魔人探偵脳噛ネウロinエロパロ板 第9話

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135134(春刹)
蝉たちが1/100の命を謳歌し始めた初夏の森で、刹那は薄く微笑みながら、
木陰で涼をとる。
本来病室で安静にすべき入院患者である彼女は、担当する春川教授の判断で
大学敷地内であれば外出も許可されていた。
肉体的には問題のない健康体の刹那は、軽い運動とばかりに手頃な木にするりと登ると、
枝に腰掛けてまったりと夏の鈍い風を味わう。
その若さに似つかわしく己の汗も弾く肌は健康な色に輝いているが、
彼女の指先の爪は所々赤黒く汚れてしまっている。
定期的に起きる発作は相手の柔硬を選ばず攻撃的に暴れまわり、
少なからず彼女自身の身体もこういった小さな傷が絶えない。
発作を押さえる春川教授らも、程度でいえば彼女よりも酷いこともある。
壁を削り、硝子を割り、人を罵る。
『幸いなのは、記憶がないことですね』
先ほどの朝の問診で春川の頬に生生しい引っ掻き傷を見つけ、深く謝罪した後、彼女は漏らした。
そしてそのまま、散歩に行くと言っていつものようにこの森へやってきたのだ。

彼女はこの病のことに関しては決して泣き崩れずたりせず、
こうして己の気持ちを整えてから彼女はいつもの生活へ戻っていた。
それがせめてもの矜持だと、己に静かに誓っている。
只でさえ発症時にはヒステリックという言葉では表現できないほどの粗暴を見せているのだから、
『自分』であるときにはそう居たくはなかった。
本城刹那は元々そんな人間なのだと周り――いや春川英輔に思われたくはなかったのだ。
136134(春刹):2006/12/15(金) 19:34:26 ID:Cm5AA3nS
「自殺でもするのかと思ったが、木登りをしているとは恐れ入った」
その根性、敬意に値するよ――と甲高い蝉の森で、深く静かな声が刹那の鼓膜を揺らす。
「…しないって分かってて、そういうこと聞いてるんですか?」
相変わらずの皮肉屋ぶりに、刹那は呆れたように微笑んで言葉を返した。
ククク、と春川の喉の鳴らす笑いのみが彼女の問い答える。
「私はそんな誘惑には屈しません。
 死んでしまったら何も始まらないし、何も生まれない。それに――」
刹那はまるで帰る様子を見せず、木の枝上でサンダルを脱ぎながら、
「私が死んだら沢山の人が悲しみますから。
 そんな無責任なこと絶対にできません」
その眩しい裸の足を輝かせながらプラプラと陽気に振って、サンダルを地面に放り投げた。
強がりのパフォーマンスをするような性分でないことを熟知している春川は、
彼女の乗る枝の元に寄りつつ、そのしなやかな強さに感銘を覚えた。
人間の脳力とは己のような天賦の才に満ちた人間を指すのではなく、
その人生経験から学び取ったものも関与するのだと。
10代の若い頃から特殊な病に悩まされた彼女だが諦観に至ることなく、
その生を大切にし、常に暖かい感情に満ちている。
その強さは机上では決して身につかぬ、春川すらも持ち得ない貴重なものだ。
自分と並ぶ脳力を持つ彼女を、密かに、だが確かに、
春川は一回り以上も下であることなど関係なしに深く敬愛していた。
「さてと!そろそろお昼ご飯ですか?」
眩い木漏れ日に混じった数十センチ程上の視線で、刹那は自分の左手首を指差し春川に時間を尋ねた。
「いや――残念ながら、まだ53分21秒早いよ。」
残念、と刹那が小さく呟くのを聞いて、春川は楽しそうにまた低く喉を鳴らす。
「もっとも木登り好きの君には、バナナでもあげた方が機嫌が良さそうだ」
暗に『お前は猿』と言われた刹那は、とうとうアハッと声を上げて笑った。
「そういう事言うと、ここから教授めがけて飛び降りますよ?
 足のサイズ23.5cmの私がこの約2mの枝から落下して、
 教授に与えられる圧力はいくつぐらいですか?」
重ければ重いほどいいんですけど、と刹那は無邪気に天才春川に尋ねる。
137134(春刹):2006/12/15(金) 19:36:11 ID:Cm5AA3nS
そしてその視線が草の茂る地面に投げ出した靴に行くのに気付いた春川は、
「昨日測定した体重から考えると――」とわざと女性が嫌がりそうな話題で
饒舌に応酬しながら、華奢なサンダルを手に取り、
輝く白い足にゆっくりと履かせてやる。
じわり、手が汗ばんでゆく。
「――お返しに、私にも傷、とか付けます?」
脈絡なく呟いた彼女の言葉に、春川の手が止まる。
油を揚げているような蝉の声が2人の空間を埋めた。
「病気の件で君が負うべき責任は0に等しい。治療の最高責任者はこの私だ」
さっきまでの楽しそうな応酬とは打って変わった、
厳しいまでの理性的な言葉で頬の傷のことには触れるなと春川は釘を刺す。
「降りなさい」
どこか優しく言い聞かせるような温度で、彼女を見上げながら春川は腕を伸ばした。
刹那はちょっと困ったような笑みを浮かべ、細く長い指が揃う冷えた手の平を右手で握り、
左手を春川の肩に託し彼の力を借りてふわりと地面に降り立つ。
その身長差から春川の白衣に染み込んだ据えた薬品の匂いが、刹那を鼻腔の目の前でただよう。
用が済み、名残もなく刹那を手放そうとした大きな冷えた手を、
彼女は捕らえるように再びしっかり握りこんだ。
少し春川が眼を見開き、無言で刹那を見つめ返す。
「記憶がなくて楽なのは私だけですよね。
 さっきは軽率でした。春川教授 ごめんなさい」
痛みますか、わずかに震える手が春川の頬の傷に伸ばされる。
その瞬間、彼女に内在している病への恐れの片鱗を垣間見てしまった春川は
自分でも驚くような感傷的な行動に出た。
清潔な白い大きな衣が、本城刹那の細い身体を覆う。
「――っ――」
拒むことも問うこともせず、刹那はただただ驚いて春川の体温に包まれ、
大きな背は猫背気味に刹那を覆い尽くす。
深い森が2人を隠すかのように覆っているのに、暴くように木々の隙間から夏の光が降り注いだ。
自分の頬に掛かる春川の黒髪の向こうに広がる、
その生に満ちた美しい世界に刹那の鼻の奥にはツンとしたものが走る。
一方春川は脳の電気信号も血液中の物質量も骨密度すら把握しているというのに、
その身体の頼りなさに重い衝撃を受けて眉間の皺を深く刻む。
重みに負けて、一歩後ずさりした刹那の背が木の幹に押し付けられるのを合図に、
夏の熱と痛みを共有した2人は唇を重ねた。
呼吸すら煩わしいかのようなその激しさに、
カーディガンが大きく開いてずり下がり、キャミソールの細い紐のみが掛かった白い肩を暴き出す。
138134(春刹):2006/12/15(金) 19:38:00 ID:Cm5AA3nS
血色豊かな唇と舌の感触を堪能しながら、冷えた大きな手は裸の肩を優しく彷徨い、
汗の雫を指先で崩す。
甘い吐息が刹那の鼻先から漏れ、逃れようと逆逸らしてきた首筋に春川は優しく唇だけで触れた。
「そういう事をするときって、
先に愛の告白をしてから――っていう順番じゃありません?」
熱に溶けた瞳で、春川の黒髪に指を絡ませながら刹那は求めるように言う。
「クク…このような状況で手順を求めるとは。
 君の稚拙さを表しているようなものだよ、刹那。」
その春川の言葉に、暑さ以外の熱が刹那の頬を熟させた。
「あ、やっぱり分かっちゃいましたか。
 …初めてなもので、その…こういうの」
まるで悪戯が見つかった子供のように、顎を引いて恐る恐る刹那は言葉を紡ぐ。
その言葉に面食らったのは、春川の方だった。
驚きを含め、寄せていた身を引こうとする春川の首に刹那は腕を回して逃がさない。
「刹――」
「いいんです」
「だが、私は…」
「このまま抱いて下さい。いま、すぐに【私】を」
その言葉に躊躇いの糸がプツンと切れ、再び互いの唇を縫いながら、
春川はゆっくりと白衣を脱ぎ捨てて、木漏れ日の草の上に投げた。
性急さを抑え、慈しみ癒すようにゆっくりと春川の繊細な指が刹那を弾かせる。

徐々に木の幹に寄りかかりながら膝を折ってゆく彼女に合わせ、春川の唇も下へ降りてゆく。
キャミソールを捲り上げると、銀の粉が撒かれたように細かに汗ばんで輝く胸元に春川は眼を細ませる。

緑の黒髪が一本一本汗に捕らえられて白肌に横たえているのはひどく官能的で、
その髪さえも味わうように浮き出た鎖骨と血管へ舌を這わせる。
「んっ…」
控えめな嬌声と共に刹那の指が、春川の仕立ての良い薄い青のシャツの襟元に皺を寄せる。
一つ一つが春川の理性を狂わせる。
背中を撫ぜる冷えた手の平に、忘れかける理性と羞恥を思い出させられながら、刹那は春川を見つめる。
息も乱れ気味に黒髪の狭間から珍しい汗の雫が幾筋か垂らし、
何より見た事もないような熱い瞳が刹那を照らしている――それだけで彼女の動悸は上がる。

プツンと背中の拘束が解けて、彼女の胸の膨らみを覆う白いレースの布が心許なげに白い肌に掛かっている。
恥ずかしくて直視できずない刹那の気持ちを悟ったように、春川が片手を頬に添えて唇を重ねながら、
もう片方の手で膨らみをゆっくりとこねる。
平均的な大きさであるものの、春川の骨ばった手は簡単に全体を覆う。
粘りのある唾液と熱い息遣い、遠くで響く蝉の鳴き声だけが2人の空間を埋め尽くす。
139134(春刹):2006/12/15(金) 19:39:33 ID:Cm5AA3nS
刹那の頬を離れた手は、彼女の全てを堪能しようと刹那の裸の足の甲と土踏まずにまで及び、
そのため再び脱げてた淡いブルーのサンダルは緑の原に横たわった。
糸を引いて離れた春川の薄い唇は刹那の胸元を寄せて、その桃色の頂を舐め上げる。
「ぁっ…んぁぁ…っ…」
その刺激が電気的に刹那の身体を跳ね上げさせる。
カーディガンに辛うじて袖は通しているものの、キャミソールも下着も首元に上げられ
白い肌には長い黒髪が散る官能的な姿。
視覚も、息遣いと嬌声で聴覚も、汗ばむ肌に味覚も、濡れた唇に触覚も、甘い髪の香りで嗅覚すら、
春川の五感全てが本城刹那に溺れる。
そして繰り返される優しいというよりもしつこい程の長い長い愛撫に、
「教授、も、恥ずかし…っ」
刹那は顔を真っ赤にして強く瞑られた睫毛を涙に濡らす。
ぞくりと内臓全てを撫ぜられたような征服感が春川をますます昂ぶらせる。
「この程度で恥じているようでは、"これから"が大変だよ」
笑いを含ませた甘い囁きついでに耳朶を噛むと、より高い声が真夏の森に響いた。
背に腕を回し、両膝下にもう片方の手を回して、膝立ちのまま刹那を抱き上げると、
草の上に広がる白衣の上に刹那を横たわらせる。
「きょ…じゅ…」
暗闇を怖がる子供のように空に伸ばしてきた彼女の手をしっかりと握り、
春川は珍しく寛いだような薄い笑みを浮かばせる。
「怖がることはない。時間をかけよう」
その優しい言葉に心臓が喜びで締め付けられながらも、刹那はぶんぶんと首を振る。
「もう、して…」
甘ったるい言葉で誘う刹那の色香に、春川はぐらり本能が頭を支配しそうになるが
戸惑いつつ彼女の上に身体を重ねる。
「気持ちは嬉しいが、初めてである君に要らぬ痛みを与える必要はない」
違うの、と呟くと刹那は近づいてきた春川の頬にキスを落とすと、その耳元に震える声で重く囁いた。
「私である間に、早く」
つぅ、と刹那の目尻から雫が滑り落ちてゆく。
それは涙なのか、それともただ重力に引かれた眼球の水分なのか。
「教授がくれるものなら、痛くていいんです。だから、今すぐ」
この蜜月の合間でも逃れることができぬ病の存在と刹那の覚悟に、春川の顔が僅かに歪む。
いつの間にか握りこまれた互いの手に、刹那が唇を寄せる。
木漏れ日の逆光で暗いものの、春川の温かな瞳は刹那の願いを聞き入れたようだった。
まるで涙のように春川の頬から流れた熱い汗が刹那の頬に降り注ぐ。
途端、刹那の視界が春川の瞳で埋まった。
唇を塞ぎながらで視界に入りはしないものの、春川がベルトを緩める音がまるで手術準備のようで刹那の身体を竦ませる。
140134(春刹):2006/12/15(金) 19:41:40 ID:Cm5AA3nS
「刹那」
未知への恐れに濡れた瞳に、春川が唇を寄せる。
「もう手順も何も無いが…私は君の想像以上に、君を愛しているようだよ」
こんな時でも断定的に言わないなんて、と根っからの皮肉屋に刹那は瞳を三日月に細めた。
そして首筋で一際反応を示した一点を舌と唇で味わいながら、刹那の下腹へ指を這わせる。
「ぁぁぁっ、教授、ぁっ…ぁッ!」
その割れ目には僅かながら蜜が満ちており、春川の指を深くへ誘い込む。
本当であればここから一層時間を掻けた方がいいのだが、春川はその蜜を確認すると、
彼女の望んだとおりに時間を惜しむように、彼女の下着とズポンを一緒に下げる。
そして春川は限界近くまで怒張した己で一気に刹那を貫いた。
「ィぁッ――ぁッッ…!!!」
痛みを伴うならばせめて短時間でと思うものの、
初めての身体は春川の侵入を完全には許さず、ある段階でぎりぎりと拒む。
痛みに耐えかねているのか、左手は地面に生える葦を握りしめて、
春川と繋いだままの刹那の右手の指は力が入り過ぎて震えて白くなってしまっている。
柔らかく硬直する粘膜の拒絶は、春川をますます硬くさせて急かす。
歯を食いしばり汗ばんで痛みに耐える刹那の姿にすら春川を刺激するヒダの一つだ。
まるで犯しているようだと、春川は刹那の身を案じながらも遠くで思う。
ここまで来たら、もう引き返せない。
「力を抜いて」
急かす肉欲が春川の息を乱して刹那の耳に熱く吹きかかる。
「ぅっ、…んーっ…」
唇をかみ締めた刹那の耳に舌を這わせ、胸の頂に絶えず刺激を与えながら、ゆるゆると侵攻してゆく。
時間をかける辛さもあるが、何より想う女の肉の筆舌に尽くしがたい快感に春川は我を忘れそうになる。
すっかり痛みで冷えた刹那の身体とは対に、
刹那の中の熱さとぬめった抵抗感で快感の海に叩き込まれた春川の身体は煮えたぎる。
暴れまわる己の本能を押さえながら、春川は痛みに縮まった刹那の身体を抱きしめた。
春川の熱に浮かされたのか、刹那が唇だけでもっと、とさらに求めた。
緊張が解けた瞬間を見計らい、春川はゆっくり動き出す。
「あっ、ぁっ…はぁんっ…ぁ・ぁ…アッ!!」
血液か愛液かもわからぬ粘度が卑猥な水音で2人を繋ぎ、刹那の声が痛みゆえなのか分からぬ甘さで動く度に漏れる。
「ぁっ…はぁぁ…アッ!ァッ!…っと…もっと…!!」
その求めの叫びに、タガが外れたように春川は己の欲のまま奥へ奥へと貫く。
胎内の動きに翻弄されながら、刹那はうわ言のように濡れた瞳で春川を求め続ける。
141134(春刹):2006/12/15(金) 19:43:19 ID:Cm5AA3nS
「教授、もっと!…っとがいい…っっ」
その言葉に応えるように、彼女の白い肩に手を添え激しく動きながら、
春川は紅く熟した唇を食して言葉を塞ぎにかかる。
しかしそのキスも動きの激しさゆえに彼女の嬌声の妨げにならず、悲痛な言葉も捕らえられなかった。
「…好きなように 傷つけて―――…!」
熱く蠢くヒダに捕らえられていた春川はできるだけ身体を密着させるようにして、
求められるがまま淫に満ちた動きで貫き続ける。
その命の輝きのように、刹那の熱い汗が木漏れ日を受けて白く輝いて跳ねた。
柔らかな太腿を片腕で抱え上げて、刹那の身体も痛みも苦しみも崩すかのように
大きく腰を動かすと自分の限界が近いことを悟る。
「く、刹那…ッ」
夏の生に満ちた草木に満ちた真夏の世界で、春川は緑の地面に向かって精の熱を解き放った。


衣服を整えられて、横たわる刹那の肌は痛みで冷えた白から、
いつの間にやら薄っすらと桃色に染まり汗ばんでいる。
気だるい身体で血液だけが異常な速度で身体を駆け巡る春川はシャツの胸元を開けたまま、
その傍らで寝添っている。
「刹那、身体は?」
髪を乱している春川が改めて珍しく、刹那は春川の黒髪をゆっくりいじりながら微笑んだ。
「すごく痛いけれど大丈夫です」
「やはりそうか」
「生傷抉られる痛みで地獄そのものだけれど、すごく幸せ」
「また君は面妖な表現をする。ムードの欠片も無い」
まったく愛すべき変人だよ、と珍しく真っ直ぐな言葉を呟くと、
その輝く黒髪が貼りついた額に唇を落とすのであった。


【深く愛することのできる者のみが、また大きな苦痛をも味わうことができる】
と語ったのは、トルストイであった。
そうして刹那もまた春川の傷を持ったまま、世を去ることになる。

その冬の森は、生を謳歌する虫の音はせず、満ちるは雪降る静寂のみであった――。


-了-