■ 13 ■
ラウラの車に乗り数時間。
食事休憩に寄った場所は、すでに澄泉の知る風景ではなかった。
「これからどこ行くの?」
フォークにパスタを絡ませながら、彼女は尋ねる。
腹の音は鳴っていたが、胸が不安で満たされ食が進まない。
「どこへ行くかより、何をするかの心配をするべきよ」
ブロンドの娘は逆に、さも美味そうにパニーニを頬張っていた。
「どうせやらしい事されるんでしょ」
「少なくとも、パリへスウィートを食べに行く訳じゃないわ」
冷たい答えに、少女は肩を竦ませる。
「早く食べなさい。人間らしい食事ができる間にね」
ラウラはやはり顔色ひとつ変えていない。
その冷徹さは家畜を率いる牧羊犬さながらだ。
彼女は近くを通った店員を呼び止めて言う。
「ちょっと、帰りにミルクを貰えるかしら」
不快な食事の後、二人はブティックに立ち寄った。
「おめかししてあげる」
ラウラはそういって子供服を選び始める。
子供用とはいえ西洋人向け、澄泉と一号違う程度だが。
渡される服を少女は黙々と身につける。
食後の窮屈さに苦しみながら。
(お腹…きついな)
サイズの違う服に覆われ、細い身体はよりいっそう華奢に見えた。
防空壕のような、草や木の根に覆われた扉。
それが開かれ陽が射した時、中にいた者は息を呑んだ。
侵入者のあまりの愛らしさに。
風になびく、肩甲骨までの艶やかな黒髪。
生意気そうに輝く目。
キスすれば蕩けそうなふっくらとした唇。
ある者はそれをニンフと見紛うた。
誰もが少女の幼さ・儚さの中に、尋常でない物を感じていた。
神性を際立てるのは彼女の服装だ。
一瞬OLを思わせる堅い装い。
濃紺のベストに薄手のシャツ、腿までのスカート。
首元には洒落たタイが結ばれている。
何より印象的なのが黒のタイツで、
強調された細い脚線は女の目さえも釘付けにした。
バイオリンの演奏会に出る日、上流階級の令嬢が着るような服だった。
暗い巣窟の中、それはいかに場違いである事か。
部屋に足を踏み入れたとき、澄泉は異臭に鼻を押さえた。
むせ返りそうな雌雄のフェロモン、そして熱気が立ちこめている。
(青くさい…)
よく栗の花の匂いと形容されるが、少女には馴染みがない。
ニノは朝まで突き続けても「それ」を出さなかったから。
部屋にはその匂いが充満していた。
これが何を意味するのか、性に疎い少女とて理解できる。
だが真に澄泉を凍りつかせたのは、室内の異様な雰囲気だった。
ありとあらゆる拷問道具が蝋燭の灯に浮かぶ。
手錠や足枷、三角木馬、水車に針の生えた箱。
錆具合や赤黒い染みが、それはただのオブジェではないと語っていた。
「驚いた? カタコンベ(地下墓所)の近くには、
こんな異教徒の拷問部屋がいくつも残されているの。
もっとも、今ではアブノーマルな男女の秘密の乱交場だけど」
少女に続いて扉をくぐった娘が言う。
場の興味を一身に惹きながら、澄泉はただ立ち尽くしていた。
と、急にその目が見開かれる。
「んっ」
ブロンドの娘がその唇で、彼女の口を塞いだからだ。
「ん、んぐっ」
少女はやや困惑していたが、躊躇いがちに娘の首に手を回す。
ラウラは知らなかった。
誰もが振り向く美しい少女を従えている、
そう誇示するために何気なく行ったこのフレンチキスが、
澄泉にとって初めてのものであった事を。
少女がその朱唇を許した事に、どれほどの価値があるのかを。
周囲にはどよめきが起こっていた。
稀に見る精霊のような少女でも、性的な行為に興味があるのか。
ここへ来たのは手違いではないのか。
彼らは鞭を止め、目隠しをとって幼いレズビアンに見とれた。
ぐちゅぐちゅといういやらしい音を聞きながら。
視線と唾液を交わす深い口付け。
ラウラは糸を引きながら顔を離し、息を弾ませる澄泉の髪を撫でて言う。
「こんな顔してるけど、すごいのよこの子。
昨日、ビール瓶みたいなモノで処女を奪われたばかりなの」
さらに辺りが騒がしくなり、澄泉はたちまち頬を赤らめた。
「っ! …それは…だって…」
何かを言おうとするが口ごもる。
見る者には、それが真実であること、少女が初心であることが
はっきりとわかった。
――ちょっと、どこ見てるの?
――だってあれ見てみろよ、半端ねぇじゃん
――絶対あいつ、自分のこと可愛いって思ってるタイプよ
――実際、あんなの見たことねえよ。人形かと思ったぜ…
陰口が大きいのはこの国の特徴だろうか。
場には羨望と嫉妬が渦を巻いていた。
女のいる場所ならどこへ行ってもそうなのか。
少女は俯き、ブロンドの娘は口に三日月を描く。
「あら、プレイのお邪魔しちゃったみたいで御免なさい。
この子が乗り気になるまで、私達は隅で見てるわ。ほら」
澄泉の腕を引っ張り、ラウラは壁にもたれた。
少女はそれに従う。肌色の違う妹のように。
気の強そうな目、しかしよほど心細いのだろう、
その手はブロンドの娘から離れない。
■ 14 ■
薄暗い部屋に沈黙が訪れてしばし。
突如それを打ち破ったのは、甲高い悲鳴だった。
澄泉はそちらに顔を向け、絶句する。
そこには幼い少女が四つん這いになり、後ろから抱かれて喘ぐ姿があった。
まだ10歳前後だろうか、子供らしい細長い手足だ。
足首には鉄球つきの拘束具が嵌められている。
明るい赤髪に、北欧系の気品ある顔立ち。
もう長いこと嬲られているのだろう、彼女の肢体は汗にまみれていた。
凝視する澄泉に気付き、傍らの男が解説する。
「気になるか?名前は知らんがスウェーデンのお嬢様だそうだぜ。
ここに来てまだ二週間だが、あの通りさ」
男が示す少女はあどけない顔を蕩けさせ、しかし目から一筋涙を流す。
こんな姿を見ないで、そう言いたげに。
「あ、あなたたち、そんな小さな子に何してるのよっ!!」
気づくと、澄泉は拳を作って叫んでいた。
よく通る怒声が反響し、少女を囲む男が視線をよこす。
入墨や銃痕が浅黒い体の各所に窺えた。
「ちょっと、澄泉やめなさい!…あ、お気になさらず」
ラウラは珍しく焦って少女の口を押さえる。
「んー、むー!」
「バカ、相手を見て物を言いなさいよ!
ここはいつ銃口を向けられてもおかしくない国なの!」
その言葉でさすがの澄泉も抵抗を止めた。
ラウラは大きく息を吐き、内心で舌を巻く。
筋骨隆々たる大男を前に、よくも説教ができるものだ。
「へっ、言うじゃねぇか嬢ちゃん」
男たちは高潔な少女に気分良い視線をよこし、
見せ付けるように背後からの突き上げを強めた。
赤毛の少女は髪を振り乱してあえぐ。
ぐちゃぐちゃ…その音が行為の執拗さを物語っていた。
「あの子も気持ちよさそうじゃない、あれがセックスよ」
ラウラが澄泉に囁き、彼女が眉をしかめるのを見て微笑む。
『男女の関わりに、必ずしも愛は必要でない。
性欲を越えた異性間の友情こそ本物だ』
澄泉はかつてそう熱論していた。
その潔癖さはラウラが一番よく知っている。
だからこそ嘲笑うのだ。
「でもよく見て。あれ、あそこに入ってるんじゃないわ」
ラウラは赤毛の少女を指して言う。
それに応えるように、少女を嬲る男は体位を変えた。
少年のように貧弱な尻肉を割り、赤黒い物が出入りしている。
その下にはぽたぽた雫を垂らす無毛の割れ目。
澄泉は不可解そうに眉を寄せる。
彼女は考えた、膣の後ろに何があるか…
「お・し・りよ。あの子、お尻に入れられてるの」
語気を強めたラウラの言葉に、二人の少女が目を見開く。
赤毛の少女は頬を染め、黒髪の少女は言葉を失くした。
(う…うそ…!)
澄泉にとって、肛門はへそや耳の穴と等しい。
そこを使って性交するなど、どうして信じられるだろうか。
だがそれは事実だった。
赤毛の少女は背後から間違いなく排泄の穴へ突きこまれ、
肩で息をしながら汗まみれの体を前後させている。
「後ろだって立派な性器よ。慣れれば前よりいい子もいるわ」
ラウラは囁いたとき、澄泉の瞳は色を映していた。
煙草の煙を見つめる少年の目。
堕落への憧れ。
(この子、好奇心の塊だしね…)
ラウラは少女の後ろに回り、すっとスカートに手を潜らせた。
澄泉に下着は穿かせていないため、タイツからじかに繊毛を撫で回す。
その唇は歪な弧を描いた。
「あらぁ、あなた濡れてるじゃない!」
声を高めたのは意図的にだ。
人に噂されるほど、この少女は隙を作るから。
「え?…そ、そんなことないわよっ!」
澄泉は大慌てで否定するが、淫核を押す指は確かにぬるぬると滑る。
(ほんとだ…嫌、なんで……!)
自分の体に裏切られたようで、少女はひどく困惑した。
「おしり貫かれてる小さな子を見て感じたのね。
最初はあんなに怒ってたのに、あなたも犯したかった?」
澄泉は唇を噛み、何かを払うように首を振った。
何度も何度も。
「ああ、違うわよね。あなたは犯されたいのよね。
いつも男という男に見られて、汚されるのを待って……」
「やめてっ!ラウラやめてぇっ!!」
澄泉は耳を塞いだ。
ニノの変に優しい声が、ヒステリックな脳裏をよぎる。
初めは同属嫌悪。そして軽蔑。激昂。
『…されるのなら、どうぞお好きになさって下さい』
精一杯の虚勢で迎えた男は、ただ、恐怖だった。
朝まで岩のような体に組み敷かれ、どれほど心細かったか。
それこそビール瓶並みの怒張で間断なく産道を抉られ、
鼓膜が破れそうな絶叫をなぜ止められなかったか。
針や甲羅の強固なものほど、その中身は柔らかい。
少女のトラウマは深かった。
肩を震わせる姿は、赤毛の少女より幼く見えた。
「あらあら、言い過ぎたわね。ほら泣かないで」
その肩を優しく抱きながらも、ラウラの瞳に動揺はない。
まるで計算通りだと言いたげに。
しゃくりあげるたび、動悸が激しくなっていく。
滲む視界の中、赤毛の幼子は目を細め、だらしなく舌を出していた。
酸欠にも恍惚にも取れる表情。
水責めを受けた女囚が最期に見せるような、ぞっとする相貌。
「そこいいですっ、ずっと奥まで突いてください!!」
彼女の英語はもはや訛ったように聞こえづらい。
ラウラの言うとおり、小さな尻で感じているとしか思えなかった。
「貴族のガキもああなっちゃお終いよねぇ」
冷たい女の声。
二週間、男たちの巨根で延々と腸壁をえぐられ続け、
女の身体がそうならざるを得なかったのだろう。
男が深々と突きこむたび、赤毛の少女は絶叫する。
澄泉は傷む心を抑え黙っていた。
こうした悲劇を止められる、祖国の平和を噛みしめて。
「そろそろ出すぞ!」
男は抽送を早めながら、少女の尻を叩き始めた。
ぱんっぱんっという肉の弾ける音が響きあう。
よほど平手が強いのか、雪のような少女の臀部は
たちまち痛々しい朱に染まっていく。だが…
「いや、もっと、もっと叩いてぇ」
赤毛の少女は泣きながら、幼い体を激しく身悶えさせた。
(あんなちっちゃい子が……うしろって、そんなにいいの……?)
彼らの熱気が伝わったように、澄泉の頭は霞んでいた。
内腿をわずかにすり合わせる。
先程よりも明らかに愛液は増し、タイツの前部を湿らせた。
ラウラが横目でそれを見ている。
彼女はすっと床に転がる瓶を拾い上げた。
「どうしたの?したくなってきたって顔してるわよ」
再び澄泉のスカートを捲り、指を這わせる。
だが今度は方向が違った。
その手はタイツに潜り、ふっくらと女らしい臀部を割る。
指が後穴をへこませる感触に、少女の細い背が仰け反った。
「ひゃ!だめっ、そっちはっ…!!」
恥らうその表情に、ラウラは初めて歪みでない笑みをみせる。
(しおらしくしてれば、可愛い子なのよねぇ)
まだ堅い菊輪をくじり、うねうねと指を動かしはじめた。
皺をひとつずつ伸ばすように、丁寧にほぐしていく。
ラウラの手にした瓶にはべっ甲のようなとろみが入っており、
それをつけた中指はあっさりと菊門の締まりをすり抜けた。
澄泉はタイツに包まれた脚を強く踏みしめ、苦悶の表情を浮かべる。
「や、お尻やぁ……」
鼻にかかったような声に、彼女を抱く娘は頬を和らげた。
「そればっかり。本当はどうなの、結構いいんじゃない?」
ラウラは人差し指も挿しいれ、少女の腸に円を描く。
海老反りになる少女の背を支え、ベストに手を入れて
やわやわと乳房を揉む。
「ん…ふぅ…」
澄泉の顔がたちまちに緩和した。
周囲の男女は唾を呑んでその痴態を見つめている。
華奢な美少女が顔を歪める様はひどく嗜虐心を煽り、
背後から嬲る娘は恐ろしいほど手馴れていた。
邪魔に思ったのか、ラウラは身悶える澄泉の隙を見て
彼女の穿くスカートのホックを外す。
舞うようにそれが落ちたとき、感嘆の声が漏れた。
ベストと汗に濡れたシャツ、そして股下まで降ろされたタイツ。
その格好は裸よりもいやらしかったし、
少女のすらっと伸びた脚線が一層あらわになったからだ。
「ほら見て、皆があなたの細い脚を見ているわ」
指を少女の腸内で芋虫のように蠢かし、さらに耳を噛んでラウラが囁く。
澄泉の締め付けが一気に強まった。
(この子、本物のマゾかもね)
さらに二本指を使い、狭い腸壁をひらげては閉じる。
潤滑液が粘った音を立てた。
空気が入り込み、まるで腸内へと放屁されたようにむず痒いはずだ。
鎌を振るように指を根元までくじ入れ、引き抜き、また入れる。
「この動きをお通じがきた時だと思って。どう?気持ちいい?」
指の腹に暖かい粘膜を感じながらラウラは言う。
澄泉は答えず、背筋をくねらせて逃げようともがいていた。
「おしり、きもちぃよ?」
ふと、遠くにいる赤毛の少女が澄泉を見つめ、声を上げた。
彼女はまた別の男に貫かれ、騎乗位で腰を使っている。
「だめよ、だめ!そんな所で感じちゃ駄目なの!!」
そう返す澄泉の口調は赤毛の少女に諭すようだったが、
おそらくは自分に言い聞かせる言葉だったのだろう。
「んー…っ」
澄泉が嫌そうにそう唸った直後、後孔からぶじゅううっと
恥ずかしい音が漏れた。
「あっ」
その時の少女の恥じらいようは、眼前の男を虜にした。
彼らは息を呑む。
「あら、可愛いおならね」
獲物の咳き込む前のような表情が楽しく、ラウラはそう茶化した。
黒髪の少女は羞恥に瞳を潤ませる。
「だ、だからそんなとこ汚いって言ったじゃない!馬鹿!!」
そう叫んでブロンドの娘を突き飛ばした。
油断しきった状態は体格差を埋め、豊満な体は呆気なく床に転ぶ。
ラウラの顔が変わったのはその時だ。
飼い犬に手を噛まれた、そう言いたげな目。
云わば自業自得。
だが、娘が抱いたのは傲慢な憤りだった。
「あっ、ごめんなさい」
澄泉はすぐに手を差し伸べたが、ラウラはそれを冷たく払う。
上品ともいえる澄ました態度が、この時ばかりは鼻につく。
目が合ったとき、澄泉は心臓が激しく脈打った。
また蛇の目。
この目を見るとき、少女はラウラという人間がわからなくなる。
いつも明るく振舞うが、残忍な性格も垣間見えた。
澄泉の通う美術学校の女生徒は、大半が年上男性を好む年頃だ。
ニノも何十という生徒から想いを寄せられている。
それらの乙女から一線を画すのがラウラなのだ。
黒い噂は澄泉も何度か耳にした。
「痛いじゃない」
ラウラは呟き、澄泉が口を開く前に強くその頬を張った。
乾いた音が響く。
「……っ」
気高い少女は甘んじてそれを受けた。
異様な光景だった。
性的な悪戯で辱められた方が頬を打たれる。
赤毛の少女がそうであったように、澄泉の白磁の肌にも赤みがさす。
二人の間には暗黙の了解、力関係が存在した。
何ならいつでも絶交してやる、ラウラの平手はそう伝えていた。
「…何よ、オドオドして?」
ラウラはさらにつけ上がり、澄泉を睨んだ。
「そんなあなたにはこれがお似合いね」
そう言って壁から鉄枷を取り外した。
さすがに少女は身を翻したが、ラウラはその手を掴んで逃さない。
今度は筋力が物をいい、同い年の少女ながら一方的だった。
少女の胸の前で冷たい枷ががちりと音を立てる。
手枷をつけた黒髪の少女、それは傍らで喘ぐ足枷の少女と同じ。
「あ…」
手枷を見て呆然とする少女を尻目に、ラウラは低い声で言う。
「あなたさっき、お尻は汚いって言ったわよね?」
鋭い足音を立てて部屋を回り、隅の木箱を引きずってきた。
食事休憩の時に買ったミルク瓶もバックから出し、
木箱から取り出した金だらいに中身を注ぐ。
「意外だわ。陳腐な表現だけれど、あなたは天使みたい。
周りの方々もそう思っているはずよ」
瓶が空になり、続いて箱から出された物は、澄泉には判別できなかった。
酒を入れるボトルに見えたが、それにしては口が狭い。
それは硝子のシリンダー。
しかも家畜用の1リットルは入るものだ。
もっとも場所が場所のため、拷問用というべきか。
『可哀想に』
どこからかそんな声が聞こえ、澄泉の胸は渦巻いた。
シリンダーに新鮮な牛乳を満たし、ラウラは綺麗に微笑む。
「私たち女子の間でさえ、あなたの排泄姿を想像できないって
噂が立ったわ。そんなあなたのお腹に、一体どんな穢れが
詰まっているのかしら?」
ここに来て、ようやく澄泉も相手の目的に気付いた。
しかし逃げようとする彼女を数人の手が押さえつける。
「いや、放してっ!」
澄泉が叫んでも誰も耳を貸さない。
清流のように光沢の揺れる髪から花の香りがした。
一人が恐る恐るそれを撫でる。
赤子の頬へ触れたくなるように、その黒髪は目を惹いた。
その髪は無残にも床に垂れる。少女が組み伏されたのだ。
「大人しくなさい」
白いシリンダーを逆光に、ラウラの影が少女を覆う。
揺らめく炎に染まる橙色の柔尻が揺れた。
その影にひっそりと息づく蕾。
べっ甲のようなとろみを纏わせ、指の弄りですこし喘いでいる。
誰かが冗談交じりに言っていた、澄泉の菊門は桃色だと。
さすがにそれはない。しかし放射状に並んだきれいな皺は
薄いセピアで、排泄器官と称するにはあまりにいじらしい。
ラウラは背筋をぞくぞくするものが駆け上がるのを覚えた。
「いくわよ?澄泉、力を抜いて」
息を弾ませ、フェイントで少女の反応を愉しみながら、
肉厚なシリンダーの口をそのすぼまりに咥え込ませた。
「…ぅ…ううあ…くぁ…あ゛っ」
誇り高い少女には、そう小さく呻いた事さえ屈辱だった。
だが排泄の穴に雪解けを思わせる冷水がなだれ込み、
腸壁の隅々まで染みいる様はかつて経験がない。
それも半端な量では無かった。
下腹が蛙のように不自然に膨らみ、這った姿勢では
背中の肉ごと骨を残して溶けおちるのではないかと思えた。
「さぁ、もう一本いくわよ」
非常にも親友の声がそう告げる。
直腸を満たされ胃までも圧迫されているというのに、
これ以上入れられるというのか。
どれだけの量だろう、あのミルクは2リットル入りだったはず…
「ほーら、美味しそうに飲んでいくわねぇ」
またも菊輪が押し拡げられる苦しさに腹のミルクが逆流する。
しかしそれも新たな奔流に圧され、すらりとしていた腰つきを
歪にゆがめていく。
「……っっふ、ん゛……っぁふ…っ……!!」
ようやく上から押さえる手が放され、
気息奄々という様子の少女はやもりのように床を這った。
■ 15 ■
ふぅ―――っ、…ふぅぅ――――…、う゛っごほっ……
気の昂ぶる部屋の中、一際苦しげな息が咳き込んだ。
最初こそ四つん這いだった彼女はやがて座り込み、
便意が背筋を焦がしたため立って部屋を彷徨う今に至る。
初めの格好が一番良かったが、もう遅い、
「まだ5分も経ってないわ、頑張りなさいよ」
そう野次を飛ばすのは、少女に陰口を叩いていた女の声だ。
10分我慢すれば外で排泄していい。
ラウラがそう提案したとき、澄泉は一筋の希望を持った。
腹を下した授業で40分耐えられたこともある。
いくら量が多いとはいえ…と、そう考えていた。
(こんな大勢の前で…うんちするなんて)
壁に拘束された手をつき、少女は歯を食いしばる。
排泄――そんな生易しい語感のものではない。
(もし、そんなことになったら…みられたら…)
ぐぉるるるるる………
腹の音は濁りきり、差し込むような痛みがぶり返した。
(………死んでしまいたい……っ)
少女の細い体は、持久走でもしたように汗にまみれている。
前髪が珠の汗を噴く額にぺたりと貼りつき、
薄手のシャツは彼女の体をありありと浮き出しにして。
苦しみから自ら脱ぎ捨てたベストが足に触れた。
彼女の美しい裸体を隠すのは、もはやシャツと
太ももまで下がった黒いタイツのみ。
神々しさははだけ落ち、なまめかしさが芽を吹かす。
容のいい小鼻の横を汗が滴った。
「うぁ…――、くっ、ひぃっ――……」
少女は華奢な筋肉をぎゅっと締め、内の冷えた血脈を堰き止める。
そのカラダから漂う熱気の、なんと香り高そうなことだろう。
国を越え、性差を越えて部屋の者達はその肢体に見入っていた。
「そろそろ7分ね。頑張るじゃない?すごいわ」
入り口を塞ぐラウラは表面上の感嘆を示す。
だが腹を揉みくだすだけで、彼女は好きに少女の瓦解が狙えるのだ。
初めから賭けになどなっていない。
(あと・・・さんぷん・・・あと・・・さん・・・・・)
カップ麺が作れる時間だな、でもそれって長くなかったっけ。
また食べたいな。
少女は揺れる脳でそう考え、気を紛らわす。
限界は限りなく近かった。
肛門付近の腸壁が筒だとするなら、そこがマグマのように蕩けている。
ぼこぼこと沸き立ち、立ち昇る蒸気圧で嘔吐させようとする。
彼女の不運は、それでも括約筋を締めようと壁を伝った事だ。
別の壁に寄りかかった時、そこは冷たく滑らかだった。
顔を上げると、それは天井まで届く巨大な鏡。
恐らく拷問を受ける者にその姿を見せて自白を迫るものだ。
そこに映るのは惨めな自分。後ろに控える数え切れない目。
閉じない口から泡など噴いていたのか。
こんなのぼせた顔が、赤毛の少女に意見した人間のものか。
「これ…わた…し…?」
少女は膝ががくんと笑うのを感じた。
すかさず誰かが金だらいを構えたのも気を緩めさせる。
固く閉じた蕾から、つっと白い朝露が零れた。
新鮮なミルクのひとしずくが見事な腿を伝い落ちる。
「さあ見せなさい、澄ましたあなたの人間臭さを!」
ラウラの厳しい声が、少女の最後に聞く騒音だった。
耳がばりばり鳴り、鼓膜でも破れたようにきかなくなる。
顎が外れそうなほど口を開けた様から、自分が絶叫しているのだとわかる。
その絶叫の終わりは、絶望の始まりだった。
まず子を産むように骨盤が軋んだ。
肛門が開ききり、直腸から熱い奔流が一塊に溢れ出る。
張った腹がへこんでいく。
脚の浮く感覚は絶頂に似た。
その勢いがやや弱まった刹那、少女の恐れたものは括約筋を伸ばしきる。
柔らかいそれは、何度も、何度も。
耳が通ったのか、水音が跳ねるのが聞こえている。
叫びに近い喚声も沸き起こっていた。
菊門の拡がりは収まり、それでも暖かな噴き出しは止まらない。
いつまでもいつまでも続いている。
それが終わった後を考えれば、永遠にでも構わない。
ラウラの考えがうっすらとわかった。
これほどの恥辱を受け続ければ、ニノの事など何でもなくなる。
そうしてうやむやにしようというのだろう。
決してそうなりはしない。
心が壊れるその時まで、失った純潔を忘れはしない。
そして必ず何時の日か、また笑って絵を描こう……
少女はぐったりと床に伏し、静かに長い瞼をとじた。
続く
夜中なのに凄いのが来たな。
GJ!
調教を繊細に描く神だな。GJなんて言葉じゃ表現出来ない位、綺麗な調教シーンだ。
漏らさないよう必死で耐える澄泉タン……プライドを崩されてていく描写が
素晴らしいです! 続きも超期待!
447 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/24(土) 01:43:44 ID:xyv8ujBR
GJ
作品には文句のつけようもない、だけどスレ事考えるとこれが二の舞にならない為には他にも作品書く人がほしいかなぁ…(私自身が書けないのが難点ですが(^-^;
これだけ素晴らしい調教なら、お手本には十分過ぎるな。
すごい読み応えに相反する思いがあるですよ
1)ここに投下してくれたお陰で読めたのはメチャ嬉しい
2)けど一名無しの便所の落書きとして発表するには、もったいなさすぎる作品だよ
禀とした少女が落ちていく調教小説………
最高。
ここは純愛調教はOK?
どんなあらすじかな。以前荒れた経緯があるんで、どんな流れになるのか書いて欲しい
今は特に、過ちは繰り返してはならない
なくてもいいと思うけどw
最後に純愛になって締め括るなら調教スレ
最初の方に純愛になって、その延長だったら純愛スレ
純愛調教っていうジャンルは微妙
書き手のプロットを見ないことには、無駄に荒れるだけ。
ただ、主人公と彼氏彼女がベタベタになっちゃうなら純愛スレのほうがいい。
いや、今構想中だけだから。
主人公&ヒロイン。
ちょっとした事故でヒロインがおもらしをしてしまって、それを主人公だけが知ってしまう。
ヒロイン主人公をぶん殴って大怪我を負わせてしまう。
怪我が治った主人公、ヒロインとギクシャク。
ヒロイン、何でもするから許して
主人公、彼女を1週間性奴隷になれと命令。
最初に要求するのは、目の前で半裸でおしっこをさせる。
最初頑なに拒否するが、「なんでもする」の約束を押し付けられて、
泣きじゃくりながら、やってしまう……。
が初期プロット。駄目だったらすまん。
ヒロインが落ちた後、長く続かなければ、文句のつけようもないプロットだよ。ガンバレ
なんじゃそりゃ。
ダメだな。連載したら荒らすよ?
書き手が増えるのはいい事ジャマイカ
スレ違いではないんだし、暖かく見守ろうや兄弟
書いてくれるのはありがたいけど、いちいち保険かけるような前フリはいらない
書いてくれるだけでありがたいんだからさ
みなさん、前回の感想ありがとうございます。
一応
>>449さん
例え落書きでも、こんなに暖かい言葉が頂ければこれ以上の幸せはありません。
>>451さん
楽しみにしてます
今回はレズ注意です↓
■ 16 ■
枯れ木の立ち並ぶ広場を横目に、ブロンドの娘は受話器を持ち替えた。
辺りには子供が無邪気に駆け回っている。
『そう、ちょっとだけあの子を貸してあげるんです。
見知らぬ人間に弄ばれるのって屈辱でしょう?
…大丈夫。堅気でない人間は、足がつく無茶はしません。
むしろ心配なのはネコぶってた可愛い女共かしら。
あんなのに虐められたら、私泣いちゃいますよ』
娘はわざとらしく笑いつつ、先程から気にかける右手に目をやった。
人差し指と中指、澄泉の直腸を嬲った二指が薄桃色に変色している。
何かに「かぶれた」ように。
それは果たして、清冽な少女の身を穢した罰だろうか。
やや考えるそぶりを見せた後、彼女は小さく舌打ちした。
『…何でもありません。先生こそ、お体に異常ありませんか?』
そう続ける口調は人妻を思わせる。
娘は、話し相手の身をひどく案じているらしかった。
『近いうち、必ずあの子を躾けて帰ります。では…』
電話を切り、ラウラは深い溜め息を吐く。
手のひらを強く握りこんで。
「……もう、あんまり時間ないのかしらね……」
「…はっ……あぁ……ッ…!!」
蝋燭の照らすほの暗さの中、荒い息はまたも声を押しとどめた。
横臥するその少女の手は厳しく高手後手に縛められている。
「ほんと強情な娘ね、一言赦しを請えばいいだけなのに」
冷たく少女を見下ろす女は、ビニールの手袋を嵌め直した。
そして瓶からべっ甲のようなとろみをたっぷりと掬いとる。
それを目にし、少女――澄泉はきりりとした柳眉を歪めた。
(だめ…!これ以上塗られたら、本当に…)
必死に身を捩る抵抗もむなしく、彼女の脚は上向きに開かれる。
伝染したタイツでくるまれた、すらりと美しい脚。
付け根の淡い花びらはしとどに蜜を溢れさせ、
桜色の腫れをみせる菊座にまで垂れおちている。
女の指が纏う金のとろみはぬるりとその窄まりを抜け、
小腸へと繋がる肉壁に溶けていった。
繊細な内面が痺れゆく。
冷たく染み入り、赤い粘膜から質の異なる雫を滲ませる。
「…う、くっ……!!」
少女の瞳が閉じ、口からは搾り出すような呻きが漏れた。
「あら?あんたのお尻の中、さっきより濡れてるわよ。
腸液ってやつかしら。気持ちいいんだぁ?ん?」
愛らしい不浄の穴を突いた女は嘲り、澄泉の尾てい骨へ向け
曲げた指を引っ掛けはじめた。
掴まれた少女の足がぴんと伸びる。
「この子のお腹も流石にやばいって感じてるんじゃない?」
別の女が乱雑に少女の肉芽をこねると、喘ぎの中にああ、と
明らかな悲鳴が混じる。
平静を装う相手のわずかな反応が面白く、
その指はぬるぬると滑る新芽を執拗に取り囲んだ。
包皮越しに、或いはそれすらを剥いて扱き出す。
女達はのたうつ細い肢体をほほえみの目で追いかけた。
同性ゆえの気遣いなど、そこには微塵も見られない。
(……痒い…痒い……かゆい…!)
横向きに寝たまま片脚を担ぎ上げられ、直腸と肉芽を弄られる。
その苛烈な状況下にあって、少女の頭にはただそれだけが巡っていた。
女が澄泉の腸内に塗りこめたとろみは、昨日ラウラが
少女の後孔をほぐす為に使ったものだ。
この辺りで「トイペ」と呼ばれる草を挽いたもの。
通常は筋弛緩効果のある潤滑油だが、発酵すると漆に近い成分になる。
化学薬品の出回る以前は痒み責めに重宝されたほどだ。
かつてルーマニアの小さな村が賊軍に蹂躙された際、
その実験台となった村娘は3日で発狂寸前にまでなったという。
ラウラは床の瓶を誰かが開けたばかりだと思って拾い上げたが、
実際は長い間かけて徐々に空気を抱き込んだものであった。
女達はそれを少女に塗りつけているのだ。
さらに澄泉の直腸は、浣腸により今その粘膜が弱まっている。
針で刺すような痒み・痛みと共に、強烈な熱さが下腹を焼いた。
特にひどいのが肛門の入口で、性感帯のひとつでもあるその肉輪は
蟻の群れに噛まれているような感覚だ。
排泄と同時に気を失ってから長く痒みにうなされ、
それでも少女は懇願をしないでいた。
「これで楽にしてあげるって言ってんじゃない」
女が細身のディルドーで痒みにひくつく肛門を撫でても屈しない。
二穴からは自衛本能により濃厚な蜜が滲みでていた。
また痒みの大波が背筋を固める。
少女は身体を弓なりにのけぞらせ、汗まみれの頭と腰を振って身悶えた。
「あははっ、やらしい腰つきね。男でも誘ってるの?」
女に蔑まれても彼女に恥じる余裕はない。
内腿の染みひとつない珠肌には、哀れ湿疹までできている。
真っ赤になるほど握りしめた手が自由なら、人目も憚らず
弄くり回したいことだろう。
「あぁっんっ!くうぅっ、あっ、あああっ」
脈打つ血管が限りなく細切れになってさざめく様な極感。
浣腸の時とはまた違う違和感が少女の体奥を蝕んだ。
堅い異物で掻き回して貰えれば、どれほど楽になることか。
しかし澄泉の矜持はそれを許さなかった。
神経まで焦がす痒みを和らげるためとはいえ、
自ら請うて排泄の穴をいじくられるのは我慢ならない。
少女は全身を汗で光らせ、鯉のように口を開閉させる。
その視線はあちこちに向かうが、巨大な鏡だけは避けていた。
惨めさは浣腸を我慢していた時よりひどい。
何時間が経っただろうか。
ぜぇぜぇと息を切らす少女を見て、女は別の瓶を取り出した。
蝋燭の火で蜂蜜のように輝くミネラルウォーター。
今の澄泉にとり、金よりも遥かに貴重なものだ。
少女は喉を鳴らした。
「そろそろ欲しいでしょ?お飲み」
そう聞こえた後、水の瓶は無慈悲にも逆さを向く。
煌めく飛沫が次々と床に弾けた。
「……っ!」
少女の見開かれた目が水溜りに映る。
「どうしたの、お飲みってば」
このネコはなぜミルクを舐めないの?
それと同じ口調が頭上から降りかかり、澄泉の瞳が揺れた。
ニノのアトリエと同じ、乾燥した空気が喉を焦がす。
(……さすがに……水なしじゃ……)
立て膝がぶるぶると震える。
「みんな見て、このコ床を舐めてるわ!」
手を叩いて叫ぶ女達を睨み上げ、少女は黙々と舌を這わせた。
ただ命を繋ぐために。
その一部始終を眺めながら、部屋の男達は言葉をなくしていた。
つい昨日まで自分に甘えていた女の豹変に。
鞭で叩かれるのが趣味であるはずの彼女らは、さも可笑しそうに
赤らんだ少女の割れ目を靴先で撫でる。
そこには女の嫉妬の恐ろしさが渦巻いていた。
しかし澄泉は音を上げない。
赤くなり涙をこぼす瞳は渚のような静けさを残し、
時に白い奥歯の覗く唇は喘ぎながらもなお品を失わない。
この程度の辱めなど何でもない、そう言いたげに。
惨めな黒タイツと濡れて上体を透かすシャツだけの格好ながら、
その毅然とした態度は汚すことの叶わぬ皇女を思わせる。
女達の怒りを買うのも、また仕方のないことだ。
女は鼻に皺を寄せる。
「ふん。日本人は忍ぶのもお手の物、ってわけ?」
高潔さをひときわ印象付ける黒髪を掴み、
荒々しく澄泉を引き起こした。
「ひっ…」
少女は苦痛に顔を歪め、不安に足をよろめかせる。
「いい度胸ね。それならもっと辱めてやるんだから!」
ひどく怒気のこもった声が壁に響いた。
■ 17 ■
薄暗く湿気た部屋から一歩出ると、外はもう春先の
しんなりとした空気になりはじめていた。
澄泉がこの国に着いた時のような。
少女は先程の格好にコートだけを引っ掛けられ、
身の引き締まる寒さを噛みしめる。
それでも茹だるような頭には心地よかった。
タイツ越しに触れる草も石畳も、ようやく文字通り
地に足がついた感じがした。
人気のない草原を、少女は女囚のように連れられ歩く。
この辺りはベネツィアの影響を受けているのか、
街はその広域が大河であり、対岸に家が並ぶ造りだった。
水に建物が直接浮かぶその様は、水没した都市を思わせる。
『テベレ川』…ふと目にした看板にはそう見えた。
女の足は、そこに架かるひとつの橋の上で止まる。
美しい石造りのあまりにも巨大なアーチ橋。
繊細な細工を残しつつ、端々の欠損が歴史を感じさせた。
その偉功が映る水面までに、ビル幾つぶんの高さがあるだろうか。
遥か下に風の吹く渓谷のような街並みは、もはや恐怖すらも起こさせない。
空が身近に思え、立つだけで背筋を浮遊感が這いのぼる。
(ふわ、すごい……!!)
澄泉も痒みを忘れてその絶景に見惚れる。
3日前までの彼女なら、恐る恐るデッサンを始めたことだろう。
その自由さえない今の状況に、少女は沈痛な面持ちになった。
「ほぉ、やっぱりここに来たかよ」
広い床版の向こう、声を掛けたのは昨晩の男達だ。
傍らには赤毛の少女が座り込んでいる。
裸のまま後ろ手に縛られ、右足にはやはり鎖つきの枷。
かゆい、かゆいとしきりに泣く所をみると、状況は澄泉と同じだろう。
だが彼女は澄泉を見た途端、目をこすって泣き止んだ。
「ここがどんな所か知ってる?おちびちゃん」
澄泉のコートを取り去りながら女は問う。
別の女はかちゃかちゃと少女の左足に枷を嵌めていた。
場所のこともあり、少女はひどく不安に駆られるが、
手を縛られたままではどうしようもない。
「自殺の名所なの、ここ。」
足首の鎖は、欄干に打たれた鉄の柵に巻かれ始めた。
隣では赤毛の少女も同じ事をされている。
いよいよ澄泉は心細くなった。
「ちょっと、何する気?…や、やめなさいよ!!」
女は嫌がる澄泉をひきずり、欠けた欄干の隙間に立たせる。
さすがにここで下を見ると血の気が引いた。
強風が黒髪と肌に貼りつくシャツを揺らす。
「あんた、強情さが自慢なんだよね?」
女達はじりじりと縁に立つ澄泉を追い詰める。
少女の顔は引きつった。
ここに立った時、誰もが想定しうる最悪の事態。
それが起ころうとしている。
「…いや、ぁ、やめてぇ……っ!」
いくつもの掌に押され、ついに澄泉の身体は宙へ投げ出された。
足場のないジェットコースターの感覚。
悲鳴が出ない。
城壁を思わせる石壁がどんどんと離れていく。
すぐ隣で明るい赤髪も風になびいている。
街並みが、山々が、大河が、反転してゆっくりと視界を巡った。
死ぬのかな。この綺麗な場所で…。
意地を張って、うわべの友人しか作らなかったから。
意地を張って、多く非難を浴びたから。
自分は今、無惨な死を迎えようとしている。
――今まで何をしていたんだろう?
生き返れるなら、二度と意地なんて張らないから……
澄泉は閉じた瞼を震わせる。
その瞬間、唐突に足首が軋んだ。
「っ!?……あ、きゃああああああ!!」
思わず叫びが上がって上体を起こす。
じゃらっと足の鎖が鳴った。
「あっははは、あいつ超びびってんの。死ぬ気だったでしょ?」
遥か上から蔑みの声が降ってくる。
逆さを向いたまま、少女は目を見開いた。
口からは無惨にも涎が垂れてくる。
これほど胸が高打ったのも、息が上がったのも初めてだ。
反転した雄大な景色が目に入る。
隣でまた赤毛の少女が泣いている。
(……いき、てる……?)
澄泉は生を実感すると共に、今考えていた事を思い出した。
意地を張ると、そのうち本当に殺されるかもしれない…。
(…でもやっぱりイヤ!人の言いなりなんて絶対に嫌よっ!!)
そう気を取り直すが、目尻には恐怖からの涙が零れた。
逆向きの頭に血が上りだす。
「しばらくぶら下がって反省なさい。
鎖が外れて死んでなければ、助けてあげるわ」
女達はそう言い残して足音を遠ざけていく。
「待って!待ってよ!!」
澄泉も赤髪の少女も、声を限りに叫ぶが届かない。
周囲からは完全に音が消え、隣の息遣いだけが繰り返される。
「……どうしよう…おねえちゃん」
肩の触れるほど近くで、赤髪の少女が呟いた。
澄泉は抱きしめてやろうと思ったが叶わない。
後手に縛られ、片足を鎖に繋がれた二人の少女。
捕らえられた獲物のように、ただ細身を震わせる。
しばらくは二人とも無言で身をよじっていた。
いつ足の鎖が切れるかと気が気ではないし、別の理由もある。
しかしさすがに間がもたず、澄泉から口を開いた。
「…ねぇ、あなた名前は?私は澄泉」
赤毛の少女が虚ろな目をよこす。
少し癖のある赤髪は下に垂れ下がり、広い額が覗いていた。
恐らくは澄泉の綺麗な黒髪も同じだろう。
「…カーネ」
少女は呟いた。
伊語で「犬」を意味する言葉だ。
男にそう名乗るよう躾けられているのだろう。
澄泉は眉根を寄せた。
「そうじゃなくて、お母さんにつけて貰った名前よ」
澄泉が問い直しても、少女は首を振るばかり。
「…あなたはそんな名前でいいの?」
やや語気を強めて言うと、少女は微かに笑みを浮かべた。
「気持ちは嬉しいな。でもあたし、今の環境で満足してるの。
ご飯食べられるし、気持ちいいこともできるし。
戦争に怯える暮らしなんかより、ずっと……」
澄泉は言葉が続かなかった。
年端もいかぬ幼子ながら、大変な苦労をしていたのだとわかったから。
自分の置かれている環境など、この元令嬢に比べれば
幸せな方かもしれない。
そう考えると、嘆くばかりが少し恥ずかしくもあった。
足が自重で引きつるような感覚を覚え、身体を揺らすほどの風が
濡れたシャツと心を冷やす。
しかし、何よりも身を苛むのは痒みだった。
足の付け根、菊門を這うようなむず痒さ。
二人とも努めて気にしないようにしていたが、限界だ。
「おねえちゃん、かゆいよぅ…」
カーネが小さな身を揺らす。
それを憐れそうに見る澄泉もまた、長く細い脚をすり合わせる。
たまらなかった。
逆吊りで身動きの取れぬまま、敏感な場所が疼く。
首筋を汗が伝い、遥か下に滴りおちた。
恐怖に耐えて仰ぐ水面に映るのは、少女の死影か、あるいは藻か。
あまり身悶えしては死の危険が増す。
しかし痒みもまた気が触れそうに半身を焼く。
澄泉は少し考え込み、わずかに目つきを和らげた。
「たすけて……あそこが、つらい…!」
カーネの声に、そっと右脚を曲げる。
相手の動きに気付き、赤髪の少女は目を開いた。
胴よりも半分近く長い見事な脚線。
その片脚がするっと黒タイツから抜き去られる。
「ちょっとだけ楽にしてあげる」
澄泉は言い、自由になった右脚を相手の左脚に掛けた。
カーネが身体を強張らせると、大丈夫、と声がかかる。
ほどなく4つの美脚は卑猥に絡み合った。
(…あ、そっか!)
相手の意図に気付き、カーネも表情を緩める。
手が使えないなら、お互いの脚で股座の痒みを鎮めればいい。
互いの足先に力が篭もる。
「動くわよ」
澄泉の言葉にカーネは頷いた。
双方が死の恐怖を感じる極限状態での同意だった。
ずる…っ
ローションのような蜜にまみれた秘部が重なり、擦れあう。
二人は息を呑み、吐き、また大きく吸った。
腰を浮かしながら、カーネの心は目の前の少女を追っていた。
上等な襦袢のように風に舞う黒髪と、淡雪のように白い肌。
カーネの胸にこすれる腹部は暖かくなだらかで、
股座をなでる太腿は陽に当てた毛布のように柔らかかった。
大人らしく淡みを覆う、やわらかな繊毛がこそばゆい。
はぁっはぁっと息を上げる声はなんとも言えず艶がある。
「おねえちゃん、すごく綺麗。羨ましいよぉ」
赤毛の幼女は眼前にぷるんと揺れる白桃に吸い付いた。
薄紙のようなシャツも一緒に舌でくるむ。
「ひゃっ、やぁ、くすぐったい!」
喘ぎ声はさらに可愛さが増した。
桜色の乳首を吸いあげると、しょっぱい味が鼻を通る。
シャツはプールで嗅いだ塩素の匂い。
胸を鳴らすこの甘い香りはうなじからか。
鎖骨でも吸うと、今度はどんな反応をするだろう?
カーネはまるで乳児期に戻ったかのように、シャツ越しに
澄泉の様々な窪みへと口づけを降らせた。
ぽってりした唇の意外な吸引力に驚きつつ、澄泉は腰をくゆらせる。
足首に力を込め、内腿に筋を立て、下腹をおしつけ、胸を潰す。
細く柔らかな躯を密着させ、平泳ぎのように脚を蠢かす。
無様でもいい。
肛門にこれでもかと薬液を塗りこめられた澄泉は、
秘唇に塗られたカーネと違いめったな事では痒みがおさまらない。
誰かに見られていない事を祈りながら、
なりふり構わずに相手の膝裏を土台に股下への快感を貪る。
上気した身体を合わせれば寒さなど吹き飛ぶ。
長時間の逆さ吊りのなか激しく動くと嘔吐しかけるが、
その時は互いの肩を甘噛みしてやり過ごした。
「うっ、はっ、あっ、あっ!あっっあ!!」
にちゃにちゃという潤みの音にあわせるように、
少女らは渓流へ美声を響かせあう。
髪を振り乱すたび雫が飛んで川に波紋を描いた。
逆向けの頭は血が上り、秒刻みで白くなっていく。
「あ、あっああ―――っ!!」
一際高い声が上がり、黒髪が揺れた。
シャツを押し上げる膨らみを通って透明な蜜が伝いおち、
二人のまろやかな顎を温める。
「やっとおねえちゃんもイッたんだ?」
澄泉の腋に舌を潜り込ませ、カーネが安堵の笑みを浮かべた。
「はぁ…っ、っはあ…」
澄泉は全身を脂汗でてらつかせ脱力する。
閉じた瞼に汗をのせて荒い息を整えている。
天使のような寝顔は想像に難くない。
「あたしも、おねえちゃんみたいな大人になりたいな」
カーネはいたわる様に、相手の首筋へ舌を這わせる。
彼女は気付いていた。
幼いカーネに体力を使わせないよう、澄泉が必死で腰を使っていたこと。
自分がより効率よく痒みを押さえる方法もあっただろうに、
わざわざ赤毛の少女ばかりが悦楽に浸れる体勢を作っていたこと。
最後に陰核で愉悦を迎えたとはいえ、何ら根本的な解決には
なっていない筈だ。
むしろ体力は消耗し、痒みは増して心身共に
追い詰められただけだろう。
しかし、カーネの小さな身体では同じ返礼はできない。
快感を享受するだけで、すでに脚の骨が外れそうになっていた。
彼女が舌を這わせていたのはその為だ。
「私みたいになっても…可愛気なんてないわよ」
薄目を開け応える澄泉に、カーネは泣きそうな顔を振った。
■ 18 ■
拷問部屋に戻された時、澄泉は抵抗しなかった。
いや、できなかった。
逆さ吊りでいたずらに気力と体力を消耗したためだ。
まるで海から溺死の寸前に引き上げられたように、
すらりとした身体は汗にまみれて力ない。
場の空気が変わっている事にも気付かないほど。
一方のカーネは、部屋の奥に座す男を見て背筋を伸ばした。
昨日の荒くれたちも揃って畏まっている。
その男はサングラスを掛け、皺の数から高齢とわかるが、
褐色の体躯はまるきり現役軍人のそれだった。
周囲の態度から見て将校級だろう。
彼はゆったりと腰を上げ、重々しい足取りで澄泉に近づいた。
「聞いた以上の上玉だな」
少女のまろみを残す顎に指をかけて言う。
澄泉は反射的にその相手を睨みつけ、そして、固まった。
赤剥け節くれた手、硝煙の匂い、野獣のような眼差し。
彼女の触れてきたどんな男とも、醸し出すオーラが違う。
「おう、いーい目ェするじゃねえか」
男が歯を剥きだすと、澄泉の瞳孔は針のように縮まった。
カーネが俯く。
澄泉とて、屈強な男にあっては只の少女に違いないのだ。
自分の3倍以上の筋量を前に、澄泉は後ずさりもできない。
獅子が目の前に佇んでいるに等しかった。
木の幹のような腕がシャツを掴み、
胸を弾ませながらたくし上げられる。
絞ると水溜りをつくったそれを、少女は呆然と見つめた。
「ずいぶん遊んできたみてぇだな」
割れ目へ捻じ込まれた指はまるで岩だ。
大岩のような腕…。
(…いやだ、なんであいつが浮かぶのよ…)
澄泉は弱弱しく頭を振る。
「前は嫌か?」
つぽっと音を立てて指を抜くと、少女は小さく震えた。
男は蜜まみれの指を舐め満足気に笑う。
そしておもむろに、軽々と少女を抱え上げた。
澄泉は何かを叫んで身をよじったが、まるで赤子の反抗だ。
胡坐をかいた男の上、少女は脚を掴まれ降ろされる。
幼いころ、排尿の訓練をした格好だ。
しかしその時は、尾骨にあたる熱い猛りなどはなかった。
(だめ、犯られる…!もしあいつより大きかったりしたら…)
澄泉は大きく息を吸った。
唇と肩と脚の、おこりの様な震えが止まらなくて。
「いい子だ」
褐色の男は少女に囁いた。
この状況にあり、懇願をしない娘はめずらしい。
初めに見せた猫のような瞳、胸板に垂れる黒髪、
そして理想的な細身のスタイル。
その逸材をリスク無しで抱けるのはまさに僥倖といえた。
男は深く腰を据え直す。
「俺は前よりこっちが好きなんでな」
男の狙いは排泄の穴だ。
しとどな粘液で蕩け、ひくひくと息づくそこを銃口のような亀頭が塞ぐ。
相手の狙いが菊門だと知り、さすがに澄泉は顔色を変えた。
まだ指しか迎え入れた事がない場所だ。
「む…無理よ………入りっこないわ……!!」
澄泉はなだめる様に説く。
しかし、男に止める気などあろうはずもない。
「無理かどうかは、俺が決める」
理不尽なまでの剛力で、少女の細い体が沈められていく。
肛門の皺が目一杯に伸びきり、みちみちと押し広げられる。
どれほどの痛みなのだろう。
少女の細い視線は傍をむいたまま、凍ったように動かない。
「いっ……あっ! ……あっっ!!」
小さく悲鳴をちりばめ息を吐く。
「す…すげぇ。キツくて、あったかくて…最高だぜ」
男の賞賛にも反応を返さない。
しかし――
「おねえちゃんっ!!」
それまで目を伏せていたカーネが、急に声を張りあげた。
澄泉の目が大きく開く。
「もうやめてぇ!おねえちゃんにひどい事し………!!」
男に口を塞がれながらも、赤毛の少女は何かを叫ぶ。
澄泉はそちらへ視線を向けた。
「…だいじょ、うぶ。へ、き…だから…」
目尻に皺を寄せながら必死に言葉を紡ぐ。
涙ぐましい光景に、しかし褐色の男は下卑た笑みを浮かべた。
「そうか平気か。なら、奥までがっぽり咥えてくれよ」
そう凄んで少女の腰の手に一層の力を込める。
「うっ……ぐぅ!」
澄泉の整った顔が露骨に歪んだ。
そして獅子の牙は、ついにウサギの腹を刺し貫く。
カーネが痛々しそうに目を背けた。
「おら、根元まで全部入んじゃねぇか。何が入らねぇだ」
男のドスの利いた声に少女はすくみ上がり、
はぁ、はぁと前屈みで息を整えはじめる。
強気でいながらも、男は内心で舌を巻いていた。
どろどろの壁がきゅうきゅう吸い付くように怒張を締め付け、
菊輪は厳しく根元を引き絞る。
血流に合わせ力を込めているだけで、たちまち達しかねないほどだ。
「見目と具合は反するとばかり思ってたが…いや恐れ入るぜ」
男は一人ごちて背を伸ばす。
引き抜くと共に怒張へ纏いつく粘液を感じ、男は遠慮を捨てた。
「ぐ…っ!う、動かな…で、や……っあ!!」
少女の悲願も虚しく、肉の音は連なりはじめる。
(こんなの…いつまでも耐えられない…)
骨盤にゴツゴツとひびく堅さを感じ、少女は考える。
排泄の穴を使われていることより、そこに男根が入ったこと自体が驚きだった。
そしてそれが苦痛ではなく、驚くほど自然であることが。
下準備が万端すぎるのだ。
薬液の痛烈な痒みは、ハッカを口に入れたときの様に、
湿る空洞の神経をこの上なく鮮烈に研ぎ澄ませた。
蟻に噛まれるようだった菊輪を肉竿が擦ると、
自分でもその小さな盛り上がり一つ一つの充血がわかる。
堅い亀頭が腸壁に沿って擦り上がり、子宮の裏を突き上げるとき、
少女は背を仰け反らせずにはいられなかった。
痛烈な痒みが部分部分で薄まってゆき、熱さだけを残し、
やがてそれが暖かさになって腸の接するあらゆる器官に伝播する。
今までには経験のない感覚。
潔癖症の澄泉なら、恐らくは一生知らずに過ごしたはずの快感。
ぶじゅ、ぶじゅっ、ぶじゅっ……
リズミカルな水音は膣よりもいやらしく粘質だ。
「これでお前の汚ねぇケツ穴ァ、真っ直ぐに変えてやっからな」
男の言葉責めは止むことなく、少女の耳奥を火照らせた。
直腸へ疼きという杭を打つように、抽送は果てることなく繰り返される。
何十回という容赦のない突き込み。
それを延々と受け入れるうち、括約筋を緩めると割に刺激は小さく、
締めると大きくなる事がわかった。
同じく脚をひろげるとましになり、閉じるとぞくぞくする。
かといって広げすぎると、かえって一番に括約筋が締まってしまう。
特に直腸の奥底を突き刺された時に力をこめると、
身体に電流が走るという表現がぴったりだった。
男の怒張はかなり長く、そのような事態がよく起こる。
しかしその時が一番に痒みを収める事ができるのも事実だ。
また男のほうも慣れたもので、締め付けざるを得ないような
突きこみを憎らしいほど心得ていた。
「っい、いーーっ、いぅーっ!!」
やがて少女が歯を食いしばり、背を仰け反らせはじめた。
男はそれを見て一気に突きこみと腰の捻りを強める。
程なく、少女の慎ましい菊門は痛々しいほど収縮した。
直後、ぼじゅううっと壮絶な音を漏らし、腸液を噴きこぼす。
少女はそのたび耳を赤くして恥じるが、男はなんら動じない。
それこそが薬をつかった肛門性交の極まった様だからだ。
膣を突かれる感触が布ごしに鉛筆で、ならば、
後孔を貫かれるときはダンボールごしに酒瓶で。
澄泉の唸りがニノの時と違うのも、悦楽の種類が異なるためだ。
一度一度の感覚は鈍く、しかし溜められるエネルギーは凄まじい。
じっくりと時間をかけ、絶頂が霞むほど遠くにある中を永遠に彷徨いつづける。
もしも真の境地に達すれば、内臓が蕩けるのではないだろうか。
『後ろだって立派な性器よ。慣れれば前よりいい子もいるわ』
ラウラの言葉が頭をよぎった。
あの時は信じようともしなかった。しかし今なら……
「やっとイイ声が出はじめたな」
男の声が遠くで聞こえる。
確かに澄泉は喘いでいるらしい。
ただ、止まらない、
そして――止めて欲しくもない、
これは喉の奥の奥、腸を満たすぬるい穢れを吐きだす息だ、
きっとそうだ、
女が笑みを浮かべ、男が呆れ果て、赤髪の少女が泣いている、
泣いている、泣いている
(だぇか…… だれか助けて……
わたし そのうち本当におかしくなる。
私が 私で 、いられなく なる … …)
つづく