かーいい幽霊、妖怪、オカルト娘でハァハァ【その12】
「さて、」
と男は、言葉を句切ってからしばらく間を空けたあと、もったいぶってから話し始めた。
「ずいぶんとやりたい放題、悪戯しまくってくれたじゃねーか」
キリストが磔(はりつけ)にされたのがゴルゴダの丘。
しかし、割り箸で作られた簡易な十字架を、会社に備え付けの粘土の上に突き刺しただけのこの丘は、
世界でもかなり有名な聖人さんになぞらえるのはばちが当たりそうだ。
だからパクるにしてもワンクッションおいて、ゴルゴダ星の丘、ってことにしとく。ウルトラ兄弟やエースキラーはいないけど。
その簡易ゴルゴダ星の丘に縛り付けられているのは、この会社のパソコンに潜んでいた、インターネットの妖精さん。
ちょうど、昔の占い雑誌、「おまじないコミック」あたりに連載されていた、やすはらじゅん先生が書くところの妖精さんのようだ。
(描写は割愛する。とりあえずここ
http://www.iinet.ne.jp/~akimori/yousei.htmのクロトクリンあたりを参照。)
そろそろ気温も下がってきて、夜ともなれば肌寒くも感じる今日この頃、しかしこの妖精さんはまぁ、何ともファンタジーな薄着だった。
そんな彼女を十字架にくくりつけるのにはこの男、少々罪悪感も湧いたのだが、彼女がしでかした悪戯のお仕置きだ、と心を鬼にしてくくりつけた。
男は独身だったので、ちゃんと自分でソーイングセットを持参しているのです。
「ううっ、こ、こんなこと、ひどいよっ!!」
「だまらっしゃい! 君がやらかした通信の阻害が、どれだけスレのコミュニケーションに悪影響を与えたと思ってるんだ?」
男は、まるでスレの代弁者気取りで、そんなたわいのないことをいかにも大仰に述べ立てた。
しかし、まぁそんな言葉には実(じつ)も伴っていない。この小さな妖精さんの心に響こうはずもない。
「うるさいっ! あんなろくでもない、人間のクズが集まるようなスレなんか、アラされちゃえばいーんだっ!!」
その、あくまでも心折れない小さな妖精さんを前に、男も紳士の仮面を被るのをやめた。
「ほほう・・・」
「これが何か、分かるかね? 妖精さん」
ここは男の勤務先、とある設計会社のオフィス。彼一人しかいない部屋の隅にある道具入れから持ち出したのは、
機械設計系の事務所なら必ず常備されているであろうノギスだった。
(描写は割愛する。とりあえずここ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%82%AE%E3%82%B9を参照のこと)
「・・・・・・なんか、屈折したフェティッシュを感じるんですけど・・・」
その、金属製の歪(いびつ)な定規を目にした妖精さん、少し額に汗を流しながらそれでも減らず口。
「妖精さんの小さな乳首の直径だって、このノギスなら0.01mm単位で測れる」
努めて男、冷静な口調で。さながら、ヤマトの真田さん風に。
ここで、妖精さんの脳内に、彼女の想像力が作り出したフラッシュアニメが再生された。
裸に剥かれ、十字架に張り付けられた妖精さん。
冷たい金属の定規が当てられ、冷酷に目盛りを読み上げられる、妖精さんの乳首の直径。
「いーーーーーーーーやーーーーーーーーーーーっっっっ!!!!」
じたばたと力の限りに暴れまくる妖精さん。どうやら身体測定は嫌いらしい。
「へーーーーーんーーーーーたーーーーーーーいーーーーーっっっ!!! おまわりさーーーーーんっっっ!!」
だがしかし、彼女を縛る絹糸はなかなかに頑丈だった。
必死にあがく彼女を見ながら男、罵られている割に平然と。
「変態とは失敬な」
とだけ口にした。
そんな冷静な真田班長を前に、とにかく抗う妖精さん。
「虐待反対っっ!! 可愛い妖精さんを苛めるの禁止っっ!! レッドデータアニマルを守ろうッッッ!!!」
ワシントン条約に妖精さんは規定されていない。
そんなツッコミを心の中で呟く。
そして男、ノギスの他に持ち出した、もう一つのアイテム。
「普通ならここで、羽根箒とか三角スケールを持ち出すところだが・・・」
たしかに、小さいサイズの女の子を扱うエロ漫画なんかではお役立ちアイテムの羽根箒や三角スケールを持ち出すのもこのスレでは「あり」だろう。
(描写は割愛する。ここ
http://item.rakuten.co.jp/gazaiya/te17-012/と ここ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E8%A7%92%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%ABを参照のこと)
またまた想像力豊かな妖精さん、羽根箒でくすぐりの刑を受けたり、三角スケールで三角木馬の刑を受けるところを想像。
「いくらエロパロスレだって、そんなヒドいこと、しない・・・わよ・・・ね・・・?」
微かな希望に縋り付くように、可愛く首を傾げながら語尾を上げておもねってみる妖精さん。
しかし今度はこの男、無意味に若本ボイスを真似て。
「これなら、小さな膣穴(アナ)でも正確に測れるぞ?」
手にしたのは、何とも鋭いクナイのようなテーパーゲージ。
(ここ
http://www.dogudoraku.com/catalog/product_info.php/products_id/18030/cPath/250_250450参照。)
「ぎーーーーーーーーーーーーーーやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっ!!」
もう、妖精さん必死。
泣きじゃくりながらアタマを振り回すものだから、涙やら鼻水やらがあたりに散乱。
そしてその男、そんな妖精さんを見ながら定規の鋭い先っぽを近づけて・・・。
「・・・なーんてな」
ちょん、と小さく頭をつついて、その凶器を引っ込めた。
「オレ、残念ながら拷問するの趣味じゃねーし」
確かに彼は、グロ方面のスレは巡回していない。
割り箸に結んだ糸をほどいて、妖精さんをい自由にしてやった。
「これでおしまい。・・・これに懲りたらもう悪戯、するなよ?」
そういって男は、照れくさそうに物騒な製図用具を片づけ始めた。
「あ・・・・・・」
思いがけず自由になった妖精さんは、少しのあいだ惚けたあと。
「ありがとう・・・・・・」
しゅんと項垂れて、そういった。
・・・かと思ったら、
「なんてっ、言うと思うかコンチクショーーーーーーーッッ!!!」
と妖精さんには不似合いなFUCKの中指を突き立てたあと、先ほどからつけっぱなしのパソコン画面に飛び込んでいった。
「おおっ! パソコン画面の中にはいったっ!!」
男が驚いて、画面を凝視。
インターネットエクスプローラーのウィンドウが、小さいポップアップを作り出していて、その中にさっきの妖精さんが収まっていた。
「よくもいたいけなわたしを苛めてくれたわねっ!! みてなさいよっ!!」
そしてそのポップアップを閉じたかと思うと。
ぴろりん、と音がして。
男が3日かけて作成した、納品前の図面が一枚、削除された。
「ぎーーーーーーーーーーやーーーーーーーーーーーっっっっ!!!」
今度叫ぶのは男の番。
「てめー、なにしやがんだコンチクショーーーーーーーッッ!!」
ディスプレイをがくがく揺すって恫喝するものの、中の妖精さんにはぜんぜん効いていない。
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それから男は、結局呼びだしたタクシーを断って、泊まりがけで消された図面を修復していった。
「あーあ、またこんな、無駄なことしちゃってサー」
パソコンの画面に立ち上げられた製図ソフトで図面を作成するのだが、そんな作業を邪魔するかのように、
画面の中をデスクトップアクセサリーと化した妖精さんがうろちょろうろついて邪魔をする。
「ちくしょー、コイツ、なんとかならんものか・・・・・・」
度重なる妖精さんの嫌がらせに歯ぎしりをしながら、男はふとインターネットエクスプローラーを立ち上げてみた。
「えー? こんな忙しいときに、エロパロ板を覗いてていいのかなーーー?」
と、妖精さんは男をからかっていたのだが。
「・・・! や、やばっ!!」
とたんにあたふた、慌て始めた。
男はその妖精さんの動作に首を傾げた。そしてちょっと彼女の様子を見ていると、なにやら必死に、エクスプローラーのボタンを背中で隠している。
なんだろう、と男は、マウスでもってその窓をひょい、と動かして妖精さんの背中から露わにする。
すると、見慣れたボタン類の端っこに、小さな妖精さんのアイコンが。
「なんだ、これ?」
「だーーーーめーーーーーっっ!!」
必死にそれを隠そうとする妖精さんをかわして、男がそのボタンをクリック。
「あうっ!」
ぽん、と妖精さん、ディスプレイの外にポップアップ。
前のめりにつんのめるように、再び実体化した妖精さん、慌てて立ち上がり、また画面の窓に飛び込んで、隠れてしまった。
しかし男、慌てることなく、再びボタンをクリック。
「ひゃん!」
またまた実体化。
「ふっふっふっ・・・」
男の、不敵な笑い。声は相変わらず若本ヴォイスで。
「えへ?」
妖精さんの、可愛らしい微笑み。額には脂汗が浮いているが。
さすがは世界のビルゲイツ。
妖精さん実体化アイコンまで作ってたよ?
はてさて、このあと、妖精さんはどうなってしまうのか?
彼女の乳首は直径何ミリなのか?
それらは次回の講釈で。
(あと2回、続いちゃうっ!)