保守
そして、保管庫への収録を熱望!
379 :
102:2008/01/16(水) 06:22:02 ID:IcUefQm2
みなさん、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
365の続きです。
・・・・・・・・・・・・・・
もうすっかり日は落ちていた。
静かな闇が、当然のような顔でその場に横たわるのを引き立てるように、青い月が昇り始めた夜の入り口。
イヌイの読み通りの時刻にその岩に着いた時、雲一つない晴天の夜空に月光は冴え冴えと輝き、
闇を散らして澄んだ紺色に変えていた。
その色はイヌイの贈った桃子の着る藍の絣と、まるでそろえたように同色で、大犬は不安に
銀の瞳を曇らせた。
桃子を草原に下ろした時、そのまま夜に溶けて消えてしまうように感じて胸を病む。
イヌイはその印象が間違いではなかったと後に知る。
さっきまで翔る空の広さの中、抱かれるイヌイの腕は力強く、その逞しさに安堵感すら感じていた
桃子だが、やはり実物を目前にすると愕然として、急速に心細さに襲われる。
この世界も自分も、そして目の前の愛しい妖獣も。何もかもに不安を覚えて立ち尽くす。
初めて出逢う同族。
それは冬枯れもせず青々と広がる草原の中にぽつんとあった。
確かに岩だった。
ぼんやりと白く滑らかに美しい。だがどんなにきれいでも、それはもの言わぬ岩なのだ。
空の上より、あれだがそうだと教わってから、桃子は言葉を失い青ざめたままだった。
「誰か食い意地張ったやつが壊したか。マナーがなってないぜ。」
天頂部が裂け、欠けているのを見てイヌイはもらした。
マナー云々ではないだろう。
これが自分の将来とすでに聞いている桃子には、その乱暴された痕跡はとても痛々しくて見ていられない。
その反面これが自分の同族であるとは未だ信じられず、桃子は心のどこかでイヌイが「今までの話は
全て嘘だ、からかっただけだったんだ、信じたのか?」と笑ってくれるのを願っていた。どれほど待っても
当然ながらそんな言葉は与えられなかった。
遠巻きに見守る桃子を尻目に、青草にさくさくと分け入り、イヌイはその岩の亀裂にためらいなく
手を差し入れた。
「運がいいな。まだ生きてる。」
「食べるの?イヌイのおじちゃん。」
追ってそばに寄って来たマサルの明るい声に救われる。
イヌイはそれには応えず、ただ黙って小猿に笑顔を向けて、慣れた手つきでそのなだらかな丘をなでる。
欠けた頂部分がイヌイの手で隠されると、白い岩は桃子が見るこの距離からだとまるで女の尻に見えた。
ズクンと股奥に刺激を感じて桃子は反射的に目を逸らす。それは同調なのか嫉妬なのか。今の桃子に
それを己に問う余裕は無かった。
「何をしてる。来い。」
未だグズグズ遠巻く桃子をイヌイが呼んだ。
「おまえの育った村に一番近い桃岩だ。…母親かもしれないぜ?」
「そんなこと言わないでよ!」
大きな声で怒鳴った自分に、桃子自身も驚き、改めて緊張していると知る。
ふざけたように軽く言うイヌイに、相変わらず思いやりに欠けると思った。
イヌイの言った意味も含めて、初めて見る桃岩は、桃子にはただ恐ろしかった。
だがやっと得た念願の機会、旅の目的地から逃げ出すわけにはいかず、桃子は恐る恐る足を踏み出した。
イヌイのつけた青草の倒れた跡をそのままなぞり近寄ると、その背に隠れるようにして、鍛えられた
男の肩越しにそれを見た。そのせいか、遠くから見たときよりそれは柔らかくなめらかな温かみを
もって見える。
「欠けさえなけりゃあ最上クラスだ。よかったな、初めて逢う同族がべっぴんで。」
桃子の恐れを知ってか知らずかイヌイが笑いかけた。
思いがけない優しいイヌイの笑顔と、初めて会う同族が欲目抜きに美しい肌色をしているのを認めて、
桃子は安堵で泣きそうになった。
380 :
102:2008/01/16(水) 06:41:58 ID:IcUefQm2
規制?…テスト
wktk支援
382 :
102:2008/01/16(水) 06:47:43 ID:IcUefQm2
むう。長文は無理みたい。出直します。
このスレ中には終わらないので保管庫嬉しいな。よろしくお願いします。
乙です。
続き、楽しみに待ってます。
384 :
102:2008/01/16(水) 06:50:26 ID:IcUefQm2
あっ、人が居る!おはようございます〜。規制はじめてでわかりません。
短くぶった切って投下した方がいいのでしょうか。
一行目が空いてて22行以上の長文だと規制される、ということ以外はよくわからないなー。
102氏のは何で規制されているんだろ。
頑張れ102氏。待ってる…!
386 :
102:2008/01/16(水) 07:15:11 ID:IcUefQm2
一行目あけてました。ありがとうございます。やってみます。出来たら続けますね。
続き↓
・・・・・・・・・・・・
すでに知った自身の正体に、今更ショックで倒れそうになりながら、桃子はこの岩の前で涙ぐんでいる。
嫌悪では決して無いが、この気持ちはなんといおうか。
「拗ねたり怒ったり泣いたり、忙しい女だな。」
イヌイは一人ごちる。だがその声は慈しみを持って桃子を勇気付ける。
そうだ、すぐそばにイヌイが居る。何が怖い事があるだろう。
それでも背中から一歩も動かない桃子に、しびれをきらせてイヌイが横にずれた。
「泣いてないで、ほら、土産を渡すんだろう?」
そう言って萌黄の絹の風呂敷包みをひょいと桃子に手渡した。
ずっしりと思いその中には、桃子が摘んだ秋桜が詰まっている。その重みに押されて半歩岩に
近づいてしまった桃子は、躊躇いながらその包みを草地に下ろして結びを解くと、中から鮮やかな桃色の
花が、わあ、と溢れて散らばった。
こんな時だが桃子は摘んだ時と同じく、その花の色にうっとりと眼を細める。両手に持てるだけ
その花束を抱え、ぎゅっと抱きしめて岩に対峙した。
「え…と、も、…桃岩さん?」
緊張に掠れた声に、イヌイがおまえもだろうと笑う。その声の方に拗ねた顔で一瞬振り向き、
また岩を見て桃子はその花束を岩の周りに飾るようにひと掴みづつ置いた。しゃん、と背筋を伸ばして
岩の前でお辞儀をした。
「はじめまして、桃子です。」
返答のない挨拶を終えて、途方に暮れる桃子はまた、本当にこの岩が私と同じ人がただったのかと
疑念が沸く。
「おまえも触れてみろ。」
「噛み付いたりしないから大丈夫だよ。桃子おねえちゃん。」
マサルとイヌイに挟まれるように桃子は目前に岩を見た。もはや逃げられないと悟り、言われるままに
手を伸ばす。
「あの…、失礼しま…す…。」
白魚の細い指が、乳白色の岩におずおずと添えられた。
思いがけず岩はほどほどに熱を持っていた。
「温かい…それになんかしっとり…。」
「お前がぐずぐずしてるからもう十分準備できちまった。」
「準備?」
その質問に、イヌイが答える必要はもうなかった。
あっ、と小さく桃子が声をあげた。
それが境だった。
この時より何もかもが変わったーーーーー
・・・・・・・・・・・・・・
387 :
102:2008/01/16(水) 07:20:43 ID:IcUefQm2
一瞬のことだった。
白い岩の内部から桃色の光がせりあがってきたと思ったとたん、岩全体…いや、この辺り一帯を
真っ赤な光で包みこみ、そしてそれはすうっと空に消えた。とおに降りてきていた闇が、いっそう濃い
群青の空間となり、さっきまで辺りを照らしていた月がどこに消えたのか今は見えない。ただイヌイと
マサルの金と銀の体毛の光だけが、互いの妖獣を、桃子を、そして今はその奥にぼんやりと赤い光を見せ、
飾られた花々と同じ濃い桃色の岩を照らしていた。
チラ、と横目でイヌイが桃子を見ると、ハアハアと息が弾むのを必死で押さえるように、小刻みに
胸を震わし呼吸を乱している。
「おい。」
イヌイの声にも反応はない。
まるでのりで貼付けられたように岩に手を吸い付けたまま、桃子の頬がみるみる紅潮していく。
その花と、その岩と同じ桃色に…。
「おい!」
イヌイはもう一度呼びかけたが、ぶるぶると全身を震わせはじめたのを認めて、強引に腕を掴んで
岩から離した。
桃子は瞬き一つせず、じっと空を見つめ放心し、引き寄せられるままにイヌイの腕に巻かれ胸に
体を預ける。
柔らかい肢体の全体重がどっさりとイヌイにぶつけられた。
とたん、むんっと勢いよく桃子の体臭が駆け上がってきて、イヌイはたまらず顔を背けた。
臭いわけではもちろんない。むしろ震いつきたくなる…、いやそんな程度ではない。がむしゃらに
引き裂いてただちに口中に、ぐちゃぐちゃと噛みしだいて腹に収めたくなるようなそんな…強烈な芳香!
ーーーーーーーーーーっっっ!!!
「わあああぁあっ!何っ!?イヌイのおじちゃん!これ、何!?怖いっ、怖い…っ!!」
初めて聞く、小猿の動揺を隠さぬ畏怖の叫びが草原に響き渡る。
昼間も聞いたキーーッという高い叫びをあげ、マサルはその場にうずくまると、股間を守るように
両手で押さえつけビクビクと痙攣し、そのまま身体を折って崩れ、青草に消えた。
それなりに経験を積んだイヌイですら、たまらなかった。
まともにくらわなくてよかったと、イヌイは見当違いの安堵をなんとか探し出し自我を保守する。
鼻をかすめた程度の今でさえ、血が沸き出す衝動にかられながら、はちきれんばかりの股間の痛みを
こらえてなんとか立っている!
「桃子…!」
「桃子……っ、桃子っ!!」
幾度も繰り返された妖獣の呼びかける叫びにようやく瞬きをひとつたて、続けてぱちぱちと
長いまつげをばたつかせ、桃子は初めて世に出てきたひよこのように、何の感情もまだ知らぬ
無垢な瞳でイヌイを見た。
「イヌイ…。」
「おう、大丈夫か?」
「スケベ。信じられない。」
おい、心から心配して抱きとめている男にそれはないだろう。
イヌイはげんなりした気分と桃子の無事を認めた安堵より、一息ついて肩を落とした。と、同時に
どんっと力任せに弾む女体に押し倒された。
388 :
102:2008/01/16(水) 07:23:26 ID:IcUefQm2
女に押し倒されるなど初めてのことで、驚きと軽い屈辱感にイヌイは声を荒げて抗議する。
「何だ急に!痛えだろ!どけ…っ…。」
罵声は桃色の唇に飲まれて小さな口内の奥に消えた。
上に股がった桃子の俯いた顔は近すぎて見えないが、明らかに興奮した息がねっとりと唾液とともに
イヌイの口に注がれる。
−−−美味い。
率直な感想だった。
元より妖獣の好物だ。出逢って以来何度も啜って、美味い事もすでに知っていた。だが今のこの味は…!
口端からこぼれる液が惜しくて無意識にすすり上げ、口角にこぼれたそれを舐めとりながら、
押し付けられる柔らかい肉に、意図も無く舌を差し入れると桃子の舌にぶつかった。驚いて一瞬
引っ込んだそれは、そのまま待っているとおずおずとまた戻ってきて、小さい舌は倍以上あるイヌイの
それにそっとあてがわれ、そしてそのまま動きを止めた。
桃子はイヌイの上で四つに這い、眼を見開いたまま、ただ唇を合わす。
大きな口の亀裂にあてがわれた柔らかい口腔から、重力の通りに惜しげも無く甘い唾液が垂れてくる。
イヌイは同様にその身を固め目を見開いて、桃子の動向を量っていたが、口中に流し込まれるごちそうに
堪らず、ゴクリとのどを鳴らして溜まった甘露を飲み下した。
それを待っていたように桃子は顔をあげた。
やっと表情を知れるその位置で、ゾッとする美貌がイヌイの銀の光に照らされ闇に浮かんでいた。
イヌイは初めて見る妖しい笑顔の桃子を仰ぎ見た。
「おいしい?」
艶やかな声でわかりきった答えを俺に訊く、これは本当に桃子だろうか。
あり得ないそんな思いがふいに頭に浮かび、イヌイはそれを打ち消すようにわざわざ鼻で笑う。
「まあまあだな。」
そう言って、自分の身体の上にのしかかる桃子の尻をするりと撫でた。
「ひどい。」
まあまあに腹を立て、上から非難の目をむける。その拗ねた様は一瞬幼く、いつもと同じ桃子に
イヌイはホッとする。
だがそれも一瞬でしかなかった。
大犬の大きな体躯の上で、小さく華奢な桃子の身体は、感じるそのささやかな重みからも、覗く
わずかな皮膚からも、もう牝の匂いしかしない。
その明らかな変貌を、イヌイは身体全体で感じて驚愕する。
今までの桃岩から聞いていた、桜桃が言っていた、これが同族伝授か…!
まったくすげえな、桃岩属ってやつは…!!
さっきまでは本当に、たとえ体は牝でも、俺が女にしたと言ってもどうしても、子供だったのだ。
だが今は、もう女だ。女でしかない。
五分やそこらでこの変化はなんだ!
389 :
102:2008/01/16(水) 07:26:16 ID:IcUefQm2
接触伝達は同族に限るので、何を伝えられたかイヌイは知る由もなかった。ただ一つ言えるのは、
桃子は今やすべてを知っているということだ。
イヌイはやっと肩の荷を降ろしたような身軽さを感じ、同時にそのことが堪らなく恐ろしかった。
「大人の世界を知った気分はどうだ。」
不安に耐えかね、からかうようにイヌイが口火を切った。
桃子はただ一言「最悪」と言った。
「どうしよう…大人になっちゃった…。」
「わかったか?」
何を?とは訊かなかった。
「うん。わかった。」
全てを、だった。
・・・・・・・・・・・・・
さっきまで冷たい夜風にざわめいていた草原が、今はしんと静まり返り、青草に横臥した獣の光が
それに埋もれて闇が広がる。
イヌイの上で、桃子はまた放心した顔で空を見る。
闇に溶かされた藍の着物に包まれてなお匂い立つ芳香は、溢れ出るように桃子から流れ続けており、
イヌイの怒張は静まるどころか、猛りを強めて股がる桃子の尻を刺し熱い。
むずむずとした腰の苛立ちを懸命に押さえるのが精一杯で、イヌイは身動き一つとれなかった。
わずかでも身体が動き出せばそれを機に、己が何をするかは知れている。
どうにかしてくれ、桃子!
「抱きしめて、イヌイ。」
拷問のような桃子の望みに、だが従わないわけがない。
背に腕を回し力強く引き寄せる。
しなやかにくねって逞しい男の胸に押し潰された女体は、密度を増して重くイヌイにのしかかる。
溜まらない濃厚な匂いにイヌイは苦しげに大きく息を吐いた。次に吸ったその空気に脳が溶けるような錯覚。
抱き潰さぬよう過剰に力んだイヌイの腕が、ひくりと痙攣しては弛緩する。それを繰り返すうちいつしか
イヌイの拳は握られていた。
この手を開いたら俺は。
イヌイの葛藤と抑制を知ってか知らずか、胸中の桃子が急に背筋を反らしてその白いのどを見せつけた。
きっちりと着付けたはずの着物の衿からは漏れるはずのない双丘の香り。
ガクンと首を折り、顔色をうかがうように俯いた桃子の長い黒髪がバサリと乱れてイヌイの顔を包み、
出来た密室に桃子の甘い吐息が満ちた。
開くまいと力を込めた手の平に、いつのまにか山吹の帯があった。
主の意識から放れた手は慣れた手つきで背の結びを解き、緩んだ長着に獣の手は滑り込む。薄い襦袢越しに
重量ある大きな乳房が弾んでイヌイの手の平に吸い付いて、あとはもう止められるはずもない。
390 :
102:2008/01/16(水) 07:29:09 ID:IcUefQm2
「スケベ犬。」
桃子の声がそんなイヌイをあざ笑う。
背を反らせ、されるがままで、なのに俺をなじるのか。
「誰がそうさせている。」
まだ絡む帯を片手で抜き取りながら、もう片方の手は闇雲に動く。肉を捏ねあげる手の中にコリコリと
しこりだした先端を覚えて、イヌイはくるりと寝返りを打ち、先ほどとは逆に青草に桃子を組み敷いた。
己の大きな身体が閉じ込めた桃子の芳香を下からくらい、我慢もこれまでとイヌイは細いのどに噛み付いた。
「ん…ああぁん。」
先端の丸い牙ががぶがぶと甘噛みする刺激に嬌声が上がる。待っていたと知る。
牙は耳裏から首筋を這い、美しく窪みを作る鎖骨にひっかかり止まる。そこで信じられない声を聞いた。
「この桃岩の名は水蜜。」
ピクリとイヌイの肩が揺れた。
「私のお母さんではなかったけど、綺麗で、胸も私より大きくて、優しい女だった…でしょう?」
イヌイが半身を起こして横たわる桃子を見ると、怒ったような、拗ねたような、だが女の顔をしている。
「スケベ。信じられない。」
再び言った桃子の台詞に、イヌイは浮かんだ面影とすぐ横のもの言わぬ岩を見比べた。
まだサルトルにも出逢う前、ひととき共に旅した豊満な彼女の優しく甘い声を思い出す。水蜜!
「水蜜って…あ…あの水蜜か?」
動揺に言葉をかみ、イヌイは驚きを隠せない。
「イヌイ若いときから変わらないのね。料理の時間長くてなかなか食べないの。意地が悪いの。」
「見たのか!」
「見たよ。おっぱい揉んでばっかり。えっち。」
うろたえる獣の横で岩はその身の中の赤い光を揺らし、それが笑っているように映る。
腕を立てた体勢のまま身を固めた大犬の顔も、それに呼応するように赤くなる。
「み…見るんじゃねえよ!」
「私だって見たくなかったよ!ばか!えっち!スケベすけべスケベ犬!!」
下からドンと蹴り上げられ、イヌイはうおうっと股間を押さえて桃子の横に肩をつく。
すかさず起き上がった桃子は、そのまま丸まる背中にばかばかと拳をぶつける。
「ばかぁ!あんなに…あんなにべろべろ太腿舐めなくてもいいじゃない!餌なんでしょう、私たち!あれって
ただの食事なんでしょう!?なのに…あんなやらしく…っ!いやらしい!いやらしい!!スケベばか!!」
「よせっ、阿呆!昔の話だろう!?」
「今も…私にも同じことするくせに何が昔の話よ!」
「おまえにそうするのは…おまえだからだろう!?」
「ばかあああああぁあっ!!」
両の拳を身体ごとドンとぶつけて、それからわあああと泣き出した。
以前と変わらず幼く、嫉妬の激昂を持て余す少女のそれに、なぜかイヌイは安堵した。
「バカ…妬くなよ、桃子…。」
乱れて背を見せる襟首を摘んでその少女を抱き寄せる。
いつもマサルにするように懐にしまい込み、小さな頭をなでる…その手を。
桃子はぶるん、と首を振ってはね除けた。
イヌイは自分の感じた安堵が、そう思いたいばかりの独りよがりのものだと、ようやく認めて
その「女」を見た。
391 :
102:2008/01/16(水) 07:31:49 ID:IcUefQm2
「私のこと餌ってイヌイは以前言ったけど、本当に私って…私達って、妖魔妖獣の餌なのね。」
桃子は何を見たのだろう。
その変貌に戸惑いを持て余しているのはイヌイだけではなかった。
桃子もまた、還りたい、と泣きたい思いで、だが戻れない事実に、惑い、揺れていた。
どうしたら良かったのだろう。どうすればいいのだろう。
この世界の理を前に、揺れるしかない小さな自分に、今は泣くしか出来ない。
「イヌイだけじゃなかった、水蜜を食べたのは…。たくさん…たくさんの妖しの餌に何度も…。
私がヒヒに食われたように。」
おぞましさを思い出し、ぶるっと身を震わせイヌイの腕にしがみつく。
桃子は何も知らなかった遠い昔の幸せを、慈しむかのようにそれに涙をすりつけた。
それは以前の少女の桃子で。
同時にはだけられた胸からその香りはいっそう濃く溢れ出し、獣を猛らせイヌイを誘う。
それは明らかに「女」のそれで。
「イヌイがヒヒを食べたように。マサルくんが道中の猿を、タキジさんが雉を…。私が食べたあの雉と、
鱒と同じように…!」
「違う、桃子。」
ふいにピイピイと、青草の奥から雉のヒナが鳴き始めた。マサルがつれていた、あの三羽の雉のヒナ!
「イヌイが私を食べるのと同じように……っ!!」
「違うっ!桃子!!聞け、違う!!」
ザワと青草が揺れた。
生温い風が先ほどまでの静か過ぎる夜の草原に、不穏な空気とイヌイの恐れる不安な未来を運んで渦を巻く。
「水蜜はたくさん食べられて、経験を経て、だから成熟して岩になって、さらに食べられて!とてもいい
泉になったことを誇らしげに教えてくれたよ!あの亀裂は汁を啜って、食べちゃいたいほど興奮した
鬼の一族に鬼歯でガリガリやられたって!…嬉しそうだった。他の桃岩達もみんな、たくさん食べられて…、
いろんなふうに食べられて…!それがすごいでしょう、嬉しいって…!!でも…でも私は恐い…っ!!」
ザアッ。
青草が、まるで生き物のようにうねる。
光る獣の銀の毛は逆巻を強め、その光を散らせつつ波打つ。
心地の悪いぬるさを持った風が桃子の長い髪をまばらに揺らす。
言霊を奪うために塞がれた桃子の唇が震え、のどから苦しげに嗚咽が漏れた。
それでもイヌイは桃子の頬を掴み、唇を、腕を巻き付け固定したその身体を離さない。
ヒクついたまま桃子の腕がイヌイの背に回され、「女」は「男」にすがりつく。
毛深い体毛ごしにその下の逞しい筋肉に押し当てられる鞠の胸。「女」は扇状するように、
「少女」は逃げ込むように身を押し付けて。
頬を掴んだイヌイの手を濡らし流れていく涙。
「怖い。」
震える肩に長い手を伸ばして、そのまま自分の胸に伏せさせた。
「染み古反…おばあちゃんは私の為にくれたけど、イヌイが私にしたように、桃岩にとって染み古反は
餌の保存に使うものなのね。私たちの一族に生理ってないのね。だって牝しかいないもの。
私にお父さんはいなかった。私たちは単体で卵ではなく子株を増やすの。
桃岩に触れて一族の情報を伝達されることが、大人に…女になることだったのね。
さっきイヌイがした準備って私にする料理と同じで、ああして撫でさすると泉のように液を出して、
そうしてそれを啜らせる…。確かに私と同じ…、あれは私…、私もやがて岩になる……っ!!」
一気に加速をつけてまくしたてた桃子は、どんっとイヌイの胸を叩いてがたがたと震えだした。
「怖い……!!」
392 :
102:2008/01/16(水) 07:35:17 ID:IcUefQm2
「大丈夫だ。俺がいる。」
誰にも。俺以外の誰にも桃子を食わせない。俺のものだ…桃子、おまえはこの世界で
ただ一人の俺のつがい!
「イヌイがこれから私に何をするつもりかわかってイヌイも怖い。」
懇願するように見上げる目と合った。銀の光に桃子の瞳孔が縮まりうつろな点になる。
「俺が…何をする。」
「怖い。」
「俺が?」
「怖い。触らないで。」
守ろうと抱く男を突き放す桃子の手は弱く、イヌイの腕の中でただ身じろぎをする。
「俺が怖いのか、桃子。」
嫌なら突き離せるはずだ。桃岩だ。
「放してイヌイ、触らないで…。」
本当に嫌ならそう出来るはずだ。
だだをこねる腕の中の桃子に煽られる。放すはずないだろう、そんな匂いをさせて!
「嫌…。」
「俺が嫌いになったか。」
知ればそうなるだろうと覚悟をしていた。
もう何も知らなかったおぼこではない。
あの香しく俺を包んだ健気な少女の想いはすでに消え去って、だが。
「俺が嫌いか桃子…。」
イヌイが抱きしめる腕に力を込めると、桃子はまた胸に押しつぶされて、しなった身体からドロリと
濃厚な匂いが立ち上がり獣を猛らせる。自我を奪う。
なんという香りか!
「……嫌い。」
身をくねらせ真白いのどをのばして仰ぎ見た、桃子の赤い小さな口から漏れる吐息がイヌイの顔に
かかった。
大きな瞳は熱く潤んで、その中に銀の獣がいる。獣は吸い込まれる。
「うん、ていうはずないの知っててそんな意地悪を言うの…イヌイ、嫌いだよ。」
離れようと胸を押していた細い腕が、腋にすべりこみそのまま大きな背を引き寄せる。
「…好き。」
「ああ。」
「怖いけど、イヌイが好き…。私…イヌイが好き。イヌイだけが…。」
泣くな、と。こぼれた涙を啜ろうと口を寄せたその先が桃子の戦慄く唇だった。
それだけだ。おまえを食おうとしてじゃない。
これは食事じゃない。
「俺もだ桃子。おまえが好きだ。大丈夫だ、俺が守る。怖くない。何も、怖くない桃子。」
「イヌイ…好き…。」
さらに溢れた涙の意味をイヌイは知らなかった。
だがこの時は、奪われた意識の自由を悔やむ事なく、腕の中の桃子の狂おしいばかりの芳醇さにすでに
垂涎し、己の猛りの解放に酔うばかりだった。
・・・・・・・・・・・・・
393 :
102:2008/01/16(水) 07:37:18 ID:IcUefQm2
イヌイは青草に足を伸ばして座った腰の上に桃子を身体を引き上げ、はだけかけた前合わせをぐいと開く。
桃子は一瞬あっと声をあげ身を反らし、また両手で男の胸を突っぱねるが、イヌイに剥いた着物ごと
腰を押さえつけられ、そこから抜け出すことはできなかった。
すでに硬くそそり立ち脈打つイヌイの自身と男の腹に挟まれ、桃子は着物越しでも知れる男の昂りを
尻に受け、戸惑いと股奥のむずがゆさに腰をよじる。真っ白い大きな乳が二つ、重みでぶらんと揺れ、
それがイヌイの鼻先をかすった。
甘い匂いがイヌイの鼻腔から脳を貫く。
桃子…堪らない。なんて、なんていい匂いだ。
「食っていいか?」
うっとりと心酔したイヌイの声に、桃子は「でも」と顔をあげる。
「水蜜さんが見てる…。」
すぐとなりの桃色の岩を見て、恥ずかしそうに桃子はイヌイの身体を突き放す。突き放せない。
「見てなくてもどうせ知れるのだろう、桃岩は。」
「マサルくんも…。」
「おまえに当てられ放心中だ。見てない。仮に見られて何が嫌か。」
有無を言わさぬイヌイの猛りはすでにその身を桃子の尻に。イヌイは焦れるその着物を取り去ろうと
襦袢ごと前を開いて桃子の太腿を剥き出させた。
熟れた肉が露になり、そこに手を這わせむっちりとした肉を掌中で楽しむ。
しとどに濡れたその奥は、すでに溢れて獣を待っていた。
目が合って、お互いのはずむ息を認めて桃子は形ばかりの拒絶をやめ、イヌイの腰で股を開く。
そこからの誘惑の匂いをまともにくらい、イヌイは大きく息を吐く。
「だめだ。くらくらする。我慢しようと思ったが。」
息を切らす。
それは言い訳だ。
我慢など出来るわけがない。
突き入れたい。
中からむしゃむしゃと食い充たしたい。
見なくともわかる。柔らかく赤い肉はすでに熱く、俺を待っているのだろう!?
イヌイの着る粗野な着物をとめる帯を解いたのは桃子だった。
「おなかがすいたの?イヌイ。」
女は男の鋼の腹に手をついて腰を浮かせる。
「違う。桃子、俺は…。」
「俺は?」
飢餓感は確かだ。だがそうじゃない。
これは食事じゃない。桃子、俺は…!
「俺はおまえを感じたい。ここに、俺の前に居ると。俺の女だとただ感じたい…!」
焦らす女に懇願する男の声。
「おまえが欲しい。桃子…!」
満足に微笑む女の、それでもこのときはまだ無垢のそれで…。
394 :
102:2008/01/16(水) 07:40:48 ID:IcUefQm2
「あげる。」
くい、と腰を反らし、待ち構えそそり立つ肉の柱を秘腔に当てた。
イヌイのそれは鈴口から吹き出した先走りの汁がぬらりと桃子の大陰唇を濡らし、裂け目に収まろうと
さらに尖る。
くちゅりと音をたて、滑り込む。
「…っうぅ!」
「……っぁあん!!」
ずぶずぶと突き進む肉腔は熱く、熱くとろけてイヌイの刺す柱に絡む。
締め付け押し付けるその感触は、だが拒絶ではなかった。
「…あげる。私の全部…イヌイにあげる…っ!……食べて……ああっん、あん、ぁん!!」
浅い抜き差しを自ら繰り返し、男の肉棒を奥に進める少女の尻肉が、フリフリと揺れる。
食べて、と言いながら、イヌイの男根をくわえこむそれの与える快楽に、食われているのは
俺のほうだと、とろけそうに大犬は目を細める。
ぐいっと突き上げるのと挿入の動きが反し、一気に奥に滑り込んだ。
桃子の嬌声が高く上がり、嫌、と突き上げる男の腹を腕で突っぱねる。
拒絶は形ばかりでその腰をさらに振って、中から溢れる愛液は潤滑を促し男をさらに奥へ。
それを悦ぶ自身がすでに限界にきている焦りを散らすように、イヌイは女を言葉で嬲る。
「びしょびしょだ桃子。もうこんなにして、この…いやらしい…いやらしい女……!!」
「や…、イヌイっ!イヌイの…大きい…っ!!」
腹に突っ張っていた桃子の腕を掬いあげ、その支えを奪うと女の尻は、重力に逆らわずぺたりと
その肉を男の腰に付けた。肉棒はコツンと何かに当たり二人ともがビクリと腰を揺らし、その動きは
意図せずさらに奥を突いた。
「ひっああぁあっん!!」
「くっ………あっ、桃子っ!!」
一瞬にして高みに登った桃子のきゅうきゅうと締め付ける痙攣に、耐えて、耐えて。動きを速めた。
「桃子っっ、桃子!……ああ!」
男の腰が卑猥な動きで乱暴に女の秘所を抉る。
ゴツゴツと子宮口を突くそれは中でパンパンに膨らみ、内部を充たしてなおもっと奥を求めて身を伸ばす。
「んぁあっ、イヌイ!イヌイ…や…深い…!」
いやいやと首を振り、だがその腕はイヌイの首に回され、中だけでなく離れた外の肉体も密着しようと
桃子はしがみつく。快感に耐えきれずイヌイの肩に噛み付きその背に爪を立てた。
ガリガリと引っ掻いて、だが無傷の鍛えられた男の背に感じて、桃子は初めての荒ぶる欲情に腰を振る。
乱れる女の腰をかき抱いて、やみくもに男も腰を突き上げる。
桃子の奥の入り口はゴリゴリと亀頭を擦り、イヌイは脳髄が麻痺するような強烈な快感を覚えて
雄叫びをあげた。
「桃子っ、俺の、俺の桃子っーーーうううぅお、おおおーーーっ!!」
「やあぁーーーーっーーーー!!」
ほんのわずか先に達した桃子ががくんと弛緩したのを認めて、イヌイは待ちかねたように泣きそうに
顔を歪めて腰を引いた。
ずるりと自身を引き抜いて。
やっと、と油断したそのとき。
395 :
102:2008/01/16(水) 07:42:51 ID:IcUefQm2
「…嫌。離れないで…イヌイ、嫌……っ!!」
桃子の小さな手のひらが、ギュウと男の根元を握り、その先端を再び中に納めたのと。
「ばっ……よせ!桃子……っ!!くっ……っ!!」
うっおおおぉおぅっ、とイヌイが獣の咆哮で、その腰を揺らすのは同時だった。
ぶおっ、と中で膨らんだそれから、絶頂の痙攣いまだ収まらぬ桃子の体内で、一気に噴き出したもの。
「おおおおおおおおおおおおーーーーーっ!!」
「……っあっ!ひあっ、あ、やああああああーーーっ!!」
ドクッドクッと脈打ち、限界まで腫れた熱い肉棒が硬く身を反り返すたびに、ビュクビュクと
噴き出す白濁の液。
それを搾り取るように収縮を繰り返す桃子の肉壁にそれを溜め込む余裕は無く、搾り取る動きは
同時に噴き出したそれを外に押し出し、イヌイの放った欲望は結合部からビチュビチュと溢れ出る。
キュウキュウ締め付けるその穴から、今からでも抜こうと桃子の腰を押しやるイヌイの手は、力一杯
そうしているにもかかわらず無力で、桃子の腰はびくともせず、それは最後の一滴まで女に注がれた。
最奥で放たれた熱いイヌイの欲望の汁は、突かれ続けたその奥の奥まで、激しい勢いで桃子を貫いて、
その瞬間女は真っ白に…。うっすらと愉悦の表情を浮かべて。意識は飛ぶ。
ひああぁん、と鼻にかかった甘い声を最後に、桃子はイヌイの身体を手放した。
・・・・・・・・・・・・・・
気を失っていたのはわずかな時だった。
イヌイの腕の中で目を開けた桃子は、自身はもとより、精悍な大犬もいまだハアハアと肩で
息をしているのを見取ってそれを知りホッとした。
「…大丈夫?イヌイ…。」
「ばか…こっちの台詞だ…。」
イヌイの胸の上に倒れ込むようにうつ伏せた桃子は、いまだ快楽の余韻にしびれてだるい身体を
ぐったりと弛緩させたまま、動くのはここだけと頬をすりつけた。
息を乱し草むらに横臥する獣は、仰向けに闇を睨む。
熱い手の平が桃子の肩に添えられ、頬ずる少女を労る。
「このやろう、人の気も知らないで。どうするんだ。」
「知ってるよ。」
「こうなると知っててやったのか。」
「知っててやったの。」
イヌイの肉茎はいまだ桃子に納められていた。
脈打つ欲情の猛りは静まって、だがその身は中でパンパンに腫れて桃子の腹を押している。
最奥の傘は開いてイヌイは身動き出来なかった。
女は男の肉の楔に囚われている。それは桃子の望んだことだった。
396 :
102:2008/01/16(水) 07:44:51 ID:IcUefQm2
「しばらく抜けねえぞ。」
「いいの。こうしていたい。」
「…子が出来ちまう。」
肩を覆うイヌイの手に力がこもり、桃子の身体はさらにイヌイにめり込む。
銀狼の光が強くなり、弱くなり、揺れている。
大事な女を胸中に、自身の楔でつなぎ止めなお、イヌイは生まれて初めて感じる悔恨に虚脱していた。
子が出来る。そうしたら桃子は…桜桃のように桃子は…!その時サルトルのように俺は笑うのか!?
「そのつもりだったんでしょう、最初から。」
桃子の言葉が大犬の胸を刺した。
そうだ、と言えずイヌイは黙り込む。
「でもまだ出来ないよ。私、ぜんぜん経験足りないもの。」
そうか…ああ、そうだ。サルトルも言っていたっけ。
経験を積んで成熟した桃岩だけが、妖獣の子供を産めるのだと。
「ごめんね。」
半身を起こして桃子はイヌイの顔を見た。
情けなくも潤んだ銀の瞳が美しい女を映す。
「まだ産んであげられない。ごめんね。」
「ばか。なぜ謝る。」
安堵が妖獣の口を開かせた。
「そんなこと、望んじゃいない。子なんて欲しくない。俺は…。」
桃子の身体ごと身を起こして、口づけた。赤い花びらのような唇を吸うたび、中の肉棒が擦れ桃子が
身じろぎするたびに、一瞬離れる柔肌をイヌイは愛おしむように何度も強く抱く。
「俺はおまえがいればいい、桃子。」
だだっ子をあやすように、桃子の小さな手が幾度となく俺の頬をなでる。
俺は泣いていたのだろうか。
「おまえとずっと、こうしていられればいい。」
「…うん、私も。ずっとこうしていたい、イヌイ。」
つながったまま抱き合って、一つに。
これは食事じゃない。…ああ、そうだ。思い出した。
桜桃はこれをメイクラブとか言ったのだ。
「だけど無理みたい。」
397 :
102:2008/01/16(水) 07:50:20 ID:IcUefQm2
桃子の言葉に一瞬凍った妖獣は、それを桃子に問う前に、「ほら」と指さす空を見た。
月の隠れた空は変わらずに闇。だが当初晴れ晴れと澄んでいた夜は今、曇天の濁りで草原を覆っていた。
月を隠したのはその妖魔だった。
ひとたびの羽ばたきに漏れた月光に浮かぶ大きな黒い蝶!
「抱きしめて、イヌイ。」
再び発せられた桃子の望みに、イヌイはやっとそういう意味と知る。
「私があの魔にすがらないように…守って…。」
がたがたと震え始めた桃子を隠すように胸に納めたまま、イヌイはその空を睨みつけた。
「失せろ!おまえに食わせる雫は、もうただの一滴もない!」
ーー消えるのはおまえだ、妖獣。俺は…ーー
「失せろ!!」
ーー俺はこのために生まれた魔。その桃岩に呼ばれてここいる!ーー
声無き声。直接頭に響くその不気味な声にイヌイは不覚にも胸中の桃子を見てしまった。
桃子は変わらずイヌイにしがみついていたが、だがその瞳はうつろに、わずかに口角をあげ微笑んでいた。
まるでその妖魔を待っていたように…!
「ねえ、イヌイ…。」
先ほどまでとは明らかに変わった艶やかな声。
「私たち、誰にでも濡れる淫乱でしょう?」
媚びた姿態。上目でイヌイを見ては、裸のたわわな乳房を男に押し付ける。どこで覚えた桃子!
「なぜだかわかる?…妖獣に、妖魔に、餌を与えるのが苦痛にならないようにだよ。だからそんなふうに
作られてるの。この世界に…。」
かつて俺が繰り返し、桃子に言い聞かせたその言葉。
「だけどやっぱり平気じゃないんだよ。心はどうしても…、誰でもいいなんてそんなこと。イヌイだって
そうでしょう?」
俺は…俺は今はおまえだけだ。そうだ、おまえだけだ桃子!
「だから私たち身体に、心中に魔を飼うの。」
「なんだって?」
「目隠ししてもらうのよ。心が辛くないように。そうしないと経験積めないから…成熟出来ないから…。」
「同族伝授のその時に、その魔を身に取り込んで生きるの。
岩になるそのときまで、助けてもらうの。私が生まれた時与えられたのは、あれがそう。
三匹いたのにイヌイがつぶしてしまったから、あれは仕方なくあんなに大きくなった。
みんなそう。
桃岩属はそうやって…そうやって生きるんだ。
その水蜜も。
桜桃も。
そうやって…。」
398 :
102:2008/01/16(水) 07:51:32 ID:IcUefQm2
次々語られる桃岩属の真実に、腕に抱いた桃子を遠く思う。イヌイはただ愕然と…。今は繋げた
己の肉の楔だけを頼りに桃子を感じて愕然とする。
「イヌイが愛した桜桃にも、痣があったでしょう?」
眼下の真白い双丘に、桜桃の茶色い痣を思い出す。
「桜桃とマサルくんて似てないでしょう。」
桜桃も見たのか、桃子。
「なぜだかわかる?」
なんなんだ、同族伝授というやつは。
「私たち桃岩属がどうして岩なのか、わかる?」
なんなんだ、桃岩属って。
「どうして牝なのかわかる……?」
女って…。
草原は変わらず渦巻く生暖かい風に揺れ、その中で桃子は妖艶に微笑んだ。
それが悲哀に泣き濡れているように見え、イヌイは胸中に強く桃子を抱きしめた。
桃子の両の手がイヌイの頬を撫で、泣いているのは自分と知った。
・・・・・・・・・・・・・ このスレではこのへんで
無事投下〜
支援、ご指導ありがとうございました!
ではまた次スレで。
>>102 今年もよろしく!
すごく良かった……!!何を知って何を考えてるんだろう桃子は。
続きが気になるよ。
次スレでもよろしく、楽しみにしてます。
子供ができると困るならアナルですればいいじゃない(;´Д`)ハァハァ
相変わらずGJです。
桃子とイヌイが幸せになってくれると嬉しいです。
どなたか保管庫作っていただけないですかね。
素晴らしくGJでした
イヌイと共に泣いた…この先どうなるんだか全く想像できない
次スレでの続き待ってます
次スレつうか、童話スレに合流でも良いかと思うが。
っていうか、内容的には
>>405のスレ趣旨のど真ん中だから遠慮する必要も無いわけで。
よそのスレの人からすれば、いきなり続きから投下されたら
イミフメでなにそれと思うだろうから新スレでよくね
102さんに聞いてみればいいんでない
そこはそれ、
>>402の保管庫にまとめて貰えば
リンクを貼ってその続きですって言えるし。
職人一人に頼ってるスレじゃあ先が…
テーマがピンポイント過ぎて他の職人が来るとも思えないし。
今保管庫の管理人さんにお願いしに行った。
童話スレと統合させてもらうかもしれないとも一応書いたから、そうなったら
分類し直して収蔵してくれるようまたお願いに行くよ。
102さんファンとしては、職人さん単独でも
荒れなくていいんじゃないのかな、と思いますが。
102さんの意向を聞いた方がよいよ
でもそれだと102氏がプレッシャーを感じるのでは? >職人さん単独
>>409に賛成
そしたら良作を知ってくれる人も増える。
414 :
102:2008/01/23(水) 16:17:40 ID:BOIUbnpn
うちのパソがついに逝かれてしまい仕事場からカキコです。続きとんだので書き直しですよ!
二度目だなあ、トホホ。
保管庫申請ありがとうございました。
スレ合流はあちらの方が拒否されなければ…なんせ長いので嫌がられるのが怖くてあえて過疎スレで
はじめたものなので…。読んでくれる人がこんなに増えて今で十分満足してますが、他の職人さんが
来にくいのではと思ってます。てゆうか桃太郎からだいぶ離れてしまってますがいいのかなあ。でも
どこに行っていいのかわからない…。
次回投下は月末にパソ買い直しに行ってからになるので二月頭になるのですが、今からお伺い立ててきます。
断られたら次スレこのままタイトルで。受け入れてもらったらそちらに投下することにします。
また職場の人目をしのんで報告に来ますね。いろいろ考えてくれてありがとうございます。
いや、102氏に面倒なことをさせてごめんな。
童話スレの住人さんもどうやらOKっぽいし、次からは童話スレっぽいね。
様子見てエロパロ保管庫の管理人さんに連絡しとくから。
次の話も楽しみに待ってるよ〜102氏のペースでのんびり頑張ってください。
今日何気にクリックして読み通したよ。
どうなるんだろう。どうなっちゃうんだろう。
イヌイと桃子、そして続きを書くスレも。
このスレのうちに言っておこう。
102さんの書く話が本当に楽しみです。
偶然このスレを見つけられて良かったよ。
童話スレでも次スレでも、どこまでもついていきますよ!
この作品だけは最後まで読みたい
102さん、応援してます
>>415 一部水増しID自演で賛成しているが、合流は住人の総意ではないから。
まずは童話スレの過去スレを最初からじっくり読み返して欲しい
合流お断りな住人はいる。
保守がてら見たら勝手に話が進んでて驚いた
荒れる前にやめて欲しい。
以上
>>102氏とやらありがとう
うちは早速荒れ始めたぜ・・・
自分で荒らしてなに開き直ってんだか
ID変えてクダまいてる暇があるならさっさと次スレ立てたらどうだ?
このまま埋めてうちに来られても困るわけだが
困るのは住人だけじゃないと思うがなー
102、そんなに続き書きたきゃ自分でスレ位立てろよ。
他力本願ってのがそもそも気に食わん。
うめ
うめ
427 :
102:
やっと来れた…と見てびっくり。
どうしようか迷いましたが、迷惑かけたあちらももうやっと落ち着いたところのようなので
蒸し返しにいくのもご迷惑かと思い、ここで謝罪します。
私、こういう話が書きたいーーと思うばかりで自分のSSが女体、ショタという認識まったく
してませんでした。せいぜい逆ハーレムものというくらいしか…。
それを不快に思う方がいるのは知ってたのに、配慮がたらず本当に申し訳ありませんでした。
新スレ立てていただいたので、今後はそちらで淡々と投下することにします。
ご迷惑、不愉快な思いをしたすべての方に、ごめんなさい。
こちらの住民の皆さんにも、私のせいで迷惑かけてごめんなさい。
それでも最後まで書きたい話なので、今後もよかったら読んで下さると嬉しいです。
もちこしたくないので新スレにこの話題、謝罪はせずいきなり投下します。
新スレ立てて下さってありがとうございました。1さま乙&感謝です。
いいスレ、住人に恵まれた私は本当に幸せ者ですね。精進したいと思います。
今後ともどうぞよろしくお願いします!