900 :
喜空その3:2007/02/21(水) 01:48:49 ID:3SxjOU6H
喜助は、かすかに残るかさぶたをはがすように、空鶴の心を問う。
どうしようもないほど、不快な行為だった。むかむかする。
他人からしてみれば腕を失ったことを後悔しているように
見えているのかとおもうと気分が悪い。
いつか腕を欲しがってしまいそうな弱い自分にも腹がたつ。
喜助なら、腕を再生することは可能だ。
彼の技術の高さは知っている。
空鶴が一言欲しいといえば、喜助は腕を与えてくれるだろう。
さも簡単に。そのことが、一番厭だった。
自己嫌悪の混じったため息を吐く。こんなくだらないことから
さっさと頭をきりかえようと、空鶴はおもった。
腕をのばして蜜柑をひろう。座布団のよこにひとつ、ちょうどよく
ころがっていた。
それもむきましょうか、と訊ねる喜助を無視して、空鶴は蜜柑に
爪をたてる。指に、蜜柑の汁をかんじた。
蜜柑は空鶴のおもうままにならない。格闘するもぐちゃぐちゃと
つぶれかけた蜜柑で手がぬれただけだった。
「ほら、やっぱり、」
喜助の呆れた様子の声に、血が上った。
空鶴は手のなかの蜜柑を喜助に力いっぱい投げつける。
蜜柑は喜助の胸元にあたると、汁をしたたらせながら畳のうえに落ちた。
「だからなんだっていうんだ」
空鶴はまっすぐに喜助をにらみつけながら、吐き捨てるように言った。
感情にまかせて空鶴は、喜助の胸倉をつかみあげる。
「俺が、滑稽か」
喜助はくびを傾げる。そして笑った。
「滑稽ですよ」
901 :
喜空その4:2007/02/21(水) 01:50:47 ID:3SxjOU6H
空鶴の怒りで震える腕を、喜助がつかんだ。あたたかい指だった。
笑ったままの表情とは裏腹に、指先には力がこもっていた。
空鶴は痛みに顔をしかめる。
「空鶴サンはぁ、」
喜助は、間延びした口調でゆっくりと喋った。
「自分がよわいと知っているのに、つよいふりをするんスね」
急に喜助が腕をつきはなした。均衡していた力場がうしなわれ、
空鶴は姿勢を崩す。腕をつこうにも、腕は、なかった。
仰向けにころがる。畳にころがっていた蜜柑が、背中で潰れる。
室内の蜜柑の匂いが、一段と濃くなった。
喜助は馬乗りの姿勢で空鶴にまたがると、さも自然にくびへと手をのばした。
おちた蜜柑を拾いあげるかのように、なんの感情もこもっていなかった。
「アタシはあんたをこのまま殺すことだってできるんスよ」
喜助の瞳に表情はみえない。ただ、空鶴の顔がうつっているだけだった。
夜。闇。そういったものよりも暗い。泥だらけの沼ににている。
そうだ沼ににているんだ、と空鶴はおもった。
落ちたら泥に足をとられて、もがいてももがいても
深く沈んでいくだけの底なし沼。
意図的にゆっくりと空鶴は目を閉じる。さえぎってしまいたかった。
目をしばたかせる空気だとか、喜助の不自然にわらった顔だとか
彼の瞳にうつる自分だとか、わけのわからない恐怖心とか。
蜜柑の、甘いあまい匂いだとか。
そういったものすべてを、さえぎりたかった。
自分の呼吸がきこえる。やけにおおきな音だ。視覚をさえぎったぶんだけ
他の部分が鋭敏になったからだと理解はしていても、不思議な気がした。
息を吸う。息を吐く。
そのたびに咽がうごいて、皮膚の上にある喜助の指の存在を感じた。
空鶴よりも体温のたかい、ごつごつと骨ばった男という生き物のおおきな手。
902 :
喜空その5:2007/02/21(水) 01:52:31 ID:3SxjOU6H
このまま殺されるのだろうか。喜助は殺すのだろうか。
妙に頭は冷静だった。
「あんたのつよいところが、きらいだ」
喜助の声が耳元で聞こえた。そのまじめな声色に驚いて目をあける。
さっきとかわらない暗い瞳。胡散臭いわらい顔も同じだった。
なのにどこか寂しげだった。泣きそうだ、と空鶴はおもう。
どうしてこんな顔をしているのだろう。
喜助はわらっている。けれど空鶴には、泣くのを我慢している
ようにしかみえなかった。
腕をのばして、喜助のまぶたにふれる。睫がかすかにふるえた。
「俺を殺さないのか」
「殺されたいンですか」
「殺されてやってもいいぜ」
おどけた口調で言うと、喜助は眉根をひそめた。
くびから手をはなして顔のまえにある空鶴の手をにぎる。
「ねえ腕が欲しい、って言ってくださいよ」
「いらねえ」
べたつく空鶴の手に、険しい顔をしたままの喜助が口でふれた。
蜜柑の汁をなめとるように、指先、てのひら、てくびと、ふれていく。
くすぐったさに空鶴は身をよじらせる。
やめろ、と静止の言葉を言いかけた空鶴の口を喜助の唇がふさいだ。
喜助の唇は、ひどくやわらかくて、蜜柑の味がしていた。
ねっとりとした喜助の舌が、むりやり奥まではいってくる。
「……んっ、」
空鶴の意図に反して、自然に声がもれた。
まぶたの裏、眼球のもっと奥のあたりがじんわりと眩しい。
熱。喜助の熱。まぶたの裏のまぶしいオレンジ色の光がにじんだ。喜助の髪と
おなじあざやかな暖色だった。
903 :
喜空その6:2007/02/21(水) 01:53:58 ID:3SxjOU6H
「そうやって殺されることも、自分の意思か」
唐突に唇がはなれていく。同時に、光は残滓となってかききえていった。
「あんた、アタシが抱きたいって言ったらどうするんスか」
「抱かれてやるよ」
喜助がうなだれるように、胸に顔をうずめた。やっぱり空鶴には喜助が
泣いているようにしかみえなかった。迷子のこどもみたいだった。
無意識に空鶴は喜助に右腕をのばしかける。抱きしめてやりたかった。
けれど、そこに腕はない。
もう一方の手は喜助がにぎったままで、動かすこともできない。
空鶴は抱きしめるかわりに、すこし苦笑して、そのまま喜助の耳元で
ヤろうぜ、とささやいた。
蜜柑の匂いは、いつのまにかしなくなっていた。
---------
おわり
うまい ありがとう
携帯からみかん臭がしたお
下げんの忘れた
>>898 よかったらタイトルつけて
タイトルは大切だ
これはいいみかん小説ですね
空鶴が可愛いのに格好良かったです
何とも切なくなる喜空をGJでした!
909 :
898:2007/02/21(水) 23:55:16 ID:3SxjOU6H
>>906 シャーマンキング的な意味合いをこめて「蜜柑」でいいかと。
つーか変な改行してるから、携帯からだとみにくくてごめんね。
>>898 GJ!!!よかった!
こーいうとらえ方から書くといいね、空鶴
てか喜助のほだし方がうまい!!あいつのキャラはこういうとこで役に立つんだな・・
うまいなぁ…未完と言っても上手く濁されてて後味悪くない!GJ!
地味に人いないね。
そういえばアイコラさんはどうしたんだろ?
アイコラーーーーーーーー!!!
アイコライラネ
ノイトラテスラコンビと女の子が戦ってほしい
普通にエロがみたい
空鶴はSEXの時は常に上のような気がする
姉御だしね
空鶴が受け身って想像しづらいが
百合ならガンガンに攻めてほしいな
攻められると意外に弱かったりしたら萌えるんだが<空鶴
うろたえる姉御萌え…
元々声が高いキャラだしな
海燕の前では妹キャラになったりしてくれたら…
床の中ではMだったりしたら…
>>922!!!!
そうか!だから夜一は浮竹が(ずっと前のカラブリで)縛られてた時
”お楽しみ中”と判断したんだ!!
夜一さんの性格からして普通だと思うが…
浮竹といえば、浮清が好きなんだけど同好の人をほとんど見かけない
だから以前投下があった時は嬉しかったよ
浮清いいね。清音は献身的に頑張ってくれそう。
>>924 刑軍的に考えて縛り=拷問じゃないか?
俺自身いつSMの何たるかを知ったか思い出せんが。
ここに来ると、とりあえずギン乱注文したくなる
だれか職人居ないですか
ノイトラ×織姫陵辱モノマダー?
>>677 >>685 >>690 >>725 >>734 >>737 アイコラのムーブメントは若い男性死神に
いや尸魂界に多大な文化的激流を巻き起こした。
それこそ特に若い男子死神達の血と汗と涙
そして汁を絞り出したと言っても過言ではない。
でも一番多く流されたのは血の様な気がする…。
俺、檜佐木修兵が熱狂的ムーブメントに巻き込まれて大けがをした時の話だ。
詳しくは上の690を参考にしてくれ。
俺は謎の巨大虚に襲われて全身複雑骨折という大けがを追った
表向きはそういう事になっている。
その巨大虚は幾ら探しても見つからなかった。
でも事実は口が裂けても言えない。
市丸隊長に破道の八十番台を手加減無しでぶつけられたなんて
それも乱菊さんのおっぱいが発端だなんて、死んでも言えない
でもいい事もある。入院中の俺に乱菊さんが見舞いにきてくれたのだ。
「修平、大丈夫?手足もギプスで使えないのね」
俺の為に悲しそうな顔をする乱菊さん、やっぱり綺麗だ。そしておっぱいv
いえ、いいんですよ、乱菊さんが見舞いにきてくれただけで俺、凄く嬉しいです。
「副隊長クラスにこんな大けがさせる巨大虚なのにまだ見つからないのよ」
ええ、たぶん永遠に見つからないと思います。狐の化け物ですから。
「あら、枕元の花瓶の花しおれそうだわ、水取り替えてきてあげる」
乱菊さんはそういうと(女らしい心使いだなあ)俺の枕元にある
花瓶を取ろうと手を伸ばした。でも微妙な位置にあるらしく乱菊さんは
俺の顔の上まで上半身を延ばした。
俺の顔の上には神々の谷間が!柔らかそうで、でも弾力ありそうで
白くてまる〜いおっぱいが間近に!俺、今なら死んでもいいかも。
「う〜ん、届かないわ」
乱菊さん、がんばってください!
そしてすべって俺の顔の上に倒れ込んでください!
肋骨の二、三本折れたって平気です。そのおっぱいに顔を埋められるなら
近くだといい匂いだ、乱菊さん。おっきなおっぱい見てるだけでもさいこーなのに。
俺もおっきしちゃいそうv
「きゃっ」
乱菊さんが足を滑らせた!ωωωωωω
今こそ俺の顔は神々の谷間に深々と……アレ?
「乱菊、危ないやろ、それじゃ檜佐木君の顔に水ぶちまけてまうわ」
鬼が来た……。どうせそんな事だろうと思ったんだ。
俺を入院六ヶ月に追い込んだ化け物が、乱菊さんの腰に手を回してささえてますよ。
「あら、市丸隊長がどうしてここに?」
「ん?隊が違うても副隊長クラスが大けがしたんやろ?
話聞いとこおもて。あ、僕はプライベートで来とるんやからギンでええよ」
俺、泣いていいかな。
「僕も花持ってきたし、花瓶取ったるから、乱菊水かえてきて」
「う、うん、ありがと」
そして俺の視界は市丸隊長の肋骨が浮いてみえるぺったんこの胸板に
男臭いよ、あれだ男子更衣室のあの匂いだよ、助けて、乱菊さんのいい匂い
そしておっきなおっぱいを返してくれーっ!
俺は男の胸板にハァハァする趣味は無いんだっ。
「水入った花瓶取るってけっこうしんどいな。
あ、そこに僕のもってきた花もあるから生けといて」
「あんた、また仕事中抜け出してきたでしょ?」
「ええやん、中休みくらい外出たって」
…仲よさそうですね。俺の存在忘れてませんか?
市丸隊長の持ってきた花は白百合、葬式ですか?
あ、乱菊さんがお花生けてくるって席外しちゃいましたよ。
乱菊さんを笑顔で見送った市丸隊長は
俺にはいつもの不気味な笑顔に戻りましたよ。
「お加減いかが?檜佐木君」
おかげさまで複雑骨折手足ギプスで動けませんよ。
「僕なあ、入院で暇な檜佐木君にと思て、ええもん差し入れにきたんよ。
ほれ見てみ」
市丸隊長が懐から取り出したのは洋物金髪巨乳のエロ本だった。
鬼だ、つくづくこの人は底意地の悪い鬼だった。
俺、両手使えないのに、それを見てどうしろと言うんだろう。
顔色が悪くなった俺に市丸隊長は笑顔で言う。
「看護師さんに頼んだらセクハラんなるやろか、なるやろな〜」
ならそんなもの持ってこないでください!
「乱菊以外のおっぱいやったらいっくらでもあげるで、感謝し。
でなあ、僕最近九十番台の破道にも挑戦しとんの。
けっこういい線いってると思うわ、自分でも」
それは乱菊さんに群がるおっぱい星人を倒す為ですか?
でも怖くて聞けない、市丸隊長の眼がいぢわる〜く光る。
「お花生けてきたわよ、て何、あたしの話してたの?」
よかったおっぱいの天女が戻ってきてくれた。
花瓶の花より綺麗な笑顔。俺もういぢわるな狐は嫌です。
「あんなあ、檜佐木君おっきなおっぱい大好きなんやて。
だから僕、今日はええもんもってきてん」
手に持ったエロ本を降って乱菊さんに微笑む市丸隊長。
「いやあねえ、そんなもの差し入れて。
でも男の事情ってのもあるのかしら…」
いやに物わかりのいい乱菊さん。唇を噛み締めて辱めに耐える俺。
違う、違うんです乱菊さん、俺は乱菊さんのおっぱいだけじゃなくて…
「でなあ、檜佐木君、乱菊のおっぱいが大好きなんやて」
ああああーーーーーーっ!
「でも勘違いせんとき?”乱菊の”おっぱいが好きなんやのうて
おっぱい大きかったら誰でもええねん、そやろ?檜佐木君?」
うううっ。
「そうなの修平」
乱菊さんの困った様なちょっと嫌そうな顔。
「そうやろ?だからこれでええねんな?」
横には鬼の様な顔の狐が一匹。
「…はい」
「ほらなあ、僕の差し入れ役にたつんや」
俺は、俺は九十番台の破道怖さに日よってしまった……。
おっぱい星人の誇りを曲げてしまったのだ。
「でもおっぱい星人っていったらあんたもそうなんじゃないの?」
「い〜や、違う。全然、違う。
僕は乱菊のおっぱいがたまたま大きゅうなったから好きになっただけや。
僕はおっぱいが好きなんやない、乱菊自身が好きなんや。
乱菊からおっぱいがこぼれてまうても、僕は君を愛する自信がある!」
「いや〜ね〜、こんなトコでまたふざけて」
あの〜俺の事はナッシングですか?市丸隊長のおふざけにちょっと
嬉しそうな乱菊さんに、心も身体も傷だらけです……。
「だから再三言っとるやろが。僕のお嫁さんになってぇて。
僕、その為に出世街道ばく進したんやで?
また一緒にくらそ?あの頃もそれなりに楽しかったけど
大人になったら違う楽しみあるやん、特に夜」
「いや〜よ、あたし仕事したいし、夜が楽しいのあんただけじゃない。
あんた加減ってもの知らないから嫌よ。一緒になったりしたら
腰がたがたになるわ」
「え〜乱菊やてもっと〜せがむやん、僕ばっかやらしい男なん?
僕は毎日乱菊に愛を注ぎ込みたいの」
「昼間っから卑猥な事ぬかすと殴るわよ。もう帰るわ。じゃね修平」
「え〜乱菊まってえな、じゃ檜佐木君、養生しいや」
俺の枕元にエロ本を無造作に置くと、市丸隊長は乱菊さんの後を追いかけて行った。
忘れ去られた俺は悲しくエロ本を見るしかなかった。
看護師さん達にはしばらく「サイテー」という顔で見られた。
アイコラキタ!
アイコラみてから寝れるなんてしあわせ
938 :
ikenuma:2007/03/05(月) 16:14:04 ID:7chkaA0L
きもいすれだな。
だから大好きなんだ。
アイコラGJ!
>>929GJ!!
アイコラネタ好きなんだけど、乱菊以外の女死神が不憫に思える。
複数の職人が書いてるみたいだし、今度書く人もし良かったら
他の女の子の事も気に掛けてくれると嬉しい・・・
>>940 いや乱菊が一番の被害者なんじゃないかとw
平隊員にはネムとか七緒も人気ありそう
可哀想かな…乱菊さんが一番しっくり来るから好きだけどな
他の死神なら七緒がいいと言ってみる
卯ノ花隊長の事も少しでいいから思い出してあげてください(´・ω・`)
乱菊姉さんだと、ばれてもあっさり笑い飛ばしてくれそうだけど
他の人だと何だか妙に後ろめたいというか冗談にならないというか
本当に可哀相になってきてネタにしづらい。
>>942 ネムの場合はコラじゃなくて本物のハメ写真が出回ってる気がする。
勿論出元は技術開発局。売り上げは研究費に回される。
そしてそのうちネムそのものを商品にすることを思いつくマユリ様であった…。
アイコラってアイドルコラージュのことだと思って
なんで小説板で?と思った俺が来ましたよ
アイコラ=俺×キャラのことだったのか…
>>947 いやいや、ここにおけるアイドルとは女性死神だからアイドルコラージュでおk
シリーズ最初から読んだ?
>>947 どのへんをどう見てそう思ったんだ……
ところでそろそろ次スレの季節だな。