228 :
102:
225の続きです。 読みづらい気がして行間多めに開けてみました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この岩窟を少し下ったところにある洞穴に、温泉がわいていたから入ってこい、とイヌイに促され、
桃子はマサルと雨の山道を下った。
激しくはないが晩秋の冷たい雨は、ものの五分で体を芯から冷やし、ガチガチと歯の根の合わない
音をさせながら洞穴につくと、桃子は迷わず着物を脱ぎ捨て湯に飛び込んだ。
「あああ〜…ったかい〜〜…っ!!」
思わず唸り、声も体も弛緩する。桃子は温泉も初めてだ。さっきイヌイに言われたときは、
湯に体をつけるなど気持ち悪くてまっぴらだと思ったが、試してみるとなかなかどうして心地よい。
いや、かなり気に入った。
無色透明な湯は熱すぎずぬるすぎず、じわりじわりとしみ込むように疲れた体を癒していく。
ふと見ると体に無数の小さな泡がびっしり付いていて、それは湯を囲む中の岩も同じだった。
「ふわ〜〜〜っ、気持ちいいねえ、桃子お姉ちゃん。」
湯煙の中からすいいっとマサルが泳ぎながら現れる。
「ここの温泉は炭酸泉っていうんだよう。疲れを取り、傷の治りを早め、飲んでもいいの。
のぼせないように出たり入ったりを繰り返すといいんだよう〜。お湯から出てすぐは脚を
胸より上にあげちゃだめなんだって〜。」
「そうなんだ。くわしいね、マサルくん。」
「お猿は温泉大好きなんだよう〜〜。」
すい〜、と 寄って来て、仰向けに体を伸ばしていた桃子の上に股がるように陣取る。
「おっぱい触ったらだめだからね。」
「いいもん〜見るだけだもん〜。…でも枕にしていい?」
もう隠すのも拒むのも億劫だとばかりに、桃子はだらんとした手足を微動だにさせないまま
マサルを胸元に受け入れる。
マサルも桃子にだらりと体を預けて同じように仰向けになる。おっぱいに背を向けるなんて、
マサルは今度こそ触らないよう気をつけているつもりらしい。
桃子の大きな乳房は湯の中で、浮力を受けぽっかり浮いていた。それに小さな頭を乗せ、同じく全身を
ぽっかり湯に浮かべて寝そべるマサルの、無防備な脚の間を桃子は再び見た。さきほどの尖りは消えたか、
あるいは毛に小さく隠れているのか無かった。
「…さっきの…びっくりしたね。」
ぼんやりと桃子がつぶやく。
「うん、でも気持ちよかったあ…。」
「気持ちいいの、あれが!?苦しそうだったよ?」
「はじめ苦しいんだけど、桃子お姉ちゃんがごしごししてくれたとき、体がふにゃあ、て溶けちゃうみたい
だったんだあ。それからかけっこでゴールしてわーっとなってドカーン!て。」
それですっきりして、ああいううのは気持ちいい、とマサルは続けた。
「精通っていうんだって。イヌイのおじちゃんが教えてくれた。」
「…イヌイは何でも知ってるのね。」
桃子はさっきのニヤニヤ笑いながら楽しそうだったイヌイを思い出し、歯がみした。
マサルの説明を聞き、さっきの行為は桃子がイヌイにイカされる、あれに似てると思った。
少なくとも、そんななにかちょっといやらしい事をさせられたのはわかる。
それをひどい、イヌイ。あんなに面白そうに。なんて厭な性格の犬だろう。
「あれが大人になった証拠なんだって。死んだお父ちゃんに報告しとけって。…大人になったよ
お父ちゃあ…ん。」
マサルは心地よい桃子の胸枕にうっとりしながら、桃子に話すでも無くつぶやく。
桃岩との半獣は補食が出来ないから育たないといわれている、とイヌイは言っていた。
それをここまで大きくしたサルトルはたいした奴だと、イヌイは心から嬉しそうだった。
マサルが桃子の手のひらにはじけ、おめでとうとマサルの頭をかきむしるイヌイの笑顔には、
ニヤついたところはなかった。小猿の成長を感慨深く喜ぶ、父親のような男の顔だった。
イヌイのあの顔は好きだ、と桃子は思う。
ああ、私、今日はイヌイのことばかり考えてる。ばかみたい。
229 :
102:2007/10/10(水) 01:50:38 ID:bca81gj/
そのイヌイは今桃子達の昼ご飯の鱒を焼いてくれている。
そうだ、ご飯の事を考えよう。楽しみだなあ、お昼ご飯。
ムニエルにするって言ってたっけ。ムニエルってなんだろう…。
笹に串刺しにされた大きな魚の姿に、桃子はふとタキジの事を思い出した。
ーーー謝ってはいけません。食のために屠られる、それは自然の理ですーーー
あの魚にも子供はいるのだろうか。
イヌイの食である自分は屠られていることになるのだろうか…。
「それ以上珠の肌を磨いて誰を惑わすおつもりですか。」
クスクスと涼やかな声色の笑いを聞いて、はっと桃子は我に帰り振り向く。
背を預けていた洞の壁の上方の窪みに、今まさに思い出していた美しい妖しが座っていた。
湯煙の狭間に長い尾羽の光が見え隠れして輝いていた。
「タキジさん!」
桃子は慌ててマサルを抱いて身構える。急に強く抱きしめられ、うとうとしていたマサルは、
んあん?と寝ぼけて状況がつかめないでいる。
「おや、珍しい。その猿は桃岩の子じゃないですか。そんなに大きいのは初めて見ましたよ。」
ふわりとタキジは身を浮かせたまま、桃子達の目の前に降りて来て、湯の上に立つかごとく宙に留まる。
羽ばたいている様子も無いのに、妖鳥は皆こんなに優雅に空に浮くのか、と桃子は感嘆する。再び見まえた
妖鳥と人の子、鬼のタキジはやはり美しかった。
「マ…マサルくんにはなんにもさせないから!」
「そんなお猿に興味はありませんよ。」
「お猿じゃないよう、マサルだよう。」
寝ぼけ眼のマサルにタキジの口元がほころび、そんなマサルに興味はありません、とわざわざ言い直す。
桃子はひどい目にはあったが、やはりこのタキジはそんなに悪い奴ではないように思った。
「用事があるのはあなたにですよ、桃岩さん。」
「桃子だよ。」
同じように言い直しを求める桃子にタキジは今度は声を出し笑った。
「桃子さんに用事です。昨夜は失礼しましたね。まさか補食を嫌がる桃岩さんがいるなんて、
思いもよらなかったものですから。」
柔らかく穏やかなタキジに少し警戒を緩めて、マサルと抱き合いつつ向い合う。
タキジは桃子の背の横の岩に腰掛け、着物の裾をめくった。露になった脚は形こそ美しくまっすぐだったが、
膝から下は硬い鱗に覆われて、まるでとかげのようだった。ひっと声に出し驚いて桃子がタキジの顔を見る。
「生まれつきです。でもこれは病気でも異常でもありませんよ。私は鳥ですから、腕が羽毛のように脚は鱗なのです。」
気持ち悪いですか?と尋ねられ、桃子はぶんぶんと首を振る。鳥ならば納得だ。驚いて悪かったと、桃子は詫びる。
「初めて見たから驚いただけなの。ごめんなさい。」
クスクスと笑みを漏らしながらタキジは脚だけを湯につけた。
「私も旅の癒しを求めて温泉にきたのですよ。ただしつかるのは脚だけですが。羽が濡れると飛べなくなりますからね。」
「お兄ちゃんも温泉好きなんだあ〜。僕も大好き〜!」
マサルは無邪気にタキジに懐く。タキジもそうですね、猿ですものね、と適当な相づちをうちつつ、場に馴染む。
230 :
102:2007/10/10(水) 01:53:38 ID:bca81gj/
大丈夫なんだろうかと、いぶかしみつつも桃子はやはりタキジに見蕩れた。整った顔立ちに薄情そうな
うすい唇は赤い。五色の顔の入れ墨は不思議な模様でタキジの雰囲気を妖艶なものにしている。
そんな桃子の視線をまんざらでもないように受け止め、タキジは微笑む。
「私が美しいのは鬼だからですよ。桃子さん。」
「鬼はみんなそんなに綺麗なの?」
たいがいは、とタキジは続ける。
「イヌイとかいうあの妖獣、発情期に入りましたね。光って綺麗でしょう。」
どこかで見たのか、当然のように言うタキジに桃子は素直に頷いた。
「鬼は半分人ですから、実はいつも発情期で、だから美しいのですよ。あなたが美しいように。」
いろんな意味で驚く桃子である。
え?確かにイヌイは発情期に入ってああなったって…発情期にはみんな綺麗になるの?
半分人だからいつも発情期って、つまり人はいつも発情期なの?私もいつも発情期なの?私…。
「私…て、綺麗なの?」
そこだけが口から漏れ出てしまったのは、もう一度聞きたかったからかもしれない。
桃子の意を汲んだのかタキジは繰り返してくれた。
「あなたは桃岩の中でもとびきり綺麗ですよ。若いから、これからもっと磨かれて美しくなるでしょう。」
「うん、桃子お姉ちゃんはすごく綺麗だよ!それにとっても美味しいし、良い匂いがして、おっぱいも
やわらかくて気持ちいいんだよう〜。」
「そうですね。私もそう思います。」
含みのあるタキジの笑みに昨夜の愛撫を思い出し桃子は顔が赤くなる。もちろん、その前の
ストレートな美辞麗句に既に頬を染めてはいたのだけれど。
私は本当に綺麗なんだろうか。
本当だったら、イヌイもそう思ってくれているなら、どんなにいいだろう。
タキジのようにその身の美しさで、人の…イヌイの心を捕らえられたら、美味しいだけより
どんなにいいだろう…。
お世辞でも、そう言ってくれたタキジに今は心が慰められる。
桃子はありがとう、と小さく礼を言った。
「そんなことよりあなたに用事とはこれです。」
桃子が自分の言葉に耳を傾ける今が本題、とばかりにタキジは懐を開いてみせた。
「あっ。」
桃子はその中身に気づくと、抱いていたマサルを離してタキジに近寄った。
一、二、三、と三羽のヒナが、昨夜同様ピイピイと口を大きく桃子に開けて見せる。
「巣にいなかったからそうじゃないかと思っていたけど…。」
鬼のタキジの本当の子供であるはずがないとイヌイに聞いて、少し不安に思ったヒナの行方がわかり、
桃子は安堵の声を漏らした。
「やっぱりタキジさん、ヒナも連れて逃げてくれてたんだ!よかった〜!」
「わあ、雉のヒナだね!おいしそう〜!!」
マサルのとんでもない声が重なり、桃子は慌てて、こら、と怒る。だが今度はそれに
タキジの声が重なった。
「そうですね。私もそう思います。」
231 :
102:2007/10/10(水) 01:56:01 ID:bca81gj/
背筋に冷たい悪寒を感じて桃子はタキジを見上げた。
ぴいぴいと鳴くヒナを懐に抱いたまま、タキジはにっこりとマサルに笑いかけた。
「母雉を狩ったのは君ですね、マサルくん。私が狙っていたものだったのに。このヒナは譲りませんからね。」
「ああっ、そうだったの〜?ごめんなさ〜い。」
ーー狙っていた。そう言った。
桃子はタキジの言い草にある不安を覚えて尋ねる。
「タキジさん、このヒナをどうするつもり…。」
「無論育てていただきます。」
「いえ、私が育てるとか、その話じゃなくて…。」
「いただきます。…美味しく三羽とも。」
「そりゃあそうだよね、雉だもんねえ、お兄ちゃん!」
当たり前のように頷くマサルの声が湯煙の洞に明るく響いた。
「まったく愚問ですね。同族喰らいは妖しの基本でしょう。桃子さん。」
クスクスと変わらぬ笑いに桃子は戦慄する。
「雉の妖鳥の一番の好物です。とくに私は…鬼は、桃岩から妖力は補充出来ないし。」
置いて行くわけがない、というタキジを睨むように桃子は涙を溜め始めた。
「食べちゃうの…?」
「育ってからですが。だからあなたに育てて欲しくて。」
ひどいと、声を漏らす。自分だって母雉の鍋を食べた。だからお門違い怒りだとわかっている。
だがぴいぴい鳴く声に粟穂を砕いて押し込んだのは桃子だ。小さいふわふわのひなのぬくもりを
まだ手が覚えている。そこにある。
「ひどい、タキジさん。この子たち…可哀相に…。」
「あなたは自分の村からここまでに、ちら、とでも犬や猿を見ましたか?」
唐突なタキジの問いに首を振る。そう言えば、妖しではなくただの野犬すら見ていない。
村に住んでいたときはあんなにいたのに。猿もそうだ。
「お猿はマサルくんが全部食べたんですよね。」
凍り付きマサルを見る。
「全部って、二匹しか食べてないよう。この辺最初からいなくって、桃岩も無いし、ずっとお腹がすいて
大変だったよう〜。」
桃子は急にくらりと目眩を覚えて、岩に手を付き息をあげた。
「おやおや、大変。のぼせたんですか。」
赤くゆだった桃子の体をタキジは軽々湯から引き上げ岩に寝かす。その腕の心地よさに桃子は
返って嫌悪した。
「触らないで、鬼!」
「もちろん鬼ですよ。」
タキジの涼やかな音色の声…。クスクス笑いが不意にやんだ。
「…んああ!? 誰かいるのか!?」
見知らぬ大きなダミ声が湯煙の奥から響いた。
桃子の体に緊張が走り、慌てて湯の中のマサルの姿を探す。
「桃子お姉ちゃ…っ!」
こちらに向かって手を伸ばしかけたマサルの背後から、大きな茶色い腕がむんず、と
マサルを掴んでざばああ、と湯から引き上げた。
キイイーッ!!
マサルの悲鳴が洞に反響する。
「マサルくん!!」
「なんでえ、小猿と…こりゃあいい、桃岩じゃねえか!」
岩の上に裸で身を震わす桃子を見つけると、声の主はもう片方の手でマサルと同じく桃子を掴んで
引き寄せた。
232 :
102:2007/10/10(水) 01:58:04 ID:bca81gj/
「ちょうどよかった桃岩ちゃんよう、俺たち腹減ってんだ。染み古反一つよろしく頼んまあ。」
「どうした、兄弟…、おお!ラッキー!桃岩かよう!いっただっきまーす!!」
桃子を掴んでいる獣と違う者の舌が背後からべろんと、桃子の剥き出しの尻をいきなり舐め上げた。
前の獣におののき、後ろの獣を振り返り、さらに身の毛をよだたせる。
イヌイの倍はありそうな大きな二匹のヒヒ猿が、黒い顔から赤く長い舌をべろべろと繰り出し、
舌なめずりで桃子を見ていた。
「キヤアアアーーー!!」
尻を舐めていった者の正体を知り、桃子は叫んで両手足で暴れた。
桃岩の全身の抵抗に、あっけなく巨体が弾き飛ばされる。
桃子を掴んでいたヒヒは、うげえ、と低い声を吐いて盛大に湯に倒れた。放り出された桃子も
同じく湯に落ちて、ヒヒの倒れた大波を被り溺れかけるが、ひょういと大きな手のひらにすくい上げられ、
再びヒヒと顔を合わす。
「おいおい、いきなり舐めやがって、気をつけろよ兄弟〜。…ねえ〜?びっくりしたでしゅねえ〜?
でも大丈夫でしゅよ〜。俺たちテクニシャンだから!気持ちよ〜くしてあげるさ!」
にんまり笑うヒヒの鼻先で桃子はガタガタと震えだす。
染み古反……ああ、今は無い。てことは直接補食されるのだろうか。
イヌイが私にいつもするように、口を吸われ、股間を食われ…このヒヒ猿達に!?
嘘…、嫌だ…。嫌っ!!
「おい、兄弟!よく見ろ、その猿、桃岩の子じゃねえか!?」
突き飛ばそうと身構えかけた桃子はその声にぎょっとしてマサルを探す。
マサルは桃子を捕らえるヒヒの片手に、握られたまま湯の中に沈められたままである。
ツレのヒヒ猿の指摘にその腕を湯から出し、桃子の乗る手のひらの横に猿を転がし指でつつく。
マサルはぎゅうと握られ気を失っているようだった。
「マサルくん!ああ、マサルくん、しっかりして!!」
桃子がマサルを揺するが目覚めない。息がある事を確認するも、桃子は不安に涙をあふれさす。
「うおお!本当だ!!すげえ〜、オレっち初めて見たぜ兄弟〜。」
「レアものじゃん〜!半分こだぜ、兄弟〜〜!」
ヒヒの嬉々とした声に桃子は戦慄した。
「いっただき〜!」
「きっちり縦に半分こだぜ、兄弟〜!!」
「だめえーーーーーっ!!」
大きな指がマサルを掴み持ち上げるのを、マサルに抱きつき妨げる。
「おおっと、と。どいてよ桃岩ちゃん、食えねえじゃん〜〜。」
「まさかお前の子じゃねえだろう、まだヒトガタだしよう〜。」
「やめて!食べないで!同じ猿でしょう!?」
だらだらと涎を垂らす二匹のヒヒ猿の並んだ黒い顔に懇願する。
「同じ猿だから食うんじゃねえか。」
「そうだぜ、何言ってんだい、桃岩ちゃんよう〜。」
あああ、そうだった。たった今、妖しの同族喰らいの話を聞いたところではないか。
桃子は涙をぼろぼろにこぼしながら、マサルに抱きついてふるふると首を振る。
「ま…まだ子供だし…。」
小さくつぶやきながらも目でタキジを探すがいない。
なんとか助けてくれはしないだろうかという、淡い期待が掻き消える。鬼とはいえ細腰の鳥である。
逃げたのだろうことは責められない。
ああ、ではせめて上の岩窟にいるイヌイを呼んではくれないだろうか。
祈るように桃子は心中でイヌイの名を叫ぶ。
イヌイ!助けに来て、イヌイ!昨夜みたいに…!!
233 :
102:2007/10/10(水) 02:01:07 ID:bca81gj/
「冗談じゃねえ、こいつは絶滅危惧種の金絲猴じゃねえか。大人になったら食われるのはこっちだ。」
「そうだそうだ。ただでさえ育たねえ桃岩の子だ。妖力は未知数。今のうちいただこうぜ。」
再びあんぐり口を開けるヒヒと、しがみつく桃子をマサルから引き離すヒヒ。
「いやっ、マサルくん、起きて!!お願い、食べないで!!助けて!助けてえーー!!」
ーーーーーイヌイ!!
「絶滅危惧種はなんでも食べますからね。そりゃあヒヒ猿程度では、二対一でも勝てますまい。」
声を涸らし叫ぶ桃子の前に、ぐったりと気を失うマサルを軽々抱いて、ふわりと降りて来たのは
鬼のタキジだった。
「タキジさ…っ!!」
桃子の絶望の涙が安堵に変わる。
「私の望みをきいてくれるのなら、この小猿を上の大犬に届けてあげますが?」
なんでもきく。桃子は涙を散らしつつ、大きく縦に首を振る。
漆黒の裂け目を細めてタキジは静かに笑って承知、と頷いた。
「こいつ、いつのまに…っ!」
「なんで鳥鬼が……うわっ!!」
どこに隠していたのか、バサリと長い尾羽を広々と扇に広げ、青緑の光を放ちヒヒをなぎ払うと、
タキジはそのままスウッと空に昇っていく。だらんと垂れたマサルの尾を慌てて掴もうとするヒヒに、
桃子は飛びつきそのまま逃がす。
「こ、このやろうーーっ!!」
とんで来た毛むくじゃらの腕をよけ損ない、桃子は強い衝撃を受け気を失ったーーーーー。
・・・・・・・・・・・
ぐちゅぐちゅと粘る液体の音に気を戻したすぐに、生暖かいぬめる肉が蠢く感触に、
桃子は何をされているかを知る。反射的に身を縮めるが、二匹がかりで掴まれ広げられた四肢は
ぴくりとも動かず、それどころか二匹の獣はそれさえも気づかない。その圧倒的な力は、気を失って
目覚めたばかりの桃子の、抵抗しようという気すら飲み込んで、愕然とその身を恐怖に固めた。
「うっほっほっ!すげえ、美味ええ!こっち食ってみろよ兄弟〜!」
「…っはふっはううっ!いやあ、こっちもいけんだぜえ兄弟〜!!」
耳元に聞こえる下卑たダミ声がやけに遠くに感じられた。
桃子は大の字に手足を広げられ、それぞれのヒヒ猿に口中と秘部をねぶられ、粘液を食われていた。
大きな唇が桃子の顔ごとくわえ、器用に舌をストローのように丸め、小さな口から唾液を吸う。
無くなると毛むくじゃらの指で首筋や耳を撫で、桃子のため息を促した。そして震える乳房ごとくわえて
口中でその大きな舌をぐるぐるとかき混ぜるように胸を揉み、尖った先端に歯をぶつけて刺激を与える。
その反応を受け、もう一方のヒヒが掴んだ両足をさらに大きく開き、暴かれた秘裂をベロベロと舐め上げ、
尖った肉芽を柔らかな陰毛ごとずず、と啜る。我知らず声を上げる桃子の口に、乳房をくわえていた
ヒヒの管の舌が再び入り込み、そうして潤った液をまた啜るのだ。
二匹の獣の無限の蹂躙に、そのおぞましさに、ただ心を凍らせ耐える。
なのになんて事だろう。自分の体からはだらだらと、獣の求める粘液が溢れ、二匹の饗宴をもり立てる。
そこに快楽は無い。嫌悪と絶望的な無力感だけが、粘つく妖獣の唾液と共に桃子を包んでいるだけだった。
桃子の体だけが、獣の需要に応じてその機能を果たし餌を供給しているのだ。
艶やかに喘ぐ声とうらはらに、うつろに死んでいくその瞳から静かに涙を流し、その目頭の熱さだけが
本当の自分の気持ちを代弁してくれているように桃子は思った。
私は桃岩だ。食のために屠られている。あの雉と、あの鱒と同じに。
これは自然の理で、怨んでも憎んでもいけない。
だけどただ、…ただ出来るなら。
一匹のためだけの餌でありたいと…。
願うくらいは…いいよね…。…イヌイ。
234 :
102:2007/10/10(水) 02:04:02 ID:bca81gj/
大きなヒヒの手が再び桃子の胴を掴み直立させる。
宙ぶらりんの足を指で摘んで開くと、尻側から分厚い唇が押し当てられ、その唇で桃の双丘を
しゃぶりつつ、舌を伸ばして菊門の粘膜も尖らせた舌に絡めとる。
同時にもう片方のヒヒが前方から唇で肉芽を押しつつ舌を伸ばし、ひだに分け入り
ぐちゅぐちゅとかき回す。
うまいうまいと、二匹は夢中にしゃぶり付いて喜悦の叫びをあげている。
前後から穴を食われて桃子は嗚咽をもらしつつ、ひたすら嫌悪に耐え続けた。
待ち望んだイヌイの姿が、桃子の泣き顔を自毛の光で照らしたのはそんなときだった。
「……。」
言葉は何も出てこなかった。
どこからか跳んで来て桃子の目前に、桃子の股間を啜る獣の頭上に降りたイヌイもまた、
無言で桃子と目を合わせた。そのまま桃子を掴む毛むくじゃらの手首を、片手で掴んで軽々ボキンと折った。
「ギャアあああっ!!痛えっ!腕がああ…っ!!」
「どうした兄弟…っ!ああっ!!」
放り投げられた桃子の体をイヌイが抱きとめ、跳び退いた。桃子の黒髪が遅れてバサリと降りて揺れる。
一瞬強く肩を抱き寄せ、桃子を下ろすと、イヌイは再びヒヒに向かってジャンプした。
イヌイの倍はある大きなヒヒ猿が、二匹そろって銀に光る犬に戦慄し萎縮する。
「げええっ!お前っその毛…っ!!」
「まさかっ銀狼のイヌイ……っ!?」
「ほお、俺を知っているのか。ならば文句はあるまいな。」
イヌイは二匹を見上げると、毛を逆立てて、ぐおおおーーと咆哮した。
洞の湯気が二つに割れ、壁際を一気に天井へ駆け上がると、そこから滝のように
ヒヒに向かって降りてくる。
「まずは一匹。」
湯気の滝に押しつぶされるように、さっき腕を折られたヒヒが体をくの字に曲げ地面に膝をつく。
目前に来たヒヒの顔を見て口を歪めてにたりと笑うと、イヌイはヒヒの両肩を掴んだ。
「まっ待て!待ってくれ!俺はただ腹が減って桃岩を…っ!」
「あれは、俺のだ!」
ぐわあ、と大口を開けたイヌイの牙が輝き、ヒヒの額に突き刺さった。
ぐぎゃあああ、と絶叫してヒヒの頭が割れ、血しぶきの中、半分になった頭が狂ったように
左右に振れる。
「兄弟ーーーーーっ!!」
つれのまき散らす血の雨を浴びながら、残ったヒヒが絶望に叫ぶ。
真っ赤な霧の中心で、青白く光るイヌイが両手で頭の無い猿の体を二つに、そして四つに裂いた。
細長くなった肉を端から口中に納めていく。バリバリと音を立て、ヒヒの巨体はイヌイに飲まれて
消えていった。
血濡れた毛皮がさらに輝きを増し、イヌイが口から漏れたヒヒの血を啜りべろりと舌を唇に這わすと、
何事も無かったかのように美しく銀尾を光らせた。ただ足下にはところどころに血溜まりを残し、
黒々とした染みの地面が広がっていた。
愕然と立ち尽くすもう一匹のヒヒが恐怖に震えて後ずさった。
「逃げるな。どのみちお前も食う。」
「ひっいいいいいっ!!」
四つん這いになり、残ったヒヒが、来るなと叫びながら桃子に向かって突進して来た。
壁際で事の成り行きを呆然と見守っていた桃子を、あっと言う間に組伏してイヌイを威嚇する。
「こ…こここ、この桃岩を返して欲しければ…っ。」
「返してなどいらん。もとより俺のだ。」
イヌイの無慈悲な銀の瞳はヒヒだけでなく、一緒に見上げる桃子をも畏怖に震えさせる。
同族喰らい、とタキジは言った。ではヒヒをも喰らうイヌイはなんだ!?身丈の倍はある
同じ妖獣をあとかたもなく喰らって、銀色の光を強め猛々しいこの大犬は…。
235 :
102:2007/10/10(水) 02:07:32 ID:bca81gj/
うつ伏せに組敷かれた桃子の上でヒヒ猿が悲痛の雄叫びを上げた。恐ろしさに震える桃子に
広げた口のその牙を向ける。人質にくわえて逃げる気だ。そう悟った桃子は意志強めて向かう
ヒヒの頭を思い切り後ろ足で蹴りとばす。ぎゃん、と犬のような声で吹っ飛ばされたヒヒ猿を、
イヌイが抱きしめるように胸で受け止めた。
「イヌイ、やめて!殺さないで……ああっ!!」
強靭な爪を出した両手をブスリと胸に突き刺すのを見て、桃子は次にイヌイが行う行為を察して
顔を背けた。
げえあああああっ!!と岩壁を震わすほどの最期の絶叫に、めりバリと肉が裂かれ
骨が亀裂する音が混じる。ずるりとぬめった物が引き出され、そしてそれをすする音が続く。
桃子が察した通り、イヌイはヒヒの肉を開き肋骨を割ると、内臓を掴んでそれを弄び口に運んだ。
血は湧き出る泉のように吹き出し、桃子の足下をまだ温かい液体が這っていく。
肉が屠られ、骨が砕かれるイヌイの口中の音を真上に聞き、桃子は目を硬く閉じ、耳を押さえて
がたがたと震えた。
食べてしまった。イヌイは、あんな大きな妖獣を…!
ああ、だけど、それは自分を助けてくれたのだ、と思い直して目を開ける。
自分を包むイヌイの影を認めて上を向く。
銀の光沢の瞳がじっと桃子を見ていた。
さっきまでのヒヒと同じに、四つん這いに桃子に覆い被さっていた。
食事を終えたはずの口元からダラダラと血の混じった涎を垂らし、イヌイの息は荒い。
フンッフンッと速い鼻息も漏れている。殺戮と血の食事に興奮を抑えきれない獣がそこにいた。
逆立ちかけた毛皮がわずかにざわざわとさざめき、銀の波を作っていた。
帯びた光は強く輝き、美しいがそれはゾッとするような緊張を桃子に与えた。
イヌイはじっと桃子を見ていた。
やがてまだ、血の匂いを貯めたままの口を開いて桃子に言った。
「お前も食う。逃げるなよ桃子。」
四つん這いのイヌイの足の間に屹立した赤黒い男根が、驚愕に目を見開く桃子を射るように、
狙いを定めこちらを向いていた。
・・・・・・・・・・・・・
「イ…イヌイ…。何これ…。」
鋭利な銀の光を帯びつつ、以外にも柔らかいイヌイの腹毛が桃子の太腿から下腹に掠って温かい。
だがその真ん中を割りにょっきとそそり立つ肉棒は、焼け石のように熱く硬く、赤黒いそれにさらに
黒い血管が、稲光のような模様で棒に添い張り付いていた。それがどくんと蠢くたびに、先端の傘が揺れ、
その亀頭の裂け目からぬるぬるとした透明の粘液が垂れる。
桃子はそのテカる兜を鼻先に見て、理由もわからず身を竦ませた。
怖い…!
三本目の足のようにイヌイから突如生えたその肉の柱から、逃れるように後ずさる。
だがイヌイも追って足を進め、桃子の腹にその柱を押し付け這わす。
焼けるように熱いその昂りに思わず桃子が顔を背けた。
震える白いのど元にイヌイの口角が持ち上がる。
「俺が恐ろしいか、桃子?」
236 :
102:2007/10/10(水) 02:10:19 ID:bca81gj/
低く、唸るようなイヌイの声色がいつもと違い、桃子は恐怖に震えつつも、懸命に首を横に振る。
「怖がっていいぞ。今から食うと言っただろう。泣いて、叫んで、逃げてみろ。」
「う…ううう。…ひっ。」
ぬらぬらした棒の先端を、首から顎にかけて這わし、腰を揺らして桃子の頬にめり込ます。
溢れる粘液を顔にぬすくられ、桃子はうめき声を上げた。
「嫌なら逃げてみろ。こいつを、俺を跳ね飛ばし、拒んでその身を守ってみろよ。出来るはずだろう、
桃岩ならば。」
「い…嫌…。」
「嫌なら逃げてみろ!!」
「嫌あ…っ!!」
桃子を煽るイヌイの剣幕に身を震わせつつも、桃子は逃げなかった。
逃げたくなかった。自分は、待っていたのだイヌイを。
嫌であるはずがない。ただ怖いのだ。
初めて見る、イヌイのこれが、怖いだけだ!
どくどくと脈動する恐怖の対象である男根から逃れるため、桃子はうつ伏せに身を返し両手で
顔を隠した。イヌイは桃子の腰を掴み、かわりに露になった丸い尻肉を眼下に突き上げさせる。
尻の割れ目に熱い固まりを感じて桃子は、ああ、と叫んで息を飲んだ。
後背位に獣の猛りを覚えて、桃子の女陰から一時に愛液が溢れ出た。
どうして…!?と桃子が心で叫ぶと同時にイヌイの冷たい声がした。
「この淫乱。」
聞こえた言葉にひくりと、桃子の背中がひきつれた。
先走るイヌイの鬼頭の汁と桃子の漏らす液が混じりつつ、ずるずると肉棒は持ち上げられた
尻の割れ目を上下する。その下にある二つの秘穴がそれぞれひくひくと痙攣する。
「おぼこのくせに。あんなヒヒ猿にも濡れるのか。たいした泉だ。」
あきらかに自分を蔑むイヌイの声に、冷水を浴びたように冷たく心が凍っていく。青くなった桃子の顔を、
大きく見開いた瞳からあふれた涙が伝い、それは熱かった。
何かに突き刺されたように痛む胸を押さえて、桃子は嗚咽を漏らした。
腰を掴んでいたイヌイの手が片方前に回され、おもむろに肉芽を捕らえて捻り上げた。
「やっ…ああああっ…っ!!」
痛みに仰け反り、震える尻たぶをイヌイの大きな手のひらが、パンパンと音を立てて叩き上げる。
「ひいっ!く…っ、あっ、あっ、…ああっ!……わあああんっ!!」
前の尖りをきりきりとつねられ、刺すような痛みが桃子を襲う中、激しく尻を叩かれそこから
かゆみに似た鈍い痛みが熱く広がっていく。
桃子は小さい頃おばあさんから受けたお仕置きを思い出し、自分はなにか悪い事をしたのだと
とっさに思い、子供のように泣きわめいた。
「わああああんっ!イヌイっ、イヌイ…っ!ごめんなさい!許して!ごめんなさいーーっ!!」
痛みに戦慄き、恐怖に震えて泣き叫び始めた桃子に、イヌイの興奮した息がはあはあと荒く
激しくなっていく。
何がごめんだ!意味もわからず、この子供は…!子供のくせに…!!
イヌイは尻を打つ自らの手の熱さに、ふと攻めを緩めた。
桃子の肉付きのいい尻は、弾けるような若い肉を真っ赤に染めてぶるぶると震えていた。
手のひらのしびれるようなかゆみに、その丸みを掴むと、肉棒をあてがった割れ目から
ひく付く菊門のしわがのぞき、それが可憐に小さくすぼまるのが見え、イヌイはごくりとつばを飲んだ。
ひとたび腰を引き女陰をのぞくと、だらだらと愛液を垂らしたそこはぱっくり開いている。
美しい桜色の秘肉に美味そうな白い淫汁が絡み付き、いやらしく蠢いていた。
237 :
102:2007/10/10(水) 02:12:31 ID:bca81gj/
「うっうっ、ひあああん、あっあああん。」
桃子は顔をくしゃくしゃに歪めて声も抑えず子供の嗚咽を響かせていた。
このおぼこは…ッ!
苛立と肉の興奮にイヌイは目をぎらつかせ、乱暴に桃子を仰向けた。
「逃げないならいつまでも泣くな鬱陶しい!」
昨夜もぶつけられたイヌイの苛立に気づき、桃子はビクっと体を揺らせて口を閉ざした。
ひっくとのどからしゃくり上げる音が漏れた。
「さっきヒヒに嬲られてたように大人しく喘いでいろ。」
桃子の硬く結んだ唇が震えて、うう、と唸る声が漏れ出る。
かまわずイヌイは桃子の両足を肩に担ぎ上げ、覆い被さるように桃子の腰に自らの腰をぶつけて
膝をつく。桃子の足の間からイヌイの太い肉竿は桃子の胸の谷間に頭を埋める。その谷間から
突き出された亀頭が桃子の上唇をめくるようにヌラリとなぞると、イヌイは一気に腰を引き
肉棒を宙に浮かせた。同時に桃子の足首を大きくV字に開いて、眼下に秘腔を露にする。
その恥ずかしい体位に桃子が思わずイヌイを止めた。
「な…何をするの!?」
その問いに答えは無く、イヌイはすでに張りつめた竿の先端のぬめりを、大きく暴いた
秘所の尖りになすり付けるように腰を動かす。
先ほどつねられ敏感に尖っている肉芽が、粘つく淫液にくるまれ擦られるたび、途方も無い快感が
桃子の下腹に広がり、桃子は思わず甘い声を上げた。
どっくりと吹き出した愛液を認めてイヌイが笑った。
「さすがだな、桃岩。さっきあんなに食われたくせにもうこれか!」
「待って、イヌイ!待ってお願い…っ!」
蔑む声色に急になにかみじめな気がして、桃子はイヌイに乞うた。
「お願い…先に、口を啜って…。」
震える声でせめてもの願いを告げた桃子を、銀の瞳が侮蔑の色を浮かべて見下ろした。
「あんなヒヒに吸われた後など、いらねえな。汚らしい。」
桃子は大きく顔を歪め、口から声にならない悲鳴をあげて、勢いよく体を二つに折り曲げた。
「ーーーーーーーっ!!」
膝をついてたイヌイの体がそのままの体勢で後方に吹き飛ばされ、岩壁に大きく背を打ち付けた。
驚いたように惚けた顔で桃子は泣きながら身を起こす。
汚らしい。
イヌイに言われたその言葉だけが桃子の頭をぐるぐると巡り、絶望に心が折れる。
うう、と唸り、桃子ははあはあと肩で息をしながら、四つん這いに動いて湯を湛えた岩場に向かった。
頭から飛び込むように湯に転がり落ち、そのまま炭酸の小さなあぶくが体をなぞっていくのを、
慰めのように感じて湯に溶けた。
汚らしい。
私は…イヌイに…。
温かい湯と同じ熱さの涙が桃子のまぶたを震わし、がぶがぶと桃子は湯を飲んだ。
238 :
102:2007/10/10(水) 02:15:04 ID:bca81gj/
「桃子!」
弛緩する体をイヌイが両腕ですくい、湯から引き上げる。
「嫌っ!!」
ふたたびイヌイをはじき跳ばすと、桃子は急いで湯から出て、洞を振り返りもせず雨の林に飛び出した。
冷たい雨が顔を打つのをかまわず桃子は山道を駆けた。小枝や笹の葉が股を打ち、裸足の足に時折石が
刺さるのをかまわず、闇雲に走った。
どこかに沢が見えたらそこに飛び込もう。
あんな優しい湯ではなく、痛いくらいに冷たい湧き水で身を清めたら、少しは綺麗になる気がする。
そのまま体が冷たくなって淵に沈めば、またイヌイが。
イヌイが助けてくれるだろう…。そうでなくても、それもいい。
駆け抜けて来た道が目の前の大きな松の幹で行き止まりだと気づいて、きびすを返したとたん、
目の前にどすんと銀の獣が降って来て、桃子は松を背に追いつめられた。
「どいて。」
小さく、だがきっぱりと言った。
「どこへ行く。」
「イヌイのいないとこ。」
輝く光る長い腕が桃子を引き寄せ、またたく速さで顎を捕らえて、唇が重なった。
んうう、と桃子はうめいて身をよじったが、びくともしないイヌイの腕に、正直な自分の体を
いじらしく思った。
噛み付くように重ねられた唇が、少しずつ優しく緩み、何度か小さく桃子を啜って、
それから舌が入って来た。
入り口で桃子の歯をなぞり奥歯に這わすと、その先で小さく縮こまってる桃子の舌を見つけ出し、
迷わず絡めて引き出した。舌の側面を撫でるように繰ったそれは、力が抜けた小さな弁の根元をくすぐり、
桃子は、ああん、と甘ったれた声を漏らして上気する。
お互い息が上がり、唇を離して目を合わせた。
名残惜しく舌をあわせたまま、はあはあと呼吸する息が、山の冷たい空気に白く濁った。
イヌイの大きく熱い手のひらが桃子の頬を包んで、その上を桃子の涙が伝う。
「悪かった。」
イヌイの謝罪に桃子は嗚咽を漏らした。
「お前は汚くなんか無い。本当だ。」
「嘘だ…。」
「嘘じゃない。」
イヌイはその証拠とばかりに再び桃子の口を吸った。
桃子は涙に疲れた瞳をとろんと漂わせ、吸われるに任せた。
そのとき桃子の腹に硬く当たっていた熱い固まりが、びくんとその身を揺らし震えた。
桃子は恐る恐るその肉棒に手を触れた。
硬く、やけどするかと思うほど手に熱い。両手できゅっと握るとズクンとさらに大きくなり、
同時にイヌイの口から珍しく息が漏れた。
あ…。
桃子がひらめいてイヌイを見上げた。
「これ…マサルくんと同じ物だね?」
頷くイヌイにそうか、と納得して桃子はマサルの言葉を思い出す。
「イヌイもこれ擦ると気持ちいい?」
「ああ。」
擦るよりもっといい事があるが、と言いかけてイヌイは口をつぐむ。
桃子はゆっくりと、マサルにしたように両手で握り、上下にそれをしごき始めた。
239 :
102:2007/10/10(水) 02:18:42 ID:bca81gj/
「…大きい……。」
すでに興奮状態にあったそれは、桃子の刺激にみるみるその身を伸ばし、再び先端から先走りの液を
だらりと垂らし始める。息を飲んでそれを見つめていた桃子は、そっとそれに触れ粘りを確認すると、
ぬるぬる溢れる液を亀頭に広げて、そっと傘の部分を撫でたり、裏の筋に指を這わせたり、好奇心のままに
いじりまくる。
「…もう、恐ろしくはないのか?」
イヌイの声が少し震えてきこえた。
「何が?」
「俺が。」
握り込んだ指を上下しつつ、イヌイに上を向かされ、桃子はまた唇を吸われてとろけそうに目を閉じた。
イヌイの手が桃子の豊かに突き出した乳房を、両から挟んで持ち上げるようにたぷたぷと触れる。
その優しい手つきにちりりと胸を焦がす。
さっきあんなにも残忍に肉を裂いた同じ手が、私を撫でている。
バリバリと骨を砕き妖獣を飲み込んだ同じ口で、私を啜る。
「…怖いよ。」
桃子は正直に口にした。
「…でも好き。」
桃子の手に焦れイヌイも自らの腰を動かし、両手の内の熱い肉棒の動きが速くなる。
「イヌイが…好き……。」
急に背後の松の木に体を押し付けられ桃子は、ああっ、と声を上げた。
桃子が握っていた肉竿は昂りに桃子の手から暴れ出て、はち切れそうに膨らんだ体を、
桃子の胸の谷間に押し入れた。
「イ…イヌイ…!?」
イヌイは桃子の乳房を両手で脇からギュウと押さえ込み、己の欲望を柔らかな肉で圧迫する。
形が変わるほど強く握られた乳房の間から、出たり入ったりする亀頭を目前に、桃子はどうしていいか
わからず、両手でずれる体を支え、イヌイの激しさに立ちすくむ。
イヌイは獣の唸りを漏らし、猛りに任せて腰を振る。はあはあと、息を乱し桃子を呼んだ。
「口を開けて舌を出せ。」
切ないようなうわずった、初めて聞くイヌイの声に、言われるままに口を開く。
すべては入らぬ大きな兜を口中に差し込まれ、桃子は苦しさにうめいた。
鈴口から溢れ出る先走りの液が桃子の口に粘る。
それはわずかに甘く、桃子はおそらくイヌイが求めるように、懸命に舌を絡めて淫汁を舐めとった。
再び棒の抜き差しがはじまり、突き出されるたびに桃子は亀頭をくわえて、健気に吸い上げ舌を這わす。
やがて桃子の唾液もまじりぬらぬらとてかりながら、リズミカルに抽送される肉棒は、これ以上は
裂けるとばかりの皮膚を張らし、浮き出た血管もグロテスクに、口に硬い。
ああ、イヌイ、イヌイが…っ!
桃子は目前と口中に感じるイヌイの限界に、自分も熱く昂り秘部を濡らして興奮する。
弾ける……っ!!
240 :
102:2007/10/10(水) 02:24:45 ID:bca81gj/
うおおおおーーーっと咆哮し、イヌイが激しく腰を桃子の乳房に打ち付けた。
とたんに何かが口中に熱く飛び出て、どくんと竿をゆらすと、さらに身を反らしそれを散らした。
「ーーー…っ!」
イヌイは唸り、ひく付きながら、己の獣の猛りからはじけ散る白濁した液を、
二度三度と、桃子の顔に、胸に、そして口に放った。
放つ瞬間、最も青白く輝いた銀の毛皮は激しく逆立ちイヌイの体を大きく、神々しく見せた。
桃子はそれに見蕩れつつ、熱い雫を受け体を震わせた。
はあはあと激しく乱れるイヌイの吐息が湯煙のように漂い、やがて満足に目を伏せる妖獣の顔を
桃子に見せた。桃子は震える手をそっと伸ばして初めて見るイヌイの赤く上気した顔を撫でた。
イヌイもまた震えているように思い、桃子は目を細めて息を吐く。
口端から垂れたイヌイの欲望の汁を慌てて舌で口中に納め直し、さらに口中に吐き出された
そのすべてをごくりと飲み下した。
「…あったかい。」
桃子は胸に出され白く溜まったそれを両手にすくいとり見つめると、ゆっくり胸に広げるように
塗り付けた後、それを見守るイヌイを見上げて笑った。
綺麗だ。桃子、お前は…。
イヌイは思いがけず胸中に涌いた思いに、愕然として立ち尽くす。
イヌイはまた強まって来た雨が桃子を濡らさぬように、その身を傘に桃子に覆い被さって、
しばらくそのまま動けなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
今回はこの辺で
連投すみません。
他の職人さん、待ってますよう〜。