはダンペイに会釈したが、話をしようとは思わなかった。墓守という職業に加えて、
醜い風貌や陰気な性格のため、ダンペイは村人に敬遠されていた。同様にアンジュも、子供の
頃から知っているにもかかわらず、これまでダンペイとはほとんど言葉を交わしたことがなかった。
 ダンペイはアンジュの思いを忖度する気もないような素振りで立ち止まり、ぼそりと言った。
「もう、墓穴を掘る場所も、なくなっちまう」
 返事に困るアンジュを無視して、ダンペイは続けた。
「神殿なら、まだ、場所が空いてるだろうな」
「神殿?」
 アンジュは思わず問い返した。
「神殿なんて、どこにあるの?」
 ダンペイはアンジュの顔を見つめ、不気味な笑いを浮かべて言った。
「おらしか知らねえ所さ」
 答にもならない答を投げたまま、ダンペイはゆっくりと歩み去っていった。
 カカリコ村に神殿があるなんて、聞いたこともない。ただの妄言だ。ダンペイは頭がおかしいと
いう人がいるが、実際そのとおりなのだろう。
 でも……もし神殿があるというのなら──何の神かは知らないが──真剣に祈りを捧げてやれば、
この苦しみから、わたしたちを救い出してくれるだろうか……
 苦い笑いが漏れる。
 いもしない神に頼って、どうなるというのか。頼るべきなのは……
『インパ様』
 それが最後の望みだった。インパには策がある。その策が実行可能になるまで、いくら苦しく
とも、村は戦うことをやめはしないのだ。
『それに、わたしには……』
 まだ心のよりどころがある。
 家族。
 やくざ者の兄は、村を見限って出て行ってしまったのか、もう長いこと会っていない。でも父と
母は健在だ。二人とも、できる限りのことをして、苦境にある村を支えている。
『それから……』
 アンジュは想う。自分が愛し、自分を愛する、ただ一人のひと。
 激しい戦闘が続く緊迫した日々、二人は会う機会をなかなか持てなかった。が、何とか時間を
見つけて、慌ただしい中にも愛を交わし、結婚の約束が実現する幸せな未来を語り合ってきた。
 儚い願いなのかもしれない。それでも、わたしは……
 ──彼がいる限り、望みを捨てない。
 ──彼のそばにいたい。彼と一緒に生きていきたい。
 ──彼に触れていたい……彼に……抱かれたい……
 ──彼が……欲しい……
 思わず両脚を、ぎゅっとすり合わせる。
『今夜は……会おう……』
 いたたまれないほどの情欲が身にあふれるのを感じながら、アンジュは急ぎ足で村へ戻っていった。
3092-5 Impa II + Ange II (3/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:19:58 ID:qQi8XbPq
 補給が絶えた上は、戦いを続けても敗北は目に見えている。それが王党軍幹部たちの一致した
見解だった。ただ、ならばどうするか、という議論になると、結論はなかなか出なかった。しかし
インパは、これしかない、という一つの考えを持っていた。
 ガノンドロフ殺害。
 容易なことではない。だがそれが、敗色濃厚な戦況をひっくり返す唯一の方法だ。ゲルド族が
いかに勇猛とはいえ、カリスマ的な指導者であるガノンドロフがいなくなれば、戦意は一気に
落ちるはずだ。情勢は一変するだろう。
 以前のごとく、いま、ガノンドロフは敵陣にいない。殺害するには、ガノンドロフを戦場に
引っ張り出さなければならない。そのためには、石にかじりついてでも戦闘を続けることだ。
そうすればガノンドロフ本人が現れる。戦いが膠着状態に陥った時に、ゴロン族とゾーラ族が
突然の惨禍に襲われたのは、偶然ではあり得ない。ガノンドロフの魔力によるものであることは
明らかだ。
 ガノンドロフが現れたところで、それこそ両部族のように、強大な魔力で一瞬のうちに
全滅させられるのではないか、という意見も、当然ながらあった。しかしインパには確信があった。
 ガノンドロフは自分を──少なくともすぐには──殺すことはない、という確信が。

 賢者を二人抹殺したからといって安心はできない、一人でも生かしておくと封印の危険が残る、
というのがツインローバの口癖だった。ハイラル城の玉座を占めるガノンドロフの前で、
ツインローバはせかせかと話していた。
「あとの四人のうち、『森の賢者』と『魂の賢者』は目当てがある。神殿の場所がわかっている
からね。でも……」
 いちばんの問題は、『光の賢者』であるラウル。なにしろ精神だけで生きている相手だ。
抹殺しようにも方法がない。だがそのままではラウル本人も困る。賢者としての力を発揮するには
リンクとの接触が必要になるが、精神だけではそれは不可能だ。だからラウルの精神は現実の
世界の何者かに宿り、実体となって接触を待つに違いない。ラウルを抹殺するためには、その
何者かを見つけ出さなければならない。そして……
「もうひとり。『闇の賢者』も厄介だ」
「お前の代ではどうだったのだ?」
 知っているはずだろう、との意を含ませて問うガノンドロフに、ツインローバは苦々しげな
表情で答えた。
「『闇の賢者』については昔から謎なのよ。いることは確かなんだけど、あたしの代でも、それが
どこの誰なのかわからなかった。だいたい、神殿の場所さえ知られていないんだから……」
 ぶつくさ言いながら考えにひたるツインローバを見て、ガノンドロフはひそかに苦笑した。
 こいつはラウル憎さのあまり、賢者抹殺に入れこみすぎているようだ。賢者など、あとまわし
でもいい。問題はゼルダだ。
 ゼルダの失踪から、すでに九ヶ月が経っていた。探索に力を尽くしたにもかかわらず、ゼルダの
足取りは全くつかめていなかった。当初は簡単に見つかると楽観していたが、ここに至って
ガノンドロフは、別の手がかりを求めて、方針を転換せざるを得なくなっていた。別の手がかりとは……
『インパだ』
 カカリコ村の王党軍を率いているのがインパであることは、とうにわかっている。ゼルダは
インパに連れられてハイラル城から逃げたが、いまゼルダがインパとともにいるとは思えない。
隠密組の得た情報でも、カカリコ村にゼルダの存在を示唆する兆候はない。しかしインパが
ゼルダの消息に関して、何かを──現在の居場所とはいかないまでも、その手がかりになるような
何かを──知っていることは間違いない。
「行かねばならないようだな」
 呟きながら、ガノンドロフは立ち上がった。
3102-5 Impa II + Ange II (4/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:20:39 ID:qQi8XbPq
 少なからぬ数の死者を出しながら、その日もカカリコ村は命脈を保った。
 日没とともにゲルド族は攻撃をやめ、宿営地へと引き上げた。村の前面に築かれた王党軍の
防御陣地は、束の間の静寂に満たされた。人々は地べたにすわり、あるいは伏し、安堵と虚脱と
不安がないまぜとなった表情で、言葉もなく互いを見交わしていた。
 陣頭で指揮をとっていたインパだけは、両脚でしっかりと大地を踏みしめ、油断なくハイラル
平原の敵陣へと目を向けていた。しかし身体は疲労しきっていた。
 限界だ。このままでは、村はもう数日とはもつまい。最後の方策も果たせず終わるしかないのか──
 心で慨嘆するインパに、声をかける者があった。
「朗報です」
 ふり返ったインパは、守備隊長の姿を認めた。傍らには、ハイラル平原の決戦を経験した、あの
騎士が立っていた。隊長は騎士にちらと目をやり、
「彼がガノンドロフを見たそうです」
 と続けた。インパは騎士に目を向けた。インパの言葉を待たず、騎士は興奮を抑えきれない
様子で口を開いた。
「間違いありません。戦いには出てきませんでしたが、騎乗したガノンドロフが後方にいました。
確かです。奴の姿は見忘れません」
 強調を繰り返す騎士の言葉を、インパは信じた。
「よし」
 何気ないような応答。だがそこには、インパの、そしてカカリコ村のすべての希望が反映されて
いた。
 戦法の細部は、すでに何度となく検討され、練り上げられていた。
「明日は私が行きます」
 守備隊長が言った。役割の重大さを感じさせないような、静かな声だった。
「頼む」
 インパが寄せた言葉はそれだけだった。が、生還を期しがたい任務に淡々と挑み、いまも
穏やかな笑みを浮かべている隊長に、インパは心の中で深い礼を捧げていた。
3112-5 Impa II + Ange II (5/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:21:15 ID:qQi8XbPq
 翌日の早暁。
 守備隊長に率いられた騎馬隊は防御陣地を飛び出し、ゲルド族の宿営地に攻撃をしかけた。
開戦以来、王党軍が積極的な攻撃に出たのは、これが初めてのことであり、ゲルド族は不意を
突かれて混乱した。
「深追いするな!」
 矛で手近な敵を次々と倒しながらも、隊長は味方に警告するのを忘れなかった。敵を打ち破る
のが目的ではない。
 容貌魁偉な大男が、荒ぶる漆黒の馬に跨って、敵陣から飛び出してきた。インパや騎士から
聞いていた特徴で、それがガノンドロフであると、隊長にはすぐわかった。
「退け!」
 全力疾走の退却が始まる。
 組みやすしと思わせなければ。下手に抵抗して魔力を奮われたら元も子もない。とはいえ……
『逃げるばかりでは、逆に怪しまれる』
 隊長はひとり、馬の向きを戻した。他のゲルド族を後方に置いたまま、ガノンドロフはただ
一騎で突進してくる。
『やはりな』
 こちらも馬の速度を上げる。長大な剣を抜き掲げたガノンドロフ。その姿がぐんぐん大きくなる。
殺戮を求めて沸きたつ顔。怯みかける心を励まし、矛をしっかと構える。
「かぁッ!」
「りゃッ!」
 気合いとともに、矛と剣とが火花を散らす。
 巧みに馬を駆りつつ、続けて数合、すれ違いざまの競りを繰り返す。
『さすがに……』
 腕に覚えはあるつもりだったが、ガノンドロフの剣圧は予想以上だ。次はやられるかもしれない。
それに……
 十数騎のゲルド兵が、ガノンドロフを追って接近しつつあるのを、隊長は認めた。村の方へと
すばやく方向を変え、一直線に馬を飛ばす。追尾してくる背後の気配。
 防御陣地が近づく。すでに隊の仲間はそこにたどり着き、迎撃体勢を取っていた。
 開け放たれた陣地の門を走り抜ける。行き過ぎてから馬を止め、ふり返る。追ってくる
ガノンドロフとゲルド騎兵。その後方に従う軍勢は、まだ遠く離れている。予想どおりだ。
「射よ!」
 敵に向け、一斉に矢を射かける。二、三騎が倒れるが、敵もまた、疾駆する馬上から巧みに矢を
放つ。流鏑馬の腕は侮れず、味方はばたばたと倒されてゆく。
 押しとどめる間もなく、ガノンドロフを先頭に、敵の一団は陣地内へ突入した。
 隊長は村の入口へと馬を走らせ、石段を駆け上がった。
 このまま奴らを引きこむことができたら……
 ざく──と右肩に衝撃。わずかな時間差で感じる痛み。
 矢をくらった。だがもう少し。もう少しで……
 どっ──と背を刺される感覚。一本。二本。さらに立て続けに三本。
 馬から身体が落ち、石段に激突する。疼痛を感じるよりも早く、村の門が眼前に見えた。
『あとは……頼みます……』
 隊長の思いは迫り来る敵の叫びにかき消された。ガノンドロフは仮借なく隊長を蹄にかけ、
粉砕し、カカリコ村へと駆けこんだ。
3122-5 Impa II + Ange II (6/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:22:03 ID:qQi8XbPq
 ガノンドロフの一隊が村へ入るやいなや、隠れてそれをやり過ごしていた王党軍が、急いで
防御陣地に復帰した。
 指揮をとる騎士は、大きな満足を感じていた。ハイラル平原の決戦で自分が経験したガノンドロフの
戦いぶり。それをもとに立てられた今回の作戦が、いま、みごとに図に当たりつつある。
 ガノンドロフは攻撃的だ。常に全軍の先頭に立ち、部下を大きく引き離しても躊躇せず、単独で
突っこんでくる。肉体的な戦闘力に自信があるのだろう。いきなり魔力を使うこともない。最大の
効果が得られる機会を待ち、大兵力を相手にした時など、ここぞという場面で使ってくる。
 戦い方はここでも変わらないはず。だからそれを利用する。
 挑発してガノンドロフを釣り出し、おびき寄せる。魔力を使わせないよう、敢えて弱みをさらけ
出して。ひとりで釣られてくれれば好都合だが、敵の人数が少々増えることも想定ずみだ。
ガノンドロフが本気で突進すれば、従う手勢があっても多くはあるまい。
 機動力にまさると言えば聞こえはいいが、ゲルド族の戦法は基本的には単純で攻撃一辺倒。
その勇猛さは会戦や奇襲では威力を発揮しても、防御を固めて守る相手にはなかなか通用しない。
カカリコ村やゾーラ族に手こずったことがそれを証明している。こちらが隙を見せて逃走すれば、
必ず猪突猛進して追ってくるだろう。そうやって村に誘いこむ。
 問題は……
 騎士は平原に目をやった。残りのゲルド族が総力を挙げて襲来しつつあった。
 あいつらを村に入れてガノンドロフと合流させてはならない。絶対にここで食い止めなければ
ならない。そのために、いまは残る王党軍のほとんどが、この防御陣地に集結している。一時でも
いいのだ。村で待ち伏せる一隊が、ガノンドロフを始末する時間さえ稼げれば……
『インパ殿……』
 ガノンドロフを待つその人に届けとばかり念をこめつつ、騎士は殺到する敵軍を見据えた。
もう吶喊がそこまで迫っていた。

 ゲルド騎兵の一隊とともに、カカリコ村中央の広場へと走りこんだガノンドロフは、奇異な
感覚を抱いた。
 馬を止め、周囲を見渡す。人の気配がない。いや……
 殺気!
 思う間もなく、四方八方から矢が飛んできた。ガノンドロフは危うく避けたが、部下のうちの
三人が倒された。残る全員が馬から飛び降り、手近な家の外壁に貼りついた。騎兵たちは射られた
方向から目標の位置を判断し、それを視認するやいなや、すばやく矢を放った。家の屋根の上や
物陰にいた射手が数人、悲鳴をあげて倒れた。
『謀られたか』
 脆すぎるとは思っていたが、結果的にまんまと村の中に誘いこまれた。もう村の入口は封鎖
されているだろう。
 危地に陥ったことを自覚しながら、しかしガノンドロフは平静だった。
 いまに味方の軍勢が来る。それまで耐えればよいだけのこと。
 見える範囲に狙撃手がいないことを確かめた上で、騎兵たちをその場に残し、ガノンドロフは
ゆっくりと広場の中央に足を向けた。
 一歩……二歩……三歩……
 ひょう──と空気を破る音。注意していたガノンドロフは難なくその矢をかわす。騎兵が一人、
壁際から走り出て、音の方向へと矢を射かえす。木の上にいた射手が、どっと地面に落下する。
同時に別の方角から矢が飛来し、騎兵の首に突き刺さる。
『油断ならんな』
 残る騎兵は七人きりだ。狙撃手があと何人いるのかはわからないが、下手をすると全員が矢の
的になってしまう。身を隠していれば一応は安全だが、時間が経てば不利であることを相手も
承知のはずだ。別の攻撃を用意しているだろう。
 視界の隅に人影が映った。狙撃を警戒しつつ、ガノンドロフは人影を注視した。
『さっそく来たか』
 剣を抜いたインパが立ちはだかっていた。
3132-5 Impa II + Ange II (7/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:22:56 ID:qQi8XbPq
「お前には、別荘での借りがあったな」
 唇の端に薄笑いを浮かべたガノンドロフが、低い声で言った。インパは答えず、ガノンドロフの
右手に注意しながら、じり、じり、と間合いを詰めた。
 ガノンドロフは右手から魔力による波動を放つ。直前に溜めが入る。騎士はそう言っていた。
気配を見逃さないようにしなければ……
 ガノンドロフの右手が、ぴくりと動いた。間髪を入れず、インパは剣を上段に振りかぶり、
飛びかかった。
「やッ!」
「むぅッ!」
 すばやくガノンドロフも剣を抜き、攻撃を受け止める。
 ぎりぎりと続く鍔迫り合い。
「ガノンドロフ様!」
 駆け寄ろうとするゲルド女たちを、四囲から飛ぶ矢が足止めし、ひそんでいた味方の一団が
包囲する。
『いいぞ、そいつらは任せた』
 一瞬、注意をそらせた隙に、ガノンドロフの腕に力がこもり、インパを突き飛ばした。転ばぬ
よう体勢を整えようとするところへ、頭上から剣が殺到した。
「でぇッ!」
「くぅッ!」
 今度はインパが受け止める。
 再び鍔迫り合い。必死で圧力に耐えるインパの腕に、かすかな振動が伝わってきた。
『来る!』
 上からの力をいなし、インパは横へ飛びすさった。力余って前のめりになるガノンドロフの剣が、
瞬間、白い閃光を発した。
『剣を通じて魔力を伝播させるのか』
 全身から汗が噴き出す。これでは下手に剣を合わせられない。
 間合いを取って剣を構え直す。直後、右手の気配が見えた。
 即座に突く。後ろへ飛び下がるガノンドロフ。その足元に矢が刺さる。さらに下がろうとする
ところへ飛びこみ、
「やぁッ!」
 と剣を横に払う。剣先はガノンドロフの腹をかするが、身には惜しくも届かない。服に裂け目を
入れただけだ。
『だが、こちらが有利だ』
 ガノンドロフは狙撃にも注意を割かなければならない。その分こちらは、一手、先んじることが
できる。
 インパは突撃した。
 突き。突き。縦斬り。突き。横斬り。
 速攻。また速攻。
 インパが息を入れるたび、ガノンドロフの右手に気合いが入りかけるが、それを許さず、
繰り返し攻撃を叩きこむ。そのつどガノンドロフは巧みに避けるも、反撃する余裕はなく、足は
じりじりと下がってゆく。
 防戦一方のガノンドロフ。もう顔に笑みはなく、額には汗がにじんでいる。
『いける!』
 インパの心は高ぶった。
 ──ダルニア……あれきり戻らないのは無念だが、その仇をここで討ってやる!
 ──リンク、そしてシーク……悪いが、お前たちが未来で活躍する余地はもうないぞ!
 ──ゼルダ様……あと少しで、また、あなたと……
3142-5 Impa II + Ange II (8/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:23:36 ID:qQi8XbPq
 必死でインパの攻撃をかわしながら、ガノンドロフは歯噛みした。
 腕力が尋常ではない。ただ、女にしては、というレベルだ。正面からぶつかれば、圧倒するのは
容易だ。
 問題はスピード。こう立て続けに速攻を繰り出されては、波動を放つ暇もない。魔力を溜める
時間を見切られているのだ。
 その速攻がきた。右に避ける。そこへ突き。動きを読まれている。後ろへ飛ぶ。
 宙に浮けば攻撃を避けられ、魔力を溜める時間もできる。だがそれでは、狙撃手の格好の目標に
なってしまう。
『味方は?』
 地響きと人々の叫びと剣戟の音とが入り混じった、熾烈な戦闘の音響が、平原の方から伝わって
くる。まだ防御陣地を抜けないようだ。広場の騎兵たちは激しい抵抗を続けているが、徐々に
包囲陣に追いつめられている。
「くおおぉぉッ!!」
 耐えきれず、ガノンドロフは溜めなしで右手をかかげた。ぎりぎりでインパは横に飛び、
『ちぃッ!』
 放たれた白い波動はむなしく空を切る。
 すかさず上段から斬りかかってくる。受ける。ぐっと押される。圧が増している。
『調子に乗りおって……』
 突きがくる。横に逃げる。体勢が崩れる。矢が足元を襲う。地を転がって距離を取る。
 狙撃への警戒で、動きが制限されてしまう。
 それに、ゼルダの情報を得るためには、インパを殺せない。生きたままで捕らえねばならない。
攻撃を手控えざるを得ない。が、この状況では……
『しかたがない』
 ガノンドロフの右の人差し指が、くいと曲げられた。
3152-5 Impa II + Ange II (9/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:24:19 ID:qQi8XbPq
 インパはそれを見た。
 波動を放つ動きではなさそうだが……
 わっ──と、防御陣地からどよめきがあがる。
『もうあちらも限界か……』
 確かめている時間はない。時間を奴に与えてはならない。
 稲妻のごとき速度で突進し、
「とああッ!」
 全力を奮って斬る。突く。薙ぐ。これまで以上に迅速に。
 剣を楯に防ぐガノンドロフだが、足がついていっていない。よろけかかっている。
『決める!』
 インパは煙幕玉を放った。
「う!」
 噴出する黒煙から目をそらしつつ、ガノンドロフは豪剣を振り回す。それをたやすくかわし、
インパはガノンドロフの背後をとった。
『終わりだ!』
 眼前にそそり立つ背に向かい、インパは袈裟懸けに剣を振りおろそうとした。が──
「!?」
 いきなり後ろから右肩をつかまれた。大きな手。
『いつの間に──』
 直後に左肩も。
『──後ろに敵が?』
 つかむ力に抗して、肩越しに右手の剣を背後へ突き下ろす。剣は両肩をつかむ敵の体軸を貫いた
──はずだった。だが剣は手応えなく空気を刺しただけだった。
『手だけが?』
 インパは初めて恐怖を感じた。
 ガノンドロフがこちらを向いていた。背後に回した剣を前に振ろうとしたが、届かぬうちに
右腕をつかまれた。後ろから両肩を固定され、逃げられない。即座に左脚で蹴りを放つ。しかし
それも脇で受け止められる。
「手こずらせてくれたな」
 息を荒げながらも、ガノンドロフの顔に再び陰惨な笑いが満ち、
「げッ!」
 拳が鳩尾に叩きこまれた。続いて顔面に。
 痛みとともに、激しい痺れが全身に広がる。ただの打撃ではない。
『魔力を……くらったか……』
 肩の圧力が離れる。
 視界の隅に、インパは見た。両手が腕から分離した、巨大な怪物。頭部が赤く花弁のように
はじけている。
「いいぞ、ボンゴボンゴ」
 意識が遠のく寸前、ガノンドロフの声が耳に届いた。
3162-5 Impa II + Ange II (10/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:25:23 ID:qQi8XbPq
「あッ!」
「インパ様!」
 インパをぶちのめした場所が、騎兵たちを取り囲む連中の近くだった。一人の男が包囲から
離れて寄ってきた。
「てめえッ!」
 斬りかかってきた。頭の禿げた、大柄な年寄りだ。意気は盛んだが、剣の扱いの拙さで素人と
わかる。
 ガノンドロフは構えもとらず、ぞんざいに剣を振った。切り裂かれた胴から鮮血を噴出させ、
男はどっと地に倒れた。見ていた他の連中の動きは凍りついた。ガノンドロフが一歩踏み出すと、
みな一斉に後ずさった。
 その時、防御陣地の方で歓声があがった。どど……と馬蹄の音が続き、ゲルド族の騎兵団が村に
突入してきた。
「ご無事ですか!?」
 先頭の女が馬を降り、ガノンドロフに呼びかけた。それには答えず、ガノンドロフは問い返した。
「陣地は?」
「撃破しました。いま残敵を掃討中です」
 女は興奮した面持ちで答えた。
「ほどほどにしておけ。村の中の奴らも殺すな。武装解除しろ。略奪もなしだ。狙撃手が残って
いるから気をつけろ」
 ガノンドロフは冷静な声で命じた。女は命令の内容が意外そうだったが、それでも、
「はッ!」
 と頷き、他の面々に命令を伝達した。

 ゲルド騎兵たちを包囲していた一隊は、武器を捨てて投降した。狙撃手も同様だった。
防御陣地が破られ、村に侵入され、インパも倒されたとあっては、もう打つ手はなかった。
抵抗する者もいたが、それらはあっさりと斬り捨てられた。
 カカリコ村は陥落した。
 
 村の生き残り全員が広場に集められた。人数は百にも満たず、疲弊した村の現状を物語っていた。
 戦闘員としては、先に村にいた騎兵包囲陣と狙撃手がいた。防御陣地で戦っていた王党軍も
合流させられたが、その大部分はすでに殺され、生存者はわずかだった。それらはみな捕縛され、
広場の一角に並ばされた。
 墓地に避難していた非戦闘員──女子供や老人らは、ゲルド女たちに追い立てられ、広場の別の
側に固まっていた。戦闘での死者にすがって泣く者もあったが、ガノンドロフは敢えてそれを
放置した。悲嘆の雰囲気を演出するためだった。
『そして、こいつだ』
 気絶したインパの身体を引きずって、ガノンドロフは広場の真ん中へと歩み出た。不安げに
見守る村人たちを睨め回す。
「お前らに、面白いものを見せてやろう」
 ガノンドロフの腕が、インパの衣服を引き裂いた。
「あッ!」
「きゃッ!」
 驚きと憤りのこもった悲鳴が、あちこちであがる。ガノンドロフは心地よくそれを聞きながら、
『味わうがいい。絶望を』
 顔に邪悪な笑みを浮かび上がらせた。
3172-5 Impa II + Ange II (11/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:26:20 ID:qQi8XbPq
 頬に土の感触がした。
 やがて、頬だけでなく、身体の前面すべてがそうであることに気づく。
 うつ伏せになっているのだな、とインパは感じた。意識が戻るにつれ、皮膚の感覚も戻ってきて
いるのがわかった。
 だが、運動神経は鈍麻したままだった。身体を動かそうとしても、わずかに震えが生じるだけだ。
そして両腕は背後に回され……
『縛られている……か……』
 予想どおり、自分は殺されなかった。しかし……
 インパは覚悟した。ガノンドロフはゼルダを探している。その行方を白状させようとして、
激しい拷問が始まるだろう。
 周囲で気配がした。いま自分はどこにいるのだろう、とインパは思った。
 閉じていた目を、ゆっくりとあける。村人たちが見える。痛ましげな表情。すすり泣きの声。
散在する死体。武装したゲルド女たちが立っている。
『村が……陥ちたのか……』
 周囲の風景が見えてくる。村の広場だ。すると、あれから時間はあまり経ってはいないのか……
 痺れに抗し、ようやくのことで首をまわす。縛られた自軍の一団が目に入る。彼らも悲痛な目で
こちらを見ている。
 守備隊長も騎士もいない。死んだのか。待ち伏せていた仲間たちは……みな捕まったか……
あるいは死体となって……いや、確か……もう一人……
 突然、下半身が持ち上げられた。腰の両側をつかまれている。誰かの手が素肌に触れている。
土に接していた身体の前面もまた素肌であることに、いまさらながら思い当たった。
 インパは驚愕した。
 何も身につけていない!
 村人たちの表情の意味が、やっとわかった。自分は彼らの前で全裸をさらしているのだ。これは
……このわけは……
「お前らが敬う、このいかつい女とて……」
 嘲るような声が聞こえた。
「ただの雌に過ぎないことを、はっきりと教えてやる」
 ──ガノンドロフ! 私はこいつに……
 後ろから股間に硬直した物体が押しつけられる。
 ──犯されるのか……みなの見ている前で……
 拒む力もない肉門を、それは一気に貫き通し、
「うッ……あ……ああッ!」
 潤いもない襞をこすられる、ひりついた痛みが、
 ──こんな格好で……獣のように……
 屈辱が、羞恥が、インパの身を震わせた。
 敗者の女が勝者の男に犯される。それは戦争の常識だ。だが、自分がその女の立場に堕ちよう
とは……
 いや、拷問を覚悟した時点で、無意識にではあっても、それは予想していた。しかし……
このような場面で……このような状況で……辱められることになろうとは……
 インパは歯を食いしばった。
 耐えろ。耐えるのだ。恥も苦しみも一時のものだ。むしろそれに負けない自分をみなに見せて。
意気を保って。まだ望みはある。姿の見えない彼が……
3182-5 Impa II + Ange II (12/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:27:37 ID:qQi8XbPq
 必死に思いをめぐらすインパの脳が、ふと別のことを感知した。
 痛みがない。いつの間にか。
 膣を埋めつくし限界まで拡張させながら、それはインパの中で違和感もなく居座っていた。
 ガノンドロフが動かないせいだ、粘膜がこすれないせいだ、と、インパは自らを納得させようと
した。が、次の瞬間、
「おぉ……ッ!」
 それはゆっくりと引かれ、そして押しこまれ、またも引かれ、押しこまれ、引かれ、押しこまれ……
 やはり痛みはなかった。巨大さによる抵抗はあっても、それはスムーズに、なめらかに、
インパの膣内を前後した。
 濡れている? 私が?
 インパの動揺を読み取ったかのように、ガノンドロフの指が前にまわり、結合部の周囲を
なでさすると、そこはかすかに粘液質の音をたてた。指が包皮を剥きあげ、
「くぅッ!」
 陰核を揉みつぶす。明らかなぬめりが一帯を浸している。もはや否定できない。
 ガノンドロフの抽送が速度を増す。インパの膣はそれを受け入れる。意志を無視して。敵意を
無視して。ただ感覚が、感覚だけが、拡大し、膨張し、インパを支配し始める。
「あッ!……あッ!……あッ!……あッ!……」
 突きこまれるそれに同期して、インパの口から声が漏れる。声。喘ぎ。そこに宿る感覚は、
まぎれもなく淫らな欲情を映し出して……
 見えてしまう。声もなく見守る村人たち。悲嘆の表情は変わらない。いや、そこには……
それまでにはなかった、別の感情が湧き起こっているように思えて……
 仇敵に犯されながら感じている自分が、彼らの目にはどう映っているか……
 だめだ! 屈してはだめだ!
 おのれを鞭打つ心の叫びもむなしく、すべての感覚が下半身に集中する。膣を蹂躙する動きは
大きく、激しく、そこに生まれる快美な味を、自分は追い、何も考えられず、ただ追いかけ……
「見ろ、お前ら。よくわかっただろう」
 ガノンドロフの声。
「こいつが色に狂った、ただの雌だということがな。敵を相手に、自分で腰を使っているぞ」
 インパは愕然となった。身を固くしたが、遅かった。ガノンドロフの動きは止まっていた。
股間に剛直を打ちつけられているはずが、いつの間にか、自分の腰がそれを求めて後ろに
突き出されていたのだった。顔が、かあっと熱を持った。もう村人たちの顔を見られなかった。
 再びガノンドロフが攻め始める。インパはただ、迎え入れるしかなかった。口は隠しようもない
淫欲の叫びを発し、それを止めようという意志も働かなかった。垂れ下がる豊満な乳房を後ろから
つかまれ、勃起した乳頭をなぶられても、新たな快感の衝撃が身を刻むだけだった。
 もうすぐ……いってしまう……
 いっそ早く終わった方がいい。敵に絶頂させられる恥辱を甘受しても……
 ここまで打ちのめされながらも、インパの心の奥には、まだ一片の冷静さが残っていた。
 彼。姿の見えない彼。狙撃手としてまだ村にひそんでいるはずの彼。まだどこかでガノンドロフを
狙っているはずの彼。
 ガノンドロフが自分と接触しているいまは、攻撃をためらっているだろう。だが、ことが
終われば……隙を見てこいつから離れ、孤立させれば……
「ぅあ!……ああ……あ……」
 来る……もう少しで……早く……早く……
3192-5 Impa II + Ange II (13/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:28:28 ID:qQi8XbPq
 それを察したようなタイミングで、ガノンドロフはぴたりと抽送を止めた。たまらずインパは
自ら腰を振ろうとしたが、ガノンドロフの逞しい腕に抑えられ、目的は果たせなかった。
 なぜ?
 焦燥に乱れるインパをよそに、ガノンドロフが言い出した。
「この淫乱な女が、ふだん誰を相手にしていたか、お前らは知っているか?」
『こいつは何を……』
 心臓に冷水を浴びせられたような気がした。
 まさか……まさか……
「息子だ。こいつは実の息子と交わっていたのだ」
 場は沈黙したままだった。が、その沈黙の陰にさまざまな感情が渦巻いているのが、インパには
感じ取れた。しかしその時のインパにとっては、場の感情よりも、自らの感情の方が重要だった。
 動揺を抑えきれない。どうしてガノンドロフがそんなことを知っているのか。もちろん、その
言葉の内容は……
「でたらめだ!」
 村人の間から叫びがあがった。
「インパ様がそんなことをするものか!」
 勇気ある一人の発言に続いて、数人が同意の声をあげた。ガノンドロフは動じる様子もなく、
平然とした声で言った。
「証人がいる」
 ──証人?
 ガノンドロフが合図をしたのか、一人のゲルド女がその場を離れ、やがて若い男を連れて戻って
きた。村人たちのどよめきの中で、
「お前!」
「兄さん!」
 ひときわ大きな声が響いた。大工の親方の女房とその娘──アンジュだ。二人はそれまで死体の
一つにすがって泣いていたが──(親方も殺されたのか)──いまは二人とも驚きに身が固まっている。
 ということは……
 インパは男の顔を見た。親方の息子だった。
「話してやれ」
 ガノンドロフの言葉に、卑しげな笑いを浮かべつつ頷くと、男は蔑むような目でインパを
見下ろした。憎むべき敵に恥ずかしい体位で犯され、ひたすら快感に喘ぎ、いまもその格好でいる
自分を思うと、蔑まれてもしかたがない。が、ならず者として村ではつまはじきにされていた
この男に、そういう目で見られるのは我慢ならなかった。そんな意をこめたインパの視線を、
しかし男は軽く受け流し、村人たちに向かって、大仰な口ぶりで話し始めた。
「俺はこの目で見たんだ。お高くとまった、このインパ様が、息子と──あのシークとかいう
ガキと──ベッドでつるみ合って、ひいひい言ってるざまをな」
 半年前の、あの夜の、インパとシークの行為を、男は克明に描写していった。
 インパは茫然となった。冷汗が流れた。顔から血の気が引いているのが、自分でもわかった。
 見られていたのだ! 
 この男がどこにいたのかわからないが、気配に気づかなかったとは、何たる不覚。とても
冷静ではいられない状況だったとはいえ……
 男の話の内容は正確だったが、勝手な誇張も加わっていた。話の中で、インパは、おのれの
欲望のままに幼い息子を誘惑して近親相姦の快楽にふける、淫蕩で罪深い母親に仕立て上げられて
いた。揶揄するような男の口調が、さらにインパを下劣な存在として強調していた。
 耐えられなかった。両腕を縛られた状態で、耳を塞げないのが、この上もなく苦痛だった。
シークとの、あの厳粛な行為が、汚され、踏みにじられているのだ。
3202-5 Impa II + Ange II (14/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:30:55 ID:qQi8XbPq
 だが……
 インパはすがるような思いを抱いた。
 みなは、この男の話を信じるだろうか。ならず者として知られた、この愚劣な男の……
 村人たちに目を向ける。ある者は男を見、ある者はインパを眺め……そこにはまだ、陵辱される
自分たちの指導者への同情と憐憫が感じられたが、微妙に変わった空気も見て取れた。男の話を
信じきっているわけではない。そうではないが……
 まさか……いや、ひょっとして……という疑惑が生まれつつあるように思われた。
『しまった!』
 インパは初めて気がついた。
 即座に否定すべきだったのだ。ガノンドロフの言葉を聞いた直後に。男が話し始めた直後に。
男の言うことは事実なのだが、明確に否定すれば、村人たちは自分の方を信じただろう。しかし……
 唐突な暴露に動揺し、それを面に出してしまった。男を止めることもせず、話すままにさせて
しまった。動揺が、村人たちにも伝わってしまった。
 覗きという恥ずべき行為の所産でありながら、話の内容の強烈さが、男への非難の感情を
打ち消してしまったようだった。男の話は微に入り細を穿っており──事実だから当然だが──
単なる作り話には聞こえないような生彩があった。
 それに、ガノンドロフに一方的に犯されて喜悦に浸る自分を見た村人たちが、自分に対する
印象を変化させていたとしてもおかしくはない。
『もう……遅いか……』
 いまさら否定しても、効果は薄い。シークとの関係は一度きりで、ガノンドロフが示唆した
ような常習行為ではないし、近親相姦の汚名も晴らしたかったが、シークが実の息子ではない
ことを告白するわけにはいかない。息子でなければ何者なのか、と追求される。それだけは絶対に
避けなければ……
 男の話は終わっていた。賢者についてのシークとの会話を聞かれていないようなのが、唯一の
救いだった。
『それに……まだ……』
 たとえどん底に堕ちようとも、こいつを──ガノンドロフを倒す機会があるうちは……
「馬鹿息子が!」
 村人たちの群れの中から、一人の女が走り出た。親方の女房──男の母親だ。
「お前……インパ様のことを……馬鹿につける薬はないっていうが……こんな馬鹿が息子だなんて、
あたしゃ死んでも死にきれないよ!」
「やかましい! くそババア!」
 男が大声で罵った。
「こんな村にいたって、いいこたあ何もねえんだ。息子とつるむようなスケベなおばさんにゃ、
つき合いきれねえ。俺はガノンドロフ様につくぜ。その方がよっぽどいい思いができらあ」
「罰当たりが! お前は人間じゃない! 魔物になっちまったんだ!」
「なにを!」
 男と母親が揉み合い始める。
「鬱陶しいな」
 ガノンドロフが呟いた。男を連れてきたゲルド女が、争う二人の間に割って入った。直後、女は
剣を払って母親を斬り捨てた。
「ぎえぇッッ!!」
「お母さん!!」
 母親の断末魔の悲鳴と、駆け寄るアンジュの叫びが、その場で同時にはじけた。
3212-5 Impa II + Ange II (15/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:31:54 ID:qQi8XbPq
 眼前の惨劇に、男は言葉を失っていたが、ほどなく顔に笑いを戻すと、憎々しげな口調で言った。
「馬鹿はどっちだよ。利口に立ち回らねえやつは、こうなるのさ」
「なんてこと言うの! 兄さん!」
 母親の死体にすがるアンジュが、傍らに立つ男へ、涙と憤りに満ちた目を向けた。
「もう心の底まで腐ってしまったの? そうなの? 違うと言って! 兄さん!」
「黙れ!」
 男がアンジュを蹴り飛ばした。小さな悲鳴をあげて土の上に転がるアンジュ。
「おい」
 ガノンドロフが短く声をかけた。
「その女、あとで味見してやる。捕まえておけ」
 ゲルド女がアンジュに歩み寄った。
「お前の妹だが、かまわんだろうな」
 ガノンドロフの言葉が男に向けられた。男は上目遣いで、
「ええ、どうぞどうぞ、お気に召すままに……」
 と、卑屈な笑いを浮かべながら言った。
「立て!」
 ゲルド女が、泣き濡れたアンジュを乱暴に立たせようとしていた。
 なすすべもなく目の前の情景を見守っているしかないインパだったが、アンジュの危機に接して、
『まずい』
 悪い予感が胸を刺した。
 彼が耐えてくれればいいが……
 しかし予感は当たった。
「アンジュに手を出すな!」
 風車の背後にある高台の上から大声がした。
 青年。アンジュの婚約者。最後の狙撃手。
 ガノンドロフのまわりに人が集まっている状態では、弓を使えないと判断したのだろう。
高台から飛び降り、剣を抜いて、広場に向かって突進してくる。ゲルド女たちが立ちふさがり、
たちまち青年は血祭りに上げられる。
「きゃあああああーーーーーーッッ!!」
 アンジュの絶叫が響き渡った。
『やはり……耐えられなかったか……』
 是非もない。だがこれで、反撃の最後の機会が失われてしまった……
 インパの身体から、がくりと力が抜けた。腰を固定されて、ぶら下がっているような感覚だった。
ガノンドロフの陰茎が、硬い勃起を保ったまま、膣を満たしているためだった。自分がまだ
犯されている最中であることを、インパは思い出した。
3222-5 Impa II + Ange II (16/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:32:40 ID:qQi8XbPq
 陵辱はさらに続いた。永遠とも思える時間だった。身体の自由はきかず、快感を否定する気も
おこらず、インパはひたすら絶頂の到来を待ちこがれた。
 ことが終わっても、もうガノンドロフを倒すチャンスはない。ただ、絶頂しさえすれば、この
いたたまれない状況から解放される。思うのはそれだけだった。
 しかしガノンドロフは残酷だった。インパが達する直前になると、動きを止める。波が引いて
しまってから、またじわじわと攻めを再開する。それが何度も繰り返された。
 意識を保つことのできる限界まできた時、ガノンドロフが耳元でささやいた。
「いかせて欲しいか?」
 インパは心の中でそれに答えた。口には出せなかった。
「どうだ?」
 重ねてガノンドロフが訊いた。
 再び心の中で答える。ガノンドロフには通じない。
 どうしようもなく、インパはかすかに声を発した。
「いかせて……くれ……」
「聞こえんな」
 ガノンドロフがうそぶいた。なぶられていることは明らかだったが、インパは声をあげずには
いられなかった。
「いかせてくれ!」
 恥辱の舞台に幕を引くためなのだ、と自らに言い聞かせつつも、その叫び自体が恥辱の極致で
あることを、インパはわかっていた。
 いまの声は、村人全員が聞いただろう。
 絶望と敗北感が心を満たした。
 が、それでは終わらなかった。
「ならば……」
 ガノンドロフの残酷さは予想以上だった。
「ゼルダの居所を吐け」
 身体が、びくんとのたうった。
『ここで……そうくるか……』
 インパは首を振る。それは……それだけは……
 状態が初めに戻る。攻めと休止が積み重ねられ、限界にくると、ゼルダのことを訊かれる。
そのつどインパは答を拒否する。
 それが何回となく続いたが、インパは黙秘を貫いた。
「強情だな」
 ガノンドロフもさすがに辟易したようだった。
「ここは、ひと区切りつけておいてやる。ありがたく思え」
 ガノンドロフの動きが、いきなり激しさを増した。それまでの計算された動きに慣れていた
インパは、膣の最深部をどつかれる快感に狂い、
「ぅあッ!……ぅあぁぁッ!……あ……ああぁッ!!……」
 ついに絶頂した。
 子宮口に精液がぶちまけられる感触を最後に、インパの意識は失われていった。
3232-5 Impa II + Ange II (17/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:33:30 ID:qQi8XbPq
 ぐったりとなったインパの膣から長大な陰茎を引き抜き、ガノンドロフは立ち上がった。
長時間の性交にもかかわらず、疲労はほとんどなかった。心身ともに男まさりのインパを、
女として徹底的に犯しつくした満足感が、全身を満たしていた。
 ゼルダの情報を得ることはできなかったが……
『それは追々、じっくりと身体に訊いてやる』
 ガノンドロフは心の中でほくそ笑んだ。
「あの……」
 横からおずおずと声をかける者があった。密告者の男だった。
「あんなもんでよかったでしょうか。俺、うまくやりましたよね」
 下らない奴だ。そんな思いを持ったまま、しかし口では、男の望む台詞を投げてやる。
「よくやった。褒美をやらんとな」
 男の顔が卑屈な期待にゆがむ。
 ガノンドロフは、男の妹のことを思い出した。
 さっき飛びこんできた男は──あの女の恋人か何かだろうが──アンジュと呼んでいた。
 そのアンジュは、部下の女の一人に捕らえられ、広場の端に立ちつくしていた。インパを
拘束しておくよう近くの手下に命じると、ガノンドロフはアンジュのもとへ歩み寄った。男も
あとからついてきた。
 眼前で恋人を殺された時、アンジュは悲痛のきわみのような叫びをあげていたが、衝撃が
あまりに強かったためか、いまのアンジュの顔は、すべての感情が失われたように空虚で、
ガノンドロフが前に立っても、それが見えてもいないようだった。
『恋人だけではないからな』
 母親もまた、目の前で殺された。そして……
 先刻の戦いでインパを倒した直後、自分に斬りかかってきた初老の男。斬り捨てたその男の
死体に、アンジュと母親は取りすがっていた。あれはアンジュの父親なのだろう。
 父親と母親と恋人とを、一瞬と言ってよい間に亡くしたのだ。感情を失うのも無理はない。
 その張本人が自分自身であることを思い、ガノンドロフは身が震えた。残虐な快感によってだった。
 そして、残った兄は、このありさまだ。
 ガノンドロフは男の方を向いた。男の顔には相変わらず、卑しい笑いが浮かんでいた。
 下品な密告で味方を裏切り、母親が殺されても平然と憎まれ口をたたき、あげくには妹を
いそいそと生け贄に差しだして、恥じる様子もない。
『インパを落とす役には立ったが……もう要らんな』
 ガノンドロフは剣を抜き、
「褒美だ」
 と言うと、無造作に横へ払った。男の首がすっ飛び、アンジュの前に転がった。
 アンジュはそれに顔を向けた。それが何なのかわからない様子だった。が、少しずつ表情に
変化が現れ、やがて口から、意味をなさない唸りが絞り出された。唸りは徐々に音量を増し、
ついには耳をつんざく絶叫となって、あたりを覆いつくした。
 その絶叫を快く味わいながら、
「この方がすっきりしていいだろう」
 ガノンドロフは冷然と言い捨てた。
3242-5 Impa II + Ange II (18/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:34:16 ID:qQi8XbPq
 ゲルド族によるカカリコ村の制圧作業が行われている間、ガノンドロフはインパの家を占拠した。
家の一角には家畜を入れておく檻があり、インパは全裸のままの姿でそこに拘束された。
 激しい拷問が、数日にわたって続けられた。ゲルド女たちに鞭打たれ、殴打され、全身の皮膚が
破れて、インパは血まみれとなった。ガノンドロフは性的虐待を加え、合間には女たちによる
陵辱も行われた。膣や肛門に太い異物が挿入され、乳首や陰核には針が突き立てられた。
 インパは無抵抗だった。ガノンドロフや女たちの暴行に対し、反抗する素振りも見せず、
黙ってそれに耐えていた。ゼルダの消息については、いっさい口にしようとはしなかった。

 インパの寝室のベッドで、全裸のアンジュは、ガノンドロフにのしかかられ、その剛直を
味わわされていた。
 カカリコ村が陥落し、家族と婚約者を一挙に失ってしまったいま、アンジュにはもう生きる
目的がなかった。かといって自ら命を絶つ気力もなく、アンジュはただ、ガノンドロフの餌食と
なって、日を過ごすのみだった。
 すでに男を知っていた肉体は、荒々しい攻めにも否応なく敏感に反応した。だがそれは、
肉体のみの反応だった。
「……は……ああ……あ……あぁん……」
 口から漏れる喘ぎ声は、確かに快感ゆえのものではあったが、アンジュはそれを快感と
認識できる状態ではなかった。
 心は空っぽだった。何も考えられなかった。

 ガノンドロフにとって、アンジュは意外な拾いものだった。とりわけ美しいというわけでは
ないが、性交時の反応はそそるものがあり、ガノンドロフは当初、それを熱心に賞味した。
 しかし回数を重ねるうち、アンジュの反応が機械的なものであることに、ガノンドロフも
気がついた。身体は淫らに蠢くのだが、心が伴っていないのだった。
『存外つまらんな』
 肛門の処女を奪ってやった時もそうだった。物理的な苦しみは訴えても、精神的な苦しみは
感じられなかった。恐怖や屈辱を感じない相手は、物足らない。
 肛門といえば……と、ガノンドロフの思いはアンジュから離れていった。
 インパの肛門も犯してやったが、初めてではなかったようだ。ああ見えて、案外、経験を
積んでいるとみえる……
 問題は、そのインパだ。
 ガノンドロフは、心の中で舌打ちした。
 さんざん責め立てても、頑としてゼルダの居所を吐こうとはしない。
『やはりツインローバに任せるしかないな』
 今回のカカリコ村との戦いは、賢者が関係しないものだったので、ツインローバは同行して
いなかった。拷問で口を割らせるのは困難とみて、ハイラル城にいるツインローバには、
カカリコ村へ来るよう、すでに伝えてあった。
『それでかたをつけてやる』
 仰向けのアンジュに覆いかぶさり、ガノンドロフは膣に埋めた肉柱をぐいと押し進めた。
「あぅッ!」
 アンジュの短い叫びが寝室に響いた。
3252-5 Impa II + Ange II (19/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:34:59 ID:qQi8XbPq
「どうだ?」
 インパが閉じこめられた檻のある部屋に、一人のゲルド女が入ってきた。
「相変わらずさ。動きもしないよ」
 見張りの女が、つまらなさそうに答えた。
「おかげで見張りは楽だけどね。けどまあ、よくここまで耐えられるもんだ」
「強情張らずに、さっさと吐いちまえば、楽になれるのにな。でも、もうすぐ見張りも必要
なくなるよ」
「どうして?」
「ツインローバ様が呼ばれたのさ。おっつけ着く頃だろう」
「ああ……頭の中を読んじまうわけね」
「そういうこと」
「なら、こいつとも、じきにさよならだな」
 見張りの女はそう言うと、意味ありげな口調で、相手の女に問いかけた。
「ガノンドロフ様はどうしてるんだい?」
「あの女とお楽しみだよ。ほら、大工の娘さ」
「じゃあ、その間にさ……この女をなぶってやらないか?」
「いいのか?」
「何をやってもかまわないと、ガノンドロフ様も言ってたよ」
「じゃあ……」
「よし」
 見張りの女が、檻の鍵をあけた。倒れているインパの背後に回り、腕のいましめを解く。
「縛ったままだと、やりにくいんだよな」
「大丈夫か?」
「心配ないよ。こいつ、捕まってから、全然抵抗しないんだ」
 もう一人の女が、そばに寄ってくる。
 両者が射程圏内に入ったのを確認してから、インパは折り曲げていた両脚をいきなり伸ばし、
二人の顔面を蹴り上げた。
「うわッ!」
「げッ!」
 短い叫びとともに、二人の身体が吹っ飛んだ。すばやく身を起こし、一方の女の腹に拳を
打ちこむ。ひるがえって、もう一方の女のうなじに手刀を飛ばす。二人は呻き声をあげて
うずくまった。
 インパは見張りの女が手にしていた剣を奪い、全裸のまま檻を飛び出した。
 ずっと耐えて待っていた。これがほんとうに最後の機会だ。
 ガノンドロフに犯される時は、いつも魔力で身体の自由を奪われ、手が出せなかった。ところが
いまは、ガノンドロフはアンジュを犯している最中だという。不意を襲えば殺すことも可能だろう。
だが……
3262-5 Impa II + Ange II (20/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:35:46 ID:qQi8XbPq
『頭の中を読む……だと?』
 そんな能力が、ツインローバにあったとは。自分の思考を読まれることだけは、絶対に
避けなければならない。ゼルダの、そしてシークの秘密を知られてはならない。
 ツインローバはもうすぐ到着するという。それに先んじなければ。
 インパは部屋を出て、寝室へと急いだ。
 中から声がする。低い声。ガノンドロフの声。
 寝室の扉をあけ放つ。ベッドでアンジュを組み敷くガノンドロフ。その顔がこちらを向く。
狼狽の色。挿入した状態。
『殺れる!』
 飛びかかろうとした瞬間、ガノンドロフの視線が横に向き、叫びが飛んだ。
「こいつがインパだ!」
 そちらを見る。寝室の隅に一人の女。
『ツインローバ!』
 もう来ていたのか!
 インパは寝室の外に飛び下がろうとした。が──
 背後から複数の足音。ゲルド族の連中が駆けつけてきたのだ。
 逃げられない!
「お前が……お前が……」
 ツインローバの声。意外そうな……(読まれた?)……驚いたような……(読まれたのか?)……
「お前が『闇の賢者』!」
 何を言っている?
 瞬間、疑問が頭をよぎるが、
『まだだ!』
 同時に、
『こうするしかない!』
 剣を自らの首筋に当てる。
 かの人への別れの思いは許されない。しかしこれだけは──
『頼んだぞ! リンク!』
 インパは腕に全力をこめ、剣をずぶりと皮膚へ食いこませた。
3272-5 Impa II + Ange II (21/21) ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:36:30 ID:qQi8XbPq
 インパの首が落ち、切断面から噴水のように鮮血がほとばしった。首に数秒遅れて、胴が
ばたりと床に倒れた。
 アンジュの口から、何とも形容しがたい激烈な叫びが噴き出し、突然それがやんだ。失神したのだ。
「どうだ? 読めたか?」
 ガノンドロフはツインローバに訊ねた。常にもなく声が緊張していると自分でもわかった。
「……だめだ……ゼルダのことは、読めなかったよ……」
 ツインローバが呻くように言った。
「この女が『闇の賢者』だとわかったもんで……それに気を取られちまった……」
 声に悔しさをにじませ、ツインローバはインパの死体に歩み寄った。
「こいつ……あたしが人の考えを読むことを知っていて……それで自分の考えを読まれまいと……」
 壮烈な自刎。
 ガノンドロフも、すぐには身体を動かせなかった。
 それでも興奮は徐々に薄まった。薄まるにつれて、ゼルダに関する最後の手がかりを失った
ことが実感され、心にしこりがよどんだ。
「でもまあ、偶然とはいえ、『闇の賢者』の正体がわかって、しかも自分から死んでくれたんだ。
それでよしとしようかね」
「ゼルダのことはどうする?」
 のんきそうなツインローバの口調が癇にさわった。しかしツインローバは平然としていた。
「かりかりしなさんな。ゼルダについちゃ、まだ手はあるわよ」
 確かに……
 ガノンドロフは自制した。
 インパの死体を見下ろす。
 ここまで自分を追いつめた敵はいなかった。そう、あの小僧の父親の他には……
 連想が広がる。
 あの男には、リンクという息子がいる。そしてインパには、シークとかいう息子が……
 そいつは、いまどこに? 村人の話では、開戦前に村から去ったということだが……
『どうであれ、男だ』
 ガノンドロフは連想の流れを打ち切り、本来の問題へと立ち戻った。
『ゼルダか……』
 ツインローバが、俺の運命に大きく影響すると言った、その人物。
『……先の長いかかわりになる……』
 床に転がったインパの首。かっと目を見開いた、その表情が、ガノンドロフの意識を捉えた。
そこには苦悶も悲嘆もなく、ただ、死の直前に彼女を支えていた決然たる意志と──そして、
守るべきものを守りきったという、満たされた思いがうかがわれた。


To be continued.

328 ◆JmQ19ALdig :2007/03/24(土) 00:37:06 ID:qQi8XbPq
以上です。苦しい回でした。いろんな意味で。
次回、舞台はロンロン牧場へ。
329名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 01:14:45 ID:Qsu5LEMQ
なんというクオリティ・・・
330名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 01:51:55 ID:OncaZdPW
待ってましたー!激しくGJ!
331名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 09:54:41 ID:UqOyhy56
素晴らしいとしか言いようがない
リンクが大人時代に倒すモンスターが登場し、何らかの形で関わっているのもイイ!
最後の下りは悲しくも感動した
332名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 13:42:55 ID:YT3zNO8f
乙……凄く続きが気になるな
333名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 17:24:05 ID:FoDhdAMe
全然長く感じなかった。続きが気になった所で終了。
そしてJmQ19ALdig氏がSであると自覚した。
くそう、どうしてもインパの顔が時オカのイメージで残ってしまう。
脳内変換がこんなに高度なものだったとは。

>>305
それはマジなのかと本気で思ってる。
334137:2007/03/24(土) 17:28:54 ID:NBBUZyw+
インパ全裸格闘キター!……と思ったら……orz
335名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 19:16:55 ID:8I2MX3Z0
>>317-322
不覚にも起った
336名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 23:45:59 ID:rmoxQpq4
GJ
クオリティスゴス……
337名無しさん@ピンキー:2007/03/25(日) 23:27:39 ID:hooHLWLd
>>335
そこは負けを認めるんだ!
338名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 19:02:21 ID:ca96Ank4
今更だが乙&GJ
本当に文章が上手いな
インパ拷問シーンでコンクリ殺人思い出してちょっと鬱ったorz
339名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 03:14:04 ID:Ba0nzPru
リンクの登場がいつかと待ち遠しい
340名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 23:52:50 ID:nnq04ZYg
リンクも掘られるの?
341名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 02:14:19 ID:RkmDOghE
アーッ!
342名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 09:37:43 ID:owMEPw1G
このスレ的にはゲルド女に逆レイープでしょう
343名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 15:11:04 ID:4ugMwP6a
>>321
>  眼前の惨劇に、男は言葉を失っていたが、ほどなく顔に笑いを戻すと、憎々しげな口調で言った。
> 「馬鹿はどっちだよ。利口に立ち回らねえやつは、こうなるのさ」
> 「なんてこと言うの! 兄さん!」
>  母親の死体にすがるアンジュが、傍らに立つ男へ、涙と憤りに満ちた目を向けた。
> 「もう心の底まで腐ってしまったの? そうなの? 違うと言って! 兄さん!」
> 「黙れ!」
>  男がアンジュを蹴り飛ばした。小さな悲鳴をあげて土の上に転がるアンジュ。
> 「おい」
>  ガノンドロフが短く声をかけた。
> 「その女、あとで味見してやる。捕まえておけ」
>  ゲルド女がアンジュに歩み寄った。
> 「お前の妹だが、かまわんだろうな」
>  ガノンドロフの言葉が男に向けられた。男は上目遣いで、
> 「ええ、どうぞどうぞ、お気に召すままに……」
>  と、卑屈な笑いを浮かべながら言った。
> 「立て!」
>  ゲルド女が、泣き濡れたアンジュを乱暴に立たせようとしていた。
>  なすすべもなく目の前の情景を見守っているしかないインパだったが、アンジュの危機に接して、
> 『まずい』
>  悪い予感が胸を刺した。
>  彼が耐えてくれ
344 ◆JmQ19ALdig :2007/03/31(土) 23:06:53 ID:YTiVOLMr
私本・時のオカリナ/第二部/第六章/マロン編その3、投下します。
インゴー×マロン。陵辱。死にません。でも鬱展開。
3452-6 Malon III (1/13) ◆JmQ19ALdig :2007/03/31(土) 23:08:46 ID:YTiVOLMr
 カカリコ村の陥落により、王党派の軍事勢力は消滅し、ハイラルの覇権はガノンドロフと
ゲルド族の手に落ちた。地域によっては、敗残兵や住民が散発的に反抗を示すこともあったが、
それらは簡単に鎮圧され、恒久的な対抗勢力とはならなかった。
 ゲルド族の移住が始まった。ハイラルの西端にある『幻影の砂漠』は、ゲルド族にとっては
故郷であり、特別な意味を持つ場所ではあったが、環境は厳しく、生活に適した土地とは
いえなかったのだ。ハイラル平原へ進出したゲルド族のもとで、王国の──もはや旧王国と
呼ぶべきであったが──住民たちは、奴隷として酷使されることとなった。
 とはいえ、ハイラルの地は広く、人口が多いとはいえないゲルド族が、その全域を強圧的に
支配することは不可能だった。ゲルド族の移住範囲はハイラル平原の西部にとどまり、東部では
ゲルド族の締めつけも比較的ゆるやかであった。
 たとえばカカリコ村は、物流の中継地としての価値があるため、陥落後も破壊を免れた。村には
ゲルド族の一部隊が駐留を続けたが、それに反抗しない限り、住民は生活の自由を、一応は保つ
ことができたのだった。

 新たな土地で恵まれた生活を享受し始めたゲルド族であったが、そこで問題となったのは、馬の
確保だった。ゲルド族は馬を大切にする。そのために、馬を安定して供給できる施設が、支配下の
地域に必要だった。ガノンドロフはその問題を解決しなければならなかった。
「あの牧場はどう?」
 合体した姿のツインローバが、玉座にすわるガノンドロフにしなだれかかった。
「ほら、平原の真ん中あたりに牧場があったでしょ。このハイラル城からも遠くないし、ちょうど
いいんじゃない?」
「そうだな……」
 その牧場のことは、反乱勃発直後、すでに部下から報告を受けていた。いずれは役に立つ場所
かもしれないと思い、難民や敵軍の巣にならぬよう、とりあえず処置はしておいたが、うち続く
戦闘で、その後の対応を忘れていた。
「では、そこを奪い取るか」
「それも悪くないけど……」
 ツインローバが意味ありげな口調で応じた。
「いまさら仲間に、しんどい牧場仕事をさせるのもどうかと思うのよ」
 やけに優しいことを言う……とガノンドロフは奇異に感じ、相手の顔をじっと見たまま、返事を
しなかった。その視線に動じず、ツインローバは言葉を続けた。
「疲れる仕事はそこの住人にやらせておいてさ、あたしらは、その上前だけいただくってのは
どう?」
「牧場の住人が、黙ってこちらの言うことを聞くか?」
 力による支配は簡単だが、馬の飼育を任せるとすれば、表面的な服従だけでは不充分だ。真剣に
仕事をしてもらわなければ困る。が、ゲルド族を恨みこそすれ、心から協力する住民があろうとは
思えなかった。
 ツインローバの顔に笑いが浮かんだ。
「聞くようにしてやったらいいのよ」
 その笑い、その声に秘められた、暗い意思。合点がいった。
「洗脳か……」
 他人の心を読めるツインローバは、最近では一歩進んで、他人の心を変化させるという、新たな
能力を開発しているところだった。
「いいだろう。やってみろ」
 ツインローバが顔を近づけ、
「ありがと、ガノン」
 とささやき、唇を合わせてきた。脂がのった胴をぐいと引き寄せ、向かい合わせの形で、膝の
上に抱きかかえる。ツインローバの手が、すばやくこちらの股間を開放する。そそり立つ逸物は、
同じく露出された花弁を押し分け、すでに淫らな液体を湛える肉筒の中へとすべりこんでいった。
「いいのね、ガノン……やるわ……あたし……やってやる……思い切りやってやるわ!」
 激しく腰を振るツインローバ。その欲望の叫びが、玉座の間に大きくこだました。
3462-6 Malon III (2/13) ◆JmQ19ALdig :2007/03/31(土) 23:09:43 ID:YTiVOLMr
『今日も、お天気がよくないわ』
 母屋を出たマロンは、暗い気分で空を仰いだ。真昼に向けて昇りつつある太陽の部分が、
まわりより少し明るく見える程度で、あとは一面、どんよりとした灰色の雲に覆われている。
 この数ヶ月、晴れの日がずいぶん減ったような気がする。雨が増えたわけではない。ただ
曇りの日が長く続くのだ。
 デスマウンテンが噴火したせいだ、と父は言っていた。しかしマロンには、それだけが理由とは
思えなかった。根拠はない。ないのだが……
 ため息が出る。
 重苦しさを振り切ろうとして、空から目をそらし、母屋の前の掃除に取りかかったマロン
だったが、心の澱は消えなかった。
 世の中で何が起こっているのか、詳しいことは知らない。けれど、自分が見聞きしただけでも……
『いやなことばかり……』

 最初は十ヶ月ほど前のこと。突然、大勢の人たちが牧場へやってきた。城下町から逃げ出して
きた人たちだった。
 ──ゲルド族が反乱を起こした。
 ──お城が攻め落とされた。
 ──首領のガノンドロフは魔王となった。
 ──王様が亡くなった。
 ──王女様は逃げた。
 いろんな話が飛び交っていた。正確な意味は理解できなかったが、何かよくないことが起こった
のはわかった。ただ、その時のあたしは、みんなの手伝いにてんてこまいで、それ以上の何かを
感じる心の余裕はなかった。
 ほんとうに怖かったのは、ゲルド族の女兵士たちが襲ってきた時だった。ゲルド族は逃げてきた
人たちを無理やり牧場から追い出した。自分はどんな目に遭うかと、生まれて初めて、身の危険と
いうものを感じた。でもゲルド族は、あたしに手を出そうとはしなかった。父さんとインゴーさんも
無事だった。
 しばらくして、また人が逃げてきた。西の方で戦争があったと聞いた。あとからゲルド族が来て、
前と同じようにみんなを追い散らしてしまった。その時もやっぱり、あたしたちは放っておかれた。
 そのあとは、東の方で長いこと戦争が続いたようだ。逃げてきた人はいなかったけど、
デスマウンテンが噴火して、この牧場にも、薄汚い灰がうっすらと積もった。
 最近、東の戦争は終わったらしい。なのに、世の中が、元のように、よくなっていくふうには
思えない。それどころか……
3472-6 Malon III (3/13) ◆JmQ19ALdig :2007/03/31(土) 23:10:16 ID:YTiVOLMr
『何もかも悪くなっていくみたい……』
 空が晴れないのは、そのしるしなのではないか、と、マロンはまた、重苦しい思いに囚われる。
『それでも、うちは安全だから』
 気分を引き立てるために、マロンは物事のよい部分へ目を向けようとした。
 いまもゲルド族は時々、牧場へやってくる。でも人が隠れていないのを確かめると、いつも
すぐに帰っていく。どういうわけか知らないけど、あいつらは、あたしたちに危害を加える
つもりはないらしい。
 不安に満ちた生活の中で、それだけが唯一の救いだった。
 このまま、ここで無事に暮らしていけたら……
 ひたすら願うマロンの心に、引っかかるものがあった。
 あたしが思うこと。それに関係のある何かが、記憶のどこかに残っていて……
 何だろう。いつ? どこで? 誰と?
 ……そう、誰かがかかわっていること。あたし以外の誰かが。
 父さん? インゴーさん? ううん、そうじゃない。
 じゃあ、誰?
 ……思い出せない。だけど気になる。
 そもそも、何がきっかけ? あたしは何を思ったかしら? そう……
『何もかも悪くなっていくみたい』
 そうだ。その言葉。
 ……悪くなる……悪いこと……

「ちょいと、お嬢ちゃん」
 突然、後ろから声をかけられ、マロンの心臓は縮み上がった。
 おそるおそるふり返る。
 いつの間にか、馬に乗ったゲルド族の女が数人、そこに来ていた。時々やってくる連中と
同じようないでたちだ。ところが、今日はその中に、見慣れない風貌の女が一人いた。
「この牧場の主人に会いたいんだけど」
 女が言った。
 しっとりと響く、低い声。背が高く、きれいな顔立ち。でも、気味の悪さも感じさせる。
どこか近寄りがたいような雰囲気。
 マロンは返事もできず身体を硬くしていたが、やっとのことで頷くと、小走りに母家の中へ
駆け入った。
3482-6 Malon III (4/13) ◆JmQ19ALdig :2007/03/31(土) 23:10:57 ID:YTiVOLMr
「──だから、タロンの旦那。気分が落ちこむのはわかりますがね、俺たちはここで生きて
いかなきゃなんねえんですぜ。何とか方法を考えねえと」
「インゴー、そうは言うがな、いったいどうすればいいんだ? 城下町がゲルド族の手に落ちて、
ロンロン牛乳を売る先もなくなってしまったし……」
「そいつは……俺も……いい知恵があるってわけじゃありませんがね……だが、あのいまいましい
ゲルド族の奴らに、やりたい放題やらせておくわけにゃいきませんや。どうにかしねえことには……」
「どうにもならんよ、もう……何もかも、いやになっちまった……」
「旦那……そんなこと言わねえで……」
 母屋に入ると、父とインゴーが話をしていた。
 もともと怠け癖のあった父は、ゲルド族の反乱以来、すっかりやる気をなくしてしまった。
仕事熱心なインゴーは、それが歯痒くてしかたがないようで、何とか父を励まそうとするのだが、
効果があったとはいえなかった。以前から父の怠けぶりに不平を漏らしていたインゴーだったが、
最近では愛想を尽かし気味にも感じられた。
 今日も、いつもと同じような会話だ。
 二人の話をさえぎるのは憚られたが、あまり待たせるとゲルド族の連中が気分を損ねるかも
しれない、と思い、マロンはおずおずと口を開いた。
「あの……表にゲルド族が来てるわ。ここの主人に会いたいって」
 父が、ぎょっとしたような顔でふり返った。
「何の用ですかね」
 父の顔をうかがいながら、インゴーが声を低くして言った。父は黙ったまま、動こうとしない。
「行かないと、まずいんじゃねえですか?」
 インゴーが言葉を重ねた。やはり父は動かなかった。インゴーは唇を噛み、じりじりしたような
表情で父を見据えていたが、どうにもならない、といった様子で肩をすくめ、
「俺が話を聞いてきますよ」
 と言い置いて、母屋の外へ出て行った。ほっと息をつく父を見て、マロンは子供心にも
やりきれなさを感じた。
 ほんとに、父さん、どうしちゃったのかしら。確かにのんきな性格だけど、こんな引っこみ
思案じゃなかったはずなのに……
 それに比べれば、インゴーの方がよほどしっかりしている。いまの対応もそうだが、前に戦争で
人が逃げてきた時、てんやわんやの状況を一人で仕切ったのはインゴーだった。父はその時も
おろおろするばかりだった。インゴーがいなければ、牧場はどうなっていたかわからない。
 父にかける言葉もなく、マロンはそこに立ちつくしていた。
3492-6 Malon III (5/13) ◆JmQ19ALdig :2007/03/31(土) 23:11:41 ID:YTiVOLMr
 三十分ほども経った頃、インゴーが母屋に戻ってきた。父はおびえた目でインゴーを見、
「やつら、どうだった?」
 と訊いた。
「帰っていきましたよ」
 インゴーの声は冷静だった。あまりに冷静で、マロンは背筋がぞくりとした。
 いかにも安堵したように、大きなため息をつく父。そこへインゴーが声をかぶせた。
「ゲルド族の方々は、自分たちの馬をここで世話しろ、とおっしゃってますぜ」
「え?」
 父がいぶかしげな声を出した。マロンも奇妙な感じがした。
 馬を世話しろ、というゲルド族の要求も意外だが……いまのインゴーの言葉は……
 ゲルド族の「方々」? 「おっしゃって」?
 インゴーがじろりとマロンを見た。声と同じように冷静な──いや、冷酷、と言っていい
目つきだった。
「おめえは外へ出てな。俺はこれから、タロンに話があるんだ」
 マロンはびっくりした。ふだんのインゴーではない。
 あたしのことを「おめえ」だなんて。いつもは「お嬢さん」と呼ぶのに。言葉づかいも、
もっと丁寧で。父さんを「タロン」と呼び捨てにするのも、これまで聞いたことがない。
「出てろと言ったんだぞ」
 インゴーの語調が強まった。マロンは、ぞっとした。声も出せず、逃げるように母屋を出た。
『何なの? どういうこと?』
 マロンの胸は、疑惑と恐怖に大きく波立った。
 正午になろうかという頃なのに、あたりは薄暗い。
 空を見上げる。
 雲の厚みが、さらに増していた。
3502-6 Malon III (6/13) ◆JmQ19ALdig :2007/03/31(土) 23:12:33 ID:YTiVOLMr
 インゴーは人が変わってしまった。
 決してゲルド族のことをよく思っていなかったはずなのに、一転して、ゲルド族のために馬の
世話をして働こうと言い出した。生活のためにしかたなく、というのではない。本気でゲルド族に
心酔しているような口ぶりだった。首領のガノンドロフ──あの魔王のことを呼ぶのに、「ガノン
ドロフ様」と敬語を使ったりもした。
 自分の主張を通そうと、インゴーは連日、父を責めたてた。父は相変わらず、煮え切らない
返事をするばかりで、それがいっそうインゴーを怒らせるようだった。インゴーは口汚く父を
罵った。とても主人に対する使用人の態度ではなかった。
 マロンへの態度も一変した。もともと愛想のいい男ではなかったが、それでも以前は、もっと
気軽に話ができた。優しい言葉をかけてくれることも、時にはあった。ところが、あの日以来、
インゴーはいつも怖い目でマロンを睨みつけ、口を開けば乱暴に命令ばかりを吐きかけてくる。
マロンは毎日、びくびくして暮らすようになった。
 インゴーの父へのふるまいは、日に日に荒っぽさを増し、暴力を振るうようにさえなっていった。
 ある夜、マロンが母屋の二階で寝ていると、一階から、インゴーの怒鳴り声と、許しを請う父の
哀願の言葉とともに、荒々しい物音が聞こえてきた。インゴーが父を殴りつけているのだ。
マロンにできるのは、布団にもぐり、震えていることだけだった。
 翌朝、父の姿が消えていた。驚いて探し回ったが、父はどこにもいなかった。茫然と牧場に
立ちすくむマロンのそばへ、インゴーが歩み寄ってきた。
「タロンは出て行ったぜ」
 インゴーは言い放ち、さらに嘲るような口調で続けた。
「もう牧場をやっていく気はねえんだとさ。ろくに仕事もしねえ穀潰しだったし、いなくなって
くれてせいせいすらあ」
「父さん、どこへ行ったの?」
 マロンはやっとそれだけ訊いた。
「知るもんかよ。どっかで野垂れ死にでもするだろうさ」
 あまりの言葉に、マロンは思わず、かっとなった。
「出て行ったなんて、嘘よ! インゴーさんが父さんを追い出したんでしょ!」
 インゴーは何も言わず、じっとマロンを見据えた。蛇のように冷たいその視線に、マロンの
怒りは一瞬で消えてしまった。インゴーの無言が怖ろしかった。
 いきなりインゴーの手が飛んできた。頬を張られたマロンは、悲鳴をあげて地面の上に転がった。
他人に暴力を振るわれたのは初めてだった。
「口のきき方に気をつけろよ」
 もはや逆らう気力もなかった。マロンは地に這いつくばり、冷淡な笑いに満ちたインゴーの顔を、
ただ見上げるばかりであった。
3512-6 Malon III (7/13) ◆JmQ19ALdig :2007/03/31(土) 23:13:19 ID:YTiVOLMr
 インゴーとマロンの地位は、完全に逆転した。雇われ人であったインゴーは、牧場の主人に
成り上がり、「お嬢さん」であったマロンは、いまや下女の身へと転落した。
 家事全般がマロンに押しつけられた。子供には無理な馬の調教や他の力仕事は、インゴーの
役回りだったが、家畜への給餌や給水、馬小屋や牛小屋の掃除、牧草の管理、雑草抜きなど、
牧場の仕事でも可能なものは、みなマロンが受け持たされた。もともと牧場にいた動物だけでなく、
ゲルド族の馬も預かるようになったため、仕事の量は倍増していた。
 朝から晩まで毎日休みなく働かされ、マロンはへとへとになった。ちょっとでも仕事が遅れると、
インゴーは容赦なく暴力を振るった。初めのうちは涙にくれていたマロンも、そのうち泣く暇も
なくなるくらいに疲れ果て、日々の作業を機械的にこなしていくのに精いっぱいとなった。
 身体はすりきれ、心は重く沈澱した。
 救いはなかった。救いを求めようという気がおこる余裕すらなかった。
 
 ハイラル城外の練兵場で、ガノンドロフはゲルド女たちが駆る馬を眺めていた。
「最近、馬の調子がいいな」
 傍らに立つツインローバが応じた
「そうね、あのロンロン牧場──おっと、いまじゃインゴー牧場だっけ──あそこに任せて
よかったじゃないの」
「インゴーというのが、そこの主人なのか?」
「いまはね。元は使用人よ。あたしが牧場に行ったら、その時の主人じゃなくて、そいつが出て
きたのさ。見こみがありそうだったんで、そいつを洗脳してやったんだけど、うまくいったわね」
 にやりと満足げな笑いを漏らすと、ツインローバはガノンドロフに向き直った。
「忠誠心も申し分ないわ。あんたに挨拶したいと言ってるそうよ。一度会ってやったら?」
「うむ……」
 洗脳の結果とはいえ、ゲルド族以外の人間に傅かれるのも悪くはない。今後、ハイラルの支配を
強化してゆくためには、そういう便利な奴を飼っておく方がよい。
「よかろう。適当な時期に呼んでおけ」
 と言い置き、ガノンドロフは練兵場をあとにした。
3522-6 Malon III (8/13) ◆JmQ19ALdig :2007/03/31(土) 23:13:57 ID:YTiVOLMr
 その日もマロンは仕事に追いまくられた。が、いつになく心は軽かった。ガノンドロフに
拝謁するために、インゴーがハイラル城へ出かけていたからだ。インゴーに怯えることなく、
一人で日を過ごせるのは、父がいなくなって以来、初めてのことだった。インゴーがいない分だけ
家事の手を抜くことができ、心の軽さも手伝って、いつもよりは多い牧場の仕事も順調にはかどった。
昼過ぎにはもう、おおかたの作業が終わっていた。
 マロンは牧場の真ん中へ歩み出て、草の上に腰を下ろした。
 家畜への夕べの給餌と、日暮れまでには戻ってくるであろうインゴーへの夕食の準備が残って
いたが、陽のあるうちに一息つくことができるのは、久方ぶりのことだった。
 しかし、いざ一息ついてみると、マロンの心に湧くのは、悲しみばかりだった。
 空は今日も厚い雲に閉ざされている。父の行方はいまも知れない。唯一の友であるエポナは、
将来ガノンドロフに献上するとインゴーが決めてしまった。
 何の希望もない、この生活。
 どうしてこんなことになってしまったのだろう。
 こんな目に遭わなければならないような、何か悪いことを、あたしがしたというのだろうか。
 目から涙があふれ出る。
『誰か……助けて……』
 底のない泥沼から逃れ出ようと、必死に手を伸ばす。あてもないのに。
 いや……
 何かが心に引っかかっている。
 いまの自分の思い。
『何か悪いこと』
 そして、
『誰か』
 前にも同じような引っかかりを感じたことがある。その時は結局、思い出せなかった。だけど
いま、もう一度、同じ引っかかりを経験してみると……あれは……確か、あれは……
『この世界には、いま、悪いことが起こり始めていて……』
 ──そう。その言葉。
『ぼくはそれを防がないと……』
 ──誰か。「ぼく」と言った、その誰か。
「リンク!」
 思わず声が出る。
 悪いこと。リンクはそれを知っていた。
『ぼくには使命があって……』
 使命。リンクの使命。
 世界が悪に堕ちていこうとしている、いま、この時、リンクはどこかで、その悪に立ち向かって
いるのだろうか。そして……
3532-6 Malon III (9/13) ◆JmQ19ALdig :2007/03/31(土) 23:14:45 ID:YTiVOLMr
 あの夜。リンクと別れた、あの夜。別れ際に、あたしは訊いた。
『また来てくれる?』
 あの時、リンクは……ああ、リンクは……
『来てくれる!』
 マロンは胸の中で叫んだ。
 来て欲しい。いや、来るに違いない。そう信じるだけで、あたしは……
 思い出す。
 あまりに苦しい生活のため、心の底に封じられていた、リンクの記憶。それがいま、堰を切った
ようによみがえる。
 城下町で初めて会った時のリンク。緑色の変わった服を着て。キスするカップルをじろじろ見て。
キスっていう言葉も知らなくて。なのにキスの経験はあって。その時は、とりとめのない会話だけ。
それでも同じ年頃の友達がいないあたしには、心楽しいひとときだった。
 牧場を訪ねてきてくれたリンク。再会の喜びを顔にあふれさせて。それをあたしはからかって、
忘れたふりをしたりして。ほんとうは嬉しかったのに。会いたかったのに。
 ハイラルの風景に感動するリンク。あたしの知らない世界を語るリンク。そんなリンクに、
あたしは……
 その夜。そう、いまと同じこの場所で、あたしはリンクの横にすわって……
 キスをせがんだ。
「もっといいこと」も。
 結局、それは果たせなかったけど……そのあと……夜空いっぱいの星の下で、ひとり、あたしは
……あたしを……
 胸が動悸を打つ。強く。激しく。
 股間が疼く。じんじんと。ひたひたと。
 ずっと幼い頃から、ひそかにふけってきた、あの楽しみ。
 生きるだけで精いっぱいの日々、長いこと忘れていた、あの悦び。
 オナニー。
 これまで、たいていは、夜だった。家の中だった。日の暮れないうちに、外でしたことなんて
なかった。
 でも、もう我慢できない。
3542-6 Malon III (10/13) ◆JmQ19ALdig :2007/03/31(土) 23:15:51 ID:YTiVOLMr
 右手が服の裾をくぐる。両脚のつけ根へと、まっすぐ手が進む。そのまま下着の上から触れてみる。
 ほんのりと湿った布。
 下着ごしに、指を押しつける。
「あ……んん……」
 これ。この感じ。すべてを忘れさせてくれる、この感触。
 奥に溜まった粘液が、じっとりと布から染みだしてくる。濡れる。指が濡れる。
 濡れるのなら、とことんまで濡らしたい。
 右手を腹まですり上げ、下着と皮膚との間に差し入れて、今度は下へすべらせる。何の飾りもない、
下腹の皮膚。その下端の真ん中に始まる、細い谷間。すぐ指に触れる、硬いしこり。
 圧を加えながら、指をぬるりと下へ。
「ん……!」
 反射的に両脚が閉じ、ぎゅっと右手をはさむ。それでも指は動かせる。
 また上へ。また下へ。上へ。下へ。上へ。下へ。
「んぁ!……ああ……」
 快感を生むそのしこりを、さらに押して、圧迫して、今度は、左に、ぐりっと。
「うぁッ!」
 右に、ぐりっと。
「ひぁッ!」
 身がすくむ。身が固まる。身が震える。
 止まらない。止まらない。左へ、右へ、上へ、下へ。
 粘液にまみれるその場所で、マロンの指は踊り狂った。
『もっと……』
 しこりの下。谷間の奥。そこにも触れたい。感じたい。
 脚を大きく開く。裾がまくれ上がる。太股が、下着が、外気にさらされる。
『丸見えになっちゃう』
 理性のささやきも、もはや妨げにはならない。どうせ誰も見てなんかいない……
 指を伸ばす。狭い入口へと。指を進める。奥へと。
 肉壁が抵抗し、痛みを訴える。でも、大丈夫。そっとやれば。
 初めは無理だった。痛みに耐えられなかった。それでもずっと続けるうちに、指もあそこも
慣れてきた。少しずつ、指を挿しこめるようになった。痛みを打ち消す気持ちよさを、あたしは
知ってしまったから。
 じわ、と指を押し進め、
「くぅ……ッ……!」
 次いで、引く。
「は……ぁッ……!」
 きつい圧迫に抗して、指を前後にすべらせる。ゆっくりと。ゆっくりと。
 いい。感じる。気持ちいい。とても。
『だけど……ほんとうは……』
 ほんとうは、ここに入ってくるのは、指じゃなくて、あれなんだ。
 男の、あれ。
 あたしがまだ知らない、あれ。
 あれだと、もっといいのかしら。もっと気持ちがいいのかしら。
 想像する。
 男の人が、あたしの上にいて、あたしを抱いて、あたしの中に入ってきたら……
「あぁッ!」
 思わず、指をいつもより深く突っこんでしまう。痛いけど、平気。快さの方が、はるかに大きい。
 欲しい。欲しい。あたしを満たしてくれる、あれ。自分じゃなくて。指じゃなくて。
 誰? あたしに入ってくるのは、誰?
 決まってる! それは……
3552-6 Malon III (11/13) ◆JmQ19ALdig :2007/03/31(土) 23:16:54 ID:YTiVOLMr
「おい」
 声!
 心臓が破裂しそうになった。
「ずいぶんとお盛んじゃねえか」
 インゴー! いつの間に?
 空に目をやる。日が暮れかかっている。どれくらいの時間、あたしは……
 はっと気がつく。あわてて指を引き抜く。手を下着から引き出す。が、もう遅い。
 見られてしまった。
 インゴーが近づいてくるのに、どうして気がつかなかったのだろう。それほどあたしは夢中に
なって……
 あたしのいちばん恥ずかしいところを、どうして……どうしてインゴーなんかに……
 すぐ近くに立つ、インゴーの脚。それより上に視線をやれない。顔が、かっかと火照って
いるのがわかる。
「別に恥ずかしがるこたあねえよ」
 え……?
 意外な言葉に、思わずインゴーの顔を見る。下卑た笑いが浮かんでいた。
「俺は知ってんだよ。おめえが前からしょっちゅうマンズリしてることくらいな。いまさら俺に
見られたって、どうってこたあねえだろう」
 マンズリ。それが何を意味する言葉か、マロンにはわかった。自分の行為が、そんな下品な
言葉で呼ばれるのはいやだった。
 でも、そう呼ばれてもしかたがない。あたしのしたことは、下品なことなんだ。だからあたしは
恥ずかしいんだ。
 恥ずかしいといえば……
 インゴーの言葉が、やっと脳に染みこむ。
 いまだけじゃない。ずっと前から知られていたんだ。オナニーにふける、あたしのことを。
「いや!」
 首を振る。激しく。
 すべてを知られて、すべてを見られて。しかも、相手が、インゴーだなんて。
 マロンの嫌悪の情も知らぬげに、インゴーは言葉を続けた。
「いまじゃ、城下町で娼婦を相手にすることもできねえんだ。おめえがガキだといっても、
これだけマンズリしまくってるんなら……」
 声が上ずっていた。マロンは再びインゴーの顔を見た。
 血走る目。
 危険な臭いを感じて、マロンは逃げようとした。が、あっさりと腕をつかまれた。地面に
押し倒される。上にのしかかられる。近づくインゴーの顔。荒い息。
「おめえのせいだぞ。溜まってる俺の目の前で、あれだけ見せつけやがって」
 そんな。見せたわけじゃない。見たのはそっちの勝手じゃないの。
 けれど言えない。ぎらぎらと燃え盛るインゴーの目。
 怖じる心を励まし、腕で押し返す。脚をばたつかせる。叩く。蹴る。
「おとなしくしてろ!」
 ばしッ──と頬に感じる衝撃。
 続けて、二度、三度と平手打ちをくらい、それ以上、動けなくなった。
 服がまくり上げられ、下着をはぎ取られる。
 インゴーが自らを開放しようとする気配を感じながら、マロンはどうすることもできなかった。
3562-6 Malon III (12/13) ◆JmQ19ALdig :2007/03/31(土) 23:17:47 ID:YTiVOLMr
 股間に何かが押し当てられる。何か。あれ。男のあれ。
「ひッ!」
 指よりも、ずっと大きく、太い。
 それが、ぐいと押しつけられる。
 先には進まない。
 インゴーの舌打ち。さらに荒々しく、マロンの秘部が蹂躙される。でも、無理だ。
 ずっしりと身を圧する大人の体重に喘ぎながらも、マロンはひと筋の希望を持った。
 これなら挿入されずにすむかも……
 そうよ、あたしに入るのは、あたしに入っていいのは、一人だけ。
「んぁんッ!」
 その想いが、別のものを呼び起こしてしまう。さっきまで溺れていた快感。それが、谷間を、
しこりを突きまくる男のものに喚起されてしまって……
 どうして? 上にいるのはインゴーなのに。
 いやよ! こんな男で感じるなんて!
 だが、相手が誰かは関係なかった。すでに女の悦びを知っていたマロンの身体は、否応なく
性器への刺激を受け入れてしまっていた。自慰によるぬめりが潤滑剤となり、乱暴なはずの責めが、
なめらかな動きに変換され、かえって興奮を煽った。
 硬いものが、しこりを押す。すべる。
「あッ!……あッ!……あッ!……」
 だめ! 感じちゃだめ!
 自制もむなしく、身体は求める。刺激を。快感を。男を。
 ぐりぐりと圧されるしこり。さらなる圧迫を求めて、マロンの腰も動いてしまう。
「おめえ……」
 インゴーがあきれている。淫らなあたしに、あきれている。
 いやなのに。いやなのに。
 けれど、もう、どうにもならない。
 マロンの反応を理解したインゴーが、無謀な挿入をあきらめ、陰核への刺激に専念する。
「あッ!……あぁッ!……うぁッ!……」
 律動的な陰茎の動きに、マロンの腰も同期する。
「このアバズレが」
 インゴーのかすれ声。
 アバズレ。最大の侮辱。
 しかし罵倒すらも、燃え上がった欲情をとどめることはできない。
 いやだと思う男に腰を振るあたし。どうしようもなく淫乱なあたし。
 その自覚が、最後の一線を越えさせた。
3572-6 Malon III (13/13) ◆JmQ19ALdig :2007/03/31(土) 23:18:58 ID:YTiVOLMr
 終局に向かってマロンはひた走る。
「来る!……来るわぁ!……あ……ああッ……あああああッッ!!」
 股間の凝縮が爆発する。
 身体は硬直し、火花が全身に飛び散り、全身にしみわたるのを感じ……そして、がっくりと
力が抜ける。
 その時だった。
 まだ達していないインゴーの剛直が、抵抗のなくなった関門を、ついに突破した。
「ぅあああぁぁぁーーーッッッ!!!」
 予期しなかった衝撃に、マロンの喉から、吼えるような絶叫がほとばしった。
 気が遠くなるような痛み! 痛み! 痛み!
 が、それだけではなかった。
「うおおぉぉッッ!!」
 圧迫に耐えかねてか、インゴーも遂情の叫びをあげる。
 膣の奥底に叩きつけられる男の噴射。膣を満杯にしてどくどくと脈動する男根。その不思議な
充足感。
 身を引き裂かれた激痛とともに、かすかに、しかし確実に生じたその感覚は、快感という名で
呼ぶほかはないものだった。
 なおさら、情けなかった。
 心が急速に冷えてゆく。
 ──どうして。
 ──あたしの初めての交わりが、どうしてこんなことに。
 叫びたくなる。
 でも、これは、あたし自身のせいなのだ。
 あたし自身の淫らさゆえに、あたしはこれからも、堕ちていくしかない。
 はらはらと、涙がこぼれ落ちる。
『リンク……』
 別れ際に見た、リンクの笑顔。それはもう、あたしの手には届かない。
 脱力したインゴーの下敷きとなり、いまだ治まらない痛みに苛まれながら、マロンはむせび
泣いた。
 牧場を吹き渡る、冷ややかな風。
 すでに日は落ち、雲に覆われた空は、絶望的なほどに暗かった。


To be continued.
358 ◆JmQ19ALdig :2007/03/31(土) 23:19:47 ID:YTiVOLMr
以上です。年齢に似合わぬ言動の数々・・・まあこの話ではマロンに限りませんが。
次回の舞台はコキリの森です。
359137:2007/03/31(土) 23:35:34 ID:ZF95hFRo
欝展開の嵐なんだけど
ガノンとツインローバは時間に追われてないせいかのんびりムードで
ガノンもなんか物分りのよさそうな感じがしてきて萌え(;´Д`)ハァハァ
360名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 23:36:17 ID:ZF95hFRo
名前消しわすれてたorz
361名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 00:04:45 ID:aH2hvPIK
すげええええ
362名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 02:31:31 ID:HSgSQVDo
>>358
乙〜
ここから一番始めに投下されたプレストーリーに繋がるのか
そういえば保管庫にそのプレストーリー、保管されてしまっていたな
依頼の段階ではちゃんと省いてあったはずだけど
何にせよ続きがとても楽しみです
363名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 17:45:17 ID:RGZ18Iq/
すごく乙
364名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 09:46:22 ID:JY9XVx+h
もうすごいとしか言いようがないな
365名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 12:53:44 ID:7odtIyc7
時オカってこんな鬱だったっけ?
366名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 13:53:35 ID:w0EOKTTd
>>365
初めてリーデッド見た時は鬱になった
367名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 17:12:08 ID:DVrkjcKr
鬱と言うか
七年後の世界は適度に暗い世界観に奇妙なキャラクターで
ただシリアスとも言いがたい独特の雰囲気かな
368名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 19:47:57 ID:+RYawv/W
スタルキッド倒しちゃった時の後ろめたさは異常
369名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 11:20:51 ID:WvJ0k8sR
デクの樹様クリア後コキリ族に罵られるのは鬱
全員に話しかけたら結構キツイ
370名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 11:53:08 ID:mRd8I0ma
371名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 21:47:14 ID:XF7GXNiw
372 ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 00:24:51 ID:WlGqCr0x
私本・時のオカリナ/第二部/第七章/サリア編その3、投下します。
ツインローバ&ガノンドロフ&ファントムガノン×サリア。陵辱→死亡(一過性)。
他にガノンドロフ×ミド、ゲルド族×コキリ族の点描あり。
キャラの年齢の点も含め、人によっては抵抗を覚える内容かもしれません。
3732-7 Saria III (1/18) ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 00:26:42 ID:WlGqCr0x
 低い稜線を越え、なだらかな下り道をたどっていった所で平原は尽き、ハイラルの南東の端に
あたるその先には、深い森が広がっていた。ガノンドロフは馬を止め、目的地の方向を見定め
ようとした。が、森をなす木々は稠密で、昼間だというのに奥は暗く、見通しはきかなかった。
道らしい道すらないようだった。
「ここからは、馬では無理だな」
 ガノンドロフは呟いた。
「そうね、あたしたちだけなら飛んでいくこともできるけど……」
 傍らに馬を寄せつつ、呟きに応じたツインローバは、後ろをふり返った。
「せっかくの連れを、置いていくわけにはいかないし……」
 ガノンドロフも、従う十数騎のゲルド女たちに目をやった。
 一応、武装はしているが、今回の遠征では、戦闘はない。遠足といってもいいくらいだ。
もちろん目的はあるのだが。
「かといって、歩くのもかったるいわね。どうする?」
「燃やせ」
「え?」
 素っ頓狂な声。よほど意外だったのか。
「燃やせ、と言ったのだ」
 まじまじとこちらを凝視していたツインローバは、やがて顔に邪悪な笑いを浮き上がらせた。
「よくそんなことを思いつくわね。でも……」
 ツインローバが分裂を始める。深いアルトが、醜いキイキイ声に変わってゆく。
「いくら炎の魔道士とはいえ、あたしだけじゃ、とてもそこまではできない。助けておくれよ、
ガノンさんや」
 分裂を果たして、コウメが言う。
 ガノンドロフは頷いてみせた。箒に跨ったコウメは森に向かって、枯れ枝のように細い腕を
振りおろした。指先から勢いよく噴出する炎。右手をかざしたガノンドロフが気合いを加えると、
炎は一瞬のうちに大きく伸展され、森へと襲いかかった。
「ああ、たぶんあのあたりだねえ」
 箒で上空に舞い上がったコタケが、東の方を遠望しながら、大きな声を出した。
「目当ての場所まで燃やしちまうわけにはいかない。適当なところで、あたしが氷を降らせて
やるよ。そうすりゃ火も調節できるだろうて」
「任せたぞ」
 ガノンドロフは唇の端に薄い笑いを浮かべた。視界が赤く染まり、顔に熱風が押し寄せる。
 森は激しく燃え上がり始めていた。
3742-7 Saria III (2/18) ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 00:27:23 ID:WlGqCr0x
『森の聖域』は、今日も変わらぬ静けさを湛えていた。
 周囲を取りまく樹木の間から、みずみずしい空気が漂いあふれ、空の霞と溶け合って、廃墟と
なった神殿を、慈しむように包みこむ。枝葉の穏やかなうねり、小鳥の気まぐれなささやきが、
静謐を破ることなく調和する。どれもが欠くことのできない要素として、緊密に、しかしあくまで
優美に、唯一無二の空間を形づくる。
 その妙味を味わいながら、サリアは湿った下草を、そっと踏み歩んだ。自分の場所と決めている
切り株の前に立ち、ゆっくりと腰を下ろす。
 いつもの空間。いつもの静けさ。そして胸に宿る、いつもの想い。
 リンクが森を出て行ってから、もう一年近くになる。
 別れの時、あの吊り橋の上で、リンクは言った。「帰ってくるよ」と。
 あたしはそれを信じている。かたときも疑ったことはない。でも……
 リンクはいま、どこで何をしているのか。リンクはいつ帰ってくるのか。
 苦しい。哀しい。
 でもあたしは、想いを捨て去りはしない。いくら苦しくても、いくら哀しくても、その想いが
ある限り、二人の絆は保たれる。
『あたしはリンクが好き』
 リンクが去ってから、サリアは前にも増して足繁く、ここを訪れるようになっていた。仲間と
一緒に暮らしていると、日々の生活とかけ離れたリンクへの想いが、ともすれば色褪せてしまい
そうになる。けれども、他に訪れる者のない、この『森の聖域』では、心おきなく自らの想いを
深めることができるのだった。
 リンクとの絆の証。サリアの脳裏に、それは鮮明に焼きついている。
 別離の時の、唇の触れ合い。そこに感じた、無上の幸せ。
 あの幸せを、もう一度、感じたい。
 衣服の上から、そっと触れてみる。両胸のほのかなふくらみを。未知の内奥を秘める両脚の
分かれ目を。
 以前、いまと同じこの場所で、身にまとうすべてのものを捨て去って、あたしはそこに指を
さまよわせた。でも、その時には、まだ、わかっていなかった。
 いまは、わかる。どうすれば、あの幸せを感じられるのか。
 もっと強く、もっと深く、そこに触れさえすれば……
『だめ』
 わかるけれど、そうはしない。
 あの幸せは、リンクとともに分かち合いたい。あたしひとりのものにはしたくない。
 手を離す。
 が、離された手は、感触を覚えている。その感触が、別の思いを引き起こす。
 かつてあたしを惑わせた、乳房のほころびと、かすかな発毛。それらは兆しだった。それらが
あったからこそ、あたしはあの幸せを体験できた。
 では、なぜ、そうなったのか。
3752-7 Saria III (3/18) ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 00:28:15 ID:WlGqCr0x
 ひとつの言葉が胸を刺す。
 使命。
 デクの樹サマは言った。
『確かにおまえには、他の者とは異なるところがある。しかしそれは意味があってのこと。それが
おまえの運命であり、使命とも言えるのじゃ』
 使命とは何なのか、ずっとわからないままだった。でも、いま考えると……
 あたしの身体の変化に意味があるというのなら──身体の変化がもたらした、あの幸せの体験に
よって、リンクと絆を結んだこと──それがあたしの使命だったのだろうか。
 あれから身体の変化は進行していない。すでに使命が果たされているからなのか。
『違う』
 サリアは確信する。
 使命は果たされていない。あたしはリンクを待っている。リンクを求めている。それはリンクとの
絆が、まだ完全ではないからだ。
 リンクに再び会えた時にこそ、使命は果たされるだろう。絆は完全になるだろう。あの幸せの
体験を、さらに突きつめることによって。リンクと分かち合うことによって。その時、実際に何を
すればいいのか、まだはっきりとはわからないのだけれど。
 身体の変化が止まったのは……
『もう、それで充分だから──もう、いつでもいいからなんだわ』
 さらに、ひとつの予感。
『ここは、これからの──(そう、これからの!)──二人にとって、とても大事な場所になる』
 なぜだろう。この『森の聖域』に、何があるというのだろう。
 わからない。でも……あたしがずっとここを好きだったのは、きっと、自分でも気づかない
うちに、それを知っていたから……
 解けない部分が残ってはいるが、それでもサリアは自分の思考に満足した。
 これであたしは耐えられる。ずっとリンクを待っていられる。苦しみが、哀しみが、和らいでいく。
 けれど、なくなりはしない。
 サリアは思い出す。リンクの言葉。
『何か悪いことが起ころうとしている』
 悪いこと。
 始まりは、デクの樹の死だった。その余波は、いまもコキリの森を暗く支配している。新たな
子供が生まれないのだ。
 サリアは空を見上げた。最近めっきり晴れ間を見せなくなった空。これもまた、悪いことの
現れなのか。
 リンクは『外の世界』へと旅立った。悪と戦う使命を持って。
 悪とは何か。その正体は何か。リンクはどのように戦っているのか。どのように使命を果たすのか。
そして、あたし自身の使命が、そこにどうかかわるのか……
 その時、サリアは気づいた。
 雲に覆われた暗い空に、さらなる暗みが加わっていた。それは視界の一方の端から湧き起こり、
不気味な揺らぎをもって、森の上空一帯へと広がりつつあった。
『煙?』
 これは……ひょっとして……いや、間違いなく……
 悪の新たな現れ。
 サリアは切り株から身を起こし、急いで『森の聖域』をあとにした。どす黒い胸の騒ぎを抑え
きれないまま。
3762-7 Saria III (4/18) ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 00:29:02 ID:WlGqCr0x
 迷いの森を抜けて戻ってみると、その場は騒然となっていた。仲間たちはひとつ所に集まり、
森の西方から立ちのぼる黒煙を指さしながら、口々に切迫した言葉を交わし合っていた。
「どうしたの? あれは何?」
 駆け寄りながら問うと、みんなが一斉にふり向いた。
「あ、サリア!」
「さっきから、ああなのよ」
「森が燃えてるんだ!」
「火事!」
「煙が近づいて……」
「じきにここにも……」
「どうすればいいの? あたしたち」
「どうしよう」
「どうしよう」
「落ち着け!」
 混乱をきわめる言葉の嵐は、最後の叫びによって、はたと静まった。叫んだのはミドだった。
「俺が様子を見てくる。みんなはここにいろ」
 ミドの顔がサリアに向けられる。
「心配するな」
 サリアにだけ、かけられた言葉だった。
 ミドは視線を黒煙に戻すと、森の出口に向かう西の道へと駆けだしていった。
 誰も何も言わなかった。サリアもまた、遠ざかるミドの後ろ姿を、無言で見送った。
 ミドの言葉は頼もしかった。でも……
 そればかりではどうにもならない、圧倒的な悪が到来しつつあるのを、サリアは感じずには
いられなかった。
3772-7 Saria III (5/18) ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 00:29:35 ID:WlGqCr0x
 森の出口に近い吊り橋まで来て、ミドは立ち止まった。黒煙は空を圧するばかりでなく、
吊り橋の向こうに続く道の先にもたちこめていた。火のはぜる音も、かすかに聞こえるようだった。
 ミドはごくりと唾を呑んだ。
 俺が何とかしなくちゃいけない。コキリ族のボスである俺が。
 何とかする? いったいどうすればいい?
 仲間たちを襲った不安と惑乱は、ミドも同様に共有するものだった。それを表に出しては
いけないという強迫感が、ミドにあの一喝を叫ばせたのだったが……
 こんな時、あいつならどうするだろう──と、ミドは脈絡もなく思った。
 デクの樹サマが死にかけていた時、ひとり敢然と周囲の怪物に立ち向かい、それを倒して
デクの樹サマに駆け寄っていった、あのリンクなら。
 首を振る。
 あいつは森を出て行った。もうここにはいないんだ。だからいまは俺が……みんなを
……サリアを……
 目をしっかりと道の先に向ける。
 とにかく、確かめなければ。いま何が起こっているのかを。
 黒煙は吊り橋の先に漂いながらも、それ以上、こちらへは流れてこないようだった。ミドは
吊り橋に立ったまま、前方を凝視し続けた。
 どれくらいの時間が経過したかわからない。が、黒煙が少しずつ薄まり始めているのにミドは
気づいた。見上げると、空は相変わらず雲に閉ざされてはいたが、やはり黒煙の影は去りつつ
あるようだった。ミドは、安堵の息をついた。
 この様子なら……
 道の先から物音が聞こえた。安心しかかった心を、ミドはまた引き締めた。
 何かが来る。
 ミドの心を震わせる新たな緊張は、その何かが前方の道に出現するに及んで、最大となった。
 どう表現していいかわからない、異様な集団が、そこにあった。
3782-7 Saria III (6/18) ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 00:30:18 ID:WlGqCr0x
 ミドはあっけにとられた。
『こいつらは……何なんだ……?』
 巨大な人間たちが、見たこともない四つ足の動物に跨って、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。
先頭の動物には、巨大な中でも特に巨大な男が乗っていた。その風貌に、ミドは凍りついた。
黒く濁った皮膚。暗い炎を燃やす両眼。冷たく引き絞られた口。
 ミドの前まで来た男の、その口が開いた。
「コキリ族か?」
 短い言葉だったが、重く響く低音は、ミドの心だけではなく、身体をもぞくりと震わせた。
 男が横を向いた。同じくらいの背丈がある、これまた異様な一人の女が、動物の上からこちらに
目を向けていた。その目がついと男にすべり、女は首を横に振った。男が再びこちらを見た。
「お前の仲間はどこにいる?」
 がたがたと脚が揺らぐのを自覚しながらも、ミドは必死の思いで言葉を返した。
「何の用だ」
 男の目が見開かれ、ミドの心臓は縮み上がった。横から女がおかしそうな声で割りこんだ。
「ほらほら、びびっちゃってるじゃないの。あんまり子供を脅かすもんじゃないわよ」
 女が動物を少し前に進ませ、男に代わって話しかけてきた。
「ねえ、坊や。あたしたち、人を捜してるのよ。あんたの仲間うちにいるはずなんだけど──」
 人を捜している? 誰のことだろう。
「──だから、ちょいと仲間に会わせてくれないかしら」
 ミドは女の顔を見つめた。鋭い目つきが気になったが、口元の笑みとくだけた口調は、ミドの
気持ちを少し和らげた。それでも用心深く、ミドは訊いた。
「会うだけか?」
「ええ」
 女は表情を変えなかった。
「約束するか?」
「約束するわ」
 ミドの念押しに、女はためらう様子もなく、あっさりと答えた。
 こいつら、格好は人間のようだが、とにかくでかい。まともにやり合える相手じゃない。下手に
逆らわない方がいい。どうやら話はわかるようだし……
「ついて来い」
 ミドは心を決め、集団の先に立って森の奥へと向かった。黒煙の意味がまだ知れなかったが、
訊ねる気にはなれなかった。
3792-7 Saria III (7/18) ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 00:31:13 ID:WlGqCr0x
「はあ……のんびりしてて、いい所じゃないの」
 森を抜け、家々の建つ開けた場所に出ると、あたりを見回したツインローバが、のんきな声を
出した。先導する少年のあとからゆっくりと馬を進めつつ、ガノンドロフはツインローバに目を
やり、小さく苦笑した。
 なかなかの役者ぶりだ。
 前方に人だかりが見えてきた。子供ばかりの集団だ。
 コキリ族。森の神殿の近くで暮らす、子供のまま大人にならない種族。『森の賢者』は、
この中にいる。
 集団の前まで行くと、先導の少年はふり返った。
「仲間だ」
「これで全部?」
 ツインローバの問いに、少年は黙って頷きを返した。
「ふーん……」
 馬を降りたツインローバが、子供たちに歩み寄った。各人の顔の上を、その視線が順繰りに
移動する。子供たちはみな押し黙り、身をすくめている。一様に怯えた表情で。
 いや……
 一人の少女がガノンドロフの注意を引いた。活発そうな、整った顔立ちだ。ガノンドロフに
ひたと向けられた目は、不安に満ちているにもかかわらず、何らかの強い意志の片鱗をも宿して
いるように思われた。
 ツインローバの視線が、その少女に止まった。しばしの観察ののち、ツインローバはガノンドロフを
ふり返り、にんまりと笑いながら大きく頷いた。
 ガノンドロフもにやりと笑って見せた。ツインローバは少女に向き直り、その片腕をつかんだ。
 はっ、と少女は息を呑み、後ずさる動作を示した。が、ツインローバは斟酌せず、ぐいと力を
こめて少女を引き寄せた。
3802-7 Saria III (8/18) ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 00:33:05 ID:WlGqCr0x
「サリアに触るな!」
 例の少年が大声をあげた。ツインローバは冷たい目で少年を見た。
「うるさいね。捜してたのはこの娘なんだよ。引っこんでな」
 態度の変化に驚いたのか、少年は怯んだ表情を見せた。しかしすぐに怒りを面に現すと、両手を
握りしめ、強い言葉を放った。
「約束しただろ! 会うだけだって!」
 ツインローバがけたたましく笑った。
「約束が守られると思いこんでるところが、ガキの浅はかさだねえ」
 少年の顔がゆがみ、小さな身体が引き絞られた。飛びかかろうとしているのだ。馬から飛び降りた
ガノンドロフは、後ろから少年の両肩をつかみ、動きを封じた。少年は暴れまくったが、一歩も
動けないようにするのに、大した力は要らなかった。
 ツインローバが、ねっとりとした声で言った。
「この娘を犯るんでしょ、ガノン。でも、この幼さじゃ、いきなりは難しいかもよ。まずあたしに
任せちゃくれない? 犯りやすくしといてあげるから」
 そういう趣向もいいだろう。
 ガノンドロフが頷くと、ツインローバは草の上に腰を下ろし、サリアと呼ばれたその少女を、
後ろ向きにして膝にのせ、抱きすくめた。
「いや!」
「やめろ!」
 少女と少年の声が同時に響いた。ツインローバは声を完全に無視し、服の上から少女の身体を
撫でまわし始めた。
 ガノンドロフは、従ってきたゲルド女たちを見渡した。子供相手で戦闘の必要がないのに、
彼女らを連れてきたのには、理由があった。ゲルド族の中にも、幼い少年少女に欲情を抱く性癖の
者はいる。今回の旅は、そういう者たちへの一種の慰安という意味もあった。
 ツインローバの行為で刺激されたのか、女たちの目はどれも爛々と燃え盛っている。訴える
ような視線に、ガノンドロフは応じた。
「いいぞ」
 女たちは一斉に馬を捨て、歓声をあげて子供たちに襲いかかった。
 逃げ惑う子供たちを、女たちは嬉々として追い、次々に捕らえ、手もなく地べたに押し倒した。
服をむしり取って素肌の感触に飢えを満たす者もいれば、服ごしにゆったりと玩弄を楽しむ者も
あった。ある者は自らの秘部に相手の顔を押し当てて舌技を要求し、またある者は男の子の
下半身を露出させて未熟な陰茎をしごきたてた。張形を装着して──さすがにサイズは小ぶり
だったが──男女の区別なく、性急に陰門や肛門を犯し始める者もいた。たちまちあたりは
修羅場と化し、子供たちの悲鳴と泣訴、ゲルド女たちの嬌声と喘ぎが満ちあふれた。
 暴戻な慰安の幕開けを見届けたあと、ガノンドロフは、自分が捕らえた餌食へと注意を移した。
3812-7 Saria III (9/18) ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 00:34:22 ID:WlGqCr0x
 女に抱きすくめられ、その手が全身を這うのを感じて、サリアの身体はおぞましさに震えた。
 この人たちは、いったい誰? どうしていきなり、こんなことを?
 サリアの頭は恐慌に陥っていた。わからないことばかりだった。
 いや、ひとつだけわかることがある。
 やはりこれが、悪だったのだ。
 サリアは力の限りもがいた。しかし自分とはかけ離れた体格に備わる相手の力は強大で、
逃げようとしても逃げられるものではなかった。
 女の手が両の胸に触れ、サリアは体を硬くした。
「おや」
 女がいぶかしげな声を発した。より詳細な情報を求めるように、指が細かくそこをなぞる。
手のひらでぎゅっとつかまれる。思わず喉からかすかな呻きが漏れる。
「お前……」
 手が裾をくぐって服の下へと伸び、腹から胸へと素肌を撫で上げ、わずかな乳房のふくらみを
捉える。
「驚いたね、子供だとばかり思っていたが……」
 手がじっくりと乳房をなぶり始める。
 初めて他人にそこを触られ、サリアの心は怖気に満ちた。だが女の手つきは決して荒っぽくは
なかった。優しいといってもいいほどだった。女の手によって乳首が硬く尖っていくのを、
サリアは自覚した。
 同時に、感じた。
 あの感覚が、あの幸せの体験に至るはずの快い感覚が、身体の奥から染み出してくるのを。
 幸せ? 快い?
 そんなことない!
 サリアは激しく首を横に振った。あの大切な体験が穢されるような気がした。が、いまの感覚が、
すでに知っている快感の味と同一であることに、サリアは気づいていた。
「気持ちいいかい?」
 追い討ちをかけるように、女が言う。もう一度、首を振ろうとする。でも、できない。どうして?
 ほんとうだから。気持ちがいいから。
 認めてしまった自分が、たまらなく厭わしかった。心が屈辱にまみれた。しかし肉体をかき立てる
感覚は、もう止めようがなかった。自然に息がはずんでいた。
 いきなり服がまくり上げられ、首と腕からも引き抜かれて、上半身のすべてが外気にさらされた。
あわてて胸を隠そうとしたが、後ろから羽交い締めにされ、腕が自由にならなかった。
「これを見てよ、ガノン。どうやら──」
 女が周囲を見回す気配がした。
「──他の女の子はみんな兆しもないけど、この娘だけは、もう萌え初めてるわ。これも賢者の
しるしかしらね」
 仲間たちが襲われている様子は、すでに感じ取れていた。女の言葉で改めてそれが気になったが、
いまは自分のことで精いっぱいだ。
3822-7 Saria III (10/18) ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 01:01:11 ID:WlGqCr0x
 見られてしまう。とうとう見られてしまう。
 羞恥に揺れるサリアの目が、眼前の視線とぶつかった。
 ガノンと呼ばれた、あの男が、こちらを見ている。
 サリアは目を閉じようとした。見られたとしても、それを自分が知覚しなければ、少しは
ましだと思った。けれども実際にはできなかった。目の前で、想像を絶することが起こって
いたからだった。
 男は地面に膝をつき、後ろからミドの腰を両手で抱えていた。ミドは両手を地につけていたが、
抱えられた下半身は宙に浮いていた。下半身は裸だった。股間に突起が──女にはない、あの
突起が見えた。男の股間には、ミドのものの何倍もの大きさの突起がそそり立っていた。それが
ミドの後ろにあてがわれた。ミドが目を見開き、喉が裂けんばかりの叫びをあげた。
 どうなっているのか、すぐにはわからなかった。二人の下半身は密着している。男の、あの
大きなものは、どこにいったのか。
 考えてみて、わかった。あれはミドの体内に入っているのだ。ミドが叫んだのは、そのせいだ。
どこに入っているのかは明らかだ。入口はひとつしかない。
 吐き気がした。排泄に使う場所が、そんなことにも使われるなんて。
「よく見ておくんだよ。お前もこのあとすぐに経験するんだからね」
 女の低い声が聞こえた。
 あたしが? あたしも、あんなふうに、あれを挿れられる? あそこに?
「お前の場合は、別の方さ」
 女の手が、今度は下半身に差し入れられた。反射的に脚を閉じようとしたが、無駄だった。女の
脚が股にはさみこまれ、両脚を大きく広げられた体勢は変えようがなかった。
 下腹部の丘を撫でられる。
「はっ、ここも萌え初めかい」
 からかうような女の声。まさぐられている。そこに生える、あの短い飾り毛を。
 羞恥を感じる暇もなく、手はさらに下へと向かう。ひと筋の窪み。その奥。快感を生み出す、
その場所へ……
 身体がびくんと跳ね上がる。
 探り当てられた。自分もまだ知らなかった急所。
 押し寄せる。快感が押し寄せる。やっぱりここだった。ここにあることはわかっていた。だけど
自分では触れないようにしてきた。それなのに……
3832-7 Saria III (11/18) ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 01:02:29 ID:WlGqCr0x
 女の指が、さらなる奥へともぐりこむ。
「ここだよ。お前が破られるのはね」
 ここが? 破られる? 何に? あれに?
 指。女の指。あたしに入ってくる。あたしを押し広げる。奥の奥。あたしの中心。あたしの純潔。
 違和感。圧迫感。でも、苦痛じゃない。なぜ? そこに指を挿れられて、なぜあたしは苦痛を
感じない? それが悔しい。苦痛じゃないのが苦痛。
 聞こえる。ぴちゃぴちゃと。あたしは潤っている。あたしは濡れている。いじられて、挿れられて、
気持ちがよくて。
 そう、気持ちがよくて!
 だめ! だめ! この感覚は、この幸せは、ひとりでも、ましてや他の誰かとも、感じちゃ
いけない。だって、だってあたしは……
「リンクが好きなんだね」
 驚愕。
 どうして、どうしてこの女は、あたしの考えていることを言い当てられるの?
 わからない。でも、そんなことはどうでもいい。
 そうよ。あたしは好き。リンクが好き。
 あたしはリンクが好き!
「リンクとキスしたね」
 キス? キスって何?
「唇と唇を触れ合わせただろう」
 ああ、そう! あたしはした。リンクとした。あたしはリンクとキスをした。
 キス。キス。なんていい響き! なんてすばらしかったあの体験!
「いまみたいなこともしたのかい」
 してない! してないわ! こんなこと、リンクとも誰ともしたことない!
 でも、でも、今度リンクに会ったら……こんなことも、これ以上のことも……
 これ以上のこと?
 そうだ。わかった。いまわかった。
 あたしのそこ。リンクのあれ。それが触れ合うんだ。それが結び合うんだ。それが完全な絆に
なるんだ。
 そうしたい! そうしたい! リンクとなら! リンクとなら!
「残念だったね」
 残念? どうして?
 朦朧とする頭脳が、自分の現状を思い出す。燃え上がった心が、一気に暗転する。
 リンクじゃない。いまこの女にあたしは穢されている。これからあの男にあたしは穢される。
リンクじゃないんだ。リンクはいないんだ。
 女の指が勢いを増し、サリアは絶望に打ちひしがれつつも、次々とうち寄せる快感の波濤に
翻弄された。いつの間にか下半身の衣服も剥ぎ取られ、全裸にされていた。
 それでもサリアは抵抗した。全くなすすべもない状態であったが、サリアは自分にできる最後の
抵抗を続けていた。
 決して声は出さない。どんな目に遭おうとも。
 決して自分の中身を自分からさらけ出しはしない。たとえ形ばかりのことであっても。
 手弄に屈し、濡れに濡れ、サリアは悶え狂った。やがて圧倒的な絶頂がサリアを襲い、身体が
激しく痙攣した。
 サリアは歯を食いしばり、喘ぎ声ひとつ漏らさなかった。
3842-7 Saria III (12/18) ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 01:03:47 ID:WlGqCr0x
 激越な快感の余韻にどっぷりと浸り、サリアは弛緩しきっていた。身体も、心も、動かなかった。
 女の声が、耳に届く。
「メロメロさ。すべりはよくなってるよ」
 女はまだ自分を抱いていたが、声はとてつもなく遠い所から聞こえてくるような気がした。
 身体が浮き上がった。女の手が両脇をつかみ、自分を持ち上げたのだ。そのまま空中を移動させられ、
別の両手につかまれた。
 分厚い、ごつごつした手の感触。
 男だ。あの男だ。
 最初に見た時、わかった。全身から発する悪の匂い。そのために、あたしはこの男から目を
離せなかった。
 ミドはどうなったのだろう。男にえぐられ、聞くに耐えない叫びをあげていたミドは……
 考えたくない。見たくない。これから自分に強いられることの結末を。
 ミドも、あたしに見られたくはないだろう。
 男の腕に囚われる。膝の上に抱きかかえられて、今度は向かい合わせにさせられている。
ざらざらした男の衣服が、裸の胸に接触する。鳥肌が立つ。でも、両の乳首だけは、やっぱり、
感じてしまう……
 下半身は、生の接触。露出されたままの、男のあれ。あの長い棒の上に、あたしの割れ目が
跨っている。
 そこはまだ、濡れている。濡れ続けている。濡れて、すべる、その感触が──ああ、感じたく
ない──でも、やっぱり、やっぱり……気持ちいい……
 感じることへの嫌悪感が薄らいでいる。
 どうしようもない。あたしの身体は、もう、感じるようになってしまっているのだから。
 けれど……けれど……心は……心だけは……
 男のあれが、びくりと動いた。サリアの意識はそちらへ引き寄せられた。
 硬い。太い。
 こんなものが、あそこに入るとは思えない。指ならまだしも。
 そこに生じるであろう感覚を想像し、サリアが身を震わせた時──
 男が両脇を持ってサリアを浮かせた。股間の窪みに先端があてがわれた。男の手が荒々しく
サリアを下に押しつけた。
 かっ──と口が開く。これ以上ないほど大きく。
 ぎゅっ──と目が閉じる。これ以上ないほど強く。
 挿れられた! 挿れられた! 挿れられた!
 その衝撃。その苦痛。想像をはるかに超えた、激甚な破壊の感覚!
 全身の筋肉が引き絞られる。身体が石のように硬くなる。
 動かない。身体が動かない。動かす気にもなれない。なりようがない。
 こちらの様子など全く知らぬげに、男は両脇をつかんだまま、一方的にあたしを上下させる。
上下させる。激しく激しく激しく!
 すべる。すべる。男のあれが、あたしの中ですべる。
 でも、気持ちよさなんかない! 痛い! 苦しい!
 このまま死ぬのではないか──と、サリアは思った。
 強く閉じられた目蓋の間から、とめどなく涙がこぼれ落ちた。が……
 限界まであけられた口を、サリアは閉じた。ぎりぎりと噛み合わされる歯は唇をも巻きこみ、
噛み破られた粘膜から、乾ききった口の中に、唾液とは異なる液体が染み出した。血の味がした。
 男の動作はいよいよ速くなり、それはサリアの中で暴虐の限りを尽くした。
 サリアは耐えた。
 やがてそれはぐんと膨張し、生き物のように脈動しながら、サリアの中に、おぞましい何かを
噴出させた。
 サリアは耐えきった。
 耐えきれたことがわかって、サリアはやっと、緊張を解いた。
3852-7 Saria III (13/18) ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 01:04:45 ID:WlGqCr0x
 ガノンドロフは、だらりと緩んだサリアの身体を持ち上げ、陰茎を引き抜いた。陰茎は破瓜の
血に染まり、膣からは同じ血を混じた精液がどろりとしたたり落ちた。
 それを見てしまうと、興味はなくなった。嗜虐の快感を満たすのに子供はもってこいだが、
あとをひくほどの美味ではない。ただひとつ、サリアが一声もあげなかったのが奇異に感じられたが。
 サリアを草の上に放り出し、ガノンドロフは立ち上がって、あたりを見回した。ツインローバは
少年の腰に跨り、ぐいぐいと股間を押しつけながら絶頂しているところだった。少年は気を失っていた。
 他の連中も、あらかた欲望を発散し終えたようだった。子供たちの弱々しい泣き声が聞こえて
いたが、数は少なかった。ほとんどの子供は、そこの少年と同じように気を失ったか、声も
出せない虚脱状態にされてしまったのだろう。
 情欲を満たし終えたツインローバが歩み寄ってきた。
「さて、ガキどもをどうする?」
「始末しろ」
 言い捨てる。
「いいの? 性奴隷にはもってこいだと思うけど……」
 未練ありげなツインローバだが、
「連れて帰るには手間がかかりすぎる」
 ぴしゃりと拒否する。
「そうね……子供の性奴隷なら、どこだって手に入るか」
 さばさばした調子でツインローバは言い、つと歩を進めると、散った面々に大声で指示を出した。
 殺戮が始まった。ゲルド女の一団は、無抵抗の子供たちを、次々と刃の餌食にしていった。
 目を細めてそれを眺めていたガノンドロフの耳に、ツインローバの声が聞こえた。焦りの色があった。
「あの娘はどうしたの、ガノン?」
 ふり向くと、草の上にサリアの姿がなかった。
 いつの間に。気絶したと思っていたが……
 周囲には見当たらない。
 まずい。確実に命を奪っておかねばならない相手なのに。
「あそこだ!」
 声を張り上げるツインローバ。森の北側を指さしている。目をやると、高台を走ってゆく全裸の
少女が見えた。その姿はすぐに森の中へ消えた。
 ツインローバが瞬時に分裂し、箒に乗った二人の姿となって、サリアの消えた場所へと、
もの凄い速さで飛んでいった。ガノンドロフも急いでそのあとを追った。
3862-7 Saria III (14/18) ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 01:05:23 ID:WlGqCr0x
 三人は森へ入った。木々が鬱蒼と茂り、細い道が複雑に絡み合う、そこは迷宮だった。サリアの
足取りは全くわからなかった。
「上だ!」
「上から見るんだ!」
 コタケとコウメが宙に舞い上がった。
「だめだ」
「見えない」
「木が多すぎて」
「葉が茂りすぎてて」
「「道が見えない!」」
 二人は狼狽の声をあげ、上空をやみくもに飛び回った。が、やがてその動きがぴたりと止まる。
「コウメさん、あれを見てごらんよ」
「コタケさん、ありゃあ何じゃな」
「わからないかね、あの建物」
「北にある、あの石造りの建物」
「あれだよ」
「あれかい」
「「森の神殿!」」
 聞き苦しい叫びが重なった。
「あの娘はあそこへ行ったんだ」
「賢者が神殿に惹かれて」
「そうだ、あたしらも」
「そうだ、飛ぶよ」
「ガノンさんや、早くあんたも」
「まあ待て」
 ガノンドロフは落ち着きを取り戻していた。行き先がわかるなら、あわてる必要はない。
 いったん失われたサリアへの興味が、再びふつふつと湧き上がっていた。
 まだ楽しませてくれるとは。
 右の人差し指を立て、くいと曲げる。何の前触れもなく、目の前に空間に黒い霧のような無数の
粒子が現れ、みるみるうちに凝縮して、ひとつの大きな影となる。
 暗黒に染まったおのれの姿。
「行け、ファントムガノン。わが分身よ」
 影が空に躍り上がった。驚く二人の老婆を尻目に、影は北の方角へと飛び去っていった。
3872-7 Saria III (15/18) ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 01:06:11 ID:WlGqCr0x
 サリアは迷いの森を駆けた。全裸であることは、気にもならなかった。股間が血に染まり、
ずきずきと痛み、走るには相当の忍耐が必要だった。仲間たちの悲惨な最期にも、胸が引き裂かれ
そうになった。それでもサリアは走りやめようとはしなかった。
 あたしには、しなければならないことがある。
 使命。あたしの使命。
 あたしは穢された。でも、あたしはまだ、ここにいる。
 あたしがどうなったとしても、あたしがいる限り、使命は果たせるはず。
 あたしは待つ。リンクを待つ。リンクは必ず帰ってくる。
 どうすればいいか、あたしにはわかる。なぜかはわからないけど、わかる。
 二人にとって、とても大事な場所。何かがある。あそこには。
 ともすればもつれそうになる脚を、サリアは必死に前後させ、ひたすら駆けた。駆け続けた。
木々に閉ざされていた風景が開け、その場所に到達するまで、サリアの脚は止まらなかった。
『森の聖域』に着き、サリアは、ほっと息をついた。その瞬間、正面に立つ神殿の廃墟が目に
入った。サリアの意識に、それは深く食いこんだ。
 神殿。いつも見ている神殿。いまはなぜか、それから目を離せない。
 どうして? 何があるの? あの神殿に何があるの?
 思い出す。女の言った言葉。賢者。あたしは賢者。
 神殿。賢者。そして使命。この不思議な暗合。
『神殿へ行かなければ』
 理由も知れず、サリアは確信した。
 でもどうやって? 神殿の入口は高い所にある。あたしには届かない。
 待って。方法はある。入口のそばに木が立っている。何とかしてその木に登って……
 サリアが木に走り寄ろうとした、その時。
 頭上から黒い影が舞い降り、サリアの前に立ちはだかった。サリアは愕然とした。
 あの男だ!
 迷いの森を追いかけてはこられないと思っていたのに。
 よく見ると、あの男とは違っていた。顔が人間のそれではなく、髑髏のような仮面で覆われていた。
だが全身から発散する悪の匂いは、あの男のものと寸分たがわなかった。
 影がゆっくりと近寄ってきた。サリアはじりじりと後ずさりしながら、周囲の状況をうかがった。
 逃げられる場所があるだろうか。
 ない。
3882-7 Saria III (16/18) ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 01:07:13 ID:WlGqCr0x
 サリアは身をひるがえし、引き返そうとした。が、決断はわずかに遅れ、背を向けた瞬間、
肩に手をかけられた。強烈な力がサリアを組み伏せた。背が地面に押しつけられた。
 影がのしかかってくる。両脚を開かれる。影のそれが股間に触れる。
 まただ。また穢されるんだ。ここまで来たのに。やっとここまで来たのに。
 力が入らない。もういい。どうにでもするがいい。
 でも、最後の抵抗だけは続けてやる。
 割れ目を押し分けて、それは一気に侵入してきた。すでに開通し、残る快感の液体と血による
潤みにも助けられてか、それは楽々とサリアの中に収まった。しかしサリアの知覚は楽々どころでは
なかった。裂傷面が摩擦され、先ほどに劣らぬ苦痛がサリアを襲った。
 でも、これなら、まだ、耐えられる。
 再びサリアは歯を食いしばった。
 そのまま時間が過ぎた。のしかかる影は疲れを知らぬがごとくに運動を続け、サリアの意識は
遠くなった。それでも声は出さなかった。
 耐え続けるサリアの耳に、草を踏む足音が聞こえた。
「俺の分身だけあって、欲望には限りがないな」
 自嘲するような声音。本人だ。あの男、本人が来たんだ。
 影がサリアを抱き起こし、仰向けとなった。サリアは影に貫かれたまま、その上でうつ伏せの
格好になった。
「見ていたはずだな。お前にも、この味を教えてやる」
 自分に向けられた言葉だと気づくのに、しばらく時間がかかった。
 見ていた? 教えてやる?
 男が背後から近づく気配がし、影に挿れられた部分のすぐ後ろに、硬いものが接触した。
 ミドと同じことをされるのだ──と、サリアは気づいた。力の抜けていた身体が、再び固まった。
また吐き気がした。そこがこんな行為に使われることが、いまだに信じられなかった。二つの
ものを同時に受け入れるという行為も、サリアの理解を完全に超えていた。
 男のそれは、サリアが全力ですぼめた部分を着実に押し開いた。先端が入ったと思われた瞬間、
それは猛然と突進し、サリアの尻を貫き通した。
「!!!!!」
 今度こそ死ぬ──と、サリアは思った。
 すでに限界に近かった下半身の容量が、いまは限界以上に拡張されていた。サリアの下腹の中で、
二本のそれは同期しながら、めちゃめちゃに踊り狂った。痛み以上の痛み、苦しみ以上の苦しみが、
サリアを打ち砕いた。
 もう、耐えられない。これ以上、口を閉じてはいられない。声を出せば、この限りない苦痛も、
少しは和らぐかもしれない。でも、出すのなら……
 自分に科した戒めを破り、ついにサリアは、言葉を口にのぼらせた。
「……助けて……おねがい……」
3892-7 Saria III (17/18) ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 01:08:19 ID:WlGqCr0x
 サリアの声を聞き、ガノンドロフは内心にんまりとした。
 けなげにも陵辱に耐えてきた幼い少女に、とうとう哀願の言葉を吐かせてやった。もちろん、
助けてやる気などない。実現しない望みをこいねがう、哀れな獲物のむなしい言葉こそが、欲望の
放出を彩る最高の装飾なのだ。
 ガノンドロフは、いっそう残酷に剛直を抜き差しした。下から子宮を突き上げるファントムガノンの、
おのれと同等の逸物の動きが、薄く膜状に引き延ばされた筋層を通して、直腸をえぐるこちらの
ものに伝わってくる。二本の肉柱は際限なく暴威を奮い、陰部も肛門も血まみれだった。対して
サリアの全裸の皮膚は、蒼白となっていた。
 いったん口を割ったサリアは、堰を切ったように言葉を吐き続けた。
「助けて」
「おねがい」
 語彙は二つだけだったが、ガノンドロフはその響きに酔いしれた。いよいよ限界にさしかかり
始めた時、異なる言葉がサリアの口からかすかに漏れた。
「きて」
 と聞こえた。胸が躍った。
 いいだろう。
 ガノンドロフは最後のスパートをかけた。ファントムガノンも同調させる。二重の残虐な攻撃が、
最大限の速さで完結しようとした、その時。
 サリアが明瞭な声で叫んだ。
「助けて! おねがい! 助けにきて! リンク!」
 声が二つの射精に重なった。
 ガノンドロフの心は急速に硬化した。射精の快感は霧散した。
 余韻に浸る気にもなれず、ガノンドロフは乱暴に陰茎を肛門から引き出した。サリアの身体を
つかみ上げ、ファントムガノンからもぎ離す。そのまま地面に叩きつける。
 サリアの声は、哀願ではなかった。自分に向けられたものではなかった。助けを求めるまっすぐな
声だったのだ。あの小僧に向けての!
 虚仮にされた気がした。サリアにそのつもりはなかったとわかってはいるが、どうにも我慢が
ならなかった。
「助けになど、くるものか」
 吐き捨てる。
 地べたに這いつくばったサリアの顔が、のろのろと持ち上げられる。顔さえも血にまみれた
サリアは、しかし目に強い意志を湛えて、こう言った。
「リンクは、来るわ」
「来ん!」
「来るわ!」
 短くも激しい言葉の応酬。
 しばしの沈黙をはさんで、ガノンドロフは言う。
「たとえ来ようが、お前は助からん」
 サリアは黙っている。
「あの小僧とて、俺が殺してやる」
「いいえ!」
 サリアがさえぎった。続けて、サリアは身を起こした。脚を震わせ、息を切らせながら、
長い時間をかけて、サリアは立ち上がった。そして、冷ややかな声が、サリアの口から発せられた。
「リンクが、あなたを、滅ぼすわ」
 瞬間、ガノンドロフの頭は沸騰した。傍らに置いた剣を鞘から引き抜き、サリアに向け、
力まかせに振りおろした。剣は袈裟懸けにサリアを斬り裂き、その身体は再び地面に倒れた。
3902-7 Saria III (18/18) ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 01:10:01 ID:WlGqCr0x
 斬られた痛みは感じなかった。死という意識すらなかった。
 ──使命を……果たさなければ……
 ──リンクに……伝えなければ……
 ──この悪の……存在を……
 地に伏し、消えてゆく意識の中で、サリアは遠く呼びかけた。
『……助けて……リンク……』
 それが最後の想いだった。

 ガノンドロフは、地面に横たわるサリアを、じっと見下ろしていた。胸の中は、まだ荒れていた。
 ふだんなら、こんな小娘のたわごとなど、鼻で嗤って聞きとばすところだ。それが、いまは
異常に気に障った。
 あの小僧のことが気に障った──としか言えない。
 この俺が?
 ファントムガノンが立ち上がるのが見えた。いらついた気分で指を振り、その姿を消す。
「殺ったのかい」
「殺ったんだね」
 二人の老婆の姿で、ツインローバが舞い降りてきた。喜色にあふれた二人の表情さえもが
鬱陶しかった。
「燃やせ」
 短く言う。
「は?」
「え?」
 飛躍した言葉が、ツインローバには理解できないようだった。
「森を全部、燃やしてしまえ」
 この小娘の死体ごと──とは言えなかった。
「はいはい、いつものように」
「はいはい、徹底的にね」
 おどけた声を出すツインローバ。その片割れのコウメが、腕を振り、指先から炎を噴出させる。
荒れた心のまま気合いを加えると、炎は爆発的な勢いで、一気に森を燃え上がらせた。
「おお危ない。どうしたんだね、ガノンさんや」
「ほんにどうしたこと。なんぞ気にそわぬことでも?」
 のんきなツインローバの言葉に返事もせず、ガノンドロフは紅蓮の炎を見つめていた。
『リンク……か……』
 いずれ奴は戻ってくる。俺の前に立ちふさがろうとして。
『来るがいい』
 唇の端に、笑いを浮かべる。が、苦いつかえが、胸に残る。
 いまや森は全域が轟々と炎上し、壮大な破滅の姿を現していた。
 それを黙然と見やりながら、破滅というその言葉を、ガノンドロフは複雑な思いで反芻していた。


To be continued.
391 ◆JmQ19ALdig :2007/04/11(水) 01:11:11 ID:WlGqCr0x
以上です。ガノンドロフでサリアをいかせる気にはなれませんでした。やはり。
次回は西へと舞台が飛びます。
392名無しさん@ピンキー:2007/04/11(水) 01:18:14 ID:I1/K/tDB
GJ!
393名無しさん@ピンキー:2007/04/11(水) 01:34:11 ID:i0Ds38j7
GJ
毎度ストーリーがよく作られてますなぁ
394名無しさん@ピンキー:2007/04/11(水) 01:57:38 ID:Xo2q8mLt
毎回素晴らしいSSです
GJ!
395名無しさん@ピンキー:2007/04/11(水) 05:50:27 ID:Lx3X6ctn
ガノン・・・


ぶち殺すぞ(^ω^#)
396名無しさん@ピンキー:2007/04/11(水) 08:27:53 ID:7eS3ob6c
乙!
サリアに惚れなおしました
397名無しさん@ピンキー:2007/04/11(水) 23:44:59 ID:jzuLoZAP
GJ!
ゴロン、ゾーラに続いてコキリ族も絶滅…ガクブル
次回は西ということで、いよいよ最期の賢者ナボールかな?wktk
398名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 02:38:21 ID:0KPXzlsN
ガノン大人げなさ過ぎでちょっとだけワロタ
399名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 20:57:46 ID:embmw9WL
凄くGJ
400名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 22:08:29 ID:rkwYtW+d
GJ!GJ! 次も期待して待ってます!
401名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 03:31:57 ID:hGKRxph9
超GJ!
サリアの健気さが最高にいい!
402名無しさん@ピンキー:2007/04/14(土) 17:30:25 ID:5vlHXtNn
保管庫更新しないの
403名無しさん@ピンキー:2007/04/15(日) 21:56:16 ID:jpc5lEXQ
誰かトワプリネタもっと書かないか?
ミドナとイリアは既出だが、個人的にはアッシュをぜひ読んでみたい。
404名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 11:05:15 ID:7kBB1CXf
アッシュか…、難しいチョイスだな。だが見たいのも事実。
ミドナやイリアに比べて格段に一緒にいる時間が少ない&普段からミドナが一緒にいるのがネックだな。
ED後に1人旅中のリンクがアッシュに惹かれるとかそういうシチュになるのか?
405名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 12:24:38 ID:nZllyJ1h
ED後に失意のリンクをアッシュが口説く
406名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 13:40:19 ID:41TIzHpC
アッーな流れか
407名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 14:21:19 ID:GuGWFAhC
ED後だけにEDなリンク
408名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 19:11:48 ID:NJRz8FoT
>>404
アッシュ以外のキャラでも同じ問題があるんだよな。

1.ミドナ込みでも成り立つ設定を考え出す
2.ミドナのいない時期(ED後とか)を舞台にする
3.いっそミドナを完全無視
4.リンク以外のキャラと絡ませる

こんなところかな。俺的にはミドナ無視でもおkだが。
409名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 19:35:03 ID:mIA05rq4
ミドナ、犬リンクが少女の匂いたどってるときに
メスのニオイがなんちゃらってリンクに言ってなかったっけ。

あんな感じでリンクの恋路を高見の見物でからかってきつつ、
2人の関係が深まっていくにつれ徐々にとりみだしていくミドナとか。

いかんこれではミドナツンデレ描写ものになってしまう
410名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 19:56:38 ID:c5tFLe/+
やはり理想はED後だろうな
411名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 20:04:44 ID:gBPl5FNL
ED後ならリンクは傷心で落としやすいからな
412名無しさん@ピンキー:2007/04/17(火) 12:02:10 ID:CY28138P
ミドナ以外なら普通に
どこかで休憩中にミドナだけ眠ってしまう→リンクだけが一時的に放浪
でいいんじゃないか?
413名無しさん@ピンキー:2007/04/18(水) 16:37:44 ID:eVF0HMzb
あぁ、相棒系がいるのではよくあるパターンだな
414名無しさん@ピンキー:2007/04/19(木) 12:51:47 ID:J7w8syIe
そこで羞恥プレイですよ

リンクミドナ喧嘩

ミドナ「ロクにメスと交わった事のない勇者が偉そうに言ってくれるな」
リンク「言ったな。見てろ」
ミドナ「何だよ…。アイツは雪山で会った大柄な女じゃないか…ってまさか!よせ!ワタシの目の前で何するつもりだー!」
アッシュ「アッー!」
リンク「アッー!」
ミドナ「うわーっ!」

ごめんなんでもない
415名無しさん@ピンキー:2007/04/19(木) 16:25:32 ID:XiAq0z5L
ミドナ「ぬわーっ!」


に見えた
416名無しさん@ピンキー:2007/04/19(木) 23:20:36 ID:UUI0ysA4
>>415
パパスか!
417名無しさん@ピンキー:2007/04/20(金) 04:46:09 ID:y75Qu3ID
>>414
大柄な女って…
ミドナ様?
418名無しさん@ピンキー:2007/04/20(金) 10:00:33 ID:Ad7zFC+8
マトーニャかと思った。いわゆる不倫に走ったリンクなのかと。
419名無しさん@ピンキー:2007/04/20(金) 10:39:49 ID:feWF6+rn
いいなそれ
420名無しさん@ピンキー:2007/04/20(金) 21:59:40 ID:xaJThJ0V
そこに現れる獣人ドサンコフ

リンクが勝てる気がしないw
421 ◆JmQ19ALdig :2007/04/21(土) 11:52:02 ID:XKZK7zEv
私本・時のオカリナ/第二部/第八章/ナボール編その2、投下します。
ガノンドロフ×ナボール。陵辱(なのか?)→生存。
他に女×女の短い描写あり。
註:『副官』=大人時代のゲルドの砦にいる親分格のゲルド女、という設定。
「さるさん規制」のため、投下途中で一度、少し間隔が開くと思います。
4222-8 Nabooru II (1/13) ◆JmQ19ALdig :2007/04/21(土) 11:53:30 ID:XKZK7zEv
 仲間を探るのは気が進まないが──と言いながら、ツインローバは各地を巡って、ゲルド族
全員の調査を行った。『魂の賢者』はゲルド族の中にいる、と確信していたからだった。しかし
それは徒労だった。綿密に調べ上げたにもかかわらず、『魂の賢者』は発見できなかった。
「まあ予想はしてたのよ。そいつがリンクに出会っていなけりゃ、賢者のオーラは発しないから、
あたしが見ても賢者と知ることはできない。ところが仲間のほとんどは、リンクに会ったことが
ないときてる。万一、と思って調べてはみたけど、やっぱり無駄だったねえ」
 と愚痴りながら、ツインローバはガノンドロフに渋面を作って見せた。
 一戦を交えたあと、一息ついている時だった。ハイラル城の奥まった所にある、先の国王の寝室。
豪奢な寝台は、大柄な二人がくんずほぐれつの絡み合いを繰り広げても、充分の余裕がある
大きさだった。二人はいま、その寝台の中央で、全裸のまま寄り添い、横たわっていた。
「まだ調べていない仲間が残っているのか?」
 ガノンドロフはツインローバの肩に回した手を、片方の乳房に移しながら訊いた。ツインローバは
それを気にもとめない様子で答えた。
「ええ、いるわ。砦に残っている連中よ」
 声に秘めた意図が感じられた。
「あいつらがリンクに会ったことがあるとは思えないけど……それでも一応は調べとかないと」
 そこでツインローバはガノンドロフに顔を向け、意味ありげな視線を送ってきた。
「なにせ砦には、ナボールがいるからね」
 ガノンドロフは黙っていた。
 ツインローバは以前から、俺と身体の関係を結ぼうとしないナボールに対して、不審を抱いていた。
反乱勃発のあと、ナボールは断りもなく砦へ戻ってしまい、それがツインローバの不審を強めている。
反乱後はいろいろと忙しく、また特に実害もないので、放置してきたのだが……
 ぶつぶつとツインローバが言葉を続ける。
「あいつはどうも怪しい。これまで機会がなかったが、一度、心を読んで確かめとく必要がある」
「ナボールが『魂の賢者』だというのか?」
「それはわからないがね。だが、そうだとしても、あたしゃ驚かないわよ。ゲルド族の中で
あんたに反抗しようと思う奴がいるとしたら、ナボールくらいのものだろうさ」
 俺に反抗する──か……
 ガノンドロフはひそかに微笑した。
 確かに、そんな根性があるのはナボールだけだろう。が、それほどの根性の持ち主であるからこそ、
俺はナボールを買っているのだ。
 俺への反感に満ちたあの顔を、陶酔の色で塗りかえてやりたい──という思いは、前からある。
しかし単なる欲情だけではない。ナボールは腕が立つ。根性もある。身も心も強い女だ。ああいう
女をものにして、そばに置いておければ楽しいだろう。前に一度、犯す機会をつかみながら、
惜しいところで逃がしたことがあったが、その時の様子では、あいつも満更ではなさそうだった……
 俺がこんなことを思っているのを知ったら、ツインローバはどう言うだろう──と考えて、
ガノンドロフは再び心の中でにやりとした。
 つまらぬ嫉妬を燃やすような女ではないが、パートナーとしての立場がある。いまも何とは
なしに、俺に疑惑の目を向けているようだが……俺の魔力がツインローバのそれを上回った現在では、
ツインローバが俺の心を読むことはできないのだ。
「なに考えてるのよ」
 いらいらした調子で、ツインローバが言った。
 やはりな──と心でほくそ笑みつつ、表情は硬く保ったままで、ガノンドロフは鷹揚に答えた。
「必要なら、いくらでも調べろ」
 ついでに挑発してやる。
「俺もナボールには会っておきたいからな」
 ツインローバの目が光った。何か言いたげだったが、それを待たず、ガノンドロフはツインローバの
身体をうつ伏せにした。張った腰を後ろから持ち上げ、次いで、ずっしりと重い乳房を両手で
受け止める。
「もう……ほんとに……強いんだから……」
 甘えた声。俺に抱かれるのが、そんなに嬉しいか。
 どろどろに熔けた部分を、怒張で撫でてやる。
「ああ、ガノン……今度は……後ろで……後ろでしてぇ……」
 言われなくてもそのつもりだ。こういう欲求が一致するのは、やはり貴重な相棒だからこそだな……
 身勝手な感想でおのれを高揚させつつ、ガノンドロフはツインローバの肛門に、硬い剛直を
突き入れた。
「ひぃぃッ! ガノォンッ! いいわ! いいわぁッッ!!」
 悲鳴混じりの叫びが寝室に響き渡った。
4232-8 Nabooru II (2/13) ◆JmQ19ALdig :2007/04/21(土) 11:54:35 ID:XKZK7zEv
「はッ!」
 掛け声とともに、馬は走り出す。速度を上げつつ、右に向けて弓を構える。近づく的に目を据える。
弓をぎりっと引き絞る。
 まず一矢。
 即座に矢立から矢を取り、次の的へ一矢。さらに次。さらに次。
 一寸の乱れもなく、一寸の無駄もなく、リズミカルに、敏捷に、腕が舞い、矢が放たれる。
 的が尽きた所で速度を緩め、ぐるりと弧を描くように馬を戻し、成績を確認する。矢はどれも
確実に的の中心を射抜いていた。
「お見事。姐さん」
 出発地点に戻ると、『副官』が拍手で迎えてくれた。
「相変わらず、流鏑馬の腕は抜群だね」
「ありがとよ」
 敢えてぞんざいな口調で、しかし顔には素直な笑みを浮かべ、ナボールは『副官』に礼を言った。
馬を降りると、『副官』が汗を拭く布を差し出した。手にとって顔を拭う。拭い終わると
『副官』は布を引き取り、代わりに水筒を渡してくれた。ナボールは『副官』に頷きを返し、
ぐいと水をあおった。
「あっちの様子はどうだい」
 喉を潤したあと、ナボールは訊いた。『副官』は生活に必要な物資を仕入れに、ハイラル平原の
仲間たちの所へ出かけていて、今朝この砦に帰ってきたばかりだった。
「うまくやってるよ。奴隷どもをこき使って、左うちわの生活さ。みんな言ってた。『これも
ガノンドロフ様のおかげだ』ってね」
 ナボールは返事をしなかった。ガノンドロフの名前を聞くと、重い感情が心に湧くのを抑える
ことができない。
 嫌悪と。不安と。そして恐怖と。
 嫌悪は以前からあった。女は自分に屈従するのが当然と言わんばかりの態度。強い女である
ことに誇りを持つあたしは、そんな態度にずっと反感を抱いてきた。
 不安もしばらく前から続いている。王国を滅ぼして、ガノンドロフはハイラルの支配者となった。
ゲルド族としては万々歳だ。ところがあいつは、まだそれ以上の何かを求めている。そう、危険な
匂いのする何かを。
 そして恐怖。
 反乱勃発の時、ハイラル城の玉座の間で、ゲルド族の中でもとりわけ肝が太いと自負する
あたしですら正視に耐えないような虐殺を、ガノンドロフは平然とやってのけた。その顔に
浮かんでいた、あの笑い。あれはとても、人間のつくることのできる笑いではなかった。
『こいつはもう、人として立ち入ってはならない領域に踏みこんでしまった』
 あの時、あたしはそう思った。
 ガノンドロフは魔王と呼ばれている。魔力を駆使するゲルドの王として。でもそれだけじゃない。
あいつはすでに人間じゃない。「やばすぎる」もの。そう、その異名のとおり、魔になって
しまったのだ。あたしはそれをこの目で見た。
 こいつのもとにはいられない。
 そう決意したナボールは、反乱のどさくさに紛れ、ガノンドロフの許可も得ず、強引に連絡役を
買って出て、ゲルド族の本拠地である砦へと舞い戻ったのだった。やがて仲間たちが大挙して
ハイラル平原へ移住していったのちも、今度は留守居役と称し、砦に居座り続けた。
 武芸に優れ、さっぱりとした気性の持ち主でもあるナボールは、もともと仲間たちに人気が
あった。中には少数ながら、ナボールと同様、ガノンドロフに面白からぬ感情を抱く者もおり、
ナボールは自然とそういう連中のリーダー格となった。いまも砦に残るのは、ナボール党とでも
言うべき、二十人ほどの、その集団のみだった。
 中でもナボールに懐いているのが『副官』だった。もちろん本名はあるのだが、リーダーである
ナボールとの意気投合ぶりがあまりに目立つことから、他の連中はからかい半分に、しかし
心からの愛着もこめて、彼女を『副官』と呼ぶようになり、いまではそれがすっかり彼女の
名前として定着していた。
4242-8 Nabooru II (3/13) ◆JmQ19ALdig :2007/04/21(土) 11:55:32 ID:XKZK7zEv
 ナボールは、その『副官』が引用した言葉を反芻した。
『これもガノンドロフ様のおかげだ』──か……
「その『おかげ』とやらが、いつまで続くか……」
 語りかけのつもりではなかった。が、『副官』はその言葉に反応した。
「どういうこと?」
「いや……」
 ナボールは言葉を濁した。自分がガノンドロフに対して持つ嫌悪は、ここの連中も、もちろん
『副官』も、共有している。だが不安や恐怖は、これまで自分だけの胸にしまってきたもので、
誰にも漏らしたことはない。『副官』は信頼できる相手だし、自分の思いを理解して欲しくも
あるが、それらはまだ漠然としていて、どう話したらいいのか、自分でもよくわからないのだ。
「いまは、いいかもしれない。だけど……」
 とりあえず、そう言ってみる。言いながら、考えを整理する。
 いまは、いいかもしれない。平原へ移住した仲間たちは、ガノンドロフのおかげで安楽に
暮らしている。だが、その安楽な暮らしが、はたして今後も保たれるのか。
 そうは思えないのだ。
 ガノンドロフなら──文字どおり魔王と化した、あのガノンドロフなら──自分の欲望を満たす
ためには、仲間のことすら、斟酌したりはしないのではないか。その欲望の対象が何なのかは、
わからないのだが……
「結局、あいつは自分のことしか考えていないのさ」
 結論だけを言う。自分でも舌足らずだと思う。言いたいことは伝わるまい。
 そうではなかった。ナボールの言葉にすぐとは答えず、『副官』はじっくりと何かを考えている
様子だったが、やがてぽつりと言葉を返した。
「トライフォースのこと?」
「トライフォース?」
 ナボールは思わず問い返した。
 トライフォース。初めて聞いた、その言葉の響きが、なぜか心に深く突き刺さった。
「何だい、そのトライフォースって?」
「知らなかったのかい? ガノンドロフのおっさんが、えらくご執心のものだって、あっちの
仲間うちじゃ、もっぱらの噂だよ」
 聞けば、トライフォースとはハイラル王家に伝わる秘宝で、それを手にした者は世界を支配
できるという。ガノンドロフはその一部を手に入れたが、いまだ不完全な状態であり、それを
完全にするべく、躍起になっているのだとか。失踪したゼルダ姫の探索も、それに関係しているらしい。
 世界を支配できるって……あいつはまだ満足していないのか? ハイラル全土を手中にしたいまも?
 そのトライフォースとやらが、危険な匂いのする何かだったのだ、と、ナボールは悟った。
ガノンドロフの限りない欲望の対象。自分の持つ不安の正体。
「うさんくさい話さ」
『副官』が鼻を鳴らした。
「どれほどのお宝かは知らないけど、妙ちきりんなことに熱中して……はたして仲間のためになる
ことなのかどうか……」
 直截な物言いが自分に似ている。考えていることも同じだ。
 ナボールは改めて『副官』への近しい思いが増すのを感じた。そんなナボールの思いに気づく
余裕もないように、『副官』は不満げな表情で話題を変えた。
「そうそう、こんな話もあるよ。天気のことなんだけどね」
「天気?」
「ああ。ここは今日もいい陽気だし──」
『副官』は空にちらりと目をやった。太陽がきつい日差しを振りまいている。
「──平原でも、仲間たちの住むあたりは、格別どうということはないんだが……他の地方じゃ、
一日中、空が分厚い雲に覆われてて、やけに鬱陶しい天気なんだってさ。おまけにそういう所じゃ、
昼間から魔物がうろつくようになって、物騒きわまりない状態らしいよ」
4252-8 Nabooru II (4/13) ◆JmQ19ALdig :2007/04/21(土) 11:57:33 ID:XKZK7zEv
 そこでいったん言葉を切り、『副官』はナボールに深刻そうな顔を向けた。
「ねえ、姐さん……こんなことで、ほんとうにいいのかな? どこかおかしくないか?」
 ナボールは冷静に訊き返した。
「あっちの仲間たちは、そのことについて、何て言ってるんだい?」
「自分らの住む所が平穏無事なら、それでいいんだろうさ。よそのことなんか、気にとめちゃあ
いないよ」
 憤懣やるかたないように表情をゆがめ、『副官』は吐き捨てた。
 どこかおかしくないか、という『副官』の言葉に、ナボールは深い共感を覚えた。
 おかしい。明らかに。
 気候の変化。魔物の跳梁。それらがガノンドロフの魔力のせいであることは間違いない。
 他にもある。噂に聞いた、デスマウンテンの噴火や、ゾーラの里の氷結。そして最近あったという
ハイラル南東部の大規模な火災。それらは敵をやっつけるのには必要なことだったのかもしれない。
しかし、それにしても……
『やりすぎだ』
 まるで世界が滅びてもいいとでもいうような、悪魔そのものの発想。
 世界がゆがんでしまう。世界が狂ってしまう。そうなったら、ゲルド族だって立ちゆきはしない。
 そう、いまは、いいかもしれない。だが長い目で見れば、ガノンドロフの行為は決して
ゲルド族のためにはならない。あいつは自分が魔王になって、世界を思うままにできれば
満足なのだろう。けれどゲルド族の王としては認められない!
 ナボールは覚悟を決めた。
 ガノンドロフを倒さなければならない。
 思った瞬間、鳩尾にずんと衝撃を感じた。
 可能なのだろうか。
 許しを得ない行動であるにもかかわらず、砦に居座って自由にしていられるのは、単に
ガノンドロフが征服事業に忙しく、お目こぼしの格好になっているからに過ぎない。ゲルド族と
しては例外的に、奴に身を任せることなく、反感を隠す気もなく行動してきたあたしだ。これ以上、
少しでも怪しい行動を示せば、たちどころに粛清されるだろう。
 そして、もうひとつの負の感情が徐々にわだかまるのを、ナボールは自覚する。
 嫌悪でも不安でも恐怖でもない──いや、むしろそれらがすべて融合した結果の感情と言うべきか──
 思い出したくない、しかし思い出さずにはいられない、あの記憶。
 ガノンドロフに犯されそうになった時、あたしがどういう心境になっていたか。犯されてもいい、
そう思ったではないか。ガノンドロフを妄想の相手にして、自慰にふけりもしたではないか。
表面では嫌悪しながら、あたしは実は……心の底では……ガノンドロフに……屈従したいと思って……
「姐さん?」
 ナボールは我に返った。『副官』が不思議そうにこちらを見ている。
「どうしたんだい? 考えこんだりして」
「ああ……」
 生返事をする一方で、ナボールは気持ちを引き締めた。
 しっかりしろ。自分の感情は置いておけ。どう動くかを考えなければ。
 実際的な思考に取り組もうとしたナボールだったが、胸にはまだ、ひとつの言葉が突き刺さっていた。
 トライフォース。
 それがあたかも、自分自身に深くかかわるものでもあるかのように……
 唐突にひとつの思いが浮かんだ。
 巨大邪神像。砂漠の果てにある、ゲルド族の聖地。
 なぜだろう。なぜこんなことを思い出す?
 トライフォースと関係があるのだろうか。あそこにはゲルド族の宝が隠されているという
言い伝えがある。トライフォースがハイラル王家の秘宝だということからの連想か?
 いや、それだけではない。あそこには何かがある。そんな気がしてならない。ガノンドロフ
打倒に関係した、とても重要な何かが。
 心を決め、ナボールは静かに言った。
「巨大邪神像を見てこようと思う」
4262-8 Nabooru II (5/13) ◆JmQ19ALdig :2007/04/21(土) 11:59:03 ID:XKZK7zEv
 巨大邪神像にあると伝えられるゲルド族の宝を探しに行く、と、ナボールは砦の面々に説明した。
特に目的もない暮らしの中での、一種の気晴らしといったふうに、深刻な意図と聞こえないよう
注意した。
 ほとんどの連中は特に疑問を差しはさまなかったが、『副官』だけはナボールの説明を
いぶかしんだ。ほんとうの理由があるのではないか、と詰め寄ってきた。『副官』の勘のよさは、
二人の心のつながりを証明しているようで、ナボールは嬉しく思ったが、真意を漏らしはしなかった。
 ほんとうはすべて打ち明けたかった。自分の企図を述べておきたかった。同じ危機感を持つ
『副官』はもちろんのこと、他の連中も、わけを話せば、みんな味方になってくれるに違いない。
 だが……この時点で自分の企図を明言にしておくことに、なぜか危険を感じる。みんなを
信用しないわけではない。もっと、別のことで……それが何かはわからないが……
 とにかく、いざという時がくるまで、誰にも企図は話すまい──と、ナボールは固く心に決めて
いたのだった。

 巨大邪神像へは単独で向かうつもりだった。自分もついていく、と『副官』は言い張ったが、
ナボールは聞き入れなかった。
「あんたには、残った仲間をまとめる役目がある。なんせ『副官』なんだからね」
 冗談めかして言ったものの、それはナボールの本心だった。『副官』は一党の中でも年少の方で、
以前はそれほど目立った存在ではなかったが、砦での生活を続けるうちに、能力も人格も磨かれて
きていた。『副官』という名は伊達ではなく、リーダーの代役は充分に務まると思われた。
 最後には『副官』も納得した。ナボールの言葉に、何らかの真情が秘められているのを察した
のかもしれなかった。

 出発の前夜を、ナボールは『副官』とともに過ごした。
 女ばかりのゲルド族の間では、女同士の行為は珍しくもない習慣だった。とはいえ、その多くは
男不在の穴埋めとしてのものだった。だが中には、積極的に女同士の関係を築く者もいた。
ナボールと『副官』との関係も、そのような例のひとつだった。
 ナボールと、一歳下の『副官』とは、幼い頃から仲がよかった。二人の間には通じ合うものが
あったのだ。年頃になると、ナボールは男狩りによって処女を捨て、さらに男女との体験を重ねて
いったのだが、『副官』の行き方は、それとはまた違っていた。
 ガノンドロフがツインローバの身体で男となって以来、ゲルド族の処女の水揚げは、ガノンドロフが
一手に引き受けていた。ごく稀にはナボールのような例外もあり、『副官』もその例外だったが、
『副官』の処女は、男にではなく、以前から心の通じる相手であったナボールに捧げられたのだった。
 その後は『副官』も、一人前の戦士として成長する一方で、ナボールや他の仲間たちと同様、
男女両刀使いの経験を積んでいったが、ナボールとの関係は特別なものであり続けた。ガノンドロフとの
性交を拒んだ点もナボールと一致しており、それが二人の関係をさらに強める要素となった。
 別れを明朝に控え、ナボールと『副官』は時間を惜しんで激しく愛し合った。『副官』は
かわいい一人の女となり、ナボールの身体の下で喜悦の涙を流した。
 しかし夜が明けると、『副官』の顔から涙は消え、その物言いも、いつものような、さばさばした
ものに戻っていた。
「あとを頼んだよ」
 砂漠への入口に立ったナボールは、他の連中とともに見送る『副官』に向け、別れの言葉を送った。
『副官』は頷き、
「気をつけて」
 と言っただけだった。その顔は、勇猛なゲルド族の戦士としてのそれだった。が、同時に、
愛する者への惜別と信頼を、ナボールはそこにしっかりと感じ取ることができた。
4272-8 Nabooru II (6/13) ◆JmQ19ALdig :2007/04/21(土) 12:00:06 ID:XKZK7zEv
『幻影の砂漠』を突っ切って巨大邪神像へ向かうような酔狂者は、ゲルド族の中でも、これまで
ごくわずかしかいなかった。砦の面々は誰一人として正確な道筋を知らず、ナボールの旅は難航した。
だが、かつてその道をたどった者が残した道しるべが、かろうじてナボールを先へと導いた。
数日間の困苦の末、ナボールはようやく巨大邪神像に到達することができた。
 ハイラルの西端にある『幻影の砂漠』、そのさらに西の果ての地に、巨大邪神像は建っていた。
仰ぎ見るためには首を直角に曲げなければならないほどの大岩に掘られた、それは一体の女神の
彫像であった。風貌はゲルド族のそれを模し、目を閉じて瞑想にふけるかのような顔、掌を上に
向けて両手を前に差し出す神秘的な姿が、ナボールに深い印象を与えた。
 女神の像の真下にあたる所に、内部への入口があった。中に入ると、そこは奇妙な彫像や凝った
装飾で彩られた大広間となっており、左右には通路が延びていた。ナボールは通路をたどって、
奥に続くいくつかの部屋を探索してみたが、宝はおろか、人間にかかわるような品物ひとつ発見
できなかった。荒れ果てた廃墟という以外に呼びようがない場所だった。
 しかし気になることはあった。ところどころで、壁の低い部分──床に接触するあたりに、
方形の穴が開いているのだ。子供でもなければ通り抜けられそうもない小さな穴だったが、
その先には、まだ部屋がありそうだった。
 さらにナボールの注意を惹いたのは、自身の心のうねりだった。
 ここにはガノンドロフ打倒に関する重要な何かがある。あたしはそう信じてここまで来た。
実際には何も見つからない。だが……何かがあるという思いは、ここに来てますます強まっている。
 何があるというのだろう。わからない。わからないが……
 それは宝などという物質的なものではなく、何か……そう、もっと……あたしの存在自体に
関係するような……いわば……精神的なもので……
『何を考えてるんだ、あたしは』
 ナボールは首を振った。
 根拠などない。ただの思いこみだ。どうやら、苦労してここまで来た甲斐はなかったようだ。
 失望を胸に抱き、ナボールは大広間まで戻った。
 その時。
「我らの神殿へ侵入するとは、恐れを知らぬ不届き者よのぉ。ホッホッホ………」
「では、その不届き者に、罰を与えてやりましょうかねぇ。ヒッヒッヒ………」
 二つのキイキイ声がその場に反響した。ナボールは驚愕して入口に目をやった。
 箒に乗った二人の老婆が浮いていた。
 ツインローバ! 人の心を読む、ガノンドロフの片腕!
 その瞬間、わかった。ガノンドロフ打倒の企図を、砦のみんなに打ち明けることがためらわれた
理由。ツインローバのことが潜在意識にあったからだ。
 企図を話して、みんなが同調してくれたとする。その後、ツインローバがみんなの心を読む
ことでもあったら……皆殺しになるのは火を見るよりも明らかだ。
 話さないでおいてよかった──と安堵する暇もなく、ナボールの心は、それを上回る緊張に
満ちた。
 ツインローバが来たということは……
 そのとおりだった。入口から差しこむ外光を背に、ガノンドロフの巨体が、暗い影となって
立っていた。
4282-8 Nabooru II (7/13) ◆JmQ19ALdig :2007/04/21(土) 12:01:24 ID:XKZK7zEv
 二人の老婆がゆっくりと頭上に移動してきた。はっと身構えたナボールだったが、二人は
手出しもせず、ナボールの頭上をぐるぐると旋回するだけだった。
「どうだ?」
 ガノンドロフが短く言った。ナボールはどきりとした。しかしそれは自分にかけられた言葉では
なかった。
「残念ながら、賢者のオーラは感じないねえ」
「だからといって、疑いが晴れたわけじゃあないが」
 二人が落胆したような声を出した。ナボールには意味がわからなかった。
「ナボール、お前」
「リンクに会ったことはあるかい?」
 鋭い声で問いかけられる。ますますわからない。
 賢者? リンク? いったい何のことだ?
 二人のツインローバは、ゆるゆると回転しながらナボールを凝視していた。観察がしばらく
続いたあと、
「やっぱり」
「ないか」
 二人は同時に嘆息した。
「けれど……」
「お前……」
 いきなり二人の速度が増した。ナボールの頭上をかすめ、二人はガノンドロフの両脇に飛び戻った。
「なかなか面白いことを考えてるねえ」
「前からくさいと思ってたんだよ」
「ガノンさんや」
「この娘ったら」
「「あんたをぶっ倒したいんだとさ!」」
 心を読まれた。が、ツインローバの姿を見た時から、覚悟はしていた。
「言い逃れはできないよ、この裏切り者が!」
「ガノンさんや、こいつに何とか言っておやり!」
 ガノンドロフが歩み寄ってきた。ナボールは、身構えた身体にさらに力を入れ、腰の刀に手をかけた。
 こいつを倒す。倒さなければならない。ゲルド族の名に賭けても。
 だが……
 近づく。ガノンドロフが近づく。その迫力。その威圧感。
 思い出す。思い出してしまう。犯されそうになった、あの時のことを。
 忘れるな! こいつは人間じゃない。やばいどころの話じゃない。こいつに屈服しちまったら、
あたしはもう……
 大音量で鳴り響く脳内の警報。
 ガノンドロフが眼前で立ち止まる。静かに燃え盛る両目が、こちらを見据える。視線がぶつかる。
「そんなに俺がいやか」
 いやだ! と心は叫ぶ。しかし声にはならない。
 身体が震える。あの時よりも、もっともっと強い、この圧倒的な吸引力。
 なぜ? これも魔王の力なのか?
「お前のことは、評価しているのだぞ」
 評価? ほっとけ! こいつに何と評価されようが……なのに……ああ……
「お前となら、うまくやっていけると思っているのだがな……」
 この声。優しささえ感じられる声。
4292-8 Nabooru II (8/13) ◆JmQ19ALdig :2007/04/21(土) 12:02:52 ID:XKZK7zEv
 ガノンドロフの手が、胸に巻かれた布地にかかる。それがほどかれ、両胸が露出する。上半身が
さらされる。
 動けない。どうして? ゲルド族の血がそうさせるのか? ゲルドの女はゲルドの王に逆らえないのか?
「あ……」
 乳房をつかまれる。硬い両手が胸を揉みしだく。
 感じる。ガノンドロフの手から、何かが皮膚に染みこんでくるかのような……
 その感覚に、乳房が張る。乳首が固まる。
「……あ……ああ……」
 力が抜ける。目をあけていられない。立っていられない。
 がくりと脚が崩れる。両膝が床につく。そのまま仰向けにされる。下半身の衣装を脱がされる。
刀も一緒に。それでも抵抗できない。なすがままの自分。
 ──こんなはずじゃない……あたしは……
「お前は強い」
 ──そう……あたしは……強い……それが……あたしの……誇り……
「だが、女だ」
 ──強い……だけど……女……その生の姿を……いまあたしは……全部見せてしまって……
「ああッ!」
 女の部分に触れられる。身体がきゅんと収縮する。
 そこにも何かが染みこむ。代わりに何かが流れ出す。とろりと。じわりと。快感のしるしの液体が。
「俺の女になれ」
 ──何を馬鹿な……でも……『副官』……あの娘もあたしの前では……だからあたしも
同じように……
「あッ……くぅぅッ……!」
 指に支配される。指に操られる。腰が揺れる。あそこがあふれる。
 ──そうじゃない……もう長いこと……男に接していないから……ただそれだけの……
「うあ!」
 指が入ってくる。指に犯される。締めつける肉襞。それを求めて。それを欲しがって。
「俺の前に跪くのは、恥ではないのだぞ」
 ──跪く……ガノンドロフの前に跪く……そうだ……あたしは……ほんとうは……
 仲間の女に手ほどきを受けた時を除いて、セックスでは常に攻めの立場だった。男相手に受けに
回ったことは皆無だった。
 ──ほんとうは……いつか……男に攻められたいと……男に屈服したいと……思っていた……
 いつしか指は抜き去られ、もっと大きなものが、もっと大きな快楽をもたらす男の塊が、そこに
触れていた。
 ──あたしが……屈服する相手……やっぱり……それは……この……男しか……
 薄目をあけ、その対象を、ナボールは見る。顔は間近に寄せられている。黒光りのする硬い皮膚。
吊り上がった口の端に宿る冷たい笑い。堂々たる自信に満ちた、爛々と光り輝く目。
「いいな」
 低い声。
 こくりと頷きを返そうと決意しかけた瞬間。
 ナボールには見えた。
 ガノンドロフの目。あふれる自信の裏にある、その独善、その魔性、その狂気!
 騙されるな! こいつは自分のことしか考えていない!
4302-8 Nabooru II (9/13) ◆JmQ19ALdig :2007/04/21(土) 12:04:05 ID:XKZK7zEv
 呪縛が解けた。
 瞬時に頭の後ろに右手をやる。長い髪を束ねる装具。最後の武器。それをつかみ取る。仕込んだ
刃を開放する。まっすぐに相手の首へと叩きこむ。
「あッ!」
「こいつ!」
 ツインローバのうろたえた声。
『やった!』
 心が震えた。
 が、右腕は動いていなかった。刃先は首の皮膚の寸前で止まっていた。
 どうしたんだ? 頸動脈を貫いてやったはず……なのに……
 そこでやっと気がついた。右の手首はガノンドロフの左手に握られ、がっちりと固定されていた。
「見上げた度胸だ」
 平静な声だった。息ひとつ乱れていなかった。
「そこが、いい」
 右手首に加えて、ガノンドロフは右手でナボールの左手首をもつかみ、ぐいと床に押しつけた。
ナボールはのけぞり、腕を大きく広げた格好で床に貼りつけられた。右手から装具が離れ落ちた。
両脚はガノンドロフの巨体に割られ、開かれたその中心に、灼熱の肉杭が打ちこまれた。
「うあーーーあああッッ!!」
 噴出する叫び。
 それは、とどめを刺されたことへの苦悩の発露であるとともに、ついに甘美な敗北を得たという
歓喜の爆発でもあった。
 いっさいの抵抗を封じられたまま、ガノンドロフの巨根が体内に充ち、激しく乱舞し、残酷に
突撃するのを感じながら、ナボールは、波うち、衝突する、その二つの感情に溺れ、翻弄された。
 いけない──と思う一方で、身体は究極の快楽を渇望する。理性が必死で否定しようとし、
さらに欲情がそれを凌駕する。
 いつ果てるともなく攻撃は続いた。ナボールは徐々に考える力を失い、しかし身体は勝手に
反応していた。上の口はあられもない喘ぎを漏らし続け、下の口は絶えず恥液をしぶかせながら
暴行を許容した。苦悩は歓喜に押しつぶされてしまっていた。
 やがてその瞬間がきた。身体の反応が閾値を超え、ナボールの意識は白熱する閃光に満たされた。
下半身の筋肉がぎりぎりと収縮した。一気に狭まった肉筒にきつく締め上げられ、侵入者は
どくりと身震いすると、陵辱の証である体液を中にぶちまけた。
 いままで経験したことのない絶大な快感に身を引きつらせながら、ナボールの理性は、ただ
自分が犯されたという事実だけを認識した。
4312-8 Nabooru II (10/13) ◆JmQ19ALdig :2007/04/21(土) 12:04:57 ID:XKZK7zEv
「危ないところだったねえ」
「往生際の悪いことだよ」
 挿入したままのガノンドロフのそばへ、箒に乗ったツインローバが漂ってきた。
「これでわかっただろう、ガノンさんや」
「こいつはあんたにはなびかない」
「見切ることだよ」
「捨てることだよ」
「「殺しちまいな!」」
 毒に満ちあふれた声だった。しかしガノンドロフは、その毒には酔わなかった。
「殺すほどのことはあるまい」
 二人のツインローバは探るような目でガノンドロフを見、次いで互いを見交わすと、合体して
熟女の姿となった。
「あんた、やけにナボールの肩を持つじゃないか」
 昂然と身をそらせた姿が、自分の存在を誇示しているかのようだった。
「お前はやけにナボールを目の敵にするのだな」
 笑みが浮かぶのを隠しもせず、ガノンドロフは言い返した。ツインローバの顔に稲妻のような
感情が走った。
「のんきなことを! こいつはあんたを殺ろうとしたんだよ!」
 それだけではあるまい──との思いは胸にしまっておき、ガノンドロフは冷静な分析を述べた。
「仲間を殺すのは、士気にかかわる」
 一瞬、ツインローバは言葉に詰まった。
「……そりゃ、たかが小娘とはいえ、こいつを慕う者もいるけど……そいつらみんな、まとめて
始末しちまえばいいじゃないか」
「砦の連中のことか」
「言うまでもないよ」
「あいつらは、俺を嫌いはしても、反抗しようとまでは思っていない。ナボールがいなければ何も
できない小者ばかりだ。そんな連中すら殺してしまうのは、どうかな。他の仲間が動揺するだろう」
 ハイラルを支配し始めて間もない現時点では、旧王国民はともかく、ゲルド族をも恐怖政治で
縛ることは避けたい──というのが、ガノンドロフの本音だった。
 ツインローバは黙ってしまった。
 この巨大邪神像──魂の神殿に来る前、二人は砦に寄って、そこにとどまる連中を吟味していた。
ツインローバは全員の心を読み、ガノンドロフの言うとおり、ナボールのようにあからさまな
反逆をもくろむ者はいないことを確認していた。
4322-8 Nabooru II (11/13) ◆JmQ19ALdig :2007/04/21(土) 12:05:56 ID:XKZK7zEv
「『魂の賢者』のことだが……」
 ガノンドロフは攻め手を変えた。ツインローバの表情が、はっと動いた。
「砦の連中も調べたが、やはり該当する者はいなかった」
「ああ……」
 悔しそうなツインローバの声。
「仲間をすべてあたってみたが、見つからない。それでも『魂の賢者』はゲルド族の中にいる──
と、お前は思っているのだろう」
「確かだよ」
「誰だと思うのだ?」
「それは……」
 ツインローバの視線が、ナボールに向けられる。そう、こいつはナボールを疑っている。それも
ナボールを殺せと主張する理由のひとつなのだ。
 だが、もし『魂の賢者』が別人なら、ナボールを殺しても全く無意味だ。ツインローバもわかって
いるから、その理由では抹殺を強くは主張できない。
「ナボールだという根拠はない」
 いったん言葉を切り、そこで餌を投げてやる。
「いまはな」
 ツインローバが、いぶかしそうにガノンドロフを見る。
「確かめる方法があるだろう」
 しばしの沈黙のあと、ツインローバは目をそらし、絞り出すような声で言った。
「そうね……確かめてからでも、遅くはないか……」
 ツインローバが視線を戻してきた。きつい視線だった。
「だけど、ナボールをこのままにしとくわけにはいかない。こいつの処遇は、あたしに任せてもらうよ」
「いいだろう」
 ガノンドロフが頷くと、ツインローバは、挿入されたまま半ば死んだように横たわっている
ナボールに顔を寄せた。
「さあ、ナボール……あたしの目を見るんだ……あたしの思いを、あんたに送りこんでやるからね……」
4332-8 Nabooru II (12/13) ◆JmQ19ALdig :2007/04/21(土) 12:07:14 ID:XKZK7zEv
 ナボールは、眼前に近づけられたツインローバの目を、茫然と見つめた。
 そのまま時間が経過した。何が起こっているのか、まるでわからなかった。頭は空っぽの状態で、
筋の通ったことは何も考えられなかった。
 あたしは眠っているんだろうか──とナボールは思った。そうとしか思えないほど、現実感が
なかった。
 ──これは……夢……そうに違いない……
 意識が深い濁りの中にかき消えていこうとした、その時。
 ナボールは感じた。自分の中で、何かがじわりと動き始めるのを。
 動き始めてから、それがずっと自分の中に埋めこまれていたものだとわかった。埋めこまれて
いたということを忘れるほど、それは自分と一体になりきっていたのだ。
 ガノンドロフの陰茎。
 いったん達したはずなのに、それは全く硬度を失わず、膣を占拠し続けていた。それが再び
活動を開始し、粘膜をゆっくりとこすり始めていた。
「……は……ああ……」
 ナボールはそれを受け入れた。受け入れるのが当然だと思った。受け入れたくてたまらなく
なっていることに、何の疑問も感じなかった。
 ──ガノンドロフに……いや、ガノンドロフ様に……かけられる情けが……こんなに心安らぐ
ものだったなんて……
 さっき絶頂した時の快感を、はるかに上回る心地よさだった。くだらない葛藤を捨てさえすれば、
これほどの悦びを得ることができるのだ。
 ──それに気がつかなかったとは、あたしはなんて馬鹿だったんだろう……
 心は幸福感でいっぱいだった。何もかも忘れて快楽に浸りきることができた。
 ゆっくりとしたペースがもどかしい。
「……お願い……どうか……もっと……」
 出し入れされる動きに応じて、こちらの腰も動き出す。
 相手の動きが速くなる。
 ──わかってくれる。あたしがどうして欲しいのか、ガノンドロフ様はわかってくれている!
「あッ!……そうッ!……そうしてッ!」
 開放された腕を相手の背にまわし、力いっぱい抱きしめる。
「ああッ!……もっと!……もっとぉッ!」
 ──もっと強く! もっと激しく!
「してッ!……してくださいッ!……あたしを!……あたしはッ!」
 ──ガノンドロフ様のもの! あたしのすべてはガノンドロフ様のもの!
 突かれる。突かれる。もの凄い速さで。もの凄い力で。
「もうッ!……もういくぅッ!……いっちゃうぅぅッッ!!」
 ナボールは一気に頂上へと押し上げられた。痙攣という言葉では収まらず、身体はがくがくと
振動した。
 ガノンドロフの動きは止まらなかった。無上の快感にうち震えるナボールを、ガノンドロフの
長大な武器は、休みもせずに侵略し続けた。それがますます刺激となって、ナボールの身中では
次々に誘爆が起こった。
 それが終わらないうちに、ナボールの膣から陰茎が引き抜かれた。
 ──まだ! まだ行かないで!
 絶頂の余韻を求めて哀願を口にしようとした瞬間、両脚が持ち上げられ、腰が浮き上がった。
露呈した後ろの部分に、それは襲いかかってきた。
「おあああッッッ!!!」
 仲間の女に教えられて以来、誰も迎えていなかった場所だった。男には決して許さなかった、
処女も同然の新鮮なその場所が、初めて男に開かれた。
 身が引き裂かれるような苦痛だった。が、ガノンドロフに苦痛を与えられることが、いまの
ナボールにとっては最大の悦びだった。
 またもナボールの中で誘爆が連続した。ナボールは涙を流しながら、何もかもガノンドロフ様に
捧げる、ガノンドロフ様に抱かれるためならどうなってもいい、と叫び続けた。
 肛門への攻撃は延々と続いた。ナボールの声が枯れ果て、最後の絶頂を迎える時になって、
それはやっと邪精を吐き出した。
4342-8 Nabooru II (13/13) ◆JmQ19ALdig :2007/04/21(土) 12:09:21 ID:XKZK7zEv
 ナボールから身を離し、ガノンドロフは立ち上がった。
 心は冷えていた。ナボールへの関心は、もう失われていた。
 自分に代わってナボールをなぶり始めたツインローバを見やり、ガノンドロフは心の中で苦笑した。
『こいつにしてやられたな』
 確かに、ツインローバの洗脳のせいで、ナボールは反抗心を捨て、俺に絶対の忠誠を誓うように
なった。しかしその代償として、ナボールの魅力である強さは失われてしまった。もはやナボールは、
俺のまわりのどこにでもいる、色に狂った一匹の雌犬でしかない。
 ツインローバは、俺がそう思うようになることを見越していたに違いない。
 ナボールは目をとろんとさせ、口元から涎を垂らしながら、ツインローバの攻めに乱れ狂っていた。
洗脳の際、ツインローバは自分への忠誠心も植えつけたのだろう。
 変わり果てたナボールの姿を眺めながら、ガノンドロフは淡々と思った。
『惜しい女だが、しかたがない』
 やがて欲望を満たし終えると、ツインローバはガノンドロフの前に傲然と立ち、強い声で言い放った。
「これでナボールは、もう逆らえない。あとは鎧でも着せて、この神殿の留守番をさせとくことにするよ。
それでいいわね」
 食えない奴。だが、得がたい相棒だ。
「好きにしろ」
 さらにツインローバが顔を寄せてくる。
「この先、こいつが『魂の賢者』だとわかったら……その時は、あんたが何と言おうと、あたしは
こいつを殺してやるから」
「そうだとわかったらな」
 からかうように答えてやる。
 それでも、賢者の問題はまだ終わっていない。
 あと一人。『光の賢者』、ラウル。ツインローバの終生の敵。
 そいつに出会った時、はたしてツインローバは、どれほど残酷になるだろうか。
 ナボールなど、及びもつかぬことになるだろう。
 ガノンドロフは床を見下ろした。だらしなく呆けた笑みを顔に浮かべた、女の形をした抜け殻が、
そこには横たわっていた。


To be continued.
435 ◆JmQ19ALdig :2007/04/21(土) 12:11:49 ID:XKZK7zEv
以上です。奇妙な三角関係になってしまった。
なぜか規制にかからなかった。スレの残り容量も厳しかったが、なんとか投下できました。
次回よりシーク再登場。
436名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 16:03:03 ID:ZrO2P3sF
うおわああああ
Gj
437名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 17:00:46 ID:c4pjQ99L
いつもGJ!!!1
前回あれだけガノンを酷いと思ったのにゲルド関係のシーンでは余裕あるガノンがイイと思ってしまう。
438名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 23:36:16 ID:haxupBmE
GJ!
本当に見せ方、魅せ方が上手いなぁ
次回はシーク再登場と聞いてwktkがとまらない

>>437
俺もだw
439名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 01:32:51 ID:aiy2vKpN
残り要領がSS一本分としては微妙というか無理っぽいので新スレ立てました
書き手さんの新作投下は新スレに、ここまでの作品の感想・埋め雑談はこのスレによろ

ゼルダの伝説でエロパロ 【4】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1177259262/
440名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 07:51:23 ID:6mMUJclA
もったいないので小ネタで埋め梅
トワプリ 終盤ネタバレ含む リンクとミドナ 非エロ
ごめんよ
441解呪 (1/2):2007/04/25(水) 07:52:03 ID:6mMUJclA
影の宮殿から帰還した鏡の間でのことである。

翳りの鏡の壇から降りたところで、リンクは腕組みをしてしばし思案に沈んでいた。
ややあって意を決したように
「ミドナ」
相棒を呼び出した。
「どうした、リンク?」
いつものように影が立ち上がる。
「…ちゃんと出てきなよ、そうじゃなくてさ」
「?」
何を言い出すのかと思ったが、リンクの声も顔もあまりにも真剣そのものだったので
ミドナは気圧されてしまい、素直にその身を実体化させた。
「何だよ?」
「…知ってる?昔から、魔法で姿を変えられた姫君の呪いを解く方法には定番があって」
「えっ」
「俺はさ、魔法なんて使えないし…王子様には程遠いけど、でも」
そう言いながら目の前に浮いているミドナの手を取った。
「万が一にでも可能性があるなら」
「え、それって…」
「試してみる価値はあるんじゃないかって」
そのままミドナを引き寄せようとする。

「ちょ、ちょっと待て」
彼の言わんとするところを理解して動揺した。
影の世界にだって御伽噺はある。
でも、呪いの主であるはずのザントを倒してすら解けないものを、
そんなことでまさか――
「ミドナ」
青い目がまっすぐにミドナを射抜いている。
真剣にワタシの為を思ってのことなのだ。それはわかるけれど、
「俺のこと、信じられない?」
馬鹿なことを、オマエを信じられなくてこの世の何を信じられる?
ただ、でも
「………」
まさか、まさかでも、もし、もしも――
拒否する理由が見当たらない――

黙ったまま俯くミドナにもう一度
「ミドナ…」
呼びかけて、今度は小さな肩に手をかけ、静かに自分の方へと引き寄せる。
抵抗はない。
懐まで引き寄せたところで片腕をミドナの肩から背に廻し、
もう一方の手をまるっこい顎にあてがい、上を向かせる。
きょろりとした赤い目が不安げに瞬き、――そして瞼が閉じられた。

――創造主たる女神達よ、どうか我が姫にかけられしこの忌わしき呪いを解かせたまえ――
祈りを込めて
442解呪 (2/2):2007/04/25(水) 07:52:41 ID:6mMUJclA
「う、わあああぁぁぁぁっっ!!」
両手をリンクの顔に押し当てて腕を突っ張り、大声で叫ぶと同時に激しく頭を振っていた。
やっぱりダメ、とてもダメ。
だって、ワタシは――!

いきなりの激しい拒否反応に思わずリンクが手を離した次の瞬間、
ミドナは影へと戻り、地面へ吸い込まれてしまっていた。
じんじんと痛む頬に手を当て、リンクは呆然と立ち尽くしている。
ミドナが頭を振った拍子に、その頭上の結晶石をしたたかぶつけられていた。
「…なんで」

そんなことしたら、ワタシはきっと壊れてしまう
今まで必死に支え、守ってきたものが崩れてしまう。
頼り切ってしまわぬように、縋りきってしまわぬように、
使命感と自己嫌悪の危ういバランスの間でどうにか自分を保っているのに。
これ以上リンクに近づいちゃいけない、離れられなくなってしまう――
怖いんだ、こんなことになっていなけりゃ決して触れることなどなかったはずの
光の住人にどんどん惹かれていく、ワタシの中で目覚めてしまった乙女心が。
リンク、嘘も打算もなくワタシに向けられる純粋なその好意が怖いんだよ。
だから、
「そーゆーのはお話の中だけなんだっての。
 本当の魔法ってのはもっとシビアなもんなんだよ」
影の中からどうにかそれだけ言った。できるだけぶっきらぼうに。
魔法音痴の勇者に反論なんてできやしない。

ホントは触れたい、甘えたい、共に在る未来を夢見てみたい――
心の器に今はもう満ちきって溢れ出しそうな想い。
こらえなきゃいけない、もう少しだけ。
ソルは開放され、僭王は滅んだ。
影の世界は徐々に回復するだろう、
時間はかかるかもしれないけれど――たとえワタシが――いなくたって――
卑しいこの身を彼らの前には晒せない――

「リンク、ハイリア城へ急ごう、今度はゼルダを助ける番だ」

ありがとう、ごめんな。
もうちょっとだけ…付き合ってくれよな。
443名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 08:20:11 ID:N7QZr/Bp
朝から萌える事になろうとは。GJ!
444名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 09:18:37 ID:yLCXHhDY
かなり萌えたGJ!

445名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 13:48:30 ID:GbpDtlsQ
非エロでもこんなに萌えるとは…
超GJ
446440@携帯からごめんなさい:2007/04/25(水) 16:59:49 ID:2rd2iQ7H
うぼぁ
城の名前を間違えた。
×ハイリア
○ハイラル
なんか他にもいろいろすいません。
レスくれた方々ありがとうございます。
今後打ち込み直投下はやめますのでご勘弁を。
447名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 17:04:11 ID:iZSSBGgX
いやいや、激しくGJですよ。
448名無しさん@ピンキー:2007/04/26(木) 00:06:02 ID:eNhyA8I+
やばい激しく萌えたwwGJ!!
449名無しさん@ピンキー:2007/04/29(日) 13:47:59 ID:JHYrFrfp
これは・・・GJ
450名無しさん@ピンキー:2007/04/29(日) 13:48:31 ID:JHYrFrfp
誰か獣リンク×ミドナ書いてくれー
451リンク(獣)×ミドナ(小) 1/5:2007/04/29(日) 18:50:55 ID:a64Q3t9D
随分前にリンク(人)×ミドナ(小)を投稿した者です。
今回はリンク(獣)×ミドナ(小)
イリアのポシェット(?)発見から城下町にいくまでの道中
健全な青少年(成獣)リンク。
※デクババはこんなに強くない


―メスの匂いだろ?ツラを見りゃあわかるんだよ―

輪郭の曖昧な、黒と黄に支配された平原を、リンクは獣の足で地をつかんで走っていた。
やっとつかんだ幼馴染の手がかりに嬉々としていただけなのだが、
あんな風に言われ頭にきた。
そんなんじゃないとリンクは唸る。
決してそういう感情は抱いてはいない。
幼い頃から一緒にいる異性というのは
兄妹のようなもので、そういう方向へは持っていけない。
だから彼女の言う"メスの匂い"に過敏に反応したのは
やっと幼馴染を助けられるという安堵からくるものなのだ。

そんなふうに意識していない。断じて違う。
誰に弁解するわけでもないのに、必死にリンクは胸中で否定した。
憤りを、思いきり地を蹴ることで発散しようと、リンクは吼えて速度を上げた。
「うわっ・・・!」
背にまたがっているミドナは後ろに引っ張られ、慌ててリンクの背にしがみつく。
「・・・っおい、オマエ!・・・急くのはいいけど、こういうときこそ冷静になれよな」
リンクの耳をつまんで寄せてミドナは言う。返答はなかった。
ミドナは呆れたように肩をすくめて上体を起こした。
曖昧な闇の向こうに大きな石橋が見える。手前の樹を避けようと急な角度で曲がりかけたとき、
幹の根元の植物が大きく動いた。
452リンク(獣)×ミドナ(小) 2/5:2007/04/29(日) 18:52:05 ID:a64Q3t9D
「!!」
植物の魔物、デクババだ。
牙を剥き出しにして涎をしたたらせている。
地を蹴って後退しようとしたリンクの前足にデクババは噛み付いた。
一瞬の対応の遅れが命取りだ。ぎゃうっと吼えて地に転ぶ。
前足に噛み付いたデクババは粘液のようなものを吐き出しながら、顎にさらに力を加える。
リンクは前足ごとくれてやる勢いで振り切ろうとするが、なぜか力が入らない。
「おいオマエ!なにやってるんだっ・・・、!」
ミドナはリンクの異変に気づき、同時にその要因も理解した。
毒だ。
傷口にこれでもかとどす黒い液体を注がれている。
「ちっくしょう、手間かけさせやがって…!」
ミドナは一旦リンクの背を離れ、目の前の獲物に夢中になって
隙だらけのデクババの背後に回った。
全神経を集中して魔力を高め、
「タチの悪いやつは・・・」
敵に向けて一気に放つ。
「嫌いなんだよ!」
ミドナの髪は、それ自体が魔力の塊だ。
だがまともにそれを食らったはずのデクババはかろうじて生きていた。
ミドナは舌打ちをした。
(こんな弱い魔力・・・っ!)
瀕死でまともに動けないデクババにすかさずリンクは飛びついて、
その頭部を思いきり噛み千切った。

幸い石橋の下には川があり、
流れこそ止まっているが、充分な水があった。
前足を水に浸して毒を洗い流そうとするが、思うように取り除けない。
前足を口元に寄せて毒を吸いだそうとするが、獣の口ではそれも上手くいかなかった。
仕方なしに舌で傷口をちろちろと舐めると、口内にひどい痺れが広がる。
激痛にびくりと体を揺らした。
その様子を見かねたようにミドナが傷を覗き込んで言った。
「しかたないな・・・オマエ、ちょっとおとなしくしてろよ」
言い終わるか終わらないかのうちにミドナはかがんでリンクの前足をとって口付けた。
453リンク(獣)×ミドナ(小) 3/5:2007/04/29(日) 18:52:51 ID:a64Q3t9D
戦いの興奮冷めぬこの獣の体。もう慣れたものだと思っていたが、
先ほどの失態といいこの様といい、非常に情けなく思う。
少々からかわれたくらいで平常の警戒を怠ってしまった。
傷口を吸われるたびに痛みで体がこわばる。
それをなだめて抑えるようにミドナが頬から腕へと撫でる。
やはり情けないと思う。

メス、女性、女――――幼馴染の彼女を、そんな風に見たことがないわけではなかった。
ただあまりに身近にいるために、いわゆるその気が起きないのである。
女といえば、目の前のこの影の者はどうなのだろう。
最初は魔物かと思った彼女は、よくよく見れば大きな瞳に丸みのある体のライン、
そして小ぶりだが確かに膨らんでいる胸。
つまりは女である。
言動のせいか、普段は意識もしていなかったが、こう改めて意識すると
この柔らかい体をいつも背に乗せているということになる。
そう思うと普段の背の感触を思い出してリンクは変な気分になった。
そして今の状況もそれを助長していた。

ミドナはそれこそ狼になった自分より多少背は上だが、
今はかがんで自分の前足を両手で持っている格好で、多少彼女を俯瞰の視点で見ることになる。
そうすると胸に視線がいくわけなのである。
これはまずい。
なにやら先ほどから感じているその変な気分が、どんどん膨らんでいく。
それにやはり片足でも重いのか、ミドナは持ち手を慎重に持ち替えたりする。
その動きがゆっくりと、あの柔らかそうな両の胸を寄せたり離したりするものだから――――
454リンク(獣)×ミドナ(小) 4/5:2007/04/29(日) 18:53:42 ID:a64Q3t9D
気が付けば前足の痛みもそっちのけでミドナを押し倒していた。
「・・・うわっ!ちょ、な・・・・・・ッ!」
突然の事態に上手く体制を整えられないのをいいことに、その上にのしかかる。
自分の状況を飲み込めたのか、ミドナは怒号を浴びせる。
「オマエ!一体何のつもり」
だがそれは最後まで続かなかった。
いきなり腹から胸へとぺろりと舐められたからだ。
「んぁっ、!く・・・・・・」
漏らしてしまった己の妙な声色を聞いて、ミドナは奥歯を噛み締めた。
なんとか逃れようとするのだが、リンクは全体重をかけるように
両前足で自分の腕を押し付けている。びくともしない。
さっきの傷の痛みはどうしたんだと思った。
その間にも、上体を舐めまわされる。
「・・・んっ、ぅんん・・・く・・・」
胸の頂に舌を押し付け、わき腹から胸、首筋を舐められる。
素肌に直接かかる息遣いは雄のものだった。
視線をリンクの下肢にやれば、膨張しきっているその象徴が見えた。
動揺した一瞬の隙をついて、リンクはミドナを四つんばいにさせる。
露になった背骨を舌でたどって耳に甘く噛み付く。
「んんっ、・・・・・・っ!」
ミドナの背がこわばった。
無意識に開いていた脚の間の女の部分に、熱い物があてがわれた。
それが何なのか、意味するところがわからないほど子供ではない。
ただリンクのこの急な発情が、一体なんなのか解せないのだ。
なぜだ、なぜと疑問がぐるぐると胸中を回る。
それは強い衝撃に掻き消された。
455リンク(獣)×ミドナ(小) 5/5:2007/04/29(日) 18:54:29 ID:a64Q3t9D
「!!ぅああっ、あっ!つッ・・・」
内部に、自身の体温と異なる温度を持つものが入ってくる。
痛みと、圧迫感と、なぜか感ずる心地よさ。
襞とそれが擦れて、ミドナはもう声を抑えられなくなった。
「なん・・・で、あ、あっ、んあっ、あッ」
リンクが腰を打ち付けてくる。
ミドナは思考を放棄した。
「んんっ、ゃ、あっ、はッ、・・・」
本能のおもむくままに激しく突き上げられ、擦れて揺さぶられる。
なんの技巧もないが、それが逆に生物としての根源を刺激し、
自分をただのメスにする。
気づけば視界は涙で滲んでいた。
リンクはきしむミドナの背、潤んだ嬌声、そして神経に直接染みる
その体温、感触、そのすべてに追い立てられる。
たまらず彼女のうなじに噛み付いた。
「ぁっ、はあ、んっ・・・く・・・」
耳元の荒い息遣いが、存在を主張し続ける体内の雄が体温が、
快感を増長させる。
終わりが近いのか、律動はさらに加速していく。
ミドナも無意識に、それを助けるように腰を揺らす。
「ぁ、ああっあ、ああ・・・・・・!!」
最奥を、なにか温かいもので満たされ、
ミドナは果てた。

456名無しさん@ピンキー:2007/04/29(日) 18:55:34 ID:a64Q3t9D
急な発情は毒のせいです。
このあとリンクは自分のやっちまったことをおおいに悩めばいいと思ってます。
そしてやっぱりエロは難しい。つーか合体が難しい。
お粗末様でした。
457名無しさん@ピンキー:2007/04/29(日) 21:43:32 ID:JHYrFrfp
ちょwww早いwwwwGJですwwwwww
要望聞いてくれて感謝ですwww
458名無しさん@ピンキー:2007/04/30(月) 01:41:06 ID:OtEICCAe
GJ!
としか言いようがない
459名無しさん@ピンキー:2007/04/30(月) 02:31:15 ID:RYxCqwp/
GJ!

あとデクババもGJ!!
460名無しさん@ピンキー:2007/04/30(月) 21:41:46 ID:vFXeIu2d
いつまでたってもアゲハタソとリンクは結ばれない運命なのか・・・
461名無しさん@ピンキー:2007/05/01(火) 03:05:49 ID:68jwNePS
>>456
ぬおーGJ!!
若いオスのケダモノな交尾エロス!
462名無しさん@ピンキー:2007/05/01(火) 10:40:49 ID:PG/vjoCt
>>456
これはエロい!
童貞狼の獣汁中だしハァハァ…
小ミドナ様は受けも攻めも最高だ。
463名無しさん@ピンキー:2007/05/01(火) 13:14:07 ID:ItTzxVrA
みんなありがたう
今見てみたら直したい箇所が多々有った
もっと推敲してエロ表現の技量を上げたい
464アナウンス:2007/05/01(火) 19:56:37 ID:4qNOrva4
↑までの時点で496KBとなっております
前スレは502KBで書き込み不能となりました
職人さんは今後は少品であっても新スレへ投下お願いします

なお、このスレに投下された作品の感想および埋め雑談は
引き続きこのスレを利用よろ

…このまま沈めるのも有りかも
465名無しさん@ピンキー:2007/05/01(火) 21:51:21 ID:lU6WOmUG
沈める前に誰か保管庫に保管依頼をー!
466名無しさん@ピンキー:2007/05/02(水) 09:49:42 ID:zlSyAAPX
一刻も早くssを保管してもらわないと
467名無しさん@ピンキー:2007/05/02(水) 14:55:15 ID:CEB4vsND
一応age
468名無しさん@ピンキー:2007/05/03(木) 12:20:32 ID:D0Nai/xT
保管依頼出てないみたいだね。
ちなみに自分は携帯なので無理です。
469名無しさん@ピンキー:2007/05/03(木) 13:00:21 ID:G7Nt0JrH
よし、では俺が保管依頼してくる
ただ今日は忙しいので明日になっちまうが
それまでこのスレ落とさないでくれよ
470名無しさん@ピンキー:2007/05/04(金) 00:06:35 ID:z51ugIoF
任せろ
471469:2007/05/04(金) 11:31:24 ID:zlginmje
保管依頼してきた
後は保管人様が保管してくれるのを待つのみだ
では、埋めなり雑談なりよろ
472名無しさん@ピンキー:2007/05/04(金) 13:29:31 ID:RHwamaSF
>>471
劇乙!
473名無しさん@ピンキー:2007/05/05(土) 03:12:53 ID:qGquc1tO
乙elda
474名無しさん@ピンキー:2007/05/06(日) 08:49:48 ID:xUdGU8Wk
保管完了までは雑談で埋めるわけにもいかんな。

ほっしゅ
475名無しさん@ピンキー:2007/05/06(日) 11:58:54 ID:bxz1blsP
hosyu
476保守:2007/05/08(火) 02:32:55 ID:Ev/Y8u7U
アッシュ可愛いよアッシュ
477名無しさん@ピンキー:2007/05/08(火) 23:36:25 ID:U9cqairK
アゲハにカタツムリを渡したときのセリフがエロすぎる
478名無しさん@ピンキー:2007/05/10(木) 07:08:08 ID:ILPEpsHp
>>477
kwsk
479名無しさん@ピンキー:2007/05/10(木) 21:25:32 ID:+6Lz3S/a
>>478
あのヌメヌメに溺れてみたい・・・
とか言ってた気がする
480名無しさん@ピンキー:2007/05/11(金) 12:48:00 ID:Phn6APPG
アゲハのヌメヌメに溺れてみたい(性的な意味で)
こうですかわかりません!><
481名無しさん@ピンキー:2007/05/11(金) 19:42:27 ID:Wthr7IHm
王子×イリア
トリル×スモモ
各種モンスター×大妖精
モイ×ウーリ
482名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 22:45:00 ID:5McbG/2D
メイプルちゃん・・・・は需要はないのか?
483名無しさん@ピンキー:2007/05/13(日) 10:40:27 ID:JhUnkn/K
トワプリのエロをチョーダイ、チョーダイよぉぉ
484名無しさん@ピンキー:2007/05/13(日) 20:32:27 ID:iaya/a9x
それより、ここをさっさと埋めね?
485名無しさん@ピンキー:2007/05/13(日) 21:22:53 ID:GQS/GmL+
ume

・・・私立ハイトリア高校に通う青年『リンク』が通学途中、目撃したのは、
豪奢なお屋敷の窓際に佇む美しい金髪の女性だった・・・


ゼルダの伝説(’’*)『窓際の姫君』

6月発売予定
486名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 16:57:08 ID:Nbp9Apr9
アゲハの虫プレイ
487名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 22:49:14 ID:eT8WjUT9
アッシュの設定って攻略本とかではどうなってんの?
年とか載ってる?誰か教えてくれまいか
情報少なすぎ…
488名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 22:51:11 ID:MjkOIKw9
アッシュ「アッー!!ちんちんシュッシュッ
      って覚えれば俺の名前が覚えやすいぞ」

リンク「なるほど」
489名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 00:47:07 ID:9FlodXF4
ちょwwアッシュは女ww
490488:2007/05/15(火) 02:00:31 ID:ykqqiTDs
しもた、モイをずっとアッシュだと思ってて、何でそんなにアッシュが人気なのか理解に苦しんでた。

アッシュ「アッー!!ちんちんシュッシュッ
      って覚えれば私の名前が覚えやすい」

リンク「言ってて恥ずかしくないか?」
491名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 03:21:42 ID:NOut1ldX
でも武人として育ったから女の恥じらいとかは無いかもね。
暑い日には平気でおっぱい丸出しにして汗ふいたり
全裸で水浴びしたり(;´Д`)ハァハァ
492名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 11:17:19 ID:QJH/yVeu
>>490
ちょwwっwwww
だったらアッシュは何て名前だと思っていたんだw
493名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 17:06:13 ID:aBBfRiJt
アッシュをモイ、モイをアッシュと思っていたに違いない。
あと年齢とか詳細は公表されてないんじゃないかな。
というか設定しているかも怪しい。
494名無しさん@ピンキー
リンクXメドリの需要無しか…



                           ノi_,.- z__ __,
              ,              ( / /  ,r<,__,
             / |!              ,r┘ ,.−− 、 >‐' <曲間違ってんじゃねぇ!!
           /  |!、          _,ノ  '´ ̄`_,. ‐'´ヽ、
              / 、′|!|        ー‐/ // i  \ <,_ー‐ ト!_,.-'^ー''ー'´ ̄'¬‐ 、_、,_
          | ’  |!|       _,ノ'1l  ト、ヽ、ヽー=ニニ/´           / / } |  |、
            |  / |           ヾヽl、_v'ニニ  ヽ!>)|      !  / / /  /  l ヽ、_
          | //|            ソi7  ̄´  /イ |    |/ /‐'´ ̄`マ_,.‐'¬   `'!
             |/_ |            / |ヾニコ / /へ、|     |‐'´           ヽ、r j
         i       `′          /   | _`二k  jl        l              LJ'´
     _,ノレr'´        '′    | ̄`ヽ.´´    ̄「|     / /
  ー=;‐' 、 、 `ヽ.  ,. ‐¬         j     \     l !  ///
  / f'リ_,_'、nヽ>'  _,ノ          ヽ     \   >〉// /
 ノイ{'=i ´,、 リ>'゜,、-'゙/            ゙、 −- 、_\.イ{´/  /
   } ハ、<r'ニ´ /´\(   <メドリ          j、_   ー‐`ヽj_}  _,. 〉 <りんく
  ノ'  >lj'r'r/´   `ヽ,             /  `ー、      `<  /
      | 1´′      !          / ,_____,.>、'''"~´ ̄ ̄>'^' 、
     i  !   _,,、-¬ !        \  ー-、__,>、  //    \,_
  。   j  ト、 ´"''−-  〉          /\      /`ー<_/      /'−- 、
    /  ! ヽ,______ _ \       ノ;;;;;;;´'−、_  /l |  /       / 、     \
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