【涼宮ハルヒ】谷川流 the 36章【学校を出よう!】
Q批評とか感想とか書きたいんだけど?
A自由に書いてもらってもかまわんが、叩きは幼馴染が照れ隠しで怒るように頼む。
Q煽られたりしたんだけど…
Aそこは閉鎖空間です。 普通の人ならまず気にしません。 あなたも干渉はしないで下さい。
Q見たいキャラのSSが無いんだけど…
A無ければ自分で作ればいいのよ!
Q俺、文才無いんだけど…
A文才なんて関係ない。 必要なのは妄想の力だけ… あなたの思うままに書いて…
Q読んでたら苦手なジャンルだったんだけど…
Aふみぃ… 読み飛ばしてくださぁーい。 作者さんも怪しいジャンルの場合は前もって宣言お願いしまぁす。
Q保管庫のどれがオススメ?
Aそれは自分できめるっさ! 良いも悪いも読まないと分からないにょろ。
Q〜ていうシチュ、自分で作れないから手っ取り早く書いてくれ。
Aうん、それ無理。 だっていきなり言われていいのができると思う?
Q投下したSSは基本的に保管庫に転載されるの?
A拒否しない場合は基本的に収納されるのね。 嫌なときは言って欲しいのね。
Q次スレのタイミングは?
A460KBを越えたあたりで一度聞いてくれ。 それは僕にとっても規定事項だ。
3 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/08(月) 10:10:06 ID:HybaSL/c
>>1乙
このスレは37章、次スレは38章で立てる
次スレ立てる時に憶えてる人が指摘すればいい
たかがスレ番ぐらいで氏ねとはいただけない
>>1乙
スレ立てはきちんとご確認の上で
計画的にお願いします。
またにぶら下がっているもの!
>>1乙
まぁループってコトでww
「ハルヒ」に相応しいじゃないか
涼宮ハルヒの暗号 解答編まだ〜?
もう「答え:ぞぬの肉」でいいんじゃね?
前スレ埋め乙
>>10 そんなのあったな。もう存在自体を忘れてたよwww
>>10 アレは難解だよな。早く答え知りたいな。
地味に心に引っかかってるんだよね。
涼宮ハルヒの〇天国の続きまだー?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
>>10 ようやく忘れてたのに、また思いだしちまったぜ、正直答えがかなり気になる
ポッキーゲームの古泉verマダ-
>>17 書いた俺自身ですら忘れていたものを(;´Д`)
イレカワリLOVERも未完だったような。でもあの続きちょっと鬱りそうなんだよなぁ
>>19 古泉編は尺の都合でカットされたんだってばw
おいおいw
>>22 ディレクターズカット(´・ω・`)
マジレスすると俺も他に書きたいものがあるから勘弁してくれwww
その代わりあのポッキーネタは誰でも好きに使って良いから、っていうかいちいち許可必要なほどのもんでもないから
むしろあれだけポピュラーなネタが今まで被らなかった事の方が不思議なんだって、アレは
なんか自分が元祖、みたいな態度取るのも横暴でどうかと思うし
古泉編でも朝倉編でも鶴屋編でも喜緑編でもなんでも良いから、お前らもっとポッキー!ポッキー!
25 :
17:2007/01/09(火) 20:45:20 ID:uQaAlve1
>>22 YOU書いちゃいなよw
てか書いてくださいorz
できればついでに鶴屋さんやら朝倉やら妹,さk(ry
すいません調子に乗りましたorz
投稿時間下4桁が異様に不吉な件について
悪いことは言わない、そのまま氏ねwwww
てかポッキーってどこかのキャラスレで読んだ記憶があるんだよな。
……個人サイトだったかも知れんが。
ポッキーゲーム…
キョンハルも古キョンも好きな自分としては、非常に続きを楽しみにしていたのにorz
放棄なんてひどい。
作者に愛想を尽かされた作品を愛してしまったこの気持ちはどこへ行けばいいんだ。
>>30 妄想を実現させるための気力にすればいいと思う。
そういえば、9-27様: キョン×有希が加筆修正されて公開されたね。
32 :
某偽w:2007/01/09(火) 21:28:13 ID:M+3ykxDQ
>>30 その気持ちはテキストエディタへ向けるのが吉でしょう。「無ければ自分で作ればいいのよ!」
と某団長も言ってますし。
……実際過去に一度やっちゃった事がある偽者よりw
いやはや未だに作者には頭が上がりません。
33 :
もうお前らね:2007/01/09(火) 21:34:07 ID:NM+H2J1L
<ポッキーゲームの古泉verマダ-…?
| 〃〃∩ _, ,_
|・) ⊂⌒ ( ゚д゚) ?
| `ヽ_つ ⊂ノ
<今すぐ投下してもらおうか…
| ∩ _, ,_
|・)二⊃⊂⌒ ( ゚Д゚ ) !
| `ヽ_つ ⊂ノ
<いやいや、ノーカット版と言う事で…
| _, ,_
|⌒ ( `Д´) )))
|`ヽ_つヽ_つ ))
<非常に続きを楽しみにしていたのに…!
|, ,_
|Д´) ))
|ヽ_つ )
|
| イヤアァァッ ───── !!!
|
こういう気分になるからやめてくださいw
っていうか、投稿頻度が非常に少ない俺みたいなのが
あんま書き込んでると馴れ合いみたいになるから後はROMるノシ
リバイバルブームみたいでいいな。未完の続きが来るってのは。
前スレで、真(チェンジ!)長門なるワードを見て、
「目を瞑っていても、合体出来るようになるまで繰り返す」と言いながら
キョンを押し倒す長門、と言う発想をしてしまった俺は病んでるんだろうか……
>>29 某キャラスレでポッキーネタを書いたが……俺のかも?
>>35 「これがメイン端末とバックアップの差…」
38 :
偽:2007/01/10(水) 02:18:03 ID:KwYgnYFK
>>17 波乱万丈な部活動をようやく終え、あの後妙に迫る古泉を地面に叩き伏せてから家に帰り着くと
「あ、お帰りキョンくんー」
妹のヤツが俺にとことん甘い厄災を振り撒いたあのチョコ菓子を手にして俺を迎えてきた。
何で今日に限ってそんな局地的大流行な菓子を食べてるんだお前は。
「えーとね、みよちゃんと話題になったからー」
……何となく続きを聞くのがためらわれる話の流れだ。
その証拠に妹の瞳が宇宙的観察対象指定を受けているアイツが自称楽しい事という傍迷惑な何かを
ひらめいた時の輝きを灯している。
そしてその瞳輝かす内容を実行した場合、十中八九どころか百パーセント被害を被るのは俺だ。
なので俺は至極当然のように部屋まで付いてきた妹からの好奇心がたっぷり詰まった
言葉のセンタリングを迷わずスルーする。
「そうか。もうじき夕飯だろ、菓子も程々にしとけよ」
「ねー、キョンくんはポッキーゲームってした事あるー?」
あまりの直球にスルーしたはずのボールが顔面ヒットした。
全くこいつはみよきちと何て話題を話していやがるんだ。
小学生なら小学生らしくおしゃれ泥棒の話題ででも盛り上がっていれはいいんだ。
俺が小学生の正しい姿をじっくり教えてやろうと振り向くと
「んー」
今日何度目かのポッキーを咥え迫る妹の姿があった。
あまりこのネタをひっぱるのもアレなので小ネタって事で。
おいおい、いいのかい? 続き書いちまうぜ?
40 :
17:2007/01/10(水) 05:22:11 ID:KlwvF3LD
>>38 まさか書いてもらえるとはwww言ってみるもんだ。
保管庫の管理人さんへ
9-27様: キョン×有希 01 が一部文章がダブっているようです。
< 有希が柔らかい声で沈黙を押しのける。>
から
<少しずつ三点リーダーが長くなっていく有希だったが、表情は変わらない。
強いて言うのなら、わずかに瞳が濡れているような気がした。>
まで。
>>39 お前……もしかして書きたいのか?
「……」
……よしわかった。構わない、書いちまえ。
人間が表現できる範囲内で思いっきり書いて見せつけてやれ。
>>39 あなたが書いた文章とは
とても気になりますね。
でも書き上げた後でちゃんと見直さないと、
投下した後で気分が飛ぶ鳥を落とす勢いで
下降する羽目になってしまいますからね。
すばらしい作品を期待していますよ。
留守の間にお願いしますよ。
>>43 素直じゃないねぇ・・・
いや、逆に素直なのかな?
>>43 が
気
き
た
る
し
間
ガキ来たる島? 冗談はさておき、投下をワクテカしながらまってます。
先の件でバックアップからバックパックに格下げをくらって、
ずっと長門の背中におんぶのようなかたちでくっついて、
長門のいう事に一言よけいなことを言ったり、
後ろにこけて後頭部をうったり、
長門ごしにおでんを作ったり(だし汁や野菜片が長門にかかりまくり)、
体育の時に着替え終わったと思ったら逆に長門が後ろにいたり、
長門が本を読もうとすると代わりに女性セブンを渡してきたりする朝倉。
という電波を受信した・・・…
これ、どうしよう……
涼宮ハルヒの暗号 解答編マダ〜?
>>16 答えもそうだが、オチのほうが気になってしょうがなかったw
あんがい「お薦めはナポリタン」コピペみたいに意味のないものだったりして。
ウミガメのスープに投稿すれば誰かが答えてくれるかも。
でも答えがわからないから投稿しちゃだめか
単純に答え考えてない釣りだと思うんだがこれ如何に。
絶句
工房か。ほっとけほっとけ。
拾った者を得意げに貼り付ける・・・
コレが若さというものだろうか。
得意げ?よく見ろ
拾った物で僕が書いた訳じゃありませんってちゃんと書いてあるだろうが
2時創作にも著作権はあるのにな
そこに貼ってある中で有名どころのSSの作者の2名が、
同じFC2ブログ内でブログを持っているにも関わらずだ。
前スレでもでてたね、この話題。
とりあえず転載の仕方から見て、昔からのスレ住人って訳じゃなく保管庫から持っていってるみたいだけど
ちゃんと20歳超えているのかそっちの方が気になる。
20?FC2にはそんな規約があったりするの?
ちなみにこの板は、いつの間にか18未満禁止だけど。
保管庫は21歳未満閲覧禁止だからな。
保管庫から持っていってるなら21歳以上なんだろうけど、そうは見えないってことだろ。
>>56 まさしく「本人乙」って感じだな。
注意書きがあれば無断転載してもいいのか?
転載するにしても最低限転載元は明記すべきだろうに。
こんなことで神々のモチベーションが落ちたらイヤだなぁ。
>>51 答えは1-3なんだ。
決して答えを考えてなかったわけじゃないんです。
でも暗号だけが先走って、オチが思いつかなくて……。
ごめん……
>>63 よ〜し
じゃあ、俺が暗号を解くのと
お前さんが話しのオチを思いつくのと
どっちが早いか勝負だ!
>>56 その一文が追加されたのって最近だぞ?
まあ転載はともかく、タイトルを改変するのはいただけないと思うが。
>>63 よし俺はおまいさんの方を応援しよう!
頑張れ!
>>47 ガチャ
毎度の如く扉を開け、見慣れているであろうはずの部室内に目を向ける。
だがそこには見慣れない、そして俺を警戒させるには十分過ぎるほどの光景が視界に飛び込んできた。
「朝倉!」
俺を何よりも恐怖に陥れるその存在に、俺は思わず身構える。
が、それよりもだ。
その朝倉の今の姿は、俺にしてみればあまりにも信じ難い……というか、どう考えても俺の視神経の方に不備があったようにしか思えず、俺は再度扉を開き、いったん外へ出る。
今のは朝倉だよな。そうして長門だ。長門はいつもの如く読書中だったように思う。
その長門に関しては全く問題ないのだが、どうにも朝倉の方だ。俺の知る限りの朝倉涼子とは到底掛け離れている行動だったように思うのだが。
いや、そもそも朝倉がいるという時点で俺にとっては大問題なのだが、あの姿を目の当たりにすると、何だかそんなことはどうでもよくなってきた。
きっと疲れていて幻覚でも見たに違いない、と自分に言い聞かせ、意を決して再び扉を開ける。
ガチャ
「ね、ちょっと進むの早いってば」
俺は頭を抱えた。
OK、まずは冷静にこの状況を把握しよう。
残念ながら決して幻覚などではなく、現実問題として朝倉涼子がそこに存在している。
だが、俺が頭を抱えたのは朝倉がいたということ自体にではなく、やはりその朝倉の行動に対してあり、まずは本人に事の次第を問い質してみるのが先決だ。
「……朝倉、何やってんだお前」
一体どういう風の吹き回しなのか、俺には皆目見当もつかない。
何やらおんぶをして貰っているように長門の背中にピッタリとくっ付き、長門の肩越しに長門と一緒に読書をしているではないか。足まで長門の腰に回しているような気もするが、もうこの際そんなことはどうでもいい。
「ね、ね、長門さん。だから読むの早いってば」
見たか情報統合思念体。これがお前たちの端末たるものの暴走した成れの果てだ。
「……おい、聞こえてるか朝倉」
「あら? 居たのあなた。久し振りね」
ああ、久し振りだ。そして、そんな感傷に浸っている余裕など持たせないほどの行動を、今お前は取っている。
「え? 何のことかしら……」
朝倉がそう言うや否や、長門が席を立ち部室を出ようとする。もちろん朝倉をおぶったままだ。
「長門、どこ行くんだ?」
「図書室」
「そ、図書室よ」
……いちいち被せんでもいい朝倉。
とにかく俺にはこの状況を気にするなと言う方が不可能であり、俺は当然のようにこの二人に付いて行くことにする。
「えー、それちょっと面白くなさそうじゃない?」
「…………」
「ね、雑誌買いましょうよ雑誌」
「…………」
お気に入りの本を物色している長門に対し、先程から事あるごとに後ろから余計なつっこみを入れていく朝倉。まったく、何がどうなってやがる。
やがて長門は、朝倉の余計な横槍にも全く動じずに自分の気に入った本を見つけ、坦々と貸し出しの手続きを済ませる。
「もう、あっちの本の方が良かったと思うんだけどなあ」
朝倉はボソボソと不満を漏らしつつも、しっかりと長門の背中にしがみ付き、長門の行動に従う。
どうでもいいが朝倉、その体勢でいるならスカートの丈を長くする事を俺は激しく提案する。健全な男子高校生にしてみれば、非常に目に毒なのは疑う余地もない。ましてやお前のルックスなら尚更だ。
そうして下校時間。
変わらず長門と一体化している朝倉が、どういう訳か妙な提案を掲げ出した。
「ねえ、あなたも家に来ない?」
朝倉、それは505号室のことなのか708号室のことなのか、どっちだ。
「何言ってるの? 長門さんは708号室にしか家を持ってないわよ」
「……そ、そうか、すまん。いや、俺の思い違いだ」
もうどうにでもなれ。
「長門、行っていいのか?」
その瞬間、俺の問いに長門が答える間もなく、朝倉が長門の肩から手を滑らせたようで、盛大に後ろ向きにこけた。
「痛いな、もう。あ、わたしったら、長門さんから離れちゃったじゃない」
そう言いながら、朝倉は再び長門の背中に乗る。
「長門さんって、とってもいいんだもん。長門さんだって、いいと思うでしょ?」
長門は俺の方に向き直り、
「いい」
……長門、それは俺の質問に対してなのか朝倉の質問に対してなのか、どっちなんだ一体。
その答えによっては、俺はお前に対する認識を改め直さねばならんかもしれん。
何やら怪しい関係にあるかもしれない二人に、俺は何とも言い難い気分に駆られつつも、二人に付いて長門のマンションへと向かうことにした。
折れた……あとは頼む。
これはもうアレだろ・・・
フラグ勃っちゃっただろ・・・
さんぴ(ry
69 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 00:32:37 ID:ffXW8RLW
「長門有希の嫉妬」「長門の崩壊」「BADEND風味」をハイテンションユッキーに脳内改変して読んでみた… 俺もうアカン
>>70 超いい激しくいいんだが俺としては古泉分が足りない。
>>52みたいな悪質サイト晒し上げはともかくとして
>>70のような純然たる個人サイトを晒してる奴はなんなんだろう
俺が2chで宣伝してやったぜ、アクセス増えて良かったなw
なんて思って悦に入ってるのかな。それとも
こんな面白いサイトがあるんだぜ、お前ら知らないだろw
とか思ってるのかな。身勝手な自己満足で振り回される管理人さん(´・ω・)カワイソス
∨
ビシッ / ̄ ̄ ̄ ̄\
/ ̄\( 人____)
, ┤ ト|ミ/ ー◎-◎-)
| \_/ ヽ (_ _) )
| __( ̄ |∴ノ 3 ノ
| __)_ノ ヽ ノ
ヽ___) ノ )) ヽ.
>>75 なんとういうイケメンこいつは間違いなくモテる
おいおまいら2chが大変だ
ネット界激震!! 賠償命令を無視し続けてきた日本最大の掲示板「2ちゃんねる」
(2Ch)の管理人、西村博之氏(30)の全財産が仮差し押さえされることが12日、
分かった。債権者が東京地裁に申し立てたもので、対象となるのは西村氏の銀行口座、
軽自動車、パソコン、さらにネット上の住所にあたる2Chのドメイン「2ch.net」
にまで及ぶ見込み。執行されれば掲示板の機能が一時停止するのは必至だ。
【ネット】再来週にも2ちゃんねる停止? −ZAKZAK−★22 [01/12]
http://news22.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1168589961/
>>78 ぴんくちゃんねるは管理人がちがうんじゃなかったっけ
やっぱこっちもあぶないのかな
つーか2ちゃんがおしゃかになっても代替が出てくるだけだよ
『ハルヒ×古泉』
「ん……」
めずらしく妹に叩き起こされずに目が覚めた。
今日は平和だとか考えて伸びをしたころでやっとこさ機能してきた俺の意識は、
真っ先に部屋の違和感に気付く。ハンガーに学ランがかけてあって、
ベッドの下には女子のブレザーが投げ捨てられていた。
「ここは俺の部屋じゃ……あーあー」
声も変わっている。というかすごく聞き覚えのある女の声だ。
「何だってんだこれは?俺は……ハルヒか?」
髪が長くて、それから女の子の匂いがする。そしてふと横を見た俺は……
「うわぁっ!」
自分が枕にしていたものが何なのか気付いて飛び起きる前に、
そいつに抱きすくめられた。
「おはようございます。涼宮さん」
「古泉!一体これはなんの真似だ!」
なんで裸なんだ。なんでこいつと寝てるんだ。色々抵抗を試みるが、
くそ、こいつ意外に強いぞ。
「僕だって男です。朝っぱらから女の子の裸を見たら、
我慢できなくなるときがあるんですよ」
ニヤケスマイルに抗議の声をあげる前に唇を塞がれた。
舌を入れられると力が抜けてしまう。
死ぬほど気持ち悪いが、力の差がありすぎて抵抗できない。
「何を暴れているんですか?言葉遣いもいつもと違うようですし……
おおかた、変な夢でも見たのでしょう?」
古泉は耳をねぶりながら胸をまさぐりだした。やばい、
男と女じゃ感覚が違うらしい。
「あぁっ」
出したくもない声が勝手に漏れてくる。これには参った。
「は、放してくれぇ……あっ……」
「ふふ、まだ寝呆けているようですね」
古泉は俺の胸の部分まで顔を落とすと、乳首を丁寧に吸い上げた。
怖気と気持ち悪さと快感が一挙に襲ってくる。
「ひゃああん!あっ、あふぅ、やめろぉ、おれははるひじゃなあぁ!」
昨日まで息子が居たところを指で擦られると、
すぐに頭が真っ白になってしまった。
「あああ……ああああっ」
徐々に何かが溢れて来るのがわかる。くちゃくちゃという音まで聞こえてきた。
「じゃ、これで目覚めさせてあげますよ」
古泉はくたっとなってしまった俺の足を広げると、さっき散々いじめたところに
俺が無くしてしまったシンボルを深くねじ込んだ。
「ふぁああああ!」
ぱんぱんという音が聞こえる。まさか初体験がこんなだとは思わなかった。
「はぁっ、はぁっ、はあ、はあ……」
目の前には笑顔を忘れた古泉が。目を閉じても古泉の吐息が聞こえてくる。
畜生、なんて気持ち悪いんだ。しかし俺は抵抗できない。
気持ち良すぎて動けないからだ。
「あぁー!あー!うあー!」
もう自分でも何を言っているのかよく分からない。この状況早く終わってくれ。
俺の記憶を消してくれ。出来ないなら俺を殺してくれ。
「くっ……そろそろイきそうです。」
腰の動きが早まった。やばい更なる気持ち良さが。
おんなはおとこよりきもちよくなるときいたが――
「あああああー!」
御託を並べている間に絶頂が来てしまった。
凄い。いつもの射精の瞬間が長引いてる感じだ。
「ああ……あああ……」
俺がイってる最中に中に出しやがったこんちくしょうが愛のことばを囁いている間に俺の意識は暗転して……
「うわああっ!」
気付いたら見慣れた蛍光灯が俺の目に映った。
とりあえず良かった。どうやら夢だったらしい。
何か重みを感じて下を見ると……
「んっ、んっ、んっ」
妹のぱんつが見えた。こら、何をしている。
「うー?ひょんひゅんおひたー?」
振り向いた妹は手のひらを口の前に置いて
「うえー」
と口のなかのモノを出した。
「キョンくんいっぱいでたー」
ニコニコ笑う妹を見ながら、俺はこいつに垂れる説教の言葉を
原稿用紙10枚分くらい考えていた。
フヒヒ!すいません!
ハルヒ×古泉が一番好き
確かにハルヒ×古泉だww
このハルヒ×古泉なら許せるwww
そう来るとは思わなかったwwwww
即効NGにしようかと思ったら盛大に吹いたw
……最近まったく電波が降りてこない。もう俺は駄目なのか
アッー!ってなんだこりゃw
そういや
アッー!
これ元ネタなんだっけ?
タイトルを見る→NG準備→ん?「俺の意識」?→アッーーー
これはやられたw
まぁなんつーか……
原作を読むとハルヒ→キョンがホントに鉄板すぎるんだよね。
なのでそれ以外の例えばハルヒ→古泉なんてのは
もうその時点でハルヒじゃないって感じちゃうんだよな。
名前が一緒なだけで別人格?みたいな感じかな。
でもキョン→ハルヒはそんなに鉄板って思わないんでキョン→長門とかはありなんだけどさぁ
あとみくるは朝比奈(大)の時の「久しぶり」発言があるから
最終的に未来へ戻るのが規定事項なんだよね。
だからどうカップリングしても最終的には別れるコトになるから
SS書く方としてはなんか使いづらいんだよねぇ。
キョン→長門は原作ではまったくないがSSでは書きやすい
>>93 長門のどこか抜けてるところをキョンがお兄ちゃんするみたいな展開が好きすぎる
古泉ハルヒは改変世界でカップルだから妄想の余地はあると思うよ
ハルヒ→古泉みたいなのは、原作ではっきりフラグを否定されちゃってるから難しいね。
書く方も読む方も。まぁ、フラグ立ってても書けないけど。
>94
いやだからさ、改変世界みたいな理屈をつけないとハルヒ→古泉のカップル話にはもってけないってことでしょ
おまけに消失世界でも「転校生という属性が薄れ最近は飽きられ始めている」みたいな事を古泉がいってなかったけ?
なんつーかハルヒの側にキョンがいる限りは難しいんだよね、古泉展開はさ。
97 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 23:34:17 ID:zoYoye1F
改変世界でもハルヒ→古泉は無かったよな。
転校生って事で会いに来たけどもう飽きられてきているって古泉も言ってたし。
ごめん、sage忘れorz
みくるは未来制限が厳しいから原作でいろいろわかるまで書くのは難しいな。
妄想を爆発させて話を補完しないといけない。
あと宇宙人に人権はないの話と涼宮ハルヒの〜と朝比奈みくるの火遊びまだか?
しかしあれだよね、原作でわかってることってかなり少ないよね。
例えば団員の自宅にしても描写があるのはキョンと長門だけだもんな。
あとの三人はどいうトコにすんでるのか不明だろ。
ハルヒの家族だってそうだよな。
親父がいるってのはわかってるがそれ以外は不明だもんな。
古泉→ハルヒは恋にはならないだろうな。
っていうか、手のかかるお姫様に仕えてるって感じ。
俺の古泉のイメージは、妹を見ている感覚なのかなと。
雪山でもキョンと友情フラグを立ててたし。
普通の学校生活、普通の友達同士の日常をこそ、求めてるんじゃないかと。
ここで古泉×長門が好きと言って見る。VIPで古長ものを読んでめちゃくちゃ気に入ったw
俺も古泉と長門の組み合わせはカップリングじゃないギャグ物なら好きだw
そうそう古長はいいよね。
古長こそ正しい長門カプのあり方だよね。
古長良いよね。
みくるにはあえてカップリングするとしたら古泉か鶴屋さんしか思い付かない。
なぜ古泉になるんだ?関わりないのに。
みくるは普通にキョンだろ。長門もキョン
古泉もキョンだろ
>>108 お前そんなキョンハル並に王道なことわざわざ言う必要ないだろ
非エロなら古長はしっくりくる。
『空梅雨のきまぐれ→もうひとつの冬』でのやりとりみたいな。
俺が受ける印象としてはハルヒのキャラクター設定の中にキョンの事が大好きってのが完全に組み込まれてるんだよな。
それこそ属性として「ハルヒ=超が付く位の美少女」ってのと同じくらいのレベルなんだよな。
SOS団団長ではなかったとしてもハルヒ→キョンは動かないって感じかな。
キョンがいる状況で他の男を選ぶハルヒなんてのはもう既にハルヒじゃないだろって突っ込みたくなる。
流れを読まずにスランプ中の俺が通りますよ。
ネタはいくつかあるんだが、さっぱり書き進めない……どうしたものか。
俺はSOS団に入ってすっかり丸くなってまぁ変人ぶりも許容できる範囲になっ
たハルヒをどうやってベッドに持ち込むか四苦八苦してる谷口みたいな設定も好き
つまりハルヒ×谷口(失敗エンド)が好き
114 :
_:2007/01/13(土) 00:43:49 ID:WB7YyjB7
>>111 さらにキョンが行動不能や死亡してしまう状況に陥ったとしても
消失の病室寝泊りやら世界改変で不動だろうしな。
これ全てクリアして書くってことが出来る人がいるのかなあ。
>>112 俺はそういうときは大まかな描写を箇条書きにしてる
@の展開→Aの展開→Bの展開→アッー!→余談
みたいに。
古長は恋愛方面じゃなければおkだな。信頼?みたいな。
雄弁に解説好き、寡黙で無口ってのは相性はいい。
>>115 俺は過剰書きしてもそのとおりに行かないな。
なんていうか、地図を持たずに漠然と目的地に向かうドライブ感覚、というか。
ウンコー!!
古長・古みくは恋愛まではいかないけど友人としては色々妄想の余地があって悪くない。
長門とみくるじゃ会話が中々成立しないしハルヒは元よりキョンにも相談出来ない話を
みくる又は長門が古泉と話してる状況ってのは結構ありそうなんだよね。特に古泉とみくる。
でも本編見てると長門もみくるもやっぱりキョン一辺倒なんだよね…ちょっと残念。
>>113 退屈で「いいわ、あんたには期待してない」とか言っちゃう辺り本当は少し期待してたのかな、とか。
キョンは他の団員の事を気に掛けるけど、恋愛感情は全く表に出さないな。
みくるに対するのは恋愛感情とはなんか違うし。さすがツンデレ。
しかし隠し通せない想いがちらほらと……
>>120 確かに全く無いわけではないな。
消失の時とか特に。
携帯からスマソ
>>120 エンドレスエイトの天体観測とかね
ワンダリングまでいくとモノローグがもうね・・・・・・
>>119 キョンのきもちは
長門→子供の世話。みてて微笑ましい。信頼
みくる→憧れ。かぐや姫。恋愛面はアニキャラ好きが好きなアニキャラに思ったりする気持ち。
ハルヒ→ツンデレ
って感じだからな。原作の展開でみくる(大)、みくるがキョンに気持ちをだしはじめたりすれば変化はありえるが一番ハルヒは不動。
長門に関してはもう変化はなさそう。
俺はキョン→長門は戦友って感じだな。
どっちにしろハルヒ→キョンが鉄板っていうのは動かせない。
キョンとまだ会っていないとかキョンが死んだとかじゃない限りは
ハルヒがキョン以外を好きになるってのはありえナスだな。
そんなハルヒはもうハルヒじゃないだろって思う。
古泉はどうよ。SOS勢3人は→キョンだし、
おこぼれ(キョンが無理だから古泉みたいな)にもあずかれそうにないし……
森か鶴屋さんあたり?
古泉→キョ(ry
>>118 みくるはエンドレスエイトのとき、キョンではなく古泉に相談しているし、
キョンの知らないところでは結構ひみつ会議をしてるのかもしれん。
退屈のそのセリフは「やっぱり普通の人間はダメね」ってことかと思った。
キョンのときとは対応が雲泥の差だしな。
古泉も→キョンで良いような気がする。ウホッネタでなく。
雪山の裏切り宣言とか、陰謀の自分の居場所〜、とかね。
@キョンが受け…
A長門が何故かテクニシャン
Bみくるがフタナリ…
C朝倉がキョンをレイプ…
Dハルヒがエロビデオ製作…
Eコンピ研部長×ハルヒ…
F鶴屋さん本はあるのに喜緑本がない…
思えばわしはさんざんSS書いてるくせにいわゆるカップリングというのをまともにやったことがない……。
長門長編も3つ書いておいて全部成就してない……。
そこで古泉アッー長編ですよ
>>131 俺はあからさまにカップルになっているものより、ほんのり恋愛っぽさを匂わすものの方が好きだ。
>>133 分かるかも。
ただやっぱSS書いてる以上一回くらいはベタベタなの書いた方がいいのかなぁ……などと思ってしまって。
>>134 数年後キョンと古泉が結婚して……みたいな設定だとベタラブ書きやすいかも。
高校生同士をベタベタさせるのはなんだか気持ち悪い
>>135 キョンと古泉wwwwww
こほん、それはともかくとして。……ラストシーンから以降のべたべたが想像できるくらいだと丁度よくないすか?
>>136 俺も今脳内で同じ間違いをしたと思う。
べたべたしっぱなしの風景は一度ぐらい書いて見たいなぁ。
謙遜するなよ、今こうして世界があるのは間違いなくお前のお陰なんだからさ。
「ふふふ……あなたにそう言ってもらえる日が来るとは思いませんでしたよ」
その台詞、お互いのケツをさすりながら言うんだろ?
アーっ!
なんだこのうほっ!な流れはwww
実際、古泉×キョンのエロ同人がそれなりに多いのに驚いた。
まったく……キョンが攻めだろうに
女だって同人読むし書くからな。
キョンは大人っぽい振る舞いをする割りに以外と子供だと思う。なんつーか、思春期からまだ抜けてない感じ。
背伸びしたいお年頃かw
ハルヒはある意味キョンより大人かもな
んなこと言っても、SOS団にまともな思春期送れてるやつなんているか?
ハルヒと長門は思春期すら迎えてない感じなんだが。
別にキョンが子供であることは意外でも何でもないような
谷川が冷めた描写を好んでるから、意図的にキョンの子供な部分が隠されてるってのはあるだろうけど
だからといって、キョンを「大人っぽく」見せようとはしてないと思う
キョンは熱い部分も同じくらいあるからいいんだけど、学校の高崎佳由季はそういうのもないから
キャラとしての魅力がかなり薄いんだよなぁ……。
妹の精神年齢の低さが好き
「はさみー!」
とか
「はさみでねぇ、キョンくんのねぇ、頭とねぇ、体をねぇ、まっぷたつ!」
のちのバラバラ殺人犯である。
>>149 「あなたはそのページを見ていた4分54秒、この世界から消失していた」と長門に言われました。
エアブレイカー
恋するハルヒは切なくて、キョンを想うとすぐHしちゃうの
が、割と好み。
>>146 ヨシユキも結構熱い所は有ると思うが
あいつの場合歪んだ熱さなんだよな
真性シスコン変態は伊達じゃない
同人にすごい絵がうまいやつがあった。
絵師の名前はわからないけど、すべてフルカラーだった
このスレが雑談でこれだけ伸びるのは珍しい
まあハルヒスレだしな。
ハルヒ好きって厨も多いけど良質なファンも結構居るんだよなあ、ってたまに思う。
いやしかし上のカップリング談義は非常に参考になった。
そういうのあんま考えないし俺。
こういうカップリング談議をみると、誰も考えないようなカップリングを書いてみたくなる。
俺の脳内では今、「国木田×喜緑さん」が熱いんだ。
結構イイ感じな気がするんだが、さすがに妄想し過ぎか……
ハルヒと長門が絡む場面が好きだ。雪山の家庭環境の話とか
ヒトメボレ冒頭の「有希はおとなしいから〜」あたり読んでるとニヤニヤが止まらん。
キョンとは別腹でイチャイチャ女友達してる所とか見てみたいな
こういう流れもたまには悪くないな
たまに、限定だろうな
多ければそれは馴れ合いだろうし、すると雑談となって雰囲気が悪くなる
投下と感想だけやれとは言わないが、意識して控えるに越した事はないと思われ
>>157 ハカセ君×森さん
会長×キョン妹
みたいな?
そういやハカセ君×ハルヒって以外にないよね
現在それらとは全然関係ない奴を書いてっけど
最近投下かなり少なくなったものなぁ……。
いままでが多過ぎたんじゃないか。
一時期かなりまとまって投下されたので
今は各人せっせと執筆中であろう。
書き溜めてる最中なのでは、といってみる
ていうかこういう雑談で充電してるわけなんだがね……
他の書き手の人はしらんけど俺はそういうスタンスだね。
仕込みの時間って必要ですよ。
分かるwてかよかったSSとかカップリングの話って書く人にはかなり参考になる。
馴れ合い雑談化しないなら悪くない。
国木田が、実はとある理由で男装している女の子だったらって妄想してるのって、俺だけじゃないよな!な!!
wktk!
171 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/13(土) 22:43:28 ID:tZC+jAy1
>>115 遅レスになったが、サンクス。参考にしてみるよ。
でもアッー! てw
174 :
115:2007/01/14(日) 00:02:53 ID:WuJR2dST
>>173 ホモ・セックス以外でもセックスの総称として俺は「アッー!」を使ってる。
→でチャート作って肉付けするとホント楽よ。行き当たりばったりにならなくて済むし。
現在半分書きあがったアッー!
しかし180くらいまできて投下3本しかないんだな〜
>>174ガンガレ。待ってるよ。
そういや国木田って朝倉と席が隣なんだよね。
だからなんだ、って話なんだがw
今アニメを見直してて思ったんだが、5話のキョンが長門の部屋にいるシーンで、
「・・・やっとしゃべるようになったかと思ったら、永遠電波なことを言いやがった」って聞こえる部分、
「永遠」って「延々」の間違いなのかな?
>>178 俺は今までになくマジマジと長門有希の顔を直視した。
度を越えた無口な奴がやっと喋るようになったかと思ったら、延々と電波なことを言いやがった。
変な奴だとは思っていたが、ここまで変だとは想像外だった。
長門フォルダから書いた覚えの無いのが出てきたのでうp
今日も今日とて、いつもの放課後、俺は部室へとやってきた。
長門と朝比奈さんは、すでに部室に来ていたようだ。
朝日奈さんが鏡に向かって何かしているようだ。
「ああ、クリームですか」
「ええ、最近乾燥してきましたから」
なるほど、朝比奈さんのつるつる卵肌は、日々のこうした努力の賜物だったのか。
機会があれば、ぜひその触り心地を、体感してみたいものだ。
・・・ふと見ると、長門が本から顔を上げて
朝比奈さんがクリームを塗っているのを、物珍しそうに眺めている。
「どうした長門、興味津々だな」
「長門さんも使います?」
こくりとうなずく長門。
長門もお肌が気になるお年頃なのだろうか・・・っておい!
長門、顔がクリームでベトベトになっているじゃないか!
「おい長門、それはさすがにつけ過ぎだろ」
いきなりガタッと椅子から立ち上がり、ものすごい速度で、俺に近寄ってくる長門。
いかん、もしかして怒らせたか!?
なすがままに、顔を両手で鷲づかみにされ、俺の顔に−−−−−
すりすりすりすり・・・・・・
思考が止まる。
クリーム過剰の頬を、俺の頬と摺り寄せる長門。
右頬、左頬。
俺の顔と長門の顔に、適量のクリームが満遍なく塗りたくられる。
「乾燥は、お肌の大敵」
>167
国木田=藤岡ハルヒでおK?
>>180 乙です。長門は何となく嫉妬が似合いますよね。
そういや、2ch閉鎖してもピンクって平気なんだよね?
エロパロスレは残るけど キャラスレは閉鎖されるのか…
>>184 びぱーが流れ込んできたら、人大杉になってパンクする
そしたらどうしようね
どこに投下すればいいのやら
キョンとのカップリング問題点
ハルヒは特になし
長門
・ハルヒが王道
・原作キョンが長門を恋愛対象とみてないからキョンが長門に好きとか言うとどうしても不自然
みくる
・ハルヒが王道
・未来人であることに関わる設定(これがかなりでかい)
・ハルヒがみくるとキョンをあからさまに離そうとするのでキ長ほどハルヒの存在を無視できない
ハルヒが応援するってのもおかしいことはおかしいよな
古泉
・ハルヒが王道
・原作キョンが古泉を恋愛対象とみてないからキョンが古泉に好きとか言うとどうしても不自然
・ホモであることに関わる設定(これがかなりでかい)
・周りの全員が古泉とキョンをあからさまに離そうとするのでキ×ハルほど周りの存在を無視できない
朝倉
・ハルヒが王道
・原作キョンが朝倉を恐怖対象とみているからキョンが朝倉に好きとか言うとどうしても不自然
・そもそも情報連結を解除されている。
鶴屋さん
・ハルヒが王道
・原作キョンが長門さんを恋愛対象とみてないから(ry
・ポニーテールにも可変する(退屈参照)が、それがキッカケだと閉鎖空間が予想される。
妹ちゃん
・ハルヒが王道
・原作キョンが(ry
・つーか実妹で倫理的にダメ
阪中
・ハルヒが王道
・原作(ry
・キョン、節操が無さ過ぎ
森さん
・ハルヒが王道
・原作キョンが森さんを恋愛対象とみてないからキョンが
森さんに好きとか言うとどうしても不自然
・キョンとの絡みが少ない
ミヨキチ
・ハルヒが王道
・原作キョンがミヨキチを恋愛対象とみてないからキョンが
ミヨキチに好きとか言うとどうしても不自然
・倫理的観点
・これから原作に出てくるかどうかわからない
おかん
・ハルヒが王道
・原作キョンがおかんを恋愛対象とみてないからキョンが
おかんに好きとか言うとどうしても不自然
・倫理的観点
・これから原作に出てくるかどうかわからない
従姉
・ハルヒが王道
・原作キョンの初恋だが恋愛感情が残っているかわからない
・これから原作に出てくるかどうかわからない
変な女
・ハルヒが王道
・原作キョンが恋愛対象と見ているかどうかわからない
・これから原作に出てくるかどうかわからない
ENOZ
・ハルヒが王道
・原作キョンが彼女たちを恋愛対象と見てないからキョンが
彼女たちに好きとか言うとどうしても不自然
・キョンとの絡みが圧倒的に少ない
・原作にもう出てくるかどうかわからない
誘拐女
・ハルヒが王道
・原作キョンが敵視しているため(ry
・これから原作に出てくるかどうかわからない
・キョン、絶倫過ぎ
面白くないんだけど
面白くないんだけど
馬鹿
そこは、嘘でも面白かったと言ってやるのが優しさだろうが
朝比奈さんや古泉は常にこんな気分なんだろうか。
夏のループの中で
思念体の派閥が暴走して
キョンが殺されて長門が泣く
ってSSタイトル何だっけ?
>>197 そうだな。たとえて言えば、うちのシャミセンみたいなものか。
三毛猫だけに、尾も白くない、なんてな。
「…………」
ま、待て、落ち着け、すまん、ちょっと言ってみたかっただけなんだ。
俺だってたまにはそんな親父ギャグの一つくらい言ってみたくなるときもあるんだよ。
だから落ち着けって、なっ、ほら、座って深呼吸の一つもして……
アーッ!
面白くないんだけど
そんな冷静に突っ込まれると
ビクビクッ
この「変な女」ってのは、もし登場すればハルヒ×キョンの中の絶対不可侵領域
に踏み込んでくる可能性があるな。何が変なのかは定かではないが、とりあえず
一般人だろうし。
ここで新たに「変な女=女の姿に戻った国木田」説を。
つまり交際してるように見えたというのは遠まわしなアプローチだったんだな?
つまり国木田は中学のとき男国木田と変な女の二役をしてたと
昼
国木田「ねえキョン、今日ゲーセン行かない?」
夜
国木田「キョン……あん、んっ」
たまに学校で
国木田「きょ、キョン…あ、あの……そのね?」
とか戻ったりするのか
俺の妄想を駆り立てて如何するつもりだ貴様等。
それでなくても、「実は女だった内気な奴」ってスレの住人なのに…。
国木田は水をかぶると女性になります。
>>209 ら○ま○/2じゃないんだから(^−^;)
でも、ハルヒに読ませてからさりげなく
「国木田って、外見は女みたいだよな」ってなこと言ったら
次ぎの日には実現できそうだぞ
211 :
201:2007/01/14(日) 19:47:09 ID:1xJEigCh
>>203 女声の男ってことで美琴しか連想できなかった
ハルキョンもの投下いきます。
エロなしです。
原作と照らし合わせると破綻してる部分があるかもしれませんが
目をつぶってやってください。
真冬の研ぎ澄まされたような底冷えのする深夜の保健室で、俺は小人国で磔の刑に遭ったガリバーのように仰向けになったままベッドで動けないでいた。
両肩を押さえつけられてはいるものの縄で縛られているわけじゃない。ただ、馬乗りになってこちらを覗き込んでくるハルヒの真摯な眼差しが、ゴルゴン三姉妹の末妹ばりの眼力を放っているせいだ。
月明かりに照らされたハルヒの白い頬は仄かに朱が差し、その双眸は嬉しさと優しさと一抹の恥ずかしさを湛えて潤んでいる。
艶やかで纏まりのよい長いみぐしの一房が俺の首筋をくすぐっているが、そんなことなど瑣末なことだ。俺はハルヒが見せる新鮮な表情に身じろぎすることも忘れるくらいに混乱していた。
「ジョンは……、あたしのこと、きらい?」
少し鼻にかかった様な不安げな調子で訊いてくる。俺の知ってるハルヒ、元の世界のハルヒが一度だって出したことのない甘えたような声だった。
なんて声を出しやがる。その周波数帯域を使用するのだけは勘弁して欲しい。男の庇護欲が共振を起こしてどうにかなってしまいそうだ。
「……きらいだったら、お前に付き合ってこんなクソ寒い夜の学校まで来たり、っせんだろ」
努めて冷静を装ったが咽喉の乾きはどうしようもない。台詞を言い切るので精一杯だ。
「じゃあ好き? みくるちゃんや有希よりも?」
お前はなんでそう0か1かで決めたがるんだ。なんでもデジタル化すりゃあいいっていう昨今の風潮はどうかとおも、っうおっ?
理性という名の箪笥の中から必死に言葉を引き出す俺を遮るようにして、ハルヒはそのまま身体を倒して俺と身体を密着させてきた。俺の胸元に顔を押し付ける形で重なり合う。
少し背伸びをしたような大人っぽい芳香が俺の思考を完全に掻き消して、混乱が二乗になった。
―――――。
鼓膜の内側からやかましいくらいに響いてくる心臓と大動脈のアンサンブルを静聴することしばし。
時間感覚が麻痺したまま断熱に優れる機能素材越しに温もりと柔らかさがじんわりと感じられた頃に、ハルヒがゆるりと顔を上げた。
まっすぐに視線が合う。女としての魅力が五割増しの今のこいつと向き合うことは正直堪らなく気恥ずかしいが、ここで目を逸らすのはあまりに情けない。
なけなしの気概を振り絞って敢えて正面を切って対峙する。
「一緒に居て分かったの。あたしジョンのことが、……好きみたい。ううん、ずっと前から好きなの。心の奥に仕舞ったままになってたけど、本当はまた会いたかった」
気持ちは分からんでもない。なんせ煽るだけ煽って逃げたようなもんだからな。
「まったくよ。……責任とりなさい」
少し拗ねたような顔に照れが差す。十八番のアヒル口はどうした。黙っていれば美人のお前がそうやってまともな女の子の表情をすると正直手がつけられん。
責任って、俺がこうやって戻ってきて団活してるだけでもう十分だろ?
「……バカねぇ。そっちの責任じゃないっての」
そう言い捨てるとハルヒは一人で盛り上がって顔を赤く染める。
なんだ? 今のやり取りのどこに恥ずかしい要素があった?
訝る俺の態度が我慢ならなかったのか、ハルヒはそれをごまかすかのように急に上半身を持ち上げると、俺の胸板の上で匍匐前進を敢行し、俺の耳元に顔を埋めてきた。連動して降ってきた長い髪が俺の視界を奪う。
「お、おいっ」
接近最短距離が更新されて心臓がビリヤードのキューで弾かれたように飛び上がる。一体何事かと混乱が三乗になる俺をそっちのけで、内に秘めた想いを大切に紡ぐようなハルヒの囁きが鼓膜に響いてきた。
「今だけでいいから、あたしだけを見て……」
ひんやりとした滑らかな髪を分け入って熱い吐息が俺の首筋を掠めた―――。
結局、俺は元居た世界から完全に乖離し、元の世界とよく似てはいるが全く異なる世界の一部となった。
いや、こうやって自動詞で表現するのはいささか抵抗がある。
俺は自分の意思とは反してこの世界に縛り付けられたわけだから。
そう、こんな風に他動詞で表現するほうがしっくりくる。
主語は……、いい加減察してもらえるだろうから割愛する方がスマートってもんだろう。もはや絵に描いた蛇に足を書き足す行為と同じくらい必要がないことだ。
「ジョンが消えちゃうような気がしたから……」
あの時文芸部で他の面子が完全置いてけぼりを喰らって呆然と立ち尽くす中、エンターキーを押そうとする俺の腕を信じがたい反応速度でしっかり掴んでおきながら、自分でもよく分からないといった類のアホ面をぶら下げてアイツはそんなことを呟いてくれたがった。
ろくに事情も何も分かってないくせしてとんでもないことをやってくれるもんだ。お前の脊髄には俺を邪魔するための専用ホットラインでも引かれてるのか?
やれやれ、直感だけでで生きてるような天才肌の人間はこれだから始末が悪い。
全く迷惑な話には違いないが、異世界で高校と制服と髪型が変わっても、やっぱりアイツはよろしくアイツだったってことなんだろうな。
結果、長門が用意した脱出プログラムは非実行となって、年代もののパソコンは殊更切なげなファンの停止音を奏でてシャットダウンし、呆けた俺などそっちのけでこの瞬間から俺の人生は世界を変えての再スタートとなった。
いっそリセットの方が幾分かマシだったかもしれない。
『急に世界改変が起こったので……』
パロってる場合じゃないが、俺の心境が過不足なく伝わるマーベラスな表現であることも事実だ。
この世界では俺の歴史がない。
いや歴史自体はあるんだろうが、歴史を作ったはずの肝心の俺がその内容を全く知らない。
こっちの世界の俺が昨日まで何を成して今に至るのかを知らない。
自分よりも他人の方が過去の俺に詳しい状況は易々と耐えられるもんじゃないだろう。
まさかこんなシチュエーションで記憶喪失の患者の気分を身をもって知ることとなるとはね。
俺はこの世界でどうなってしまうのか?
逆に元の世界の俺はどうなってしまうのか?
なんとかして元の世界に戻る方法はないものか?
学校もクリスマスもそっちのけで四六時中考え抜いたさ。あるはずのないヒントを求めて公園とか図書館とかSOS団と縁のある場所にも足を運んだりもした。
それらは悉く徒労に終わり、自分の無力さに打ちのめされるだけだったけどな。
ただ、絶望に打ちひしがれた人間が次にすることは……、なんて悲観的にならなかったところを鑑みると意外に俺は肝っ玉が据わってたらしい。
――――すまない。どさくさに紛れて少々嘘をついた。
外野がやかましくてそんな気分になれなかったというのが真相だ。
腰を据えて考え事をしようにも、アイツがしつこいくらいに毎日尋ねてきやがるもんだから、落ち着きもへったくれもあったもんじゃなかったんだよ。
「ねぇ、ジョン! SOS団のこともっと聞かせなさいよ」
「駅前の喫茶店で集まることにしたわよ。記念すべき第一回の会合はなんと明日! あんたも来なさいよね。言い出しっぺみたいなもんなんだから。来なかったら死刑だから!」
「やっぱり来ないつもりだったわね? いつまで不登校児気取ってんのよ。ホラ、いい加減腹くくりなさいっ」
これだけでどういうやり取りがなされて、俺が今どうなっているかを十分説明できそうだ。
何の前触れもなく他校の女の子が押しかけてきた日には家族一同が混乱し、遺憾ながらあらぬ疑いが俺にかけられたりもした。しかし、何食わぬ顔で平日はおろか休日も構わず毎日来るアイツに妹はすぐに懐き、今では両親にもすっかり顔なじみになってしまった。
全く慣れとは恐ろしい。
太平洋の大海原で針に掛かった巨大カジキ並の引きで「SOS団」というキーワードに食いついてきたアイツは、早々にメンバーを強引に集めて無駄にヤル気を燃やしていた。
何から何までうんざりするくらい洗いざらい事情聴取をかけられた俺の犠牲と引き換えにな。
歴史は繰り返すというか、蛙の子は蛙というか……、いやどっちも違うな。さすがに偉大な先人たちも時空改変にまつわる故事は作れなかったらしい。
とにかく、性懲りもなくこの世界でもSOS団は発足してしまう運びなった。意図せずとはいえ存在意義不明の集団誕生にまたもや一役買ってしまうとはね。どうやら賞味期限を過ぎた納豆のように腐敗しきった腐れ縁らしい。
しかし、俺はこの展開を逆手に取って考えることにした。発想の転換と言うやつだ。
ここに飛ばされた発端がSOS団にあるのならば、元の世界に帰るのもまた然りなんじゃないかってね。
新SOS団の面子には妙ちくりんな属性など一切付いていない。正真正銘の一般人による至極真っ当な集まりだってことは分かっているさ。
この面子を中心に超常現象が巻き起こる要素など欠片すらもないことも重々承知している。
しかし、新しい世界で孤立し、一人でやれることをやり尽くした今、俺はもうSOS団というブランドに一縷の望みを賭けるしかなかったのさ。
何のことはない。こんな感じで俺は生きる世界が変わっても順調に涼宮ハルヒに振り回されていた。
新SOS団設立から早一ヶ月。元祖SOS団と比べて8ヶ月遅れのスタートが気に入らなかったのか、ハルヒは俺が辿ってきた活動軌跡に早足で追いつくかのようにこれでもかってくらいにイベントをぎゅうぎゅうに詰め込んだ。
冬休み直後の忘年会鍋パーティを皮切りに、新年を跨いでの初詣を済ませ、年明けにはカルタの市民大会に参加した。
三学期が始まってからは、週二回の街の不思議散策を軸にして、週末には冬だというのに一泊二日で離島に出かけてサイクリングで散策に興じ、その様を活動記録としてビデオカメラに収めた。
離島と言っても南海に浮かぶ無人島なんかじゃなく、近代建設技術の粋を結集させた大橋が連絡道路として開通している超近場の島で、宿泊場所も館ではなくただの萎びた民宿だったがな。
サイクリングでは高校生の切実な財布事情が露呈して二台しか自転車を借りられず、俺と古泉が三人の女子を交代で後ろに乗せて走る羽目になり、一体何の罰ゲームだと思いながらも畝くった海岸線を延々と走った。
「こらっ、ジョン! 古泉君に離されっぱなしじゃない。根性みせなさいよ! あー!? 押して歩くなんてどういうつもりっ?」
「うるせぇ。三人乗りでっ、坂道をっ、漕げるかっ」
喚くハルヒに息を弾ませながら毒づくと、長門が気遣って
「大丈夫?」
と、俺の顔を覗き込んでアイロンを掛けた白いハンカチを差し出してくれるというやりとりを何回繰り返したか分からん。
ふと顔を上げると少し先を行く古泉が涼しげな顔を向け、その後部座席で鎮座する朝比奈さんが潮風でなびく髪を手で押さえながら天使のような微笑で見守ってくださる、というお約束の一コマもあったりした。
宿では例によって仕込役を命じられた古泉が地元の伝承やら迷宮入りした事件を拾い上げてきてそれっぽい感じにアレンジして怪談を盛り上げた。全く殊勝なヤツだ。
まさしく休む間もなく遊び倒して疲労もあったが、このてんこ盛りのイベントラッシュのお陰でかなり団員の関係が解れてきたような気がする。
初イベントの鍋パーティの時は悲惨なもんで、お互いにほとんど面識がない上に何のためにこの集まりがあるのかも良く分かっていない状態だったもんだから、徹マン明けの雀荘のようなダウナーな違和感が場に篭もっていた。
しかし、元々相性が悪いわけでもない同年代の男女が集まれば、それだけでもそれなりに遊びの形にはなるもんで、心配は無用だった。
更にハルヒが休みもなくイベントとネタをぶち込んでくる後押しもあって、俺達は知らず知らずの内に一ヶ月という決して長くはない期間で確実に打ち解け始めていた。
もちろんこの間、不可解な出来事や超常現象などには一切遭遇していない。新SOS団は飽くまでも一介の高校生のできる範囲で遊ぶ至極健全なイベントサークルだった。
こっちの世界のSOS団面々のキャラもつかめてきていた。当然のことかもしれんが元の世界のみんなとこっちの世界のみんなは微妙に性格が異なる。
知っての通り、長門は寡黙ではあったが決して無機質ではない引っ込み思案の読書好きの少女だ。
性格上決して目立つことはないが、さりげないところでみんなを気遣ってくれている。
ときどき俺のことをじっと見てるような気がするのは単に俺が自意識過剰なせいだろう。
古泉はハルヒの召使い役やイベントの裏方役を務める点では元の世界と変わりはないが、それらの丁稚奉公は飽くまでもハルヒへの好意が原動力となっているらしい。
ヤツとは普通に世話話もするが、ハルヒが絡むと勝手なライバル意識を燃やして黒い一面を見せたりもする。だが、基本は飽くまでも空気が読める世話好きなヤツだとフォローしておこう。
朝比奈さんは……、俺の出会い頭の非礼もあって他の面子と比べて打ち解けるのに時間を要した。
しかし、心を入れ替えて紳士に努めた甲斐があって、徐々に俺に微笑みかけてくださるようになった。
性格は元の朝比奈さんとほとんど変わりはない。極めて天然で温厚、ぽわぽわした雰囲気でSOS団のマスコット的存在という地位を磐石のものにしつつある。
で、問題のハルヒはというとだ、馴れ初めでもお分かり頂けたようにダイナモを内蔵してるんじゃないかと思えるくらいの無限の元気をフル回転させていた。
相変わらず傍若無人に迷惑をばら撒く存在に違いなかったが、細かいところで差異があることが分かってきた。ごく最近になってようやく気付けたことなんだがな。
こっちのハルヒははっちゃけ度合いが30%オフといった感じで、いささか落ち着いた雰囲気がある。まともな高校生活を送っていたせいかもしれんが、8ヶ月分大人のハルヒだった。
丸くなって素直になってくれたのはこっちにすれば非常に助かる。結構なことだ。そこまではいい。
しかし、やたらと俺の世話を焼いたり、臆面もなく手を繋いだり、二人きりになりたがったりするのはなぜだ?
それとときどきお前から兄を慕う妹のような視線が漂ってくるのは気のせいか?
もし気のせいでないとするならば意味が分からん。
こればっかりは俺の自意識が焼ききれてイカれてしまったせいだと信じたい。
そんなこんなで困惑しながらもこちらでのSOS団の活動が軌道に乗り始めた頃に事件は起こったんだ。
「今週末は夜の学校で肝試しをやるわよっ」
ガチャンとテーブルの食器を躍らせて喫茶店奥の自称SOS団専用ボックス席でハルヒが怪気炎をあげたのは四日前のことだ。
校則とか季節以前に常識を間違えてるだろ。
という俺の会心のつっこみも虚しくハルヒはまくしたてる。
「この前珍しく早く家に帰ったら、夕飯前に夏の番組の再放送でテレビで学校にまつわる怪談をやってたのよ。で、夜の校舎とかグラウンドとか写ってたんだけど結構雰囲気あるわけ」
そこで一旦区切ってもったいつけると、唖然とする一同を見回してから目を輝かせて続ける。
「不思議探索としては絶好のロケーションと思わない? ねぇ、みくるちゃんもそう思うでしょ?」
「え、ええっ?」
ベーグルを食もうとしていたところだったのか、突然指を突きつけられた朝比奈さんは小さなわっかを手に取ったまま目をクリクリとさせて面食らうが、
「そ、そうですね。……で、でも、わたし怖いのはちょっと……」
「何言ってんの、お盆じゃあるまいしお化けも幽霊も冬眠中よ」
「え? あ、そうか……」
などど、矛盾だらけの説得に勢いだけでしっかり言いくるめられてしまうあたりが本当に朝比奈さんらしい。
つーか、そこに付け込んで最初に朝比奈さんを強引に味方に取り込むやり方はいい加減卒業しろ、ハルヒ。
業を煮やした俺が本格的に反対派閥を立ち上げようとしたが、それを見計らったように、右手から声があがった。
「いいですね。旅行以来これといって何もなかったですから、ここらでテコ入れということですか。寒いときに敢えてアイスクリームが食べるという趣向に通ずるものがあります。やりましょう」
例によって古泉が薄ら寒いインチキスマイルを浮かべながらハルヒに賛同すると優雅にカプチーノを啜る。
心の底からそう思ってるなら一度窓のない大きな病院で診てもらうことを薦めるぞ。
しかし、このままではまずい。賛成派はこれで3人だ。
「さっすが古泉君。分かってるわねぇ。あー、なんだかアイス食べたくなってきたわ。すいませーん、アイス一つ!」
ハルヒがアホな注文をやってる隙に俺はすかさず左に座る長門に伺いを立てる。
「長門、お前はこんな色んな意味で寒い我慢大会みたいなイベント、もちろん棄権だよな」
我ながら誘導バリバリの切り出し方だが背に腹は代えられん。せめて勢力を拮抗させて持久戦に持ち込むしかない。
モンブランを食していた長門はフォークを静かに置くと、俺に向き直る。
いよいよ反旗を翻すときがきたかと期待されたが、長門の答えは俺の予想に沿うものではなかった。
「……みんなが一緒なら、いい」
なんてこった、お前だけが最後の砦だったというのに。
みんなと言いつつ俺の顔だけをまっすぐに見つめながら言うのはなぜだ。言っておくが、暗闇で俺はガード役として頼りにならんぞ?
「往生際が悪いわねぇ、観念なさい。えー、ただいまの投票により賛成3、反対1、棄権1で学校での肝試しは決行となりました」
太鼓もちの古泉による白々しい拍手によって、反対勢力は完全に死んだ。
夜の学校へ潜入するのは一万歩譲ってやろう。日本は民主主義だ。いまの選挙もどきが数の暴力と紙一重であろうが投票結果は受け止めてやる。
ただし、目的もないのにただ行くだけなんてあまりにナンセンスだ。目的もなく徘徊して警備員に見つかるのがオチだぜ。自分からむざむざ停学になりにいく趣味は俺にはない。
SOS団の最後の良識であろうとする俺の敢然たる主張だったが、……どうやら裏目に出てしまったようだ。
ハルヒが待ってましたと笑んだ時は決まって碌なことがない。
「バッカねぇ、そんなのあたしだって分かってるっての。だからちゃんとゲームっぽくなるように考えてきたわ。古泉君」
「はい。では、不肖ながら僕から今回の趣旨を説明させていただきましょう」
……ちょっと待ってくれ、眩暈がしそうだ。
と、古泉を遮って出鼻を挫くことが俺にできた精一杯のことだった。
まったく今思い出しても脱力するやり取りだが、こんな出来の悪い談合に巻き込まれて俺は夜の北高に潜入する羽目となった。
イベントの内容だが、簡単に説明すれば次のとおりになる。
二組に分かれてそれぞれ定刻に北高、光陽園学院に潜入し、あらかじめ隠しておいた宝を探し出す。見つけた暁には携帯のカメラで撮影・送信し、どっちが早いかを競い合うというものだ。
ちなみに宝はSOS団のマークが印字された紙。こっちのハルヒが予備知識なしでオリジナルと全く同じマークを作りあげたとき、妙に感心してしまったが、それは余談だ。
所在のヒントは校舎最上階の教壇の中ということになっており、どの教室にあるかまでは明らかになっていない。
ご丁寧なことに光陽園学院の警備システムと進入経路はすでにハルヒと古泉が把握済で、残る問題は北高だったが、こっちは金持ちの私立と違ってボロの公立だ。宿直もまともに機能してないし防犯もザルみたいなもんだからすぐに計画はまとまった。
で、問題の組み合わせだが、何の巡り合わせかは知らんがくじ引きでハルヒと俺が組んで北校に向かうことになった。
古泉はこの組み合わせに遺憾の意を示して止まなかったがな。ハルヒがやけに上機嫌だったのと対照的に。
「あなたを信頼してはいますが、間違いが起こるのが年頃の男女ですから。……万が一夜闇に紛れて涼宮さんに非紳士的な行為をとった場合、あらゆる手段をもって僕はあなたを糾弾しますよ?」
顔の上半分がマジで下半分がスマイルという新しい顔芸を披露して、耳打ちしてきやがった。
お前、俺がハルヒを押し倒せると思ってるのか? 精神的以前に物理的に不可能だぞ。
こんな紆余曲折もありつつ、俺とハルヒは街灯の疎らな坂道の登校ルートを踏破して、木枯らしの荒んで不気味な雰囲気さえ漂う北高にたどり着いていた。
時刻は午後九時五分前
夜も定刻にチャイムがなるんだっけか。この状況で不意に鳴るのだけは勘弁して欲しい。
思わず怖気づいた俺だったが、ハルヒは
「いい仕事してるわねぇ。ボロい校舎が寂しい雰囲気を一層引き立ててるわ」
と、俄然ヤル気で先人切って意気揚々と塀に沿って校舎裏まで回りこむ。
ウインドブレーカーを着て防寒対策をしてきたつもりだったがそれでも冷える。今の時期は春を迎える直前で寒さのピークになる頃だ。零下は堅いところだろう。
一方ハルヒは、実用的のみで色気も素っ気もない俺の服装とは対照的に襟回りにファーの付いた純白の丈の短いフレアコートを羽織り、下はタイトなミニに膝まであるブーツというショッピングモールで見かけるような上半身だけ暖かそうないでたちをしていた。
八百万の女子が冷え性に悩まされている中、どうやらこいつだけは冷え性とは無縁らしい。
金のない公立の高校にありがちな話だが、この北高にも多分に漏れず古い先輩達が開拓した脱出経路なるもの放置されて残されている。
校舎の一角を囲んでいる金網が破れて男子生徒が身を縮めてようやく通れそうな穴が空いている所があるのだ。
うまい具合に校舎裏の深い茂みに隠れているので、今夜みたいに秘密裏に進入するのにはうってつけだ。実際に遅刻・エスケープ常習犯御用達の抜け道となっている。
噂では十五年以上前から開通していたそうだが、これだけの歴史があっても夜の校舎に用もなく潜入するために使うのは恐らく俺たちが初めてなんじゃないかね。
「長い間こんな大穴放っておくなんて、公立っていい加減よねぇ」
悪かったらな貧乏で。金に余裕があるなら改築のために寄付してやってくれ。
「時間は?」
九時ジャスト。潜入開始の定刻時間だ。
「そういう時はフタヒトマルマルって言いなさいよ。散開前に時計合わせたの忘れたの?」
SOS団はいつから軍隊になったんだ? まぁ、鬼のような軍曹がいることに違いはないがね。
嫌味もそこそこに抜け穴をくぐろうと身をかがめたが、
「……待って、あたしが先にいくわ。レディーファーストよ」
と、待ったがかかった。
へいへい。分かりましたよ。
投げやりに譲る俺とは対照的にハルヒはやや緊張した面持ちで四つんばいになる。
破れた針金の先端が危なくないかと後ろから気を遣ったが、不意に俺の視界にとんでもない光景が飛び込んできた。
目の前でハルヒの小さな尻が揺れて、タイトスカートの裾から白い布切れがチラチラと覗いているではないか。
悲しいかな、男の性に負けて食い入るように見てしまう。
水銀灯に反射された純白は神々しいまでの光沢を放ち、キュッとしまった小尻は意外なほど肉付きがよく、それはまるで冬の闇の中、肌色の双丘に狭間でモンシロチョウが幻想的に舞うような―――。
などと真剣に描写を始めるとスポーツ新聞のエロ記事の様相を呈してくるため敢えて控えることとするが、ハルヒが向こう側に抜けてこっちに向き直るまで阿呆みたいに視線が釘付けになってしまった。
「なに呆けてんのよ。とっとと続きなさいよ」
という檄を浴びてようやく俺は我に返る。
一瞬なんの間違いかと思ったぜ。というのも、朝比奈さんならまだしもこいつはこんな脇の甘いようなことをする女じゃないからだ。
単に先陣を切りたいがあまりに気が逸ってたまたま隙を見せたのか?
まさか狙ってやったなんてありえないだろう。
ハルヒが心もち頬を赤らめていたのは、焦れて怒っていたせい……だよな?
そうとしか考えられん。
混乱を振り払うかのように自分に言い聞かせながら、俺は緩慢な動作で穴を抜けた。
校庭に入って辺りを見回すと、一段と不気味さが増した。
寂れた校舎裏は月明かりも届かず、頼る明かりは廊下に灯った緑色の非常灯しかない。積もった枯葉は湿っぽくて、向こうの茂みの奥の闇からいつなにが出てきてもおかしくない雰囲気が漂っていた。
おいおい、ちょっとシャレになってないぞ。朝比奈さんが居合わせたら問答無用で竦み上がるんじゃないか?
「言ったでしょ? 期待した通りのシチュエーションだわ」
暗い寒い怖いの三重苦に祟られた俺は恨み節の一つでも詠もうとしたが、ハルヒは何を思ったか強引に俺の腕を取ってとっとと歩き出す。
なっ、おい、ちょっと待て。
「グズグズしてる暇なんてないわ。競争やってんのよ」
どうせなら手を引いてくれ。
「こうやってればはぐれないし。それに、……暖かいから一石二鳥じゃない」
分かったから引っ張るな。つーか、そっちは入り口じゃねぇ!
邪な意識を引き剥がすように俺は無邪気に笑ってはしゃぐジャジャ馬の手綱を引き締めた。
壊れて施錠の掛からない窓から廊下に侵入した俺達は、足音を潜めて階段を登っていた。
屋内に入ってから木枯らしに体温を奪われることはなくなったが、吹き付ける風は静寂の中ひどく窓を鳴らして聴覚的に俺を脅かす。
踊り場の非常灯が狙ったように切れかけていて足元もおぼつかん。
どこぞの莫迦が設定したルールで携行を許されるのは手元が照らせる小さなペンライトのみとなっているため、非常灯が役に立たん今、文字通り闇雲に進むしかなかった。
ハルヒは校舎に入るまでは威勢良く先頭を歩いていたが、階段を登り始めた頃から俺の後ろをうつむき加減で歩くようになっていた。
踊り場を挟んで階段が途切れるときに足元に気をつけろと言う俺に、「うん」と殊勝な返事を返してくるくらいだ。
向こうのハルヒならこの状況でも四つん這いになって階段を爆走して駆け上がり、教壇を引っ掻き回して五分もかからずに勝利宣言をするんだろうがこっちじゃ勝手が違う。
そんなことを考えながら粛々と最上階を目指していたが、
「そう言えばさ、ジョンと初めて会ったのもこんな夜の学校だったよね」
静寂を割いてハルヒが口を開いた。
想定外の話題の選択に俺は面食らったが、初めてのタイムスリップの印象はあまりに強烈ですぐに思い出がフラッシュバックする。
そうだな。中房の頃のお前は憎たらしいくらいにこましゃくれてたぞ。
「なっ。ジョンだって怪しさが炸裂してたじゃない。高校生の割りに老けてるし、誘拐魔と思ったくらいよ」
老けてるってなんだ。落ち着いてるとか高校生とは思えないほど思慮深いって言えよ。
「じゃあ、あたしのことも大人びてるといか、中一とは思えないくらいしっかりしてるとか言いなさいよっ」
階段で顔を突き合せる。久々に見た小太刀のような切れ味を持つハルヒの釣り眉釣り目だったが、明らかに本気じゃない。マジなら、立ち位置などものともせず、高所から見下ろしてるはずの俺が気圧されていたことだろう。
くだらない言い合いに程なくしてどちらからともなく噴き出した。
「馬鹿みたいな話だけど、暇をみてはあれからあんたのことを探したわ。あたしの我侭にまともに付き合ってくれる大人なんていなかったし、子供心に印象が強くてもう一度会ってみたいと思ってたの」
ちらつく蛍光灯が一瞬ハルヒの顔を照らした。
ハルヒの過去を慈しむような優しげな表情が一瞬浮かびあがって、俺の心拍は乱れる。
これだよ。この視線。今まで故意に意識から外すようにしていたが、これがいわゆる兄を慕うような妹の視線と称さしめるモノだ。
急速に俺の精神状態から余裕の二文字が褪せ始めた。
「学校の六限目をサボって北高の校門前で下校する生徒を全員チェックしたり、名簿を入手したりしたけど全部空振り。まぁ、ジョン・スミスなんて名前が名簿に載ってるかもしれないと思ったあたしもあたしだけどね」
そりゃまた無駄な手間を掛けさせたな。
二人して昔を懐かしむように笑うが、ハルヒは急に真顔になる。
「ジョンの正体はいくら調べても分からないままで、さすがに二年に上がってからはもう諦めるようになってたわ。その代わりに興味を惹くものがないか色んなことにチャレンジしたの」
中学でも部活荒らしをやったのか?
ハルヒは一瞬目を丸くしたが、すぐに納得したように続ける。
「表現はアレだけど、そうね。少しでも興味を惹くものがあったら即チャレンジして飽きることを繰り返したわ。でも、心の底から面白いと思えることなんかなかった。みんな常識の枠に捕われた予定調和のことばかり」
ハルヒの表情は険しい。
宇宙人や未来人や超能力者が絡んでこないと、つまらんということか?
「今思えばジョンとの出会いがその類のものだったから、それを自然と求めてたんだと思う。諦めたつもりで実は諦めきれてなかったってことよ。ジョンと校庭で落書きしたとき、あたし最高に楽しかったもの」
和らいだハルヒの表情にまたあの視線が戻っていた。
だめだ。
こんな健気で素直過ぎるハルヒは耐えられん。
つーか目の前に居るのは本当にハルヒか? 美人の上に妹属性まで付けやがって反則だろ。堪らず逃げるように前に向き直るが、ハルヒは構わず続けた。
「でもさ。こうやってまた会えた。毎日が楽しいって思えるようになったのは、ジョンのおかげよ。だからこれからも―――」
分かった! 分かったから恥ずかしいことに熱弁を奮うな。とにかく先急ぐぞ。もたもたするなと言ったのはお前だ。
強引に会話をぶった切って、脚を上げようとしたが、思った以上に俺は動揺していたらしい。
階段の途中で不自然な体勢で長く留まっていたことも災いして痺れて言ういうこと聞かなくなっていた俺の下肢は上半身を支えることを放棄して、バランスを崩した。
嗚呼、全部お前のせいだぞハルヒ。
傾く視線に慌てふためくハルヒの表情がスローモーションで写る。
どうか骨折だけは勘弁して欲しいと切に祈りながら、俺は階段を転げ落ちる覚悟をした。
「―――ョンっ! 起き―――よ! ジ――――ンっ!!」
誰かが俺を呼んでいる声が聞こえる。
眠りがあまりに浅いと自分が意識を無くしていることを自覚できる瞬間があるが、今はまさにそんな状態だ。寝ているのが分かるけど、自分の意志で起きられない。
正直もどかしい。
自分の身体が強く揺すられているのが感じられた。
誰だ、俺の安眠を邪魔する不届き者は。
聴覚と触覚が徐々にクリアになっていく。
そして、
「ジョン!」
という、一際大きな呼び声で俺は覚醒した。
目を開けていきなり飛び込んできたのはハルヒのどアップ。
目覚めるには十分過ぎる刺激だった。まったく心臓に悪い。
「良かった!」
ハルヒは目の端の何かを拭うと、俺の胴体に折り重なるように飛び込んできた。
ちょっと、待て!
慌てて制止しようとしたが、その前に痛覚が警告を出してきた。ハルヒを受け止めた衝撃で身体のあちこちから喧々囂々の悲鳴が上がる。
ハルヒのヤツめ。随分と自分勝手に気遣ってくれやがる。
しかし、この痛みで俺は自分の置かれている状況を自覚できた。
そうだった。俺は階段から落ちたんだ。
祈願の甲斐あって折れてはいない。全身打撲ってところか。やけに後頭部が疼くと思って触るとたんこぶが出来ていた。患部には濡れたハンカチが添えられている。あんまり想像できんがハルヒがやってくれたんだろうな。
五感が戻ってきてようやく気づいたが消毒液臭いここは保健室か。よく一人で俺をベッドまで運べたもんだ。
「もう目を覚まさないんじゃないかって思った」
お前な、そう思うなら救急車を呼んでくれよ。
「呼ぼうとしたわよ。でも、ケータイ開いた瞬間にあんたが動いたんだもの」
月明かりに照らされたハルヒの眼は真っ赤に充血していた。
こいつなりに俺のことを心配してくれていたってことなんだろうな。
「はぁ……、なんか安心したらどっと疲れちゃった」
ハルヒは大きなため息をつくと、一緒に身体の力まで抜けていったように弛緩し、重力に任せて俺に身を委ねてきた。
おい、怪我人だぞ俺は。重――っ!!
言おうとした瞬間すごい勢いで眉が釣り上がり脇腹を抓られた。
「……ちょっとだけでいいからこのままで居させて」
一転殊勝な小声でハルヒが呟く。
まぁ、泣くくいらい心配させたんだ。俺に責任がないとも言えん。
コートの上からハルヒの背中を撫でてやると、気持ち良さそうに長い睫毛を伏せてまどろんだ。
どらくらいそうしていただろう。
ハルヒと密着して忙しなかった俺の心拍はいい加減平常のペースまで落ち着いていた。上の主はさっきから身じろぎの一つしないで大人しくしている。
ひょっとしたら眠ってしまったのかもしれないと首を伸ばして顔を覗き込む。ここからは表情までは分からんが、まばたく睫毛の動きからしっかりと両方の眼を開けているようだった。
視線はどこか一点に固定したまま。
思い過ごしかもしれんが、何か思い詰めているのか?
会話に詰まる。ふと壁に掛かった時計を見上げると、暗闇に浮かび上がった蛍光塗料の時刻は午後十時を過ぎていた。思ったほど時間が経っていないな。
時間を意識して本来の主旨を思い出す。
そうだ、俺達は肝試し兼宝探しをやってるんだった。
一時間あれば向こうからの連絡があってもおかしくなはい。
古泉達からの連絡はまだか。
やはり上の空だったのかハルヒは俺の質問に一拍空けてから反応した。
「……まだよ。ふふっ、手間取ってるみたいね」
俺らはそれ以前の段階だがな。底意地の悪いお前のことだ、とんでもない所に隠したんだろう。ルールは守ってるんだろうな?
「失礼ね。ルールの範囲内で工夫するから面白いんじゃないの」
どこに……、いやこれは愚問か。場所は教壇の中という決まりだ。
どんな隠し方をした。
ハルヒは俺の質問に待ってましたと自信満面に、
「机の天板の裏に貼り付けたわ。上から覗く限り見つからないでしょうね」
と勢い良く口を開いたが、そこから急に失速して、
「……あんまり早く見つかると、……困るもの」
と、妙に尻すぼみな調子で答えた。
なぜいきなり目を逸らす。相変わらず読めんやつだ。
それはそうと、無い無いとべそをかきながら真っ暗の教室と廊下を行き来して彷徨う朝比奈さんと長門の姿が目に浮かぶ。ひどく同情がひかれる画だった。
しかし、いつまでここでダベってるつもりだ。
このままで居るのは色んな意味で危険な気がする。
「俺達は行かんのか。心配をかけたが俺ならもう大丈夫だぞ」
いい加減身を起こそうとしたがすぐにハルヒに両肩を押さえつけられて止められた。俺が戸惑う間にハルヒはすばやく馬乗りになって上から俺を見下してくる体勢になる。
影になってよくは分からんがハルヒは瞳を少し潤ませてはにかんだ様な意味不明の表情をしていた。
「いいの。……別に、やることができたから」
俺は絶句するしかなかった。冗談としか思えない状況で、ハルヒの顔は本気そのものだったからだ。
なんだか甘ったるいような、くすぐったいような異様な空気が辺りに張り詰める。
ハルヒは一度目を閉じて大きく息を吸い込むと意を決したように口を開いた。
「ジョンのことが、好きなの」
深夜の保健室で男に跨りながら突然告白を始める女子がどこに居る?
できることならこいつの辞書に極太マジックペンでTPOという単語とその意味を殊細かく追記してやりたいもんだ。
驚天動地の展開に俺の脳みそは真っ白にフォーマットされたように思考することを放棄してしまっていた。
これらの超展開を経て冒頭に繋がる。桶狭間にて信長による急襲を受けた今川義元ばりのピンチに俺が陥っている顛末だ。
据え膳食わぬは男の恥
なんとも男が都合よく言い訳するためにあるような諺ではあるが、今ほどこの諺の存在を恨んだことはないだろう。
しおらしく恥らうハルヒの所作は俺の理性を崩壊させるに十分な破壊力を持っていた。
傍らを向くと熱に浮かされたようなハルヒの顔。
蝶が花に吸い寄せられるように俺はその薄くグロスを引いた瑞々しい唇に自分の唇を重ねた。
閉鎖空間でハルヒと初めてキスしたシーンが蘇る。
柔らかくて温かい感触はあのときと全く一緒だった。
チュッ
と、中学生のするようなソフトなキスをして離れる。しかし、ハルヒはえらく不満だったしく、俺の首に手を回して頭を抱きかかえると、堰を切ったように今度は自分からキスを求めてきた。
「んっ、ちゅっちゅっ、ちゅるるるっ、んんん、んむっあむっ、ちゅっむ、ちゅっ」
積極的に舌を差し出して絡めてくるハルヒに圧倒される。慣れない刺激に後頭部がピリピリと痺れたような感覚がした。
心地よいけど苦しい。そんな妙な感覚に囚われる。
しばらくお互いを求め合うことに没頭するが、生命活動を無視することはできず窒息する限界で離れて息を継ぐ。
ハルヒは大粒の涙を流して泣いていた。思わず動揺する俺に、
「ばか。嬉し涙よ」
と、言い放つと再びディープキスを再開する。
「ちゅくっ、ちゅっちゅっ、れるっ、んむむっ、ジョン……、好きっ、んっ」
あまりに情熱的なキスにまるでハルヒに食われているような感覚に陥るが、このまま終始良いようにされるのもなんだか癪だ。反撃に出ようじゃないか。
ハルヒの味を堪能しながらコートのボタンを一つだけ外して手を差し入れた。セーター上からでも十分に分かるくらいのボリュームを誇る柔らかい膨らみに触れる。
「ひゃんっ!」
想定外の刺激にハルヒは可愛い声を出して水面で跳ねる魚のようにビクンと身体を震わせた。一瞬唇が離れる。
ちょっとした奇襲にはなったが、セーターとブラに阻まれたまま揉んでもなんだかお互いに楽しめそうにないため、怯んだハルヒに今度はこっちから口づけることにする。
「んん? んーんんんっ? んむっ、んんっ、ちゅっ、ちゅるるるっ、ちゅむ」
抗議満面のハルヒをキスだけで宥めることに腐心する。
長大な時間をキスに費やした後、ようやく慣れて一息着くことにした俺達は疲れて莫迦みたいに肩で息をしていた。
「はあっ、はあっ、はあっ、……ファーストキスにしては激し過ぎるだろっ」
「はっ、はっ、はあっ、……だってっ、ジョンの顔近くて見てたら我慢、できないんだもん、んんっ」
そう言うと、駄目押しばかりにもう一度唇を重ねる。
だめだ、この以上は正気を保てる自信が無い。
俺が呆ける隙を見てハルヒは身を起こす。再び俺に跨った体勢になると、何を思ったのかいそいそとコートを脱ぎ始めた。
なっ!? 待てっ、ハルヒ。
「何よ。自分で脱がしたいの?」
きょとんとした顔で見当違いのことをのたまう。
「そうじゃないだろ。お前、……その、ど、どこまでやるつもりなんだ?」
間抜けだ。思わずどもっちまった。
「どこまでって、……できるとこまでよ、って何言わせんのよ?」
「逆ギレしてる場合か。お前、ここがどこか分かってんのか。不法侵入中の学校だぞ? こんなとこで、その、なんだ……」
「何よ?」
悪知恵とか悪戯には天才的な鋭さを発揮するくせに、肝心なところでなんでお前はそうも鈍感なんだ。
言わせるのか? 俺にこんなはずかしい台詞を!?
…………、こいつを納得するためには言うしかないんだろうな。
俺は観念したようにしぶしぶ口を開く。
「落ち着いていちゃいちゃできんだろ!」
嗚呼、もう穴があったら入りたい。
というか、軽く今まで作ってきた俺のキャラが崩壊してるんだが、どう責任取ってくれる。
俺の言葉が鼓膜を震わした瞬間に、ハルヒは真っ赤に顔を染め上げる。
言わんこっちゃない。
「ジョンは、お、落ち着いて……したいんだ。そうよね、落ち着いて、じっくり」
口元に手をやって俯きながら上目遣いにこちらをチラチラと覗き見するのは止せ。我慢できなくなりそうだ。あと、どさくさに紛れて勝手な解釈をするな。
「宝が見つからなかった場合、十時半で打ち切ることになってたよな。後十五分もないぞ。途中で古泉から電話が入るのは寒いと思わんか?」
「電源切っちゃえば……」
「それも駄目だ。音信不通になるときっとヤツは本気で心配し出すだろうからな。騒ぎが大きくなるぞ」
俺は決死の説得に手ごたえを感じていたが、ハルヒは見る見る不機嫌になり口をすぼめてむくれる。久々のアヒル口の披露となった。
「何よ。あんたそんなにあたしとしたくないワケ?」
ああもうっ、違うっつーのっ! こういうのはちゃんとしたいんだよ、俺はっ。
頭を掻き毟る俺に、ハルヒは仮面を外した様に顔をほころばせて、してやったりと舌をチョロっと出す。
まんまと騙された。言わなくて良い台詞を吐かされたような気がする。そこはかとなく高い代償を払ったような気分だ。
「うそうそ。分かったわ。……分かったから、さっきのもう一回!」
ハルヒは俺の手を取ると、目いっぱい反動をつけて後ろに倒れ込んで、落胆する俺を振り回すように起こさせる。
「いててててっ! あのなぁっ、俺は怪我人―――」
座って向かい合った状態になるや否や、例によってこちらの言い分など耳を貸さずにハルヒは再び求めてきた。
小首を傾げながら目を閉じて迫ってくるハルヒの顔が切り取られた画のように網膜に写りこむ。
また一つ女の子したハルヒの表情を発見して、柄にもなくドキリと胸が高鳴った。
そんな不意打ちに乗じて甘い香水の香りと柔らかい唇の感触が再来すると全身打撲の痛みもどこへやら、麻薬のような甘い快感に押し流されてしまった。
全く健全な男子のカラダってのはなんて現金なんだろうね、と他人事のように言い訳するのも儘ならず、息をする間も惜しむようにハルヒと舌を絡めあって、ひたすら唾液を交換して嚥下することを繰り返す。
まさかこいつ残りの時間を全部キスに費やすつもりなんじゃないだろうな?
この状況に異議を唱えるつもりはさらさらないが、同時に生殺しの状態だぞこれは。
早くブリーフの中から出せと涎を垂らしながら喚いてる息子がやかましくて敵わん。
そんなことを意識して、目を開ける。
唇の動きがなおざりになったことを悟られたのか、ハルヒも目を開けて自然とインターバルになった。
「ジョン……? どうしたの?」
訝るハルヒに、
我慢できなくなってきた。
などと男の純情を素直に告白することなどできるはずもなく、自分でも下手な誤魔化し方だと分かりながらも、逃げるように視線を外してあさっての方向を向いた。
そう、そこに時空を超えた修羅場が待ってるとも知らずに。
こんなに明るかったか?
暢気にそんなことに気づいたのが事の始まりだった。
白の空間であるはずの保健室は、いつの間にか灰色に染まったように薄明るかった。
俺はようやく異常に気づく。
どうなってるんだ? 深夜の闇はどこへ失せた?
確かに今夜は丸い月が出ていたが、窓からの差し込む月明かりではこんなに部屋の照度が均一になるはずがない。
ふと、備え付けの薬品棚に視線が定まる。ガラス戸に写りこむ人影があった。
北高の冬服セーラー、肩に掛かるか掛からないかセミロング、黄色いカチューシャ、揃いのリボン、吊り上った眉、エトセトラエトセトラ。
江戸時代のゼンマイ仕掛けのからくり人形のような滑稽な動作で目の前のハルヒとガラスに写った保健室の窓の外に佇むハルヒを何度も見比べる。
「???」
当然のごとく目の前のハルヒは首を傾げるが、俺はそれ以上に錯乱していた。
物理的にありえないだろう。
実像が同じ方向を向くなんて。
いや待て、問題はそこじゃない。
それ以前に服装と髪の長さが違う。
質の悪い冗談だったら勘弁してくれ。
なぜ、元の世界のハルヒがここに居る―――?
ガシャ―――ン!
窓ガラスが割れる音がどこか浮世離れした静寂を破った。
いきなりガラスを蹴破って乗り込んでくるという信じ難い暴挙に出たハルヒに、俺とハルヒは弾かれた様に身構えた。
ああ、もうややこしい。
朝比奈さんに倣ってこう言い直そう。
ガラスを蹴破って保健室に闖入してきたハルヒ(短)に、俺とハルヒ(長)は視線が釘付けになった。
「キョン〜〜〜〜、見つけたわよ〜〜〜?」
背後に黒いオーラを沸々を湧き上がって見えるのは、マイナスプラシーボ効果だろう。
涅槃から這い上がって来たかのような怨嗟の声に冗談抜きで戦慄を覚えた。
「ようやく見つけたと思ったら、こんなっ、夜中の保健室に女連れ込んでっ、……いやらしいっ。 いきなりあんたが失踪してみんなどれだけ心配したか分かってんの?」
待て待て待て、自慢じゃないが展開に全然ついていけてないぞ。そもそもなぜお前がここに居る?
「あたしの話を逸らそうなんて七兆年早いのよ。総動員で寝る間も惜しんで捜索活動やってたのに、女作って近場でシケこんでたなんて、さすがのあたしもびっくりよ」
ハルヒ(短)は仁王様のように血走らせた目を見を開くと、右手を握り締めて振るわせた。
どうやら相当お冠らしい。こっちの命の危機が感じられるほどにな。
「……どういうこと? 誰? ……あたし?」
一方ハルヒ(長)はきょとんとした様子でもう一人の自分と俺に視線を往復させていた。
「いいから、早く離れてベッドから降りなさい!!!」
耳をつんざくようなハルヒの怒号に弾かれたように俺はハルヒ(長)を押しのけてリノリウムの床に直立不動で立った。
なんだこれ、自分でも驚くくらい素早い動作だったぞ。条件反射になってるとしたら、悲しくなってくるね。
「わっ、ちょっと!」
乱暴な扱いに不満の声を上げたハルヒ(長)だったが、しぶしぶといった感じで俺の傍らに立つ。
長短ハルヒの初対峙となった。
「あんた誰? キョンはウチの団員なの。専属契約結んでんのよ。垂らしこんでるところ悪いんだけどちょっかい出さ―――」
形振り構わず先手取ってまくし立てようとしたハルヒ(短)がハルヒ(長)を見たまま途中で絶句した。
今更気づいたのか。
「なにこれ? なんでショートのあたしがもう一人……、それにキョンって……
ハルヒ(長)も言葉に詰まるが、
「もしかして、そういうこと? …………ふーん」
世界改変の経緯を知るこいつは何が起こっているのかすぐにピンときたらしい。察しの良いヤツだ。
唖然を悠然に変えて口元に薄く笑みを浮かべると、真正面からもう一人の自分に向き直った。
「はじめましてこんばんは、涼宮ハルヒさん。悪いけどジョンは返さないわよ。ジョンはあたしを選んだんだもの」
大嘘だろそれ。
と、ツッコむ前にハルヒ(短)が自分がもう一人居ることに関する疑問をすっとばして人類の限界に挑戦するかのような反応速度で応えた。
「はぁ? 色気で騙して調子に乗ってんじゃないわよ。キョンはねぇ、こう見えて純情なのよ。身体ばっかり大きくなって一生懸命ニヒルにカッコつけようとしてるけど、全然サマになってないわけ」
言いたい放題だな、おい。
「このくらいの年頃の男子は色香漂わせればすぐにコロっといっちゃうのよ。アンタみたいなケバい女にでもねっ!」
俺の内面に関しては甚だ遺憾ではあるが、完全に修羅場と化した保健室で俺が口を挟める余地などなさそうなのが更に遺憾だ。。
貶められたハルヒ(長)は肩眉を吊り上げて痙攣させながら反駁する。
「ふん。お子様ねぇ。既成事実作ってから付き合おうかなんていくらでもあると思うけど。あたし知ってるんだから、あんたがジョンのこと好きだってこと。本当はあんただってジョンとこういうことしたいんでしょ?」
ハルヒ(長)は、俺の腕を取ってギュッと抱きしめて身を寄せてきた。
「なっ!?」
思わず一歩踏み出すハルヒ(短)。
こらっ、火事場にガソリンを放水するような真似は止せ。
くそったれ。振りほどこうとするが、万力のような馬鹿力で引き剥がせん。
「ハン、嫌がってんじゃない」
「照れてんのよ。お子様には男心は難しすぎるかしら」
ああもう、できることなら今すぐここから消えてなくなりたい。
これはもう収拾不可能だろ。
片肌に桜の彫り物を入れても丸く収められそうにない。
どうすれば……、どうすればいい―――?
ォォォ――ンン
少し頭を冷やして逡巡を始めたとき、俺は微かな地鳴りのようなものを聞いた。
周りの様子などそっちのけで長短合戦中のハルヒを差し置いて、目を閉じて聴覚に集中する。
ドォオォォォ――――ン
さっきよりも確実に、だがあまりに震源が遠いせいか相変わらず体感の薄い地鳴りが聞こえた。
瞬間に俺の身体が凍りつく。
そうだ、目の前の現象を追うだけでいっぱいいっぱいで失念していたが、灰色の世界とセットになってるモノがあった。
青い光の巨人。古泉が属する機関が神人と呼ぶモノ。
アレが出てるとするなら、こんなところで愚図ってる暇などない。
すぐに確かめる必要があると思った俺は、居ても立ってもいられなくなって、舌戦に夢中のハルヒ(長)を強引に振りほどいて保健室を飛び出した。
「あっ、こら!」
「あっ、こら!」
二人のハルヒによる見事にハモりを背に、俺は廊下を走りきると全身打撲の身体に鞭を打って階段を駆け上がる。
激痛に腰砕けになろうとするが、スロープに取り付いて形振り構わず屋上を目指した。
そんな中、三階の廊下から階下を見下ろす人物と鉢合わせた。
待ってたかのようにスロープにカッコつけてもたれかかっている様子を見ると、こっちの世界のアイツじゃないことは雰囲気で分かる。
やはり来たか。随分と久しぶりじゃないか。
「ええ、お久しぶりです」
実質的にはお前の声は毎日のように聞いていたが、妙な懐かしさを感じるね。状況はどうなってる?
俺と古泉は合流すると、どちらからともなく同じ目的地を目指して駆け出した。
「一言で説明するのは非常に難しいですが、可能な限り端的に表現すれば、涼宮さんが二つの世界を閉鎖空間で強引に繋いだという表現になるでしょう」
二つの世界だと? じゃあ、俺が元居た世界は消失せずに残っているってのか。
「ええ、原因は不明ですが、去年の十二月十八日の早朝に突如新しい世界が構築されました。元の世界から分岐する形でね。分岐開始地点はそれよりずっと前のようですが、詳細はつかめていません」
改変じゃないのか、新しいパターンだな。
「そうです。いわゆるパラレルワールドという代物ですよ。しかしどうしても解せないことがありましてね」
このクソ非常事態でもったいぶってる場合か、とっとと話せ。
「全人類に対して異世界同位体がもう一人存在する状態の中、どうもあなたはイレギュラーな存在のようでして、元の世界から消えて新しい世界のもう一人の自分を押しのける形で移動したようです」
なんで俺が例外扱いなんだ。
自嘲するわけでもなく、全日本凡人選手権ってのがあるならばベスト32くらいに残る自信はある。何の特技があるわけでもなく、何でも中途半端にできるようで実は何もできないってのが俺のステータスのはずだ。
「推測の域は出ませんが、何か異なる大きな力がぶつかった結果なんじゃないかと僕は感じています。そうでなければ、こんな誰も望まないような半端な形で世界が分岐・再構築されないでしょう」
ハルヒ以外にこんな芸当ができるヤツがいるってのか。
「まだこの話はオフレコなのでこれ以上追究するのは止しましょう。ただ、向こうの涼宮さんがこの閉鎖空間を発生させたことに疑う余地はないでしょう」
まぁ、それはアイツが突然現れたときに薄々気づいてはいたがな。
「この閉鎖空間は特殊で向こうの世界とこっちの世界を繋ぐ異世界連結型の大規模閉鎖空間でしてね。なんとしてもあなたを探し出したいという涼宮さんの欲求の表れでしょう」
相変わらずとんでもないことをやってくれるぜ。
「あなたが失踪してから、涼宮さんはそれはもう荒れに荒れました。閉鎖空間が過去に例を見ない頻度で発生し、もうそろそろ僕達も食い止めるのに限界だと思っていた矢先のことなのでさすがの僕も参りそうです」
そうかい。今回ばかりはお前に同情するよ。
身体が疲労と打撲で言うことを聞かず段差に躓いてバランスを崩したが、ちくしょうとばかりに叩きつけるように壁に手を叩きつけて立て直す。釈迦力になって上を目指した。
最上階をパスして半階分上がって身を翻せば、屋上への鉄扉が見えた。一気に駆け上がって体当たりするように乱暴に押し開ける。
―――――――――。
屋外にも関わらず、無色無音の世界がそこに広がっていた。
降り注ぐ太陽の光も、耳元をそよぐ風もなく、ありふれた飛行機や自動車の騒音も、人の喧騒も小鳥の囀りすらもない無音のモノトーンの風景は気を抜けば発狂しそうなくらいの異常に満ちていた。
最悪の気分だ。もう二度と来るまいと心に決めてたのにな。
ドォォ――――ンン!!!
保健室で聞いたときよりも確かな地鳴りが響いた。
辺りを見回すと――――、居た。神人だ。
できるだけ近くで見るために屋上を走って突き当たりのフェンスに取り付いた。
山の上に学校が建っていることに感謝したのはこの瞬間くらいだろう。高台のような屋上から遠くまで見渡せた。
ここから確認できるのは一体だけ。
十五キロくらい離れているので目を凝らさねばよく分からないが、繁華街のビル群をドミノ倒しのようにして遊んでやがる。
「今は一体だけですが予断を許さない状況です。現象からして放置すれば両方の世界がまとめて破棄させるでしょう」
古泉、俺はどうすればいい……。
自分でも愚問だと分かっていた。解決策なんぞがあるなら真っ先に伝えてくるはずだ。
しかし、問わずにはいられない。
追い込まれた俺はそれくらいに狼狽していた。
「……解釈の仕方にもよると思うんですが」
古泉が神妙に切り出す。
「あなただけがイレギュラーな存在ということは、あなたが世界の在り方を決める権利を持っているということなんじゃないでしょうか。実際に間もなく審判の時は訪れます」
百万歩譲って決める権利があったとしようじゃないか。だが、二者択一できる状況じゃないだろ。
ハルヒ(短)を選べば俺は元の鞘に戻るんだろうが、ハルヒ(長)とこの世界はどうなる。消失して終わりか? 俺に世界一個を消す権利なんて本当にあるのか?
逆にハルヒ(長)を選べばこの世界は存続するんだろうが、フラストレーションを溜めたハルヒ(短)が何を巻き起こすか分かったもんじゃない。それこそ、二つの世界がまとめて消滅するってこともあるんじゃないか?
「お気持ちは察しますよ。しかし抜き差しならないところまで来てしまっているのも事実なのでね」
古泉はそこで一旦区切ると、眉間の皺を解いて見たこともないような他意のない笑顔を俺に向けた。
「何の慰めにも参考にもなりませんが、僕の個人的な意見としてはあなたが決めていいと思ってますよ。どんな世界を選ぼうと、あなたが選択したものなら少なくとも僕に不満はありません」
オォオォオォォォ―――――ンンン
神人の咆哮が鼓膜を震わす。街の方角を見ると、新たな神人が二体出現していた。
「まずいですね。応援に行かなければ。僕にできることは神人を食い止めることだけです。後は頼みましたよ」
そう言い残して古泉は赤い球体に変化して猛スピードで飛んで行った。ただでさえ赤い光点は見る見るうちに遠近法によって掻き消された。
「キョン!」
「ジョン!」
古泉の退場を見計らったようにハルヒから絶妙のタイミングでお呼びが掛かった。
振り返ると、そこには二人のハルヒが息を弾ませながら立っていた。
俺がそうだったように二人とも変わり果てた世界の様相に一瞬面食らう。
が、一度閉鎖空間を体験しているハルヒ(短)は耐性のある分すぐに気を取り直してこちらへと歩みを進め始めた。
ハルヒ(長)もそれを見て、少し慌てたように負けじと続く。
「キョン! 帰るわよ。サボってた分たっぷりコキ使ってあげるから、覚悟しときなさい。不純異性交遊の罪をたっぷり懺悔させてあげるわ」
「ジョン! こんな子供っぽい女なんか構ってないでさ、あたしと一緒にいようよ。高校生は高校生らしく付き合うべきよ」
この幕末の京都のような殺伐とした状況でどっちかを選べというのか?
世界の行方云々の前に、どっちかを選んだ直後に刺されるんじゃないか?
左脳をフル回転させるしかない。考えうる最良の選択肢を最速で選ぶんだ。
どっちかを選ぶシミュレーションはさっきやった。
結論として一方を選ぶなんてことをできそうにない。
では、いっそのことどっちも選ばないってのはどうだ。
だめだ。選ばないということはハルヒを振るのと等価だ。
特にハルヒ(短)のイライラを煽るのは返って自滅行為だ。
体の良い台詞もない。プレイボーイじゃない自分が恨めしい。
そうなると残る選択肢はただ一つだ。両方選ぶってのはどうか。
この際もう俺が二人のハルヒの面倒をみるしかないんじゃないか。
神人を古泉に任せて三人でじっくり話せば分かり合えるかもしれん。
そうだよ。どの道すぐに答えなんて出るわけがない、しばらく三人で――――。
崖っぷちで解を見出して、眼前にに光が差したかと思えたのとは裏腹に、急に視界が暗転した。
ものすごい精神的、物理的な圧力が上から差し迫っていると気づいたときはもう遅いと自分でも悟っていた。
二人のハルヒが歩みを止めて俺の上にある何かを見上げて、何かを喚いているが耳に入って来ない。ただ、上から降って来るものの影が二人まで掛かってないことに安堵した。
そうだよな。
不埒者には制裁を。
これは正直受け入れるべき天罰だと思う。
ズドォォオォォォオオオォォォォ――――――ン
突如背後に出現した神人の手刀によって俺は校舎ごとペシャンコに潰された。
ハッ。と永遠に覚めるはずの無い目が覚めた。
朝日が眩しくて思わず目を眇めるが、見慣れた天井が網膜に写った。
上半身を起こす。紛れも無く俺の私室だった。
どういうことだ。夢にしてはリアルな感覚が残り過ぎている。
ただ、全身打撲のはずの俺の身体はどこにも異常が見られない。
たんこぶも消え失せた様に無くなっていた。
慌てて手元に置いてあった携帯電話で今日の日付をチェックする。時計のデザインが不評の俺の機種は液晶に十二月二十五日午前九時二十分を表示していた。
学校はないはずだ。真っ当な世界なら冬休み初日ってことになる。
また世界改変か……。
もはや寝起きを覚ますに足るインパクトすらも無い。
淡々と飲み込めるようになったのは果たして良いことなんだろうかね。
そんな時、携帯に一通のメールが着信した。ハルヒからだ。
寝起きで近くに焦点の合わない目を凝らして内容を読む。
『十時に駅前だから。あんた分かってるんでしょうね』
分かるかよ。と一人でツッコみを入れつつ今までの履歴をチェックした。昨日の俺はどうやら夜に数回ハルヒとやり取りしていたらしい。
それによるとどうやら今日ハルヒと会う約束をしたことになっている。
何をするのかは分からん。とにかく来いという内容しか辿ることができなかった。
「キョン君。朝だよー」
バタンというけたたましい音を立て、朝の恒例イベントを消化するためにマイ妹が部屋に飛び込んできた。
「冬休みだからっていつまでも寝―――、なんだ起きてたんだ。つまんなーい」
こらっ、おはようの挨拶くらいしていけと俺は起き上がる。
いつでもどこでも世界が変わろうとも全く変化のない妹を見てるとどこか癒されたような気分になった。
さて、一体世界はどうなってしまったんだろうね。
朝飯もそこそこに切り上げて、いつもの通り適当に身支度を整えた俺はママチャリを走らせた。
遅刻して奢らされるのを回避するわけではなく、俺は一刻も早くハルヒの答えが知りたくてペダルを踏む足を加速した。
ロータリーの違法駐輪の群れにママチャリを押し込んで、いつもの待ち合わせ場所にたどり着いた。
大時計を見上げると、時刻は九時五十二分。
間に合ったが、誰も居ない。
ハルヒのことだ、絶対に早く着ていると思っていたが、拍子抜けだな。
上がった息が煩わしい。
急かしといて自分はギリギリかよ、などとボヤくのも無駄なエネルギーだと諦めると、俺は息を整えることに専念することにした。
しかし中々呼吸が落ち着かない。思った以上に俺は緊張しているらしかった。
しばしの待ちぼうけを食らって心拍のペースが戻った頃に、横断歩道の方から声が掛かった。
「キョーン!」
という声に反応する。
…………そうか。俺は元の世界に戻ってきたのか。
と、どこか溜飲を下げた一方で一抹の暗澹とした気分を味わう奇妙な感覚がした。
それでも俺は結果を受け入れるしかない。
振り向けば髪の短いハルヒが待っている。
そう言い聞かせて俺は視線を移す。
しかし、そこで待ち受けていたのは俺の予想の斜め上を二段くらい飛び越えた光景だった。
「ごっめーん。もしかして待った? 思ったよりこの子連れてくるのに時間掛かっちゃってさ」
「痛いって、あんま引っ張んないでよ」
白とピンクの色違いのフレアコートを着てハルヒ(短)がハルヒ(長)の手を引いて近づいてきた。
……どういうことだ?
呆けながらもなんとか声帯から搾り出した俺の質問にハルヒ(短)がいらずらっ子のように目を輝かせて答える。
「びっくりした? あたしの双子の妹よ。叔父の元で小さい頃からイギリスに留学してたから日本に帰ってくるのは久し振りなんだけどね」
「涼宮ハルキよ。よろしく!」
ハルキと名乗った髪の長いハルヒは完全置いてきぼりを喰らって呆然自失の俺の垂れ下がった右腕を勝手に取ると、それを振り回して強引に握手を交わす。
「これが噂のキョン? ふーん…………」
ハルキはまるで値踏みをするかのように頭のてっぺんから足元まで俺に視線を這わせてきた。
一体なんだ? 珍しい物など何一つ身に着けているつもりはないんだが。
「聞きしに勝るってこのことかしらね。ほんっと地味なのね」
「言ってるでしょ。地味なのが売りのキャラクターなのよ」
ステレオで貶されるのは初めての経験だ。
確かに新鮮ではあるがなんだが頭痛がしてきた。眩んだ視界に思わず額を押さえる。
「あっ、ちょっと待ってっ」
ハルキは何を思い付いたのか、いきなり両端で縛っていたリボンを解くと、口でくわえて髪を後ろで一つにまとめ始めた。手際良くポニーテールになる。
「ホラッ、どう? あんたの好きなポニーよポニー。どう? そそる?」
公衆の面前などお構いなしに、長い髪を左右に振りながら俺の前で色んな角度でポーズを取り始めた。
いや、そりゃあ絶品で眼福には違いないんだが。披露するタイミングとシチュエーションが間違ってるだろう。
色んな意味で感想を言えないでいる俺にハルキはチョロチョロ動くのを止めると不満そうにハルヒにこぼす。
「あれ? 何よ、全然反応なしじゃない。ハルキ、あんた髪伸ばしても無―――むぐっ」
何か言おうとするハルキの口をハルヒが慌てて押さえ込んだ。
ハルキは手足をバタつかせて盛大に暴れる。
「あー、ごめんごめん。変な事やり出しちゃって。この子帰ってきたばかりで……、そうっ、時差ボケなのよ」
「むー! むー! むー!!!」
時差ボケのボケ方ってこういう類のものと違うだろ。
「こ、細かいことはいいのよ。とりあえず喫茶店にでも入るわよ」
怒るハルキの口を押さえながら、ハルヒは逃げるように歩き出す。
その背を見送りながら俺は深い溜息を吐いた。
そうか、これがお前の答えなんだな。ハルヒよ。
……いいだろう。お前に付き合うのが俺の役割だ。
「キョン何してんの!」
「早くしなさいよ!」
横断歩道の向こうで捲くし立てる姦しい双子の姉妹。
二人分のハルヒの相手をすることを思うと気が滅入りそうになるが、自分の撒いた種だ。
この世界の行く末を見届ける責任感くらいは俺にもある。
背後の街頭時計から十時を示すチャイムが鳴り響く。
延長十回表のコールとばかりに俺は駆け出した。
―完―
以上です。
最後にこのSSを書くにあたって多大なインスピレーションを与えてくれた
某スレ目の某氏に深く感謝いたします。
GJ!!
すんません。書き出しのレス番でタイトルまちがっとりました。
○ 二涼辺三角関係
× 二両辺三角関係
240 :
Kの悲劇:2007/01/14(日) 21:24:41 ID:5oeRzcuy
今日朝に下駄箱を開けたらノートの切れ端みたいなのが中に入っていた。
文面はこうだった。
「今日放課後、最上階の階段の踊り場に来て下さい」
誰だろう?
今の時代にこんなベタな事をするのは。
もしかして谷口あたりのイタズラかな?
まぁいっか…
その日の授業が今朝の手紙のせいで頭に全然入らない…わけもなく、
いたって普通に普通な授業を受けた。
勉強の方は谷口と違ってそこそこできるから、
別に本当に難しかったときだけ隣りの朝倉さんに聞く事にしている。
にしてもこの人本当に八方美人なんだね…
そうこうしてる内に授業も終わり、頭の片隅に残っていた手紙を読み返して、
待ち合わせ場所に行った。
誰だろう…そこそこ可愛い子だといいんだけどな…
241 :
Kの悲劇:2007/01/14(日) 21:27:02 ID:5oeRzcuy
一緒に帰ろうって言ってくれた谷口の誘いを丁寧に断って、
僕はその場所に向かって行った。
途中で青い方のトイレの個室で用を足して、
ぶらぶらしながら目的地を目指した。
で、階段を上ると僕を呼び出した「その人」がいた。
「その人」は夕日を背に笑って立っていた。
因みに今日は「その人」は僕に数2を教えてくれた。
まあ、わかるよね。
谷口曰わくAAランク+の
朝倉さんだったんだ。
「遅かったね。」
「ごめん。ちょっと谷口と話してたんだ。」
「ふ〜ん。ま、いいや。本題に入るね。国木田君さ、気になる人っている?」
何だろう?急に。
「ん〜まぁいると言えばいるかなぁ…阪中さんとか剣崎さんとか…」
ところが、次に朝倉さんが言った言葉は僕を動揺させるには十分だった。
「それって同性愛じゃないの?」
「え?」
結果的に言うと甘かった。
誰にも気付かれてないと思ってた。
気が付いた時には既に朝倉さんが後ろに回り込んで、
僕の無い胸をつまんでうなじを舐めていた。
あっという間に一回イカされて、ズボンの中に手を入れられてしまった。
もうほとんど頭の中が真っ白になりかけていた。
242 :
Kの悲劇:2007/01/14(日) 21:33:06 ID:5oeRzcuy
「うっ…あっ…ああっ…やめて朝倉さん…」
「あら?そんな事言える立場?」
秘部をいじられ、上を脱がされ乳首を甘噛みされ、
5.6回イカされたところでようやく朝倉さんの責めは終わった。
「じゃあね。国木田『さん』。また明日この場所でね。」
それから毎日僕は彼女に犯され、彼女の玩具となっていったのであった…
それからしばらくしての日曜。
朝倉さんも転校して平和な日々を送っていたある日、
キョンから電話が来た。
「もしもし?」
「おお、国木田か。ちょっとお前ん家行っていいか?」
「?別にいいよ。」
「わかった。じゃあな。」
それからしばらくしたらキョンが来た。
ピンポーン
はーい。
「おっす。さみいな。」
「早く中入りなよ。」
「おじゃましま〜す。」
「なあ国木田。」
「どうしたの?そんな真剣な顔して。」
僕が言い終わるが早いかキョンは僕を押し倒してキスをしてきた。
もうとにかく快楽にはしった。
そして…結局今度は僕はキョンの玩具になっていった。
終?
243 :
Kの悲劇:2007/01/14(日) 21:38:46 ID:5oeRzcuy
以上、国木田×朝倉の百合でした。
>>167さん、こんな感じすか?
GJ!!
>>237>>239 エロがなくても面白かった!
ていうか、二涼辺三角ってそういう意味か。いいですね。じつにGJです!
ところで某スレってどこ?
246 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/14(日) 22:42:23 ID:iX6rS4bq
GJ!
この設定で長編をだれか・・・
>>237 乙かれー
>某スレ
プが付くスレの妹ネタですか?
ナツヒ?だっけか。こんな感じのダブルハルヒのSSあったよな。
鈴宮春日だっけか。そんな感じのダブルハルヒのSSもあったよな。
250 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/14(日) 22:57:29 ID:Hs1nuHy1
誰か
古泉×みくる
の良質SS紹介してくれー
>>248 それはたしか「キョンの消失」の2個目だと思う。
>>237 描写丁寧だし語彙も豊富だしすっと物語に入れました。
そこに着地するのか! 的驚きもあったしw
お疲れ様です。楽しかったっす。
>>237 GJです! 相変わらずうまいしおもしろいし、もう感謝感謝です。
自分もSS書いたりするので、
普段はうまいSSが投下されるとけっこうライバル心を燃やしてしまうんですけど、
あなたの作品だけは別格! 完全読者と化します。
256 :
237:2007/01/15(月) 00:24:13 ID:AjlVE45B
>>245 >>247 紛らわしい書き方をしてしまった。スマン。
違うスレじゃなくてこのスレの過去スレの
とあるレスにアイデアをもらったということを書きたかった。
去年秋頃のスレだったと思うけど、詳細は思い出せない。
あとSSのラストでとんでもない誤植してて鬱になった。
管理人さんお手数でなければ修正お願いします。
× 「あれ? 何よ、全然反応なしじゃない。ハルキ、あんた髪伸ばしても無―――むぐっ」
○ 「あれ? 何よ、全然反応なしじゃない。ハルヒ、あんた髪伸ばしても無―――むぐっ」
>>256 GJ!!
ハル×キョン大好きの俺にはたまらなかったw
ハルヒ(短)が乱入してくる所とかニヤニヤが止まりませんでしたわwww
>>256 多分俺が影響をうけたレスと同じだと思う。
先を越されたのは悔しいけど、GJ
おっしゃ、俺も消失ハルヒ(ないし消失長門)とハルヒのキョンの取り合い書くか〜
>>256 GJです。
ハルヒと消失ハルヒの修羅場が自分の琴線に触れたのか妙にツボだった。
内心ニヤニヤしながら見ていた
消失絡みだとやはり長門関連が多いが、消失絡めてのハルヒvsハルヒってのも面白いな。
キョン×ハルヒものを描く場合、原作のキャラ雰囲気を無理に壊さずに
ハルヒの内心を暴露させる飛び道具としても使えそう。
>>208 詳しい場所を教えてくれ。エロパロ内で検索しても見つからんかった。
キーワードが悪いのか?
GJ!
しかし消失長門が出てくるたんびやたら切なくなるわ。
ぬるぽ
>>262 それでも見つからん。落ちてるのか?もしかして童貞だと女性化って所?いい加減スレ違いか…
>>264 ッガ!
>>237 GJ! 話の流れや内容もさる事ながら、語彙が貧弱ですと判定された
ヘタレSS書きな俺にとってこれは刺激になった作品でした。
にくちゃんねるまで追いかけてやっと場所が分かった。
長々とスレ汚しスマンかった。
にくちゃんねるって12/31付で更新終了って書いてあったように思うんだが今も更新してるのか
スレ違いスマソ
アレとかあそことか使いたがる方も
それを必死に探し求める御仁も
両方なんだかなぁとか思ふ
>>269 「ほ、ほらキョン……早くあんたの、その、アレを……あたしのあそこに……さ……」
わかってる。そんな事はお前に言われなくたってわかってるんだ。
だが悲しいかな、チェリーボーイな俺にはお前のソレが何処にあるのかがわからないんだよ。
「……本当バカキョンなんだから。ほら……ココ、よ……あ、ああ───────っ!!」
アレってなんじゃい?
そんな冷静に突っ込まれると
ビクビクッ
アレ→耳かき
ソレ→耳の穴
ジャマイカ?
伸縮自在の耳掻きktkr
俺167なんだが・・・。
あの書き込みのあとすぐにSSを書き上げたんだが、規制にひっかかっちゃって今まで投下できなかったよ・・・。
そんな中SSを書いてくれた247氏には感謝!
では投下します!
キョン×国木田(女)です!
今回はエロ無し!
キャラの性別が変わるのはちょっとという方はスルーして下さい!
ではいきます!
276 :
国木田の憂鬱:2007/01/15(月) 22:32:43 ID:Bqj1sOpB
俺の友人であるところの国木田の様子が最近おかしい。
何か非常に思い悩んでいるようなのだ。
弁当を一緒に食っていてもどこか上の空だ。
今日に至っては、谷口に「お、国木田そのミートボール食わないんならもらうぞ!」とおかずを横取りされていた。
それでも怒るようでも呆れるようでもなく、ただぼーっとしているだけ。
谷口にそのことを話してみたら、
「キョン・・・。男がそんな状態になるなんて、原因は一つしかないだろ?そう!恋煩いだ!
いやー、国木田にもやっと春が巡ってきた訳だな!まぁ俺のようなモテ男になるにはまだ修行が
足りないだろうが、まぁせいぜい頑張ってほしいな!そういやキョン、1組の真田って知ってるか?
なんでもかなりの美尻の持ちぬ・・・」
・・・と下らないことを話し始めたので、アイアンクローで黙らせた。
まったくコイツに話したのが間違いだった。そのうち盗撮+ストーキングで捕まるだろうが、
そのときはついでにこいつの悪行を洗いざらい暴露してやろう。
それはともかくどうしたものか。まぁ、谷口と違ってしっかり者の国木田のことだ。
相談したくなったら言ってくるだろうから、それを待つとするか。
・・・ちなみに谷口の妄言が、実は的を得ていたことが分かるのはその数日後だった・・・。
「ほらキョン!何ちんたらやってるのよ!?さっさと部室へ行くわよ!!」
授業が終わり放課後。俺はハルヒに急かされていた。
うるさいなお前は。そんなに急がなくったって部室は逃げやしないぞ。
俺がそう言うと、ハルヒは腰に手を当ててチッチッチッと指を振った。
「甘いわねキョン!今部室に宇宙人や未来人や超能力者が来ていたらどうするの!?
せっかくのアンノウンとのふれあいの時間が減っちゃうじゃない!だから急ぐのよ!!」
部室にはその三者は大概全員集合してるけどな。言えないけど。それにしてもアンノウンとのふれあいって・・・。
めまいがしそうだったので頭をふる。その時に、ぼーっとこちらを見ている国木田と目が合った。
その時の国木田の顔は何だか奇妙だった。まるで・・・そう、羨ましそうな顔、だ。
ちょうど散歩に連れて行ったシャミセンが、よその飼い猫が値の張るキャットフードを食べているのを見ている時のような。
俺と目が合った国木田は、はっとしたような顔をし、顔を赤らめてうつむいた。
何だその反応は。お前は美少女顔なんだから、周りに怪しい関係だと思われるだろうが。
そういうのは古泉だけでたくさんなんだから勘弁してくれ。
「ほらキョン!いつまでもボサっとしない!さあ行くわよ!!」
そう言うが早いか、ハルヒは俺の腕をとってずかずかと歩き始めた。くそ、この馬鹿力女め。
その時ちらり、と国木田の顔が目に入った。その時の国木田の顔もまた奇妙だった。その時のやつの顔は・・・
・・・嫉妬、をしている顔だった。
室へ行って朝比奈さんからおいしいお茶をもらっても、古泉とボードゲームをしていても、ハルヒにがなりたてられていても、
国木田の表情が頭から離れなかった。
家に帰り、飯を食ってベッドに転がっても、国木田の表情はまだ俺の頭から離れない。
あんな顔の国木田は初めて見た。最近ぼーっとしていることと関係があるのだろうか。
そんなことを考えているうちに、俺はいつの間にか眠りについていた。
「キョンくーん!朝だよー!!」
いつものごとく妹のダイビングボディプレスで叩き起こされる俺。そのうちトラウマ級のお仕置きをしないといかんな。
「ねーキョンくーん。なんかメールがきてるみたいだよー。」
俺の布団に乗っかったまま妹が言う。分かったから降りろ。重たいんだよ。
「ひどーい。れじぃにそんなこと言うなんて。キョンくんはぜんとるまん失格だー。」
どうでもいいが、英語を使うならちゃんとした発音をしろ。本場のようにはいかなくても、せめてカタカナになるようにな。
妹の首根っこをつかんで布団から下ろす。しかし夜中に誰からだったんだろう。
差出人は、何と国木田だった。メールにはこんなことが書いてあった。
「キョン、今日の夜、学校で逢えないかな。大事な話があるんだ。もしOKなら、今夜20時に僕らの教室に来て。待ってる。」
やはり何か悩みがあったのだろうか。しかも夜の学校でとは、よほど他人に聞かれたくないらしい。
谷口と違って国木田には宿題やら何やらで世話になってるし、これくらいはお安い御用だ。
早速OKの返事を送り、登校の準備をする。
教室に着くと、国木田はすでに来ていた。その表情は、ここ最近のものとはうってかわって晴れやかなものだった。
ここまで上機嫌なあいつを見るのも珍しいね。
そうして授業を受け、SOS団の部活もこなし、家へと帰った。
約束の時間が近づいた頃、母親に学校に宿題を忘れた旨を告げて家をでる準備をする。
出掛けに妹が、「キョン君が宿題を取りに行くなんてめずらしー。ひょっとしてあいびきー?」
などと言ってきた。お前はどこでそんな言葉を覚えてくるんだ。しかも微妙に出かける理由を当ててるし。
女のカンは鋭いというが、こいつもいっちょまえにそんなモノを持ち合わせているのだろうか。
まぁ男同士の相談、という風にちゃんと当てていないところがまだまだだがな。
妹をあしらって家を出る。
人目を忍んで学校に侵入し、自分の教室に行く。どうやら国木田はまだ来ていないようだ。
しかし、こんなところでする話とは何だろう。余程重要なことなんだろうな。
だが、「キョン、実は僕、異世界人なんだ・・・。それで、是非SOS団に入りたいんだけど・・・。」
などと告白されたらどうしたものか。SOS団の危険性を切々と説いて、入団を思いとどまらせるべきか。
そんなことをつらつらと考えていると、こつこつと人が歩いてくる気配がする。どうやら待ち人が来たようだ。
「・・・キョン?いるの・・・?」
「おう国木田。待ちくたびれたぜ。」
「ごめんねキョン・・・。こんな時間に・・・。でも来てくれて嬉しい・・・。ありがとう・・・。」
「何、気にするな。お前には色々と世話になってるしな。・・・ところで何で入り口のところにいるんだ?中に入ってこいよ。」
そう、国木田は何故か教室に入ってこようとしなかった。明かりをつければ俺たちが不法侵入しているのがバレてしまうため、
教室は暗いままだ。
「う、うん・・・。でも、驚かないでねキョン・・・。」
「?俺が何に驚くんだ?」
俺が首をかしげていると、意を決したように国木田が教室に入ってきた。
俺に歩み寄ってくる国木田。近づくにつれ、その姿が月明かりでよく見えるようになってきたのだが・・・。
「・・・お、お前、どういう格好してるんだ!?」
そう言った俺を誰が責められようか。誰だって自分の男友達が、その学校のセーラー服を着ていたらこんな反応をするだろう。
しかし、国木田の女装は見事だった。元々が美少女顔であるため、全く違和感が無い。ご丁寧に胸まで作ってある。
控えめなサイズなのは、一応男であるが故の遠慮か何かなのだろうか。しかし、それも全体と上手くバランスがとれている。
国木田の妹か親戚だと言って谷口に見せればAAの評価は堅いだろう。それほどの完成度だった。
そして俺は納得した。国木田の悩みはこれだったのだ。おそらく、国木田は自分の性癖について悩んでいたに違いない。
またこれが抜群に似合うものだから、誰かに見せたくて仕方が無かったのだろう。
そして見せる相手として俺が選ばれた。これは、国木田の俺に対する深い信頼の表れだ。
ならば俺も親友として、こいつの性癖を受け止めてやろう。
俺がそう考えていると、国木田が口を開いた。
「ね、ねぇキョン・・・。この姿を見れば分かると思うけど、実はボク・・・。」
「皆まで言うな国木田・・・。大丈夫、俺は全部分かってるから。」
「え・・・?ホ、ホントに・・・?」
「ああ。女装はまぁ・・・確かにおおっぴらに出来る趣味じゃあない。だが、別に誰に迷惑をかけているわけでもない。
変態度で言えば、谷口のほうが数百倍は上だ。だから大丈夫。何も心配することはない。俺でよければ、いつでもお前の
女装を鑑賞させてもらうぜ。もちろん誰にも言わない。誓うよ。」
いつもなら言わないようなクサイ台詞だが、俺は誠心誠意、心をこめて言った。
何しろ親友が自分の恥ずかしい秘密をさらしたんだ。それに真心で応えるのが男として、いや人としての礼儀だろう。
ふと見ると、国木田は俯いて肩を震わせている。おや、俺の言葉に感動して泣いてしまったのか?
「・・・キョンの・・・・。」
「?」
「キョンの・・・にぶチーンッッッ!!!」
そういって国木田は渾身の右アッパーを繰り出してきた。
不意をつかれた俺はかわすこともできず、顎に見事にクリーンヒット。ぐあ国木田、お前世界をねらえるぞマジで。
「うるさい!大体この流れできたら、普通はボクが言いたいことも分かるだろ!!」
すまん、女装癖でないなら思いつかないんだが・・・。
「だから!ボクは!!実は女なんだよ!!!」
俺に怒鳴りつけるようにして言う国木田。そんなに怒鳴らんでくれ。怒鳴る女は一人で十分だ。
それにしても・・・。
「なぁ国木田・・・。お前女だっていうけど、そうするといくつか疑問があるんだが・・・。」
肩で息をしていた国木田は、少し落ちついたようだ。俺の問いかけに答えてくれた。
「・・・何?」
「お前トイレは・・・?」
「あぁ、だから小はしてるふり。凄く恥ずかしいし、バレないようにするの大変なんだから・・・。」
「体育・・・というかプールは?俺お前の裸を普通に見てるんだが・・・。」
「特別製の肌色のスーツを着てたんだ。よく見ても分からないよ。その下にはサラシをまいてね。幸か不幸か、ボクは貧乳だから
偽装は楽だったよ。」
夏場でもそんなモノ着てたのか。そりゃ大変だ。まぁそれはさておき・・・。
「・・・そもそも、なんでじょそ・・・じゃなかった、男装なんて・・・?」
「・・・うちのしきたりなんだ。18になるまで、国木田の女子は男子として過ごすべし、ってね。・・・ホントは嫌なんだけど、
周りが許してくれなくって・・・。」
そりゃ何とまぁ・・・。。しかしどこかで聞いたような話だな。ときめきを感じるのは何故だろう・・・?
「・・・まてよ?確かしきたりじゃあ18になるまで男として過ごすんだよな?お前まだ・・・。」
「・・・うん。18にはなってないよ。」
おいおいしきたり破ってるじゃないか。大丈夫なのか?
そう聞くと、国木田は「きっ!」と俺を睨んだ。
「人の気も知らないで・・・。ボクが女だと明かすことになった原因は!キョン!キミなんだからね!」
「はン?」
俺は混乱した。国木田が女だったってだけで脳がオーバーヒートしそうなのに・・・。その原因は俺?なんで?WHY?さっぱりわからん。
その思いが顔に出ていたのだろう。国木田は俺の顔を見て、海より深そうな溜息をついた。
「うぅ・・・。分かってはいたつもりだけど、キョンはやっぱりギネス級の鈍感男だよねぇ・・・。」
失礼な。俺ほど人間関係の機微に長けている男はそうはいないぞ。何たって色々経験してるからな。
したくてした訳じゃないのがちょっと悲しいが。
「いいさ・・・。そんなことは分かっていたしね・・・。じゃあキョン、キミが原因だと言った理由を言うからちゃんと聞いてよ?」
そう言って国木田は真っ直ぐ俺を見詰めてきた。俺も気を引き締め国木田を見返す。
「あのね・・・。その訳は・・・。ボクが・・・ボクがキョンのことを・・・好き、だからだよッ!!」
思考が止まる。俺に話す隙を与えまいとするかのように、国木田は一気に喋り始める。
「中学の頃からずっと好きだったの!だけどボクは男でいなくちゃいけなくて・・・!
キョンがあの変な女と仲良くしてるのを見るだけで、胸が締め付けられて・・・!
北高にあの子が来なかったから安心してたのに、今度は涼宮さんというもっと変な女の子と仲良くなっちゃうし!
しかもSOS団なんて怪しげな団を一緒に作っちゃうし!
それだけならまだしも、それを通じて長門さんや朝比奈さんや鶴屋さんという美人さんたちと知り合って仲良くなっちゃうし・・・!
もうボク、いてもたってもいられなくて・・・!
それだったら、たとえしきたりを破ることになっても自分の本心を打ち明けたいと思って!
それでッ・・・!」
自分の中にあった想いを一気に吐き出した国木田は、また肩で息をしていた。
俺は、その告白に衝撃を受けていた。だが、決して嫌だったわけじゃない。むしろ・・・。
だが俺が何か言うより早く、国木田はまた喋りだした。
「・・・でも無理、だよね・・・。ずっと男友達でいたんだもん・・・。こんなこと言われても、困っちゃうよね・・・。」
その表情は空虚、だった。どんなに望んでも手に入れることはできない。それを悟ってしまったかのように。
「ごめんねキョン・・・。ボクの我侭につき合わせちゃって・・・。もう友達じゃ・・・いられないよね・・・。」
その空虚な表情が。小刻みに震える肩が。放ってなどおけなくて。
「・・・国木田。」
「いいんだキョン。こうなることは覚悟してたから。そのつもりで告白したんだから・・・ボ、ボクは・・・」
「国木田ッ!!」
俺は国木田を抱きしめた。初めて抱きしめた国木田の体は、髪は、とてもやわらかく、良い匂いがした。
頭の隅で、「ああコイツ本当に女の子なんだな」などと考える。
「キョ、キョン・・・。」
「見損なうなよ国木田。俺がこんなことくらいで、お前を嫌うとでも思ったか。」
「だ、だけど・・・でも・・・。」
「正直に言わせてもらうと・・・お前と付き合うことは、今は出来ない。」
俺は本当に正直に言った。国木田の体がびくり、と震える。
「だけど、な・・・。これからは分からない。俺は・・・中学の頃から自分を好きでいてくれて、そして告白するために家のしきたりを
破ってしまうような一途な女の子、というのは・・・嫌いじゃない、からな。」
ぐあ、自分で言っててなんだが何だこの台詞は。どう考えても俺のキャラじゃないだろう。そう頭の冷静な部分が叫ぶ。
しかし、同時に心は・・・まぁキャラじゃないのは確かだが、これもまた本音なんだから仕方ないだろバカ野郎と叫んでいた。
「ふふっ・・・キョン・・・らしくないよ。」
国木田にも言われてしまった。うるさい、なんとでも言え。
だが、国木田は俺を強く抱きしめ・・・胸に顔を埋めてこう言った。
「だけど・・・ありがとう・・・。やっぱりキョンを好きになって良かった・・・。」
俺たちはしばらくお互いを抱きしめたまま、佇んでいた・・・。
さてその後だが・・・。俺と国木田の関係に取り立てて変化はない。いつもどおりにつるんでいるだけだ。
変わったことといえば、国木田が優しい目で俺を見ることが増えたこと。
そして、SOS団女子や鶴屋さんと一緒にいると、刺すような視線を感じるようになったことぐらいか。
もっとも、これからどうなるかは分からない。
国木田は家族を説得し、しきたりを守らなくても良いようにしたらしい。
だが相変わらず男子として学校に通っている。そのことを聞いてみると、
「だって他の男にちょっかいだされたらうざったいしね。特に谷口はしつこそうだし。男友達としては悪くないんだけどね。」
・・・という説得力抜群の答えが返ってきた。谷口、よそのクラスの美尻の女子も良いんだろうが、お前のすぐそばには
こんな美少女がいるんだぞ。それに気づけないお前は・・・まぁ、皆まで言うまい。俺も人のこと言えないしな。
そして俺は今、外で国木田と待ち合わせをしている。宿題を見せてもらった代わりに、買い物の荷物持ちをやらされるはめになった。
まぁ自業自得だな。
そして遠くをみると、かわいいワンピースに身を包んだ国木田が満面の笑みを浮かべて走ってくるのが見えた。
折角だからおしゃれをしてくる、と言った国木田に誰かに見られたらどうするんだと聞いたら、妹か親戚だとごまかす、と笑って答えやがった。
そこらへんのフォローも俺がやることになるのかね。SOS団に加え、また俺の悩みのタネが増えたわけだ。
だがまぁいいさ。なんてったって「親友」の頼みだしな。だがひとつだけ言わせてくれ。
やれやれ。
以上です。
正直ツッコミ所は満載ですが、まぁエロパロという事でご容赦下さい。
時間が出来たら国木田との初デート、国木田との初体験、国木田VSSOS団女子とか書いてみようと思います。
このSSを読んで同志が増えたら嬉しいですね。ではー。
>>273 なるほど。テスト勉強を見る為にハルヒがキョンの家に来ていたら
妹ちゃんがやってきていつもの様に耳掃除を要求。
仕方なくハルヒの見てる前で妹ちゃんを膝枕耳掃除してあげたら
「何だか気持ち良さそうね」
「うん、気持ち良いよ。ハルにゃんもキョンくんにしてもらったらいいよー」
「……そう、ならして貰おうかな」
という誰かの陰謀にも思える自然な流れでハルヒに耳掃除を
する事になり、くすぐったいやら気持ち良いやらで変な声を出す
ハルヒにちょっとだけドキドキするキョン。
しかもお返しにとハルヒが強制的にキョンを膝枕して耳掃除。
何故かこんな時だけ短パン姿だったが為に太ももの温もりと感触が
直に頬に当たってやはりドキドキ状態になるキョンだった。
……と言う話になる訳か。
>>281 国木田に……国木田に萌える時が来ようとは……。
新機軸を打ち出された気分になったよ。
でも某伊集院家の御曹司を思い出してしまった俺は古い人種。
分かってくれる方がいたとは・・・。嬉しい!
国木田ルートはプレステ2で追加されるんだな。
>>281 GJ!
いやぁ〜、好きですよこういうの。
国木田カワユサMAXwww
かわいすぎますよ国木田!
続きもお願いしますね(^-^)/
しかし、キョンは相変わらずのニブチン王ぶっちぎりだなぁ、おい(^-^;)
国木田に女装させて、ワンピース着せたらまんま藤岡の方のハルヒ
じゃないですか。
むしろ変な女の正体は国木田の(ry
それもおいしいな
292 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/16(火) 00:05:51 ID:TRGS1YxD
この、国木田=女の設定はかなりGJだと思う。
しかし、真の女神は長門だということを皆は忘れている!
斬新で新鮮で広がりのある設定だな。
これからのSSに大いに期待。
国木田女性化もいいがほどほどにしておきたいな。
原作で出てきたときにどう見ればいいか分からん。
でも
>>281良かった。GJ。
結局キョンは『総受け』必至なんだなwww
>>289 だめだ、ハニー先輩にしか見えねえ・・・
この流れに逆らうのは恐いな
すいません。投下させていただきます。
バラモス「遅いよ」
元やまたのおろちの美少女が作り出した即席空中修羅場もみくるタウンに着いた
頃にはなんとか収束し、俺は互いに牽制し合う三人の姿を見ながら最近は少し乱
れ過ぎたんじゃないかと反省しているのだが、そもそも皆が俺のエロ体質をうま
く利用して襲い掛かってくるので避けようがなく、俺をこんな難儀な身体に改変
した統合思念体に愚痴の一つでも言ってやりたい気分だ。
「見ないうちに大分様変わりしたわね。みくるちゃんは何処にいるのかしら?」
そんな俺の憂欝もつゆ知らず、ハルヒは段々町らしくなってきたみくるタウ
ンをすたこら歩き、長門はジパングから持ってきた巻き物を歩き読みし、朝倉は
ニコニコ顔で俺の腕を抱きながら歩いている。
「どうしたのキョン君?難しい顔して」
「いや、何でもねえよ」
朝倉が俺のことを好きだというのは昨日こいつを抱いていてよく分かった。だか
ら俺はそんな朝倉を性欲に任せて犯したことを改めて申し訳なく思っていた。
これが俺の憂欝の正体だ。朝倉……今までは恐怖の対象でしかなかったのに、
急に可愛くなりやがって。
「今日も、いっぱいいいことしましょうね」
「うぐっ!?」
陰茎を掴まれるような感覚……サイコキネシスか。
「それまで、これで我慢してね」
朝倉には気を付けよう。このままだと調教されかねん。……うっ、気持ちい……
「あはは、イっちゃっていいよ。ほら、おっぱい柔らかい?」
朝倉は皆に気付かれないように俺の掌を柔らかい膨らみに導いた。
うぅ、柔らか、気持ちいい……
「たぶんみくるちゃんはここで働いているのね。ほらキョン、いつまでも変な顔
してないで行くわよ!」
絶頂に達する寸前にハルヒの怒声に我に返ると、そこは『メイド喫茶みくる』
と看板の付けられた建物の前だった。朝比奈さんはここで働いているのだろう。
*
店の中はまだ真新しく、所々にある装飾の数々がほんわかとした可愛らしさを演出している。
まだ開店直後なのか、数人のメイドさんが皆して出迎えてくれた。
「はぁい、いらっしゃいませー」
そしてその中から聞こえてくる天使の声。このお店のユニフォームであるエプロ
ンドレスとレースのカチューシャを身にまとった俺だけのエンジェルが、柔らか
な笑顔とともによちよちとやってきた。うん、今日も可愛い。
「涼宮さんたちの帰りをずっと待ってたんですよー
……ってあれ?新しい仲間ですか?」
「喜びなさいみくるちゃん。新しい住民よ!外国好きな娘でね、ジパングからこっちに
移民したいって言うから連れてきたの」
ハルヒは朝倉の移民に至るそれっぽい理由をでっちあげた。本当の理由はとても言えないし、
わざわざ言うこともないと判断したのだろう。こいつにしては賢明な判断だ。
「わぁ、よろしくお願いします。町長の朝比奈みくるです」
「あなたがこの町を治めているのね。よろしく」
朝倉は朝比奈さんの異世界同位体に驚いたようだったが、
すぐに表情を元に戻して握手をした。
「おーいっ!ハルにゃんたちお帰りっ。これからの予定を決めたいから、
ハルにゃんが仕切っておくれっ!」
鶴屋さん達は隅っこのテーブル席に集まっていて、そこから手を振っていた。
他には古泉と谷口、国木田がいる。メイドさんたちがいそいそと働くほんわかした雰囲気の中、
フリフリのテーブルクロスのついた可愛らしい席に着き、
俺たちは今後の方針会議を始めた。
*
鶴屋さんは俺たちがジパングでドンパチやっている間にサマンオサ国の密使から
『偽王を暗殺してほしい』
という手紙を貰ったので、古泉、谷口、国木田を引っ連れて
サマンオサで調査をしていたそうだ。勇者一行は気ままに旅するわけにはいかないんだな。
「……偽の王様は確実にモンスターだな。城中が魔物の匂いで満たされてたぜ。
何でみんな気付かねえんだ?」
「モンスターの微妙な匂いなんて魔物使いにしか分からないでしょ」
そんな谷口と国木田の漫才に、古泉が割って入った。
「そしてこれが偽王の化けの皮を剥がすための道具です」
古泉が出してきたのは一つの鏡だった。俺が話に入れずに頭にハテナマークを
二、三個浮かべていると、朝比奈さんは鏡をひょいと持ち上げて普段は古泉
の役目である解説役を買って出た。
「これはサマンオサ王家に伝わる家宝『ラーの鏡』……本物ですね。
これに姿を写すと写したものの真の姿が見えると言われています。
装飾の素晴らしさから偽物も多く出回っていて……
うちのお手洗いにある鏡もラーの鏡のイミテーションなんですよ」
朝比奈さんは鏡を手にとって「ほへー」とか言いながら色々な角度から眺めて
うっとりしている。指紋を付けないための手袋はいつも持ち歩いてるんですか?
「それじゃ後は偽の王さまをやっつけるだけでいいのね?分かりやすくて非常に良いわ」
ハルヒは瞳に一等星をちりばめてすっかりご機嫌さんだ。サマンオサ行きは一人決定だな。
残り組はどうする。
「もう一つのチームにはオーブ探しを続行してもらうわ」
俺たちが探すのはあと一つだな。長門、最後のオーブはどこにある?。
「シルバーオーブはネクロゴンドの洞窟を抜けたほこらにある。
バラモス城の付近にあるので魔物も強力になっている。気を付けて」
と、もう一組の行動指針もあっさりと決定し、ハルヒはチーム分けの
あみだくじを作り始めた。こいつわざとやってるんだろうか?
「どんな編成だろうとあたしたちが負けるわけないじゃない!
文句ならラーミアを復活させた後に聞いてあげるわ」
信頼してるのはわかったから出鱈目は止せ。敵が強くなってるって聞いたろ今さっき。
「まぁまぁキョンくん、編成はあたしとハルにゃんで決めるっさ。
ちょろんと待ってておくれっ」
鶴屋さんはハルヒの隣に席を移して話し合いを始めた。
どうやら会議は終わったようだ。伸びをしながらさぁ谷口とダベろうかとか考えていたら、
「あの、キョンくん、ちょっとその剣見せてもらっていいですか?」
朝比奈さんが心配そうな表情をして話しかけてきたので言う通りに宝剣“草薙”を渡すと、
「ありがとう、わぁ、これ凄い精巧に造られてる……
剣の形からしてジパング製の、恐らく女性用に造られた刀ですね……」
朝比奈さんは剣を細部まで鑑定し始め、
暫らくすると三点リーダーを4つ位出したまま固まってしまった。
どうしたんですか?
「キョンくん、残念だけどこの剣はもう使わないほうがいいです。
……呪われています」
呪われている?どういうことですか?
「市販のドラゴンキラーは、魔法使いの人が竜鱗破壊の呪文を武器に
刻み込んで造るんだけど、この剣はもっと違う製法で作られています」
その製法とは?
「丑の刻参りって知ってますか?そんな感じで竜への呪いを剣に込めるんです。限られた
優秀な職人にしかできないんですけど、まだこの製法が残っていたなんて……」
朝比奈さんは剣を眺めてうっとりしている。
……う〜ん、早くこっちの世界に帰って来ないかな。
「……あっ、すいません夢中になってしまって……えっと、
あまり長くこの剣を使っていると、製作者の呪いの影響を受けて精神を蝕まれ、
最終的には……頭がおかしくなります。法律で禁止されている製法で
記録もあまり残っていないんです。わたしも実物は初めて見ました。」
この剣はハルヒに贈るつもりで造り始めて、
ハルヒが殺された後に完成させたと言っいてたが……
俺Bは剣にそんなもんを込めてたのか。……いや、あいつも辛かったんだろう。
「もちろん切れ味だけでなく芸術品としても素晴らしい出来ですから
取っておくのは構いません。でももうこの剣は実戦では使わないでください。
同じ形状の片刃剣なら最近仕入れたはず」
朝比奈さんは、他のメイドさんに一言何かを言うと、
メイドさんはすたすたと裏口から出ていき、暫らくして一降りの刀を持ってきた。
「ジパングから取り寄せたんですよ。切れ味は保障します」
朝比奈さんが持ってきてくれたものは、
宝剣“草薙”のような綺麗な装飾の一切ない簡素な拵えで、
優美に反った刀身が芸術的なまでに美しい大太刀だった。
どっしりと重い分、草薙よりもパワー型の剣のようだ。大事に使わせてもらいます。
「うふ。それじゃ頑張ってくださいね」
朝比奈さんは愛らしい笑みを浮かべたあと、店が忙しくなったようで
ぱたぱたとお客さんの所へ行ってしまった。
*
「くそ、何だこのむさい顔ぶれは。俺も鶴屋さんとサマンオサに行きたかったぜ」
谷口はハルヒがジパングからかっぱらってきた座布団を枕にしてごろごろしている。
決まっちまったもんは仕方ないだろう。
「しかし何で鶴屋さんは俺と離れたんだ?絶対俺に気があると思ったのに……」
どうせ出会って30秒で意気投合したとかそんなんだろ。そりゃ勘違いだ。
「げっ、マジかよ。くそー、キョンはいいよな……。
涼宮と出来てんだっけ?性格は危ねーけど、そこに目をつぶればなぁ」
アホか。何も出来てねえ。……っと谷口、モンスターが出たみたいだ。
「あん?うちのピエールとホイミンに任せとけ」
俺、古泉、谷口、国木田はネクロゴンドの洞窟を目指して航海中。船旅を邪魔す
るモンスター達は谷口の仲魔に任せて船の中で優雅にだべっている。今まではど
こかに上陸する前にへばっているのが当たり前だったのだから、これは素晴らしい待遇改善だ。
外からサカナの断末魔やらスライムナイトの斬撃やら聞こえる
がもう知ったこっちゃねえや。
「そういえば、キョンはどうして呪いの剣なんて持ってたわけ?」
国木田は草薙の剣の塚を恐る恐る指で突いている。この剣、なぜか俺とハルヒにしか握れないらしい。
「僕も興味がありますね。どんな呪いがかかっているのか、是非聞かせてほしいところです」
古泉は座布団に座ってすっかり拝聴モードに入っている。
あれは確かに悲劇だったが今となってはただの惚気話だ。話したくねえ。
「恋の話ですか……。意外なところですね」
「話せよ、まだ時間は腐るほどあるんだ。」
このまま取り調べみたいな展開になることを予想した俺は仕方なく
俺BとハルヒBのことを伏せてジパングであったことを皆に話した。
「……なるほど。ではその剣は二人の『愛の思い出』というわけですね」
勝手に気持ちの悪い名前を付けるな。これは宝剣“草薙”だ。
「いい名前だと思ったのですが……どの道実戦で使うことができないなら、
その剣は今度ジパングのお二方に返しに行きましょう。オフの日を貰ってね」
ああ、今度俺一人で返しに行くとしよう。それより今はオーブ探しが先決だ。
「キョン、さっきからやけに恋人二人のことを隠してるけど、どうしたの?」
うっ。
「おいおい、俺たちにまだ隠してることが――あれ?外から人の声がするぞ?」
『もう!あんたさっきからベタベタしすぎよ!』
『良いじゃないか。俺たち夫婦なんだから』
嫌な予感がする。
「おい、外からキョンの声がするぞ?」と谷口。
『もう……すっかり甘えんぼになっちゃって』
『誰のせいだと思ってんだ。勝手に一人で死にやがって』
「もう一人は……涼宮さんだね」と国木田。
くそ、何でこんな大海原のど真ん中に。
『こら……やめなさい、よ……あんっ』
『ハルヒ……愛してるぞ』
危機を感じた俺は真っ先に船の室内から飛び出すと、傍迷惑な声のする
方角に向かって怒鳴り付けた。
「おい!頼むから人前でいちゃつくのはよせ!」
そこで俺が見た光景は、海のど真ん中でふよふよと浮いているハルヒBと、
それにしがみつく俺Bだった。
*
「へーっ、本当にキョンとそっくりだ」
国木田は船室に招き入れた俺Bに感嘆している。
谷口と古泉のニヤニヤ視線が痛い。何やってんだよこんな海のど真ん中で。
「不思議探索よ!ジパングの外には未知の生物や怪奇現象が
あるかも知れないじゃない!」
物理法則を無視してぷかぷか浮いてるお前が一番不思議だろうが。
「ふん、超能力なんて一発芸みたいなもんよ。耳をぴくぴくさせることが
出来る人っているでしょ?あれと一緒よ多分」
「はは、うまいな」
俺Bは所々に殴られた跡がある。今朝ハルヒBにやられたんだろう。
うまいなじゃねえ。お前もハルヒを穏やかな目で見つめてないで何か突っ込め。
「おい、そろそろネクロゴンドの山が見えるぞ」
谷口に言われて外を見てみると、遥か先に大陸への立ち入りを禁ずるように
大きな山がそびえていた。思ったよりでかい。
俺はワンダーフォーゲルとは縁のない山初心者だがいいのか?
「登山中にモンスターが出てきたら非常にまずいですね」
古泉の言う通り、問題は登山だけじゃない。山越えは思ったより辛いかもな。
「ならあたしに任せなさい。道ぐらい作ってあげるわ」
おお、サイコキネシスで飛ばしてくれるのか。
「嫌よそんなの。MPも足りないし……その剣を使わせてもらうわ」
ハルヒは“草薙”を指差している。もともと返す予定だったので、
俺は道を開けてくれるならと快くそれを渡した。
「よし、じゃ早速道を開けに行くわよ」
ハルヒは草薙の剣を手に外に出ていった。まだ山は
遠ーくにしか見えないのだが。
*
「……本当にいいのね?」
ハルヒBは俺Bに確認を取るように尋ねた。
「ああ。元々そのために造った剣だからな。せいぜい派手にやってくれ」
そう言って優しく微笑む俺Bに、ハルヒBは笑顔で頷くと
ネクロゴンドの山を見上げて語りだした。
「これからやる技は『大蛇薙』つまりおろちを倒すために作った技よ。
まさかおろちが涼子だとは知らなかったから使わなくて大正解だったけどね。
この剣は元々あたし専用のものだったから、リミッターも
あたしにしか外せないように出来てるの。
この剣がどんなバケモノなのか、あんたたちにも見せてあげるわ」
ハルヒは船からふわっと浮かんで少し前に出ると、浮かんだ状態で呪文の詠唱を始めた。
スペルが紡がれる毎に剣は緑色の刀身をさらに輝かせ、
仕舞いにはバチバチとショートする音がしてくる。
詠唱を終えたハルヒは輝く剣をまさかりみたいに担ぐと、
「――っだあっ!」
思いっきり振り下ろした。「な、何だ!?」
刹那、ハルヒが剣を振った方向に海が割れ、その斬撃は
ネクロゴンドの大陸まで続いて……
次の瞬間どごっ、という鈍い音がしたかと思うと、遠くのネクロゴンド山が
パカッと縦に割れ、崩れてしっちゃかめっちゃかになっていた。
もうデタラメだ。
「ハルヒが“草薙”に込めた仕掛け、ファイナルストライクさ」
俺Bの説明も耳に入らないほど俺たちは唖然としていた。
なるほど、ビックリ機能……満載ね。
「代償として、剣一本消費しちゃうんだけどね……」
宝剣“草薙”は既に光の粉となって原型を留めていない。
ハルヒは船に戻ってきて、さっきまで激戦を繰り広げていたピエールの上にぺたんと座った。
上にいたナイトはどこに行ったんだろう。
「また作ればいいさ。今度は呪いなんかかかってないやつをな」
俺Bは中空を見てぽーっとしているハルヒBの背中をぎゅっと抱き締めた。
谷口、俺の方を見るのはよせ。
「もう、みんなの前でやめてよ……」
「いいじゃないか。見せ付けてやろうぜ」
「もう……ばか」
だから見せ付けるなっつーの。
谷口と国木田と古泉のニヤニヤ視線が痛い。やめろ、なぜ俺を見る。
*
あれから数時間奴らのいちゃいちゃを見せ付けられて鬱度合いが臨界点に達した
辺りでネクロゴンド大陸に上陸し、今度は谷口たちのニヤニヤ視線に耐えながら
ネクロゴンドの洞窟へ入った。みくるタウンから出る前に
朝倉からレミーラをかけてもらったから洞窟内が明るい。
「こっからは魔物のレベルがかなり高い。気ぃ引き締めていくぞ」
谷口もみくるタウン周辺で拾ったはぐれメタルのはぐりんを出して本気モードだ。
「では僕は先回りしますね」
古泉は先頭を歩いてトラップやお宝チェック。意外に落し穴や自然トラップが
多いのに驚きだ。現実世界でもこいつは縁の下で頑張る奴だったな。
こいつがいなかったら今頃この洞窟だけで三回くらいは死んでいる気がする。
俺たちはかなりレベルの高い敵をさらに高いレベルで粉砕しつつ進んだ。
朝比奈さんから貰った新武器は強いし、はぐりんは剣や魔法シールドに
形状を変えたり、自ら魔法攻撃も行使できる万能選手だ。万一深手を受けても
僧侶国木田のベホマがある。うん、俺たちに死角はないね。
ハルヒのあみだくじに任せていたらどうなっていたことやら。
「おや?」
探索を続けていた古泉が立ち止まった。新トラップか?
「岩で道がふさがれています。出口に繋がる道ではなさそうですが……
お宝の匂いがします」
入るには岩を破壊する必要があるな。爆弾とか持ってないのか?
「残念ながら炸裂するものは閃光弾と煙玉しかありません」
ひょいと肩をすくめる古泉。まぁ諦めるとするか。
「ん、どうした?……いい考えがあるって?」
はぐりんが谷口と何やら話している。お前らコミュニケーションできるのか。
「いや、こいつの目を見ると何となくわかるんだよ。」
谷口の胡散臭いカミングアウトを聞き流している間に、
はぐりんは件の岩にべちゃっと張りついて詠唱を始めた。
「…………メ・ガ・ン・t「よせっ!」
……何か物凄く嫌な予感がしたのでつい声を張り上げてしまったが、
どうやら正しい判断だったらしい。
国木田にはどういうことか分かっていたようで、顔色が悪くなっていた。
「危なかったね。メガンテが発動したらこのフロアごと吹き飛ぶところだったよ」
はぐりん、なんてヤツだ。
「え?今のはジョークだって?はっはっは、こいつめ」
洞窟を吹き飛ばすことのどこがジョークだ。笑えねえ。
待ってましたw
「次は本気でやるとよ。俺たちには離れて見ててほしいそうだ。」
次はメガンテじゃないだろうな?一抹の不安を感じながら、俺は物陰に隠れた。
*
はぐりんの作戦は大成功だった。まずはぐりん単体でぶらぶらと待機し、経験値目当ての
モンスターが襲ってきたらそいつにマヌーサをかけ、そいつらに幻を見せて岩を
破壊させるというものだ。岩が壊れた後に残った奴らは全員イオナズンで消し飛んでいる。
抜け目が無い。俺や谷口よりも頭はいいのかも知れない。
「すげえ!宝物庫じゃねえか!」
という谷口の叫び通り、隠し扉のむこうは宝箱がずらりとあった。しかし、
「なにがでるかな、なにがでるかな」
とはしゃいでいた谷口は、
「ぐああああっ!」
宝箱を開けた瞬間ミミックの餌になってしまった。アホだ。
「即死魔法に気を付けて!」
国木田が詠唱を始める。即死魔法使いなら、早めにカタをつけないとな。
まずは踏み込んで――横凪ぎ!
大太刀は宝箱の側面にぶち当たって、ミミックはごろごろ転がっていった。
中から谷口の悲鳴が聞こえる。お前はそこで反省してろ
「マホトーン!」
国木田の呪文封じは……
「メラミ!」
どうやら効かなかったようだ。古泉に飛んできた炎弾を代わりに盾で受ける。
「ありがとうございます。出来れば、斬撃でミミックのフタを開てみてくれませんか?」
「ああ」
軽く返答してミミックに踏み込む。上蓋に向かって
跳ね上げるように切り上げると、
「――っは!」
古泉は一瞬で谷口をミミックの口から取り出した。
すかさず国木田が回復呪文をかける。
「ふぅ〜、危なかったぜ。サンキュー古泉」
よし、反撃開――
「待てキョン!そいつに敵意は無え」
食われた張本人が何言ってんだ?
「こんな宝物庫に閉じ込められたせいで暇だったんだとよ。
俺たちが攻撃しなきゃもう襲ってこねえ。むしろこいつ歩く道具箱として使えるぜ」
谷口はミミックにつかつか歩み寄って目で会話を始めた。
「あれは説得だよ。仲魔にするときはいつもあんな感じ。
そのあいだ他の箱も開けちゃおう」
と国木田は言うので、今度ははぐりんのインパスを駆使して慎重にいった。
中身は大金、刃物のついた鎧、からっぽ、そして……
「ピアスだ。凄い綺麗だね。誰か付ける?」
呪いの心配もあるしな。帰ったら朝比奈さんに見てもらおう。
「それが賢明ですね。鑑定が済んだら涼宮さんにでもどうですか?」
くっくっくと笑う古泉。何だ?殴ってほしいのか?
お宝はミミックに詰め込んで洞窟の本ルートを進む。どうやら宝物庫はゴール近くだったようだ。
洞窟を抜けると川を隔てて魔王の城がそびえていた。周りのモンスターも多く、
なるほど橋を架ける余裕もなさそうだ。空からアクセスすべきだな。
近くにあったほこらのおっさんからシルバーオーブを貰って、無事帰還。
「いやー、はぐりんがいて助かったぜ。まさかルーラまで使えるなんて」
ここでもはぐりんは有能ぶりを見せ付け、俺たちを船を置いた場所まで飛ばしてくれている。
俺たちがわざわざ出向かなくても草薙と古泉と谷口がいればよかったよな。
「そうだね。回復役なんかホイミンに丸投げしてみくるタウンの教会で
説教でもしてればよかった」
「いえいえ、皆さんの活躍がなければネクロゴンドは抜けられませんでしたよ。」
船まで到着。これからみくるタウンまで、また船旅だ。
「帰りもピエールとホイミンに戦闘を任せられるから、
僕らはまた船室でまったりだね」
そうだ、帰りはまた優雅にだべりながら帰れるぞ。窓から見える景色は
少々スプラッタだが仕方ない。
なんて期待しながらドアを開け――
『あっ、ああ、あ、あっ、あぁ!あぁあ!ああ――――!!』
『あぁっ!ハルヒ!ハルヒー!!』
ようとしてやめた。
「船室では……お楽しみのようですね」
小泉の笑顔が引きつっている。
「うーん、折角五年越しに結ばれてるみたいだし……」
「そっとしといてやろうぜ?なぁ、キョン?」
谷口が俺の肩にぽんと手を置き、俺は諦めたようにうなだれた。
*
『あれ?何時の間に船が動いてる』
『……あぁ』
『うわ、魔物が出てきた』
『……』
『そんなきつく抱き締めなくても、もう消えたりしないから大丈夫よ』
『……解ってるさ』
『あんたそんなキャラだったっけ?いつもの仏頂面はどこ行ったのよ』
『もうすぐ帰ってくるんじゃねえか?』
『帰ってくるならまぁいいわ』
『……そろそろここから出たほうがよさそうだな。いつまでも居座るわけにもいかないし』
『そうね。キョンがいっぱい突いてきたからもう疲れちゃったわ』
『ばっ、そんな、あけすけな』
『痛かったけど……嬉しかった』
『……』
『あたしも、キョンを愛してるわ』
『……ハルヒ……』
『ほら、もう泣かない。移動魔法唱えるから、耳はみはみしたらぶっ飛ばすわよ』
……
……
ハルヒはルーラを唱えた!
キョンは天井に頭をぶつけた!
ハルヒは天井に頭をぶつけた!
終わりです。エロ少なくてごめんね。
イエローオーブはエッチにしようかと思っています。
また機会があったら投下したいと思います。
毎度毎度GJですw
なんかドラクエ5を思い出すw
最後素で吹いた
GJ
超GJ
毎回面白いw
>>キョンは天井に頭をぶつけた!
>>ハルヒは天井に頭をぶつけた!
あったあったw GJw
>297-298
バロス
谷口〓リュカ
ちょっとした小品を投下します。
いちおうハルヒ×学校、非エロ。
「涼宮さんの様子はどう?」
「どうって、俺にそんなこと訊かれても困るんだがな」
彼は訊くたびにこんな反応をよこす。
「大体どうして俺なんだよ。意味が分からん。納得も行かん」
「あなたが一番近くにいるからよ」
そう。あらかじめ分かっていたこと。
涼宮ハルヒが彼に接近すること、彼が涼宮ハルヒに接近すること。
そして、わたしが彼を殺そうとすること。
わたしが、消えてしまうこと。
――わたしたちがいなくなる日――
朝倉涼子。高校一年生。
広域宇宙体たる情報統合思念体急進派の対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェー
ス。
同主流派のインターフェース、長門有希のバックアップを兼任。
……このマンションで暮らして、三年になる。
観察対象、涼宮ハルヒの動向は高校入学を期にふたたび変化を始めている。
わたしの時間制限も、間もなく尽きる。
それはあらかじめ決まっていたことなのだ。
「長門さん。今日の夕飯はどうする?」
「ひとりで作る」
「あ、また簡単に済ませちゃうつもりでしょう。ダメよそれじゃ。あなたはわたしより観察期間も長い
んだから。もっと有機体としての自分の身体をいたわらないと」
長門有希は涼宮ハルヒが作った団体の部員。
統合思念体が配置したインターフェースの中で最も対象に近い位置にいる。
わたしたち端末に、思念体の意図はわからない。
わたしたちは基本的には観測に徹し、時に課せられる役割を全うする。
「そろそろだなぁ。あと二週間と少し」
それでわたしの役目はおしまい。
「……」
長門有希は黙って味噌汁をすすった。
「これまでありがとうね」
わたしは言った。なぜそのような事を言ったのか、特に理由はない。
「……べつに」
「ふふ」
長門有希は思念体のインターフェースの中でも特別制限が多い。こと感情面において。
彼女でなくてはならない理由があることはわたしにも推測できるが、それが何故なのかは分からない。
予定ではわたしの消失日が今月二十五日午後五時五十二分四十一秒。
長門有希の消失日が十二月十八日午前四時二十三分。
そこでわたしたちは役目を終える。
わたしに関して言えば、この星の生命体そのものに未練はない。
ならば彼女はどうなのだろう。
涼宮ハルヒと彼女に関わる人間に近い場所にいる彼女なら。
……その性格ゆえに、わたしよりもっと無関心だろうか。
「わたしは長門さんと違って読書は好きじゃないし、これまで退屈だったわ」
「……」
このやり取りすらもね。
どうして端末単体の思考能力まで与えられているのかしら。
観測ができればいいのなら、何も人型をしなくてもいいんじゃない?
「それが、あなたに与えられた仕事」
長門有希は言った。……いつもこう。あなたにはわたしの退屈は分からないのね。
――――
<高等監察院‐インスペクタ>より送信。
インターセプタ。
貴君の責務は固体名「神田健一郎」の時間的ループの解除。
あくまでも指定の処理を正確に行うこと。余計な行動は慎むこと。
「わかっております。高等監察院」
わたしは交信を解除した。
五月二十日。今日はいい天気ですね。
この世界は、どれくらいぶりでしょうか。
……彼に会うのは、どれくらいぶりでしょうか。
わたしには大切にしている記憶がある。
それは、幼い頃の恐怖と共にあった、果てしない安堵。
「もう大丈夫だ」
差し伸べられた手、優しい笑顔、茶色がかった髪、
射しこんだひとすじの光。
彼はわたしをいつまで続くかわからない暗闇から救い出してくれた。
まだ幼かったわたしは、本来、彼と同一の世代となる人間ではなかった。
しかし、わたしは彼と同級生になることを許される。
それは、ほんの一時。……わたしが持つ特異な力によって。
今日はまだ彼にコンタクトをとることはない。
事前に一度だけ、監視の任務が与えられた。
平たく言えば、わたしは彼の暮らしぶりを遠くから見ることになる。
わたしはドアを開いた。
駅から程近いマンションの507号室。かりそめのわたしの住居。
予定では、六月十日から十三日まで、彼とここで暮らすことになる。
彼と……。
……。
物語とは、常に予定された調和と共にある。
それは、わたしの使命そのものでもある。調和。
この場所に住む多くの人たちは、隣の世界の存在や上下に位置する世界の存在を意識していない。
あまたの者は介入の手を必要としない物語に登場し、それぞれの結末へと己が道を歩いていく。
そして、わたしは稀有な世界に干渉する存在。
真実の世界をわたしは持たない。……ただ、下位世界の矛盾を取り除く役割を負っているのみ。
この役目がいつ終わるのか、知らされていない。
この力がEMP能力である以上、有限であり終わりがあるはずだと、わたし個人は考えている。
以前、高等監察院にそのような問いかけをしたら冗談扱いをされた。
……。
「おいユウキ! やめろっての! つうか許せよあのくらい!」
「人の着替えから財布抜き取って使うなんて行為のどこを許せって言うのよ! どう見たって泥棒じゃ
ない!」
「そこはほら、腐れ縁の顔利きってことでひとつ!」
彼と彼女が走って来る。
固体名、神田健一郎、海老原ユウキ。……彼らは幼馴染み。
わたしが彼について干渉する使命を負っていると知らされたのはごく最近だ。
わたしはこれまで、年表干渉者という立場から介入を続けてきたが、よもや彼に再会する筋書きが用
意されていようとは思わなかった。
「許すわけないでしょうが! こら待ちなさいよバカ!」
「待つかっての。お前に捕まったら死んだも同然だからな。あばよ! 達者でな!」
……。
わたしの前を彼が通り過ぎた。
彼は、まだわたしを知らない。
わたしの過去は、彼との出会いは、ここより未来にあるのだから。
「くっそ逃げ足だけは速いんだから! アホ健一郎め……」
わたしは、この世界の住人ではないのだから。
――――
わたしは買い出しに家を出るところだった。
彼女と出会ったのは、丁度ドアを開けた直後だ。
「あっ」
「あら」
出会いがしらにぶつかりそうになった。
「ごめんなさい」
咄嗟に謝る。
「いいえ、こちらこそ」
彼女はつつましくお辞儀をした。
「……?」
こんな人、住んでいたかしら?
彼女は気がついたように小首を傾げる。
「あの、どうかされましたか?」
「いいえ。あの、あなた……お名前は?」
「星名サナエと申しますが」
パーソナルネーム、星名サナエ。
「ここに住んでる方ですか?」
「はい。あの部屋です」
彼女が指差したのは507号室。……そこには誰も住んでいないんじゃなかったかしら。
「そうですか。わたしは朝倉涼子です。どうぞよろしく」
「えぇ、よろしくお願いいたします」
彼女はにこりと笑った。
スーパーへ向かいながらわたしは考えていた。
彼女のパーソナルデータを参照したところ、エラーとなった。
……と、いうことは、少なくとも彼女は通常の人間ではない。
わたしは他の派閥からインターフェースがあのマンションに送られてきたのかと検索をかけた。
しかし、そちらのヒットもなし。
……ならば彼女は何者なのだろうか。彼女も、涼宮ハルヒに関係する人物なのだろうか。
「のわっ!」
「きゃ!」
本日二度目の出会いがしら。
「ごめんな! どっか痛いとことかなかったか?」
「いいえ……大丈夫」
視覚情報よりパーソナルネーム照合。……神田健一郎。一般人。
取り立てて特筆する点もなし。
「そっか。ならよかった。おーいユウキ! 帰るぜ!」
「何で今日はあたしがあんたに主導権握られてるわけ? 意味が分からないわ」
彼を追いかけるように走ってきたのは同世代の少女。
照合。……海老原ユウキ。一般人。
「ん、健一郎。この人誰よ」
海老原ユウキが言った。
「今ぶつかった知らない人だ」
神田健一郎が気軽な調子で返す。
「ちゃんと謝ったんでしょうね」
「当たりまえだろ。どっかのバカじゃあるまいし」
彼らは中々親密らしいことがうかがい知れた。
「何ですって!」
彼女は彼に拳骨をかました。
わたしは同時にあることに思い至った。
さきほど星名サナエと名乗った彼女は、視覚情報からのデータ照合を不可能とさせていた。
……何者なのだろう。
――――
わたしは時刻を確認した。午後七時。この世界への駐留は本日中に限られている。
用件は全て片付いていたので、早く戻ってしまっても構わない。
しかし、わたしにはそうする気などないのだった。
……このような時間が与えられることなど、滅多にないのだから。
たとえ一人であっても、久しぶりに羽を伸ばせようというものだ。
わたしは春の夜を川の方まで散歩することにした。
街に降り立ち、いつもと違う視点で見渡せば、そこには確かなものとして世界が広がっている。
時間はたゆまずに動き、人々は行き交い、家々に灯がともり、それぞれの物語が紡がれている。
「あっ」
「あ」
出くわしたのは偶然でしょうか? ……偶然など存在すると、そう思いますか?
彼はぶつかる直前だった自転車を慌てて引っ込めて、
「すまん。ぼーっとしててな。ちょっと考え事っていうか、まぁその……」
わたしにぎこちなく謝る。
「よくあることなのです、考え事は」
わたしには初対面の人と旧知であるかのように話せる力がある。それがEMP能力によるものなのかは、
わたし自身もよく知らない。
わたしたちは近場の公園に立ち寄りました。
少しだけ、どの筋書きにもないイタズラをしましたけれど。
「君も北高生だったのか。いや、見かけたことなかったから気がつかなかった」
「わたしは人の影に隠れてしまいがちですので……くふふ」
そう言うと彼は慌てて頭を掻き、
「いや! 別に存在感ないとかそんなことじゃないんだ。それに、存在感の希薄な奴なら心当たりがあ
るしな」
「SOS団……ですか。あなたのことも聞き及んでおります」
「知っててほしくなかったんだが……」
彼の物語を紡ぐは別の存在。彼の世界も別にある。
気まずいとばかりに目を背ける彼にわたしは言う。
「なかなかにうらやましい境遇なのです」
「そうか? なら今度君も仮入団してみたらどうだ。不思議話のひとつでもしてやれば涼宮は喜ぶだろ
うさ」
「ふふ、そうですね。機会がありましたら」
機会がありましたら――。
――――
わたしは階段で長門有希の家から自宅まで戻るところだった。
彼女にふたたび会ったのはその時だ。
「あら、あなた」
「また会いましたね。ふふ」
これまで一度も見たことがなかったふたつ隣の住人。
今日だけで二回目の遭遇になる。
今、気がついたことがもうひとつある。
彼女に対し、位置特定の感知モードが働かない。
「あの、朝倉さま?」
星名サナエはわずかにかがんで上目がちに、
「よろしかったらわたしの家に寄っていきませんか?」
――――
この部屋にはほんの一時家具が置かれている。
そこでわたしは以前からここに住んでいるかのように振舞うことができる。
「紅茶とコーヒーでしたらどちらが好みでしょうか」
「……えっと、紅茶をお願いします」
彼女を誘ったのはなぜだろうか。
何か、わたしに通ずるものを感じ取ったから?
固体名、朝倉涼子。
彼女もまた、筋書き上の使命を持っている。
わたしは詳しく知らないが、彼女もわたしと似たような憂いを持っているように思うのだ。
理由のない出来事があったとしても、それが額の外にあるいたずら書きならば、許されるのではな
いか。
「星名さんは一人暮らしですか?」
「えぇ。両親を早くに亡くしまして」
「あ……ごめんなさいね。わたしったら不謹慎なこと」
「かまいません。それに、あなたはこうしてわたしとお話してくれていますから。ふふ」
――――
時折、星名サナエはその瞳にわたしには判読不能の光を宿らせる。
表情の変化は視覚情報であるがゆえ、わたしにも読み取ることができる。
しかし、『感情』と呼ばれる概念については、厳密な意味でわたしに理解することはできない。
「学校はどこですか?」
「光陽園女子です」
星名サナエはにこりと微笑む。
その言葉が真実かは分からない。もしかしたらどちらでもいいのかもしれない。
現に、ひさびさにわたしは退屈していない。
繰り返しと既知の連続による日々の中、彼女はわたしにとっての『未知』だからなのかもしれない。
「朝倉さんは北高生なのですよね?」
「え? えぇ……そうですけど」
星名サナエはティーカップをことりと受け皿に置いて、
「学校は楽しいですか?」
屈託なく微笑む。
思えば彼女はそうして笑っている時間が一番長い。
わたしはしばらく彼女の表情を見つめてから、
「そうね。実はあまり……」
そう言うと、星名サナエは不思議そうな顔をして、
「あら。そうなのですか?」
「えぇ。退屈……って言ったらいいのかしら。明日あることがもう分かっている、みたいなね」
――――
彼女はやはりわたしと近い立場にあるのだと思う。
わたしは彼女について詳しく知らないし、彼女もわたしを知り得ない。
「わたしも同じようなことを考えることがあります」
そう言うと彼女ははっとしてこちらを見る。
「あなたも……?」
「えぇ。なぜわたしという存在がこの場所にいて、この立場にあるのか。疑問に思うことがあります」
それは、普段誰にも口にすることのない、本音の一端。
わたしが彼とふたたびまみえるのは、今から先の数日間だけ。
彼のクラスメートを装った、年表干渉者として……。
「そうなの。……意外だわ」
彼女はカップを手に持ったままで言った。
「人は見た目によらぬもの、とは古事にもある教えですね。わたしもそのように思います」
だから、わたしはあなたを分からない、あなたはわたしを分からない。
けれど、わたしたちは同じ時を共有している。
今、この時限定で。
――――
「楽しかったわ」
「えぇ、わたしもです」
彼女は終始穏やかな笑みを崩さなかった。
その時、なぜだか分からないけれど、わたしは次のように言った。
「また来てもいいかしら? せっかく家も近いんだし」
サナエは一瞬だけぽかんとした表情になった。
ややあって笑みが戻り、
「えぇ。お待ちしているのです。お茶を用意して」
「それじゃ、またね」
ドアが静かに閉まった。
サナエの微笑が、うっすらと記憶に残っていた。
わたしは五日後には役目を終えて統合思念体急進派の意識に戻る。
だからおそらく、もう彼女と会うことはない。
分かっていた。
それなのにまた会う約束をしたのは、どうしてだろう。
わたしは結局、自分でその答えを出すことができなかった。
――――
――――
朝倉涼子が舞台から去ったのは五日後のことだった。
しかし、年表干渉者はそれを知り得なかった。
彼女はそれから二週間あまり後に、つかの間舞台に上がり、また同じように退場した。
二人が一時出会っていたことを知る者はごくわずかである。
ここにいるわたしと、
……あなたと?
(了)
あまりのつまらなさにピタッとスレが止まってしまったわけだが。
お世辞でもいいから誉めてやれよ。
停滞したままになっちゃうだろ。
>>326 いや普通に面白い。久しぶりに熟読してしまった。GJ
エロなしの上、学校がどうとかいうマイナー作品のキャラ出してるからね
なのです可愛いよなのです
2巻冒頭漫画のパジャマのふくらみは反則
別に流れが止まった訳じゃなくって、前に比べて昼間みる人が減っただけじゃないの?
ほら、最近はスレ自体まったり進行してる訳だしさ。
あと話も普通に良いと思ったわ。
そうね、少なくとも「あまりにつまらない」って事は無いんじゃないかな。
安西先生……幼馴染みが(r は難しいです……。
特に興味ないしな。改行も無駄に多いし。
まあエロ入れとけば反応も数倍になるんじゃないか?
秀麗なストーリーものよりデッサン狂ったエロの方が売れる同人の法則。
いいとは思うけどちょっと散漫というか
クロスさせずにサナエを掘り下げてもよかったんじゃ
ほんとに言いたい放題でいいスレッドだw
>>319 学校好きにはしんみりとして面白かったです。
ただ学校とハルヒの舞台を同じにする場合、
インターセプタはハルヒ世界よりも上位の存在として扱わないと不自然な気がしました。
(ハルヒの登場人物を上位から見て操れないと不自然)
>>327 平日の昼間にレスする暇人はあまりいないと思うが。
>>333 反応が欲しい為にSS書いてる訳じゃないかと。
書きたいものを書くのが一番ですよ。
ちなみに過去スレで一番評価が高くてレスも多いのは
エロ無しの「少年オンザグラウンドゼロ」だよ。
>>333 エロなしでも売れるものは売れるぞ(純愛、感動系etc)
338 :
さりょ〜:2007/01/16(火) 19:21:25 ID:TRGS1YxD
流れをぶった切って
キョン×長門を投下します。
>>337 エロ有りはある程度文章が整ってればそれだけで結構評価されるが、
エロ無しはそうはいかないと思う。
少なくとも、純愛系、感動系とやらを書いときゃいいって訳じゃない。
学校のSS投下できる場所他にないんですよね。
質の低さは認めますが。
342 :
さりょ〜:2007/01/16(火) 19:28:29 ID:TRGS1YxD
今、俺はかったるい授業から開放されて、部室へと向かっていた。
しかし、今日はいつもとちがう!!地球が氷河期に入っても風邪をひかないだろう
涼宮ハルヒがなんと学校を休んだのだ!
毎日こんな風だったら、どれだけ平和だろう。
さ〜て今日は、朝比奈さんの天使のようなコスプレで
目の保養をしてまったりすごそう。
そんなことを考えながら部室の前まで来た。
343 :
さりょ〜:2007/01/16(火) 19:38:00 ID:TRGS1YxD
「コンコン」ノックをしてからドアノブを回し、ドアを押すとそこには
長門しかいなかった。
心の底から朝比奈さんを期待していた俺は、あいさつもなしに
「あれ?朝比奈さんは?」と、聞いてしまった。
「・・・・・・」返事は無い。
「長門、朝比奈さんは今日来ないのか?」もう一度聞いてみる。
古泉は・・・・・・どうでもいい。
「・・・朝比奈みくるは用事があるといって帰った。
古泉一樹は、今日学校に来ていない。」
ご丁寧に古泉についても語ってくれた。まあ、閉鎖空間が発生したんだろう。
345 :
さりょ〜:2007/01/16(火) 19:50:12 ID:TRGS1YxD
しかし、朝比奈さんがいない部室で俺がやることは何も無い。
そう考えて、
「じゃあ、俺も帰ろうかな・・・」
そう言って部室を出ようとしたそのとき。
「まって。」そう聞こえた気がして、振り返ってみると、目の前に長門がいた。
間髪いれずに長門が言う
「あなたはさっき、私のことよりも先に朝比奈みくるのことを聞いた。なぜ?」
「えっ!いまのはどういう・・・っ」
思考回路をフルに使って考えていると、なんと長門が抱きついてきた。
目には涙を浮かべている。
「胸が大きいほうがいい?」
抱きつかれても、あるかないか分からないほどの長門の胸。
そんな長門を見て、思わず
「そんなことないぞ。」と言って髪を撫でてしまった俺を誰が責められよう。
346 :
さりょ〜:2007/01/16(火) 19:58:14 ID:TRGS1YxD
この前のように誰かに見られることがないように、カギを閉めた。
そして・・・・・・
この後のことはあえて語らないでおこう。
一つだけいうなら、長門・・・いや有希の肌は雪のように白かった。
平日昼の間に反応がないのは仕方あるまい
もう少し絡んでパラレルに繋げることを期待させるような作品だったが、この終わり方もありかな
>>342 VIPから来たの?わざとsageないの?
隔離板の常識をピンクちゃんねるに持ってきたらだめよ
>>339 みずのまことのマンガを持ってる俺は少数派か主流派か。
350 :
さりょ〜:2007/01/16(火) 20:02:52 ID:TRGS1YxD
初投下でした。
駄作で本当にごめんm(−−)m
やっぱ、妄想を文章にするのは難しい・・・OTL
荒してスイマセンでした。
ではっ
自覚はあったっぽいな
もうVIPから出てくるなよ
何様だお前らは、同じエロパロ住人として嫌気が差すわ
雰囲気悪いな。気に入らないSS・レスはスルーぐらいできんのか
コテハン、age、顔文字
嫌がられる要素満載だから仕方ないと言えば仕方ない
上の感想云々は荒しでしょ
>>354 気に入らない云々でなく、2ちゃんねる名物の初心者叩きだと思うが。
荒らしだろう。
>>351のほうをスルーすべし。
しかし、とは言ってもさすがにちょっと言いたいのは、
メモ帳かなんかに先に書いてから一括投下してくれ。
あと、1レスあたりにもっと詰め込んでくれ。無駄に区切りすぎ。
叩かれてもくじけんな。
くじけんならその程度の情熱と才能だ。
褒め言葉しかいらないアマちゃんは伸びない。
あーあ、氏ねばいいのに
ここに投下する作品を書くにあたって、俺が勝手に誓っていること
1・ネタが思いつかなくても諦めない
2・エロが書けなくてもくじけない
3・執筆中に文才が無いことに気付いても投げ出さない
4・自分の作品が叩かれても泣かない
5・どんな時でも精進することを忘れない
そうだね。あと、基本的に他人をけなさない。悪口を言われても言わない。
どうして俺が帰ってくると荒れるんだ?
初心者まるだしのSSが投下されればこういう流れになるのは必然。むしろ健全。
>>310も
>>318もGJなのですよ。
>>310最後まで書き切るの大変だろうがガンガレ。俺は終わりを見届けたいんだ。
>>318学校は読んでないからキャラとか分からんからソッチの方の言及はできないが、
朝倉が殺人鬼でもキョンにベタ惚れでもないっていうシチュはあまりないから良いと思うぞ。
>>362 良い事は良い、悪い事は悪いとはっきり言ってやった方本人の為。
なんでもかんでもGJ素晴らしい続きwktkなんてやってたら、
勘違いして、分不相応な事をして恥をかく、って今井●ロが言ってた。
367 :
349:2007/01/16(火) 22:48:24 ID:4C/j/KnK
結論:俺は少数派
なんにせよ、投下しにくい空気になるのは良くない。
このスレははっかりと文句を言われますね。
でもぜんぜんつめてなかったり、sageないってのは確かに論外だよ
流れを読まずに一つ質問。
最近多いオススメを訊くレスを見て思ったんだが、
好きなSS、と言われて一番に思い浮かぶSSと、
返し読みした回数が多いSSって、けっこう違うのは俺だけ?
好きなのは、やっぱベタに少年オンザだが、
返し読みしたのは「風邪とお見舞い」だけだ。ありゃ今までに3回読んだっけ。
ちなみにキョンサイドの方。
ただ黎明期の作品とか見てると高品質のものばっかでもないと思うわけで……。
>>275氏の作品にインスパイアされて書いた。
作者様、勝手に文章を借りてすいません。
『もし谷口が女だったら・・・』
谷口が手紙でキョンを呼び出して・・・
「・・・キョン?いるか・・・?」
「おう谷口。待ちくたびれたぜ。」
「すまんなキョン・・・。こんな時間に・・・。でも来てくれて嬉しいぞ・・・。ありがとな・・・。」
「何、気にするな。・・・ところで何で入り口のところにいるんだ?中に入ってこいよ。」
そう、谷口は何故か教室に入ってこようとしなかった。明かりをつければ俺たちが不法侵入しているのがバレてしまうため、教室は暗いままだ。
「あ、ああ・・・。でも、驚くなよキョン・・・。」
「?俺が何に驚くんだ?」
俺が首をかしげていると、意を決したように谷口が教室に入ってきた。
俺に歩み寄ってくる国木田。近づくにつれ、その姿が月明かりでよく見えるようになってきたのだが・・・。
「・・・お、お前、どういう格好してるんだ!?」
そう言った俺を誰が責められようか。誰だって自分の男友達が、その学校のセーラー服を着ていたらこんな反応をするだろう。
「あ、あのな・・・キョ・・・」
俺は今世紀最大の馬鹿を力の限り殴ってやった。
「谷口!お前が変態なのは知ってたが女子の制服盗むとは何事だ!ついて来い、警察に突き出してやる!」
「ちょ、ちょっとキョン。待って、待ってって。ねぇ〜」
その後事情を聞いた俺は丁重にお断りした。
以後、谷口を見た者はいない。
あ、一箇所国木田になってる!すいません・・・
閉鎖騒動が完全に釣りとわかって良いかったわー。これでまた安心して続きが書ける
つうか、ここは2chじゃねーだろ
>>376 2chが閉鎖みたいになって、こっちに来られたら耐えられない
なるべく多くの良い作品に出逢えればいいから、人が増えるのは大歓迎だな
玉石混合で、石が増えるね
数で云えば玉も増えることになるだろうけど、それ以上に石が増えるからなあ
個人的には今くらいでちょうど良い。キャラスレでもSSあるし。
内容に関係しないつまんないことで作者を叩く馬鹿が減ればいいよ
長門スレは適度にSSが投下されてて雰囲気もいいな。
まとめWikiも見やすい。
そんな事よりみくるだ。
彼女のSSはその総数が圧倒的に少なく、しかもたまに見かけても
エロ特化でまともなストーリーものがない。
みくるは絵師には人気があっても、SS執筆人にはハルヒや長門の方が
魅力的に写るんだろうか?
SS書いてる人は原作にだいたいどれくらい目を通してるもんなの?
まさかみんながみんな8巻全部読んでないとは思うけど。
>>381 キョンとの進展がほぼ確実に望めないキャラクター性や、
ややこしい仕掛けが必要になりやすい『未来人』という属性が原因じゃなかろうか?
実際、縛りの少ない朝倉の方が多いくらいだもん。
>>380 独り善がりのイタい奴は住人でも作者でも徹底叩かれるのが2ちゃんのお約束だぎゃ
>>382 原作だけの人
アニメだけの人
原作どころかアニメも全く見たことがなくネットで手に入るSSや同人や各種情報だけで書く人
千差万別だろう
それより、ここやアニキャラのスレも含め全ログは言わないが全SS読破した上で書いてる人……いるの?
新規参入者には辛過ぎる
玉石混合は確かに。
俺はVIPには付いて行けん。なんかノリがね。キャラスレのSSは読むんだが。
みくるは一般向け同人では結構出てる気がする。
SSは変にカップリングを意識するから、書きにくいんじゃないかと思わなくもない。
質問。
長門って携帯持ってたっけ?
なんとなく持ってない印象なんだが記憶が曖昧で。
>>385 持ってる描写はなかったような。うろ覚えだが。
ただ他の四人が持っている事を考えても持っているんじゃないかと思う。
電話が掛けられるだけで何の機能も無い旧型PHSとか。
逆に家に電話は無いって感じ。
>>385 ヒトメボレでは「長門宅の番号を呼び出した」ってあるし、
陰謀でも話中だったときに「長門の家に電話してしまったオペレータに同情」とあるから、
キョンは長門に電話するときは、家の電話にかけてるんだよな。
ってことで、長門は携帯を持ってないんじゃないかと思う。
>>385-387 情報操作で回線は契約されている。
実際の通話はNTT網に割り込んだ長門自身が行う
>>384 VIPはまとめのレスポンスが良いから
まとめサイトだけ追ってれば問題なす
ある程度の批評・批判は大事だが、度が過ぎると荒らしとして認知される
もしくは荒らしが便乗して荒れる
某キャラスレだね
個人的に今までのエロパロ板の空気がベスト
>>383 え?
原作アニメ読んでない&見てない俺でもok?
>>387 確かに持ってなさそうな感じ。
通学時とSOS団活動、キョンと図書館以外はずっと家にいそうだし。
携帯持ってても配備された3年前の機種を使い続けてるとかだろうね。
でもってキョンの番号だけ入ってるとか。
長門だから電話番号全部覚えてて登録する意味はないんだけど、それだけ入ってる。
長門の場合、買ったとか言って自分で作り出しそうな気がする
>>382 縛りがきついから少ないだけでキョンの恋愛感情があるぶん進展は長門よりみくるのほうが自然だよ。
長門に対してキョンは恋愛感情がなくて仲間、子供みたいだし、原作でこれ以上進展する可能性がない。
みくるもの書くと最後に別れたいといけないってゆう悲恋になりやすいんだもん。
>>382 SS書くほど作品に入れ込んでるなら、原作8巻ぐらい頼まれんでも熟読してると思うんだが
ただ他人に強制するつもりはないんで、それが必須条件だとは言わないけど
>>383 自分は他スレのSSは一切読んでいない
ここのやつは多分全部読んでると思うんだけど
ただ、ここで重視されるのはそのSSが原作との間に設定の齟齬がないかどうかだけ
過去にどんな作品が投下されているかはあまり重要でもないんで、たまに紹介されるおすすめ作品だけ保管庫で抑えておけばいいんじゃないかな
俺はアニメと原作4巻まで読んでる
消失だけは抑えとくべきだと思う
エンドレスエイト読みてぇ……
>>396 各スレあれだけ大量のSSがあると、ネタがかぶらないかそれが心配だ
>>398 まるっぽ、パクリでなければ、ネタ被り自体は許容範囲
>>398 俺なんて2回程「よし、書けたから投下しよう」としたら直前にネタが被ってる上にレベルがやたらと高いのが投下されてた事があるぜorz
かつて投下したのも多少は被ってるなあ
>>383 アニメ開始→撮り溜め→原作8巻読む→アニメ見る→このスレのSSをまとめで見る。
ここが一番原作準拠度高いよね。
元々アニメも原作をうまく再現してる
原作は二巻目が罠だからなぁ
>>402 一番低いの何処だろう……個人サイト?
自身がVIPPERだから庇護する訳じゃないが、VIPのSSも中々。
原作読んでない奴が書いたりするけど、それ以外は原作に近い作品が出たりしてる。
>>403 アニメは第1話で新参者を多く手放したよな。多分。大体が判ってるとあの手法は神かもしれんが。
>>405 VIPはどっちかというとシチュものが多い気がする。
ここはネタというか、話ありきというか。
妹と喜緑さんのジャケ来てたのか。妹はともかく、喜緑さんは何歌わすんだ?
まさかアニメに先行してインターフェースカミングアウトか?
喜緑さんってそもそも公式ではカミングアウトしちゃっているよね・・・。
さて、国木田の悲劇を書いてほぼスルーされた俺が来ましたよ。
もうちょい長めのやつ書いていい?
今度は鶴屋さん×国木田と喜緑さん×国木田で。
>>406 こっちは純粋に文章構成が問われる
VIPはノリとテンポが重要
書くのも投下するのも自由だ
叩かれても泣かない心構えがあればな
412 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 19:11:01 ID:z9iwYnUk
>>409 国木田の悲劇なんて作品、保管庫には無かったぞ
非2chの(少なくともサイトを見た限りではそう思える)個人サイトのSSは案外良いのがあるよね
打倒「国木田の憂鬱」ぐらいの勢いで、どーんと来い!
415 :
412:2007/01/17(水) 19:12:04 ID:z9iwYnUk
すまんageちまった
みんなの脳内データベースを検索させてくれ
涼宮ハルヒの憂鬱×学校を出よう! なSSは、『北高を出よう!』以外になんかある?
長編はあれしかないかな……?
>>413 だが、同じ比率でDQNのもある罠
まあ、イタイ奴の方が目立つからな…
偏見もたれるのも仕方がないと思ってしまう
自分の守備範囲なら抑えられるが
前に某801満載の奴を見させられたときは発狂して荒らしたくなったし
そして、それ作ってたのがリア友だったというウザさ
しかも、感想聞いてくるし…氏ねじゃなくて死ねってこういうことかと実感した...orz
学校ネタというか、リンクさせたネタなら一つ書いたんだけどさ、キャラスレのまとめが閉鎖しちゃったので
たぶん見れないだろうから、ここに転載していいかな。ちなみに自分が筆者なんだけど。
>>418 個人サイトモノは同人と同じ傾向なのかな。
良作がある半面で何コレなのも多杉、特にエロ系。
つかSSに求められてるものも十人十色だと今さら思った。
荒らしたいとか死ねとか、ドンだけ痛いやつなんだ
もう来なくていいよ
個人サイトモノも結構レベル高いのあるよな。
紹介するのは疎まれるようなので教えられないが。
個人サイトのは微妙なのばかりな気がする
―― プレ ――
偶然を装って近づく。
これからわたしのすること。彼女について知った時から、いつかそういう機会を作りたいと思
っていた。どうやっても拭い去れないわたしの願いにどんな形であれオチをつけたいのだ。
そう、わたしは彼の愛する人に会ってみたい。そのための、ほんの小さな出会いを作る。わた
しはそう考えながら彼女を待ち、そして思う。いつか「すべてが終わった」と感じるときが訪れ
るとするならば、そして「これでよかったのだ」と心から思えるような形での終幕を望むなら、
行ない残したことや心残りをできるだけ少なくするよう、拙くとも我々は努力するべきだろうと。
だからし残したことを一つ果たすために、わたしはここに立って彼女を待っている。
―― 1 ――
「ハルヒ姉さん、今日は本当にありがとうございました」と真面目そのものといった風情でハル
ヒにお礼を述べているのは、通称ハカセ君。絵心のある学究肌の少年だ。
「いいっていいって。誰かさんと違ってほんっと教えがいがあるわ。いいこと?ハカセくんはわ
たしが見込んだ将来を背負って立つ人材よ。世界を大いに盛り上げるためにじゃんじゃん働かな
くちゃダメなんだからね。わたしが言うんだから間違いないわ。このペースでがんばんなさい。
フィラデルフィア実験もカタストロフィもメタフィクションも、あなたの理解力ならどんとこい
だわ」
ハカセくんは後ろ頭に左手をやって困惑気味に「いえ。でも、あのお兄さんの話になるとハル
ヒお姉さんとても楽しそうですね。(僕の命の)恩人ですけど、ちょっとうらやましいです。で
は」と言い、やや深めに礼をして、にこやかな顔を名残惜しそうに向けつつ生来的に姿勢のいい
背を向けた。
「もう何言ってるの!……あ、亀ちゃんによろしくね!」 何言ってるのといいつつ全くまんざ
らでなさそうである。本日の太陽のような笑顔だな、とハカセくんは思ったかもしれない。
ギャラリーとしては、むしろハカセくんの心地よく他人をさせるおべんちゃら能力の末恐ろし
さに注目すべきかもだ。末は博士か大尽か、あるいは両方なのだろう。以前、ある事件に巻き込
まれた際にハカセくんに出会った朝比奈みくるの彼を見る目は、まさに歴史上の偉人に面と向か
う機会を得たギャラリーのそれであったから。
街なかは予選突破した上出来の青年の主張を太陽が叫んでいるようないい天気。しかし遠くな
い海の香りが残るさわやかな風の吹く、日曜の正午まえである。
428 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 20:20:42 ID:jNRcM1dc
>>425 まあ良いところは荒らしとか警戒して教えたがらないしな、2ちゃんだと……残念ながら
「すごい偶然なのです」
通りすがりにそんな声がハルヒに聞こえた。それだけなら通り過ぎるだけだったのだろうが、
モンシロチョウの羽ばたきのようなほのかに霞んだ声が続けてこう言う。
「あの……涼宮ハルヒさんですか?」
あらあ、綺麗な子ね……立ち止まって振り返ったそこに佇んでいるのは少女だった。おそらく
家路の途中であった上機嫌中なハルヒに声をかけた、見たところハルヒやキョンと同年代の少女。
ちょうど小さなマンションの日陰になる場所で、白いワンピースがこの上なく映えている。
白いリリーが微笑んでいるような、同級生の男子の9割がたがひとめぼれloverしそうな外見
とオーラを放つ、しかしどこか儚げな印象を与える少女だった。
朝比奈みくるが北高におらず、代わりにいたのがこの少女なら、内面を抜きにしても無理やり
スカウトしていたかもしれない。もっとも内面なり正体を知ったらますます高確率で無理にでも
引っ張りそうだ。ただしキョンには思いっきり釘を刺したくなるだろうが。少女の内面とか正体
などをまだ知らない涼宮ハルヒだが、うららかな陽気のこの日理由なく出くわしたという少女を、
SOS団団長はしげしげと見つめていた。
――これほど印象的なのに、あたしには見覚えのない顔だわ……
「××くんがあなたのことを話していたのです」ハカセくんの名前を告げつつ少女はさらに微笑
んで言う。
「え、あなたあの子知ってるの?」
自分を知っていることはまあいい。おそらく同学年でわたしの名前くらい知っているのは近隣
の同学年なら十分に考えられる。なにしろ世間を騒がせてきた自覚はそれなりに持っている。な
らば目の前にいるおそらく同級生のこの女は、年の違うハカセくんをなぜ知っているのだろう。
涼宮ハルヒとしては当然の疑問を口にした。
《それほど急いでいるわけでもないし、とりあえず面白そうな感じの子だしね》おそらく第一
印象はこんなものだろう。
「通っている塾の先生が××くんにベタ惚れのぞっこんなのです。わたしのクラスでも塾開講以
来の秀才くんだとかで何度も耳にしました。おそらくわたしと話が合いそうだとも言っておられ
たので、このあいだ塾の休み時間に××くんに会って話してみたのです。思ったとおり、とても
興味深い少年でした。とても。コペンハーゲン解釈についての意見がお互いにかなり一致したよ
うに思います。あなたのことはその話で出ました。そうして少しの時間話しただけなのですが、
涼宮さんに興味を抱いたわたしにあなたのことを教えてくれたのです。とても聡明で性格的に明
るい、近所ではちょっとした有名人なのだとか。実はわたしの通っている高校でもあなたの名前
は聞いていたものですから、お友達に卒業アルバムを見せてもらってあなたの外見を知っていま
した。ああ、申し遅れました、わたしは……と申します。お察しの通りあなたと同い年なので
す」
日曜の陽気にさそわれて、ドッヂボールに興ずる少年たちが近くで楽しそうに声を上げている。
あまり見かけなくなった光景だなと思いつつかもしれない、ハルヒは少女の話を聞いていた。
――ふうん、なるほど。
見知らぬ相手にまず物怖じしないハルヒである。面白そうか面白くないかが人物鑑定のハルヒ
基準なのだ。そしてハルヒ的鑑定に白いワンピースの少女はかなりの高価値と見なされたらしい。
とはいえ、ここで立ち話ってもドッヂボールの邪魔になるかもしれないな。
そんな風に思ったハルヒを見透かしたように「わたしはいま美容室の帰りなのです。ぶしつけ
なお誘いで気がとがめるのですが、涼宮さんさえ良ければ……」と、少女は近所で最近新装した
喫茶店にハルヒを誘った。
少し考えるそぶりだったが、どちらかといえば外見的におとなしそうな、かえって庇護欲をそ
そられる可憐な少女の控えめな誘いに気を悪くする人間もそういないだろう。ハルヒもご他聞に
もれずだったようで、
「……そうねえ、あなた面白い子ね。いいわよ。さっそく行きましょっ。なんとなくだけど、こ
こで会ったのも偶然じゃない気がするのよねぇ。あ、でも持ち合わせがちょっと足りないかも」
言いつつ財布を気にする。
すると少女はうれしそうな表情と声で言った。
「いえ、わたしが声をかけたのです。お金は気になさらなくて結構です。ぜひぜひ、奢らせてく
ださい」
美容院の帰りに買い物の予定も予定していたのでお金なら問題ないらしい。こうして、ハルヒ
としてはキョンと連れ立って入ったこともある件の喫茶店に行くこととなった。
外見的に通常を大きく凌駕するワンピースの白い少女を連れているためだろう、誘っておきな
がら「わたしは初めてなのです」などとと少女の言う喫茶店に向かう途中で二人連れの若い男性
に声をかけられること計二回、加えてすれ違いざま、動物園のアイドルのように凝視され・また
は振り返られることおよそ四回、
そのことごとくに「それどころじゃないの!」と風よけ役には心強いと言うほかないハルヒが
すげなく返事しつつ5分ほどで着いた。
表の駐車スペースは埋まっており、ついでにこの店の客のものと思しき車が数台路駐してあっ
て、いかにも客が入っている様子である。
案の定、昼時における駅前のファミレスにやや近い込み具合であった。少女はしげしげと中を
見渡している。
席が空いていないわけではなかったのだが、カウンター以外はどうしても相席になるので席待
ちをする。何かに気づいたように「あ……クフッ」と、のどの奥から染み出るような声で小さく
笑いながら少女が書いた。
「プッ、それでいいんじゃない? なかなか笑いのセンスあるわよ、…さん」どれどれと覗いた
ハルヒが面白がっている。名前欄に少女が『勘解由弾正音』などと書いたからだろう。
これのどこに笑いのセンスを感じるのかは異論の余地がありそうだが。
「二名でお越しの、か、かげゆだんじょういんさまぁ……で、よろしいでしょうか」
若いウェイトレスが少し戸惑った様子で、しかしはっきりと二人を呼んだ。
なんだこいつらと内心思っているかもしれないが、臆面にも出さずにニコやかに席に案内する。
窓際のテーブル席に案内された。席待ちで二つ前の欄に『按察使黄昏之介、他一名』などと書い
ていた(らしい)大学生風の男女とたまたま近くなった。こちらさんは変な男なのだろうか。
とっとと自分の注文を済ましたハルヒは、決めかねてメニューを見つめている少女の姿勢がと
てもよいのに気づく。なんとなくハカセくんに似ているわね。それにしてもこういう場所にあま
り来た事がないのだろうか。なんとなく歩いているだけで異性の目を釘付けに出来そうな――実
際にそうだったから間違いない――美人さんなのにね。
じっと見られていることに気づいた少女は穏やかな口元を緩めて、「申し訳ありません、どれ
にしようか悩んでしまって」と言いつつ「飲み物は涼宮さんと同じで。ええと、モカと……この
クラシックに」
そばに来たウェイターにハルヒが声をかけて少女の注文分を追加した。
肩甲骨のあたりを指圧するという健康法の話から始まり、高地トレーニングの話、近くに座っ
ている男女の面白そうな話―といってもほぼ男性の独壇場だったのだが―をうけてからは加速し
て、宇宙はもう一度収縮に向かうのか永遠に膨張し続けるのか、カルタゴ兵のアルプス越えの際
の上官への悪口雑言の予想(「ハミルカルの禿」とかひたすらくだらない)、最近の量子論的な
見地からの雪男の存在について、少年探偵が殺人事件に遭遇する頻度の異常な高さをどう合理的
に説明するか、世界史的見地におけるグローバリズムとナショナリズムとフーコーの振り子につ
いて、エドゥアルド=ガレアーノの仏頂面が異様にかっこよかった件、視覚と聴覚のあいまいさ
と精密さ、睡眠の際に眼球が見ていると錯覚しているらしい映像を脳はどのように見ているのか、
男女がある種の同じ夢を見た際にその二人についてどう判断したらよいか。そのほか筆者には到
底わからない話を楽しそうに続けた。
少女はとりわけ夢の話に興味を惹かれたらしく、「それ、涼宮さんの実体験ですか」とか「あ
なたはどう判断しておられるのですか」と尋ねた。
そのあたりになるとさすがに言葉に詰まるハルヒ。
「えーと、そんなんじゃないけど。でも普通じゃないわよね。特別な……」と苦しい弁解をして
しまう。
「赤い糸で結ばれているのです」 え。「いまのは冗談です。でもとても興味深いのです」
ククッとわらう少女。
「…………」
「でも、ロマンチックなのです。たぶん、わたしもそういう話は嫌いではありません。それに涼
宮さんの選んだ人の話なのでしょう? おおいに好奇心をそそられます」
ふたたび黙秘権を行使するハルヒ。なんだかハルヒが手玉にとられているようなやりとりだっ
た。オーダーの時間差どおりに早く届けられたケーキをハルヒはものの1分でたいらげる。コー
ヒーに口をつけながら、少女は感心したようにそれを見ていた。
―― 2 ――
「まったく、いつまでたってもセコさは変わりませんわね」
「はは。安心したまえ。ジェンダーだのなんだのとはわたしはほぼ恒久的に無縁なのだ」
さきほどの変な男(推測)と連れの女性が割り勘だの奢りだので揉めている様子が聞こえる。
ほとほとうんざりした表情を作っている女性だが、これまた清冽な雰囲気の美人である。ただお
となしくしていればハンサムなのに、ひたすらくだらないことに真剣そうな長身の相方男性と同
次元で張り合うあたり、この女性も相当奇矯な人物なのだろう。
そんな様子を知ってか「くふふ」と肩をすくめて少女が笑う。
「やはりとても面白いのです」
「うさぎのお姉さんと、お兄さん」
――え?
とても年相応に思えない火傷話未満にやはり気が散らされていたのか、ハルヒは少女の言葉が
聞き取れなかったらしい。
「××くんが言ってました。二人とも涼宮さんのお友達で、僕の恩人だと」
「…………」 な、っても知ってておかしくないわね。じゃあこちらも聞いてやろう。
「……さん、あなた中学は?」 名前を聞いて驚くというよりやっぱりと思う。
そう、この子はキョンの同級生だったのだ。「じゃあ、キョンのことも」
「はい。名前は知っていました。あなたの」
言いかけて口を緩やかに閉じる。かわらない微笑だけどちょっとだけ目が細まっている。
ええ、たぶんあなたの思ってるとおりよ。だから……視線に力をこめてあたしは見返した。そ
れを正面で受けてからクフッと笑った彼女は
「高校に進学してから、涼宮さんはとても変わったように聞きました。それもSOS団の話にな
ると良くわかるって。きっと、それは彼と出会ったからなのでしょう? なんとなくわかりま
す」と言った。
ちょっと、わたしは何もしゃべっていないわよ。何を勝手に。
「あなたの口からぜひ聞きたいのです。彼の第一印象はどうでしたか?」
わたしの心としゃべっているような感じがする。観察力が尋常ではないのか、尋常でない子な
のか。ならば、心にあることを言おう。
「……そうね。もう運命としか思えなかったわ。もちろん、初めは疑ってたけど」
言いつつ頬のあたりが熱くなるのを感じる。 コーヒーに口をつけて、外の景色をなんとなく
眺める。ほんと、いい天気ね。
「ほんとうにいい天気ですね。いまの涼宮さんのような」
いまあたしが思ってたことをそのまま告げられた。
わたしに向きなおって続ける。「彼のどんなところでしょうか。以前の同級生として興味があ
るのです」
むしろあなたに聞きたいわね。そんなに気になることかしら。
「ぜんぶ」 ちょっとちょっと。それって有希のような台詞だわね。「……などと惚気られても
困ってしまいますが」
冗談めかして言いつつ、まだ残っているケーキを小さくしながら上目づかいでこちらを見た。
知らないうちに誰にも話したことないような深い部分に探りを入れられているのだが、このとき
あたしは不思議に思わなかったらしい。
だがなんと答えればよいのか純粋にわからずに、この子はトリートメントどんなの使ってるか
などと関係ないことを考えていたように思う。
少女はまた少し目を細めて「ひょっとして、将来を約束なさっているのですか? いえ、もし
そんな話があったらなんてロマンティックだろうと思います。きっと素敵な話なのです」と付け
加えた。
――沈黙。
でも逃れられない思いがわたしを覆っていく。この子はキョンのなんなの? こんな細面の、
華奢で儚げな女の子のどこにそんな力があるのだろう。凄腕の代理人にチームの花形選手の入団
契約を打診されているオーナーのような感覚を覚えた。いやだ。そんな交渉はありえない。どん
な大金積まれても絶対にいや。いやなの!
ありもしないそんな圧力をわたしが一方的に感じていると、彼女は少し申し訳なさそうな顔に
なった。
「すいません。なんだか失礼なことまで聞いてしまいました」
それでも、聞かなくともじゅうぶん伝わりましたというように居住まいをただす。
「こうしてお話できてとてもうれしいのです。わたしの直感ですが、よくお似合いです。くふ、
すこしジェラシーなのです。それに、いいお友達がいらっしゃる様子ですね。お会いしたくなり
ました」
「え、ああ、ごめんなさい。そうね、きっとあなたも気に入るわよ。ちょっと変わってるのばっ
かだけどね。でも、ここほんとに奢ってもらっていいの?」
くるくると笑ってワンピースの少女は答える。「モチのロンなのです」
大学生風の凸凹コンビが席を立っていく。男性が長身なだけなのだけど。どうやら男の方が奢
ることで決着したらしく、女性は満足そうな余韻を漂わせている。オーダーメイドのように似合
ってはいるが、モノトーンのあのゴスロリ衣装はちょっと暑苦しそうだな。ま、あそこまで堂々
と着こなされると何も言えないけどね。
「では、わたしはここで」 深めにお辞儀をされる。
ちょっと背中がむず痒いな。こういうときはわざと威勢よく返事してしまう。
「ういっす! ごちッした! えっとね、暇な時にいつでもいらっしゃいよ、SOS団は24時
間無休であなたを歓迎するわ」
キョンがいたら確実に突っ込まれそうな変な口調で変なことをつい言ってしまう。
彼女は初めと同じような佇まいで微笑み、そのままわたしに背中を向けた。ほんとうにこの子
が来た時はどうしようなどとつまらない詮索はしないのだ。キョンとあたしは真正絶対超確実極
厳正な審査のうえお似合いなのだから。
―― 3 ――
「ねえキョン」 月曜日の休み時間である。
前の授業中なんとなくうわの空の雰囲気だった後ろの席の女は、やはりどことなくメランコ
リーな気分を発信している。どうした、ハルヒ。
「不思議って、やっぱ不思議ね」
どこかで面白い本でも見つけて読んでいるのだろうか。もともととはいえ一層変なことを口に
しているハルヒを怪訝な表情で見ていると、「あんた、そういえば同じ中学出身よね、……さん
と」
え……
ハルヒが口にした名前は俺にとって対ハルヒ禁則事項に含まれる重要ネームであった。人違い
だろうと思いたくても、なにしろその名前は希少価値のあるものなので、まず俺の聞き間違いで
はなさそうだ。中河が忘れていたらしいのは意外だったが。
って、いきなりなぜその名前を……。
どうやったって動揺は隠せないだろうが、一応平静を保ちつつ「ああ。知ってる」と可能な限
り素っ気無く言ってみた。
「ふーん。……あんた鼻の下結構長いわね。でも一段と伸びてるわよ。そりゃあれだけかわいけ
りゃね。あんたじゃなくても無理もないわ」
俺の反応は想定の範囲内だったらしい。すこし胸をなでおろす俺。しかしハルヒはあいつの顔
を知ってるのか? 結構長い付き合いなのに気が付かなかった。ん、不思議とあいつがどうつな
がるってんだ。
「昨日、ハカセくんの勉強を久しぶりに見てあげてたのよ、そしたらその帰りに。わたしでも立
ち止まって鑑賞したくなるくらいかわいい子だったわ。偶然だけどわたしに『会いたかったので
す』だって。×○…ほら最近リニューアルしたあの店に一緒に入ったの。そこまでの5分くらい
で二度もイケメンに声かけられたわ。ま、あの子と一緒なら仕方ないかもだけどね」
ハルヒ自身もそんじょそこらにいない美少女だからだろうよ。
「ばか」
お決まりの、カモノハシのような口を作りながらも若干うれしそうなハルヒにシャーペンで鼻
先をつつかれた。だからあぶねえって。だが、どうやら機嫌はいいらしいね。脳内で二人の会話
をシミュレーションしてみる。なるほど。
たぶん、お互いに話が合ったんだろう。あいつもやたら宇宙とか超能力とかに興味があったか
らな。そういう意味でハルヒの御眼鏡にかなったのかもしれん。
ハルヒはフフンと笑って
「まああんたじゃとてもじゃないけどあんな出来た子は釣り合わないってものよ。あんなに綺麗
で、守ってあげたくなりそうな微笑みちゃんで、どっか儚くて、でもしゃべってみるとものすご
く賢いのよ。うん、勉強じゃわたしも敵わないかもね。体育系なら別だろうけどさ」
めずらしく素直に相手を認めるハルヒだ。これは希少かもしれん。いや待て、じゃあ俺とお前
はどうなんだ。釣り合わないとか言いたいのか?そりゃおとなしくすましてる分にはかわいいし
学業もほとんど万能だろうけどさ。
するとハルヒはシャーペンで指差した鼻先から順に俺の顔をねめつけながら憎まれ口を叩く。
「……そうよねえ。なんであんたなんかと」
そんな悪態をついてくるが、それが本気か冗談かの見分けくらいはつく。これは猫の甘がみの
ようなものだ。
「でも、その子とね。あんたの話になったんだけど」 今度こそすこし伺うような目。
ああ、いったいどんな会話になったのか。なにしろ国木田あたりに言わせると付き合っていた
の部類に入るらしいのだ。そういう情報に過敏とも言える反応を示すハルヒのこと、下手を打つ
とただではすまないだろう。
そんな心配をよそに、俺の目をじっと見つめながらハルヒは続けた。
「ふふ、あんたを誰かに取られるくらいなら、地球をヤフオクに出して宇宙人に売ってやるわよ。
USAにだって文句は言わせないわ」
冗談めかしながらもものすごいことを言う。地球よりも俺のほうが大事だと言いたいらしい。
こいつなりのジュテーム。周囲の女子に微笑ましく見られているように感じる。ほぼ公認の仲と
はいえやはり恥ずかしいぜ。しかしなんて言ってたんだ?俺のことを。 「あんたの顔は知って
るみたいだったけどね。それよりあたしたちのこと聞きたがってさ。出会ってはじめての印象と
か、どうして気に入ったのかとか、将来のことまでね、いろいろ。変な子よね」 まるで許婚が
相手の過去を洗うために雇った調査員の勢いだな。なんでまたそんなことを……
俺を観察するような目で見ていたハルヒだが、すこし目をそらしてからやや真剣味を帯びた表
情を作ってつぶやいた。
「……あんたたち、どういう関係だったの?」
顔見知りだって言ってたんだろ。
「うそ。それだけじゃ絶対ない。わたしに会ったのだって……。たぶん、あんたとわたしのこと
を知りたかったのよ」 そこまで勘ぐられると言い訳しようがなくなってくる。
だがそんな心配をされるくらいには、ハルヒと俺はお互いが気になっているわけで、それは他
の奴から見ればもう鬱陶しいくらい、そうだな、ラブラブってやつなんだろう、ね。そこの谷口
くん。なんとなしにジトッした目線と合う。かまうもんか。
「俺からも言わせてくれ」 「なに」 拗ねたような顔で上目遣いのハルヒ。
「俺のお袋の味を作れるのは、お袋自身を除いておまえだけだ。ベタだがこれは俺にとって結構
重要なんだ」
すこし沈黙してキョトンとして、そのあとクッと笑いをこらえながらハルヒは言った。
「クク、なによ、それ」
「心配すんなってことだよ。でも心配させたんだな。すまん」
ハルヒの前髪のあたりをいじりながら俺は答えた。
―― エピ ――
鏡台の前。
左手に持ったこの携帯電話のディスプレーが写すひとつの番号をわたしは見つめている。
『中学の同級生』グループに入れる番号かもしれないが、わたしはその番号を『プライベート』
に振り分けている。その他大勢にしたくなかったから。
すぐにでも発信できるだろう。
けれど話す言葉がみつからない。話したいことはいっぱいあるのに。
彼女はやっぱり思ったとおりの人でした。とてもお似合いです。綺麗で、あなたの話をしてい
る彼女は目がキラキラしていて、もっと綺麗に見えました。彼女はあなたが大好きなのです。だ
からあなたをもっと見たいと目が輝くのでしょう。それくらいに、心を覗かなくてもはっきりわ
かるくらいに。それはずっと昔から定められていたような、まぶしくて直視できない直射日光に
も似た出会いだったのでしょう。SOS団なるものも。涼宮さんはあなたのためだけに作ったの
です。あなたは気づいていましたか?
いいえ。
こんなことを言って何になるのだろう。
わたしの心は、いったい何を望んでいるのだろう。
それとも。
あなたの顔を見たいとでも言ってしまおうか。わたしはあなたに会いたいと願っていると。あ
なたの飼っているという三毛猫の顔を見たいとでも。あなたのかわいい妹さんに会ってみたいな
どと。プラネタリウムの新作がとてもすばらしいのです……でも一人では不安です、一緒に見に
行ってくれませんか。それともこの間持ち上がった同窓会の件で相談したいと切り出そうか。い
っそ、彼女に聞いたSOS団のみなさんに興味があるのです、それであなたに……と。ぜんぶほ
んとうのことだ。それをそのまま伝えようか……
でも。
わたしにはできない。したくないのではないけど。今のまま遠くから見守っているだけ。鏡の
なかに映るわたしに、わたしはつぶやく。発信の実行を問うディスプレーに目を落とす。たった
一つのボタンで、彼につながるのだ。たぶんつながるだろう。
一瞬、得意な料理を自宅で振舞っている自分と、満足そうな顔で食べている彼の様子が浮かん
でくる。願うことは自由なのだ。そして……鏡に目を戻したわたしは悲しそうな顔を見つめる。
それでも願うことはできる。でも。
それだけ。
つーか、素人が無料奉仕で書いてるもんなんだから玉石混淆で当たり前なんじゃまいか
文句つける方がおかしいぜ。
まぁ誤字脱字が多いとかそういう論外なのはあるけどさ。
叩きゃいいってもんじゃねーべ。
>>383 先週読み初めて今日やっと読み切ったものですが何か
しかし、こんなにssがあると、果たして小生が書けるのかの
国木田の悲劇じゃなくてKの悲劇じゃね?
まあ、そこはいいとして、
>>437の作品はよくわからんのだが…
キョンの昔の女vsハルヒ
ってことでいいの?
>>440 学校〜の作中キャラとリンクしてるから学校知らないとわかんないかも
○さんと聞くと悲しくなってしまう俺が来ましたよ
>>443 まとめサイトの管理人がバッくれて、移行の見通しも立たない
某キャラスレに投下した作品を甜菜って言ってるじゃない
>>405 ちと亀レスだが
普段ここに投下してる職人がVIPに投下してることも割とあると思うよ。
こないだ、ふとVIP見に行ったら、何か見たことあるトリップの人が長編投下してた。
俺はVIPの書き手さんでトリップわかる人いないから、誰だろうと思ってたら、
「空梅雨の気まぐれ」の人だった。
>>446 お前みたいなしょうもないヤツがいるから、みんなプリンに行っちゃうんだよ。
>>406 同意。
それにしてもここエロ少ないな。別にいいけど。
個人サイトの印象が良くないのって、某登録サイトのランキングが影響してると思うんだが。
何故か良質なサイトが下位だし。点数も然り。
>>444 見通しどころか、すでに準備まとめが立ってるけどな
今度会長書くから憤慨研究中
うはーおもすれー
>>449 あそこの点数なんて殆ど自作自演だろ。
中学生が書いたSSがしかも18禁が(゚Д゚)ハァ?
みたいなんが載ってるようなサイトが一位になったり
もはやランキングの意味ねぇ
SSサイトの良いところは辞書攻撃のごとくくまなく探すしかない
ここは職人さんの質はプリンやキャラスレ含めたSSあるスレの中で最高級だが住民の質は最低級と言う面白いスレだな。
9月ごろ、度を越した批評家気取りの横行で多くの職人流出、投下激減、スレ過疎をしていて
んで最近、職人さんの良作低下でやっとこ良い流れが回復してきたと思ったら
また変な批評家気取りが台頭しだして悪い流れに逆戻り気味ってのは学習効果皆無で笑える。
てか批評=挙げ足取りと勘違いしているのか変な挙げ足取りばっかでバランス感覚が取れてない阿呆が多過ぎで困るな。
あと、他スレとやたら比較してここが一番、とか言う人がこのスレにはやたら多いが(つか定期的に出るな)
このスレの作品は確かに質高いのは分るが、だからと言って(少なくとも自分は)自分が投下しているわけでも無いんだし
他と比較して何を自慢したいんだかよく分からんな。
もしや、自分達が住民が批評して質維持しているから質高いと勘違いしている痛い低脳?
それは手前のお陰じゃなく、職人さんの良作投下のお陰だってコト分ってんのかね?
>>453 わかってないねえ。
初心者への注意=揚げ足取り=批評だと勘違いしている変な人が多いんだよw
懸賞に応募したところ、このペンネームはいただけません、フロッピーディスクでの送付は受け付けていません、と言われたら、
それを批評だと思うのか?
初心者に徹底して荒療治してるスレだからこそ、良作が投下されてるんじゃないか。
上と下との扱いに差をつけてこそ、上の人はモチベーションが湧く。孫呉の兵法。
初心者(初級者ではない)も神も同じGJ扱いされるようなスレに、神が居着くものかね?
だいたい、18歳以上なんだからさ、間違ったこと書けば叩かれる覚悟くらいできてるだろ。
殴られずに大人になったやつなどいるものか。
叩きあげて鍛えようとしてるのが空回りしてるよな
でもVIPの馬鹿どもよりいいと思うんだ
>>453 全面的に同意だが、もう少し幼なじみが照れ隠し(ry
>>453 お前みたいな子供が黙っていればそうそう荒れるスレでもないと思う。
スレ立て直せ
まぁ
>>454からは
「俺らがこのスレのクオリティを上げてやっているんだぜ」
という痛い批評家の上から目線をヒシヒシと感じるわけだが
>>459 だから批評ではないと何度言ったら(ry
じゃあ言い換えよう
「俺らのおかげでこのスレのクオリティが保たれているんだぜ」
というイタい自治厨の(ry
>>461 そういう目でしか人を見られないのは、当の本人がそういう人間だからだよな。
やれやれ。
住人はデレであれ
書き手
せめてツンデレのツンのふりでお願いしたいです
同じく書き手
批評とかは書き手、もしくはものを書くことに精通してる人だけがすべきだと思う
そうじゃない人は「〜だと思う」ぐらいの感想に留めておいた方がいいんじゃないか
いやぁ、
>>454の内容はもっともなのに、伝え方一つで
>>453の後半部を半ば実証する形になっちゃいますね
というのを分かりやすくしようと煽ってみた、正直スマソ
ただ、間違いは注意されて当然だとは思うが、叩かれて当然だとは思わない
ぬこ
たぶん書き手
>>465 それって鳥つけるとかしないとわかんないし、やったとしても結局荒れるよ。
あるレベルまでは数書かないとダメだし、逆に言えば数書けば上手くなるんだから、誉めるかスルーの二択でいいよ。
誉めとけば荒れないし投下も増えるし、スルーされたら書き手はつまんないんだと分かるから。
別に指摘が悪いってんじゃなくて、俺絶対みたいなあまりにも傲慢すぎる意見がやたら目に付くのがな。
>>462とか典型じゃん。それでバランス感覚取れていないというコト。
このスレ、8割くらいは人を見下し視点で指摘しているのが多いからな。
まあ2chやネット上の性質で当然のことではあるが、それにしてもここのスレ住民の見下し視点評価は
プリン・キャラスレ含めた他ハルヒSS投下スレに比べて突出しすぎ。性根が完全に腐っているとしか思えんな。
ツマランならどこがツマランとか言うなら、自分だったらここをこうした方が良いと思うとか
指摘点をきちんと挙げて言うべきだと思うんだが。なんだか自分の意見が偉い!絶対!みたいな人大杉。
自覚がないってのはとても悲しいことなんだ
スレ立て直せ
スレ立て直せ
>>465 匿名掲示板でそんなことをどうやって判定するんだ?
>>468 叩きはともかく、問題点を指摘されるのとスルーされるの間には
評者の作品に対する評価に雲泥の差があるんだが
474 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/18(木) 16:11:09 ID:wPFBq108
5413tEK9が痛々しくて面白すぎるw
>>473 誉める以外の評価なんて心の内に留めとけと言っているの。
こんな風に意図が伝わらない事なんて山ほどあって、それが原因で荒れることもあるんだから、黙っておけよと。なんで評価したがるのかなあ。
>>466 ?
>>465 批評は批評職人が、はよく言われることだが、
>>468の通り、現実的には難しい。
情緒や感性に訴える文芸に誰もが納得できる客観的な評価を下すのは、なかなか困難。
SS職人よりもはるかに人材が乏しい上、
「こんな面白いSSにそんな厳しい評価を下すなんて、お前はこの職人が嫌いなんだろ?」
などと筋違いの話を宣う方々が必ず出てくるから。
誰もがそう思う客観的なことというと、
sageない等のお子様らしさ
投稿方法のデタラメさ(誤字脱字はともかく)
内容上の理由のない、明らかな版権との矛盾
結局は、こういうところになってくる。
そして、「〜だと思う」とつけても、「何様だ?」と言われるのは同じ、だと思う。
>>469 ずいぶんと人を見下す書き込みだな、おい。
自分は性根が腐ってないと思っているらしいが、その自信はどこから。
自分の嫌いな食べ物のどこが不味いのか説明できますか。好きな食べ物ならどうですか。
説明できなければ、美味いも不味いも言ってはいけないのですか。
そして、説明できるとしたら、もう少しここはこうしたほうがいいんじゃないか、と言うべきですか、料理人さんに。
それこそが傲慢だとは思いませんか?
あいにくと自分は、料理人さんのできなかったことを自分ができるとは思いません。
自分にわかるのはただ、美味いか不味いか、あるいは皿が不潔だとか料理名が下ネタだとか、そのくらいだけです。
>>468 >誉めとけば荒れないし投下も増える
些細なイベントで荒れてしまう、ウィルソンの霧箱みたいなスレになります。
そもそも「荒れる」ってどんな状態?
投下されたトンデモない代物が叩かれるのは、匿名掲示板の常。むしろ健全な状態。
>スルーされたら書き手はつまんないんだと分かる
「義務的GJ」は絶対につけないこと、というLRでもない限り無理。
>>476 荒れてるって言うのはね、僕とか君のせいでスレの目的が蔑ろにされてるこの状態の事だよ。理想的なスレってのは、つつがなく作品が投下されるスレだよ。
ほんと迷惑かけてごめんなさい。消えます。
どうでもいーよ
書き手が神
読む香具師は俺含めてみんな虫
某キャラスレ→某キャラスレ→VIP→エロパロ→最初に戻る
と言うループで荒れているような気がするんだよな。
俺が書き込むと荒れるというヤツ。
正直に手を挙げろ。
流れを無視してSS投下。
>237に影響されて、数ヶ月ぶりに筆を取ってみましたが……
『へたれキョン』『バッドエンド風』『俺設定』『中二病』『無駄に長い(25KB超)』
のいずれかのワードに引っ掛かる場合はIDをNG指定推奨。
言い訳はこの辺にして、消失IF物を失礼します。20レス予定。本番等無し。
クリスマスを目前に、突然世界は変わってしまった。
それともやはり、国木田や朝倉が言うように、変わってしまったのは俺の方なのだろうか?
まるで誰かに栞の位置をズラされたかのような不快感。
知っているはずの物語なのに、ストーリーが繋がっていない。
読み進めていた推理小説は、席を外した間に、スペースオペラに変わっていた。
飛ばされたページには、いったい何が書かれていたのだろうか。
そんな栞の錯覚から俺を救い出してくれたのも、やはり栞だった。
文芸部の部室で見つけた一枚の紙切れだけが、唯一、俺の正気を保証してくれた。
『プログラム起動条件・鍵をそろえよ。最終期限・二日後』
どうやら俺は『鍵』とやらを揃えなければならないらしい。
見事成功すればオープンセサミ。すべての問題が解決するはずだ。
しかし出来なければ──、
おそらく、この靴下を裏返しに履いてしまったような世界で、異邦人として暮らすしかないのだろう。
ちなみに期限を明日に控えた現在、鍵はカタチの見当すらついていない。
誰かの部屋によく似た、見知らぬマンションの一室。
三人で囲んだコタツの上では、熱々のおでんが湯気と一緒に良い香りを上げていた。
上の空で味わう余裕など無かったが、気が付けば腹は膨れていた。
どうやら消化器官は腕とともに脳から独立宣言をし、せっせと栄養補給に勤しんでいたらしい。
お腹が膨れたのは他の二名も同様のようで、自然とお開きの流れとなった。
「明日も部室に行っていいか?」
別れ際に長門に尋ねた。
今の俺にとって、文芸部の部室が最期の砦だった。
「放課後さ、ここんとこ他に行くところがないんだよ」
朝比奈さんも古泉も──ハルヒもいない放課後。
この世界で、唯一、変わらずに俺を迎えてくれた相手が、目の前の寡黙な少女だ。
多少性格が違ってしまっているが構わない。
宇宙人の何とかインターフェイスである必要なんか無い。
いつも通り、部室でパイプ椅子に座って、黙々と本を読んでいるだけでいい。
お前が居てくれるだけで──……
長門は俺をじっと見つめ、それから……。
、 、 、 、
薄く、だが、はっきりと微笑んだ。
────目眩がした。
エレベータで降りている最中、朝倉は含み笑いを浮かべて言った。
「あなた、長門さんが好きなの?」
「……がう、」
返答は言葉にならなかった。
目眩がする。足場が揺れる。吐き気がする。
もしここに朝倉がいなかったら、遠慮無く吐いている。
すべてを吐き出して、楽になってしまいたかった。
居なければ……、いなければ……、
……居ない、
おい、 …はどこに居るんだ?
「ん? 何か言った?」
エレベータが停止し、扉が開く。
朝倉は、こちらを気にする様子を見せながらエレベータを下りた。
「やっぱり調子が悪いみたいね。早く寝た方がいいわよ。長門さんを心配させちゃダメよ」
そのセリフを認めるわけにはいかず、貼り付いた喉から絞り出すように言葉を発した。
「……違う。……あいつは、 …じゃない」
「──?? あなた何を言って──、」
朝倉の言葉は、最後まで伝わることなく、分厚い扉に遮られた。
一瞬の浮遊感とともに、エレベータが再下降を始める。
壁に寄り掛かり、そのままズルズルと崩れ落ちた。
いっそこのまま、このエレベータが世界から切り離されてしまえばいいのに。
あんな誰も居ない世界になど戻りたくない。
そこに、俺の居場所はない──
願いなんてものは、得てして叶わないものと相場が決まっているらしい。
神様なんて信じていないが、仮に居るとしたら、とんでもなく底意地の悪いやつに違いがない。
エレベータは一階に到着し、元の世界へと繋がる扉が開いた。
俺はヤモリの改造人間のように不格好な動きで、エレベータから這い出した。
それからどうやって家まで帰ったかは覚えていない。
気が付くと家で、俺の顔を見て心配する妹や母親に生返事で対応し、ベッドに倒れ込んだ。
目蓋を閉じても、網膜に焼き付いて離れない。
別れ際の光景が脳裏で勝手にプレイバックし続ける。
、 、 、 、
あいつと同じ黒曜石のような瞳で、あいつは、はっきりと微笑んだ。
目眩がする。
、 、 、 、
長門有希は微笑んだりしない。 、 、 、 、
分かり切っていたはずのことだが──あいつも、俺の知る長門有希じゃなかった。
思い知らされ、打ちのめされた。
──ここには、俺が知る人間は、誰もいない。
『 長門有希の不在 』
She's nowhere.
翌日、俺は学校を休んだ。
ずる休みってわけじゃない。本当に体調が悪く、ベッドから出られそうもなかった。
それなりの熱も出てるし、何より母親が学校に連絡を入れた次点で正式な欠席だ。
今日が栞の定めた期限だった。
すでに昼時も過ぎて、学校では午後の授業が始まっているころだろう。
後先のことを考えるなら、寝込んでいる場合などではない。
今日中に『鍵』を探し出さないと、おそらく二度とチャンスはないだろう。
……しかし、何もかもがどうでもいい気分だった。
捨て鉢な気持ちというのは、こういう状態を言うのだろう。
──静かだった。
時計の秒針の音すら、どこか遠くに感じた。
聞こえるのは、自分の呼吸音と心音、あとは身体を動かした際に布団がこすれる音。
この部屋は、昨日のエレベータと変わらない。
俺だけが取り残された、俺だけの、静かで孤独な空間。
それは学校に行っても変わらない。
他人だらけの空間なんて、本質的に独りと何ら違いはない。
世界はエレベータを相似拡大しただけのものなのだろう。
……いかん、熱のせいか思考が樹海の中の方位磁針のように行き先を見失っている。
俺はそういうダウナーキャラか? 違うだろ? こんな時は寝てしまうに限る。
後は野となれ山となれだ。
眠りにつく寸前、間抜けな神が俺の言葉を勘違いするという妄想が浮かんだ。
目を覚ましたら、一面が荒廃した焼け野原になっていて、誰も居なくなってしまう。
そんな、くだらない願望──
────、
ノックの音で目が覚めた。
悪い夢でも見たのか、寝汗で服がピッタリと貼り付いて気持ち悪い。
喉もマーズパスファインダーが映した火星の表層のように、カラカラに乾燥しきっていた。
ノックの主は母親だった。
何でも俺にお見舞いが訪ねてきたらしい。
女の子よ、と、何を勘違いしたのか嬉しそうな声で付け加えてきた。
当然、思い当たる節は一人しかいない。
少し前までだったら、やたらと喧しいのや、心優しい上級生などの候補もあった。
だが今この状況で俺を訪ねてくる女性と言ったら、あいつしかいない。
少し待ってもらうように言って、ベッドから起きあがった。
外はもう真っ暗で、たっぷり寝たお陰か、体調もだいぶ良くなっていた。
今更ながら、約束を破ってしまったことを思い出す。
おそらく文芸部の部室で、一人でずっと待っていたのだろう。
仕方がないとは言え、悪いことをしてしまった。
寝間着から着替え、目に付く範囲に見られてはマズイ物が無いか確認する。
どうやら大丈夫のようだ。
下に向かい、上がってもらうように伝える。
階段を上ってくる音がする。
妹の騒々しいのとは違い、想像通り静かでゆったりとした足音だった。
部屋の前まで来て、コンコン、と控えめなノック。
どうぞ、と返事をした。
下校途中に、そのまま寄ってきたのだろう。
ドアが開き、制服に身を包んだそいつの姿が現れた。
「あら、意外と元気そうね? よかったわ」
────、
まるで予想だにしなかった登場人物に、しばし呆然とする。
まったく、何だってこう次から次へと予想外のことが起こるのだろうか。
俺は目の前に立つ少女の名を呟いた。
『 朝倉涼子 』
Now, she's here.
「……どうしてお前がここにいる」
「随分な言いようね。それ、一昨日も言われたわよ」
朝倉涼子は、さして気にした風もなく、いつもの微笑み顔で答えた。
「そりゃ言いたくもなるさ。何せお前は──あ、いや、何でも無い」
あからさまな誤魔化しをしたが、朝倉は相変わらず顔色を変えたりしない。
……今更ながら、本当にこいつは出来た人間だと思う。
「最後まで言わなくていいの? 遠慮しないでいいわよ?」
、 、
「いや、これはお前には関係ないことだ。気にしないでくれ」
、 、
『鍵』探しを放棄した今、いつまでも昔のことを引きずるわけにはいかない。
、 、 、 、 、 、 、 、 、 、
サンタクロースはいないし、未来人も超能力者も、宇宙人なんかもいやしない。
そんなことは小学生だって知っている。それが当たり前だ。
、 、 、 、
──それがこの世界の常識だ。
朝倉だってそうだ。確かに宇宙人みたいにハイスペックだが、歴とした地球人だ。
クラスの人気者で、勉強も委員長の仕事も完璧にこなす。
病気で休んだクラスメイトを気づかって見舞いに来てくれる優しい奴だ。
おまけに顔もスタイルも良く、男子垂涎のAAプラス。
間違っても、放課後の教室で、クラスメイトをナイフで襲いかかったりなどは──
「ふぅん、素っ気ないのね。やっぱり、殺そうとしたことを根に持ってるの?」
────、
──今、何て言った?
「殺そうとしたことを根に持ってるの? そう訊いたの」
朝倉は、いつも通り、変わらなさ過ぎる笑顔のままで繰り返した。
「謝罪すればいい? あたし人間のそういう感情、よく理解出来ないけど」
……こいつ……、ぜんぶ、知って────
沸点に達した水分子の気持ちってのは、こんな感じだろう。
「お前の仕業か!!」
体中の筋肉が不随意筋に変わり、脳の指令を待たずして朝倉に掴みかかった。
セーラー服のカラーを捻るように掴み上げ、至近距離から睨み付ける。
脳の中では断線したコードからバチバチと火花が弾け、思考が赤で染まった。
しかし朝倉の表情は変わることが無く、笑顔のまま冷静に見返してくる。
「それで終わり? 他にすることがないなら離して。時間がないから」
急激に力が抜けた。
まるでバッテリー切れを起こしたロボットみたいに、だらりと弛緩する。
元々、俺は熱容量も熱許容量も大きい人間じゃない。
瞬間的にヒートすれば、冷めるまでも早い。
「質問の答えは『いいえ』。あたしも巻き込まれた側よ」
朝倉の言葉は予想に反した物だったが、どうでも良かった。
「涼宮ハルヒの力が失われた世界を作るだなんて、まったくどうかしてるわ」
なかば投げやりに、絞り出すような声で問い掛けた。
「何しに来た」
「独断専行。本当はいけないんだけど、見てられなかったから」
内容に反して、にっこりと笑う。
いつだってこいつは本当に嬉しそうにしゃべる。
「それより」
──初めて、朝倉の顔から笑顔が消えた。
「あなたこそ、何をしてるの?」
>>467 あんさんは内容批評自体は難しいと思っているわけか。
>sageない等のお子様らしさ
>投稿方法のデタラメさ(誤字脱字はともかく)
>内容上の理由のない、明らかな版権との矛盾
まあそこら辺はまあ最低限投下のルールと言うかやってもらわんと見辛くて困るというかそもそも評価以前レベルのだしな。
だったら、せめてきちんとルールのっとって困る、くらいの言い方しときゃいいものを
何で
>>453みたくわざわざお高くとまったような言い方するのかね。それが問題という事。
──俺が、何を?
「メッセージは見たんでしょ? 期限は今日までよ。どうするつもりなの?」
再び笑顔に戻ったが、言葉には逃避を許さない厳しさがあった。
「元の世界に戻りたくないの? 『あの娘』はそれを望んでいるのよ」
「『あの娘』は自覚してないだろうけど、あなたに期待して待ってるのよ?」
「あなたは、こんなところで、何もやらないまま終わるつもり?」
「もう一度訊くけど──、あなた、何をしてるの?」
「──っっ、知るか! だいたい手掛かりも何も無しに、どうしろってんだ!」
完全に逆ギレだった。ガキの癇癪の方が、まだ可愛げがある。
思考の崩壊を周囲に示して、責任義務からの逃避を企てた。
しかし朝倉は許してくれない。
あくまで冷静な口調で、問いかけの形を借りた糾弾が続く。
「ねえ、『やらなくて後悔するよりも、やって後悔したほうがいい』って言うよね?」
それは、いつかどこかで聞いた問いかけだった。
あの時も俺は、答えから逃げようとしていた覚えがある。
だってそうだろ。
そんな重い選択肢なんて、『選ばない』が正解だ。
、 、 、
『やる』でも『やらない』でも、どちらか選べるのは強い人間だ。
俺は巻き込まれるだけのキャラでいたかった。
自分からは何も起こさず、状況に流されていたかった。
ハルヒや他の人間が引き起こす騒動に、文句を言いながら喜んでいた。
自分から行動を起こす勇気が無く、誰かが引っ張ってくれるのを待っていた。
「あたしはね、やらなくて後悔するのも、やって後悔するのも嫌い」
しかし、朝倉は恐れることなく第三の選択肢を提示する。
「『やることはやるし、後悔もしない』っていうのが一番だと思うの」
誰もが望み、誰もが言い躊躇う回答を、驚くほどにあっさりと口にする。
どこぞの迷惑な団長の言葉にも似た力強さがあった。 、 、 、 、 、
それは、やると言ったからには周りのことなどお構いなしにやり遂げる者の言葉。
「……お前、何をするつもりだ」
「だからさっき言ったでしょ?」
朝倉は、にっこりと八月のヒマワリのような笑顔で笑い、
「独断専行」
物騒な響きの言葉を口にした。
次の瞬間、足場が溶けた。
突然の溶解は、床に留まらず、壁や天井まで達し、部屋全体を包み込む。
住み慣れた部屋は、まるで水銀のように鈍く輝きを放ち、原型を留めていない。
「あなたを元の世界に戻してあげる。『あの娘』のためにね」
はっきり言って、何が起きているのか全然理解できない。
だが、はっきりと、何かとてつもないことが起きていることだけは分かった。
ごく普通の、何の取り柄もない高校生にすぎない俺だ。
だが、こと不思議現象に巻き込まれた回数に掛けては、そこいらの奴らに引けを取らない。
そんな俺から見ても、今回の現象はぶっ飛んで凶悪だ。
目に見えている変化なんて微々たるものだ。
薄膜を一枚隔てた向こう側では、とにかくヤバい何かが起きている。
まるで、目の前で、世界が無理矢理に作り替えられようとしているほどの圧迫感。
、 、 、 、
天地創造なんていう、天に棲まうお偉い様方の所行を彷彿させる、何かが起きていた。
「バックアップだからって、機能的に劣るわけじゃないのよ」
変異の中心で、朝倉は力を存分に振るっていた。
何をしているのかは分からないが、何かをしていることは目を瞑ったとしても分かる。
、 、 、
はっきり言って、これ程のものだとは思わなかった。
「むしろ涼宮ハルヒの力が失われ、長門さんがああなった今」
にやり、猫のように嗤い
「あたしが最強よ」
世界がゆっくりと回転を始める。
やがて回転は一箇所を中心に螺旋を描き収縮を始めた。
ちょうど朝倉の真上を中心に、世界が閉じようとしていた。
空間は粘性が高いらしく、ぐぐぐ、と固い雑巾を絞るかのような緩慢さだった。
見ていてもどかしくなるような動きは、ぎぎぎ、とやがてそれ以上進まなくなった。
抵抗する空間を、無理矢理に捩子曲げようとしているのだろう。
だが、いまや力は完全に均衡し、これ以上は進みそうもない。
それどころか、徐々にではあるが、歪みが元に戻ろうとする様子を見せ出した。
しかし、朝倉は慌てた様子など見せない。
「あーあ、やっぱりこれじゃ足りないか」
まるで、月曜は憂鬱だから休みにならないかな、なんていうくらいの口調で言う。
最初から、そんな都合のいいことは起きないと分かり切った上での言葉。
日本中のどこにでもいる、普通の高校生のような顔だった。
そして、仕方ないから諦めて学校に行こう、というくらいの気楽さで、
「 倉 子……存在 ──を、 して ─ 情報爆発 … を補 ── 」
不明瞭な言葉の後、パキ、と、ガラス細工が折れるような、取り返しの付かない音がした。
次の瞬間、朝倉の身体を光が包み込んだ。
いつかの放課後の教室のようなキラキラした輝きではない。
ひとつひとつの光の粒子が生命を持っているかのような、そんな煌めきだった。
まるで珊瑚の産卵だった。色彩々のイルミネーションが、渦を巻いて流れ出す。
光の奔流は収縮上昇し、停滞していた歪みの中心点を突き破った。
ぽっかりと空いた穴から、嘘みたいに清々しい青空が覘く。
──それで、最後の枷が外れた。
穴を補填するかのように、周囲の空間が回転しながら呑み込まれていく。
爆縮とでも表現したくなるような勢いで、あらゆる空間が再生の坩堝に投じられる。
今度こそ抵抗のしようがなく、世界は断末魔の悲鳴を上げながら、終点へと走り出した。
ふぅ、という溜め息が聞こえた。
言うまでもない、朝倉だ。
これだけの現象を引き起こしておきながら、「まあ、こんなもんかな」くらいの態度だった。
光は相変わらず朝倉の周りに渦巻いている。
よく見れば、一番輝きが強いのは足先や手先などの末端──
ちょっと待て。
、 、 、
それって、あの時と同じじゃないか!
正確には違った。
あの時の朝倉は、光の砂粒になって消えていった。
だが、今の朝倉は────
光の浸食が、膝のあたりまで来た。 、 、 、 、
膝から下は、まるで虚空に蝕まれたかのように、何も無い。
、 、
ただ見えないだけではなく、何故だか、もっと根本的な──致命的な消失。
『朝倉涼子』という存在が、徐々に失われつつあった。
光はなおも上昇していく──いや、浸食していく。
それに伴い、朝倉涼子が消えていく。
周囲の空間は、もう放っておいても、勝手に呑み込まれて消えてしまうだろう。
核反応のように、一度スイッチが入ってしまえば、あとは終焉に向かって突き進むだけだ。
それでもなお、世界は轟々と唸りを上げながら、最期の悪足掻きを続けている。
朝倉がこっちを見て、何かを言っている。
すでに胸より下は虚空に蝕まれていて、辛うじて残っている顔も、光のせいでよく見えない。
そんな状況にもかかわらず、朝倉の輪郭は、笑っているように見えた。
「 …さんと…付 ─ なら、まじ… 考え ──ダメ 。でな とわ ……許さ ── わ 」
……何……言って──??
圧力を伴う光に押し流されて、もはや朝倉が何を言っているのか聞こえない。
渦巻く空間が嵐のように唸りを上げて、朝倉の言葉を掻き消していく。
「 … …… ── … 、 ……。」
向こうだって、聞こえてないのは分かっているはずだ。
それなのに──自分が消えようとしているのに、笑顔のままで、何かを伝えようとしている。
浸食はとっくに首を越えている。
もはや朝倉のカタチなど残っていない。
なのに、その残骸は、どうしようもなく笑顔のままで──
その姿から、あろうことか、線香花火を連想してしまった。
パチパチと火花を散らし、ぽとり、と消える寸前────、
世界から雑音が消え、最期の言葉だけは、はっきりと耳まで届いた。
「 …さんとお幸せに。じゃあね」
ぱっ、と光が爆ぜた。
『 の不在 』
HER Existence / I'm HERE.
ぱっ、と目が覚めた。
「おや。お目覚めですか?」
寝起きの一発目に見たのは、よりにもよって古泉の顔のアップだった。
思わず両手を使って、はじき飛ばすようにその顔を押しのける。
古泉はひどいですね、などと言っているが無視を決め込んだ。お前が悪い。
状況は掴めないが、思考は驚くほどクリアだった。
さっきまで眠っていたなど信じられない。
まるで覚醒状態から、ここまで瞬間移動をさせられた気分だった。
周囲の様子から、状況を推測する。
どうやらここは病室で、今まで俺はそこで寝ていたらしい。
それもちょっと貧血で、などというレベルではなく、入院が必要な程度のものだ。
そこに至るまでの過程の記憶は、すっぱりと抜け落ちているけどな。
顔を巡らせれば、古泉の他にも見慣れた顔ぶれが並ぶ。
朝比奈さんは両手を口元にあて、何やら感極まっているようだ。
長門は相変わらず何を考えているのか分からない無表情だ。
だが、病室に居てくれたというだけで十分に嬉しい。
ハルヒは……まあ、あえて言うまでもないだろう。
そして──── 、 ……あれ?
「おい、 …はどこだ?」
病室に、不思議な沈黙が流れる。
沈黙はやがて困惑に。
そして更に別の何かへと変わりつつあった。
とっさにマズいと警戒する。もちろん、後の祭りなのは言うまでもない。
「ちょっとキョン! 開口一番に他の女の名前を言うなんて良い度胸ね!」
病院だという考慮は一切無しの怒声が響き渡った。
当然、病み上がりの俺に対する配慮も一切無く、首元を締め上げ揺さぶられる。
朝比奈さんが慌てて助けに入ろうとしてくれたが、いかんせん役者不足だ。
ハルヒという名の猛獣を宥めるのに必要なのは天使の慈悲ではない。
「白状しなさい! その女は、どこの誰よ!」
誰って、そりゃあ……
────誰だ?
「…………あれ?」
記憶の網目に引っ掛かっていた小さな欠片が、ポロリと落ちてしまった。
もう、どうやっても思い出せそうにない。
よほど間抜けな顔をしていたのだろう。
怒っていたはずのハルヒが、心配そうな顔に変化していた。
「キョン、あんた本当に大丈夫?」
「ああ、どうも寝惚けてたみたいだ。あと、みんなに心配掛けたみたいだな。すまん」
ハルヒは一瞬きょとんとした顔をすると、
「べ、別に、あたしは団長として……」
などと、ぶつぶつと何かを言っていた。
その後、医者が呼ばれて、色々と検診や問診があった。
ついでに病院に運ばれた経緯も教えてもらったが……やはり記憶には無かった。
医者と入れ替わりに、母親や妹なんかが来て、これまた色々と話をした。
とりあえず、みんな俺の平気そうな顔を見て安心したようだった。
ようやく一人になれたのは、目が覚めてから三時間も経ってからだ。
一人部屋を設えてもらっていたため、本当に一人っきりだった。
しかし、俺には妙な確信があった。
確信はすぐに、コンコン、と小さなノックによって裏付けられた。
返事をすると、ドアが開き、制服に身を包んだそいつの姿が現れた。
「何となく、来る気がしてた」
「そう」
現れたのは、もちろん長門だった。
ベッドの脇まで来ると、わざわざ壁に掛けられたパイプ椅子を開いて座った。
それっきり、何もしゃべり出す様子はない。
じっと何かを待っているようにも見えた。
かと言って、こちらから提供する物に思い当たる節はない。
仕方がないので、時間稼ぎに気になっていたことを訊ねた。
「なあ長門。俺が目覚めたときに言ってた名前に聞き覚えはないか?」
「………………」
長門は数瞬の間、思案するような顔をすると、
、 、 、 、
「あなたが言う …は、過去、現在、未来すべてにおいて存在し得ない」
────?
気になる言い回しだったが、まあ長門が居ないと言うのなら、居ないんだろう。
再び沈黙が支配する。
相変わらず長門はしゃべる様子は見せない。
まるで、今回は聞き役に徹すると言わんばかりの態度だった。
さて、どうしたものだろう。
「……長い夢を見ていた気がする」
「どんな?」
珍しく、長門が話題に食いついてきた。
少なくとも、話題の選択は不正解ってわけじゃなかったようだ。
いや、詳しくは覚えてないが、普通に学校に行ったりする夢だ。
学校と言っても、普段とは違ってたな。どこが違っていたかは覚えてないが。
部室には長門が居て、教室には……あー、誰か居た気がするんだけどな。
ああ、長門の家にも行ったな。おでんを食べた。教室にいた誰かも一緒だった。
……喋っていて、何だかどうでもいい夢の気がしてきた。
こんな話を聞かされたところで、長門だって困るだろう。
しかし、予想に反して長門は、熱心に聞き入っていた。
特に、顔も名前も覚えていない『もう一人の誰か』に興味があるようだ。
そうと分かれば、話題の中心をそいつに移す。
そいつは長門のことを色々と気に掛けていたこと。
そいつは長門のことを大切に思っていたこと。
そいつは、長門と友達のように接していたこと……
「もし長門にお姉さんがいたら、あんな感じだろうな」
言ってから、マズったと自分の迂闊さを呪った。
家族の話題というのは、いつだって慎重に扱うべきだ。
居ることを当たり前と思ってはいけない。
世の中には、そうでない人間も意外なほど多くいる。
やや特殊な例だが、目の前のこの少女だって、その大勢の一人だ。
「……姉さん」
長門は呟くと、その言葉をじっくりと味わうかのように黙り込んだ。
無表情の長門からは、何を考えているのかまったく読み取れない。
「すまん長門。気に障ったか」
沈黙に耐えきれず、恐る恐る尋ねる。
幸いなことに、俺の目の錯覚でなければ、長門の首は左右に揺れた。
ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間──
長門は俺をじっと見つめ、それから……。
、 、 、 、
薄く、だが、はっきりと──嬉しそうに微笑んだ。
目眩がした。
『 朝倉涼子の不在 』
"She's nowhere," the girl said, "but she's still here".
She smiled and touched the chest of herself.
"Who is the 'she' ?" I asked.
"My sis," she replied, "...and my best friend".
-end-
GJ
うまいな。
消失〜if〜物は多いがこういうパターンは初めて見た
良かったよ
香ばしい中二病のかほりがしたけどGJ。
80%の確立でBLEACHファン
何かここ最近SSのオチのつき方がよくわかんないな…
誰かこの作品の解釈をしてくれない?
面白かった。
キョン一人称文体らしい投げっぱなしが、らしくていい。
やっぱりキョンは朝倉の前ではみくる並の被害者にならなきゃw
最後の英文はなんなの…?
英文そのままの意味でしょ
失礼します、作者です。
良いと言ってくれた皆さん、ありがとう。
>507,509
すまん、ぶっちゃけ深いコトは何も考えてない。
初めに少し触れたとおり、中二病要素を詰め込んだだけなんで。
某同人誌(少年フ○イト)を読んだせいで、
少年誌的なムダに熱い展開を入れたくなった。
長文使ってオナって悪かった。
>506
ファンじゃないが、ああいうノリを目指した。それが伝わったなら嬉しい。
>>501 こんなに魅力的な朝倉描写ははじめてなんじゃなかろうか
今までスルー対象だった朝倉が好きになってしまいそうです
こういうのを読むと自分も頑張らないと、って思うなぁ
>>512 > こんなに魅力的な朝倉描写ははじめてなんじゃなかろうか
って書いてしまうあたりに、保管庫を読んでないなと思わせる何かを感じてしまうんだが、
でもまあ、がんばれ。
よしんば保管庫には目を通していたとしても、
他板や外部サイトなんかは8割方ノータッチだろ。
保管庫や他板や外部サイトの前に
ログをしっかり読みましょう
人の好みはそれぞれだ。皆の一番が同じじゃあるまい。
>>501 乙です。
中二病とか言われると回れ右したくなるんだが、読んでみたらとてもよかったよ
少女漫画と通じる感じというか。
キョンの若さがよく見えて、そういえばこいつ若いんだよな、と思ったよ。
なんか時々忘れるんだよね。
俺達は今、真夜中に冷たい僅かに濡れている草原を背にして仰向けに寝転がっている。こんな夜中、まして冬の寒い寒い夜に、何故こんな事をしているかというと、これはこういうものだからである。
そう、俺達は今、天体観測をしている……と言ってもただ見てるだけだがな。
空を眺め続け、もう見飽きてき、早く終わらないのかと考えていた時、ふと俺の方に近づいてくる、人の気配に気がついた。
その人は、今まで遠くの方を見ていた為か誰なのか見分けることが出来ないが、俺には分かる、こいつは長門だ。
その人ー長門はどんどん俺に近づき、俺の隣で寝転がった。そこで俺は兼ねてから疑問に思っていたことを口にした。
「そういえば、長門、一体全体、暗黒物質ってのはほんとは何なんだ?」
「……人類はまだ正体を知らない、だから言えない……」
はは、やっぱりね
「……でも、あなたには言っておく……」
ってことは教えてくれるんだな。暗黒物質の正体が初めに分かった人に、俺はなるのか。あぁ、理科の教科書に名を残したいねぇ。
「……暗黒物質は私のお父さん」
えっ、何だって
「私のお父さん。正確に言うと私の産みの親、情報統合思念体」
こんな事を言うなんて、やっぱり長門は変わってきているんだな……って、暗黒物質は情報何とか思念体!?
「……そう」
なるほど……っておい、長門、情報何たら体ってのは実体が無いんだよな?
「……そう。だから見えない、発見されていない。そして、発見されることもない」
しかし長門よ、どうして実体が無いのに、力だけはあるんだ?
「……うかつ」
て言うことは、やっぱり……
「そう、私の冗談」
最近はよく長門の冗談をよく聞くようになった。喜ばしい事ではあるのだが、長門よもう少し分かりやすい冗談を言ってくれ。
「……検討する」
どっかで読んだ思念体SSが頭に浮かんだ。
主流派と穏健派と急進派の掛け合いみたいなやつ
うわっメッチャ駄文。山に行こ
主要キャラの性別が反転してるSSってあったけ?
>>513 いや、俺もこの朝倉は良いと思ったよ。
原作での「悪」のイメージを壊してないのに、何か女の子的な魅力を感じた。
>>520 GJだけど、
謙遜と誘い受けは違うよ。
一回SS書きの控え室に行くことをお薦めする。
駄文だったら投下する前に推敲するなりで少しは改善できたんじゃない?
やはり朝倉には、人(有機生命体)を小馬鹿にしたような、イノセントな
余裕がないといけないな。
>>521 キョンハル反転ならいくつか保管庫にあると思う。イレカワリLOVERとか。
SOS団全員が反転ってのは、少なくとも保管庫では見たことない気がするな。
個人サイトにはあったりするが。
>>521 SOS団のみならず、家族、クラスメイト、街行く人々、
すべての性別が入れ替わってるSSを読んだ覚えがあるが
どこで読んだかは覚えてないや。
想像してみた
女キョンが親父と妹にからかわれ
無口読書少年に世話を焼き
元気いっぱいクラスメイトと部活
転校生は百r・・・
上級生の着替えをを見てしまったら巨k・・・
後半一気に電波っぽくなった
妹は妹のままなのか
コギャル化した谷口、国木田らと馬鹿話で盛り上がり
美少女化した古泉に顔を覗き込まれドキドキし
男化したハルヒに振り回される日常
それなんてホストb(ry
ここも○ネタが来ると荒れるんだね
531 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 00:47:57 ID:88YJindr
管理人が共有財産のはずのまとめごとバックレるようなスレにはもう投下する気はないよな
その点、VIPとここは過去の実績がイコール信頼感につながってる。
どちらの管理人さんもご苦労様です。(_o_)
>>531 sageろ
「管理人さんもご苦労様です」を伝えるのに人を貶す必要あるのか?
お前の書いたSSなんざ読みたくない
どうせハルヒスレに沸いてた荒らしなんだろうけどな
嵐のないスレなんて張り合いがないわ!
おじちゃん悲しいよ
>>532 嵐というよりストーカーらしいぞそれ。前にもID変え忘れて失笑されてたw
スレチなんだが前から聞きたかったんだけど
ここの保管庫の管理人さんって、エロパロ板のあらゆるSS
一人でまとめてるの? すっげーなあ…。本当にご苦労様です。
>>535 荒らしならスルーすればいいけど、ストーカーがまとわりつき続けていたので
閉鎖せざるをえなかったんだと思ってるけど。スルーして耐え続けろってのは
可哀想な状況だった。本人一度も文句や反論すらせず謝るばかりだったしね。
スレの流れからして
>>530のレスが不自然過ぎる
まぁ、いつもの何故か常に荒らしとセットで現れる○儲さんなんだろうけど
>>537 どっちでもいいよ。とにかくお前ら全員ハルヒスレに帰ってくれ
>>536 同情の余地なしの一方的なストーカーっぽいね。何のために生きてるんだろう?
よーし初めて言ってみるぞー
なんでこのスレは私が帰ってくると必ず荒れてんだ。
>>540 おまいはこんな時間まで何処に行ってたのかと?
てか人のこと言えねえwww
>>521 保管庫の15-146様「涼宮ハルヒの転換」だと思われる
いつも荒れているからだな。
ゲーム系、一部アニメ系、女性系、エロのアニメとゲーム系、ニュースは
いつでもどこでもこんな感じだ。
ふたばみたいな臭い連中の巣窟と比べれば、エロパロだろうがVIPだろうが
キャラスレだろうが、実に居心地がいい。
他板の管理人の話はどうでもいいよ。ましてや撤退した人の話はね。
ところでハルヒスレの新まとめが出来たってホント?
好きな短編とか久々に読みたいんだが。
スレチスマソ
>>545 まだ移転途中で最近のはまとめに上がったが古いのはまだみたいだな。
ただ問題は、ハルヒスレにはハルキョンSSはいらない、ハルヒは俺の嫁というちょっとおかしいヤツが
まとめサイトいらねと工作活動をしているみたいなので今後、まとめ自体が無くなるかもしれん
他のスレの話題こそどうでもいいだろ。
ハルヒスレなんて見てないし、興味ない奴も多い。
そんな奴からしたらこの会話も荒らしを呼び込み、さらに雰囲気を
ギスギスさせる可能性の高い全く理のないものになっている。
言いたいことがあるなら直接ハルヒスレに行け。
こんな所で陰口モードに入ってないでな。
以下、ショウヘイヘーイを挟みいつもの流れに
いつも、ってなんだったっけ……
投下があるまでスレスト
時々思い出したようにおすすめSS談義
基本的には投下されるまで放置。
あとVIPとの比較、好きなカップリングについて、厨房と大人の違い、罵りあい、「sageろ」、好きなSSの話、
「こんなの無い?」、「エロ少ないな」とか「エロ必要か?」などの四方山話、日本語がなってない話、空気嫁、カエレ!
○○の続きキボン、「最近はまった。おもすれー」、「学校ようやく読んだ」、他スレを羨んだり生暖かく見たりなど。
なんだ、あんま変わらないじゃん。
ハ「アナル大拡張! いくわよ、キョン」
キ「あふぅっ! んあっ、ひぃぃん」
ハ「すごいわ、もう手首まで入っちゃった……直腸が丸見えね」
そういうのをもっと洗練したネタがアナルスレVIPの管轄だ
流れぶったぎるけど、
古泉が鶴屋さんに膝枕してもらう話ってタイトル何だったっけ。
6-363氏の鶴屋さんの陰謀じゃないか
それだ!これ読んで、この二人もいいなって思い始めたんだが、
あろうことかタイトル失念しちまってて。とにかく、ありがとう!
>>547 トン!
てかまとめいらないとかあり得ないだろ。何考えてんだか。
俺もあの古鶴は好きだ。
ていうか古泉と鶴屋さんは似合うよな。
古泉が冗長な説明をしながら、隣りで鶴屋さんがオーバーリアクションで踊ってる、みたいな図とか。
あのグロSSか…
対岸の喧嘩を持ってきて何がしたいんだ?
終わってる話題を唐突に蒸し返して何がしたいんだ?
―ここで時空改変―
ハルヒって誰だっけ?
中華人民共和国の東北にある都市の名前じゃね?
中華人民共和国?
そんな国はないぞ。
キョンの名前って何だっけ?
はて、上は確か涼宮だったと思うが、下はなんだったかな…
>>568 ちょwwwwおまwwwww
10年後の未来からカキコしてるwwwwwww
>>568 あれ?キョンの名字ってたしか「古泉」じゃなかったか?
で、ハルヒって誰だっけ?
ホスト部所属
そう言えばなんかあと2年で太陽が寿命らしいな
そういうノリはあるのかお前らwww
投下します!
今回はちょっと短め!
578 :
国木田の接吻:2007/01/19(金) 21:15:44 ID://SWAjVM
俺は今、かわいい女の子と二人きりで買い物に来ている。
かわいい女の子と二人きりで買い物なんて、そりゃデート以外の何物でもないという奴もいるだろう。
俺の悪友の一人なら間違いなくそう言う。ついでにウザい俺理論も披露してくれるだろう。
しかし、俺自身はこの状況を「デート」と呼ぶのにはいささか抵抗がある。
別に買い物につきあわされたのが嫌なわけじゃない。相手が嫌いな訳でもない。
ただ・・・どうもまだ慣れないのだ。
こういう状況と、隣で無邪気に俺の腕を抱きしめている・・・コイツが実は女だったってことにな。
「どうしたのキョン?ボーっとしちゃって。」
俺の腕を抱きしめた国木田が、上目遣いで俺を見上げてくる。ぐっ、かわいいなコイツめ。
「いや、ちょっと考えことをしていてな。
・・・まさか、お前とこんな風に買い物に出かける日が来るとは夢にも思わなかったってな。」
「そう?あはは、そりゃそうか。
だけど、ボクは中学の時からこんな風になることをずっと夢見ていたんだ。
実際に何度も夢に見たよ。起きる度に、「あぁ夢か」って悲しい気持ちになったけどね・・・。」
「国木田・・・。」
「でも!今はもう大丈夫!だって、キョンがボクを嫌わずにいてくれて、
女の子であることも受け入れてくれたんだし!
しかもデートにまで付き合ってくれるなんて!ボク本当に嬉しいよ!」
そういって眩しい笑顔を浮かべ、俺の腕をさらに強く抱きしめる国木田。
その笑顔と、腕にあたるささやかだがその存在をしっかりと主張するふくらみを感じ、俺は落ち着かなくなる。
「どうしたのキョン?そわそわしちゃって。」
あー、そのなんだ国木田。大変言いにくいことなんだが・・・。
というか、お前も男として生きてきたなら多少は察してほしいんだが、その・・・。
「あ、ひょっとして胸のこと?大丈夫、コレ当たってるんじゃなくて当ててるんだから。
こうでもしないと涼宮さんたちとのスキンシップには勝てそうにないしね。」
確信犯ですか。何が大丈夫なのかはよくわからんが。
しかし、最初に女の子の服を着た国木田を見たときはささやかだと表現した胸だが、
こうして感触を感じると、結構あることがわかる。
ハルヒや朝比奈さんには敵わないだろうが、長門には勝ってると思うぞ。
・・・というか!
「国木田!俺とでかけられたりして嬉しいのは分かるが少し離れろ!」
お前とくっついていると、頭や股間がヤバいことになりそうなんだ。
「あ!嬉しいな。キョンがそんなに照れるってことは、ボクのことをちゃんと女の子だと認めてくれてるってことだもんね!」
国木田はえへ、と笑って俺の腕をがっちりと抱く。離そうとする気配は微塵も無い。やれやれ。
しかし、とふと思う。クラスでの国木田は普通だが、俺と二人きりの時は、かなり甘えてくるようになったなぁと。
俺はこいつのことを飄々とした奴だと思っていたが、それは俺に対する想いを外に出さないようにするための、
こいつなりの努力だったのではないだろうか。
そう思うと、その枷を解き放たれて、自分の想いを一生懸命ぶつけるコイツのことが、
愛しく・・・じゃなくて、その、いじらしく思えた。
別にこいつと付き合おうってんじゃないんだから、恋愛感情なんて俺にはない。ないったらないんだ。
この間まで「男」友達だったんだし。
「キョン?」
国木田が不安そうな目を俺に向けてくる。
「ちょっと・・・はしゃぎすぎ・・・だったかな?」
確かにそんな感じは少しするが、そんな潤んだ目で問いかけられたら男の95%はNOと答えるぞ。
俺は国木田の頭をくしゃっとなでてやった。
「わっ!キョン・・・!」
「ほら国木田。せっかくの買い物なんだから、楽しくいこうぜ。」
「!うん!ありがとうキョン!」
そうして俺たちは買い物へと出かけた。
国木田と色んな店をまわる。
男友達としての時にも買い物はしたが、その時に比べ、はるかに時間を費やしている。
女は買い物が長いというが、やはりコイツも女の子なんだね。
服やら何やら意見を求められる。どれも国木田には似合っていて、そう言ってやるが国木田は不満顔だ。
「もうキョン!似合っているって言ってくれるのもうれしいけど、かわいいとかきれいとかも言ってよ!」
お断りだ。大体そんな台詞は俺のキャラじゃないことは知っているだろう。
しかもお前が意見を求めている、その手に持っているモノはなんだ。ブラとパンツじゃないか。
女性下着売り場にいるだけでも拷問なのに、このうえさらに羞恥プレイをさせる気か。
「だって、やっぱり好きな人が選んでくれた下着をつけていたいし・・・。」
そう言ってはにかむ国木田。
確かに色々意見も言うし選んでやることもやぶさかではないと言ったが、下着はちょっと・・・。
「あはは!ごめんごめんキョン。ちょっとからかい過ぎたね。
キョンの好みはちゃんと知ってるから、それっぽいのを選んでおくよ。」
何で俺好みの下着を選ぶんだ。大体さらしをまいてるのにいつ使う・・・と、そこまで考えて思考を止めた。
これ以上は考えたくない。考えてはいけない気がする。
その後、アクセサリーショップに入った。さっきは選んでやらなかったが(やれなかった)が、
何か一つくらいは俺が選んだものをプレゼントしたいと思ったからだ。
そう思って店内を物色すると、よさそうなものを見つけた。
それはチョーカーだった。派手すぎず、しかしかわいいデザインが国木田に合うと思った。
早速呼びよせて試着してもらう。予想どおり、よく似合っていた。
「え?キョン・・・これ買ってくれるの?」
ああ、そんなに高くないし、何よりお前によく似合っているからな。
「嬉しい・・・ありがと・・・。えへへ、チョーカーかぁ・・・。
つまり、ボクはキョンのモノっていう証だね。首輪みたいなものだね!」
確かに首輪みたいなものだがそんな意図は無い。これっぽっちも無い。
そんなこんなで買い物を終え、家路に着く。
国木田は、さっそく買ってやったチョーカーを着けている。本当に嬉しそうだ。
途中で公園によりたいと国木田が言うので立ち寄った。
国木田とならんで公園のベンチに腰かける。ふう、しかし、ちょっと疲れたかな。
「あはは、キョン、年寄りくさいねー。」
うるさい、誰のおかげでこんなに疲れたと思っているんだ。
まぁ楽しかったから良いけどな。
「ふふ・・・。でもキョン・・・。今日、実は結構色々気にしてたでしょ?
特に・・・SOS団の人たち・・・涼宮さんに見られたらどうしよう、とか。」
む、と俺は言葉に詰まる。実は今日、その思いは常に頭の中にあった。
そりゃそうだろう。
国木田が実は女だったとハルヒに知れたらどんなオモチャにされるか分かったもんじゃない。
色々ごまかそうとしても、あいつ相手じゃごまかしきれる自信もあまり無いしな。
それ以外にハルヒに見つかって困る理由は無い。断じて無い。
そう言ってやろうとしたのだが、何故か上手く言葉が出てこなかった。
「いいよキョン。確かに女の子としての付き合いは涼宮さんたちの方が長いしね。
だけど、女の子とのデート中に他の娘のことを考えるのは・・・どうなのかなぁ?」
これはデートだったのかとかハルヒを気にしたのはお前のためだとかいう反論をしようとしたが、
俺の口から漏れたのはいつもの口癖・・・「やれやれ」だった。
「すまん、俺が悪かった。埋め合わせはするよ。」
「ホントに?・・・じゃあキョン、目をつぶってよ。」
目をつぶれ・・・とは。まさか、張り手の一つも張られるのだろうか。
まぁ国木田の腕力を考えればそれほどの威力は無いだろうし、それで国木田の気が済むなら安いものだ。
俺はそう考え、ベンチに座ったまま目を閉じる。さぁ、いつでもいいぞ国木田。
「そう?じゃあ・・・いくね。」
次の瞬間、俺の唇に柔らかいモノが押し当てられた。予想していた事態と違う展開に、俺は困惑する。
しかし、この感触は何だ?初めて味わう感触・・・。いや違う、前に一度・・・。
そこまで考えた俺は驚愕に目を開く。そこには目を閉じて、俺にキスをする国木田の姿があった。
俺が目を開いた気配を感じたのか、国木田も目をあけ、ゆっくりと俺から唇を離す。
離れていく感触を、名残惜しく感じたのは内緒だ。
「ふふ・・・。ボクのファーストキス・・・キョンにあげちゃった・・・。」
実は俺はファーストキス・・・閉鎖空間でのアレをいれるなら、だが・・・じゃないのもナイショだ。
「しかしキョン・・・。やっぱりにぶいねぇ・・・。普通この流れできたら、
キスされそうなものだと分かりそうなものだけどねぇ・・・。
どうせ横っ面を張られるとでも思ってたんでしょ?」
俺は考えていたことを当てられ憮然とする。くそ、何かくやしいな。
そんな俺を優しい目で見つめて、国木田はくすりと笑う。
「でも、そんなキョンだから・・・ボクは大好きなんだけどね。
・・・無自覚にフラグをたてまくるところは困りものだけど・・・。」
ん?国木田、何かいったか?
「ううん、なんでもない!」
そう言って国木田はぴょん、と俺から離れる。
「キョン!今日は本当にありがとう!とっても楽しかった!また行こうね!それじゃまた・・・学校で!」
言うが早いか国木田は家へと帰っていった。
まったく、人のことをさんざんもてあそびやがって・・・。
そして俺は、自分の唇に指をあてる。
あいつの唇・・・すごく、柔らかかったな・・・。
そんなことを考える自分が急に恥ずかしくなって。
色々とごちゃごちゃとしたきた気持ちやこれからのことをとりあえず頭から一時振り払うため、
俺は肩をすくめ、一言呟いた。
やれやれ。
以上です。もう完全に別キャラですな。
で、こういう流れできたので次は本番を書こうと思います。
ハードルが一気にあがりますが、何とか書き上げたいと思います。
ではー。
国木田とならアッーしてもいい!
ほ…、本番…!?
正直、この国木田は大好きだがそこまでいっちゃうのか?
もうちっとハルヒ達とドタバタしてからでもいいんでね?
ボクっ娘って2次元の中の生物だよな。
たゆねと蒼星石と緑先輩くらいしか知らんが。
ちなみに俺の一人称、外では僕w
今年のセンター試験にも出たりして、ボクっ娘。
>>584 ボクっ娘は結構いる
まぁ狙ってるのだろうがな
SS読んだ後にアニメ見直したら国木田が女にしか見えなくなってた
もしハルヒ板とか言うのが作られてたら性別反転スレもあっただろうな。
まあ住人が分散しなかったからこそここもこれだけ続いてるんだから
悪い事ばかりでもないか。
ボクっ娘よりもはるかにオレっ娘(娘?)のほうが多い現実。
絶望(ry
俺っ子がたまに「私」と言うと凄くキュンとくるんですが。
異常でしょうか?
名物「あいつに胸キュン」やな
《いつか、どこかの時間線上で。できればごめんなさい》
こんな感じやな。
何か思ってたよりここの人は国木田ネタを受け入れてくれてんだな。
こりゃもう一本書くしかないな。
597 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/20(土) 11:55:19 ID:WGIJjK/K
薔薇
598 :
>>597:2007/01/20(土) 11:58:01 ID:WGIJjK/K
うわぁ、ごめん!なに意味不明なこと言ってんだろう、俺は!
ワロスww
「いてっ」
なんでこんなところに薔薇があるんだか。
「血が出てる」
「大丈夫だ。ツバ付けときゃ治るさ」
「貸して」
そう言うと長門は俺の手を取って指を口に咥えた。猫などを飼っていると解ると思うが、指先は神経が集中していて舐められると結構気持ちいい。以下略
ろつぴやく
601 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/20(土) 13:26:05 ID:5Hf/RZBr
キョンの記憶喪失の話が読みたいなぁー
キョン記憶喪失はいつか本編で読める
久々にSSを投下します。
非エロで14レス程度
僕はいったいどうしてしまったんだ?
忘れたいはずなのに、あの時のあの感触が今も手に残っている。
これまで、こんなことなどなかったというのに……。
でも……、今まで必死にこの気持ちを否定してきたけれど、もう抑え切れそうにない。
僕は彼女のことを……。
しかし、この初恋には大きな障害がある。策が必要だ。
しばらく黙考した後、僕はあるものを携えて、重く立て付けが悪くなった部室のドアを開け
て、SOS団の部室へと足を向けた。
「ねえ、キョン。あんたの理想のタイプってどんなの?やっぱりみくるちゃんなの?それと
もミヨキチって子みたいなのが好みなのかしら?」
春休みを間近に控えたある日の放課後、SOS団部室で二人きりになるという偶然のなか、
束の間の時間にハルヒはそんな突拍子もないことをのたまった。
一瞬背筋に冷たいものが走り、驚きを隠せないまま、俺は油の切れた扇風機のごとくギギギ
とハルヒの方に視線を向けると、彼女は俺の顔を直視はせず、腕を組みあぐらをかきつつ窓
の外へ視線を向けたままだった。
ハルヒがこんなことを言うなどとは、かの高名な予言者エドガー・ケイシーでも彼女の奇矯
な言動や行動の予測は不可能だろう。無論、一般人の俺に予想できようはずもない。
これは天変地異の前触れか?それとも何か悪いものでも食ったのか?
いずれにしても、ハルヒの意外すぎる質問に、俺にできることといえば驚愕と困惑、それと
なぜかはわからないが、浮気を責められるしがない亭主のような感情が入り交じった表情を
浮かべることだけだった。
「はあ?何言ってんだ、お前……。あれだな、さては昨日の夜に『檸檬』や『葡萄』なんか
の漢字の書き取りでもやってて熱でも出したのか?」
返答に窮した俺としては、考えをまとめる時間稼ぎにこんな答えを返すしかないわけだ。
すると気に入らない返答だったらしく、ハルヒは俺の方に顔を向けてギロッと睨め付けると、
「はあ?あたしがそんなことをするわけないでしょ!いいから教えなさい!」
……逆効果だった。
ハルヒはまさに猪突猛進の字を体現するかのごとく、俺の席の前まで神速で移動し、顔には
泣く子も黙るほどの威圧感のある笑みを浮かべながら、俺の胸ぐらをつかんで顔を近づけて
きた。
「ほら、キョン。隠すと身のためにならないわよ!」
「なんでそこまでされて、お前に教えなきゃならんのだ」
俺にはハルヒのこの詰問の意図するところがまるでわからないが、妙に寒気がするのは気
のせいか?
「何をためらっているの?ただ、あたしに好みのタイプを教えてくれればいいだけじゃない」
「……それを聞いて、お前はどうしようと言うんだ?」
ハルヒは少し答えに詰まりかけたが、すぐに答えを見つけたのか、こう切り返してきた。
「別にどうもしないわ。ただ、あんたがデートした相手って、どっちも少し似た感じの
女の子じゃない?だから、あんたみたいなさえない男は、そういうのが好きなのかなと
思っただけ。別に深い意味はないわ」
……深い意味がないと言うなら、お前のその形相と、全力で疾走するディープインパクトさ
え跳ね飛ばしてしまいそうなその勢いは何なんだ?
しかし、こんな問答をしているうちにもさらに迫り来るハルヒ。これは精神的にもそうだが、
ハルヒを阻止しようと精一杯の抵抗を見せる俺の腕のあたりに2つのプレッシャーを感じる
のは落ち着かない。
なにやら、不覚にも妙な気分にもなっちまいそうだ。
・・・・・・こんなところを他の部員にでも見られでもすれば、いらぬ誤解を与えてしまうことに
なるに違いないだろうぜ。
「ガチャッ」
「遅れちゃってごめんなさぁい」
……最早説明するまでもないだろう。俺の脳髄をしびれさせるえもいわれぬその声、だが……。
お約束ですね、朝比奈さん。
まるで、タイミングを見計らって入ってきたとしか思えない、未来からやってきたポンコツ
天然少女(失礼)我が天使の朝比奈さん。
彼女は謝罪の言葉を口にしつつ、俺とハルヒが繰り広げる攻防戦を目撃し、その光景に唖然
とした。そして彼女は熟れたリンゴのように頬を真っ赤に染め上げた。
「お…お取り込み中でありますか。ご…ごめんなさぁい!」
微妙に口調が変だが……。
こんなこと前にもあったな、と俺があきらめと悟りの境地で、もごもごしながらあたふたして
いる挙動不審の朝比奈さんを見つめていると、第二の目撃者がやってきてしまった。
解説好きのスマイル野郎、古泉だ。
古泉は、端から見れば修羅場か、あるいは遺憾ながらじゃれあっているようにしか見えない
この状況を認めると、微笑ましそうな表情を浮かべ、朝比奈さんを促して部屋の外へとU
ターンしようとした。
すると時を同じくして、珍しくも遅れてきた長門が部室にやって来た。
長門は遅れてきた割にはいつものごとく一言も発さず、喧噪甚だしいこの部室のその状況に
反比例するかのような静寂を伴って入ってきた。
そして彼女は俺とハルヒを一瞥したが、この騒動には興味がないらしく、テーブルの上に鞄
を置いてパイプイスに腰をかけ、ダンベル代わりになりそうな一冊の極厚本を取り出しそれ
を広げた。
その長門の落ち着いた行動の効果と言っていいのか、ハルヒにとって幾分の鎮静剤となったよ
うで、まるで業務用冷蔵庫に放り込まれた温度計のように、興奮のバロメータをみるみるう
ちに引き下げ、繊維がバラバラになってもう修復不可能かと思えるような俺のシャツから
ようやく手を離した。
そしてハルヒは俺から顔をそらすと、何事もなかったかのように自分の席まで戻り、イスに
静かに腰を下ろした。
それにしても、俺に迫っているを皆に目撃されて、恥ずかしがったり照れたりすりゃ、ち
ょっとはかわい気があるんだが、ハルヒの奴、平然としていやがる。
まあ、ハルヒのそんな姿なんぞ想像できないし、した日には体中に湿疹が出そうだ……。
そのハルヒはといえば、パソコンの画面を見つめながら、制服姿のままの朝比奈さんにお
茶を要求し、それを受け取ると高級茶葉の価値をみじんも感じさせないほどにすぐさま飲
み干した。
そしてハルヒは、さっきまで俺に迫っていたことは、まるで忘却の彼方に追いやったかの
ように、朝比奈さんに対するセクハラ行為を行っている。
廊下で足音がこいらに向かってきたようで、部室のドアの前で立ち止まった。
「たのもう!」
ここはいつから道場になったんだ?
だが、ハルヒは部室の外から聞こえる声を完全に無視して、朝比奈さんの口から悩ましげな
声が漏れるほどに、彼女の胸を揉みしだいている。
「だから、たのもう!と言っているじゃないか!」
こちらからの返事を待ちきれず、ある人物が部室のドアを開け、押し入った。
不機嫌そうな表情を見せるハルヒ。
いいところだったのにちょっと惜しい、と思ってしまった青い自分が呪わしい。
だが、俺は入ってきたその人物の顔を見るやいなや、再び騒動の種が持ち込まれたことを感
じざるを得なかった。一難去ってまた一難だ。
その人物とは、お隣さん兼SOS団下部組織と成り果てたコンピ研の部長氏だ。
部長氏の姿を見た朝比奈さんは、最早彼女にとって、トラウマと化したかつてのパソコン強奪
事件における恐怖体験を想起させるのか、気の毒にも怯えの表情を浮かべた。
もちろん、悪いのはハルヒであって部長氏ではないのだが、彼自身が朝比奈さんのトラウマ
の対象となってしまっていることには同情の念を禁じ得ない。
「あら、誰かと思えばコンピ研の部長じゃない。なぁに?またパソコンをくれるの?でも、
今のところ間に合っているから無理しなくてもいいわよ」
……この女は、罪の意識というものを感じたことがあるのか?
コンピ研の部長氏はSOS団に――というよりハルヒにだが――目をつけられたがために、
その運勢が凋落の一途をたどることになった気の毒な存在だ。
だが、その部長氏のことを、ハルヒはパソコンの配達業者程度にしか思っていないようだ。
「ちがう!僕はそんな用で来たんじゃない。別のことで来たんだ。それとも、君たちはこれ
以上僕たちからパソコンを巻き上げるつもりか?なんなら、以前君たちがやった卑劣きわ
まりないパソコン強奪劇のことを生徒会の耳に入れてもいいんだぞ」
ああ、あれだ、こんなことわざがあったな。馬の耳に念仏ってやつが。
さしずめハルヒの耳に苦情。とでも言った方がいいか。
言葉の通り、こんな抗議や脅しでは、ハルヒのチタン合金より頑強な神経は、地球の裏側で
おきた地震ほども揺るがない。
だがそんな部長氏の勢いは、ハルヒが一言も発さず昂然としていることに怖じ気づいて、まる
で商店街のアーケードに引っかかったゴム風船のように、徐々にしぼんでいった。
「そ、そんなことはどうでもいい。実は、今日おもしろいイベントを提案しに来たんだ」
と、ついには前言を撤回し、本題に入った。
イベントと聞いて、退屈を嫌うことの甚だしいハルヒは、俄然瞳の色を輝かせた。
「なに?校長の髪の毛を本人に気づかれずに全部抜いてくるとか、それとも『テロが起き
た』って警察にイタ電でもするの?」
どんな罰ゲームだ?それは。……おまえは無期限停学処分でも食らいたいのか?
「違う!僕が持ってきたのはこれさ」
と部長氏が差し出したのは、一枚のDVD−ROMだった。どうやらゲームソフトらしい。
「なあに、これ?またゲームで対戦をやるの?それに勝ったらパソコンを返せっていうん
だったら容赦しないわよ。今度は北口駅前であんたたちのストリーキングをやってもらうか
ら覚悟しなさい。その時には村上ショージのギャグを叫びながら歩くのよ」
……二重の意味で寒さと羞恥に打ち震えることになるような、およそ常人には考えもつかな
い世にも恐ろしい罰ゲームを提案するハルヒ。
しかし、これは俺の勘だが、おそらく部長氏の目的はパソコンの返還などではなかろう。
彼は、前回の件でSOS団に勝負を挑むことがどれだけ実のないことかわかったはずだ。
なにせ完璧超人の長門に、超がつくほどの負けず嫌いのハルヒが相手では、彼らには荷が
重い。相手が一般人じゃないのだからな。
程なくしてハルヒの一方的な罰ゲームの発表が終わると、部長氏はいささか顔を引きつらせ
て口を開いた。
「ち…違う。パソコンのことはもういいんだ。実は……」
部長氏の説明によると、今回は純粋にゲーム大会だ。このSOS団の面々に部長氏を加えた人数
だけで行うということで、コンピ研の他メンバーは参加しないとのことだ。
ただ、今回の大会における最大のポイントは、優勝者にある特典が与えられるということ。
それは部長氏提供のファミレスの食事券。そしてそれに加え、優勝者にはそれを使ってメン
バーのうちの誰かを誘う権利が与えられるらしい。もちろん指名された者は拒否できない。
……俺には正直、部長氏の意図を計りかねた。
誰かを誘いたいというなら、直接誘えばいいのだが、これまでパソコン一筋の部長氏には無
理な話か。だが、こんな提案をハルヒが受け入れるわけがないよな。
だろ?ハルヒ。
「……いいわ。おもしろそうじゃない?やりましょう!」
……って、即決かよ。
「みんなは不服はないわよね?古泉君は問題なし。有希も反対意見はなしと。みくるちゃんも
OK……なに?その顔は。みくるちゃん、い・い・わ・ね?……はい決定と」
俺たちに、拒否権などありはしないのさ。ハルヒ独裁体制のこのSOS団にな。
「みんな賛成してくれてるし、やりましょ」
しかもあからさまに俺をスルーしていきやがった。この女は。まあ、どうせ俺が反対したと
ころで、無駄な努力だろうがな。
「でも、食事券だけじゃ優勝賞品としては貧弱よね。……そうね、あたしからはこれを提供
してあげるわ。だからこれも賞品にしてちょうだい」
と、ハルヒが鞄の中から取り出し、テーブルの上に差し出したのはペアの映画鑑賞券だ。
しかし、そんなものをハルヒが持っているなんて、どういう風の吹き回しだ?
それに、なんでハルヒはこれほどまでに乗り気なんだ?
まさか朝比奈さんを誘って、映画館の暗闇に乗じてイタズラし放題をもくろんでいるのか?
というか、ハルヒは日常からやってるから関係ないな。
他に何か意図があるのかもしれんが、これ以上は考えないでおこう。いや、考えてはいけな
い気がする。
「これはね、昨日、新聞の勧誘員からもらったものよ。もちろん新聞は取らなかったけどね」
などと、満面の笑みを浮かべ、武勇伝を語るかのように誇らしげに胸を張っているハルヒ。
……お前は鬼か?
運悪くも、ハルヒの家を訪問してしまったその勧誘員に、俺は同情するぜ。きっと精神的に
追い詰められて、チケットを提供せざるを得なかったのだろう。
おそらく金輪際、蟻地獄のようなハルヒの家を訪れる勧誘員はいないだろう。
部長氏の説明が終わった後、全員ゲームのマニュアルに目を通し、さあ今から始めるわよと
ハルヒが言い出しのだが、あとわずかで下校時間となるため、今日のところは操作の練習に
とどめておくことになった。ハルヒも不承不承頷いた。
「しょうがないわね。今日のところはこのぐらいにしておきましょう。でも、明日は授業が
午前で終わりだから、お昼ご飯食べたらノンストップでやるからね。勝者が決まるまではみん
な返さないから、そのつもりでいなさいよね」
せいぜい、夕方までには終わらせてくれよ。よもや理科室の標本が動き出すような時間ま
で、ってのは勘弁だぜ、ハルヒ。
「じゃあ、あたしがみんなのお弁当を作ってきましょうか?」
なんと、朝比奈さんはお優しくも、お手製の弁当をその美しい御手で作るとおっしゃっている。
なんという幸福。まさしく重畳の至りだ。
朝比奈さんが作った弁当なら、俺はたとえ中身が白いご飯だけでも、跪いてそれを頂戴するね。
「ねえ、みくるちゃん。お弁当もいいんだけど、どうせなら調理室で何か作ってくれない?
もう授業もないし、自由に使えるでしょう?」
おいハルヒ、あそこは自由に使っていいところじゃないぞ、先生の許可がいるんじゃねえか?
「そう?『ご自由にお使いください』って書いてなかったかしら」
書いてねえよ。
「そうだったかしら?まあ、いいじゃない。学校の施設はみんなのものなんだから、あたし
たちが使ったって問題ないわよね」
いかにもハルヒらしい。まさしくハルヒならではの論理だ。
俺はハルヒの言葉を聞いて、すぐさま古泉に目配せした。すると、古泉はわかりましたとい
う表情を浮かべて、微笑した。
断っておくが、俺と古泉は目と目で意思の疎通が図れる特別な関係というわけではもちろん
ないのであしからず。ただ、俺は無用なトラブルを避けるため、古泉に調理実習室の使用許
可を取らせるべく合図をしたわけだ。
このように、無茶で無謀で猪突猛進のハルヒの陰には、苦労して根回しなり、後始末なりを
する俺たちの姿があるわけで、それがなくなればどんなにいいかとも思うが、なければない
で物足りなくなるのかもしれんな。
なんにしろ、朝比奈さんの手料理がいただけるわけで、俺にとっちゃ願ったり叶ったりだ。
明日は至福のひとときを過ごさせてもらうぜ。
「じゃあ、みくるちゃん、明日はお願いね。でも、もし一人で大変ならあたしも手伝うけど、
どう?」
殊勝にも朝比奈さんの手伝いをするというハルヒ。だが、朝比奈さんは軽くかぶりを振って、
「大丈夫です。あたし一人でできますから」
「そ、そう?」
なぜか少し残念そうに見えるハルヒ。
「何かリクエストありますか?あったらそれを作りますけど」
朝比奈さんは柔らかなほほえみを浮かべて、そう提案した。
いえいえ、朝比奈さんが作るものなら、たとえ冷凍食品を暖めただけでも、高級懐石さえも
凌駕する味に変貌します。
それでも、何かリクエストしようかとしばし考えていると、ある女子生徒が唐突に口を開いた。
「……カレー」
さて、誰の発言かは言うまでもないだろう。
カレー大好き宇宙人、長門有希その人である。
ちなみに、俺は今日、初めて長門の声を聞いた気がする。
「カレーですね、わかりました。じゃあ、みなさん、明日は楽しみにしていてくださいね」
もちろんです。俺はこれまで、明日という日をこれだけ待ち望んだことはありません。
もはや、ゲーム大会のことなど、はるか銀河の果てである。
などと、俺の浮かれた気持ちが顔に出ていたのか、ハルヒのジト目にギクッとさせられた。
そんな時、明日の準備のために早めの帰り支度をしていた朝比奈さんが小声で俺に囁いた。
「キョン君、あの、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」
何でしょう、朝比奈さん。
「カレーって、以前長門さんの家でご馳走になったあの料理でいいんですよね?」
……?未来人である朝比奈さんは、カレーを食べたことがあまりないのだろうか?と、訝しげ
に思いながらも取りあえず肯定しておく。
そうですよ、朝比奈さん。あの時の料理がカレーです。
「やっぱりそうだったんですね。じゃあ、『黄レンジャー』がよく食べていたものと一緒
なんですね?」
……なぜカレーのことはよくわかっていないのに、黄レンジャーは知っているんだ?ってい
うか、あなたは本当は何歳ですか?
朝比奈さんが、まともなカレーを作れるのかを少し不安を感じた俺は、明日悲劇を招かない
ため、念のために助言をしておいた。
「難しい料理ではありませんし、スーパーにはカレーのルーも売っていますから、それを使
えば簡単に作れますよ」
「キョン君、ありがとう。うん、カレーを作るのは初めてだけど、今日お料理の本を読んで
予習するから、たぶん大丈夫。だから、安心して明日を待っててね」
朝比奈さんの天使の笑顔に促されて頷きはしたものの、なんだ、この言いしれぬ不安感は?
朝比奈さんが、決して料理下手というお約束スキルを保持しているわけではないことは、以前に実証済みなのだが、明日何かが起きそうな予感がしてならない。
下校時間の到来とともに、ハルヒによる解散宣言を受けて、俺たちは三々五々帰路につくわ
けだが、校舎を出ようとしたころ、意外にも明日のイベントの企画者であるコンピ研の部長
に声をかけられた。
「君!キョン君と言ったっけ?ちょっといいかな」
何が悲しくて、コンピ研の部長にまで渾名で呼ばれねばならんのだ?
「ええ、かまいませんが、どういうご用件でしょうか?」
「ここじゃなんだから」
というわけで、俺たちは学校の裏庭に移動し、部長氏から手渡されたコーヒーを手に、ベン
チに腰掛けた。
部長氏はやや思い詰めた表情にも見え、次の発言が待たれた。
「実は話というのは他でもない。君に朝比奈さんのことを聞きたいんだ」
どういうことでしょうか?
「忘れられないんだ」
は?
「だから、あの時のあの感触が忘れられないんだ!」
ますますわからん。部長氏は何が言いたいんだ?
「去年の春、君のとこの団長さんの策略にはめられて朝比奈さんの胸を触ってしまったわけ
だが、それ以来、僕の中にもやもやとした感情がくすぶっていたんだ。それからというもの、ことあるごとにあの日の感触が思い出されてしまって、勉強も手につかないことがあったの
さ。それで最近、これが恋だと言うことに気がついてしまったんだ」
古今東西、恋のきっかけというものは人それぞれだろうが、部長氏は朝比奈さんの胸を触っ
てしまったことで目覚めたという。
俺は16年間生きているが、胸を触って恋に落ちるなどと言う話を聞いたのは初めてだ。おそ
らく、今後も耳にすることはないだろうが。
あまりに突飛かつ、意外な話に呆気にとられている俺にかまわず、部長氏は話を続けた。
「前にもゲームの対戦をしたことがあったろう?あのとき、団長さんは朝比奈さんを賭の対
象として差しだそうとしたしたけど、僕が断ったのは君も知ってのとおりだ。あのころはお
互いトラウマの対象であることの方が大きかったし、僕はこの気持ちを必死に否定していた」
では、今回こんなイベントをハルヒに提案したのは……
「そういうことなんだ。君も回りくどいことだと思っているんだろうけど、今、朝比奈さんに
告白しようとしたところで、彼女は怖がってまともに相手にはしてくれない。だったら、
こんなことでもいいから彼女とデートをして、そこで僕のことを知ってもらって、さらに僕
に対するわだかまりを取り払ってもらった上で告白しようと思ったんだ。幸い、僕のもくろみ
通り、というよりそれ以上にあっさりと団長さんも乗ってきてくれたしね。」
ですが、どうして俺に話をしようと思ったんです?
「君が、あのなかで一番話せる人間だろうと思ったからさ。こんなことを聞いてくれるの
もね」
そういうと、部長氏は本来の目的であったはずの朝比奈さんのことを俺から聞くこともなく、
礼を言って去っていった。
部長氏が去った後、両手に持ったコーヒーカップのぬくもりを感じながら、俺は赤く染まり
つつある空を見つめていた。
日は変わって翌日の放課後、待ち望んでいた昼飯時だ。
授業の終了とともに帰り支度を始めた谷口が、お前も気の毒だなという哀れむような表情を
浮かべていたが、俺は谷口に対する優越感でいっぱいだった。
理由は簡単、今日は朝比奈さんの手料理を味わえるという貴重な一日なのだ。これでは憂鬱になろうはずもない。
俺は教室を後にし、昼食担当である朝比奈さん以外のSOS団全員と、コンピ研部長がすでに
いるはずのSOS団部室に向かった。そこで時間調整の後、ハルヒを先頭に、俺たちはぞろぞ
ろと調理実習室へと移動する。
さて、今日はカレーがテーブルに並ぶはずだ。心なしか長門もうかれて見える。もちろん俺
も楽しみにしている。
俺たちは調理実習室にたどり着いた。そこからはカレーのいいにおいが……
しない……?
これはひょっとして……。
ドアを開けると、実習室のテーブルに並べられていたものは……
なんと、ハヤシライスだった。
皆の驚きに、まるで気づいていないメイド姿の朝比奈さんに、俺はあわてて耳打ちする。
「朝比奈さん。これはカレーじゃなくて、ハヤシライスですけど……」
「ええ!?そうなんですか?……あたし、間違ってハヤシライスのルーを買っちゃったみた
いです」
驚く朝比奈さん。ていうか、匂いでわかってください。いや、それより前に、ルーの外箱
の表示が違うことに気づいてください。
「……」
長門は少し、ムッとしているようだ。
朝比奈さんのポンコツぶりにますます磨きがかかっている最近の様子を見ていると、今の朝
比奈さんがあの朝比奈さん(大)につながっているとは、正直とても考えられない。
俺には朝比奈さんの健やかな成長を祈るしかなかった。
さて、多少のトラブルは勃発したが、気を取り直して、俺たちは朝比奈さんの手製の料理を十
分に堪能することができた。
若干一名、まあ、朝比奈さんなんだがな、長門の視線に少し怯え気味だったのが気の毒では
あったが……。
そして時は過ぎ、俺にとって幸福きわまる昼食が終わり、いよいよメインイベントであるゲーム大会の時間となった。
俺たちはSOS団部室に戻り、パソコンを立ち上げ各々の席でスタンバイし、ハルヒの開始
宣言を待っていた。
ちなみに言い忘れていたが、ゲームの内容はこうだ。
タイトルは『足利氏の野望』といい、歴史シミュレーションゲームで、コンピ研オリジナル
と言うことだ。なお、内容的には世間的にも有名な某ゲームを踏襲している。ただ、シリー
ズのいいとこ取りをしたシステムということで、ある意味本家を凌駕しているといえなくも
ない。
最後に勝利条件だが、それぞれが好きな戦国大名を選択し、最後まで生き残ったプレーヤーが
優勝者だ。なお、跡継ぎによるプレーの続行は認められない。担当する大名が死ねばそこで
ゲーム終了だ。
ハルヒは部室を見渡し、全員の準備が整ったことを確認して開始の宣言を行った。
「さあ、みんな、準備はいーい?じゃあ、始めるわよ。戦闘開始!トラ・トラ・トラよ!」
おいハルヒ。それ時代も使うシチュエーションも違うだろ……。
とにもかくにもゲーム大会はが開始されたのだ。
ところで、それぞれが担当する大名だが、ハルヒはその性格に共通点があるのか、予想通り、
織田信長だ。そして、朝比奈さんは当時松平元康と名乗っていた徳川家康。長門は松平家の
直上、甲斐信濃を支配する武田信玄。ハルヒの忠実なる太鼓持ち古泉は、意外にも少し離れ
た相模周辺を統治する北条氏康だ。そして、この大会の提案者であり、優勝を誰よりも欲し
ているであろうコンピ研の部長氏は、このゲームのタイトルもなっている将軍家である足利
氏、足利義昭だ。
ちなみに俺は、人材、地の利など、境遇に恵まれている島津義久を選択しておいた。
さて、ゲームが開始したが、俺はすぐには攻め込まなかった。
ますは内治に努めて国力の増強を図り、力を蓄えることにした。1ターン目は内政のコマン
ドの実行で終えた。
しかし2ターン目、早くも波乱が起きた。
長門担当の武田信玄が、朝比奈さんの担当する松平家の支配する領土にいきなり攻め入った
のだ。
ここで、朝比奈さんは致命的なミスを犯した。彼女はどうも操作がよくわかっていないらしく、籠城戦をすべきところを野戦決戦に出てしまい、武田信玄自ら率いる最強の騎馬軍団により
1兵たりとも残らないという、全滅ではなく殲滅の憂き目にあった。
何が起きた理解できず、茫然自失の朝比奈さん。いくらゲーム音痴の彼女とはいえ、2ターン
目にして早くも敗退するとは思いもよらなかっただろう。
しかし、長門……。おまえ、カレーのことで根に持っていただろ?
普段、ドライアイスのような冷静さを持ち合わせる長門の、意外な一面を垣間見たようだ。
その後、長門は余勢を駆って、疾走する馬のごとく、猛烈な勢いで主に北陸、北関東、東北
をほぼその手中にし、勢力を拡大していった。
この勢いにはさしもの古泉もなすすべがなく、南関東と、東海東北の一部をその版図に入れ
たに過ぎず、現状は長門に圧迫されつつあった。
ハルヒはというと、北陸の一部から美濃、近畿のほとんどを奪取し、現在部長氏の足利将軍
と対峙している。
そして、現在ハルヒと対決中の部長氏だが、本拠である山城の国と、中国地方の東半分をその
勢力下におくことで精一杯だった。
ただ部長氏にとって幸運だったのは、ハルヒが勢力を拡大し続ける長門信玄を無視できず、
その牽制に軍勢を割かれ、部長氏攻略を疎かにせざるを得ないことであった。
これで部長氏は、かろうじて一息ついたと言うことか。
とはいえ、足利氏は将軍家であっても、この時代一個の中堅大名に過ぎず、正直なぜ部長氏
がこの大名を選んだのか疑問ではあるが。
そして、数ターンが過ぎ、長門に包囲されていた古泉は徐々にその勢力を縮小し、ついには
堅固な城である小田原城に籠もることになり、さらに数ターンの兵糧攻めの後、滅ぼされた。
かくしてプレーヤーで生き残っているのは、ハルヒと長門、部長氏に、そして九州を制圧して
その版図を中国四国地方に拡大しつつある俺であった。
それから数ターンが経過したとき、突然、部長氏が史実の通り、ハルヒ追討令を発布した。
これはこのゲームの独自機能というべきもので、さらに言うと、足利氏のみに与えられた
特権であり、史実よりも遙かに諸大名に対して強制力があった。
つまり、全大名には信長であるハルヒに対して、軍事的圧力をかける義務が課せられたのだ。
その命令を受け、古泉を滅ぼしたことによりほぼ東日本を制圧した長門は、次の攻略勢力で
もあったハルヒにターゲットをしぼり、全力を傾けて圧迫を加えてきた。
戦線は膠着状態にあるが、多方面から侵略を受けるハルヒに対して、兵力の逐次投入を続け
る余力のある長門が徐々に押してきた。
押されて、後退を余儀なくされるハルヒ。
「ちょ、ちょっと有希!少しは手加減しなさいよ!」
たまらず、悲鳴を上げるハルヒだが、長門は容赦しなかった。
長門をそこまで本気にさせているのは何なのか?俺には皆目見当がつかなかった。
そして時間の経過とともに、クレヨンで塗りつぶすかのように、ハルヒの支配地域を浸食し
てゆく長門。もはや戦局は決したか?
そんな長門とハルヒの戦いを傍観しながら、自分の思い通りの展開になりつつあるのか、ほ
くそ笑みながら、朝比奈さんの方をしきりにチラ見する部長氏。
なるほど、彼が足利家を選択したのはこのためか。自分の力を使うことなく、敵対勢力を
苦しめることができる。さらにその攻撃に参加した連中の力をもそぐことができる。
つまりは一石二鳥か。少し、やり方が気に入らないがな……。
再び戦局に目を向けると、なぜそこまでとおもえるほどに全力の長門に押されに押されて、
ハルヒの運命はもはや風前の灯火だった。
だが、運命の女神は残念ながらというか、それとも幸運にもと言うべきか、ハルヒを見捨てな
かった。
なんと、武田信玄が突然病死してしまったのである。これでも史実よりも遙かに長く生きた
わけではあるのだが……。
突然の死という、まったく思いもよらないことで退場を余儀なくされる長門。彼女は無表情
ではあるけれど、さすがに残念そうに見えるのは俺の気のせいではないだろう。
最強の敵の死により、九死に一生を得たハルヒは、朝鮮戦争での国連軍のように、またたく
まに領国を奪還し、国力を急回復させた。
するとすぐさま身を翻し、まるでネズミを捕食しようとする蛇のように、自分を苦しめる原因
を作った部長氏に対して、全力を持って猛然と襲いかかった。
俺は当初、多少おもしろくなかったとはいえ、朝比奈さんを思う部長氏には理解を示し、や
や協力的ではあった。しかし、かといってこの絶好の機会を逃すわけにも行かず、意を決し、
ハルヒに呼応して部長氏の領国へと攻め入った。
その攻撃は質量ともにすさまじく、戦術を考慮するまでもなく、ほぼ力攻めで押し切ること
ができた。その結果、俺とハルヒの二大強国の挟撃により、部長氏はなすすべもなくあっさ
りと滅びた。部長氏はまさしく、蜘蛛の糸が切れて地獄にまっさかさまに転落したカンダタ
のようだった。
俺は、部長氏の計画を頓挫させてしまったことに、いささか後味の悪いものを感じざるを得な
かったが、同時にほっとする感情も否定できなかった。
優勝を逃してしまった部長氏は、恐らくあきらめきれずに、玉砕覚悟で朝比奈さんに告白で
もするのだろう。
ただし、玉砕する確率は九割、いや九割九分か?まるで、竹ヤリ一本もって単身硫黄島に乗
り込んで、そこで勝ち目を見いだすようなものだが……。
結局、最後まで残ったのは俺とハルヒだった。
部長氏の滅亡とともに一時的な協力関係を解除し、改めて対峙する俺とハルヒ。
勢力は拮抗していると言いたいところだが、ハルヒは滅亡の危機を経験していながら、長門
の撤退後、以前よりもその勢力を拡大し、今や俺を凌駕する存在に成長していた。
ハルヒは己の勝利を確信しているのか意気軒昂、今や飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
そして、ハルヒは何が嬉しいのか、高輝度発光ダイオードもかすむほどの笑顔を満面に浮か
べ、今にも鼻歌を奏でんばかりであり、隣の古泉がニヤニヤとしているのが気に入らない。
…って、古泉、なぜ俺に向かってニヤついているんだ?
朝比奈さんもです。そんな微笑ましそうに、なぜハルヒでなく俺を見ているんです?俺に
は関係ないはずですが?……たぶん。
さて、どうしたもんだろうな。ハルヒの笑顔を見ていると、その笑顔に免じて負けるっての
も悪かない、なんて不覚にも思ってしまったのだが、だからといって、このまま負けるとい
うのはおもしろくない。
現在、投入し得る兵力にしても配下の武将の質にしても、ハルヒの方が勝っていると認めざ
るを得ないのだが、何かつけいる隙はないものかね。
俺は、団長席に座っているハルヒの様子を窺いながら、しばし沈思黙考していた。
………まてよ、あの方法ならば可能か。
と、突如として、俺はあることがひらめいた。今大会の勝利条件と、ハルヒの性格とを利用
すれば、勝ち目は出てくるのではないかと。
ただ、この策はハルヒに気がつかれる可能性もあるのだが、今のままではジリ貧の憂き目に
あう。それならば、それに賭けてみる価値はあるのではないか?俺はその策を実行に移すべ
く、すみやかに周到な準備を行った。
まず手始めに、今現在ハルヒと隣接している備中とその西隣の備後の二国から、金と兵糧を
必要最低限のみ残し、後は周辺国に送った。そして、次のターンには目的とは異なるハルヒの
領国を攻める体を装い、二地域から兵力を送る欺瞞工作を行った。だが、あくまでも減らし
すぎないことが要点だ。
これで、ハルヒへの勝利という豊かな実りへの種まきはほ完了したが、ハルヒはこの策に乗
るか、それとも気がつくのか。
「フッ」
どうやら俺の意図することに、古泉は気づいたようだ。ということはもちろん長門も気づい
ているはずだ。ただし、部長氏と朝比奈さんはまるで気がついていないようだ。
すると、俺が兵力を減らしたことに目をつけたハルヒは、絶好のチャンスとばかりに、大軍
を擁して、隣接する俺の領国である備中へと侵攻した。
―――食い付いた。
自らが指揮官として参戦したハルヒ軍との合戦が起こると、俺はなるべく長期戦を志し、さら
には兵力の消耗を抑えた上で敗戦した。
予定通りだ。
ハルヒは俺の領土どころか、そこの敗残兵まで飲み込んだことに、有頂天だ。
気をよくし、次のターンを迎えたハルヒは、ふくれあがった兵力のまま、さらに西の備後へ
と攻め込んだ。
後方からの補給を待たずに、だ。
ハルヒが攻め込んだことを確認した俺は、先ほどハルヒにより陥落した備中を、北方から軍
勢を起こし、速戦即決で奪還した。
これにより、現在備後を奪取してまもないハルヒ軍は、補給路と逃走路を遮断されることに
なった。
包囲され、孤立無援の状態となったハルヒ。ここにいたって、彼女はようやく俺の真の目的
に気づいたようだ。
つまり、この大会の勝利条件としては、ハルヒの領国をすべて攻めつぶす必要はなく、ハル
ヒ一人さえ倒してしまえばことは足りるのである。しかもハルヒは本国でじっとしていられる
性分ではなく、主要な戦いには必ず指揮官先頭で参戦してくる。
俺はそこに勝ち目を見いだしたのである。幸いにも、俺の考え出した策は見事に図に当たった。
といっても古泉には見破られる程度のもではあったが、ハルヒは騙せたようだ。
俺は最後の戦いとばかりに、動員できる限りの軍勢をハルヒがいる備後へと投入した。ただし、
戦いと言っても無闇に兵力を消耗するつもりも、ハルヒにさせるつもりもなかった。
ただ単に、長期戦を繰り広げればいいだけなのだ。そうすれば大軍団を食わせている兵糧
はやがて尽き、兵士は干涸らび、そして自動的に俺の勝利となるわけだ。
それに今更のように気づき、悔しさと焦りの感情を前面に押し出しているハルヒ。
ハルヒは勝利への執着があるためか、俺をにらめつけたり、画面を凝視したりを繰り返して
いる。だが、もう遅い。
ゲームオーバーだ。
ハルヒ軍の兵糧が、残りゼロを示したことで、俺の勝利が決定した。
「あんなことをするなんて、卑怯よキョン!」
と言うものだと予想していたのだが……。
ハルヒは妙にしょんぼりして、実にハルヒらしくない。
「よかったわね、キョン。あんたは、みくるちゃんか有希でも誘うんでしょ?」
と意外なことを言い、先刻ハルヒが勝利を目前にしているときには、遠足前の小学生のよう
に喜色を満面に浮かべていたというのに、今はやけにあっさりしている。
いささか拍子抜けをした感は否めないが、このたび行われたゲーム大会は、俺の優勝で幕が
閉じた。
したがって、最初の取り決め通り、俺には優勝賞品のファミレスでの食事券と、映画鑑賞券、
それに、その相手を指名する権利が与えられた。
……俺はいったい誰を誘うのか?朝比奈さんか?あるいは長門か?それとも……?
俺は誰かを念頭に置いてゲームに参加したわけではないので、いざ、誰かを選べと言われると、
とたんに躊躇してしまい、にわかには選べないのである。
「さあ、キョン!いったい誰を指名するの?」
気を取り直したハルヒが、挑むような窺うような視線で、俺に結論を急がせようとする。す
ると、部屋にいた人間が俺に一斉に照準を合わせた。
なにやら、期待と好奇の籠もったみんなの視線を一身に受け、逃げ出してしまいたくなる俺
であり、実際一時退却することにした。
「悪い、ハルヒ。忘れ物をしたから、ちょっと教室へ戻るぜ」
ハルヒが声を発する間も与えず、俺は部室から飛び出した。
だが、実際には忘れ物をしているわけではなく、単に考える時間がほしかったのだ。
そういうわけであるから、俺は教室には向かわず、ベンチに座って春の暖かな空気のなか、
誰を指名すべきかを呻吟していた。
「やあ、やっぱりここでしたか」
と言う声が聞こえ、俺の前に立った古泉が、スッと紙コップに入ったコーヒーを俺に手渡した。
何の用だ?もしやお前を誘えって言うんじゃないだろうな?
それを聞いて、古泉はさも愉快そうに相好を崩し、
「それは非常に魅力的な提案ですが、今回は遠慮しておきましょう」
俺はコーヒーを胃に流し込み、あたりまえだ、と一言返した。
「どうやら、悩んでいるようようですね。僕はもうあなたは誘う相手を決めているものだと
思っていましたが?」
まだ決まっちゃいないよ。ところでお前は何をしに来たんだ?
「いえいえ、僕はあなたにきっかけを与えて差し上げようと思いましてね」
なんのことだ?というと、古泉はやや改まった様子で口を開いた。
「ところで、あなたは、朝比奈さんやミヨキチさんと以前デートをしましたね?」
何を藪から棒に。
……あれがデートだったとは思わないが、確かに一緒に出かけはした。
「それに、長門さんとも図書館デートをしているそうですね?」
なぜお前が知っている、っておい、みんな誤解だ。俺は誰ともデートをしたつもりはないぜ。
「ですが、そう思わない方もいるようで。彼女はそのことをなにやらうらやましく思い、あ
なたと二人きりで出かけてみたいと思いつつも、だからといって素直にあなたを誘うことも
できない。そんな彼女にとって、今回のイベントはまさにうってつけ、渡りに船だったわけ
です。彼女が優勝の暁には、なんだかんだと理由をつけて、あなたを誘うつもりだったので
しょう。ただ、残念ながら、彼女の思い通りの結果にはなりませんでしたが……」
……馬鹿な奴だよ。
古泉が名前を出さずとも、それが誰であるのか、俺にはわかってしまっていた。だが、誰だ
かは言わないでおく。
それで、お前は何が言いたいんだ?
と俺が言うと、古泉はかぶりを振りつつ、
「いえ、これ以上は何も。ただ、ここまで聞いてしまうと、あなたとしては動かざるを得ないでしょう」
と言い、ベンチから立ち上がると、古泉は校門へと向かった。しかし、歩みの途中で振り返
ると、
「ああ、そう言えば、彼女はまだ部室にいるはずですよ。春休みにおけるSOS団の活動を検
討すると言っていましたからね」
とだけ言い残して、再び歩き出した。
古泉が去った後、少し躊躇したが、意を決して俺も立ち上がり、いったん背伸びをすると、
部室に向かって足を進めた。
俺がSOS団の部室のドアを突然開けると、そこにいたハルヒがあわてて何かを隠した。
まあ、それはいいんだが。
「キョン、やけに遅かったのね。あんたが遅いからみんな帰っちゃったわよ。残念ねえ、み
くるちゃんも有希もいなくて」
ハルヒはアヒル口をしながらそううそぶいた。
いや、いいのさ。ハルヒ、お前に用があるんだ。
「……あたしに?な、なんなの?さっさと言いなさいよ。どうせろくでもないことなんで
しょうけど」
やや動揺したが、あわてて体裁を取り繕うように、意味もなく胸を反らせ、俺をにらみつけた。
「……お前がくれた映画のチケットだけどな、あれ上映が来週の金曜日までしかないじゃね
えか。と言うことは、今週の土日のどっちかに行くしかないんだよ」
「そうだっけ?じゃあ、明日にでもみくるちゃんか有希を誘えばいいじゃない?」
「二人とも週末は予定があるそうだぜ」
もちろん、これは俺のハッタリだ。
「なら、古泉君でも誘えばいいじゃない」
なぜ、そっちにいく?
「だから、俺が言いたいのはだな……こんなチケットを提供した、お前が責任をとれと言って
いるんだ」
とうとう言ってしまった。すると、ハルヒの頬にわずかに朱が差し、
「バッ……そ、そう?本当に、相手のいない男はしょうがないわね。……わかったわ、しょ
うがないから、あんたがどうしてもって言うんなら、つきあってあげなくもないわよ」
そうかい、ありがとよ。
「か、感謝しなさいよね。それと、当日1秒でも待ち合わせに遅れたら、全部あんたのおご
りだからね」
ハルヒは俺でさえ惹きつけてしまいそうな、とびきりの笑顔を見せて言った。
当日、わざと遅れていくか。そうすりゃ、『遅いわよ、キョン。約束通り、今日は全部あんた
におごってもらうからね』などと、嬉しそうに言うのだろうな。などと、ハルヒの笑顔を眺
めながら、俺は不覚にもそんなことを考えてしまった。
ああ、それと部長氏のことだが、あのイベントの後、勇者部長氏は朝比奈さんに告白し、見事
玉砕、名誉の戦死を遂げたと言うことだ。
合掌
終わり
以上です。
デート編が書ければ、エロまで到達できそうですが、
今回の展開ではエロ無しとなってしまいました。
乙。面白かったよ
歴史や時代等、書き手によっては深く描写したがるマニアックな要素をあっさり目に味付けしたのは良かったと思う
GJ!
次は烈風伝(デート編)、その次は天下創世(エロ)くらいで書いてくれたら嬉しい
復活sage
何が起こったんだ。2chも止まってたらしいが。
>>620 随分壮大なエロをイメージしてしまったw
鯖側の電源トラブルらすぃ
625 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/20(土) 19:21:04 ID:XUgkHQxS
>>618 GJ!
あぶねーあぶねー。これで書きかけの部長×ハルヒを無駄にせんで済む
626 :
620:2007/01/20(土) 19:25:00 ID:KkgyEhkB
さっき信長の野望天下創世でハルヒ達を武将エディットで作ってプレイしてたが・・・
ハルヒ達(特にハルヒと長門)が強すぎてゲームバランス崩れたwww
しかもハルヒを大名にしたらゲームの仕様で苗字が赤松になるし・・・
ごめんsage忘れ
このSS読んで、ちょっと信長の野望をやってみたくなった。
将棋弱いからすぐ負けると思うが。
631 :
620:2007/01/20(土) 21:36:57 ID:KkgyEhkB
>>629 烈風伝なら2000円くらいで出来るし、システムもはっきりしてるからお勧めだな
なかなか戦国モノってのはワクワクするな
>>618 うい。面白かった。
ゲーム場面も個性を出しながらそれでいて簡潔にまとめられてるし。
これでハルヒがありきたりなツンデレみたいにどもらなかったら最高だったんだが…
そういや、なんでハルヒはキョンをキョンと呼んでるんだっけ?
コンピ研からPC奪い取ったときからだよな。
なんでって、そりゃ、キョンはキョンであってキョン以外の何物でもないからだろう。
時期を聞いてるんだったら、最初からだろう。
谷口や国木田がキョンキョン言ってるからな。
ハルヒの口からはじめて出たのは、確か古泉が転校してきたくらいだったとオモ
ハルヒ―「キョン」→キョン :PC強奪のためコンピ研部長を脅す際の2度目のシャッターチャンス
キョンがまったく驚いてないところを見ると、かなり前から「キョン」呼ばわりだったらしい
みくる―「キョンくん」→キョン :上の翌日か翌々日のバニービラ配り事件の直後
みくるが渾名を知っていた理由はともかく、キョンはそれほど驚いていないので、ハルヒは部室内でキョンキョン言っていたらしい
キョン―「ハルヒ」→ハルヒ :言わずと知れた初の閉鎖空間内で。現実ではその翌日
記念すべき出来事だが、ハルヒはまったく驚いていないため、キョンは以前から「涼宮」と「ハルヒ」を使い分けていたのかもしれない
または、ハルヒの力で「言わされた」のか
ここでふとネタが湧いた。
638 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/21(日) 05:11:53 ID:UAO/yTjs
女の子を1stネームで呼ぶってことは好意があるってことだろ。
興味の無いやつには呼ばないからな。
640 :
16-674:2007/01/21(日) 12:01:53 ID:ecO3siDS
ダイジェスト電波受信した。「涼宮ハルヒと憂鬱」
「力」に自覚のあるハルヒ。高校入学、自己紹介は至って普通。
閉鎖空間は意図的に封印。この辺は古泉曰く「常識的」な観点が働いたから自重している。
力の使い道に困り、常々退屈している。
校内にいる監視派遣員、つまり宇宙人と未来人と超能力者の存在にも気付いている。
キョン、朝倉と適度に仲良し。ふとした理由(原作と同じ「その髪型は宇宙人対策か?」)でハルヒと話す。
ハルヒは無能力なのに「こちら」を意図せず見抜いたキョンに興味を持つ。でも髪はばっさり切った。
近くにいる口実を作る為にSOS団を結成、メンバーを拉致。(古泉は展開の都合上最初から入学していた、で)
面子は原作と変わらず。お互い正体を明かし合う。他メンバーの望みは大よそ「現状維持及び事態の解明」となる。
協力を交換条件に団参加を要求するハルヒ。
実際問題、ハルヒが持つ絶対的な能力はそれらの条件を飲んだ上でも揺るがないほどに強固である。
キョンのみ様子を見るべく蚊帳の外状態。含んだところを持つ4人+鈍感1人の団が誕生。
休日、不思議探検と称したキョン観察一日目開始。午前朝比奈さん・古泉班、午後ハルヒ・長門班と行動するキョン。
好印象。しかし午前は古泉が、午後は長門が熱狂し暴走。鎮圧を計るため合流した午前組も巻き込みヒートアップ。
朝倉、急進派の思惑と、朝倉の個人的な興味もあって接触を図る。キョン、教室にやって来る。
なんとなく気に入らない4人により襲撃。ここで始めてキョンは4人(と朝倉)の正体を知る。
原作通りキョンを殺そうとした訳ではなかったので、(涼宮ハルヒ直々の)厳重注意でその場は静まった。
翌日。部室に行くと朝比奈さん(大)がいた。「私と仲良くしてください」何を言っているんだろうこの人は。
夜。良く分からないけどイライラしているハルヒが閉鎖空間解禁、キョンを拉致。ストレス発散に神人に追いかけられる。
古泉出現。助けてくれると思いきや彼もハルヒと同じ思惑の様子。事態は秒単位で悪化していく。
部室に逃げ込むキョン。PCを見ると長門と朝倉と朝比奈さんが喧嘩していた。迷わず電源を引き抜く。
まだ自分の気持ちに上手く整理がつかないハルヒ。好きなんかじゃない、興味があるだけ、でも構ってほしい。
やれやれと苦笑いしながらハルヒに仕方なくキスしてやるキョン。今日のところは、これで勘弁してくれ。
恥ずかしい上になんか悪い気がしないハルヒは逆上してキョンを閉鎖空間から叩き出す。そして、なんとか平和になった。
翌日。長門にキスをせがまれた。朝比奈さんにもせがまれた。朝倉はおろか古泉すら同様だ。
抵抗を試みるものの、次々に唇を奪われていく。最後に古泉のどアップが見えた辺りで、キョンの意識は途切れる。
ハルヒの怒鳴り声を聞きながら、次の不思議探検はサボろうと硬く誓うキョンであった。
基本的にシリアス少な目のギャグ調
ハルヒの能力が解明された時点で機関やら宇宙人やらが転覆を謀るとかそういうのは出来ないように。みんな仲良く
実際、憂鬱段階ではこの設定は面白くない気がする。退屈での映画撮影とかそういう時にこのネタは最大限活用される訳で
俺はダイジェストで力尽きたから後は書き逃げ。誰か拾ってくれたら嬉しいけど萌えないゴミもとい燃えないゴミかもしれない
641 :
有希っ子:2007/01/21(日) 13:04:25 ID:zfQYpRvP
SS出来たので投下させていただきます
初投下なので不手際が有ったらすみません
642 :
有希っ子:2007/01/21(日) 13:07:36 ID:zfQYpRvP
長すぎる行とかがあって書き込めなかったので
直してから書き込みます
出直してきます、、グスン
643 :
有希っ子:2007/01/21(日) 13:10:17 ID:zfQYpRvP
題名 ホワイトデー大作戦
やっぱり投下SSは読みやすくなくっちゃいかん。最近の流行してる『山場の描写→俺の説明回想→時間軸を今に戻そう』のコンボは原作だから面白いわけであって、んなもん投下されても読みにくいだけである。
その上、そのせいで俺に妄想癖があると思われるのはまったく迷惑な話である。
てことで説明から入る、今日は3月11日の日曜日だ。
朝、いつもの休日と同じく妹の襲来によって目を覚ました俺は、シャミセンを餌に妹を追っ払うことに成功した。普段なら朝飯のテーブル前まで強制連行されるのだが、昨日の昼から今日の夜にかけて親が親戚の所に出かけているため、朝飯が無いのが理由だろう。
2度寝という至上の快楽を久方ぶりに貪ろうと枕を抱えなおしたところで、何でだろうねまったく、こうもいいタイミングで携帯が鳴るとは。
どうせまたハルヒだろう、と思って相手を見ると意外なことにそれは古泉からの電話だった。
「どうもおはようございます、突然ですがお暇でしたら今日の昼にでも付き合っていただけませんか?少々相談したいことがありまして」
全力でお断りだ。何が悲しくて休日に男とデートせにゃならんのだ。それに昨日確かハルヒから聞かなかったか?俺はこの土日、両親が出かけるから妹の面倒を見るため家に居なきゃいかんことを。
「ええ存じ上げております。涼宮さんもあなたが居ないとつまらないらしく、昨日の不思議探索も昼過ぎには切り上げてしまいましたから。今日に至っては自由行動です」
だったらなんで電話してきたんだ?ちなみに俺は今安眠を妨害されて不機嫌まっさかりだぞ。
「それはそれは失礼しました、もう10時になるのでさすがに起きてらっしゃると思ったのですが。妹さんのことも分かってはいますが、今日を置いていい機会があるとは限りませんから」
「まあいい、で、用件はなんだ?妹のお守りを置いてまで休日にお前とデートせにゃならん理由があるのか?」
「僕のほうでも色々考えてはいるのですが、ここはやはり二人で協力した方がいいと思いまして。特に涼宮さんはあなたの出方に期待しているはずです。僕も個人的に興味があるところです。予め教えていただければ機関の方でも最大限サポートする手はずも整っていますので」
いったい何の話だ?相変わらずお前の話はさっぱりわからんぞ?
「とぼけてらっしゃるのですか?それとも本当に忘れているのですか?前回はもらう立場だったので忘れていても問題は無い、というより忘れていた方が良かったと思いますが、今回はさすがにまずいと思いますよ?」
だから何の話だ、はっきり言ってくれ、3行以内で頼む。
「では単刀直入に申しましょう。ホワイトデーはどうしますか?」
………俺がそれを完全に忘れていたことと、無理やり思い出さされてマリアナ海溝のどん底並みの気分に叩き落されたのはまさにneedless to sayってやつだ。
「どうもこんにちは突然お呼び立てしてすみませんでした」
ああ、まったくだ。しかも海のそこに叩き落すおまけ付でな。もしかして機関とやらは人をコンクリで固めて海の底に沈めるのが得意なのか?
まったくすまなそうにしていない古泉のさわやかスマイルをじと目でにらみつつ俺は適当に返した。
古泉の話によると今日はSOS団全員がフリーということらしいので、俺と古泉は今やSOS団のアジトパート2と化している喫茶店に入った。軽く昼食を取りながらの相談というわけだ。
相手がSOS団専属メイド、麗しの朝比奈さんなら心躍りつつ回りからのチクチクささる視線を堪能するところだが、相手が古泉では俺の心も冬の寒空に放り出された動物園のワニのごとく、踊りだすどころか微動だにしないというものだ。
「さてどうしましょうか?バレンタインであれだけ大掛かりなことを涼宮さんにしてもらった以上、ただチョコを渡すというわけにはいきません。
先ほども申し上げた通り僕のほうでも作戦は練ってありますが、僕の場合ですとどうしてもミステリー的な展開になってしまいまして、孤島の時から3度目となると涼宮さんもそろそろ飽きが来るころでしょう。
それに涼宮さんはあなたからのサプライズを何よりも期待しています。ここはどうでしょう、あなたが何か涼宮さんを喜ばせるような作戦を立てていただいて、僕と機関がサポートするという形で出来ないでしょうか?」
「わかったわかった、そこまで言われんでもなんか奇人変人的な渡し方をせにゃならんということぐらい俺にだってわかってる。しかしだな、いったいどうすりゃハルヒが満足するかなんて俺に分かるわけ無いだろ?
バレンタインはチョコをもらえるかもらえないかで悶々とするからこそもらえた時の感動も一塩なわけで、最初からもらえると分かっている奴を驚かせるなんて至難の業だ」
「でしたら僭越ながら僕にいいアイディアがありますよ」
古泉はいつになく下世話なニヤケ顔を浮かべると、こんなことを言い出しやがった
「あなたが朝一番にこう言って渡せばいいんですよ『これが俺の本命だ、だから誰よりも早くお前に、二人っきりで渡したかった』とね。
そうすればその日一日どころかしばらくは涼宮さんの精神が安定すること間違いなし。チョコの面白い渡し方を考える必要も無く、僕がアルバイトに呼び出されることも無くなるでしょう。
まさに一石二鳥、いいアイディアだと思いませんか?」
「却下だ」
そんなことをしたら後々どんなひどい目にあうかは火を見るより明らかだ。大体なんで俺がそこまでせにゃならんのだ。たかがホワイトデーのために人生を棒に振る気は毛頭どころかカーボンナノチューブの先っぽほどもない。
「そうおっしゃると思っていましたよ。」
分かってるなら言うな。
「ではこの作戦を実行する必要が無くなる様にいい方法を考えておいてくださいね。最悪の場合僕の考えた方法で仕方ないですが、後々がもっと大変になると思いますので」
そう言って古泉は伝票を手に取った。いつもおごって頂いてますから、それに呼び出したのは僕の方ですしと言いながら2人分の料金をレジのお姉さんに渡している。
古泉にしては殊勝な心がけである。が、今の俺にはそんな古泉を感心してやる心の余裕などは無いわけであり。
まったくハルヒめ、ホワイトデーにここまで苦しめられるチョコを渡すとは、あれはもしや不幸の手紙ならぬ不幸のチョコか?などと下らん現実逃避を開始した。もらった時はうれしかったけどな。
そうそういいアイディアなど思いつくはずも無く、ただだらだらと月曜の朝が来る。いつも通り殺人的な坂をいつになくどんよりした気分で登り、やっとのことで教室にたどり着くとハルヒが頬杖をつきながら外を見ている姿が目に入った。
珍しくツインテールだな、そういえば最近こいつはまた髪を伸ばしている。いつぞやの中途半端なポニーテールとは違い、ちゃんと頭の両側できれいにまとまっているツインテールである。そういえば先週の金曜もみょうちくりんな髪型だったなこいつ。
そうまるで宇宙人対策してた時のような………。
そこで俺はハッとなった。思い出して数えてみると金曜のハルヒの髪の結びは5つ、今は2つ、おそらく土曜は4で日曜は3だろう。そして明日は1つ、明後日は………ホワイトデーだ。
こいつ、カウントダウンしてやがる!俺は絶望の鍋のどん底から底が抜けてさらに落とされていく気分になった。いったいどうすりゃいいと言うのだ。ここまで意識しまくってる奴を驚かせるなんて俺が東大に現役合格する以上に不可能だ。
ドラゴン桜が満開になって天空に昇っても無理だ。出来るとしたらそれは反則的な方法しかない。ん?反則?そういえば別に反則しちゃいけないってことは無いな。そうか、ここまで意識してるってことは逆に………
俺は諸葛亮孔明ばりのアイディアを早速古泉に連絡した。
そんなわけで(どんなわけだ?)3月13日、ホワイトデー前日だ。今日の下準備が明日の命運を分ける山場であることは間違いない。では作戦開始と行こう。
朝教室に入ると、予想通りポニーテールのハルヒが昨日と同じ体勢で外を眺めていた。俺はハルヒのポニーテールを軽く引っ張り、ハルヒの首をかっくんしつつ声を掛けた。普通だったらこんなこと絶対やらないがな。後で何されるか分からん。
「よ、ハルヒ、元気か?」
ホワイトデーが待ち遠しすぎてなのかは知らんが、ここ数日不機嫌オーラ大量生産中のハルヒは、生産した黒い霧をここぞとばかりに撒き散らし、椅子をガタリと鳴らせ立ち上がり真っ直ぐ俺を睨んできた。
「いきなり何すんのよ!SOS団の団長たるこの私の髪をいきなり引っ張るって言うのはどういうこと?理由いかんによっては死刑よ、死刑!いやそんなの生易しいわ、貼り付け獄門の刑よ!!何ニヤニヤしてるのよ。私は本気で言ってるんだから……」
普段ならハルヒに怒鳴られたらやれやれといった感じで目を逸らすはずの俺が、満面の笑みをハルヒに向けていることに驚いたのだろう。語尾が小さいぞハルヒよ。
「ああ、すまんすまん、まあそう怒るな。それよりこれを見ろ」
そう言ってポケットから取り出した紙切れをハルヒに手渡した。
「何よこれ、宝くじじゃない。1等でも当たったの?」
お前じゃ有るまいし、1等なんか当たるかボケ。てか、これも当たった訳じゃないんだけどな。
「いや1等はさすがに無いが、7等で10万のギフトカードだ。ふふふ、いいだろ?これも普段の行いだな。うらやましいか、んん?昼飯ぐらいならおごってやるぞハルヒ」
するとハルヒはさっきまでの不機嫌オーラはどこ吹く風に乗せてぶっ飛ばし、爛々と輝く瞳でこう言った。
「そうだわ、これ使ってSOS団でパーティー開きましょう」
昼飯はおごってやるとは言ったが全部やるとは言ってないぞ?お前人の話聞いてんのか?てか、いつも通り都合のいいことしか聞こえてないんだろうな、まったく。
「そうね、「春休み不思議発見祈願大感謝祭」ってのはどう?10万円もあればどこかの高級レストランでおいしいものがいっぱい食べれるに違いないわ」
前言撤回、10万ってとこはしっかり聞こえていたらしい。にしても何に感謝するんだか………。いや突っ込みどころはそこじゃないな、こいつの中では宝くじはすでに自分のものらしい。どこのジャイアンだ、お前は。
でも、まあ想定内だ。負け惜しみじゃないぞ?どっかの誰かと違って。
「善は急げよ!今日の放課後SOS団みんなで出かけましょう。楽しみねー」
ちょっと待て、それは俺のだ、お前は強盗か?
ギフトカード奪還のために必死に食い下がる俺に、『SOS団は一心同体』だの、『普段お世話になっている団長にささげるのは当然』だの、ハルヒがやたら理不尽な理由を並べまくっている間に担任の岡田が入ってきた。
まったく、これが本当に自分で当てたのだったら泣いてるぞ俺。もし宝くじが当たっても絶対ハルヒに言うのはやめよう。
そして放課後。ハルヒは俺のネクタイ引っつかんで文芸部室に直行すると、長門が先に居た。お前授業はどうした?ハルヒと俺は6限終わって即来たぞ。
「出ている。授業終了後にここに来た。特に問題は無い」
まあ、長門なら今さらこの程度の不思議はへっちゃらさ。我ながら成長したもんだ。
「後は古泉くんとみくるちゃんね、早く来ないかしら」
程なく古泉が現れ、15分ほどしてから朝比奈さんがいらっしゃった。
「おくれてごめんなさぁい、来年の授業の選択についての説明があtt」
「遅いわよ、みくるちゃん!」
そういえば3年生は文系と理系に分かれるからどれを取るか決めないといけないんだっけな。などど考えていると横からハルヒが叫んだ。
「ふぇっ、あ、あの、ごめんなs」
急に叫ばれてビクビクッと文芸部の扉に隠れる朝比奈さん。扉からちらちらと顔をのぞかせる姿は小動物のようで、思わずギューとしたくなるね。
「私はこの十分を十分千秋の思いで待ったのよ!でもいいわ、今の私の心は太平洋より寛大だから許してあげる。それより本題に入りましょう」
「あ、ありがとうございますぅ」
心が広いならいきなり怒鳴りつけるな。てゆうか朝比奈さん、そんなに有り難がらなくてもいいですよ、あなたに否は1フェムトたりともありませんから。
そしてハルヒは、えーと春のなんとか祭り、めんどくさいから感謝祭でいいや、感謝祭の開催を高らかに発表したのだった。
さて一言で感謝祭って言っても何をするかまったく決まってないので、何をするについて現在話し合いだ。しかしあいにく俺には先約が有る。古泉もな。
「なるほど分かりました、ただ実を申しますと夕方に先約がありまして、そうですね、8時ぐらいには終わると思いますので、感謝祭でしたらその後にしていただけないでしょうか?」
「古泉くん先約って誰と?どんなこと?SOS団春休み不思議発見祈願大感謝祭よりも大切なことなの?」
俺に問い詰める時は『SOS団の活動より大切なものあるわけ無いじゃない』みたいな勢のくせに古泉の時は普通に不思議そうにしてやがる。ハルヒめ。
「古泉は俺と一緒にちょいと野暮用があるんだよ」
答えにくそうにしている古泉に代わって俺が答えてやる。
「キョン君と古泉君でお出かけですか?何かお買い物にでも行くんですか?」
「二人してなによ、せっかくの感謝祭なのにいったいどんな用事があr………うん、まあいいわ、んじゃあ9時くらいから始めましょう。それなら平気よね古泉くん?」
「はい大丈夫です、どうもありがとうございます。」
俺には聞かないんだな。にしてもまあハルヒも気づいたか、俺たち二人がそろって用事の理由なんてあれしかないからな。まあホントはすでに買ってあるが。
朝比奈さんはまったく気づいてないみたいだ。ほら、あごに人差し指を添えながら斜め上を向いてらっしゃる。空中に?マークが浮かんで見えるね。
「じゃあパーティーはどうしましょうか?どこかおいしい所にみんなで食べに行こうと思ってたんだけど、9時からじゃあディナーって訳にもいかないわね」
「それでしたら六本木ヒルズのホテルに泊まってみるのはいかがでしょう?」
「え、え、古泉くんそれどういうこと?」
あわてて赤くなりながらハルヒが聞いている。いったい何を想像したんだ?ちょっとかわいかったのはまた別の話だ。
「ホテルの1室を借りて皆で遊ぶのですよ。言ってみれば友達の家に泊まりに行くようなものです。夜景を見ながらのんびり春休みの計画を練るというのも乙なものでは無いでしょうか?
高いところからなら不思議も見つかるかも知れないですし、普段お世話になっている涼宮さんに感謝の意を込めて優雅に過ごしていただくという意味でも、SOS団春休み不思議発見祈願大感謝祭に相応しいのではないでしょうか?」
なるほど、ホテルに泊り込むとは言っていたが、なかなかどうして役者だな古泉。ハルヒの適当につけたパーティー名にうまい具合に結び付けやがった。
「すばらしいアイディアだわ古泉くん!さすがはSOS団副団長ね。それで行きましょう。きっとすごく楽しいに違いないわ!!!」
「ありがとうございます、では部屋の手配などは言い出した僕がやりますね。以前田丸さんのお手伝いで手配したことがありますので。
部屋が取れましたら携帯の方まで追って連絡ということで。涼宮さん、それに長門さんと朝比奈さんはお菓子や飲み物の手配をお願いしてよろしいでしょうか?」
「わかったわ古泉くん。ばっちりまかせといて!究極のお菓子をチョイスしてあげるわ、キョン覚悟はいい?」
「いったい何の覚悟だよ。ところで古泉、予算の方は大丈夫なのか?俺の哀れな宝くじは10万円に化けるので精一杯だぞ」
「大丈夫ですよ、スイート以外でしたら予算内です。それよりもマナー、特に服装が問題かもしれません。なにぶん大人社会に混じるわけですからね。
僕たち男性は無難にスーツで大丈夫ですが、女性の方が何を着るべきなのかは分かりかねます。森さんにでもアドバイスを頂けるといいのですが」
「えーっと、メイドさんの服とかじゃ駄目ですよね?どんな服がいいのかなぁ」
朝比奈さんならどんな服でも問題無しですよ。俺が保障します。
「じゃあせっかくだし今から3人で買いに行きましょう!古泉くん森さんの携帯教えて!
大人の服選びの極意を聞き出して、ばっちり決めていくわ。でもそうなるとあんまり時間無いわね。なんてったって3人分選ばなくっちゃいけないし。じゃあ今日はここで一旦解散。また9時にえーっと」
「地下鉄六本木駅の改札でどうでしょう?」
「うん、じゃあ六本木に集合。よし、有希、みくるちゃん急いで買いに行くわよ!」
「正直ここまでうまく行くとは思いませんでしたね。いやはやあなたの読みは完璧です。涼宮さんの行動をここまで的確に予想しコントロール出来るのは世界中探してもあなただけですよ」
古泉が褒めてんだか貶してんだか分からんことをほざいている。
「褒めているのですよ。いやはや機関の一員として喉から手が出るほどの才能です。いっそ機関に体験入会でもされてみてはいかがですか?」
「遠慮しとく」
俺と古泉はヒルズのホテルの一室で作戦の最終調整中だ。当初の予定では森さんから衣装を借りてくる予定だったがハルヒが買いに行くと言い出したので、別に止めることもあるまい、その通りにさせた。
パーティー開始が早すぎると不味いが、遅くなる分には問題ないしな。実際ハルヒの服選びのセンスはなかなかのもので、それはSOS団の日々の活動で証明済みだ。
もっとも朝比奈さんなら何を着てもベストドレッサー賞を取ってしまうほど似合ってしまうからだという説も有力だが。
女性陣が衣装を借りるのではなく買いに行くことになった代わりといっちゃ何だが、買出しは男性陣の担当となり俺と古泉はしこたまスナック菓子とジュース類を買い込んだ。
ハルヒの関心はすっかり服選びに向かったらしく、電話でそのこと伝えると『んじゃよろしくー』と言ってさっさと切ってしまった。
「ここまで来ればもう大丈夫ですね、きっと上手くいきますよ。あとは僕たちも存分に楽しみましょう。せっかくのパーティーですからね」
「一つ聞きたいんだがこの部屋はホントに10万以内なのか?」
なんとなく気になったので聞いてみる。部屋は広かったし、23階ということで景色もかなり遠くまで見渡せる。これで10万なら意外に安いものだ。
「いえ。この部屋はグランドスイートですので20万ほどです。でもまあ夏のセッティングに比べれば安いものですよ。クルーザーや館の建設などで数億ほど掛かりましたから」
「ああ、そうだな」
ハルヒを退屈させないためだけに見たことも無いような大金が動くわけか。まさに無駄遣いだな。
「ところで涼宮さんたちが来るまで暇つぶしにどうですか?」
古泉はそういってマグネット式のチェスを取り出した。
そんなやり取りをしている間に時間は9時40分、ようやくハルヒ達のお出ましだ。
「さあ思いっきり遊ぶわよ!」
まるで部室に入るかのように部屋にずかずか入ってきて、第一声がこれだ。大分待たされたわけだが、遅れてごめんなさいの一言もいえんのか?
「遅刻!罰金!」
と言おうとしてドアの方に目をやったが、俺の口からは何も出て行かなかった。なんというかあれだ、そうそう言葉をなくしたって奴だ。
当然だろ?SOS団自慢の女性陣がそれぞれ趣向の違った煌びやかなドレスを身にまとってるんだぜ?お釈迦様でも見とれるね、これは。
学校では頭の後ろの高い位置でポニーになっていたハルヒの髪は、今では少し低めの位置で一つにまとめられている。左耳の少し上にひまわりの飾り、耳には白い星のイヤリング、首にはこれまた白い十字架のネックレスをつけていた。
肩から胸の上までの部分が大きく開いている鮮やかな赤いドレス。右脇から左腰に向かって流れる、白い川のような模様がドレスの赤をいっそう際立てる。
腰には帯のようなものが巻かれているためスレンダーなハルヒの体型がよりいっそう強調され、いまさらながら『こいつこんな細かったんだ、いったいどこからあのバカ力が出てくるんだ』などど思った。
腰から下は真下にすらりと伸びるカーテンのようになっていて、裾からは深紅の靴のつま先が煮え隠れしている。おそらくハイヒールなのだろう、ドレスで腰の位置を高く見せているのもあってか、まるで外人のモデルのようなプロポーションだ。
化粧はしていないみたいだが、かえってハルヒらしい健康的な魅力が最大限生かされていた。
朝比奈さんは髪を後頭部でなにやら複雑な形にまとめていて、後ろから見たら花が咲いているように見えるだろう。
きらきら光るアイシャドウは、色白な朝比奈さんの肌とのコントラストがよく出ていて情熱的な紅の口紅とともに、なにやら大人の魅力をかもし出している。青い星のペンダント、薄い黄色のネックレス、どうやらハルヒと色違いみたいだ。
だがドレスはうって変わって黒基調。タートルネックのように首まですっぽり隠れているが、その代わりといわんばかりにノースリーブで、左胸の下からおへその辺りにかけていくつもの流れ星が流れているというデザインだ。
腰には金色のチェーンのベルト、朝比奈さん(大)がいつも着ているみたいなミニスカート。ひじから先は白いウォーマーを身に着けていた。赤い唇、服の黒、白い肌。普段のあのかわいい上級生の姿からは想像だにできないほど妖美な魅力満載である。
さあ最後は長門だ。長門のドレスはうすい紫で、ところどころに薄いピンクの紫陽花が咲いているというデザイン。形はワンピースに近いが、ワンピースほどゆったりとしておらず長門の細い線がくっきりと浮き上がっていた。
普段は正面から耳を隠しているもみ上げ部分は細い白の糸でぐるぐる巻きに束ねられ、あらわになった耳にはピンク色の星のイヤリング、首にもピンクの十字架のネックレスが掛かっている。
長門の透き通るように白いほほにはうすくベニが広げられており、まるで上気して顔を赤らめているようだ。
唇には光を反射してきらきら光る口紅が塗られていたが、塗られているのは唇の3分の1以下、ほんの申し訳程度の面積で、今にも口をつぐんでしまいそうな長門をよく表現していた。
触れたら折れてしまいそうなほど細い腰、幻想的な薄紫のドレス、病的な白い肌と、上気したほほ、消え入りそうな唇。今すぐ長門をやさしく抱きしめたくなった俺を責められる奴なんか居ないさ。
3人をたとえるなら、そうだな、ハルヒが春の高原に咲くひまわり、朝比奈さんが夜の闇に咲く薔薇、長門が立ちこめる霧の中に浮かぶコスモスって感じだ。うん、我ながらぴったりの例えだ。みんなにも見せてやりたいが、絵心の乏しい俺には無理な話だ。
「何鼻の下伸ばしてんのよバカキョン」
うるさい、余計なお世話だ。
「うふ、キョン君のエッチ」
朝比奈さんのそんなお姿を見たら誰でもこうなると思いますが。
「まあいいわ、とりあえず乾杯しましょ、みんなジュース持った?あ、待って。せっかくだからそこのグラス使いましょう。そっちのほうが雰囲気出るわ」
まあどう見てもワインかシャンパンを注ぐために用意されただろうグラスに、果汁100%オレンジジュースをつぐ。
「みんないい?じゃあSOS団の未来を祝って、かんぱーーい!」
それはまあ普通に楽しかった。
孫にも衣装とはよく言ったものだね、ハルヒもいつもよりずっと大人っぽくて綺麗だったし、朝比奈さんはもしかして朝比奈さん(大)と入れ替わったのかと錯覚するほど色っぽかったし、長門は謎めいた雰囲気が紫のドレスとあいまって宇宙人オーラ5割り増しだ。
ひとしきり遊んで俺が3人の姿を網膜にくっきり焼き付けた頃に、順番にシャワーを浴びようということになり、女性陣から一人ずつ浴びにいった。
風呂上りで寝巻きになった3人はさっきまでと違い年相応の顔で、ほんのりほてった顔とほかほか頭から昇る湯気のアクセントによって健康的なエネルギーを体いっぱいに広げていた。
ドレスも良かったけどやっぱりこっちの方が落ち着くのは、まだ俺がガキだからか?。
ちなみに一番最後にシャワーを浴びることになった俺を、ハルヒをはじめ朝比奈さん、よりによって長門までが覗きに来たのはなんなんだろうね。とめろよ!古泉!!!
そんなこんなで時間は過ぎ、今は、ふむ11時50分。そろそろだ、『用意は良いか?』俺は古泉に目配せする。『はい大丈夫です』よし抜かりは無いみたいだな。
ボーンボーンボーン、ぴよっ、ぴよっ、ぴよっ。
備えつきの振り子時計がひよこを吐き出しつつ12時の時を告げる。
「あらもうこんなじk」
「「ハッピーホワイトデイ!」」
ハルヒの呟きをさえぎって、俺と古泉の声がきれいにハモった。
そうこれが俺の反則的作戦だ。
ふあぁぁぁーーーーーーぁ
忌々しい坂道を登りながら俺は特大のあくびをした。そりゃそうだ、なんだかんだで2時過ぎまでしゃべってた挙句、着替え、鞄などを取りに全員ほぼ始発で家に帰ったからな。
2,3時間しか寝る時間はなかったし、あの3人がそばに居るのにすやすや眠れるほど俺は聖人君主じゃない。おかげでほとんど徹夜だ、眠くないわけが無い。
ホテルから出る辺りまではナチュラルハイってやつで元気だったが、家に着く頃にはぐったりモード、学校に着いたら泥のように眠るだろうことは疑う余地は無い。
それにしてもハルヒの顔は見ものだったな。俺と古泉のホワイトデーチョコを受け取った時、ハルヒは目を見開き口は半笑い、顔は真っ赤で眉を吊り上げるという、なんだかいろいろごちゃまぜな表情をした。まったく器用なもんだ。
「僕ら二人で皆さんを驚かせようと思って作戦を練りました。発案は彼ですけどね。僕は部屋や食べ物の手配などを担当しました」
古泉が作戦の裏話などをちらほら話しているうちに、複雑ハルヒは徐々に笑顔満開ハルヒに変身し俺は作戦成功を確信していった。それ以降、朝に始発で帰るまでハルヒは終始ご機嫌花盛りだった。
だが授業が始まる頃には、眠さ核爆発なのはハルヒも同じようで、谷口の話によると俺もハルヒも昼になるまでピクリともせず仲良くお休みになっていたらしい。
『二人して昨日は何やってたんだ?』なんていう谷口のニヤケ顔を適当にあしらいつつ昼を過ごし、5,6限もバッチリ睡眠学習した。
放課後になり、とりあえず部室に向かう。まぁどうせハルヒのことだから『今日は眠いから解散』てな感じで自分勝手に決めてしまうんだろうが、俺には大事な用事がまだ残ってるんでね。
「今日は眠いから解散。てゆうか徹夜なんてするもんじゃないわね。授業中ずっと寝てたから睡眠時間は十分なはずだけど全然寝足りないわ。キョンも試験前に徹夜とかしちゃだめよ。次の日一日無駄になるからまさに無駄よ」
まあ試験勉強で徹夜など試みたところで、何時の間にやらベッドですやすや眠っていたという記憶は多々あるが、団長様様たってのご忠告とあれば以後気をつけなければなるまい。
「んじゃみんなまた明日ね」
それで解散となった。
さあ、ここからが本当の戦いだ。俺は携帯を取り出し今別れたばかりの○○に電話をかけた。
さて分起点だ
『ハルヒ萌え』な人は
>>653 『朝比奈さん大好き』な人は
>>654 『長門かわいいよ長門』な人は
>>655 アンカーミスってたらすまん
思いっきりアンカーミスった、ちなみにこれはハルヒバージョンだ、是非お気に入りキャラの結末から見てくれ
「ハルヒか?」
「んー、何?キョン、私今すごく眠いわ」
「ああ、すまん。俺も眠いんだが、ちょいとお前に用が有ってな。今から教室で話せないか?」
「うーん、明日にしない?今話を聞いてもきっと忘れるちゃうわよ」
「あー、できるだけ急ぎたいんだ(てか今日じゃないと駄目なんだけどな)だから頼む」
「もう、仕方ないわね、じゃあ今から行くけど高くつくわよ?なにせ団長様を呼び出すんだから。すごく眠りたがってるのにもかかわらず」
「わかったわかった。じゃあ教室で」
ガラガラガラ
教室の扉を開け、ハルヒが入ってくる。俺がいつもの席に座っているのを見つけると、ハルヒはスタスタと歩いてきて俺の後ろの自分の席に座り、いきなり机に突っ伏した。
「で、話ってなんなわけ?」
今日の授業中に爆睡していた時と同じ体勢でだるそうに聞いてくる。
「話というより渡したいものがあるんだ」
そう言って俺は水玉模様の包装紙に包まれた、ペンケースほどの箱でハルヒの頭を軽くノックした。
「なによ、まったく」
めんどくさそうに顔を上げたハルヒに面と向かって俺は言った。
「ホワイトデーのプレゼントだ」
「へ?」
顔中に?マークを貼っ付けながらポカンと口を開けているハルヒに続けて言ってやる。
「今日が何日か忘れたのか?ホワイトデーだよホワイトデー。バレンタインチョコ貰ったからにはちゃんと返さなきゃな」
「え、でも朝にくれたんじゃ………」
「は?何言ってるんだ?俺がホワイトデーのプレゼントを渡すのは今日は今が最初だぞ?ついでに言うと最後だ」
「キョンの方こそ、何言ってるの?今朝チョコくれたじゃない、SOS団パーティーで、古泉くんと一緒に、有希やみくるちゃんにも………」
呆けたままのハルヒに、俺はまるで古泉のごとくわざとらしく
「あー、それは昨日だ。まあ昨日の23時55分だったからお前も勘違いしたんだな、きっと」
我ながら意地が悪い笑いを浮かべていたことだろう。古泉を超えたね、間違いない。
事態を飲み込み始めたハルヒは徐々に表情を変えていく。昨日と違って眠いため頭が回ってないのか、いつもならコロコロ変わるこいつの顔も今はゆっくりお着替え中だ。
ふむ、驚いた顔からうれしそうな笑顔に、次にはっとなって顔中どころか耳まで赤くしつつ眉毛を吊り上げる。なるほど、昨日はこうして怪しげな顔を作ったわけね。昨日よりゆでダコ度は遥かに上がってるけどな。
「お前だけにプレゼントしたのがそんなにうれしかったか?」
「ななな、何言ってるのよバカキョン。私はSOS団の団長なのよ?特別なのは当然じゃない!べ、別にうれしくなんか無いわよ。だって当然なんだから!!!」
「耳まで真っ赤だぞ、ゆでダコハルヒ」
「うるさい!うるさいうるさいうるさーーーい!!団長に向かってタコとは何よタコとは!キョン、あんたなんか死刑よ、死刑!いやそんなの生易しいわ、貼り付け獄門の刑よ!
いやいやそれでも全然なまっちょろいわ、あなたにはもっとふさわしい地獄の罰を与えてあげる。明日までにバッチリ考えてきてあげるんだから、キョン、覚悟しなさい!」
「わかったわかった」
「なによ、ふんっだ」
ひとしきり叫ぶとハルヒはドスドスと教室から出て行ってしまった。もちろん俺のプレゼントはしっかり持って。まったく、人に物をもらったら『ありがとう』って言うように親にしつけられなかったのかね。
でもまあ、あの茹で上がりっぷりを見れば言葉は要らないってやつかもな。
次の朝、俺が教室のドアを開けると、ハルヒが頬杖をつきながらぼーっと外を眺めていた。髪はポニーテール。それを結ぶのはいつもの黄色いリボンとは違う鮮やかな赤いリボン。
ふふ、思った通りハルヒに赤いリボンは良く似合う。
自分の席に着いて振り向きつつ
「ハルヒ」
「なに?」
窓の外から視線を外さないハルヒに、俺は言ってやった。
「似合ってるぞ」
Fin
これは朝比奈さんバージョンだ、是非お気に入りキャラの結末から見てくれ
「もしもし朝比奈さんですか?」
「はい、そうです。キョン君どうかしましたか?」
「あの、実はですね、少しお話したいことがあるんですけど今から会って話せますか?」
「えーっと、大丈夫ですけど、どんな話ですか?涼宮さんがらみですか?」
「いえ、この件に関してはハルヒは無関係です」
「はあ、そうなんですか」
「そうなんです」
「じゃあ、どんな話なんでしょう?」
「あー、その、つまりですね、いや、会ってから話しますよ」
「そうですか、私今部室で着替えてる途中なんで、そのまま部室で待ってますね」
「あ、はい。どうもすみません」
「いえ、キョン君にはいつもお世話になってますから。じゃあまた後で」
コンコン
俺は部室のドアをノックする。今、もし万が一にも朝比奈さんの着替えシーンに遭遇してしまったら、気まずすぎて後の話が続かなくなるじゃないか。
「はーい」
朝比奈さんの声をしっかり確認してから俺はガラガラと扉を開けた。うむ、ちゃんと制服に着替え終わっている。
「突然呼び出しちゃってすいません」
「いえー、ところでお話って何でしょう?あ、その前にお茶でもいかがですか?」
そう言って朝比奈さんはお茶を入れてくれる。
ずずーー
朝比奈さんはお茶を入れ終えるといつものポジション、つまり俺の向かいの席に腰掛けた。お茶を半分ほど飲んで一息ついたころ、俺は単刀直入に切り出した。
いや、まあ、じらして朝比奈さんの反応を見ても良かったんだが、このお方は永久に気づかない恐れもあるからな。
「実は朝比奈さんだけにはチョコじゃないプレゼントを渡したかったんです」
ゴルフボールがギリギリ入るか入らないかぐらいの箱を机に差し出す。水色のリボンつきの小箱に目が釘付けの朝比奈さんは少し赤くなりながら
「え、キョン君、それって、あの」
「いわゆる本命ってやつですよ。朝比奈さんにはチョコだけじゃなくこれも受け取って欲しいんです」
「え、キョン君、そんな、前に言ったでしょ?私はいつか未来に帰らなきゃいけないって。それにこんなこと涼宮さんが知ったら、また」
「朝比奈さん」
「は、はい」
俺は椅子から立ち上がり、ぐるっとまわって朝比奈さんの隣に腰掛ける。
「未来に帰るのはいつですか?」
「え、そ、それは私も知らされて………。でも、もし知っていてもきっと禁則事項だと………」
オロオロと目を泳がせながら答える朝比奈さん。うーんかわいい。でも今はそんな朝比奈さんをほほえましく見ている余裕なんてない。こっちも真剣でいっぱいいっぱいだからな。
「未来なんていい加減なもんです、人が何時離れ離れになるかなんて誰にも分からない。もしかしたら明日にでも事故で離れ離れになってしまうかもしれない。でも分からないからこそ一瞬一瞬を大切にしてすごしていくんだと思います。
朝比奈さんがいつか未来に帰らないといけないのは俺にもわかってます。でもそれだけの理由で自分の気持ちを殺す理由になるんですか?朝比奈さんはそれでいいんですか?」
「わ、わたしは、でも」
次第にうつむき加減になっていく朝比奈さんの顔はもう見えない。が、声が震えている、きっとすごく迷っているんだろう。
「俺のやっていることはもしかしたら世界を破滅に追いやる行為なのかもしれません。でもかまわない。どんなことになろうとも、たとえハルヒと争うことになったとしてもかまわない。朝比奈さんが未来に帰ることになってもかまうもんか。
どんなことをしても朝比奈さんを見付け会いに行きます」
「キョン君………、お願い、やめて」
朝比奈さんのスカートに涙の粒がぽつぽつと落ちていく。
俺は朝比奈さんの頭を優しく胸に抱きかかえる。ひっとびくついた朝比奈さんは最初少し抵抗したが、すぐに肩の力を抜いて俺のワイシャツをぬらしだした。
「朝比奈さんが任務でこの時代に来ていたとしても、そうだとしてもそれ以前に朝比奈さんは一人の人間なんですよ?自分の心を持つ女の子なんです」
「ダメ、もうやめて」
「朝比奈さん」
「ダメ、ダメ」
「大好きです」
「ダメ、うう、ひっく、うぇぇぇ、ダm、うっく、えぅぅ、ダメ」
朝比奈さんは声を上げて泣き出した。
「ダメキョン君、キョン君、私だってキョン君のこと、ひっく、ダメぅぅ、でも、でも私は、うぅ、未来に、ふえぇぇぇ」
ダメ、ダメ、ダメ。泣きながら力なくつぶやく朝比奈さんの頭を撫でながら、俺はプレゼントの小箱を開ける。
「朝比奈さん」
やさしく呼びかけて、顎に手を添える。ゆっくり朝比奈さんの顔を自分の方に向けると朝比奈さんの目はウサギよりも真っ赤で湧き水のように涙が溢れ出していた。
「運命が二人を分かつまで」
彼女の左手をそっと手に取る。
「あなたを愛することを神に誓います」
そっと薬指にはめる。
Fin
これは長門バージョンだ、間違えた人は是非お気に入りのキャラの結末を先に見て欲しい
ちなみに消失長門が出るから、萌え死に注意してくれ
「あー長門か?」
「………」
うん、長門だ。
「ちょっと話があるんだが今から暇か?」
「特に急を要する指令は出ていない」
「じゃあお前のマンションの近くの公園のいつものベンチで話せるか?」
「話せる」
「じゃあ俺一度家に帰るから、そうだな、30分後にベンチで大丈夫か?」
「了解した」
「じゃあまた後でな」
「………待って」
俺が電話を切ろうとした瞬間、めずらしく長門が戸惑うような声で言ってきた。
「ん、どうした?なにか用事でもあったか?」
「………現在の気温は5℃、今日はこれからさらに冷え込むと考えられる。あなたは昨日寝不足で体力および免疫能力が低下している。外に長時間居るのは危険。だから………」
「だから?」
しばらくの沈黙のあと、長門は呟いた。
「話なら私の家ですることを強く推奨する。」
ずずずずず
相変わらず殺風景な部屋で俺は長門に出されたお茶を飲んでいる。
コクコクコク
長門も飲んでいるようだ。どうでもいいがその飲み方だと熱くないのか?
「問題ない」
そうか、まあ長門だしな。ところでカーテンとかは買わないのか?あった方が良いと思うぞ?
「………そう」
いつまでもコタツだけじゃさびしいだろ。
「………」
本棚とかは無いのか?
「………」すっと寝室の方を指差す。
そうか本棚はあるのか。
…………………………………………
いや、確かに俺は長門の無表情鑑定に関しては誰よりも自信があるし、普段部室とかで長門と2人っきりっていうのも慣れっこだ。しかしだな、この状況で落ち着いていられるわけがない。あーもう、どうやって切り出そうか。そうだ!これなら自然に、
「昨日は楽しかったか?」
「………」コクッ、5ミリほどうなずく。そうか5ミリか、長門的には相当楽しかったみたいだな。
「そうか、それは良かった。チョコはもう空けたか?」
「まだ未開封」
「それならちょうど良い、チョコ返してくれないか?あれはなんと言うか、間違いなんだ。」
「!!!」
長門が少し驚いたように顔を上げ、うらめしそうに俺を見つめた。
「……………そう」
悲しそうにうつむくと、俺に聞こえるかどうかの声で呟く。
そんな顔をされるとなんだか心が痛むんだが………。チョコもらったのがそんなにうれしかったのか?だとしたら光栄だな、長門に喜んでもらえるなら俺の苦労も報われるってもんだ。
「代わりにこれを受け取って欲しいんだ」
そう言いながら俺は表にこう書かれた袋をコタツの上に差し出した。
『Happy White Day』
うつむいていた長門は目だけを俺の差し出した袋に向け、一度さらに深くうつむいた後にゆっくり顔を上げた。事態が飲み込めていないといった不安そうに迷う瞳でこちらを見つめている。
「長門にはいつも世話になってるからな。チョコじゃなくてもっと形に残るものをプレゼントしたかったんだ。迷惑だったか?」
「………」
長い沈黙。長門の表情はただでさえ分かりにくいのに、うれしいのか驚いたのか恥ずかしいのかなにやら複雑なものが入り混じっているようで、実際何を思ってるんだろうね、まったく分からなかった。
沈黙に飽きたのか、長門は小さく、しかしハッキリとこう言った。
「ありがとう」
去年のクリスマス前、世界が改変された時の長門のように、小さく微笑んだように見えたのは俺の目の錯覚だったのだろうか?長門のみぞ知るって奴だな。
俺がプレゼントしたスカーフを早速装備した長門は、現在台所でお片づけ中だ。長門が何をもらったら喜ぶか、全然見当がつかなかったが、有希にちなんで雪の結晶の幾何学模様が描かれたスカーフをどうやら気に入ってくれたみたいだ。
鼻歌でも聞こえてきそうな勢いだね。
さっきの長門の微笑み(?)をなんと無しに頭の中で遊ばせていると、ふとある疑問が浮かび上がってきた。俺は台所に向かって声をかけてみる。
「なあ、長門」
「なに?」
台所から声が返ってくる。
「あの世界、クリスマス前にお前が作り出した世界が長門の願望だったとして、だとしてだ、お前の中にあいつ、つまりもう一人の長門は、その、今でも居るのか?」
「………」
カチャリ
お茶を置いた音がした後、音も無く長門は台所からリビングへと戻ってくる。うつむき今にも泣き出しそうな顔で。『めがねをかけた長門』が。
「ずっと………、聞きたかったことがあるの」
「な、なんだ?」
ぶっきらぼうに答えた俺は内心ひどく動揺していた。何気なく聞いた質問からこんな展開になるとはまさに藪蛇だ。目の前に居るのはどうやら消失長門だ。俺の質問の答えはばっちり分かったが、その代わりにとんでもない事態になるとは。
「あなたは向こうの世界ではなくこの世界を選んだ。あなたのそばに私じゃなくて涼宮さんが居る日常を。私は選んでもらえなかった。私は、どうして………、あなたを、………私じゃ………」
最後は声にならなかった。
「長門」
俺は優しく語り掛ける。さっきの動揺なんてもう忘れたね。なんだ長門の聞きたかったことはそんなことか。だったら何も迷うことは無い。なにせ俺があの時思っていたことをそのまま言えばいいんだからな。
俺はリビングの入り口に立っている長門にゆっくりと近づき、今にも消え入りそうな長門の髪を、くしゃくしゃっとなでてやった。
「心配するな長門。俺はお前に全幅の信頼を寄せてるんだぜ?確かにあの世界の長門もそれはそれでかわいかったさ。でもな長門、俺はお前に、めがねっ子の長門じゃなくて宇宙人の長門に、あんなふうに笑えるようになって欲しいんだ。
おまえ自身では気づいてないかもしれないが、この1年で俺もお前も変わった。そう、ちゃんと成長してるんだ。そしてあの世界を作ったお前なら、いつかきっと自然に笑えるようになると信じてる。
だからこそ俺は迷い無くこっちに戻ってきたんだ。別にお前を選ばなかった訳じゃない。何も心配する必要なんて無いぜ長門」
俺に頭をなでられながらうつむいていた長門は、ゆっくりと俺の顔に涙のたまった瞳を向けてくる。
「……………そう」
つぶやいた長門は、今度こそ俺の見間違いじゃない、小さく、でもとても幸せそうに微笑んだ。
Fin
660 :
有希っ子:2007/01/21(日) 13:44:42 ID:zfQYpRvP
以上です
エロ展開は書く気は無いので
続くことは無いと思います
・田丸
・孫にも衣装
はまだ許せても
・岡田
は可哀想だろ。ちょっと。
あと、長門の部屋には「陰謀」の段階で
カーテンが追加されている描写がある。
あーなんだ、それだその……とりあえずお疲れ。
GJ!
・・・『ハルヒ』の舞台って確か兵g・・・ああすまん気にしないでくれ、ただの独り言だから。
面白かったと俺は思う。乙。
>>660 ほんとに初めてか疑わしいぐらいには面白かった、GJ
でも揚げ足を取られるようなミスが若干多いのは気になった
がんばってると思うが、バレンダインデーたしか月曜日じゃなかったか?
聖人君主って物言い流行ってるの?
あと物理的に読みづらい。内容は良かったけど
適度な空行と読点て大事よね
669 :
有希っ子:2007/01/21(日) 16:54:52 ID:zfQYpRvP
>>661 ご指摘ありがとうございます
カーテン追加されてたんですね
>>665 何度か読み直したんですけどやっぱりミスはありました、、、
次回からは減らせるようにします
>>667 ホワイトデーですけど?3月14日は水曜だと思いましたが
>>668 ワードで作ったのですが、いざ書き込んでみると
1行が長すぎて書き込めなかったり
行間に隙間が無かったりと
1つ目を書き込んだ瞬間自分でも読みにくいと思いました
次回は空行とかもうまく使えるようにします
アンカー分岐は失敗したけど狙いとしてはよかった
時間軸とかは投下前に下調べが必要だな
terapadは前に使ってたけど、一回JWORD入ったことあるから
俺はサクラエディタにしたかな・・・
>>669 『陰謀』でバレンタインデーが月曜日だというのは既定事項なので、
ホワイトデーは月曜日か火曜日になるということなんだが。
今年、2007年のホワイトデーは水曜日だけど。
そっちを基準にしたのかな。
というか憂鬱のGW明けとか、消失とか、
日、曜日が統一されてないって話を聞いた気がする。
だから、20XX年が舞台かどうかわからんとか。うろおぼえだが。
陰謀以外にも日にち特定できる描写があって、それとずれるんだったような……。
そのせいで土曜日に学校行くことになっちゃったりとか。
細かいことは気にしないが吉。
決して条件が合うことはないんだよね。小説の曜日設定と現実のカレンダー。
だからそのあたりはあまり気にしなくていいと思う。
たとえば夏休み明けの9/1は、消失の条件に合う2002年だと日曜日になってしまう。
かといってエンドレスエイトの重要ポイントだから、どちらもずらすわけにはいかない。
>>637 アニメだと憂鬱2の冒頭、SOS団結成の次の朝くらい?で「ねえキョン」って言ってる
質問なんだけど、スレをまたいで投下するっていうのはNGなんだよね?
次スレまでかかるってこと?
>>679 ちゃんと完結させてくれるのであればどうでもいいけど。エロパロ保管庫に保管されるから
過去ログ化されても問題ないし。
>>680 そうです。こつこつ書いてたら長くなりすぎてて。
>>682 だめとは書いてないね。
てかかなりのボリュームだなw
次スレ立てたらいいんでないの? そこに1から投下すれば。
で、前スレ(ここ)がまだ埋まってないって一応誘導しておけばいいかと。
たぶん大丈夫かと
あと、1000レス&500KBの制限のため
あと、317レス&117KBですのでお気をつけてください。
埋めるにはかなり残ってるけどなw
答えてくれてありがとう。
さすがに新スレにはまだ早すぎるだろうし、混乱する人がいるといけないから、やっぱこっちが埋まるの待つことにするよ。
参考なまでに、北高を出ようで約2450行、135KB、41レス前後だ
次スレに長編予告ktkr
ksk
kskておまw
しかし大作はひさびさですね。
692 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/21(日) 21:10:37 ID:CLGdJSKN
古泉一子
イツキの双子の妹、イツキとよく似てるけれど、
兄と違うのは一子は本物の超能力者である、たとえば念力、透視、テレパシー、瞬間移動、予知などができる
一子は兄を代わりにSOS団に入部、そしていろいろの事件があった
そしてエロエロの事件もあった
...という電波を受信した。
大作ktkr
とりあえず、次のスレは
【涼宮ハルヒ】谷川流 the 38章【学校を出よう!】
忘れないように気をつけよう。
別にスレ跨いでも問題ないと思うよ、一気に埋めたりしなければ。
なので前後編とかでの投下を期待。
宇宙戦隊TFEIレンジャー って感じのssってある?
ksk
さすがに300レスkskで埋めるのは無理がある
じゃあwktkで
300レスあるなら投下されてもよろしかったのでは?
113kb以上かもしれない
そもそもスレを跨いではいけないなんて誰も言ってないし
そんなルールもないわけで。
あらかじめ宣言してるならスレ跨いでも問題なくね?
どうせ後でまとめに載る時は一緒なんだし
跨ぐのとかは、埋まりそうになったら次スレ立て+誘導してくれれば問題はないと思います。
もういいよ。 >703 が全てだ。つーことで、スレ跨ぎ云々レスよりSS投下を望む。
すいません。見当違いな質問してしまったみたいで。
埋めない程度にこっちに投下してから次スレを立てて、続きはそこに投下します。
鶴屋さん純愛もの。
42レスぐらいです。
エロくないので、ご注意を。
「やあやあキョンくんっ、遅くなって悪かったね!」
人もまばらな下駄箱の前で用務員に植えられた観葉植物のように佇んでいた俺の目の前に、待ち人が片手を振り上げながら騒々しくやってきた。
「いやー、うちの担任ってば話が長くて困っちゃうよ。自分の放談が恋人達の放課後を奪ってるって自覚がまるで無いんだもんなっ」
靴を履き替えながら、ちっとも不愉快では無さそうに文句を言う鶴屋さんを尻目に、俺はわたわたと周囲を見渡すと、
「あの、鶴屋さん。人前で恋人がどうとか言うのは……」
「あり、恥ずかしい? キョンくん、相変わらずシャイだねぇ」
いや、至って普通の反応だと思いますけど。
自身のノーマルさを必死でアピールしようとする俺の話も聞かず、つま先で地面をタップしていた鶴屋さんは、
「まぁまぁ、そういうところもお姉さんは好きだからさっ」
白い犬歯を丸く光らせ、空いた方の手で俺の手を握り締めるや否や、スキップでもするかのように歩き始めた。周囲の視線に媚びないアレグロなリズムがこっちにも伝わってくる。
しかし、足に合わせて揺れる髪の間から覗く耳は微妙に赤かった。
あれだけ人に言っておきながら、自分でもちょっと恥ずかしいのだ、この人は。
そういう不公平さがこちらこそ大好きなのだが、俺まで公序良俗を乱す行為に走るわけにもいかず、モラルハザードを憂う紳士の表情を崩さないまま彼女の横に並ぶ。ヒヒイロカネばりの自制心。
しかしそんな自制心も、春の傍若無人な風に踊らされているスカートを慌てて抑えようとする仕草を見るにつれ、だんだんと壁際に追いやられてしまうから困りもの。
こうやって少年の頃のイノセンスは喪われていくんだろうか。
それ以上ジェントルステータスを引き下げるわけにもいかない俺は、茹ですぎたシナチクみたいに弛んだ理性に鞭打って、生足の眩しさから逃げるように視線を彷徨わせる。
校門の陰に、つぼみが芽吹こうとしている桜の木が見えた。
「っとと! もう、キョンくん、急に立ち止まらないでおくれよっ」
「……すいません。ちょい靴紐が緩んでるみたいで」
握った方の手を解かないまま鞄を下ろして、緩んでいるような気がしないでもない靴紐を、しっかりと結び直す。
体を起こすと、鶴屋さんも校門の隅に目を向けていた。俺の視線を辿ったのだろう。後ろめたいものを覗かれたようで、少しばつが悪い。
「あーあ、もうすぐあたしも三年になっちゃうなぁ。受験戦争は目の前って感じ」
「大丈夫ですよ。鶴屋さん、成績いいんだから。どこにだって、行きたいとこに行けます」
といっても、名家のお嬢様なだけに、行く所はすでに決められているのかもしれない。
「うーん、そういうのとは違くてさっ、ほら、補習とか何とかで時間とられるわけ」
鶴屋さんは鞄を片手で振り回しながら、俺の方を見てニヤリと笑い、
「キョンくんは寂しくないのかなっ?」
「そういえば、学食のすき焼き定食もう終売らしいですね。春だなー」
「……すげーあからさまにごまかしたね」
俺は答える代わりに、繋いだ手に力を込めた。すぐに握り返される。以心伝心とまではいかないが、これぐらいでわかることもあるのだ。
「ま、キョンくんはまず自分の進級の事を考えないといけないよっ」
おっしゃるとおりです。
かれこれ三ヶ月前の冬。俺は鶴屋さんに自分の想いを告白した。
どうしてかと聞かれれば、情景にも似た先輩への気持ちが次第に具体化して即物的な想いになったというか、純粋な感謝の気持ちが積もりに積もっていつの間にやら愛情になっていたというか、とにかく気持ち的にせっぱつまってしまったからだ。
だからって別に若さゆえの暴走ってわけじゃないぜ。これでも死ぬほど悩んで決めたんだ。危うく知恵熱を出すところだった。
告白すると決めたら決めたで、直接会って言わなくちゃならないわけだから、場所はどこがいいとか、時期はいつがいいとか、やっぱ雰囲気的に夜がいいんだろうかとか、足りない頭で必死に考えた。
そして、十二月のある日。
さり気なさを装いつつも割とあからさまに鶴屋さんの予定を聞きだし、夜から家族と予定があるから夕方なら空いてると言われれば噛みまくりながら夕方を予約し、その日はやってきた。
雪も降らずただ暗いだけの日、学校の近くの公園というこれまたベタな場所に現れた鶴屋さんに向かって俺が何と言ったのかは、悪いが秘密だ。思い出すと舌を噛み切りたくなるからな。
ただ、告白なんて思い切った事をするのは生まれて初めての経験であり、気分はファンタジー物のドラゴンに挑む推理小説のエキストラみたいな感じだったことは伝えておく。
被害者になるか、それともそのままフェードアウトかの二者択一である。
しかし、元々面倒見の良い先輩として何かと俺の世話を焼いてくれていた鶴屋さんは、いつもみたくカンカン照りの元気な語調で、
「こちらこそよろしく!」
力強く答えながら、俺の胸に飛び込んでいらっしゃった。その時の着膨れした感触を、人生で最良の瞬間として脳裏に焼き付けたのは言うまでも無いだろう。
それからというもの、鶴屋さんは周囲に構わず俺への好意をあっけらかんと表現しまくり、その勢いたるや、ひょっとしたら同情されてるだけなんじゃなかろうかという俺の密かな悩みを粉砕機にかけて余りあるものだった。
代わりに一部の男子からは羨望と恨みが絶妙にミックスされて吸血鬼とかにも効きそうな視線の弾丸を浴びせられることも多々あったのだが、それはまあ有名税というか幸せ税というか、すまんな皆って感じだ。
もっとも、底の知れないこの上級生のことだから、そんな行動も含めて同情なのかもしれない、などと失礼な考えを抱かないでもない。なんせ、相手が俺なんだし。
天秤を用いるまでもなく釣り合っていないのは明白だろう。
しかし、それならそれで別にいいとも思う。こっちは大人しく手玉に乗り続けるだけさ。どっちにしろ、今が幸せであることに変わりは無いんだからな。
とにかく俺は、一般的に言う所の恋人とか彼氏彼女とか、そういった照れくさい関係を鶴屋さんと結ぶことに成功したのである。
少なくとも、靴紐よりは固く。
「うはー、めっさあったけー」
今日は朝から、春を目の前にしたとは思えないほどの寒気が電柱を薙ぎ倒さんばかりの勢いで吹き荒れていて、ようするに極寒だった。
しかしだからと言って、休日の人通りも多い駅前で後ろから抱きついてくるのはいかがなものか。
「やっぱこういう時は人肌が一番だよっ! ぽかぽかでしかも省エネ!」
頚動脈も含めがっちりと決められた両腕のせいで、俺はもうすぐ冷たくなりそうだった。行き過ぎた省エネ。このまま死んだら自縛霊となって子泣き爺的なポジションについてしまうだろう。
いよいよ視線が定まらなくなってきた頃、妖怪図鑑に掲載されそうになっている俺に気づいたのか、鶴屋さんは首に回した手を解いてぴょんと地面に降り立つと、
「あっはははっ! ごめんごめん、やりすぎたっさっ。乙女心の暴走にょろ」
乙女心は暴走すると首に絡みつくらしい。なるほど、サスペンスに女性絡みの話が多いわけだ。命の危機をビンビン感じるぜ。
しかし、少し咳をした途端に、
「わわっ、大丈夫かいっ? ほんとに首絞まっちゃってた?」
心配そうに瞼を浮かせて、背中をさすってくれる。打って変わってこの優しさ。正に魔性である。
俺はすっかりルートヴィヒ一世に同情したい気分になりながら、ちょっと大げさにしていた咳を止め、
「……死ぬかと思いましたよ」
割とマジで。
鶴屋さんは明後日の方向に黒目をやりながら、ごめんごめん、と頭を掻いている。冬物らしいブラウンのコートの上で、手入れに何時間もかかりそうな髪が毛先をふわふわと揺らした。
しかしすぐに目を細め、こちらにトトっとやってくるなり、俺の右腕にしがみつくと、
「さ、今日も元気に行ってみよぅ!」
言葉どおり元気な声に促されると、俺はそれ以上責める事もできず、苦笑いしながら人ごみの中を歩きはじめた。
行くと言っても、特に目的地は決めていなかった。ただ一緒にぶらぶらしようという暇な学生らしいお出かけプランである。
情けないことだが、俺はお洒落なデートスポットにご案内できるような甲斐性なんてまるで持っちゃいないし、できてもせいぜい雑誌の企画をなぞるぐらいのもんだからな。無理しても、逆にみっともなくなるのがオチだ。
それに鶴屋さんと一緒なら、どんな場所でもかなり楽しめる。なんせ絶対スベりそうな冗談でも爆笑してくれるんだ。自然と会話も盛り上がるってもんさ。
それでも俺は密かに、二人でいつか旅行にでも、なんて妄想していたりした。そのためにちょくちょくバイトをしているのだ。
「あ、キョンくん見て見て! あのマネキンのポーズわけわんねっ! どう見ても稲刈りしてるようにしか見えないよっ」
ミレーも真っ青の斬新な面白ポイントを発見してケタケタ笑う鶴屋さん。
一人で見たら頬がピクリとも動かないであろう黒塗りのマネキンをガラスの奥に認めながら、俺も自然に笑ってしまう。
世は全てこともなし。
そのままフラフラと街中を彷徨い続け、気づけば時刻は夜の六時。
鶴屋さんの笑顔印潤滑油のおかげで地球も回りを良くしたのか、時間が過ぎるのはあっという間だった。
今月に入って暗くなる時間が繰り上がってきたとはいえ、さすがにもう太陽は見えない。
俺は駐輪所に止めていた自転車に鶴屋さんを乗せ、古風な屋敷の前まで送り届けた。
スタンドを立てると、荷台の鶴屋さんは葉っぱみたくふわりと着地し、
「ささっ、キョンくん。たまにはうちに上がっていったらどうかなっ」
「それは遠慮しときます」
食い気味で遠慮する俺を見て、不服そうに唇を尖らせる。
別に理由も無く遠慮しているわけでなく、以前一度お言葉に甘えさせていただいた時のことがトラウマになっているのだ。
竜宮城もかくやといったおもてなしを受け、ついでに甕に入れられた高そうな酒も飲まされ、べろんべろんになった末に黒塗りのベンツで自宅にパック送便された俺のみじめな気持ちがわかるか?
あの時、お父様がいらっしゃらなかったことだけが唯一の救いだ。あんな状態で娘の恋人だと知られたら、翌日海岸沿いに謎の袋が一つ打ち上げられた事だろう。
「おやっさんはそんな物騒な人じゃないよっ! むしろ、キョンくんのこと気に入ってくれそうなんだけどなー」
「ちゃんとした日に、改めてお伺いさせてください」
せめて制服を着てる時に。
鶴屋さんは文句有り気に俺の顔を下から覗きこんでいたが、何か思いついたように目を光らせると、
「じゃ、お別れのちゅーをしておくれっ」
なんてことを言いながら、未知の概念に対しATMを前にしたネアンデルタール人のような戸惑いを抱いている俺に向かって、一歩踏み出してくる。角質層まで見えちまいそうな距離だ。
俺は錯雑たる心中を落ち着かせながら、
「い、いやー、さすがにそれは……」
家の前だし、もし誰かに見つかったら命に関わるような気がしないでもない。
しかし無情にも、
「おっ? 断っちゃっていいのかな? ここであたしが声を上げれば、キョンくんは明日シベリア海上にお引越しさせられることになるにょろよ」
完全に脅迫である。というか、やっぱりそっち系なのか。顔に傷のある殺し屋とかいるのか。
竦み上がる俺をじっと見て、そして、それだけで満足したかのように鶴屋さんは一歩離れる。
「うそうそ、ほんの冗談さっ。無理矢理そんなことするような趣味は、さすがのあたしもとんとご縁が無いもんでっ」
無理矢理も何も、こっちだってしたいのは死ぬほどしたいのだが、それをやってしまうと、色々と張り詰めていたものが切れてしまいそうで、ちょっと怖かったりもするのだ。
結構慎重派なのさ、俺は。言い換えればただのビビリだけどな。
でも、好きな人に恥を欠かせるほどビビリってわけじゃない。そういうのはもう卒業する頃合だろう。きっと。
離れた一歩分、俺は近づき、細い肩に手を置いた。
そんなことをされるとは思ってもみなかったのか、電流でも浴びせられたように飛び上がった鶴屋さんは、何か言い訳するかのように口をもごもご動かすと、そっと瞼を閉じた。
向けられる静かな表情は、昼間とまるで印象が違う。これじゃ箱入りのお嬢様だ。
よく考えたら当然のことを思い浮かべ、爆発しそうな血管の音を聞きながら顔を近づけていく。
そして、少し震える唇、の少し横に軽く口付けた。本当に陶器みたくツルツルなのに、柔らかいのは何か不思議だ。
一次的接触を維持したまま、きっかり二秒後。
俺が断腸の思いで顔を離すなり、大きな目をぱっちりと開いた鶴屋さんは、少しがっかりしたかのように口角を下げ、
「なぁんだ。ほっぺたかぁ……」
そんなことを言われると、本当にどうにかなってしまいたい気分になる。綱渡りの理性。
「ほとんど唇だったじゃないですか」
木工用ボンドで固められたように離しがたい肩から手を引き抜きつつ言い訳すると、鶴屋さんは自分の唇の辺りを撫で、顔を赤らめて、へへっと笑い、
「また明日、学校でねっ!」
それだけ残して、門の横の勝手口に飛び込んでしまった。鉄と木材が打ち鳴らされ、無機質な筈の錠の落ちる音がやけに生き生きと聞こえてくる。
俺は急に冷たくなった手をポケットに入れたまま、ぼんやりと木造の屋敷を眺めていた。
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後ろに気を使う必要もなくなり、運動がてらの全速力で鶴屋邸から帰宅して家の前にチャリを止めた俺は、玄関に向かう前に、さすがに汗ばんできた体を少し冷やそうと、ジャケットを脱いでその場に座り込んだ。
息を整えながらも頭をよぎるのは、さっき触れたばかりの鶴屋さんの感触。
口が三角定規を突っ込まれたかのような形に固定されているのが、自分でもよくわかる。はたから見れば変質者そのものだろう。即時逮捕は免れない。
それでもニヤつきが取れないまま、しばらくそうしていると、不意に、妙に落ち着かない感覚を覚えた。
冷えた風にまじって、誰かの視線がこちらに向けられているような、そんな感じ。
もちろん俺は特別な修行を積んだわけでもなく、人の気配なんざさっぱり読めないんだが、それでも妙な感覚を覚えた時は、十回に一回ぐらいの確率で誰かがこっちを見てたりする。
要するにほとんど当てにならないわけだが、それでも気になるもんは気になるんだ。
うちには飴玉一つで外人にだって素直について行きそうな奴が一匹いるからな。安全確認を怠るわけにはいかない。
俺は立ち上がると、道路が交差する見晴らしのいい一角に小走りで向かい、辺りを見回す。
まだそこらの家の明かりは爛々と灯っており、どこにでもありそうな平穏な住宅街なのだが、染みのような暗さは所々に残っていて、かえって不気味だ。
しかし、人影は無かった。
緊張を解いて、ほっと息をつく。
外れだ。実際に誰かいたら相当困るんだろうが、こういう予感は外れたら外れたでちょっと悔しかったりするんだよな。
安堵とも敗北感ともつかない感慨を抱きながら引き返そうとしていた俺は、途中で足を止めた。
息を殺し、耳を澄ます。
コツ、と。
俺じゃない、誰かの靴の音が聞こえた。
背筋が総毛立つのがわかった。やっぱり、どっかに誰かがいるような気がする。俺をじっと見ていた誰か。
振り返る。誰もいない。
妹の悪戯か? いや、さっき家の中で聞こえてきたアホみたいな笑い声は、バラエティを楽しむ妹のものだろう。たまには教育とか見せた方がいいかもしれない。
そもそも、あいつだったらこんなに上手く隠れられないし。こらえ性のまるで無いガキなんだ。
「誰か、いるのか?」
一応声を出してみても、返事はまるで聞こえてこず、改めて周りを見渡してみても、動いてるものは何もない。
……やっぱ、気のせい、か。
ま、そりゃそうだ。俺みたいに平凡な奴の生活を覗いて、得をする連中がいるとも思えないし。どっかの家に人が帰ってきただけかもしれない。
鶴屋さん絡みで、なんて予想ができなくもないが、それもちょっとな。さすがにテレビの見過ぎだろう。企業スパイはストーカーなんてリスクの高い事はしない。勝手なイメージだけどな。
首を振って妙な妄想を脳から追い出しながら家の前に戻り、今度はまっすぐ中に入ると、
「あー、キョンくんおかえりー。ねえねえ、またデートしてたのー?」
この歳で既に野次馬根性を取得しつつある妹の追求を途中のコンビニで買ってきたポテチでいなしながら部屋に戻り、日課であるカレンダーに丸をつける作業を始めた。
三ヶ月前からペンの色を変えているあたり、我ながら青臭さを感じないでもない。
「…………ん?」
画鋲で壁に貼り付けていたカレンダーの位置が、昨日とは少しずれている。
やれやれ。また妹の仕業だな。
俺はこのカレンダーを日記帳代わりにも使っていて、と言っても数字の下にある僅かなスペースを用いた一行メモ程度の日記なのだが、偶にそれを面白がった妹が読んでいるらしい。
あのちびっこにはまだプライバシーという意味が理解できないのだろう。食べ物だと思っているのかもしれない。
それでも以前軽く叱った時は反省してたみたいだったし、もう見ないだろうと踏んでいたんだけど、甘かった。
柔な叱咤では、温室で育てられたせいで危機感が欠如し鮫の群れを見てはしゃぐイワトビペンギンのように奔放なあいつを止めるのは不可能だったようだ。
ま、いいか。別に大したこと書いてないし。好奇心旺盛なのもそう悪いことじゃなかろう。鶴屋さんとのことだって、家族全員知ってるしな。
理解のある兄ぶりながらも、今度から部屋に鍵をかけてやろうかと企みつつ、
「よし、と」
最後の一枚に、また一つ丸が加えられる。ぺらぺらとめくれば、インクに囲まれた日付の山。年をまたいで使えるスクールカレンダーも、今月で終わりだった。
新しいのを購入しないといけないな。
これまで忘れなかったためしが無い心の中の買い物リストに一行加え、念のため窓から外を覗いて誰もいないことを確認した俺は、少し眠ることにした。
三年生達の受験期も終わり、もうすぐ新年度を迎えるためか、最近の学校には俄かに浮ついた雰囲気が漂っている。
うちのクラスもご多分に漏れず、元々大したリーダーシップを取れる奴も尖った個性を持った奴もいない一年五組は、昼休みに至り設計ミスで糸をつけ忘れたアドバルーンのように地に足がついていないこと甚だしい空気につつまれていた。
「聞いてくれよお前ら! 俺、今日学校の下んとこでさ、すげえ可愛い子見かけたんだ!」
その中でも特に浮ついている約一名が、海に出てしまった淡水魚のようにふらふらとやってくる。
「谷口、こないだも同じ事言ってたじゃない」
借りていたパーフェクトノートを国木田に返しながら、同調するように頷く俺。
「いや、今日のはマジ凄かったんだって! 腰を抜かしそうになったぐらい!」
「それもこないだ言ってた」
国木田はまたしても冷静に切り返す。辻斬り御免。
無形の血しぶきを吹き出さんばかりの谷口に、俺は一応尋ねてみる。
「で、その子と何かあったのか?」
谷口は少しのあいだ目をクロールさせ、解けない数学の問題を目の前にしたように難しい顔で腕を組むと、
「いや、目が合った途端逃げられた」
可哀想に、よっぽど変態的な目で見られたに違いない。猥褻物陳列罪の適用範囲を広めることが警視庁の急務だ。
呆れる俺たちを逆に哀れむかのような息を吐き出して、谷口は言う。
「もういいよ。お前らに話したのが間違いだった。所詮彼女持ちと童顔。この胸のときめきなんて、わかりゃしないんだ」
「童顔は関係ないって……」
そうだ。ひどい人種差別だ。
「うるせえ。お前みたいに毎度イチャつきながら下校する奴なんて、人間としてカウントされないんだよ。そういう奴らはあれだ、二人揃って一人分の人間未満人間だ」
なかなか先鋭的なカテゴライズだな。どこぞの人権団体から速攻でクレームがつくに違いない。
「そう言えばこないだも手を繋いだまま帰ってたらしいね。谷口じゃないけど、流石にそこまでされると目の毒かも」
国木田までもが反旗を翻した。孤立無援である。
でも仕方ないんだ。惚れた弱みというか何というか、迫られると拒めない。まあ迫られると言っても、せいぜい手を握るとか、人前じゃなければ抱きついてくるとか、その辺止まりだけどな。
いや、それでも十分心臓には悪いんだが。
で、放課後。
「そういうわけで。今月の機関誌は噂の幽霊特集でいきたいと思います」
「いやっほおおぉぅーーーいっ!」
「……鶴屋さん、無理に盛り上げないでいいですよ」
「あ、そう?」
パイプ椅子から勢い良く飛び上がった鶴屋さんは、特に恥ずかしがるでもなく楚々と座りなおす。
まあ、盛り上げたくなるのも無理は無いだろう。だいぶ物が増えてきたとはいえ、基本的にボロくて地味な文芸部室に、部員が二人っきり。少数精鋭にも程がある。
『小さいながらも楽しい我が家じゃないかっ』
これは以前俺がぼやいていた際に残した鶴屋さんの名言なんだが、そのあと自分の言葉の意味を考えたのか頬を染めて俯いていた姿は、未だに俺の記憶アルバムのトップページを飾り放題である。
閑話休題。
鶴屋さんは、古びた椅子を初めて触ったヴァイオリンのようにギシギシ鳴らすと、
「幽霊ってな、めっさおもろそうだけどさー。書けそうなのが何も見つからなかったらどうすんだいっ?」
「その時は……適当な怪談をでっちあげて、夜中の学校とか、それっぽい写真を撮りまくって誤魔化します」
機関誌といっても、学級新聞みたいなものを想像してもらった方が正しい。A4の紙を五枚か六枚ぐらいひっつけて、それらしい文章とそれっぽい写真で誤魔化し誤魔化し埋めてるだけだ。
文化祭の折に発表したものを含め、まだ三冊しか発行していないが、その割にはどれも結構な評価を受けていたりして、特に鶴屋さん作の冒険小説なんて、かなりコアなファンを獲得しているらしい。
このまま行けば来年当たり、新規の部員を獲得することができるかもしれないな。
「な〜る、夜中の学校ってのもいいかもねっ! いかにも何か出そうだよっ」
俺は足をぷらぷらさせている鶴屋さんを目にするにあたり、新入部員が来たら二人っきりじゃなくなるな……やっぱ来ても追い返そう、とか思いながら、
「多分大丈夫ですよ。ここに来る前、幽霊を見たって人に話を聞いてたんですけど、何とか書けそうな内容でしたから」
幽霊特集といっても、別に真相を究明するってわけじゃない。第一、幽霊の実在なんて証明できるわけないだろ。
ただ、こういう噂がありますよってことを書いて、目撃現場の写真を貼り付けて紹介するだけで十分なんだ。
もともとこういう特集は、小説ばかりじゃつまんないからってことでやってるお遊び企画に過ぎず、少しでも楽しんでもらえれば、それでいいのさ。
「で? で? どんな話だったんかなっ?」
実は、いかに鶴屋さんが楽しそうにしてくれるかが第一目的だったりするのだが、そんな個人的な事情は、トイレというには余りに相応しくないので清流四万十川にでも流して、
「それがですね……」
俺は聞きたてホヤホヤの話を解り易くまとめて語り始めた。
すいません。ミスりました。
次の奴が8で、上の奴が9です。
俺は言い訳する代わりに、
「んなことより、次の機関誌の内容に詰まってるんだけど、お前ら、何かいいアイディアないか」
所属部員が二名しかいない我が文芸部は、四六時中ネタに詰まりっぱなしなのである。誰か頭によく効く便秘薬を開発してくれないだろうか。試薬ができたら、モルモットに立候補してやってもいい。
しかも今月は春休みがあるから、入学式の日に二か月分の合併号を出す予定だ。素直に一回分休めば良かった。後悔はホント先に立たない。
「だから、『男子百名に聞きました! 学内美少女トップテン(ポロリもあるよ)』にしろって前から言ってるじゃねえか」
「それは教師からの大きな反発と女子同士の水面下にある様々な軋轢が刺激されて爆発することが予想されるから無理だって前から言ってるだろ」
あと、ポロリは下手したら立件されかねない。
谷口の桃色なんだかドドメ色なんだか、とにかく自らの欲望に直結した企画をワンブレスで却下して、国木田へ期待の眼差しを投げかける。
「そんな目で見られても……大体、先月の期末テスト予想特集だって、僕がほとんど考えたんじゃないか」
おかげで先月は大ヒットだった。金を取れたらかなりの儲けになっただろうが、生憎通常の部活で商売をするのは禁じられている。穢れ無きボランティア。
国木田は嘆息しながらも、デフォルトで装備されてしまっているお人よしスキルをいかんなく発揮し、頭を掻きつつ数秒考え込むと、一言呟いた。
「……幽霊」
幽霊?
「今朝、隣のクラスの友達と話してたんだ。詳しくは聞かなかったんだけどさ、何人か見たんだって。こう、人影がスーッと消えるやつ」
谷口は腰に当てていた手を俺の机に乗せると、
「幽霊ねぇ。遅すぎるというか早すぎるというか、夏向きな話って感じがするけどな」
「いや」
俺は谷口を遮り、
「それがいい。決定だ」
幽霊。大いに結構じゃないか。ゴシップ的な要素も十分で大衆受けしそうだし、鶴屋さんも気に入ってくれそうな話題だしな。
谷口は、一人頷いている俺を、新興宗教に嵌ってしまった老人を見るような目で、
「お前って、結構そういうの好きだよな」
人をオカルトマニアみたいに言うな。最大公約数的な好奇心を忘れないアダルトチルドレンなだけだ。
「それもどうかと思うけどね」
国木田の呆れ混じりな突っ込みを最後に、話は昨日のお笑い番組にシフトする。話題は軽いほど鉄板だ。
国木田の友達から人脈を辿って話を聞けた、幽霊らしき人影を目撃したという生徒は、女子二名男子一名の計三名だ。
まず、女子Aが人影を目撃したのは、今朝の通学路。随分健康的な時間帯だ。幽霊も二十四時間営業の時代なのかもしれない。
最近できた彼氏と遅くまでメールしていたため寝坊してしまい、学生服が一つも見当たらない通学路を不安で押しつぶされそうな兎のように走っていた彼女は、取って置きの近道を使用することにした。
この辺はもともと山だっただけに伐採されていない山林があちこちに点在しているのだが、とにかくその内の一つを突っ切っていた彼女は、ふと、過ぎ去る木立の陰に人影を捉え、足を止める。
もちろん、人里離れた山の中ってわけでもないので、人がいることは多々あるのだが、それでも彼女が立ち止まったのは、その人影が木漏れ日に透けて見えたからだという。
え、と思いながらも半ば反射的に目を擦りつつ人影の方を見やった彼女は、ぼんやりと消えていく輪郭のようなものを確認して、しばらく腰を抜かしていたそうだ。
次に女子Bだが、彼女が人影を目撃したのは、昨日の夜八時頃。学校とは少し離れた、ちょうど鶴屋さんの家との中間点辺りである。
普段から人通りの無い、生垣に囲まれた細い路地を抜けてコンビニに行こうとしていた彼女は、背後に何者かの気配を感じ取り、とっさに振り返った。なんせ女性の一人歩き。不安に思うのは当然だろう。
そして予想通り、暗闇の奥には人影らしきものが立っていた。暗くてよく見えなかったが、自分より少し大きかったような気がするから、多分男性じゃないか、とのことだ。
自分の後ろにいるからといって、別に細い路地を通っていたら男性が自動的に犯罪者になるわけも無く、そう焦ることもないだろうと判断した彼女は、なるべく歩調を変えずにそのまま進んでいく。
彼女なりの意地があったのかもしれないが、それはまぁどうでもいい話。
しかし、途中まで確かに聞こえていた後ろの足音が突然消える段になって、彼女は違和感に気づいた。
おかしい。家の入り口も無く、周りが生垣に囲まれただけの一本道で立ち止まるなんて、何か妙だ。
彼女は歩みを止め、やはり音が聞こえないことを確認し、訝りながらもう一度振り返る。
果たしてそこにあったのは、半透明の腕が二本。空間に活けられた花のように、ぶらりと空中に浮いていた。
これは結構なホラーだ。大の男でも尿漏れを引き起こすに値する。当然彼女も恐怖のあまり絶叫し、家に逃げ帰って必死に家族に説明したのだが、誰も信じてくれなかった、とぼやいていた。
最後に、男子A。やはり昨日の夜八時前後。俺の家から割と近い、駐車場の一角。
車好きの彼は、塾帰りに通りがかった駐車場で、何とかって名前がついた外車(懇切丁寧に説明してくれたが、残念ながら覚えられなかった)を見つけ、近くで鑑賞するために走り寄っていった。
車の元にたどり着き、流線型のボディに鼻息を荒げながら頬擦りしようとしていた彼だったのだが、しかし耳の中におかしな音が入り込んでくることに気付き、咄嗟に口を覆う。
泣き声。幼い少女のような泣き声が、すぐ傍から聞こえてくる。しかし、確認できる視界の中には誰もいない。一体どこから?
彼は肌が粟立つ気配を感じながらも、声を頼りに車の裏に回った。
そして見つける。
ビルの裏手と車の間に存在するわずかな空間。そこに、年若い少女が座り込んでいるではないか。
一拍分驚いていた彼が我を取り戻し、どうしてこんな所で泣いているのか、と少女に声をかけようとした瞬間。
しゃくり上げるような泣き声がテレビのボリュームを落とすかのように遠のいていったと思ったら、少女の姿そのものがぼやけていき、やがて暗闇に溶けるように消え去ってしまった。
後に残されたのは、手を上げかけた格好のまま固まった彼と、性能がやたらといい外車が一台。もっとも車の存在は、既に彼の頭から消えていた。
720 :
非単調ラブロマンスは微睡まない 11:2007/01/22(月) 02:19:54 ID:hNuiLuYr
学校を出た俺たちは、女子Bの証言にあった細い路地に向かった。山道を散歩するには遅すぎる時間だし、こっちは鶴屋さんを送るついでに立ち寄れる場所だったからだ。
「昨日の夜から今日の朝にかけて三人も同じようなものを見てるってのは、こりゃ本当になんかあるかもねっ」
隣を歩く鶴屋さんは犬でも連れてピクニックに来たような風情だが、ロケーションはそれに全く反比例していた。
周りを見れば、生垣や囲いと、それに抱き合うように密着して建てられた家の壁がほぼ切れ目無く連なっており、閉所恐怖症の人はご遠慮した方が良さそうなほどの圧迫感を覚える。
しかも日当たりが悪いのか、窓もあまり見当たらず、そのため漏れる光も微々たる物で、夕方の今はまだマシだが、日が完全に落ちれば相当暗くなるだろう。
元々道として作ったというよりは、自然とできた家と家の隙間と言った方が正しそうだ。近所の人しか知らない抜け道なのかもしれない。
中途半端に漂う生活観と共に、緑と無機物の隙間が黒く覗いていて、要するに、結構それっぽい雰囲気なのだ。
俺が道を間違って映画監督にでもなった暁には、是非ホラー映画の一幕として使わせていただきたい。
「ほらほらキョンくん、キョロキョロしてないで写真撮らにゃっ。それともひょっとして、もう取っ憑かれちまったんかいっ?」
俺は不甲斐なさを見せまいと即座に否定の言葉を返し、デジカメのシャッターをパシャパシャと切り始める。何枚か撮ったあとで画像を閲覧し、妙なものが写り込んでいないか確認する事も忘れない。
そうして密かに胸を撫で下ろしていると、隣を歩いていた鶴屋さんが、いつの間にか俺の半身にひしっとしがみ付いているではないか。スープが冷めないどころか、コアラとユーカリのような距離感。
「鶴屋さん、それは流石に密着しすぎなんじゃ……」
人目が無いからといって、客観性を欠いていいわけではない。常識ある一般人は、常に節度を持って行動しなくてはならないのだ。
「だってだって、ここめがっさ狭いんさ。不可抗力って奴だねっ」
しかし、二つの控えめと言えなくもない感触が肋骨に伝わるにあたり、頭頂部がやかんを空焚きしてしまいそうなほどヒートアップしてくる。
「わっ、キョンくん、何か体温上がってない? わははっ、顔もまっかっかだっ!」
頬擦りされる感触が、制服越しに伝わってくる。これはヒートアップどころかショート発火まで行ってしまうかも……
いや、ダメだ。理性の醒めた氷を絶やしてはならない。思うに、人間がここまで進化し発展する事ができたのは、本能と対を成す理性が枷のように自由すぎる精神を、
「えいさっ!」
「おわっ」
考え事というか意識階層の深いところまで行ってしまいそうになっていた俺の肩口に、意外と力の強い細腕が巻きつき、二人分の体重を受けた膝は強制的に関節のボルトを緩める。
そして鶴屋さんは、ボディにパンチを浴びせられたボクサーのように下がっていく俺の顎を捉え、
「ちゅっ」
唇の端に湿った感触がストロボじみた余韻を一瞬残し、皮膚の弾力性に弾かれて消える。
あんぐりと口を開ける俺に対し、鶴屋さんは上気した頬を隠すように無邪気な笑顔を浴びせながら、
「昨日のお返しだっ」
俺は綱の上から飛び降りそうになる理性を論理的思考で説得しつつ、ここをロケ場所にするならホラー映画じゃなくてラブロマンスだろう、と先ほどの自分の誤りを訂正するのだった。
奇跡的に脳内サーカス団は綱渡りを成功させ、おかげで神経が彫刻刀で研ぎすぎた鉛筆と同程度の細さになったことはさておき、あらゆる意味で無事鶴屋さんを自宅に帰した俺は、一人駐車場の前に立っていた。
男子Aの話に出た、あの駐車場である。丁度帰る途中の道なりにあるのだから、今日まとめて撮ってしまおうという魂胆だ。
車が二台入っている寂れた駐車場の全景をデジカメに収めたあと、今日はどうも不在らしい高級外車が停められていたという隅っこを接写。
数枚撮り終えてデジカメから顔を離し、人の気配がさらさら無い駐車場を見渡す。国道に面したこの辺は、さっきの路地と違って、いかにもな雰囲気は感じられない。
それでもあんな話を聞いたあとじゃ、どことなく怖いように感じてしまうから不思議だよな。あまり長くいるのはやめておこう。見栄を張る相手ももういないし。
足早にその場を後にしながら、撮り終えた画を確認してみたのだが、泣き顔の少女なんて写っていなかった。拍子抜けのような、一安心のような。
複雑な感慨を覚えつつ家に戻った俺を出迎えたのは、二階からせわしない足取りで降りてきた妹だった。
どうしたんだそんなに慌てて。ススワタリでも見つけたのか。
妹は俺の目の前で急ブレーキをかけるなり、
「キョンくん、お客さん?」
お客さん?
「何だよ、誰か来てるのか?」
足元を見ても、玄関の靴は家族の人数分しか無い。裸足で他人の家にお邪魔する類の知り合いなんていたか?
俺が疑問をもてあましていると、妹は油揚げが目の前で消えた狐のように首を傾げ、
「今、家の前に女の人が立ってたでしょ? お客さんじゃないの?」
女の、人?
「……何言ってんだ、お前」
妹は指揮者のように大げさな仕草で手を振り回し、
「だからぁ、女の人〜。キョンくんのうしろから来てたでしょ〜?」
俺の後ろから、誰か。
「……そんな奴はおらん。あんまり変な嘘をついてると、舌を抜かれちまうぞ」
胸に去来するざわめきを否定するために、妹に向かってそう告げると、
「嘘じゃないもん! だってあたし二階から見てたもん! キョンくんがおうちに入ったあと、すぐ後ろから女の人が来て、そこに立ってたもん!」
妹が指差した先には、俺が閉めた時のまま沈黙を守る扉がある。
壁より薄い一枚の境界線。
その向こうにいるのは、誰だ?
「中に入ってろ」
「ぶー、何でよぅ?」
「いいから、入ってなさい」
俺は妹をリビングのドアの先に押しやると、靴下のまま玄関に下りる。
僅かな隙間から漏れ出る夜気にまぎれた寒さが、タイル張の溝に溜まっていて、踝までが水に浸かったように冷えた。
脳裏をよぎるのは、すすり泣く少女の話。想像の中で彼女は顔を上げ、俺の足跡を這って辿る。ひどい妄想だ。そういえばこないだも妙な視線を感じた時が有ったが、あれも妄想だったな。
背筋まで這い登ろうとする悪寒を感じながらも、音を立てないように数歩進み、ドアの覗き穴に右目を近づける。
球状に映し出される、家の前の風景。仄かに浮き出る川のような道路と、明かりが灯った向かいの家。
誰もいない。
俺は一度瞬きをしたあと、そのままドアノブに手を回して一息に開き、転がるように外に飛び出て、家々の明かりに照らされた周囲を見やる。
そこには、誰も、
「あれ〜?」
いつの間にか、言いつけを守らずに外に出てきた妹が、裸の足で俺の周りをぐるぐると回っている。
俺は飛び上がりかけた心臓を押さえ、首筋の汗を拭いつつ、
「ほら、誰もいないだろ」
「えー!? でも、本当にいたんだよ? あたし嘘ついてないよ〜!」
「わかってる。嘘だなんて思っちゃいないよ。ほら、いいから中に入ろう」
ぐずる妹を連れて家の中に入ると、鍵とチェーンを注意して掛け直す。
部屋に戻って駐車場で撮ったデジカメのデータを見ても、ただ車の不在を示す白線の数字と、真新しい白いフェンスの向こうで背中を向ける灰色の雑居ビルが、液晶に表示されているだけだった。
ひどく寝苦しかった昨晩を経て、いつもより一時間早く目を醒ました俺は、鶴屋さんと共に女子Aの話にあった山林地帯へ出向いていた。
「ふぁー、ねっむぅー」
名称不明な鳥の鳴き声を縫って、鶴屋さんの眠そうな声がすぐ後ろから聞こえてくる。だから無理して来ないでもいいって言ったじゃないですか。
「いやいや、あたしも文芸部だし、朝の空気は気持ちいいし、運動は美容に効くらしいからねっ。一石三鳥ってな具合だよっ」
俺の横に並び、キリンと背丈を争うかのように背伸びした鶴屋さんは、そのまま普段のパッチリとしたまなこに戻ると、
「それにしてもキョンくん、今日はめっさ気合はいってんねー! 普段朝はぐーたらしてんのにさぁ、何かあったんかいっ?」
鶴屋さんの言葉どおり、俺はさっきから気合を入れて写真を撮りまくっていた。とは言え別に前向きな理由じゃなく、正直、この調査を早く終わらせたかっただけなのだ。
昨日の妹の話は、うわ言として片付けるにはインパクトが強すぎた。あれが嘘だとしたら、俺はあいつにアカデミー主演女優賞と脚本賞をダブル受賞させてやってもいい。うちは近所でも有名な演技派ファミリーとして認知されるだろう。
無為に不安にさせたくないので鶴屋さんに話してはいないが、それでもこんな所に自分の彼女を長く置いておくべきじゃない。さっさと学校に戻らなければ。
あー、やっぱ幽霊特集とかやめときゃよかったぜ。触らぬ神に祟りなしと言うが、触っちまったあとのことを諺にしてくれた奴はいないんだろうか。
俺は諸々の思考を、
「急がないと遅刻しちゃいますから」
の一言で済まし、シャッターを切りまくっていると、
「キョンくんっ、こっち来て!」
数メートル離れた場所から、鶴屋さんが手招きをしている。俺が素直に近づくと、
「ほらこれ、足跡じゃないかなっ!」
確かに、鶴屋さんが屈み込んでいる一帯は、枝なんかが踏みしめられた跡がある。風に散らされてない所を見ると、昨日今日できたものみたいだ。
「この辺はまだ浅いですからね。散歩しに来る人だっているんじゃないですか?」
「でもほら、この跡辿ってみてよ」
鶴屋さんは針のように細い指をすっと動かし、俺の目線を誘導する。
ここいらの山林は浅く、まだ木立もまばらで、すぐ傍から通学路が見渡せるぐらいだが、右手の方に行くほど木立が深まり、鬱蒼とした森になっていく。
そして足跡は、右手の方に向かっていた。
「ね、ね、キョンくん! 行ってみ」
「ダメです」
最後まで聞かずに却下する。
「写真は沢山撮れました。もう十分です」
あんな所に鶴屋さんを連れて行けない。いくらなんでも遭難はありえないが、ちゃんとした道が無いんだ。怪我する可能性は大いに有りうる。
それに、昨日のこともあるせいか、何だか不安だった。
強硬な姿勢を取る俺に対し、
「でも、ひょ……」
鶴屋さんは何事か言いかけて飲み込むと、またすぐに、
「あたしは最後まで確かめてみたいんさっ! 中途半端はいくないよっ」
対峙する両目は真剣だ。
……まったく、基本強引なタイプだからな、この人も。
俺は譲歩しようと、
「万が一、危ない人がいたりしたら大変です。俺が一人で見てきますから、鶴屋さんは学校に戻って……」
「大丈夫だよっ! 危なそうなら途中で引き返せばいいんだし。それに、ほらっ、じゃーん!」
ネコ型ロボットのように鶴屋さんがスカートから取り出したのは、掌サイズの無骨な鉄の塊……スタンガンっていう、アレか? 何か思ってたのより大分小さいけど。
「お嬢様のたしなみってやつ? なんせ世間には不埒な連中も多いからねっ! この鶴屋家特製改造スタンガンでビリッとやれば、カンガルーでもノックアウト間違いなしっ!」
迂闊なことをしないで良かった。もし辛抱堪らず鶴屋さんを襲っていたら、今頃俺の内臓はウェルダン気味になっていたことだろう。できるだけレアでいたいものだ。
胸を撫で下ろす仕草をどう取ったのか、鶴屋さんはわたわたと手旗信号のようにスタンガンを振り回すと、
「だいじょぶだいじょぶ。キョンくんにだけは何されたって使わないから……って何言わせんのさっ!」
「はぶぅっ!」
一人で身悶えながら、俺の頼りない腹筋に左の掌底を叩き込んだ。えらく綺麗に入ったんだが、これもお嬢様のたしなみなんだろうか。
「わっ、わっ、ごめんよっ! キョンくんが野外でいやらしいこと言わせるプレイをはじめるから、恥ずかしくてついっ!」
そんなプレイしてないです。人生で一度もしたことないです。特殊な性癖も今のところないです。
腹を押さえていた俺の手を、鶴屋さんは一転して優しく握ると、
「ね、キョンくん。行ってみよ? 一緒に」
……どうして、そんなに、
「わかりました。でも、ちょっとだけですからね。あんまり遠くまで続いてるようなら、途中で引き上げます」
俺はそれだけ言って、鶴屋さんの手を握り返した。
結局、足跡は緑深い場所の入り口辺りですっかり途切れてしまっていた。
こんな所で誰が何をしていたのかと考えると疑問が残ってしまうのは否めないが、俺はもう少し調べようという鶴屋さんを、学校が始まるからと言い含めて連れ出した。
もう十分記事を書く材料は揃った。これ以上調査するのは、百害あって一理無しだ。好奇心は猫以外だって殺す。
あんまり深入りするとまずいことが起きそうな予感がするんだ。俺の予感は狙ったように悪い方ばかり当たるからな、昔から。この才能を生かせる職につきたいが、絶対ろくなものは無いだろう。
「なーんかありそうな気がするんだけどなぁ」
昼休み。久々に鶴屋さんが弁当を作ってきてくれたというから部室に行くと、玩具をねだる子供のような顔をしたご本人に出迎えられた。
「何かあったら困りますよ。薮蛇どころか藪幽霊なんて、あんましシャレになってません」
子供を諌めながら漆塗りっぽい一重の重箱を開けると、色とりどりのおかずが花火のような豪華さで視神経を突き抜けて味蕾を刺激する。こいつは、たまりません。
俺は手を合わせてお辞儀をしたあと、これまた高級そうな桜模様の箸を掴み、F91並の速度で玉子焼きを接収しようと、
「あ、こらっ! 待った、タンマだよタンマ!」
え? いただきますの挨拶は一応済ませたんですけど。
隣に座っていた鶴屋さんは困惑する俺の手から目にも止まらぬ早業で箸を引き抜くと、狙っていた玉子焼きを器用に掴み取り、
「はい、口を開けるにょろ」
……また変な漫画読みましたね。
「影響されやすいお年頃なのさっ。というわけで、あーん」
それはいくらなんでもプライドが、というか何と言うか、ぶっちゃけ恥ずかし過ぎる。この現場を写真に押さえられたとしたら、俺はあっさり脅迫に屈するだろう。テロリズムの脅威。
「いいから口開くっ。あんまわがままばっか言ってっと、あたしだけで全部食べちゃうんだからねっ!」
そんな横暴な。こんな美味しそうなものを目の前にして食えないなんて、デジタル放送の料理番組じゃあるまいし。
胸の内ではレジスタンス活動を展開していた俺は、視覚と嗅覚に同時に訴える玉子焼きに屈して、口を開いた。超マヌケ面。鏡を見なくてもそんぐらい自明だ。
「そうそう、素直なキョンくんが大好きさっ。はい、あ〜ん」
ふっくらとした卵焼きが俺の口に突っ込まれると同時に絶妙な甘さが口の中に広がる様は、まさに味のエレクトリカルパレード。
ニワトリになるとは思えない柔らかさの玉子焼きを飲み下したあと、もう何でもいいから全て食べてしまいたい、と堕落しかけていると、箸がやおら引っ込んで、
「もう、そんなにがっついたら口元よごれちゃうよっ」
いや、がっつくも何もまだ一口しか食べてないんですがと言おうとした俺の口元を、鶴屋さんは自分の舌でちろりと舐める。
「んー、我ながらいい出来だっ!」
ひょっとしたら俺たちはバカップルなのかもしれない。
その後の俺は、まさに言いなりだ。一度堕ちれば人間際限なく堕ちるもので、すっかり完食してしまう頃には、自分の手を一切使用しない食事も悪くないかもしれない、とか思う境地に至っていた。ブッダ超えたね確実に。
そのまま入滅に入ろうとしていると、重箱を片付けていた鶴屋さんは、後ろに立てかけてあったパイプ椅子を俺たちの間に一つ開き、
「じゃ、次は食休みっ。さぁキョンくん! あたしの膝を枕代わりにして一眠りだっ!」
「……いや、机で十分で」
「とうっ!」
襟首を掴まれたかと思いきや、視界がくるりと半回転し、鶴屋さんの膝に強制的に顔を埋めさせられる。
というかこれは決して膝枕とは言えず、体勢的に割とまずい部類に入るのではないだろうか。だって目の前真っ暗だし。スカートの海で溺死。ギネスに認定されそうな勢いだ。
俺は鶴屋さんにこの状態がいかに危険かを進言しようと、
「ふふふぁふぁん、ふぉっふぉふぉふぇふぁふぁふふぃんふぁ」
「ぷははっ、ちょ、ちょっとキョンくん、く、くすぐったいよっ!」
「おいーっす。暇なんで遊びに来たんだけ…………」
なんか余計な声が一つ多いような気がする。まさか、誰か来たのか?
やべえ、脅迫が現実のものとなりかねない。言い訳しようのない状況に見えるかもしれないが、何とか上手く取り繕わねば。
「お、谷口くんじゃん! おいっすっ!」
「う…………ぶはっ、て、なんだ谷口かよ」
入り口で石膏のように固まっているのは、たしかに見慣れた顔だ。
ほっとしたぜ。今の場面を教師なんかに見られてたら確実に冤罪退学させられるところだった。
一息ついた俺が状況を正確に説明しようとする間際、谷口は素の表情で、
「すんません、部屋間違えました」
いや、間違ってないだろ。
どうも完全に誤解してしまっているらしい谷口は、新作人型ロボットのようにぎこちない動きで廊下へと消えたかと思えば、
「完全に淫行だーーー!!」
耳に残るシャウトを振りまきながら、遠くどこかへ去ってしまった。あいつ、ぐれたりしなきゃいいけどな。夜中にトランペットを吹きはじめたりしたら末期だ。
「わははっ! 相変わらずおもろいなぁ、谷口くんってさっ」
おもろないですよ。妙な噂立てられたらどうすんですか。
「いやぁ、黙っててくれるっしょ。キョンくんはもっと友達を信用した方がいいよっ。それに言われたら言われたで、開き直っちゃえばいいんじゃないかなっ!」
今でも割と開き直っているつもりなのだが、これ以上開いてしまうとパンドラの箱的なものまで開いてしまいそうで恐ろしい。
思わず眉根を寄せてしまっていたのか、鶴屋さんは小さく笑いながら俺の額を伸ばすように撫でた。
鶴屋さん、今日は妙にひっつきたがるな。まあ、それに対する不満なんて素粒子ほども無いわけだが。今までもこういう事たまにあったし。きっとそういう日なんだろうさ。
されるがままというのも癪ではないが、俺も手持ち無沙汰だったので、目の前に垂れ下がった長い髪の一房を指で掬う。相変わらずサラサラだった。本当にどうやって手入れしてんだ?
しばらくそうしていると、視界がオブラートに包まれるように遠くなっていく。
「目がトロトロしてるねっ。眠い?」
微かに目を動かせば、いつもより落ち着いた微笑を浮かべる鶴屋さん。俺にはもったいないお嬢様。柔らかくていい匂いがする。誰にもやらん。
胡乱になっていく思考を押して、眠くないです、と言おうとしたが、あくびしか出なかった。食べた後で横になるのは、これだから良くない。
囁く声が聞こえる。
「いいよ。ほら、寝ちゃいな。あたしは大丈夫だからね」
じゃあ、少しだけ。きつくなったら、すぐ起こして下さい。
「わかってるから。だから、おやすみ、キョンくん」
額に添えられた暖かい手の温もりを感じながら、意識はたゆたうように溶けていく。
ずっとこうしていたいですね。眠りに落ちる間際、俺はぼんやりと本音を言った。
「……うん。あたしも、ずっと」
だけど、そうはならなかった。
鶴屋さんが予感していたように、やがて日々の終わりは幽霊騒ぎの真相という形を取って、俺の目の前に現れる。
幽霊の話にまとわりついていた妙な感覚も、実際に書く作業段階に入ると、霞の向こうに消えていった。基本的に人間は目の前の物を第一に考えるようにできているんだろう。便利なもんさ。
鶴屋さんもその後特に何を言ってくることもなく、自分のノートパソコンで冒険活劇の続きを書いている。たまに自分で爆笑しているから間違いない。
元々あったデスクトップに加え、文芸部所有のノートパソコンとプリンターは鶴屋さんがコンピ研から持ってきたものだ。機関紙に勧誘の広告を載せる代わりに、型落ちして使わなくなった分を譲ってもらったらしい。
手回しがいいというか何というか、末恐ろしいお人である。ただでさえ大きな鶴屋家をこれ以上どうするというのか。ある種見ものだ。
機関誌の製作と、さらに卒業式を目前に控えているため、予行演習や各種引継ぎなどで学内の浮ついた空気がようやく自重を増してきたこともあり、せわしなく数日が過ぎていった。
そして、機関誌のレイアウトも大体決定し、差し迫ったホワイトデーに鶴屋さんへ向けて贈るプレゼント案を練らなくてはならないな、と思い始めた、そんなある日。
いつもどおりのギリギリさ加減で登校し、教室の扉を開くと、
「キョン!!」
谷口がバネ仕掛けの人形のような勢いで飛びついてきた。
朝一で男に抱きつかれるという拷問を受けた俺が遺憾の意を表明する前に、
「幽霊! 俺、幽霊見たんだ!」
谷口は唾を飛ばしまくってくる。
幽霊だって? もうそのネタは終わったんだ。この期に及んで原稿を差し替えなんて、したくないしする気も無い。時代遅れも甚だしいぜ。
「こないだ言っただろ、学校の下で美人を見かけたって! あれだ、あれが幽霊だった!」
海で溺れるような呼吸をしながら、
「今朝もそいつがいてさ、俺、声かけられたんだ。話があるからついてきて、ってすげえ可愛い声で言われたから、ついてったわけ。学校の近くに山道あるだろ、あそこだよあそこ」
幽霊がどうとかはさて置き、そんな所について行くなよ。もう少し人生に対する危機感を持てっつーの。
「アホかお前、美人が人気の無い所に連れ出してくれるんだぞ! 何だかんだで不安ながら期待しちまうのはしょうがねえだろ! でもそいつ、お前にこれを渡してくれって」
俺の胸に押し付けてきたのは、白い便箋。
「お前宛のラブレターだと思ったから本当は受け取りたくなかったんだけど、咄嗟に貰っちまったんだ。そしたら、そいつ、いきなり体が透け初めて、見間違いかと思って目を擦ったら、もういなくなっててさ!」
「ちょ、ちょっと待て。何で幽霊が俺に手紙なんか……」
「知るか! とにかく渡したからな! 確かに渡したからな! 呪わないでくれよ!」
谷口は土煙をあげる勢いで自分の席に座り込むと、全てに絶望したかのように顔を机に埋めた。
「谷口、来た時からあの調子なんだ。かなり参ってるみたい。本当に何か見たのかな?」
入り口で立ち尽くす俺の前に現れた国木田は、今しがた押し付けられた便箋に目をやる。霊界発、俺の胸行きの手紙だ。
「開けてみないの? それ」
気のせいかもしれないが、冷凍庫に保存されていたように冷たく感じる便箋を開けたいと思う奴なんて、それこそこの世にいるのだろうか。
「国木田、お前開けてみてくれ」
「やだよ。キョン宛なんだから、キョンが開けないと」
「俺は幽霊と文通するほど人間関係に窮してない」
「僕だって迂闊なことして呪われたくない」
小柄な体から確固たる主張を漲らせる国木田と、それ以上張り合っても事態が進展するとは思えず、手の中の細い長方形に折りたたまれた便箋を、ゴミ箱に放るべきか神社仏閣へ持っていくべきか逡巡していた俺は、
「……キョン?」
待て。
この便箋、どこかで見覚えが、いや、知ってる。これは。
しかし。
そんな、だって、ありえないだろ。もうそんなつもりなんて、俺には。
俺は震える手を隠す事もできず、おぼつかない指使いで折りたたまれた便箋を開く。誰も傷つけないだろう少女キャラのイラストが、俺に微笑みかけてくる。
「何て書いてあったの?」
声はもう聞こえない。耳は蓋をされたようにどの音も通さず、眼球は便箋に書かれた、たった一行の文章に釘付けにされていた。
『今夜八時、いつかのベンチに。あなた一人で来てください』
それから放課後まで俺はどう過ごしていたのか、あまり覚えていない。
支援?
鶴屋さんに今日の部活を中止する旨を伝えた俺は、便箋の約束より三時間も早く、指定されたベンチに腰を下ろしていた。
未だに頭の中はぐちゃぐちゃだったが、ただ、ここに来なきゃならないってことだけ、暗室に空いた穴のようにはっきりしている。
三時間と言うと、気の遠くなるような時間だ。瑞々しい紫だった辺りはいつのまにやら黒ずんだ群青になり、定時に灯る街灯が一斉に灯り始める。
以前もこんなことがあった。
鶴屋さんに告白した時だ。緊張しまくっていた俺は真昼間と呼べるような時間からこのベンチに座って、寒さに首を縮めながら自分の心臓の音を聞いていた。
それに、もっと前から。
この公園には、色々な思い出が染み付いている。
これから会うのは、そんな思い出だ。現実じゃなくて幻だ。俺の記憶から這い出してきた幽霊だ。
生きている俺には、関係の無い世界の話だ。
時計は回り、八時になった。
「キョンくん」
長針が頂点に達した瞬間、俺の目の前にまるで始めからそこにいたかのように現れたのは、泣きそうなほど懐かしい、一つ年上だった可愛らしい先輩。
本人か?
顔が同じだけの別人。ありそうな話だ。俺のことなんてまるで知らない、通りすがりの可愛い人。期待は常に裏切られる。
だけど、
「迎えにきました」
ふらつく体を置きざりに、俺の意識は一年前の春に立ち戻る。
フラッシュバック。
三月。
一生分のシナプスを繋ぎ終えてしまうのではないかというほど悩んだホワイトデーの贈り物も無事決定し、進級するに当たっておよそ全てのイベントを消化したと思われた頃に、そのお誘いはやってきた。
「あのぅ、キョンくん。悪いんだけど、また少しだけ、付き合ってくれませんか……?」
申し訳無さそうに言う朝比奈さんを見れば、未来的用件だということはすぐに察しがつこうというもの。
これがハルヒの、繋げる回路を三キロメートルほど間違ったような誘いなら即刻唾棄する所だが、エンジェルの頼みとあらば話は別口だ。どこまでだって延長ケーブルを繋げよう。
今みたいに二人っきりの部室でお茶を嗜むのもいいが、未来のために手を取り合って励むのもオツなもんさ。大事な部分は二人ってとこで、他は何しようとオマケみたいなものだ。
俺は不埒な考えを尾も出さず、自分ではそこそこ決めているつもりの笑顔で頷いた。
するとどうだろう。朝比奈さんはやんわりと毛布のように微笑むと、そっと俺の手を包み込む。これだけでも頷いた甲斐はあろうというものだ。
一人で悦に入っている間に、例のきつい立ち眩みが襲ってきた。いい加減御馴染みになってもよさそうなもんだが、いつまで経っても慣れないこの感覚。
頼りない上下左右がぐるぐると回り、NASAの訓練にでも使えるんじゃないかというほど脳内がシェイクされる。
吐き気を催しながらも、滅多に触れることのできない朝比奈さんの肌の感触をしっかりと確かめながら耐える事しばし。
なんか移動がいつもと比べて長くないか、と俺が疑問を抱いた、その次の瞬間、それは起こった。
「…………ーーっ!!」
今までとは段違いの、もう立ち眩みとは表現できないような激しく不安定な感覚。
世界に何かが圧し掛かって海に転覆させようとしている。
イカれたジェットコースターがスペースシャトルに接続されたような、猛烈な揺れだか上昇だか落下だか、とにかく何もかもが無茶苦茶だ。
細胞一つ一つに乱方向でくっついた力場に、体をちぎれんばかりに引っ張られ、何かを考えることも不可能で、俺はただ、このままじゃ死んじまう、と本気で思っていた。
「誰…………が、異常な…………! ……ットワークに……生? …………どう……っ!!」
傍にいるはずの朝比奈さんの声は、遥か遠くなったかと思えば、耳元に大音量で響くほど近くなったりして、何を言っているのかまるでわからない。
握り締められた俺の手には爪が深く食い込んで、ひどく痛かった。
「そんなのは…………から早く引き……て!! この…………ョンくんが、キョンくんがどこ………って……!!」
全てがブレて、一点に集中し始めた。閉じた瞼の奥で眼球がぐるぐると回り、そこを中心に体と体のまわりの全てが渦に飲み込まれていくような感覚だ。
神経は鳥肌を立てた瞬間の掻痒感に囚われ、あべこべに繋ぎなおされていく。
「……せん……い…………………ら!」
そして次第に、何もわからなくなっていった。
ここはどこで、何だ?
自分が幾つも見つかって、誰がどれなのか、何がそうしていたいのか、脳の電流はどこを通してどいつに向かう?
「離し……ダメ! お願い! …………ないで!!」
離す? 何を? 俺は何か握っているのか?
どれだ、どの俺がどれをどうしてどんな物を一体どこで、
「誰か! 早く誰か助けて!!」
泣きそうな声がはっきりと聞こえたのを最後に、とうとう耐えられなくなった俺は、手を離してバラバラになった。
次に俺が目を醒ましたのは、自宅のベッドの上。
「キョンくーん、朝だよー!」
いつもと同じような妹の声で起こされた俺は、べたつく目を半開きにしたまましばらくぼんやりしたあと、慌てて飛び起きるなり自分の体を確かめる。
……ちゃんとある、よな。
さっきまでろ過された砂粒ぐらいに破砕されてたような気がするが、どうやら勘違いだったらしい。
俺は胸を撫で下ろし、そのままベッドに倒れこんだ。
変な夢を見たせいか、起きぬけとは思えないほど疲れきっていた。心身ともに御影石を丸呑みしたかのような重さだ。
「こらー、キョンくん! 二度寝しちゃだめ!」
兄の心中を慮ることなく、妹は布団をめくりあげる。てか寒っ!
俺は丸まった姿勢で寝転がったまま妹の手から布団を取り返すと、
「今日は具合悪いんだ。もうちょっと寝かせてくれ」
いつもと違い、あながち嘘ってわけじゃない。
妹も野生の勘でそれに気づいたのか、うー、と唸ったあと、控えめに尋ねてきた。
「でも、本当にいいの?」
何だそのおずおずとした物の言い方は。俺を寝坊させないための新しい作戦か。
小賢しいやつめ、と思いながらも、寝返りを打って妹の方を振り返り、
「……何でそんなこと聞くんだ」
妹は、珍しく困ったような顔をしながら、
「だって今日、入学式だよ?」
その言葉を聞いて、俺の眠気はすぐに消し飛んだ。
今日は入学式。
一体、誰の?
結論から言うと、その日は俺の入学式だった。
暗い気持ちで坂道を登り、そしてハルヒと出会った、あの入学式である。
知らぬ間に一年前に戻っていた事を知り、あれがどうやら夢ではなかったようだと気づいても、他にどうすることもできず、坂の角度を憂う代わりに途方も無い不安を抱えながら学校に向かった俺は、不安が的中していた事を知った。
一年五組の、見慣れたクラスメイト達。
しかし、俺の後ろでトンチキな自己紹介をぶちまけるはずの変態娘は、どこにもいなかった。朝倉涼子さえ、そこにはいない。
普通の自己紹介が披露されるたび、原因不明の焦りが俺の心に募っていく。
オリエンテーションが終わり、同じ中学だった友人との挨拶もそこそこに、俺は谷口に詰め寄った。
「涼宮ハルヒを知らないか?」
谷口は目を白黒させ、気押されたように口を開く。
「いや、知らないけど……」
思わず膝を落としてしまいそうになった。
それでも俺は、失礼を詫びる言葉を残して、二年生の教室へと向かった。途中には一年九組があって、そこに古泉はいなかったけど、少しだけ気分が楽になる。
しかし、朝比奈さんがいる筈のクラスに行っても、愛らしい未来人はどこにもおらず、不躾な新入生へ向けられた奇異の視線の中に見知った長い髪の上級生も混じっていて、俺は逃げるように教室を出るしかなかった。
念のために立ち寄った部室には、テーブルと椅子があるだけで、読書家の宇宙人の姿は見当たらない。
そりゃそうだ。まだ入学初日だし、部活に入部できるのはもう少し先のことなんだから。
パソコンを立ち上げてみても、旧式のOSがむき出しのデスクトップを表示するだけで、どこにも特別なプログラムは見当たらない。
俺はなんとか胸中に燻る不安を消したくて、長門のマンションに向かって走り出した。
ハルヒの使った手でまんまとマンションの中に押し入り、708のチャイムを鳴らし、硬いドアをノックする。
誰も出てこなかった。
しつこくドアを叩く音を聞いて出てきたのだろう、隣の部屋の若い男性は、その部屋が空き部屋だという旨だけ怒鳴りつけると、すぐに引っ込んでしまった。
念のため訪れた505の部屋には、年配の女性が住んでいて、朝倉涼子なんて聞いたことも無いという老女にお茶をごちそうになってから、大きなマンションを後にした。
希望の糸が一本一本耳障りな音を立てて切られていくなか、崩れる足場から逃れるために女子校のままの光陽園学院に赴き、出てくる生徒に片っぱしから涼宮ハルヒの名前を尋ねていく。
誰も首を縦には振らなかった。
やがて、不審な人物の話を聞きつけた教師が校舎から現れるのを見て、俺は慌てて逃げ出した。
見慣れた景色が、まるで違う世界のように追い立ててくる。
俺は一人だった。
それでも、最初はまだマシな方だった。
個人的な事情なんて省みず時間は流れていくわけだし、学生らしく毎日学校に通っていれば、嫌でも健康的な生活を送らざるをえない。
部活にも入らないまま、やった覚えのある授業を諾々と繰り返し、クラスメイトともそこそこの関係を結んで、日々平穏に過ごしていると、自分がどこにいるのか忘れそうになるぐらいだ。
俺は記憶が鮮明なうちに、と思って、大きなスクールカレンダーを購入し、そこに覚えている限りの予定を書き込んでいった。どこに行った。何をした。
席替えの時、くじ作りを手伝う振りをして窓際の一番後ろを抜き取って自分のものにしたりもした。
ここにいれば、きっとそのうち朝比奈さんか長門か、ひょっとしたら古泉でも、俺を元の場所に連れ出してくれるに違いないと信じていたからだ。
しかし、ゴールデンウィークを越え、古泉が転校してくるはずの日もあっけなく過ぎ去り、世界が瀕死の危機を迎えたあの夜も明けきってしまうにつれ、俺は段々と追い込まれていった。
そして、夏を目前に控えたある日の放課後。
ブラバンの演奏が遠くに聞こえる中、俺は文芸部室へ向かっていた。
未だに誰も訪れない文芸部室を、俺はそれまで定期的に掃除していた。SOS団抜きの放課後の長さは想像以上であり、それを埋め合わせる意味で始めた習慣だ。
いつもどおり途中で拝借したバケツを片手にドアノブを握ると、部屋の中から誰かの話し声が聞こえてきた。
……まさか。
一瞬期待して、でも期待しすぎないように、ゆっくりとドアを開く。
果たしてそこにいたのは、見たこともない男子生徒三人組で、そいつらはあろうことか、部室に置かれていた本棚を運びだそうとしていた。
「お前ら、なにやってんだ!」
俺はバケツを放り出して、倒した本棚を持ち上げようとする男に掴みかかった。
「な、何って、これを図書室に運ぶんだけど……」
驚きの混じった声で、わけのわからないことを言う。
「それはこの部屋の備品だろ? 何で運び出したりするんだよ!」
ああ、と一人離れた所に立っていた男がこちらに近づきながら、
「文芸部はもう廃部が決まったんだ。今年は新入部員も入らなかったしね。この部屋の備品は、図書室に持ってくことになってる」
生徒会の役員らしいそいつは、面倒くさそうに顔をしかめると、
「新しいの買えばいいのに、とんだリサイクル精神だよ。一々手間のかかることをさせて」
何でもないそんな物言いが、この時はどうしょうもなく気に食わなかった。
リサイクルだ? ふざけたことを抜かすじゃねえか。
「あんたも私物を置いてるんなら、今の内に持っていった方が……」
俺は何事か言おうとするそいつの胸倉をあらん限りの力で掴み上げ、脅しつけるように言った。
「文芸部には俺が入部してやる。今からここは俺の部室だ。だからお前ら、この部屋の物に触るんじゃねえ」
目を見開いて黙り込んだそいつを部屋の外に引きずり出したあと、残った二人も同じように叩き出して、倒された棚を必死で立て直す。 暗くなると、パイプ椅子に座って窓の外を眺めながら、俺は少しだけ泣いた。
翌日、いつか長門に渡されたのと同じ入部届けに、今度は『文芸部』と書いて担任に提出した俺は、それからしばらく学校を休みがちになる。
何をしていたのかと言えば、まず、電話帳を開いて団員と同じ苗字の人に片っぱしから電話をかけていた。特に涼宮と古泉。
未来から来たわけでもなく宇宙人でもない二人なら、ここにいてもおかしくないはずだ。
しかし、懐かしい声が携帯から聞こえてくることは無かった。
電話の次は、皆で訪れた場所を一人で回ろうと決めた。ハルヒが消えた冬のパソコンみたいに、どこかに何かの手がかりが残されているかもしれない。
先立つものを用意するために日雇いのバイトで金を貯め、さすがに孤島は無理だったが、鶴屋家の別荘までは行くことができた。生憎と、中に入ることはできなかったんだが。
そんな風に過ごしている内に家族が本気で心配し始めたので、今度は毎日学校に行くことにした。しかし、ただ行くだけで、授業にも出ず部室でぼーっとしていることの方が多かった。
出席簿には、バツ印が重なっていく。
幸い、というか、どうでもいいことなのだが、単位を落とす事は無かった。テストなら勉強しないでもある程度できる。答えを事前に知ってるからな。
おかげで教師からの信頼は綺麗さっぱり失ったが、クラスメイトは成績優秀な怠け者だと受け取ってくれたらしく、特に扱いが変わるわけでもなかった。まあ当然だ。俺はどう見ても不良って感じじゃない。
ただ、同じ中学の奴は何かと心配してくれたみたいで、特によく部室を訪れてくれる国木田には感謝しながらも、誤魔化すしか術が無かった。
部室に鶴屋さんがやってきたのは、そんな夏の日のことだ。
昼休み。部室で弁当を食べ終え、窓際で食後の読書に勤しんでいると、歴史の授業に便宜上使用される地図帳ぐらい滅多に開かない扉が、錆びた音を立てて開かれる。
現れたのは、いつも元気で快活だった、きっとこっちでも同じように元気で快活なのだろう、そんな上級生だった。
人形についたボタンみたいにぱっちりした目で俺を見つけるなり、肩まで捲し上げた夏服のしわを伸ばすように片手を挙げ、彼女は笑う。
こんな距離で目を合わせるのは、実に数ヶ月ぶりだった。
「お! キミが例の……えーっと、キョ、キョ、……キョンくんだねっ」
俺は呆然としつつも、鶴屋さんがここにいることを不思議に思っていた。
教師に目をつけられないため、俺がここにいるってことは信用できる奴にしか教えていない。それが、どうして。
俺の目に浮かんだ疑問を読み取ったのか、鶴屋さんは勝ち誇るように笑うと、
「谷口くんに聞いたら、しゅしゅっと教えてくれたよっ!」
あの野郎、可愛い子の頼みだけはザルで聞きやがる。今度安物のコーヒーフィルターでもプレゼントしてやろう。
俺はため息をついた。飼い慣らされた子猫みたいに無遠慮に近づいてくる鶴屋さんを改めて見るにつけ、気が重くなるのをひしひしと感じる。
正直、鶴屋さんとはあまり顔を合わせたく無かったのだ。SOS団の近くにいたこの人から他人行儀な顔をされるのは、あまりにも辛い。
「……誰か知らないけど、俺に何か用でもあるんですか?」
こんなことを言わなくちゃならないのも、結構きつかったりする。
意識して無愛想に接する俺を、硬くて掘れない地面の上でもがくモグラを見下ろす鳥のような笑いを浮かべ、鶴屋さんは言う。
「おや、自己紹介せにゃなんないの? あたしのこと知ってるくせに?」
思わず声をあげそうになった。
この鶴屋さんは、自分のことが俺に知られているとは思わないはず。なんせ、会って話したことすらない。
なら、ひょっとして……
「キミさぁ、こないだうちんとこの別荘に来てたっしょ? 防犯カメラに、ばっちしくっきり写ってんだっ」
俺はいい加減学習した方がいい。ここにいるのは、SOS団の名誉顧問じゃないんだ。
こんな気分になってしまうから、会いたくなかったのに。
「さあ、覚えがないですけど。人違いじゃないんですかね?」
ここはとぼけといた方が賢明だろう。妙な疑いを持たれるのはさすがにまずい。犯罪者になるのは、普遍的にごめんだ。
しかし、鶴屋さんは甘いねっ、と言わんばかりに指を突きつけながら、
「いやいや、キミの顔は間違えないよっ。前からキミのこと、色々チェックしてたんさっ」
チェック? どうして鶴屋さんが俺を気にするんだ? ここに来て接点を持ったことなんて、一度も無かったはずなのに。
「すげー興味あるんよねっ、キミのこと。入学式の日にうちのクラスに来たキミだっ。あん時もあたしの顔見て、すぐ出てっちゃったっしょ? あたしに言いたいことでもあるんかな、とか考えてたら、気になって寝れないのさっ!」
ああ、あの時か。しかし、一瞬目を合わせただけなのに、相変わらず鋭い人だ。ひょっとしてカボチャの気持ちとかもわかってしまうんじゃないだろうか。
内心感嘆の言葉を述べながらも、それ以上関わるつもりの無い俺が、誤魔化しを口にしようとすると、
「昨日も昨日でさ、途中で立ち止まっては、どっかをじっと見つめたり、ベンチをずっと触ってたり、ありゃ何のオリエンテーリングなのかなっ?」
昨日?
昨日は、確かに街に出て色々な場所を回っていた。たまに落ち着かない気分になると、一人で不思議探索の真似事をする時がある。しかし、そんなこと谷口にだって言った覚えは無く、したがって鶴屋さんが知っているはずが……
「あ、そうそう。ごめんだけどねっ、昨日尾けさせてもらってたからっ」
「……つ、尾けた?」
万引きとかと同種の後ろめたさを秘めた言葉を、鶴屋さんはあくまでハキハキと、
「たまたまぶらぶらしてた時、駅前で見かけたんさっ。じっと立ってたもんだから、ありゃ、誰か待ってるんかね、と思ってちょろっと眺めてたんだけど、いきなりふらりと歩き出すし、どうにも気になっちゃってねっ!」
ぺろっと長い舌を見せる鶴屋さん。でもそれって、犯罪に近い感じがしますけど。
「んにゃ、自白したから帳消しだっ!」
いつの間に法律は力士のトランクス並に緩くなったのだろうか。
「ね、ね、キミっていっつもあんなんしてんの? 別荘んときもじっと建物を見てただけだったじゃん? ただの趣味ってわけじゃないよね?」
「いや、それはだから、つまりですね……」
「隠したって無駄だかんねっ。キミからは、なんか面白そうな匂いがするんだっ! 独り占めしてないでさぁ、お姉さんにも教えておくれよ!」
鶴屋さんは、画竜に点睛を入れる芸術家ぐらい真剣に、そして週末の子供のようにわくわくと輝く好奇心でもって、こちらの目を見つめてくる。
耐え切れず外に目をやると、ここに来たばかりの頃咲いていた桜の木は、もうすっかり地味な緑色に覆われ、他の木と区別がつかなくなっていた。
だから俺は、
「……本当に聞きたいですか?」
「うんっ!」
「ちゃんと最後まで、聞いてくれますか?」
「もちろん! あたしゃ中途半端が嫌いなんさっ! 地獄の果てまで初志貫徹だよっ」
俺は、ゆっくりと口を開いた。
別に鶴屋さんの好奇心に負けたってわけでもない。
ただ、俺は誰かに知っておいてほしかった。自分がどこから来て、そこにはどれだけ楽しいことがあったのか。
この頃になると、たまに考えることがあったんだ。ひょっとしたら、俺は頭がどうかしちまってるんじゃないかってな。
宇宙人だの未来人だの超能力者なんてのは最初っからいなくて、ハルヒだって脳内劇場の登場人物に過ぎず、入学式の日に妄想に取り付かれた俺は、一人わけのわからない夢を見てるに過ぎなんじゃないか。
笑い飛ばすには悲しすぎる現実。そんなもの、認めたくはない。
だから、俺は話し続けた。自分の記憶が本物だと確信するために、脳のローランド溝をなぞる様に微に入り細に入り話しまくった。
昼休みを経て、放課後も学校が閉まるまで話し続けた。
そして翌日。
外が暗くなる頃、ようやく最後まで語り終えた俺に向かって、鶴屋さんは喝采の拍手を打ち鳴らす。
「すごいすごいっ! まるで違う世界の話みたいだっ! おもしれーっ!」
飛び上がって喜ぶ姿を見ながら、俺は恐々と尋ねた。
「……こんな話、信じてくれるんですか?」
鶴屋さんは打つ手をぴたりと止めて、腕組しながら眉間に皺を寄せ、
「う〜ん、話は正直ちょっと眉唾っぽかったよ。あたしが出てんのも、何か変な感じだったし……でも、聞いてて楽しかったしねっ! そんなんが本当なら、サイコーだっ」
そのまま頬を引き、ニッと見慣れた笑顔になって、
「それに、キミはずっと真剣だったっしょ。話してる時も、街を回ってた時も、ずっと真剣だった。だから他はうっちゃっても、キミのことは信用することにしたんさっ!」
ちょっと待ってな、と言って部室を飛び出し、またすぐに舞い戻ってきたかと思うと、
「これ!」
俺の鼻先に引っ付けてきたのは、草書体で『文芸部』と書かれた入部届けだった。
「異世界探し、あたしも混ぜてっ!」
一人っきりだった文芸部員は、こうして二人になった。
夏休みに入るなり、俺はやたらと豪華なクルーザーに乗せられて、例の孤島に向かった。もちろん鶴屋さんの根回しによるものだ。
そこまでしてもらう必要は無いと言ったのだが、あたしが行きたいの一点張りで、どうしようも無かった。
建物も何もない無人島で、俺たち二人は一日だけ泳ぎまくった。
一日限りの合宿から戻ると、今度はプールに向かった。やはりアメフラシのごとく大量発生していたガキどもと共に即席ルールの水中サッカーで遊んだ。筋を軽く痛めた。
盆踊り大会では、俺も無理矢理浴衣を着せられた。蓄えを全放出する勢いで豪遊したあと、ちゃちな花火をした。浴衣姿の鶴屋さんがポニーテールだったせいで落ち着かない気分だったことは胸の奥に閉まっておく。
鶴屋山で虫採りもした。セミを棒受け漁で捕獲されたサンマのように乱獲し、にも関わらず一向にボリュームが落ちないセミの合唱を聞いていると、いつの間にか夜だった。
キャッチアンドリリースの精神は、もちろん忘れない。セミにしてみたら、何がしたかったんだこいつらと思ったことだろう。
鶴屋家の蔵にあった望遠鏡で天体観測をした。無愛想な宇宙人のことを話すと、鶴屋さんは会ってみたいと言ってくれた。
バッティングセンターでまた筋を痛めた。カッコつけようとすると良いことがあった験しが無い。
花火大会の日は雨だった。代わりに図書館に行って、元の世界で読みかけだった本を借りてきた。同じ内容。なのに、どうしてあいつらはいないんだろう。
ハゼ釣り大会で鶴屋さんが優勝した。商品は最新型のデジカメ。何かあれば写真を撮るようになった。
肝試しはちっとも怖くなかった。暗かったからかどうか解らないが、いつの間にか俺たちは手を繋いでいた。
宿題も自力で全部終わらせた。二年生とは内容が違うので、写しあうことができなかったからだ。
カエルのバイトはしなかった。さすがに鶴屋さんをあんな灼熱地獄に放り込むわけにはいかない。
とにかく、五人だった思い出を、二人でやりなおした。
帰るための手がかりを得ることはできなかったが、それでも楽しかった。
もし一人だったら、俺は何をしていたんだろうか。想像すると、少し恐ろしい。
やがて秋になり、文化祭が近づくと、流石に映画を撮るわけにもいかなかったので、予定を早めて機関誌を作ることにした。
鶴屋さんはやはり抱腹絶倒の冒険小説を書き、俺は短い恋愛小説の代わりに、自分の実体験に基づいたSF小説を長々と書いた。五人分の文章だ。なかなか面白いものができたと思う。
俺たちの小説に加え、無理矢理手伝わせた谷口と国木田の渋々な尽力もあり、紙面はかなり充実した内容となった。
評価もそれ相応に高かったらしく、そのせいで図書部の教師に目をつけられた俺たちは、半ば強制的に図書部が発行する新聞とやらのコラム欄を担当させられることになったりもした。
ステージを欠場したバンドは、一つも無かったという。
そして、冬を迎えようとする頃。
自分の中に、鶴屋さんに対するある種の感情が芽生えている事を認めないわけにはいかなくなった。
ずっと一緒にいてくれた上級生。
情が宿るのも当然といえば当然で、どうしようもないことかもしれない。
しかし、それだけだと思い込むのは、ひどく難しい事だった。
鶴屋さんといるとき、元の世界のことを考える時間はいつの間にか少なくなって、俺はただ二人でいられることを、純粋に楽しんでいた。
手段と目的の逆転。よくある話だ。
カレンダーには、元の世界のものとは違う、新しい予定がどんどん増えていった。
戻るために思い出をなぞっていたわけでなく、新しい思い出を作るために進もうとしている自分がいる。
以前一度は否定した、常識的で退屈な世界を、あいつらの影も形もない世界を、俺は受け入れようとしている。
それに気づいたからには、決断しなくてはならなかった。
どっちにしろ、ずっとこのままでいいわけがない。それだけは、初めからわかっていたことだ。
つまりは二択。
あいつらを探し続けるか、それともここで生きるか。
真面目に出席するようになっていた学校を風邪と偽って丸一週間休み、ろくに眠る事もできずに考え続けた末、俺は決めた。
冬独特の、すべてが薄ぼんやりとした空気の中で、一つだけ確かなものがある。
十二月初旬。
昼はそこそこの賑わいを見せていた学校の近くの公園には、夜を間近に迎えるにあたり、さすがに子供たちも夕食に勝る価値を見出せなかったのか、人っ子一人見当たらなくなっていた。
さらに、アリもキリギリスも凍死しそうな寒さを伴った空気は手入れを怠った五十代の肌のように乾燥しており、もう少し暖かい日にすればよかったかもしれない、と俺に思わせるには十分な天気。
告白の成功率と気温の相関関係は多分誰も調べたことが無いだろうが、一々北極海まで赴いた上で愛を語られても迷惑としか思えないだろう。財布の中身ぐらいなら賭けてもいいぜ。
心中で微妙にテンパりながら公園の真ん中につっ立ったまま、少しでも寒さを防ぐためマフラーの中に顔を埋めていると、
「ちわっ! 遅くなってごめんよっ」
何枚着ているのか、張り切りすぎた雪だるまのように膨らんだ鶴屋さんが、ケーブル編みの柔らかそうな手袋を拝むようにこすり合わせながら、柵をまたいで小走りにやってくる。
俺の前で急停止すると、足だけはそのまま小刻みに動かしながら、
「いはー、めっさ寒ぃー。キョンく〜ん、スキー合宿の打ち合わせなら、こんなとこでしなくてもいいんじゃないかな? それともあれかいっ? 寒さ先取りってことかいっ?」
さすがに直球で行く勇気は持てず、そんな理由にかこつけて呼び出していたことを、すっかり失念していた。
豆鉄砲を乱射されるハトのように慌ててフォローの言葉を入れようとすると、鶴屋さんはぐりんとした目を半分閉じて、
「キョンくん、何か隠してることあるっしょ?」
ぐ、と詰まる俺を見て、きしし、と悪党っぽく笑うと、
「うちら長い付き合いだからね、そんなんはばればれさっ。で、なになに? ひょっとして、何かサプライズあんのかなっ?」
ビックリ箱を解剖しようとするやんちゃ坊主のように、目を輝かせはじめる。
俺はそれを見逃さなかった。
ここだ。この話の流れに乗るしかない。波乗りの神様よ、カメハメハ大王とか、とにかくその辺の偉人よ、俺にご加護を!
「……じ、実は、鶴屋さんに伝えたいことがあるんでふぇ」
噛んだ。やはり一銭も投じたことがない連中に頼ってもダメだ。瀬戸際の教訓。大体何だよカメハメハって。親ふざけてんのか。
「でふぇ? キョンくん、今更語尾を変えて無理矢理キャラ変えんのは難しいにょろ。そういうのはさ、入学した時から決めとかなきゃね」
いや、キャラ変更の話とかじゃなくてですね。というか、語尾がでふぇとか抗菌物質のデフェンシンぐらいしか思いつかない。抗菌物質キャラ。未踏の領域だ。学校に巣食う不良共を一掃してくれそうな勇ましさがある。
……でもなくて。
いかん。目の前の大仕事にびびってしまい、さっきから思考が逃避しがちだ。
俺は絵に描いたようにキョトンとしている鶴屋さんを見ながら、マフラーが盗まれたバイクみたいな心臓の音に乗せて、自分自身に暗示をかける。
やれ。もう吹っ切れ。一回噛んだら、もう何回噛んでも一緒だろ。もともと、そんぐらいみっともない方が分相応なんだ。
一度大きく深呼吸してから、俺は一息に言う。
「今まで色々、俺のわがままに付き合ってくれてありがとうございました」
噛まなかった。一筆書きのように滑らか。
「なーにっ、そのことなら気にしないでいいっていつも……」
毎度のことを、とでも言いたげに俺の肩を叩こうとした鶴屋さんは、糸止めに繰られたように動きを止め、
「……今までってことは、ひょっとして、やめちゃうの?」
俺は頷いた。鶴屋さんは一瞬顔を俯かせたが、すぐにまた顔を上げ、目の奥にいつに無く真剣な色を浮かべると、
「そか……じゃあ、文芸部も解散なのかなっ。今日はそれを知らせに?」
静かに尋ねてきた。少しぐらい、寂しいと思ってくれているのだろうか。もしそうだとしたら嬉しいけど、同時に心苦しくもある。
俺は、ちぎれんばかりに首を横に振った。
「帰ることを考えるのは、もうやめます。でも、文芸部はやめません」
鶴屋さんは、英語のリスニングを聞かされるチェシャ猫のように何が言いたいのかわからないといった様子で、困惑と笑顔の間を彷徨っていた。
もう、引き返す事はできない。
「帰るための手がかりとか、そういうの抜きで、鶴屋さんと二人でいたいんです」
唾を飲み込み、乾いた喉を一度濡らして、
「俺、あなたのこと好きですから」
それ以上目を合わせていられず、深々と頭を下げる。
「だから俺と、……その、こ、これからも一緒にいてください」
俺の言葉が途切れるや、公園の中に忘れられていた静けさが、隅に追いやられた報復とばかりに殺到してきた。沈黙の針が冷えた耳を撫で回している。
閉じようとしても言う事を聞かない瞼を諦め、自分のつま先を見つめながら、頭の中は熱暴走していた。
ついに、言ってしまったのだ。
ほとんど前フリなしの告白。こんなんでいいのか。いや、ダメだろ。雑誌の特集とかでダメな告白の仕方ベスト5とかにランクインされる感じかもしれない。
まぁいいさ。断られる確率の方が高そうだってことは、事前に見当ついてたからな。二人っきりでもペースを崩す様子が無かったし、まず男として見られてないのは間違いなさそうだ。
だからって、こっちで生きるという決意を変えるつもりはない。それはもう決めた事で、この告白は、決意表明みたいなものでもある。
手がかり探しはもう止める。そうだな、文芸部としてもっと積極的に活動するのもいいかもしれない。コラムだって、始めてみれば楽しいもんだったし。
その時、もう鶴屋さんは隣にいてくれないかもしれないけど、そんときゃ暇そうな谷口辺りを引き込んで、アホらしいことやるってのもいいかもしれない。
でも、しばらくは何をする気も起きないだろうな。振られたくねえ。ショックで拒食症とかになったらどうしよう。まあ、そこまで繊細じゃないけどな。
一呼吸の間に、幾つもの思考が並列処理で加速していく。
そして、その内の一つでも何らかの結論を出す前に、
「こちらこそよろしく!」
柔くて軽くて丸っこいものが、俺の腹の辺りにタックルをしかけてきた。
一瞬わけがわからなかった。コチラコソヨロシク。何だそれ。南米の方の新しい王様の名前か何かか。コチラコソ王。どっちだ。
いや、そんなことより見ろよ。鶴屋さんが俺に抱きついてるぜ。どうして? ホワイ? 映画の撮影?
やがて、忙しく駆け巡っていた血液が深い場所に落ち着いていき、混乱の魔法をかけられたような頭にも、一献の冷静さが戻ってくる。
……成功。
俺はそっと深く、コートの奥に隠された熱を確かめるように抱きしめると、口の中を思いっきり噛んだ。すげえ痛い。夢じゃない。
脳からわけのわからない麻薬が飛び出して、ただひたすらにハッピーな気分だった。もし死ぬなら今がいい。何一つ悔いは残らないだろう。
涅槃の境地へいざ旅立たんとしていると、抱きしめた背中が小刻みに揺れているのに気づいた。
「つつつ、鶴屋さん? どうなさりなさったんですか?」
言葉がまったく覚束いていないが、それは置いといて、慌てて顔を下に向けても、卵みたいな形の頭頂部しか確認できない。
ひょっとして、俺の体臭かったか? あんだけ風呂入ったのに。
それとも、念のためと思って使った制汗スプレーがまずかったか? 一吹きもしなかったのに。
完全にパニクっていると、ずずっと鼻を啜る音が聞こえ、途切れ途切れに吐き出される湿った声が、俺の腹部を暖めていく。
「だって、キョンくんいつも帰るために一生懸命で、そういうとこ好きで、でも、だから、あたしのことなんて、見てないんだろうなって思ってたから……」
どうやら体臭は正常なようで安堵すると共に、こんな時どうすればいいかわからない自分の経験値の少なさに慙愧の念を抱きつつ、鶴屋さんの背中にまわした手を撫でるように叩く。
「機関誌、毎月発行しましょう。放課後は毎日打ち合わせですね。どっか取材に行くのもいいかもしれない。あと、旅行にも行きましょう。今度は俺の行った事無い所がいいです。でもなるべく、リーズナブルな所で」
こうやって楽しいことを話してやれば、誰だってすぐ泣き止むさ。うちの妹から導き出された法則だから、互換性には乏しいかもしれんが。
公園は相変わらず気圧に難癖をつけたいぐらい寒かったが、二人で一緒にいれば、実はそうでもないことに気づいた。
それから、日々は目まぐるしく過ぎていった。
放課後は部室で過ごして、夕方になれば一緒に下校し、休みになれば一緒に遊んで、暇なときにはメールする。
クリスマスには調理室に忍び込んで手料理を振舞ってもらい、正月は初詣に行って、バレンタインには味のしないチョコをもらった。
不思議なことなんて何一つ無い、十人並みの生活。手を握るだけで幸せになれる安易な人生。
それでも俺は、ずっとここにいたいと願っている。
フラッシュバック。
やがて意識は現実と重なり、目の前に焦点を結ぶ。
「まず、現状を説明します」
記憶と異なる、まるで大人になった彼女のように隙の無い厳しい顔のまま、朝比奈さんは口を開いた。
「あたしたちが時間航行をしている最中、STC間のネットワーク……我々のTPDDでアクセス可能な時空間領域に、情報生命体が寄生しました。コンピ研の部長さんや阪中さんの件を覚えていますか?」
いまだ口を開く事ができない俺を待たず、朝比奈さんは続ける。
「あの時と同じです。規模が膨大になり、寄生対象が我々の概念装置に入れ替わっただけだと考えてください」
情報生命体。像が自動的に結ばれる。馬鹿でかいカマドウマと、阪中家のルソー。
「情報生命体は、それがもともとの能力なのかそれとも寄生する事により何らかの変異を起こしたのか、おそらく後者でしょうが、ネットワークのあちこちに無数のリンクを貼り付けはじめました」
この辺はさっぱり。他所に回して欲しい議論だ。
「ここと同じような世界とのリンク。同位でありながら我々の歴史とは因果を共有しない、完全に独立した、ありえないはずの時空へのリンクです。平行世界の出現と考えてもらって構いません」
ありえないだって? どうして。俺はここにいるのに。
「我々の世界に直結しうるリンクがこのまま増え続ければ、やがて可能性は限界に達し、急速的な収縮活動が行なわれると予想されます。そうなれば終わりです。全ては消え、宇宙は始まりの状態に戻るでしょう」
世界の終わりに宇宙の始まりと来たもんだ。随分大仰な話じゃないか。
「幸い、寄生した生命体の位置は長門さんの協力で特定することができました。今ならまだ消去可能です。ネットワークが正常化されれば、リンクも有り得ないものとして消失するでしょう」
そいつは良かった。何よりだ。
「次に、キョンくん。あなたのことです」
俺のことはもういい。放っておいてください。
「あなたは情報生命体が寄生した際の時空震に巻き込まれ、存在が散り散りにされてしまいました。本来ならそこであなたは消えてしまう筈なのですが、何故かここ、元の時空と近似な時空で、あなたとして再生されています」
どうやら俺は、よっぽど生き汚いらしい。
「おそらく、涼宮さんの力が何らかの影響を及ぼしているのだと思います。存在の上書きか、或いは二重化か。何にせよ、不幸中の幸いでした」
涼宮。ハルヒの名前を他人の口から聞いたのは、一年ぶりだ。あいつは今、どこで何をやってるんだ? ちゃんと楽しくやっているんだろうか。
「情報生命体を消去すれば、この時空は実質的に消失します。涼宮さんの鍵であるあなたを、それに巻き込ませるわけにはいきません」
……待て。何だって?
「朝比奈さん、この時空が消失って……」
「先に言っておきますが、あなたに拒否権はありません。無理矢理にでも連れて帰ります。これは、長門さんと古泉君を含めた、我々の総意です」
「な……!!」
俺は立ち上がり、朝比奈さんにしがみつく。
「答えてください! この時空が消えるって、どういうことですか!」
朝比奈さんは一瞬瞳を伏せたあと、すぐに毅然と俺の顔を見上げ、
「リンクが消失すれば、この時空は観測不能になるの。そうなれば存在しないも同然です。仮に情報生命体の能力でのみ定義されていた時空であった場合は本当に消える事も考えられます。どちらにせよ、結果は変わりません」
消えるだって? 谷口も国木田も、家族も、鶴屋さんも?
「明日の夜、迎えにきます。その時までに、お別れを済ませておいて下さい」
「ま、待ってください! それ、その消えるとかって、何とかできないんですか!」
俺が捲くし立てても、朝比奈さんはあくまで冷静に、
「不可能です。先ほど述べたとおり、情報生命体を捨て置くわけにはいきません」
「じゃ、じゃあ、こっちの人をあっちの世界に移すとか、とにかく、何か方法が」
「それも不可能です。ほら、見て」
朝比奈さんは俺に向かって手を掲げる。街灯に照らされた腕は、指先から肩にかけて半透明で、体の向こう側の景色を透かしていた。
絶句すると同時に納得した。だから、幽霊。
「膨大に増え続けるリンクのせいで時間航行は妨げられ、未来の時間の位置も不明瞭になり、通信も困難な状態です。加えて我々の時間移動プロセスは、このような事態を想定されて作られてはいません」
朝比奈さんは腕を下ろすと、
「少しの間しか、異なる時空に留まることはできないの。長く留まりすぎると、弾きだされて消えてしまう」
公園の時計にちらりと目を向けて、
「それに、一定時間ごとに元の時空に戻ってポイントを更新しないと、増え続けるリンクに押し流されて、どちらの時空も位置を見失ってしまいかねません」
「……なら、俺が戻ったって、消えてしまうだけじゃないですか」
「そうかもしれません。ですが、そうならない可能性も高いです。あなたがここで無事に存在しているのと同じように」
ゼロより少しでも大きい数字を、ってことか。
そんな、いい加減なことで…………第一、どうして、
「どうして、今更そんなことを」
すぐに来てくれれば、俺は何も、
「今更なんかじゃ、ないんですよ」
朝比奈さんは冷えた表情を俯かせると、懺悔するような響きでぽつりと零す。
「さっきも言った通り、時間移動は妨げられています。今時間平面を移動するのは、濁流に身一つで飛び込むようなもの。それでも、同時間軸上に存在する近似の時空に移動する事だけは、辛うじて可能でした」
「同時間軸……?」
二年生への進級を控えた、三月。
「そう。キョンくん、あなたにとっては一年後のことだったかもしれないけど、あたしはあの日のうちに、あなたの元に向かったんです」
……そうだ。
俺が妙な気配を感じたあの夜が、朝比奈さんと共に時間移動を行なった日だった。
じゃあ何か。俺が一年かけて、もとの世界と重なる時間軸に戻ってきてしまったから、今なのか。今更、こんな……
「本当はすぐに連れて帰るつもりだった。でも、あなたはここで、新しい関係を築いていたから……ごめんなさい、キョンくんの部屋のカレンダー、勝手に見てしまいました」
妹じゃ、なかったんだな。
「あたしは、ずっと迷って……できるだけ、ギリギリまで待ってもらいました。でも、もう限界です」
俯かせていた顔を上げた朝比奈さんは、厳しい表情に立ち戻ると、
「いいですか。明日の夜、あなたを連れてもとの時空に戻ります。これは規定事項です。決して覆りません」
朝比奈さんが目を閉じると、フィルムを炙ったように所々欠落していた輪郭は、次第に夜にぼやけて消えていく。
「待って、」
こんな一方的な話だけしといて、行っちまう気かよ!
「待ってください朝比奈さん! 俺は、俺はもう帰るつもりは……」
俺の言葉を待つことなく、朝比奈さんの体は風に吹かれるように一瞬で消えた。
夜の公園で、俺はまた一人になった。
春はうららかと言うが、うららかって一体どういう意味なんだよ。
窓際でどうでもいいことを考えながら、紙パック入りのスポーツドリンクというアルミホイルに包まれた水羊羹のようにどことなく不自然さを感じさせる飲料で喉を潤わせていた俺に向かって、目の前でアップルジュースを嗜んでいた国木田は、
「で、昨日の手紙は結局何だったの?」
「ああ、ありゃ人違いだ。どうも送り先の宛名を間違えたらしいな」
人間誰しも、間違いを起こすものさ。死後だってそれは変わらないみたいだぜ。
「ま、言いたくないならいいけどさ。一応、お払いとかしてもらった方がいいんじゃないかな」
嫌だね。俺は困ったとき神に祈りはすれども平常時は無宗教かつ無信仰なんだ。妙な説法に札束をつぎこむつもりは無い。
「ダメだ。キョン、今度俺と一緒に寺に行くぞ。俺たち何か変なのに呪われてんだ。あんな山道、掘り返したら白骨死体の一つや二つ出てくるに決まってる。その内の一つが、俺たちの背中にくっついてんだよ」
これまた紙パックのコーヒー牛乳を飲んでいた谷口が、正気の面構えで夢遊病患者のような妄言を吐く。そんなもん妄想だ妄想。行くんならお前一人で行ってくれ。
「バカタレ。憑いてるのはお前であって、俺はとばっちりを受けた形なんだぞ。お前が傍にいる限り、俺たちに明日はねぇ!」
失礼な奴だなおい。そういうのが発展していじめ問題に繋がるんだぞ。
俺は最後の一滴まで逃すまいと紙パックを握りしめつつ、
「わぁったよ。行く行く」
行くから、必死な顔を接近させるのは止めてくれ。
「うん。やっぱり二人とも行くべきだよね。こういうのは、何らかの対処を受けたっていう意識が一番の薬だっていうし」
訳知り顔で頷く国木田に、谷口は至って真面目に、
「何他人事みたいに言ってやがんだ。お前も寺に行くんだよ」
「え? 何で僕まで」
「お前もあの手紙に目を合わせただろ。呪われてるぜ、間違いなく」
「……どんな感染経路なの」
谷口の奴、よっぽど幽霊を見たのがショックだったらしい。何でもオカルトの方向に結び付け始めやがった。こりゃ、こいつが変な宗教に嵌るより先に寺へ行かないとな。
「じゃあ、春休みになったら三人で行くか」
寺に遊びにいくなんて初めての経験だが、何事も行ってみないとわからないからな。意外と日々の煩悩を白紙に戻すいい機会になるかもしれん。
「おっし、絶対な。国木田、お前もだぞ」
国木田はさも気が進まなそうに渋々と頷くと、
「はいはい。わかったよ」
谷口は、一年間刺さりっぱなしだったささくれが何かの拍子に抜けたかのように満足気な様子で、
「あー、これで寝る前に盛塩しないで済むな。いや、呪いが解けて悪いものが消えれば、アドレスを交換してから三ヶ月音沙汰無しのあの子からもメールが来るかも」
それはもう諦めろよ、とは取り立てて言わない。どうせ言っても聞かないことは火に触ったら火傷するぐらい明らかだ。
「なに、その悟ったような顔は」
国木田が、空の紙パックを指でいじりながら問うてくる。
「あいつアホだなぁと思って」
まあ、プラス思考は悪い事じゃないけどな。俺が言うと国木田は、それこそアホらしいと言わんばかりに、
「今更気づいたの?」
「いや、再確認だ」
俺たちは視線を交わしたあと、揃って肩を竦めると、あの子とやらがどんな子なのか聞いて欲しそうな谷口のために口を開くのだった。
放課後から少しばかり時計の針を進めた時間。
息を切らして部室の扉を開けると、
「あ、キョンくん、遅かったじゃないかっ。今日も部活中止になんのかと思ったよ」
口を尖らせながらも、目元を緩ませる鶴屋さん。うぬぼれてしまいそうになる瞬間だ。
「すいません。ちょっと野暮用がありまして」
俺が閉じられたノートパソコンに目を向けると、鶴屋さんは餌を一人で獲ったインパラの如く誇らしげに胸を張り、
「あたしの分は終わったよ! あとは印刷するだけっ!」
ひょっとして、昨日も一人で書いていたのかもしれない。悪い事をしてしまった。こんな寂しい部屋に一人でいるのは、それほど楽しい事じゃないだろう。
「じゃあ、今日はのんびりしましょうか」
俺の分の小説は既に書き溜めてあるので、その内の一つを出せばいいだけだ。なんせ荒唐無稽なSF小説のネタに関してだけはストックが幾らでもあり、詰まるという事が無いからな。
鶴屋さんの横に座り、憂いの欠片も見当たらないような笑顔を眺めながら、どうでもいい言葉を交わす。
考えてみれば人生においてどうでもいい会話が占める割合はことのほか多く、それでもまだ政治の話とかできればまだ建設的なんだろうが、今のところそんなのは授業でやってれば十分だ。
この点については他の多くの学生から賛同を得られると思うね。
「ね、ね、キョンくん。来年新入部員がはいったらどうするっ? 大所帯になるかもしんないよっ」
で、気づいたらこんな話になっていたりする。
「誰も入れません。拒否します」
先日密かに決定した事項だ。
「え、なんでさっ?」
そんな普通に聞かれたら答えに窮してしまうんだが。そのぐらい察して欲しいと思うのは我がままなのだろうか。
鶴屋さんは口篭る俺を見て、サディスティックな笑みを浮かべながら、
「こゆことできなくなるからかい?」
いきなり耳に生温い息を吹きかけてくる。わかってて聞いてきたな。たまにSスイッチが入るから、この人は油断できない。
しばらく身もだえしていると、今度は俺の膝の上に乗っかってきて、脇をくすぐりはじめた。
「ちょ、ちょっと、鶴屋さん、くる、くるしいですって!」
「うひゃひゃひゃ! ここかいっ? ここがいいのかい?」
傍から見たら何やってんだこいつらと思われるだろうが、俺たちは暇な時大抵こんな感じなのである。
で、それにも飽きたらいそいそと本を読み始める。
当初は空っぽだった本棚も、俺たちが少しづつ持ち寄る事で、本棚としての役割を次第に果たし始めていた。
ただ、俺もそうなのだが、特に鶴屋さんは面白ければ何でもOKという人なので、様々なジャンルが無秩序にひしめきあって、凝り性の人が見たら思わず整理整頓したくなること請け合いだ。
「キョンくん、読むのめっさ早いなあ。もうちょっとゆっくり読んでおくれよう」
「じゃあ鶴屋さんが持って下さいよ」
「やだねっ」
俺の膝に座ったままで、だだをこねて足をバタつかせる鶴屋さん。人間椅子になってしまったような気分だ。というかそのまんまなのだが。
色々と我慢を強いられる姿勢なのだが、これはこれで顎を鶴屋さんの肩に乗せて楽できるため、密かに気に入っていたりする。
水を打ったように静かな部室に、紙の摩擦音が聞こえている。遠くからはブラバンの練習音。低い音や高い音が重なり、頬には絹のような感触がさらさらと流れ、どこまでも眠気を誘う。
そのためか、いつもは鶴屋さんが俺の腕にもたれかかって寝てしまうか、もしくは俺も後ろにのけぞったまま眠ってしまうことが多々あるのだが、今日は珍しく最後まで一緒に読んでいた。
さすがスペクタクルアクション巨編。帯に偽りなし。
「あたしらってさ、結構バカップルだよねっ」
鶴屋さんが漏らしたとおり、やはり俺たちはバカップルなのかもしれないが、自分で認めたら最後の牙城が崩れるので認めない。
部室で本に読み嵌ってしまったせいもあり、鶴屋さんを家の前まで送る頃には、もう七時を大きく回ってしまっていた。
人の声は少なくなったせいか、虫の涼しげな鳴き声が、門の向こうの前庭からよく聞こえてくる。
俺たちは自転車の傍で蹲ったまま、そんな音を聞いていた。はしゃぎすぎて疲れている体にはいい薬だ。総天然マイナスイオン。
「うっひゃー、お腹空いたなー。ねえ、キョンくん? あたしん家でご飯食べて行くかい?」
「つかぬことを聞きますが、今日お父様はご在宅ですか」
「うん。ばっちしいるっさっ」
「じゃあやめときます」
「うわ、ださいっ。キョンくんビビリにょろ〜」
女性にはわからないんだ。父と言う鋼鉄装甲の如き壁が。しかも鶴屋さんのお父様と言えばこんな大きな家を建てるぐらいの傑物であり、俺なんて指先一つでダウン間違いなし。
想像だけで敗走してしまいそうになる自らの小さな肝っ玉を恥じ入りつつも、モラトリアム的考えでこれから大きくなるだろ、とか暢気に考えていると、ブレザーの袖がそっと引かれた。
「もし、もしキョンくんがよければなんだけど。あたし本当にさ、おやっさんに紹介したいって思ってるんだけどなっ」
恐る恐る、といった様子で、俺の顔を覗きこんでくる鶴屋さん。
何も恐れることなんて、ありはしないのにな。
答えのかわりに、俺は鶴屋さんを抱きしめ、
「へ?」
そのまま持ち上げて、再度自転車の後ろに座らせる。
「ちょ、ちょっとキョンくん、どうしたの? あたしんち、ここなんだけどなっ?」
「旅行」
「りょこう?」
「二人で旅行に行きましょう」
「へ? ……い、いいけど、どこに?」
「どっかに」
「どっかにって、そんなやっつけな、あ、うわわっ!」
ペダルに力を込め、地面を蹴って走り出す。慌てた鶴屋さんの腕が、俺の胸に巻きついた。
「りょ、旅行って、ひょっとして、今からなのっ?」
「当然です」
命短し走れよ男女。有り余る時間をわざわざ無駄に過ごすことはあるまい。
「ちょ、ちょっと待ってよキョンくんっ、そんな急に、いや、二人で旅行にはすごい行きたいけど、今日じゃなくったっていいんじゃないかなっ」
「今日行きたいんです」
「でもでも、ほら、家族が心配するんじゃ」
「あとで両家とも俺が責任持って連絡します」
「うっ……で、でもさ、着替えとかも、ほら、女の子には準備が色々……」
「全部現地調達で」
何のためにこつこつ貯蓄していたかと言えば、それは正にこの日のためである。
「……う〜、だって、まだおやっさんに紹介もしてないのに、いきなりお泊りなんてさ、」
「旅行が終わったらその足でお伺いさせていただきます」
何なら紋付袴だって用意しよう。
それから車輪の音だけが続き、やがて、回された腕に力が籠もる。
「キョンくん、さっきまでビビリだったくせに、いきなり超強引だね」
俺にだってそんな気分の時があるんですよ。彗星が接近してくるぐらいの頻度ですけど。
「昨日様子が変だったことと、関係あるのかなっ?」
いえ、全然。以前から計画してたことです。意外と後先考えるタイプですからね、俺は。
「……ははっ、確かに結構そういうとこあるよね、キミはっ!」
鶴屋さんはどうやら立ち上がったらしい。俺の肩をばしっとはたくと、
「おーっし! じゃあ温泉にでも行ってみるかいっ?」
いいっすね、名湯巡り。戻ってくる頃には、お肌が生まれ変わってますよ。
「よぅっし! 目指せ美肌! さしあたっては、駅へゴーゴーだっ!」
「お任せあれ」
歌でも歌いながら行けば、あっという間に着きますよ。
「ええっと、温泉だから……じゃあ、『She Came in Through the Bathroom Window』でいっとくかいっ?」
それ温泉どころか風呂ともあんま関係ないです、と俺が教示する前に、鶴屋さんの歌は始まってしまっていた。
近所迷惑なので良い子は真似しないようにしてほしい。
まあ、三曲目から一緒に歌ってしまっていた俺が言えた義理じゃないんだけどな。
つられてしまったんだからしかたない。流されるのは得意なんだ。それに恥の一線を越えてしまえば、あとは楽しいだけだった。
たまに車や自転車なんかが大声で歌いながら走っているのを見るにつけ、丸聞こえなんだけど恥ずかしくないんだろうか、と斜に構えていたが、ここは俺が謝る所だろう。済まん。悪かった。
なるほどラブアンドピースを叫びたくなるわけである。歌を歌いながら走る道のりは素晴らしい。鶴屋さんはともかく、俺の歌がはた迷惑であることは否めないが、それでも声を張り上げる。
駅に向かう一本道の下り坂は一夜限りのステージと化し、そしてそのステージは、鶴屋さんの悲鳴で唐突に幕を閉じられた。
四円
「キョンくん! 前!!」
今まで誰もいなかったはずの空間。自転車の鼻先に、手を広げた朝比奈さんの姿が現れる。
くそ、なんて無茶を!
「っ!」
反射的にハンドルを捻じ曲げ、車体を傾かせながらアスファルトに弧を描いて縁石に乗り上げたのを最後に、自転車は俺の体から離れる。
一蹴の浮遊感の中、鶴屋さんの小さな悲鳴が聞こえる。抱きついてくる体温。俺は背中から落ちないことだけ考えながら、顔面を道路脇の草地に擦りつけた。
頬に幾つもの熱い線が引かれ、ついた手の平に細かい小石が突き刺さる。背中に軽い体重が掛かっていることを考えると、どうやら鶴屋さんを放り出さずに済んだらしい。重さに感謝。
「キョンくんっ!?」
鶴屋さんの二度目の悲鳴が耳元で響き、背中に乗っていた体重が消える。
「……大丈夫。ちょっと擦っただけです」
立ち上がった俺の頬に、鶴屋さんは自分のポケットから取り出したハンカチを添えてくれる。少し血が出ているらしい。
「ホントに? ホントに大丈夫? どこも痛くない?」
「ええ、全然」
本当はあちこち痛いのだが、小石が刺さった程度で、無視できるレベルだ。一度ナイフで刺された経験があるからな。おかげで随分我慢強くなった。
視界にちらつくハンカチの向こうで、朝比奈さんは手を広げた姿勢のまま、じっとこちらを見つめていた。よかった、無事みたいだ。
自転車に目をやる。こっちは前輪がひどく曲がってしまっていた。これじゃ走れそうにない。
俺は放り出された鞄を回収し、親が撃たれた小熊のように心配そうにしている鶴屋さんの手を取る。
「少し歩いて、タクシー拾いましょう」
「ちょ、ちょっと待ってよっ。少し休まないと、まだあちこち……ううん、その前に、あの子に謝らないと」
朝比奈さんに駆け寄ろうとする鶴屋さんを、手を引いて制す。
鶴屋さんは少しよろめいて、俺に向かって何事か言おうと口を開いたが、
「あなた達を行かせるわけにはいきません。キョンくん、昨日言ったとおり、あたしと一緒に来てもらいます」
先に声を発したのは朝比奈さんだった。普段のマシュマロボイスと違って、愛らしくも硬い、糖度抑え目の板チョコみたいな声だ。あんまり似合ってない。
俺は聞こえないフリをして、鶴屋さんを連れて歩道に上がろうとする。
「キョンくん、あの人、今……」
「ほら、鶴屋さん。しっかり歩かないと」
遅くなりすぎると、泊まるとこ探す時間が無くなってしまいます。それこそいかがわしいホテルぐらいしかね。
それでも、鶴屋さんは足を止めたまま動こうとはしない。
ただ優しく、
「ね、あの人、キョンくんを迎えに来たんでしょ?」
俺は首を振る。
「いえ、知らない人です。もう春ですからね。変な事を言う人が出てきてもおかしくないでしょう」
色々なものが花開いてしまう季節だ。開いてはいけないものも開いてしまうもんさ。
「自転車は壊れたけど、あの人は幸い怪我一つ無いみたいだし、ここは当初の計画を優先して……」
しかし、俺の言葉を千切るように、握っていた手が振り解かれる。
「鶴屋さん?」
笑顔を消した鶴屋さんは数歩後ずさると、腰に手を当てて、
「キョンくん、嘘ついたねっ。お姉さんは悲しいなっ」
「俺は何も嘘なんて、」
「あたし全部知ってんだからっ。キョンくん、もう帰らないといけないんだよね?」
人並み外れて鋭いあなたにしては珍しいですが、生憎と外れです。
「鶴屋さん、いいですか? あの人は知らない人で、俺は今から帰るんじゃなく、旅行に行くんだ」
二人で一緒に、温泉でも目指して。
「何を想像しているのか知りませんが、それはただの考え過ぎです。大丈夫、心配しないでも、俺はどこにも行きませんから」
しかし鶴屋さんは、こんな表情を見たのは初めてだ、寂しそうに薄く笑うと、
「ダメだよ。旅行なんていつでも行けるけど、帰るチャンスはもう無いんだ。ね? 今戻らないと、二度と帰れなくなっちゃうんでしょ?」
俺は伸ばしかけた手を止めた。どうしてだ。鋭いなんてもんじゃない。まるで全部知っているみたいな話振りじゃないか。
……まさか、朝比奈さんが。
ガードレールが白く浮かんだ歩道の上に、疑念の目を向ける。
しかし、
「どうして、そんなことまで……」
朝比奈さんは俺の疑問を肩代わりするかのように、一言零しただけだった。通りがかった軽自動車のライトが照らした表情は、深い戸惑いしか見当たらない。
どうなってる。朝比奈さんは何もしていないのか?
言いようの無い不安に駆られて、もう一度鶴屋さんの手を取ろうとした俺は、
「僕が教えた。あんたが昨日、そいつと会っている間にね」
草地の奥の木に寄りかかって、薄笑いを浮かべている男を見た。
「……てめぇ、なんでこんな所にいやがる」
「自分の時間に戻れないのは、僕としても困るんでね。この件はさっさと片付けておかなくちゃならない」
かつて朝比奈さんを俺の目の前で攫った未来人野郎は、偉そうな足取りでこちらに近づきながら、
「それに何故かあんたの名前は僕の今後の予定表にも記されている。正直言って、あんたがどこでどうなろうとさして興味は無いんだがな、ふん、任務は任務だ。元の時空まで牽引してやらねばなるまい」
そのまま俺を挟んで歩道と点対称になる位置まで歩くと、立ち止まって朝比奈さんに鋭い目を向ける。
「しかし、放っておいてもあんた達の方で上手く処理してくれると思っていたが。まったく、念のために監視しておいて正解だった」
視線はそのままに、口元を嘲りの色に歪ませ、
「朝比奈みくる。彼女はあっちではあんたの友人だそうだが、そこにいる彼女は別人だ。二人を重ねて感傷的になるのは勝手だが、それでこの仕事をおざなりにされたんじゃ、僕としても非常に迷惑を被る。わかるか?」
子供に言い聞かせるような口調。気に障る。朝比奈さんは俺の苛立ちが感染したかのように、
「そんな! おざなりになんてしてません! キョンくんが事故に巻き込まれたのは、あたしの責任なんだから、あたしが、あたしがきちんとやらないと」
「口ではなんとでも言える。だがあんたのやり方を見ていると、わざとそいつらに逃げ道を作っているとしか思えないな。最低限の努力で浅ましくも自らの責を果たしたように見せかけ、あとはご両人の選択に丸投げしようという魂胆が見え見えだ」
「逃げ道なんて……、あたしはただ、二人に時間を」
「なら、そいつが寝ている間にでも縛り付けて連れ出せばよかったんだ。あの宇宙人の手を借りたっていいさ。どうとでもできたはずだろう? なのにあんたはやらなかった。二人に時間を与えるふりをして、責任から逃げていたに過ぎない」
朝比奈さんは鞭打たれたように顔を俯け、押し黙る。そいつは面白がる様を隠そうともせず、
「いくらここが僕らの時空とは関係無いからと言って、あんたの立ち位置が変わるわけじゃない。それともそっちの連中は、下世話なヒューマニズムを規定事項の上に位置づけているのか? だとしたら僕には何も言うべきことは無いんだがね」
「おい!!」
俺は声を荒げた。いい加減ムカつくんだよ。
「朝比奈さんに嫌味を言うためにわざわざ来たのか? てめえも大した暇人じゃねえか」
未来人野郎は、睨みつける俺をつまらなそうに一瞥すると、
「とにかく今までは見逃していたが、この期に及んでまで愚かな真似を続けられると、流石に手を出さないわけにはいかないということだ。もっとも、あまり体力を浪費したくなかったのでね。楽な方法を取らせてもらった」
朝比奈さんは弾かれたように顔を上げ、
「あなた、一体何を……」
そいつは落ち着き払ってまた数歩下がると、
「さっきも言ったろう。そいつが元の時空に帰るという事を彼女に話したって。こんな下らん任務は、それだけで十分片付けられる」
どういう意味だ、と追求しようとした俺の前に立ちはだかったのは、いつもみたいに明るく笑う、鶴屋さんの姿だった。
そして、いつもみたいに良く動く口で、
「キョンくん、お別れだねっ」
軽く軽く、別れの言葉を。
>>743 久しぶりの長文、楽しまさせてもらいました
>> 744
スレ立て乙
751 :
750:2007/01/22(月) 03:08:14 ID:wAMq5Vj/
久しぶりの大作、なら分かるが
長文って、頭悪い。
確かに言葉の使い方は間違ってるが、文脈から好意が感じ取れるんだから
それに突っかかるのはちとカリカリし過ぎでないかい?
全ての人間に好かれる作品は存在しない
前提としてここにいる人はプロではない
書く書かないは個人の自由、読む読まないもまた自由
嫌いなら嫌いでいいが黙ってNG登録しろよ、わざわざ文句書いて空気悪くする必要は無い
俺は好きだけどね、まあ
>>2って事だ
>>752の短文で面白い作品に期待しつつ、埋め
755 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/22(月) 14:59:53 ID:0eya7TKh
>>752が安価してないためかもわからんが、
確かに
>>754は大きな勘違いをしてるようだ。
という埋め
スレの最後に恥さらしてる
>>754が不憫で飛んできました
「
>>754短文で面白い作品に期待しつつ、埋め」
うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
>久しぶりの長文、楽しまさせてもらいました
これは流行る
>>754 顔が真っ赤だぜ?どうしたんだ?
>>754 「空気悪くすんな」「
>>2を読め」といちいちうるさく言って空気悪くしてくのって、
全部
>>2を書いた本人なんだよね。何時もくだらない議論を巻き起こしてスレを無駄に消費させるのも
>>2の人。
散々喧嘩売りまくった挙げ句に「
>>2読んで頭を冷やせ」がお約束。
過去スレであれだけうざがられてもまだこうして活動を続け赤っ恥かいていくあなたに敬意を抱いてしまう。
一連の流れの意味がよく分からない。
うめ
飛猿横流れ
763 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/22(月) 18:41:06 ID:gGgqPWSD
>>759 全ての人間に好かれる煽りは存在しない
前提としてここにいる人はプロ市民ではない
煽る煽らないは個人の自由、釣るられる釣られないもまた自由
嫌いなら嫌いでいいが黙ってNG登録しろよ、わざわざ文句書いて空気悪くする必要は無い
俺は好きだけどね、まあ
>>754って事だ
>>759の短文で面白い作品に期待しつつ、埋め
埋めヶ丘幼稚園
埋めネタ
憂鬱の長門の自己紹介の前
「ふぉんふんいふほ?」
こら、口にチ○ポを咥えながら喋るんじゃありません。
まだ埋まってない?
このシリーズのスレも38個目か・・・・・
初代の頃が昨日のように思えるぜ。
専ブラで使いやすいのってなんだろう。ずっとJaneだが、一度キコにしようとして断念したことがある。
トホホ、埋めネタ書いてたら12kになってしまった。
次にまわすか……。
埋めだああああああああああああああ
あああああああああああああああああ
あああああああああああああああああ
あああああああああああああああああ
あああああああああああああああああ
´ ,゙. :.;i.,゙. .:,' i .f _i_ :| . | : . i ! ! . 、 : ハ
i. :/|.{. .: i ,ri'{´ U{l`.:|、. : . .r=}: 、.j!: . :} i . i
}:' { |. .: :|. ::|! ,ァc、! ヽ:{ ヽ. : . : .| | メ\ .|: . .;. | . : }
ノ′ !:', :.:八:|{ 《{ノ;;ハ 丶 \,rz≦、 |ヽイ:. :./:. . j. : j
}ヘ.:{| :|:} ト -i| ´ {ノ;;心j/い: . /}:. : ./. : :,'
ヾ!、 l.:| └‐′ ト{rt;;ルノ:./:リ: /: . ! ;
'; .:|.{ ' 、匕ージ/イ :{=メ/: : :! |.:i 埋め
ヽi人 ヽー _ ,゙ :{ヘノ〉: : : . i {
}リ. :\ | ノ .i :|ン: : : : :. : !.|
〃. : .:\ ー ´ _..ィ:| :{ : : : : :,' :. ヽ!
,.、 /. : . : : : : }:ヽ-r─‐ '' ´: : :{::j .八: : : :,': : : . .゙、
/ } /′. : : : : : ノィ仁| . : :|/ . : : : };.: : ': : : : : .. ヽ
: ! __..ィ´. i.; . : :/: : : //z='-、 ___ _;/′. : : : : { \{: : :i : : : . .. \
┌‐、ー| :{´ ̄ ̄ ̄ . . ,ィ|:. . :ノ.: ://'´-‐-、 \,// . : : : : : :j ::.::._;\{: : : : : : : . . 丶
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773 :
埋めネタ:2007/01/23(火) 00:24:39 ID:85wBbUc2
SS用のテキストに書いてあったメモ程度のネタ。
何のシーンに使うつもりだったんだか思い出せない。
「あなたは」
沈黙を破ったのは意外にも長門の方だった。俺の上に乗ったまま、顔だけをこちらに向けてきている。
「あなたはインターフェースに魂があると思う?」
何だか逃亡した目標を狩る悩み多き賞金稼ぎのような瞳を浮かべつつ、えらく重い命題を出してくる。
お前の期待に沿えなくて悪いが、俺はまだインターフェースというものをちゃんと理解していないと思う。
だから、俺にその答えを出す事はできない。
「……そう」
長門は一転して市場に売られていく子牛のような瞳をしていた。
でもな、長門。そんな俺でもこれだけは言える。これだけは間違ってないと言い切れる。
なにせ俺自身が一生忘れる事がないだろう、あの冬の三日間に体験した事だからな。
俺は長門をそっと、でもしっかりと抱きしめながら言ってやった。
「長門有希はヒトと同じ夢を見る」
それはユキのように儚く解けつつも、すっと心に染みこんでいく淡い夢。
それはユキが望んだ、人並みの幸せを求める心のこもった暖かい夢だ。
「この長門有希には夢がある!」
埋めたい。もぐらのように。
ありゃ、499k……計算間違えたか。
それじゃ、チラシの裏からもう一つ。
長門が素っ裸で本を読んでいた。
のっけからこんな事言って誠に申し訳ないが、もう一度事実確認の為に言わせてもらおう。
俺が部室を訪れると、部室の中では長門が素っ裸で本を読んでいた。
……何書こうとしてたんだ、俺。
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/ /´ ̄ ̄ ̄ \ \
/⌒ヽ. // //´  ̄ 、 ̄`ヽヽ\ ヽ. / `ヽ
| ∨7′/ / ! ヽ \::. ',ハ ∨⌒ヽ / }
! ∨ :,'.:/__/ヽ ヽ\ ヽ,.斗', ',\ } ! ノ _
,. -‐…ー- 、 '、 l .:.lΛ:/ \\ヽ `<」::;ハjl ! !Λ,' /,. ‐''"´ `丶、
/ \ ヽ { .:.::{ ,ィテ=ミ ヾ イ下ミト | l ノ / \
{ ヽj ',.::::',!{∨ヒj 近ノ;j ! l | |/ / }
ヽ、 ___ ヽ. ヽ、:\`ー'' __'__ `¨´| l::|イ{,. -┴- 、 ,. ‐…ー‐--‐'′
`¨¨´ Λ , ‐''" ̄``¨ヾ:{ ̄` V´ `} ,':. j j/ \ }
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〉 _,. -‐''´ヽ:ヽ> 、_ ,. イ/:::///´ ̄ ̄`丶、 〉
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{ i\ ,.-‐'′ /.:.:.:/´ ,. --- 、 `∨:.:.:ヽ、  ̄ /} }
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