1 :
名無しさん@ピンキー:
エロや恋愛から最も遠い
遠藤作品で萌えてみましょう。
ハードも微エロもエロ無しも萌えがあれば大歓迎。
みんなで仲良く萌えましょう。
スレが立ったことを知っただけだったら素直に
>>1乙!! と言ってるところだが。
本スレ行くのはどうかと。
実はアンチとでも思われたいの?
まあやってることだけ見りゃ自分はアンチと解釈するが。
こんなこと書いたらファビョるかな?w
連投失礼。
つうか、予告も無くイキナリ立ててるよな?
少女漫画スレ(だったか)なんかで
スレが維持出来る程度に需要があるかどうかくらい
様子見てからにすりゃ良かったんじゃないの?
まあ、頑張って保守したりネタ提供したりして下さい。
みんな厳しいな。こんなのあっても面白いと思うよ。
・・・・・・・・・・・・ネタは何にも思い浮かばないんだが。
寡作とは云え神もいるジャンルなのに惜しいが、
単独スレは流石に無理では、と思ったんだがw
しかし
>>1はどうしようもないな。
結局立て逃げか。
本スレ行くくらいだし、まさか本当にアンチじゃあるまいな?
つうかそもそも本当に21以上なんだろうな。
近頃どうにも疑い深くていかん…
>>1は結局逃げちゃったの・・・?なんだかなあ・・・。
クワ太スレもなくなってるぽいし
一緒にして印ジャマイカ
需要あるのかな
いやかなり好きなんだが、単独スレは幾ら何でも無理だろう、とは思ってた。
自分で目新しいネタを提供出来る才能がある訳でもないし。
しかしこのスレの場合、需要云々よりも
>>1のフザケっぷりの方が問題だと思う。
本スレでまで大恥晒しといて結局トンズラかよと。
その辺の腐れ荒らしなんかよりよっぽど腹立つわ。
いっそのこと桑田遠藤スレで立てりゃよかったのに
だいたいの読者層被ってるし作風も似てるし作者同士も仲がいいしな
「狼には気をつけて」の数年後が読みたい
あー需要あるんだ
書こうと思ったんだけど、犯罪っぽくなって辛くなったorz
いつか夢の中で
とか
空の向こうとかは?
heavenとか
heaven とアルファベットで書かれると、真っ先に佐々木さんの絵が頭に浮かぶw
先ず見てみたい、読んでみたい、と思ったのは自分も「狼〜」だなあ。
でもやっぱり犯罪臭くなりかねないよね。
でもやりようはあると思うんだ。
ほのぼの路線とか原作より年取らせるとか。
自分で書けないので無責任なこと云ってますが…
白泉漫画だと高尾滋の成人男性×少女の歳の差カップルエロパロは成長させてたし大丈夫だったな
ところでフォレスト君は何歳なんだろう…
マダミス見たい。
以前別スレに投下されたけど途中までだしぜひ・・・
17 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 12:24:00 ID:5p8CwN+L
エバンジェリン姫を誰か
オーソン×姫もむかーし少女漫画小説スレに投下されてたね
え?保管庫にないけど…
20 :
18:2006/11/23(木) 01:47:51 ID:znLUwbaQ
あれ、少女漫画小説スレじゃなくて「この元ネタでエロパロは無理だろう」みたいな
タイトルの別スレだったかも
1レスだけの短いやつだったけど、確かにどっかのスレで見た覚えがある
>>13が犯罪に手を染める日を今か今かと待っています
23 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/25(土) 06:02:41 ID:YCKpK4he
>>18=20
>>21 【まさかこのキャラをエロに使うか!?】のことかな?
自分も気になって探してみたけど、●で過去スレ読めなくて
肉でもヒットしなかった…(´・ω・`)
探し出したら詳細教えてくれ〜
狼〜もマダミスもエヴァ姫も読みたいなー
ヘヴンだと、どのカップリング?戦前?戦後?
24 :
18:2006/11/25(土) 21:54:12 ID:RPREGVJ5
あああ、狼さんで読みたい。
ちなみに今年齢で書くとしたら、何処までおkなんだろう。やっぱりちゅー止まりかな。
アレクって4巻でやっと13歳くらいだっけ。
>>24の姫×オーソン、ワロタ。こういうの読みたいよー。
遠藤ギャグでエロなくてもいいから。甘甘なやつ。
「姫。いくらなんでも城内アスレチックサバイバル大会で優勝したからって
私と結婚するというのは無理がありあすぎます!」
「私だって金持ちの国の美形と政略結婚して、手っ取り早くこの国を豊かに
したかったとも。でも父上が私の一番望む相手と共になる事が
ひいてはこの国の未来のためでもあると言ってくれたのだ。
私はこの国と…私を一番大事に想って、そして守ってくれているのはお前だと思っている。
私は間違っているか?」
「姫…ゴール付近に細工しましたね…」
うーん、だめだな。私に甘い台詞は書けない。神、出現待つ。
ヘヴンのデイヴィス中佐とマットが好きだ。
カミサマ〜〜〜!!
エヴァンジェリンカワユス
即死防止(50レスだっけ)がわりに、マダミス投下します。
長い上にエロ極少ですまん。
最終話(?)クリスマスネタで。
30 :
マダミス1/9:2006/12/22(金) 20:48:41 ID:5gGafZER
「メリークリスマス」
知らず抱き締めていた小さな肩を、ゆっくりと引き離す。
触れた頬の冷たさが私の理性を呼び戻すまで、十数秒は経っていただろうか。
なるべく平静を装って顔を見ると、奥様は屈託なく微笑んで、
握り締めていたシャンパンの壜を掲げて見せた。
「さあさ、はやく飲みましょ。せっかく雪の中こんな重たいのぶら下げてきたんだから。だいたいこんな火の気のないとこで何してんのよ。まーた熱出して寝込んじゃうわよ。」
「物置の片付けです。前から気になっていたんですけど、普段はなかなか時間が取れないですからね。いい機会だと思って。」
「イヴに大掃除するのが“いい機会”なら、あたしはバレンタインに確定申告するわよ。」
いつもの軽口、いつもと変わらないその様子に私は安心し、壜を受け取って歩き出す。
よかった。さっきの抱擁は、単なるクリスマスの挨拶だと受け取ってくれたようだ。
旦那様が亡くなって三年半。
水と油のように正反対の私達も、主人と執事として、そしてまた残された家族として、どうにかうまくやっていけるようになってきた。
いや、正直に言ってしまえば、どうにかというかかなりというか相当というか、
まあ使用人達にある種の誤解を受けるほどにまで、親密になったわけである。
自分の“好意”の本当の名前を、わかっていないといえば嘘になる。
けれど、家族縁の薄い私達に、お互いはたった一人の「家族」で。
納屋で寄り添う仔馬のように、触れ合う温もりにまどろむような今の暮らし。
ようやく辿りついたこの場所を、私はまだ失いたくなかった。
31 :
マダミス2/9:2006/12/22(金) 20:50:39 ID:5gGafZER
「それじゃ暖炉に火を入れてきますから、奥様はグラスとコルク抜きを取ってきてください。」
居間へと続くドアに手をかけた私を奥様が引き止める。
「えー、リビングに行くの? あたしの部屋に行きましょうよ。」
なんだって!?
「何を言ってるんですか、駄目ですよ、そんな」
「だってー、二人っきゃいないのにあんなだだっ広い部屋暖めるの、不経済じゃない。カリスマ主婦は、そういうとこから節約して1年で100万ためるのよ。」
まあ、そんな事だとは思ったが。
「うちはまだ、そんなに困っていませんよ。」
「そうやって油断してると、気付いた時には持ち山が一つ減り、二つ減り、ついには相続税も払えなくなって代替わりのたびに屋敷を半分にぶった切って売っぱらわなきゃいけなくなるのよ。自分の部屋が4分の1カットにされたら寒くてかなわないじゃない。」
「奥様があやしげな金儲けに手を出さなければ、そんなことにはなりません。」
「まあまあいいじゃない、自分の部屋なら酔っ払ってもそのまま寝ちゃえるしね。」
「寝ちゃ……」
私は絶句した。“家族のように”といったって、信頼されるにも程がある。
「あら、顔が赤いみたいよ。やっぱり風邪引いたんだわ。早く暖かいところに行かないと。」
人の気も知らず、奥様は額に手などあててくる。その手の冷たさに先ほどの感触がまざまざと甦って、私は一層赤面した。
「とにかく駄目です!奥様といえど一応は妙齢のご婦人の部屋に、こんな時間に入るわけには行きません。」
「今更なに言ってんのよ、普段から夜中に勝手に入ってきてあたしの寝相直したりしてるんでしょ。」
「そんな昔の話を。」
「だいたい、今日は屋敷中どこにいたって、二人っきりじゃないの。どうせおんなじよ。」
そう言われた瞬間、張り詰めたような雪の夜の静寂が辺りを包んだ気がした。
ポーチの置時計の音が、やけに響く。
「あー、もうわかったわよ。じゃあ、グラハムの部屋ね。それで文句ないでしょ。じゃあ先行って待ってるからグラスとおつまみ持ってきてねー。」
そういうと奥様は、さっさと階段を昇って行ってしまった。
その勇ましい後姿に、ついついため息が出る。
ま、早いとこ酔っ払わせてお引き取り願おう。
32 :
マダミス3/9:2006/12/22(金) 20:54:22 ID:5gGafZER
飲み始めてから一時間。
すっかりご機嫌になった奥様は、私のアルバムを手当たり次第に引っ張り出してそのまま撒き散らすわ、よろけて掴んだカーテンを破くわ、そのついでに筆立てをひっくり返すわ、絶好調である。
ほんとに早く帰ってくれ。
「なんだか眠くなってきちゃったー。五分、五分だけ寝かせて。」
「人のベッドで寝ないで下さい! ご自分の部屋に帰ってくださいよ。」
「いいじゃないのよケチ。わー、ずいぶん年代物のベッドねえ。いつから使ってんの、これ。あなたもうジョンストン家の主人なんだから、もっと豪華なやつ買いなさいよ。ヒョウ柄の総金箔張りとか。」
「嫌ですよ、眼がチカチカして寝れやしない。」
「ほら御覧なさいよ、もうこの辺なんてミシミシいって──」
バキン
「ぎゃっ」
ドスン、
「あいたたた」
「おくさまっ!!」
ゆすっていた天板の一枚が外れてしまい、その反動で奥様は、板を掴んだまま床に転げ落ちてしまった。私は慌てて駆け寄り、彼女を抱き起こしてベッドに座らせる。
「大丈夫ですか」
「あたた、へーき、ちょっと腰打ったけど。それよりごめんなさい、ベッド壊しちゃった。でもこれはやっぱ買い換えろっていう神様の、……ん? ここに何か──」
剥き出しになったベッドと底板の隙間から奥様がつまみ出したのは、「グラハムへ」と書かれた白い封筒だった。
「この字、じいさまだわ。すごい、時を越えて死後に見つかったメッセージよ!」
「確かに旦那様の字ですね。でもどうしてこんな所に。」
「いいから読んでみなさいよ。隠し財産のありかが書いてあるのかも。」
そんなことはまずあるまいとは思ったが、促されるまま、私は取り出した便箋に目を走らせた。
33 :
マダミス4/9:2006/12/22(金) 20:55:57 ID:5gGafZER
「やっほー、グラハム。元気か?
この手紙をお前が読む頃は、私はこの世にいないだろう。だが私も元気だぞ。天国で絶好調だ。
ところで、お前のベッドに隠したこの手紙をお前が読んでいるということは、そこにグレースがいるだろう。お前が普通に寝起きしただけでは見つからないように隠すつもりだからな。この手紙を発見できるのは、グレースか暴れ牛ぐらいのもんだ。
お前のベッドに、お前とグレース。
いや、何も言うな。私にはこうなることはちゃんとお見通しだった。
そこで、可愛い息子に、パパから最後のプレゼントだ。
なになに、気にするな。息子にこういう事を教えるのは、父親の役目と相場が決まっておる。
それじゃ、しっかりやれよ。グッドラック!
パパより」
読みながら、あまりのことに手が震えだすのを私は抑えることができなかった。
すると、この封筒の底のほうに入っている小さな四角い物体はつまり……。
「ちょっとグラハム、あなた読みながら赤くなったり青くなったりどうしたのよ。そんなすごいことが書いてあったの? 早く見せて。」
「駄目ですっ! ちょっと、あっ。」
抵抗むなしく、手紙は奥様に奪われてしまった。
旦那様、そこまで状況を読んでいるなら、なぜここで奥様が手紙を読んでしまうことまで予測してくれなかったんですか。当然想定してしかるべき事態じゃないですか!
黙りこくって手紙を読む彼女は、顔を真っ赤にして、あまつさえ手をわなわなと震わせている。
そりゃあ、無理もないだろう。いくら奥様とはいえ、うら若き女性にはとても笑って済ませられる内容ではないはずだ。そう、笑って……、ん、笑って?
「ぷ、くく、く、あはははははー!!」
気がつくと顔を真っ赤にした奥様が、ベッドに突っ伏して大笑いしていた。どうやらさっきのは笑いを堪えていたらしい。
「グ、グラハムがあたしを、あたしと、あはははは、ああ苦しい。」
大きく肩で息をついて、むっくりと彼女が起き上がる。
「じいさまってば、天国に行ってからまで笑わせてくれるわー。イースター島のモアイが八頭身になったって、そんなことありえないじゃない。」
ねえ? と屈託のない笑顔で手紙をひらひらさせる奥様のその手を、私は無意識のうちに摑んでいた。
「さあ、どうでしょうか。」
私の言葉に、奥様はぎょっとしたように身を引き、手を振り払おうとする。
「そ、そうでしょ、だって。あなたがそんな……」
「──試してみましょうか?」
34 :
マダミス5/9:2006/12/22(金) 20:57:12 ID:5gGafZER
あまりにも頭から否定されたことにムッとしたのかもしれないし、あるいはただ、少々酔いが過ぎていたのかもしれない。
とにかく、最初はちょっとからかうだけのつもりだったのだ。いつものように。
さあここで、にっこり笑って「冗談です」とでも言えばいい。
けれど、摑んだ腕を引き寄せもう片方の手で頬に触れたとたん、顔を朱に染めギュッと目を瞑ったグレースの表情を
可愛い
不覚にもそう思ってしまった瞬間から、
何かの螺子が外れていくのを、私は感じていた。
35 :
マダミス6/9:2006/12/22(金) 20:58:47 ID:5gGafZER
藻掻く彼女を胸元に掻き抱き、そのまま横抱きにベッドへ倒れこむ。
「ぎゃあっ!」
色気には程遠いその悲鳴が可愛いだなんて、私はどうかしているだろうか。
「なんて声出すんですか。」
囁いた唇でそのまま、髪に、首筋に、軽く触れていく。その度に、腕の中で彼女が身体を固くした。
「ちょ、まっ、グラハムやめて」
身を捩る彼女を押さえつけ、
「駄目です。」
なおも続けようとする私の耳元で、
「や、め、て、って言ってるでしょー!!」
キャラウェイ火山の噴火のような怒号が響き渡った。
女性とは思えない怪力で暴れるグレースを必死に押さえ付け、息を荒げて私たちは見つめ合った。鳩尾に膝蹴りをくらっても手を離さなかった自分を褒めてやりたい。
「なんのつもりよ!」
「何、と言われましても……」
真っ赤な顔で睨む彼女に、私は苦笑した。
「言わせたいですか?」
「あ、あたしが聞きたいのは、どうしてかってことよ。」
「どうしてって、そりゃあ。」
愛しているから、とでも言えばいいのだろうか。
しかしそれは、膝蹴り決められた後で言うのに適切な科白ではないような気がする。
くどいようだが、膝蹴りだぞ、鳩尾に。
複雑な胸の内を隠して、私はとりあえず微笑んで見せた。
「──旦那様のせっかくのお心遣いを無駄にしては。」
「ば、ばっかじゃないの。どうせ天国からは文句を言って来れやしないんだから、そんなのうっちゃっておきなさいよ。」
赤い顔をふいと背けたグレースを、私は再び抱き締めた。
駄目だよ、グレース。
私はもう、家族でなくてもいいと思ってしまった。
「お嫌ですか。」
嫌がられてはいないという確信があったからこそ、暴れる彼女を押さえつけてでも私は先に進もうとしたのだ。
けれど、
「嫌に決まってるでしょ!」
彼女はそう叫んで、私を渾身の力で突き飛ばした。
36 :
マダミス7/9:2006/12/22(金) 20:59:54 ID:5gGafZER
一気に酔いが醒めていく。全ては私の思い過ごしだったのだろうか。
グレースは身を起こししばらく俯いて黙り込んでいたが、やがて顔を上げると、私の隣へ乱暴に腰を下ろした。彼女のほうから近づいてきたことで、胸を塞いでいたものがすっと消えていく。まだほんのりと染まったその頬に滲むものが、私の錯覚ではないなら……
「物事には手順ってものがあるでしょ! あなたのいた執事養成学校じゃ、女主人の口説き方は教わらなかったわけ?」
つっけんどんなグレースの口調は、これはそう、照れ隠しのときだ。
「教わるわけないでしょう、そんなもの。」
「あら、うちの高校では教わったわよ。学生手帳の“健全な男女交際の手引き”にちゃんと書いてあったんだから。」
自分のペースを取り戻してきたのか、グレースの表情にいつもの快活さが戻ってくる。
「まずステップ1が、愛の告白でしょ。ステップ2が一緒に下校。それから映画、一緒に食事。」
無理に怒った口調で話し続けるグレースを見守るうちに、先程蹴られたあたりから、くすぐったい様な笑いが込み上げてきた。これは自惚れなのだろうか。彼女の気持ちも彼女の望む言葉も、全て理解した、とそう感じてしまうのは。
「以上のステップ3と4を数回繰り返してから、ステップ5で自宅に招待。ステップ6でやっとキスなのよ!! それをいきなり……」
──誰が作った規則か知らないが、ステップ5は順番的にまずいのではないか。少なくとも男性の発想ではないな。家に上げるのは、その後のステップを一気にこなせってのと同義だろうに──
それはともかく、彼女は随分と古色蒼然とした高校にいたらしい。女子校ということしか聞いていないが、けっこうな名門校だったのかもしれない。
さぞかし、浮いていただろうな。
おっとりしたお嬢さんたちの中で一際目立つ少女グレースを想像して、私は思わず吹出してしまった。
「な、何笑ってんのよ。そもそもなんでそんなに余裕なのよ。あたしばっかり、ドキドキしちゃって馬鹿みたい……」
はっと口を押さえたグレースの目を、私はにこやかに覗き込んだ。
「そうなんですか。」
「ちがうわ、嘘よっ!」
「顔真っ赤ですよ。」
慌てて頬に手をあてた彼女を、私はゆっくりと抱き締めた。
そうだね、君の言うとおりだ。
長く傍にいた私達だからこそ、ちゃんとここから始めなければ。
「大好きだよ、グレース。」
37 :
マダミス8/9:2006/12/22(金) 21:01:00 ID:5gGafZER
胸元から聞こえるクスクス笑いに、私は彼女を覗き込んだ。
「何を笑ってるんですか。」
「律儀に最初っからやってくれなくても、ステップ1は飛ばしていいのよ。もう済んでるんだから。」
済んでる? その言葉に私は首を傾げた。
「それはどういう……」
「どうもこうも、だって今の台詞聞いたの二回目よ。」
大好きだよ、グレース。
それは、あの時の──
「覚えてたんですか!!」
「当然でしょ。あれが催眠術を解くキーワードだったんだから。」
してやったり、という顔で、グレースはにっこりと微笑んだ。
「まあ、直後は混乱してたからよくわからなかったけど、おいおいね。思い出したのよ。」
得意げに笑う彼女に、私は思わず苦笑した。
まったく、君にはかなわない。
お手上げをして見せた私の首に、彼女の細い腕が勢いよく巻きつく。
「ステップ5までは、特別に免除してあげるわっ!!」
──乱暴に押し当てられた唇は、少しだけシャンパンの味がした。
38 :
マダミス9/9:2006/12/22(金) 21:02:20 ID:5gGafZER
目覚ましのベルより早く、ドサリとなにか鈍い音で私は眼を覚ました。
薄く開けた眼に、早朝の光がやけにまぶしい。
ああそうか、昨日は雪だったから。するとさっきのは……屋根を滑る雪の音だ。
私はベッドの上に身を起こし、傍らに眠るグレースを見下ろした。
大口を開け、あまつさえ涎をたらしながら眠るその顔は、お世辞にも色っぽいとは言い難い。ベッドから落ちかかっている片足を戻してやっても、いっこうに起きやしないし。
肩が冷えないよう布団をかけ直して、私はゆっくり彼女の髪をなでた。
ああ、困ったな。
数時間後には、ちゃんと“執事”の顔に戻れるだろうか。
以上、駄文スマソ
エロい神の光臨お待ちしています。
「一生の不覚」の二人の初夜が読みたい。
倒錯しててなんだか凄そう(笑)
>>29 GJ!!
あのメリークリスマスの後ってのが、本当にありそうですね。
ほのぼの話、ごちそうさまでした〜。
>>39 GJGJGJ!!!
グレースの口調とかすごくらしくていい〜。
早めのクリスマスプレゼントをありが?ォ!
GJ!
グレース・グラハム・じいさまの三人ともが原作のキャラそのまんまで、
とても楽しかったです。こういう展開、十分ありそうだなぁと思えてw
執事の顔に戻れそうにないグラハムに萌〜(*´Д`)ハァハァ
>>39 GJGJ!!
スレ開けて思わず叫んだよ。
一足早いクリスマスプレゼント、ありがとう!!
しかし一夜明けてグラハム冷静だなぁ、DTくさいのにww
44 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/23(土) 23:36:18 ID:2zf9FwIQ
グラハムはDTじゃないだろ
湖で女の子と…
>>30 >「イヴに大掃除するのが“いい機会”なら、あたしはバレンタインに確定申告するわよ。」
がなぜかツボだったwww
神様ありがとう〜!!!
とっても幸せなクリスマスプレゼントでした。拝。
作中エピも細かくひろってあって遠藤節も効いててGJ!!
グラハムはあれで博打の達人だったりするように、
大概の事はそつなく経験済みと思われ。隠し子騒動もあったしな。
GJGJGJ!!
それぞれのキャラが不自然じゃないところも良かった!
47 :
39:2006/12/26(火) 16:37:24 ID:KZWrCtRi
皆様レスありがとう。
こちらこそたくさんのクリスマスプレゼント(GJ)をいただきまして感謝感謝。
私もグラハムDT疑惑は捨て切れなかったものの、
ソツのないあいつのことだから当たり障りなくこなすんだろう(byじいさま)
と自分を納得させますた。
シェンナ姫とマースネタで構想中です。次はエロありで。
他の職人さんの作品も読みたいなー。
遠藤作品の二次ってなかなか無いのでこのスレに期待。
>>39 GJ!!グラハムかわいい&原作っぽくてイイ
マースとシェンナ姫だいすきなんだ!!
超待ってる!
>>39 GJ!!グラハムかわいい&原作っぽくてイイ
マースとシェンナ姫だいすきなんだ!!
超待ってる!
マースとシェンナ姫、9スレお借りします。
昔々あるところに、少し先の出来事を夢見ることができるお姫様と、その幼馴染の魔法使いがおりました。
子どもの頃から憎からず思い合っていた二人でしたが、成長して後は姫の美しさに魔法使いがゾッコン。多少のすれ違いはあったものの、二人は思いを確かめ合い、魔法使いの熱烈なプロポーズによって先頃めでたく結ばれたのでした(以上、シェンナ姫談)、が・・・・・・
「ちょっと、こうもり」
シェンナ姫とマースの結婚式から一週間後、未だ祝賀ムードに包まれる城の一角で、姫が辺りを伺いながらこうもりを手招きしました。
「なんですかー、姫、こそこそと」
「しっ、静かに。お前に折り入って聞きたいことがあるのです」
「マース様の好きな下着の色ならこの間お教えしたとおりですよ」
「違います」
少し頬を赤らめて、姫は咳払いをしました。
「もっと重大なことよ。ねえ、こうもり」
姫はガシっと、こうもりの肩(?)を摑みました。
「マースの過去の女性関係ってどうなってますの?」
「ど、どうしたんですか、いきなり。結婚式に昔の彼女が乱入でもしたんですか」
「いいえ、そういうことはなかったのだけれど。――やっぱり、ほかの女性とも付き合ってましたのね」
「いや、今のは一般的なたとえ話として・・・・・・」
「いいのよ、こうもり。正直に話して。私、夫の過去まで遡って責めるような心の狭い女ではありませんわ。」
「じゃあ、なんでそんなこと」
「いいから!!」
姫の迫力に気圧され、こうもりはおずおずと口を開きました。
「ぼくがお仕えする前のことはよくは知りませんけど、魔法学校の学生時代に付き合ってた女の人がいたと聞いたことがあるよーな、ないよーな・・・・・・・」
「なんですって、その女性とは、どの程度のお付き合いでしたの!!」
「だから、よくは知りませんってばー」
姫の怒鳴り声と、こんなこと話したのが知れたらマースにどんなに叱られるかとの恐怖で、こうもりはもう涙目になっています。
姫はブツブツ呟きながら何やら考え込んでいましたが、やおらこうもりに向き直ると
「ではもう一つ聞きたいのですけど、マースには特に親しい男友達はいるかしら」
と尋ねてきました。
「男、ですか? いや、たまに同業者が尋ねてきますけど特に親しい人ってのはいないと思いますよ」
「そう、ありがとうこうもり」
ふいに神妙な顔つきになり、シェンナ姫はゆっくりと頷きました。
「私わかりましたわ」
「わかったって、何がです?」
「マースは・・・・・・」
たっぷりと間を取って、姫はこうもりに言い放ちました。
「マースは不能なのです!」
「えええええー!!!!!」
「静かにと言ったでしょう。声が大きい」
姫に口をふさがれて目を白黒させながら、こうもりは、さっきの姫の”不能”発言だってけっこう声大きかったじゃないかと思いましたが、口を塞がれているので口には出せません。
「ここだけの話なのですけど、結婚式から一週間、マースは私に指一本触れようとしないのです」
こうもりを開放し、姫は芝居がかった口調で語り始めました。
「最初のうちは、私のこのまるで朝摘みの白薔薇のような清らか過ぎる美貌に傷をつけるのが怖いのだろうと解釈していたのですけれど・・・・・・」
(表情が本気だ)
「とは言っても、若い情熱は抑えが利かないもの。愛する女性と褥を共にして一週間も手を触れないなんて、おかしいですわ。下着も好みの白だったのに」
「はあ、まあ確かに」
「となれば、可能性は二つ。女性に興味が無いか、不能か。先ほどの話を聞くかぎり前者ではなさそうです。となれば!」
姫はこうもりに指を突きつけます。
「残る可能性は一つです」
(でもなあ、ほんとにそうだったら、あのマース様が結婚までそれを黙ってるなんてことがあるだろうか。真面目な人だし)
こうもりの思いをよそに、姫は語り続けます。
「だけど大丈夫。そんなあなたのために、こちら!」
いつのまにかテレビショッピングのセットとなった背景を舞台に、姫が怪しげな小瓶を手ににっこりと微笑みました。
「情熱の夜をもう一度。男性のせいよ・・・・・・ゴホンゴホン・・・・・を復活させる滋養強壮剤、”Mr.マキシマム”。今なら三本セットで19,800円。ただいまダイナミックキャンペーン中につき、お買い求めのお客様には寝室のムードを高めるアロマセットもお付けいたします!」
「うわー、うさんくさー。姫、だめですよ、通販の中でもその手のものはインチキだと相場が決まってるんです」
「あら、これはいつも利用してるカタログに載っていたものだから大丈夫ですわ。ほら、全国からも続々とお喜びの声が――」
「けどぉ、まだマース様がそうと決まったわけじゃ・・・・・・」
「あら、もう間違いありませんわ。さあ、そうと決まったらさっそく注文しなくては」
スキップで去っていく姫の後姿を、こうもりはため息とともに見送りました。
(これは、マース様に報告したほうがいいだろうなあ)
そして小一時間後、
「だ、れ、が、ふ、の、う、だー!!」
城内に設けられたマースの魔法研究室に、怒りに震えた声が響き渡りました。
「あ、やっぱりちがうんですね」
「ちがうもなにも、あいつは、あのグータラ姫はなあ」
怒りのあまり荒くなる息を整えながら、マースはこうもりを睨みつけました。
「寝室に入ってベッドに横になるなり、バタン、グーで3秒とたたず熟睡なんだぞ。その後は昼過ぎまで起きてきやしない。そんな状態で、何をどうできるっていうんだ」
そんなことじゃないかと思ってはいたものの、実際に聞くとなんとも脱力する真相です。哀れな御主人を慰めるため、
「じゃあ、マース様。眠くならない薬を姫にこっそり飲ませてみては?」
と言ってみたものの、
「そんなことはとっくにやってみた!」
と怒鳴られてしまいました。
しばらくは収まりそうにないマースの剣幕に恐れをなして、こうもりは
「あっ、用事を忘れてた」
などと白々しい言い訳をしながら出て行ってしまいます。
一人になった部屋で、マースは大きなため息をついて頭を抱えました。
この一週間、思い悩んでいたのはマースも同じだったのです。
とはいってもマースの場合、あまりに人間離れした姫の寝つきが、実は演技ではないかと疑っていたのでした。
いくらグータラで乱暴なシェンナ姫といっても、そこは深層のお姫様。もしや体を重ねることが怖くて寝たふりをしているのではないか、もしそうなら、自分はどうすればよいのかと、マースなりに姫の心身を案じていたのでした。
(それが、あのグータラ姫め)
こうもりが持ってきた”Mr.マキシマム”のチラシを、マースは握りつぶしました。
(そっちがその気なら、俺にだって考えがあるぞ)
そして夜。
マースが寝室に入ると、珍しく先に来ていたシェンナ姫が、ソファから立ち上がってにっこりと微笑みかけました。
「今宵はとても珍しいお酒が手に入ったのです。寝る前にいかが?」
見ればテーブルの上には、何やら不吉な沼色の液体をたたえたグラスが用意されています。
(あいつ、ほんとにあんな怪しいものを飲ませる気だったのか)
げんなりする気持ちを隠して、マースは微笑んでみせました。
「それじゃ、グラスをこっちに持ってきてくれないか」
言いながらベッドへ行くと見せかけて、その手前で急に立ち止まったマースは、後ろに来ていた姫の手からグラスを取り上げ、その場できつく姫を抱きしめました。
「あ、あの、マース?」
わけがわからず身じろぎする姫に、マースは囁きます。
「残念ながら、俺にはこれは必要ないんだ」
「え、どうし・・・・・・」
言いかけた姫の言葉は、マースの口付けによって遮られました。
「マース、私・・・・・・」
うっとりと自分を見上げる姫を片手で抱いたまま、マースはグラスを近くのサイドテーブルに置き、そのまま空いた手をポケットに忍び込ませました。
(では、これを)
取り出した小さな木の実を口に含み、少し噛み砕いた後、また姫に口付けます。今度はさっきよりももっと、深く。
「んっ」
口内に侵入してきたマースの舌とそこで感じたわずかな苦味に、一度は驚いて体を引き離そうとした姫も
自分を押さえつけるマースの手の熱さに、決意したように身を寄せていきます。
口の中では、相変わらずマースの舌が自分を隅々まで探っており
その感触に慣れるにつれ、頭がボウっと、そして体の中心から力が抜けていくような感じに襲われるのでした。
(だるい、横になりたい)
姫の思考は、不意に訪れた刺激によって中断させられます。
口付けをしながらゆっくりと首や肩をなぞっていたマースの手が、夜着の合わせ目から胸元に滑り込んできたのでした。
「きゃあっ」
驚いて身を引くと、唇が離れ、マースと目が合います。
マースは、初めて見る表情をしていました。
「シェンナ姫。いいか?」
戸惑いながらも、姫はしっかりと頷きます。
(ああ、今こそ愛する人と一つになるのですわ。少し怖いけど、頑張るのよ私)
「それじゃ、ベッドへ――」
「だめだ」
ベッドへと歩きかけた姫の手を乱暴に引いて、マースはその奥へと彼女を引っ張っていきます。
「え、あの・・・・・・」
摑んだ手をそのままに、マースは姫を壁へと押し付け、激しく口付けました。
「今日はこのまま、ここで」
「な、なんでですの」
抗議の声は、だんだん荒くなる自らの呼吸で途切れてしまい、姫は観念したように目を閉じました。
横になったらすぐ眠ってしまうのならば、絶対に姫をベッドに寝させない。
そう、それこそがマースが考えた作戦だったのです。
(熱い)
ゆっくりと動きまわるマースの手が触れた箇所が、熱を持ちます。
とりわけ、その手が胸の頂に触れたときには、体が燃えるように熱くなり、そして疼くような奇妙な波が体を駆け抜けていきました。
「ああっ」
自分の声に驚いて目を開けると、マースと目が合います。
心なしか満足げに微笑むと、マースの顔がすっと下に沈みました。
「え、ちょっと、・・・・・・んんっ」
先ほどから攻められ、敏感になっているその箇所を、マースの舌が捉えたのでした。
「や、だめで・・・」
夜着の裾から進入し、滑らかな足の感触を確かめるように動いていたマースの手が、その中心まで辿りつきました。
鈍い水音を立てながら、マースの指がそのかたちをなぞるように動き、一点で止まります。
その途端、全身の血が集まっては拡散していくような感覚に攫われ、シェンナ姫は膝から崩れ落ちました。胸元にあったマースの頭にしがみつき、息も絶え絶えに訴えます。
「マース、おねが、ああっ、も、だめ、立ってられな・・・・・・」
「それでは」
ぐったりと座り込んだ姫を抱えあげ、マースはベッドへと向かいました。
そっとやさしくベッドへ横たえられるかと思いきや、マースは姫を抱いたままべッドの縁に腰掛け、姫を膝の上に降ろしました。
「ごめんな、しんどかったか」
そう言いながらも、マースの手は自分と姫の夜着を剥ぎとっていきます。その手を押さえて、シェンナ姫はマースに向き直りました。
「なんだ、どうし・・・・・・」
「先ほど、私に何を飲ませましたの?」
マースの手が止まりました。
「さっき口移しで飲ませたあれか。気付いてたのか」
「マースが必要だと思うのでしたら、私、何も拒みませんけれど、けれど、そんなものがなくったって、この身も心ももうマースのものですのに」
「は? 何を言ってるんだ」
「だから、媚薬なんて使わなくとも、私はマースを」
「お前なあ・・・・・・」
マースはがっくりと肩を落としました。
「あれは媚薬なんかじゃない。女は初めてのときはひどく痛むというから、それを緩和する薬で――、
まあ、多少そういう成分がないでもないが、少なくともお前が俺に飲ませようとしたものよりは全然ましだ」
「あ、あら、そうでしたの。私てっきり・・・・・・。だって、体がおかしくなってるから」
その言葉を聞いて、マースが微笑みました。
「おかしくなってるんじゃない。それでいいんだ」
真っ赤になって俯いたシェンナ姫の見事な金髪を撫で、マースはその耳元に囁きました。「それじゃ、最後まで進めて大丈夫か」
「じゃあ、布団の中に・・・・・・」
「入らない」
「え、でも?」
「いいんだ、こういうやりかたもある」
(初めての相手にすることじゃないけどな)
心の中で一人ごち、マースは姫の体を持ち上げ、自分の膝をまたぐように一度座らせて、向かい合った姫に優しく口付けました。
(変則的ですまない。・・・・・・ま、悪いのはそっちだけどな)
「それじゃ、いくぞ」
「はいっ!!」
翌朝、というか昼。
シェンナ姫が目覚めると、マースはすでに服を着替え、ベッドに腰掛けて自分の顔を見下ろしていました。
「おはよう、マース」
いつもどおり屈託なく笑いかける姫に、マースは少し決まり悪そうに眼をそらします。
「その、体は大丈夫か?」
「え? ああ、そうでしたわね、昨日はそうでしたわ・・・・・・。大丈夫です」
最後のほうの声は、消えそうなほどか細く小さくなっていました。姫とて恥ずかしいのは同じ。ただ、寝起きは寝とぼけているので昨日のことをすっかり忘れていたのです。
「ねえ、マース」
赤くなって俯いたまま、シェンナ姫が言いました。
「私、夢を見ましたわ」
「また例の正夢か。今度は何だ」
「マースが」
顔を上げて、姫はマースを見つめました。
「マースが眠っている私に微笑みかけて、それから優しくキスをしてくれるんです」
マースは一瞬目を見開き、それからふいと横を向いて、二、三度咳払いをしました。
「あー、それなら、えー、・・・・・・夢じゃない。現実にあったことだ」
「え?」
少し頬を赤らめて、姫とは目を合せずに、マースはそそくさと部屋を出て行きます。
「それじゃ、お前も昼食までには着替えて起きて来いよ」
その後姿を見つめながら、姫はにっこりと微笑んで呟きました。
「ええ、知ってましてよ。けれど、正夢にもなるのですわ。これから毎朝、ずっと――」
以上です。
夜中一気に書いたので乱文失礼。
エロって難しい。
エロでなくとも難しい・・・・・・・
うわーいいよ、萌え!
GJ!
この二人好きなんでうれしい
神、GJ…! 萌えました!
またぜひ待ってます。
ほしゅ
ほしゅ
保守ですよ。と。
保守しとく
補習だ
マダミスもマース&シェンナ姫も名作!
遠藤絵で脳内で漫画化できたよ。才能あるなあ。
くわー!このスレも神ばっかりだ、嬉しいなぁ。
遠藤パロSSは雰囲気を出すの難しくて自分じゃ書けないけど
またマダミス書いて下さる神が降臨しないかな〜。
あっ、もちろん他の作品もみんな好きだから、どれでもOK!
ほしゅ
うわっ素敵なスレ見つけちゃった!(笑)
マダミスもダイスキ〜職人様アリガトン
シェンナ姫の通販(笑)…思い出して爆笑した〜!
こちらの職人様もアリガトンでございました
75 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 21:37:53 ID:By3qSx3E
保守!
ほっしゅほっしゅ
保守
保守
しぶとく保守
ピーチツアーの鬼申×モモなんぞの妄想が浮かんでくる
文章に出来なくてスマソけど。
81 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 09:24:57 ID:EbbvYSbE
上げてみる。
保守っとく
保守
保守
保守
保守に参加
保守以外をそろそろ見たい
まずは雑巾水をポトスにかけてお願いを
売れない演歌歌手で保守
ほーしゅー
ディヴィスはほんとはわざとへましてマットが軍で昇進しないようにしてたと思うんだ。
マットのような性格で昇進して、軍が非人道的なことをしているのを知ったら多分黙っていられなくなって
結果消されてしまうことなんかも考えられるし。
で、そのことをネタにじっくりねっとりいたぶるディヴィス×マットキボン
そんな素敵なネタが思いつくなら
自分で書いてみる気は?
結果発表を楽しみにしているぞな
文才無いです、自分orz
ディビス君はマットちゃんに意地悪しました。
でもほんとは大好きだったんです。大好きだから困った顔が見たかったんです。
なんて子供の作文になっちゃうよ…
味があってすごくイイ!と思うよ >93
お待ちしてます
とりあえず保守してみる
ディヴィスとマットの話待ってるよー
もちろん他の話も!
やべえ・・二作品とも小技が利いててすごく面白かった。
97 :
保守:2007/08/15(水) 03:22:58 ID:Yv//lKRT
遠藤キャラでエロパロはかなりツボ。
このスレ見つけた時は狂喜したが……この廃れっぷりはいかに。
自分で書くのは無理だーすまん。
98 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/16(木) 01:52:32 ID:TTQV5vsT
上げてみる。
99 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/25(土) 00:10:28 ID:ftj9BUH+
保守age。
ひっそりと保守
101 :
夏休みの宿題:2007/09/02(日) 08:14:52 ID:Ze1TyLH/
作文でも良いと言われたので、保守替わりに投下。
デイヴィス×マットです。
設定も文章も無理無理だけど、作文ですので許してください。
ただ、そこに合意はありません。
きっぱりはっきりレイプものですので駄目な方はNG登録よろしくです。
102 :
夏休みの宿題:2007/09/02(日) 08:15:31 ID:Ze1TyLH/
お金がないことは人をすさませる。
「きれーな顔してるねえ。どうだい、一晩?」
なんて言われて一瞬迷ってしまうくらいだ。
「なあに、男同士だって慣れればいいもんだぜ」
という言葉でおもわずなぐってしまったが、それは性別を間違えた相手が悪いのだ。
気が付いたら鼻から血を流した酔っぱらいが倒れていて、助け起こそうとしたら何かわめきながら逃げていった。
治療費を請求されなかっただけマシか、と思っているとパンパン…と乾いた拍手が聞こえた。
「お見事、軍曹。軍を離れても相変わらず腕っ節はすばらしいな」
会いたくないけど捜していた相手がそこにいた。
「どうしてあんな所に?」
オフィスと言うには雑然としすぎているが、一応ソファや簡単な給湯設備があるボロビルに案内され、コーヒーを入れてもらいながら聞くと
「秘密任務中。っと、愛の伝道活動中、てことにしておいてくれると助かるけど」
相変わらず人を食ったような回答が返ってきた。親の七光りをめいっぱい浴びてのこととはいえ、一応中佐という立場だ。民間人には言えないこともあるのだろうが、この人の場合どこまで本気なのかわからない。
「それより君こそどうしたの?お姉さんは元気?」
そこでこの人を捜していたことを思い出した。以前にも訪ねたビルに行ってみたが、素っ気なく不在を告げられて、どうしようかと思案していたところだった。
「姉は入院していますが、容態は落ち着いています。中佐、実はそのことでお願いが」
「軍曹のお願いならかなえてあげたい気持はいっぱいだけど。どんなお願い?」
ふざけた調子で聞いてくるのをうけながす。
「仕事を紹介してほしいんです。このままでは入院費も払えなくなりそうで」
姉のホリーは幼い頃から入退院を繰り返している。病気のことも気がかりだが、お金がないと病気を治すどころか生活をすることも出来ない。
軍にいた頃さんざんひどいめにあわされて出世のジャマをしてくれた相手だが、背に腹は替えられない。職を得るためにはどんなつてでも頼らなくてはならないのだ。
103 :
夏休みの宿題:2007/09/02(日) 08:16:38 ID:Ze1TyLH/
仕事かあ、と考える様子になお言葉を足した。
「どんなものでもいいんです。給料が高ければそれにこしたことはありませんが、すぐに働けるのなら贅沢は言いません」
体力には自信もある。要人のボディガードだってこなせるし、なんなら道路工事だってしてみせる。もっとも、そんな仕事は安くて壊れにくいロボットがするから、なかなか求人はないのだが。
「お手当がいい方がいいのなら、うちの父親が愛人と別れたばかりだけどなー。といってもあの人は巨乳好きだから気に入られるかどうかはーっっと!」
テーブルを殴るだけでおさえたのはここでこの人に怪我をさせてコネを失ってはいけない、という理性がどうにか働いたからだ。
「申し訳ありませんが、その手の冗談は嫌いなんです。皿洗いでも運転手でも良いので、どうかお願いします」
そういって頭を下げた。
「オヤジじゃ駄目なら若い方がいいかな?じゃ、僕の愛人してみるとかど」
「時間を取らせてすみませんでした。コーヒーごちそうさまです」
全て言い終わらないうちに席を立った。もう一度斡旋所に行ってみよう。何か新しい仕事口があるかもしれない。
「自殺願望のある少年がいてね」
出口に向かった背中に向かって声がかかり、振り向いた。
「マーロン君ていうんだけど。まあ、一人で死ぬだけならまだいいんだけどね、寂しいから友達を連れて行きたいって言ってて、爆弾持って街をさまよってるものだから捜してたんだ」
さっき見つかったって連絡があったから、会ったことのないお友達が吹き飛ばされたりしなくて良かったけど。
何でもないことのように続けた後、こういった。
「スイッチが入ったら、自分では止められない。彼にはスイッチを止めてくれる人がいなかったんだ」
「彼」の素性は聞かない。ただ、まっすぐに目を見返してこう答えた。
「中佐は大丈夫です」
以前も言った言葉を繰り返しただけだが、相手には通じたらしい。一瞬ほほえんで、そのほほえみがにこやかな笑みに変わった。
「うん。でもね、俺自身をよく見ておいてほしいから、愛人契約はいい話なんじゃないかなーと思うんだけど。ダメ?」
「ほかをあたってください」
即答した。やっぱりこの人の思考回路はよくわからない。
やっぱりだめかあ、とつぶやく声を後ろにして部屋を出ようとした。その時。
104 :
夏休みの宿題:2007/09/02(日) 08:17:44 ID:Ze1TyLH/
かちゃん!と左手首の辺りで音がした。え?とふりむこうとすると、いつの間にか右腕まで掴まれていたらしい。2度目の音は右手首の辺りでした。
「……何のまねです?」
「んー?軍の開発品だよ。これだと腕に跡が付かないらしい」
「そういうことを聞いてるんじゃないんですが。何のためにこんなことをするんです?」
両腕を後ろに回されて、それでも一応平静を保とうとしているのだが、この人相手では無駄かもしれない。
「だって、愛人契約は断られたし、軍曹相手ではなかなか合意も取れそうにないし。和姦が無理なら強姦しかないかなと」
「……何の話です?」
訳がわからない。
「うん、だからね、乱暴な手段はあまり使いたくなかったんだけどね、他に思いつかなかったし」
話がかみ合わない。
とにかくこの手錠をはずせ。そういおうとした。
なのに、急に世界が回った。急激におそってくる浮遊感に立っていられなくなり、しゃがみ込んだ。
「あれ?効いてきたのかな?それも軍の開発品なんだよ。体の自由は奪われるんだけど五感は損なわれない上、後遺症もないらしい」
さっきのコーヒーか?手をついて体を支えようにも手錠のせいでそれも出来ず、床に転がるような形になりながらにらみつけてやる。
「うん。ごめんね、軍曹」
そういいながら抱き上げられても、抵抗することは出来なかった。
105 :
夏休みの宿題:2007/09/02(日) 08:18:16 ID:Ze1TyLH/
ソファの上に投げ出されるような格好になった。シャツは脱がされて、体の後ろの手首の辺りで止まっている。
「一応、聞きますが、何を、しようと、してるんです?」
「え?わからない?この状況で?」
ろれつが回らないのに何とか聞いてみたが、まともな答えが返ってこない。その上、ブラジャーまで上に押し上げられて、のどの奥から変な声が出た。
「かわいい胸だなあ」
感心したようにつぶやく男にカッとなって蹴り上げようとしたが、足が上がらない。力が入らないのだ。
「すごいな、ほんとに効果絶大だ。感覚はあるみたいなのにね」
言いながらささやかな胸を触られて、びくりと体が跳ねてしまうのを確かめての言葉だった。
「なんで、こんな…っ、バカみたいなものの研究ばっかりっ」
一服盛られて気づかなかった自分にも腹が立つが、ろくでもない物にばかり労力を割いている軍に対しても怒りの矛先は向かう。どうせ拷問にでも使うためのものだろう。
「はは。戦争のためにだけお金をかけてる所じゃないからね。まともじゃない組織であることは確かだ。早めに縁が切れて良かったんじゃないかな?軍曹は」
口調は軽かったが、目は笑っていなかった。
「……だから?」
「え?」
「だから、私を、追い出したんですか?」
自分を上からのぞき込むようになった相手と目が合う。
「何の話かな?」
以前、自分のことを知能も才能も普通だといっていたが、勘はいいし、性格は最低だが、要領もいい。そんな男がなぜかいちいち自分がいるときにだけミスをする。偶然にしてはできすぎだ。
何のためにそんなことをするのかまでは考えなかったが、自分が部下であることが気に入らないだけであれば除隊になった時点で縁は切れたはずだ。なのにわざわざ仕事を依頼しに来たり、よくわからない人だとは思っていた。
手錠をかけて薬を盛ったりするのはさすがに予想外だったが。
そして相手は自分の問いかけには答えようとせず、今度は額にくちづけてきた。そのまま頬に、耳に、唇は降ってくる。口に来たら噛みついてやろう、と思うのにその気配を察しているのか決して口元には触れてこない。そんなところがよけいに腹が立った。
「っ!」
106 :
夏休みの宿題:2007/09/02(日) 08:20:15 ID:Ze1TyLH/
耳元に吐息を吹きかけられた上、胸を触られた。奇妙な感覚。ざわざわと背中が落ち着かなくなる。
体に力が入らない上、腕が体の下にあるから何かにすがって耐えることも出来ない。
両方の乳首をこね回された上、口に含まれたときはさすがに泣きたくなった。どうせならなぐられたほうがまだましだ。
「きれいだね、マットは」
胸をいじりながらそういわれてもバカにされているとしか思えなかった。
自分で言うのも何だが、筋肉質で女性らしい丸みはない体。その上、軍の時代から怪我をすることが多かったから消えきらない傷がいくつも残っている。
「きれいだよ、マットは。本当に」
自分が言いたいことがわかったのか、相手はもう一度繰り返した。そして、傷跡にくちづける。優しく触れる唇に、さらに背中はざわめく。
必死でそんな感覚と闘っている間に、相手の男は私の靴と闘っていた。ズボンを脱がそうとして、靴が脱がせず、足首のところで止まってしまったらしい。
「ま、いいか」
下着とズボンと一緒に、靴が片方だけ脱げたところであきらめたようだ。右側の足にだけ服の固まりが引っかかっている自分の姿を考えると、さらに泣きたくなった。
「この、へんたい…っ」
股間をなめられて、いてもたってもいられなくなる。せめて自由な口だけでもと、相手をののしった。
「ごうかんっま、ひきょう、ものっ」
「それに、悪魔でサタンで疫病神だし。ほんとに、こんな奴に関わって災難だよね、軍曹」
そういって顔を上げた相手の口もとが濡れているのはなぜなのか、考えたくない。
「なんでかな。あの酔っぱらい相手にマットがすぐに反応しなかったから、もしかしたら俺以外の人間がマットの裸を見る機会があるのかもしれない、ベッドをともにする機会があるかもしれないって思ったら、ぷっつんしちゃったみたいだ。
たまたま薬を持ってたときに会えたのは、もう思いのままに行動しても良いんだってことかなと」
そんな理屈があるか、といおうとしたが言葉にならなかった。
「まあ、何を言っても今の自分の行動が最低なのはわかってる。
わかってるけど、ごめん、止められない」
107 :
夏休みの宿題:2007/09/02(日) 08:20:51 ID:Ze1TyLH/
なぜか相手の方が泣きそうな顔に見えた。
子供のようだ、と思う。
また男の顔が見えなくなって、今度は指を入れられた。1本、2本。指が増えていくたびに、考える力がなくなっていく。
どうしても体が跳ねてしまうところを見つけた指が、執拗にそこを攻める。くちゅ、くちゅ、と水音が耳に届き、いたたまれないのに顔を隠すことも出来ない。必死で目を閉じてみても、自分の呼吸の荒さにかえってあおられる結果になった。
ようやく指を抜かれて、ほ、と力が抜けたのを見計らったように、それまでとは質量の全く違う熱の固まりが入ってきた。
「…っ、きつっ…、もう少し、力抜いて。でないとかえって辛いよ」
そんな声も耳に入らない。ナイフで斬りつけられたり銃で撃たれたりした経験はあるが、そんなものとは全く種類の違う痛み。まるで内臓を直接なぶられているような感覚で、じりじりと腰が進むと言いようのない違和感が残る。
「〜〜〜っ!」
やっと進入がやんだ、と思ったら今度は激しく突き上げられ、目の前がちかちかする。かみしめた唇から血がにじんだようで、鉄の味が広がった。
「ごめん」
指で口元をぬぐわれた。どういう仕掛けになっているのか、特に鍵を持っている様子もないのに背中に回った腕の手錠も外してみせる。
自由にはなったが相変わらず力は入らない。でも力の入らない指先に大事そうに口づけされると、そこだけが熱くなる気がした。
もう一度胸をいじられ、耳元に口づけられた。そして今度はゆっくりとした動きでゆさぶられる。いつの間にか相手を受け入れてしまっている自分の体に気づかないふりをしたいのに、相手の動きがスムーズになり、どんどん熱くなる内奥がそれを許さない。
「マット。…マット…」
名前を呼ばれている、それだけなのに、吐息からも熱が広がっていくようだ。相手にすがりつけない、そのことをもどかしく感じている自分がいるがそんな思いもおそってくる波が押し流していく。
きっと全てが薬のせいだ。体に力が入らないのも、口腔に入ってきた舌の動きに答えてしまったのも、すべて。
108 :
夏休みの宿題:2007/09/02(日) 08:22:04 ID:Ze1TyLH/
「バスルームはどこです?」
体を拭こうとしていた相手の動きを制していった。
「あの扉。体、辛くない?抱き上げて連れて行ってあげた方がっっ」
今度は遠慮せずに殴ってやった。完全に力は戻っていないが自分の意志で動かせることに満足する。一度では終わらなかった蹂躙の跡がいくつも残っている体を見ながらも足をおろして、歩けることを確認した。
「軍曹。謝ってすむことじゃないし、許されることじゃないのはわかってる。言い訳をすることも出来ない。本当に、申し訳なかったと」
「謝ってすむことじゃないのがわかっているのなら、思いつきで行動するその性格、なんとかしてください。……その方が、しなくて良い心配をしながら生活するよりずっと建設的です」
そういってバスルームに向かった。途中、忘れないように付け足す。
「ちゃんと私の仕事先、見つけといてください。給料と条件が良くて、セクハラ親爺のいないところ!」
歩き去る途中、「俺のお嫁さんって言う永久就職じゃダメだよなあ」というつぶやきはあえて聞こえない振りをした。立ち直りの早い人のことは放っておこう。
のっぴきならない関係はもう少し続くだろう。しばらくはそれでも良いのかもしれない。いつか変わってしまう、その時までは。
109 :
夏休みの宿題:2007/09/02(日) 08:24:42 ID:Ze1TyLH/
以上です。お目汚し失礼しました。
読みたいものと書けるものが違いすぎて辛かった…
ごめんなさい。
110 :
保守:2007/09/02(日) 20:56:03 ID:Ipqh6JnZ
うわぁぁ。
素敵過ぎる。最近ヘヴン読み返したばかりだからウハウハしながら楽しませていただきました!
全然作文じゃないっすよ。ちゃんと遠藤キャラなのにしっかりエロなのが素晴らすぃ。
是非続編も! と期待してみる。
っおお!!GJGJGJ
この二人大好きなんで、すげー嬉しかった。
それぞれ「らしい」話で、よかったよ! GJ!
だいぶ遅ればせながらGJ〜!
きっとルークが居たなら
帰宅後のマットの微妙な変化を指摘して殴られてそうだw
たまにあげないと落ちそうなので
115 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 10:49:47 ID:ydE17N+i
じゃあ、あげてみよう
よく圧縮生き延びたな・・・
>>116 >>114のレスがあったからじゃない?
とはいえ圧縮の基準は最終書き込み時間だから、ageる必要はないんだけど。
まぁageた方が目立つから、職人さんがこのスレ気付いてくれるかもね。
>>118 そのスレ見てるけど、荒らしを呼び込む危険もあるからちょっとね。
女性の多いスレだと愉快犯も来そうだし。
そろそろ、保守かな
前に総合の方でマダミス書いてた職人さん、こっちに続き書いてくれると嬉しいんだけどなぁ。
あの続きがものっそ気になる。
☆
123 :
保守:2007/11/05(月) 23:52:21 ID:+ammUhjx
創作はともかく二次は難しい。
すまんが保守のみ。
デイヴィス×マットの2回目が気になる。
予防線を張りまくりのマットを中佐がどう攻略するのか…
とりあえずホリーの病室で待ち伏せかな。
少なくとも中佐の渡す飲み物や食べ物を口にしないだろうなあ
同じ手は二度と使えないwww
保守
圧縮近そうなので保守
101ありがとう
129 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 14:25:34 ID:vwKY2NTe
ヤバイどころの話じゃないほど下がっているのであげてみる
本スレでも遠藤作品のカップル話がちょろっと話題にのぼってたし、
SSになってなくてもいいから妄想話が聞きたい。
姫×オーソンは第1話だけ敬語じゃないんだよね。
そういえば遠藤カップルはみんな敬語会話が多いのが萌えポイントなのかな。
編み目もようのメロン
立場が明確に違っていて、かつ敬語会話は確かに萌ポイントだな。
家族ごっこのリー中佐×タナー伍長って、ディヴィス×マットの
前身かなあと思う。
一度そう思っちゃうと前者は現役軍人だし、また違った妄想が
広がってしまった。
ほ
しゅ
135 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 18:11:43 ID:jbWMVlgS
ほ
しゅ!
137 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/30(日) 15:14:29 ID:oroDplgw
保守
あけ
み
グラハム×グレース投下します。
最終話の後のエロが書きたかったんですが、どうしても39さんのクリスマス話
を越えるシチュエーションが浮かばなかったので、大変失礼かと思いますが
ちょっと設定をお借りしました。
>>39さんのマダミス8/9から9/9までの間を書いてみました。
つまりエロのみです。
苦手な人ごめんなさい。そして、39さんありがとう。
あなたがいなければ書けませんでした。
では、いきます。
軽い口づけを交わしながら彼女の身体を抱きしめ、そのままベッドに横たえる。
栗色の髪の毛を手で弄びながら角度を変えて何度も口づける。
「ん…」
最初は唇に触れるだけから、次第に深くなりお互いの吐息が混じりあいそうになる頃
「…ちょっと、眼鏡が邪魔よ」
グレースはそう言うと私の眼鏡に手をかけて外そうとする。
が、不器用な彼女のことでなかなかうまく取れない。
無理に取ろうとしてまた壊されても困るので
「自分でやりますよ」
私は眼鏡を外すとサイドテーブルに置いた。
「ついでに、灯りも消してくれない?こう明るくちゃ恥ずかしくてしかたないわ」
上気した頬を、手で隠すようにして彼女が言う。
「気になりますか?私は別にこのままでも構わないんですが」
「もう、何言ってるのよ。こんなに丸見えじゃ恥ずかしいに決まってるじゃない。
…いくらあたしががさつで大胆なタイプでも時と場合によるわよ」
恥じらいを見せ顔を赤らめて言う彼女。
こういう彼女を見たことがないわけでもないが、ベッドの上で見るのはもちろん初めてだ。
「…グレース」
部屋の照明を落とし、枕元のわずかな灯りのなか彼女の頬に触れる。
屋敷に戻ってきたばかりのグレースの身体は冷えきっていたが、今は違う。
シャンパンを飲み、暖かい部屋にいた身体は触れると生きているぬくもりを感じさせる。
思えば、彼女はいつも無鉄砲で後先考えずに行動してばかりで、一緒に過ごした
三年半の間に生命の危険にさらされそうになったことだって何度あったか分からない。
そんな彼女と、主人と執事として、残された家族として共に生活していくうちに
いつしか家族としてだけではない感情が芽生えてしまった。
彼女を愛しいと思う。
告げることのない想いでもそれはかわらない。
書類上とはいえ、彼女と私との関係は親子であり家族だ。
たとえ、彼女が私と同じ想いを抱いていたとしても
それ以上の関係に進むことはないだろうと思っていた。
今日この日を迎えるまでは。
「…グラハム?」
頬に触れたまま動かなくなってしまったような彼にそっと声をかける。
眼鏡を外した彼はいつもとは少し違った表情を見せる。
これが男としての彼の姿なんだろう。
あたしが彼のこんな顔を見ることになるなんて思ってもみなかった。
屋敷に戻ったあたしを、彼は玄関先でいきなり抱きしめた。
普段の彼からは想像もつかない行動だったのでちょっと驚いてしまった。
じいさまが亡くなる前と比べて、ぐっと親しくなったとはいっても
彼があたしに特別な感情を抱いているのかというとあたしにはよくわからない。
思わせぶりな素振りをみせることもあるけど、ただの親愛の情としての表現な気もする。
どちらにしろ、あたし達は家族だしそれ以上の関係は彼も望んでいないはず。
仮に、お互いの気持ちが同じところにあったとしても、だ。
少しの間混乱していたら、すぐにいつもの表情で迎え入れられた。
まったく、相変わらずのポーカーフェイスで感情が読めやしない。
そのあとは、すったもんだのあげく今あたしは彼のベッドの上にいる。
まさか彼とこうなるなんてそれこそ夢にも思わない出来事だったけど
じいさまの手紙を読むかぎり、いずれこうなる運命だったのかもしれない。
彼女に名を呼ばれ、我に返る。
潤んだ瞳で見つめられ視線が絡み合う。
グレースの手が私の髪を撫で、頭を引き寄せる。
深い口づけは互いの想いを溶け合わせているかのようだ。
「…グレース、君を………」
交わす口づけにまぎれてつぶやくように囁く。
「んんっ…あたしも…よ」
漏れる吐息に重ねるように彼女が応える。
「……じいさまも、クリスマスに、粋なプレゼント…して、くれる、じゃない…んっ」
この状況になるにあたって、旦那様の手紙が多大な効力を発揮したのは言うまでもないが
その直感もたいしたものだと素直に思う。自分達ですらここまで近しい関係になるとは
思ってもいなかったというのに、あの方は最初から見抜いていたのだろうか。
名残りを惜しむ唇を離すと、頬から耳そして首筋にかけてそっと辿っていく。
耳朶に軽く歯を立てると息を詰めるのがわかった。
「はっ…」
背中を撫でていた右手をゆっくりと下ろしていく。
もう片方の手をセーターの間にしのばせる。
掌で収まるほどの胸のふくらみを揉みしだくと、彼女の唇からたまらず甘い声が漏れた。
「ああ、はぁ…グラハム…っ」
「ピーターで構わない、今は」
そう言うと、少し驚いたように彼女が笑う。
「初めて、ね。…あなたが、ファーストネームでもいいって、言ったの」
……確かに仕事中は呼ばないでくれと言った覚えはある。
だが最近は彼女もグラハムとしか呼ばなくなっていたのですっかり忘れていた。
うれしそうに私を見つめる彼女に愛しさが増す。
胸の上にある手がその先端を軽く摘まむ。
「はぅっ、…ああ」
ふいに訪れた刺激に彼女が小さく身をすくめる。
片手で下着の留め具をはずすとセーターをたくしあげた。
へそのあたりから上に向けて徐々に唇を滑らせていく。
彼女の腰のあたりをさまよっていた右手をスカートの中に滑り込ませて、太腿に触れる。
「あっ、はっ…んん」
唇はすでに胸に到達していて、先程まで指で愛撫していた部分に吸いつくと
「あ、ああっ…や、あ…んっ」
彼女の声がさらに高くなる。
舌で転がしながら、もう片方の胸は先端のまわりをじりじりと撫で、また摘まむ。
その間も右手は焦らすように滑らかな太腿を撫でさするだけだ。
とうとう耐え切れなくなったのか
「ん、はぁ…あっ…ピーター、あたしっ、…もう」
顔を朱に染め、わずかにうわずった声で彼女が吐息を洩らす。
「もう、何?」
普段見せない彼女の女の部分が色っぽく、つい意地悪なことを言ってしまった。
軽くにらむようにこちらを見るが、その瞳はすでに濡れていて。
問いかけに答えはなくとも、言いたいことはよくわかる。
太腿を撫でていた手を静かに動かす。
さらに奥のほうに手を寄せると下着の上からでもわかるほど熱くなっていた。
軽く撫であげ下着をずらしてそっと指をさし入れると、彼女の身体がびくりと震えた。
「や、やだっ…ちょ、ちょっと…待っ」
気にせずにゆっくりとおし進める。
小刻みに指を動かすと、震える身体が小さく跳ねた。
一度抜き出すと湿った音がする。
そのまま指を這わせると小さな突起に触れる。
円を描くようにかすかに指を動かしてみる。
「や、あああっ……んん、くぅ」
彼女は手で顔を覆い、必死で自分を抑えようとしている。
「グレース…」
顔を覆う手首を掴むと、シーツに押し付けた。
口づけながらも指の動きは止めない。
混じり合う互いの吐息。
「……ああっ…もう…おかしく、なりそう…」
いつの間にか手首を押さえていた手は離れ、彼女の手を握っていた。
指と指を絡ませしっかりと握りしめる。
握り返す指の力が強くなってきた。そろそろかもしれない。
耳元で名を呼びながら、指先は彼女を煽る。
「あ、あ、ああっピーター…あああっ」
グレースが一際高い声をあげ、大きくのけぞった。
グレースの閉じた瞼にそっと唇を落とすと、ゆっくりと身を離す。
彼女をさんざん煽っていたのだから私だって普通ではいられない。
シャツの上に着ている服を脱ぐとベッドのそばの椅子に放り投げる。
「……はぁ」
落ち着いてきたのか、小さく荒い息をついていた彼女が薄く眼を開けた。
彼女の頬に手を添えて顔を覗き込む。
「大丈夫?」
「…頼むからそんなこと聞かないで。大体、ずるいわよ…。
あたしだけ振り回されてるみたいじゃない」
薄明かりの部屋の中、潤んだ瞳を伏せつつぼそっとつぶやく彼女の表情を見て。
たまらない。
歯止めがきかなくなりそうだ。
私の腕の中にいるときは、いつもの彼女とは別人のように見える。
もっともっと乱れさせてみたい。誰も知らない彼女を知りたい。
───彼女のすべてを自分のものにしたい。
ずっと家族でいるつもりだったこれまでとはまるで違う想いに自分でも戸惑う。
乱されているのは彼女じゃなくて私かもしれない。
「ん…身体が熱い…脱がせてくれる?」
甘えるように言う彼女の口調も初めて聞くものだ。
彼女の身体に残っているすべての衣類をはぎとる。
そして、再び彼女に覆い被さると
「あなたも脱がせてあげるわ」
そう言って、シャツのボタンに手をかけてひとつひとつはずしていく。
彼女の髪の毛を撫でながら、耳朶に口づけそっと舌を這わす。耳の中に舌をねじこむと
「ひゃっ…だ、だめよ…くすぐっ…たいじゃない」
首をすくめて身悶えるその様子が可愛くて、ますます愛おしい。
伝い降りていく唇が首筋を舐めあげる。いっそ跡でもつけてしまいたい。
「…いいわよ、つけても。冬は厚着してるからバレやしないって」
私の考えを読んだかのように彼女がいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「どうなっても知りませんよ」
そう言いつつ、なるべく肩口に近いあたりに唇を寄せ、きつく吸いあげた。
白い肌に小さくついた赤い跡。
おそらく誰の目にも触れることがないであろうその印をそっと指で撫でる。
この屋敷の使用人の中には私達の仲を誤解している者もいるようで
──今となっては誤解も何もないが──クリスマスにこの広い屋敷に
ふたりきりともなれば、何かあったのではないかと勘繰られてもおかしくない。
それにしても、よくパブからの帰りを奥様ひとりで帰らせたものだ。
「しかし、よく帰ってこられましたね。誰かに止められたりしなかったんですか」
「ん?ああ、メイド達は夜も遅いからやめた方がいいって言ってたんだけど
コック長がね、グラハムさんもひとりで寂しがってるかもしれないから
奥様が帰れば喜びますよって送りだしてくれたのよ。
ついでに、ふたりでこれをどうぞってシャンパン持たせてくれたの」
……なるほど、そういうことか。結果的にはその目論見どおりになったというわけだ。
「ねえ、…あたしもつけていい?」
は?
「だーいじょうぶよ!噛んだりしないから安心して」
そういう問題ではないが、彼女はすっかりその気でどこにしようかなんて考えてるようだ。
止めたところで聞き入れはしないだろう。
「見えないところならいいですよ」
仕方ないなと苦笑しながら言うと、グレースはにっこり笑って抱きついてきた。
まだ羽織っているシャツの内側の肌に唇を寄せる。
彼女の唇が私の鎖骨に跡を残そうとした瞬間、そのまま頭を抱えてベッドに押し倒す。
「…興奮した?」
すっかり彼女のペースに巻き込まれている。
何も言わずに彼女の唇を塞ぐ。
舌を絡ませ、深い口づけに酔わせる。
「んんっ、はぁ…」
瞳が潤んできた。
私は一度身を離すと、身につけている衣服を脱いで椅子にかけた。
ついでに旦那様のお心遣いがその辺に落ちていたはずだ。
拾ってひとつ取り出すと、残りの箱をサイドテーブルに置いておく。
ベッドに横たわる彼女を振り向くと、私に向かって腕を伸ばしてきた。
細い腰に腕をまわして、ゆっくり抱きしめる。
お互い一糸まとわぬ姿で抱き合うと、彼女の身体のぬくもりがよりはっきりと感じられる。
首筋に顔を埋め、鎖骨をたどってその下へと唇をすべらせていく。
腰にあてた手はなめらかな臀を撫で、胸にたどりついた唇は先端を舌で刺激する。
「んっ…あっ」
彼女の身体がほんのり薄紅色に染まりはじめた。
…そろそろこちらの理性がもたなくなりそうだ。
太腿を抱えあげ少しずつ身体を重ねる。
「は…っ」
すべて埋めてしまってから様子を窺う。
「……っ…あ、ああ…うっ…く」
先程まで力の入っていなかったはずの彼女の身体が急に固くなった。
瞳を閉じ、眉根を寄せて何かに堪えているかのようだが様子がおかしい。
その身をすくめ、私の首に絡む手がかすかに震えている。
まずい。
受け入れた衝撃のためかわからないが、身体に力が入りすぎている。
このまま抱いても彼女を傷つけるだけだろう。
彼女の背中に腕をまわし、強く抱き締めて言い聞かせるように囁く。
「グレース…力を抜くんだ……グレース…」
何度も囁き、髪の毛を撫でながら震える彼女に口づけを落とす。
「…っ……はぁ」
強張っていたグレースの身体から徐々に力が抜けていく。
「そう…それでいい…」
意外な反応に少し驚いた。
もしや初めてなのかと思ったがそんなこと聞くだけ野暮だし、彼女も答えないだろう。
とにかくあまり無理はさせないほうがよさそうだ。
グレースの力が抜けて身体の重みが腕にかかってくる。
前髪をかきわけて額に軽く口づける。
「…堪えられなかったら、噛んでもいいから」
「んっ…噛まない…って…言った…でしょ」
クスリと笑いながら発せられた声はうわずっていて、紅潮した頬はそのままに
今にも零れそうなその瞳はまっすぐにこちらを見つめている。
彼女の掌が私の頬に触れ、途切れ途切れにつぶやく。
「…っ…あなたが…好き、よ…たとえ…一夜限り、でも……………うれしい」
──ああ、もう、君という人は。
「誰が一夜限りなんて言ったんです。もう離しませんよ。…覚悟はできてる」
グレースがわずかに眼を見開いた。
「………あなたって……本当に…意外なこと…言うわ」
「ギャンブル人生お好きでしょう?一緒に賭けてみませんか」
返事を待たずに唇を塞ぐ。軽く触れ、再び口づけようとしたその時
彼女の青い瞳から一粒の滴が零れ落ちた。
「グレース…」
だめだ、抑えられない。
緊張がほぐれるまで待っていたがもはや彼女の様子を見ているだけで煽られる。
抑えきれずにゆっくりと揺らし始めると
いきなりの律動に驚いたグレースが私にしがみついてきた。
「や、あっ、ああ…ピーター…っ」
まるでか弱い少女のように必死で堪えようとしている。
いつも勝ち気で自由奔放な彼女にこんな一面があるなんて誰が知っているだろう。
無理はさせたくないがこうなるともう自分を止めることができない。
最大限の注意を払って、なるべく負担にならないように腰を動かす。
最初はただ戸惑っているだけだったグレースの声が次第に艶を帯びてきた。
身体が慣れてきたのだろうか。
甘く鼻に抜けるようなその声から彼女の感じている様子が伝わってくる。
「…はぁっ、あっ、…あ、あ、ああっ…んんっ」
頭に響くその声が私の理性を溶かしていく。
──ずっと書類上の立場に縛られてきた。
たかが紙切れ一枚が邪魔をして、秘かな想いにブレーキをかける。
想いを告げられなくても、共に未来を過ごすことができるならそれでいいと思っていた。
だが、今、彼女を抱いている。
一線を越えてしまったことに対して後悔はしていない。
むしろ何故今まで何事もなくいられたのかという疑問のほうがずっと強い。
お互い相手を必要としていて、これほどまでに愛しているのに。
「…ああっ…ピーター…はっ…んっ、あ、あっ…ああっ」
切なげな甘い声。
火照った身体が互いの熱を伝えあう。
激しさを増す振動に年代物のベッドが軋みをあげる。
「…グレース……っ」
彼女の腕が私の首に絡みつき、たまらないとばかりに縋りついてくる。
「…ね、ねえっ…あっ、ん……あぁっ」
揺らめく瞳が訴えてくることを察して、噛みつきそうな勢いで唇を重ねた。
「んんんっ、…はぁ…っ」
舌を絡め互いを貪る。
とろけるような口づけに反応してか彼女がきつく締め付ける。
「……くっ」
あやうく果ててしまいそうになる。
「あ、ああっ…あ、あたしっ…も、だ…めっ」
グレースが息も絶え絶えといった風に言葉を絞り出す。
小刻みに震える身体が彼女もまた限界が近いらしいことを表していた。
彼女を抱く腕に力をこめ、さらに激しく突き上げる。
もう何も考えられない。
「あ…んっ…くぅっ、あっ、あっ……あああああっ」
限界はほぼ同時だった。
「……んっ」
「気がついた?」
あたしが目を覚ますのと同時に声が降ってきた。
気がつけば毛布が掛けられていて、すぐ隣にはピーターが横になっている。
「やっぱり疲れてたんですね、無理もないですよ」
どうやらあたしは彼と寝たあとそのまま気を失ってしまったらしい。
そんなに長い時間じゃないみたいだけど、気を失うって…。
さっきまでの行為の内容を思い出して顔が赤くなる。
とんでもないこと言っちゃったような気もするし
とてもじゃないけど、彼の顔なんて見れやしない。
慌てて顔を隠そうと反対側を向く。
「どうしてそっち向くんです。寂しいじゃないですか」
ああもう以前の彼なら絶対こんなこと言わなかったのに。
「…言っとくけど、あたし酔っ払ってたのよ。だからこんなことになっちゃったんだわ。
俗に言う一夜の過ちってやつよ。あなたも忘れてくれていいわよ」
興奮して思わず早口になってしまった。
「……本気で言ってるんですか」
少し低い声で彼が問いかける。
…やばい、怒らせてしまったかも。
彼が小さくため息をつく。
背中越しに抱きすくめられる。
「どれだけ一緒にいると思ってるんです。…君の本心はすぐにわかるよ。
恥ずかしいならそっち向いたままでもいいですから、頼むからそんなこと言わないでくれ」
「………」
「それに言ったでしょう?もう覚悟は決めてますから」
まっすぐで頑固で、一度こうと決めたら意志をまげない強さを持ってて
真面目なだけかと思ったら時に意外なほどに大胆で。
ああ、本当にあなたには敵わないわ。
くるりと身体を返すとピーターの顔がすぐ目の前にあった。
「…ごめん。あたしが悪かったわ」
目が合うと、彼が唇を寄せてきた。
そっと触れて離れて、そしてまた唇をついばむような軽いキス。
彼があたしの髪の毛をゆっくりと撫でてくれる。
全てを受け入れてくれているようで、なんだかとても安心する。
…愛されてるってこういうことなのかしら。
とにもかくにも、じいさまに感謝しなくちゃいけないな。
今度お墓参り行く時バラの花持ってってあげよう。
あー、このまま寝ちゃうのも悪くないかも。
いい夢が見られそう…
今度こそ完全に眠ってしまったようだ。
腕の中のグレースはすうすうと寝息をたてている。
軽い失神から眼を覚ました彼女は、急に真っ赤になったかと思うと
心にもないことを言ってみたりして相当混乱しているようだった。
今までの彼女の様子を見るかぎり、本人が言うほどのこともなく恋愛に関しては
あまり経験がないのかと思われるからこの手のことは苦手なのかもしれない。
まあ、そこが彼女の可愛いところでもあるのだが。
グレースの髪を撫でる。
愛しい彼女。
今日から私達の新しい関係が始まる。これからもよろしく。
──そんな想いをこめて、眠る彼女の頬にそっと唇を落とした。
以上です。
年末年始はずっとこれ書いてましたが、なかなか楽しかったです。
39さん、本当にありがとうございました。
感謝してます。
>>151 年明けからいいもの読ませてくれてありがとう!
マダミスずっと待ってました
39さんのも合わせて読み返したけど
違和感なく繋がってエロ度もラブ度もあがってGJでした
よかったらまた是非投下して下さい!
マダミスまってたよー
終わり方がイイ!
グレースかわいいグラハムかっこいい!!
わーいい!GJGJ
1年ぶりのマダミスー!!
ありがとうございました。待っててよかった。
コック長、GJ。
敬語と本音が混じり合うグラハムもいい。
さて、こうなると2戦目も気になる…使用人の視線も気になる…
今度は旅先とか。
156 :
151:2008/01/16(水) 22:57:25 ID:Zx4iUep1
レスありがとうございます。
とても励みになります。
今書いてるSSも書き終わったらそのうち投下する予定です。
いつになるかわからないけど…。
>>155さん
鋭いですねー。
まさしく旅行ネタで書いてます。
正座してまってます。
158 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/29(火) 10:08:24 ID:yWT+e/iL
hoshu
保守。
ちょこっとほしゅ
161 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 11:44:27 ID:bLFPSLtJ
バレンタイン華麗にスルーほっしゅ
>>161 マルチ投稿だって、他のスレでも見たアド
163 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/23(土) 14:14:09 ID:1vuUvC/G
hoshu
マダミス読みたーい
やっぱり職人さん少ないのかな
ほ
166 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 21:26:31 ID:kLch17E0
オオカミ出てこないねー。年齢だけアレク18才くらいにしてなら大丈夫だと思うんだけどなー。
そもそも人気ないのか?
そういえば狼はまだ一度も見たことないな。
人気がないわけじゃないと思うけど遠藤作品の中でも
さらにエロパロにしにくいからじゃない?
年齢そのままだと犯罪になっちゃうしさ。
39です。
久しぶりにこのスレ来て、新作が2作もあってびっくり。
151さん、私の拙い話に素敵な続きをいただいて、
こちらこそ感謝感激です。
こういうのが読みたかったんだよー(書けなかったけど)!!
と叫んでしまいました。
>「ギャンブル人生お好きでしょう?一緒に賭けてみませんか」
覚悟を決めてくれたグラハムのセリフに、激萌。
スーパー執事の手腕で法律の壁をぶち壊して、
いつか夫婦として「マダム」と「ミスター」になってほしい。
デイヴィス×マットの職人さんもGJ!
無理やりなのに優しいデイヴィスに萌えました。
二人の関係がどう変わっていくのか、続きをぜひ。
39さんいらしてたんですね!
151です。
勝手に続きを書いてしまって気分を悪くされたりしないかとひやひやしてました。
ご本人にレスいただけたのが一番うれしいです。投下してよかった…。
39さんのおかげでマダミスSS書けました。
本当にありがとうございました!
151さんの次回作もいつまでも正座でお待ちしております。
そんな私は155。
171 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 13:21:39 ID:ZViapFbv
なぜここに^^;
描きかけのグラハム×グレース絵発見した。
セリフとかはいっとるwww
よっぽど萌えに飢えてたんだな当時の自分。
まだ飢えてる人がここにいるので、ぜひうp希望。
ごめん、前に使ってたパソコンだからネットが繋がってないんだ・・・
そしてデータ移すものも無いのでメモリースティックとか買ったらうpするわ。
他の人が書いた二人がみたい。
>>175 ずっと待ってるからよろしくー。
久しぶりに少女漫画板の遠藤スレの過去ログ読み直したら
ますます飢えてきた。…困ったもんだ。
ありがとー!!
つーか仕事早いな!
グレースかわええ〜。グラハムの表情も見たかった。
あとどんなセリフが入ってたのか興味あるw
151です。
前回から間があきすぎて少し(かなりかも)テイストが変わってしまいました。
もう諦めようかと思ったけど、書くと言った以上投下します。
155さん、ご期待に添えなかったらすみません。
3月中に投下したかったのでとりあえずさわりだけひっそり投下。
続きは日曜の夜かな?
年があけて一週間。
年末年始のお祭り騒ぎの雰囲気もいつしか薄れ、またいつもの日常が戻ってきた。
この冬は例年より雪が多く、夜も更けて静寂の中さらに雪は降り続く。
あまりの静けさに時間が止まってしまったかのような気持ちにすらさせられる。
私は一通り仕事を済ませると早々に自室に戻り、ソファに腰掛けた。
こんな夜はひとり読書でもするに限る。
コンコン。
ノックの音がすると同時にドアが開く。
「グラハム、入るわよー」
満面の笑みを浮かべた奥様が部屋に入ってきた。
時計はすでに九時をまわっている。
夜遅く私の部屋を訪ねてくるなんてめずらしい。一体何の用だろう。
ひとまず読みかけの本をテーブルに置き、奥様にソファをすすめると
何故か向い側ではなく私の隣に腰をおろした。
「どうしたんです、こんな時間に」
「へへー。明日のことでちょっとね」
明日?何か予定でもあったかな。
考えを巡らせているうちに、彼女は手に持っていた冊子を広げ嬉々として話し始めた。
「ほら明日あなたの誕生日でしょう。
どうしようか考えてたんだけど、たまにはあなたも仕事やあたしから離れて
ひとりでのんびり過ごすのもいいんじゃないかと思ってね
今年のプレゼントは二泊三日の湯けむり温泉旅行に決めたわ!
いい機会だしゆっくり温泉にでもつかれば日頃の疲れもとれて癒されるってもんよ。
温泉のほかにもプールにエステにいろいろあるみたいだし
のんびりできてお肌もつるつるなんて最高でしょ。
出発は朝の十時だから、それを伝えに来たのよ」
……はあ。
どうしてそう君はいつもいきなりなんだ。
心の中で小さな溜息をつく。
思い立ったら即行動、がモットーの人ではあるがそれにしても随分と急な話だ。
温泉にエステと言われても…女性じゃないんだから興味ないし。
「そんなに温泉ばかり入ったらつるつるどころかふやけますよ。
せっかくのプレゼントですが、丁重に辞退させていただきます。仕事もありますから」
「だめよ。だってもうチケットもホテルの予約も全部済ませちゃったもん。
今更キャンセルなんかしたらいくらとられると思ってんの!?
あなたには必ず行ってもらうわ。
じじいじゃないんだから三日間温泉入ってもふやけやしないわよ、へーきへーき」
相変わらずこういった時の手回しの良さには感心する。
もっと別のことに使えばいいのにと思ったりもするけど。
「奥様はその間どうするんですか?」
「あたしは留守番よ、ずっと屋敷にいるわ。
あなたが変な心配するといけないと思ってお客様も呼ばないから安心して。
それに仕事が数日分溜まったところであなたならどうってことないでしょ。
気兼ねしないで、ゆっくり羽を伸ばしてくればいいじゃないの」
そう言ってにこやかに笑う奥様。
ああ、まるでわかってない。
トラブルメーカーな君をひとりこの屋敷に残したまま
温泉に行くくらいなら、旅行自体を取り止めた方がどんなにいいか。
しかし言い出したら聞かない彼女のことだ。キャンセルなんてまず無理だろう。
ますます深い溜息をつきたくなったその時、頭の中で何かがひらめいた。
「わかりました。せっかく奥様が私のために準備してくれたんですから
ありがたく行かせていただきますよ」
えっ!?
さっきまでどうやって断ろうか思案していたであろう彼が
やけにあっさりとこう言ったものだからあたしは拍子抜けしてしまった。
あまりに物分かりが良すぎてちょっと気持ち悪い。
絶対もっとモメると思ってたのに。
「ただひとつお願いがあるんですが」
「銀食器ならまっかせといて!ふふん、たかが三日でしょ?
今度は完璧に磨いてみせるわ。あたしを誰だと思ってるのよ」
以前グラハムが風邪で寝込んでしまい、あたしが執事を代行した際
彼がそりゃもう命の次に大切にしているといってもいいかもしれない銀食器を
うっかり酸化させてしまったことがあって。
よほど懲りたのか、あれ以来彼はますます念入りに銀食器を磨くようになった。
まだ若いのにじじくさい趣味してるったらありゃしない。
…ま、そんな頑固じじいみたいなとこも嫌いじゃないんだけど。
「銀食器じゃありませんから」
くっくと笑いながら彼が答える。
「じゃあ何よ?お土産の相談だったら食べ物でいいわ。
木彫りの熊なんか買ってこようものなら速攻で売り飛ばすわよ」
「そんなもの買ってきません。第一、売れやしませんよ。
お願いというのはですね……明日からの旅行、奥様も一緒に来てほしいんです」
「へ?なんでよ?」
あたしに自分の目の届く傍にいてほしい、という彼の心理は理解できる。
去年の誘拐騒動のときも彼にどれほど心配をかけてしまったことか。
でも今回はあたしが外に出るわけじゃないし誰かを呼ぶ予定もない。
言ってみればグラハムの留守中、ただ家でじっと彼の帰りを待つだけだってのに
どうしてあたしも一緒に行かなきゃならないのよ。
自分ひとり温泉旅行を楽しむことに遠慮でもしてるってことなのかしら。
「あなたにのんびりしてもらおうと思って企画したのに一緒に行ったら意味ないじゃない。
なにもあたしに気を遣う必要ないわよ、日頃の感謝の気持ちなんだから」
「別に気を遣って言ってるわけじゃない。
ひとりじゃ寂しいでしょう。グレース、君と行きたいんだ」
彼があたしのことを奥様以外で呼ぶときは必ずそこに何らかの意図がある。
仕事とプライベートは分けて考えたい人だから
今の発言は執事としてではなく、それ以外としての発言に違いない。
わからないのは…何故それが今なのかってこと。
これは、もしかして。
「あなた飲んでるでしょ」
「まさか。酔って口説かれるよりいいでしょう」
しれっとした顔でグラハムが言う。
…相変わらず本気か冗談かわからないこと言うんだから。
この間から振り回されっぱなしだわ、まったくどうかしてる。
少し冷静にならなくちゃ。
「…グラハム、あなたそれ本気で言ってるの?屋敷の皆にはどう説明するつもり?
あなたの誕生日にふたりで旅行だなんてそんなの言い訳できないわよ」
「平気ですよ、口実なんていくらでも作れます。家族なんですから」
「………」
なんだかもう何も言う気になれない。
どうしてもあたしを連れて行きたいみたいだけど、その理由もはっきりとしないし
そんなに信用されてないのかと思うとそれはそれで気分が悪いし。
一体どういうつもりよ。
ムカムカしてたら突然彼があたしの腕をぐいっと掴んで引き寄せた。
今度は何!?もの言う間もなく抱きしめられて、彼が耳元で囁いた言葉は。
「誕生日プレゼントなんでしょう。……何が欲しいか、まだわからない?」
グレースの顔がみるみるうちに朱に染まる。
「…わ、わかった!わかったから!んっ…ちょっと、離してっ
こんなとこ誰かに見られたらどうするのよ!」
顔どころか耳まで赤くなった彼女が慌てて身体を引き離そうとする。
時折見せるこういった反応がかわいくて、たまらなく愛しい。
あの夜、彼女の心も身体もすべて自分のものにしたはずだった。
だがあれ以来肌を重ねたことも触れたこともなく
時が経つにつれ徐々に実感が薄れていき
あの手触りもぬくもりもまるで夢でも見ていたかのようだ。
もう一度彼女に触れその存在を確かめたい。
わざわざお膳立てしてくれたことだし、これを利用しない手はないだろう。
「奥様の分のチケットは明日の朝手配しておきます、今日はもう遅いですから。
ホテルは一部屋で構いませんか?」
「…任せるわ」
いささか憮然とした表情で彼女がつぶやいた。
目を合わさないように横を向き火照った顔に両手をあて熱をさまそうとしている。
思いがけない話の展開に少々驚いているようだったが、さすが奥様。
立ち直りは早かった。
「よし、明日の準備するからもう帰る!
プールがあるなら水着も用意したいしヘタすると今晩眠れないじゃない。
せっかくの旅行が寝不足で楽しめないなんてことになったら
キャンセル料どころの騒ぎじゃないわっ、行くからにはしっかり元を取らなきゃ!
あなたも早く休んだ方がいいわよ。じゃ、おやすみ!!」
勢いよく立ちあがると、バタバタと部屋を出て行ってしまった。
「お休みなさい、奥様」
部屋を出ていく彼女を横目で見送りながらソファにもたれかかる。
天井を見上げて一息つく。
なんとかベストな方向に話を持っていくことができてほっとした。
とかくトラブルメーカーというのは、本人が望む望まないに関わらず
トラブルを起こしたり巻き込まれたりするものだ。
そんな素質たっぷりな彼女をこの屋敷にひとり置いていくなんてもってのほかだが
せっかくの好意を無にすると機嫌を損ねる。それもまた面倒な話だ。
となれば連れていくしかない。
どうせトラブルに巻き込まれるのなら一緒にいるときの方がまだマシだ。
それに、彼女とふたりきりでの旅行も実際いい機会なのは間違いない。
いくら同じ屋敷で暮らしているといってもここでは常に誰かの目がある。
案の定、クリスマス当日もコック長に耳打ちされてしまった。
適当にはぐらかしておいたがそのうち真剣に対策を考えなければならないだろう。
急に決まった今回の旅行のような件もあることだし。
さて、明日から留守にするとなるとある程度仕事を片付けておかなければ。
彼女は早く寝ろと言ったがそうもいかない。
私は立ち上がるとデスクに向かって歩きだした──
キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
続き期待してます!
正座して待ってます。
187 :
続き:2008/03/31(月) 00:19:33 ID:GxKfl/uW
「あー気持ちよかった!やっぱり風呂は命の洗濯って本当なのねー。
結局あなたと一緒に来ちゃったけど来てよかったわ」
バスルームから出てきたグレースはパタパタと掌で顔を煽ぎながらソファーに腰を下ろした。
軽くバスローブを羽織っただけの湯上りの彼女にグラスを手渡すと、嬉しそうに受け取る。
着いた早々スパだのヨガだのマッサージだの堪能した奥様はご機嫌である。
今朝方、ホテルに連絡してダブルにチェンジした部屋は広々として
白を基調とした落ち着いたデザインで彼女はとても気に入った様子だった。
同じ部屋は嫌がるかと思ったがそんなことはおかまいなしと
いった感じで、いたって普通にこの旅を楽しんでいるようだ。
まあ過去に野宿経験もあるくらいの私達だからそういったことは気にならないのだろう。
夕食を済まし、ホテルのバーで軽く飲んで部屋に戻ってきた。
そして彼女が今まさに風呂から出てきたばかりという状況だ。
「冷たい水でいいでしょう」
「えーお酒にしてよー。そこワインか何かあったわよね?さっき見たわ」
夕食でワインを飲んで、バーでカクテルを飲んで、そしてまだ飲むつもりらしい。
このペースで飲めば間違いなく酔い潰れる。
「まだ飲むんですか?そろそろやめたほうがいいですよ」
「だって気持ちいいのよー。温泉入って心身ともにリフレッシュできたし
食事もおいしかったし、ここはあなたとふたりっきり…だしね」
ほろ酔いの彼女は手をひらひらさせながら機嫌よくこんなことを言っている。
やれやれ、この分だと今夜は酔っ払いの介抱で終わりそうだ。
「気持ちがいいのは結構ですが、ほどほどにしてくださいよ。
ここで奥様の介抱するのは私だけなんですから」
「んもう、こんなとこまで来て奥様はやめてよ。ね、ピーター?
あなたも早くお風呂入ってきたら?気持ちいいわよー」
まったく人の気も知らないでのんきなものだ。
彼女にワインとミネラルウォーターを手渡してさっさと風呂に入ることにした。
風呂から上がったらソファにいるはずのグレースの姿が見えない。
これはもう潰れてしまったかなと思い、寝室に続くドアを開けると
枕元のかすかな明かりの中、やはり彼女はすでにベッドに
倒れ込むような形のままうつぶせで横になっていた。
ゆったりとしたキングサイズのベッドだからまさかここで落ちたりしないだろうが
せめてきちんと寝かせようと彼女に近づくと
「…遅かったじゃない。もう待ちくたびれたわ」
もそもそと彼女が身動きする。なんだ、まだ寝てなかったのか。
「起きてたんですか。そのまま寝ると風邪ひきますよ。
湯冷めするといけませんからちゃんとベッドに入って」
「だーめ。今日は何の日だと思ってんの、早く来て。
湯冷めするって言うならあなたがあっためてくれればいいでしょ」
私に向って腕を伸ばし、むっくり起き上がる彼女と目が合う。
酔っているせいか目が据わっている。
「相当飲んだでしょう。気分が悪くなる前に早く休んでください」
「しつこいわねー、何度も言わせないでったら。今日はあなたの誕生日じゃないの。
お望みどおりプレゼントらしいことしてあげるわよ」
いきなり彼女がふらふらと体重をかけてのしかかってきた。
反動でふたりベッドにもつれるように倒れ込む。
グレースに押し倒された格好だ。
「ちょっと、奥様」
「あなたは何もしなくていいわ…あたしにまかせて」
囁くように言った彼女の細い指先が私の顔に触れ眼鏡を外す。
予想外の出来事にさすがに驚きを隠せない。
一体何を企んでいるんだと考えていたらおもむろに彼女が唇を寄せてきた。
かなり酒くさい。
普段の彼女は酔うと陽気になって騒ぐタイプで
べろべろになるまで飲んだ後、さんざん騒いで暴れまわって朝になってから
「あれー昨日あたし何かした?なーんか身体のあちこちが痛いのよねー」
なんてのたまうことも数え上げればきりがないほど経験している。
ただ、やかましくはあっても人に絡んだりはしないから
まさかベッドの上でこんな風に絡まれるとは想像もしていなかった。
今夜も酔っ払って騒ぐだけ騒いだらすぐ寝てしまうだろうと思っていたのに。
──こんなことになるならワインなんか渡すんじゃなかった…
激しい後悔の念に襲われても後の祭り。
何のつもりか知らないが、どうせ最後までできるわけじゃない。
途中で寝てしまうのがオチだろう。いや、すでに寝ぼけているのかもしれない。
とりあえずやりたいだけやらせてみることにした。
観念した私の唇に柔らかい感触が降りてくる。
久しぶりの彼女とのキス。
嬉しいはずなのにこの状況のせいで素直に喜べないのが辛いところだ。
お互いの唇をついばむような軽いキスを何度か繰り返した後
小さな舌がためらいがちにそっと忍び込んできた。吸い込んで絡ませて
そのまま彼女の口腔内に侵入すると少し驚いて身を引いたのがわかる。
逃がすまいと投げ出していたままの両腕で彼女を抱き締めた。
うなじに手を這わせつつ、太腿から腰にかけて撫であげれば
重ねた唇の隙間から彼女が文句を言ってくる。
「んっ…あなたは何もしなくていい…っ」
「君に触れたいんだ」
「もう…」
顔を見ると、頬を赤らめて幾分困ったような表情を浮かべている。
そんな表情を見せられるとつい本気になってしまいそうだ。
私に跨る彼女の身体の質感や温かさが直に伝わることもあり
はだけたバスローブから垣間見える白い肌に触れずにはいられない。
「あっ、やあっ…だめよ、あたしが…!」
素肌に触れられる刺激に堪えきれず吐息をもらす
わずかに震えているようなその様子にさらに熱を煽られる。
ここは屋敷ではないし、すでにグレースとはそういう関係になってしまった。
酔っているとはいえ今も彼女から進んで肌を重ねようとしている。
愛する女性が腕の中にいるのに何もしないというのもおかしな話で
こうなったらいっそ抱いてしまいたい。
だが、酔ってこんな乱れ方をする彼女のことだ。
朝になれば何も覚えてないに違いない。
それではあまりに虚しい。
──誰かのぬくもりが欲しいだけなら敢えて君を選ばない
そんなこと彼女が一番よくわかっているはずなのに。
そこまで考えると馬鹿馬鹿しくなってきて彼女に手を出すのはやめることにした。
なに、どうせすぐ眠くなるはずだ。
もはや諦めにも近い境地でいるとグレースが首筋に顔をうずめてきた。
熱い唇で耳朶の後ろから鎖骨にかけて慣れない様子でちろちろと舐めていく。
少しくすぐったい。
おとなしく彼女の頭を撫でていたら急に動きが止まった。
真剣な顔をして何やらぶつぶつと呟いている。
「…明日も温泉入るならやめとくべきかしら。でもなー」
跡をつけるかつけないかの話のようだ。
そういえば前もこんなことやってたな。
「どうしてそんなに跡をつけたいんですか」
「だって…あたしのもの、って感じがするじゃない」
やや拗ねたように言う彼女が愛おしい。
「もう君のものですよ、これからずっと」
言ってしまってからこれではまるでプロポーズのようだと気付いたが
彼女はそんな気持ちを知ってか知らずか、あっさり納得して微笑んだ。
「ならいいわ」
満足気に首に手をまわし抱きついてくる。
そろそろ眠くなるんじゃないかと待っていたのに眠くなるどころか
グレースの勢いは止まらずにその手がするすると私の下半身にまで伸びてきた。
…さすがにこれ以上は無理だ。
いくら抱くつもりはないといっても自制がきかなくなるのも時間の問題だろう。
最後までしないのに煽られるだけ煽られるなんて一体何の罰ゲームだ。
「もう気が済んだでしょう。続きは明日にして一緒に寝ましょう」
すぐにやめさせるつもりで慌てて起き上がろうとするも彼女に力いっぱい押し戻された。
「いやよ。あたしがするんだからジャマしないで」
やけにきっぱりと言う彼女の決意は固いらしく
あろうことか彼女の手にはすでに私自身が握られてしまっていた。
ぎこちない手つきで扱くというよりはおそるおそる触れるといった感じだ。
他の誰でもない彼女に触られているという事実を意識するだけで反応してしまいそうになる。
すでにふたりとも素肌に纏うバスローブははだけていて
ベッドに横たわる私に馬乗りになっているのは酔って潤んだ瞳でこちらを見つめるグレース。
「勘弁してくれ…」
心の中で呟いたつもりがつい口に出てしまった。
しまった、と思った直後。
「…わかったわ。そんなにあたしとするのがいやなら仕方ないわね」
彼女がうつむいて発した言葉に眩暈がしそうだ。
誰のせいでこうなってるのかわかって言っているのだろうか。
「どうせ君のことだから朝になったら全部覚えてないんだろう。
忘れられるぐらいなら最初からしたくない」
「はああ!?何よそれ!あなた、あたしにケンカ売ってんの!?
忘れるようなどうでもいい相手ならわざわざ一緒に来たりしないわよ!!」
何を言い出すんだとばかりにいきなり怒鳴りつけられた。
あまりの剣幕に冷静さを取り戻す。
彼女に嫌みを言っても仕方のないことなのに何を自分もムキになっていたのだろう。
「だったらどうしてこんなになるまで飲んだんです。
もとはと言えば君が飲みすぎたからでしょう」
「…部屋に戻ってからは飲んでない」
不満そうにぼそりと呟く。
「そのわりにずいぶんと乱れていたような気がしますが」
「だって飲まなきゃやってられないわよ!シラフでできるわけないでしょこんなこと!
あたしだって恥ずかしいんだからっ」
そう言った彼女の顔はもう真っ赤になっていて
呆然と見つめる私に気がつくと慌てて目をそらした。
……どうやら私の誕生日だから積極的に奉仕をしようとしたというのは本音だったらしい。
唐突に見えたその行動には理由があった。
酔っ払いの戯れだとばかり思っていたが、真意がわかると
彼女のいじらしさが伝わってきてその気持ちが素直に嬉しい。
そこまで酔っているわけでないことも判明したし、意味のない我慢をする必要もない。
そうと決まれば。
「グレース」
静かな声で名前を呼ばれてどきりとする。
ゆっくりと上半身を起こしてあたしを抱きよせる彼。
「ごめん、悪かった」
「…いいのよ。あたしもちゃんと説明すればよかったわ。
まさかあなたがあんな風に誤解してるとは思わなくて」
「君が驚かすようなことするからですよ」
くしゃりと髪の毛を撫でてきた。
彼もわかってくれたみたいでほっとする。
さっきはカッとなって一瞬頭に血が上ってしまったけど
冷静になれば彼が言うこともわからないわけじゃない。
きっと酔っ払いに絡まれてるとでも思ったんだろう。
最初っから言っとけば変な勘違いさせることもなかったんだわ。
失敗したなー。まあ、次から気をつければいいか。
「誕生日おめでと。これでまたひとつじじいに近づいたわね」
「ありがとう。でもまだ二十代なんですけど」
笑いながら力強く抱きしめてくる。
彼のぬくもりがうれしくて気持ちいい。
こんなにあたたかい気持ちになれるのって幸せね。
「…本当は全部あたしがしてあげるつもりだったのよ」
「いいよ、その気持ちだけで十分だ」
でも、せっかく誕生日なのに。
言いかけたあたしの唇に人差し指をあてて
「本当だよグレース。それに」
「君が火をつけたんだ。…もう遠慮はしない」
まっすぐにあたしの目を見て、そう告げた彼の表情が変わった。
今までの優しい笑顔から男の顔へ。
普段の彼からは決して窺い知ることができない表情。あたしにしか見せない顔。
ああ、あたしこの顔が好き。この瞬間彼はあたしのものだと確信できるから。
近づいてくる気配を感じてあたしはそっと瞳を閉じた。
ねえ、ピーター?
あたしばかり飲んでるみたいに言うけどあなただって同じくらい飲んだじゃない。
アルコールにはめっぽう強いあなただから酔っ払ってる姿なんて見たことない。
どんなに飲んでも表情も変えずに平気な顔してる。
悔しくて何度挑戦しても、いつもあたしが先にダウンしてしまう。
真面目で固くて有能。なのにギャンブル強くて酒にも強い、なんて反則もいいところよ。
…おまけに女性の扱いも上手だし。
あなたベッドの上であんなに優しいとは思わなかったわ。
あなたが好きよ。
誰よりもあたしをわかってくれる人。
じいさまが亡くなってあたしは正式にこの屋敷の主人となった。
慣れない毎日、不安に押し潰されそうになるあたしにとって
あなたの存在がどれほど大きな支えになったか、あなた知らないでしょう。
つらい時や泣きたい時はもちろん、いつも傍にいて一番欲しい言葉をくれる。
どんなに人の心が変わってしまってもあなただけは変わらない。
ずっと信じていてくれる。あたしを受け止めてくれる。
あたしが結果的に無茶なことばかりしてしまうのもあなたがいるからよ。
あなたがいるから安心できるの。
何があっても揺るぎない信念であたしを導いてくれるから。
そう、だから。あなたを信じてる。
あなたにならすべてをあずけられるわ。
「んっ…」
性急に相手を求めあうように触れた瞬間から蕩けるような熱いキス。
舌が絡み合い、まるで吐息が溶けあっていくかのよう。
唇を舐められ甘く噛まれると焦らされているようでなんだかもどかしい。
ねえ、火がついたのはなにもあなただけじゃないのよ。
もっとあなたを感じたい。あなたにも感じてほしい。
熱くなっていく身体とともに心まで昂ぶっていく。
彼の手がはだけた胸元からするりと入ってきた。
背中にまわり撫で上げる手と太腿をさする手。
直に素肌に触れる、その感触に肌が粟立つ。
「ひゃっ……んっ、あっ」
触れられるだけでこんなにぞくぞくするのにこれ以上なんてどうなるの。
彼のまだ乾ききっていない髪の毛からシャンプーのいい香りが漂う。
普段の彼の様子と今が結びつかなくて頭がくらくらする。
こうなることを望んでいたのに実際の状況にまだ戸惑ってる。
うれしいのに、怖い。
やっぱりあたし酔ってるのかもしれない。
唇が離れると耳朶に触れてきた。
軽く噛まれた瞬間、まるで電流が走ったようで思わず顎が上がる。
彼はそんなあたしを見逃さなくて執拗に耳、耳朶からうなじを攻めてくる。
「やっ、はっ…ん、あぁ…」
くすぐったいような、背筋を駆け上がる快感に声が抑えられない。
太腿をさすっていた彼の手がじわじわと身体の中心に移動してきた。
下着も何もつけていないそこは自分でももうわかるほど濡れている。
彼の指が触れた、と思った瞬間そっと指が入ってきた。
「はぅっ……っ」
十分に濡れているそこはまったく抵抗もなく受け入れる。
小刻みに揺らしながら、ゆっくりと確かめるように動き出す。
「グレース…」
名前を呼ばれても返事なんてできるわけない。
「あっ、はっ……んんっ、あ」
身体の力が、抜けていく。
彼の指が生みだす熱い痺れが全身を支配していく。
その感覚以外何も感じなくなってしまったみたいで
差し込んだ指の数が増える頃にはもう自分で身体を支えられなくなっていた。
背中にまわされた彼の腕だけがあたしを支えている。
手の中にある彼のものが徐々に形を変えていく。
彼も感じてくれているのがわかってうれしい。
「ピーター…っ」
「わかってる」
あなたも同じ思いなんでしょう。
だけど彼はあたしから身を引いて離れようとした。
「…すぐ戻るよ」
いやよ、ちょっと、あたしを置いてどこ行くのよ。
わけがわからない。
彼のバスローブの端を掴むと、彼は静かに自分の手を重ねてきた。
言い聞かせるようにあたしの目を見て囁く。
「君を守るためだから」
…やっとわかった。そういうこと。
でもそれなら
「…もってきたわ。……そこ」
ベッドのそばに目線を寄せると彼もわかったようだった。
幼い子供にするように頭を撫でて額にキスしてくれる。
手をのばして掴み取り袋を破る。
見慣れない彼の仕草を見て、彼も男なんだと変な風に感心してしまった。
こんなことしといて今頃思うのもどうかしてると思うけど。
「……手伝う?」
「いい。それよりこの体勢は君が辛いだろう」
そんなに気遣ってくれなくてもいいのに。
優しいところはいつもの彼らしくて思わず笑みがこぼれそうになる。
あたしの身体を横たえようとする彼を押しとどめて抱きついた。
「大丈夫、できるわよ。…たぶん」
何か言ってくるかと思ったけど彼は何も言わずにキスしてきた。
あたしに任せてくれるのかな。
できると思うけどいざとなるとちょっと腰が引ける。
痛いかしら…でも、まあなんとかなるわよ。
少し間をおいて呼吸を整えた。
向かい合う彼が見守っててくれる。
身体をずらして彼のものにあてがうように、体重をかけて腰を下ろそうとした。
したんだけど…だめだー、うまくできない。
緊張してるせいかなかなか思うように入っていかない。
考え込む様子を見かねた彼があたしの背中に腕をまわしてきた。
「グレース…力、抜いて」
耳朶を甘噛みしながら囁いたと思ったら、そっと唇を重ねてきた。
強く抱きしめられて深くなっていく甘いキス。
ゆるゆると自分の身体の力が抜けていくのがわかる。
彼に全身をゆだねるようにするとしっかりと支えてくれた。
あたしの身体を抱え込むようにして押し当てた彼自身をゆっくりと進めてくる。
「あっ」
彼が入ってくる。
指とはまるで違う圧迫感。やけるように熱い。
そのじりじりとした痛みに思わず腰を浮かせたくなってしまったけど…なんとか堪える。
彼のものをすべて飲み込んでしまう頃には彼に震えながらしがみついていた。
「う…くぅっ……っ…」
息ができない。
絶え間なく溢れてくる痛みがあたし達がつながってることを認識させる。
「無理はしなくていい、グレース」
彼の声が耳のすぐそばで聞こえる。
前に彼が言ったことを思い出す。
おそらくこの続きは同じことを言われるに違いない。
「…っ……噛まない…わよ…っ」
自分ではしっかり言ったつもりだったのに
実際発せられた声はとても頼りなく聞こえてそれがちょっと情けない。
「…そうか。君に辛いだけの思いをさせたいわけじゃない。
慣れるまで…暫く我慢してくれ」
彼はあたしの返事にちょっと驚いたみたいだったけど小さく笑ってこう言った。
短く荒い息をはきながらどうにかこの状態に慣れようとする間
動かずにじっと待っててくれた。
背中にある腕から彼のぬくもりが伝わってきて安心する。
まだ痛みは感じるけどようやく落ち着いてきた…かしら。
「…っ……もう…平気、よ…」
それが合図だったかのようにゆっくりと彼が動き出す。
最初は小さく慣らすように。
「ん、んっ」
鈍い痛みが身体を襲う。
はっきり言ってまだ快感なんて感じない。
彼の手があたしの胸に触れ、掌で包み込む。
「ああっ」
ゆるやかに揉みしだき尖ってる先端を舐めあげられて、つい声が出た。
仰け反った首に彼が吸いついてくる。
「グレース」
熱い吐息とともに名前を呼ばれるとぞくぞくする。
あなたの声が好き。もっと呼んでほしい。
彼の動きが少しずつ大きくなってきた、その時。
「あ…」
あ、きた…。
痛みが次第に快感にすり替わっていく、この感じ。
初めての夜もそうだった。
揺られるたびに反応が変化していく。
さっきまでの痛みがうそみたいに、彼が動くたび快感が押し寄せてくる。
あ、ああっ、やだ、気持ちいい…なに、これ…っ。
どうすればいいの。
ただただ彼にしがみつく。
自分の声が甘く彼にねだるような響きになっていくのがわかる。
抑えたくても抑えられない。
彼に抱かれてこんな声をあげてる自分が恥ずかしい。
ねえ、あなたわかってる?
今のあたし見せられるのあなただけよ。
あなただけなんだから。
「はっ、あ、ああっ…ピーター…好き…っ」
それを聞いた彼の動きが激しさを増す。
「ああっ!…あっ、あっ、やだっ」
この前のように意識が飛びそう。
まるで自分が自分でなくなる、みたい。
いきなり彼があたしの身体を抱いたままベッドに倒れ込んだ。
重なり合う部分がぐっと深くなり、さらに追い込まれる。
「あんっ…ああっ、あ、あ、いやぁ……!」
全身が熱い。涙がでてきた。身体が震えているような気もする。
ああ、もうだめ、どうしていいかわからない。
怖い。乱されるのが怖い。
心だけじゃない身体までとらわれていく。
どこまであなたに溺れていくのよ。
もう戻れない引き返すなんてできない身も心もあなただけ。
「グレース…」
彼に呼ばれて薄眼を開けた。
あなたも少し苦しそうな顔してる。
「大丈夫だから」
掠れた声でそう言って手を握ってくれた。強く強く握りしめる。
そうね、あなたがそう言ってくれるなら。
大丈夫よね、きっと。
好きな人と愛し合うってこんなに気持ちいいことなの。
心も身体も満たされていく。
あなたが好き。
あ、ああ、もう、こみあげてくる快感に堪えられない。
溶けていきそう。
頭が真っ白になってく。
「ピーターっもう、だ、め…っ」
そこで意識がとぎれた。
──たとえ書類上だけでも親子で恋愛なんて許されるわけがない
あたしグラハムが好き。彼を愛してる。
たぶん…彼も気が付いてる。
もちろんそんなこと口に出したりしたことない。
でも、わかる。だって彼どんどんあたしに優しくなってくるのよ。
どこがどうってはっきり言葉にできる変化じゃなくても
ふとした態度やあたしに対する視線がとても優しい。
以前のような水と油の関係から、確実にふたりの距離は縮まり関係は変わってきている。
その変化をもたらしたものが何なのか、わかっているけど決して触れない。
触れてはいけない。それがあたし達のルール。
彼ならあたしの本当の気持ちを受け入れてくれるかもしれない。
だけどそれは──ゆるされない願い。
どれだけ愛していても絶対に結ばれることはない。
想いを告げることすらもかなわない。
だってあたし達は家族だから。血のつながらないたったひとりの家族。
あたしも彼もこの家を大切に思ってる、じいさまから託されたこの家を。
だからこの気持ちは誰にも見せない。気付かせない。
蓋をして、閉じ込めて、深い心の奥に隠して生きていく。誰にも見つけられないように。
女性として愛してくれなくても家族としてなら彼も愛してくれている。
だったらそれでいい。
あたし達は家族として愛し合うのよ、これからもずっと。
ずっと、そうするつもりだったのに。
あの夜からふたりの関係は変わってしまった。
お互い後悔するかもしれないと思ったけど、彼はそんな気さらさらなさそうで
すべてを受け入れて前に進む道を選んでくれた。
うれしかった。
あたしを愛してくれたこと、覚悟を決めてくれたこと。
ギャンブルに強い彼だもの彼となら負ける気がしないわ。
人生を賭けてのギャンブルなんてあたし達にぴったりじゃない。
周囲の人々は彼があたしに振り回されてると思ってるみたいだけど、それは違う。
振り回されてるのはあたしの方よ。でもそんな彼に翻弄されて惑わされるのも悪くない。
だってそうでしょ、彼ほどいい男いないもの。
さすがじいさまとあたしが選んだだけあるわよね。
彼の顔がすぐ目の前にある。
目を閉じて…もう眠ってるのかしら。
どうやらあたしまた気を失ってたらしく、しかもそのまま眠ってしまっていたらしい。
気がついたらほとんど脱げてたバスローブを着て横になってた。
彼が着せてくれたんでしょうね、ほんとマメなんだから。
少しずつアルコールも抜けて眠気もどこかへ行ってしまった。
薄暗い部屋の中、彼の顔をじっと眺める。
そういえばこんなに近くで彼の寝顔見るの初めてかも。
イブの夜も結局あたしの方が先に寝ちゃって寝顔なんて見てない。
あんまり見る機会ないし、この際だからじっくり見とこう。
柔らかそうなブロンドの髪。すっきりと通った鼻筋。
肌もきれいね。つるつるなのは温泉のおかげかしら。
へえ、しっかり効能あるじゃない。あ!これって金儲けにならないかな!
じいさまの遺してくれた土地、金は無理だったけど温泉なら!?
保養もできるし、ビジネスにもなるしでやってみる価値あるわ。
よおし屋敷に戻ったら早速調べてみなくちゃ。
ふーん、こうやって見ると整った顔してるわ、彼。
あたしには言わないしプライベートは謎が多い人だから
わかんないんだけどモテると思うのよね。
眼鏡やめてコンタクトレンズにすればいいのに。もったいないなあ。
まあ眼鏡も似合ってるからいいか。その方が執事っぽいし。
あ、でも一度だけコンタクトにしたことあったわ。
ホテルの社長の息子の身代わりになった時。
嫌々ながら引き受けたマネージャーなのに、彼ったら持前の有能さで
バリバリ仕事こなして結構楽しそうにやってた。
社長があんまり褒めるし、もともと才能ある人だから
もしかして執事を続けることで彼の将来を狭めてるんじゃないか
もっと他にその高い能力を生かせる仕事の方が彼自身のためなんじゃないかと思って
確認する意味で、社長の提案を受けなくていいのか問い詰めてみたんだけど
ああいう反応されるなんて思わなかったから驚いた。
…彼、あたしをからかって遊んでるようなところあるからなー。
思えばフレディがうちに来た時もそうだった。
彼が最後にあんなこと言うもんだから
どきどきしちゃって意識するようになっちゃったのよ。
後になって考えてみたら、彼女のことで少ししんみりしたあたしの気分を
変えようとしての発言だってわかるんだけど、その時はわからないじゃない、ねえ。
そして、極めつけはやっぱり…あれ。
ジムおじさんの事件。
あの時まさかあのタイミングであんなこと言われるなんて
思ってもいなかったからつい本音が出てしまった。
だって、だって…ずるいじゃない。
あの状況であのセリフ言われたらあたし動けないわよ。
それくらい彼はあたしのこと完全に理解していた。
だからこそ暴走してるあたしを止めるためにはああ言うしかないとわかってて言ったんだわ。
あたしの気持ちも、それを聞いたあたしがどう思うかもすべて承知の上で。
…そんなの、言葉も出ない。
あたし達の間では切っちゃいけないカードだったのにそれ使うなんて
切り札出されちゃったら何もできないに決まってるじゃない。
そうよ、彼に勝てるわけない。
ああ、思い出せば思い出すほどあたし彼に振り回されてばかり。
頭の中がグルグルしてる。
これじゃまるで走馬灯じゃない。
…ん?
ってちょっと待って!あたしまだ死にたくないわよ!?
そりゃこの前ちょっと石が降ってこないかと思ったけど…
石。そうだ、やっぱり石なんて降らなくてよかった。
あたしまだまだやりたいことあるし、彼と一緒にいたい。
万馬券だって当てたことないんだから一度くらい当ててみたいじゃない。
夢はクラシック三冠制覇よ!
…ってまあそれは置いといて。
──もう決めたわ。逃げないし迷わない。
石なんて…降らなくていい。
向かい合うように彼女と横になり、目を閉じてこのまま寝てしまおうかと思っていたら。
やはりもう眠っていると思われたグレースが小さくつぶやいた。
「そう、石なんて降らなくていいのよ」
……いし?何のことだ、一体。
「何ですか…?」
「…あら、起きてたの?てっきり寝てるもんだと思ってた」
彼女は意外そうにこちらを見上げると、少しばつが悪そうに続けて口を開いた。
「…昔、学生の頃に読んだ小説よ。
ハッピーエンドで終わるお伽話に対して
なんで最後に石が降ってこないんだって思う主人公の話」
意味がわからない。その話がどうしたっていうんだ。
「今でもよく覚えてるわ。
ティーンエージャー向けの小説の一場面だったんだけど、その主人公
幸せな結末で終わる物語がその後も続くことにどうしても納得いかないらしくて。
王子と姫が結ばれて末永く幸せに暮しましたってやつね。
末永く幸せに、なんてそんなの無責任だ
幸せになったのならその物語に続きなんていらないだろう
だったらそこで空から石でも降ってくればそれが本当のハッピーエンドじゃないのか、って。
それって無茶苦茶でしょ。
まあ、主人公が恋人にふられた直後だったからそう考えちゃったみたいなんだけど
あたし当時それ読んで、バカなこと言ってるなーって思ったのよ」
学生時代を思い出したのかどこか遠い目をして懐かしそうに話す。
……なんとなくわかってきた。
彼女はその物語を自分に置き換えて考えたのだろう。
幸せな結末を迎えた物語、その続きは。
「それで今は?」
「正直に言うわ。あの夜、一瞬、ほんの一瞬だけ…石が降ってくればいいと思った。
今が幸せならこのまま終わっちゃうのもいいんじゃない、って。
……あたしもバカだわ。一瞬でもそんなこと考えるなんてね。ただ逃げてただけよ。
石なんか降ってきちゃったらもうあなたに会えないのに」
じっと私を見つめるグレースの瞳がうっすらと滲んでいる。
「結局その主人公、悩んでもがいて最後には自分の進む道を見つけたわ。
彼女の中でしっかり石の話もけりをつけて。
前向きで好きだったのよねー、その小説。
生きてく以上、後ろばっかり見ててもしょうがないし前見て歩かないと躓いちゃう。
人生を楽しめるかどうかは自分にかかってるんだもの
どうせ生きるなら楽しく生きたほうがいいに決まってる。
たった一度の人生なんだから悔やむような生き方はしたくない。
あなたとこうなったこと後悔するなんて絶対いやよ。
ずっと、ずっと一緒に生きていきたい。
大体あたし達はお伽話の中で生きてるわけじゃないのよ、
ハッピーエンドを迎えてもまだまだ生き続けなきゃならないってのに
石に邪魔されてゲームオーバーなんてまっぴらだわ。
そう考えて気がついたの、石を望む気持ちなんてやっぱり間違ってるって」
微笑みながらそう言う彼女は吹っ切れたような顔をしていた。
彼女なりに私と関係をもったことに対して気持ちの整理が必要だったのかもしれない。
倫理的な問題もあるし、最後の一線を越えることにためらいや抵抗があったはずだ。
いくらタフで前向きな彼女でもいろいろと考えることもあったのだろう。
人知れぬ彼女の苦悩を感じて、そっと髪を撫でる。
「…君が選んで、君自身が決めたことだ。
たとえ正しくなくても間違っていたとしても
自分で受け止めて前に進む強さがあるならそれでいいじゃないですか。
僕も君を選んだんですよ。絶対に後悔なんてさせない。
何があっても君を守る。家族としても、一人の男としても」
「信じてるわ。…あなたはかわらない」
彼女が胸に顔をうずめてきた。
ゆるく抱きしめる。
「…僕の人生には君が必要だ。勝手にいなくなられたら困ります。
ただでさえ君はいなくなると捜すの大変なんだからもう離れないでください」
「……」
腕の中の彼女が小さく震えはじめた。
泣いているのかと思ったら…どうやら違うようだ。
押し殺した笑い声が聞こえる。
「あっはは、あなたあたしを捜すときいつも大変な目にあってるものねえ」
「笑い事じゃないですよ」
「ごめん、ごめん。……でも、ありがと。そう言ってくれて」
伏せた顔が少し赤いように見えるのは気のせいだろうか。
言葉で、君が抱える不安を取り除くことができるならいくらでも言ってやるのに。
ゆっくりと背中を撫でるとぬくもりが伝わってきて心地よい。
やはり君を連れてきてよかった。
こうして向き合ってお互いの気持ちを確かめあうと更に君を愛しく思う。
去年とは比べ物にならないくらい、いい誕生日だった。
このまま彼女が暴れて落ちたりさえしなければよく眠れそうだ。
「こうしててあげますから、もう寝ましょう」
「もう寝ちゃうの?」
突然グレースが顔をあげて私を見上げてきた。
もう、と言ってもすでに時刻は深夜二時近いのだが。
しばらく考えてから、内緒話でもするように耳元に口を寄せそっと囁いた。
「……したい?」
「い…いやっ、ちがうわ!そういうつもりで言ったんじゃないわよ!?」
彼女がぎょっとしたように慌てて自分から離れようとする。
その焦りまくる様子がかわいくて、ついからかいたくなってしまうから困る。
背中を撫でていた手を腰まで落とし彼女の身体を引き寄せた。
「君が望むなら朝までだって付き合いますけど」
「あ、朝まで…ってそんなの無理よ!できるわけないって!」
悲鳴のような声をあげ、さらに慌てふためく。
「やってみないとわかりませんよ。試してみる?」
身を起してもがく彼女の身体を押さえ込み、首筋に唇を落とす。
「んん、ちょっと…っ」
身悶える彼女が一瞬だけ顔をしかめたのを見て思い出したことがあった。
動きを止めて問いかける。
「身体の調子はどうです?」
「…痛くはないけどちょっとだけね、ヒリヒリする」
──やはりそうか
「ならもう寝よう」
「…いいの?」
「君に無理はさせたくない。明日もありますから」
「でも」
「グレース……本当に朝までしようか?」
彼女はもう何も言わなかった。
額に軽くキスしてから向かい合うようにベッドに横になる。
「?」
「おやすみのキスです。明日は飲みすぎないように」
「…うん」
「おやすみ」
そう告げて私は静かに目を閉じた。
キスをして目を閉じた彼はすぐに眠りに落ちていった。
規則正しい寝息が聞こえる。
何よもう、あなたが眠かったんじゃない。
おかしいなとは思ったんだけど。
──清く正しいだけじゃつまらない
昔あなたが言ったセリフまだ覚えてる。
なんて大胆なこと言う人だろうと思ったけど
今のあたし達見るとまったくもってその通りかもね。
たとえ正しくなくてもあたしには彼がついてる。
あなたがいてくれるなら怖いものなんて何もない。
そうよ、家族から始まった関係ってのもあたし達らしいわよ。
ゆっくりじっくり時間をかけて新たな関係を築いていけばいいじゃない。
人生おもしろおかしく生きる!ってのがあたしのポリシーだもの、
あなたと共に、思う存分人生を楽しむわ。
だからずっと一緒にいましょう。
明日も明後日もこれから先ずっと。
お互いじじばばになるまでね。
すやすやと気持ちよさそうな寝顔のあなたを見てたら
なんだかあたしも眠くなってきちゃったわ。
おやすみ、ピーター。また明日ね。
起こさないように彼の手をそっと握って、あたしもゆっくり目を閉じた。
以上です。
すみません、長すぎました。どれだけレス使ってんだか。
一日目終了の時点で疲れてしまいました。
155さんが待っていてくれたので、なんとか仕上げましたが
遠藤漫画のエロパロってほんと難しい。
あのドタバタ感が出せなくて辛かったです。
肝心のエロがうまく書けないし。
というわけで二日目はちょっとわかりません。
ともかく、読んでくださった方ありがとうございました。
155でっす。張り付いてましたw ありがとうございましたー。
本編のおいしいセリフがところどころ出て来て
そうよね〜やっぱアレは落ちるわよね〜と思いました。
ガっつく事もなく、あくまでも丁寧に慎重に、というのが二人らしいです。
まさかここでもずくちゃんが出てくるとは…
乙でした。
ああああ!石の話はもずくちゃんかあ〜。
聞いた事あるけどなんだったか思い出せずつっこめなかった。
職人さん、同世代?って遠藤ファンなんだから当たり前か。
間違えたもくずだorz
いやでも分かったからw ごめんなさい海野さん
わ!もくずちゃんわかってもらえてうれしい!
どこかで使ってみたくてこの話を書いたようなものです、実は。
今回これ書くにあたって読み直したんですけど
その影響かグレースの一人称がやたら増えてしまいました。
グラハムの目線の方が萌えるしエロも書きやすいのはわかってんですけどねー。
明らかに駄作だと思ってもダメな子ほどかわいいっていうか
自分で書いといて何言ってるんだと思いながらも、この話嫌いじゃないから困ります。
SSなんだからもっと人に読んでもらうことを意識して書かなきゃいけないとは
思ってるんですがなかなか難しいですね。
自己満足だけじゃなく、読みたいものが書けるようになりたいです。
ちなみにグラハムさんよりは年上だと思います。
マダミス連載中に読んでた頃はグレースより年下だったのになー。
時の流れって早い。
そういえば、信頼し合ってるけど具体的な描写は皆無で
その分ここという時にぐっとくる台詞をはく
という部分は、件の人が書く小説キャラに通じるものがあるね。
飢えを癒して下さってありがとう
留守番コック長目線の番外編を頭の中で妄想中w
乙です!
ちょ、萌え死ぬ。
グレースの語り、よかったですよ。
本編では、グレースのモノローグって誘拐事件のときの
「変わらないあの人を見てると安心する〜」だけなんですよね。
それだけに印象的で。
それに絡めたグレースの心情が語られてたのでジーンとしました。
長編歓迎。二日目もぜひ。
留守番コック長も楽しみ。コック長スキーなので。
「こんばんは、フォレスト君。入っていいかしら?」
俺の家のドアの前に立っている女は、俺を押し退けて無理矢理中に入ろうとしてきた。
「今何時だと思ってるんだ」
女は大袈裟に腕時計を見た。
「ミッドナイト・プラス・1」
「俺は実際の時間を聞いている訳でも、小説のタイトルを聞いている訳でもねぇ。
何でこんな時間に押しかけてくるのか聞いてるんだよ!」
「あの小説の映画化権はずっとスティーブ・マックイーンが持っていたんだけど、今は我が社が保有しているのよ。
あなたが演りたければ主演させて上げてもいいわよ」
「演りたかねぇよ。大体、アーヴィング社は映画会社でもないくせに、何でそんなもん持ってるんだ」
「愛しのマックイーンが演りたがっていた役を、探偵上がりか何かのバカ男優に演じさせない為よ」
「どうしたいんだよ」
世界有数の頭脳と資産を持つ小生意気な女は、ズカズカとリビングに上がり込んだ。
勝手にソファにふんぞり返ると、アカデミー賞授賞式でスピーチをするように宣言した。
「本日只今をもって、私は18歳になったのよ。
一人のアメリカ国民の誕生を、誰よりも早くお祝いさせて上げようと思って」
「そういうのは、お友達の役目だろ。ダナ・オニールに祝ってもらえ」
「パリやミラノのランウェイを歩く一流モデルにとっては、
誕生日は男性からのお誘いが引きも切らず一年で一番忙しい日だから、女友達は遠慮するのが常識だそうよ」
そりゃお盛んなことで。
それにしても、胡散臭い新聞広告に釣られてアーヴィング社を訪れて、
アレンクサンドラお嬢様と知り合ってから8年か。
俺の腰ほどの背丈しかなかったガキも、見た目と年齢だけは立派な大人だ。
スカートから伸びた長い足をあまり眺めてはいけないような気がして、カーテンを開けたままの窓に目をやった。
まんまるい月が空に浮かんでいた。
月を見ている俺につられて、アレクも窓の外に目をやった。目を瞠ったところをみると、月に気付いたようだ。
「やるよ。バースデイプレゼントだ」
「それは7年前に貰ったわ」
「地球環境に配慮して、リユースだ」
「あなた、そんなんだから女にもゲイにも相手にされないのよ」
いい年して結婚もしていないし、決まったパートナーもいないが、相手にされてなかった訳じゃないんだがな。
と自分では思うが、やっぱり相手にされてなかったのかな。
「だから、こうして一アメリカ国民の誕生を祝えるんじゃないか」
俺はアレクの頭に手をやった。つもりだったが、アレクが頭を引いたので、俺の手は虚しく空中を彷徨った。
「一人前のレディに対して、子供みたいな扱いはやめてよね!」
だって子供じゃねぇか、と言いかけて、俺を睨むアレクの顔を見て何も言えなくなった。
ずっと前に、どこにも行かないでって言われたことがあったが、あの時ぐらいの必死な目。
今回は別にどこかに行く訳じゃないし、ただ頭を撫でようとしただけだ。何でこんな切ない顔をする?
切ない顔?アレクが?
…俺、勘違いしていいか?
いや、いいかって何だよ!勘違いして何する気だよ!
俺は宙ぶらりんの手をアレクの肩に置いた。
髪の毛が指先に触れて、絹糸のような感触にドキドキした。
今まで何度も何度も触った筈なのに、何で今更ドキドキする?
アレク、とつぶやいた俺の鳩尾に、突然激痛が走った。
アレクが渾身のボディーブローを決めていた。
「やめてよ、何すんのよ!」
「何もしねぇよ!」
「女の子と二人っきりで自分の部屋にいて、何もしないなんてどういう了見よ?」
「どっちなんだよ!」
******
頑張ってみたが、これが限界でした。
ラブくもならんし、エロくもならん。
職人さん達は凄いなぁ…。
フォレスト君きたー!
初狼いい感じです!
ぜひとも続きを。
導入だけでも充分萌えます!
エロなくても充分萌えます!
良スレなのでたまにはあげてみる
遠藤パロはエロなくても十分萌えられるから好き
>>215さんの狼、雰囲気もよく出ててうまいと思うのでまた書いてほしいなあ
219 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/24(木) 00:33:16 ID:k7fbs/vX
あげてなかった…
>>215の続き書いてみました。
やっぱり、ちっともエロくもラブくもならんかった。
******
このまま二人で部屋にいるのは危険だ。色んな意味で。
「車は帰らせたんだろ?プレゼントを用意するから、俺の車に乗れ」
「ふうーん?」
怒っているような、疑っているような、責めるような、嬉しいような声を出した。
ソファに座ったまま身体を反対に向け、その上、物凄く不自然に顔を背けているので表情は判らない。
「追い出さなくてもいいじゃない」
俺の中の黒キースと白キースが猛烈に戦い出した。
とにかく部屋を出よう。何かする時は、車の中でも出来る。いや、何もしないけど。多分。
アレクは車の中でもずっと顔を背けたままだった。
あまり背けすぎて、一回りして顔がこっちを向きそうだ。
俺の方は助手席ばかり何度も見てしまうので、歩道に乗り上げて危うく消火栓に激突するところだった。
どうせここで停めるつもりだったから、それでいいんだ。
「何よ、ここ」
「ここで待ってろ、鍵はかけとけ」
シャッターの横のインターホンを鳴らすと、眠そうな男の声がした。
「情報屋のジローだな」
「さあな」
「今日が誕生日の18歳の女には、どんなプレゼントがいいかな」
インターホンの向こうで、猛烈に喚く声が聞こえた。
日本語だか中国語だか知らないが、ウラジョーホーとかチャントゥキケとか言っている。
俺、英語しか判らないんだ。悪いな。
「あぁ、もう!横手のダストボックスの上に花束が乗ってる。107ドルでいいぜ」
「7ドルは何だよ」
「そいつが知りたきゃ、もう50ドル。モルガン・スタンレーの最上層部が情報筋のお買い得話だぜ」
別に興味ないので、107ドル郵便受けに突っ込んで、花束を貰うことにした。
シャッターの向こうで銃を乱射するような音が聞こえた。
そういや、全米ライフル協会の新会長って誰になったんだっけな。
ダストボックスの上にあったのは、白い花ばかりを束にして、ピンクの包装紙で包んだ花束。
俺にはバラとユリとカスミ草しか判らんが、確かに18歳の女が喜びそうだ。
「改めて、バースデイプレゼントだ」
今までむっつりしていたのは何だったんだというぐらい、はしゃぎ出した。
子供そのものだ。うん、やっぱり子供だもんな。俺はエンジンをかけた。
「どこ行くの?」
「お前の家」
一瞬動きが止まったが、すぐに笑顔が戻った。
「そうね、早く花瓶に入れないといけないものね。フォレスト君にしては上出来なプレゼントだわ」
ふーん、もう帰っていいのか。
車をいつものように車寄せに停めた。
「今日はありがとう、フォレスト君」
ドアを開ける前に、俺は声をかけてみた。
「グッナイ・ハニー」
アレクが俺の顔を見つめたまま、動かなくなってしまった。
あまり目を見開くと、眼球が落っこちるぞ。
「グッナイ・シュガー」
フォレスト君がいきなりシュガーになったぞ。随分な出世だ。
「勘違いしてもらっちゃ困るんだけど、シュガーってのは“お熱いのがお好き”のマリリン・モンローの役名。
寝台列車でマリリンが女装したバカ二人にお寝みの挨拶をするシーンよ」
そんなシーン、あったっけか。かなり昔にテレビで観たきりなので覚えていないぞ。
それ以前に、俺は映画のシーンを再現したい訳じゃない。
「と言っても、女装したトニー・カーチスは嫌いじゃないの。むしろその役者根性がステキだ…もがっ」
うるさいので、口を塞いでやった。アレクの舌は、甘い味がした。
唇を離しても目を閉じたままなので、ついでに抱きしめてみた。小さく息を吸うのが聞こえた。
「スティーブ・マックイーンにトニー・カーチスって、どんな好みだよ」
「苦しい…」
慌てて腕の力を緩める。俺、余裕ないな。
「ついでにヘボ探偵なんかはどうだ」
俺の胸の中のアレクの顔に唇を寄せようとしたら、顔を埋めたまま背けられた。
今日は顔を背けられっ放しだ。
「口の中がポテトチップス味のヘボ探偵は好みじゃないわ」
アレクが来る前、小腹が空いたので食べてたんだが、気付かれたか。
「完璧な人間はいないさ」
“お熱いのがお好き”のラストシーンのセリフだ。いや、“七年目の浮気”だったかな。
肩を震わせて笑っているところを見ると、“お熱いのがお好き”で合ってたようだ。
「お寝み、フォレスト君。明日は午後2時に私のオフィスよ。忘れてないでしょうね」
「勿論だ、ボス。お寝み」
******
ティムポを捻じ込まずに、シャーリイちゃんとジローを捻じ込んでみました。
後悔はしていない。
会話がおしゃれで素敵です!
エロがないのがフォレスト君らしいようなじれったいような感じで萌え。
いいなーこういうの書きたい。
すごい、遠藤節が文章で再現されてる。
ありがとうです!
226 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/05(月) 11:59:31 ID:1+8UKife
あげ
保守
わがままだが
>>223さんの書いたマダミスが見てみたい。
完全遠藤節で再現してくれそう。エヴァ姫でもいいな。
保守てりあ
すげぇな、
遠藤淑子でエロパロなんてあるんだ…
ここだけは踏み込んではいけない領域な気がするぜ
だまされたと思って読んでみてくれ。
良スレだよ。
232 :
sage:2008/07/03(木) 08:47:54 ID:mzBCGK0f
だがちかごろとんと作品の投下がない…
遠藤作品でエロパロがあるとはびっくりだ
自分もこのスレ見つけた時、嬉しかったけどかなりびっくりした
んで、ここから総合スレたどって未完のマダミス読んでさらにはまった
最近じゃ福本漫画も驚いた
あそこエロくないけど笑えるw
235 :
SS保管人:2008/07/11(金) 13:17:16 ID:rycriGAJ
どーぞー
237 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 20:56:54 ID:Lf1Y3Hxv
238 :
SS保管人:2008/07/13(日) 00:57:52 ID:Xy8+51hu
>>238 おつかれさまです
いつも楽しませてもらってます
おおっ保管人さんありがとうございます。
保管していただけてうれしいです。
保管庫ができたお祝いに
>>181からの番外編の留守番コック長をと
思ってたんですが今週末間に合いませんでした。すみません。
近いうちに投下しに来ます。
ギャー!
留守番コック長編を切望していた者です。うれしすぎます。
もう何度このスレ読み返してた事か。
wktkして待ってます。
>>235 おー、私のも入ってる。どうもありがとうございます。
>>228 ちょっと書いてみた。でもやっぱりエロくなりません。
>>240さんの投下を全裸で待ちましょう。
******
「昔々あるところに…」
枕が飛んで来た。
「それはさっきから何度も聞いた」
催眠術で自分が記憶を失っていた間のことを知りたいとのお尋ねだからお答えしているのに、乱暴な話だ。
「それでは…。アリスは川辺でお姉さんの横に座って…」
スリッパが飛んで来た。
若い未亡人が夜中に、夫でもない男の部屋のベッドの上で、酔っ払って寝そべっているだけで、考えられないシチュエーションなのに。その上、スリッパを投げるとは。
「奥様、もうご自分の部屋でお寝み下さいよ」
「ねぇ、一緒に寝ようよ」
また何やら言い出した。
「ねーよーうー」
右手でシーツを叩く。ここに寝ろ、ということか。
「襲わないからさー」
早く帰ってくれ。
「私は襲うかもしれませんよ」
大袈裟にネクタイなど緩めてみた。
「グラハムはそんなこと、しないもーん」
随分、信頼されたものだ。執事は男ではないと思っているのか、義理の息子は大人ではないと思っているのかしらないが。
「そうとは限りませんよ」
ネクタイを外して椅子の背にかけた。本当はすぐにネクタイハンガーにかけて皺を伸ばしたいのだが。
ベッドの傍に立って、わざと上から見下ろしてみる。奥様は白い歯を見せてニッコリ笑った。
これまで奥様には驚愕したり失望したり脱力したりさせられているが、今日は初めて、殺意を抱かされた。
「俺だって男だから何するか判んないぜと言ったら、物凄い爽やかな笑顔を返されたので、ついカッとなって殺してしまいました」。どんな裁判官でも無罪判決を出す筈だ。
「美しい未亡人の寝姿を何度も見てるくせに、何もしなかったじゃない」
「何かしていいのだったら、もっと早く言って下さらないと」
シャツのボタンを外して、裾をズボンから出してみた。まだ帰らないか。
「あら、ベッドから落っこちる時はいつもリグビー・アンド・ペラーの勝負下着だったのに気付いてなかったの?」
ロイヤル・ワラント(王室御用達)の下着。本当だろうか。くそっ、何のつもりでこんなことを言うんだ。
本当に襲い掛かるぞ。そして特注のスイス刺繍を拝見してやる。
ベルトをわざとガチャガチャ言わせながら外して、大袈裟にサイドボードの上に置いてみた。
ああ、ケーブルテレビで奥様が観ている、アメリカのソープオペラ(昼ドラ)のようだ。
ベッドに腰掛けてみる。
「気付いていれば、もっと早くこうしていたのに」
「あなたの出た執事養成学校は、そんなことも教えてないのね」
とうとう、奥様の顔の横に手を着いて、覆い被さってみた。
奥様が吃驚して帰ってくれればいいと思う気持ちが半分、奥様がこのまま自分のものになってくれればいいと思う気持ちが半分。
「何するのよグラハム」
奥様は顔を背けた。拒否なのか羞恥なのか判らないが、こういう顔は初めて見た。
奥様の顔なら色んな表情を見たが、これは多分、「グレース」の顔。
「時は深夜、所は夜具の上。やることは一つでしょう」
ぐっと顔を近づける。
「オーケー、お金はあるんでしょうね」
売春婦の真似とは随分余裕がある。お金なら奥様と同じだけ貰いましたよ。
いや、奥様の財産は減ったかもしれないが、私の財産は確実に増えている。
「僕の財産を全部くれてやってもいい」
「マジで?」
そんな風に正面から見つめないでほしい。正面から覆い被さったのは自分だが。
左手を頭の下に差し入れた。小さく息を吸うのが聞こえた。
「こんなの嫌」
奥様は酒の上の冗談のつもりだったかもしれないが、あんな顔を見せられたからにはもう止められない。
******
ちょっと誉められたので調子に乗ってやってしまった。
今は反省している。
コック長の登場を待つ。
なんという寸止め…!!
いい!やっぱり遠藤節炸裂で思ったとおりです!
リクエストに応えてくれてありがとう。
ぜひ続きが読みたいので、こちらも全裸で待ってていいですか。
246 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 14:16:35 ID:EKC3boZX
「財産目当てで結婚する女だけど、こんなのは嫌っ!」
奥様の手が私の首に伸びてきたと思ったら、首を絞められた。組み敷かれた状態から十字絞めとはまた器用な。
私のシャツの襟を掴んでいる両手を捻って外し、奥様の両手を封じる形になった。
十字絞めなんてどこで習ったのか想像するのも恐ろしいが、日頃の鍛錬を伴わないケンカ殺法では、私の敵ではありませんよ。
奥様の両手をこのままシーツに押し付けてアレを続行すべきかと一瞬迷ったが、奥様の身体を起こし、ベッドに座らせた。
しかしこの状態で一体、何を言えばいいのか。
赤い顔をして私を睨みつけている奥様の手を離したら、確実に飛び掛られる。暴力的な意味で。
「私が相手ではお嫌ですか」
「私のこと好きでもないくせに、一緒に寝ようとするなんてサイテー」
誘ったのは奥様じゃないですかと言いたいが、流石にそれは言ってはいけないだろう。
「“誘ったのは奥様じゃないですか”とでも言いたそうね。何よそれっ!」
どうしてこういう時ばかり、察しがいいのだろう。
「別にやりたくないけど、据え膳食わぬは男の恥だから、お情けでやってやるっての?」
人の気も知らないで、大した被害妄想だ。
「私がそんないい加減な男に見えますか?全財産だって差し出すと言ったのに」
「そこは、“私の大切な人だから、いい加減な気持ちでは寝られません”っていうところの筈でしょっ!
全財産なんて、その後ゆっくりくれればいいじゃない!」
そんな無茶な。
我ながら馬鹿だと思うが、奥様の無茶苦茶な論理が、赤い顔が、掴まれた手を振り解こうとイヤイヤする仕草が、とんでもなく可愛いと思えてきた。
「じゃあ、奥様と同じベッドで寝るには、どうしたらいいんでしょうか」
「片膝ついて花束を差し出して、“世界で一番、君を愛している”って言えばいいじゃない!」
流石にそんな小っ恥ずかしい真似は出来ない。でも、まあ、今日の私は馬鹿になってるから。
ベッドを降りて、シャツのボタンを留める。ベルトを締める。ネクタイを締める。上着を羽織る。髪に櫛を入れる。靴の埃を払う。ポケットチーフを整える。完璧だ。
私の部屋には花がないので、廊下に出る。ガレの花瓶からバラを引き抜く。
綺麗な包装紙はないが、大判のクラフト紙でいいだろう。リボン代わりに荷造り用の麻紐を結ぶ。
白と茶色の二本取りで少しはオシャレに見えるだろう。
振り返って見ると、奥様はベッドの上で固まっていた。もう私が掴んでいる訳ではないので、手は下ろしていいんですよ。
そして、ベッドの傍に膝をついて、花束を差し出して。
「世界で一番、君を愛してるよマダム」
奥様はベッドの上で固まったまま。ここまでやらせておいて、まだ不満がお有りでしょうか。
花束を奥様の右手に抱えさせると、左手を取った。手の甲に唇を近づけてそっと触れた。
…つもりだったが、手は引っ込められ、代わりに蹴りが飛んできた。
眼鏡が吹っ飛ぶ前にガード出来てよかった。
「バカーッ!何でそんなことするのよ!恥ずかしいじゃないの!」
「私だって恥ずかしいですよ」
「あと、その辺の物で可愛い花束作っちゃうのが気に入らないわよ!冒険野郎マクガイバー?」
「花束そのものは気に入っていただけたんですね」
暴れる奥様を袈裟固めで押さえ込む。柔道技を邸内で実際に使っている執事なんて、そうはいないんだろうな。
「奥様、私は何もしないから、大人しくして下さい」
「何もって、何をする気だったのよー!」
どれだけ暴れたのか判らないが、奥様はやっと大人しくなった。
私の腕の中で私に背を向けて寝ているので、私が後から抱き締めている状態だ。
「グラハムは女あしらいが上手ね。慣れてるの?」
「人並以下の経験しかありませんよ」
そもそも、スリッパを投げたり絞め技かけたりしてくるような女性のあしらい方なんて、どこで経験するというのだ。
「じゃあ、湖で女の子と何があったの?」
インチキ霊媒が私の過去を透視すると言ってあることないこと口走ったのを、未だに真に受けているらしい。
いや、ないことばかりでもないのだが。
「妬いてるんですか」
奥様の上半身が跳ね起きそうになるのを、無理矢理抱きとめる。
「ああいう手合いは、誰でも少しは心当たりのありそうなことを言って、
言われた人がズバリ当たったように勘違いするのを利用するんですよ」
「うん」
奥様はこっちに向き直って、私の胸に顔を寄せた。少し強く抱いて頭を撫でていると、寝息が聞こえ始めた。
お寝みなさい、奥様。私ももう寝よう。その前に。
奥様の目が突然開いた。起こさないようにしたつもりだったんだが。
「どうして私のズボンの中にあなたの手があるのよ」
「リグビー・アンド・ペラー特注の刺繍を見る機会がなかなかありませんので、この機会に拝見しようと。
スイスの刺繍職人の刺繍が見たいだけで、奥様の下着が見たい訳ではないのでご安心を」
「一つも安心じゃないわよー!」
目覚まし時計に手を伸ばす奥様。目くるめく熱い一夜は終わりそうにない。
奥様の下着が濡れていたのは、気付かなかったことにしよう。
時計が枕に叩きつけられ、羽毛が飛び散った。
「グラハムのバカーッ!」
******
パンツ濡れ濡れが最大限のエロ表現です。これ以上は私には無理です。
全裸に五本指靴下という羞恥プレイで、コック長をお待ちしています。
ちょ、久し振りに来たら…!!
GJでございました。
他に言うことはございません。
こんなに早く続きが読めるなんてっ
ありがとう〜!
マクガイバーに大笑いしました。
さっすがスーパー執事なんでもできるなー。
二人がこの後どうなったのか非常に興味があります。
こんなにも細部にわたって素敵な描写の作品が描けるのに
エロはパンツどまりというアナタが大好きです…!!!
>>252 エロを書こうとすると、何故かヤイチ(「モンキー・パトロール」)モードに入ってしまい、
オッサンの竿自慢のような文体に我ながら萎えるので、全部削除です。
エロ職人様、渡辺淳一を召喚する方法を伝授して下さい。
近いうちにと言いながら遅くなってしまいました。
ひとまず途中まで投下します。
コック長のお話なのでエロも萌えもありませんが
保守がてらってことで大目に見てもらえるとうれしいです。
「しかし今回も突然だったわねー」
コック長が夕食の仕込みを始めようとした時だった。
キッチンのすぐ隣にある使用人控室からなにやら話し声が聞こえてきた。
声のほうに目を向けると、暇を持て余しているのか
三人のメイドがまったりお茶を飲みながらくつろいでいるのが見える。
今この広い屋敷にいるのは俺達使用人だけでそりゃ奥様もいないし退屈だよなと
コック長はぼんやり考えながらも手を動かしつつ、聞くともなしにその会話を聞いていた。
「奥様とグラハムさんの旅行でしょ?今朝になっていきなり
『しばらく留守にしますから後はよろしく』だもん。驚いちゃったわよ」
「まあ、そろそろグラハムさんの誕生日だからまた奥様が何か企んでるんじゃないかとは思ってたけどね」
「あっ誕生日!」
「なるほどねー、だから二人して温泉旅行ってわけ。奥様からの誕生日プレゼントなら納得だわ」
「案外そういうとこマメよね、奥様って。でも最初はグラハムさんひとりで行く予定だったみたいよ」
「あらそうなの?なんでまた奥様も一緒に行くことになったのかしら」
「暇だからくっついていくことにしたとか」
「そうじゃなくて、グラハムさんにどうしても一緒に来てくれってお願いされたんだって。
去年の事件のこと言われちゃ断れないわよって奥様苦笑いしてたわ」
「…そっか、あれからもう一年たつんだ。
グラハムさんあの時トラウマになりそうだって嘆いてたし、連れていくの無理ないかも」
へえ、急な外出はいつものことだからと大して気にしてなかったがそんな理由だとは知らなかった。
去年の事件というとあれか、グラハムさんの親友が奥様を誘拐したってやつだな。
コック長の脳裏に一年前の出来事がまざまざとよみがえる。
いやあ、あんときは大変だった。
二人の乗った車が海中から発見されたってんでメイド達はうろたえるし
グラハムさんはこの一大事だってのに部屋にこもってずっと本読んでるっていうし。
これは俺がしっかりしなくちゃいかんと思ってどーんと構えてみたものの内心は気が気じゃなかった。
なんてったって皆知らないからあれだが、俺は知ってる。
グラハムさんと奥様が、まあ、その、そういう仲だってことをだ。
誰よりも奥様の身が心配で心配でたまらないのはグラハムさんだろう。
なのに最愛の人と親友を一度に失ってしまうかもしれないこの状況で読書ってのは
さっぱり意味がわからんが、グラハムさんのことだから何か考えがあるのかもしれない。
あの人はどんな辛い状況でも決して自暴自棄になったりなんてしない。
俺達が今までずっと見てきたグラハムさんはそういう人だ、と俺は信じたい。
そうこうするうちにグラハムさんは詳しい行き先も告げずに慌ただしく出ていってしまった。
こうなるともはや、俺達にできることといったら信じて待つことだけだ。
そう考えたコック長はそわそわと落ち着かないメイド達をなだめ
祈りをこめて静かに主の帰りを待つように説いた。
結局二人とも無事で屋敷の者も皆一様に胸をなでおろしたが一番ほっとしていたのは他ならぬコック長だった。
「でもさ、前に比べると大分落ち着いてきたと思わない?あの二人。
旦那様と結婚したばかりの頃とは大違いよ。あの頃はしょっちゅうケンカしてたもの」
「うん、ずいぶん仲良くなったわよね。性格はまるっきり正反対なのになんだか不思議な感じ」
「正反対だから逆に気が合うんじゃない?奥様毎日楽しそうだし。
グラハムさんは相変わらず振り回されてばかりで大変そうだけど」
「あは、それは仕方ないわよ。奥様って退屈とは無縁の人だもん。
人生いかにおもしろおかしく生きるかに命かけてるようなとこあるし」
「あるある!いつどこで何しでかすかわからないからグラハムさんいつもほっとけないのよねー」
「それにしたってプライベートな旅行まで一緒なんてほんと仲がよくてうらやましいわ」
「まあ親子だしね。家族旅行みたいなものなんじゃないの。
今の季節の温泉なんて気持ちいいだろうなー。奥様はしゃぎすぎて風邪ひかなきゃいいけど」
「グラハムさんがついてるから大丈夫でしょ」
「それもそうね。今頃かいがいしく世話やいてるだろうから心配いらないか」
「……」
「どうしたの?さっきからやけに静かじゃない」
「…ん、いやね」
「なに?食べ過ぎてお腹でもいたいの?薬持ってこようか」
「もう奥様じゃないんだから。…ちょっと、変なこと考えてただけ」
「変なことって何よ。気になるわ」
「別に大したことじゃないから気にしないで」
「そんなこと言われたら余計気になるってば。何?奥様のこと?」
「まあそうなんだけど…。言っても笑わない?」
「内容による」
「ならやめとく」
「焦らすわねー。はっきり言っちゃいなさいよ」
「そうよ、言いかけてやめるなんてのどに詰まった魚の骨みたいで気持ち悪いじゃない。
奥様だったら何が何でも吐かせようとするわよ」
「じゃ言うけど…笑わないでよ。私だってばかなこと考えちゃったって思ってるんだから」
「わかったわかった。で?」
「ん…あのふたり、最近すごく仲いいじゃない」
「まあね」
「……だから…ひょっとして…旅行中は同じ部屋に泊まってたり、するのかなー…なんて」
「え、それって……」
「……」
「……」
「……」
ためらいがちに、ひどく遠回しな言い方ではあったが言いたいことはすぐにわかった。
まったく考えたこともない、といえば嘘になる。
ただその内容が内容だけにおおっぴらに口にするのは憚られるせいもあって
使用人達の間でも今まで一度として話題にのぼったことはなかった。
むしろ触れないように意識的に避けてきたといったほうが正しい。
だから突然降ってきた仲間の発言にあとの二人も戸惑いを隠せなかった。
──その話って…しちゃっていいの?まずいんじゃない?
一瞬の迷いがメイド達の判断を鈍らせた。
そんなことあるわけないでしょ!って笑い飛ばしてしまえばよかった、と思っても時すでに遅し。
控室は気まずい沈黙に包まれる。
誰も口を開こうとしないままむなしく時間だけが過ぎていく。
とうとう長い沈黙に耐えきれなくなったのか、ひとりが意を決したように口火を切った。
顔を寄せ合い、声を一段とひそめてまた話しだす。
「ね、ここだけの話!……どう思う?」
「…親子っていっても元は他人なのよね、あのふたり」
「グラハムさんだって別に結婚してるわけじゃないし…」
「こういうこと言っちゃいけないのかもしれないけど、お似合いだと思わない?」
「そりゃたまに夫婦に間違われたりすることもあるくらいだもん」
「ねえ、私思ったんだけど…去年パブであったクリスマスパーティーのとき
奥様途中で帰っちゃったじゃない。あれってさ、今考えるとちょっとヘンじゃない?
いくら車で帰るの止められたからってひとりで歩いて帰るなんておかしいわよ、一時間以上かかるのに」
「それわたしも思った!あの夜って結局朝までふたりっきりだったんでしょ」
「…………もしかして」
「やっぱり…!?」
「いやいやいや、まだわかんないわよ。奥様のことだもの歩いて帰るくらい平気かもよ。
わざわざ帰ってきてあげたんだから!ってグラハムさんに恩を着せようとする魂胆だったりして」
「あー確かに。奥様だったらやりかねないわ」
「いえてるー」
メイド達の笑い声が響く。
そうなんだよなあ。
旦那様が亡くなって、表向きは奥様が主人グラハムさんが執事という形をとるようになり早三年が過ぎた。
最初の頃なんてそれはもう本当にこの二人が家族としてうまくやっていけるのかと
見ているこっちがハラハラするほどだったのに、いつの間にやら随分と仲良くなっていて
今じゃメイド達が二人の仲を疑ってしまうほどのいいコンビっぷりだ。
まあ、いつも大騒ぎしている奥様も大人しくしてりゃ可愛らしいお嬢さんなんだし
グラハムさんだってちょっとばかしお堅いところはあるがいい男だもんな。
主に対して少々失礼な印象を抱きつつ、コック長の妄想は続く。
若い男女が常に一緒に生活してるんだから相手を意識してしまうことだってあるだろう。
ましてあの二人にはもう身内と呼べる人は少ないようだし
きっと二人だけにしかわからない強い絆で結ばれてるんだろうなと俺は思ってる。
お互いを特別な人として向き合い、日々を過ごしていくうちに
二人の関係に変化が訪れたとしても…それは俺達が口を挟む問題じゃない。
彼らが一番よく分かっているはずで、外野がとやかく言うのは野暮ってもんだ。
ただ静かに見守ってやりたい。
以前グレースが朝早くグラハムの部屋から出てくるのを目撃して以来
ずっと二人の仲を誤解している彼は今となってはそんな気遣いを見せるまでになっていた。
「ねえねえ!コック長はどう思う!?」
ぐえっ
いきなり話しかけられて妄想中のコック長は飛び上るほど驚いた。
手が滑ってあやうく持っているナイフを落としてしまうところだった。
慌てて何事もなかったかのような顔を作ろうとするも、まだ心臓はばくばくいっている。
「どうって……奥様とグラハムさんのことかい。まあ、仲はいいんじゃねえかな」
なんとか当たり障りのない返事でごまかしたが心中は穏やかではない。
…あっぶねえー。おいおい、なんで俺にその話を振るんだよ。
いくら二人の仲を知ってるのが俺だけだとしても
皆にぺらぺら喋ってしまうほど俺もいい加減な男じゃない。
誰にも言わないと約束した以上、約束は守る。
あの堅物のグラハムさんがそういう行動を起こしたってことは本気なんだろう。
でなけりゃ奥様に手を出すなんて、それこそ天地がひっくりかえってもありえない話だ。
グラハムがまだ執事として勤める前の学生の頃から彼を知っているコック長は彼の性格をよく理解していた。
だからこそ例の場面を目撃した時は、グラハムさんもやっぱり男だったんだなと感慨深く思うと同時に
相手が奥様だなんて大したもんだ、澄ました顔して意外にやるなあと素直に驚いたものだった。
いつも冷静で礼儀正しく穏やかな彼が奥様に対してだけは妙につっかかるように見えたのも
それが原因だったのかと後になって思い返して微笑ましくもあった。
今はジョンストン家の主人になったとはいえ、執事の頃とまるで変わらない日々を過ごすグラハムを
コック長だけでなく屋敷の者皆が好ましく思っていたのである。
「仲がいいのはわかってるけど、それ以上だったりするのかなってこと!」
「怪しいと思わない?」
「コック長も気になるでしょ!?」
じれったそうにメイド達は立ち上がり、一斉にコック長の周りを取り囲んだ。
じりじりと詰め寄られてたじろぐ。
まいったぜ、ここで下手なことは言えないしどうすりゃいいんだ。
舌打ちしたい気持ちを抑えて必死で言葉をさがす。
「そ、それは俺に聞かれてもわからんよ。ただあの二人、書類上は親子なんだろ?
親子でどうこうってことはねえんじゃねえかなあ」
「それはそうだけど」
「でも仲良すぎじゃない。誕生日にふたりで旅行って……ねえ?」
「クリスマスイブのことだってあるし…」
メイド達が顔を見合せて囁きあう会話を聞いてふと思い出す。
そういや、あの夜はどうだったんだろう。
翌日屋敷に戻ってからグラハムさんにそれとなく聞いてみたが、あっさりかわされちまったんだよな。
あの晩奥様がパーティーの途中でいきなり帰るなんて言い出したもんだから皆面食らってしまった。
メイド達はなんとか思いとどまらせようと奥様を説得してたが俺は止めなかった。
そりゃせっかくクリスマスイブなんだから一緒に過ごしたいんだろうなと思ったからだ。
大体考えてもみろ。
イブの夜、酔った恋人がパーティーを抜け出して帰ってくる。
自分のために、寒い夜道をひとり歩いて。
男の俺でさえ相当歩く距離だってのに…いじらしいじゃねえか。
屋敷には誰もいないし否が応でも気分は盛り上がる。となれば…
俺には想像もできないが、あの奥様でもロマンチックな雰囲気になるようなことがあるんだろうか。
愛する人の腕の中で俺達に見せないような恥じらいの表情を浮かべ、愛をささやく──
……………。
ダメだ、無理。これっっっぽっちも想像できねえっ。
あの二人のラブシーンなんて酔っ払って誰彼構わずナンパしたあげく
鼻の下伸ばしながら女はべらすグラハムさんの姿を想像しろってのと同じくらい難しい。
まったく難易度が高いにもほどがあるってんだ。
己の想像力の限界を恨めしく思いながらぜえぜえと息をつく。
実のところ、二人の仲の進展にはコック長の心遣いが少なからず関係していたのだが
ずっと前からあらぬ誤解をしている彼はもちろんそんなこと知るよしもない。
コック長は頭を振り妄想を追いやると、気を取り直してメイド達に話しかけた。
「そうは言ってもあのグラハムさんとあの奥様だぜ?俺には何かあるようにはとても思えん」
彼の妄想の果ての発言はやけに説得力を持っていてメイド達の心を強く揺さぶった。
「……まあ、それを言われると何とも言えなくなっちゃうんだけど」
「いくらお似合いだっていっても…奥様とグラハムさんだし」
「ありえないと言われればこれ以上ないくらいありえない組み合わせだもんねえ」
やっぱりな。その気持ちはよーくわかる。
俺だって実際この目で見てなきゃそう思ったに違いない。
よし、このまま押し切ってしまおう。
メイド達の心の変化を敏感に感じ取り、気をよくしたコック長はさらに畳み掛ける。
「だろ!?俺が言うんだ、間違いねえよ。あの二人の間には何もないね」
腕を組みきっぱりと自信満々に言い切る様子を見て、メイド達も次第にそうかもしれないと思いはじめてきた。
屋敷の主と執事がただならぬ関係ではないかと疑った彼女達だったが
普段のやりとりから具体的な想像を浮かべるのはやはりコック長と同じく、至難の技に近かった。
「…やっぱりわたし達の勘違いかしら」
「かもね。二人は家族なんだもの」
「うんうん、あのお堅いグラハムさんに限ってそんなことあるわけないって」
それぞれ大きく頷きあう様子を見て心の中でほっと一息。
ふう、俺の話術も捨てたもんじゃねえな。グラハムさんも感謝してほしいもんだ。
安堵の表情を浮かべかけた彼はメイド達の次のセリフで再び焦る羽目になる。
とりあえずここまで。
あともう少しで終わるので早く仕上げたいです。
圧縮きそうでこないですね。
つ、続きを!続きを!
か、神降臨。
264 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 21:48:49 ID:rByWoIpe
あげ
圧縮来そうなので保守
ほしゅ
ほしゅ&続き待ちがてらつぶやき。
最終話でストウクラット家の猟犬の子犬がでてきたのは
グラハムの「子供の頃飼ってた時は平気だった」から来てるんだろうなー。
湖の女の子はビアトリスじゃなさそうだけど。年齢的に。
それにしてもバーフォート卿の回のグラハムは男の嫉妬心から
社交欄の裏の裏まで調べ上げたかと妄想すると…w
ナイス妄想
グラハムは顔にでないだけで、実は嫉妬深いとかだったらかなり萌える
そして「彼女はどこにいる?」のシーンは廊下でコック長が様子を見てた。
(だって一緒に探しに行ってたし)と思っている私はコック長スキー。
続き、wktkで御待ちしてます。
保守
271 :
sage:2008/08/13(水) 13:04:04 ID:UcyzY0as
☆
わたくしを読んだのは誰!?
byゆかり
てかりは呼んでないぞ!
274 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/16(土) 23:43:15 ID:+FQO/yvq
星 ゆ か り よ!
まさかり担いでると、銃刀法違反でタイーホされるって、本当?
えーっと、星あかりさんでしたっけ?
お話し中のところすみません。
遅くなりましたが続きを投下させていただきます。
「でもそれじゃつまんないわね。本当だったらおもしろかったのに」
「ねー」
「おいおい、滅多なこと言うもんじゃないよ」
やや不満そうな表情のメイド達を慌ててたしなめる。
何を言い出すかと思いきや、つまらないときたか。まったく二人の立場がわかってんのかな。
俺達の間で話してるくらいだったらまだいいが、万が一屋敷の外に伝わるとさすがにまずい。
ただでさえ『莫大な遺産を相続したうら若き未亡人』として奥様は世間から注目を浴びてるってのに
実は執事とデキてるらしい、なんて噂が広まってしまったらどうなるか。
しかもその執事は義理の息子だ。かつてないスキャンダルに見舞われるだろうことは容易に想像できる。
ジョンストンの家名を汚すような真似は彼らの本意ではないし、何より俺は二人が傷つく姿を見たくない。
面白半分で話題にだされては彼らがかわいそうだ。
たとえ噂の段階であってもメイド達にはきつく口止めしとかなきゃいかん。
まれに見る剣幕で焦るコック長とは裏腹にメイド達は顔を見合わせ目を丸くする。
ひとりが大げさにコック長の身体をはたいた。
「やーだもうコック長ってば!わたし達だって奥様のこと好きだもん言いふらしたりなんかしないわよ」
「そうそう。もし二人がそうなっちゃっても陰ながら応援するし」
「奥様の暴走を止めること出来るのってグラハムさんだけなんだから
家族でもそうじゃなくてもどっちにしろ同じことよね」
ごく当たり前のような顔で二人の仲を認めるような発言をして、うんうんと頷き合うメイド達。
思わぬ反応に唖然とするコック長をよそに目くばせしてくすりと笑ったかと思うと急にまじめな顔つきになる。
そして慎重に言葉を選ぶようにゆっくりと口を開いた。
「それに奥様…ううん、グレースにはいつも笑っててほしいと思うから」
「いくら口では財産目当てだ何だって言ってたって、亡くなった旦那様をちゃんと愛してたこと
この屋敷の人間なら皆知ってるわ。ああ見えて本当は優しい人だってこともね。
ねえ去年だったかしら、奥様が催眠術をかけられて子供の頃に戻ってしまった時のこと覚えてる?」
覚えてるも何もあんな経験そうそうあるもんじゃない。
コック長はそのセリフを聞くなり大きく頷いた。
屋敷の女主人が催眠術をかけられて心だけ子供に戻ってしまったというだけでも驚きなのに
当の本人といえば、いつもの性格とはまるで違う大人しい気弱な少女だったということが
グラハムをはじめ屋敷中の使用人を巻き込んで事態をさらなる混乱に導いた。
それだけにこの一件は、奥様の誘拐騒動と並ぶほどの忘れられない印象的な事件として
コック長やメイド達の心に深く刻まれていたのである。
いや、催眠術ってやつは俺も初めて見たがあれにはたまげた。
外見は普段通りいつもと変わらない様子なのに
『コックさんの帽子はなんでそんなに長いの?そこから材料がでてくるの?』
なんて物珍しそうな顔して俺に聞いてくるもんだから
ああ、中身は本当に子供になんだなとしみじみ思ったんだっけか。
当時の奥様の子供らしい無邪気な一面を思い出し顔が綻ぶ。
幼いグレースはコック長の目にもとても可愛らしく映っていた。
たしかしばらくの間ずっとそのままで、どうやって元に戻ったんだろうと不思議に思ったものだが
どうやらグラハムさんが催眠術を解いたらしいと後でメイド達が噂しているのを聞いて納得した。
一番近い存在のグラハムさんが解けないで誰が解けるんだっつう話だからそりゃまあ当然だよな。
「あの時の奥様って、気弱で繊細そうな感じがしていつもと全然違ってたでしょ。
いつまでたっても元に戻らないから私達もうかわいそうで見ていられなかったけど
催眠術が解けるまでグラハムさんずっと傍にいて奥様を見守ってあげてたわ。
それ見て私思ったのよね。普段はそんな様子微塵も感じさせないけど
ただ誰も知らないだけで、本当は奥様今でも脆い一面があったりするのかもしれない。
人には見せない弱い部分も何もかも全部ひっくるめて受け止めて愛してくれる
そういう人が奥様にいるのなら、それって…やっぱりグラハムさんじゃないのかなって。
奥様のこと誰よりも理解してるのはグラハムさんだと思うし、大切にしてるのも見てればわかるもの。
あのふたりのことだから今のままでもいいのかなとは思うけど、でも先のことってわからないじゃない。
だからこれから先もしふたりの関係が変わってしまうようなことがあっても……私何も言うつもりはないわ」
「わたしも。奥様が幸せならうれしいのよ。なんたってほら、元同僚だしね」
そう言ってお互いの顔を見ながら照れくさそうに微笑んだ。
メイド達の言葉のひとつひとつがコック長の胸に素直に響く。
じわじわとこみあげてくる想いに目頭が熱くなる。
はは…なんだ、皆わかってんじゃねえか。
そうだよな。俺だけじゃない、皆奥様とグラハムさんが好きなんだ。
いつも明るくたくましく、人生楽しく生きるために努力を惜しまない奥様と
そんな奥様に翻弄されつつも執事として家族として懸命に奥様を守り支えようとするグラハムさんが。
今更ながらメイド達が自分と同じ想いを抱いていたことに気づく。
自分が守ろうとしていたものは彼女達も守ろうとしていたものだった。
同じ職場で働く仲間が屋敷の主人となっても彼女達の想いは変わらない。
仲間のことを想い幸せを願う気持ちは一緒だ。自分がグラハムさんに対して抱く気持ちと同じように。
「何があっても、わたし達はずっと奥様の味方よ」
「ふたりの仲が悪くなったりしちゃ嫌だもん。コック長だってそうでしょ?」
メイドが首をかしげて彼に問いかける。
冗談めかした軽い口調だったが、まっすぐに見つめるその眼差しは真剣だった。
社会的に許されない関係であっても彼女達は受け止めるつもりでいる。
その覚悟がコック長には嬉しかった。
「ああ、そうだな。そのとおりだ。いつまでも仲良く過ごしてくれりゃ何も言うことはないよ」
メイド達の顔にほっとしたような笑顔が浮かび
皆の気持ちが一つになった喜びでキッチンはなごやかな雰囲気に包まれた。
今まで誰にも言わずに内緒にしていたことを知るはずのない彼女達が同じ気持ちでいてくれた。
それだけでもう十分だ。グラハムさんも奥様もいい仲間に恵まれたな。
すっかり嬉しくなったコック長はよせばいいのについ口を滑らせてしまう。
「まあ俺が思うに、この先どんなに金持ちでいい男が現れても奥様が再婚することはないと思うぜ。
なんだったら賭けてもいいよ」
一瞬の沈黙の後、メイド達は一斉に吹き出した。
「なーんだ、やっぱりコック長も怪しいと思ってたんじゃない!」
「そんなの賭けにならないわよー」
「そうよ!皆再婚しないほうに賭けるに決まってるわ」
やべ、余計なこと言っちまったかな。
でもまあ別にばらしてるわけじゃないし、これくらいならグラハムさんも許してくれるだろ。
突然吹き出したメイド達を見て少しひやりとしたが気にしないことにした。
しかしあいつら笑いすぎじゃねえか。
見れば未だに爆笑中だ。
いささかむっとした表情のコック長に気づいたひとりが涙目をこすりながら問いかけた。
「ねえ…ひょっとして、コック長何か知ってるの?」
ぎくっ
「な、俺が何を知ってるって言うんだよ!そんなことあるわけねえだろ」
「……ふーん?」
げ、やっぱりまずかったか!?
どうやってごまかそうか必死で知恵を絞るコック長をメイド達は興味津津といった様子で見上げてきた。
心の中を見透かされそうで視線をあわせられない。慌てて横を向いても反対側から覗き込んでくる。
顔をそらそうとしてもできなかった。
明らかに、挙動不審。
「…どうもさっきから様子がおかしいと思ってたのよね」
メイド達は固まってこちらを見ながらなにやらひそひそと小声で話しはじめた。
……あーやっちまった。グラハムさんすまん、男の約束守れねえかもしれん。
墓まで持ってくつもりだったがいくらなんでも三対一じゃ分が悪すぎる。
うちのメイドは奥様の影響かこういうとこ妙に団結力あるんだよなあ。
はあ、と大きくため息をつき天を仰ぐ。
メイド達が近づいてくる気配を感じ、目を閉じて覚悟を決めたその時。
「わたし達何も聞いてないから」
…へ?
ぽんと肩を叩かれて言われた言葉にコック長は耳を疑った。
ついまじまじと穴があくほど顔を見る。
「誰でも秘密の一つや二つあるわ。
コック長も何か知ってるのかもしれないけど聞かなかったことにしとく」
「私達も別に秘密を暴きたいわけじゃないしね。
皆の考えてることが同じだったってわかっただけで十分よ」
ね?と同意を求めるように仲間の顔を見て、あとの二人も大きく頷いた。
なんだなんだ、一体どういう風の吹き回しだ?
おそらく質問攻めにあうだろうと覚悟していたコック長は彼女達の意外な反応に戸惑う。
「まあ、どうしてもコック長が俺の話を聞いてくれ!って言うなら話は別だけど…」
意味ありげに呟きながら彼に向ってちらりと視線を流す。
とんでもねえ!俺から話しちまったら意味ねえじゃねえか。
コック長はぶんぶんぶんと勢いよく首を横に振った。
「ないないっ!俺は何も見てねえし話したいことなんてねえから!」
「そう」
すでに半分以上ばらしてるも同然だが混乱しているコック長は気付かない。
しかしメイド達も心得たものでそれ以上突っ込んだりはしなかった。
「さーてと、それじゃそろそろ仕事に戻りましょうか」
「だいぶのんびりしちゃったものね」
大きく伸びをしてそう言ったかと思うとテーブルの上のコップを手に取りてきぱきと後片付けを始める。
コック長はただ呆然とその様子を眺めていた。
「ほらほら、コック長も早く仕込みの続きしないと夕食に間に合わないわよ?」
「お、おう」
いまいち腑に落ちない表情のまま、首をひねりながら元の位置に戻ろうとするコック長の背後で
メイド達が一瞬顔を見合わせたことを彼は知らなかった。
…なんだかよくわからんが随分あっさり引き下がったな。
まあ俺もできるかぎりシラを切りとおすつもりだったから助かったっちゃ助かったんだが。
あれだけ誰にも言わん!って宣言しておきながら
ばらしたとなったらグラハムさんに合わせる顔がねえもんな。
ま、何にせよ、よかったよかった。
メイド達の反応に拍子抜けしたものの、自分の口から秘密を話さずに済んだことにコック長は心底ほっとしていた。
機嫌よく手元の作業を再開した彼を複雑な表情で見つめるメイドを仲間が肘でつつく。
「わたし奥様の部屋の掃除してくるわ。旅行の準備のせいでものすごく散らかってるのよね」
「あ、私もいく。一人じゃ大変でしょ」
お茶の時間を終えたメイド達はいそいそと自分の仕事に戻るべく
ドアを開け出て行こうとして、ふと何かを思い出したように振り向いた。
「ねえ、コック長」
「なんだー?俺は何も話すことねえからな」
仕事に集中し始めた彼は顔も上げない。それなのに最後まで否定しようとするのが彼らしかった。
「それはもうわかったってば。そうじゃなくって、私達いい職場で働いてると思わない?」
ぶっ、今度はいきなり何を言い出すんだ。
唐突な問いにコック長は吹き出しそうになりながらも顔をあげてメイド達に向かって笑いかけた。
「当たり前だろ。俺はずっとここで働くつもりだよ」
その返事を聞いてメイド達は満足そうな笑みを浮かべるとパタンと扉を閉めた。
閉じた扉を見つめて、コック長はくすりと笑う。
あんな質問してくるなんてどうしたんだか。
奥様がいて、グラハムさんがいて、あの二人に仕えてるこの職場が悪いわけねえだろっての。
亡くなった旦那様の頃から居心地のよい職場だったが主人が代わってもそれは変わらない。
家は主とともに、そして使用人とともにある。
旦那様の薫陶よろしく二人とも立派な屋敷の主になったからな。この屋敷で働く俺達も嬉しい限りだ。
それにこれは俺の個人的な意見だが、なんといってもうまそうに飯を食う人間に悪い奴はいねえ。
奥様なんて俺が作った料理をいつもきれいにたいあげるし料理人冥利につきるってもんだ。
料理人という仕事に心から誇りを持っている彼はこういう面からも奥様のことが好きだった。
尊敬する主の秘密を守れたことと、メイド達も自分と同じ気持ちでいたとわかったこと。
二つの幸せでコック長はご機嫌だった。
グラハムさん今頃いい誕生日迎えられてっかな。去年は散々だったもんなあ。
ふたりっきりで過ごす機会なんてそうあるもんじゃねえんだから何事もなく仲良くやってりゃいいが。
帰ってきたらどうだったかさりげなく聞いてみるか。
おっと、この屋敷じゃたとえばれても心配する必要ないぜってこともちゃんと伝えてやんなきゃな。
自分があやうくばらしてしまいそうになったことは忘れて
すっかり上機嫌のコック長は鼻歌交じりにせっせと仕込みにとりかかるのであった。
一方その頃。
「……予想外の展開だったわね」
控室のドアを閉めたメイド達はしばし廊下にたたずんでいた。
奥様とグラハムさんの関係について、コック長が何か知ってるんじゃないかとにらんではいたが
彼が口を閉ざすその態度からこれ以上の詮索は避けようと彼女達は考えていた。
コック長は決して無口なタイプではないし、むしろ陽気でおしゃべり好きな人なのだが
その彼が話さないということはむやみに話すべきではないと考えているからなのだろう。
だったらその意思は尊重してあげなきゃ、というわけで
『ふたりの関係は気になるがあえて詮索はしない』
それが彼女達が相談して出した結論だった。
そう彼に伝えてちょっとからかってみるだけのつもりだったのだが。
「何を見たのかしら、コック長」
「さあ…わからないけど『見た』ってことは…」
「……そういうことよね」
コック長が何を目撃したのかはともかくとして、目撃者がいる以上ふたりの関係は決定的だ。
色めき立ち興奮状態に陥るかと思われたメイド達は意外にも冷静で落ち着いていた。
「なんかほっとしちゃった」
「私も。もっと早くこうなるかと思ってたわ」
「グラハムさん真面目だからねー」
大方の予想通り、事実は事実として動揺もせずすんなりと受け止めているようだった。
さすがジョンストン家のメイド。女主人に振り回されてばかりなのは何も執事だけではない。
屋敷で働く者たちにもそれなりに耐性がついていた。
「まあ、奥様の相手がグラハムさんなら亡くなった旦那様も安心なんじゃない?
二人がうまくやっていけるかそれだけが心配だってずーっとおっしゃってたから」
「うん。間違っても怒ったりしないと思う。逆に手を叩いて喜んでるでしょ、旦那様」
「今頃天国で、よくやった!ってグラハムさんのこと誉めてるかもね」
今は亡きジョンストン氏に思いをはせる。
彼はグラハムのことをその有能な仕事ぶりはもちろん一筋縄ではいかない性格も含めて大変気に入っていた。
少年時代から成長を見てきたグラハムはまさに彼にとっては我が子も同然。
晩年まで家族を持たなかった彼には、グラハムも親子以上に年の離れた妻のグレースも
ともに自分の子供や孫のように愛しい存在だったのだろう。
彼の愛した子供たちが新たな関係を築こうとしていることを彼が知ったらどう思うか。
メイド達から見てもその答えは明白だった。
「それにしてもコック長が知ってたとは驚きだったわ。今までそんなこと一言もいわなかったのに」
「…最初から誰にも話すつもりなかったんじゃないかしら」
「たぶんね。さっきも言う気なさそうだったし。いつから知ってたのかわかんないけど
二人のためにずっと黙っといてあげようなんていかにもコック長らしいわよ」
彼が何を見たのかは知らないが、自分の心の中だけでおさめようとする
コック長の優しさはメイド達にも十分すぎるほど伝わっていた。
だから黙っていたことに対して責めたりする気持ちは毛頭なかったし
秘密をばらしてしまったことを彼が知ったらひどく落ち込むだろうと考え気づかなかった振りまでしたくらいだ。
「コック長もねえ、いい人なんだけど…ちょっとうっかりしてるとこあるよね」
「お酒好きだしね」
顔を見合せて小さく笑う。
もともとこの屋敷の使用人は皆仲が良かったが
面倒見がよく世話好きなコック長は何かと頼れる存在として特にメイド達から慕われていた。
執事であると同時に屋敷の主人でもあるグラハムには話しにくいことでもコック長になら打ち明けることができる。
義理堅く情に厚い。それが彼の仲間内での評判だった。
その彼が本人も気づかないうちに洩らしてしまった二人の関係。
聞いてしまった自分達がどうするかなど考えるまでもなかった。
「こうなったら私達が一肌脱ぐしかないでしょ」
「まあね。奥様とグラハムさんのためだもん」
「グラハムさんのことだからそうそう迂闊な真似はしないと思うけど何があるかわからないし
しっかりわたし達が守ってあげなくちゃ。今まで内緒にしてたコック長のためにも」
手を取り合わん勢いでお互いの目を見つめ固く誓う。
口では仕方ないわねと言い、首をすくめる素振りをしつつも
彼女達の表情は晴れ晴れとしていて隠しきれない嬉しさにあふれていた。
こうして、ジョンストン家において触れることすらタブーとされてきた主人達の関係は
当事者はおろかコック長ですら知らないうちに暗黙の了解としてメイド達に受け入れられたのであった。
そのきっかけとなったのが、コック長の目撃談であったことは言うまでもないが
鼻歌交じりでキッチンに立つコック長に、廊下で決意を固めるメイド達
留守中の屋敷で何が起こっているのか露知らず旅行を楽しむ主人ふたり
それぞれにとって一番よい結果となったのだから
あの時のコック長の読みはあながち間違ってなかったといえるのかもしれない。
たとえそれが誤解であったとしても。
以上です。
遅くなっちゃってすみません。
読んでいただきありがとうございました。
コック長、乙!
>>228 エヴァンジェリン姫も書いてみました。今回は頑張ってエロシーンなどを…。
******
女官達がぞろぞろと退出して行く。
最後の一人となった女官長が、見たこともないような優雅な最敬礼をした。
ちゃんとした挨拶が出来るなら、何故いつもしないのか。
「エヴァンジェリン姫、アルバート公。この度は本当におめでとうございます」
「うむ、ありがとう。下がってよい」
部屋に残されたのは、私と、私の花婿であるアルバート・オーソン公。
私の臣下であったが、本人の熱意と左右の薦めにより、本日めでたく婚礼の儀と相成った。
居並ぶ百官を前に、私への愛と忠誠を誓った言葉は、我が国の歴史に刻まれるであろう。
「俺は一生を姫とこの国に捧げます!だから、両親にだけは危害を加えないで下さいっ!」
急に二人きりになったので、ちょっと間が持たない。
この日の為に教育は受けているが、実際に直面してみないと対処出来ない問題もあるのだな。
流石は初夜、あなどれんな。取り敢えず、テレビを点けた。
勿論、どの局も私達の結婚についての特番だ。
エッシェンシュタイン城の大広間に流れる祝福の歌を聴きながら、涙ぐむ美しい花嫁。
このオリジナル・ウェディングソングをセリーヌ・ディオンに歌わせるのに
かかった手間と金を思うと、これぐらいの涙では済まないというものだ。
これから稼がせてもらうぞ。
執務室長の話では、婚礼の儀の中継が終わってから、
この曲の販売情報の問い合わせが殺到しているらしい。
これでこそ、結婚した甲斐があったというものだ。
オーソン…いや、アルバートが私の頭を撫でた。見ると、涙を浮かべている。
そうか、お前も今回の経済効果を想像して嬉し涙が止まらないか。
オーソンが異常に明るい声で言う。
「このテレビセットは、日本の皇太子殿下から頂いた物ですね。この装飾は蒔絵というのでしょうか」
「ああ。裕福な上に気配りの行き届いたお方だ。
またしても奥方が体調不良で欠席なのはちょっと許せんがな。
私の一生に一度か二度のめでたい日だというのに。殿下もさっさと側室でも迎え…」
「止めて下さいっ、姫!国際問題を引き起こす気ですか!」
「エヴァンジェリンと呼べ。いや、しかし実際だな…」
「さあっ、他の皆様から頂いたお祝いの品でも拝見しましょう!」
「大体…」
「さあッ!」
まあよかろう。私もさっきからテーブルの上は気になっていた。
銀のボンボニエール、サファイアのネックレスなど、換金性の高そうな物がいっぱいだ。
銀のティーセット、バカラのグラス、“性生活の知恵”…?
「なんだこの本は。どちらからの贈り物だ?」
「ああ、それはマリネラ国王、パタ…」
「あのつぶれ大福か。やりそうなことだ」
あのケチが特産品のダイヤを贈ってくるとは思っていなかったが…覚えていろ。
「さあ、そろそろ床に入ろう」
大丈夫、この日の為に色々教育は受けている。滞りなく初夜を迎えられる筈だ。
オーソンは頷くと、私の肩に手を回した。
「こんな風に二人で夜を過ごすなんて、今でも信じられませんね」
「私のひいじいさんの時代には、初夜には十六人の立会人がいたのだぞ。
お前が望むなら、今から立会人を入れるか?」
ベッドサイドの呼び鈴に伸ばした私の手にオーソンの手が重なり、そのままベッドに押し付けた。
「そんな用で呼ばれた日には、執務室長が本当に倒れてしまいますよ」
オーソンは私にキスをした。
最初は唇が触れるだけだったが、徐々に舌で私の唇を舐め始めた。
その内、息が荒くなるにつれて、私の口の中に舌を捻じ込んできた。
私の舌に自分の舌をなすりつけ、唾液を流し込んでくる。
「姫」
こういう場には相応しくない、ちょっと冷静な声。
片目を開けて、オーソンを見る。
「何か俺、すっごいやりにくいんですけど」
「私達の初めての交歓だからな。無理もない。焦らなくてよいぞ」
「いや、そうじゃなくて…。姫、ちょっと冷めてます?」
何を言うか。こちらの息だって荒くなってきたし、身体も熱い。
まだ何か言おうとするのを唇で塞ぎ、今度はこちらから舌を入れた。
舌を軽く噛んでくるのが不思議な気分にさせる。
オーソンはぎゅうぎゅうと身体を押し付けてくるが、
太ももに嫌に硬いものが触ると思ったら、大きくなった陰茎だった。
夜着の上から触ってみたが、こんなものが本当に膣内に入るのか不安だ。
「俺はちょっと、余裕なくなってきました」
聞いたこともない、かすれた声。
そのまま私の夜着を脱がしにかかる。覚悟はしていたが、なかなか恥ずかしい。
オーソンの手が私の尻を撫でる。
そしてそのまま…あんなことやこんなことがあったが、そのあたりは割愛だ。
さて、いよいよ陰茎が私の膣口に…痛い!
これは痛い。初夜でなければ大暴れしているところだ。
突然、私の視界が広くなった。
私の上に覆い被さっていたオーソンが、ベッドに寝転がったのだ。
腕を私の首に回し、反対の手で私の髪を撫でる。
「今日はここまでにしておこう」
ここまで?初夜は中止ということか?
「そうはいかん。子孫繁栄は王族の義務。経済効果の次は、世継の誕生が期待されているのだぞ」
「どうしても今日でないといけないってことはないでしょう。
姫の気持ちと身体の準備が出来るまで、俺はずっと待ってますから」
そうしてもらえると有り難い限りだが、なにしろ私には子供を産む義務がある。
「姫は、子孫繁栄の道具としてしか俺を見てないんですか?」
「ああ、そうだ。だが、オーソンしか子孫繁栄の道具としては見ていないぞ」
オーソンの視線が私から逸れ、宙を彷徨いだした。虫でも飛んでるのかと思って、つい視線を追ったじゃな
いか。
「あの…。仰る意味が判りかねるんですが」
初夜の床で何を口走るか、痴れ者め。
「愛の言葉を囁いているんじゃないか」
オーソンに覆い被さって続きをしようと思ったが、腕の中に抱きすくめられてしまった。
「それでも急ぐ必要はないでしょう?俺達にはまだまだ時間があるじゃないですか。
死が二人を別つまで一緒にいるって誓ったんですよ」
「中国の諺に“朝に道を尋ねたら、夕方死ぬこともある”という。
明日死ぬかもしれないのに悠長なことを言ってられるか!」
腕の中から脱出すると、この夜の為に練習していたセクシーポーズをとった。
「姫、全裸で大の字ってのは…。嬉しいことは嬉しいんですけど、何かちょっと違うような…」
ああ、男の生理というのは難しいものだと聞いていたが、ここまでとは。
仕方ない。私は膝を曲げ、所謂、M字開脚のポーズをとった。
一国の王女がこのようなあられもない姿を見せているのだぞ。これは飛び掛らずにいられまい。
しかし、オーソンは夜具をそっと掛けてきた。夜具を跳ね除けて、飛び起きる。
「いずれ王配(女王の配偶者)となって私とともに国を治めるお前が、そんな気弱なことでどうする!」
ベッドからずり落ちたオーソンが、蛙のような声を出す。
うむ、M字開脚というのは実際に見てみると、さほど扇情的なものでもないのだな。
次回から開脚はなしにしよう。
ベッドサイドに立って、身体を起こしたオーソンを見下ろす。
後ににじり下がるので一歩近づく。また下がるので、こちらも前に出る。
「全裸の女に追いかけられるのは全男性の夢と言って過言ではないですが、姫、少々お待ちをっ」
「エヴァンジェリンと呼ばんかー!」
夜はまだまだ長いし、私達の幸せな一生もまだまだ続く。
死神だろうがメフィストフェレスだろうがワルキューレだろうが、私が追い返す。
そして、いつか言った通り、長い一生涯、私はお前をずっと困らせてやる。
******
エロシーンなのにエロくないのは、私じゃなくて姫が悪いんですよ。
「官能小説用語表現辞典」という本を買ってきたので、勉強します。
読んでて興奮するより爆笑することの方が多い、謎の本ですが。
>>290訂正。
「つい視線を追ったじゃないか」の改行はナシで。
>>289-291 乙です!!
エヴァ姫らしいwww
しかし、「官能小説用語表現辞典」などという素晴らしい本を見つけてきた姐さんに
思わずエヴァ姫の姿を重ねてしまったのはスマソですww
マリネラと国交があるとはさすがww
>>292 GJ!
絵面を想像するとけっこうエロいはずなんだが一向にエロくならないのは
さすがエヴァ姫w
296 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 23:23:09 ID:UtpndAZp
良スレ保守
エヴァーー。
エロいはずなのに、オーソンが羨ましくない。
いや羨ましいけど、大変だなーが先になってしまう。
>>297 それは性的な意味でですね、わかります。
いやいやGJ!
エヴァ姫まで見られるとは思わなんだ
マダミスでも狼でもいいから萌えるエロが読みたい
自分じゃ書けないのでもう諦めました
遠藤作品のエロパロって難しいね…
新刊4冊同時発売おめでとう保守。
ここも住人増えるといいな〜。
今回の文庫化では
アレクとフォレストでもアリということかと。
しかしなんとなく
アレクからプロポーズしたイマゲw
そっかな、フォレスト君ってアレクのことほっとけなさそうだし
決めるところは決めるような気が。遠藤キャラに共通してるとこだけど。
ああ、それにしても書き下ろし幸せー!!
公認ということでSS読みたいなあ。
303 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/18(木) 23:00:44 ID:6RWKPK17
あの書き下ろしはぐっときた。
そして相変わらずの遠藤さんの寸止め具合w
あれに至る過程も見たい!
あれは反則だろー
まさかあんな書き下ろしがあるなんて連載当時は思いもしなかったさ
今までずっとマダミス派だったけど狼派に転びそうだ
大人アレクがちらりとも出てこないあたり想像が膨らむ膨らむw
狼の書き下ろしは、妄想が膨らむなー。
プロポーズを捏造したいけど、やはりエロは入らないよなぁ…。
捏造キボンヌ
あの書き下ろしのおかげで生殺し中です
>>305 積極的なアレクをフォレストが叱る構図が思い浮かびました
……やっぱりエロくならないw
それじゃエヴァ姫とおんなじだw
プロポーズの後はぜひ初めての話でお願いしたい
ところでアレクとフォレスト君て何歳差?
310 :
305:2008/09/24(水) 00:47:21 ID:7AunhoCZ
>>307 同年代の男の子たちとのパーティに出かけて、ピンチになるアレクを助けるにくるフォレスト君を想像。
宥めて慰めながら、告白…かな。子どものころとは違う泣き顔にくらりとして欲しい。
でも、告白してから「あのアレクだぞ?!」みたいに葛藤もして欲しいな。
しかし、そうなると書き下ろしのフォレスト君の態度が淡白すぎるんだよなー。
狼な流れに便乗して、フォレスト君×アレクを投下させて頂きます。
307さんの発言に近いものなんですが、エロにもつれ込ませられなくて
すみません。
一応、多少大人になったアレクといういうことで。
丁度日付も代わった直後の深夜十二時。
珍しく早寝をしていたフォレストは、腹の上を圧迫される不快感で浅い眠りから目を覚ました。
それまで見ていた赤い頭巾を被った子供の夢は、小さな呟きと共に霧散して記憶からするりと消えた。
「……なんだ?」
カーテンを引き忘れた部屋の中は窓から差し込む満月の煌々とした灯りで十分に明るい。それに
照らして貰わなくとも、自分の上に乗っかって顔を覗きこんでいる人影が大人に近い重量を持った
人間であるというのは、寝起きの頭でも理解出来ていた。反応を見ていた人影は、フォレストの返す
それの鈍さに首を傾げる。ふわふわとした金色の髪は月光に負けない位に奇麗だったけれど、
今は見惚れている場合でもなければ、褒め言葉を口にする場合でもなかった。
男やもめの一人所帯。普通なら侵入者に驚くなり、心霊現象化と恐怖に震えるものだろう。
彼女もそう予想していたらしいが、生憎とフォレストは職業柄不測の事態には慣れていた。
それに――――彼女に無断で部屋に乱入されるのも、長い付き合いの中一度や二度ではなかったのだから。
フォレストは一つ溜息を落とすと、腹筋の力だけで反動を付けずに上半身を起こす。慌てたのは人影だ。
「きゃぁっ!」
ベッドから簡単に転がり落ち、床でしたたかに腰を打ち付けたらしい彼女は、涙の浮かんだ大きな青い
瞳をきっと眇めると何時もの口調で叫ぶ。
「ちょっとフォレスト君!」
「はいはい、今度はどうしたんだよ、アレク」
「突然落っことすなんてひどいじゃない」
「目が覚めて女が腹の上に乗ってたら、普通は驚いて振り落とすだろ」
「全然驚いてなかった癖に」
太腿の上できゅっと拳を握って上目遣いに睨んでくるアレクサンドラの鋭い指摘に、フォレストは
一瞬言葉を詰まらせた。
視線を逸らすのと同時に立ち上がり、部屋の電気を点けるついでに話題も逸らそうとしたのだけれど。
明るくなった部屋の中、床に座り込んだままのアレクサンドラの格好に今度はフォレストが叫んだ。
「お前っ、なんて格好してるんだよっ!」
「あぁ、これね」
フォレストの驚愕を他所に涼しい顔で自分の胸元を見下ろしたアレクサンドラは、短い裾を気にして
引っ張る素振りをしながらも、いとも簡単に告げてみせる。
「ダナにアイドバイスを貰ったの。夜這いをかけるならこれよって」
「お、お前らは……」
がっくりとその場に膝をついたフォレストは頭痛に襲われる。
今、この瞬間第三者に部屋に踏み込まれれば、フォレストは間違いなく逮捕されるだろう。何せ、
真っ白のレースとフリルで飾られた淡いピンクのベビードール一枚しか身に纏っていない十七歳の少女が
部屋にいるのだから。気力で頭痛を押さえ込みながらフォレストは言った。
「そんなはしたない格好して男の部屋に乗り込むなんて、そんな娘に育てた覚えはないぞっ」
「フォレスト君に育てられた覚えなんてないわよ。昔っから私が面倒みてたくらいじゃない。それにちゃんと
この部屋に忍び込んでから着替えたんだもの」
堂々とした口調で胸を張ったアレクサンドラが部屋の隅を指差す。そこにはきちんと畳まれたチェックの
ワンピースとインナーの黒いハイネックのシャツが鎮座していた。
「威張る所じゃないだろ」
「大体フォレスト君がおかしいのよ。普通の妙齢の男なら、こんな格好をした女の子が部屋に来たら
嬉しいものじゃないの? これで反応しないのはゲイかEDかどっちかよ」
「お前のその偏った知識は何処から生まれてくるんだ?」
六歳で大学に飛び級入学した天才少女がとんでもなく世間知らずなのは、長い付き合いでよく身に沁みていた。
だからこそ、叱る時には叱らねばならないと、フォレストは挫けそうな心を奮い立たせる。
「子供がする格好じゃないだろ?」
「……子供じゃないわよ」
拗ねて頬を膨らませていたアレクサンドラがすっと表情を消し僅かに俯いた。長い睫毛が影を落とすと、
その見慣れた顔がが突然大人びて見えて瞼を擦りそうになった。
「十七歳なんてまだまだガキだって……あ」
「フォスレスト君はいつも私を子供だ子供だって言うじゃない。今日から十八歳だもの。だから……」
だからこんな馬鹿げた行動に出たのだと、アレクサンドラは暗に告げていた。
しょんぼりされるのには弱くて、フォレストはまず椅子にかけておいたシャツをアレクサンドラの
肩にかけると、目線を合わせる様に前にしゃがみこんだ。
呆れられているかと伺うアレクサンドラの頭をくしゃくしゃと撫でる。子ども扱いしないでと、
最近よく耳にする文句は目の前の唇から投げられなかった。大人になったのをアピールしようとして、
かえって浮き彫りになった己の幼さに罰が悪いのかアレクサンドラは床を見つめたままだ。幼い頃から
変わらない、そんな素直さがただ愛おしい。
「やっぱりお前は子供だよ、アレク。そんな背伸びなんてしなくていいだろ?」
「だって、いくら歳を取ってもフォレスト君には永遠に追いつけないじゃない」
「誰でもいつかは大人にならなきゃならないんだから、一足飛びになろうとしなくても、……待つよ」
決定的と呼ぶには曖昧なフォレストの言葉を、アレクサンドラはきちんと理解した。
おずおずと顔を上げるアレクサンドラの額にフォスレトは唇で触れる。
生意気な、でも守ってやりたい大切な子供がフォレストの中で一人の少女になったのはほんの
少し前の事だった。幼い頃から大人である事を強要されてきたアレクサンドラに無理をさせる気は、
フォレストには毛頭もない。この言葉だって、アレクサンドラのこの突飛な行動がなければ、きっと
告げはしなかっただろうけれど。
「ちゃんと好きだよ、アクレ」
「……うん」
こつんと額を合わせると、アレクサンドラは花が綻ぶ様に柔らかく笑う。
ふと思い出してフォレストはアレクサンドラに着せているシャツの胸元のポケットから、小さな包みを
抜き出した。
「ほら、誕生日プレゼント」
「覚えててくれたの? 先刻忘れてたじゃない」
「明日会ったら渡そうと思ってたんだよ」
「開けてもいい?」
「あぁ」
不燃織の袋の口を閉じていたリボンを解いて、中身を手の平の上に出したアレクサンドラは小さく声を上げた。
「ペンダントっ。石まで付いてる! どうしたの、フォレスト君。毎年、お菓子やぬいぐるみだったのに」
「だから、十八歳だろ?」
「うんっ」
嬉しいと素直に笑うアレクサンドラからシルバーのペンダントを受け取ると、四苦八苦しながらも華奢な
首に付けてやる。アレクサンドラの白い肌にその青みがかった乳白色の石はよく映えた。
「この石、奇麗ね」
「昔あげたものと同じだよ」
きょとんとした表情になったアレクサンドラに笑いながら、フォレストは窓の外を見た。
丁度窓枠に半分掛っている、黄金の月。
「ムーンストーン。……これはレンタルじゃないからな」
「明日返さなきゃいけないのかと思ったわ」
可愛くない口を利く目の前の少女が世界で一番可愛い相手で、それは多分一生ずっと変わらないのだろうと
フォレストは思う。
無意識に伸ばした手が柔らかい頬に触れる。細い髪の感触と間近で見る至妙なアレクサンドラの顔。
床に伸びていた二人の影が重なった。瞼を下ろす寸前に見えたのは、押さないアレクサンドラが何故だか
赤い頭巾を被っている姿だった。
この先もアレクサンドラに振り回される幸せな人生がフォレストには待っているのだろう。
振り回すアレクサンドラにも同じだけの幸せな人生がある筈だ。
これが童話ならば、〆の台詞は決まっている。
『こうして狼と赤ずきんは一生仲良く暮らしましたとさ。めでたしめでたし。』
お目汚しですみませんでした。
以上です。
よかった!よかったんだ…けど
肝心のいいところの台詞であれはないだろう
思わず吹いてしまったw
わざとだったら天才だ
318 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 17:15:40 ID:utAiQ8hO
アクレwはびっくりしたけどとっても良かったです!
イメージ違うけどごめん
「なんでこんなに多いんだよ!」
「今年は少ないくらいよ。不景気なのね」
今夜はクリスマス・イブ。
例によってへっぽこ探偵をひきつれて退屈なパーティに出席した後、
ついでにもう一仕事と、会社に届いたプレゼントの山を、
フォレスト君の車に積んで自宅まで運ばせたのだった。
「それはそこに置いといていいわ。こっちの山は私の部屋へ運んで」
「…おい。俺一人でやれってのか。いつもたくさんいるメイドさんたちはどうした」
「イブの夜よ。みんな出かけてるわ。いるのは警備員くらいよ」
「俺だってイブの夜に…」
「なんか予定でもあった?」
「…ねえよ。」
「じゃあお願い。依頼料はずむから」
「本当だろうな」
「クリスマスだもの。それぐらいはね.。まあ、働き方次第だけど」
軽口をたたきあいながら、たくさんの荷物のせいで危なっかしい足取りのフォレスト君を
自室へ案内する。
ブツクサいいながらも、フォレスト君はテキパキと仕事を片付けてくれた。
「どうもありがとう。お茶いれるわね。あと、もうひとつ頼みたいことがあるの。いいわよね、どうせ予定ないんでしょう?」
フォレスト君の返事を聞く前に、私は部屋を出た。
上着を脱ぎ、ネクタイも外してしまったフォレスト君は、私が特別にいれてあげたお茶を仏頂面で飲んでいた。
私が次から次へ仕事を言いつけるのが面白くないんだろう。
(変わらないなあ)
フォレスト君に久々に会った人は皆驚く。出会ってから8年、フォレスト君の外見は
ほとんど変わっていなかった。
お前のせいで寿命が縮みっぱなしだとか、やつれてボロボロだとか文句を言う割に、
もともと童顔なのも手伝って、まだ20代と言っても通用するほど若々しい。
それが、私には嬉しかった。
永遠に埋まらない、私とフォレスト君の年の差。
だけど、なんだかフォレスト君が、待っていてくれてるんじゃないかという気がして。
私が、大人になるのを。
お茶を飲み干しても、アレクは次の用事を言いつけてこなかった。
手の中で空のカップを弄びながら、視線は棚の上に注がれている。
振り返らなくても、何を見ているかわかる。―親父さんと二人で写っている、幼いころの写真。
今年こそは、クリスマスをパパと過ごせる。毎年アレクはそう願ってるはずだ。
しかし今年もその願いは叶わなかった。
それで、ひとりでいたくなくて俺を引き留めているのかもしれない。
(それなら、ヘザーさんの招待を受ければいいのに… ったく)
口に出したら依頼料を減らされるのがわかっているので、俺は懸命にもそれは言わなかった。
「アレク」
「なあに?フォレスト君」
「…外に何か食べに出るか?」
貧弱な財布の中身を少なからず気にしながら、俺は一応誘いかける。
仕事がないなら帰るぞ、という立ち上がるには、あまりにもアレクの姿は寂しそうで。
「今からじゃ、有名店は満杯よ」
「俺が有名店に連れてけるわけないだろ」
「ま、フォレスト君が良く行くマクドナルドだって有名店よね」
返ってきたいつもの生意気な物言いにホッとしつつ、俺は立ち上がりながらアレクをどこに連れていくべきか考えていた。
暖かくて、旨いものが食えて、あまり下品ではないところ…
「フォレスト君」
「ん?」
続いて立ち上がったアレクが、まっすぐにこちらを見ている。
「あなたは知らないだろうけど、いいニュースがあるのよ。教えて欲しい?」
「いいニュース? どうせ俺にとってはいいニュースじゃないんだろ」
「さあ、どうかしらね」
「いったいなんだよ」
「フォレスト君」
「ああ。」
「私、18歳になったのよ」
「知ってるよ。今年贈った満月もきれいだったろ?」
「ええ。―だから、私に手を出しても、もう犯罪じゃないのよ」
…ここで言い返せなかったのが、俺の敗因だと思う。
思わず絶句してしまった俺の目に映っていたのは、あの小生意気な少女ではなかった。
出会って8年。
アレクはあっという間に成長した。
髪は腰まで伸び、背だってもう俺より少し低いくらいだ。
あの嫌味で大人びた物言いも、もう違和感がない。
目の前に立つのは、パーティ用にドレスアップした、すらりとした姿の美しい女性。
意志の強そうな瞳が、まっすぐに俺を見ている。
一瞬の戸惑い。
俺が我にかえる前に、アレクが胸に飛び込んできた。
これは俺の依頼主。口うるさいボス。大金持ちの天才少女。
そして、18になったばかりの…子供。10以上年下の、子供。
さっきの言葉がどういう意味なのか、この行為がどんな意味を持つのか、
わからないわけじゃない。
だが、抱きしめ返すわけにはいかない。
そう自分に言い聞かせているにもかかわらず、
俺の腕は意志に反したように自然ともちあがり、彼女をかたく抱きしめていた。
「…っ フォレスト君…」
苦しそうに身じろぎし、アレクが俺を見上げた。
もう、あの小さなアレクサンドラではない。
彼女の表情も、腕の中の華奢な体も。
彼女が一人前の女性であることを、声高に主張していて。
(降参だ…)
わずかに身をかがめると、アレクの長いまつげがゆっくりと伏せられた。
唇を重ねながら、俺は細く残った理性の糸が音もなく消えていくのを感じた。
「ひゃ…ん」
うーっ、声が出ちゃう。
何度も何度もキスを交わし、舌を絡めるのも、
フォレスト君が私の服を1枚1枚脱がせるのも、全然恥ずかしくなかったのに。
「ゃあん」
フォレスト君の唇を体のあちこちに感じるたび、自分でも聞いたことがないような声が出るのが
恥ずかしくってしょうがない。
でも、私の声を聞いたフォレスト君の表情を見たら、そんな思いも消えた。
「あ…ぁ…」
だんだん体が熱くなり、頭がぼうっとしてくる。表面ではなく、奥から湧き上がるような熱さ。
彼の指が私の中心にのび、小さな水音をたてると、甘い痺れが体中に満ちてきた。
やがフォレスト君の体が私にのしかかってきて、ゆっくりと私の中に入り込んできたとき、
私を貫いていたのは、足の間の痛みと、胸が痛くなるほどの幸福感だった。
フォレスト君を、私のものにしたかったわけじゃない。
彼はいつだって私のものだった。少なくとも、私が雇ってる間は。
常に私の傍で、私のことを考えてくれた、パパ以外の、唯一の人。
18になるまでの間、素敵な男の人にもいっぱい出会った。言い寄ってきた人もいれば、良い友人になった人もいる。
だけど、私に明かりを与えてくれたのは、このお人好しの私立探偵だけだった。
フォレスト君を、私のものにしたかったわけじゃない。
私を、フォレスト君のものにしてほしかったのだ―
「フォレスト君」
「ん?」
けだるい休息の中、ぴったりくっついたアレクの体から、直に熱が伝わってくる。
「なんか、私に言うことあるんじゃないの?」
腕の中にいても、彼女の口調はいつもと変わらない。
いや、いつもの調子を取り戻した、と言うべきか。
「来年のクリスマスに言ってやるよ」
「じゃあ、依頼料は次のクリスマスまでお預けね」
「おい」
本気でやりそうな口調に少々焦りながら、アレクの望む言葉の代わりに
たくさんのキスを落とした。
「ん…」
息苦しいのか、鼻にかかった声をもらすアレクに、さらに深いキスを。
首に回された細い腕を、体の下の柔らかな体を。
こんなに愛しいと感じる時がくるなんて、予想もしていなかった。
「フォレスト君」
「ん…」
「メリー・クリスマス」
「…メリー・クリスマス」
やがてすやすやと寝息をたてはじめたアレクの体を、しっかりと抱きしめて、
いつしか、俺自身も眠りに落ちて行った。
…イブの夜は、ゆっくりと更けてゆく。
以上です。あんまエロくなくてスマソ。
327 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 22:10:23 ID:7xDYYjHn
328 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 15:58:19 ID:Vy5PvSZm
おまけ以来アレクとフォレスト君人気だなw
あの書き下ろし効果は絶大だね〜。
やっぱり萌える。
かなりGJです!
ほしゅ
331 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/18(土) 13:34:18 ID:77CU9wRF
hoshu
332 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/27(月) 21:06:51 ID:ynzFTpBG
保守
マダミスもよろしく〜!
へヴンも待ってる
335 :
名無しさん@ピンキー:2008/11/17(月) 20:40:05 ID:YYb40dus
保守
保守
ほす
338 :
名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 20:49:29 ID:nq+kNbou
保守
保守ですよ
340 :
名無しさん@ピンキー:2008/12/27(土) 14:38:49 ID:RpLUEYt0
保守あげ
年末保守
2009年も神さまの降臨を
お待ちしています!
ニューイヤー保守
今年も神様よろしく!
マダミスで催眠術の話あったよね。
グレースが十歳くらいの子供に戻っちゃう話。
あれ、記憶が戻らなかったら、
グラハムはグレースをどう扱っただろう?
狼の二人みたいな感じになるのかな。
344 :
名無しさん@ピンキー:2009/01/21(水) 21:14:38 ID:XBsuCG9Y
「心だけ元に戻っても 時間だけはどうにもならない
誰にも戻せないんだよ」
グラハムは優しげな笑みを浮かべたまま、包むようにグレースの乳房に触れた。
「君はもう子供じゃない」
いかんグラハムが鬼畜になってしまう
あんまり鬼畜なのはいやん
ちょっと意地悪ぐらいなのがいいな
エヴァ姫ほしい…
347 :
名無しさん@ピンキー:2009/02/13(金) 22:07:15 ID:kbFKZ1Ux
今更狼の文庫書き下ろし読んだ。
萌えまくったハァハァ
でも原作でも二人が恋愛関係に変わるとこも見たかったね
そりゃもう見たい!
…けど、遠藤漫画で実際にそんなあからさまなシーンは
期待しちゃいけないっていうか、マダミスとか狼書き下ろしとか
描かれそうで描かれないあのじれったさが何とも言えず好きな自分としては
このスレみたいに脳内補完するくらいがちょうどいいのかなって感じ
全部見せちゃうとつまんないでしょって具合に
マダミスかエヴァが読みたいです
マダミスが投下される夢を見た…
正夢になればいいなと思いつつ保守
某所での会話
エヴァ「ひと思いに、頼む…」
オーソン「それじゃ物足りないでしょう?」
「うっ…いつそんな技を覚えたのだ」
「鍛えてくれる人がいましたからね」
「…(こそっと)室長か」
「…執務室は全員そのようですね」
「…そちも好きものよのう」
「…私はもの好きのほうだと思いますが」
「…」
「…」
「貴様…」
「ああ、その顔が見たかったんですよ」
エロいな
と、見せかけて麻雀かなんかのシーンのような気もしてきた
遠藤漫画ならそれもありだ
グレース編とアレク編も読みたい
保守
保守
たまにはage
エヴァ「ずるいぞオーソン、自分ばかり上手くなるなどと」
オーソン「姫は最短期間で学ぶのがお好きですからね、地道なのは向かないでしょう」
「…」
「…」
「…ちっ」
「いい顔ですね」
さては今度は花札勝負だなw
「それにしてもオーソン、なにをひとりで踏ん張っている」
「なに呑気なことを……こんなの協力作業ですよ」
「ふむ。なるほど…………では、保守」
保守しとこう
361 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 23:56:33 ID:VwbvGiS1
保守
ほす
ええい、コミックス全部もってるのに、このスレみてたらアレクのその後が読みたくて文庫版も注文しちゃったじゃないか
いいことだ
このスレも役に立ったな
素晴らしい
フォレスト君はアレクが何歳で手をだして何歳で結婚したんだろうな
ジムやオーナーがあまり老けてなかったからわりとすぐか
アメリカの場合、結婚できる年齢は州によって違うみたいだが
ニューヨーク州の場合は18歳からみたいだから、それまで待ったのかな
「よし、明日結婚するぞ」
「ちょ、待ってフォレスト君!
順番がおかしいわ、私たちまだキスもしたことないのよ?」
「当たり前だ、未成年のお前に手なんか出せるか。
誰にも文句を言われずにお前とキスしたいから結婚しよう。
納得したか?」
「……キスだけでいいの?」
こんな感じで受信した
むしろアレクのほうが積極的だった説を推す
保守
370 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 22:28:03 ID:PFtW5Zpu
保守あげ
「オーソン……」
「姫、名前を呼んで……」
「ア……ア、ア、ア……アルフォート」
「姫、それは先日、日本の皇太子からいただいたお菓子です」
「いや、なんだその……お前を名前で呼ぶのは文庫版ぶりなんで、つい舌がもつれてな…」
「なんならその活舌、紅天女を演じられるようになるくらい直してさしあげましょうか?」
ほす
「ひ……姫」
「ばかもの。こんなときは……名を呼ぶもの…だ」
「え……エ……エヴァン…」
「エヴァンゲリオン、と続けたらお前が想像出来ることの180倍酷い目に遭わせるぞ」
「…………」
「…………」
「…………」
「何故、黙る」
「姫、通販のおもちゃを買うのはもうやめたらいかがですか」
「あなたの媚薬は効かないのだから試してみるくらいいいでしょう?」
「使わなければどんな薬もおもちゃもおなじですよ」
「自分が使うよりしてもらうのが好きだからしかたがないじゃないの」
「…////」
オークションで売りに出されるグラハムと、なりゆきで結局買いとってしまう
グレース。
そして二人は…。
という電波を受信した。
376 :
保守コネタ:2009/08/18(火) 14:42:15 ID:Opyvd387
月光が射すバルコニーで、二人は唇を重ねた。
優しいキスが徐々に、求めあい奪い尽くす炎に変わっていく。
「……ん……グラハム……」
「なんですか?グレース」
上着から背中に手を入れたグラハムは、ブラのホックを巧みに外し、上質の絹のよう
な肌触りを楽しんだ。
グレースの感じる所をあます所なく見つけようと、手が上半身を探索する。
「……ぁっ……こんな所で、誰かに見られたらっ……」
胸の頂を摘まれのけ反る。
グラハムの腿がグレースの膝を割り、腰を引き寄せられると、熱い高まりが下腹部に押し
つけられた。
「大丈夫、誰もいませんよ……もう少し、足を広げて……」
「ダメよ……月が見てる……」
次の瞬間、グレースは肩を掴まれ、まじまじと見つめられた。
「あなたは本気で言ってるんですか?!月が見てると!」
それから小一時間ほど、グレースはグラハムから天文学の蘊蓄を聞かされるハメになる
のであった。
エロパロ板なのにエロより笑いが先に来てしまうのがENDO流w
内心グラハムさんだってそういう野暮なことは言わないと
ツッコミつつ
>>376 GJ
378 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 11:48:50 ID:k1+M9+NH
保守あげ
これ、お互いの台詞が逆でもいけそうな気がするなー
こういうの好きだわ
エロなのにどこかコメディっぽくなるのはさすが遠藤漫画といえようw
380 :
保守用:2009/09/05(土) 00:59:57 ID:nHOUAioo
その爆弾発言は、城壁を壊した大砲よりも強烈だった。
「オーソン。おまえにこれから一週間、夜伽を申しつける」
ちゅどーん。
オーソンの頭は、漂白剤に漬け置かれた衣類のように真っ白になった。
「わかりました。……むか〜し昔あるところに、おじいさんとおばあ…」
「そっちの伽じゃない。男女間のプロレス、はっけよいよい48手、夜のお菓子うなぎパイを
必要とするスポーツ、の方の夜伽だ」
嘘だ。誰か嘘だと言ってくれ。
オーソンは心の中で呻いた。
確かに時々エヴァンジェリンは、変な小娘の世界チャンピオンに君臨するほど突拍子もな
い事をしでかす。
だが少なくとも、性的な面では慎み深いはずだ。
「姫……。一体どこから、そんな突拍子もない考えが出て来たんですか」
「うむ。先日、大学時代の友人の結婚式に出たであろう?その友人が旦那様を捕まえる
のに、ベッドで誘惑したと申しておってな。これだ!と思ったのだ。顔の良い王子を誘惑
するために、処女である必要もあるまい。既成事実を作ってしまえばこっちのものだ!」
エヴァンジェリンはこぶしを握りしめ、仁王立ちで高らかに笑っている。
オーソンの頭はズキズキと痛みを訴え始めた。
このあっけらかんとした姫に、どうしてSEXを教えられよう。
どんな事をするか、知っているかどうかも怪しいと言うのに。
「他の者に教わったらいかがでしょう?」
コホン、とせきばらいして、オーソンは逃げを打ってみた。
この場合、忘れてくれるか諦めてくれるのが、一番理想的なのだが。
「執務室の中で未婚なのが、おまえとクラウゼとイエーガーだけなんだ。で、年功序列で
先に二人に持ちかけてみたのだが、イエーガーは翌日いきなり入籍し、クラウゼは胃炎
で入院。……結局お前しか残らなかった、という」
「あれは、姫のせいだったんですかっっ!!」
執務室は色々な職務を兼任している。一人欠けただけでも仕事量がふえるのだ。
クラウゼの胃炎とイエーガーのハネムーンで、執務室はてんやわんやだった。
眩暈を覚え、がっくり崩れたオーソンが、かろうじて机に寄りかかった。
「ワルツのステップすら覚えられない姫が、性技のノウハウを覚えられるとは思えません。
まだ、アルプスアイベックスにフォックストロットを教えた方が楽そうじゃないですか……」
「失礼な!努力と根性すらあれば、なんとかなるであろう?」
「姫……あなたは、SEXのどんな事をご存じなんですか?……多少なりともご経験は?」
「うむ。まったくない!」
はっきりきっぱり答えるエヴァンジェリンを横目に、オーソンは神を呪いたくなってきた。
オートリバースの不幸は、伝染するものなのだろうか。
だいたい、初めての経験を愛情なしで済まそうなんて、血迷ったとしか思えない。
いっそのこと、いきなり押さえ付けて、この場で暴力的に奪ってしまおうか。
そうすれば、自分がいかに考えなしな事をしでかしたのか思い至るかも。
オーソンの脳裏に一瞬、目の前の机上に押し倒され、あられもない恰好で泣き叫んでいる
エヴァンジェリンの姿が浮かんだ。
そんな妄想をしてしまった自分に、吐き気を覚える。
姫が泣く姿など見たくない。
能天気ににこにこと笑っているエヴァンジェリンを見て、自分の胃にも穴が空きそうだと
思い、オーソンからため息がもれた。
ウオォォォォオ!!!!!
待ってましたっ!!
乙でございます、そのままエロに、エロをどうかエロを我々にぃぃぃい!!!!!!!!!
>>380 乙!
翌日いきなり入籍したイエーガーに吹いたw
保守