「さて、」
と男は、言葉を句切ってからしばらく間を空けたあと、もったいぶってから話し始めた。
「ずいぶんとやりたい放題、悪戯しまくってくれたじゃねーか」
キリストが磔(はりつけ)にされたのがゴルゴダの丘。
しかし、割り箸で作られた簡易な十字架を、会社に備え付けの粘土の上に突き刺しただけのこの丘は、
世界でもかなり有名な聖人さんになぞらえるのはばちが当たりそうだ。
だからパクるにしてもワンクッションおいて、ゴルゴダ星の丘、ってことにしとく。ウルトラ兄弟やエースキラーはいないけど。
その簡易ゴルゴダ星の丘に縛り付けられているのは、この会社のパソコンに潜んでいた、インターネットの妖精さん。
ちょうど、昔の占い雑誌、「おまじないコミック」あたりに連載されていた、やすはらじゅん先生が書くところの妖精さんのようだ。
(描写は割愛する。とりあえずここ
http://www.iinet.ne.jp/~akimori/yousei.htmのクロトクリンあたりを参照。)
そろそろ気温も下がってきて、夜ともなれば肌寒くも感じる今日この頃、しかしこの妖精さんはまぁ、何ともファンタジーな薄着だった。
そんな彼女を十字架にくくりつけるのにはこの男、少々罪悪感も湧いたのだが、彼女がしでかした悪戯のお仕置きだ、と心を鬼にしてくくりつけた。
男は独身だったので、ちゃんと自分でソーイングセットを持参しているのです。
「ううっ、こ、こんなこと、ひどいよっ!!」
「だまらっしゃい! 君がやらかした通信の阻害が、どれだけスレのコミュニケーションに悪影響を与えたと思ってるんだ?」
男は、まるでスレの代弁者気取りで、そんなたわいのないことをいかにも大仰に述べ立てた。
しかし、まぁそんな言葉には実(じつ)も伴っていない。この小さな妖精さんの心に響こうはずもない。
「うるさいっ! あんなろくでもない、人間のクズが集まるようなスレなんか、アラされちゃえばいーんだっ!!」
その、あくまでも心折れない小さな妖精さんを前に、男も紳士の仮面を被るのをやめた。
「ほほう・・・」