ツンデレのエロパロ3

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477名無しさん@ピンキー:2007/02/21(水) 15:17:22 ID:8AM4EHRf
GJ!!
ふと思う
一真以外の登場キャラ全部食べてない?
478名無しさん@ピンキー:2007/02/21(水) 22:04:15 ID:6JLfWQhw
>>476
GJ!!!!
ついさっきまで「ハヤテのごとく!」を読んでたので「ハヤテ=フタナリっ娘」が俺の脳内で確定した。

>>477
よし!カメ×一真をうわなにをするやめ
479グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/21(水) 22:24:54 ID:qwTQw0tl
投下します。

後編ではなく、中編ですが。

480名無しさん@ピンキー:2007/02/21(水) 22:25:37 ID:+zRBn/Zx
ツル視点は初めてですかねぇ…ぐっじょb        って言うか、


あまりに予想の斜め360゜上を行きすぎだああああああ!!!!!!
いい意味で期待を裏切りまくりますな…
まさかふたなりで来るとは、まさかセンスで来るとは。
そしてまさか真っ昼間から投下されてたとは!

いいんですかいこんな切り札サービス大解放的なネタ出しちゃって…w;
481グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/21(水) 22:25:47 ID:qwTQw0tl
・ ・ ・ ・ ・ ・

 自宅に帰ってきて、自分の部屋を見たはじめは絶句した。
 目の前にはあるのは今朝までの塗料の瓶や雑誌が散乱する部屋ではなくなっていたからだ。
 足の踏み場も無かった――かろうじてあった――畳の上にはゴミひとつ落ちていない。

 ここまで完璧な掃除をする人間はこの家には一人しかいない。
 そしてその人物はすぐに見つかった。

「ふ〜ふふ〜ふふふふ〜ふふ〜 ふ〜ふふ〜ふ〜ふふふふふ・・・・・・
 あれ? おかえり。はじめ」

 マナだった。鼻歌を歌いながらはじめの部屋を掃除している。

「何してるんだよ。マナ・・・・・・」
「見ればわかるでしょ。掃除よ掃除。
 今まで鍵が閉まってたから入ったことなかったけど、見たときびっくりしたわよ。
 同じ家に住んでるのにこんなところがあったなんて知らなかったわ」

 昨晩やよいに蹴破られてドアに鍵がかからないということをはじめは失念していた。
その結果マナが部屋に入り込み掃除を行った、というわけだ。
 普通なら感謝するところだろうが、はじめのような人間にとっては余計なお世話でしかない。

「何やってるんだよ!プラモデルを作りやすいように部屋のレイアウトを設定していたのに!
 雑誌なんかどこにあるかもわかんないじゃんか!」
「本とか雑誌は一箇所にまとめてあるわ。
 それに部屋のレイアウトはほとんど変えてないわよ。
 だいたい私がそんなへたくそな掃除の仕方すると思う?」
(言われてみれば・・・・・・)

 道具などは整理されているもののほとんど位置は変わっていない。
雑誌は本棚に整理されきちんと並べられている。

 さらに、机の上もしっかりと片付けられている。何も乗っていない。

「ええええええええええええええ!?」
「きゃ!? な、何よいきなり」
「マナ! この上にあったものはどうした?」

 嫌な想像がはじめの頭をよぎる。

「ああ、あのバラバラになってたやつ?いらないと思ったからゴミ箱に入れちゃったわよ」
「どれに入れたんだ!?」
「たしか・・・・・・あれの中に入ってるはず」

 マナが指を指したところに置いてあるゴミ箱にとびついて中を覗いた。
 バラバラになって他のゴミと一緒になっているが、確かに昨日まで机の上に
置いてあったプラモデルの部品が入っていた。
482グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/21(水) 22:26:57 ID:qwTQw0tl
「はああああ。よかったあ。心臓が止まるかと思ったよ」

 実際、机の上に何も乗っていないのを見たときには心臓が止まってしまったような気分になった。

「おおげさねえ」
「おおげさってなんだよ。これを作るのに僕は――」
「僕は、なに? もしかして全身全霊をかけていた、とか?」
「・・・・・・僕にだって理由ってものがあるんだよ」

 それも大事な理由だった。
 仕事とはいえ、はじめがやよいとマナに世話をしてもらっていることに変わりはない。
 そしてはじめはそのことを思うと肩身の狭い思いをしていたのだ。
 だからせめて、二人の誕生日ぐらいは心を込めたプレゼントを贈りたい。
 精一杯の感謝の意を込めて。

「理由って何かしら? 聞かせて欲しいな」
「・・・・・・なんでもないって」
「言いなさいよ。ほら」

 マナがしつこく声をかけてきた。だから、さっきから苛立っていたはじめはつい
怒鳴り声を出してしまった。

「なんでもないって言ってる!!」

「えっ・・・・・・」
(! しまった・・・・・・)

 怒鳴り声を聞いたマナは固まっていた。自分の失態に気づいたはじめは声をかけられない。
 そのまま二人揃ってしばらく固まっていると、マナの表情が変化した。
 呆けた表情から怒りの表情へと。

「何よ・・・・・・何怒ってるのよ!」
「ごめん! 怒るつもりは無かったんだ! 本当に!」

 はじめは深く頭を下げて謝った。しかし、マナの怒りはそれでおさまるようなものではなかった。
483グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/21(水) 22:27:47 ID:qwTQw0tl
「怒るつもりはなかった、ですって?
 そんなこと言われてもね、怒鳴られた人がそれで納得できると思うの!?」
「すまない! もう言い訳しないから!」
「ふざけないで! さっきからなんなのよ! 
 部屋が散らかってるから掃除したらいきなりなにやってるんだ、ですって!?
 掃除してるに決まってるでしょ! 見ればわかるじゃない!」

 マナの怒声は止む気配を見せない。そしてさらに加熱していく。


「あんたに理由があるように私にだって、他の人にだって理由があるのよ!
 それなのに何? 自分だけが被害者みたいな言い方をして!
 馬鹿じゃないの! たかが――」

 マナの怒りは止まらない。そして――

「たかがおもちゃじゃないの!」

 勢いそのままに無思慮な言葉を発してしまった。


「・・・・・・・・・・・・ぁ・・・・・・」
「! ・・・・・・ご、めん。今、私・・・・・・」

 そのときのはじめは喋れなくなっていた。言葉の内容にショックを受けたのではなく、
マナが冷静さを失くすほどに怒っていることが分かったから。

 ――僕はマナの喜ぶ顔を見たかったのに。
 ――なんで、喜ばせるどころかこんなに怒らせてしまったんだ?

 
「――ごめん! はじめ、ほんとにごめんっ!」

 そう言い残すとマナははじめの部屋から出て行った。廊下を走る足音が次第に
遠くなっていく。そして扉が開く音、次いで閉まる音が聞こえて静寂が戻った。
 部屋にははじめが一人で残された。
484グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/21(水) 22:28:50 ID:qwTQw0tl
・ ・ ・ ・

 その日の夜七時。夕食どきにやよいがはじめの部屋を訪ねてきた。

「はじめくん? 居ないんですか?」
「・・・・・・居ますよ。ここに」
 
 はじめは部屋の明かりをつけずに座っていた。マナと喧嘩してしまったことで
何もする気になれなかったのだ。喧嘩したのは今日が初めてではないが、自分が
原因で喧嘩をしてしまったのは初めてだった。

「もしかして、マナと喧嘩したんですか?」
「・・・・・・」
「マナも部屋から出てきませんし。
 今日はご飯は要らないと言っていましたから鉢合わせしませんよ」

 マナに会いたくないから部屋を出ないのではない。それなのにまるで拗ねている
子供をあやすようなやよいの態度にはじめは苛立ってしまった。

「やよいさんは、マナを無理やり連れ出そうとはしないんですね」
「はい。そのことについては何も先生から言われてはいませんから」
「また・・・・・・父さんですか。そればっかりですね、やよいさんは」

 本当はこんなことを言いたくはなかった。でも口は止まらない。やよいを
責め立てるために棘のある言葉を続けて投げかける。

「先生先生って、父さんの言いつけなら何でもするんですか!
 僕の部屋のドアを壊したりするのは平気なんですか!」
「! そんなことはありません! 昨日だって仕方なくああしたんです!」
「やっていることは同じです! 結局やよいさんは父さんの言いなりじゃないですか!」
「・・・・・・はじめくん。いい加減にしないと私も本気で怒りますよ」

 やよいの目の色が変わった。普段見せる冷静なものではなく、怒気を含んだものに。
485グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/21(水) 22:29:25 ID:qwTQw0tl
「勝手ですねはじめくんは。今日だってマナはせっかく掃除をしてくれたのに
 それについてマナを責めて。そしてそのまま喧嘩をして。
 さらに私にまで八つ当たりをする。自分が悪いということを認められないんですか?」
「う・・・・・・」

 図星だった。自分が悪いということは自覚していたから反論することもできない。
 
「何も言えないでしょう? 本当は自分が悪いと思っているのでしょう?
 だったらなぜマナに謝らないんですか。意地を張っているんですか?」

 当たっている。はじめはマナに謝りたくなかった。それは本当にちっぽけな意地。
『なんとなくマナには謝りたくない』という子供じみたものだった。

「意地を張らずに謝ってください。私は二人といつまでもこんな状態でいたくありません。
 ・・・・・・多分、許してくれますよ。マナは」
「・・・・・・・・・・・・」

 今の叱責はやよいなりの励ましだったのかもしれない。その時のはじめには
理解できていなかったが。

「少し、言い過ぎましたね。ごめんなさい。
 ・・・・・・今晩は強制はしませんけど、後でご飯食べに来てくださいね」

 そう言うとやよいは部屋の前から離れていった。

「・・・・・・ごめん。マナ・・・・・・」

 一人でならば謝罪の言葉をいくらでも言えるというのに。
 はじめはマナの拒絶を恐れてそこから動くことができなかった。
486グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/21(水) 22:30:09 ID:qwTQw0tl
・ ・ ・ ・ ・ ・

 翌日の朝、朝食を摂らなかったはじめは家を出る前にマナの部屋を訪ねていた。

「マナ。起きてるか?」

 ・・・・・・・・・。返事は無い。
 いつもこの時間にはもう起きているから、たぶん無視されているということだろう。
 それでもはじめはドアの向こうにいるマナに向かって話しかけた。

「昨日はごめん。言い訳はしない。僕が悪かった」

 ・・・・・・・・・・・・。

「家に帰ってきたら渡したいものがあるんだ。
 僕なりにどんなものがいいか考えて用意した誕生日のプレゼントなんだ。
 だから・・・・・・それだけでも受け取ってほしい」

 今のはじめにはそれだけ言うのが精一杯だった。

「それじゃ、僕は学校に行ってくるよ」

 はじめが部屋の前から離れていったときも最後までマナは声を聞かせてくれなかった。
487グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/21(水) 22:31:14 ID:qwTQw0tl
・ ・ ・

「はあ・・・・・・」

 登校中、何度目になるか分からないため息をはじめは吐いていた。
 扉越しだったからマナに話しかけられたものの、家に帰ってきてから彼女を目の前に
して同じことを言えるかは分からない。はじめは自分の臆病者ぶりに落胆していた。

(結局は誕生日プレゼントを渡さないといけないんだけど。せっかく完成させたんだから)

 昨晩、一人になってからプラモデル作りを再開した。
 ゴミ箱から部品を全部拾い集めて組みなおし、最後の仕上げまで終わらせたのだ。
 普段作ったものに対しては必ず反省すべき点を見つけてしまうはじめだったが、
今回作ったものに対してはそれが無かった。
 自分の持てる力の全てを込めて作ったと言える出来だった。

(仲直りできたらいいな・・・・・・)

 プレゼントを贈ったからといって許してくれるとは限らないが、一晩経って
少しは怒りがおさまっていたら望みはある。そうはじめは思った。


 通学路の途中にある商店街。高校生が登校する時間帯には買い物客の姿は無い。
いつものように路肩にワゴン車が何台か停まっているぐらいだ。
 
(うん。家に帰ったらマナに即謝って、その後はいつもどおりに話をしよう。
 それが一番だ。いつまでも昨日のことをひっぱっているのはだめだ)

 そんなことを考えながらワゴン車の左を通り過ぎたとき。

『ゴァァッ!』
 
 突然ワゴン車のドアが開き、中から大柄な男が飛び出してきてはじめの
制服の襟を掴み車の中に連れ込んだ。

「ええ! だ、誰だよあんた!」

 はじめは訳がわからず声をあげた。しかし。

「しばらく静かにしてろ。用事が終わればすぐに開放してやる」
「なにを! ――ぅあがあっ?!」

 男の持っていたスタンガンで体に電流を流されて気絶してしまった。
488グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/21(水) 22:31:49 ID:qwTQw0tl
・ ・ ・

 はじめが気絶させられていた頃、藤原邸の玄関では自称メイドの小柄な女性が
膝を抱えて座っていた。

「・・・・・・まだ、かな」
「さっき登校したばかりでしょう? まだはじめくんは帰ってきませんよ」

 その隣には自称家政婦の女性が姿勢良く立っている。
 ちなみに彼女たちの自称が違うのは「かわいいから」「私は家政婦です」という
それぞれの理由からである。それ以外の意味は無い。

「はじめが来たときにすぐ飛び出していればよかった・・・・・・」
「まだ謝るチャンスはありますよ。――そうでないと困ります。
 私も昨日は厳しいことを言ってしまいましたから」

 マナははじめが朝訪ねてきたときに起きていたが、すぐに彼が学校へ行って
しまったので謝ることができなかった。
 同じくやよいも朝食を食べにこなかったはじめに会っていなかった。
 彼に昨夜のことをちゃんと謝るつもりでいたというのに。
 
「早く謝りたかったのに・・・・・・」
「心配しなくても五時ごろには帰ってきてくれますよ。
 だって今日はマナの誕生日なんですから」
「・・・・・・うん。そうだね」

 はじめは渡したいものがあるとマナに言っていた。それに彼女たちの誕生日に
彼が帰ってこなかった日など一度も無い。今日もきっと一緒に居てくれる。
 そう考えてはいるものの、不安は尽きない。もしかしたら今年は一緒に
過ごせないのではないかと二人は思っていた。

「・・・・・・大丈夫だよね? やよい」
「ええ。絶対に帰ってきてくれます」

 マナの問いに対して、やよいは自分に言い聞かせるように応えた。

「さあ、早く立って。今日はマナの誕生日ですからたくさん料理を作らないと
 いけません。もちろん手伝ってもらいますからね」
「うん。もちろん――」

『プルルルルルル ルルルルルルル』

 二人がキッチンに向かおうとしたとき、電話が鳴り出した。

「もしかして、はじめかな?」
「でも、この時間は授業中のはず・・・・・・」

 不審に思いながらやよいは電話を取った。
489グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/21(水) 22:32:49 ID:qwTQw0tl
「はい。もしも――」
『あ、やよいさんですか!? 俺です! 卓也です!」
「あら、卓也さん? 今日は学校のはずでは?」
「なーんだ。卓也かあ。期待して損した」

 電話の相手ははじめの友人の卓也だった。
 以前卓也は藤森家に遊びに来たことがあり、そのとき二人にも会った。
 それ以来、メイド好きの彼は二人にさまざまなアプローチをしてきた。
 しかし、全く相手にされていない。

『今の声はマナちゃん!? 損したって何を?!』
「マナ。そんな風に言ってはいけませんよ。聞こえないように言わないと」
『ちょ、そりゃ無いよ! やよいさん!』
「ああ、ごめんねやよい。卓也のために喋るのももったいないから今度から心の中で罵倒するわ」
『たった今罵倒してるじゃないか! 冷たいよマナちゃん!』

 こんな感じでいつものようにあしらわれている。

「それより、何故電話をかけてきたんですか?」

 電話をかけてきたときの慌てぶりが気になったやよいは卓也に質問をした。

『そうだった! 実ははじめがさらわれてしまったんです! 登校中に!』
「――え・・・・・・」
「「ええええええええええええっ!!」」

 卓也の回答を聞いた二人の絶叫が、藤森家に響いた。

・ ・ ・

『――と、こういうことがあってはじめは誰かにさらわれてしまったんです』

 はじめがさらわれた経緯についてふたりは卓也から事情を聞いていた。

「わかりました。知らせてくださってどうもありがとうございます」
『やよいさん。あまり気を落とさないでくださいね。きっとはじめなら大丈夫ですから。』
「はい、ありがとうございます。報せていただいたお礼はいずれ必ずいたします。
 それでは卓也さん。ごきげんよう――」

 やよいが受話器を静かに置いた。
 すると、すかさずマナが玄関に向かって駆け出した。
490グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/21(水) 22:34:20 ID:qwTQw0tl
「マナ! いけません!」
「だって、はじめがさらわれたんだよ?! 早く助けに行かないと!」
「駄目です。はじめくんがどこにいるのかもわからないのに動いては。
 犯人から連絡が来るまで待って・・・・・・」
「そんなの待ってられないよ! そんなことしている間にもしものことがあったら・・・・・・
 どうしよう。・・・・・・私のせいだよきっと。昨日喧嘩なんかしちゃったからだ」

 マナが自分の肩を抱いて床にしゃがみこんだ。目には涙が浮かんでいる。

「嫌だよ・・・・・・。仲直りしないまま、もう会えなくなるなんて。
 今朝もはじめが謝ってくれたのに、私、何も言わなくって・・・・・・。
 帰ってきたらまたいつも通りに戻れると思ってたのに・・・・・・」
「マナ・・・・・・」
「ごめん、はじめ。私が昨日掃除なんかしちゃったから・・・・・・。
 ・・・・・・ごめん。ごめん、う、ぅぅぅ・・・・・・・・・・・・」

 謝罪の言葉を呟きながら嗚咽を漏らしだした。
 やよいはその姿を見て声をかけられなかった。彼女も本当は泣き出したかったのだ。
 親しい人ともう二度と会えないかもしれないという恐怖。仲直りをしなかったという後悔。
 その二つに押し潰されそうだった。
 ただ、自分まで座り込んでしまったら誰もはじめをこの家に連れ戻すことができないという
ことをわかっていたからなんとか立っていることができた。
 
「・・・・・・部屋に戻って犯人から電話が来るのを待ちましょう。
 それから交渉を行って――」

『プルルルルルル ルルルルルルル』

 再び電話が鳴り出した。
 また卓也から電話がかかってきたのか?そう考えながらやよいは受話器をとった。 

「はい。もしもし」
『そこは藤森はじめの家か?』

 卓也ではなかった。そして、やよいには聞き覚えの無い声だった。

「――え? 失礼ですが、どちら様で・・・・・・?」
『・・・・・・今、藤森はじめの身柄を預かっている者だ』
「――なんですって?!」


 聞いたことが無いはずだ。相手ははじめをさらった人間だったのだから。
491グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/21(水) 22:38:33 ID:qwTQw0tl
中編、終了です。

ごめんなさい。デレ描写は後編になります。
エロは他の書き手の方に比べて薄めになりそうです。

あと、NTRはありません。
492名無しさん@ピンキー:2007/02/21(水) 22:47:26 ID:+zRBn/Zx
うあ、微妙に割り込んでしまった;

これまたGJっす!
こちらも予想外の展開ですね…wktkが止まらない。

そして卓也の扱いのひどさにワロスw
493名無しさん@ピンキー:2007/02/22(木) 00:29:10 ID:mubE7CjR
>>476
究極苛烈に
*      ∩_
   +.    | E) *
       / /
  _( ゚∀゚)/ .ノ   *
/  GJ! /  +
//   /*     +
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
もうご馳走様としか言いようが無いよ!
2クール突破お疲れ様でございます。
これからも期待しております。


>>491
NTRは回避…なんていい宣言だ…
しかしエチシーンがまだな現状では、この「GJ」を渡すわけには…っ!

Nice Job!
494名無しさん@ピンキー:2007/02/22(木) 02:00:23 ID:ojgS0Xd1
>>475
猛烈にGJ!まさかフタナリとはwww



つ[]<今回の件で水樹が母になる可能性は?
495名無しさん@ピンキー:2007/02/23(金) 23:21:28 ID:PHxbhjiZ
ロボ氏GJ!
水樹とセンスのフタナリがこれほどの破壊力とは…

そして>>494の質問に便乗して質問です

つ[]同時に、センスが父になる可能性は?
496名無しさん@ピンキー:2007/02/24(土) 00:52:27 ID:AkZAUHN5
>>476
GJ!!
まさかの展開ワロタw

つ[]センスって実は元から男だったんじゃね?

>>491
GJ too!!
やよい可愛いよやよい
さあ早く後編を!!
497名無しさん@ピンキー:2007/02/24(土) 13:25:54 ID:UUbT1mVu
>>476
>「や、やだ、やだやだ」    水樹、もう おまえしかみえねえ・・・ お前がNo.1だカカロット
ミチルには変態といわれるし、大満足       ……あれ?

>>491
とてつもないwktk
498グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/24(土) 22:45:47 ID:V+tYs2Uo
投下します。

また予想以上に長くなってしまいました。中編その2です。
499グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/24(土) 22:47:18 ID:V+tYs2Uo
・ ・ ・

 薄暗く、ホコリっぽい廃工場の中ではじめは手足を縛られ座らされていた。
 廃工場の中を照らしているものは頭上三メートルほどの位置にある窓から差してくる陽光だけ。

 目の前には男が三人。いずれも大柄ではじめよりも年上のように見える。
 武器のようなものは何も持っていない。手に持っているものは携帯電話ぐらいだ。

「・・・・・・今、藤森はじめの身柄を預かっている者だ」
『―――――?!』
 
 男の一人が携帯電話でどこかに電話をかけていた。
 相手が誰なのかはわからない。しかし、だいたいの予想はついていた。

『――――――!』
「安心しろ。無事だ。声? 悪いが聞かせられないな。こっちにはあまり時間が無いんだ」
 ・・・・・・嘘だと思うなら信じなければいい。藤森はじめの命が惜しくないならな。
 こちらの用件を伝える。金目のものを持って今すぐ隣町の――」

 廃工場の位置を電話の相手に伝えている。
 男の話にから推測すると、ここは隣町にある廃工場だということになる。

「用件は伝えた。ちなみに警察には連絡するな。騒ぎを大きくしたくはないだろう?
 ――じゃあな。早く来るんだぞ」

 用件を伝えた後、男は電話を切った。

「今、僕の家に電話を・・・・・・?」
「ああ、そうだ」
 
 男は気だるそうにため息をついた。その姿にはじめは違和感を覚えた。
 その男だけではない。残りの二人にも同じものを感じる。
 男三人は顔を突き合わせて話し出した。

「なあ、ほんとにいいのか? こんなことして」
「警察に連絡でもされたらどうするよ」
「・・・・・・たぶん、その心配はしなくても平気だろう」

 てっきり自分を殺す算段をするのだと思っていたはじめはその会話を聞いて混乱した。

(やっぱりおかしい。話していることに計画性が無さ過ぎる。普通警察に連絡がいくことも考えるだろう?)

「・・・・・・やっぱり俺は降りるよ。危険すぎる」
「馬鹿! ようやく借金を返せるかもしれないんだぞ!」
「でも、もし家の人がごつい人を連れてきたらどうするんだよ! 勝てるわけないぞ!」

 男達が口論を始めた。仲間割れだろうか?
 この隙に逃げだしたいところだが、手足を縛られているはじめは動けなかった。
500グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/24(土) 22:48:18 ID:V+tYs2Uo
 男達は数分間口論したあと、意見がまとまったようだ。

「――すまん。藤森はじめくん」
「は、はい?」

 男の一人が声をかけてきた。何故誘拐犯が謝るのだろう?

「実は、君をさらうようにある人から言われていたんだ」
「ええ?! 誰ですかそれは?」

 なんとなくそんな気がしていたものの、本当に当たってしまうとは思っていなかったはじめは
驚いて開いた口が塞がらなかった。どこの誰がそんなことを?

 はじめの手足の拘束を解くと、男が口を開いた。

「実は――――――――」
『ドロロロロロロ ロロロロロロロロ』

 突然大きな音が聞こえてきて、聴覚を遮られた。音は外から聞こえてくる。
 心臓を打たれたような錯覚を覚えた。静かな廃工場の中の空気をも震わせるほどの音量である。
 はっ、としてはじめは口を開いた。

「この音はたしか・・・・・・マナのバイクの音?」
「なんだって? もう来たのか!」

 目の前の男が頭を抱えている。まだマナがやって来ないと踏んでいたんだろう。
 それもそのはず。藤森家から隣町までは混雑する国道を通らなければならないので、20分以上はかかる。
 いかに機動性に優れるバイクとはいえ、連絡してからこれほどの早さで着くなど考えられない。
 常識的に考えれば。

「外に来てるのか・・・・・・」
501グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/24(土) 22:53:19 ID:V+tYs2Uo
 バイクの排気音は工場のすぐ近くで止まった。ドルドルドル、というアイドリングの音が聞こえてくる。
 男の一人が肩を落とし、かぶりを振った。

「はあ・・・・・・一体どうやって説明すればいいんだ・・・・・・ふう」

 ため息をつきながらそんなことを言っている。振り向いた顔には疲労の色が映っている。

「藤森くん。君も少しだけフォローしてくれないかな? 俺達のやったことに対して怒ってるかもしれないけど」 
「は、はあ・・・・・・」
 
 そう言われてもはじめには呻くことしかできない。正直なところ、状況がさっぱり掴めていない。
 この誘拐事件を起こした人間のことも、三人の男達が何者なのかも。
 一つ分かっていることは、彼の知り合いがバイクに乗って工場にやってきたということだけだ。

 男がもう一度嘆息し、工場の入り口へ向けて歩き出す。

『バオオオオオッ! ブォォオオオオオォゥン!』

 瞬間、一際大きな排気音が廃工場に響いた。反射的に耳を押さえてしまうほどの爆音。

 それは段々大きくなって近づいてくる。そして――


「はっじめぇぇぇぇぇっ!!!!」

 音が工場内へ響いてきた。同時に、女の声がはじめの名前を叫んでいるのも聞き取れた。
 その場にいた全員が音のする方向、上を向いた。

 陽光を取り入れていた窓ガラスが割れていた。
 飛び散った窓ガラスが陽光を反射しキラキラと光っている。
 その光景に、黄色いバイクが一台混じっている。バイクには女中服を着た女性が二人乗っていた。
 背の低い女の子と無表情のままの女の子。それが誰だかはじめにはすぐにわかった。

(マナ! と、やよいさんも?!)
502グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/24(土) 23:01:07 ID:V+tYs2Uo
「な、なんだぁぁぁぁ!?」

 入り口近く、はじめの前方三メートルの位置にいた男が驚愕の声をあげる。そして、彼の上空には闖入者のバイクが。

「こぉの、お邪魔虫ぃぃぃぃぃぃ!」
 
 男の視界が黄色――バイクの車体色――で埋め尽くされる。
 彼が最後に目にしたものは、黒いタイヤだった。

「あがぁぁぁっ!!」

 後輪のタイヤに顎を直撃され、男は半回転してうつぶせに倒れた。
 同時に、バイクも着地する。ハンドルを握っているマナ一人だけを乗せた状態で。
 やよいはというと、バイクが着地するより前に飛び降りて駆け出していた。もう一人の誘拐犯の方へ向かって。

「ちょっと待って、これは――」

 男が手を体の前に出して何か言おうとするが、やよいの耳には届いていない。
 目にも止まらぬ速さで標的の懐に入り込んだ女は、一瞬の溜めの後に跳躍。
 がごっ、という音がしてやよいの飛び膝蹴りが男の顎に突き刺さる。そのまま後ろに倒れ、男は昏倒した。

「あと、一人――!」

 やよいの鋭い眼差しが残る標的を捕らえた。はじめを挟んで向こう側に一人だけ残った犯人が立っている。
 それを確認した彼女は胸元から銀色のボールペンを取り出し、右手の人差し指と中指で挟むと後ろに振りかぶった。
 
「はじめくん。動かないでください」
「え?」

 短く、抑揚の無い声で呟くと、やよいは体をひねりペンを投擲した。
 そのペンは一直線に突き進む。座っていたはじめのこめかみを一陣の風が通り抜けた。
 
「ぎゃああああ!?」

 はじめが振り向くと、右掌にペンを刺した状態で悲鳴をあげる男の姿があった。
 本来筆記用具であったはずの物は正しい使い方をされることなく、人間の手を貫き半ばまで突き刺さっていた。
 膝をつき、しばらく悲鳴を上げ続けていた男は顔を上げるとやよいの目を睨み付けた。

「このアマ! 甘くしてやったらつけあがりやがって!」

 血に塗れたペンを投げ捨てると、男はやよいへ向かって襲い掛かった。
 
「・・・・・・」

 それを見たやよいは男に背を向けた。興味を失ったかのように。
 しかし走り出した男は止まらない。怪我をしていない左手を振りかぶり、無防備な家政婦の後頭部に振り下ろす。

 刹那。
 
「噴ッ!!!」

 やよいの右足を軸に回転して放たれた左回し蹴りが、標的の右側頭部を直撃した。
 男が放った左拳の打ち下ろしの一撃はやよいの右手に進路を曲げられ、不発に終わった。

 最後の抵抗も空しく、誘拐犯は脱力してその場に崩れ落ちた。
503グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/24(土) 23:04:10 ID:V+tYs2Uo
 自分より大柄な男三人が女性二人の手にかかって瞬く間に倒された。
 その事実も驚きだが、その女性二人が知り合いだということもはじめにとっては驚きだった。

(本当にやよいさん、強かったんだ)

 もしかしたらとは思っていたが、これほどだとはさすがに予想していなかったようだ。
 それともう一つ。

「ふん、はじめをさらうからこんな目に会うのよ! 自業自得ね!」

 誘拐犯からの電話があってから10分と経たないうちに廃工場に到着したマナの運転技術にも驚かされた。
 彼女はというと、誘拐犯全員をその辺に落ちていたロープで縛り上げているところだった。

「やっぱり亀甲縛りがいいわよね。そして町中をバイクで引きずりまわすの。楽しみだわぁ」

 うふふふふ、と笑いながら複雑に縄を縛っていく。

(マナにも逆らわないほうがいいな。これは)

 一歩間違っていたら自分も誘拐犯と同じ目に会わされていたかもしれない。
 はじめは昨日マナと喧嘩した自分自身の愚かさに後悔した。
 
「はじめくん!」

 名前を呼ばれたはじめはその声の主――やよいが目の前にいることに気づいた。
 その目はいつも自宅で見かける冷静なものではなく、今にも泣き出しそうな目であった。

「大丈夫でしたか? 怪我は?」
「どこにも無いです。あの人達は僕に危害を加えようと考えてはいなかったようですし」
「そうですか。それは良かったです・・・・・・ん!?」
「? どうかしましたか?」
「はじめくん。ここ」

 やよいが手を差し出してこめかみに触れた。その途端、はじめの脳にちくりとした痛みが走る。
 こめかみに触れた指先を見ると、赤い液体が付いていた。
 男たちに殴られたりはしなかったので、はじめにはその怪我に心当たりがなかった。
 しかし、やよいは自分の指先を見つめると息を呑んだ。

「もしかして、さっき私が投げたペンがかすって・・・・・・?
 ごめんなさい! ごめんなさいはじめくん! ごめんなさい!」
「あ、大丈夫ですよ。これぐらいかすり傷です」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。まさか怪我をさせてしまうなんて、私・・・・・・」

 さらに何度も謝り続ける。はじめはその姿を見ていたたまれなくなってきた。
504グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/24(土) 23:07:13 ID:V+tYs2Uo
「もう大丈夫ですって。こんなもの、怪我のうちにも・・・・・・」
「駄目です! 今、すぐに消毒をしないと!」
「え、でも」

 消毒できる道具なんてどこにも、と言おうとしたらやよいの手が頭に触れた。
 はじめの頭は彼女の顔の近くにまで引き寄せられた。

「・・・・・・れろ」
「うひぇっ?! やよいさん!? いきなり何を!」
「ですから、消毒です。私の舌で舐めて消毒しますから」

 やよいがはじめのこめかみを舐め始めた。血の流れている部分に何度も舌を這わせる。
 ぴちゃぴちゃという卑猥な音が聞こえてくる。

「うわ、わ、やよいさん。そんなこと、しなくてもいいです、から」

 その言葉を聞いてやよいが一旦舌を止めた。

「・・・・・・まだ駄目です。血がまた滲んできました」
「ですから、これぐらいなら放っておいても」
「駄目と言ったら駄目です! 放っておいたら化膿してしまいます」
 
 再びやよいがこめかみを舐め始めた。今度は先ほどまでの血を舐めとる動きではない。
 舌を突き出し、全体を使って血が滲んでいる部分に唾を塗りつける。
 
「わ、あわあああ、はぁ、ぁうあああ・・・・・・」

 未知の体験をしているはじめには、やよいを止めるという選択肢が思い浮かばない。
 ただこめかみを舐め続ける舌が止まるまでそのまま待ち続けるしかなかった。

「・・・・・・うん・・・・・・血が止まりましたよ。はじめくん」
「へ。あ、そ、ですか。あはははは、は」
「良かった・・・・・・」

 ぎゅっ・・・・・・とやよいがはじめの頭を強く抱きしめた。
 形のいい胸に少年の顔が埋め込まれる。

「む?! うわ、柔ら――いや、やよいさん、手を離し、て?」

 頭を抱きしめる腕が小さく震えていた。同時にはじめの頭も小刻みに揺れる。
 もしかしたら泣いているのかもしれない。そう思ったら彼は何も言えなくなってしまった。
505グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/24(土) 23:10:00 ID:V+tYs2Uo
「本当に、ごめんなさい」
「でも、あれはわざとじゃないんでしょう?」
「いいえ。それだけじゃなくて、昨日のことも」
「あ・・・・・・」

 そう言われてはじめは思い出した。昨日、やよいと口論になってしまったということを。
 それをやよいが気にかけているということを知って彼は心苦しくなった。
 
「でもあれは僕が悪いじゃないですか。今朝だって僕の方から避けたのに」
「違うんです。そうじゃなくて――なんて言ったらいいかわからないです。・・・・・・ごめんなさい。
「・・・・・・」
「ごめんなさい。何度でも謝るから、だから居なくならないで。はじめくん」
 
 やよいは謝りながら抱きしめる腕に力を込めてきた。胸の谷間にはじめの顔が沈む。
 エプロンの生地越しに未体験の感触が伝わる。
 優しく受け入れながらもそれを弾こうとして柔らかく押し返す。そんな感覚。
 しかし、最初は気持ちよさを感じていたはじめも、抱きしめる力の強さに我慢できなくなってきた。
 頭を締め付けられ、脳に圧力がかかる。やよいが喋るたびにその力は強くなっていく。

「昨日も本当はあんなことを言うつもりじゃなかったんです。ただ、二人に仲直りしてほしくて。 
 それなのに喧嘩してしまって、そしてはじめくんがさらわれて、二度と会えなくなると思ったら・・・・・・。
 お願いです。許してください。はじめくん」
「あ、が、だだだだだ、それより、い、やよいさん。ち、からが強す、ギ・・・・・」
「居なくならないでください。ずっと、あの家に居て」
「・・・・・・ぅ・・・・・・ぁガ・・・・・・・・・・・・ギ・・・・・・」

 後頭部からプレス機のような力をかけられて、額をやよいの胸板に押し付けられる。
 はじめにはその胸の肉感的な柔らかさはもう感じられなかった。
 暴力。理不尽。拷問。そんな単語しか思い浮かばない。
 
「私にできることなら、なんでもしますから・・・・・・だから、ずっとあの家に居て・・・・・・」
「・・・・・・ぁ・・・・・・め・・・・・・・・・・・・ぇ・・・・・・・・・・・・ぅ」

 抱きしめられている少年は声を出すこともままならなかった。呻き声を漏らすだけで、呼吸さえできない。
 やよいの腕を振りほどく力も余裕も、今のはじめには残されていない。

 女性に抱きしめられながら死ぬというのは幸せな場合ばかりではない。
 はじめはそう思いながら繋ぎとめていた意識を手放すことにした。
506 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/24(土) 23:11:14 ID:V+tYs2Uo
投下終了です。

今度こそは後編を投下します。
507名無しさん@ピンキー:2007/02/24(土) 23:12:21 ID:AkZAUHN5
リアルタイムGJ!!
やよいさんテラツヨスwww
もちろん後編は3Pですよね?
508名無しさん@ピンキー:2007/02/24(土) 23:24:29 ID:ZD8ZF3tY
やよいさんカッコヨスwwwwwwwww
舐めてるのを見たときマナがどう思ったか気になるwwwwwww
509訂正 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/24(土) 23:39:49 ID:V+tYs2Uo
>>505
>「違うんです。そうじゃなくて――なんて言ったらいいかわからないです。・・・・・・ごめんなさい。

の閉じ括弧が抜けていました。ごめんなさい。
510名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 00:40:06 ID:07ZBH5sU
これは後半に向けてwktkが止まらない!

Fain Job!
511名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 00:44:54 ID:jqtso5HB
>>510
それはfineと言いたいのか…
512名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 01:38:17 ID:HUT8fsmw
fain
副詞
1 喜んで(…したいのだが)
2 むしろ(したい)

うん、むしろマナとしたい
513名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 15:51:55 ID:/v3JuLQj
保守
514名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 22:12:09 ID:EcSCKsvN
n
 ( l    _、_
  \ \ ( <_,` )
   ヽ___ ̄ ̄  )   グッジョブ!!
     /    /
n
 ( l    _、_
  \ \ ( <_,` )
   ヽ___ ̄ ̄  )   グッジョブ!!
     /    /


515名無しさん@ピンキー:2007/02/26(月) 01:13:48 ID:5ePVavF8
ここって別に短編でもいいんだよね?
長編しかないみたいだけど
516名無しさん@ピンキー:2007/02/26(月) 02:12:00 ID:WiTRL1vr
>>515
wktk(゚∀゚0)
517名無しさん@ピンキー:2007/02/26(月) 04:46:45 ID:WiTRL1vr
アクションシーンの躍動感がGJ!
これからのめくるめくキャッキャウフフにwktkが止まらない!



> それを見たやよいは男に背を向けた。興味を失ったかのように。

>(中略)

> やよいの右足を軸に回転して放たれた左回し蹴りが、標的の右側頭部を直撃した。


これなんて天の道を行き総てを司る人?w
518名無しさん@ピンキー:2007/02/26(月) 14:24:55 ID:+2OaCIgx
今初めから読み終わったんだけど、コイはカメの事諦めるのか?そんな事ないよな?な?
激しく気になったから書き込んだ。流れぶった切りすまん
519名無しさん@ピンキー:2007/02/26(月) 17:59:06 ID:/rBTNKJr
やはり時代の最先端は武闘派使用人か。
520名無しさん@ピンキー:2007/02/28(水) 20:22:34 ID:JYMk5li/
あげ
521グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/28(水) 21:10:56 ID:r6vYIRwU
投下します。最終話です。
522グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/28(水) 21:12:05 ID:r6vYIRwU
・ ・ ・ ・ ・ ・

『はじめくん。私のおっぱいを触ってください』
『な?! そんなことできるわけがないじゃないですか!』
『嫌なんですか? ・・・・・・嫌だというのならば、無理矢理にでもやらせていただきます』
『うわ! そんな抱きしめられたら、息ができなく……』
『はじめくん。私の胸の中で眠ってください』
『そ、そんなのは――――』

「御免です!!!」
「きゃあ?!」
 夢から覚めたはじめは上体を勢い良く起き上がらせて叫んだ。
 彼が目を覚ましたときに見たものは見慣れた自分の部屋と、目を丸くしているメイドの顔だった。
「……大丈夫? ちゃんと起きてる?」
「……うん」
「なんだかうなされてたけど、何の夢を見てたの?」
「えっと、やよいさんが僕に――」
 ここまで言って、はじめは言葉を止めた。マナの顔があからさまに不機嫌になり、半眼で見つめていたからだ。
 そのまま両者ともじっと見つめ合ったまま動かなくなる。その場の空気がとげとげしいものに変わっていく。
 居づらさを感じ始めたところでマナが口を開いた。
「……続きは? やよいが、何?」
「その、せ、折檻をする夢を見たんだ」
「ふうん……夢の中でも仲がよろしいことで。現実でも気絶するまで抱きしめられてるんだもの。当然よね」
 腕を組み、はじめから顔を逸らして右を向いた。
「私はいいのよ、別に。二人がどれだけ仲良くしようと。どうぞご自由に。
 でも人前でいちゃつくのはやめてよね。さっきみたいな場所でもご法度」
「さっきの場所、ってそうだ! あの人たちは?」
「聞きたい? ――聞かないほうがいいわよ。あまりに馬鹿馬鹿しいから知っても意味が無いわ」
 マナが冷めた反応を見せた。てっきり誘拐犯の男たちに激怒しているものだとばかり
思っていたはじめは、彼女の様子に対して疑問符しか浮かばない。
 それに馬鹿馬鹿しいとはどういう意味なのだろう。
 さらわれた当事者でありながら何も状況を掴めていないはじめはその言葉の意味が分からなかった。
「教えてくれないか、マナ」
「それじゃあ、教えてあげる。あの男たちはおじさまに雇われたやつらよ」
「な、なに?」
「だから、誘拐事件を起こすようにあの三人に頼んだのはあんたの父親。――ね、馬鹿馬鹿しいでしょ」
「…………」
 彼女達が誘拐犯に尋問をしてみたところ、黒幕がはじめの父親だと白状した。
 男たちは金で雇われただけの無職の青年達で、本物の犯罪者ではない。
 父親がなぜそんな依頼をしたのかは彼らにも知らされていなかったらしい。
「なんでこんなことをしたのかはやよいがおじさまに直接尋ねるそうよ」
「……聞かなければ良かったよ。ほんと」
 誘拐事件の黒幕が父親だと分かると、あの三人に対して申し訳ない気持ちになる。
 はじめはあまりのくだらなさに呆れ果てて嘆息するしかなかった。
「真剣になった僕の方が馬鹿みたいだ。一時は命の心配もしたのに……」
「こっちは慌てて損したわよ。まったく、何で私があんたの心配なんかしなきゃいけないのよ」
「ごめん。心配させて。」
「別に……謝らなくてもいいわよ。本気で怒ってるわけじゃないから」
 マナははじめのことを心配してくれていたようだ。
 今朝のことについて、はじめは言っておきたいことがあった。
「それに、昨日もひどいこと言っちゃって、ごめん」
「昨日? って何のこと…………あ!」
 そのことに今触れられるとは思っていなかったのだろう。もしくは彼女自身もそのことを忘れていたか。
「……もういいのよ。そのことは。こうやってまた話せているんだから、蒸し返す必要も無いわ」
「うん。ありがとう」
 笑顔を浮かべるマナにつられてはじめも微笑んだ。もう、二人の間に険悪な空気は流れていない。
 いつも通りの二人の関係。近所に――いや、同じ家に住む幼馴染の関係である。
523グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/28(水) 21:13:42 ID:r6vYIRwU
 はじめはふと、思い出した。いつも通りと言えば今日のことを忘れてはいけない。
「そういえば、さ。朝僕が言ったこと聞こえてた?」
「ああ、渡したいものがあるって……え。本当にあるの?」
「当たり前だろ。僕がマナの誕生日を忘れてた日なんかあったか?」
「……無い」
 はじめがベッドから下りて机の上に置いてあったものを持ってきた。
 この日のために長い時間をかけて作ってきたプラスチック製のバイクである。
 それを手渡されたマナは、最初のうちこそ怪訝な顔つきをしていたが、すぐにあることに気がついた。
「これ……私のバイクと同じの? もしかしてはじめが昨日言ってた
 『言えない理由』って、これのことだったの……?」
「うん。今日まで内緒にしておきたくてさ。でもむきになって隠す必要もなかったかな……って!
 なんで泣いてるんだよ!」
 はじめの前で、マナが泣いていた。
「……ぅえっ……ごめ……昨日、何も考えずにあんなこと言っちゃって。
 私のためにって、考えて用意してくれてたのに、それなのにあんな、ひどいこと……」
 膝の上で手を握り、俯いている。彼女の小さな握り拳の上に涙の雫が落ちてきた。
 嗚咽をあげるたびにマナの肩が上下に揺れる。
「ひっ、く……う、ぇぇぇぇ……」
「あ、その……」
 はじめが泣いているマナを見るのは初めてだ――この家に住み込むようになってからは。
 二人で遊ぶことの多かった小学生のころには彼女はよく泣いていた。
 それを泣き止ませるのが昔のはじめにとっては日常に組み込まれたパターンであった。
 もっとも、マナが一足先に中学、高校と進学していってそれも無くなっていったのだが。
「なんで・・・私……っく、あんたにひどいことばっかり……言っちゃうのかなぁ……」
 昔は彼女が泣いているとき、それを泣き止ませる役目を負ったのははじめだった。
 それは何年も経った今でも変わらない。そう彼は思っていた。
 腰を落としてマナと目線の高さを同じにする。
 彼女の髪に右手を乗せて、髪形を乱さないように左右にゆっくりと動かす。
「ん……? は、じ、め……?」
「大丈夫。マナは何も悪いことなんかしてないよ」
「本当に……そう思ってる?」
「うん」
「…………あり、がと」
 マナの嗚咽がおさまってきた。撫でられたまま、頬を紅く染めはじめの目をまっすぐ見つめてくる。
 さっきまで泣いていた彼女の瞳は潤んでいて目尻が垂れ下がっている。
 守りたいと、そう思わせてしまう瞳をしている。
 そのまま抱き寄せてしまいたくなる衝動を抑えるために、はじめは彼女を撫でる手を止めた。
「もう、大丈夫か? マナ」
 はじめがマナの頭から手をどける。
「……待って」
 彼女の手がはじめの手首を掴んだ。
 握る力は弱いが、決して離さないという強い意志がその手には込められていた。
「もう少しだけ、このままでいさせて……」

 マナに手を握られながら、はじめは彼女について色々と考えていた。
 古畑マナ。年は19才。家は藤森家の近所とは目と鼻の先ほどの位置にある。
 家が近い上に同年代ということもあって二人はすぐに仲良くなった。
 どれほど仲がいいのかという例をあげると、一緒に成長してきた、ということが挙げられる。
 幼稚園から小学校へ。小学校から中学校へ。中学校から高校へ。
 物心付く頃から一緒に成長してきたのだ。そんな二人の仲が悪いはずがない。
 現在では、同じ屋根の下で暮らしているのだから。
「はじめ……」
 しかし、男女の関係に発展することはなかった。それはもう一人同棲している家政婦の存在の
せいかもしれないし、ただ二人がその気にならなかっただけなのかもしれない。
「はじめぇ……」
 それはつまり、二人がその気になれば男女の関係になることも可能だということでもある。
 とはいえその気になる、というのが難しいのが幼馴染という関係だ。
 長く一緒に居ると、お互いのことを知りすぎてしまう。
 知っている、知りすぎている、というのは恋愛関係に踏み込むための道の『入り口』に水溜りが
広がっているようなもので、あえてその先に進む気分にさせないのだ。
524グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/28(水) 21:15:18 ID:r6vYIRwU
 しかし、その気になれば進むことはできる。きっかけと、覚悟さえあれば。
「なあ、マナ。そろそろ離してくれないか――」
「はじめぇっ!!」
 はじめの手を握っていたマナが、その手を離すと同時に抱きついてきた。
 突然のことに驚いた少年は、幼馴染の行動の真意を理解することができなかった。
 しかし、すぐに理解することになる。
「あの……マナ?」
「……もう、我慢するのはやめる」
「え? それって一体……」
「はじめ。私――――」

・ ・ ・

 一方、その頃――

「やよいさん。はじめは?」
「お部屋で寝ています。今はマナがついているところです」
 学校帰りの卓也が藤森家に訪ねてきていた。
 やよいが彼に「はじめが無事だった」ということを連絡したのだ。
 今回、はじめがさらわれたと連絡をしてくれたのは卓也だ。
 彼のおかげでマナとやよいは慌てることなく事態に対処することができた。
 普段卓也に対しては冷たいやよいも今回ばかりは彼に感謝しきりだった。
「いやー、ほんとによかった。やよいさんとマナちゃんが無事で」
「あら。はじめくんの心配はされないのですか?」
「どうせこんなことだろうと思ってましたから。
 はじめみたいな高校生よりももっと小さな子供をさらうもんですよ。誘拐犯は」
 うなずきながら卓也は玄関をあがり、廊下を歩く。
 彼と並んで歩きながらやよいはからかうように喋りだした。
「あら? その割には電話をかけてくださった時に慌てている様子でしたけど」
「え? あ、あーーー……」
「本当は、はじめさんのことが心配だったのでしょう?」
 ふふ。と嬉しそうにやよいが笑う。その顔を見た卓也は目を大きく開いて、同じく口を大きく開けた。
「や、やよいさんが、笑った?! 初めてだ、こんなことは……これが、デレというやつか……」
「今まで私の笑顔をご覧になったことが無かったのですか?」
「無いです。ただの一度も。
 ――おお、神よ。ようやく私のもとにやよいさんを遣わせてくださる気になられたのですね……」
 恍惚とした表情で天を仰ぎながら祈るようなポーズをする。歩きながら。
 涙を流しそうなほど――実際に心の中で泣いている――感動しているようだ。
 そんな卓也の様子を気にもせず、やよいは廊下を進む。鍵が壊れているドアの前で立ち止まった。
「――あら? はじめくんの声がしますね」
「あのーー、なんでドアの鍵が壊れてるんでしょうか?」
「お気になさらず。勝手に壊れたのです」
「は、はあ……」
 有無を言わせないその口調に卓也は口をつぐんだ。
「はじめくん。マナ。入りますよ」
 やよいがノックをせずにドアを開けた。
 すると。

「私、好きなの! はじめのことが! ずっと昔から!」
 マナの大声がやよいと卓也の耳に届いた。
 やよいはドアノブを握ったまま固まっている。
 卓也は部屋の中を覗きながらやよいの右で固まっている。
 部屋の中にいる二人は抱き合ったまま目を逸らさない。明らかに、普段とは様子が違っている。
 誰も動かない。藤森家の中は一種の膠着状態に陥った。
「な……」
 それを破ったのは客人である卓也の叫び声だった。
「なんじゃそりゃああああああああ!!」
525グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo :2007/02/28(水) 21:16:35 ID:r6vYIRwU
 卓也の上げた大声を聞いて、三人はそれぞれに違う動きを見せる。
 はじめは肩を揺らした後に部屋の入り口を振り向いた。
 マナはドアの向こうにやよいが立っているのを見ると、はじめから離れた。
 やよいは右にいる男の顔面に裏拳を叩き込んだ。
「ぶげぇっ?!」
 ごす! という音がしてやよいの拳が埋め込まれる。卓也は鼻血を吹いて仰向けに倒れた。
 倒れた男を廊下に放置したまま、やよいは部屋のドアを閉めた。
 音も立てずにまっすぐ歩き、部屋にいる二人の前で停止した。
 彼女の様子は普段と少し違った。マナを責めるような目で見つめると、そのまま問いかけた。
「マナ。どういうことですか?」
「あの、これは、つい…………」
「つい、じゃありません。約束を破るだなんて、最低ですよ」
「ああぁぁぁ……」
 無表情なのに怒りを感じさせる彼女の迫力に、マナは呻き声を洩らした。
「あ、あの……」
 この声ははじめである。どうやらいろいろなことが一度に起こって混乱しているようだ。
 マナが突然告白してきたこと、それについてやよいが何故か怒っていること。
 どちらも彼にとっては予想外だった。
「はじめくん」
「は、はいっ?!」
「さっきのマナの告白についてですが。もう返事は決まっていますか?」
「…………いいえ。その、なんと答えたらいいのかと思って」
「それはつまり、決めてはいない。ということですね」
 その問いに対して、はじめは無言でうなづく。
 うなづくはじめを見てマナが俯いた。悲しそうな顔をして。 
「……やっぱり、迷惑だったよね。私なんかが告白してもさ。ごめんね、はじめ――」
 そう言ってマナははじめの前から立ち去ろうとする。が、その進路をやよいが塞いだ。
「? やよい……?」
 やよいに進路を塞がれたマナが疑問の声をあげる。
「マナが告白したのならば、私もしないわけにはいきませんね……」
「や、やよいさん?」
 はじめも疑問の声を上げる。その顔に向けて、やよいが声をかける。
 頬を紅く染め、真摯な眼差しで見つめながら。
「――はじめくん。その、実は……私もあなたのことが好きなんです」
「え」
「聞こえませんでしたか? ではもう一度。――私は、はじめくんが好きです。以前からずっと」
「え、えぇえええええええ?!」
 その言葉は、今度こそはじめの思考を混乱へと導いた。
 やよいさんが僕のことを好きだって、今言ったのか?いやいや。おかしいぞこれは。
 いや、おかしいと言えばそれだけじゃない。さっきマナも同じことを言った。
 二人ともが、僕のことを、ずっと昔から好きだったなんて冗談だとしか思えない。
 そう考えたはじめは、告白の真偽についてやよいに聞き返すことした。
「あの、それって本気、なんですか……?」
「私は本気です!」
 はっきりとしたやよいの口調。その言葉に冗談が入り込んでいるようには思えない。
「はじめくん。返事を聞かせてください」 
「あ、の……やよいさん……」
 はじめは答えを出せなかった。
 もちろんやよいのことは好きだ。しかし、やよいは親戚であり、従姉なのだ。
 従姉でも婚姻関係を結ぶことはできるということは知っていた。
 恋愛関係になることが「社会的」には許容されているということも理解していた。
 そうは言っても簡単に受け入れられるものでもない。だがやよいの告白は嬉しい。
 好きではあるが、受け入れがたい。この感覚をどう言葉にして伝えればいいのかと考えていると。
「はじめっ!! もちろん私も本気だから!」
 マナがやよいと同じく、冗談が入り込んでいない真剣な表情ではじめの前に割り込んできた。
 そして、またはじめの腰に手を回した。今度は、先ほどよりも強い力を込めて。
526グレーゾーンのメイドと家政婦 ◆Z.OmhTbrSo
「もう、約束なんて守ってられない……。私ははじめが好き! 絶対に離れない。
 ずっと、ずっと昔から好きだったんだから。やよい、はじめは渡さないからね!」
「ちょっと、マナ……」
 マナから熱烈な愛の告白を聞かされて、はじめが困ったような声を漏らす。
 その姿を見たやよいがマナに向かって声をかけた。
「ふむ――ではどちらがはじめくんを手に入れるか勝負しましょうか。この場で」
「勝負?」
 抱きついたままのマナが聞き返す。
「はい。この場で――はじめくんからより多く寵愛を受けたものが勝ち。このルールでどうです?」
「ふうん…………悪くないかも。そのルールなら、私たち二人の約束も破られないしね」
「……約束?」
 さっきから出てくる「約束」という言葉についてはじめは疑問を持った。
 首をかしげるはじめに向かってやよいが声をかける。
「約束というのは、はじめくんに対して抜け駆けを行わないという内容のものです。
 はじめくんから、私たち二人のどちらかを選んでもらうために作りました」
「でも、はじめがいつまで経ってもなんにもしてこないから」
 マナがはじめの体から離れた。
「このままずるずると家人とメイドのままの関係でいるのかと思ってた。
 だけど、考えてみればそんな回りくどいことをせずにこうしていればよかったわ」
 そう言って、マナがはじめのシャツのボタンを外し始めた。
「え」
「はじめ、じっとしてて。大丈夫。すぐに私のことを好きだって言わせてあげる」
「ちょっと、待って! 何をする気なんだ!」
「とぼけなくてもいいじゃない。わかるでしょ?」
 怪しい笑顔でマナが笑う。その顔を見て、はじめにはある予感がした。
「まさか、僕を……」
「おそらく、はじめくんが考えている通りです」
 とやよいが言った。白いエプロンを脱ぎながら。
「私たちで、はじめくんの体を満足させてあげます。初めてですけど……出来る限り、何でもしてあげますよ。
 だから、はじめくん――私のこと、好きになってくださいね?」
 そう言い終わる頃には、やよいは既に白い下着だけの姿になっていた。肌の色と、見分けがつかない。
 はじめは彼女の肢体の美しさに体を熱くしたものの、それを振り払って声を出す。
「待って! 僕は二人とも好きなんです! だから、そんなことしてもらっても選ぶことなんか――」
「できない、って?」
 はじめのシャツのボタンを外し終えて、ベルトに手をかけながらマナが言った。
「そう言うと思ったわ。はじめは私たちには優しいから。
 ――でもね、いい加減に私もそれに我慢できなくなってるの。
 そしたらもう無理やり……じゃなくて、こっちから積極的にいかないとね」
「今、『無理やりにでも』って言おうとしただろ?!」
「もう、観念したら? この部分みたいにさ」
 そう言いながらマナがはじめの股間を下着の上から撫でてくる。
 股間のその部分だけが、下着を着たままでもわかるほどに大きく膨らんでいる。
 はじめから突き出しているモノの先端を、マナが親指の腹を使って撫でる。
「うあっ、マナ、やめろよ……っ?!」
 はじめがその快感から逃れようと後ろに下がる。しかし、後ろにはやよいが立っていた。
「駄目です。どちらが好きか、はっきり答えるまでは逃がしません。
 ――でも、私のことが好きだと言ってくれたら逃がしてあげます。
 そのあと、私の部屋でゆっくりと二人きりで、語り合いましょうね? ふふふ」
「そうそう。素直に『マナのことが好きだ』って言ってくれたら、ココから手を離したげる。
 その後で今度はじっくりと、たぁっぷりと楽しませて、それから、はじめの欲望を受け止めてあ・げ・る。
 何回でも、何十回でも――して、いいからね?」
 二人がそれぞれにはじめを誘う。しかし、はじめは諦めなかった。
「ええぇっと……そうだ! やよいさん、父さんに事情を聞きましたか?!」
「ええ。私がはじめくんを守れるかどうか、それを試したかったらしいです。
 そんなことをしなくても、私ははじめくんを守り抜きますし、離しはしないんですけど」
 耳元で囁きながらやよいがはじめを抱きしめた。
「そんなどうでもいいことではごまかされませんよ。はじめくん。大人しく、私の――――」
「私のものになって! はじめ!」

 はじめは、やよいとマナ、その二人に押し倒された。