271 :
102:
265の続きです
・・・・・・・・・・・・・
小脇に桃子を抱えたまま、イヌイは不安定な杉の梢の高枝に足を踏ん張り、桃子が泣き止むのを
辛抱強く待っていた。
大きな一本杉は周りの木々より頭一つ突き出ており、眺めはいいが、上空の風を受け時折揺れた。
その度に先ほどまでの雨の雫を湛えた枝が、無数の水滴を散らし、それがイヌイの銀の光を受け
キラキラとしずる。
遠く輝く天の星と、近くに煌めく雨の雫を一度に目にして、桃子はうっとりと美しさに惚けていた。
「風が出てきた。そろそろ戻ろう。」
イヌイは、そう言って片手で桃子の腰を抱きジャンプした。
杉の枝葉を飛び出し一瞬夜の空に浮く。
抱き寄せられたイヌイの肩越しに、桃子はさっきタキジにつれられ飛んだ夜空を見上げた。
雨雲はすっかり遠ざかり、空は数千の星の光に煌めいている。
あんなに高い位置で見ても、地面にほどないここから見ても、星の大きさは変わりないように見えて
不思議だった。
同じだけど。
今見てる星の方がずっと綺麗だ。
イヌイの胸に抱かれて見る今の方が…。
桃子はイヌイの毛深い胸に頬を擦り寄せ、抱きつく腕に力を込めた。
イヌイはそれに気づかぬ振りで、雨のぬかるみを避け、高枝つたいでマサルのいる岩窟に戻った。
その入り口まで来て桃子が温泉に入りたいと言いだした。
「日に何度も入るとくたびれる。明日にしろ。」
「体を洗いたいの。ベタベタするから。」
そう言われてイヌイは止める事は出来なかった。
桃子が泣き止むのを待つ間に、いや、天から降って来た桃子を受け止めてすぐに、当然気づいていた。
桃子の内股に伝って乾いた愛液の跡。未だ濡れたままの粘る泉の匂い。それと…。
タキジの匂い。
イヌイは訊く事が出来ず、桃子も言わないでいた。
その行為の跡を流したいのだろう。
「俺も行こう。」
「いいよ。マサルくんと先に寝てて。」
「俺が行かないと真っ暗だぜ。」
確かに、と桃子は夜の闇に光るイヌイの腕を取った。
イヌイは再び桃子を抱き上げ、数度の跳躍で温泉の洞に着いた。
・・・・・・・・・・・
着いてすぐ、地面にヒヒの血の染みが無い事に気づいた桃子の、首を傾げる様子にイヌイが啜ったと
一言言った。
最後まで食べるなんて行儀がいいね、と桃子は言い、だろう?とイヌイがにやと笑った。
そのほんの少し口端をあげるだけの一瞬の笑みにホっとして、桃子は涙を浮かべた。
それにすぐさま気づいてイヌイは顔をしかめた。
「ごめん…。」
桃子が慌てて顔を背けて俯く。
「何故謝る。」
「鬱陶しいんでしょ?」
「まあな。」
「脱ぐから向こう向いてて。」
272 :
102:2007/11/13(火) 01:38:16 ID:MY6JKhpe
またスンと鼻を鳴らす桃子の、震える肩を追い越してイヌイは湯に向かった。
「イヌイ?…わっ。」
目の前でさっさと着物を脱ぎ捨てたイヌイは、ドボンと湯に飛び込んで桃子に笑った。
「俺が入ると綺麗だろう?」
「……わあ……っ。」
イヌイの全身から照る青白い光で輝く銀の湯に、タキジ動揺やはり桃子も感嘆の声をあげる。
「一緒に入ろう桃子。湯煙で見えないし、どうせ…。」
「どうせ?」
聞き返しながら岩陰でもそもそと帯を解く。
着物をたたんでそっと岩から覗くと、銀の湯の光を受け明るく光る湯煙でイヌイが見えない。
すこしためらいながらも桃子は足先から湯に入り、炭酸の粒がきらきら光りながら自分の体に
まとわりついていく様子に、うっとりと見入る。
「…綺麗。」
「だろう?」
声の近さに驚いて身を硬くする。
だが桃子はなぜか顔が上げられずうつむいたまま、湯の中の泡が絡み付く自分の裸の膝を見つめ続けた。
泡に反射する銀の光がだんだん強くなっていく。
…綺麗。イヌイはイヌじゃない。狼の妖獣、絶滅危惧種の最後の一匹だとタキジさんは言っていた。
ものすごく強くて、こんなにも綺麗で…頼もしくて…また助けに来てくれた…優しい…眩しい、イヌイ。
ドクドクと鼓動が速くなるのを桃子は実感しつつも、息をも殺して、ただ泡を見つめる。
視界にイヌイの輝く手のひらが現れる。湯の屈折でそれはいつもより大きく見え、下から桃子の顔を照らした。
もう既に自覚するほど赤くなった顔を、湯から飛び出した手が上を向かす。目の前のイヌイと目が合い、
桃子はさらに赤くなった。
その様につられて、よけいな意識をしてしまいそうな気がしてイヌイは、視線をそらすため俯いた。
そして息を飲む。
イヌイの放つ光を受けて、桃子の白い裸もまた柔らかな光に輝いていた。
小さな泡の光が美しい曲線をなぞりながら、だんだんと増えていく。
「お前も綺麗だ、桃子…。」
ごく自然に口をついて言った、己の台詞にイヌイ自身が驚き、慌てて腕を引っ込めた。
その様がおにぎりを食べさせたときの引っ込め方と同じで、桃子は胸が熱くなった。
湯につかる二人の間を、湯煙が重たげに流れていく。
その間から不機嫌そうに眉根を寄せるイヌイを見て、桃子はまたしても涙ぐむ。
イヌイは忌々し気に背を向けて、顔もよく洗え、塩で目が腫れるからと言った。
声に従い桃子は何度も顔を流した。
「そういえば、どうせ、なんだったの?」
「ああ?」
「さっき言ってた…、湯煙で見えないし、それにどうせ…?」
「どうせ、お前の裸なんかもう見飽きた。」
バシャン、と水音をたてたあと、桃子は沈黙した。
イヌイの言葉に一喜一憂してしまう。
自分の感情の波のあまりに簡単なアップダウンに嫌気がさす。
見飽きたって…。わかってる。いつもの軽口だ。
なのにもうこの体たらく。桃子の瞳の涙は今にもこぼれそうだ。
273 :
102:2007/11/13(火) 01:39:53 ID:MY6JKhpe
「桃子?」
ザバ、とイヌイがこちらを向く音がした。
だめ。涙よ止まれ。
雫の光を散らしながらザバザバと何度も顔を洗うが、その端から胸に広がる何かに押されて、
桃子の目頭は震えて水を溢れさせた。
どうして…、泣かない、泣かないようにしてよ、私!
でないとイヌイに食べてもらえない…っ。
泣いてる桃岩は不味いって…。
せっかく一瞬でも綺麗だって思って、言ってくれたのに…。
…そうだ!
思いついてトプンと桃子はそのまま湯に潜った。
水の中でも息が出来る、岩の自分にこればかりは感謝する。
落ち着くまでこのまま。湯の中だったら、泣いてたってわからない。
いい考えを思いついたことに安堵して、桃子は煌めく湯の中で思い切り涙腺を緩めた。
そうだ、イヌイはどこだろう、と振り向く。
その目の前に輝く銀毛を湯になびかせた尾を見つけ、あっ、と思ったと同時に、振り返ったイヌイの
股間が目に飛び込み、硬いなにかに顔をぶつけた。
「ひっやああああーーっ!!」
頓狂な悲鳴をあげつつザバアッと湯から飛び出した目前に、当然イヌイが立っていた。
「…あ……。」
「おまえ…勝手に潜って勝手にぶつかっといて、それはないだろう。」
「ごめんなさいっ。」
逃げようとする桃子の頭をがっしり掴んで、イヌイは引き寄せ凝視した。
大きな棗型の目にみるみる水滴が溜まる。
「泣くほど嫌か、これが。」
イヌイが苦笑しつつも、意地悪くそれで桃子の腹を突いた。硬く、熱い。
「違うの…ごめんなさい…。」
「じゃあ、何故泣く。」
何故。
そんなこと、もはや桃子にはわからなかった。
泣いているのがバレたことに。
イヌイのあれに驚いて。
違う。
泣き止まないと嫌われるのに、泣き止めないから。
私の裸なんか見飽きたって言われたから。
違う、違う!
イヌイの光が綺麗だから。
イヌイと見た星が綺麗だったから。
イヌイが私に笑ってくれたから。
私に綺麗だって言ってくれたから!
ここにいてくれるから…!
ひっく、とのどが鳴り、桃子の顔が歪む。涙に濡れる。
うんざりした様子のイヌイにまた涙が溢れる。
「ごめんなさい…。」
「何故謝る。」
「イヌイが好きだから。」
・・・・・・・・・・・
274 :
102:2007/11/13(火) 01:42:27 ID:MY6JKhpe
桃子の頭を掴んだイヌイの手に、わずかに力が入り、指は髪を滑って桃子の肩に落ちた。
「イヌイが好きだから…、泣き止めない…。」
嗚咽を漏らし、震える肩に置かれたイヌイの手に、桃子は頬ずりした。
「俺が好きだと何故泣き止めない。」
「イヌイが私を好きじゃないからだよ。」
瞳から流れ出たばかりの涙がイヌイの指を濡らす。
「そんなこと俺がいつ言った?」
「じゃあ好き?」
「………。」
言いよどむイヌイには、別に涙はでてこない。
そんな事はわかっている桃子だった。
「いいの。嫌わないでくれていたら、それで。」
「嫌いでは決して無い。」
「泣いても嫌わない?」
「嫌わないからあんまり泣くな。」
「…うん、頑張る。出来るだけ我慢する。」
ホっとして桃子は笑みをこぼした。
思いがけず自然に笑えた自分が嬉しくて、桃子はイヌイを見上げ、誇らしげにさらに笑った。
イヌイが顔をしかめる。
あ、しまった、恩着せがましかった?と桃子が自分の失態を悔やんだ時には、もうイヌイに
抱きしめられていた。
ドクン、と胸が鳴る。
だけどその鼓動は桃子のものじゃなかった。
「桃子。」
「な…なに?」
「欲しいと言え。」
ドクン。
イヌイの胸に押し当てられた桃子の耳が、大きく響く脈動に震えた。
イヌイ、イヌイ私も…。
桃子は自分のそれをイヌイに重ねたくて、双丘を強く押し付けながら、イヌイの首に腕を回してずり上がる。
見上げた鼻先にイヌイの冷たい鼻が掠った。
目が合った。
銀色に冷たく照るイヌイの瞳に、欲情に上気する桃子が映る。
「言え。」
「…好き。」
「欲しい、と言え!」
「イヌイが好き…!ひあ、あ……っ!」
大きな口に噛み付かれて、桃子の唇が戦慄く。
あっという間に侵入して口腔を充たした太い舌が、桃子の小さなそれを探してぐるりと蠢き、見つけた舌と
唾液を掻き取って離れた。
はじめてイヌイにされた、あの不愉快に驚き、不思議としびれた口づけを、なぜだか今懐かしく思い出す。
今は違うと確かめたくて、ずれて離れた唇を追って、慌てて桃子が重ね直す。
溢れ出た唾液をイヌイは啜り、桃子もまた、イヌイのそれを啜ろうと分厚い舌に吸い付いた。
互いの絡んだ粘液が、糸を引いて唇を結んだ。
275 :
102:2007/11/13(火) 01:44:16 ID:MY6JKhpe
イヌイは桃子の細い体を折れんばかりに強く抱きしめた。
不思議な強さを持ってしなる肢体に、イヌイの体がざわめき欲情を具現していく。
抑えられない。
発情期の自分の体の荒れ狂うばかりの衝動は、既に一つに集まり、いまかとその身を反らせている。
桃子の秘壷は湯の中にあり、そこに湛えた妖獣のごちそうの匂いは温泉にかき消されわからない。
なのにどうだ。桃岩の、粘液を何も出さない場所から、その震える白いのどから、小さな三角の
鎖骨の窪みから、豊かな真白い乳房の丸みから、匂い立つ抗えない芳香!
くらりと一瞬の目眩に押されてイヌイは桃子を岩肌に、自重をかけて押し付ける。
両腕を裂くように開き、放り出され突き出すロケットの乳房を、丸ごと食らうかのようにイヌイは
むしゃぶりついた。上あごに当たるすでに尖ってしこる乳首を、乳輪ごと口中に納めて舌でくちゃくちゃと繰る。
「ああっ、ひ、あ、あああんっ!」
無意識に待ち望んでいた性感を、いきなり激しい激情の様で与えられて桃子は嬌声をあげた。
あ…いい…!気持ち、いい!!…イヌイ、もっと…。
広げられた胸を大きな口でぐちゃぐちゃに乱暴に嬲られ、桃子は顔を左右に振って与えられる快感に酔う。
その度にぶるんぶるんと暴れる乳房を、イヌイは両手で押さえるよう揉みしだいた。解放された桃子の腕が
イヌイの頭をかき抱いて胸に押し付ける。イヌイは己の唾液で指間から目前に滑り飛び出した乳首に、
交互に吸いつき夢中で唇で噛みしだいた。
柔らかな弾力を心のままに味わう。
切なげに喘ぐ桃子の声に、さらに股間の竿は凶暴さを増していく。
「もっと…あ…あ、食べて…!イヌイ…っ!!」
望んだ要求に応え、白桃の肌にイヌイの歯が甘く食らいついた。
食うとも。食うとも、桃子、お前は美味い!今まで俺が食った誰よりも…!
誰より、と思った言葉にタキジの嘲る声が蘇った。
ーー桜桃より?
桃子の胸の輝く白い丘を前に、イヌイの脳裏に一瞬茶色い痣が浮かんだ。
・・・・・・・・・・
276 :
102:2007/11/13(火) 01:49:24 ID:MY6JKhpe
「…イヌイ?」
愛撫の手が止まり、胸に伏したまま動かない。イヌイの変化に桃子は戸惑い、顔をのぞきこむ。
イヌイは桃子の乳を貪っていた興奮の名残に息を乱しながら、だが不遜な表情を見せて言った。
その声は低いが冴え冴えと尖鋭で、思いがけずイヌイの身の銀の光にふさわしかった。
「誰だって…、餌をくれる、与えてくれる者に懐く。あの雉のヒナのように。」
意味が分からず桃子は首をかしげてイヌイを見る。
「それだけだ。俺だって…。」
言葉を途中に、イヌイは桃子の突き出た赤い乳首を、ぱくんとくわえて口中でねぶる。
ひあん、と桃子が可愛らしい声をあげた。
「目の前に餌があるから食うだけだ。粟であろうと虫であろうと。」
口端だけの笑みを浮かべながら、桃子の腰を持ち湯から上げ、岩に腰掛けさせた。
そのせいだけではない冷たい空気を全身に感じ取り、桃子は一瞬震えた。
不安になりイヌイの離れた手をとり、もう一度自分の胸に置く。
そのイヌイの手は桃子の乳首をおざなりに繰ると、いきなり桃子の膝を持ち上げ、大きく足を開かせた。
驚いて桃子は瞬時に足を閉じようと股に力を入れたが、すぐさま広い肩が割って入りそれを拒んだ。
イヌイの頭がなめらかな桃子の腹を舐めつつ足間に下っていく。
イヌイの眼下に股を左右に開かれ、あらわになった桃子の秘部。
拒まれつつもなおも閉じようとする筋肉の戦慄きを無視して、イヌイはさらに秘裂のひだをめくって
内部の赤い肉をさらした。その上方で濡れて絡む柔らかな恥毛をかき分けて、身をひそめて守る小さな尖りを
見つけ出す。その指がためらいも無く包皮をずらし、半透明の骨のような粒を露見させると、ひくん、と桃子の
秘穴が敏感に動いてとろりと蜜を絞り出した。
それらの一切の行為と反応を、それを無言で凝視するイヌイの顔から放つの光が、否応無く細部まで照らす。
羞恥に耐えかね桃子が小さく、いや、と漏らしたが、聞かない振りのイヌイの舌がいきなり剥き出しの真珠を
レロレロと舐め擦った。
「ゃあ、んんーーーっ……っ!!」
桃子が仰け反り、強過ぎる刺激に悶える。
イヌイは舌を尖らせその一点を叩き付けるように、くるくるかき混ぜるように、唇にはさみ
吸い上げるように集中して責めた。引きはがそうと掴んだイヌイの頭が、唇を陰核に押し付けたまま左右に振れた。
いきなりゾゾゾと這い上がった快感に、その掴んだ頭を仕方なく押さえ込んで、桃子は腰をガクガクと痙攣させ達した。
だがイヌイはその唇に真珠をくわえたまま離さない。
桃子の痙攣が収まるのを待たずに、たっぷりと唾液を絡めた舌で再び粒を転がす。
「…あ、…んっや、や!イヌイっ、嫌っ!!」
「何が嫌だ。食えと、…もっとと言ったのはお前だろう、桃子。」
「だけど…んはっ、はっ、ああ、ああああ、やあああああ、あーーーー……。」
眉間に深くしわを刻んで、桃子は全身を強張らせていく。
達したばかりで達したいのに達せない。キリキリと締め付けるような絶頂の前兆だけが、桃子の体を蝕み
支配していく。嫌だとイヌイに何度叫んでも、まるで聞こえないように、淡々とイヌイの舌戯は続いた。
声は枯れ、ひい、と漏れる空気音を自分のヒクつくのどから桃子はきいた。
息も絶え絶えにやっと掴んだイヌイの手の甲に爪を立てる。
それを気にも止めないイヌイの口舌による蹂躙は続く。
私の反応を見ながら、からかい笑いながらされた今までの補食とは違う。
興奮に猛ったイヌイを乳房にぶつけられた時とも違う。
イヌイが、イヌイが私を見ていない!
滂沱の涙をこぼす。
これではまるで、これではまるでヒヒに嬲られていたときのようだ!
「嫌だ、イヌイ、嫌っ、嫌あーーーっ、ああああ!」
277 :
102:2007/11/13(火) 01:51:21 ID:MY6JKhpe
なにかに追い立てられるような不安定な上昇感に、腹筋を浮きだたせ身をよじった。
桃子の目頭が白くスパークし、瞼は痙攣する。し続ける。
いつもの突き抜けるようなゴールはそこになく、ただただ快感の波に桃子は翻弄されるがままだ。
達してないわけではない。肉芽だけで得る絶頂の快感が延々続いて終わらないため、桃子の女陰に
集まった気が散らず、果てない。嵐の森を彷徨うように、震える手を足を暗闇に伸ばし出口を探す幻影。
だがそこから抜け出せる気配は全くと言っていいほどなかった。ただ全身を風に震わし雨にびしょ濡れる、
その感覚に徐々に桃子は酔っていく。
気がつけば桃子の秘壷からは止めどない愛液が垂れ続け、太腿を伝っては乾き、座らされている岩にさえ
いくつもの筋をつけていた。
それは空から落ちて来たときと同じ様で、足の間でベタベタと桃子に不快感を与える。
イヌイはそれをまったく舐めとらず、ただ桃子を嬲り続けて秘壷を満たした。
「どうして…っ。」
桃子は顔を涙で濡らし尽くしてイヌイに問う。
今はもうヒクヒクと全身を戦慄かせて岩の上で蹂躙されるにまかす桃子に、冷たいイヌイの声が降った。
「同じように、さっきタキジに空で濡らされただろう。」
言葉に詰るような響きがあった。
硬い岩肌に泣きつかれた顔を伏せて、桃子はうつろにそれを聞いた。
「…匂いが残っている。」
妖鳥は羽から媚薬のような粉を出し簡単にこれをする。
抵抗出来ないくらい、悦かっただろう、桃子、何度イッたか?と意地悪く狼は笑った。
鬼も妖獣も結局は同じだ、と。
「桃岩はこうやって食うもんだ。」
そしてやっと、イヌイの口が桃子の泉に寄せられる。
「あのヒヒ達と…同じだろう?」
ゾロリと一気に侵入し、湛えた粘液を根こそぎさらっていく生暖かい舌に、桃子はのどを反らせて
声無き悲鳴を上げた。がくんと腰骨が抜けるような嫌悪に近い快感に鳥肌を立てる。
ぐちゃぐちゃと股間を噛みしだきながら、自分の唾液と混ざった桃子を啜り上げる、その行為はまさに
ただの食事だった。桃子はただの器で、飲んでも減らない甘露な水を湛えた杯だった。
278 :
102:2007/11/13(火) 01:55:12 ID:MY6JKhpe
「俺は、あのヒヒと同じだ。餌であるお前を食うために料理する。」
「桃子、お前はもうわかっているはずだ。」
「お前は、ただの、俺の餌だ。」
違う、と言いたかった声が、乾いたのどに絡んで出てこない。
「そしてお前は鳥のヒナと同じ。」
「捨てられて最初に逢った俺に…。桃岩に餌をやる俺に懐いただけだ。」
淡々と機械のように語るイヌイの声に感情はなく、冷酷な銀の瞳は蔭に曇っている。
イヌイの顔が持ち上げた口角に歪み、自嘲に満ちる。
ああ、この顔は…と女陰を嬲られながら桃子は思う。
鬼が島に行ってくれ、と渋々言ったじいちゃんの…。
せめてもと染み古反を手渡してくれた、ばあちゃんと同じ顔。
桃子の顔を濡らし続けていた涙が止まった。
「勘違いだ桃子。…好きとか、だから、おかしいぜ。」
「餌ならどうして食べないの?」
上ずった細い声がイヌイの演説を止めた。
「イヌイの言う事は時々難しくてわからない。そんなことより、どうして食べてくれないの?」
「食べてるだろう。」
「口じゃない。こっちで。」
そう言って、桃子は片足をイヌイの腹に伸ばして、土踏まずに当たった亀頭をそのままかかとで
軽くこずいた。一瞬腰を引いたイヌイが驚いて桃子の顔を見る。
「発情期はそうなんでしょう?そのためにこんなになるんでしょう?もう…こんなにしてるくせに。」
思いがけない桃子の言葉にイヌイは眉をひそめた。イヌイの肉茎は湯の中に身を隠しつつも反り返り
腹を打つ猛りを見せていた。桃子の泉から撒き散らされる愛液の匂いを鼻先にかぎ続けていれば、しごく当然の
その反応にイヌイは舌打ちした。桃子がたどたどしく足の甲でそれをなで上げると、与えられた直接の刺激に
ビクンとさらにそそり立つ。
「…食べて、イヌイ。」
いつの間にか泣くのを止めていた桃子の声は、快楽の色をにじませてイヌイを誘う。
さっきまでのイヌイの責めに乱れた息に双方の大きな乳房を上下させ、その谷間から濡れた
赤い唇が淫猥に映った。イヌイは我知らずゴクリとのどを鳴らした。
「ここ…。」
震える桃子の白魚の指先も、延々与えられ続けている快感に赤く染まっている。その指がおずおずと
桃子自身の秘裂に伸び、まだ幼いようにも見えるぷっくりしたひだに添えられた。桃子は一瞬イヌイを見て、
その視線が指先の動きの行方に注がれているのを確認すると、ゆっくりとかき分けるように指を左右に開いた。
279 :
102:2007/11/13(火) 01:58:29 ID:MY6JKhpe
「ここの、舌が届かない奥の…ああっ。」
その言葉を断ち切るようにザバアッと水音をさせ、岩に足を掛けたイヌイは、そのまま股間の焼けた杭を
桃子の腹に擦り付けるように、のしかかりながら岩に上がった。
ぼたぼたと湯を桃子にたらしつつ岩に組敷く。なだらかな斜面に突き出された桃子の腰を持ち上げ、
屹立した己の昂りを、その根元を桃子の秘裂にあてがい、先端を胸の谷間に納めた。
みるみる鈴口から透明な粘る液を出したそれは、粘つく糸を引かせて乳房を揺らした。
「この、子供のくせにそんなこと、どこで覚えた!」
苛立を含んだイヌイの声が、子供をしかる親のように桃子を叱責する。剣幕に体を揺さぶると、
肉竿の根元を柔らかく包む桃子のひだがひくつき、ねっとりと絡み付く。
じわりと上がって来た濃厚なあの匂いに、イヌイの激昂は強まり、苛立ははっきりと怒りに変わる。
「この、…淫乱が!」
「そんな風に出来ているって、みんな言う!」
桃子はそれでも、恐れた様子も、惨めに泣くでも無くきっぱりとイヌイを睨んだ。
「イヌイも…。」
そしてイヌイの胸に手の平を拒むようにでなく添わせると、下からゆっくりなで上げながら、
イヌイを見上げて挑発するように微かに笑う。
「タキジさんも。」
「もう、突っ込まれたか。桃子。」
ぞっとするようなイヌイの声が、桃子の眉間を刺し、反射的に身を竦めて桃子はビクン、と体を揺らす。
「もう、おぼこじゃなくなったか、淫乱!」
「その方がいいんでしょう、気楽に食べられるんでしょう、イヌイ!」
刺々しい気に全身の毛を尖らせる妖獣のその首に、腕を回しすがるように桃子は抱きつき
目前までずり上がる。
しばし無言で睨み合った。
哀れな自分を映すイヌイの目に、耐えきれず桃子がバカと言った。自分に言ったのかもしれない。
「イヌイはもう、私に気持ちいい、を教えてくれた。気持ちよくしてくれたら、案外泣かないから、私。」
いつもされるように、噛み付くように唇を重ねた。
一文字に結ばれた唇の隙間を求めて柔らかく吸い上げながら、こみ上げてくる涙を桃子は懸命にこらえた。
「空から落ちて来たとき泣いてたじゃねえか。」
つぶやくイヌイの開いた口端から、待ってたとばかりに桃子はその小さな舌を侵入させてチロチロと
口内に這わせた。いつもイヌイがするように…。
「びっくりしたからだよ。まさかあれ、入れるなんて知らなかった。」
桃子は自分の腹に当たり、熱を貯めて待つその肉茎を、擦るように上下に体を揺らして、なおも
イヌイの唇を貪った。
イヌイの口から熱い吐息が漏れ、硬い昂りがドクンと脈打つのを感じた。
ああ、熱い。凄い。イヌイのこれ、大きい。どうしよう、入らなかったら。
「このあいだ、知ってたら…。教えてくれたらよかったのに。」
クチュクチュと舌をねぶりながら、桃子は不安と、それでも自分の内部に席巻する肉欲の昂りに、
股間がうずき痒みに焦れた。
「イヌイが最初がよかったのに…。」
280 :
102:2007/11/13(火) 02:01:12 ID:MY6JKhpe
その答えを聞いて、イヌイは戯れるに任せていた口舌にいきなり牙を突き立てた。
「…い、……たっ!…あっ!」
ぷちっ、と小さく裂けた舌の皮に血が滲む。ひるんで引っ込んだ桃子の舌に、追いかけたイヌイの舌が
容赦なく絡み、嬲り、その血を啜り上げる。その味に興奮を抑えずイヌイは獣のうめきを漏らして、互いの腹に
擦れる男根の先からだらだらと粘りを垂らし、熱い欲望を桃子の胸間に抽送させた。その存在感に圧倒されて
桃子はさらに自身を欲情に濡らした。
壊れてもいい、入れたい。
イヌイがしたかったように…、イヌイが満足するように…、イヌイに…。
「食べて…。」
口づけにふやけた桃子の唇が、欲望を隠さず訴えた。
「食べて…私を、裂いて、中から、めちゃくちゃに…、あのヒヒみたいに…!」
脚間の泉からだけでなく、全身の毛穴からじんわりにじむ汗のように、欲望の気が立ち上がるのを、
他でもない桃子自身が感じ取り、その香りに酔う。
「入れて、イヌイ。」
懇願ーーだが同様にその匂いに酔った獣の目が目前にある。拒まれないという確信に桃子は愉悦する。
「イヌイが、欲しい…ーーーー。」
・・・・・・・・・・
男根の根をあてがった桃子の女陰から溢れて滴った愛液が、イヌイの睾丸を濡らしてべしゃべしゃと
音を立て桃子の臀部にぶつかっていた。中の玉はパンと膨らみ、イヌイはそのうずきにもはや抑える事を忘れて、
桃子の腰を持ち上げる。イヌイの両腕に脚を引っかけた桃子の膝が左右に開き、イヌイの眼下に赤く蠢く
膣腔をあらわにする。ぱっくりと開ききったそれは、白い愛液をだまにからめて飾り、そこからわんわんと
淫香を立ち上げ、ただイヌイを待っていた。
「…淫乱め。」
どうしようもない劣情を漏らせてイヌイはそう、つぶやくしか無い。
はじめから食うと決めていた。食うときが来た。だが。
ここに来て、選択の余地を無くした今はじめて、イヌイは悟る。
俺は。望んでいたが俺はーーー。
自業自得だと自嘲する。
いっそ姦られてくればいいと、一度は投げ捨てたくせに。
嬲られ泣き濡れるあいつの顔がちらついて、じっとしてられなくて、
ついにはタキジの手中にはまっても、杉の梢に向かったのは俺だ。
何があったかなど訊かずとも知れていた。
淫行の跡。残されたタキジの男性器の匂い。
鼻が利く自分を呪う。そこに明らかに匂うのは桃子の快感の印。
誰にでも体を開くと知っていて、餌となる種族と知っていて。それを何度もわからせて。
そうしたのは俺自身のくせに。
それを嫌がる桃子に、俺は誰の面影を見ていた?
桃子の口からタキジの名が出て抑えを失った。
憤りに睨んだあいつの瞳に映った俺の顔は、突き刺すような目をしていて、
俺はまるでおまえだったぜ、サルトル!
憧れていたものの正体を知った。
桃子、お前をただの餌だと何度も繰り返したのは。
本当は、そ、れ、を知るのが恐ろしかったのだーーー。
281 :
102:2007/11/13(火) 02:03:37 ID:MY6JKhpe
「入れるぜ。」
イヌイは腰を引き、ずるりと己の肉柱を桃子の腹から引きはがすと、先端から溢れた淫汁が
糸を引きとろりとつららのように垂れる。ぱっくり開いた入り口に迷う事無く鬼頭をあてがうと、
その熱さとぬとぬとと絡み付く肉の蠢きに、再びどくりと先走りの液が溢れた。
いやらしい。この女。とイヌイは思った。
桃岩は何度も食って来た。特別に強い快感を与えてくれる桃岩にも何人も会った。
だがここまで俺を、俺の中の獣を、発情期の猛りを、耳鳴りするほどうわんうわんに感じて、
我を失いかけた事が合っただろうか。
もう奪われたとしてもまだ経験の浅い桃子は、鳥のそれの数倍ある狼の肉棒に悲鳴をあげるだろう。
それが待ち遠しい。乱暴にぐちゃぐちゃに噛み砕きたい欲望。
俺は抑えられないかもしれない。
俺は桃子をーーー。
ぐちゅ、と傘までを埋める。
ひう、と桃子の吐息が漏れて、柔らかな肉体が緊張に強張った。
入り口がきゅうと締まるが、かまわず中に突き入れる。
ずぶ、ぶちゅ、と中に溜まった愛液が溢れ、隙間からしぶいてイヌイの腹を濡らした。
「…う、ひ、いっ、ーーっ。」
桃子の腹が異物の受け入れに痙攣して、ぴくぴくと側筋を震わした。
眉をハの字に寄せて眉間に深々としわを刻む。唇を噛み締めて声を出さぬよう、自分の方に顔を埋めて、
挿入の痛みを紛らわせようと、両手はかりかりと岩を掻いた。
自身を3分の1ほど納めたところで、中のカーブに突き当たり、そこでイヌイは桃子を伺う。
…痛いか、まあまだ仕方がないが。色気がねえな。
そんな桃子をなぜだか微笑ましく、可愛く感じて口元をほころばせた。
だがふいにこの桃子をタキジも見たのかとひらめいて、急速に残忍な気持ちになる。
「泣くなよ、桃子。」
さらに大きく脚を開かせ、イヌイは腰を突き立て残る棒を一気に打ち込んだ。
ギチギチと押し開くような感覚に、イヌイ自身も痛みを覚えて呻く。
「ひっ、ーーーーー…、…!……っ!」
強引に奥まで押し込み、最奥に頭をぶつけてイヌイは息を吐いた。
さすがに、きつ過ぎる。中で締め付けるというより、未だに開かぬ裂け目を裂かれて懸命に
閉じようとする肉は、万力のようにイヌイを圧する。
「…力抜け、桃子。」
だが、桃子自身、中と同様に身を固めてひくひくと痙攣にすべてを強張らせている。
すくみ上がった肩を、力んだ腹筋を、とにかくほぐさないと動くのもままならない。
「桃子。」
「…ひ、くっ。」
長い髪を乱してそれに顔を埋めていた、紅潮した頬につと、と涙が滴った。
噛みしめて赤くなりすぎた唇がわなわなと震え、しかし声を出すまいと奥歯を噛んでいるのか、
頬から顎に駆けて不自然に固まっている。
「桃子…、こっち向け。」
イヌイは片方の腕を桃子の膝から外すと、乱れた髪をかき分け、強張る頬を何度も撫でた。
大きな手の平で包むように上をむかせて、長い舌で桃子の戦慄く唇を舐めた。
282 :
102:2007/11/13(火) 02:08:05 ID:MY6JKhpe
「ふ、う、う、…ふう、はあ。」
「泣くなって言ったはずだぜ、こら。」
涙を吸い取り、ついでに優しく眉間のしわに口づけを落とす。
はあはあと、まだ息を乱しながらも、桃子はゆっくりと硬く閉じていた目を開けた。
そこに蒼白に鋭い光を燦爛させながらも、微笑むいつものイヌイがいて、息を上げながらも桃子は笑った。
「なんだ。余裕あるじゃないか。」
イヌイが桃子の卵の輪郭を伝い耳に手を置き、手の甲で首を撫でる。
体の中心に打ち込まれたくさびに、背骨を反らせて痛みに耐えつつも、なだめるような、いたわるような、
その手の優しさに桃子はうっとりと目を細めた。
「イヌイはバカだ。」
「なんだと。」
「あの鱒を捕らえて、笹を突き刺したとき、同じように力を抜けと撫でてあげたの?」
ピタ、とイヌイの手が止まり、不機嫌そうに顔をしかめて桃子を睨む。
「腹を割いて塩をして、粉をつけて焼いてる間、お前は餌だから、俺を好きになるなよ、なんて言ってたの?
バカみたい。」
ゆっくりと、半身を起こしてイヌイは桃子の視線から逃れる。
奥まで収まったままの肉棒が擦れて桃子はうめき声を上げた。かまわずイヌイが再度桃子の脚を持ち上げ
股を開くように岩に手を着いた。
痛みにその手に手を絡めて掴む桃子の指は、岩を掻きすぎて擦り切れ血が滲んでいた。
その匂いにイヌイの獣が猛る。
「バカみたい。餌に、お前も綺麗だなんて言って…。」
「うるさい。」
「料理するときも、食べてるときも、イヌイは餌にこんなにも優しくするんだ。」
「うるさい、桃子。」
苛立に、納めていた肉棒を少し引いて突き上げた。激痛に桃子は顔を歪めて身をよじる。
「わ…私が餌なら…黙って食べたらいいじゃない…!」
「そう、している!」
ズンズンと何度か奥を突かれて、痛みに引こうとする腰をイヌイが押さえてさらに揺する。
「バカだよ、嫌わないでくれたらいいって言ってるのに!…いっ、あっ!」
「ほら、食ってやるから早く濡らせ。桃岩なんだろ、餌!」
「あっ、やっ、痛いっ!イヌイのバカ!…ひんっ!」
「優しいんだろ俺は?タキジとどっちがイイ?ほら!ほら!絞めてばっかいねえで、餌絞り出せよ、ほら!」
「…んっ、はっ、あっ、あっ、や、や、…ーーーああああああっ!!」
ついに我慢出来ずに、桃子が悲鳴を上げて涙を散らした。
「泣くなって言っただろ、鬱陶しい!」
「泣いてないーーー!!」
ひっ、ひっとしゃくり上げながら、イヌイの乱暴な攻めに押されてずり上がった桃子の手に、
岩陰に脱いでたたんだ着物が触り、桃子はそれを引き寄せ顔を覆った。
「泣いてない!痛くない!気持ちいい!いい、よ、イヌイ!ちゃんと、私…!」
ひくひくと、肩を震わせて、握りしめた着物に指先からの血が染みをつけた。
すび、とならした鼻をかみ、ごしごしと乱暴に涙を拭う。覗いた赤い唇も、我慢に噛み切って血がにじんで
いっそう赤い。そこから嗚咽を漏らしながら、それをぶるぶると震わせながら、何が泣いていないだ、子供!
「ちゃんと私…、桃岩だから…、誰にでも…ひっ、ぬっ、濡れるから…っ。」
283 :
102:2007/11/13(火) 02:11:26 ID:MY6JKhpe
気がつけば、強く掴みすぎた桃子の細い腰に、イヌイの指跡が赤くくっきり着いていた。
イヌイが突くたびに腰を引き、ずり上がっていった桃子の肩が、背が、肘が岩に擦れて赤い。
激情に、荒くしていた息を押さえ込んで、イヌイは桃子の腰を撫でた。
「ふ…ああ、ん。」
急な優しい刺激に、桃子は小さな、だが明らかな嬌声を漏らす。
今までキリキリと締め付けていた桃子の中が緩んだ気がして腰を引くと、溢れた愛液と共にずるりと
肉棒が抜き出された。桃子は痛みを与えていた物が消えた安堵より、突然いなくなったイヌイの存在に、
ただ心細くなりまた涙に濡れた。
「…おい。」
抜いた自分の肉竿に絡む桃子の愛液を、まじまじと見つめていたイヌイは、泣き出した桃子の横に
寄り添うように横たわった。
「この意地っ張りの嘘つきが…。」
白い愛液にマーブル状に鮮血の赤色が、痛々しくイヌイの欲望に絡んでいた。
・・・・・・・・・・・
「タキジはまだおまえに…。」
「ごめ…なさ…。」
桃子の震える声が押さえた着物にくぐもって聞き取れない。
細い肩を抱き込んで腕枕をして懐に納めると、桃子はこらえきれずにわあ、と泣き始めた。
「ごめ…さい、……ないで…イヌイ。…ひっく。」
マサルにいつもしてやるように、小さな頭を撫でてやった。だが、そうすることで胸に涌く、
この苦々しい感情はまるで違う。
手のひらが撫でるごとに小さな桃子を感じてしびれた。イヌイは眉を寄せ不機嫌そうに顔をしかめる。
可愛い桃子。可哀相に…。俺がしたことだが、可哀相に。だがだからこそ、可愛い…。
イヌイの屹立した股間の竿はいまだ、いや、いっそう身を硬く腫らせて、桃子の中にいるときよりも
じんじんと痛かった。
「…ごめんなさい、嫌わないで…イヌイ…。」
「バカ、嫌わない。桃子、痛いか?」
イヌイに貫かれた中は、おそらく擦れた肉を癒すため、じわじわと快楽からではない粘液を溢れ出し、
それがとろとろと桃子の股間から漏れていた。破瓜の出血は思ったよりも多いのか、桃子の愛液とともに
時折ごぼっと吐き出される鮮血。
血の匂い。桃子の奥の…、一番最初の印だ。俺が刻んだ…。
嫌いになれるわけがない。
「…痛くない。」
「意地っ張りなやつだな。」
俺もだが。と自嘲する。
血の興奮にイヌイは息を乱したまま桃子の顔をのぞき、からかうように笑って言った。
「痛くないって言うなら続けて食うぞ。俺は残さず食う行儀のいい犬だからな。」
「……。」
沈黙に、怯えたかと鼻白む笑いを浮かべたイヌイだが、真摯な大きな黒目にぶつかり
柄にも無くたじろいだ。
抱きしめている体から立ち上る芳醇な愛液と、清浄な粘膜と、俺の刻印した血の匂い。
そして。
「…うん。食べて、最後まで。」
284 :
102:2007/11/13(火) 02:22:32 ID:MY6JKhpe
立ち上る、この香り。最初に俺の抑えを飛ばした匂い。これは、お前の体液の匂いではなかったのか。
くらくらと目眩を覚えながら、イヌイは涌いてくる生唾を飲み込む。
「明日、同族の桃岩に接したら、きっともう、いろんな事がわかっちゃって、迷いも無くなって、
これからどうすればいいかとかもわかっちゃうって言ったよね、イヌイ。不安になる事もなくなるって。」
桃子は横たわった腰に回されたイヌイの腕を、胸元に引き寄せ唇を這わす。そのまま身を起こして
イヌイを見下ろす。
「イヌイが好き…。」
「桃子、それは…。」
「錯覚でも間違いでもいいの。今、イヌイが好き。大好き。」
桃子は切なげにイヌイの手に頬ずりして、吐息を漏らす。うっとりと目を伏せる。
ああ、この香りは。
イヌイもそれに酔ったようにトロンとした目になっていく。
「でも明日にはこの気持ちが無くなっちゃうかもしれない。」
俺を好きだという、桃子の香りなのか。
「だから痛くてもいいの。不安でいいの。この気持ちのまま食べられたい。」
もう二度と食えないかもしれない無垢な桃子の…。
「イヌイに食べて欲しい。」
…………。
「イヌイが欲しい。」
さっきとは違う、きっぱりとイヌイを誘う桃子に、欲情に流されたわけでは決してないという、
強い意志を感じて、イヌイは愕然とする。こんな女を見た事がある。
ーーーーーー桜桃。
食わない、わけがなかった。
なによりも、拒まないとイヌイは桃子に誓っていた。
今回はこのへんで
・・・・・・・・・・
次回も延々デレデレエロです。すみません。
長く俺のターンだがいいのだろうか。いいよな?
あと三〜四回で一区切りなんでそこまでは書かせて下さいな。