204 :
102:
196の続きです。
・・・・・・・・・・・・
息が整った頃には静かな闇が、ただ星の光をまたたかせていた。
月は夕方に見たが沈んでしまった。空には無数の光があるが、そのなかに大きな鼓のような
形を見つけて桃子は時を知る。鼓の真ん中の三ツ星がよく見える。深まる秋の丑三つ時だった。
息を整えてるだけのつもりだったが、少し眠ってしまったのだろう。
イヌイがマサルを投げた方角を見るといない。目をこらしてあたりを探すとそこから少しに離れた
土手下に、転がっている二匹らしき岩のような影が見えた。大きいのと小さいの。親子のような妖獣を
探し当てて、気持ちが落ち着くと、桃子はまた夜の星空を見上げた。
星明かりがちかちかと揺れている。そんな次の日は雨だと昔おばあさんから教わった事を思い出し、
桃子はそれはずいぶん昔のような気がした。
イヌイに出逢ってまだ二日しかたってないことに驚く。おじいさんとおばあさんに人間の子供のように
育てられた村での日々よりも、長く密にあの妖獣と過ごしている気がするのは、それが桃岩属である自分が
桃岩として過ごしている時間だからかもしれない、と桃子は思う。疑いようもない自分の本質を今日はまざまざと
思い知らされ悲しかったが、慣れろ、と言うイヌイの言葉は、冷たく思うが正しいのだろう。イヌイには違うと、
嫌だと言ったが、どんな妖獣、妖魔にも、基本的には体を開いて餌になるのが一族の生き方だと聞いて、
どこか納得している自分がいる。
マサルくんに…あんな小猿に感じてしまった。まんまではないけど、イヌイの繰る手技とかわらずに。
だけど誰にでも同じようにああなるなんて、イヌイには思われたくなかった…。
でもとっくに知ってるよね、他の桃岩達と旅していたんだもの。
それをマサルから聞いた時はなんだか不愉快に思い、とても嫌な事を聞いたような気がした。
でも他の桃岩も同じで、誰にでも開いてしまう体は桃岩属の特性だとわかってくれるなら、
自分だけが淫らな性質ではないと、厭に思わないでくれるのならいいのにとも思った。
乳首を強く捻られた時は、イヌイに嫌われたのだろうかと、とても怖い気持ちがしたのだ。
容赦なく乳房の先端を押しつぶされ爪で刺されて、なのに優しくされた時と同じように
あそこが濡れた桃子を、ひどく嘲るように笑ったイヌイ。淡々と乳首を繰る仕草は、桃子が子供で、
なのにだらしなく乱れるのを、蔑んでるように思ったのだ。だが…。
あれは…なんだったんだろう。イヌイ…興奮してた…?
食い入るように自分を見つめて息を乱すイヌイを思い出し、桃子は歯を立てられた首をそっと撫でる。
犬歯の刺さったのど元をなぞると、出血こそ止まっているが指に障る程度の小さな傷が刻まれ、
思い出して顔が紅くなる。
マサルにもみくちゃにされていた頃からじんじんとしびれきっていた胸は、先端を
イヌイに嬲られてからは、火花を散らす線香のように熱くはじけて桃子に快楽の気を充満させた。
それがはじけて激流に流されたように、のけぞった桃子の首にイヌイが食らいついて来た時、
桃子はとっさに食べられる思った。
----ゾクゾクした。その瞬間を思い出し、再び息を乱す。
食べて、と思った…。イヌイに…。
そのとたん、体をバチバチと走る稲妻が、乳首と股間から額に抜けていった。
すでにイヌイに教わっている絶頂感に近いその感覚に、桃子は気をやられてしまった。
もう一度…とは決して思わない、切ないような刺激だが、思い出すと繰られ疲れたはずの両の乳首に
むずがゆいしびれが蘇ってくる。
…気持ちいい、というんだろうか。あれも。
なにか満たされない物足りなさに焦れる。こんなことは初めてだった。
205 :
102:2007/09/25(火) 22:05:16 ID:PUQGcw0a
桃岩の、桃子の体液がごちそうだって言ってたくせに、イヌイは約束通りとはいえ食べなかった。
その事が桃子にはひどく不自然に感じられた。昼間みたいに染み古反に含ませもしないで、
桃子の愛液すら放置しておやすみと去って行った。
気づいてないわけがないよね。あんなに溢れていて、きっと匂った…。
未だべたつくその部分に、おそるおそる己の指を刺してみる。つぷん、と水音がしたような気さえした。
桃子の秘所は自分でも驚くほど柔らかく、熱く、ぬるりと妖獣のごちそうを湛えたままである。
かき混ぜるとチュプチュプと音をさせて、泉の豊かな水量を教える。
満たされないせつなさがこみ上げる。物足りない。何が?
イヌイが食べてくれなかったからだ…。
いきなり得た正解に桃子の目頭が熱く震えた。つん、と鼻に痛みを覚え、じわじわと涙がにじんできた。
股間に沈めた指をよしよしと撫でるようにして自分を慰める。そうして得る熱くしびれる感覚は、
ほんとうにせつない自分の気持ちを慰めてくれるようで、桃子は手を止められなくなった。
イヌイ…。どうして?私のこれを食べるために乳首をいじったんじゃないの?食べないならどうして
あんなこと…あんな……。恥ずかしかった……。
目を閉じて出来た闇にイヌイの姿を浮かべて、桃子の指は速くなる。唇をゆるめると、出来た隙間から
湿った息が漏れ熱い。
ねばついて引っ張られる口端に焦れて下唇を舐めて濡らすと、自然に口が開き、冷たい夜の空気が
流れ込んで来た。空っぽの口内を淋しく思い、桃子はもっと切なくなる。
股間を繰る右手が我知らず尖った快楽の中心を捕らえ、桃子はああここだ、とばかりにその一点を
夢中で擦った。
左の手のひらで乳房を押しつぶすように胸を触ると、どきどきと鼓動が速い。
さっき現実のイヌイにされたのと同じように、まぶたのイヌイに自分を凝視させると、
見られている事を意識して、それはいっそう速くなった。
見ないでイヌイ…恥ずかしい。
ううん、嘘、…見て…。
…見てほら、私…っあ…あっ、濡れてるの…!
切ない思いに胸の奥がぎゅうと縮まる。さっきも同じ思いをして泣いた桃子だ。
濡れてるよ、イヌイ……食べて………。
「……べて…。」
口から漏れた声に桃子自身が驚いて慌てて目を開く。
顔を赤らめ夜を見つめると、ふとさっきとは違う空気を感じて桃子は身を起こしかけ、硬直した。
黒い蝶のような羽虫が、桃子の右手を差し入れた股間に覆い被さるように止まっていた。
ひっ、と声を上げて手ではね除ける。すると蝶はゆらりと舞い上がりまたゆっくりと今度は桃子の
愛液に濡れた右手に止まる。
「やあ…っ!!」
ぶんぶんと右手を振り回すとまた股間、股間を遮るとまた右手とまとわりつくさまが気持ち悪い。
「厭っ、あっち行けったら!」
払っても払っても寄り付く黒い羽虫に、不穏な物を感じてゾッとする。
うそ、妖魔なのに払えない?私はこんなに厭なのに、何故…!?
「や…あ…っ、どうしたら…イヌ…っ!」
イヌイに助けを求めかけたその口を、ふわっと何かが包み込み、桃子は息を止めた。
「落ち着いて、お嬢さん。そのまま虫を払うのです。」
206 :
102:2007/09/25(火) 22:08:09 ID:PUQGcw0a
驚きに目を見開いて声の主を見る。
顔に五色の刺青を刺した美しい青年が桃子の口を押さえていた。いや、押さえてではなくただ優しく
覆っていた。ふう、と息を吹いただけではずれそうなその覆いは、不思議に心地いいとさえ感じた。
「妖しですが、怪しい者ではありませんよ。」
涼やかな声色で笑う。
桃子はとにかく言われるままに口を覆われたまま虫を払う。
すると確かにさっきまでまとわりつき離れなかった虫が、いとも簡単にひらひらと闇に消えて行った。
美しい妖しは桃子と目を合わせ再び笑うと、口元に被せた手を離した。そのときやっと桃子は彼の手が
柔らかいビロードのような羽毛に覆われているのに気づく。手の甲から腕には動くに邪魔にならぬ程度に長い、
玉虫に光る見事な羽が伸びている。
「あなたの口から漏れる欲望の湿気が、彼らをおびき寄せ、拒絶を疑似にするのです。
息を止めればいいのですよ。」
なるほどと頷き口を硬く閉じた桃子に、細く裂けた目をさらに細めて言う。
「何を考えていたのですか。いやらしい妄想が彼らは大好きなのですよ。」
お気ををつけなさい、とからかうように笑みを浮かべる。
かあっと顔を赤らめて身を起こし、桃子はその妖獣に向い合った。
「私はタキジ。見ての通り妖獣です。…いや、雉ですから妖鳥でしょうか。」
くすくすと笑うその妖鳥の美しさにあらためて見とれたが、すぐさま重大な事に気づいて桃子は青くなる。
「え…雉…?」
「はい、雉です。あなた方が鍋に捕らえた牝雉は、私の妻でした。」
でした、と言うのはもうこの世にいないからですが…、と続けてまたくすくすと笑う。
「妻はおいしかったですか?」
青ざめた桃子がぶるぶる震えだす。
え…?なんて?…今、なんて?妻!?あのキジ鍋の雉が…っ!?そんな…っ!!
「ご…ごめんなさ…っ」
「謝ってはいけません。食のために屠られる。これは自然の理です。」
ビロードの手が桃子の頬にのび、溢れた水をすくいとる。
「おいしく食べて下さればそれで妻も報われましょう。おいしかったですか?」
再び妖鳥は桃子に尋ねた。頬の涙を羽毛に吸い取られるままに、桃子は恐る恐るこくんと頷いた。
それを確認しまた涼やかに笑うと、あなたもおいしいですよ、と桃子の涙で湿った自身の
ビロードの指を舐めてみせた。同じ事です、謝ってはいけません、と再び言われ、桃子はこの妖しの
優しさを感じた。
タキジと名乗った妖しは今まで見たどの妖獣より、いや、人間も含めて、桃子が知る中の
最も美しい生き物だった。女と見まごうばかりの美貌に長く艶やかな髪が足下まで垂れている。
それは彼の腕を覆おう羽と同じく玉虫色で、今は夜の星明かりを受け、青緑と紫に光っていた。
ビロードの手と顔や羽のない素肌は青白いまでに白く、切れ長の裂け目からのぞく瞳は漆黒の
闇のように深い。
見惚れるままにタキジを見つめながら、桃子は言葉を無くしてただ懺悔する。
なんて事をしてしまったのか、こんなに美しい者の愛しい人を食べてしまった。捕って来たのは
マサルくんだけど、マサルくんは私のために料理したんだ。ごめんなさい。謝らなくてもいいと、
言ってくれたけど、ごめんなさい。すごくおいしかったです、ごめんなさい!!
ほとほとと涙をこぼす桃子は無言だが、何を思って泣いているか、タキジは知っているようだった。
「怒っても怨んでもいませんよ。これは自然の理なので。ですがもしあなたが気にして下さるのなら、
一つお願いしてもいいでしょうか。」
なんなりと!と桃子は勇んで顔を上げる。
「子供達に母の昇天を伝え、悼んでもらうために、彼女の骨が欲しいのです。」
今度こそ一気に下がった血の気に、冷たくなっていく体を震わしながら桃子は呆然とタキジを見あげる。
「…子供がいたの…ごめんなさ…。」
謝罪の言葉を乗せた唇にタキジの薄い唇が重なった。軽く吸い上げてすぐに離れた。
207 :
102:2007/09/25(火) 22:11:27 ID:PUQGcw0a
謝罪の言葉を乗せた唇にタキジの薄い唇が重なった。軽く吸い上げてすぐに離れた。
「いけません、と言ったでしょう。」
突然の行為に驚いた桃子だが、タキジの妖艶な微笑みの意味を読み取ろうと凝視する。
「あなたは桃岩さんなのですね。さっきの涙も甘露でしたが、唾液はもっと…。」
タキジの笑みとは違う瞳の色に桃子は心を奪われる。
「妻の肉汁と混ざってるせいか、背徳の味がします。」
額の奥から影に曇って行くような目眩に襲われ、桃子はよろめいた。待ってたように伸びた
羽毛の腕で、ふんわりと支えられる。
「妻の骨をいただけますか?」
「ごめんなさい、骨はイヌイとマサルくんが噛み砕いて食べちゃった…。」
「イヌイとマサル…あの妖獣達ですね。そう…しかし妖獣同士ぶつかりあうのはごめんです。
それではあなたが子供達に…。」
母の死と死肉のかけらを伝えて下さい。
遠くにきこえるタキジの頼みに、頭上がぐるりと回る混乱を覚えながらも、当然のように桃子は
首を縦に何度も強く振った。
・・・・・・・・・・・・
口中にあるはずのない硬いしこりのせいでなかなか寝付けなかった。
想像のあめ玉を転がしながら、イヌイは自分の体の変化に気づいていた。
やはり桃子のせいだろうか、と今はまだ、身中に収まる自身の獣の猛りをわずかに感じて
イヌイはいぶかしむ。
今まで出逢った多くの桃岩の誰も、イヌイのサイクルを狂わすような事はなく、それだけに
今夜の自分の肉体の乱れが、わずかとはいえイヌイの心をも乱していた。いや、心の乱れに
体が反応したのかもしれない。自分はただ、桃子の桃岩らしからぬ言動に苛立ち、思い知らせてやろうと
しただけのはずだった。だが苛立を感じる事自体、イヌイ自身がらしくなかった。
どうしたと言うのだ、俺は…。
指に、手のひらに、味覚などないはずのその部分に甘いしびれが残っている。繰るほどに赤く
色着いていった桃子の大きな双乳は、吸い付くようにイヌイの手に馴染んでいき、反してその頂は
ツンと硬く立ち上がって独立した。マサルにいいように嬲られていた時は、それほどの尖りを
見せていなかったように思うのはイヌイの主観だろうか。だがその様をじっと見ていたイヌイを見る
桃子の目が、どうにも堪え難い悦楽に歪んでいたのは同じだった。思えば苛立を感じていたのはすでに
そのときからのように思う。
誰にでも感じる桃岩の特性に何故俺が…?馬鹿馬鹿しい。
マサルと同じように乳だけを繰り、誰にでも同じと証明してやったはずの自分が、行為の
コントロールを失い動揺した。それほどに仰け反る桃子の首に突き上げる情欲を感じた。
なぜだろうか。そこはなんの体液も分泌しないのに。
口中から溢れ出た唾液に。そしてそれを舐め取ったとき触れた尖りが、今も口中にあるように舌が
転がすことに。失いかけた自制に。イヌイはまぎれもなく自身が獣として最も猛々しく血がざわめく
前兆を感じ取った。
発情期が来る。
手甲の毛を見るとすでにうっすら光を帯びている。
昼に同じように赤金茶の光をぼんやり灯したマサルを見て、俺が桃子に言ったのではないか。
お前のを食ったからだと。桃子の桃岩としての資質は他と比べて強く、濃いのかもしれない。
おそらく…。
二、三日中には始まるだろう肉体の祭りに俺は桃子を食らうだろう。
もちろんはじめからそのつもりだった。だがその時あいつは…。
あいつはひどく泣くのだろうな…。
口中のしびれがぼんやりとにじみ、イヌイはようやく眠りに入っていった。
208 :
102:2007/09/25(火) 22:15:25 ID:PUQGcw0a
休息の淵で大きな鳥の羽音を聞いたイヌイは、その鈍い羽ばたきになにか大きな獲物を携えていると思い
意識を自分に戻した。
オオワシが鹿でも捕らえたか…。
頭をかすめた不安に飛び起きてあたりを見回す。
探していた小猿の大の字に眠る姿に安堵のため息をついた。以前見た、マサルの父親サルトルの
滑稽なまでの慌てぶりを思い出し、今更笑いをこぼす。マサルがまだ生まれて間もない小さな獣の頃の
事件だった。無事だったからこそ、あれを滑稽に思えるのだが、とほのぼの笑い、再び横になった
イヌイの視界を大きな鳥が横切っていった。
さっき大人用に換えてやろうと決めた、童の着物と兵児帯がひらひらと残像を残して夜空に消えた。
「桃子…っ!!」
飛び起きた次の一歩で土手を駆け上がり、イヌイは鳥が消えて行った方角の闇を凝視した。
谷二つ越えたその先にどっしりと不動する深山があった。
・・・・・・・・・・・・
山の中腹にある頂まで伸びた杉の木の下に連れてこられた桃子は、タキジにうながされるまま
その足下に広がるクマザサと山吹の茂みに入って行った。わらや姫竹の皮を敷いたすり鉢状の巣の中に
小さなひなが一、二、三、と三匹、親鳥の帰還にぴいぴい声を高めて訴え始める。
お腹がすいているのだろう。桃子はまた罪悪感を感じ瞳を曇らせた。
「母雉がいなくなってからご覧の通りで困っています。私にはどうしていいのやら。」
タキジは桃子を巣の真ん中に下ろし、ため息をつく。
「どうしたらって…餌は?米とか粟とか穀物の穂でも噛み砕いてやれば…。」
なるほど、それでは、と巣の奥の隙間から粟穂を取り出し桃子に渡す。
「お願いします。」
タキジは一度も子育てに携わってないのだという。
なかば呆れて桃子はタキジになにかすりばちのような道具は無いかときく。
タキジはちょっと待って、と飛び上がり杉の木の下枝に消えると、ほどなく手に石で出来た皿と
棒を持って巣に帰って来た。それを使って桃子はひなが咀嚼するに容易な餌に粟穂を砕いて、
それぞれのひなの口に押し込む。
びいびいとうるさかったひなが満腹に目を閉じ眠っていく。
ひと仕事を終えて桃子はタキジに言った。
「今のように日に三度。」
桃子の指導を、ぼんやりと巣のふちに座り遠方を眺めていたタキジは、億劫ですね、と何の虚勢も無く
本音をもらす。
「…でも、あなたのお子さんですから…。」
「桃岩さん、あなたが育ててくださいませんか?」
えっと驚くと同時に桃子はすり鉢の巣に横倒しにされる。
「タ…タキジさん!?」
さきほどと同じようにふんわりと猿ぐつわをされ、さらに自らの体で桃子を覆う。
上に乗られたが不思議な感触だ。身動きが取れない桃子だが四肢にタキジの体温は感じる。
だが重みはない。
「この子達が巣立ちの時を迎えるまででいいのです。そうすることがこの子達に母親の夭逝を伝える事に
なると思うのですが。」
いつの間にかはだけられた着物の裾を大きく左右に開いて、タキジのビロードの手が太腿を這った。
はじめての感触にゾクゾクと寒気に似た感覚が太腿から背筋に伸びていった。あわわ、と
はね除けようにもびくともしない。だがそれはマサルの時と違って、罪悪感による邪見にしては
いけないという桃子の思いからだった。決して気持ちいいからではない。
「タキジさん、この子達は妖獣の気が感じられません!普通の雉にみえるのですが…っ!」
「おや、バレましたか。」
「バレましたかって…っんはあっ!!」
いきなり股間の快楽の中心部をそろりと撫でられ、そのあまりの快楽に桃子はひくひくと脚をつらせた。
その一点だけをとろけるような指先でくるくると刺激され、みるみる高みに押し上げられて桃子は声を
抑える事も忘れて嬌声を響かせる。兵児帯を解かれまろびでた乳房にタキジの薄い唇が這い、焦らしもせず
すでにしこった頂点を口に含む。タキジの舌はイヌイのともマサルのとも違ってヌルヌルと粘膜に覆われており、
転がされて絡めとられた乳首はタキジの口中で痛いほどの尖りを見せていた。桃子は自覚するほど、
どっと愛液をあふれさせた。
209 :
102:2007/09/25(火) 22:19:44 ID:PUQGcw0a
「なんと感度の良い…。いい泉ですね、桃岩さん。」
イヌイに言われたと同じ言葉に桃子は我に返る。
「や…やめて下さい、タキジさんっ!私…わた……っ、…っやあっ!ああっ、あっ…!!」
尾てい骨の奥からぞぞぞと這い出てくるしびれに、たまらず桃子は大きく仰け反り痙攣する。
「イキそうですか?早いですね。まあ、ご自分でもう高められていたからとはいえ、
簡単すぎるのはつまらないですね。」
そういってタキジはすっと、捏ねていた肉芽から指をひくと、そのまま溢れ出た愛液を
指に吸わせてそのまま裂け目に添ってさらに奥へとなぞっていった。小さな窪みにたどり着き、
そこで湿った指を止めた。
戦慄いていた桃子に一瞬緊張が走る。
「タキジさん、何を…。」
同じようにたっぷりの唾液で湿らせたもう一方の手の指は乳首を摘み、てろてろの指先でしごくように
上下に撫でる。それだけでさっきイヌイに与えられた絶頂に近いしびれがすぐそこにせまって来た。
桃子は目を硬く閉じては、快感を振り払うようにかっと見開き、両手で巣のわらを握りしめ耐えしのぐ。
それだけに懸命なのに、タキジの指はじわりじわりと菊門の周回を始め、回りながらゆっくり穴に沈んでいく。
「タ…タキジさ…っ、ふっ、わ、あっ、あ…っ。」
「こちらの愛撫は初めてですか?皆さん愛液が目的ですからこちらに興味はむけられないようですが…。」
タキジは乳首を嬲っていたもう一方の手の仕事を口に任せ、ビロードの手を股間に滑らし割れ目を
大きく左右に開いた。
はじめに快感に火をつけた肉芽を、あらためて中の指で愛液をなすり付けるように擦る。
同時に乳首を唇ではさみ吸い、菊門にあてがった濡れた指に力を込められた。予感に桃子は身を硬くする。
入ってくる…!
そんなところ…イヌイだって入れてないのに…!!
「なれると病み付きですよ。ほら、吸い付いてくる。もう悦いなんて、淫乱ですね桃岩さん。」
「いっ…いやああっっ!!」
首を振り涙をあふれさせ嫌がるも、抵抗する手に力は入らず、秘所からはほとばしるように
愛液を涌かす。心と体がバラバラで、桃子は桃岩である自分の質を呪った。
甘噛みされる乳首の刺激と充血した肉芽の昂り重なり絶頂が近い。もはや狙いを定めてあてがわれた
菊門の指を、つぷつぷと浅く出し入れされ、桃子は嘆いた。だめだ、イってしまう。なのに自分の間違いなく
感じる欲望にさっききいた淫乱というタキジの嘲る声が重なった。
…違うっ、私は、私の欲望は…
「入れますよ。」
優しげな声色に反して、強引なタキジの指がぐりぐりと繰るように穴に突き刺さる。
背筋を駆け抜けて行く寒気に桃子は声をあげる。
「…やだ…やだ、やだあーーーっわあああっん!…イヌイっ!!」
ずんっと大きな衝撃に巣が揺れて、目覚めたひながぴいぴいと騒ぎ立てはじめる。
空から降って来た大きな獣のためクマザサと山吹の屋根は飛び散り穴をあけ、冷たい朝方の空気が
どうっと降りて来た。桃子がそれを感じたのは衝撃と同時に、桃子に覆い被さっていたタキジの
羽毛のぬくもりが一気に取り払われたからだ。飛び退くタキジを追うように、強靭な爪を光らせた
毛深い腕が桃子の腹上で風を切る。桃子の肌に一気に鳥肌が立ち、驚きと喜悦に眼を限界まで見開いて、
殺気を帯びた大犬を見た。
「イヌイ…っ!!」
声を上げた桃子を一瞥もせず、イヌイは自刃をかわし、自身の開けた天井の大穴に腰掛け、
こちらを見下ろすタキジを睨みつける。
「お前…鬼だな。名乗れ。」
「私はタキジ。見ての通り…妖鳥ヌーベルキジーヌが人に産ませた半妖の鬼です。イヌイさん。」
殺意を隠そうともしないイヌイをくすくす笑いながら涼しげな声でタキジは言った。
「その桃岩、いいですね。染み古反、私にも一つくださいませんか。」
210 :
102:2007/09/25(火) 22:23:23 ID:PUQGcw0a
「鬼は桃の雫を食らわなくても生きられる。無用だろう。」
タキジはなおもくすくす笑いに肩を揺らす。
「必要だけが需要ではないのですよ。無粋な獣にはわかるまいが、世の中には嗜好品という物があるのです。
嫌がる桃岩なんて珍しいもの、他の鬼達もさぞ食らいたがることでしょうね。いやだいやだといいながら
体の快感に蹂躙されていくなんて、その桃岩は私の趣味的にかなり、おいしい、…っ。」
言葉を遮るように飛び上がりぶんっと振られた尾に足場を崩され、おお怖い、とタキジは笑いながら
明け始めた空の高くに昇って行った。長い五色の尾羽がどんよりと曇った夜明けにわずかに輝きを
残しながら消えて行くのを見て、こんな目にあったのに桃子はタキジをやはり綺麗だと思った。
山吹の枝の囲いには桃子とイヌイの二人が残され、冷え冷えと朝の空気に立ち尽くす。
「あの…助けにきてくれてありがとう…。」
はだけた着物を押さえて兵児帯を探しながら桃子はイヌイの背に言った。
「大きなお世話だったな。悦かったんだろう?お前の息は欲望に凄く乱れていた。」
冷たい声に凍り付く。見つけた帯を片手に結ぶのも忘れて桃子はぶるぶる震えだした。
「そんなこと…。」
「じゃあなぜ跳ね飛ばせない。いやなら拒絶出来るはずだ。どうして簡単に連れ去られた。」
「だって私たちが食べた雉が奥さんだったって…」
「鬼が普通の獣と交わるかっ。そんなことに騙されたのか!馬鹿!」
「そんなこと、知らないもん!!」
向かいあい、にらみ合う。
「妖鳥の愛撫はそうとう気持ちいいと聞いてる。らしいな。そんなに濡れて。」
「誰から聞いたの。今までイヌイが食べて来た桃岩達?気持ちいいなんて、イヌイが教えてくれた
あれしか私、知らないよ!!」
自分を見下ろすイヌイの眼の冷たさに、恐怖して桃子は声を荒げた。やはり、呆れているのだ。
蔑むように乳首を捻った、あれは錯覚ではなかったのだ。自分はイヌイに嫌われたのだ。
涙が吹き出してくる。
なのになんの言い訳も出来ない。自分は確かに今、他の妖獣にいじられびしょびしょに濡れていて、
未だ体が火照って熱い。タキジも言ったではないか、淫乱だと。欲望の気もまだ続いている。それもおそらく
イヌイに知られているだろう。そうしてもう永遠に欲望が満たされる事は、イヌイに食べてもらうことはないのだ。
その証拠に…。桃子は染み古反の束をぶっきらぼうに渡される。
「せっかくそんなに濡れてんだ。着物着る前に含ませとけ、もったいねえ。」
桃子はくるりとイヌイに背を向け、着物のかげで言われた通り、もそもそと股間を拭いた。
ひっくと嗚咽を漏らしながら、いつまでも泣いてる桃子にイヌイは苛つく。
「いつまでも泣いてるな。鬱陶しいだろう!」
背後から頭を掴まれ上に向かされた桃子の頬を、ベロリとイヌイの大きな舌が涙を根こそぎ剥いで行った。
膝立ちで股間に自らの手を突っ込みながら固まる桃子が、イヌイを見上げたその目にみるみるまた涙を溜める。
今度は唇を尖らせそれを吸い上げたイヌイは、桃子の異変に声色を和らげる。
「どうしたんだ、桃子。もしかしてどこか痛いのか?あいつに何かひどい事をされたのか?」
「それはまだ食べてくれるんだ…。」
つぶやいて桃子は一気に顔をくしゃりと歪ませ、振り返りイヌイにしがみついた。
不可解に首を傾けながらもイヌイは震える桃子の肩を抱いた。冷たい肩に憐憫の情を持ち
優しく撫でさする。しくしくと桃子は泣き始め、だが先刻イヌイに言われた事を思い出し、
ごめんなさいすぐ泣き止むから、ごめんなさいと何度も声に出す。わけがわからずイヌイは
桃子の背を肩をさすりながらただそれを聞いていた。ほどなく立ち上がってきた甘い匂いに
イヌイはごくりとつばを飲んだ。
「…なに濡れてんだ。桃子、俺は何もしてないぜ?」
「ごめんなさい…。」
か細く震える声は羞恥の色を見せている。自覚があるのだろう。
「イヌイが…イヌイがお乳を触ってから…。」
乳首でイカせたあれか?とイヌイは眉を寄せる。
「ずっと濡れてるの…私…どうしていいかわからなくて…自分で…。」
211 :
102:2007/09/25(火) 22:27:39 ID:PUQGcw0a
震える声が語る内容にイヌイは自分の腹に押し付けてる桃子の顔を、むりやり上げさせて見つめた。
「や…見ないでっ…。」
桃子は真っ赤になって顔をそらす。
「なんで見たらいかんのだ。」
イヌイの声は低く、穏やかでそこにさっきの冷たさはない。
「イヌイに見られると変になる…。」
桃子の背をさするイヌイの手がするりと下にすべって桃子の尻肉の上に留まる。
同じように優しく撫でさすられるが、さっきまでとは違う熱のこもった手のひらに、小さく震えた。
「この程度で感じるのか。また濡れた。桃子、きりがない。」
「どうしたらいいの…?」
すがるようにイヌイに問う。桃子は本当にわからないのだろうか。
「イキたいのか桃子。」
違うと、首を横に振る。そしてためらいながらもイヌイの顔に手を伸ばし、イヌイの大きな口を
なぞった。訴える瞳はなにかを切実に乞うていた。
「桃子?」
「イヌイが…イヌイが食べてくれないと終わらない。」
桃子は満たされず放置された自分の欲望をついに口にした。
「どうして食べてくれなかったの?」
桃子の問いにイヌイは、あれはもうお前がくたびれていて、今夜はしないと誓ったからだと、
言いかけて、口をつぐむ。桃子が言っているのはそういうことではないのだ。ひらめく思いにまさか、と
否定しつつ、それでもイヌイはそんな桃子を急に可愛らしく思う。言ってくれればいくらでも食うぜ、
おまえの雫は極上なのに。
「だから私…だから私辛くて、あそこがうずいて…タキジさんにお尻いじられても濡れちゃて…っ。」
桃子の悲痛な叫びにイヌイは膝立ちの桃子を持ち上げ片足を肩に担いだ。大きく開かれ暴かれた秘所に
むかってあんぐりと口を開ける。
「イヌイ…イヌイに食べられたかった……っんああんっっ!!」
ぱっくりと食いつかれてそのまま女陰全体をぞろりと舐め上げられた。待ちこがれた性感に桃子は
最初のひと嘗めであっけなく達した。がくがく痙攣する腰をイヌイに支えられ、桃子もイヌイの首に
しがみついて片足立ちで駆け巡る快感に耐えた。
「イヌイっ、ああ、もっと…っ食べて…!!」
欲望に応じてイヌイは秘穴に舌を差し入れ、中の液を掻き出すように輸送する。
中ほどの上の天井に柿の種粒状のしこりが出て来て、それを突くように擦り上げると桃子はひああ、
と叫んでイヌイの頭をかき抱いた。瑞々しい透明な体液がわっと溢れてイヌイの顔をびしょびしょに濡らした。
「え…っ、何?何、今の私…っ。」
おしっこを漏らしたのかと桃子は慌てて、真っ赤になってイヌイの顔を引きはがす。
それを拒みつつ自身の濡れた顔を長いベロで拭い、桃子の両足を肩に担いでさらに顔を押し付けた。
「潮吹きだ。桃子、心配ない。美味い。」
ひだに口づけながら話す唇の動きにまた高まる。不安定に揺れる体を支えようと手を伸ばし
山吹の枝を二三束掴んで、それを引き寄せるように体を反らせて桃子はふたたび快感の滝に打たれた。
べろべろと肉芽を繰られていたが、やがて尻肉を広げられ、舌は奥まる穴にも伸びて桃子は嬌声をあげた。
212 :
102:2007/09/25(火) 22:31:32 ID:PUQGcw0a
「いじられ濡れたといってたな。イイか、桃子?」
「やっ、イヌイまでそんなとこ…恥ずかしいっ、恥ずかしい!!」
さらに溢れる蜜を指に塗り付け、桃子の小さくすぼまる桃色のアヌスにぬっと差し入れる。
「やああああう……っ!はあうっ!」
すでにぱっくりと開いた蜜壷を間近に見て、そこからどくどく溢れ出る愛液を何度もすくいとりながら、
イヌイは激しい情欲がこみ上げてくるのをはあはあと息を乱して実感する。
これでまだおぼこだなんて、ありえない。俺が食う。桃子。
アヌスの指を浅くかき回しながら、再び肉芽に吸い付き口中に転がす。舌で皮をむきそのまま嬲った。
三度目の桃子の絶頂を、膣に指を突き入れ中で味わう。そのまま四度目、五度目の山に達して桃子は
息も絶え絶えに弛緩した。指から手首にしたたる愛液を美味そうに舐めてイヌイは桃子に言った。
「教えてやる、桃子…お前のその気持ちは、欲しい、と言うんだ。」
「欲しい…?」
握りしめた枝に手を傷だらけにして桃子は緩んだ攻めに、つかの間の休息を得る。
「言ってみろ。誰もお前を拒まない。俺も…決して。」
「…イヌイが欲しい。」
愉悦に惚けた顔で言った桃子の言葉に、イヌイは指を突き立てて六度目の絶頂を与えると、声を掠らせ
仰け反った桃子の体は支えに握っていた枝を折り、空に投げ出された。
ぶんと風を切り、イヌイの尾が気を失った桃子の体を受け止める。
イヌイは桃岩の雫を腹一杯食ったはずの己のまだ満たされない飢えと乾きを、見下ろす肢体に感じて
視線を空にそらせた。
ポツポツと降り出した雨が山の気温を一気に下げて、はあはあと熱く乱すイヌイの吐息を
白く浮かせ、その激しさをイヌイ自身に見せつける。
所詮獣だ…俺も。
青白く光りを帯びる自身の毛皮に桃子を包んで、イヌイは山を下りて行った。
今回はこのへんで。