かーいい幽霊、妖怪、オカルト娘でハァハァ【その12】
それからの男はといえば。
ただなにをするわけでもなく、日々をのんびりだらだら過ごしていた。
あの日、会社が夜逃げをした日、男は逃げた社長を捜した。
もちろん、電話もつながらないし、行く当ての予想もつくわけがない。
そうなれば実際男にとって必要だったのは社長ではなく、持ち去ったパソコンな訳で、そのあと主に探すのはそちらだけ。
未払いの給料も重要であったが、そんなものよりもまず、妖精さんのことが気がかりだったからだ。
中古OA引き取り業者を片っ端から確認し、その日に買い取ったパソコンを調べて回った。
数件目にしてようやく、あの日会社から持ち出されたいくつかの端末を見つけたが、なぜか男の使っていたパソコンはなかった。
比較的状態の良かったその端末はすでに売れてしまっており、当然のことながらハードディスクはフォーマットされ、新しいOSがインストールされてしまっていた。
男は無理を承知で頼み込み、そのパソコンを調べさせてもらったが、夜になっても小さなポップアップは開くこともなく、ごくふつうのパソコンでしかなかった。
ああ、妖精さんはいなくなってしまったんだな、男がようやくその事実を受け止めることができたのは、それから三月くらいたった頃だろうか。
最初の頃は、あのしたたかな妖精さんのことだから、なんかの裏技を使ってでもあのパソコンを抜け出しているに違いない、と思っていた。
そうして、どうやってかは分からないけれど男のパソコンを捜し当て、インターネットの海をすいすい泳いで訪ねてきてくれると思っていた。
うふふ、私に会えないあいだ、寂しかったでしょ?と、心の内を見透かしたように悪戯っぽく笑うだろう妖精さんの言葉に、
なぁに、静かになってちょうど良かったさ、とニヤニヤ笑って答えてやるつもりだった。
妖精さんと過ごした数日間は、男にとって、とても楽しい時間だった。
その時間が貴重なものだと深く思い知ることができるのは、今、その時間が失われてしまったからだ。
そしてその時間が楽しければ楽しかったほど、それを失った後の時間は寂しい。
男は、その寂しさに耐えることができなくて、
自分が、妖精さんを失ってしまったことを、受け入れたのだ。
そしてそのときにはっきりと自覚した。
自分が、妖精さんのことを、女の子として好きになっていたと。
さて。
このまま、二人のお話が終わってしまうのか、と言えば、もちろんそうではないわけで。
二人の別れが唐突に訪れたのと同じように、お話の続きも、唐突に始まる。
男はその夜、自宅のノートパソコンを覗きながら、晩酌にと買っておいた泡盛をちびりちびりとやっていた。
お気に入りのスレを眺め、いくつかのレスをしていたところ、唐突に小さなウィンドウが開いた。
男は、瞬間、どきりと驚き、同時に期待した。
しかし、そのウィンドウはあの妖精さんが現れたポップアップではなく、彼のパソコンにインストールされていたソフトウェアからの警告だった。
『もう、だめ・・・』
そう書かれたメッセージウィンドウは、セキュリティーソフト『うぃるすバスターズ』からのものだった。
もちろん、今までそんな表示をしたことはない。当たり前のことだがごく機械的に、その役目を果たすのみだった。
となれば、いったいこの断末魔のようなメッセージはなんなのだろう。
男は、不思議なそのメッセージに、首を傾げた。
そのときだ。
「ギぃガドリルっ・ブレイクっ!!!」
突然、スピーカーを割るような少女の雄叫びが聞こえたかと思うと、パソコン画面からものすごい勢いでなにやら鋭いものが飛び出してきた。
錐にように鋭く回転するそれは、螺旋を描く円錐、つまりドリルだった。
そして画面から飛び出したそれは、パソコンから少し離れたちゃぶ台の上に着地した。
着地、そう、それは確かに、ヒトの形をしていた。
小さい身体に、その身の丈を越える巨大なドリル。
「燃える魂を込めた妖精さんドリルに、貫けないものはないっ!!!」
そう、そいつは、あの妖精さんだった。
「あ・・・」
男は。
その姿を見て、目を見張り、そしてようやく。
「あ・・・、あぶねーじゃねーかっ!!!」
そう、怒鳴りつけた。
確かに、突然画面から鋭いドリルが飛び出してきたら、危ないに決まっている。
男は、かろうじての反射神経でその直撃を逃れたが、それでも鋭い切っ先が頬をかすめてゾッとした。
もう少し男が鈍ければ、顔の真ん中に風穴があいていた。
妖精さんは、えー? 感動の再会イベントはないの?と、男の反応にいささか不満があったようだ。
そして危険を主張する男の意見を聞いたあと、それをあっさりと笑って返した。
「あはははははは、そんなの、鼻の穴がもう一つ増えるだけじゃない、気にしない気にしない♪」
気にするわい、と強く怒鳴り返した後、何でいきなりドリルなんだ、と男は妖精さんを問いつめた。
「いやぁ、最初はスコップでね? ちまちまと壁を掘り進んでたのよ。
でもねぇ、どうやらわたしのお仲間が敵に捕まっちゃったみたいでさぁ、解析されてワクチン作られちゃったのよねぇ・・・」
「まて」
男は妖精さんの言葉に、なにやら引っかかる単語を発見し、問い質そうとしたのだが妖精さん、話に夢中で切り上げる様子もない。
「それでいきなり門番が強くなるし、火の壁も頑丈になるしで、スコップ一つじゃあ間に合わなくなったわけ」
そこでこのドリルよ、と妖精さん、右腕のひじから先に付いたバカでっかいドリルを高々と掲げてみせる。
そしてその鋭い先端をうっとりと眺めながら。
「やっぱドリル最高よねぇ。ドリルを馬鹿にする奴は、きっと最終回でそのドリルに貫かれて、だから外せと言ったのだ、とかいいながら死んでいくんだわ」
とかなんとか、訳の分からないことを呟いていたのだが。
男は、妖精さんを問い質すまでもなく、先程の疑問を解決させた。
「つーかテメェ、コンピューターウィルスだったのかよっ!!」
その男のツッコミを聞いて妖精さん、舌を不二家のペコちゃんのようにぺろりと出して、てへ、と笑った。
「いやぁ、今まで隠してて、ゴメンね?」
確かに、今までの妖精さんの行いを掻い摘めば、納得である。
改変データを送信する、勝手にポップアップウィンドウを作り出す、そして重要データを消す、など。
そして妖精さんは、言い訳を始めた。
インターネットエクスプローラーに宿った妖精さん、といったのはウソだったのか?と男が問えば。
「『宿った』のはウソじゃないもん・・・」
「それは『宿った』ではなくて、『感染した』というんだっ!!」
今までどこで何してたんだ?と問えば。
「必死で火の壁(ファイヤーウォール)を突破しようと、がんばってたんだから!」
そして語る、男のパソコンにインストールされたセキュリティソフトの守護者との、2クール(6ヶ月)にわたる死闘の歴史を。
「最初は守護者に見つからないようにひっそりと、土の軟らかいところをスコップでほじほじと崩してたんだけど、それでも見つかっちゃって」
延々と。
「そしてついに、『超銀河大妖精さん』となったわたしにとどめを刺そうとした『スーパーアンチウィルスガーディアン』だけど、わたしが最後の力を振り絞って『てんげ」
もう、いい加減なところで男は妖精さんの口を指先で塞いだ。話が飛びすぎる。特定の作品に対するパロも、程々に自重しろ、と。
「あの『もう、だめ・・・』ってメッセージは、その守護者とやらの断末魔だったのか・・・」
今まで影で、男のパソコンを危険なウィルスの侵入から守ってきてくれたセキュリティソフトの守護者とやらも、この妖精さんと死闘を繰り広げ、散ってしまったようだ。
男は、今までの働きに感謝しながら黙祷する。
妖精さんも、まさしくあいつは強敵だった、と評する。強敵と書いて友と呼ぶ、などと補足することも忘れない。
「まぁそーいうわけで、がんばって侵入したんだから、誉めて誉めて♪」
と、ひとンちのセキュリティをぶっ壊しておいて得意げな妖精さんに、男は、ぎらりと目を鋭く光らせ、裂帛の気合いを込めて怒鳴った。
「もーーーーーーーーーーー我慢出来ねぇ!!」
びくり、と妖精さん。
久方ぶりの再会に、距離の取り方を間違えたのだろうか、とか。
自分がいないあいだ、この男が変わってしまったのか? とか。
ウィルスである正体を隠していたことで、信頼を失ってしまったのか、とか。
陽気な表情の裏に隠した、小さな不安の火種がちろり、と燻り始めた。
実際のところ、妖精さんは、不安だったのだ。
男は、そんな表情に影が差し始めた妖精さんに、勢いを落とさないままで。
「今まで我慢に我慢を重ねて我慢してたけど、もーーーーーー我慢出来ねぇ!!!」
男は、そう叫ぶと、妖精さんを強く睨み付けて、言った。
「おまえが、好きなんだ」
いったいどんな罵詈雑言が飛び出してくるのかと身を固くしていた妖精さん、あまりにも突然な告白に、へ、と間抜けな声を漏らした。
「ずっと、ずっと待ってたんだ。・・・・・・おかえり」
さっきまでの勢いを落ち着けて、静かに、男は言った。
しばしの間のあと。
妖精さんは、ずるい、と呟いた。
ヒトと妖精(実際はコンピュータウィルスなのだが)は、いわば種族の違う二人。
トモダチにはなれても、恋人にはなれない。
トモダチよりも先に進んでしまえば、叶えられない様々な想いに、二人は苦しむに違いない。
だから、この男と恋人同士になってはいけない、と思ってきたのだ。
たとえ自分がこの男を好きになっても、この男は自分を好きになってはいけない、と。
だから、その距離の取り方には、十分気をつけてきたつもりだった。
もしも告白されたとしても、冷静に説得して諦めさせる自信があった。
しかし、そんな風にフェイントつけて告白されてしまったら、心の準備が間に合わない。
だから、ずるい、と言った。
「人間の恋人、できなくなるよ?」
「・・・・・・もともと、できるとは思えねぇ・・・」
「わたし、ウィルスなんだから、絶対あなたに迷惑かけちゃうよ?」
「その迷惑がまた、楽しい」
「わたし、小さいから、セックスできないよ?」
「それでも、いっしょに気持ちよくなれるはずだ」
妖精さんは不覚にも、泣いてしまいそうだった。
男が言ってくれる言葉も嬉しいが、何より、男が真剣なのが嬉しかったからだ。
だからせめて、男に涙を見られないように妖精さん、ぴょんと男に飛びついて、その首もとに顔を埋めるようにしてしがみついた。
「でも、そんなエッチばっかりしてたら、変人になっちゃうよ?」
「妖精にマジ惚れする男なんて、変人に決まってるだろ」
そして妖精さん、とうとう堪えきれずに涙をこぼし、小さく呟いた。
「よかった・・・わたし、好きになるヒト、まちがえてなかった・・・」
そうして、妖精さんに差し出された男の掌に促され、そこに乗り移った彼女は、
導かれるまま男の顔に身を寄せて、
ずいぶんとスケール違いなキスをした。
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唐突に。
「ね、エッチしよ?」
と、キスの興奮にうっとりと表情を蕩けさせた妖精さんが言った。
男も、もちろんそういうことに反対する理由もないわけで。
「よし、じゃあオレが気持ちよくしてやるよ」
男は、セックスができないかわりに、自分が妖精さんの身体を可愛がってやろう、と思ったのだが、
「わたしも、あなたのことを気持ちよくしてあげたい」
妖精さんがそういうものだから、二人がいっしょに、お互いに気持ちよくなれるようにしよう、ということになった。
そして男は服を脱ぎ、ソファの上に腰をかけた。そして妖精さんを手招きし、手伝ってやって彼女の服を脱がせてやった。
妖精さんは男の股間にちょこんと着地し、勃起し始めているペニスに手をかけた。
「・・・すごい、これがあなたの、オチンチンなんだ・・・」
男のペニスを、小さな掌でさわさわとさするながら、妖精さんが緊張して言った。
以前、彼のペニスを見ることなくポークビッツなどと揶揄もしたが、実際はとてもそんな可愛いものではない。
「じゃあ、はじめよ?」
妖精さんは、その小さな裸体を男の醜悪なペニスに寄せて、最初はふわりと抱きついた。男はその、何とも倒錯的な風景に、ドキドキと鼓動が
早くなるのを感じ、その鼓動は間違いなくペニスに大量の血液を送り込んでいった。
「わ、すごい・・・だんだんおっきくなってくる・・・」
そしてペニスが完全に勃起した頃には、妖精さんの背丈を超え、彼女を圧倒するくらいに大きくなってしまっていた。その、大きなペニスの
威圧感に対抗するためか、はたまた男に快感を与えようと言う気持ちからなのか、妖精さんはぎゅ、と力を込めて、ペニスにしがみついた。
「わたしが、しごいてあげるね」
そうして妖精さん、懸命に身体をペニスに擦り始めた。
最初はまだ湿り気もなく、乾いた肌と肌をサラサラと擦り会うような行為だったのだが、次第に妖精さんも汗をかき、男のペニスも先端から
漏れた先走り液によって、ぬめぬめとした粘りけのある擦りあいになった。
「・・・ん、んはっ、・・・これ、けっこう、わたしもキモチイイ・・・」
身体を擦りつけていく内に、妖精さんの可愛らしい乳首が滑ったペニスに擦りつけられ、その度に身体をぴくぴくと震わせる。
「けっこう感じやすいのか、スケベだなぁ・・・」
男が、からかうように口にするが、妖精さんはその言葉に、恥ずかしがりながらも頷いた。
「うん、わたし、けっこうスケベなの・・・。ずっとあなたと、こうしたかった・・・」
妖精さんは、ますます強くペニスを抱きしめ、身体を密着させて、今まで心の内に貯めていた想いを吐露する。
「あなたのオチンチン、わたしの膣内(なか)に入れたい! あなたのこれで、いっぱいいっぱい可愛がって貰いたい!!」
だけど、それは無理だから、と妖精さんは切なく言葉を繋ぎ、
「だから、わたしがあなたのオチンチンをいっぱい可愛がってあげたいの・・・」
すでにヌルヌルになったペニスに、妖精さんは懸命に身体を擦りつけ、男を高めていく。ペニスの裏筋に身体の正面をあわせて、敏感なところを
強く責め立てる。
「・・・きもち、いい?」
「ああ、すげー、きもちいいよ」
男の反応に妖精さんは、よかったと満足して、身体を擦りつける動きを激しくした。
男は、確かにそのまま妖精さんに愛されるまま射精してしまいたい欲求に駆られたが、それでは妖精さんを可愛がってやりたい、という自分自身の
欲求が後回しになってしまう。
「なぁ、ちょっと、お尻を突き出して?」
「・・・・・・、こ、こう?」
妖精さんは恥ずかしげに、ちょこん、と可愛らしくお尻を突き出した。ペニスの裏筋に身体をあわせている妖精さんだから、
男からはそのお尻を直接眺めることができない。そのかわり、ちょうど彼女の性器があるあたりに、そっと指の腹をあてがった。
「ひゃうん!」
すでに敏感になっている部分を、男のざらついた指の腹で撫でられ、妖精さんは悩ましげな声を上げた。
「ここ、もう滑りやすくなってる」
「ば、ばかぁ・・・」
男は手先器用に、妖精さんの割れ目を指の腹や爪の先で優しく弄りながらも、自分のペニスに与えられる刺激に耐えるのに必死だった。
女性の身体はデリケートである、とよく聞く話ではあるが、この妖精さんに至ってはその比ではない。力を入れて扱えば、いともたやすく
傷つけてしまうだろう。
「きもちいい、わたしも気持ち良いよ・・・あなたも、気持ち良い?」
すでに音が立つくらいに滑ったペニスに身体を擦りつけ、そして突き出したお尻を男の指で撫でられ、妖精さん自身も快楽を得ている。
男が妖精さんの問いに、言葉なくそれでもしっかり頷くと、妖精さんは嬉しそうに笑った。
「あ、・・・・ごめん、わたし、もうダメみたい・・・」
息も途切れ途切れに、妖精さんが呟いた。
「あなたとこうなれて、あなたに可愛がってもらえて、あなたに尽くしてあげられて、それだけでもう、わたし、ダメになっちゃう・・・」
妖精さんは、もう、高みに登り始めていた。
もちろん、男も、すでに我慢できないところまで、射精欲求がせり上がってきていた。
「オレ、もう、逝きそうだ・・・」
「うん、うん、わたしも、わたしも、ダメになっちゃう!」
お互いがお互いを求め、気持ちよし高めあい、そしてとうとう、二人同時に絶頂に上り詰めた。
「だめ、だめっ、だめだめーーーーーーーーーーっっ!!!」
「くっ!!」
男はペニスから、盛大にザーメンを吹き出した。
妖精さんはその迸る精液を、よけることもなく全身に浴びていった。
「・・・・・・いっぱいでたね・・・」
ヌルヌルと、あたりに迸った男のザーメンに身を浸し、それをまた男のペニスになすりつけながら、うっとりとした表情で妖精さんは言った。
「これが全部、わたしに出してくれた精液なんだ・・・なんか嬉しい」
そして妖精さん、何とも愛おしそうにそのヌメヌメを弄んでいる。
男は、そんな妖精さんを見ている内に、再び股間に力がみなぎっていくのを感じた。
そのあと、数回の戯れのあと、二人いっしょに風呂に入って身体を清めた。
そしてさっぱりと身体を拭ったあと、二人は別れることにした。
もちろんそれは、永遠の別れではない。
彼女は男のパソコンの中、新しいインターネットエクスプローラーに寄生するのだ。
そこの中で体を休める妖精さんだから、さすがにずっと実体化していられるわけではない。
そんなふたりの、ほんの数時間の別れ。
明日も、明後日も、これからずっと会えるから、今日は少しのさよなら。
今日も、楽しかった。
じゃあまた、あした。
妖精さんはパソコンの中に消え、男は部屋の電気を消した。
そして男は一人布団の中にいながらも、傍らに小さな妖精さんがいるようなぬくもりを感じていた。
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そして、以下はその後、のようなもの。
「モスラ〜や、モスラ〜♪」
妖精さんが歌っている。
小美人、というにはあともう一人足りないところだが。
それにしても、と男は思う。
「オレのチンコと添い寝しながら、モスラの歌を歌うのは、やめい!」
いつものように、男と妖精さんは仲良くスケベなことをして楽しんだあと、情交のあとの気怠さを堪能していた。
そしてその日は、射精のあとで萎えていった男のペニスを抱き枕のように使いながら、妖精さんが機嫌良く歌っていたわけだ。
「だって、モスラ幼虫みたいで可愛いんだもの」
それを言われるだろうからイヤだったわけだが。
「ところで」
男が、唐突に言った。
「ちょっと、気になることがあるんだけどな」
ちょうどパソコン画面には、妖精さんが抜け出てきた小さなポップアップがある。
「このボタン、なんだろうねぇ?」
男がカーソルで指し示すボタンは、ウィンドウの右上、窓の隅にある小さなボタン。『_』と『×』のあいだにある、『□』ボタン。
「なにって、『最大化』じゃないの?」
妖精さんが、何を当たり前のことを、とでも言うような表情で答える。男はそれに気を向けるわけでもなく、試してみよう、と提案した。
妖精さんは、何を試すのかも今ひとつよく分からないまま、言われるとおり一度パソコンの中に帰っていった。
それから。
等身大になった妖精さんが、ゆっくり画面の外に出てくる様を男は、
「ホラー映画『リング』の、貞子みたいだ」
と評した。
それを聞いた妖精さん、涙目になりながら男をぽかすかと殴って抗議しましたとさ。
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そして、思いつきで追加。
ちょん、と全裸の妖精さんが、卓袱台の上に鎮座。
そしてその前に、とりあえずパンツだけ穿いた男が、あぐらをかいて座っている。
「第6回、新型プレイ提案会議、開催します!」
妖精さんが、声高く宣言した。
あれから、身長130センチの女の子にまで最大化できるようになった妖精さんは、男といろいろとエッチなことをして楽しんだ。
当然、セックスもした。たとえ大きくなったとしても、その身長、体格からして、現実の女の子にたとえれば、小学生3〜4年生と言ったところだから、
最初はずいぶんと苦労もしたし、妖精さんもかなり痛がった。
しかし、そういった苦労も、幾度となく肌を重ね合わせていく内に馴染み、溶け合い、最高の相性となった。
まるで大人の男が子供を犯すようなセックスであっても、今となってはお互いが充分以上の快楽を得られるようになった。
だが、こうやっていつもの小さな妖精さんサイズでのエッチも止めてしまったわけではない。
実際のところ、等身大になってのセックスは、燃費が悪いようで。
パソコンの消費電力が凄いことになってしまうらしい。
さて、本日は。
こうして二人でいろいろと考えて、小さい妖精さんと楽しむ、新しいプレイを開拓しよう、としているのだ。
「わたしに良い考えがある」
可愛らしい声を、ちょっと渋めに抑えて、妖精さんが言った。男も、その妖精さんの自信たっぷりな言い様に、ほほぅ、と興味を寄せる。
「ええとね、まずは、大きくなったあなたのオチンチンを、ローションとか使ってぬるぬるにするワケね」
ほうほう、と男も興味深く耳を傾ける。
そうやってローションまみれになった妖精さんがペニスに抱きついて、というプレイは過去にも試したことがある。
この妖精さんの自信からすると、おそらくそれよりもキモチイのかも?と、ついつい期待してしまう男。
「で、ヌルヌルになったところで、あなたのオチンチンの先っちょ、つまり尿道に、わたしのこの腕をつっこむわけ!!」
そういって妖精さん、たかだかと腕を掲げる。
「これからのトレンドは、『NYOW−DOW』、尿道よ! そのトレンドを先取りした、逆フィストファック!!
どう? 絶対キモチイイから、試して見ようよ!!」
男は、想像だけで股間が痛くなり、ギブアップの白旗を揚げた。
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