かーいい幽霊、妖怪、オカルト娘でハァハァ【その12】

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「・・・なんなんだよ、おれ、別にそんな意味で書いたんじゃないのに」

その男は、とある掲示板でのレスに、眉根を寄せた。

机の前のノートパソコンを眺める男。
他愛のない書き込み、そしてそれに返された、注意とも悪意ともとれる返信レス。
しかし彼は知っていた。
煽りに乗って、自らも攻撃的なレスをしてしまえば、いたずらに相手を刺激し、スレが荒れてしまうことを。
そして男は、落ち着いて、新たなレスを送信した。


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「・・・えーと。・・・ま、ずいぶんと真面目な意見だこと。面白くないから、ちょっと弄っちゃえ!」

『うるさいね、あんた。黙れよ』

「・・・と。これで良いわ♪ あとは、プロバイダさんにGO!」

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「お、$$$さんちのパソコンからだ。・・・ふむふむ。今ひとつ、押しが弱いなぁ」

『うるせーっての。テメーみたいな童貞は黙ってろ!』

「うむ、我ながら名文だ! あとはこれを、PINK鯖の妖精さんに送って・・・と、完了!!」

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「@@@プロバイダちゃんからだ。・・・なになに、キャハハ、これいいね! アタシもちょっと、手を加えちゃえ!」

『るせーって。テメーみたいな童貞は、アタマん中の幽霊ムスメをオカズにして、一生シコってろ!』

「これでよし! あとはこれを、『かーいい幽霊、妖怪、オカルト娘でハァハァ』スレに・・・投下ッと!」

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「はぁ? またワケわかんねーレス返しやがって!」

怒りと呆れ、そんな不快なストレスが腹の辺りにぐるぐると渦巻く。
仕事場のデスクトップパソコンで、終電をのがしたあとのタクシー待ち。
(こういうときはアレだ、脊髄反射のレスをしちゃいけねー)
男はそのことを知っていたから、ひとまずは机の引き出しから、マイルドセブンとライターを取り、ベランダに出た。

「しかしまぁ、オレもずいぶんと、紳士になったもんだ」

ふぅぅ、と紫煙を夜の空に流し、男はゆっくりと星を眺めた。
そして彼は、ずいぶんと短く縮まった煙草を携帯灰皿に押し込み、部屋に戻ろうとして・・・。

「なんだァ、ありゃあ?」

男は、自分が使っていたパソコンの後ろに、小さな女の子がいるのを見つけた。

「さ〜て、この男、今度はどんなレスを送るんだろう? わくわく♪」

その小さな女の子、ちょうどマウスを抱き枕にして眠れるくらいのミニサイズ。
パソコンの背後から伸びるLANケーブルに耳を当て、送られてくる信号を盗み聞きしているらしい。

「あの男が、どんなに誠意を込めたレスを返したって、このワタシの目の黒いうちは、立派な嵐レスにしてやるもんね♪」

「きーさーまーのーせーいーかー!!!」
「きゃっ!!」

男はパソコンの裏に忍び寄り、そのケーブルにしがみつく小さな女の子を指でひょいとつまみ上げた。

「さぁて、この悪戯者の妖精さん、いったいどうしてくれようか!」



「あ、あのー、あなたも『かーいい幽霊』スレの紳士さんだったら、・・・私たち妖精に、手荒な真似をしたりしません、よ、ね?」



「どあほう! オレは、もう紳士はやめじゃーっ!!」



男がその妖精さんに、どんな悪戯をやり返してやったのか。

それをここでいちいち伝えるのも、無粋というもの。


なぜならば。
とりあえずあなたが、あなたのパソコンの後ろにいる妖精さんを捕まえて、

あなた自身が彼女たちに、思い思いのお仕置きをしてあげればいいからだ。



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