かーいい幽霊、妖怪、オカルト娘でハァハァ【その12】
流れ仏契りで投下いたします。
30kbあるので、途中で『さる規制』に引っかかって投下を中断するかも知れません。
そのときは、生暖かい支援をおねがいします。
とあるスレでの雑談で考えたネタなのですが、書き上がってみれば微妙にスレ違いっぽい出来のように思えたので、懐の広いこちらのスレをお借りしようかなと。
たぶん抜けないので注意。(抜けない理由:冗長)
元になったネタ。
ジラース娘:クラスでも目立たずにいた女の子だが、付き合ってみると実は暴れ者の怪獣娘。
首筋、うなじが弱点で、そこを攻めるととたんにしおらしくなる。
タイトルと本編に、あまり関係はありません。
ウルトラ原作とのパロディ密度は、自己評価10%くらいでしょうか。
それは、とある冬の夜のこと。
まだ日付の変わらない頃合いではあるが、その道を歩いているのは、見渡す限り少年一人だった。
今時コンビニエンスストアが夜22時で閉店してしまうような僻地であるが、そこそこの家が建ち並んでいる。
少年は、勉強の息抜きという名目で、深夜の散歩としゃれ込んでいた。
この少年、とりあえずこのお話の主人公であり、名を『二階堂博士(にかいどう ひろし)』という。
実家は少し離れた町にあるのだが、この辺りにあるアパートを借りて済んでいる一人暮らしではあるが、まだ
高校に通う2年生である。もうじき3年生となり、とうぜん進学または就職に対して明確なビジョンを持っていな
ければいけない時期ではあるが、彼はその辺り少々浮世離れしていたので、未だ進路を決めあぐねていた。
進路調査の用紙には、一位・怪獣博士、二位・妖怪博士、三位・宇宙人博士と書いて提出したものだから、教
員用トイレの掃除を罰として言い渡されたくらいだ。もっとも先生達も彼の実家がそれなりに裕福であることを
知っているから、卒業後特に就職しなくても問題ないだろうと踏んでいたので、彼のそんなふざけた態度にも
殊更強く窘めることはしなかった。
とにかく彼は、教師達からもクラスメイト達からも、変わり者と思われていた。もちろん自分もそれを認めてい
るので、どこからも文句を言われることのない、完全な『自他共に認める変わり者』なのである。
そして彼は、いつもの散歩コースである湖の畔(ほとり)にやってきた。町から離れたこの場所に、こんな夜中
に人がいるはずもなく、彼は目論見通りの孤独を楽しんでいた。畔の林を散策し、湖に向かって「アポローン!!
ヘッダー!! トラングー!! レッガー!!」とか、「ビッグオー、ショータイム!!」とか訳の分からないことを
叫んでみたりしても、誰も咎めるもののいない、自由な空間だったのだ。それなりに蓄積する日常生活のスト
レスを、こうやって叫ぶことで解消しているのだと考えてもらえば、それなりの理解を得ることも出来るだろうか。
そして今夜も林の中から、毎日の気まぐれの一環で、月明かりに煌々と照らされる湖面を眺めては、「来いッ!!
ガンダームッ!!」などと叫び、来もしない架空のシャイニングガンダムを呼び出そうとしていた。
さてそんな彼ではあるが、さすがに湖面からガンダムが現れないことを確認して、立ち去ろうとしたのだが。
ぱしゃ・・・。
静寂の中、わずかに湖水の跳ねる音が聞こえた。
彼は、その音を探るように湖面を見渡し、ようやくそれを見つけた。
林の木々の狭間から見える湖の端、湖岸付近に、人影が見えたのだ。
少女。
一糸纏わぬ少女が、まだ凍ってはいないものの間違いなく冷たい湖水に、膝まで浸かるように立ちつくしていた。
これにはさすがの変わり者、二階堂博士とて、肝を冷やした。まさに今、彼女は入水自殺をしようとしているので
は、と焦る。さすがに自殺者を呑気に眺めているだけなどというモラル外れな男ではない。
彼は必死に、聞こえるかどうかは定かではないが、とにかく叫んで少女を引き留めようとした。林を引き返し湖岸
に駆け寄り、その僅かのあいだ林によって視界が遮られたときに、不覚にも彼女を見失ってしまった博士は、思
い切って湖の中に足を進めた。さっき見た場所にあたりを付け、少女を呼び戻そうと大声で叫ぶ。おーい!!
はやまるなーっ!! と叫びながら、ざぶ、ざぶと水をかき分け歩を進める。腰までを湖水に浸しながら探し回った。
しばらくの捜索の後、彼は岸に引き返した。未だ少女は見つからなかったものの、彼自身の限界だったからだ。
そして、水からあがった彼は、自分がいくつかの失敗をしたことに気が付いた。
ポケットに入れていた携帯電話が浸水して壊れていたこと。自分が水に入る前に、誰か応援を呼んだ方がよかっ
たかも知れない。
もうひとつ、焦るあまりいきなり湖の中に入ってしまい、よくこの湖岸を観察しなかったこと。よくよく見てみれば、
湖岸から離れるように、町の方向へ続く小さな足跡が見つかったからだ。水滴をまき散らしながら続くその足跡
は、それほど時間が経っていないことが分かる。思い起こせば、彼が発見した少女は、湖岸側に向かって正面
を向けていた。入水するのとは逆の向きだ。
何とも人騒がせなことかと思うが、自殺を取りやめたのか相手は引き返した、とも考えられる。
なんにせよ、これ以上彼に出来ることはない。
もし、本当にその少女が入水してしまったのなら、この夜中にそれを引き上げてやることは出来ない、もう手遅れだ。
彼の楽観的な希望的観測を含む予想が正しいのなら、少女は自殺を思いとどまったのか、水浴びか水垢離か
というところなのだろう、それこそ彼には何もすることはない。
とぼとぼと彼は家路につきながら、早く暖を取ろうと考えていた。このままでは風邪を引いてしまう。
そしてふと、最初に見かけた少女の姿が脳裏に蘇った。
輝く湖面の光に照らされるような白い裸身、水に濡れ、艶やかに輝く黒髪。
不謹慎だとは思ったが、信じがたい美しさだった。
寒さに凍える彼の、先ほどの記憶の中から、まるで幻のように存在感を薄めていく彼女の姿。遠くから見た少女
の特徴など、はじめから判別出来ようはずもない。
それでも、ほんの一瞬自分の方を見た彼女の瞳と、首の回りを縁取るようにして輝く模様だけが、なぜかはっき
りと記憶に焼き付いていた。
そして、当然の事ながら、風邪をひいた。
家に辿り着くなり熱い風呂に入って体を温めたものの、すでに手遅れだったようで、翌朝には高温の発熱によっ
て学校を休む羽目になった。
昨夜のうちに警察に電話し、湖に入る人間がいた、と報告していたので、翌日の朝から数人が捜索のために湖
に潜った。夕方には捜索も一段落し、特に死体も発見されず、博士の想像と意見を同じくして自殺者は引き返し
たと結論づけた。最初は博士の悪戯通報かとも疑われはしたが、彼らも湖岸から町へ伸びる足跡を発見したの
で、『引き返し説』を採ることにしたようだ。
数日の病欠の後、ようやく博士は快気し、久しぶりの登校となった。
教室に入り、自分の席に鞄を置いた博士は、ほんのわずか、違和感を感じ取る。
背後から、錐のように細く鋭い視線が刺さる。
じーーーーーーっ、
博士が振り向いてみるものの、朝の賑やかなクラス風景が広がるのみで、これと言って気を引くところもない。
始業のチャイムにあわただしくなったクラスに流されるように、博士も違和感を曖昧にせざるを得なかった。
そして、それから数日。
授業を終え、迎えた放課後。生徒達の多くは帰途につき、校内に残るのはクラブに精を出すもののみとなった
頃合い。特に所属もない博士だったが、なぜか校内に残っていた。
残っていた、というより、戻ってきたのだ。なんのことはない、教室に忘れ物をしていただけなのだが。
教員から鍵を借り、教室に戻ってきた博士は、そこに、もう一人の生徒を見つけた。
制服の上に防寒のジャンパーを羽織り、首には暖かそうなマフラーを巻き付けた、女生徒。
確かに、博士のクラスメイトだった。
「・・・二階堂君」
彼女は、教室の前の廊下にたたずんでいた。博士を待っていた、とは、博士自身にも考えにくい。特に約束を
していた覚えはない。
・・・というよりも、彼には、彼女の名前が思い出せない。
同じクラスになって1年近く経つというのに、クラスメイトの名前を覚えていない彼を不人情と詰る向きもあろうが、
今まで一度も話した記憶がないのだから、それもやむなしといえる。
しかし、博士はそれでも、違和感を覚えていた。
(・・・か、可愛い)
その少女、夕闇の校内に光少なく浮かび上がる姿、それは幻想的な美しさで博士を圧倒した。長い黒髪を三つ
編みに結わえ、大きなエビのしっぽを思わせるなりをしている。おまけに小柄な体格のおかげで、髪の毛の量も
多く身体を覆うようにも見えてしまう。
そして少しつり目がちな、アーモンドの瞳。小さいながらも形のよい鼻、丸顔でありながら凛とした印象を与える
顎。彼女を構成するパーツすべてが博士のストライクゾーンにど真ん中、剛速球で入ってきた。
しかし、こんな可愛い女の子が一年間もクラスメイトだったはずなのに、なぜ自分は彼女の名前を覚えていな
いのか。
まるで、今初めて出会った、初対面の一目惚れのような印象。
これまでの記憶と既視感が曖昧に織り混ざったような違和感に、彼の頭は混乱していた。
そんな彼に、彼女は再び声をかける。
「二階堂君、こんな時間にどうしたの?」
笑うでもなく、睨むでもなく。気安さのない口調で事務的に話しかける彼女に、博士はようやく、忘れ物をしたこと
を告げた。理由を聞き、それにも無関心な風で彼女はただ一言、そう、とだけ呟き、歩き始めた。そして博士とす
れ違う瞬間、さよなら、と小さく声を出した。
翌日、博士はクラスを見渡した。自分の座る席の後ろ側に、確かに彼女はいた。教卓に貼ってある座席表を
見て、初めて彼女の名前が『鰯水縁(いわしみず ゆかり)』という名前であることを知った。クラスの男友達
との雑談の中で、博士がさりげなく彼女のことを話題に出しても、誰もあまり彼女に印象を深く持っていない
ようだった。昨日彼が感じたような、女性としての可愛らしさすら、誰も印象を持っていなかった。
それから博士は、暇があるたび視線で彼女を追った。授業中は後ろの席に目を向けるわけには行かないも
のの、休み時間や昼食時間、そして体育の時間など、可能な限り彼女を見た。特に親しい友人がいるわけ
でもなく、暇があれば窓の外を眺め、菓子パンを一つもそもそと頬張って食事を終える。そんな生徒だった、
鰯水縁という少女は。あと気になったことはといえば、彼女の首周りだった。昨日は大きめのマフラーによっ
て隠されていたが、それを付けていない教室や、体育のジャージの襟元などを見れば、彼女がそこを白い
包帯で覆っていることが判る。
怪我でもしたのだろうか、と思いクラスメイトにさりげなく訊ねては見るものの、誰もその理由を知る者はいな
かった。
ともかく、観察を続けて博士は確信したことがあった。
(やべぇ、俺、マジに惚れたっぽいな・・・・)
どどどど、と凄い勢いでマラソンを全力疾走する彼女を眺めながら、博士は考えた。自分の気持ちが把握
できたのなら、後の行動は簡単だ。
早速告白しよう、と、決めた。
そして放課後。
「二階堂君、何か用かな?」
彼女と博士だけが残る、夕暮れの教室。窓から射し込む夕日が、彼女の白い肌を赤く染める。彼女は、すでに
帰る支度を終えたところを彼に呼び止められ、教室内であるというのにジャンパーとマフラーを着用していた。
教室の暖房を生かすために博士は前後のドアを閉めた。もちろん、邪魔者が入ってくることを回避したい、会
話が漏れてしまうのを防ぎたい、という理由もある。むしろ、こちらの方が本命。
そして鍵こそ閉めないものの戸を閉め終えた博士は、彼女に近寄ってから、言った。
「俺、鰯水(いわしみず)さんに惚れたんだ。恋人として付き合って欲しい」
彼は決して、女慣れしているわけではない。彼女がいなかったわけでもないが、その期間はごく短く、交際も
まだ不慣れなはずだ。その彼がこうもストレートに告白のセリフが言えるのは、ひとえに彼の性格によるもの
だ。気後れや動揺、遠慮会釈、そういった言葉とは縁遠い性格をしている。平たく言えば、厚かましい。
「・・・・・・」
博士の告白の言葉に、彼女はやや面食らったようで、綺麗な形をした瞳を大きく見開いた。しばらく無言であっ
た彼女だが、ややあってようやく口を開く。
「・・・おかしいな、なぜ効果がないのだ?」
それは、彼の告白に対する答えではなく、彼女の自問する言葉だった。
「私のことを意識しないで、障りのない関係を維持するように命令したはずなのだが。
クラスメイトだと思いこむ命令は受け入れているようだが、なにやら不完全なようだ。
・・・やはり、電波放射の前に、姿を見られたのが原因か・・・」
じろり、と睨まれてはさすがに博士も、あまり良い感触ではないことくらいは察してしまった。しかし、彼女が
言っている意味が分からない。
「あのさ、どういう意味なの、それ」
素直にそう訊ねる博士に、彼女は初めて笑い顔を見せて答えた。
にやり、と口を歪めた、邪悪な笑み。
「ふん、いいだろう。判るように説明してやろうか。
貴様は、まぁまぁ私好みだ、普通の地球人にないパルスを感じる。それに免じて、な」
急に雰囲気が変わった彼女に、博士は背筋に嫌な汗が伝うのを感じた。初めてみた彼女の笑み、なんとも
邪悪っぽい。
しかし正直、そんな表情も可愛いと思ってしまうあたり、緊迫感がないのが惚れた弱み。
「私はこの星の生命体ではない。貴様達が言うところの『宇宙人』だよ」
自分が告白しようとしていた相手が、地球人ではない、という発言は、変わり者である博士に何とも奇妙な
感慨をもたらしていた。残念なような、嬉しいような。
そんな微妙な感覚と戦っている博士を見て、彼女、それを恐怖の動揺と受け取った縁(ゆかり)は、ますます
笑いを凄絶なものにした。
すると、彼女の首を多うマフラーが薄く光り、それを突き破るようにして、8本の光が伸びた。それは光を維持
したまま、長いツノのような鋭さで彼女の首から放射状に伸びている。見ようによっては、八方から彼女の首
に光の爪を貫通させたような、残酷な想像すらさせる。
そしてその爪を骨として、薄い光の膜が張り巡らせた。ちょうど、雨傘をひっくり返したような、パラボナアンテナ
のような光景だ。中心に縁の首があるのだから、滑稽な言い方をすれば、エリマキトカゲのような襟にも見える。
「ふふふ、恐怖に足がすくみ、動けないようだな」
微動もせずにその動きを見守っていた博士は、その彼女の『光の襟』を見て思った。
(エリザベスカラーを付けた仔猫みたいだ・・・可愛い)
目の前の人間離れした光景も、惚れた弱みのあばたもえくぼ、可愛らしく見えてしまう博士には困ったものだ。
「この生体アンテナから放射される電波は、周囲の生命体の記憶操作を可能にする。この星の原住民程度で
あれば、何万人単位で自殺を命じることだって出来るのだぞ?」
なるほど、その電波を使って記憶を操作して、クラスメイトになりすましていたのか。
しかし、なんでそんなことをしてまで学校に?
「貴様を監視するため・・・は、ついでの理由だな。
調査活動というヤツだよ。これから私が支配する星の住民が、それに足る存在なのか」
そのエリマキを博士に向け、威嚇するような縁。
「あまりにもくだらない生き物であれば、私に仕えることを許さぬ。この星の住民すべて、自ら命を絶って
滅びるがいい!!」
叫ぶように発したその言葉。博士はそれらを要約して、『宇宙人の女の子、お忍びで学生生活をエンジョイ』とか、
脳天気に受け止めていた。
「さて、おしゃべりは終わりだ。今度こそ私の電波を受け、支配下に落ちろ!!」
くわっ、と見開かれた縁の瞳を、博士は、
(スゲー、銀色の瞳だ! 綺麗だなぁ・・・)
などと呑気に見つめていた。
そうこうする間も、縁のエリマキは強く発光し、彼女言うところの『服従電波』を発したのだが。
いかなる理由からか、博士に何か影響を及ぼしたとは思えない。
彼の思考がおかしい、のは、最初っからである。
それでも縁は、自分の放った電波に相当の自信を持っているらしく、得意げに成功を信じて疑わない。
「フフン、さて、これでお前も私の言うことには逆らえなくなる。とりあえず今日は、さっさと帰って、ここで見聞き
したことをすべて忘れるんだ、良いな?」
自信満々に博士にそう命じるものの、彼は動く気配がない。むしろ、ふらふらと引き寄せられるように近づいてくる。
「む? 何をしている、早く帰れと命じているのだ、従え!!」
より強い語調になる縁だが、対して博士は口を開く。
「いや、まだ告白の返事を聞いてないし」
けろりと答える男に、縁はぎょっとした表情。わずか動揺した後、歯がみを不敵な笑みに変える。
「私と付き合いたい、というさっきの戯言か。ならば答えてやろう、私の最大出力でな!!」
彼女はそういって、首に巻いていたマフラーを勢いよく取り除き、さらにその下の包帯をほどいていった。
そうやって明らかになった彼女の首には、入れ墨のような文様が首周りを覆っていた。円形の模様を直線で
つないだ、チョーカーのようにも見えるその模様から、エリマキの骨になる光のツノが発生しているようだ。
彼女の言った『最大出力』は、その文様を直接晒すことで発現した。
発する光がより増し、青年の網膜を白く焼き視界を奪う。
「あははははっ、もうこれで、私を彼女にしたいなどという妄言も消えてなくなったろうが!!」
しばらくの発光の後、光は落ち着き始めた。
「いや、なんか、ますます好きになった感じ」
「な、なんだとーーーーーっ!!」
この最大出力を信じていた縁は、全く効果がない局面に出くわして、大慌て。
そして博士は、その彼女の首元を見て、意識の奥から浮上してきた記憶に驚いた。
「ああっ、お前、あの夜、湖にいた女の子か!!」
「くっ、思い出してしまったのかっ!! ええい、忘れろ、忘れろーーーっ!!」
そうして何度も強く発光を繰り返す縁のアンテナだったが、博士に変化はない。
「なんで? どーしてっ? なんで貴様に効かないんだっ!!」
もう、狼狽を隠そうともしない。いや、隠すことを忘れているほど狼狽しているという方が正しい。
そしてその動揺は、震える手でもって彼女の武器をかざすに至った。
「ええい、こうなったら仕方がない。私の手で、直接死を与えてやろう、光栄に思うがいい!!」
ポケットにつっこんだ手を引き戻したとき、彼女は小さな護拳(ナックルガード)のようなものを拳に覆わせていた。
やたらと艶やかな光沢のある、金属で出来たそれを、突きつけるようにして博士に向ける。
「え? 殴るの?」
「撃つんだよ、こんな風にな!」
ぴゅう、と電気的な風切り音、が発せられた。
縁の表情に、残忍な笑みが広がる。
「・・・で?」
博士の周りに、何も変化がない。
先ほどの電子音の後、じわじわと鼓膜に、校庭を走る運動部のかけ声が蘇ってくる。
撃つ、といわれたから、銃弾か光線によって攻撃されるのだろうか、などと、今になって考えを巡らせる。彼女は
宇宙人らしいので、それなりのハイテクは持っているのだろう。
対して縁は、得意げな笑みを次第に引っ込め、疑問の声を一つ。
「あれ?」
しばしの呆然、そして呟き。
「・・・・・・効いてないのか?」
縁は、続けて2度、3度と護拳をかざし、ぴゅう、ぴゅうと音を鳴らすが、それでも変化は起きない。
彼女の持つ武器、それは、鋭い熱線を発する殺人兵器。おおよそ地球上に貫けないものなど無い威力だ。もち
ろん、この兵器を食らって無事でいられる人間などいない。
ならばなぜこの場で威力を現さなかったのか。
単純な話だが、縁の腕が悪い。
わざわざ頭部を狙って発せられた熱線は、博士の髪すらかすめることなく通り過ぎた。連続的に放射し続ける
タイプの武器ではなく、ピストルの弾丸のように、短く区切って発射されるようだ。そして壁に切り目を入れるよう
に貫いて、射程の先まで突き進んでいった。それから何度も放たれた熱線も同様だ。
博士は、縁とは逆に、大して動揺することもなかった。むしろ、怒ったり笑ったり焦ったりする縁を見て、コロコロ
表情を変える可愛い女の子、などと認識を深めたくらいだ。
さすがに博士も、今放たれた兵器が、わかりやすい銃声を伴った実弾銃だったり、着弾点に爆発を起すものだっ
たり、あるいは熱線軌道に派手なエフェクトを伴うような類のものであれば、それなりに人間らしく慌てもするだろうが。
さて。
えい、えい、こんにゃろ、と続けて銃を撃ち続けていた縁だったが、やがて発せられていた音が途絶えた。さすが
のハイテクミラクル兵器も、弾切れ、エネルギー切れがあるようだ。
「その銃も、どうやら俺には効かないみたいだね」
武器の詳細を知らない博士は、先ほど彼女が放った電波と同じように自分に効いていないと思った。
知らない、という事が幸いしたのだ。
そして一歩、足を踏み出し、さらに二人の距離を縮めようとした。
「ええい、く、くるなっ!!」
博士が足を前に進めると、縁が足を後ろに進める。じりじりと後ずさる縁、もちろん、後方に注意を向ける余裕も
ない。そして、後退する足が机に当たり、驚いてバランスを崩してしまった。
「きゃっ!!」
「あぶねっ!!」
後ろに倒れそうになった縁を、とっさに博士が飛び出し、抱きとどめた。
「「・・・・・・」」
二人、しばしの沈黙。
唐突に、ぐにゃり、と縁が表情を歪める。
そして、縁が口を開いた。
「触った・・・」
「は?」
「触ったな・・・・・・?」
「え? いや・・・、倒れそうだったから支えただけで・・・」
「触ったーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっっ!!!」
「ええええええええええええええええええええ!?」
博士は慌てて彼女から飛び退いた。確かに、彼女を支えるために抱き締めはしたが、特に胸やお尻など、女の
子のデリケートな部分を手で触れたような形跡はない。全般的に、触れてしまったこと自体がダメだったのか?
なんにせよ、彼女は表情を歪め、半泣きだ。
「私の首に触ったなーーーーーーーーっっ!!」
首。
言われてみれば。
だが、首に触るのがそんなにいけないことなのだろうか。
ふと気が付くと、いつからか彼女の首から広がっていたエリマキのような光が消えている。
「首、触っちゃダメなの?」
博士が恐る恐る訊ねると、きっ、と強く睨み付けながら怒鳴り声でそれに返した。
「当たり前だっ!! 首の文様に触れられるのは、生涯の伴侶のみだっ!
それを貴様、貴様がーーーーーーーーーーッッ!!」
おお、異文化!
博士は、驚きながらも手を伸ばし、ぴたりと再び彼女の首に触れた。
「ひゃああっっ!!」
びくりと身を震わせる縁、博士に触れられることで身体の力を失ったようで、ふらりと倒れそうになるのをまた
博士が抱き留めた。
「あのさ、聞きたいんだけど」
彼女を抱きしめ、さらさらと指先で彼女の首の文様を撫でてやりながら、博士は問いかけた。彼に指を撫でら
れるたび、縁は全身の力を無くしていく。
「もし、生涯の伴侶以外の男が触れちゃったら、どうなるわけ?」
撫でられるがまま、短く息をもらし喘ぐ彼女を見ていると、まさしくここが彼女の性感帯であるように思えてくる。
たしかに、性感帯を易々と触らせない、というのは、ここ地球でも同じ風習といえるわけだし。
「ねぇ、どうなるの?」
自分の指の動きが彼女の言葉を妨げているようなので、少し撫でるのをやめてやる。すると、さっきまでの攻撃
的な侵略者の表情(それでも博士には『威勢の良い元気娘』のように思えていたわけだが)とは思えないほど
とろりとふやけた顔で、彼女は答えた。
「・・・さ、さいしょに、さわった、ひと、の、・・・およめさんに、なる・・・」
熱っぽく、うなされるような熱い息を吐きながら、とぎれとぎれに答えた。
その答えに感極まった博士、思わず呟く。
「・・・ビバ、異文明ッ・・・!!」
博士は、なんだかとても都合がよい異文明の風習に感謝した。それに倣うならば、自分が彼女を娶る権利が
あるのでは? と当然のごとく考えてもおかしくない。
「じゃあ、俺が、旦那様?」
期待に胸を弾ませながら、博士は聞いてみた。すると彼の胸に抱かれた縁は、ぐったりと身体の力を失いなが
らも、小さく、こくりと、頷いた。
そして、はふう、と大きく息を吐いた彼女。その表情があまりにも艶っぽいものだから、つい博士は欲情して
しまった。
「じゃあ、抱いて、いい?」
欲望に素直な博士は、それほど躊躇することなく彼女にアプローチをしてみた。
そして彼女の反応。
短く途切れる息、虚ろな視線、そして火照った頬を見ていると、どう見ても彼女も欲情しているように思える。
そのまま彼女は、しばしなんの反応も示すことなく、は、は、と息を吐くだけだった。
そして少しの間が空いて、ようやく、彼女の唇が動いた。
「・・・わたしを、だいじに、して、くれるか?」
博士は迷わず、そして強い意志を込めて、頷いた。
「・・・わたしを、まもって、くれるか?」
惚れた女を護らないで、なにが男だ、と、若干時代錯誤的な思いこみに倣う事になるが、それでも博士は頷
いた。むしろ、惚れた女が自分を頼りにしてくれないことの方が虚しい。
「・・・・・・だったら、・・・・・・」
その先は、言葉に出すのを恥じらったのか、ただ小さく、こくりと頷いただけだった。
彼女の返事を心中喝采で喜んだ博士は、喘ぐ縁に唇を寄せ、キスを促した。彼女も目をつむり、小さな唇を
差し出してきたので、ちゅ、と触れるキス。
「・・・・・・ん、・・・ぁ・・・・・・は・・・・・・」
ほんの一瞬で解放された縁の唇は、小さく空いた隙間から、微かに掠れるような声を漏らした。キスの後、
うっすらと視線を泳がすその瞳が、眼前の博士を捕らえ、少しずつ視線を定めていく。
そんな様子を見つめていた博士は、その儚げな様子にますます彼女を愛おしく感じていった。
見つめ合った僅かな間の後、再び目を閉じた彼女。博士はその、彼女の求めを正しく理解し、再び唇を重ねる。
ちゅ、ちゅく・・・
柔らかい少女の唇を割り博士が舌を忍ばせると、縁はそれを受け入れ、くちゅりと湿った音を立てて舌を
絡めてきた。
「んっ、・・・・・・ん、んん・・・・・・」
博士は、より唇を密着させ、舌の深いところまでを絡めるように、キスに熱中した。それは縁も同じで、男の舌を
受け入れ、そして自分の舌を受け入れて貰いながら、夢中になってキスに応じていく。
ずいぶんと長い間、二人はキスを交わした。
所々で息継ぎのために中断をしつつも、その時間さえももどかしく感じて、すぐにキスを再開する。
そしてようやく、二人はキスを堪能し、唇を離した。
「・・・・・・おいし」
ほう、と甘い息。それをはき終わった縁は、キスの余韻から来る震えを全身で味わいながら、美味しい、と言った。
その恍惚とした表情は、目の前の男、博士に対して、完全に無防備だった。それは、彼女の星の文化、首の
模様に触れた男を伴侶とする、そのしきたりに則っての流れなのだ。博士は、彼女に選ばれたことを幸運と
感じながらも、少し悔しくもあった。贅沢なことだとは判っていても、彼女の無防備さを引き出す信頼を、実力で
勝ち取りたかった、という悔しさだ。
しかし今、そのことに気を取られていても仕方がない。これからがんばりゃいいわいな、とポジティブシンキング。
そして二人は、キスによって心が愛おしさで満たされると同時に、肉体的な欲情がかき立てられていく。
さてそこで博士には、一つ思うことがある。
いまさらな話であるが、彼女は本当に宇宙人なのだろうか、と思い直してみる。先ほどまでのエリマキの光など
を見ても間違いないとは思うのだが、無粋な心配がないわけではない。
平たく言えば、『出来るのか』ということが気がかりなのだ。
地球人類の男性と交合。
ここまで外見が地球人利に近似しているのだ、中身もそうであって欲しい。
あと、実は、どっちも付いてます、的なのも、勘弁願いたい。
そんなことを考え始めると、早急に確かめないと気が済まない。
博士は、着衣のままの彼女を抱きしめ、掌で彼女の身体を撫で回した。胸、腰、尻と優しく撫でていくと、それに
応じた仕草で縁が身体をよじる。
「ん、あん・・・・・・んく・・・」
服越しに身体を撫でられ、それでも博士の与える刺激に反応する縁は、その度に息を短く詰め、声を殺して喘ぐ。
このあたりまでは、博士のそれほど多くない女性経験での反応と、さして違いはない。ちゃんと地球人類の女性
と同じように、博士の愛撫で感じてくれている。首だけが性感帯というわけではなさそうなので一安心。
そして、肝心の部分。
「触るよ、いいね?」
などと聞くのが無粋なのは百も承知。
しかしそれでも。
「・・・・・・うん」
快感による火照りと恥じらいの赤みで顔中を真っ赤に染めながら、小さく承諾。
これだよ、これ、この表情が見たいから聞いたに決まってるじゃないか、と博士は十分ご満悦。
するり、とスカートの下に手を這わせ、期待と祈りを込めて、ショーツの中に手を差し入れる。
そして、慎ましやかな陰毛を指先で撫で進み、肝心の部分を確認。
・・・ない、・・・ない、・・・ある、・・・ある!!
「ひゃん、や、そこ触っちゃ、やぁ・・・」
ぐっ、と、博士は愛撫に使っていない、空いたほうの掌(てのひら)を拳(こぶし)にした。
(やったっ、チンコない、キンタマない、クリトリスある、膣もある!!)
大宇宙を統べるご都合主義の神様に、博士は感謝した。もし大宇宙御都合主義教などという新興宗教があ
れば、喜んで入信するかも知れない。なければ作るか?
そして、ぐ、と握ったガッツの拳を解く。後はもう、彼女を普通の人間の女の子と同じように、心おきなく愛して
やればよいだけだ。
「やぅ・・・ひ、んんぅ、くひぃ・・・おねがい・・・あ、あまり、そこは、いじらないでぇ・・・・・・」
と、彼女のせっぱ詰まった訴えに、博士は我に返った。
考え事をしているうちに、無意識にいじり倒してしまったようで。
そして、自分に弄られてあられもない姿をさらす縁を改めて見つめる。
は、は、と短く息を継ぎながら性感に振り回される縁。
そんな姿を見てしまっては、本格的に導いてやらねばならんよな、と博士は本腰を入れて彼女を愛すること
に決めた。
「あ・・・・・・あ・・・・・・・・・・・・ひ・・・・・・・・あは・・・」
先ほどのキスから、いくらの時間が費やされたのか。
ひくひくと身体を波打たせ、何度も何度も迎えた絶頂に、すっかり彼女はなすがままに弄ばれていた。
博士は、汗だくになり悶える彼女を教室の机の上に横たえ、思う存分可愛がってやる。
彼女は服をすべて脱いだわけではなく、ジャンパー、そして制服のブラウスの前だけをはだけ、ゆるめられた
ブラジャーの隙間から露わになった乳房を博士に吸われていた。
先ほどから両手で彼女の身体を撫でさすり、唇は彼女の唇と弱点である首を責め立て、たとえ彼女が泣いて
果てようとも構わずに快楽を与え続けていた。
「おねがい・・・・・・もう、ゆるして・・・・・・」
あえぎ疲れて枯れた喉、果て続けて弛緩する身体、愛されすぎてとろける心で、縁は何度目かの限界を訴えた。
しかし博士は無情で、
「許しません」
と、きっぱり答える。
そうだろうとも、許せるはずもない。すでに博士のペニスはズボンの下で痛いほどの膨張を見せ、彼女の中に
放出しない限り収まりそうもなかったからだ。
博士はズボンを脱ぎ、ギンギンに固くなった怒張を露出した。
「・・・・・・っ」
ぼんやりとした視界に博士の男性器を捕らえた縁は、く、と息を呑む。
「そんなにおおきいの、・・・・・・はいら・・・ない・・・」
「大丈夫、入ります!」
不安を口にする縁を、またしても一言で断言。
それが男の欲望から出た言葉であろうとも、ここで躊躇するよりは良い。彼女を気遣い、労るのであれば、言葉
だけではなく行動で示す。
博士の半ばハッタリに近い断言を信じたのか、縁はこくりと頷き、彼を受け入れる覚悟をした。
スカートをまくり上げ、ショーツを脱がされた縁は、すでに何度もいかされてとろとろにふやけた性器を博士に晒す。
見た目も、性器としての機能も、地球人のそれと何一つ変わらない、初々しい縁の秘所。指で彼女の秘肉を
割ると、新たにわいた愛液がどろりとあふれ出す。
膣口に亀頭を押し当て、わき出るぬめりをまんべんなく纏わせていく。
そして、彼女の上に覆い被さった博士は、腰に力を込め、ぬめりの力を借りて、怒張を押し込んでいく。
「つっ!」
彼女の膣肉を、ほとんど限界まで拡張しながら、初めての男が進入する。痛みに顔をしかめたものの、それでも
進入は止まらずに、一気に根本まで押し込まれた。
「い、いたい、・・・・・・いたいよぉ・・・」
涙をぼろぼろとこぼしながら、痛みを訴えてくる縁。だが、初めての挿入を受けるならば、これは避けて通れぬ
痛み。博士は、痛みを訴える唇をキスで塞ぎ、ゆっくりと落ち着かせてやりながら、膣が男根に馴染むのを待った。
しばしのキスを終え、唇を離しても彼女は、もう痛みを口にしなかった。もちろんまだまだ痛むのだろうが、それ
でもそれをぐっと堪えた。痛い、と口に出すよりも、別の言葉を口にしたかった。
「おねがい、・・・わたしを、かわいがってほしい・・・・・・」
博士はそれに応え、ゆっくりと腰を動かし始めた。びくり、と痙攣するかのように身体を強張らせる縁だが、それ
で遠慮をする博士ではない。
「ひ、あっ! ・・・・・・ひう!」
博士は、遠慮無く彼女の膣内をペニスでえぐり、こすり立てる。そして、せめて痛みを紛らわせるためにと、彼女
の首の文様に、舌を這わせてやった。
「うあっ! ひ! そこぉ!」
きゅ、きゅん、と彼女の膣が締まる。やはりここへの刺激はことのほか弱いらしく、彼女は眉根を寄せてかぶりを
振る。博士は、痛みなどに気が回せなくなるほど、彼女の弱い部分を責め、腰を激しく使い、どんどんと快感を
与えていった。
ず、ずちゅ、ぐちゅ、ちゅぐ
湿った音を立てて出し入れされる男の剛直が、その度に彼女の膣内から溢れる愛液を泡立て、掻き出していく。
博士はそのピッチを、早くしたり、遅くしたり、深く、浅く、緩急深浅を付けて変化を凝らす。
「んん、んはぁっ、や、だめぇっ! ああああっ!」
彼女の声と表情から痛みが影を潜め始めた。そうなれば後はしめたもの。博士は、自分のペニスに与えられる
刺激を堪えながら、彼女を高めるために尽くした。
「んああっ、ひゅ、んんんんんああああああ! あっ! あはあっ!」
彼女はもうすでに、うわずったあえぎ声をあげながら、博士から与えられる快感を味わうのに夢中になっている。
彼が、腰を打つピッチを小刻みなものにすれば、
「あっ、あっ、んっ、あっあっあうっ! あっ、んくっ! あっ、あっあっ、ひっ! あっ、あうっ、あっ、んあっ!!」
と揺さぶられる身体に流されるまま喘ぎを小さく刻み、彼のピッチが深く、長いものになれば、
「ああああああああああああああああっ!! んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんっっ、ひ、
ひああああああああああああああああああああああっっっ!!!」
と、身体の中の息をすべて吐き出すような、長く強い悲鳴を上げた。
そして、堪えに堪えた博士の射精欲求に限界が訪れる頃には、彼女はもう、全身を汗まみれにして痙攣させ、
顔じゅうを涙と涎でぐしょぐしょにしながらよがり狂うほどになっていた。
もう、スカートやブラウス、制服はべとべとに汚れてはいるものの、二人ともそんなことに構う余裕はない。
「くっ!」
とうとう博士の限界が訪れた。腰の奥で発生したマグマの噴火を、後はペニスの締め付けで引き延ばしている
に過ぎない。
あとはもう、ただがむしゃらに腰を突き立て、彼女の子宮を押し上げるかのように責め立てた。
「あっ、あああっ!! だめ、だめええええええええええっっ!!」
そして、いよいよ訪れた射精。限界まで締め付けて堪えた堰を、勢いよく突破する精液。彼女の膣の、一番奥
までえぐり込まれたペニスの先端から、痛いほどの勢いを付けて流し込まれる精液が、彼女の子宮口に流れ
込み、中をどくどくと満たしていく。
「ああああああああああああっ!! でてる、でてるぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっっ!!!」
自分の身体の奥に流し込まれる男の精、そしてペニスの脈動を受けながら、彼女は意識を真っ白にする最後
の絶頂を迎えた。
激しい情交の後、お互いを甘く撫であいながら、火照った体をゆっくりと鎮めていった。
ようやく身体の熱も治まり、ゆっくりと身支度を整え始めた。彼女の制服はすでにくしゃくしゃになっており、汗で
べとべとになったブラウスと合わせても、とてもじゃないが着られたものではない。仕方なく、体操服のジャージ
に着替え、ジャンパーだけを羽織った。もちろん、首の文様を隠す包帯とマフラーは忘れない。
学校を出る間際、守衛の男とすれ違ったが、二人を見ても何も咎めなかった。とっくに下校時間は過ぎていたの
だが、おそらくはそれも彼女の発する電波の影響だろう。
「家はどこ?」
送っていこう、と博士がそれを訊ねると、彼女は短く、ない、とだけ答えた。
博士は、歩く道すがら、彼女の話を聞いた。
彼女は、逃亡者なのだそうな。
彼女の母星で内紛が起き、王族である彼女は、遠い星の果てまで逃げてきたのだという。
「え、ということは、お姫様か!?」
「まぁな、そういうことになる」
ぶっきらぼうにそう答えた縁。
彼女は、この星に辿り着いた後、身を潜めるべく女学生としてこの星の住民になりすましていた。博士が見た
湖での彼女は、ちょうどこの星に着いたばかりの時だ。名前は、自分の母国の言葉をムリヤリこの星の言葉
に訳し、適当に体裁を整えたものだそうで、本当の名前は地球人に発音できないのだそうな。
「じゃあ、これからどうするんだ?」
そういって問いかける博士の言葉に、ぎっ、とキツイ視線を向ける縁。
「貴様の家に行くに決まっているだろ!」
並んで歩く彼女は、そして博士の手を握った。
「私を護ってくれるんじゃないのか?」
最後は声も小さく、不安そうに口ごもる彼女の手を、博士は強く握り返した。
「護るに決まってるじゃないか」
そして二人は、肩を寄せ合いながら、夜の道を一緒に歩いていった。
それから2年後。
ぱん、ぱん、と、洗濯のしわをのぱしてから、縁は男物のパンツをベランダに干していく。
家事にもすっかり手慣れ、洗濯の後の部屋の掃除、夕食の支度と、さくさくと済ませていった。
縁は、午前中のみ付近のコンビニでアルバイトをして、昼からは主に家事に専念するという毎日を過ごしている。
二階堂博士は、高校3年の進路希望に、『1〜3位・宇宙人のお姫様を嫁にして、○×工業大学へ進学』と書いて
提出した。相変わらず周りからの変人扱いは変わらなかったので、先生は教員用トイレの掃除を命じただけで
『宇宙人の〜』のくだりは不問にした。
そして無事に大学受験に成功した彼は、縁と一緒に故郷の町を離れ、大学に近いアパートに移り住んだ。
二人が結ばれてから、あの湖に宇宙から調査隊がやってきたことがある。危うく彼女が発見されるかというところ
まで危機が迫ったのだが、博士の機転で無事にやり過ごす事が出来た。
また、超有名な正義の宇宙人がやってきて彼女を発見したときも、博士が間に立って説得し、見過ごして貰うこと
に成功した。
他にも、別の宇宙人の女の子があの湖にやってきた『湖のヒ・ミ・ツ』事件に巻き込まれたり、と、いくつかの騒動を
経験した。
そのおかげで、縁と博士の絆はさらに深いものとなった。
最初の頃は滅多に外さなかった首の包帯も、今では、二人の部屋では外すのが普通、といった風になっている。
そして、大学後のアルバイトから帰ってくる博士を、甲斐甲斐しく待っているのだ。
「ただいま〜」
「遅いぞ! 今夜はすき焼きだから待たせるなと、あれほど言っておいたのに!!」
そんな風に博士を怒鳴り声で出迎えながらも、その宇宙のお姫様は、
嬉しそうにすき焼きコンロの火を付けるのだった。
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以上です。
おつきあいしていただいた方、ありがとうございます。