【貴方が居なければ】依存スレッド【生きられない】

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1名無しさん@ピンキー
・身体的、精神的、あるいは金銭や社会的地位など
 ありとあらゆる”対人関係”における依存関係について小説を書いてみるスレッドです
・依存の程度は「貴方が居なければ生きられない」から「居たほうがいいかな?」ぐらいまで何でもOK
・対人ではなく対物でもOK
・男→女、女→男どちらでもOK
・キャラは既存でもオリジナルでもOK
・でも未完のまま放置は勘弁な!
2名無しさん@ピンキー:2006/10/09(月) 11:00:41 ID:t/ijVt4o
おらおら、WWF(World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金)の
愛くるしいパンダ様が>>2ゲットだぜ! 頭が高いんだよ、ボケ!

.         ,:::-、       __     >1 クソスレ建ててんじゃねーよ。ビンスみてーに裁判で潰しちまうぞ。
    ,,r   〈:::::::::)    ィ::::::ヽ    >3 >>2ゲットも満足にできねーお前は、俺の着ぐるみ着てプラカード持ってろ(プ
  〃   ,::::;r‐'´       ヽ::ノ     >4 お前はカキフライのAAでも貼ってりゃいいんだよ、リア厨ヒッキー(プ
  ,'::;'   /::/  __            >5 汗臭いキモヲタデブは2ちゃんと一緒に人生終了させろ、バーカ。
.  l:::l   l::::l /:::::)   ,:::::、  ji     >6 いまさら>>2ゲット狙ってんじゃねーよ、タコ。すっトロいんだよ。
  |::::ヽ j::::l、ゝ‐′  ゙:;;:ノ ,j:l     >7 ラッキーセブンついでに教えてやるが、俺はストーンコールドが好きだぜ。
  }:::::::ヽ!::::::::ゝ、 <:::.ァ __ノ::;!     >8 知性のねーカキコだが、お前の人生の中で精一杯の自己表現かもな(プ
.  {::::::::::::::::::::::::::::`='=‐'´:::::::::/      >9 つーか、自作自演でこのスレ盛り上げて何が楽しいんだ?
  ';::::::::::::ト、::::::::::::::i^i::::::::::::/      >10-999 WWEなんか見てるヒマがあったら、俺に募金しろカスども。
.   `ー--' ヽ:::::::::::l l;;;;::::ノ       >1000 1000ゲットしたって、WWF時代の映像物に販売許可は出さねーよ。
        `ー-"
3名無しさん@ピンキー:2006/10/09(月) 16:13:16 ID:gfcC3umw
(´c_,`)
4名無しさん@ピンキー:2006/10/09(月) 19:43:05 ID:HRxqHbSN
それなんてNHKにようこそ?
5名無しさん@ピンキー:2006/10/11(水) 13:07:03 ID:Y6zpUGv5
>>1
これ忘れてる エロゲ板の
【身も】依存ヒロイン萌えスレ2【心も】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1110773669/

依存は大好物だからスレがのびてくれるとうれしいんだがな…
6名無しさん@ピンキー:2006/10/14(土) 10:58:11 ID:Qv5jLTYF
期待age
7名無しさん@ピンキー:2006/10/19(木) 16:19:04 ID:f3jpn5yp
期待age
8名無しさん@ピンキー:2006/10/19(木) 16:32:45 ID:gc9isZGo
あなたの中には

いかせれない
9名無しさん@ピンキー:2006/10/21(土) 23:38:38 ID:em/FSFK7
職人が来ないとだめだなage
10名無しさん@ピンキー:2006/10/22(日) 12:32:26 ID:GphZI7dY
>>3
トリポー
こんなとこでなにしてんだ
11名無しさん@ピンキー:2006/10/29(日) 15:13:01 ID:pIx4P2yY
1週間
12名無しさん@ピンキー:2006/11/01(水) 20:21:35 ID:yW6fgmQU
宣伝してみる?
13名無しさん@ピンキー:2006/11/07(火) 23:08:20 ID:2SmirWYt
「エロゲー板では依存専用スレッドまであるのになぜエロパロ板で根付かなかったのか」反省会
とりあえず>>1が放置していることが原因だな。小説かきやがれこんちくしょー。・゚・(ノД`)・゚・。
14名無しさん@ピンキー:2006/11/07(火) 23:56:57 ID:knJBhiWm
>>1
頑張って
15名無しさん@ピンキー:2006/11/08(水) 00:02:19 ID:PjGPd6PQ
お前等、>>1に依存し杉
16名無しさん@ピンキー:2006/11/08(水) 07:30:19 ID:Y0oeH9Zj
修羅場スレに取られちゃってるイメージ
17名無しさん@ピンキー:2006/11/08(水) 11:24:36 ID:KUefKcIh
>>15
誰が旨い事言えと(ry
18名無しさん@ピンキー:2006/11/08(水) 15:08:54 ID:qONptRqX
依存そのものがテーマか……
19名無しさん@ピンキー:2006/11/09(木) 09:03:39 ID:FxQV+xOd
なんでこんなツボなスレが過疎ってるんだ
20名無しさん@ピンキー:2006/11/09(木) 21:35:45 ID:5spiMTIW
>>19
お願い、何とかしてよ。
21名無しさん@ピンキー:2006/11/09(木) 21:41:20 ID:5sqOQfcE
ただエロ書きゃいいって訳じゃないから、読み切りでまとめるのがちょっと難しい。
22名無しさん@ピンキー:2006/11/10(金) 10:31:27 ID:X+XRksj/
>>21
お願い、長編を投下して
23名無しさん@ピンキー:2006/11/10(金) 11:05:24 ID:EXWofH6P
「お願い、●●して」は依存ではなく依頼であると小一時間(ry

まあ、依存スレはまだ見ぬ書き手に依存している現状なわけだが
24名無しさん@ピンキー:2006/11/12(日) 22:44:09 ID:/ke4diYd
具体的に何をどうすれば依存なのかピンとこないな。
エロゲ以外の例で誰か解説プリーズ
25名無しさん@ピンキー:2006/11/13(月) 23:58:57 ID:t6hNDZCD
参考になるかどうかわからんが……
http://trauma.or.tv/1kouisho/6.html
とりあえず、俺も頑張って考えてみる。
26名無しさん@ピンキー:2006/11/15(水) 21:36:51 ID:X5IeD/00
>>25
お願い、頑張って
27名無しさん@ピンキー:2006/11/16(木) 18:43:10 ID:t9UBtPc8
嫉妬スレの作品みたいなのが依存なんじゃないの?
28名無しさん@ピンキー:2006/11/16(木) 19:02:56 ID:jTQ/l48B
ITARI SENPAI とかか。
29伊南屋:2006/11/17(金) 13:05:33 ID:eay1EvfA
 僕と彼女が同棲を始めたのは一年程前だ。
 初めて生活を共にして、僕達は多くの発見をした。良くも悪くも。
 特筆すべきは彼女の生活能力の無さだ。
 まず家事が出来ない。
 同棲を始めるまで実家暮らしだった彼女は家事の一切は両親に頼っていたと言う。
 同棲を始めた初日に、一度だけ料理を作ってくれたことがあったが正直、食べれたものじゃなかった。
 以来、食事は僕が作っている。
 そして、仕事が出来ない。
 先に話した通り、実家暮らしだった彼女は、両親から渡されるお金だけを使っていた。アルバイト等はした事が無かったし、する必要も感じなかったらしい。
 やはりこれについても、同棲を始めたばかりの頃に、生活費を入れる為にアルバイトに挑戦したが、ものの数日でクビになる有り様だった。
 同棲を始めてから彼女を養っているのは僕だ。幸い、彼女一人を食わせていけるだけの収入はあった。
 しかし、言ってしまえば彼女はニートである。学生という身分を終えてから、アルバイトもせずに過ごす彼女はそう言うしかなかった。
 僕が居なくては野垂れ死ぬ。と言うのは決して誇大表現ではないと思う。
 毎日彼女の為に働き。彼女の為にご飯を作り。身の回りの世話は僕が全てする。
 友人は僕を、召使いみたいだと言った。僕自身、なる程と思った。
 それでも僕はこの生活を止めようとは思わなかった。別段面倒見が良いわけではない僕は、最初それが何故か分からなかった。
 だけど、彼女の言葉でその理由に気付いた。
 彼女はこう言ったのだ。
「私は貴方に依存して生きている。だけど、それは貴方も変わらない。そうでしょ? 貴方は私の愛情に依存して生きている。私が貴方に愛情を向けるから頑張ってくれる」
 それは少し、傲慢な物言いだったけど、見事に的を射ていた。
 結局は相互依存。。
 今日も僕は彼女の為に生きている。

 そう言えば、そろそろニートを脱出しないか、提案しようかと思っている。

 それは勿論。プロポーズの事だ。
30伊南屋:2006/11/17(金) 13:08:24 ID:eay1EvfA
こんなんでいいですかね?
31名無しさん@ピンキー:2006/11/17(金) 15:06:19 ID:b9qkVzrd
>>30
GJ!
できるならエロの部分も書いて欲しかったけどなw
32名無しさん@ピンキー:2006/11/17(金) 22:15:25 ID:h5Nvm60/
>>30
イイヨイイヨー
エロなくても萌えればイイヨー
33名無しさん@ピンキー:2006/11/18(土) 10:12:53 ID:q9eEcRW7
34伊南屋:2006/11/18(土) 10:25:12 ID:1470qMjY
 改めてSS書こうと思うんでなんかリクエストあったらどうぞ。
35名無しさん@ピンキー:2006/11/18(土) 12:05:40 ID:1Meu0OVz
>>34
24時間ベットの中までお兄ちゃんにくっついていく義妹
36伊南屋:2006/11/18(土) 21:35:37 ID:1470qMjY
「おにぃ〜ちゃん!」
 またか……。
 振り返ると僕の妹が居た。名は美奈希。僕が九歳の時に出来た妹だ。
 美奈希が七歳の時に僕達は不慮の事故で両親を失った。
 以来、歳の離れたこの妹を、両親が居なくとも幸せにと、僕は溺愛して育てた。
 幸い。それなりの資産家であった両親は、僕と美奈希がそれぞれ独り立ち出来るまでくらいの遺産と、一軒家を遺してくれた。
 それでも僕は高校三年間をバイトと勉強、そして妹の美奈希の為に浪費し過ごした。
 別に後悔はしていない。そんな事で疎ましく思う程、妹は軽い存在では無かったし、互いを支えに生きて来たのだ。その存在はむしろ、単純にありがたかった。
 それから、僕が高校を卒業する頃になった。十分、大学に行けるだけの遺産は残されていたし、学力だって十分あった。
 だけど僕は就職の道を選んだ。
 美奈希には苦労を掛けたくないし、何より遺産にばかり頼るのは気が引けた。だから高校時代もバイトをして学費の足しにしていたのだ。
 妹は資産について遠慮をする僕が、不思議でたまらなかったらしい。だけど僕には遠慮をするだけの理由があった。
 養子なのだ。
 だから、僕達兄妹は歳が離れているし、血も繋がっていない。
 子供に恵まれなかった両親は僕を養子にし、その後、数年後に美奈希を産んだのだ。
 だからと言って両親や美奈希と距離を計るような事はしなかった。両親も美奈希も本当の親や妹だと思っているし、美奈希が産まれた時は本当にこの妹を大切にしようと思った。
 つまり僕は、単純に今は亡き両親に恩返しをしたい一心で遺産は極力使わないようにしたのだ。
 そしてその代わりに美奈希には自由を謳歌して貰う。そう願った。
 だけど、と思う。
 少々甘やかし過ぎた。
 僕が、唯一の特技であり趣味である料理を仕事にし、料理人になって五年。
 現在、僕が二十四歳。妹の美奈希が十五歳。
 美奈希は極度の甘えん坊になっていた。
 四六時中、朝から晩までお兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん……。
 そして今も。
「ぎゅ〜っ!」
 もう中学も三年生。今年は高校受験なのに、こんな風に抱きついてくる。
 僕は軽く溜め息を吐いた。
「美奈希……いい加減抱きついたりするなって、この間も言っただろ?」
「え〜? でもぉ……」
「でも、じゃない。大体、今は料理してるだろ。ぶっちゃけ邪魔」
「む〜……」
37伊南屋:2006/11/18(土) 21:38:13 ID:1470qMjY
 美奈希はむくれた表情を作ると、渋々と言った感じで僕の腰に回した腕を外した。
 美奈希は同年代の中でも特に小柄なので、割と背の高い僕に抱き付くと自然、腰のちょっと上辺りに腕がくる。
 その感覚は不思議な安心を与えてくれるけど、いつまでもそんな風に甘えるのはいかにも問題だ。
「美奈希、晩御飯まではまだ少しかかるからその間、勉強してなさい」
 だからたまにはこんな風に突き放す。
 しかし、美奈希はぷいとそっぽを向いて。
「やだ」
 と言った。
「あのね……美奈希。お前も今年は高校受験だろ? 少しは勉強したらどうなんだ?」
 別に美奈希は成績が悪い訳ではないが、特別に良い訳でもない。
 それでも、やはり少しでも良い高校に立派に進学して欲しいという願いはある。
 そんな僕の願いを知ってか知らずか。美奈希はそっぽを向いたまま、僕の後ろで突っ立ったままだ。
「……邪魔なんだけど」
 無理に勉強をしろとは言わないがせめて居間でテレビを見るなりして、邪魔にはならないで貰いたい。
「やだ。意地悪なお兄ちゃんの言うことなんて聞かないもん」
 美奈希は頑として動かないつもりらしい。仕方ない、これを言えば美奈希も流石に諦めるか……。
「ご飯抜き」
 ぴくっ、と美奈希が身じろぎする。そっぽを向いていた顔を戻し、その表情に懇願を浮かべる。
「だっ、ダメ! 邪魔しないからご飯食べさせて!」
 泣きついてくる妹の頭に手を置き、静かに告げる。
「Get out.(出てけ)」
「Yes sir…….(了解)」
 すごすごとリビングへ戻る美奈希。
 自慢じゃないが僕も料理人の端くれ。作る料理には自信がある。美奈希が僕の作る料理を楽しみにしている事も知っている。
 だからご飯を引き合いに出せば美奈希は大抵引き下がるのだ。
 ようやく静かになったキッチン。僕は会話中も常に気を配っていた鍋に意識を集中させる。
 今日の晩御飯はビーフシチュー。美奈希の大好物だ。
 僕はこれを食べた美奈希が見せるであろう笑顔を思い浮かべ、口元を緩ませた。
 シスコンだとは思うが、やはり美奈希には笑っていて欲しい。
 だから美奈希が喜ぶ事はなんでもする。喜ばずとも、美奈希の為になるなら憎まれ役だって厭わない。

 しばらくしてから、リビングから聞こえだした鼻歌が耳に心地良かった。 
38伊南屋:2006/11/18(土) 21:40:19 ID:1470qMjY
 リクエスト通り。ちなみに続きます。いずれはエロに……。
 それではスレの繁栄を願って。以上、伊南屋でした。 
39名無しさん@ピンキー:2006/11/18(土) 22:19:34 ID:2irf3oFA
GOOOOOOOOOODJOB!
40名無しさん@ピンキー:2006/11/18(土) 22:24:13 ID:O7HseVkP
何か礼を言いたくなったよ。ありがとう。
41名無しさん@ピンキー:2006/11/18(土) 22:47:42 ID:q9eEcRW7
もう伊南氏が居なければ生きられない
42名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 10:08:28 ID:Ck4Mwt+N
リクエストを書いてもらってありがとうございます
すばらしいです
43名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 12:04:37 ID:jpBRVxD2
乙でふ
44名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 14:40:04 ID:mmcC8xr6
伊南屋さん愛してる!!
45名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 21:55:13 ID:TIP6bxk7
>>44に負けないくらい愛してる
46名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 22:54:35 ID:7iTrUeuM
いや俺の方が
47名無しさん@ピンキー:2006/11/21(火) 18:07:29 ID:3QJRN8Kt
シュッ!シュッ!シュッ!
48名無しさん@ピンキー:2006/11/21(火) 18:18:45 ID:f+YsBS9/
私は、小学3年です。 は、彼氏がいます。彼とわたしは、デートの時 、どちらかの家に行き、だれもいないとき、部屋 で横になって裸でだきあいます。
それがだんだ んエスカレートしていって、学校の体育倉庫で服 をぬがされ、まだ3年生ですが学年で1番大きい おっぱいを、つかむように触られたり、しゃぶっ たりされます。
最初は、苦手だったんだけどだん だん気持ちよくなりサイコーです。しかも、わたし は、学年1美人でもてます。
彼も同じで、美男 美女でよくみんなにうらやましく、思われます。
: : このカキコ見たあなたは4日後に不幸がおとづれ 44日後に死にます。それがイヤならコレをコピペ して5ケ所にカキコして下さい。
私の友達はこれを信じ ず4日後に親が死にました。44日後友達は行方不明・・・・。 いまだに手がかりもなく私はこのコピペを5ケ所に貼り付け ました。すると7日後に彼氏ができ10日後に大嫌いな人が事 故で入院しました。 : :     信じる信じないは勝ってで
49名無しさん@ピンキー:2006/11/21(火) 23:26:07 ID:bubNBbpx
美奈希たん(*´Д`)ハァハァ
50籠城戦 ◆DppZDahiPc :2006/11/22(水) 00:07:40 ID:rxO4jQh6
思いつくままに書いた。
全4レス

 事故の瞬間のことは覚えていない。
 頭を強く打ったショックで、事故前後の記憶を失っているからだと、先生から
説明された。
 その事故で、わたしの目は見えなくなってしまったのだが。
 それについても覚えていない。
 事故前後の記憶を失ったのと同様に、私は色々なものを失った。
 まず、視覚。
 目が見えないというのは、私が考えていた以上に、辛い。
 好きだったクイズ番組は、効果音と、出演者が正否で歓喜する声が聞こえるだ
けになり。聞いていてもつまらない。
 カップラーメンを食べようとして、湯を入れ、三分待つというだけの行為がひ
どく長かった。
 掃除をするたび、身体のあちこちを家具にぶつけた。
 友人たちとは疎遠になった。所詮その程度の人間関係しか、築けていなかった
のだ。
 それまでの生活は失われた。
 しかし、盲目となった私には、それらのことよりも。
 父母妹、家族が全て失われたことの方が、大きかった。
 まるで、私という存在に、風穴をあけられたかのようだ。
 私は失意に沈み、一度は死のうとした――死ねなかった。
 手首を切り、死ぬはずだった私を助けたのは。国からボランティアとして、派
遣されてきた、一人の青年。
 声から、私と同年代と推測したが。外れた、私より一回り上だった。今年で三
一になると、本人が言った。
 ヘルパーになってからは、まだ一年経っていないとも。
 彼はとても甲斐甲斐しく、私の面倒を見てくれる。
 本当に男性なのかと、疑いたくなるくらい、気が利く。
 二年も経った頃には、私は彼なしの生活が考えられないほど、彼に依存するよ
うになっていた。
 何故か、彼はそれを嫌いがったが。
 私が買い物に行く時は、彼に付き添ってもらったし。
 部屋掃除は彼に任せた。
 障害者手当と、定期にした父母の保険を、彼に銀行に下ろしてきてもらったし。
 彼から点字を習い、彼へ手紙を書いたこともあった。
 彼の顔が見えないから、本当の所は分からないが。彼は嫌そうにはせず、かい
がいしく面倒を見てくれた。感謝の言葉もなかった。
 そのお礼を一度、――身体で払おうとしたことがあった。
 けれど、彼は
「すいません」
 と辞した。
 私は、私に女としての魅力がないのかと悩んだ。
51籠城戦 ◆DppZDahiPc :2006/11/22(水) 00:09:16 ID:RHawaKY2
 その前後辺りから、私は彼のことが好きになっていた。
 当然だ。
 その間、まともに関わった人間は少なく、私へ優しさを向けてくれたのは、彼
だけだったのだから。
 ――だから、彼になら……とも思ったが。
 私の誘いは全て断られ、本当なら大学を卒業するはずだった二二の春、彼は唐
突に切り出した。
「来週、僕は引っ越すことになりましたので。来週からは新しい方が来られます」
 ――声が、出なかった。
 彼は色々と言っていたが、それも耳に入らなかった。
 私は酷く取り乱した。
「なんで」「うそ」「私のことが嫌いになったの」「ふざけないで」
 言葉が濁流のようにあふれ、彼を何度も、言葉の鞭で殴りつけたのは覚えてい
る。もしかしたら、彼へ物を投げつけたかもしれない、殴りつけたかもしれない。
 それでも彼の言葉は変わらなかった。
 ――いや。
「ごめんなさい。もう、無理なんです。オレ」
 無理――私といることが?
 手元にあった物を投げた。がしゃんっと何かが砕けた。
 彼を傷つけようとした手を、厚い手が、優しく抱いた。
 そうされると、私が落ち着くことを知ってる。
「動かないでください、今片づけますから」
「そんなこと、後でいいから。わけを聞かせて。なんで行っちゃうのよっ、なん
で、なんで」
 彼は答えない。
 彼の手が離れた。私は行かせまいとして、手を伸ばす、空を掴む。
 静かな足音が離れていく。
 私はまるで、置き去りにされた子供のようだった。
 頬にむずがゆい感触が伝わっているのに、今更気づく。
 彼が片づける音を聞きながら、錯乱した私は、頭を掻き乱して――空虚な閃き
を得た。


 私は、立ち上がると、彼がいると思われるほうを向き。
「――西原さん。私を、抱いて」
 一瞬の空白。
 室温は変わらないというのに、身が縮まった。
「……服を着てください」
「なんで」
「駄目なんですよ」
「だから」
「――分かって、ください。貴女とは、笑って別れたい」
 私は首を振った。
「オレは、貴女を抱いていいような男じゃない」
「――だからっ」
 私は、手を伸ばし、また何かを彼へ投げつけようとした。
 手先は何かに触れたが、掴むことはなかった。
 勢いよく突き出した手は、壁にぶつかり。鈍痛がはしる。
「大丈夫ですか」
 彼が走ってきて、私の手首を掴む。
「……大丈夫」
 小さく喘いだ。
52籠城戦 ◆DppZDahiPc :2006/11/22(水) 00:10:08 ID:RHawaKY2
「……湿布貼った方がいいかな」
 彼は私の言葉を無視して、そう言い。
「そこに座って待っててください、今湿布持ってきます」
 離れようとした、彼の手を、今度は掴んだ。
「行かないで」
「でも……」
 彼は、しかし、わずかな沈黙の後。
「もう駄目なんです」
 と繰り返した。
 私は涙がこぼれるように呟いた。
「説明して。そうじゃないと、私、死ぬわ」
 彼が何かを言おうとした吐息だけが伝わった。
 私は絶対に離さぬつもりで、彼を掴み続けた。
 無限に感じられた間の後、彼はのろのろとした口調で言う。
「……本当は、伝えてはならないことなんですが」
 て前置きして、彼は、怯えた口調で呟くように言った。
「オレは……、オレが、貴女の家族と、貴女から目を奪った相手なんです」
「…………え?」
「オレが悪かったのに、本当ならオレが死ぬはずだったのに、オレが……オレが
……。だから、せめて、貴女の助けになりたくて」
 私は、頭の中が白んでいくのが分かった。

 ※※※

 あの日――誕生日を迎えた妹を祝うため、私たち家族は、車ででかけた。
 楽しかった。
 父さんはお酒を飲んでいたが、私は気にもしなかった。
 帰り道。
 住宅街のほの暗い道を、父さんは車を快調に走らせる。
 ヘッドライトが人影を照らし出す――その距離僅か。
 父さんはハンドルを切り――強い衝撃が、襲った。

 ※※※

 彼の手が震えはじめたのに気づき、私は回想からぬけ出た。
「どるだけ、謝っても、赦されないのは分かっています。ですが、……オレは、
もう貴女のそばにはいられない」
「……なぜ」
 震えが強くなる。
「駄目だと、あってはならいと分かっていたんです……それなのに、オレは、貴
女へ好意を抱いていた。……もう、駄目なんです。これ以上貴女の側にいたら、
立場を忘れてしまいかねない…………分かってください」
 彼は寂しく、悲しい声でそういった。
 私は、
「……最低ね」
 と呟いた。
「はい」
 彼は短く答えた。
「ヒトの目、奪っておいて」
「はい」
「ヒトの家族、奪っておいて」
「……はい」
「その上、また大事なヒトを奪うの」
「は――……え?」
「赦すとはいえそうにない、……だから、私の大切なヒトになって」
「な、――なにを言って」
53籠城戦 ◆DppZDahiPc :2006/11/22(水) 00:11:08 ID:RHawaKY2
「誰よりも私のこと好きになって、ずっと私の側にいて。私も……あなたが好き」
「――ば、バカなことを……そんな。だって、オレは、貴女の家族を……」
 私は小さく首を振った。
「もう、あなたも家族なの。大事な、大切な」


  ※※※

 私は、死ぬことに決めた。
 普段、物事を深く考えない私が。有り余る時間を得て、考え抜いた結果。
 それ以外の結論は得られなかった。
 家族は喪われ。
 全てを喪失した。
 生きている意味なんて、ない。
 手首をナイフで切ると、血は思っていたより、勢いなくあふれた。
 頭が白んでいく。
 私は白む視界に、誰かを見たような錯覚をおぼえた。
 その誰かは、必死に私へ呼びかけていた。
「死ぬな。――死ぬな。生きてくれ」


 そう言いながら、助けてくれた誰かの姿を、私は見たような気がした。


「そばにいて、これからも、ずっと」


――END
54籠城戦 ◆DppZDahiPc :2006/11/22(水) 00:14:44 ID:RHawaKY2
……おかしいな。エロがない。
55名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 00:17:06 ID:QUoYbvTC
>>50-53
「ヒトの目、奪っておいて」からの一連の流れに、
GJのただ一言を贈りたい。
56伊南屋:2006/11/22(水) 04:56:46 ID:8+ZTg5lx
「ごちそうさま!」
「おそまつさま」
 夕飯を食べた美奈希が手を合わせ、完食を告げる。
 皿に盛られたビーフシチューは美奈希の胃袋に残らず収まっている。
 美奈希は食べている間中、美味しいと言っては僕に笑顔を向けてきた。こんな風に食べて貰えるのは料理人冥利に尽きる。
 笑顔の妹を見つめ、僕も微笑みをこぼした。
「それじゃ片付けるね?」
 そう言って美奈希が食卓の上の皿を重ね始める。
 僕がご飯を作る代わりに美奈希が片付けをするというのが我が家のルールだ。
 美奈希は重ねられた食器を流し台へ運び、それを洗い始めた。
「お兄ちゃんは休んでて良いから」
 そう言う妹の言葉に甘え、僕は体を休める事にした。
 最近、職場でも重要な調理を任されるようになり疲れは溜まっている。少しでもゆっくり休めるのはありがたかった。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん」
 居間側に開いたキッチンの流し台から声が掛けられた。
「この感じ何かに似てると思わない?」
 美奈希の言葉の意図を図りかね、僕は首を傾げた。
 感じ? この雰囲気がなんだって言うんだろうか。
「なんかさ、夫婦みたいじゃない?」
「っ!」
 吹いた。
「な、なんだよいきなり?」
「だってさ、私がやるから休んでて。なんていかにも夫婦っぽいじゃない?」
 確かに、それは言えている。しかし僕達はあくまで兄妹だ。
 僕は夫婦と言う言葉に強い反発を覚えた。
「なに下らない事言ってるんだよ、僕と美奈希は兄妹。それ以上でもそれ以下でもないだろ?」
 美奈希はむっとしてそれに反駁した。
「お兄ちゃんは私みたいな可愛い女の子がお嫁さんで嬉しくないの!?」
「あのなぁ、そういう意味じゃないって! あと自分で可愛いって言うな!」
「じゃあ私は可愛いくないの?」
「う……」
 詰まってしまった。
 シスコン気味……というかシスコンである事を抜きにしても、美奈希は可愛いらしい顔立ちである事は間違いないだろう。
 事実として、鞄一杯のラブレターの存在を今時、現実として確認させられた事もある。
 そういった事からしてやはり、美奈希が可愛いということは疑う余地もない。
 別段、そんな事は口に出さなければ構わないのだが。どうにも美奈希に真っ直ぐ見つめられると自白してしまう病に掛かっている僕は躊躇いつつも。
「いや、そうは言わないけど……」
 と呟いてしまった。美奈希はそれを聞き逃さず、更に僕に追い討ちをかける。
57伊南屋:2006/11/22(水) 04:59:56 ID:8+ZTg5lx
「そうは言わないけど?」
「いや、その……」
「言ってくれなきゃ分からないよ」
「か、可愛いと……思うよ?」
「そっか!」
 実に嬉しそうに笑う美奈希。
「じゃあ私がお嫁さんなら嬉しいよね?」
「いや、それは違うだろ!」
「だって可愛いって思うんでしょ?」
「だからといって結婚には繋がらないだろ。信頼とか、相互理解とか愛情とか、色々あるだろ」
 懸命な反論はしかし、美奈希の言葉に封殺される。
「信頼も、相互理解も、愛情も私達にはあると思うんだけど?」
「……」
 ぐうの音も出ない。確かに僕は美奈希を信頼し、理解し、愛情を注いでいる。その点は否定出来ない。
 シスコンここに極まれり。
「ね? 大丈夫っ!」
「いや、まぁ……うん」
 言ってからしまった、と思う。何を認めてるんだ僕は。
「やった! じゃあ私が来年、私が十六歳になったら結婚しようね!」
「ダメだってそんなの!」
「もうダメだよ。お兄ちゃんは私と結婚するの!」
「いや、だから……」
 マズい。一方的に押し切られてる。
 どうにか反論しようと言葉を探すも見付からない。妹を傷付けずに否定なんて出来なかった。
 甘過ぎる。僕がこんなだから美奈希も甘えてくるというのに。
 僕が言葉に詰まっていると、美奈希が不意に。
「……なーんてねっ!」
「は……?」
「冗談だよ、冗談。私達は兄妹なんだよ? 出来るわけないじゃん、結婚なんて」
 美奈希が意地悪く笑う。
「な……、お前からかったな!」
「あははははっ!」
 ……しかしまぁ、冗談ならそれで良いのだ。
 安心に胸を撫で下ろす。
「はぁ……疲れた。今日はもう風呂入って寝る」
「背中流そうか?」
 まだ笑いながら、美奈希がそんな提案をしてくる。
「要らん」
 そんな事は勿論却下。これ以上美奈希の冗談に付き合えない、僕はさっさと風呂場に向かった。
 しかして僕はその時気付いていなかった。
 結婚の話が冗談と分かり安心したと言うことは、僕は冗談と分かるまでは動揺していたのだ。
 もし、これが冗談でなかったら、僕はどうしていたのか。
 ――僕は意識的に考えないようにしていた。
 
58伊南屋:2006/11/22(水) 05:01:07 ID:8+ZTg5lx
 ちまちま投下。エロスは遠く、霞んでいる……。
 いや、頑張りますよ勿論。
59名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 08:52:38 ID:M8Bd3dX9
美奈希ハァハァ
60名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 09:50:15 ID:DZeA+ut1
ちょw降臨しとるwしかも二人もw
伊南氏も籠城戦氏もGJ!
61名無しさん@ピンキー:2006/11/23(木) 21:41:20 ID:npgVlFvj
「いや。行かないで」

タンっと小気味いいような音をたててさっきまでケーキを切り分けてたナイフをテーブル
に突き立てた。自衛隊に入るための大学を進路に決めた、とか言い出した紘太を睨む。

「連絡が取れなくなる訳でも一生会えなくなる訳でもないんだがな」
「望むならいつでも頼っていいってのは嘘だったの?それとも私が言えば外出許可の
 必要な寮からたとえ夜中でも会いに来てくれるわけ?」
「お前はそんな無茶は言わんだろ」
「だってそんな事言ってあんたに愛想尽かされたら生きていけなくなるじゃない」
「つまり問題はないだろうが」
「どんな論理よ!そもそも行っちゃうことの方が大問題じゃない!」

なんだか普段なら絶対言えないような事を言ってる気がするがこの際気にしない。
いや気にして欲しいのだけど。テーブルに刺したナイフにも全く動じてくれないし。

62名無しさん@ピンキー:2006/11/23(木) 21:43:12 ID:npgVlFvj
「別にお前は1人もやって行ける程度には強いと思うがな」
「強がってるだけです。あんたに頼れるから」
「だいたい今までだって毎日会ってた訳ではなかろう?」
「いつでも会えるってのと会えないってのは全然違うもん。
 電話だってそんなに出られなくなるでしょ?」
「電話って…お前が泣いたりしてるのに俺がひたすら大丈夫だって言ってるだけだろうが。
 他の奴でもできる」
「紘太じゃなきゃダメなんだって」
「お前、手洗って来い」
「なんでそうなるのよ!」

紘太はナイフを握りしめていた私の手をとって手のひらのはじを舐めた。ナイフを
握り直した時に切ったらしい。血が流れている。大人しく私は席を立った。洗面台に
行く時にチラッと見ると紘太はナイフを抜いていた。ごめん、テーブル傷つけちゃった。
心の中で謝りながらとりあえず水を流す。
63名無しさん@ピンキー:2006/11/23(木) 21:44:05 ID:npgVlFvj
「自分のことは大事にしろ。安心しておいて行けん」
「選択肢はおいて行くのみですか」
「俺の人生だからな」
「私のことはどうでもいいの」
「そんなことは言っておらん」
「じゃあ行かないでよ」
「だからって泣くな。俺が困る」
「困らせてんの」
「終わったぞ」

救急箱をしまいながら頭をポンポンってされた。相変わらず手当てとか上手いなあとか
ぼんやり思った。昔から器用なんだ。紘太が巻くと何故か包帯もズレない。突き指常習犯の私にはありがたい友人…友人だった。

「抱いて」
「俺はお前よりケーキが食べたい」
「この最低人間が」
「自分のことは大事にしろって言ったばっかりだろうが。それにそういった感傷は好まない」
「感傷じゃないよ。あんたを縛るために言ってるの。私はとっくにあなたがいないと
 ダメなんだよ。他に恋人がいてもいい。私のこと好きじゃなくてもいいから
ずっとそばにいてよ」
「発言が微妙に矛盾しているぞ」
「紘太、お願い」

「とりあえず、ケーキ食わないか?」

もうこの男殺して剥製にしてやろうか。

64名無しさん@ピンキー:2006/11/23(木) 21:45:12 ID:npgVlFvj
反省してます。
65名無しさん@ピンキー:2006/11/23(木) 22:39:50 ID:tDcd1sSv
>ID:npgVlFvj氏
新たな神が御降臨なさ(ry
女性がまたいい依存っぷりですな。しかしもうちょっと感情的になってもよさげだった気もしますがw
66名無しさん@ピンキー:2006/11/23(木) 23:34:31 ID:AEzLvnFU
かなりgjだぞおまいら
67名無しさん@ピンキー:2006/11/24(金) 09:06:53 ID:uScJ/6io
イイヨイイヨー
68密会 1/8:2006/11/27(月) 00:06:52 ID:LpK/4ZXS
 学校から帰ってすぐ、PCを起動した。
 バッグを放り出し、真新しい制服を着たままで、私は椅子に腰掛けた。
 起動画面を横目にスタンドミラーを覗く。
 大丈夫、そんなに乱れてない。
 でも、ちょっと可愛くないかな。
 最近、不安になる──
 この一年ぐらいで、急速に大人っぽくなってる。背もぐんぐん伸びてるし、
身体つきも怖いぐらいに変化してる。当然、アレなんかもとっくに来てたし、
あそこの毛だって──
 恥ずかしい。
 そうだ、あれ着けよっと。
 引き出しから、以前買ってもらった髪留めを出す。
 猫のキャラクターを象ったプラスチックのアクセサリーがついた髪ゴム。
 右はピンク、左は水色で。
 うん、これでよし。
 左右の髪をひと房ずつ、耳の上でまとめて留めた。小さな房が、ぴょこんと
左右に飛び出て、子供っぽくなる──きっと彼は喜んでくれる。
 ウェブカメラの位置を調整する。
 私の姿を、彼に見てもらうためのカメラ──
 メッセンジャーが立ち上がると、たった一人だけが登録された、素っ気無い
友達リストをチェックした。
「やっぱりいないかぁ……」
 解かりきっていた。
 それでも、がっくりしちゃう。
 私がこの春から中学一年生になったように、彼は社会人一年生になった。
 まだ陽も沈まないこんな時間じゃ、彼は仕事中なんだろう。
 十歳も年上の彼。
 私がこんなに焦がれてるって、気づいてるのかな──
 こんなの駄目だって解かってる。
 でも、抑えられないんだから仕方ない。
69密会 2/8:2006/11/27(月) 00:07:24 ID:LpK/4ZXS
 お風呂から出て、パジャマに着替え、宿題を片付けていた。
 PCの電源はオンのままで、メッセも起動したまま──
 ぴこん、とアラームが鳴り、私は弾かれたようにモニタへ眼を向けた。
『よ〜たからのメッセージ』
 他にいるはずもない。彼からだった。
 握っていたシャーペンを放り出し、マウスを滑らせてウィンドウを開く。
『よ〜た > ただいま〜、千穂〜♪』
 小学校の卒業祝いと中学の入学祝を兼ねて両親が買ってくれたPCを使い始めて
から、まだひと月も経ってないのに、キーボードを叩く指は滑らかで、自分でも
驚いてしまうくらいだった。
『ちほ > おかえりお兄ちゃん^^』
 もちろん、彼は兄じゃない。
 でも、私は彼をそう呼んでる。
 そんなふうに呼ぶのは、彼が──幼馴染みで親友の、兄だから。
 いや、それは正しくない。
 私は、優しくて真面目で少し意地悪な、親友の兄である彼を、本当の兄なら
良いのにと思って、そう呼んでいる。
 いや、それもちょっと違う──
『よ〜た > 昨日はよく眠れた?^^』
 彼の言葉に、どきっとする。
『ちほ > うん・・・>m<』
 よく眠れた。ぐっすりと眠りに就いた。
 その直前の行為を思い出す──
『よ〜た > いっぱい気持ちよくなれたんだね^^嬉しいよw』
 彼の言うがままに、私はあんな事をしちゃったのだ。
 昨日だけじゃない。一昨日も、その前も、さらにその前も──
 このところ、ほとんど毎日しちゃってる。
『よ〜た > 今日もしたい?w』
 心拍数が跳ね上がる。
『ちほ > うん・・・したい///』
『よ〜た > 千穂はエッチだなぁwww』
 そう言われて、びくっと震えちゃう。
 私はエッチだ──
『よ〜た > 今日も見せてくれるよね?^^』
 そう──私はエッチな子だった。
『ちほ > うん・・・お兄ちゃんに見てもらいたい・・・』
『よ〜た > いい子だ、千穂♪』
 カメラを起動──小さなウィンドウに、自分の姿が映し出された。
 私は彼に見られながら、エッチな事をするんだ。
『よ〜た > 今日も可愛いよ、千穂^^』
『ちほ > ありがとう/////』
 そうだった、あれを着けなくちゃ──
『ちほ > ちょっと待ってね!』
『よ〜た > ん?(゚-゚ )?』
 私はカメラを伏せて、夕方いじっていた髪留めを手に取った。
 まだしっとりしてる髪を急いで纏め、括りつける。
 鏡を覗き、ちょっと不細工かなと思ったけど──
 急いで文字を打ち込み、エンターを押すのと同時にカメラを戻した。
『ちほ > お待たせ・・・お兄ちゃん^^』
『よ〜た > あ、それってw
 よ〜た > 前に俺が買ってあげたやつ??』
『ちほ > うん^^これ着けたら、お兄ちゃん喜ぶかなって・・・・』
 アラームが鳴り、新たに開かれたウィンドウに、ヘッドセットを装着した彼の
姿が映し出された。
 ゆったりした室内着姿の彼は、いつものように優しくて、ちょっと意地悪な
顔をしていた。
 ネット越しに、お互いの姿を映し合う。
 私はこれから、彼に見られながら、彼の指示に従って、淫らな事をする。
 ついさっき綺麗にしたばかりなのに、そこはもう潤み始めていた。
70密会 3/8:2006/11/27(月) 00:07:58 ID:tT8m5P9W
 ヘッドセットを着けて、音声チャットをオンに──
 でも、私は声を出せないし、彼の声を聴く事もできないのが寂しい。
 ヘッドフォンから、かたかたとキーを打つ音だけが聞こえてくる。
『よ〜た > 千穂、可愛いよ^^』
『ちほ > お兄ちゃん////』
 彼もまた、ヘッドフォンもマイクもあるのに、キーボードを叩いてる。
 十一時を回ったぐらいじゃ、お互い家族はまだ起きてる。こんな事をしてる
なんて、二人とも知られるわけにはいかなかった。
『よ〜た > 千穂の胸、どれぐらいになったんだっけ?w』
 昨日も訊かれた。たった一日で大きく変わるわけも無いのに、彼はわざと訊く。
『ちほ > Bカップだよぉ><』
『よ〜た > 可愛いおっぱいだw』
『ちほ > うう・・・』
『よ〜た > 見せてくれるよね?^^』
『ちほ > うん・・お兄ちゃん////』
 厚手のパジャマのボタンをひとつずつ外してゆく。
 四月下旬──まだ肌寒い日もあるけど、エアコンも動いている。
 彼を待っていた私は、パジャマの下には何も着てなかった。
 小振りな膨らみが露になっちゃう。
 私の姿がカメラのウィンドウに映し出され、私はどきどきと昂ぶってゆく。
『よ〜た > 千穂のおっぱい、見えちゃったw』
『ちほ > うん、見えちゃった・・・』
『よ〜た > 脱いじゃおうか^^』
 彼に促され、こくりと頷いてパジャマを脱いじゃう私。
 私は、何も着けてない上半身を、親友の兄に晒しちゃう。
『よ〜た > 千穂の身体、綺麗だよ・・・
 よ〜た > おっぱいも可愛いねw』
『ちほ > うん・・・』
 膨らみを可愛いと言われるのは嬉しかった。
 彼の妹──親友の深雪は、私より背が低いのに、私よりも胸は大きい。
 彼女ぐらいのサイズになりたい──と思うんだけど、もうこれ以上成長して
欲しくないとも思う。
『よ〜た > 千穂の乳首、つんってなってるんじゃない?w』
「あぅ」
 恥ずかしくて、思わず声が出ちゃう。
 ヘッドフォンから、彼がくすりと笑ってキーを打つ音がした。
『よ〜た > 声出したらダメでしょww』
『ちほ > うん・・・ごめんなさい><』
 家族はまだ起きてる。聞かれちゃったら困る。
 親友もまだ起きてるだろう。彼も妹に声を聞かれるわけにはいかない。
 私だって、こんな事をしているんだと彼女に知られるわけにはいかない。
『よ〜た > 千穂のおっぱい、もっとよく見せてくれる??』
 私は手を伸ばして、カメラを固定しているクリップを外した。
 近づけると、なだらかに膨らんだおっぱいがアップになる。
『よ〜た > やっぱり、乳首勃ってるね〜』
『ちほ > うう。。・・・』
 片手でキーを打ったら、少し指がずれた。でも、いつもの事だった。
『よ〜た > 千穂はまだ中学一年なのに〜
 よ〜た > 乳首をエッチにさせちゃって・・・・w』
 彼の言う通り、私のそこは、きゅっと縮み上がるように尖ってた。
 カメラの画質は悪いけど、こんなに近づければしっかり映し出されちゃう。
『よ〜た > 友達の兄貴におっぱい見せて、
 よ〜た > エッチになってる千穂』
『ちほ > うん・・・・』
『よ〜た > エッチで可愛い千穂・・・好きだよw』
『ちほ > 私も、お兄ちゃんが好き・・・』
 カメラを元の位置に戻して、両手で打ち込んだ。
71密会 4/8:2006/11/27(月) 00:08:31 ID:LpK/4ZXS
 ウェブカメラを通してだと、お互いの眼を見つめ合う事ができない。
 カメラとウィンドウにずれがあるから、映像を見ようとすれば、カメラから眼を
逸らさなくちゃならなくて、相手を真っ直ぐ見てる映像を送るには、画面を見る
事ができない。
 もどかしいんだけど、それが羞恥心をやわらげてもくれる。
『よ〜た > ちゃんと抓んで、くりくりするんだよ』
 両手で左右の先っぽを抓んでる間は、キーボードを打てないから、私は小さな
声で、うん、と頷いた。
 乳首を弄るのは苦手だった。
 気持ちよくないわけじゃないけど、鈍い痛みの方が表に出てきちゃうから。
 彼もそれはよく知ってて、それでも私に乳房を責めさせる。
『よ〜た > 痛い?』
 うん、と頷く。
『よ〜た > でも、気持ちいい?w』
 やはり、頷く。
 痛いのに、私はこんな状況に興奮しちゃってる。
 親友の兄に、ネットを通して淫らな行為をさせられてる。
 私は中学生になったばかり。こんな事をしていい歳じゃないんだと思う。
 世間では、小中学生の女の子を狙った凶悪な犯罪が多発してるという。
 マスコミは、出会い系などネットの危険性を声高に叫んでるけど、その一方で、
美少女アイドルグループとかを盛んに売り出してるし、私の世代をターゲット
にした漫画や雑誌は、煽り立てるかのように、性行為に関わる内容をたくさん
並べ立ててる。
 そういうのを二枚舌、ダブルスタンダードと言うんだと、彼は言ってた。
 でも、私もそういうのに影響されていた。
 まだ早いとは思っているんだけど、好奇心に背を押され、快楽に腕を引かれて、
こんな事をしちゃってる。
 彼だって、妹の親友にこんな淫らな行為をさせている。
 私たちはそんな危険な関係に興奮し、身体を熱くして愉しんでいた。
『よ〜た > もう濡れちゃってる?w』
「うん……」
 小さく頷くだけなら両親も気づかないよね。
『よ〜た > 見せてくれるよね?
 よ〜た > 下も脱いじゃうんだよ^^』
 言われるまま、パジャマのズボンに手を掛けた。
『よ〜た > 座ったままで脱ごうか』
 腰を少し浮かして、するすると脱いじゃう私。
『よ〜た > パンツも可愛いねw』
 彼の好きな、シンプルな白いショーツ。
 もうちょっと大人っぽいのも穿きたいって思うけど、彼はこういう子供っぽい
ショーツが好きだった。
 彼は──世間で言う、ロリコンだった。
72密会 5/8:2006/11/27(月) 00:09:15 ID:tT8m5P9W
 学校での私は、当たり前だけどこんなエッチな子じゃない。
 小さい頃から、言いたい事をきっぱりと言う、生意気な子だった。
 小学生になってからは、同級生や上級生から因縁をつけられる事もあったけど、
そんな圧力なんかには屈しないで、毅然とした態度を取ってるうちに、少なく
とも同級生からは、頼りになるリーダータイプの子だと思われ始め、私はそれを
自覚してた。
 次第に私を中心として周りが動くようになってゆき、特に深雪は、いつも私に
くっついていて、私も彼女を一番大切だと思っていた。
 私は、周囲の扱いは不快じゃなかったし、むしろそのおかげで色々と得もしてた
から、ありがたいと感じてた。
 そして、一人っ子で両親も家を留守にしがちだった私には、深雪の兄の存在が
羨ましくて、頼もしかった。
 私は彼に憧れた。深雪の遊びに行く理由の半分は、彼に会いたいからだった。
 彼はそういう趣味があったから、ずいぶん早いうちから私をエッチな眼で見て
いたんだそうだ。
 淫らな関係が始まったのは、小学六年生の秋だった。
 切欠は、深雪だった。
 ある時、うちのお兄ちゃんこんなの持ってるんだよ、と言って深雪が見せて
くれたのは、成人向けの漫画雑誌だった。
 あまり読みはしないけど、少女漫画にだってその手のシーンはありふれてるし、
知識だってそれなりに持ってるつもりだった。
 でも、その雑誌に載っていた、たくさんのストーリィと、グロテスクなほどに
艶めかしい描写は、私の本能に強烈な揺さ振りをかけてきた。
 しかし私は、こんなのただの漫画でしょ、と言い捨て、そんな事はおくびにも
出さなかった。彼女は残念そうにして、それっきり、その手の話題が彼女から
振られる事は無くなったんだけど──
 私は、密かにその一冊を持ち帰って、こっそりと読み耽った。
 だけじゃなく、彼とエッチな事をするところを空想し、自慰の仕方も覚えた。
 それからひと月ほど経った、日曜──
 その日、連絡無しでふらりと遊びに行くと、深雪は留守で、彼だけがいた。
 しばらく彼と話をしてたけど、彼は、明日提出のレポートが全然進んでないん
だよね、と申し訳無さそうに頭を掻いて自室へ閉じ篭もってしまった。
 私はどうしようかと思ったけど、ゆっくりして行きなよ、と言われて、深雪の
部屋でいつ帰るとも知れない彼女を待つ事にした。
 そして、机の奥に隠されていた雑誌を見つけちゃったのだ。
 いけないと思いながらも、ページを繰る指が止められなかった。
 隣の部屋に彼がいるっていうのに、下着の上から刺激した。
 そんな状況が私をさらに興奮させて、下着をずらして直接触れたりもした。
 そこを──彼に見つかったのだ。
 火を噴きそうなほどに恥ずかしくて、逃げ出そうとしたけど、彼にがっしりと
腕を掴まれて、身動きが取れなかった。
 千穂ちゃんってエッチだったんだね──そう言った彼の眼は、いつもと違って
ぎらぎらと鈍く光って怖いぐらいだった。
 それなのに、私は抗う事もしないで、彼に身を委ねていた。
 私は親友の部屋で、その兄の指に溺れ、昇り詰めちゃったのだ。
 戸惑いと、後悔と、激しい快楽が、私を恍惚とさせた。
 以来──どうやら私は、彼の虜になっちゃったらしい。
 度々親友の目を盗んで、何回もエッチな事をした。
 私は彼に刺激され、私も彼を刺激する、秘密の関係を続けてた。
 でもまだ、いわゆる本番──セックスは経験してない。
 彼にも最後の一線を越えてはならないっていう理性があるらしい。そんなの、
言い訳にしかならないでしょ、って思うのに──
 あの日から、およそ半年が経っていた。
 私は中学生になり、深雪とは同じクラスになった。新しい友達もでき、新しい
生活にも馴染んできた。クラスが私中心に回り始めたのも自覚してる。
 彼は社会人になり、私も運動部に所属したおかげで、会うのは難しくなった。
 でも、私たちは、こうして画面を通して会える。
 文字も、映像も、音声も、ただのデジタル信号でしかない。彼の感触も、温もり
も直接感じる事はできない。
 それでも私は、彼と会えるのが嬉しかった──
73密会 6/8:2006/11/27(月) 00:10:12 ID:tT8m5P9W
『よ〜た > いっぱい濡れてるね〜』
『ちほ > うん・・・』
 ショーツには大きな染みができていた。
 さっき洗ったばかりなのに、さっき履き替えたばかりなのに、ぐっしょりと
濡れて、いやらしいおつゆがショーツに染み込んでた。
『よ〜た > 千穂はそれをどうするのかな〜?』
『ちほ > 脱いじゃう・・・』
『よ〜た > いい子だね
 よ〜た > じゃあパンツも脱ごうか^^』
 私はショーツに手を掛け、あっさりと脱いでしまった。
 身に纏うものは何ひとつ無い、生まれたままの姿を親友の兄に晒した。
『よ〜た > 脚広げて、見せてね』
『ちほ > うん』
 言われるままに、脚を開く。
『よ〜た > どうすればいいか判るよね?』
 私はこくんと頷き、昨日もしたように、椅子のひじ掛けに両脚を引っ掛けた。
 不安定な姿勢だけど、いやらしくて恥ずかしくて、どんどんエッチになる。
『よ〜た > 千穂のM字開脚・・・
 よ〜た > いやらしい格好だね』
『ちほ > うう・・・はずかしい』
 手を伸ばしてキーを叩く。
 画面に見入っている彼の姿と、ウィンドウに映し出された自分自身のあられも
ない姿に、私はさらに昂ぶってゆく。
『よ〜た > でも、興奮しちゃうんでしょ?』
『ちほ > だって・・・』
 彼に見られると興奮しちゃう。
 それを言われて、ますます熱くなっちゃう。
『YO−TA_W−Ire > もっとよく見せて』
『ちほ > もっと・・』
『よ〜た > もっとだよw
 よ〜た > 俺の顔が、近づいてると思って、
 よ〜た > 俺によく見えるように、ね?』
 カメラを掴んで、いやらしく濡れそぼったところへ近づけた。
 私のそこが、大きく映される。
 ぱっくりと開いた下の唇は、ぐっしょりと濡れていて、とてもいやらしい。
 裂け目から覗くサーモンピンクの襞は、艶めかしくひくついている。
 黒々と茂ったヘアも、その中にぽつりと顔を出した小さなお豆も、何もかもが
映し出されていた。
 彼もこの画を見てる──それがいっそう、私を掻き立てる。
「千穂のおまんこ、やらしいね」
「あぅっ──」
 唐突なヘッドフォンからの彼の声に、私はびくっと震えて声を漏らしちゃう。
「声、ダメでしょ?」
「うん……」
 私はヘッドフォンを少しずらして、家族の反応を窺った。
 大丈夫、特に変化はないみたい。聴かれてないっぽい。
 でも、自分も声を出したじゃないか、と恨めしく思う。
 あんな言葉を親友に聴かれたら──
『よ〜た > 大丈夫だよ、深雪は今トイレ行ったっぽいw』
 よかった、深雪には聴かれてないんだ。
『よ〜た > ていうか、真っ暗www』
 そう言われて、驚いた拍子にカメラを落としちゃってたのに気づいた。
 机の縁にコードが引っかかって、ぶらぶら揺れてその奥の暗闇を映していた。
 私は急いでカメラの向きを戻す。
『よ〜た > ちゃんと見えるようにね^^』
 小さな声で頷いて、カメラを固定し、レンズの向きを調節した。
 画面に、私の一番エッチなところが、くっきりと映るように──
74密会 7/8:2006/11/27(月) 00:11:14 ID:tT8m5P9W
『よ〜た > くちゅくちゅいってる
 よ〜た > 千穂のおまんこの音、よく聴こえるよ』
 彼の指示どおりに、頭から外したヘッドセットを腿に填めた。
 カメラを向けられ、マイクも寄せられ、私のしとどに濡れたエッチなところは、
私自身の右手の指で掻き回されて、いやらしい音を立てている。
『よ〜た > すごくエッチだね
 よ〜た > もっと気持ちよくなっていいんだよ』
 画面に映った彼も、そこを曝け出して握り締めてる。
『よ〜た > おまんこいっぱい濡らして
 よ〜た > びくびく震えて
 よ〜た > たくさん感じちゃうんだよ^^』
 キーを素早く正確に叩きながら、その合間に自分のモノを扱いている。
 私は彼のように器用にはできない。私はもう、彼の言葉に突き動かされながら、
身体中に広がる快楽を貪る事しかできなくなっていた。
『よ〜た > 俺のもこんなになってるよw
 よ〜た > 見えるよね?』
 カメラが揺れて、彼のそこへ近づいてゆく。
 何度も見た彼のそれ──
 天を衝くほどに反り返った男性の象徴。赤黒く硬直して、どくどくと脈打つ
欲望の塊。
 私はそれを握って扱いたり、ぺろぺろ舐めたり銜えたりもした。ほとばしる
精を喉に浴びて、咽返った事もあった。
『よ〜た > 千穂のオナニー見ながら
 よ〜た > 千穂のおまんこに入りたいって
 よ〜た > こいつが叫んでるよ』
 なら、入れて欲しい──そんな事言うなら、ちゃんと入れて欲しいのに。
 私はまだ、一度もされた事が無い。私の初めてを、彼は奪ってくれない。
 こんなにも求めてるのに、これほどに欲してるのに、彼はそれだけはしてくれ
なかった。
 だから、私は──
 もう、すぐそこまで来てる。
 身体がびくびくなって、何かがきゅーっとお腹の下に集まってくる。
 自分の右手の中指がその真ん中に沈み込んだ映像に、見惚れてしまう。
 未開通のそこは熱く潤んでひくひくと、抉るように蠢く指を銜え込んでる。
 ヘッドフォンから解放された耳に、いやらしい水音が届いてる。
 どろどろのそこから女の子の匂いが立ち昇り、鼻腔をくすぐってる。
 さっきまでそこを貫いてた左手の指の、塩気とえぐ味が舌に絡み付いてくる。
 彼に貫かれる自分を想像し、指を代用にして五感全てで感じ取る──
 身体ががくがく震えちゃう。椅子がぎしぎし鳴っちゃう。
「んっ、あぁっ、はぅっ!」
 口が開きっぱなしになって、声が抑えられない。
 唾液と愛液にまみれた左手を伸ばし、なんとかキーに触れる。
『ちほ > おにいいちゃああああmmん』
 ちゃんと打てない。直す余裕も無い。
 気持ちよくて、快感以外どうでもよくて──
『よ〜た > いっちゃいそうなんだね千穂w
 よ〜た > おれも・・・いきそうだよ!』
 それを扱く彼の手は勢いを増し、激しくぶれてどうなってるのかよく判らない。
 私の指も中を掻き抉り、濡れた左の指でクリットを責め立てる。
「ひゃっ、あっ、お兄ちゃ……んっ、はぁぁっ!」
 声を出しちゃいけないと解かっているのに、抑える事は私にはできない。
 きっと、彼の耳に届いているはずだから。彼に聴いて欲しいから──
『よ〜た > ああああ・・ちほ・・・もういく!』
「はぁっ、ひんっ、イくぅッ!」
 ひときわ大きな衝撃が、私の身体を跳ね上げた。
「ひっあぁッ──!」
『よ〜た > ちほ・・・・でるよ!!』
 彼も全てを解き放ち、白い精を飛び散らせた。
 私はびくびくと身体を震わせながら、放心して余韻に浸った。
75密会 8/8:2006/11/27(月) 00:12:18 ID:tT8m5P9W
 恥ずかしい。
 終わってしばらくすると、自分のしていた事が無性に恥ずかしくて、すぐに
でもPCを終了させたくなっちゃう。
 汗を拭いてパジャマを着たけど、じっとりと湿ったショーツに、快楽の余韻が
染み付いていた。
『よ〜た > 今日もいっぱい気持ちよくなれた?w』
『ちほ > うん・・・すごい気持ちよかった・・』
『よ〜た > そっかwよかったw』
 彼の笑みが、私の心を満たしてくれる。
 恥ずかしいけど、お互いの姿を確認し合えるのは心地好い。
『よ〜た > うあwwカメラにちょっとついてるwww』
 その言葉の直後、彼を映していたウィンドウが真っ白になり、私は動揺して
しまうが、すぐにティッシュで拭いたんだなと理解した。
『ちほ > だいじょうぶ?こわれてない?』
『よ〜た > 俺の顔、見える?w』
 照れ臭そうな彼の顔は、ちゃんと映ってる。
『ちほ > うんwお兄ちゃんの顔、ちゃんと見えてるよ^^』
『よ〜た > よかったw』
 急に心細くなる。不安になる──
『ちほ > お兄ちゃん・・・かっこいい』
『よ〜た > なに?いきなりw』
 でも、笑顔を作って、顔に出ないようにしちゃう。
『ちほ > 言いたくなっただけ・・・』
『よ〜た > 千穂はほんと可愛いなぁ^^』
 よかった、気づかれなかったみたい。
『よ〜た > 俺好みの、エッチで可愛い子w』
『ちほ > うれしい・・・』
 私は中学生になった。自覚できるほどに、身体の成長が著しい。
 千穂は大人っぽいから羨ましい──友達はみんなそう言う。
 でも、私は──
 私が大人になったら、彼に捨てられるんじゃないかと不安になる。
 だって、彼はロリコンだから。大人っぽい子には興味が無いから。
 大人になんてなりたくない。子供のままでいい。
 きっと彼は──
 最後までしちゃうと、私が大人になっちゃうから、してくれないのかも──
 彼とずっと一緒にいたい。彼にずっとこうして可愛がられていたい。
 そんなの、無理だって解かってる。それでも、私は──
『よ〜た > あ、そうだ、千穂
 よ〜た > 来週もうGWだけど、金曜日って空いてるかな?
 よ〜た > どっか遊びに行こうよw』
 その日は、たしか──深雪と出かける予定があった気がする。
 深雪とは親友だ。彼女との予定をキャンセルするのは躊躇する。
 でも、私は──
『ちほ > うん?あいてるよ』
『よ〜た > よかったw
 よ〜た > どこも込んでると思うけど、デートしようw』
 デート──
 私は、期待してもいいのかもしれない。勝手に私が焦ってるだけなのかな。
『ちほ > 楽しみ・・・』
『よ〜た > 俺もw』


 PCのファンが停まって、エアコンの唸りと、こちこちという秒針の音だけが
部屋に響いてる。
 ぐっしょり濡れたショーツが冷たい。
 寝る前にちゃんと穿き替えるんだよ、と彼は言ったけど、私はこれを穿いて
明日も登校するつもりだった。昨日も、一昨日もそうだった。
「お兄ちゃん……」
 エッチなおつゆの染みたショーツを穿いてると、彼とずっと繋がっていられる
ような気になれるから──
76名無しさん@ピンキー:2006/11/27(月) 00:56:17 ID:/O1Od9F+
超大作 GGGGGJJJJJJ!!!!!!!!
77名無しさん@ピンキー:2006/11/27(月) 18:08:33 ID:GlC+5t/p
GJ!
78伊南屋:2006/11/29(水) 03:49:12 ID:o4O8N3Ny
 やけに暖かい布団の中で目が覚めた。
 僕はぼーっとする頭で、どこか甘味のある匂いを嗅いでいた。
「う……ん」
 腕の中、何かが身じろぎした。
 またか。またなのか。
 腕の中のものが何かを悟り、僕は布団を剥ぎ取る。そこには予想通りのものが。
「……美奈希」
「う……にゅ」
 上半身はパジャマに、下半身は下着だけ。そんな無防備極まりない姿で、美奈希が僕の布団の中に潜り込んでいた。
「美奈希、起きろ」
「あ……ぉはよ……おにぃ……ちゃん」
 美奈希は絵に描いたような低血圧ぶりで、今にも二度寝を始めそうだ。
「ほら、ちゃんと起きて着替えろ」
「う〜……」
 のそのそと身を起こす。僕のベッドの上で女の子座りをして目をこする仕草は、我が妹ながらなかなかに可愛かったりする。
 僕は部屋のドアを開け、美奈希を促す。
「ほら、まず自分の部屋に戻れ。学校の準備だってあるだろ?」
「ん……」
 未だ眠そうではあるが、なんとか立ち上がりよたよたと歩き出す。
 小柄な美奈希がそんな風に歩くと危なっかしさは三割ましだった。
「ちゃんと歩けよ……まったく」
 美奈希の手を取ってやり、エスコート。案内先は美奈希の自室。
 扉の向こうに美奈希を押し込む。
「すぐに朝飯にするから急げよ?」
 そう言い残し、僕はキッチンへと向かった。

 朝のメニューはトースト中心の簡単な洋食。
 それらをブラックのコーヒーで流し込んでいると、美奈希が言った。
「……いつも思ってたんだけどさ、よくそんな苦いの飲めるね……」
 それは聞き捨てならない。家のコーヒーはインスタントではなく、ちゃんとしたドリップコーヒーだ。
 父親の影響で、昔からこれに慣らされた僕にとってみれば、缶コーヒーなどの甘いコーヒーの方が遥かに不味い。
 そんなに甘いものが飲みたければココアでも飲めばいい。わざわざコーヒーを甘くするなど言語道断だ。
 そう思っている僕は、だからコーヒーの良さを知ってもらいたくて言ったのだ。
「美味しいよ? 大体ブラックコーヒーは苦いだけなんかじゃない」
 カップを差し出すと、美奈希は恐る恐るそれを手にとってみる。
 流石に、それはビビりすぎじゃあるまいか?
 頬杖をつきながら僕が様子を見ていると、美奈希は意を決したかのようにきゅっと目をつぶった。
 カップに口を付けようとして、しかしその直前静止する。
「どうした?」
79伊南屋:2006/11/29(水) 03:50:42 ID:o4O8N3Ny
 美奈希は閉じていた瞼を開き、上目遣いに僕を見つめた。
「お願いがあるんだけど」
「なに?」
「口移しで飲ませて」
「っ!!」
 頬杖から頭を滑り落とし、テーブルに強打。半端なく痛ひ……。
「ダメかな?」
「ダメに決まってるだろ!」
「……じゃあいい」
 言って、美奈希はコーヒーのカップをこちらに返し、自分の牛乳を口に含む。
 心なしか失意が見て取れるのは僕の幸せな錯覚と思いたい。
「朝からなに言ってんだよ……まったく」
 もはや僕には、精々が溜め息を吐くくらいしかなかった。
 これもまた日常……と思うことにしたい。
80伊南屋:2006/11/29(水) 03:53:01 ID:o4O8N3Ny
毎度、伊南屋にございます。

え〜と……あんま依存してない?
いや、これからだよ!これから!
……多分。
えちぃシーンもね、これからだよ!これから!
……多分。

……すいません精進します。
以上、伊南屋でした。
81名無しさん@ピンキー:2006/11/29(水) 04:56:52 ID:YfecWq8p
>>80
も、萌えた……
続きに大期待!
82名無しさん@ピンキー:2006/11/29(水) 06:43:16 ID:F7X7zA2w
テンション上がってきた
83名無しさん@ピンキー:2006/11/30(木) 13:43:17 ID:gLJH+7vm
ちんこも上向きになってきた
84名無しさん@ピンキー:2006/12/02(土) 07:29:16 ID:qZhwm4Q6
ほす
85名無しさん@ピンキー:2006/12/02(土) 11:24:20 ID:XqJfk7Sg
「お……おい、ばか、まだやるのかっ?」
「え〜?いいじゃん、博士」
射精したばかりのイチモツを再びいじりだした少女の手を、おれは払いのける。
「これでもう何回目だと……!そんな子に育てた憶えはないぞ!」
「夜な夜な求めてくるくせに、なーにが」
くっ。それは、それとこれとは話が
「わたし、博士の好みの子なんでしょ?美少女で、えっちに積極的な。じゃあいいじゃない」
「それは……そうだが!おまえの性欲に関する数値は通常レベルに設定したはずだ!」
「ふふん。その分てえっちってことじゃない。ほら、たってきた。まだ有り余ってるんでしょ?」
「い、いいかげんにしろっ!」
たまらずおれは起きあがって素早く衣服を身につけた。口論するために、人型生体兵器を創り出したわけではない。
もちろんそれとえっちすることは視野にいれて設計したが、それだけに留まるつもりもなかった。
もっと、家庭的なものが欲しいのだ。仕方ない、テストケースとして開発途中の性格強制プログラムを試してや
「……博士」
「なんだ」
声が落ちついた感じだったので、おれはそちらを見、そこに泣きそうな顔の少女を発見した。
「ひどいよ……博士、わたしを身勝手な理由でつくっておいて、性欲の捌け口にしておいて」
く……
「わたしにだって未来があったんだよ。お母さんとお父さんに囲まれて、カレシができて友達ができて、結婚して子供できて……」
ぐぐ……
「だから博士……責任、とってよ。わたしのこと、最後までかわいがってよ。わたし、博士しか知らないからさ。博士のこと、好きだからさ」
ぐぬぬ……
「わたしのネタで、ノーベル賞とったんでしょ?だからほら、あとはわたしと一緒に、幸せな余生をすごそう?」
ぐぬぬう……
「ほら、カタくなってる。もっとしよう。ね?博士」
結局、おれはこの泣き落としには勝てないのだった。
こんなんじゃ世の中渡っていけないぞ、おれ。
86名無しさん@ピンキー:2006/12/02(土) 23:24:54 ID:Zj6smTxV
これは新しい
8785:2006/12/03(日) 00:22:03 ID:ticzED/F
うーむ、いま読み帰すと依存の部分が弱いな。
ところでノーベル賞とか人権問題とかでてくると萎えるか?一応、できるだけソフトにしておいたんだが
88名無しさん@ピンキー:2006/12/03(日) 00:24:10 ID:YUwq6bAC
「彼氏のね・・・おちんちんを切り取ってやろうかと思うのよ」

「はぁっ?いきなりなに言い出してんのよ、あんたは」

「だってほら、私はセックスとかできない体じゃない。
「それでもいい」って、彼は付き合ってくれたんだけど、
やっぱり彼も男だからね。性欲は溜まっちゃうのよ。
そしたら絶対、他の女に目移りしちゃうと思って、いっつも私が抜いてあげてたの。」

「抜くって・・・アレのこと?」

「アレっていうか精液よね。手でしたりフェラしたり、他にもいろんなこと・・・。
でも精液って、出しても出してもなくならないのよ。
夜に3回も出したのに、次の朝にはまた勃ってるの。許せなくて。」

「ちょっと!そういうの、大声で言わないでよ」

「でね。男が浮気するのって、絶対性欲のせいだと思うの。
心がどれだけ繋がっていても、
おちんちんが他の女に向いちゃうから浮気するのよ、絶対。

私なんて、心も体も彼に尽くしてるのに。
彼のためにご飯つくって、彼のためにお掃除も洗濯もして、
彼のために体もきれいにして、髪型も彼の好みに合わせて、
この眼鏡だって、彼が似合うっていうから付けてるのに。

それなのに、他の女のことを見るのよ。
いっつも朝、隣のおくさんと楽しそうに話してるし。
一緒に歩いてても、すれ違う女の人とかちらっと見るのよ。」

「・・・それは・・・普通じゃない?そんなこと言ってたら生活できないわよ」

「普通じゃないわよ!私はずっと、彼のことしか見てないもん。
そしたら彼、「四六時中ずっと見てるのは気持ち悪い」とか言うの。
ぜったい彼、浮気してると思うのよ」
89名無しさん@ピンキー:2006/12/03(日) 10:04:31 ID:WtZUhJd+
>>88
気持ち悪い、同感だ。
そんな女、ちんこ切られる前に別れた方がいい。
でもきっと、ストーカーになるんだろうな……
メンヘルキモス
90名無しさん@ピンキー:2006/12/03(日) 11:05:03 ID:FiUjUJWW
>>87
投下してくれるならどんな形でも歓迎
好きなようにドゾ
91名無しさん@ピンキー:2006/12/03(日) 14:49:58 ID:ZGU2bjBR
おかあさんもおねえちゃんも、もう殺したから
これでこのいえにはわたししかいないから
だからおとうさん、たくさんえっちしよ?
わたしだけを、みていて……わたしだけを、あいして……
ね、おとうさん?
92名無しさん@ピンキー:2006/12/03(日) 15:02:09 ID:ZGU2bjBR
おかあさんもおねえちゃんも、もう殺したから
これでこのいえにはわたししかいないから
さっきみたいにとちゅうでじゃまははいらないから
まってるあいだにわたしのここ、こんなになっちゃったんだよ
だからおとうさん、たくさんえっちしよ?おとうさんがすきなだけ、だしていいよ?
わたしだけを、みていて……わたしだけを、あいして……わたしだけを、おそって……
ね、おとうさん?
93名無しさん@ピンキー:2006/12/03(日) 15:11:24 ID:ZGU2bjBR
おかあさんもおねえちゃんも、もう殺したから
これでこのいえにはわたししかいないから
さっきみたいにわたしたちをじゃまするひとはもういないから
わたしだけを、みていて……わたしだけを、あいして……わたしだけを、おかして……わたしだけを……わたしだけを……
ね、おとうさん?
94名無しさん@ピンキー:2006/12/04(月) 04:01:33 ID:M0yE+o5Y
>>88
依存というかヤンデレぽっいな
95名無しさん@ピンキー:2006/12/04(月) 13:06:14 ID:ai8mBqj1
彼女に携帯電話を奪われた。
返ってきた電話は、アドレスが40件ほど削除されていた。


彼女とは同棲している。大学時代のこと、モテない仲間同士で
学内の女性に声をかけまくるという罰ゲームをやっていたら、
振られまくったあげくに引っかかったのが、彼女だった。

可愛いといえば可愛いのかもしれない。
けれど、その陰鬱で、人を寄せ付けない雰囲気は、
他人と関わることなく生きてきた原因であり、結果だった。
罰ゲームという言い訳と、酒の勢いが無かったら、まず声をかけない。
目を見て話すことすら躊躇させるような、男を拒絶する女。

けっきょく付き合うことになった。正体を見せない彼女の、
内面を手繰る作業が楽しかったのだと思う。気が付けば深みにはまっていた。

彼女もまた、男にとっての"深み"だ。
一度そのぬかるみに落ちた男にすがりつき、絡め取り、
あらゆる手管で男を縛りつけ、手離そうとしない。

ああ・・・そういえば、付き合いだして1年目くらいか、
携帯電話のアドレスを全消去されたことがあった。
(「全消去」にはパスワードが必要だから、彼女は全160件の
 電話番号を、ひとつひとつ手作業で消去したらしい)

今回は「仕事関係」以外、「友人」「親戚」などのフォルダから
主に女性の番号を選んで消去したようだ。親しい男友達の名前も消されている。

自宅のリビング、机の上には置手紙。「8時〜10時 "久田"で夕子と飲みます」。
夕子。彼女のほぼ唯一の友達。電話でちょっと話しただけで会ったことはない。

さすがに社会人の携帯電話だから、彼女も全削除はしていない。
進歩を褒めるべきか、嗜めるべきか、叱り付けるべきか。
96名無しさん@ピンキー:2006/12/04(月) 22:53:09 ID:ai8mBqj1
彼女は私のアンチテーゼだ。


ふつうの女性は、たいてい成年までに5,6人とは肌を重ねるものだ。
私の場合、少し多めで11人。付き合ったのは、幼稚園から数えれば20人くらい。
これだって「多め」なだけ。「多すぎ」でもないし、「股のゆるい女」なんかじゃない。

男にだっていろいろある。体の相性はすごく大事だし、
顔だってもちろん重要。最近は収入だって魅力の一部だと思うし。

いろんな男と付き合って、女を磨いて、一番いいところで一番いい男と結婚すればいい。
それでいい男がいなければ、べつに一生独身だって構わない。
男に尽くせばそれで幸せ、なんて世迷言は、昭和の時代で腐り落ちた。

だから、彼女を見ていると腹が立つ。幸せなのか、幸せになれるのか、
わからないのにひたすら男に尽くしている。男のために生きている。
彼女みたいな「男以外なにも無い女」。正直なところ、半分は軽蔑している。

けれど、反面すこし羨ましい部分もある。
彼女には、私みたいな要領もない。人生への諦念もない。
ただひたすら、男のために没入している。夢中になって男の尻を追っかけている。

報われないし、正直キモい。ほとんどの部分で報われない彼女は、
たまに夕食に誘うと、いつも彼の愚痴ばかりこぼしている。
でも、彼との相思相愛を語り、彼との将来を語り、彼への崇拝を語る彼女は、
ときおり、恐ろしいくらいに幸せそうな笑顔を私に見せる。

そういうとき、半分鼻白む私は、もう半分で嫉妬している。
きっと、彼女の得る幸せは、私にはもう手の届かない高みにあるものだから。


「高校からの友達だかなんだか知らないけど、私と話してるときより
 その人達と話してる方が楽しそうなの。だからついでにアドレス消しちゃった」

正直、キモい。
97名無しさん@ピンキー:2006/12/05(火) 09:05:07 ID:d+JW16uv
続き!続き!
98名無しさん@ピンキー:2006/12/05(火) 12:30:31 ID:lU/3X6kY
修羅場スレ向きな気がしないでも無いがGJ!
99名無しさん@ピンキー:2006/12/05(火) 17:46:34 ID:MiaZpnOt
>>98
まあいいじゃないか。向こうは良い意味で供給過多な気もするし、ここで分散してくれると助かる。
100名無しさん@ピンキー:2006/12/07(木) 08:45:52 ID:hsi3kqe2
執着と依存は別物?
101名無しさん@ピンキー:2006/12/07(木) 09:13:28 ID:cYmNa3gI
>>100
依存するほど愛しているが故の執着ってのはアリかと
102籠城戦 ◆DppZDahiPc :2006/12/11(月) 06:57:40 ID:6REVvriL
保守がてら、ちょっと書いてみた。
本番なし、鬱鬱。
103ダメアネ1/3 ◆DppZDahiPc :2006/12/11(月) 06:59:02 ID:6REVvriL
 電気を落とした寝室に、彼女は寝そべっていた。
 天井を仰ぎ見ているのか、視線は虚空で固定され、動かず。
 まるで、死んでいるかのように動かない。
 伸ばし放題な黒髪は、扇状に広がっている。
 着ている薄手の夜着の裾はめくれていて、下着は膝まで下げられ、自慰の痕跡
が残る股間を晒している。
(……また、オナニーしようかな)
 乾きを覚える思考で、彼女は考える。
 乾きを潤すため。
 飢えを満たすため。
 まだ少女と言ってもいい若さは、呪いだと彼女は思う。
 若いからこそ、乾き易く、飢え易い。
 若いからこそ、自らの欠けた部分が気になる。
 若いからこそ、直ぐに行動してしまう……。
 乾き餓える心を宥めるため、彼女の手は自らの性感体を求める。
 姫部に群がる僅かな陰毛が、じょりじょりと指先に触れる。
 小さな核を探しだし、摘む。
 冷めた指先に触れられ、熱の冷めやらぬ核に不意な快感を感じたが、それは直
ぐに消える。
 氷でもあてがえば、気持ちいいかもしれない。
 楽しい空想に、少女じみた微笑みが浮かぶ。
 まるでテレビに映るアイドルに、恋い焦がれる乙女のような笑み。
 しかし、それも直ぐに失せる。
 そんなことでは、この渇えは満たせないと――。
「……姉さん、入るよ」
 トランスしかけていた彼女の思考が閉ざされる。
 短いノックの後、扉が開かれる。下着を上げる暇さえなかった。
 開かれた扉、差し込む光が、暗闇に順応していた眼を眩ませる。
 眩んだ眼でも、そこに誰がいるかはわかった。
「夕飯だって呼んでるのに、来ないからきてみれば。ダメだろ、そんな寝方した
ら、風邪ひくって」
 まだ幼さの残る不安定な声音。
 世話をやくのが当然だという優しく、少し押しつけがましい声。
(雅人)
 彼女は苦笑するように顔を歪め、それでも動かなかった。
 雅人――彼女の弟は、遠慮もなく部屋に踏み込んでくる。
 それが当然かのように。
 彼女は少しだけ手をずらし、秘部を隠した。
 ――その手は、直ぐに退かされてしまう。雅人の、弟の、手によって。
 男にしては華奢で、少年にしては大きな手に触れられるたび、想うことがあっ
たが。それを彼女は口にはしないだろう。
 今の彼女を庇護してくれる、唯一の存在。見捨てないでくれた、ただ一人。
 駄目になった姉と共に居てくれる優しい弟。
104ダメアネ2/3 ◆DppZDahiPc :2006/12/11(月) 07:00:27 ID:6REVvriL
 その好意に甘える気もなかったが。
 彼の献身を、無碍に突き放すことは、今の彼女にはできなかった。
 だから、言わない。
 過渡期の指先が、彼女より確かに太く逞しい指先が、彼女の膣に入れられ、乱
暴に動かしてくれたら気持ちいいかもしれない。
 胸を引きちぎらんばかりに、強く掴み。激しく揉まれたら、抵抗もできないだ
ろう。
 彼女を抱き上げられるようになった力で、抱いてくれたら、どれだけの快感が
得られるか。
 空想はどこまでも楽しい。
 沸き上がる空想に、衝動的に自慰がしたくなる、セックスがしたくなる。
(このまま、犯してくれないだろうか)
 いえない思考を弄ぶ。
 雅人は、姉の指先をティッシュで拭い終えると。わずかな逡巡の後、姉の秘部
を静かに拭き始めた。
 ティッシュの感触に悦びを感じる。
 自尊心も誇りも喪われた彼女でも、弟の前でいくのは気が引けた。
 ……だが、どうしようもなかった。
 彼女の体が、大きく仰け反り、紅を塗らなくなった唇から淡いため息がこぼれ
る。
「――ぅあ………は…」
「姉さん?」
 拭いてもらったばかりの秘部から、ゆるりと一筋、愛液が漏れた。
 彼女は、雅人の顔を見て、冥い悦びを覚えた。
 驚き/戸惑い/悲しみ/哀れみ――混色の感情。
(そこに歓喜が交ざれば最高なのに)
 しかし、地に足がついた弟は、直ぐにそれを振り切り。新たにこぼれた愛液を
拭った。
 黙々と、姉の自慰の後始末をする雅人を見ながら、彼女は穏やかに眠った。


   ※※※


 時間という概念が欠けてしまった彼女にとって、それが何時のことなのか、理
解するのは難しい。
 しかし、見送ったから、雅人が大学へと出かけている時間だとは理解できた。
 用意してくれた朝食を、もそもそと食べる。
 テレビでは、同い年のアナウンサーが乾いた笑いを浮かべていた。
 それが、彼女には嘲笑に思えた。
 理由は――よくわからない。
 そのアナウンサーが、派手な化粧をしているからかもしれない、綺麗な服を着
ているからかもしれない、しっかりと就職しているからかもしれない、顔が笑っ
ていないからかもしれない。……そもそも、理由などないのかもしれない。
 ひどく悲しくなった。
 ひどい憤りを覚えた。
 水を飲んでも、喉が乾きを訴える。
 朝食を食べても、餓えを覚える。
105ダメアネ3/3f ◆DppZDahiPc :2006/12/11(月) 07:04:18 ID:6REVvriL
 それらは、簡単には埋められず。
 しかし、放置もできない。
 簡単なのは、幸せになれる薬を吸うことだが――それは、弟が嫌な顔をする。
だから駄目だ。
 そして、
(オナニーをしよう)
 想い着く。
(オナニーをしよう、オナニーをしよう、オナニーをしよう、オナニーをしよう、
オナニーをしよう)
 夜着を脱ぐ。弟が買ってくれた下着を脱ごうとして、足がひっかかり転ぶ。
 それでも彼女は止まらない。
 止められない衝動。
 足は洗濯場へ向かう。
(オナニーをしよう)
 空想だけでは、この乾きは満たされない。
 何か、空想を補ってくれるような、オカズが欲しかった。
 洗濯かごの中を漁る、漁る。……見つけた。
 縞柄のトランクス。
 昨日、弟が穿いていたトランクス。
 それを見つけた歓喜に奮え、どうしようもなく高ぶり、トランクスを鼻に押し
つけ、吸う。
(雅人の臭い)
 雅人の汗、雅人の尿、雅人の精液、雅人の臭い。
(雅人の臭いだ、雅人の臭いだ、雅人の臭いだ、雅人の臭いだ、雅人の臭いだ)
 彼女はその場に倒れ。堅い床の上、弟の肉棒を空想しながら、自弄する。
 瞼の裏の雅人が、彼女を激しく抱く。
 姉は弟に犯される悦びに酔い、弟は自らの行いに酔うのだ。
 ただ一人の肉親、二人きりの家族。
 駄目な姉の面倒を見てくれる弟。
 姉が性的欲求を覚えていることに、気づかないフリをする弟。
 弟のトランクスを指に巻き付け、それで秘部を擦る。
 顔はどうしようもなく弛み、思考は白む、身体はただ乾きを満たそうとするだ
け。
「……く………まさとぉ…」


 熱くなった体を、自ら抱く。
 弟に抱かれる日を、いつかと夢見て。
   ※※※

「あっ、もう。なんでこんな場所で」
「…………ごめん」
「わかったから、怒らないから。あっちで一緒に肉まん食べよ」
「……ごめんね」
「わかったよ。ほら、立って」
 差し出された手を、掴めない。
「だめなおねえちゃんで……ごめんね」
 暴発した感情が、そう言わせた。
 冷めた理性が、なにを今更と嘲笑する。
 逃げたい。
 変なことを言い出した自分から、逃げ出したかった。
 ――しかし。
「駄目じゃないよ、姉さんはさ」
 雅人は、身体の下に手をまわし、引き起こした。
「優しすぎるだけだよ」
 キスできる距離に、弟の顔があった。
「雅人……」
106籠城戦 ◆DppZDahiPc :2006/12/11(月) 07:08:23 ID:6REVvriL
最初は、薬物依存でいこうとしたが、書く技量がないため。
弟依存にすり替えた。
彼女/姉がなんでこうなったかについては、各人の想像力にお任せ。

……実姉いるのに、こんなもん書く俺は腐ってる気はしたが。
キニシナイ。
107名無しさん@ピンキー:2006/12/11(月) 09:33:55 ID:mtSaU+/o
GJ!
薬物に手を出した姉を弟が世話してるように見えた
108名無しさん@ピンキー:2006/12/12(火) 01:45:43 ID:3uWi7QC6
GJ!!
実際に姉がいるのに素晴らしいと思った!!
俺もダメなのかもしれない…
109名無しさん@ピンキー:2006/12/12(火) 02:16:54 ID:TJ9GcBD2
グッときた
世話してみたいけど実際にいたら大変なんだろうな…
110名無しさん@ピンキー:2006/12/12(火) 04:27:34 ID:RLpbaSlH
いいなぁ。GJ
111ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/16(土) 23:04:24 ID:jzodNrQg
<ママは依存女>

──あ、パパ、来た。
いっしょに帰ろっ! ──おうちに。
そんな顔しないで。
ママも、待ってるよ。
うふふ、マンションの、愛人さんが気になる?
でも今日はダメよ。
○学生の、実の娘が会社まで迎えに来たんだもん。
まさか、ここから一人で帰れ、なんてこと言わないわよね、パパ。
パパの会社って、駅から繁華街と風俗街を通らなきゃならないんだもの。
来る時はまだ夕方だから大丈夫だったけど、もうお日様も沈んで真っ暗だし、
女の子が一人で帰るのは怖いよー。
でも、大丈夫だよね、パパがいっしょに帰ってくれるんだもん。
ね、そうでしょ?
──わあい。じゃ、いっしょに帰ろっ!

うふふ、どう、二ヶ月ぶりの我が家は?
やっぱり、落ち着くでしょ?
愛人さんのマンションより、ずっと居心地いいと思うんだけどな。
だって、ここはパパとママと私のおうちだもん。
あ、ビール、出そうか。
ママならすぐ帰ってくるよ。
さっき電話したら、全速力で帰ってくるっていったから、あと三十分くらいかな?
……何、ぎょっとしてるの、パパ?
心配しなくても、ママ、怒らないよ。
泣いて抱きついてくるかもしれないけど。
──パパも、わかってるでしょ。
ママは、パパがいないと生きていけない女なんだもん
112ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/16(土) 23:04:55 ID:jzodNrQg
うふふ。
おかしいよね。
ふだんは大手会社の女社長様だって威張ってるけど、
ママって、パパがいないと、ほんっとダメになっちゃうんだもん。
この二ヶ月、会社でミスのしっぱなしだって。
パパがいるときは、定時に帰ってこなきゃならないから仕事にならない、ってぶつぶつ文句言ってるのに、
いなくなったら夜遅くまで会社にいてもなーんの役にも立たない無能社長に成り下がっちゃうんだもん。
ママはね、五時までガツガツ働いて、大急ぎで家に帰ってパパのお夕飯作る生活じゃないと
「マスコミにも大絶賛される有能な女社長」でいられないみたいね。
真美と二人のこの二ヶ月間って、そりゃもうひどかったもん。

はい。
ビール、注いであげるね。
おつまみ、枝豆だけでいい?
ママが帰ってきたら、すぐにご馳走出るよ。
え、着替えないのかって?
うふふ、学校の制服でお酌されるのって、けっこういいでしょ?
ジョシダイセーの愛人作っちゃったロリコンパパには?
ママからも言われてるんだー。
「パパは若い娘が好きだから、真美も家庭内キャバクラでパパを引き止めなさいっ!」って。
──ママって、実の娘をそういう道具に使うのも、躊躇しないから。
パパをひきとめるためならね。
んー?
別に気にならないよ。
ママはママで、私のこと愛してるってわかってるもん。
だって、真美の半分、パパで出来てるから。
ママにとって真美は、世界で二番目に大事な存在だもの。
だから、世界で一番目に大事なパパを引き止めるためには、
そんな駒にも使えちゃう、ってだけのこと。
113ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/16(土) 23:05:26 ID:jzodNrQg
あ、ママ、帰ってきた。
うふふ。
ほら、怒るより前に泣き出しちゃったでしょ?
あらら、真美よりちっちゃな女の子みたいにわんわん泣いて。
パパもひどい人ねえ。
こんなママを奥さんにしてるのに、浮気なんてしちゃって。
あと一週間、放っておいたら、ママ、
そのジョシダイセーのこと刺し殺して、パパも刺しちゃって、
自分も自殺しちゃうところだったのよ。
もちろん、無理心中で真美のことも刺していたに違いないわ。
うふふ。
どうしたの、パパ。青い顔しちゃって?
ママがそういう女だって、パパのほうがよく知っているでしょ?
──大丈夫よ。
パパが戻ってきたら、ママは大丈夫。
ほら、パパの胸にすがり付いて泣いてるママを抱きしめてあげて。
うん。
髪の毛すいてあげるのはポイント高いわよ。
あとは、キスしちゃえばもうママはメロメロよ。
ほら、娘が見てる前なのに、ディープキスになっちゃった。
うふふ、パパもまんざらじゃなさそうね。
ま、そりゃそうか。
結局、パパが好きな女はママで、ママが好きな男はパパなんだもん。
いろんな事情とか行き違いとかあるんだろうけど、
パパはママと仲良くしておいたほうがいいよ。
じゃないと、パパも、ママも、真美も、みんな困るもん。
114ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/16(土) 23:06:09 ID:jzodNrQg
──パパ、今日はママとエッチしてあげてね。
うふふ。
ママって、パパからエッチ誘われて断ったこと、ないでしょ?
ああゆう人だから、自分からパパにエッチせまれないけど、ママは毎晩悶々としてるんだよー。
パパが出ていっちゃった二ヶ月の間、
ママったら、パパの下着で毎晩泣きながらオナニーしてたんだから。
今日はたっぷり虐めてあげてね。
んんー?
二ヶ月ぶりで誘いにくいの?
しょうがないなー。

ママー! 真美、パパと一緒にお風呂はいるねー! ママも一緒に入ろー!

ねっ、パパ、お風呂、お風呂!!
裸になっちゃえば、あとは、もう……できるよね?
ほら、ママ、いそいそと入ってきたでしょ?
あとはみんなで洗いっこして……。
うふふ、真美はもう一人でちゃんと洗えるからいいよー。
──パパはママを洗ってあげなさい。
そうそう。
ママのおっぱいとか、あそことか。
──ほら、ママはパパを洗ってあげるの!
パパのおっきくなりはじめたおち×ちんを丁寧にね……。
あらら。
ママったら、とうとうおしゃぶりはじめちゃった。
娘の前なのに……ま、しょうがないかー。
パパも気持ちよさそうねー。ママ、フェラチオ上手だもんね。
真美は、お風呂あがっちゃうから、
──あとはパパとママとでごゆっくりどーぞ。
うふふ、真美って、けっこう孝行娘でしょ?
115ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/16(土) 23:06:43 ID:jzodNrQg
ちょっとひねって娘から語らせてみました。
116名無しさん@ピンキー:2006/12/17(日) 01:42:43 ID:WKVq70AS
うほお、GJ!!
こういう進め方もいいですね
しかし娘、なかなか出来るなあw
117名無しさん@ピンキー:2006/12/17(日) 04:34:34 ID:LPvD2+vo
恐ろしい娘……!
なぜかまったりと癒されたよ。GJ
118名無しさん@ピンキー:2006/12/17(日) 18:47:34 ID:PEPbaWKq
娘の語りもけっこうキてるなこれ
ゾッとしたよ、GJ
119名無しさん@ピンキー:2006/12/17(日) 20:20:54 ID:eMkHLl+N
こ、これは……

盛り上がって(・∀・)キタアァアァァアァアァァァァァアァアァア!!!!!
120名無しさん@ピンキー:2006/12/17(日) 21:30:54 ID:lfIfqgRU
これはいい
121名無しさん@ピンキー:2006/12/18(月) 09:17:33 ID:cxymUa2z
なにこの羨ましいパパ
122名無しさん@ピンキー:2006/12/18(月) 21:33:16 ID:EC1dxIy+
書いてたらヤンデレになってきた
123名無しさん@ピンキー:2006/12/18(月) 22:55:05 ID:syxOE8lS
この娘さんがママの跡を継いで社長になれば安泰だなw
124名無しさん@ピンキー:2006/12/18(月) 23:54:05 ID:v8tIqb1E
結婚と依存で組み合わせてなんかネタが沸きそうだ
元クラスメートのまとめ役と結婚したけど、自宅に帰ると完全なデレデレで依存しまくり
外と内のギャップにびっくりするパートナーとか
125ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/19(火) 06:38:26 ID:doqSreFL
<ママは依存女・2>

ママー。お腹すいたー。晩御飯まだー?
昨日の夕ごはん、おいしかったなー。
あれ、なんだっけ、満漢全席のなんとかって料理。
パパがいるときしか作ってくれないけど、あれ、真美大好きなんだよねー。
今日はなんだろう……。
……って、ママ……? 台所、まっくらだよう……。
え? え? え?
な、なんで包丁持って突っ立ってるのかな、ママ……?
え……今日、パパ帰ってこないって……。
そう……。
と、とりあえず、包丁は下ろそうよ、ママ。
そうそう、包丁しまって……。
……それで、なんでナタのほうを持ち出してくるかなあ……。
うわあ。ステンレスの台が真っ二つ……。
マ、ママ。
一家心中なんてよくないよ、うん。
「その前にあの小娘バラバラにして食らってやる」って……。
真美、夕ごはんにそんなの食べたくないよぉ……。
──ちょ、ちょっと待っててね。
パパに電話してくるからっ!!
126ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/19(火) 06:38:57 ID:doqSreFL
──パパ?
いい、よーく聞いて。
愛人さんの酢豚定食、食べたくなかったら、急いで帰ってきて。
超速球で!
真美もバンバンジーの材料にされちゃいそうなんだからっ!
え、愛人さん、今日安全日? 生でできちゃう日?
──そんなこと、どうでもいいから帰ってきてってば!
安全日が何よっ!
──ママなんか、今日、こってこての危険日よ!
でも、パパに生でさせちゃうんだからっ!
真美の弟も妹も作り放題なんだからっ!
それで足りないなら、もっとママにおまけ付けさせるよう。
今ならママ、なんでも言うこと聞くよ!
……え?
パパ、そんなことしたかったの?
……やっぱりパパってエッチ!
いいわ。ママは真美が説得しとく。
大丈夫。それくらい、なんとでもなるって。
え、――十年間、いっつも断られてたから絶対無理だって?
あー、もうっ!
パパったら、ほんっと、ママの操縦法しらないのね。
いいから、真美にまかせて!
127ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/19(火) 06:39:28 ID:doqSreFL
──ママ!
パパ、帰ってくるって!
ちょっとお仕事が増えたから遅くなるだけなんだって!
でも、ママ。パパが早く帰ってくるかどうかはママしだいよ。
──パパねえ、ママのお尻で遊びたいんだって!
うふふ。どうしたの、ママ。おろおろしちゃって。
え?
ママってお尻でしたことないの?
うん。そうだよね。
パパがしたことないって言ってるんだから、当然ママはしたことないよね。
ママ、パパしか男の人知らないもん。
でも、パパはしてみたい、って言ってるよー。
真美、「ママは絶対OKするよっ!」って答えちゃった。
パパ、きっとわくわくして帰ってくるだろーなー。
でもママが「そんなのイヤ!」って言ったら、きっとがっかりするだろーなー。
またお外に行っちゃうかもねー。
あ、そういえば、ママ、こないだテレビで
「最近のジョシダイセーはすごくススんでる」って言ってたよね。
きっとお尻でエッチするのなんて当たり前なんだろーなー。

……あれ、ママ、決心付いたの?
んんー。じゃあ、危ないからナタはしまっちゃおうね。
はい、代わりにこれあげる。
うふふ、ほら、お浣腸。
こないだ真美がお腹張ったときママが買って来てくれたやつの残り。
パパが帰ってくる前に、これでお腹の中きれいにしておいてね、ママ。
あ、でもその前に、真美の夕ごはん作ってよね!


──あ、パパお帰りー。
今日も夕ごはん、ご馳走だよー。
え、ママ? さっきおトイレに行って、お風呂に入ってるよ。
もうすぐ上がるから、パパは夕ごはんいっぱい食べて、体力つけて待ってなさい!
128ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/19(火) 06:41:11 ID:doqSreFL
羨ましいパパは、実は自分の奥さんの自分への依存度を
あんまりわかっていなかったりしますw
129名無しさん@ピンキー:2006/12/19(火) 08:31:12 ID:B9NDgYhZ
>>124
よし。書くんだ。
>>128
God job
130名無しさん@ピンキー:2006/12/19(火) 18:55:24 ID:bfe0CGVg
パパさん実は浮気なんてしてなくてママさんをオロオロさせたいだけなんじゃ…
そう思ってる俺がいる
131名無しさん@ピンキー:2006/12/19(火) 20:49:54 ID:TaXn89ae
>>128
GJ!!
前回のより、今回のがツボに来た俺がいる。
132名無しさん@ピンキー:2006/12/19(火) 21:31:10 ID:wMmiH3dw
GJ

真美ちゃん、もしかして消防なんですか?
末恐ろしいw
133名無しさん@ピンキー:2006/12/19(火) 22:32:45 ID:+IcAmDx9
俺の勝手な依存妻の設定

歳は20後半(30前半でもアリ)実際の歳より若く見える
134名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 00:47:54 ID:V8oKHU69
このパパ天然だな……w
135ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/20(水) 07:29:20 ID:Ce7A8qr2
ママは依存女1、2
個人保管庫のほうで少し訂正等加えてみたので、よろしければ見てください

http://green.ribbon.to/~geparosenyo/izonsyuraba/izonsyuraba01-mamaizon.html
http://green.ribbon.to/~geparosenyo/izonsyuraba/izonsyuraba01-mamaizon02.html

リンク先が「Forbidden」ページになる方は

http://ribbon.to/d.php?green.ribbon.to/~geparosenyo/

で入り口からどうぞー。
136名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 08:22:09 ID:579gJrxe
>>135
GJ
137名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 08:51:31 ID:0vJMcGaz
むしろ年上妻と嫉妬妻が気に入った俺
138質入れ1/4 ◆DppZDahiPc :2006/12/21(木) 00:07:14 ID:U5zxbdJr
 オレは質屋に住み込みで働いている。
 根っからの勉強嫌いを直すことなく高卒後、NEET街道を一直線に進んでいた所、
伯父さんが営んでいる質屋に預けられ――現在に至る。
 三十余年質屋を続けてきた伯父さんは、店に閉じこもりがちだった生活に嫌気
が差していたらしく、この五年というもの、店に顔を出すのは盆暮れ正月位だ。
 最近では写真に凝っているらしく、風景写真を撮っては自慢してくるのだが。
この前などは、三週間も顔を見せず、どこかで事故にでもあっているんじゃない
かと心配していると。
 フィヨルド山脈の写真を撮るためだけに、北欧に行くような豪放な人だ。……
少しは、周りの者のことを考えてもらいたい所だ。――と、これは蛇足。
 そんなこんなで。いつのまにやら、それなりに質屋の経営をやれるようになっ
てきている。
 最初はテンテコマイだったのも、いつの間にか余裕が出てきて。それまで気に
することもなかった、品を持ってくる客について、少しか考えるようになってい
た。
 考えるといっても、風貌や様子から『この人はどうして金がいるのだろうか?』
と毒にもならないことだが。
 それで分かったのは、質屋に来るのは大まかに分けて、三種類の人間。
 まず、盗品を流す場として、質屋を利用する者。
 次に、スーツやコートなど、高級な衣類の預け所として質屋を使う者。
 そして、借金を抱えている者ばかりではないだろうが、今直ぐ金が入り用で、
サラ金に頼れない者。

「……ちょっと、聞いてるの。幾らになるの、このバッグ」
「はいはい、聞いてますよ」
 ――今訪れている客は、その後者だ。
 薄いガラス越しに立つ女は、苛立たしげに体を揺らし、靴で何度も床を叩き、
オレの査定を待つこの女が来るのも、今月だけで二度目だ。
 前回は装飾品を持ってきた、ブランド品のネックレス。それなりの品だったた
め一万渡した。
 まだ流れてはおらず、店頭にある。
 しかし買い戻す気はないのだろう、首には新たなチョーカーが巻かれている。
 若い頃日焼けした名残のある肌。波だった長い髪は茶色く染めあげられ。化粧
は濃くないが、少しばかり雑な印象を受ける。
 マニキュアを塗らず爪をのばしていないのは、趣味のためだろう。
 スーツを着ているが、働いていないのは知っている。
 有馬京花――パチンコ狂いの二十八歳、子持ちの人妻だ。
139質入れ2/4 ◆DppZDahiPc :2006/12/21(木) 00:08:44 ID:U5zxbdJr
「――三千円、よくて五千円ですね」 
 オレは淡々とそういった。
「は? 嘘言わないでよ。十万もしたのよ、ソレ」
 今回に限って誓おう。駆け引きや、買い叩こうというわけではない。簡単な話
である。
「コレ、クィレルの九十八年モデルと言われましたが、模造品ですよ。しかも、
ハインラのバッグの」
 オレがそういうと、有馬は顔色を変えた。
「嘘よっ」
「本当ですよ」
 商品を受け取るための口から、ここ十年で発売されたバッグの写真付き一覧表
を提示する。
 最初は、顔を真っ赤にして怒こっていた有馬だが。次第に青ざめていき――
「………うそでしょ…」
 力なく呟いた。
「残念ですが、本当です。まあ、こちらとして出せるのは、できる限り高く見積
もっても五千円ですね。品の状態はいいので」
 説明したが、明らかに耳へ届いていない。
 彼女は自らの顔を掴むや、かきむしるようにし、何事かをブツブツとつぶやき
繰り返している。
「学費……バレたら殺される……バレたら……」
「この価でいいなら――」
 言おうとしたら、睨みつけられた。
「お願い。どうしても十万要るの、十万ないと困るのよ」
 ――十万で買った物を十万でかよ。
 懇願する彼女の顔に魅力を感じたが、商売は商売だ。
「無理ですね」
「そんなっ……」
「どうしてもお金が要るなら、金貸しにでも頼ったらどうです」
「旦那にバレたらどうするのよっ。それにああいう連中は怖いのよ、テレビでよ
くやってるものっ」
 怒鳴られた。……そのテレビで、パチンコ狂いの怖さはやっていなかったのだ
ろうか?
 オレはクサクサした気分で、投げやりに答えた。
「なら、クラブとかソープとか――なんなら、ウチのほうから紹介しても」
 というと。
「イヤよ。面倒臭そうだし、キモイし。それに、旦那にバレたら離婚されちゃう
かもしれないじゃない。だから、貴方が素直に十万渡せばいいのよ」
 ……さいですか。
 オレは、まあ関わりたくない客とはいえ、馴染みの客だ。少しは親切働かせて
やろうと考え。
「今着ているコートとスーツ、靴、指輪、チョーカーもお売りいただけるなら。
五万までは出せますが」
「五万じゃなくて十万よ、それに裸になって帰れっていうの? バカじゃないの、
アンタ。」
 ――叱られた。オレが悪いんだろうか?
「それに服売ったらバレるのよ…………あっそうだ」
140質入れ3/4 ◆DppZDahiPc :2006/12/21(木) 00:10:07 ID:ikJwoegU
 有馬はさぞ名案を思いついたのか、ニマニマと笑顔を浮かべるや。
「トイレ貸してくれないかしら?」
 脈絡もなくそういった。


 店部分にトイレはなく、家屋になっている二階まで案内し、トイレまで連れて
いくや。
「――ちょ、なにして。引っ張らないでくださ――引っ張るなよ」
「いいからいいから」
「服が伸び――ていうか、なにする気――」
「楽しいことよ」
 トイレに引っ張り込まれた。


   ※※※


 洋式便座に座らされたオレは、キッと有馬を睨みつけ。
「脅されても、金は渡しませんから」
「脅すなんて、そんな、ねェ?」
 有馬の指先が、オレの顎に触れようとした――払い落とす。
「ウチにも監視カメラはありますし、台帳にも貴女の――って」
 ――唐突に。
 それはもう、一瞬目の錯覚かと想った。
 有馬が脱ぎ始めたのだ。
「ま、ままま、待て」
 コートとジャケットが床に落ちる。ブラウスのボタンが一つ一つ外されていく、
生生しい人妻の肌が見え。知らず、オレは唾を呑み込んでいた。
 ブルーのキャミソールは薄く、下に着けている濃紺のブラジャーが見え、布地
に包まれた膨らみの輪郭が目に焼き付く。肌は、どこまでも生生しい
 パチンコ狂いの女が、オレを混乱させる。
「……な、なんのつもりだ」
 絞り出すようにオレは喘いだ。
 パチンコ狂いは、自らのたっぷりとした肉球を持ち上げ、
「ここまではサービス」
「……はっ?」
 意味が分からなかった――といえば嘘になる。
「裸見せてあげるから、十万ちょうだい」
 オレより四歳上の人妻は、淫媚な笑みを浮かべ、オレの顎に触れた。前屈みに
なった有馬の胸元、深い深い深い肉の谷間。
「――とは言わない。五千円でいいや」
 傲岸不遜としかいいようのない、交渉とは言えぬ、一方的な取引。
 パチンコ狂いの淫魔が哄う。
「写真撮らせたげるから一万円ちょうだい。おっぱい揉ませてあげるから五千円。
質屋さんの膝の上でオナニーしてあげるから一万円。まんこ舐めさせたげるから
一万円。舐めてあげるから一万」
 淫魔が笑う。
 オレの下腹部を撫でる。
 緊張しているオレ自身に、布越しに触る。
 淫魔が嘲う。
「犯らせたげるから、五万、ちょうだい」
 ずいっと身を乗り出し、オレの耳に息を吹きかける――ぞわっとしたエクスタ
シー。深い谷間が眼前、目も眩むような煙草と酒と女の臭いがした。
141質入れ4/4 ◆DppZDahiPc :2006/12/21(木) 00:11:29 ID:U5zxbdJr
「い、っかい、五万は高いな」
 上擦った声で、意地を投擲する。
 ――息が失せる。
 二十代後半のくせに、弾力のある肉の塊がオレの顔に押しつけられた。
 意識が――爆ぜる。
「なら、一回一万でいいから、十回しよ」
 布越しに、何かが擦りつけられる。
 乳房で阻まれる視界、手で触れ理解した。
 女はタイトスカートをまくりあげ、股間をオレの下腹部に擦り付けてきている。
「――は、……頭、狂しいんじゃないか」
「そうね…………ねぇ」
 果ての虚無へ誘うような――というと大げさだろうか。
 ならば女としか、興奮した女が放つ特有の臭いが、鼻の中、肺の中いっぱいに
充満する。
「試してみて、よかったら、お金ちょうだい」
 わらった、ような気がした――――――オレが。


   ※※※


 昼下がり、しなびた質屋の通りからも店内からも見えぬ、カウンターの下に一
人の女がいた。
 裸に剥かれた女は、店内に流れる音楽ですらかき消せぬほど、音を立てながら
店主の陰茎に喰いつく。
 人妻であるという逡巡も悔いもない、在るのはただ、肉の杭と銀の玉。
 店主がわずかに呻く。
 赤黒い陰茎の先端から、白い液が放たれる。
 女――有馬は、懸命にそれを飲みこもうとし、口端から一筋こぼす。
「こぼしたから、三千円だ」
 彼は、有馬の割れ目に丸めた千円札を三枚押し込む。
 有馬は、何か反論しようとしたが――
「あの……」
 質屋に入ってきた場違いな少女の声に、無垢な歓喜を見せた。
「お母さん、ここにいるって聞いたんですけど……」
 今年十歳になる、有馬京花十八歳の時に産んだ娘は、不安げな顔を彼へ向ける。
 彼は、ひどくうれしそうな顔をした。
 カウンターの下で、京花は嘲う。
「二十万よ、二十万」
 彼は苦笑した。
 自分だけならまだしも、娘まで質入れした女の浅ましさに。
 それに、それを受け入れている自分に。
「分かってるさ」
 彼は哄った。
 これから半日、少女を好きにできる喜びが溢れるためであり。
 何時かは質流れすることになるだろう、母娘の運命を。

 少女が悲鳴をあげ、店内を逃げまどう。
 陰茎を出した男は、だんだんとそれを追い込んでいき――娘は母を見つけた。
「あ、お母さ――」
「じゃあ、パチンコ行ってくるから」
 母は、笑ってその場から立ち去った。
 少女は、


――END
142名無しさん@ピンキー:2006/12/21(木) 00:18:13 ID:OahLy+5P
ここで終わりなのかーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
(*´д`*)ハァハァ
143籠城戦 ◆DppZDahiPc :2006/12/21(木) 00:19:08 ID:U5zxbdJr
以上、パチ依存女の軍資金入手方。
本番失調症が、依然として治りま(ry


あと、なんとなく流れに乗って。自保管庫晒し
http://mbsp.jp/Rionwing/
このスレに投下したのは
TOPから┳→悪戯場へ→短編:今回(質入れ)と前回の(ダメアネ)
     ┗━あそび場に前々回(クラヤミ)
144名無しさん@ピンキー:2006/12/21(木) 00:33:00 ID:mq241UE3
保管庫見にくいよ
途中で読むのやめちゃった
145名無しさん@ピンキー:2006/12/21(木) 03:04:31 ID:+pRG3hD1
携帯サイトか……。
146名無しさん@ピンキー:2006/12/21(木) 09:23:04 ID:97lIy4+c
まあなんにせよGJ
147ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/23(土) 00:30:06 ID:1QfassN5
<ママは依存女・3> 大学時代編

へえ。
キミって、モテないの?
意外だなー。
だって彼女いるじゃん、キミ。
え、幼稚園からの腐れ縁で、別にそんなんじゃないって?
ふうん、そんなものかなー。
でもエッチはしたことあるんでしょ、その娘と。
えーっ。○学生の時からー?
早すぎるぞ、それ!
んー?
……そう、別れちゃうかもしれないんだ。
……というより、「いつか別れなきゃならないだろう」って……覚めてるのね、けっこう。
ふうん。
その娘、社長さんの娘なんだー。
いるよねー。住む世界が違うっていう人。
あ、そこの会社、知ってる。すごい大企業じゃない。
そういや、その娘本人のことも聞いたことあるな。
あたしらといっしょで大学生なのに、自分でも会社立ち上げてるんだって?
化粧品とお花の会社でしょ?
こないだ雑誌に載ってた。
すごいよねー。
それにめちゃくちゃ美人だし。
「そうなの?」って……モデルか、女優並じゃない。
「普段から見てるから、あんまり感じない」って……この贅沢モン。
まあ、恋の悩みならおねーさんが聞いてあげるよ。
コイバナとワイ談は得意中の得意だから、あたし。あはは。
148ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/23(土) 00:30:37 ID:1QfassN5
あ、店員さん、生中ふたつ追加してー。
まあ、飲め飲め、飲みなさい。
んで、キミは、彼女との行く末を悩んでるわけねー。
え?
悩んでないの?
「なるようにしかならないでしょ?」って、意外とクールなのね。
……クールと言うか、なんというか。
案外やきもきしてるの、彼女のほうじゃないの?
うん?
「それはないよ、あはは」って、いやいや分かりませんよ、男と女は。
意外な女が、意外に変な男にひっかかるものなのよ。
あはは、キミも変といっちゃあ変な男だよー。
こんなにモテそうなのに、「今までモテたことない」って真顔で言うんだもん。
えー。
「女の子と仲良くなれない」って?
声くらいかけられるでしょ?
ん?
「最初はいいんだけど、次の日当たりからすぐに避けられちゃうんだ」って?
ふうん。
いっつもそうなんだ。
なんか、会話がよくないとか、気付かないところがあるかもね。
よーし、じゃあ今日はおねーさんがババーンっと相談に乗ってあげよう!
キミ、かわいーし。
あ、店員さん、焼酎セットちょーだい。
149ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/23(土) 00:31:23 ID:1QfassN5
──んで、どーなのよ。
彼女とのエッチは?
んんー。酔ってないよ。
酔ってなくてもワイ談するから、あたし。あはは。
で、どーなのよ?
ちゃんとエッチしてるの?
あら、会えば毎回?
い、意外と激しいのね……。
え、でも全然普通だって?
「お尻でエッチさせてくれないし……」って、キミねえ……。
どこのアダルトビデオでそんなん覚えたの?
フツー、そんなことはしません。――女の子、怒っちゃうよ?
そうよ。
そういうものなの。
フツーはお尻でなんかしないし、顔射とかもしません。
キミ、アダルトビデオの見すぎ。
最近、そういう男多いのよねー。
こないだもさー、「顔にぶっかけていい?」とかいう男がいたからぶん殴っちゃった。
まったく、女をなんだと思ってるのかって。
ん? どしたの、変な顔して。
え、それ、彼女さんOKなの?
……あれと、
……そ、それも?
……ないないない! 
普通、それない!
精子なんかフツー、飲まないよ。うん。
ヒニンはするって、フツー。
ピルまで飲んで中出し好きの彼氏にあわせないって、絶対。
150ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/23(土) 00:32:49 ID:1QfassN5
あっはっはぁー。
キミ、何、ふたりに分身してるのー?
もう一軒行こう!
ダイジョウブ、酔ってませんよ、あたしゃ。
今日はまだ日本酒飲んでないし、
キミのワイ談も全部聞いてないぞー!
え、酒より〆のラーメンのほうがいい?
あー、あたしもそんな気分だわ。
じゃ、來々軒でタンメンでも食べよっか。
美容のために少し野菜摂っておかないと。
……しっかし、キミもやるもんだねー。
彼女さんのほうがキミにめろめろなんじゃないのー?
いやいやいや、そんなことあるって。
どう考えても、彼女さんのほうがキミに合わせまくってるてば。
んんー──おわっと!!
あ、あぶないわねー!
な、何、この車……。
急ブレーキで10センチ手前停車って……あ、腰抜けちゃったわ。
って、ピッカピカのポルシェ……。
運転手、あたしを殺す気かっ!
……って、降りてきた娘、殺る気まんまんでこっち睨みつけてるわよ。
ちょ……え、……キミの彼女さん?
……うわ……。
何、これ。ちょ……背筋が凍るわ。鳥肌が……。
──岩手のおじいちゃんに聞いたことあるわ。
手負いのヒグマとばったり会うと、目見ただけで全身金縛りになるって……。
でも、これ、多分、もっと凶悪でタチが悪いわ。
あ、あたし、今日死ぬのかな……。
151ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/23(土) 00:33:20 ID:1QfassN5
……キ、キミ。
状況分かってるの?
彼女さんの怒りのオーラが見えて……なさそうね。
いや、彼女以外の女の子とお酒飲んでるところ抑えられたんだから、
ちょっとは焦ろうよ、謝ろうよ。
じゃないと、二人とも殺されるって……。
……って、彼女さんは何デレデレしてるのよ。
ご主人様をお迎えにきた犬みたいに……スカートの下で尻尾パタパタ振ってるわよ?
さっきまでの殺気は……ひっ! こっち向いたっ!!
狂犬病のドーベルマン、三日間エサ抜きの視線だわっ!!
動いたら殺される。
じっとしてても殺される。
ていうか、「貴女、息をしているから、死刑」って目で睨みつけられてるわっ!
キ、キミ。
ちょっ、來々軒のタンメンはいいから……。
──って、彼女さん、行く気なの?
あ……いやいやいやいや、あたしは遠慮しときます。
たった今、食欲全部なくなりました。
つーか、プレッシャーで吐きそう。
……主に彼女さんからの殺気で……。
ふ、ふたりで行ってくればいいんじゃないかな? その後、デートでもしてくれば?
うん。
そうしたほうがいいよ、きっと。
あたし、まだ死にたくないし。
はい。それじゃ、私はここで。
腰ぬけてるし、ちょっとチビったから立てないけど、
気にしないで行っちゃって。
いいからっ! 彼女さんがご機嫌なうちに、あたしから離れてぇーーー!
152ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/23(土) 00:34:26 ID:1QfassN5
……それで、さ。
アイツ、彼女さんと結婚するんだって。
学生結婚よ、学生結婚。
彼女さんが妊娠しちゃってね。
というか、絶対狙ってたわよ、あれ。
「ピル飲んでる」なんて大嘘。
アイツは、「子供で来たからしょーがなく結婚する気になったみたい」って言ってるけど、
大学で女の子と話してる機会が増えてるの見て、彼女が焦ったんだろうね。
幼稚園から、小、中、高っていっしょの学校だったから、
近づく女は片っ端から始末してこれたんだけど、大学だけは別々だから、
気が気じゃなかったんだろうね。
まあ、アイツは全然気が付いてないみたいだけど。
え……。結婚式の招待状?
断ったわよ、もちろん。
「新郎の女友達です」なんてノコノコ出席してみなさい。
七代先まで皆殺しよ?
あんたも丁重にお断りしときなさい、……長生きしたければ。
あの後さ、次の日よ、次の日。
……あたしの下宿に、鉢植えと化粧品のセットが届いたのよ。彼女さんの会社の。
「先日はどうもありがとうございました」って。
デートするのを後押ししてくれたお礼……なのかな。
お花も化粧品も、一番高い、最高級品。
……ぞっとしたな。
だって、さ。――あたし、その週に引越しして、学校にも住所まだ連絡してなかったんだよ。
もちろん、アイツだって、サークルの友達だって誰も知らない。
……でも、しっかり届いたんだ。
それも、あたしが大学から帰って、バイトに行く前の十五分くらいの時間にぴったりと……。
……皇國ホテルの結婚式って一度見たい気もするけど、――まあ、命あってのモノダネだわ。
153ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/23(土) 00:34:56 ID:1QfassN5
えー。
パパって、高校とか大学とかで、もてなかったの?
うっそー。
だってパパかっこいいよぉ?
「ウソじゃない、結婚式に呼んだ女の子の知り合いは誰も来てくれなかった」って……。
……ふうん。
な、なんとなく理由はわかった気がする……。
……でも、まあ、いいんじゃない?
パパは、ママからモテモテなんだもん。
ほんとだよー。
154名無しさん@ピンキー:2006/12/23(土) 00:40:14 ID:LbJ9Sr8W
パパさんとママさん、幼馴染(?)だったのねw
155ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/23(土) 00:43:49 ID:1QfassN5
ママさんは忠犬ハチ公並に犬ちっくなのに、パパさんは全然気が付かないのですw
一生懸命尻尾をパタパタして、まとわりついているのに、
「あー、ママって、りりしいから、犬というより牝豹とかそういう近寄りがたいイメージだよね」
と無邪気に言って、ママさんをはてしなく凹ませてしまうw
156名無しさん@ピンキー:2006/12/23(土) 01:13:08 ID:oI+Bj/Ru
陰鬱な雰囲気に浸りたくてこのスレに来てみれば
何?この軽いノリはww
GJ!
157名無しさん@ピンキー:2006/12/23(土) 01:45:49 ID:W+qHclR1
パパの知らないところで暗躍するママいいなw
悪い虫がつかないようにいろんな力を使ってたんだろうな
158名無しさん@ピンキー:2006/12/23(土) 06:08:08 ID:r7b6vBjX
多少スレチ気味ではあるが昨日発売した
戯画のフォセット内の里伽子抄がいい依存気味の作品だったと思う。

儲視点だから良作に見えるかもしれない。
あと、値段が……ってのが問題点だな。
159名無しさん@ピンキー:2006/12/23(土) 10:22:35 ID:hk1i+9/P
依存ママかわいいよ依存ママ
語り手が本人達じゃないのもいいね
160名無しさん@ピンキー:2006/12/23(土) 11:18:30 ID:3q60XgK0
>ママは依存女
小中高大は近づく女性を排除していたのに結婚して子供が出来ると女子大生との浮気での留守を二ヶ月も我慢できる不思議
逆に言えば二ヶ月も妻の妨害をものともせず夫と同棲していた女子大生は妻以上の権力の持ち主かつ
依存っぷりなのか!!!!!!!!111!!1夫がうらやましいぜ!!!!!1!


依存女GJ!!!
161名無しさん@ピンキー:2006/12/24(日) 02:49:21 ID:B+cSvbH6
言われてみればその女子大生も只者じゃなさそうだ……

それはともかくママGJ!
162ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/24(日) 11:32:07 ID:0vEK//e7
ママは依存女3
個人保管庫のほうで訂正等加えてみたので、よろしければ見てください

http://green.ribbon.to/~geparosenyo/izonsyuraba/izonsyuraba01-mamaizon03.html

リンク先が「Forbidden」ページになる方は

http://ribbon.to/d.php?green.ribbon.to/~geparosenyo/

で入り口からどうぞー。


しかし、ママさんの設定が可愛くなっていくにつれ、
パパさんの浮気がだんだん浮いてきた……。
怖い女性を書き続けるといつもまにか可愛くなってしまう。
浮気は切り離して練り直し、作り直ししたほうがハッピーなのかなー。
ジョシダイセーさんは、当初はジョシコウセーさんで、
相当な人です。報われないけどw
163ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/24(日) 15:59:59 ID:0vEK//e7
<プレゼントは……>

あの人と結ばれてから、もう何年になりますか。
お前がこんな歳になるのですから、随分になりますね。
一代で巨万の富を築いた男の一人娘として、結婚というものにそれほどの期待は抱いてはおりませんでした。
いわゆる新興財閥、その本家の人間として、婚姻とはすなわち政略結婚でしかないことは、
年端もいかぬ少女の頃から悟っておりましたし、また、私の人生はそのまま、そういうものでした。
あの人を婿養子に迎え入れ、契り(ちぎり)を交わしたのちも、それは変りませんでした。
ただ、決められたことを決められたとおりにこなす毎日。
その中で──私は思い上がっていました。

──吸収した会社から迎えた婿養子。
あの人──お前の父親を良人(おっと)とした私は、「女主人」の態度を崩しませんでした。
人前では自分が家長であることをことさら強調しましたし、
あの人の知り合いの前で、あの人のことを呼び捨てにしましたこともあります。
あらゆる意思決定の場に出席させながら、また発言を求めたこともありながら、
あの人の意見をことごとく拒否し、あざけり、罵倒して、自分の思うがままに振舞い続けました。
それが、私に許された当然の権利のように。
しょせんは、「成り上がり者の娘」にすぎなかったのですね。
……何百年も家を守り続けた、本当の名門ならば、
迎え入れた婿養子や嫁の力を最大限に引き出すことこそが家の繁栄につながる、ということを心得ていたはずです。
──お前も、一度会ったことがあるでしょう、薙刀の……そうそう、双奈木の御家。
あそこはもう何十代も、女しか生まれなかったそうですが、代々の当主たちは、
決して自分の良人を粗略に扱いませんでした。
いたわり、励まし、二人で手を取り合って外敵に立ち向かい、家を守り続けたのです。
妻は良人を育て、夫は妻を育てる。
互いが掛け合ういたわりは、人に本来以上の力を与えるのです。
しかし、望んで婿に迎えるような有能な男を萎縮させ、自分の虚栄心を満たすことだけを考える女が、
どれほど卑しいものか、と私が知るのには、――随分と時間がかかりました。
それも、取り返しの付かないあやまちを何度もおかしてから──。
164ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/24(日) 16:00:42 ID:0vEK//e7
──亭主が萎縮しているのをいいことに火遊びをしたりすることだけはさすがにありませんでしたが、
私がやっていたことは、よく言われる田舎の家付き性悪娘のようなものでした。
あの頃の私は、「あの人をないがしろにすればするほど自分の価値が上がる」とでも思っていたのでしょうか……。
毎日、顔を見るたびに傷つけずにいられない。
そのくせ、毎日、側にいてもらわなければ気がすまない。
なかなか子が生まれないことを、あの人のせいにして、何度もののしり、
不能者あつかい、無能者あつかいいたしました。
そのくせ、気分のまま、夫婦(めおと)の営みも拒んだりし、
ますます子供を産むことから遠ざかっても、かえってそれであの人を責め立てたりしました。
──私は、あの人にとって、最悪の存在だったのです。
それでもあの人は、この悪魔のような妻に辛抱してくださいました。
心と身体を痛めながら、我慢強く、私を補佐してくれました。

そう、補佐……。
──私は、どれだけあの人に支えられていたのでしょう。
──どれだけ守ってもらっていたのでしょう。
あの人の心が、ついに破れ、私の元を去ってしまったとき、
私は、すべての物を失ったのを知りました。
──苦しい。
水を飲んでも苦く、食事を摂っては吐き戻し、空気さえも毒となったような生活。
あの人を見ることも、声を聞くことも、触れることもできない毎日。
それが、これほどまで辛く恐ろしいことだったなんて、私は知りませんでした。
廃墟と化したような家から這い出て、
自分の誇りと権力の源──愚かにもそう思い込んでいたところ──にたどり着いた私を待っていたのは、
突然牙を剥いた父の部下たちでした。
驕慢なだけで、何の実力もない小娘がいいように食い物にされるまでは、ほんの一瞬でした。
女王のような振る舞いは、父と、父亡き後はあの人の庇護下にあってはじめて可能なものだったと思い知ったとき、
私は、すでに会社の代表権さえ失っていました。
絶望にふらふらと外をさまよったのは、――クリスマス・イブの夜でした。
今日のような、よく晴れた、でも夜になると寒い、本当に寒い日でした。
165ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/24(日) 16:01:32 ID:0vEK//e7
ガラス玉と化した目には何も映らず、灰と暗闇が詰まった頭は何も認識せず──。
ただ、幸せそうな人々の間を、惨めに背をかがめてさまよう私が、
色が着いたものを見たのは、何時間もたってからのことでした。
突然、鮮やかな色──それは、優しいベージュ色でしたが、暗灰色の世界ではあまりにも美しく輝いていました。
古着屋の店頭に吊るされたそれは、かつて私のものでした。
ベージュのコート。
あの人が、去年のクリスマスにプレゼントしてくれたもの。
受け取った私は、良人のセンスの悪さを鼻で笑い、袖を通すこともなく、
あの人の目の前で、使用人に捨てるよう命じたのでした。
それが、まわりまわってここに──。
見誤ることはありません。
身の内から沸き起こる醜い衝動を抑えることもできずに、破いてしまった右の袖口には修繕の跡があります。
あの人が私のために選んでくれた最高級品がこんな路地裏に売られているのは、その破れ──私のせい。
私は、顔を覆って、泣き出しました。
私は、あの人だけでなく、あの人が選んでくれたものにまで、どんなにひどい仕打ちをしたのでしょう。
コートを買い戻す──そんなことさえも出来ない私がいました。
いえ。財布の中にはお金はありましたし、会社での権限は失っても、家産は手付かずに残っています。
新品のコートを何万枚だって買えるのに、
私は、たったその一枚を手にする資格がないことを自分で悟っていました。
ほこりっぽい、冷たい夜風の中で、それは、私のような醜く愚かな女が手を触れることさえも許されない過去の幸せでした。
だから私は、――店の前で、泣き続けました。
氷のような石畳の上にしゃがみこんで。
道行く人々に、打ち捨てられたゴミに与えられる視線を投げかけられながら。
そして、目を上げたとき──コートはなくなっていました。
その優しい過去が私の目に触れることさえ、神様はお許しにならなかったのでしょう。
最後の色さえ失った灰色の世界の中で、私は、今度こそ自分の心が壊れるのを覚悟しました。

──でも、神様が見捨てても、まだ私を見守っていてくれた人がいました。
しゃがみこんだ私の肩にコートがかけられました。
私は、私が泣き崩れているあいだに店から買い戻してくれた人を呆然と見上げました。
166ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/24(日) 16:02:03 ID:0vEK//e7
──なつかしい、あの人を。
誰よりも会いたかった、あの人を。

先ほど、神様が私を見捨てたといいましたが、本当は神様は見守ってくれていたのかもしれません。
あのコートがあの店にある事を、良人が知ったのも、つい最近のことだったそうです。
気になって、何度も店先に足を運んだあの人が、泣いている私を見つける偶然──。
やはり神様はいたのかもしれません。
そして、こんな傲慢な、嫌な女にも手を差し伸べてくれていたのかもしれません。
あの日、肩にコートをかけてくれた後、立てるように手を引いてくれたあの人のように。

ことばもなく、でも何百回もあやまりながら、私はあの人がその時住んでいたアパートについていきました。
冷え切った身体は、コートの優しい温かみで、部屋の中に入る頃は、身のうちが燃え盛るようでした。
そして、あの人と私は、久しぶりに、本当に久しぶりに、ふれあい、夫婦の営みをしたのです。
ああ。
はじめて、自分が何者なのかを知ったあの夜、お前は私の子宮に宿ってくれたのですよ。
あの人は、私の中で何度もはじけ、愛の証が私の一番深いところでひとつになってくれたのです。
結婚してから、今まで、何度も交わったのに、子供が出来なかったのは、
私があの人の愛をないがしろにしていたから、神様が与えてくれなかったのでしょう。
生まれても、「家族」に愛情をそそげない女に子供を産む資格はないのですから。
あの日の夜から──私は、その資格を得たようです。
「この人の子供を産みたい」そう思いながら交わったあの夜、お前は私たちのもとに来てくれたのです。
あの日、私は、世界で一番大切なものをふたつもプレゼントされたのです。
167ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/24(日) 16:02:35 ID:0vEK//e7
……娘や。
お前は、昔の私と同じで、本当に大事な時に素直になれない女だから、母は心配です。
その人のことが好きなら、目をつぶって考えてみなさい。
その人が昨日かわした挨拶が最後のことばになったら──お前はどう思いますか?
今夜はクリスマス・イブです。
どうするかは、お前が決めなさい。
母は、これからあの人と外に出ますから、一人でよく考えて、素直な気持ちで決めなさい。

──あなた、おまたせしました。
あの子ですか。
大丈夫です。
私と違って、大事なことを間違えたりなどしませんわ。
あなたの娘ですもの。
え。
このコートですか。
いいえ、これでいいのですよ。
もう二十何年も着ていても、袖口が破れてつくろったものでも、
私が一番好きなコートですもの。
とくに、クリスマス・イブには、これでなければなりません。
ふふ。
二人でどこに行きましょうか。
娘も誰かと会いに行くでしょうから、今夜は帰らなくてもいいですわ。
イルミネーションが綺麗ですね。
世界がこんなに綺麗な色に染まっていることを、あの子が気付くのももうそろそろですね。
え。
さみしいですか。娘が去って行くのは。
ふふ。それなら、もう一人、子供を作りましょうか──今晩。
毎年、十月生まれの子供ができるのは、なんて素敵なことでしょう。
一番上の娘が、伴侶を得るまでそれが続いてくれるとは思いませんでしたが。
今年のクリスマス・イブも、神様からプレゼントがもらえる気がしますわ。
168ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/24(日) 16:03:09 ID:0vEK//e7
──あー。……こんばんは。
あらたまって、何?
ん、ああ。……メリークリスマス。
……予定が詰まって忙しかったんじゃないのか?
あ、なんとか終わらせたんだ。
ごめん、こんなことになるとは思わなかったから、プレゼントとか準備してないや。
ご飯食べるにしても、どこも空いてないしなー。
どうしよう……。
え、「あなたと一緒ならどこでもいい」って、……しおらしいね。
何、どうしたの、何か変なものでも食べた?
ま、いいか。
とりあえず、俺の下宿来るかい?
ん……、じゃ、行こうかあ……。
なんだよ、……今日はやけにくっつくね。
なんかあったの?
え、これから起きるって、……何が?



パパー。
おじいちゃんとおばあちゃんって、ほんと仲いいよね。
叔父さんとか、叔母さんとかも、みんな仲良しだよね。
真美、親戚の集まり行くの、好きだよー。
でも、なんでママも叔父さん叔母さんも、みんな十月生まれなの?
真美も十月生まれで、お誕生日みんな近いんだよねー。
なにか、秘密があるの?
169ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/12/24(日) 16:04:29 ID:0vEK//e7
クリスマス・ネタです。
ダンナ依存症は母娘二代にわたる筋金入りだったりします。
170名無しさん@ピンキー:2006/12/24(日) 16:15:16 ID:q2YDxUK6
GJ!氏はプレゼント配りの聖人ですか?

しかしママさん、当初はツンだったのかいw
171名無しさん@ピンキー:2006/12/24(日) 16:43:52 ID:B+cSvbH6
この母にして……というわけですねw
色んな意味でクリスマスプレゼント。GJ!
172名無しさん@ピンキー:2006/12/25(月) 01:53:03 ID:zAVI6ZWR
夜中に起きてみたら本当にプレゼントがあったわw
GJ!
173伊南屋:2006/12/26(火) 19:11:50 ID:7cv4Hmu/
 お久しぶり、伊南屋に御座います。
 今回はお詫びに参りました。

 依存妹ネタ。未完も良いところですが、打ち切りと言うことにさせて頂きます。
 1ヶ月も放置したあげくこの体たらく。本当にすいません。

 代わりに、と言ってはなんですが別な依存ネタをただ今書いております。
 こちらはちゃんとして行きますのでなにとぞ宜しくお願いします。

 以上、伊南屋でした。
174名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 01:03:44 ID:umluZKM7
>>173
wktk
175名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 13:26:22 ID:BTSMg3gB
来年は依存スレが繁盛しますように…
176名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 17:25:04 ID:oygd3hYA
俺に依存してくれる彼女が現れますように…



すいません今でかい口たたきましたすいません…
177名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 20:55:04 ID:wQ0mRRPE
>>175
今月に入ってからは、過疎スレにしては繁盛してたなぁ。
この調子が続くといいなぁ。

と読み専が言ってみる。
178 【小吉】 :2007/01/01(月) 22:29:36 ID:yanDsqml
あけましておめでとうございまいます
今年の依存スレの運勢を占わせていただきます。



…占い依存症でSSが一本書けるかもしれないな。占いでエッチしたほうがが良いと出たからエッチする彼女とか
179名無しさん@ピンキー:2007/01/01(月) 23:10:34 ID:7QxQK6qI
>>178
書くんか
180名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 13:58:15 ID:m8t9caY4
このスレが無ければ生きていけないほど依存してるので保守!
181ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/01/05(金) 22:57:20 ID:3FMCkDQT
<勇者ラディスの婢女(はしため)>

勇者ラディスが、邪悪な龍アゾルフを倒したという報は疾風の速さで国内を駆け巡った。
ラディスの武勲は、もはや生ける伝説だ。
<魔王>、<鬼将軍>、それに<龍>。
少し前には、<北の魔女>と呼ばれる、この世でもっとも魔力の高い邪悪な魔女を屠った。
──その話を聞いたとき、私は、それをなかなか信じられなかった。
同じく魔法を生業とする女として、<北の魔女>の力がどれほどのものかを、私はよく知っていた。
正直言って、<魔王>や<鬼将軍>よりも手ごわい相手だということも。
彼女は、この世で最も高い魔力の持ち主であると同時に、おそろしく切れる策略家でもある。
魔力をまったく使わない、純然たる謀略戦──それも彼女にとっては片手間の退屈しのぎ──で、
大国の軍師が何人も滅ぼされている。
そんな正真正銘の化物が、ただ一人の剣士に倒された。
魔道をたしなむ者は、みなそれを疑い、あるいは「だまされた」勇者を嘲笑いもしたが、
<北の魔女>が復活もせずに一年、また一年と年月が過ぎ、
勇者ラディスが次々と暗黒の君主たちを倒して行くのを見て、おおいに驚愕した。
同時に、この勇者は「本物」だということを受け入れざるを得なかった。
私もその一人であったことは言うまでもない。
そして、わが国に隣接する山岳地帯に住処を持つ、
巨龍・アゾルフを滅ぼした報を受けたとき、その思いは頂点に達した。

<龍殺し>の英雄は、すさまじい歓声によって迎えられた。
荷馬車に積んだ巨大な龍の首は、人々に、今回の英雄の偉業も、
決して嘘まぼろしの類ではないことを教えていた。
わが国の多くの騎士と領民たちを餌食にしていた悪夢の化身の死は、
ラディスを建国以来の英雄として迎えるのに十分な材料であった。
乙女たちが野山で摘んだ花を振りまき、ラディスの乗った馬車が通る道に敷きつめる。
楽の音が響き、吟遊詩人たちが新たな英雄譚を披露しようと競い合う。
冬の初めだというのに、謝肉祭よりもにぎやかな祭りがはじまっていた。
182ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/01/05(金) 22:57:51 ID:3FMCkDQT
「ラディス様は、どこで剣術をお習いか」
「取り立てて誰に習ったということはないな。気がつけば、強くなっていた」
「龍を倒すほどに──うらやましいことですな」
「何、魔術を望むままに操ることのほうが、どれだけすごいかわからん」
「その魔術とて、貴公の前ではまやかしも同然。なにしろ<北の魔女>を斃したのですから」
「ははは、あれは、思ったほどの相手ではなかったぜ。今回の龍のほうがどれほど強敵だったか」
身振り手振りを交えて自らの武勇伝を語るラディスは、──思ったよりも単純な男だった。
まあまあの礼儀作法を心得ているが、おだてに弱く、ややもすると自慢話が長くなる。
尊大なわけではないが、自信と自尊心がまさった魂の持ち主だろう。
そこには陰惨さがなく、子供のような明るさがある、というのが、他の男と少し違うところか。
──揶揄の意味で、いわゆる「騎士っぽい」と呼ばれる性格。
それが、私の見た勇者ラディスという男だった。
なんとなく、<冬の魔女>をも斃した英雄、といものは神秘がかった剣聖、
という先入観があったせいか、私は少し失望した。
ラディスが「英雄らしく」色を好み、
近寄る娘たちに積極的にことばをかわす姿を見ていると、その思いは強まった。
──しかし。
考えてみれば、これが本当の英雄なのかもしれない。
好色だが陽気で、気さくな大男は、ハンサムとは言いがたいが人をひきつける愛嬌がある。
それに、ただの戦士にはないだろう、奇妙な優しさも。
下卑たことばまじりに大声で笑うラディスが、
盆をひっくり返したことを、高慢で陰険な高位の騎士に攻め立てられている小姓を
ウィットの効いたやりとりで解放してやったところを垣間見た私は、この男に少し興味を抱いた。
少なくとも、この国の騎士たちの大半よりは、まともな頭と精神の持ち主に見えたからだ。
先ほどの挨拶とお世辞の応酬よりも、ぐっとくだけた会話を少し楽しんだ後、
勇者どのから提案された夜中の逢引を了承したのは、我ながら、どういうつもりだったのだろうか。
183ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/01/05(金) 22:58:21 ID:3FMCkDQT
「――ごきげんよう、勇者どの」
「おお、これは宮廷魔術師どの」
月の光の下で、ラディスは子供のように嬉しそうな顔をした。
主賓として夜中まで酒をあおっていたのに、疲れた様子が全くない。
超人的な活躍をする戦士とは、そういう身体の構造をしているのだろう。
「夜風にあたって語らうのもいいが、この国の男女は、長い話はベッドの中でする風習でな」
「……積極的なんだな」
「何、こんな寒い国では、自然とそうなるものだよ」
ラディスが目を丸くしたとおり、私は普段より積極的だったかもしれない。
<世界で一番強い男>を前にして、私の<女>がうずいたのだろうか。
この国の多くの騎士から──つまり、多くの愚にもつかぬ脳みその持ち主から──求婚されて
拒絶し続けた美貌と肢体が、世界で一番の魔女を屠った勇者にどう見られるのか。
──私の興味は、あるいは、そこにあったのかもしれない。
「では、俺のベッドに行こうか」
ラディスがそう言ってにんまりと総合を崩したとき、
そのベッドがある部屋から、小さな影が走り出た。
「――あ、あの……ぬし様……」
日陰を切り取って人型に据えたような小柄な少女は、
ラディスの侍女か──いや、婢女(はしため)だ。
凱旋パレードの時に、ラディスの周りでちょこちょこと走り回っていたのを思い出す。
「なんだ、シーヴ」
めんどくさそうに振り返ったラディスの態度と声は、まさに婢女にかけるものだ。
「……あの……、私、生理終わりました。その、今晩から……できます」
つややかだが華がない黒髪の下で、白い頬を真っ赤に染めながら、
シーヴと呼ばれた少女は消え入りそうな声で主人に報告した。
「ああ? あー。そうか……じゃあ、明日、な」
「あ……」
袖口を掴むシーヴの手を振り払ったラディスは、
いつでも手に入る女に対しては、あまり決め細やかな優しさを見せない男らしい。
──もっとも、男など、みなそういうものだが。
184ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/01/05(金) 22:59:06 ID:3FMCkDQT
「その娘は、勇者どののベッドを追われたら今晩行くところがないようだな」
「あ、いや……」
私が去ると思ったのか、ラディスが慌てた。
わたしは、くすりと笑った。
意味ありげにドレスの上に羽織ったマントの襟紐をゆるめる。
「こんな寒い晩にベッドなしではその娘が気の毒だ。
──そこは彼女に使わせてやって、勇者どのは私の部屋に来ないか?」
私のことばの意味を悟って、ラディスは何度も大きく頷いた。

久しぶりの性交は、なかなかのものだった。
ラディスは、自信と体力に満ち溢れた男らしく、精力家で、そこそこ巧みな男だった。
シーヴという少女には与えていなかったが、この勇者が意外な気遣い屋であることは、
たっぷりとした前戯と、一戦終わったあとにもこまめに愛撫を怠らないことでもわかった。
ことの最中は、勢いと自分の快楽にかまけて、少々乱暴で単調な責め方であったことを差し引いても、
ラディスは十分に紳士的だった。
脳みそに肉のパティをつめているような騎士たちには望めない性交のお返しに、
私は久しぶりに唇と舌での愛撫を相手に施した。
口に出されたものを飲み下してやるほどのサービスをしたのは、いつ以来であったろうか。
「まだ、できるかな、勇者どの」
「もちろん。あんたみたいな美人が相手ならば──」
にやりと笑ったラディスが、また私の裸体に手を伸ばしかけたとき──不意に部屋の空気が凍った。
185ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/01/05(金) 22:59:36 ID:3FMCkDQT
「――!?」
ラディスが、瞬時に跳ね起きて枕もとの短剣をかまえたのは、さすがだというべきか。
だが、部屋の中央に現れた暗闇は、勇者を持ってしても相手が務まる存在ではなかった。
「……裏切り者……」
地の底から聞こえるような小さな声は、だがしかし、この世で最も危険な呪詛だった。
「――!!!」
私が悲鳴を上げるまもなく、ラディスは床に崩れ落ちた。
──そう。
文字通り「崩れて」「落ちた」のだ。
ラディスが倒れこんだ床にあるのは──白い骨とぐずぐずに解けた黒い土。
「……裏切り者……」
細々とした呪詛は、泣き声すらもまじっているようだった。

「……私を抱いたくせに……」
「……私に殺されたくせに……」
「……私を犯したくせに……」
「……私によみがえらされたくせに……」
「……私を愛していると言ったくせに……」

ぶつぶつとつぶやく、黒衣の女には見覚えがあった。
「あなた、ラディスの婢女……!?」
私の声に、シーヴと言う名の少女は目を上げた。
──そして私は、彼女に声を掛けたことを後悔した。
「……ぬし様の名を、その口から呼ぶな……」
憤怒をぶつけるべき対象を見つけた魔女は、氷より冷たい焔(ほむら)を瞳に閉じ込めていた。
それを見た瞬間、私は、この少女の正体を悟った。
「――<北の魔女>……!!」
ラディスが滅ぼしたはずのその名の持ち主は、絶望より冥(くら)い地獄の女王だった。
186ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/01/05(金) 23:00:53 ID:3FMCkDQT
「……この売女っ……!」
表情を変えぬままゆらり、と、一歩を踏み出した少女のまわりで空気が歪んだ。
濃密の余り、固形化すらしているような鬼気によって。
私は声もなく凍りついた。
身に付けたあらゆる魔術が、この女の前では無力と言うことが本能で分かる。
魔力とは、天稟と努力だ。
そして、どのどちらも、私はこの女の足元に及ばない
どころか、はるかに仰ぎ見ても、姿すら目にすることが出来ない。
──北の大国の宮廷魔術師たる私が。
──仕方あるまい。
──<北の魔女>に敵う魔女などいないのだ。

黒髪を揺らめかした女の正体を悟って、私の骨は氷の柱になった。
<北の魔女>は倒されてなどいなかったのだ。
考えたら、雄々しく、力強いが、賢くはないラディスのような、
「どこにでもいる勇者」ごときに滅ぼされるはずがない。
彼に倒された振りをして、世界をさまようことにしたのだ。
気まぐれに、<魔王>や<龍>を滅ぼしながら──。
女神にも等しい魔力の持ち主なら、それくらい、する。
だがこの女神は──。
憎しみという感情しか知るまい。
自分が作ったおもちゃにちょっかいをかけられた魔女の怒りがどれほどのものかを、
私は想像することさえ恐ろしかった。
飼い犬に手をかまれたどころの話ではない。
文字通り、自分が作り、生を与えたものの裏切りだ。
ラディスは、一瞬にして骨と土くれに戻った、
では、それをそそのかした相手の女にふさわしい罰とは──?
戦慄が氷と化した精神と肉体をも貫く。
呪詛を唱えながら、紅い瞳を燃え上がらせて歩を進める<北の魔女>に、
私は真の恐怖と絶望のなんたるかを知った。
187ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/01/05(金) 23:01:23 ID:3FMCkDQT
<北の魔女>が腕を上げる。
死よりも恐ろしい地獄に、私を生きたまま送り込むために。
あと一歩踏み込んだとき、その刑が執行される。
そう悟っても、私には何もすることができなかった。
──<北の魔女>が、その一歩を踏み、愕然と下を向くまで。

「……ぬ…し……様!?」
先刻、自分が土くれに変えた男の残骸が足に触れたことに気がついた女は、悲鳴をあげた。
「ぬし様っ、なんてお姿にっ!! ああ、ぬし様っ、ぬし様っ!!」
狂乱の声をあげる女は、<北の魔女>であり、同時に勇者ラディスの婢女だった。
ひざまずいて、その衣の袖をひろげ、骨と黒土をかきあつめる<北の魔女>を、
私は呆然と──もっとも体は凍りついていたのでもともと身動きは取れなかったが──眺めた。
狼狽と悲嘆の泣き声を上げて、ラディスの残骸をかき集めた女の瞳に、
私の姿などもう映っていなかった。
「お戻しいたします、ぬし様。――ああ、今すぐに!」
その語尾がまだ空気の中に残っているうちに、<北の魔女>の姿は消えた。
──彼女の「ぬし様」とともに。
そして、私は、身体が自由になったことを悟り、――安堵のため失神した。
188ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/01/05(金) 23:02:00 ID:3FMCkDQT
翌朝。
私は、ラディスに与えられた部屋の前に来ていた。
恐いもの見たさ──などではない。
来たくもない場所にきた理由はただ一つ──招かれたのだ。
──<北の魔女>から。
──今、部屋の中で自分の命無き僕(しもべ)と戯れる女から。

「ひっ……ぬし様っ……そこはっ……!!」
「うるさい、前が限界なら、こっちの穴くらい使わせろ」
「そ、そんなっ……!」
「だいたい、生理が終わったって言うから、わざわざ抱いてやってるのに、
十回くらいでまた血がにじむなんざ、なんて弱いま×こなんだ」
「も、もうしわけございませんっ……でも、ぬし様が…一晩中……っ!」
「お前のおかげで、宮廷魔術師どのを食い損ねたじゃねえか」
「ひいぃっ! ぬ、ぬし様、もっと……優しくっ……」
「ぎゃあぎゃあわめくな。こっちの穴は嫌がってないぜ。
おら、俺のモノにねっとり絡みついてきやがった。――出すぜ」
「は、はぃいぃぃっ、出して下さいませ、ぬし様の精を、私の中にっ……!」
大柄な戦士が、手の中の華奢な女体の中に、熱い液体を注ぎ込む。
どろりとした粘液を不浄の門に放たれた女は、快楽にのけぞって悶えた。
「ああ……ぬし様、ぬし様ぁ……」
声が溶けるように消え入ったのは、気絶をしたからだ。
だがシーヴは、気を失う前に、しっかりとラディスの袖を掴んでささやいた。
「ぬし様……どこにも…いかないで……」
「……ああ、お前の気が済むまで、いっしょにいてやらあ……」
「ずっと……ずっと……です…よ」
「……ああ。俺の旅に連れてってやらあ」
そっぽを向きながら答えたラディスは、私が見た勇者の姿の中で一番優しそうだった。
189ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/01/05(金) 23:02:39 ID:3FMCkDQT
──勇者が婢女を連れて去っていった日から何年も経った今になって、思う。

あの交わりの最後でかわされた二人の会話は、
おそらく、過去に本当にあったやり取りなのだろう。

<北の魔女>と勇者ラディスの間になにがおこったのかは、当人同士以外は誰も知るまい。
だが、あの「誓約」とも言える会話がおこなわれたことだけは間違いない。
あの浮気性で欠点も多いが、心は優しい大男がかけただろうことばに、そして彼の存在そのものに、
<冬の魔女>はすがりつくようにして生きている。
ラディスがいつ、どうやって死んだのかは分からない。
あるいは、殺したのは<北の魔女>本人であるかもしれない。
だが、重要なのは、ラディスは蘇り、<冬の魔女>と旅を続けているということだ。
シーヴという名の、ラディスに従順で、ラディスがいなければ生きていけない婢女とともに。

──ラディスは、<冬の魔女>のかけた魔力で命をつないでいる土くれだ。
──<冬の魔女>は、ラディスのかけたことばで心をつないでいる化物だ。

二人のうち、どちらが主なのだろうか。
……いや、どちらでもいいか。
あの強力な、そして世にも奇妙な二人組は、ちょっかいをかける者さえいなければ、
永遠にこの世を歩き回るだけなのだから。
そしてその片割れは、<生前>の記憶からか、世の中の悪をこらしめることに積極的だ。
あれから何年かたつが、世の中の<悪の君主>たちは随分と数を減らし、
世界は随分と住みやすくなったようだ。
……ねがわくば、嫉妬深い婢女の目の前で、その主人を誘惑しようとする女が少ないことを……。
190ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/01/05(金) 23:31:29 ID:3FMCkDQT
しまったあああ!
<北の魔女>と<冬の魔女>とごっちゃにして書いてター。
全部、<北の魔女>です……。
191名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 23:33:14 ID:BKKOC1aG
何回GJって言えば感動が伝わるかな?
192名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 23:36:16 ID:mAYeIdOp
かくも女とは恐ろしく──。
gj!!
193名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 23:36:39 ID:i/LFzQqP
GJ!!だが、俺の背筋も氷を差し込まれたようだぜ…
194名無しさん@ピンキー:2007/01/06(土) 02:14:13 ID:iGB6CznH
GJ!


何故か知らないが、ランスが頭に浮かんだ。
195名無しさん@ピンキー:2007/01/06(土) 06:23:38 ID:Fz7VumwB
>>194
奇遇だな。俺もだ。
暗に行為を要求しているのにぞんざいに扱われるシーヴ嬢(?)に、シィルの影を見た。


だから、そういう意味でも、後半の急展開にはどぎもを抜かれたさ。
196名無しさん@ピンキー:2007/01/07(日) 22:19:44 ID:/HFTJnIc
過疎スレ化したな。
ここは一つネット上の依存小説でも紹介したらどうだろうか。
三作ともエヴァSSだが
・ほわいと・がーでん
ttp://seventhfall.hp.infoseek.co.jp/
の「むーん ふぇーず」と「Moon Phase」
とか
・線香花火と蚊取り線香
ttp://www6.ocn.ne.jp/%7Eley-k/
の投稿作品 猫狂著 「真心を貴方だけに」
なんかが依存…だと思う。
197名無しさん@ピンキー:2007/01/09(火) 00:43:31 ID:C8fa8IPM
>>196
がより過疎化させている件について
198名無しさん@ピンキー:2007/01/10(水) 08:14:16 ID:9/uFnW9x
こんくらいじゃ過疎とは言わないだろ。この板では。
もう三ヶ月も投下がないスレだってあるんだぞ
199名無しさん@ピンキー:2007/01/10(水) 12:14:02 ID:waJyQ7sH
こんな、職人さん方GJ過ぎるスレを、過疎スレ呼ばわりはないな。
200名無しさん@ピンキー:2007/01/15(月) 02:34:52 ID:tL051M/w
とりあえず保守しとく
201名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 02:37:27 ID:Vyv6xt8X
この板はどのくらいの間隔で保守ればいいのかな?
202名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 09:42:42 ID:OzshNC/7
A:ほとんど保守なんてしないでも落ちない
203名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 18:09:01 ID:Gc2nVxfO
なんか変な流れになってるな
204名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 19:47:37 ID:lIRJMPro
ttp://eternal-ml.com/
ここの「夏を向かえる」(←誤字にあらず)がなかなか素晴らしい。
もう二年以上更新してないけれど。
205お魚 ◆5Z5MAAHNQ6 :2007/01/24(水) 00:38:01 ID:cBc6sN9q
1/8
 地面に剣や矢が突き立ち、まだ腐敗も進んでいない死体の転がる戦場。
 空はどこまでも青かった。
 一人帰途に就いていた少年兵のヨモギは、荒野にポツンと立つ幼女に気がつ
いた。
「俺はヨモギ。……名前は?」
「……ゆず」
 その少女は、ボサボサのくすんだ髪は目元まで覆い隠し、服はといえば薄汚
れた肌着一枚靴すらなかった。
 戦闘の巻き添えを食ったのだろう。両親の姿は見当たらない。
 おそらく死んだのだろうと、ヨモギは考えた。
 このまま、ここに放っておく訳にもいかない。
「一緒に来るか?」
「いいの?」
「大きな街の孤児院なら、食い物ぐらいあるだろう」
 ヨモギはユズに手を差し伸べた。
「…………う、うん」
 ユズはヨモギの手と自分の手を見比べ、その小さな手の平をヨモギの手に乗
せた。
 ヨモギはユズの手を引いて、山を越えた先にある街へと向かう事にした。
206お魚 ◆5Z5MAAHNQ6 :2007/01/24(水) 00:40:04 ID:cBc6sN9q
2/8
 森の中、槍で狩った獣を晩飯にし、二人は野宿する事になった。
「ほれ、毛布」
 焚き火はつけたまま、ヨモギは毛布を一枚ユズに渡した。
 ユズがその毛布に包まるのを確認し、ヨモギも自分の分の毛布に包まった。
「…………」
 ユズが何か言いたげな顔をしていたのに、ヨモギは気がついた。
「何だ?」
「よもぎ……あのね」
「……ん?」
 ユズは真っ赤な顔で、意を決したように口を開いた。
「いっしょにねていい?」
「好きにしろ」
 ヨモギが言うと、ユズは嬉しそうに毛布の中に潜り込んできた。
 そのままユズは、ヨモギの膝の間で寝息を立て始めた。
 暖かいな、こいつ……と思いながら、次第にヨモギも眠りに落ちていた。
207お魚 ◆5Z5MAAHNQ6 :2007/01/24(水) 00:43:41 ID:cBc6sN9q
3/8
 山を越え、ふもとの村で一泊する事にした。
 街までは、ここから半日ほどで到着する距離だ。
「部屋は如何いたしますか」
 宿の主人の問いに、ヨモギは指を一本立てた。
「一部屋。ベッドは二つで――」
 くい、と裾を引っ張られた。
「……よもぎ」
 恨めしそうな声。
 振り返ると、村の服屋で安い洋服に着替えていたユズが悲しそうな顔をして
いた。
 ちなみに山を越えるのに(ユズの体力に合わせて)三日、ずっと一緒に眠っ
ていた二人である。
「……一つでいい」
 顔を引きつらせながら、ヨモギは宿の主に訂正した。
「お子さんですか?」
 宿の主人はニコニコしながら問いかけてきた。
「……ああ、家族だ。な、ゆず」
「うん……おとうさん」
 さすがに赤の他人で、一緒に寝るのはまずかろう。
208お魚 ◆5Z5MAAHNQ6 :2007/01/24(水) 00:45:55 ID:cBc6sN9q
4/8
 活気のある大きな街の、大きな建物を二人は見上げていた。
 背後では、人の行き来が絶えない。
「着いたな」
「……おわかれなの?」
 きゅっと、ユズがヨモギの手を握り返していた。
「ここなら、食いっぱぐれも多分ないだろ。同じ歳の子だっている。俺と一緒
だと危険が大きすぎるしな」
「……うん」
 ヨモギはユズの頭を撫でた。
 孤児院の院長は優しそうな恰幅のいい女性だった。
「それじゃ、院長さん、よろしくお願いします」
「はい。ここまでありがとうございました。ユズちゃん、お部屋はこっちよ」
 院長先生に手を引かれながら、ユズは何度もヨモギに振り返った。
209お魚 ◆5Z5MAAHNQ6 :2007/01/24(水) 00:48:04 ID:cBc6sN9q
5/8
 その日の夜、ヨモギは街の宿屋に宿泊した。
「一人ですか?」
「ふた……ああ、一人」
 訂正し、部屋に入った。
 そのまま、ベッドに潜り込む。
「……落ち着かないな」
 天井を見上げ、眠りに就こうとした。
 まだ、暖かい気候のはずなのに、寝床は妙に寒かった。
210お魚 ◆5Z5MAAHNQ6 :2007/01/24(水) 00:50:22 ID:cBc6sN9q
6/8
 翌日、早朝にヨモギは宿を出た。
 人気のない通りに、ポツンと洋服を着た女の子が立っていた。
「……ユズ?」
「おとうさん……やっぱり、ゆず、おとうさんといっしょがいい……」
 ユズは、ぐすっとべそをかいた。
「……で、黙って出てきたのか?」
 この時間に、院長先生が外出許可を出すとは思えない。
「……ごめんなさい」
 しゅん、と落ち込むユズ。
 ため息をつきながら、ヨモギはユズの手をとった。
「謝るなら、院長先生に言え。ほら、行くぞ」
「……やだ」
 ユズは足を踏ん張って、抵抗した。
 そのまま連れ戻されると思ったのだろう。
「断るにしても、筋は通さなきゃ駄目だろ」
「え……」
 ユズの身体から、抵抗の力が抜ける。
 それを確認し、もう一度、ヨモギはユズの手を引いた。
「旅はきついぞ。実家までかなり遠いからな」
「う、うん!」
211お魚 ◆5Z5MAAHNQ6 :2007/01/24(水) 00:53:07 ID:cBc6sN9q
7/8
 そして、時が流れ。
「お前と出会ってもう十年か」
「もう、そんなになるんだね」
「なるんだよ」
 ヨモギは自分の家に一度戻ると、そのまま旅に出た。
 実家は兄が継いでいるし、放浪が性に合っているのが帰還の旅で分かったか
らだ。
 もちろん、ユズも一緒だった。
 ここは森の中。
 二人は初めて会った日の夜と同じように、獣を狩って野宿をしていた。
「――で、父親として言わせてもらうとだ」
「うん」
 ヨモギの無精ひげに、自分の頬をこすりつけるユズ。
 ヨモギ、二十五歳、職業は戦士。
 ユズ、十五歳、職業は魔術師である。
「いい歳した娘が父親の寝床に潜り込むんじゃない」
 最近富に成長著しい胸の感触も、ヨモギとしては気になるところであった。
 毛布一つで一緒に寝る習慣は、この十年変わる事がなかった。
「……駄目なの?」
 可憐な少女の潤んだ目で見詰められ、ヨモギはコホン、と咳をした。
「父親と娘としては非常に問題がある」
 意味を悟って、ユズの顔も真っ赤になった。
「……じゃ、じゃあ、別の理由があればいいのよね?」
212お魚 ◆5Z5MAAHNQ6 :2007/01/24(水) 00:55:12 ID:cBc6sN9q
8/8
 翌日の昼下がり、街に到着した二人はまず宿を取った。
「お泊りですか?」
 ヨモギは頷き、指を一本立ていた。
「一部屋。ベッドはダブル」
「ご夫婦ですか?」
 ヨモギの後ろで、ユズがコクコクと頷いていた。
「今日から――」
 頬が熱くなるのを感じながら、ヨモギは宿の主人に道を尋ねる事にした。
「――時に主人、この街の役所と教会はどこかな?」


※以上、支援でした。
すみません、エロなかったです。
そして依存スレ的に、これちゃんと大丈夫なのか心配です。
が、書いちゃったので投下です。
次の職人さん新たな投下お待ちしてます。
213名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 02:19:32 ID:11bF6Zcc
>>212
GJ!!!!!
214名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 02:36:44 ID:CT4pYAsN
GJ!
215名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 02:40:12 ID:4sAcw8EC
違うような違わないような、だけどGJ
216名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 09:02:34 ID:Rub6/AjN
GJ!
217名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 16:50:02 ID:uA3p03IU
GJ! 微笑ましい
218名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 18:38:18 ID:3Gk4GCuU
おもしろいかおもしろくないかは、エロがあるかないかではないと思う。
次にも期待してますよ。

GJ!
219名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 14:41:11 ID:oVeLwsyp
あまり依存って感じじゃなかった気もするが…
そんなん抜きにして面白いな
GJ!
220名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 04:35:17 ID:hgKIvNKi
hoshu
221名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 00:15:41 ID:7NN54zKb
ネット上で良い依存小説を知っていたら教えてくれ
↓頼む
222名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 08:14:58 ID:DnPf80D7
ストレートな依存小説って言えば、修羅場スレのSSに1つか2つあった気がする。
あとは、個人的に依存小説だと思うのは「縛」って小説かなぁ?近親相姦ものだけど。

223名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 23:15:36 ID:wuheWSia
>>222
縛は女→男かと思ったら実は男→女依存だったからなぁ。
あれほど性別が逆だったらと思った小説は他になかった。
224名無しさん@ピンキー:2007/02/15(木) 18:16:25 ID:EFLh6ZwZ
ハーレムスレでも上がっているが、靄の森のHaniwaという小説の5話で
>あ、あたしだって祐紀がいないと...いないと......ひっく、ぐすっ...だめなの...生きていけない...
な台詞が出る
225名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 18:50:34 ID:2gnDXS0x
「てんぷら」みたいな、女が生活能力0で男に面倒みられっぱなしってのは依存に入るのだろうか
226名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 23:35:39 ID:YjEMRDfG
>>225
個人的には入ると思うのでどこのサイトかkwsk
227名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 02:00:02 ID:26GkC7W/
>>226
まんがタイムスペシャルに連載されてる4コマ漫画でほのぼの系
ヒロインの造型は激しく好みが分かれるところだと思うがw
228名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 06:46:09 ID:j3/jIO/9
ちょっと質問。
ここでいう依存というのは精神的なものじゃないと駄目なのかな?

電波を受信したんで短編書こうと思ったんだけど、みなさんの口に合うものかどうか微妙。
ファンタジー物なんだけど、女が世界に存在するためには特定の属性の魔力が必要で
その魔力は男の一族しか発することが出来ず四六時中一緒に居ないと物理的にダメというもの。
イメージ的にはメガテンのマグネタイトと仲魔みたいな感じ。
229名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 06:57:35 ID:628C7F60
>>228
俺はいいと思う。
230名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 07:09:43 ID:YtfmrzYZ
>>228
俺はエロイと思う
231名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 09:05:24 ID:aq15rgTd
>>228
俺はFate思い出した
232名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 10:14:09 ID:26GkC7W/
>>228
魔法使いと使い魔みたいな関係かな?
いいんじゃない?
233退魔師くんと淫魔先輩(1/5):2007/02/18(日) 21:13:23 ID:BfZBLL12
 秋陽高校、昼休みに屋上に一組の男女がピクニックシートを広げていた。
 片や、首や腕といった身体の見える部分のあちこちに包帯を巻いた一年生―
―谷町敏満(たにまち としみつ)。
「先輩、最近思うんですが」
 片や、天使かと見紛うようなふわふわ髪の美少女。スカーフの色は三年生を
示している。
「はい?」
 美少女――天王寺千華(てんのうじ ちか)は首を傾げた。
 千華手製の弁当を食べながら、敏満は言葉を続ける。ちなみに弁当の中身は、
焼肉や鰻の蒲焼、牡蠣フライなどやけに精力重視のものが多い。
「俺達、この界隈での拝み屋としては、そこそこ頑張ってますよね」
「そうですね」
 敏満に比べて、ちょこんと小さなお弁当を食べながら千華が頷く。
「ただまー、そのせいで支部からの指示が増えてきたのがちょっと辛いかなと」
「それは……そうですね。もうちょっと人員が増えてくれればいいんですけど
……」
 ほぅ……と微かにため息を吐く千華。
「そうもいかないのが現実でして。他所は他所で魔物退治が忙しいし、俺達で
出来てるうちは人員増加は見込めないと思うんです。だから……」
 そこで敏満は口ごもった。
234退魔師くんと淫魔先輩(2/5):2007/02/18(日) 21:15:52 ID:BfZBLL12
 案の定、千華は上目遣いでこちらを伺ってきた。
「……あの、敏満様?」
「……先輩、学校内で『様』はやめてってば」
 ちなみに敏満のクラスを初めて千華が訪れた時、うっかりそれを口にしてし
まい、敏満はクラス中の男子(と一部女子)に袋叩きにあった経験がある。
 というか、千華と『契約』して以来、敏満の校内での敵は確実に増えた。身
体中に巻かれた包帯は魔物退治が原因ではなく、学生生活という日常の中で増
えたものだ。
 千華は口を押さえながら、顔を赤らめた。
「すみません。でも、今、この屋上には二人っきりですし、人の気配もありま
せんから……そう呼ばせてください」
「……絶対いない?」
「いない、と思います。少なくとも普通の人は。それで、先刻から言いにくそ
うにしている内容ですが……」
「んじゃあ話を戻してですね、ここは独自に戦力アップを図ろうと思う訳ですよ」
「……はい」
「そこで、新たな魔物か精霊と契約を――」
「いやです」
 即答だった。
「……まだ、全部言ってないよ、先輩」
「必要ないです。だからやです」
235退魔師くんと淫魔先輩(3/5):2007/02/18(日) 21:17:57 ID:BfZBLL12
「前と後ろの台詞が繋がってないですよ、先輩!? それは論理的じゃない!」
「戦力アップでしたら、私が強くなります! 他の魔物と契約っていう事はで
すよ? つまり、それは、あの……私にしたように性交での契約って事ですよね?」
 敏満の予想範囲内ではあったが、事は命にかかわる。
 何とか、敏満は説得を試みる事にした。
「えー、まあ、そうなります。でも、これは別に愛情があってする訳じゃなし、
あくまで古の儀式であってですね」
「やだったらやです……っ!」
「先輩、性格が! いつもの内気な先輩はどうしたの!?」
「だ、だって、敏満様が浮気するって言ってる……」
 千華は涙ぐみ、自身の小さな両拳をギュッと握り締めながら、敏満を見据え
た。
「浮気じゃなくて儀式ですよ!」
「やる事は一緒です! 必要ありませんし、私がもっともっと強くなればいい
だけの話ですから……やですぅ……う、ぐすっ……うぅ……」
 口元を押さえながら、嗚咽をこらえる。
「じゃ、じゃあ、妥協点としてですね」
 敏満はポケットからハンカチを取り出し、千華に渡した。
「……何ですか?」
「そんな恨めしそうな目で見ないで下さい。えっと、性交ではなくて、血の契
約で――」
236退魔師くんと淫魔先輩(4/5):2007/02/18(日) 21:20:01 ID:BfZBLL12
「……いやです」
「やっぱり?」
「私、頑張りますから……どうかそんな事、なさらないで下さい」
「いや、でもですよ? 淫魔である先輩が強くなるには、ですよ? ……つま
りその、大量の精気が必要な訳でして……だとすると不特定多数の男の人と?」
「そ、そんなの、ありえません……私、男性恐怖症ですし……私の身体は髪の
一本、血の一滴、涙の一滴まで敏満様のものです。敏満様以外の男の人に抱か
れるぐらいなら、舌を噛んで死にます」
 先輩なら本当にやりかねないな、と敏満は思った。
 というかやるだろう。
 淫魔であるにも関わらず、千華は敏満と『契約』するまで処女であったし、
その後も他の男から精気を吸った事は敏満の知る限り一度もない。
「じゃあ、どうやって? 初めて会った時みたいに女の子達から、こっそり……?」
「敏満様、これを……」
 そう言って、千華はポケットから小さな薬瓶を取り出した。
「何、この薬瓶?」
「天王寺家に伝わる強精剤です」
「…………」
「…………」
「……つ、つまり、そういう事?」
 淫魔は精気で己を強める。
237退魔師くんと淫魔先輩(5/5):2007/02/18(日) 21:22:45 ID:BfZBLL12
 他人から駄目となると、そりゃ、契約者が何とかするしかない。
「き、昨日、いらまちおとかいうのをビデオで勉強してきましたしっ……お尻
とかっ……!」
 真っ赤な顔で千華はとんでもないことを口走る。
「先輩声大きいってば……!」
「だ、大丈夫です、結界を張りましたからこのお昼休みでも多分二回は……駄
目ですか……?」
「……じゃあ、当分二人で頑張るということで」
 敏満は、いつの間にか空になっていた弁当箱を傍らに置いた。
「……当分じゃなくて、ずっとです、敏満様」
 千華は胡坐をかいた敏満ににじり寄ると、たどたどしい手つきで彼のズボン
のジッパーを下ろし始めた……。

※えっと、こんなん?>魔法使いと使い魔
 うっかり途中であげてしまった。申し訳ない。
 とりあえず仕事の現実逃避で書いてみた。
 これから現実(仕事)に戻ります。
 すまん、期待されてたかもしれんエロはまた今度で。
238名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 21:26:50 ID:MQNIb55Z
ちょw寸止めwwだけどGJ!
敏満ガンバレwエロの続き待ってるよ!
239名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 21:55:16 ID:628C7F60
これはGJ。続きに期待期待
240名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 22:32:29 ID:O1CdRfGa
うわ、いいなぁ。GJ
241名無しさん@ピンキー:2007/02/19(月) 03:16:14 ID:qK0qqkTF
先輩かわいいGJ!
242名無しさん@ピンキー:2007/02/19(月) 09:43:04 ID:+WlQKo4g
純情淫魔先輩イイ!!
続きと言うかこの後のエロを希望
243名無しさん@ピンキー:2007/02/19(月) 10:28:32 ID:01pwF1XF
いいよいいよ、これ。
GJなんで続きを期待w
244お魚 ◆5Z5MAAHNQ6 :2007/02/20(火) 06:20:05 ID:wA9oBJm9
233です。
感想どうも。
とりあえず修羅場のメドがついたら書きますけん、
もう少しお待ちください。
今月中に書けるといいなぁ……。
とりあえず同板の無口スレにも投下してるんで、
そっちで暇潰してくれれば幸いです。
『秋陽高校』で検索掛ければ引っかかりますんで、
と他所スレ宣伝込みの報告でした。
245名無しさん@ピンキー:2007/02/21(水) 09:24:00 ID:/DMXAl7w
>>244
つまんね
つうか書く前に自分で読み直してみろ
246名無しさん@ピンキー:2007/02/21(水) 12:05:59 ID:E6BAILV7
>>245のメール欄はわざとやってんのか?
素だとしたら半年といわず一年ROMってろ
247名無しさん@ピンキー:2007/02/22(木) 18:49:01 ID:hxza2/FA
そういや、ハーレムスレの「うらびでっ!」ってどうなったんですか?
248名無しさん@ピンキー:2007/03/01(木) 10:01:19 ID:HjI1GnvV
保守
249名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 00:46:14 ID:hc3jTD5O
ほーしゅ!
250名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 15:48:38 ID:yAxZWCkU
さぁ、張り切って保守だ。
251名無しさん@ピンキー:2007/03/18(日) 17:56:25 ID:6kSqgD99
ほしゅ
252名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 01:36:15 ID:tmSqC8qK
ほしゅ
253名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 02:27:41 ID:kVerkYes
age誰かかいてくれ
254名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 03:32:56 ID:TItFuck3
仕事が明けたら書く予定。
今月はまず無理、すまん。
255籠城戦 ◆DppZDahiPc :2007/03/26(月) 22:16:28 ID:T+voQeH/
思いつきで書いた故か、キャラのビジュアルイメージすらない状態で書き。
気付けば、容姿描写がないことに気付いた。
だから
・女子中学生
・へたれ気障吸血鬼兄さん
を、適当に思い浮かべながら読んでくれ。

……SS書きとして、グダグダなことを言いつつ、保守投下

全4レス、本番なし

256食事狂1/4 ◆DppZDahiPc :2007/03/26(月) 22:18:36 ID:T+voQeH/
 夕日に焼ける旧びた校舎。授業も終わり、まだ部活も本格始動しないこの時期、校舎の中はまるで安置所のような静寂に包まれる。
 それを、

 コツコツコツ

 破る、足音。乱れなきパーカッション、急ぐような三拍子――床を蹴る音。
 静寂な校舎の中響く音を、人外の聴力で聞き耳を立てながら、彼は歌う――足音の主に聞かれぬよう/静かに/密やかに、故国の歌を。
 彼女の足音、その主旋律は、彼の故国にある大河の流れによく似ていた。奔る風の歌に酷似していた。彼の母が歌う子守唄そのまま。
 彼は、歌う、故国の歌を。
 それを――

 コンコン

 ――ノックの音が妨げる。
 足音は止まっていた。
 この時期、この時間、この部屋を訪れるのは一人しかいない。
「どうぞ」
 彼が言うや、扉は盛大に開かれ、
「――おや?」
 怒り顔の彼女がそこにいた。
「どうしました?」
 彼が訊くのへ、彼女/有守るいが応える。怒りの文言。
「どうしたもこうしたもないよっ。なんなのさっ、これ!」
 そういって差し出されたのは――1輪の薔薇。
「ああ」彼は朗らかに微笑むと。
「内緒の合図という奴ですよ。<キス>させていただくのに、いちいち貴女の教室まで往っては要らぬ疑いをかけられてしまいます」
「……だから、薔薇?」
「ええ、洒落てるでしょう?」
 そういって彼は得意げに鼻を鳴らした。
 だが――
「洒落はしゃれでも、こんなのダジャレじゃないのさっ」
 るいは切れた。響く大声。
「こんなん下駄箱に置いてあったら、誰だって今日何かあるって気付くって」
「……そ、そうですか?」
 彼は何を怒られているのか理解できないようすで、怯え怯え応えたが。
「ですが、中々ステキな誘い方だとは思いませんか?」
「しっつこいっ!」
 るいは手に持っていた鞄を、床に投げつけた。
「あんまり言ってると<吸わせて>あげないさっ!」
 その言葉に、彼が慌てる。
「そ、そんな、あんまりですっ。我々吸血鬼にとって、<キス>は身体を維持するのにどれだけ大切なことか、忘れたわけではないでしょう」
257食事狂1/4 ◆DppZDahiPc :2007/03/26(月) 22:20:46 ID:T+voQeH/
「ええ、もちろん覚えてるよ。<吸わ>ないと灰になるっていうんでしょ? 灰になったら、砂丘にでも蒔いてやるのさ。金輪際復活しないように」
「そんな殺生な。この人でなし、人外外道」
「マジに人外畜生のあんたには言われたくないわっ」
「そんな酷いっ!」
 そう叫ぶや、彼はめそめそ泣きはじめた。
 るいより頭二つは高い身長を丸めて泣くものだから、その姿は不気味なことこのうえない。
 るいは、無視しよう、無視しようと思いながらも――結果的には、
「いいから、泣いてないで<キス>しなさいよ。この後、私デートあるんだから」
 その言葉に、今まで泣いていた彼がぴくりと動きを止め。まるで油の切れたブリキ玩具のような動きで身体を起こすと。
「まだ、あの洟垂れ小僧と付き合っているのですか」
「なによ。飯島くんの悪口言う気?」
「――いえ、別に」
 白けたような表情で彼は応えた。
 気に入らないのだろうか? わたしが飯島くんと付き合っていることが――彼女は想い――否定する。
 一瞬でも浮かべてしまった、甘い希望に。
 そう、この人外外道が飯島くんとつきあっているのにいい顔しないのは、わたし/るいが処女でなくなってしまうかもしれないから。
 彼にとってるいの血は、脳が蕩けるような極上のワイン。
 ほんの数的舐めるだけで、折れた肋骨がくっつくほどの力を与えるらしい。
 故に、彼はるいを手放したくないし。その血の魔力が弱まるから、処女でなくなってしまうことを嫌がる。
「……大丈夫」
 るいは呟くように言った。
 すっ、と。スカートの裾をあげていき、ピンクの下着が露出する直前で止める。
 白い太ももが露になる。
 それを見て、彼の眼に、それまでのちゃらけたものとは明らかに違う色が浮かんだ。
 それは――獣の眼。
 しかし、
「まだ、処女だよ。童貞さん」
 その眼をるいは畏れない。
 その眼はるいにとって、今最も必要としている、狂暴な光。
「それは良かった」
 彼は笑った。口元だけで。
「もっとも、あの小僧に貴女に手を触れるだけの勇気があるとは思えませんが」
 自信満々に言い切った。
 その根拠のない自信に、るいは思わず笑ってしまう。
「では、<キス>を――ああ、そうそう。この後デートなのでしたら、首元にキスしたほうが?」
「…………ばか」
 るいは小さく呟き、指差す。
「ここに、して。ここなら、外から見えないから」
 そこは――
258食事狂3/4 ◆DppZDahiPc :2007/03/26(月) 22:22:55 ID:T+voQeH/
 吸血鬼の口元に月。狂暴で、無邪気な月の笑み。どうしようもない歓喜の発露。
 ――処女の内腿。
 まだ処女の少女は、淫猥で淫乱な要求に、自ら赤らむ。
 それを見て、吸血鬼に惨酷な要望が募る――この少女を、娘にしたい。自らだけのものにしたい。
 ――だが、その考えは、直ぐに打ち消した。
 そうするのは、彼のポリシーに反するし。なにより、彼女との契約に反する。
 無限、永劫、虚無の命を持つ獣にとって、契約は自ら足らしめる、数少ない要素、故に吸血鬼は約束を破らない。
 彼女との契約――彼が新たな血液提供者を見つけるか、彼女が処女を捧げてもいいと想う男と出会うまで、彼女は彼に血を与え、彼はそれ以上を要求しない。
 だから
「かしこまりました、レディ」
 跪き、恭しく頭を下げる。
「――では、」
 口元に光る、犬のような牙。
「いただきます」
 そっと
 静かに顔を寄せ――

 ちく

 白い太ももに牙が刺さり、ぷくっと赤い珠が傷口よりこぼれ、涙跡。
 それを舌ですくい、舐めとり、嚥下する。
 彼の身内に迸るような電流/甘く切ない衝動/揺れる激情/歓喜――血が、全身に流れていく。
「おいしい?」
 るいの言葉、喘ぎ。
 彼は頷き、応える。
「毎夜、求めたくなるほど」
 そういって、傷口にキスをした。
 こぼれる血を吸い、傷口から血を吸い、強く強く強く、彼女の身体から血を吸う。
 彼女の膝が震え――倒れそうになったが、彼の頭に手をつき、免れる。
 その体勢のまま、僅かな時間、彼に血を与え続ける。
 そして、気付く、自らのしている体勢、その拙さ。
 ――でも
 いいや
 その体勢は、まるで彼の顔を、股間におしつけているかのようだったし。実際あたっていたが。
 他に誰もいないという開放感では、そんなこと気にならなかった。

 血を吸われる、その快感。
 眼が覚めるような――蕩けるような――自分と世界の狭間が理解できなくなるような――どうしようもない――甘い――
「…………あっ」
 彼女は、倒れた。
 その身体を、彼は受け止め、抱いた。
259食事狂4/4 ◆DppZDahiPc :2007/03/26(月) 22:28:21 ID:T+voQeH/
 彼女の意識がまどろんでいるのを知りながら、普段の彼女なら絶対にさせてくれないほど強く、抱擁した。その華奢な身体を。
 花のような香りがした。
 ソレに気付き、彼は手を伸ばし、触れ――泣きそうな顔をした。
 キス/吸血されると強い性的快感が得られる。
 それが、彼女を引き止めていると知っていた。
 吸血の快感は、人によっては、セックスを凌駕する。――彼女はそういう体質だったのだ。
 故に、これから、彼女が人間の男と付き合ってセックスしても。
 それは、この逢瀬で与えられる快感には程遠い。
 彼は、泣きそうな顔をして、想った。
 弱っていたとはいえ、旧き血の自分が、こんな幼子を狂わせてしまった――その罪を、彼は想った。
 後悔している。言葉で言い尽くせぬほど――しかし、だ。
 彼はその罪に酔っている、どうしようもなく。この少女を手放したくなかった。
 たとえ、吸血鬼に変えてでも。
 彼女と、一緒に居たい。
 故に、彼は想った。
 旧き血の我と、少女を巡って争う一人の少年のことを――
「まあ、知ったこっちゃありませんが」
 まだ白い空に、月が微笑んでいた。


おしまい
260名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 19:43:57 ID:mv9wHS9f
GJ!
261名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 11:26:53 ID:4QzQJYFF
吸血GJ!
吸血スキーなので美味しく頂きました。
262名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 20:53:34 ID:yLBoWZP1
どこかで
田上好きなカリスマ歌手と社会人みたいなシュチュな小説を見た。
おそらく依存っぽかったんだかどこでみたかいまいち覚えていない。ということで情報求む
263名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 21:16:55 ID:YdO7k4RA
傍から見ると、「男が女にベタ惚れ、女、絶対的に優位」に見えるのに
実は女のほうが男に依存、というのに萌える。
・・・めったに見ないんだけどねorz
264名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 21:27:13 ID:R4iu6PUc
>>263
よく分からんが
普段は
男「なあ、デート行こうぜ」
女「はいはい、今度ね。――ああ、牛乳切れてたから、買ってきて」
とか言いながら。
いざ男が他の女に口説かれてるのをみると
女「今からデート行くわよ」
とか言い出すタイプか?
265名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 00:14:49 ID:OTw5wlLY
>>262
たぶん、気の強い娘がしおらしくなる瞬間に…スレの彼女は〇〇〇だと思う
266名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 00:33:02 ID:KXC+BgCa
保守
>>264それだけで射精した。続きプリーズ
267名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 02:14:11 ID:IPaYyPz0
>265
dクス
268名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 10:47:29 ID:qZ5ub/An
>>263
なんとなくGS美神の美神と横島を連想した
269名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 00:51:10 ID:BjAZBbk9
こんないいジャンルなんだ。誰か書いてくれ。


え?俺?俺には文才がry
270名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 07:37:36 ID:wsfac5WC
なあに、書いてる内にこなれてくるさ。
271名無しさん@ピンキー:2007/04/14(土) 10:27:59 ID:nqKJ6Q4Z
236
これなんてご愁傷様二ry
272名無しさん@ピンキー:2007/04/15(日) 01:31:10 ID:3I1GaK2l
愉快なヘビくん
273名無しさん@ピンキー:2007/04/15(日) 01:47:29 ID:en/1e2OX
「なるたる」の高飛車お嬢と、その幼馴染が263ぽい。
274名無しさん@ピンキー:2007/04/19(木) 02:27:42 ID:v5MbI4/r
275名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 10:13:10 ID:Je8BCzJv
hosyu

最近電王の良太郎の姉さんが弟依存キャラっぽく見えるのは俺だけか?
276名無しさん@ピンキー:2007/04/26(木) 01:59:08 ID:XWboQyy5
保守。
277名無しさん@ピンキー:2007/04/28(土) 06:40:15 ID:ljkK2kPF
保守
278名無しさん@ピンキー:2007/04/28(土) 12:07:43 ID:GMdhxcl9
好きなジャンルなんだけど需要ないのかなぁ
退魔師くんとかすごい面白いんだが
279名無しさん@ピンキー:2007/05/01(火) 22:31:09 ID:wkcA+r7t
依存を書いてくれる職人さんがいなければ生きられない
280名無しさん@ピンキー:2007/05/02(水) 21:37:01 ID:INkU5Bfi
hagedou
281名無しさん@ピンキー:2007/05/03(木) 10:25:48 ID:4W4+HFvP
ttp://www.uploda.net/cgi/uploader4/index.php?file_id=0000012837.lzh

ヤンデレスレ保管庫を参考に作ってみた。
うpロダの性質上、二日以内に消えるらしひ。
282名無しさん@ピンキー:2007/05/05(土) 12:49:12 ID:jSVMsd/c
チクショウ…遅かったか…
283名無しさん@ピンキー:2007/05/05(土) 14:36:09 ID:FADkE4s/
>>281
もっかいうpして〜
284名無しさん@ピンキー:2007/05/05(土) 15:13:47 ID:UkotH/k0
285名無しさん@ピンキー:2007/05/05(土) 23:55:02 ID:g20MSZa3
なぜスレがあるのにわざわざうpロダにうpるんだ
お願いします
頼むから普通に投下してください
286名無しさん@ピンキー:2007/05/06(日) 08:13:30 ID:Fcky+YYk
>>>285
いや、作品じゃなくて仮の保管庫だから。
287名無しさん@ピンキー:2007/05/07(月) 21:24:31 ID:ea0vcJfC
流れ無視してすいません。
周囲には冷たいイメージで知られている女が、(周囲の評判は度外視)男のいいなり。
しかしそれは弱みを握られて強制させられているわけではなく、女の依存によるもの。
男に必要とされることに喜びを感じるが、その反面必要とされなくなることを恐れる・・・
こういうシチュエーションの作品(18禁ゲーム・雑誌何でも)見たことありますか?
この場合、たいてい男は引くものなのですが、男がいいように利用していたら更に良いです。
288名無しさん@ピンキー:2007/05/08(火) 21:18:01 ID:a5hVgEaN
その展開いいね、クズ主人公ってのが更にいい。
289名無しさん@ピンキー:2007/05/11(金) 00:43:48 ID:GoGW8744
これでdatたら諦める
290名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 00:20:19 ID:zpCpi4ot
あと十日もすれば補給が途絶えて2ヶ月になるか。
需要があるのに供給が無い…。(´;ω;`)
291名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 03:22:32 ID:GS/5EKRY
やっぱもう無理か?
なんとなくだか書くの難しそうな気がするし。
292名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 19:49:21 ID:GtPCa8RE
今初SS頑張って書いてる。
今月中には投下したいけどエロ描写がうまくいかん。
俺としてもこのスレは萌えポイント高いし、無くなってほしくないから頑張るよ
293名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 19:51:50 ID:rpA4HHDl
よし、それなら保守ろうぞ。
294名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 21:07:39 ID:i+mE0Kll
伊坂幸太郎の「重力ピエロ」の弟が妹だったら、俺は全力で萌えた。
あれは依存とはちょっと違うのかもしれないけど。
295名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 02:15:50 ID:rx4sIUJ8
292と職人の為に全力保守
296名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/16(水) 21:37:12 ID:Vxzs8j1h
なんとなく書いてみたので投稿。
263を意識しつつ。えろなし冒頭のみ。
続きを書くかも不明。
保守代わりに
297僕の仕事はやくざ屋さん  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/16(水) 21:38:05 ID:Vxzs8j1h
天国のお父さんお母さん、僕は立派に社会人になりました。
見城刀19歳は住み込みで今でも働いています。
社会人ははじめの仕事を三年間続けろとの教えどおり、働き始めてから
無能とか雑魚とか世界一向いてないとか言われつつも今でも頑張ってます。
料理を作りながら物思いにふけっていると。

「おい!刀!朝飯はまだかっ!」
「おそいおそいおそーい!おなか空いたおなか空いた!!」
ああ、職場の上司から仕事の催促が〜

「はい。ただいまお持ちします。親分、お嬢さま。今日は豚汁と焼き鮭です。」
「うんうん!おいしそうな匂い。刀ほめてあげるわ。」
「ま、人生間違いはつき物だ。おめーは料理人にでもなるんだったな。」
「ほめられてるのか貶されてるのかわかりませんねー。」

はい僕は今、鬼城組というところで働いています。
俗にやくざ屋さんと呼ばれる職業です。鬼城組は中堅のやくざだったのですが、
二年前に崩壊。借金だけが残り部下は四散という…倒産しちゃったんです。

僕はやくざ屋さんとしては、老人に恐喝なんてできませんし強い人には勝てないですし、
まして追い込んでいくようなことはできなかったので邪魔者扱いでした。
他の優秀な方はそれぞれ別の場所に再就職なされたのですが、僕だけはできなかった
んです。

持ち家を処分したことと、両親が事故で亡くなった際保険金があり、2億程度の
財産が僕には残っていましたので暫くぷらぷらするかとも思ったのですが…。
298僕の仕事はやくざ屋さん  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/16(水) 21:38:48 ID:Vxzs8j1h
両親を亡くして途方にくれたときにお嬢には僕を拾ってもらった義理もあるし、
親分さんにもよくしてもらっていたので借金をお金で清算し、今までどおり
おいていただくことにしました。
そういうわけで、僕だけがここで働いています。

もちろん、お二人には生活能力なんてものは存在しなかったので全て僕が
取り仕切っています。お金の面に関しても趣味の読書から得た知識から、
残った財産を運用しています。

家事一切を引き受け、お金を稼ぎ、給料を頂く。立派な社会人ですね。うん。
しかし、何より一番大変な仕事は…

「ほら、刀。ぼやぼやしてないで学校までエスコートなさい!ぐずぐずしない!」
「はい!ただいま!すぐ行きます!」
「ほらっ!いくわよ。はやく!」

お嬢さまのお世話だったりします。
今もエスコートといいつつ、僕の腕を引きずっています。せっかちなんだから…。
三年前、小さな暴君だった彼女は今では女帝といった風情に成長しています。
外見は見目麗しい大和撫子なのですが…。
今日も意味もなく殴られたり文句を言われながら今日も女学院への道を歩いていきます。
僕は高校に通えなかったのでお嬢さまには是非楽しんでいただきたいものです。
299名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/16(水) 21:40:57 ID:Vxzs8j1h
以上。
まだこの先はさっぱり考えてません。
300名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 00:03:35 ID:8etTjLK7
ヤクザって就職になるのか?wwwwww
301名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 01:49:33 ID:48un/f7g
もう数百年くらい投下がなかった気がするよ・・・・
>>299超GJ!つかみだけでここまで期待させてくれる作品はなかなか無いぞ。
ゆーっくり考えて神作を投下してくれ!
302名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 08:13:38 ID:rlO207Jy
>>299
兎にも角にもGJ
303名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 11:42:48 ID:UPnWvOWb
久々のGJ!
依存でツンデレかw
304名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/17(木) 15:10:29 ID:7Btrd6CD
続き書いてみた。
難しいです。相変わらずのエロなしです。
305僕の仕事はやくざ屋さん  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/17(木) 15:11:11 ID:7Btrd6CD
お嬢さまを学校に送った後はお金を稼ぎます。最近はパソコンとインターネットが
あればどこでも仕事ができるので便利です。
そして、学校が終わるころにお迎えに行きます。今日はお嬢さまがなかなか出て
こられません。掃除当番でしょうか。

「遅いですねー。何かあったのでしょうか…。」
「え…うそ…刀お兄様!!!」

うわっ。ぼーっとしてたら急に名前を呼ばれて抱きつかれました。
凄い美少女です。栗色の髪の綺麗な…大和撫子。ただし、お嬢さまが元気すぎて生命力が
溢れているような感じだとすると、大人びたしっとりとした雰囲気を持ってます。
しかし…

「えっと…僕には妹なんていないのですが…」

そう、僕は一人っ子です。目の前にいる見知らぬ美少女は生き別れの妹か
何かなんでしょうか。天国のお父さんお母さん、不倫はよくないです。
美少女は僕を半泣きで上目遣いで睨んでます。

「兄様酷いです〜従妹の刃霧(はぎり)ですよ。ご無事だったんですね!」
「あー。刃霧ちゃんか。すっかり大きくなっちゃってー。」
「いきなり失踪しちゃって…心配したんですからね!」

なるほど見城家本家の跡取り娘、刃霧ちゃんでした。
天国の以下略、疑ってごめんなさい。
そういえば、叔父さんに住み込みで働くことを連絡していませんでした。
これはうっかり。しかし、時の流れは速いです。ちっちゃかった刃霧ちゃんも
すっかり綺麗になりました。まさか、こんなとこで再会するとは。
306僕の仕事はやくざ屋さん  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/17(木) 15:12:21 ID:7Btrd6CD
「こちらの進学校に入学なされて…うちに住んでくださるといわれてましたのに…。」
「まあ、色々ありまして。」

まさか、両親が亡くなって公園で進学先をどうしようか悩んでいるときに、
お嬢さまに自殺しようとしていると勘違いされて、なし崩し的にやくざ屋に
なってしまったとは言えません。

「今からでも遅くありません、うちに来てください。お願いですから〜。
うう…寂しいです…暖かい…すりすり。」
「申し訳ないのですが、僕は社会人でして住み込みで働いていますので…。」
昔と変わらず甘えん坊です。しかし、泣きながら抱きつかれると困りますね。
大人になってますし…お嬢さまが来る前に離れていただかないと…。

「…刀!何やってるの!!お、女の子抱きしめて…ふ、不潔ですわー!!!」
て、手遅れでした。問答無用の左ストレート、通称幻の左を食らいました。痛いです。
他のお嬢さま方が優雅にしずしずと歩いている中、本気ダッシュの左ストレート。
さすがはお嬢さまです。

「申し訳ありません、お嬢さま。三年ぶりに従妹と再会したものですから。
 この子は従妹の見城刃霧です。」
「あの…刀お兄様。この方は?」
刃霧ちゃんが、お嬢さまのほうを見て言いました。両者殺気が篭っている気がするのは
気のせいでしょうか。

「こちらは、今僕がお使えさせて頂いている方でして…鬼城沙耶(おにしろさや)様です。」
「お…お仕え!お兄様がですか!」
「そう…下僕ともいいますわね。彼は私のモノ。私のために働いているの。
 私が死ねといえば死ぬの。私の所有物で全ては私の自由なの。」
「もしかして…あ、貴女が…お兄様の人生を狂わせたのですねっ!」
「ちょ、ちょっと〜仲良くしましょうよ。」
「「刀(お兄様)は、黙っていなさい!」」
「は、はい!!!」
な、なんか非常に相性が悪いようです。二人はにらみ合ってます。

「刀…私、刃霧さんとお話があるので先に戻っていてください。」
「…わかりました。今日は美味しいもの作りますね。」
「お兄様、沙耶さんは私が送りますのでご心配なく。」
威勢ほど口が強くないお嬢さまが少し心配ですが、刃霧ちゃんの護衛も
いますし体は大丈夫でしょう。僕は買い物をして一度帰ることにしました。
307僕の仕事はやくざ屋さん  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/17(木) 15:13:58 ID:7Btrd6CD
「雨が降りそうですね…。それじゃ戻りますか。」
荷物を置き傘をもって、再び女学院前に戻ります。まだお話は続いているようですので
陰で終わるのを待ちます。予想通りお嬢さまの劣勢のようです…。刃霧ちゃんは
頭の回転が速いですからね…ああいえいえ、お嬢さまが頭が悪いとはいいませんよ?
ただ野生の直感で生きてるだけです。

「お兄様は絶対に取り戻しますからっ!」

どうやら話が終わったようです。刃霧ちゃんはお迎えの車に乗って去っていきました。
お嬢さまは立ち尽くしています。気位が高いお嬢さまは敵と認識した相手に送られる
などということを良しとはしないと解っていました。
さて、雨も降ってきましたし帰りますか…。
お嬢さまは泣いてます…僕はゆっくり笑顔で歩み寄ります。いつもどおりに。

「お嬢さま。傘をお持ちしました。帰りましょう?」
「お、遅いぞ刀!待ちくたびれたぞ。さっさと帰るぞ。ふん!」

お嬢さまは僕から一本傘を受け取ると、それを茂みのほうに投げ捨てました。
泣き顔を見られたくないのか赤くなってそっぽを向いてます。

「刀!傘が一本しかないぞ。全くお前は用意が悪いな。よし、優しい私がお前を
 一緒に傘に入れてやろう!感謝しろ!!もっと近くに寄れ。濡れるだろう。」
「ありがとうございます。お嬢さま。」
こうして、今日も僕は腕にお嬢さまのぬくもりを感じながら帰宅します。

「お前は…ずっと一緒にいるよな…どこもいかないよな?」
「僕は鬼城組の一員ですよ。お嬢さま。」
僕が頭をなでると猫のように気持ちよさそうにし、その後顔を赤くして子供扱いするなと怒られました。
308名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/17(木) 15:16:11 ID:7Btrd6CD
以上です。よく考えたら二億円って多いよね。
と思いましてこんなお話に。
309名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 16:45:38 ID:OH2wdgNa
ツンデレなのに依存!
主従なのに依存!
この先どうなるのかwktkですよ。GJです!
310名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 17:02:02 ID:MHt9sJhN
ツンデレ+依存は最近好きな組み合わせだな。
このあとの展開が楽しみです。
311名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/18(金) 11:54:35 ID:lvCpKlRC
最弱やくざとツンデレ娘。
続き投下します。
312僕の仕事はやくざ屋さん  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/18(金) 11:55:32 ID:lvCpKlRC
「…ごちそうさま。」
夕食を終えるとお嬢さまが自室に戻られます。

「なーんか、最近沙耶の元気がねえな。おめーなんかしたんじゃないだろうな。」
あれから数日が経ちました。親分の言うとおり最近お嬢さまの元気がありません。
今日もいつもなら5杯はご飯をお代わりするのにたったの2杯です。

「僕の従妹にあってからですね。そのとき口喧嘩で負け…いてっ!」
どこからともなくしゃもじが飛んできました。

「おめーにもちゃんと親戚はいたんだな。」
「ええ、偶然にもお嬢さまと同じ学校でした。再会してから毎日待ち構えてますね。」
毎朝、放課後、共に刃霧ちゃんはお嬢さまと口喧嘩を繰り返してます。
仲良くしてほしいのですが。
「悪いが元気付けてやってくれよ。あれが大人しいと調子がでねえ。」
そうですね。らしくありません。何を悩んでいるのか聞くことにします。

紅茶をいれ、お嬢さまのドアをノックします。
「お嬢さま、食後の紅茶をお持ちしました。」
「…いらない。」
む…困りました。
「お嬢さまの大好きな、僕の手焼きクッキーも用意しています。」
「…いらない。」
甘いものでもつれないとは…。相当悩んでらっしゃいますね。
「では、紅茶がご入用になるのをここでお待ちしています。」
ドアに背中を向けます。持久戦です。10分後、お嬢さまがドア越しに
声をかけてきました。
313僕の仕事はやくざ屋さん  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/18(金) 11:56:36 ID:lvCpKlRC
「刀…うちに来たこと後悔してる?」
「お嬢さま、心配なさってくれてるんですか。」
「ばっ!違うわよ!!こんな若いころからやくざになるってあんまりないから…
 一般論よ一般論!!誰があんたなんか!」
ドア越しでもお嬢さまの表情が想像できます。わかりやすい方です。

「ひょっとして刃霧ちゃんに何かいわれましたか?」
「そ、それは…。」
どうやらその辺りで気になることがあるようです。

「本当なら刀は、県内一の進学校に入学してエリートになるはずだったのを、
 滅茶苦茶にしたって。人生を変えたって…」
しゃくりあげる声が聞こえます。お嬢さまは誤解されているようです。

「お嬢さま…聞いていただけますか?」
「………」
「お嬢さまと出会ったあの日、僕は確かに悩んでました。自殺は考えてなかったんですが。」
あははと笑う僕。

「悩んでた内容は…決められたレールを走るか、新天地の誰も知らない場所に引っ越して
 自分を知る人がいないところでやり直すか…。現状維持か逃げるかで悩んでたんです。
今思うと情けない話です。」
僕は続けます。きっと真剣に聞いてくださってるはずですから。

「その二つの道しかないと思っていた僕をお嬢さまはかなり強引でしたが、第三の道を
 紹介してくれました。お嬢さまらしい道なき道を進むような荒っぽさでしたが…。」
「荒っぽくて悪かったな。どうせ女らしくない!」
「まあ、お陰で自分の力で生きようと思えたんです。その手段がたまたまやくざ屋さん
 でしたってことで…。欠片も向いてなかったのが面白いですね。」
「よかったのか?それで。本当なら学校いってもっと気楽に生きれたかもしれない。
 私なんかの面倒を見なくてもよかったんだぞ?私…迷惑だろ?」
気弱そうな声。元気ですけど人一倍お嬢さまは寂しがり屋です。
314僕の仕事はやくざ屋さん  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/18(金) 11:58:11 ID:lvCpKlRC
「後悔はしていません。ここでの生活は楽しいですしね。自分の意思で、自分の足で
 生きています。確かに滅茶苦茶に人生は変わりましたが、いい方向に変わったんだと
 思いますよ。ですから、お気になさらずに。僕はいつもの元気なお嬢さまが好きですよ。」
がちゃり…と、背中でドアが開く音が聞こえました。
納得してくださったようです。よかった。お嬢さまはぬいぐるみが好きで、部屋の中は
女の子らしい可愛いものとぬいぐるみで溢れています。入るとぶかぶかのパジャマを
きたお嬢さまが迎えてくれました。

「はいれ。紅茶が冷める。あ、明日からまたちゃんとこき使ってやる。」
「了解です。お嬢さま。」
顔を赤くしてそっぽを向くお嬢さま。どうやら元気は出たようです。

「あのその…か、刀。そのす、好きって、わ、私はそのわ、私っ…!!」
「うーん。お嬢さま見てると我侭な妹ってこんな感じなんだろうなーって思うんですよね。
 困るけどいいなーって…えええ、お嬢さまその握りこぶしはっ、ちょまって!!」
僕は何故か怒ったお嬢さまに、ぼこぼこにされました。

次の日の朝。

「刀!おかわりっ!!」
「はい。お嬢さま。まだまだありますからね。」
これでおかわり6杯目です。本調子に戻ったようです。

「刀!学校行くぞ。はやくはやく!」
今日もお嬢さまと腕を組んで学校に向かいます。天気のいい空を見ながら
いい一日であることを僕は祈りました。
315名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/18(金) 12:02:17 ID:lvCpKlRC
今日はここまでです。
まったり連載します。
316名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 12:27:34 ID:kMEeHKjG
可愛いじゃないかお嬢様
317名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 04:13:35 ID:lFM1T/hc
ツンデレヤクザっ娘ktkr!!GJ!
それにしても嬉しい事に投下ペース早いな。
いい職人さんが過疎を救ってくれそうだ。
318ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/05/19(土) 08:27:26 ID:e35mWojK
<志穂理さん>

遅いです。
待ち合わせの時間に、五分遅刻です。
何度言ってもダメなのですね。
いい加減直さないと、社会で恥ずかしい思いをするのは啓太さんですよ。
……行きましょうか。
「どこへ?」ですって?
そこのラブホテルです。
お昼ごはん? ……お弁当を作ってきました。
映画? ……見たいものはありません。
カラオケ? ……ホテルにもあります。
散歩? ……ホテルの入り口まで手をつなぎましょう。
「いや、ちょっと……」って、何を恥ずかしがっているのですか。
せっかくの休日に何をしにきたと思っているのです。
私は啓太さんとセックスしに来たのですよ。
啓太さんも私とセックスしに来たのでしょう?
いつもだらだらと過ごして、ホテルに入る頃には疲れ切って、
セックスも五回くらいしかしなくて、お互い物足りない思いになるのは愚かなことです。
無駄なことは省きましょう。
……啓太さんと丸一日いっしょに過ごせるのは週に一回しかないのですから。

お風呂、上がりましたか。
ああ、もう。ぽたぽた水たらさないで。
ちゃんと拭いてから上がってきてください。
ほら、バスタオルです。髪を拭いてください。
だからいっしょに入りましょうって言ったじゃないですか。
啓太さん、頭洗うの下手です。身体洗うのも下手です。まったく。
……拭き終わったら、そこに座ってください。
今日は啓太さんにお説教があります。
319ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/05/19(土) 08:28:07 ID:e35mWojK
……啓太さん、浮気しましたね?
白を切っても無駄ですよ。
先週、会社の同僚の伊沢圭子とデートに行きましたね?
……行きましたね?
……行、き、ま、し、た、ね?
よろしい。
啓太さんはとても愚かですが、素直なところだけは良いです。好きです。大好きです。
写真だのビデオだのをいちいち突きつけて追求する時間が省けます。
伊沢圭子については色々調べました。
彼女がその今週に退職してからは啓太さんと接点がまったくなくなったのも確認しています。
ああ、彼女がなぜ辞めたかなどは私に聞かないで下さい。
私は伊沢圭子と直接会っていませんから。
調査と交渉を依頼したやくざ……いえ、探偵社の方が何をしたのかは知りません。
とにかく、伊沢圭子はもう啓太さんと一生関わることはありません。
そのことについては忘れなさい。いいですね?
彼女も、もともと啓太さんの事を好きというわけではありませんでしたし。
そうですよ。
勘違いしないで下さい。
伊沢圭子が啓太さんにアプローチしてきたのは、啓太さんが魅力的な男性だからではありません。
私の彼氏だから、ですよ。
<T大出で、大企業の後継ぎ娘で、雑誌にも<美人お嬢様>として載った女の彼氏>。
彼女が興味を持ったのは、その肩書きです。
啓太さん自身ではありません。
そのままの啓太さんを好きなのは、世の中で私くらいですよ。
その辺はちゃんと認識してもらわないと困ります。
……なんですか?
言っておきますが、啓太さんは、モテません。
金輪際、女の子に好意を持たれるような男の人ではありません。
先ほども言いましたが、私、道明寺志穂理(どうみょうじ・しほり)の彼氏という以外に、
啓太さんが女の子にとって魅力的な要素は何一つありません。
320ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/05/19(土) 08:29:19 ID:e35mWojK
だから、啓太さんが女の子からデートに誘われるとか、
いっしょに遊びに行くとか、あわよくばセックスをするとか、
そういうことを期待してはいけません。
啓太さんは、生まれてから死んでお墓に入るまで、そういうことには一切無縁です。
啓太さんがセックスをしたいのなら、プロの女の人にお金を払って、
そういう風俗のお店でしなければ、できません。
……本当に行ったらおち×ちんチョン切りますよ?
まあ、プロの女の人も、貧乏で冴えない啓太さんに、いいサービスしてくれることなどないです。
おざなり手抜きな行為で、いやいやお相手することでしょう。
お金を払ってそんな思いするなんて、とっても惨めですよ。
素人相手は金輪際無理。
プロ相手もよくない。
啓太さんは、女の子と楽しくセックスするのは無理な人なんです。
……でも、私は例外ですよ。
私は啓太さんとセックスしてあげます。
高校の頃からずっとそうだったでしょう?
こうやって啓太さんのおち×ちんを手でしごいて、お口でしゃぶって、胸で挟んで。
いつでも好きなときに啓太さんに私のおま×こを貸してあげてるじゃないですか。
啓太さんは変態さんですから、すぐに調子に乗って私のお尻でしたがったじゃないですか。
私が今までに一度だって拒んだことがありますか? ないでしょう?
啓太さんは、他の女の人にまったくモテない劣等人間なので、
私がその分セックスさせてあげるんです。なんでもさせてあげるんです。
まったく。
幼稚園でも小学校でも中学校でもまったくモテなかったのに、
高校でナンパデビューだ、とか勘違いして隣の席の私に声をかけたのが
そもそもの始まりでしたね。
おかげで、私は十年も啓太さんの性奴隷です。
毎日毎日啓太さんの粘っこい精子をかけられたり飲まされり、穴と言う穴に注がれて
十年経ってしまったのですよ。少しは反省してください。
反省したら、死ぬまでこれ、続けてください。
321ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/05/19(土) 08:30:00 ID:e35mWojK
ほら、もう啓太さんのおち×ちんビンビンじゃないですか。
私の手でシコシコされて、タマタマをもきゅもきゅ揉まれて、
すごく元気になっちゃったじゃないですか。
いまどき、中学生でもこんなにすぐに勃起しませんよ。
普通の日本人の男の人は、ストレスでセックスレスになるくらい元気がないんです。
啓太さんは脳天気だから、こんなにおち×ちんが元気なんです。
頭空っぽだから、タマタマに精子がたまっちゃうんです。
少しは反省してください。
お気楽フリーターなんかやめてください。
もっとちゃんと、真面目に将来を考えてください。
父と会ってください。婚姻届に判子押してください。婿養子に来てください。
啓太さんのこと、一生大事にしますからっ!!
あ……。
もう出そうなんですか?
啓太さん、相変わらず早漏です。
手コキだけでイくなんて、小学生以下です。恥ずかしいです。
おま×こに入れている余裕はなさそうですね。
最初の精子の濃い、元気な精液は子宮に貰うつもりでしたのに。
しかたないです。
お口でしてあげますから、出してください。
唇でしごいて、舌先で先っぽをなめ回して、イく瞬間に鈴口をちゅっと吸ってあげます。
だから、啓太さんは精子を思いっきり出していいのですよ。
ほら。
ほら、ほら。
ほら、ほら、ほら。
私のお口の中に、精子出してください。
啓太さん、私のお口でイって、濃ゆいのをいっぱい出したら、
ごほうびに啓太さんの精子、全部飲んであげます。
だから、思いっきり出してください。
322ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/05/19(土) 08:30:40 ID:e35mWojK
……本当に思いっきり出しましたね。
啓太さんは、遠慮と言うことを知らない人です。社交辞令を真に受けちゃう人です。
お口に出していいとは言いましたけど、こんなに出すなんて。
飲みきれなくて吐き出してしまうところではないですか。
……全部飲みましたけどね。
高校の頃から、毎日しているのですもの、失敗はしません。
でも、啓太さん、量多すぎです。
啓太さんは何のとりえもないですけど、精液だけはいっぱい出るから、私大変です。
私以外の女の人は、絶対に啓太さんの彼女や奥さんになれません。
それに精子、濃ゆいです。濃すぎです。
何で毎回こんなに濃いのが出るのですか?
毎日のフェラチオとセックスを一回ずつ増やさないと駄目ですね。
なんですか。
またおち×ちん、大きくして。
今出したばかりなのに、啓太さん、いやらしいです。獣です。
こんないやらしい獣、放っておいたら警察に捕まっちゃいます。
だから、私が全部絞ってあげます。
「次はおま×こでしたい」だなんて破廉恥なこと言わないで下さい。
いくら彼女だからって、嫁入り前の女の子にそんなことしようだなんて、犯罪です。
でも私以外に、啓太さんにセックスさせてあげる女の子はいないので、
私のおま×こを使わせてあげます。感謝してください。
……私だって感謝してるんですから。
啓太さん、産まれてずーっと友達もいなかった、地味な女の子に告白してくれたんですもの。
啓太さん、キスとか、デートとか、セックスとか、ずっと憧れてたもの、全部くれたんですもの。
いいです。何も言わないで下さい。
でも、心の中で、少し感謝してください。
大人になっても、お化粧覚えて綺麗になっても、私、啓太さんと毎日セックスしてあげてるんですもの。
だから、感謝して、はやく私のお婿さんになってください。
323ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/05/19(土) 08:31:21 ID:e35mWojK
……いいですか、入れますよ。
ほらっ……ふあっ……んっ!!
だめです!
大きすぎます!
啓太さんのおち×ちん、大きすぎます!
ひっ、だめ、腰を掴んで引き寄せないで!
わた……わたしっ……!
ふあっ、それ、だめっ! だめです!
耳たぶ噛んじゃだめぇ!! 首筋なめちゃだめぇ!!
ち、くび……つままないでぇ……。
しぬ、死んじゃう……いっ……あひいいっ!
あ、なか……中に……。
子宮が、子宮があ……。
あう……あう……。
そ、そこはお尻の……だめぇ。そっちまでされたら、私、わたし……。
いっ……ひっ……。
ふああっっ……!!


……啓太さん。
シャワーあびたら、もっとちゃんと頭を拭いてください。
水滴がぽたぽた落ちてます。
もうっ! タオルこっちにください。
私が拭いてあげます。
まったく、世話が焼ける人です。
はい。
お弁当です。
お腹減ったでしょう? いっぱい食べてください。
啓太さんの好きな物、色々入れてきました。
よく噛んで食べるのですよ。
食べ終わったら、よく歯を磨いてください。
食後三分以内に、最低三分以上かけて磨いてくださいね。
歯磨きが終わったら、……また、セックスしてください……。

                                      fin

324名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 15:06:17 ID:hZloRSie
なんというヒモ生活……
女の一人称だけでハァハァしてしまった
このSSは間違いなくGJ

ところでこの男会社員? フリーター?
325名無し@ピンキー:2007/05/19(土) 16:15:44 ID:o8sV2YqM
地雷女GJ!
これはいい…

地味で免疫のない人には気をつけよう
326名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 19:34:46 ID:zck1vR3G
>>323
GJ
ゲーパロさんのSSはどれもこれもツボだわ
327名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 00:35:47 ID:KWUUFZrk
GJ!

これはもしかして、以前の依存妻の娘ですか?
だとしたらあの母にしてこの娘あり。
げに恐ろしい。
328名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/20(日) 09:43:17 ID:5tUCpEAv
そして続き投下。
軽依存。他の方の重依存作品にwktkしつつ
投稿します。
329名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/20(日) 09:43:58 ID:5tUCpEAv
数日が経ちました。今、僕のおかれてる立場を一言で表すなら、
針のむしろ…というのがしっくりきます。

「…お兄様の馬鹿っ!」
「刀の馬鹿………(ぷいっ)」
「いい加減機嫌直してくださいよ〜。謝ってるじゃないですか。」

帰りの車内で二人から責められる僕。
事の発端は二日前、刃霧ちゃんが叔父さんに一度挨拶に来てほしいという
言葉から始まりました。例によってお嬢さまは物凄くごねたのですが、
僕自身、一度はいかないといけないと感じていたので、親分に許可を貰って
泊りがけで挨拶にいくことにしました。

「あんた一人じゃ心配だから私も行ってあげるっ!」

と、何故かお嬢さまも付いてきてしまいました。
刃霧ちゃんの実家、見城家の本家は鬼城の家が四つほど入りそうな、まさにお屋敷という
建物です。グループ企業を持つ大金持ちで普通に生きている分には雲の上。僕も
血縁がなければこんな場所に出入りすることはなかったでしょう。

で、数年ぶりに叔父さんと会ったのですが…自分がどう生きてきたか、
ヤクザ時代の苦労話、今どういう風にお金を稼いでいるかなど話している間に
意気投合してしまい、お嬢さま方をそっちのけで夜遅くまで話し込んでしまったのです。

「でも、よかったです。お兄様。お父様と気がお会いになったようで…。」
「色々参考になりましたよ。やはり、実際に重責をこなしている人の会話は
 ためになります。鬼城の家の財産運用の効率も上がりそうです。」
「ぷ〜、また刀難しい話して〜!」
「…い、痛いですお嬢さま。髪ひっぱらないでっ!」
刃霧ちゃんは、そんな僕たちを見て怪訝そうな顔で質問して来ました。

「お兄様…沙耶さんの家はお兄様しか働いていないのですよね?」
「ええ。僕だけです。」
「料理は誰がなさってるんです?」
「僕です。和洋中全部作れますよ。」
「掃除は?」
「僕です。コツがあるんですよね。掃除って。」
「…洗濯とか買い物とか裁縫とか…」
「僕ですね。特売めぐりも得意ですし、手洗いもできますよ。」
「それで、お金も稼いでいられると…。」
「はい。財産を運用してお金を稼いでます。やりがいがありますね。」
「お兄様失礼ですがお給料はいかほど頂いているのですか?」
「月10万貰ってます。若者には破格ですよね〜。本がたくさん買えます。」
おおっ。なんだか刃霧ちゃんから怒りのオーラが立ち込めてます。
330名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/20(日) 09:46:26 ID:5tUCpEAv
「お兄様…やはり、私の家に来ましょう。仕事でしたらきっといくらでもあります。」
「ちょ、ちょっと!人の使用人勝手に連れて行こうとしないでくれる?」
お嬢さまと刃霧ちゃんが再びにらみ合います。

「お兄様がなさっている仕事は正当に評価されてません。血縁として、
 見過ごすわけにはいきません。私でしたら最低その10倍は出します。」
「そんなの人の勝手でしょっ!それに決めるのは刀よ。」
「でしたら…お兄様が自分で決めてくださればいいのですね。」
お嬢さまは僕を不安そうな顔で見つめてます。

「そ、そうよ。刀の自由よ。私は刀を束縛したことなんてないんだから!」
「わかりました。それで決めていただきましょう。」
あの…僕をおいていかないでください。

さらに、数日後の夜…僕は親分に呼び出されました。
「おい、飲め。」
「僕は未成年なんですが…。あ、どうもありがとうございます。」
日本酒をお互いに注ぎあいます。

「今日これが着たんだ。おめー宛に。」
「えー何々。ああ、叔父さんからですね。本家の跡取りとして、婿養子に…
 って!!えええええっ。」
「落ち着け。でだ、正式に跡継ぎにする前に自分のところで仕事を教えたいから
 金渡すからそちらで解雇してくれといってきやがった。」
ぐっと酒を飲み干す親分。僕は少し頭が麻痺してます。

「まあ丁度いい頃合かもしれん。この結婚云々はともかく、お前さんは
 そろそろ自由になっていいと思うんだ。ヤクザとしてははっきりいって
 おめーは使いもんにならんが、堅気の仕事なら有能といっていいくらい
 できるだろう。いつまでも俺たちがお前さんを縛るのはいかん。」
「縛るなんて…。僕は自分の意思でここにいるんですよ。」
「それでもだ。二年前、お前のお陰で俺は殺されずにすみ、借金で沙耶を風呂に
 沈めずにすんだ。それだけでも、命を懸けて返さないといけない恩義があるのに
 若い青春のときを俺たちの世話だけで終わらせちまった。いつまでもお前に
 甘えてるわけにもいかねえ。恩がいつまでも返せねえ。」
「親分は親と思え、兄貴分は兄弟と思え…。教えてくれた人はもうここには
 いませんが…。親を助けるのに理由なんてないし、まして恩を着せようなんて
 考えたこともないですよ。お嬢さまもそういう意味では妹みたいなもんです。」
僕は真実そう思ってます。だから、こうして働いているのです。

「今にして思うと俺の人を見る目は節穴で、沙耶の人の見る目が正しかった。
 情けない話だがな。…お前がここに残る未練を残さないよう、あいつは嫁に
 やることにした。俺はここに残るが…鬼城組は終わりだ。」
331名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/20(日) 09:48:43 ID:5tUCpEAv
「え…お嬢さまを…嫁に…?」
頭に強い衝撃が走りました。

「俺の昔の部下が始めた組だ。今伸びている。うちからも人が流れたはずだ。」
「絶対いやっ!!!!」
ガンっと大きな音を立てて入ってきたのはお嬢さまでした。

「沙耶お前も聞き分けろ。いくらこいつの意思っていっても友人も恋人も
作れなかったのは俺たちのせいだ。笑って送ってやるのが一番こいつのためだ。」
「刀は私のよ!刀がいない生活なんて考えられないし、刀がいないと生きていけないっ!
 知らない人の嫁にいくなんてまっぴらごめん!」
「あ、お嬢さん!」
親分はお嬢さんの頬を叩きました。娘に甘い方で今まで怒ったことなんて
一度もなかったのに…。しかし、それでもお嬢さまは親分を睨みつけてます。

「今のお前にゃ刀は勿体無い。釣り合わない。諦めろ。人に頼ってばかりのお前じゃ
 刀の負担になるだけだ。」
「そんなこと、知らないわよ!私は絶対いや!」
そこまでいうとお嬢さまは走って部屋を出て行きました。

「親分…僕のために…ありがとうございます。今はお嬢さまを追いかけてきます。」
「すまん…頼む。」

僕はお嬢さまのいる場所はわかっていました。
僕たちが出会った近くの公園…。いました。う…お嬢さまが三人に絡まれてます。
サングラスをかけ、ドス(刃は削ってます)を取り出します。
そして、なるべく低い声で、

「…組長のお嬢さまを絡むとは…いい度胸してるな。」

脅すと逃げていきました。お嬢さまが抱きついてきたので大丈夫と
背中を軽く何度か叩きます。襲われなくてよかったです。
僕は喧嘩は弱いのです。
332僕の仕事はやくざ屋さん  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/20(日) 09:50:23 ID:5tUCpEAv
「あはは、腰が抜けました…お嬢さま、大丈夫ですか?」
「馬鹿!おそい!」
「遅くなって申し訳ありません。」
「いや…いつでも遅くても絶対刀は私を助けてくれてる。ありがと。」
お嬢さまが落ち着くのを待って、聞きます。夜の公園は人影もなく、
街灯だけが僕たちを照らしています。

「…いつから…お聞きでした?」
「全部。父さんが真剣な顔してたから気になって。」
お嬢さまは困ったように微笑んでいます。

「刃霧は刀を好いてるわ。それに実家は裕福で彼女も彼女の父も貴方を認めてる。」
「でも僕は彼女に恋愛感情を持っていません。」
そう…妹以上の感情をまだ持っていないのです。

「でも、刃霧は刀に好かれるように頑張ると思う。多分、刀のためって
 考えるならお父さんは正しい。だけど…」
お嬢さまは僕の胸に頭をつけて、魂から搾り出すような声で言いました。

「父さんの言ってることもわかるっ!だけど…だけど!私は刀がいないと…
 母さんみたいに、みんなみたいに、いなくなっちゃったら生きていけないよ!」
「お嬢さま…」
「勝手だよね。いつも迷惑ばかりかけて、愚痴聞かせて、すぐ怒って…
 嫌われるようなことばかりしてるのに、一方的に頼って…でも、一緒にいたいの。
 他の女と仲良くしてる刀なんて想像するだけで泣きたくなるの…。」
お嬢さまが僕の胸で泣いてます。いつも強気なお嬢さまの弱い一面。

「刀…私結婚なんていやだよお…助けてよぉ…刀と一緒にいたいよぉ…」
「お嬢さま…僕はお嬢さまの前向きな性格にいつも助けられてます。
 それに…成長はこれからしていけばいいじゃないですか。今はいつものように
 僕に命令してくださればいいのですよ。」
「…お願い。この婚約…破談にして。」
「了解です。お嬢さま。僕は貴女を必ずお守りします。」
お嬢さまの顔を見つめます。泣きはらしていますが街灯の淡い灯りに照らされたそのお顔は非常に
端正な顔をしています。そして、生命力に溢れてます。顔を赤くして見上げてくる
彼女を見ていると護らなければならないという使命感が沸いてきます。
お嬢さまはまだ震えていたので、安心させるために抱きしめておでこにキスしました。

「契約完了です。」
「馬鹿、刀…契約ならこっちっ……んっ!」
お嬢さまはそういって僕の顔を両手で掴むと僕の唇を奪いました。
333名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/20(日) 09:53:53 ID:5tUCpEAv
今日はここまでです。
なんとか完投できそうな目処が。
334名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 10:17:44 ID:7Ax1zG+t
>>333
GJ!!
335名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 11:10:46 ID:SjPLFf8e
GJです!お嬢様の逆襲にwktk
336名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 03:15:49 ID:h7azsM9c
>>333これは最高!GJ!俺のツボにストレートに来た!

一時期は恐ろしい程に過疎ってたけど・・・・本当にいい職人達が来てくれた。
ありがとう!
337名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/21(月) 15:33:26 ID:iWGEN4E/
様々な葛藤の末、最終回です。
軽依存ツンデレ娘と最弱やくざ。
338僕の仕事はやくざ屋さん  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/21(月) 15:35:27 ID:iWGEN4E/
次の日、僕は鬼城の親分と袂を分かったお嬢さまの婚約相手、風谷組の組長の
ところに来ていました。知り合いも多いため、舐められないように対策を立て、
乗り込みます。

「鬼城組の者だ。風谷組長に面通しをお願いしたい。婚約の件だ。」
しかし…怖いですね。ですが、引くわけにもいきません。
組長は、老境に入ったばかりの鋭い眼光の人でした。うちの親分が
岩のようなどっしりした人とすればこの人は刀といったところでしょうか。
背後には何人か護衛が控えています。そのうち一人は20台前半。
立ち位置と服装からして息子…婚約相手でしょう。風格のある人です。

「何か用かな?婚約の件は大体まとまっているはずだが…。」
組長がいいます。僕はつばを飲み込み、いいました。

「婚約を破棄していただきたい。」
周りがざわめきます。当然でしょう。こちらから頼んだことなのですから。
何人かが怒りで僕を抑えようと動きます。

「てめえ、下っ端の癖に何言ってやがる!」
「動くな!僕の体にはここにいる全員を吹き飛ばせる火薬を巻いてある。死ぬぞ!」

準備その一です。あんま使いたいとは思いませんが。上着を脱いでそれを見せます。
続いて、先に考えておいた台詞を言い放ちます。これで動けないでしょう。
「俺は確かにそうだった。だけど、鬼城組を全員見限った中で俺だけは残った。
 借金を完済し、財産を作って親分を命を懸けて守り、義理を貫いているんだ。
 義理も知らない三下は引っ込んでいてもらおう。」

そして、相手に向き合い、僕の財産から用意したものを渡します。
天国以下略、お金は人助けで使いきりました。
「申し訳ありません。失礼しました。ですが、交渉に来たのです。
 できれば、脅しなどは使いたくありません。まず違約金として二千万の
 用意があります。」
「ふむ…。だが、俺たちの間で約束を違えるってのは金の問題じゃない。
 けじめの問題だ。どうけじめつけるんだ?」

婚約相手の男がいいます。知性を感じさせる鋭い眼光…相当な方のようです。
僕は最後の手段として用意したものを出しました。
339僕の仕事はやくざ屋さん  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/21(月) 15:36:27 ID:iWGEN4E/
大きな白い手ぬぐいと鉈です。使わずにすめばよかったのですが…。
「俺がけじめを…責任を取らせていただきます。」

白い布をデスクに引き右手で鉈を持ち上げ…
左小指に向かって躊躇なく振り落としました。想像以上の激痛が左小指に
走り、左小指の先が転がります。勝負どころなので僕は痛みを感じていないよう
振舞います。叫びたいほど激痛が走っているのですが…
「まだ、足らないなら次に行きますが。」
「はっはっは、いい度胸だ。わかった。お前のけじめ見届けた。認めよう。」

組長さんが笑って認めてくれました。婚約者の方も笑って頷いてます。
「誰か応急処置してやれ。婚約の約定書もそいつに渡してやれ。
しかし、どうしてそこまでする?。」

婚約者の男が僕に聞きました。僕は痛みを堪え、笑っていいました。
「惚れた女も守れないような人は男じゃありませんので。」

帰宅後予想通りというかなんというかお嬢さまに怒られました。
お嬢さまの部屋でずっと説教されています。
「馬鹿!馬鹿馬鹿あほ!馬鹿!馬鹿!刀!何馬鹿なことしてるの!」
「お嬢さま、馬鹿言わないでくださいよー。」
「馬鹿を馬鹿といって何が悪いのよ!」
「ちゃんと仕事したじゃないですかー。」
「馬鹿!一生残るような怪我までして…がぶっ!!!」
「ぎゃー、痛いイタイいたいっ!!!噛まないで!!」
左小指に噛みつかれるのは洒落になりません。

「馬鹿…もう二度とこんなことしないでよ…。刀が怪我したって私は嬉しく
 ないんだからね…。もう…。」
「ええ、ですから…僕が二度とこんなことをしないようにお嬢さまが僕を
 見張ってくださいますか?」
「なっ!!か、刀!!それって…その…。」
僕は笑顔でいいました。
「お嬢さま。僕はお嬢さまが好きです。これからは貴女が僕を頼るように僕も貴方を頼ります。
 親分さんの課題についてはこれから二人で一緒に考えましょう。ずっと一緒です。
一生僕に甘えてくださって構いません。お嫌ですか?」

「それはその…私も…私も刀が…ああもう!むむむ…返事はこうだ!!」
そういうとお嬢さまは僕を押し倒すと、キスをしました。
本当に素直で可愛くて…いとおしい人です。
340僕の仕事はやくざ屋さん  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/21(月) 15:37:25 ID:iWGEN4E/
エピローグ

「親分、お嬢さんを私に下さい。」
お嬢さまの気持ちを確認した後、親分のところへお願いに行きました。
勝手に破談にし、小指を落としたことで一発殴られましたが、

「お前さんがそれでいいならくれてやる。早く孫の顔見せろよ。」
と、快く認めてくれました。
後日、叔父さんにも断りの連絡を入れました。感謝はしていますが、
自分の人生は自分で切り開いていくのです。

「お、お嬢さま!包丁の持ち方はこうです。そうじゃありませんっ!」
「ええいっ!難しいわね。鈍らだわ…切れない。」
「こうです。一緒にやりますよ。」
「えへへ〜。うん!」

それからというものお嬢さまも家事を手伝うようになりました。
出来ることからゆっくり学んでいくそうです。壮絶にお嬢さまは
不器用ですから、覚えるには非常に時間がかかりそうです。
こういうとき背中から羽織るように手伝うとお嬢さまはとても嬉しそうな
顔をしてくれるので僕も幸せな気分になります。

「お兄様はいつか必ず取り返して見せますからね!!」
「べ〜!刀はずっと私と一緒なんだから!!」

刃霧ちゃんとお嬢さまの関係は相変わらずです。喧嘩するほど
仲がいいといいますが気が合うのでしょう。
こんな平和な日々がずっと続くことを祈りつつ、よく晴れた青空を見上げました。


──────────────────天国のお父さんお母さん。僕は今幸せです。
341名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/21(月) 15:39:01 ID:iWGEN4E/
というわけで終了です。
応援してくださった方々、ありがとうございました。

次書く機会があったらねっとりしたのに
挑戦してみたいと思います。
342名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 17:39:15 ID:AFlLrov6
>>341
GJ。
ネタがタイムリーだ・・・
たしか綺麗に切断されてれば病院で縫合できるらしいな。
343名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 20:00:49 ID:NxmpRDIA
うほーーーーGJ!!!
お嬢様かわいいよお嬢様

やっぱりヤクザのケジメは小指なのねw
344名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 22:54:40 ID:OTdGgY8s
>>318
ママは依存妻とは関係ありませんよね?
作中の「女子大生」かと思いましたが、違うようですし・・・
345名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 10:28:59 ID:Ap5K86Y1
>>327>>344
むしろ関連があるのは嫉妬修羅場スレの嫉妬妻・道明寺静子のほうだと思う。
苗字が一緒だし。
346名無しさん@ピンキー:2007/05/23(水) 02:50:01 ID:s4mkYxbN
>>341最強の神GJ!
暖かい気持ちになったよ。age
347依存型ハーレム:2007/05/24(木) 06:49:36 ID:LBhAuQu0
僕は八戸 月(やど らいと)少し名前が変わっている割と普通の男だった。
だけど何の因果か18で信仰宗教の『教祖』いや『新世紀の神』になってしまった。

18の誕生日ささやかに(親の)知り合い等が船上パーティーを開いてくれていると
蝗の群れのような女の子達に浚われ
彼女達に王子様、あるじさま、主と持ち上げられました

こんなことになった原因は僕が『モテモテ』だったかららしいです、
昔からユニークな娘に好かれて『女の子同士のころ…喧嘩が激しいので』【←打ち消し線】……
転校が多いので全国規模でかなりな人数になってたらしい

でみんな運命の人を捜すうちに出会いあってハナシあいの結果こうなったらしい

巫女頭の狩須(かりす)・M・ドミナが
「王子さまをもう哀しませたくないから仲良く」

生贄頭の真空(マゾら)レイ
「皆、あるじさまのモノに」
メンバー筆頭、海部(アマ)さんご
「喧嘩(コロ)しあわないから捨てないで」

と全裸で迫ってきまして、みんなの躊躇い傷と捨てられそうな子犬のごとき瞳に勝てませんでした
348教団の朝 依存型ハーレム:2007/05/24(木) 07:25:53 ID:LBhAuQu0
朝は何時も温かだ、僕が眠っている間に教団の大温泉(掛け流し)に入れてくれる

朝のご奉仕らしいけれど僕は聴いてしまったのだ、
彼女達は朝飲泉のしてると、その、僕の出汁がでたもので

朝のお風呂では彼女達が体で体を洗ってくれる
躯の隅々まで彼女達が恍惚としながら舐め清めるのだ。

それが済むと朝食、毎朝オートミールだとミルクだ。
口移しの
朝食は時間がかかる一口毎に人が変わるのだ、口移しの恍惚感でトぶらしい。
らしいと言うのは、崩れるたびにすぐ次の人と交代するからだ。
349名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 10:50:07 ID:Xc9zXJGj
>>347->>348
設定は面白いと思いますが…

書き込む前に自分で推敲するのと
(脱字が気になりました)
あと文の末尾は「です・ます」調かそうでないか
どちらかに統一するとわかりやすいですよ

頑張ってください
350名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 19:56:12 ID:LBhAuQu0
了解した、ただ続きは遠いのでネタのパクリ元をご紹介する
当板のハーレムスレ
『アカ・ソ・ノモノ』氏の『巫女妹信者暴力姉引きこもり居候借金お嬢様メイド』
リンク集兼保管庫は以下に
ttp://marie.saiin.net/~mcharem/harem.htm

ラブラブなハーレムは独占欲を依存度や(嫌われる)恐怖が上回るから産まれる、そう思えた
351名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/24(木) 20:45:49 ID:SSXp0WuQ
折角だから俺はこのスレを選ぶぜ!

というわけで、投下場所を悩みつつもこちらへ。
352凶犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/24(木) 20:49:40 ID:SSXp0WuQ
高校入学──────初日、俺、犬塚八代(いぬつかやしろ)は停学一週間食らった。

入学式当日、地味な眼鏡のおさげ髪の女が四人の男に絡まれているのを
見た俺は助けることにした。

何も女を助けたかったとかそんなのじゃない。
ただ、女一人に四人で絡むような男が気に食わなかっただけだ。
また着たら俺に言えというと女──新庄菖蒲は礼と次は自力で解決すると
いって去っていった。強気なやつだ。

別に恩に着せたいわけでもなかったので俺はただの日常の1ページと
考えていた。代償が喧嘩両成敗の停学ってのは痛かったが。


「よう、ハチ!今日からお前も登校か。」
バンと背中を叩いてきたのは中学時代からの親友、犬飼一志だ。
180cmを越える背の高さに甘いルックス。平均の身長と堅苦しい
と言われる俺と何故友人でいられるか自分でも不思議である。
ちなみに俺をハチと呼ぶのはこいつだけだ。

「ああ、えらい目にあったな。初日から全く。」
「だな。四人ぼこぼこにして一人腕へし折ればそりゃ停学にもなる。」
中学時代、俺のあだ名は狂犬だった。売られれば買い、手加減を知らないのが理由だ。
一志のあだ名は猛犬。喧嘩大好きで獰猛なのだ。だが、そこに暗さは無い。

こいつは社交的だが俺は内向的。だが、何故か気があった。
暇なときはいつもつるんでいたし、困ったときは助け合った。

反対な部分は他にもある。一志は女好きで二股三股当たり前といった感じなのに
対し、俺は中学時代は全く他人との関わりに興味が無かった。
恋なんて勿論しなかった。
353凶犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/24(木) 20:51:06 ID:SSXp0WuQ
学校に着いた。入学式ではクラスに入る前に問題を起こしたため、
席がわからない。座席表を確認し、席に座る。
回り目の目は案の定、腫れ物を見るような目だ。
いつもどおり気にすることは無い。ふと隣を見た。

そこには、物憂げな顔をして一人座る、美しい少女がいた。
長い綺麗な黒髪、平均より少し高い身長。均整の取れたプロポーション。
少し影があって、おどおどした暗そうな雰囲気を覗けば完璧だと思えた。
良家のお嬢さまといったところか。
朝の喧騒の中、静かに一人座っているそんな彼女に声をかけた。
理由はわからない。そうしないといけない気がした。
笑顔は作れなかったが。

「おはよう。」
「…っ…おはようございます…。」
怖がらせただろうか。なんか驚いている。
まあ、初日から停学くらうような相手なら無理も無いか。

「俺は今日からこのクラスに通う、犬塚八代。君は?」
「はい…神城佐久耶(かみしろさくや)申します。」
「よろしく。」
「こ、こちらこそ…その…よろしくお願いします。」

人に対し無関心なはずの自分がなぜか声をかけてしまった。
理由がよく判らないままに時が過ぎ、昼になった。
彼女は誰とも話そうとしなかった。誰も話しかけようとしなかった。

「隣いいか?」
「あ…どうぞ…。」
彼女の前に座り黙々と食事する。

「なぜ一人で食べるんだ。一週間もあれば友達くらいいるだろう?」
「えと…その…いないから…友達…。」
話を聞くと、男は怖くて女からは何故か避けられるという。
354凶犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/24(木) 20:51:54 ID:SSXp0WuQ
「俺は怖いか?」
「うん…少し…ごめんなさい。」
「いい。怖がられるのに慣れてるから。」
周りの視線は俺たちに向かっている。興味深そうに、嫉妬交じりに、
嫌悪感をこめた目で。

「犬塚君…私といると貴方も…。」
「俺は元々だ。余計な気は必要ない。君は…皆と仲良くしたいのか?」
「うん、できれば…。」
「そうか。」
会話はそこまでだった。
俺はなんとかしてやりたいと思った。

放課後、帰ろうとした俺に神城は申し訳なさそうに声をかけてきた。

「あの…犬塚君、ごめんなさい。」
「なんだ?」
「実は犬塚君が休み中に学級委員に決まってしまったの…。
 今日は放課後、学級委員の集まりがあって…。」
どうもいつの間にやら面倒な仕事が割り振られていたらしい。

「別に神城のせいじゃないだろ。どこでやってるのか教えてくれ。」
「え…うん。女子は私なの…。案内するね。」
「ああ、ありがとう。」
大方、女子に推薦されて嫌がらせに初日から停学の厄介そうな俺が
選ばれたんだろう。

「犬塚君っていい人だね。もっと怖い人かと思ってた。」
「いい人か。初めて聞いたな、そんな評価は。」
俺は今日一日で彼女が笑ったのを始めてみた。
穏やかな…すみれの花のような落ち着いた笑顔だった。

学級委員の集まっている場所に行くと見覚えのある女がいた。
地味なめがねのおさげの女。あまり気にせず、決められた席に座る。
「こんにちは、犬塚君…だよね?」
「ああ。」
「学級委員だったんだ。これからよろしく。」
「よろしく。」

ぶっきらぼうに答える。会話する興味は沸かなかった。
355凶犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/24(木) 20:52:58 ID:SSXp0WuQ
退屈な予定調和の会議が終わり、帰宅の準備をする。
「神城。駅まで一緒に帰るか。」
「え、あ、はい。お願いします。」

そこでふと、昼の出来事を思い出した。
「新庄。お前も一緒に駅まで帰らないか?」
「え、二人じゃなくていいの?」
「そんな関係じゃない。」

そうして駅まで三人で歩いた。
話しかけるのはもっぱら新庄だった。地味な外見とは裏腹に、会話が巧みで
明るくて人を退屈させない。面倒見もいいらしく、学級委員には自分で立候補したと聞いた。
一方、神城は人見知りしているのか相槌を打つだけだった。
計算違いだ。女同士、上手くすれば会話も弾むかと思ったのだが。
駅に着くと、俺と新庄が同じ路線。神城は反対の路線と分かれた。

「犬塚君、神城さんと仲いいの?」
「席が隣だった。後はなんとなく協力してやろうと思った。」
「協力?」
「友達がいないらしい。性格は特に悪くは無いと思うが。」
「なんとなく判るなあ。」
「それで、新庄にあいつと仲良くなってもらおうと思った。」
「ふーん。判った…いいよ。借りもあるし。」
「ありがとう。強引に借りを取り立てるみたいで悪いな。」
新庄は引き受けてくれた。いい奴だ。俺自身はどうすればいいのか。


翌日の昼、新庄は違うクラスの俺たちのところに昼を食べに来てくれた。
周りの視線は相変わらずだが、気にはしなかった。

「わー。神城さんの弁当おいしそうだねー。これ交換しない?」
「はい。どうぞ…私のでよければ。」
「弁当は自分で作ってるのか?」
「いえ…作ってもらってます。犬塚君は?」
「八代でいい。友人は皆…いや、一人を除いてそう呼んでる。俺は自作だ。」
「ええ!八代君意外だねー。神城さんもそう思うよね?」
「はい…。あっ…ごめんなさい。」
「一人暮らしだから仕方がない。」
「今度ご飯作りにいってあげるよ。」
「いらん。」
こんな感じで始まった、俺たちの友達関係は暫く続いた。
そして破綻した。俺のせいで。
356凶犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/24(木) 20:56:19 ID:SSXp0WuQ
俺は少しずつでも、神城をクラスに馴染ませてやりたかった。
だが、俺は親友である一志のように明るい性格ではなかった。
今のままでは難しいと考えた俺は無理に明るく振舞うようにした。

男女問わず話をするようにし、誠実に物事に応対した。
初めは印象が最悪だったが、新庄が停学の事情を広めてくれたらしく
皆、俺を受け入れてくれた。社交的な一志にも相談して力になってもらったりした。
そして、俺を通じて神城をゆっくりとクラスに馴染ませた。

神城のノートを見せてもらうと、勉強は出来そうだったので会話を合わせるために
必死で遅れを取り戻し、さらに全て理解できるように勉強した。

趣味が読書と聞くとお勧めの本を全て図書館で借りて読み、自分なりに要点を
まとめるなどして、会話できるようにした。

二ヶ月経つと、クラスの印象は変った。
神城の笑顔も良く見るようになり、クラスに溶け込み始め、
会話は殆ど俺とだったが、何人かとは話せるようになった。

新庄も神城の悩みを聞いたり、相談したりできる仲になった。
俺はいつの間にか神城のことが本気で好きになり──告白した。そして振られた。
彼女には好きな人がいたのだ。そしてその相手はよりにもよって、
──────親友の犬飼一志だった。
357名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/24(木) 20:58:48 ID:SSXp0WuQ
ここまで。
またよろしくお願いします。
前作よりは依存強めに。
358名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 00:08:49 ID:LptZEWUB
むう、誰が誰に依存するのか・・・
続きを読まなければ分からない。
359名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 03:47:06 ID:x1ThHaHH
これはっ・・・・やばい続きが気になりすぎる!GJ!
360名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/25(金) 09:46:55 ID:it4e0Rnf
NTRとかはないけど
人によっては不快になるかも。

というわけで依存部分まで投下。
361凶犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/25(金) 09:48:49 ID:it4e0Rnf
情けないことに俺は二日ほど抜け殻のように日を過ごした。
目的は無くなり、惰性で習慣となった勉強や新しい友人との会話はしていたが
心配されたくらいだから相当酷かったのだろう。
俺は神城とは距離を置き、昼食は屋上で一人、取るようになっていた。
だが、今日は来客があった。見慣れた地味な眼鏡とおさげ、でも明るい友人。

「いたいた、八代君。ここんとこ変だから心配したよ。佐久耶も教えてくれないし。」
「神城に告白して振られた。しつこく付き纏うのは趣味じゃない。」
「そか…。」
深くは追求しない。そんな気配りのできるこいつはありがたい奴だ。

「元の自分に戻るだけだ。気遣うこともない。お前も俺と一緒にいる必要は無い。」
「さびしいこというね。」
「一人は楽だ。」
「そうかな。私も邪魔?」
「いや、俺は友人と思ってる。いい奴だし世話になってるしな。」
そういうと新庄は隣に座った。

「別にいい奴じゃないよ。私、佐久耶にずっと嫉妬してた。」
「そうか。」
「うん。八代君に世話焼いてもらえて、暗くなりそうだった高校生活も
 明るくしてもらって…。独占してた。私と再会したとき覚えてる?」
「学級委員会のときか。忘れた。」
「だろうね。私、八代君が同じ委員だって知ってすごく嬉しくて。
 だけど話しかけてもそっけなくて泣きそうだったよ。」
「すまない。」
「しかも、一緒に帰ろうって喜ばしておいて言うことは佐久耶のことだし。」
「全く最低だな。」
新庄は一度言葉を止めた。
そしてこちらを向いて笑顔で続けた。

「私はね…助けてもらったときからずっと八代君が好きだった。今はもっと好き。」
「ごめんな、気づかなくて。だけど今は答えられない。時間をくれ。」
「勇気使い切っちゃった。次は振るにしろ受けてくれるにしろ、そちらからね。
 ああ、後私は名前で呼んでるからそっちも菖蒲って呼んで。」
溜め込んだ想いを全部言い終えた彼女は晴々としていた。
362凶犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/25(金) 09:50:25 ID:it4e0Rnf
数日後、一志から電話がかかってきた。

「おい、ハチ。あれどういうことだ。」
「何だ。」
「お前のとこの…神城に告られた。付き合ってんじゃなかったのか。」
「告って振られた。」
「そうか、ハチこんなこと初めてだったのにな…お前のお陰で俺も珍しい体験をした。」
「どんなだ?」
「初めて女をこっちから振ったぜ。完膚なきまでに。」
「らしくないな。」
「わかってら。だがな、あれほど不愉快な思いをしたのは初めてだ。」
「どういうことだ?」
「俺はあいつのためにお前がどれ程無理したか知ってる。」
「そうだな。自分でも驚きだ。」
「逆で考えてみろ。俺が本気で好きになった奴が別に好きでもないお前に告ってきたら
 お前はどう思うんだ。他の女を全部捨ててもいいと思うほどの奴が。」
「確実に不愉快だな。」
「もっといい奴さがせ。お前も。あいつはやめたほうがいい。」
「一志もいい加減一人に決めろ。刺されるぞ…それとすまない。」
「俺は修羅場が好きなんだ。じゃ元気出せよ。これ以上暗くなられたらかなわん。」
俺はほっとしたような悔しいような情けないような気分になりながら夕食を
作った。気力がわかないのでインスタントでその日は済ませた。


それから数日、ようやく落ち着いた俺は普通にクラスの連中と付き合えるように戻った。
冷静になってまわりを見ると──神城はまた一人に戻っていた。

俺がおかしくなっていたせいで色々な噂が立っていたらしい。
初めてあったときのような物憂げな表情で彼女は席に座っていた。

「おはよ。」
「あ…おは…よう。もう話してくれないかと……っ…」
「馬鹿、泣くな。」
「ごめん…なさい…。」
「俺のあれも忘れろ。二度は言わん。友達として付き合っていけばいい。」
俺の努力は徒労だったのだろうか。自分がいなければ未だに、クラスとの
コミュニケーションが取れないとは。

「犬飼君に言われたの…。彼は凄く怒ったんです。お前はなんにもわかってないって。
 大事な親友のことを何も理解できないような奴は絶対ごめんだって。」
「そうか。すまんな。ある意味俺のせいだ。」
彼女は泣きながらも笑顔で続けた。

「ううん。犬飼君の言うとおりでした。二週間、八代君も菖蒲もそばに
 いない学校の時間は初めの一週間と…中学の頃と同じで…。灰色で
 全然楽しくなかったんです。」
「頑張ればよかったんだ。もう俺がいなくとも大丈夫なはずだ。」
「うん…。でも話してて気づいたの。みんなが心配してるのは八代君でした。
 それだけのことをしてたんだって。」
「だが、別に神城が間違ったことをしたわけじゃない。気にするな。」
「私…離れてやっとわかったんです…。八代君がいないと寂しいの…。
 勝手なことばかりで悪いけど、もし前の告白が有効なら…私と付き合って…
 ごめん本当に勝手ですよね…。」
「わかった。付き合おう。」
俺は即答した。そして、彼女は笑顔を見せてくれた。
それは掛け値なしに美しかったが、俺は何か間違えたようなそんな不安に駆られた。
363凶犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/25(金) 09:51:38 ID:it4e0Rnf
放課後、神城に先に帰ってもらい俺は屋上に菖蒲を呼び出した。

「前の返事だが…。俺は神城と付き合うことになった。」
「そっか…でもそれでいいの?」
菖蒲の顔が曇る。その言葉の意味を俺は正確に理解している。
一志の電話での台詞と朝の神城の態度と言葉で判断した。
恐らく間違っていない。

「あいつは俺が好きなわけじゃない。」
「うん…そうだよ。それでも?」
「ああ。まだ俺は好きだから。」
「今までのことを考えると…永遠に好きになってもらえないかもしれないよ?」
「そうでないことを祈る。」
「私はもう手伝えないよ?いつ怒りに任せて手を出すか判らないから。」
「判った。今まで本当に助かった。」
「八代君とは友達でいていいよね?」
「当然だ。菖蒲は親友だ。」
「ありがと。それじゃまた明日。」
菖蒲はそれだけ言って走って帰っていった。
俺は彼女を泣かせた。


付き合い始めてから佐久耶は前より俺に寄りかかるようになった。
自分から外への窓口を作らず、全て俺を通して外と交流する。

「ああ、最近仲がおかしかったのは俺がセクハラしたせいだ。」
「嘘―。犬塚君って意外とむっつりさんだったんだね。」
「佐久耶が可愛いからついな。お陰で二週間謝り倒すことになった。」
「もう、惚気ちゃってー。変な噂流れたから心配したじゃない。」
クラスメイトの女子に少しおどける。こんなのもすっかり慣れた。
悪い噂を自分を悪役にして消していく。
本当は触れてすらいない。

「八代君…一緒に帰ろ?」
「ああ、すぐに行く。それじゃ、みんな…また明日。」
笑顔の佐久耶と並んで駅まで歩く。はたから見れば恋人に見えるかもしれない。
彼女の好きな話題で話し、楽しませる。
だが、俺が触れると彼女は俺に恐怖の目を見せる。
手を繋ごうとすると露骨に嫌がる。

その日は一志が俺の住処を訪れていた。

「お前、神城と付き合ってんだってな。」
「ああ。」
「早く別れろ。あいつは…あいつは!」
「判ってる。お前は正しい。だが、好きなんだ。」
「難儀な性格だな。だから女は嫌いなんだ。困ったらすぐ言えよ?」
「ああ。それはおいといて期末の範囲だが…」
期末は学年一位だった。一志はなんとか全教科赤点を免れた。
いつも女を侍らせてるこいつが女嫌いであることは俺だけが知っている。

俺にとって長い一学期が終わった。
学校は拷問だ。好きな女は俺がいないと何も出来ず、俺には恐怖と嫌悪を向ける。
精神が擦り切れそうになっていたそんな頃、学校は終わった。
364凶犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/25(金) 09:52:50 ID:it4e0Rnf
こちらから二人で遊ぼうと連絡を入れても佐久耶は断るため、夏休みは
一志や菖蒲と殆ど過ごした。クラスメイトの誘いのときだけ佐久耶を誘い、
それ以外殆ど関わらなかった。俺も疲れていたのかもしれない。

一志は菖蒲は気に入っていた。馬鹿なことをしたり、海、キャンプ、
うちへの泊まりこみ…三人での夏休みは本当に楽しかった。

夏が終わると以前と同じような日々が変らず始まっていたが、二学期のある日、
ついに事件は起きた。

朝、駅の階段で佐久耶を見つけた俺は挨拶をしようと近づこうとしたが、
目の前で彼女が足を滑らせ、俺はそれを受け止めた。
結構な高さから落ちてきたため、階段では自分も踏ん張れず結局一番下まで
落ちて彼女をかばったために背中を強く打った。幸いにも荷物を下敷きに
することが出来たので怪我は無かった。運動神経に感謝したのは初めてだ。

「ごほっ…おい。気をつけろよ。佐久耶、怪我は無い…」
ぱんっ!!!
自分に何が起きたかわからなかった。
頬に痛みが走る。彼女は怒りに満ちた目で俺を見ている。
次の瞬間にはいつもの気弱な目に戻り、泣きそうになりながら学校に走っていった。
俺はそれを何も考えずに見送った。

教室に入ると全員の目がこちらに向いた。
通学時間帯だったお陰で見たものがいたのだろう。
そして男も女も俺に寄ってくる。残りのものは佐久耶に非難の視線を向けている。

「犬塚君…朝のあれ何…?」
「ああ、あれは……俺が変なことを言ったせいで佐久耶が驚いて足を滑らせたんだ。
 かばったのも無茶するなって怒られたよ。俺は心配かけてばかりだ。俺が悪いんだ。」
真顔で言い切れた。質問してきたクラスメイトも信じさせれるだろう。

「そ…そうなの?」
「違うでしょ!何でそこまで庇うのよ!!」
隣のクラスの菖蒲がいつの間にか教室に来ていた。こいつも見てたのか…。
本気で怒っている彼女の肩を叩いて俺は言った。

「菖蒲、いいんだ。」
「よくない!佐久耶!あんた何様よ!!いつも、八代に頼って!縋って!
離れようとしたら好きでもないのに縛りつけて!」
「菖蒲!!やめろ!!よせ!」
これ以上言わせるわけにはいかない。
俺は菖蒲を後ろから羽交い絞めにし、口を押さえた…が、
次の瞬間に噛み付かれ、離される。

「命懸けであんた助けた八代をあんな眼で叩くなんて…私の恩人を…
 私の好きな人を傷つけて…それでも平然としてるあんたを私は…
 私は…絶対に許さない!!」
羽交い絞めにされながら怒りに震える菖蒲を俺は必死に抑えながら、
佐久耶を見た。彼女は怯えていたがやがて口を開いた。
365凶犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/25(金) 09:53:44 ID:it4e0Rnf
「仕方…ないんです。明るくて友達も多い菖蒲さんには判らない。」
「判る…わけないでしょう。あんたの気持ちなんか。」
「八代君は私の始めての友達です。中学まで誰も私と仲良くなんて
 してくれなかった。彼だけなんです。私が怖がっても気長に接してくれたのは。」
「あんた、そんな人に何してるか自覚…してんの。」
「彼は暗くてどうしようもない私を好きになってくれて…。本当に嬉しかったんです。
 彼がいて、みんなと仲良くできるようになって…だけど、私は他に好きな人がいたの。
断るしかないじゃないですか。」
「だったらなんで後で受けたのよ!それで八代が今どんだけ傷ついてんのよ!」
「彼がいなくなったらみんな私から離れていったんですよ…。彼は仕方ないとしても
菖蒲さんもみんなも好きな人も私を否定して…私は怖かったんです…一人に戻るのが。」
「そんな理由で…利用したの…」
菖蒲の顔は怒りを通り越して真っ青になっていた。
俺は佐久耶の告白にはそれほど驚かなかった。鋭い痛みは走ったが判っていたことだ。
彼女はその美しいといえる愁いを帯びた顔を向けて続けた。

「八代君は人気があるから…他の人と付き合うと私と入れなくなります。だから…
 お願いしたんです。でもどうしても…男の人として好きになれなかったんです。
 好きでない人に触られたらどうしても嫌なんです。無理なんです!」
「本当にどうしょうもない女…。」
「いいんだ、菖蒲。判っていたしその上で俺も好きでやってるんだ。」
「いいわけ…ないでしょう。私は無愛想な一匹狼だった八代がどれ程の努力を
 して、無理をしてみんなに溶け込もうとしたか知ってる。私のせいで停学まで
 受けて、白い眼で見られてたはずなのに。それなのに…こんな奴のせいで…」
菖蒲は俺の胸に頭をつけて泣いていた。
抱きしめる資格は俺には無いので代わりに頭を撫でていた。

「佐久耶がいなければそもそも努力すらしなかった。感謝してるんだ。」
「私もうやだよ。辛すぎるよ…わああぁぁぁぁぁぁぁっ!」
俺は菖蒲が泣き終えるまで好きにさせた。
彼女が泣き終えたとき佐久耶の味方は……俺しかいなかった。
366名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/25(金) 09:55:08 ID:it4e0Rnf
ここまで投下。
後はもう一度書き溜めてからにします。
367名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 10:01:48 ID:0ePqYUmK
GJ
弦楽器を糸のこで奏でた極上の音楽だな
何時誰が切れるかキリキリくる
続きか気になって仕事にならん!
368名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 10:04:02 ID:H13fVsMX
もう俺にはwktkしかできない
369名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 11:22:39 ID:rdwe0ovX
展開は面白いのだが、あまりにも文章が淡々としていて、
キャラ描写も少なく、普段の様子なども描かれずに、
〜〜した、〜〜だった、な文章が続くせいで話に入り込み
づらいのが、すごくもったいないと思う。
370名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 15:53:11 ID:4BugM/77
こんな神達が集うスレを見つけられた今日という日に感謝。
371名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 18:26:11 ID:Vr6aTq+E
ゲーパロ専用さん来ないかな〜
372名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 03:10:41 ID:p9nd+MWE
なんなんだこの複雑神SSは・・・・神GJ!
そして>>365の才能に嫉妬と尊敬を表さなくてはならんな。

それにしても少し前までには考えられなかったほどに活気があるな。
過疎を救ってくれた職人さん達には感謝してもしきれない、ありがとう。
373名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 03:12:27 ID:sMWKPDRW
あげ
374マンネリ打破と依存:2007/05/29(火) 12:51:56 ID:nIK+6iMM
保守!
3レス使用
1冒頭

2依存娘
3サイコ
の分岐
375マンネリ打破と依存 冒頭:2007/05/29(火) 12:52:48 ID:nIK+6iMM
最近マンネリを感じた僕等はSMに手を出したんだ。
でもそれは単なるスパイスで終わらなかった、僕等は暖かな底なし沼に溺れたんだ。

僕と彼女が僕と愛玩奴隷(ペット)になるのにさほど時間はかからなかった。

もともと四六時中僕の浮気を心配していた彼女は
近頃では四六時中僕の命令を実行して幸せだった

この間は僕の物だってもっと感じたいって『首輪』を欲しがった。

『ネックレス』や『チョーカー』をつけてあげても物足りなさそうだった
376マンネリ打破と依存 冒頭:2007/05/29(火) 13:00:10 ID:nIK+6iMM
とうとう『大型犬の首輪』をと思ったけれどもそこで彼女が言ったんだ
『キスマークで首輪を頂戴?人の手が入らないように』
翌日その首輪は消えました
だから毎日つけてあげるんです

彼女の細い首に毎日キスマークを
377マンネリ打破と依存 冒頭:2007/05/29(火) 13:08:01 ID:nIK+6iMM
けれどもそれが儀式からいつしか習慣になっていって。
またマンネリに




だから首に輪を直接あげたんです。あの細い首に両手をかけて、こうキュッと
これならもう消えません。
彼女は
『ずっと変わらず、アナタのなかにいられる』

って喜んでくれました。
378名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 20:35:13 ID:l3KbJXpg
・・・
379名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 20:40:35 ID:lj16HTbo
え?ここで終わり?
380名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 06:15:50 ID:7tdicVDI
ドーセ保守
381名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 21:36:22 ID:Zi7ZPtjp
捕手
382名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 20:42:08 ID:ZOCyaFwI
狂犬と症状たちの続き待ち保守
383名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/31(木) 21:19:28 ID:g9djrSXk
何度も書き直してました。
短めですが方針は決めたので次はなるべく早めに。

少し開きましたが投下します。
384凶犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/31(木) 21:22:23 ID:g9djrSXk
 その日の昼、俺は初めて悪意が眼に見えるものだということを知った。
 流石の俺も30人からの悪意の視線を受けたことは無いが、それを受けても
一応恋人である綺麗な長い黒髪を持つ美女…佐久耶は物憂げにはしているものの
それほど気にしている様子は無い。

「どうしたの?八代君。食べないんですか?」
「俺はむしろ佐久耶がいつもどおり食べているほうが驚きなんだが。」
「え、だって八代君がいますし…。」
 朝の事件は菖蒲が変りに日頃の俺の思いをぶちまけたせいか俺自身は冷静で
周りを見渡す余裕もある。特に女子の視線が厳しい。
 それにも気がつかないというのは…。

「佐久耶。もう手遅れだとは思うが空気を読めるようになれよ。」
「空気を読む…超能力か何か…ですか?」
「だめだな…どうしたもんか。」
「八代君、お困りでしたら私も手伝いますけど…」
 彼女は困ったように首をかしげている。羨ましいことにそもそも気づいていないらしい。
 本当に困った…これからどうするか。

「八代〜学食にご飯食べにいこ。」
「菖蒲か。見てのとおり弁当なんだが…。」
 考え込んできたときに教室におさげにメガネの見慣れた友人、菖蒲が入ってきた。
 地味な外見と違って表情が豊かでころころ変る。朝のことは吹っ切ったのかいつも通りだ。

「たまにはいいじゃない。二人で食べにいこ?」
「しかし、今離れるわけにはな…」
と眼で教室中を見ろと合図する。こいつなら分かるだろう。
 菖蒲は苦笑して納得したが、それまで黙っていた佐久耶が口を開いた。

「あの…菖蒲さん。ごめんなさい…人の恋人を連れて行こうとしないでもらえると…
 矢代君は私の恋人なので…」
 教室中の空気が凍るというのはこういうことを言うのだろうか。
 五秒ほど教室の喧騒が途絶えた。菖蒲は怒りを通り越して呆れ果て
俺も何も言えずに佐久耶を見つめる。冗談で言っている顔つきではない。

「八代…本当にこの人大丈夫なの?」
「流石に自信無くなってきたな。」
 菖蒲が何か気持ち悪いようなものを見たような声で呟く。
 今日のところは菖蒲に引いてもらい、昼食を再開したがあまりの視線の圧力に
味を感じることは出来なかった。
385凶犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/31(木) 21:24:01 ID:g9djrSXk
「それじゃ佐久耶、学級日誌返してくるから待っててくれ。」
「はい。お待ちしています。」
放課後、日誌を職員室に返すために廊下を歩きながら佐久耶について考える。
結局、昼食時も休み時間も朝の事件がなかったように佐久耶はいつも通りで、
人助けに恩を着せるのは主義でないはないから俺に対しては問題があるわけじゃないが
他ならぬ俺自身に同情が集まることによって、佐久耶が悪い立場に立たされているのは問題だ。
 そこまで考えて、あそこまでいわれても佐久耶を中心に考えてる自分に苦笑した。

「おい、佐久耶もど…ん?」
 日誌を返し教室に戻ると佐久耶がいなかった。先に帰ったかと少し考え、頭を振る。
鞄が机に放置されてあるということは…トイレか誰かに連れて行かれたか…。落ち着いて
携帯に電話する…繋がった!

「おい。もしもし!佐久耶どこだ?」
「ザーッ………何…………ざけて………やめ………」
ついに、実力行使まで…。会話から場所がわからないため、廊下の窓を調べつつ
女子トイレ前で電話を鳴らして音を確認。いないことを確かめ急いで屋上へと
駆け上がる…裏庭の女四人…あれか!!

「そこの三人!何をしている!」
「あ、犬塚君…」
 俺がついたとき佐久耶は、校舎の壁に追い詰められて問い詰められていた。
その暗いながらも綺麗な顔は怯えを浮かべている。俺が到着すると彼女は
すぐに俺の背中へと隠れた。決して触れないようにしながら。
 佐久耶を見ながらクラスメイトの女子三人は憎らしげに、また、ばつが悪そうにしている。

「犬塚君…朝の女の子じゃないけど見てるの辛すぎるのよ。もう…」
「すまない。俺のせいで。」
「何で謝るの!悪いのは全部その女じゃない!」
「俺も今の状態は望ましいわけではない。だが、こういう風に一人を攻撃するのは
 俺の顔に免じて勘弁してやって欲しい。頼む。」
そういって頭を下げるとさらに複雑そうな顔になったが自分たちも悪いと思っているのか
それとも言いたいことが判ってくれたのか去ってくれた。
だが、どうにかしないと守ろうとしてきた俺のせいで全員が敵に回るという皮肉なことに
なるという予感が消えない。
386凶犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/31(木) 21:24:45 ID:g9djrSXk
「佐久耶。大丈夫か?」
「うん少し怖かったですけど…ありがとう。」
そういって少し微笑む佐久耶は西に傾いた太陽の光を浴びて絵になっていたし、
ずっと見ていたかったが、意を決して一日考えてきた結論を佐久耶に話すことにした。

「やっぱり恋人はやめにしないか?」
「八代君も…私のことを嫌いになりましたか?当たり前ですよね…」
 佐久耶は悲しそうに少し眼をふせ、力なく呟く。

「俺は佐久耶を嫌いになどはならない。だが、佐久耶は俺のことが好きじゃないんだろ?」
「はい…でも、いつか好きになれるかもしれませんし…。」
「付き合って三ヶ月、俺なりに努力したつもりだ。だが、変っていない。これ以上
 変らないのなら、俺の存在は佐久耶にとって害にしかならない。」
「そんなこと…八代君のお陰でかなり助かってます。」
「友達という関係で行こう。それ以上の関係は佐久耶へのいらん敵意を増やすだけだ。」
 そう…相手が好きでないとわかっていながら付き合おうと考えた俺がまずかったんだ。
結局、大勢を傷つけただけに終わってしまった。しかし、佐久耶は涙を浮かべながら真剣に叫ぶ。

「他の人なんてどうでもいいじゃありませんか。他の人からどう思われるかで
 考えるなんてそんなの間違ってます!」
「佐久耶と初めて話した日に、佐久耶には普通の高校生活を送ってもらいたいと
 思っていたんだ。俺がいるとそれが出来なくなる。」
「いいんです…。八代君がいてくれたら…八代君だけで…八代君さえいてくれれば…。」
「友達に戻っても、今までどおりできる。」
 佐久耶が俺の手を両手で掴んだ。その両手から彼女の震えが伝わってくる。だが、
彼女は震えながらも泣きながらもしっかりと手をその両手を握る。

「お願いします…。私も…私も怖いけど…努力しますから…お願いですから私を捨てないで!!」
「………だめだ。一度恋人としては離れたほうがお互いのためだ。友人としては今までどおりだから
 心配するな。佐久耶を捨てるわけじゃない。今日は帰る。また明日な。」
 俺は心を鬼にして彼女の手を引き剥がし、久しぶりに一人で家への帰途に着いた。
 慣れていたはずの孤独からの寂しさと心の痛みが胸に刺さっていた俺は一志と菖蒲に
電話し、二人のために晩御飯を振舞った。
 次の日から佐久耶との関係がどうなるのか、このときは想像もできなかった。
387名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/05/31(木) 21:26:51 ID:g9djrSXk
投下終了です。
388名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 21:48:02 ID:r0X77rlM
この女救いようがねぇえGJ!

何かヤンデレとか言うものの臭いがしてきたように感じたが・・・。
もうね。
主人公が可哀想で可哀想で。
菖蒲ちゃん可愛くて可愛くて。

大団円でなくても、それなりのハッピーエンドになることを願う。

職人◆x/Dvsm4nBI 氏に感謝。
389名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 22:00:31 ID:10dM4bTf
相変わらずGJ!!
390名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 22:13:47 ID:lvyq93XX
投下しまーす(´・ω・`)初SSで駄作の上途中ですが。




4月。俺はこの高校にきて3年になる。進学校で、前にいた就職8割の高校より張り合いも出るし、教えていて楽しい。忙しい。とにかく忙しい。その所為か、妻もいなければ彼女もいない。職場恋愛は、、、無いな。平均年齢が高すぎだ。
でも最近ちょっと楽しいことができた。ちょうど灰色の大地に春風が吹き始めたかのように、、、いや、そんないいものじゃないな。
こうやって掃除を見てると―――
「山本先生ー!!」
―――ほら、来た。
俺は頬の筋肉がゆるむのを抑えながら振り向いた。
「お前、掃除行けよ」
「もう終わらせましたー!先生に早く会いたくって。」
「……ったく、毎日毎日……」
そうは言うが、正直ここまで慕ってくれるのは嬉しい。それを言ってやれば喜ぶだろうか?いや、俺の性に合わないな。
「お前、勉強はちゃんとしてるのか?」
「う、、、数学わかりません。」
「俺が去年教えてやったところがわからないとか、まさか言わないよな?」
「そんなこと言いませんよ!先生の数学わかりやすいですから。何で学年上がってきてくれなかったんですか?」

正直それは俺にもわからない。去年入学してきたこいつらを1年間見て、一緒に2年もやっていきたいと思っていた。残念だが校長や学年主任の決めたことだ。
「…俺に聞くなよ。俺だって悲しいんだから。」
それだけ言って、この空気に耐えられなかった俺は担当のクラスに向かった。淋しそうな顔をして立ち尽くす夏目を残して。
391名無しさん@ピンキー:2007/06/01(金) 01:33:42 ID:oyEk/MwX
狂犬と少女、いつも楽しく読ませて貰ってます。
今回も凄く楽しかったです、風邪には気をつけて無理しないでね。
携帯から失礼しましたm(..)m
392名無しさん@ピンキー:2007/06/01(金) 05:43:38 ID:jLUQ75Zf
狂犬と少女
えー更新

いや『GJ』だと終わった感があるし『続きだわぁい』は作品にあわないな。


断崖絶壁から真綿の命綱をクビにぶらーんな感じがたまらねー
393名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/01(金) 20:00:58 ID:fQQHEu3O
今日も投下します。
次は少し時間がかかると思います。
394狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/01(金) 20:02:16 ID:fQQHEu3O
「八代おはよ。今日もいい天気だね。」
「おはよう。今日は雨だ。」
 朝、電車から降りると菖蒲が後ろから挨拶してきた。振り向くと知らない女が
そこには立っていた。

「………菖蒲か。随分と変装したな。」
「お洒落っていってよね。さて、恋人もいないそうだし今日はお供してもいいよね。」
「ああ。そうだな。」
 駅の階段を歩きながら菖蒲を眺める。いつもの長い三つ編みは解いてストレートにし、
やぼったい眼鏡はコンタクトにしたのかつけていない。眼は相変わらずの活力に輝き、
以前の地味な印象は全くない。

「本当に驚いた。急にどうしたんだ?」
「え……似合ってない?」
「いや…明日からラブレターの処理が大変だろうというくらいに似合ってる。」
「ほんとっ!よかったー。でもラブレターは一枚だけでいいんだけどね。」
 そういっていたずらっぽく微笑んだ。笑うと他人を元気にさせるような雰囲気に
してくれるところは変わってない。冗談を言い合いながら駅を出るとそこには
思いがけない人がいた。黒い綺麗な長い髪の美しい人…昨日別れたはずの恋人…

「おはようございます、八代君。菖蒲さん。」
 俺は戸惑った。朝に佐久耶と同じ時間帯の電車になることはあっても先に来て
待っているというのは今までにはなかったからだ。その彼女は曇りのない上品な
笑顔を浮かべながら頭を下げた。

「おはよう、佐久耶。でもあんた昨日八代と別れたんでしょう。今更何か用?」
 菖蒲が動揺する俺に代わって笑顔で返す。だが、眼は笑ってない。佐久耶は
それに対してはいささかも動じず、

「朝、一緒に登校するのは付き合ってる恋人でしたらそれ程おかしいことでは
 ないと思いますが…行きましょう八代君。菖蒲さん。失礼します。」
「あ、おい!」
 そういって俺の腕に自分の腕を絡ませて歩き出した。振りほどくのは簡単だったが、
彼女の腕は小刻みに震えており、そんな彼女を理解できず成すがままになってしまった。
 去り際に最後に見た菖蒲の眼には強い決意の光があった。
395狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/01(金) 20:03:50 ID:fQQHEu3O
 私は駅で八代と佐久耶を見送りながら、改めて佐久耶と戦う決心をした。
 ただの嫉妬かもしれないけど、相手は友人としか思っていないかもしれないけど、
それでも自分の好きな人が不幸の泥沼に沈むのをほうっておきたくはなかった。

 私は学校へと急ぎ、同じクラスの一志と相談することにした。彼のことは噂しか
知らないときはただの女たらしと嫌っていたけど、友人として付き合う分には頼りになるし
誠実な人柄だった。昨日も放課後女と会うとかいっていたにも関わらず、八代に呼ばれて
すぐに来たのは少し変だと思ったからだろう。
 私は彼に朝の出来事を話し、感想を求めた。

「なるほどな。そうは簡単にはいかないとは思っていたが…。」
「一志はどう思う?」
「ほっとくとハチは一生あいつを抱える羽目になるな。」
「八代が彼女を完全に見捨てるってことはやっぱりない?」
 一志は笑って肩をすくめた。

「絶対無い。わかってていってんだろ?」
「うん…八代は困った人をほっておける性格じゃないしね…」
 彼はうって変って真剣になり、私を見つめ衝撃的なことを話し始めた。

「これから言うことは他言無用だ。あいつにも。いいか?」
「うん?何かわからないけど話すなというなら。」
「あいつが人を助けるのは性格だからじゃない。強迫観念に近い。なんで狂犬と
呼ばれていたと思ってるんだ。心当たりはあるだろ?」
「え…。」
「あいつは母親に裏切られてるからな。理由は違うが俺と同じで。」
「じゃあ…。」
「ハチは生真面目な男だ。だから、そんな人間にはなりたくないと思っていた。
 交際は広くは持たず、交際した人間には誠実だ。女嫌いでもあったから、あいつが
 好きな人ができたって聞いたときは驚いたさ。」
「一志がとっかえひっかえしてるのは女嫌いだからなのね。」
「さてね。」
 私は少し考えた。努力の理由、そして、報われなくとも続ける理由。そもそも、
八代は相手に期待していないのかもしれない。だけど…

「やっぱり、佐久耶との関係はこのままにはしたくないわ。私を好きになって
 貰えないとしても、友達としてもほっておきたくない。」
「そうだな。人の色恋沙汰に首を突っ込むのは性にはあわないが、融通の利かない
 我らが友人のために骨を折るとするか。しかし、女はやはり怖いな。」
「あんまり舐めてると後ろから刺されるわよ?」
「やれやれ…大分わかってきたと思っていたが理解不能な女が身近に二人もいるからなあ。」
 彼は困ったように苦笑いしていった。話も終わったので席に戻ろうとした私に
一志は忘れてたことを思い出したと笑っていった。

「その格好のほうがいつもより美人だぜ。いつものもいかにも委員長って感じでいいがな。」
「そ。ありがと。一志が私を褒めるなんて…ああ、だから今日雨なのかな?」
 私も笑い返して軽く流した。
396狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/01(金) 20:04:44 ID:fQQHEu3O
 結局その日は一日、佐久耶は俺に必要以上に触れてきた。それは今までのことを
考えると異常だし、不思議だった。おかげで周りの空気は昨日よりさらに悪化し、
さらに、彼女自身触れることを嫌がっているようなことも悩みになっていた。

「佐久耶。何を考えている?」
「恋人なのですから、これくらい普通ですよ。」
 放課後雨の中、駅までの道を二人で歩いていた。一人で帰ろうとしたがついてきたのだ。
 彼女は笑顔でそういうがその何も悪意のないその笑みに俺は少し違和感を覚えた。

「昨日、恋人ではなく友達に戻そうといったはずなんだが…。」
「私は…努力するって決めたんです…。好きになるように…好きになってもらえる
 ようにって…。」
「怖いんだろう。嫌ならやめといたほうがいい。」
「確かに怖いです。だけど…嫌なわけじゃないんです!」
 佐久耶はまるでそれが義務であるかのように俺の腕を掴んだ。だがやはり、無理は
しているようで嬉しさよりは困惑しか感じなかった。

「無理はするな。手を離すんだ。」
「嫌です。私は八代君の近くにいたいんです。」
 今日の学校での周囲の状態、昨日のことを思うと俺もとめることの出来ない最悪の
事態に陥ることに今のままではなりそうであって、そのためには何とかして関係を
変えなければならなかった。どういえば納得してくれるのか…。

「俺はもう佐久耶のことが好きなわけではない。お互い好きじゃない以上、
 無駄な努力だ。もういいだろう。やめてくれ。」
「八代君が好きでいてくれたとき私は好きでなかったけれども付き合うことが出来ました。
 私は今八代君のことが好きですから付き合うことは出来るはずです。」
 彼女の顔は真剣で、その美しい顔で俺を見上げている。嘘をついている雰囲気はない。
 この手だけは使いたくはなかったが…。俺は意を決して言った。

「俺は他に好きな女が出来た。だから一緒にいられると迷惑だ。」
「……嘘です……。八代君は私を…私だけを…そして私も…」
「人の心は変わるものだ。俺はもう友人としか見れない。」
 俺は彼女の手を離し、一人で駅のホームへと歩いた。彼女は暫く俯いていたが
俺の後ろをゆっくり歩いて付いてきていた。
397狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/01(金) 20:05:27 ID:fQQHEu3O
「おはよう八代。今日はいい天気だね。」
「またそれか…おはよう、菖蒲。今日は晴れたな。」
 電車から降りると昨日と同じように菖蒲がいた。イメージチェンジをした彼女は
目立つのかちらちらと視線がこちらに向いている。
 駅から出ると予想通り佐久耶がいた。

「おはようございます。八代君、菖蒲さん。」
「おはよう。佐久耶。急ぐからまたな。」
 眼を合わせず、挨拶だけをして彼女の前を通り過ぎた。後ろから付いてきているの
はわかっていたが、見ないようにして菖蒲と並んで歩く。

「ねえ、いいの?」
「何がだ?」
「佐久耶ほっといて。」
「そうしないと駄目だ。佐久耶の立場がますます悪くなって危険になる。」
「そっか…。色々大変だね。」
「自業自得だ。俺の責任だからな。」
 菖蒲は困ったような笑みを浮かべていった。

「他の人と付き合えばいいじゃない。そしたら流石に離れるでしょ?」
 俺は何も言わずに苦笑して首を横に振った。惚れた弱みもあるし、他の人と
付き合うと彼女を見捨てることになる。
 一番いいのは俺を見限って自立し、一人で溶け込むことだろうがそれが出来るとも
思えず、正直手詰まりを感じている。自分自身どうしたいのかも判然としない。
 結局この後は菖蒲とも何も話さずにただ学校へと向かった。
 この日の昼、彼女は珍しく用事があるからと一人でクラスを出て行った。
398名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/01(金) 20:06:51 ID:fQQHEu3O
投下終了です。
399名無しさん@ピンキー:2007/06/01(金) 20:18:12 ID:CEt5SyDT
乙、続きwktk
400名無しさん@ピンキー:2007/06/01(金) 22:37:35 ID:UsFIi6vV
あー、なんかこの佐久耶って女、知り合いにそっくりでむかつくわww
リスカ女なんだがなwwwww
401名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 00:31:25 ID:4gewqmff
このスレでこの傾向の作品が見られるとは・・・GJ!
402名無しさん@ピンキー:2007/06/02(土) 03:50:03 ID:5wops/Ra
なんかヤンデリズム感じた。GJ!
403名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/03(日) 10:56:05 ID:z966MeLB
続き投下します。
404名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/03(日) 10:56:47 ID:z966MeLB
 私は八代君に今日のお昼は用事があることを告げて隣の教室へと行くことにしました。
 彼と食べる食事の時間は私にとっては大事なひと時なのですが、今日ばかりは私と
彼の時間を続けるために使う必要がありました。
 教室に入ると何やらざわめきましたが、気にせず目的の人を探します。丁度
お一人のようで助かりました。

「今日は、菖蒲さん。」
「佐久耶…珍しいわね。何か用?」
 私は彼女の前に座り、話しかけます。彼女は驚いたような顔をしてこちらを向きました。

「実は菖蒲さんにお願いがあるのですが。」
「ふーん。何かしら。」
「八代君に近づかないで頂けないでしょうか。」
 そう…きっと八代君に元気がないのはこの人が私たちに余計なちょっかいをかけている
からに違いない。彼女は未だに知らない振りをしています。私が何も知らないとでも
思っているのでしょうか。

「言ってる意味がわからないんだけど…。」
「私は彼とお付き合いさせていただいているので、彼を惑わすようなことを
 しないで欲しいんです。」
「わけわからないこといわないで欲しいわね。まず、彼は恋人はいないって言ってるわ。」
「そんなことはありません。今は少しお互いが誤解してるだけで、恋人同士です。」
 そう、お互いが誤解をしているだけです。私は彼が好きになってきているのですから
少し努力すれば元に戻るのです。

「…愛想をつかされたんじゃないの?」
「そんなことはありません。あの後、私が危ないときに助けてくださいましたし。」
「そもそも付き合ってたの?佐久耶は八代の家にすら行った事無いでしょう。私は
 一志と一緒に食事に呼ばれたり出かけたりしてるわ。まだ、私のほうが近いんじゃない?」
「それはこれから解決していけばいいんです。男の人が怖くて今まで努力を
 してこなかったから…克服すれば上手く行くんです。」
 私たちが上手くいっていないときに菖蒲さんは入ってきました。髪形を変えたり
おしゃれになったのは八代君に近づくために違いありません。でも、そんなことは
許しません。彼は私と一緒にいるのですから。彼女は少し怒ったような感じに
なってきていますが、ここで負けるわけにはいきません。

「八代は迷惑しているわ。佐久耶が近くにいる限り、彼は休まらないのよ。
 本当に好きなら身を引くべきじゃないの?」
「それは菖蒲さんが彼のことが好きだからでしょう。彼を盗りたいから言っているんでしょう。
 八代君はほかに好きな人がいるとか嘘をついてまで私から離れようとしています。
 菖蒲さんが彼を誘惑して悩ませているんでしょう。あなたこそ迷惑じゃないですか。」
 次の瞬間、頬に強い衝撃を受けました。周りの人たちも何事かとこちらを向いています。
 私はそれでも彼女から目を離しませんでした。

「佐久耶。あんたは本当にどうしょうもないわね。本当にほかに好きな人がいるかも
 しれないでしょう。いつまでも八代に縋ってるんじゃないわよ。」
「私には彼が必要なんです。だからどんなことがあろうと菖蒲さんにはお渡しできません。
 別れるつもりもありません。話はそれだけですので失礼しますね。」
 言うことをいった私は教室に戻りました。例え本当に八代君が菖蒲さんを好きになった
としても渡せないのです。私は一人に戻ることは絶対に嫌なのですから。
405名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/03(日) 10:57:38 ID:z966MeLB
 放課後、俺は屋上で人を待っている。待ちながら考えることは後悔ばかりだ。あの時、余計な
気を回さなければ俺の親友はあそこまで精神をすり減らすことはなかったかもしれない。
 後悔先に立たずとはよく言ったもんだ。
 今からやることが上手くいっても失敗してもハチは傷つくだろう。

 俺は女は嫌いだ。これから会うのは女の中でも一番嫌いなタイプだ。他人に寄生して
自分は何もしない。さらに厄介なことにこいつは宿主を共倒れさせる宿り木だ。例えどうなろうとも
宿主たる親友のために、俺は泥をかぶることに決めた。
 携帯電話を弄りながら待つこと五分。屋上の扉が開いた。現れたのは長い黒髪の…
恐らく学年で一番であろう美人。一度振った相手だ。

「よう、待ってたぜ。神城さん。」
「犬飼君…だったんですか…。」
 朝、俺は彼女の下駄箱にラブレターを入れておいた。昔と反対に。彼女は驚いて
俺を見つめている。

「こうやって二人で会うのは三ヶ月ぶりってとこか。」
「はい。そうですね…。あの時は犬飼君が八代君の親友だなんて知りませんでした。
 …犬飼君が怒ったのも無理ないですね。」
「まあな。今では少し後悔している。」
 一応、嘘ではない。もう少しよく人柄を知っていれば無用の努力と心労を掛けずに
こいつを排除できたんだ。

「それで…何か御用ですか?」
「ああ。前に断っておいてなんだが…俺と付き合って欲しい。」
 そこまで言って相手の返答を待つ。自分からこういうことを言ったのは初めてだ。
 望んだものでもないが、二度も経験のないことをさせられるとは…。

「犬飼君にはたくさん彼女がいらっしゃいますし、私は必要ないでしょう。」
「ほー、そういうことも知ったわけだ。」
「……八代君に聞いたわけではありませんよ?」
「ああ。わかってる。でもって、そいつらとは全員別れた。」
 彼女は強い風に髪をなびかせながら少し考えていった。

「昔……助けていただいたお陰で私は犬飼君が好きになりました。ですが、今の私は
 八代君の恋人です。申し出を受けるわけにはいきません。」
「あいつはお前さんをただの友達だって言ってたぜ?」
「それはただの誤解です。では、お話がそれだけでしたら失礼します。」
 そういい残して彼女は去っていった。失敗したか…面倒だがまあいい。
 後は任せるとしよう。だが、あいつも苦しめるようにならないとは限らないな…。
あまり明るい未来といえない考えに苦笑しつつ、俺は携帯電話を取り出した。

「全く女ってのは怖いぜ。」
406狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/03(日) 10:58:42 ID:z966MeLB
 放課後、佐久耶が屋上に向かったのを確認した私は八代に会うために教室を
訪れていた。掃除の当番だったこともあってか、教室にはもう誰もいない。

「八代…帰らないの?」
「ああ。一志が後で話があるから少し残ってくれってさ。」
「そう…じゃ、私も待っててもいいよね?」
「どうぞ。暇だし助かる。」
 予定通りだ。一志は私の味方についてくれた。後は私の努力次第だ。

「こうやって二人になるのも久しぶりだよね。いつも佐久耶か一志が一緒だったし。」
「それは…」
「私を…避けてた?」
 八代は明後日の方向を向く。それで勇気が出る。完全に友達としてみているわけでは
ないとわかるから。

「そんなわけじゃないさ。たまたまだ。」
「じゃあ、私はだいぶ運が悪かったんだね。」
「うん?」
「だってずっと二人きりになりたかったんだもの。」
 放課後の静かな教室に、遠くで運動クラブが上げる歓声だけが響く。

「こないだの佐久耶の事故の日だけじゃなく、毎日同じ電車に乗ってたし。」
「そうか…気づかなかったな。」
 ポケットでマナーモードにしてある携帯電話が鳴る。時間を会話と別の頭で数え始める。

「私さ。八代が佐久耶と別れるっていったときよかったと思ったんだ。二人には悪いけど。
 二人が付き合っても、二人とも疲れ果てて傷つくだけだと思ってたから。」
「そうかもな…。だけど…それでも…」
 その先は言わせない。もう少しだ。私はゆっくりと八代に近づいていく。

「私を好きになってとは言わない。そうなれば嬉しいけど。でも、私は八代がまだ好きだから
 二人がただの友達だというなら、私は八代が振り向くような女になって捕まえたいの。」
「菖蒲…お前何を!!!………っん!!!」
 八代が教室の扉に背を向けるように移動し、首に手を回して彼の唇を強引に奪う。
柔らかくて暖かい唇の感触といいようの無い幸福感が私を満たす。

 そして、教室の扉が開かれた。扉の前には口を手で押さえて驚きで顔を蒼白にして
立ちすくむ佐久耶の姿があった。
407狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/03(日) 10:59:53 ID:z966MeLB
「う、嘘……」

 不意をつかれてキスをされ、混乱した頭を現実に引き戻したのは佐久耶の泣きそうな声だった。
慌てて菖蒲を引き離す。菖蒲は今までに見たことのない男を魅惑するような眼で
俺を見つめている。やがて、少し離れて彼女は佐久耶と向き合った。

「佐久耶…これでわかったでしょう。あなたはもう八代の恋人じゃないの。」
「そんな…そんなはずが…」
「八代は別に好きな人がいるっていったんでしょ?」
 うろたえる佐久耶を菖蒲は射抜くような目で見つめている。
このままではまずいと思った俺は説明するために前に出ようとしたが、
菖蒲に手で制止された。

「あんたは自分の都合で八代を利用したのよ。自業自得でしょう。誰が自分を好きでもない
 利用するだけの人を好きになるの?」
「貴女に私たちの何がわかるっていうんですか。」
「そんなのは知らないわ。わかるのは八代が佐久耶から離れようとしていることと
 あんたと一緒にいる限り、八代が苦労するってことだけよ。それに…
 心が私に向いてるならあんたから救うのは当然でしょう。見たんでしょ。
 さっき八代が私に熱いキスをしてくれたの。」
「やめて!」
 佐久耶はその綺麗な顔を怒りにゆがめて菖蒲の頬を張った。彼女は内向的で基本的に
臆病だ。そんな佐久耶が怒りを浮かべて菖蒲を睨んでいる。

「二人とももういい。やめろ!」
「八代君…」
「俺は暫く誰とも付き合わない。キスは事故だ。」
 俺はそれだけ言うと何かいいたそうにしている佐久耶を振り切って鞄を持って外にでると、
一志が待っていた。

「よ、ハチ。もてる男は大変だな。」
「見てたのなら止めろ。」
「さすがにこれで距離は開くだろう。強引だが。さてどうなるやら。」
 俺はその言葉に何も言い返すことができなかった。ほっとした気分と少し
照れくさい気分、辛い気分などごちゃまぜな気持ちにさいなまされながらも、
菖蒲とキスをした唇を無意識に撫でていた。
408名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/03(日) 11:02:16 ID:z966MeLB
投下終了です。
次からはまた主人公中心になると思います。

SS書くのも好きですが読むのはもっと好きなので
他の方のSSで依存パワーを充電したいです。
409名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 15:26:38 ID:TxDgBOJ3
うおおお!GJ!!
410名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 15:45:39 ID:rOuwsfeX
保守
411名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 17:25:54 ID:RUMmLojY
あーもーさくや死ねwwwwwwwwwwwwwww
412名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 17:50:29 ID:xbJSfAC3
ジコチューではあるけど、一応筋は通してるジャマイカ
413名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 20:46:49 ID:YKVYEgH0
更新お疲れ様ですw
今回も面白かったです^^
小学校の作文で先生に、才能ないと断言された人間で良いなら書いて良いですか?(`・ω・´)
414名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 21:26:11 ID:vB89s8ba
先生「おk」
415名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 21:37:01 ID:YKVYEgH0
後押ししてくれた方ありです^^
人生で初めての書き物なので稚拙な文になるかもしれませんが、ご容赦下さい(´・ω・`)
416名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 22:47:55 ID:YKVYEgH0
僕、霧沢優人は雨が嫌いだ。
いつから、どういう理由で嫌いなのかは自分でも分からない。
きっと本能的に嫌いなんだと思う。
雨の日は気分が重く憂鬱な気分になり、それは溜め息になる。
「はぁ・・・。」
購買で買ってきたパンをかじりながら思わず溜め息をつく。ふと、窓を見ると外の景色は暗くどんよりとしていて。
窓ガラスを無数の雨が叩いては流れていく。
「さっきの溜め息は美里の知る限り38回目ですねぇ」
無邪気に笑いながら無駄な努力をする、この子の名前は百合川美里ちゃん。
緑色のリボンが1年生だということを示している。
肩まで揃えた髪はうっすらと茶色がかかり、良く動く瞳と相まって辺りを和やかな雰囲気にさせてくれる。
美里ちゃんは1年生でもマスコット的な存在で可愛がられてるらしい。
どうして1年生の女の子がここで食事をしているかというと・・・。
「美里、バカの相手は止めなさい。うつるわよ?」
「うつるはずないだろ・・・」
極めて失礼なこのお方の名前は百合川雪乃。
美里ちゃんとは反対に髪は長く、大きな瞳はつり上がっていて。
その絶対的な美貌は1度見たら2度と忘れる事は出来ないと思う。
どうすれば、姉妹でこんなに性格が異なるのか興味をそそられるが、学校でも有名な仲良し姉妹だというから驚きだ。
417名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 00:24:20 ID:gHQZ84M0
「そうかもしれないわね・・・でも」
そこで、そっと間を置くと瞳を伏せて小さく呟く。
「少なくとも、その溜め息は人に憂鬱な気分をうつすのじゃないかしら・・・」
雪乃が言うことも最もだと思う、だけどこれだけは仕方ない。
気まずい雰囲気を察したのか美里ちゃんが、慌てて口を開く。
「違うんだよ、優人兄さん!お姉ちゃんは溜め息をつく優人兄さんが心配なだけであって!」
ずいっと美里ちゃんが僕に近寄ってくる。
「大丈夫だよ、美里ちゃん。雪乃とは長い付き合いだしね」
未だに心配な顔な美里ちゃんに出来るだけ、優しく微笑むと同時に雪乃の頭を撫でる。
「雪乃、心配してくれてありがとう」
「ん・・・。」
瞳を閉じると気持ち良さそうになすがままになっている。
何度か撫でた後に手を離そうとしたら、強い視線を感じた。その強い視線の先には・・・。
「美里もお願いしますっ!」
結局、昼休みは頭を撫でるのに時間を使うことになってしまったのだった。
418名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 00:54:38 ID:gHQZ84M0
短いですが、投下終了です。
ぶっつけで書いたので構成が・・・。
ヒロイン(?)は妹の予定ですw
419名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 09:03:23 ID:itvFtM5T
ホントに短けーw
短いけど癒された

GJ!
420名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 11:57:25 ID:7IxtQdCN
短すぎてどうレスしたものか悩む。
だが、悪くない。
421名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 13:14:56 ID:gHQZ84M0
続き投下します。
今回は長めにいきますので、お付き合い下さいφ(.. )
422名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 14:13:15 ID:gHQZ84M0
放課後。
昼間はあれ程強かった雨足は弱まりを見せて、今では小雨に変じている。
今日一日の授業を終えた教室では、それぞれの放課後を楽しむ為活気に溢れそれは僕にも例外ではない。
明日の授業で使う勉強道具を机に残し、軽くなったカバンを持って教室を出る準備をしていると近寄ってきた雪乃に声をかけられた。
「優人、梨華ちゃんの具合はどうなの?」
僕には妹が一人いる、僕より歳が1つ下で美里ちゃんと同学年だがクラスは違う。
生まれつき体が弱く、今まで何度も夜中に高熱を出しては僕が面倒を見てきた。
僕の家には母親はいない、父さんの話しによれば僕がまだ幼いときに交通事故で亡くなったらしい。
母さんが亡くなってから父さんは再婚もせずに男手一つで僕らを育ててくれたのだ。
父さんも母さんを失ってつらい筈なのに病弱な梨華と僕を、一つの弱音を吐かずに世話をしてくれた事に感謝している、それは。
子供心に父親に対する尊敬を抱かせるのは充分だったと思う。
僕はまず何が一番父さんの助けになるかを考えた、その結果が梨華の面倒を見ること。
小学生の時は友達と遊びたいのを我慢して梨華の面倒をみてきた。
その成果もあってか梨華は少しずつ体が丈夫になっているのは僕にとっても嬉しい事態だと言えるだろう。
「大丈夫、風邪だし微熱だから明日には学校来れるかな。」
それを聞いて安心したのか雪乃は少しだけ微笑む。
美里ちゃんと違い雪乃には感情の揺れがない。
笑っても本当に付き合いが長い人にしか分からず、多くの人は無愛想だと取るだろう。
雪乃に男の話が出てこないのはそれが一番の要因ではないだろうか?
「美里と一緒にお見舞いに行って良いかしら?」
梨華もきっと寂しいだろうから、雪乃と美里ちゃんに来て貰えたら喜ぶだろう。
「それじゃ、お願いしようかな。夕飯の材料買って帰りたいから5時ぐらいで良い?」
「分かった・・・」
雪乃が小さく頷くのを確認してから。
「それじゃまた後でね」
出口に向かって歩みを開始した。
423名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 14:34:36 ID:tJxXTVKa
書きながらより書き溜めてからのほうが自分にも相手にも楽だよ
424名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 15:03:00 ID:7IxtQdCN
話が一段落するまで書き溜めてからまとめて投下しておくれ。
425名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 15:27:42 ID:tNy1ktF+
面白そうだし、期待しながらコーヒー飲んで待ってる。
がんばれー。
426名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 15:30:58 ID:gHQZ84M0
学校からの帰りに買って来た少量の荷物を持ちながら、ポケットから家の鍵を取り出して鍵穴に差し込み、軽く回すと金属音が鳴り、ロックが外れる。
「ただいま。」
梨華はきっと寝てると思うので起こさないように小さく呟く。
材料を置くために台所に入ると、材料を仕舞い。
コップで水を一杯飲んでから梨華の部屋に向かう。
梨華の部屋は2階の突き当たり、つまりは僕の部屋の隣に位置する。

コンコン
「梨華、起きてる?」
梨華から返事がない場合そのままにしておこうかとしたが、それは杞憂に終わることになった。
「お、お兄ちゃん!?」
どこか少し慌てる声が部屋越しに響く。
「入って良いかな?」
「どうぞ・・・って!あっ!まだ入ったらダメだよ!」
ドアを開けようとした手が梨華の言葉によって停止する。
「お兄ちゃんごめんなさい、少し待ってね」
その言葉と同時に梨華の部屋から慌ただしい音が聞こえてきた。
「ど、どうぞ」
梨華の了承の合図にドアを開け中にはいるとまず目に飛び込んで来るのは人形の大群。
50は超えるであろう人形達は、綺麗に整えられていて。
ここが女の子の部屋であることを再認識させられた。
「あんまり、じっと部屋見られると恥ずかしいよ」
声のした方へ視線を向かせるとピンクの布団を深く被り、僕をじっと見ている妹と目が合う。
髪は黒髪より茶色の方が強く、さらさらとしていて撫で心地が良いのを僕は知っている。
梨華曰わく、僕がいつでも撫でて良いように髪には特に気を使ってるらしい。
布団から覗く肌は白く、儚げな印象を与えてくる。
正直可愛いと思う。
「梨華、気分はどう?」
「大分良くなったよ、この調子なら明日学校に行けるよ。」
花が咲いたように、にっこり笑いながら楽しそうに僕を見る瞳は、嬉しいからなのか上機嫌だ。
「どれ。」
僕は梨華が寝ていた布団に近寄り、優しく梨華の上半身だけ起こすと。
梨華の前髪を左手で上げて、僕の額と額を合わせる。
427名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 15:37:04 ID:7IxtQdCN
だからまとめて投下しろと。
428名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 16:02:05 ID:tNy1ktF+
落ち着いて心を広く気長に待とう。
夜まで待てば終わるだろうから。

まとめての投稿は次回からでもいいじゃないか。
429名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 16:08:48 ID:gHQZ84M0
額と額を合わせたまま頭の中で3秒カウントする。
「うん、少し熱っぽいけど大丈夫かな」
梨華の方を向くと耳まで真っ赤にしながら、口をパクパクしていた。
「梨華どうしたの?」
「へっ、あ・・・えっと」
「ううん、な、なんでもないよ!」
真っ赤な顔をして腕が引きちぎれそうなぐらい、腕を振り回してる姿はどこか微笑ましい。
「お兄ちゃん、いつも心配かけてごめんね・・・」
申し訳なさそうに僕から視線を外し頭を下げてくる。
「梨華はそんな事気にしなくて良いんだよ。そ、れ、よ、りも風邪直さないとね」
言いながら梨華の額をツンと押すと、梨華は僕を見て頷いた。
「そういえば・・・今日、雪乃と美里ちゃんがお見舞いに来てくれるそうだよ。」
「本当に!楽しみだなぁ」
梨華と美里ちゃんは昔から仲が良く、学校でも二人一緒なのを何度も見かけてる。
だからこそお見舞いに来てくれることを、余計に感謝しなくちゃいけないなぁと思っていると家の呼び出しが鳴り響いた。
430名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 16:12:34 ID:gHQZ84M0
たくさんの方に不愉快な思いさせてしまってすいませんorz
以上で今回は終了です;;
次回からは纏めて投下するので、今回だけは御容赦を(ノ_・。)
431名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 16:19:10 ID:7B0cihK3
AAが・・・
432名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 18:42:22 ID:7IxtQdCN
うむ、面白そうなのでがんばってくれ!
433名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/04(月) 21:39:03 ID:tNy1ktF+
>>430
おつかれです。ちょっと癒されました。
頑張ってください。

投下します。長編の長さ自己新。
434狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/04(月) 21:40:35 ID:tNy1ktF+
 ここ数日の間、俺は眠れない夜が続いている。特に今日は極め付けだった。
 柔らかい唇の感触が忘れられない…俺も男だ。性欲がないわけではないから仕方が
ないとはいえ、ここまで動揺するのも情けない。
 そうして眠れずにいた真夜中、携帯の音が静かな部屋に鳴り響いた。着信名は
菖蒲となっていた。

「もしもし、八代。こんな時間にごめんね。」
「菖蒲か。何か用か?」
「………すごいね。八代はいつも通りっぽい。」
「そんなわけないだろ。眠れない。」
「ちょっとは気にしてくれたんだ。」
「当たり前だ。」
「私も………思い出すと眠れなくって。八代の声聞きたくてつい。迷惑だった?」
「別に。俺も起きてたし。」
「ごめんね。じゃ、また明日。おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」
 携帯を切ると少し考え込んだ。菖蒲のことは嫌いではない。だが恋愛感情となると
今まで佐久耶に感じてきたような、心の底から熱くなるような激しい感情は沸いてこない。
彼女は好いてくれているが…お互いが好きではない以上、付き合えば自分たちのように
不幸になるだけだろう…そう結論付け、無理矢理でも寝ることにした。

 翌朝、俺は普段より早起きし、二本ほど早く電車に乗った。菖蒲とも佐久耶とも
できれば今日は顔をあわせたくなかった…が、

「おはよ…八代。今日は早いんだね。」
「おはよう。…お前こそ早いな。」
「なんとなく目が覚めちゃってね。たまにはいいかなって。」
 トレードマークの三つ編みをやめたストレートの長い髪を揺らして、くすくすと
明るい笑みを浮かべながら菖蒲はこちらを向く。

「それじゃ早速学校へいこーっ!!」
「あ、おい!」
 そして、彼女は俺の腕を掴んで学校までの道を歩き出した。何故、朝早く来るのが
わかったのか。それともいつも早めに待っているのか…わからなかった。
435狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/04(月) 21:42:16 ID:tNy1ktF+
「あれー。今日は犬塚君一人なんだね。」
「ああ、佐久耶が休んでるからな。」
 佐久耶は今日、学校を休んでいた。学校へは風邪と連絡を入れていたらしい。
 しかし、昨日のこともある…自分のせいである可能性を思うと胸が痛かった。
 ぼーっとしていた俺にクラスメイトの女子が好奇心に眼を輝かせた目で俺に話しかけてきた。

「そういや、犬塚君聞いた?」
「何を?」
「神城さんが昨日なんか隣のクラスで大暴れしたんだって。」
「……あいつが暴れた?」
 俺は怪訝そうな顔で彼女を見た。暴れる佐久耶をどうしても想像することが
できなかった。怒った姿を昨日は見たが、良くも悪くもマイペース、上品で温和だ。

「ああ、ごめんごめん。言い方がまずかったね。口論したんだって。自分で出向いて。」
「そういや……昼に席をはずしていたな。」
「凄かったらしいよ。いやー犬塚君愛されてるねー。神城さん見直したよ。うん。」
「俺は友達に戻そうと…いったんだが。あんなことがあったし、さすがにな…。」
「ええっ!じゃあどうなってんの?って、犬塚君フリー?私と付き合おうよ。」
「俺は暫く誰とも付き合わない。」
「ちぇー。でもさ、神城さんは許して上げなよ。反省したのか震えながらもべたべた
 しようとしてみたり、別のクラスに怒鳴り込んでみたり…神城さんなりに不器用だけど
 頑張ってるんじゃない?ま…嫌々かもしんないけどさ。」
「あいつは俺が好きなわけじゃないからな。どうしたものか。」
「それでも惚れさせるのが男ってもんでしょ。はいこれ、神城さんの家までの地図。
 私、あの子にはもっと美容とか胸を大きくする方法とか聞きたいんだよね。だから、
 さっさと立ち直らせて。ああ、地図の代金は中間テストの山でいいよ。」
 そういって、彼女は俺に地図を握らせて去っていった。俺は当たり前のことを
失念していた。敵は多いが中立や味方もいるのかもしれない。
 一学期は普通に他の人と話すことも会ったのだから。
436狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/04(月) 21:44:08 ID:tNy1ktF+
 話し終えるのを待っていたのか菖蒲がクラスメイトの去った後に笑顔で弁当を
揺らしながら近づいてきた。

「一人でしょ。一緒に屋上でお昼食べよ?」
「いや、ここで食べる。習慣だからな。」
「えー。いいじゃない。」
「場所が変ると喉を通らないんだ。」
 朝のことを思い出すととても今日は二人でいる気になれない。友達としてしか
見れないのなら思わせぶりな態度は取れない。欺瞞かもしれないが。

「お互いファーストキスの相手同士なんだしさ。」
「なっ!!」
 ざわっと周りが騒がしくなる。地図を渡してくれたクラスメイトも驚きの目で
こちらを向いている。菖蒲は…普段どおりに見えるが雰囲気は別人のように思えた。
活発な明るい感じではなく、どこか艶っぽい印象を受ける。

「菖蒲、お前何を…。」
 周りからの視線が突き刺さる。先日、騒ぎを起こしたばかりだ。菖蒲は騒ぎの
当事者でもあるから覚えてる人がいれば誤解だとわかるだろうが…あのときと
菖蒲の姿は大きく変っている。前の地味な雰囲気はかけらもなく、今の彼女は掛け値なしに美人だ。
このままでは客観的には二股を掛けていたとしかみられないだろう。
菖蒲は髪の毛を少しかきあげて笑顔で俺の前の席に座る。

「嘘は言ってないよね。」
「お互いの合意ではないがな。お陰さまでクラスで孤立しそうだ。」
 俺は頭をかいて苦笑してそう言った。文句の一つでも言いたくはあったが、
佐久耶の立場を考えると悪くはないので自重した。

「そのときは私が助けてあげるから心配しないで。」
「俺は元々一人だ。だから大丈夫だ。」
「ううん。私はずっと八代の味方だから。何があっても。一人になっても。」
 俺は薄ら寒い感じがした。ひょっとしたら人を悪い方向に変える力があるのかもしれない。
佐久耶が変ってしまったように。いや、元々こうだったのかもしれないが…。

「何度も言ってるが…」
「言わないで。私は待つから…好きになってくれるまで。今は一緒にお昼食べてくれれば嬉しいの。」
 彼女は俺に最後まで言わせず、食事を始めた。俺も何も言わず食事を再開したが
ここ数日と同じようにあまり味を感じることはできなかった。
437狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/04(月) 21:48:36 ID:tNy1ktF+
 放課後も昼とあまり変らなかった。菖蒲は教室に来て俺の腕をとり、周りから
二人に冷たい視線を向けられる。俺は彼女が何を考えているのか図りかねていた。

「じゃあ帰りましょうか。八代。」
「俺は寄り道して帰るつもりだ。」
「私も一緒に行くよ。」
「…わかった。まっすぐ帰る。」
 俺は諦めてため息をついて歩き始めた。暫く二人で歩いていると俺の携帯が
鳴った。名前を見ると佐久耶となっていた。俺は取ろうとしたが…

「佐久耶か。」
「だめっ!!」
 菖蒲は俺の携帯を掴むと強引に携帯の電源を切った。

「だめだよ八代…佐久耶にこれ以上関わっちゃ…。私がずっと一緒にいるから…
 いいじゃないもう…。」
「佐久耶は風邪だった。友人なら心配するだろう。」
「だめっ!そんなんじゃ八代は…ずっとあの子から離れられないよ!私でいいじゃない。
 私なら八代を助けてあげられる。八代がしたいことも全部させてあげるから私を選んでよ!」
 彼女は必死な顔で俺を見つめている。周りの通行人も何事があったのかとこちらを
覗いている。少し言葉を捜して俺は菖蒲の肩を軽く叩いていった。

「そういう問題じゃないんだ。俺は友達と決めた奴は裏切らないんだ。一志も、菖蒲も。」
「八代…なんでそこまで…。」
 俺は携帯を取り出し、佐久耶にリダイヤルした。数回コールをした後、繋がる。

「佐久耶か。さっきはすまない。どうした。」
「ごめん……なさい……動けなくて…家族も…今日帰ってこれなくて……。」
「わかった。すぐ行く。待ってろ。」
「え…でも家……」
「今日相沢に教えてもらった。じゃ、また後で。…菖蒲、すまん…用事だ。また明日な。

 電話を切った後、菖蒲を向くと彼女はうつむいていて表情はわからなかった。
一応声をかけて走り出す。

「……ぜ……いに………ない…」
 菖蒲が何かを呟いていたが意識が他に向いていたのと、急いでいたこともあり
よく聞こえなかったので深く気にはしないでいた。
438名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/04(月) 21:51:04 ID:tNy1ktF+
投下終了です。
439名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 21:52:05 ID:8YJ44yS5
張り詰めた空気がGJ。こりゃそのうち死者が出かねないなぁ…
440名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 23:06:33 ID:kOMojAso
>>437
おもしろいから更新楽しみにしてる。
ただ頼むからヤンデレにだけはしないでくれ。切に切に・・・
441名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 09:20:15 ID:omXOKFcF
定義が辛いな、精神を"病む"愛情(デレ)がヤンデレ、
依存する+αなスレ、エロ推奨

荒淫などにふける肉の依存ならともかく
依存なら心は病んでいるからすでに…

440君がなにを言っているのかわからないよ……
442名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 15:30:57 ID:/5bEvwnd
俺ヤンキーがデレデレでヤンデレかと思ってた
443名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 16:38:36 ID:omXOKFcF
ヤンキーはギザギザハートなのでツンツンのツンデレ
444名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 17:12:00 ID:aEElGM+J
ちっちゃな頃から悪ガキで
15でキモウトと呼ばれたよ
445名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/05(火) 17:24:41 ID:ScxitT4q
キモウトスレに帰るのはいつの日か。
なんだか永住しそうな勢いです。

昨日は一気に書き進めていたので誤字を確認しつつ投下。
446狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/05(火) 17:27:30 ID:ScxitT4q
 佐久耶の家は俺の住む場所と高校をはさんで丁度反対の位置に当たる高級住宅街に
あった。山を開いて開発された宅地で、ゆるりとした坂をのぼっていくと、そこに
並んだ大きな家の一軒に神城という名前を見つけた。インターホンを押す。

「すみません…鍵を開けますので入ってきてください…。」
「わかった。」
 中に入ると趣味のよい家の外見に相応しい調度が置かれており、持ち主の趣味の良さが
伺われたが…。違和感を感じて置かれているテーブルなどを指で触ると指に埃がついた。

(生活感が薄い気がするな…。)
「ごめんなさい…。わざわざ来てもらって…」
 後ろから寝巻き姿の佐久耶に声をかけられた。顔色はかなり悪く、風邪を引いて休んだ
というのも嘘ではないようだった。

「困ったときはお互い様だ。友達なら謝るより有難うといって欲しいな。」
「くす…こほっ……ありがとうございます。」
「無理するな…部屋に戻ってろ。台所借りるぞ。」
 俺は料理用に途中で買っておいた食材をキッチンへと運び、おかゆを含めた
軽い料理を作って、佐久耶の部屋へと持っていった。彼女の部屋は他の部屋でも見られる
ような、趣味のいい調度を揃えシックな雰囲気に女の子らしくぬいぐるみや小物で飾っている。
 彼女はそんな部屋のベッドに横たわっていた。

「おまたせ。食べれるか?」
「はい…。」
 俺はスプーンで少しおかゆをすくって彼女の口元へと持っていく。佐久耶は顔を赤くして
首を横に振った。

「あ…え、えっと…その…自分で食べれますから…。」
「ああ、そうか。そうだな。つい癖で。」
「癖…?」
「ああ、一志に妹がいるんだがあいつは妹に料理をまかせっきりでな。親は滅多に
 帰ってこないから妹が風邪を引くと俺が料理を作るわけだ。その妹が俺にそうしろと
 いうもんだから。甘えてたのかもしれないな。」
 うちも一志も境遇は似ている。違うのは妹の有無くらいか…。そう考えてると
佐久耶は首を俯けて少し考えたような仕草をしてから恥ずかしそうにしながらこちらを向いた。
447狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/05(火) 17:29:00 ID:ScxitT4q
「あの…もしよろしければ…お願いしてもよろしいでしょうか…。」
「え?」
「…その…駄目ならいいんですけど…。」
 頷いてそっと口元にスプーンを持っていく。小さな口でゆっくりとそれをくわえる。
二口、三口と食べた後、くすくすと可愛らしく笑った。それは初めて見る類の年相応の
表情に思えた。

「八代君。おいしいです。」
「そうか、よかった。」
「他の人に食べさせていただくだけで、凄く幸せな気分になります。犬飼君の妹さんは
 天才かもしれませんね。」
 その言い様に俺も少し笑った。暫く、食事を楽しむ静かな時間が続いた。
やがてそれも終わろうとした頃…。

「八代君、私は八代君に謝らないと。」
「何かしたか?」
「ごめんなさい。本当は今日は着てくださらないと思っていました。」
 佐久耶は申し訳なさそうに俯いた。

「それは謝ることじゃないだろ。」
「うん…でも少しでも疑っちゃったから…。本当に菖蒲さんのことが好きなのかも
 しれないって…だとしたら来てくれるわけないって…」
 佐久耶はその綺麗な顔に涙を浮かべて俺を見つめている。本当にそこまで一人になるのが
怖いのだろうか…。

「生憎俺は好きな人が振り向いてくれないからと、すぐに乗り換えれるほど器用じゃないからな。」
「うんでも…菖蒲さんはしっかりしてますし、美人だし…それに…それに…」
「駄目なんだ。佐久耶が俺のことを好きになれなかったように、俺も菖蒲を
 恋人としては見れないんだ。だから、前の件のことも佐久耶を責める気はない。
 俺は人のことをいえるような奴じゃないからな。」
 彼女は少し安心したように微笑み、顔を一度俺からそらして呟いた。

「気持ちは変るもの…だそうですよ。」
「そうかもしれん。」
 俺は苦笑した。そして、佐久耶はこちらをもう一度真剣な顔をして振り向いた。
448狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/05(火) 17:30:06 ID:ScxitT4q
「もう一つ謝りたいことがあるんです。実は…今の学校で会う前から八代君のことは
 知っていたんです。」
「え…俺は覚えがないぞ。」
「ふふ…。八代君らしい…。犬飼君と二人で、数人の男に囲まれていた私を助けて
 くれたんですよ。菖蒲さんと同じです。」
「それで一志を…。」
「はい…。犬飼君は喧嘩していても明るくて…私とは正反対で惹かれたんです。
 八代君は…私…怖かったんです。どこがとは言えませんが…。」
 少しずつ思い出してきた。中学時代、一志と組んでよくそういう喧嘩をしていた。
その時助けたうちの一人だったのだろう。俺はその喧嘩の仕方から狂犬と呼ばれていた…。

「わかるな。俺は喧嘩のときに全く加減ができない…殺してしまいそうなくらいに…。」
「でも、友達になってくださって…実際は全然違って…。そんな八代君に酷いことを…。」
「いいんだ。過ぎたことだし。」
「八代君が一度離れて…菖蒲さんが本気になって…私やっとわかったんです…。どれだけ、
 甘えてたか…努力もせずに…それで、いなくなりそうになったら怒って嫉妬して…。」
 俺はその言葉に少し嬉しさを感じた。何も成長していないようでちゃんと成長していた
のかもしれない。本当に少しずつ。

「佐久耶も努力してたさ。だから相沢も心配したんだろ。友達だから…」
「うん…。私にも…友達…できた…っ……んです…っ…ね……」
 嬉し涙を流す彼女の頭を撫でた。綺麗な髪の感触を心地よく感じながら
嬉しそうな彼女の顔を見る。

「そろそろ寝ろ。他にして欲しいことはあるか?」
「頑張ろうって決めてすぐ甘えるみたいだけど……寝るまで手を握ってください…。」
「怖くないのか?」
「少し………でも、それよりもっと安心できますから……。」
 俺は彼女が寝付くまでそのまま手を握り、寝付いたのを確認した後、今日の授業の
ノートのコピーをおき、一番上に何かあったらすぐ連絡するように書置きして食器を洗ってから
家を辞去した。
 気になることはいくつもある。彼女の両親は何をしているのか。使用されている雰囲気のない
家具の数々。生活感のない空間…。だけど、それは追々解決していけばいいと思えた。
 久しぶりに前向きな気分になった佐久耶の家からの帰りの道は夜空は澄み切って、
星が綺麗に瞬いていた。
449狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/05(火) 17:31:44 ID:ScxitT4q
 翌日、今までよく眠れなかった反動か起きたときには一時間目に間に合うか
どうかという時間で、急ぐ努力を放棄した俺はいつも通りゆっくり準備して
学校へと向かった。
 電車が駅に着き、降りるとそこには風邪が治ったのか顔色もよくなった佐久耶が
いた。彼女は俺を見つけると嬉しそうに微笑んだ。

「八代君、一緒に学校に行きましょう。」
「これは…随分待たせたな…。風邪はもういいのか?」
「はい。すっかり治りました。いろいろ有難うございました。」
「礼を言うほどじゃない。普通だ。」
「いえ……本当に助かりましたから…。あ、明日日曜日ですよね。もしお暇でしたら
 お礼がしたいので家に遊びに来ませんか?」
「そこまでして貰うほどでは…」
「じゃあ…お礼じゃなく…八代君は料理がお上手ですから…私の料理の採点をして下さい。
 私も女の子ですから男の人に負けたくないんです。」
 俺は苦笑して頷いた。特に断る理由もないし前向きになってきている佐久耶に水を
さしたくもなかった。彼女は楽しそうに…自然に笑ってこちらを見つめている。

「言うようになったな。わかった。」
「有難うございます。楽しみにしていますね。」
 その後、他に学生のいない通学路を二人で並んで歩いた。無理せず、体を30センチだけ
離して。久しぶりに穏やかな朝を迎えられた気がした。
450名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/05(火) 17:33:00 ID:ScxitT4q
投下終了です。
もう少し続きます。

いつかifでダークな話も書いてみようかとも…
451名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 18:09:46 ID:hHRYltAq
GJ!
ご苦労様です。

二人とも今回は良い感じですが、
果たして菖蒲ちゃんなどはどうなるのか。

キモ姉・キモウトスレでもお待ちしておりますので、
暇なときに覗いてやって下さい。
452名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 20:56:53 ID:ySFxoqz6
GJでした。
佐久耶タンよりも徐々に菖蒲タンが病んできてる…ガクブル

>>442
オマイは俺かw
453名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 21:52:41 ID:miQePfh/
で、一志君の妹の参戦はいつからですか?
454名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 22:43:34 ID:NPSsh0PI
続きにwktk

>>442,453
お前は俺かwww
455名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 01:45:08 ID:kV4MDFSJ
やっとできた・・。
投下します
表現が稚拙なのは見逃して下さいorz

狂犬、毎回楽しみでニヤニヤしなから読んでます^^
456名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 01:46:41 ID:kV4MDFSJ
「それじゃ、二人案内してくるね。」
梨華のベッド付近で座っていた僕は、二人を呼ぶ為に立ち上がろとした。
だけどそれは思わぬ形で中断する事になる。
「梨華・・・?」
ベッドから上半身だけ起こしていた梨華が僕の制服の裾を掴んでいたから。
「お兄ちゃん、早く帰ってきてね。」
「早くって・・・同じ家の中だよ?」
苦笑混じりに梨華を見ると、梨華は今にも泣き出しそうな雰囲気で僕を見ている。
「だって・・・だって!」
それだけ言うと、梨華は嗚咽をあげながら泣き出した。
彼女の瞳から流れ出た、大粒の雫が頬を伝い布団に染みを作っていく。
「何も泣くことなんか・・・」
未だに涙を流している梨華は泣き顔のまま僕を睨んできた。
そして、普段大人しい梨華からは想像も出来ないぐらいの大声で。
「お兄ちゃんは私の事何も分かってない!!」
「私が今日1日お兄ちゃんに会えなくて寂しかったか、どうして分かってくれないの!!!!?」
そうか・・・確かに一人で過ごすのは寂しいのかもしれない。
でも・・・高校生が風邪で1日休んだからと言ってこれほど、取り乱して良いものだろうか?
少し自問自答してみるが、未だ目の前で泣いてる梨華を見たくない。
僕は立ち上がろうとした体を再びおろすと、優しく梨華の頭を撫で始めた。
「すぐ、戻ってくるから少しだけ我慢していてね。」
やっと納得してくれたのか、梨華は僕の服を放してくれた。
静かな部屋に梨華の嗚咽が響いていたが、それは少しずつおさまり。
結局僕は梨華が泣き止むのを確認してから、部屋を後にした。
457名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 01:49:33 ID:kV4MDFSJ
お兄ちゃんが部屋から出ていく。
お兄ちゃんが大きな手で私を撫でてくれると、凄く満たされる気分になるのだ。
私はお兄ちゃんを家族ではなく、一人の男性として愛している。
本来ならば、家族に対して思慕の念を抱く事がどんなに醜い感情なのか私でも知っているが。
私はお兄ちゃんに対する思いを捨てるのはできない。
お兄ちゃんが微笑んでくれると、私の心まで暖かくなり。
お兄ちゃんの事を考えるだけで私の心を暖かい火が優しく灯る。
この感情を愛だと言わずに何と表現すれば良いのだろうか?
私にはお兄ちゃんに関して大切な想い出がある。
もうお兄ちゃんは忘れているかも知れないが、私の中では大切な想い出。


私は幼少の頃から病弱で発作を何度も起こしは、お父さんとお兄ちゃんに迷惑をかけてきました。
発作が起こると大抵は2日か3日でおさまるのだが。
中学校に入って間もない時期に私を大きな発作を引き起こしてしまった。
熱が高く、まともに息さえ出来ず。
失神を起こしては、起きて苦しみまた失神で眠ると言うのが1週間ほど続いたある日。
私が起きて辺りを見るとお兄ちゃんが私の手を握り締めながら、ベッドにもたれ寝ていました。
お兄ちゃんの目は赤く腫れていて、きっと寝ないで看病してくれたのだと思うと罪悪感が私を苛ます。
私が居なければ、お兄ちゃんは自分の為の時間も持てるし。私はこんな苦しい想いしてまで、生きたくない。
それならば私がするべき選択はただ一つ。
458名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 01:52:08 ID:kV4MDFSJ
私が起きたのが分かったのか、お兄ちゃんもすぐに目を覚まして目をこすりながら私を見る。
「梨華起きたのか?具合はどう?」
きっとまだ眠たいのだろう、優しい笑みを浮かべながら尋ねるお兄ちゃんの声は欠伸混じりだ。
「大分良くなったよ、ありがとうお兄ちゃん。」
それを聞いて安心したのか、お兄ちゃんの表情が緩む。
「良かった、今すぐお粥もってくるな。」
そう言いつつ、立ち上がろうとするお兄ちゃんを私は引き止めた。
私が決意したことを言うために・・・。
「お兄ちゃん、お願いがあるの・・・」
私をお兄ちゃんの目をはっきり見ながら話す。
「うん?」
「・・・私を殺して下さい。」
その瞬間お兄ちゃんの目が大きく開かれ、部屋に大きな音が鳴り響いく。
頬が灼けるように熱くて、私がお兄ちゃんに叩かれたのだと理解するのに数秒かかった。
昔から私がどんなにイタズラしても、私に決して手を上げる事なく困った顔しながら許してくれたお兄ちゃんにまさか叩かれるとは思わなかった。
叩かれた頬を左手で抑えながら、お兄ちゃんを見ると。
お兄ちゃんは無言で私を見ていた。
「だって、私が居るから!!お父さんもお兄ちゃんも迷惑してるじゃないの!!!」
一度溢れ出した感情は止まる事を知らず、激流のように流れていく。
「それならば、私なんか居ない方が楽じゃない!!」
きっと私は凄い顔で泣いているのだと思う。
それでも涙を止める事は出来なかった。不意にお日様の匂いと暖かい何かが私を包み込む。
それはお兄ちゃんだった。
お兄ちゃんは私を強く、強く抱きしめると。
「梨華を叩いたりしてごめん・・・でもあの言葉だけは許せなかった・・・」
お兄ちゃんの声が震えている・・・。
いつも、笑顔を絶やす事なく優しかったお兄ちゃん。
そんな人が私の為を思い、悲しみの涙を流してくれている?
「父さんも僕も梨華を邪魔だとか、そう思った事なんか一度もないよ・・」
私の肩が湿って、やがて濡れていく。
ああ、これはこの人の優しさなのだろう。
「僕の気持ちが分かった上でまだ、死にたいと言うのなら」
お兄ちゃんはそこで一度止めると、鼻を啜り続ける。
「僕が梨華を殺して、僕も後を追うよ。梨華が居ない日常なんて考えられないから・・・」
459名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 01:53:14 ID:kV4MDFSJ
私はどんなに愚かな人間なのだろう・・・。
こんなに私の事を大切にしてくれる人達を裏切るような事言うなんて・・・。
「お兄ちゃん、ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい」
私はただ謝る事しか出来なくて、お兄ちゃんに抱きしめられたままずっと泣き続けていた。
460名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 01:56:40 ID:kV4MDFSJ
以上で今回の分は終了です
お付き合いくださりありがとうございます。
続きは明日のこの時間ぐらいに投下します。
461名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 07:54:15 ID:50spjacb
ああ、「ヒロインは妹」ってこっちの妹のことか。
こういう王道なのもいいな
462名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 12:18:31 ID:98nwJ4zS
GJ!!
確かに王道、だけどそれがまたよし。
463名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 18:59:41 ID:1P40Bg4z
皆様に質問。
このスレ的には、

親が借金作って逃げたおかげで借金のカタに堅気じゃない人に掴まり、
あんなことやこんなことをされそうになった少女がお金持ちの子供に助けられ、
肩代わりしてもらった借金の分を働いて返すためメイドをしている、
というのはおkでしょうか?

メイドをやめたりすれば返しきってない借金の残額分をヤの字が取り立てに来るので、
借金肩代わりしてる坊ちゃんなくしては生きられないと、
ある意味経済的には依存しているのですが。
464名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 19:34:30 ID:YHkhHKjJ
>>463
それなんてハヤテ?
465名無しさん@ピンキー:2007/06/06(水) 19:50:59 ID:1P40Bg4z
言われて気付きましたよw
アレって、男女逆なら見事にここ向きの作品ですね。
中の人ネタはやりすぎですが。

さて。
難産かつ自信のないモノを、
それでも投下するのを人は勇気と言うのか。
466変名おじさん ◆lnx8.6adM2 :2007/06/06(水) 21:43:31 ID:1P40Bg4z
取り敢えず投下しておきますね。

依存モノと言い切れるかは微妙。
467(少年+大金)×(少女+借金)=?の式:2007/06/06(水) 21:45:20 ID:1P40Bg4z

朝。
日に照らされるお屋敷の廊下を歩き、
立ち並ぶ扉の中でも一際大きな物の前で立ち止まる。
ノックを2回。

「ご主人様、ご主人様」

数秒待ち、同じ事を同じ間隔で繰り返す。
返事はない。
着替えの最中や、今のノックで起きたばかりという事は無さそうだ。
仕方がない。

「ご主人様、失礼します」

呼吸を一つ。
私、雨水 流(うすい ながれ)は扉を開け放った。

「・・・・・・」

駐車場にでも出来そうな広さの室内をぐるりと見渡し、
部屋の一角に鎮座する天蓋付きの豪奢なベッドで視線を固定する。
不必要に大きな足音を立てないようにつかつかと歩み寄り、上質そうなヴェールを開く。
純白のシーツに覆われる見るからに柔らかそうなベッドには、
静かに寝息を立てる一人の少年が身を沈めていた。

「ご主人様、もう朝ですよ。
 起床されるお時間です。起きて下さい」

声をかけ、苦痛にならぬ程度に両肩を掴んで身を揺さぶる。
十秒程も続けると緩やかにご主人様の瞼が上がり、ぼうとした瞳が私を捉えた。

「ん・・・流か。もう朝・・・?」

「はい。早く起きて頂かねば通学に支障が出ます。
 御樫山(おかしやま)さんが朝食をご用意していますのでお早く────って」

折角起こした上半身をぼすんと倒すご主人様。

「ご主人様っ!」

「ふぅ・・・あと、五分・・・」

「あと五分、じゃありませんよっ!
 唯でさえ毎朝それほど時間に余裕が在る訳ではありませんのに、二度寝の習慣をつけないで下さい!」

何とか起こそうと試みるも、
立場上は執拗にベットに潜り込むご主人様に対して暴力的というか強く出れないので難航する。
シーツの引っ張り合いが続くこと数十秒。何とか年上の貫禄で私に軍配が上がった。
枕から何から、ご主人様のしがみ付く物を取り払うことに成功する。

「もうっ。
 遅刻してお困りになるのはご主人様なんですからね?」

「うぅ・・・眠い」

私の背後には放り出された枕やらが重なっている。
この部屋の片付けも私の職務だというのに、全くご主人様ときたら。
468(少年+大金)×(少女+借金)=?の式:2007/06/06(水) 21:46:49 ID:1P40Bg4z
「寝坊も、余り度が過ぎると奥様にお叱りを受けますよ?
 旦那様はもうお出かけになられましたから、庇ってくださる方もいないんですからね?」

私の言葉に、まだ抵抗の意思を見せるご主人様の背がぶるりと震えた。
ご主人様の母親は、厳しくはないが子供を甘やかしたりもしない。
最近は遅刻ギリギリの多いご主人様なので、そろそろ雷の落ちる可能性がある。
上流の人間である奥様に、丁寧な言葉遣いと裏腹にねちねちと小言を言われるのは堪えるのだ。
これで、ご主人様もいい加減に起きるだろう。

「・・・・・・じゃあ目の覚める起こし方をしてよ、流」

「え────────きゃっ!?」

そう思ったのが甘かった。
油断した私に対して、
さっきとは打って変わった俊敏さで身を起こしたご主人様が私の腕を掴んでベッドに引き倒す。
ぼすん、と。
二人分の体重を受け止めたベッドは、それでも品質に見合った柔らかな音しか立てなかった。
目の前。ベッドに横になって僅かに沈み込んだ視界の中、直ぐそこにご主人様の顔がある。

「ご、ごごごごごご主人様っ!?」

「なあに? 流」

反射的に離れようとして、ぎゅっと抱き締められる。
腰に腕が回され、引き寄せられた胸にご主人様が顔を埋めた。

「なな、ななななななななっっ!?!」

「流。まだ寝起きで少し頭が重たいんだから静かにしてよ」

「いいいから手を放して下さいっ!」

「流の胸は気持ちいいなあ」

ご主人様が、私の胸に埋めた頭をぐりぐりと押し付けてくる。
ただ思い切り押し付けるのではなく、力の加減を変えたり、胸の先端を擦るようにしたり。
思わず全力で突き飛ばしてしまいそうになるが。

「流────────僕に逆らうの?」

「うっ」

ご主人様の一声で動きを止められてしまう。
何処か強制力を秘めた響きが私の体を打ち、縛り付けた。
ぴたっと動きを止めた私を見るご主人様は気を良くしたように薄く笑い、
折れそうなほど線の細い体を捩ると、服装次第では性別さえ偽れそうな綺麗な顔を私の胸に乗せる。

「さ、流。目の覚める起こし方をしてくれないかな?」

「うぅっ!」
469(少年+大金)×(少女+借金)=?の式:2007/06/06(水) 21:48:00 ID:1P40Bg4z
ご主人様は目を閉じ、私に向けて唇を突き出した。
何の体勢なのか、何を求めているのかは言うまでもない。
おはようのキス。
目覚めの口付け。
それを、求められている。朝から破廉恥なこと極まりない。
一体どこかで教育を間違えたのかと、私は涙を流す思いだった。
そんなことをすれば、ご主人様はそのしょっぱい雫を嬉々として舐め取るだろうけど。

「どうしたの流? もしかして、流は主人である僕の言うことが聞けないのかな?」

「ううぅっ!!」

抵抗は出来ない。してはいけない。
それは、もしかしたら許されるかもしれないけど、私自身の意志で許してはいけないことだ。
ああもう恥かしい。顔が火を噴きそうだ。
今は目を閉じてるご主人様も、内心では私が赤面するのを想像して楽しんでいるに違いない。
本当、どこで教育を間違えたのか。
出会ったばかりの頃は、少なくともこうではなかったはずなのに。


私こと雨水 流の人生は、客観的視点からはお世辞にも幸福とは言えないだろう。
父は借金を作って逃げた。
母も借金を作って逃げた。
私は親の借金で掴まった。
借金だけ残して私を捨てた両親に対し、
親子の中が悪くなかったのはそこそこ気を遣っていたからではなく、
無関心さによるものだという事実に気付いたのはその時。
ある日、唐突に姿を消した両親は私を借金のカタとして残し、
事態を把握できていない私の下には直ぐに堅気じゃない人間が来た。
あわや身売りか臓器摘出かとなった時、私を助けてくれたのがご主人様である。

その場に現れたご主人様は私の、正確には両親の作った私達一家の借金を全て肩代わりした。
私も流石に白馬の王子様をいつまでも夢見るほどの馬鹿じゃない。
何のために、どんな目的があってそんなことをしたのかと聞いた。
帰って来た答えは簡潔に一言。
メイドが欲しい、と。

ご主人様はその線の細さからも分かる通り、余り体が丈夫ではない。
実際、仕え始めたばかりの頃は少し体調を崩す程度なら日常茶飯事だった。
そんなご主人様ではあるが人一倍負けず嫌いな一面もあり、
病弱な体を押して普通の中学校への入学を希望、
それを心配した旦那様達が常に直ぐ傍でお世話出来るような人物、
即ち公私に渡るメイドを用意しようとしたのは自然の流れなのだろう。
しかしここで誤算が一つ。
ご主人様は自分だけに仕える直属のメイドならば自分で探して雇い入れると主張したのである。
そのための資金は長年使わずに貯めてきた小遣いと、それを元手に人を使って増やさせたお金。
額が幾らだったのかは知らないが、私を雇うために結構使ってしまったのだとか。
当時小学生の人間の小遣いで命を救われたと言うのは、正直言って私の人生の黒歴史である。

さて。兎に角、私はそんな経緯を経てご主人様のメイドとなった。
借金を肩代わりして私を助ける条件は、ご主人様の肩代わりした借金分稼ぐまで仕えること。
その間利子などが付くわけでもなく、
しかも公私に渡るメイドということで私は24時間常に労働扱い、
書類上の建前はともかく実際には普通の三倍くらいの給料を貰っている。
加えて、家賃や食費、光熱費その他諸々は屋敷に居ればタダ。
正直、普通に働いて稼ぎ出せる可処分所得と比べれば十倍かそれ以上。
ご主人様が私を雇わなければ借金の利子を返すだけで一生を終えていたかもしれない。
だからまあ、私はご主人様には大恩がある訳で。

ご主人様の命令に逆らうことは、如何せん出来ないのだ。
470(少年+大金)×(少女+借金)=?の式:2007/06/06(水) 21:49:04 ID:1P40Bg4z

「あうぅ」

困った。非常に困った。
このご主人様は、何故にいつもいつもこんな要求ばかりをしてくるのだろうか。
朝からおはようのキスだなんて、目覚めの口付けだなんて、男女でちゅーだなんて。
破廉恥だ。実に破廉恥だ。
仮にも年上の女性として、エッチなのはいけないと思う。
なのに。

「・・・・・・」

私はご主人様には逆らえない。逆らってはいけない。
この仕事を、ご主人様に仕えるメイドを首になったら大変なのだ。
借金を作ったのは親だから娘は巻き込まないなどど甘い考えを持つ程、
ヤクザも世の中も甘くはない。
両親の作った借金はご主人様が肩代わりしているだけで無くなった訳ではなく、
借金分働いて返すという契約を私が破れば残りの額の分をヤの字の人が取り立てに来る。
取立て先は、行方の知れない両親ではなく当然ながら私となるだろう。
そうなれば今度こそ身の破滅である。
売春の斡旋か内蔵を取られるか裏ビデオにでも出演させられるか。
碌な生き方、死に方は出来ないに違いない。

だから、私はこの瞬間にもご主人様によって生かされている。

もともと、ご主人様には私の借金を肩代わりする義理も義務もない。
メイドが私でなければならない理由もない。
だから。だから。

私はただ、ご主人様の好意によって生きていられる。

そもそも、ご主人様はよく分からない人だ。
こうやって私をからかったりエッチな要求をする癖に、ひどく優しい一面もある。
私がご主人様に仕えるようになって二年。失敗の数なんて数え切れない程だ。
私が最初からメイドの訓練を受けていた訳でもなし。
皿は落とす配膳で零す窓ガラスは割る家具は壊す、屋敷を汚すこと数限りない。
その癖に貰っている給料は普通の三倍。
なのに、ご主人様は私を責めない。
しょうがないなあと言いたげな瞳で見詰めながらからかうだけだ。

一度など、
私の最大の職務たる病弱なご主人様の学校での世話に失敗したのを庇ってくれたこともある。
少し目を離した隙にご主人様が友人と遊びに学校を出て、その先で倒れたのだ。
あの時のことは、おそらく生涯忘れないだろう。
怒気の熱さを通り越して殺気の冷たさで私を見据える旦那様達。
そして、愚かな失敗を許されない無能を晒してただガタガタと震える私を背に、
倒れてから目覚めたばかりのふらふらな体で私を庇って旦那様達を説得するご主人様。
私が見たご主人様の背中は私には余りにも有り難くて申し訳なくて、
同時に男性らしさのようなとても強い力を感じたのを憶えている。

それに、ご主人様は私の不利益になることもしない。
肩代わりした借金に利子をつけないのもそうだし、
私が壊したり汚したりして弁償しなければならない品々の値段を追加しないのもそうだ。
思い返せば思い返すほど、ご主人様は呆れるほど優しい。
『僕に逆らうの?』何て言いながら、
最初はつい反射的に突き飛ばしたり悲鳴を上げたりした私を一度も咎めてないのもそうである。
借金を盾に脅迫めいた命令をしたことなど、一度だってない。
ああ。
やはり、私はご主人様は優しい人だ。
471(少年+大金)×(少女+借金)=?の式:2007/06/06(水) 21:51:10 ID:1P40Bg4z
「うーっ」

「ほらほら。流、早く」

それでも朝からご主人様とキ、キスだなんて恥しいことこの上ないけど。
我慢するしか、ないかなぁ。
いい加減焦れたのか、目は瞑ったままでご主人様が催促しているし。

「・・・分かり、ました」

「あはっ」

声を上擦らせて、それでも渋々という様子を取り繕う私に、ご主人様は本当に綺麗な笑顔を向ける。
目を瞑ったままだけど、いやだからこそ本当に美しい。
少しずつ、私とご主人様の距離が近付く。

「────────ちゅっ」

唇が合わされた。
触れるだけ。一瞬だけ。
ご主人様の唇の感触を感じた瞬間に、かっと全身が熱くなって何もかも吹き飛んでしまう。
初めてじゃ、ないのに。これだけは慣れない。

「・・・むぅ」

だと言うのに、目を開いたご主人様は不満そうに唸っていた。
私が、何か粗相をしてしまったのだろうか。
だとしたら。

「あの、ご主人様・・・?」

「流ってさ。キスの時、いつもちょっと触れて終わりだよね」

心配は杞憂だったようだ。

「ねえ流、もう一回キスしてよ。
 今度はちゃんと長くね」

「ええっ!?」

が、代わりに無茶苦茶な要求が返ってきた。

「む、むむむ無理ですよご主人様っ!
 私、今だって恥かしいのに・・・・・・そんなの恥かし過ぎます」

「ダメだよ、流。そんなの許さない。
 触れるだけのキスなんて、もう我慢できない。
 だからちゃんとすること」

「う、ですが────」

そんなの無理に決まっているのに。

「これは『命令』だから」

ご主人様の言葉が、私の体を震わせた。

「あ」
472(少年+大金)×(少女+借金)=?の式:2007/06/06(水) 21:52:39 ID:1P40Bg4z
恐怖ではない。
もっと別の、ご主人様の言葉から感じた何かが私の体を走り抜けて行く。
『命令』。ご主人様がそう口にする時、決まっていることが二つある。
それが、ご主人様に取って拒否を許さない物であること。
それが、ご主人様にとって切実な物であること。

正確には、拒否は出来るけど。
そうした時、ご主人様はひどく悲しそうな顔をするのだ。

「はい・・・」

だから、逆らえない。
私には逆らえないし、逆らってはいけない。
私はメイドで、ご主人様から頂く好意と報酬のおかげで生きていられて。
そんな分際で逆らうなんて不義理なことは自分で許せなくて。

何より、ご主人様の『命令』に逆らうつもりにはなれない。ただ。

「ねえ、ご主人様」

「何だい、流」

これだけは言っておきたい。

「私・・・恥かしいんですからね? こういうことは、本当に。
 キ、キキキスだけでも恥かしいのに、それをもっと長くだなんて」

「うん」

自分よりも低い位置にあるご主人様の顔を見詰める。余計に頬が熱くなった。

「だけど・・・ご主人様は私の借金を肩代わりして、
 それも利子もつけずに私に高いお給金を払って返させて下さって、
 しかも私がお仕事を失敗しても弁償もさせずに許して頂いて、
 ましてや一度なんて旦那様達から庇ってまで・・・」

「うん。そんなこともあったよね」

ああ。
やっぱり、ご主人様も憶えていたんだ。

「だから私、
 ご主人様に逆らえませんし逆らっちゃいけませんし・・・・・・逆らうつもりもないのに、
 ご主人様が『命令』とまで仰るから、だからするんですからね!
 ・・・・・・はしたない女だと思わないで下さい」

「うん。いいよ」

あっさり頷かれる。
こっちは一世一代の告白をしているつもりなのに。でも、いいか。

「じゃ、じゃあ・・・いきます」

一世一代の告白。
内心の呟きの意味を、私は自覚しているのだから。
再び目を閉じられたご主人様の顔へと、私の唇が近付く。
彼我の距離が縮まるにつれて、私は心臓の鼓動が高まるのを感じた。
それは恥かしいからだけではないはずだ。
胸の高鳴りは、きっとご主人様を前にしているからなのだろう。
だから、私は唇が触れ合う前に囁いた。
473(少年+大金)×(少女+借金)=?の式:2007/06/06(水) 21:54:20 ID:1P40Bg4z

「ご主人様。私、一生懸命お仕えしますからね。
 少しでもご恩を返せるように。
 ですから────────どうか、末永く仕えさせて下さいね」


私はご主人様がいないと借金を返すまで生きられませんし。
私はご主人様なしでは借金を返しても生きて行けないみたいですから。
474変名おじさん ◆lnx8.6adM2 :2007/06/06(水) 21:58:05 ID:1P40Bg4z
投下終了。
深夜帯に書いて今日推敲するも、
どうしても後半が上手く纏められずにそのまま投下。

スレチやお気に召さないと思われた場合は、
ハヤテと言われて最初に月光 ハヤテを思い浮かべたダメな私を罵って下さい。
475名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 01:56:46 ID:ytAbr69e
変名さん、面白かったです(^-^)
メイドは良いものですw

投下します、題名は思い浮かばないのですいません。。

妹の依存が強くなるのは次回からなので、お楽しみに^^
476名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 01:58:40 ID:ytAbr69e
玄関を開けた僕を待っていたのは、少し頬を膨らました美里ちゃんといつも通りの無表情な雪乃。
「優人お兄さん遅いですよ!!もう少しで帰るとこだったんですからねっ!」
腰に両手をあてて、今私は怒ってるんですよのポーズ。
「ごめん、取り込んでたから・・・」
「むーー」
美里ちゃんの扱いに困り。
雪乃に助けを求めようとしたら、僕と視線があった瞬間に顔を背けられた。
ちくしょう・・・。
「なんちゃって、冗談ですよ優人お兄さん」
と言い少しだけ、舌を出して笑いだした。
そんな美里ちゃんに僕は乾いた笑いを浮かべるしかなかった。
「えっと、とりあえずどうぞ。」
「お邪魔しまーす。」
「お邪魔します。」
家に上がった美里ちゃんは乱雑に靴を脱ぐと、スタコラ中へ入って行くのに対し。
雪乃は、軽く溜め息をつくと美里ちゃんの靴と自分の靴を綺麗に並べていた。
「私が靴並べるのがそんに珍しい?」
「いや、雪乃もちゃんとお姉さんさんやってるんだなぁ・・と」
「もう慣れてきたし、反対にあの子が綺麗に靴並べたら少し寂しくなるかも知れない。」
「そっか・・。」
きっと雪乃も妹が可愛くて仕方ないのだろう。
だからこそ、美里ちゃんがしっかりするようになると少し物足らなくなるのではないだろうか?
まるで、母親みたいだなと僕は思う。
「お姉ちゃん、優人お兄さん何してるの?早くいこーよ。」
階段へと続く壁から頭だけ出した美里ちゃんが、僕らに呼びかける。
僕らは美里ちゃんに追い付くと、3人揃って梨華の部屋に向かって歩きだした。
477名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 02:01:01 ID:ytAbr69e
可愛いらしいネームプレートの掛かった梨華の部屋の前で歩みを止めると、3回ノックしてから声をかける。
「梨華、入っていいかな?」
「どうぞ」
梨華の声は、先程泣いてたのが嘘みたいにしっかりしていたので、僕は少し安心した。
梨華の部屋にはまず美里ちゃんが入り。
雪乃、最後に僕という形になる。
「梨華ちゃん、やっほー」
「こんばんは、美里ちゃん」
元気が溢れそうな満面の笑みに対して、梨華は少し困り顔。
「こんばんは、梨華ちゃん具合はどう?」「お見舞い来て下さってありがとうございます、雪乃先輩。大分良くなりました」
ベッド上からぺこりとお辞儀。
「あれ、美里ちゃん目真っ赤だよ?」
その一言で心臓の鼓動が少し早まる。
「成る程、美里分かっちゃいました!!」
「な、何が?」
声が裏返りそうになるのを、出来るだけ冷静に問いかける。
「つまり!!優人先輩が関係していますね!?」
「う・・・。」
美里ちゃんは梨華の前だけでは先輩とつける。
以前その事について聞いたら、乙女心がどうとか・・・という返事が返ってきた。
全く持って理解できないが、そういうものなのかと妙に納得したのもまた事実。
「その真っ赤になる梨華ちゃんの反応は・・、間違いない!!」「学校から帰ってきた、優人先輩が。いきなり梨華ちゃんの部屋に入ってきて。」
「梨華ちゃんの可愛さに我慢できなくなり、泣き叫ぶ梨華ちゃんを無理や・・」
「・・・えい。」
マシンガントークをはじめた、美里ちゃんの額に雪乃の手刀がはいる。
「痛いよ、お姉ちゃん!」
「優人はそんな人じゃないわ、少し変態なだけよ」
「フォローになってないよ!!!」
僕らの会話を聞いていた梨華が目を細めて、本当に楽しそうに笑う。
結局僕らは7時までこうして、会話に華を咲かせていた。
478名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 02:03:04 ID:ytAbr69e
美里ちゃんと雪乃を隣の家まで送った後に、僕は台所で卵粥を作っている。
今日振り返るのは、梨華のあの過剰ともいえる反応。
何が梨華をあれ程駆り立てるのだろうか?
そう考えていると、かなりの時間が立っていたらしくお粥は食べごろになっていた。
レンゲとお水を添えて梨華の部屋へと運ぶ。
「梨華、お粥できたから入るね。」
「うん」
片手でドアを開けて中に入ると梨華は漫画を読んでいたらしく、漫画を枕元に置いた。
「お粥作ったけど食べれる?」
「うん、お腹すいちゃったから。」
「それじゃ、ここに置いていくからちゃんと食べるんだよ?」
立ち上がろうとした僕の裾をまたしても握られる。
「・・・お兄ちゃん。」
梨華の瞳がお粥と僕を交互に行き交う。
それだけで梨華が何を望んでいるのかが分かってしまう。
「・・・分かった、食べさせて上げるよ・」
「うんっ!」
ぱぁと極上の笑みがこぼれる。
その元気があれば絶対一人で食べれるだろと思ったのは少し内緒。
終始幸せなそうな梨華にお粥を食べさせてから、僕が夕食を取ったのはかなり遅い時間になってしまっていた。
479名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 02:05:37 ID:ytAbr69e
以上です、短くてすいません。。
続きはまた近いうちに、今度は多目で投下します
では、失礼します
480名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 04:55:11 ID:VGHt2l7B
マシンガントーク+手刀でみずいろを思い出した
それとGJ!!
481名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 12:37:48 ID:mAPzhB5W
次回の投下量に期待しつつGJ!

しかし、病弱少女でりか(漢字違いましたか)と言うと某ラノベのヒロインが思い浮かぶ私。
儚くて脆い命でそれでも懸命に兄を愛する妹、非常に萌えです。
482名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 17:53:06 ID:ytAbr69e
自分の中では完全オリジナルのつもりでしたが、色々被るとこあったのですねorz
何かパクりみたいな形になってますね。。
色々すいません(;_;)
483名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 19:09:28 ID:mAPzhB5W
つSSではよくあること
484名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 21:22:07 ID:ytAbr69e
ナ、ナンダッテー!!
しかし続けて良いのかなぁ。。
485名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 21:39:06 ID:kBNPBGgx
未完で放置してあるSSを見ると悲しくなる。

何が言いたいかというと
「焦らしちゃらめえええええ」
ということだ。
486名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 21:44:12 ID:mAPzhB5W
まあ、そうならないためにももっとGJが必要かと。

それとも、此処はそんなに住人が少ないんでしょうか・・・。
487名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 22:08:19 ID:ytAbr69e
一人でも楽しみにしてくれている方が居ましたら、絶対完結させます(σ・∀・)σ

人は居るけど、どういった内容を議論すれば良いのか迷っているのじゃ・・・
488名無しさん@ピンキー:2007/06/07(木) 23:52:53 ID:mAPzhB5W
かもしれませんね。
スレは住人数で比べるものでもありませんし。すいませんでした。

依存の議論はもっとしてもいいと思うのですが・・・。
私的には、やはり精神的依存が一番くるんですけど。
そんな訳で、今病弱、と言いますか病室妹もの執筆中。
もしかしたらキモウトスレ行きかも知れませんが。
というか同じ作品でもスレチでなければ複数スレに投下してもおkなのか・・・。

あ、ちなみに氏の作品は楽しみにさせて頂いております。
でも、こういうのは馴れ合いと言って叩かれるんですかね?

次回の投下もお待ちしております。
489名無しさん@ピンキー:2007/06/08(金) 00:20:07 ID:2eXC0j7E
叩かれないと思いますよ^^
面白い作品があって、それを楽しんでくれる人が少しでも居るなら素敵な事かと(=^▽^=)

作品を楽しみって言われると、励みになります(*^-^)b
490名無しさん@ピンキー ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/08(金) 23:48:42 ID:Ev6bfvOu
一度書いて気に入らずに書き直ししてました。
狂犬続き投下します。
491狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/08(金) 23:50:01 ID:Ev6bfvOu
 土曜日の放課後…土曜日は昼前には授業が終わるため、クラス中で楽しそうな声が
響いている。携帯を見るとメールで一志が今日は遊びに行こうと入っていた。

「佐久耶、すまない。今日は一志と出かけてくる。最近あいつとも中々会ってなかった
 からな…。今日はあまり無理せず休めよ。」
「はい。八代君、楽しんできてくださいね。」
 挨拶をして、遠くに離れると昨日俺に地図をくれた相沢が佐久耶と話していた。俺の
噂話をしているらしいが…声が大きすぎるせいで俺にまで聞こえてくる。

「神城さん、風邪治ったんだ。」
「はい…八代君が看病してくださいましたから…」
「そっかー。それで今日は幸せそうなんだ。幸せオーラが見えるよ。なんか楽しそう。」
「昨日は有難うございました。」
「いやいやーいいよいいよ。でも気をつけなよ。昨日すっごい美人が犬塚君に会いに来てたしさ。」
「はい…その人のことはよく知ってますから…。でも、彼女には負けません。」
「よくいったー!私は恋する乙女の味方だよ。お代はその綺麗な髪を維持する方法だ!」
 相沢は佐久耶の肩をぽんぽん叩いていた。佐久耶も楽しそうにしている。そこに
他にも数人の女子が集まって楽しそうに話していた。明るく笑う彼女は掛け値なしに美しく
一際目だって見える。教室を出るとき佐久耶は笑顔で小さく手を振ってくれた。

「今日は二人仲良く重役出勤だったそうだな。ハチ。」
「誰から聞いたんだ。」
「噂だ。お前らは目立つからな。学年主席と学年一の美人!…だもんな。」
 一志はおどけて言った。なるほど…と思う。

「ま、深い意味はない。たまたま一緒に遅刻しただけだ。」
「今日は妙にハチは元気そうだったからな。何かあったんだろ。」
「まあ少しな。で、今日はどこ行く?」
「ああ、街に遊びに行こう。久々に。」
「わかった。喧嘩は無しだぞ。」
 俺たちは肩を並べて歩き出した。久々に一志と二人で…と、思ったが駅で菖蒲に会い
結局三人で街へと向かうことになった。昨日、変な別れ方をしたから少し不安だったが
菖蒲は普段どおりに明るくて安心した。
492狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/08(金) 23:50:58 ID:Ev6bfvOu
 暫く後、俺は菖蒲と二人で街を歩いていた。途中で一志が前に付き合っていて
急に訳も言わずに別れた女に遭遇したからだ。菖蒲はあっさりとその女に一志を
売り渡し、二人になることを選んでしまった。

「一志君大丈夫かな。」
「…死にはしないだろ。さて、何をするか。」
 正直に俺は困っていた。女と二人で出歩くということが今まで殆どなかったため、
何をすればいいのかもわからない。俺が困っていると…

「おなか空いたね。まずはお昼食べよっか。美味しい店調べてあるんだ。」
 菖蒲は見透かしたように俺を見て笑うと俺の手を取った。暫く歩くと本通りから
一本はずれた脇道にある洒落たパスタの店があり、そこで足を止める。

「ここ!クラスで評判になってるんだよ。本格的なパスタで美味しいんだって。」
「そうか。外食はあまりしないから…たまにはいいか。」
「作るにも美味しいもの知っていたほうが作りやすいでしょう。」
 少し暗めの店内は木材を中心とした椅子やテーブルが置かれており、各テーブルに
ランプを置いて手元を照らしている。少し待ち、頼んだパスタが運ばれてくる。
 菖蒲はくるっとフォークにパスタを巻きつけながら、少しまじめな顔で聞いてきた。

「八代、昨日はどうだったの?」
「風邪だったな。おかゆや味噌汁、軽く食べれるものを作っただけだ。」
「ほんとに?」
「ああ。」
「その割には八代はすっきりしてたし、佐久耶も妙に明るかったけど…。」
「たまにはそういうこともある。」
 菖蒲はまだ何か言い足りなそうだったが、追求をやめて自分のパスタを食べ始めた。
俺は食事を続けながら暫く考え、

「一つ言えるとすれば…あいつも成長してるってことだな。」
と、それだけ言った。
493狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/08(金) 23:53:41 ID:Ev6bfvOu
 食事を終え、店を出たがまだ夕方ともいえない時間だった。次に何するか考えてると
ハンカチを菖蒲が取り出し、俺の口元を拭いた。

「口元汚れてたよ。気をつけないとね。」
「すまない。」
「さっきからずっとしかめっ面だよね。ひょっとして私と二人じゃ楽しくない?」
 そう聞いてきた菖蒲の顔は泣きそうな…昔の佐久耶を思わせる不安そうな顔で
怯えたように俺を見つめている。

「そんなことはないんだが……。何をしたものかと思ってな。」
「ふーん。じゃあさ。今日一日だけ私を彼女と思って八代が楽しいと思うとこつれてってよ。
 文句は言わないからさ。」
「それじゃ菖蒲が楽しくないんじゃないか?」
「私は八代と一緒ならいいんだよ。」
「わかった。」
 俺は頷くと一志と遊んでいるときを思い出し、それに近い感じで遊ぶことにして連れまわし
はじめた。ビリヤード、ボーリングなど一通り遊んだ後、ゲームセンターに入る。

「あ、あの熊もどき可愛い!とってとって!!」
「ちょっと待ってろ。」
「もうちょいもうちょい……凄い!取れた!!」
 熊もどきのぬいぐるみを菖蒲に渡し、ゲームセンターから出ると太陽が西に沈みかける
時間になっていた。菖蒲が近くの公園に移動することを提案したのでそれに従う。
 そこの自販機でコーヒーを二本買い、一本を菖蒲に向かって投げた。

「今日は遊んだな。そろそろ帰るか。」
「楽しかったよ。今日は…でも、今日はまだ終わってないよね。」
「何かあるのか?」
 夕日の陰になって菖蒲の表情は見えない。コーヒーを持ちながら手を後ろで組んで
こちらを見つめている。なんとなく、その姿は俺に屋上や先日の放課後を思い出させていた。
494狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/08(金) 23:54:35 ID:Ev6bfvOu
「何かあったのは八代の方じゃない?」
「俺は何も変ってないと思うが…。」
「佐久耶…今までにないくらい今日は楽しそうだった。」
「あれは、俺以外に友人ができたからだ。」
「今日二人で遅れてきてたよね。」
「俺が寝過ごしてあいつが待ってただけだ。」
 菖蒲の真意が掴めず、俺は自分がそう思っている事実だけを話す。

「そんなわけないでしょ!少し前の佐久耶ならそんなこと…するわけなかった。昨日までの
 八代なら佐久耶を相手にせず、そのまま学校に行った…。」
「人は変わるもんだ。俺は変らないがあいつが変ったんだ。いい方向に。」
「あの子は…佐久耶はずるいね。」
 菖蒲は……泣いていた。辺りは日が完全に落ちて、公園を暗く染めている。

「ずるいよ…。好きじゃないならなんで、離れないの…甘えるの…少し変っただけで
 八代を幸せな顔をして……ずっと八代に想われて…。」
「菖蒲…。」
「私なんて…頑張っても頑張っても…初めのそっけない態度のままなのに…。手詰まりで
 卑怯な手であの子を離そうとしても…あの子は空気読めないから全然気にしてくれない…。」
「そうか…すまないな。」
「八代は私と同じ…こんな辛いこと、何故耐えれるの?平然として佐久耶と付き合えるの?
 私は自分も辛いし、八代も同じ気持ちを味わってると思うと…。」
 菖蒲はコーヒーを落とし、俺の胸倉を両手で掴んで何かに耐えるように泣き続けている。
 だけど、それをいうならもう一つ俺と菖蒲に共通してることがあるのだ…

「俺は不器用だからな…菖蒲と同じで…。」
 その言葉に菖蒲は驚いたように顔を上げ、静かに呟いた。

「ねえ…今日はまだ終わってないから彼女扱いってことで…一つお願いしていいかな。」
「願い事による。」
「うん…今から八代の家に一緒に行っていい?」
 俺は言葉の意味を正確に理解した。そしてその答えも決まっている。

「駄目だ。」
「だよね…っ…ごめん、今日は帰るね!」
 菖蒲は後ろを向いて走ろうとして驚いていた。俺も影から出てきた人物に驚く。
そこに立っていたのは美しい長い黒髪の繊細な容貌の女性…。

「佐久耶…。」
495名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/08(金) 23:55:53 ID:Ev6bfvOu
今日はここまでです。
496名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 00:00:28 ID:+0rQ1WTJ
GJ……なんつう張り詰めた綱渡り感。死者が出ないことを祈る。
497名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 01:45:09 ID:dOV+h2Se
是非ともハッピーエンドになってほしい。
あやめたん萌え。
498名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 08:57:58 ID:ss+yYOGi
相変わらずいい作品を書くなぁ…今回もGJです。
毎度これを読むのを楽しみにしてる俺ガイル。
でも、バッドエンドだけは読みたくないねぇ…(´・ω・)
499名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 13:59:34 ID:7yE6sQBU
ヤンデレとは愛故に生まれ、そして愛を目指すものだ
500名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 14:00:54 ID:7yE6sQBU
失礼。誤爆した。

正直、八代が幸せになってくれればそれが一番良い。
501名無しさん@ピンキー ◆kraAt17jLU :2007/06/09(土) 23:41:20 ID:rBnMk2L3
投下します。今日は短め。
502狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/09(土) 23:42:13 ID:rBnMk2L3
 彼女は夜の街灯の弱い光を受けてこちらを見つめている。影になっているために
表情はわからない。満月の下に立つ彼女はまるで人以外の何かのように不思議な
雰囲気を漂わせている。
先に沈黙を破ったのは菖蒲だった。

「佐久耶…あんたなんでここに…。」
 だが、佐久耶は菖蒲を無視して俺に頭を下げた。

「ごめんなさい。少し心配になって後をつけさせていただきました。」
「佐久耶…俺は…」
「大丈夫です。全部聞いていたのですから。」
 彼女はくすくすと笑っている。自然に、綺麗に、まるで童女のように。

「菖蒲さん、私が後をつけたのは…犬飼君と二人で遊びに行くと聞いていたのに
 偶然駅で三人が一緒にいるところを見てしまったからですよ。」
「私は一志とも友達なの。何もおかしいところなんてないでしょ。」
「はい。偶然八代君たちと会って、偶然犬飼君が昔の彼女の方と出会って、偶然
 二人で遊ぶことになったんですよね。」
「……何が言いたいの?」
「菖蒲さんが一番良くわかっているのではないですか?」
 静かに笑う佐久耶とは対照的に菖蒲は憎憎しげに佐久耶を睨んでいる。

「あんたおかしいわよ。ストーカーじゃない…。」
「おかしいのは菖蒲さんではないですか?」
「どういうことよ。」
「人の恋人を寝取ろうとして…これのどこがおかしくないと?」
 俺は二人のやり取りを止める事も出来ずに見つめている。街灯と月がまるで二人を
スポットライトで照らすかのように浮かび上がらせる。

「佐久耶はもう恋人じゃないでしょ。関係ないじゃない。」
「ふふ…」
 佐久耶は薄く笑って月を一度見上げてから菖蒲に向き直った。

「両思いですから…何の問題もないではありませんか。」
「え……」
 俺と菖蒲は驚いて佐久耶の方を見る。両思い…?俺だけの片思いのはずじゃ…。
503狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/09(土) 23:43:38 ID:rBnMk2L3
「私は先日犬飼君に交際を申し込まれました。でも、迷いなくお断りすることができました。
 仕方ないですよね。今、私は八代君が好きなんですから。」
「う、嘘よ!あんたが八代を好きなわけが!」
「私が誰を好きかなんてわかるのは私だけじゃないですか?」
 そういうと、一志に交際を申し込まれたという新しい事実に驚く俺の手を
佐久耶は両手で掴んだ。そこで、ようやく佐久耶が菖蒲に対して虚勢を張っている
ことがわかった。日中なら恐らく顔にも出ていて見抜かれていただろうと思う。
 虚勢とわかった理由……彼女の両手は震えていた。

「菖蒲さん…私は臆病です。それに男性恐怖症…なんです。初めは八代君の怒ったときの
目が、やっと死んでくれたお父さんみたいな理性のない目で怖かった。だけど、八代君は
そうじゃないってわかったから…。頼ってるっていわれても、寄生してるっていわれても
負担掛けてるっていわれても…暖かい彼を絶対に他の誰にも渡さない!!!」
そこまで一気に言い終えた佐久耶は俺の首に恐怖症で震える手を回し、勢いよく
顔を近づけた。慣れも何もないそのキスは歯が当たって正直痛かった。だが、気持ちと覚悟は
それ以上に強く伝わってきた。唇が離れた後、腰が抜けたように崩れ落ちた。

「ふふ…八代君。私、ちゃんとファーストキスできましたよ。怖いけど嬉しくて…
 不思議な感じですね。……ごめんなさい、また八代君に甘えちゃいました。」
「佐久耶は…しっかりしてそうな美人なのに甘えたがりだな。」
 俺は苦笑して佐久耶の頭を撫でた。そして、菖蒲に向き直りはっきりと言った。

「見てのとおりだ。どうしようもないやつだが俺は佐久耶が好きだ。こいつは俺たち並に
 不器用で、人に迷惑をかけまくるだろうが…それでも俺は佐久耶を守る。
 苦労もするだろうが俺が幸せかどうかは俺が決める。」
「八代………。」
 呆れただろうか…。当然だと思う。ましになったとはいえ佐久耶がかなりの重荷に
なるのは間違いがない。その苦労を軽減させてくれた恩人をはっきりと振ったのだ。
 菖蒲はこちらを無表情で見つめていた。

「もう帰ろう…。二人とも駅までは送る。」
「八代君……ごめんね。それから…有難う。私も大好きだよ。」
 力が抜けたまま立てない佐久耶を背中に背負い、菖蒲を伴って駅へと歩き始めた。
俺たちは三人で無言で駅に向かって歩いている。駅の前には国道も走っており、
今のような夜遅くでもそこそこの交通量がある。その信号の前で俺たちは立ち止まった。
504狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/09(土) 23:45:10 ID:rBnMk2L3
 何も考えたくなかった。でも思考だけはぐるぐると回る。
 初めて助けられたときに好意を持った。
 佐久耶のために努力する姿を見て本気で好きになった。
 

────────────初恋は叶わないもの────────────


 私はそんなもの信じてなかった。
 佐久耶は八代ではなく一志のことが好きだったから積極的に応援した。
 八代は告白して失敗し、佐久耶から離れた。

 八代のいいところを知っているのは私だけ。
 私も告白して振られたけどいつかはお互い理解しあえると確信した。
 
 だけど、佐久耶はずるかった。
 八代を好きでもないのに拘束し、依存し、頼りきって疲れさせ、しかも八代の好意を
逆手にとって好きでもないのに恋人関係になった。

 何故…八代は私を見てくれないのか。
 何故…佐久耶は好きでもない人を本気で好きで幸せにしたい私に譲ってくれないのか。
何故…八代は全て理解しながら受けたのか。
何故…私は友達以上になれないのか。

 何故……私は努力しても報われず、八代は両思いになって私の目の前で本気で愛しあっているのか。

「明日…私の家でってことでしたけど…八代君の家にお邪魔してもいいですよね。」
 私は見てしまった。八代におぶられて…だけど怯えず幸せそうにしている佐久耶の顔を。
 そして………私に見せたことのない優しい、労わるような笑顔で頷く八代の顔を。

 私は────佐久耶も八代も─────────ユルセナイ!!

 そして……私は……
背中を押した。
505名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/09(土) 23:47:09 ID:rBnMk2L3
段落が;
投下終了です。
506名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 00:27:41 ID:cWndqnvs
GJ一番槍!
八代!佐久耶!逃げて!逃げて−!
507名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 02:59:15 ID:CWX2COe2
GJ!!
まさかのヒールターンktkrww
508名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 06:28:12 ID:MCkNhXqO
まさかみたいな予感はあったが、菖蒲……

静かに正座して待ってます。
509名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/10(日) 19:19:46 ID:GYNN4UqB
文字ずれした前回のラストから。
投稿行きます。
510狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/10(日) 19:20:36 ID:GYNN4UqB
 何も考えたくなかった。でも思考だけはぐるぐると回る。
 初めて助けられたときに好意を持った。
 佐久耶のために努力する姿を見て本気で好きになった。
 

────────────初恋は叶わないもの────────────


 私はそんなもの信じてなかった。
 佐久耶は八代ではなく一志のことが好きだったから積極的に応援した。
 八代は告白して失敗し、佐久耶から離れた。

 八代のいいところを知っているのは私だけ。
 私も告白して振られたけどいつかはお互い理解しあえると確信した。
 
 だけど、佐久耶はずるかった。
 八代を好きでもないのに拘束し、依存し、頼りきって疲れさせ、しかも八代の好意を
逆手にとって好きでもないのに恋人関係になった。

 何故…八代は私を見てくれないのか。
 何故…佐久耶は好きでもない人を本気で好きで幸せにしたい私に譲ってくれないのか
 何故…八代は全て理解しながら受けたのか。
 何故…私は友達以上になれないのか。

 何故……私は努力しても報われず、八代は両思いになって私の目の前で本気で愛しあっているのか。

「明日…私の家でってことでしたけど…八代君の家にお邪魔してもいいですよね。」
 私は見てしまった。八代におぶられて…だけど怯えず幸せそうにしている佐久耶の顔を。
 そして………私に見せたことのない優しい、労わるような笑顔で頷く八代の顔を。

 私は────佐久耶も八代も─────────ユルセナイ!!

 そして……私は……
 背中を押した。
511狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/10(日) 19:23:14 ID:GYNN4UqB

 俺は生まれて初めて浮かれていた。
 周りが見えていなかった。これから幸せになれると単純に喜んでいた。

「明日…私の家でってことでしたけど…八代君の家にお邪魔してもいいですよね。」
 佐久耶はうちには来たことがないし、一度案内してもいいだろう。料理は自分が
すればいい。俺は頷いた。

 そして…後ろから押される感触がした。

 キィィイイイイイイイイイイイイイィ!!

 世界がゆっくりと動く。時間がコマ送りのようでありながら体は思うように動かない。
 乗用車が自分に向かって…。

 かわせない!

 半瞬で判断した俺は背中の佐久耶を後ろ向きのまま突き飛ばし…そして…覚悟を決めた。

 どん!

 自分の体が跳ね飛ばされる音がまるで他人事のように聞こえる。浮遊感を感じ、続いて
叩きつけられるような衝撃を受けた。意識を刈り取られそうになる痛みを感じながら
おもちゃのように地面を転がり続け、暫くしてようやく止まる。

「八代君!!!!!!!」
 佐久耶が泣きながらアスファルトに寝転がる俺に寄ってくる。菖蒲は…魂が抜けたように
立っているだけだ。気を失いそうな激痛に耐えて意識を繋ぎとめながら、

「……これくらい…で…死んで…たまるか…。」
「救急車!救急車がすぐに来るから!!」
「佐久耶…これは事件じゃなく…事故だ…いいな…?」
 そこまで言い終えた俺は耐える努力を放棄して、意識を失った。
512狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/10(日) 19:25:19 ID:GYNN4UqB
 目を覚ますと白い天井がまず視界に入った。痛む頭からゆっくりと記憶を引き出していく。
 確か、菖蒲に押されて佐久耶を後ろに投げて…そう、車に撥ねられた。ということは、
ここは病院か。生きてるとは俺も悪運は強いらしい。ふと横を見ると長い黒髪がベッドの
上に流れていた。

「寝てるのを起こすこともないか。」
 不思議と体は痛くない。あまりよく動かないが…。部屋にたまに響く鳥の鳴き声を聞きながら
音のない病室で静かに時を過ごす。

「ん……っ…」
 長い黒髪の持ち主が目覚めたらしい。

「おはよう。菖蒲。」
「え…!八代!…嘘…起きたの…!」
 慌ててナースコールを押す菖蒲。よくみると、昨日と比べてかなりやつれているような…。
 暫くすると看護士の女性が俺を確認し慌てて医者を呼びに走っていき、そして、
ぽっちゃりした男の医者がゆっくりと歩いてきた。

「あー。君、自分の名前はわかるかい?」
「犬塚八代です。」
「今日は何年何月何日かわかるかい?」
 質問の意図がわからず、少し困惑したが俺は答えた。

「200×年9月27日くらいだと思うんですが…。」
 その俺の言葉に、医者や菖蒲の顔が苦々しくなるのがわかった。だが、医者は何も答えず
後で検査をするからと部屋を出て行った。
 菖蒲と二人きりの時間に戻る。

「そういや菖蒲…お前私服だけど今何時だ?」
「十二時。」
「学校は?」
「…やめちゃった。」
「そうか…。すまんな俺のせいで。」
 自業自得だよ…と苦笑いしながら呟き、ただ静かに座っている。菖蒲は活力に満ちた
明るいそんな女だったのに、今は見る影もなく燃え尽きた灰のような乾いた印象を俺は受けていた。
513狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/10(日) 19:26:25 ID:GYNN4UqB
「八代は怒らないんだね。事故にしろって聞いて驚いたよ。」
「生きてるからな。友達でも喧嘩くらいはするさ。」
「馬鹿だね。」
「殺そうとした俺の看病してる菖蒲ほどじゃない。」
「責めてくれると思ったのに……。」
 菖蒲は俺の寝てる枕元に頭を押し付けて泣き出した。何もできなくてもせめて慰めたいと
思った俺はなんとか手を動かし彼女の頭を撫でた。そして、気づいた。
自分の手を見て俺は震えた。

「菖蒲…悪いが鏡を貰ってきてくれないか。」
 諦めたように菖蒲はため息をつき、鏡を持ってきてくれた。その鏡に映った自分の姿
は…まるで見たことのない男のようだった。髪は伸び、痩せ細った男…。

「どういうことだ…これは!」
「八代はずっと寝てたの。今は10月25日。一年後の。右手、両足骨折、肋骨も
 何本か折ったみたいだけどそれは完治したよ。本当に酷かった…。」
 否定して怒鳴り返そうとしたが、自分の体から事実だと信じざるを得なかった。
 気持ちを落ち着けるために一度大きく深呼吸して口を開く。息をするだけの行為に
疲労を覚えた。どれ程弱っているのだろうか。とにかく五分ほど気持ちを落ち着けた。
 考えると頭も痛むが我慢する。

「……そうか。」
「責めないの?……八代は私のせいで一年何もできなかったのに。大怪我させたのに。」
「あれは事故だからな。それに……苦しんだろ。俺が起きなかったせいで。」
「……でも。」
「いいんだ。菖蒲への借りを全部まとめて返したと思っておくさ。」
 俺は菖蒲に笑いかけて頭を撫でた。自然に笑えたと思う。

「一志や佐久耶はどうしている?」
「佐久耶は……元気にやってるみたい。学校には私が行ってないから情報があまり
 入ってないんだけど…」
「元気か…。良かった。」
「負けずに頑張って明るくなって友達もたくさんできて……好きな人もいるんだって。」
「そうか…一年だからな…実感は全くないんだが…。」
 胸を痛めたが、時の止まっていた自分には何もいえないだろう。例え自分の感覚では
お互いの気持ちを確かめたのが昨日のことであっても。佐久耶の時間は流れていたのだから。

「八代は……泣かないんだね。なんでそんなに達観してるの?」
「涙は…二年前…いやもう三年か。尊敬した親父が死んだときに一緒に墓に埋めた。
 そして、強く生きるって。細かいことは一志の親父に頼りっぱなしだが…」
「辛くないの?……私を恨まないの?」
「何があっても俺は友達は許すって決めたんだ。」
 菖蒲は、ごめんすぐに戻るからといって走って去っていった。そして一時間が過ぎた。
514狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/10(日) 19:27:31 ID:GYNN4UqB
 彼女が戻ってきたとき、後ろに制服姿の客を二人連れてきていた。一志は明るく笑い、
佐久耶は一年経ち、以前より明るい雰囲気を感じさせる表情に涙を浮かべていた。

「一志……佐久耶……。」
「よう、ハチ。よく寝てたな。」
「三年分は寝たぜ。」
「……八代君!!!」
 暫く一志と冗談を言い合っていたが、そんな俺に我慢できないといったように
佐久耶が俺の頭を抱きしめて泣き出した。む、胸が…。

「待て待て、お前他に好きな奴ができたんじゃ…」
「何いうんですか!私そんな軽い女じゃありませんっ!今も…ちゃんと好きなんですから!
 私は八代君がいないと駄目なんだから…。」
「そ、そうか…」
「八代君が帰ってくるまで頑張ろうって決めて生活してたんですから。暫く甘えさせてくださいね。」
 俺は佐久耶に抱きつかれながら菖蒲に非難の視線だけなんとか向けた。菖蒲はあさっての
方向を向いて口笛を吹く真似をして楽しそうに笑っている。

「嘘はついてないよー。焦った?ねえ焦った?」
「菖蒲…」
「初めて八代を焦らせた気がするね。ふふ…。仕返しはしたし、八代。私はもう
 大丈夫だよ…心配しないで。しっかりしないと一志もうるさいしね。」
 菖蒲は一年前のように元気な口調で話していた。いじわるな顔でにこやかにしている。
一志がばつの悪い表情でこちらを向いている。

「お前ら…まさか…。」
「ハチ…すまん。俺も自分の方を全く向かない難儀な女に惚れちまった。」
「八代君。今度は私が犬飼君の相談に乗っていたんですよ。」
 佐久耶が少し体を離して涙目ながらも上品に微笑む。
515狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/10(日) 19:28:33 ID:GYNN4UqB
「まだ、付き合っちゃいない。半年以上掛けて条件付で納得させるまでは頑張ったんだが…。」
「条件?」
「ハチが目覚めてから、それまで誰とも付き合わず、ハチが自分を許してくれたら考えるってさ。」
 肩をすくめて力なく話す一志に俺は同情の視線を向けた。この女嫌いに一年の間
何があったんだろうか…後で佐久耶にじっくり聞こう。

「佐久耶は菖蒲を許せたか?」
「初めは…やっぱり酷いことも言っちゃいました。だけど、八代君が恨んでないって
 わかってましたし…その………菖蒲さんも友達ですから。仲直りまで時間かかりましたけど…」
「そうか…なら問題ないよな。一志浮気するなよ…死にたくなければ。」
「ハチ…お前それ洒落になってねえよ。」
 俺は一志に向かって頷いた。一志は余り人に見せない本気で嬉しそうな表情でガッツポーズを
決めていた。病院じゃなければ飛び跳ねまくって喜んでいたかもしれない。
 それに対して菖蒲は…。

「考える…とはいったけど、付き合うとはいってないわよ。」
と、はしゃぐ一志に釘を刺していた。
 俺は佐久耶に向き直り、

「佐久耶…待っててくれて有難う。これからもよろしく頼む。」
「はい…。こちらこそ。」
 泣きながら本当に嬉しそうな明るい笑顔をする佐久耶見て、俺も笑った。
 視界がぼやけていた気もするがきっと気のせいだろう。
516名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/10(日) 19:32:24 ID:GYNN4UqB
空白期間は…

とりあえず、投稿終了。
517名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 20:13:40 ID:8zogyiWa
GJだが、全て丸く収まりそうで物足りないのは俺だけだろうな・・
518名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 20:33:40 ID:MCkNhXqO
俺も無理矢理的な大団円っぽい流れや、1年の空白に対して八代があっさり認めちゃうあたりの下りが、少し物足りなく感じた。
だがそれが逆に、また一波乱起きる前の静けさにも思えるぜ…

まあ何が言いたいかと言うと、佐久耶かわいいよ佐久耶wwwwww
519名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 21:37:23 ID:f3z1RvGW
うぅむ……なんとなく物足りなく思ってしまうのは
贅沢というものだろうか……。
520名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/10(日) 22:31:24 ID:GYNN4UqB
二種類書き上げて悩んで悩んで書き手の精神的事情によりこちらを投下しました。
もう一種類は事故後を分岐に先に話が終わってから投下しようと思ってます。

こちらが一応「表」です。
個人的にはこの手のものにルートを作るのは駄目と思うんですが、ご勘弁ください。
理由は投下したときわかっていただけると思います;
521名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 23:29:50 ID:HABz1oX5
時の流れがすべてを解決しましたとさ
522名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 13:07:01 ID:8nOY01hY
GJ! GJ! GJ!

全員がそれなりに幸せならそれが一番。
523名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 14:23:22 ID:X/vehP+S
俺はこの終わり方で文句ないけどね。
むしろ、ドロドロにしてほしくない。
読むのが怖くなるから…ガクブル
何はともあれGJでした。
524名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 17:43:32 ID:HYaDw64k
少し時間かかりましたが、投下します。いつもより少しだけ長めです。
525雨の記憶と妹:2007/06/11(月) 17:47:14 ID:HYaDw64k
夕食と風呂をこなしてから、居間のソファーに座ってテレビを見ていると梨華が入ってきた。
先程まで着ていたパジャマではなく、赤色のパジャマ。
「お兄ちゃん、少し話あるんだけど良いかな?」
僕は何も言わずにテレビを消すと、梨華は僕の隣に座ってくる。
梨華の髪から仄かにシャンプーの薫りが漂ってきた。
「梨華、風呂入って大丈夫?」
「うん、熱もなかったし。明日学校行きたいから・・。」
「そっか。」
一度会話が止まり、時計の針の音だけがその存在を強調するかのように規則正しく響く。
「お兄ちゃん今日はごめんなさい。」
「梨華が謝る事じゃないよ、それに気持ち汲んであげれなかった。僕こそごめんね。」
「ううん、お兄ちゃんは全然悪くないよ。」
出来るだけ優しく笑いかけると、梨華の頭に手をのばして撫でる。
今日、撫でるの何回目だろう?
そんなどうでも良い事考えてると、梨華の頭が不規則に揺れ出す。
「すー、すー。」
「梨華?」
きっと泣いたのが原因で疲れたのだろう。
すっかり熟睡しているみたいで。
軽く体を揺すっても起きる気配がない。
「まいったなぁ・・・」
ここに放置でもしたら、またぶりかえさないとも限らない。
僕は梨華を背中に抱えると、梨華の部屋へと運んだ。
「お休み、梨華。」
526雨の記憶と妹:2007/06/11(月) 17:54:32 ID:HYaDw64k
窓から差し込む陽の眩しさで目をさます。
まだ鳴っていない目覚まし時計を確認すると時刻は7時12分、ついでに解除もしておくことも忘れない。
まだ眠たい目をこすりながら、洗面所に向かおうとしたら誰かが台所から出てくる。
「お兄ちゃんおはようございます」
長くて綺麗な髪を一つに纏めて、後ろに流した梨華がそこに居た。
「おはよう、その調子だと元気みたいだね。」
「うん、色々ご迷惑かけました。」
ペコリとお辞儀。
「家族だから礼はいらいよ。」
少し苦笑してから梨華を見る。
「学校行く準備してくるね」
僕は梨華にそう言うと洗面所へと足を向けた。


「おおお・・・。」
制服を着替えて朝食を食べようとしたら、その光景に思考が一瞬停止。
何も考えないまま梨華を見ると、目があった瞬間微笑まれた。
「さぁ、召し上がれっ。」
テーブルの上には朝食とは思えない豪華なおかずが、所狭しと並べられている。
「梨華・・・いや、梨華さんこれは一体・・・?」
「昨日、お兄ちゃんの夕食準備できなかったから・・・」
「いや、でもこれは。」
特別な状況をのぞいて、家事は梨華が握っている。
僕も家事は一応出来るのだが、手伝おうとしたら。
「「お兄ちゃんは今まで私の為に時間割いてくれたんだから、これからは自分の為に使ってね」」
と言い、手伝うことを許してくれない。
机を挟んで目の前にいる梨華は既に涙目で口をぎゅっと引き締めている。
「梨華、胃薬の用意を・・・。」
梨華が作ってくれた物を残す訳にはいかない。
ぼくは意を決すると箸を手に取った。


朝の通学路。
昨日の雨が嘘みたいに晴れ上がっていて、空気も澄んでいる。
アスファルトに点在している、昨日の名残が青空を映し出し普段とは違う模様をみせていた。
「うっ・・・。」
もし、この嘔吐感さえなければ気分爽快で歩いていただろう。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
心配そうに、様子をうかがってくる梨華に出来るだけ微笑む。
「大丈夫だよ、心配してくれてありがとう。」
学校まではまだ道のりがあるのでそれまでには回復してるはず。
「ねぇ、お兄ちゃん。」
「うん?」
「放課後何か用事あるかな?」
顔を赤らませて胸の前で指を組んだり放したりするのは、梨華のお願いのポーズ。
普段は内気な梨華は滅多にする事はなく、凄く珍しいと思う。
「少し付き合って欲しい所あるのだけど・・・。」
527雨の記憶と妹:2007/06/11(月) 17:56:45 ID:HYaDw64k
「分かった、放課後校門でね。」
「うん!!」
凄く嬉しそうに笑っている梨華が強く印象に残っていた。



校門でお兄ちゃんと別れた私は1年生用の靴箱の前に立っていた。
今日の放課後の事を考えると、顔が自然とにやけてきて自分では抑制することが出来ない。
普段の私なら靴箱に入っている手紙を見ると気分を害すのだが。
そんな物はどうだって良いぐらいに幸せ。
私は靴を履き替えると、靴箱に入っていた手紙を一番近いゴミ箱に無造作に投げ込んだ。

「おっはよー梨華ちゃん」
教室に入った私に声を掛けてくれたのは、仲が良い友達の美奈子ちゃん。
「おはようございます、美奈子ちゃん。」
「あれ、梨華ちゃん何か良い事あったの?」
「分かりますか?」
「そりゃねぇ、そんなに笑顔だったらすぐに分かるよ。」
「実はですね・・・」


教室に入った僕を待っていたのは、友人の柊 桃太。
本当はとうたと呼ぶらしいが、皆からはももと呼ばれている。
性格はムードメイカー的存在で、義理も厚くクラスの人気者。
「優人、待っていたぜ!!我が友よ!!」
そう、言うなり僕に抱きついてくる。
その瞬間クラスから主に女子から歓声があがる。
神に誓っても良いが僕はノーマルだ。
「俺を昼食、一緒させてくれ!!」
梨華が学校に来てる時は絶対ココで昼食を食べるので、それに同伴したいのだろう。
「と、いうより離れて欲しい・・・」
「いやだ!許可がおりるまで離さない!!頼むお兄さま!!!!」
いい加減、気持ち悪いので力込めようとしたら、不意にももが投げられた。
「邪魔、それに優人が迷惑してる。」
稟とした澄んだ声に無表情な顔。
「ありがとな、雪乃。」
「別にいい。」
それと同時に雪乃が僕の胸に飛び込んできた。
背中に手を回して、ぎゅっと抱き締めてくる雪乃から柑橘系の甘い香りと柔らかな感触が僕を支配する。
男からの視線が痛い。
「雪乃、何してるの?」
依然僕を抱き締めている雪乃は顔だけ上げて一言。
「洗浄。」
「俺はばい菌かよ・・・」
情けないももの声にクラス中に笑いが起きた。
528雨の記憶と妹:2007/06/11(月) 17:58:48 ID:HYaDw64k
「やっと昼食だ・・・」
「さぁ、優人一緒に食べ・・・」
物凄い笑顔で僕に寄って来ようとしたももは、クラスの男子に両腕を掴まれて強制退場。
廊下からももの悲痛な叫びが聞こえて来たが、完全無視。
彼らを買収したのは僕で、報酬は缶ジュース一本。
さらば、240円の男よ・・・。

そんな事を考えていると美里ちゃんと、梨華が教室に入ってきた。
「お兄ちゃん、昼食一緒して良いかな?」
「良いよ。」
一個前のイスを借りると僕がそれに座り。
梨華には僕のイスを使って貰う事にする。
「ありがとう、お兄ちゃん」
「優人先輩、私達も御一緒していいですかー?」
「んじゃ、みんなで食べようか」
その日の昼食は楽しく会話が弾んだ。


空が茜色に染まり、それぞれが帰る時間。
僕はカバンを持つと急いで教室を後にした。
僕が校門についた時には、胸にカバンを抱いた女生徒が校門に居る。
「梨華、ごめん待った?」
「ううん、大丈夫。」
「それじゃ、行こうか」
529名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 18:05:08 ID:HYaDw64k
本当は依存を書く予定でしたが、延期してしまいましたorz
稚拙な文章ですが、楽しんで貰えたら幸いです^^

狂犬の作者様、今回も面白かったです。みんな幸せでよかった(*^-^)b

最近、萌が分からなくなってきた・・・。
530名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 18:22:15 ID:R0UTiiDq
んー・・・佐久耶はいつ八代を好きになったのかがはっきりとはわからなかったなあ
無理やり付き合って三ヶ月した後に「どうしても男性として好きになれない」とまで言ったのに・・
531名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/11(月) 23:28:52 ID:hfi06cx7
>529
おつです。かわいい妹で留まるのかそれとも…どきどきです。


作品について、正直かなり迷いました。
書き手としての未熟さも反省しています。指摘については自身感じており、
好意的、否定的な意見どちらも喜んで参考にさせていただきます。

元々のプロットでもある「裏」を軸に「表」も再構成することも
考えましたが、「表」は明るいままでいいと判断しました。
そして、明後日から投下する事故後から始まる「裏」が終わったとき、「表」はこれで
良かったのかもしれないと思っていただければ幸いです。

言い訳はこれくらいで「表」の最終回投下します。
「裏」の第一回はしっかり見直し、いいものに仕上がるよう頑張ります。
532狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/11(月) 23:30:48 ID:hfi06cx7

 結局、三週間ほどリハビリを行って俺は退院した。この間、三人は毎日のように
顔をだし、幾度となく病院で騒ぐなと怒られていた。日常が戻ってきた…が、
やはり一年という時間は長く、爪あとを残すこととなった。

 俺は学校を退学した。悠長に高校生活をすると一志や佐久耶に二年の遅れを
取ることになるからだ。結局、菖蒲と一緒に大検を受けることを選択する事になった。
 以前のクラスメイトたちには迷惑や心配を掛けたことを詫びた。彼らは俺が完治した事を
喜んでくれ、お祝いと称してパーティを開いてくれた。
「佐久耶の顔が幸せそうすぎて殺意を覚える。」
とか、恋のライバルに負け続けているらしい相沢辺りはぼやいてはいたが。

 そして、時は過ぎクリスマスイブ…。
 今年のクリスマスイブは我が家でいつもの三人に佐久耶と一志の妹の志乃をくわえた五人で
祝っていた。

「こういうのやってみたかったんです。」
 という佐久耶の意見により、今年は念入りにクリスマスっぽく自宅は飾り付けられた。
 後で掃除するのが大変そうだ…。

「ハチ。食いもんは食いもん!」
「おまえが運べ。作るのは俺と佐久耶と志乃で全部やったんだから。」
 三人、それぞれの家のキッチンで料理を作って持ち寄っている。俺はスープ系担当で
色々作って置いている。他の二人は運びやすい料理を作ってもらった。

「八代おにいちゃん、料理の腕落ちてないねー。むしろ上がった?」
「愛しのおにいちゃんは恋人に食べさせるために腕を上げてるんだ。彼氏のいないお前じゃおいつかん。」
「うっさいだまれ一志!」
「何で八代はおにいちゃんで俺は呼び捨てなんだ…。」
 久々に会った志乃も元気だ。料理を全て運び終えて全員に酒を配る。

「ずっと心配掛けてすまなかった。今年はみんなで祝えて本当に嬉しい。
 これからもよろしく頼むって事でメリークリスマス!」
「「「「メリークリスマス!!!!」」」」
 カツンと中身は日本酒のワイングラスが軽い音を立てる。飲み食いの宴が暫く
続いたところで俺はプレゼントの中身を確認することにした。
 プレゼントは男女で交換することにしており、佐久耶と菖蒲と志乃のプレゼントがある。

 まずは佐久耶のプレゼントを空けてみた……ゆ、指輪!?
 美しい黒髪の上に今日は三角帽子を載せながら佐久耶はにこやかに笑っている。

「佐久耶…これは…。」
「ふふ…やっぱりプレゼントっていったら身につけるものですよね。私がつけてあげますね。」
 佐久耶は俺の左手を取って薬指にそれを嵌めた。

「それは男から女にするもんじゃないのか?」
「結果は同じだからいいじゃないですか。ずっと一緒ですし…逃がしませんし…。」
 ため息をついて、苦笑してから佐久耶の頭を撫でて礼を言った。続いて菖蒲のを
あけ…とある箱が見えた瞬間すぐに戻した。菖蒲と一志がにやにや笑っている。

「あ、菖蒲!お前ら…」
「やっぱり贈り物は役に立つものよね。」
 うんうんと、一志も頷いている。佐久耶と志乃はわけもわからずぽかんとしていた。
 最後に志乃からのプレゼントをあける…。

「か、肩たたき券…。」
「うん、八代おにいちゃん苦労してそうだから…。」
 少し泣きたくなった。
533狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/11(月) 23:31:48 ID:hfi06cx7
「ハチ、がんばれよ。」
「お前な…。」
「じゃあまた…な。」
 宴会は夜遅くまで続いたが、志乃もいるために日が変る前にはお開きになった。
 片付けのために佐久耶は残り、一志と菖蒲は志乃を送っていった。料理などの
後片付けを終えると終電の時間はとっくに過ぎていた。

「佐久耶、俺のベッド使え。俺は居間で寝るから。」
「いえ……その……菖蒲さんが一年分甘えるなら今日が一番だと…。やりたいこと
 全部いいなさいって…。プレゼントのことも…。」
「あいつらは…。まあわかった、今日は佐久耶のいうことを聞く。」
「そうですね……まずは…」

 暫く後、俺たちは一緒に風呂に入っていた。そこまで広いわけでもないので
佐久耶が俺の脚の上に座って胸に体を預けている。二人とも勿論裸で、佐久耶の
形の良い大きな胸が後ろからでも見える。

「恥ずかしいけど…なんだかドキドキしますね。」
「…のぼせそうだ。」
「八代君…後ろから抱きしめてもらえませんか?」
「だが…。」
「いいんです。お願いします。」
 佐久耶の要求どおりに後ろから肩を引き寄せて抱きしめる。恐怖症は随分ましに
なったように思えるが…それよりこの体勢だと…元気になった俺のものが…。

「ふふ…嬉しい。なんだか幸せです。包まれてるみたいな…。背中の硬いこれが…
 入るんですよね。」
「ああ。経験はないから優しくは出来ないかもしれんぞ。」
「お手柔らかに。」
「善処する。」
 甘えるように頭をさらに後ろをもたれさせる。こうして佐久耶はひとしきり
風呂で甘えた後、体を拭いてバスタオル一枚で俺の部屋に入り、ベッドに横たわった。俺も隣に入る。
534狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/11(月) 23:33:02 ID:hfi06cx7
「そういえばうちに泊まるのも初めてか…。」
「はい…。このお布団…八代君のにおいがします。よく眠れそうです。」
「そうか…自分だとわからんが。それじゃ…。」
「お願いします…。」
 俺は佐久耶を軽く抱きしめながら軽くキスをした。徐々に体が熱くなり、
キスも自然に熱く、深くなっていく。部屋にはお互いの唾液が絡み合う
音だけが響く。

「大丈夫か?」
「はい…気持ちいいです。頭がぼーっとします。」
 時々佐久耶を労わりながらぎこちなく愛撫を続ける。

「もう…大丈夫です…多分…。」
「わかった。」
 菖蒲から貰った箱から一つ取り出して焦りながら付ける。緊張して二度ほど失敗した。

「八代君も…緊張するんですね。」
「当たり前だ。好きな相手を初めて抱くんだから。」
 場所がわからないので佐久耶に教えてもらいながらその場所を探す。そして…

「……っ………た!!」
「佐久耶…やめようか?」
「大丈夫。お願い……最後まで。」
 その声に頷いて、腰を奥に入れ込む。何か遮るものを破り、完全に一つになった。

「よく…頑張ったな。」
「うん……。本当に嬉しいです。後は…八代君が気持ちよくなってください。」
 俺はあまり痛くしないよう、熱い頭を必死に押さえてゆっくり腰を動かし始めた。
 初めは痛みしか感じていないようだったが、佐久耶の綺麗で整った表情が徐々に
艶やかにゆっくり溶けていく。それを見てしまい、理性の箍が緩み徐々に腰を早く動かす。

「………あっ………八代…君……」
「ごめん、そろそろ我慢が…佐久耶……」
「……いいよ。好きにして……」
 その言葉で完全に理性が弾けた。俺は自分の獣性の赴くままに佐久耶を貪り始めた。
 激しく腰を突き、唇を合わせてはじめてのその体を蹂躙していく。

「八代…君…いや…激しすぎ……いっ……」
「佐久耶……そろそろ……。」
「うん……」
 終わりが近づき、それまで以上に突く。もはや、優しさなど見せる余裕もなく必死に
体をあわせ…佐久耶の膣が閉まった刺激を受け最後に奥深くまで突いた。

「っ!」
「………………くぅ…んっ!!!」


535狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/11(月) 23:34:15 ID:hfi06cx7
 行為が終わり、俺たちは全ての力を使いきったようにお互い抱き合って横になっていた。
 佐久耶は俺の頭を抱きしめ痛いだろうに幸せそうに笑っている。

「八代君…。痛かったけど…気持ちよかったです。」
「そうか…。悪かったな、初めてなのに乱暴にして。」
「いえ、可愛かったです。八代君必死で…。」
 からかうように笑われ俺はそっぽを向いた。

「私…八代君に迷惑掛けます。甘えます。頼ります…」
「ああ。佐久耶一人くらいちゃんと支えてやる。心配するな。」
「友達も出来ました。学校が楽しくなりました…。看病してもらって…暖かさを
教えてもらいました。そして、やっと本当に好きになれて…八代君は私を幸せにしてくれました。」
「そうか。」
「だから…。私も八代君を幸せにします。いっぱい迷惑掛けるけど…………
 絶対に寂しい思いだけはさせません……だから私の前だけは我慢しないでください。」
「我慢?」
「はい…。八代君は頑張りすぎなんです。辛いときも普段どおりだけど…顔は…。」
 勝手に口が動いていた。鍵が外されたかのように…。恐怖症を乗り越えた強い彼女に…
自分でも考えていなかった本心を曝け出し始める。

「辛かった…。不条理だ。何故学校を辞めないといけないのか…なぜ時間がたっているのが…
 一年ってなんだ!全ての努力が水の泡だ!!なんのために俺は頑張ったんだ!
 不条理だ…母親が裏切ったのが…親父がそのせいで早く死んだのが…俺がずっと一人なのが!」
「うん……当たり前…辛いですよね…。」
「何で誰も頼らせてくれないんだ。辛かった!しっかりしてる?俺は…俺は!!」
「うん……だけど、その不条理のお陰で…我慢してくれたお陰で…助けられました。」
 佐久耶は豊かな胸に俺の頭をゆっくり抱え込んだ。

「たまには吐き出したほうがいいとおもいます。そして…明日からまた…。」
「くそっ!うああ…く…あああああああ!!」
 親父がなくなってから…この日、初めておもっきり泣いた。佐久耶は次の日、何事も
なかったように普段どおりに接してくれて、それが何より有難かった。恥ずかしすぎる。
 彼女が俺に頼るように、これからは俺も彼女に頼るのだろう。ひょっとしたら、
これは共依存なのかもしれない。だけど、手放すつもりはなかった。

 お互い傷つけあい、他人を傷つけてきた。だけど、友情や絆は残った。そして愛する人も…
だが、今は一人じゃない。ゆっくり二人で…そして友人たちと幸せになればいいと思った。


536名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/11(月) 23:38:02 ID:hfi06cx7
表はこれで終了です。長いお付き合い有難うございます。


明後日から投稿を悩んだ事故後からの裏を書いていきます。
こちらは暗めの話で進むので苦手な方はお気をつけください。
537名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 09:52:09 ID:BAviHu/i
GJ一番槍!
次は裏か…。
読みたくない気もするけど、
怖いもの見たさで読んでみたい気もする…。
ワクテカガクブルでお待ちしてます!
538名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 13:10:05 ID:U1jKiSay
おつかれさま!
GJ!!

なんだが……
最後の八代の弱音が唐突な感じがする。とってつけたような印象。
たぶん、八代の一人称なのに、八代の気持ちがあんまり描かれてない
のが原因だと思う。
話の展開やハラハラドキドキ感はすごく良かったし、そういった部分が
うまくなれば、もっと面白いものを書ける力を秘めている!
これからに期待大ッ!
539名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/13(水) 19:30:26 ID:wxWosxSL
というわけで投下します。
511の続きからになります。
540狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/13(水) 19:31:42 ID:wxWosxSL


 まるで、ボールのように彼がごろごろと転がっていく。

 私は自分が引き起こした事態に呆然としていた。佐久耶は体を打っただけで
怪我はないが…八代は…八代は!!

「佐久耶…これは事件じゃなく…事故だ…いいな…?」
 死にそうになって、ぼろぼろに怪我をして、腕も変な風に曲がってて…血が…
全身から…。顔も…足も………八代が…八代が…こわれて…
 殺されそうになったにも関わらず、それでも八代は…私のことを考えてくれていた。

 私は………何を………。

「菖蒲さん…貴女は!!貴女は!!!!」
 救急車を呼んだ佐久耶は私を殺すような目で睨みつけ胸倉を両手で掴んで
締め上げていた。私は何も抵抗せずに…いや、抵抗する気も起きずにただただ
呆然としていた。

 このことは…結局事故として処理された。
 佐久耶が八代から頼まれたことを忠実に守ったからだ。
 入院などの手続きは後見人でもあるらしい一志のお父さんが全て執り行い、
緊急に手術が行われた。

 手術を待っている間、佐久耶は私に怒りを爆発させて一志も志乃も全ての事情を悟った。
 二人とも…そして一志の妹の志乃も私を許さなかった。
 当然だ。
 親友と恋人と兄代わりをそれぞれ殺されそうになったのだから。

 手術は成功し、八代は助かった。だけどそれは辛い生活の始まりでしかなかった。
 彼は……何日立っても目を覚まさなかった。
541狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/13(水) 19:33:23 ID:wxWosxSL


 新しい私の生活が始まった。とだけ考えると明るいようにも思えるが、全く反対だ。
 辛い、懺悔の為の、誰も味方をすることのない生活の始まりだった。でも、
やめることはできない。やめたとき、私はどうなるかわからない。想像できない…

 当初、私は重く頭の働かない体をそれでも強引に学校へと運び、毎日放課後に八代を見舞っていた。
 周りは当然いい顔をしなかった。それでも通い続け、一ヶ月が過ぎた頃…この日は病室に
一志、佐久耶、自分のほかに一志の妹の志乃が来ていた。
 病室では私や一志、佐久耶は視線をあわさなかった。兄と異なって低めの背にショート
の彼女はいつもなら黙って八代を見つめているだけだったが、ぼーっとこちらを眺めて
いたと思うと、急に敵意に満ちた目で全員を睨みつけながら低い声で言った。

「お前らいい加減にしろよ…」
 殆ど話すことのなかった志乃からそんな台詞が出て、驚いて全員彼女の方を向く。

「そこの女二人!お前らのくだらん争いが原因だろうが…よく恥ずかしくもなく
八代おにいちゃんの前に顔を出せるな!それから一志、お前もだ!あんたは男だろ。しっかりしろ!!」
 そこまで言い切ると、泣くのを堪えながら志乃は外に走っていった。私たちはそれを
あっけにとられて見つめていた。

 それから佐久耶は病室にはあまり来なくなった。学校では明るく、元気に過ごしているらしい。
 対照的に私は通い続け日に日に気力を失っていった。
 原因は私なのだ。彼女から見れば大事な人を意識不明にした憎む相手でしかない…。
542狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/13(水) 19:34:19 ID:wxWosxSL


 揃いも揃って毎日毎日暗い顔でうじうじしやがって…走りながら私は悔しくて涙が止まらなかった。
 一志の話だとあの美人二人のどちらかが八代にぃの恋人らしい。そして争って…
結局、八代にぃは巻き込まれたんだろう。悪い女に引っかかったんだ。
 むかつくのはそんな八代にぃに迷惑を掛けて命に関わる大怪我をさせたやつらが、
友達面して毎日病室に来ることだ。いやそれだけじゃない…何も出来ない自分自身にも
腹が立つ。今日のは八つ当たりだ。

 八代にぃと知り合ったのは小学生の頃だ。父親同士が友人で遊びに来たのがきっかけだった。
 一志とは気があっていたけど、私の初対面での印象は暗い奴…だった。でも、そう思ったのは
最初だけで、無口だけどしっかりとした温かい人だとすぐに分かった。
 私が料理をはじめとして家事を覚えたのも八代にぃの影響だ。私たちと同じ境遇なのに
後ろ向きにならずに自分の出来ることをする姿勢…そして、私を本当の妹のように
大事にしてくれた優しさ…そんなものを学びたくて真似していったのだ。
 八代にぃはもう一人の兄だ。

「一志……あの二人……特に、新庄さんっていったっけ…ここに入れたくないんだけど。」
「八代がもし起きてたら……気にしていないはずだ。」
 兄はよく理解してる。長年の親友なのだ。八代にぃはそんなこと望んでないと私もわかる。でも…

「私は……許せないよ。絶対に許せない。」
「あんな奴じゃなかったんだ。八代も菖蒲も好きになった相手が悪かった…。全てが
 悪い方向に動いただけだ。」
「なんで一志は許せるのよ…。八代おにいちゃんは…あいつのせいで!」
「俺も許せないはずなんだが……どうしても憎みきれない。今までの経緯…俺が知ってる
 限りの話だが聞くか?」
 私は頷いた。八代にぃのことはなんでも知っておきたい。そして私は三人に何があった
のかを理解した。そして、それでも……許すことは出来なかったが。

「それに……誰かが付いていてくれるのは正直助かる。あいつは…ハチは…」
「……」
「肉親がいないんだから。意外と寂しがりだからな。誰かが付いていてやらないと。寂しがる…。」
「………一志……私も……私たちも……家族じゃないの…」
 兄は苦い顔をしたまま何も言わなかった。
543狂犬と少女たち  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/13(水) 19:36:31 ID:wxWosxSL
 ハチが倒れてから二ヶ月が経った。神城は見舞いにはあまり来なくなり、菖蒲は見舞いに
来続けている。見せ掛けでも元気に振る舞い、自分に出来ることをやっているらしい神城
とは異なり、菖蒲は学校にも余り来なくなり日に日に憔悴していった。
 俺は菖蒲のそんな姿を毎日見せられ、理由もわからずにいらついていた。
 そして三ヶ月が過ぎ、四ヶ月が過ぎ…ついに菖蒲は学校を辞めた。そして今日も
話すでもなく、身の回りのことをしてハチの手を握って眺め続けている。妹に文句を言われようが
誰に何を言われようが…。俺は衝動的に数ヶ月ぶりに菖蒲に声をかけた。

「菖蒲…もうお前もここに来ないほうがいい。てか来るな。」
 菖蒲はその言葉にこちらを向いた。その顔には以前のような人を食うような活力は
まるでなく、死んだ目で義務的にこちらを向いたという感じだった。

「私は…私は…八代を見てないと……見てないと……私のせいで…傍に…。」
「起きたとしても…お前がハチをどれだけ見てもハチはお前を見ないんだ!」
 ぱちんっ…と軽い音が室内に響いた。少し遅れて自分の頬に痛みを感じる。
 目の前にいる菖蒲は無気力な目ではなく、怒りに満ちた目でこちらを睨んでいた。

「それくらい…言われなくてもわかってるわよ…でもしょうがないじゃない!
 好きなのよ!何度も助けてもらって…馬鹿なことして死に掛けても私をかばって…」
「あいつは神城を選んだんだろう。」
「そんなので諦めれるわけないでしょう!ほっといてよ!」
 数ヶ月ぶりに話した目の前の唯一の女の友人…だったはずの奴はもう無茶苦茶だった。
 八代を心のよりどころにしてかろうじでもっている状態…だが…

「不毛だ。あいつも今のお前みたいな状態になるのは望んじゃいない。駄目になるだけだ。」
「ほっといてよ…」
「馬鹿やろう…自分が惚れた女が駄目になっていくのをほっとけるかよ!」
 …俺は自分で何を言ったのかしばらく理解が出来なかった…。だが、不思議に感じる
頭とは別に言葉は勝手に紡ぎ出されていく。

「これ以上ここにいるようなら力尽くでもここに来れなくするぞ。帰れ!」
「………帰らない。」
「てめえ!!」
 俺は座っている菖蒲を椅子から引きずり落とし床に這わせた。がっ!!と体を
床にぶつける硬い音がする。俺は菖蒲を組み伏して構わず続ける。

「もう一度だけいう。二度と来るな…。もう忘れるんだ…不幸になるだけだ。」
「……絶対に…嫌。」
 押し倒され、組み伏されそれでも拒絶の意思を見せられてついに俺の理性は飛んだ。
 強引に押し倒そうとし…

「いや………助けて八代…………」
 そして──────理性が戻った。無意識に出る言葉も自分が殺そうとした八代…。
それに本気で縋っている事を悟った。
俺は菖蒲を離すと一度床を思い切り殴り、立ち上がって荷物を持った。

「すまなかった。帰る。今日のことは後日訴えるなり殴るなりしてくれ。」
 嫌がる女を無理矢理押し倒そうとした自己嫌悪と解決の方法のわからない無力感
といらだちだけが俺には残っていた。
544名無しさん@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI :2007/06/13(水) 19:38:41 ID:wxWosxSL
今日はここまでです。
腕磨きつつ気を取り直して頑張ります。
545名無しさん@ピンキー:2007/06/13(水) 20:16:33 ID:iPjtX+rk
今日もGJ一番槍!
ダークだっていうからいろいろ想像していたけど、
想像していたほどドロドロしていなかったからホッとした俺ガイル。
続きもwktkしながら待ってます。
でも無理はしないでくださいね。
546名無しさん@ピンキー:2007/06/13(水) 22:35:38 ID:ytIuGwFO
素晴らしい。
こっちを先に読みたかったぞー!
547名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 02:33:07 ID:lEGCV46G
保守
548名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 17:15:00 ID:WFX28CNK
保守
549名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 01:59:23 ID:4tbqGcJG
ここ固定の住人少ないのか?
550名無しさん@ピンキー:2007/06/18(月) 11:26:50 ID:leTVnvfY
確かに少ないかもしれないね。あんまり一般的な属性でもないし
◆x/Dvsm4nBI氏の続きやら新しい投下があれば
ちょっとはまた盛り上がるとは思うけど
551名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 10:42:51 ID:sa50GeOm
書き込む住人だけでも10人はいるかと思っていましたが・・・。
◆x/Dvsm4nBI 氏の他、過去に投下された方の数も少ないわけではありませんし。

と言うわけで期待保守
552名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 10:59:54 ID:FukrR9yb
パンツ下ろしたまま淫魔先輩を待ち続けているオレがここにいる
553名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 11:08:58 ID:n+W2N/Cm
ゼロの使い魔とかでやられた人もここを覗いてそうなんだけどなぁ。
554名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 21:37:11 ID:sa50GeOm
あれって依存とかありましたっけ?
いやまあ、主人公がいないと主が何回死んでいるかわかりませんが。
555名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 22:03:46 ID:n+W2N/Cm
>>554
ルイズ
556名無しさん@ピンキー:2007/06/20(水) 00:55:13 ID:Q37X2l61

そういえば後追い自殺未遂をやらかしていましたねw
アレはこのスレ的にも良かった。
557名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 06:35:53 ID:bvNqkDs5
未亡人が遺骨or位牌でオナるに死者への依存をみたい、24時間入れたままでないと生きられない…みたいな
喪服とリスカそして位牌
558名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 03:37:14 ID:rwB8zzNc
投下待ち上げ
559名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 00:55:38 ID:tiM9YQ/J
このスレ見つけて一気に読みふけっちまった。
サクサク読めるのから重厚な奴まで素晴らしい品揃えだぜ。
560名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 01:50:52 ID:DAxRvl0J
凄くいいシチュだと思うんだが伸びないな
561名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 01:51:42 ID:DAxRvl0J
すまん誤爆した
562名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 05:33:29 ID:4It0A5ny
狙ったな
563名無しさん@ピンキー:2007/06/26(火) 06:25:46 ID:oj8aeOGT
ヤンデレ(notヤンキー)やキモウト等との競合
鉈っぽい打ち切りフラグ処理
が遠因か
564名無しさん@ピンキー:2007/06/28(木) 13:22:57 ID:MvFCGile
565名無しさん@ピンキー:2007/06/28(木) 15:03:16 ID:RR8vzRJZ
保守なんてしなくても落ちないから
566名無しさん@ピンキー:2007/06/28(木) 19:51:06 ID:NkM+pg3z
もうこのスレ無しでは生きていけない…
567名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 22:30:43 ID:1phadcpN
けれど私達たちにはしてあげる事がコレ(保守)くらいしかッ……
568名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 07:32:23 ID:EA36+iPh
頼む・・・投下を・・・
569名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 13:42:13 ID:qUUSrgIb
「お願い……捨てないで……」

幼なじみの奏が、僕に抱きつきながらそう言った。
はっきり言って意味が分からない。
捨てるも捨てないも、そもそも僕らは付き合ってはいないし、僕には昨日彼女が出来たばっかりだ。

「お願い…愛してくれなくてもいいからぁっ…」

僕の胸に顔を押し付けながら、泣き出す奏。

「美紀の次でいいから、お願い……」

美紀ってのは彼女の事で────

「そばに居させて────」

そう、悲痛な表情で言う奏を突き放す事など出来る筈もなく、僕は奏に言う



「保守」
570名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 19:51:04 ID:IOYlWJ8N
俺は今日もこのドアを開ける。

「よぉ…元気にしてるか?」

安アパートの部屋に入ると奥から女性が飛び出てきた。
飛び切りの美人だ…。俺の思い人。そして俺が手に入れてしまった女性。
飛び出てきた女性は俺を力いっぱい抱きしめ言った。

「お願い、欲しいの…頂戴!何でもするから!」

事の始まりは一ヶ月前だった。片思いの女性に告白する勇気が無かった俺は、先輩に相談した。
暴力団や裏組織などとのつながりがあると噂されていたが、頼りになる兄貴分だった。
俺の思いを聞いた先輩は、後日妙な液体の入ったビンをくれた。先輩曰く「最高の惚れ薬」だと。
俺は片思いの女性に飲ませた。こんな事になるとは知らずに。

先輩がくれた「最高の惚れ薬」は麻薬だった。普通の麻薬とは違い、肉体はぼろぼろにならず幻聴や幻視も無い。
薬物検査に引っかからず法的に規制されても居ない。ただ、あるのは強すぎる精神依存と快楽だけ。
思い人は一瞬にしてこの薬の虜になっていった。飲めばありとあらゆる刺激が強烈な快楽となり、効果が切れれば
ありとあらゆる事が負の感情となり心を蝕む。薬無しの生活など彼女にはありえない。薬を手に入れるためならば、
すなわち俺から薬をもらうためならば何でもやるようになった。

裕福な家庭のお嬢様だった彼女は親の金に手を出し家を追い出され安アパートに引っ越してきた。−俺の隣に。
薬無しの…いや、薬だけの生活になっている彼女は仕事など出来るはずも無く、一日中家に篭っていた。やることといえば、
寝て、起きて、食事して、トイレに行って、後は薬だけだった。親から勘当されている彼女に仕送りが来るはずも無く、生活費は
すべて俺が面倒を見ていた。薬もだ。薬は先輩から買っている…頑張れば変えなくも無い高額で、だ。薬を買うために、彼女を
養うために俺は朝から晩まで働いた。薬が無ければ彼女を手放さなければならなくなってしまう。その意味では俺もこの薬に依存
しているのかも知れない…。

俺に抱きついている彼女の頬に一粒の水が落ちた。…俺の涙だった。確かに彼女は手に入れることが出来ただろう。
彼女の腰まで届く美しい髪も、豊満な胸も、女神のような顔立ちも。しかし、手に入れたのは体だけで心は…。

「ねえ!薬頂戴!お願いだから!」

俺は彼女を力いっぱい抱きしめた。いつの間にかあふれるように涙が出ていた。彼女はもう元に戻らない。
俺が壊したんだ。俺は申し訳ない気持ちが一杯でこう言った。

「保守」
571名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 22:37:00 ID:G9K/bmHy
>>569-570
乙とGJ
投下して下さる神が少ないのは、まとめがないからだと思いはじめてきた今日この頃。
572名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 23:31:04 ID:QNohkfRm
>>571
じゃあ作ればいいジャマイカ
573名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 23:33:39 ID:CmkeYpRR
前にだれかHTML落としてった人が居たなぁ……。



どう見ても最近更新停滞してるあそこの管理人っぽかったが。
574名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 23:40:04 ID:Zamv8YiL
ショチョウGJ
575瀬錬:2007/07/02(月) 00:34:28 ID:9qPHFr+z
ちょっと投下してみます。
576身体の関係:2007/07/02(月) 00:37:13 ID:9qPHFr+z
 ――ある女の子は、目が生まれつき不自由でした。
 ――ある男の子は、身体が生まれつき不自由でした。

「――さ。行きましょ」
「ちょ、ちょっと待って。まだボタンが……」
「大丈夫よそんなの。一個や二個、ボタンが止まってないからって」
「そうじゃなくて…… 掛け違えてる。一個ずつ」
「……」

 二人はある時出会いました。
 二人は自分の不自由な部分が相手の自由な部分である事を羨ましく思いました。

「は、速い速い! そんなに速く押さないで! ぶつかる!」
「何言ってるの! 今日遅れたら減俸なのよ!?」
「それはそうだけど……! あ、前方十五メートル先、右!」
「了解!」

 ある時、女の子は言いました。目が見えていいわよね。身体だけ動いてもどうしようもないわ、と。
 ある時、男の子は言いました。身体が自由でいいよね。目だけ見えてもどうしようもないよ、と。
 二人は壮絶な口喧嘩を繰り広げました。

「――で、上官どのは何て?」
「連続遅刻の上に器物破損で減俸は覚悟しておけって。はいこれ始末書」
「面倒ねぇ…… 文面、君が考えてよ。私が打つから」
「そう来ると思ったよ」

 紆余曲折あって、二人は仲直りしました。
 そして気付いたのです。

「今日は随分とキレがいいね。どうしたの? ――左三十度上二十度、一機」
「さっきので三機目でしょ? ――捉えた?」
「そう。 ――捉えた。ちょっと右。そう、そのまま」
「じゃあスコア更新。あの馬鹿コンビが自慢してきたから見返してやろうかと思って。 ――落とした?」
「なるほど。 ――落ちた。いい動きだった」

 女の子の身体。
 男の子の目。
 二人が一緒なら、ほら。こんなにも――

「ん…… ヘンじゃない? 私の身体」
「そんな事ないよ。とても…… 綺麗だ」
「ふふ…… ありがと。どう? 眼帯、着けたままの方がいい?」
「? なんで?」
「目が人形みたいで気持ち悪い、って言われた事、あるから」
「そんな事ないよ。宝石みたいで綺麗だと思う」
「ホントに?」
「好きな人に――自分の身体に、嘘なんか吐かないよ」
「……ありがとう。自分の目の言う事だもんね。信じる」
577身体の関係:2007/07/02(月) 00:39:18 ID:9qPHFr+z
 こんなにも満たされて。
 こんなにも幸せで。

「――っ! はっ、はっ、っっ、く……!」
「だ、大丈夫……? もっとゆっくりした方が……」
「だ、大丈夫…… どう? 気持ちいい?」
「う、うん…… 暖かくて、なんだか、すごいや……」
「そう、良かった…… んっ、動く、わね」
「む、無理しちゃ……! う、あっ、くあっ!」
「ふふ…… 声、もっと聞かせて…… っ!」
「う、あ、あああッ!」

 君は私で、私は君で。
 僕は君で、君は僕で。

「私の中が、君で一杯ね」
「そういう事言うかな、普通」
「三回も出した癖に。この早漏」
「そ、それは、気持ち良かったし…… それに」
「それに?」
「き、綺麗だったから。君がイった時とか」
「それを言うなら君がイった時だって可愛かったわよ。女の子みたいだったし」
「止めてよ……」
「ふふっ……」

 この命尽きるまで。
 君と一緒に歩んで行く。


 ――はずだった。
 君が「私を」「僕を」裏切りさえしなければ――


「――どうして、こうなってしまったのかな」
 何処で間違えたのか。
 何を間違えたのか。
「さあ……? 私には分からないわ」
「まぁ、いいか」
「ええ。どうでもいい」
 敵は眼前。
 目は、身体は「二人」の時ほどではないけれど。
 「一人」の己に引導を渡すには十分に過ぎる。


 ――その事に気付いてから、女の子と男の子はお互いに支え合って生きていきました。
 いつまでも、いつまでも――

578瀬錬:2007/07/02(月) 00:40:34 ID:9qPHFr+z
以上です。
579名無しさん@ピンキー:2007/07/02(月) 14:42:49 ID:0BrV69kk
短いけど作品がktkr!
なんだか目からしょっぱい水が出てきたよ。

次はもっと濃厚なのを頼むッ!
580名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 19:14:53 ID:DS3TTeUu
このままだと一年一スレッドになりそうだな。
581名無しさん@ピンキー:2007/07/06(金) 02:04:13 ID:99xDVg/p
一時期はふつうににぎわったんだがな・・・
またあの時の再現が起こらないもんか・・・
582 ◆DppZDahiPc :2007/07/07(土) 02:23:39 ID:xIArd9B9
久々に書いてみた。百合百合になったが反省してない。
というか、強化人間系の薬物依存を書こうと思ったのに、なんでこうなったんだろうか?
EXEs-R.A.C.E.に関しては読み方も姿も想像にお任せする

では投下、全9レスで百合
5831/9 ◆DppZDahiPc :2007/07/07(土) 02:25:41 ID:xIArd9B9
 西暦二〇七七年、人がスペースコロニーに住むようになった時代。人は宇宙に進出して尚、戦うことをやめていなかった。
 それまで宇宙の影に隠れていた生命体が、自らの生息域を侵犯されたと考えたのか、人間に襲い掛かってきたのである。
 話し合いの通じぬ彼らへ対抗する為、全人類規模で戦いを挑んだが、彼らの力は強く人類の半数が死滅するに到る。
 彼らに対抗する為、人類側は宙間機動戦闘用躯体EXEs-R.A.C.E.を開発し、反抗作戦を展開し始めた。
 だがEXEs-R.A.C.E.には厳しい使用制限が備わっていた……

***

 半年前までただの高校生だった私は、EXEs-R.A.C.E.の装者(レイサー)に選抜され、いつの間にやら
『地球統合軍第八機動艦隊二番艦宙間機動戦闘用躯体試験部隊所属三等空尉』
 という、いつまで経っても覚えられない肩書きを与えられた。
 私が統合軍の秘密兵器の試験装者となったのには、当然理由がある。
 確かに私の年代でも、志願兵として前線に行っている子たちはいるけれど、私はそういうことにはできるだけ関わりたくなかった。
 こんなことを言えば、人類の危機だと怒られるかも知れないが、私には戦いがひどく恐ろしいものに感じられたのだ。
 朝テレビを点けると昨日の戦死者の数を発表している。
 それを見ると毎日のように百単位の人が死んでいる、その中に私も入ってしまうかと考えると寒気がした。
 戦うことというより、死への恐れかもしれない。とにかく戦いや、それにまつわることが怖かった。
 なのに私が地球統合軍第八機動(略)試験装者になった理由、それは酷く単純だ。
 軍に入れば戦災によって重傷を負った母さんの医療費を、軍が払ってくれる――そのために、私は軍の戦闘兵器の一部となった。
「どうしたんです? 暗い顔して」
「――へっ?」
 声をかけられ気づくと、私の前には私と同じ肩書きを持つ、つまりEXEs-R.A.C.E.の装者であるリラ・キリュウが立っていた。
 そんなに暗い顔をしていただろうか?
「ああいや、なんでもない。それより、リラもお昼――って、凄い量」
 リラが手に持つトレイには、山盛りのパスタやマッシュポテト、それにデザートのゼリーが重なるようにして載っていた。
 リラは白磁の頬を赤く染めると、トレイで顔を隠し、小さな声で答えた。
「……だって、テストのあとはお腹が空くんです。フランは大丈夫なんですか、それしかなくて」
「ああ、うん。私はあんまりお腹空かないかなぁ」
 私のトレイにはチーズと合成肉のハムが挟まったハムサンドとオレンジジュースのパックだけ。
 ここに来た時にはもっと食べたような気がしたけれど、最近はあまりお腹が空かなくなってきていた。
5842/9 ◆DppZDahiPc :2007/07/07(土) 02:27:44 ID:xIArd9B9
 何故だろうか? と考えてもしょうがないことだ、おそらくストレスとかそんなのだろう。
「ここ座ってもいい?」
「どうぞ」
 リラは私の隣に座ると、小さく神へ祈りを捧げてから、食べ始めた。
 私は黙々と食べるリラの横顔を見つめ、この細い身体のどこにこれだけのパスタが収まるのだろうかと考えた。
 学生時代、特に背が高くなく身体の小さかった私よりも、リラは更に一回りくらい小さい。
 長いプラチナブロンドのおかげで、シルエットにはボリュームがあるが、それを一つにまとめてしまうと、折れてしまいそうなほどにリラは細く小さい。
 胸にいくというジョークを胸しか取り得のないアメリカ女が言っていたが、リラはそんなことはない。
 胸にも背丈にも志望にもいかないのなら、どこへ行くのだろうか。
 そう思って見ていると、リラの頬がじわじわ赤くなってきて、困ったようにこちらを見つめてきた。
「……あんまり見つめないでください」
 もじもじしながらリラが言うのに、私の中にある悪戯心がどうしようもなく沸いてしまう。
「どうして? リラがかわいいから見てるだけよ、気にしないで、ほら食べて」
「…………うう。イジワル言うときのフランは嫌いです」
「イジワルじゃないって、本心よ」
 そういってリラの髪に触れ、撫でると。リラの困り顔がほぐれ、とろんと弛んだ。
 そんなリラの素直なリアクションに、私はちょっとだけリラの貞操が心配になった。
 特に何かしたわけでもない私にこんなに懐くのなら、優しい言葉をかけられたら、飢えた男にあっさり食べられてしまうのではないかと。
 いや、私が心配するようなことではないか。心配するくらいなら、この子が一人でも大丈夫なように手助けしてやった方がましだ。
 それよりも、こうして女同士でベタベタしているせいで、同性愛者と言われないかを心配するべきか。
 ……でも、今の世の中同性愛者の女性は珍しくなくなっている。
 それは戦争最初期に男性の半数以上が死んだからであり、私たち女の身体から受胎機能が失われたせいでもある。
 現在、子供は自然受胎は不可能といわれており、人工授精がポピュラーだ。
 そのせいで子作りとしての生殖行為は失われ、本当の意味で好きなもの同士、ただ快楽を求める行為へと変質していた。
 だからそれまでは忌避され陰のものだった同性間でのそうした行為は、否定されることがなくなり。
 四分の三が女性で占められるこの艦の、同性愛者率は結構なことになっていたりする。
 この私ですら寝込みを襲われそうになったことがある。なんとか追っ払ったが。
 だが、リラは私同様に同性愛者でないと言い切れる。彼女は以前、同室の相手から犯されそうになった経緯があり。
 その時のことを怖そうに語った彼女が、同性愛者であるはずはない。私と一緒にいることでそう呼ばれないか、かなり不安だ。
 そういえば、何故かEXEs-R.A.C.E.の装者には、同性愛者が多く――あれ?
5853/9 ◆DppZDahiPc :2007/07/07(土) 02:29:46 ID:xIArd9B9
「なに? 風邪でもひいたの?」
 大量のパスタたちを食べ終えたリラが、ポケットから小さなケースを取り出し、そこから錠剤を四つ取り出すと飲下していた。
 リラは咽ながら、小さく首を振った。
「違いま、けほっ……すよ」
「なら今なに飲んだの?」
「これは……あれ? フランは飲んでないの?」
 頷いた。病気にでもならない限り、薬なんて飲みたいものではない。
「そっかぁ……」
 リラは一人で納得すると、ケースをポケットにしまい。
「そうだ、シャワー浴びにいこう、今の時間なら他に人いないよ」
「え、あ、うん」
 私はリラに引っ張られるようにシャワールームへと向かった。

***

 十二のブースに区切られたシャワールームは、男女それぞれ一つずつしかなく、混んでいるのが通常だが。
 昨日、新型のEXEs-R.A.C.E.が搬入され、その組み立てと調整のために、格納庫の人口密度は酷いことになっていたが。
 そのおかげでそれ以外の場所は、いつになく閑散としていた。
 新型の試験装者に選抜されたものたち以外――つまり私たちのような装者には更にその恩恵があり。
 普段はテストとレポートで一日が潰れるのに、今日明日は呼ばれない限りは休みなのだ。
 昔のこと、入隊の経緯を思い出してしまったのも暇だったからかもしれない。
 私はリラが服を脱ぐのを手伝ってやり、それから自分も脱ぎ、適当なブースに入ると、当然のようにリラも入ってきた。
「今日は混んでないから他使ったら」
 意地悪をいってやると、リラは私を睨み上げ。
「……一人ではいるの、怖いから、その……」
 今にも泣きそうな声でいった。
 もうその姿が愛玩動物かそれに類するものにしか見えなくなった私は、思わず抱きつきそうになったが、なんとか自重した。
 そんなことをしてリラに嫌われたくなかった。
「どうしたの……?」
 リラが不安そうな視線を向けてくる、私はにっと笑うと。
5864/9 ◆DppZDahiPc :2007/07/07(土) 02:31:49 ID:xIArd9B9
「なんでもないよ。ほら洗ってあげるから、背中向けて」
「あ、うん」
 いつものようにリラの小さな背中を洗ってやることにした。
 シャワーから艦の動力炉の余熱で暖められたお湯を出し、頭からお湯をかけてやると、リラは身体を縮めた。
「あ、熱い?」
「んーん、だいじょうぶ」
 共用のスポンジもあるが、何に使われたか分からないので私物のスポンジにボディソープをかけ、泡立てると、リラの肌を傷つけないように、そっと触れた。
「ふぇっ」
 驚いて声をあげるリラの背中を、そっとそっと、静かに擦る
「ひゃ、あはっ――や、やめてよ。くすぐったいよぉ、っ」
「えー、なにー、聞こえなーい」
 リラの背中というか肌は人並み外れて敏感なせいで、ちょっとくすぐってやると、直ぐに反応してしまう。
 リラは自分を抱きしめ、身悶えする。
「やめてやめてっ、くすぐったいよっ、あははっ、やぁ」
 そんなリラを見て、にやにや口元を弛めている私はかなり駄目な人かもしれない。
 リラはちょっと肉のついたわき腹付近も弱いが、首筋を軽く撫でてやるだけで、簡単にあられもない声をあげる。
「――ひゃんっ、あっ、やめっ、ううう……」
 逃れようとするリラの小さな身体を片腕で引き寄せると、腋の下を指先でこちょこちょとくすぐってやる。
 リラはまるで水揚げされた魚のように暴れまわるものだから、二人して滑って転んでしまった。
 打ったのが頭じゃなくお尻で良かったなんて思っていると、リラは楽しそうに笑い始め、釣られて私も笑っていた。
 重なった笑い声が途切れるまで、少しの時間が必要だった。

***

 予定していた装者が新型EXEs-R.A.C.E.に適合できず、その代わりとしてリラが新型の装者となった。
 リラが駆る新型は圧倒的なもので、偶然遭遇した彼らの艦隊をリラ一人で葬ってしまった。
 私はそれを見ていることしかできず、ただただ凄いなあと、そう考えていた。

 しかし、その翌週には私の考えは変わっていた。
***
5875/9 ◆DppZDahiPc :2007/07/07(土) 02:33:57 ID:xIArd9B9
 新型の装者としてあちことにひっぱりだこにされていた、リラと三日ぶりに会ったのはシャワールームの中だった。
 シャワールームのブースの中で、リラが糸の切れた人形のように倒れていた。
 私は直ぐに医務室まで行き、軍医を連れてきて、リラの容態を診させた。
「どうなの? 大丈夫なの」
 訊くと、軍医はため息を吐き。
「なんだ、ただのフィードバックじゃないですか」
 軽い口調でそう言った。フィードバック?
「これなら、いつもの対抗剤さえあれば……」
「ただのって何よ、教えなさいよ、なんなのよっ」

 軍医から聞き出したことによると。
 EXEs-R.A.C.E.の装者にはある特定の遺伝子が必要であり、それが選抜の理由となるのだが。
 その遺伝子は年齢と共に減少するし、EXEs-R.A.C.E.をまとって出撃するたびに減少する、だからいつかは乗れなくなるのだが。
 その減少を抑えるための薬物があり、それを服用することによって装者としての寿命を延ばせるらしく。
 リラが服用していた薬はそれらしく、リラのレイサーとしての寿命は幾許もなく、今は薬の力で乗っている状態らしい。
 だが、その薬は決して人体に無害と言えるものではなく、少しずつ寿命が磨り減っていくのだそうだ。
 私はその事実を聞き、それ以外の方法がないのかと訊くと、医師は意外にもあると答え、更に予想外の答えを言った。

***

 私は今、新型の装者として個室を与えられたリラの部屋へ来ていた。
 私物の殆どないリラの部屋は閑散としていて、もの寂しい。私はリラが目覚めるのを待った。
「……ん」
 リラの穏かな寝顔が崩れ、呻き声を上げるのを聞きつけ、声をかけた。
「おはよう、リラ」
「おはよぅ……あれ、なんでフランがいるの……」
 不思議そうにするリラ、私はリラの髪を撫でてやりながら答えた。
 EXEs-R.A.C.E.のレイサーとして戦う代償を知ったこと、それへ抗う手段を知ったこと、そして
「これからは私がリラの対抗剤になるから、だから、薬に頼らないでリラ」
「……え?」
5886/9 ◆DppZDahiPc :2007/07/07(土) 02:36:01 ID:xIArd9B9
 対抗剤以外による遺伝子減少への対抗策、それは――性的快楽。
 性的快楽を得たときに分泌されるそれは遺伝子の減少を抑えてくれる。
 軍人に同性愛者が多いのは、対抗剤を使用しないでの遺伝子減少へ対抗するためでもあるらしい。異性とするより気軽で、後腐れないから推奨されているのだそうだ。
 私がそのことを知らなかったのは、入隊してから半年は知らせないという規則があったため。私にも、もう少しで教えるところだったのだそうだ。
 驚いたように私を見上げるリラの視線に耐え切れず、私は視線を逸らした。
「リラが、そういうの怖いってのは分かるよ。でも薬で身体ぼろぼろにするよりいいじゃない、だから……怖いけど、私と、しよう」
「……フラン……フランはそれでいいの?」
「私だって怖いよ、怖いけど。身体がぼろぼろになるくらいなら、したほうがいいし。それに、リラだからこんなこと言えるんだ。ううん、リラじゃなきゃ、ダメなんだ。私の相手は」
 そう私にだって、いつかはリラと同じ様な症状に襲われる時が来る。
 それに対抗する為に薬を飲むか、しなければならないというのなら、身体がぼろぼろになる薬なんか服用したくない。
 だけど、相手が誰でもいいというわけじゃない。
 この艦にいる人で、リラ以上に親密な人はいないし、リラ以外に親友と呼べるものはいない。
 だから、というわけだけでもない。
 リラとならば、未知のその行為も怖くないように、そうお風呂でふざけ合うのと同じ様に出来るのではないかと考えたのだ。
「フラン、こっち向いて」
 リラの言葉に、そのお人形のような顔を見る。リラは僅かに涙していた。
「私もフランとしたかった。キスして、フラン」
「……うん」
 初めてのキスが寝ている少女相手など、全く予想しなかったが、考えていたよりは自然とできた。
 唇を重ね、どちらからともなく唇を割り、リラの舌が私の上唇を舐めた。
 積極的なリラに多少驚いていると、私の唇はリラの唇に甘噛みされ、そうかと思うと舌と舌が絡み合っていた。
「……んっ……んん……」
 唇よりも敏感な舌が絡み合う感触に、思わず声が漏れ出し、息が乱れてしまっていた。
 気持ちいいなあと思う反面、リラを気持ちよくしてあげたくなって、舌を動かしてみたが、リラほど器用に動かない。
 リラの舌はどうしてそんなに自在に動くのか、雑な動きしか出来ない私の舌を自在に操る。
 涎が舌に乗り、リラの口の中へ零れるのが分かった。
 リラは嫌がらず、瞑っていた瞳を開くと、小さく微笑み私の腰に手を回して引き寄せた。
 重なる身体に、私は妙なことを考えてしまった。
 唇を一旦離すと。
「ちょっと待って、私が上だとリラ潰れない」
5897/9 ◆DppZDahiPc :2007/07/07(土) 02:38:10 ID:xIArd9B9
 本気で不安だったから聞いたというのに、リラはまぶたをぱちくりと開いたり閉じたりしてから、笑った。
「ふ、ふふふ。だいじょうぶだよフラン、フランそんなに重たくないよ」
「いやでもほら、十キロ――いや、五キロくらい体重違うしさあ」
 別に私が太っているからではなく、体格差の問題だ。この体勢だと、リラを押し潰してしまいかねない。
 リラはひとしきり笑うと。
「そうだね。じゃあ、フランが下になって」
「うん。そうだ、服脱いだほうがいい?」
 そう訊くと、リラは頷いて肯定し、一旦ベッドから降りた。
 私は服を脱ぎ、ベッドの上に寝転がるとリラを待った。
 リラはクローゼットから何かを取り出してくると、服を着たまま私の上に跨った。
「あれ、リラは――ひっ」
 リラの手には、不思議なものが握られていた。
「ふふ、でも嬉しいなあ。フランから来てくれるなんて」
「ね、ねえリラ。その手に持ってるのは、なあに?」
 訊くと、リラは愉しそうに笑った。それだけで答えは充分だった。
「わたしがいつも使ってるの、今からフランにも挿入てあげるね」
 それはかわいらしいピンク色の、でこぼこがついた、リラが使うというにはあまりにも巨きすぎるディルドーだった。
 リラはそれをぺろぺろと舌先で舐めながら答えた。
「そ、そんなのはいっちゃうの、リラって」
「うん。フランはね知らなかったと思うけど、わたしフランのことずっと好きだったんだ。フランてお姉ちゃんみたいに優しくて、美人で、綺麗なおっぱいしてて、いつもしたいって思ってたの」
「……な、なに言ってるの」
 リラは恋する乙女な瞳でにっこり微笑むと。
「フランのこと、姦したいって思ってたの」
「で、でもリラって、女からレイプされて人間嫌いに……」
 リラは不思議そうに首を傾げ「わたしそんなこといったっけ」と言った。
「でも、されたときのこと辛そうに言ってたじゃない」
「――ああ、だってそれは、あの子上じゃなきゃやな子で、反りが合わなかったの」
「な……それだけなの?」
「うん」
 リラは天使の微笑みで答えた。
5908/9 ◆DppZDahiPc :2007/07/07(土) 02:40:12 ID:xIArd9B9
 何がなんだか分からなくなってきた、これはいったい。まさか
「リラって女の子好き?」
「うん、大好き」
 即答した。
「ああ、でもね。フランが一番好きだよ、誰よりも好きなの。だからフランの裸を他の子たちに見せないように、守ってあげてたんだから」
 混乱した私は何も考えられず、そこへリラは最終宣告のように告げた。
「じゃあ、挿入るね」
「……え――ええ、ちょっ」
 抵抗する間もなく、リラは私の秘部にそれをあてがうと。
「少しずついくより、一気にやった方が後が楽だから。ちょっと痛いけど我慢してね」
 リラは言うや、それを私の中に押し込んだ。
「――――っっ!!?」
 膣から一気に脳天まで貫かれたかのような衝撃と痛みが走り、意識が一瞬飛んだ。
「ごめんね、いたかったよね」
 リラは耳元でそう囁いてくれたが、抜いてはくれず、挿したまま、私の下腹部をゆっくりと撫でた。
「今ね、ここくらいまではいってるんだよ。ふふ、フランは食いしん坊さんだ」
「……い、痛いの、抜いてよ」
「もう少し待ってね、今に気持ちよくなるよ」
 リラはそう言いながら手を這わせて、股間に伸ばすとそれをピストンさせるのかと思いきや、違う部分に触れた。
 そこに触れられると、先程とは違う、電流に似た、上手く言葉に出来ない感覚が体中に溢れた。
「ねえ、フランってオナニーするときって、どこら辺触るの?」
 リラはクリトリスをくすぐりながらも、耳元で囁き続ける。
「ナカ? それともこっち?」
 私は首を振った。
「じゃあどこで……あれ? もしかして、オナニーもしたことなかった、とか」
 その問いに答えるのは辛かったが、私は小さく頷いた。
 すると、リラが愉しそうに笑い。
「じゃあ、わたしフランも触ったこともなかった場所に触ってるんだ。なんか、うれしいねぇ」
 クリトリスが抓まれ思わず腰が浮き、その振動が膣内のそれにも伝わって微妙に動いてむずがゆいような感触。
「いいから、早く抜いてよっ」
5919-1/9 ◆DppZDahiPc :2007/07/07(土) 02:42:14 ID:xIArd9B9
「……そんなに嫌なの?」
 私が頷くと、リラは残念そうにため息を吐き、抜いてくれた。
 異物が入っていたせいで拡がっていた膣が元に戻り、落ち着けたけど、何故か物足りなさを感じた。
 リラは今まで私の中にはいっていたそれを、口に含み蕩けた表情で味わって、言った。
「じゃあ、今日はわたしがこれ使うね」
 口から抜くと、私の上に跨ったままスカートをたくし上げ、パンツをずらして挿入した。
「くっ……あ……ぁんっ」
 リラは苦痛そうに顔を歪め、身体を痙攣させると、しかし直ぐに顔の緊張を解いた。
「ねえ、フラン。自分で動かすのって辛いの、だから……おねがい」
 リラはくたっと倒れ、足を広げたまま辛そうに体を動かす。
 私はごくっと唾を飲むと、身体を起こし。
「いいの?」
 と確認した。
 リラは頷き、やりやすいようにか、更に足を広げた。
 私は自分が先程された苦しみを理解しながらも、リラの膣に突き立つそれを掴み、まずは引き抜いてみた。
 するとリラは上体をくねらせ、自らを抱いた。
 私はいつのまにやら、ほしがりな涎で濡れたピンク色の唇へ押し込む。
「あ、ああ、う、擦ってる、こすってるよぉっ。あ、……ああああっ」
 挿し方が拙かったらしいと思い、引き抜き再び突き刺す。自分の感覚の届かないディルドーがどう進んでいるのかわからない。
 前後に押し出しするだけでも、リラは喜んでくれるが、動かしているうちに、リラが特に好きな場所がなんとなくわかった。
 こうした経験はなくとも、リラをくすぐることにかけては経験豊富な私だ、リラの表情や声の出し方で、どこを触られたら気持ちよくて不快かくらいは判る。
「いっ……やっ……そこ…もっと……ううう……フランすごいのぉ……」
 リラは奥まで突き立てられるよりも、膣壁を抉るように進ませた方がいいようで。奥まで入れると、痛いだけのようだ。だからこそ。
「ひゃんっ――またっ、っ、いっ。ひど、いよっ」
 奥を重点的に突いた、先程のお返しだ。
 奥を突かれると痛みも強いがその分、快感も強いらしく、リラの小さな肢体が激しく悶えた。
 痙攣し、いちいち表情を歪めるリラに、なんだか愉しくなってきてどんどん攻める動きが激しくなっていくのが自分でも分かった。
「ねえリラ気持ちいいの? ねえ答えてよ、ねえ、ねえ」
 リラの胸を撫でながらいうと、リラは涙ぐんだ目で私を責めた。
 リラの気持ちなど、応えてもらわずとも、手に感じる心臓の鼓動で理解できた。
5929-2/9 ◆DppZDahiPc :2007/07/07(土) 02:44:20 ID:xIArd9B9
 だから、それまでの身勝手な責め方から変更し、リラが気持ちいように膣襞を抉ってやる。
 リラは手で、顔を隠し、言葉を洩らした。
「も、……だめ」
 リラの身体が一段と激しく痙攣し、リラは勢いよく尿道からおしっこを飛ばし、ベッドへ、なにより私の顔へかけた
 リラの熱い迸りに、私はそれが汚いものだと判りながらも、何故か少しだけ嬉しかった。
 それが何故なのかわからないけれど、
「お漏らししちゃったね」
「……ばか」
 というリラがとてもいとおしい存在に想えた。
 私はリラの唇に唇を重ねると。
「じゃあ、今度は私にして」
 と言い、リラが嬉々として目を光らせたのを見て。
「でも、先にお風呂に入ろう。臭いままじゃいやでしょ」
 そういってベッドから降りた。


  完
593 ◆DppZDahiPc :2007/07/07(土) 02:46:41 ID:xIArd9B9
先生! エロい文章の書き方も判りませんが、
行数が横に出るエディタ使ってるくせに、総レス数間違えた自分の脳みそが理解できません!

以上、保守。
594名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 18:06:34 ID:XeKURn6w
GJ!
なんと言うクォリティwww
これはもう既にエロパロとかの域を遥かに超えているwww
595名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 06:10:50 ID:5OePNicn
アゲ
596名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 18:51:29 ID:d05hlNFO
>>593
GJ!
職人が降臨されたのにGJが一つしかないとは…。かく言う私も二日遅れだがw
597名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 00:54:04 ID:WASHpHqr
百合だ!百合だぞ!
最高だ!!
598名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 20:53:19 ID:vR0YZJnQ
599名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 05:06:28 ID:nxHSp54x
補者
600名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 14:21:44 ID:BOj/CVXV
601名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 20:13:42 ID:qsstGIeJ
普段は女に相手にもされない虚しい住人どもの巣窟か
キモヲタは、くたばれ・消えろ・失せろ・潰れろ・馬鹿・あほ・間抜け・ドジ。
ポンコツ・トンチキ・ガラクタ・クズ・ゴミ・カス・最低以下の下劣・下等種族。
劣等種族・下衆野郎・腐れ外道・邪道・外道・非道・ウジ虫・害虫・ガン細胞。
ソマン・マスタードガス・ダイオキシン・イペリット・クソブタ・悪魔・電波・殺人犯・ブタ野郎・畜生・鬼畜・悪鬼。
ライトニングロードローラーの餌食になってしまえ・マンキンEXE・欠陥住宅・寄生虫・大虐殺者。
邪気・邪鬼・ストーカー・クレイジー・ファッキン・サノバビッチ・原爆・水爆・核ミサイル・シット・ゴキブリ・ガッデム。
小便・便所の落書き・サルモネラ菌・サディスト・不要物・障害物・産業廃棄物・邪魔者・除け者・不良品・カビ・腐ったミカン。
土左衛門・腐乱・腐臭・落伍者・犯人・ならず者・いんぽ・チンカス・膿・垢・フケ・化膿菌・О157。
放射能・放射線・鬼っ子・異端者・包茎・妄想・邪宗・異教徒・恥垢・陰毛・白ブタ・愚か者・下水道。
ケダモノ・ボッコ・ろくでなし・VXガス・ヒ素・青酸カリ・地獄逝き・ウンコウマー・監獄・獄門・さらし首。
打ち首・市中引きずり回し・戦犯・絞首刑・斬首・乞食・浮浪者・ルンペン・物乞い・下等生物・アフォ。
放射性廃棄物・余命1年・アク・割れたコップ・精神年齢7歳・裁判は必要なし。
不良品・規格外・欠陥品・不要物・チムポの皮が3メートル近くある・糞スレ・埃・掃き溜め・吹き溜まり・塵埃・インチキ・居直り。
ふてぶてしい・盗人・盗賊・残忍・残酷・冷酷・非情・薄情者・ガキ・クソガキ・哀れな奴。
ファッキン・ガッデム・サノバビッチ・シット・ブルシット・ボロ・反省する気も謝罪する気もゼロのDQN・ボッコ・妄信。
狂信者・有害物質・毒薬・猛毒・発ガン物質・誇大妄想狂。他人の悪口は山ほどほざくが反省は一切しないガキ根性野郎・腐れ根性。
腐って歪んだプライドの持ち主・狭量・ボケ・ボケナス・アホンダラ・たわけ。
怠け者・無能・無脳・狂牛病・脳軟化症・思考停止・アメーバ・単細胞・蠅・蚊・カビ・排気ガス。
腐敗・膿・下劣・下等生物・劣等種族・クレイジー・マッド・ストーカー。
人格障害・守銭奴・見栄っ張り・ええ格好しい・粗製濫造品・偽物・似非・ブォケ。
イカレ・乞食・浮浪者・ルンペン・狼藉者・放蕩息子・道楽息子・極道息子・要らぬ存在・ヘッポコ。
迷惑・困りもの・厄介者・村八分・異端者・アウトサイダー・死人・水死体・お前はもう死んでいる。
ナチスドイツ・アルカイダ・ビンラディン・三菱自動車・麻原・731部隊・ポルポト派らと同類。
宇宙一馬鹿で間抜けで弱い種族と同類・下品マン、ギロチン、永遠地獄行き、
ฺღ〠ᩬǛとか意味不明な言葉を発する種族と同類。
他人にばっかり迷惑をかけて自分は迷惑をかけられてないのに.くらいの反省すらしない馬鹿餓鬼。
クソガキ、悪趣味、麻薬売人、首飛び、違反行為、エログロ好き、池沼。
王様に迷惑、伝説に伝わる程の馬鹿、壊れたフロッピーディスク、激極大癌細胞。
しつこいコケ、キモヲタ、グロヲタ、エロヲタ、異常な売買、客としてキムチ.ぐらいも渡せない。
\_WW/|WWWWWWWWWWWWWW/
≫そして、こんな数の悪口を考え、≪
≫作る精神と体力が.ぐらいもなく ≪
≫馬鹿という悪口すら言えないグズ≪
/MMMMMMMMMMMMMMMMM、\
    ∧_∧
    (  ´A`)
    (     )
    |  |  |
   .(__)_)
602名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 19:24:47 ID:Jyn8q5/k
>>601
ツンデレまで読んだ
603名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 22:13:52 ID:sNBGhq5D
ライトニングロードローラーって何だろうな。かっこいい。
604名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 17:44:25 ID:LY526u6d
>>603
よく見つけたなwww
ほんとだww カコイイww
605名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 18:11:59 ID:00ObQZOn
ライトニングロードローラーだ!
606名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 02:53:08 ID:hBxQWNCF
屁種
607名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 09:42:48 ID:iGw/3Cs2
 ガッデム・ボッコ・クレイジーとか二回出てきているのがいくつかあるな。字数稼ぎかな?
 あとガッデムとか三菱自動車とか今ひとつ悪口として分からないものもある。

 なんか見ていて中学校のころ隣に住んでた女の子を思い出した。
 当時小学校ぐらいのその子はいつも俺に遊んでくれとねだってきていたな。
 でもいつも遊べるわけじゃなくて、そんなときは彼女にひたすら罵られたんだが、小さい子供のいうことだから今ひとつ悪口になりきっていないところとか同じ言葉を繰り返すとかそういうところがあったんだ。
 友達とか見たことなかったし、今考えると寂しかったんだろうな。
608名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 09:53:44 ID:vknAnOzF
それ依存フラグだな
609名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 17:50:50 ID:88/MFZFt
>>607

.      ,.r''´      ; ヽ、
    ,ri'  、r-‐ー―'ー-、'ヽ、
   r;:   r'´        ヽ ヽ
  (,;_ 、  l          ::::i 'i、
 r'´    i'   _,   _,.:_:::i  il!
 ヾ ,r  -';! '''r,.,=,、" ::rrrテ; ::lr ))
  ! ;、 .:::;!    `´'  :::.   ' .::i: ,i'
  `-r,.ィ::i.      :' _ :::;:. .::::!´
     .l:i.     .__`´__,::i:::::l
     r-i.     、_,.: .::/
      !:::;::! ::.、     .:::r,!
     l::::::::ト __` 二..-',r'::::-、
     l;::i' l:     ̄,.rt':::::::/   ` -、
    ,r' ´  ヽr'ヽr'i::::::::;!'´

 ソレナンテ=エ=ロゲ[Sorenant et Roage]
     (1599〜1664 フランス)
610名無しさん@ピンキー:2007/07/24(火) 12:44:45 ID:HwkH1EEj
>>607
早く連絡を取れ。今ならまだ遅くないかも試練
611名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 04:45:57 ID:DGXcwKNa
保守
612名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 13:20:54 ID:EkOUgvb9
つーかこのスレ見てるやつ今何人居る?
613名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 14:45:41 ID:8MWqe+3E
少なくとも、三人以上。
614名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 15:06:34 ID:WOiNjekp
おるよ
615名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 18:40:08 ID:tEi2cccM
俺も俺も
616名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 19:34:42 ID:d/LBHIdv
617名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 19:41:30 ID:7jtCShDx
ノシ

素直スレの同級生(略
618名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 19:43:52 ID:7jtCShDx
は良い依存だと思う

スレが切ないのは
デレ≒依存
でアッチが盛況だからかねぇ
619名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 01:37:37 ID:08M/lKVT
圧縮前ほーしゅ。
620名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 22:41:25 ID:H1o/blrY
ニャ━━━━ヽ(゚∀゚)ノ━━━━ン!!
621名無しさん@ピンキー:2007/07/30(月) 21:31:18 ID:Iwp6O8ra
刻が見える
622名無しさん@ピンキー:2007/07/30(月) 21:56:32 ID:moBV2WSP
結構良くみる台詞だが大本は何なんだろうか?
623名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 11:55:53 ID:J/VQ72Ph
>>622
 ファースト・ガンダ無
 ララァ・スン嬢のお言葉より
624名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 11:59:04 ID:/ohhm7+f
>>623
dクス
625名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 04:29:42 ID:XP3GrdhC
何気に毎日覗いてるなぁ
626名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 20:28:24 ID:XzY0Muq/
俺も。
気の強いヒロインで書いてくれないかな〜
627名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 23:24:18 ID:aJlsL6h/
人はいるのに新作がこないってのが悲しい…
628名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 02:49:56 ID:Tp6wYkxD
携帯ロム厨の俺が保守アゲ
629名無しさん@ピンキー:2007/08/11(土) 01:07:31 ID:+Y+Yc9ZN
あげてみる
630名無しさん@ピンキー:2007/08/14(火) 20:22:36 ID:L0YrZriI
保守age
631名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 02:12:25 ID:VfM+guZa
携帯からのカキコは初めてなもんで(これで本当に下げてんのかどうかすらわからん)、うまくいかないかもしれんが・・・、とりあえず投下。
632名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 02:13:25 ID:VfM+guZa
「別れよう・・・」
 ガシャン、という音がした。下を見ると、私が今まで持っていたコップが、みるも無残に砕けていた。
「な、何でそんなこと言いだすのよッ!」
 表面上だけでも虚勢を張ったが、それもいつまで持つかわからない。
「お前の父さんから聞いた。縁談、あるんだってな」
「だから何なのよッ!?」
「わからないのか?縁談がある人に、彼氏がおかしいんだよ。だから、俺と別れろ」
 さっきより強い彼の口調に、私は思わず口をつぐんでしまった。しかし、このまま黙っていれば、私が黙認したことになってしまう。
633名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 02:14:27 ID:VfM+guZa
「い、いやだ!」
「お前・・・はぁ」
と、彼は困ったように嘆息する。
「何で、なんで縁談があるからってアンタと別れなくちゃいけないの!?」
 別れる、という恐怖に耐えられなくなって、ついに私は涙を堪えられなくなってしまった。
「私は、ぐずっ、アンタの事が、ひぐっ、死ぬほどすきだよぅ・・・えぐっ、私は、アンタがいない、ひぐっ、と生き、ていけないのに、えぐっ、嫌だよぅ・・・ぐずっ、別れるのだけは、ひぐ、絶対いやぁ・・・」
 私がそう言うと、彼は辛そうな目をしながらも、
「別れよう」
と言った。
634名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 02:16:34 ID:VfM+guZa
 私の中で、何かが切れた。私は、近くにあった果物ナイフを手に取った。それは、この前買ったばかりで、まだ切れ味は相当良かった。
 私がその切っ先を自分に向けると、彼の顔色が変わった。
「お、おい・・・」
「アンタが、えぐっ、どうしても別れるっていうんなら、ひぐっ、ここで死んでやるッ!!」
 そして、目をつぶり、自分目がけて包丁を突き立てた。
 ぐしゃ!、という肉を切り裂く音が耳に入る、がしかし、自分の体にナイフが突き立った感触はない。
 恐る恐る目を開けると、そこには信じられない光景があった。
635名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 02:17:39 ID:VfM+guZa
 彼の腕に、ナイフが刺さっていた。完全に貫通している。そこからは、真っ赤な血がどくどくと・・・。
「い、いやぁ・・・な、なんで・・・」
 腰が抜けてしまい、すとん、と床に尻餅をついてしまった。
 床は血で真っ赤。私のお気にのブラウスも真っ赤。彼の体も真っ赤・・・。
 突然、バタン!という音と共に彼が倒れた。彼の顔は、腕からあふれる血とは対称に青白くて、今にも死にそうで・・・。
「いやだぁ!起きて!起きて!やだやだやだやだやだ!私を一人にしないで!私の所為で死なないで!」
636名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 02:24:12 ID:VfM+guZa
 もう、僕の力じゃここが限界です・・・・・・orz
 非常に拙い文章のうえに、30分で書いたことがバレバレの浅はかなストーリーですみませんでした。
637名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 02:53:43 ID:thLtn+NQ
>>636死ね。頼むからもう二度と投下もカキコもしないでくれ。

本当に不快な気分になったからさ。
638名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 03:30:28 ID:+er3rQTV
>>637
クレクレ野郎の癖に態度だけはデカいんだな。
お前が死ねwwwwwwwwww
639名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 08:02:31 ID:YaSRL00E
せめてヤンデレか修羅場スレに投下するべき内容だったな。
640名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 14:09:12 ID:Iw13pV6l
>>636
謝るぐらいなら書くな
貴方は神(職人)が見捨てたこのスレに、どのような文にせよ投下したのだから。
誇る事は出来なくとも謝る必要は無いはずだ。


あ、でも誤字脱字はそれ以前の問題な。
ストーリーや文章力の是非はおいといて、携帯だからといって推敲しないのは論外。
>>632
>縁談がある人に、彼氏がおかしいんだよ
641名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 17:31:06 ID:3WBcHzMl
SSを投下したい気持ちと大まかなプロットはあるんだけど、
今まで短い小ネタみたいのしか書いた事無いから
エロを含めたある程度長いSSを書けるかどうかが不安でたまらん。
642名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 18:16:33 ID:XWJrwDh9
メモ帳開いてまずは、書け
そしてえぐり込むように、推敲
一晩と言わず3日は寝かせて
自信が無かったら、ひたすら音読
無理に長くしなくても短いSS、十分結構
中途半端なエロを無理矢理ねじ込んだ尻切れ蜻蛉より全然桶

萌え〜なほのぼの微エロスキーな自分が言っても
全然説得力ないかもしれんが、神の降臨を心より待ち望む
只、度重なる誘い受けは勘弁な
643名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 12:40:22 ID:w4ssBgCt
保守
まだ沈ませんぞぉ
644名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 20:19:52 ID:z/m1iVDb
クレクレのくせにえらそうなやつがいるから過疎るんだよ・・・
645名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 20:02:29 ID:tcWh85lt
依存キャラがいるネット小説知らね?
646名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 03:26:08 ID:NNi2Qwzj
hisavisaに来た俺に三文字以上二文字以内のお題プリーズ
647名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 03:28:17 ID:NNi2Qwzj
ごめ……誤爆orz
648名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 21:07:27 ID:hd5/dIF0
>>646

マジレスしてやるぜ



物理的にミリだwww
三文字以上二文字以内ってどうしろとwww
ってかどんな感じで書けばそうなるか教えてくれwww
649名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 21:45:42 ID:BSd4zwwH
    _
イ衣イ子

これなら3文字以上使っても文意は2字だぜ
650名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 04:37:41 ID:xkToCdBQ
なんかどこに書くべきかよく分からん内容になったけど、
このスレを愛してるのでここに。
短いしエロ無いけど、次はもっと長い尺でヤるので許して下さい。
こういうとこに書くのなれないので
改行で読み難かったらごめんなさい。

「何時?」
鈴の震えるような、か細い声が、饐えた匂いのするこの部屋に響いた。
問われて俺は、古い映画を映すモニターから目をそらさずに答える。
「三時」
古い映画は好きだった。何でかは分からない。
青みがかったフィルムの向こう、売女が笑う。
「あたしお腹すいた。サクちゃんは?」
衣擦れの音、足音、一定のリズムでぱたぱたと響く。
「食べ物は」
リモコンをぱちぱちと弄り、映像を
いったん止めてから、声の方へ歩む。
「ないよ」
少女は小さな頭を振って、黒く長い髪を揺らす。
それが近づいた僕に当たって鬱陶しい。
大きく可愛らしい目、長い睫毛。
食べ物がないと分かるや否や尖らせた口。
「買ってこようか」
「いいよ。あたし外出たくないし」
少女はふるふるとその頭を振って、振って僕の申し出を拒否した。
栄養なんか微塵もとってないような矮躯、
発育の悪さが如実に出た低身長。
遺伝だと少女は言うが、僕は彼女の家族を
見た事が無いので何とも言えない。

「だから僕が買ってくるって言ってるんだけど」
少女は大きな目で僕を見上げて眉根をよせる。
「あたしを残して? だめ、絶対だめだからね」
僕は安心すら覚えた。彼女が僕に、依存してくれている事に。
それは異常だと、大学の知り合いにも言われたりした。
しかしお互いが望んでいて何も困ることなどない。
ある意味これが幸福の形なのだ、僕らにとっての。
少し、だけど、少しほんの少し、僕は嗜虐心をくすぐられた。
その少女の、ひた向きに注いでくれる愛情に対して。
「残してくって言ったら? それでもう帰ってこなかったらどうする?
 僕がさぁ、外に出て車に轢かれでもしてさぁ、
内蔵とかいっぱい出ちゃってさあ」
少女の目には、みるみる雫がたまって行く。
それでも僕はやめない。
「そ、そしたら、あ、ああ、ああたしは全部拾ってくるもん。
……な、内蔵だって、さくちゃんのなら温かくて
良い気持ちに違いないからっ」

狂ってる、のは僕も同じに違いない。
僕は少女を抱きしめて「愛してるよ、ミカ」とささやいた。
651名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 04:39:45 ID:xkToCdBQ
うわもっと横長くて大丈夫なのか…すいません。
652名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 06:50:22 ID:0AVN2GZ4
かわいいな…GJ

しかし某大統領夫人を思い出すな
653名無しさん@ピンキー:2007/08/28(火) 12:42:32 ID:YOgH/Qo2
GJ!!
654名無しさん@ピンキー:2007/08/29(水) 19:31:55 ID:iH1N9bAm
 いい病み具合依存具合。
 待ってた甲斐があったぜGJ!!
655名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 19:38:46 ID:VGywtP9V
保守ねた投下
656名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 19:39:41 ID:VGywtP9V
「お待たせしました〜杏仁豆腐です」
今日は仲間で集まっての飲み会だ。
テーブルに散らばるグラスを除けて杏仁豆腐の置き場所を作る。
「おい、デザート来たぞ。頼んだやつ?」
しかし殆どの奴らが死んでるらしく返事しない。
「たくよー、食っちまっていいのかな……?」
「うぅ……杏仁豆腐?」
陽子が、よろよろと肩に寄りかかってくる。
「お前が頼んだのか?」
「あたし……?」
コイツも結構呑んだな……。
「頼ん……だ気がする………」
「食うか?」
「……む、むり」
「そうか、まあ無理はしなくて良いぞ」
おれは小皿に杏仁豆腐を掬い、箸でつまんでは食べる。
一人で食べるには、ちょっと大変な量な気もする。
「あたしも……食べ………る」
「んん? でもさっき無理って言わなかったか?」
「優太だけに、食べ……させたら、悪い……から」
「わかった。じゃあ小皿はここに置いておくぞ」
おれたちは二人並んで杏仁豆腐をつつく。
しかし食べても食べても白い四角い奴は減らない。
陽子は、おれにしなだれかかりながらも箸を口に、よろよろと繰り返し運んでいく。
「なんで杏仁豆腐を頼んだんだ?」
「ごめん……」
「……すまん。まるで責めるような言い方になってしまったな」
「いいよ、気にしない。……杏仁豆腐を頼んだのはね」
「うん」
「ほら、ここ来る時、ここの杏仁豆腐がおいしいって話をしたじゃない」
「言ったなあ」
「それで………」
「それだけ?」
「………うん」
それだけか。
「優太は、さ。おいしいって思わない?」
「流石に、この状況じゃな」
「そっか……そうだよね」
陽子は少し酔いが覚めたようだ。

おれらは、ようやく杏仁豆腐を食い終わり皆を起こして解散した。
泥酔状態だったように思うのだが、寝てたおかげなのか、それとも一時的なものなのか
みんな割かしピンピンとした状態で駅に帰っていった。
それに比べおれたちはヨロヨロだ。特に陽子は酷い。
657名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 19:41:02 ID:VGywtP9V
夜空を飾る星々が綺麗だ。酔った頭には特にそう思える。
「夜道を歩くのも悪くねぇなぁ。
 飲み会はハードだったけどさ、ふらふらと自宅に向かうのも良い気分だ。
 ほら、見てみろよ陽子。あの星なんて言うのかな」
おれの肩を借りて歩く陽子が顔を上げる。
「どれ?」
「あれだよ」
「あの辺? さあ………なんて言うのかな……」
空を見上げる陽子の目にも星は輝いていた。しかし、直ぐに陽子は俯いてしまう。
「ごめんね」
「なにが?」
「杏仁豆腐。大半食べてもらっちゃって」
「そんなこと気にす――」
「気にするよ。だって優太には助けてもらってばかりだし」
「………」
「今日だけじゃない。いつだって優太は私に良くしてくれる。それなのに私は……」
「陽子……」
「本当に迷惑掛けちゃってごめん。本当にごめんね。
 だけど………だけど優太ぁ……私を見捨てないでぇ……」
急に涙する陽子におれは戸惑ってしまう。
「見捨てるとか、そんな訳ないだろ」
「本当に? 私迷惑ばかりじゃない?」
「おれら長い付き合いだろ。なにを言い出すかと思えば………」
「う……うぅっ、信じて良いんだね優太ぁ………」
「まだ酒が残っているようだな? 大体おまえが迷惑掛けるのは昔からだろ?」
「……優太のばかぁ」
ハハ、とおれは笑う。

「なにも気を揉む必要なんてないのさ。
 陽子を送ることを面倒に思うわけないだろ。家は直ぐそこなんだし」
「もしも私が遠く離れた家に住んでいたら?」
「引越しでもするつもりか? ま、それでも送ってやんよ」
「優太………」
「ほら、もっと掴まれって」
「うん」
陽子は、おずおずと体を寄せる。
そうしておれたちは肩を並べて夜空の下を帰っていったのだった。
658名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 19:43:36 ID:VGywtP9V
依存具合が足りない……
けれども保守ネタだから勘弁してくれ
659名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 02:38:44 ID:/t23LfAy
いえいえ、いいもの読ませていただきました
よりかかっているような感じが良いですね
GJ!!
660名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 23:10:00 ID:VlpIhV5k
需要過多だな、このスレ。
何回か人大杉になったし。。。
661名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 23:21:44 ID:avwxSrRN
専ブラはどうした。
662名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 00:05:59 ID:eK4jBgB3
>>661
あまり2cnやるわけじゃないから入れてないんだ。
便利?
663名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 01:31:07 ID:9Hj9dmGF
便利
664名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 07:46:47 ID:Fquo3zId
便利だし負荷軽減にもなるから出来れば使ったほうがいい
665名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 20:51:00 ID:j8HMDTAy
保守
666名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 23:49:09 ID:b9MZY+OY
もうすぐこのスレも一周年age
667名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 18:15:20 ID:iLS9LmrM
保守
668名無しさん@ピンキー:2007/09/20(木) 00:51:57 ID:JlR2caxj
それでもGJと言わせてもらうぞ!
669名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 15:27:54 ID:L7vY0zU0
保守
670名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 13:52:46 ID:3eQyx+IJ
ネタ探しに「教えて!goo」の恋愛相談を覗いてみたけど「依存」についての質問結構あったな。
4995件だって。


保守
671名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 13:43:15 ID:28DfMQAA
無口な女の子とやっちゃうエロSS 二回目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1179104634/

の599から依存系のSSが投下されてた
672名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 13:53:39 ID:28DfMQAA
スマン
ageてしまった
673名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 14:36:33 ID:fdzsi/D8
男のほうが依存とは予想外だった
674名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 21:21:15 ID:GtTsZFgy
男依存と見せかけて妹はさらに上を行ってたなw

しかしSSは書きたいが依存とヤンデレとの境界がよくわからん。
このスレ的には依存が行き過ぎて病んでしまうのはNGなんだっけ?
675名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 22:45:42 ID:Nkcfh9xq
NGではない。というか明確な境界は無い。
ここのスレは依存があればOKだから、ヤンデレと重なる部分も出てくる。
676名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 23:13:52 ID:NRynbSuH
>>674
ヤンデレは男に身体的ダメージを与えるのを許容されているみたいだが、
依存女は、精神的ダメージはともかく身体的ダメージを与えない方がいいと思う。
677ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/09/26(水) 00:39:52 ID:JJ8lnjlY
<社長秘書>

まったく。
世の中、不景気ねえ。
私も遊び疲れたし、そろそろ適当な男を捕まえて家庭にでも納まるかと思ったけれど、
気がつけば、いい男どころか、まあまあの男さえ見なくなっちゃたわね。
セレブ主婦になっちゃえば、もう一生安泰、遊び放題、
年収三千万くらいで妥協してあげるっていうのに。
仕方ないから、転職して大企業に転がり込んだ。
「この街の人間の半分はそこに勤めていて、残りの半分はそこ相手の商売をしている」って大会社に。
すぐに秘書課に配属されたのは、まあ、当然ね。
私、美人だし、頭もいいから。
でもまじめに働くのは面倒くさいのよね。
お偉方の誰かとっ捕まえて愛人にでもなるか。
いざとなれば、その証拠ちらつかせて強請ってやればいいし。
と、思っていたら、いいネタを見つけた。
ここの社長、浮気してる。

相手は、秘書課に配属されたとき、私の事をすごく冷たい目で眺めた、社長秘書。
眼鏡が似合う美人だけど、まあ当然、私のほうが上だ。
歳だって、もう三十路いってるんじゃないの、大年増もいいとこよ。
秘書課の中でも、なんか「別格」みたいに振舞ってるのに、
古株の他の秘書も、見てみぬふりをしている。
社員は着用が義務付けられている名札も、この女は付けてないし、
名前で呼ばれないで、「あの方」とか「あの人」とか言われてる。
他の秘書は、こうして秘書室に全員集められて、
役員のスケジュールを集中的に管理しているって言うのに、
あの女だけ、社長室に机用意されていて、四六時中そこにいる。
私は、こんな女くさい、うざったいところの末席で愛想笑いしてなきゃいけないのに、
あのクソ女だけ特別待遇。あー、思い出しただけでもなんかムカつく。
678ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/09/26(水) 00:40:33 ID:JJ8lnjlY
あの女、絶対社長と寝てる。
こないだ、女子トイレで会った。
このフロアには、役員用の女子トイレもあるんだけど、
ここの会社、女の役員って会長以外いないのよね。
だから、誰も使わないんだけど、広いし、綺麗だし、私、こっそりここ使ってる。
誰も使わなくたって、お掃除は毎日されてるんだから減るもんじゃないし。
で、用を足して、個室から出たら、あの女とばったり。
あいつ、眉をしかめてなんて言ったと思う?
「ここは、役員専用よ」
自分だって使ってるじゃない。
社長秘書は、役員待遇のつもり?
あとで、古株の秘書に、チクってやったけど、
あいまいな笑いを浮かべて「あの方はいいの」って返事。
とことん、別格扱いで、めちゃくちゃムカツクわ。
で、あの女、私にそう言ったあとは、もうこっちも見もしないで、
鏡に向かって、お化粧直しを始めたんだ。
目をそらしてその脇を通り抜けるとき、――ザーメンの匂いがした。
まちがいない。
あれは、男の精液の匂い。
良く見れば、あの女、口紅を塗りなおしていた。
社長室で、フェラチオでもやっちゃってたのか。
あんな「私は貴女たちと違うのよ」って顔してて、よくやるわ。
あの「別格」気取りも愛人だから? 
マジ、ムカツク。
一瞬、あの社長寝取ってやろうかと思ったけど、
ちょっと調べたらここの社長、婿養子ってことがわかってがっかり。
会社の実権は、ふだん会社に姿を現さない
──会長室はあるんだけど、居るのを見たことない──
会長が握っているみたい。
愛人になっても旨味はないわけよね。
679ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/09/26(水) 00:41:15 ID:JJ8lnjlY
だけど、いいこと考えた。
これ、写真に撮って強請れば、いい金になりそうね。
ここの会長って、代々この街の支配者で、やくざともつながりがある家だから、
婿養子社長としたら、絶対バレちゃマズいわよね。
実権ないらしいから、あまりお金持っていないかもしれないけど、
五百万か、一千万くらいは出すでしょう。
ついでに、世界中の人間をジャガイモかカボチャに見ているような
あのクソ女のこともハメられるし。
一石二鳥だわ、ああ、私って頭いい!
……ということで、私は、頃合を見計らって社長室の前に立った。
おあつらえ向きに、分厚い樫のドアには僅かな隙間が開いていた。
カギもかかっていないということだ。
隙間にちょっと耳を寄せる。
「……気持ちいいですか、……さん」
あの女の声。
だけど、それは、別人かと思うくらいに甘く、可愛らしく、媚びを含んだものだった。
「出しても、いいんですよ。我慢しないで、いっぱい……」
僅かだけど荒くなっている呼吸に溶けている甘さ。
女なら、誰でも知っている、あの状態の声だ。
私は、ドアに手をかけ、それを勢い良く開けた。

「……な、何だ、き、君は……」
婿養子どのが素っ頓狂な声を上げる。
かまわずに、携帯で写真を撮る。
「……浮気の現場、押さえましたわ! さあ、社長さん、いくらでこのデータ買い戻します?」
「……?!」
口をあんぐりと開けた社長のバカ面。
──いや、ちがう、この弛緩ぶりは……。
「んっ……んっ……」
その股間に顔をうずめた女が、微塵の動揺も見せずに「続き」をしていた。
680ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/09/26(水) 00:41:59 ID:JJ8lnjlY
「……」
私は、呆然とフェラチオを続ける女を眺めた。
たった今、身の破滅のネタを写真に撮られた社長秘書は、横目で私を眺めた。
いつもと同じ、ジャガイモかカボチャを見るような目で。
すぐに視線を戻した社長秘書は、上目遣いで社長を見つめた。
「あっ、ちょっ……も、もうっ……!!」
社長が身を捩った。
女のような悲鳴を上げる。
その反応を心得ているように、女が舌と唇を使った。
ちゅるる、ちゅるっ。
じゅぽっ、ずるるっ。
風俗の経験もある私でさえ、顔を赤らめるような音を立てた瞬間、
婿養子社長は、女の口の中に射精を始めていた。
「〜〜〜っ!」
快感に身もだえする社長が、女の頭を抑える。
抵抗する素振りも見せず、秘書は口内射精を許した。
こくん、こくん。
女秘書は、ためらいもなく精液を飲み下す。
世界中の人間を見下しているような美女のそんな姿は、
女の私でさえも、ぞくりとするほどに淫らで、妖艶だった。
「……うう……」
上り詰めた後の脱力感にがっくりと肩を落とした社長がこちらに関心を戻すより早く、
女秘書が立ち上がった。
ハンカチで口元を拭いながら、私を一瞥する。
「……それで、何の用なのかしら?」
先ほどの痴態とは絶対に同一人物と思えない冷たい声に、私は我に返った。
「あ、あんたと社長の不倫現場を取らせてもらったわ。
会長に知られたくなければ……わ、分かっているわよね?」
681ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/09/26(水) 00:42:42 ID:JJ8lnjlY
「……え?」
社長が、間の抜けた声を上げた。
ズボンとパンツはまだ下ろしたままの情けない格好だ。
「啓太さんを、強請る気?」
「……な、名前で呼ぶとは、随分なご身分ねえ。
この不倫、会長に知られても、その余裕顔でいられるかしら?」
「え、ちょ、ちょっと君……」
社長が目を白黒させる。
何か言いたいらしいが、まあ、そりゃそうだろう。
私は交渉をはじめるべくそっちを向こうとして、……それが出来なかった。
社長秘書の視線に射すくめられたから。
「私に何を知らせてくれる、ですって?」
眼鏡を外しながら、秘書は静かに聞いた。
あれ。
この顔、どっかで見たことある。
たしか、社長のことを調べようとして読んだ雑誌で。
このグループを切り盛りしている、会長の特集の号の。
でも、それって……。
「私が、社長室で啓太さんにフェラチオをしていて、何か不都合なことがあるのかしら?
……啓太さんの妻で、社長秘書、兼、会長のこの私、道明寺志穂理にとって?」
溺愛する夫といちゃつく時間を邪魔されたこの街の支配者は、
悪魔よりも恐ろしい目で私を睨み見つけながら、そう質問した。
682ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/09/26(水) 00:43:22 ID:JJ8lnjlY
そう。
あとは、よしなにお願いね、敷島。
あの女のことは、お任せするわ。
ええ、私の母が、貴女のお母さまを信頼していたと同じくらい、
私も貴女のことを信頼していますもの。
きっと、私の気が済むように取り計らってくれると思っているわ。
うちの会長秘書は、とっても有能ですもの。
では、お願いね。

ああ、啓太さん、全部済みましたわ。
時間をずいぶん、無駄にしましたね。
さ、続きを、しましょう。
お口で一回しただけじゃ、満足していないのでしょう?
ほら、さっきから、おち×ちん、ビンビンじゃないですか。
うふふ、次は私のここでしたいですか?
いいんですよ。
私は啓太さんの奥さんですから、
啓太さんは、私のおま×こをいつでも自由に使っていいんです。
夫婦ですから、社長室で毎日昼間っからセックスしててもいいんです!
え? 仕事ですか? 大丈夫ですよ。
啓太さんの今日のお仕事は、あと10枚、書類に社長印押すだけです。
始業前に、全部私がチェックしてありますから。
あ、今日は、一時間おきの休憩時間にセックスしていいですよ。
その後は、帰りに私とデートして、お家に帰って晩御飯食べて……。
うふふ、今日は啓太さんの好きなビーフシチュー作りますね。
それから一緒にお風呂に入って、後は……うふふふふ。
ね、啓太さんのスケジュール管理は、完璧ですよ。
だって、私、啓太さんの秘書ですもの。

               fin
683名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 01:16:03 ID:lhw4PbVJ
俺が人生初の一番槍GJをゲットォォォォォォォ!!!!!1111
684名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 02:35:58 ID:cKJYZNsg
GJ
秘書なら会長の顔ぐらいわかれw
685名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 04:25:25 ID:TZ2RB+uq
GJ
やっぱりゲーパロさんの作品はいい!!!
686名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 08:13:29 ID:2U3/95II
オモロイ…けど…依存?
687名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 15:07:12 ID:ioFL0C4j
GJ!
相変わらずこの嫁さんはこええw
これだけだと依存っぽくないけど、前の話も含めて考えると、もっと見えてくるかな
688名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 22:42:37 ID:As6eki8r
きたああああああああああああああああああ!
GJ!
689名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 23:19:25 ID:wkSKdZnN
>>687に言われるまで気付かんかった  orz
690名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 01:59:31 ID:ib+nH67x
ダメ社長化してる元公務員男にワロタ
691名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 11:11:04 ID:OdRiXIsl
GJ!! 相変わらずの嫁だなw
692名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 19:28:22 ID:epZYNmEy
GJ!!なんという神っぷり!
693名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 03:57:21 ID:QNdqJCP+

694名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 19:39:31 ID:dRQc/K5s
↓ここで話題を提供する勇者↓
695名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 19:48:28 ID:w/47IUVy
最初に言っておく!




特に言う事は無い!
696名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 19:53:11 ID:hZN1yPQ6
デネヴキャンディ置いてとっととカエレ
697名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 19:58:58 ID:w/47IUVy
ごめん、調子こいた

「契約が果たされるまで、絶対に離れないからね」
「何で私と契約してるのに、他のと契約するのよ!」
「あなたと契約していいのは私だけ……私だけなの!」

契約と依存を無理やり捏ね合わせて見たけどダメだな!
698名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 21:01:30 ID:bmXBAHPT
↓ここで話題を提供する勇者↓
699名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 22:28:03 ID:9u7zz0r5
↑まさに依存↑
700名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 22:31:30 ID:c+sM+2o3
ここの方向性がイマイチ分からないんだけど、
ダメ亭主を影ながら支える良妻を性別だけ反転させたって感じなのか?
精神的な依存だとヤンデレとかと被るよな

「……うはよー」
「お、起きたか。んじゃ、その辺にでも座っとけ。もう少しでメシ出来るからな」
「うん、いつもあいがとー」
「冷蔵庫にはロクなの無かったからテキトーに作ったチャーハンだ。味はほしょーしねえから」
「……もぐもぐ……じょぶじょぶ、だいじょーぶ。今日もおいひいよ」
「ん、そか」
「…………」
「…………………ん?」
「…………んーん、何でもないよ。ただアタシって、キミがいないと死んじゃうんだろーなってさ」
「……ああ、餓死か。ならメシぐらいテメーで作れよなー」
「違うよ。あ、いや違わないけどさ。餓死もあるけどさ……」
「なんだよ」
「んとね、んとね」
「はっきりしないヤツだなー」
「……くて死んじゃうよ」
「――え?」
「うー……、寂しくて死んじゃうって言ったの! もう、この話はもーお終い!」

こんな感じか?
文才なくてスマン
701名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 22:34:26 ID:yI3bFee6
今眩い光を目の当たりにした。
702名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 00:22:31 ID:x4G6dnn7
目!め、メガーッ!ギガーッ!
703名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 05:54:16 ID:e8G0Q81H
萌える
704名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 08:10:16 ID:SSiLoa/y
>>700

良妻が、ダメ旦那に
「この人は私がついていないと……」
って形で依存している可能性も……
705名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 20:01:54 ID:FYFkusQ/
>>704
なんでだろう・・・
どこと無く泥沼可しそうな悪寒が。。。
706名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 20:56:33 ID:Zjg8KATU
「この人は私がついていないと……」
「こいつには俺がついていないと……」
こうですか?わかりません!
707名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 00:36:29 ID:rYkJxNi7
>>704
それは、母性本能というか保護欲というか、ともかく依存とはチョイ違うような…
708名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 00:43:25 ID:WKbjCDsA
分かってないな、自分ではそう思ってるんだけど実はってのがいいんだろ
709名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 05:29:20 ID:Mi6Bxd+t
>>704
確かそういうのを共依存っていうはず
710名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 04:23:56 ID:9rESTEl8
今更だが>>700でほんわかしますた
711名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 17:25:15 ID:tH6XRa61
「すまん、そろそろ行くな」

「や、やだ!いっちゃヤダ!お願いだから行かないで!」

「とは行ってもだなぁ」

「わ、わたしは!あなたがいなきゃダメなの!あなたじゃなきゃダメなの!あなただけなの!」

「仕事始まるし」

「ですよねー」





依存が掴みきれない
下手したら
キシャー!とか
グサッ!とか
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいフラグが立ちそうだ。
712名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 18:23:25 ID:FL8vQ8qq
ですよねー
吹いたwww
713名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 22:19:37 ID:d6ex25qv
いいww
こんな感じのやり取り大好きだこんちくしょうww
714名無しさん@ピンキー:2007/10/09(火) 18:20:31 ID:rNf7qABt
そうか!異性への依存は煙草のようにいつの間にか頼ってしまうと言う事か!
715名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 17:52:20 ID:P9ev1G8n
「ねぇ…」

 驚いた。心底驚いた。気付いたら同棲中である彼女の依子(よりこ)が後ろに立っていた。変な汗が出る。怖い。しかし、いつまでも返事をしないわけにはあるまい。

「なんだ?」

「昨日はなんでしてくれなかったの?」

「はぁ?」

 何の事だ?昨日は普通に仕事して、普通に過ごして、普通に寝ただけだったはずだ。考慮すべき特記事項は確かにあるがそれは致し方がない事なのだ。

「昨日は私たちの一周年記念日だったのよ!私はとても楽しみにしてたの!大好きなあなたと一つになるのを心待ちにしていたの!それなのにあなたがしたのは18時20分31秒のキスだけじゃない!」

「………」

 ちょっと待て、と言おうとしたが声が出ない。依子の迫力に圧されて声帯が変に震える。

「どうして!ねえ、どうして!!私じゃダメなの!?私はあなたの一番になれないの!?私はあなたじゃなきゃイヤなの!あなたじゃなきゃダメなの!あなただけなの!あなたが好き、大好きなの!お願い…ダメな所は直すから見捨てないで…イヤ…あなたが離れるのはイヤ…」

716名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 17:53:18 ID:P9ev1G8n
 一通り糾弾し終えると依子は俺の足元に崩れ落ちた。そして、俺の足に手を回して拘束し、「イヤ…イヤ…」とジーンズに顔を押し付ける。時折聞こえる嗚咽が心苦しい。
 ああそうか、と納得する。依子は不安だったのだ。俺が良かれ、と思ってした事が知らぬ間に依子を傷付けていたのだ。
 ならば、まずは誤解を解く事から始めようじゃないか。

「いや…昨日の依子は超危険日だったしな。もし俺がお前を求めていたら大変な事になっていたと思うぞ」

 足元の依子がピクリと動く。するとプルプル震えだした。恥ずかしさを隠すように笑っている、そんな震え方だ。

 そうなのだ。昨日の依子は神様が示し合わせたかのように危険日が重なったのだった。
 これを機に身でも固めなさい、という謎の暗示だった気がしなくもないな。

 俺は取りあえず依子の頭を撫でる事にした。

 どれだけ悩んだんだろうな、コイツは。先ほどの依子の顔を思い出すと妙にげっそりしていた気がする。つまらない心配かけてゴメンな。

 1分くらい撫で続けただろうか。依子も幾分かは落ち着いたようだ。
 頃合いか?依子の肩を軽く叩き、立つように促す。

717名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 17:54:59 ID:P9ev1G8n
 そして…そろり、そろりと立ち上がり気まずそうに視線を合わせる依子。うわっ。目だけじゃなく顔全体が茹で上がったみたいに真っ赤じゃねえか。
 さあて、依子の第一声に期待しようじゃないか。

「し、ししし知ってたよ?」

 嘘つけ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「でも良かった。私の事を嫌いになっていなくて。あなたがいなくなったら私はもう生きていけないもの」

 それは俺だってそうさ。

「ごめん、さっきの言葉は取り消すね。あなたがいなくなったらこの世界を生きる意味がないの。あなたは私の一部になっているの」

 そうか…そうだな。俺もお前がいなきゃ生きる意味を見いだせんしな。

「うん…ありがとう…」

 そして依子を抱き締める。昨日から甘えたくてもずっと我慢してたんだろうな。両腕を俺の背に回してくる。苦しいくらいに。

「…すき」

 うん。

「…だいすき」

 うんうん。

「ずっと私のそばにいてね…」

 ………うん。

718名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 17:55:55 ID:P9ev1G8n
 その後の俺達の事を少しだけ語ろうと思う。

 俺は依子にプロポーズをした。あの時のような口約束だけでなく指輪も添えて。そして大学卒業を待って籍を入れる予定だ。

 近い将来、男の片腕にべったりくっ付く栗色の髪の女と、男に手を引かれている小さな女の子がいたらそれは俺達だろう。その女の子は未だお目にかかった事はないが既に存在はしてるんだ。

 …俺の隣にな。


「ずっとずっと大好きだから、あなたも私を離しちゃダメよ?」

「ああ、わかってる」

END
719名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 18:00:40 ID:P9ev1G8n
一昨日投下した>>711を元に書きました。


これが依存なのかどうかは各々の判断で。

スレ汚し失礼しました。
720名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 19:56:08 ID:dAQ2YJxS
GJ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
721ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/11(木) 21:32:39 ID:8JhgddIF
<私が私でいられる時>

「お姉ちゃん、今日の夕飯よろしくね」
電話の中から、母さんの声がする。
オネエチャン。
私は、今、この家でそう呼ばれている。
「……どうしたの?」
「ううん、なんでもない。作っておく」
「あと、彩ちゃんの明日の準備もお願い。お母さん、遅くなりそうだら」
アヤチャン。
私の<妹>は、そう呼ばれている──母さんからも。
「……母さん」
「何? お姉ちゃん?」
何の迷いもない、その声に、私は続く言葉を失った。
「ううん。なんでもないわ。やっておくから」
「そう。お父さんとお母さんは遅いから、戸締りちゃんとしてね」
オトウサン。
お母さんは、再婚した相手のあの人を、そう呼ぶ。
「わかってるわ。大丈夫」
違和感にまみれた単語の羅列からなる会話を終え、私は携帯電話を切った。

「あ、龍ヶ崎(りゅうがさき)さん……」
クラスメイトの声は耳に入っていたが、私は通り過ぎた。
聞こえなかったのでもなく、無視したのでもなかった。
ただ──その「記号」が私のことを示す名前だと思わなかったからだ。
「龍ヶ崎さんったら!」
再度の呼びかけに、私はやっとそれが自分のことを言っていると気がつく。
「ごめん、ごめん。何?」
振り向いた笑顔が、自然のもののように思われただろうか。
自信はあまりない。
722ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/11(木) 21:34:13 ID:8JhgddIF
母が再婚して、一年になる。
新しい父住む街に引っ越してから通うようになった高校には、
私の昔の苗字を知る人間はいない。
彼女たちにとって、私は、はじめから「龍ヶ崎」で、そして「お姉ちゃん」なのだ。
なぜなら──。
「彩ちゃんがね、校門で待ってるって!」
無邪気に伝えるクラスメイトに、私は身体の心まで凍りつく感情を外に出すまいと必死になった。
「彩ちゃん、明日コンクールなんですって?」
「頑張って、って伝えて!」
「応援してるからね!」
私を取り囲んで「アヤチャン」を褒め称えることばの嵐を、
氷のように張り付いた笑顔で受け止める。
「……うん、伝えておく!」
誰も、私の心の奥底に詰まった冷たい塊を知らない。
だから──、
「彩ちゃんのピアノはうちらの誇りだからね!」
──そんなセリフを私に吐けるのだ。

龍ヶ崎彩(りゅうがさき・あや)と言えば、誰でも知っている。
日本を代表するピアニスト・龍ヶ崎八郷(りゅうがさき・やさと)の娘で、
本人も高校生ながら天才の名をほしいままにする天才ピアニストだ。
テレビにも何回も出て、一躍有名になった。
誰もが知っていて、誰もが応援するこの街の誇り。
だから、龍ヶ崎八郷が後妻を迎え、その娘が「綾子」という名であっても、
誰もその娘を「あやちゃん」と呼ぶ人間はいない。
それは、天才少女、龍ヶ崎彩が独占すべき名前だから。
高校のクラスメイトにとってもそれが自然であり、彼女の義姉になった
一歳年上の女の子のことは、「龍ヶ崎のお姉ちゃん」と呼ぶのが当たり前のことだった。
だが、それは……。
母の再婚によって「石岡」という苗字をも失った娘から、下の名前までも奪うことだった。
723ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/11(木) 21:35:10 ID:8JhgddIF
石岡綾子(いしおか・あやこ)は、どこに行ってしまったのだろう。
下駄箱から靴を取り出しながら、私はぼんやりと考えた。
この街の誰も、石岡綾子──私を求めていない。
必要なのは、忙しい父母の代わりに家事をし、
天才少女・龍ヶ崎彩をサポートしていく「彩ちゃんのお姉ちゃん」。
苗字も名前も失った私は、一体誰なのだろう。
ぼんやりしたまま私は、校門に向かった。
「遅かったじゃない、オネエチャン」
とげを含んだ声を浴びせられて、はっと我に返る。
校門の前で微笑む少女は、今そんな声を発したことが信じられないほど清楚で可愛い。
テレビで、<奇跡の天才少女>と呼ばれる美少女だ。
ジュニアの世界大会で何度も賞を取った実力もさることながら、
世の中の男の過半数が好きだろう、いかにも「お嬢様」している美貌が、
テレビや週刊誌が賛美してやまないポイントなのだろう。
マスコミのつけた<ホワイトプリンセス>というあだ名は、
私でさえも、納得してしまうものだ。
だけど、
「待ちくたびれちゃったわ。荷物、持ってよ」
遠目で見たら、そんな言葉を吐いているとは到底思えない笑顔のまま、
美少女はカバンの一つに視線を向けた。
大きなかばんと、小さなカバン。
私が持つのは、小さなほう。
だけど、その中身は、大きなカバンはほとんど空っぽで、
小さなカバンはぎゅうぎゅうに詰め込まれた重いもの。
だけど、それは担ぐ私にしか分からない。
他人の目には、「姉に自分の荷物を運ばせる妹」には写らないのだ。
私は表情を殺して、それを担いだ。
<妹>は、大きな、そして軽いカバンを、いかにも大変そうに両手で抱える。
その姿でさえ、週刊誌に賞賛の文章とともに載ったことがある。
724ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/11(木) 21:35:51 ID:8JhgddIF
この娘と出会ってから、私は全てを失った。
苗字も、名前も、母親の愛情も。
生活のためと、あとは女としての見栄とかそういうもののため、
世界的ピアニストと再婚した母さんは、
それから実の娘よりも、義理の娘のことを優先するようになった。
それが、新しい夫の望んだことであり、さらに言えば、
彼女自身の生活や地位やその他もろもろの要求を満たす近道だったからだ。
彩がテレビや週刊誌に載る時、義父も取材されることも多い。
そして、「一家」として紹介されるときは、母もその端っこに写るのだ。
華やかに化粧をして、豪華な服を着て。
それは、再婚前の数年間を苦しんだ母さんが心の底から欲しがっていた生活だった。
私の本当の父さんが生きていた頃、何の疑いもなく手に入っていたものが失われたとき、
母さんは、それを再び手に入れることに必死になった。
そして、それを取り戻したとき、彼女は、それを再び失うことを何より恐れた。
──実の娘を犠牲にしても悔いないくらいに。
私は、忙しい<父>をサポートする母の手が回らない、
<妹>の世話のために高校生活の全てを費やすことになった。
朝夕のカバン持ち。
家に帰ったら、掃除、洗濯、炊事。
コンクールのための旅行の準備。
マッサージさえ、私の仕事だった。
だけど、それは、生活基盤さえも失っていた状況から救われた母娘には当然の代償だった。
でも、私はそのおかげで、全てを失った。
そしてそれは、仕方のないことではなく、全てが悪意によるものだった。
この娘の。
「……ねえ、オネエチャン」
私から「綾子」という名を奪ったのは、この<妹>だった。
「あやちゃん、と呼ばれるのは私だけでしょ」
無邪気な、だがぞっとするほどの憎しみを含んだその一言で、
母さんを含めた家族の全員が私を名前で呼ばなくなり、街の人間もそれに倣った。
725ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/11(木) 21:36:34 ID:8JhgddIF
「オネエチャン。昨日、ピアノ触ったでしょ?」
前を向いたまま、<妹>は冷たい声を私に投げつけた。
「……うん」
「やめてって、言ってるでしょ。あれは、私のピアノなの。
私とパパとしか触っちゃいけないの。
オネエチャン、私の真似でもしたかったの?」
ずきん、と心臓に突き刺さることば。
昨日の夜、義父と母さんと一緒にパーティーに出た彩の目を盗んで、
ほんの少しだけ、私はピアノを弾いた。
誰もいない、一人だけの家で。
哀しくなって、一曲弾き終えることもできずに私はピアノの蓋を閉めた。
「……ちが…う……」
声は自分でも弱々しかった。
弾きはじめたとき、私は彩のかわりにコンクールで拍手喝采を受ける自分を想像しなかっただろうか。
ない、と言いきれるほど私の心は強くなかった。
「何が違うの? まだピアノやってるつもりでいるの?
サイノー、全っ然、ないくせに!!」
ぐらりと私の視界が揺れる。
そう。
私は、ピアノをやっていた。
実父が生きていて、裕福だった頃に。
小学生の頃は、区や市や、そのあたりのレベルのコンクールで何度も入賞した。
地方の新聞に載ったこともある。
それは、私の密かな誇りだった。
でもそれは、彩に比べればほんのちっぽけな、
……普通の人間と何一つ変わらない程度の才能だった。
「だからね、私のピアノに触らないでよね。
オネエチャンの垢が着いたら、音が悪くなっちゃうじゃない」
小さなその声は、私の心臓を何度も容赦なく貫いた。
726ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/11(木) 21:37:28 ID:8JhgddIF
荷物を運び終えた私は、すぐに着替えて家を飛び出した。
すぐ近くの、高級住宅街ご用足しの高級スーパー。
そこが私の唯一の息抜き場所だった。
人参、インゲン、サニーレタス、セロリ、レモングラス。鶏肉。
魚は、今日はいいや。
ぐるぐると店の中を回りながら、食材を買い集める。
お金を気にする必要はないけど、吟味を重ねるのは、
ここにいる時間が長ければ長いほど、家にいる時間が少なくなるからだ。
「あら、龍ヶ崎さん家のお姉ちゃん、えらいわねー」
商品を置くから運び出してくる小母さんたちとも顔見知りだ。
「妹さん、明日コンクールですって、大変ねえ」
「お姉ちゃんがしっかりしているから安心ね」
この人たちも、私の事を、彩をサポートするオネエチャンと見ているんだ。
すっかり慣れたことだけど、私は微笑がこわばっていくのを感じた。
無理をして、その冷たい塊を心の奥底に静める。
「エエ、今日ハ、アヤチャンノ好キナ、鶏肉ノサラダニデモ、シヨウカナ、ッテ」
レジで会計を済ませる。
腕時計を見る。
料理をする時間を考えても、あと五分くらい時間がある。
公園へ──は、行けない。
後妻の連れ子がそんなところで黄昏ていたら、格好の噂だ。
アミューズメントスポット?
さらに駄目。
結局、私は、スーパーのそばにある自販機コーナーに向かった。
バス停の近くだけど、微妙な位置にあるそこは、人がいることがあまりない。
とはいえ、ベンチもあって少し休めるし、バスを待っている言い訳も立つ。
私の重宝する五分だけの隠れ家だ。
そんなところしか「私だけの場所」はなかった。
でも、今日は、そこに先客がいて……。
727ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/11(木) 21:38:12 ID:8JhgddIF
ベンチに腰掛けていたのは、ジージャンにジーパンの男の子だった。
私と同じくらいの男の子。
「……」
私だけの隠れ家を奪われたような気がして、私は立ち止まった。
いつも私が座って、ジュース一本の安息を得る場所に座って、
その男の子は、携帯ゲームをしていた。
どこでもできるゲームなら、ここではない場所でして欲しい。
そこは、私が休める唯一の場所だから。
自分の視線が尖るのが分かる。
でも、画面を食い入るように見つめている彼には伝わらなかった。
小さくため息をついて、ジュースだけでも買おうと自販機に向かう。
コインを入れて、ボタンを押す。
ゴトン。
缶が落ちる音。
維力(ウィリー)。
この近辺ではここでしか売っていないジュースは、昔、地元でよく飲んだ。
この自販機で売っているのは、なぜか濃い目だ。
噂では、出荷の時期によって濃さ薄さが違うらしい。
この味が好きな私にとっては、うれしい。
これを飲みながら、ぼんやりと貴重な五分を過ごすのが私の唯一の楽しみだったのに、
今日はそれを諦めなければならないようだった。
缶を取って、立ち上がる。
また、ため息をつきそうになったけど、それは我慢した。
振り返って、そ知らぬ顔でバス停に向かおうとして──。
「あれ、綾ちゃん?」
声をかけられた。
「え?」
「あ、いや、違ったかな。……えっと、石岡……綾子ちゃん?」
缶が落ちる音で私に気がついたのだろう、
ベンチに座っていた男の子が、私を見つめていた。
728ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/11(木) 21:38:56 ID:8JhgddIF
「そ、そうだけど……どなたですか?」
思わず身構えたけど、返事をしてしまったのは──久しぶりにその名で呼ばれたから。
「ええと……その……、僕、石岡新治(いしおか・しんじ)、覚えてない?」
「あっ……!」
言われてみれば、見覚えがある。
小学生のときの、同級生。
同じ、「石岡」と言う苗字で、親戚だとか冷やかされたけど、全然接点のなかった子だ。
ちっちゃなころから、やっぱりゲームとかアニメとかの「オタク」で、
人気者だった私と違って、クラスでは目立たない男の子だった。
クラスで「石岡」といえば私のほうが有名で、新治君のほうは、
「イシオカモドキ」とか言われて、どちらかというといじめられているほうだった。
でも──。
「ひ、久しぶりだね」
「そ、そうね。すごい偶然! 新治君、この辺に住んでいるの?」
「うん、中学の頃、こっちに引っ越してきたんだ。……あ、綾ちゃんも?」
小学校のクラスは、男女とも仲がいいほうだった。
からかわれることが多い新治君も、私を呼ぶときは皆と同じく「綾ちゃん」だった。
その響きが、耳に心地良かった。
「ええ、高校になってから、こっちに」
「そ、そうなんだ」
新治君はどきまぎしたように黙り込んだ。
もとから、冴えない男の子だったけど、その時私は……。
「い、いつもここに来るの?」
「え?! ……あ、ああ、いつもは塾帰りにだけど、今日は行く前にちょっと」
「わ、私、いつもこの時間に来るんだ。ね、明日も来れない?」
なぜか、そんな言葉がすらすらと出た。
「え……、あ、ああ、大丈夫」
「じゃ、明日、またね!」
ジュースの缶を掴んだまま、そう言って、私は自販機コーナーを飛び出した。
729ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/11(木) 21:39:49 ID:8JhgddIF
走りかけて、止まる。そして振り返った。
「あの……」
「な、何?」
「も、もう一回、綾ちゃんって呼んでくれないかな?」
「え……?」
「お願い」
「う、うん。いいよ。……綾ちゃん」
「……ありがとう!!」
私は、バス停に向かってぱっと駆け出した。
すごく、嬉しかった。
胸がドキドキしていた。
あの子の前では、私は、「石岡綾子」で、「綾ちゃん」なんだ。
あの子の前だけでは。
私は、私でいられるんだ。
そのまま、50メートルくらい先のバス停まで一気に走っていって、
立ち止まったとき、私は股間に違和感を感じた。
「こ、これって……」
ショーツの中が、濡れている。
オナニーするときに、出る、あの粘液で。
「……」
私は頬が染まるのを感じた。
バスが来るまでの間、私は、ぼんやりと、
(新治君と結婚したら、また石岡って苗字に戻れるな……)
とか考えていた。


   Fin ? 
730名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 22:21:28 ID:frnNLwbV
>>729
おぉぉぉぉぉおお!!!111
これだ!これだよぉ!!
731名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 23:46:03 ID:Uw7IpRA0
もっと詠みたいDEATH
732名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 23:58:24 ID:7OAs09ep
>>729
鬱展開のまま終ったらどうしようかと思ってた。
安心させた所でエロ要素を入れるとは、憎い演出をしてくれる。
GodJob!
733名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 16:38:03 ID:mcZx6dl3
>>729
流石にござりまするな!
続きが読みとうござる!
734名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 21:35:06 ID:ImQ/2Xr/
GJ……続きますか?ハーレム脳で姉妹丼まで幻視した私は終わった
735ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/14(日) 00:16:13 ID:Mqq95qfl
<私が私でいられる時>2

「んっ……くっ……」
薄暗がりの中で、私の声が漏れる。
常夜灯のオレンジ色の光だけが、小さな世界を照らしている。
私の部屋を。
お屋敷と呼ぶには小さく、普通の家よりはかなり大きいこの家の、
隅っこの四畳半相当のフローリング部屋が私の城だった。
彩――<妹>の隣の十畳サイズの部屋を選ばなかったのは、正解だったと思う。
義父が私のために用意していたそこに入っていたら、
あの娘からどんな嫌がらせを受けていたか、分からないから。
<妹>の部屋はそれよりさらに大きかったけど、<姉妹>の部屋が隣同士に並べば、
彩は絶対にそれを許さないだろう、ということは会ったその日に確信した。

張り合わないこと。
<姉妹>だと思わないこと。
「後妻の連れ子」に徹すること。

それが、一番の処世術だと思ったし、そしてそれは正しかった。
彩の部屋からも、両親の寝室からも遠いこの部屋は、
眠るとき、ある程度はプライベートを与えてくれる。
こんな風に、自慰をする自由くらいは。
「んんっ……ふううっ……」
粘膜の縁(ふち)をさまよう指先は、熱い蜜を絡ませている。
パジャマとショーツを脱がずに手を差し入れて始めてしまったのをちょっぴり後悔する。
ショーツはおろか、パジャマにまで染みとおってきそうなほど、私のあそこは濡れていた。
(私、こんなカラダしてたんだ)
指先から伝わる、後から後からあふれ出てくる蜜の多さに、私はびっくりした。
ここ数日で知った自分の性器や身体の中身の発見。
私のカラダは、すごく牝だった。
ついでに、こんなにオナニーが好きな、いやらしい娘だということも知った。
今まで、自慰なんて数えるくらいにしかしたことなかったし、
何かの際にしてしまったときなど、ベッドの中でひどい罪悪感に包まれた。
736ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/14(日) 00:16:57 ID:Mqq95qfl
でも、今は──。
「んくっ……!!」
布団の中で、身体が跳ねる。
「……んあっ……新治く…んっ!!」
達する瞬間、私は、その男(ひと)の名前を呼んだ。
ぎゅっとつぶった目蓋の裏に、ジージャン姿の男の子が浮かぶ。
そして、その声も。
(綾ちゃん)
「んああっ……!!」
私は強くのけぞった。
毛布の端を強く噛んで必死にあえぎ声を殺す。
甘い絶頂は、長く長く私の心と身体を満たした。
「……ふうっ……ふうっ……」
息をするのも忘れてむさぼった快感がゆっくりと引いていくと、
私は、獣のように荒い呼吸で酸素を取り込もうとした。
(綾ちゃん)
新治君の声がまだ耳に残っている。
その声で、達することが出来て、私は最高に満足だった。
この二週間、毎日オナニーしている。
新治君のことを考えて。
自販機コーナーでの逢瀬は、もうそれだけ続いていた。
新治君と再会したその晩から、私の自慰狂いは始まった。
(綾ちゃん)
その名前、私の本当の姿を認めてくれる呼称は、
私が自己防衛のために身につけていた硬く冷たい鎧をあっさりと素通りし、
ハダカの私を直撃した。
いつの間にか、新治君のことを大好きになっている自分に、私は戸惑った。
新治君が、冴えない子だということはわかってる。
小学生の頃、いじめられっ子だった「オタク」な男の子は、
高校生になっても、やっぱり冴えなくて、
世間一般的には、「モテない男の子」の典型だということも。
でも──だから何?
あの男(ひと)は、私を名前で呼んでくれる。
737ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/14(日) 00:17:34 ID:Mqq95qfl
それは、私にとって、一番大事なことだった。
私を「綾ちゃん」と呼んでくれるということ。
それは、私を「石岡綾子」として認識してくれているということ。
それは、私を「私でない今の私」ではなく、「本当の私」として認めてくれているということ。

……それは、私にとって、世界で一番価値のあることだった。

この家の、この街の、いいえ、今となっては日本中の誰もが呼んでくれない
その名前で呼んでくれるから、私は新治君を大好きになった。
世界中の誰よりも、一番に。
愛している、と言い切れる。
そうでなければ、毎晩、彼のことを考えてオナニーなんかしない。
「好き。大好き。愛してる……新治君……」
脱力感と快感の余韻に火照った身体を預け、
私は天井を見つめながら私はそうつぶやいた。
右手を、ゆっくりパジャマの中から抜く。
指先は、透明な液体にまみれていた。
意外に粘度の少ないそれは、常夜灯の色を受けて妖しく輝く。
「……」
私は、それをぼんやりと見つめる。
透明な雫は、優しい暖色の光を含んで、何か素敵なものに見えた。
無意識に、私はその手を口元に持っていったのだろう。
気がついたとき、私は、そろえた指先を舌で舐めていた。
「……!!」
予想もしていなかった感触に、私は我に返った。
濡れやすい体質だからなのか、多量に分泌される体液は薄く、
味はほとんどしなかったが、匂いは十分に感じ取れた。
フェロモンをたっぷり含んだ、牝の匂い。
同性のそれは、自分のものとはいえ、それほど嬉しくない。
「……男の子の……新治君の精子も、こんな感じなのかな」
つぶやいて、自分の口走った言葉の意味に気がつき、
私は、背筋を電流が走ったようにぞくぞくと身を震わせた。
738ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/14(日) 00:19:16 ID:Mqq95qfl
「……新治君の……精子……?」
薄暗闇の中で、自問する。
音にすると、ぞくぞくは、さらに激しくなった。
「だめ……そんなの、私……」
ソンナノ舐メタラ、キット、理性ヲ、保テナイ。
目をぎゅっとつぶる。
逆効果だった。
先ほど自分の指先にからんでいた愛液が脳裏に浮かび、
それは、もっとどろどろとした白濁の粘液に変わった。

男の人の、精子が、そういう物体だということは知っている。
それが、おち×ちんから出るものだということの知識はある。
でも、実物を見たことなんか、もちろん、ない。
それが即座にこんなにリアルに想像できてしまうとは。
それを──舐める?
さっき、自分の蜜を舐めたように?
背筋の電流は、稲妻のように強くなった。

唇と舌になすりつけられる。
新治君の精液。
見たことも、触ったことも、嗅いだことも、もちろん舐めたこともない粘液は、
現実以上の現実感をもって私の頭の中に押し寄せた。
苦くて、生臭くて、男臭くて、――私を狂わしいほどに魅了する。
「だ、だめっ……新治…くぅんっ!!」
甘くとろける想像に逆らえるはずもなく、
私はショーツの中に手を突っ込み、再びオナニーを始めてしまった。

「……」
30分後、脱衣場にある洗面台で脱いだショーツを広げながら、
私は、ちょっとだけへこんでいた。
あれから、3回、立て続けにしてしまった。
あんなことを想像してオナニーをするなんて。
こんなこと知られたら、……ケーベツされるかな、あの男(ひと)に。
739ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/14(日) 00:20:02 ID:Mqq95qfl
「新治君……」
心の中で、小さくつぶやく。
現実には、私と新治君は、手をつないだこともない。
晩生(おくて)の女の子と男の子との、たわいない会話。
ジュース一本分の時間でも、昔話。
それだけが、新治君とのつながりの全て。
なのに、私の心の中では、あの男(ひと)は、もう離れられない存在になっていた。

でも。
私は。

もっと、新治君とつながりたい。

男と女。
牡と牝として。
なぜなら、それが二人の人間の中で一番強いつながりだから。
母さんは、新しい夫とのつながりを保つために、私を捨てた。
男女の絆は、親子のそれを上回る。
あるいは、その逆もあるのかもしれないけど
それは、私にとって信じられるものではなかった。
一番強イノハ、牡ト牝ノ、ツナガリ。
それが私が得た結論で、今、それを求める対象が目の前に現れたのだ。
740ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/14(日) 00:20:42 ID:Mqq95qfl
新治君。
彼に、私が自慰の中で想像していたことや、
もっともっといやらしくてひどいことを、してほしい。
それで、彼の存在がもっと近くになるのなら
新治君は。
きっと、ううん、絶対に童貞だ。
他の女の子を、まだ知らない。
私以外の女の子とは、親しくしゃべったこともない。
毎日話ができる女の子は、私が最初。
そして、最後。
そう。
私が、新治君を独占する。
彼の「最初」と「最後」と、その間の全部を独占すればいい。
新治君に必要な「牝」を、全部私が満たせば、
私との絆(きずな)は、どんなものよりも強くなる。
母さんのように、私を捨てることもない。
だって。
新治君は、男の子……牡で、私は女の子……牝なんだから。
あの男(ひと)の「唯一」になれば、
絶対に、新治君は、私を捨てられない。

「……」
ぼんやりとした考えがまとまったとき、
私の手の中で、ショーツもきれいに洗い終わっていた。
4回も自慰をしたせいでショーツはぐしょぐしょだったけど、
一家の家事を全て背負わされている私の手にかかれば、
一枚きりの下洗いなんて、何ほどのものではない。
かごの中にある洗濯物の中に入れる。
あとは、全自動洗濯機にかけるだけだけど、それは明日の朝にしよう。
手を洗いなおす。
ふと、顔を上げて、鏡を見た。
髪の毛が、だいぶ伸びていた。
741ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/14(日) 00:21:29 ID:Mqq95qfl
セミロングに揃えていた黒髪は、すばらしい勢いで伸びている気がした。
とくにこの半月──新治君と再会してから。
女性ホルモンが活発化したのだろうか。
毎晩狂ったようにしている自慰行為が、それを助長しているのかも知れない。
私は、恥ずかしくなって顔を伏せた。
「――夜中に何やってるのよ、オネエチャン」
冷たい声は、背後からした。
振り返ると、<妹>がいた。
声と同じくらい冷たい瞳で私を見つめながら。
「ちょっとね、洗濯物の準備を……。目、覚めちゃったから、トイレ行くついでに」
「ふうん」
彩は、私の頭の上からつま先までゆっくりと視線を這わせるようにして眺めた。
誰か他に人がいないときの、彼女のいつもの態度だ。
「ふうん。……あ、私、お台所に飲み物取りに来たんだ。
ちょうどいいわ、オネエチャン。取ってきて」
「……わかったわ」
冷蔵庫に彩ご指定のミネラルウォーターの壜が冷えているはずだ。
一度切らしてしまったことがあって、夜中に大きな声でののしられた。
以来、何はなくとも、それだけは冷蔵庫に入れている。
きびすを返して台所に行きかけたとき、背後で
<妹>がそのときと同じくらいの金切り声を上げた。
「あっ! また私の洗濯物と混ぜてるわね、オネエチャン!!」
彩は洗濯籠を持ち上げて床の上に中身をぶちまけた。
「あっ!」
私は、さっき洗ったショーツが入っていたことを思い出して固まった。
彩は、憤怒の表情で私を睨みつけ、怒鳴り散らす。
「私の下着、あなたやあなたのママのものと混ぜないでって、言ってるでしょ!
汚いじゃない!! 牝臭いのよ、あんたたちはっ!!」
床に散らばったシャツや下着を蹴り飛ばしながら、彩はわめいた。
この娘は、私と同じくらい、私の母さんも嫌っている。
742ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/14(日) 00:22:30 ID:Mqq95qfl
「……ごめんなさい」
謝って、床の洗濯物を拾う。
誰が誰の物かは、照明を半分にしている暗がりでも分かる。
洗濯するのもたたむのも、私だから。
「……このっ!!」
怒りが収まらないのだろう、彩は私の肩を蹴飛ばした。
小柄な、スポーツは得意ではない女の子の蹴りだ。
痛くない、といえば嘘になるけど、我慢できないものではない。
私は、ぐらっとしたけど、黙って下着を拾い続けた。
蹴られた痛みより、メス臭い、と言われたことのほうが私を動揺させている。
彩が、私たち母子をののしるときに使うおきまりのセリフだ。
父親の再婚相手と、その娘に抱く印象は、「女の武器で父親を篭絡した淫婦」なのだろう。
何百回も聞いたことばだけど、あれだけ激しい自慰の直後に浴びせられると、返す言葉もない。
私は、真っ赤になった顔を見せまいと、必死で顔を伏せた。
「……このっ……!!」
彩は、肩透かしをくらったように、ことばにつまった。
抑えきれない怒りが、テレビで絶賛されている国民的美少女の中で渦巻く。
それは、別の方向に噴出さなければ収まりが付かなかった。
「何よ、その髪っ! 私の真似!? 切りなさいよ、うっとおしいっ!!」
私の髪に目を付けた彩は、ひとしきりそれをののしってから、
飲み物のことも忘れて二階に上がっていった。
「……」
私は、下着を拾い集め、彩のものとそれ以外に分けた。
分別が終わって、立ち上がったとき、はらり、と髪が肩にかかった。
「……」
私は、鏡の中の自分を見つめ続けた。
743ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/14(日) 00:23:16 ID:Mqq95qfl
「……お姉ちゃん、髪、伸びたんじゃない? 切りにいってきたらどう?」
めずらしく朝食をいっしょにする母さんが、席に着くなり私に声をかけた。
義父さんは、東京のコンサート・ツアーでホテルに泊まっている。
母さんは、昼間、そのサポートに毎日そこに通い、半々の割合で泊まってくる。
ツアー中のいつものパターンだ。
でも、朝、早々にそんなことを出したのは……。
私は彩のほうを盗み見た。
<妹>は、そ知らぬ顔でミルクのカップに口を付けている。
間違いない。
朝のうちに、あるいは昨晩あれから叩き起こして、母さんに「命令」したのだ。
父親に溺愛されている実娘は、義母よりも立場がずっと強い。
そして、母さんは、義理の娘の言葉に従って私に命令することに躊躇をしてくれない。
「……」
いつもならすぐに承諾の返事をするのだが、私はなぜか押し黙った。
うつむいてテーブルの上を見つめる視界の端に彩の姿が映る。
美しいロングヘアの彩が。
<後妻の連れ子>を姉妹として認めなかった彩は、同時に私のロングヘアも認めなかった。
小さな頃から伸ばし続けた黒髪を天才少女は何よりも誇りに思っていて、
同じようにロングを好んでいた私のそれを憎しみの視線で見つめた。
「家のお手伝いをしてくれるのに、それは邪魔よね」
彩の意を汲んだ母さんが、そう言ったとき、
ピアノと並ぶ私の自慢だった黒髪は、ばさりと切られた。
泣いて抵抗したので、ショートまではいかずセミロングにとどまったけど、
小学生時代の思い出のつまった髪は、美容院のゴミとして捨てられた。
以来、私は、それ以上髪を伸ばせなかった。

でも。
今は。

「――ううん。これから、ちょっと伸ばしてみるわ。小学校のときみたいに」
その返事に愕然としたになった表情の母さんと彩を、私は見ていなかった。
私の瞳には、新治君が映っていた。
長い長い黒髪だった小学生の私を見つめる、新治君が。
744ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/14(日) 00:23:57 ID:Mqq95qfl
私の黒髪は、クラスメイトのちょっとした自慢だった。
あの時、私は気がついていなかったけど、他の子と同じように、
きっと新治君も私のロングヘアをまぶしく見つめていたのだろう。
だったら、今だって。
きっと、新治君は、ロングの私を見たいだろう。
それなら、伸ばす。見せてあげる。
あの頃、遠巻きに見ていた「石岡綾子」を、
そのままそっくり新治君に見せてあげる。
ううん。
あれから育った、小学生以上の「石岡綾子」を、
新治君に見せてあげる。
新治君にだけ、全部をあげる。
黒髪は、その第一歩だ。

頬に、痛いくらいの視線を感じた。
彩が、私を睨んでる。
私は目を閉じてそれを無視した。
頭の中は、小学生のとき、見ているだけだった「石岡綾子」の
「何もかも」を捧げられて、喜ぶ新治君の姿だけが浮かんでいたから。

(今日、あの男(ひと)と、キスしよう)

煮えたぎるような憎悪の視線を浴びても、
私は、そう決意しただけで、天国にいるようにうっとりと微笑むことができた。


        ここまで
745名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 00:36:51 ID:03jVYBmQ
>>744
いいですなぁ。こんだけ先の展開にわくわくする作品は久しぶりです、
続き早く読みたいです。
746名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 00:57:31 ID:0x4QpzLB
これはやばい、嵐の前の静けさというべきか……どうなるのか楽しみだ。
747名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 01:28:19 ID:KstSYmRa
ゲーパロ氏降臨!
748名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 02:48:58 ID:JBvqHn5e
言いたい事は言われてしまったがあえて加えるなら、
744の薄気味悪い構図とか、予想外のエロさも良かった。
期待が高まる!
749名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 09:58:28 ID:ZU46hC6u
>>744
これは良い心の歪み。




>>748
までで461kBだからおそらく、シリーズが完結する前にこのスレは限界を迎えるな。
750名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 17:02:28 ID:OLC8LBF6
綾子は新治に依存してきているのは明白なわけだが、

彩も綾子に依存してるように見えるのは考え過ぎなんだろか
751名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 20:37:07 ID:M6G15o7D
>>750
神のみぞ知る、だろうな。

何はともあれ、
wktkして待ってるぜ!
752名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 14:36:58 ID:/WMXGHaC
保守
753名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 18:39:50 ID:hPmPT6Um
この保守をゲーパロ氏に捧げます。
754名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 08:39:00 ID:YEJHsB6v
保守
今か今か
755ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/21(日) 14:35:15 ID:o8F8AfPh
<私が私でいられる時>・3

ぴりりり。
小さな電子音がして、胸ポケットの携帯が鳴った。
誰かから電話が掛かってきたわけではない。メールでもない。
時間設定をしておいたアラームが鳴ったんだ。
17:00。
まっすぐ学校から帰ってきて、30分あるかどうかという微妙な時間帯は、
ともすれば、無自覚に過ごしてしまう。
僕は慌てて読んでいたコミックを机の上に開いたまま伏せた。
<ギャンブル・ウィッシュVSブラフ喰>の最新刊。
帰りに買ってきてすぐに読み始めたそれは、ちょうど佳境に入ってきたところだ。
女子高生ギャンブラー・腋野さんと、大年増女博徒の範馬うららの、脱衣丁半博打。
ヒロイン同士の対決は、掲載本誌でもまだ決着がついていないけど、
この巻には、最近すっかりヨゴレ役が板についてしまって逆に大人気の腋野さんの、
伝説的なブレイクシーン、「ブラウスを脱いだら腋毛を剃っていなかった回」と、
作者が腐女子なんじゃないかと思うくらい男しか出てこない漫画の紅一点の大年増・うららの
「対戦相手が挑発をかけた<髪の毛と同じくらいものすごい量とヘアスタイルの陰毛>説に大激怒の回」
の両方が載っているはずだ。
正直、読み続けたいという気がするけど、そうはいかない。
このところ、僕には日課が出来たからだ。
3週間前から、僕の生活はがらりと変わった。
有り体に言うと、彼女?……ができたのだ。
正直、<もてない男・○○市代表候補>の僕、石岡新治に
そんな機会がめぐってくるとは、産まれてこの方考えたこともなかった。
しかも、相手が、小学校の頃のクラスメイトの綾ちゃん──石岡綾子だったとは。
なんだか、すごく不思議だ。
756ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/21(日) 14:36:09 ID:o8F8AfPh
石岡新治と石岡綾子。
苗字は同じだけど、親戚関係とかは全然ない。
同じクラスだったけど、接点はあまりなかった。
小学生のクラスは先生が交流にすごく熱心で、
クラスで放課後にみんなで遊んだり、休みの日にどこかに遊びに行ったりしてたけど、
綾ちゃんとは全然別のグループだった。
……というより、僕はどこのグループにも入っていなかった。
母親がいない、内気でマンガ好きの子どもは、
クラスの中にあまりうまく溶け込めなかったし、
クラスで人気者だった綾ちゃんと同じ苗字と言うのは、からかいの対象にしかならなかった。

綾ちゃんは、……いわゆる<高値の花>の女の子だった。
美人で、大人しくて、頭が良くて、ピアノが上手な、いわゆるお嬢様。
特にピアノは、お母さんがピアノの先生なだけあって、
本人も県のコンクールで何度も賞をもらっていた。
だから、小学校の頃、僕のクラスは綾ちゃんのピアノのおかげで、
合唱コンクールとかではいつも校内で一番だった。
そんな綾子ちゃんが引っ越していっちゃったのは、小学四年生のとき。
お母さんが再婚するってことだった。
クラスでお別れ会を開いたのを覚えている。
それが、今になって再会するとは思わなかったし、
再会してその日のうちになんだか付き合うような感じになるとは、
もっと思っても見なかった。
あ。
綾ちゃんは、もう石岡って苗字じゃないんだっけ。
たしか、お母さんが再婚して、今は龍ヶ崎さんって言うらしい。
でも、そっちの名前で読んだら──彼女はきっと怒る。
そして、僕が彼女のことを、あの頃と同じように
「綾ちゃん」と呼んであげると、彼女がものすごく嬉しがるということも。
757ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/21(日) 14:37:10 ID:o8F8AfPh
誰にも言ったことはないし、誰にも悟られたことはないから、
僕のクラスメイトや知り合いは誰も信じないだろうけど、
僕は、女の人の心を読むのがかなり得意だ。
何の自慢にもならないけど。
小さい時に、母親が「幼馴染で初恋の人」にもう一度心を奪われ、
五年間の葛藤の末に、最後は夫と小学生の息子を捨てて去っていった家庭で育った子は、
母親──自分の身近にいる女性――の顔色を常に窺って生きるようなった。
どう振舞えば母さんが喜ぶんだろう。
何をしてしまったら母さんの機嫌が悪くなるのだろう。
僕はいつも憂い顔の母親を必死に観察していた。
でも、結局。
何をしても、どんな努力をしても、
「いい人だけど、ときめかない男(ひと)」と、「その息子」は、
彼女にとって何をしようと、最後は「一生の中で一番好きになれた人」には敵わなかった。

そして、僕は女の人のことが、恐くなり、嫌いになった。
一分見れば、その女(ひと)が何を欲しているのか、わかる。
どう振舞えば喜ぶか、わかる。
だから、僕は彼女の事を「龍ヶ崎さん」ではなく「綾ちゃん」と呼ぶ。
そういうことはすぐにわかる。だけど、――本当は、わからない。
だって、女の人は、母さんのように、あんなに僕の事を誉めてくれた次の日に
黙って家から出て行ってしまったから。
そして、いつもあの人を悲しませていたはずの「一番好きな人」のもとに嬉々として身を寄せたから。
売女(ビッチ)。
僕は、女の人の心の表面だけは読めるけど、奥底までは絶対に読めない。
だから、恐いし、好きになれない。
あの娘――石岡綾子も。
……石岡綾子、も……?
……綾ちゃん、も……?
僕は、無意識に唇に手をやった。
758ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/21(日) 14:37:50 ID:o8F8AfPh
キスをした。
はじめて女の子とキスをした。
ファーストキスってやつだ。
僕には一生縁のない物だと思っていたものだ。
一週間前、つまり、綾ちゃんと会ってから2週間後、
あの自販機コーナーで、僕らはキスをした。
どういう流れで、どんな会話をしていてそうなったのか、
頭が沸騰して、全然覚えていない。
ただ、綾ちゃんは、いい匂いがして、唇は柔らかくて、キスはとても気持ちいいものだった。
あれから、毎日、綾ちゃんはキスを求めてくる。
僕はとまどいながら、それを受け入れる。
この間の土曜日は、デートをした。
デートと言っても、綾ちゃんのところはすごく家が厳しいから、
高校の地域ボランティア活動をいっしょに行った、というだけのことだけど。
僕らが住んでいる学区は、高校のボランティア活動が盛んで、
ちがう学校の生徒がいろんな場所でいっしょに同じ活動をすることができる。
「学校公認の合コン」のつもりで参加している連中も結構多い。
僕は、そんなことには全然興味がなかったら、あまり真面目に活動してはなかったけど、
何かの折に、子どもたちの施設で遊び相手になる活動をしているサークルに入っていた。
自販機でジュースを飲みながら、そんな話になったとき、
綾ちゃんは、目を輝かせてそれに参加したいと言い出したんだ。
結果は、上々だった。
施設には古びたピアノが一台あって、綾ちゃんは子どもたちにそれを弾いて聞かせた。
最初は戸惑いながらだったけど、すぐにカンを取り戻した綾ちゃんは、色んな曲を弾いてくれた。
「練習なんかしてないから、もう、難しい曲は弾けないんだけど……」
そういいながら、綾ちゃんは、簡単なピアノ曲の中に
アニメやゲームのテーマをまぜて弾き、
子どもたちは大喜びでそれを歌ったりしていた。
いままでどうすれば良いのか全然わからなかったボランティアが大成功に終わり、
そして、僕と綾ちゃんはもっと仲良しになった。
759ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/21(日) 14:39:01 ID:o8F8AfPh
「綾ちゃんも、ゲームとか、アニメ見てたんだ」
その帰り道、僕はそっと聞いてみた。
「ううん。全然。曲覚えたのは、今週になってからかな」
綾ちゃんは、笑顔でそう答えた。
「え?」
「新治君のケータイの着信、あれだったでしょ。ええと、<らき☆なな>だっけ?」
……登場人物が聞き取り不可能の歌詞にあわせてポップに踊りまくるOPが大人気のパチンコアニメは、
たしかに僕の携帯電話の着メロだった。
「あと、<アッコアコにしてあげる>とか、<エアーウルフが倒せない>とか、
新治君がよく口ずさんでいたから、覚えちゃった」
……番組の中で不当に貶められた人工音声ソフト会社が、激怒のあまり、
その番組の司会者でもある老女性歌手の全盛期の声を100%合成音のみで作成し、
すっかり声量の衰えた<芸能界の女帝>と赤白歌合戦で直接対決、圧勝した記念曲とか、
……悪魔的天才博士が生み出した超音速攻撃ヘリが倒せない悲哀を歌った曲とかは、
僕の鼻歌レパートリーの筆頭だった。
「それって……」
耳コピー? と聞こうとしたら、綾ちゃんのほうが先に答えた。
「新治君の好きな曲、私も好きだから」
「え……?」
先回りされた、でも予想外の返答に、僕は戸惑った。
そして、僕は、僕が予想していたよりもはるかに、
彼女が僕の事を好いてくれていることに気がついて――戦慄した。

女の子は、怖い。
だって、それは、母さんと同じだから。売女(ビッチ)だから。
今日は優しく笑っていても、明日も同じとは限らない。
親子だからって、家族だからって、安心は出来ない。
そんなものは、<一生で一番好きな人>の前では何の意味のない絆だったから。
だから、僕は、やっぱりあの娘のことも怖い。
だって、彼女が僕の事を一生で一番好きだなんて思えないから。
760ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/21(日) 14:39:44 ID:o8F8AfPh
時計を見る。
17:12。
いけない。
17:20頃にあの自販機コーナーに着くに、もう家を出なくちゃ。
僕は部屋を出て、階段を下りた。
玄関で靴を履き、扉を開ける。
そこで、僕は凍りついた。
「……えへ。来ちゃった」
買い物籠を下げた綾ちゃんがそこに立っていた。

「な、なんで……」
僕の家を知っているのか、と聞きかけて、こないだボランティアの時に
帰り道の途中だったから教えた事を思い出した。
だけど、わざわざ来るなんて。
そうも言いかけて、にこやかな笑顔の綾ちゃんを見て言葉を飲み込む。
綾ちゃんは、僕の彼女だ。
僕自身はいまひとつ踏み切れないでいるけど、彼女や世間一般的なものの見方で言えば、
僕と彼女の関係は、もうそう呼んで差し支えないものなのだろう。
一日後五分か、十分の逢瀬だけど、あれから、毎日キスをしている。
土曜日のデートの帰りは、手もつないだ。
それは、彼氏彼女の関係以外の何物でもない。
だから、「彼女」が「彼氏」の家に遊びに来てもなんらおかしくはないだろう。
だけど、僕はパニックに陥った。
「ね。……中に入っても、いい?
新治君のお部屋、見てみたいの」
上目がちに僕の顔を窺う綾ちゃんと、その瞳と言葉の中にあるものに、
僕の「女の人の気持ちを読み取る」能力は、さらに戦慄した。
761ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/21(日) 14:40:25 ID:o8F8AfPh
「ああ、あああ、あの……」
散らかった部屋に通したのは、綾ちゃんの笑顔に押されたからだ。
一週間前、キスをしたのも、この笑顔のせい。
僕の丸ごと全てを肯定し、受け入れてくれる微笑。
それは今まで誰にも向けてもらえなかったものだ。
母さんからでさえも。
でも、この微笑みは、同時に、僕の丸ごとすべてを要求するものである。
僕は、もうそれに気がついていた。
「うわあ、いいお部屋ね」
嬉しそうにそう言った綾ちゃんは、床の上に散らばっているお菓子の袋とか、
漫画本とか、アニメのDVDとかに眉をしかめない。
貴方は、それでいい。
貴方は、そのままでいい。
と細めた目が語っている。
でも。
その瞳の奥にある光は、こうも言っていた。
(ダカラ、ソレハ、他ノ人ニ、ホンノ少シデモ、アゲチャ、ダメ)
「お、お茶、持って来るね!」
僕は自分の部屋を飛び出した。
心臓が、どきどきしていた。
それは、興奮なのか、恐怖なのか、それともまったく別の感情なのか、全然分からなかった。
分かるのは、彼女が僕の家の中に、いや、
僕の心の中に入ろうとしてやって来たということだけだった。
762ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/21(日) 14:41:09 ID:o8F8AfPh
「あ、あの……」
「なあに、新治君?」
「いや……」
淹れてきた紅茶をテーブルに置いてベッドに腰掛けると、
当然、というように綾ちゃんが隣に座った。
自販機コーナーのベンチではいつものことだったけど、
こうして自分の部屋でされると、心臓が破裂しそうだった。
綾ちゃんの、甘い、いい匂いは、いつものように外の風に散らされることない。
部屋の中で動きのない空気の中で、それは濃密に僕の鼻腔の奥を叩いた。
(なんでこの娘がここにいるのか)
今までの五分ちょっとの時間を反芻しても、
ちっともその答えにたどり着けない。
(この娘は、何をしに僕の部屋に来たのか)
それも、僕に誘われてではなく、自分から。
僕のパニックは収まらなかった。
なぜなら、僕の洞察力は、なんとなくそれを感じ取り、
そして僕の理性と経験がそんなはずがない、とその可能性を否定していたから。
「あの……」
「え?」
「新治君は、こういうの、……好きなの?」
いつのまにか彼女の手の中にある、数冊の本。
<ギャンブル・ウィッシュVSブラフ喰>の脱衣丁半博打は、
僕が読んでいたところよりだいぶページが進んでいて、
腋野さんも、うららも、どちらもあとショーツ一枚というところまでストリップしていた。
他にも、こないだ買ったばかりでベッドの下に隠しておいたエロ漫画も
お気に入りの裸のシーンが開かれて彼女の視線にさらされていた。
763ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/21(日) 14:42:30 ID:o8F8AfPh
「ど、ど、どうして!!」
後にどういうことばを続けようとしていたのか、わからない。
どうして、見つけたの?
どうして、見ているの?
どうして……?
だけど、僕がどんな問いを発せようとしていたとしても、
彼女の答えは決まっていた。
「新治君の好きなもの、私も好きになるから」
問いになっていない問いに対する、答えになっていない答え。
でも、
僕のことを覗き込む美少女の瞳の光は、あまりにも強かった。
だから、僕は気おされて、彼女の次の言葉を待った。
それは、予想していた通りのものだった。
「でも、こういうの、見たかったら、私のを見せてあげる。
こういうの、好きだったら、私がしてあげる」
背中に稲妻をまとった蛇が走った。
彼女は、自分の身体を使って、僕を取り込もうとしていた。

「だめだよ……そんなの……」
恐怖と、別の感情にしびれる脳が、無意識でことばを出していた。
「どうして? なぜ?」
綾ちゃんがゆっくりとにじり寄る。
彼女の体温、彼女の体臭、彼女の息遣い。
あたたかい。いい匂い。ぞくぞくする音。
「……漫画とか、ゲームとか、アニメとかの女の子のほうが、いいの?」
問い。
こわいくらい真っ直ぐな問い。
「だって、生身の女の子は……裏切るもん」
今まで生きていて、誰にも言えなかったことば。
それが、あっさりと引き出されていた。
764ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/21(日) 14:43:17 ID:o8F8AfPh
そこからの十数分間、僕は魔法にかかったように、言葉と感情を引き出されていた。
母親の不倫。
捨てられた子ども。
学校の成績とか、仕事とか、家事を手伝うこととか、
僕や父さんが努力すればできることは、本当は全然意味がなくって、
結婚とか子供を作ることとかには何の価値もなくって、
ただ母さんが選んだ、かっこよくて女の人をどきどきさせる男(ひと)だけが幸せになれる。
僕みたいな男には、そういう力がないから、
生身の女の子に近づいてはいけないということ。
紙やモニターの上の、裏切らない女の子にだけ関心を向けていればいいこと。

気がつけば、そんなことを全部吐き出されていた。

彼女の、強い強い、粘っこい光をたたえた瞳に見据えられて。
自白剤を打たれたかのように、僕が問われるまま答えさせられていたのに気がついたのは、
綾ちゃんがその瞳を閉じたからだった。
「そう……そうだったの……」
綾ちゃんの桜色の唇の端が、すうっと吊り上った。
形のいい、柔らかい、僕が何度もキスした唇。
それが、微笑みの形をとる。
獲物を捕らえて、満足した猛獣の笑み。
優しい、優しい笑み。
その二つを矛盾なく含んだ唇が、怯える僕の顔に近づく。
「むぐうっ!?」
キスは、いつものキスでなかった。
僕の唇を割る、優しくて柔らかくて、強くて怖いもの。
綾ちゃんの舌は、ためらいもなく僕の口の中を犯した。
甘い唾液が僕の舌にからむ。
「!?」
彼女は僕の唾液を舌先ですくい取り、代わりに自分の唾液を流し込んだ。
765ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/21(日) 14:43:57 ID:o8F8AfPh
「ふぁ……ぷぁっ……!!」
身体全体がしびれるような口付けが終わる。
ゆっくりと顔を離す綾ちゃんと僕の唇の間を、
互いの唾液が入り混じってできた銀の糸が長く伸びた。
「これ、ディープキスって言うんでしょ。……新治君は、はじめて?」
「そりゃ……」
僕は綾ちゃんがファーストキスの相手だ。
「私も、はじめて」
「綾ちゃん……」
「ん」
そう呼ぶと、綾ちゃんは嬉しそうに微笑んで、今度は自分の唇を付きだした。
僕はためらいながら、もう一度キスをした。
今度は、僕の舌が綾ちゃんの唇を割って入る。
二人の舌は、再び互いの唾液にまみれた。
「うふふ。私ね、――貴方のお母さんとは違うよ」
二度目のディープキスの後で、綾ちゃんはささやいた。
「私、裏切らないから。私、貴方と離れないから。どんなことがあっても」
「え」
「貴方が、私を綾ちゃんと呼び続けてくれるなら、私、なんだってするから」
「え……」
「明日、貴方の不安、全部取り除いてあげる」
「あ、明日?」
「うん。明日、<妹>いないんだ。練習もコンサートもないから、どこかに遊びに行くって。
家の人も誰もいないの。だから、明日は、夜まで新治君といられるの。だから、証明してあげる」
「しょ、証明?」
「そう。貴方に証明するの。私が、新治君を絶対裏切らない女だって。
貴方のお母さんとか、他の女の子とは違うんだって、貴方が納得するくらいに証明してあげる」
「あ、綾ちゃん……」
「うふふ。もう一回、呼んで」
「え……?」
766ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/21(日) 14:44:47 ID:o8F8AfPh
「もう一回、綾ちゃん、って」
「あ、綾ちゃん」
「うん。素敵。とっても素敵よ、新治君……」
綾ちゃんは、もう一度唇を重ねてきた。
貪られる。
綾ちゃん、と彼女を呼ぶ僕の唇を。

「……明日、ここで待ってて。絶対よ」
そう言って、彼女は名残惜しそうに身体を離した。
僕は、どろどろに溶けたような疲労感と虚脱感と、そして快感に、
ベッドの上で動けないでいた。
「ね……最後に……」
猛獣か、魔物のように僕を蹂躙した唇が、甘えるような声を上げた。
彼女の要求は分かっていた。
「……綾ちゃん……」
僕がそう呼ぶと、彼女はもう一度幸せそうに微笑んだ。
「明日――楽しみにしていてね!」
そういうと、買い物籠を掴んだ綾ちゃんは、ぱっと駆け出していった。
767ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/21(日) 14:45:28 ID:o8F8AfPh
「……」
彼女が去ってから、何分が経っただろうか。
あるいはほんの一瞬後のことかもしれなかったけど、
僕には、時計を見る気力もなかった。
(夕飯の買い物、しなくちゃ)
今日は久しぶりに父さんが帰ってくる日だった。
母さんが出て行ってから、父さんは仕事にのめりこむようになり、
家事は僕が全部やっている。
別にそれは苦痛でもなんでもなかった。
料理は得意だし、好きだ。
だから、たまに帰ってくる唯一の家族のために、
今日はカップ麺で済ませるという気にはなれなかった。
甘い虚脱感と戦慄にしびれた脳髄と身体を引きずるようにして外に出る。
冷たくなってきた風が、火照った頬に気持ちいい。
夜の空気を胸いっぱい吸い込んで、吐き出す。
玄関のドアにカギを閉め、門から一歩踏み出して、僕は立ち止まった。
さっき、家を出ようとしたときと同じように。
そこには、さっきと同じように女の子が立っていて――。
「あ、綾ちゃん?!」
ずっとそこにいたのか、と僕は言いようのない恐怖に立ちすくんだ。
でも、そこにいたのは――。
「アヤチャン? ……そうよ、私が、アヤチャン」
明るい家の中から出たばかりの薄暗がりで、それはさっき別れた女の子によく似て見えた。
同じような、シンプルでおとなしめなブラウスとスカート。
同じような、長い髪。
同じような、上品な美人。
でも、彼女は、僕の知っている綾ちゃんよりちょっと小柄で、
その美貌は……テレビの中でしか見たことない顔だった。
768ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/21(日) 14:46:11 ID:o8F8AfPh
「ふうん。……あの女、最近浮かれていると思ったら、
彼氏が、いたんだ。……気に食わないな」
誰もが知っている<天才少女>は、僕の顔を覗き込むようにしながら、そうつぶやいた。
「あ、アヤチャン……」
綾ちゃんじゃ、ない、と言おうとして、僕はそれを最後まで言い切れなかった。
アイドル歌手より美人だから、絶大な人気を誇っている女の子が、
にっこりと、魅力的な、そして、怖い笑顔を浮かべたから。
「そうよ。私が彩。アヤチャン。私だけが、そう呼ばれるべきなの」
「……」
そのことばを、僕は傲慢とは思わなかった。
この街で、僕以外の人間は、そう言われても、ただただ頷いて肯定するだろう。
一億人の人間が名前を知っていて、
数千万の人間が顔も知っていて、
数百万の人間がファンになっている少女。
その実績と自信は、彼女の周りにオーラのように渦巻いていた。
瞬間、僕は、薄闇の中で彼女が輝いているようにさえ、思えた。
僕の生きる世界とは全然次元が違うところで生きている、天使。
その天使――龍ヶ崎彩は、僕に声をかけてきた。
「あの女、明日、貴方とデートでもするの?」
「!!」
デート、というより、僕の家に来る。
僕の沈黙をどう取ったのか、龍ヶ崎彩は、その微笑をもっと「怖い」ものにした。
「……ふうん」
たっぷり十秒くらい沈黙してから、吐き出すように続ける。
「妙に私のスケジュールを聞いてくると思ったら……」
それから、彼女は僕をしげしげと見つめ、――やがて、にたり、と笑った。

国民的美少女がこんなにも恐く笑えるのか。
でも、それは、やっぱりそこらのアイドルなどよりもずっと美人で可愛かった。
その笑顔のまま、彼女、龍ヶ崎彩は僕に提案してきた。
「ね。明日、あの女とじゃなく、私とデートしないかしら?
明日、私、夕方からは、オフなの。16時半にK・N・エキスプレスカフェで、ね」
答えを待たず少女は駆け出した。
僕は、その後を追うことも声をかけることも出来ずに、ただ立ちすくんだ。

怖かった。
ものすごく怖かった。
そして、僕の麻痺した脳は、二人の「アヤちゃん」のどちらのほうが
より恐くて、そして魅力的なのか、答えを出せずにいた。


ここまで
769名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 15:37:31 ID:+PxoXSUp
一番槍GJ!
とうとう性悪義妹が動きだしたか。
770名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 17:16:11 ID:a0qMcl11
ディ・モールトGJッ!!
妹さん怖いなぁ・・・((((( ゚Д゚)))))
771名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 18:36:27 ID:DytCQ9RN
ついにきたかあぁぁぁっ!! って感じだぜゼェハァ
772名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 18:51:30 ID:SUw91jBD
エロゲ的選択肢と鋸エンドが頭に浮かんだのは俺だけでいい
773名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 21:24:41 ID:TRyacHPh
この後はまず間違いなく修羅場が待っている
774名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 21:45:07 ID:b1mI4SQG
姉の誘いに乗ったら人生の危機で、妹の誘いに乗ったら生命の危機。
もう詰んでいますね。
775名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 22:08:22 ID:67vTthzH
だったら、全員で大合唱してやろうじゃないか。
「これより我ら、修羅に入るっ!」
776名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 22:31:26 ID:uxiog/Nf
修羅場より妹の依存フラグを期待してる
777名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 23:37:42 ID:H0sIyouc
姉→主役
男→ヒロイン
妹→ライバル
な位置付けっぽいからなぁ………
初戦で勝つか負けるかで展開を読む自分駄目人間。
778名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 00:38:05 ID:Nc6sQH/f
妹の誘いは、明らかに姉への嫌がらせのためのポイ捨て作戦にしか見えないんだから
乗るという選択はありえない希ガス。

つか。どっちにしろ、好かれて、というより利用されてるだけな主人公カワイソス。
779名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 09:14:31 ID:3szdeqVf
主人公の女性の心を読む能力って単独で見ると正直ウラヤマシスだけど
主人公が女性不審の上、何か今回妙に嵌って泥沼製造能力と化してるあたりむしろカワイソスか……このスレ的に美味しい能力だけど
妹さんにもビビりながら能力使って半端に取り繕った対応してフラグ立てちゃって、より深い泥沼を作りそうな気が
妹さんも妹さんで、有名人で嫌なヤツってことは、内面に色々鬱屈してるんだろうし(偏見)そういう相手には効果抜群そうな
なんにせよ主人公は狩られる側の獲物ですね
780名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 13:39:26 ID:UDg5KKDI
age
781ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/24(水) 23:45:41 ID:MVSnhpaY
<私が私でいられる時>・4

カチ、カチ、カチ。
時計の音が異様に大きく聞こえる。
大きく。
大きく。
その音が僕を飲みこんでしまうような錯覚を覚えて、がばっと跳ね起きた。
生ぬるい汗が、全身にまとわりついている。
はぁはぁ、はぁはぁ。
荒い息をついて、僕は恐る恐る時計を見た。
13:27。
学校は、休んだ。
休みの連絡は、父さんから電話をしてもらった。
あまり家に帰ってこないから最近はめったに顔を合わせないけど、
父さんは、僕のことを信頼してくれている。
母さんが出て行った日々の中、僕ら父子は、
取り残された人間同士で力を合わせて、なんとかそれ以上「家庭」が壊れることを防いだ。
それは、二人のよく似た父子に同志的な信頼関係を与えてくれた。
僕は、あまりよく出来た子どもじゃないけど、嘘をついたり、
親が家に帰ってこないのをいいことに好き放題やったりなんかはしない。
父さんはそれが分かっているから、「体調が悪いから学校を休む」というメールを疑うことなく、
会社から学校に連絡を入れてくれただろう。
その、信頼が、今日は心苦しい。
……実際、体調は悪い。
夕べから頭はがんがんと痛いし、目の前はくらくらとしているし、
嫌な汗はかきっぱなしだし、何より背筋が寒い。
でも、僕は、自分で分かっていた。
それが父さんに報告した、風邪とかの病気によるものではない、ということを。
僕のこの変調は、精神的なパニックによるものだ。
二匹の蛇に狙われた、無力な小動物が陥る恐慌。
782ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/24(水) 23:46:29 ID:MVSnhpaY
アヤチャン。
石岡綾子と、龍ヶ崎彩。
どうして彼女たちは僕の前に現れたのだろう。
はじまりは、小学生のときのクラスメイトを見かけたことだった。
綾ちゃん──石岡綾子は、お母さんが再婚して「石岡」ではなくなっている。
そして彼女は、新しい家で居場所がないということは、僕にはすぐにわかった。
だから、彼女は僕に好意を抱いた。
彼女の、一番幸せな、輝かしい時を知る、僕に。
綾ちゃんは僕の瞳の中に、かつての自分、石岡綾子を見つけ出した。
龍ヶ崎彩の義理の姉、龍ヶ崎綾子ではない自分を。
それは、たぶん、彼女にとって何よりも大事なもの。
だから、綾ちゃんは、僕を好きになった。
砂漠で遭難した旅人が、オアシスの泉を見つけたときに抱く感情。
世界の他の部分は、見渡す限りの砂。
彼女は泉から離れられない。
泉から離れようとしない。
離れたら、死ぬから。
死しかない、と思うから。
一度逃れられた砂漠に、もう一度踏み出すことが出来ないから。
……僕は、それに気が付いていた。
彼女は僕が好きなんじゃなくて、「石岡綾子」の存在を認めてくれる人が好きなだけだと。
土曜日のデートを、児童施設のボランティアに選んだのには、
そこしか彼女が家の了解を取れそうになかったということの他に、それも理由がある。
あそこでは、ピアノを弾くことができる。
彼女の幸福な少女時代は、おそらくはピアノを習っていたあの頃につながる。
何か、いいきっかけになるかもしれない。そう思った僕は、彼女をそこに連れて行った。
ある程度、それは成功したのだろう。
子供たちの拍手を浴びた綾ちゃんは、小人たちにかこまれた白雪姫のようだった。
遠い昔、講堂のステージでクラスメイトの拍手喝采を受けていた時のように。
でも、子供たちの、悪気のない一言が、彼女を現実に戻した。
783ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/24(水) 23:47:14 ID:MVSnhpaY
「オネエチャンって、アヤチャンに似てるね」
「ほんとー」
「そっくりー!!」
同じような雰囲気の、同年代の少女。
昔のように髪の毛を伸ばし始めた綾ちゃんは、
その黒髪がトレードマークのテレビの中の天才少女によく似ている。
その少女が、彼女に嫌悪感を抱くくらいに。
そして、子供たちにとって「アヤチャン」と言えば、テレビの中のその少女のほうだった。
石岡綾子がこの世でもっとも嫌う存在。
彼女の砂漠を生み出すもの。
龍ヶ崎彩。
綾ちゃんの微笑が凍りついたとき、僕もまた凍りついた。
しかし、綾ちゃんは、僕が思っているよりもずっとずっと強靭だった。
「そうねー。名前も似ているかなー。
でもね、私はアヤはアヤでも、下に子が付くんだよ。綾子。石岡綾子って言うの……」
戸籍上では、もう二重線で消されている名前を、綾ちゃんはためらいもせず名乗った。
「綾子……お姉ちゃん?」
最初に、龍ヶ崎彩に似ている、と口走った子が、
何かを感じ取ったのだろう、おそるおそる、といった感じで尋ねた。
「そう……ね」
妥協にも似た光をたたえて、暗い瞳がうなずいた。
そこから先、アヤコオネエチャンと呼ばれた女(ひと)は何曲もピアノを弾いた。
だけど、それは、あきらかにそれ以前よりも、
楽しさや心浮き立つ様子が減じたものだった。
それでも、綾ちゃんは、子供たちが知っていたり、喜びそうな曲を丁寧に弾いていった。
最後のほうは、僕が、彼女はすっかりそのことを忘れてくれたのか、と思ったくらいに。
でも、やっぱり、綾ちゃんは……。
「ありがとう、楽しかった。……<新治君と一緒なら>、また来たいな」
帰り道、彼女はそういって微笑んだ。
784ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/24(水) 23:48:07 ID:MVSnhpaY
子供たちは、――「湿った泥」とわずかに生えた「雑草」。
砂ではないけど、彼女に必要な「泉」ではない。
泉の周辺にある、付属物。
泉の周りにあれば好ましく思うけど、そうでなければまったく無価値なもの。
静かな、穏やかな声はそう告げていた。
それでも、ボランティアは行かなかったよりはずっとずっと良かったと思う。
彼女にとっては。
今は無価値に思えても、世の中には砂漠と泉の他のものがあることを知ってもらったはずだから。
でも、僕にとってはどうなのだろうか。
僕は、彼女がますます僕にのめりこんでくるのを感じた。
昨日。
彼女は、自分がこの世の他の女とちがうと証明する、と宣言した。
──オアシスを見つけた遭難者は、その泉が枯れることを何より恐れる。
泉に見捨てられ、水を出してもらえなくなることを。
だから、彼女は泉の弱っている部分を見つけて狂喜した。
それは、彼女にチャンスを与えるものだから。
水脈をふさぐ石を取り除き、流れを滞らせる藻を掻き出す。
泉にとって必要な仕事の担い手は、泉から見捨てられることはない。
遭難者は、その奉仕によって、泉の管理者になれるのだ。
彼女は、それを求めていた。
あの長いキスは、
僕の中に入り込もうとする儀式。
自分の中に僕を取り込もうとする儀式。
あの娘(こ)はもうすぐ、ここに来る。
もっと僕の中に入り込もうとするために。
もっと僕を自分の中に取り込もうとするために。
ぶるっ。
全身が震えた。
彼女の狙いと、そして取るであろう行動を予想できないわけではない。
でも、それは──。
785ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/24(水) 23:49:19 ID:MVSnhpaY
僕は、パジャマの中でおち×ちんが固くなるのを感じていた。

(こういうの、見たかったら、私のを見せてあげる。
こういうの、好きだったら、私がしてあげる)

エッチなコミックを指差しながら、彼女は確かにそう言った。
それは、今日、見せてくれるということなのだろうか。
掛け布団をしっかりかぶった暗闇の中で、僕は唾を飲み込んだ。
現実の女の子には、興味がない。
……この間までは。
すぐ近くに、理由はどうあれ、僕に好意を抱いている女の子がいて、
その娘(こ)は、小さいときすごく憧れた女の子で、
今はあの頃よりずっとずっと綺麗になっていて、
髪の毛も長くて、おっぱいも大きくて、美人で、優しくて、毎日キスをしてくれて。
そして、――怖い。
読めるけど、読み通せない執念。
わかるけど、わかりきれはしない執着。
その行動原理に突き動かされている女(ひと)は、僕にとって恐怖の対象だ。
だが、蛇に睨まれた蛙のように、それゆえに彼女に惹かれている自分がいる。
綾ちゃんは、今日会えば、間違いなく身体を使って僕を捕らえようとする。
どこまでするつもりなのだろうか。
下着を見せてくれるんだろうか。
おっぱいを見せるつもりなのだろうか。
全部を脱いで、女の子のあそこまで見せるなんてことは――。
それとも、まさか、その先まで……。
目をつぶる。
彼女の迷いのない笑顔が目蓋の裏に浮かんだ。
がたがた震えながら、僕は体中から熱い汗がにじみ出るのを感じていた。
おち×ちんは、痛いくらいに張り詰めていた。
思わずそこに手を伸ばしかけたとき、時計の針がカチっと大きな音を立てた。
786ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/24(水) 23:50:22 ID:MVSnhpaY
「!!」
僕は跳ね起きた。
やましい想像にとらわれていた自分を、誰かから目の前に突き出されたように、自己嫌悪感が沸く。
15:30。
駅前のKNエキスプレス・カフェに行くには、もう支度をしなければならない時間。
「……」
龍ヶ崎綾。
世界的ピアニストの愛娘は、今やアイドル以上の知名度と人気を誇る。
その少女が、昨晩、僕の家の玄関先にいた。
そして、僕をデートに誘った。
一時間半後に。
明らかに、それは、僕と石岡綾子を会わせまい、
そしてその仲を引き裂こう、という意思によるものだった。
僕の元クラスメイトと、天才ピアニスト少女。
義理の姉妹の間にどんな確執があるのか。
僕は、先ほどとは違う寒気を感じ、もう一度身震いをした。
龍ヶ崎彩は、石岡綾子がそれを望まない、という一点だけで、
さえない男の子とデートを申し出てきた。
一方的な言葉。
自分の価値を微塵にも疑わない、傲慢な取引。
でも、一生に一度あるかどうかのチャンス。

このままここで待っていれば、自分のために僕を捕らえようとする女の子がやって来る。
駅前に行けば、誰かを傷つけるために僕を利用する女の子が待っている。
どちらからかも逃げれば──いや、多分、僕は逃げられない。
女の子は怖いから。
もう五年も顔を見ていない母親は、今なお僕を痛めつける。
彼女たちは、きっと、それと同じくらい怖い女(ひと)たちだ
そして、――時計の針は進む。
787ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/10/24(水) 23:51:56 ID:MVSnhpaY
ピン、ポーン。
玄関のチャイムが鳴る。
僕は文字通り、飛び上がった。
選択の機会は、もう失われた。
僕は動けず、逃げられず、そして──。
意思を奪われた人形のように、僕は玄関のドアを開けた。
家人に招かれなければ獲物の家に入ることが出来ない吸血鬼が
なぜ標的を必ずしとめることが出来るのか、今の僕には良く分かった。
そして、僕は、僕の巣穴に、僕を食らう猛獣を招きいれた。

「どうしたの、汗びっしょりよ」
綾ちゃん──石岡綾子は、僕の顔を見て驚いた表情になった。
「あ、あ、うん。ちょっと、体調が悪くて」
わずかな望み。
このまま彼女に帰ってもらえれば──。
「大変。寝てなきゃ。お部屋に行きましょう」
当然のように家に入ってくる綾ちゃんを止める手立てを僕は持っていなかった。
「……ん。シャツとか、どこ? 着替えなきゃ」
僕の部屋に入るなり、てきぱきと動き始めた彼女は、
あっという間に僕の上半身を裸にし、タオルでぬぐい、新しいシャツとパジャマを着せた。
僕の格好を見て、くすり、と笑う。
「上下、色違いね。下も着替える?」
「い、い、いや、いい」
別途に腰掛けた僕は、あわてて手を振る。
「熱は……?」
あっと思うまもなく、綾ちゃんは僕のおでこに、自分のそれを押しあてた。
「……下がってるみたいね。あれ……?」
僕は、息をするのを忘れた。
至近距離で、綾ちゃんの瞳が僕を覗き込んでいた。
「……新治君、私に何か、隠してるでしょ?」

     ここまで
788名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 23:55:40 ID:9SUqVpLC
単純にチャンスに浮かれれば命の危機、チャンスの裏の意思に気がついてもまた命の危機か…
789名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 00:15:02 ID:e5zEgfDV
こえええええええええええGJええええええええ
790名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 01:39:03 ID:D2wVF2Q9
GJ!!!!
というかこっち(姉)選んでも(選んでないで流されただけだけど)妹さんの方の危機からも逃れられてないようなw
なにせ初めて自分(妹)より他人(姉)を優先した人間って事で妹さんの方にも執着の理由ができちゃったようなw
進退窮まるとか四面楚歌とか、まさにこのことですなw
なまじ読めてしまうだけにその恐怖は如何ほどか?
主人公頑張れ、超頑張れw
791名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 04:24:54 ID:GsyRlnVO
主人公自分に自信を持てば無問題なカップルだろう>主人公×姉
根底にセットされてるのは「綾ちゃんを「綾ちゃん」って呼ぶ自分よりいい男が現れたら自分は捨てられる」っていう危機感だし
でも主人公は綾ちゃんを親身になって矯正させようとしてる訳だし、基本的にいい男だ。ただヘタレ
792名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 07:41:19 ID:1mkp+ida
GJ!!!       ところでそろそろ次スレの季節?
793名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 12:19:29 ID:KTCV0DPs
だな。現在495KB。あと5KBしか書けない。
建てれるかどうか知らないけどチャレンジしてくるわ。
794名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 12:29:52 ID:KTCV0DPs
次スレなんだけど 【貴方が居なければ】依存スレッド2【生きられない】 で建てようとしたら
サブジェクトが長すぎるって言われた。
どうしよう?スレタイを勝手に削っていいのかな?
テンプレは1に書いてあるままでいいの?
795名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 12:59:30 ID:xTULNV9L
>>794
貴方なしでは、にすれば、趣旨からあまり外れずに文字数削減が出来ると思う。
796名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 15:12:09 ID:e5zEgfDV
きみがいてぼくがいる
797名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 16:32:18 ID:KTCV0DPs
>>795
おk、それで建ててみる
798名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 16:36:03 ID:KTCV0DPs
建てて来た。

【貴方なしでは】依存スレッド2【生きられない】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1193297652/
799名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 20:52:50 ID:oOV4E4yk
800名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 17:09:02 ID:22ENrOkb
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
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801名無しさん@ピンキー
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
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うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ

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  /  終了  ゙/\
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     \/         \    よいしょっと
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