ヤンデレの小説を書こう!Part2

このエントリーをはてなブックマークに追加
595慎太郎の受難第2話1/5 ◆lPjs68q5PU :2007/02/10(土) 21:47:32 ID:x7y5aExW
電話を取ってみると、幼馴染の高畠絵里からだった。
幼馴染。幼稚園から中学まで同じ。中学のときは、同じく吹奏楽をやっていた。
高校は彼女の方が俺の行く高校に落ちてしまい、別々になってしまった。
そう幼馴染・・・。そろそろその先に行きたいのだが。
「やぁ、しん君」
「なんだ・・・絵里かよ」
「なんだってなによなんだって」
「いや、うん、まぁいろいろあってな。それでどうした?」
「うん、最近さ、一緒に遊んでないじゃん。だからさ、街に遊びに行かない?」
「いつ?」
「今週の日曜」
「練習後の昼なら良いよ」
「じゃあ3時に橋のところで!」
橋・・・街の中心部にあるでかい橋のことだな。
「OK。でどこか行きたい所はあるのか?」
「おいしいパスタの店があるの。そこに行きたいなぁ、なんて。」
「昼を三時に取るのは遅いなぁ。夕飯にしてもいいか?」
「もちろん!あ、服とかも買いたいなぁ」
「付き合うよ」
「本当!?ありがとう〜。じゃ、明後日ねぇ」
がちゃ。
久々に会える。
絵里に会える。
嬉しい。
このときの俺の顔はとんでもなくにやけてただろう。
それほど嬉しかった。とりあえず私服選びから。
どんな服が良いだろう。
いや待てよ、あんまり着飾ると、逆に意識させてしまうか。
いやでもやっぱり(ry
そんなことを考えているとあっという間に日曜が来た。


596慎太郎の受難第2話2/5 ◆lPjs68q5PU :2007/02/10(土) 21:48:11 ID:x7y5aExW
「すまん今日は早く帰るよ」
「どうした、奈津子ちゃんとデートか?」
「違うよ」
「別の子か。もてる男はいいねぇ」
鈴木に早く帰ると告げ、俺は私服に着替えに一度家に帰った。
鈴木はチャラけたように言っていたがなんか寂しそうな目をしていた。
お前だってもてるじゃないか、と突っ込みたくなったが、早く帰りたかったので、
スルーして帰った。というかデートじゃねぇよ。
昼飯をかきこみ、私服に着替え、
大慌てで出たせいか、待ち合わせ場所には30分前に着いた。
絵里は・・・15分前に来た。ショートカットで黒髪。
顔は奈津子ほどではないが、普通に可愛い。
さっぱりした性格ではあるが、感情の起伏が激しい。
いつも笑ってればいいのだが、涙もろい
「なんであんたそんなに早いのよ」
いきなり文句かよ。
「家にいたってすることないしな。ところで・・・お前その格好・・・」
プリーツのミニスカ。そんなの着ていた姿はあまり見かけない。
というより、今日はいつもと違い女の子らしい格好だった。
いつもはGパンにTシャツとか男らしい格好なのに。
そういったことから出た疑問だった。
「別に、今日たまたまこれしかなかったのよ。・・・何よ」
「いや、そういう格好も似合うな。」
「あんた今日熱でもあるの?」
「ひどいなぁ。素直にほめただけだ。」
「あんたが言うとなんか下心があるように聞こえるのよね。」
「ひどいなぁ。おれは変態か?」
そんな会話をしながら歩き出した。
買い物はすさまじい量だった。
俺がいるからって無茶すんなよ・・・
荷物もちの気持ちも考えてくれ・・・
まぁ絵里の荷物ならどれだけでも持つが。
597慎太郎の受難第2話2/5 ◆lPjs68q5PU :2007/02/10(土) 21:48:43 ID:x7y5aExW
「ここ、ここ!美味しいって評判のパスタ屋さん」
絵里が来たかったのはここらしい。
しゃれた感じの・・・パスタ専門店?いやピザも出すようだ。
早速注文をとる。俺はピザを、絵里はパスタを頼んだ。
「ピザは時間がかかるんだよ〜」
と、絵里は不満があるようだが。
「ところでさぁ」
絵里が切り出してきた。
「小牧さんってどんな人?」
・・・なんですと?
「だから、小牧奈津子さんってどんな人?」
「あーあー聞こえなーい(∩゚д゚) 」
「ぼけないで!」
「そんないきりたたんでも。気になるのか?」
「別に・・・ただあんたに付きまとうなんてどんな変人かと思って。」
「その通り、まさに変人だ。」
「可愛い?」
「あぁ」
「その・・・どうなの」
「なにがだ」
「仲・・・良いの?」
「向こうからの一方通行だ。もっともはたから見ていると、漫才に見えるそうだが」
「仲いいじゃん」
「良くねぇよ!それよりどうなんだ?彼氏できたか?」
「あたしにできるわけないじゃん!」
「無理だったら俺が引き取ってやるぜ」
「誰があんたなんかと!」
・・・この前は
「彼女できなかったらあたしが引き取ってあげる」
なんていってたのに・・・(´・ω・`)
楽しい時間はあっという間に過ぎていく・・・
598慎太郎の受難第2話4/5 ◆lPjs68q5PU :2007/02/10(土) 21:49:45 ID:x7y5aExW
そして地獄はやってくる。
おのおの注文したものを食べ終わり、店を出た。
6月とはいえ、外はもう暗かった。
俺は絵里を送っていくことにした。
夜に女の一人歩きは危険だしな、うん。
帰り道も楽しく会話、んで近くの公園で・・・
なんてこと考えてたら不意に後ろから、
「慎太郎くーん」
という声が聞こえた。
振り返るとそこには恵と・・・
奈津子がいた。
何故?何故ここに奈津子がいる?
「ねぇあれ誰?」
絵里が尋ねる。
「同じ部の恵と・・・奈津子だ。」
「へぇ。それで・・・どっちが奈津子さん?」
「右」
「ふーん」
すこし冷たい感じの声がする。
「あ、邪魔しちゃった?」
恵が明るく言う。
「うんうん、2人は仲よさそうだね。彼女さん?」
おい、隣に奈津子いるんだぞ恵!
絵里も反論してくれ・・・といおうと思ったが、
様子を見ると絵里は赤面してうつむいている。
いや、誤解されちゃうじゃん。
ほかの人の前でなら嬉しいけど今はまずい!
あわてて奈津子の様子を見てみると、いつもと違っていた。
いつもなら、目に見えるような殺気を出すのだが、
今回は何も出していない。むしろ空っぽ、放心状態というほうが正しいだろう。
俺は、驚いた。
しかし、ある意味ほっとしていた。
599慎太郎の受難第2話4/5 ◆lPjs68q5PU :2007/02/10(土) 21:50:51 ID:x7y5aExW
下手すると自分の命がなくなる事態。
しかし、肝心の奈津子はいつもと違いおとなしい。
このまま何事もなく終わればいい。
明日の学校で奈津子がぎゃーぎゃー言うかもしれないが、
それはそれで対処すればいい。
そんなことを考えているうちに、、
「お邪魔しっちゃったねぇ。奈津子、行こう!」
恵はそういって奈津子をつれて去ってしまった。
その後は気まずくて絵里と何もしゃべれなかった。
くそっ俺の華麗なる計画が!
しかし、奈津子がおとなしかったことで、
修羅場を乗り切った俺は、十分満足だった。
ところで帰る途中で鈴木に会ってしまった。
嫉妬の炎を燃やしているように見えたのは気のせいだろう。
悪いが、絵里は渡さないぜ。

彼は満足していた。
そのため気づくことができなかった。
崩壊の芽が育ち始めていたことに。
しかし気づけたからといって、彼にそれを摘み取ることはできただろうか。
その答えは誰にも分からない。




運命という歯車は急速にその回転を速める
そして仕掛けは動き始める
静かに
速やかに
600慎太郎の受難 ◆lPjs68q5PU :2007/02/10(土) 21:55:34 ID:x7y5aExW
以上。
修羅場をあっさり終わらせましたが、
その裏を書いた第2話
side−N
side−E
を書いています。
そこあたりから徐々にやみ具合を・・・
と考えています。
結末四個ほど考えています
Aある意味ヤンデレスレ的王道END
Bある意味救われるエンド
C鮮血END(救いようがない)
Dある意味最悪のEND(ギャグ?)
ぼちぼち書いていきます。では。
>>600
パスタGJ!!

崩壊していく光景を眺めながらバジリコのパスタを食べたいもんです。


では、続けて投下します。


WARNING! WARNING!
警告です。途中の注意書きをよく読んでください。
602名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 22:28:20 ID:mCeR+K8E
ノベルゲーの人どうなったんだろ?
流石に二、三日で出来てるとは思わないがタイトルとか気になる
 真也は今、自宅の玄関前で目を閉じている。

(鍵を回したらすぐにドアを開けて、PC本体を床に叩きつける。
 そしてフィギュアを見たら踏み潰してハンマーで粉々にする。
 その後でハードディスクを取り出して叩き割る。よし)

 自分がこれから行うべきことをおさらいし、いざ――

 ズッ! ガチャリ! ばん!

 ドアを開けて、彼が目にしたものは――――



 いつも通りの自分の部屋だった。
 
「あ、あれ、れ?」

 真也は拍子抜けした。
 何かおかしなことが起こるだろうと覚悟していたからだ。
 たとえば『オカエリナサイ シンヤクン オソカッタネ』って言いながら歩いてきたりとか、
PCから触手が出てきてゲームの中に閉じ込めたりするとか。
 

 しかし、現実はあっけないものだった。

 部屋のレイアウトは変わっていないし、フィギュアも当然どこにも無い。
PCにインストールされているプログラムを確認してもあのエロゲーの
タイトルは見つからなかった。メールにも送信履歴は残っていない。

「なあんだ。白昼夢だったのか。
 はああああ・・・・・・」

 一気に疲れが押し寄せてきた。
 
「あーーーーー。
 昨日は寝るのも遅かったしな。今から寝よ」

 仕事着のままベッドに倒れ込む。
 そのまま横になっているとすぐに睡魔がやってきた。
   
「もうエロゲーはこりごりだ・・・・・・」

 そう言うと真也はゆっくりと寝息を立て始めた。


 しかし、この男はまたしてもとんでもないミスを犯した。
 部屋の鍵を開けっ放しにしていたことを忘れていたのだ。

 そしてこの後にすぐ――ではなく、眠りから覚めた後にそれを後悔することになる――――
 夢の中で真也は天国を味わっていた。

「ああ・・・・・・そんないきなり、おっぱいに・・・・・・」
「いいじゃねえか。お前も好きなんだろ?」

 エロゲーのヒロインの胸を後ろから揉んでいる。
 昨晩ナニのネタにしなかった方のヒロインだ。
 
「ん・・・・・・やあ、ん・・・・・・直に触っちゃだめよぉ・・・・・・」
「天国を味あわせてあげるって。お前言っただろ?」

 最初はあの時の恐ろしい描写を思い出してしまい、ためらったが・・・・・・
彼の胸フェチぶりはやはり常軌を逸していた。
 
「確かに・・・言ったけど・・・・・・でも・・・・・・
 ふえ? あ! ・・・・・・こんなの恥ずかしいよ。
 ・・・・・・ね、口じゃだめなの?」
「俺は挟んでもらうのが好きなんだよ!」

 経験なんか一度も無いくせに。
 まあ、彼は自分のことを非童貞にして超絶倫のイケメンだと
妄想の中で変換しているから、夢の中限定でそういうことにしてもいい。

「ひあっ! ふぁん! やあっ!
 待ってよ! 真也くん! 激っ・・・しすぎるよお!」
「あーーーー、やっぱでかい方が締りがいいわ」

 真也は声を上げながら激しく動いている。
 しかしここではカットさせていただく。聞かせられるようなもんじゃないし。

「っ!・・・・・・んあっ、・・・や! 待って! 息が、ちょっと!
 止まってよ! 真也くん!」
「もう無理だ! いくぞ!」

 もう少し粘れよ!黒川真也!
 ええい、検閲だ!

 ピ―――――――――――――――――――――――――――――――

「あ、白いのが、いっぱい出てる・・・・・・」
「ふううう、はああああ、いい・・・・・・・・・」

 自家発電よりもだいぶ良かったらしい。
 検閲も長めになってしまった。

 絶頂を味わった真也は、このヒロインの虜になってしまった。

ーーーーーーーーーーーーー

 ※エグイ描写が嫌いな方はこのまま『ジャンプ先』へ向かってください。
  男性の場合は、『特に』それをオススメします。
※ジャンプすることを推奨します。

 コトが終わってからもまだ真也は夢の中にいた。

 夢だったらコトが終わってから目が覚めるものだが、
まだ彼の横には巨乳のヒロインが上半身裸で寝そべっていた。

「・・・・・・ね、真也くん。
 私の話、聞いてくれる?」
「んーーー? 別にいいけど、何?」

 ヒロインは体を起こし、真也の足の間に座った。

「私の人形をさ、ゴミ袋に入れたよね?」

 どきっ・・・・・・

「あれさ、どういう意味だったのかなあ?
 まさか、焦らしプレイ? 放置プレイ? 放棄プレイ?」
「いや・・・・・・あれは・・・・・・・・・・・・その・・・・・・・・・・・・」

 まさかその話を今されるとは思っていなかったらしい。
 真也は答えることが出来ずに口をぱくぱくさせている。

「答えられないの? じゃあ・・・・・・」


「おしおきだよ」 

 ぐあっ!

「ひえっ?!」

 ヒロインが大きく口を広げた。
 そしてそのまま――――
※ジャンプすることを推奨します。

「はむ・・・・・・ん、・・・・・・んちゅ・・・・・・
 れろ・・・・・・ちゅる。んふ・・・・・・ん・・・・・・
 ぷはあ。・・・・・・私の必殺技、受けてもらうよ」

 真也のナニを咥えながら口淫を開始した。
 それは自信を持って必殺技と呼ぶに値するほどの技術だった。

 ちゅばっ ちゅる れろれろ

「う、ああ・・・・・・く、かあ・・・・・・」

 真也は再び天国に連れて行かれた。
 夢の中だというのに、信じられないほどの快楽が襲いかかってくる。
 真也はこのプレイにすっかり夢中になってしまった。


 自分の体が動かないことに気づかないほど。

 
 かり かり

「うああ・・・・・・いた、気持ちいい・・・・・・」

 ヒロインがナニを根元近くまで咥えながら甘噛みしてきた。

 かり かり かり

 それは、次第にエスカレートしていく。


 甘噛みから、噛み切る動きへと。
※ジャンプすることを推奨します。

 がり がり がり

「?! ・・・・・・っつぅ、おい。何を」
 
 がりっ!

(うがあああああああああああ! 
 何しやがるんだ!)

 がり みちみち ぶち

(あがああああああ! ああああああああああああ!
 いてえ! いてえええええええええ!)
 
 ヒロインが、真也のペニスを噛み千切ろうとしていた。
 真也が悲鳴をあげようとしても、暴れようとしても何もできない。
 
 ・・・・・・まるで人形のように。


 ぎり ぎり ぎり 
 
 ぎりぃっ!

(ーーーーーーーーーっ!!!!!
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーああっ!!!!)

 真也のペニスはすでに原型を成していない。

 
 そして、無慈悲にも。


 ぎりぎりぎりぎり! 
 
 ガチンッ!!



「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
 ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
 アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 夢から覚めた真也は地獄の痛みに苦しみ――


 その後、彼の男性としての命は失われた。
※『ジャンプ先』

 もしあなたがエロゲーをしていたとして、ヒロインの一人を
スルーして別のヒロインに夢中になったとします。

 その後でもしもスペシャルステージやアナザーストーリーが
画面上に出てきたら、注意してください。

 ゲームの特典としてフィギュアやポスターが付属していたら、
さらに注意が必要です。
 クリアしていない状態では決して捨てないでください。

 もしクリアせずに捨ててしまうと、彼と同じ目に遭うかもしれません。


 終
終わりです。
今度こそエロゲやってる人。ごめんなさい。 

タイトルはCMYKからとりました。
最後のストーカーというのは『stalKer』の『K』からとりました。
610名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 22:57:08 ID:DDHJWf5a
>>600GJ!これからが楽しみ!wktk!
>>609ちょwwwwwこれはwwwww
(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク
611名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 22:58:48 ID:OApDMel9
こえ〜
612名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 22:59:24 ID:q3jSbcqG
これ世にも奇妙な話じゃね?GJ
613名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 23:08:44 ID:6L6iLFF5
>>600
幼なじみの方もただのツンデレでは無いようで…wktk

>>609
GJ!!!なんとか事件を思い出した。
614伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/10(土) 23:09:01 ID:mCeR+K8E
>>609
GJ!好みの内容だw

なんちゃってパッケージ描いてた
http://imepita.jp/20070210/831400
けどここまで描いてキモウトと神無士乃の入る余地が無いことに気付いたorz
615上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/02/10(土) 23:12:43 ID:EZ/bc10q
>>589
楽しみにしてますw

>>600
これは次回に期待w

>>609
GJ過ぎwww
エロゲ出来ないww

て事で投下します
616上書き第2話 ◆kNPkZ2h.ro :2007/02/10(土) 23:16:03 ID:EZ/bc10q
今日もいつもと変わらない朝。
朝の新鮮な空気をたっぷり吸い込みながら、家の前で加奈を待つ誠人。
「誠人くん〜!もうちょっと待ってぇ〜!」
「はいはい待ってるよ」
開いたままのドアから加奈の叫び声が聞こえる。
ひどく慌てた様子が誠人に伝わる。
いつも寝坊する加奈を待つのは、誠人の日課だ。
家中に縦横無尽に動き回る加奈の足音が広がる、それを聞くのが楽しかった。
「ごめ〜ん!すぐ行こう!」
両手を合わせ真剣な表情で謝る加奈をおかしく思う誠人。
「あっ!笑ったな!?」
「笑ってないから、さっさと行こうぜ」
「ちょっと待ってよぉ!」
早足で歩く自分に並ぶために必死についてくる加奈を見つめる誠人。
(本当可愛いな…)
あんまりにも見とれていた加奈が不審な目で誠人を見つめ返す。
「どうしたの?あたしの顔なんか付いてる?」
自分より一回り小さい少女に指摘され、ようやく自分が彼女を見続けていた事に気付く誠人。
紅潮した表情を悟られないよう前を向き、ちょっと走り出す。
「誠人くん〜!」
走る誠人の背中を追う加奈。
誠人が後ろをチラ見してみると、中身の少ない鞄を振り回しながら必死に走る少女の姿が映る。
一生懸命にしているほど、誠人は意地悪な気持ちになっていく。
(相当参っているな、俺も…こんな好きなんてな…)
「もうちょっとゆっくり行こうよ!」
「早くしないと遅刻だぞ」
そう言いながらも走るペースを緩めてやり、距離差を縮めてやるようにする。
ようやく追いついた加奈が息を切らして誠人を見上げる。
「誠人くん早過ぎ…」
「お前が遅いだけだ」
「もう…!」
頬を膨らして怒っている加奈も、誠人にとっては天使の微笑みだった。
こんな関係であり続けたい、心からそう思った誠人であった。
617上書き第2話 ◆kNPkZ2h.ro :2007/02/10(土) 23:17:04 ID:EZ/bc10q
「それじゃ!」
俺は加奈に手を振って教室へと入っていった。
加奈とはクラスは分かれている、といっても隣同士なんだけど。
お互い学校ではそこまで親しくはしない、加奈にも、俺にも付き合いというものはある。
学校ではなるべくそれを大事にしたい、恋にうつつを抜かして友達一人も出来ませんでしたじゃ充実した青春とは言えない。
こんな気遣いがお互いに嬉しい…んだと俺は思っている。
無理はせず、相手を思い遣っていられる、そういう関係に情熱的な恋とは違った、落ち着きを伴った感情を俺は抱いている。
きっと、加奈もそのはず…。


今は日本史の授業中な訳だが、欠伸が出ちまう…。
そんな単語の羅列を板書されてもわかんねぇよ…なんて風に愚痴を溢しながら寝ようとした時、ポケットに入っている携帯が震えた。
差出人を確認してみると、加奈からだ。

『誠人くん今日本史だよね?
あたしは数学だけど、全く意味不明…。
当てられないかビクビクしてます…』

全く…授業中はメールはよそうって言っていたのに………。
まぁ俺も今寝ようとしてたし、何よりも加奈からのメールだ、素直に嬉しい。
机の下で手馴れた感じでメールを打っていく。

『安心しろ、数学は俺の専売特許。
当てられたらすぐにメールしろ、答えてやるよ』

送信後一分もしない内に返信メールが届く。

『誠人くん中間テスト数学39点だったじゃん!
そもそもメールしてその返信を待つってどれだけ時間かかるのよ〜!』

全く以ってその通り…だが、俺の数学の点数は93点だ。
どうして逆さまに脳内変換してんだよ…、ちょっとムッときたので、メールを無視してみる。
五分くらい経つと、また加奈からメールが届く。

『ごめん、怒っちゃった?
言い過ぎたのなら謝るから…』

何真に受けてんだか、その反応が見たくて無視した訳だが。
本当にコイツは俺の心を的確に射やがるな…朝天使だと思ったが前言撤回、こいつは悪魔だ。
そんな悪魔が見せる無邪気さに打ちのめされながら、メールを返信する。

『冗談だよ、怒ってないから気にすんな』

送信ボタンを押しながら、時刻を確認する。
後もうちょいで授業終わるな…。
重苦しい空気から開放されると思うと、嬉しくなる。
そんな中、やや遅れて返信がくる。

『良かったぁ〜!
ねぇ?もうすぐお昼ご飯だし、今日は一緒に食べよ?』

そうか、この授業四時間目だった…と確認した。
いつも友達と食ってるしな、たまにはそれもいいか。
久しぶりの加奈との昼飯に何となく新鮮さを覚えながら、携帯を弄る。

『いいよ、終わったら俺んとこきて』
618上書き第2話 ◆kNPkZ2h.ro :2007/02/10(土) 23:18:45 ID:EZ/bc10q
チャイムが拷問のような時間の終わりを告げる。
今日は加奈とメールしてたからそこまで苦じゃなかったけど。
席で弁当を用意して加奈を待っていると、近づいてくる奴が見えた。
「沢崎くん………」
「島村…またか?」
俺が呆れた顔で邪魔臭そうに言ってみるも、表情は変わらない。
「本当にごめんなさい、何か私こういう事妙に気にするタイプで…」
「気にすんなって、てかそんな常に相手に気使ってたら疲れるぞ?」
俺の目の前で申し訳なさそうに頭を深々と下げているのは、クラスメイトの島村由紀だ。
何でこんな風にいるかというと…昨日の授業中に俺の前の席にいる島村が突然奇声を発しながら立ち上がったのだ。
そこで椅子が俺の机に当たって、俺は転がり落ち、右腕を床に擦ってしまったのだ。
その事に関して島村は昨日から何度も謝っている。
友達からわざわざ親しくない俺のメルアドを聞き出してまで謝ってきた時にはさすがに驚いた。
「別に掠り傷なんだから気にすんなって」
「でも…」
心配そうに俺の右腕を見つめている島村を確認した俺は、やれやれと思いながら制服の上着を脱いでワイシャツを捲くった。
「な?大した傷じゃないだろ?」
怪我した時は血がやけに出たが、止血が終われば大したもんではなかった。
「…良かった………」
ホッと胸を撫で下ろす島村の様子が見て取れる。
ずれた眼鏡を直しながら、やっとの事で笑顔を俺に向ける。
「ま、そういう事だから」
俺がワイシャツを再び着ようとした時、腕に痛みが奔った。
一瞬顔をしかめるほどの痛みに、何事かと思ってみてみると、そこには………

小刻みに震えながら俺の腕を片手で掴んでいる加奈の姿があった。
反射的に傷を隠そうとするが、細い腕からは到底想像のつかない力に振り払う事が出来ない。
目が静かに俺を見下ろす…そのあまりの怒りの視線に、俺は恐怖を覚えた。
昼休み教室にこいと言ったのは俺だ………迂闊だった、自ら俺は…。
「ちょっと来て」
有無を言わさず加奈が俺の腕を引っ張る、落ちた弁当に目もくれない加奈。
加奈の腕を媒介にして俺に恐怖が伝わる…ヤバイ!
619上書き第2話 ◆kNPkZ2h.ro :2007/02/10(土) 23:19:16 ID:EZ/bc10q
「おい!加奈ここ女子トイレ…」
俺の声なんか無視して加奈は強引に女子トイレの個室に押し込める。
独特の異臭が鼻をつく中、只ならぬ雰囲気の加奈に寒気を感じる。
「誠人くん…」
名前を呼んだかと思うと加奈は俺の唇をいきなり奪った。
壁に押し付けられながら、普段の様子からは到底想像のつかない情熱的なキスを交わす。
舌まで入れてきて、口の中で厭らしい痺れが広がる。
俺の唾液を掻っ攫って満足したのか、加奈は口を離した。
「か、加奈…?」
無言で俯く加奈、不安になってくる…嵐の前の静けさとはこんな事を言うのかな…?
「あたし…誠人くんが好き」
顔を上げ分かりきっている事を口にしてくる。
笑顔だが目に色がない。
「俺もだよ…!」
「ありがとう…。でも、あたし短気なのかな…?他の人に誠人くんを触らせたくない。
その傷が…他の人が誠人くんに触れた証拠があるのが耐えられない!
そんなの見てるとあたし壊れちゃうよ!!!」
押し付ける力が弱くなったと思った瞬間、加奈が掴んでいた右腕を見つめてきた。
嫌な予感がした…。
「…ハハ…こんな、こんな傷があるのがいけないんだよ…?あたしも誠人くんも悪くない…”この傷”がいけないんだよ!?」
すると加奈が俺の傷を引っ掻き始めた。
瘡蓋が剥がれピンク色の皮膚が覗く。
その皮膚の周りを上から下へと懇親の力で引っ掻いてくる。
「いぇが!痛ぇ!やめてくれ加奈!!!」
皮膚が破れる鈍い音が聞こえる。
加奈は相変わらず笑いながら俺の皮膚から血が出る様子を楽しんでいるように見える。
俺の声など無視して一人笑っている。
「あああ!!!か、加奈ぁ〜〜〜!!!」
「大丈夫大丈夫大丈夫…すぐに消えるから………傷も、痛みもすぐに消えるから!」
昼飯時でトイレには誰も来ない、俺の悲鳴だけが虚しく響き渡った…。


「はぁはぁ…終わった………あはっ」
加奈は俺の血まみれの腕を見て満足そうに笑っている。
止め処なく溢れる血に俺は呆然としていた。
「痛い?誠人くん…ごめん………こんなあたしでごめん…」
突然態度を翻してくる加奈、いや、これが本当の加奈なんだ!
そう思いたかった…。
心配そうに下から覗き込むように見上げる加奈、さっきまでの鬼神の如き表情じゃない…いつもの加奈だ。
「あたしが弱くてごめん…。ホントごめんなさい!あたし誠人くんが好きなの!好きで好きで…ごめんなさい…」
ずるいよ…加奈、そんな風に謝られたら………。
「き、気にすんな。俺も怪我しないように気をつけるから」
自分でも何を言っているのか分からなかった。
ただ今加奈が一番喜ぶであろう言葉を本能的に選択しただけだ。
案の定、涙目だった顔に光が差し込む。
この笑顔の為なら、許してしまう…どうしようもないな…俺。
620上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/02/10(土) 23:21:50 ID:EZ/bc10q
投下終了です。
こんな感じなんですかね…。難しいですわ。

>>614
GJ!
621名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 23:30:54 ID:DDHJWf5a
>>620
GJ!これはいいヤンデレですね(*゚∀゚)=3ハァハァ
622名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 23:44:38 ID:vNNnHOPO
>>609
天国の後に地獄が!

>>620
通常時がまったくまともなだけに恐ろしい。

どちらもGJです!
623名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 23:47:20 ID:13yW4C4n
>>614
大丈夫ですよ!
世の中にはFDになった途端パッケージから消えるメインヒロインだっているんですから!

「それ、誰のこと(ですか)?」
「――あ」

暗転
624名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 23:52:24 ID:Rd11u8D4
>>609
怖いお。エロゲーのヒロインならエロゲーの主人公を追ってろお(つД`)
でもGJだお。
625いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/10(土) 23:52:58 ID:8jgVWqnM
>614
彩色してロゴ入れたらまさにパッケージだ
パッケージにメインヒロインがいないことだってあるさ……

ノベルゲーの方、必要ならば追加シナリオとか追加エンドとか書きますので、遠慮なく言ってください

埋めネタとして投下するはずだったのを投下
『終わったあとのお茶会』全三話です
登場人物はマッド・ハンター如月更紗、一般人須藤幹也、三月ウサギの兄妹
パラレルワールドというか楽屋裏のようなものだと思ってください
626終わったあとのお茶会 ◆msUmpMmFSs :2007/02/10(土) 23:54:12 ID:8jgVWqnM


「チェンジ」
 二枚のカードを、里村冬継は机の上に放り投げる。ダイヤの7とスペードのエース。代わり
にやってきた二枚は、ダイヤの8とハートの7。手元にあるカードは、ハートの8、クローバ
ーの2、スペードの2。
 8のツーペアだった。
「おや、おや、おや。なんとも微妙な顔をしているね」
 くすくすと笑いながら、角の席に座る如月更紗が言う。いや、今は如月更紗ではなく、マッ
ド・ハンターなのかもしれない。男物のタキシードに小さなシルクハット、黒い杖は逆向きに
して肩にかけている。
 手に持つのは、五枚のカード。片手で持つそれを、指先だけで器用に閉じ、開いた。その際
に落ちた一枚が、ひらりと机の上、冬継が捨てたカードの上に落ちた。ゲームを始めたばかり
なので、机の上にはまだ三枚しかカードがない。
 捨てたカードは、ハートの4。
「一枚でいいのか?」
 冬継の対面――椅子に座り、退屈そうな顔をした少年、須藤幹也が問いかける。マッドハン
ターは黙って頷き、手元の山から幹也は一枚を引き抜いて手渡す。冬継の位置からでは、一体
何を貰ったのかは判別できない。マッドハンターは常に笑っているせいで、表情から手のうち
を読みとることはできそうにもなかった。
 ――一枚交換ってことは、良い手か。
 そう思考することしかできない。
 ポーカー、である。
 ルールは単純だ。カード交換の回数は一回、枚数は自由。入っているジョーカーは一枚。あ
とは掛け金を積み上げて、ハッタリとブラフと騙しと賺しで勝負を決める。捨て札を切ること
はなく、山札を使い切るまでが一ゲーム。この場にいるのは三人なので、平均して三回の勝負
が出来る。
 ただし、かけるのは金銭ではない。
 ――御伽噺だ。
 勝った人間が、負けた人間に、質問をする。負けた方は御伽噺を聞かせるように、昔のこと
を物語る。そういう、狂気倶楽部内に伝わる遊びだった。
 コール(勝負に乗る)をせずに、ドロップ(降りる)をした場合、質問されることはない。
ただし、質問することもできないので、完全に蚊帳の外だ。
 そういう、微妙な損得を釣鐘にかけ、相手の真理を読み解くのが――ポーカーというゲーム
だった。
 もっとも。
627終わったあとのお茶会 ◆msUmpMmFSs :2007/02/10(土) 23:55:28 ID:8jgVWqnM

「なら僕も一枚だ」
 淡々と、あくまでも退屈そうに須藤幹也――五月生まれの三月ウサギは、自身のカードを一
枚捨て、山札から一枚引く。捨てたカードはダイヤのA。
 退屈そうな須藤幹也と。
 楽しそうなマッドハンター。
 表情を変えない二人を前に、心理ゲームは、圧倒的に不利だということを冬継は自覚してい
た。その上、頭が痛くなることに、須藤幹也の後ろには――
「あら兄さん、この手で本当にいいんですか?」
 真顔で囁くのは、須藤幹也の片膝の上に身を座らせ、生身の手で首に抱きつくようにしてい
る『妹』だ。べったりと、兄にくっついて離れようとしない。右腕以外の腕と両脚は義手・義
足であり、それらを動かすことなく、右手一本で兄に寄り添っている。時折思い出したかのよ
うに幹也の首筋や耳にキスをするので、そのたびに冬継はなんともいえない気分に襲われる。
 実の兄妹、なのだ。
 そして、『女王知らずの処刑人』、八月生まれの三月ウサギという仇名を授かる、狂気倶楽
部の住人だ。
 マッド・ハンター。
 元・五月生まれの三月ウサギ。
 その跡継ぎであり妹である、八月生まれの三月ウサギ。
 周りを狂気倶楽部で囲まれてることに対する居心地の悪さがあった。
 里村冬継は、狂気倶楽部の住人ではない。
 住人だったのは、今は亡き彼の姉で――その姉もまた、元・三月ウサギなのだ。かつてマッ
ド・ハンターの友人であり、五月生まれの三月ウサギと付き合い、そして殺されたという、絡
み合った人間関係の中にある。死してなお、その影響力は残っている。
 居心地が、悪くならないはずがなかった。
「……なんで僕がお前らと和気藹々とポーカーしなきゃなんないんだろうな」
「和気藹々?」
 答えたのは、幹也だった。カードに眼を落としていた幹也が顔を上げ、
「和気藹々としてると言えるのかなこれは」
「言える、言えるさ、言えるとも。なあ忘れてしまったのかい三月ウサギくん。私たちはずっ
と、こうしていたよね」
「私は――知りません。兄さんたちとは、時期が違いますから」と、妹。
「そうだね、そうだよ、そうだとも。かの黄金のお茶会時代においては、いつでもいつだって
こうしていたのさ。ヤマネとグリムは学校になどいっていなかったからね」
「ヤマネ? グリム? おい如月更紗、誰だそれ」
 知らぬ名前に冬継が反応し、対するマッド・ハンターはにやりと笑った。
「それが、君の質問かい?」
「……まさか。それじゃ、賭けるよ」
 百円玉を机の上に置く。ゲームの形式上、硬貨は必要だった。ちなみに賭けられた金は、す
べて一階にある喫茶店のコーヒー代になるらしい。
628終わったあとのお茶会 ◆msUmpMmFSs :2007/02/10(土) 23:56:11 ID:8jgVWqnM

「コール」
 マッド・ハンターは短く続き、
「兄さんはどうします?」
「僕もコールだ」
 示し合わせたように、幹也も百円玉を机の上に置いた。
「…………」
 わずかな緊張。
 公開するこの瞬間が、一番気の張る時間だった。
「……8のツーペア」
「負け、負け、負けたね」
 スペードの6とクローバーの6、クローバーのKとハートの3、ダイヤの3。
 クローバーの2ペアだった。
 2ペア同士ならば、数字の高いほうが強い。そして、最後の一人、幹也は――
「僕も負けた」
 ハートのAとハートの10、クローバーの9とスペードの7、ダイヤの4。
 ブタ、だった。
「…………」
「…………」
「だから言ったでしょう兄さん? その手じゃ負けますよ、って」
「二人が降りてくれることを期待したんだけどね」
「あら兄さん。兄さんが三番目なんだから、それは無理だわ」
「ああ、それもそうだね」
「兄さんはお茶目ですね――」
 うふふ、と妹は笑い、兄は笑わなかった。
 マッドハンターの笑いはいつも通りで――冬継の笑みは引き攣っていた。
「……おい、如月更紗」
「なんだいなんだね冬継くん」
「こいつら、いつもこうなのか?」
「当然だ」
 彼女にしては珍しく、はっきりときっぱりと、ただの一言で切り捨てた。
 この兄妹は、いつだってこうなのだと。
「そう、当然です。私と兄さんは、この世界で唯一の家族なんですから」
「……唯一?」と、冬継が首を傾げる。
「よくある話だよ。父親も母親も殺された。それだけのことさ」
 あっさりと、幹也が答える。声には動揺も憤慨もない。そんなことは、自分にとってはどう
でもいいことなど、その態度に表していた。
 あまりにも――乾いている。
 見た目は、普通の高校生にしか見えないのに。
「それより、質問はそれで終わり?」
「あ、いや――あんたには質問はないよ」
 言いながら、冬継は心の中でこっそりと思う。
 本当に訊きたいことは。
 跪かせ、命乞いと共に訊いてやる――と。
 今はまだ、そのときではない。
 代わりに、前々から気になっていたことを訊ねた。本編だと、なし崩し的に監禁ルートに突
入したため聞く暇がなかったのだ。
629終わったあとのお茶会 ◆msUmpMmFSs :2007/02/10(土) 23:56:45 ID:8jgVWqnM

「如月更紗。お前、いつから此処にいるんだよ。少なくとも一年前からはいるんだろ? その
――姉さんと、友人だったってんなら」
「そうだね、そうかな、そうかもね。一年といわず……」ひい、ふう、みい、とマッドハンタ
ーは指折り数えて、「七年ほどいるよ」
「七年!?」
「そんなに前から……」
「ふぅん」
 驚きと、呆れと、無関心。
 三者三様の返事は、前から冬継、幹也、妹である。
「七年ってことは……九歳からマッドハンターを?」
 言いながら、冬継は頭の中で想像する。
 九歳の如月更紗が、あの馬鹿でかい鋏を振り回している姿を。むしろそれは、鋏に振り回さ
れているといってもいい想像だった。可愛らしいといえなくもないが――それ以上に物騒極ま
りない。
 けれども、マッドーハンターは。
「いや、いや、いや」
 と、大仰に首を振った。
「七歳の頃は違うのさ――そう、違うのよ。あの頃の私はまだマッドハンターじゃあなかった」
「まだ、か」
 呟く幹也に、マッドハンターは「その通りだよ、その通りだ元・三月ウサギくん」と微笑み、
「ここにきたときに振り当てられた役柄は――『ハンプティ・ダンプティ』」
 ハンプティ・ダンプティ。塀の上で狂っている、擬人化された卵。世界を内包したキャラク
ター。
 それは――鏡の国のアリスに出てくる登場人物だ。
 マッド・ハッターのように。
 三月ウサギのように。
 あるいは――白の女王の、ように。
「狂気倶楽部は代替わりがあるからね。演劇の役者変更みたいなものだよ」
 幹也が、冬継の方を向いて言った。この場で唯一、狂気倶楽部に所属しない彼へと説明した
のだろう。そんなことは知っている、と言いたかったが、ここで噛み付いても何にもならない
ので我慢した。
 須藤幹也は、きっと何を言われたところで――堪えたりはしないだろう。
 退屈だな、と返すだけだ。
 何を言っても無駄な相手に、何かを言うことほど、虚しいことはない。
630終わったあとのお茶会 ◆msUmpMmFSs :2007/02/10(土) 23:57:51 ID:8jgVWqnM

「ところが、ところが、ところがだ! 一年もしないうちに事件が起きて――ハンプティ・ダ
ンプティはくだけ散った。それはもう、見事に、砕け散って、元には戻らなくなった」
「…………」
 それも、また。
 原作と、同じように。

  ハンプティ・ダンプティが塀の上。
  ハンプティ・ダンプティがおっこちた。
  王様の馬みんなと、王様の家来みんなでも
  ハンプティを元には戻せない。

 壊れたハンプティ・ダンプティは――元には戻らない。
「『卵の中身のダンプティ』は『白の女王』へとプロモーション。そしてそして、『卵の殻の
ハンプティ』は――ご存知の通り、イカレ帽子屋に成り下がり。おかげで白い女王陛下のため
に働く、しがない首狩り役人になってしまったというわけさ」
 自嘲するように。
 おどけるように。
 あざけるように。
 嘲笑うように。
 マッド・ハンターは、そう言った。
「マッド・ハンター。以前言ってた、『首切り女王』っていうのが?」
 訊ねたのは。
 かつて、マッド・ハンターとお茶会を共にした、須藤幹也だった。
 かつて、マッド・ハンターは、自身の立場をこう表現した。
 ――首切り女王のために働く、狂った狩り人にしてイカレ帽子屋だけどね。
 そのことを、幹也は覚えていたのだろう。
「おや、おや、おや。よく憶えているね――本当によく憶えている。私としても、あまり関わ
りたい人物ではないのよ」
「ふうん……お前にも、色んな過去があるんだな」
 納得したように、冬継は頷く。
 白の女王。
 首切り女王。
 ハンプティ・ダンプティ。
 マッド・ハンター。
 七年前。
 九歳。
 情報が多すぎて、何について考えればわからない。
 ふと、最初に思いついたことを、冬継は口にした。
「なあ如月更紗。ってことは、ハンプティ・ダンプティって――」
 その問いを遮って、マッド・ハンターは高らかに言った。
 まるで、そこには触れてほしくないと、言わんばかりに。
「さぁさぁさぁ! 質問はそこまでだよ冬継くん。次のゲームといこうじゃないか。あとは本
編でのお楽しみ、という奴さ」
「なんのことだよなんの……」
 ぶつくさと、それでも冬継は従った。一気に話を聞いても、全てを理解できるとは思わなか
った。
 カードはまだ三分の二は残っている。あと二回は出来るだろう。
「それじゃあ、配るよ」
 言って、幹也がカードを配り出す。

 奇妙なお茶会は、まだ、続く。
 
631いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/10(土) 23:59:26 ID:8jgVWqnM

・使用済み
ハート   A 34  7  十
ダイヤ   A 34  78
クローバー  2   6  9    K
スペード  A2   67

以上で(1)終了です。
ぶっちゃけると本編で張ってた伏線が弱かったので補強もかねてます
あとは単に、ありえないメンバーで平和にゲームをするところを書きたかったという
次はちゃんと本編投下します
632名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 00:14:51 ID:fR7UUWKX
誠に良いヤンデレだ!
GJ!!
633名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 00:17:05 ID:fR7UUWKX
誠に良いヤンデレだ!
GJ!!
634伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/11(日) 00:38:10 ID:Wy/5ziQ0
GJでありました!

パッケージリベンジ編
今度は全員入った。
http://imepita.jp/20070211/020390
ラフなので分かりにくい為一応解説。
上段左から神無士乃、里村冬継、須藤冬華
下段左から須藤幹也、ヤマネ、マッドハンター
となっております。
635名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 00:40:12 ID:W1wZyw7C
型月ネタで敬遠する方もいるかも知れませんが、以前月姫のFDである歌月をプレイしていた際、投稿された二次創作を収録していたのを思い出しました。
そこで、お茶会もお茶会の二次創作を募り、優秀な作品を収録する。というのはいかがでしょうか?
636名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 00:48:26 ID:cTVOpEhn
>>635
ふむん?

確かに面白いアイデアではあるのだが、気が早くないか?


それに優秀かどうかをスレで語りだしたら荒れる可能性がある。
それだけのために別スレを用意するというのも微妙だな。
別の板ならもしかしたら・・・・・・だが。
637名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 00:52:43 ID:W1wZyw7C
>>636
勿論それを決めるのは作者様で、発売まで誰の作品が収録されるのかワクワクするのも良いかと思ったのですが……
638名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 00:54:14 ID:3IO5fhab
二次創作!?
止めとけ止めとけ。

最悪の場合スパシン(ザザーン)、U-1、スレナルとかと同じ方向に走るぞ。
639名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 00:57:09 ID:Y6fxQTxR
>>634
神無士乃が個人的にすげーぐっとくる(*´ρ`*)

>>635
TYPE-MOONに限ったわけじゃないけど、二次創作っていうのはすこぶるデリケート。
わざわざ荒れる種を蒔く事はないでしょ。
640慎 ◆lPjs68q5PU :2007/02/11(日) 00:58:57 ID:jmw5a2Dm
投下された職人様GJです。
活気出てきましたね。
>>635
いいアイデアだとは思いますが・・・>>636氏が仰ってる通り、少し気が早い話だと思います。
後は批評による荒れもありえないわけではないでしょう。
したらばかなんかに二次創作、そして
それについて批評するスレを立てるというのも
手でしょうけど、まだその時期ではないと思います。
未完の作品も多いですし・・・・
ただ需要があれば建てに行きますが。
641名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 01:32:10 ID:eieYISQQ
>>635
ならば言い出しっぺの君が(ry
642伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/11(日) 01:45:12 ID:Wy/5ziQ0
みんなに質問。
今までの冬継と
http://imepita.jp/20070211/061840
ではどちらが良い?
素直な意見を聞きたい。
643名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 01:49:58 ID:nccjQsTV
>>642
自分的には、今回の冬継君の方がいいかも。
何と言うか、今まで以上に「らしさ」が出てて良い感じ。
644名無しさん@ピンキー
>>642
あくまでもお茶会の人の意見が最優先ではあろうが、自分としては今回の方かな。