ヤンデレの小説を書こう!Part2

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1名無しさん@ピンキー
・このスレッドはヤンデレの小説を書くスレッドです。
・既存のキャラの使用アリ。
・プロット投下やニュースなどのヤンデレ系のネタ大歓迎。
・ぶつ切りでの作品投下もアリ。
・作者のみなさんはできるだけ作品を完結させるようにしてください。


ヤンデレとは
・主人公が好きだが(デレ)その過程で心を病んでしまう(ヤン)状態の事をさします。
 (別名:黒化、黒姫化など)
・ヒロインはライバルがいてもいなくても主人公を思っていくうちに少しずつ確実に病んでいく。
・トラウマ・精神の不安定さから覚醒することがある。

ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫
http://yandere.web.fc2.com/
前スレ
ヤンデレの小説を書こう!
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148704799/
2名無しさん@ピンキー:2007/01/22(月) 23:44:56 ID:sXcPKANe
>>1
3名無しさん@ピンキー:2007/01/22(月) 23:53:28 ID:BIfER8Q2
>>1
お茶会の人も大河内さんも全力で期待してます。
4あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/23(火) 00:53:09 ID:bYCtaPEW
>>1
まさかテンプレを使ってくれるとは思っていなかったw

>>3
サンクス 書く気力が補充された
5名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 03:05:18 ID:JHNR49Db
回避
6名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 13:59:38 ID:pi8YjqwB
キモウトの続きも待ってる
7名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 14:08:42 ID:6zwSdDZP
>>1

関連スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その27
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1169469610/
8名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 16:57:49 ID:Bo5DfLAq
>>1
乙!!さてwktkしながら続きを待つかな
9名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 17:41:41 ID:7w9uNgyP
>>7
まだこっちにしておいた方が無難だろ。
下手するとそっちの子は切られるかも分からんぞ。
関連スレ↓
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その26
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1168129885/l50
10名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 17:50:53 ID:fzH8Kh8m
神無士乃=マッド・ハンターと予想

そうなると周りの女はみんなお茶会関係者になるなwwww
11名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 18:08:04 ID:LSqEQ80P
>>10

じゃあ俺は如月更紗=マッド・ハンターと予想。
鋏を使ったミスリードかも知らんが……。
12名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 19:37:52 ID:HdISiKlr
>>11
俺もそう思う
ところで「彼」を自分のものにしたいがために拉致・監禁するのってヤンデレ?
13名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 21:10:09 ID:+4orXTIq
>>11
俺は
如月更沙=首きり(首狩り?)女王
神無志乃=チェシャ
って予想する。女王は昔マッド・ハンターの話の中にチラっと出て来た。
14名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 21:10:58 ID:+4orXTIq
>>12
ヤンデレだっ……連投スマソ
15名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 21:20:04 ID:fzH8Kh8m
お茶会の準備が終わるまで、ずっと、まってるからね?
16投下準備完了 ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/23(火) 22:13:44 ID:bYCtaPEW
『あなたと握手を』を投下してもおk?
17名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 22:15:51 ID:fzH8Kh8m
おけ
18あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/23(火) 22:20:29 ID:bYCtaPEW
その日の夕方、大河内桜は学校の部活動に姿を現さなかった。
部員たちは不審に思ったものの、部長である海原英一郎の左手を見て事情を悟った。
憧れの先輩が練習に参加できなくなったことにショックを受けてしまったのだ、と。

剣道部員たちにとって二人は恋人同然の関係だと認識されている。
毎日校外練習のあと二人きりで帰っていることを知っているので、
未だに恋人の仲になっていないことが不思議なくらいだった。
今回のことは二人の間で解決するしかないと思った部員たちは、深く詮索しないことにした。

海原英一郎は、しばらく練習に参加できないこと、
大河内が来ていないため今日の校外練習はできないことを副部長に伝えると、
鞄を持って先に帰ることにした。
19あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/23(火) 22:21:17 ID:bYCtaPEW
自宅へまっすぐ帰るのなら正門を出て左に曲がるのだが、
いつもの癖で右――練心館の方角――に曲がってしまった。
でも、引き返さずにそのまま歩き出すことにした。
しばらく練心館には行けなくなってしまうから、見納めをしておこうと思ったのだ。
歩きながら考えたいことも、あったから。

まず、この左手のこと。
全く動かなくなるという可能性は低いと思う。
痛覚があるということは神経は通っている、ということだ。望みはある。
ただ、竹刀を握って高校生を相手に試合ができるほどの握力が戻るとは限らない。

大学生を相手に片手で試合をする選手もいる。
彼は何年かけてあそこまで強くなれたのだろう。三年?五年?十年?
いや、同じ時間をかけても俺がああなれるとは限らない。

ならば、いっそのこと剣道を――――

やめろ。馬鹿馬鹿しい。
まだ怪我をしたばかりだ。そこまで悲観的になる必要は無い。
今は怪我を治すことに専念しろ。


次に考えるのは、大河内のこと。
心に引っかかっているのが、あの絶望を味わったような表情だ。
予想では、怪我の話をしたときに過剰に心配してくると思っていた。
しかし実際には――こう言うのも変だが――俺が死んでしまったと聞いたような反応だった。
何かが引っかかる。俺は言わなくてはいけないことを言わなかったのではないか?


そこまで考えてから、自分がいつのまにか練心館に着いていることに気付いた。

「大河内ともしばらくは一緒に帰れなくなるなぁ・・・」

そうつぶやくと、この怪我が本当に恨めしくなる。
女生徒を助けようとしたことを後悔はしていない。
ただ、あのとき怪我をしないように動いていれば。
女生徒の姿を目にした瞬間に動き始めていれば。

「・・・帰るか。」

ここにいるといつまでも自分を責め続けてしまうような気がした。
道場に向かって一礼して、背を向けた瞬間。

『オマエかァァァッ!!』

『ガッ!シャァァァァン!』

道場から女の声と、ガラスを派手に割る音が聞こえた。
20あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/23(火) 22:21:51 ID:bYCtaPEW
ようやく見つけた。海原先輩に助けられた恩を忘れ、立ち去った女を。





昼休みに学校を抜け出し、海原先輩が事故にあった現場を見に行った。
昼の忙しい時間帯は交通量も多く、事故の痕跡を発見することはできなかった。
この中にもしかして先輩の左手を轢いた車がいるのだろうか。
許せない。歩道にいた先輩を発見することもできずにそのまま走り抜けたへたくそドライバー。

どいつだ。そこの図体だけでかい箱みたいな車か。それとも塗装の剥げ落ちている小さい車か。
違う。携帯電話で会話しながら信号待ちしている車高の低い車。たぶんこいつだ。
その汚い金髪を引き抜いて間抜け面の皮を引き剥がして左手の爪をペンチでじわじわとめくっていって手首から先の骨を粉々にしてハンバーグに入れて・・・

いや、待て。そんなことをしている暇はない。
一刻も早く例の恩知らず女を見つけて報いを受けさせねばならない。
事件の関係者が現場に戻ってくるというのは通説だ。
この場で同じ高校の女生徒を発見したらすぐに捕まえなければ。


午後二時。待ち伏せてから一時間経過。
犬を連れて散歩する人しか通らない。まだまだこれから。

午後三時。待ち伏せてから二時間経過。
黄色い帽子をかぶった小学生しか通らない。私と目が合った女の子が驚いて逃げて行った。失礼な。

午後四時。待ち伏せてから三時間経過。
ようやく同じ制服を着た女を見つけた。しかしよく見たら剣道部の女子部員だった。
今日は重い日だったから部活に参加しなかったらしい。
まぎらわしい。今度は胴を打つときにわきを狙ってやる。

午後五時。すでに四時間待っているが、それらしき人物は発見できなかった。
今日は現れないのかもしれない。
仕方がない。今日は引き上げることにしよう。
21あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/23(火) 22:22:37 ID:bYCtaPEW
私は今、練心館の男子更衣室の中に一人でいる。何もしていない。ただ膝を抱えて座っているだけ。
自分の部屋に一人きりでは居たくなかった。
海原先輩との思い出が染み付いている場所に居たかった。
先輩に会った日から、この時間には毎日のように一緒にいたというのに。
いきなり会えなくなるなんて耐えられない。
先輩が剣道部を辞めてしまったらもう、二度と会えないなんて・・・

膝の上に涙の雫が落ちる。二滴。三滴。何度も。何度も。

寒気がする。先輩とさよならの挨拶をしたときに感じるあの寒さ。
こたつに入っても、お風呂に入っても、布団にもぐっても、この寒さからは逃げられない。
背中が震える。肩が揺れる。膝が痙攣する。歯がガチガチと音を立てる。

知っている。この寒さの正体は『寂しさ』だ。

「一人に、しないで・・・いっしょにいてくださいよぉ、せんぱぁい、ふ、うぅぅぅぅぅ・・・」

寒い。苦しい。逃げたい。もう嫌。これほどの寒さは初めてだ。

「せんぱい、・・・たすけて・・・助けて、ください・・・たす、けてぇ・・・」

視界が揺れる。脳の中がかき回される。

わたし、もうこのまま――
22あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/23(火) 22:23:29 ID:bYCtaPEW
『誰もいないじゃん。嘘ついたんじゃねえだろうな?』

――?

男の声がした。剣道部の男子部員だろうか?でも聞いたことのない声だ。
 
『ほ、ほんとです。いつもはここで、ぁがっ!』

また別の男の声。その声は震えていた。
更衣室の窓から道場裏を覗くと、男三人と女一人がいるのが見えた。全員同じ高校の生徒だ。
男の一人は口をおさえている。さっきの声はこの男のようだ。

『いないんじゃしょうがねえ。帰ろうぜ。』
『おう。でもあの海原ってやつもしかしてその後死んじまったんじゃねえの。』
『あ、そうかも。なんかガードレールに頭打ってたし左手なんか潰れてたし。』

・・・こいつら、いまなんて言った?
『海原』『ガードレールに頭を打っていた』『左手が潰れていた』。
そして『同じ高校の女生徒』。

『死んじゃったんじゃ私の傷とケータイのお礼参りできないよね。
 ごしゅうしょーさま。きゃははは!』

ここから導き出される答えは一つしかない。
この女だ。海原先輩に助けられたくせに救急車を呼ばずに立ち去った女。
私達の仲を引き裂く原因を作った女。そして先輩を馬鹿にした女!

更衣室を飛び出し、左手に木刀を掴み、
置いてあった面を道場裏のドアに向かって全力で放り投げる!

「オマエかァァァッ!!」

ガラスが砕け散る。割れた窓を飛び越えてガラスの破片の上に着地する。
足裏にガラスが刺さるのがわかる。だが痛みは感じない。
この程度ではこの怒りを抑えることはできない。

許 さ な い。

私から先輩を奪ったお前は許さない!
23あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/23(火) 22:24:43 ID:bYCtaPEW
いきなり窓から飛び出してきたポニーテールの女に、その場にいた四人は度肝を抜かれていた。

女は緩慢な動作で地面に落ちている面を拾い、

「な、なんだよテメげぐっ!」

左に立っていた男の、左側頭部に勢いよく叩きつけた。
男は横向きに倒れ、側頭部から血を流している。

「てめぇ!何しやがる!」

正面に立っていた男は拳を女の顔面に向かって振り下ろし――
女が盾にした面の、金具の部分を殴った。
男はその痛みに声をあげる前に股間を蹴り上げられ、
うずくまったまま、動かなくなった。

もう一人いた男は恐怖で声をあげられなかった。
それは、懸命な判断だった。
数秒で男二人を気絶させた女は、声をあげた存在に対して攻撃をする獣になっていたからだ。

大河内桜は恐怖で動けない男を一瞥し、

「こいつじゃない・・・」

顔が血の色で染まった男と、うずくまった男を見下ろし、

「こいつらでもない・・・」

自分の右で腰を抜かして倒れている女を見下ろすと、カッと目を見開き、

「おまえだっ!!!」

大音声で叫んだ。
24あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/23(火) 22:25:39 ID:bYCtaPEW
勢いで戦闘シーンを書いた。
正直、やりすぎたかもしれないと反省している。

次で終わりです。たぶん、明日の今頃投下します。
25名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 22:26:56 ID:fzH8Kh8m
GJ!!!!!

最高です
26名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 22:30:21 ID:2PeEq9pZ
大河内にはハッピーエンドを与えてあげてください・・・
かわいそう・・・
27あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/23(火) 22:33:09 ID:bYCtaPEW
>>25
ありがとう。君も最高だ。

>>26
ご心配なく。
前スレでの予告のままに。
28名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 22:43:22 ID:LSqEQ80P
え?
つまり、海原が助けたのはDQN女だったって事?

うわぁ……。
大河内カワイソス(´・ω・`)
29名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 23:03:13 ID:pi8YjqwB
GJ!
大河内さんも海原もカワイソス
でも躊躇なく殺意を叩き込む大河内さんオソロシス(*´Д`)ハァハァ
30名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 23:09:35 ID:F2RdmnTt
>>24
明日を楽しみにしています。

助けた女といちゃくちゃがあるかと思ったら まさかDQNとは・・・

31名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 00:00:30 ID:U7RgVbaF
投下しますよ
32『首吊りラプソディア』Take0:2007/01/24(水) 00:01:57 ID:U7RgVbaF
 書類整理を一段落させると同時に、俺は伸びをした。仕事柄、普段から体をそれなりに
体を鍛えているものの、長い間机に向かっていると体に堪えるものがある。背もたれに体
を預けると、軽い音が連続で響いた。まだ二十代の半ばだというのに、随分とくたびれて
いるものだと思う。新人と話が噛み合わないときも多いし、少し自分が不安になった。
 電子音。
「もうこんな時間か」
 冷めた珈琲を一口含み、立ち上がる。
 同僚に軽く挨拶をして部屋を出ると、退屈そうに立っている女性と目が合った。名前は
よく覚えていないが、顔には見覚えがあった。確か新人の中でも郡を抜いて活躍していた
ことで有名だったような気がする。報道部の友人と先日飲みに行ったときに、彼女のこと
を色々言っていた。曰く、十年に一人の逸材だとか、専門の学校を歴代トップで卒業した
だとか、早くも昇進が考えられているだとか。
 だが俺には関係ない、住む世界が違うのだ。
 素通りしようとすると、何故か後から着いてきた。最初は偶然だと思ったのだが、歩く
テンポも、それどころか足音さえも重ねてくる。どうにもやり辛くなり立ち止まって彼女
に振り向くと、同じタイミングで止まってこちらを見つめ返してきた。
「何の用だ?」
「気にしないで下さい」
 気にするなと言われても、それは無理だろう。だが彼女はそれきり口を閉ざし、ずっと
こちらを見ているだけだ。どうにもならない。相手をするだけ無駄かもしれないと思い、
吐息をして再び歩き始める。やはり彼女は一定の間隔を持って着いてくる。
33『首吊りラプソディア』Take0:2007/01/24(水) 00:06:45 ID:U7RgVbaF
 目的地に辿り着き、数回ノックをしてドアを開く。
「うん、時間通りだね」
「それだけが取り柄です」
 そう言うと、俺の正面、皮張りの椅子に腰掛けた初老の男性は愉快そうに顔を崩した。
「今回の用事は何ですか?」
 僕を呼び出した張本人である署長は、煙草に火を点けると旨そうに煙を吸った。脳天気
にすら見えるときもあるのだが、それでも悪い印象が浮かばないのは独特の雰囲気がある
からだろう。第37監獄都市管理局局長という堅苦しい役職名があるにも関わらず皆からは
親父と呼ばれて親しまれているのも、一重にこの人の人柄だ。
「虎吉君、君は『首吊り』という話を知っているかね?」
 知っているも何も、この辺りでは知らない人は居ないだろう。居るとすれば、そいつは
かなりのモグリか最近こちらに来たばかりの奴だけだ。
 『首吊り』というのは一年程前から流行りだした都市伝説で、夜な夜な殺人を繰り返す
化け物のことだ。殺人方法は様々なのだが、全てに共通しているのは死体を首吊り自殺の
ように紐で吊るしていること。隣の第36監獄都市に出没するらしいが、どこにでもある類
の話だと思っている。こんな噂話は昔から無くならないものだし、監獄都市の中では殺人
というのも珍しいことではない。表通りこそ穏やかだが、裏のスラムではそれこそ毎日の
ように行われているものだ。それを誰かが脚色したものだと思う。
「それが、どうかしたんですか?」
「居るんだよ、本当に」
34『首吊りラプソディア』Take0:2007/01/24(水) 00:07:45 ID:U7RgVbaF
 馬鹿馬鹿しい。
「局長、もう少しストレートに言ったらどうでしょうか?」
 声に振り向くと、先程の女性が立っていた。いつの間に部屋に入ってきたのだろうか、
全く気が付かなかった。彼女もこの場所に居る以上は、今の件に関わっているのだろう。
それに先程の発言から察するに、既に話は伝わっているらしい。
 数秒。
 局長は煙草の煙と共に溜息を吐くと、書類を差し出した。
「『首吊り』の最有力容疑者だと言われている者だ」
 目を通し、一瞬思考が停止した。
「僕は反対したんだが上からの命令でね。本当に済まないと思っているんだ。君からして
みれば信じたくない話だろうしね、彼女のことは」
 こいつがあの凶悪な『首吊り』である筈がない。信じたくないのではなく、信じること
が出来ない。いつも微笑みを浮かべていて、誰よりも優しかったこいつが犯人である筈が
ないのだ。それなのに、何故こんなに酷い仕打ちをするのだろう。
「このサキ君をサポート役として、彼女について詳しく調べてほしい。それに、悪いこと
だけではないと思うよ。サキ君は優秀だし、彼女が無実だった場合はすぐに捜査も終わる。
それが分かるように、このチームを組んだのだからね」
 言葉が何も浮かんでこない。
「こちらも、精一杯協力しよう」
 そうだ、無実だと証明出来れば良い。彼女がこんなことをする筈もないから、無駄だと
すぐに分かるだろう。ついでに監獄都市から出してやることも出来るかもしれない、局長
の言う通りに悪いことばかりではない。寧ろ、メリットの方が多いかもしれない。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ」
 決意をし、再び書類を見る。
 容疑者『カオリ・D・D・サウスフォレスト』、罪人ランクF、現在16歳。
 そして、俺の幼馴染み。
35ロボ ◆JypZpjo0ig :2007/01/24(水) 00:09:09 ID:U7RgVbaF
今回はこれで終わりです

投下ペースは遅くなるかもしれませんが、
完結はさせるつもりです
36名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 00:37:20 ID:CNIs1fEG
>>35
ィヤッホオォォォ!!GJ!!
閉鎖的状況プラス壊れてそうな人々GJ!!
37名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 01:08:20 ID:r7DkZkAp
ロボ氏ktkr
38名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 04:20:11 ID:ZwqzZZSa
ヤンデレ抜きで普通に物語として面白そうな件。
サキとカオリのどちらがヤンデレなのか、どちらもなのか。
今のところサキの罠っぽいな
39名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 10:08:55 ID:S6jVvqli
>>35
GJ!!
ロボ氏はここでも連載をしてくれるというのか!
なんたる僥倖!

それはともかくwktk
40名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 10:22:12 ID:LdvqcTQQ
ロボ氏キタ━━(゚∀゚)━━!!
ミステリアスな雰囲気GJ!
41名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 11:35:36 ID:DysJ2xkm
急に読むのが忙しくなってきた!嬉しい悲鳴 。・゚・(ノ∀`)・゚・。 
42名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 12:56:24 ID:+BAZjMrB
神が舞い降りた地はここですか?
43名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 13:02:37 ID:/kyF+zEH
嫉妬スレはもう終りだな俺はこっちに移ることにするよ
44名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 13:31:44 ID:YipNbHL+
かえれ
45名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 14:10:56 ID:S6jVvqli
>>43
「あ、お父さん。こんなところにいた。
 もうだめだよ。今夜はすき焼きなんだから。
 たっくさんお肉があるからね。うふふふふ。
 早く私たち『ふたりだけ』のお家に帰りましょ。」
46名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 15:10:46 ID:Q5iZszqB
なんというヤンデレ…
スレタイを見ただけで反応してしまった。
俺達は間違いなくヤンデレ萌え
47名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 16:05:05 ID:Z4U+K8Uf
なんという良スレ!
俺が常駐していた嫉妬スレ以上のすばらしさ
俺は悪いがヤンデレに転向するからな
48名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 16:11:05 ID:jRZfo3cX
なんか盛り上がってると思ったら……。

また、荒らしか……。
49名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 16:14:55 ID:c6tc9Ru2
どうぞどうぞどうぞ
50名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 17:47:59 ID:xiZ2ykrL
あ、後ろに包丁を持った女のこがくぁwせdrftgyふじこlp;:「」
519割書き終わった ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/24(水) 20:43:39 ID:VkGvZHfe
『あなたと握手を』にエロシーンを入れるかやめるか迷っているのだが・・・
どうする?

希望者がいたら
『ヤンデレスレはエロエロよー!』
と書き込んでくれ。

後日投下希望ならば
『マッガーレ』
と書き込んでくれ。
52名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 20:55:34 ID:r7DkZkAp
ふんもっふ
53名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 20:57:41 ID:CAsJZ2Ym
ヤンデレスレはエロエロよー!

日時は神のご意思のままに
54名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 21:03:40 ID:hKllmp0y
ヤンデレスレはエロエロよー!
55名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 21:26:12 ID:LdvqcTQQ
ヤンデレスレはエロエロよー!
56名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 21:41:18 ID:CNIs1fEG
ヤンデレスレはエロエロよー

ヤンデレスレはエロエロよー

ヤンデレスレはエロエロよー

ヤンデレスレはエロエロよー


……まずい楽しくなってきた。
579.5割書き終わった ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/24(水) 21:48:34 ID:VkGvZHfe
>>52
だがね●くん。そこまで期待されても応えられるとは限らないよ。
私にはそんなプレイを文章にできる力は無い。

>>53 >>54 >>55 >>56
サンクス。
1〜2時間後に投下する。
58名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 22:13:44 ID:Zl51SM0K
>>57
期待するしかない
59あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/24(水) 23:28:10 ID:VkGvZHfe
期待されちゃあこたえねぇ訳にはいかねえ。
まずはジャブだ!


海原先輩に怪我を負わせる原因を作ったこの女が憎い。
そしてこの女が先輩を馬鹿にしたことが許せない。
近寄っただけできつい香水の匂いが鼻をつく。臭い。

先輩から事故の話を聞いた後、この女に報いを受けさせてやろうと思った。
でも、あの場から立ち去ったことを先輩に謝るつもりでいたのならば、
先輩に免じて平手一発お見舞いするだけで済ませようと思っていた。

しかし、この女はどうしようもないほど馬鹿な女だった。
お礼参りだと?助けてもらったくせに。
先輩が居なければお前もあの携帯電話のように潰されていたんだ。
それなのにお前は膝をすりむくだけで済んで、代わりに先輩の左手が潰された。

「あ、あんた一体なんなのよ!」
「――さっき自分で言ったことを覚えてる?」
「・・・え?」
「海原先輩に、お礼参りするって、言ったでしょう?」

木刀を女の眉間に突きつける。女の顔が恐怖で醜く歪む。

「それがなんなのよ!あんたに関係なくぁっ!?」

左手を突き出し、何か言おうとした女を黙らせる。
女は後頭部を地面に打ち、気絶した。
喋るな。カメムシ女が。いや、人に害を成したこの女はカメムシ以下だ。
この世に存在していてはいけない。こいつは生かしていたらまた犠牲者を生み出す。

潰してやる。あの夜に本来なるはずだった姿に変えてやる。
いや、そんなものでは生温い。一瞬では終わらせない。
じわじわと、確実に恐怖を与えながら、
理不尽な力を前に自分の無力さを味わいながら、己の行いを悔いるがいい。

女の左肘を踏みつけて押さえる。木刀を振りかぶる。まずは、左手。
柄を握る手に力を込め、振り下ろそうとした瞬間。


「大河内ィィッ!」


あの寒さを、一瞬でかき消してくれる声が聞こえた。
60あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/24(水) 23:29:05 ID:VkGvZHfe
道場裏の光景を目にした俺は、自分の目を疑った。
自分と同じ制服を着た男が、一人は顔を血の色に染めて、一人は地面にうずくまっている。
唯一、震えながらもなんとか立っている男は、それとは別の光景に目を奪われていた。

大河内が、女生徒に向かって木刀を振り下ろそうとしていた。

なんだこれは?これを大河内が一人でやったっていうのか?
倒れている二人の男はどちらも大柄で、力比べをしたら俺でも勝てるかわからない。
その二人を、俺よりも小柄な後輩が一人で倒したということが信じられなかった。

いや、今は呆けている場合ではない。
大河内の木刀は今にも女生徒に襲い掛かろうとしている。
一度襲い掛かったが最後、そのまま女生徒の命を奪うまで止まらないのではないだろうか。
そして血を流している男の出血もただごとではない。

「おいっ!」
「ひっ!?ぼ、ぼくですか?」
「今すぐ救急車を呼べ!早く!」
「え、と・・・あ、はい!」

呆けている男を一喝し、救急車を呼びに行かせる。
倒れている男に対してはこれでいいだろう。

次は、大河内をなんとかして落ち着けないといけない。

「先輩。やっと私を助けに来てくれましたね。寒くて、死んじゃうかと思いましたよ。」


そう言った大河内の目は、絶望の色に染まっていた。
61あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/24(水) 23:29:54 ID:VkGvZHfe
大河内は何を言っているのだろう。『私を』助けに来てくれた。
どう見ても助けないといけないのは倒れている男とお前が踏みつけている女だろう。

「寒かったんですよ?本当に。先輩がいないのに道場に一人きり。
 先輩の匂いを少しでも感じたかったからここに来たのに、こんなことなら来なければよかった。
 ・・・あ。違いますね。このカメムシ女を発見できたんだから来て正解でした。」
「・・・落ち着け。・・・大河内。」

もっと何か気の利いたことを言えよ!俺!

「落ち着く?無理ですよ。やっとこのカメムシを捕まえたんですから。
 先輩に怪我をさせたこの害虫。
 それなのに助けた恩を忘れてまた先輩に害を加えようとしたこの害虫!
 ――それとも、先輩はこの害虫のことを?」

俺に怪我をさせた?気絶している女生徒が?

そうか!あの夜俺がかばったのはこの人か!

「だめですよぉ?先輩。害虫のことなんか気にしちゃあ。
 先輩は人間なんですから、人間の女の子を好きにならないと。
 先輩のことを好きな女の子だってここに、・・・・・・ここに練習に来る子の中にいるんですから。」

俺はお前のことが好きなんだよ!って言ってやりたい。
でも、違う。俺が今言わなければいけないことはそれじゃない。
なんだ?もう少しでわかりそうなのに。くそ、落ち着け俺!

「先輩の左手が動かなくなっちゃって・・・そしたら先輩は剣道部をやめちゃって・・・
 その後、私はひとりぼっち。そんなの、いやです。寒いのはいやです。
 誰も助けに来てくれない場所に一人きりで震えているのはもう・・・嫌なんです。」

俺が、剣道部をやめる?そんなことは言ったことがない。
なぜ大河内はそんなことを――

「でも、もうだめですよね。
 こんな暴力的な女の子、先輩だって怖いですよね。
 先輩に嫌われたら私、生きていけません。
 この女を潰したら、私も――」
62あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/24(水) 23:30:40 ID:VkGvZHfe
そうか。今言うべき言葉が見つかった。

俺が左手を怪我してしまったから、『剣道部をやめてしまう』とこいつは思っている。

おそらく大河内が恐れているのは『俺とのつながりが無くなってしまうこと』。

ならば俺が言うべき言葉は決まっている。

おそらく、大河内が一番聞きたかった言葉。

「さよなら。せんぱ――」
「大河内。俺は剣道部を辞めないよ。」



大河内の動きが止まった。女生徒に向けられていた目が俺に移る。
その目にはよろこびの色、とまどいの色、おどろきの色が移っている。

「え!え。え、でもそんな、だって先輩は・・・」
「左手が動かなくても、部活動には来られるし、なんならマネージャーでだって構わない。
 俺は剣道部をやめない。やめたくないんだ。」

そしてこれから言うのは、俺が一番言いたかった言葉。

「お前と一緒にいたい。
 お前と離れたくない。
 俺は、お前のことが、好きなんだ!」


死ぬほど恥ずかしい台詞だ。顔が紅くなるのがわかる。
でも言って正解だった。

大河内は振り上げていた木刀を落とし、
顔を耳まで紅くして驚愕の表情を浮かべている。
ようやくこいつの驚きの表情を拝むことができた。
めちゃくちゃにしたいほど可愛かった。


俺はこの表情を脳内に永久保存することに決めた。
63あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/24(水) 23:32:18 ID:VkGvZHfe
「ふえぇぇぇええぇん。ぅえぇぇぇぇん。」

驚きの表情から立ち直った大河内は、大声で泣き出した。
泣き顔もかわいいな。この顔も永久保存して――って、そんなことしてる場合じゃない。

「大河内、逃げるぞ。」
「ふぇぇぇぇぇ・・・ぅえ?なんれぇれすかぁ。しぇんぱいぃ・・・」

男二人と女一人が気絶していて、全員が怪我を負っている。
このままここにいたら、暴力事件の加害者として俺と大河内は補導、もしくは逮捕ということになるだろう。
この場から立ち去れば――浅はかな考えだが――加害者を特定しにくくなると思ったのだ。

「早く行くぞ。人が来たらまずい。」
「うぁっ!あ、ちょ、ちょっと待ってください。私、足が・・・」

足元を見ると、血の痕がついていた。
靴下を脱がして足裏を見ると、ガラスの破片が刺さっていた。見たところ深く刺さってはいないようだが・・・

「この足じゃ、歩くのは難しいな。」
「はい・・・でも、一つ良い方法がありますよ。」

大河内が俺の首に腕を回してくる。

「お姫さま抱っこしてください。」
「は?」
「お姫さま抱っこしてください。お姫さま抱っこしてください。」
「二回言わなくても聞こえてる。左手が動かないのにどうやってやれっていうんだ。せめておんぶにしてくれ。」
「私が先輩の首に手を回しますから、左手を使わなくても平気ですよ。
 ・・・それとも、私をお姫さま抱っこするのは、嫌ですか・・・?」

上目遣いは卑怯だぞ。大河内。

「わかったよ。じゃあ、しっかり捕まってろよ。手、離したら頭から落っこちるぞ。」
「心配御無用です。だって・・・私も先輩から離れたくないですから。」

俺の首に回した腕に力を込めて、顔を寄せてきた。
潤んだ瞳に、俺の顔が映っているのが見える。

「本当は先輩より先に言うつもりでしたけど・・・今が絶好の機会だから言っちゃいます。
 先輩。私は先輩のことが好きです。初めて会った日から・・・好きでした。
 私を、先輩の・・・海原英一郎先輩の恋人に、してください。」
「・・・目、閉じろ。」

無言で大河内は目を閉じる。

俺も同じように目を閉じ、

OKの返事の代わりに、くちづけた。
64あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/24(水) 23:33:11 ID:VkGvZHfe
右手一本で大河内を支えて家まで運ぶのは正直、骨が折れた。
大河内の家族は全員居ないらしく、俺が大河内家かかりつけの医者を呼んで、足裏の治療をしてもらった。
幸い、ほとんどがガラスによる裂傷で、刺さっていた破片は全て取り除くことができた。
消毒薬を塗り、包帯を巻き終えると『では、お大事に』と言って医者は帰っていった。

「とりあえずは、一安心だな。」
「ええ。」

ここで、一つ気になることがあったので聞いてみた。

「なあ、なんで俺が剣道部を辞めるだなんて思ったんだ?」
「・・・だって、それは・・・もし左手が動かなくなったとしたら、先輩は練習に参加しなくなって、
 そしたら練心館にも来なくなって、一緒に帰れなくなって・・・
 いつか先輩は剣道部にいる意味なくして、やめちゃうって・・・思ったからです。」

・・・また涙目になってしまった。そこまでこいつは俺が剣道部をやめることを恐れていたのか・・・

なんだかいたたまれなくなってきた。右手で大河内の頭を撫でる。
柔らかな、絹のような感触がする。

「あ。
 ・・・先輩の手、大きいですね。まるでお父さんみたいです。」

あそこまで俺は巨漢ではない。

「今『あそこまで巨漢じゃない』とか思いましたね?」
「いや、思ってない。断じて思ってないぞ。」
「先輩には、おしおきをする必要がありますね・・・」
「待て落ち着け話せば分かるもうむちうちは――」
「私、――もう、我慢できません。」
「は?」

大河内が俺に体当たりしてきた。
そのまま俺は押し倒され、キスをされた。
65あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/24(水) 23:34:09 ID:VkGvZHfe
すまない。もう少し待っててくれ。
もうちょっとでエロシーン書き終わるから。
66名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 23:58:19 ID:xCWNvGPM
      +
 +
     ∧_∧  +
  + (。0´∀`)
    (0゚つと )   +
 +  と__)__)
67名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 00:03:47 ID:BbVwOBjk
>>65
ワクワクテカテカ
68名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 00:25:54 ID:sCO44oSb
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 ワッフルワッフル!!
 ⊂彡
69あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/25(木) 01:03:37 ID:VgLGiMfZ
こいつでとどめだ!最終話!


大河内は俺と唇を重ねながら、体をすり寄せてくる。
その次は、舌を絡ませてきた。必死に俺もそれに応える。

「ん・・・ふ・・・んちゅ・・・ん、・・・ふぁ・・・れろ・・・」

唇の裏を、歯の裏を、舌の裏を絡ませる。
ひとしきり俺の口内を味わった少女は、何故か睨みつけてきた。

「先輩・・・誰かとキス、したことあるんですか?」
「は?なにいって・・・」
「初めてキスされたんだったら、舌で応えてくるなんてありえません。」
「・・・誰がそんなこと言ったんだ?」
「お母さんです。」

抗議の声をあげようとしたが、もう一度唇を奪われた。

「んん・・・せんぱぁい?だぁれと・・・んちゅ・・・したんですかぁ・・・?
 そんなせんぱいにはぁ、もっときついおしおき、してあげます。」

俺のベルトに手をかけて、ジッパーをおろすと、トランクスの上から陰茎を撫でてくる。

「ふふ。せぇんぱい。おぉっきくなってますよぉ?」
「こんなこと・・・してたらそう、なるのがあたりまえだ。男ってのは、そうっ、いうもんだ。」

ひとしきり楽しんだのか、今度は下着をずらして直接手を触れてきた。
未知のものに触れるかのように最初は亀頭のあたりを握ったり離したりしていたが、

「くっ・・・・・・、・・・うぁ」

カリを撫でられた途端、俺の口から声が漏れた。
その反応に妖艶な笑みを浮かべた少女は、指先を裏筋にそって這わせてくる。
指づかいが巧みすぎる。お前こそどこでこんなこと覚えてきたんだ。

「ふぅん。じゃあ、誰がやってもこうなっちゃうってことですよねぇ。」
「曲解をっ、するんじゃ・・・ない。あれは、ふ、うぁ。お前にされたら・・・ってぃうぁ!」

竿を掴みながら、カリの裏、鈴口を順番に舌で舐めた。
未知の快感に大きな声をあげてしまった。その声に納得したようにうなづいた少女は、

「もう、充分ですね。・・・今度は、私が気持ち良くなる番です。」

スカートを脱ぎ、次いで下半身を覆う下着を脱ぎ捨てた。
70あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/25(木) 01:04:23 ID:VgLGiMfZ
「せんぱい、そのまま動かないでくださいね・・・」

コンドームの包みを破り、俺の陰部に装着する。
俺のズボンとトランクスを脱がすと、腰の上に跨った。

そそり立った俺の陰茎の上には、少女の花弁が当てられている。

そしてそのまま大河内は一気に腰を下ろした。

「はぁっ!う、あ、ぁ、あああああぁぁ!」

処女膜を貫いた感覚が俺にも伝わってきた。
俺の胸に手をついて、肩を上下させている。

「大河内、苦しいんなら、もう・・・」
「いや、です。・・・へいき、です。への、かっぱ・・・」

その目に、迷いはなかった。

「動きますよ。せんっ・・・、ぱい。」

ぬちゃ、ジュプ

腰が上がり、今度は下りてくる。
陰茎を咥えている膣から、血と愛液の混ざったものが滴り落ちる。

「くぅ、う・・・か、は・・・」

俺はすでに大河内と繋がっているこの行為の虜になっていた。
柔らかく締め付け、暖かく刺激を与えてくる。
何度も、何度も。

ずっと好意を寄せていた少女に快感を与えて、同時に与えられているという
この行為は、すさまじい勢いで俺の脳を痺れさせる。

「さ、くら、もう・・・俺は、・・・くぁ・・・」
「わたしも、も・・・・・・せ、んぱ、い。一緒に・・・」

限界がすぐそこまで来ていることがわかる。
俺が全力で腰を動かすと、応えるように大きく腰を振る。

「はぁっ!はっ!はぁっ!あ、も、だめ!
 くるぅ!いっちゃぁう!あ、ああ、ああああああああああああぁぁ!」

俺は欲望を吐き出し、大河内はそれを受け止める。

「・・・あつい・・・あついよぉ・・・あったかいのが、たくさん・・・せんぱぁい・・・」


その声は、喜びに満ちていた。
71あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/25(木) 01:04:54 ID:VgLGiMfZ




季節は夏。
道場には剣道部員の掛け声と踏み込みの音、面を打つ音が響いている。
その音が一旦止まり、

「籠手打ち、始め!」

部長の掛け声をきっかけに、再び音が道場に響く。
日曜朝7時、ここ練心館で始まった三年生最後の校外練習は二時間続く。
72あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/25(木) 01:05:29 ID:VgLGiMfZ
練習が終わり着替えを済ませ、外で部員全員が出てくるまで待つ。
この道場の持ち主の娘であり、今日から剣道部の部長を任された者としての務めだ。

海原先輩を除き部員全員が帰ったことを確認した私は、鍵を閉めることにした。

「おい、待て桜!まだ俺がいるって!」
「うーん、海原先輩の声が聞こえますねー。先輩は遠い星になってしまったというのに・・・。」
「勝手に故人にするな!すぐに出るから、って言いながらも鍵を閉めるんじゃない!」

先輩が出てから再び施錠をする。うん。確認OK。

「さ、先輩帰りましょう。」
「桜。お前なあ・・・」
「今まで自分がやってきたことがわかりましたか?
 毎日再三同じことをやらされたからすっかりパターン化しちゃいましたよ。
 部長になったらこれやってみたかったんですよねー。」
「・・・・・・。」
「先輩は、ぐうの音も出ないようだ。」
「考えてることを喋るな!
 ・・・まあ、いいや。さっさと映画見に行こうぜ。」

そう言って先輩は左手を差し伸べる。私はその手を握って先輩の左隣に寄り添う。

「でも先輩。今日はいつもより着替えるのが遅かったですね。
 どうかしたんですか?」
「ああ、まあ、ちょっとノスタルジックな気分になったというか。
 ここでは本当にいろいろあったなと思ってな。」
「ふふ。違いますよ。『これからも』もっといろいろなことが起こるんですよ。」
「・・・言われてみれば、そうだな。お前が恋人である時点ですでにいろいろやっかいなことがおk」
「そうだ先輩。映画は中止にしてうちの道場でワイヤーなしのワイヤーアクションしましょう。
 ちょうどお父さんが漫画に影響されて『竜巻』って技を編み出してましたから。」
「ごめん嘘。前言撤回。頭から落ちるのは勘弁だ。」

こうやって冗談を言い合える関係でいられることが、とてもうれしい。
73あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/25(木) 01:06:28 ID:VgLGiMfZ
あの冬、練心館で私が気絶させた三人は、あの事件のしばらく後に退学した。
正直言って、学校に報告されたらどうしようかと不安に思っていたのだが、
校内で私とすれ違うたびに目をそらす彼らは、あの時の光景がトラウマになってしまい、
何のアクションも起こせなかったようだ。

私の足裏は後遺症を残すことなく完治した。
靴下と、剣道の踏み込みで厚くなっている皮が細かい破片を通さなかったからだ。
これは運がよかった、と言うべきだろう。

先輩の左手がほぼ元通りに直ったのは運ではなく、努力の賜物だ。
四月に先輩の手から包帯がとれたときには、握力はかなり低下していた。
しかし、先輩は握力を取り戻すためのリハビリを欠かすことなく、
七月の頭には怪我をする前以上の実力を見につけ――夏の全国大会の個人戦で、優勝した。

上手く行き過ぎだと思った。
ここまで上手くいくと何らかの力が働いているとしか思えない。


そしてその通り、ある力が先輩と私の間には働いていた。
それは私達の間に、確かな『つながり』があったから。

この『つながり』があるかぎり、私達の心が離れることはない。
もう、あの寒さを味わうことはない。
今では、いつでも春の暖かさが私の心を包んでいる。

「じゃあさっそく行きましょう!ほら!手を繋いで!」

二人の『つながり』を消さないために。
二人の心が離れることのないように。


あなたと、握手を。



74あなたと握手をあとがき ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/25(木) 01:08:00 ID:VgLGiMfZ
エロ妄想をしながら書いた。
正直、俺にエロの才能はないとわかった。反省している。

75名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 01:17:00 ID:BbVwOBjk
GJ!
76名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 01:21:50 ID:Ujj7CPCT
GJ!!
良い作品だった!
できれば次回作もお願いしたい!
ヤンデレ成分強めで
77名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 01:45:39 ID:LmMEUhhQ
投下しますよ
78『首吊りラプソディア』Take1:2007/01/25(木) 01:46:37 ID:LmMEUhhQ
「やぁ性犯罪者、楽しそうだね」
 友人の言葉に、俺は溜息を吐いた。
「黙れカマ野郎」
 俺にカマ野郎と呼ばれたこいつの名前は、フミヲ・轟。外見は出来る女、部類で言えば
現相棒に指定されたサキ・立花に似た雰囲気があるが、こっちの場合はれっきとした男だ。
そこらの女よりも見栄えが良いのだが、先程の発言だけでも分かる通りに口が悪いので、
全てを台無しにしてしまっている。口さえ開かなければ、どれだけ周囲の反応が変わるか
分からない。人の外見が印象を左右するという、分かりやすい見本だ。
 男なので当然スカートの中身が見えることを気にせず、豪快に足を開いてベンチに座る。
そしてこちらを見上げると、愉快そうに口元を押さえて肩を震わせた。
「いや、しかし笑えるわね。性犯罪でSSランクなんて」
 堪えきれなくなったのか、フミヲは腹を抱えて笑い出した。
 俺だって好きでなった訳ではない、上からの指示でしかたなくこうなっているのだ。
 首に付いているのは黒い金属製の二つの首輪、つまりはSSランク罪人の証だ。潜入捜査
の為には罪人になる必要があるのも分かるし、基本的に立ち入り禁止の場所が皆無になる
SSランクにされるのも理解が出来る。そこまでは良いのだが、何故よりにもよって罪状が
性犯罪なのだろうか。それを局長から告げられたとき、カオリが『首吊り』容疑者として
考えられていると言われたときとは別の目眩がした。犯行内容も悪質極まりないもので、
猥褻物陳列罪及び多数の変態的行為というものだった。強姦罪などの直接的なものが何故
か含まれていなかった為に、余計に変態臭く思えてくる。何の問題も起こさずに監獄都市管理局の平局員として真面目に
働いてきたつもりだったのだが、上層部は俺にどんな恨みがあるというのだろうか。
79『首吊りラプソディア』Take1:2007/01/25(木) 01:49:08 ID:LmMEUhhQ
「今まで前例が無かったらしいわよ、変態SSランクなんて」
 それはそうだろう、俺も聞いたことがない。俺と同じ境遇の罪人を躍起になって探した
けれど、過去のデータベースの変態罪人の中でも精々Aランク止まりだった。因みにその
馬鹿はある式典で大統領演説の際、全裸で会場ジャックをしたという猛者だった。そんな
奴よりも上だと知ったとき、良い歳をして本気で泣きたくなった。娑場で一生懸命働いて
いる両親に対し、申し訳ない気持ちが溢れてくる。
 嫌なことを思い出し、俺は再び吐息。
「もう帰れ、頼むから帰ってくれ」
「何よ、折角有給取ってまで遊びに来たのに」
 そんなことに大切な有給を使わないでほしい。代わりに仕事をする同僚が可哀想だし、
何よりも俺らは公務員だ。国民の大切な税金から給料が支払われているというのに、その
行く先が変態罪人見物の為に使われていると思うと怒り心頭だろう。しかも真っ先に怒り
の矛先を向けられるのは、真面目に対応をする俺のような人間なのだ。勘弁してほしい。
「それで、噂の相棒ちゃんはどこ?」
「ん、今カオリの方に行ってる。俺の名前を盾に、最近の行動を……」
 直後。
 最後まで言うことなく、俺は慌てて背後に飛び退いた。次の瞬間には、俺の立っていた
空間を不可視の塊が通り過ぎてゆく。それは進行先の大木にぶつかって、轟音をたてる。
幹の幅が5m程もあるにも関わらず、全体が大きく揺れていた。
80『首吊りラプソディア』Take1:2007/01/25(木) 01:50:47 ID:LmMEUhhQ
「虎吉ちゃん、早まっちゃ駄目!!」
「早まっているのはお前の方だ!!」
 声の方向に向き、反射的に叫ぶ。
 本当に危ないところだった。この大木は第36監獄都市のシンボルであると同時に、硬度
が高い木としても知られている。それなのに今の攻撃は樹皮だけでなく幹本体をもえぐり、
小さな子供ならば中に入ることが出来るような穴を作っている。もしもこれが自分の体に
当たっていたかと思うと本当に恐ろしい、カオリの調査どころではなくなっていた。
 誰がやったのかと思えば、カオリ本人だった。
「何しやがる!!」
「ご、ごめんなさい。このお姉さんが、虎吉ちゃんが世界一の変態になったって言ってて、
それで女の人とお話をしてたからつい。ごめんなさいごめんなさい」
 つい、で殺しかけてしまうのか。昔から性格が優しかった割に容赦がない奴だったが、
ここに入って悪化しているような気がする。特に今のものは洒落になっていない。
 カオリが撃ったのは、恐らく空気弾だ。空気を固めて撃ち出すという、目に見えないが
打撃力も熱量も高い、軍事兵器としても使われているもの。普通ならば複雑な制御が必要
なので大型の確率システム制御装置が要る筈だが、見たところ身に着けているのは市販の
指輪型のものが一つだけ。才能があると思ってはいたが、ここまでとは思わなかった。
「すみません先輩、もう少し威力の低いものを勧めるべきでした」
「お前の指示か」
「ここのシンボルが、あんな無惨な姿に」
81『首吊りラプソディア』Take1:2007/01/25(木) 01:52:17 ID:LmMEUhhQ
 俺の心配は無いらしい。
 初めて会ってから一週間足らず、まだ間もないというのに俺は嫌われているのだろうか。
しかも毎日会っていたという訳でもなく、合計すれば三日も会っていない。それなのに、
ここまでされる理由が分からない。嫌われる瞬間も何も、そんな機会すら無かったのだ。
 たった数分の間に一気に疲れが溜り、肩を落とす。
「大丈夫、虎吉ちゃん?」
「大丈夫だ、今はまだ」
 これからは多分、もっと酷いことになるだろう。気合いを入れる為、改めてカオリの姿
を見る。カオリの今の姿を忘れてはいけないと、守らなければいけないと自分を戒める為。
今にも壊れてしまいそうな弱い娘を、壊さないようにする為に。
「どうしたの、そんなにじっと見て? 何だか恥ずかしいよ」
「綺麗になったな」
「やだもう、お世辞ばっかり」
 カオリは照れ臭そうに顔を背けるが、これは本音だった。
 カオリと別れてから二年になるが、その短い間に子供は急成長する。最後に会ったとき
はまだまだ子供だと思っていたけれど、どことなく大人びて見える。身長が伸び、それに
合わせて体のラインも確かに女性のものになっていた。第四惑星の血が少し混じっている
のでやや小柄だが、それは目に見えてはっきりと分かる。
82『首吊りラプソディア』Take1:2007/01/25(木) 01:53:23 ID:LmMEUhhQ
 ただ、変わらない部分の方も同等に目に着いた。
 灰色の髪は最後に見たときと変わらずに長く綺麗で、緩く波打っているのも変わらない。
相変わらずドジな部分が多いのか膝や肘が少し擦り剥けているし、喋り方も昔と同じだ。
それに顔を見ていると、人の根っこの部分は簡単に変わらないのだと思う。垂れ目がちの
大きな瞳、それがよく似合う柔和な笑みは幼い頃からずっと変わっていない。何の根拠も
なく、カオリはやはりカオリなのだと思ってしまう。
「変わらないな、カオリは」
 口に出して言うと、はにかんだ笑みを見せる。
「さっきと言ってること違うよ?」
「良いとこだけ伸びたってことだ」
「そう?」
「先輩は、悪い部分が伸びたみたいですけど」
 サキの発言にカオリは軽く首を傾げ、すぐに意味を理解したらしく俺の顔を心配そうに
覗き込んできた。その顔が僅かに赤く染まっているのは何故なのだろうか。
「あのね、虎吉ちゃん」
 言わないでくれ。
「その、変態になったのは本当なの?」
 カオリの口からだけは、訊かれたくなかった。思わず否定してしまいそうになったが、
サキの視線が飛んできたことにより寸前で堪える。これは潜入捜査で、しかも対象は俺に
問うてきている本人なのだ。簡単に言ってはいけない。それは分かっているが、俺の心は
悲鳴をあげていた。カオリの純粋な視線に堪えられない。
 沈黙を破るように、サキが咳払いを一つ。
「この首輪が見えないのですか?」
「やっぱり、そうなんだ」
 頼むから納得しないでくれ。
 どうにもならなくなり、俺は頭を垂れた。
83ロボ ◆JypZpjo0ig :2007/01/25(木) 01:56:25 ID:LmMEUhhQ
今回はこれで終わりです


『甘獄と青』と世界は同じですが、
読んでない人でも分かる話にする予定です
意味が分からない単語が出てきたときは、そんなもんだと思って下さい
84名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 02:07:07 ID:c9ccpKjw
虎吉と聞いてとらとらシスターを思い出したのは俺だけ?
85名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 04:08:24 ID:J1GQFbD1
連続投下キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
>>74
GJ!大河内さんも海原も幸せになってよかった(*´∀`*)
>>83
GJ!主人公が不幸だw
そしてこれから誰が病んでいくのかwktkです
86名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 08:36:34 ID:XeFIWhqF
>>83
ロボ氏GJ!

虎吉ちゃん濡れ衣着せられてカワイソス
87名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 10:27:02 ID:mDe6Ynjo
>>74
2人とも生きて幸せになれて良かったよ…(つД`)。゜
というかヤンデレ大河内さんを普通に受け止める海原先輩スゴス

>>83
なんか変な人いっぱいいるぅぅぅ!!カオリの今後にwtkt
88名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 11:49:52 ID:sCO44oSb
◆Z.OmhTbrSo氏、ロボ氏、共にGJ!!

ここもついに活気付いて来たな!!
89名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 19:45:27 ID:DXtDyYh7
無口系ヤンと幼馴染系ヤン…
これにはwkwkせざるを得ない
90埋めネタ投下終了 ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/25(木) 22:51:47 ID:VgLGiMfZ
『ひどいよ!おおこうちさん』を前スレに投下しました。
もしよろしければご一読を。

注意:ヤンデレ分五割増し
91名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 23:23:19 ID:BbVwOBjk
パラレルかと思ったらオチに糞ワロタwwww
92名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 07:48:59 ID:ZSZVQ/6V
>>90
>床に置かれていたのモップを手に取り、
>床に置かれていたのモップを手に取り、桜めがけて
>床に置かれていたのモップを手に取り、桜めがけて突進する。

ちょwwwのモップてwwww
93いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/01/26(金) 23:27:26 ID:UnvIt1gf
間があいてすいません
九話投下します
94ミツバ:2007/01/26(金) 23:48:54 ID:r8DAWahY
お茶会きた―――!!
これからも頑張って下さい。
95いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/01/26(金) 23:51:28 ID:UnvIt1gf
 教室に如月更紗の姿はなかった。

「………………」
 いつまでも教室の入り口に立ちすくむのもあれなので、扉を閉めて自分の席にまで向かう。如月更紗が普段ぼうと窓の外を
眺めている椅子には、誰も座っていない。机の上に何も置かれてもいない。無人を主張するように、ある種の空白感をとも
なってただそこにあるだけだ。
 人の座らない椅子と机ほど虚しいものはない、と思う。誰かが風邪で休んだとき、あるいはいなくなったとき、そのたった
ひとつだけの空白はとても目立つのだ。
 ふと、何の脈絡もなく椅子とりゲームを思い出す。椅子が全て埋まっているのに、人間が一つ余っているという不思議。
椅子に意識があれば、きっとそのときの人間と同じなんじゃないかと僕は思う。
 一つだけ余っているのも。
 一つだけ足りているのも。
 それは同じことだ。向きが違うだけで、はみ出していることには変わりない――
「…………」
 なんてことをつらつら考えながら、如月更紗の席から視線をそらした。彼女との奇妙な関係はまだ
誰にも知られていない。始業ベルのなっていないこの時間、空席が一つしかないわけでもない。如月
更紗の席ばかり見ていたら、勘のいいやつには怪しまれるだろう。
 如月更紗は、学校では大人しい優等生なのだし。
 僕だって――ごく普通の、学生だ。
 周りの皆と、同じように。
 それは、即ち。
 周りの皆も――一歩見えないところでは、同じように壊れているのだろう。
「……結局、僕だって平均値なんだよなあ」
 姉さんもそうなのかな――と思いながら、席につく。
 どうも今日は思考が散漫している。朝から色々なことがありすぎたせいだろう。まだ学校に来たばかりだと
いうのに、帰って昼寝したくなる。いや、帰らなくても昼寝はできるか。一限目だけ授業に出て、ニ限目から
は寝るかな……一回や二回休んだところで対して授業に問題は出ないし。こういうとき『困るのはどうせ自分
だ』とでも呟くべきなのかもしれないが、しかし、テストで赤点をとろうが停学になろうが退学になろうが僕
は別に困らないのだった。
 姉さんがいなくなった、三年生までは在校したいと、その程度にしか考えていない。
 なんで――僕はここにいるんだろうな?
 そんなことは、誰にだって分からないのだった。
「……本格的につかれてるな」
 誰にも聞こえないように呟く。呟かなければやってられなかった。こんなこと、他の誰かに聞かれたら説明に
困るので、できるかぎり音を立てずに口の中だけで響く程度まで声を落とす。そこまでしなくても、朝のがやが
やとした教室内では目立たないが、念には念をというやつだ。
 神無士乃はいない。年代が違う彼女はここにはいない。それだけが唯一の安息内容だった。
 ――と。
 がら、と扉が開く。教室の喧騒こそ収まらないものの、何人かの視線が扉へと向かう。時間的に教師がくる可能性
もあったが、なんとなく予感があった。恐る恐る、僕も彼らと同じように扉を見る。
 案の定、如月更紗がそこに立っていた。
 朝見たとき――つまりは全裸だ――とは違う、きちんと制服を着た姿。ただし、家から出るときに持っていた巨大な
キャリーケースは手にしていない。その細い手が持っているのはごく普通の学生鞄で、あの長い鋏が握られていたりも
しない。一度自宅に帰ったかなにかして、どこかで荷物を置いて来たのだろう。
 そりゃああんな大荷物持って学校にはこれないな――と思う反面、疑問がわいた。
 自宅。
 如月更紗は、いったい何処で、誰と住んでいるのだろう。
 まさか木の股から生まれてわけでもあるまい。両親や家族はいるだろう。住む家は……まあ、無いと
言われても驚きはしない。さもありなん、と思うだけだ。
 如月更紗は、僕のことを深く知っていた。
 僕は――如月更紗のことを、何も知らない。
「…………」
 それが少しだけ、心に棘を刺した。その棘が何なのか、よく分からなかったけど。
 如月更紗は僕に一度だけ視線を向け、止めることなく視線を流した。ぼうと空の机を
見ていた僕とはえらい違いだ。一瞬視線が絡んだことなど、僕と如月更紗以外には誰にも
分からなかったに違いない。
 誰に挨拶もせず、如月更紗は教室を縦断し、彼女の席についた。話しかけるものは誰もいない。
 いつも通りの朝だった。
 いつも通りに、始業の鐘が鳴った。
96いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/01/27(土) 00:25:21 ID:zq2tTUAY
 二限目。授業をさぼって保健室に行くと
「遅かったわね」
 当然のように、如月更紗がベッドで横になって僕を待っていた。
「…………」
 つい数時間前に見た光景をデジャヴして脳がくらりと悲鳴をあげる。幸いというか、最悪にというべきか、
如月更紗は服を着ていなかった。脱いだ制服がきちんとハンガーにかけられている。上も下もきちんとかけられ
ているので、今毛布の下の如月更紗は下着姿だろう。
「偉いでしょう? 皺にならないようにしてるのよ」
 僕の視線を読んだのか、如月更紗はどこか自慢げにそういった。
 悪いが、全く自慢にならない。
「せめてジャージでも着てろよ……」
「あら、あら、あら。冬継くんは体操服とブルマがお好みと?」
「誰がそんな話をした! 僕が言ったのはジャージだ!」
「嫌よ」如月更紗は眠そうにあくびをして、「あんなものを着るのは、私の美意識が許さないわ」
「まあ、あの野暮ったいジャージがお前に似合いそうにもないことは保証してやるが……」
「ちなみに下着も着ていないわ」
「それは着ろよ!」
「私の美意識が――」
「お前のソレはただの露出癖だ!」
 首の下あたりまで毛布が被さっているため、如月更紗の言葉が真実かどうか判別するすべはない……いや、むきだしの首
筋とか鎖骨とかが見えていて、肝心の下着の紐が一切見えていないということは、少なくとも上はつけていないことになる。
朝のときといい、今といい、寝るときには何もつけないタイプなのだろう。
 しかし……学校でまで……
 僕の疑問をやはり顔から読んだのだろう。如月更紗は微笑んで、
「生まれるときと――死ぬときくらいは、余計なものはいらないと思わない?」
「…………」
「装飾品を全て削り落として、人格も全てこそぎ落して、何もかもをなくして――
 さながらチェスのように、白と赤に染まって終わりたいとは、思わない?」
「……チェスは白と黒だ」
 一応突っ込むが、如月更紗の微笑みは変わらない。僕にだって分かっている――彼女の言うところの『チェス』は、
普通のチェスではない。
 赤と白のチェス。
 言うまでもなく、不思議の国のアリスだ。
「白い肌が赤い血に染まって――ってか。寿命って線はないのかよ」
「考えられる?」
「ちっとも」
 そこは素直に頷く。
 僕にせよ彼女にせよ誰にせよ、寿命で死ぬところなど、想像もつかない。
「毛布をはぎとりたそうな顔をしてるわね」
「してねえよ! 脈絡のない嘘をさらりと言うのは止めろ!」
「毛布をはぎとりたそうな存在をしてるわ」
「存在意義すら捏造された!?」
「ちなみに私は――きっと、毛布をとりたそうな顔をしているのでしょうね」
「格好つけて言うのは構わないが、やっぱりお前のそれはただの露出癖だ」
 童話で脱ぎたがりの御姫様とかいたっけな……狂気倶楽部でのコイツの二つ名は、きっとそんな感じに違い
ない。棘姫とか、その辺が適任なんじゃないだろうか。鋏持ってるし。
「それで……なんでお前ここにいるんだよ」
 無理矢理に話を戻す。無理矢理戻さないとずるずると脱線してしまうことを、ここ数日の付き合いで思い知っている。
 つぃ、と、如月更紗は僕へと手を伸ばした。何もつけていない、付け根から指先まで肉のない細い裸腕が僕へと伸ばされる。
伸びた爪先が、惑うことなく僕を狙っていた。
「貴方が、ここにいるから、よ」
「…………」
97いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/01/27(土) 00:54:51 ID:zq2tTUAY
「話したいことがあったから、先に来てたのよ」
 眠かったしね、と冗談めかして如月更紗は付け加え、手で口元をかくして欠伸をした。
移りそうになる欠伸をどうにか堪える。この女の前で大口あけて欠伸をしたら、その口に鋏
を突き入れられる気がしてならない。
 どうせ、毛布の中か枕の下にいつもの鋏を隠しているんだろう。
「……眠いのか?」
「一晩緊張していたから」
「チェシャがくるかも、と?」
「そうね」如月更紗は頷き、「いつ貴方に襲われるかと戦々恐々と緊張していたわ」
「前後の文が繋がってねえ! そもそも自分から裸になっておいて――」
「据え膳を食べる男なのね」
「…………」
 そういわれると立つ瀬がない。実際、神無士乃がきていなかったらにゃんにゃんしていた可能性だって
なきにしもあらずなのだ。
 いい加減恥かしいので、話を戻す。
「チェシャは――人の家に平気で真夜中に襲撃かけるような常識知らずなのか」
「いえ。常識を知っているからこそ、よ」
 言って、口元を押さえていた手をするりと枕の下にもぐりこませ、如月更紗は見慣れた鋏を取り出した。
何度見ても心地良く感じない、物騒な鋏。その鋏の持つ部分に指をかけ、くるりと回して、如月更紗は切っ先
を僕に向けた。
「狂気倶楽部には、二つの原則がある。遺書を書くことと――外側と線を引くこと」
「…………」
 遺書と――区分分け?
「前者は置いておくとして……この場合の問題は後者。チェシャもアリスも、常識を知っているから、常識を知りすぎて
いるから、決して学校や人前でしかけてくることはない。けれど逆に――路地裏や廃ビルや、夜中の家や街だと、遠慮なく
襲ってくる。『日常と違う場所』という、一種の異界だから」
「異界って……同じ世界だろ」
「そう、同じ世界。けれど、違う世界だと思い込める、そういう場所が必要なの」
 これはこれは、大きな大仰な『ごっこ遊び』なのだから。
 そう、如月更紗は言葉をまとめた。
「ごっこ遊び……」
「儀式、と言い換えてもいい、そういう場が必要なの。その線を越えれば――ヤマネのように事件になる」
 また――知らない名前だ。
 ヤマネ。
 恐らくは、不思議の国のアリスに出てきた、眠り続けるヤマネのことだろう。そしてそれは、狂気倶楽部
の人名でもあるはずだ。
 そいつもまた――姉さんの事件に、関わっているのかもしれない。
 そう思うと、黙って話を聞く以外の選択肢はありえなかった。
「だからこそ今は安全で……だからこそ、今は休息を取らないと。
 今夜にでも、あの子は来るのかもしれないわ」
 ふぁあ、と如月更紗はもう一度欠伸をして、鋏を元に戻した。案外、本当に眠いのかもしれない。
「だから冬継くん」
「なんだよ」
「今日は一緒に手を繋いで帰りましょう」
「手を繋ぐ意味はあるのか……?」
「私が嬉しいわ」
「……。嫌だといったら?」
「手を繋いで帰るわ」
 そこで如月更紗は言葉を切り、にっこりと笑って、
「あなたの手を切り取って、繋いで帰るわ」
「怖いことを笑顔で言うな! 余計に怖いだろうが!」
「冗談よ」
「それこそ嘘だろ……」


98いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/01/27(土) 01:05:01 ID:zq2tTUAY
 はぁ、とため息一つ。無論それは形だけだ。
 一緒に帰ろうという如月更紗の提案は、学生同士の甘酸っぱい約束でも何でもなく、純粋に『学校
帰りに襲われる可能性がある』と指摘しているに過ぎない。僕の身の安全を保証するといった如月更
紗が下校を共にしようというのは、わからないでもない。
 同年代の女の子に守られることに抵抗がないわけでもないが……それよりも、何よりも。

 狂気倶楽部同士で食い合ってくれたほうが――僕としては、都合がいい。

「…………」
 ただ問題があるとすれば、下校を一緒に帰るということは、神無士乃を置き去りにしなければ
ならないということだ。如月更紗と神無士乃の三人で一緒に帰るなどという自殺行為をする気は
ない。それどころか、朝臭いを覚えられている可能性がある以上、引き合わせることさえ危険だった。
 そもそも、今日の放課後は神無士乃と約束があったんだっけ。
 どうしよう、と悩みながら、悩む時間を確保するために、僕は如月更紗に質問する。
「なあ、如月更紗」
 何? と首を傾げる如月更紗。むきだしのうなじと鎖骨が艶かしく蠢く。学校でこんな
姿をしてるなんて――十分倒錯的だ。一応カーテンでしきられているものの、誰かに見られたら
どうするんだ。
 ……既成事実ができるだけか。
 心の中で、心の底からため息一つ。
「お前、先回りしたって言ったよな」
「言ったね、言ったわ」
「どうして――僕が保健室にくるってわかったんだよ」
「ああ、そんなこと」
 くすり、と、如月更紗は意味ありげに渡って。
「入学したときから、ずっと見てたもの――貴方が保健室にいくときの態度くらい、覚えてるわよ」
「…………」
 ストーカー?
 ストーカー……なんだろうなあ。
 狂ってる?
 狂ってる……んだろうなあ。
 人のこと、言えないけど。
 ちょっと可愛いと思ってしまう辺り――もう駄目なんだろうけど。
 さて。
 そんな如月更紗に対して、僕はどうするべきなんだろう――――?
99いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/01/27(土) 01:07:51 ID:zq2tTUAY

以上で九話終了です
先人を見習って選択肢でもつけてみようかと思います

A.如月更紗と時間を過ごす
B.神無士乃と時間を過ごす
C.今すぐ家に帰って姉と会う
100名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 01:15:07 ID:6OO4cR14
>>99
A!!!
101名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 01:15:52 ID:BLGls1Cl
いない君といる誰かキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
GJ!
>ちょっと可愛いと思ってしまう辺り――もう駄目なんだろうけど。
俺はとっくの昔に更紗たんに萌えまくり(;´Д`)ハァハァ 
だから選択肢も当然

rアA
102 ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/27(土) 01:19:51 ID:N3CylHm4
>>99
GJ!!です

どこかエロスを感じさせる文章にゾクゾクさせられてます
文章の書き方も見習わせていただきます
本当にありがとうございました
103名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 02:34:36 ID:YRtPIB7z
>>99
A以外選択肢が見えない件
104名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 04:27:36 ID:kKCDeWwi
>>99
Dのニア ころしてでも いきぬく
105埋めネタ投下終了 ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/27(土) 05:02:00 ID:N3CylHm4
流れを切ってしまってすいません。

『ひどいよ!おおこうちさん』を前スレに投下しました。
もしよろしければご一読を。

注意:パロディです。
   ただ、ちょっと時間の感覚を掴みにくいかもしれません。

では先ほどまでの続きをどうぞ
↓↓↓↓↓↓↓↓
106名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 05:07:54 ID:qP+9mHCU
>>99
欲張りな性格なので全部ということで
107名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 11:21:05 ID:b6Tld6i3
更紗はどことなく森野っぽいな
懐かしい
108名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 14:43:53 ID:613OV8Yp
>>99
もうAしか見えない
109名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 15:46:49 ID:6OO4cR14
>>105
あなたもGJ

Aがいいとは言ったものの死んだ姉に会いに行くのもなかなか危険で良い気がしてきた…
110名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 15:52:53 ID:xD6FLWAu
Bで
111名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 15:58:33 ID:P74dswY9
アネスキーの俺にはCしか見えないな
112名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 17:05:44 ID:iKaAdTYm
Aですね。
113ミツバ:2007/01/27(土) 17:09:46 ID:6hTEtMR1
Bでお願いします。
114渋沢夏恋の話◇ミツバ:2007/01/27(土) 17:32:49 ID:6hTEtMR1
――告白しよう。
私こと渋沢夏恋は、唯一の肉親である、渋沢剛毅を誰よりも愛している。

思えば私は、剛毅がより私の愛を感じる事が出来るように、いろいろと手を尽くしてきた。

十五年前、剛毅に対して私以上の愛情を注いでいた両親を、交通事故に見せかけて亡きものにした。
――私以上に剛毅を愛する者などあってはならない。
両親の葬儀の際、多くの人が『可哀想に…』と私に同情してくれた。
けれど、剛毅とのふたりきりの生活を夢想する私にはどうでもよいことだった。

私達を引き取ろうとする親族もいたが、丁重に断った。
「ふたりきりの家族ですから、これから支えあっていきたいと思います」
親族達はそんな私を気丈だと誉め、そっとしてくれた。

――正直助かった。もし強引に引き取られでもしたら、その人たちまで殺さなくてはいけなくなるところだった。
殺人はどうでもよいが、警察に嗅ぎつけられたら剛毅と離れ離れになってしまう。
115渋沢夏恋の話◇ミツバ:2007/01/27(土) 17:49:51 ID:6hTEtMR1
剛毅が小学校に上がる時はとても心配だった。
剛毅は私の為に操を立ててくれると信じでいるが、クラスの汚らしい雌餓鬼共が剛毅を誘惑するかもしれないからだ。
私の危惧は当たった。
剛毅が雌餓鬼を連れて帰ってきたのだ。
掴みかかりたい衝動を堪え、よそ行きの笑顔を張り付かせた。

唇を噛むと、血が滲んだ。
その痛みの報復は、その日のうちに晴らした。


――次の日、剛毅は酷く落ち込んでいた。
駄目だよ?私の前では笑顔でなきゃ。
剛毅の笑顔はこの世で一番可愛いんだから。

夕食になっても剛毅は落ち込んだままだった。
話を聞いてみると、昨日一緒にいた雌餓鬼が、バラバラにされて発見されたらしい。
なぁんだ、そんなこと、剛毅が気にする必要ないのよ?

その夜、剛毅を慰めるために、私たちは一戦を越えた。
116名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 19:05:09 ID:Hy1Lr/32
キモ姉ですか。
……これからに期待させていただきます。



ところで、トリップは付けないのでしょうか?
みたところ、直接◆の後に「ミツバ」と入れているようですが……。
117ミツバ:2007/01/27(土) 19:16:21 ID:6hTEtMR1
トリップは立派な職人さんの証だと考えているので、恐れ多くてつけられません

この話は一人称のみで書いていきたいと思っています
118名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 19:24:44 ID:N3CylHm4
>>115
>剛毅が小学校に上がる時はとても心配だった。
ちょwwww早すぎwwww

あ、このスレでは普通か

>>117
では、気が向いたら使ってください。

トリップの付け方(嫉妬・三角関係まとめサイトより)
名前欄にタイトルのあと、「半角# + 秘密の文字列」でトリップが出ます。
(例) 鮮血の結末 7#abcdefg → 鮮血の結末 7◆v/rTh0HxaQ になります。
119ミツバ:2007/01/27(土) 19:31:54 ID:6hTEtMR1
わかりました。

あ、しばらくは夏恋の回想で話を進める予定です。
ちなみに登場人物の現在の年齢は、
剛毅→17歳
夏恋→20歳

…あれ、てことは夏恋は5歳で童貞を失ったということに……
120名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 19:51:51 ID:N3CylHm4
>>119
小岩井よつば吹いたwwww
121ミツバ:2007/01/27(土) 20:00:49 ID:6hTEtMR1
>>120
小岩井……?
すみません、勉強不足で元ネタ分からないので教えてください。
122名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 20:06:29 ID:N3CylHm4
小岩井よつば(♀)
あずまきよひこの漫画「よつばと!」の主人公。
めがっさ元気な女の子。五歳。

googleで検索したほうがわかりやすいと思う。
123名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 20:19:52 ID:lTBU4TLV
何か色々と素人っぽいように見えますが、作品の『先』は見えてますか?
長編を書くつもりなら、ある程度筋書きを決めておかないと終われませんよ?
124埋めネタ投下終了 ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/28(日) 07:21:29 ID:wFSh9mQ6
『ひどいよ!おおこうちさん』を前スレに投下しました。
もしよろしければご一読を。

また脳内に妄想が浮かんだら新たなSSを投下しますので、
そのときはよろしくお願いします。
125名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 07:42:42 ID:VVpTfat0
GJ!
126名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 14:52:20 ID:mqZacx+v
これ置いておきますね

つ「病み鍋PARTY」 ttp://amane.dyndns.info/yami/
127名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 17:02:58 ID:bT6KQYqF
>>126
本州か・・・おいは九州の人間だから本州さ怖くて行けねぇ。
行ってみてぇけんど、ヤンデレ本欲しいけんど、むりだぁ。
みんなで楽しんできてけろ。
128名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 18:27:03 ID:+4y5EUiI
行く人は報告ヨロ。
委託してたら買うかも知らんで。


ちなみに、俺は愛知県。
5回乗り換え、約3時間半と約11000円かけねば行けね……orz
129名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 18:52:43 ID:SQxqzpns
今ならイベント参加もぎりぎり間に合うのか
問題は金と絵と時間だな……

見るだけ見にいってみるかなあ
130名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 19:32:18 ID:FMqSkYE+
これは…行きたいけどひぐらしとハルヒ知らない俺にも買えるオリジナル物はあるのかな。
131名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 19:37:44 ID:MfdIXOF/
>>130
ちょい待て。ハルヒはこのスレ的にヤンデレで決定してるのか?

・・・・・・まあ俺もハルヒはヤンデレものを好んで読んでるけど。
132名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 20:07:55 ID:FMqSkYE+
>>131
ハルヒがヤンデレと言うよりヤンデレの二次創作物はハルヒが多いかな、と思って。
冬コミでも見かけたし、ヤンデレ二次創作物は他はひぐらしくらいじゃないのか?
133いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/01/29(月) 20:27:27 ID:SQxqzpns
「あら、駄目ですよ」

 後ろからかかる声と共に――止められた。
 無理矢理に、脚を止められた。
 止めざるを得なかった。
 横薙ぎに脚を包丁で切られれば、誰だって足を止めるだろう。
 右足から感覚が消え、うまく走ることができずに右半身から床に倒れこむ。受身を取ることすら
できなかった。どうにか手をついて頭を床にぶつけるのだけは防ぐ。
 遅れて――痛みがくる。
 脚に、痛みが。
 痛い。
 それ以上に――熱い。脚が熱い。熱いのに、冷えていく。
 脚から血が、抜けていく。
「兄さんに乱暴しようなんて――私が許しません」
 上から声がする。さっき後ろで聞こえていた声が、今度は上から聞こえてくる。高い、女の子の声。
 聞いたことのない声は、笑っている。
 楽しそうに、笑っている。
「兄さんに触れるなんてとんでもない。触れていいのは、私だけです」
 笑い声が近づいてくる。同時に、きぃ、きぃと車輪の音が聞こえる。
 何の音だ――疑問に思いながら、力を振り絞って、身体を仰向けに戻す。
 車椅子に乗り、血に濡れた包丁を手にした少女が、楽しそうに笑っていた。
「男の方も、女の方も、関係ありません。兄さんの側にいていいのは私だけです。
 私は兄さんだけのもので、兄さんは、私だけのものです。
 そうでしょう――兄さん?」
 最後の言葉は、僕ではなく、松葉杖をついた男に向けられたものだった。
 男は、目の前で起きた惨劇に眉一つ動かすことなく、退屈そうに答える。
「お前が言うなら、そうなんだろ」
「ええ、その通りです。だから――貴方は、邪魔者です」
 退屈そうな男と対照的に、少女はどこまでも楽しそうだった。
 おかしそうに、笑っている。
 犯しそうに――笑っている。
「お前、は……」
 脚の傷を手で押さえる。ぬるりと、血に濡れる感触がする。それでも血が止まらない。フローリングの床に、血が
だくだくと、だくだくだくと広がっていく。的確に、これ以上ないくらいに正確に動脈を切られたのだろう。
 急いで手当てをしないと、間違いなく死ぬ。
 いや、手当てをしても怪しい――そして、それ以上に。
 目の前の少女が、それを許すようには見えなかった。
「ごめんなさい。ここは貴方の家なんでしょうけど……今は、私と兄さんのための世界なんです」
 くすくすと、車椅子の少女は笑う。血塗れの包丁にはそぐわない、純粋無垢な笑みだった。
 少女は笑う。
 男は笑わない。
 僕は――
「は、はは」
 僕は、笑った。
「はははははははははははははははははははははははははは!」
 笑うしかなかった。
 なんだ――これは。
 一体なんで、こんなことになっている。理不尽だ。曖昧だ。唐突すぎる。伏線も前ぶれも何もなく、理由も意味もなく、
 ――僕は、殺されるのか。
 姉さんを殺した奴にですらなく。
 その妹に――邪魔だという、それだけの理由で、死ぬのか。
 馬鹿げている。
 狂っている。
 どいつもこいつも――狂ってやがる。
「はははははははははははははははははははははははは!」
 僕は笑い、笑い、笑って、

「煩い」

 喉に包丁が突き刺さって――それ以上、笑うことはできなかった。
134いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/01/29(月) 20:29:50 ID:SQxqzpns

ごめんなさい投下先間違えました
前スレに埋めネタ投下中です
135名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 20:59:23 ID:MfdIXOF/
本当に会いに行ってしまった・・・・・・

だがGJ!!

>>132
ひぐらしの二次創作って
『あの時こうしていたらハッピーエンドだったのに』
っていうのが多いのかな?
136名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 22:50:31 ID:GflRSjlw
ひぐらしのヤンデレものは表層的で好かんな
狂ってしまうほどに真っ直ぐ主人公を愛するヒロインの一途さに惹かれるわけで。
退廃的なエロス万歳!
137名無し@ピンキー:2007/01/30(火) 00:06:02 ID:/y3XY1Td
「ね、ね、にーちゃ、きょ、今日、お家いるの?」
「あ? いるけど? 何、なんか用?」
「う、ううん。よ、用事とかじゃ、な、ないんだけど。えへ、に、にーちゃと一緒にいれるな、て。お、思ったから。う、嬉しいな。えへへ」
 俺は力任せに妹の鼻っ柱を殴りつけた。華奢な身体の妹は、二メートル近く吹き飛んだ。俺は妹に近寄ると、髪の毛をわし掴む。
「や、にーちゃ。い、いた、痛いよぅ」
「いいかい、美都? 俺はお前の何?」
「に、にーちゃ」
「違うだろ」
 もう一発、鼻に入れる。ただ、さっきより全然力は入れていない。
「ご主人様。オーケー? 言ってみな」
「ご、ごしゅじんさまぁ」
「ん、良い子だね美都。ほら、キスしてあげるよ。お前犯されるの好きだろ?」
「ん、んぅ、や、にゃ、に、にーちゃ。気持ち、いい、よぅ」
「んー良い子良い子。ほら、鼻血出てるぞ。ご主人様が舐めて拭いてあげるよ」
「く、くすぐったよぅ。に、にーちゃはやっぱりやさ、や、優しいね。えへ、えへへ。に、にーちゃ大好き」
「……美都、俺はお前の何?」
「え? え? に、にーちゃはにーちゃだよ。ち、違うの!?」
「……んーん。違わないよ、美都。ほら、おいで。部屋でいい事したげる」
「う、え、えちぃのはや、やだよ? こ、怖いから、や、だよ?」
「お前は本当バカだなぁ。まあそこが可愛いけどね。あと俺に命令すんな」
「え、えへへ。ほ、褒められちゃった。に、にーちゃに褒められ、ちゃった。う、嬉、嬉しいなぁ。えへへ」
 屈託の無い妹の笑顔。俺は妹の唇に自分の唇を重ね合わせると、そのまま押し倒した。欲望が、止まらない。
「にゃ? ふぇ? に、にーちゃ、だ、だめだよ! こ、ここ廊下だ、だよ!? は、恥ずかしいよぅ……」
「いいだろ。どうせ父様も母様も今日は帰って来ないし。俺が一日中犯してあげる」
「ほ、ほんと? に、にーちゃきょ、きょお、お家い、いてくれるの?」
「おうそうだよ。なんせ俺はエライからね。ほら、喜べよ」
「えへ、え、えへへへ。う、嬉しいなぁ。に、にーちゃがずっとい、一緒にいてくれ、いて、いてくれて嬉しいなぁ」
「おうおう。俺もお前をずぅっと犯せて嬉しいよ。ほら、我慢出来ないからさっさとヤらせろよ」
「に、にーちゃ、だ、大好き」
「はいはい」

 俺は、ひどく性欲を誘発するその幼い肢体に、舌を這わせる。

練習してみた。正直ぜんぜんヤンでる気配がないのは俺の力不足ということで一つ。
138名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 00:25:32 ID:vVDVVog3
投下しますよ
139『首吊りラプソディア』Take2:2007/01/30(火) 00:26:48 ID:vVDVVog3
 結局何の誤解も解けないまま、俺達は食事に向かうことになった。勘違いされたままで
向かうのは不本意だが、久し振りにカオリと食事をするというのは胸が踊る。可能ならば
フミヲとサキが居ない方が良いのだが、フミヲは何が楽しいのだろうか、いつもの下品な
笑みを浮かべていて帰ろうとする様子は欠片もない。サキはサキで俺から離れようとせず、
既にお馴染みとなった無表情のまま黙って着いてくる。こいつの場合は仕事の相棒だし、
常に隣に居るのが不自然だと思われないよう、監視しなければいけないという理由で俺と
共に行動している。真面目なのは良いことだが、それのせいで人を完全に性犯罪者として
扱ってくるのは流石に疲れる。今とて近寄るだけで妊娠してしまいそうだと理不尽な理由
を付けて微妙に離れているのだ。何と極悪なんだろう。
「虎吉ちゃん、どこで食べるの?」
「焼肉かと、とにかくスタミナの付くやつを食いたい」
 ここに入るまで引き継ぎやら委託やらで疲れているので、体力がほしいのだ。カオリが
『首吊り』でないと証明するだけでなく、ここから出してやる為の捜査もしなければいけ
ないので、これから忙しくなるだろう。頭脳担当のサキのような人間ならともかく、現場
で叩き上げられたタイプの俺は足で調べることしか出来ない。
 意見を求めてカオリを見ると、少し嫌そうな顔をしていた。
140『首吊りラプソディア』Take2:2007/01/30(火) 00:28:37 ID:vVDVVog3
「最近腰の辺りがちょっと」
 それもそうか。俺にとってカオリは妹といった感覚がの方が強く子供扱いをしてしまう
けれど、こいつも年頃の娘だ。流石に野暮だったかもしれない。
「それに先輩にスタミナ料理など与えてしまったら、どうなるのか分かりません。何しろ
過去に前例のない変態なのです、精力が付いたら一大事になります」
 サキは黙れ。
「なら近くに良い店知ってるわよ。第三惑星の極東地区料理のお店なんだけどね」
 それが無難なところか。元々俺もカオリも第三惑星の出身だし、下に馴染んだ味の店と
いうのは助かる。第二惑星の料理は苦味が多いし、第四惑星の料理は基本的に辛味が強い
のであまりカオリには食べさせたくない。変な味という訳ではないが、癖の強い味に慣れ
てしまうと娑場に出たときに大変だろう。過保護という言葉が、不意に思い浮かんだ。
 フミヲに案内されるままに歩いていると、立ち入り禁止のテープが見えた。こんな仕事
に就いていると珍しいものではなくなってくるが、善良な罪人として普通に暮らしている
カオリには辛いものがあったのだろう。悲しそうに目を伏せ、テープから視線を外した。
「どんなだった?」
「両手が吹き飛ばされていたらしい、気分悪い」
「『首吊り』って、本当に居たんだ」
141『首吊りラプソディア』Take2:2007/01/30(火) 00:30:44 ID:vVDVVog3
 野次馬の方に耳を傾けてみると、どうやら『首吊り』の仕業だったらしいことが分かる。
本当に厄介だ、しかも殺し方がえげつない。早く解決しないといけないと自覚し、カオリ
の頭を撫でた。その存在に只でさえ怯えていて、しかもその容疑はカオリにかかっている
のだ。それにこのままでは都市伝説どころではなく実在の殺人鬼だという話が流れ、監獄
都市自体も正常に機能しなくなる可能性もある。
 何か証拠があるかもしれない。
 そう思いテープの向こう側を見つめていたが、側頭部に軽い打撃が来たことにより思考
が遮られた。衝撃の方向に視線を向ければ、サキの冷たい顔が見えた。サキは首筋を指で
示した後でカオリを見て、小さく首を横に振る。それだけで言いたいことが分かった。
 カオリを無視して現場に向かえば、捜査がばれる。どうせ鑑識の人間が調べているのだ
から、今はそちらに意識を向けず、普通に振る舞っておけということだ。
 俺は軽く頷くと、先に進んでいたフミヲに小走りで追い付いた。
「メシはまだか?」
「そこだよ」
 指差す方向を見れば、店の看板。
「あ、何か良い感じ。虎吉ちゃん、早く入ろ」
 先程のことを忘れる為だろうか、急かすカオリに促されて店に入る。少し進むと、随分
と懐かしい匂いが漂ってきた。故郷の匂いとでも言うのか、家の匂いというのか、幼い頃
から体に馴染んだ極東地区料理独特の匂いが何とも快い。フミヲは慣れた様子で店員に何
か一言二言告げると、奥の座敷に向かった。俺達もそれに続く。
142『首吊りラプソディア』Take2:2007/01/30(火) 00:31:31 ID:vVDVVog3
「うわ、懐かしい。畳なんて久し振りに座ったよ」
「少し金がかかるが、管理局に届ければ注文出来るぞ?」
 たまに畳でないと寝た気がしないどころか、生活している気にならない人も居る。俺も
管理局に入った頃はそんな状態で、仕事よりも寧ろそっちの方が辛いときもあった。それ
は飲食物も同じで、今ではすっかり自炊が特技の一つになってじまった程だ。
「それにしても、よくこんな店知ってたな?」
「報道課は範囲が広いし、よその噂も情報の一つだからね」
 成程な、フミヲなりに頑張っているという訳か。食べ物屋は自然と情報が集まる場所で、
管理局の人間が居ても怪しまれない。報道課としては、捜査の上で必要なのだろう。
「そういえば、最近大量の上様領収書が来ていると事務課の友人が言っていましたが」
 俺も愚痴を言われたことがあるが、まさか、
「お前か?」
「必要経費よ、必要経費」
 このカマ最悪だ。
「ね、虎吉ちゃん。どれ食べる?」
 カオリは嫌な話題を変えるように、苦笑を浮かべてメニューを広げた。この四人の中で
一番の年下だというのにフォローもしっかりしている、何とよく出来た16歳なのだろう。
違う、この場合は年下の少女に気遣わせている俺達が問題なのか。良い年をした大人三人
が、一体何を馬鹿やっているのだろうか。
 吐息をしつつ適当に料理を注文し、茶をすする。
「あれ、サキちゃん飲まないの?」
 フミヲに言われて気付いたが、サキの湯飲みの中身が全く減っていない。
143『首吊りラプソディア』Take2:2007/01/30(火) 00:32:34 ID:vVDVVog3
「もしかして極東地区の食い物が駄目だったか?」
「そんなことないです。わたしは第二惑星出身ですけど、寧ろこっちの方が好きで」
 サキも第三惑星出身だと思っていたが、違ったようだ。第三惑星でなら平均に近い身長
だけれど、基本的に大柄な人間が多い第二惑星では小柄な部類に入る。なるほど、それで
納得がいった。サキの乳が小さい理由は、遺伝子的なものだったのだ。身長が小さいなら、
それにバランスを合わせるように乳の成長も小さな時点で止まるだろう。しかしカオリの
ように小柄でありながらも少し乳の大きな奴も居るし、何と言うか、
「可愛いなぁ」
「どこ見て言ってるの!?」
 いかん、つい凝視してしまった。
 カオリは恥ずかしそうに顔を赤らめ、慌てて胸を腕で隠した。そして変質者を見るよう
な目でこちらを眺めてくる。うっかり忘れていたが、俺は今は前代未聞の変態という設定
なのだった。これでは本格的に痴漢と変わりない、俺は改めて首輪と上層部を呪った。
「それで、何で飲まないんだ?」
 強制的に話題を戻し、サキを見る。
「猫舌なんです」
 意外だった。てっきりこいつのことだから、どんなに熱いものでも顔色を変えずに淡々
と食事をすると思っていた。それに熱いなら熱いで確率システムを使えば簡単に冷ませる
と思うのだが、そうもいかないらしい。サキは悔しそうな表情で俯いて、
「温度調節は苦手で」
 再び意外なことを言った。
 エリートだし、新人の中でトップの成績だというので万能だと思っていたのだが、サキ
もやはり人間だったということか。どんなに完璧に見えても、誰にでも欠点はある。
 代わりに少し冷ましてやると、
「ありがとうございます」
 いつも通り抑揚の少ない、無感情な声で言って、飲み始めた。
144ロボ ◆JypZpjo0ig :2007/01/30(火) 00:35:52 ID:vVDVVog3
今回はこれで終わりです

次回でやっと『首吊り』登場
理想のヤンデレが書きたいです
145名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 03:55:22 ID:LlhQwxlc
>>137
こういうの凄く好きだわw
続き書いてくれたりしませんか

>>144
GJ
次回にwktk
146名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 07:11:30 ID:4JoeR5yd
>>144
GJ!
これからの病みっぷりに期待しています
147完全世界:2007/01/30(火) 07:26:38 ID:WgKNhTCo
「…ゴメンネ…ゴメンネ…」
そう呟きながら僕の胸に頬を擦り付けるように抱きついているのは幼馴染みの祐子だ。
小さかった頃には、ゆうちゃん、なんて呼んでいた仲だ。
今では、その…恋人になっていた。
その祐子に何で謝られてるのか、だって?
それは、祐子が───
「…ゴメンネ…ヒック…、ゴメンネ…ふ、フライパンでぶっちゃったりして…グスッ…」
と、言うことだ。
「ゆ、祐子、わかったから、この、手を縛ってる紐、解いて、くれない…?」
「…ダメ」
あまりの痛さに、朦朧としながらの僕の願いは、苛立ちを隠さない祐子によって即却下された。
「な、んで…?」
「だって、そうしたら○○ちゃん、どこか行っちゃうでしょ…?」
「どこにも…いかないよ…?」
なんだか要領を得ない言葉を紡ぐ祐子。
僕の言葉にも黙って首を横に振るだけだ。
僕の言葉に嘘は無いのだけれども。
「ゆ、ゆう、こ?」
「だ、だって、だってね?
○○ちゃん、私の事今まで、『愛してる』って言ってくれない、んだもん…グスッ」
「……」
148完全世界:2007/01/30(火) 07:27:55 ID:WgKNhTCo
「私は、私はね?
○○ちゃんの事、ずぅぅぅっと、ずぅぅぅっと、愛してるの…
でも、でもね?
○○ちゃんは、私の事、『好き』なんでしょ?
わ、私はね?
本当は、ズルい、嫌な女なの…ヒック
だから、『好き』じゃ、不安なの…
ううん、足りないの…グスッ…
だからね?
○○ちゃんを、私だけの物にしよう、って
ちょっとだけ、痛いかもしれないけど…アハハ…。
い、良いよね?○○ちゃん…アハッ…」
狂った眼で、狂った笑顔で、狂った詞(ことば)を、真摯にぶつけてくる祐子。
それに、僕は、狂っているとは思わなかった。
僕はむしろ、情けなく、悔しく、そして、ほんの少しだけ、嬉しかった。
「…い、いよ」
「え?」
「ぼ、僕を祐子の物にしても…いいよ」
「○、○○ちゃん!」
「でも、一つだけ、伝えたいんだ」
「…」
「祐子、ずっと愛してる」
「…ヒック…グスッ…わ、私も、ずっと愛してます」
そう、二人で言葉を交わした後。
祐子が持っていた、鈍く光を反射して輝く刃。
それで、お互いの首筋を────裂いた。

それぞれの血を体に浴びながら

僕と祐子は誓いのキスをした。

永遠で、絶対の、約束。

そうして、僕達の世界は、完全世界になったんだ。
149名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 07:30:03 ID:WgKNhTCo
突然思い付いたので書いてみた。
もしかしたら、『〜世界』シリーズを作るかもしれない。
150名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 07:43:20 ID:4p8rZw3G
>>137
>>144
>>149
そろってGJ!!そしてwktk

しかし、ヒロインだけでなく主人公もどこか病んでるな。
やはりヤンデレ女を受け止められるのはヤンデレ男だけなのか?
151名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 12:42:49 ID:gQDfGKGv
406 :名無したん(;´Д`)ハァハァ :2007/01/29(月) 10:00:16 ID:0CUCKJoS
 ttp://kasamatusan.sakura.ne.jp/cgi-bin2/src/ichi72370.jpg
 ttp://kasamatusan.sakura.ne.jp/cgi-bin2/src/ichi72372.jpg.html
152名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 16:00:14 ID:GqLZUNZh
そういやヤンデレ男を中心にしたSSって見ないな
もっとも描写力が足りないとヤンデレ男は変質者にしかならないってこともあるがw
153名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 17:13:09 ID:MfeofgEp
>>150
朱に交われば赤くなる、なんてのも。
154名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 19:05:26 ID:0z4voIX5
◆Z.OmhTbrSoさんの嫉妬SSスレ>>295ネタを寝ないで待ってる俺が居る…
155姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/30(火) 19:59:44 ID:g6cZmyPM
>>154
呼んだ?

元ネタ

295 :名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 09:23:41 ID:FMqSkYE+
小学生くらいの子供がさ、弟妹ができたときにお母さんを取られたと思って
弟妹が嫌いになる話ってあるよね。
あれで思いついたんだけど、弟妹が欲しくて欲しくて仕方がなかった女の子が、母親が
妊娠したと言って大喜びするんだけど、母乳を飲んだり母がべったりと甘やかすところを
想像して"弟妹"ではなく"母親"に嫉妬。
まだ生まれていない愛しの弟妹を奪うため、母親のおなかを包丁で…なんてのが頭に浮かんだ。

「うふふ、きみはお姉ちゃんが産んであげる。
 だからママのおなかなんてところからはさっさと出ようね…ううん、出してあげる!!」

こんな感じ。でもこれってここじゃなくてヤンデレスレ向きだなぁ…


細かいところは違うので、そのつもりでお願いします。
156姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/30(火) 20:00:32 ID:g6cZmyPM
姉弟(おやこ)の絆

『誠二、おかえりなさい』

 姉さんの声が聞こえる。
 暖かくて、包み込まれる声。
 でも普段聞いている声とはどこかちがう。なんだろう。

『もう。十ヶ月も目の届かない場所にいたなんて・・・・・・
 これからは私のそばから離れちゃだめよ』

 ・・・・・・?おかしい。
 記憶にある限りでは、学校行事を含めても姉さんから
一週間以上離れていたことはない。

『でも、大丈夫。
 私とあなたの間には強い絆があるから。
 誰もそれを引き裂くことなんて出来ないわ。
 これからは、ずっと一緒よ――』

 声が遠ざかり、光が射してくる。
 この感じは――夢だ。
 どおりで姉さんの声が子供っぽく聞こえるわけだ。

「誠二ー! 朝よー! 起きなさーい!」

 あれ?いきなり大人っぽくなった?
 ・・・・・・違うか。この声は昨晩おやすみの挨拶をしたときと同じ声。
 今年27才になった姉さんの『現在』の声だ。 

 からっぽの頭に無理やり意識を詰め込む。
 目を開けると、姉さんの顔が目の前にあった。

「おはよ。清子姉さん」
157姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/30(火) 20:01:16 ID:g6cZmyPM
 姉さんの顔が目の前にある。近い。近すぎる。
 僕が上体を起こすか、姉さんが顔を下ろせばすぐにキスできる距離。
 さらに腕をがっちりホールドされている。逃亡不可能。

「姉さん・・・・・・今日は上から? 右から? それとも左?」
「さぁ? わかっちゃったら面白くないでしょう・・・・・・? こ・う・い・う・こ・と・は」

 ゆっくりとした動きで体を摺り寄せてくる。胸のあたりに柔らかい、ふくよかな感触がある。
 その感触は姉さんの動きに合わせて変幻自在に形を変える。

「無理やりは反則だからね」
「あら残念。私は無理やりも結構好きなんだけどなぁ・・・・・・」

 潤んだ瞳で僕の目を見つめてくる。

「そんな目をしてもだめ。それより、今日はいつもより時間をかけてやってもらうからね」
「じゃあ、私はあったかいものをいっぱいいただこうかしら・・・・・・」

 そう言って姉さんは目を閉じる。目を閉じたまま顔を近づけてくる。
 僕はそれに対して――


 すぐさま右に首を曲げて、姉さんの唇を避けた。

「ちっ!今日はそっちだったか!今日こそはと思っていたのに・・・・・・」
「はい、僕の勝ち〜。じゃあ今日のご飯当番は姉さんだね。よろしく。」

 しぶしぶうなづいて姉さんは僕の体の上からどいた。
 しかし、部屋を出て行くことなく僕の方を見つめている。

「・・・・・・なに?姉さん」
「うふふ。うふふふふ。せいじくぅん? それは何っかな?」 
「へ?・・・・・・だぁわぁぁぁぁぁ!」

 姉さんは僕の――生理現象&さっきのやりとりで大きくなってしまった――股間を見つめていた。

「お姉ちゃんに欲情して劣情を抱いてソコが感情を爆発させてしまったのね?」
「でてけぇぇぇ!」
「照れなくてもいいのに・・・・・・『全部』、知ってるんだから。
 じゃあ、早く来てね。今日はいつもより手の込んだ料理作るから!」

 怪しい笑みを浮かべて、姉さんは台所に向かった。
 なぜかいつもよりご機嫌だった。
158姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/30(火) 20:02:26 ID:g6cZmyPM
 いつもより豪華な朝食を食べてから学校に行く準備をしていると、
スーツを着た姉さんが部屋に入ってきた。

「姉さん。今日は編集部で打ち合わせ?」
「ええ。ついさっき電話があってね。・・・・・・まったく。今日は大事な日だって言うのに」

 なにやら苦々しい表情をしている。最後に言った言葉はよく聞こえなかった。

「それでね誠二。今日ね・・・・・・より道しないで早く帰ってきて欲しいんだけど」
「? 今日なにかあったっけ?」
「え? 今日何の日か覚えてないの?」

 本気で驚いている。そう言われても・・・・・・姉さんの誕生日はこの間祝ったし。
 今日は学校があるんだから祝日でもないはずだ。
 
「いえ、思い出せないならいいのよ。それで、早く帰ってきてくれる?」
「うん。いいよ。今日は誰とも会う約束してないし」

 僕の返事を聞くと、姉さんは嬉しそうな顔で部屋を出て行った。





 学校での生活を普段どおりに送って家に帰ってきたら、姉さんが笑顔で迎えてくれた。

「誠二! おかえりなさい! さぁさぁ早く上がって! お祝いしましょ!」
「え、ちょ、ちょっと待って! なんのお祝いなのさ!」
「入ればわかるわよ! ほらほら歩いた歩いた!」

姉さんに背中を押されて居間に入ると、朝食以上に力の入っている料理が
テーブルの上にところ狭しと並べられていた。

「うふふ。どう? お姉ちゃん頑張ったのよ」
「すごい量だね、これは・・・・・・それで今日は一体何の・・・・・・って、あっ!」

 壁にかけてあるカレンダーにはこう書いてあった。

『1月30日
 誠二19才の誕生日』

「そっか。今日は僕の誕生日だったんだ・・・・・・全然思い出せなかった」
「そういうこと。さ、座って。お祝いしましょ」
「う、うん・・・・・・」

 姉さんの笑顔を見ていたら反論するのを忘れてしまった。
 ――僕、まだ18なんだけど。
 でも、毎年姉さんは僕の年齢に一を足して数えている。
 だからいつものことだと思って姉さんとの誕生パーティーを楽しむことにした。
159姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/30(火) 20:03:26 ID:g6cZmyPM
 どこの貴族の食事かと思うほどの美味しい料理と誕生日ケーキを食べ終えて、
その余韻に浸っていると、姉さんがアルバム写真とデジタルカメラを持ってきた。

「じゃあ早速、19才になった誠二の写真を撮ることにしましょうか」
「姉さん。僕はまだ18才・・・・・・」
「誠二。笑って笑ってー。お姉ちゃんが夜這いかけてきたと想像してー」

『カシャッ』

 デジタルカメラがフラッシュを放ち、僕の姿を写真におさめた。
 いきなり撮られたからどんな顔をしていたか分からない。
 できたらもう一度撮り直してほしいところだが――

「うん。よく撮れてる。じゃあ待っててね。すぐに印刷してくるから!」

 せっかちなカメラマンの姉さんはそう言い残すとすぐに居間から出て行った。
 あとには僕一人が残された。

 手持ちぶさたになったので、アルバムを開く。
 中身は全部僕の写真で埋め尽くされている。
 ほんと、姉さんは几帳面だな・・・・・・僕が赤ん坊のころからずっと続けているなんて。
 一番最初の写真はどれだろう。一番最初のページの左上の写真。これだな。
 日付は・・・・・・ 

『1988.2.18』

 あれ?
 確か僕の生まれた年は1989年のはずだ。
 不審に思い、写真を裏返したらこんな文章が書いてあった。

『やったやったやったやった!
 私の弟が家に来てくれた! お母さんありがとう!』

 私の弟、ということはこれを書いたのは姉さんだな。
 ん?ということはやっぱり僕は1988年生まれで、今日19才になったってことなのか?

 次の写真を見てみると、また赤ん坊の写真だった。今度は
『1989.2.19』と右下に印刷されている。
 写真の裏にはこう書いてある。

『ようやく誠二が家に帰ってきてくれた。
 もう離さないからね。誠二』
160姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/30(火) 20:04:19 ID:g6cZmyPM
 ・・・・・・どういうことだ?写真の赤ん坊は――正直言って見分けがつかないけど、
一年も経っていればもう少し成長しているはずだ。
 もしかして成長が遅い病気?・・・・・・いや、それはないだろう。
 もしそうなら僕は同年代の皆と同じ体格をしていないはずだ。

 だとすると、この『1988年』生まれの赤ん坊と
『1989年』生まれの赤ん坊は別人ということになる。
 それはつまり。

「僕が・・・・・・『誠二』が二人いる・・・・・・?」

 頭が混乱する。どうなっているんだ?僕の誕生日は?・・・・・・1月30日だ。
 じゃあ生まれた年は?・・・・・・1989年だ。
 でも、本当にそうなのか?
 今まで何度誕生日を迎えたんだ?18回?19回?
 だめだ。小さい頃の記憶なんてまったくない。
 僕にはわからない。誰か他に知っている人は・・・・・・
 
「お待たせー。いい写真ができたわよー」

 ・・・・・・居た。姉さんだ。姉さんに聞けば分かるはずだ。

「ね、ねえさん・・・・・・この写真のことなんだけど・・・・・・」
「え?ああ、誠二が『この家に初めて来た日』と『ひさしぶりに帰ってきた日』の写真よ。
 本当、嬉しかったわ。特に帰ってきてくれた日なんか親戚みんなが集まっちゃって」

 ――この写真を見て、おかしいと思っていないのか?

「ひさしぶりに帰ってきたって・・・・・・僕はどこに行ってたのさ?」

 僕のこの質問に対して姉さんは、


「え?そんなことも忘れちゃったの?
 あなたは十ヶ月くらい、私のおなかの中にいたのよ」

 とても嬉しそうな表情で答えた。
161姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/30(火) 20:05:28 ID:g6cZmyPM
 思考が働かない。落ち着け。
 よく思い出せ。姉さんは今なんて言った?

『あなたは私のおなかの中にいたのよ』

 姉さんの、おなかの中にいた・・・・・・?僕が?

「忘れてても無理ないか・・・・・・居なくなったとき、まだ誠二は0才だったものね」

 僕は0才のときにいなくなった・・・・・・

「せっかくだから教えてあげる。誠二が居なくなったあの日、家に強盗が入ったの。
 そんなときに限ってお父さんが運悪く居なくって、体調を崩してたお母さんと誠二が襲われた」

 僕と母さんが襲われた・・・・・・

「ちょうどそのときに帰ってきた私が見たのは、血に濡れたナイフを持った強盗と、
 血を流して倒れてるお母さんと誠二の姿だった。
 その後は私も殴られて気絶してしまったから、二人を助けることが出来なかった」

 じゃあ、僕は一度死んでいた・・・・・・?

「その後は本当に生き地獄だったわ。お母さんはいない。誠二もいない。
 何にも食べられなくなったし、何もしようと思わなかった。
 あのころ、私が何をしていたかなんて全く記憶に無いわ」

 やっぱり、僕は死んで・・・・・・

「でも、ある日おなかに違和感を感じたから親戚のおばさんと一緒に病院へ行ったの。
 そしたらね! 私のおなかの中に子供がいるって言われたの! 私は確信したわ。
 『誠二はやっぱり生きていた。生き残るために私の中に避難してたんだ』って!」

 でも、実は生きていて姉さんの中に・・・・・・?

「それから、周りの人間たちの反対を押し切って私は・・・・・・あなたにようやく再会したの。
 十ヶ月ぶりに見るあなたはあのときのままで、本当に嬉しかった」

 頭がさらに混乱する。僕は死んだけど、実は生きていた。
 いや、ちがう。死人は甦ったりしない。そんなことはありえない。

 ということはつまり。

「・・・・・・僕は二人目の『誠二』・・・・・・」
162姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/30(火) 20:06:58 ID:g6cZmyPM
 信じていたものに裏切られた気分だ。
 清子姉さんは『姉』じゃなくて『母』だった。
 姉さ・・・・・・じゃなくて、母さん?ずっと、物心ついたときから一緒にいた女性が母さん?
 つまり、この人は。 

「僕をずっと、騙していたんだね・・・・・・」
「騙していた? 何のことを言ってるの?」
「ね、――清子さんが! 僕を産んだってことだよ!」
「違うわよ。あなたは強盗から逃げるために私のおなかに避難した。
 そしてもう安全だと思ったから、私に会いたいと思ったからおなかから出てきた。
 『出産』じゃないわ。『再開』よ」
 
 いつもと何も変わらない話し方だ。
 自分の言っていることに何の疑問も持っていない。この人は。

「あなたは私の弟よ。1988年1月30日生まれ。19才。
 父親の名前は一誠。母親の名前はみどり。姉の名前は清子。
 好きな人はお姉ちゃん。好きな食べ物はお姉ちゃんの作る料理。
 将来の夢は、お姉ちゃんのお婿さんになること」
「うそだ・・・・・・嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ! 全部嘘に決まってる!」

 こんなの、嘘だ。
 僕の母さんは居ない。清子さんは姉さんだから母さんじゃない。
 でも、清子さんは姉さんじゃない。僕を産んだんだから母さん・・・・・・? 

「朝起きて最初に考えることはお姉ちゃんのこと。
 学校で考えることはお姉ちゃんのこと。
 寝ているときに見るのはお姉ちゃんと結ばれる夢」

 じゃあ、目の前にいる女の人は誰だ?母さんでも、姉さんでもない『家族』。
 この女の人は、誰なんだ?
 誰なんだよ!あなたは一体僕の何なんだ!

「私はあなたの『姉』。実の『姉』。
 そして、あなたの全てを知っている人間。
 だから――あなたの全ては私のもの」

 わけがわからない。目が回る。吐きそうだ。
 

 もう、立っていられない―――――― 
163姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/30(火) 20:07:40 ID:g6cZmyPM



 
「おはよう。誠二」
「おはよう。姉さん」
「誠二。今日の朝――んンッ?!」
「ん・・・、ふぁ・・・ねえ、さん・・・・・・」
「ちゅ・・・んはあ、せいじぃ・・・・・・んちゅ・・・・・・」
「ん・・・・・・ぷはぁ。今日も僕の負けだね」
「もう・・・・・・いきなりするのは反則よ」
「だって、姉さんの顔を見てたら我慢できなくてさ。
 だから・・・・・・」
「あら。嬉しいこと言ってくれるじゃない。
 じゃあ、私も今日はいつもより激しくしてあ・げ・る」





「ねえ、誠二?」
「なに?姉さん」
「私はあなたの『なに』?」
「そんなの決まってる。
 最愛の『姉』にして、僕の生涯の伴侶さ」
「んふふ。いい子ね。
 そんないい子の誠二くんには、
 一日中一緒に寝てあげるご褒美をあげます」
「ありがとう・・・・・・姉さん。愛してる」
「私もよ・・・・・・誠二」
  

 僕たちは、姉弟だ。
164姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/30(火) 20:10:03 ID:g6cZmyPM
嫉妬SSスレのほうを巡回していたら
『ヤンデレ』のキーワードに反応して、書いてしまいました。

もし破綻している部分があったら・・・・・・存分にお叱りください。
165名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 20:14:06 ID:0z4voIX5
ヒャッホォォォォォォォォォォォォォォォォォウ!
GJです。待っていた甲斐がありました、ご馳走様でした。

ところで父親が気になります。8歳での妊娠は不可能ではないといえね。
166名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 20:28:50 ID:iiwiEutx
GJ!!

レイープされたショックで病んでしまった母親ですか?
……これも、なかなか。
167名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 20:40:16 ID:t6kctdyq
>>152
流石にヤンデレ男じゃ萌えないよ
168名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 20:48:19 ID:4JoeR5yd
>>164
GJ!
こういう病み方も(・∀・)イイ!!
169訂正 ◆Z.OmhTbrSo :2007/01/30(火) 23:21:45 ID:g6cZmyPM
>>162
>『出産』じゃないわ。『再開』よ」
『出産』じゃないわ。『再会』よ」

でした。ごめんなさい。
170名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 07:32:41 ID:ql59vair
SS保管庫更新ハヤス
管理人さんご苦労様。
171名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 12:20:40 ID:BjVtf4Zb
この強盗になりたいと思った性犯罪者予備軍は手をあげろ
ノシ
172名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 12:37:53 ID:jqzVvAh1
>>171
悪いがそれはお前だけだ
173名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 20:47:12 ID:0qUkUVJe
>>172
ワリィ、オレもなりてぇとおもた。
174名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 21:01:44 ID:j2NFLfp9
おまいら・・・・・・
175名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 23:16:57 ID:0ZE27T3t
弟の方が羨ましいだろ、常識的に考えて……
176いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/01/31(水) 23:39:55 ID:C6nX4lQD
十話(A.如月更紗と時間を過ごす)を投下します
次が多分山場突入なので、少し短めですがごめんなさい
177いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/01/31(水) 23:40:54 ID:C6nX4lQD

「……話したいことっていうのは、他にはないのか」
 言って――僕は如月更紗の隣、白いベッドの上に腰掛けた。学校の保健室のベッドなんて、
そんな大そうな大きさを持っているわけではない。一人用の、こじんまりとした安物ベッドだ
。手を届くまでもなく、如月更紗と毛布ごしに身体が触れてしまう。毛布の下に何もきていな
いと考えると、色々こう、心にくるものがあるが――その辺は勤めて考えないようにする。
 如月更紗の黒い髪が、黒く長く綺麗な髪が、白い毛布の上に広がっている。その内の一房を
、特に意味もなく手にとる。手の中を流れていく柔らかな感触があった。
「今なら……なんでも聞いてやるぞ。どうせサボったついでだ」
 元々――授業はサボるつもりだったのだ。なら、隣のベッドで寝るのも、如月更紗の話を聞
くのも同じことだろう。
 だったら、話くらい聞いてやってもいい気がした。
 今は――そんな、気分だった。
 如月更紗は、僕に提案に、ベッドに横になったままかすかに微笑み、
「冥土の土産に教えてやるぜ――という奴かしら」
「お前の中の僕はどれだけ外道な奴なんだよ!?」
 保健室で寝ている同級生の寝込みを襲うような奴に見えるのか……? 冗談ならばともかく
、真顔でうん、と答えられたら恐らく一生モノのトラウマになることだろう。
 如月更紗はしばらくの間真顔で考え込み、
「……メイドに土産を教えてやるぜ?」
「何を教えるんだ何を」
「それは勿論、勿論のことナニを――」
「そういうオヤジみたいなことを言うな!」
 裸の同級生にオヤジ発言をされると、倫理観が崩壊しそうだった。
 元から崩壊しているかもしれないが。
「冬継くんはメイド服、好きなのかしら?」
「え、話そっちに飛ぶの? さっきまで僕ら真面目な話してなかったっけ」
「言っておくけど、言っておくけれど、メイド服とゴスロリ服は違うわよ」
「……?」
 意図が分からない。
 意図ではなく、意図がわからない。
 はてなマークを浮かべる僕に、如月更紗はどこか陰鬱そうに言葉を続けた。
「似たような服でも、職業制服と精神論では大違い――ということね。忠告しておくけれど、
人によっては同一しただけで怒るわよ」
「怒るのか」
 ウィキとウィキペディアを混合すると真っ赤になるような人と似たようなものだろうか。
「怒るどころではないわね。例えば私の知り合いに《逆転ビーバー》という人がいるけれど」
「また愉快な二つ名の友人がいるんだな」
「いるけれど。その人の前でそんなことを言って――生爪を剥がされた人がいるわ」
「…………」
 生爪。
 生爪を――剥がす。
 想像しただけでも痛い、絶対に想像したくないことだった。まだナイフを腹で刺されるとか
、屋上から突き落とされるとかの方が想像としてはマシだ。爪剥ぎという行為は、妙にみみっ
ちくて現実味があるせいで、余計に痛そうに感じる。
 逆転ビーバーがどんな人間かは知らないが、会いたいとは思わなかった。下手なことを言っ
ただけで爪をはぐような相手とお知り合いになりたいとは思えない。
178いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/01/31(水) 23:42:07 ID:C6nX4lQD
「ちなみに、同じ場で『脱がせば一緒のことだね』言い放った人もいるわ」
「お前だろ、それ」
 間違いなく、お前だ。
 お前以外にいるとは思えない。
 というか、いてほしくない。
「そういうわけで冬継くん、貴方はメイド服とゴスロリ服、どちらが好きなのかしら?」
「僕? 僕は――」
 不意の質問に考えてしまう。
 メイド服。
 ゴスリル服。
 考えたこともなかった。どちらがいいとか、そういうことを考えたことは全くなかった。
 姉さんは――そういうことに、無頓着だったから。
 少なくとも、家の中では。
「……姉さんは」
「?」
「姉さんは、狂気倶楽部では――」
 どんな服を着ていたんだよ、と言いかけて。
 め、と、如月更紗の人差し指が、すばやく僕の唇に添えられた。
 それ以上話してはいけないと、瞳が語っていた。
「その名前は――外で、気軽に口にしていいものではないの」
「…………」
「秘密中の秘密。抱えたまま死ななければならない。もし狂気倶楽部に終わりがくるとすれば
――それは間違いなく、一蓮托生なのだから」
 その言葉は、きっと何の誇張もないのだろう。
 調べた限り、狂気倶楽部にいる人間は、誰も彼もが傷を負っている。
 それは、
 身体の傷だったり、
 心の傷だったり、
 それ以外の傷だったりする。
 共通するのは、誰もがまともではいられなかったということだ。もし狂気倶楽部という場が
なくなれば、それだけで暴走してしまう人もいるだろうし――無秩序めいた秩序が崩壊するこ
とによって、暴走する子も出てくるに違いない。

 陽が沈めば、おままごとはお終い。

 ふと。
 全てが終わった後でも、如月更紗は、変わることなく生きていくのだろうかと、そんなこと
を思ってしまった。
「……いいのかよ、そんなこと言って」
「ん?」
「僕の願いは――狂気倶楽部の破滅かもしれないんだぜ」
 姉さんを殺した奴の破滅を願っている。
 姉さんを殺した奴らの破滅を願っている。
 それが、狂気倶楽部そのものに向かないとは、自分でも言い切れない。むしろ、姉さんがい
なくなってしまった以上、何もかもを道連れにしたいと――考えていないといえば、嘘になる

 考えてしまえば致命的になってしまうので、考えないようにしているけれど。
179いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/01/31(水) 23:43:07 ID:C6nX4lQD

「ああ、ああ、ああ! なんだ、そんなこと」
 如月更紗は、本当に、心の底からどうでもよさそうに言った。
 存続も滅亡も。
 生も死も――関係がないと、言うかのように。
 如月更紗は、言い捨てる。

「それもまた、面白いわね」

 ぞくりと、した。
 横になったまま、僕を見上げている如月更紗の言葉には、微塵も嘘が含まれていなかった。
いつもの韜晦でも、冗談でもなく、真に面白いと言い捨てているのだと、如月更紗の瞳は告げ
ていた。僕を見つめる瞳がそらされることはない。揺れることもなく、惑うことなもく。
 如月更紗の瞳は、にやにやと、にやにやにやと、笑っている。
 楽しそうに、笑っている。
 ――ああ。
 今更に、思い出す。
 今更に、思い知らされる。
 こいつもまた、狂気倶楽部の一員なのだと。
 そんな僕の心境に気付くこともなく、如月更紗はいつものように微笑んだ。
「まあ、私は臆病だから……沈む船から逃げさせてもらうけれどね」
「脱兎の如く――ってか。お前はウサギじゃないんだろ」
「そうね。今のウサギは、あの兄妹。それに冬継くん、一つ言わせて貰うけれど、沈む船から
逃げるのはネズミよ」
「そうだったっけか?」
 脱鼠の如くって言葉は無かったような……ああそうか、そもそものことわざが違うんだ。あ
あれはもともと、沈む船からは鼠が逃げていくという、そういった伝承を元にしていたはずで、
脱兎の如くとはまったくの別物だ。
「もっとも、あの勇敢な鼠の騎士は、最後の最後まで船に残って……ついには東の海の果てに
まで、いってしまったけれどね――」
 そう言葉を結んで、話は終わりとばかりに、如月更紗は瞼を閉じた。口実ではなく、本当に
眠かったのかもしれない。
 あまり邪魔するのもあれなので、僕はベッドから離れようとし、
「――――」
 離れようとした裾を、毛布の腋から伸びる、如月更紗の手がつかんでいた。
 立ち上がろうとした微妙な姿勢で僕は止まり、ぎぎぎと、音のしそうなほど不自然な動きで、
如月更紗を見る。如月更紗は、まるでウィンクでもするかのように、片目だけを開けて僕を
見ていた。
 瞳は、楽しそうに笑っている。
「おやすみなさい」
 笑ったまま、如月更紗はそういった。けれど手は離さない。ここにいろ、ということなのだ
ろう。
 どうしようか、悩むまでも無く。
 ため息を一つ吐いて、僕は再び、如月更紗の横に腰掛けた。そして如月更紗の髪を、いつの
日にか姉さんにしたように撫でて、僕は言う。
「ああ、おやすみ」
 僕の言葉に満足したのか、如月更紗は片目を閉じて、今度こそ眠りについた。暫く待つと、
すう、と、安らかな寝息が聞こえてくる。
 こうしていれば――普通の同級生にしか、思えないのに。
 僕も、こいつも、普通の高校生にしか見えないというのに。
「…………ふう」
 ため息を一つ吐いて、僕は如月更紗の髪を一房つかんだまま、彼女に沿うようにして上体を
倒した。
 今くらいは、何も考えずにゆっくりと休みたかった。
180いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/01/31(水) 23:43:43 ID:C6nX4lQD
以上です
181名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 00:21:42 ID:+xvnNo/H
>>180
GJ!

ヤバいな、ここまで物語に引き込まれたのは初めてだ……次回の山場に期待してます
182名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 00:28:09 ID:iJP02Vjg
GJ!
更紗派の俺はwktkが止まりません
183名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 02:51:15 ID:i1K/FEjt
ちょww
冬継君はこのまま寝たら『学校で同級生と同衾した変態』扱いに……。
184名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 07:35:36 ID:vZfTTU6H
いいやそれだけなら…。


全裸の同級生と…変態!

GJ!!
185名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 09:39:22 ID:53EV+rUE
このスレは本当に質が高いな。GJ!
186いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/01(木) 23:18:02 ID:5llf4frG
前スレに埋めネタを投下しようとしたら既に埋まってた
187名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 23:22:29 ID:i1K/FEjt
Bルート投下キボンヌ(゚∀゚)!!
188名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 23:45:55 ID:1U+KQnna
今、俺の目の前にはチョコレートがある。
そして俺はいったいこれからどうすればいいのか考えていた。

 数ヶ月前、28才彼女無し趣味は2chの俺は何をどうやって奇跡を起こしたのか姫野亜弓に
告白された。駅で見て一目惚れしたと。彼女は少し痩せ気味ではあったが青白いほどの
肌をした割と美人な女性だった。告白されたのだが、二次元にしか興味が無くロリ属性を
兼ね備えた俺は丁寧にお断りした。もう少し正確に理由を言えば手首に刻まれた何本もの
傷跡が俺を思いとどまらせた。

 そして、姫野亜弓はストーカーになった。
 まず、無言電話から始まった。電話をとらなければ一晩で50回以上かけてきた。
履歴が50までしか残らないので本当は軽く3桁をこす回数なのだろう。着信拒否をかけると
公衆電話からかかってくるようになった。
 この頃からメールも来るようになった。俺が朝何時に起きて飯は何を食い、誰としゃべって
トイレにいつ行ったかこと細かに書いてあった。そして、夕飯がカップラーメンってのは
健康に良くないです、体を壊さないか心配です、とか、今日話していた子は化粧が濃くて
あなたには釣り合いません、などと逐一コメントがあった。
 非通知電話と
189名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 23:47:23 ID:1U+KQnna
 5人の友人に姫野から電話があった翌日、俺は帰り道で物陰から姫野をひきずり出して
思い切り平手で殴った。
そして大声でふざけんなストーカー女がいい加減にしろ、てめえの事なんざゴキブリ程度にも
思ってねえんだよというようなことを喚いて去った。

 それが3日前だ。

 そしてつい数時間前。
「はじめまして姫野真弓です」
 姫野亜弓の妹だという女が訪ねてきた。

 とりあえずその子を家にあげることにした。制服だし見たとこは女子高生だ。
「これ、お姉ちゃんからです」
「…えーと、俺にってこと?」
「はい。チョコレートです。バレンタインの。少し早いですけど」
「ちなみに今…亜弓さんはどうして…?」
「傷がちょっとやっぱり膿んじゃって発熱してます。あ、命に別状は無いから大丈夫ですよ」
「俺のせいか…」
「え?違いますよ?手首です手首。傷つけることは良くあったんですけど切り落としたのは初めてで…やっぱり危ないですよね。だから指にしようって言ったのに」
「……」
「じゃあ、長居するとお姉ちゃんに殺されるんで私帰りますね」
「あ…ああ」
「チョコ、絶対に食べて下さいね。お姉ちゃんの身を削った愛が詰まってるんですから」

 
190名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 23:48:58 ID:1U+KQnna
むしゃくしゃして書いた。反省はしている。
このスレのみんなに早いにも程があるバレンタインを。


お茶会の方、Bルートお待ちしております!!
191名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 23:58:12 ID:1U+KQnna
き……途中で切れてる…投下しなおしてみる…
1921/4:2007/02/01(木) 23:59:22 ID:1U+KQnna
今、俺の目の前にはチョコレートがある。
そして俺はいったいこれからどうすればいいのか考えていた。

 数ヶ月前、28才彼女無し趣味は2chの俺は何をどうやって奇跡を起こしたのか姫野亜弓に
告白された。駅で見て一目惚れしたと。彼女は少し痩せ気味ではあったが青白いほどの
肌をした割と美人な女性だった。告白されたのだが、二次元にしか興味が無くロリ属性を
兼ね備えた俺は丁寧にお断りした。もう少し正確に理由を言えば手首に刻まれた何本もの
傷跡が俺を思いとどまらせた。

 そして、姫野はストーカーになった。
 まず、無言電話から始まった。電話をとらなければ一晩で50回以上かけてきた。
履歴が50までしか残らないので本当は軽く3桁をこす回数なのだろう。着信拒否をかけると
公衆電話からかかってくるようになった。

1932/4:2007/02/02(金) 00:00:25 ID:1U+KQnna
 この頃からメールも来るようになった。俺が朝何時に起きて飯は何を食い、誰としゃべって
トイレにいつ行ったかこと細かに書いてあった。そして、夕飯がカップラーメンってのは
健康に良くないです、体を壊さないか心配です、とか、今日話していた子は化粧が濃くて
あなたには釣り合いません、などと逐一コメントがあった。

 非通知電話と彼女のアドレス(とおぼしきもの)も受信拒否をすると電話はさすがに
無くなった。が、メールだけは東南アジアだとかアフリカだとかの訳の分からないサーバーを
経由して送られてきた。姫野亜弓にはハッカーの才能があったらしい。
 登録しているアドレス意外からはメールを受け取れないようにした。すると今度は
2日に一回、郵便受けに手紙が舞い込むようになった。

 俺は次々と連絡手段を絶つ意外は一貫して無視の態度をとっていた。
 下手に反応を返せば喜ぶと思ったからだ。
 だが、しばらく手紙攻撃が続いた後で友人達に手が及んだのには腹がたった。電話で
もう彼とは付き合わないで下さい、あなたといるとあなたの汚さが彼にうつるかもしれない、
彼をたぶらかさないで下さい等々と述べたてたらしい。
1943/4:2007/02/02(金) 00:01:14 ID:xMkeqk+n
 5人の友人に姫野から電話があった翌日、俺は帰り道で物陰から姫野をひきずり出して
思い切り平手で殴った。
そして大声でふざけんなストーカー女がいい加減にしろ、てめえの事なんざゴキブリ程度にも
思ってねえんだよというようなことを喚いて去った。

 それが3日前だ。

 そしてつい数時間前。
「はじめまして姫野真弓です」
 姫野亜弓の妹だという女が訪ねてきた。

 とりあえずその子を家にあげることにした。制服だし見たとこは女子高生だ。
「これ、お姉ちゃんからです」
「…えーと、俺にってこと?」
「はい。チョコレートです。バレンタインの。少し早いですけど」
「ちなみに今…亜弓さんはどうして…?」
「傷がちょっとやっぱり膿んじゃって発熱してます。あ、命に別状は無いから大丈夫ですよ」
「俺のせいか…」
「え?違いますよ?手首です手首。傷つけることは良くあったんですけど切り落としたのは初めてで…やっぱり危ないですよね。だから指にしようって言ったのに」
「……」

1954/4:2007/02/02(金) 00:02:22 ID:xMkeqk+n
「じゃあ、長居するとお姉ちゃんに殺されるんで私帰りますね」
「あ…ああ」
「チョコ、絶対に食べて下さいね。お姉ちゃんの身を削った愛が詰まってるんですから」

 姫野真弓は言いたいことだけ言って帰って行った。

 そして俺の前にチョコレートが残されている。どうすべきか。
 食べるという選択肢は無い。一切無い。…切り落とした手首の行方を俺は知りたく無い。
だが捨てるのは…果たして捨てて大丈夫な代物なのか。腐敗臭のする可能性のある状態で
あれば俺が疑われる危険性がある。
 とりあえず箱を開けて形状を確かめればいいのだが…もし手の形をしたチョコレートが
入っていたら俺はきっと立ち直れない。

 俺はいったいどうすればいいのか。答えは当分出そうに無かった。


196名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 00:03:30 ID:xMkeqk+n
ミスすまんorz
197名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 00:20:05 ID:NEr9ZgPx
gj!          嫉妬スレ見てたらギャルゲの中のヒロインに襲われるみたいな奴あったけどあれなんかどうよ!   
198名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 01:10:09 ID:vnQLuJ/g
これは程よく病んでますね(*´ρ`*)
個人的には>>189の科白で終わるのも嫌いじゃない。
199いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/02(金) 02:12:03 ID:7Ww8SaUH
GJ!
やっぱりホワイトデーに襲われて手首切り取られるんだろうか


Bルートはトゥルーなので、Aの本ルートが書き終わったら書くかもしれません。
というわけで11話投下します
200いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/02(金) 02:13:44 ID:7Ww8SaUH

 いい天気だった。
 どうしようもないくらいにいい天気だった。真上に太陽があるせいで、余計にそう思う。遠
くに流れる雲はあるものの、夏の近づく空は遠く遠く遠くにまで蒼い。あの空を泳げたらさぞ
かし気持ちがいいだろうとがらにもなく思う。それほどまでに、いい天気だった。
 太陽が真上にあるせいで、陽射しが余計に強く感じた。じりじりと、コンクリートから照り
課す熱を感じる。
「……昼間だから当然だよな」
 虚しい独り言を言うが、虚しさに変化はなかった。むしろ言葉に出したせいで、感じる必要
のない物寂しさまで覚えてしまった。
 横に立つ如月更紗が、突如立ち止まって空を見上げて独り言を呟いた僕を見遣り、暑さを感
じさせない淡々とした声で言う。
「悲しい姿ね」
「お前が言うなよ」
「さもしい姿ね」
「お前が言うなよ!?」
「いやね、いやだわ、冬継くん。さもしいにはえっちぃとかそういう意味は含まれてないわよ」
「お前自覚してんじゃねぇか……」
 ちなみにさもしいの意味はいやしい、浅ましいであって、この場合どちらにも当てはまらな
い。
 空を見るのが虚しくなってきたので、視線を地に落す。
 隣に、如月更紗がいる。
 周りには誰もいない。広い道路の上にいるのは、僕ら二人だけだった。
「なあ、如月更紗」
「なぁに、冬継くん」
「……どうして僕はお前と手を繋いで下校してんだ?」
 ぐい、と右手をあげて言う。あがったのは僕の右手だけではない。つられるように、繋いだ
如月更紗の左腕もあげられた。普通の握り方ではない。指と指を交互に絡める、俗に言う恋人
繋ぎだ。如月更紗の指は体温が低いのか、触れていて心地良いくらいに冷たい。だから、繋ぐ
ことは不快ではないが――さすがに恥かしい。
 学校を出るなり、自然と、ごく自然に、恋人同士がさりげなくやるように、不自然さの欠片
もなく如月更紗から手を繋いできたのだ。あまりにも自然すぎて、数十メートル歩くまで手を
繋いだことに違和感を感じなかった。
 如月更紗は繋いだ手を『今気付いたわ』という顔を見て、
「……右手と左手、逆の方が良いの?」
「そういうことを言ってるんじゃねえ」
「でも、駄目」
 ふるふると首を振り、如月更紗は重苦しい口調で言った。
「右手は、繋ぐわけにはいかないの」
「……どうして?」
 嫌な予感がしつつも、訊く。どうせろくでもない返答が返ってくるのだろうが、万が一、億
が一くらいの確率で、マトモな返事が返ってくるかもしれない。
 問いかける僕の顔を、僕よりも少しだけ背の低い如月更紗は、かすかに顔を上げて微笑んだ。
 幸せそうな、微笑みだった。
「右手で鋏がもてないじゃない」
「本当にろくでもない理由だった――!」
 この女、左手で確保して右手で斬る気か。
 何から何までやる気満々だった。
「左手でも扱えるけれど――右手の方が速いもの」
「ああそうか分かったからちょっと黙れお前」
 はぁ、とため息一つ。万事がこの調子なので、もう大分慣れてしまった。
 手を繋ぐのは嫌ではないので、このまま放っておいてもいいだろう。
 どうせ、見ている人もいない。
201いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/02(金) 02:14:14 ID:7Ww8SaUH
「昼間の道ってほんと人いないな……」
 辺りを見回しても、誰の人影もない。登校の時間でも、下校の時間でもない。
 太陽が真上にある――即ち、真昼だ。普通の人間なら、食事をしている時間。
 勿論学生がその範疇から外れるはずもない。今頃、普通の生徒ならば学校で食事をとってい
るはずだ。高校の同級生たちは弁当を。神無士乃たち中学生は、給食を。
 食べていないのは、普通ではない学生だけだ。
 たとえば――学校をサボって、昼から帰るような。
「なんか堕落した気分だ……」
 二限目から授業をサボっただけではなく、その後も全部サボるとは、堕落したと言われても
否定しようがない。
 実際、保険の神薙先生には『貴方は堕落しました』とはっきりと言われてしまった。それも
これも、如月更紗のベッドで横になったのが悪かった。ちょっと休むだけのつもりが、気付け
ば寝入ってしまって――起きたときには、なぜか上着が剥ぎ取られ、裸の如月更紗と同衾して
いた。
 神薙先生が、生徒の健康状態以外に何一つ興味を持たない人間でなかったら、間違いなく問
題になっていただろう。いや、それ以前にカーテンをめくってベッドを覗き込むような興味心
の強い生徒がいれば、それだけで一環の終わりだ。二度と学校にいけなくなる。 
 というか、如月更紗と噂のたっている学校なんて、死んでも行きたくない。
 起きたときにはもう昼だったので、午後の授業を受けるのも面倒になり、結局学校をサボる
ことにしたのだが――当然のように、如月更紗はついてきた。
「堕落なんて、そんなわけはないよ」
 如月更紗が、まるで僕を赦すかのような笑みを浮かべて、言う。
「最初から底辺じゃない、私たち」
「僕を最底辺扱いするなよっていうか『たち』ってなんだ『たち』って! 僕はな、――」

「お前らと、同類になったつもりはない?」

 にやにやと――笑いながら、如月更紗は機先を制したように、そう言った。
「…………」
「同類、同類、同類ね。あんな姉に懸想して、こんな私に懸想されて。そんな心で、一緒でな
いと?」
「…………」
 僕は――答えられない。
 これだ。
 如月更紗のやっかいなところはコレなのだと、短い付き合いながらも悟ってきた。切り替え
氏が速い。ふざけたような態度の中に、鋭い皮肉が混じっている。くるくると表情を変えて、
人がもっとも切り込まれたくないところに話を飛ばす。つねに他人を観察して、隙を狙ってい
なければ出来ない芸当だ。
 微笑みの裏側に――にやにや笑いがあるようなものだ。
「同じ穴のむなじ、ということよ」
「……回文っぽく聞こえるがむじなの間違いだ」
 ただ、本気でボケてるのか、本音でボケているのか、たまに判別がつかない。
 まあ――どちらでも、同じことだ。
「僕やお前や姉さんが同類かどうかはともかくとして、同類項でくくられるのは確かだろうか
らな……正確には、『仲間になった憶えはない』だ」
「それなら正しいわね」
 にっこりと、満足したように如月更紗は笑う。
 ――ふと、思う。
 あの日屋上で、如月更紗は僕の身の安全を保証するといった。
 けれど。
 僕の仲間になるとは――一言も、言っていないのだ。
 如月更紗。
 よく考えてみれば。
 狂気倶楽部の一員とさえ、名乗っていないのだ。
 こいつが敵か味方なのか、そもそも何を目的としているのか、調べる必要があるのかもしれ
ない。
202いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/02(金) 02:14:44 ID:7Ww8SaUH
「流石にこの辺りは人が多いわね」
 言いながらも、如月更紗は手を離さない。制服を着た男女が――さすがに如月更紗は服を着
ている――手を仲良く繋いで真昼間から歩いているのは少しだけ目立つ。幾人かが、口元に笑
みを浮かべながら僕らを見ていた。
 ……手を振り解きたい。
 しかし――そんなことをしたら、間違いなく鋏が閃く。今も如月更紗の背中には、あの三十
センチものさしを組み合わせたような馬鹿でかい鋏が隠されているのだ。
 あの鋏、本気で振ったら首でも撥ねれるんじゃないだろうか。
「平日の昼間でも、無人の街だったら怖いだろ」
 軽口を飛ばしながら、周囲を見回す。学校前の長い坂道を降りきって、大きな道路に出たの
だ。片道ニ斜線の道路は交通量が多く、街路樹に沿うようにして歩道が作られている。しばら
くこの歩道沿いに歩いて、信号を渡り、反対側の駅方面へと歩くと自宅に到着だ。
 如月更紗を手を繋いで歩道を歩くのは、ある意味羞恥プレイに等しかった。
 まあ、こいつ綺麗だから、そこまで嫌な気はしないけど。
「……黙っていれば薄幸の美少女って感じなんだけどな」
「醗酵した美少女?」
「どう考えてもゾンビだそれは」
「納豆星人かもしれないわ」
「そんな奇妙な奴に『美』なんてつけてたまるか!」
 思わず突っ込むと、すれ違ったOLがくすくすと笑った。
 ……傍から見たら、どう見えるんだろう。
 考えてみた。
 すぐに結論がでた。
 ――漫才夫婦。
 まったく笑えない、泣きたくなるような結論だった。
 如月更紗はそんなことを気にする様子もなく、どこか上機嫌そうに小さな声で、
「おー手てつないで帰りましょうー」
「唄うなよ……」
「あら、あら、あら。歌は良いものよ冬継くん。良い舞台には、良い音楽と良い演出が欠かせ
ないのだから」
「……演劇、すきなのか?」
 僕の問いに、如月更紗は手を繋いだまま、器用に肩を竦めた。
「この世は全て舞台――シェイクスピアではないけれど、私たちはずっと、ずっとずっと、ず
っとずっとずっと、劇を続けているわ」
「狂気倶楽部、か」
 その単語を、簡単に言うなと言われていたけれど。
 言わずには――いられなかった。
 どう考えても、如月更紗はそのことを言っているような気がしたからだ。いや、それだけで
はない。それを含めた、全てのことを、言っているような気がしたからだ。
 僕の相槌をどう思ったのか、如月更紗は微かに、その小さな口元を引き上げた。
「歯車は狂い、螺子は壊れ、脚本は消失し、観客すらも無くしているけれど――壮大で矮小な、
馬鹿げたほどに真面目で、狂おしいほどに狂っている――喜びに満ちた悲劇、ね」
「どうして――」
 どうして。
 どうして、んなものが、あるのだろう。
 どうして、そんなところに、人が集まるのだろう。
 どうして。
 どうして――姉さんは、そこにいたのだろう。
 けれど、言葉から出たのは、心に浮かんだ疑問ではなかった。
「――お前は、そこにいるんだ?」
 本心ではない。
 けれど、本音かもしれない僕の問いに。
 如月更紗は、笑みと共に答えたのだった。
「フラグが立ったら、教えてあげる」
 冗談めかしたそんな言葉に――何故だか僕は、少しだけ安堵を憶えていた。
 それは、もしかしたら。
 この関係が――少しだけ、気に入っていたのかもしれない。
203いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/02(金) 02:15:17 ID:7Ww8SaUH
「……ポートピアなみに難しそうだな」
「犯人はヤスよ」
「知ってるよ」
「貴方を殺した犯人よ?」
「俺が死ぬのか!?」
 初耳だった。
 というか、ありえない話だった。
「あと数十ページほどで何の脈絡もなくヤスが登場して貴方を殺すのよ」
「そういうメタ的な発言は頼むからやめてくれ……お前が言うと本当になりそうだ」
 この女が悪魔と契約していても僕は驚かない自信がある。
 それくらい、やりそうだし。
「ま、あんまり期待せずに待っとくよ――」
 言って、僕は如月更紗から視線を逸らした。少しだけ気恥ずかしくなったのだ。そんな心中
を察したのだろう、如月更紗は僕から視線を逸らすことなく、にやにやと笑ったまま、ずっと
僕を見ていた。
 …………。
 …………いや、そこは視線をそらせよ。
 心中を察したからこそ視線を逸らさなかった、というべきか。
 あんまりにも凝視されるので、居心地が悪くなってさらに視線を逸らす。
 ――と。
「…………」
 道路を挟んだ対岸の歩道に、おかしなものがあった。
 おかしなものが居た、だとはすぐに気付けなかった。初見で、それが人だと分からなかった
からだ。
 ――影が直立しているように見えた。
 そう言うのが、一番正しいのだろう。よく見てみればそれは人間だが、一見すると、長細い
影が立っているようにしか見えない。
 少年だった。
 鴉色のズボンとブレザーを着ているせいで、黒一色の影に見えた。そしてそれ以上に――頭
に被っているシルクハットが、影の印象を強めていた。
 夏だというのに、白のカッターシャツと臙脂色のネクタイは、ブレザーに隠れてほとんど見
えない。見るからに暑そうな顔だったが、少年は平然としていた。シルクハットはいまにも落
ちそうで、頭の頭頂部から首のあたりまでを広いつばがすっぽりと隠していた。
 奇妙な少年だった。
 何よりも奇妙なのは――少年は、目があった瞬間。

 僕を見て、にやにやと――それはまるで、如月更紗のように――確かに、笑ったのだった。

「…………」
 僕は。
 そのにやにや笑いを見て――何を思うよりも早く。
「――あ。」
 横にいる如月更紗の間の抜けた声と同時に――電信柱に思い切り頭をぶつけたのだった。
「い、」
 痛い、といえなかった。
 ぐわんぐわんと頭の中で鐘が鳴っていた。横を向いて歩いていたせいで、正面にあった電柱
にまったく気付かなかった。そりゃあ、横見て歩いてればふらふらと行先がずれるかもしれな
いが……まさかぶつかるとは考えもしなかった。
「痛い……」
 ようやく、痛いと主張できる程度に回復してきた。そこまで速度が出ていなかったので、こ
ぶができるほどでもない。それでも、ぶつかったところがひりひりと痛んだ。
 如月更紗は手を繋いだまま、そんな僕を見て、くすくすと右手で口元を押さえて笑った。
204いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/02(金) 02:16:21 ID:7Ww8SaUH
「面白かったわよ」
「…………」
「もとい、大丈夫?」
「できればそっちを先に言ってほしかった」
「もとい、大丈夫そうね」
「言い直すなよ!」
「それだけ突っ込めるなら、大丈夫というものよ」
 言って――如月更紗は、すっと。
 いつもは凶悪な鋏を握る、細い指で、僕の頭を撫でた。
 指先が――頭皮を撫でていく、優しい感触が遅れてきた。
「痛いの痛いの」
 撫でながら、如月更紗は言う。
「増えたら面白いわね」
「面白くね――! お前僕の身の安全を保証するんじゃなかったのか!?」
「身体をはったギャグだと思ったわ」
「そんな生傷だらけの青春はごめんだ!」
 心の底からごめんだった。
 如月更紗の手を振り払うように体勢を整え、ついさっき少年を見た方へもう一度視線を走ら
せる。けれど、あの影のような少年の姿は――それこそ影のように、蜃気楼のように消えてい
た。
 見間違い、だろうか。
 普通に考えれば呻いている間に立ち去ったと考えるんだろうが……なんとなく、あの少年の
雰囲気が、そんな常識的な解答を拒んでいた。
 シルクハットをかぶった、にやにや笑いの少年。
 まあ――少年がにやにや笑っていたのも、この展開を予想していたかもしれない。そりゃあ
横向いて歩いている男の前に電柱があったら誰だって笑うだろう。
 気にするほどの、ことでもないか。
「ドッペルゲンガーでも見たかのような顔をしてるわ」
 少年の姿を見失った僕に、横に立つ如月更紗がそっと口添えた。
 ドッペルゲンガー。
 似たような、ものなのかもしれない。
 僕とは似てもつかなかったけれど。
 しいていえば――雰囲気が、似ていた。
 僕ではなく。
 如月更紗に、似ていたような気がした。
「そんなところだ」
「鏡でも見たかのような顔をしてるわ」
「それは酷い侮辱だ!」
 鏡を見るたびに鬱になれというのかこの女は!
 ゴッホの抽象画みたいな顔をしているつもりは一切ないんだが。
「何を見たのか知らないけれど」
 珍しいことに、こほん、と如月更紗は咳払いして。
 一歩だけ踏み込んで、僕の瞳を間近から覗き込んで、彼女は言った。
「出来ることなら――私だけを見てほしいものだわ」
205いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/02(金) 02:17:48 ID:7Ww8SaUH

以上で十一話終了です。山場のぼりかけといった所
次でようやく山と、病んだシーンを書けそうです
206名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 02:49:14 ID:MAWLByRU
GJ!
この軽快な口調の電波娘がどのように病んでいくのかがとても気になります。


>シルクハットをかぶった、にやにや笑いの少年。

あれ?もしかして、(男装している)マッド・ハンター?
如月更紗はマッド・ハンターじゃない??


>Bルートはトゥルー

うお、新事実発覚!
メインヒロインは神無士乃だったのか!?
207名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 02:50:08 ID:UUM9gXcp
いない君といる誰かキタワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!☆

GJ!
主人公と更紗のやり取りにほのぼのしてしまいました
208名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 04:27:55 ID:UpU7PADd
GJGJGJ!!
これは面白すぎるだろ……常識的に考えて……
209名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 08:02:55 ID:qNFQ+vxW
>>196
手首切り落しって・・・・・・しかも男のじゃなくて自分の?すげえや。

>>205
これは面白くなってきたましたね。
あの少年は倶楽部の関係者なのか?それとも主人公と同じ考えを持っているのか?
wktkです。



えーと、俺らも誤字の指定はしていいのかな?
だとしたら、
>>201
>如月更紗のやっかいなところはコレなのだと、短い付き合いながらも悟ってきた。切り替え
>氏が速い。ふざけたような態度の中に、鋭い皮肉が混じっている。くるくると表情を変えて、

の『切り替え氏』は『切り替えし』じゃないのかな?
と思ったりするんですが。

いや、みんな待って!バットはさすがに危なくぁwせdrftgyふじこlp;@:「」
210名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 08:55:27 ID:h0klp62Q
>>206
よく考えろ
マッド・ハンターのシルクハットは頭にちょこんとのっけるタイプで爵杖を持っている
つまり主人公が見たのはヤマネの死体を処理した……



あ、誰か来た
211名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 10:26:14 ID:uUIYnH25
>>209
それも違くね?
「切り替えし」じゃなくて「切り返し」だろ
212名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 10:41:26 ID:qNFQ+vxW
>>211
そういやそうだ。
俺のミスまで指摘してくれてありがとう。

君みたいな人は初めてだ。
結 婚 を 前 提 に 付 き 合 っ て く だ さ い !
213名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 10:56:45 ID:xMkeqk+n
誰だ!誰だ!誰だ〜お前はだ〜れだ〜>シルクハット
214名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 14:22:05 ID:NEr9ZgPx
なんか最近>>205氏のSSのストーリ−がよく分からなくなってきた
だれかまとめてくれ、頼む
215名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 15:17:36 ID:9yD2ehT5
>>214
シスコンの少年が通り魔と恋に落ちる話
216名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 16:13:18 ID:UpU7PADd
>>214
まとめサイト読んだら?
前作と繋がってるから、その辺も含めて
217名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 20:58:26 ID:to+plQON
あのあれだ。
なんというか、更沙の接頭語?×3の喋り方はマッド・ハンターそのものジャマイカ!と指摘してみる






というより、更沙がマッド・ハンターであって欲しい今日この頃。
218名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 22:00:10 ID:gA0JCOH+
>>217
そうなると、何故表舞台に出てきたのかが話の焦点になるんだろうな…

ウサギ兄妹の出番があるかなぁ、作中一番好きな人物だし。
幹也君が。

誰だアンタ、え?
「兄さんを愛していいのは私だけです」
ザシュッ!!

暗転
219いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/02(金) 23:25:14 ID:9yD2ehT5
>>218
あのヤンデレ兄妹が出てくるとどうしても他の登場人物が死んでしまう
死亡フラグのようなキャラだからなあ……
ラストで出るかもしれません

誤字の指摘、まとめへの転載、感謝しています。ありがとうです。

12話投下します。

220いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/02(金) 23:25:52 ID:9yD2ehT5
「KRの4」
 わざわざ口で宣言して、如月更紗は黒のクイーンを動かした。かつん、と木の触れる良い音
がする。プラスチック製の安物ではない、しっかりと造られた木彫りのチェスだ。赤と白――
ではなく、黒と白。白は使いたくない、と如月更紗が言ったので、僕が白、如月更紗が黒だ。
 姉さんが買ったチェス盤で、姉さんと遊んでいたチェスを、如月更紗としている。
 妙な違和感があった。
 なんで僕はこんなことをしているんだろう――とめどなくそう思う。
「…………」
 チェス盤がある以上、口頭する必要はない。無言のまま、白のポーンを動かす。かつん。音
を共に木彫りの兵士が一歩前進。目指すは黒のキングだ。もっとも大してやる気があるわけで
もないので、先の先を読もうとも思えなかった。その場しのぎの、読み合いですらない適当な
チェスだ。
 負けているのかも勝っているのかも、よく分からないチェスだ。
「なんで僕らこんなことしてるんだろうな」
 独り言のように呟くと、予想外にも如月更紗が反応した。タイムラグ・ゼロで黒のポーンへ
と伸ばそうとしていた手を止めて顔をあげる。
「貴方が暇だと言ったから」
「……分かりやすい解答をありがとうな」
 確かに、言った覚えがある。暇だ、と。しかし――だからといって、如月更紗と仲良く遊ん
でいる自分というものに、どうしても慣れることができない。
 だが、それ以上に。
「それと――お前の格好に、関連性はあるのか?」
 僕の問いに、如月更紗はきっぱりと「ないわね」と答えた。
 答えて、微笑む。
 ブラウス一枚だけの姿で、幸せそうに微笑んだ。
「…………」
 そんなふうに笑われては何もいえない。
 チェス盤が置かれているのは机でも床でもない。ベッドの真ん中に、毛布に沈めるようにし
てチェス盤はあった。ベッドの頭側と足側に向かい合うようにして座っているのだが――その
向かい合う如月更紗の姿が問題だった。
 制服を脱いでいる。
 スカートと靴下も脱いでいる。
 半そでのブラウスはボタンひとつしか止まっていない。案の定というか何と言えばいいのか、
その下に下着をつけている様子はない。ショーツとブラウスのみだった。
 ……なんか、よく考えれば、こいつの制服姿か裸のどちらかしか見た覚えがない。
 何と言うか、色々な面で問題だった。
「露出狂め」
「ブラウスも脱いで欲しい、と?」
「僕が露出狂じゃなくてお前がだよ! 誰が裸を迫った!?」
「私の中の冬継くんは、笑顔で全裸調教を迫ることのできる人だわ」
「捏造だよそれ! 妄想以下だ!」
「あ――これは貴方でなく須藤くんだったわね。ごめんなさい」
「誰だよ須藤……」
 というか、その須藤くんとやらは笑顔で全裸調教を迫るような奴なのか。
 恐ろしい世界だった。
221いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/02(金) 23:26:30 ID:9yD2ehT5
「制服はあまり好きではないのよ。家の中でくらい脱ぎたいわ」
「ここはお前の家じゃなくて僕の家なんだけどな」
「間を取って二人の愛の巣ということでどうかしら」
「間どころか彼方に跳んでるじゃねーか!」
「冗談よ。――Kの2。チェック」
 急にくるりと話を変えて、黒いナイトを如月更紗は動かした。そのまま、チェス盤に見入っ
て言葉を続けようともしなかった。そのくせ、確実にチェックメイトへと迫っているのだから
意地が悪い。
 はぁ、とため息ひとつ。
「どんな服が好きなんだよ」
 言って、こちらも白のナイトを動かして、赤のナイトをとった。伏兵でも策略でもない、た
だのその場しのぎの戦いだ。こんな曖昧なチェスを、夕方からずっと続けている。
 家に帰ってきたのは、昼過ぎだった。
 帰ってきて最初に驚いたのは家の鍵が開いていたことであり、二番目に驚いたのは人の部屋
に見覚えのあるキャリーバッグが置いてあったことだった。問い詰めてみると、僕と神無士乃
が学校へ向かった後、こっそり家に戻ってキャリーバッグを置き、それから学校に向かったこ
とを如月更紗はあっさりと白状した。
 悪びれもなく。
 不法侵入だ、と突っ込むと、涼しい顔で『ノックはしたわ』と返された。そういう問題じゃ
ないが、それ以上突っ込んでも完全に無駄なので放置。
 なんとなく寝たりなかったので、ベッドで如月更紗と寝て――一緒に寝ることに慣れてしま
った自分が怖い――夕方に目を覚まし、如月更紗にブラウスとショーツを着せて、今に至る。
 窓の外ではもう陽が完全に沈んでいた。真夜中、ではないが、どっぷりと夜に浸かっている。
今外に出て空を仰げば、きっと綺麗な月が見えるだろう。
 閑散とした住宅街なので、やけに静かさが耳についた。
「服――見たい?」
 ちらりと、トランプ柄のキャリーケースを見て、如月更紗はそう言った。少しだけ考えて、
「いや、いい」と断る。今も如月更紗の背後には巨大な鋏が置いてある。あのキャリーケース
が開いたとき、中から何が出てくるのか考えたくもなかった。
「裸のほうが好きということね」
「誰がそんなこといった!」
「裸の私は嫌いかしら?」
「枕詞に裸をつけるなよ! 僕がすごい駄目人間みたいだろそれだと!」
「違ったかしら」
「く……っ」
 違うと言い切れないのが悲しかった。
「クイーンをK列へ」
 話の流れを斬るように、如月更紗のクイーンが動いた。こつん、と木が鳴る。盤面で、白と
黒の駒は行ったり来たりを繰り返す。
 将棋と違って、復活はしない。
 欠けてしまえば――戻らない。
222いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/02(金) 23:27:06 ID:9yD2ehT5
「……狂気倶楽部には、チェスの二つ名もいるのか?」
 なんとなく。
 意味もなく――そんなことを、僕は如月更紗に尋ねた。暇潰しだったのかもしれないし、話
題逸らしだったのかもしれない。
 けれどもそれが、僕と彼女を繋ぐ、最大の接点であることに変わりはなかった。
「――――」
 如月更紗は、すぐには答えなかった。しばらくの間、迷うように盤面に視線を彷徨わせてい
た。そこから何を読みとろうとしていたのかは、やはり僕には分からない。
 分からない。
「例えば、そう――」
 どうして如月更紗が――その駒を指差すときに、微かに躊躇っていたのか、僕には分からな
かった。

「――白の女王とか」

 如月更紗は、その細い指先で――白のクイーンを、指差したのだった。
「…………」
 指された駒を、何気なく持ち上げる。木を掘られて出来た駒は重くもない。
 チェスの中で、最強の駒。
 そして、同時に。
「……不思議の国のアリスにもいたよな」
「そうね」
 気のない返事を、如月更紗は返した。何か、思うところがあるのだろう。
 ――狂気倶楽部では、二つ名を授かる。『本当の自分』を現すためか。『現実の自分』から
逃げるためか。とにかく、彼は、彼女は、仇名を授かる。
 如月更紗にも、あるはずだ。
『白の女王』は彼女の知り合いなのかもしれないし――彼女自身なのかもしれなかった。
 いい加減、それをはっきりさせたかった。
 持ち上げた白のクイーンを、QRの6へと置き、僕は宣言する。
「チェック」
「え、嘘?」
 ばっと如月更紗が盤に顔を近づける。黒く長い髪が、チェス盤の上に垂れた。
 チェスに集中していなかったのは如月更紗も同様だったのだろう。盤の上では、黒のキング
が完膚なきまでに追い詰められていた。
 完全に、詰みだ。
「……私の負け?」
「そうみたいだな」
「…………」
 無表情で盤面を眇める如月更紗にわずかな優越感を感じつつ、僕は本題を切り出すことにす
る。
「勝ったんだから――ひとつくらい、言うこと聞いてもらうぞ」
「……分かったわ」
 無表情のまま、それでも微かに声に悔しさを滲ませて、如月更紗は頷いた。頷き、ひとつだ
け止まっていたブラウスのボタンを自分で外す。
 ――って、おい。
223いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/02(金) 23:27:47 ID:9yD2ehT5
「この身体を自由にし」
「だれがそんなことをしろと言った!」
「……せめて最後まで言わせて欲しいわね」
「最後まで言わせてもろくなことにならないだろうが」
 それ以上に、口を開けばろくなことを言わない。
 本当にろくでもなかった。
「こういった冗談は、結構好きなのよ」
 さらりと、耳元にかかっていた黒髪を後ろに流して、如月更紗は言った。ブラウスの前を止
めようとしないが、もう着ているだけでよしとする。
「それは知ってる」
「なぜ好きかというとね――」
「いや、説明しなくていい」
 ろくでもない言葉が出てきそうな気がして制止するが、如月更紗は聞いちゃあいなかった。
 くすりと、口元を押さえて笑い、
「向こう側だと、冗談にならないからよ」
「――――」
「冗談でしかありえないことを、本気でやる人しかいないから」
 それこそ須藤くんしかりね――そう、如月更紗は、冗談めかして言葉を結んだ。
 冗談で、あるはずがなかった。
 如月更紗の言葉が、冗談であるはずが、なかった。
 沈黙する僕に、如月更紗は笑いながら続ける。
「そう考えると、冬継くんは不思議よね。貴方は明らかに向こう側を許容しているのに――自
身は渡っていないなんて」
「……何を言ってるかさっぱりだ」
 いや。
 言いたいことは分かる。狂気倶楽部なんてものと平然と向かいあう人間なのに、お前はなぜ
狂っていないのだと、そう如月更紗は問うているんだろう。
 そんなことに、答えられるわけがない。
 自分が狂っているかどうかなんて――自分で、分かるはずがない。
「そんな冬継くんだからこそ、私は今ここにいるのよね」
 どこか、楽しそうに。
 どこか、幸せそうに。
 如月更紗はそんなことを言って、ベッドにぽすんと身体を倒した。生々しい生足が放り出さ
れてむき出しになる。低い視点から、僕をじっと見上げてきた。
「それで、何を聞きたいの?」
「…………」
 チェックをとった白のクイーンを弄びながら考える。聞きたいことは、幾らでもある。
 狂気倶楽部での姉さんのこと。
 姉さんを殺した奴のこと。
 ウサギのことを聞いてもいいし、それ以外の誰かについて聞いてもいい。
 あるいは――如月更紗が、どうして狂気倶楽部に入ったのか、とか。
 冷静に考えれば、聞くべき質問は決まっているはずだ。復讐のためにどこまでも走ればいい
。無理矢理にでもソイツの特徴を聞きだして、今すぐ家を飛び出て探せばいい。
 けれど。

 そのときはきっと――如月更紗と、決別するのだと、思った。

224いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/02(金) 23:28:27 ID:9yD2ehT5

 顔を上げる。部屋の隅に、姉さんはいる。姉さんはずっとそこにいる。如月更紗と添い寝を
する僕を、如月更紗と遊ぶ僕を、如月更紗と話す僕を、変わらぬ笑みで見ている。
 姉さんは、いつでもそうだ。
 変わらない。
 変われない。
 死んですら、変われない。
 僕の中で生きている限り――変わることは、ない。
 僕は。
 僕は姉さんに――何をしたいんだろう。
 姉さんに、何をしてほしいんだろう。
 死んだ姉さんに対して――僕は果たして、何を思っているんだろう。
 そんな、はじめに考えておくべきことを、疑ってしまう。結論は分かりきっているはずなの
に、分かりきっているそれを言葉に出せない。
 ――迷っているんだろう。
 何に迷うのか、分からないほどに。
「……なあ、如月更紗」
 結局、僕は。
「今日帰りに、変な奴をみたぞ」
 結論を出すのを――先延ばしにした。
 答を、先送りにした。
 それが何の意味もないと、知りつつも。
 そんな僕の心中を、如月更紗の黒い瞳は見抜いていたのだろう。「そう」と頷くだけで、僕
に対して追及してこようとはしなかった。そのことに安堵しながら、僕は今日の昼、帰り道で
見た少年のことを思い出す。
「絶対暑いと思うんだけど、冬物のブレザー着てたんだよ。それだけでもおかしいけどさ、そ
いつ、ぶかぶかのシルクハットを被ってたんだ」
 他人から聞いた面白おかしな噂話を話すつもりで語った。
 だというのに。
 如月更紗の反応は――劇的だった。

「――――――――――――――――――――――――――――――――――――冬継くん」

 表情が、止まった。 
 声が、止まっている。
 何もかもが抜け落ちてしまって、表情を浮かべることができなくなってしまったような貌を
していた。見開いた瞳が、鏡のように僕を映している。
 驚いて、いるんだろう。
 僕もまた驚いていた。如月更紗が驚くということに、驚いていた。
 驚きをまったく隠そうとしないまま、如月更紗は、震える声で言葉を紡ぐ。
 決定的な、一言を、吐く。

「そいつは―――――――――――――にやにや笑いを、浮かべてはいなかっただろうね?」

 にやにや笑い。
 他人を嘲うような、からかうような、笑み。
 にやにやと、そうとしか効果音のつけようがない笑み。
 それならば、確かに――
「……浮かべてた、な」
 思い返せば、あの少年は終始笑っていた。僕を見て、如月更紗と手を繋いでかえる僕を見て
、にやにやと笑っていた。てっきりバカップルぶりを笑われていたのか、電柱にぶつかったの
を笑われたのかと思っていたが……
 それがどうしたというのだろう。
 にやにや笑いくらい、誰だって浮かべると思うのだが。まあ、黒一色の姿ににやにや笑いと
いうのは、確かに変ではあったけれど。
 けれど。
225いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/02(金) 23:29:06 ID:9yD2ehT5
 けれど――如月更紗の反応は、今度こそ、劇的過ぎた。
「どうしてそれを言わないのよ!」
 傍から見て退いてしまうほどの勢いで如月更紗が立ち上がった。反動でベッドの上に置かれ
ていたチェス盤が撥ね、駒たちがばらばらと転げ落ちる。そんなことに如月更紗は委細構わず
にベッドから飛び降りる。
 化学反応のような反応だった。
 劇的過ぎて、ついていけない。
「おい如月更紗、いったい何が――」
 状況についていけず、問いかけた僕に。
 如月更紗は、一言で答を返した。

「――チェシャだ!」

「チェ――シャ?」
 意味が飲み込めず、意識せずに反復してしまう。如月更紗はベッドに置いていた鋏を握り、
しゃきんと、慣らすかのように一度鳴らした。
「そいつがチェシャなのよ!」
 ――チェシャ。
 不思議の国のアリスに出てくる、笑いだけが残る猫。
 そして、それ以外の意味については、今朝説明を受けたばかりだった。
 索敵と、警戒と、罠を担当する――狂気倶楽部の、『外』に対する役割。
 番犬であるアリスを呼ぶための――呼び水。
 闇に溶けるような服装をし、にやにや笑いだけを残す、悪趣味な猫。
 つまり、つまりは――

 間違いの無い、敵だ。

「昼に補足されたなら、今夜には間違いなくアリスが来る。今はチェックを受けてる段階。こ
ちらの反応次第では、間違いなく詰まれるわよ」
 鋏をもうニ、三度鳴らし、くるりと回して如月更紗は言う。鋏の遣い具合をチェックしてい
るのだろう。……ということは、今夜あれを振うかもしれないということか。
 狂った凶器にしか見えない鋏を見ていると背筋が冷えるが、敵でないだけ安心だ。屋上でや
られたように、僕の首筋に添えられるということはないだろう。
 問題は、如月更紗ではない。
 問題はチェシャで――そいつが呼ぶ、アリスだ。
 アリスが、やってくる。
 敵が、やってくる。
 けれど、それは。
「考えようによっては――これはチャンスか」
「……え?」
 僕の言葉に、如月更紗は疑問符と共に振り返った。長い黒髪が宙を舞う。その毛先を目で追
いながら、僕ははっきりと告げる。
「僕の目的は、アリスやらチェシャやらを打破することじゃなくて――そいつらを押しのけて、
姉さんを殺したウサギと会うことなんだからな」
 チェシャがどんなやつだろうと。
 アリスがどんなやつだろうと。
 あくまでそれは障害物に過ぎない。僕の目的は、姉さんだ。
 そう、自分に言い聞かせるように、僕は言う。
 如月更紗はそれでもしばらく沈黙していたが、やがて、ふぅ、とため息をついた。
「仕方がないわね――」
 その後、如月更紗が何と言おうとしたのか。
 知る機会は、永遠に失われた。
 次の瞬間に――


 ピンポーン、と。軽い電子音が、家の中に響いたからだ。

226いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/02(金) 23:30:10 ID:9yD2ehT5
「…………」
「…………」
 一瞬で――場に緊張が満ちる。
 タイミングが、良すぎる。
 まさか。
 まさかこのタイミングで、正面から堂々と、アリスが――
 その杞憂もまた、次の瞬間に破られた。
 どんどんと、どんどんどんどんと、荒々しく扉が叩かれたからだ。そして、扉を叩く音に被
せるようにして、どことなく間の抜けた声が聞こえる。
「里村くぅん――! あけて――! お願い――!」
 半分泣いてる、女性の声だった。
 聞き覚えのある、女性の声だった。
「……なんだ、神無佐奈さんか」
 胸をなでおろし、僕は窓の方を向いて油断なく鋏を構えていた如月更紗を見る。
 ――裸に鋏。
 どう間違っても、この姿を見られたら、この家から出ていかなくてはならない。
「……如月更紗」
「何?」
「ちょっと対応してくるから、この部屋で待ってろ」
「でも――」
「知り合いだから大丈夫だ」
 あまり問答している時間はなかった。話している間にも、どんどんという音と、泣き声は二
階にまで届いてくる。神無佐奈さんは非力だからドアは壊れないだろうが……その前に拳が壊
れるんじゃないだろうか。
 一方的に言って、僕は如月更紗を置いて一階へと降りる。その間にも、ドアはどんどんと鳴
っていた。
「はいはい、今出ますよ――」
 言って、ドアをがちゃりとあけると、
「あ。」
 ドアを叩こうとしていた神無佐奈さんが、バランスを崩して、僕の胸に飛び込んできた。
 どん、と少し重い感触。如月更紗の軽い体と違って、神無佐奈さんは、実の娘である神無士
乃と同じように女性的な体つきをしていた。回りくどくない言い方をすれば、胸に大きな重り
が二つあるせいだろう。
 ぶつかっても痛くないのは、その重りのおかげだが。
「……どうしたんですか、こんな夜中に」
 夜中に――というほど夜でもないが、日が暮れてから、こんな風に神無佐奈さんがきたこと
はなかった。神無士乃ならばこんな来客もおかしくはないが――いくら幼く見えるとはいえ、
神無佐奈さんは立派な大人であり、母親だ。そこまで常軌を逸したことをするとは思えなかっ
た。
 しかし……
 本当に幼いな。胸の中にすっぽりと収まる身長といい、制服を着れば学生にしか見えない顔
といい。本当にこの人、母親なのだろうかと、たまに疑ってしまう。今はゆったりとした私服
にエプロンをつけているおかげで、かろうじて家庭的な人に見えた。
 神無佐奈さんは、「はわわ」と慌てて僕から離れ、裾で涙を拭った。
 本当に泣いてたのか。
 涙を拭った瞳で、神無佐奈さんは僕を見上げて言う。 
「あのね、士乃ちゃんが帰ってこないの。冬くんのところにいるかと、佐奈さん思ったんだけ
ど」
227いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/02(金) 23:31:22 ID:9yD2ehT5
「――神無士乃が?」
「冬くん。士乃ちゃんのこと、呼び捨てにしてもいいんだよ? そんな他人事みたいに言わな
くても――」
「いや、そんなことはどうでもいいですから。――神無士乃が、帰ってきてないんですね?」
「え、うん、そう」
 こくこくと、勢いよく神無佐奈さんは首を縦に振った。
「学校からまだ帰ってきてないの。冬くん、いっつも一緒帰ってきてるから、そっちの家に行
ったんじゃないかなって、佐奈さん思ったの」
「いや――」
 言葉に詰まる。
 今日は、僕は神無士乃とは一緒に帰ってきていない。
 いや。
 正確に言えば。
 今日は、初めて――神無士乃と、一緒に帰らなかった。
 帰れなかったことは幾度かある。ただしその場合は、あらかじめ連絡を入れていた。連絡な
しで帰れなかった場合、神無士乃は犬のように、忠犬のように坂道で待っていたから、結局遅
くはなっても一緒に帰っていた。
 けれど。
 今日、初めて――僕は、神無士乃よりも、早く帰った。
 神無士乃との、約束を、破った。
 いつも繰り返していた日常を――僕の方から、破ったのだ。
「まさか……」
 頭の中に浮かぶ想像は最悪なものだ。


 ――神無士乃は、今もあの坂道で、僕を待っている。


 一度思い浮かんでしまえば、それは、取り消すことのできない事実に思えた。
 今朝見た、神無士乃のあの姿。
 あの神無士乃ならば――たとえ一晩だって、あそこで待っているだろう。
 チェシャやアリスが徘徊する町で――僕の知り合いである神無士乃は、ずっと、そこで無防
備に立っているのだろう。
 僕を待って。
 僕を、信じて。
「……くそ!」
 思わず、悪態をついた。それは神無士乃へと向けたものではない。彼女の優先順位を低く見
すぎていた僕に対するものだ。声をかけることくらい、できたはずなのに。
 夕方一緒に買い物に行こうと――約束していたのに。
「神無佐奈さん」
 僕は神無佐奈さんの横を通るようにして靴を履き、つっかけながら外に飛び出る。
 夜の街は暗く静かだ。遠くで月が輝いている。街頭の光が、頼りなく街を照らしている。
 この先に、きっと神無士乃は待っている。
「……迎えに行ってきます」
 今からでも、遅くない。
 謝るには、遅くはない。
 神無士乃を――迎えに行こう。
 僕は迷わずに、全力を持って、夜の街へと駆け出した。

 そこに何が待ち受けているのか、知らぬままに。

228いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/02(金) 23:33:22 ID:9yD2ehT5

 以上で十二話終了です。
 今回鏡の国のアリスの小ネタがちょっと入ってます。

 次回でようやく、書きたかった二つのシーンが書ける……
 急加速して急落下する予定。

229名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 23:36:34 ID:Es5M5QVt
いや、ほんと面白いですわ。
貴殿に賛辞を。そして来たる惨事に賛辞を。
230名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 23:41:51 ID:ArCuoT3z
>>228
うはwwwGJ!!
次回の燃える展開を期待しております。

>>229
誰がうまいこと(ry
231名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 23:57:41 ID:HFsgaaYl
>>228
GJGJGJ!
wktkが止まりません!
232名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 04:24:00 ID:7fRsZeef
GJ!!
改めて思ったが…
この作品を読むのは夜寝る前に限る!!
233名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 04:33:26 ID:hgKIvNKi
GJ!!
夜中まで待ち続ける神無士乃。病んでますね。
迎えに行ったら行ったで「あの女のにおいがする!!」
とか言いそうで怖いww
あ、如月更紗とはまだ面識がないか……。
234名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 05:00:24 ID:hgKIvNKi
>あの勇敢な鼠の騎士は

読み返してみたら、十話でリーピ・チープのネタがww
235名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 05:40:27 ID:BmdBoyHk
GJGJGJGJGJ!
次回姿を現す?裁罪のアリスに激しく期待!
236名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 05:50:33 ID:WyQwLqj1
ああ…ヤンデレスレなのに敢えて言おう
誰にも死んで欲しくない!!
キャラを愛しすぎてしまったのか…
237名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 06:54:48 ID:5QP1HQSR
GJ!
>赤のナイト→黒のナイト かと思われる。
更紗と冬継に幸あれ。
微妙に死亡フラグが立ちましたがあえてスルー…させてください!
238名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 10:49:11 ID:0B9RN4eO
何という… 何という…

ヤンデレ以外の要素で燃えてしまうから困る
239名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 11:56:03 ID:RgYVpYBY
贖罪のアリスが神無士乃っていう展開も燃えるな。

そうだといいな
240名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 12:55:01 ID:5QP1HQSR
>>239
おぉ!それもいいな〜って、はッ!?
まずい…確実に更&冬のどちらかもしくは両方の命が……。
241名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 13:37:17 ID:J68D0dFA
須藤兄妹がセットでアリス
という錯乱したような予想を置いていく
242名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 13:52:11 ID:Tq0g9ULk
>>228
遅くなりましたがGJ!果たしてこの先に何があるのか……

ところで保管庫見たらidealがいい所で中断してるんだよなあ……再開をお待ちしております
243名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 16:10:19 ID:RgYVpYBY
>>240
故にBがトゥルーになる。
と予想する。
244名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 17:27:06 ID:BmdBoyHk
A=グッド
B=トゥルー

こういう事?
245名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 18:16:30 ID:2+yTM92I
いや、自分は神岸トラップと予想。
神無士乃の好感度を上げておかないと如月更紗のEDにたどり着けないとみた。
246名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 19:31:04 ID:RgYVpYBY
マッド・ハンター=髪フェチと認識しているので、冬継に接触した理由が『冬継の髪が綺麗だから』だったらやだなぁ

ん?それでこそヤンデレか?
247名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 21:06:36 ID:hgKIvNKi
>>244
作者氏の上のレスによると

A 本ルート
B トゥルールート
C 姉ルート

らしい。
248いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/03(土) 22:34:16 ID:vpHTOitt
>>229
誰がうまいことを(ry

>>ルート
一応プロットとしては以下のようになりそうです
A-1 ハッピーワールド・ルート
-2 ループパーティ・エンド
B  トゥルーラブ・ルート
C  バッドエンド

結構長くなってしまいましたが、読んでくれてるスレのみんなありがとうです
これにて一区切り終了、第十三話投下します。
アレとかアレとかの影響を一部受けてますがごめんなさい。
249いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/03(土) 22:34:54 ID:vpHTOitt
 時計を持っていないので時間が分からない。太陽の位置ならともかく、月の位置から時間を
特定する方法は忘れてしまった。まだ月は真上には浮かんでいない――それでも太陽が完全に
消えてしまっているので、もう完全に夜だということは分かる。
 夏の夜空には星がよく見える。星座の形なんて小学校にならったきりで忘れてしまった。北
極星が見えるのは夏だったか冬だったか。そんなことももう憶えていない。
 思考が錯綜しているのが、自分でも分かっていた。
 姉さんの次に付き合いが長い少女。神無士乃が、ここまで逸しているとは思っていなかった。
普通の人間なら、とっくに帰ってきているはずだ。
 いや。 
 いや――違う。
 そもそも、前提が違う。
 今まで一度も考えたことがなかったが、よく考えてみれば、普通であるはずがないのだ。普
通でない姉さんと付き合える僕と、長い間付き合ってきた神無士乃が――普通であるはずが、
ないのだ。
 類は友を呼ぶ。
 朱も交われば赤くなる。
 血に交われば赤くなる。
 いつからかは分からないけれど、神無士乃は、とっくに逸脱しているのだ。
 元に戻れないほどに――かどうかは、分からない。神無士乃は明るくて、学校で存在感なく
窓際で本を読むような、そんな少女じゃない。ごく普通の、年相応の少女らしい面だって持っ
てる。
 それと同じくらいの比率で、朝見せた、あんな表情だって、裏側に持っているのだ。
 片足を――踏み込んだようなものか。
 向こう側に片足を踏み出して。
 こちら側に片足を踏み入れて。
 曖昧なところで、揺れている。
 なら。
 その背中を、とんと押すのは。
 その腕を、ぐいりと引くのは。

 僕次第じゃ、ないんだろうか。

「…………くそッ」
 もう一度悪態をついて角を曲がる。暗い一本斜線の道を、電柱につけられた灯と家から漏れ
出る光が照らす。家に帰る時間はもう過ぎている。今は、家の中でのんびりする時間だ。辺り
には誰もいない。暗い道がどこまでも続くだけだ。
 走る。
 どこまでも――走る。息が絶え絶えになっても、途中で休みたくなっても、走る。歩いて三
十分以上かかる距離でも、走れば半分にできる。走りながら、どうせなら自転車に乗ってくれ
ばよかったと後悔するが、今更遅い。鞄を持っていないのが救いだ。
 夜の道を、全速力で走る。
 力の限り。
 命の限り――走る。暗い夜道を直進し、曲がり、くねり、ひねり、よどみ、うねり、闇夜の
奥の果てを目指す。
 風景が後ろに流れる。
 目的地が近づく。
 あと角を二つ曲がり、一つの直線を走れば、あの大きな国道に出る。歩道橋を渡って反対側
に行き、坂道を少し登ったところが、神無士乃との待ち合わせ場所だ。
 そこまで、走る。
 休むのは、そこについてからだ。
 僕は走り、角を曲がりながら――ふと。
 三匹の子豚の話を、思い出す。
250いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/03(土) 22:36:10 ID:vpHTOitt
 狼がこないように、レンガの家の中に逃げましょう――三匹の子豚の話はそういう物語であ
り、子豚たちがとった行動は正しい。どうしようもなく正しい。レンガの中の中にいれば、狼
はやってこない。それは確かだ。狼のすさましい吐息は、レンガの壁を壊すことができなかっ
たのだから。
 でも。
 狼にしてみれば――そんなことは、どうだっていいのだ。ワラの家を吹き飛ばすようなとん
でもない狼にしてみれば、レンガの家を突き崩す手段なんて、いくらでも思いつくはずだ。そ
れをしなかったのは、その労力に見合う対価が、子豚三匹じゃ足りなかったからだ。
 家をどうにかする必要はない。
 家から出てくるを待てばいい。
 生きている以上――いつまでも、家にいるわけにはいかないのだから。安心すれば、油断す
れば、あるいは朝がくれば、子豚は家の外へと出てくる。そのときに、ぱくりと食べてしまえ
ばいいのだ。
 けれど、もしも。
 子豚が想像よりも予想よりもはるかにアホで――あるいは、そうしなければならない理由で
――その夜のうちに、レンガの家から飛び出てきたら。


 狼が、襲わない理由など、何一つないだろう。


 目的地に辿り着くまで、止めないと誓った脚が――止まる。
 止めざるを、得なかった。
 無理矢理に走り抜けることもできた。そうしなかったのは、目の前に立ちふさがる相手が、
あまりにも異形だったからだ。闇夜の路地、月明かりの下、『通せんぼ』をするかのように、
道の真ん中に立ち尽くしていたその異形を、ただの一言で現すのならば。

 ――黒白。

 白く、黒い。モノクロで、歪な、少女だった。
 着ている服は、月の光を浴びて輝かんばかりに白い服だった。フリルの過剰な、洋服という
よりはドレスに近い。ウェディングドレスと言われても信じてしまいそうな装飾過剰な服だっ
た。スカートの前は大きく膨らみ開いていて、代わりに後ろは地面すれすれまでテールコート
のように伸びている。薔薇をあしらったヴェールのせいで、その顔は見えない。ただ、黒い口
紅を引いた口元だけが、三日月状に笑っていた。袖口は大きく膨らんでいるくせに、肩と腋が
むき出しになっていた。その全てが、染み一つのない白。
 病的なほどに肌は白く――だからこそ、よけいに。。
 手にしている、大きな蝙蝠傘の黒が、何よりも黒く見えた。
 闇よりも、夜よりも暗い、暗黒よりも黒く漆黒よりも暗い、蝙蝠傘を差している。
 吸血鬼が、日光を嫌うように。
 狼男が、満月を避けるように。
 雲ひとつない月空の下――白い少女は、黒い傘を差していた。

 童話の世界から抜け出してきたかのような形貌で、少女はそこに立っている。

「…………」
 迷う。止めた脚を、前へと進めるか、後ろへ戻すかを。
 冷静に考えれば不審者なんて無視して先に進めばいい。神無士乃がきっと待っている。
 目の前の相手が、ただの不審者ならば、の話だ。
251いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/03(土) 22:36:41 ID:vpHTOitt
 これが不審ですむなら警察はいらない。
 疑わしいなんてレベルじゃない。どう考えてもこれは待ち伏せされていた。大通りに出るた
めの路地で、両脇に門ではなく塀があり、外から気付かれにくい道はここしかないからだ。
 襲撃するならば――ここを選ぶ。
 意図的に、少女はここに立っているのだろう。恐らくは家へと攻め込むかどうか考えあぐね
ていた際に、僕が飛び出るのを見て――ここに移動したに違いない。
 チェシャは、呼び水。
 呼び水は、当然のように水を呼ぶ。 
 呼ばれてきたのは、殺人鬼。
 狂気倶楽部に関わるモノの罪を裁く、狂気倶楽部の中の最果て、狂気の中の狂気。
 その名を、僕は、如月更紗から聞いている。
「裁罪のアリス――か」
 僕の、言葉に。
 白と黒の少女は、ヴェールに覆われて見えない口元の笑みを。

 きりりと、吊り上げて、深く笑った。

 正解です、と言わんばかりに。
 笑って――すっと手を動かす。左手を傘の柄に沿え、右手で傘の持ち手を逆手に握る。何を
するのかと思えば、アリスはするすると、するすると右手を動かした。
 左手は動かさない。
 なのに、右手はするすると、するするすると動く。
 その理由は――
「……冗談だろ」
 馬鹿げてる。
 冗談だ。
 いや、冗談だと、思いたい。
 思いついても本当にやるやつがいるとは思わなかった。いったいどこであれを買ったんだ。
まさか自分たちで作っているのか。 
 そんな突っ込みが頭の中に浮かんでくるが、突っ込みのための声が出来ない。
 あまりの光景に、威圧されて言葉が出てこない。
 アリスの右手は、持ち手を握っている。それなのにするすると動くのは、持ち手が、傘から
離れるようにして伸びていくからだ。一メートルはありそうな傘の柄から、持ち手が離れてい
く。
 そこから現れたのは――信じがたいことに、現れてしまったのは――月の光を浴びてなお輝
くことのない、長く長く長く長い、一振りの黒い剣だった。
 すらり、と。左手の傘を捨てて、アリスは細い黒剣を振った。風を切る音だけが聞こえて、
剣の軌跡は見えなかった。ただでさえ細い刀身が黒いせいで、まったく見えない。
 ――冗談じゃない。
 如月更紗の大鋏も冗談めいていたが、これはもう、ふざけているとしか思えない。
 本気で、ふざけている。
 本気で、道化けている。
 本気で、演技けている。

 それが――狂気倶楽部。
252いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/03(土) 22:37:15 ID:vpHTOitt
「殺人鬼って……比喩でもなんでもなかったのかよ……」
 甘かった。チェシャやアリスを撃破すると言いながら、ここまでだとは考えていなかった。
無鉄砲に家を飛び出したのも甘ければ、常に武器を常備していないのも甘すぎた。
 如月更紗は、寝ているときだって、鋏を持っていたというのに。
 あいつのあの行為が、偏執でも冗談でもなく、至極当然の行為なのだと、僕は今更気付かさ
れた。
 こんなのを相手にするなら――あれくらいの備えは当たり前だ。あれでも、足りないくらい
だ。こいつなら、レンガの家にガソリンまいて火をつけることくらいはするだろう。
 とんでもない、相手だ。
 けど。
「だからといって――負けるわけには、いかないんだよな」
 そう。
 負けられない。
 勝たなくてもいい。刀を振り回すこいつに、勝つ必要なんてどこにもない。
 負けないことが、大事だ。
 死なないことが、大事だ。
 こいつは過程でしかない。こいつの向こうにいる、姉さんを殺した男にこそ、僕は用がある
のだから。
「どけよ、お前――」
 言いながら、僕は足に力を込める。前に飛ぶわけではない。
 後ろに退いて、全力で逃げるためだ。
 剣持って街中走れるやつなどいない。違う道を通って神無士乃を迎えにいけばいいし、なん
なら、如月更紗と合流してもいい。
 そう思って、いつでも駆け出せるように足に力を込めて、

 考えが甘すぎたことを、次の瞬間に思い知った。

「ち――ッ!」
 足にこめた力で、一気に跳ぶ。後ろではなく、横へ。身を低くして、潜るようにして跳ぶ。
跳んだそのすぐ上を、ちりちりと、死の感触が通り過ぎていく。
 毛先を切りながら、黒剣が振り切られたのだ。
 真後ろに跳んだら――殺られていた。
 裁罪のアリスが、十メートル近い距離を、一秒で埋めて切りかかってきたのだ。足に力を入
れてなければ、逃げることさえ間に合わなかっただろう。
 確かに運動神経がいいやつなら、十メートルを一秒で走りぬけることは可能だが、それはあ
くまでもトップスピードの話で、立ち止まった状態からなんて――
「どこまでデタラメなんだ――お前らは!」
 着地し、それでも止まらずに勢いのままに再度跳ぶ。振り下ろした剣が逆方向に跳ね上がっ
てきたのが、流れる視界のままで見えた。あのまま立っていてもやはり斬られていた。
 容赦のない斬撃。
 完全に、殺す気で来ている。
253いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/03(土) 22:37:50 ID:vpHTOitt
 せめて武器が、バッドでも鞄でも鋏でも何でもいいからあれば反撃か防御ができるのに――
 探す暇はなかった。裁罪のアリスは振り上げた剣を手の中で翻り、上段で担ぐように構えて、
 避けよう、と思う暇もなかった。
 勢いを殺せなくて無様に転んだだけだ。
「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――アハ」
 その無様さが、ギリギリで、命を救った。
 かすかな笑い声と共に――頭の上を、横薙ぎに剣が通り過ぎていく。頭上で風が流れるのを
感じた。剣が此方から彼方へと流れていく。
 ぎりぎりで、死ななかった。
 死ななかっただけで、助かったわけじゃない。
 敵は、すぐ前にいる。
「この――常識知らずどもが!」
 悪態を力にかえて、尻をついたまま、無理矢理右足を蹴り出した。無理な体勢で伸ばしたせ
いで、ぎりりと、筋が痛む感触が走る。それでも足を止めず、刀を振り切ったアリスの腹を目
掛け、
「な、」
 目掛けた足が、左手で受け止められた。
 いくら不安定な姿勢からとはいえ――全力で蹴った足を、手の平で、受け止められた。
「んな馬鹿な――」
 憤りとも悲鳴ともつかない言葉は無理矢理に中断された。つかんだ左手を、アリスが合気道
のようにぐるりと回したからだ。力ずくで、僕の身体もまた宙を一回転し、
「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――アハハ」
 笑い声と共に、浮いた体を、蹴られた。
 サッカーボールのように、胴を思い切り蹴り飛ばされる。「がぁ、」と意識せずに口から息
が漏れる。
 肺の中から、無理矢理しぼり出される感覚。胃の中のものを吐き出したくなる。衝撃が強く
て吐くこともできない。
 蹴られた勢いのまま僕の身体は宙を飛び、地面に叩きつけられて――それでも止まらずに地
面を転がり、壁にぶつかってようやく止まった。
 まずい。
 これは――死ぬ。
 相手が狂気を持っているとか、狂気を以っているとか、そういう問題じゃない。蹴られた衝
撃で息が出来ない。呼吸をしなければ酸素が取り込めない。酸素がなければ、動くことができ
ない。
 五秒もすれば動けるようになるだろう。けれど、再び剣を構えたアリスは、五秒も待ってく
れそうになかった。あそこから詰め寄って剣を下ろすのに、一秒もかからないだろう。
 だから。
 僕は、このままだと、死ぬ。
254いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/03(土) 22:38:59 ID:vpHTOitt
 殺される。
 殺される?
 誰が? ――僕が。
 誰に? ――アリスに。
 アリスに、僕が、殺される。
 身体が動かない。だから、思考だけがくるくると、狂々と動き続ける。殺す。殺す。殺され
る。殺される。殺し殺して殺され殺される。
 姉さんは殺された。
 姉さんは殺された。
 僕も殺される。
 僕も殺される。
 姉さんを殺した奴に?
 違う。
 姉さんを殺した奴に会うこともなく――僕は殺される。
 それは、おかしい。
 おかし過ぎて、笑いたくなる。
 可笑し過ぎて、脳が侵される。
 心が、犯される。
 そんな、馬鹿げたことがあるか。
 姉さんを殺した奴でもないのに――殺されるのか。
 姉さんと殺した奴を殺すこともなく、殺されるのか。
 こんな、中途半端で。
 僕は――
 アリスが迫ってくる。
 白と黒が迫ってくる。
 白い少女が殺しにくる。
 黒い細剣が殺しにくる。
 死が、目前に。
 終わりが迫る。
 僕は。
 僕は――
 最後に――姉さんではなく。


 如月更紗の、笑い顔を、思い浮かべた。




「やあ、やあ、やあ! 誰か――私のことを呼んだかい!」


255いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/03(土) 22:39:50 ID:vpHTOitt
 かきん、と。
 脳裏の笑い顔に、現実の笑い声が重なって――黒い剣が、金属音と共に、弾かれた。
 弾いたのは、僕じゃない。
 鋏だ。
 三十センチものさしを二つ組み合わせたような、人を殺すことしかできない、人を救うこと
なできそうにもない、狂気じみた凶器でしかない大鋏が、僕の命を、救った。
 裁罪のアリスの身体が、見えなくなる。
 塀の上から、降り立った人影によって。
 颯爽と、まるで正義のヒーローのように、頭上から飛び降りてきた人影によって、アリスの
姿が見えなくなる。アリスの剣が届かなくなる。
 罪が裁かれることはなく。
 罰が、そこに在る。

「おや、おや、おやまあ! なんてことだなんてこと! 私を差し置いて随分と楽しそうなこ
とをしてるじゃない」

 楽しそうな。
 愉しそうな。
 おかしそうな。
 犯しそうな。
 笑い声。
 聞き覚えのある、笑い声。
 裁罪のアリスが一歩退く。目の前に降り立った影は、そんなことには構いもせずに、くるり
と右手の鋏を回して――くるりと左手に持った、黒いステッキを逆回しにした。
 時計の針のように、杖と鋏が回りだす。
 デタラメな時間を、刻み出す。

「それはそれはそれは楽しかったでしょう。こんなにいい夜なのだから!」

 影は笑う。影は、影にしか見えなかった。
 長く艶のある黒髪は長く、夜の風に揺れていた。男物のタキシードは、彼女の性別を覆い隠
すかのように黒い。頭につけたミニハットもまた、黒だった。回る杖も黒。
 アリスが白と黒ならば。
 白を殺して――黒だけになったような、姿だった。
 黒い。
 黒い男装の、少女。
 見覚えのある、後ろ姿。
 これが。
 こんなものが――キャリーケースの中に、入っていたのか。

「さぁさぁさぁ楽しみましょう遊びましょう。こんなにも月が綺麗なのだから!」

 そう、高らかに笑って。
 右手と左手が同時に止まった。鋏は前へ、杖は後へ。杖の頭と鋏の先を、二挺拳銃のように
アリスへと向ける。
 その名を、僕は知っている。
 噂だけは――聞いている。
 姉さんを殺した奴の名前を探しているときに、偶発的に、必然的に飛び出してくる名前。曰
く、七つの頃から其処にいる、気付けばいつだってそこにいる――狂気倶楽部の最古参。
 狂った狩り人してイカレた帽子屋。


 ――マッド・ハンターが、そこにいる。

256いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/03(土) 22:40:32 ID:vpHTOitt
 そして。
 そして僕は――
 彼女の、もう一つの名を、知っている――その声に、その姿に、その鋏に、覚えがある。
 僕は、ようやく動くようになった肺を、喉を、身体を、力を振り絞って、僕の命を救った彼
女の名を。
 身の安全を保証すると、あの日屋上で交わした誓いを、守った彼女の名を――叫んだ。

「如月――更紗!」

 僕の叫びに、如月更紗はくるりと鋏と杖を回し、僕の方を振り向いて――おどけるように笑
って言った。
「今は、今は、今だけは、マッドハンターさ」
 そして、振り返ったそのままに、後ろ蹴りをかました。
 僕に。
「…………」
 何しやがる。
 無言の広義の視線を送ると、如月更紗はふんと笑い、
「さっさと、さっさに、さっさか立ちたまえよ。生きているのでしょう?」
「…………ハ」
 全く――遠慮のない奴だった。
 まさに、その通り。
 生きている。
 僕は今、お前のお陰で――生きている。
 壁に手をついて、どうにか立ち上がる。裁罪のアリスは、焦ることもなく僕と闖入者たる如
月更紗――いや、マッド・ハンターを見つめていた。といっても、目がヴェールで隠れて見え
ないので、本当に見つめているかどうかはわからないが。
 どちらにせよ、焦っている様子はない。
 まるで、登場を予期していたかのようだった。
 マッド・ハンターは鋏をしゃきん、と一度鳴らし、アリスに向き直ったまま、僕に言う。
「里村くん、里村くん、里村冬継くん――君はどうして私たちがこういう格好をするのか、知
っているのかい」
「こういう格好――?」
 それは、お前みたいな男装とか、アリスのウェディングドレスとか。
 狂気倶楽部の面々が好むゴシック・ロリータ姿のことだろうか。
 僕の返答を待たずに、如月更紗は朗々と唄うように続けた。
「それは儀式さ、それは魔術さ、それは黒魔術さ――自分は特別なのだと、ここはメルヘンの
世界なのだと、思い込むための魔術装備。だからこそ、」
 こんなことができるのよ。
 そう、言葉を結んで――マッド・ハンターの姿が、消えた。
「!?」
 消えたようにしか見えなかった。
 一瞬後に事実を悟る。一瞬の後に、マッド・ハンターは距離を置いていたはずのアリスと、
剣を交えていたからだ。黒い剣と長い鋏がぶつかって、がぎんという音がする。瞬き一つの間
に攻防は進んでいく。鋏を開き、剣を挟むようにしてすべらせる。アリスは剣を返し、鋏を弾
く。弾かれた鋏が宙で向きを変えてアリスの首筋に迫り、首を逸らせてアリスは避け、避けな
がら長い足を蹴り上げる。足の間を通す脚撃をマッド・ハンターは杖で巧みに受け流し、返す
一撃でアリスの腹部を殴打しようとした瞬間にアリスが後ろへと跳んだ。
 跳んだのにあわせてマッド・ハンターは鋏を開いて跳び――しゃきんと鳴らして、アリスの
首を刈ろうとする。アリスは伏せて避け、避け切れなかった髪が一筋宙に残された。下から逆
袈裟に黒い剣、黒い杖がそれを受け止める。中に何か仕込んであるのか、杖が両断されること
はない。ぎりぎりと、拮抗状態が生まれる。
 目で追うのがやっとの――信じられない、争いだった。
257いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/03(土) 22:41:32 ID:vpHTOitt
 そして、脳は目よりも早く事態を追っていた。思考だけが加速していく。
 魔術儀式、とマッド・ハンターは言った。
 日常とはかけ離れた服を着て、日常ではありえない舞台を作り、日常に存在しないモノを振
う。そうすることで、まるで物語の中に自分がいるのだと、強く思い込む。思い込むだけでは
あきたらず、思いこんだ世界をそこに作り出す。
 強力な――自己暗示だ。
 洋服も、
 武器も、
 口調も。
 全てが、日常から変質するための、道具だ。だからこそ、こんな突拍子もないことができる。
もしも暗示が逆転して、それが日常になってしまえば――完全に発狂する。狂気が常になり、
基準点が崩壊する。
 正しく――狂っている。
 狂気倶楽部。

 狂気の国の――御伽噺。

「行きたまえ、行きたまえ、行き給えよ冬継くん。君を待っている人がいるのだろう? ここ
は私に任せて――という奴さ」
 杖の隙間から鋏を繰り出しながらマッド・ハンターが言う。アリスはそれをバックステップ
で避け、さらに垂直に飛んで塀の上へと降り立った。マッド・ハンターは、そんな彼女と僕と
の間に立ちふさがる。
 杖で、僕の行く道を指し示す。
 その好意に、こたえないわけにはいかない。
「――恩にきる。だから、」
 僕は、初めて。

 更紗――死ぬなよ」

 自覚して、彼女の名前を呼んで。
 わき目もふらずに、駆け出した。今の僕では、如月更紗の、マッドハンターの邪魔になるだ
けだ。
 僕は、僕のやるべきことをやる。
 あいつは、あいつの意思で、僕のために戦っているのだから。
 その思惑が何なのか、僕はまだ、知らないけれど。
 あいつが――僕の命を、助けてくれたのは、本当なのだから。
 僕は走り出す。
 最後の角を曲がる直前に。
 背後から――楽しそうな、マッド・ハンターの声が、聞こえた気がした。

 
258いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/03(土) 22:42:34 ID:vpHTOitt

 


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「さあ――――――――――――――――――――――――――――お茶会を、始めようか」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   




259いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/03(土) 22:44:14 ID:vpHTOitt
 ……。
 …………。
 ………………。
「――――」
 走り、走り、走り抜いて。
 歩道橋を渡り、あの坂道を、学校へと繋がる坂道を登った先。近くに民家がないせいで余計
に暗く、ぽつり、ぽつりと、大きすぎる間隔をあけてたつ街灯の明かりしか存在しない、夜の
坂道に。
 ――神無士乃は、立っていた。
 辺りは暗い。月と星の光だけが頼りだった。街灯の真下に立つ神無士乃だけが、夜の闇から
ぽっかりとくり抜いたように見えた。俯いているため、表情は見えない。
 泣いて、いるのかもしれない。
 それも当然なのかもしれない。泣かせるだけのことを、僕はしたのだから。
 何を置いても、謝らなければいけない。
 ここまできたらもう走る必要はない。そう自分に言い聞かせ、息を整えながら歩く。
 ――走るのをやめたのは、神無士乃に何て話しかければいいのか、思いつかなかったからか
もしれない。
 そんな思考を押し殺し、歩いて、近づく。走り続けてきたため、心臓は破裂するかのように
ばくばくと鼓動していた。息が荒い。呼吸が難しい。今にも死にそうだ。
 でも、死んではいない。
 如月更紗が、助けてくれたから。
 ――彼女は、生きているだろうか。
 マッド・ハンター。狂気倶楽部の古参。古くからいるということは、古くから生き続けてい
るということだ。生半可なことでは死なないと思うが――それでも相手もまた、狂気倶楽部の
中では特別な位置にいる殺人鬼なのだ。結果は、誰にも分からない。
 生きているか死んでいるか分からないなら、
 生きていると、信じよう。
 如月更紗を、信じよう。
 そしてそれは、後で考えるべきことだ。今は――神無士乃だ。
 街灯の下で立ちすくむ、神無士乃のことを、考えなければいけない。
 夕方からずっと――僕を待ち続けてくれた、神無士乃のことを、考えよう。
 街灯の光の中に立ち入ると同時に、僕は息を吸って、吐いた。一つ深呼吸をして覚悟を決め
る。
 そして僕は、彼女の名前を呼んだ。
「神無士乃――」
 名前を呼ばれて。
 神無士乃は――顔を上げた。
 泣いているのだと、思っていた。
 けれど、違った。
 神無士乃は。
 数時間も待ちぼうけを喰らっていたはずの神無士乃は、僕を見て。
「――先輩!!」
 嬉しそうに、笑っていた。
 幸せそうに――笑っていた。
「先輩、ちゃんと来てくれました。でも、大遅刻ですよ? 具体的に言えば、三十一時間ほど
時刻です」
 いつものように笑って、神無士乃は言う。
 いつもと変わることなく、神無士乃は、言う。
「え、あ、うん――」
 その、あまりの変わらなさに、僕はなんと言えばいいのかわからずに戸惑う。
 謝らなければ、いけないのに。
 笑う神無士乃に対し、その言葉が、出てこない。
260いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/03(土) 22:45:08 ID:vpHTOitt
「ちなみに今のは日付を間違えた場合の計算です」
「いくら僕でも日付を間違えたりはしないよ」
「知ってます。先輩は年月を間違えるんですよね?」
「どこの浦島太郎だよ僕は」
 いつものように、僕らは問答する。
 いつものようだ。
 日常的に、する会話だ。
 日常――過ぎる。
 あれ?
 おかしい。
 まったくおかしくないのが、おかしい。
 僕は、謝らなきゃいけないはずだろう?
 謝るだけのことを、しでかしたはずだろう?
「そう、そうじゃない――神無士乃、僕はお前に、」
「あ、いいんです」
 神無士乃は。
 謝ろうとした僕の唇を、左手の人差し指で塞いだ。
「それ以上言ったら駄目ですよー。気にしてないですから」
「気にしてない?」
「はい、全く全然です」
「いや、重複しているから」
「全く全然全てにおいてパーペキです」
「パーペキは死語だ!」
 意味も間違ってる。
 じゃなくて。
 そうじゃ、なくて。
 こんな楽しい会話を、している場合じゃなくて。
 おかしいだろ。
 おかしくなくて――おかしいだろ。
 例えば、笑ってる神無士乃とか。
 丸い瞳が、僕を見て、なんで笑っているのかとか。

 なんで――そんなに、幸せそうな顔をしてるんだとか。

「いえいえ、正確に言えば、もう気にする必要はないんです」
「……? 何が、だよ」
「それはですね、」
 神無士乃の左手は、僕の唇に添えられている。その手が、くるりと捻って、僕の口を押さえ
た。声が出せなくなる。
 そして、神無士乃の右手。
 右手につかんでいたバッグが、地面に落ちる。そして、その手がつかんでいるのは――黒く
て長い、棒状の何か。ああなるほど、と納得する。神無士乃の薄っぺらいくせに重そうな鞄の
中には、こんなものが入っていたのか。
 その先端が、僕の首筋に、当てられて。
「か――」
「大好きですよ、先輩」
 神無士乃はそう言って微笑み、微笑んだまま手に持った棒ことスタンロッドのスイッチを一
気に最強まで引き上げた。
 電流が、走って。
 


 誰かのことを考える暇もなく、僕の意識は、闇に堕ちた。

261いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/03(土) 22:46:08 ID:vpHTOitt


 そして僕は――地下室で目覚めることになる。


262いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/03(土) 22:49:56 ID:vpHTOitt
 夜討ち、監禁が嫉妬の華ならば。
 横から主人公を奪い取るのも、また修羅場の華である――

 というわけで、第十三話終了です。伏線伏線張りつつも完全に折り返しの山を越えました。
 散散引っ張っていたキャラをようやく出せて嬉しいです。

 Aルートということで、神無士乃のフラグが立たない状態で、如月更紗ルートに突入した話でした。
 結果、横合いから思い切り殴られることに。
 次回から多少エロありの監禁調教編です。
263名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 23:09:07 ID:R1VD3LQ+
48度線から韓国面となります
264名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 23:23:10 ID:qn1NPJ2v
>>262
キタ━━(゚∀゚)━━!!
激しくGJ!
これほどの作品を毎日投下して下さる作者様は神いわゆるゴッド!
265名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 23:40:57 ID:hgKIvNKi
GJ!!
どんどん病んできましたね!!


それにしても……。
神無士乃はスタンロッド常備してたのか!!

もう更正は無理ポ

266名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 23:49:11 ID:RgYVpYBY
>>254
殺人貴キター!!

これで冬継くんは蜘蛛めいた動きをする暗殺者になる訳ですね!!

違います?
267名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 23:52:43 ID:hgKIvNKi
>>266
消えろ月厨。
若しくはアンチ型月。
268名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 23:56:20 ID:e1B5/YHA
月厨 乙
269名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 00:06:16 ID:uUb4oBjk
頑張れありゃりゃぎいーちゃん!
270名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 00:08:07 ID:InR9IB3M
いい仕事してますねぇ。
刀対鋏。これは実に興味深い戦いだ。
俺の予測では光輝いた鋏が刀をちょん切って・・・・・・って展開はないな。

そして、後輩のエロスに期待。
271名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 00:57:04 ID:RAA1Wd5e
読んでる間動悸が止まらなかった!
マジGJ!
272名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 01:02:48 ID:hK3AiIAj
マッドハンター気タァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
273名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 01:12:29 ID:IsPZZbp8
     !ニニ'' フ         iニi    ____  /二/    
     __  / / ─ッッ ムZ7/7 iニi   / --//     /   
     ヽ‘ニ'ノ iニ√ iニしシ iニヽ_ノ iニしソ !二二し'   
274名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 01:17:02 ID:TPjHz1ZO
>>267-268
どうでもいいじゃん
275名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 01:27:43 ID:lE7sV37g
実に良きものを見せて頂きました。
毎回このシリーズには読み入ってしまいますよ。
次回も楽しみにしています。
276名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 02:07:28 ID:q6Qw3w0D
GJ!
病んできたよ。これからが楽しみだ。
277名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 04:00:42 ID:UspJGeEY
GJ!
マッド・ハンターがカッコ良すぎる!
278名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 04:27:17 ID:ZX7De/tP
やはり更紗はマッド・ハンターだったか。
ミスリードかと思ってたら更に裏をかかれたww

まぁ今はとにかくGJ!
物語もさる事ながら戦闘のクォリティも高いwww
279名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 08:19:16 ID:Qp6PkzpM
賛辞と惨事の掛詞に興味を示してもらえるとは。
今が三時で無いのが残念だけれど、参事したからには更なる賛辞を、他の雑事は二次三次。
280名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 09:02:42 ID:InR9IB3M
>>279
ではキミの三時のおやつはサンジェルマンのメロンパンだ。
281名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 11:31:21 ID:aCKEUEFb
(´・∀・`)うっせ
282ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/04(日) 15:00:28 ID:InR9IB3M
では投下します。
283ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/04(日) 15:01:09 ID:InR9IB3M
〜遠山雄志のひとり語り〜

 一人称を僕から俺に変えたのはいつだったかはっきり覚えていないが、
俺の性格が大きく変わったのは二年前だった。
 別にトラウマになるような事件が起こったわけではない。ただ俺が勝手に
ひねくれただけのことだ。

 学生のころはもっと単純な人間だった。
 人間は話せばわかってくれる、悪いことばかり考えている人間はいないと思っていた。
 しかし就職してからはすぐに現実と言うものを見せつけられた。
 人の話を聞かない人間がいるということ。
 人は自分さえ良ければ他はどうでもいいと思っているということ。
 自分より上の世代のだらしなさやマナーの悪さ。
 自分より下の世代の自分勝手さと良識の欠如。
 
 自分にも駄目な部分があると思っている。
 だから他人の悪いところばかりを見ないように努力した。嫌なことを忘れるために色々やった。
 酒、パチンコ、女、スポーツ、車、読書、暴食・・・・・・
 それでもどんどん嫌なものばかりが目に入った。
 いつのまにかテレビ・新聞・社会の習慣、全てが疑わしくなり――

 就職してから四年後、会社を退職しフリーターになった。 
284ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/04(日) 15:02:02 ID:InR9IB3M
〜菊川かなことの出会い〜

『ぴぴぴぴっ ぴぴぴぴっ ぴぴぴぴっ ぴっ』
 目覚ましを止めて時間を見ると、朝6時。
 いつもバイトの日に起きる時間だ。 
 今日はバイトも無いのだからゆっくりしていてもいいのだ。
 そんなわけでもう一度布団に潜りなおす。
 ・・・・・・・・・・・・。むぅ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 眠れない。寝すぎか?昨日は何時に寝たんだっけ。
 えっと・・・・・・
 思い出せない。何時に寝たかが分からない。
 たしか昨日は家に帰ってきて、シャワーを浴びて飯を食って、
布団に入りながら本を読んで・・・・・・読んで・・・・・・どうしたんだ?
 いつもならその後で歯磨きをして寝る。でも、昨日は歯磨きをした記憶がない。
 ということはつまり。
「そのまま寝ちまった、ってことか」
 だらしない。日に日にだらしなくなっていく気がする。
 やることが少ないからか、それとも自分を縛り付けるものが少ないからか。
 いや、違うな。心がたるんでいるからだ。
 俺がしっかりしていればだらしなくなったりはしない。

 そう思わないと本当に駄目になってしまいそうだ。
 望んでフリーターになったということを、今更後悔したくはない。
 今日もいつも通りに朝食を食べてから図書館へ本を返しに行くとしよう。



 俺が住んでいる町の図書館はこじんまりとしたもので蔵書の数は多くないが、
それでも俺の読書欲を満たすには充分な数だ。
 ここの図書館はジャンルや作者ごとにきちんと整理されて管理が行き届いて
いるのに加え、掃除がしっかり行われているので読むには最高の環境だ。
 今日は昼まで本を読んでから一週間分の本を選んで借りていくとしよう。
 
 この間借りた小説の本は面白かった。
 どこぞの姫の命を奪おうとする刺客たちと、姫を守るために戦う一人の武士との戦い。
 刺客との戦いに勝利し、姫のもとへ駆け出す武士。
 しかし姫のもとにたどり着いたとき、彼が見たものは今にも死にそうな姫の姿だった。
 彼が刺客と戦っている間、別の刺客によって姫は襲われていた。
 姫は最後の力を振り絞り、涙を流す武士に愛の言葉を伝え――彼の腕の中で息絶えた。
 この小説の中で俺がもっともぞくりとしたシーンは姫の最後の台詞。
『わたくしは・・・・・・あなたさまに殺されとうございました・・・・・・
 あなたさまの愛をこの胸で、この背中で感じながら、そして・・・・・・
 いまのように強く、抱かれながら・・・・・・死にとうございました・・・・・・
 強く焦がれております・・・・・・今のこのときも・・・・・・
 わたくしは生まれ変わりたるときも・・・・・・此処であなたさまに会える日を・・・・・・
 ・・・・・・もう、前が見えませぬ・・・・・・わたく、しは・・・・・・あ・・・・・・て・・・・・・ぅ』

 姫と過ごした日々を思い出しながら泣き崩れる武士の気持ちが、痛いほどに伝わってきた。
 本を閉じてから頬に手を当てると涙が流れていた。
285ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/04(日) 15:03:13 ID:InR9IB3M
 あれほど泣けた本は初めてだった。
 そういえば初めて本を読んで泣いたのはいつだっただろう。
 ・・・・・・まあ、いつだっていいか。

 よさげな本は無いかと思い、あの本が置いてあった棚の列の前に向かうと――
 一人の女の子がいた。
 いや、違った。
 ・・・・・・すごい美女がいた。
 腰にまで届くほどの黒髪。
 透明な肌。
 整った目鼻立ち。
 ピンク色の小ぶりな唇。
 儚げな眼差し。
 細い体に白いワンピースを身にまとい、その女性は本棚の前に立っていた。

 横顔に見惚れていると、その視線に気づいた女性は俺の方を振り向いた。
「? あの、何か・・・・・・?」
「い、いいえ別に。なんでもありません」
 怪しいものを見る眼差しだ。
 しかし彼女は俺の答えを聞いてから、すがるような声で話しかけてきた。
「・・・・・・あの、一つお聞きしたいことがございます。この図書館で――」
 どうやら彼女は一冊の本を探しているようだ。
 その本は、姫と一人の武士が恋に落ちるという内容らしい。今まで他の町の
図書館に行って探してきたが、一向に見つからないのだという。
 なんとかしてあげたいが・・・・・・
「すいません。その本はまだ読んだことがないです」
「お願いいたします。もう一度思い出してください。
 わたくしはもう、何年もその本を探して・・・・・・」
 そう言われても・・・・・・ん?待てよ。
 この間読んだ本も過程は違うけど共通している部分があるな。
「違うかもしれませんけど、似たような本なら読みましたよ。
 最後には姫が死んでしまうんですけど」
「! その本は今どこにございますか?!」
 いきなり腕を掴んで迫ってきた。整った顔がすぐ目の前にある。
 花のような優しい香りがする。香水だろうか?
 くらくらしてきた。この距離はまずい。
 とりあえず彼女の肩を掴み距離を空ける。
「ついさっき返却してきたばかりだから、今はカウンターにあると思いますけど・・・・・・」
「ありがとうございます!」
 俺に向かって頭を下げるときびすを返してカウンターへ向かって走り出した。
 いかにもお嬢様に見える人が本一冊で落ち着きを無くすとは。
 もしかしてあの本は有名な本だったのか?
 また今度改めて読み直すとしよう。
286ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/04(日) 15:04:16 ID:InR9IB3M
 めぼしい本を数冊選び、昼まで本を読んで時間を潰してから外に出ると、
駐車場に長い車が停まっていた。ゆうに軽自動車二台分はある。
 黒に塗装されているボリューム感のあるフェンダーや押し出しの強いフロントグリル。
 ボンネットの先端にはシンボルマークの天使がたたずんでいる。
 どう見積もっても俺では一生かかっても買えそうにない車種だとわかる。
 こんな小さな町の図書館に大金持ちが来るほどの価値のある本があるのだろうか。
 一度読んでみたいものだ。

 ボリューム感という単語とは程遠い我が愛車――二万円で購入した自転車だ――の
ワイヤーロックを外そうとしたところで、後ろに人の気配を感じた。
 振り向くと図書館で話した女性がいた。
「先ほどは本当にありがとうございました。
 おかげさまでずっと探してきたこの本を手に入れることができました」
 彼女が持っているのは今朝俺が返却したばかりの本。
 大事そうに両手で胸の前に抱えている。 
 ・・・・・・ところで今『手に入れた』って言ったか?
 まさか図書館の責任者にかけあって自分のものにしてしまったのか?
 まあ、この女性に『お願いします。どうしてもこの本が必要なのです』と
涙を浮かべながら言われたら俺も『あげます』としか言えないけど。
「それは良かったですね。それじゃあまた・・・・・・」
「お待ちください」
 呼び止められた。なぜ?俺、何かしたか?
 ・・・・・・そういえば図書館の中でこの人をじっと見つめていたっけ。
 でもまさかそのことで因縁をつけられたりはしないよな・・・・・・?
「この本を見つけられたのはあなたのおかげです。ぜひお礼をさせていただきたいのですが」
 ・・・・・・どうやら違うようだ。ほっと胸を撫で下ろす。
 しかし『お礼をしたい』と言われても、たったあれだけのことでお礼をされても
気が引けるだけだ。ありがたい申し出だけど、断らせてもらおう。
「すいません。今から昼食を食べに行くので。
 お気持ちはありがたいのですがお断りします」
「お昼ですか? それでしたらわたくしがお礼に馳走いたします!」
 しまった。必要無いことまで言ってしまった。
 このままでは一緒にお昼を食べることになってしまう。
 別に奢られるのが嫌なわけじゃない。ただ――怪しいのだ。俺のようなフリーターの
男をこんな美人が誘ってくるなど、何か裏があるとしか思えない。美人局の可能性もある。

 逃げるのが得策だ。はっきりと断ったのだから、俺に何の落ち度も無い。
 自転車のロックを外し、サドルに乗ろうとした瞬間――
 右から来た黒い腕にチョークスリーパーをかけられた。
「あ・・・ぐ・・・ゥゥッ・・・・・・」
 すごい力だ。振りほどこうにもびくともしない。まるで銅像だ。
 ――やっぱり、嫌な予感当たったな。
 
 数秒間首を絞めあげられ、抵抗する力を失った俺は諦めて目を閉じた。
287ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/04(日) 15:05:13 ID:InR9IB3M
 目が覚めたときに最初に見たものは木目の天井だった。
 ・・・・・・・・・・・・。
 ここはどこだ?なぜ俺はこんなところにいる?
「目を覚まされたのですね」
 その声は頭の上から聞こえてきた。
 目線を上げると穏やかな笑顔の美人の顔があった。
 ということはこの体勢は膝枕か。どうりで寝心地がいいわけだ。
 目が合うと女性は俺に向かって頭を下げた。
「申し訳ございません。わたくしのせいですわ。
 どうしてもあなたとお食事をご一緒したかったので・・・・・・
 側近の者に命じてあなたをここまでお連れしたのです」
 ・・・・・・つまりこの女性は俺と昼食を一緒に食べたかったが俺が断ったことで焦り、
側近――おそらく首を絞めてきた人間のことだろう――に命じて強引に俺をここまで
連れてきた、ということか。
「申し訳ございません・・・・・・本当に、誠に、申し訳もございません・・・・・・
 何度でも謝ります・・・・・・ですから、どうか、どうかわたくしを嫌わないで・・・・・・
 お願い・・・・・・お願いでございます・・・・・・ぅっうっうっ・・・・・・」
「いえ! 大丈夫ですよ! もう全然! あはははは!
 ・・・・・・大丈夫ですから、もう泣くのはやめてくれませんか・・・・・・?」
 飛び起きて大丈夫だということをアピールする。
 泣かせたままにしておいたら今度はその側近とやらに刺されてもおかしくない。
 幸い女性は飛び起きた俺を見て泣き止みはじめていた。
「くすんっ・・・・・・すん・・・・・・本当でございますね? ・・・・・・よかった」
「それでその、ここはどこですか? 図書館ではなさそうですけど」
「ここは菊川の分家が経営している料亭ですわ。
 料亭としては中の下ですが、図書館から最も近い場所にありましたので
 ここにお連れしました。・・・・・・もしや、お気に召しませんでしたか?」
 どこが中の下だというのか。
 畳や襖はしみどころか色あせも無いし、壁際には高そうな壷や掛け軸まで
掛けてある。庭に敷き詰められている砂利には靴跡一つ無い。
「気に入らないなんてことないですよ。ただ、自分には場違いだと思って」
「堅くなる必要はございませんわ。わたくしの客人であるあなたに物申す人間は
 わたくしが許しません。ご安心を」

 ・・・・・・最初から思っていたけど、この人は何者なんだ?
 上品な言葉遣い。さらに側近を連れている身分。この料亭を中の下だという胆力。
「さ、こちらに。すぐに料理を運ばせますわ」
 座れ、ということだろう。敷いてある座布団に正座をする。
 女性が手を叩いたらすぐに女中らしき人が襖を開けた。そして女中に一言告げると
俺の正面に正座で座り、礼儀正しく座礼をする。
 女性は顔を上げるとこう言った。
「数々の無礼、改めまして深くお詫びいたします。
 わたくしは菊川本家長女、菊川かなこと申します。以後お見知りおきを。遠山雄志さま」
288ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/04(日) 15:06:35 ID:InR9IB3M
 菊川本家というのは分かりやすく言えば上流階級の人間だ。
 最近は階級格差がどうとか言うが、そんなことを言っているのは労働者である
下流の人間と、人を雇う立場にある中流の人間と政治家だ。
 労働者ではないし、人を雇わなくても自動的に金が懐に入ってくる上流階級の
人間。その一つが菊川本家だ。
 菊川本家が動けば当選確率が低い県知事候補がいてもその状況を
数日でひっくり返すことが可能だという。
 ・・・・・・いや、全部今聞いたんだけどな。どこそこの金持ちの名前を
聞いて反応するのはフィクションか、もしくは上流階級の人間だけだ。
 実際俺も目の前にいる女性――菊川かなこさんを前にしてもどうも金持ちだという
イメージがわかない。おしとやかな和風美人であるという印象の方が強い。
「あまり驚かれないのですね?」
「ええ、まあ」
 とはいえ、どう接したらいいものか。
 今までの人生でここまでスケールの大きい人間と話したことがない。
 まるでフィクションだ。今俺がここで食事をしているという事実も含めて。

 口数も少なく食事を終えて、お茶を飲んでいるとかなこさんから話を切り出してきた。
 図書館で彼女が探していた本を俺の前に差し出す。
「この本を読まれて、雄志様はどのような感想を抱きましたか?」
「そうですね・・・・・・。面白かったですよ。
 戦闘シーンの緊張感は真に迫るものがありましたし、
 姫の最後の台詞を読んだら泣・・・・・・なんとも言えない気分になりました」
 危ない危ない。『泣いてしまいました』って言うところだった。
「では、姫は本当はどうなることを望んでいたと思われますか?」
「姫が本当に望んでいたこと、ですか?」
「はい。『本当の望み』です。思ったままお答えください」
 まさかそんなことを聞かれるとは思っていなかった。
 『姫は本当はどうなりたかったのか?』
 困った。そんなこと本人じゃあるまいし、わかるはずもない。
「うーむ・・・・・・ありきたりですけど、『武士と幸せに行き続けたかった』じゃないかと」
「やはりそう思われますか・・・・・・」
 残念そうな顔で俯いてしまった。
 もしかして俺、まずい答えを返してしまったのか?
 彼女は顔を上げ、俺に訴えかけるように喋りだした。
「わたくしはこう思います。
 姫は幸せな未来ではなく、『武士を永遠に独占したかった』のではないかと。
 そのためには生き続けるのではなく、共に死を迎えようと思った。
 二人で刀を持って向き合い、心の臓を貫き合い、同時に死を迎える。
 これこそが姫の描いていた理想の死に様なのではないでしょうか?」
289ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/04(日) 15:08:35 ID:InR9IB3M
 なるほど。姫の最後の台詞から推測するとそう考えていたともとれる。
 第一、『私はあなたに殺されたかった』なんて正気とは思えない。
 姫が少しばかり心を病んでいたとしても不思議ではない。
 しかしリアルな想像だな。お互いに刀を向け合う姿が目に浮かぶよ。
 俺がその光景を想像していると、彼女の言葉で目を覚まされた。
「・・・・・・はっ。申し訳ございません。
 この本のことになるとつい熱くなってしまって・・・・・・。
 誠に失礼ですが、もう一つだけお答え頂いてもよろしいですか?」
「ええ。なんでもどうぞ」


「もし雄志さまの前世が武士だったとして、生まれ変わった姫と
 再会したら一緒になろうと思いますか?」


 ――――――これは、本の話ではない?
 本とは全く関係無しに『前世を信じるか』と聞いているのか?
 かなこさんは俺から目を逸らさない。
 まばたき一つしない。
 ここは、自分の本当の考えを伝えないとまずい――そんな気がする。

「もし、そうであったら・・・・・・そうであったとしても、
 前世で愛し合っていたという理由だけで一緒にはなれません。」
 これは正直な気持ちだ。
 だいたい、前世で引き裂かれたという理由だけで恋人同士になるなら
人間とカメだって恋人同士にならなければいけない。
「前世とか運命なんて・・・・・・嘘っぱちです。そんなものは信じていません。
 もし存在していたとしても、庭に敷き詰められている砂利の一粒のように
 気づかなければ素通りしてしまう程度のものです」

 俺の言葉を聞いたかなこさんは俯いていた。
 肩が震えている。
 手は固く握り締められている。
「なるほど・・・・・・そう思われるのですね」
 そう言うと顔を上げた。

 ・・・・・・・・・・・・!
 彼女の目が、睨みつけている。
 俺の目を、睨んでいる。
 その目には光を宿していない。
 純粋な殺意の瞳。
 鋭い眼差しが俺の目を通過して脳を通過し――
 心を、睨んでいる。
 そんな錯覚を覚えた。
290ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/04(日) 15:09:34 ID:InR9IB3M
 今度は完全に選択肢を誤った。
 かなこさんは怒っている。しかも半端なものではない。
 烈火のごとく、という表現はこういうときに使うのだろう。
 それが目線だけでわかるのだ。
 彼女はこれでも怒りを抑えている。
 もし怒りを爆発させたら――確実に殺される。
 側近に頼ることなく、彼女自身に首を絞められて。

 彼女は立ち上がり、俺の右に座った。
 すぐ目の前に殺意のこもった瞳がある。
 睨みつけたまま俺の首に手を伸ばし――
「っ!!」
「何を怯えていらっしゃるのですか?」
 え?
 かなこさんは俺の肩に手を乗せていた。
 手の感触が服を通して伝わってくる。
 もう睨みつけてはいない。雰囲気は穏やかそのものだ。
「わたくしは前世で無理矢理に引き裂かれた者同士は
 生まれ変わったとき、何もせずとも出会ってしまうものだと考えます。
 それは、『運命』もしくは『宿命』とも言えます。
 雄志さまの言葉を借りるならば、砂利の一粒ですね」
 そこで言葉を区切ると目を閉じ、唇を軽く結んだ。
 だんだん彼女の顔が近づいてくる。
 ――もしかしてキス?
 しかし彼女の唇は俺の顔の数センチ前で進路変更して右耳のあたりで停止した。
 体を密着し、言葉を続ける。
「ですがわたくしは砂利ではなく、巨大な岩石だと思うのです。
 目を逸らそうにも勝手に視界に入ってくるほどの大きな岩。
 離れようとしても大きな音を立てて転がりながら追ってくる丸い岩石。
 こう・・・・・・どどどどど!どどどどどどどどどど!どどどどどどどどどどど!ぐしゃり。と。
 目を逸らした相手をひき潰すまで追ってくるのです」
 話すたびに耳に息がかかる。
 くすぐったい。

「もし雄志さまが武士の生まれ変わりだとしたら、潰されてしまいますね・・・・・・ふふ」

 彼女の顔は見えない。
 いや、見たくなかった。
 きっと、さっきの恐ろしい瞳が俺の右にある。
 そう思うとそのまま動くことができなかった。
291ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/04(日) 15:12:47 ID:InR9IB3M
 その状態を変えてくれたのはかなこさんだった。
 俺の肩を掴んで体を離す。
「ふふふふふ。冗談でございますよ。
 運命が人を殺す、なんてことはございません」
 笑いながら語りかけてきた。
 緊張の糸が解ける。
「あ、ははははは。そうですよね。
 まさかそんなことはありませんよね。あはははは・・・・・・」
 運命と言う名の大岩に潰されて死にました、なんて両親が聞いたら
おそらく葬式もしてくれないに違いない。
 それに大岩に潰されるなんて御免だ。


 ちょうどいい時間になったので、お礼を言ってから帰ることにした。
「本当に今日はご無礼をいたしました」
「いいえ、こちらこそ美味しい料理をご馳走していただいてありがとうございました」
 かなこさんは名残惜しそうな顔で俺を見つめている。
 そんな顔で見つめられるとどうにかなりそうだ。
「また、お食事をご一緒していただけますか?」
「ええ。機会があればぜひ」
 だが、こう言って別れた相手との約束が果たされることはほとんど無い。
 いわゆるお約束というやつだ。
「それでは、また、近いうちにお会いしましょう。『必ず』。
 雄志さま。ごきげんよう」
「はい。また」
 そう言ってから料亭とかなこさんに背を向けて歩き出す。
 
 かなこさん、綺麗なひとだったなあ。
 でも俺みたいなフリーターとはこれ以上の接点はないだろう。
 俺には豪華とはほど遠い六畳一間のアパートで本を読んでいるのがお似合いだ。
 ・・・・・・本?
 そういえば今日は図書館に行って借りてきて・・・・・・
 あ!
「自転車と本、図書館に置きっぱなしだ!」
 しかもワイヤーロック外したままだし!まずい!
「待ってろ! 相棒!」
 
 自転車が盗難に遭っていないことを祈りながら、図書館へ向かって走り出した。
292ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/04(日) 15:14:14 ID:InR9IB3M
次回に続きます。

予告:ヒロインはあと二人登場します。
293ことのはぐるま訂正 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/04(日) 15:20:54 ID:InR9IB3M
>>288
>「うーむ・・・・・・ありきたりですけど、『武士と幸せに行き続けたかった』じゃないかと」
「うーむ・・・・・・ありきたりですけど、『武士と幸せに生き続けたかった』じゃないかと」

でした。ごめんなさい。
294名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 15:25:03 ID:QmcXFwy7
うぉぉぉぉぉGJ!!!!!
295名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 15:27:07 ID:UspJGeEY
>>292
GJです!
既にかなり病んでるヒロインktkr
296名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 15:27:34 ID:ZX7De/tP
GJ!

実に先が気になる展開ですな。
この先登場するヒロイン二人にも期待!
297名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 16:28:43 ID:i7sUNtiQ
GJ!!!!
オラ、久しぶりにワクワクしてきたぞ!!!
298名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 16:36:35 ID:ptr0E1xP
今やってる「料理」ってゲームの奥さんがヤンデレだな
別居中の夫を監禁して手料理を食べさせるんだが…
299名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 16:43:39 ID:8VVzy+A/
自らの手を調理して、旦那に食わすのでござるか。
300名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 16:52:37 ID:ptr0E1xP
いや、選択肢によって内容が変わる。
今は全部クリアしたら出てきたビフォアストーリーを読んでるが、
奥さんが徐々に狂っていく様子が結構クるな
301名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 17:45:56 ID:QmcXFwy7
>>300
詳細kwsk
コンシューマー?
302名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 17:56:29 ID:ptr0E1xP
フリゲ。vectorで検索したら出てくる
ちなみにすぐ終わった
303名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 18:21:49 ID:rNWlPayh
飯食いながらやったら吐きそうになったぜ。
304名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 18:31:05 ID:xprb1kCY
作者のページにいってみたら、結構そそりそうなものが展示してあった。
305名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 18:31:25 ID:rroPq7Mx
たしかにヤンデレだが・・・グロが強くて萌えなかったぜ
306名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 21:52:25 ID:dytkcEY/
キタキタキタキタキタキタキタキターーーー!!
作者GJ、超GJ。続きも期待しています!
307名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 23:23:35 ID:ptr0E1xP
縛り付けて手料理食わせるまでは良いとして、そこで優しくささやきながら抱きしめる(けど縄はほどかない)
ってのがいいな、俺は。
料理も口移しで与えるとなお良し
308赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/04(日) 23:48:26 ID:aE+nSUJS
書いてみたらこっち向けだったので投下します。
309赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/04(日) 23:49:20 ID:aE+nSUJS
 真冬の山の中。俺は榛原よづりと湖面に浮かんだ船の上に居た。
「カズくん……。寒いよう……」
「うるせぇ、湖の中はもっと寒いんだ。これぐらいガマンしろ」
 真冬の湖の上は寒い。冷たい風が吹くたびによづりは体をちぢ込ませ、暖をとるように俺に抱きしめる。そんなよづりを俺は片手で抱きかかえ、オールを使いなるべく湖の真ん中へ移動していた。
 片方だけでボートをこぐとまっすぐ行くわけはないのだが、ちょうどぴゅるりと吹く風が俺たちの乗ったボートを流し、真ん中へ運んでいる。オールはそれの方向調整に使っているだけだ。
 胸によづりのふにゅりとやわらかい感触が押し付けられていた。不健康そうな顔をしているのに、ここだけは健康的に膨らんでいて奇妙だ。
 吹く風を背中で受けながら、俺は目的の場所にたどり着いた。
「湖の中心についたぞ」
「うん……かずくん」
「なんだ」
「わたし……かずくんと一緒なら死ぬの……怖くないよ」
 よづりはかちかちとふるえつつも俺に笑顔を見せる。俺より年上のクセに、小動物のように寂しそうな笑顔。
「死後の世界に行っても……一緒だよ。かずくん」
「……そうだな」
 俺の返事を聞いたよづりは安心したように白い息を吐くと、また湖面を眺めるように俯く。
榛原よづりは死のうとしていた。誰も居ないような山の中。湖に体を沈めて、現世とのつながりを絶とうとしていた。
「じゃあ、そろそろ行くか?」
 俺はオールを漕ぐ手を止めて、よづりの体を両手で掴む。早くしないと湖の中心からズレてしまう。死ぬには万全を尽くさないとうまく死ねない。よづりの口癖だった。
「ちょっとまって……」
 よづりは俯いていた顔をあげると、俺を抱きしめていた手を強く握り背伸びをするように顔を伸ばした。
 瞬間。重なる唇。
 よづりの唇は冷たかった。
「えへへ……」
奪っちゃった、と言いたげに笑うよづり。彼女にとっては最後の現世でのキス。
「もういいか? よづり。そろそろ……」
「うん、もう死ねるよ。かずくん」
 二人で立ち上がった。ボートがバランス悪く揺れる。
 あたりは真っ暗で俺の持っている懐中電灯の明かりのみがあたりを照らしていた。
「じゃあな。よづり」
「うん。またね。かずくん」
 最後のお別れを言った後に、俺は懐中電灯を海の中に捨てた。
 そして、俺とよづりは、手をつなぎ、二人で冷たい湖の中へ飛び込んだ。
310真夜中のよづり ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/04(日) 23:49:56 ID:aE+nSUJS
俺が榛原よづりに出会うきっかけというか原因を考えれば、去年の四月まで遡る。
もともと、俺はそんな真面目な生徒じゃなく毎日を学校でのほほんと過ごしてる奴で、委員長みたいにいつも勉強しているような器用な真似はしない。
せいぜいテスト前に慌てて勉強して、平均点の若干下あたりの点数をとるぐらいである。マンガやらアニメやらでの主人公と一言ぐらいしか交わさないサブにもならないモブキャラみたいなものと考えてもらえば想像しやすいと思う。
名前だって森本和人でワープロで打てばほら一発で変換完了。変換ミスなし。ありふれすぎた名前だ。
そんな俺なのだが、いやそんな俺だからこそ、副委員長に選出されたのかもしれない。
 なんてことない俺だから、誰になっても特に問題ないような副委員長にみんな俺を選出したわけだ。俺にとってはめんどくさいことこの上ない。
 ただ、救いだったのは、委員長となった駒木愛華がとてつもなく優秀だったことだ。責任感が強く面倒見のいい委員長はほとんど俺に仕事を回すことなく全て一人でクラスの厄介ごとをすべて解決していた。
 俺の仕事はたまに授業の教材を取りにいったり、月一回の委員会に少し出席するだけ。
 四月に選出されてこの一月まで、俺はたいした仕事もせずただ副委員長と言う肩書きのまま高校二年生の学生生活を過ごしていた。
 結局副委員長のままたいした活躍もせずに終わるのかと思っていた。というかそれを望んでいた。
 しかし、あと一ヶ月でようやく解任というこの時期に、俺は一生ものの仕事を副委員長として任されることになる。

「明日、あたしのかわりに榛原さんの迎えに行ってください」
 委員長こと駒木愛華は放課後教室に俺を呼びだすといつもの口調で言った。
 おさげに黒髪でまんまるメガネというまさに委員長という容姿の女で、真面目な成績優秀者だ。ほとんどの委員長の仕事をこいつが引き受けてるため、副委員長居の俺としてはどうしても頭が上がらない存在だ。
焦ると関西弁を喋るらしいが俺はコイツを焦らせたことがないので、その関西弁はいまだ聞いたことが無い。
んで、そんな委員長が俺に用があるって言うんで呼び出された。放課後、できるかぎり人の居ないところでって。
あのさ、そんなシチュエーションだとやっぱり思うよ。告白するのかって。
だって、二人っきりの教室だよ?
んで、呼び出されているわけじゃん。期待しないわけない。俺はもし告白された場合を考えていた。
……委員長ってめっちゃ真面目じゃん。それこそ一昔のマンガみたいに委員長ってあだ名で呼ばれてるくらいだから。じゃあ付き合いはめちゃくちゃプラトニックになるのか? うわぁ、新鮮だ。新鮮すぎて逆にいい。萌える。
じゃあ付き合って初キスは彼女の部屋か? やろうとしてメガネに当たってちょっと二人ではにかんでみて、メガネをはずしてもう一度やろうとしたらメガネをとった顔がもっと可愛くて……。
 とかなんとか。いま思うととらぬ狸の皮算用。わかりやすく言うと馬鹿。
 行ってみればこのとおりである。
「はぁ?」
 で、告白かと思って返事を考えてた俺は情けない声を出して聞き返す。
「榛原さん。知らない?」
 はいばら? 誰だそれは。
「もぉ、副委員長なんだからクラスメイトぐらい全員覚えておきなさいよ」
 委員長は頬を膨らませるように説教じみて言う。俺はそれを聞きながら榛原という人物について思い出そうとしていた。
しかし、クラスメイトで榛原という人物が居た覚えは無い。
「不登校のコよ。去年から登校してなかったからちょうど一年留年になったわけなんだけど……。一応名前はうちのクラスになってるわよ」
そういうと、委員長は持っていた学級日誌を渡した。学級日誌の生徒欄の中には、たしかに「榛原よづり」という名前があった。
「本当だ。居るな」
よづり。男か女かわかりづらい名前だな。女っぽいけど……。
「で、その榛原さんが明日から登校するんだって。で、今年度初めての登校だから一応付き添いとして一緒に行って欲しいの」
「ふぅん、微妙な時期に登校するんだな。なんでだろ」
「さぁ、理由は知らないけど」
「でもさ、登校するんならわざわざ付き添いに行かなくてもいいんじゃないか? 勝手に来ればいいだろ」
 俺にとっては学校と言うものは面倒くさくても行かなきゃならない場所と脳内で設定している。だいいち家でずっと過ごすってのも結構暇でつらいものがあるからな。
 しかし、委員長はそんな俺とは違う考え方の持ち主だ。真面目で面倒見がいいのが如実に現れる性格と言動をする女である。
311真夜中のよづり ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/04(日) 23:50:54 ID:aE+nSUJS
「あなたは不登校生徒の気持ちがわかってないのね」
 お前はわかるのか? それだとお前も不登校だったってことになるが。
「違うわよ。でもね、いい? 森本君。誰だって初対面の人たちがいるところに新たに入っていくのは苦手なの。初めての人ばかりの空間って不安にならない?」
「俺は初めての人たちがいっぱい居る電車の中に入っていくのは不安に思わないぞ」
 あえて的外れな回答を返してみる。
「電車の中の人たちは一期一介だけど、学校はみんなで集団生活する場所でしょ? あなただって入学式は緊張したんじゃないの?」
簡単に返す委員長。まぁそりゃそうだ。
「まぁ、確かに入学式は、な」
「うん。でも入学式はまだみんながお互いのこと知らないから、まだいいの。ただ、今は違うわ。みんなほとんどのグループになっちゃってるから、このコにとってはもっと入りづらいのよ」
言わんとしていることはわかる。
今のクラスになってもうすぐ十ヶ月。クラス内でもおしゃれギャルグループ、ロリ姉グループ、文系グループ、他クラスグループと何組か友達グループができている。
 結構個性的な面々が集まってるクラスだから(筆頭は藤咲ねねこだな)、なじめず孤立してしまうこともあるだろう。
「で、このコがようやく登校してきたのに、友達も居なくて一人じゃかわいそうじゃない」
変な同情だ。一人の奴は一人が好きだから一人で居るという考え方はこいつには無いらしい。
「だから、あなたが付き添ってあげるの」
 で、なんで俺がそんな役回りになる!?
「俺がぁ?」
「そう。あなたがこのコ……榛原さんに付き添ってあげて、クラスの仲間にいれてあげるの」
「やだよっ。俺、そんなことしたことねぇし! それにこういうのは委員長の仕事だろ?」
俺だってそんなに友達が多いほうじゃない。だいいち、そんな器用なこと俺にはできそうもなかった。
 しかし、委員長はふんと鼻を鳴らすとジト目で俺を見る。
「この一年間厄介ごとは全部あたしに押し付けておいて、最後までなにも仕事せずに終わるつもり?」
「うっ……」
 責めるような口調。いや、じっさい軽く責めている。
たしかに、文化祭のときも全校会議のときも合唱大会のときも俺がやったことと言えば、資料のホッチキス留めとか楽譜のコピー(これはやってよかったっけ?)とか装飾の貼り付けとか、ガキの使いみたいな仕事ばかりしかしてなかった。
合唱曲を決定したのも委員長だし、全校会議の資料のワープロ打ちも委員長、先生への報告も大体が委員長がやっていた。俺はそれのフォローにもならなそうな助けだけ。
 それを言われると、俺も副委員長と言う肩書きを持ちながらまともな活動はできていないという罪悪感が湧いてくる。
 タバコ吸っていた生徒を無視したこともあるし、もし委員長なら相手が男塾にでてきそうな不良でも注意するんだろうな……。
 俺は肩をすくめた。どうやらやるしかなさそうだ。
「わかったよ。行けばいいんだろ? 行けば」
「わかればいいのよ」
 委員長は納得した俺を
 とりあえず仕事は、朝早めに起きていつもの支度を手早く済ませた後、その榛原とかいう奴の家に行って一緒に登校する。教室に入ってしまえば、あとはなんとか委員長がフォローしてくれるだろう。
それに、三学期も残り二ヶ月ちょっとしかない。そこまで責任がのしかかってくる仕事じゃないしな。
俺も副委員長としての爪あとを残しておかなきゃな。
 このときはまだ俺は楽に考えてた。

 榛原よづりに会うまでは。
312赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/04(日) 23:51:51 ID:aE+nSUJS
次回へ続きます。
なお、魔女の逆襲のスピンオフでもありますので両方読んでいただけるともっと楽しめるかもしれません。
313名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 00:08:24 ID:VgLGiMfZ
>>312
うはwww
委員長がヒロインかと思わせつつ別のヒロインを出してきますか。


しかし、それ以上に委員長のメガネモエス
314名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 00:08:24 ID:ZEaakHvT
このスレでもパパさんの作品が読めるなんて…。
またひとつ楽しみが増えたってもんだ。
315名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 00:12:59 ID:VgLGiMfZ
続きレス申し訳ない。

>>312
>委員長は納得した俺を

の続きは無いでござるかパパ殿。ちと気になるのでござるが・・・・・・
316名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 01:58:00 ID:f8ft57f0
あれ?IDが
317名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 02:14:42 ID:sCO44oSb
IDが一巡した……?
318名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 02:31:20 ID:aTbHND1I
62の8乗分の1? 凄いな。
319名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 03:00:04 ID:sCO44oSb
他のスレ見てきたら、1/25と今日のIDが同じって人が沢山……。

これは、エロパロ板全体が病む前兆かもしらんね。
320名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 03:09:22 ID:hoEnOjyN
このスレ読んでたらひさしぶりにこの曲を思い出した

ttp://www.youtube.com/watch?v=895uVOJf7Xc&mode=related&search=
321名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 11:35:55 ID:XeFIWhqF
>>320
見ても何言ってるかわからん・・・・・・
歌の内容をかいつまんで教えて欲しいのだが。
322名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 14:38:26 ID:206hWlB1
俺はこれを思い出した

ttp://www2j.biglobe.ne.jp/~k_asuka/sakuhin/warau_h.html

結構ヤンデレって歴史があるのかもね
323名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 16:29:49 ID:hoEnOjyN
>>320
SHOW-YAの「その後で殺したい」
情事の際の女の心情を歌ったものだが歌詞が実によい
「その後で殺したい 愛を独り占めしたいだけ 迷惑な優しさであなたの舌を噛んであげる」
「殺したい 殺したい 殺したい 殺したい もう誰にも渡さないわ 心臓が止まれば わたしだけのあなたよ」
とか

>>322
高橋留美子の短編はけっこうヤンデレ系のホラーが多いね
少女が美しいだけに迫力がある
324名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 16:30:52 ID:hoEnOjyN
誤:>>320
正:>>321

だった。すまんかった。
325名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 16:37:13 ID:XeFIWhqF
>>323
ほ、ほほう・・・・・・これはなかなか・・・・・・
絶頂に達した瞬間に心臓を一突きされたら完璧だな。

まとめてくれてサンクス。
326名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 16:50:43 ID:sCO44oSb
人魚シリーズには、そういう見方も有ったのか……。
327ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/05(月) 18:05:02 ID:VgLGiMfZ
SSを投下します。
328ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/05(月) 18:05:42 ID:VgLGiMfZ
第二話〜天野香織との日常〜

 朝食を済ませてバイト先へ向かうため玄関を開けると、冬らしい冷え込んだ空気が
襲い掛かってきた。
 アパートの鍵を閉めて自転車に乗って出発。
 風はほとんど吹いていないが、今日ぐらい冷えていれば手袋をしていても指先が冷える。
「冬はいつもこれぐらい冷えてればいいのになぁ・・・・・・」
 冬は好きだ。他の季節と違い寒さが身を引き締まらせてくれるし、
なにより生きているという実感がある。
 最近の自堕落な生活ではこういった刺激がないとすぐに退屈になってしまう。
 自堕落な生活の一番の敵は退屈だ。
 ・・・・・・いや、人生における最大の敵が退屈なのだろう。
 退屈は人間を磨耗させる。
 退屈だから夫婦喧嘩をして、退屈だから犯罪を起こす。
 つまるところ退屈から逃れるためには、寒さなどの刺激――『生』を感じさせるのが
一番の解決策なのかもしれない。

 と、誰も賛成しそうにないことを考えている間にバイト先に到着した。
 7時30分。ちょうどいい時間だ。
「いらっしゃいませー! おはようございます! ・・・・・・って雄志君。キミかぁ」
 コンビニ店員の見本のように元気な声で挨拶してくる店員。
 俺の中学時代からの唯一の友達。
 さらに退職してから働くことになったバイト先でも一緒になるという腐れ縁の持ち主、
天野香織がレジに立っていた。
 肩の辺りまで伸ばした少し茶色の入った髪と、黒くて大きな瞳が特徴的だ。
 こいつのおかげでこの店が繁盛しているから、店長にとっては貴重な戦力である。
 店内に置いてあるパンと缶コーヒーをレジに出し、いつものように話しかける。
「客に向かってその口の聞き方はなんだ。教育がなっとらんな。店長を呼べ」
「なんでボクがキミに敬語なんて使わなきゃいけないのさ。
 今日は店長は昼からだよ。昨日本社から呼び出し受けて行ってたから」
 そうだったのか。昨日俺は休みだったから知らなかった。
 ・・・・・・また『この店の売り上げがいいから』とかいう理由で変なものを
押し付けられたりしないだろうな。
 コンビニのマスコット人形なんか大量に入荷されてもこっちが困る。
 あの時はレジ前にずっと置かれたままのマスコット人形が哀愁を漂わせて
いたから逆に客足が遠のいた。
「それより早く着替えてレジに入ってくれるかな?
 ボク次の時間も連続だから休憩したいんだ」
「ん。わかった。ちゃっちゃと着替えてくるよ」
 香織の差し出したパンと缶コーヒーを持って事務所の中に入ることにした。
329ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/05(月) 18:06:28 ID:VgLGiMfZ
 12時を少し過ぎた時間にバイトを終え、事務所で今朝買ったパンを
昼食代わりに食べていると香織が話しかけてきた。
「ね、ね。今日、これから暇?」
「暇ではない。が、忙しくもない。」
 暇だ、と言わないのはせめてもの意地だ。
 誰に対して意地を張っているわけではない。
 ただ、自分が暇だと認めたくないのだ。
 もし認めてしまったら本当に暇人になりそうだから。
「その返事が返ってくるってことは予定が無いってことだね。
 じゃあさ、またボクの家に来てくれないかな?」
「・・・・・・もしかして、またか?」
「うん。そう。
 やっぱりキミ意外にそっち方面に詳しい友人がいないからさ。
 ね。お願い!」
 まあ、今日は確かに予定も無いしな・・・・・・香織と過ごすのもいいだろう。
「よし、わかった。
 ただし、今回も容赦はしないからな」
「あはは。お手柔らかに。
 じゃあ早速行こ! 早く早く!」
 そう言って俺の手を引っ張って事務所から出ようとする。
 こいつは我慢というものを知らないのか?
 まだ人が食事している最中だというのに。
「ええい、少し落ち着け。
 このパンとコーヒーを飲み終わったらすぐに行くから」
「むー・・・・・・。早くしてよね」
 そう言って俺の手を離す。まったく、忙しない奴だ。
 だいたい食事というものは不味いもので無い限り、味わって食うのが礼儀・・・・・・

「ただいまー! 誰かいるー!?」
 ばん!と事務所の扉を開け放ち女店長が入ってきた。
 両手で紙に包まれている巨大な丸いものを抱えている。
「おかえりなさい。店長。
 ・・・・・・そのでかい物体はなんですか?」
「もしかして、ボクへのお土産ですか?」
「そんなわけないでしょうが! これは本社から試験的に持ってきた・・・・・・」
 手に持っていたものを床に置いてその包みを剥がしたとき、出てきたものは――

「我がコンビニのマスコット! 超巨大バージョンのノモップくんです!
 今日からレジの前に置いとくから二人ともよろしくね!」
 またノモップかよ・・・・・・。俺と香織は一緒に頭を抱えた。
330ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/05(月) 18:07:10 ID:VgLGiMfZ
「今日は恋愛もののポエムか・・・・・・」
 香織が俺を家に誘うときの用事は、たいていがポエムを読ませるためだ。
「うん。恋愛ものを初めて書いてみたんだけど、どうも自信が無くって」
「前から言ってるけどな。俺に見せるより先にサイトに投稿した方がいいぞ。
 あっちの方がいろんな人の意見をもらえるし。
 それに俺の感想を聞いてから書き直したりしたら純粋なお前のものじゃなくなるんだぞ?」
 香織は何故かポエムを書くことにはまっている。
 それでインターネットのポエム投稿サイトに投稿しようとしているのだが、不安だからという
理由で必ず俺を最初の読者に選ぶ。
 信頼されているのは嬉しいが、俺の意見で内容が変わったりしたら意味が無い。
「それは分かってるけどさ・・・・・・。
 う〜〜・・・・・・とにかく! ボクはキミに最初に読んでほしいんだよ!
 ・・・・・・あ、なんとなくだからね。あと昔からの友達だから。
 ・・・・・・それだけだよ?」
「はいはい。分かってるって」
 このやりとりも毎回のことだ。
 違うこといえばポエムのテーマが違うことくらい。
 まあいい。天野香織作のポエムを読むことにしよう。
331ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/05(月) 18:07:52 ID:VgLGiMfZ
『出会いのコイン』

 わたしはあなたを見ていました
 
 ただ見ていただけではありません 

 一人の男性としてあなたを見ていました

 しかし声をかけることなどできません

 わたしは臆病な人間です

 怖いのです あなたに拒絶されることが

 声をかけられないわたしにチャンスをくれたのは一枚のコイン

 あなたが歩いているときに落としたもの

 それは小さなものでした わたしの小さな手にもおさまるほどの

 ですがこれは大きなものです

 あなたに話しかける大きなきっかけです

 そのコインを手にしたことで ようやくあなたに一歩近づけた
332ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/05(月) 18:08:31 ID:VgLGiMfZ
「うん・・・・・・良いと思うぞ。
 女の子がどんな性格かよく分かるし落し物を拾ったからっていうのも
 話しかけるきっかけとしてはよくあるし」
「そ、そう?よかったぁ・・・・・・」
 感想を聞いて、香織は不安が無くなったように肩の力を抜いた。
 俺、適当なことしか言ってないんだけどな。
 これがいいポエムなのかなんて分からん。
 ポエムなんて人によって感じ方が違うものだろうしな。
「あの、それでさ。何か共感できるものがなかった?
 どこかにキミとの共通点とかが無かったかな?」
「そんなのあるわけないだろ。女の子に告白されたことなんか無いし」
 俺の言葉を聞くと、香織は悲しそうな表情を浮かべた。


「タイトルを読んでも、何も感じないのかなぁ・・・・・・?」


 なんでそんな悲しい声で喋るんだよ・・・・・・。
 『出会いのコイン』?
 出会い?それともコイン?まさか両方か?
 俺と何か関係があるのか?
 でも香織との出会いは一緒のクラスだったのがきっかけだし、当然告白されてもいない。
 コインについてはもっとわからない。
 もしかして比喩か?まるでなぞなぞだな・・・・・・。

 俺が数分経っても反応を返してこないので、香織の方から話しかけてきた。
「ふうぅ。・・・・・・やっぱりニブチンのキミにわかるはずもないよね。
 さすがにここまで鈍いとは思わなかったけど、さ」
 いつもの調子に戻っている。
 ・・・・・・よかった。やっぱりこいつはこうじゃないとやりにくい。
「失礼な。俺ほど感受性の強い人間はいないぞ。
 俺にポエムを書かせたら日本中の人間が号泣するに決まってる」
「また根拠のない自信を持って・・・・・・その自信はどこから来るのさ?」
「自信をつけたきゃ根拠が無くても胸を張れ!」
「それで自信がつくのはキミだけだよ。
 ・・・・・・ちょっとうらやましいけどね」
333ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/05(月) 18:09:44 ID:VgLGiMfZ
 その後、香織とゲームしたり談笑しているうちに外が暗くなりだした。
「じゃあ、今日は帰るとするよ」
「え、もう?もっとゆっくりしていきなよ」
「俺の自転車にはライトが付いてないんだよ。
 今日はライトを持ってきてないからこれ以上暗くなると危ないんだ」
 これは本当。今日は香織の家に寄るつもりはなかったからライトを
持ってきていないのだ。
「そっか。じゃあ仕方ないね。あ、送っていこうか?」
「どうやってだよ。歩いて、とか言うんじゃないぞ」
「違うよ。キミがボクのバイクのキャリアを掴んで自転車に乗れば
 あっという間に着くじゃないか。」

 ――――それは、ひょっとして冗談で言っているのか?

 俺が立ったまま唖然としていると、香織はいたずらっこの笑顔を浮かべた。
「あはははははははは! 冗談冗談。
 もうこの年になってからそんな無謀なことはしないよ。
 警察に見つかって点数を引かれたくはないからね」
 こいつの冗談と本気の境界線は長い付き合いでもわからない。
 それに高校時代に同じことを実行して俺に怪我を負わせたのはどいつだ。
 
 外で自転車に乗って帰ろうとすると香織が見送りに来てくれた。
「キミもバイクの免許取らない?
 今なら格安でボクが教官の教習所で教えてあげるよ。
 試験場で一発合格間違いなし!」
「バイクのローンで破産したくはないからパスだ」
「そっか・・・・・・貧乏って悲しいね」
「毎月ギリギリのお前に言われたくはないな。
 ・・・・・・じゃ、また明日バイトでな」
「あ・・・・・・・・・・・・うん。
 バイバイ。雄志君。また会おうね・・・・・・」

 名残惜しそうな声で見送る香織を後にして自転車をこいで家路に着く。
 朝とは違い、冷たい風が吹き付けてきた。
334ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/05(月) 18:10:56 ID:VgLGiMfZ
次回へ続く。

〜遠山雄志のひとり語り〜がプロローグ
〜菊川かなことの出会い〜が第一話
そしてこの話が第二話だと思ってください。
一話から三話まではどの順番で読んでも意味は通じます。

次回から話数をつけて投稿するようにします。
結構長くなる予定ですので。
335名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 18:25:52 ID:206hWlB1
GJ!
>結構長くなる予定ですので。
楽しみが多くなって嬉しいです
336名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 18:26:48 ID:g5fi5xTl
これだけ職人が多いと読む前に圧倒されてしまうな
かくいう俺もこのスレのSSをほとんど読んでない
前スレどころか修羅場スレからつながっていたりと何がなにやら
337名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 18:49:32 ID:mDe6Ynjo
>>336
つ[保管庫]
どっちのスレも良作揃いだから楽しいぞ
338名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 19:22:01 ID:yEEhPkZN
ボクっ娘萌え。
ちなみにピアキャロ3のボクっ娘も姓が天野。
339 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/05(月) 19:33:12 ID:VgLGiMfZ
>>338
うあほんとだ! 天野って娘がいる!
しかも『ボク』まで・・・・・・

『あなたと握手を』のときも
大河内一楼って人がいるって最終回のあとでわかったし。
あーーーー・・・・・・なにやってんだよ俺・・・・・・orz

みんなごめん!
もう名前変更できないからこのまま行かせてくれ。
いえ、行かせてください。お願いします。
340名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 19:39:43 ID:mDe6Ynjo
>>339
もちろん歓迎です。
そんな偶然よくあることさ。



もちろん俺がよく家に帰る時に髪の長い女性を見かけるのも偶然だ。
あれ、今日はなんだか長い棒もって…ああ金属バットk
341338:2007/02/05(月) 19:54:14 ID:yEEhPkZN
>>339
偶然だったのかorz
ちゃんと黒化させてくれるなら問題なし。
342 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/05(月) 21:42:03 ID:VgLGiMfZ
>>340 >>341
ありがとう。ふたりとも優しいな。
343名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 22:05:34 ID:hoEnOjyN
ふたりとも優しいね。
もう、このぬくもりだけは
失・・・い・・・た・・・く・・・ない。

Aルートへ
344名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 00:36:07 ID:c4sMuGyi
誰も覚えて無いかもしれないが勢いだけの短編落として行くぜ…

ヴァレンタインのB面だ…
345ヴァレンタインB 1/3:2007/02/06(火) 00:37:08 ID:c4sMuGyi
「お姉ちゃん。それは絶対危ないから止めた方がいいと思うよ」
「…いいのよ真弓…これであの人に私の思いが伝わるなら肩から切り落としたっていいわ」
「そりゃすごくいい考えだと思う。私もその案には大賛成だけど」
「あら珍しく気が合うのね」
「私はやらないけどね。でも世の中アプローチの方法は1つじゃないし。ストーキングとか
 あのメールはちょっと周りくどくてどうかと思うけど今回は私もいいと思う」
「なら手伝ってよ」

 家に帰って来るとお姉ちゃんが包丁を持って私を待っていた。6つ違いのこの姉は
生活能力がゼロに近い。機械系に異常に強くてハッキングや盗聴から追跡まであらゆることが
出来ること以外は本当に何も出来ない。現役高校生の妹としては莫大な遺産を残してくれた
大叔父だかに感謝するのみである。

「ねえ真弓…私はあんたの時は手伝ったじゃない」
「いや手伝いたい気持ちはものすごくあるんだけど…せめて指にしない?」

この人は手首を切り落としたら止血をしなければならないことが分かっているんだろうか。
それとも止血やその他の後処理は私や祐人がやるからいいと思っているのだろうか。
346ヴァレンタインB 2/3:2007/02/06(火) 00:39:43 ID:c4sMuGyi
「だいたいさ、片手無くなったら誰がチョコ作るの?」
「え、多分自分で出来ると思うんだけど…」
「あのね、衛生面は全く無視なの!?傷口から化膿して腐って死ぬよ?もう…本当に
 祐人が止めてくれて良かった。ありがとう祐人」

 私は3年前から一緒に居てくれる恋人を振り返ってお礼を言った。たまたま今日彼を自由に
しておいて良かった。もし部屋に繋いで行ったりしていたら今頃台所は地獄絵図だったろう。

「真弓がそれを望まないとわかっていたから」

祐人はそう言うと淹れてきた紅茶をおいて私に軽くキスをした。そんなことをされると
もっと欲しくなる…けれど私は理性を総動員してお姉ちゃんに向き直った。この人に
死なれると未成年の私としては非常に危ない。

「……その祐人くんが今家に居るのは誰のおかげかなぁ真弓ちゃん」
「う…でもとにかく手首は危ないと思う!!」
「じゃあ調理は真弓に任せるから…」

 ……極めて真剣な眼差しな所を見るとこれで最大限の譲歩のつもりだろうか。普段は
奥手なお姉ちゃんがこんなに積極的になっているのだから協力はしてあげたい。
347ヴァレンタインB 3/3:2007/02/06(火) 00:40:50 ID:c4sMuGyi
 困った私は祐人の方を振り返った。呑気に紅茶を飲んでいた彼は私の視線に気づくと
困ったように微笑んだ。
 ……うん、祐人の笑顔を見るとなんか安心する。どちらにしてもお姉ちゃんがこれ以上
譲歩することは無さそうだし、なんとかするしか無い。

「祐人、止血できる?」
「切り傷ならともかく切断面はやったことないな。でもやるんだろう?」
「…うん、そうだね。私も切断はやったことない…でもやらなきゃいけないみたいだね」
「真弓なら大丈夫だよ。なんとかなるって」

 そっと頭を撫でてくれた。祐人は本当に私のして欲しいことを的確にわかってくれる。
そんなのは当たり前のことだけどそれが嬉しい。

「話がまとまったみたいね」

 私は腹を括ってお姉ちゃんから包丁を受け取った。







348ヴァレンタインB その後:2007/02/06(火) 00:41:43 ID:c4sMuGyi
 高熱で動けないお姉ちゃんの代わりにチョコを渡してきた3日後。
 家に帰ると空気が重くこごっていた。

「…お……お姉ちゃん?」
「あらお帰りなさい真弓」

 お姉ちゃんは笑っていた。こんなに笑顔なのは見たことが無い。けれどその笑顔は
黒い感情のみで出来ていた。重い。冷や汗が出て来た。今日は祐人は部屋だ。私は精一杯
力を振り絞って声を出した。

「……どうか、したの?」
「あの人、食べてくれなかったみたいなの。私が身を削ったのに……
 どうして食べてくれなかったのかしら。手首だけじゃ伝わらなかったのかしら。
 愛してるのに…こんなに愛してるのに。なんで食べてくれないの…」
「……っ!」

 お姉ちゃんがこちらを向いた。その瞳には何も写っていない。黒い暗いだけの瞳が
真っ直ぐ私を押し潰してくる。私は立っていられなくなってへたり込んだ。

「ねえ真弓…なぜかしら…私はこんなに彼を見守っているのに。愛してるって毎日
 唱えているのになんで彼は私に気づかないの?なぜ愛してくれないの?伝え方が
 足りないのかな…私はこんなに愛してるのに。ずっとあの人を見ていたのに。
 愛してる愛してる愛してる。なのに…どうして?ねえ真弓、私わからなくなっちゃったの…
 いったいどうしたらいいの?私はただあの人に愛されたいだけなのに…愛してるわ。
 ずっとずっと見ていてあげるのに…」

 お姉ちゃんはいつまでもしゃべり続けた。

349ヴァレンタインB:2007/02/06(火) 00:43:35 ID:c4sMuGyi
3レスで終わると思ってたら4レスだったためタイトルをごまかしたのは秘密だぜ。

あ、保管庫の中の方タイトルありがとうございましたm(_ _)m
350名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 00:54:46 ID:c4sMuGyi
連投スマソorz
351名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 00:55:41 ID:c4sMuGyi
連投スマソorz

ヴァレンタインって5日ぐらい前に無題で投下したストーカー女のSSです。
352名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 01:07:44 ID:XwaMjmpP
落ち着け。そして、GJ!!


妹も色々とアレな姉妹ですね。
祐人はいつも首輪かなんかで繋がれてるんだろうなぁ……(;´Д`)ハァハァ
353名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 07:54:36 ID:CuQdHl16
グッジョブ。

妹が祐人をどうやって仕留めたかも読んでみたくある今日この頃。
354名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 10:39:16 ID:5snrzlS5
GJ!
>>353同じく
解ってて束縛されてそうな感じのする祐人は腹黒っぽい
355名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 17:15:08 ID:ACX5mYHI
前スレ遂に落ちてしまったか……

なにはともあれ、GJ!!
356名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 17:26:43 ID:ACX5mYHI
今読み返してみて疑問に思った点があるのだが、祐人は妹の恋人(?)であって、姉の想い人とは違うのですか?
357名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 20:14:55 ID:7WQNyNB1
正直こういうのもヤンデレだとおもうんよ。
ttp://www.h6.dion.ne.jp/~em-em/page244.html
358名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 20:27:03 ID:Nqc2DkM9
神話世界は極端なのしかいないからな
359名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 20:31:13 ID:UWU+IsLa
これはいいな。

サルマキス(;´Д`)ハァハァ
360名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 21:08:38 ID:c4sMuGyi
>>356
はい違います…祐人は妹(真弓)の物で姉(亜弓)の想い人とは関係無いです。

わかりにくくてすみませんorz
祐人の話は今書いてみてます…
361名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 22:14:46 ID:5snrzlS5
>>360 是非!!
362ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/06(火) 22:24:43 ID:UWU+IsLa
>>360
>>361と同じく、是非読ませていただきたい!!

では、SSを投下します。
363ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/06(火) 22:26:28 ID:UWU+IsLa
第三話〜現大園華との再会〜

『おにいさん。どうして会社をやめちゃったんですか?』
 この声は誰だ?
 なんだかやけにエコーがかかっているな。
 『おにいさん』?俺に妹はいないぞ。
 たしかに欲しかったが母親に頼んだらスルーされたからな。
『高校卒業してすぐ正社員になれたっていうのに
 やめるなんて私は悲しいです』
 ・・・・・・いろいろあったんだよ。
 逃げた。と言われたらそれまでだが。
 しかし誰だか知らない女にそんなことを言われる筋合いは無い。
『おにいさんみたいなアウトローが日本のニート・フリーターになって
 ひいては少子化を招くんですよ』
 知ったことか。俺一人がフリーターになったところで日本人に占める
フリーター人口の割合はは0.1%も上昇しない。
 少子化結構。子供の数が少なくなればそれに適応するように社会が
変わるだけだ。なんとかなる。・・・・・・多分。
『私はおにいさんに社会復帰してもらいたいんです。
 このままじゃ正月に親戚が集まったとき顔向けできませんよ?』
 余計なお世話だ。正月じゃなくても親には会ってるんだから十分だ。
 だいたい社会復帰ってなんだ。まるで俺が犯罪者みたいじゃないか。
 ・・・・・・・・・・・・いい加減つっこむのも疲れてきたな。

『今度は私が助ける番です。
 おにいさん。必ず助けてあげますからね――――――』

 『今度は私が助ける番』?
 そういえばこの台詞、どこかで――――――――
364ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/06(火) 22:27:46 ID:UWU+IsLa

『チャーラーラーラーラー チャラララ-ラ-ラ-ラ-ラ- チャンチャンチャン・・・・・・』

 ・・・・・・・・・・・・うるさい。
 携帯電話の着信音で起こされた。
 何か夢を見ていた気がするが・・・・・・思い出せない。
 ただ、腹のたつ夢だったことは覚えている。
 俺のせいじゃないのに理不尽に問い詰められるような・・・・・・

『チャララー! チャララーラーラー! ラーラーラーラー・・・・・・』
 まだ着信音は鳴り続けていた。
 寝起きには耳に障る。とりあえず電話に出よう。
 通話ボタンを押して不機嫌な声で対応する。
「・・・・・・もしもし」
「おはよう雄志。起きてた?」
 誰かと思えば母親だった。
 腹のたつ夢を見てから携帯電話の着信音で起こされて、電話に出てみれば母親。
 朝くらいもっとの色気のある起き方をしてみたいもんだ。
「うん。今起きたんだけど・・・・・・こんな朝早くから何?」
「もう朝八時でしょ。寝坊ばっかりしてると再就職したとき苦労するわよ」
 何を言う。休日の朝八時に起きられたら上等だ。
 父親が早起きだから母親の感覚までおかしくなるんだ。
「・・・・・・用件は何? もしかしてダイエットに成功したとか?」
「あのさ。華ちゃん、覚えてる?」
 スルーされた。都合の悪いことがあれば毎回これだ。
 華ちゃん、ね・・・・・・もしかして従兄妹の現大園(げんおおぞの)華か?
「覚えてるけど、華がどうかした?
 もしかして俺の家にしばらく泊めろ、とかじゃないよね」
「あら? もう華ちゃんから連絡があったの?」
「は? いや、冗談で言ったんだけど」
 ・・・・・・雲行きが怪しくなってきた。
365ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/06(火) 22:28:53 ID:UWU+IsLa

「実は華ちゃんね、四月から大学二年生になるのよ。
 それで来年から勉強に専念したいからってことで」
「断る」
 この家、いや部屋に二人も住むことなど不可能だ。
 だいたい従兄妹同士とはいえ年頃の娘を男に預けるなんて
叔父さんたちは何を考えているんだ。
「最後まで聞きなさい。
 叔父さんたちは華ちゃんの一人暮らしが心配だから反対だったの。
 でも大学の近くに雄志が住んでるから、同じアパートに住ませれば
 まだ安心できるってことで賛成してくれたのよ」
「ということは同じアパートに越してくるだけ?」
「そうよ。もしかして期待した?」
「最初から何にも期待してないよ」
 もし同棲したとしてもあの口うるさい華をどうにかしようとは思わない。
 確かに可愛い顔をしているが、中学時代からの同級生に比べれば劣る。
「ふーん。華ちゃんに再会してびっくりしても知らないわよ。
 大学生になって見違えるほど綺麗になったんだから。惚れても知らないわよ」
「性格の不一致は男女関係において大きな亀裂の原因になると思うのですが」
 いかに綺麗であろうとも口うるさい相手、ましてや従兄妹に手を出すほど
溜まってはいない。
「そういうことにしておいてあげるわ。
 今日明日中には来るはずだから仲良くするのよ」
「はいはい」
「もし華ちゃんに変なことしたら・・・・・・今度こそは許さないわよ」
 母親は脅し文句を最後に電話を切った。
366ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/06(火) 22:30:08 ID:UWU+IsLa

 今俺はホームセンターへ買い物に来ている。
 昨日、バイトの帰り道で自転車の後輪がパンクしたが、家にもパッチを
置いていなかったので修理できなかった。
 同じ轍を踏まないために、ということでパッチと持ち運び用の
パンク修理キットを買いに来たのだ。
 俺の住んでいるアパートからホームセンターまでは歩いて一時間。
 往復時間に買い物の時間を加えると二時間少々。
 それだけ時間を空けていればアパートに華が訪ねてきていてもおかしくない。
 『なんで待っていてくれなかったのか』と責められなければいいのだが。
 ・・・・・・いや、そもそも待っている必要など無いのだ。
 華も大学生だ。一人で引越しの段取りくらいできるだろう。
 それに人に対して口うるさいだけあって自分にも厳しい。
 俺の心配など無用、というものだ。

 しかし、早く帰ってあいつの顔を拝んでみたいのも事実だ。
 母親が言うには見違えるほど綺麗になったという。
 おそらく叔母さんに似たのだろう。叔母さんはうちの母親と一つ年が離れている
だけとは思えないほど綺麗だからな。
 そうは思っても華を女として見ようと思わないのは・・・・・・やはり従兄妹だからだろう。
 両親の住んでいる家と叔父・叔母の住む家はそれほど離れていないので
両家の子供である俺と華は小さい頃から一緒にいた。
 華が生まれたときに俺は五歳だったから、あいつからすると兄のような存在だと思う。
 俺から遊びの誘いに行くこともあったし、華から来ることもあった。
 そしてその関係は俺が高校を卒業するまで続いた。
 しかしそれから四年後に俺が会社を辞めて実家に帰ったとき以来、華には会っていない。
 あのときの失望した表情はちょっとだけトラウマだ。

「なんだか気まずいよなぁ・・・・・・」
 パッチとパンク修理キットを購入して、家路に着くことにした。
3671:2007/02/06(火) 22:30:49 ID:nNWoFujZ
ムダに長い奴だけど、呼んでいただければ光栄です。



「ああ、またあってる」
 そう佐藤育は微笑んだ。その目線は、同年代と思われる女性と話している彼女の弟へと向けられている。
 朝、私の手料理を食べた弟は、いつものそっけない顔を少し微笑ませて出かけていった。
 その姿が妙にしこり、家事を放棄して来て見ればコレだった。
 弟と話している女性は、確か弟の会社の同僚だったはずだ。いつか書類関係を片付けるために家に来ていたのを覚えている。
 人当たりのよさそうな娘で、なかなかよい子のようだった。頻繁に弟と会うと言うことを抜かせば。

 育と弟の伸は、姉が大学に入る頃父親を無くし、その2年後、伸が高校を卒業すると同時に、母親も他界した。
 姉は大学を中退し、弟も高校を卒業後、すぐに就職した。
 二人は親の持ち家であったマンションに二人で生活し始めた。
 姉は家事が可能であったし、弟は健達で二人は仲睦まじい姉弟として、近所の評判もまぁまぁだった。
 姉は弟の事がそれなりに好きで、小さい頃から面倒を見ていた。勉強もよく見たことがあり、そのおかげで成績も上々で、それなりの大学に入る事も可能だった。就職ではなく進学した方

がいいと先生にいわれたらしいが、弟はすんなり断ったそうだ。
「僕には姉しかいませんから。姉が居れば他にほしい物もありませんし」
 可愛いことを言う。そう思って育はほほを染めた。

 伸は、姉の育はキライではなかった。いや、グラフにすれば好きの値域に入るだろう。
 父親が死んで、母親が少々無理をし、高校卒業を目前として他界。父親が死んだとき、人は簡単に死ぬし、いつかは死ぬのだからとわかり、母親が死んだことにもそれほど驚きや悲しみは

無かった。
 大学進学も視野に捕らえた人生設計をと教師にいわれていたが、彼にははじめから進学などと言う言葉は無かった。
「ほら、内は姉しかいないし、姉を圧迫するのもあれですから。それに、進学よりも、やりたいことありますしね」
 そう、笑いながら答えた。

368ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/06(火) 22:31:04 ID:UWU+IsLa

 アパートへ向かう帰り道。
 歩道の脇で自転車のタイヤとにらめっこしている女性が居た。
 パンクしたのだろうか?
 困った顔をしてタイヤをつまんだり引っ張ったりしている。
 パンク修理の道具は持っていないようで、時々首をもたげてため息をついている。
 まるで昨晩の俺を見ているようだ。
 幸いにも俺はパンク修理道具一式を持っている。
 これは助けるべきだろう。同じ自転車乗りとして。・・・・・・そして男として。

「あの、もしかしてパンクですか?」
 俺の声を聞いて女性は小さく肩を揺らした。
 振り向いても顔を上げないまま、目を合わさないように俯いている。
「え?・・・ええ。でも、気になさらなくても平気ですよ。自分でなんとかしますから」
「もし良ければ今から直しますよ。丁度道具もありますし」
 俺が買い物袋の中身からパンク修理キットを取り出すと女性は口を閉じた。
 警戒しているのか?
 まあ、今時困っている人に関わろうとする人もいないからな。
 警戒するのも無理は無い。
 押し黙った彼女を前にして居心地の悪さを感じてきたところで救いの言葉をかけられた。 
「・・・・・・では、すみませんけどお願いできますか?」
 
 パンクの修理は道具があればそれほど難しいものじゃない。
 チューブを取り出して、穴の空いた部分にパッチを強くこすりつけて・・・・・・
 タイヤの内側にチューブを入れてからビードをリムに戻して空気を入れたら、完成だ。
「はい。できましたよ」
「え? もうできたんですか? ・・・・・・あ、ありがとうございます」
 女性が少しだけ笑顔を浮かべて頭を下げてきた。
 よかった。どうやら警戒は解けたようだ。
3692:2007/02/06(火) 22:31:39 ID:nNWoFujZ
ちょっとタイミング悪いみたいですけど、そのまま投下させて頂きます。


 事件が起きたのはその一年後だった。

 弟は自動車整備工場でエンジンをきっちり組む程度になり、稼ぎも安定してきた。
「姉さんはボクが養うから、姉さんは働かなくていいよ」
 まるで夫婦宣言のようなその言葉に、育は喜んだ。だがあまり弟に甘えるのはよくないと、彼女はパートの時間をすくなする程度に抑えた。
 育は開いた時間を弟の部屋で過ごすことが多くなった。部屋に溜まっている埃を掃除し、エンジンチューニング科学をいう専門書を本棚に片付けた後は、弟の汗の臭いが染み付いたベット

にもぐりこみ、体を撫で回し、絶頂を迎えた。体が浮くなどと言う生易しい感覚ではなく、その場で存在が溶けだし、自身が無くなってしまうような強烈な感覚。
 優しい弟、カッコイイ弟。私の育てた、可愛い弟。
 出来ることなら、その弟の腕で力いっぱい抱きしめられたいと、育は思った。
 その晩のことだ、育は弟に力いっぱい壁に押し付けられ、初めての唇を奪われ、処女を奪われた。はじめは姉弟なのにという倫理観が彼女を悩ませたが、伸の熱い思いをたくさん受け止め

ると、そんなことはどうでもよくなった。
「好きだよ。姉さん」
 そんな甘い言葉をささやかれ、仲に出される。汗の臭いを全身に塗りこまれるように抱かれると、これ以上の幸せは無いと、育は思った。

 近頃、少々姉が変わってきたと伸は思った。どこへ行くにも付いてこようとする様になった。それらはべつにいい。それほどのことでもないし、付いてこられてもやましいことはない。だ

が、女性の話題になるとかなり気性が荒くなる。たとえば、テレビに映る女優などをみると「そんな女見ることはないでしょ! お姉ちゃんが居るんだから!」とヒステリックに騒ぎ立てる


 疲れているのかもしれない。稼ぎが上がってきたといっても、姉の助けが必要であることは変わりは無いのがつらい所ではあるが、体調の方が大切だということで、姉にパートの時間を少

なくするように言った。姉は素直に従った。
 それとはべつに、ある女性と知り合った。同僚となった女性で、姉の大学時代の後輩ということだった。
 姉から自分のことを話されていたらしく、名前と雰囲気ですぐにわかったそうだ。姉が変なうわさを流して無いことを祈るばかりではある。
 姉に会いたいというし、伸はおとなしく彼女を家へと連れて行った。
 料理していたらしく、姉はエプロン姿で出迎えた。いつもどおりの満面の笑顔で綺麗な黒髪をポニーテールにしている。
「育さん、おひさしぶりでーす」
 自分の後ろから顔を出し、そう同僚が声をかけた。
 姉はきれいな笑みを浮かべて答えた。
3703:2007/02/06(火) 22:32:16 ID:nNWoFujZ

「ダレ?そのオンナ」

 伸は状況が一変したことを感じた。半身がゾクリとうごめき、なんとも言えない独特の感覚が脳を直撃した。
「やだなぁ 大学時代にお世話になったモンっスよ」
「出てって」
 彼女の言葉を聞く気も無いさめた口調と台詞。
 その雰囲気に、彼女も異様なものを感じだ。
「出ってって」育は、低い声で言った。「出てけ・・・さっさと出てけ!」
 ヒステリックな叫びだった。その叫びにおびえ、彼女は小さくな挨拶と謝罪をして、家を飛び出して言った。
 それを聞きながら、伸は目線を姉から動かせなかった。そして、体が妙に熱くなる。だが、脳は限りなくクールだった。
 同僚が出て行くのを確認すると、姉は普通の状態に戻った様で、「ご飯食べよう」と、いつもより少し甘い声で言った。
 靴を脱ぎ、居間へ入るときも、ゾクリとしたものを感じていた。
 いやな予感を感じ、いつもは履くスリッパを履かずに、伸は居間に入った。
371ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/06(火) 22:32:22 ID:UWU+IsLa
 しかしよく見たらこの人、結構美人だ。
 リボンで括った長い髪は野暮ったく見えないし、縁無しの眼鏡もよく似合っている。
「あの、もしよろしければお名前を教えてくださいませんか?」
 助けた女性に名前を聞かれた?この流れはよくある恋愛物語ではないか!
 このまま流れに乗ればこの女性とのラブロマンスが・・・・・・?
 ――そうか。今朝色気の無い起き方をしたのはこのイベントとのバランスをとるためだったのか!
 ありがとう母上!今度ケーキを大量に持って帰ることにするよ!
「僕の名前は遠山雄志と言います」
 なるべくさわやかな声で自己紹介をした。
「雄志さんですか。どうもありがとうございます・・・・・・。
 ・・・・・・ん?・・・・・・あれ?もしかしておにいさんですか?」
 『おにいさん』?
 ・・・・・・・・・・・・。
 俺のことをそう呼ぶのは、知る限りでは一人しかいない。
 まさか、と思ってよーく見ると・・・・・・彼女の顔には見覚えがある。
 いや、まだだ。他人の空似という可能性もある。
 たのむ!違っていてくれ!
「失礼ですけど、あなたのお名前は・・・・・・?」
「現大園華です! 一年ぶりですね! おにいさん!」

 ・・・・・・当たってしまった。
 ・・・・・・買い物に出かけて自転車がパンクして困っている女性を助けたら、相手は幼馴染。
 ・・・・・・こういう時くらい色気があってもいいと思うのだが。
372ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/06(火) 22:33:00 ID:UWU+IsLa
 その後、華と肩を並べて歩いて帰ることになった。
 本来ならアパートで再会する予定だったが、道端で遭遇してしまった以上
そのまま別々に帰るわけにも行かない。
 ちなみに自転車は俺が押している。やけに軽い。おそらく有名メーカーの
自転車だ。・・・・・・うらやましい。
 いやそれはともかくとして。今問題なのは・・・・・・
「腕を絡めるな華。歩きにくい」
「努力して歩いてください。それに腕を組んで歩くのは昔からじゃないですか」
 俺にくっついて腕を組んで歩こうとすることだ。
 腕を組んで歩くのは俺と学校に通っていたときの癖だ。
 あの頃は華がまだ子供っぽかったから何ともなかったが、
今では成人女性そのものだ。少しだけ意識してしまう。
「お前と腕を組んでいたら恋人同士だと思われるだろ。
 小さい頃とは違うんだからよく考えろ」
「おにいさん気にしすぎです。皆そこまで他人に関心ありませんよ。
 それに、私はそう思われてもかまいませんよ?」
 なんてこと言うんだこいつは。
「あのな。お前だって大学生なんだから恋人くらいいるんだろ?
 勘違いされたらどうするんだ」
「・・・・・・・・・・・・それ、本気で言ってるんですか?」
 華は俯いて沈んだ声を出した。 
「え? ・・・・・・あ!」
 思い出した。華は男が苦手なんだった。

 俺が小学六年生のとき、華が同じ学校に入学してきた。
 最初は華も男の子と遊んだりしていたけど、いつの間にかその子達とも遊ばなくなった。
 それに気づいたのは放課後になっても校門に現れない華を迎えに行ったときのこと。
 華が、数人の男の子に囲まれて悪口を言われていた。
 早い話が、集団によるいじめを受けていた。
 たぶん、それは・・・・・・俺のせいだ。
 華は昔から俺としか遊ばなかった。そのため、他の男の子と遊んだことがない。
 さらに大人しい性格をしていたから友達ができにくくていつのまにか孤立していき、
いじめの標的になってしまった。
 その場では男の子たちを追い払ったが、いつでも一緒に居られるわけではない。
俺が居ないときにも言葉によるいじめを受けていた。
 そして――華は俺以外の男が苦手になってしまった。
3734:2007/02/06(火) 22:33:23 ID:nNWoFujZ
 夕御飯を並べたテーブルの横、姉が少し冷たいような、上気した顔で静かに立っていた。 包丁を持って。
「前からいってたよね。伸にはお姉ちゃんがいるって」
 包丁はキッチンにあるものだった。
「お姉ちゃんには伸がいるから、伸もお姉ちゃんが居ればいいよね」
 刃渡りは約20cm。調理用出刃包丁。純手で持っている。
 姉が虚ろな表情で歩き出した。距離約1,5m。間合い内に入った。背中がさらにゾクリとうずく。
「お姉ちゃん、伸のこと大好きだから、なんでもしてあげるよ」
 腰溜めから包丁を突きさしてくる。可能性大。
「脱げって言えば脱ぐし、セックスだってしてあげるよ」
 切り上げの可能性は低い。後方確認。約2mほど空がある。一歩下がることが可能。
「お口でなめてあげるし、おしっこも飲んであげるよ。お尻でもさせてあげるし、いくらでも中出ししても大丈夫だよ」
 すぐ動けるよう、足の指が力をため、足の裏の接地比を前へと動かす。
「お姉ちゃんは、伸の子供なら何人でも生んであげる。うん。生ませて欲しいな。伸のこと本当に愛してるから」
 体が小さくなる感覚。違う。筋肉が緊張し、体に芯を通したような感覚を覚える。日常ではない非日常。体が異様に興奮する。
「でも、私が愛してるのに、伸が女の子を連れてくるのはがっかりだな。いけない子だよね」
 次の動きはなんだ? どうした!速くやってくれ・・・!
「いけない子には、お仕置きしなきゃいけないよね?」
 包丁を持った右腕が、高く上がった。上から振り下ろす。
 伸の右足が地面を蹴り、左手が包丁を持った右腕を上手くつかむ。よし! そのまま姉を壁に押し付け、包丁を持った右腕を壁に叩きつける。包丁が落ち床に刺さった。
 同時に、壁に押さえつけた腕に、さらに荷重が掛かる。見ると、姉が気を失っていた。
 姉をそっと床に座らせる。まるで人形のような、力の無い姿だった。
 まだ心臓が高い回転数で鳴っている。指先が震えている。だが、この充実感。新しいエンジンを組み、アイドリングを確認した以上の興奮。感動ではない、違う胸の高鳴り。
 落ちた包丁で、姉が怪我をしていないのを確認し、姉を彼女のベットへと運んだ。
 そういえば、姉の部屋に入るのはしばらくぶりだ。中学だか、高校だかの時に入って以来だと、扉を開け、ベットへ寝かせた。エプロンを解き、ロングスカートのボタンを少し外し、タオ

ルケットを書け、部屋をあとにした。
374ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/06(火) 22:33:50 ID:UWU+IsLa
「ごめんな。無神経だった」
「いいんです。昔のことですし。それにおにいさんが鈍感で無神経なのはわかってますから」
 わかっている、と言っているがこの口調は怒っているときの喋り方だ。
 そしてこの状態を放っておいたら・・・・・・

「それにおにいさんに恋人についてとやかく言われたくありませんね。
 だいたいおにいさん、恋人を作ったことあるんですか?
 あ、一度だけありましたね。私が叔父さんたちの家に遊びに行ったときに
 女の人と一緒にベッドの中でもぞもぞしていました。
 あれ、何をしてたんですかね? なんだか喘ぎ声とか聞こえてましたけど。
 まあ、おにいさんが自分の部屋で何をしてようとわ、た、し、は、構わないんですけど!」

 この通りマシンガンが炸裂する。
 久しぶりだからかもしれないがやけに熱がこもっている。
 おまけに組んでいる腕をものすごい力で締め付けてくる。
 ・・・・・・いや、ちょっと力入れすぎじゃないか?
 
「ええ! 私を放っておいて! 誰と何をしててもね!」

 その言葉を機にさらに力が加えられる。
 華の細い腕が肘関節を捕らえ――
『ビキ ビキ』
「あだだだだだだ! ちょっと待てって! 変な音してるし!」
 まずい。このままだと腕が折れる。
『ビキ ビキ グリッ』
 いや、折れるだけじゃ済まない!もぎとられる!
「――――っ!! 待ってくれ! 悪かった!」
『グリ グリ  グリリッ』
「ごめんなさい!! もう無神経なこと言わないから許してください!」
 俺が叫んだらすぐに腕が開放された。
 ――ああ、腕が紫色だぁ。
「分かればいいんですよ。素直なおにいさんは好きです」
「ああそうかい。ありがとう」
 お前に言われてもあまり嬉しくないな。
 どうせ好きと言っても『兄』としてだろうしな。
3755:2007/02/06(火) 22:33:55 ID:nNWoFujZ
 育が目を覚ましたのは午前1時ごろだった。だが、意識はまだしっかりしていなかった。夢遊病患者のような、虚ろな目でベットから這い出し、歩きづらそうな歩調で、部屋をあとにした

。途中、踏んだスカートがずれ落ち、大人のランジェリーがあらわとなった。
 そのまま弟の部屋に静かに入った。弟は綺麗な姿勢で寝ていた。
 育は、彼に掛かっていた布団をどかし、寝巻きのズボンを、パンツと共に下ろした。大人の形となった弟のモノを見て、育は虚ろな顔で顔を赤らめ、自分のパンツを落とした。
 そこはすでに想像できないほどの液で濡れていた。
 弟のモノを舐め、大きくなったのを確認して、自分の中へ入れた。驚くほどすんなりと入り、育は体を振るわせた。育は処女ではなかった。彼女の処女は、以前の弟を思った自慰で、失っ

ていた。
 伸は異変に気づき飛び起きようとしたが、姉が恐ろしいほどの力で彼を押さえつけた。
「お姉ちゃんの処女、伸にあげてられてうれしいよぉ。伸が、私の処女貰ってくれたの・・うれしいよぉ」
 虚ろな目で興奮した顔。その不可解な姿んまま彼女は腰を揺らし、自分の中に彼のモノを押し付けた。何かを喋ろうとした弟の唇を強引にふさぎ、舌や唾液を一生懸命舐めながら、腰を揺

らした。
「すごいよ・・・中にいっぱい出てる・・・」
 甘く、色の付いた声で、姉が言った。姉の中はコレは絶対渡さないと言った様に、動いていた。

 姉が疲れ果て、ベットに倒れこむと、伸は姉がどうにか成ったのではないかと心配し、その体を改めた。脈拍や呼吸は先ほどの性交で高ぶったのを差し引いても普通だった。
 昨晩からの一連の事件はなんだったのかと、伸は考えた。姉が錯乱し、そして逆レイプとも呼べる状態で、姉の中に大量に出した。それは倫理的に少々胸を痛めることではあるが、それよ

りも伸は大きなことに気づいていた。
 錯乱した姉を押さえつけるときの興奮度。包丁を見たとき、体がこわばると同時に脳が鮮明に働くあの感触。
 しばらくそんなことを考えていると、育が目を覚ました。
 自分の身を改め、状況を確認した後、姉は弟に抱きつき、泣き始めた。
「うれしいよぉ。お姉ちゃんうれしぃよぉ」
 泣きじゃくり、体をこれ以上ないほど密着させて来た姉を無意識に抱き、伸はあの高揚感に付いて考えていた。
376ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/06(火) 22:34:58 ID:UWU+IsLa
 そんなやりとりをしているうちにアパートに到着した。
 結局、出発してから帰ってくるまで二時間どころか三時間以上かかった。
 おまけに腕も締められた。自転車に乗っていないとロクなことがない。

「ここがおにいさんの住んでるアパートですか・・・・・・。小さいですね」
 ひと目見た感想がそれか。
 確かに広くはないが、1Kの物件で二万円なら格安だぞ。
 それに小さいとはなんだ。
 小ささで言わせればお前の胸だって平均以下だ。
「な、なに人の胸をじっと見てるんですか・・・・・・。
 見たって大きくはなりませんよ」
「俺はお前の胸に夢を抱いたことはない。
 たぶんこれからもそうだろう」
「あれ? そうなんですか?
 昔私が叔父さんの家に泊まりに行った時におにいさんはお風呂を」
「いやー、うん。小さいものの方が夢が詰まっているというしな。
 うん。小さいほうがいい。小さいの万歳!」
「それ、ロリコンの発言ですね」
 俺がロリコンならお前はヘビだ。忘れたい過去を思い出させやがって・・・・・・。
 しかし、これから毎日こんなやりとりをしなければならないのか。
 ・・・・・・ストレスで発狂しなければいいのだが。


 引越し業者の持ってきた荷物を華の部屋に入れる作業が終わった頃には
もう外は真っ暗になっていた。
「荷物はこれで全部届いたのか?」
「はい。あまり持ってきてないですから」
 たしかに箱の数は少なかったが、中身が本ばっかりだったからかなり疲れた。
 明日は筋肉痛間違い無しだな。
「そっか。じゃあ今日は帰るよ。またな」
「はい。また明日会いましょう。おにいさん」
 別れの挨拶をしてから華はドアを閉めた。
 やれやれ。休日だというのに何故こんな重労働をしなければならんのか。
「あ、おにいさん言い忘れてたことがありました」
「・・・・・・なんだよ」
「お部屋、隣同士ですから。昔みたいに雑誌でおイタしたらすぐ聞こえますよ。
 気をつけてくださいね。うふふふふ」
「とっとと寝ろ! このヘビ女!」
 華は手を振ってからドアを閉めた。

 ・・・・・・ストレスと欲求不満で発狂しそうだ。
3776:2007/02/06(火) 22:35:42 ID:nNWoFujZ

 後日、伸は、カフェで同僚のあの娘と一緒に紅茶を飲んでいた。
「自分の後方、露店の近くの角。こちらを見ている人が居る」
「育・・・さん・・?」
 答えを聞いて、伸はにやりと笑った。
「おかしいよ。包丁で切りかかってきたり襲われたり・・・。育さん、絶対に医者につれてったほうがいいよ」
「お断りだ」
 なんで。そう同僚が返した。
「背中に感じるこのゾクリとした感覚。危険を感じ、こわばる体、明確な判断をしようと高回転する自分の思考。その興奮がたまらなく好きになってきている」伸は、軽くこぶしを握った。
「それは、あの姉でしか味わえない。自分をそこまで興奮させてくれる女性は、姉しか居ない」
 伸は心底うれしそうに笑った。


 誤字多いな・・・。
 他の人の奴の間に入れる形にってすいませんでした。
378ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/06(火) 22:35:50 ID:UWU+IsLa
次回へ続く。

とりあえず三人のヒロインが出揃いました。
ここからはそれぞれが絡み合うストーリーになります。
嫉妬分は少なくなる予定です。
どちらかというとお互いにゲフンゲフン。


どうでもいい情報
題:胸の大きさ

女店長 >>(越えられない壁)>> 天野香織 >>>> 菊川かなこ >> 現大園華
379ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/06(火) 22:38:38 ID:UWU+IsLa
うあ! すごいことになってしまった!
すんませんnNWoFujZさん。
あとスレの皆と保管庫の中の人ごめんなさい。
380名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 22:45:13 ID:nNWoFujZ
ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSoさん、こちらこそスイマセン。割り込む形に成ってしまって。
381名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 23:03:06 ID:ACX5mYHI
両方とも超GJ!!


キモ姉万歳!!

三人の中では幼なじみが一番好感がもてる

続きに期待!!!
382名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 23:11:53 ID:c/t9r4Kh
ちょwww
なんかすごい連続投下キタ━━━!!!
お二方ともGJ!

遂に三人のヒロインが揃ってこの先の展開にwktk
383名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 23:12:48 ID:DnPf80D7
作品がぶつかるほどこのスレが活気があるなんてうれしいですな。
>>379
>>380
お二人とも、これからも読み続けさせていただきますよ。
384名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 23:22:47 ID:l6jTrGdI
いやっほおおおおおおおおおおおおおおおおおお
385名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 23:30:47 ID:RIVIkvRt
雄志の着メロ、MGSのメインテーマの気がする。
386ことのはぐるま訂正 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/06(火) 23:53:24 ID:UWU+IsLa
>>363
>フリーター人口の割合はは0.1%も上昇しない。
フリーター人口の割合は0.1%も上昇しない。

でした。ごめんなさい。

>>385
ヒント:雄志は萌える曲より燃える曲が好き。
387名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 23:59:35 ID:c4sMuGyi
お二人にはGJ以外にかける言葉が見つからない。
388名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 01:05:39 ID:3SE/UIFM
>>378
越えられない壁とまで言われると女店長が気になってくるわけですが
389名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 01:33:43 ID:BlWBUlC5
共にGJ!!!

ただ>>380さん、結局キモ姉の処女はいつ無くなったんですか?最初は弟が奪ったみたいになってるんですが、後の方はバイブに捧げたみたいな感じに……
390名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 01:58:20 ID:hOt4U5zC
現実と妄想の境目が無くなったキモ姉……。

そして、優等生面しときながら独占欲の強そうな従妹……。


GJすぎるぜ!!
391 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/07(水) 08:53:47 ID:55zc9tPi
>>388
よしわかった。
『越えられない壁』女店長の短編も書くとしよう。

いつにしようか?バレンタインネタにしたほうがいい?
392 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/07(水) 09:35:22 ID:55zc9tPi
続けてレスしてすまない。

やっぱりバレンタインネタの方がキモくなりそうなので14日に投下する。
393名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 12:15:33 ID:fEymG/BJ
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +
 と__)__) +

バレンタインを正座して待っています
394名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 17:32:32 ID:wPKBMAfm
395名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 17:43:02 ID:hOt4U5zC
なんだ、この笑えないオチは!!
結局なんだったのかすげえ気になるな。
396名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 18:29:09 ID:wh/n4Ly9
>>394
これ、美少女にされるんなら俺は大歓迎だ。

しかしイタズラメールの匂いがするな。根拠はないけど。
397名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 23:52:09 ID:hwYcHRU4
気をつけろ…。
店長ばかり見ていると、あの娘がナイフを持ってお前らの背後に…。
398名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 00:28:35 ID:Eyqqfjq3
寧ろあの娘にナイフで刺殺されるのが本望
399名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 06:01:15 ID:CCFupwTk
誰かネットで読めるおすすめヤンデレ小説知らない?
まとめのリンク先以外で
400名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 06:54:27 ID:AOcERuKu
>>399
ハルヒを知ってるんならば、『長門スレまとめwiki』内にある
SSコーナーの『書き込めない人』のがいいかな。

ハルヒを知らないなら、事前知識として

キョン:突っ込み役
ハルヒ:得体の知れない力を持っている女
長門:読書好きの宇宙人

と思っていればなんとなく内容がわかるはず。
401名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 07:14:26 ID:CCFupwTk
>>400
ハルヒかじったことないからやっぱよくわからんです
でもわざわざ教えてくれてありがとう
402名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 21:29:30 ID:R0z+1/2F
最近このスレの作品を読み返しては、ニヤニヤしてたりするんだが、
いっそのことノベルゲー形式で読みたくなってきたぜ。
403名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 21:38:15 ID:c39xyxyX
>>402
むしろ誰か同人ゲーとして作ってくれれば…

勿論、上質な病みを提供して下さる神々にきちんと許可をとってから

お茶会なんかは多分ブームになるぞ
404名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 22:04:22 ID:R0z+1/2F
そっか同人か、んじゃ身の回りでサークルめんばーでも探してみるかな。
神との交信はスレでイイのかね?
405名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 22:11:25 ID:lxE43LNo
そんなん言うとキャラデとか考え出しちゃう俺。
406名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 22:40:08 ID:R0z+1/2F
>>405
製作確定じゃないが、そう言われると、参考にキャラデザとかいろいろみたくなる俺。

>>403
確かに上手くやりゃ凄いかもな、お茶会シリーズ。
407名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 22:53:01 ID:WcOnGCcg
>>405
その前にsageてちょうだい
408名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 22:53:58 ID:WcOnGCcg
スマンアンカー間違ったw
>>406sageて
409赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/08(木) 22:55:43 ID:I20DV8yW
いまだスレに追いついてないですが完成しましたのでうpします。
410真夜中のよづり2 ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/08(木) 22:57:02 ID:I20DV8yW
 俺は委員長から渡された住所の紙を持って、住宅街をさまよっていた。
 あの後、委員長は住所と簡単な地図を書いた紙を用意してくれた。俺だったらルーズリーフを一枚破って渡すのに、委員長は丁寧にも教卓に常備されていたわら半紙のウラを使った。
 さすが委員長だ。手際がいい上に紙を無駄遣いしない。コイツは大学に進学するより、発展途上国に行かせたほうがいい働きをするだろうと思う。
 で、そのまま俺は教室を追い出されこの住所の元へ行くように指示されたのであった。
 明日すぐに会うのは緊張するだろうから、今日のうちに会っておいてそれなりに打ち解けてから一緒に登下校しろということらしい。
 俺にとっては今会おうが明日会おうがそんなに関係は無いと思うのだが。委員長は世話焼きで真面目なので俺のめんどくさい言い訳は聞く耳を持たなかった。
 まあしかし、委員会活動の少なさから考えれば今の俺に拒否権はほとんどない。従うしかないのである。
「しかし、入り組んだ住宅街だな」
 俺は学校から少し離れた、二階建ての家が立ち並ぶ郊外の住宅街の道を歩いていた。
 山を削り、段々に作られた分譲土地。何にも無かった切り立った山をブルドーザーやショベルカーが整地して行き、静かな住宅分譲地として売り出されて十年。
 周りを見渡せば中流以上の家庭のお父さんが36年ローンで思い切って購入するような三階建ての豪華な家ばかりが立ち並ぶ、まさにセレブの棲家と化していた。(ここでのセレブはレベルをうんとおとしたセレブである)
 商店というものはほとんどなく、この住宅街に入ってから俺は一回も自動販売機を見つけられなかった。くそ、コーラが飲みたかったのに。
 階段状に立ち並ぶ家のゆるやかな上り坂をのぼっていく。各住宅にはスロープが全て設置してあり、障害者にも優しい仕様となっている。
 なーんか、こんなところ住んでいる榛原よづりって何者だろうと思う。
 榛原よづり。委員長から聞くにはどうやら女の子らしい。成績は非公式だがトップクラスで先生らが彼女の家で二学期の期末テストをやらせてみたところ、数学以外全て満点という馬鹿みたいな成績だったと言う。
 ちなみに俺の点数はちょいと言いにくい点数だった。たぶん、学年ならお尻から数えたほうがいくつか早い成績。
 しかし、なんでそんな優等生がひきこもってんだ?
「あ、登校するって言ってたからこれからは元ひきこもりになるわけか」
 俺は一人で訂正する。
 優等生が引きこもりになる理由……。マンガやドラマでよく見るのは劣等生の妬みによるイジメかな。
それ以外にも、引きこもりになる理由というのはさまざまだ。学校は集団生活の場。ささいなことで仲間はずれにされたり理解不能な奴から攻撃を受けたりすることはどこにでもある。
 それに耐え切れず逃避する奴は多い。この榛原と言うヤツもそのパターンなのかもしれない。
 俺は引きこもりのありがちな理由を考えながら、今から会う事になる女の子の対応について模索した。
 成績優秀者というのは事実。引きこもりになった理由というのは不明。で、女の子。
 女の子。
 すこし俺は顔がニヤついていた。もし、この榛原とかいう女の子がとてつもなく美人だったらどうしよう。
 今のクラスでは、俺が彼女と一番最初に仲良くなるわけだ。彼女にとっては俺はクラスの一番最初にできた友達となる。そうなるとやっぱり俺は彼女にとって友達の中でも特別な友達として認識するだろう。
 友情もえっちもはじめての相手と言うのは特別な感情を持つものだ。
 それに、もしかしたら彼女は元引きこもりでまだ人間関係がうまくもてないかもしれない。そうなったとき、彼女が唯一の支えとして利用してくれるのはもちろん俺。
 くふふ、たまんないシチュエーションだ。
 俺は自分の妄想に内心ほくそ笑んでいたが……、すれ違う小さな子供を連れた家族連れがひそひそと俺の横を通り過ぎて行くのに気付いて、あわててニヤけた顔を戻した。
 まぁ、もしブスだったら災難だけどな。そうだったら俺は必要最低限のフォローしかやんね。俺は結構現金だった。
 そんなこと考えつつ、俺は目的の場所の前へやってくる。
 郊外住宅地のはじっこに位置する二階建ての住宅。門構えは立派で道路に面した部分には大きな車庫があり小さな庭のテラスには赤黄のパンジーやオダマキのプランターがいくつも綺麗に並んでいた。
榛原と彫られた表札はピカピカに光る大理石で圧倒している。全てに手が行き届いてあって、さながら芸能人の家のよう。
 住所と地図から見るに、ここで間違いなかった。
「ここかよ……。なんか門構えだけで威圧されるな……」
411名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 22:57:43 ID:uvMSwaz6
>>405
3月21日にヤンデレオンリーの同人誌即売会があるぞ、まだ参加締め切りも過ぎてない。
412真夜中のよづり2 ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/08(木) 22:57:51 ID:I20DV8yW
 俺は勇気を出すと、内心ビクビクしながらライオンがわっかを加えたオブジェクトがつけられた門を開けた。きぃーと開く門。
 豪華な装飾の玄関の前に立つ。いよいよ、榛原よづりとの対面だ。
 と、ここで。俺はドアの横につけられた郵便受けに気付いた。ビデオテープ台の横穴には朝日新聞がいくつも差し込まれていた。
 数えてみると三部。今日と昨日とおとといの。これは……この三日間誰も新聞をとろうとしなかったのか? それとも受け取り拒否じゃねぇよなぁ? どっちだろう。微妙なライン過ぎてわからねぇ。
 まぁ、いい。
俺は覚悟を決めてインターフォンのボタンを押した。
ぴんぽーん。
 ……しばらく待つ。
 ぴんぽーん。
 もう一度押してみる。
 俺は三回鳴らして反応が無かったなら帰ろうと思っていた。
 ぴぴんぽーん
 しまった、四回鳴らしてしまった。
 しかし、反応は同じく無い。
「留守なのか」
 俺はドアノブに手を伸ばす。開けるつもりは無い。鍵がかかっているのか確かめたかった。もしかしたら留守かもしれないし。引きこもりが学校登校の前日に外へ出ると言うのも変な話だが。
 と、俺がドアノブを回そうとした瞬間。
『……はい』
 ジジジジとラジオのチューナーをいじったような音が聞こえたかと思うと、すぐにインターフォンのスピーカーから、電子じみた女の声が聞こえた。
「あ、すいません。榛原さんのおたくですか?」
『……そうですよ』
 その声は妙齢の人のような大人っぽい声質だった。俺は榛原よづりの姉か何かかと思い、それなりに丁寧に対応する。
 しかし、そのわりにはまるでお通夜の雰囲気のような暗い声だ。やはりひきこもりが家に居ると家庭全体も暗くなるのだろうか。俺は罪悪感湧いて引きこもれねぇな。
「あ。俺、森本和人といいます。明日一緒に学校へ行くことになったんで一応挨拶に来たんですけども……」
『………』
「……えーっと……」
 困った。ここから先は何も考えていなかった。
 てっきり母親か何かが出てきて、とりあえず家に上がらせてもらってお茶菓子でももらいながら母親を介してお互いに自己紹介してそれなりに交流できると思ったのだが……。
 めちゃくちゃ甘い考えだったようだ。まぁ、そんなほんわかにいくとは思ってなかったけどさ。
『………』
 相変わらず、無言のまま。ジジジという電子音が聞こえてるから、回線は切っていない。
 インタフォーンのスピーカー越しから聞こえる無言が妙にプレッシャーになる。スピーカーに目がついて俺をにらみつけているようだ。
「あ、あの! じゃあ俺、明日迎えに行きますんでっ」
 俺は早いところこの場を離れたかった。 やっぱりこういうのは委員長の仕事だ。俺には向いてない。
 早口で残りの用件を言うと、俺は玄関に見たまま後へ一歩、二歩。そのまま逃げるように離れ、大きな門を開けようとして、押して開ける門ではなかったことに気付き、引いて開けた。
 俺は明日のことを考えていた。俺一人じゃこの家庭につっこめそうにない、仕方が無いが委員長に付き添ってもらうしかないだろう。委員長の携帯番号は副委員長と言う立場上いやと言うほど知ってるから、場から離れたらすぐに連絡だ。
 と、思っていた矢先。
 ガチャリ。
 玄関が開いた。
 きぃぃと外側にすこしづつ開くドア。が、すべて開くことなくちょうど手のひらぐらいだけ開く。
『入ってください……』
 消え入りそうな声がスピーカーから聞こえたと思うと、ジジッと音を出して回線が切れた。
 俺は逃げようとして開けた門を閉めると、もういちど玄関へ近づく。
 少し、ドア越しに中をのぞくと誰も居ない。ただ電気がついていない暗いリビングと廊下が見えるだけだった。
 ちょうどドアの反対側、家の中側を見てみる。そこにはインターフォンのマイク部分がつながっていた。
 どうやらさっきまでドア一枚隔てて、あの家の人は居たようだ。隠れなくてもよいのに。それにしても改めて大人っぽい声だったと思う。めちゃくちゃ声の雰囲気は暗かったけど。
「おじゃましまーす……」
 俺は玄関に入ると、小さな声で言う。玄関は広く、土足スペースは二畳分もあり横の靴箱は田舎にある小さい旅館よりも大きい。
 しかし、玄関に置かれている靴の数はとても少ない。サンダルと黒いハイヒールがひとつづつ並べられているだけだ。俺は内心怖くなってきた。
 靴を脱ぐと俺はハイヒールの横に外側を向くように並べた。玄関は暗く、段差につまづきそうになりながら家に上がる。
「えっと、どうすればいいんだろ」
413真夜中のよづり2 ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/08(木) 22:58:44 ID:I20DV8yW
 とりあえず、入ってと言われてあがってみたわけだが。
見えるのは暗い廊下といくつもの扉。廊下の先には階段があるのが見える。ひとまず俺は廊下を歩いてその階段へ向かってみることにした。
家の奥に行くたびに、なにか恐ろしいものが体に捕り付いてるような気がして、俺は身震える。
 階段の前までやってきた。明り取り用の窓からちょうど光が漏れてここだけは明るかった。廊下をまがった先には台所が見える。しかし、まだ夕方だと言うのに漆黒の闇のように暗かった。
 雨戸をしたままなのだろうか。
「すいませーん! 誰か居ますかー!」
 俺は口に手を当ててメガホンを作ると、家の中に響くように大きな声で叫んだ。誰か居ることは確かなのだからこの言い方はおかしい。ただもしかしたら、ここに居る幽霊が俺を招いたのかもしれない……と思ってみたりもしたのだ。
「すいみませー」
「ここです」
 うおぉぉお!
 階段の上や部屋の奥に声を放っていた俺の背後からいきなり声をかけられた。しかも背後と言ってもすぐ後だった。
 驚いて俺は振り向く。
 そこには、
「そっちは私の部屋……」
 黒ずくめの女の人が立っていた。
 見た目は二十歳後半ぐらいだろうか。かなりの長身で黒のセーターとノーブランドの黒いGパンを着込んでいた。
黒い髪の毛は長く伸びて腰まで届いていて、まるでマントのようだ。顔を見ようとしたが、彼女の前髪は目元を覆い隠すようにカーテンとなっていて見づらく表情が見えない。
 セーターからは中から押し上げるような大きなメロンが二つ隆起していて、高校生とは違う大人の魅力で目を奪われそうになるが、それとは対照的なほど腰や腕が細く、そしてバランスを崩したように体がふらりふらりと右へ左へ揺れている。
一目見た俺の印象は「不気味」だった。
「あ、ど……どうも」
 俺はドキドキと周りに聞こえそうなほどの心臓の鼓動を押さえつけながら、手を上げて軽い挨拶をした。
 突然すぎてびっくりしたが悲鳴は上げてなかったと思う。しかし、いつのまに背後に? まったく気配が無かったぞ?
「お、俺森本和人です。こんにちは」
「……こんにちは」
 不気味な女の人が軽く頷くぐらいで頭を下げる。声は消え入りそうなくらい小さく、俺には「ちは」ぐらいしか聞き取れなかった。しかし、大体声質はわかる。この人はさっきのインターフォンの人だ。
 榛原よづりのお姉さんか? 26歳かそのくらい。結構歳の離れた姉だけど、この暗さは異常だな。ひきこもりが居る家庭はウイルスみたいに感染して家族もどんどんひきこもりみたいになっていくんだろうか?
 そんな馬鹿なことを考えるが、口には言わない。副委員長としてこれから榛原よづりの登下校の面倒を見なくてはならないのだ。家の人とそれなりにいい関係を築いておいたほうがいい。
 俺はなるべく、愛想のいい笑顔を浮かべた。対する相手は表情が読めない。なんか妙なアドバンテージが向こうにあるぞオイ。
「すいません、よづりさんにあわせていただけますか?」
 俺は努めて明るい真面目そうな高い声(俺は声を作ると自然と高くなる。母親が電話に出たときのよそ向けの声と同じ)で聞く。
「……」
 だが、目の前のお姉さんは長い髪をたらしたままふらりふらりとしたまま、くるりと反転する。そしてふらふらのまま、歩き出した。
414真夜中のよづり2 ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/08(木) 22:59:30 ID:I20DV8yW
「え、ちょっ……?」
「こっちがリビング。廊下で立ち話もなんですから……」
「は、はぁ……」
 いや、立ち話はいいとして、俺としては早いところ榛原よづりに挨拶してさっさと帰りたいのだが……。
 というより、なんだこの人。ふらふらなクセにかなり自分勝手だ。俺は呼び止めようと、後姿に声をかける。
「あ、あの。お姉さん」
「……」
 無言。もう一度、こんどは語気を強めて。
「お姉さんっ」
「……」
「おねーさんっ!」
「……私?」
 三回目で、ようやく振り向いた。
「はい、そうですよっ。無視しないでくださいよ」
「……私は一人っ子だからお姉さんと呼ばれたことがないの。私だと気付かなかったわ……」
「なんですか、それ」
 俺ははぁとため息をついて。ふと、女の人のある言葉に気付いた。
「あれ? お姉さん、この家の人ですよね」
 さっきまで俺はこの人を榛原よづりのお姉さんかと思っていたが……、この人は一人っ子なので榛原よづりの姉ではない。
「……うん。そう」
 丁寧語の無い言葉使いは微妙にむかつくな。
 ともかく、彼女は肯定した。たまたまここに来ていた人でもないか。じゃあなんだ、下宿人とか同居人とかルームシェアとかかな? いや、でもひきこもりの家庭はルームシェアするほど余裕は無いだろ……。
 じゃあ、……この女の人は誰だ?
 姉でもない、同居人でもない、この家に住む一人っ子……。
 一番ある可能性はひとつだけだった。
「……すいません、もしかして……」
 俺の頭の中でまだ未確定だったが、ある答えが浮かぶ。それを聞こうとお姉さんに話しかけようとした刹那。
 お姉さんは首から体ごと、俺に向きなおった。
そして、
「榛原よづり。私のなまえ……」
 自分から、名乗った。
 まるで呪文のように、呟いた。
「二十八歳で高校生で元引きこもりだけど………。明日からよろしくね。 ……『かずくん』」
 彼女は顔を覆い隠している髪のカーテンをずらして、俺に顔を見せて自己紹介した。
 元引きこもり、榛原よづりの顔は、自嘲的な笑みを浮かべていて目の辺りは黒くなっていたが、とても大人っぽい美女だった。
 しかし、カーテンから彼女が見せた藍色の瞳は、ぐろりぐろりと音を立てて暗色と混ざり合うように不気味に淀んでいた。

 今思い出せば、よづりは最初に会ったときからすでに俺のことをかずくんと呼んでいた。
(続く)
415赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/02/08(木) 23:00:40 ID:I20DV8yW
更新頻度は遅めですが、できる限り続けていきます。
28歳の元引きこもり高校生というヒロインですけど。
416名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 23:07:32 ID:B3pKIDCq
>>404
作るのは良いがな。
ちゃんと職人さんには話し通しとけよ。

>>パパ氏
うお、何だかホラー系ヒロイン。
最初っから病んでそうな雰囲気バリバリですね。
これからも期待させていただきます。
417名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 23:13:02 ID:WcOnGCcg
かつてないヒロインキタワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!☆
GJ!
依存心の強そうな所が(*´Д`)ハァハァ 
418名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 23:23:43 ID:/VLnFBv7
委員長エンドが気になる
419名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 23:24:22 ID:R0z+1/2F
sage忘れたー!
>>408
スマソ。

>>411
今から立ち上げるとなるとさすがに目処が立たん。オンリーイベントは知ってたが……。無念。誰か出るというなら神速でハイレベルなものを頼むw

>>415
なかなかGJ!
次も楽しみに待ちます。
420名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 23:31:53 ID:lxE43LNo
試しにマッドハンター/如月更紗のラフ絵描いてみた。
原作者の許可出たら張って良い?
421名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 23:37:09 ID:R0z+1/2F
>>416
もち勝手に配布販売等しませんよ。
最初は作るだけっすね。
422いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/08(木) 23:41:58 ID:T46tAjLx
>>421
販売したら買いにいきます

>>420
是非見たいです

埋めネタがいくつも思い浮かぶのにスレはまだ半分という
423名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 23:48:21 ID:tqSNTpXK
>>415
GJ!!
よづりさんの設定が激しくツボる
下手をしたら過去最大級かもしれない件


連続でスマン、投下しますよ
424名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 23:48:36 ID:WcOnGCcg
>>422
ちょw
神ktkr
425『首吊りラプソディア』Side首吊り:2007/02/08(木) 23:49:35 ID:tqSNTpXK
 眠れない。
 不眠は最近は毎日なのだけれど、どうしても慣れることが出来ない。人は基本的に夜には
寝る生き物だし、実際に自分も長い間そうして生きてきた。だけれど何故か急に不眠症に
なってしまい、こうした状況に戸惑っている。昼には皆と遊んだので、今日は眠ることが
出来るかもしれない。そう思っていたのに、体の方は応えてくれない。
 仕方ない、今日も散歩だ。
 軽く伸びをして指輪を着け、適当に髪を整えた。着替えは特にしなくても良いか。面倒
だし、今の時間帯ならば人も全然居ないので問題ないだろう。
 外に出ると、冷たい夜風が頬を撫でてくる。最近は暑い日が続いていたから、この位が
丁度良い。暑さに強くない自分にとって、これはありがたかった。気分が良くなり、足も
軽快に動いてくれる。独りでの散歩は寂しいけれど、雑多なものが消え失せた都市の風景
というのも悪くない。見ていると心が落ち着いて、心が晴れやかになってゆくようだ。
 いつもの道を通り、鼻唄を鳴らしながら進む。
「あ、まだあった」
 何気無く横に視線を向けると、昼間に見た立ち入り禁止のテープが残っていた。管理局
の人達は優秀だから既に調査を終えていると思っていたのに、どうやら完全には終わって
いないらしい。大事な証拠はきちんと片付けたし、掃除もしやすいようにしていたけれど、
逆にやっきになって調べているのかもしれない。
426『首吊りラプソディア』Side首吊り:2007/02/08(木) 23:50:42 ID:tqSNTpXK
「無駄なのに」
 吐息をし、テープに向かう。あの先には広場と言うには少し狭いが、それなりに開けた
場所があって楽しかったのだ。親を持たない小さな子供達が集まり、独特のコミュニティ
を作っていた。自分も彼女達に混ぜてもらい、夜空を見上げていた。四方を壁に囲まれて
いるせいか広い空ではなかったけれど、逆にそれは宝石箱の中を覗いているように思わせ
てくれた。管理局の人達に保護されて今は誰も居なくなっているだろうけれど、一人でも
見る価値はあるだろう。星の光は平等だと、昔の偉い人が言っていた。
 微痛。
 テープに触れると、指先に軽い痛みが走った。見ると指の腹が少し切れている、これは
侵入者用の罠だろうか。他の場所よりも綺麗にしてあった分、念入りに調べるつもりか。
今もテープが残っているのは、そんな理由だったのか、と溜め息を吐く。
「失敗したなぁ」
 綺麗にしておいたのは大事な証拠があるからではなく、単にあの子供達の場所を汚した
ままにしたくなかったからだ。それ以外はいつも通り、悪い人を注意しただけ。お人形に
しただけで、他意なんて角砂糖の一つ分もありはしないというのに。それなのにこんな風
にしてしまったら、ここに逃げてきたり立ち寄ったりした子供がいつものように入ろうと
して、怪我をするかもしれない。そんなことも分からないのだろうか。
427『首吊りラプソディア』Side首吊り:2007/02/08(木) 23:52:48 ID:tqSNTpXK
 指輪を起動させて、警備プログラムを確認する。撤去するときの為だろうか、それ程に
複雑ではない、単純なプログラムだった。誰かに取られないよう勿論それなりに複雑化を
しているものの、確率システムの仕組みを習っていて、頭がそれなりに回る者に対しては
殆んど効力を持たないものだ。幸い自分はそれに当て填るタイプの人間だったので、解除
を実行する。数秒もかからずに、プログラムは完全に消え去った。
 テープをくぐって奥へ進み、少し歩けば視界が急に広がった。
「こんなに広かったんだ」
 自分一人で居るせいか、皆の声が聞こえないからなのか、広くないと思っていた場所が
やけに広く感じる。空白の部分を見たくなくて空を見上げれば、目に飛び込んでくるのは
無数の星の輝き。切り取られた空を見ていると、独り占めというより、共有出来ていない
という感想が沸いてくる。一人でも見る価値はあると思っていたけれど、どうやらそれは
間違いだったらしい。誰かと一緒に見た方が、ずっと綺麗で楽しいと思う。
 出来れば、あの人と二人きりで。
 そのときまで、この景色を取っておくのも悪くないかもしれない。溜めていた幸福は、
やがて大きなものになり二人を包んでくれるだろう。自分でも笑ってしまう程にメルヘン
な想像に、少し吹き出してしまう。もう幼い夢を見る年でもない、あこがれてしまう部分
や惹かれる部分が多いけれど、今のは無しだろう。
 大通りに戻り、軽く伸びをする。
428名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 23:53:50 ID:lxE43LNo
一応原作者の許可出たらうpするとして、以下注意書き。

・勢いで描いたものです。ラフなので線は荒いし全体的に汚くなってます。
・質の保証は出来かねます。一応人並みに描けるつもりではありますが所詮は素人ですから。
・あくまで自分のイメージを描いた物なので他の人は“違う”と想われるかもしれません。
・一番の問題点。描いた人は携帯厨です。PCだと画像閲覧に問題が発生するかと思われます。

以上の点を踏まえておいて下さい。
429『首吊りラプソディア』Side首吊り:2007/02/08(木) 23:54:19 ID:tqSNTpXK
「こんばんは」
「あ、どうも」
 声に振り向けば、どこかで見たような顔だった。思い出そうとするけれど、どうしても
思い出せない。珍しいことではないけれど、そんな風になるとどうも気持ちが悪い。相手
にも失礼だと思うし、知り合いだったとしたら何だか悪い。どこかで見た筈だったのに、
この女の人はどこの誰だっただろうか。
「あの、昼間にSSランクの人と一緒に居ましたよね?」
 尋ねようとする前に、相手が答えを教えてくれた。そうだ、この人は昼に御飯を食べた
店の店員さんだ。通りで思い出せなかった筈だ、今日初めて会ったのだから。それも短い
時間、記憶に残っていなくても無理はないかもしれない。
 そして同時に、心に引っ掛かっていた理由も分かった。覚えていなくても頭の中に僅か
に残っていた理由、それは悪い人だったからだ。昼間、あの人の手に勝手に触れた。料理
を出すふりをして、事故に見せかけて手を出すなんて、何て卑劣な女なのだろうか。バレ
ていないと思っていても、自分には分かっている。ここは監獄都市で住人はほぼ皆が前科
持ちだ、善人の皮を被っていても首輪が薄汚い本性を示している。ランクは低いものだが
本当はどうなのやら、きっとあの人も食いものにするつもりなのだろう。浅ましい。
「ひ、助けて」
 睨みつけると、彼女は一歩後退した。自分の計画が知られたのを悟ったようだ、馬鹿め。
やましいことが無ければ堂々としていれば良いのに、そうしていないのは何か後ろめたい
ことがあるからだ。これでは、自分は悪人だと言っているようなものだ。悪人だと証明が
されたら、残ることはただ一つ。注意をして、真人間になってもらうだけだ。思い返して
みれば今日はまだ一人も注意をしていないし、丁度良かったかもしれない。
430『首吊りラプソディア』Side首吊り:2007/02/08(木) 23:55:43 ID:tqSNTpXK
「助けて、助け……」
 うるさい。
 逃げようとしたので、まずは足を破壊する。悪人を逃がすような悪い足は、二度と治る
ことのないように捻り潰してしまえば良い。這って逃げようとする腕も同罪だ、使いもの
にならないように捻り、骨を砕き、筋繊維を全て千切り飛ばす。いやらしい視線を飛ばす
目も潰そう。煩く汚らわしい言葉を吐く口は、空気を消すことで無力にしてしまえる。
 彼女は暫くもがいていたが、すぐに大人しくなった。注意をするのは、やはり言葉では
なく見に覚えさせてやるに限る。これで悪い部分もなくなって、良い人間になっただろう。
最後は紐で吊してしまえば、それで完了だ。こうすれば、もう悪さをしなくなる。
 いつも自分に暴力を振るう、馬鹿でろくでもない父だったが、唯一教えられた物がある。
今のように勇気を持って注意をすれば、相手は静かで誰にも害を加えない良い人間になる
ということだ。こうすれば、皆が楽しく暮らせるようになる。
「それに」
 彼女も身を呈して、自分に一つ教えてくれた。
 ここにはあの人を狙う、汚れに汚れた悪女が存在すると。そしてその存在からあの人を
守ることが出来るのは、自分だけだと。一緒に居たオカマや雌豚は当てにならない、現に
彼女を野放しにしてしまっていたのだから。そう考えれば、いずれあの雌豚も殺さないと
きえないのだと思う。無駄に擦り寄って、本当に最悪だ。
「くひ」
 目標が決まり、
「くひゃ」
 やることも分かり、
「けひゃひゃ」
 沸き上がる使命感で笑いが込み上げてきた。
「けひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」
 明日も頑張ろう。
 あの人に近付く悪い女を、全て良い人に戻すために。
431ロボ ◆JypZpjo0ig :2007/02/08(木) 23:58:04 ID:tqSNTpXK
今回はこれで終わりです


ネタバレ関係のせいで、この話のSideは首吊りだけになります
俺が今まで書いたものの中でもトップクラスの読みにくさに
なると思いますが、勘弁して下さい
432名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 00:00:50 ID:WcOnGCcg
首吊りキタ━━━━( ゚∀゚);y=ー( ゚д゚)・∵.━━━━ ン
GJGJGJ!とんでもない病みっぷりにwktkですとも!

しかしこの展開は……となると首吊りの正体はやはりあの二人のうちどちらかなのか?
433名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 00:01:01 ID:lxE43LNo
うわ!うわ!
注意書き書いてる内に原作者来てるわ、書き込んだら割り込みになってるわでもう生まれてきてすんませんっした!
数々の無礼、誠に申し訳無い。かくなる上は割腹して詫びる所存。

え〜……とりあえず拙い絵ではありますが

マッドハンター/如月更紗 全身
http://imepita.jp/20070208/853030
マッドハンター/如月更紗 バストアップhttp://imepita.jp/20070208/855810

うpするの初めてなんでこれで良いのか不安……。
434名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 00:03:28 ID:fbTwf/yx
>>422
折角のネタを溜め込むのも何だし、投下してみてはいかがだろう?

……うん、まぁね、ぶっちゃけ俺が読みたいだけなんだけどね

>>431
乙。

これは良質のヤンデレですね
435名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 00:07:39 ID:WcOnGCcg
>>433
GJ!これからも絵師さんの活躍を激しく期待ですよ!
436 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/09(金) 00:08:19 ID:7XURx3PG
>>415
>>431
な、なんですか! なんで今夜は投下が多いんですか!
GJ!!

>>433
ラフ絵でこのレベルの高さ!
経験者とお見受けした!
GJ!!
437名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 00:13:59 ID:mA7s0bYC
>>433
う、うめぇぇぇぇぇぇぇあくぁwせdrftgyふじこlp


とにかく超GJ!
ハサミは確か30cm定期を重ねたような、先端が角張って丸みの無い形状だったと思ったが、それ以外は完全にイメージと合致しててとても良い感じですっ
438いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/09(金) 00:14:58 ID:76e5wCUJ
>>433
GJ!
ちょっと感動。こうして絵になるとなんともいえない感慨が
最高だ! ありがとう!

そして13話と14話の間に入る短い話を投下します。
失神している冬継君の見ている、昔の夢。

14話は早ければ今夜にでも。
439いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/09(金) 00:15:49 ID:76e5wCUJ

 10歳の僕は、疑問に思った。
 どうして姉さんは学校に行かないのだろう、と。
 中学生だった姉さんは、けれど中学生には見えなかった。買ってもらった制服はクローゼッ
トの中で眠り続けていたし、体操服はゴミ箱に捨てられたいたのを見た記憶がある。学校にも、
部活にも、姉さんはいかなかった。保健室登校ですらしなかった。
 何かを怖がるかのように、学校へは行かなかった。
 何もかもを怖がるように――部屋から出ることすらなかった。
 そして姉さんは、弱すぎた姉さんは、一人で部屋の中にいるのも怖かったのだろう。大きな
人間である父や母すらも怖かったのだろう。一人ぼっちで部屋にいることに耐えられなくて―
―僕を部屋の中へと呼んだ。
 自分よりも小さな、11歳の僕を。
 世界で唯一、自分よりも弱い存在である僕を、14歳の姉さんは必要としたのだった。
『冬継ちゃんは、冬継ちゃんは私を傷つけないよね。私のこと、大好きだよね、ね、そう言っ
てよ、言ってくれないと、お姉ちゃん、冬継ちゃんのこと、どうしていいかわからなくなるの』
 がくがくと震えて、一回りも小さな僕を抱きしめて、すがるように姉さんはよくそう言った。
僕に好きだと言って貰いたがっていた。
 そう姉さんに言われるたびに、僕はまだ筋肉ついていない手で抱き返して、
『――うん』
 と頷いたのだった。
『うんだけじゃわからないわよ! お姉ちゃんは、お姉ちゃんは、冬継ちゃんからちゃんと聞
きたいの、ね、わかるでしょ、すきだって、いてもいいんだって、ちゃんと、ね、そう言って?』
『うん。姉さんのこと、俺、好きだよ』
『駄目よ冬継ちゃん、そんな怖い言葉づかいしちゃ、駄目よ、冬継は、僕って、そういわない
と、ね?』
 抱きしめた力が強くなる。細い僕の体を千切らんばかりに。
『分かったよ姉さん』
『じゃ、じゃあ、もう一回言って? お姉ちゃんのこと、すきだって、そう言って?』
『僕は、姉さんのことが、好きだよ』
『――。ありがとう冬継ちゃん、冬継だけは、ずっと、ずっとずっと、私の味方だよね、私の
こと、好きだよね』
 そう言って姉さんは、僕にキスをした。僕は受け入れられるがままにキスをされた。キス以
上のことも、それ以上のことも、それ以下のことも、何でも受け入れた。
 姉さんは、僕を必要としていたから。
 僕に依存して、依存していなければ生きていけなかったから。
 そして――

 姉さんに依存していた僕は、姉さんに生きていてもらわなければ、困ったから。

 だから――好きだと、何度も繰り返した。
440 ◆5PfWpKIZI. :2007/02/09(金) 00:17:58 ID:1xdnCuh9
>>433
あのさ、生まれてきてくれてありがとう。

>>赤いパパ氏
よづりさんヤバいっすね……最高です!

>>ロボ氏
難解なのは大好物です!首吊りはいったいどっちなんだろう。

そしてこの流れで投下します。筆力が他の方に比べてはるか及ばないながら。姫野さんの話を。
441いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/09(金) 00:18:11 ID:76e5wCUJ
 後天的に『弟は姉のことが好きなのだ』とすりこまれた僕は、教え込まれた僕は、その通り
に育った。12歳までに人間の価値観は形作られる。柔らかな粘土のような頭を、姉さんは自
分の好きなように作り変えたのだ。
 里村春香という人間を、無条件に許容する人格を。
 あるいは――里村春香のような人格を、無条件に許容する人間を。
 そうして。
 出来上がったのが、里村冬継という人間だった。姉さんのように狂った人間を否定すること
ができないように作られた――それこそが僕だ。
 そのことを、悔しいとは思わない。
 そのことを、悲しいとは思わない。
 そんなことを思うようには――造られなかったから。
 僕は、姉さんが好きだ。
 姉さんが好きだということ以外に――何一つとして、与えられなかった。
 それだけが価値観の全てで、それだけが生き甲斐で、それだけが世界の全てだった。
 けれど。
 12歳で人格が固まって、それから一年経った、温かな春のある日に。

 ――姉さんは、変わってしまった。

 360度回転したかのように、変わってしまった。ぐるりと体を360度回転させて、ひね
って千切れてしまったかのように、姉さんは別人になってしまった。
 人が変わったように。
 人間が代わったように。
 姉さんは、僕を、
『――冬継』
 と、淡々と、呼び捨てにした。
『――――』
 その変化に僕が何も言えずにいると、姉さんは珍しいことに、笑みを見せた。泣いてばかり
いった姉さんは、涙が枯れてしまったように、乾いた笑みを浮かべていた。
『私、高校に行くことにしたわ』
『…………へえ』
 そんな答しかでなかった。姉さんが聖域のような部屋を捨てて、外に出るということに対す
る驚きはあった。
 でも。
 僕は知っていた。姉さんのことしか知らないぼくは、当然のように知っていた。
 この春休みの間――姉さんが、外出していたことを。
 僕の知らない何処かへと、出かけていることを。
 誰も知らないどこかへと、通っていることを。
 そこで何かに出会って、姉さんは変わったのだと、思った。
 生まれ変わるというよりは。
 死に代わるように。
『冬継はどうしたい?』
『僕は――』
 答は、すぐに出てこなくて。
 悩んで。
 悩んだ末に、僕は、こういうことしかできなかった。
『僕は、姉さんが、好きだよ』
 いつものように繰り返したその言葉に、姉さんは『そう』と頷くだけで、抱きしめてこなけ
れば、キスをしてもこなかった。
442名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 00:18:33 ID:Gu1Opzd3
よ、良かった〜。とりあえず好評の様子。うpした直後は居に穴開くかと思った……。

>>437
最初はそれで描いてたんですがなんかバランス悪かったんでバランス重視で改ざんしました……orz

とりあえずはこれからも皆さんさえ良ければ描いていこうかなと。
あとアレだ、需要と許可さえあればエロいのも頑張る……きっと。
443いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/09(金) 00:19:37 ID:76e5wCUJ

 僕の知っている姉さんとは、明らかに変わってしまっていた。それでも僕は姉さんを必要と
していた。必要とするように育てられたのに、捨てられて、それでも――自分の存在意義のた
めに、僕は姉さんを好きでい続けた。
 変わってしまった姉さんの、慰み者でい続けた。
 時折、思い出したように、戯れるように触れ合う以外には、何一つ交流がなくても、それでも
僕は――姉さんのことが、好きだったのだ。
 気付かなかった。
 姉さんが、僕以外の誰かを好きになることなんて――想像も、していなかった。
 その変化の理由に、僕は気付けなかった。
 姉さんが死んで、調べるまで、気付けなかった。
 けれど。
 今は違う。
 今にして思えば。
 姉さんはその日に、出会ったのだろう。


 ――狂気倶楽部に。


 ただ、当時の僕は、そんなことを知らなかった。
 だから、ただ単に。
 13歳の僕は、疑問に思った。
 どうして姉さんは――生きているのだろう、と。
 何か大切なものを捨ててしまったかのように、あっさりとしている姉さんは――きっと生き
ることを諦めたのだろうと、直感してしまったからだ。
 その予感は二年後、的中することになって――――――――――――――――――――――



 そして僕は、懐かしい夢から醒める。ぺちゃぺちゃという水音と、むずがゆい感覚と共に。
 姉さんの記憶姿が、遠くへ消えていく。
 目が醒める先は、きっと――地獄のような世界に違いない。

 そこには、もう、姉さんはいないのだから。

 姉さんはもう、僕の心の中にしか、いないのだから。

(14話へ続く)
444いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/09(金) 00:21:40 ID:76e5wCUJ
あら……重なってごめんなさい orz
流れが落ち着いてから投下すべきでした
445 ◆5PfWpKIZI. :2007/02/09(金) 00:25:14 ID:1xdnCuh9
>>444
ええと、その、あれだ。俺のところにアリス送って下さい。すいませんでした。

↓改めて投下します
446恋人作り ◆5PfWpKIZI. :2007/02/09(金) 00:26:38 ID:1xdnCuh9
「聖祐人(ひじりゆうと)、私、あなたのことが好き。あなたも私を好きだから付き合って!!」
「……彼女がいるから無理」
「それは祐人の勘違いだよ。だから私の所へおいで」
「うるさい黙れどっか行け」
「姫野ーなんか先生が呼んでるぞー」
「またなの?なんで毎日呼び出しくらうのかしら。じゃあね、祐人。また明日ー」

 姫野真弓は明るく笑いながら走って行った。
 入学してから一週間、毎日のように繰り広げられる光景に誰もが慣れつつある。

「毎日助けてくれてサンキューな水城……」
「なんの、お前も真綾ちゃんいるのに変なのがくっっついて大変だな」

 聖祐人は大きくため息をついた。水城(みずき)が先生の呼び出しと偽って引き剥がすまで
姫野真弓は聖祐人にべったりなのだ。違うクラスであり、たまたま教室が離れているため
昼休みしか来ないことが唯一の救いだった。

「まだ真綾ちゃんにはバレてないのか?」
「なんとか……でも耳に入るのって時間の問題だよな……」
「でもあの姫野といい彼女でいらっしゃる北島真綾さんといいお前のどこがいいんだろうな」
「お前にそこまで言われる筋合いはない。まあ知りたきゃ真綾に聞け」
「けっ。いいよなーモテる男は」
「別にに2人だけだ。姫野で良けりゃ譲るぜ?あいつだって可愛い」
「姫野はお前にぞっこんじゃん。出来れば学年のアイドル真綾ちゃんの方をいただきたいです」
「だーめ。あれは半年も前から俺のだから」

今はまだ祐人にも軽口を叩く余裕があった。そう、今はまだ。


■■■■■■
447恋人作り ◆5PfWpKIZI. :2007/02/09(金) 00:27:47 ID:1xdnCuh9
■■■■■■


「ただいまー」

 姫野真弓はマンションのドアをあけて誰もいない家に向かって防犯のために言葉を放った。
 姉は出掛けているようだ。

「あー……まだ飽きて無いんだ……」

 姉の亜弓はいわゆるネット廃人なので普段はほとんど家から出ることは無い。 だがたまに思いついたようにふらりと出掛け、何回かに一回は「運命の人」を見つけて
帰ってくる。そして亜弓は「運命の人」を見守り続ける。真弓にすればちゃんとダイレクトに伝えるべきだと思うのだが亜弓に
とっては見守ることが愛だった。
 どちらにしても亜弓は数ヶ月で相手に飽きてしまい、元のネット廃人に戻るのだが。
 それは真弓が覚えている限り繰り返されていた。

「はぁ……相談したいことあるのになぁ……」

 祐人を素直にするために今すぐにでも動きたい。計画は出来ていたが普通の女子高生
である真弓には実現できることに限界があった。絶対に姉姉である亜弓の助けが必要だ。

448名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 00:28:20 ID:x/ZaI2Z/
ちょwwwwwww
とりあえず全てにGJ!と言わせてくださいorz

素晴らしすぎますよ
449恋人作り ◆5PfWpKIZI. :2007/02/09(金) 00:28:54 ID:1xdnCuh9
「祐人ぉ……私もう我慢出来ないよ……」

 鞄を投げ出してベットに腰掛け、真弓は自分の体を抱きしめた。そして右手をそろそろと
下ろしてスカートの中に滑り込ませる。既に濡れぼそっている部分に下着の上からさわると
真弓の指は迷うことなく中に入りこんで直接秘部に触れた。最初は全体をなぞるように。
最も敏感な部分にいきなり触れたりせず自分を焦らすようにする。

「……ぁ………ん…ゆうと……」

 下半身から広がってくる甘い痺れによって思考が溶ける。真弓の指はその二本だけ別の
意志をもったかのように責め立てた。じゅぷじゅぷといやらしい音が彼女の耳にも届く。真弓にとってその指はもはや自分のものでは無かった。これは祐人の指。
彼の指がそこに触れていると思うだけで更なる快感が真弓をつつみこんだ。指は真弓の
敏感な部分を執拗に責め立てる。

「……んっゆうとぉっ」

頭の中が白くはじけた。


■■■■■■
450恋人作り ◆5PfWpKIZI. :2007/02/09(金) 00:30:28 ID:1xdnCuh9
■■■■■■


「ねえ真弓……私また間違えたみたいなの」
「あ、お姉ちゃん今回の人やっと飽きたんだ?」

 夕食中に突然亜弓は切り出した。どうせ飽きる時も見つける時もいつも突然なのだが。

「飽きたんじゃないわ。間違いに気付いたの。あの人は違うわ……」
「はいはい。今回は長かったねー4ヶ月ぐらい?」
「そうね……もう使った機器の類は全部回収してきたの。
 今回は真弓に手伝ってもらわなくて大丈夫だったわ」
「そう、お疲れさま。ってことはお姉ちゃん当分は時間ある?」
「ええ、あるわよ」
「あー……ぇぇと、折り入って相談があるんだけど」
「なあに?」

 真弓は少し顔を赤らめてためらってから思い切ったように続けた。

「私のこと好きな人が学校にいるの」
「そう」
「聖祐人って言うんだけど」
「珍しい名字ね」
「私も祐人のこと好きなの」
「問題ないじゃない」
「でも祐人ったら本当にひどいツンデレで全然素直になってくれないの」
「大変ね」
「だから祐人には素直になってもらおうと思って。で、幾つか私じゃ手に入らないものが
 あるからお姉ちゃんの力を貸して下さいっ」

「……真弓は随分積極的なのね」
「お姉ちゃんが消極的過ぎるんだよぉ盗聴器とか仕掛けに忍び込むぐらいならちゃんと
 直接本人に会ってくればいいのに」
「私は……見守っていたいの。いいわ、手伝ってあげる」

 真弓はにっこりと笑った。その笑顔は例えるならひまわりのようだ。明るく屈託がない。
 少し薄い茶色のツインテールが揺れた。

「ありがととう、お姉ちゃん」


■■■■■■
■■■■■■
451 ◆5PfWpKIZI. :2007/02/09(金) 00:31:50 ID:1xdnCuh9
今回はここまでです。
短編以外なんて初めて書いたorz
452名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 00:33:33 ID:eSRBVESr
ついにトリをつけなすったか。
GJ!!
453 ◆5PfWpKIZI. :2007/02/09(金) 00:35:00 ID:1xdnCuh9
>>452
あ、何回かに別れるんで識別にと……
調子のってすんません
454名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 00:37:46 ID:I7uedTft
GJ!別にトリ付けは生意気とかいう風潮はないのでご安心を。
姪っ子に全裸で監禁されながら続き期待してます!
455名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 00:37:56 ID:mA7s0bYC
>>442
なるほどなるほど。
絵のバランスとかわかんない素人が生意気言って申し訳ないorz

これからの絵にも期待してますよー

>>444
GJGJGJ!
こうして見ると、冬継君もかなり重度に病んでるなぁ……


>>451
こっちにもGJ!
姉wwwどこが消極的なんだよwwww
456名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 00:42:01 ID:YIAnHCcB
もはやスレごとGJ!!!

msUmpMmFSs氏
ありがとうございます!
死力を尽くします。

>>442
すばらしい!
もっと更紗に惚れたぜ
後に助けを請うかもしれませんです

まずはお茶会の世界観を頑張って制作してみます。
457名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 00:43:52 ID:bd9FPAv6
なんなんだ…このGJ祭りは!?
>赤いパパ氏 既に病んでそうなヒロインΣd(・∀・)イイ!!
>ロボ氏 いい感じの病みっぷりな首吊りの正体はどっち!?
>◆msUmpMmFSs氏 春香の病みっぷりがよかったっす!冬継も病んでますなぁ!
>◆5PfWpKIZI 祐人との馴れ初めキタ━━(゚∀゚)━━ヨ!!!!
全てにGODJOB!! 続き待ってます!
458名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 00:59:27 ID:Gu1Opzd3
勢いでまた描いた。
須藤幹也/雨に唄えば
幹也が「雨に唄えば」を口ずさんでいるところのつもり。
一応カラーだけど殴り描き同然。陰影考えずに肌色ベタ塗り(しかもムラが激しい)なんで味気ない。

ハサミについては単に自分の力量不足。きっと四角いハサミを見栄えよく描く手段もあったはず。

そして二度になるバッティング申し訳無い!
459名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 01:00:43 ID:Gu1Opzd3
って肝心のリンク張ってないし
http://imepita.jp/20070209/031430
460名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 01:02:28 ID:ADgHa5mN
活気あふれるこのスレGJ!!ヤンデレ好きって結構いるんだな!!
461名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 01:07:55 ID:1xdnCuh9
>>459
少なくとも俺のイメージには

死ぬほどぴったりですGJ
462名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 01:12:17 ID:2l3NQqiE
なんか来てない間にすごいことになってる・・・
投下された皆さん、GJです。
とうとう絵まで投下されるようになるとは・・・
しかもレベル高い・・・
ヤンデレの時代ktkr?
463名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 01:16:59 ID:mA7s0bYC
今日はヤンデレ祭だな

>>159
上手い!もうただひたすらにGJ!
464名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 01:28:46 ID:ADgHa5mN
>>459
GJ!!俺の勝手なイメージではGOTHの神山樹だったがこっちもいいな!!
465名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 01:31:31 ID:Gu1Opzd3
ついでにヤマネも描いてみた。
……いい加減はしゃぎすぎた。腰も痛いしもう寝ます。
466名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 01:33:25 ID:Gu1Opzd3
またリンク張ってないし……。
脳みそ腐ってきてる……。
http://imepita.jp/20070209/052930
明日からはもっと時間掛けてちゃんとしたの描きます。
467 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/09(金) 01:41:11 ID:7XURx3PG
>>466
やばっ可愛すぎ。萌える。
GJ!!


ところでさ、俺も投下していいかな?
468名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 01:44:00 ID:2l3NQqiE
>>467
もちろんいいですとも。
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +
 と__)__) +
469レッド・グリーン・ブラッド ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/09(金) 01:46:40 ID:7XURx3PG
またしてもプロットから。
>>197のネタ。元はヤンデレスレか嫉妬スレのどっちかで見たことがある。
たしか主人公がエロゲーマーだったように思う。
勢いで書いてみた。

もしかしたら同じようなSSがあるかもしれないし、
正直言って投下していいかわからないけど、投下する。
470レッド・グリーン・ブラッド ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/09(金) 01:47:21 ID:7XURx3PG
〜レッド・グリーン・ブラッド〜

 ある夜の、都心部に在るマンションの一室。
 一人の男がパソコンと向かい合っている。
 
『真也くん! 私もあなたが好き!』
「よっしゃあああああ! レッツ! エロシーン!」

 パソコンのモニターに映っている女の子の頬が紅く染まる。
 そして画面が切り替わり――――

『駄目ぇ・・・・・・そんなに強く揉んだら、感じちゃうよぉ・・・・・・』
「よーしよし。揉みしだけ揉みしだけ!」

 女の子は前髪を隠した男に胸を揉まれていた。

 ここまで言えばわかるだろう。
 この男――真也――はエロゲーをしている。
 しかしこの男、やけに興奮している。

『やああ・・・・・・乳首が、たっちゃうよぉ・・・・・・』
「いいぞ! そのまま責め続けろ!」

 どうやら真也は胸フェチのようだ。
 その証拠はこちら。

『あっ・・・・・・すっごくおっきい・・・・・・はぅ、んむぅ・・・・・・』
「なんだ・・・・・・終わりかよ・・・・・・」

 口淫のシーンになった途端、スキップボタンを押した。
 この男にとっては胸を使ったプレイ以外は使えないらしい。
 何に使うかは聞かないでくれ。聞きたくないだろ?
471レッド・グリーン・ブラッド ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/09(金) 01:48:35 ID:7XURx3PG
 この男について少し情報を教えておこう。

 名前は黒川真也。22才。地元企業に勤めるサラリーマン。
 エロゲーマー歴は一日。
 というか、さっきプレイしていたゲームが初めてのエロゲーにして、
初めてのエロシーンだった。
 普通、初めてのエロシーンは興奮してネタにしてしまうものだが、
この男の胸フェチぶりは常識の範疇に収まらないようだ。

『うふふ。こうされるのが好きなんでしょう・・・・・・?』
「その通りです!」

 早くも別のヒロインを攻略して、エロシーンに突入している。
 今度は最初に攻略したヒロインよりも巨乳のキャラ。
 その巨乳が男のイチモツを挟んでいる。
 こっちの男のボルテージも最高潮だ。
 
 ・・・・・・解説するのやめよっかな。
 
『ほら、ほらぁ・・・・・・イっちゃいなさい』
「うあ、まず・・・・・・っ」

 待て!早すぎるぞ!
 くそ!間に合え!

 ピ――――――――――――――

「ふう・・・・・・間に合った」
 
 こっちもなんとか検閲が間に合った。
 もう少しでエグい描写が入り込むところだった。

 ・・・・・・とまあ、ここまではPCを購入した成人男性ならば
誰でもやりそうなことである。

 しかし、この男はとんでもない間違いを犯した。
 初めてプレイしたヒロインのエロシーンをスキップしたのがそれだ。

 そしてこの後にすぐそのことを思い知ることになる――――
472レッド・グリーン・ブラッド ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/09(金) 01:49:28 ID:7XURx3PG
 一通り後始末を終えた真也は、少しシナリオを進めたあとで
PCの電源を落とそうと思い、プレイを続けていた。 
 キリのいいところでセーブをして、ゲームを終了しようとしたら、

 ぴろりん♪

 効果音と共にメッセージが現れた。
 こう表示されている。

『おめでとう! 真也くんはとっても運がいいね!
 スペシャルステージをプレイする権利が与えられたよ!
 どうする? やってみる?』
「へえ、こんなのがあるんだ・・・・・・」

 まだ寝るまで時間があったので、『はい』のボタンをクリックした。

 カチッ

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『きゃああああああああ!」

 クリックした途端、女の叫び声が聞こえた。

 この声はさっきネタにしたヒロインだ。
 しかし、この声はさっきの色っぽい声とは違う。

『あはははは! 待ちなさいよお! このホルスタイン女ぁ!』

 今度は別の声がした。
 最初にプレイしたヒロインの声に似ている。
 
『ひいい! やめてぇ! 斧は、うっぎゃああああ!』
『あっははははは! ひどい声ねぇ。さっきの男に媚びる声とは全然違う。
 まあ、私が許せないのは、真也くんにその声を聞かせたことなんだけどね!』

 ごす! がっ! ぐちゃあっ! ぼぎいっ!

 ひどく生々しい音だ。まるで、本当に殴っているようだ。
 
「なんだよこれ! 巨乳キャラがウリのゲームじゃなかったのかよ!
 それに今・・・・・・」

 はっきりと『真也くん』と言った。
 最初のエロシーンでは名前の部分だけ声が出ていなかったのに、
今、ヒロインの声で喋った。
 このゲームにはこんな機能は付いていない。
 真也は訳がわからなくなっていた。
473レッド・グリーン・ブラッド ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/09(金) 01:50:43 ID:7XURx3PG
『これで、とどめぇぇぇぇぇぇ!!!』

 ぐしゃああっ ・・・・・・

 ――どしゃあっ!

 どく。 どく どく どく。 どく、 どく、 どく どく ・・・・・・・・・・・・

 襲われていたヒロインが、糸の切れた人形のように倒れた。
 続いて、血に濡れた斧が画面にアップで映る。
 
 ぽたり。 ぽたり。

 血が滴る音が聞こえる。
 
「うあああ・・・・・・は、早く消さないと!」

 かち、かちかちかち、かちかちかちかちかち

 真也は右上の×をクリックするが、ゲームの画面は終了しない。
 電源ボタンを長押ししても同じだ。

『う、うフフフふふふふふふふふふふふふふふふふふ。
 あぁぁははははははははははははははははははははは!
 あははっ・・・・・・
 真也くん?見てくれた?』

 女の顔が今度は映った。
 さっき真也がエロシーンをスキップしたヒロインだ。

『あの女は殺してあげたよ。
 だから、今度はあたしを見ながらあんなことをしてね。
 なんだったら直接やってあげてもいいけど、少し『難しい』からやめとく。
 でも、無理じゃあないんだよ?』

 まるで本当に生きているような声だ。
 だから、真也はつい返事をしてしまった。

「あ、はは、ははは。どうせ、ゲーム会社のいたずらだろ。
 よくできてるなぁ、ほんと・・・・・・」
『うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。
 いたずらじゃないんだよ?ほ、ん、と。
 でも、今だけはそういうことにしてあげる。
 じゃあ、スペシャルステージはこれでお終い! じゃあね!」

 その音声と共にゲーム画面が消えた。
474レッド・グリーン・ブラッド ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/09(金) 01:51:41 ID:7XURx3PG
 モニターにはいつものデスクトップ画面が表示されている。
 
「あはははは。変な夢でも見たんだな。きっと。うん。
 そうに決まってる。こんなことあるはずないもんな」

 ゲームのヒロインが話しかけるなんて、夢でしかありえない。

 電源を切るためにマウスを動かして終了ボタンをクリックしようとしたら、
勝手にテキストエディタが立ち上がった。

「え?」

 かたかたかたかた かたかたかたかたかた たん
 かたかたかたかたかたかたかた たん

 今度はキーボードが勝手にストロークを開始する。

「まさか・・・・・・」 

 キーボードからゆっくりと画面へと視線を映すと・・・・・・

『嘘じゃないよ。真也君。

 じゃあ、また明日。

 今度は必ず満足させてあげる。

 おやすみなさい』

 カチッ
 
 マウスの音と共にテキストエディタが終了した。

 真也は呆然として動けない。
 足は震え、全身に鳥肌が立っている。

 
 彼は パソコンの中のヒロインから 惚れられてしまったのだ。

 終
475レッド・グリーン・ブラッド ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/09(金) 01:52:52 ID:7XURx3PG
以上で終了です。
なんだか投下祭りみたいだから、やっちゃいました。

エロゲやってるひと、ごめん。
476いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/09(金) 01:59:28 ID:76e5wCUJ
>>458
>>466
GJ! 感謝感激の嵐です。
須藤幹也は見た目はごく普通で中身がアレなキャラ、というイメージがあったのでぴったりです
そしてヤマネが可愛すぎる。この少女にならさされてもいい。
……誰も彼も目が病んでるのは気のせいじゃないんだろうなあ。

14話投下します
477いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/09(金) 02:00:24 ID:76e5wCUJ
 目が醒めたら地下室にいた。
「…………」
 それが本当に地下室なのかどうか、いまいち判然としない。周りを打ちっぱなしのコンクリ
ートに無理矢理木の板を拵えたような、大雑把な壁に囲まれて、窓も扉もないからそう判断し
ただけだ。正面、部屋の奥には上へと繋がるハシゴがある。あのハシゴをあがったら屋上だっ
た――なんてことになれば、そこそこ面白そうなのだが。
 部屋は狭い。六畳一間、あるかないかといったところだろう。それだけなら狭いというほど
でもないが、部屋の両脇に詰まれた木箱が部屋を圧迫していた。低い天井には電球一つしかな
くて、余計に圧迫感が増していた。電球から伸びたむき出しのコードは、部屋の端へと繋がっ
ている。部屋にあるのは、奇妙な形のトイレと、幾つもの木箱と、簡易ベッドだけ。
 シェルターみたいだ、と思う。
 ずっと前に姉さんと二人で見た、古い外国製のモノクロ映画。その中に出てきた個人用シェ
ルターに、雰囲気がそっくりだった。台風や爆撃のために逃げ込むための地下室。一ヶ月程度
なら、ずっと暮らして行ける環境のはずだ。快適とはいえなくても、生きていくことはできる

 ただし。
 両方の手足を、鎖と手錠でつながれていなければ、だが。
「…………」
 ぴちゃぴちゃと、水音が聞こえる。粘つくような、小さな音が、耳にこびりついて離れない
。同時に下腹部からむずがゆい感覚。夢か醒める寸前から感じていたものだ。首筋がひりひり
と痛むのは、スタンロッドをあてられたからだろう。
 ――スタンロッド。
「……ッ、」
 寝惚けていた意識が、一気に覚醒した。まだ微かに頭に残っていた夢の残滓をこびり落す。
そんなことにかまけている暇はないのだ。
 そして、目を覚ました僕を見上げて、
「あ、先輩。おはようです!」
 咥えていた性器を口から離し、場違いなほどに明るい声で、神無士乃は挨拶をした。
 離れる瞬間に、ぬるりと、ナメクジが這うようなぞくぞくとした感触が走る。それだけで張
り詰めたものは限界を迎えそうになった。
 見れば、ズボンのチャックはあけられ、そこから取り出された取り出されたモノは、神無士
乃の唾液に塗れていた。暗い電球の光を浴びて、ぬらぬらとした輝きを見せている。
 神無士乃は伏せるようにして僕のモノをくわえ込んでいた。たおやかな胸が、両脚に置かれ
る感触。両脚を鎖で壁の木箱と、両手を後ろで手錠で括られている僕は、ほとんど身動きがで
きない。そそりたつ自身のものを隠すことも、触れることもできない。
 神無士乃は、見下げるように、見上げてくる。
「神無、士乃――」
「はい、士乃さんです。目、ちゃんと醒めましたか?」
478いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/09(金) 02:00:55 ID:76e5wCUJ

「…………」
 普通の挨拶のように、神無士乃は言う。
 いつものように。
 日常のように。
 この異常な状況で、平然と、笑っている。
 何だ。
 僕は、何に対して、突っ込めばいい? ここは何処ときくべきか? お前は誰だというべき
か? どうしてあんなことをしたのか、どうしてこんなことをしているのか、それを訊ねるべ
きなのか?
 けれど、どれもこれも、適切な質問ではない気がした。
 僕の股の間で笑う神無士乃に対して、そんな質問は、意味を為さないような気がしてたまら
なかった。
 結局僕は、まったく関係のない質問を投げた。
「……学校に遅刻するぞ、神無士乃」
「大丈夫です先輩、今日は土曜日ですからっ!」
 自身満々に神無士乃は言う。
 ――ということは、アレから、一日とたっていないのか。
 眠ったまま一週間がたっていなかったとすれば、昨日の夜から最大でも五時間くらいしかた
っていないことになる。窓が一つもないから、外の時間なんて分からないけれど――少なくと
も、そんなに時間はたっていないのだろう。
 永遠に、眠っていたような気さえしたのに。
「はっはっは、神無士乃はアホの子だな。土曜日も学校はあるに決まってるだろ」
「そういう先輩はゆとり教育の被害者ですね。最近は第二、第四土曜日だけ学校に行けばいい
んですよ?」
「ハ! ひっかかったな神無士乃、完全週休二日制が導入されたことを知らなかったようだな!」
「まじですか!」
 悪の帝王のように笑うと、神無士乃は正義のヒロインのように驚いてくれた。
 いつも通りの、馬鹿げたやりとり。
 そのやりとりを続けながら、こっそりと、神無士乃にバレないように手足を動かしてみる。
鎖が外れないかと思ったのだが、どうにも動かない。手は完全に固定されていて、前に回すこ
とも上に動かすこともできないし――足を動かせるのはせいぜい五センチ程度で、閉じること
すらできなかった。
 そんな僕に対し、神無士乃は笑ったまま、
「駄目ですよ先輩。いや、無理ですよ先輩。私、ちゃんと外れないように頑張ったですから」
「…………」
479いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/09(金) 02:02:05 ID:76e5wCUJ

「どこにも、逃げられません」
 その言葉に。
 僕の顔から、笑みが消える。神無士乃は確信して、これをやっているのだ。
 スタンロッドで意識を奪ったのも。
 地下室に繋いだのも――全て、神無士乃の、仕業なのだと、目の前の少女は言っている。
 笑う瞳が、告げている。
「でも、先輩は逃げたりしないですよね。ずっと私と一緒でしたもんねー」
 笑う、笑う、楽しそうに、おかしそうに。
 神無士乃は、笑っている。
「……確かに、ずっと一緒だったな」
 姉さんを除けば、だが。
 姉さんを除けば、僕からは何も残らないことを除けば、だが。
「そうですねっ!」
 僕の心中を知り得ることのない神無士乃は、笑ったまま、続ける。
「そして、これからも一緒です。先輩と私、二人仲良く、二人三脚です」
「三面六臂の方がまだマシ、といった感じだな」
「四身の拳とならどっちを選びます?」
「狼牙風風拳とならそっちを選ぶよ」
 ヘタレは駄目だ。間抜けならまだいいが、ヘタレだけはいけない。
「それで――この状況、どう説明する気だ?」
 僕の言葉に、神無士乃はひひひひひ、とオヤジ臭く笑って、
「この状況って、こんな状況のことですか?」
 くい、と。
 そそりたった僕のモノを、その指先で、いきなり握りしめた。
「――ッ!!」
 細い指が肉に食い込む。こすれる爪が、微かな痛みと、痛みを越える快楽をもたらしてくる
。触れられただけで、意識の全てがそこに集まってしまう。
 玩具のように、僕のモノを、神無士乃は上下に揺らした。空気を掻き混ぜるように。唾液が
重力に従って下へと落ち、その微かな感覚を、鋭敏になってしまった性器が全てかき集めてし
まう。
 もどかしく、嬲るような手つきだった。
480いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/09(金) 02:03:13 ID:76e5wCUJ

「目の前に無防備な先輩がいちゃいましたから。ちょっと、やりたくなったんです」
「無防備って……こんな強制無防備宣言みたいなことしといて、お前、」
 反論する僕を、完全に無視するように、神無士乃は手に力を込める。
 一瞬、握りつぶされるかと思った。
 けれど、そんなことはなかった。ニ本の指では挟むように、少しだけ強く僕のモノを神無士
乃は握る。指先から、神無士乃の体温が伝わってくる。そのまま上下にこすって欲しいと、頭
の片隅で誰かが考えている。命の危機も、異常な状況も、全て無視して快楽をむさぼりたいと
、すぐそこにある神無士乃の顔に出してしまいたいと、頭の中で誰かが言っている。
 その誰かを、精神力で、どうにか押さえ込む。
 それは、神無士乃から見れば丸分かりだったのだろう。意地の悪い笑みを浮かべて、神無士
乃は言う。
「だって、もう先輩は――私だけのものじゃないですか」
「お前だけの、もの?」
「そうですよう。先輩は私だけのものですし、私も、先輩だけのものです」
 当たり前でしょう?
 そう言って、神無士乃は、笑う。 
 笑って、彼女は言う。
「だから、安心してください。

 他の誰にも――先輩は、傷つけさせません。

 安心して、ください」
「他の――誰にも」
 その言葉。
 その言葉で、僕は思い出す。スタンロッドで気を失う前のことを。本当ならば、最初に思い
出さなくてはいけなかったことを。
 そうだ。
 あの時、あの夜。
 如月更紗が、マッド・ハンターだとわかって。
 そして、そのマッド・ハンターが――僕を庇って、アリスと激突したのだ。
 あまりにも目まぐるしく進む事態に、あの時は驚いている暇すらなかったけれど……こうし
て考えてみれば、それはとんでもない内容のはずだ。
481いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/09(金) 02:04:09 ID:76e5wCUJ

 マッド・ハンター。
 狂ったお茶会の一人。
 ヤマネ、マッドハンター、三月ウサギからなる、狂ったお茶会と呼ばれるチームの一人。狂
気倶楽部の中での小集団。物語別の、御伽噺。
 姉さんは、里村春香は、三月ウサギだった。
 ――里村春香と、友達だったのよ。
 そう、如月更紗は言っていた。
 それは、つまり。
 姉さんは――僕が如月更紗と知り合うよりも早く、ずっと昔から、付き合いがあったという
ことになる。
 高校生になった、狂気倶楽部に足を踏み入れた、あの日から。
 それが一体何を意味するのか、僕には分からない。分かるのは、その如月更紗が、僕を守る
ように、本当ならば身内であるはずのアリスと衝突したということだけだ。
 マッド・ティーパーティーに、アリスは訪れ。
 アリスが去ることで、狂ったお茶会は終わる。
 出番が、終わる。
「…………」
 あいつは。
 僕を庇ったあいつは、無事なんだろうか。『あの恐るべき』と形容していたアリスから、生
き延びることが、できたんだろうか。
 分からない。
 地下に監禁されていたは――何も、分からない。

 出なければならない、と思った。

 誰でもない、他の誰でもない、如月更紗のために。
「あ。先輩、他の人のこと、考えてます。駄目ですよ、それ」
 言いながら、神無士乃は、手に握ったソレを、舌でべろりとなめ上げた。下から唾液をすく
うように、ざらざらとした舌の感触が、竿を這っていく。カリ首を握る指まで辿り着いたとこ
ろで、今度は根元へと降りていく。
「う、うぁ、」
 一回で終わらなかった。二回、三回と、神無士乃は丹念に舐める。愛しそうに、嬉しそうに
。綺麗に、綺麗に、舐め取っていく。そのたびに快楽が電流のように走る。
482いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/09(金) 02:04:52 ID:76e5wCUJ

 けれど、足りない。
 決定的に、足りていない。神無士乃はつかんだ手の方は動かさない。絶頂へと導かないよう
に、加減して愛撫しているのが、はっきりと分かる。
 笑う彼女の瞳が、告げている。
 ――まだ、いっちゃ駄目ですよ。
 そう、神無士乃は笑っている。
「私のことだけ、考えてください。だからこれは――お仕置きです」
 ――お仕置き?
 その言葉に、疑問を思う暇もなく。

 かり、と。

 むき出しになった頭頂部を、神無士乃は甘噛みした。
「――――――っあ、あ、」
 今までの優しい触れ方とは違う、敏感なところへのいきなりの衝撃に、心のそなえもなかっ
た僕の口からあられもない声があがる。びくりと、股間が脈打つのが分かる。すぐそこにある
、神無士乃の顔に、
 出ると思った瞬間――神無士乃が、すっと、離れた。
「え、」
 足り、ない。
 足りて、いない。
 あと一ミリ、届いていない。噛んだ後、少しでも舌が触れれば、それだけで絶頂へと辿り着
いただろうに、神無士乃はそれをしなかった。極限まで敏感になった瞬間に、絶対に触れない
ように気をつけて、口を離したのだ。
 そして、立ち上がる。
 立ち上がって、見上げるように、見下ろして。
「これで、おしまいです」
 ぺろりと、唾液に濡れる唇を、自身の舌で拭い取った。
483いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/09(金) 02:05:47 ID:76e5wCUJ


「終わ、り……?」
「はい。あとで、ご飯持ってきてあげますね。じゃんじゃじゃーんと楽しみしててください、
私の手料理ですよっ」
 明るくそう言って、僕の返事も待たずに、神無士乃は踵を返す。
 踵を返して、ハシゴへと、歩く。
 股間をむき出しにして、恐らくは情けない顔をしているだろう、情けない僕を置いて。
「神無士乃――」
 何を言おうと思ったのでもない。
 気付けば、口からは、名前が出ていた。
 名前を呼ばれて、神無士乃は振り返り。
「早く、私のことだけを考えてくださいね――冬継さん」
 最後に、僕を、名前で呼んで。
 神無士乃は、ハシゴの側にあったスイッチを切って、部屋の中の電気を消した。そしてハシ
ゴを昇り、明るい世界へと出て行く。
 天井の扉が閉まる。
 明かりが途絶える。
 地下室に、闇が訪れる。


 何も見えない地下室で、動くこともできないままに――僕は大きく、ため息を吐いた。


 如月更紗が、無事でいるといいと思った。
 無事でいて欲しいと――願った。

484いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/09(金) 02:07:19 ID:76e5wCUJ

以上で14話終了です。
エロは難しい……かける人が凄いです
投下ラッシュ、明日ゆっくり読ませてもらいます
485レッド・グリーン・ブラッド訂正 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/09(金) 02:08:44 ID:7XURx3PG
>>474
>『嘘じゃないよ。真也君。
『夢じゃないよ。真也君。

でした。ごめんなさい。

・・・・・・毎回こんなこと言ってるな。
重ね重ねごめんなさい。

>>484
後輩! 後輩! 
GJ!! GJ!!
486名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 02:13:39 ID:2l3NQqiE
・・・今夜はねむらせてくれなかったな。
◆Z.omhTbrSo氏、wktkして良かった。怖い!GJです。
お茶会の方、寸止めとはまた乙な真似を・・・GJ。
お二人に改めてGJ。ヤンデレ万歳。
487名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 02:14:19 ID:mA7s0bYC
終わらないお茶会ノベルゲー化の始動、神絵師降臨、そして各作者氏の怒濤の投下ラッシュ……

感動した、ヤンデレスレと神の方々GJ!
488名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 02:38:35 ID:j37TF7Vl
世界観とかかなりいい感じなので電撃とかのラノベの選考に応募してみては?
489名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 02:40:55 ID:Gu1Opzd3
残念ながらああいう賞は“未発表”である事が条件。
なのでお茶会シリーズは残念ながらすでに選考対象外。
490名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 04:39:50 ID:Gu1Opzd3
こんな早くにお早う御座います。
結局寝てなかった人です。
今度はアリスを描いてみました。
フリル描くので死にそうになった。
http://imepita.jp/20070209/165620
491名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 05:10:01 ID:q+dezRSm
  |    |   :|   |  | |::|:|
  |_,,..+-―┴‐┴-+、,j::|:|
'"´            `::ヽ
              .:::::::|
-ァァテァ‐rチ''''''''''""`ヾミ-、,ノ
// / ,/、ツ      .:ヾ__ゝ!
,jツ /,∠≧、_    _,ノエ,ヽl
シ,ノ ,癶 ◎`ヾ゙  、f!f◎,ハ,iリ
ノ /  `゙゙´''"  l l:゙`~´:;jソ
/         l !:::::::::/ ,r-、
           l::::::::/ 〈,ク/
ト、        ,_ 」:::::/  </
. ヽ、    r、_,,ヾ,ィ:/  ,r―ァ
 ゙::ヽ、     、,,`゙´/   ゙゙7〈
、、:  `ヽ、 . . .::::~´/    <ヘ>
:::::`:ヽ;、、:Y>-‐ '′    {l{l,ヘ
:::::::::::::::::`ヾ′        </
492名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 06:51:01 ID:Cd7ZC/p+
何気なく言った、同人ゲームになったら素敵ではないか。という発言が凄い流れになっていてびっくりした。

発売を楽しみにしています。
493名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 07:02:47 ID:1XuwJ+nY
>>489
電撃はネットで公開したもののみ、選考対象に入れてくれるみたいだぞ
494名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 07:44:16 ID:gIAN0Otz
起きたら投下ラッシュキテタ━━(゚∀゚)━━!!
そして遂に絵師様の降臨もキテタ━━(゚∀゚)━━!!

全ての方々にGJを!
495名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 08:24:49 ID:Gu1Opzd3
再びおはよう御座います。
性懲りもなくうp。
デッサン甘かったりとかハサミの形が明らかに変とか正直人に見せられるレベルではない……けどうpする。
要リベンジな一枚。
http://imepita.jp/20070209/098100
496名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 08:33:45 ID:YIAnHCcB
>>495
神ですかあなたは!
ハサミ以外はwばっちしイメージ通り!

>>493
文庫で読みたい気もするが、
そうするとゲームは頓挫してしまうのです。
まあ>>484様のお好きなようにどうぞです。
作るだけなら、配布販売さえしなけりゃ、
問題ない、はずですし。
497レッド・グリーン・ブラッド訂正 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/09(金) 09:58:47 ID:7XURx3PG
>>470
>女の子は前髪を隠した男に胸を揉まれていた。
女の子は前髪で顔を隠した男に胸を揉まれていた。

でした。ごめんなさい。

>>495
この状態で
「というわけで、貴方の〜」
と言われるわけですか。

GJ!! エロゲ以上のクオリティ!
498名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 10:08:42 ID:Gu1Opzd3
お茶会クライマックス。
自宅で幹也を迎えるヤマネ。カラー。
http://imepita.jp/20070209/363810
499名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 10:50:17 ID:w8XYMGTd
お前いい加減にしろよ
萌え殺す気か!!



ものすごい良いけどヤマネはもっと“赤”いイメージだった
500名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 10:59:53 ID:1xdnCuh9
>>498
本当に生まれてきてくれてありがとう。
ヤマネと更沙ヤバい……惚れるわ。



けどアリスはもっと華奢なイメージだった。素人がデカい口叩いてごめん。
501名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 11:39:38 ID:HHXdmeIQ
すでに萌え死んだ俺が来ましたよw

ヤマネがやべえ、イメージ以上だよ
神GJ!!!!!!
502伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/09(金) 11:41:48 ID:Gu1Opzd3
そろそろコテ晒すか。
絵柄の違いで別人とか思われそうだし。

と、言うわけでこのスレの皆さんは初めまして伊南屋(いなみや)です。
コテ使い分けるのめんどくさいんでSS書きの時の名前で名乗らせて貰います。

取り敢えず神無士乃置いときますね。
全身
http://imepita.jp/20070209/417890
バストアップ
http://imepita.jp/20070209/420060
503名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 14:45:24 ID:mA7s0bYC
>>502
萌えるなんてレベルじゃねーぞ!!
今回の神無士乃はケチのつけようがない、GJ!!
504名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 15:10:27 ID:eSRBVESr
リボンの所為か、Piaキャロ3版の某愛沢に見えた……。
505名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 16:14:46 ID:7XURx3PG
可愛いからいいじゃないか!
506名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 16:51:57 ID:gIAN0Otz
>>502
激しくGJ!
507伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/09(金) 18:09:16 ID:Gu1Opzd3
仮眠から復活。

里村冬継/全身
http://imepita.jp/20070209/649250
神無士乃/先輩っ!(カラー)
http://imepita.jp/20070209/649780
508名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 18:45:07 ID:gIAN0Otz
>>507
何度言わせれば気が済むのですか!
GJGJGJ!
509名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 18:50:39 ID:1xdnCuh9
>>507
仕事の速さにも感服。GJ!!!

そしてほぼリアルタイム更新の神業をやってのける保管庫の中の方もGJ!!
510伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/09(金) 19:19:48 ID:Gu1Opzd3
>>499のイメージに近付けてみた。
ヤマネ/おかえりっ(Ver.1.1)
http://imepita.jp/20070209/693300
511名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 19:23:34 ID:Cd7ZC/p+
ぐっとじょっぷです。

そういえば、このスレの住人の中で作曲の出来る方はいらっしゃいませんでしょうか?

私は、お茶会のBGMはすべてピアノ曲で、ギターやドラムは一切使われていない。というイメージがあります。
512名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 19:25:20 ID:Cd7ZC/p+
>>510
綺麗だ…。

もう何度口にしたかわかりやせんが、
GJ!!
513名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 19:25:30 ID:GJkPPnnx
>>475
俺だったら怯えないで
「ついに俺にもヤンデレな女の子が!!」
って喜びそうだから困る。

続き楽しみに待ってるぜ。
514 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/09(金) 19:49:40 ID:7XURx3PG
>>510
キャラデザイン・描くスピード共に速すぎる。
グッジョブ。

>>511
音楽無しのゲームは雰囲気出ないからなあ。
職人さんが見つかればいいんだけど。

>>513
期待されてるならば、俺は書こう。
515名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 20:23:32 ID:6QvQDaH3
音楽ならジャズ系のイメージが自分にはありますな。
ピアノも良いけれど。
516伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/09(金) 20:35:10 ID:Gu1Opzd3
自分はクラシックのイメージですね。ヴァイオリンとかストリングス系。

マッドハンター/戦闘儀礼服
517伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/09(金) 20:36:23 ID:Gu1Opzd3
リンク張り忘れ
http://imepita.jp/20070209/738750
518名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 21:04:56 ID:mA7s0bYC
>>517
かっこいい!もう何度言ったかわからないけどGJ!


BGMは、自分的には基本ヴァイオリンのイメージ。
で、幹也が狂気倶楽部でヤマネを殺した時の事を回想するシーンなんかはピアノの曲が合いそう。
519名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 21:06:29 ID:QrHcQP5u
何なんだこのGJ祭りは!もう今日で死んでもいい!

GJGJGJGJGJGJ!
520名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 21:09:48 ID:Y1yyrg6m
>517
毎度GJだぜあんた?!

>519
死んじゃダメだろ。

ヤンデレの幼馴染に殺されるんならまだしも。
521名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 21:15:54 ID:Cd7ZC/p+
そうですね。
テナーサックスやヴァイオリンもいいですね!!

私の案の一つに、アリス戦などの戦闘シーンではピアノの連弾など良いのではないか。と考えています。
522名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 21:25:46 ID:1xdnCuh9
終わらないお茶会の方はオルゴールの音とか弦楽器のピチカート

とか思ってた俺は少数派のようですね。
523名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 21:26:13 ID:CeDAzphQ
ちょwwwwwwwwwwwwwwwwwwww伊南屋光臨してたのかwwwwwwwwwwww

GJ!!!!

お茶会の曲はマルコム・マグダウェルの歌う「雨に歌えば」はどうか?
他にも泥棒かかさぎ序曲とか交響曲第9番ニ短調とか?
524伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/09(金) 21:35:43 ID:Gu1Opzd3
いい加減体が痛んで来た件について。
流石に座りっぱなしはキツい。
自分の執筆姿勢悪いのが原因だけど。

取り敢えず須藤幹也/或いは名も無き少年
http://imepita.jp/20070209/774110

タイトルはCルートで幹也が
「特に誰でもないよ」
と言っていた事から。
525名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 21:39:49 ID:Cd7ZC/p+
>>523
素敵だと思います。
作風的にコラールは外せないと考えているのですが、いかがでしょう?

ただ、出来ればオリジナルの曲がいいなと思っている自分がいます。
最終的には、作者様に判断が委ねられるとは思いますが。
526名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 21:46:17 ID:Cd7ZC/p+
>>522
第一部(終わらないお茶会)のラストシーン、幹也とマッド・ハンターの会話はオルゴールがいいかもしれませんね
527 ◆5PfWpKIZI. :2007/02/09(金) 22:09:53 ID:1xdnCuh9
投下します↓
528恋人作り ◆5PfWpKIZI. :2007/02/09(金) 22:12:49 ID:1xdnCuh9

「真綾ー帰るぞー」

 聖祐人と北島真綾は毎日一緒に帰宅している。2人は同じ中学から進学してきており
入学式からずっと公認カップルだった。そのためクラスの友人もそれなりに出来ては
いたが今のところ放課後はずっと一緒だった。

 けれどもこの日は違った。

「あ、あのね祐人、この人真弓っていうんだけど、相談があるんだって」
「はじめまして。姫野真弓です」

 真綾の隣に真弓がいた。

「な……真綾お前こいつと知り合いだったのか!?」
「あれ?祐人、真弓のこと知ってるの?」
「知っ」
「そんなこと無いわ。しゃべったのは初めてだよね、聖くん」
「……」

 知っている、と返そうとすると有無を言わさぬ笑顔で真弓が素早く遮った。
 やけに確信に満ちた物言いで。呼び方さえ常と違う。

「祐人?」
「聖くんの勘違いじゃないかしら。私は本当に初めて」

 この状態を至極当然のようにふるまう2人とは対象的に祐人は混乱していた。
 なぜ真弓がこんなところにいる?真綾とこいつはクラスどころか教室のある階が違う
はずだ。なぜこいつは初対面のフリをする?それとも昨日までのあれは俺の白昼夢で
本当に初対面なのか?
 冷静に考えれば真弓が嘘をついている、ということぐらいわかりそうなものだった。
だがあまりに真弓の登場が全く予想外だったこと、彼女が堂々としていたこと、そして
祐人にとって一番近しい真綾と突然友人になっていることなどが彼の判断力を奪っていた。


529恋人作り ◆5PfWpKIZI. :2007/02/09(金) 22:14:34 ID:1xdnCuh9
「あ……ああいや……」
「んもう祐人、寝ぼけてんの?」
「面白い人ね聖くんって」

 真綾と真弓は楽しそうに笑っている。まるで昔からの友人だったかのように。何故だ?
何故真弓がここにいる?真弓は訳のわからない暴走女で真綾の友人では無かったはずだ。
まだ委員会も部活動も無い。クラスだって違う。2人の設定は無いはずだ。なのに……

「でね…でね、祐人、あのね、作戦会議が必要なの。だから、今日は3人で姫野さんの家で作戦会議!」

 祐人はもう事態に流されるままだった。


■■■■■■
■■■■■■


「ぁー真弓顔赤くなってるぅ」
「違うよっ真綾が変なこと言うからでしょっ!!」
「ぇー私は水城くんってキス上手そうだよねって言っただけだよ?
 もぅ……それだけで真弓は何を想像しちゃったの?ねぇ何を?」
「何も想像してないー!」

 聖祐人の目の前で姫野真弓と北島真綾が普通の友人同士のように会話をしていた。
真弓が水城のことを好きだと言い、それを真綾がからかっている。普通の光景だ。
ごく普通の。真弓が祐人をさも自分の恋人になることが決まっているかのような言動を
取り続けた少女であり、真綾が祐人の彼女で昨日までは真弓のことを知らなかった
はずである点を除けば。

「ねぇ祐人、ちゃんと考えてよ。水城くんにどうやって近づけばいいかなぁ?」
「あ……ああ」
「ごめんね聖くん。無理やりたのんで」

 祐人は上の空だった。いつもの昼休みの姫野は本当に俺の夢だったのか……?

「ひゃぁっ」

 突然真綾が変な声をあげてはねあがった。

530恋人作り ◆5PfWpKIZI. :2007/02/09(金) 22:15:50 ID:1xdnCuh9
「ごめんね電話みたい……なんか親からみたいだから出てもいい?」
「いいよ。じゃあ私紅茶淹れなおしてくるね」

 どうやら真綾はブレザーの内ポケットにいれた携帯のバイブに驚いたらしい。カップを
トレーに載せた真弓が部屋を出ると祐人はなんだかほっとした。気付かないうちに
緊張していたようだ。
 電話を切った真綾は浮かない顔をした。

「なんかね、急用で帰らなきゃいけないみたいなんだけど……」
「そっか。じゃあ送ってくよ」
「でも、でも真弓どうしよう……せっかく勇気出して相談してくれたのに……」
「別に明日以降でもいいだろう?水城がいきなりいなくなる訳でもないし」
「でも……なんか悪くない?」

 一刻も早く帰りたい祐人と真弓を気にする真綾がもめていると真弓が戻ってきた。

「あ、真綾電話もういいの?」
「うん。あのね、それがね、本当にごめんなんだけどなんか帰らなきゃいけない
 みたいなの。急用らしくて」
「そっかーじゃあしょうがなわぁっ!!!」
「うわっ!!!」
「きゃっ!」
 三者三様の悲鳴が上がった。真綾はあげなくても良かったのだが。
 つまり真弓が足元でつまづいた結果、祐人は紅茶を思いっきり頭の上から浴びていた。

「本当にごめん!!」


■■■■■■
531恋人作り ◆5PfWpKIZI. :2007/02/09(金) 22:17:48 ID:1xdnCuh9
■■■■■■


 結局真綾は1人で帰っていた。祐人を女の子の部屋に置いて帰るのはどことなく嫌
ではあったが思いっきりずぶ濡れだったので仕方ない。それに真弓なら大丈夫だろう。
 今朝、2時間目あたりに携帯を無くした。それを見つけてくれたのが真弓だった。

「あの……北島さんのですよね?この携帯」

 何故か泣きそうな顔で真弓は真綾に話しかけてきた。

「あ、拾ってくれたの?ありがとう!!!」
「北島さんって……聖くんと仲良いですよね?」
「うんそうだよ?」
「聖くんって、み、水城くんと仲良いですよね?」
「ぇぇと、眼鏡の人だよね?」
「はい……あの、お願いします相談にのって下さい!!」

 そこまで言うと真弓は泣き出した。
 水城のことを好きで好きでどうしたらいいかわからないと真綾に泣きついた。
 そう、水城くんのことを想って泣く子と祐人に間違いがある訳は無い。そう思って
真綾は祐人を置いてきたのだ。

「早く帰ろ」

 そう呟いて真綾は足を早めた。


■■■■■■
532恋人作り ◆5PfWpKIZI. :2007/02/09(金) 22:18:40 ID:1xdnCuh9
■■■■■■


「本当にごめんね」

 祐人は真弓の姉のものだという大きめのパーカーを着ていた。ワイシャツは
とりあえずシミになりたくないので脱いで洗い今は乾燥機に入っていた。

「別にいいよ、失敗は誰にでもあるさ」

 水城の話をしようか、それとも何故初対面のふりをしたのか問い詰めようかと
考えながら出されたココアに手をつけた。少し濃かったがちょうど飲みやすい温度だ。
 そして、祐人がココアを飲むのを見た真弓が一際深く笑った。

「本当にごめんね、『祐人』」
「……!」
「本当はこんな手使いたく無かったんだけど。
 祐人が素直になってくれないのがいけないんだからね?」

 ひまわりのように笑いながら真弓は続ける。

「水城くんのこと好きだとか言うの、もちろん嘘だよ?知らないふりしてごめんね。
 でも祐人も辛かったろうけど私だって本当に辛かったんだよ?祐人が最初っから
来てくれればこんな嘘吐いて辛い思いしなくても………」

 祐人に聞こえたのはここまでだった。
 ココアに混ぜられた薬が彼の意識を奪い去っていった。


■■■■■■
■■■■■■

533 ◆5PfWpKIZI. :2007/02/09(金) 22:20:44 ID:1xdnCuh9
今回はここまでです。

>>伊南屋さん
本当に……あなたには千のGJを送りたいです。
534名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 22:21:35 ID:Cd7ZC/p+
>>533
GJ!!!
535名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 22:24:05 ID:bd9FPAv6
うをーーっ!GJ!!
次からいよいよ祐人調教ですか!?
536名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 23:17:31 ID:fpV4cJhX
いない君の作者様ーーーーーっ!GJ!!
今保管庫を覗かしてもらったんですが
「カーニバルの夜に」の続きはドコで拝見させてもらえるのでしょうか
どなたか知っていたら教えてもらえるとうれしいです!
537名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 23:18:58 ID:/DsBanc4
sageろ カス
538名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 23:27:35 ID:gIAN0Otz
>>533
GJ!!!
監禁ktkr
539伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/09(金) 23:27:50 ID:Gu1Opzd3
里村春香/三月兎
http://imepita.jp/20070209/843060

三つ編み三つですごい悩んだ……。
540伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/09(金) 23:31:41 ID:Gu1Opzd3
>>533
GJを忘れてました。すいません……orz
541名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 23:35:36 ID:Cd7ZC/p+
>>539
可愛いすぎる…GJ!!

幹也のキモウトのデザインが気になる…
542伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/10(土) 00:06:49 ID:mCeR+K8E
殴り書きキモウト
漆黒の少女/八月生まれの三月兎
http://imepita.jp/20070209/862580

車椅子の資料がないんでただの椅子。
義手、義足は球体関節人形をモチーフに。
つかキモウトって名前出てなくね?気のせい?
543名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 03:51:21 ID:eI8Tf9zd
保管庫のお茶会九回の最後辺りマッド・ハンターの台詞中で
『悲惨な事件の生き残り・須藤冬華懸命なリハビリ』って言ってるのは今確認し直したから間違いないかな。
というわけで伊波屋さんGJ!
544名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 03:51:41 ID:udbY188n
寝る前にここにくるのが習慣になってきたな〜
皆様GJ!!ワクワクしながら続き待ってます!!
そういえば妹名前出てなかったかも…もう一回お茶会読んでくる!!
545名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 03:55:34 ID:tcMn8K+H
文も絵もハイクオリティすぎるぜ!

これはワガママだけどサイ娘以外なヤンデレも読んでみたい今日この頃
サイ娘以外でどんなバリエーションのがあるだろか?
546名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 04:01:12 ID:Ao4sEZa8
GJGJGJ!!!
これはいいwwww
547伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/10(土) 07:37:12 ID:mCeR+K8E
おはようございます。

キモウト置いときますね。
http://imepita.jp/20070210/272760
548名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 07:45:10 ID:4vHZDrBN
>>547
おはようございます。

朝早くからいいお仕事してらっしゃいますね。
半開き?の瞳が狂気に満ちていますね。
毎度ご苦労様でございます。
549名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 08:51:33 ID:13yW4C4n
>>547
最高です。GJ!!

これでデザインが公表されていないキャラクターは、
キモウト五体満足ver
グリム
士乃の母
ついでに幹也の両親ですね。

期待しています。
550伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/10(土) 09:37:22 ID:mCeR+K8E
代替の少女/グリム
http://imepita.jp/20070210/344620

キモウトについて
五体満足時は義手、義足が生身になるだけでデザイン的差異はないものとお考え下さい。

両親について
初登場時はすでに肉塊だった気がするんですが。
551名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 11:04:49 ID:13yW4C4n
>>550
ケチをつけるつもりは無いのですが、作中でヤマネが幹也の家族を襲撃して、幹也がグリムに刺されるまでそれなりに時間が経っているので、
五体満足時の冬華の髪型をショートやセミロングにしていた方が、冬華登場時のインパクトが上がるのではないか?と考えたねですがいかがでしょうか?
552伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/10(土) 11:30:03 ID:mCeR+K8E
ああ、なる程!それは気付かなかった。
したらば描くかねぇ。

神無佐奈/天然にして天然
http://imepita.jp/20070210/413200
553名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 12:42:14 ID:13yW4C4n
>>552
人妻属性の無い私ですが、素直に萌えました。
GJ!!
554伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/10(土) 13:59:10 ID:mCeR+K8E
キモウト放っといてマイナーキャラ。
フリル地獄に吐血。しかも参考にした写真のフリルはレース。死ぬる。

壱口のグレーテル/全身
http://imepita.jp/20070210/500510
壱口のグレーテル/バストアップ
http://imepita.jp/20070210/501100
555名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 14:53:05 ID:x7y5aExW
伊南屋さんあんたすごすぎだよ・・・GJ。
現在SS執筆中。少し見直したら投下しようかと思う。
556名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 16:12:47 ID:6L6iLFF5
>>555
楽しみにお待ちしております。

ところで>>545の言っていたサイ娘じゃないヤンデレだが自分は1スレにあった
「終わるその時に」なんか否サイ娘だと思うんだが……
557名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 17:02:28 ID:x7y5aExW
投下行きます。初めてのSS。本来なら短編から入ろうかと思ったけど、
思いついたのが若干長かった・・・
ご指導ご鞭撻、謹んでお受けいたします。
では第1話から。
558慎太郎の受難 ◆lPjs68q5PU :2007/02/10(土) 17:03:40 ID:x7y5aExW
「しんちゃ〜ん!」
どこからともなくハスキーボイスが聞こえる。
またかよ・・・・と思いながらも振り向くとやはりいた。
小牧奈津子。
「何のようだ」
「用がないのに呼んじゃいけない?」
「駄目だ。今忙しいから。」
「全然そうは見えないけど?」
くっ・・・たしかに今は暇だが・・・。ああいえばこういう。可愛くないやつだ。
「忙しくなくたって駄目だ。」
「いいじゃない、夫婦なんだし。」
始まった。
「いつ俺たちが夫婦になったと?」
「時期なんて関係ないっていったでしょう?大切なのは夫婦であるということよ」
「俺はまだ夫婦になった覚えはないぞ。」
「もう、しんちゃんったらツンデレなんだから♪まだだなんて♪」
「デレてない。断じてデレてないぞ。」
「もう!ツンツンしなくて良いの、だって私たちは・・・」
「夫婦だからって言うのは、なしだ。」
「あら、分かってるじゃない♪」
はぁ。これがいわゆる電波っ子てやつか?
こんな会話をしていると、隣にいた松本恵がいつものように茶々を入れてくる。
「はいはい、そこ、夫婦漫才は終わった?」
「夫婦じゃないって!」
これは俺。
「漫才じゃないって!」
これ奈津子。
神様、どうして奈津子と俺を引き合わせたのですか?
559慎太郎の受難第一話2/4 ◆lPjs68q5PU :2007/02/10(土) 17:05:12 ID:x7y5aExW
奈津子と出会ったのは高校に入学した4月のことだった。
中学の頃からやってきたので高校に入っても吹奏楽部に入ろうと決めていた俺は、
早速部室に行った。
先輩に連れられ、自分の楽器のパートが練習する部屋に行く間、
俺は久しぶりに楽器が吹けるということで頭はいっぱいだった。
「ここで練習してるの。」
部屋に着くとそこには先客がいた。先輩だろうか?と思った。
なかなか可愛い。髪は黒。肩にかかるぐらいの長さ。
後に分かることだが、奈津子だった。第一印象、可愛い。
しかしこの日は何もしゃべらずに終わった。

そして部活動編成の日、うちの学校は全員何かしらの部活に入らなくてはならず、
そのための編成が行われる日。
新入生初顔合わせの日。
そこで初めて自分の楽器の新入生が誰か始めて分かった時の驚きは、
今もはっきり覚えている。何せ先輩だと思っていた、あの可愛い子が
同級生だと分かったからだ。
テンションあがるあがる。
ちなみにもう一人の松本恵のほうもなかなかの美人だ。
その・・・胸も・・・はぁ。
この日俺は、俺の高校生活薔薇色だ〜
なんて馬鹿なことを思っていた。正直馬鹿だった。
しゃべってみればハスキーボイスだった奈津子。
顔よし。声よし。最高じゃないか。
なんて思いながら練習をしたことははっきり覚えている
初の練習の後の俺の顔はとてつもなく明るかったらしい。
当たり前だ。自分の好きな楽器がふけて、可愛い子にも囲まれる。
どこに暗い要素があるかと。
しかし、事態は急変する。
奈津子が本性を出したというか・・・。
ともかく急変だった。
560慎太郎の受難第一話3/4 ◆lPjs68q5PU :2007/02/10(土) 17:06:16 ID:x7y5aExW
出会ってしばらくの間は、何の変哲もない会話をしていた。
中学のときのこと、楽器のこと、高校のこと・・・。
しかし、5月に入り、奈津子の態度が突然変わった。
まず、今まで慎太郎君だった呼び名が突如として「しんちゃん」になった。
そしていつの間にか奈津子の頭の中では
俺たちが夫婦になっていた。
「ねぇしんちゃん」
「なんだその呼び名は。いままでそんな風に呼んでたか?」
「いやね、夫婦なんだから君付けはおかしいかな、と思って。」
「いや、夫婦でも君付けのところは若い夫婦ではあってな・・・
っていつから俺たちが夫婦になったんだ!?」
「いつからだっていいでしょ。大切なのは時期じゃなくて夫婦であるということよ。」
「断る!第一、俺はまだ15だぞ。法的に無理。」
「あら、あたしも15よ」
「なら・・・」
「3年ぐらい待つわ。余裕よ。」
「あのなぁ」
「それにこんな可愛い子が嫁になるなんてうれしいと思わない。」
「自分で自分を可愛いというか。」
「本当のこといってるだけよ。しんちゃんだって可愛いと思うでしょ」
第一印象で確かにそう思ったが・・・くそ、反論できない。 
「それに夫婦だって言い続ければ、ほかの女も寄ってこないし(ボソッ」
「ん、なんか言ったか?」
「ううん、なんでもないよ。じゃ、また明日ね。」
この日から俺は奈津子に付きまとわれることになった。
帰りにこのことを中学からの友達の鈴木(♂)に相談すると、
「妬けるね」
といつものにやけ顔で言い放った。
「お前に渡そうか?お前なら顔もいいし・・・」
「断る。」
妬けるんじゃなかったのかよ。俺は友にも見放されるのか?
561慎太郎の受難第一話4/4 ◆lPjs68q5PU :2007/02/10(土) 17:07:31 ID:x7y5aExW
こうして冒頭のような日常が続いてるというわけだ。
正直言うと今俺は困っている。
好きな女が別にいる。しかし奈津子が離れてくれない。
けじめつけるためにも奈津子に言わなくてはならなかった。
しかし、俺はまだ言えてない。なぜか。
奈津子は俺がほかの女(それがたとえ恵でも)と会話していると
殺気というかすごいオーラを出す。
一度はサバイバルナイフをチラッと見せてきた。
女の子と話した後に、
「ねぇヒ素がいい?それとも青酸カリ?」
と聞かれたこともある。まるで、
「お風呂にする、それともご飯?」
と訊いてるかののりで・・・
「冗談だよ。」
とは言っていたが。
こんなこともあって、好きな子がいることを奈津子に言えないでいる。
言ったら何されるかわかったものじゃない。
まだ俺は死ぬような年齢じゃないしな。
それにいずれ俺にも飽きてくれるだろうと思っていた。
正直俺はそんな良い男ではないしな。鈴木と比べると月とすっぽんだ。
そう、苦しいのは今だけ。頑張れ俺!
ところで最近その鈴木から俺が奈津子と会話しているとき
すごい目で見られるのだが・・・
うらやましいならそういえばいいのに。いつでも譲ってやるのにな。
あいつそんなおくてだったかなぁ、
そんなことを考えながら今日も一日が過ぎっていった。
そんな夜、一本の電話がかかってきた。



運命の歯車が回り始めた。

562慎太郎の受難 ◆lPjs68q5PU :2007/02/10(土) 17:10:25 ID:x7y5aExW
以上。
うんやっぱりお茶会の人とかすごい。
書くことって大変。
ヒロインは二人。とりあえず一人目出しました。
若干実体験入ってたりなかったり・・・
二話はもう少し洗練したものを書ける様頑張ります。
563名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 17:17:34 ID:gDKyjqVO
>>562
早速のGJ
実体験が気になるww
次話もwktkしてます
564名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 17:23:01 ID:+WhzKfbt
>>562
GJ
新しい職人様ktkr
565名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 17:26:48 ID:EZ/bc10q
SS保管庫からとんできた訳だが…なんだこの良スレww
ヤンデレ好きな人が多いのもあれだが、職人皆凄いw
保管作品読んだら書きたくなっちゃったりして…
566名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 17:52:49 ID:EZ/bc10q
sage忘れ…
567名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 18:06:54 ID:tcMn8K+H
You書いちゃいなよ
568名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 18:09:49 ID:bHfEQ14g
こうやって職人が増えていくんだな
良い傾向だ!作品待ってるよ!
569名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 18:14:01 ID:Hsf76qcX
余りの盛況ぶりにROM専まで書き出しました。
gdgd言うのもあれなんで、気が向いた方感想くださいませ。
570類友1話:2007/02/10(土) 18:15:11 ID:Hsf76qcX
私はその時、愛する人を失った悲しみに打ちひしがれていた。



今朝から彼の姿が見えず、不思議に思い彼のクラスメートに尋ねたところ

…彼が、自殺したということを、知った。


気が付くと、人気の無い後者裏に一人佇んでいた。
そして泣いた。
体中の水分が出尽くして、脱水症状を起こすんじゃないかと思う程に。

本当に悲しかった。
自殺するくらいに悩んでいたなら、何故私に相談をしてくれなかったのか。
彼がそこまで追い詰められていたことに、何故気がつけなかったのか。
私の愛は、彼の心に、届いていなかったのか。

止まらぬ涙でぼやけた視界に、ふと影が差した。

「…大丈夫か?」

いつの間にか正面に男性が立っていた。
そして、その優しげな声色に、余計に涙が流れた。


暫くして涙が収まりだした頃、私は隣に座った男性に慰めてもらっていた。
けれど泣き疲れてぼうっとした頭には、何を言われのか残らなかった。
残ったのはただ、優しい人だという印象だけ。

実際優しい人なのだろう。
そうでなければ、話しかけても返事さえしない見知らぬ女が泣き止むのを、
ましてや授業を放棄してまで付き合う筈がない。

そして、ようやく泣き止んだ私の、
手には男物のハンカチが。
視界には男性の後姿が。
記憶には、安堵した笑顔が、残った。
571類友2話:2007/02/10(土) 18:16:17 ID:Hsf76qcX
まだ昼前だったが、到底授業を受ける気分になれず帰宅した。
両親共に多忙な仕事人間で、娘のことを気にかけるようなことがない。
それが今は素直に有難いと思う。

誰もいない家の中を進み、私室に入る。
…視界に入るのは彼の写真。いけないまた泣けてきた。

手に握ったままのハンカチを目頭に押し当て、波をやり過ごす。
すぐに落ち着いた。…私は冷たいのだろうか。

だが。彼も冷たかった。
何度メールを送っても碌に返事がきたことはない。
プレゼントだって使うどころか、包装をそのままに捨てられてたこともある。

手を伸ばし、写真に触れる。愛しい彼の顔を撫でる。この写真も。
何度頼んでもくれなかったから、隠し撮りしてようやく手に入れた物なのだ。
だから彼の目線はこちらを向いていないし、
その笑顔の理由を考えて、嫉妬に身を焦がしたことは一度や二度じゃない。

でも。弱気な私は直接問いただすことなどできずに。
結局、私は、何も、知らないまま、彼を失うことに―――


止めよう。今は何を思い出しても悲しいだけだから。
とはいえ、何もしてなくてもこの部屋は。
彼を愛した痕跡が至る所に見受けられて、辛い。
…片付けることにした。彼との思い出さえも。

彼の笑顔を写したカメラや、その写真や、分けてもらった彼の私物。
彼の声を聞いた携帯電話も、何も、かも、捨てた。

そして、空虚な部屋に私は、いる。
572名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 18:46:19 ID:+Ky50rQJ
>>571
・・・・・・投下終了かな?
まだ来る?
573名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 18:54:24 ID:ossILU/J
嫉妬スレは終焉を迎える

俺があっちを荒らしまくったおかげだぞ
感謝しろよwwwww
投下終了みたいなので、投下します。
先日投下したレッド・グリーン・ブラッドの続き。
・・・・・・の前編。
〜シアン・マゼンダ・イエロー・ストーカー〜

 ある夜の、都心部に在るマンションの一室。
 一人の男がPCと向かい合ってうんうん唸っている。

 男は逡巡してから顔を上げて、
 
『このゲームをアンインストールしますか?』
「はい。・・・・・・っと」

 マウスを操作してゲームのアンインストールを実行する。
 PCがアンインストールの作業を実行し、一分も経たないうちに
ゲームは真也のPCから削除された。

 エロゲーのヒロインが同じゲーム内のヒロインを殺害し、さらにキーボードを
勝手にタイピングしたという現実を目の当たりにしてこのゲームをまたプレイ
しようと真也は思わなかった。
 とはいえ、アンインストールしようとしたらまた何か奇妙な出来事が
起こるのではないかと真也は戦々恐々としていたが、数秒、数分待っても
何も起こらなかった。

「よかった。これで安心だ・・・・・・」

 あのスペシャルステージと、自動的にテキストエディタが
立ち上がったのはゲームに組み込まれていたもの。
 キーボードが勝手にタイピングを始めたのは、自分の気のせい。
 真也はそう納得することにした。

「もう夜の二時だもんな。知らないうちにちょっと寝てたんだろう。きっと」

 立ち上がり、ベッドに身を投げる。
 ぼすっ、という音と共にベッドが真也の体重を受け止めた。

 そしてそのまま目を閉じて彼は眠りについた。 
 翌日。
 今日は燃えないごみの日だったので、あるものをゴミ袋に入れて
ゴミ収集所に出しておいた。
 『あるもの』とは、昨日プレイしたゲームを購入したときに特典として
ついてきたヒロインのフィギュアだ。
 今朝目が覚めたときに、部屋に飾っていたフィギュアを見たら
悪寒がしたのだ。
 
 もしかしたら、フィギュアが動き出すかもしれない・・・・・・

 実際にはしばらく見つめていても何も起こらなかったし、
ゴミ袋に放り込んだときに暴れだす、ということも無かった。
 
「ま、当たり前だよな。昨日のはやっぱり夢だよ」

 そうひとりごちてから会社へ向かうことにした。



 仕事中にメールをチェックしていたら、迷惑メールが一通
届いていることに気づいた。
 メールサーバで迷惑メールは削除するように設定されている
というのに・・・・・・
 不審に思った真也はそのメールの送信者を確認した。

「あれ? これって俺のアドレス・・・・・・?」

 自宅のパソコンから会社のパソコンにメールを送った覚えはなかった。
 ウイルスにでも感染していたのだろうか?

 しかし、そのメールの件名を見て真也は目を見開いた。

「『アンインストールしたこととゴミ袋に入れたことについて』・・・・・・」

 おそらく、昨晩のエロゲーのことを言っているのだろう。
 ウイルスメールにしても昨日の今日ではタイミングが良すぎる。
 それにゴミ袋。まさかあのフィギュアのことを言っているのか?

 真也はしばらく逡巡したが、決心してそのメールを開いた。
『真也くん。お仕事お疲れ様。
 ねえ。どうして昨日私が出てくるゲームを削除しちゃったの?
 あのゲームが無いと私に会えないじゃない。
 もしかして焦らしてるの? だめよ。そんなの我慢できないわ。
 だから私がまたインストールしちゃったから。

 あと、私をゴミ袋に入れたことについてなんだけど、
 これについてはゆっくりお話がしたいな。
 だから今日は早めに帰ってきてね。』

 『私が出てくるゲーム』。
 『私をゴミ袋に入れた』。
 もう疑う余地は無い。
 このメールを送ったのは朝に捨てたヒロインのフィギュアだ。

「どうなってんだよ・・・・・・これ・・・・・・」

 真也は頭を抱えた。
 まさかナニのネタを替えただけでこんなことになるとは。
 家に帰ったらまさかあのフィギュアが待っていたりするのか?
 嫌だ。そんな家には帰りたくない。
 しかし、逃げても無駄なように思える。何せ相手は都市伝説そのものなのだ。

 考えた末、真也は決心した。 

「やられる前に・・・・・・やってやる。
 家に帰ってあのフィギュアを見たらすぐ粉々にして、
 PCのハードディスクも叩き壊してやる・・・・・・」

 
 真也は会社の帰り道で100円ショップに寄りかなづちを購入した。
 人外の相手をするには心許ないが、無いよりは幾分かマシだろう。
 いつもよりも激しく鼓動する心臓を深呼吸で落ち着けながら
自宅へ向けて歩き出した。
前編は終了です。
後編は早ければ今日中に。遅くても明日までに。

>>571
女性視点のストーリーですか。
どういうふうに病んでいくか楽しみです。
グッジョブ!

もし投下終了してなかったらごめんなさい。
579名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 19:07:56 ID:13yW4C4n
GJ!!
タイトルが光の三原色に続き色の三原色だ…
てことは後編のタイトルはブルー?
580名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 19:13:35 ID:+WhzKfbt
投下ラッシュキタ━━(゚∀゚)━━!!
>>571GJ!
彼との思い出がストーキングの歴史になっていますねw
>>578GJ!
これは恐可愛い((( ;゚∀゚)))ガクブルハァハァ
581名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 19:25:15 ID:ossILU/J
>>578
ちょっと日本語がおかしいんじゃないんですか?
582名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 19:36:07 ID:twywMdbe
職人様方投下乙であります。
現在約一名ほど荒らしが騒いでおりますが、彼は嫉妬スレでも工作をしている
ただのヴァカですのでお気になさらず執筆お願いします。

荒らしのレスを見たくない人は ID:ossILU/J をアボンしてください。
583名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 19:39:22 ID:EZ/bc10q
>>562
実体験ってどういう事ですかw

>>571
ストーカー女は大好きw 

>>578
レッド・グリーン・ブラッドが個人的に好きだったんで期待大w
頑張って下さい!


て事で流れに乗って思いついたの次から投下しちゃいます。
584上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/02/10(土) 19:41:39 ID:EZ/bc10q
「ねぇ、何で夏なのに上着なんか着てるの?」
「別にいいだろ…」
帰り道、沢崎誠人は隣で寄り添っている城井加奈の顔色を伺いながら答えた。
目が合うと誠人は慌てて視線を逸らす。
「暑くないの?」
「あぁ、暑くない。これ着てるくらいが丁度いいんだよ」
嘘だった。真夏の炎天下に黒の学ランは最悪の組み合わせだ。
常に流れ落ちる汗をハンカチで拭いながらも、平生を装って加奈のロングの黒髪を撫でる。
くすぐったそうに笑う加奈を誠人は本当に愛しいと思った。
若干大きめの制服から覗くか細く弱々しい手足を美しいと思った。
少し動く度に漂う髪の匂いが心地良いと思った。
この笑顔がいつまでも続く事を心から望んだ。

ほどなくして、二人は自宅に到着する。
二人の家はそれぞれ向かい側に位置している。
「それじゃあね、誠人くん!また明日!」
名残惜しそうに何度も何度も力強く手を振る加奈を、誠人は精一杯の笑顔で見送った。
加奈が家に入ったのを確認して、誠人は安堵の息を漏らした。
念の為彼女の家の玄関に誰もいない事を確認し、誠人もようやく自分の家へと帰宅する。
誠人はドアに鍵をかけ、すぐさま制服の上着を脱いだ。
「ふぅ…今日も暑かったなぁ…」
リビングの辺りから僅かに流れ込んでくるクーラーの冷気に至福を感じる。
その冷気が、誠人の右腕にあるほんの少しのかすり傷をひんやりと冷やした。
かすり傷を見つめながら呟く。
「何とかバレずに済んだな………」
585上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/02/10(土) 19:42:52 ID:EZ/bc10q
誠人と加奈はいわゆる幼馴染同士だ。
家が近い事から互いの母親の仲が非常に良く、その影響で二人はいつも一緒に遊んでいた。
同い年で、幼稚園から中学、そして高校も同じとこを受け見事に二人とも受かっており、
産まれてから二人は片時も離れた事がない関係になっている。
当然仲も良く、”喧嘩”など一度もした事がなかった。
更に、二人は付き合っていた。
小学二年の頃、加奈の強いアプローチに誠人が承諾したのだ。
小さい頃の告白だが、二人は今尚お互いに愛し合っている。
付き合いといっても友達とする事は変わらない、特別な事はない。
でも、お互いそういう付き合いに満足していた。
しかし、誠人は”一つだけ”この付き合いに不安を感じている節がある。
それは…加奈の屈折した独占欲だ。

遡る事数年、二人が小学二年の時―――――


「誠人くん、一緒に帰ろ!」
「あぁ、ちょっと待ってて」
慌ててランドセルに教科書を乱暴にしまう誠人くん。
「お待たせ、そんじゃ行こ!」
自然に手を握って先を進んでくれる誠人くんの優しさが嬉しかった。

あの時…告白した時、本当に緊張したけど、誠人くん”いいよ”って言ってくれた。
誠人くんにとってあたしが幼馴染から恋人に変わった事が凄く嬉しかった。
あたしだけの誠人くんになった、あたしの心は満たされた。
彼氏になった後もいつも通り振舞ってくれる誠人くんが愛しい…。
だって、飾らない誠人くんが一番好きだから!


でもある日………。
「誠人くん!?どうしたのその怪我!」
「…け、喧嘩で負けただけだよ…」
顔や足に擦り傷をつくってよろよろ歩く誠人くんにあたしは本当に驚いてしまった。
誠人くんの綺麗な体にこんなに傷が沢山………許せなかった。
喧嘩相手は勿論だけど、誠人くんの体に他の人間の”跡”が残っているという事実を認めたくなかった。
「と、とにかく早く保健室に…」
「いいよ、大した怪我じゃないし、唾付けときゃ治るよ」
確かに怪我はいつか治る………でも、治るまでの間、
あたしは誠人くんが他の人間に汚された証を見続けながらいなきゃいけないの?


ソンナノタエラレナイ


本能的にあたしは誠人くんの傷を爪で引っ掻いた。
「痛っ!何するんだよ加奈!」
抵抗する誠人くんの腕を払いのけ、ほっぱについた掠り傷に向かって何度も爪を立てる。
「やめてくれ!痛いよ…!やめて!やめて!!!」
「大丈夫…大丈夫………もう少しだから…」
誠人くんが泣いている…ごめんね。
痛いんだよね?苦しいんだよね?
でも、もうちょっとだから我慢して…。
他の人間に傷つけられるくらいなら、あたしが傷つける…。
もう少しでその傷を、あたしが付けた事にするから………”上書き”してあげるからね。
「ああああああああああ!!!!!」


―――――
586上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/02/10(土) 19:44:55 ID:EZ/bc10q
あの日以来、加奈は俺が怪我する度にその傷を引っ掻いてくる…。
初めてやられたほっぺの傷は、加奈のおかげで跡が残ってしまったほどだ。
でも、加奈の事を嫌いにはなれない。
加奈の事は本当に好きだ。
俺が怪我した時の加奈は怖い。
物凄い力で襲い掛かってきて、その力に俺は抗えない。
それでも、完全に傷が加奈がつけたものだけになった後、申し訳なさそうに謝る姿を可愛いと思ってしまう。
恋愛は惚れた方が負けというが、その言葉をしみじみと実感する。
彼女と付き合い続けていたい…だから、俺は怪我をするわけにはいかない…仮に怪我をしてしまったら、
何としてでもそれを隠し通さなければならない。
その為に、季節に拘らず俺は常に長袖長ズボン状態だ。
そうでなければ安心できない…。
「こんなんで…俺、付き合っていけんのかな………」

587上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/02/10(土) 19:47:17 ID:EZ/bc10q
とりあえず投下終了。
即興で思いついたのではやっぱ色々と厳しいです。
続きは後日…。
588名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 19:51:40 ID:mCeR+K8E
GJ!
職人が増えまくって実に喜ばしいね!
589いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/10(土) 19:58:18 ID:8jgVWqnM
可愛いヤンデレ少女に
「貴方頭おかしいんじゃないですか? ――私のこと好きになるなんて」
とか言われてみたいなーというかそんな話を書きたい

伊南屋 氏に描いていただいた絵、全て拝見させてもらいました。フリルだらけの登場人物で申し訳ない
戦闘儀礼服とグレーテルは大変だっただろうなあ……
神無士乃の兎風や冬継くんのちょっとつっぱったようなところ、イメージとあうのも違うのも楽しませてもらいました
こんな沢山書いていただいて嬉しい限りです。本編頑張らせてもらいます

>>536
カーニバルの夜にはあそこで凍結しています
時期的には「お茶会」と「君誰」のちょうど中間なので、そのうちできれば書きます

>>BGM
個人的なイメージだと
お茶会が淡々とループするような単楽器での演奏
いない君といる誰かがジャズと無音
といった感じです

一レスが長くなって申し訳ない
夜には埋めネタか本編投下します
590伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/10(土) 20:55:23 ID:mCeR+K8E
おぉ、原作者殿が来ていた。
喜んで頂けた様でこちらとしてもありがたい。
幹也については目つき悪くし過ぎたと反省。次からは多分もっと柔らかい表情になるかと。

んでキモウト黒化前
須藤冬華/秘めたる狂気は未だ芽生えず
http://imepita.jp/20070210/750050
591慎太郎の受難 ◆lPjs68q5PU :2007/02/10(土) 21:00:33 ID:x7y5aExW
うはっすんごい数が投下されてる・・・
職人方GJです。
>>589
wktkして待ちます。

さて、そろそろ2話を投下します。
現在校正中。ほか職人方の投下とかぶらないぐらいの
時間に投下します
592名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 21:38:53 ID:DDHJWf5a
帰ってきたら大量投下キテタワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!☆

もはやレスが追いつかないという嬉しい悲鳴です!全ての神々に感謝!
593名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 21:44:39 ID:AiJE8ZsK
>>562大兄のお腹から生えてるナイフが素敵です。
続きに期待してます!
594慎太郎の受難 ◆lPjs68q5PU :2007/02/10(土) 21:45:26 ID:x7y5aExW
|
| ̄`ヽ  誰もいない・・・
||リソ|ノ 投下するなら今のうち。 
||゚ -゚) 
⊂ノ
|
595慎太郎の受難第2話1/5 ◆lPjs68q5PU :2007/02/10(土) 21:47:32 ID:x7y5aExW
電話を取ってみると、幼馴染の高畠絵里からだった。
幼馴染。幼稚園から中学まで同じ。中学のときは、同じく吹奏楽をやっていた。
高校は彼女の方が俺の行く高校に落ちてしまい、別々になってしまった。
そう幼馴染・・・。そろそろその先に行きたいのだが。
「やぁ、しん君」
「なんだ・・・絵里かよ」
「なんだってなによなんだって」
「いや、うん、まぁいろいろあってな。それでどうした?」
「うん、最近さ、一緒に遊んでないじゃん。だからさ、街に遊びに行かない?」
「いつ?」
「今週の日曜」
「練習後の昼なら良いよ」
「じゃあ3時に橋のところで!」
橋・・・街の中心部にあるでかい橋のことだな。
「OK。でどこか行きたい所はあるのか?」
「おいしいパスタの店があるの。そこに行きたいなぁ、なんて。」
「昼を三時に取るのは遅いなぁ。夕飯にしてもいいか?」
「もちろん!あ、服とかも買いたいなぁ」
「付き合うよ」
「本当!?ありがとう〜。じゃ、明後日ねぇ」
がちゃ。
久々に会える。
絵里に会える。
嬉しい。
このときの俺の顔はとんでもなくにやけてただろう。
それほど嬉しかった。とりあえず私服選びから。
どんな服が良いだろう。
いや待てよ、あんまり着飾ると、逆に意識させてしまうか。
いやでもやっぱり(ry
そんなことを考えているとあっという間に日曜が来た。


596慎太郎の受難第2話2/5 ◆lPjs68q5PU :2007/02/10(土) 21:48:11 ID:x7y5aExW
「すまん今日は早く帰るよ」
「どうした、奈津子ちゃんとデートか?」
「違うよ」
「別の子か。もてる男はいいねぇ」
鈴木に早く帰ると告げ、俺は私服に着替えに一度家に帰った。
鈴木はチャラけたように言っていたがなんか寂しそうな目をしていた。
お前だってもてるじゃないか、と突っ込みたくなったが、早く帰りたかったので、
スルーして帰った。というかデートじゃねぇよ。
昼飯をかきこみ、私服に着替え、
大慌てで出たせいか、待ち合わせ場所には30分前に着いた。
絵里は・・・15分前に来た。ショートカットで黒髪。
顔は奈津子ほどではないが、普通に可愛い。
さっぱりした性格ではあるが、感情の起伏が激しい。
いつも笑ってればいいのだが、涙もろい
「なんであんたそんなに早いのよ」
いきなり文句かよ。
「家にいたってすることないしな。ところで・・・お前その格好・・・」
プリーツのミニスカ。そんなの着ていた姿はあまり見かけない。
というより、今日はいつもと違い女の子らしい格好だった。
いつもはGパンにTシャツとか男らしい格好なのに。
そういったことから出た疑問だった。
「別に、今日たまたまこれしかなかったのよ。・・・何よ」
「いや、そういう格好も似合うな。」
「あんた今日熱でもあるの?」
「ひどいなぁ。素直にほめただけだ。」
「あんたが言うとなんか下心があるように聞こえるのよね。」
「ひどいなぁ。おれは変態か?」
そんな会話をしながら歩き出した。
買い物はすさまじい量だった。
俺がいるからって無茶すんなよ・・・
荷物もちの気持ちも考えてくれ・・・
まぁ絵里の荷物ならどれだけでも持つが。
597慎太郎の受難第2話2/5 ◆lPjs68q5PU :2007/02/10(土) 21:48:43 ID:x7y5aExW
「ここ、ここ!美味しいって評判のパスタ屋さん」
絵里が来たかったのはここらしい。
しゃれた感じの・・・パスタ専門店?いやピザも出すようだ。
早速注文をとる。俺はピザを、絵里はパスタを頼んだ。
「ピザは時間がかかるんだよ〜」
と、絵里は不満があるようだが。
「ところでさぁ」
絵里が切り出してきた。
「小牧さんってどんな人?」
・・・なんですと?
「だから、小牧奈津子さんってどんな人?」
「あーあー聞こえなーい(∩゚д゚) 」
「ぼけないで!」
「そんないきりたたんでも。気になるのか?」
「別に・・・ただあんたに付きまとうなんてどんな変人かと思って。」
「その通り、まさに変人だ。」
「可愛い?」
「あぁ」
「その・・・どうなの」
「なにがだ」
「仲・・・良いの?」
「向こうからの一方通行だ。もっともはたから見ていると、漫才に見えるそうだが」
「仲いいじゃん」
「良くねぇよ!それよりどうなんだ?彼氏できたか?」
「あたしにできるわけないじゃん!」
「無理だったら俺が引き取ってやるぜ」
「誰があんたなんかと!」
・・・この前は
「彼女できなかったらあたしが引き取ってあげる」
なんていってたのに・・・(´・ω・`)
楽しい時間はあっという間に過ぎていく・・・
598慎太郎の受難第2話4/5 ◆lPjs68q5PU :2007/02/10(土) 21:49:45 ID:x7y5aExW
そして地獄はやってくる。
おのおの注文したものを食べ終わり、店を出た。
6月とはいえ、外はもう暗かった。
俺は絵里を送っていくことにした。
夜に女の一人歩きは危険だしな、うん。
帰り道も楽しく会話、んで近くの公園で・・・
なんてこと考えてたら不意に後ろから、
「慎太郎くーん」
という声が聞こえた。
振り返るとそこには恵と・・・
奈津子がいた。
何故?何故ここに奈津子がいる?
「ねぇあれ誰?」
絵里が尋ねる。
「同じ部の恵と・・・奈津子だ。」
「へぇ。それで・・・どっちが奈津子さん?」
「右」
「ふーん」
すこし冷たい感じの声がする。
「あ、邪魔しちゃった?」
恵が明るく言う。
「うんうん、2人は仲よさそうだね。彼女さん?」
おい、隣に奈津子いるんだぞ恵!
絵里も反論してくれ・・・といおうと思ったが、
様子を見ると絵里は赤面してうつむいている。
いや、誤解されちゃうじゃん。
ほかの人の前でなら嬉しいけど今はまずい!
あわてて奈津子の様子を見てみると、いつもと違っていた。
いつもなら、目に見えるような殺気を出すのだが、
今回は何も出していない。むしろ空っぽ、放心状態というほうが正しいだろう。
俺は、驚いた。
しかし、ある意味ほっとしていた。
599慎太郎の受難第2話4/5 ◆lPjs68q5PU :2007/02/10(土) 21:50:51 ID:x7y5aExW
下手すると自分の命がなくなる事態。
しかし、肝心の奈津子はいつもと違いおとなしい。
このまま何事もなく終わればいい。
明日の学校で奈津子がぎゃーぎゃー言うかもしれないが、
それはそれで対処すればいい。
そんなことを考えているうちに、、
「お邪魔しっちゃったねぇ。奈津子、行こう!」
恵はそういって奈津子をつれて去ってしまった。
その後は気まずくて絵里と何もしゃべれなかった。
くそっ俺の華麗なる計画が!
しかし、奈津子がおとなしかったことで、
修羅場を乗り切った俺は、十分満足だった。
ところで帰る途中で鈴木に会ってしまった。
嫉妬の炎を燃やしているように見えたのは気のせいだろう。
悪いが、絵里は渡さないぜ。

彼は満足していた。
そのため気づくことができなかった。
崩壊の芽が育ち始めていたことに。
しかし気づけたからといって、彼にそれを摘み取ることはできただろうか。
その答えは誰にも分からない。




運命という歯車は急速にその回転を速める
そして仕掛けは動き始める
静かに
速やかに
600慎太郎の受難 ◆lPjs68q5PU :2007/02/10(土) 21:55:34 ID:x7y5aExW
以上。
修羅場をあっさり終わらせましたが、
その裏を書いた第2話
side−N
side−E
を書いています。
そこあたりから徐々にやみ具合を・・・
と考えています。
結末四個ほど考えています
Aある意味ヤンデレスレ的王道END
Bある意味救われるエンド
C鮮血END(救いようがない)
Dある意味最悪のEND(ギャグ?)
ぼちぼち書いていきます。では。
>>600
パスタGJ!!

崩壊していく光景を眺めながらバジリコのパスタを食べたいもんです。


では、続けて投下します。


WARNING! WARNING!
警告です。途中の注意書きをよく読んでください。
602名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 22:28:20 ID:mCeR+K8E
ノベルゲーの人どうなったんだろ?
流石に二、三日で出来てるとは思わないがタイトルとか気になる
 真也は今、自宅の玄関前で目を閉じている。

(鍵を回したらすぐにドアを開けて、PC本体を床に叩きつける。
 そしてフィギュアを見たら踏み潰してハンマーで粉々にする。
 その後でハードディスクを取り出して叩き割る。よし)

 自分がこれから行うべきことをおさらいし、いざ――

 ズッ! ガチャリ! ばん!

 ドアを開けて、彼が目にしたものは――――



 いつも通りの自分の部屋だった。
 
「あ、あれ、れ?」

 真也は拍子抜けした。
 何かおかしなことが起こるだろうと覚悟していたからだ。
 たとえば『オカエリナサイ シンヤクン オソカッタネ』って言いながら歩いてきたりとか、
PCから触手が出てきてゲームの中に閉じ込めたりするとか。
 

 しかし、現実はあっけないものだった。

 部屋のレイアウトは変わっていないし、フィギュアも当然どこにも無い。
PCにインストールされているプログラムを確認してもあのエロゲーの
タイトルは見つからなかった。メールにも送信履歴は残っていない。

「なあんだ。白昼夢だったのか。
 はああああ・・・・・・」

 一気に疲れが押し寄せてきた。
 
「あーーーーー。
 昨日は寝るのも遅かったしな。今から寝よ」

 仕事着のままベッドに倒れ込む。
 そのまま横になっているとすぐに睡魔がやってきた。
   
「もうエロゲーはこりごりだ・・・・・・」

 そう言うと真也はゆっくりと寝息を立て始めた。


 しかし、この男はまたしてもとんでもないミスを犯した。
 部屋の鍵を開けっ放しにしていたことを忘れていたのだ。

 そしてこの後にすぐ――ではなく、眠りから覚めた後にそれを後悔することになる――――
 夢の中で真也は天国を味わっていた。

「ああ・・・・・・そんないきなり、おっぱいに・・・・・・」
「いいじゃねえか。お前も好きなんだろ?」

 エロゲーのヒロインの胸を後ろから揉んでいる。
 昨晩ナニのネタにしなかった方のヒロインだ。
 
「ん・・・・・・やあ、ん・・・・・・直に触っちゃだめよぉ・・・・・・」
「天国を味あわせてあげるって。お前言っただろ?」

 最初はあの時の恐ろしい描写を思い出してしまい、ためらったが・・・・・・
彼の胸フェチぶりはやはり常軌を逸していた。
 
「確かに・・・言ったけど・・・・・・でも・・・・・・
 ふえ? あ! ・・・・・・こんなの恥ずかしいよ。
 ・・・・・・ね、口じゃだめなの?」
「俺は挟んでもらうのが好きなんだよ!」

 経験なんか一度も無いくせに。
 まあ、彼は自分のことを非童貞にして超絶倫のイケメンだと
妄想の中で変換しているから、夢の中限定でそういうことにしてもいい。

「ひあっ! ふぁん! やあっ!
 待ってよ! 真也くん! 激っ・・・しすぎるよお!」
「あーーーー、やっぱでかい方が締りがいいわ」

 真也は声を上げながら激しく動いている。
 しかしここではカットさせていただく。聞かせられるようなもんじゃないし。

「っ!・・・・・・んあっ、・・・や! 待って! 息が、ちょっと!
 止まってよ! 真也くん!」
「もう無理だ! いくぞ!」

 もう少し粘れよ!黒川真也!
 ええい、検閲だ!

 ピ―――――――――――――――――――――――――――――――

「あ、白いのが、いっぱい出てる・・・・・・」
「ふううう、はああああ、いい・・・・・・・・・」

 自家発電よりもだいぶ良かったらしい。
 検閲も長めになってしまった。

 絶頂を味わった真也は、このヒロインの虜になってしまった。

ーーーーーーーーーーーーー

 ※エグイ描写が嫌いな方はこのまま『ジャンプ先』へ向かってください。
  男性の場合は、『特に』それをオススメします。
※ジャンプすることを推奨します。

 コトが終わってからもまだ真也は夢の中にいた。

 夢だったらコトが終わってから目が覚めるものだが、
まだ彼の横には巨乳のヒロインが上半身裸で寝そべっていた。

「・・・・・・ね、真也くん。
 私の話、聞いてくれる?」
「んーーー? 別にいいけど、何?」

 ヒロインは体を起こし、真也の足の間に座った。

「私の人形をさ、ゴミ袋に入れたよね?」

 どきっ・・・・・・

「あれさ、どういう意味だったのかなあ?
 まさか、焦らしプレイ? 放置プレイ? 放棄プレイ?」
「いや・・・・・・あれは・・・・・・・・・・・・その・・・・・・・・・・・・」

 まさかその話を今されるとは思っていなかったらしい。
 真也は答えることが出来ずに口をぱくぱくさせている。

「答えられないの? じゃあ・・・・・・」


「おしおきだよ」 

 ぐあっ!

「ひえっ?!」

 ヒロインが大きく口を広げた。
 そしてそのまま――――
※ジャンプすることを推奨します。

「はむ・・・・・・ん、・・・・・・んちゅ・・・・・・
 れろ・・・・・・ちゅる。んふ・・・・・・ん・・・・・・
 ぷはあ。・・・・・・私の必殺技、受けてもらうよ」

 真也のナニを咥えながら口淫を開始した。
 それは自信を持って必殺技と呼ぶに値するほどの技術だった。

 ちゅばっ ちゅる れろれろ

「う、ああ・・・・・・く、かあ・・・・・・」

 真也は再び天国に連れて行かれた。
 夢の中だというのに、信じられないほどの快楽が襲いかかってくる。
 真也はこのプレイにすっかり夢中になってしまった。


 自分の体が動かないことに気づかないほど。

 
 かり かり

「うああ・・・・・・いた、気持ちいい・・・・・・」

 ヒロインがナニを根元近くまで咥えながら甘噛みしてきた。

 かり かり かり

 それは、次第にエスカレートしていく。


 甘噛みから、噛み切る動きへと。
※ジャンプすることを推奨します。

 がり がり がり

「?! ・・・・・・っつぅ、おい。何を」
 
 がりっ!

(うがあああああああああああ! 
 何しやがるんだ!)

 がり みちみち ぶち

(あがああああああ! ああああああああああああ!
 いてえ! いてえええええええええ!)
 
 ヒロインが、真也のペニスを噛み千切ろうとしていた。
 真也が悲鳴をあげようとしても、暴れようとしても何もできない。
 
 ・・・・・・まるで人形のように。


 ぎり ぎり ぎり 
 
 ぎりぃっ!

(ーーーーーーーーーっ!!!!!
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーああっ!!!!)

 真也のペニスはすでに原型を成していない。

 
 そして、無慈悲にも。


 ぎりぎりぎりぎり! 
 
 ガチンッ!!



「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
 ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
 アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 夢から覚めた真也は地獄の痛みに苦しみ――


 その後、彼の男性としての命は失われた。
※『ジャンプ先』

 もしあなたがエロゲーをしていたとして、ヒロインの一人を
スルーして別のヒロインに夢中になったとします。

 その後でもしもスペシャルステージやアナザーストーリーが
画面上に出てきたら、注意してください。

 ゲームの特典としてフィギュアやポスターが付属していたら、
さらに注意が必要です。
 クリアしていない状態では決して捨てないでください。

 もしクリアせずに捨ててしまうと、彼と同じ目に遭うかもしれません。


 終
終わりです。
今度こそエロゲやってる人。ごめんなさい。 

タイトルはCMYKからとりました。
最後のストーカーというのは『stalKer』の『K』からとりました。
610名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 22:57:08 ID:DDHJWf5a
>>600GJ!これからが楽しみ!wktk!
>>609ちょwwwwwこれはwwwww
(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク
611名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 22:58:48 ID:OApDMel9
こえ〜
612名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 22:59:24 ID:q3jSbcqG
これ世にも奇妙な話じゃね?GJ
613名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 23:08:44 ID:6L6iLFF5
>>600
幼なじみの方もただのツンデレでは無いようで…wktk

>>609
GJ!!!なんとか事件を思い出した。
614伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/10(土) 23:09:01 ID:mCeR+K8E
>>609
GJ!好みの内容だw

なんちゃってパッケージ描いてた
http://imepita.jp/20070210/831400
けどここまで描いてキモウトと神無士乃の入る余地が無いことに気付いたorz
615上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/02/10(土) 23:12:43 ID:EZ/bc10q
>>589
楽しみにしてますw

>>600
これは次回に期待w

>>609
GJ過ぎwww
エロゲ出来ないww

て事で投下します
616上書き第2話 ◆kNPkZ2h.ro :2007/02/10(土) 23:16:03 ID:EZ/bc10q
今日もいつもと変わらない朝。
朝の新鮮な空気をたっぷり吸い込みながら、家の前で加奈を待つ誠人。
「誠人くん〜!もうちょっと待ってぇ〜!」
「はいはい待ってるよ」
開いたままのドアから加奈の叫び声が聞こえる。
ひどく慌てた様子が誠人に伝わる。
いつも寝坊する加奈を待つのは、誠人の日課だ。
家中に縦横無尽に動き回る加奈の足音が広がる、それを聞くのが楽しかった。
「ごめ〜ん!すぐ行こう!」
両手を合わせ真剣な表情で謝る加奈をおかしく思う誠人。
「あっ!笑ったな!?」
「笑ってないから、さっさと行こうぜ」
「ちょっと待ってよぉ!」
早足で歩く自分に並ぶために必死についてくる加奈を見つめる誠人。
(本当可愛いな…)
あんまりにも見とれていた加奈が不審な目で誠人を見つめ返す。
「どうしたの?あたしの顔なんか付いてる?」
自分より一回り小さい少女に指摘され、ようやく自分が彼女を見続けていた事に気付く誠人。
紅潮した表情を悟られないよう前を向き、ちょっと走り出す。
「誠人くん〜!」
走る誠人の背中を追う加奈。
誠人が後ろをチラ見してみると、中身の少ない鞄を振り回しながら必死に走る少女の姿が映る。
一生懸命にしているほど、誠人は意地悪な気持ちになっていく。
(相当参っているな、俺も…こんな好きなんてな…)
「もうちょっとゆっくり行こうよ!」
「早くしないと遅刻だぞ」
そう言いながらも走るペースを緩めてやり、距離差を縮めてやるようにする。
ようやく追いついた加奈が息を切らして誠人を見上げる。
「誠人くん早過ぎ…」
「お前が遅いだけだ」
「もう…!」
頬を膨らして怒っている加奈も、誠人にとっては天使の微笑みだった。
こんな関係であり続けたい、心からそう思った誠人であった。
617上書き第2話 ◆kNPkZ2h.ro :2007/02/10(土) 23:17:04 ID:EZ/bc10q
「それじゃ!」
俺は加奈に手を振って教室へと入っていった。
加奈とはクラスは分かれている、といっても隣同士なんだけど。
お互い学校ではそこまで親しくはしない、加奈にも、俺にも付き合いというものはある。
学校ではなるべくそれを大事にしたい、恋にうつつを抜かして友達一人も出来ませんでしたじゃ充実した青春とは言えない。
こんな気遣いがお互いに嬉しい…んだと俺は思っている。
無理はせず、相手を思い遣っていられる、そういう関係に情熱的な恋とは違った、落ち着きを伴った感情を俺は抱いている。
きっと、加奈もそのはず…。


今は日本史の授業中な訳だが、欠伸が出ちまう…。
そんな単語の羅列を板書されてもわかんねぇよ…なんて風に愚痴を溢しながら寝ようとした時、ポケットに入っている携帯が震えた。
差出人を確認してみると、加奈からだ。

『誠人くん今日本史だよね?
あたしは数学だけど、全く意味不明…。
当てられないかビクビクしてます…』

全く…授業中はメールはよそうって言っていたのに………。
まぁ俺も今寝ようとしてたし、何よりも加奈からのメールだ、素直に嬉しい。
机の下で手馴れた感じでメールを打っていく。

『安心しろ、数学は俺の専売特許。
当てられたらすぐにメールしろ、答えてやるよ』

送信後一分もしない内に返信メールが届く。

『誠人くん中間テスト数学39点だったじゃん!
そもそもメールしてその返信を待つってどれだけ時間かかるのよ〜!』

全く以ってその通り…だが、俺の数学の点数は93点だ。
どうして逆さまに脳内変換してんだよ…、ちょっとムッときたので、メールを無視してみる。
五分くらい経つと、また加奈からメールが届く。

『ごめん、怒っちゃった?
言い過ぎたのなら謝るから…』

何真に受けてんだか、その反応が見たくて無視した訳だが。
本当にコイツは俺の心を的確に射やがるな…朝天使だと思ったが前言撤回、こいつは悪魔だ。
そんな悪魔が見せる無邪気さに打ちのめされながら、メールを返信する。

『冗談だよ、怒ってないから気にすんな』

送信ボタンを押しながら、時刻を確認する。
後もうちょいで授業終わるな…。
重苦しい空気から開放されると思うと、嬉しくなる。
そんな中、やや遅れて返信がくる。

『良かったぁ〜!
ねぇ?もうすぐお昼ご飯だし、今日は一緒に食べよ?』

そうか、この授業四時間目だった…と確認した。
いつも友達と食ってるしな、たまにはそれもいいか。
久しぶりの加奈との昼飯に何となく新鮮さを覚えながら、携帯を弄る。

『いいよ、終わったら俺んとこきて』
618上書き第2話 ◆kNPkZ2h.ro :2007/02/10(土) 23:18:45 ID:EZ/bc10q
チャイムが拷問のような時間の終わりを告げる。
今日は加奈とメールしてたからそこまで苦じゃなかったけど。
席で弁当を用意して加奈を待っていると、近づいてくる奴が見えた。
「沢崎くん………」
「島村…またか?」
俺が呆れた顔で邪魔臭そうに言ってみるも、表情は変わらない。
「本当にごめんなさい、何か私こういう事妙に気にするタイプで…」
「気にすんなって、てかそんな常に相手に気使ってたら疲れるぞ?」
俺の目の前で申し訳なさそうに頭を深々と下げているのは、クラスメイトの島村由紀だ。
何でこんな風にいるかというと…昨日の授業中に俺の前の席にいる島村が突然奇声を発しながら立ち上がったのだ。
そこで椅子が俺の机に当たって、俺は転がり落ち、右腕を床に擦ってしまったのだ。
その事に関して島村は昨日から何度も謝っている。
友達からわざわざ親しくない俺のメルアドを聞き出してまで謝ってきた時にはさすがに驚いた。
「別に掠り傷なんだから気にすんなって」
「でも…」
心配そうに俺の右腕を見つめている島村を確認した俺は、やれやれと思いながら制服の上着を脱いでワイシャツを捲くった。
「な?大した傷じゃないだろ?」
怪我した時は血がやけに出たが、止血が終われば大したもんではなかった。
「…良かった………」
ホッと胸を撫で下ろす島村の様子が見て取れる。
ずれた眼鏡を直しながら、やっとの事で笑顔を俺に向ける。
「ま、そういう事だから」
俺がワイシャツを再び着ようとした時、腕に痛みが奔った。
一瞬顔をしかめるほどの痛みに、何事かと思ってみてみると、そこには………

小刻みに震えながら俺の腕を片手で掴んでいる加奈の姿があった。
反射的に傷を隠そうとするが、細い腕からは到底想像のつかない力に振り払う事が出来ない。
目が静かに俺を見下ろす…そのあまりの怒りの視線に、俺は恐怖を覚えた。
昼休み教室にこいと言ったのは俺だ………迂闊だった、自ら俺は…。
「ちょっと来て」
有無を言わさず加奈が俺の腕を引っ張る、落ちた弁当に目もくれない加奈。
加奈の腕を媒介にして俺に恐怖が伝わる…ヤバイ!
619上書き第2話 ◆kNPkZ2h.ro :2007/02/10(土) 23:19:16 ID:EZ/bc10q
「おい!加奈ここ女子トイレ…」
俺の声なんか無視して加奈は強引に女子トイレの個室に押し込める。
独特の異臭が鼻をつく中、只ならぬ雰囲気の加奈に寒気を感じる。
「誠人くん…」
名前を呼んだかと思うと加奈は俺の唇をいきなり奪った。
壁に押し付けられながら、普段の様子からは到底想像のつかない情熱的なキスを交わす。
舌まで入れてきて、口の中で厭らしい痺れが広がる。
俺の唾液を掻っ攫って満足したのか、加奈は口を離した。
「か、加奈…?」
無言で俯く加奈、不安になってくる…嵐の前の静けさとはこんな事を言うのかな…?
「あたし…誠人くんが好き」
顔を上げ分かりきっている事を口にしてくる。
笑顔だが目に色がない。
「俺もだよ…!」
「ありがとう…。でも、あたし短気なのかな…?他の人に誠人くんを触らせたくない。
その傷が…他の人が誠人くんに触れた証拠があるのが耐えられない!
そんなの見てるとあたし壊れちゃうよ!!!」
押し付ける力が弱くなったと思った瞬間、加奈が掴んでいた右腕を見つめてきた。
嫌な予感がした…。
「…ハハ…こんな、こんな傷があるのがいけないんだよ…?あたしも誠人くんも悪くない…”この傷”がいけないんだよ!?」
すると加奈が俺の傷を引っ掻き始めた。
瘡蓋が剥がれピンク色の皮膚が覗く。
その皮膚の周りを上から下へと懇親の力で引っ掻いてくる。
「いぇが!痛ぇ!やめてくれ加奈!!!」
皮膚が破れる鈍い音が聞こえる。
加奈は相変わらず笑いながら俺の皮膚から血が出る様子を楽しんでいるように見える。
俺の声など無視して一人笑っている。
「あああ!!!か、加奈ぁ〜〜〜!!!」
「大丈夫大丈夫大丈夫…すぐに消えるから………傷も、痛みもすぐに消えるから!」
昼飯時でトイレには誰も来ない、俺の悲鳴だけが虚しく響き渡った…。


「はぁはぁ…終わった………あはっ」
加奈は俺の血まみれの腕を見て満足そうに笑っている。
止め処なく溢れる血に俺は呆然としていた。
「痛い?誠人くん…ごめん………こんなあたしでごめん…」
突然態度を翻してくる加奈、いや、これが本当の加奈なんだ!
そう思いたかった…。
心配そうに下から覗き込むように見上げる加奈、さっきまでの鬼神の如き表情じゃない…いつもの加奈だ。
「あたしが弱くてごめん…。ホントごめんなさい!あたし誠人くんが好きなの!好きで好きで…ごめんなさい…」
ずるいよ…加奈、そんな風に謝られたら………。
「き、気にすんな。俺も怪我しないように気をつけるから」
自分でも何を言っているのか分からなかった。
ただ今加奈が一番喜ぶであろう言葉を本能的に選択しただけだ。
案の定、涙目だった顔に光が差し込む。
この笑顔の為なら、許してしまう…どうしようもないな…俺。
620上書き ◆kNPkZ2h.ro :2007/02/10(土) 23:21:50 ID:EZ/bc10q
投下終了です。
こんな感じなんですかね…。難しいですわ。

>>614
GJ!
621名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 23:30:54 ID:DDHJWf5a
>>620
GJ!これはいいヤンデレですね(*゚∀゚)=3ハァハァ
622名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 23:44:38 ID:vNNnHOPO
>>609
天国の後に地獄が!

>>620
通常時がまったくまともなだけに恐ろしい。

どちらもGJです!
623名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 23:47:20 ID:13yW4C4n
>>614
大丈夫ですよ!
世の中にはFDになった途端パッケージから消えるメインヒロインだっているんですから!

「それ、誰のこと(ですか)?」
「――あ」

暗転
624名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 23:52:24 ID:Rd11u8D4
>>609
怖いお。エロゲーのヒロインならエロゲーの主人公を追ってろお(つД`)
でもGJだお。
625いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/10(土) 23:52:58 ID:8jgVWqnM
>614
彩色してロゴ入れたらまさにパッケージだ
パッケージにメインヒロインがいないことだってあるさ……

ノベルゲーの方、必要ならば追加シナリオとか追加エンドとか書きますので、遠慮なく言ってください

埋めネタとして投下するはずだったのを投下
『終わったあとのお茶会』全三話です
登場人物はマッド・ハンター如月更紗、一般人須藤幹也、三月ウサギの兄妹
パラレルワールドというか楽屋裏のようなものだと思ってください
626終わったあとのお茶会 ◆msUmpMmFSs :2007/02/10(土) 23:54:12 ID:8jgVWqnM


「チェンジ」
 二枚のカードを、里村冬継は机の上に放り投げる。ダイヤの7とスペードのエース。代わり
にやってきた二枚は、ダイヤの8とハートの7。手元にあるカードは、ハートの8、クローバ
ーの2、スペードの2。
 8のツーペアだった。
「おや、おや、おや。なんとも微妙な顔をしているね」
 くすくすと笑いながら、角の席に座る如月更紗が言う。いや、今は如月更紗ではなく、マッ
ド・ハンターなのかもしれない。男物のタキシードに小さなシルクハット、黒い杖は逆向きに
して肩にかけている。
 手に持つのは、五枚のカード。片手で持つそれを、指先だけで器用に閉じ、開いた。その際
に落ちた一枚が、ひらりと机の上、冬継が捨てたカードの上に落ちた。ゲームを始めたばかり
なので、机の上にはまだ三枚しかカードがない。
 捨てたカードは、ハートの4。
「一枚でいいのか?」
 冬継の対面――椅子に座り、退屈そうな顔をした少年、須藤幹也が問いかける。マッドハン
ターは黙って頷き、手元の山から幹也は一枚を引き抜いて手渡す。冬継の位置からでは、一体
何を貰ったのかは判別できない。マッドハンターは常に笑っているせいで、表情から手のうち
を読みとることはできそうにもなかった。
 ――一枚交換ってことは、良い手か。
 そう思考することしかできない。
 ポーカー、である。
 ルールは単純だ。カード交換の回数は一回、枚数は自由。入っているジョーカーは一枚。あ
とは掛け金を積み上げて、ハッタリとブラフと騙しと賺しで勝負を決める。捨て札を切ること
はなく、山札を使い切るまでが一ゲーム。この場にいるのは三人なので、平均して三回の勝負
が出来る。
 ただし、かけるのは金銭ではない。
 ――御伽噺だ。
 勝った人間が、負けた人間に、質問をする。負けた方は御伽噺を聞かせるように、昔のこと
を物語る。そういう、狂気倶楽部内に伝わる遊びだった。
 コール(勝負に乗る)をせずに、ドロップ(降りる)をした場合、質問されることはない。
ただし、質問することもできないので、完全に蚊帳の外だ。
 そういう、微妙な損得を釣鐘にかけ、相手の真理を読み解くのが――ポーカーというゲーム
だった。
 もっとも。
627終わったあとのお茶会 ◆msUmpMmFSs :2007/02/10(土) 23:55:28 ID:8jgVWqnM

「なら僕も一枚だ」
 淡々と、あくまでも退屈そうに須藤幹也――五月生まれの三月ウサギは、自身のカードを一
枚捨て、山札から一枚引く。捨てたカードはダイヤのA。
 退屈そうな須藤幹也と。
 楽しそうなマッドハンター。
 表情を変えない二人を前に、心理ゲームは、圧倒的に不利だということを冬継は自覚してい
た。その上、頭が痛くなることに、須藤幹也の後ろには――
「あら兄さん、この手で本当にいいんですか?」
 真顔で囁くのは、須藤幹也の片膝の上に身を座らせ、生身の手で首に抱きつくようにしてい
る『妹』だ。べったりと、兄にくっついて離れようとしない。右腕以外の腕と両脚は義手・義
足であり、それらを動かすことなく、右手一本で兄に寄り添っている。時折思い出したかのよ
うに幹也の首筋や耳にキスをするので、そのたびに冬継はなんともいえない気分に襲われる。
 実の兄妹、なのだ。
 そして、『女王知らずの処刑人』、八月生まれの三月ウサギという仇名を授かる、狂気倶楽
部の住人だ。
 マッド・ハンター。
 元・五月生まれの三月ウサギ。
 その跡継ぎであり妹である、八月生まれの三月ウサギ。
 周りを狂気倶楽部で囲まれてることに対する居心地の悪さがあった。
 里村冬継は、狂気倶楽部の住人ではない。
 住人だったのは、今は亡き彼の姉で――その姉もまた、元・三月ウサギなのだ。かつてマッ
ド・ハンターの友人であり、五月生まれの三月ウサギと付き合い、そして殺されたという、絡
み合った人間関係の中にある。死してなお、その影響力は残っている。
 居心地が、悪くならないはずがなかった。
「……なんで僕がお前らと和気藹々とポーカーしなきゃなんないんだろうな」
「和気藹々?」
 答えたのは、幹也だった。カードに眼を落としていた幹也が顔を上げ、
「和気藹々としてると言えるのかなこれは」
「言える、言えるさ、言えるとも。なあ忘れてしまったのかい三月ウサギくん。私たちはずっ
と、こうしていたよね」
「私は――知りません。兄さんたちとは、時期が違いますから」と、妹。
「そうだね、そうだよ、そうだとも。かの黄金のお茶会時代においては、いつでもいつだって
こうしていたのさ。ヤマネとグリムは学校になどいっていなかったからね」
「ヤマネ? グリム? おい如月更紗、誰だそれ」
 知らぬ名前に冬継が反応し、対するマッド・ハンターはにやりと笑った。
「それが、君の質問かい?」
「……まさか。それじゃ、賭けるよ」
 百円玉を机の上に置く。ゲームの形式上、硬貨は必要だった。ちなみに賭けられた金は、す
べて一階にある喫茶店のコーヒー代になるらしい。
628終わったあとのお茶会 ◆msUmpMmFSs :2007/02/10(土) 23:56:11 ID:8jgVWqnM

「コール」
 マッド・ハンターは短く続き、
「兄さんはどうします?」
「僕もコールだ」
 示し合わせたように、幹也も百円玉を机の上に置いた。
「…………」
 わずかな緊張。
 公開するこの瞬間が、一番気の張る時間だった。
「……8のツーペア」
「負け、負け、負けたね」
 スペードの6とクローバーの6、クローバーのKとハートの3、ダイヤの3。
 クローバーの2ペアだった。
 2ペア同士ならば、数字の高いほうが強い。そして、最後の一人、幹也は――
「僕も負けた」
 ハートのAとハートの10、クローバーの9とスペードの7、ダイヤの4。
 ブタ、だった。
「…………」
「…………」
「だから言ったでしょう兄さん? その手じゃ負けますよ、って」
「二人が降りてくれることを期待したんだけどね」
「あら兄さん。兄さんが三番目なんだから、それは無理だわ」
「ああ、それもそうだね」
「兄さんはお茶目ですね――」
 うふふ、と妹は笑い、兄は笑わなかった。
 マッドハンターの笑いはいつも通りで――冬継の笑みは引き攣っていた。
「……おい、如月更紗」
「なんだいなんだね冬継くん」
「こいつら、いつもこうなのか?」
「当然だ」
 彼女にしては珍しく、はっきりときっぱりと、ただの一言で切り捨てた。
 この兄妹は、いつだってこうなのだと。
「そう、当然です。私と兄さんは、この世界で唯一の家族なんですから」
「……唯一?」と、冬継が首を傾げる。
「よくある話だよ。父親も母親も殺された。それだけのことさ」
 あっさりと、幹也が答える。声には動揺も憤慨もない。そんなことは、自分にとってはどう
でもいいことなど、その態度に表していた。
 あまりにも――乾いている。
 見た目は、普通の高校生にしか見えないのに。
「それより、質問はそれで終わり?」
「あ、いや――あんたには質問はないよ」
 言いながら、冬継は心の中でこっそりと思う。
 本当に訊きたいことは。
 跪かせ、命乞いと共に訊いてやる――と。
 今はまだ、そのときではない。
 代わりに、前々から気になっていたことを訊ねた。本編だと、なし崩し的に監禁ルートに突
入したため聞く暇がなかったのだ。
629終わったあとのお茶会 ◆msUmpMmFSs :2007/02/10(土) 23:56:45 ID:8jgVWqnM

「如月更紗。お前、いつから此処にいるんだよ。少なくとも一年前からはいるんだろ? その
――姉さんと、友人だったってんなら」
「そうだね、そうかな、そうかもね。一年といわず……」ひい、ふう、みい、とマッドハンタ
ーは指折り数えて、「七年ほどいるよ」
「七年!?」
「そんなに前から……」
「ふぅん」
 驚きと、呆れと、無関心。
 三者三様の返事は、前から冬継、幹也、妹である。
「七年ってことは……九歳からマッドハンターを?」
 言いながら、冬継は頭の中で想像する。
 九歳の如月更紗が、あの馬鹿でかい鋏を振り回している姿を。むしろそれは、鋏に振り回さ
れているといってもいい想像だった。可愛らしいといえなくもないが――それ以上に物騒極ま
りない。
 けれども、マッドーハンターは。
「いや、いや、いや」
 と、大仰に首を振った。
「七歳の頃は違うのさ――そう、違うのよ。あの頃の私はまだマッドハンターじゃあなかった」
「まだ、か」
 呟く幹也に、マッドハンターは「その通りだよ、その通りだ元・三月ウサギくん」と微笑み、
「ここにきたときに振り当てられた役柄は――『ハンプティ・ダンプティ』」
 ハンプティ・ダンプティ。塀の上で狂っている、擬人化された卵。世界を内包したキャラク
ター。
 それは――鏡の国のアリスに出てくる登場人物だ。
 マッド・ハッターのように。
 三月ウサギのように。
 あるいは――白の女王の、ように。
「狂気倶楽部は代替わりがあるからね。演劇の役者変更みたいなものだよ」
 幹也が、冬継の方を向いて言った。この場で唯一、狂気倶楽部に所属しない彼へと説明した
のだろう。そんなことは知っている、と言いたかったが、ここで噛み付いても何にもならない
ので我慢した。
 須藤幹也は、きっと何を言われたところで――堪えたりはしないだろう。
 退屈だな、と返すだけだ。
 何を言っても無駄な相手に、何かを言うことほど、虚しいことはない。
630終わったあとのお茶会 ◆msUmpMmFSs :2007/02/10(土) 23:57:51 ID:8jgVWqnM

「ところが、ところが、ところがだ! 一年もしないうちに事件が起きて――ハンプティ・ダ
ンプティはくだけ散った。それはもう、見事に、砕け散って、元には戻らなくなった」
「…………」
 それも、また。
 原作と、同じように。

  ハンプティ・ダンプティが塀の上。
  ハンプティ・ダンプティがおっこちた。
  王様の馬みんなと、王様の家来みんなでも
  ハンプティを元には戻せない。

 壊れたハンプティ・ダンプティは――元には戻らない。
「『卵の中身のダンプティ』は『白の女王』へとプロモーション。そしてそして、『卵の殻の
ハンプティ』は――ご存知の通り、イカレ帽子屋に成り下がり。おかげで白い女王陛下のため
に働く、しがない首狩り役人になってしまったというわけさ」
 自嘲するように。
 おどけるように。
 あざけるように。
 嘲笑うように。
 マッド・ハンターは、そう言った。
「マッド・ハンター。以前言ってた、『首切り女王』っていうのが?」
 訊ねたのは。
 かつて、マッド・ハンターとお茶会を共にした、須藤幹也だった。
 かつて、マッド・ハンターは、自身の立場をこう表現した。
 ――首切り女王のために働く、狂った狩り人にしてイカレ帽子屋だけどね。
 そのことを、幹也は覚えていたのだろう。
「おや、おや、おや。よく憶えているね――本当によく憶えている。私としても、あまり関わ
りたい人物ではないのよ」
「ふうん……お前にも、色んな過去があるんだな」
 納得したように、冬継は頷く。
 白の女王。
 首切り女王。
 ハンプティ・ダンプティ。
 マッド・ハンター。
 七年前。
 九歳。
 情報が多すぎて、何について考えればわからない。
 ふと、最初に思いついたことを、冬継は口にした。
「なあ如月更紗。ってことは、ハンプティ・ダンプティって――」
 その問いを遮って、マッド・ハンターは高らかに言った。
 まるで、そこには触れてほしくないと、言わんばかりに。
「さぁさぁさぁ! 質問はそこまでだよ冬継くん。次のゲームといこうじゃないか。あとは本
編でのお楽しみ、という奴さ」
「なんのことだよなんの……」
 ぶつくさと、それでも冬継は従った。一気に話を聞いても、全てを理解できるとは思わなか
った。
 カードはまだ三分の二は残っている。あと二回は出来るだろう。
「それじゃあ、配るよ」
 言って、幹也がカードを配り出す。

 奇妙なお茶会は、まだ、続く。
 
631いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs :2007/02/10(土) 23:59:26 ID:8jgVWqnM

・使用済み
ハート   A 34  7  十
ダイヤ   A 34  78
クローバー  2   6  9    K
スペード  A2   67

以上で(1)終了です。
ぶっちゃけると本編で張ってた伏線が弱かったので補強もかねてます
あとは単に、ありえないメンバーで平和にゲームをするところを書きたかったという
次はちゃんと本編投下します
632名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 00:14:51 ID:fR7UUWKX
誠に良いヤンデレだ!
GJ!!
633名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 00:17:05 ID:fR7UUWKX
誠に良いヤンデレだ!
GJ!!
634伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/11(日) 00:38:10 ID:Wy/5ziQ0
GJでありました!

パッケージリベンジ編
今度は全員入った。
http://imepita.jp/20070211/020390
ラフなので分かりにくい為一応解説。
上段左から神無士乃、里村冬継、須藤冬華
下段左から須藤幹也、ヤマネ、マッドハンター
となっております。
635名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 00:40:12 ID:W1wZyw7C
型月ネタで敬遠する方もいるかも知れませんが、以前月姫のFDである歌月をプレイしていた際、投稿された二次創作を収録していたのを思い出しました。
そこで、お茶会もお茶会の二次創作を募り、優秀な作品を収録する。というのはいかがでしょうか?
636名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 00:48:26 ID:cTVOpEhn
>>635
ふむん?

確かに面白いアイデアではあるのだが、気が早くないか?


それに優秀かどうかをスレで語りだしたら荒れる可能性がある。
それだけのために別スレを用意するというのも微妙だな。
別の板ならもしかしたら・・・・・・だが。
637名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 00:52:43 ID:W1wZyw7C
>>636
勿論それを決めるのは作者様で、発売まで誰の作品が収録されるのかワクワクするのも良いかと思ったのですが……
638名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 00:54:14 ID:3IO5fhab
二次創作!?
止めとけ止めとけ。

最悪の場合スパシン(ザザーン)、U-1、スレナルとかと同じ方向に走るぞ。
639名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 00:57:09 ID:Y6fxQTxR
>>634
神無士乃が個人的にすげーぐっとくる(*´ρ`*)

>>635
TYPE-MOONに限ったわけじゃないけど、二次創作っていうのはすこぶるデリケート。
わざわざ荒れる種を蒔く事はないでしょ。
640慎 ◆lPjs68q5PU :2007/02/11(日) 00:58:57 ID:jmw5a2Dm
投下された職人様GJです。
活気出てきましたね。
>>635
いいアイデアだとは思いますが・・・>>636氏が仰ってる通り、少し気が早い話だと思います。
後は批評による荒れもありえないわけではないでしょう。
したらばかなんかに二次創作、そして
それについて批評するスレを立てるというのも
手でしょうけど、まだその時期ではないと思います。
未完の作品も多いですし・・・・
ただ需要があれば建てに行きますが。
641名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 01:32:10 ID:eieYISQQ
>>635
ならば言い出しっぺの君が(ry
642伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2007/02/11(日) 01:45:12 ID:Wy/5ziQ0
みんなに質問。
今までの冬継と
http://imepita.jp/20070211/061840
ではどちらが良い?
素直な意見を聞きたい。
643名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 01:49:58 ID:nccjQsTV
>>642
自分的には、今回の冬継君の方がいいかも。
何と言うか、今まで以上に「らしさ」が出てて良い感じ。
644名無しさん@ピンキー
>>642
あくまでもお茶会の人の意見が最優先ではあろうが、自分としては今回の方かな。