GJ!楽しく読ませていただきました。
お兄ちゃん鈍感だよお兄ちゃん、妹かわいそうだよ妹w
スク水で突入のほうが個人的にはこn(ry
>>521 うまあい、ナイスラブコメ。練られた一人称が銃刀法犯罪者二人の可愛さを
一層際だたせているな、クールな中にも初々しい照れがあるのが嬉しいぜ!
妹、生きろ。
GJ
妹人気すぎわろた
だが、俺も好きだ
GJ!そうか!!読めたぞ!
妹を入れて4ぴry
流石にこうまでくると主人公に同情するなw
最初はやけに素直クールにこなれた対応をしていると思ったら、妹で慣れていたわけか。
いいかんじにテンパってるな、主人公。
しかし、このまま消えてしまうキャラとは思えないな、妹。
黒幕系素直クール……。
おはようございますこんにちはこんばんは。これからずっとの人です。お久しぶりです。
エロを入れると言ってしまったが為にキリのいいところで切れなくなってしまいましたが、エロシーンは半分以上あります。
頑張りました。うん、俺頑張った!
なんとかご期待に添える内容だとといいんですが……
それではどうぞ。
ほんの1週間ほど前にも訪れた門扉の前に立ち、一息おいて一歩踏み出し、扉を押し開ける。
今回は事前の連絡も無くお邪魔することになったので、向こうの親御さんはたいそう驚いていた。だが挨拶もそこそこに、彼女に2階の部屋へ連行された。
パステルカラーに彩られた部屋に俺と安田は2人きりになった。
「ええんか?ちゃんと挨拶せんで。」
まだどう言おうか考えていなかった俺は、少し時間をとろうと話を逸らす。が、それは見透かされているようだ。
「そんな隙を与えるつもりはありません。話をしていただけるまで帰しませんよ?」
怖いくらいに目がマジだ。
彼女は普段から真面目な顔はしているが、そのときの感情によって目元に生まれる微妙な変化から読み取るように出来ているらしい。
……そんな些細なことに気が付くほど纏わり付かれている俺って、何なんだろう。
「大阪におった頃に彼女がおった、ただそれだけやろ?」
「でも何かあったんでしょう?……恐らく、それが先輩たちが別れた原因になった。」
図星だが、それを顔に出さないようにしないといけない。
「知らんな。俺があの人怒らしたんは確かやけど、何で怒ったかまで分かるかいな。」
「どうして理由が無いのに怒ったんですか?先輩は『自分の全てを占めていた人』の気まぐれですぐに諦めて、別れてしまうような人なんですか?」
目尻に力を込め追求してくる。彼女らしい理路整然とした語り口だ。法律関係の職業に向いているのではないか、とふと思ったり……
「どうなんですか?」
……する暇も与えてはくれない。
暫くだんまりを決め込んでいると、敵はまず外堀を埋めに来たようだ。話題を変える。
「それなら言える範囲で先輩の好きだった人のことを教えていただけますか?」
「……分かった。」
ここ何日か、ある理由から何度も巻き戻していた当時の記憶を太陽の下へ晒す。
…………………………
向こう三軒両隣、お互いの顔が分からないという地域も増えてきたとマスコミは言っているが、少なくとも俺の住んでいた地域では嘘っぱちだった。
町内のご近所同士は仲が良かったし、学校からの下校途中、隣のおばちゃんに『おかえり』と言われることも多々あった。
そんな町内に仲良くしていた幼馴染の女の子がいた。幼稚園、小学校、中学校と毎日のように一緒にいた。
愛し合っていた、というのとはちょっと違うと思う。
うまく言葉で言い表せないが、お互いがお互いを必要としていて、お互いがお互いの全て『だった』。
…………………………
「先輩はSEX、好きですか?」
思い出話に一区切りをつけ大きく伸びをすると、唐突に質問された。女の子が口にする言葉ではないだろうと思ったがいつものことだ。スルー推奨。
「俺も一応男の子やからな、興味が無いって言うたら嘘になる。」
「それならその人とも、したんですね。」
確信を持って質問してくる。気が付いていないか、と彼女の話は続く。
「今、先輩の顔すごく優しくなっていますよ。まるで自分の半身をいたわるような、そんな顔をしています。」
彼女は、本当に一つにならないとそんな顔は出来ないだろう、とも付け加えた。
女の勘、女の洞察力は恐ろしい。そう思ったのは何度目だろうか。数える気も失せるほど何度と無く経験している。
だが、初めて強く意識したのはあの時だ。それだけは忘れようが無い。
…………………………
自分のことを深く知りたいと思うのは当然のことだった。身体の傷、皺、くぼみやへこみ、お互いがお互いの身体を知り尽くしていた。
初めて愛し合ったのは中1の冬だった。あの人の部屋にあがったとき、なんとなくそうなった。どっちもよく分からなくて、何度もチャレンジした。
何度も色々な場所で身体を重ねて、2人は1つになれたと感じ始めた頃、俺の家に来たあの人を見た母親が、真面目な顔でポツリと言葉を吐いた。
「アンタ等2人は、どこまで……してるんや?」
俺はその言葉に心臓が凍りついた思いがした。表情にも出ていたと思う。だけど俺はしらばっくれた。
母親も一言、そうか、と言うとそれ以上の追求はしなかった。俺はバレなかったと無邪気に喜んでいたが、今思えばそこが最後の岐路だった。
茨を突き抜けなければならない戻る道と、一見楽に進めるが道幅が細っていく道との分岐だ。
俺は目の前に見える茨を避けた。
…………………………
「その先を聞かせてください。」
安田はお気に入りらしいぬいぐるみを胸に抱きかかえ、動揺している様子も無く続きをうながす。
「もう言いたないんや、これ以上は。今でも十分サービスしとるくらいやで?」
「それでも聞かせて下さい。先輩の全てを知りたいんです、お願いします。」
それまでは床にぺたりと座っていたが、急に姿勢を正して正座をし、両手をついて額を絨毯に押し付けた。
俺は彼女を慌てて抱き起こし怒鳴りつける。
「んなことされたって、言いたないもんは言いたない!……それに結末は想像できるやろ、こんな昼メロに毛の生えたような話。」
「先輩言いましたよね、好きな人のことを全部知りたかったって。私の好きな人は先輩なんです。だから憶測では済ませたくないんです。」
「……何で俺が教えなたらなアカンねん。」
「先輩本人から聞くから意味があるんです。先輩は私のこと、嫌いですか?」
顔は好みのタイプだし、『宇宙人』と呼ばれる奇行にも慣れた。何より腕の中に納まっている彼女は母性本能をくすぐるように小さく震えている。
これで墜ちない男がいるのなら、そいつとはお友達になれそうにない。だが嘘を吐く。
「嫌いや……ない。やけど、好きでもない。」
「じゃあこれから好きになっていただければ結構です。……今は、身体の震えが止まるまでこうしていてください。」
背中に手を回されぎゅうと抱きつかれた。安田は顔を俺の胸に押し付けて震えている。
俺は自分の心臓の鼓動が早くなるのを感じながら、されるがままになってしまった。
そのままでたっぷり10分の間、2人とも一言も発しなかった。顔を上げた安田の身体はもう震えてはいなかった。
ほっとした俺は、静かだった間に思いついた質問を安田にぶつけてみる。訊きたくないが、訊かなければならない質問だった。
「身体震えてたんってさ……俺のせいやんな?」
恐る恐る切り出す。最近、安田が自分から触れにくることが減ってきて気にかかっていた。
カウンター席で並んで座るのを良しとしなくなってきたのもあの日からだし、今日だって、俺の母親の前で腕を抱きしめてきたくらいしか近付いてはこなかった。
彼女は一瞬ハッとこちらを見上げ、それから顔を伏せて口を開く。
「いいえ、私のせいです。調子に乗って自分が痛い目を見ただけなんですから。……自業自得です。」
嫌な予想が当たった。心がズシンと沈み込んで、目の前がチカチカしてくる。
「自分のせいや無い、俺がやったんや。」
「違います!」
珍しく声を荒げ、背中に回されたままの腕が強張る。
「大丈夫ですから。……怖くないですから、気にしないでください。」
再び始まった震えを押さえ込むように、腕が俺の胴体を締め付ける。
「ゴメン。」
俺にはそれしか言えなかった。
…………………………
愛し合えば、どれだけ気を付けていたとしても来るものは来る。いや、来なくなる、の方が正しいか。
高校にあがる前の少女なのだから生理は元々不安定だったが、流石に3ヶ月も来なければ病院の世話になるのが普通だろう。そうして、妊娠していることが分かった。
あの人の親からはなじられ、蔑まれ、無視された。俺は怒られることに苦痛は感じなかったが、あの人が自身の親から責められていると考えるのは胸が張り裂けそうだった。
結局、子供を育てることも出来ない俺達が唯一出来たことは、堕胎だった。
…………………………
ぼうっと昔の事を考えていると、腕の中の姫君が伸び上がり心配そうに顔を寄せた。
「……辛いことなら、どうしても話したくないことなら話さなくてもいいですよ?」
その代わりに楽しかった思い出を聞かせてほしい、と言う。彼女に気を遣わせてしまったが、その言葉に鬱々とした気分になりかけた心が一転、開けた。
それなら一晩あったって語りつくせない。だが、話し始めるその前にやることがある。
「よいしょっ。」
「え?」
臍下丹田に力を込めるように踏ん張って彼女を持ち上げた。俗に言う『お姫様抱っこ』と言うやつでベッドに向かう。
「あの……」
「ここからはただのノロケ話やからな。気ぃ楽にして、寝っ転がって聞いといたらええ。眠かったら寝てまえ。」
静かに腕の中の彼女をベッドに降ろすと、俺自身はその縁に腰掛けた。
何から話そうかと考える暇も無く、口から思い出が溢れてくる。
初めて遊んだこと。幼稚園に一緒に通ったこと。遠足で2人だけ迷子になって先生に怒られたこと。友達にからかわれて暫くそっけない態度をとったこと。
お互いがお互いを異性として意識しだしたこと。勇気を出して告白したこと。今更告白するなんてと笑われながら付き合い始めたこと。
初めて彼氏彼女として手を繋いだこと。深夜に家を抜け出して公園で語り合ったこと。唇に触れ合ったこと。
そして、身体を重ねたこと。
…………………………
その日は朝から天気が思わしくなかったと記憶している。黒雲が重く空を支配していたが、天気予報では夜半過ぎまで雨は降らないと言っていた。
放課後特に用事の無かった俺は彼女の部活動が終わるのを待って、2人で手を繋いで帰っていた。そうしているうち雨が降り出し、学校に近かった彼女の家に避難した。
濡れネズミになって渡されたバスタオルで身体を拭いていると紅茶をどうぞと誘われた。
冷えた身体に暖かい飲み物はありがたかったから、ずぶ濡れの靴下を脱いであがらせてもらい、彼女の部屋へ入った。
濡れたYシャツと冬の寒さに奥歯を打ち合わせながら砂糖のたっぷり入った紅茶を啜っていると、なんとなくあの人と目が合った。
寒いのなら脱げばいい、とあの人は立ち上がると大股で歩み寄り俺のYシャツのボタンに手を掛けて1つずつ外していった。
寒さで頭がどうにかなっていた俺は、俺のシャツのボタンを外していくあの人を濡れた身体のまま抱きしめてしまった。
少しして俺は体を離し彼女の顔を覗き込んだ。冷えた身体に不快感を示して頬を膨らませていた。が、やがて彼女は腕を背中に回して1つ頷いた。
いつも彼女の側にいた俺だから何を指しているのか理解できたし、身体を許しあえた。
…………………………
行為の話に入る前に彼女は疲れて眠ってしまったらしい。すやすやと寝息を立てている。
こんな話を微に入り細に入り話すわけにもいかないから内心ではほっとしているのだが、それでも不完全燃焼な気分は拭えない。
こんな話を後輩の女の子にしたいなんてと苦笑して、ベッドの縁から尻を持ち上げ背筋を反らせる。
そのままドアを開け外に出ようかという時に、ベッドの上から声が上がった。どうやら立ち上がったときのマットレスの揺れで目が覚めてしまったらしい。
「悪い、起こしてもうたか。」
「いえ。すみません、お話を聞いている途中で眠ってしまって。」
右手でグジグジと目をこすりながら上体を起こす。
「構わん、ノロケ話なんてあんまりかっこいいことでもないしな。」
少し楽になった心は笑顔を見せたがるものらしい。少し笑って部屋を出ようとする。
「どちらへ?」
「眠いんやろ?うるさくするのもあれやし。前みたいに下のソファ、借りてるで。」
「ダメです。」
安田はベッドから降りると、まだ寝ぼけた足取りで俺に抱きついた。
「ダメです。ここでお話してください。」
「俺は熟睡しとる奴に延々思いで話をしてやる趣味は持ってないで?」
「じゃあ少し待っていてください。顔を洗ってきます。お化粧も落とさないと。」
見ると先程こすっていた左目の周りが黒く滲んでいる。手にも付いているんだろう。思わず上着の触られたところを確認する。
安田はそんな俺を押しのけるようにして、足元がおぼつかないままドアを出て行った。後ろから見ても頭がぐらぐら揺れている。
……大丈夫か?
…………………………
一度、両方の家族が顔を合わせた折に結婚したいと言ったことがある。
その時まで俺とあの人は共に軟禁状態で会うことはできなかったが、2人の意見は一致していたらしく俺が言ったことにあの人は微笑みで同意してくれた。
それだけで俺には十分だった。
当然、そんなわがままは通ることは無かったのだが。
その時以来、あの人とは会っていない。
…………………………
安田は戻ってくると、今度はベッドの縁に腰掛けた。俺はそれを見てパステルピンクの絨毯に胡坐をかく。そうして自分の膝に肘を据え、真っ直ぐに向けられている視線に応える。
「先輩。」
「……何や後輩。」
「そんなに見つめないでください。」
「ん?ああ。普段見つめられてるお返しに、な。」
口の端を持ち上げ、芽生えた童心のままに言葉を発する。こんな大人げの無いことをするのは思い出話をしたせいだろうか?
しかし化粧を落とすと言っていたが、本当にそんなことしていたのだろうか。目の前にいる少女は部屋を出る前と変化があるようには思えない。
あえて相違点を挙げるなら、恥じらいからなのか頬を僅かに染めているくらいではないだろうか。
「化粧、しとったんやな。気ぃ付けへんかったわ。」
「マスカラと薄くファンデーションを引いているだけですし、気が付かないのも当然ですよ。」
それもあるだろうが、これだけいつも一緒にいて化粧をしているときが付かなかったのは、彼女の『興味が無い』と言わんばかりの性格にも一因があるだろう。
その上、スッピンのままでも肌はきれいだし睫毛だって人並み以上に長いから、男の俺に気が付けるはずもない。
「先輩が一応男の子のように、私だって一応女の子なんですよ。……実を言うと、先輩に会うまでそんなことに興味は無かったんですけど。」
何でも、化粧の仕方が分からないのでクラスメイトや母親に教えを請うたんだとか。かわいらしいところもあるんだなあ、と少しだけ見直した。
「どこまで覚えとる?」
途中で寝てしまった彼女に訊く。
「何やったら最初っからすんで?」
「勘弁してください。好きな人がするノロケ話は辛いものですから。」
「それもそうやな。」
軽く同意して、それなら何を話そうかと頭を巡らせる。
「じゃあ今度は私がお話しします。」
そうですね、と前置きしてから話し始めた。
彼女の小さいころには妹がいたらしい。とても仲が良く、どこに行くにしても一緒だったと言う。まるで先輩と先輩の好きな人のようですね、とは彼女の弁だ。
彼女が小学校に上がるころ、近所で2人は交通事故にあった。車で撥ねた側、撥ねられた側、どちらの責任とも言えない不運な事故だったという。
「私は半年ほど入院する怪我でした。でもあの子は……」
「言わんでええ。……辛いことやろうしな。」
今、彼女は一人っ子なのだ。間違いなく、亡くなったのだろう。
「そうですか。……私はともかく、親にとっては辛かったでしょうね。1人は死んでしまって、1人は半年以上病院に釘付けにされてしまっては。」
怪我のリハビリまでを含めれば1年近く病院とお友達だった、と言う。
「大変やったんな。」
「でも、もう治りましたから。」
なんとなく気まずくなって、そのまま2人とも口を噤んでしまう。
「先輩。」
「何や後輩。」
「すみません、変な話して。ノロケ話に少しイラついてしまったので、つい作り話を……」
「オイ!何だ、報復行為か?俺のしんみりした気分を返せ。」
腹が立ったが強い眠気がテンションを下げさせる。もう朝刊が配達され始めている時間帯だ。
そろそろ本当に寝ようか、と大あくびをしながら立ち上がりドアへ向かう。が、今度も行く手を阻まれた。
「一緒に寝ましょう。」
「そんなことせえへん、って言わへんかったか?」
ここに来る車に乗り込む直前、確かに言ったはずだ。しらばっくれることを失敗した今、貞操くらいは守りたい。
「本当に寝るだけですよ。何か期待してるんですか?」
「まさか。」
「じゃあ今夜一晩、あのぬいぐるみの代わりになってください。」
さっき抱いていた大きなぬいぐるみを指して袖を引っ張る。
「あれの代わりは出来へん。手ぇくらいやったら握っといたるけど。」
これ以上ブレザーの袖が伸びるのも嫌だったし、仕方なく譲歩した。
すとんとブレザーとスカートが落ちる。
「何しとんねん。」
「着替えるんです。制服のまま寝るわけにいかないでしょう?」
クローゼットを開けてハンガーを取り出しながらYシャツ1枚の彼女が言う。
「人前で服を脱ぐな言うてるんや。」
俺が彼女の奔放さを非難しているのもお構いなしだ。膝をほとんど伸ばしたままお辞儀をするように服を拾っていく。
そうして制服をハンガーにかけると、今度はパジャマらしい服を取り出す。着ているYシャツは洗濯に出すためか脱ぎ捨ててしまった。
上下の下着だけの姿になってこちらを振り返る。
「気にしなくていいですよ。私も気にしていません。」
「着替え、終わったら教えてくれ。」
もう一度ドアノブに手をやり、今度は部屋の外に1歩踏み出してから声をかける。今すぐに退却しないと我慢がきかなくなりそうだ。
「我慢しなくていいですよ?」
……女の勘は怖い。
内側から声がかかり中に入ると、彼女は既にベッドにいた。掛け布団をかぶって背を向けており、腕だけを突き出して『おいでおいで』をしている。
その腕を捕まえて約束通りに手を握る。赤ん坊のしなやかさと大人のつやの同居した、触り心地のいい肌だ。撫でたり、擦ったりしてしまう。
「先輩。」
「何や後輩。」
「気持ちいいですね。」
「何が?」
「先輩の手が。」
「俺の?」
自分の手の平を改めて観察してみる。特別、肌に張り、つやがあるわけでもない。むしろ指先はあかぎれがひどくひび割れ、ざらざらとして痛そうだ。
部活をしていると絵の具や水が付きっぱなしになって荒れてしまうのが嫌になる。
「あたたかくて、大きくて……」
「そうか。一応、ぬいぐるみの代わりにはなったみたいやな。」
「抱きしめて寝たいんですが。」
「調子に乗るんとちゃう。」
「嫌です。」
言うが早いかベッドに引きずり込まれた。……2度目なんだから警戒しておけよ、俺。
お互い顎を少し動かすだけで唇の触れ合うくらいに接近している。
「先輩。」
「何や後輩。」
「私のこと好きですか?」
「それはさっきも訊いたやろ。」
「さっきは『嫌いですか』と訊いたんです。」
屁理屈を言う。そんなことを言い出したら『制服で寝るわけにいかない』と言ったのは誰だったか問い詰めたい。
「私は先輩が好きです。先輩は私のこと、好きですか?」
「……嫌いやない。答えは一緒や。」
視線を外して言う。だが至近距離ではあまり効果は無い。
「じゃあ、試してみましょう?好きかどうか。」
安田は少し挑戦的な口調になり、唇を押し付けてきた。
ガツンという衝撃に2人の顔が跳ね上がる。
「「〜〜〜〜〜ッ……」」
前歯が欠けるのではないかという衝撃に両者呻き声を上げる。
「……すみません、やりなれていないもので。」
安田が口元を覆って言う。何か大人の真似をして膝をすりむいた幼児を見ているようで思わず笑みが漏れる。堰を切ったように声を上げて笑ってしまう。
「……どうして笑ってるんですか。」
「いや何でも……っ」
息をするのも苦しいほど笑っている俺を見て、彼女からムッとした声が漏れる。表情はほとんど変わらないからとても怖い。
「まだお答えを聞かせてもらっていません。」
「……好き、かな。今みたいなマスコット的間抜けっぷりが。」
呼吸を回復して、でも顔には笑顔を浮かべたまま答える。途端に彼女の目が険悪になっていくが、こっちだって決して馬鹿にしているわけではない。
段々彼女が恋愛対象になってきているのも事実だが、それ以上の感情は無い。その旨をきちんと伝える。
真面目に訊かれているのだから、真面目に答えたのだ。今現在はそれ以上の感情もそれ以下の感情も持ち合わせていない。
安田はそれを聞くと、さらに身体を寄せてパジャマの一番上のボタンを外す。肩が丸々露になる。
「これだけしても?」
膨らみを精一杯強調するように身体をすり寄せる。息遣いが振動として伝わってくる。
「ブレザーの上から押しつけても効果は薄いで。」
「じゃあ、肌を触れさせればいいんですね。」
彼女は体勢を変えて仰向けになった俺の上に跨ると、もう一度、俺の視界を支配した。
2度目はおっかなびっくり近寄ってきて、そしてゆっくり押しつけられた。
舌を入れるわけでも何でもない、ただ触れるだけのキスだったが、彼女は勇気を振り絞るように目を閉じて震えている。俺は身動き1つとらずに安田を観察していた。
上半身はパジャマの下には何も着けておらず、下半身は……下着一枚だ。白を基調にした布地と、蛍光灯の光を弾いている肌が眩しい。
やがて満足したのか異変を感じたのかどちらかは分からないが、唇を離し目を見開いた。
「気ぃ、済んだか?」
無言。
「頑張ったな、お疲れさん。」
残酷な言葉だと分かってはいたが、言わずにはいられなかった。
……女の涙ってのは見たくないのにな。
落ち着くまでとずっと頭を撫でていたが、もう必要ないようだ。
「先輩。」
「何や後輩。」
「何度も言うようですが、付き合ってください。今ならもれなく私の処女が付いてきます。」
「そういうこと言うとるから相手にされてへんっちゅうことを学習しような。」
全く、こいつの不屈の精神には恐れ入る。そして、それにグラグラきている自分がいるのも事実だ。
少しは見習わないといけないのかもしれない。目を閉じ、1つ息を吐く。何を言われても仕方が無い、と1つ覚悟を決めて、
「別に付き合うてもええで。」
目と鼻の先にいる彼女にもギリギリ聞こえるかという声量で呟く。
「別に……何です?」
危険を察知した草食動物の動きで身を翻すと、信じられない言葉を聞いたかのように聞き返す。
「俺もええ加減、昔のことを吹っ切らないかんかもしれん、て、前向きすぎる後輩に付きまとわれるようになって考えるようになったんや。」
それまではそんなこと考えたことも無かったと告白しながら、手は頭から耳、頬を撫で顎を伝い唇へ到達し、少し太めの下唇を中指と人差し指でならしながら話を続ける。
十年以上昔の思い出話をすらすら喋れたのも、この間安田を泣かせてしまった日から毎日のように昔を振り返っていたからだ。
「やからってまだ吹っ切れたわけやないし、アンタの期待に添える答えが出るか分からん。」
正直に白状する。俺は卑怯だ。
「そんな理由からでもええんやったら、付き合うてもええよ。……こんな卑怯なことされて、まだ愛想尽かしてへんねやったら、やけど。」
誰かを忘れるために違う誰かと付き合うなんて褒められた行為では無い。大体、振って泣かせた後に付き合ってもいいよ、なんて虫が良すぎる。
「これだけ何度も告白しているのに、断る理由がありません。」
うれしいのか頬をほんのり染めている。彼女の優しさと自己嫌悪に眩暈がした。
「俺、最低やね。ゴメン。」
「これからは私が先輩の一番になるんです。過去は関係無いですよ。」
俺の背中に手を回すと、俺の薄い胸板に頬ずるしながら安心したように目を瞑った。
そろそろ太陽が自己主張を始める時間だ。
眠たそうにしている安田の頭を撫でながら、そろそろ重くなってきたなあと思っていると、安田は俺の胸に頭を押し当てて目を瞑ったまま、質問していいですかと言う。
「どうぞ。」
「本音を言えばHしたかったんですよね?当たってます。」
「……本能は抑えようが無いんです、ゴメンナサイ。」
だって柔らかくて気持ちがいいんだもの。両腕を彼女のパジャマの背中に突っ込んで、ゆったりと抱きしめる。
「かゆ……くすぐったいです。」
安田は快とも不快とも取れないような声音で言葉を漏らす。
背筋のくぼみや脇腹のつややかさをもっと感じたくて、自然と手が伸びて体のあちこちを撫で回していたようだ。
ボロボロに角質化して皮膚がめくれかけた指が全身を這い回れば、少なくとも滑らかには感じないだろう。
「止めよか?」
俺もまだ我慢の出来るレベルだから引き返せるし、不快に感じているものを無理に進める必要も無い。
「いえ、続けて大丈夫です。なんだか、上手く言えない感じが広がっているんです。」
では遠慮なく、と先程よりも少し乱暴に指を行き来させる。俺の背中に回された腕に少し力が入り、眉間に皺が寄る。
俺はそれを見て右腕を裾から引き抜くと、風邪の子の熱を測るときのように手の平をおでこにあてがい、鼻の頭にキスをする。
「嫌やったら止めるって言うてるやろ?」
「続けてほしいと言ったのは私ですよ。……もっと、してください。」
うなじの辺りに電気が流れる感覚がした。ゾクゾクとする自分の背筋を御しようと、左手に力を入れて強く抱きしめる。圧迫されて苦しいのか彼女が目で訴えてくる。
安田には申し訳ないがスイッチが入ってしまった。こうなってしまったらなかなか留め置けるものではない。
本能という名の奔流が、理性という名の堤防を楽々乗り越えていく。
…………………………
彼女の全てを知りたい。
そう思ったのはいつのことだったか。はっきりと自覚したのは3度目、深夜の逢瀬のときだった。そのときに初めて唇を重ねた。
いつも一緒にいたからそんなことを考える必要も無かったが、彼氏彼女の関係となってからは考える頻度が増えていった。そして爆発したのがあの雨の日だった。
それは多分、あの人も同じだったんじゃないだろうか。
そんな2人は欲望を満たそうと何度も何度も身体をぶつけ合った。
…………………………
別の考え事をしながら安田の体を愛撫したせいか、安田も限界を超えてしまったようだ。突然ガバッと起き上がると、肩で息をしている。
「や、やりすぎ……です……」
「え?」
「私も本能を抑えられなくなっちゃいます。」
表情はそのままで、目の色だけを怪しく光らせる。その目の色に釣られるように俺も上体を起こして、向かい合って座る形になる。
「満足するまで付き合うで。別に本番をせんでも満足する方法はあるしな。」
「それなら本番までして下さい。」
「無茶言いな。ゴムも無いのに出来るかい。」
首の後ろに手を回し引き寄せてキスをする。舌を散らすように彼女の口の中を舐め回して、歯と歯茎と舌を順番に蹂躙していく。
唇を離して一息つきながら顔を覗き込むと、彼女の双眸は潤んでいた。それが気になり声をかけるが、本人は平気だと言い張る。
数瞬睨み合い、そして先に動いたのは彼女だった。押し倒されて唇を奪われる。さっきの震えながらのキスではない。余裕たっぷりに舌を絡ませる。
たった一度(だろうと思われる)の経験で、今度は自分からしてみようという神経に驚かされた。きっと半分は意地なのだろう。
俺の顎に両手をあてがっている彼女と違い俺の両手は何もしていない。空いた両腕を、今度は背中と尻に配置する。
尻に手を置いた途端にぴくりと身体が跳ねる。また震えが来たら今度こそ止めにしようと考えていたが、一瞬動きが止まったくらいでまた動き出す。
ならいいか、と産毛も生えていないような柔らかい肌を指に沁み込ませる。
背中の左手はパジャマの中、肩甲骨から脇腹にかけて指を滑らせる。背骨で凹み、肉感に溢れた腹部で膨れ上がる。
尻の右手は下着の上から指でつまんだり爪で擦ったり、時折中に手を入れて蒸れた様になっている尻たぶの間を伝う。
彼女は脇腹に触れるたびにくすぐったがり、尻の谷間に手を差し込むたびに身をくねらせた。
あまりに反応するので絡ませた舌を噛まれないかと心配になって手の動きを抑えると、安田はもっとしてほしいと言わんばかりに口の中をせわしく出入りする。
それに応えようと俺も段々際どい場所まで手を伸ばしていく。
息が続かなくなって名残惜しそうに絡んだ舌がほどける。酸欠と官能でクラクラする頭にゴツンと衝撃が走っておでことおでこがぶつかる。
「いて。」
「すみません。力が、入らなくって。」
ふうふう、ふいごの様に肩を上下させて腕を突っ張っている。
これ以上は体力的に無理か。そう判断して体を入れ替え、俺が上になる。
出来ればこの体勢にはなりたくなかった。この間、この場所この体勢で彼女を泣かせたからだ。
また身体が震えたりだとかの異変は無いか、とじろじろ見ていると、彼女の全身に力が入る。心がずくりと痛む。
「先輩。」
「何や後輩。」
「早く、満足するまで、お願いします。」
熱くて甘い吐息を鼻先に受けて、俺は唾を飲み込む。
俺の不安を押し隠すように朝日が昇り、夜はもう完全に終わっている。
安田の顔の横に左肘を置き、膝を立てて体を支える。そうして空いた右手と舌で胸を愛撫する。
パジャマのボタンを全てはだけさせる。下着はつけていない。そのまま控えめな頂に口を寄せ、指はもう片方を摘み上げる。
刺激を与えるたび、子供が脇腹をつつかれたように全身が固まり反り返る。
亀の歩みのようにゆっくりと、胸をいじっていた手を臍へ滑らせる。爪を押し付けるようにして少し強めの刺激を与えつつ、口は相変わらず胸を愛撫している。
臍を2度3度さすった後、その下へ手を遣るのを躊躇した。理由は言うまでもない。
その時、彼女に両手で右腕を掴まれてギュッと握られる。
「してほしいと言ったのは私です。」
「あの時もそうやった。」
口を離して見上げて言う。先程は潤う程度の涙の量だったが、今は目尻を転げ落ちている。
「そうですよ。だから、してください。」
声ははっきりと通っている。鼻づまりをしていないところから考えると、ただ性感の高まりから自然とこぼれた涙のようだ。胸を撫で下ろす。
腕を掴まれたまま、下着を下ろさせよういうのか手を下方へ導かれた。親指がパンティにかかる。
「今度は、してくれますよね?」
この間はブラジャーのホックに手を触れさせられたが、俺はそれには応えなかった。今回は応えてやる。
少し引きおろそうとして引っかかった。尻に体重がかかっているからおろせないのだ。それ以上おろすことは諦め、指を1本だけ立てて陰唇へ触れる。
一層強く彼女のまぶたが結ばれた。それを見た俺は彼女の上体を抱き起こすと頬を撫でる。不安なのだろう。見つめられて腕が頭に回される。
「少し、入れるで。」
中指の第一関節までうずめて反応を見る。嫌がっている様子は無い。もう少し無理をしても大丈夫だろうか。
今度は第2関節まで一気に進める。安田の表情からは何も読み取れはしない。心なしか腕に力が入ったくらいか。
こうして比べるのもなんだが、あの人よりも締まりがキツイ。小柄なのが作用しているのだろうか。
「動かしてええか?」
今迄だって嫌がることを散々しているくせに、まだ了解を得ようとする自分がひどく惨めに思える。
「何度言わせるつもりですか?」
潤んだ瞳と詰まった鼻腔の持ち主が少しイラついたような声で先をせがむ。自分から腰を振って、秘所からはくちゅりと音を立った。
「そうやったな、ゴメン。……痛かったり気持ち悪ぅなったら言うんやで。」
まず第2関節から動かし、そして段々と指の根元からと少しずつ指を大きく動かしていく。
指が自由に動くほど濡れてくると、クリトリスに親指を当てて圧力をかけながら中指は中を抉る。同時に肩に回した左手は耳たぶをいじり、唇は双丘を滑る。
「うっ……ふう……はぁ、はあっ!」
最初は苦しそうに呼吸をしていたが、俺が彼女の肢体をなぞる度に吐息に艶が混じってくる。
突然頭に回された腕の輪が縮められた。胸部に顔面が押し付けられる。
「す……すみません、私、何だかおかしくなりそうで変なんです。」
「止めるか?」
「意地悪、やめてください。」
それじゃあ、と言われた通りとことんまで弄りたおす。
秘所を弄る指を3本に増やす。割れ目に沿わせて人差し指も差し入れたが、流石にきつくて動かすことが出来ない。右手を動かすことは諦めて他の部分に力を注ぐ。
今まで吸い付いたり唇で摘み上げていた乳首には、少し噛み付いたり、摘んで捻ったりしてみる。快感で少し開いた唇に指をねじ込んでみたりする。
彼女の瞳はうっとりとして何も映していないように見えるが、意識ははっきりとしているようだ。もっとしてほしいと全身で表現している。
息遣い荒く腰を振り、瞳は何も受信しない代わりに静かな言語を操る。彼女の瞳は雄弁だ。
そうしているうちに努力が実ったのか手指がぬめってきて、くちゃくちゃと音を立てながら段々動かせるようになった。
無理をさせないだろう範囲で2本の指を動かす。深くしたりバラバラに動かしたり色々試そうとしたが、そんな暇もなく彼女の身体がガクリと震えた。
「ふ、うぅ、ああぁあっ……!」
中空を、色を失った彼女の視線が舐める。頭に回されたままだった腕に強く引き寄せられる。指が強く締め付けられて奥からドロドロした液体が溢れてくる。
今度こそは何も訊かないで弄るのをやめた。これ以上は――もう十分に、かもしれないが――身体に毒だ。
息が浅く弾んでいる。彼女ではない。俺がだ。気をやってぐったりとしている安田を見下ろすようにしてベッドの上に膝立ちになり、天井を仰いで息を吐く。
気が付くとシャツの下が汗まみれになっていた。気持ちが悪い。ブレザーを脱ぎ捨てシャツのボタンを1つ開ける。
こっちに越してきてからは枯れたようになっていた。身近な女性に興味が全然持てなかったのだ。
あの人のことが理由ではない。胎児の命を奪った自分を嫌悪していたし自分の性欲を憎悪していた。その感情自体は今も続いている。
だが秘密を家族以外の人間に話せたことで多少マシになったのか、それとも溜め込んでいた分が爆発したのか、今の『元気さ』は半端じゃない。
どうやって鎮めようか頭を捻っていると、意識を取り戻した安田が俺のズボンのジッパーに手を伸ばす。
「私もしたいです。」
「せんでええ!」
何を言っているのかを察し慌てて拒否するが、安田はお構い無しに下を脱がせていく。その表情は好奇心に満ち溢れた無邪気な子供のようだ。
ベルトを外されボタンを外され、下着ごとスラックスを下ろされるまで時間は掛からなかった。今にも暴発しそうな自身が跳ね上がる。
「これが……私のここに入るんですね。」
上体を起こしまじまじと見つめる。恥ずかしい。
「私がしてもらった分、お返ししたいです。」
そりゃ本音を言えばこっちだってされたいし、このまま押し倒さない理由は無い。だが避妊具も無いのに軽々しくそういうことが出来るほど、もう子供じゃない。
「自分で何とかするから、大丈夫や。」
「自慰するんなら、私に見せてください。今後の参考に……」
「なるかボケェ!……それにこの前も言うたやろ、出来たらどう責任とるんや。それにお前の期待に沿えることはせえへんって言うた筈や。」
股間を押さえるようにしてしゃがみこんで、高さが同じになった顔を覗き込んで言った。早々に割ってしまった口と違って、体は簡単に開けない。
「これは使いたくなかったんですが……」
枕元の引き出しをごそごそやって真四角に近い形の銀紙を出してくる。中身も入ったコンドームの包み紙だ。
「どこでそんなもん買うて来たんや。」
「父も母もまだ若いですから。」
どうやらご両親の寝所から失敬してきたらしい。これなら文句は無いだろうと胸を張る安田。
……元気なのは結構だと思うが、娘に避妊具の在り処がばれてるのはどうかと思うぞ、安田夫妻。
それでもまだどうしようか迷っている俺に向かって、安田は最後の一刺しを打ち込んだ。
「ここまでしておいて、まだ期待に沿っていないと思っているんですか?」
前戯と呼ばれる行為は一通り終え、彼女も絶頂を迎えて彼女の下半身と俺の右手はもうドロドロだ。
この瞬間だけを切り取るならば、どうみても行為後です、本当にありがとうございました。
「……ええんやな?」
最後の一線を踏み越えるため、最終確認を取る。
「あんまりしつこい人は嫌われますよ。……先輩、私の処女をもらってください。」
黙って頷く。
安田の手に持ったコンドームをひったくろうとしたが、その動きはかわされた。
「その前に、もっとよく見せてほしいんです。だから……少し待ってください。」
そう言いながら、コンドームを奪おうと前のめりになった俺の体の下に潜り込んで大きくなったそれを握る。
四つんばいになった安田に覆いかぶさって俺が圧し掛かっているようになっているから、振り払おうとどちらかの腕を離すと押しつぶしてしまいそうになる。反抗できない。
無遠慮に握り締めるようなことはせず指を置く程度にしか握っていないが、かえってそれが俺を追い詰めてきて声が漏れる。
「感じているんですか?もし痛かったり気分が悪くなったら言ってくださいね。」
皮肉なのか、さっき俺が言った言葉を使ってから手を動かし始めた。最初はゆっくりしたペースだったが、段々とギアが上がっていく。
やや皮を余して指の間に挟むようにゆるく握られたまま動かされて、目の奥が締め付けられるように感じられ、視界が真っ白になる。
「くっ……もうアカン、やめてくれ!」
それまでスラックスに押し込められていて我慢してきた上にこの仕打ち。半分悲鳴のような情けない声を上げ腰を引いたが、それがまずかった。
俺に急に大きな声を上げられ、腕の動きはそのままに安田の握力が増したのと、俺の腰が引いたのが同時だった。それがとどめになり、勢いよく精を放ってしまう。
音の無くなった室内で俺は、顔を真っ青にするべきか真っ赤にするべきか、複雑な心境を抱えて動きを止めてしまった。
「これが……せ、いえき?」
俺の下でまだもぞもぞやりながら呟くが、俺には答えられない。『軽く扱かれただけで達しました』なんて言えない。
俺だって一応オトコノコなんだから、そんな情けないことは言えない!
「何だか、変な、うん。」
体の下で何か舌に絡んでいるのかクチャクチャというノイズ交じりに何か言っている。何を口にしているか気が付いたのは数秒後だった。飛び起きて突き放す。
「何を……」
予想通りのことをしていて絶句し、天を仰いだ。布団や彼女の体に飛び散り付着したザーメンを口に運んでいる。
「どうかしましたか?」
平然として指ですくった粘液を口に運ぶ。赤いシャツを着た黄色い熊が蜂蜜を舐めているようなその光景に性的興奮を覚える前に嘆息してしまう。
「口に入れて危険なものではないのですから心配する必要は無いと思うのですが。」
「いやまあそうやけど。」
あっけにとられている俺の表情に疑問を投げかけてくる。
艶かしい表情をしていればまだしも、いつもどおりの無表情でペロペロやられたんじゃねえ。
「おいしくは無いですね。」
「……それやったら舐めるの今すぐ止めなさい。」
こんな漫才をしている間にも、一度放って少し収まっていた分身がまた鎌首をもたげてきた。そこを凝視されて赤面する俺。
「……しょうか、本番。」
視線を反らせるためにはその話題しかなかった。
「はい。」
安田は一歩擦り寄って、先程の包みを差し出した。
女の側を仰向けにして、準備を施したモノを入り口に当てる。先程弄ったのでもう十分に濡れている。後はほんの少し腰を押し進めるだけだ。
俺は両手を彼女の腰に回し、彼女の手は背中に回される。
「いくで……」
一声かけてゆっくり押し進める。カリまでは入ったが、入り口からきつく締め付けてゆっくりでもなかなか前へ進めない。
「キツイ、ですか?」
「うん。痛くないか?」
「はい。」
「多分このへんから痛くなるで。」
会話をしている限り苦しそうな様子も無いので、もうちょっと無理が出来るだろうか。押し込む行為を続ける。
もう処女膜の直前まで進んでいたようで、突いたと同時に外と中を隔てていた薄い膜が破られた。
「んんっ!」
破瓜の瞬間呻き声を出したが、最奥まで突き入れても静かなものであっさりと貫通の儀式は終了した。
あの人と初めてしたときは痛がってどうしようかとオロオロしたはず……なんだけど、下に寝そべっている彼女は痛がっている様子は無い。
「痛くないか?」
「痛いですよ。でも快感が勝っていて、そんなに苦痛は感じません。」
口から発する言語はこう言っているが、その自己主張の強い瞳は早く早くと急かしている。その目に惹かれるようしてに俺は何も言わずに腰をグラインドし始めた。
「あっあっああっ、急に動……てすご……も……」
体の中心を大きく揺すられて口が半開きになっている。無性にキスがしたくなって開いた口を口で閉じる。
「う、むっむっむっんん!」
お互いの舌を絡め合い、下半身はお構い無しに突きまくる。合わさった口の端から唾液が垂れて、安田の耳の縁をなぞっていく。
息が苦しくなって唇を離し、2人同時に大きく息を吸う。
「先輩。」
「何や後輩。」
「もう、ダメです。さっき以上に頭の中がふわふわしておかしいんです。」
「最後まで付き合うたるから、心配せんでええ。俺も限界近いし、思う存分イったらええよ。」
事実彼女の中はきつく、奥まで入れた時点で出そうになった。それを誤魔化す為に一息ついたくらいだ。
お互い最後まで行き着くにはそんなに時間は掛からないだろう。
ぐぷっぐぷっぐぷっぐぷっ。血が混じった愛液が卑猥な音を立てている。
何度も突き上られて切ない顔を見せる安田の顔が俺の興奮を増幅させる。きっと俺の顔も情けない顔をしているのだろう。だが引き締めることも出来ず、快感に身をゆだねる。
そこから間もなく俺も限界が見えてきた頃、彼女の体が不自然に震えだした。
「やっ……あああぁ!イ、きますっ、イくぅっ!」
叫ぶと同時に膣が収縮して彼女の背中がエビ反りになる。俺も限界だった。今まで以上に締め付けられている中に数度出し入れして俺も果てた。
「先輩。」
「何や後輩。」
「いつ私の子宮に精子を注いでくれますか?」
「……寝ろ。」
「眠れません。」
「ええから寝ろ。」
「でも。」
「早よ寝ぇ。」
もう起きないといけない時間だが、今日も平日なのだから少しは寝ておかないと体に悪いだろう。
「体が火照って眠れません。」
「……このまま添い寝しといたるから寝てくれ。」
「はい。」
結局ぬいぐるみの代わりをすることになったなあ、と考えながらうつらうつらした頭で考えた。
と、以上です。
男の行動が支離滅裂だとかも言わないで!ああ俺構成力ダメダメだなあorz
まだまだ昔の女出したり妹に男くっつけたり色々やりたいことがありますが、なんか変な電波受信したので次は他のシリーズを書いてみたいと思います。
容量的にこのスレ中に投稿できるかなあ?
>>521 GJです。改行が多くて見やすいし、話は明るいし面白かったです。エロシーンも期待!
妹の逆襲にも期待!
ああ何で俺、こういう風に書けないのかなあ。才能がうらやましい。
>妹に男をくっつける
妹に彼氏を作ってやりたいという意味ですので近親相姦は出さないつもりです。念のため。
これからずっと氏GJ!
そうか、そんな過去があったんだ・・・
とりあえず俺は二人が真の意味で愛し合うのを待ち続ける。
なんという投稿ラッシュ。世間はまさにGW。
お二方ともGJです!
>>467の同級生型敬語系素直クールを書いた者です。
沢山のGJを頂き、ありがとうございました。
調子に乗って続編的なものを書いてみました。
推敲して、夜にでもアップする予定です。
悲しい話だ、と彼女は呟いた。
暗い部屋、煌々と灯るモニタの明かり。そこに映る文字の端々から二人の、過去に対する想いを感じ取っていく。
「だが安田よ、そういう過去を背負った男を包んでやれてこそ、女なのだ」
彼女はそう呟くと共に、自分もそうありたい、と強く思う。
それはそうとして、やはり下着を脱いだままの閲覧で正解だった、と彼女は、濡れた秘部をまさぐり始めたのだった。
つうわけで、GJですた!
549 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/28(土) 13:54:11 ID:QHbjN07L
あと少ししたらSS投下します。前作の続きとなります。
長くなってしまったので、さるさん防止として、
2回に分けて若干間をおいて投下いたします。
-同級生型敬語系素直クール その2-
「ただいま帰りました」
「あら、おかえりなさい。瑞希」
図書室での情事後、その後始末が終わり、夕方遅くなってから自宅に帰った雪雨瑞希(ゆきさめ みずき)を、
ややのんびりとした声が迎える。
奥からパタパタとスリッパをならして、瑞希よりも頭2つ分近く背の高い女性があらわれる。だいたい、20代前
半から後半ぐらいだろうか。
まずその胸に目が行く。エプロンをこれでもかと押し上げている豊かな膨らみは、弾丸ライナーのように平坦
な瑞希のそれとは対照的だ。いや、対照的なのはそこだけではない。
女性にしては長身の体躯、豊かな胸にくびれたウエスト、そこから滑らかに裾野を広げ、ハートを逆さにした
ような見事なヒップ、むっちりしとつつもスラリとした脚。
普段着+エプロンという所帯じみた格好なのに、彼女が歩く玄関までの廊下が、まるでファッションショーの
舞台になったかのような錯覚を覚える。
「今日は遅かったのね。…あら? そちらの男の子は?」
にこやかな表情を絶やさずこちらを見る女性に、瑞希がいつもように平坦な口調で答える。
「彼は私の恋人で、遅くなった私を家まで送ってくれたんです」
その声で、明俊ははっと我に返った。そうだ、ここはパリやミラノのショー会場ではなく、雪雨さんの家だった。
「は、はじめましてっ。日阪明俊(ひさか あきとし)と申しますっ!」
びしっと気を付けの姿勢から、ずばっと最敬礼を繰り出す。明俊は緊張の余り、動きが堅くなる。
こ、恋人として紹介されてしまった…。いやまあ雪雨さんとは確かにそういう関係なんだけど、付き合い始め
たその日の内にこんな状況になるとは思わなかった。この女の人は、雪雨さんのお姉さんだろうか。
学校を出る時、家まで送って行くと言ったのは明俊だが、家の前で「それじゃ、また明日」と帰ろうとしたら
「そんな急がなくてもいいじゃないですか」と瑞希に手を取られ、半ば強制的に玄関に上がる羽目になってし
まった。カッコつけて「送って行く」なんて言わなきゃ良かったと一瞬後悔したが、でも僕の、か、彼女…なん
だし、自分も送って行きたかったし、でも、こんな状況はまだ心の準備が出来ていないと言うか、と、揺れ動く
思春期の男心。
そんな明俊に、長身の女性がのんびりと答える。
「あらまあ。瑞希が恋人を連れてくるなんて思わなかったわ。
はじめまして。瑞希の母です。わざわざ娘を送ってくれてありがとう」
穏やかな微笑みに、明俊の緊張が幾分おさまるが、彼女の言葉の意味に気付いて、後から驚きが来た。
……え? 母?
「え? お母さんですか? てっきりお姉さんかと…」
だって、女子大生かOLくらいの年齢に見える。高校生の娘を持つ母親とは思えない。
「あらあら嬉しいわ。お世辞が上手なのね」
単なる勘違いなのだが、彼女は頬に手をあて、相変わらずにこにことしている。
この人が雪雨さんのお母さんかあ。想像と違ったなあ…。明俊は思った。
いつもにこにこしてそうだし、体型だけじゃなくて表情も対照的だなあ。
と、観察してる明俊の左腕が、不意に左へ引かれる。
「わ、雪雨さん!?」
瑞希がまるで自分のものだと主張するかのように明俊の腕を抱き締める。お、お母さんの前でこんなっ! と
明俊は泡を食う。振りほどく訳にもいかず、わたわたと慌てることしか出来ない。瑞希の無表情に見える顔の奥
に、憮然とした感情が浮かんでいるように見える。
「そんな顔しなくても、取らないわよ。瑞希」
娘の突飛な行動に全く驚きを見せずに、母親は微笑ましそうにくすくすと笑う。
「ほらほら、放してあげなさいな。彼、困ってるわよ?」
ぴたりと寄り添っている娘とあわあわとしている彼を見て、まるで学生時代の自分と夫のようだと彼女は思う。
自分達も外から見たらこんな感じに見えたのだろうか? 彼女はくすぐったそうに微笑む。
「日阪君は私のです。手を出したら母さんでも許しませんよ?」
「そんなことしないから、安心なさい」
母親の言葉の真偽を見定めるかのように、瑞希が敵意むき出しでじっと見つめている。
なんでこんな状況になってるの!? と明俊は一人慌てる。
「お母さんが愛する男の人は、お父さんだけよ? 他の人なんて目に入らないわ。
今までも、これからもずっとそうよ」
にこにこしたまま答える彼女をみて、明俊は納得した。あー…、なるほど。雪雨さんの母親だ。
「…そうですね。確かに父さんと母さんを見てると納得出来ます」
瑞希はそう言って、きつく抱き締めている腕を緩める。明俊は、瑞希が発していた敵意が波が引くかのように
すうっと穏やかになったように感じた。
…これは、浮気なんかしたら殺されそうだ。明俊は思わず気を引き締める。実の母にも対してもこんな調子
じゃ、浮気なんてしたらどうなるか分からない。当然、浮気などする気はさらさら無いし、むしろ、自分が先に
愛想つかされてしまいそうだが、彼女の敵意が自分に向けられた時の事を想像して、明俊は背筋が冷たくなる。
でも、なんていうか。こんな些細な事で嫉妬する彼女がとても可愛いというか。好かれてるってことがはっき
り分かって、なんだかとてもくすぐったい気持ちになる。
「じゃあ、僕はこの辺で…」
未だ腕を抱いている瑞希から、さり気なくするりと腕を抜き、頭を下げ、明俊はそそくさと玄関のノブを掴む。
「あら、もう帰るの? 上がって行ってくださいな」
「日阪君、上がっていってください」
ステレオで言う母娘に、明俊は慌てて断る。
「いえいえ! もう遅いですし、お邪魔する訳には」
挨拶だけでいっぱいいっぱいなのに、家に上がるなんで無理だ。
「遠慮しないで。そうだ、晩ご飯食べて行きなさいな」
「そうですね。折角ですから、晩ご飯“も”食べて行ってください」
「いえそんな! お気持ちだけ頂いておきます!」
なぜか強調するかのように“も”を付ける瑞希をとりあえずスルーして、明俊は頭をさげて辞退する。
「あら、もうすぐ用意出来るのよ?」
「私はさっきのでお腹がいっぱいですが、日阪君は逆にお腹空いたんじゃないですか?」
「ちょっ!」
何言っちゃってんのーッ! 思わず叫びそうになる。
「あら? 瑞希、何か食べて来たの?」
「いえ、特に何も」
頭に?マークを出してる母親をよそに、瑞希は明俊を真っ直ぐ見上げ、
「晩ご飯“も”美味しいですよ? ですから、晩ご飯“も”食べて行ってください」
と、いたずらっぽく微笑む。
言外に、「さっき食べた私は美味しかったですよね?」と言ってるのが分かった。
な、な、な…! 明俊は驚きの余り、口をぱくぱくとさせる。
なんなのこの娘!? ここに不純な生徒がいるよ! PTAは何してるの!?
「瑞希もそう言ってるし、せめてお茶だけでもどう?」
そんな二人の様子に気が付いていない調子で言う母親の言葉で、明俊ははっと閃く。
びしっと姿勢を正し、
「お言葉に甘えさせて頂きたいところですが、こんな時間ですし、今日は雪雨さんを送りにきただけなので、
これで失礼させて頂きます。一度、キチンと御挨拶に伺いたいと思っておりますので、その時に改めて
お邪魔させて頂きます」
と、スラスラと自動書記のように言葉を発し、ペコリと丁寧に頭を下げる。
「あらそう? じゃあ今度いらしてね。楽しみにしてるわ」
「そうですね。そんな気を使ってくれなくてもいいんですが、そうことなら、また今度招待しますね」
一部譲歩することでこちらの目的を通す、そういった交渉術があったことを明俊は思い出していた。とっさ
に言った割には上手くいったようだ。
少し残念そうに眉を下げながらも、感心したように微笑む瑞希ママと、無表情の瑞希。だが、瑞希の瞳の奥
が微かに燃えているように見えるのは、明俊の気のせいだろうか。彼女が言う招待に、明俊は何か薄ら寒いも
のを感じるが、今日の所はこの状態から抜け出すのが先決だ。
「それじゃあ、お邪魔しました」
「あ、日阪君。ちょっと待っててください」
玄関を出ようとする明俊に瑞希はそう言うと、家に上がってパタパタと走り去る。やや間を置いて、紙袋を
持って戻ってきた。
「お土産です。温かい内にどうぞ」
「あら瑞希、気が利くわね」
どうやら何か料理を詰めて持って来てくれたようだ。明俊は晩ご飯を断ったことに罪悪感を覚えながら、紙
袋を受け取る。
「お口に合えばいいんだけど…」
「食が進むと嬉しいです」
と言う二人に明俊は、いえそんな、と手を振る。
「有り難く頂きます。こちらこそ、せっかくのお誘いをすみません」
「感想聞かせてね?」
「そうですね、私も是非感想が聞きたいです」
「はい。必ず。──それじゃ、お邪魔しました」
本日2度目の挨拶をして、明俊は玄関を出た。
* * * * *
外はすでに黄昏れ時を過ぎ、藍色の空が明俊を出迎える。
夜になり、冷えてきた空気を胸一杯に吸い込み、大きく吐き出す。
あー…、緊張したなあ…。明俊はこりをほぐすように首を回す。
まさか雪雨さんのお母さんに紹介されるとは思わなかった。まあでもそんなに悪い印象を与えなかったと
思う。雪雨さんのお母さんが優しそうな人で良かった。
今日は色んな事があったな。というかありすぎた。雪雨さんと付き合う事になったばかりか、学校でセッ…
エッチ、しちゃうし、そのまま、玄関だけとは言え、家にお邪魔しちゃうし。
雪雨さんの大胆な言動にはこれからも振り回されそうだけど、でもそれは、それだけ彼女が僕のことを好き
だってことで、そう考えると胸が熱くなって、なんだか落ち着かなくて、頬もなんだかゆるんじゃって。
ああもうっ! 家に向かって歩く足が止まる。今すぐ彼女の家に戻って彼女を抱きしめたい。頭ではそんな
事出来ないと分かっているけど、自分の腕の中にすっぽりと収まって幸せそうに肩口に額を押し付ける彼女を
思い出すと、もう、腕と胸が何かしびれたようにぞくぞくする。
あー。ハマるってこういうことなのかなあ…。
明俊はもう、引き返せないくらい瑞希が好きになっている自分を自覚した。
* * * * *
そんな事を考えながら、幸せな気分で自宅に着いた明俊だが、お土産として渡された紙袋の中身を見て、
瑞希の斜め上っぷりを再確認する。
「お土産って、これ…パンツじゃないか……」
今日一日、様々な予想外の展開を乗り越えた明俊だったが、今度こそ膝から力が抜けて崩れ落ち、がっくり
と床に手を付く。
料理もちゃんと入っていたが、紙袋の一番下に見覚えのあるショーツがビニール袋にくるまって入っていた。
確か、これは今日雪雨さんが穿いてたパンツだ。行為の時にびしょびしょになってしまったが、さすがにノー
パンで帰る訳にも行かず、家が近いですから平気です、と彼女は穿いて帰った。
まさにorz状態のまま明俊は、お土産を渡す時の彼女の言葉を思い出した。
「温かい内にどうぞ」って、脱ぎたてって事!? それにどうぞって!
「食が進むと嬉しいです」って、お、オカズにしろと!?
「是非感想が聞きたいです」って、それ聞いてどうするの!?
明俊はしくしくと女の子のように泣きたい気分になった……そう、なった、はずなのに。
え、ちょっと待って。なんで、こんな…。
意に反して、ぞくぞくと背筋が震えるのを感じて愕然となる。股間がむくむくとズボンを押し上げる。
思わずビニール袋に入った瑞希のショーツに目が行く。柔らかそうな素材で出来ており、小さく丸まったそ
れは、見た目にもふかふかとした印象を与える。白を基調とした布地で、小さな薄ピンク色の花柄が散らばっ
ていた。クロッチの部分を中心に彼女の染みが広がり、卑猥に濡れそぼっている。
明俊は喉の奥がかぁっと熱くなり、息が自然と荒くなる。
これは、雪雨さんがさっきまで穿いてたもので、この染みは、彼女が興奮して出来たもので、彼女が興奮し
たのは、ぼ、く、な訳で、僕に対して、こんな、絞れるくらい、壊れた蛇口のように雪雨さんは、濡らして。
明俊の頭に、図書室での情景が浮かび上がる。小さな彼女が、僕にまたがって、頬を染め、髪を振り乱して
涎を垂らしながら、腰を振っていた。
明俊は喉の奥が、まるで胸焼けしたかのようにジンジンと熱くなるのを感じた。ズボンの中のものは呆れる
ぐらい硬くなっている。熱にうかされたかのようにビニール袋に手を入れて、震える指がそれを掴んだ瞬間、
ビクリと固まる。……温かい。
濡れて、冷たくなっているはずなのに、まるでたった今この状態になったかのような温かさを放つショーツ
に、明俊は理性を失った。
単純に考えて、作り立ての料理と一緒に入っていたのだから、その熱に温められただけなのだが、程よく、
人肌に温められ、さらにほわほわと柔らかな感触を持ちつつも、さらさらとしたショーツの肌触りを手のひら
に感じた瞬間、もうそれに自分のものを擦り付けることしか考えられなかった。
* * * * *
……。
………。
………や…。
…やって、しまった…。
ああっ…。明俊は今度こそ、本当に、しくしくと女の子のように泣きたい気分になった。
遠い空にいる父さん、母さん。お元気ですか? あなた達の息子は、女の子に下着を渡されて興奮する変態
になってしまいました…。
* * * * *
どんなに落ち込んでいても、朝はちゃんと来るわけで。
明けない夜はない、という希望的な意味合いの言葉よりも、否が応にも朝が来る、と言った歓迎したく無い
方の心情で、明俊は通学路を歩く。
未だに夕べの自己嫌悪を引きずっていた。自慰の後は、大抵自己嫌悪に陥るものだが、あの時のそれは別格
だった。なまじ、物凄く気持ちよかっただけに罪悪感もひとしおだ。
そう、気持ちよかったのだ。物凄く。
女の子の下着でしちゃうなんて、どれだけ変態なんだ僕は。と明俊はがっくりとうなだれる。
どんな顔して雪雨さんと接すればいいんだ…。と、昨日とまるで変わらぬ状態のまま、とぼとぼと歩く。
そんな彼に、凛とした声が掛けられる。
「日阪君、おはようございます」
まさに、ちょこん、という擬音がぴったり当てはまるような感じで、瑞希が正面に立っていた。
朝日を背面から浴び、輪郭にキラキラと輝く光の粒を纏いながら歩み寄る瑞希が、それはそれは清らかで、
穢れ無いものに見えた。すっきりとした夏服も、彼女の清純さを引き立てているように見える。
長袖のブラウスに透ける細い腕も、プリーツスカートから覗く丸いひざ小僧も、紺のハイソックスに包まれ
た細いふくらはぎも、下手に触れたら壊れてしまいそうな危うさを感じさせる。
「お、おはよう。雪雨さん」
愛くるしい彼女の挨拶は、本来なら歓迎すべきものだが、今の明俊には眩しすぎて直視出来ず、後ろめたさ
に思わず視線を反らして挨拶を返してしまう。
不意に、ぐいっと顔を正面に向けられる。瑞希が正面から明俊の頬を両手で挟んでいた。
そのままついっと背伸びをし、唇に柔らかな感触が生まれる。
目の前に軽く瞑った目蓋が見える。長い睫が微かに震え、白磁器のような肌に、うっすらと青い血管が透き
通っているのを確認出来るくらい、至近距離。ふっと、なごり惜しむかのように唇が離れ、すとんと瑞希が踵
を着く。彼女は両手で明俊の頬を挟んだまま、僅かに微笑む。
「おはようのキスです。目、覚めました?」
遅れて、やっとキスされた事に気付いた明俊は顔に血が集中する。挟まれた頬が熱い。
「あ、え、う…」
しどろもどろになって言葉が出ない明俊に、瑞希は、
「まだ覚めませんか? じゃあもう一回」
と、背伸び。
「さ、覚めた! 覚めたよ!」
我に返った明俊は、慌てて仰け反りキスをかわそうとするが、頬を挟んでいた両手がするりと首に巻き付き
引き寄せられる。爪先立ちし、顔を目一杯上に向け、首にぶら下がるような形でキス。
「んー! んー!」
細い腕の、どこにそんな力があるのか。がっちりと首を抱えられ、逃れられない。
「んんっ! っぷあ!」
仕方なく、彼女を抱きかかえるようにして持ち上げ、顔を離すことに成功する。キス中の呼吸が未だに上手く
出来ない明俊は、肩で息を付く。恥ずかしいやら苦しいやらで、顔が真っ赤に染まる。
「日阪君の方から抱き締めてくれるなんて嬉しいです」
「雪雨さんが放してくれないからじゃないか…」
首に腕を絡め、抱きかかえられた格好のまま、嬉しそうに微笑む瑞希に、明俊はため息を付くことしか出来
ない。
「私としては、このまま教室まで運んで欲しいところですが、どうでしょう?」
「……却下します」
朝からどっと疲れた気分で、明俊は瑞希を地面へ降ろす。羽のように軽くて、人形みたいに細いのに、とても
柔らかくて温かい彼女をこれ以上抱き上げていると、ヘンな気分になってしまいそうだった。
そもそもここは通学路だ。幸い、周りに人はいなかったから良かったものの、こんな光景をクラスメイトに見
られたらと思うと気が気ではない。
「じゃあ日阪君の左腕で我慢します」
言うが早いか、瑞希は猫のようにするりと明俊の左側に回り込み、腕にしがみつく。
「…えっと、学校が近くなったら離れようね?」
「却下します」
左腕に感じる温かな感覚にどぎまぎしつつ、諭すように言う明俊に対し、瑞希は即答して腕に顔を擦り付ける。
「教室まで、いえ、授業が始まるまで放したくありません」
「いや、いやいやいや!」
彼女ならホントにやりかねない。そりゃ、しがみつかれて嫌な気はしないけど、時と場所というものがあっ
て、学校と言う集団社会で生活している以上、時には自分の主張よりも周りに合わせる事を優先することも大
事だと思うんだ。と、彼女を必死に説得する。
「私の目的は、日阪君と私の関係を学校中の生徒に知ってもらうことですから、注目されるのはむしろ好都合
です」
「な、なんで知ってもらいたいの!?」
「日阪君に悪い虫が寄らないようにするためです」
「心配しなくてもそんなの寄って来ないからっ!」
残念ながらというか幸いにもというか、約17年間生きてきて、そんな経験は一切ない。明俊は思わず頭を抱え
そうになる。
「あ、あのね? 生徒はともかく、先生に注意されると思うんだ」
そうだ。自分達が通う高校は、特別、風紀に厳しい訳では無いが、学校内をこんな状態で過ごしている生徒
を生活指導の先生が放っておくわけがない。
「生徒同士で腕を組んではいけないという校則はないと思います」
「な、無いかもしれないけどさ、その、心情的に反感買いそうでしょ?」
「先生にどう思われようと、私は気にしません」
僕は気にするのーッと叫びそうになるのを押さえ、明俊は瑞希の顔を覗き込むようにして、あえて、責める
ような口調で言う。
「雪雨さんはさ、来年も僕と同じクラスになりたくないの?」
「なりたいに決まってるじゃないですか」
なんでそんな当たり前のことを聞くのか分からない、といった風に瑞希が答える。
「じゃあ、少しは自重しないと」
「…どうしてですか?」
我が意を得たりといった調子で言う明俊を、瑞希は不思議そうに見上げる。
「ほら、クラス編成って、先生が決めるでしょ」
「そうですね。どういう基準か分かりませんが、結構ルーズに決めていると聞いた事があります」
「うん、だからさ、“学校内でイチャついているけしからん生徒がいる”って先生に思われたら、確実にその
生徒は別々のクラスにされるよね?」
「…………」
明俊の言わんとしていることを理解して、瑞希は不機嫌そうに目を反らす。
こんな言い方は卑怯だな、と思いつつも、明俊は心を鬼にして口にする。
「僕は、来年も雪雨さんと同じクラスになりたいなあ。高校生活最後の1年だし」
ごめんね雪雨さん。僕だって雪雨さんとイチャイチャするのは嫌いじゃないし、むしろ好きなんだけど。急が
ば回れというか、その方が結果的に僕達にとって良いと思うんだ。
「……でも、それでも私は、日阪君とこうしていたいんです…」
瑞希は駄々をこねる子供みたいなことを言って、うつむく。明俊の腕がぎゅっと抱き締められる。
そんな調子で言われたら…雪雨さん卑怯だ…。明俊は胸が痛くなった。耐え難い痛みを覚え、とてもたまら
ない気分になる。
僕の腕を抱き締める彼女の姿が、まるで、お気に入りのおもちゃを大人の勝手な都合で取り上げられそうに
なっている子供みたいに見えた。腕をしっかと抱き締め、悲しげにうつむく彼女は、とても健気で頼り無く、
僕はたまらなく胸が苦しくなる。
「…あー、」
明俊の声に、彼女は微かにビクリと震える。拒絶されると思っているのかもしれない。明俊は気付かない振り
で、素早く言葉を続ける。
「あのさ、僕、環境美化委員でね? 週に3日、30分ぐらい早く学校に行って、花壇とか植え込みに水をやった
りしないといけないんだ」
「…?」
頭の後ろを掻きながら、恥ずかしげに視線を反らし、早口で言う明俊を、瑞希が見上げる。
「だからね? その、週に3日だけだけど、その時なら、先生も他の生徒もいないし、もし雪雨さんが良ければ、
30分早起きしてもらわないといけないけど、こうやって腕を組んで学校に行ったり、キ、キスしたりしても
平気だと思うんだ。……それじゃ、駄目かな?」
途切れ途切れ言う明俊のセリフに、瑞希の顔が笑顔に変わる。
「…やっぱり、日阪君はとっても優しいですね。素敵です。惚れ直しました。大好きです」
初めて見る、彼女の満面の笑顔に、明俊は思わず見とれてしまう。瑞希は心の底から嬉しそうに明俊にしが
みつく。
「週に3日以外でも、学校の近くまでなら腕組んでもいいんですよね?」
「あー、うん」
「良かった。──行きましょう、日阪君」
満面の笑顔のまま、腕をぐいぐい引っ張って歩く瑞希に、明俊は困ったような、嬉しいような、なんとも言え
ない笑顔でついていく。
「日阪君。私まだ、学校でイチャつくのを諦めてませんよ?」
「え!?」
驚く明俊に、瑞希はこちらを真直ぐ見上げる。
「今年一年は我慢します。でも、来年は最後ですから、先生を気にする必要はありません」
いつものいたずらっぽい笑顔で、瑞希は続ける。
「一年間おあずけされる分、来年はすごいことしちゃいますよ? 覚悟しててくださいね?」
そう、楽しそうに宣言する瑞希に明俊は、
「お、お手柔らかにお願いします…」
と、力無く頭を垂れるのが精一杯だった。
* * * * *
ぽいっと、折り畳まれたノートの切れ端が、明俊の机に飛び込んで来た。
今は授業中、教師が黒板に向かっている隙に、明俊の隣の席に座っている生徒が放り投げたようだ。
今日はこれが最後の授業。試験も終わったばかりだということもあって、ほとんどの生徒が授業を聞いている
ようで聞いていないような雰囲気だった。
明俊の机に放り込まれた切れ端には「日阪君へ」と書いてある。いったい誰が?と教室を見渡すと、3列程
席が離れた先にいる瑞希が、明俊に視線を送っている。僅かに微笑んで、白い指がちょいちょいと明俊が
持っている紙片を指す。
なんだろう? 明俊は教科書を立てて壁にし、幾重にも折り畳まれた紙を開いた。
“私のびしょびしょに濡れたパンツは気持ちよかったですか?”
「ッーーーーーーーーーーーーーー!!」
声にならない悲鳴を上げ、ばしっと手を叩くような勢いで紙を閉じる。危なく大きな音が出そうになって、
背中にどっと冷や汗をかく。
か、完全に不意を突かれた…! 心臓が大型の単気筒エンジンのようにドカドカ鳴る。
今朝はこのことで頭がいっぱいだったのに、雪雨さんに会ってから、キスだのなんだので、すっかり頭から
消えていた。
板書している先生も周りの皆も特に気付いていないようだ。皆が真面目に授業を受けている時期じゃなくて
ホントに良かった。シーンした授業風景だったら、確実に気付かれていただろう。こんなメモを見られたら、
もう生きて行けない。
明俊は真っ赤な顔で瑞希の方を呆然と見る。瑞希は僅かに頬を染め、いたずら顔で微笑んでいた。
* * * * *
これは、いくらなんでも一言文句を言ってやらないと気が済まない。
正直、アレは無い。周りに気付かれなかったから良かったものの、皆や先生にあのメモを見られたらと思う
とぞっとする。第一、メモが僕の所に来る前に、誰かが見てしまう危険性だってあったんだ。
そう思い、授業が終わり、放課後になった瞬間に瑞希の席へ行こうと立ち上がりかけたとき、瑞希がこちら
に向かってくるのが見えた。視線が真っ向からぶつかり、明俊は思わず顔を背けてしまう。
椅子から浮かせた腰を下ろし、顔を伏せる。
「日阪君」
クラスメイトが思い思いに帰り始めた教室で、上から彼女の声がした。明俊は椅子に座り、顔は背けたまま
なので、彼女の表情は確認出来ないが、少なくとも声はいつも通り平坦だ。
彼女に対して答える声が、自然と憮然とした口調になる。
「…なに?」
「そんな、怒らないでください」
「だって!」
明俊は思わず声を上げ、瑞希を見上げる。そして驚いた。瑞希は少し困ったような顔をしていた。てっきり、
例のいたずら顔をしてると思ったのに。
「あんなに驚くとは思いませんでした」
「……驚くに決まってるでしょ…」
明俊は少し毒気を抜かれて顔を伏せ、力無く答える。
「でも、嬉しかったです」
「…僕が驚くのがそんなに嬉しいの?」
脱力して机に突っ伏しそうになる明俊に、瑞希はふっと顔を近付け囁きかける。
「あんなに驚いたという事は、私のパンツが凄く気持ちよかったんですね?」
どかんっと顔が沸騰した。
「自分で渡しておいてなんですが、まさか、日阪君が本当に使ってくれているとは思いませんでした。これは
嬉しい誤算です」
本当に嬉しそうに囁く瑞希に、明俊は真っ赤になった顔を隠すように背け、
「別に、つ、使ったなんて、言って無いよ」
と、精一杯、平静な声で言う。こんな分かりやすい反応をしておいて、説得力の欠片もないが、言わずには
いられなかった。
「隠さなくてもいいじゃないですか。私は使ってもらって嬉しかったんですから」
あっさり看破され、言葉を失う。否定も肯定も出来ずに、明俊は話題を反らした。
「な…なんで、パ、…あれを入れたの?」
「私は日阪君の体操服を借りたので、そのお返しにと思いまして」
どこの世界にそんなお返しをする女子高生がいるの……。明俊はもう呆れて声が出ない。
勝手に人の体操服をオカズにしたばかりか、自分の下着を相手にオカズにして貰うために渡すなんて。
「感想、必ず聞かせてくれるって言いましたよね? 使い心地はどうでした? どれくらい興奮しました?」
つ、使い心地って!? 明俊は夕べの自慰を思い出し、頭から湯気が出そうになる。思わず見上げた瑞希の
顔が、いつものいたずら顔になっていた。しかし、僅かに頬を染め、目も微かにうるんでいる。その顔をまと
もに見てしまい、明俊の心臓が大きく跳ねる。瑞希は明俊の答えを待たずに、さらに囁く。
「日阪君が私のパンツでしてるかもと思うと、凄く興奮して、昨日あれだけ注がれたのに、我慢出来なくて、
2回も一人でしちゃったんですよ?」
な、なんで、なんで雪雨さんは毎日オナニーの報告をしてくるんだ…。そんなに僕を挑発してどうするんだ。
いつの間にか二人っきりになっていた教室で、明俊は、ただただ呆然と瑞希を見つめる事しか出来ない。
瑞希はくすくすと楽しそうに微笑み、
「私たち二人とも、お互いを想ってオナニーしてたんですね。日阪君はどれくらい気持ちよかったですか?
私は凄く気持ちよかったですよ?」
腰を屈め、明俊の顔を覗き込むように顔を近づける。明俊は思わずのけぞって椅子から落ちそうになり、
机を掴んでこらえる。
明俊は何か言おうとしたが、上手く言葉が出てこない。何を言えばいいのかも分からない。
その間にも瑞希はさらにじわじわと近付く。お互いの息が掛かりそうな距離まで来た所で、瑞希はとんでも
ない事を口にする。
「今日も、図書室でしませんか?」
なッ!
「……に言ってるの? 駄目だよ」
かろうじて、かすれた声を出した明俊に、瑞希は、んー、と可愛らしく小首を傾げ、
「じゃあ、どこでしましょうか? 視聴覚室とか防音で良さそうですよ?」
と、まるでデートの場所を選んでいるかのように、楽しげで気楽な様子で言う。
「ちょっ、するのは確定なの!? というか、今年一年は学校内ではイチャイチャしないって…」
「イチャイチャではありません。これは愛の営みです」
「どっちも学校ですることじゃないよっ!」
思わず絶叫した。もう訳が分からない。女の子って皆こうなんだろうか?
「そうですか。わかりました」
「え?」
瑞希の予想外の聞き分けの良さに、明俊は思わず声が出る。
「学校じゃ無ければいいんですね?」
「いや、あの」
何か嫌な予感がして言い淀んでいると、不意に、まるで言葉を遮るように頭を抱きかかえられる。
「うぁ…!」
ベージュ色のベストが目の前に飛び込んできた。ニットの感触が頬をくすぐり、エンジ色のリボンタイが
視界の端で揺れる。
「今日、私の両親、帰りが遅くなるんです」
頭をぎゅっと胸に抱きかかえられ、囁かれたセリフに、明俊は思わず背筋がぞくりと震える。
ちょっと待って、こういうセリフって……。現実に、こんなセリフを自分が言われる時が来るとは思いも
しなかった。
「昨日、今度招待するって言いましたよね? 早速ですが今日招待します」
「ぁ、ぅ…」
華奢で、平らに見えるのに、柔らかく温かい胸に顔を押し付けられ、頭が熱を帯びる。思考がまとまらない。
「私の部屋で、いっぱいしましょう?」
いつも通り平坦な彼女の声が、どこか遠くから聞こえるように耳に届いた。
一先ずここまで。
少し時間を置いて、残りをアップします。
まさしくこれはGJ!!
お土産の中身が予想できた自分は駄目人間かもしれん
キターーーーーーー!!
続きを投下します。
* * * * *
その後、どういう風に雪雨さんの家まで移動したのか、よく憶えていない。
とにかく、僕は、半ばぼーっとした頭で、雪雨さんに手を引かれるがままに歩いた。
僕の手を引く雪雨さんは、まるで、今にも走り出したい衝動を押さえるかのように、早足で歩いていた。
その間、雪雨さんも僕も、全く会話をしなかったと思う。少なくとも言葉を交わした記憶は無い。
「どうぞ。上がってください」
僕を引く手が止まり、発せられたその声で、僕は雪雨さんの家に着いたと言う事にやっと気付いた。
ここにきて、やっと僕の意識が正常な働きを取り戻した。敷き居を跨ぎ、昨日もお邪魔した玄関に足を踏み
入れる。
「お邪魔します」
同時に、急激な緊張に襲われた。これから僕は、彼女の部屋で……。そう思うと、意識がはっきり覚醒した
分、より鮮明な緊張が身体を走る。明俊は心臓が早鐘のように鳴り、目眩を覚えた。
明俊の背後で、バタンと玄関が閉まり、ガチャと鍵が掛かる音がやけに大きく聞こえた。すぐ後ろに瑞希
の息遣いを感じる。
「日阪君」
いつも通りの瑞希の平坦な声が聞こえた。「なに?」と明俊が振り返った瞬間、ぶつかるような勢いで瑞希
が飛び込んできた。
明俊の首に腕を回し、頭を抱えるようにして瑞希が唇を押し付ける。瑞希の勢いに明俊は尻餅を付きそうに
なり、すんでのところで踏み止まる。
「んっ…ふぅ、んぅ…」
瑞希は目一杯背伸びし、明俊の首からぶら下がるような格好で情熱的に唇を重ねる。明俊の唇をむしゃぶり、
舌を入れて口内をなめ回す。ふぅふぅと荒い鼻息が明俊の顔をくすぐる。明俊も瑞希の背中に手を回し、上か
ら応戦する。
「んぅ…ちゅ、はぁ…、んんむ…」
お互い、首をぐるぐる振って唇をむさぼる。熱い吐息と涎が隙間から漏れ、熱で頭がぼーっとなる。
やっと離れたお互いの口から、だ液が糸を引く。
「……雪雨さんの部屋で、するんじゃなかったの?」
「そのつもりだったんですが、どうにも我慢出来なくて」
荒い息をつきながら問う明俊に、瑞希がいたずらっぽい微笑みで答える。お互いの顔が赤く染まり、熱い息
が掛かる。気が付けば、瑞希の足は地面から浮いており、明俊の腕の中にすっぽりと収まっていた。
ふぅふぅと荒い息をつきながら、しばし見つめあう。
「…部屋に、案内しますね」
まるで、長い葛藤の末に決断した答えのように、瑞希が言った。明俊は唾を飲み込むようにして頷いた。
* * * * *
初めて入る女の子の部屋で、明俊はとても落ち着いていられず、そわそわと身体を揺する。
瑞希は2階にある自室に明俊を案内すると、「お茶を入れてきますから、どうぞくつろいでいて下さい」と
言って、階段を降りた。
瑞希は明俊と同じく一人っ子らしい。八帖ほどのその部屋は、洋室で、全体的に白かベージュの落ち着いた
色合いでまとめられており、絵に描いたような女の子の部屋という感じではなかった。壁にクローゼットと本
棚が埋め込まれているため、八帖よりもゆったりとした印象を受ける。
明俊は部屋の中央にある小さなテーブルの前で、思わず正座をしていた。「くつろいでいて下さい」と言わ
れても、とてもそんな気分にはなれない。
女の子の部屋をあまりじろじろと眺めるのは失礼な気がして、首を固定して視線を動かさないようにする。
特に、壁際に設置されたベッドには極力視線が行かないようにした。
明俊は、童貞を捨てた男は全てに対して自信に満ちあふれ、緊張などしないものだと漫然と思い込んでいた
が、それが間違いであったことを身を持って知ることになった。こういう事は、たぶん童貞とかそんなの関係
ないのだろう。自分は脱童貞したはずなのに、ちっとも女の子に対して慣れるようになる気がしない。
口の中がカラカラになり、手が異様に冷たく冷えてきたのに、手のひらは汗でびっしょり濡れていた。
「お待たせしました」
瑞希の声で、明俊は面白いくらいびっくりする。
「コーヒーで良かったですか?」
「あぁ、うん。ありがとう」
コーヒーカップが二つ並んだお盆を、瑞希がテーブルに置く。香ばしいコーヒーの香りで、明俊は幾分緊張
が和らいだような気がした。
「どうぞ」
「ありがとう。頂きます」
明俊の前にカップを置き、瑞希は隣に腰を下ろす。
喉を潤すのと、緊張している頭を冴えさせるため、明俊はブラックのままカップに口を付ける。そんな様子
をどこか楽しそうに瑞希が見つめ、ふわりと軽く寄り掛かる。不意に瑞希の感触を感じて、明俊は危なくコー
ヒーを取りこぼしそうになった。
「あの、あんまり寄り掛かられると、コーヒー飲みにくいんだけど…」
寄り掛かられ、身体が逃げるように傾く明俊に、瑞希がいたずらっぽい微笑みを向ける。
「日阪君は、私の部屋にコーヒーを飲みに来たんですか?」
「ちょっ、雪雨さんが出したんじゃないか…」
「あ、そう言えばそうでした。でも…」
本当に忘れていたように苦笑し、自然な動きで明俊の手からカップを奪い取りテーブルに置くと、そのまま
のしかかって来る。
「私、もう我慢できないみたいです」
そう言って、身体を密着させてくる。
「ゆ、雪雨さん、ちょっ、待って」
「気持ちいい事、しましょう?」
ぴったりと身体を密着させ、鼻と鼻がくっつきそうな距離で囁くと、明俊に唇を重ねる。
「ふぅ…、んっちゅ、はぁ、んっ…」
明俊に覆いかぶさり、胸に手をついた体勢で、瑞希がキスの雨を降らせる。ちゅっちゅと唇をついばみ、
舌でちろちろと口の周りや唇の裏側をなめ回す。
「んぅ…。日阪君のお口、コーヒーの味がしますよ?」
「今、飲んでたから…」
瑞希の情熱的な口づけに、明俊は熱にうかされたように答える。
目の前の瑞希はすっかり発情した様子で微笑んでいる。長い黒髪がフローリングに垂れ下がり、明俊の頬を
優しくくすぐる。
「日阪君の、大きくなってますね」
瑞希の柔らかい太ももの下で、明俊の下半身はズボンを窮屈そうに押し上げていた。明俊は思わず視線を
そらし、
「雪雨さんがエッチ過ぎるからだよ…」
と言い訳するように呟く。
「私がエッチなんじゃなくて、日阪君が私をエッチにさせるんです」
「僕のせいなの…?」
「そうですよ? 私、日阪君を好きになるまでこんな気分になった事ありません。オナニーだって、日阪君を
好きになったら、自然と身体が求めたんです」
かぁっと明俊の顔が火照る。瑞希の告白に、文字通り顔から火が出そうになる。
「最初は、日阪君に対する自分の気持ちがよく分かりませんでした。でもすぐに、ああ、これが恋なんだって
気付きました」
思わず両手で顔を押さえたくなり、視線をそらす明俊をそのままに、瑞希の告白は続く。
「日阪君を想うと、苦しくて、切なくて、でも心が溶けそうに甘くて。布団の中で、一晩中自分を慰めて悶え
てた事もあるんですよ?」
もう明俊は恥ずかしくてどうにかなりそうだった。雪雨さんは、なんでこんなに真直ぐ告白出来るのだろう
か? ちらりと瑞希の顔を見た瞬間、明俊の心臓がバクンと跳ねる。
瑞希は明俊に負けないくらい、顔が真っ赤に染まっていた。瞳をうるませ、半開きの口から熱い息が漏れて
いる。
「日阪君と恋人になったら、この症状が収まると思ったんです。でも、逆でした。一人で想ってた時の何倍も
日阪君が恋しくて、もう、駄目なんです。この気持ち、分かってくれますか?」
「うん、分かる…」
明俊は忘我状態でうなずく。目の前の瑞希から目を放せない。
「昨日、雪雨さんの家から帰る途中、急に雪雨さん抱き締めたくなって、思わず戻りたくなったんだ…」
「…そうなんですか? とても嬉しいです」
明俊のセリフに、瑞希は一瞬驚いたように目を開く。すぐに微笑みに戻ると、
「…今なら、私を抱きしめられますよ?」
顔を近づけ、頬と頬を擦り付けようにして耳元で囁く。その声で、明俊は弾かれたように瑞希を抱き締めた。
「雪雨さんっ! 好きだっ!」
「あ、あああッ! 日阪君ッ!」
明俊が口走った言葉に、瑞希が震える。顔をお互いの首筋に埋めるようにして、力一杯抱き締めあう。
「日阪君ッ! 私も好きですッ!」
抱き締めあう二人は、お互いの熱い体温でまるで茹だるように頭が朦朧とし、息が荒くなる。熱い吐息が
お互いの首筋に掛かり、さらに体温を上げて行く。二人はまるでお互いの身体が溶け合うような錯覚を覚えた。
何かが足りない。熱にうかされた頭で、瑞希はそう考えていた。もっともっと溶けて混ざりたいのに、何か
が自分と彼を遮断している。
その邪魔者の正体に気付き、瑞希はがばっと身体を起こす。真っ白な顔がまるで内側から火を灯したように
紅く上気し、黒髪はもつれて乱れ、桃色の唇を半開きにして荒く息をつく。
「服、邪魔ですね」
瑞希は瞳をうるませ、まるで独り言のように呟く。
そうだ。服だ。これが溶け合う私達の邪魔をしてるんだ。服を脱いで、お互い生まれたままの姿で抱き合え
ば、きっともっと溶け合える。瑞希にはそれがとてつもなく素敵な事に思えた。想像しただけで腰が震える。
明俊に馬乗りになったまま、ニットのベストに手を掛け、乱暴に脱ぎ捨てる。続けて、興奮のあまり震える
手で、リボンタイを外し、ブラウスのボタンを外し掛けたところで手が止まった。
真っ赤な顔のまま、すっくと立ち上がり、窓際まで歩く。シャッと小気味良い音とともに、淡いベージュ色
のカーテンが引かれ、部屋が薄暗くなる。
まだ明るい外の光が透け、薄暗い部屋に浮かび上がる瑞希のシルエットを、明俊は沸騰寸前の頭で眺める。
明俊の目の前で、瑞希がブラウスのボタンを外して行く。薄暗い部屋に、瑞希の透けるような白い胸元が
徐々にあらわになって行き、明俊の目を釘付けにする。
薄暗い部屋の方が、明るい部屋よりも何倍もいやらしかった。特に、カーテンに太陽の光が透けている状態
が、明るいうちからカーテンを閉めて、自分が今、人に見せられないような事をしているんだと自覚させられ、
背徳感を大いに刺激する。明俊は荒い息で喉がカラカラになり、股間のものが、ズボンの中でチャックをはち
切らんばかりにいきり立っていた。
瑞希はブラウスのボタンを全て外し、するりと肩から滑り落とす。ほっそりとした首筋。白い胸元から艶か
しく浮き出ている鎖骨。小さな胸を、白を基調とし、控えめにレースの飾りが付いたシンプルなブラジャーが
覆う。細いのに、あばらがあまり目立たないすべすべとした胴回り。
目の前で裸になって行く瑞希に、明俊の興奮が高まる。
すっかりブラウスを脱いだ瑞希は、スカートに手を掛け、ファスナーを下ろす。スカートがフローリングに
落ちて広がる。瑞希はとうとう下着姿となって、明俊の目の前にその姿を晒す。
ブラジャーとお揃いのショーツは、同じく純白で、控えめなレースの飾りが付いていた。クロッチの部分が
見た目にも分かるほど濡れており、白い布地に恥部が透けて見える。その光景は、目眩がするほどの卑猥で、
明俊は居ても立ってもいられなくなり、腰を上げる。
「私だけ裸なんてずるいです。日阪君も、脱いで下さい」
平坦に聞こえる口調だが、目はうるみ、顔も真っ赤に染まっている。むしろ、弾けそうな興奮を、無理矢理
押さえ込んだような平坦さに感じられる。
「ぅ、うん」
明俊は喉がひり付き、かすれた声しか出ない。ワイシャツのボタンを震える手で外し、下に着ていたTシャツ
を脱ぐ。ズボンも下ろしてトランクス姿となった。いきり立ったペニスが、トランクスを呆れるくらい盛り上
げている。
お互い、はぁはぁと息を荒げ、歩み寄る。徐々に歩み寄るスピードが上がり、終いには、半ば走り出しそう
な勢いで抱きつく。そのまま激しくキス。
首に手を回して唇を押し付ける瑞希を、明俊は抱きかかえるように持ち上げる。脇の下から手を差し入れ、
背中と頭を支えてきつく抱き締める。瑞希も明俊の頭を抱えるようにしがみつき、唇をねぶる。
お互いの熱い吐息と、直接触れあう体温で、瑞希は頭が痺れ、腰の奥からトロトロと温かいものが溢れてく
るのを感じた。明俊も、瑞希の柔肌を直接身体で感じて、興奮で脳みそが沸騰する。抱きかかえた瑞希の、
すべすべとした下腹部に、張り詰めた熱い肉棒をぐりぐりと押し付ける。
「日阪君、ベッドに…。このまま、ベッドに運んで下さい」
うるんだ目で訴えかける瑞希を、明俊はベッドに運び、押し倒す。ベッドが二人分の体重で沈み込み、軋む。
明俊はそのまま唇を重ね、右手を瑞希の胸に当てる。
「!」
ビクッと瑞希が震える。至近距離で見つめあう目が、僅かに困惑の色を浮かべるが、明俊は止まらなかった。
「んぅ、ゃッ…日阪く、ぅん…」
明俊は瑞希の唇をついばみながら、右手を動かす。揉むと言うよりも撫でるような感じで、ブラジャー越し
に胸の感触を味わう。ごわごわしたブラジャーの下で、うっすらと微妙に膨らんでいる胸がふにふにと揺れる
のが分かった。
明俊がブラジャーに手をかけ、引き上げようとした時、瑞希がその手を掴んだ。
「日阪君、あのっ、胸は…」
珍しく慌てた様子で、瑞希が明俊の手をブラジャーから引き剥がす。
「駄目?」
明俊の問いかけに、瑞希は恥ずかしそうに顔を反らしモゴモゴと口籠る。
「私、む、胸にはちょっと自信が無くて、ですから、その、」
「……駄目。見せて」
「ぇ? ぁッ!」
瑞希のいじらしい様子にたまらなくなった明俊は、強引にブラジャーを引き上げ、胸を露出させる。真っ白
い、なだらかな曲線が、外気に触れてふるふると震える。
「ゃあッ!」
恥ずかしさに顔を真っ赤に染め、瑞希が身体をひねって胸を隠そうとする。明俊は瑞希の手首をベッドに押
さえつけ、それを阻止する。
「雪雨さん、可愛い。凄く可愛い」
羞恥に取り乱す瑞希が酷く新鮮で、明俊は情欲を肥大させる。我を失ったかのように胸にしゃぶりつく。
「んんッ!」
すでに硬くしこっている桜色の突起を吸われ、瑞希が仰け反る。胸の先端から電気が走ったように鋭い刺激
が全身を駆け巡る。
「ぁッ! やあッ! ふあッ!」
舌で乳首を転がされる度に、瑞希の身体がガクガクと痙攣し、薄い胸がふるふると震える。
全身を襲う鋭い快感に、すでに腕の力が抜け、抵抗出来ない瑞希を明俊はさらに責める。逆の先端に吸い付
き、だ液でぬるぬるになった方を指でいじる。
「やッ、やあッ! ひさかく、それ、駄目ぇ!」
両方の乳首を容赦なくいじられ、瑞希は髪を振り乱して悶える。両手で明俊の頭を抱きかかえ、波のように
断続的に押し寄せる快感に耐える。
「ひぅッ…」
唐突に止んだ愛撫に、瑞希は空気が抜けたような声を出してしまう。
長い黒髪が乱れてベッドの上に散乱し、耳まで真っ赤に染まっている。荒い呼吸に胸が上下し、ぬるぬるに
されて、きゅっと硬くなった先端がふるふると震える。
「雪雨さん可愛すぎるよ…」
明俊はうわ言のように呟き、乳首をいじっていた右手を下へ移動させる。すべすべしたお腹を堪能するよう
にすべらせ、ショーツの中に侵入する。
「ああ…!」
瑞希は待ちかねたかのように腰を浮かし、明俊の指に自ら股間を押し付ける。
ぐちゅぐちゅと淫らな水音が響き、明俊の指に熱い粘液が絡み付く。
「ああ、んっ、指、日阪君の、指」
ショーツの中で明俊の指が秘裂を擦る。そこはすでにとろとろに溶けて、明俊の指がにゅるにゅると花び
らをかき分ける。
「気持ちいい、気持ちいいです…。ぅうんっ」
瑞希はくねくねと腰を動かし、もっともっととねだる。眉根を寄せ、腰を振って喘ぐ瑞希に、明俊は激し
く劣情をそそられる。雪雨さんが乱れる姿がもっと見たい。明俊は痛そうなくらい硬くしこった乳首に吸い
ついた。
「ゃッ! 胸、駄目、あッ!」
左手と唇で乳首を責め、右手で秘所を責め立てる。複数の箇所から同時に迫る快感に、瑞希が悶える。
「ああ、駄目、きもちぃッ! 両方、すごいッ あ、あ、あ、あ」
秘所をいじる右手はすでに手首まで濡れ、中指を挿入し肉壷をかき回す。
「ゆび、なか、だめ、ひさかく、だめ、むね、なか、あ、らめ、らめ」
長い黒髪を振り乱し、慣れない快楽に、瑞希は途切れ途切れ喘ぐ。呂律が回らなくなり、半開きの唇から涎
が垂れる。
明俊が膣に入れた中指を折り曲げ、指の腹で天井を擦ると、瑞希がビクビクと反応する。
「あッ! やッ!? なに? あッ、だめッ! 擦るの駄目ですッ! それッ、あーッ!」
小さな身体を跳ね回らせ、強烈な快感に耐えるが、もう腰の奥が切なくて切なくて我慢の限界に到達する。
「ひ、ひさかくんだめわたしもう、おねがいいれていれてひさかくんのおねがいもうわたし」
情欲に染まった瞳で瑞希は哀願する。淫靡に乱れまくる瑞希が見たくて、拙い性知識を総動員して責めてい
た明俊だったが自分ももう限界だった。
明俊は瑞希のショーツを脱がし、自分のトランクスも下ろす。鉄棒のようにギンギンに硬直したペニスが飛
び出す。興奮のあまり、先端がすでにカウパー腺液で濡れてテラテラと赤黒く光っている。
ガチガチにいきり立ったそれを、瑞希がうるんだ瞳で見つめる。ふぅふぅと熱い吐息が唇から漏れ、腰の奥
がじんわりと熱くなる。すでに太ももの内側まで濡らしている愛液が、さらに秘所から溢れる。
明俊は熱くぬかるんだ蕾に自分のものをあてがい、ゆっくりと挿入する。
「あぁ、入ってきます…。日阪君のが、ふぁあ…」
さんざんいじられた肉壷は、驚くほど熱く、侵入する度にじゅぶじゅぶと結合部から愛液が滴る。
「はぁっ…。日阪君の入って、気持ちいい…」
切なく疼く膣内に恋人の熱を感じ、瑞希は震える。ぽっかりと空いた場所が埋まっていく。瑞希は身も心も
溶けそうになり、恍惚とした表情で声を上げる。
「あぁ…日阪君の素敵です……。私のナカ、嬉しくて溶けそうです」
「僕も気持ちいい、雪雨さんのすごい…」
ぎゅうぎゅうに締め付けながらもトロトロに柔らかい肉壁が明俊のものに絡み付く。明俊はたまらずに腰を
振り出す。
「んあッ! は、あぁッ! ゃッ! あぅんッ!」
抽送に合わせて瑞希が可愛く喘ぐ。
「ああ素敵気持ちいいッ! あン! ああッ! はあ」
小さな身体を淫らにくねらせ、悦びに悶える。
「あッ、やッ、きもちいいきもちいいきもちいい」
可憐な顔を蕩けさせ、瑞希は狂ったように喘ぐ。小さな胸がふるふる震える。
「ひさかくんのすごい、きもちい、あッ! あーッ! きもちいッ ふああッ!」
瑞希が声を上げる度に、膣がきゅうきゅうとうねる。入り口はきつく締め付けて肉棒の幹を扱き、内部は不
規則に蠢いて敏感な先端に吸い付くような刺激を与える。まだ一度も精を放っていない明俊は、迫りくる射精
感に奥歯を噛み締めて耐える。
「あーッ! あーッ! いきそ、いきそ! わたし、もうッ」
瑞希もまた、さんざん愛撫された末の挿入に、早くも絶頂を迎えそうになる。
「雪雨さんッ、僕も…ッ」
「あーッ! あーッ! あーッ! イク! イッちゃいます! だめ、もうッ!」
細い身体をビクンビクンと痙攣させ、瑞希が悶える。顔が情欲に歪み、黒髪が乱れてベッドに広がる。
「うッ…ぐッ!」
「だめイクッ! あッ! あーッ! ああーーーーーーーッ!!」
耐え抜いた末の射精は、凄まじい勢いで精液を噴射し、瑞希の胎内にぶちまける。
「あああああーーーッ! あああああーーーッ!」
熱い塊を子宮口に浴び、瑞希が絶叫する。膣が精液を搾り取るかのように収縮し、痙攣する。
びゅー、びゅーっと溜め込んだ精液が断続的に発射される。明俊は瑞希の腰を掴み、貫かんばかりに腰を押
し付ける。骨盤が引き抜かれそうな射精感に噛み締めた奥歯がぎりっと軋む。
「あ、あ、ナカ、熱い…。あああっ…」
膣内に感じる子種の熱に、瑞希がかたかたと震える。足を突っ張り、シーツを握りしめて絶頂の余韻に身体
を委ねる。
「くはぁっ…」
ようやく射精が収まり、明俊はぐったりと瑞希に覆いかぶさる。小さな瑞希に体重を掛け過ぎないようにし
たいのに、身体が言う事をきかない。
「ああ、日阪君…」
恋人の重さを感じ、瑞希は幸せそうに呟く。明俊の背中に手を回し、汗で濡れた身体を密着させる。お互い
の身体が溶け合うような感覚を覚え、瑞希はうっとりと目を瞑った。
* * * * *
「あッ…、あッ…、あッ…」
日がほとんど地平線に沈み、藍色が空を埋め尽くそうとしている時間。
カーテンを閉めた瑞希の部屋は、すでに真っ暗に近く、身体の輪郭をかろうじて確認出来るくらいの明るさ
しかない。
「うン、気持ちいい、奥、いいです…。素敵…、ああっ」
明俊と瑞希は対面座位の形で抱き合っていた。お互い、何度達した覚えていないが、この体勢に落ち着いて
から、すでに2回は出している気がする。
下手をしたら中学生よりも身長が低い瑞希は、この体勢でも明俊よりも頭半分低い。だが、より身体を密着
でき、したいときにキスも出来るし胸もいじってもらえるこの体位を、瑞希は気に入っていた。
「はっ、あン、あッ、んぅ、ちゅ、ふぅ…」
腰を振って快楽を貪る瑞希に、明俊は口づけをする。
「ちゅ、はあ、んぅ、ちゅぱ、ふ、んぅ…」
お互いに舌を絡めあい、ついばむように唇を吸う。瑞希の腰を支えていた明俊の手が、すべるように胸に移
動する。
「はあっ、日阪君、あッ! むね、いいッ! は、んぅ」
明俊は両手で胸を撫でるように揉む。ぷっくりと盛り上がった小さな突起に、触れるか触れないかぐらいの
微妙な刺激を与え、瑞希を焦らす。
「ゃ、いやッ、ああ、お願い、いじって、乳首…もっと…はぁッ!」
瑞希は我慢出来ずに明俊の手に自分の手を重ね、ぐりぐりと乳首をいじる。鋭い刺激に仰け反り、白い喉を
晒す。甘い痺れが脊髄を通る度に、膣内がきゅうきゅうと締まり明俊を刺激する。
「雪雨さん、乳首よわいんだね。凄い締まるよ…」
「きもちいいんです…。すごく、ああッ」
小さい胸ほど感度がいいってやつなのかな、と思いつつ口には出さず、明俊は瑞希の望みを叶えるべく、指
で桜色の突起を摘む。瑞希の身体をやや後ろに倒させ、唇でも乳首をねぶる。
「あッ! それいいッ! いいですすごいッ! きもちぃッ!」
瑞希は明俊の頭を抱え、もっと吸ってとねだるように胸に押し付ける。その間にも腰の動きは止めておらず、
くいくいと淫らにくねらせて膣内を肉棒に擦り付ける。
「はぁッ! はぁッ! ぁッ! んあッ! ああ…ッ!」
瑞希は切なげに眉根を寄せ、桃色の唇から熱い吐息を漏らす。胸の刺激と膣内の刺激が混じりあって、腰が
きゅんきゅん疼く。明俊は空いている左手を瑞希の腰に回し、後ろからぐいぐい引き寄せる。
「んぁッ! ああッ! あッ、あッ、はッ、奥ッ、来て、きもちいいッ!」
容赦なくぐいぐい腰を引き寄せられ、子宮口に熱い肉棒が突きささる。瑞希は明俊の肩を掴んで、より一層
激しく腰を振る。もっと、もっと奥を突いて欲しい。壊れるくらい、突いて欲しい。
「ああッ! ああッ! ああッ! ああッ!」
人形のように小さく可憐な瑞希が、より強い快楽を求めて腰をくねらせる。ガクガクガクガクと無茶苦茶に
振り、その度に唇の端から涎が落ちる。明俊は両手を瑞希の背中に回し、腰と肩をそれぞれ支え、瑞希の腰の
動きに合わせて、強く引き寄せる。
「あああッ! はあッ! あッ! あーッ!」
節くれだった熱い肉棒に、子宮を揺さぶられ、襞を擦られ、瑞希は急速に登りつめる。
「ああッ! あーーッ! あーーッ! こし、とけちゃうッ! おくが、ああーーッ!」
瑞希の頭はもはや快楽一色となり、口走る言葉も文脈が不明になる。腰が溶けそうに心地よく、身体の中心
から激しい浮遊感が生じる。
「とんじゃうッ! わたし、もう、おく、あーッ! いきそ、ですッ! もう、あーッ!」
「僕も…ッ! 出すよ!」
お互い腰をくねらせながら、絶頂に向かって高めあう。明俊は肉棒に精液が大挙して押し寄せる感覚を覚え、
さらに激しく腰を突き上げる。
「日阪君ッ! 私ッ! イクッ! イクッ! ああッ!」
「うくッ! 出る…ッ」
射精感がマックスに到達し、明俊は力一杯瑞希の細い腰を引き寄せ、突き立てる。
びゅるるるッ! と熱い塊がほとばしる。
「あああああああああああーーーーーッ!!!」
目一杯突き立てられ、絶頂に達したのと同時、精液が熱い波となって子宮に押し寄せる。
「あーッ!! あーッ!! ああああーッ!!」
瑞希は小さな身体をがくがくと痙攣させ、身体がバラバラになりそうな凄まじい絶頂感に意識が飛びそうに
なる。意識を手放さないよう、力一杯明俊を抱き締る。この快感を出来るだけ長く味わっていたかった。
「ぁ、はあっ…。ひさかくん…」
恍惚とした様子で呟く瑞希に、明俊は優しい口づけで答えた。
* * * * *
「ん〜〜っ…。気持ちよかったですね?」
「う、うん…」
大きく伸びをしながら言った瑞希のセリフに、明俊は赤面する。
二人はベッドの上でシーツにくるまりながら寄り添っていた。シーツの下は裸のままだ。
「大満足です。こんな幸せな気分はありません」
「そ、そう。良かったね…」
心底嬉しそうに目を瞑り、瑞希は明俊に寄り掛かる。明俊は思わず視線をそらす。何故か猛烈に恥ずかしい。
「もう、日阪君無しでは生きて行きません」
「あはは…」
うっとりとした声で言う瑞希に、明俊は乾いた笑いを浮かべることしか出来ない。行為の最中は極度の興奮
で頭がイッてたせいか、そうと感じなかったが、終わった後に猛烈な恥ずかしさが込み上げてきて、瑞希を直
視出来ない。