【ここで】フォーチュンクエスト12【ない場所】

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556550 「マリーナ、その想い」

ドアの隙間から部屋の中を覗きながら、
マリーナは凍てついたかのように身動き一つできずその場に立ち尽くしていた。
目の前の光景から目を話せない。
まるで現実味の無い空間。
けれどもそれは間違いなく事実で、今現在起こっている事なのだ。

クレイがパステルに自分から口付けをした。
パステルがクレイを好きだと口にした。
クレイは・・・・・・・・


マリーナの顔色は蒼白を通り越して、殆ど血の気が失せたかのような不気味な色に変化していた。
空気という空気が凍りついたかのように、ただ寒さと冷たさしか感じられない。
唇は震え、見開いたままの瞳は乾きを訴えている。
逃げ出したい。これ以上見ていたくない。
それでも、身体は自分の意思に背くかのようにぴたりとも動いてはくれなかった。
数センチのドアの隙間の先にある光景は、容赦なくマリーナの心の闇を暴いていく。

激しくベッドが軋む音。
延々と響き渡る卑猥な粘着音。
パステルの甘く激しい嬌声。
クレイの吐息、時折最中に囁かれる熱っぽい睦言。

耳を塞ぎたくても塞げない。
そして目は信じられない光景を網膜にしっかりと焼き付けている。
ぶつかり合う男女の身体、飛び散る汗、撓る女体、高速で動く男の腰。
二人が絡み合う姿は、あまりにも卑猥で、あまりにも美しく、あまりにも羨ましかった。