【ジャングル】ハレグゥでエロパロ【都会】

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1名無しさん@ピンキー
無かったので立ててみました。
じゃんじゃん書きこんじゃってください!
2名無しさん@ピンキー:2006/10/02(月) 18:00:29 ID:tSmXquMK
おらおら、WWF(World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金)の
愛くるしいパンダ様が>>2ゲットだぜ! 頭が高いんだよ、ボケ!

.         ,:::-、       __     >1 クソスレ建ててんじゃねーよ。ビンスみてーに裁判で潰しちまうぞ。
    ,,r   〈:::::::::)    ィ::::::ヽ    >3 >>2ゲットも満足にできねーお前は、俺の着ぐるみ着てプラカード持ってろ(プ
  〃   ,::::;r‐'´       ヽ::ノ     >4 お前はカキフライのAAでも貼ってりゃいいんだよ、リア厨ヒッキー(プ
  ,'::;'   /::/  __            >5 汗臭いキモヲタデブは2ちゃんと一緒に人生終了させろ、バーカ。
.  l:::l   l::::l /:::::)   ,:::::、  ji     >6 いまさら>>2ゲット狙ってんじゃねーよ、タコ。すっトロいんだよ。
  |::::ヽ j::::l、ゝ‐′  ゙:;;:ノ ,j:l     >7 ラッキーセブンついでに教えてやるが、俺はストーンコールドが好きだぜ。
  }:::::::ヽ!::::::::ゝ、 <:::.ァ __ノ::;!     >8 知性のねーカキコだが、お前の人生の中で精一杯の自己表現かもな(プ
.  {::::::::::::::::::::::::::::`='=‐'´:::::::::/      >9 つーか、自作自演でこのスレ盛り上げて何が楽しいんだ?
  ';::::::::::::ト、::::::::::::::i^i::::::::::::/      >10-999 WWEなんか見てるヒマがあったら、俺に募金しろカスども。
.   `ー--' ヽ:::::::::::l l;;;;::::ノ       >1000 1000ゲットしたって、WWF時代の映像物に販売許可は出さねーよ。
        `ー-"
3名無しさん@ピンキー:2006/10/03(火) 01:11:06 ID:ufzafcwu
4名無しさん@ピンキー:2006/10/03(火) 01:25:20 ID:xSA/zjtX
ロバート×ウェダ希望
5名無しさん@ピンキー:2006/10/03(火) 04:12:02 ID:ufzafcwu
とりあえずウェダ希望
6名無しさん@ピンキー:2006/10/05(木) 00:20:50 ID:5crC/2Es
とりあえずグゥなら書けますが…
7名無しさん@ピンキー:2006/10/05(木) 00:26:26 ID:5crC/2Es
平和なジャングルの村、グゥは一人で家へ帰った。ハレはマリィの家に遊びに行っていた。既に恋人という関係だった二人に介入する気も起きず、ハレに対する想いを押し殺しながら道を歩いた。
家に帰るとウェダもいなく、中は静かだった。しかし、ふと壁の向こうから声が聞こえた。
「なんだ、お前一人か?」
声の主は家で一人家事をしていたアルヴァだった。ハレとマリィの事で消極的になっていたグゥはコクリと頷いてそのまま家に入ろうとした。
「待った」
急にアルヴァがグゥを引き止めた。
「洗濯物が多いんだよ、ちょっと手伝ってくれないかな」
「ん」
面倒くさそうに一言吐き捨てアルヴァの後に続いた。

家の裏には洗濯機があるが、その他には何も無く、夕暮れで薄気味悪い闇を称えたジャングルが広がるだけだ。
「お前はもうレベッカの事はなんとも思ってないのか?」
グゥは唐突に聞いた。アルヴァは多少驚いたようだったがすぐに落ち着き払って答えた。
「結婚する予定のある女性にいつまでも惚れるなんて真似しないよ」
「結婚する予定が無いならまだ好きなのか?」
グゥは続けて質問した。
「なんなんだよ…まあ婚約してる人間よりは可能性があるかもな。何が言いたいんだよ、お前」
私情を聴かれたせいか、アルヴァは不機嫌そうに逆に質問した。
グゥは暫く黙りこくってから、口を開いた。
「好きな人間というのは婚約してるしてないで変えられるものなのか?それとも相手に好きな奴がいるかいないかで変わるものなのか?」
アルヴァは顔を歪めたが、吐き捨てるように言った。
「あくまでも理性で諦められるって意味だよ。別にレベッカにはそこまで惚れ込んでなかったし、望み薄なら仕方がないと思う事だってあるだろ」
グゥはさらに聞いた。
「じゃあ、相手に好きな人間がいてもまだ相手の事を好きなのは普通の事なのか?」
家事をしていたアルヴァの手が止まった。今度は冷たい瞳をグゥに向けながら問いに答えた。
「そりゃまあそうだろうね。…でも相手に恋人がいて、自分が入る隙は無いと思ったら、違う人間を見つけようと思う事も可能だろうな」
言いながらアルヴァはグゥに詰め寄った。グゥはそれに合わせ視線を上げる。
「どうやってするんだ?」
「こうする」
8名無しさん@ピンキー:2006/10/05(木) 00:28:33 ID:5crC/2Es
アルヴァは唐突にグゥの両手を掴み壁に叩き付けた。そのまま状況が飲み込めないでいるグゥに顔を近づけ、徐に舌を入れた。
「??」
グチュグチュと音を立てられながらグゥは混乱した。何故ならその行為の意味する事が何かを知らなかったからだ。自分の口の中で絡み合う物に、今まで味わった事がない妙な感覚を覚えた。
「んっ…ふうぅん…」
不快なような、快いようなその妙な感覚に声が出てしまい、グゥは不安に駆られた。
アルヴァは片手でグゥの両手を掴み、片手でグゥの頭を強引に自分へ引き寄せている。身動きが取れず何も出来ないまま、強引な口付けは終わった。ゆっくりと離したお互いの口からは唾液が流れ、繋がったまま地面に落ちた。
「っはぁ、はぁ…」
息をするのも忘れていたグゥは口を離された瞬間に荒い呼吸を始めた。口からはまだ濃密な唾液が流れ落ちている。
「ハレの事が辛いなら、とっとと忘れちまえばいいだろ」
息をするのに夢中なグゥに向かってアルヴァは静かにそう言った。驚いて目を見開くグゥをよそに、腰に手を回し今度は首周りを舐め始めた。
「どうしてハレの話が出てくるんだ…。う…」
見透かしたような事を言われてしまい、それを取り繕おうと必死になりグゥは言った。首筋に舌を這わされて再度意志に反して声が漏れた。
「なんとなく。話の流れを聞いてれば大体わかるだろ?そういう事には疎いんだな。…コレには相当敏感なのに」
グゥの耳元で囁きながらアルヴァは微笑した。そのままグゥの服の上部の布を端を掴み、緩めるとそれをずり降ろした。
「なっ…何がわかる、んだ…。違くてグゥは…、あっ…」
グゥは何とかしてハレの事を訂正しようとしたが、妙な事に意識が遠のいて言葉が出て来ない。その上露出した乳頭を摘まみ上げられて、悲鳴にも近い声を上げてしまった。
「も…その話はいいから…止めてくれないか…」
息も絶え絶えになりながら、続けてグゥは言った。意味もわからないアルヴァの行動と自分の反応に、不安が膨らんでいたからだ。
「フン…止めろってか?好きで受け入れてんのかと思ってた」
「な…何をだ……」
「?……お前もしかして俺がやってる事わかってないのか?」

予想外のグゥの言葉にアルヴァは拍子抜けしたように言った。何も返さずに荒い息を続けるグゥを見て、アルヴァは悟った。
「はぁん…お前この状況わかってなかったのか。そうか、なら都合がいい」
グゥは余計に混乱したが、アルヴァが良からぬ事を思ったのは理解できた。ちにかくこの場を逃げようと思い、必死で抵抗を続けた。
「とにかく…もう止め…あぁぅ!」
抵抗するグゥを更に無理矢理押さえ付け、アルヴァは両方の乳頭を攻め始めた。片方を爪でこね回し、片方を口で吸い上げた。
「ひっ…いやだ…何するんだぁ…!あぁっ…」
与え続けられる強烈な感覚に、グゥは背を反らし、小さく悲鳴を上げた。潤んでいた瞳からは、とうとう大粒の涙が零れ出した。
「らしくないなグゥ…。いつもの調子はどうしたんだよ、ん?」
ぐゥの下着をずり降ろしながらアルヴァは薄笑って言った。グゥの顔からは普段の余裕は少しも感じられなかった。
「こんなに感じやすいとはね。ハレももったいない事したんじゃないの?」
アルヴァは独り言を言いながらグゥの中へと中指を滑り込ませる。
「なっ!?なん…止め…いあぁっ…」
9名無しさん@ピンキー:2006/10/05(木) 00:30:03 ID:5crC/2Es
グゥは何をされたか全く理解できないまま、自分の中で動くアルヴァの指に悶え続けた。抵抗していたはずの身体からは力が抜け切り、手はだらしなく垂れ、気が付くとグゥはアルヴァの腕の中に大人しく収まっていて、
アルヴァから与えられる刺激に、意に反して背筋が反り返り、肩を跳ね上げていた。
「理解はできてないんだろうけど、気持ちいいんだろ?グゥ」
完全に自分の言いなりの身体になったグゥにアルヴァは意地悪く辱めの言葉をかけた。グゥは変わらずに涙を流しながら嬌声を上げている。
「きも…気持ちいい…?これが…?ば、かいうな…」
グゥは懲りずに反論した。アルヴァに聞かれて初めて、この感覚が快感だと確信してしまったのが許せなかったのだ。下の方からはグチュグチュといういやらしい音が聞こえていた。
「気持ちいいんだよ、お前は。これ以上ないって位いやらしい顔してるぞ」
本能的に感じる恥ずかしさでグゥは何も言えなかった。アルヴァはグゥを抱き上げると、グゥの両足を自らの肘にかけ、性器をグゥに沈め始めた。
「!!!っ…」
あまりの驚きでグゥは目を見開いて、声を失った。アルヴァが腰を揺らし始めると、また恐れていた感覚が溢れ出した。
「ひっ…やっ…いやぁぁつ!あっ…あぁっ…やぁっ…」
身体が揺れるのに合わせて声が漏れ続けた。意識がどんどん遠のき、我慢していた言葉が口から漏れた。
「ぃぁ…たぅけ……ハ、ぇぇ……」
アルヴァの服を握りしめながらグゥは泣いた。襲いかかってくる快感に何も抵抗できないまま、グゥはアルヴァに精液を放たれた。
「はぁっはぁっはぁっ…」
力の抜け切ったグゥはアルヴァから解放されるとそのまま壁に倒れ込んだ。白い足からは先程の名残の液が流れ落ちている。
「ハレの名前呼ぶなんて、やっぱり好きなんじゃないか」
ベルトを締め直しながらアルヴァは言った。先程の行為で完全に支配されたグゥは、戦慄したままアルヴァを横目に見た。
「どういう意味だったか教えてやるよ」
グゥの耳に口を近づけてアルヴァは低く呟いた。
「お前が浅い理解のまま言ってた、犯すとか犯さないとか、そういうヤツだよ」
グゥは硬直した。恐れていた事だったが、やはり人には言えない事なのだと、そこで全てが理解でき、より一層震えた。
「そろそろ帰ってくるぞ、ほら」

アルヴァに言われて耳を澄ますと、ハレとウェダの声が聞こえた。何事も無かったかのように玄関に向かうアルヴァの後に、グゥはよろめきながら続いた。
「ただいま〜アルヴァ」
「おかえり」
明るい表情で挨拶するハレにアルヴァは無表情に返した。ハレはアルヴァの後ろで黙っているグゥを見つけた。
「ただいま、グゥ」
「……おかえり」
目線を逸らしたままボソリと答えるグゥにハレは疑問を抱いた。それでもウェダにせかされて台所へと足早に向かった。
グゥはおそるおそるまだその場に立っているアルヴァを見上げた。アルヴァの目はグゥの方を見下ろして、冷たい笑いを浮かべた。
何も言葉を交わさないまま、二人は家に入っていった。
10名無しさん@ピンキー:2006/10/05(木) 00:31:42 ID:5crC/2Es
長くてスマソ。

ていうか前の産物掘り出してきただけだから生温い目で流してくれ…orz
とりあえず新スレ記念という事で。
11名無しさん@ピンキー:2006/10/07(土) 00:56:32 ID:CzOyCUkU
よかったよ
12名無しさん@ピンキー:2006/10/07(土) 20:56:44 ID:G3JK4DcF
いやぁ、GJ! としか言いようが無いね。
13名無しさん@ピンキー:2006/10/08(日) 00:24:22 ID:XAdNVeuq
GJ!!
14名無しさん@ピンキー:2006/10/08(日) 00:27:31 ID:PI/KNcUK
あの顔で泣いてるグゥの顔を見てみたいww
ってか想像できない‥
15名無しさん@ピンキー:2006/10/08(日) 02:42:33 ID:WMf7rfR4
おぉ、良かった。まだグゥ受けに萌えてくれるひとはいたんだねw
初期グゥなんか今にも泣きそうな顔なんだが、最近は確かに想像できんな。

また気が向いたらお目汚しするかもしれないけど、そんときはヨロシク。
ていうか誰か書いてくれ!
16名無しさん@ピンキー:2006/10/24(火) 02:34:17 ID:o0yh5sja
ハレグゥの別スレにナイスな妄想をハケーンした…。
17名無しさん@ピンキー:2006/10/29(日) 15:34:43 ID:g6IrSanm
ほぉぉ…いいねぇ。GJ!

大人にいろいろされてるアルヴァも見たい
18名無しさん@ピンキー:2006/10/30(月) 15:37:20 ID:1Vtw2Lm+
801でつか?w
ハレならTVシリーズで色々された事が…w
19名無しさん@ピンキー:2006/11/03(金) 02:08:23 ID:DsSZZZym
ほしゅ
20名無しさん@ピンキー:2006/11/04(土) 08:51:51 ID:/Ak94TFY
ほす
21名無しさん@ピンキー:2006/11/05(日) 01:39:37 ID:xQii3feS
誰か〜書いて〜
22名無しさん@ピンキー:2006/11/08(水) 07:46:28 ID:l/9VeA5T
ほしゅ
23名無しさん@ピンキー:2006/11/08(水) 15:23:02 ID:XAcfqXDQ
このまま保守でスレが終わったら大笑いだな
24名無しさん@ピンキー:2006/11/11(土) 16:08:11 ID:OL92SYjF
本気でなりそうだから困る
25名無しさん@ピンキー:2006/11/13(月) 06:47:30 ID:93vkbzLM

26名無しさん@ピンキー:2006/11/14(火) 23:13:26 ID:HdyhW3RX
自分のSSだけ載ってるのがかなりいたたまれん…orz
27名無しさん@ピンキー:2006/11/15(水) 14:02:19 ID:5o7RZGMY
だ、誰かいますか
28名無しさん@ピンキー:2006/11/16(木) 01:21:30 ID:cVKy1M97
はいはいノシ
29名無しさん@ピンキー:2006/11/17(金) 02:16:06 ID:xuyfvztY
最近この漫画読んでないけどグプタとラヴェンナが可愛かったな。
というわけでこの2人の読みたい。
夢オチとか全てグプタの妄想でしたとかいうオチでもかまわない。
30名無しさん@ピンキー:2006/11/18(土) 16:52:09 ID:cYUBPYXE
グプラヴェってある意味王道だよなぁ。
前スレには結構SSあったけど…。
31名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 05:07:09 ID:IB0i0xU8
ウェダ・・・
32名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 14:23:30 ID:m2ahu6dh
ウェダもあったねぇ…。
ていうか、前スレからの生存者ってどのくらいいらっしゃるんでつか?

挙手希望(・・)ノシ
33名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 10:30:01 ID:oL4w7sZc
ステッキ攻め旧ヨハン受けで誰か書いて
34名無しさん@ピンキー:2006/11/21(火) 00:59:25 ID:dP8DSi65
なんてコアな…そして旧かよと激しくツッコみを入れたくなるw
35名無しさん@ピンキー:2006/11/21(火) 04:00:49 ID:GzzI+kbM
OK旧ぷにぷにヨハンたんとステッキじゃ
36名無しさん@ピンキー:2006/11/21(火) 04:01:32 ID:GzzI+kbM
OK旧ぷにぷにヨハンたんとステッキじゃ時期的におかしいな
じゃあ発情期のくま攻め旧ヨハン(ry
37653:2006/11/21(火) 12:01:18 ID:tcOpK6QG
─ハレのその突然の行動はさすがのグゥも予測出来なかった。
ハレにとっては、半分冗談のつもりで、言ってしまえば事故のようなものだったに違いない。


今ならまだ間に合う。その手をグゥから離して大げさに謝ればいい。
だってグゥだぞ、グゥ。あいつに乙女の恥じらいとかそんな人間的な感情が在るわけがない。
いや、そもそもあいつは俺と同じ人間・・・脊索動物門ほ乳綱サル目ヒト科ホモサピエンスかどうかすら怪しい。
そんなあいつが、あいつがなんで・・・ちょっと、その、胸に手が触れたくらいで・・・そんな顔するんだよ。
ってゆーか俺もこんなこと考えてる場合じゃないだろ!さっさと手を離せよ、その手を・・・っ

でも、俺の指はグゥから離れてくれない。全然止まってくれない。
まるで手首から先だけが、自分の意思の外で動いているような感覚。
なのに、なんだって、手から伝わる感触だけはこんなに鮮明なんだ。

グゥの温かさ。グゥの柔らかさ。グゥの鼓動──。
布の上からだってはっきりと解る。

母さんみたいに膨れてるわけじゃないのに、グゥの胸はぽよんぽよんと柔らかい。
いや、たぶんどこを触っても、柔らかくてすべすべに違いない。
手や肩くらいなら、いつも何気なく触れていたけど、こんな気持ちになったのは初めてだった。
手のひらが燃えるように熱い。
じっとり汗ばんでいるのは、俺の手かグゥの肌か。
・・・くそっ グゥってこんなに柔らかかったのか・・・。

「んっ・・・!」
不意に、グゥはピクンと体を震わせた。
指先に硬いものが触る。
これは、なんだろう。・・・なんて馬鹿なことは流石に言わない。解ってる。
今更だけど・・・俺は、グゥにとんでもなくいやらしいことをしているんだ。
さっさとやめないと、これ以上はいくらなんでも・・・。

そんな俺の苦悩とは裏腹に、俺の指はなおグゥの胸をまさぐっている。
特に、乳首に触れたときの反応が気に入ったようで、さっきからそこばかりをしつこく弄っているようだ。
先端を爪でカリカリと擦ると、指の動きに合わせてピクピクと震わせる。
乳首全体を揉む様に挟み捻ってやると、ヒッとくぐもった声を上げ大きく跳ねる。
最初は胸の柔らかさに隠れていた突起も、もう布の上からでもはっきりと解るくらい隆起している。
38名無しさん@ピンキー:2006/11/21(火) 12:03:48 ID:tcOpK6QG
「んっ・・・!ハレ・・・ハレェ・・・」
違う!俺じゃない、俺の意思じゃない・・・。俺の手が勝手にやってるんだ。
だいたい、グゥもなんで抵抗しないんだ。こんなに無茶苦茶にされてるのに・・・
なんで、黙って好きにさせてるんだ。
俺、もう止まんないぞ。
お前がそんな顔して、そんな声出すとこ見せるから、止められなくなったんだからな。


「ハレ・・・痛い。離して・・・。」

え・・・?

手が、離れる。
あれほど頑なにグゥの体に張り付いてたのが嘘のように、簡単に。
途端に、途方も無い罪悪感が胸の奥から込み上げて来て吐きそうになった。

「ご・・・ごめ・・・っっ」
声が出ない。顔を上げられない。これからどんな顔してグゥと暮らせば・・・

「・・・服の上から触られると擦れて痛い。」
「・・・は?」
俺の焦燥をよそに、グゥはいつもの調子であっけらかんと、よくわからないことを口にする。
おずおずと顔を上げると、目の前に火花が散った。

「は・・・?な・・・・・・!??」
思考が纏まらない。脳の回路が次々と断線していくのが解る。

「・・・いいぞ。」
「好きにするがよい。元より健康な男子と一つ屋根の下で暮らす身。いつかこのような日が来ると覚悟はしていた。」

「な・・・」
何の話をしてるんだ・・・これ以上俺を混乱させるのはやめてくれ・・・っ。
だって、目の前には真っ白なグゥがいて、それはとても綺麗で
何がいいのか、服はどこに行ったのか、目の前のグゥは本当にグゥなのか・・・。

グゥの白い肌は、月明かりに照らされていよいよその透明性を際立たせる。
なんて───魔性。
まるで、罠に誘い込まれた獲物のような感覚。

俺は吸い込まれるようにその白い肌に舌を
39名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 02:00:43 ID:a0bvTYGg
…舌をなんだよ!!
気になって明日一日平穏に暮らせないぞ。
支援しまくってるから ガ ン ガ レ !
40名無しさん@ピンキー:2006/11/24(金) 00:59:11 ID:BrfT0zbN
続きが気になる…
41名無しさん@ピンキー:2006/11/26(日) 02:00:54 ID:JY6p+9hb
画像の方は祭ムードだがこっちは奮わんなぁ…orz
42名無しさん@ピンキー:2006/12/02(土) 16:27:51 ID:M6ndt6wJ
>>38
やべぇ!続きが気になる!

期待age&保守
43名無しさん@ピンキー:2006/12/03(日) 03:12:07 ID:ZXLR59ZU
>>42
な、な、気になるよな。
44名無しさん@ピンキー:2006/12/07(木) 22:38:48 ID:pm77YfYd
>>38じゃないですが…
今SS執筆してるんで、1時くらいに投下します。期待しないでくだしあ

てか官能小説とか書くの初めてなんで勝手がわかりません。
保守みたいなもんだと思って読んでください。
45名無しさん@ピンキー:2006/12/08(金) 00:03:57 ID:2KTSAyAc
ハレはグゥと二人きりで留守番をしていた。しかしハレにとってそれは留守番と言う名の
ゲーム天国である。ついこないだ買ったばかりの新作RPGを一気に進めるチャンスである。
 (母さんはまたレベッカの家で飲んだくれていることだろうな…バカ親…)
 ハレはレベル上げと言うひたすら退屈な作業の中、ぼんやりとそんなことを考えていた。
 「なーグゥ、中でアメ怪我とかしてないよな?」
 飲まれた弟を心配する素振りでの暇つぶしだ。だがその問は静寂をもって返された。
 見るとグゥは床に寝そべり、開眼したままムゥムゥと眠りこけている。ハレは小さく息を吐いた。
 (しょうがない、レベル上げはこの敵で最後にして次の城に向かうか。今はゆっくりゲームが
出来るこの時間を享受するとしよう。)
 「あ、よっしゃ、レアドロップゲット」
 だがやはりその声に応えるものは何もなかった。  

 どのくらい時間が経っただろうか、ハレがふと外を見ると赤い夕日がほぼ水平に窓から
差し込んでいた。
 「うわっ、何時間経ったんだよ…」
 ハレは一旦セーブしてゲームの電源を落とした。ゴシゴシと目をこすり、後ろを振り向いた。
 「で!?」
 ハレはあぐらをかいたまま飛び上がった。
 グゥが床に頬杖を突いてハレを見上げていた。一体いつの間に起きて、そしていつの間に
背後に来たのだろうか。
 (忍者か何かか…こいつは…)
 「な…何してんだよグゥ…」
 ハレの質問に沈黙で応え、グゥはじっとハレを見つめ続けた。
 「…ハレはそれ以外にやることが無いのか」
 グゥは見つめる視線に哀れみを含ませ、ボソッと言った。
 ハレはムッとして声を荒げた。 
 「お前が寝てるから他にすることが無かったんだよ!」
 「グゥが寝る前からやっていたではないか。グゥは暇だから寝たのだが」
 「う・・・」
 ハレが言い返せないでいるとグゥは口元をニッと吊り上げた。
 「ゲーヲタ」
 「うっせーよ!」
 ハレは勢いよく床に寝転がり、そして大きく伸びをした。
 「あーあ、それにしても母さんおっせーなー」
 「・・・」
 「またべろんべろんに酔っ払って帰って来れないんじゃないか?」
 「・・・」
 「グゥ?」
 見るとグゥはハレを見つめ、何かを考えているようだった。
 「どうしたグゥ?」
 「ハレはグゥといるよりゲームをしていた方が楽しいか?」
 その声がちょっと寂しそうだったのでハレはドキッとした。
 (まさか本当は俺と遊びたかったのか?)
 「いや、そんなこと…ねぇよ」
 「ハレはもしグゥが遊ぼうと言ったらゲームを止めて遊んでくれたか?」
 「あ…あたりめーだろ。俺はそこまでゲーヲタじゃねぇっつの」
 「そうか」
 それでもグゥは何かを考えているようだった。口元に手を当て、目を伏せて動かない。
 ハレは罪悪感に駆られた。 
(…やっぱりゲームなんかしないでグゥと遊ぶべきだったんだよな…ショック受けてるのか…) 
 ハレは己の軽薄な行動を反省した。少し考えれば分かることじゃないか。ほっとかれて
嬉しい人間なんているはずがないのに。
 (…バカだな俺は)
 「…そうだ、グゥ、今からでも一緒に遊ぼう」
 「…いい」
 それだけ言ってグゥはそっぽを向いてしまった。ハレの心がまたチクリと痛んだ。
 「ほっといたのは謝るよ。だからさ。グゥのしたいことなら何でもいいから」
 「何でも・・・?」
 ハレはにっこり微笑んだ。
 罪滅ぼしになるとは思わないけど、せめてグゥを慰めてあげられたらそれでいい。 
46名無しさん@ピンキー:2006/12/08(金) 00:06:01 ID:2KTSAyAc
「そ、何でも。何したい?」
 そして暫く沈黙したかと思うと…
 「・・・にひ」
 グゥはいきなりニヤリと笑った。ハレの表情が凍った。
 (…何だ今の…)
 ハレは嫌な予感しかしなかった。
 「じゃ、遊ぼっか。ハレ」
 そう言ってグゥは立ち上がった。
 (だからその妙な笑顔は何なんだ…)
 ハレが自分の軽はずみな発言に後悔していると、グゥは突然胸に巻いた黄色い布を
引っ張って緩めた。
 それはあまりに予想外のことで、ハレは顎を落とした。
 「え゛!?何してんのグゥ!?」
 「何って遊ぶのだろう?」
 さも当たり前のようにグゥは言う。
 「なぜ遊びで服を脱ぐ!?だー!!止めろ!脱ぐな!それ以上脱ぐな!!」
 既にグゥは黄色い布を完全に剥ぎ取り、次はスカートを脱ごうとしていた。
 「やーめーろーーーーー!」
 ハレの絶叫などお構い無しにグゥはスカートをも脱ぎ捨て、ついに
下着一枚残すところとなってしまった。
 見事なまでに起伏の無い、丸太のような幼児体型だ。
 「・・・・・・・」
 ハレが視線を釘付けて絶句しているとグゥはすまし顔でハレに言った。
 「ほら、グゥと遊ぶと約束したのだろう。ハレも早く脱げ」
 「遊び方が俺の中のソレと180度ちげーーよ!!服を着ろ!」
 「うっさい」
 「いったぁ!!!」
 重いパンチがハレの右頬を正確に捉えた。
 ハレが倒れ伏すとグゥはすかさずその上にまたがった。そして顔をぐいっと近づけ、
おでこを密着させた。
 「なんでもいいと言ったではないか。ハレは約束をやぶるのか?」
 と言い放った。
 ハレはジンジンする頬に手を当て、かつて無いほど近いグゥの顔に顔を赤らめた。
 「…はは、分かった、風呂だよな?一緒に風呂に入ろうってコトだろ?」 
 「…分かっているのだろう?女がこうして誘っているのだ。ハレも男ならしかるべきことをしろ」
 「お…お前は断じて女じゃね…うぐっ…!」
 ハレの減らず口をグゥの口が塞いだ。あまりの不意打ちにハレの体は硬直した。
 数秒間の口付けの後、グゥは唇を離し、「これでもグゥは女ではないか?」と囁いた。
 ハレは暫く呆然と、だが胸の奥から熱い何かが少しずつ込み上げてくるのを感じていた。
 今まで毛ほども意識していなかったグゥだがここまでされたら話は別だ。
ハレは異様に近いグゥの顔を、今度は自分から引き寄せてキスをした。 
 (ようし、やってやる。でも俺がわりーんじゃねーからな!)
 ハレは口を離し、起き上がってグゥの上になった。
 「・・・ゲーヲタがこのグゥを相手にどこまでやれるか見ものだな」
 「うっせ」
 ハレは短く応えるとグゥのパンツの中に手を突っ込んだ。
 「む・・・」
 「えーと、確かまず濡らすんだったよな」
 「本での知識しかないお子様だな」
 「13歳だっつの」
 ハレはとりあえず適当にいじってみることにした。
 ワレメを撫でたり、指を入れたりぎこちない手つきであれこれやってみる。
保険医の本で二・三度見たことの見よう見まねなのでこれが正しいのかも分からない。
 (それにしても…グゥにもちゃんとあったんだな、ココ……柔らかい…)
 ハレはまるでグゥが女であったことを確認するかのようにグゥの股間をいじくりまわした。 
 「ん・・・ぅ・・・」
 グゥの顔が紅潮してきた。どうやらこんな感じでいいらしい。
 「こんなんでいいのか…?」
 ハレが聞くとグゥは顔を真っ赤にして、黙って頷いた。
47名無しさん@ピンキー:2006/12/08(金) 00:08:18 ID:2KTSAyAc
(グゥのこんな顔初めて見た…なんかエロい。…当たり前か)
 暫くそんなことを続けていると、手になにやらじっとりしたものを感じるようになった。
 (あー、濡れるってこんな感じか。てかいつまでやればいいんだこれ)
 「・っぅ・・・・・む、そろそろ辛そうだなハレ」
 グゥはハレの股間に目をやり言った。確かに今のハレ自身はズボンに圧迫されて痛いほどであった。
 「もうそろそろいいであろう。さぁいよいよそのよく分からん変なものを出すがいい」
 「よく分からん変なものってゆーな…」
 ハレは手を止めズボンをおろした。普段よりだいぶ大きく硬くなったよく分からん変なものが
現れた。
 しかしソレを出したところでハレは妙な後ろめたさのようなものを感じた。
 (…俺の初体験がこれで本当にいいのだろうか…)
 ハレも男だ、初めての女性となる人を妄想したりしたこともあった。しかしその妄想の中に
グゥが出てきたことは一度もなかった。
 (はぁ…初めてはマリィがよかったのになぁ…将来マリィとするときに俺が童貞
じゃないって分かったらマリィ何て言うかな…)
 「安心しろ。童貞かどうかなぞ、そうそうわかるものではないわ」
 「んなこと言ってもなぁ…てかモノローグ読むな」
 「いいから来るがよい。とりあえず今はここに入れなければソレは落ちつかぬであろう?」
 そう言うとグゥはパンツを脱ぎ捨て、自らの指でハレのよく分からん変なものが入るべき場所を
開き、示した。ハレは固唾を飲んだ。本で見たものとは違う、綺麗で、小さいグゥの女性器。
 「あと、グゥも落ち着かんのだ。ほれ」
 「・・・・・」
 ハレは意を決し、無言で自身をグゥの股間にあてがった。
 「・・・ここだよな?」
 「いかにも」
 ハレは一呼吸置き、そのまま一気に挿し込んだ。初めての、自慰では感じられなかった快感
がハレを襲った。
 「・・・・っはう!」
 ハレの声ではなかった。ハレも声を漏らしそうになったが、それより先にグゥが小さく叫び
その体をのけぞらせた。ハレは目を丸くしてグゥを見た。
 (……はう?)
 グゥのことだから何をしても余裕しゃくしゃくだろうと考えていたハレは、
予想外のグゥの反応にいささか戸惑った。
 「え?ご、ごめん痛かったのか?ゆっくりやればよかったのか?」
 グゥは顔をしかめ、どうやら痛みに耐えているようだった。ハレが抜くべきか迷っていると
グゥは小さな声で
 「いや、いい。そのまま動くがよい…」
 と言った。
 ハレは少し迷ったが、そのまま続けた。何度かゆっくりと抜き差しを繰り返す。
 (うわ…なんだこれ…マジで気持ちいい)
 ハレは一心不乱に腰を振った。初めての女性経験がグゥという特例になってしまったので
この快感が普通なのかどうかは分からないがとにかくめちゃくちゃ気持ちいい。
 ハレが夢中で抜き差しを繰り返すうち、はじめは顔をしかめるばかりだったグゥの口からも
だんだんそれらしい声が出るようになってきた。
 「いッ…あっ…あっ…うぁっ!」
 …似合わない。
 ハレは吹き出しそうになった。あのグゥがこんなかわいらしい声を出すなんて。  
 ハレが腰を振るたびにグゥの口かららしくない嬌声がこぼれ出る。ハレは今この瞬間
自分はグゥより優位に立っているのだと理解した。
 普段はグゥの掌で踊るばかり、グゥのおもちゃのように扱われてたハレが、今そのグゥを
犯している。ハレの一突きに、グゥの小さな体が跳ねる。恥ずかしい声を漏らす。
 それはとても気分のよいことだった。
 (もっとよがらせてやりたい…)
 不意にそんな願望がハレに芽生えた。今までグゥにめった打ちにされてきたハレの自尊心が
今、復讐を望んでいる。そうだ、今この状況を利用しなければハレは一生グゥに勝てないまま
だろう。一度だけでいい。この一瞬、グゥにただ一度の敗北を…
 ハレは口元に一筋の笑いを浮かべ、一際グゥを強く突き始めた。
 「んぁッ!あっ…いッ…ハレ…少し…痛い…」
 ハレはその言葉を無視し、なおも強く突き続けた。
48名無しさん@ピンキー:2006/12/08(金) 00:10:57 ID:2KTSAyAc
 「ハレぇ…も…ちょっとゆっくり動いて…ぇあ!あっうあぁっ!」
 ハレはそのままグゥの平坦な胸に手を這わせて乳首を強く摘み上げた。
 「いひゃ!?は…ハレ?んあっぁあ!やめ……んはぁ!」
 「どうしたグゥ、そんな声出して。気持ちいいのか?」
 ハレの言葉にグゥはハッと口をつぐみ、顔に精一杯の嘲笑を浮かべた。
 「フ…フフ…あ…あまり調子に乗るでないぞ、ハレ…グゥは…ひッ!?」
 いくら強がっていても、乳首を摘み上げるとグゥは面白いほど反応する。
ハレは摘んだり、舐めたり、噛んだりしてグゥの小さな乳首を責め続けた。
 「いきゃ…あぁ!ハレ…うあぁ!あぅ…やめ…へぇ……痛い…いはぃぃい!」
 「あー、そういえばあのときのちんちくりんステッキは痛かったなー。覚えてるか?グゥ」
 バスターウィップのことである。ハレはグゥの乳首を思いっきり摘んだ。
 「あぎゃ…!!」
 「こんなもんじゃなかったんだぞ?グゥ」
 「謝るっ!謝るからもう乳首はやめ…んぎぃ!」
 ハレは最後に力いっぱいグゥの乳首を捻り、また腰を振りはじめた。
 「あひゃ…んぁ…うはぁああぁ…」
 乳首責めの効果だろうか。さっきよりも虚ろな目で、ずいぶん気持ちよさそうに見えるし、
ハレが突くたびに腰が痙攣している。どうやら絶頂が近いらしい。
 「グゥ、イキそうなんだろ?」
 ハレはそう言ってニヤリと笑った。グゥはどうやら嘲笑で返したいらしいが、そんな表情
を作る余裕は無いようだ。
 「あぅっ…グゥを…イかそうなど…っ…ひゃ…百年早いわ…んあぁぁああ!」
 「はは、ギリギリじゃんかよ、グゥ」
 「まだ……んぅ…終わらないのか、ハレ…ッ」
 「伊達にオナニーの貴公子名乗ってねぇよ」
 「初耳だ…ぁぁああああ!!」
 「てかグゥ涎垂れすぎ。きたねーな」
 そう言ってハレはグゥの顎から口にかけてグゥの唾液を舐めとってやり、そのまま
その唾液を返すかのように熱くキスをした。
 「ぷぁ…ハレ…」
 糸引く唾液に、恍惚としたグゥの表情。ハレの興奮はは最高潮だった。
 ハレは挿入したままグゥを持ち上げ、より深くに差し込んだ。
 「うあ…ハレ…やってくれるでは…ないか…ひッ!」
 そしてハレは抱き込むようにグゥの後ろに手を回し、グゥのおしりの穴に中指をあてがった
 するとグゥ表情に焦りが現れた。
 「ハ…ハレ…んあっ……そこは…やめてくれ…」
 焦るということは弱いと言うことか?ハレは当然やめるわけもなく、ぐっと力を込め…
 一気に突っ込んだ。
 グゥの体が爆ぜるように飛び上がった。
 「くあぁぁあ!!」
 その瞬間、グゥの中が一気に痙攣、収縮し、ハレ自身を思いっきり締め上げた。 
 「うぁ…何だこれ…」
 「・・・!・・・っ!!!」
 グゥは暫く弓のように反り返り、体を痙攣させた。そしてそれが終わるとぐったりとハレに
もたれかかってきた。焦点の合わない目で、酸欠の金魚のように口をはくはくさせている。
 「…グゥ、イッたのか?」
 …暫くの沈黙の後、グゥは首を横に振った。
 (ここまで来てまだ負けを認めんか…コノヤロウ)
 「そうか、じゃあこのまま続けても大丈夫だな」
 その言葉にグゥの顔が恐怖に引きつった。
 (負けを認めるまで許してやるもんか…)
 ハレはまた大きくグゥを突き始めた。
 「いぎゃあ!ハ、ハレ待って…ぇ!」
 「イッてないんだろ?じゃあこれくらい余裕だよな!」
 ハレは腰を激しく動かしつつ、まだグゥのおしりに入ったままの中指をぐりぐり動かした。
 「あぁぁぁあああぁぁぁ!!らめ…もうらめらからぁ!!ひんゃうぅ!やめへぇええ!」
 完全にろれつが回っていない。グゥの中も断続的に痙攣を繰り返し、どうやら連続で
イっているようだ。
 一気にきつくなったグゥの中はさっきと比べ物にならないほど気持ちよく、ハレもそろそろ
限界となってきた。
49名無しさん@ピンキー:2006/12/08(金) 00:15:02 ID:2KTSAyAc
 「うぁぁあああああ!ひんじゃうう亜jklsん絵cqッ喰え尾ppc@f」
 すごい勢いでイキ狂っているグゥに向かってハレはフィニッシュの言葉を発した。
 「くっ…グゥ!出すぞ!中にだすぞ!」
 「いひぁぁああああああ!」
 かつてない射精感。そしてグゥの中にものすごい量の精液が流れ込むのがわかった。
 「・・・・・っ!」
 「・・ッ!!・・・・・・・!」
 二人の体は同時に硬直し、そして暫く後、同時に脱力した。
 「はぁ・・・はぁ・・・」
 「あ・・・へぁ・・・」
 ハレは軽く白目をむいているグゥから自身を引き抜いた。一拍置いてグゥの中から
白い粘液が溢れ出した。
 (やってやった…)
 「はは、グゥ、すごいイき方だったな」
 ハレがそう言うとグゥは顔に手を当て、すすり泣きを始めた。
 (勝った…グゥに、勝った…)
 「まぁこれに懲りたらもう俺をいじめたりは…」
 ハレはそう言いかけて窓の外を見た。
 そして血を凍らせた。
 「・・・あ」
 いつの間に帰ってきたのか、ウェダとレベッカがそこにいた…
 レベッカは察したようなニヤニヤ笑いで、ウェダは顔を引きつらせて息子を睨みつけていた。
 「ハレ…あんた一体…」
 (うぎゃーーーーーーーーーー!!!!!まさか見られてたーーーーー!!!)
 「え、いや、母さん、あの、違うんだよ、これはグゥが…」
 「ウェダーーーーー!!(泣)」
 後ろからグゥが(営業顔で)ウェダへと駆けていき、飛びついて大粒の涙をこぼし始めた。
 「ハレが…ハレがぁッ…!!」
 「よしよし、グゥちゃん、ハレに襲われたのね?」
 グゥは大きく頷いた。
 「ちげーーだろ!グゥ!襲ってきたのはそっち!俺は悪くないだろ!」
 「見ている限りではそう言う感じじゃなかったわねぇ…」
 (どのへんから見てたんだチクショーーー!死にてーーーー!!)
 するとグゥが肩越しにハレに視線を投げかけた。その顔はさっきまでの弱々しいグゥではなく、
普段と変わりないあのしたり顔だった。
 ハレは全てを理解した。さっきまでのグゥは…この状況に導くための…
 「グ…グゥ…まさかお前…全部…演…」
 グゥはいつものとおり口元を吊り上げた。その表情はこう語っていた。
 『ハレごときが本当にグゥを手玉に取れると思っていたのか…?』
 
 ハレはがっくりと床にくず折れ、己の愚かさを呪った。


 
 お粗末でした…長々とスミマセン…
50名無しさん@ピンキー:2006/12/08(金) 04:34:24 ID:48CTflr1
すげー…すげーっすよ…
なんていうかホントありがとうございます…!GJ!!

今までグゥ受小説を書きつつどんな展開がいいか模索してきたが
貴方には適わない…素敵な世界をありがとう!!
いつかハレが本当にグゥを屈服させる日を願って…w最後にもう一度GJ!
51名無しさん@ピンキー:2006/12/08(金) 04:53:45 ID:48CTflr1
連レスなんだが…
グゥ内にいたアメは犯されてる間どうなってたんだろうか…;
白いのにまみれて吐き出されるとかw
52名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 00:33:16 ID:ZI0c/wkL
あちらのスレにあった書き込みを見て来てみました。
そして、早速読ませて頂きました。

良 す ぎ !! (;´Д`)...ハァハァ

展開やオチ、エロ描写が(本編にエロは無いけど)ちゃんと「ハレのちグゥ」してて感動した!
グゥを手玉に取るなんて事は、考える事すら許されないようですね。 (((( ;゚Д゚)))
ハレカワイソスww
53名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 02:43:36 ID:FCUWibM2
>>50-52

恐縮です…まだ未熟な作品ですが、このSSを誰かに楽しんで読んでいただけたのなら
それは書いた私にとって非常に幸せなことです。

もう一つ投稿させていただきます。これは少し暴走してしまった作品なんですが…
>>52さんが評価して下さった「ハレグゥらしさ」が皆無です。あと、ちょっとハードエロです。

■■■■■■グゥ×ポクテの異種姦(同種姦?)SSです!ニガテな方注意!■■■■■■
54名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 02:49:31 ID:FCUWibM2
 ポクテの頭に生えている二つのアレはどうやら耳であり手であると同時に生殖器でもあるようだ。それらは今、
グゥの股間にある二つの穴に深々と挿入され、のたうち、グゥの頭をおかしくしている。
 一匹二匹の話ではない。今、暗い洞穴の中、大小さまざまなおびただしい数のポクテがグゥを取り囲みその
万能触手でグゥの体のあらゆるところを責め立てている。それらの先っぽから時折吐き出される透明な粘液…
おそらくポクテの精液だが…それにはどうやら媚薬のような効果があるらしく、それをかけられた部位…つまり全
身が燃えるように熱い。頭のてっぺんから足の先までが、既存のどの性感帯よりも敏感になってしまっている。
 「…あッ!ぁうああぁあぁあぁ!!」
 ポクテがグゥの中でその触手をほんの少しでも動かすたびに絶頂感が津波のように押し寄せてくる。グゥの頭の
中が白くスパークしてリセットされてしまう。そのせいでさっきから全く思考がまとまらない。
 グゥは何故ここにいるのか。何のためにここに来たのか。グゥはどうしてこんな状態にされてしまったのか。
 (…そう…確かあれは今朝のこと…今朝グゥが…)
 「んはぁぁあああぁあぁあああぁあああ!!」
 絶頂感がまたグゥの頭を白く攫った。


 今日は久しぶりの狩りの日だった。久々に体を動かせるウェダは張り切って仕度をしていた。
 「今日は大物しとめるわよ〜!ハレ!」
 ハレはアメをあやしながら横目でウェダを見て応えた。 
 「張り切るのはいいけど、あまり無茶して怪我しないようにね」
 「舐めるな!母さんを誰だと心得るか!」
 「母さんは母さんだよ・・・」
 そして全ての仕度を整えたウェダが玄関に立ちこちらを振り向いた。
 「じゃ、いってきま〜す」
 「行ってくるぞ、ハレ、アルヴァ」
 ハレは泣き続けるアメに途方に暮れながら二人を見送った。 
 「はいはい、いってらっしゃーい…」
 二人が出て行ってしまった後、ハレは暫く無言でガラガラを振っていた。
 「・・・・・・・・・・・・ん!?」
 ハレは何かに気付き、飛ぶように玄関へと駆けて行った。そして遠ざかる二人の背中に大声で怒鳴った。
 「グゥ!!何でお前まで行くんだよ!?」
 なんの違和感もなく見送ってしまったが、思えば何故グゥが母さんの隣で弓を背負っている?
 するとグゥは立ち止まり、いい笑顔でハレを振り返った。
 「なぁに、ハレもいいキャラにしてやろうとおもうてな」
 「あぁ!?」
 「グゥの手でポクテをたくさん狩ってきてやろうと思うのだ」
 「胸毛かコラァ!!」
 「待ってろよハレ、父ちゃん今日は腹いっぱいポクテ食わしてやっからな〜」
 「お前のような悪意に満ちた父ちゃんおらんわ!待てグゥ!」
 「ほっほっほ」
 …行ってしまった…追いかける気にもならないハレはげんなりしながら家に入った。
 「なんだ、グゥも行ったのか」
 アルヴァが怪訝そうな顔で聞いた。
 「あぁ…何考えてんだか、あいつは…」
 見るとアメは泣き止んで眠りについていた。ようやく開放されたハレは大きく一つため息をついた。
 (あぁ、でもアルヴァと二人きりか…これはこれで気まずいな…)
 「ハレ」
 ハレがそんなことを考えているとアルヴァが話し掛けてきた。
 「ん?何アルヴァ。そうだ、ゲームでもしようか。格ゲー」
 「ハレ…」
 「?」
 アルヴァはハレを見つめ続けた。今度はハレが怪訝な顔をする番だ。
 「どうしたんだよ、アルヴァ?」
 「…二人きりだな…ハレ…」
 アルヴァのその言葉と熱い視線に、ハレは硬直した。
 ウホッ!いいアルヴァ…
55名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 02:51:32 ID:FCUWibM2
グゥはポクテを探して一人森を彷徨い歩いていた。草の根掻き分け、ハレの胸毛のために割と真剣に探し続
けた。
 (…いない)
 おかしい。いつもは探しもしないのにそこら中にうじゃうじゃいるポクテが今日に限って一匹もいない。
 (なぜだ…?)
 背中の籠はもう満田で半分ほど満たされてしまった。なのにポクテは一匹も採れない。
 「……そうだ」
 グゥは思いつき、歩き出した。
 ポクテの巣だ。あそこなら絶対にいるはずだ。
 グゥは以前訪れたポクテの巣にたどり着き、中を覗いてみた。
 …鳴き声がする。確かにいるようだ。グゥは意気揚揚と中へと入っていった。
 暫く歩くと大広間に着いた。予感は的中、おびただしいポクテが集会のようなものを開いていた。グゥは気付か
れないように5・6匹狩って帰ろうと、弓を構えた。 
 しかし弓の軋む音が聞こえたのだろうか、一匹のポクテがグゥを振り向き、大声を出した。
 「…誰だ!」
 同時に何百というポクテがグゥを振り向く。
 (・・・しまった。)
 弓を構えている姿を見られてはもう友好的にとは行かないだろう。いくらグゥでもこの数のポクテ相手に勝てる
気はしなかった。
 「誰だ貴様は!我々を狩りに来たのか!」
 「まて、話しを聞け」
 逃げる時間を稼がなければ。グゥは入り口をちらりと盗み見た。
 「話など無駄だ!どうあっても今の会話を聞いた貴様を返すわけにはいかん!」
 どんな会話をしていたのかは知らないが、どうやらまずそうだ。グゥは一目散に駆け出した。
 「逃がすな!入り口を塞げ!」
 しかし入り口まであとちょっとというところで天井から大量のポクテが落ちてきて入り口を塞いでしまった。
 「くっ・・・」
 グゥは途方に暮れた。
 「取り押さえろ!」
 その言葉と同時にまた大量のポクテが天井から降り注ぎ、グゥを地面にたたきつけた。
 「あぐっ…!」
 「愚かな人間よ…あの会話を聞いてしまったからには貴様をただで返すわけにはいかん」
 「グゥは何も聞いておらん…」
 「信用なるか!あの会話を他の人間に話されれば我らは滅亡しかねんのだ!」
 「グゥを殺すのか…?」
 すると額に「長」と書かれたポクテが笑いを浮かべて言った。
 「偉大なる彼のポクテがそうしたように、我らは人間を殺すような真似はしない。…貴様には我らの従順なる
ペットとなってもらおう。洗脳し、我々無しでは生きられない体としてしまえば秘密を漏らす心配も無くなろう」
 「な・・・?」
 「やれ!」
 その号令と共に、大量のポクテがグゥの衣服を次々と剥ぎ取っていった。
56名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 02:53:45 ID:FCUWibM2



 「あ――――…あ―――――――………!!」
 もう何時間嬲られているのか分からない。口からはグゥの意思とは無関係のだらしない声が発せられ続けてい
る。体の方も、自分の中でポクテが蠢くのを喜ぶかのように痙攣する。手足は無意識にポクテの触手をしごき、
吐き出された精液を自らの肌に擦り込むように塗りたくる。
 …体はもう完全にポクテに服従してしまった。グゥの意思など無視して勝手にもっと気持ちよくなろうとしている
。今この快楽に抵抗しているのはグゥの理性だけだ。
 「うあ゛っ!!う゛あぁぁあぁああん!!!ぎ・・・ぎもぢいいれすぅうう!!ポクテ様ぁあ!!」
 こんなことを言う始末だ。違う、これはグゥの意思ではない。こんなこと言いたくない。もう気持ちよくなんてなり
たくない。
 グゥは意思だけは何とか持ちつづけていた。どんなにすごい絶頂がきても、どんなに太い触手を突っ込まれよう
とも、どんなに恥ずかしいセリフを吐いてしまおうとも抵抗の意思が完全に失せることはなかった。
 グゥはぼんやりする頭で何とか考えた。 
 そうだ、これを耐え切れば帰してもらえる。堕ちたふりをして、ペットになったと見せかければ帰してもらえるんだ。
 「い゛あぁぁっぁあああぁあぁあ!!きもぢいいよぉぉぉぉおお!!!」
 だから…早く……グゥの理性が…全部堕ちてしまう前に…
 「やめっ!」
 突然長ポクテが叫んだ。同時にグゥを取り囲んでいた大量のポクテが一歩飛び退いた。グゥの穴を責め立てて
いた二本の触手も急に引き抜かれたのでグゥの二穴から透明な粘液が勢いよく噴出した。
 「んあ゛ぁ!!」
 「さてどうかな?我らのペットになると誓えるか?」 
 グゥはようやくまともな思考を許されるようになった頭で理解した。
 ココで服従したふりさえすれば、帰してもらえる…
 グゥは全く力の入らない首をなんとか長に向け、言った。
 「…はひ…グゥは、ポクテ様に…服従を誓いまふ…グゥは、ポクテ様の従順なる、ペットれす…」
 「ふむ…」
 長は暫く考えていた。
 いいから、早くここから、開放して…これ以上はもう…
 「まだ目が死んでおらん…貴様、それは演技だな?」
 バレている… 
 グゥは内心あせった。これ以上されてはもう抵抗できる自信が無かった。
 「…グゥは…本当に…」
 「これは徹底的にやる必要がありそうだ…おい」
 長ポクテが呼ぶと、額に「ZAKO」と書かれた巨大なポクテがグゥの前に立った。
 「今からそいつに貴様を飲ませる。そいつの中での快楽に耐え切れる生物はおるまい…」
 「いあ…やめ…へ…」
 ZAKOポクテが口を開くと中では無数の触手が蠢いていた。
 「今の自分に別れを告げるんだな…正気を失わない保障はない」
 するとZAKOポクテはグゥを持ち上げ、足から徐々に飲み込んでいった。
 この世のものとは思えない快感が足元からグゥを侵蝕し始めた。
 「いひゃああああぁあ!!らめぇえ!!!やめへえええぇぇぇ!!」
 「出てくるときには立派なペットだ。では、ごゆっくりとな」
 「んあ゛はあああぁぁぁあぁあぁあぁあああああ・・・・・・!!!!」
 ZAKOポクテはグゥを完全に飲み込んだ。ZAKOポクテの中からは、くぐもった、獣じみた嬌声がいつまでも響
き続けた。
57名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 02:55:58 ID:FCUWibM2



「グゥが行方不明!?」
 ウェダの報告を受けて、やけにげっそりしているハレがおしりを押さえながら素っ頓狂な声を上げた。
 「そうなのよ…集合場所にもかえって来ないし…もし猛獣とかに襲われてたら…」
 「で、どうするんだ?探しに行くのか?」
 後ろからやけにツヤツヤしたアルヴァがベルトを締めなおしながら聞いた。
 「そうね、今大人が編成を組んでるわ。だからハレ達はもうちょっと留守番お願いね!」
 そういってウェダは駆け出そうとした。ハレがそれをとどめた。
 「待って!俺も行く!」
 「だめよ!ハレまで迷子になったらどうするの!」
 「でも!グゥは!」
 あんな奴だけど、グゥは…グゥは俺の大事な…
 「・・・」
 ウェダは暫くハレを睨んでいた。ハレは負けじと睨み返した。
 絶対に引くもんか、グゥは俺の友達だ!
 それにこれ以上アルヴァと一緒にいるとケツの中でションベン程度じゃ済まなさそうだ…下手するとクソまみれで

 「お願いだ!母さん!」
 ウェダは悩んだが、やがて折れて頷いた。
 「分かったわ。でも母さんと一緒に行動すること、いいわね」
 「分かった!」
 そうして二人は駆け出した。
 一人残されたアルヴァは寂しげにハレを見送ると、肩を落として家を見回した。
 そして、アメに目を止めた。アルヴァが固唾を飲む…
 「アメに手出したら殺すぞ!アルヴァ!」
 なんとなく嫌な予感がしたハレが一旦戻って来て窓から怒鳴った。
 アルヴァはギクリと身を強張らせたが、すぐにすました顔をつくり、
 「もちろんだ」と言った。
58名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 02:58:05 ID:FCUWibM2


 白目をむいたグゥが徐々にZAKOポクテから吐き出された。
 「・・・・・・ぁ・・・・・・・・・・っぁぅぅ・・・・・・」
 もはや言葉も出ない様子で、完全に脱力した体が定期的に激しく痙攣している。
 中にいた時のことは何一つ覚えていなかった。ただ真っ白で、気が狂うほど気持ちよかったことだけが印象とし
て思い出せる。
 何回イッたのかも覚えていない。いや、今も進行形でイッている。絶頂感がグゥと溶け合って一体となってしまっ
たかのようだ。
 「どうだ?何かわかるか?」
 「・・・・・は・・へ・・・?」
 何も分からなかった。自分が何者なのかも、今何をされていたのかも、全て頭から吹き飛んでいた。ただ、気
持ちよかった。そして、もうそれだけでいい。
 「・・やらぁ・・・やめひゃやらぁ・・・!もっときもひよくひてぇ・・・・・・」
 もう分からない。気持ちよければそれでいい。何故抵抗する必要があったのだろうか。この地獄の深淵よりも
なお深い、底なしの快楽を得ることに畏怖していただけなのでは?こんなにも、こんなにも幸せだというのに。こ
んなにも、こんなにも、こんなにも・・・・・
 「・・おね・・・がひ、入れてへぇ・・・!グゥのおまんこ、もっときもひよくひてくだひゃいぃい・・・・!」
 しかしグゥの心が完全にポクテに屈服しようとしたそのとき、グゥの中で誰かの声が響いた。とても大きく、まるで
傍で語りかけてくれているかのように。グゥは痺れる頭でその声をなんとか認識した。
 『……グゥ!どこだグゥ!』
 ・・・誰?・・・思い出せない。なにかとても大切な人だった気がするのに。
 「あひゃぁあ!!?」
 ポクテがまたグゥの中に挿入を始めた。最後の力を振り絞って現れたひとかけらの理性が快楽に飲み込まれよ
うとした瞬間、またしてもグゥの中でその声が響いた。
 『…グゥ!おいグゥ!俺に腹いっぱいポクテ食わせてくれるんじゃなかったのかよ!どこいったんだよ!グゥ!』
 グゥはハッとして目を見開いた。死にかけていた理性が一瞬にして再燃した。
 (・・・・・ハレ!!)
 そうだ、ハレだ!この声の主はハレだ!グゥを探している!
 「あぎゃぁっ!!うぁぁぁあああああ!!!」
 グゥの小さな穴に二本ずつ、合計4本のポクテの触手が挿入され、激しく動かされる。だがグゥはもう理性を飛
ばしたりはしなかった。
 (ハレが探してくれている、グゥを、探してくれている・・・!)
 「・・・・ハレェ!!助けてハレェェ!!!」
 グゥは大声で叫んだ。長ポクテが目を丸くする。
 「何と…!まだ堕ちておらぬのか!?」
 もう負けない。どんなに穴をほじくられようとも、どんなに媚薬漬けにされようとも、どんなに気持ちいいところに
閉じ込められようとも決して理性は飛ばすものかと思った。
 「くっ…この小娘が…」
 グゥの中の触手4本が同時に射精し、媚薬をグゥの中に放つ。
 「ひぃぅ・・・ぅううううう!!!!」
 触手がぐちゃぐちゃと音を立ててグゥの中に媚薬を擦り込むが、グゥは歯を食いしばって耐えた。
 「ハレェェェェェェェ!!!!」
 グゥが一際大きくハレの名を叫んだそのとき、入り口から大慌てで数匹のポクテが飛び込んできた。
 「長!大変です!」
 そしてよろよろと長の下へまろび寄ると、顔面蒼白で報告した。
 「大勢の人間が、ここに近づいてきています!」
 「何だと!?」
 「武器を持っています!我々を狩る気です!」
 「ぐぅうう・・・!」
 長ポクテは恨めしそうにグゥを睨みつけた。
 「この娘を探しに来たか…娘が見つかるまで人間が止まらないとなると……くっ、やむおえん、娘を捨てて第
二の出口に急げ!」
 長の号令と共に数百のポクテは一斉に洞窟の奥へと逃げ去っていった。
 一人残されたグゥは、入り口の方から大勢の足音を聞いた。
59名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 03:00:06 ID:FCUWibM2
 (・・・助かっ・・・た・・・)
 グゥが力を振り絞って上体を起こすと、グゥの中から触手が抜けずに暴れてるポクテを見つけた。
 グゥはそのポクテを思い切り叩き潰して気絶させ、ゆっくりと引っこ抜いて最後となったその快感に身震いした。
 「グゥ!ここか?」
 ハレがそう叫びながら一番に飛び込んできた。そして全裸で地面に座り込んでいるグゥを見つけ、安堵のような
驚愕のようなよく分からない顔でグゥに駆け寄ってきた。
 「グゥ!心配したんだぞ!何してたんだよ!…いや、本当に何してたんだよ!!何で全裸なんだよ!!」
 「ハレ・・・」
 グゥは涙をこぼしてハレを見た。ハレは予想外のグゥの涙に仰天した。
 「な・・・何で泣いてんだよ、グゥ」
 その時入り口からたくさんの村人が入ってきた。グゥは恥ずかしそうに涙を拭い、手にしたポクテをハレに差し出
した。
 「はい、ポクテ」
 「いらねぇよバカぁ!」
 そう言ってハレは汁まみれのグゥをぎゅっと抱き込んだ。
 「無事でよかった・・・」
 ハレのその言葉にグゥは少し顔を赤らめ、ぎゅっとハレを抱き返した。




 「や・・・やめろ・・・見るな!そんなつぶらな瞳で俺を見るなぁぁああ!」
 アルヴァは目覚めたアメの視線を身に受けながら、壁に頭を打ちつけて自分の欲望を押さえていた。
 「ぬぐぅうう!それだけはいかん!アルヴァ!自分を強く持つのだ!父様!俺に一片の理性をおおぉぉお!!
!」
 ハレの家からはいつまでも、何かを壁に打ち付ける音が響き続けた。
60名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 03:04:18 ID:FCUWibM2
御粗末様です…ちょっとグゥを狂わせ過ぎました。
アルヴァがウホッなのは原作にこれっぽっちも基づいていない、
物語を潤滑に進行させるためのフィクションです…
61名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 19:21:01 ID:HiUH9GF0
結構にぎわって来ましたねー
俺も今無駄に長いの書いてるのだけれど
グゥをどこまで壊れさせるかの按配がツライッすね
結局俺グゥになっちゃうのだけど。読んだ人が引かないかちょっと不安
62名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 21:34:09 ID:VsZoRDO2
>>61
頑張って完成させて下さい!楽しみにしてます!
63名無しさん@ピンキー:2006/12/11(月) 01:14:41 ID:P2txU+Sb
>>7のアルヴァグゥ書いた者でつ。
一時はどうなる事かと思ったが賑わってきましたねー。

隅で行われていたアルヴァとハレの何かが凄く笑えましたw

自分的には壊れまくってるグゥ大好きっす。
前スレでグゥをアルヴァの性奴隷にしたりしてるし…orz
他の方の書いた新鮮なグゥにホクホクしておりますw頑張って下さい。

>>61氏のも楽しみにしてまつ!
6454:2006/12/12(火) 05:37:28 ID:MbADFxrQ
やはりグゥのような隙のないキャラは逆にむちゃくちゃにして
しまいたくなるものですよね
上記のSSもオチのコメディ描写に繋げるためハッピーエンドで
終わらせましたが完全に堕としてしまうのも良かったと思っています

>>63
僕はこのスレから参戦したので前スレを知りません。アルヴァがグゥを性奴に
したというそのSS、一度読んでみたいのですが…どこかに保管されて
いるのでしょうか。もし既に見れないものとなってしまっているのなら
お手数ですがもう一度投下していただきたいのですが…
ご迷惑になったり、もし既にデータごと削除してしまっているという
ことならば無理にとは言いませんので…
65名無しさん@ピンキー:2006/12/13(水) 01:30:46 ID:d5GAH3d4
>>63でつ。
前スレが落ちた上自分のトコのデータも残してないんでちょっと難しいですね…。
スンマセンm(__)m
また別物をいつか投下します。
66名無しさん@ピンキー:2006/12/13(水) 02:00:10 ID:RwXvyvI8
>>65
いえ、こちらこそ無理言ってすみません…
新作楽しみに待っています。
6761:2006/12/15(金) 22:19:59 ID:ZZjyj1Kl
こまめに保守。
アルヴァ何気に使いやすいですね。
私も今書いてるのがちょっと時間かかりそうなんで
もう1つ書きたいネタだったアルヴァ×ワジなんぞを先に仕上げちまおうかと思いつつ。
ワジ(女)ってどうですかね、需要的にw
68名無しさん@ピンキー:2006/12/16(土) 03:58:00 ID:Tr73yInA
前スレにはそれなりにありましたね、ワジw
まだ見てる人がいれば需要はそれなりかと。

アルヴァ使いやすいっすよね。
前科が前科なだけにもうどのようにでも動いてくれますw
執筆中の方も頑張って下さい。
ちなみに今書かれてるのは…何カプなんでしょか
69名無しさん@ピンキー:2006/12/16(土) 21:01:41 ID:bw6Bydvl
ほす
70名無しさん@ピンキー:2006/12/18(月) 17:26:06 ID:+T21JvYi
保守&期待age
71名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 22:33:50 ID:fwz3FHBM
ハレグゥ読み始めたので、やっと「アルヴァ」がどんな人物なのか解って来た。

ウホッって、ワロタww
本編でも「少しそういう人」なのかと思って期待しちゃったじゃないかww
72名無しさん@ピンキー:2006/12/21(木) 02:28:26 ID:aPTdH/Kr
本編はこれからどんどんいじり甲斐のあるキャラになっていくのでは?w>アルヴァ
なんつうか、とりあえず動かしやすいキャラっす。動かしてみたらわかる。
73名無しさん@ピンキー:2006/12/24(日) 00:12:40 ID:has8/pYv
穢れたクリスマスをブチ壊すため、もてない男たちの希望、しっとマスク参上!
                      /し, /    _>.
                     / { \レ/,二^ニ′,ハ
                     |'>`ー',' ヽ._,ノ ヽ|
                     |^ー'⌒l^へ〜っ_と',
      __             ! u'  |      /
  /´ ̄       `!             ヽ  |   u'  , イ
  |  `にこ匸'_ノ            |\_!__.. -'/ /|
  ノ u  {                 _.. -―| :{   ,/ /   \      
. / l   | __  / ̄ ̄`>'´   ノ'    ´ {、    \     
/ |/     {'´    `ヽ. " ̄\ U `ヽ.    __,,.. -‐丶 u  ヽ      
| / ヾ、..  }      u' 〉、    }    `ー''´  /´ ̄ `ヽ '" ̄\
! :}  )「` ノ、     ノ l\"´_,,ニ=-― <´  ヽ{  ノ(   `、  |
l   、_,/j `ー一''"   },  ノ ,  '''''""  \   ヽ ⌒ヾ      v  | 
ヽ   _         /   } {. { l ┌n‐く  ヽ/ ``\        ノ
  `¨´    `¨¨¨¨´ ̄`{ 0  `'^┴'ー┘|ヾ    }、 u'   `  --‐r'′
>>1 男がしっとに燃えるとき
>>2 しっとマスクを呼ぶ合図
>>3 素顔は誰だか知らないが
>>4 しっとの心を仮面に隠し
>>5 しっとパワーに炸裂だ!
>>6 しっとビームでアベック倒し!
>>7 しっとガイヤーはアベック焦がす!
>>8 行くぞ我らのしっとマスク
>>9 もてない男の希望の戦士
>>10 しっとマスクはしっとの王者
74名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 22:58:47 ID:+Cy39b1t
アニメの方はまだTV版も全話見終わってないんだが…本当にグゥ様は素晴らしい。(*´д`*)ハァハァ

隙が無いというか、こういうキャラだからこそイジリがいがあると思う(;゚∀゚)=3
75名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 23:15:18 ID:YTggMRp2
アニメだとちゃんと肌に色がついてるせいでだいぶ印象が違うね。ぶっちゃけエロいw
肩がまるごとはだけてるのは反則。
動きも猫っぽさが強調されてるし。

隙が無いってのはホントそうだねえ。あんまりにも無さ過ぎて二次創作では実に困るw
エロどころか萌え展開でも「本音」を語るだけでグゥ様のカラーからはずれてしまう罠…
そこを押し切って書かないと筆が止まる止まる。
とりあず自分で書いてるのはアニメの声で読むときは営業と通常の間くらいのテンションw
76名無しさん@ピンキー:2006/12/30(土) 03:26:59 ID:v7PuNncV
グゥ様は初期に垣間見せた寂しげオーラを使えばなんとか二次創作に持ってけますぜ。
自分もグゥ様受けの二次創作は何度かやったが、ネタが浮かばない浮かばないorz
いじりたいのにいじれない、何とももどかしい方だグゥ様はw
77名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 03:33:00 ID:IraBvURn
>>61です。やっとこハレxグゥ完成したのでお送り致したいと思います。
だいぶグゥがクーデレになってるので合わない方はご容赦をw
あとむやみに長くなってしまったのでどこまでレス使うやらわかりません。
とりあえず、↓から順次うpしていきますね。
78名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 03:36:25 ID:IraBvURn
<<1−1>>

「ほら保険医〜、ぼけっとしてないでそっちの皿さっさと片してくれよーっ」
「あ〜ン?ったく、人に頼ってばっかじゃ立派な大人になれんぞ?」
「保険医?自分がオレも本来なら頼りたくないタイプの大人であることを自覚しろよ?」
ガチャガチャと陶器のぶつかり合う音と、勢いよく流れる水の音がダイニングに響く。
──日の落ちたジャングルをこうこうと照らす小さな村。
そこにある小さな一軒家で、父子と見られる男と少年がまさしく犬猿の仲といった様子で、喧々と互いを
牽制しあいながら家事に勤しんでいた。
「……ってンめえ、それが父親に対する態度かコラ!」
「っさい!父親ぶりたきゃもっと父親らしい姿を息子に見せろ!」
この家では数ヶ月ぶりの、『いつもの光景』というやつになるのだろうか。
久々に帰省した父に対する息子の態度は、時間が解決するような代物では無いようだ。
「二人ともうるっさい!!アメが起きちゃうでしょー!!」
売り言葉に買い言葉で、ますますエスカレートして行く喧騒をピシャリと両断する怒号。
母は強し。この家のヒエラルキーの頂点に君臨する『女王』の稲妻のような叱咤にただ男衆は、
「……すいません」
と口を揃え、小さくなるしかなかった。
「ってかなんでいきなり帰ってくるんだよ……さっさと都会に帰れっ」
「言われんでも年明けには戻るわっ…たく、せっかく時間作ってアメの顔見に来てやったってのに……」
言いながら、母に抱かれすやすやと眠る赤ん坊の鼻先をこちょこちょとくすぐる。
普段は小憎たらしい表情しか見せぬ父も、こんなときだけは少しだけ穏やかな表情を見せるのだ。
「保険医……」
ただそれだけで、およそ父として…と言うか人として尊敬できる要素を認められないこの放蕩男にも、
人の親としての資格があるように感じてしまうから不思議だ。これってただの『悪いやつが普通のこと
したらすごく良いやつに見える法則』みたいなもんだよなぁ、などと穿ったことも考えてしまうのだが、
それでも救いがあるように見えて少しほっとしてしまう。
「保険医みたいのでも子供のことってやっぱ気になるんだ?」
少年もアメを抱く母の前にしゃがみ、アメをあやす。
いつの間に目を覚ましたのか、アメも親子3人に囲まれ、機嫌よさげに2人の指を力いっぱい握って
振り回している。
「…お前のことは気にならんがな」
「おお、気にして欲しいとも思わんけどな?」
「先生もハレも仲良いわね〜」
どうしても皮肉を付け足さなければ気がすまないのか。
いつでも臨戦態勢を崩さぬこのあまりにもぎこちない父子の姿ももはや日常。
その様子を眺める母の表情は暢気そのものだ。
79名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 03:36:58 ID:IraBvURn
「…ところでさ、僕はいつまで『保険医』なワケ?」
「はぁ?そんなの保険医の仕事辞めるまでだろ?あ、今は都会で別の仕事やってるけど…」
「そうじゃなくて…ウェダちゃんもだよ、僕のこといつまで『先生』って呼ぶの?」
頭をカリカリと掻きながら、憎々しげにハレとウェダを見比べる。
回りくどい言い方に首を捻るが、少し考えればなるほど、この父は至極簡単な要求をしているのだ。
しかしその要求が簡単に通るようなら、ここまで関係はこじれてはいまい。
とはいえ、せっかくこの天邪鬼が勇気を出してこの話題を切り出したのだ。少しは親孝行してやっても
良いか、とハレもその話題に乗ってやることにした。
「あ〜なんだ、パパとか呼んで欲しいわけ?」
「…それはさすがに気持ち悪い」
「んじゃクライヴ」
「僕はガキに呼び捨てにされるほど落ちぶれちゃいないつもりだがね…。普通に父さんとかあるだろ?」
「父さんねえ…ものすごい違和感を覚えるよオレは」
「気持ちは解るだけに言いかえせん…僕も本来なら呼ばれたくないんだけどね」
結局、この至極まっとうな父としての要求はあっさりと否決される。
しかしこんな会話も、父との距離を縮めるために必要なものなのだろうとハレは少し嬉しかった。
「ま、せめてもっと父親っぽくなったら呼んでやっても良いけど?」
「いや、逆だよ。僕はせめて今だけでも呼んでほしいんだ」
皮肉交じりにも、最大限譲歩したつもりのハレだったが、クライヴはよくわからないことを言う。
どうやら自分が思っていた要求とは少しズレたものだったようだが…その意図が掴めず訝しげに父を見上げる。
「…どーゆーことだよ?」
「見りゃわかんだろ、アメの顔だよ」
「?
 アメの顔になんかついてる?」
「じゃなくて…この毛髪!それに瞳、あと肌の色…!
 どこをどう見ても、僕の遺伝子が反映しているようには見えないんだけどねえ?」
言いながら、むにむにとアメの頭をいじくり倒すクライヴ。アメは遊んでもらっていると思っているのか、
きゃっきゃと上機嫌に成すがままにされている。
「ああ、まあ確かに。母さん似だよね」
「似てるなんてもんじゃないよ…それにお前もだしなぁ、ハレ」
他人事のように、うんうん、と同意するハレにハァ、と大きなため息を吐き頭を抱えるクライヴ。
確かに、アメだけでなくハレも、まるでクローンと言わんばかりにウェダにそっくりな容姿をしている。
この3人はことさら主張する必要もなく、ただ側にいるだけで誰の目から見ても親子として認められるだろう。
そこにクライヴの入る余地は見当たらない。
それがなお更、己をこの『家族』という空気に溶け込ませることが出来ない原因になってるようだ。
「なんかさ…ビジュアル面でも僕って異分子っぽいっつーかさ…」
がっくりと肩を落とし、三角座りの状態でしくしくと呻くクライヴ。その背後には灰色の瘴気が見える。
(なんだ、ちゃんとこいつも家族になろうと思ってるんじゃんか)
…そんなことを心配する親子関係というのもどうかと思わないでもないが、何も考えていないよりはずいぶんとマシだ。
いつもは、こいつが帰ってくるたびに邪魔者扱いしちゃってたけど、今日はこうやって少しだけ父のことを見直せたんだ。
これからはちょっとくらい歓迎してやってもいいかな。
「何言ってんだよ保険医!んなこと気にすることないって、もっと自信持ちなよ!」
「だったら保険医って呼ぶのやめてくれよ…。ただでさえ毎日顔見に来てやれないんだからさ〜」
勤めて明るく、背中をバンバンと叩き励ますハレ。だが根本的解決の見えぬこの関係にクライヴの表情は暗いままだ。
むしろますます落ち込むクライヴの消え入りそうな声に、ハレにも瘴気が移ってしまいそうになる。
「…このままじゃ、物心ついても俺を父親って認識しないかもしれんだろ…」
「うわぁ、それはホントにありそうでちょっとオレも心配かもしんない…」
不良を自覚する父に打ち明けられたその地味に深刻な悩みに、先ほどのハレの無根拠な希望的観測など軽く消し飛んでしまう。
逆に現在すでにその様子が垣間見えつつある妙にリアルな未来予想を展開してしまい、目の前でずぶずぶと泥沼に
沈み込んで行く父を眺める瞳に素で哀れみを湛えてしまう少年だった。
80名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 03:38:21 ID:IraBvURn
<<1−2>>

「──そだ、お風呂もう沸いてるよな…さっさと済ませちゃお」
そうこうしているうちにとっくに夕食の片付けも終わり、夕飯前に支度しておいたバスルームに目を向ける。
この手際の良さはひとえに母の教育の賜物であろう。曰く、『誰もやらなければ自分がやるしかない』。
「あ、ハレ。お風呂入るならこれ持ってって」
バスルームに向かうハレに母からぽんと、幾重にも折り畳まれた薄手の布切れが手渡される。
濃い桃色の、広げたら自分の身体をくるりと包めそうなくらいかなり大きな布。
その上に黄色い横長の、マフラーのような布が乗っている。
バスタオルと手ぬぐい?…いや、どっかでみたことあるよーな……。
頭にハテナマークを浮かべながら、脱衣場でそれをばさっと広げる。…その瞬間、全ては氷解した。
…いや、次の瞬間だったか。カラリと、ハレの真隣でバスルームの扉がスライドした、瞬間。
「え……?」
両手で大きく布を広げたままその音の方を振り向いたハレは、その先に映し出された光景に言葉を失う。
手ぬぐいを頭からかぶり、身体からはまだぱたぱたと雫を滴らせている少女。
その身には何も覆われておらず、少年の前に何のてらいも無く、白い肌が晒されていた。
くびれもふくらみもない真っ平な体。プクンと桃色に膨らんだ二つの突起に一瞬目が奪われる。
「────ッッ」
ヒッ、という小さな悲鳴は、自分の喉から出たものか他所から耳に入って来たものか、
その声にハレはハッと我に返り、すぐさま少女から身体ごと眼を逸らす。
「あ、あははは…なんだグゥお風呂入ってたんだ〜!あ、これ、ここ置いとくから!」
ここで弁解したり変に狼狽すると余計に滑稽だ。と、あくまで平静を装い、ペラペラと捲し立てる。
パタパタと手際よく手に広げていた布切れを折りたたみ、着替え用の籠の中にトサ、と置く。
ハレはそのままの姿勢で、セカセカと早足にバスルームから脱出した。
後にはぼう、と立ち尽くす少女の姿だけが残されるのだった。

「あれ、どうしたのハレ?お風呂入るんじゃないの?」
「……母さん、グゥが入ってんならちゃんと言ってよ〜!」
ドスドスとバスルームからリビングに戻り、ようやく場に相応しい狼狽を見せる少年。
対照的に、母は何を怒られているのかわからない、といった様子できょとんとした表情を見せる。
「着替えちゃんと渡したじゃない」
「そーじゃなくて!グゥがまだ入ってるのになんでオレを止めてくれないのかって話してんの!」
「……うちのお風呂そんな狭くないし、2人くらい大丈夫よ?」
「だーかーらーそうじゃなくて〜〜!!」
だめだ、まったく話が通じてない……。
オレはもう13歳…中学生だってのに、同年代の女の子と一緒にお風呂に入るなんて言語道断じゃないのか、フツウ。
…グゥが女の子かどうか、というかそれ以前に人間かどうかといった議論はこの際さて置くとして。
とにかく、グゥと一緒にお風呂なんて悪い冗談以外のなにものでもない。
そしてそれを母が咎めもしないこの家庭環境というものもいかがなものか。
「大声を上げてどうした…こんな夜更けに近所迷惑だぞ、ハレ」
「あ、グゥ聞いてくれよ〜母さんがさー────……」
噂をすれば…では無いが、不意に、現在の話題の中心である少女に声をかけられドキリとする。
つい先ほどのことのせいで顔を合わせ辛いが、勤めて普段の態度を崩さずグゥに向き直るハレ。
そこにはいつものグゥの姿。当たり前だが、きっちり着衣を着込んだ姿になぜかホッとする。
しかしそれでもまだどこかで意識してしまっているのか、まだ乾き切っていない髪や淡く紅潮した肌に目が奪われてしまう。
81ハレxグゥ04:2006/12/31(日) 03:39:24 ID:IraBvURn
「ハレったら、女の子と一緒にお風呂入るのが恥ずかしいんだってさ〜」
「ほほう、複雑なお年頃ですな」
「ったく、マセたガキだね〜」
「ちょ、なに言ってんだよ!誰と入っても恥ずかしいっての!オレもう13なんだからさー!」
ニタニタと息子の醜態を愉しむウェダにいつの間にか復活したクライヴを加え、更に最もこの少年をいじることに喜びを
感じている少女が会話に参加しては少年に勝ち目は無い。
この場は早々に切り抜けねばどこまでも泥沼に陥ってしまうと少年の経験が警鐘を鳴らす。
「もーいいよ!オレも風呂入るから!」
不機嫌を全身で表現し、パタパタと逃げるように脱衣所に隠れるハレ。
しかし、生贄である少年がその場から消えても、調子付いた彼女たちの攻勢は止まらない。
「いーじゃないのねえ、何照れてんのよねー」
「むう…ハレにはグゥの魅惑のボディはいささか目に毒だからな」
「──あー、いろんな意味で毒気強いですよね?」
壁を跨いでもしっかりとツッコミは忘れない律儀な少年。
そんな姿が2人の悪女の琴線に触れている事に気付くのはいつの日か。
「しょうがないわね、思春期の頃は身近な異性への愛情を恋愛感情と勘違いするって言うしね〜」
「まったく家族にすら劣情を催すとは、やはり血か……」
「……さりげに僕まで攻撃されてる気がすんのは気のせいかね」
くすくすと哂い合う2人の声が壁を通り抜け背中にぷすぷすと突き刺さる。
他若干一名にも密かにダメージを与えていたがあえて無視しておこう。
とにかく少年は、健気にいちいち反応してる自分に嫌気が差すと共にだんだんと怒りがこみ上げて来た。
「あ〜、うちに女性としての魅力の一片でもある人間がいたらそーゆーこともあるかもね!
 少なくとも飲んだくれとかぶっちょー面の皮肉屋とかはそれに該当しないと思うけど!!」
言い捨て、ピシャッと叩きつけるようにバスルームのドアを閉めるハレ。
「ったく、ビミョーなお年頃なんだから…」
「難儀な男だ」
そんな恐らくは微笑ましいのであろう家族の団欒を傍目に眺めながら
どーでもいいけどこいつらホントに子供らしくない物言いすんなーと一人口端を引きつらせるクライヴであった。

──まったく、母さんとグゥってどんどん息が合って来てる気がすんなー。
今日はいつもより長めに浸かろ…。身体もくたくただし…頭の疲れの方が酷いけどさ。
バシャバシャと湯船のお湯を顔にかけながら、先ほどの家族とのやりとりを心に反芻する。
…くっそー、この家にはオレの味方なんてのは誰一人として居ないってのか。
母さんとグゥ2人だけでも相手すんの大変だってのに、保険医まで加わったら心の休まる時が無い。
そもそもこの家にはプライベートってもんが無いんだよなー。ただでさえ狭い家だってのに、オレとグゥと母さんにアメ、
それに保険医とアルヴァ……はまたどっかで遭難してるんだろうけど…全員そろったら6人だぜ、6人。
こんなにごちゃごちゃしてたらお風呂に誰か入ってんの気付かなくてもしょうがないよなー。
…そう、しょうがないよな……。
うっかり、思い返してしまう。先ほどの会話…と言うか苛めというか…の発端である出来事。
まさに目と鼻の先、すぐ間近で見たグゥの身体。真っ白でつるつるの肌。それにプクンと桃色に膨らんだ……
「────ッッ」
……駄目だ駄目だ、考えるな思い出すな!
胸に手を当て、祈るように小さく深呼吸。
しかしトクトクといつもより早くなった動悸は治まらず、それにどころか胸の高鳴りに呼応するようにある一点に血液が集中して行く。
それは主人の気も知らずに、あっという間に盛り上がってしまった。
……落ち着けオレ!これはただの生理現象だろ。別にグゥをどうこうしたいって気持ちでこうなったんじゃない。
ほっときゃすぐに静まるさ。クール、クール……。
だが意識を集中すればするほど、先ほど見た少女の素肌が鮮明に思い出され、ますます膨れ上がったそれがズキズキと疼き出す。
結局、予定よりもさらに風呂から出る時間が長くなり、頭の疲労はもちろん身体の疲労まで風呂に入る前より重くなってしまう少年だった。
82ハレxグゥ05:2006/12/31(日) 03:41:59 ID:IraBvURn
<<1−3>>

「──なんだ、もう眠っちゃったのか」
バスルームから出る頃には、ウェダもクライヴもベッドに並んで寝入っていた。
とりあえず、あれ以上の攻撃は受ける心配は無くなったか、と安堵のため息を一つ漏らし、ハレも床に就く。
(あ〜あ、保険医の横で寝るのってやなんだよなー)
寝ぼけたクライヴに何度も抱き着かれたり蹴飛ばされたりした記憶が蘇る。
そうじゃなくても、こいつと床を一つにすることに抵抗があるってのに、真隣でゆっくり安眠なんて出来るはずが無い。
「…おいグゥ、グゥ?」
「……ん」
ふと妙案を思い付き、ポンポンと枕を叩く。すると枕の中からにゅっとグゥが顔を出して来る。
なんだかアラジンのランプを彷彿とさせる姿だがそれはさておき。グゥは、クライヴがベッドにいる時はハレの枕になっているのだ。
…明らかに異常な表現ではあるが実際にハレの枕になっているのだからしょうがない。
恐らくは4人も横に並んで寝ると狭くなってしまうため、居候の身である自分が分をわきまえてやろう、といった意思の現れなのだろう。
「なあグゥ、今日はオレの横で寝てくれないかなあ」
「…………何で?」
狭いとはいえ横に4人並べないことは無い。ハレは、グゥを防波堤にしてクライヴの存在を一時的に忘れようとしているのだ。
しかしグゥはあからさまに嫌そうな表情を浮かべる。
「…グゥなぞは枕で十分でごぜえますよ。川の字に水を入れる野暮なんざ、あっしにゃできませんぜ」
「誰の真似かは知らんがそんな卑屈になんな?
 …いいから、一緒に寝ようぜ。今日はグゥと並んで寝たいんだよ」
言って、これってなんだか母に添い寝をねだる子供みたいでかなりこっ恥ずかしい台詞なんじゃと思ったが今更ひっこめることも出来ない。
今が夜で良かった。これだけ暗いと真っ赤に染まった自分の顔も気づかれまい。
って言うかこんな説得でグゥが素直に動くはずがない。むしろまた自分をからかう材料を与えてしまったのではと少し後悔してしまう。
83ハレxグゥ06:2006/12/31(日) 03:42:31 ID:IraBvURn
「……ふむ…」
しかしそんなハレの思惑とは裏腹に、グゥはしょうがないな、と呟きながらのそりと枕から這い出、クライヴとハレの間に滑り込んで来た。
いったい先ほどの自分の言葉のどこに納得したのかはわからなかったが、あえて本人に口で問い質すのも野暮ってものだし、
ただでさえ気難しいグゥのことだ。変に機嫌を損ねてまた枕に戻られても困る。
とりあえず、これで今日は安眠できると素直に喜んでおこうとする少年だった。…が、しかし、今度はまた別の苦悩が少年を襲う。
クライヴに背を向け隣に寄り添う少女、グゥの視線が目に突き刺さる。
この少女は、寝てる間も目をぱっちりと開けているのでハレが目を瞑らない限り嫌でも目線が合ってしまう。
グゥに背を向ければ済む話なのだが、なぜかそれはグゥに悪い気がして気が引けた。
そしてそれよりも、この少女との吐息を感じるほどに近い距離に、また先ほどのバスルームでの出来事をどうしようもなく思い出してしまうのだ。
自分の顔が、見る見る紅潮していくのがわかる。トクトクと心臓が鼓動の速度を上げる。
これじゃ、余計眠れないじゃんか…と一人狼狽する少年。それを見つめる少女の目にも怪訝な色が灯る。
「どうした、寝ないのか?」
「あ、うん…。いや…あの、さっきはごめん…」
「…?」
突然何を謝るのか、とますます少女は表情を曇らせるが、少年は意を決したように少女を見据え口を開く。
「お風呂でさ…まさか入ってるとは思ってなくて。べ、別に覗くつもりじゃなかったんだからな?
 だけどあーゆー場合、こっちが謝るのが筋ってもんだし…すぐ謝るつもりだったんだけどさ、
 あの後あんまりグゥがいつも通りだったからつい忘れちゃってたんだけどやっぱり謝らなきゃって思って…その…」
「…………」
「…ごめん」
少年なりの照れ隠しか、言い訳がましく一息にまくし立てるが、グゥの視線に射られ最後にもう一度謝ると、しゅんと黙ってしまう。
そんな少年の姿をじと、と不機嫌そうに見つめていた少女はしかし一瞬、困ったような顔をしたあと、ふ、とかすかに微笑んだように見えた。
──つぃ、つぃ、とハレの指先に何かが当たる。
ん、とそちらを見やると、グゥの手がハレの手の下ににじにじと潜り込もうとしていた。
もともと狭いベッドの上だ。身体のどこが当たろうと不思議ではないが、グゥの手からは明らかな作為を感じる。ハレはグゥの気持ちを察し、
グゥの掌を自分の掌で覆うと、きゅ、と軽く握る。
これでいいんだよな?とグゥに目線を合わせ、目配せするとグゥの方からもきゅっと握り返して来た。
「…仲直り」
「うん。ありがと」
…心のつっかえが取れた気がした。
別に仲違いをしていたつもりはなかったが、やはりグゥの方もあのことを気にしていたのかもしれない。
ちゃんと謝って、良かった。いつの間にか、この少女の視線も気にならなくなっていた。
「グゥの手、ひんやりして気持ちいいな」
何の気も無しに、ぽつりとそう囁く。
特に深い意味を含めたつもりは無かったのだが、グゥは一瞬目を丸くし、うずくまるように顔を伏せてしまった。暗くてよく見えなかったけれど、
グゥの白い顔が見る見る濃く染まっていったような気がした。
──よく見れば、グゥの伏せた顔が自分の胸に埋もれ、まるで自分が抱きしめているような姿勢になっていることに気付く。
ぽかぽかと体温が上昇している気がするのは、きっとグゥの体温が移っているせいだと思っておこう。
結局少年には易々と安息を手に入れる術は無く。しばらく凍りついたように、その姿勢を維持し続けなければならなくなった。
それでも、自分の胸元からむぅむぅと少女の寝息が聞こえるようになる頃には固まっていた身体もほぐれ、手の温もりも安定剤となり、
少年はゆっくりとまどろみに落ちて行くのだった。
84ハレxグゥ07:2006/12/31(日) 03:44:30 ID:IraBvURn
<<1−4>>

「……ん……ふ…ぅ……んう………っ」
──夢うつつの少年の耳に、淡い吐息がかかる。
(…ったく保険医…また母さんにちょっかいかけてやがんな…。)
「……っひ……く……うくぅ……っ」
いちいち妨害してもきりが無い。だいいち今はめちゃめちゃ眠い。ほっといてさっさとまた眠りに就こう……。
…でも、気になる。聞いたことのあるような、聞きなれない声。なんだかその声が助けを求めているように聞こえて。
やっぱオレってマザコンなのかな、と憂鬱な気分になるが、しょうがない、と重いまぶたをゆっくりとこじ開ける。
「…や……んん……ひ………あっ…っ」
「──────ッ」
瞬間、眼が、脳が、まるでフラッシュを焚いたように鮮明に閃いた。
しかし目の前の状況を理解するには、まだ時間が足りない。
肌蹴た衣服。乱れた髪。白い肌に埋まる指。汗の匂い。鼻にかかる、熱っぽい吐息。痛いくらい握り締められた、自分の手。
少年は、見てはいけないものを見てしまったと思いすぐに背を向けようとしたが、しかしそれを身体が許してくれなかった。
身体がまるで言うことを聞いてくれない。目を瞑ることすら出来ない。まるで自分の身体が脳と切り離されてしまったかのような感覚。
だがそれは正しかったのだ。これは見て見ぬ振りをすべきシーンではなく、もっと一刻を争うような事態であることに気づくことが出来たのだから。

ベッドから生え出ている指が、脇の下を通り少女の肌に波を立てる。
剥き出しになった太ももに這わせた指が、子供らしい真っ白な下着の隙間から侵入する。
そのどちらもが、その少女本人の意思によるものでは無い。無いはずなのだ。少女の目に浮かぶ明らかな拒絶の色が、
それを何よりも証明していた。
しかしそんなことにはお構いなしに、その10本の指はなおも少女の身体を我がもの顔で徘徊する。
とても年相応とは思えない、失礼ながら発育不良と言わざるを得ない平らな丘に柔らかく埋まる指はしかし、
それが女の子の身体であるということを十分に証明していた。
その指が、丘につんと盛り上がった桃色の突起を挟み上げ、くり、とひねると、それが決められた合図であるかのように少女はくはぁ、
と熱い吐息を少年の鼻先に吐き出す。
指の腹で側面を優しくこする。爪で突起の先をカリカリと掻く。
二本の指で乳輪を押し広げ、余った指で全体を押しつぶすようにこねくる。
まるで少女にその感覚に慣れさせるものか、とばかりに、あらゆる手段で少女の未発達な蕾を刺激し続けていた。
しつこく弄られた少女の乳首は、ぷっくりと淫靡に隆起しその存在を主張している。
少年には、それが自分がバスルームで見たそれと同じ物だとはとても思えなかった。
少女の下半身に伸びるもう一方の指も、休むことを知らず動き続けている。
太ももの内側を優しく撫で上げ、足の付け根を揉むようになぞる。
下着の上から、その中心に浮き上がったスリットに沿ってしゅ、しゅとこすり上げるように往復する。
そのまま足の付け根から下着の中に侵入し、ぴったりと閉じた幼い柔肉を押し広げるように揉みこねる。
少女の身体を這い回る、グゥのものではありえない大人の指はまるで、それ単体がそういった生き物であるかのように、
女を悦ばせるポイントを自動的に巡回する。
その無遠慮な動きに対し少女は、ふ、く、と嗚咽とも取れるような小さな呻き声を上げ、ピク、ピクと身体を震わることしか出来ないようだった。
「あ………ぁ……」
…少女の空ろな目線が、その存在を今はじめて発見したかのようにハレの瞳を捉えた。
その目には生気無く、ただ目頭から溢れた涙が頬を伝う。
「や……ハ…レ……みる……な……ッ」
パク、パクと鯉のように口を開くが、何かが喉の奥に詰まったかのように言葉が出てこない。
ただその少女の意思を代弁するかのように、ぽろぽろと零れる大粒の涙が、シーツに雫の花を咲かせていた。
「…グ……ゥ……ッ」
まるで金縛りにあったように、身体が重い。指一本動かすだけで、間接がギシギシと軋む。
それでも、動かなきゃ駄目だ。バラバラになってもいい。今は自分のことなんてどうでもいい。
脳髄が沸騰する。視界が真っ赤に染まる。やるべき事は一つのはずだ。あとは身体を動かすだけだ!
動け……動け動け動け───!!

「───保険……医…ッッ!!!」
85ハレxグゥ08:2006/12/31(日) 03:45:08 ID:IraBvURn
何も考えていなかった。何も見えていなかった。ハレは弾かれたように立ち上がるとただ反射的に、グゥの背後に居るであろう人間の、
頭があるであろう場所めがけ足を振り抜く。
加減も何も無い。そこにあったものがスイカだったなら確実に砕けていたであろう勢いで、ハレの蹴り足は何かを捉えた。
「ブヘッ───!?」
「あだっ!?」
「おふっ──!!」
ハレに思いっきり蹴り上げられた何かは頓狂な声を上げ、後ろにあった何かに高速で後頭部を打ち付けた。
当のハレは蹴り足の勢いで思いっきりのけぞりベッドから転げ落ち、これまた後頭部を床に激突させる。
一時に、ガゴン、と言う鈍い三重奏がリビングに響いた。

───パチン、と蛍光灯の鮮烈な光が、寝静まった深夜のジャングルに淡い明かりを灯す。
「ったああぁぁ……何?なにがどーしたの!?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!??」
「っくおぉぉ〜〜〜っ」
後頭部をさすりながら、涙目でベッドに仁王立つ母。
眉間と後頭部2箇所の激痛にサンドイッチされ、声さえ上げられずうずくまる父。
後頭部をしたたか床に打ち付け、ごろごろと転がり悶絶する息子。
親子3人、そろって仲良くド頭に大きなたんこぶを作ったのだった。
86ハレxグゥ09:2006/12/31(日) 03:47:39 ID:IraBvURn
<<1−5>>

「──先生……射程範囲広すぎるにも程があるわよ?」
「だから誤解だって!たぶん寝ぼけてウェダちゃんと間違えただけだって!!」
「信用できるか!!おまえ14歳の頃の母さんだって襲ったじゃんかー!」
「襲ったって、人聞きの悪い……それにあんときは俺も若かったんだぞ?」
床に正座させられ、母子に順番に糾弾される父クライヴ。
この手の事には比較的おおらかなウェダまで呆れ返った表情を浮かべている。
「ぜんぜん記憶に無いんだけどなぁ…。だいたい僕がこんな子供に欲情するとは思えないんだよねえ…」
「お前今の自分の立場わかってるか?次はどこにコブ作りたいかくらいは聞いてやるけど?」
「わかったわかったからその手ひっこめてくれよ、まだ頭ガンガンしてんだからさ…
 これ以上やられたらマジで脳細胞どっか欠けちゃうよ」
しれっと、あまりにもその態度に反省の色の見えないクライヴにわなわなと拳を振るわせるハレ。
その迫力にクライヴは正座の姿勢のまま後ずさる。
少年は目の前の父のことを少しは見直そうと思っていたことが遠い過去のことのように感じていた。

「…ってかさ、なんでお前がそんな怒ってるワケ?」
「そ、それは…今はオレがグゥの代理だからだよ」
言いながら、ちらりとグゥを見やるハレ。
グゥは、ハレの背中にぴったりと張り付きただ無言で俯いていた。呼吸はまだ乱れ、ぎゅ、と腕を掴んで来る手からは身体の震えが伝わる。
頬を一直線に伝う、涙の乾いた跡が痛々しい。
…あのグゥがこんなにも弱々しくなるなんて。
怒って当然じゃないか。こいつはグゥに無理やりあんなことして、あのいつも冷静なグゥをこんなに怯えさせてんだ。怒らないやつのほうがどうかしてる。
「何度も言うけどさ、僕はウェダちゃんだと思ってやってたんだろうからね。これは過失ってやつが適用されると思うけど?」
「たとえ母さんに対してでも寝込みを襲うのってよくないと思うけど!?」
「いや僕ってこう見えて寂しがり屋だからさ〜。何か抱いてた方が安眠出来るんだよね。
 ほら、犬とか猫とかさ、ペットのお腹なでてたら心が落ち着くだろ?アルファ波が出るってゆーか、癒し系みたいなさ〜。
 僕としてはそれと同じ効果をウェダちゃんに与えてもらおーとしてたんだと思うんだよね〜」
「…己の妻をペットと同格扱いしたことよりも保険医に動物を愛でる心があったことに驚いてるオレ自身に何より驚きが隠せないよ…」
もう怒りを通り越して逆に心が落ち着いてきた。
いつかこいつが言ってた『あいつの血が半分も入ってるのかと思うとゾッとする』ってのをまさか言った本人から体感させられるとは。
ホント、最悪な父親だよ…。
「…そいつもそんなに嫌なんだったら抵抗すりゃよかったんだよ。
 もしかして気持ちよかったんじゃなビボッ───!!」
言い終わる前に、ハレの右拳が顔面に突き刺さる。
正座の体勢のまま、後方にもんどり打って倒れ込むクライヴ。
「てってめへ〜!ひた噛んだど!ひた!!」
「あー、まだ喋れる程度で済んでよかったな!お前ぜんっぜん反省してねーだろ!!」
「はいはい、不毛なケンカはそこまで!!……グゥちゃん、大丈夫?」
パンパンと手を叩き、にらみ合う二人の間に割って入るウェダ。
そうだ、今はこんな最低人間に構ってる暇なんてない。今のグゥの状態は明らかに異常だ。
87ハレxグゥ10:2006/12/31(日) 03:48:31 ID:IraBvURn
「グゥ……」
「……」
何を言っても、耳に入っていないようだ。ただハレの後ろで小さくなっている。
その姿にさすがのウェダも困惑しているのか、腰に手を当て大きくため息を吐く。
「……どうしたもんかしらね。…1つのベッドで寝るのにこんな問題があるとは思わなかったわ」
「だからあれは寝ぼけてただけで……」
「どっちにしろ同じことだろ変態保険医!」
「だからもーやめなさいって!埒があかないんだから!
 とにかく、今日はもう寝ましょ。このことは明日考えるってことで」
「って言っても、もうこいつとグゥ一緒に寝せるわけにいかないよ」
いまだ正座の状態を保ちながら頬をさすっているクライヴをギロリとにらむハレ。クライヴも睨み返すが、その目にはどこか力が無い。
これでも、多少なりとも後ろめたい気持ちを感じてはいるようだ。
「そうね…アルヴァの布団使ってもいいけど、隣で寝てることに変わりないし…。
 あ、そーだ屋根裏!ベルとアシオが使ってたのがそのまま残ってるはずよ」
「そーいやそんな部屋もあったね…あいつらがあそこから降りてくるたびに僕の寿命が削り取られてった気がするよ」
「それじゃ、先生?ちょっとほこりっぽいと思うけど我慢してね」
「ええ!?僕なの?」
ポンとその肩に手を置き、当然のようにクライヴを屋根裏の扉までずりずりと押し進めるウェダ。
まさか自分が入ることになるとは思ってもいなかったのか、クライヴは必死に足でブレーキをかけるがウェダのパワーには勝てるはずもなく、
ずりずりと押されていく。
「やだなあ〜悪いことしてお仕置きされてるみたいでめちゃめちゃかっこ悪いんだけど…」
「やーねぇ、悪いことしてお仕置きされてるんじゃないの……?」
「──ひいぃ!!」
にこやかな笑顔の裏に隠された重圧を本能的に察し、震え上がるクライヴ。
笑ってはいるが、明らかにいつものウェダではない。その背後に仁王が見える。
密かに、この面子の中で最も血が沸騰しているのは彼女なのかもしれない。
「うう…どーせ僕は厄介ものだよ…」
しくしくと鼻をすすりながら、力なく屋根裏へ通じる梯子に足をかける。
その様子をぼう、と見ていたハレの腕が、ふ、と軽くなる。…グゥが離れたのだ。
88ハレxグゥ11:2006/12/31(日) 03:49:18 ID:IraBvURn
「屋根裏にはグゥが行く」
「…グゥ?」
いつの間にか前に出ていたグゥが、そんなことを言う。
…一人になりたいのかな。そうだよな、あんなことがあったんだもんな。
出来ればオレも付いててやりたいけど、今はそっとしとくのが良いのかもしれない。
「え?なんでグゥちゃんが…」
「ね、ねぇ母さん?グゥがそうしたいって言ってるんだから、好きにさせてやってくれないかなぁ…」
言って、母に目配せをするようにじっとその目を見つめるハレ。
ウェダはしばらく考えた後、パッと表情を明るくして、
「そうね。じゃあハレはグゥちゃんに付いててあげて」
なんてことを言って来た。
(だからそうしてやりたいけど、今は一人にしとくのがいいんだって!)
それをなんとか目で伝えようとするが、こんなときに余計なヤツが割り込んでくる。
「お、いいんじゃないの、それ。僕とウェダちゃんがこっちで寝て、お前らが屋根裏に消えると。理想的な性活じゃないの」
「…センセ、静かにしないとしばらくしゃべれなくなるわよ?」
「ひぃぃぃ!!」
この男の辞書には反省という言葉は存在しないのか、余計な口を出し火に油をなみなみと注ぐ。
ここまで来るとなんだか逆に可愛そうな奴に見えて来るから不思議だ。
「ね、グゥちゃん。それでいいよね?」
「…いいよ」
そんなハレの思惑を知ってか知らずか、グゥは何度かウェダとハレを見比べた後、こくん、と小さく頷いた。
(…オレの気苦労って一体…まあ、グゥが良いって言うならオレとしても願ったりなんだけど…)
結局、屋根裏にはハレとグゥが上ることとなるのだった。
一階には当然、ウェダとクライヴが寝ることとなる…と思っていたのだが、
「それじゃ、私はレベッカのとこで寝るから」
などと言って、アメを抱いてすたすたと玄関を出てしまう。
「ちょ、何でウェダちゃんまで行っちゃうのさ!?せっかく二人っきりで寝れると思ったのに」
「…それじゃお仕置きになんないでしょ?」
「そ、そんなぁ…」
そのまま、ウェダは一瞥もせずレベッカの所へ行ってしまった。
寝室に一人残され、呆然とするクライヴ。その背中に漂う哀愁に少し同情もしたが、ハレも今は心からクライヴのことは忘れたかったし、
単純に『ざまあみろ』と思う気持ちのほうがずっと強い。
結局そのままハレも、何も言わずに屋根裏に上る事となった。
89ハレxグゥ12:2006/12/31(日) 03:52:48 ID:IraBvURn
<<1−6>>

「うわぉ、ゴージャス…」
屋根裏を見渡し、思わず感嘆の声を上げる。
さすがと言おうかやりすぎと言おうか、ただ閑散としてほこりまみれなだけだったはずの屋根裏部屋は見事に生活空間として改装…
否、改造されていた。
床にはぴっちりとふかふかのカーペットが敷かれ、壁際に大きな化粧台や箪笥が並んでいる。中央には背の高いテーブルに椅子が二対。
全てなんだか妙にお洒落で高級そうなデザインのものばかりだ。
さすがに電気機器の類は置いていないが、下手したらここはこの村で一番ゴージャスな部屋かもしれない。
その中でも一際目立つのがこの屋根裏のスペースの3割を占める巨大なベッド。
他のものに比べて装飾や色彩は地味ではあったが、シーツの生地の滑らかな手触りやマットの柔らかさは一階のものとは比較にならない。
ほのかに残る独特な香水の匂いは、確かに記憶にあるこの部屋の主のものと一致する。都会での日々を思い出し、少し感傷的な気分になる。
使用人の分際でなんて贅沢な暮らしをしていたのか…と妙な悔しさを覚たりもしたが、
しかしよくぞ残して行ってくれたという感謝の気持ちの方が今は遥かに大きい。

「ほらほらグゥ!すごいよこのベッド!」
ベッドの上でポヨンポヨンと跳ねるハレ。
確かに、単純にテンションも上がってはいたが、先ほどのことを考えると無邪気に喜んでもいれらない。
だけど今は、落ち込んでいるグゥを元気付けるために出来るだけ大げさにはしゃいで見せた。
「ほら、グゥも疲れたろ。ここなら保険医もいないしさ、ゆっくり寝よ」
「…うん。だがグゥはあっちで寝る」
そう言うと、すたすたとベッドの反対方向に歩いて行く。
そこには人一人分くらいのスペースにゴザが敷いてあった。そこだけ見事にカーペットが途切れ、ご丁寧にその一角を仕切るカーテンまで取り付けられている。
そこが誰の寝床だったかを考えると涙が溢れそうになるが、今は考えないでおこう。…とにかく、そんなところにグゥを寝させるわけにはいかない。
「駄目だよグゥ!せっかく良いベッドがあるんだからあっちで寝ようよ」
強引にベッドに連れ戻そうと、手をぎゅっと握る。
──そう、ただ手を握っただけだ。それだけなのに…。

「ヒッ───!!」
耳に鋭い叫び声が響いた。グゥを掴んでいたはずの手は中空をさ迷い、なぜかジンジンと痛んだ。
一瞬、目の前の少女が誰なのか解らなくなった。
「グ、グゥ…?」
「い、いいから放っといてくれ…今は一人になりたいんだ」
聞いたことの無い声で、見たことの無い表情で、自分から逃れようとするこの少女をかつて自分がグゥと呼んでいた少女と
認識することに戸惑いを覚える。
こういう場合、しばらく言うことを聞いて一人にさせてやるほうが良いのかもしれない。でもこのグゥはちょっと異常すぎる。
どうしてもこのまま放って置いてはいけない気がした。
「いいからこっち来いよ!」
「やっ…!やだって言ってるだろ!!」
少女を力づくでベッドまで引っ張り込もうとするハレ。それを拒絶しジタバタと暴れるグゥ。
傍から見たら間違いなく誤解される上に釈明も出来ないような光景だったが、気にしてはいられない。
「ひゃっ──!?」
ハレは暴れるグゥの肩と両足を持ち上げ、両腕で抱きかかえた。いわゆる『お姫様だっこ』というやつだ。
グゥは見た目も小柄だが、その見た目から考えてもずっと軽い。
同程度の体格のハレでも小脇に抱えられるほどなのでこの体勢になるとほとんど抵抗が出来なくなってしまう。
「や、やめろ!降ろせ!降ろせー!」
「この…暴れるなって!!」
それでも必死でその腕から逃れようと身体をバタバタと揺する。
その姿にいつもの不敵さや嫌味なほどの余裕ぶりは微塵も感じられない。
「何がそんなに嫌なんだよ!そんなに嫌なんだったらなんであの時…!!」
なぜか、腹が立った。自分でも何に怒っているのかわからなかった。
こんなに嫌がっているんだ。一晩くらいそっとしておいてやった方が良いじゃないか。
確かに、普通ならそう結論付けるだろう。オレだってそうするはずだ。…それが、グゥ以外なら。
「なんであの時、そうやって保険医に抵抗しなかったんだよ…!!」
「───ッ」
自分でも驚くほど、大きな声が出た。
次の瞬間、その声に怯えるかのように全ての音が消え、ただ静寂のみがこの空間を支配した。
グゥの抵抗も止み、ただ怯える様に俯く。
90ハレxグゥ13:2006/12/31(日) 03:53:53 ID:IraBvURn
…いつでも余裕で、何が起きてもぜんぜん動じなくて、オレをいじることばっか考えてて、口から出るのは皮肉ばかり。
でも、いつしかそんなグゥが側にいるのが当たり前になっていて。
なんでもいつもと同じ調子で話せて、なんでもその余裕な顔で聞いてくれる。
…オレは、グゥのそんなところがすごく安心できて、すごく大好きだったんだ。
それなのに、そんなグゥがこんなに…あんなやつのせいで、こんなに変わってしまうなんて。
「オレは…オレは誰だよ?オレはあんなやつとは違う。グゥを傷つけたりなんか…するワケないだろ?」
「…ち、違う…」
「それとも…オレってそんなに信用無いのかよ。グゥはオレのことそんな目で──」
「──違う!!」
キィンと、張り裂けるような鋭い声に言葉が遮られる。
ハレには、俯きの自分の胸に顔を押し当てているグゥの表情はわからなかった。ただ、その肩の震えだけが伝わる。
「違うんだ…」
「グゥ…一体、どうしたってんだよ…」
「………」
グゥはしばらく考えるように黙した後、観念したかのようにはぁ、と小さなため息を吐く。
その身体にはすでに力無く、ハレに身を任せるようにしなだれかかっている。
しかし表情を読み取られたくないのか、顔は頑なに俯いたままだった。

「ハレ…グゥは決してあいつに身を預けていたのではない。それだけは解って欲しい…」
「う、うん…言われなくても、わかってるよ。それは信用してる」
グゥは静かに、祈るように声を吐き出す。
その言葉に、当然だ、とは思ったが、その口からはっきりと言質を取れてほっとする。
しかしまだ全ての疑問は解消されていない。
少女の傷口に手を入れるようで心苦しく思えたが、納得しなければ気がすまない部分もある。
ハレはなるべくグゥを刺激しないように、話を先に促す。
「でも、いつからあいつにそうされてたのかは知らないけど、さ。なんで、あいつに抵抗出来なかったの?」
「…実は、あいつの手がグゥの身体に伸びてからハレが目を覚ますまで、1分も経っていないんだ。
 ハレはグゥのピンチにすぐに駆けつけて、グゥを救ってくれたんだぞ?」
「そ、そうなんだ。でもあいつ、そんな短い間にグゥをあんなに…その、服まであんなに乱すなんて…やっぱり許せないよ…」
少し、安心する。時間なんて問題ではないとはいえ、10分も20分も長々続けられるよりはマシなはずだ。
1分足らずであそこまでするクライヴにも腹が立ったが、一気にあそこまで侵入されてはグゥも戸惑ったかもしれない、
となんとか納得出来る。
…だが、次のグゥの言葉でそれは撤回される。
「…あれは、自分でやったんだ」
「な──!?」
カッと頭に血が昇る。
まさか、自らクライヴの誘いに乗ったとでも言うつもりか。
「か、勘違いするな?あいつのためじゃないからな?」
「じゃ、じゃあなんで自分で…」
そんなハレの心を察したのか、すぐに訂正を入れるグゥ。
ハレはそれを聞きホっと胸を撫で下ろすが、また別の疑問が残る。
クライヴに関係なく、何のために自ら衣服を肌蹴させたと言うのか。
「…だから、それはその……間が、悪かったんだ…」
突然口ごもり、あとは自分で考えろ、とでもいいたげに、まるで謎かけのようにそれだけを言い黙り込むグゥ。
…ハレはこれまでの情報を元に思考を巡らせる。
クライヴに触られてるのに、何で自分で服をまくって……いや、違う。
普段ならグゥに手を伸ばした時点で、クライヴは朝まで目覚めない程度の直接的な抵抗を受けていただろう。
服をまくる以前の問題だ。
だとしたら、グゥは最初から服を肌蹴させていたってことだ。クライヴが触る前から…。
じゃあ何のためにっていったら…そりゃあ……。
「も、もしかして最初は一人で…その…」
女の子にこんなことを確認するのも気が引けたが、今更話を止めるわけにもいかない。
そんな失礼な質問にもグゥは素直に、ただ無言で小さく頷いた。
表情は見えなかったが、グゥの顔が押し当てられた部分に熱が灯るのがはっきりとわかった。
91ハレxグゥ14:2006/12/31(日) 03:54:23 ID:IraBvURn
「────ッ」
言葉が詰まる。自分の体温もグゥと同じくらい上昇しているのがわかる。
まさか、グゥがそんなことをしてたなんて。
あのとき、現場を見た瞬間の勘違いもあながち間違いではなかったのだ。
少し起きるタイミングが早ければ、また今とは別の展開になっていたことだろう。
ただ、そちらの方がずっと穏便に解決できたであろうことが悔やまれた。
(でも…)
そう…でも、それでも抵抗くらい出来るだろう。なぜずっとクライヴに好きにさせていたのか。
…その疑問を察したように、グゥがゆっくりと口を開く。

「ハレ、まだ忘れてないか、今日の風呂でのこと…」
「そ、そりゃ覚えてるけど…ちゃんと謝ったろ?」
ほんの数時間前のことだ。忘れようにも頭から消えてくれない。
…そう、思えば、あの時のグゥの様子も、何かおかしかった気がする。
「うん。それは素直に嬉しかったのだが…本当は気が気でなかったのだ。
 …一体いつからあそこにいたのだろう、と」
「いつからもなにも、オレが脱衣所に入った瞬間グゥが出てきたんだよ。
 の…覗いてなんかないからな」
「そうか…。しかし風呂から出たときは驚いたぞ。あの時は少しだが、声も出していたからな」
「声?」
回りくどい言い方に首を捻る。
しかし今度はこちらが考える暇も無く、少しの間を置いてグゥがすっぱりとこちらの疑問を解いてくれた。
「…あの時も、していたのだ。風呂の中で、一人で」
「───ッ」
またしても、言葉に詰まる。今日1日で2度そんな現場とニアミスを起こしていたと言うのだ。
「だからびっくりした。グゥが呼んだから、来たのかと思った。いつの間にか声が大きくなっていたのかとな」
「そ、それって…つまり…」
「ハレの名を…だ」
思考が乱れる。顔が火照り、どこまでも体温が上昇する。もしかしたら頭から煙の1つでも出ているのではないか。
つまり…だ。それってのはつまり…オレの名前を呼びながら、一人でシテいた…と?
「あの後、ハレの前で平静を装うのが大変だったぞ?」
(そんなの、オレだって…)
そう、ハレとてあの時は、平静を装うのに必死だったのだ。
グゥも平気そうな顔に見えてはいたが、あの上気した顔は風呂のせいだけではなかったのかもしれない。
「だからハレが風呂に入った後すぐに枕になったんだ」
「そうか、枕に」
「ああ、枕に」
問題ない、問題ない。ここはスルーしていい場面だ。
もはやこの程度のことはツッコムに値しないことなのだと思っておきたい。
「でもそれじゃ…しつこく頼んだオレが言うのもなんだけど、あのまま枕に戻ってくれて良かったのに」
「それは…」
またも口ごもるグゥ。
(…ってかさっきからオレ、グゥに恥ずかしいことばかり言わせてる気がする)
もう、これ以上聞くのはしのびなく思えてきた。
グゥがクライヴにされてたことが本意じゃないというのはもうはっきりと解ったのだし、この話はもう切り上げてもいいのではないか。
「なあ、もういいよ、グゥ。こんなこと、女の子に聞くことじゃ…」
「だめだ!…それじゃあグゥの気がすまない。ちゃんと話すから、聞いてくれないか」
ハレの気遣いは空しく、ピシャリと差し止められる。
グゥの、先ほどまでの狼狽が嘘のように凛とした眼光に見据えられ、ハレはそれ以上何も言う事が出来なくなってしまった。
「それに、ハレが悪いんだぞ。ハレがあんなこと言うから…」
「あんなこと?」
「…グゥと、一緒に寝たいって…」
聞いて、ボボ、とさらに顔が燃え上がる。もう煙どころじゃあない、額で目玉焼きでも焼けそうだ。
聞きようによっては、もう誘ってるとしか思えないような言葉だ。自分の軽率さに呆れてしまう。
「もうその後はハレに何を言われても恥ずかしくてな…顔を伏せたらハレにくっついてしまって…もうどうしたらいいか解らなくなった」
「グゥ…」
ハレは、グゥに今まで抱いたことの無い感情を芽生えさせていた。
あのいつも冷静沈着なグゥが、あのときの自分と同じ…否、それ以上に気持ちを昂らせていたというのだ。
鉄面皮と思っていた少女に隠された、実に女の子らしい感情に触れ、心が強烈な親近感で満たされて行く。
92ハレxグゥ15:2006/12/31(日) 03:57:28 ID:IraBvURn
「結局、ハレが寝たのを確認してから顔を起こしたんだが…ハレの寝顔を見てたら…その」
「……」
一瞬、なぜそこで話が詰まるのか解らなかった。自分の寝顔なんぞに、そのような価値があるとは到底思えなかったからだ。
しかしグゥの沈黙が、何よりもハレの想像が正しいことを雄弁に語っていた。
…やっと、話の核心に入ったのだ。だがこのまま、グゥ一人に話を続けさせてはまた余計な恥辱を受けさせるはめになりかねない。
「…そしたら、保険医の手が?」
「……」
その部分はもう解ったから、と言うように、とりあえず話を先に進めようと誘導する。グゥもそれを察し、こくんと小さく頷く。
「…最初は、すぐ振り払おうと思ったんだ。でもハレにあんな姿、見られたくなかったからな…
 なるべく気づかれぬようにクライヴを朝まで眠らせるつもりだった」
(…やっぱり)
クライヴ本人にしても、その方がよっぽど平和的に解決されただろうに、と妙な同情心を覚える。
クライヴにとっても、やはり間が悪かったと言えるのだろう。
「しかし、その……」
「…?」
またも、妙なところで話が詰まる。今度はハレにもその理由がわからず。ただグゥの次の言を待つことしか出来なかった。
グゥはまた顔を伏せ、何かに堪えるようにググ、と身を強張らせると、意を決したように重く声を吐き出す。
「ハ、ハレのことを想いながら、ハレの顔を見ながらしていたから…その手が…ハレのもののように思えてきて…暫く浸ってしまったんだ…っ」
「……」
(なんだか、さっきからオレの中の「グゥから見たオレの評価」ってやつがぐんぐんとうなぎ上りに急上昇しているように感じるのだが……)
あまりにも現実感が無さ過ぎて、本当の自分はまだ1階のベッドで普通に寝ているのではと思えてくる。
ただこれが本当に夢だったとしても、もうグゥに今までと同じ気持ちで接することは出来ないことは確かだった。
ハレの中の『オレから見たグゥの評価』も、同じように急上昇しているからだ。
それも、現在進行形で伸び率が上がっているのでは無い。
ただ、グゥに対する自分の本当の気持ちに気付かされてしまっただけなのだから。
「だから…決してあいつに、その身を委ねていたわけじゃ…ない…それだけは、解って欲しかった…ん…んんっ…」
「グ、グゥ?」
──泣いているのか、と思った。
先ほどから押し殺すように重い声で喋っていたグゥだったが、ここに来て低い呻き声が混じり、身体を強張らせてぎゅっとしがみついてきたのだ。
しかしその様子は、ただ泣いているだけにしては少しおかしかった。
額に玉の汗を浮かべ、ふ、ふ、と小さな吐息を漏らす。自分の胸に埋もれた顔は、明らかに上気しているのがわかる。
…よく見ると、低いうめき声に合わせて腰がもじもじと動いていることに気付く。
そちらにふ、と目を向けた瞬間───ドクンと、視界が揺れた。

「グゥ、な、何やって…っ」
グゥは、ハレの身体に面している側の手を服の上から自らの股間にあてがい、密やかに指で秘所を擦っていた。
その動きに合わせ、しゅ、しゅ、という衣擦れの音が小さく聞こえる。
…眩暈がした。それはハレにとっては初めて見る光景だったが、容易に理解できた。
いつからそうしていたのか、グゥは、ハレに抱かれながら自分を慰めていたのだ。
「す、すまない…もうちょっとだけ、もうちょっとで終わるから…我慢…してくれ…」
ハレに気付かれたと解ると、ずっと悟られぬよう静かに動かしていたのであろうその指の動きを激しくさせる。
スカートの上から当てられていた指は、今はゴソゴソとその内部に侵入し更に敏感な刺激を与えている。
ちゅぐ、ちゅぐと粘液をこねるような音が周囲に響く。ハレは、ただその様子を凍りついたように硬直したまま眺めるしかなかった。
「んっふ、うんんっ……ふぁ…は、あ……っ」
「……っ」
もう誰はばかる事も無い、というように、押し殺していた声を開放し息を荒げるグゥ。
…眩暈が酷くなる。全身の力が抜け、立っていられない。不意にグゥを腕の中からずり落としてしまいそうになった。
ハレにしがみ付いている少女の手がそれを感じ、必死に服に爪を立てる。
「お願いだ、このまま抱いていて…これっきりにするから……すまない…すまない……」
…解らなかった。
グゥが何を言っているのか。なぜ泣いているのか。何を謝っているのか。自分はどうすればいいのか。
この少女に何を言えばいいのか。…何も考えられなかった。
──ただ…無性に腹が立った。
93ハレxグゥ16:2006/12/31(日) 03:58:01 ID:IraBvURn
ハレは突然、グゥを抱いたままドサ、とベッドの上に倒れ込んだ。
柔軟性の高いマットにその衝撃は吸収されたが、いきなりのハレの行動にグゥはフッ、と息を詰まらせる。
「ハ、ハレ…?」
グゥはハレに肩を抱かれたまま、あお向けに寝そべる状態になっている。
首の後ろに回された手は肩をがっしりとつかみ、身体を動かすことが出来ない。
グゥはぽかん、と少し不安げな表情でハレを見上げる。
「ひっ──!?」
突然、敏感な部分に刺激が入りビクンと身体を引きつらせるグゥ。
先ほどまで自分で弄っていた秘所に、ハレの指がぐいぐいと押し付けられているのだ。
ハレの予期せぬ行動に、グゥはカッと顔に血を昇らせ抵抗しようとするが、やはり肩を抑え込まれ身動きが取れない。
出来る事と言ったら、足をじたばたさせることくらいだ。
「やっ!な、なにを───んむぅっ!?」
足をぎゅっと閉じ抵抗するグゥに、静かにしろ、と言うかの様にその唇を奪う。
ただ自分の唇をぐいぐいと押し付けるだけの稚拙なキスだったが、グゥには効果覿面だったようだ。
すぐにその身体からは力が抜け、瞳をトロンととろけさせる。
頑なに閉じていた足も弛緩し、グゥの下半身はいとも容易くハレの手に落ちた。

「んっ…ちゅ、ん…ふんんっ……ふ…」
狭い空間に、グチュ、グチュと淫靡な音が響く。
秘所に直にあてがわれたハレの指が動くたびに、グゥはピクンピクンと身体を跳ねさせる。
下半身を保護していた薄布はすでに剥ぎ取られ、足首に申し訳なさげにひっかかっていた。
ハレの動きは、既に溢れ出ていた愛液を潤滑液にし、全体を揉みこねながらただズリュズリュと強引に肉を擦り上げるだけの
乱雑なものだったが、それでもグゥにとっては待ち望んだハレとの行為なのだろう。
ただハレに全てを任せ、ひたすらその快楽に身を預けている。
唇はなおもハレに奪われたままの状態だったが、今はグゥからも積極的にその唇に吸い付き、淡い感触を愉しんでいた。
──だが、そんないじらしい少女の姿も、今のハレには不快に映る。
「ふんむぅ゛っ!?ふひゅっう゛う゛う゛う゛っっ!!」
急に、ハレの指の動きが激しくなる。
その動きはもはやただ激しいと言う言葉では済まされないくらい乱暴になり、もう揉んでいるのか抓っているのか、擦っているのか掻いているのかも解らない。
押し潰された柔肉は、その厚ぼったいほっぺに保護されていた粘膜を露出させ、赤くテラテラと光るその敏感な部分を直接こすり上げられてしまう。
あまりの強烈な刺激に反射的に足をギュッと閉じるが、まるで果実を絞るように次々とあふれ出す愛液の滑りでその侵略を妨げることが出来ない。
むしろ秘所に押し当てられた自らの足がなおその刺激を増幅させ、少女の下半身を焼き尽くして行く。
塞がれた唇の隙間からはコポコポと唾液が噴出し、ぎゅっと瞑られた瞳からも雫が零れる。
少女はハレの暴虐を、ただ黙って耐えるしかなかった。
94ハレxグゥ17:2006/12/31(日) 04:00:09 ID:IraBvURn
「っはぁ…!
 グゥは…グゥはいつだってそうだ!自分で勝手に何でも決めて、オレの事なんて考えないで…グゥは、自分さえよけりゃそれでいいんだろ!!」
「そ、そんな…そんな、ふあっ……つもり、じゃ…んんっ…!」
ぷは、と、ようやく唇が離れた…と思ったら、ハレの唇による責め苦は別の形でグゥに降り掛かる。
──グゥは、一人で今日の出来事を全部背負うつもりだった。
自分に打ち明けた想いも、全部明日になったら、すっぱりと忘れたそぶりでいつものグゥに戻るつもりだったんだろう。
一人で、勝手に。…それが、許せなかった。
「…こんなにグチャグチャにして…!保険医にされてたときも、こうなってたんだろ!?オレのことなんか、ホントはどうだっていいんだろ!」
「…ち、違う…!ひぅぅっ…そんなわけ…ない…グゥはハレが…ハレのこと…っっ」
グゥへの責め苦に、なおも言葉を重ねる。
それを必死に否定するグゥの姿に愛おしさも感じたが、それに比例するようにグゥに対する苛立ちも増していく。
グゥが自分に好意を寄せてくれていることへの嬉しさがそのまま、
自分の手よりクライヴの手の方が先にグゥの身体を知ったことへの苛立ちという、身勝手な独占欲に塗り潰される。
たとえ自分と重ね合わせていたとはいえ、クライヴの指に一時でもグゥの身を奪われてしまったことは、今のハレには耐えがたい屈辱だった。
「うそ吐け…!オレの指、あいつみたいに上手くないからつまんないと思ってるだろ!?」
「そ、んな…はぁっ…ハレのが…いい……ハレじゃなきゃ…やだ……」
グゥは、今や完全にハレに従順になっていた。期待通りの返答を返すグゥに、ハレの支配欲が満たされる。
ハレの指は今も乱雑にグゥの秘所を蹂躙していたが、その動きは幾分優しくなり落ち着きを取り戻つつある。
グゥに対する理不尽な苛立ちも少しずつ薄れ、その感情を支配する天秤はただ愛情へと傾きつつあった。
「そう…オレにこんなことされるの想像しながら、一人でここ弄ってたんだな…勝手に人のことオカズにしてたんだな…!!」
「…や…あぁっ!…ご…ごめんなさい……うくっ……ごめんなざいぃ……」
ついに、グゥはぽろぽろと大粒の涙を零し泣き崩れてしまう。
ハレの腕の中で赤ん坊のようにハレにすがりつき、ただひぐ、ひぐと嗚咽を漏らす。
それでも、何も抵抗しない。ハレを拒絶もしない。
自分が何故こんな責め苦を受けているのかも解らないだろうに、少女はただハレの身に頬を寄せ、懺悔するようにその恥辱に耐える。
その姿があまりに痛々しくて、あまりに愛おしくて、ハレの心は何かが反転するかのように、ぐるんとその感情の色を変えてしまう。
「ハ…レ……?」
ハレは自分でも知らぬ間に、グゥの身体を力一杯抱きしめていた。突然のハレの変容に、グゥの涙もピタリと止む。
(グゥは、どうしようもなく一人なんだ。これだけ自分をさらけ出しても、これだけオレに責められても、自分一人の問題だと思ってるんだ。
 オレは、グゥがいつまでもオレに心を開いてくれないことにムカついてたのか。
 でもそれじゃ駄目なんだ…グゥには、オレから近寄っていかなきゃだめなんだ。
 それなのにオレは自分のことしか考えずに、グゥに酷いことを…)
──刹那にして、あれだけ心を焼き尽くしていた炎があまりにもちっぽけなものになってしまった。
代わりに本来の、この少女に対する純粋な想いが津波のように少年の心に押し寄せる。
「…グゥ!!」
グッと、両肩を抱きまっすぐにグゥを見つめ、ハレは意を決したように、口を開く。
(…今度はオレが、懺悔する番だ。)
95ハレxグゥ18:2006/12/31(日) 04:02:52 ID:IraBvURn
「…オレも、だよ」
「──え?」
「オレもグゥのこと、オカズにしてた…今日も、お風呂でグゥの裸思い出して……」
「……」
突然のハレの告白に、目をパチクリとさせ呆然とハレを見やるグゥ。
ハレにとっては華厳の滝からダイブするが如く勇気を振り絞った告白であったがしかし、グゥの耳には届いているのかいないのか、
ただぼう、と虚ろにハレを見据える。
「なん…で…?」
「へ?」
「…ハレは、グゥのことなんかぜんぜん興味無いと思っていた…」
グゥは本当に、一点の曇りも無くそう思い込んでいたのか、『信じられない』といった感情を満面に湛え、平坦な声でそう呟くように答える。
そんな様子にハレはあんぐりと呆けてしまったが、ごほん、と一つ咳を払い呼吸を整えるとさらにグゥに踏み込むように言葉を重ねる。
「そ、そんなことないって…オレだってグゥのこと、すげー興味深々ってゆーか…とにかく、気になってた。
 …オレもグゥとほとんど同じだよ。グゥの身体見ちゃったあとも、ベッドでも、ずっとドキドキしてた」
「……ッッ!」
頭をポリポリと掻きながら、顔を真っ赤にしてぽつぽつと言葉を重ねるハレ。そんなハレの言葉1つ1つに、グゥの表情にあらゆる感情が灯る。
嬉しいような、悲しいような、困ったような、複雑な感情がぐるぐると体中を駆け巡っているようだ。
わたわたと狼狽するグゥの姿がまた物珍しくて、悪いと思いながらも苦笑してしまう。
グゥはしばらく顔を伏せたあと、感情を整理するように大きく深呼吸をすると、その感情を一息にごくんと飲み込む仕草をし、突然ふらりとハレに倒れ込んで来た。
「グ、グゥ…?」
向かい合った姿勢のままトン、と身体を預けられ押し倒されたハレは、そのまま身体の上に寝そべり真っ直ぐに見つめて来る少女の瞳に釘付けにされる。
そこには、いつもの不敵な輝きが爛々と蘇えっていた。

「…ハレはぶっちょー面の皮肉屋なんかに女の魅力なんて感じないんじゃなかったのか?」
「う…あ、あれはいつものツッコミだろ〜…グゥもそんな台詞よく覚えてるな〜」
突然の反撃。少し拗ねたような、それでいてどこか愉しんでいるようなその表情や声からは先ほどまでの暗い影は見当たらず、
いつもの調子が戻ってきているように見えた。
ただその少女の纏う空気は昨日までのそれとは違い、どこか暖かく、穏やかに感じられるのは己の気持ちに気づいてしまったが故の欲目というやつだろうか。
「グゥはハレにもらったものは全部大事に保管してるからな。ハレがグゥにくれた言葉もよく覚えているぞ」
「っ……!
 お…お前なあ、いきなりそんなこと言うの卑怯だぞ…」
…どうやら、変わったのは自分だけでは無いようだ。グゥの中でも何かが吹っ切れたらしく、えらくこっ恥ずかしいことを言ってくる。
こんな言葉を年中交わしているとあるバカップルにはうんざりさせられたものだが、その言葉が自分に真摯に向けられるとこんなにも響きが違うものとは。
オレって単純だな、と思いつつ、つい心が小躍りしてしまう。さすがにあの2人みたいには出来ないけど、なんとなくその気持ちは解る気がした。
「と、とにかく…!その、オレもグゥにちゃんとオレの気持ち、伝えなきゃって思ったんだ。
 ぜんぜん釣り合わないし、これでおあいこってワケにもいかないけど…さ」
言いながらハレは、恥ずかしさと先ほど自分がグゥに強いた行為による後ろめたさから、ついグゥから顔を背けてしまう。
そのままハレは動けなくなってしまい、ただグゥからの返答を待つ。

「………」
…沈黙が耳に痛い。この部屋に時計でもあれば秒針の音もしたのだろうが何故かそれらしいものは無く、どれだけこの沈黙が続いているのかも解らなかった。
恐らくは数十秒も経ってはいないのだろうが、それが何分にも何時間にも感じる。
沈黙に耐え切れず、グゥの方に向き直ろうとした矢先、不意に両頬に何かが触れた。
それがグゥの手であることを認識した瞬間、ぐりんと強引に顔をグゥの方に向き直されてしまった。
コキ、と首の間接の音が聞こえた気がしたが、気にしないことにしておこう。
…いや、たとえ首の骨が折れていたとしても、今はきっと気付かなかっただろう。
少年の身体の全神経は今、唇に集中しているのだから。
96ハレxグゥ19:2006/12/31(日) 04:03:40 ID:IraBvURn
再びこの部屋は沈黙に包まれ、ん、ちゅ、という湿った音だけがかすかに響く。
先ほどのような激しいものとは違い、今は穏やかに互いが互いを求め合い、ちゅくちゅくとその唇を愛撫し合っていた。
すでにグゥの手はハレの頬から離れ、逆にその少女の頬に少年の手が優しく添えられている。
──ハレにはこれが、グゥとのはじめてのキスのように感じた。
怒りに任せ強引に奪ってしまったそれと同じとは思えぬほど、その感触はずっと柔らかく、優しく、温かかった。

…どれだけの時間、そうしていただろう。二人は最後にくちゅ、とその唇を鳴らし、どちらからと言うでもなく自然にその顔を離す。
ハレは、ほのかに頬を赤く染め自分を見つめる少女の、その真っ直ぐな微笑みに抱かれ不思議な安らぎに身を包まれる感覚に浸っていた。
「…仲直り」
「…うん。ありがと」
本当の、仲直り。今やっと、本当にグゥと言う少女の心の入り口に立てた気がする。もっと…もっとグゥに近づきたい。
もっと、自分の知らないグゥを見付けたい。ハレの心が、一人の少女への想いで満たされていく。
…でも、足りない。心を満杯まで満たすには、まだまだグゥというパーツが足りない。少年はそれを埋めるべく、再び少女を求める。
少女は少し照れたような、困ったような顔を浮かべた後、静かにその瞳を瞑る。
二人はぺたんとベッドに尻をつけ、互いの両手をきゅ、と握り合った姿勢のままもう一度、優しく穏やかに口付けを交わした。
97ハレxグゥ20:2006/12/31(日) 04:05:52 ID:IraBvURn
<<1−7>>

「でも…そうか。それでいつもより風呂が長かったんだな」
「う゛…い、いきなりなんだよっ」
「ふふ、あんまり遅かったんで先に寝てしまうところだったぞ」
二人は手を繋ぎ、ぴったりと肩を寄せ合い並んでベッドに横たわっていた。
ハレはそのまま安らかな眠りに就こうとしていたのだが、グゥのぽつりと漏らした言葉に眠気も吹き飛んでしまう。
グゥが眠らずに自分を待っていてくれたことは素直に嬉しかったが、これからは風呂に長く入ると妙な勘ぐりを受けてしまうのではと
少し今後の生活に微妙な不安感を覚える。
しかし、少女の次の言に少年はまだまだこの程度は序の口だったのだと思い知らされるのだった。
「あと最近、トイレの回数も篭ってる時間も長いときが多いな?」
「う゛う゛…!!
 オレにプライベートってのは望めないんですかね?」
「グゥがいる限り、望めないな」
「はは、そっか…しょうがないな」
今後の生活に、なんてのは甘かった。既に、とっくに自分には厳重な監視体制が敷かれていたのか。
少女はすっかりいつもの調子を取り戻し、ハレの狼狽する姿を上機嫌で眺めている。
ただ、そのいつものように嬉々として少年の急所を突いてくる少女の、くすくすと愉快そうに微笑う笑顔にはしかし、
いつもの邪悪な印象は微塵も感じなかった。
今までのグゥとはまた違った意味で手強くなってしまったような気はしたが、今のグゥには何を言われても悪い気はしない。
自分が突然変な趣味に目覚めてしまったんじゃないかとそっちの方で不安になったりもしないでもないが、気にしないでおくことにする。
「…で、いつもグゥを妄想の中で弄んでいるのか」
「…まあ、だいたい」
「ふぅん……」
「んだよ、悪いかよっ」
先ほどの償いも兼ねているのか、もう何でも聞いてくれ、とばかりに素直に口を滑らせる少年。
その日のオカズのことなどいちいち覚えてはいないが、それでも一つ屋根の下で暮らし床を一つにしているのだ、
決してグゥを使った回数は少ない方ではない。
本当は『今日がはじめてだ』と言いたかったが、こんなことを誤魔化すのはあまりにも情けなく感じ素直にそう答えた。
しかしそれを聞いたグゥの表情は重く、ジトっと不機嫌な瞳を向けてくる。
妄想の中でとはいえ、自分がたびたび勝手に人の慰みものになっているというのは気分が悪いのだろうとは思ったが、
この少女だって人のことは言えまい。ここは強気に出ることにするが…
「馬鹿、悪いに決まってる。
 …そーゆーときは『いっつもグゥでさせてもらってます』って言うんだ」
ぷう、と拗ねた表情で、そんなことを返してきた。そのあまりにも意外な反応に一瞬ほけ、と呆けてしまったが、
すぐにカ〜ッと顔中の毛細血管が開いていくのがわかりとっさにグゥから目を逸らしてしまう。
グゥの不意打ちはいつもずるい、卑怯だなどとよくわからない文句を心の中で垂れるが、そんなハレの抗議など届くべくも無く
グゥの追い討ちはまだ続く。
「なんだ、だいたいって。やはりマリィか?リタでもしてそうだな?」
「う゛う゛う゛…!!いいだろ、想像でくらい!!」
少女は実に愉快そうにチクチクと少年を攻撃しながらずいずいと詰め寄り、必死でその目線から逃れようとする哀れな少年の顔を追いかける。
少年はあらゆる方向から爆撃を受け、自分が今どんな感情で顔を真っ赤に染めているのかも解らなくなって来ていた。
もうどうにでもしてくれ、というハレの諦めにも似た願いは届いたのか…次の瞬間、ついに止めを刺される。
「ふふふ!ああ、いいぞ。ハレは今グゥの腕の中にいるのだからな。
 これは想像でも妄想でもない。この温かさが全てだ」
不意に、胸が詰まる。全体重をかけ身体にのしかかってくる少女の重みが、その身体に巻きついた腕が少年の胸を圧迫する。
クドクと鼓動が早まっているのはただその圧迫感のせいに違いない。体温が急激に上昇しているのも、きっとそのせいだ。
…くそ…本当にコイツの不意打ちは…ズルイ。
ハレの心が、一つの感情で波々と満たされる。
急激に注ぎ込まれて行くその少女の愛情表現にハレの心の器は飽和状態となり、溢れ出した熱情はその矛先を目の前の少女に向けるしかなかった。
ハレは、もう離すものか、とばかりにギューっと己を抱きしめて来るグゥの身体を抱え、ごろんと反転する。
互いに抱きしめあった状態のままハレがグゥに覆いかぶさる形になり、ハレは身動きの取れぬようになった少女を真っ直ぐに見据える。
少女はハレの意思を察し、静かに眼を瞑った。
98ハレxグゥ21:2006/12/31(日) 04:09:18 ID:IraBvURn
「グゥ…」
「ハレ……ぅンっ?」
予期せぬ刺激を受け、少女は目を見開く。唇に来ると思っていた感触が、首筋に向かってきたのだ。
少女も突然のことで驚いたようだが、しかし抵抗する意志は見えない。
その後も首筋を通り頬、耳たぶや額と、あらゆるところにハレの唇は淡い刺激を与える。
少女もそれを容認し、うっとりとその愛撫に身を委ねていた。
しかしそれだけではハレの溢れ出た感情は消化されはしない。
ハレはグゥの白い肌を唇で味わいながら、指先を少女の下半身へとゆっくり滑り込ませる。
その指が服の上から脚の付け根にある谷間にキュ、と埋め込まれた瞬間、少年の唇での愛撫に神経を集中していたグゥは、
突然加えられた敏感な部分への刺激にビクンと身体を弾ませた。
「あ、アンッ!…ず、ずるいぞ…んんっ…いきなり…はム──んふぅっ」
少女の重要拠点への潜入に成功した少年は、次にその口を封じにかかる。
ハレはグゥの下唇をきゅっと咥え、くにくにと揉むように吸い付きながら、舌でその表面をなぞる。
決してその舌が口内に届くような深いキスではなく、ついばむようにちゅっちゅと唇を融け合わせるだけの柔らかいキス。
それは強引に少女の口を塞ぐようなものでは無かったが、少女の方もそれが気に入ったようで、結局その抗議は半ばで途切れてしまう。
「んちゅ……ン…む……ひ、ぅンンッッ」
そうしながらもハレの指は、すべすべと手触りのいい脚を通り、スカートの中に手を潜り入れるとまだしっとりと濡れたままの秘所に直に触れる。
今のグゥは下着を着けておらず、先ほどハレに脱がされたものはベッドの下に落ちたまま放置されていた。
「ふっうっうっ…んんっ……っ!」
ぬちゅ、ぬちゅと粘液をこねる音が大きく響く。
何度も最後まで達せず、焦らされ続けたグゥの女の子の部分はもはや少々の刺激でもすぐにトロトロと愛液を滴らせるようになっていた。
その新鮮な分泌液に、既に乾いて肌に張り付いていた部分も潤いを取り戻し、より粘性の高い混合液となり少女の下半身と少年の指の間に糸を引かせる。
その指の動きも先ほどのような乱雑で暴力的なものでは無く、指1本1本に神経を行き届かせたような繊細な動きへと変化していた。
「ふぁ……うん、ん……っは、あ、うん…っ」
少女のぷっくりと肉厚なほっぺをくにゅ、とつまみ、浮き上がった谷間に指を埋め上下に擦る。その柔肉を指2本で押し広げ、
残った指の先を使い周囲の肉ヒダをなぞるように掻く。
くぱ、と露出した敏感な粘膜部分を、その形を確かめるように指の腹で撫でるように這い回る。
その1つ1つの動きに、少女は時折ピクンと大きく身体を揺らしながら、うん、うんと自分の反応を確認するかのように頷く。
ハレはひとしきりその少女の恥ずかしい部分の感触を愉しんだ後は、少女の反応を指の動きにリンクさせ、その身体を悦ばせることに専念することにした。
「ひぁン!…ひ、んむう!……はあ、あむっ…ふ…あ、くぅぅんっ!」
突然、グゥの反応が大きくなる。ハレは、グゥの恥部を弄り続けながら観察し、その少女の反応の特に良かった部分を重点的に、一度に攻め立てていた。
中指を中心とした3本の指を柔らかい谷間に埋め込ませ、くちゅりと指全体を粘膜部分に密着させると、粘膜全体を一度にぐちゅぐちゅと擦り上げる。
その動きのまま、人差し指と薬指は粘膜の外周のヒダヒダに指先を差し入れ溝をなぞり、中央の中指はぎゅっと圧迫するように秘部に押し付けしたまま
ゾリゾリと強く粘膜を摩擦する。その通りすがりに、いまだトロトロと間断なく愛液を分泌する膣孔に指先がずぐり、と埋め込まるが、
そのままお構いなしに指に力を入れ肉壁を持ち上げるように強引にそこから抜け出す。
余った親指と小指は、柔肉をぐにゅ、と挟むように揉みこね、肉の内側で粘膜刺激を繰りかえす3本の指がより敏感な部分に密着するように促す。
もうグゥにはハレの唇を味わう余裕も無く、声を大きく上げて悦びを表す。
しかしキスをやめたくないという欲もあるのか、しっかりと少年の首を抱きその顔に自分の唇を密着させている。
そのため少年の顔はグゥの涎でべとべとになっていた。
99ハレxグゥ22:2006/12/31(日) 04:12:00 ID:IraBvURn
「んちゅ…っぷあっ…は…あっ…ああッ!ああンッ!そ、そのまま…お願い、そのまま…!!」
グゥは最後に、名残惜しげにハレの唇に吸い付き、ちゅぱ、と離れるとその首を抱きしめたまま頬をぴったりと寄せ耳元で自己の欲求を素直にねだる。
その喘ぎ声も抑えようとせず、ただひたすら全身でその快楽を受け止めていた。
ハレはその要求に応え、更にその動きを激しくする。その際に手首に何かコリコリとした豆粒のような感触が触れた瞬間、少女はガクンと大きく身体を引きつらせた。
「ヒきぃっ!そ、そこ!…ひっ…く……手のひらのとこもっと、うんっ…グリグリして…!!」
少女は我を忘れたように大きく嬌声を張り上げ、更に新しい快感を得ようと腰をハレの手に押し付ける。
なおも首を力強く抱きしめる腕とは対照的に、下半身はだらしなく弛緩し恥ずかしげもなくぱっくりと股を開きハレに全面降伏の意思を示していた。

ハレはグゥの要求どおり、これまでの動きに加え更に手首をその豆粒大のしこりに押し当て、ぐりぐりとひねる。
最初はその力加減がわからず押し潰すようにゴリ、とねじ込んでしまい耳元で「ヒキャア!」という叫び声を鳴らせてしまうが、すぐに要領がわかった。
優しく揉みほぐすように圧迫するとグゥは安心したように、ハゥ、と熱い吐息で耳を湿らせて来る。それでもそこはよっぽど敏感な部分なのだろう。
キュ、キュとそこに手首を押し込むたびに、少女は反射運動のように脚をビクビクと弾ませていた。
「はぐっ…ふ、く……ふぐ、ぅっ…!」
この刺激が加わってからグゥの嬌声はくぐもった声に変わり、その口からはトロトロと緩んだ蛇口のように唾液を垂れ流しハレの肩を汚していた。
秘所から分泌される愛液もさらに増え、会陰部を伝い尻に敷かれたスカートの裏地に大きな染みを作っている。
少女は下半身に与えられる刺激を全て受け止めようと、さらに力強くハレの身体を抱きしめその顔を頬に押し付けてくる。
呼吸はいよいよ乱れ、密着する胸からは激しい動機も伝わる。先ほどから、腰をもじもじと揺すり自らも快楽を増幅させようとしているようだ。
…その身体の動き全てが、少女の絶頂が近いことを知らせていた。
「ふぅ、ふっ、ん、んぅ、うん…っ!」
「………」
呼吸のテンポが益々速度を上げる。少女はハレに抱かれ、最後の時を迎えようと満身に少年の体温を感じ恍惚に浸る。
反面、ハレはその表情に少し影を落としていた。
ただ少女の最後の瞬間に唇を重ねたいと思っていたのだけなのだが、グゥはずっとハレにしがみついたままなのでそれが出来ずにいたのだ。
少年はそれを伝えようと、少女の肩や首筋、耳の裏や耳たぶ、唾液でドロドロになった頬など、届く限りのあらゆる場所に唇を這わせる。
「ひんンっ……だ、だめら…いまぜったい、ヘンなかお…らから……はう゛う゛っ!!」
ハレのその意思に気付いたのか、グゥはそんなことを言ってくる。
もはやその熱情にとろけ切った態度から羞恥心など無くしてしまったかに見えたが、どうやらまだ最後の理性が残されていたようだ。
どうしてもその表情を見られたくないのか、ますます頑なにハレにしがみつき背中には爪まで立ててくる。
ハレは少し残念に思いながらもしょうがない、と諦め、代わりに首筋にもう一度唇を這わせ少女を舌で愛でることにする。
秘所を愛でる指も少女の呼吸に合わせ激しさを増し、過剰に分泌された愛液をこねる音がずじゅ、ずじゅと大きく部屋に響く。
その粘膜をひと擦りするたびに少女の身体はますます強張り、呼吸のテンポも上がっていく。
それらがピークに達した時、ブル、と一瞬全身を震わせたかと思うと、グゥはあらん限りの力でハレの身体を締め上げて来た。
「ん゛ん゛ん゛ん゛ッッ────!」
喉の奥から引きつるような鋭い声を上げ、痙攣するように身体をガクガクと揺らす。
足先は真っ直ぐにピンと伸び、股に挟んだ指を折らんばかりに締め付ける。
何度も焦らされ続け、大きく身体の芯を疼かせていた欲求。
その解放を、心の底から待ち望みしかし適わぬであろうと諦めていた相手…ハレに与えられ、少女はこれ以上無いくらいに多幸感に満ちた絶頂を迎えた。
100ハレxグゥ23:2006/12/31(日) 04:13:50 ID:IraBvURn
その後少女は何度か小さく痙攣を繰り替えし、ずるりと、力尽きたようにハレに回していた腕を離す。
「は…あ……はぁ…ん…」
大きく深い呼吸を繰り返し、くた、と身体を弛緩させるグゥ。
ハレに抱きかかえられ上半身だけを少し起こした状態で、虚ろな瞳をその少年に向けしばらく余韻に浸るように身体を小さく震えさせる。
「グ、グゥ…大丈夫?」
女性の絶頂をはじめて目の当たりにする少年には、その様子が正常なのか異常なのかの判別がつかない。
力なくその身体を少年に預けるグゥに少し心配になったハレは静かに呼びかけるが、まるで耳に届いていないように反応を示さずますます不安になる。
肩を揺すったり変な刺激を与える気にもなれず、ただ少女が何か反応を見せてくれることを祈り待ち続けるが少女はピクリともせず
だらんとハレの腕にしなだれかかるのみ。少年の心に不安感が重く圧し掛かる。
「ああ、グゥ…ごめん、どうしよう…」
いよいよその沈黙に耐え切れなくなったのか、ぎゅっとグゥを抱きしめたままおろおろと狼狽する少年。その目には雫さえ浮かんでいる。
そんな少年の耳にかすかにクスリ、と哂う声が届いた。よく見れば、腰の辺りに少女の手が軽く添えられている。
ハレはバッとグゥを身体から離し、やっと反応を見せてくれた少女の顔を確認しようとするが……
「グゥ?だ、大丈───んぷっ!?」
…あまりにも一瞬すぎて、どのような表情を見せていたかは確認出来なかった。
グゥの身体を離した瞬間、今度はグゥの方から強烈に身体に抱きつかれ、一直線に唇を奪われてしまったからだ。
先ほどまであんなにぐったりとしていたとは思えないほどに俊敏で力強い動き。
その行動に少年は少し当惑してしまったが、自分を抱きしめるその腕や自分を求める唇からしっかりと感じるその体温に安心し、
ハレも少女とのキスに集中することにした。

「ん…ちゅぷ……んぷ……ちゅ……んんっ……」
唇の裏に、生暖かく柔らかい何かが滑り込んでくる。それはちろちろと歯茎を舐め上げ、思わず少し開いてしまった歯の間を抜け、口内に潜り込んで来た。
くちゅ、と音が立つ。それは何かの生き物のようにハレの舌に絡みつき、口内の唾液を直接かき混ぜる。これまでに、感じたことの無い快感だった。
「んぷ……はぁ……」
ちゅぷ、と唇が離れる。小さくペロリと出したグゥの舌から、自分の口内へ一直線に唾液が糸を引いていた。
グゥは小さく息を吸うと舌を出したまま、またハレの唇に吸い付く。チュクチュクと唾液のこねる音が、直接脳に響く。
唇はピッタリと密着し、その口内では激しく互いを求め合っていた。
今度はハレの方からも、グゥの中に舌を滑り込ませその内壁を舐め上げている。
傍目からはほとんど動きは見られなかったが、もごもごと頬が内側から押されて膨らんでいるのが解る。
そのキスはこれまでの、唇の表面を愛でるような可愛らしいものでは無く、口内の粘膜を愛撫するような激しく深いキス。
互いの唾液を交換し、口端に泡を立てる。舌全体にくちゅ、と吸い付き、自らの口内で舌先をちろちろとくすぐる。
唇を離し、舌だけを舐め合いそのまままた口内に誘い入れる。2人は互いの口内を、余すところ無く味わい続けた。
101ハレxグゥ24:2006/12/31(日) 04:17:07 ID:IraBvURn
「ぷぁ……んもぉ、ハレ!ハレ!ハレェ!んーっっ」
ようやくその唇が離れると、今度はぎゅうと身体を抱きしめてくる。
どかんと全身でぶつかるように身体を預けられ、ハレはそのまま、グゥにのしかかられた状態でぱたんとベッドに押し倒されてしまう。
ハレに覆いかぶさるように、とろんとした表情で見下ろす少女の頬はぽっぽと上気し、瞳にはハートマークさえ浮かんでいるように見えた。
ハレは、少女の全身を包み込む乙女オーラに圧倒されてしまう。
「ちょ、ちょっと待てってグゥ、なんかキャラおかしくなってないか?」
「当たり前だ、ずーっとあんなとこばっかり弄られてたら、変になるに決まってるっ」
あまりのグゥの変わりようにドギマギしてしまうハレだったが、そんなことはお構いなしにグゥは妙なテンションのまま
ハレの頬や額にちゅっちゅとキスの嵐を降らせて来る。グゥの感情も飽和状態になってしまったのか、
自分の行動がまったく制御できていないようだ。
「それに人のこと言えないだろ」
「うわっ!ちょ、グゥ!?」
突然、ハレの下半身に強烈な圧迫感が走る。
…やはりグゥは自分を制御できていないのか、何の恥じらいもなく少年の分身をわしづかみにして来たのだ。
「ふふ、ハレも大変なことになってるじゃないか」
「ふあぅ!だ、だめだって!」
少年のそれは、既に暴発寸前になっていた。
パンパンに膨らんだ中身はズボンをこんもりと持ち上げ、その存在を雄々しく主張している。
少女の身体を愛撫し続け、精神的に焦らされ続けたその膨らみは布越しの刺激にでも十分な反応を示す。
少女はその反応を楽しみながら、しゅ、しゅとズボンの上からその形を確かめるように何度も擦り上げる。
それだけでハレは、ズボンの中に精を吐き出しそうになってしまい慌ててグゥの手を握りその動きを止めさせる。
「お、オレはいいって…!
 多分オレ、グゥにやって欲しいこととかやりたいことばっかになるから…」
これまで何度も妄想の中でグゥにさせてきた行為が脳裏をよぎる。ただ欲望に任せ、
少女に性欲をぶつけるだけの文字通り独りよがりな行為…。
その欲望を解き放ってしまうかもしれないという不安感が少年の心にブレーキをかけた。
しかしグゥは、そんな少年の重苦しく吐き出した言葉をきょとんとした表情で受け止める。
「何を言っている。それは多分、グゥがやりたいこと、やらせたいこととまるっきり同じだと思うぞ」
「……グゥ…」
本当にそうだろうか、自分のこの欲望を全て受け入れてくれるだろうか…。
まだ少し不安感は残ったが、あまりにもあっさりとそんな風に答えられてしまったら、もう何も言うことが出来なくなってしまった。

「いいからほれ、グゥだっていっぱいされたんだ。グゥにもさせてもらわんと割に合わんぞ?」
「う、うん……」
グゥはもう待ち切れないといった様子でハレを急かす。
もうなるようになれ、と意を決し、ズボンに手をかけたハレ。
…だが、少女のまん前でチャックをおろし下着をも脱ぎ捨てる行為に抵抗を感じ、思わず手が止まってしまう。
「…どうした?」
「いやその、なんか自分で脱ぐのって恥ずい」
はじまってしまえばなんとも無いのだろうが、こういった「さて今からエッチなことをしますよ」という準備をするのはかなり気恥ずかしい。
それも、少女にその様子をじっと眺められているのであればなお更だ。
しかしその意思を伝えるには言葉の選択を少し、誤ったことにまだハレは気付いていない。
102ハレxグゥ25:2006/12/31(日) 04:19:03 ID:IraBvURn
「…そ、そうか…まったく、しょうがないなハレは」
「え、ええ!?」
グゥは少し困ったような顔をすると、すぐにハレに向き直りその手をおもむろにズボンにかけてきた。
そのいきなりの大胆な行為にハレは身を引きつらせるが
…そりゃあそうだ、自分の先ほどの台詞を脳裏に反芻しその馬鹿さ加減に一人呆れてしまう。
慌てて腰を引こうとしたが、グゥの手が思いのほかがっしりとズボンをつかんでおり動くに動けない。
…気のせいか、グゥの表情がなんだかやけに楽しそうに見える。
(しかし…自分で脱ぐよりずっと恥ずかしいぞこれ…)
そうなのだ。立てひざをつき、少女の顔の前に腰を突き出して目の前で下着まで下ろされんとしているこの姿勢。
このままでは、少女の眼前に自分の分身が飛び出てくることになる。
はじめてのご対面でこの超近接遭遇はあまりにも恥ずかしいが
…しかしこれも、グゥに何度もその想像でやらせたことの1つではあるのだ。
それが実現すると思うと、ハレの身体から抵抗する力がみるみる抜けて行く。
そうこうしているうちに、グゥは手際よくハレのズボンを下ろしその中に履いているもう一枚の薄布を残すのみとなった。

「…ぱ、パンパンだな…」
ズボンの圧迫から開放され、ハレの分身は薄布の向こうにはっきりとその形を現していた。
パンパンに張ったテントが少女の目を釘付けにする。少女はコクリと小さく喉を鳴らし、いよいよ最後の一枚に手を掛ける。
そのまま間を置かず、少女の手は躊躇なく一気に振り下ろされ、ついにその姿を少女の眼前に晒しすこととなった。
はち切れんばかりに隆起するそれは、その解放を今か今かと待ち望むかのようにピクンピクンと脈動している。
「これが…ハレの…」
「グ、グゥ…」
グゥの手が直に触れると、それはビクンと大きく跳ねる。その滑らかな手触りに、
不意によからぬ欲望や期待感がむくむくと首をもたげる。
少女はそんな少年を尻目に、一人まじまじとそれを興味深げに観察していた。
「ふむ…」
「何?なんかいいたい事あるんだったら言って」
「…いや、可愛いな、と思っただけだ」
「悪かったね!」
男のプライドを傷つける無体な一言にさっくりと心を貫かれるハレ。
他のやつのと比べたことなんてないけど、女の子に開口一番そんなことを言われるとそのショックは計り知れない。
が、当の少女は少年が何を怒っているのかも解っていない様子だ。
「悪くはないだろう?手触りもすべすべだし、何よりこの恥ずかしがりやな所が良い。」
少年に未だ突き刺さるトゲに対するフォローのつもりか。
グゥはそんなことを言いながらナデナデと少年の分身を愛でている。
しかし本当にハレのそれが気に入ったようで、両手でうっとりとまだ包皮の剥け切っていない表皮をさすりながら、
少しだけ赤くその顔を覗かせている先端部分を指先でくりくりとこねくって来た。
「うあぅっ!そこ、敏感なんだからいきなり触るのナシだって!」
ほとんど外気に晒されたことのない敏感な部分に突然刺激を入れられ、ビクンと腰を引くハレ。
引き離された指からは、先端から分泌された先走りが糸を引いていた。
トクン、とグゥの身体の奥に熱が灯る。

「そうか、グゥのと同じで、とても敏感なのだな…優しくしなければな」
グゥは両手で大事そうにハレの一物をきゅっと握ると、亀頭の半分くらいを覆う包皮のふちに指の腹をかけ、
指で輪っかを作るようにして包みこむと、その皮をゆっくりと剥き下ろす。
既にカウパー液で十分に濡れていた粘膜部分は、抵抗なく包皮を滑らせツルンとその身を外気に晒した。
テラテラと光る先端部分に、ハァ、とグゥの熱い吐息が間近でかかり、その刺激だけでも敏感にピクンとその身を跳ねさせる。
「こうすると立派に男らしく見えるな」
ふむ、ふむと鼻息荒くまじまじとその様子を見つめるグゥ。
ハレは、その身を握り締める少女の両手のあまりの柔らかさに、
思わずそのまま自ら腰を振って一気に果てたいという欲求が胸に渦巻く。
しかしまさに吐息がかかるほど顔を近づけて来る少女に、さらに別の欲求も顔を出してくる。
そんなハレの気持ちを鋭く察したか、少女はハレを見上げると、くすりと照れるように微笑った。
103ハレxグゥ26:2006/12/31(日) 04:20:33 ID:IraBvURn
「ふふ、何をさせたいのかわかるぞ」
「う…」
「…それは多分、グゥだってしたいことの一つだぞ」
「グゥ…!」
ほんのりと頬を赤く染め、チロリと舌を舐めずるその少女の仕草にゾクンと背筋に黒い衝動を走らせる。
勿論それもハレにとっての「グゥにさせたいこと」の1つだったが、女の子を道具として扱うようなその行為に抵抗感もあった。
しかしグゥ本人の了承を得たのなら話は別だ。ハレの心が期待感で膨らむ。
が…グゥはそんなハレの一喜一憂を愉しんでいるのか、顔をすっと遠ざけると意地悪そうに微笑う。

「だけど今は…もったいないからしない」
言いながら、グゥはきゅ、と剥き下ろされていた皮をまた持ち上げる。
それも、先ほどの半端に被った状態よりも更に根元から皮を引っ張り亀頭全てを覆い、
先端を摘み上げてプルプルと竿をゆらし弄んでいる。
ハレは羞恥でカーッと顔が熱くなったが、包皮の先端を柔らかい指でくにくにと摘み上げられる快感と、
包皮の内側で本体を擦られる快感を受け少女の成すがままにされてしまう。
「やはりグゥは被ってるほうが好きだな」
ひとしきり包皮の感触を楽しむと、パッと手を離し自然に包皮が剥け先端部分が露出する光景を愛でる。
そしてまたゆっくりとその皮を剥き本体を全て露出させ、またゆっくりと包皮を持ち上げる。
くにゅ、くにゅとその手が上下するたびに、ハレはピクピクと小さく身体を震わせる。
生まれてはじめて他人の手で受ける、その不規則な刺激に少年はただあう、あうと呆けた声を出すことしか出来なかった。
「いつも、こうやってしているのか?」
「ん…うん…そ、そう…そのまま…」
ハレはもうすっかり、その快楽の虜となっていた。今やめられたらどうしたらいいかわからない。
急所を押さえられ、ハレの挙動は完全にその少女に操作されていた。
グゥもその動作に慣れはじめ、先ほどよりも速度を上げリズミカルに竿を擦る。
チュクチュクと汁をこねる音が少女の興奮を煽動し、身体の芯がキュンキュンと疼く。
少女も、その熱く固い感触に魅入られていたのだ。
「どうだ、グゥの手は?気持ち良いか?」
「うああっ…!あ、ああ…凄い…!」
先ほどグゥを攻めていた時とは対照的に、今度はハレがグゥの肩に手をやり、
ぼう、と茹りそうな身体をなんとか支えその強烈な刺激に耐えていた。
その瞳はとろんととろけ、弛緩した口元から一筋の雫がグゥの膝元に落ちる。
そんなハレの可愛らしい態度に気を良くしたグゥは、ますますその速度を上げハレを更なる快楽に導く。
その少女の瞳もハレと同じくらいとろけ、ハァハァと息を荒げていた。
少年の分身を両手で握っていなければ、思わず自分の秘所に手が伸びていたことだろう。
しかし今少年にしてあげていることは、何よりもグゥが心望んだことなのだ。
余計なことをしてこの濃密な刺激を分散させるワケにはいかず、ただひたすら少年の男らしい感触をその手で味わっていた。
「…う…んんっ…あ、あ、で、出…る……ぅぅんッ!!」
少年の呼吸が速くなり、その分身もビクビクと小刻みに脈動する。
グゥの手から感じる少年のサイズは先ほどよりも少し大きくなっているように思えた。
いよいよ、その先端からハレの精が飛び出すのだ。少女の心は爛々と躍る。
少女は手の動きを更に速め、少年を絶頂に促す。
ぷりゅ、ぷりゅと何度も出たり隠れたりする赤いグミのような粘膜部分をうっとりと眺め、その瞬間を今か今かと待ち望む。
そしてついに、その亀頭部分がぷくっと膨らんだかと思うと、ビクンと一際大きく弾んだ。
104ハレxグゥ27:2006/12/31(日) 04:21:56 ID:IraBvURn
───今だ!

少女は、ハレの可愛い分身を愛でながら企んでいた1つの作戦を実行に移すべく、
素早くその先端に顔を近づけ口をぱくんと開けた。
「うわっ!うわっ!そんな…いきな……り…ぃ…っ!!」
射精の瞬間に、更に加えられた強烈な刺激にハレは背筋をピンと伸ばしカクンと頭を揺らす。
ぱっくりとその先端を咥え、ビュービューと間断無く弾け飛ぶ熱い白濁液に口内を犯されながら、
グゥは未だ射精し続けている最も敏感な状態の亀頭に舌を這わせる。
風に当たるだけでもスースーと刺激を受けるそのあまりにも敏感な粘膜部分に、
射精の開放感の中その身に柔らかくぬめった舌で舐めしごかれるという未知の絶頂感。
自分一人では絶対に味わえない感覚に、ハレはもはやそれが快楽なのか苦痛なのかもわからず
ただグゥの肩を力いっぱい握り締め、ヒグ、ヒグと喉の奥から低い呻き声を上げブルブルと何度も全身を震わせていた。

「ふあ…は……あ……」
溜まりに溜まっていた精を全てグゥに吐き出し、最後に小さくブル、と震えると力尽きたようにふらりと後ろに倒れ込み、
どすんとベッドに尻餅を付く。
一人遊びとはあまりにも次元の違う絶頂感。まだ頭がぼんやりと霞みがかっている感覚を覚えくらりと視界がふらつく。
そんなハレを気遣う様子も無く、グゥは一人くちゅくちゅとその口内に吐き出された白濁液をこね、
でろんと口からガムのように糸を引かせたりして遊んでいた。
「ふむ、こんな味か。もっと苦いかと思っていたが案外淡白な味だな」
ひとしきり遊んだあと、最後にまた口に戻しコクンコクンと何度かに分けて飲み込み、指についた粘液もちゅぱちゅぱと舐め取る。
ケポ、と小さくゲップを漏らしふむふむと何やら満足げに頷いている。実に上機嫌そうだ。
そんなグゥの様子を呆けた顔で虚ろに眺めていたが、しっかりとその眼に映っていた、
自分の精液を舐めこね遊ぶ少女の姿に主人の気も知らず、早くも分身は次弾を込め終えたようだ。
我が息子ながらその元気のよさにあきれ返る。
「…まだまだ出せそうだな」
キラリと少女の眼が光る。獲物を見付けた猫のように四つんばいでしなやかに近づいてくる少女に、
少年の心境はまさに蛇に睨まれた蛙。あぐらを崩したような姿勢で、本来なら隠すべき恥部を気にする余裕も失われ、
少女がその唇の密着する距離に接近してくるまで、少年はただその視線に射られ身動き一つ取る事が出来なかった。
105ハレxグゥ28:2006/12/31(日) 04:23:53 ID:IraBvURn
<<1−8>>

この部屋に来てからどれくらいの時間が経ったのか。
時計が無いため時間は解らなかったが、少年にとってそれは、むしろ好都合に思えた。
今この空間においては、自分とグゥの音以外全てが雑音だ。高級そうなシーツの衣擦れの音すら煩わしく感じられた。

──2人は互いに素肌を晒し、ベッドの上で重なり合い何度もその唇や素肌に軽いキスを交わし合っている。
すべすべと滑らかな素肌の感触や、ぷにぷにと柔らかい肉の感触。その全てを、全身で愛撫し合っていた。
「…オレで、本当にいいの?後悔しない?」
「ベタな台詞だな」
「う、うるせーっ!一応優しさと取って頂きたい!」
「言っただろ…ハレじゃなきゃ、いやだぞグゥは」
「───ッッ」
どこで覚えたのか、そんなお決まりな台詞を吐く少年にピシャリと鋭いツッコミが入る。
返す刀で体裁を整えるも、更に満面の笑みでそんな言葉を重ねられては、ハレは顔を真っ赤にして口をつぐむしかない。
普段は超ツッコミ専門の少年も、この場では少女に頭を垂れる他無いようだ。

「それよりも、コレはこのままでいいのか?」
「あ、うん。それじゃそろそろ…」
言いながら、クイクイと胸の布を見せ付けるグゥ。
ハレもグゥもその衣服を脱ぎ去っていたが、グゥの胸の布だけはハレの希望により残していたのだ。
曰く「あ…胸のだけはオレに取らせてくれないかなぁ?…お、オレだって恥ずかしいのにグゥに脱がされたんだしさ、なぁ、いいだろ?」
という実に情けない言によりその少女のもう1つの秘部はまだ露出を控えている状態だった。
「まったく、ハレの妙な趣味に付き合わされるグゥの身にもなって欲しいものだ」
「すいやせんね…」
自分の趣味が正常か異常かなんて自分の知識では判別などつかないので反撃のしようがない。
しかしとりあえずやってることは間違いなくエッチなことなワケで、今は少女の言葉の重みに耐えるしか無い少年だった。
「それじゃ、行くよ…」
気を取り直して…。グゥと向かい合いベッドに尻をつけた状態で、ハレは小さく深呼吸するとえい、とばかりに布の上から手を当てる。
少女の胸に巻かれた布はモコモコと幾重にも折り重なってはいたが、その生地自体は薄いものだ。
布を通して、少女のぷにぷにとした感触が手に伝わる。
「…んっ…ふン……」
少年はコクリと小さく喉を鳴らすと、その手をすりすりと滑らせる。柔らかな感触の中に、ぷくんと小さく腫れた部分を見付ける。
それをコリ、と押し潰し指が通過するたびに、少女は軽くピクンと身体を強張らせる。
…この少女の秘所をまさぐっていたときに比べ、えらく神妙な態度を取る少年だがそれも男の本能か。
世の男どもにとって女性の乳房は永遠のロマンであり究極の神秘──異議は一切、断固として認めません──。
とくに脱衣所でその可愛い乳房を脳裏に焼き付けていたハレにとってそこは、少女の下半身以上に興味深々なポイントだったのだ。
「ふ…あ……んん……」
その指を、いよいよ布の中に侵入させる。大雑把に巻いた黄色い布の下から手を差し入れ、内部をまさぐる少年。
その感触は布の上からの比では無く、ふくらみの無いまっ平らな発育具合だと思っていたそこは
少女の身体のどこよりも柔らかくすべすべで、くにゅくにゅと指の沈み込む感触がたまらなく心地よかった。
「ひっ……ぅ…ッッ」
ほどなくして、布の上からでも自己主張をしていた小さな突起も発見する。指の腹で軽く擦ると、少女は敏感にピクピクと身体を震わせる。
乳房全体を揉みしだくように、手を大きく円を描かせながら指の股にキュ、と乳首を挟みコリコリとこねると、それはすぐにピンと固くしこり盛り上がる。
そのまま布をぐ、と手に乗せ一気に押し上げる。それはグゥの肩をあっさりと通過し、ぱさ、とそのままの形でベッドの上に落ちた。
106ハレxグゥ29:2006/12/31(日) 04:25:45 ID:IraBvURn
トクン、と鼓動が高鳴る。どうしてこのようなものに胸がときめくのかと不思議で仕方が無いが、ときめいてしまうのだからしょうがない。
少年は眼前に惜しげもなく晒された小さなピンクの突起に、どうしようもなくその眼を釘付けにされてしまうのだ。
「グゥ…オレ、グゥにいっぱいしたいことあるんだ。
 もしかしたらそれってヘンタイっぽいことかもしれないけど、絶対痛くしないから──」
「だから、それはグゥもされたいことだと言ってるだろ」
神妙に、ぽつりぽつりとグゥに確認を取るハレの言葉に割って入り、グゥはハレの両手をつかみ自分の胸にくにゅ、と当てる。
好きにしろ、と言う様に微笑みかけ胸をく、と突き出し、その身をハレに任せる。
ハレはその微笑にこくんと頷き、自分の手が押し当てられたグゥの胸に視線を戻す。
その指はまず、おもむろに少女のプクンと隆起した乳首を両方同時にきゅ、と挟みこみ───
「ひあはンッ!!」
──と少女に鋭い嬌声を上げさせた。
「ご、ごめん、痛かった?」
「いや…いきなりそう来るとは思わなかったからびっくりしただけだ」
部屋に、なんだか妙にぎこちない空気が漂う。さっきまでもっと凄いことをしていたはずなのに、これしきのことでドギマギしてどうする。
…そうだ、こんなのは変にかしこまるから余計に駄目なんだ。もっと強気だ、強気!
「…グゥ、オレもう止まらないから…嫌だったら殴ってでも止めてくれよ」
「…任せろ」
…やけに男らしい頼りがいのある返事をもらい逆に不安になるが、とにかくこれでいい。
少年は気を取り直し、再度少女の乳房に手をあてがう。今度は優しく、丁寧にまずは乳房全体を揉みこねる。
グゥはフ、ン、と小さく吐息を漏らす。…やはり、この感触は心地いい。
一日中触っていても飽きないだろうな、などと思うが今はそれよりもその両側にツンと突き出た桃色の膨らみに用がある。
「ふ…あ、んん……ひっう……あっあン!!」
ハレはそのまま、両方の乳首を人差し指と中指の間に挟みそのまま乳首の腹を擦るように手を押し進め、
こつんと指の根元にぶつかるときゅ、と強くはさみ、乳首を指の股に固定したまま更に手を押し進める。
乳首は途中まできゅうと引っ張られるが、すぐに指の股からはずれプクンと元の形に戻る。
手はそのまま少女のわきの下を掴むように進め、手の平で乳首を押し潰し擦り上げる。
親指を乳首の位置に誘導し、固くしこった突起を指の腹でくりゅくりゅとひねる様に押し潰しかき回す。
「うん、うんン……ひっああッ!…っひぅ……あ…は、ン……」
それだけ弄られ、ピンピンとそそり立つ突起を親指と人差し指で挟み込み、クニクニと揉むようにこねる。
そのままツンと引っ張り、指の滑りでその締め付けから解放されるまでキュウキュウと引っ張り上げる。
乳首の先端だけを淡く、軽く引っかかる程度に爪の先でカリカリと掻く。
あらゆる方法でグゥの小さな突起を弄り回し、それによるグゥの反応にも心をキュンキュンと躍らせその愛撫に没頭する少年。
しかしそこを弄られれば弄られるほど、グゥの顔には少しずつ焦りの色が見え、
何かじれったいように、むず痒いようにムズムズと身体を揺すりはじめる。

「グゥ…?」
「……」
グゥのその異変に気付き顔を向けるが、グゥは無言で突然ハレの頭を抱え、そのまま後ろにバタンと倒れた。
もろともに倒されたハレはグゥに頭をがっしりと抱えられたまま、グゥの乳房にぐりぐりと頬を押し付けられる。
目線だけでもグゥの方を見やると、グゥは顔を真っ赤に染めてその眼は何かを少年に訴え続けていた。
…頬に当たる固く柔らかい感触。グゥが自分に何をして欲しいのかなんて、考えるまでも無くシンプルな問題だ。
頬に当たるそれに、頬の内側から舌でくりくりと刺激を与えてやる。
グゥはピクンと反応すると、ハレの頭を押さえ付けていた手を緩ませる。
ハレはそのまま少し頭を後ろにずらすと、口端にぷくんと到達した突起を口内に含み入れた。
107ハレxグゥ30:2006/12/31(日) 04:27:33 ID:IraBvURn
「ふ…ん……あは、ん……」
「………ッ」
ちゅうちゅうと、小さな突起を赤ん坊のように吸い立てるハレ。
そんな様子をグゥも愛おしく思ったのか、無邪気に乳首に吸い付くハレの頭を優しくナデリナデリと撫でていたが、
ハレにはそんな恥ずかしい対応は好ましくない。これは赤ん坊には出来ないだろう、とばかりに、ハレは口内で様々な動きを見せる。
「ふああっ!…ん…んふぅ……ひ、あ、あンッ…!」
乳首を軽く甘噛みし、擦り上げるように歯をきゅうと持ち上げ離す。
乳房全体を吸い込み口に含み、ぷくんと膨らんだ先端に舌を這わせ全体を揉むようにくすぐる。
乳輪を指で押し広げ、露出した乳首の根元を舌先でこそぐように舐り上げる。
ぎゅ、と手で胸周りの肉を集め盛り上げ、無理やり乳房の膨らみを作るとその先端の突起部分だけに触れるように
舌先をチロチロと這わせる。そのまま不意に強く吸い付き、何度もチュポンチュポンと口から引き抜けるまで強烈に吸引する。
「ひっ…い……ひくぅっ!……ん、ああ…ッ」
そうしながらも、反対の乳首には指で刺激を与え続ける。交互に口で攻め立ててベトベトに付着した唾液を潤滑液にし、
ちゅるちゅるとなで擦るように乳房ごと全体を揉みこね、時に突起をぎゅうと締め上げる。
唾液でにゅるんと逃げる乳首をしつこく追いかけ、強く揉み潰す。
考え付く限りの方法で、ハレはグゥの双房を揉み、吸い、攻め立てた。

「ハレ…も、もう…」
「っん……うん、オレも、ヤバイ…」
ハレは思う存分その可愛い乳房を堪能すると、ちゅぽ、とその口を引き抜き自分の下半身を見下ろす。
そこには、自分でも見たことが無いくらい怒張した分身がビクンビクンとその出番を待ち望むように激しく隆起していた。
グゥを見やると、彼女も少年の痛々しいほどに腫れ上がったその膨らみに眼を爛々と輝かせ魅入っている。
呼吸も乱れ、先ほどから性感帯を弄られ続けたせいか、少女の秘所からトロトロと漏れ出る濃厚な愛液が
シーツをぐっしょりと濡らしていた。
自身にはもうどうすることも出来ない熱情。ハレがグゥのひざに手をかけると、グゥも何の抵抗もなくその脚を開放する。
2人はそれがまるで元から決められていた事かのように、自然に身体を重ね互いの性器を密着させた。
「いくよ、グゥ」
「ん………」
ハレが丁寧に己の分身をグゥの膣孔にあてがうと、その部分はきゅ、と吸い付くように先端を包みこみその内部へと導く。
ずぐ、と亀頭までが一気に内部に滑り込み、その刺激だけでハレは絶頂を迎えそうになってしまう。
しかしハレの本能はさらにその奥を目指し、ゆっくりと内壁を掻き分け侵入していく。
108ハレxグゥ31:2006/12/31(日) 04:29:10 ID:IraBvURn
「ひぁっ…は、ああぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」
(うああっ……こ、こんなに……キツ…イ…!?)
グゥの内部はまるでどんな形をしているのか想像も付かないほど流動的で、
柔らかく粘着質な温かいゼリーに包容されているかと思えば、全体をきゅうきゅうと圧迫し絞り込まれる。
その相反した感触に同時に襲われ、この世のものとは思えない未知の感覚にぐわんと脳を揺さぶられたような気分になる。
(…グゥの中、めちゃめちゃ熱い……まだ何もしてないのに、なんか先っぽがヒリヒリする…)
…動くことが出来ない。ほんの少し差し入れるたびに、ほんの少し抜き出すたびに股間から背骨を通り、
脳髄に何か電流のようなものが走り身体が麻痺し、思考が焼き切れる。
挿入している部分はたった10数センチの親指より少し太いくらいの棒だけだっていうのに、
全身をグゥの膣内に掌握されてしまったような感覚。
(それでも…)
そう、それでも心はグゥを求め、身体はさらなる快楽を求め、ハレを前へと進ませる。
はじめはゆっくりと、しかし確実に抽送を繰り返す。腰はそのあまりに強烈な刺激にガクガクと揺れるが、構ってはいられない。
グゥもハレの分身に膣内を押し広げられ、内部をかき混ぜられる刺激に必死に耐えるようにブルブルと震え、
ひ、ぐ、と小さく呻いている。
「グ、グゥ、大丈夫か?」
「は、はは…ハレの、中で感じると…見た目より、ずっと大きく思えるな…」
顔には玉の汗が吹き出ているというのに、グゥは不敵な笑みを崩さずそんなことを言ってくる。
ただ腰を動かすだけの行為にこんなに必死になっている自分が少し、情けなく思えてきた。
(なんだよ、余裕ぶっちゃってさ…)
しかしそんなグゥのカラ元気が、ハレの心を軽くする。
──あとは、自分の問題だ。
そうだ、オレはグゥの辛そうな顔を見るためにこんなことをやってるんじゃないんだ。
オレもグゥの膣、すっげえ気持ちいいぞって伝えなきゃ。
そんな気持ちが、ハレを強く突き動かす。
「グゥ、動くぞ…」
「ん…ふく……おぅよ………」
グゥはなおもニヤリと笑みを崩さずサムズアップまで決めてくる。なんと小憎いリアクションか。
ハレは震える腰に鞭打ち、さらに抽送の速度を上げる。
「ふあっんっんっひっぁ…くぅんっ…!」
「んっく、う……ふぐ……うっく……っ」
挿入時に完全に包皮を剥き下ろされ、普段は外気に晒されぬ剥き身の粘膜部分がトロトロの膣壁に擦り上げられる。
全身の神経が全てハレの分身に集中しているかのように鋭敏になっていた。ハレの口からも、嗚咽のような嬌声が漏れはじめる。
(くそ、ホントに情けない……オレにはぜんぜん、余裕なんて…っ!!)
グゥの膣内は度重なる愛撫により十全にとろけきっており、グゥがハレから受ける刺激によりキュウキュウと膣内に力を込め
ハレの分身を締め上げようとしても、過剰に溢れ出た愛液が潤滑液となりその侵入の妨げにはならない。
むしろその動きにより、ハレの一物は膣壁に強くしごかれ、膣孔にキュウと吸い付かれ、その刺激をより強烈なものとしていた。
109ハレxグゥ32:2006/12/31(日) 04:31:47 ID:IraBvURn
「は………あぁぁぁぁ…っっ」
ハレに内壁をしつこく擦られ、グゥの声にも艶っぽい色が帯び始めていた。
少年が力強くズンズンと突き込んで来るたびに、グゥの身体の芯がハレで満たされ悦ぶ。
ぷっくりと膨らみ傘を広げたカリが、膣ヒダの節1つ1つをゾリゾリとこすり上げながら引き抜かれるたびに、
グゥの身体の芯がハレを求め疼く。
その両方が共にこの上も無い悦楽となり、少女を幸福の絶頂へと導く。
「ふっうっうっうっんっんっんんっ……!」
ハレの分身がグゥの膣内に抜き差しされるたびに、ぐじゅ、ぶじゅと、空気混じりの粘っこい液音が響く。
それに根元まで差し込んだ瞬間の、ぱちゅ、ぱちゅという肉の弾ける音が混ざり、淫靡な二重奏を奏でていた。
更にハレの褐色の肉と、グゥの透き通るような白い肌が粘液をかくはんする瞬間のコントラストに、視覚的な興奮が煽動される。
触覚は勿論のこと、味覚でグゥの汗や唾液を感じ、嗅覚でグゥの匂いを感じる。
ハレは五感全てでグゥを感じ、その全ての感覚が少年を快楽の絶頂と導くのだった。
「あっあ…も、もう出……っ!」
「うんっ…!ぜん…ぶ、なっ中、に……ッッ!!」
ハレは一際速く腰を動かし、パン、パンと肉の弾ける音を大きくする。
それでも根元からカリ首までの長いストロークは忘れず、リズミカルに力強く腰を振り続ける。
そしてハレの分身がムク、と一瞬大きく膨らんだ次の瞬間、ハレはブルブルと震えながらその膣内に精液を吐き出した。
「ふあっ…で、でて…る……スゴ……ッ」
ビクン、ビクンと内部で脈動するたびに、ビュル、ビュルと規則的に精が射出される。
どこにこれだけ溜まっていたのか、と言うほど、ゴポゴポと大量の精液が噴出し膣壁に叩きつけられる。
グゥはその熱いハレの種を満身に受け止め、多幸感に浸っていた。
ハレは、ハ、ハ、と短く息を吐き、いまだグゥの腰をがっしりと掴んで力を込めている。
その様子はどこかおかしい、とグゥは気付いたか否か。
まだ射精が続いているのに、ハレはその分身をゆっくりと引き抜き、
これで射精は終わったのかと少女が思った瞬間──再度一気に奥まで突き込んで来た。

「─────ッッ!!」
ズチュン、と音が聞こえた。愛液に加え、濃厚なハレの精液を満々と満たしたグゥの膣壷をかき回し、混ぜこねる粘液音。
それも1度だけでなく、立て続けに。ハレは絶頂の直前よりも激しく腰を打ち付け出す。

「は……ぐ…す、げぇ……これ、きもち…い…ッッ」
「うぁっっ!?だ、出しながら…動かな……っ…はっ…あ゛あ゛あ゛あ゛っっ!!」
自業自得、と言うべきだろうか。
ハレは、グゥに教わった「射精直後の粘膜刺激」の超絶な快感をその本能で切望し貪るように実行しているのだ。
グゥは、いまだ射精が続き勢いよく精液を撒き散らしながら突き込んで来るその熱く固いハレ自身にビリビリと内部をかき乱され、
キュウー、と身体の芯の部分に熱がこもり神経が集中して行く感覚を覚えた。
その感覚が、ハレの前後運動に誘導されどんどんと鋭敏になって行く。
そして興奮がピークに達したハレの最後の一突きがズグン、とグゥの最奥に侵入し、
コツンと子宮孔の口とキスをした瞬間、グゥの中の何かが弾け飛んだ。

「ふあっふあああっ!!く、あ、ああああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛────ッッ!!!」

ガクガク、と大きく身体を引きつらせ、喉が裂けんばかりに声を張り上げる。
ハレをあらん限りの力で抱きしめるその腕はハレの背中につめ跡を付け、
脚はハレを内部から逃がすものかとその腰に巻きつけ押さえ込む。
グゥはその身体の全てでハレを求め、ハレに満たされ、ハレを受け止めながら、決して一人では辿り着けぬ絶頂を迎えた。
110ハレxグゥ33:2006/12/31(日) 04:32:34 ID:IraBvURn
「ふんん…ちゅ、んむぅ……」
絶頂を迎えた後も、2人はまだ繋がり合ったまま、互いを求め合った。
ちゅくちゅくと唇を愛撫し、その身体も全て密着するように重なり合う。
「ぷぁ……ごめん、まだ抜くの、ちょっとキツイ」
「ん…。グゥも、しばらくこのままがいい」
射精中にも刺激を与え続けたせいか、まだハレの分身の熱は収まらず、半端に膨らんだままだった。
その粘膜部分は感覚が鋭敏になり過ぎ、少しの摩擦刺激でもハレの身を強張らせる。
グゥはそれを優しく受け止め、なるべく刺激せぬように穏やかにハレを包み込んでいた。
「こっちも、もっと一緒がいい」
「……ん」
それより、と、顎をくいと上げ、少し唇を尖らせるグゥ。それに吸い寄せられるように、ハレも唇を寄せる。
2人は飽きること無く、互いの全てを愛し合った。
111ハレxグゥ34:2006/12/31(日) 04:33:41 ID:IraBvURn
<<1−8>>

チュン、チュンと小鳥のさえずりが耳をくすぐる。
ガラスの入っていない窓から朝日が差し込み、少年を心地よい目覚めへと誘う。
「んっ〜〜〜〜〜くあぁ〜〜〜っ」
ベッドの上で大きく伸びをし、肺一杯に溜めた大あくびを吐き出す。
「ほらグゥ、もう朝だよ?」
「ん………んんー」
隣で寝ている少女の肩をゆすり、目覚めを促す少年。
爽快な目覚めを迎えた少年とは裏腹に、少女はまだくったりとお疲れモードだ。
「…昨日は大変だったからね。もうちょっと寝てていいよ、グゥ」
「む……いい気なものだな…」
「え?」
「グゥが眠いのはハレのせいだと言うのに……」
そっと優しく気を利かせたつもりだったのだが、やけに不機嫌なグゥに予想外の叱責を貰う。
…首をひねる。確かに昨日はなんというかその、イロイロやっちゃったけど、それはある意味お互い様だし。
でもやっぱりそれなのかな……?
「ごめん、グゥ。昨日は散々無茶しちゃって…それで疲れてるんだよね?」
「…覚えてないのか……」
「……?」
…更に首をひねる。いくら考えても、他には何も思い当たらない。
しかしこの少女がずっと不機嫌ではせっかくの目覚めの良い朝も台無しだ。
(そうそう、互いの距離を縮めることが大事なんだよ。こーゆーときはオレから折れるべし。)
「…ごめん!多分オレ、覚えてない。何か至らないところがあったんなら治すからさ、何があったか教えてよ」
「…ふむ……恐らくハレは寝ぼけていたのであろうが…」
「オレが?ね、寝ぼけて蹴っ飛ばしちゃったとか?」
「いや…グゥの身体を一晩中撫で回していたのだ」
「──え?お、オレが?」
「うむ。おかげで寝付けなかった」
撫で回すって頭とか肩とか…?ッて、そんな可愛いものじゃないことは目の前の少女の表情がハッキリと示している。
自分の手癖の悪さに血を感じてしまいそうになるが、ここは無視無視!とにかく当面の問題は、グゥだ。
「え、それってもしかしてその、恥ずかしいトコとか…?」
「……」
少女は何も答えず、しかしその沈黙こそが何よりも雄弁に肯定の意思を示していた。

「ご、ごめん…でもそれなら振り払ってくれたらよかったのに…」
「………」
「…?」
またも、少女は黙り込む。しかし今度は先ほどとは違い、
頬を赤らめどこか憂いを帯びた瞳でこちらをチラチラと横目で見て来る。
また何か恥ずかしい自分の悪癖が明らかになるのではと身構えたが、
全く別方向からの攻撃に対する心構えは出来ていなかった。

「そんなこと、出来るか。…どんな時でも、ハレの手は温かい」
「──────ッッ!!」
ぽむ、とハレの頭から煙が上がる。
…これで何度目かもしれないが、やっぱり、グゥの不意打ちは、ズルイ。
この後、またいつもみたいにグゥのペースになっちゃうんじゃないのか?
112ハレxグゥ35:2006/12/31(日) 04:35:31 ID:IraBvURn
「とにかく、今度こーゆーことが続いたらグゥはハレと一緒に寝るのを考えるぞ?」
「そ、そんなあ…っ」
やっぱり…!ってか、それは非常に困る。今度はこっちが眠れなくなるじゃないか。
しかし自分の寝ぼけを制御出来るはずも無し…何とかこの場は取り繕ってグゥを納得させねば…!!
「いやオレってこう見えて寂しがり屋じゃんか〜。何か抱いてた方が安眠出来るんだよね!
 ほら、犬とか猫とかさ、ペットのお腹なでてたら心が落ち着くだろ?アルファ波が出るってゆーか、癒し系みたいなさ!
 オレとしてはそれと同じ効果をグゥに与えてもらおーとしてたんだと思うんだよねっ」
「…………」
「…………」
「血…か……」

「いやあああああああごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいいいい」
心地よい朝日の下、少年の土下座は地を揺るがしその叫喚は天に昇った。

「──もう、良いと言ってる。
 グゥはハレとこんな話しが出来る日が来るなんて夢にも思ってなかったんだからな」
いまだへこへこと土下座するハレにふぅ、とため息を吐き静かに嗜めるグゥ。
まったく、とぼやきつつも、その表情はどこか嬉しそうだ。
「…うん、ありがと。
 ──でも、ホントにこんな、成り行き任せで良かったのかな…?」
「成り行きなんかじゃない、いつでも必然だ。グゥは、いつもハレを待っていたぞ」
ここまできてもまだうじうじと腹を決めかねるハレとは対照的に、凛とした表情で真っ直ぐに答えるグゥ。
こんな時のグゥの決断力にはいつも見惚れるものがある。
(そうだ、オレが何かに迷っていたとき、いつもグゥの一言で前に進めたんだよな。
 その真意はともかく、言っていることはいつも本当に正しくて、オレはその度に何かを気付かされたんだ。
 …でも、オレもいつまでもグゥに頼ってちゃ駄目なんだ。これからはオレがグゥを引っ張っていくくらいにならなきゃ。)
ハレの心にまた1つ何かが宿る。ハレはぐっと覚悟を決め、グゥに真っ直ぐに向き直り───

「なんせ最近はずっとノーパンだったからな」

──グゥの突然のわけのわからない告白にその気力ごとブフッと空気を噴き出した。
「…それってなんか意味あんの?」
「なんとなく…フェロモン的なものが出そうじゃないか。そのせいでここのところ、逆に履くのが気持ち悪くなってな。
基本的に履かなくなってしまった」
ハレの力ないツッコミに、なぜか誇らしげにフンと鼻を鳴らすグゥ。
その無意味に自信ありげな仕草にまたプッと吹き出してしまう。こいつはいつもこんなをアホなことを考えていたのか。
無軌道で予測のし辛い性質は相変わらずだと思ったが、そんなところが可愛らしいとも思えるようになってしまっては
いよいよ年貢の納め時か。
まぁ今はそんなことはどうでもいい…と思いつつもツッコミ担当の宿命か、ついその話に乗ってしまう。
113ハレxグゥ36:2006/12/31(日) 04:36:37 ID:IraBvURn
「昨日は、ちゃんと履いてたんだね?」
「ああ、あんなことがあったからな…履かないと───」
「…なんだよ?」
妙なところで言葉を詰まらせるグゥ。
あんなこと、と言うと、下着を履くタイミングから考えて風呂でのことだろうか。
あの時グゥは風呂の中で一人で身体を慰めていて、それをハレに覗かれたか、声でも聞かれたかと思っていた。
そんな心理状態だと、ノーパンのままだとさらにそれを意識してしまい平静を保てなかった、といった所だろうか…。
「いや、やめとこう。つまらないことだ」
「いいから言えって、もうこのさいだろ?気になるじゃんか」
…と何となく納得できそげな理由を考えてみたが、ツッコンだ手前やはり真相を聞きだしたい。
今更この程度のことを恥ずかしがることも無いだろう、と何故か言い渋るグゥを説得する。
グゥはハァ、と諦めたようにため息を1つ吐き、小さくぼそりと呟いた。
「…………履かないと、垂れる」
「垂れ?何が………」
言って、瞬時にその言葉の意味を理解し、ぽむ、と顔を赤く染めるハレ。
あの時はそれくらい、そーゆー意味で自分を意識していたのか。
その表情からはまるでそんな様子は読み取れなかった。普段のグゥの鉄壁のポーカーフェイスには今後も悩まされそうだ。
「な、聞かない方が良かったろ」
「…いや、おかげさまで元気になったっ!」
どうでもいいことだ、と付け足し寝転ぶグゥの隣でバウンとベッドを跳ねさせ、ハレは元気よく床に着地する。
窓から差し込む朝日が少年を照らし出し、その姿にしばし見惚れ、ぽむ、と少女の顔も太陽の色に染まってしまう。
「ほらグゥ、そろそろ朝ごはんだよ、降りよ」
「む……すぐ行くから先に降りといて」
慌ててごろんとうつぶせになりそんなことを言う少女をきょとん、とした眼で眺め、
少年は「冷める前に降りてこいよ」とだけ残しトントンと梯子を降りていった。

「ハレ…っ」
一人残された少女は、周囲に誰もいないことをもう一度確認し、枕を抱いてころころと転がるのだった。
114ハレxグゥ37:2006/12/31(日) 04:38:07 ID:IraBvURn
<<1−9>>

「うわ、タバコくせ〜〜〜っ」
梯子を降りて開口一番、我が家の惨状を悲痛に叫ぶハレ。
どうせ理由など1つしかないが、なぜか部屋はもくもくとタバコの煙で覆われ、
この臭いがなければ火事と見紛うほどの酷い有様だ。…この臭い、におい消しとかで取れるのか?
「ちょ、保険医なんだよこれ〜!!家族全員ガンにでもするつもりかよ!」
「…………」
パッパと手で煙を払いながら、その煙の主を糾弾する。
煙の主…クライヴはベッドに座り思いっきり不味そうな顔でプカプカとタバコをくゆらせていた。
床には大量の吸殻が散らばり、灰が山と積もっている。
ハレの抗議もまるで耳に入っていないのか、幽鬼のようにフラフラと虚ろな視点を泳がせる。
その顔は昨日よりも少しやつれて見えた。
「…どーしたんだよ、保険医?」
「…すまん」
その余りの異様な姿にさすがに心配になり、静かに声を掛ける。
クライヴはようやくハレの姿を確認したかのように、ただ一言、消え入りそうな声でそう呟いた。

「な、なんだよ…いきなり。別に謝らなくていいからこの煙と吸殻と灰、どーにかしようぜ?」
「…ずっと、考えてたんだ。昨日のこと、さ」
ハレの姿は見えているようだが、その声はまだ耳に届いていないのか。
ハレの言葉を無視し、ただクライヴはぽつりぽつりと懺悔するように呟く。
「…すまなかったよ。謝るよ。冷静になって考えてみたら、だいぶ酷いことしたよな、僕…」
「保険医…」
(そっか、保険医もずっと昨日のこと悩んでたんだ)
そう言えば目の下がどんよりと黒い。もしかしたら、一睡もしていないのかもしれない。
クライヴはクライヴなりに昨日の出来事を重く受け止めていたのだろう。
ハレはクライヴの横に座り、その言葉に耳を傾ける。
「僕、何かが麻痺しちゃってんのかな。昨日ここで一人になるまであいつのことなんて、まるっきり考えてなかった。
 …はは、どう考えても僕が悪いよ。下手すりゃこの家追い出されてもおかしくないことしちゃったんだ」
「……」
「でも、これだけは言わせてくれ。僕は本当に寝ぼけてたんだ…誓って本意じゃなかった。
 信用してくれなんて言わないけどさ、僕はもうウェダちゃん一筋なんだよ…。アメのためにも、お前のためにもさ…」
「…んなこと、オレに言ってどーすんだよ…」
何だよ、急にそんな素直になられたらどんな態度とったらいいかわかんないじゃんか…。
でもこいつも真剣に考えてたんだ。母さんのこともオレたちのことも含めて…こいつなりにちゃんと自分を変えようとしてたんだな。
「わかってる。でもハレにも謝らなきゃいかんと思ったんだよ。グゥにもウェダちゃんにも、しっかり謝るよ」
「ふぅん…グゥが許すなら別にオレもいいけど…?」
その父の表情があまりにもいつもと違って。あまりにも悲しそうで、穏やかで。思わず少年は顔を背けてしまう。
そんな少年の頭にぽん、と大きな手が乗る。
「…話、聞いてくれてありがとな。ハレはオレに似なくてよかったよ」
「何言ってんだよ…保険医〜…」
父の手はハレの頭を大きくゆっくりなでつける。
その動きはとてもぎこちなく乱雑で、頭をくしゃくしゃにするだけの、とても心地よいとはいえないもの。
でもそんな父さんの大きな手は、少しだけ温かかった。
115ハレxグゥ38:2006/12/31(日) 04:40:40 ID:IraBvURn
「…保険医、か。そうだよな…僕に父さんなんて呼ばれる資格も…この家にいる資格も…僕には…」
しまった、失言だった…。後悔してももう遅い。また保険医の周囲には黒い瘴気が漂いはじめる。
「こんなんが、二児の父だなんてな…。情けない…」
「ちょ、いや、あのさ保険…じゃなくて父さ………」
そうこうしているうちにますますどん底に落ちていきそうな父を慰める言葉を捜すハレだったが、しかし…
(…ここで父さんと呼んであげるのは簡単だよな……でも、それじゃ駄目なんだ。
 そうだよ、保険医も、グゥと同じで一歩一歩、距離を縮めていけばいいんだ。いや、そうするしか無いんだ)
この不自然な親子関係を改善する方法は、結局は当人たちの手に委ねられているのだ。
互いが互いを認め、許しあわなきゃ本当の家族になんてなれるわけが無い。まずは一歩、踏み込む。それしか、ない。

「この───馬鹿保険医!!」
「────ッッ!!」
キィン、とクライヴの耳をつんざく鋭い咆哮。
突然脳内を揺さぶられ困惑しているクライヴを尻目に、ハレはハッハと笑い言葉を続ける。
「はーいはいはいわかったから掃除手伝わねーんだったらお前外出ろよ!邪・魔・な・ん・だ・よ!!」
「あのなあ、人が真剣に悩んでるってのに…」
「ほー!?シンケンナナヤミですかー?ろくでなしのあんたにそんな人間的な感情があったとは驚きだねー」
「てっめえ、僕だって今は本当に心から反省……」
「ハンセイ〜?んなもん今更してもなーちょーっと遅すぎなんじゃあないのぉ?」
「っんガキャ〜…あー、そーだよな!!こんなガキ2人も面倒見るハメになっちまったのが最大のハンセーテンだ!!」
「はぁ〜!?ガキ2人ってオレとアメのことっすかぁ〜?お前オレたちの何?何か関係あったっけ〜?」
「オ・ヤ・ジ・だ!!お前らの正真正銘の父親だろが!」

「───そうだよ。」

「……ッ?」
「あんたは、オレとアメの本当の父さんだろ。なんだよ、わかってんじゃんかよ…!」
ぎゅ、とこぶしを握り、真っ直ぐに父を見つめる少年。胸の奥から重く、ゆっくりとその想いを吐き出す。
「でも今は父さんなんて呼んでやらねーぞ。お前がいつまでもそんなウジウジしてんだったら、お前はずっと保険医だ!」
「………」
「お前がそんな調子だったらいつまで経ってもお前のこと、父さんなんて呼べるわけ無いだろ!!
 いつも言ってんだろ、父さんなら父さんらしくしろって!ほら、もっと堂々としろよ!」
「ハレ……ッ」
自分の声が、遠くから聞こえた。自分がどれほどの声で叫んでいるのか、解らなかった。
ただ胸が痛くて、身体が熱くて、頬に当たる雫が冷たくて…なぜか、父の姿がぼやけて、はっきりとその顔が見えなかった。
「母さんだってグゥだって許してくれるさ。だって、家族なんだぜ?一緒に暮らしてりゃ、あんなこともあるって。
 ちゃんと謝れば、すぐ元通りだよ!」
「…お前………く……」
「ほらほら、そんな陰気な顔で肩身狭そーな顔されちゃ、こっちが迷惑なんだって。
 …ここは保険医の家なんだから…さぁ。
 もっとさ、いつもみたいに…我が物顔で当たり前の顔してさ、ふんぞり返りなよ。
 保険医がここにいるのは、当たり前のことなんだからさ!」
「……ふ………うく……ハレ、お前が僕の息子だなんて、出来すぎだよ……」
ぽろぽろと、2人の頬を熱い何かが伝う。それは胸にも零れ、心の中にまで染み込んだ気がした。
一歩。一歩ずつでいい。ちゃんと歩み寄れば、その距離は絶対に、縮まるんだ。
「そんなこと、無いよ。オレだっていつも馬鹿ばっかりやって、みんなに迷惑かけてんだ。でもそれを許しあえるのが家族だろ?」
「………う゛……ぐ……」
ちょっと変な始まり方しちゃったオレたちだけど、こうやってちょっとずつその距離が縮んでいけば、
そのうちちゃんと家族ってやつになってくんだろう。
このロクデナシを、いつか父さんって呼べる日が来たとしても、来なかったとしても、もう、別にいいのかもしれない。
その距離さえ縮まれば…ううん、なかなか縮まらなくってもさ。家族は家族。父さんは父さんなんだから。
そうだ。今はもう、父さんの顔がハッキリと見える。情けない父さんの、情けない顔。
それでも、昨日よりも、これまでよりもずっと頼りがいのある顔に見えた。
116ハレxグゥ39:2006/12/31(日) 04:41:32 ID:IraBvURn
<<1−ep>>

「みっともないとこ、見せちまったな…
 …親父としてかっこわりいとこばっか息子に見せちまってるな、僕」
「だからそーゆーのやめようぜ〜。「雨降って地固まる」ってゆーしさ、
 今回のこと、オレは良かったと思ってるよ。オレにとって、保険医にとってもさ」
「わかってる。これからはもっとお前らに立派な姿見せてやるよ。僕もやるときゃやるからね」
「……保け………ふん、その気合がいつまでもつか、ちょーっと不安だけどね。
 ま、がんばってみなよ……父さん」

「……おいハレ?」
「なーに保険医?」

「……なあ、もっぺん言ってみてくれよ」
「さっきのはサービス!あとは保険医が父親らしくなってからだね」

「けちくせーなー!減るもんじゃねーだろ」
「父親らしー態度だって減るもんじゃないだろっ」
「…素直さとか子供らしさとかも減るもんじゃねーだろ」
「誠実さとか優しさってのもね!」
「ったくてめーはなんでそー可愛げがねーんだ!」
「ったく保険医はなんでそー大人げがないんだよ!」

「…………──────ぷっ」

「ったく、ホンッとそーゆーとこは僕似だよねえ、お前。
 ところで、さ。しばらく寝るときはこのままの形でいかないか?
 ウェダちゃんの機嫌治らないと僕も安心して都会に戻れないんだよね…」
「ん〜、オレはいいけどさ、でもアルヴァが帰って来たら2人っきりじゃなくなるよ?」
「あー、見たことねーけどほんとにいるのかそいつ?
 それにお前と同い年だろ、どーとでもなるんじゃないの?」

「あ、噂をすれば…」
「……?」
「…お前がアルヴァ?」
「ああ…」
「…マジに13歳?」
「それがどうした?」
「…僕、急用思い出したわ。そうそう、学会とか研究会とかそーゆーやつ。
 んじゃハレ、ウェダちゃん帰って来たら僕がモーレツに反省してたってちゃんと伝えとけよ?
 それとグゥにもな!よろしく!」

「…なんだあのおっさん」
「いや、ホントなんなんだろねえ…」
117ハレxグゥ40(完):2006/12/31(日) 04:42:08 ID:IraBvURn
「…あら、アルヴァおかえり〜。今回は新記録、なんと4日も遭難してたのね!よく生きて帰ってこれたわね〜」
「…ずーっと遭難してたわけじゃないって」
「まーまー。無事でよかったよかった。ところで先生は?」
「あー、もう都会に帰っちゃったよ。なんかごめんって謝っといてだって」
「ふーん。で、ハレはどう思う?」
「何が?」
「先生のこと。許してあげる?」
「んー、オレは別にいいけどさ、グゥしだいかな」
「へぇ。んじゃ私はハレしだいっ」
「なんだよそれー、おざなりだなー」
「いーじゃんいーじゃん、家族なんだし。ね、グゥちゃん?」
「…うむ」
「おわっ、いつのまに!?」
「さっきからいたわよ?で、どうよグゥちゃん、先生のこと?」
「ふむ、今回の件であやつもそれなりに使える存在であることがわかったしな。苦しゅうない」
「天晴れ天晴れ!よかったわねーセンセ」
「ちょっと待って…今のグゥの発言の趣旨や意図がオレにゃーまーったく解んなかったんだけど?」
「んー、それは…」
「ねーっ」
「仲良くハモんなあああ!何、なんかオレだまされてる!?そーいや母さんそのおでこのシップなに!?」
「あー、これはねー………」
「ウェダはレベッカの家でベッドから転げ落ちて額を強く売ってしまいコブが出来たのだ」
「そ、そーそー、さっすがグゥちゃん物知り〜」
「ももももももものしりとかそーゆー問題じゃねーだろ!!!」
「朝っぱらからやかましいやつだ……」
「朝っぱらから声張り上げさせんといて…
 なぁ、グゥ?オレたちのことも、その、嘘とか騙してた、とか、そんなんじゃないよな?」
「…………ま、雨降って地固まるってコトで」
「…オレの心は土砂降りじゃーーーーーーーーーーーーーー!!!」

End
118名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 04:45:16 ID:IraBvURn
すいません、長すぎました…orz
抜けが無いかチェックしてみます。
ちなみに「1−」ってのは2話以降も一応書いてるってことでw

ハレとグゥが「すでに」ラブラブになってる状態でのシチュはなんぼでも思い浮かぶんですが
そのための「言い訳」としてのいきさつ・・・ってことでの1話だったり。
それにしても、長すぎた・・・お目汚し失礼。
119名無しさん@ピンキー:2007/01/01(月) 01:52:22 ID:YKTlS7Av
明けましたな〜。本年も宜しくお願いいたします。

以前、あちらのスレより流れてきた者です。遅くなりましたが読ませて頂きました。
いやもう何というか良すぎて萌え死にそうです。朝から4回も読み返してしまったよ(*´・ω:;.:...
とにかくグゥが可愛すぎ…!!

しかも凄い長編で感動した。俺にはとても書けんわ、、、
今後、俺の中での「グゥの見かた」が大分変わりそうです。( *´・ω・)

2話以降も執筆されてるとの事で、マジデ楽しみにしております。
120名無しさん@ピンキー:2007/01/01(月) 07:16:27 ID:DieoM0Bs
いやぁ、本年も宜しくm(_)m
あまりの長さに初日の出を迎えてしまったが後悔しないのは何故だろう…w

個人的にエロだけでなく、
家族とかグゥの孤独な性とか、ハレグゥの「テーマ」なるものが存分に出ていて
実に素晴しかったっす。自分がハレグゥに於いて主張したかった事を実に見事に
書かれていて、本当に脱帽です。正に天晴!
身体(そっちの意味で)も心も温かくなりましたわ(笑)

2話以降もめちゃめちゃ期待しております。
新たなハレグゥ年の始まりですな。
121118:2007/01/03(水) 00:38:48 ID:HvONV48a
アケオメで御座います。今年も盛り上がると良いですね。

いや、ご感想感謝感謝です。
調子に乗って第2話も鋭意執筆中w
そして皆さんの作品も読みたいですYO〜!

私もハレグゥの家族観や恋愛観の描き方が好きで、
そこで最初にハマったみたいなもんなんですよね。
ドライだけどちゃんと一本筋が通ってるような関係って言うか。
クライヴ最初はムカついたけどハレグゥって作品は彼ありきなところがあって。
↑のSSじゃカワイソーな役回りですけど大好きですw
122名無しさん@ピンキー:2007/01/03(水) 03:50:24 ID:d82st4Wd
おぉ、早くも第二話目w
wktkしながら待っておりまつ。
自分もSSは書くんですが…まぁ、師走の延長上にいるんで暇になったら書きます;

ハレグゥは邪な事も考えてしまうけど118氏の様にギャグだけでなく
奥の方まで読み込んだファンがいてくれて嬉しいス。
自分もグゥの孤独さとか表現するように努力はするけど…上手く動いてくれんのです。

しみじみしたところで、次作執筆頑張って下さい!
123名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 06:31:46 ID:rk6XBUVD
124名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 07:30:32 ID:oaN78wYX
ハァハァ
気持ちよくなりたい^^
いくいく
待ってます

kojirou999@hotmail.com

@は全角なので半角にしてください
125名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 11:06:25 ID:3slyJOSh
>>124
うぜぇよバーカ 死ね 糞が
126名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 13:41:06 ID:mFO7lnyO
田舎のかっこつけ集団

富山県南砺市 旧井波方面
スポーツカー黒
30代から40代

富山県南砺市 旧井波方面
スポーツカー灰色
小太り20代後半から30代前半

富山県T波市 旧砺波庄川方面
スポーツカー緑
20代後半から30代前半
127名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 17:39:36 ID:XeSi1jsR
ロバート×ベルとか読んでみたいなw
お嬢さまのいない寂しさに耐えられなくなってるベルとか・・・
128名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 23:39:43 ID:Gcr+BiNV
ただ…ベルはおt(ry
129名無しさん@ピンキー:2007/01/07(日) 15:58:14 ID:M7hIzPKO
あ、そうなの?
ごめんw
130名無しさん@ピンキー:2007/01/07(日) 17:06:59 ID:E0ME5DyT
いやいやいやいや
131名無しさん@ピンキー:2007/01/07(日) 23:12:19 ID:p5A1C7Kj
ハレ×ベルならそのうち書くつもりw
132名無しさん@ピンキー:2007/01/08(月) 02:03:00 ID:4Mqtw9oc
ハレベルかぁ…なんか新鮮な響きですなw
いつもベルはグゥ並に最強の存在として描かれてるから、
受に回るとどんな感じになるのかが楽しみっす。
133名無しさん@ピンキー:2007/01/10(水) 00:57:00 ID:z9j9x+VH
ハレベル期待
134名無しさん@ピンキー:2007/01/11(木) 12:41:08 ID:WTnYDOeH
第一次黄金期が去ったな…
気長に果報を寝て待とう。
135名無しさん@ピンキー:2007/01/11(木) 14:48:31 ID:dlKSH1EQ
田舎のかっこつけ集団

富山県 砺波市 南砺市方面
スポーツカー黒マフラー爆音 車体低
眼鏡DQN顔20代後半から30代前半

富山県 砺波市 南砺市方面
ワゴン黒 マフラー爆音
肥満 20代後半から30代前半

富山県南砺市 旧井波方面
スポーツカー黒 マフラー爆音
眼鏡小太り20代後半から30代前半

富山県南砺市 旧井波方面
スポーツカー黒
眼鏡痩せ型20代後半から30代前半
136名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 01:15:25 ID:CBqKQZBr
最近原作読んでないんだけどベルは間違いなく男なのですか?
軽くショックだ…
137名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 12:20:20 ID:8BWEgsYH
いや普通に女性でしょ?
…だよね?(ガクブル

少なくともハレグゥ最新刊まででは特にそーいった情報は無いが…
男だったら普通にウェダ関連のネタがヤバイし。特に過去。

そーいや作者公認で性別不明のワジは都会のお別れパーティーで女の子からプレゼントもらってるね。
女の子、かなり脈アリな表情してるしやっぱ少なくとも端から見たら男なんだろうなw

まあ俺はボーイッシュなボクっ娘と確信してるがね!!
ワジ(女)ネタで書いてるしw
138名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 22:22:28 ID:cxfU66Q4
男だと、あのお嬢様萌えっぷりはやばいからなー
普通に女でしょ
で、ワジも女がいいなw
139名無しさん@ピンキー:2007/01/13(土) 02:42:33 ID:mOFIxXPw
漫画の番外編の方でベルは普通に男役やってて、しかも周りから男と感づかれてたよ。
10巻の「If」って回でも暗にカマって描写だったし…

だから自分は今まで男性説の方が有力だと思ってたんだが…
女性説に遭遇するのはこれが初めてやし。
140名無しさん@ピンキー:2007/01/14(日) 02:32:24 ID:pW5nJpxo
なんか、頭、痛くなってきた・・・・・・・・・
141名無しさん@ピンキー:2007/01/14(日) 21:47:44 ID:IoiphVhk
つまり性同一性障害でありながらレズの気があると
142名無しさん@ピンキー:2007/01/15(月) 21:20:22 ID:9FAPLDTC
トランスジェンダーのビアンってことなんだろうね
孕ませ願望もあるし、わりと健全な結婚生活送れそうだなw

>>139
番外って6巻のやつだよね
ベルがノーメイクで男役やってるの
楽屋裏で

ベル「私お嬢様とキスしちゃったわ!!」
ラヴェンナ「ねえ、ベルってもしかして・・・」
ハレ「いや〜もしかしても何も」

って会話してる奴。
「男なんじゃ?」って視点で見ると
ラヴェンナ「ねえ、ベルってもしかして・・・(オカマ?)」
だろうけど
ハレの台詞と文章の流れだけを見ると
ラヴェンナ「ねえ、ベルってもしかして・・・(ビアン?)」
で鉄板だと思うんだけどねえ。

「if」に関しては
ウェダ(ママ)が男装
ベル(パパ)が女装
まではネタとしても
ベルがハレに女装させて「昔を思い出しますわ」ってのがもう確定要素だよねえ。
ベル女派のオレとしてはこれも含めて大きなネタであることを祈りたいがw

ファンブックでも
ロバート「男として尊敬できる人です」
ベル「お前が口をすべらすからー!」
的なネタがある。
けど同じファンブックでのベルの説明文では「彼女は…」となってる。
金田一氏も男よりな発言してるっぽいのだが、本編で確定するまでは保留ってことでオレは女説を大いに唱えたいw

何より女じゃないとネタとして面白くないんだよなあ。
143名無しさん@ピンキー:2007/01/15(月) 22:10:50 ID:9FAPLDTC
もう1つ
ロバが儚い感じになってるベルに抱かれたとき照れてるんだよね
ロバはベルの性別知ってるだろうし男だったらこんな反応示すだろうか?ってのも1つ
まあその場の雰囲気と言われればそれまでなのだがw
144名無しさん@ピンキー:2007/01/15(月) 23:22:09 ID:yBUDCwEq
女の姿をしている男に見せかけた女

……というややこしい推測でOKだろうか?

ハレグゥのノリなら「男と見せかけた女と見せかけた実は女でしたー」という
三重のオチもないとは言えん
145名無しさん@ピンキー:2007/01/16(火) 17:00:38 ID:7t+eg1Fw
まぁこの板的には女でいいんじゃない?w
146名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 16:29:30 ID:77zttjw3
ベルは男(オカマ)という話が今まで一度も出ていない以上妄想を控えて素直に考えれば女でしょう
少なくとも作内では女として扱われてると思うし

ただあの作者だからどっちでもいいと思って描いてるかもしれないし
今後「実は男でした」っていうネタを今さらながら使う可能性もあるような
147名無しさん@ピンキー:2007/01/18(木) 12:31:52 ID:SMvYSKSg
つまりどっちだとも考えておかない事が
一番傷つかない方法なわけだ。
14861:2007/01/20(土) 03:19:41 ID:dWVzhTN9
そろそろ保守
書きたいこと多すぎて逆にまとまらない日々…
難産な2話ほっといて別の話書いてたり…orz
半月に1つは投稿するつもりだったけどもうしばらくかかりそうでつ
149名無しさん@ピンキー:2007/01/20(土) 13:19:24 ID:MabISNzk
ハレ×グゥ&マリィ&リタキボン
150小ネタ:2007/01/21(日) 00:46:34 ID:og5iTdZ8
母さんの実家のお屋敷の方で色々あったらしく、また都会に行く事になった。
まあそれ自体はもうどうでもいい。飛行機も、何度も乗るうちにもう慣れた。
オレの懸案事項はただ一つだ。

「今回は何もするなよ、グゥ」
「ほう……今までグゥが何かしたか?」
「したね。都会に行くたび新ネタ披露しやがって」
「グゥには身に覚えがありませんな」
「あるね。ありすぎて両手の指じゃ数え切れないね」

思えば、初めて都会に行った時は物凄く疲れた。勿論グゥの所為だ。
荷物として運ばれていった時や、機長になって機内放送を流してきた時、
スチュワーデスに扮してメニューを持ってきた時……オレの胃に次々と
新たな穴が穿たれ、神経が凄まじい勢いで磨耗していくのがわかった。
まあ、いつもの事と言えばいつもの事なのだが……。

「グゥがハレの嫌がる事をするはずがなかろう?」
「仮にお前がオレの嫌がる事をしなかったにせよ、それがオレの望む結果に
 帰着した事は一度たりともなかったわけだが」
「まあ大船に乗ったつもりでいたまえ」
(不安だ……)
「ハレ、もうすぐ飛行機に乗る時間よ?」
「向こうまで12時間か、楽しみだな」
(向こうまで12時間か……)

オレはこの時、地球の軌道なり自転なり地軸なりがどうにかなって、
都会まで30分くらいで行けるようになりはしないかと、ちょっと本気で願った。
それが実現したら実現したで、多分それはグゥの仕業なんだろうけど。
陰鬱な気持ちでチケットを改札すると、グゥがポンと肩を叩いてこう言った。

「ハレ、身の丈に合わない夢を見ていい年頃は過ぎただろう?」
「は?」
「軌道とか自転とか地軸とか、傍から見れば頭の痛い子にしか見えませんな」
「またオレのモノローグ読みやがったなお前は……」

本当に頭が痛い。
151小ネタ:2007/01/21(日) 00:47:29 ID:og5iTdZ8

席はオレと母さんとグゥの3人並んだ席。
オレが窓際で、母さんが通路側。グゥはオレと母さんに挟まれた真ん中の席だ。
チラリとグゥの顔を窺うと、何やらいい顔をして座っている。
付き合いの長いオレにはわかる、これは間違いなく何か企んでる顔だ。
今は座っているからいいが、席を立ったら最後、何をしでかすかわからない。
ツッコミとしていつも後手後手に回るオレだが、今回は秘策を用意してある。
オレは、肘掛の縁に軽く乗せられたグゥの手を、軽く握った。

「ん?」
「? どうしたの、グゥちゃん?」
「いや、ハレがグゥの手を握ってきたのですよ」
「何でまた?」

要は、グゥがオレの目の届く範囲内にいさえすればいい。
常にオレの監視下に置かれていれば、何か余計な事を仕掛けてくることは不可能。
不可能……だよな?

「い、いや……オレの目の届くところにグゥがいないと不安なんだよ」
「あらあら、ハレってば甘えん坊ねぇ」
(母さんにはわかるまい……グゥが何かやらかさないかと常に戦々恐々としている
 オレの気持ちなど……)
「まあハレがどうしてもと言うのなら、手を握っていてやらんこともないがな」
(クッ……こいつの暴走を未然に防ぐためとは言え、すっごいムカつく……!)

何も知らないで微笑ましげな視線を向ける母さんと、したり顔で見下しきった視線を
向けるグゥに軽く殺意を覚えながら、オレはグゥの手を離さないよう努めた。

離陸後もオレはグゥの手を離さない。
オレ一人の12時間で他の乗客の安全が確保されるのなら安いもんだ。あ、今オレ軽く
正義のヒーローっぽい心境。
それにしても、グゥの手ってすべすべで、ひんやりしてて、何か気持ちいいよな……
いやいや、油断するなハレ。相手はグゥなんだから、ちょっとの油断が大きな災いを……
ああ、でも何か眠くなってきたよな。そういえば昨日は夜中の3時までゲームやってたっけ。
いやいや待て待て、ここで緊張の糸を途切れさせては――
152小ネタ:2007/01/21(日) 00:49:03 ID:og5iTdZ8
ハッと目が覚める。
寝てたのか? 気づけば意識を失ってたけど、一体どのくらい寝てた?
腕時計を見ると、たっぷり7時間以上眠っていたらしかった。
7時間! 隣にグゥがいるにも関わらず、7時間も惰眠を貪ったのかオレは!?
慌てて隣に目を向けると、グゥがいつものあの顔でオレの顔を覗き込んでいた。

「グ、グゥ! ずっと見てたのか!?」
「うむ、緩みきったマヌケ顔でよく眠ってたぞ」
「ああ、そうかい……」

7時間も隙を見せていたんだ、何が起きていても不思議じゃない……
そう思ったが、ふと、手に変な感触を感じた。
手が熱くて、じっとり汗ばんでる。結構な時間手を握ってなきゃ、こうはならないだろう。
もしかして、グゥはオレの手を離さずにずっとこのままだったのか?
グゥはオレの考えを見透かしたかのように――どうせまたモノローグを読んだんだろうが――
こう言ってみせた。

「心配せずとも、グゥはずっとこのままだったぞ」
「は? ほ、ホントに?」
「ハレの寝顔をじっくり見物できたから、今回はまあよしとする。それに……」
「それに?」

鸚鵡返しに聞き返すオレに、グゥは意味深な視線と一緒に、こう囁いた。

「ハレに手を握られるのは、嫌じゃない」



その後。
グゥの真意を測りかねたオレが、風船から空気の抜けるようなマヌケな声を上げてグゥに
その発言の意味を問おうとして、心なしかほんのちょっぴり頬を赤らめたグゥにキツい
ボディブローを貰ったのは、まあ、取り立てて話題にするほどの事でもないだろう。
153名無しさん@ピンキー:2007/01/22(月) 00:16:31 ID:TQWzacvI
>>61氏?
前回の長編のグゥといい、このグゥといい…ああもう!!o(*´д`*)oブンブン
正直、>>61氏の作品を読んでから俺の中でのグゥの見方(見え方)がかなり変わった。
アニメ見てると、普段の何気ないシーンでもグゥはハレの事ばっかり考えてるのかも?
と思えてきて、物凄く「女の子」に見えるように…( *´・ω・) ハァハァ
154名無しさん@ピンキー:2007/01/22(月) 03:47:53 ID:vWTodvIu
>>153
そうなれば貴方ももう立派なハレグゥマスター兼グゥ様信者ですよw
もうこの史上最強のツンデレ少女からは抜けられない…


いや、実に美味しい小ネタでしたw
エロパロなのにエロに限らずオールマイティーなネタが読めるのが
すごく嬉しいっす。
お疲れ様でした!
15561:2007/01/22(月) 15:07:13 ID:dqUyUAuL
ではっ 私ではないですよw>>153
いやこーゆーネタ、いいですね。グゥもハレも可愛すぎます。
普段何気なく手を握ってるけど、年齢を重ねるにつれてそれに躊躇するようになってゆくのか
それとも、あまりにもそばにいすぎて麻痺してしまうのか
どちらにしろ萌えるのですがw

私も今書いてるのはエロじゃないのですが俄然やる気になってきましたw
>>150氏、超GodJobでつ。
私もこれくらい、コンパクトにまとめる文才が欲しいっす。
気をつけないとでれでれと間延びしてしまう…
156名無しさん@ピンキー:2007/01/22(月) 19:16:50 ID:vWTodvIu
なんだか素敵な小説書きさんがたくさんいて嬉しいっすね…w

自分も久々に書いてみようか…。
でもこんな上等な中に汚物を混ぜるなんて恥ずかしくてできねえっ…!!

色々勉強になります、ハイorz
157小ネタ:2007/01/23(火) 00:46:28 ID:TMW1oj93
まずはillusion:72.5 『if』を読んで下さい。話はそれからです。



朝起きたらそこは異世界だった……
なんて展開は、オレ的にはもうツッコむ気も起きないほどに慣れきっていた。
まあ宝塚さながらのキラキラゴテゴテした雰囲気を醸し出すベルと母さんや、
オレに父親同様の異様なまでの長さの睫毛を期待するアシオと母さんや、
我が子に銃器の扱いを伝授しようとするロバートと母さんには参ったが、
その他は概ね不満はない。
きっかけがグゥがオレのモノローグを勝手に読んだこととは言え、あいつなりの
気遣いなのだと思うことにして、オレはこの世界を暫くの間楽しむことにしていた。
次にオレの父親になるのが誰なのか見てみたい、という好奇心もあったし。

レジィが父親だった世界では、オレとマリィは兄妹同然に育てられたって設定だった。
ウイグルが父親だった世界では、まあ、説明しなくても大体想像つくと思う。
トムさん(銀行強盗)が父親だった世界は、ゲームの話も合って結構居心地良かった。
長老やダマが父親だった世界では……冗談抜きに発狂するかと思った。

色々あったけど、それぞれそれなりに楽しい生活を送れた。
ただ一点を除いては。

「なあ、グゥ」
(ん?)
「どうしてグゥは、どの世界にも存在してないんだ?」

虚空に投げかけた問いに、グゥは答えない。
オレはグゥの姿を、この世界に来てから一度も見た事がなかった。
それどころか、グゥの所在を誰かに尋ねても、「グゥ? 誰それ?」という感じの
反応しか返ってこない。この世界ではグゥは、存在すらしていなかったようなのだ。
そりゃあ、始めのうちは喜んださ。グゥがいないというだけで、オレの日常は
かつてないほど平穏無事だったし。
でも、グゥがひょっこり現れてくれるのを待ってるような自分に気づくのは、すぐだった。
いつも隣にいたグゥが、いつまで経っても現れない。
それは、外で何かやらかしてないかと不安でもあって、何故出てきてくれないのかと
いう寂しさでもあったんだ。
158小ネタ:2007/01/23(火) 00:47:09 ID:TMW1oj93
「何か……お前がいないと調子狂うっていうか、何て言うか……」
(ほほう……? 折角空気を読んで出て行かないでいてやってるというのに)
「それはお前が口にすべきでない言葉ベスト10に入るぞ」
(この世界は全て『ハレが望んだ世界』なのだよ……この世界の下地を作ったのは
 グゥだから、無論干渉も出来るが、ここはハレの意志を尊重してやってるのだよ)

グゥがオレの事を考えて行動するなんて有り得ない事だから、この言葉は意外だった。
グゥが、あのグゥがオレの意志を尊重した事が一度たりとてあっただろうか?
……いや、やっぱりグゥはオレの事なんかこれっぽっちも考えちゃいない。

「……オレは、グゥに出てきて欲しい」
(普段グゥを厄介者扱いする割には、調子のいいことですな?)
「うっ……」
(グゥがいなくて寂しいというわけか?)
「……ああそうだよ、何か悪いかよ!」

オレは、グゥに傍にいて欲しい。
そりゃあ確かにあいつは普段からメチャクチャで、時々どころか常時イラッとさせられる。
でも、オレとあいつは大切な友達で……何より、家族なんだ。
この世界の母さんがグゥの事を知らなかったのに気づいた時に感じた、胸にポッカリと
穴が開いたみたいな喪失感を、オレは多分一生忘れない。
グゥのいない家は、オレの帰るべき家じゃない。
グゥのいない世界は、オレの世界じゃないんだ。

「グゥがどう思ってるか知らないけど、オレは……!」
(ふ……みなまで言うな。わかっておる)
「グゥ……?」
(ではハレ、目を閉じて念じるがよい。このグゥのいる世界を……)

オレはすぐさまグゥの言う通りにした。
今までのパターンから行けば、目を開ければそこはまた別の世界の朝のはずだった。
159小ネタ:2007/01/23(火) 00:48:27 ID:TMW1oj93
眩しい朝日と、肌に慣れた暑さと湿度の高さ。
見慣れたベッドに横たわるオレは、すぐさまそこがジャングルなのだと理解した。

(ここって……元の世界に戻ってきたのか?)

そういえば、元の世界も朝になるはずだ。
オレはベッドの上で眠る人間を確認する。
果たしてオレの両隣には、母さんと、他の誰でもない、グゥがいた。

「いてくれたか……」

この上ない安心感があった。グゥがいるというだけでこんなに『良かった』と思えたのは、
ハレグゥ連載史上かつてない事に違いない。
ともあれ、オレはグゥのいる世界に戻ってきたんだ。

「むぅ……」
「あ、グゥ! おはよう!」
「ふあ〜あ、よく寝た……☆」

半身を起こして欠伸をするグゥに、オレは思わず抱きついた。
我ながらどうにかしてると思ったけど、その時は、どうにかしてるならそれでもいいと思えた。

「やっぱりお前がいないとなっ!」
「はっはっは、朝から元気だな……息子よ」
「グゥは相変わらずいいお目覚めで……………………は?」

息子?

「なぁに、うるさいわね〜……」
「あ、母さん!」
「あ、朝から父さんに抱きついちゃって。ホント甘えん坊ね〜」

父さん?

「……まさかと思うが、グゥ、お前……」
「まあ、こんなオチもたまにはアリだろう……My son」
「お前が父親の世界かよ! つーか何で英語で言い直すんだよ!?」
「番外編やしね〜」
「納得いかねぇ――――――――!!!」



ちゃんちゃん♪
160名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 01:32:09 ID:RQM6KRqj
……うまいなぁ〜。
なんかGJを越して感心ですよこれは。褒めてます。

ていうか最後のネタが面白すぎるのですがw
金田一氏でさえ考えつかなかったナイスオチではなかろうでしょか…!?

ifに沿いつつほのぼのが効いてて良かったっす。
ていうか毎日新鮮な萌えをどうもありがとう…(涙)
あくる日の朝。
いつもの和やかなジャングルの学校の朝は、一人の少年の登場で崩壊した。
誰あろう、それはハレだった。

「おはよう……」

か細い声で形ばかりの挨拶をするハレを一目見たクラスメート達は、一様に言葉を失う。
ハレの姿を見て皆の和やかムードが凍りついた理由は、大きく二つだ。
一つは、常夏のジャングルにはそぐわない片袖のない真っ黒いコートを羽織り、踵に
拍車のついたブーツを履くという気の違った格好をしていたこと。
そしてもう一つは、普段他人に気を遣って無理にでも明るく振舞ってみせるハレが、
今日に限っては、目を合わせることすら憚られるような陰鬱でやさぐれたオーラを周囲に
振りまきまくっていたことだ。
席に座って、死んだ魚のような目でボーっと黒板を見つめるハレを、皆遠巻きに見る。
教室の隅に集合(というより避難)したクラスメート一同は、グゥに事の次第を質した。

「ねえグゥ、ハレどうしちゃったの? 元気がないというか生気がないというか……」
「普段ハレがツッコミやから、ハレがボケても誰もツッコまれへんねん……」
「ん〜? まあ、心当たりがないでもないが」
「なあ、教えてくれよ。ハレに何があったんだ?」
「アハハハ、ハレ変なカッコ〜」
「お前は黙ってろワジ!」
「グゥが推測するに、ハレは辛い現実に疲れて全てを放棄し、やさぐれキャラに転向したの
 ではないかと考えられるな」

ハレにとっての辛い現実……というと、第三者の視点からも色々と心当たりがあるから困る。

「母親は家事をせず酒に溺れ、父親はあの通りの無節操な女好き。その他諸々の事情もあり、
 ハレはすっかりツッコみ疲れてああなってしまったのではないか」
「マジか!? 俺らじゃハレの代わりは無理だぞ!?」
「ていうか、この村にハレの代わりが務まる人間なんていてへんやろ」
「ハレ……あんな反社会的な感じになっちゃって……」
「と、とにかくさっ! 何とかハレを元気づけてあげようよ!」

半径数m以内に近づいただけで不幸が感染りそうな雰囲気のハレに近づく事の出来る者は
皆無だったが、それでも彼らに友人を想う情の持ち合わせはあったのである。
「ね、ねえ……ハレ?」
「ん……?」
「き、今日はどうしたの? イメチェンとか……?」
「……ラヴェンナはいいよなぁ……」
「え?」
「ラヴェンナの家には、大酒飲みで大喰らいで下着姿でも平気で外出する恥じらいのない母親も、
 無計画で無責任で無節操で子供に冷たい保険医も、オレが困ってる姿を見るのが大好きな居候も
 いないんだろ……」
「えっ、い、いや……に、賑やかそうでいいじゃない? アハハ……」
「ああ、賑やかだよ……保険医はオレの寝てる横でよろしくやろうとするしさぁ……あの家に
 オレの居場所なんて……」
(き……きっつ〜……)

○ ハレ
(1分43秒 家庭不信)
× ラヴェンナ


「よ、ようっ、ハレ! いやぁ〜、聞いてくれよ! 昨日オレの部屋にゴキが出やがってさ〜、
 朝方まで大掃除だったぜ! あれはホントに焦ったよな〜」
「ゴキブリ……か……どうせオレなんか、ゴキブリみたいに真っ黒な人間だよ……」
「あー、そうそう! 部屋を掃除してたらよ、失くしたと思ったゲームが出てきてさー、今度一緒に
 やらねえか!? あれ対戦が出来るやつだからよー……」
「ゲームか……いいよなぁ、ゲームしてるとさぁ……」
「そ、そうだよな!? 楽しいよな!?」
「ゲームやってるとさ、辛い現実を一時でも忘れられるしね……」
(も……もう限界だ……)

○ ハレ
(2分11秒 現実逃避)
× グプタ


マリィ、トポステ、ウイグル……他の誰と話しても、ハレは徹頭徹尾この調子であった。
「お前はいいよなぁ」「どうせオレなんか」と自分を卑下して他人を嫉む、普段のハレと一線を画す
卑屈なキャラクターに呑まれ、普通の会話がまるで出来ないのである。

そんな中、ハレとのコミュニケーションを試みていないのは、ついにワジだけになった。

「アハハハ、次はボク?」
「残っとるんはワジかいな……」
「正直、大きな不安が残るが……」
「ま、まあ、やらないよりはやった方がいいわよ」
「それに、案外ワジの笑顔であっさり元気になったりして」
「やってみる価値はあるだろう」

ワジの大きく癇に障る笑い声がハレの神経を逆撫でする可能性は大だったが、それでもワジに託す
他はなかったのである。
もしかしたら、意外と会話が成立するのかも……という希望的観測も、彼らの胸中にあった。
ハレのようなタイプは本気でキレたら怖いし、もしかしたらワジに襲いかかるかも……という絶望的
予測もまた、彼らの胸中にはあったのだが。

「ハレ、おはよっ」
「……おはよう……」
「アハハハ、今日は凄いファッションだねっ」
「別に……」
「やさぐれてる割にはお金かかってそうだしねっ! アハハハハハハハ!」

ワジが爆笑している間も、ハレは俯いたまま。えもいわれぬ緊張感が教室に走る。
そして、そんな空気を読めないのがワジである。

「ねーねー、ハレぇ。そんな暗い顔してないで笑おうよ」
「なら笑えよ……こんなオレを笑えよ……」
「笑ったら楽しいよっ? アハハハハハハハ!」

しかも微妙に会話になっていない辺り、クラスメート達の不安は募るばかりであった。

「笑うとそんなに楽しいか……?」
「うんっ。笑ってるとね、毎日色んな事ぜーんぶが楽しくなるんだよ?」
「オレはワジみたいに笑えねえよ……泣きたいくらいだよ……」
「泣くより笑った方が楽しいよ? だから、辛い時も悲しい時も、笑った方が得なんだよねっ」
「笑うより諦めた方が楽だと、オレは思うけどな……」

ハレとワジの振りまくオーラの温度差は凄まじいものだが、何とかコミュニケーションは出来ている。
事の運びを固唾を呑んで見守るクラスメート達を後目に、ワジはマイペースに言う。

「でもさ、辛い事を辛いって認めちゃったら、余計に辛くなるんだよ?」

……ワジの明るい雰囲気に、僅かな翳りが生じたのを、ハレは見逃さなかった。
ここにきて初めて、俯いていた顔をワジの方に向ける。

「いっぱい泣くより、いっぱい笑った方が、辛くないと思うしねっ」
「ワジ……?」
「あ、ううんっ。こっちの話だよ」

ワジはそう言うが、いつも他人の気持ちを察しその場の空気を読んで行動していたハレには、何となく
察しがついてしまった。
ワジの底抜けに明るい笑顔は、多分、仮面なのだと。
以前グゥが父親との関係をリサーチした中にあった「父さんは僕を殴るので好きじゃないです」という
のは、もしかしたらワジかも知れないと、ふと思った。

「……ワジ」
「アハハハ、なに?」
「オレ……多分、今はお前みたいに笑えないと思う」
「……そっか」

こんな事を感づいてしまう自分が、今は途轍もなく嫌だった。少なくとも笑う気分にはなれない。

「今日笑えなくても、明日からいっぱい笑ったらいいよっ。泣いたり怒ったり、そういうのも大事だしねっ」
「……うん」

ハレはワジの胸に頭を預けた。ハレの気持ちを察したのか、ワジはハレの背中を抱いてやる。
似ていたのかも知れない。他人に気を遣って己の情動を捻じ伏せて笑ってみせるハレと、自分の中の
悲しい気持ちに囚われてしまわないよう、無理にでも笑ってみせるワジは。
ワジの家庭の事情は知らない。辛い事や、悲しい事があったのかもわからない。
少なくとも分かる事は、ワジはどんな事にも負けないで笑っていたという事だ。
そんなワジが、どれほど強かっただろう。諦めてやさぐれた自分が、どれほど弱かっただろう。
ハレは暫くの間、ワジの身体に身を預けて、泣いた。



次の日から、ハレは元通りのキャラクターを取り戻していた。
結局あのコートやブーツの意味は何だったのかとか、家でもあの格好だったのかとか、終わったからこそ
笑い話に出来るネタも多かったが、皆敢えてこの話題には触れなかった。
ただ、ハレが学校で笑顔を見せる回数が心なしか多くなった気がしたのは、クラスメート全員に共通の
認識だったという。
ワジって意外と内面の分からないキャラだから困る。
DVがあるとかっていうのも、一発ネタなのか本当なのか不明だし。
166名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 20:52:15 ID:NP+2IN5b
>>157
本編らしいハレ→グゥ一方通行なハレ萌え路線は読んでて安心できますねw
カップリング未満で萌えられるものってのは良いもんだ。こーゆーのいっぱい読みたい。
あと考えて見たらクライヴって本人の人格以外はほとんど文句無い父親なんだなと思ったw

>>161
矢車兄貴ktkrwwwwww
実際、あの中で一番精神的に強そうな感じはします。あの笑顔の裏側テラミタス
ワジはあれだけキャラ立ってるくせにクラスメートで唯一メイン張ったことが無いキャラですよね。
初期のワジ紹介話以降はサギン、ラーヤクラスの目立たなさ。
攻めるならやっぱりDV絡みになるんだろうなあ。性別もわかんなくなってきたし金田一氏も扱いに困ってそうだ。
ワジは正直、女だったらだいぶツボなのでガンガン萌えさせて頂きたいところw

それにしても最近、投稿が多くてありがたや。
167名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 18:45:05 ID:uVN/VU79
所謂『小説の書き方』みたいな本に、
「登場人物の性に対する意識をしっかりさせておこう」
みたいな事が書いてあったんだけど、ワジはそれが見事にすっぽ抜けたキャラだよな。
男性でも女性でも通るルックスにスタイルや台詞回しだし、明らかに性を意識してない。
金田一はそういう細かいところが今一ついい加減なんだよな……。

まあ、そのお陰でワジ(♀)での妄想を膨らませられるんだけどさ。
16861:2007/01/27(土) 00:01:07 ID:/IryTeOq
2話書いてる合間に思いついたネタを1つ。
書いてるうちにまたえらく長くなってしまいましたがご容赦下さいorz
↓からうpしていきます。
169満田人間ハレ01:2007/01/27(土) 00:02:09 ID:DbG4OfAo
<<1>>

「ハレ、ハーレー!早く起きなさいっ」
「…ん…ん〜〜〜……」
くああ、と大きなあくびを一つ。
ここはジャングルの小さな村の、小さな一軒家。
少年は母の声に誘われ、今朝も爽快な目覚めを迎えた。
「どしたの?母さんがオレより先に起きてるなんて…」
「ん〜?んふふー…いーから早く顔洗って来なさいな〜」
「朝食が冷めるぞ」
「…朝食?」
言いながら、ダイニングからひょこ、と顔を出しウキウキとした声を上げる母と、反対に全くいつもの調子の
少女を見比べ、首を傾げる。二人ともなぜかエプロン姿のようだった。
…そう言えば、なんだかダイニングの方から香ばしい…と言うか若干焦げ臭い匂いが漂ってくる。
今朝は珍しく、母が台所に立ったようだ。…いや、本当に珍しい。
自分が何もしなくてもテーブルに料理が並ぶなんて、ベルが住み込みで働いてくれていたとき以来だ。
どうせただの気まぐれだろうが、このだらしない母がこうして母親らしいことをしてくれるだけで
少し嬉しくなってしまう。そんな自分の境遇がいっそ哀しいがこのさい気にしないでおこう。

「うわっ朝から豪華だね〜」
「うふふ、今日はフンパツしちゃった!」
顔を洗い、テーブルに着くと少年は思わず感嘆の声を上げる。
テーブルにはところ狭しと大小様々の皿が並べられ、それぞれが……
「…なんかオレ、母さんの料理のレパートリーに軽く衝撃を受けてるよ」
…それぞれが、大体似たような芳香を立てていた。ってかぶっちゃけどれも似たような料理だった。
「そう?母さんもなかなかやるでしょ?」
「ウェダも日々成長しているのだ」
「いや、褒めてない褒めてない」
どうだ、と誇らしげに胸を張る母と少女の姿にハァ、と軽くため息が漏れる。
冷蔵庫の中を適当に漁ったのだろう、ざっくばらんに斬り下ろされた野菜や肉類が、皿の上にゴロゴロと
転がっている。その大半が炒め物か、ただ皿に盛っただけと言う様子だった。
この分だと、どの皿の味もほぼ変わるまい。
「グゥちゃんもいっぱいがんばってくれたのよっ」
「なぁに、グゥはほんの少し手を貸したに過ぎない。料理は全てウェダが作ったと言っていい」
「もう、謙遜しちゃって!」
「へぇ〜、グゥが作ったやつもあるの?」
そー言えば、グゥもエプロン姿だ。
…なんだかエプロンがやけに赤く染まっているように見えるのはきっと気のせいだろう。
この皿の中に、グゥの作った料理も混ざってたりするのだろうか。少し怖いが、グゥの手料理なんてはじめてだ。
なんだか期待と不安で心ならずも胸が高鳴ってしまう。
「…いや、グゥが手伝ったのはこっちだ」
「え?」
言いながら、グゥは母の手をぐぃ、と持ち上げる。
そこには包帯でぐるぐる巻きになった、指。ところどころにベタベタと絆創膏も貼られていた。
「…言っただろ、料理は全てウェダが作ったと言っていい、と」
「…ってかグゥ、手伝ったって言えるの、それ」
「何言ってるの!グゥちゃんが手伝ってくれなかったら、母さん包丁も握れなかったわよっ」
「いや、いっそ無理せず安静にしてて頂きたい…」
グゥのエプロンに付いていたのは、母のものだったのか。想像すると、少し背筋に寒いものが走る。
料理とは果たしてそこまで過酷なものだったろうか。母と違い、いつの間にか鉄人級の料理の業前を持つに至った
少年は、これが才能ではなく幼少から強いられた鍛錬によるものだと心から理解するのだった。
…ってか、自分がどんな料理を食べて育ったのか、あまり想像したくない。
「なんかもう早くも食欲が失せ気味だよオレは…」
「なによ、こんなに母さんががんばったってのに、食べれないっての?」
「そうだぞ、グゥもがんばったんだぞ」
そのがんばりを気まぐれでなく普段から発揮して頂きたいと思うのは我侭なのだろうか…?
しかし確かに、母の手料理なんて久しぶりのことだ、贅沢を言ってもしょうがない。
そんなことに贅沢云々を論じねばならぬ時点でどうかと思わないでもないが…。
170満田人間ハレ02:2007/01/27(土) 00:03:06 ID:/IryTeOq
「ま、いいや。ほらグゥも食べようぜ」
「うむ」
「たっくさんあるから、じゃんじゃん食べてねー!」
ハレがそう促すと、ウェダとグゥもエプロンを取り椅子に腰掛ける。
三人で「いただきます」を言い、それぞれ思い思いの皿に手を伸ばしていく。
…やはり、どれも似たような味付けばかりで火加減もまちまち。
それもところどころ焦げ付き、薄しょっぱ苦い味が口の中に広がる。
しかしそんな味もなんだか懐かしく思えてしまうから不思議だ。
まぁ、たまにはこんな朝も悪くない。むしろ推奨。
自分で作ったものを自分で食べるほど、詰まらないものは無いのだ。

「どうどう、結構イケるでしょー?」
「う、うんそだね…」
そんな母の料理でも、味を問われれば言葉に窮せざるを得ない。
母はパクパクと機嫌よく口に運んでいるが、少年は早くも胸がいっぱいいっぱいだった。
「なぁグゥ────っておまっ!?」
「…ん?」
返答に困ったハレはグゥに助けを求めるが、その少女の姿を見た瞬間少年はなお固まってしまう。
グゥは、ウェダの料理を皿ごとモゴモゴと口に詰め込んでいたのだ。
そのままハレの言葉も気にせずグゥは作業を続け、間もなく口に半分ほど入っていた皿はスポンと
グゥの中へ消えていった。
それどころかいつの間にか、テーブルに置かれていた料理はすでにその1/5ほどが皿ごと消滅していたりする。
…グゥはグゥで困った存在であることをすっかり失念していた。
「…グ、グゥちゃん…?」
「あ、か、母さん?これはその…っ!」
(やばっオレだけならともかく、母さんにまでバッチリ見られちゃったよ!
 どうしよー、何てフォロー入れたら…)
そして最悪なことに、母にまでその姿を目撃されてしまっていた。
なんとかフォローしないと、事態はより悪化の一途を辿る……
「グゥちゃんったら…気持ちいいくらい豪快な食べっぷり!粋ね、粋!」
「いえーい」
「…………」
……かに思われたが、あっさりと回避されたようだ。この母の底なしの能天気さはある種の才能と言えようか。
笑顔でサムズアップを交わすこの母と少女を遠目に眺めながら、事実を事実として受け止める母のそのスキルの
半分でも自分に備わっていたなら自分ももっと気楽に生きれたろうに…などとハレは一人心を冷やすのであった。

「ね、なんで今日は朝からこんなに豪勢なんだと思う?」
そんな少年の様子を尻目に、母はニコニコと上機嫌でそんなことを聞いてくる。
…本来なら、ここで何か特別なイベントの予感に期待を膨らませるのだろうがまぁ、現実はそう甘くあるまい。
「…冷蔵庫の整理でしょ、賞味期限ヤバイのとか過ぎてるのばっかじゃん」
「う゛…なんで解るのよぉっ」
少年はあっさりと母の思惑を看破し、ズバリといたって冷静に言い放つ。
「オレ、母さんより冷蔵庫の中身詳しいよ」
皿の上には様々の食材が並んでいたが、どれも少年にとっては見慣れたものばかりだ。
そこには料理としての体裁を考えた様子は見られず、ただ冷蔵庫の中身を使い切ってしまえと言わんばかりだった。
「うーん、さっすが我が息子!私に似て細かいとこまで目が行き届いてるぅ!」
「母さん…反面教師って言葉、知ってる?」
「うっさい!…でもね、それだけじゃないのよ?他にも理由あるんだから!」
「…あ、そー言えば今日は狩りの日だっけ?」
「ンも〜!!何で知ってるのよぉ!!」
「だっていつものことじゃんかぁ。いつもは前日の夕飯で整理してるけど、昨日は母さんが何も言わなかったから
 オレ普通に作っちゃったんだよね。…どーせ、夜中にでも思い出したんでしょ」
「な、なんでそこまで……あんた、私の何なのさ!?」
「息子だよ……今だけはものすごく不本意だけどね…」
全てを悟られ、どすんとオーバーに床に倒れ込みわなわなと身体を震わせるウェダ。
まったく、笑ったり怒ったり驚いたり、毎度のことながら朝から忙しい人だ。
ころころとその表情を変える様はまるで子供だ。大人のくせに、いつでもあからさまに感情を発露させる。
だからこそこの少年も、いつも遠慮なく素直に言葉をぶつけられるのだが…。
171満田人間ハレ03:2007/01/27(土) 00:03:53 ID:/IryTeOq
「それにしても、ちょっと減らしすぎじゃない?冷蔵庫ほとんどカラだよ?」
「んふふー、母さんちょっと今日は気合い乗ってるからねー。
 心配しなくても、冷蔵庫からはみ出すくらい取って来てあげるわよ!」
言いながら、ウェダはおもむろに準備運動のような動作をはじめる。
狩りは夕方からだってのに、早くもスタートの合図が待ち切れないといった様子だ。
でもそうか、それで冷蔵庫の中を使い切ってしまおうと思ったワケだ。
今日は夕飯も、いつもより豪勢なものが食べられそうだ。…どうせ作るのは自分なのだろうが。
「うーん、それはうれしいけど、あんまり無理しないでよ?」
「まぁっ!母さんのこと、心配してくれるの?」
「べ、別にそんなんじゃないよっ!
 ほら、前みたく大怪我しちゃったらさ、また母さんの世話でオレの仕事が増えるからさぁ…」
「もう、ハレってば素直じゃないんだからぁ〜」
「だからそんなんじゃないってぇっ!もう、くっつかないでよ〜」
母は村一番の狩りの名手だが、まったく不安が無いと言えば嘘になる。
女である母が狩りをする姿と言うものも、子供にとってはあまり想像したくないものだ。
しかしそんな息子の気を知ってか知らずか、母は暢気に少年にじゃれつくのだった。

「…いや、ハレの言うとおりだ。無理はするなよ、ウェダ。」
「グゥ…?」
「グゥちゃん……」
そんな中、ハレの心中を察したのかグゥはウェダを嗜めるようにぽつり、ぽつりと呟く。
グゥも、家族の1人なのだ。ウェダのことが心配じゃないわけが無い。
「ただでさえウェダはすでに満身創痍なのだ…
 ハレは、これ以上自分のためにウェダに傷付いて欲しくないと思っているのだろう」
「いや確かに母さんボロボロだけどさ、言っちゃ悪いけどこれに関しては自業自得な気がするよ?」
「どうだウェダ、今日の狩りはハレに任せてみては」
「いや話聞けよ!ってかオレが狩り!?無理だって!」
「お、いよいよハレも狩人デビュー?」
「いやいや母さんも乗らないでよっ!オレにはまだ早いって〜!」
「何を情けないことを…女のハントならすでにお手の物だというのに」
「ま、やっぱり父親に似たのね」
「だーもう!なんでそーゆー話になるんだよー!!」
そう、グゥだって母さんのことが心配じゃないわけが無い。…そんな風に思っていた時期が、オレにもありました。
ってか、こいつがそんな素直に自分の気持ちを口に出すワケがないのはちょっと考えれば解ることだった。
結局話題はグゥの思惑通りに流れ込み、少年は事の収拾に朝から無駄な労力を強いられるはめになるのであった。

「うわ、この満田もう賞味期限切れてるじゃん」
「今日新しいのいっぱい取ってくるから、我慢して食べなさい」
そうこうしながらも朝食は綺麗に平らげ、テーブルには空になった皿が並ぶのみとなった。
皿の枚数が最初に比べ2/3ほどになっている気がするがまぁ些細なことだろう。
食後のデザートは定番の満田。白い饅頭のような形に人の顔と手のようなものが付いているデザインから、
ジャングルに来たばかりのアルヴァは気味悪がって手をつけないが、このジャングルで生まれ育ったハレに
とってはいたって日常的な食べ物だ。見た目とは裏腹にとても美味しい。
「でも賞味期限切れの満田って甘すぎて美味しくないんだよなー」
しかし美味いのは、賞味期限が切れるまでの話だ。満田の顔が少し厳しくなる熟れ頃のうちはまだ大丈夫だが、
その目と口が完全に見開かれる「賞味期限切れ状態」となるとその味は格段に落ちる。
それどころか、そのまま放置していたら中に溜まったガスによりその身が破裂し中に詰まったジャムが飛び散ってしまうのだ。
「食べ物を粗末にしちゃだめよ?身体には悪くないんだから、食べちゃいなさい」
「うーんでもさぁ、口に入れた瞬間破裂したら怖いじゃんかーっ」
昔、レンジで作ったゆで玉子が口の中で爆発するというのを何かのテレビ番組で見たことがある。
あれにはテレビの前で大いに笑い転げてしまったものだが、自分の身にそれが起こるとなれば話は別だ。
満田はゆで玉子みたいに熱いワケじゃあないが、口の中で何かが炸裂すると言うのは恐怖以外の何物でもない。
「あらっ!そんな決定的瞬間、見逃さない手は無いわね〜。カメラ回しとこうかしら」
「ハレは生粋のリアクション芸人だからな、さぞや面白映像が撮れるであろう。永久保存版にせねばな」
「…あのさ?食べ物程度でいいからオレの存在も粗末にしないでくれると嬉しいんだけどなぁ?」
しかしこの悪女コンビはそんな少年の気持ちなどそ知らぬ顔で楽しげにハレを肴に盛り上がっていた。
172満田人間ハレ04:2007/01/27(土) 00:05:20 ID:DbG4OfAo
…まぁ確かに、口の中で満田が炸裂、なんて事件、十数年このジャングルで生きてきて見たことも聞いた事も無い。
自分のこの発想は所詮、子供っぽい杞憂に過ぎないのだろう。
と、満田を一口にパクっと放り込んだ、瞬間…。

バーーーーン!!

「んぐぅっ!!」

突然の破裂音……
「……なんちゃって」
…では無く、少女の大声に思わず喉が詰まる。
そのままごくん、と満田を一息に丸ごと飲み込んでしまった。
「げほっげっ……グゥ〜〜〜〜〜?」
てへり、とお茶目な笑顔を見せるグゥをギロリと睨みつけるハレ。
だがそんなハレの威圧などこの少女に効こうものか。
そんな風に反応すればするほど少女の機嫌が良くなることをこの少年は十全に知っているのだ。
「ったくグゥは子供っぽいんだから……」
やれやれ、と大げさに肩を持ち上げ頭を振り、ハレは全身でその余裕っぷりを表現する。
…しかしその程度では少女のペースを崩すことなど出来るワケも無く…
「…丸飲み…か…」
「な、なんだよ……」
口に手を当て、必要以上に深刻な表情でこちらを見つめる少女にゾクリと背筋が冷える。
まさか、腹の中で破裂するとでも言うつもりか。
…これもこの少女の罠に違いないと思いつつも、どうしても不安感が拭えない自分が情けない。
そんな自分の様子に少女の心が満足げに潤っていくのが解るのがまた悔しくて情けなくなる。
「…破裂する前に潰してやろうか?」
「いえいえいえいえ結構です…!!」
ほくほくとした満面の笑みを湛えながら、しゅ、しゅと素振りをしはじめるグゥ。
それに対し少年は、情けない、情けないとは思いつつも結局ただ必死に少女から背を向け腹をガードすること
でしか抵抗の意思を示すことが出来ないのだった。

「ほらほら遊んでないの、ちゃっちゃと片付けちゃって学校行きなさいっ」
そんな少年と少女の攻防などそ知らぬ顔で、母からマイペースな声が飛んでくる。
いつの間にか時計の針はいつもの登校時間を刺していた。
テーブルを見ると、そこに残るはただ満田1個のみ。グゥの分のデザートだ。
それを食べたらあとは家を出るだけ。母の声に、先ほどの緊迫した空気も弛緩している。
キラリと、ハレの眼が光る。…今こそが千載一遇のチャンスでは無いか。
グゥが何の警戒心も見せずに満田をひょいとつまんだその瞬間、ハレの眼はますますに輝きを増した。
それはもはやあどけない少年の眼ではない、ただ一撃の反撃のチャンスを狙う鷹の眼だ。
そのチャンスとは、もちろんグゥが満田を食べる瞬間…!!
トクン、トクンとハレの心が高鳴る。
まるで、満田が少女の口に運ばれる様子がスローモーションで見えているかのようなかつてない集中力。
そして少女の口の中に、その起爆剤がすぽんと飲み込まれた瞬間っ!

「バーーーーン!!」

満を持しての反撃!ハレはグゥに覆いかぶさらんばかりに両手を広げ、得意満面に精一杯の大声を張り上げた。
その大声に少女は、
「……何?」
何事も無かったかのようにごくん、と一息に丸飲みし、それだけを呟いた。
「………っっ」
なんとも憎らしいほどのその余裕顔。
反対に、一人馬鹿みたいに騒いでしまったハレはただ顔をカーッと、真っ赤に染めてしまう。
「…カッコワル」
「うぐぅ…!!」
少女は更に容赦なく、くすくすと追い討ちをかけてくる。
その言葉は少年から抵抗の意志を奪い取るには十分なものだっただろう。
その眼はもはや起死回生を狙い爪を磨ぐ鷹の眼ではない。飛ぶことを忘れた従順なピヨちゃんの眼だ。
173満田人間ハレ05:2007/01/27(土) 00:06:36 ID:DbG4OfAo
「くっそー…ちょっとは動じるとか驚くってこと無いのかよお前は〜っ」
「ハレとは人生経験が違うのよ」
「オレも誰かさんのおかげで結構な経験積んでると思いますけどね?
 ったく、お前もちょっとは母さん見習って、素直に感情表現出来んもんかねぇ…」
「グゥはいつも素直ですよ?」
「自分の欲求には、だろー?」
「二人とも、今日も仲良しさんね〜」
「どこをどー見たらそー見えるんだよっ!ほら行くぞグゥ!」
「おー」
このようなやりとりはいつもの事。
いつも一方的に負かされるハレだったが、いちいち気にしていても仕方が無い。
次の瞬間には後腐れ無く、あっさりとその心も切り替わるのだ。

ハレはグゥの手をぐいと引っ張ると、勢いよく玄関から飛び出していく。
結局二人は、いつものように仲良く手を繋いで学校に向かうのだった。
174満田人間ハレ06:2007/01/27(土) 00:07:08 ID:DbG4OfAo
<<2>>

「…でよ、ここからがコエ−んだぜ……」
「ほんまか、それ?ほんまやったらえらいな〜」
「あははははは!それ凄いねー!」
「ちょっと、静かにしなさいよぉ。授業中でしょ!」
「っせぇなラヴェンナ、授業中ったってレジィ寝てんじゃんよ」
ここはジャングルの小さな学校。年齢も様々なジャングルの子供たちが1つの教室に集まり、
少人数ながらもざわざわと明るい声を飛び交わせていた。
今は授業中ではあったが、その喧騒も届かぬ様子で教卓に枕を置き、頭を乗せてグースカとだらしない寝顔を
見せている教師、レジィにそれを咎める資格はあろうか。子供たちは益々に声をあげ、大いに雑談に花を咲かせるのだった。
そんな中、子供たちの笑い声に混じらずに男子でただ1人黙々と教科書に向き合う少年の姿が一つ。
ただ彼も、別にその教科書に集中していたワケではない。
いや、教科書はおろかその眼には何も映らず、その耳には何も聞こえてないかのように少年は平静を欠いていた。
(う〜〜〜…やっぱ朝からあんだけ食ったらヤバかったかなー
 しかも賞味期限ギリギリか過ぎてるのばっかだったし…)
「ハレ?なんか顔色悪いよ、大丈夫?」
「え?う、ううん、平気平気!ありがとマリィ」
そんな自分の様子を、隣から心配げに見つめる少女になんとか必死に体裁を整える。
しかしどう言い繕おうとも、先ほどから己の腹の奥でキュルキュルと響く叫声がその汗を冷やしその身体を凍らせ
その思考を乱し続けているのも事実。
別にさっさとトイレに行ってしまえば良いのだが、この喧騒の中トイレに行くと妙なツッコミを受けそうで気が引ける。
そうこうしているうちに波が引き、安心したら時間を置いてまた次の波が…といった状態が先ほどから続いていた。
このまま授業が終わるまで…とは思うものの、事態はそれなりに急を要するようだ。
今は波は引いた状態ではあったが、次の波が来たらいよいよトイレに駆け込まざろう得ないことを少年の身体は直感していた。
「グゥ〜、お前は平気なのか?」
「何が?」
ちらりと、マリィの反対隣に座っている少女を見やる。
ハレの容態とは対照的に、グゥの身体は全く健全そのもののようだった。
その余裕な表情がなんだか妙に憎い。

…フと、グゥが何かを手に持っていることに気付く。
それはなんだか真っ白で丸い饅頭のような、グゥの手のひらには少し余る程度の大きさのものだった。
そう、それはまるで……
「ってグゥ…それ…」
「ああ、さっきのやつ」
それは紛れもなく、朝食に出た満田だった。
もちろん賞味期限切れのそれはカッと目と口を見開き、今にも破裂しそうな勢いを孕んでいる。
「…食ってなかったのかよそれ!」
「食べてないよ。飲んだだけ」
…それがどう違うのか気になるけどやっぱり聞きたくない…。
「ってか早くどうにかしろよそれ!教室で破裂したら掃除大変だろー!」
とにかく今は、グゥの手の中で弄ばれている危険物をどうにか処理することが先決だ。

「お、なんだよそれ、賞味期限切れの満田じゃん!」
「はよどうにかせんとやばいで!俺の見立てではもってあと1分や!」
「おお、さすがいずれ村長になる男!トポステの見識眼、あなどれねーぜ!?」
「…グプタ…関係あるの、それ?」
突然のハレの大声に、思い思いに花を咲かせていた会話が止まりクラス中の目が集まる。
どうやらトポステによるとあと1分で破裂するとのコトだが…。
あと1分以内にグゥの手からあれをどうにかすることが可能なのだろうか?ハレの心に一抹の不安がよぎる。
そして最悪の結末…教室中ジャムまみれ…
体中をベタベタにしたまま、取れにくいジャムの付いた床や机をゴシゴシと磨く自分の姿をあまりにも容易に
想像が出来てしまい、思わず心に暗い影がかかる。
「ふむ……」
少年がそんな想像を働かせていると、グゥも何やら考えているような仕草をしているのが目に映る。
175満田人間ハレ07:2007/01/27(土) 00:07:56 ID:DbG4OfAo
…この先の展開を考えているのか?
ハレの脳髄が高速で回転を始める。グゥの思考を読み、その手に先んじるための情報を検索し整理する…。
…確かに、「教室中ジャムだらけ」は一見、最もシンプル且つ最大の被害をもたらす妙手ではある。
しかし!グゥは誰かれ構わず嫌がらせをして喜ぶようなタイプでは無い。
最近はオレ以外のやつもターゲットにするようになっては来ていたが、それでも誰か1人に絞ってちょっとイジル程度のものだ。
やはり、最大のターゲットは不本意ながらこのオレであろう。ならば、あの満田を使いオレをどう困らせるか…。
それはもう、1つしかあるまい。ハレの思考が一つの結論…今朝、グゥと交わしたあのやり取りに辿り着く。
…これだ。間違いなくグゥがやろうとしていたことは、オレの危惧していたことの具現化!!

その時、グゥの眼がキラリと光る。しかし同時に、ハレの眼にも同じ輝きが宿っていた。
気がつけば、先ほどまでその身を蝕んでいた便意はすっかり消滅し、いつもの…いや、いつも以上にクリアな思考力と集中力
がその全身に鋭敏に蘇って来る感覚を覚える。今のハレは、間違いなくベストコンディションであった。

グゥはこちらを真っ直ぐに見据えたかと思うと、瞬時に行動に打って出た。
その少女の満田を持った手が高速で一直線にハレへと向かってくる。狙いはもちろん、口だ。
しかしそれはすでに、ハレにとっては予測済みの行動に過ぎない。
どれだけ速く動こうと、狙いさえ解っていればこちらはただ冷静に対処するのみだ。

グゥの手はパシィッと、いともたやすくハレに制止され、その腕を捕まれる。
「やっぱりな〜…さすがにオレもそこまでバカじゃあないぜ?」
「おおっ受け止めた!」
「やるな、ハレ!!」
その攻防にどよ、と教室がざわめく。
しかしグゥの眼には全く焦りの色は見えない。
その時、より一際、教室のどよめきが大きくなった。
「いや違う!グゥが手にもっとんのは…」
「ふ、普通の満田だ!!」
「と言うことは…」
いつの間にか、グゥの手に握られていたのは先ほどの満田では無く別に用意していた満田に変わっていたようだ。
しかしハレにはそちらに気を配る余裕は無い。
すでにグゥの空いている側の手に握られた満田が、こちらをロックオンしているからだ。
ここまではグゥにとっても計算のうちと言うことかっ…しかし、それはこちらとて同じこと!
狙いは見え見え、攻め手も見え見えではどのような角度から攻めて来ようとも恐れるに足らず!!

グゥはまたもハレに向かって手を突き出すが、先ほどの繰り替えしのようにあっさりとその手をハレに捕まれる。
これでグゥは、ハレに両手を抑え込まれている状態となった。
「甘い……!グゥさんにゃ敵いませんけどオレもそこそこ人生経験積んでるんでね…!」
「おお、これも読んでいたのかっ!!」
息詰まる攻防に、またドッと歓声が沸き起こる。
しかしここでまたも、トポステの鑑識眼が光った。
「いや待ちぃ!あの満田は確かに顔かわっとるけど…まだ熟れ頃の顔やで!!」
「え?じゃあ賞味期限切れの満田は一体…」
まだ先があると言うのか。確かに、グゥの眼はまだ輝きを失ってはいない。
…望むところだ。グゥの策略がこの程度で尽きるはずが無いことは誰よりもオレがよく理解している。
さぁ、最後の仕掛けを見せてもらおうか、グゥ!
「破裂まであと10秒切ってるはずや!もはや一刻の猶予もならん!」
「どう攻める、グゥ!!」
「ハレ…負けないで…」
「って言うか、なんでこんな盛り上がってんの?今授業中なんですけど…」
教室の熱気が最高潮の盛り上りを見せている中、もはや一人の少女の冷静な突込みなど誰の耳にも届かない。
今や教室中がその勝負の成り行きを見守っていた。
176満田人間ハレ08:2007/01/27(土) 00:08:49 ID:DbG4OfAo
満田が破裂するまですでに時間はない。決着は次の一瞬で決まる!!
オレなら…いや、グゥならどうする。…答えはもはや1つしかない。
最も効率よくオレの口を開かせ、かつ意識をそちらに向けぬ角度からの攻撃!!
そしてそれは、すでにオレも読んでいた事!!見え見えだ!狙いは…
「上だ!!」
「うえ!?」
「…あっあれは…いつの間に!?」
「パッ…パラシュートや!満田にパラシュートが!」
皆の視線が一斉にハレの頭上高くに注がれる。
そうだ、やはり空からの攻撃。皆は気づかなかっただろうが、オレの足元にかかる影は頭上に何かが浮かんでいることを
如実に知らせてくれていた。まさかパラシュートまで用意しているとは思っていなかったが、なるほど効率的だ。
恐らく、最初の攻撃がはじまる前から用意していたのだろう。
ったく、オレをはめるために注ぐ力をもっと平和的に活用しようとは思わんのか、こいつは。

そうこうしている間にも、影はオレの身体にかかるほどに大きくなっていく。
ここまで来ればどれだけ鈍かろうとも、この影に気づかないはずがない。…しかし、それも間違いなく、グゥの戦略の1つ。
普通なら頭上から何が迫っているのか、気になってつい上を見上げてしまうところだろう。それこそが狙いだ。
そうだ、あえてオレにその策略を気づかせ、上に意識が向いているところに別角度からの攻撃!これが本命!

頭上にかかる影の恐怖に耐え切れなくなり、上を向くオレ。その目に映らぬ角度から、ゆるやかに飛んでくる満田。
そしてあんぐりと天井を見上げ呆けるオレの口にすぽんと満田が飛び込み、炸裂…そんな様がありありと目に浮かぶ。
グゥの両腕を抑えている手は同時にオレの自由をも奪っている。瞬時に手でガードすることは難しいだろう。
加えて、真上を見上げながら口を閉じるなんてことは、相当に意識していなければまずおろそかになる。
この二重三重にかけられたトラップ…さすがグゥと言っておこうか。しかしオレはそれをすでに看破している!

それは先ほどからピッタリと閉じ何も喋らないグゥのその口からも伺える。
グゥ…その口の中に、満田が入っているんだろう?皆の意識も、オレの意識も頭上を向いているところに、その口から
ゆるやかに満田を発射する。そのタイミングを計るためにその口に力を込めているのだ。
それは下手を打てば自爆しかねない諸刃の剣!敵ながら天晴れと褒めてやりたいが、しかし今度ばかりは失策だったな!
もはやオレは上など向かん!!さあ、素直に負けを認めてさっさと飲み込んでしまわないと大変なことに───

「どうしたハレ?早くどうにかしないと、頭の上で破裂してしまうぞ?」
「な────!!?」
くらりと、視界が歪む。
ニヤリと、口端を歪ませるそのグゥの邪悪な笑みは「かかったな」と言わんばかりであった。
何で、口をひらけるんだ…?
だってその口の中には満田が…入ってるはずなのに、なんで、何も入って……。

「ハレ、どうしたの!?」
「今、破裂したら顔中ベタベタになってまうで!」
「ってか、こっちにまで飛んでくるんじゃねーか?」
「…………」
グプタの声を契機に、後ろのほうでガタガタと椅子を揺らす音が響いた。恐らく皆、教室のすみっこにでも非難したのだろう。
…そうか…そう言う事か…。オレの口の中に満田が放り込まれる、なんて、オレ以外誰も思っちゃいなかったんだ。
朝の件で、オレはその口に満田を放り込まれると言う恐怖をすでに植え付けられていたと言うことか!
今のグゥにそんな執着は無い。オレに破裂した満田を浴びせるだけで十分だったのだ。
しかしそれだけでは被害が周囲にまで及ぶ。…パラシュートは、オレ以外に被害を出さないためのバリアとしての役目も
兼ねているというワケだ。ちくしょう、あまりにも符号が揃いすぎてるじゃないか…このままではグゥの思惑通り、
オレは全身ジャムまみれになってしまう。…何か、何か破裂を食い止める手は───
177満田人間ハレ09:2007/01/27(土) 00:09:27 ID:DbG4OfAo
──その時、ハレに電撃走るっ!

「まだだ…まだ終わっちゃいない!」
ハレの目が輝きを取り戻す。かっとその目を見開き、力強く頭上を向いた時、パラシュートを着けた満田は今まさに
ハレの頭頂部に着陸しようとしていた瞬間であった。
その満田に向かい、ハレは大きく口を開け……
「な、なんや、何をするつもりや!」
「ま、まさか………!!」
そうだ、単純なことだ。満田の破裂を止める手段なんて、実にシンプルなものだったのだ。
破裂する前に、ただ噛み切る。そう、それだけでいい。ほんの少しの穴さえ開ければ、中のガスが抜け破裂は免れる。
ハレはその口にすぽんと満田をくわえ込み、そのまま思い切り歯を───

「ンむっ──!!???」

──瞬間、プツリと、思考が途切れた。

パサリと、何かが目の前を覆った瞬間。
唇に、何か柔らかく湿ったものがくちゅり、と押し付けられていた。
口が、開く。ゼリー状の滑ったものが下唇の裏をまさぐり、思わず顎の力が弛緩してしまう。
…その全てをハレが理解し終わる前に、その口内にはポコンと、丸い大きな満田がまるごと押し込まれていた。

「何だ、何が起こった?」
「ハレの様子がおかしいで!!」
「え?え?え?」
教室の壁から、ハレの後頭部を見ていた皆の目にはその詳細は解らなかったようだ。
その決定的瞬間を見逃し、何事か、と混乱するギャラリー。
しかし最も混乱しているのは当のハレ本人であろう。
…そう、ハレにも、よく解らなかった。目の前が何かに覆われ真っ暗になる前に、確かに眼前にグゥが迫って来た気がしたが、
今となっては解らなかった。グゥもいつの間にか、ハレの顔から離れ元の位置に戻っていたのだ。
ハレは、その口内に満田を押し込まれたままの形で凍りつき、頭からパラシュートをかぶり微動だにする気配も見せなかった。
(な、な、な………何!?今何が起こったんだ!?…オレの口に何か……?
 …てかそーゆー問題じゃない!!早く満田を…でもたしかにグゥの顔が──)
「ん…んんんんんんん〜〜〜〜〜〜〜っ」
ハレの思考が混乱を極めている中、ぼむ、と、最後のトドメがその口内で炸裂した。
反射的に、必死に両手で口を抑えるも口内からあふれ出たジャムが指の間からボチュ、と飛び出す。
その勢いは凄まじく、口から噴出したジャムが頭を覆うパラシュートにぶつかりそのまま床に大量のジャムが撒き散らされた。
パラシュートの壁に防がれていなければ、グゥにまでかかっていただろう。
「……まだまだよの、ハレ」
その姿を満足げに眺めていたグゥは、不適な笑みを浮かべながらふふん、と鼻を鳴らした。

「……………」
その様子に一瞬、教室中がしぃん、と静まり返り……
「あははははは!!!ハレ最高〜!!」
「すっげー!マジで破裂したぜ!!ぎゃははは!!」
「いやー最後ようわからんかったけど、白熱した攻防やったなー!ええもん見せてもろたわ」
「も〜っ笑ったら可愛そうでしょ……ぷふっ」
「ハレ、大丈夫ぅ?」
次の瞬間、何かが爆発したかのように、ドッと大きな笑い声が教室中に鳴り響いた。
ハレはいまだポタポタとジャムをたらす指で口を抑えたまま、ただワナワナと震えるのみ。
178満田人間ハレ10:2007/01/27(土) 00:09:59 ID:DbG4OfAo
(くっそー!またやられた…!結構いい線いってたのにな〜もう一歩だったか…
 ってか…オレ、オレグゥに何を………ッッ!!?)
先ほどの光景を思い出し、また思考がぐるぐると乱れてしまうハレに更に追い討ちは続く。
(う……今の衝撃でいよいよヤバイ!もうオレも破裂しそう…っ)
ぎゅるるるるるぅ〜〜〜、と、いよいよ最後の鐘の音がハレの腹の中で鳴り響く。
ぶわ、と冷たい汗が噴出す。眉間にピキピキと深い皺が刻まれていく。
もはや一刻の猶予も無い。この上で、この場で粗相などしようものなら、一生ものの辱めを受けることになるのは必至!
ハレは机に足をかけ教卓の前に飛び降りると、未だ頭にパラシュートを被ったままの姿で教室から飛び出して行くのだった。

「あはははは…は…行っちゃったね、ハレ…」
「…いつも思うけどハレとグゥって仲いーんだか悪いんだかわかんねーな」
「うーん、でもケンカするほど仲が良いって言うしね。いつものことじゃない」
「ケンカっちゅーかじゃれあってるっちゅーか…ハレが一方的にへこまされとるだけって感じやけどな〜」
「…でも今日はなんだかいつもより怒ってた、よね、ハレ…」
「ん、言われてみれば…そやなぁ、あんな風に何も言わんと出て行くなんて、はじめてやで…」
「もう、みんなであんなに大笑いするからよ……」
「おめーも笑ってただろぉ。…グゥも、あとでちゃんと謝っといたほうがいいんじゃねーか?」
「…………」
179満田人間ハレ11:2007/01/27(土) 00:10:30 ID:DbG4OfAo
<<3>>

(フー…スッキリした…)
ジャー、と勢い良く水の流れる音が密室に響く。
ハレは腹中の不安要素を取り除き、実に晴れ晴れとした表情でバシャバシャと手を洗っていた。
しかし洗面所の鏡に写る、満田のジャムでべったりと汚れた自分の口元を見るとすぐさまその表情に影が差す。
グゥに一杯食わされるなんて、今に始まったことではない。その悔しさも、すでに治まっている。
しかしその勝敗を分けた一瞬、自分の顔に迫ってきたグゥの顔が、その後自分の唇を襲った感触が、ハレを悩ませていた。
「ッタク、グゥノヤツ〜!」
照れ隠しか、自分の心に湧き上がる妙な感情を吹き飛ばすように、一人大きな声を出す。
「ッテ、ナンダコノコエ!?」
その自分の声に驚き、また大きく声を上げるハレ。
ヘリウムガスを吸ったときのような、やたらと甲高い声が耳に響く。それはとても自分の口から出たものとは思えなかった。
(賞味期限切れの満田を口の中で破裂させたから…?…まさかね…)
とにかく、自分の身に何か変なことが起きているのは明らかだ。
ハレは口元のジャムを手早くふき取ると、早足に保健室に駆け込むのだった。

「ホケンイ!!」
「おわ!?…なんだハレか…どしたその声?」
行儀悪く机に足をかけ、椅子にもたれ本を読んでいた保険医クライヴは、突然勢い良く開いた扉の音とそこから入ってきた
少年の声に驚き思わず椅子ごと倒れそうになった。
「ホケンイ〜、ナンカコエガオカシインダヨ〜」
「んー?変声期だろどーせ…」
ハレはそんなこともお構い無しに必死にクライヴに自分の症状を訴える。
が、クライヴはいつものようにのらりくらりと適当なことを口にする。
「ンナトツゼンナルカヨ!!サッキマデフツウダッタッテノ!!」
「いやぁ、子供子供と思っててもある日突然大人になるもんなんだよねぇ」
「オ、ナンダヨキュウニ…。トッテツケタヨーニ、ヒトノオヤッポイハツゲンスンナー」
「ま、とりあえず見てやるよ。ここ座って口開けな」
いつものように冗談めかした会話を交わしながらも、クライヴはちゃんと患者用の椅子に迎えてくれた。
ハレも素直にそれを受け、椅子に座ると口を大きく開ける。
「なんだこりゃ…」
「ンェ?ハニハナッヘウ?」
「大口開けたまましゃべんなっ!じっとしてろ」
ハレの口内を見た瞬間、クライヴは呆れたような声を出す。
その声にハレは不安になるが、クライヴに制されピタリと身体を硬直させた。
「んー?なんだ、これ?血…じゃないよな」
「アー、ソレタブン、マンダノジャムダヨ」
クライヴがハレの口内をガラスの棒のようなものでこそぐ。
棒が抜き取られると、その先端に何か赤いものが付着しているのが見えた。
言うまでも無く、満田のジャムであろう。
「満田ぁ?どんな食い方したんだよお前、喉の奥までへばりついてんぞ?」
「イ、イヤ〜…ドンナクイカタッテイワレテモ…」
しかしそれを聞いたクライヴは益々呆れたような声を上げる。
さすがに想像もつかないだろな、とハレも言葉に詰まるが、一応言ったほうが良いのだろうか……
「賞味期限切れの満田を口の中で破裂させん限りこんなことにゃならんぞ…」
「エェー!?ナニソノピンポイントナジョウキョウ!?グル!?ドッキリ!?」
…と、ハレが口を開く前に、そのものズバリを言い当てられてしまった。
誰の仕掛けだ、この罠は。
180満田人間ハレ12:2007/01/27(土) 00:11:31 ID:DbG4OfAo
「…あはははは!それは僕も見たかったねぇ〜」
「ッサイ!トニカクナントカシテクレヨ!」
先ほどの経緯を説明すると、クライヴはハレの予想通りの態度を見せてくれた。
あまりにも予想通りすぎて怒る気もしない。とにかく、今はこのヤブ医者だけが頼りなのだ。
「んーまぁ、満田の中にたまったガスを吸ったせいだろねぇ」
「…スグ、モドルヨネ?」
「肺の中に溜まったガスが無くなったら戻ると思うけど?でもこのへんの生物の生態はよくわかんないからなー」
クライヴはわざと脅すように、具体的なことは言わずニヤニヤと結論をはぐらかす。
自分を不安がらせて愉しんでいるのは丸解りだったが、その様子から逆に深刻な状況で無いのであろうことも伺えた。
クライヴの態度に少し腹は立ったが、とりあえずホッと胸を撫で下ろす。
「ま、数分で元に戻るんじゃない?…その満田を丸飲みしてたら厄介だったけど、ね」
「エ…?」
満田を…丸飲み?
ゾクリと、ハレの背中に冷たいものが走る。
やっぱりグルだろ?ドッキリだろ?
…そう、いつもの調子で突っ込みたかったが、クライヴのその今までに見たことの無い鋭い眼差しに、その言葉を口から
吐き出せず、ただ自分に言い聞かせるように心の中で唱えることしか出来なかった。


「──いやでもさ…あの満田、丸飲みせずに破裂してよかったよなー」
「あははは、さっきのグプタの話だね」
「満田に身体、乗っ取られるっちゅーやつやなー。ありえへんありえへん」
「わっかんねーぞ?あんなでっかいの丸飲みしたやつなんて聞いたことないしな」
「なになに?何の話ー?」
「いやあ、満田を丸飲みしたら体内で満田が根を張って、身体を乗っ取られる…っちゅーな」
「そうそう、とくに賞味期限切れの満田を飲み込んだらヤベーらしいぜ?」
「はぁ?…何それ、グプタ信じてんの、そんな話?」
「なっ…!し、信じてなんていねーけどよ!?
 で、でも誰も試したやついねーんだからマジかもしんねーじゃん!」
「馬鹿馬鹿しい……」
「あーそーかよ!じゃあ飲み込んでみろよ!大丈夫なんだろー!?」
「あんな大きいの丸飲みしたらそれだけで身体壊すわよ。自分でやればいーでしょー」
「なんで俺がンなことしなきゃならねーんだよ!」
「私だって嫌よ…馬鹿じゃないの?」
「馬鹿馬鹿言うなぁ!ったくこれだから女はロマンがねーよなー」
「ロマンってゆーかオカルトじゃない…子供っぽいんだから…」
「っせーな!おめーは勉強でもしてろよ、この優等生……っと、な、何だよ…グゥ?」
「……それで?」
「え?」
「それで、どうなるんだ。乗っ取られた人間は」
「あ…ああ。なんだグゥ、この話に興味あんのか?
 さすがお前は解ってるねー。同じ女でもどっかの誰かとはえらい違いだぜ」
「いいから……早く」
「お、おう。っと、どこまで話したっけな…
 そうそう、満田を丸飲みした人間は、徐々に徐々に満田にその身体を乗っ取られていくんだよ。
 飲み込んだ時点ではまだ本人にも解らない。だがちょっとずつ、ちょっとずつその様子が変化していくんだ………」
181満田人間ハレ13:2007/01/27(土) 00:12:25 ID:DbG4OfAo
『───その変化は、注意してりゃあ誰にだってわかる。まず最初に変わるのは声だ。
 とうてい人間とは思えねー奇妙な声に変わるんだ』

「…お前、マジで丸ごと飲み込んだのかよ…珍しいやっちゃな」
「グゥノセイダヨ〜。ソレヨリ、ノミコンダラドーナルンダヨッ!」
「別にたいしたこっちゃねーよ。腹ん中で破裂するとかもないから安心しな。
 ただ…その声が治るのに相当かかることになるぞ。腹ン中からガスが上ってくんだよ。
 朝飯んときに飲み込んだんだったら、そろそろ消化される頃だよね。
 肺の中のガスはもうとっくに無くなってると思うけど、まだ声が変だろ?」
「ソンナァ…ドレクライデ、ナオルノ?」
「そーだな…ま、1週間後には戻ってるんじゃねーか?」
「イッ…………!!チョ、ホケンイ!!ナントカナンナイノ、ソレ!?」
「まぁまぁ、落ち着けって。ようするに、さっさと腹ン中カラッポにしちまえばいーわけだよねぇ」
「エ?ソンナコトデキルノ?」
なんだか、面倒なことになってきた。たしかにそれほど深刻な状況では無いのだが、こんな変な声のまま1週間も過ごさねば
ならないと考えると早くも気が滅入ってくる。
とりあえず、何らかの手立てはあるようだが、この保険医が素直にそれを処方してくれるだろうか?
「んー…でも身体の中ってデリケートだしな、あんまし手荒なことしたくないんだよねぇ」
ニヤニヤといやらしく口端を歪めながら、「わかってんだろ?」と言わんばかりにもったいつけた態度を取るクライヴ。
「…ワカッタヨ、キョウイチニチ、カアサントイチャツイテモナニモイワナイヨ」
やはり、か。ハレはハァ、と大きくため息を吐くと、諦めたように「報酬」を提示する。
「もう一声!」
「キャッカ!」
「ちぇっ…ケチだねぇ。ま、いーや。かわいい息子のためにとっておきの薬出してやるよ」
医者に、と言うか父親に薬をもらうのに何故こんな交換条件を付けねばならんのか、甚だ不本意ではあったがしょうがない。
とにかく、このダメ親父兼ヤブ医者を懐柔することには成功したようだ。
…いささか信じがたいしあんまり信じたくもないが、この保険医は医者としてはかなり有能らしい。都会じゃちょっとした
有名人と聞いたことがある。ここにも、市販されていないような珍しい薬とかが置いてあるのだろうか。
「ほれ、これ飲んどけ」
「チョットマッテ、ソレ…」
「ん?なんだ、怖いのかぁ?」
「コワイモナニモ…ソレタダノ、イチョウヤクジャンカ!」
そう、それはどこの家庭にも置いてあるような、よく見るパッケージの薬だった。
濃い茶色のビンに、緑のふた。どこにでもある胃腸薬の入れ物だ。
いくら子供相手とはいえ、馬鹿にしている。
キッとクライヴを睨みつけるが、クライヴはまったく平然としていた。
「いやいや、中身は違うんだって。
 特別な薬を特別な容器に入れとくなんて馬鹿のすることだね。
 わざわざ「盗ってくれ」って宣伝してるみたいなもんだよ」
「ホントカヨ〜、ナンカウタガワシイナー…」
「いらねーんだったら僕は別にいいんだよ?
 これ結構高いんだから、無理にでも処方しようとは思ってないんだけどねぇ」
「…ワカッタヨ、ホラ」
「そうそう、子供は素直が一番だね」
なんだか納得いかないが、確かにそう言われればそれらしく聞こえる。
うまく騙された気がしないでもないが他に頼るあても無い。ハレは渋々と手を出し、その薬を1粒受け取るのだった。
182満田人間ハレ14:2007/01/27(土) 00:13:48 ID:DbG4OfAo
『───でもそれだけじゃ判別は難しい。なんせ、満田に乗っ取られたやつは口数が極端に減るらしいんだ。
 喋るのにエネルギーを使うのは無駄だからだろうな』

「コレデ、スグニモトニモドルノ?」
「さすがにンなすぐにゃ治んねーぞぉ。ま、1日ちょいってとこだね」
「1ニチか…マァ、ソレクライナライイカ」
「ああ、恥ずかしーなら今日1日、口閉じとけよ」
「ン…ソウシトクヨ」
しょうがない、1日くらいなら我慢出来ないでもない。
今日は1日、口を閉じて過ごそう。

『───次に、何もメシを食べなくなる。もともと植物だからな、水だけを大量に飲むんだ』

「それに1日くらいなら飯も我慢できんだろ?」
「…メシッテ…ナンノハナシダヨ?」
「ん?いや…この薬、効き目は本物だけどちょっと強力すぎてね。薬がジュージュー胃の中身溶かしてるとこに
 別の刺激が入ったら、胃が大変なことになっちゃうワケ」
「ナッチャウワケ…ジャナイヨ!!
 ナ…ナンデソレサキニイワナインダヨ!ッテカンナクスリ、カンジャニショホウスンナヨ!!」
「お前のためにわざわざくれてやったんだろ?そんな言いかたされるとは心外だねぇ…
 1週間、そんな声のままのほうがよかったのかい?」
「ウ……」
「ま、たった1日だ。我慢しなよ。水は飲んでも大丈夫だからさ、ガブガブ飲んで中のガス追い出しな」
何て怪しい薬を飲ませてくれたのか。しかし後悔先に立たず、すでに飲んでしまった後に何を言ってもはじまらない。
…今日は水だけか…せめて先に何か食べておくべきだった。ハレはとほほ、とガックリ肩を落とす。
「ま、皆には言っとくからさ。お前はさっさと帰んなよ。明日は学校休みだし、今日はどーせこの時限で終わりだろ?」
そうだ、授業中に飛び出して来てしまったのをすっかり忘れていた。
…まぁどうせ自習だったし、何も問題は無いのだが。クライヴが連絡を回してくれるならそのまま帰っても大丈夫だろう。
今日はご飯も食べられないし喋れもしない。ゆっくりゲームするなりゴロゴロ寝るなりして過ごそう。

『───んでもって日中は日向ぼっこして太陽の光を浴び、夜はすぐに寝る。光合成のつもりなんだろーな。
 …ほら、お前らの周りにそんなやつ、いねーか?』
『おらへんおらへん…』

「アリガト、ホケンイ。ソレジャソロソロイクヨ」
「おう。…いいか、声が治るまでは、絶対何も食うなよ。
 その薬が効いてる間はただでさえデリケートな胃の粘膜がもっと脆くなってんだ。
 その時に強い刺激与えたら……細胞が壊死して胃がボロボロになんぞ…」
保健室の扉に手をかけた瞬間、またクライヴは実に嫌なことを言ってくる。
最後にゾォッと背筋が凍りつくような釘を刺され、ハレはそそくさと保健室から退出するのだった。
(…しょうがない、今日はさっさと帰るか。…でもあの保険医がそんなすぐに家に連絡するとは思えないしなー。
 母さん、まだ家にいるだろうし、いろいろ聞かれたら厄介だな。ちょっとそのへんの木陰で昼寝でもしてから帰ろうかな)


「…どれくらいの時間でそうなるんだ?」
「お、興味津々だなー、グゥ。
 そうだな、だいたい満田を飲み込んでから24時間…まる1日程度で完全に乗っ取られるらしいぜ。
 例えば朝、食ったやつがいたとしたら、そろそろその兆候が現れる頃だろうな」
「…………っ!」
「…!な…んだぁ、いきなり…。飛び出してったぞ?」
「トイレちゃうか?」
「いや…俺の話に恐れをなして逃げちまったに違いねえ」
「馬鹿ね…グゥがそんな話、信じるわけないでしょ」
「馬鹿馬鹿言うなっつーの!!」
「それにしてもハレ、遅いなぁ…」
「……グゥ…」
183満田人間ハレ15:2007/01/27(土) 00:14:31 ID:DbG4OfAo
「ハレ…どうした、教室に戻らないのか?」
(グゥ…?)
保健室から出たハレは、そのまま学校を出ようと階段下りている最中であった。
そこに頭上から少女の声が響く。見上げると、グゥが階段の手すりから身を乗り出しこちらを見下ろしていた。
ハレはグゥを確認すると、すぐに顔を逸らす。特に深い意味は無い。ただ、下から見上げる状態ではいろいろとまずいものが
見えてしまっていると言うだけの話だ。
どうせ、あとで保険医が知らせてくれるだろうし、今、声を出すといろいろと面倒なことになりそうな気がする。
…しかし何も言わずに去るのも心苦しい。別れの挨拶だけでも、軽く言っておくか。
「…バイバイ」
「……ッッ」
…やっぱり、我ながら何度聞いても変な声。グゥも珍しくビックリしているようだ。変に突っ込まれないうちに去るべし。
結局、ハレはグゥには一瞥もくれずと…いうか顔を上に向けられぬまま、足早に階段を下りていくのだった。

「…グゥ」
「………マリィ?どうしてここに…」
「ごめんなさい、グゥ、さっきからおかしかったから…。
 ハレの様子も、なんだかおかしかったね。まだ怒ってるの、かな」
「…どうすれば、元に戻るんだろう」
「大丈夫よ、そんなに心配しなくても、すぐにいつものハレに戻るわっ」
「いや…このままでは、ハレは明日にはハレでなくなってしまう……」
「…?何の話??」
「さっきのグプタの話、聞いてただろ。満田に乗っ取られておかしくなるって…」
「え?でもハレは別に飲み込んだわけじゃ……うふふ、そっか…
 そうね、このままじゃハレは満田人間になってしまうのね」
「どっ…どうしよう…グゥの、グゥのせいで……っ」
「うーん…そうそう、あたしも聞いたことあるわ。満田に取り付かれた人間の、治し方」
「ほ、本当か?どうするんだ!?」
「うふふ、ハレといつもよりいっぱい、いっぱいお話しして、いっぱい遊ぶのっ!」
「え…?そ、そんなことで、いいのか?」
「そんなこと、なんて言っちゃダメよ?大事なことなんだからね」
「そ、そうか……わかった、いっぱい喋ったり、遊んだりするんだな」
「うんうん。それでね…自分の素直な気持ちを、いっぱいハレに伝えるの」
「素直な…気持ち?」
「そ!グゥの、素直な気持ち!」
「……それは…どうすればいいんだろう…」
「そうね…やっぱり、まずは手料理よっ!」
「手料理?」
「グゥの愛情たっぷりの手・料・理!あたしも手伝うから!」
「手料理か…うん。やってみる」
「その意気よ、グゥ!善は急げよ、さっそく、あたしの部屋で何か作りましょ!」
「あ、ああ」
「そうだ!ウェダの得意なエビグラタンなんてどうかな?
 あたしはウェダとグゥの分作るから、グゥはハレのために作ってあげてっ」
「…ありがとう、マリィ」
184満田人間ハレ16:2007/01/27(土) 00:15:16 ID:DbG4OfAo
<<4>>

…ここはどこだろう…?真っ暗で何も見えない。あまりにも暗すぎて、自分の姿すら目に映らない。
おーい、と、大声で誰かを呼ぶ。が、その声もすぐに闇に飲まれ消えていく。
…いや、違う。最初から、何も聞こえないんだ。自分の声すら聞こえない。声が…出てないんだ。
どれだけ声を張り上げようとも、その喉からは何の音も出てこない。
ゾ、と、背筋に冷たいものが走る。今まで当たり前のように出来ていたことが突然出来なくなる恐怖。
目は見えているのか?この闇は、ただオレだけが感じているものではないのか。
耳は聞こえているのか?本当は、周りにはいっぱい人がいてザワザワと騒いでいるのかもしれない。
そう思うといてもたってもいられず、ハレはこの闇から逃げるように走り出した。
ただがむしゃらに、無我夢中に闇を蹴る。蹴る。
しかしどれだけ走っても、己を覆う闇から逃れることは出来ない。地を蹴る足音も聞こえない。
本当にその場から動いているのか、それすらも不確かだった。
ついにハレは、走る気力も失いその場にくずおれへたりこんだ。
ハァ、ハァと大きく肩で息をし、汗が滝のように流れる。足の筋肉が痙攣し、もう満足に走ることすら出来ない。

フ、と。何かの気配がした。それはとても馴染みのある存在感。
前を見上げると、そこには一人の少女が、ぽつんと闇の中に浮かんでいた。
少女は後ろを向いていたが、一目で誰かわかる。
(…グゥ!!)
ハレは大声で叫ぶ。だがやはり、その口からは何も漏れてこない。
グゥにもその声が届かないのか、てく、てくと足を動かし、ハレから遠ざかっていく。
(グゥ!待てよ!!おい、グゥったら!!)
ハレは走った。叫んだ。たとえその声が届かなかろうとも、叫ばずにはいられない。
たとえその足がちぎれようとも、走らずにはいられない。
この闇の中で、ただ一つの現実。その姿がもっと見たい。その声が聞きたい。
ここでグゥにこのまま去られては、本当に自分と言う存在がここに確かにあるのかすら解らなくなってしまう。
しかし足が前に進んでくれない。まるで鉛の枷をはめられたかのように、足が重い。
(グゥ!グゥ!!グゥーーーー!!)
それでもハレは進むしかない。
ただゆっくりと歩いているだけのグゥにすら追いつけないような速度でも、進まないワケにはいかない。
その姿を見失わないように、一歩一歩前に進む。いつかグゥにその声が届くと信じて、力の限り大声を張り上げる。

(グゥ…!)
その想いが届いたのか。グゥはその歩みを止め、くるり、と頭だけをこちらに向けた。
(グゥ!オレだよ!!ハレだよ!なんか、言ってくれよ!)
なおもハレはグゥに少しでも近づこうと足を動かす。自分の耳にはやはり届いてはいなかったが、声を張り上げる。
ついに、ハレがグゥに触れられるほどに近づいたその時、グゥははじめてその口を開いた。

「……バイバイ」
(───ッ!?)

その声は、確かに、耳に届いた。
ただ自分に告げたグゥの言葉が、自分を見やる寂しげなその表情が、自分の存在の全てを否定した。
口が、動かない。もう何を言う気力も残されていない。その足も、身体も、ピクリとも動かすことが出来ない。
グゥは、そんなオレを哀れむように目を細めると、ついとまた前に向き直り、歩き出した。
ハレはその背中を、ただ呆然と見送ることしか出来なかった。
グゥが闇に消える。闇に同化する。…いや、闇に同化してしまったのは、自分の方か。
もう何も見えない。何も、聞こえない────
185満田人間ハレ17:2007/01/27(土) 00:15:48 ID:DbG4OfAo
(………はっ!?)
突然、フラッシュを焚いたような光とともに、視界が開けた。
うっそうと茂るジャングルの木々が見える。
その枝葉の切れ目から、自分を優しく包む木漏れ日も、その向こうにある空も見える。
耳にはざわざわと風に揺れる葉の音や、ピヨピヨと囀るこのジャングル特有の小鳥の鳴き声も聞こえる。
(…なんて、夢…)
そうだ、オレはあの後学校を出てすぐ、適当に涼しそうな場所を探して寝転んでたんだ。
いつの間にか眠ってしまっていたのか。
それにしても…ただ1日喋れないってだけで、いくらなんでもナーバスになりすぎだ。
この程度のこと、ここ3年で起こった数々の事件に比べたら苦難とさえ言えない。
人質にされたり漂流したり遭難したり未来のために戦ったり幽体離脱したことさえあるってのに…
ってか、なんだこの無駄に濃密な3年間。
しかし、夢の中にまでグゥが出てくるなんて。寝る前に最後に逢ったのがグゥだからだろうか。
…そう言えば、グゥに「バイバイ」なんて別れの挨拶をするなんて、はじめてのことだ。
帰る場所が同じなのだから当然なのだが、普段あまりにも傍にいすぎて、この手の挨拶を交わすこと自体がほとんど無い。
いつか、グゥと普通に別れの挨拶をする時が来るのだろうか。そんなことを考えると、先ほどの夢のせいもあるのか、
胸の奥からとても嫌な感情が湧き上がって来る。ハレはぶんぶんとそれを振り払うように顔を振った。

あの妙な夢のことも気にはなるが、今は現実に向き合わねば。ハレはよっと、身体を起こす。
…が、身体が動かない。何だ、まだ夢の続きなのか?
でも目は見える。耳も聞こえる。身体も…右半分は動く?そうだ、左側だけがやけに重───

「オワッ!」
思わず、声を上げてしまった。
ちらりと左側を向くと、すぐ眼前に大きく広がる少女の顔。
その少女が自分の身体にもたれかかり、体重を預けていたのだ。
「ん…起きたのか」
その声に反応し、少女も眠っていたのか、とろんと呆けた顔を少し起こしこちらを見やる。
…間違いなく、さっきの夢はコイツのせいだ…。夢なんかのことで変に悩んでしまった自分が情けない。
(ったく、グゥはオレの夢ン中までちょっかいかけるんだからなー)
さっさとどけよ、と、目配せをしたいが、あまりにもその顔の距離が近く、いろいろと今日のことを思い出してしまい
少女の方をまっすぐ向くことが出来ない。
「なんか今、変な声がしなかったか?」
「……ッッ」
そんなハレの気も知らず、グゥはずい、と益々にその顔を近づけてくる。
その質問もまた答え辛いものだ。ってか、保険医から聞いて知ってるくせにワザとそんなことを聞いて来ているに違いない。
ハレはグゥからあからさまに顔を背け、グゥが迫るたびに同じだけずりずりと後ろに後ずさる。
「…どうした?ハレ、もしかしてさっきの声、ハレなのか?」
「……」
知ってるくせに!その手になど乗るものか。
ハレは無言のまま、その目も合わせずグゥを強引に押し退けると、すぐに立ち上がり歩き出す。
グゥもそれを受け、ハレの後ろから歩みを合わせる。
結局、グゥからもそれ以上何も追求して来ることは無かった。
186満田人間ハレ18:2007/01/27(土) 00:16:31 ID:DbG4OfAo
てくてくと二人で歩く帰り道。いつの間にか、日もすっかり陰りジャングルは夕日に赤く染められていた。
どれだけぐっすり寝ていたのだろう。それにグゥはいつ頃から傍にいたのやら。
まぁ学校の帰りに偶然発見して一緒に眠りこけていたんだろう。
「あの……ハレ?」
そんなことを考えていると、いつもの学校の帰り道のように少し後ろからついてくるだけだったグゥが珍しく横に並んで来た。
「きょ、今日な。マリィの部屋に行ったんだ。新しく作った服とかいろいろ着せられてな、大変だったぞ。
 ハレの分もあるらしいから、今度はハレも着せてもらうといい」
…へぇ、と何故か関心してしまう。
こんな感じでグゥから話しかけて来ることは珍しい。それに友達のことを話題に出すこともやはり珍しいことだった。
よっぽど楽しかったのだろう、その表情は、普段あまり見たことの無い穏やかなものに見えた。
こう見えてもグゥもやはり女の子なのだ。普段はオレとずっと一緒にいて、家でゲームやったりゴロゴロしてるだけだったけど
そんな不健康な遊びに付き合うよりも、マリィのような同年代の少女と遊ぶ方がずっと自然なことだ。
ちょっぴり妙な嫉妬心も感じたりしないでもないけど、グゥが積極的に友達と遊んでくれるのは嬉しい事だった。
…やっぱりそのうち、これまで交わしたことのないような「挨拶」を交わすようになっていくのだろうか。
「それで、それで一緒に昼飯を…作って、だな…」
なんだか、妙に言葉に詰まっているようだ。普段あんまりこんな話をしないから、言葉がうまく出てこないのだろうか。
それとも、グゥに限って考えづらいが、友達の話をするのに照れてるとか?…まさかね。
それにしても、マリィの家で昼飯までご馳走になるとは。オレも一緒に遊びたかったなあ。
…それもこれも、自分の声をこんなにしたグゥが…いや、グゥの戦略を読み通せなかった自分の不甲斐なさが恨めしい。
この声が変になってしまったのが満田のガスのせいなら、結局満田を噛み切っていても同じことだったのだ。
そう、グゥがあんなこと、しなくても…。
つい、あの時の光景を、その唇の感触を思い出してしまい顔が紅潮してしまう。
(やっぱり、あれ、グゥの……)
その感触は、グゥの無機質な顔のつくりからは想像もつかないくらい柔らかく、温かなものだった。
思わず、隣を並んで歩くグゥの唇を凝視してしまいまた顔の温度が上がる。
慌ててその唇から視線をはずし、思わず少しグゥから離れてしまう。

そうしてフ、と遠目からグゥを見ると、なぜ今まで気づかなかったのだろうか、その全身がやたらと汚れていることに気づいた。
その服はもちろん、髪や肌にもところどころ砂がつき汚れたような跡がある。
グゥにしては珍しい。帰ったら母に「よく遊んだわね、お風呂沸いてるからさっさと入りなさい」とでも言われんばかりの
遊び盛りなやんちゃ坊主のような汚し方だ。
マリィの部屋に寄った後、皆で遊んでたのかもしれない。もしかしたらその途中でオレを発見して、すぐ傍で
遊んでいたのかも。そしてオレは結局目が覚めず、皆も家に帰りグゥだけが残った…。
さ、寂しい!なんだそれっ…なんか一人置いてかれたような気分!!
って、自分の想像で勝手に落ち込んでもしょうがないだろ、オレ!
…なんて、口を開けなくてもその体質からは逃れられないのか、つい突っ込みを入れてしまった。
なんだかそんな自分が馬鹿馬鹿しくなり、ハァ、と小さくため息を吐く
187満田人間ハレ19:2007/01/27(土) 00:17:03 ID:DbG4OfAo


(ン…?この匂い…)
…その時、ほわ、と風に乗って何かの匂いが漂ってきた。
それはよく知っている、何度も嗅いだ事のあるものだった。
すえたような酸っぱいような…まあ、いわゆる汗の匂いというやつだ。
こんな常夏のジャングルじゃ嗅ぎ慣れた匂いだったが、その発生源はやはり珍しいと言うべきか。
そりゃ、これだけ泥んこになるまで遊んだら、汗の一つもかくというものだろう。
それにその匂いにはあまり嫌な気もしない。…別に女の子の汗の匂いだから、とか言う理由では無く。断じて。
いやしかしこの汗の匂い、どことなく甘いような、なんだか良い匂いに思えて…って、オレは変態か!!
「……?」
気づけば、グゥがこちらをジィっと見ていた。
(あ…しまった…)
つい、クンクンと鼻を鳴らしてしまっていた。ホントに変態みたいだ…オレ…。
グゥもその様子に気づいたのだろう、おもむろに自分の腕をスンスンと匂い出した。
更に胸の布を広げ鼻に押し当てたりしている。もしかして、臭いから距離を置いたと思われたかもしれない。
さすがにこれは弁解しなくてはならないだろうか。声を出しちゃいけないとか言ってる場合ではない。

「…くさい?」
しかしハレがそう意を決し、その口を開こうとした瞬間、それを遮るようにグゥの口が先に開いた。
(プッ!!)
その言葉に思わず、腹にためた空気を一息に吐き出してしまいそうになる。
しかしここで笑ってはあんまりにも失礼というものだろう。今は笑いが収まるまで、必死にこらえるしかない。
ハレはその顔を見られないようにそっぽを向き、ただ黙りこくることしか出来なかった。
「ッ………ごめん……」
(…?)
突然何を謝るのか。別に汗をかくくらい、普通のことなのに。
しかしその自分の匂いを嗅がれたくないのか、今度はグゥの方から、すっと距離をあけた。
別にそれほど臭かったわけではないのだが、まぁ、グゥも女の子ということか。
たまには気遣ってやるか、とハレも特に何も言わず、家路に着くまでの間、ただその距離を保ち続けるのだった。
188満田人間ハレ20:2007/01/27(土) 00:17:58 ID:DbG4OfAo
<<5>>

(もう母さんも行っちゃったか。
 そんで当然、保険医もいないと。ちょっと悪いことしちゃったかなー)
家に帰ると、そこに人の気配は感じられなかった。
母はもう狩りに出かけたのだろう。クライヴも当然、母のいない家などに用はあるまい。
学校で保険医と交わした交換条件は少しいじわるだったろうか。
いや、あんな条件を求める方が悪いのは明白だ。いい気味、いい気味。
ハレはただいまもおかえりも誰とも交わすことなく、家に入る。
結局グゥとも、ばらばらに学校を出たと言うのに、今日も一緒に帰ってきた。
今は声を出し辛いのでそれは助かったのだが、グゥの「おかえり」をちょっと聞いてみたかったな、なんて
のんきなことを考えてしまう。

「…先にお風呂、入っていい?」
グゥは家に着くなり、入浴の準備を始めた。やっぱり自分の匂いが気になるのだろう。
こいつもそんなことを気にするんだな、なんて、グゥの新しい一面が見れた気がして少しうれしかった。
まぁ、別に一番風呂に執着があるわけも無い。
「さっさと入っちまいなよ」と手でグゥを風呂場に促し、ハレはテレビの前に向かった。


ハレはテレビの前に座ると、おもむろに1つのゲーム機を取り出す。
機種はもちろん、最近発売したばかりの話題のゲーム機「Mii」だ。
通称「ミィー」。正式名称は「MegaIllusionIsland」。いうまでも無いが、メガドラの後継機に当たる機種だ。
ゲーム業界の生存競争に敗れた任忍堂がGASEに合併吸収されたことは記憶に新しい。
そんなゲーム業界二大巨塔が技術力を結集させた夢の最強ハード、それがこの「Mii」なのだ。
そのデザインも実に硬派。まさに往年のGASE機を思わせる威風堂々としたものだ。
ガンメタリックで決めた漆黒のボディに刻まれた、金色に輝く「16Gbit」の文字が眩しく光る。
前世代機であるDC(ドリームキャッスル)への敬意も忘れず、その名称には「夢」の代わりに「幻想」の一字が使われた。
この機種を購入して以来、これまでハマっていた携帯ゲーム機そっちのけで猿のように遊び倒している。
普段は母に止められているので1日数時間しか出来ないが、今日は思う存分ゲームを堪能できるチャンスだ。
さて、何のゲームをやるか…と言っても最近出たばかりの機種でそれほどソフトも多くない。
そもそも、本体を買うのでお小遣いが尽きてしまい、ソフトなんて1本しか持ってない。
結局、本体に入れっぱなしのソフトを起動するしかないのだ。またお小遣いが溜まったら何か買ってこよう…。

電源を入れると、聞きなれた音楽が響く。
「Mii」で唯一持っているこのソフトのゲームジャンルは対戦格闘ゲーム。いわゆる格ゲーだ。
もともとPCで遊ぶシューティングゲームだったらしいのだが、その詳細はよく知らない。
「東方シリーズ」と言えばわかる人にはわかるのだろうか。それがコンシューマで、しかも格闘ゲームとして発表された時には
その筋の人たちは大いに賛否両論を戦わせたそうだ。
そしていよいよ発売が開始された最新作「東方不敗-老師亜細亜-」は業界初の弾幕格闘ゲームという触れ込みが話題になった。
このゲームは普通の格ゲーと違い、1対1で延々と戦う「アーケードモード」以外にも、多彩なアクションステージを雑魚敵を
倒しながら切り抜け、ステージごとのボスとタイマン勝負をする「ストーリーモード」も用意されている。
いわゆる「飛竜の拳」や「ソードオブソダン」をイメージしてもらえればわかってもらえるだろう。
今、もっぱらハマっているのはこちらの「ストーリーモード」の方だ。
弾幕格ゲーの名にふさわしく、シューティングさながらに仕掛けてくる敵の怒涛の攻撃をいかにかわし、ボスに辿り着くかが
実に攻略のしがいがあり脳に新鮮な刺激を与えてくれる。
ストーリーの方も、キャラクターごとにしっかりと個別の物語が用意され、それが少年漫画の王道のような燃えるものから
涙あり、笑いありと様々に趣向を凝らしてありプレイヤーを飽きさせることなく楽しませてくれる。
ついでにキャラクターそれぞれがやたらぷりぷりと可愛く、萌え…まぁ、これはどうでもいいことなのだが。
うん、ホントにどうでもいいんだってば。
189満田人間ハレ21:2007/01/27(土) 00:18:29 ID:DbG4OfAo
「飯、食べてないよな?」
フ、と耳に届いたその声にハッと我に返る。
…オレは誰に話しかけてたんだ。危うく現実を見失うところだった。
声のしたほうを見やると、グゥは脱衣所の壁の向こうから顔だけを出し、こちらを見つめていた。
そう言えば、今日は朝飯を食べて以来なにも口にしていない。ちょっと、ってかかなり腹が減っていることに気づく。
ぶんぶんと首を横に振ると、グゥは何故か少しほっとしたような表情を見せた。
「…冷蔵庫にエビグラタンがあるぞ」
グゥはそう言うと、また脱衣所の向こうに隠れた。
母が作って置いておいてくれたのだろう。母は基本的に料理が苦手だが、エビグラタンだけは何故か美味しい。
グゥも母のエビグラタンだけは皿ごと飲み込まずにちゃんと食べる。グゥがお風呂から上がってきたら一緒に食べるとしよう。
「…ハレのは右の皿だからな」
(…?)
意味深なことを。
恐らく冷蔵庫に左右並んでグラタン皿が置いてあるのだろうが、どちらの皿か指定するなんて怪しさ爆発。
はっきり言ってまったく良い予感がしない。また、罠か?
「…いいか、右のだぞ!?」
…まだ言ってる。あまりにも怪しい。怪しすぎる…グラタンの中に何か入ってるのか……?
ジト、と脱衣場を見やると、向こうからもこちらをジト目で睨んでいた。
その姿に慌てて顔を逸らす。すでに服は脱いでしまったのだろう、脱衣所から覗かせるその姿は、肝心な箇所こそ
見えてはいなかったが明らかにその身に何も着けていないことを物語っていた。
「聞いてるのか?右だぞ、右」
いまだしつこく念を押してくるグゥに、ただ首を縦にブンブンと振ることで答える。
グゥもやっと納得したのか、それ以上は追及せず、今度こそカララという扉のスライドする音と共に風呂場の中に消えた。
(ふふン、そんな態度に出すなんてグゥにしては珍しくうかつだったな!)
そうだ、いくらなんでも怪しすぎる。確実に何か仕掛けがあるに違いない。
また腐りかけの満田とか?アツアツのグラタンにスプーンをさした瞬間…ボン!こえー!!
…などと想像しながら、ハレはコントローラーを置くとそろりそろりと冷蔵庫の前に近づく。
冷蔵庫を開けると、確かにそこには左右に並んだグラタン皿。
(…ご丁寧にグゥって名前入りだよ。やっぱり怪しい…)
その左の皿に巻かれたラップには、デカデカとマジックで書かれた「グゥ」の文字。
自分用ということか。ここまで徹底されると逆に怪しくない気もしてくるから不思議だ。
しかしそれも罠かもしれない。…裏の裏をどこまで読んでもきりが無い。
とりあえず、罠があっても無くても何も手段を講じないと言うのは面白くない。
ハレは皿の位置を左右逆にし、皿に巻かれていたラップもしっかり逆に取り付けた。
(よし。これで先にグゥに食べさせたら万全だな)
そう一人で納得すると、ハレはまたテレビの前に戻りゲームに興じるのだった。
190満田人間ハレ22:2007/01/27(土) 00:19:11 ID:DbG4OfAo
「…なんだ、食べて無いのか?」
ゲームをしていると何故こんなに時間が経つのが早いのか。
ほとんどステージも進まぬうちに、グゥはペタペタと床を鳴らしながらバスルームから出て来た。
ほこほこと湯気を上げほんのりと肌を上気させた姿に何故か自分の体温まで上がったような気がする。
(湯上りだと、グゥみたいのでも色っぽく見えるから困る…)
母は例外だけど。他の女の子のも見たこと無いけど。
その視線に気づいたのか、突然くるんとグゥの顔がこちらを向き思わず目を逸らしてしまう。
なんか今日、グゥから目を逸らしっぱなしだ。

不意に、チーンと耳慣れた音が聞こえた。
続いて、グラタンの良い匂いが辺りに漂い始める。
グゥが夕飯を用意してくれたようだ。これまた珍しいことを…そしてやはりアヤシイ。
ともあれ、お腹もすいたことだし、せっかく用意してくれたのだから食べない手は無い。
ゲームは途中だけど、まぁいいだろう。本来ならここで電源を落とすところだが、母もいないしポーズだけしておこう。
もちろん、テレビも付けっぱなし。ああ、なんてもったいないことを。自由って、素晴らしい。

ハレはテーブルに着くと、大きく「いただきます」を…
言おうとして、ようやく思い出した。保険医に散々念を押されたあのことを。
(…食えない…んだった…)
何で今まで忘れてたのか…。そう、何か食べたら胃が大変なことになる、等と恐ろしいことを言われていたのだ。
目の前にはとても美味しそうに湯気を立てるエビグラタン。
その味を思い出し、思わず涎が垂れそうになる。
手に持ったスプーンをその中に突き刺し、一気に口にかき込みたい衝動に駆られる。
…けど今、胃に入れることができるのは水だけなのだ。
「どうした、冷めるぞ?」
グゥはその自分の状況を知ってか知らずか、パクパクと見せ付けるように自分の分のエビグラタンを口に運んでいる。
うう、食べられないと思うと余計に腹が減る。
保険医は本当にちゃんとみんなに連絡してくれたのか?まさかこれもグゥの手か…?
そんなことを考えても仕方が無い。食べられないことに変わりは無いのだが…何か無性に腹が立つ。
ハレはバンッ!とテーブルにスプーンを叩き付けると、コップに注がれた水だけを一息に飲み干し、
がっくりとうな垂れながら風呂場に向かった。
「ハ…ハレ……?」
ダイニングを出る時、後ろからグゥの声が聞こえた気がしたが、返事をする気にも振り向く気にもなれなかった。
とにかく今は、この美味そうで憎い匂いのする部屋から一刻も早く離れたかった。


「……タク、ホケンイノヤツ、イランコトシテクレタナ…」
湯船につかりながら、ぼそりとそう呟く。やはり、まだ声は戻っていないようだ。
声が治るまでの辛抱、か…。明日には戻ってると良いんだけど。
ハレは空腹をなんとか満たそうと、蛇口から出る水をガボガボと飲みまくった。
191満田人間ハレ23:2007/01/27(土) 00:19:43 ID:DbG4OfAo
風呂から出ると、リビングからゲームの音が聞こえる。
どうやらグゥが、先ほど中断した続きをやっているようだ。
(まぁ格ゲーだし、別にいっか)
これがRPGなどだったら勝手にゲームオーバーになったり先に進まれたりすると非常に困るが、格ゲーなら特に問題は無い。
ハレは特に咎めることもなく、ベッドに腰を下ろしグゥのプレイを眺めることにした。
「なあ、これどうやるんだ?」
グゥは先ほどから、雑魚敵にボコボコにやられているようだ。
確かに格ゲー初心者にはこのゲームはちょいと厳しいかもしれない。
それでなくても、これまでの格ゲーとは少し操作感が違いコツがいるのだ。
これまでと同じ調子でやれば、熟練者でも必殺コマンドはおろか目押しコンボすらまともに決まらない。
むしろ熟達していればしているほど適応し辛いことから、ゲーオタ潰しの異名すら持っているのだ。
かく言うオレもその操作感に慣れるのにかなり手間取ってしまった。
それに加えてこの独特の浮遊感に、ゲージ制による八方向多段空中ダッシュ、格ゲーのくせにボム搭載など等、やたらに多様で
変則的なシステムがよりその操作を難解にしている。「Mii」に備えられた20個のボタンを余すところ無く使うゲームは
今の所、このゲームだけなのだ。それだけに奥が深く、極めがいのあるシステムなのだが…
っと、また違う世界に行ってしまうところだった。そうそう、グゥにゲームの説明をするんだったな。

…しかしこのゲームに付き合うとなると、横でつきっきりで声を上げなくてはならない。
今の自分の状態では少しそれは難しい。
ハレはゲームソフトのぎっちり詰まった箱を漁ると、このゲームの説明書を取り出しグゥに渡した。
「…うん」
グゥはぽつりとそれだけを言うと、説明書を受け取りペラペラと捲る。
その表情はどこか寂しげで、何かに必死に耐えているように見えた。
…確かに、この説明書を読破するのは大変だろう。なんせ説明書のくせに300Pを軽く越えるという異例の分厚さを
誇っているのだ。オレも何度挫折しかけたことか。
しかし読めば読むほど、攻略の幅が広がるのもわかるのだ。最初は辛いけど、そのうちそれも快感になっていくもんなのさ…。

ハレはまたベッドに戻り、子の成長を眺める親のような目でグゥの背中を温かく見守る。
しかしグゥは、先ほどにも増して敵の攻撃を食らい続けていた。まるで手元が定まっていない感じだ。
RPGばっかりやっているから、勝手がつかめないのだろうか。
「…やっぱり、グゥにはよくわからないな。
 ハレ、続きやってくれないか?」
何度目かのゲームオーバーを迎えると、グゥは背を向けたまま、そう呟いた。
その声は少し震えているように聞こえた。
…まぁ、あれだけボコボコにやられたら悔しくも思うだろう。オレだって何度ディスクを叩き割ろうと思ったことか。
(っしゃ任せろ!)
ハレはベッドから勢いよく立ち上がると、グゥの隣にドッカと座りグゥからコントローラーを受け取った。

グゥにもこういったゲームの面白さを教えてやらねば。
手本を見せてやるぜ、と言わんばかりにハレは手馴れた操作で次々にステージをクリアしていく。
ちらりと横を見ると、グゥはピッタリと寄り添ってゲーム画面を眺めていた。
(…なんかグゥも楽しそうだな)
いつも自分がゲームをやっている時は、暇そうに寝転がりながらぼーっとしてるか、いつの間にかそのまま寝てしまっている
ことがほとんどだったのに。よほどこのゲームが気に入ったのだろうか。
分厚い説明書とゲーム画面の間をキョロキョロと行き来するその仕草がなんだか可愛らしい。
グゥは眺めているだけだったけど、久しぶりに二人きりで遊んでいる感覚を覚える。
特にテレビゲームだと、はじめてのことかもしれない。ハレの身体を、奇妙な高揚感が包み込んでいく。
192満田人間ハレ24:2007/01/27(土) 00:21:04 ID:DbG4OfAo
その時、そんな場の空気を読まぬ下品な音が、ハレの腹の中からきゅぅぅと聞こえた。
「…なぁ、本当に何も食べなくていいのか?」
(うう…食べたいけど食べれないんだって)
…とたんに、思い出してしまう。先ほどよりも強くなった、空腹感。
1度意識するともうダメだ。くらりと、眩暈まで感じてしまう。
ゲームへの集中力もあっさり途切れ、瞬時にゲームオーバーを向かえた。
(…まだ早いけど、寝ちゃおう)
もう、とにかく寝て空腹感を忘れるしかない。
ハレはグゥにゲームパッド渡し、キッチンでガブガブとまた水を飲み空腹感を紛らわせると、そのままベッドに
ばたんきゅうと倒れこんだ。
「もう、寝るのか…?
 うぅ……おやす、み…………」
グゥの声がやけに遠くから聞こえる。
木陰でもずいぶんと長く昼寝を取ったものだが、それでもまだ疲労が抜け切っていないのか、ベッドに倒れこむと
すぐに頭に靄がかかり睡眠へと誘われて行った。
「オヤスミ……」
ハレはぽつりとそれだけを言うと、その意識は深く深く落ちて行く。
「…その声……やっぱり……」
最後にグゥが呟いたその一言も、ハレに届くことは無かった。
………
……


(ほああッッッ……!!!???)
突然、目が覚めた。余りにも、余りにも恐ろしい夢だった……。
ハレは本当に夢かどうかを確かめるためズボンの上をまさぐる。…どうやら夢の中だけのことだったようだ。
…少し、水を飲みすぎたか。ハレは、悪夢の元凶であろう下半身の疼きを…ぶっちゃけ尿意を取り去るためベッドから降りた。
時計を見ると、夜中の2時を回った所だった。4〜5時間は寝ていたようだ。
幸いと言うべきか、まだ頭がぼう、として眠気が取れ切っていない。トイレから出たらすぐにベッドに戻ろう。
「お、起きたのか?
 なあハレ、グゥにもこのゲームだいぶわかってきたぞ」
グゥはまだゲームをやっていたようだ。
照明の消えた暗い部屋にテレビの明かりだけが灯り、グゥの姿をこうこうと照らし出している。
ハレはその姿を見送りながら、足早にトイレに駆け込んで行った。
(…グゥ、結構あのゲームにハマったみたいだなー)
何だかんだ言って、グゥもかなりのゲーム好きだ。RPG系などは寝る間も惜しんで楽しんでいる。
それはグゥの腹の中にまで影響を与えるほどだ。…あのゲームの影響を受けた腹の中は、あまり想像したく無いな。
あの4人、大丈夫かな。とりあえずグゥにはホラーゲームはやらせないようにしよう…。

その身をキリキリと切迫していた尿意が消えると、また性懲りも無く喉が渇く。空腹感も蘇って来る。
ハレはトイレから出るとキッチンに向かい、また水で腹を満たす。
「ハラヘッタ……」
…声は、まだ戻らない。
冷蔵庫を意味もなく開ける。ラップに包まれたエビグラタンが憎らしい。
「あ、腹減っただろ?飯にするか!?」
ハレの声が聞こえていたのか、グゥはコントローラーを置くと遠慮がちにそう尋ねてくる。
その声は本当に心配をしてくれているようで、なんだか自分が悪者になったような気持ちになってしまう。
(減ったけど…食えないんだよ…ごめんな、グゥ…)
ハレはグゥに頭を下げるようにうな垂れ、ただ無言で冷蔵庫の扉を閉めた。

「な、なぁハレ。この手のゲームは一人でやっててもイマイチだな。
 やはり対戦が面白いのだろう?ハレもゲームの中くらいならグゥに勝てるチャンスもあるんじゃないか?」
グゥはふふん、と鼻を鳴らし、2P用のコントローラーをフリフリと見せ付けてくる。
…なかなか挑発してくれる。一朝一夕でこのゲームをマスター出来ると思うなよ?
格の違いを見せ付けてくれるわ!!…と、言いたいところだが、今は…本格的に体調が悪い。眠気も食い気も続行中だ。
(…明日一緒にやろうな…)
ハレは結局、そのままばたんとベッドに倒れこみ、また夢の中へと飲み込まれて行くのだった。
「…なんであんなことしか、言うないんだ…」
その意識が途切れる寸前、パチン、と何かを叩くような乾いた音が聞こえた気がした。
193満田人間ハレ25:2007/01/27(土) 00:22:33 ID:DbG4OfAo
<<5>>

(ン…良いにおい…)
心地良い、温かな光が窓から差し込んでいるのが見える。
どうやら、あのまま朝までぐっすり眠れたようだ。…尿意も大丈夫。
それよりも、なんだかキッチンの方から良い匂いが漂ってくる。母が帰ってきたのだろうか。
「あ、おはよう、ハレ」
ふらふらとまだ定まらぬ足でダイニングに入ると、快活な朝の挨拶が聞こえてきた。
「オ、オハヨ……」
その声につられ、こちらも思わず挨拶が口から零れる。
そこに母の姿は無く、エプロン姿のグゥが一人でテーブルに皿を並べている所だった。
そして自分の声はまだ変なままだった……。


「昨日、何にも食べてないだろう?こんなのでも口に入れないよりマシだろう」
まさか、グゥが朝食の準備をしてくれるなんて。やっぱり、何も食べない自分を心配してくれていたのだろうか。
そう思うと、心がチクリと痛む。
テーブルの上には、大小様々の皿が並び、それぞれが…似たような匂いを立てていた。
ってか、まさに昨日の朝食の再現といった様子だった。…となると、だいたい味の想像も着くが、気にしてはいけない。
グゥが料理を作ってくれただけでも前代未聞、空前絶後の大事件だ。

しかし、それを口にすることは出来ない…。
こんなことなら、1週間くらい変な声のまま我慢しても良かった。もう胃がどうなってもいいから、目の前の料理を食べたい。
もう、空腹感なんて消し飛んでいた。ただグゥの気持ちに応えたかった。
でも、食べてしまったら自分の身体がどうなるか解らない…情けなくて涙が零れそうになる。
せめてグゥが注いでくれた水だけでも飲もうと、コップに手をかけた。

「……なんで……」
(…え?)
「なんで、なんで食べないんだ!!どうして、水ばっかり……」
(グ、グゥ…)
ゴトン、と鈍い音が響く。突然の大声に驚き、床にコップを落としてしまったのだ。
コップは割れこそしなかったが、その中身はパシャンと床に飛び散った。
…グゥの声とはとても思えないくらいの大声。張り裂けんばかりのその声に、胸が詰まる。
そうだよな、せっかくグゥが作ってくれたのに、食べないなんておかしいよな…。
昨日の夕ご飯も、せっかく母さんが作ってくれたのに…。くそ、なんでこんなことになっちゃったんだよ…。
「ゴメン、グゥ…オレ、オレ……」
もう、恥ずかしいなんて言ってられない。今、グゥに声をかけなきゃ本当のヘタレだ。
ハレは、自分がせめてグゥにしてやれることを探すようにぽつり、ぽつりと言葉を重ねる。
「うるさい!その声でグゥの名を呼ぶなぁ!!」
(なっ……!?)
──が、その声は、なおも張り上げるグゥの叫声にかき消された。
…確かにこの声は変だけど、そこまで言われるとは思っていなかった。そんなにもグゥを怒らせてしまっていたなんて。
「飯を食わず、大量に水を飲む…。日中は日向で寝転び、夜は早く寝る。それに、それに口数も極端に…。
 これじゃ、これじゃ本当に………」
(…?)
グゥの、嗚咽にも似たその声はまだ止まらない。しかし、その言葉1つ1つに何か妙な違和感を覚える。
確かにグゥは、今まで見たことが無いくらい怒っているように見えたが、その怒りの理由は何か自分の知らないことのように思えた。
194満田人間ハレ26:2007/01/27(土) 00:23:48 ID:DbG4OfAo
「グ、グゥ?ナンノハナシダヨ?」
「しらばっくれるな!もうお前の正体はわかってるんだ!!」
…なんだか、話が変な方向に進んできている気がする。
保険医のやつ、ちゃんとグゥたちに自分のこと、伝えたんだろうな。
なんだか今のグゥにむやみに突っ込むのは怖いが、放っておくワケにも行くまい。
ハレは意を決し、その意思が伝わるようにゆっくりとグゥに話しかける。
「…オマエ、アイツカラハナシ、キイテルンダロ?」
「…ああ、聞いている」
よかった、ちゃんと答えてくれた。とりあえずこの調子でグゥを落ち着かせて、ゆっくり話を聞いていこう。
それにやっぱり、保険医からはちゃんと連絡が回ってるようだし……
「グプタから、お前のことはしっかりとな」
「グプタ?」
……回って、無かったようだ。
保険医、次に合ったらキャメルクラッチな。ラーメンになるまで折り畳んでやる。

「チョットマテ、オレハマンダ…」
「やはりそうか…!!
 グプタの言ったとおりだった。お前は、あのときの満田なのだろう…?」
「マ、マンダ…イヤ、エ?」
とりあえず、あのヤブ医者のことはどうでも良い。今はこの目の前の少女の暴走を食い止めねば。
あとグプタも次合ったらパロスペシャルな。腕がもげるまで。
とにかくグゥは、グプタからなんだか変な話を聞かされて、それをすっかり信じ込んじゃっているようだ。
グゥはいつもはすれたことばっか言ってるくせに、初めて聞かされることは素直にあっさりと信じ込むところがある。
さっきから会話が嫌な方向にガッチリ噛み合って、ますますグゥの中でその信憑性を高めているようだ。
この状況では、オレの言葉をまともにグゥの耳に届かせられるか不安だ。…この誤解を解くのは少し骨が折れるかもしれない。
「グプタカラ、ドンナハナシヲキカサレタンダ?」
「ふん、まだしらばっくれるか…。お前たち満田は人間の精神を乗っ取り、意のままに操ることが出来る…そうだろう?
 もう正体はバレているんだ、観念しろ!」
グゥは、わなわなと震える身体を押さえつけるように腕を組み、ダン!と椅子に片足を乗せると高らかにそんなことを言い放った。
…ごめんグゥ、それは無い。
昭和後期頃のひなびた農村でオカルトじみた細菌の研究してる看護婦でもそんな怪しい妄想は信じやしないぞ、多分。
「オマエ、ソンナハナシヲシンジタノカ…?」
「…グゥも、半信半疑だった…こうして目の当たりにするまではな」
いやもう、まるごと疑ってくれよ、そこは。半分も信じちゃったグゥの純粋さに乾杯したい。
ってかグプタのやつ、どんな話を聞かせたんだよまったく…。

とりあえず会話は成立しているようだし、それにだいたいどーゆー状況に陥っているのかも把握できた。
ここは満田に取り付かれたフリをしたほうが、早期解決を望めるかもしれない。
「フフフ…ヨクゾミヤブッタ!モハヤコノカラダハワレノモノヨ…」
「く…!!やはりそうか…!ハレを、ハレを返せ!!」
…うう、なんだこの不思議時空は。ありえないくらい恥ずかしいぞ…。
どうか誰もこの家の周囲1km以内に近づいて来ませんように…。
とにかくさっさとこの茶番を終わらせよう。信じてくれるか微妙だけど、自分で解決方法を適当に言うか。
「コノカラダヲトリモドスホウホウハ、ヒトツシカナイ!!ソウ、ソレハ……」
「知っている!」
(…えっ?)
わざわざ自分から解決方法を提示しようとすることは疑わないのかよ。なんて自嘲してもしょうがない。
どうやら、グプタから解決方法も聞かされていたようだ。困難な方法でなければいいんだけど…。
「マリィが教えてくれた。ハレをお前から開放する方法を…」
(マリィ!?)
いったい何人がこの茶番に絡んでるんだ…。この場を凌いでも後が不安になって来る。
一体マリィにどんな方法を聞かされたんだろうか。
「しかしそれは全て試した…ハレといっぱい喋って、いっぱい遊ぼうとした…それに手料理だって…
 マリィが教えてくれたのに…グゥは、1つもこなせなかった…」
(グゥ……)
グゥは、本当に悔しそうにキリ、と奥歯を噛み締め、その小さな身体を震わせていた。
…茶番なんかじゃない。グゥにとっては、これは現実のことなんだ。
それに、オレのためになんとか解決しようとこんなに真剣に努力してくれていたんじゃないか。
…マリィもまた、何かを勘違いしているように思えたが、気にしたら負けだ。
今のグゥを救えるのは、オレだけなんだ。早くこの無為な呪縛から解放してあげなきゃ。
195満田人間ハレ27:2007/01/27(土) 00:24:27 ID:DbG4OfAo
「ホントウニ、ソレダケカ…?」
「え…?」
「マリィカラキカサレタノハ、ホントウニソレダケカ?」
…なんでもいい。何かヒントさえあれば、オレはそれを実行する。
今のオレには、「火の中に飛び込め」と言われたら迷わずそうするだけの覚悟があった。
頼む、マリィから何か他にも聞かされていないのか、グゥ!
「…そうだ…マリィから教えられた一番大切なことをまだしていない…」
「ソレダ!イヤ、ゴホンゴホン!
 ……ホホウ、ソンナモノガツウヨウスルカドウカ、タメシテミルガヨイ!!ドウセ、ムダダロウガナ!!」
やった!さあグゥ、なんでも言ってくれ!火か?氷か?なんなら針山でも登ってやろうか!?
グプタを殴るとか、保険医を絞め落とすとかなら実に助かる!!

「それは、自分の心に素直になること。素直な気持ちを、ハレにまっすぐ伝えること…だ」
「エ────」

そう言うとグゥはおもむろに、胸に巻いている布をほどきパサリ、と床に落とした。
後には、下半身に真っ白な子供らしい下着を1枚着けるだけの少女の姿が残る。
「ハレ…グゥの素直な気持ち、受け取ってくれ…」
「チョ………!?」
意外!それは告白!!…じゃなくて!そ、そーゆー覚悟は出来てないぞ!!
ハレは思わず後ずさり、力いっぱいダッシュし玄関を飛び出した。
グゥもそれを見て、ハレを追う。
「やった!効いてる……!」
…なんて声が後ろから聞こえる。一応、解決に向けて進んではいるようだ…が、ここで止まるわけにもいかない。
とにかく力の限り逃げよう。せめて人気の無いところへ行こうとジャングルの道なき道をひた走る。
ちらりと後ろを見ると、先ほど床に落とした布をしっかと胸に抱いて追いかけてきているようだった。
…とりあえずホっとする。パンツ一丁で追い回されている姿を村民に目撃されたらどんな言い訳も立つまい。
「待て!!お前の弱点はもう解ってるんだ、おとなしくハレを解放しろ!!」
(ホントに誰かこの状況からオレを解放してくれ……!!)
もはやどこをどう走ったのか解らなくなっていたが、それでも無我夢中で走り続けた。
帰り道が不安だったが今はそんなことを考えてもいられない。
ちらりと後ろを見る。グゥはまだしっかりとついてきているようだ。あんな状態のグゥを撒いてしまうわけにもいかないので
あまり離しすぎないようにチラチラと後ろを振り返りながら走る。

「…アレ、グゥ?」
しかし何度目かに後ろを振り向いたとき、そこにグゥの姿は無かった。
どこも曲がってはいないし、ペースを上げもしていない。
たとえ先ほど振り返って確認したときと同じ位置で止まっていたとしても、見失うはずがない。
ハレは立ち止まり、きょろきょろとあたりを見渡す。
よく見ると、そこは周囲に木々が生えておらずほんの少しだけ開けた草原になっていた。
とはいえ、周囲はうっそうと樹木が生い茂るジャングル。その中から一人の少女を探すことは困難に思えた。
隠れる場所は山ほどある。でもオレが隠れるメリットはあるとして、何でグゥが───

「捕まえたぞ…」
「ヒィィィイ!!!??」

瞬間、ゾクリと、背後から冷たい声が突き刺さった。
その声と共に、首筋にひんやりとした手が触れる。
いつの間に移動したのか、グゥはハレの背中にぴったりと張り付き「もう逃がさない」と言わんばかりに、
その肩にかけた手にぐぐ、と力を込めて来る。
…忘れていた。グゥほど「神出鬼没」という言葉が似合うヤツもいないのだ。
さっきまでの追いかけっこも、グゥにとっては手ごろなポイントに誘い込むための作戦だったのか。
196満田人間ハレ28:2007/01/27(土) 00:25:03 ID:DbG4OfAo
「ハレ…今、助けてやるからな…!」
「チョ…ト、マッ…!!」
グゥはハレの肩にかけた手をぐいと引っ張ると、そのまま仰向けに押し倒しハレに馬乗りの状態でのしかかった。
ハレの眼前に、あられもない姿のまま大きく股を広げた少女の姿が映る。
たらたらと冷たい汗が額から流れる。心臓はバクバクと大きく脈打ち、全身が沸騰したように熱を発していた。
とても正視できる姿ではない。ハレは顔を手で覆い、なんとかその姿を目に入れぬように必死で身を固める。

「やはり、効いているようだな…。さぁ、さっさと観念してハレを返してもらおうか……」
(わー!わーー!!ちょっと待ってぇー!!)
そんなハレの心の叫びも届くはずも無く。グゥはハレを抱きしめるように、ぴったりとその裸体を密着させる。
「ハレ…聞こえるか、グゥの心の音。もっと、もっとハレにグゥの気持ち、伝えてやるからな」
グゥはそう言うと、何やらごそごそと身体を動かしはじめる。
何事か、と指の間からその様子を恐る恐る覗くと、ハレはいよいよその身体を凍りつかせた。
グゥはその身に着けていた最後の着衣を脱ぎ去ろうとしていたのだ。
「マテ、グゥ!モウイイカラ、ヤメテクレ!!」
「ふん…いまさら命乞いか…?」
何を言っても無駄なのか。グゥはその最後の一枚も脱ぎ捨てると、益々密着するように強く身体を絡ませて来る。
どうしよう、どうすればいいんだろう。何でこんな事になってしまったんだろう…
なんで…こんなことに…?

(そうだよ、なんでグゥはオレのためにこんなことまで…)
あまりに突然のことに、頭が混乱してそんなことも考えられずにいた。
今、グゥは自分の素直な気持ちを曝け出してくれている。
オレのために、こんなにも一生懸命に、こんなにもまっすぐにその想いを伝えようとしているんだ。
(…そんなに、オレのことを想ってくれていたなんて…)
「グゥ……」
自分の顔を覆っていた手を、開く。
グゥはいまだギュウと身体を抱きしめ、ハレ、ハレと小さく呟いていた。
「ハレ…お願いだ、帰ってきてくれ……ハレのいない世界なんて…そんなもの…!!」
「グゥ…!!」
トクン、と、心が高く跳ねる。鼓動が1つ高鳴るたびに、ハレの心に生まれた新しい感情が大きくなっていく。
まるでその鼓動に合わせるように、ハレは自分でも気づかぬうちにその身を持ち上げグゥを強く抱きしめ返していた。
「ハレ……?」
「…グゥッッ!!オレ…オレ……!!」
その気持ちが、恋だとか、愛だとかは解らない。ただ、グゥの気持ちに応えたかった。
ハレは腕の力を緩め、グゥの頬にそっと手を添えるとその眼を真摯に見つめる。
「ハレ…ハレなの、か…?」
グゥはその手に自らの手を重ね、震える声でそう呟いた。
ハレをまっすぐ見つめ返す瞳からはぽろぽろと大粒の涙が零れる。
「そうだよ、オレだよ、グゥ…」
「もう一度……呼んで…」
「…グゥ…グゥ…あれ、も、戻ってる……?」
いつの間にか、声が戻っていた。保険医の言ったとおり、本当に丸1日くらいで満田のガスが切れたってことか。
やっぱり、キャメルクラッチはやめにしよう。せめてカーフブランディングくらいにしといてやろう。

「ハレッ…!ハレの声だ…いつものハレの声…」
グゥは本当に嬉しそうに、また強く、強く抱きしめて来る。
その身体はどこを触っても生肌で、少し興奮の熱の冷めた今ではひたすら目と手のやり場に困る。
結局、グゥが泣き止みその腕の力を緩めるまで、ハレは両手を地面に着きその腕で上半身を支えた姿勢のまま、
グゥの抱擁にただその身を委ねるのだった。
197満田人間ハレ29:2007/01/27(土) 00:25:56 ID:DbG4OfAo
<<6>>

「すまない…グゥのせいで、こんなことになってしまって…許してくれ…」
「ゆ、許すも何も、オレ、ぜんぜん怒ってなんて無いよ!!
 オレの方こそごめんな…グゥがそんなに気に病んでたなんて、ぜんぜん気付けなくて…」
「ううん、ううん…謝るのは、グゥの方だ……でも、よかった…本当に…」
「グゥ……ありがとな」
結局あの後、特に何ごとか起こることもなく、二人は手を繋いで森を出た。もちろんグゥはちゃんと服を着ている。
ジャングルを抜けると、幸いにも見知った道に辿り着くことが出来た。それほど遠くには行っていなかったようだ。

「ところで…さ。その、オレの気持ち、なんだけど」
「…?」
ハレは横に並んで歩いている少女の手をきゅ、と強く握り、数度深呼吸するとある決意を伝える覚悟を決める。
しかしグゥにはまだ、よく解っていないようだった。
「いや、グゥの気持ち、受け取っちゃったからさ。オレも返事、返さなきゃさ」
「…何のことだ?」
「へ?」
一大決心を固め、今まさにその口から吐き出そうとしたハレの決意を根こそぎ削ぎ落とすような、あっけらかんとした声。
グゥは本当にきょとん、とした表情で首をかしげ、唖然とするハレの顔を眺めていた。

「いや、だから…グゥの素直な気持ちをね、受け取っちゃったから、ね?」
「…ああ、素直な気持ちか。あれは凄いものだな」
「す、凄いって?」
「うん、グゥにはよく解らなかったのだが、ああすればいいとアディとチェットに聞いてな」
「…………」
ガラガラと、ハレの心の中の何かが音を立てて崩れ落ちていく。
グゥってやつは…グゥってヤツはどーしよーもなくこーゆーやつなんだ。
結局また、オレの独り相撲なのか…いや、諦めるのはまだ早い。
あのバカップルに何て教わったのか、ちょっと怖いけど聞くだけ聞いてみよう。
「あのさ、アディとチェットに何て聞いたの?」
「ああ、グゥの素直な気持ちをハレに伝えるにはどうすればいいかと尋ねたのだがな…。
 裸になって抱きしめたら、あとはハレの方からなんとかしてくれる…と教えてくれたのだ」
「…あの色ボケカップル〜〜〜〜〜ッッ!!なんてことグゥに教えてんだよ…っ」
あの二人、今度あったら地獄の断頭台な。首が取れるまで。
「でも、本当にその通りになったぞ。ハレはちゃんと、戻ってきてくれたんだ」
「グゥ……」
グゥがそれでいいのなら、それでいいかと思えてくる。
でも、それならオレのこの気持ちはどこにやればいいんだろう。
結局グゥは、あの二人に言われたことをただ実行しただけなんだ。
「…グゥはホントはあんなこと、したくなかったんだよな。あのバカップルに言われたからしただけでさ…」
「ん、別にそうでもないぞ。ハレのためだったら、グゥは何でもやったぞ?
 …ハレがいないと、つまらないからな」
グゥはいつもの表情で、いつもの声であっさりと、そんなことを言った。
…それが本当の、グゥの素直な気持ち。
何のことは無い。グゥは毎日、いつもの調子でオレに素直な姿を見せて、素直な気持ちを伝えてくれていたんだ。
結局、どこまで行っても自分の独り相撲だったことには変わりはないけど、それでもそんなグゥの姿から自分の気持ちに
ケジメをつける勇気が沸いて来た。
198満田人間ハレ30:2007/01/27(土) 00:26:57 ID:DbG4OfAo
「それじゃ、やっぱりオレもグゥに素直な気持ち、伝えなきゃな」
「ん?なん───んム?」
ハレはその勇気がまた挫けないように、グゥをぎゅ、と抱きしめるとその唇を強く重ねた。
多少強引ではあったが、グゥに抵抗の意思は見られない。
ハレはそのまましばらく唇の感触を味わうと、すぐに頭を後ろに引いた。
「ぷは……な、なんだ、いきなり」
「これがオレの気持ちっ」
「…なんでこれが、ハレの気持ちなんだ?キスはただの挨拶だろう」
グゥはまだ良く解っていないようだ。
そう言えば、ずっと前に母からそんな話を聞かされていた。グゥはまだそれを素直に信じていたようだ。
…こうなれば、こちらも後には引けない。
「…それじゃもっと気持ちが伝わるような挨拶にする…」
ハレはそう言うと、またグゥの唇を強引に奪う。
それは先ほどのただ唇を重ねるだけのキスとは違い、口内全体を味わうような深いキス。
ハレの舌がグゥの中で踊る。グゥもその口の中に舌が入ってきた瞬間はその身を強張らせていたが、すぐに体の力が抜け
その舌の動きに合わせグゥからも舌を絡ませてくるようになった。
二人は何度か口内で舌を絡ませ合う感触を愉しみ、ぷは、と唇を離すと、その口内から名残惜しげに唾液が糸を引いていた。
グゥは唇を離したとたん、全身の筋肉が弛緩したかのようにハレにもたれかかり、はぁ、はぁと大きく肩で息をする。
その顔は真っ赤に紅潮し、肩越しにふるふると小さく震えているのが伝わってきた。
「こ…これも、挨拶…か…?」
「うん。でもこの挨拶は、グゥにしかしない特別な挨拶。それが俺の気持ち。
 グゥもこれからはオレだけにしてくれると嬉しいんだけど…嫌?」
「…特別…。ん…嫌じゃない」
「…ありがと、グゥ」
「で…こ、これはいつする挨拶なんだ…?」
「え?そりゃあ…挨拶だからね。おはように、おやすみに、いってらっしゃいに、ただいまに……」
「そ、そんなにか……」
「あとは、したいときに、ね」
「そうか…。じゃあ、今したい」
「ん…オレも」
そう言うとグゥは、つい、と顎を上げハレを求める。
ハレもそれを受け、グゥに誘われるようにまたその唇を重ねた。


「なぁハレ」
「ん?」
「もう1度、名前、呼んでくれないか」
「…グゥ」
「もう1度」
「グゥ〜グゥグゥ〜」
「それはやだ……でも、やっぱりハレの声だ。よかった」
その後も二人は何度もキスを重ね、一向に前に進まなかった足が見慣れたいつもの通学路を踏む頃にはすっかり夕方になっていた。
グゥはとろんとした表情でハレにしなだれかかり、ピッタリとくっついて歩いている。
ハレもそんなグゥの体重を全身で受け止め、グゥの歩みに合わせてゆっくりと歩を進めていた。

その時、ぐぅ〜〜〜っと、大きくハレのお腹が鳴る。
そう言えば結局、丸1日以上何も食べていないのだ。
「あはは、お腹もグゥのこと呼んでる」
「うん」
「帰ったら、いっぱいご飯食べような」
「うん」
「ご飯食べたら一緒にあのゲームやろ。
 コツさえ覚えたら、グゥだってすぐ上手になるよ」
「うん」
ハレの声をその身体に染み入らせるように、グゥはただ静かに耳を傾け頷く。
家路に着くまでの、まっすぐな一本道。
それはまるで二人のために用意された道のように、優しく、温かな朱色にどこまでも、どこまでも照らし出されていた。
199満田人間ハレ31:2007/01/27(土) 00:27:37 ID:DbG4OfAo
「おー、やっと見つけたぜハレ!!」
…と言う訳にもいかないようだ。ったく、こんな時くらい空気を読めと言いたい。
しかしハレのそんな心の声は誰に届くことも無く。その声を契機に、遠くからガヤガヤと大勢の騒ぐ声と足音が聞こえた。
「グプタ…?それにみんなも、どうしたの?」
「あたしが呼んで来たの。昨日はごめんね、皆でハレのこと笑ったりして」
「…ほんま、悪かったな、ハレ。あんな怒るとは思ってなかってん」
「あははは!ごめんね、ハレ〜!」
「ごめんなさい…私、止めなきゃならなかったのに」
「え?あ、ああ、みんなもういいって!別にもう気にしてないって〜」
突然、皆が口々に謝罪の言葉を並べて行く。
あまりに唐突でとっさに状況が把握出来なかったが、なるほど昨日の教室でのことか、とすぐに理解した。
別にあの時、特に怒ってもいなかったのだが…なんだか、自分のいないところでまだ誤解の輪が広がっている気がする。
「うふふ…その分だと、満田、ちゃんと退治できたみたいね、グゥ?」
「うん…ありがと、マリィ」
言いながら、マリィはグゥに目配せするようにパチンとウィンクをする。
どうやら、昨日のグゥの行動は主にマリィのアドバイスによるものだったようだ。
…やはりグゥとマリィの間で認識が食い違っている気がするが、こうやって解決したのもマリィのおかげだ。
ハレも心の中でありがとう、とお礼を言う。

「なんだグゥ、あの話信じてたのかー!?ばっかでー!」
「…ちょ、グプタ?」
「な、何言ってるのよグプタったらー!!今はその話は…っ」
「なんだよお前らまで…俺ってわりと創作の才能あんのかな?」
そんな中、先ほどから空気が読めてない男が一人、せっかく静まった場に再び波風を立てるようなことを言う。
マリィも懸命にその口を閉ざそうとがんばってくれたが、すでに遅いか。
グゥの表情が見る見る「いつも」の…いや「いつも以上」のソレに変貌していくのが背中越しにでもはっきりと解った。
ハレの背中に、かつてないほどの悪寒が駆け抜けて行く。
「いやー、グゥがあんな真剣に聞いてくるもんだからよ、つい熱が入っちまったぜー!
 あんなグゥの表情、はじめてみたよ、俺」
「…………………………………………ふぅん」
やめろ、グプタ!それ以上言ったら明日と言う日を拝めんぞ!!…と声に出す力ももはや無い。
他の皆はすでに、拝むように手を合わせ早くもグプタの冥福を祈っている様子だ。
オレもせめて、きっちり成仏出来るように看取ってやるからな、さようなら、グプタ…。

彼がそんな、自らの過ちに気付いたのは、どの瞬間だったろうか。
その身に受ける衝撃により意識が消失するより先に、その目がグゥを捉えてしまったのなら、…気の毒と言う他は無い。
何故なら、グゥのあんな表情はオレですら、はじめて見るものだったのだから。

「そう、それじゃあもう1つ、グプタの知らない表情を見せてあげようかな…?」

瞬間、全ての音が消えた。ハレ自身も、クラスの皆も、ジャングルの生物たちまでもが静まりかえったような静けさ。
その深い静寂の中、グプタのこの世のものとは思えない悲鳴のみがどこまでも、どこまでも木霊するのだった。
200満田人間ハレ32:2007/01/27(土) 00:28:50 ID:DbG4OfAo
<<ep>>

「あらハレ、おっかえりー…って、いきなりアツアツねあんたら」
「ぷぁ……いや、これはただのおかえりの挨拶。な、グゥ」
「うん。次はおやすみだな」
「ね、母さんにもしてよぉ〜。ン〜ッ」
「…だめ。ハレとだけするの」
「んもう、けちっ!」
「……なんか君ら見てると、僕がおかしいのかと思えてくるんだけど…?」
「保険医も別の意味でおかしーから大丈夫だよ。それより母さん、テーブルの上にあった料理、どうしたの?」
「えー?母さんとっくに食べちゃったわよ?美味しかった〜っ」
「そ、そんなあ〜。オレまだ一口も手つけてなかったのにー!」
「何よ、残したら勿体無いじゃない?」
「華麗にスルーしてくれんな…。ったく、その声が戻ったの誰のおかげだと思ってんだ」
「あ、そーいやそーだったね…ありがと、保険医。あの薬よく効いたよ」
「ンなとってつけたよーな礼なんぞいらんわっ!で、いつ頃元に戻ったのさ」
「えっと、今日のお昼前くらいかな。だいたいちょうど1日くらいだったよ?」
「マジかよ…このジャングルの生物ってやっぱわけわかんねーな…」
「…保険医?何の話かな?」
「あ…いや、なんでもねーよ?いやーよかったなー息子よー!あははは!」
「なぁ、保険医?もしかして、だけどさ…
 ほっといたら1週間かかるとか、メシ食ったら胃が壊死するとか…全部嘘だったりしないかな?」
「そ…!そそそんなわけナイッショ?」
「ただオレに嫌がらせするために、メシ食っちゃダメとかてきとー言ったんじゃないかなあ?」
「いやいやいやあれはちゃんと家に帰ったらネタバレするつもりだったんだって………あ…」
「ふ〜〜〜〜〜ん?」
「いやだから、ちょっとした親子のスキンシップじゃないの!なあ息子よ!あははは!!」
「こ………ンの……………
 馬鹿保険医ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

「一応治ったんだからいーだろ!!」
「胃腸薬で治るんだったらほっといてもすぐ治ったわ!!お前のおかげでめちゃくちゃ大変だったんだぞー!!」
「ちょ、ギブギブギブギブ!!!これDV!ドメスティックバイオレンスだよ!!」
「な〜に言ってんだよ保険医〜!?これもちょっとした親子のスキンシップじゃろがい!!」
「うふふ、こうやって見ると、親子って感じよねー」
「いやいやウェダちゃんノンキに見てないで!!このままじゃ明日のワイドショーのネタになっちゃうから!!」
「はーいはい、二人ともそれくらいにして夕飯手伝ってね」

「あら何これ?エビグラタンじゃない!なんで残してんのよ〜っ」
「…あ、そーだグラタン!食べる食べる!オレ夕食それでいいよ!」
「なによ、ハレはグゥちゃん作ったほう食べたんでしょー?」
「…え?」
「名前書いてたでしょ、グゥって。あっちがグゥちゃんが作ったほう。」
「グゥが作った…って…え?じゃあ…今残ってるの、グゥが作ったやつ…」
「え、なんで?名前書いてないよ?」
「オレ、取り替えたんだ。ラップ」
「…はぁ?何でンなことしたの」
「別に深い意味は無かったんだけどさ…でもそのおかげでグゥのグラタン食べれるよ!昨日のオレに乾杯!」
「…食べちゃダメ」
「な、なんで!」
「2度もあっためなおしたものなんて、美味いわけないだろ。それでなくとも…失敗作だったんだ。
 グゥが自分で食べようと思ってたのに…」
「…んだよそれ、グゥがオレのために作ってくれたんならオレのもんだろーっ」
「どうせなら…出来たてのアツアツのやつを食べればいい。次は絶対美味しく作る」
「…え?じゃあ…」
「それくらい、いつでも作ってやる」
「グゥ……」
201満田人間ハレ33:2007/01/27(土) 00:29:36 ID:DbG4OfAo
「いらないの?じゃ、これ私の夕ごはんにしよっと!」
「あ!ん〜……やっぱり一口…」
「食べちゃダメ…!」
「…う〜……っ!母さん!早くご飯作ってー!」
「はーいはいはい、そんな大声出さなくても聞こえてるわよっ」
「ふんだ、昨日はぜんぜん喋れなかったから今日はめいっぱい声出すのっ」
「…そうだな。グゥも、昨日の分までハレの声を聞かないと気がすまないぞ」
「……?なんか解んないけどま、いっか。二人とも今日も仲良しさんね、結構結構!」


「よーし、それじゃ腕によりをかけて………
 っと思ったけど、ごめん、母さん急にお腹の具合が…」
「なんだよー、夕飯前に…なんか変なものでも食べたの?って、冷蔵庫の中、満田だらけじゃん!
 母さん、狩りでいっぱい捕ってくるって満田のことだったの?」
「あー、ごめんなさーい。母さん狩りの前にも、今みたいに急にお腹ゆるんじゃってさー。もう大変だったんだからー」
「それでも、ホントに満田しか入ってないよコレ…そーいや昨日、冷蔵庫の中整理しちゃったんだったっけ…。
 あれ?…ってことは今日の朝ごはんは?…グゥ?もしかして昨日、グゥが食べたってか飲み込んだやつ…?」
「…てへり☆」
「……!どーりで見たことあるわけだ!!昨日の朝ごはんみたい、じゃなくてそのものだったんじゃん!
 お前なー、なんてもん食わせよーとしてくれたんだよ〜」
「…何でもいいから、ハレがなにか食べないと身体に悪いと思って……」
「あ……ご、ごめん…グゥの気も知らないで、オレ……」
「ううん、いいんだ…もともと、グゥのせいでこんなことになってしまったんだから…」
「そんなことないよ!あんなの、いつもの冗談じゃんか!
 オレが…オレが保険医なんかの言うこと素直に聞いちゃったばっかりに……!!」
「えぇー?そこで僕が出てくるの?なんか酷い言われようだなぁ…」
「っさい!保険医が全部悪いの!!」
「あ〜〜〜はいはい悪かったワルかった!僕が悪うございましたよ!!」
「ったくもう…しょうがない、レベッカのとこに食料分けてもらいに行って来るよ」
「グゥも…」
「…うん」

「なるべく早く帰ってきてくれよー、僕も人並みに腹減ってんでね」
「…何?なんか言った?」
「…イエー?ナンニモー?」

「いこっか、グゥ」
「うん」
「そうだ、今日のご飯、手伝ってよ!一緒に作ろ!」
「うん」
「あとさ、さっきも言ったけど、ご飯食べ終わったらあのゲームやろうね。
 対戦も面白いけど、協力プレイってのがまた熱いんだよ」
「うん」
「…グラタン、また作ってね。オレ楽しみにしてるからさ」
「…うんっ」


「…何?これで終わり?僕のフォロー無し?
 このままじゃこの家庭内で僕の地位、かなりヤバくなってないかー?」

(今、この家庭内で一番ピンチなのは間違いなく母さんよ……!!…うぅ……)

END
20261:2007/01/27(土) 00:33:17 ID:DbG4OfAo
終了です。また長いすねorz
とりあえず、グゥを躍らせてみるテストってことでw
203名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 00:34:45 ID:zQpWsHRQ
GOD JOB!!!!!
204名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 01:30:45 ID:cEs+NhIO
61氏のお陰で夜も眠れない……
寝るより読む方が遥かに楽しくなってしまうじゃないか…!
あぁもう、ありがとう…!!

ネタが豊富で素晴しいと思いますた。
てかこの文章力ただ者じゃないでしょうw

無駄に濃密な三年間に笑いました。GOD JOBでした。萌でした。
205名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 22:26:46 ID:aEecqLiG
2話キター!!と思ったら「合間に思いついたネタ」の表記が。
このクオリティで合間に思いついたネタ?あんた凄すぎるよ… (((( ;゚Д゚)))
俺も>>204と同じく寝られなくなってしまった…
通勤途中にも、電車の中で(携帯で)読み返してしまったよw

マリィと遊んだとかそういう事でも、
自分からハレに言うなんてグゥにとってはかなり勇気がいる事だろうなぁ。
ハレのために一生懸命なグゥに激しく萌えた( *´・ω・) ハァハァ
206名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 00:06:02 ID:5BKfrOKa
今思ったんだけど、「踊らせるためのテスト」って事は
これから踊らせるって事ですか…!?ハァハァ
207名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 04:08:16 ID:dAKzC9nI
ご感想どもです。もっとコンパクトにしたいすね…。
>>206
グゥが他人の言に惑わされるお話ってことでw
後日談的エロも考えてはいるんですが…かなりアレな展開になりそうなので期を見つつ書かせて頂きたいかとw

ところで、上のほうで前スレの話題が出ていましたよね。保管庫見つけたので張っときますね。
ハレグゥネタは「ガンガン系コミックの部屋その1」にあります。
ttp://adult.csx.jp/~database/index.html

結構賑わってたみたいですねー。
まだ半分も読み終えてませんが、良い刺激になりますです。
208名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 02:09:06 ID:ncokwIhf
前スレ懐かしいなー。
読みたいんだけど、飛んだら出会いサイトに行ってしまったっすorz
自分が初心者なだけですかね…

でも前スレ生き残ってたみたいで何よりです。お楽しみ下され。
209名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 17:17:00 ID:iKXr8G7h
サニィ×ハレの続きギボン
210名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 20:40:51 ID:c8QnVhA0
前スレの続きはちとキツイんでハレ女体化ネタで良ければ別ネタで
でもサニィって名前は良いね。絶妙
211名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 20:51:30 ID:iKXr8G7h
>>210
ぜひお願いします!
212名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 23:43:23 ID:ncokwIhf
サニィ懐かしい…!今思ったんだけど、ハレだからサニィなのか(遅)

すいませんが、どなたか前スレの行き方を教えて下さい…orz
213名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 23:52:33 ID:c8QnVhA0
ttp://red.ribbon.to/~eroparo/comic-gangan.html
直リンOKなのかな?
どこにも禁止とは書いてないようなので張らせて頂きますw

ttp://72.14.235.104/search?q=cache:D-iWP9qQg_4J:2ch.dumper.jp/0001022320/+%E3%82%B5%E3%83%8B%E3%82%A3+%E3%83%8F%E3%83%AC%E3%82%B0%E3%82%A5&hl=ja&ct=clnk&cd=1&lr=lang_ja
ついでにぐーぐるキャッシュ見つけたので・・・438までしか残ってませんが。
SSは保管庫のほうが見やすいですがやりとりが見れるとまた趣が違うもんです。
214名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 03:31:57 ID:m2ksgPc4
サンクスです!
いやぁ、懐かしかったわぁ…。
同時に自分のも発見してえらく自己嫌悪に陥ったり…orz

全部載ってないのが残念。でも面白かったっす。サニィいたしw
215名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 22:38:44 ID:VKf1sDFg
このスレの途中から見始めたので、過去の作品が読めるのは大変ありがたい!
本当にありがとうございます。( *´・ω・)
まだ全部読んでないけど皆すごいなぁ〜。俺にはとても書けんw
サニィにはワラタ。ハレだからなのかな?とは思ったんだが、まさか本当にそうだったとはw

関係ないけどHare=野ウサギって意味なのね。(発音違うけど)
やっぱり、寂しいと死んじゃうんだろうかw
216名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 01:02:17 ID:RIJnKsDG
でもなんか金田一氏が最初に使ったスペルはHaleとGooだったよね。
Haleは「元気な、達者な」って意味があるけど、普通に「晴れ」なのかなと
推測してみたり。あと「非日常」の意味もあるそうな。
Gooは「めそめそした、感傷的な、センチメンタル」みたいな意味があるらしいが、
別の国の言葉では「虹」という意味もあるらしい。

ハレもグゥもあてはまる意味ばかりでどれが本当なんだか…w
アニメでは外国向けにあまり意味のないスペルにしたんだと思う(Guuとか)

ワジとかグプタとかウイグルとかラヴェンナとか、色んな世界の言葉が出てくるよなぁ。
小さな世界ハレのちグゥ。

…しまった長くてスマソorz
217名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 00:23:22 ID:lyoWjLyE
Guoooo節分ネタ間に合わず!今日中になんとか…っっ

>>215-216
ホントぴったりな意味ばっかですねー。
「虹」って良いなあ。いろいろ考えちゃってそれだけですごい萌えるw
そう考えるとハレとグゥって名前レベルでものすごい相性良いのねぇ。
ハレやグゥもそうだけど、他の面々の名前も他に聞いたこと無い名前ばっかですよね。
みんな名前に合ってるし覚えやすいし。結構そこって関心してたり。
SS書き出してから、全キャラの名前をそらで言える自分に気付いたりしましたよw
218名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 00:32:54 ID:ilS+n9zy
辞典とかで調べてみると結構キャラの名前が出てきまつ。
例えばワジは「涸れ川」。砂漠で一時的にできる川の事だそうな。地理用語…。

虹はどこの国か定かじゃないんだけど、どっかのHPで見ました。
センチメンタルは確かっす。検索して妙に萌えた覚えが…w
関係無いけど、虹説に萌えて「グゥは本来名前がなくて、ウェダと初めて会った時名前に詰まって
憧れてた鮮やかな虹(初っ端?のグゥ的怪物は黒かったから)を思い出してグゥと名乗った…。」
なんていう詩もどきを書いた事があったりします。

ネーミングセンスも金田一氏のウィットが窺えるところですな。
219枕小ネタ:2007/02/04(日) 01:07:07 ID:P0Xp/niK
「おい、グゥ……グゥ? どこだ?」
「ここ、ここ。どこに目をつけておるのだね君は」
「……また枕になってんのかお前は」

半身を起こして枕から頭を離し枕を見やると、枕カバーからにゅっと頭を出したグゥと
バッチリ目が合った。
ここ数日、グゥはずっと枕になっている。理由? 俺が知るかよ。
こいつの行動原理なんか知らんし、知ったところでオレの理解を超えているだろうし。
ギリギリ理解できるところで言うと、こいつは常に快楽原則に生きてる事と、オレの
困った姿をウォッチングする事を楽しみにしている事くらいか。

「居候の身やし、分を弁えなくてはな」
「別にそんな、自分を卑下する事ないだろ……」
「保険医の所為でベッドが狭いとぼやいていたのはハレではないか」
「今日は母さんも保険医もいないんだし、こっちで寝たらいいだろ」
「まあまあ、グゥの事はお気になさらず」

気にならないわけがないだろうが。
ついさっきまでサッカーをして遊んでいた空き地が実は地雷原だと知ったら、怖くて
そこから一歩も動けなくなってしまうだろう。
人間の恐怖というのはそうした認識から始まるもので、要するにオレが頭を預けていた
枕が実はグゥだったと認識してしまった以上、とても心穏やかではいられない。

「居候だって何だって、お前は別に遠慮なんてしないだろ。特にオレに対しては」
「そうでしたかな? グゥはいつも家主に対する礼儀は忘れてはいませんよ」
「礼節を弁えたふりをしてもダメだ。ほら、こっち来いってば」

オレがいくら促しても、グゥは枕カバーに包まったまま動こうとしない。
グゥに何か企みがある事は明白だ。このまま枕にさせておくのは危険すぎる。
いや、もしかしたらこうやってオレに警戒させておいて実は何もせず、神経すり減らして
グゥを警戒しているのが杞憂に終わった空振り感で虚脱させるのを狙っているとか。
いや待て待て、グゥならオレの裏の裏の裏をかいてくるに違いない。絶対そうだ。
裏の裏の裏の裏は要するに表だ。多分今夜は正攻法で攻めてくる。
なら、オレはオレでそういう方法を取らせてもらおうじゃないか。
220枕小ネタ:2007/02/04(日) 01:07:41 ID:P0Xp/niK
「おいグゥ……今、お前は枕なんだよな」
「ああ、実に居候に相応しい姿ではないかね」
「枕だったら、こういう事されても文句は言わないよなっ」

オレはグゥを引き寄せると、全身を使って抱きしめた。そう、抱き枕だ。
今グゥは枕になっていて、文字通り手も足も出ない。オレが寝た後に何かを仕掛ける
つもりなら、身体を包んでいる枕カバーを取り去ろうとするはず。
ならば先手を打って枕カバーを外せないようにし、枕のまま何も出来なくしてやればいい。
枕のグゥを力一杯抱きしめながら、オレは今回はグゥに勝てるという予感を感じた。
一晩中これなら、さしものグゥも何も出来まい。

「枕は頭の下に敷くものではないのか?」
「抱き枕っていうんだよ、こういうの」
「そうか」

グゥは何やら納得したように頭を振ると、暫くオレに抱かれたままでいた
……かと思ったら。

「ふん」
「おぐぅっ!?」

突然のヘッドパッド。鼻面にグゥの額が直撃し、鼻血が吹き出る。
オレは思わずグゥを抱きしめる手を緩め、グゥはころころ転がってオレの手から逃れた。

「な……何しやがる……」
「グゥだけが一方的に抱かれているのは不公平だとは思わんかね」
「はぁ……?」

グゥは枕カバーを取り払うと、身体をくの字に曲げて呻くオレに抱きついた。
突然の行動に戸惑うオレに、グゥは囁きかけた。

「グゥを抱き枕にするのなら、ハレもグゥの抱き枕になれ。これでこそ五分と五分」
「家主への礼儀はどこ行った」
「グゥがハレを敬っているなどと本当に思っていたのか……ハッ」

よりにもよって居候が嘲笑しやがったよ。
221枕小ネタ:2007/02/04(日) 01:09:07 ID:P0Xp/niK
「どうした。グゥを抱きしめないのか」
「い、言われなくてもそうするよ」

改めてグゥの体を抱きしめる。
さっきはグゥに勝とうと躍起になっていたし、枕カバー越しだったから気づかなかったけど、
グゥの身体はちゃんと骨が入っているのか疑わしいくらい柔らかくて、ふわふわしてる。
綺麗な白い髪も、何だかいい匂いがする。何ていうか、凄く安心する匂いだ。
こういうのが女の子なんだろうか。まさかグゥに『女の子』を感じる日が来るとは……。

「抱き枕というのはキモチイイな」

耳元で囁くグゥの声。訳もなくドキッとしてしまうような、そんな声。
いつもの抑揚のない声が、酷く艶めいて聞こえた。

「へ、変なイントネーションで言うなよ」
「あらあら、照れてますよこの坊ちゃん」
「うるさい」

完全に見透かされてる。全く、グゥには何でもお見通しか……。
でもここで負けを認めるのも癪だから、オレは何も言わずにグゥを抱きしめる力を強めた。
すると、グゥもそれに応えるかのように、強く抱き返してきた。
オレの胸に顔を埋めて、ギュッと。

「……ハレの抱き枕はキモチイイ」

そんな事を呟いてるグゥの顔は、オレからは見えなかった。
油断してるとついうっかり

(お前も、凄くキモチイイよ)

とか何とか口走りそうなオレをなだめすかして、オレは眠りにつこうと努めるのだった。



まあ結局、一睡も出来なかったけど

……また、たまになら。
222名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 01:11:42 ID:P0Xp/niK
グゥ枕ってよく考えれば物凄く羨ましい。

関係ないけど、最近リュウケンドーの2ndEDの「ビューティフル」が
ハレを慰める曲に聞こえてきたオレはもうダメかもしれない。
223名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 01:13:12 ID:lyoWjLyE
あの真っ黒い怪物が、グゥの誕生シーンだと思ったらかなり萌えるものがあるのですが。
最初にハレを飲み込んだことでその記憶やら潜在的なハレの(外面的)理想像を読んで、あの姿に…みたいな。
そうなるとグゥはもはやほとんどハレのために存在することに…ハァハァ

しかし誠一とともよの存在がどうにもそのへんを怪しくさせるw

まあ誠一とともよを飲み込んだときはまだ真っ黒だったと考えても矛盾は生じないのですが。
ああ、そう考えると、名前はあの場で決めたって説はワリと信憑性があるかも。
誠一の「正式な名前は知らないけど、お前がこう呼んでたよな、グゥって」あたりの台詞とか、
最初は「アイツ」扱いだったりとか。

ああ。勝手に想像してまた勝手に萌えてきたw
224名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 01:21:35 ID:lyoWjLyE
うぉぉーあぶな!!危うくレスをはさんでしまうところだった・・・

>>222
…萌え死んだ。素直に萌え尽きたわ…しかし本望…
3度くらいその手があったかと心の中で叫んだっすw
ハレグゥの萌え所はまだまだ発掘途上だと思わせてくれる一本でした。
やる気もあっちもおっきおっきですよ。俺もがんばらねば。
225名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 00:10:52 ID:CqFEJaTQ
やばい!今頭の中で、「もし、グゥがふつうの女の子だったら」という
ifストーリーがめくるめいて、えらいこっちゃなことになってる!
226名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 00:26:42 ID:wzg02MW6
>>219-221
GJ…!!
何度も読み返して萌え死にました。( *´・ω・)ハァハァ
自らハレに「抱きしめないのか?」と言ってしまうグゥ様とか、
一睡も出来なかったハレとか、色々と妄想が膨らんでしまったよ…

>>225
「何処にでもいる普通の女の子のグゥ」って全然想像つかないんだけどw
もし仮にそうだった場合はたぶん、ハレが「色々と」大変な事になってしまうのではないかとw
227名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 00:34:58 ID:NP+2IN5b
グゥがハレと初対面の状態が素だとしたらハレはどうなってしまうのかw
おはちゅーとかビバノンノンとか腕の痛みをそのままやられたらえらいことに
228名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 01:56:49 ID:v7PuNncV
特殊能力故に今まで忌み嫌われてきて、ハレの側にいたいがために
普通の女の子になろうと必死なグゥ…とかならまた萌える。
229名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 17:38:43 ID:CqFEJaTQ
>>228
や、やばい。燃え尽きて、いや、萌え尽きてしまう!
230ハレとグゥと異世界のグゥ:2007/02/06(火) 01:37:37 ID:UzkT2abB
朝起きたらそこは異世界でした、なんてのが通用するのは二次元の世界のみ。
現実世界でそんなおかしなこと言ってる奴がいるとすれば、そいつは妄想癖があるか
妄想しか出来ないような奴だ。

……と、そんな風に思っていた時期が、俺にもありました。

何故過去形かって? そんなもん決まってるだろ。
今オレのいるこの世界こそ、オレにとって紛れもない異世界だからだ。



さて、何から話せばいいのやら。
昨晩、オレはいつものようにグゥにおちょくられ、暗澹たる気分で一日を終えようとしていた。
家の外では友達や大人に気を遣い、家の中では破天荒な家族や居候に翻弄される。
こんな夢も希望も安らぎもない生活に一時安息の時間を与えてくれるのが、オレにとっては
ゲームと睡眠だった。現実逃避と笑わば笑え。こうでもしなきゃやってられないんだ。
だが、最近は夢にまでグゥが出てくる。オレはもうおしまいかも知れないという漠然とした、
しかし大きすぎる不安を抱きながら、オレはベッドに横たわった。

「……せめてグゥがあんなんじゃなければなー……」
「ほうほう、あんなんとはどんなんだね」
「こんなんだよ。今オレの安眠を妨害すべく迫ってくるこんなんだよ」

今年度オレの頭痛の種ランキングベスト1が、いつものしたり顔の薄笑いと抑揚のない声で
オレに絡んでくる。こいつに絡まれてろくな結果になった試しはないが、こいつに反抗して
ろくな結果になった試しもないので、オレは半ば諦めている。
だが人間疲労がピークに達すると口が悪くなるもので、オレはいつもは言わないようなことを
自然と口にしていた。

「あーあ、グゥが普通の女の子だったらいいのになー」
「普通……?」
「そーだよ。優しくて可愛くておしとやかで、飯の支度手伝ってくれたりして、それで……」
「要するに、自分の境遇を肯定し受け入れる為に道連れが欲しいのだな」
「道連れでも何でも構うもんか。あーあ、ホントにオレの周りにはろくな女の子がいないよ。
 マリィは思い込みが激しいくせに行動力だけは人一倍でいつもいつも暴走してるし、
 母さんはあの通りのグータラだし、ベルは少年誌で描写するには少々微妙なアレだし、
 ラヴェンナは普通と見せかけてやっぱり変だし、ラーヤは気がつくと背景に紛れてるし、
 ウチの居候、つまりお前は言わずもがな……」
231ハレとグゥと異世界のグゥ:2007/02/06(火) 01:38:08 ID:UzkT2abB
……何か、自分で言ってて悲しくなるな。
少年時代をこんな環境で過ごしたオレはどんな大人になっちまうんだ。

「保険医に輪をかけて元気で先走った大人になるのですよ、イェァー」
「何がイェァーだ」
「将来誰に刺されるのか、楽しみでなりませんな」

こいつ、という選択肢はまず有り得まい。
こいつは女の子かどうか以前に、ホモサピエンスであるかどうかすら疑問視してるくらいだ。
少なくともこのジャングルでは人間その他を丸呑み出来る奴を人間にカテゴライズする
風習は存在しない。
恋愛対象になどなるわけがないし、刺されるとしたらやはりマリィか……
いやいやいやいや、オレは何浮気を前提に将来の刃傷沙汰の心配なんかしてるんだ。
オレは保険医とは違う、そうだろ?

「とにかく、毎日こんなんじゃ心休まる暇もないよ」
「ネタ的には一番オイシイ役どころではありませんかね」
「うるさいな……全く、どうしてグゥなんかウチに来たんだか。ただでさえ一杯一杯だったのに、
 負担が増えてたまったもんじゃないよ。俺にばっかり働かせてさ……」
「……そうか」

急にグゥの声が寂しげなものに変わったので、オレは一瞬焦ったが、すぐに演技だと判断して
グゥに背を向けてタオルケットを被った。
普段感情を表に出さないグゥが寂しそうになんかすると過剰に心配してしまうが、これは
普段横暴なジャイアンが映画でいい人になったりすると、物凄くいい奴のように思えてくる
アレに過ぎない。こうやってグゥはオレの心を乱してつけ込んでくるんだから……。

≪Maximum Hare Goo Power≫

今日こそ騙されない、騙されないぞ……ってアレ? 何か変な声が……

≪Seiichi Power≫≪Tomoyo power≫≪Hiroko Power≫≪Goo(大) Power≫

……何か、凄く嫌な予感がする。
232ハレとグゥと異世界のグゥ:2007/02/06(火) 01:39:03 ID:UzkT2abB
≪All ××××(自主規制) Combine≫

どっかで聞いたことあるよね、これ。そう、毎週日曜朝8時辺りから……
恐る恐るグゥの方を見やり……やっぱ見ない方がよかったと、オレは後悔することになる。
後悔した点は二つ。
まず一つに、グゥが身の丈ほどもありそうな金色の剣を振りかぶっていたこと。
そしてもう一つ……あのグゥが、泣きそうなくらい顔を歪めていたこと。

「グゥが嫌いなハレなんか……」
≪Maximum Chinchikurin Typhoon≫
「……別の世界に、行っちゃえ」

……何で、そんな泣きそうな顔、してるんだよ。
やがて、振り下ろされる剣――多分ちんちくりんステッキ――が視界一杯に広がった瞬間、
オレは意識を失った。



そしてオレは今、どうも異世界にいるらしい。






スマソ、眠いので続きはまた後日書くわ。
233名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 19:34:01 ID:X41KN50C
期待
ていうか言い回しが笑えた。ラーヤなんか特にw
234名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 21:38:52 ID:KAYql5HW
なんつうところで切るかw
続きが…続きがああああああっ
235名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 23:37:25 ID:D08/Gbyt
ジャングルよりwktkをこめて
236名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 23:39:26 ID:MLX93PQ/
どんな世界に飛ばされたかで激しく萌え所が変わるな
続きに期待
237名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 20:45:44 ID:6AeT7RaL
1週間遅れの節分ネタ。
またまた長いです…。
偏った嗜好のエロ入ってるのでご注意をば。
↓から投下します。
238節分SS01:2007/02/09(金) 20:47:13 ID:6AeT7RaL
<<1>>

「あ〜〜〜〜暇だな〜……」
携帯ゲームの電源を切り、大きくベッドの上で伸びをするとごろんと寝返りを打つ。
ふかふかのマットに手触りの良いシーツ。洗い立てなのか、爽やかな石鹸の香りが鼻腔をくすぐる。
その質感も、その見た目も、自分の家のベッドのそれに比べずっとずっと高級なものに感じられる。
でもオレにとってそれはあまり居心地の良いものじゃあ無かった。
目を瞑ると、ジャングルの熱気やせせこましい我が家の情景がありありと脳裏に蘇る。

「今度はいつまでここにいるんだろな〜…」
誰に言うでもなく、ぽつりと呟く。
ここはフィアスティン家。これで何度目か、いつもの母さんの突然の思いつきで、オレはまた都会の実家に戻って来ていた。
アメを定期的に祖母に見せる為、との名目だが、母さんにとっては半分バカンス気分といった所だろう。
なにせ、ここじゃあほっといても飯は出るわ家事は勝手にしてくれるわ、炊事も洗濯も掃除も何一つやらなくて済むのだ。
…まぁ、母さんにとっちゃそのへんは家と変わらないのだが…。ああ、そう考えると自分にとってもここはある種の天国、か。

でも、ここまでやることが無いってのも退屈だ。ここじゃテレビもあんまり見られないし、自分好みの漫画や雑誌も
ほとんど置いていない。外で遊ぶにも、まだ春も遠い2月の気候はジャングル育ちの自分には苦痛でしかない。
子供は風の子、なんて言われても寒いものは寒いのだ。
ここに定期的に訪れるようになってから、祖母が何かとその手の子供向け用品を揃えてくれてはいるのだが、
如何せんセンスが…何と言おうか、まぁその、オバサンくさいと言うか…あんまりにもそのラインナップが
「はーい、お子様の遊び道具ですよ〜」と言わんばかりで、13歳の自分にとっては少し幼稚すぎるものばかりなのだ。
特撮の変身セットやプラレール等はまだしも、消して遊べる塗り絵やら積み木やら…ああ、足で漕ぐ車もあったな…。
あれはサイズが合わなくてアメが大きくなってからってことになったんだ。とにかく、今更その手の『ゴッコ遊び』も無い。
少なくとも、それらを一人で遊ぶには精神的に成熟し過ぎてしまった。かといって付き合ってくれる相手がいるはずも無し…。

「ホント、何か面白い遊びとか無いかな〜…」
もう一度、誰に言うでもなく、あくまでも誰に言うでもなく呟く。
せめてそれらを一緒に楽しんでくれる友達さえいれば、オレだって喜んで遊ぶだろうに。そこのソファで几帳面に座って
本ばっか読んでるこの少女さえ、もっと無邪気な気持ちでお子様の遊びってやつを享受してくれたならオレだってここまで
退屈はしてないだろうに。…なぁ、聞こえてんだろ、そこのお嬢さんよ。

「……『誰に言うでも無く』、じゃなかったのか?」
「聞こえてんじゃんか…。都合の良い部分だけモノローグ読むなっつーのっ」
ベッドの足を向ける側に背中向きに備え付けられたソファに背をもたれ、本を読んでいた少女はこちらを向き直りもせず
実に皮肉っぽく、全く持って皮肉っぽく口を開く。ああ、都会でもいつも通りの姿を見せてくれていっそ安心するわ。

「なぁ、グゥは退屈じゃないのかよ〜?さっきから本ばっか読んでっけどさー」
オレはベッドの上をヨチヨチと四つんばいで移動し、ソファの背もたれに顎を乗せ肩越しにグゥの読んでいる本を覗く。
ってか、このベッドがまたでかいし。無駄だし。一人で寝るにはちょっと勿体無いだろ、常識的に考えて。
部屋自体もやけにでかいわりにほとんど物が置いていない。まぁこちらにいる期間なんてほとんど無いのだから、当然と言えば
当然なのだが。しかしこの広い空間が時々やけに寒々しく感じられ、オレの居心地をますます悪くしているのだ。
239節分SS02:2007/02/09(金) 20:47:54 ID:6AeT7RaL
「何の本読んでんだ?」
「ハレにはこの本は少し、早いわね」
「お前も同い年だろー…」
グゥはうふふ、と微笑うとオレに中身を見せないようにころんとソファに寝転がる。グゥの読んでいた本はどうやら
週刊誌のようで、表紙には「芸能人の誰々が浮気」だとか「30代からの云々」だとか、なにやら下世話な文字が並んでいる。
雑誌名からも、母さんあたりの年代の女性が読みそうな大人向けの雑誌のようだった。そんなの読んで何が面白いんだか。
少なくともオレにはその良さは見出せそうに無い。どうせならゲーム雑誌なんかも置いておいてくれたらいいのに…。
自分で買いに行こうにも、当然あの人格破綻ボディガードが着いて来る。ついでにもっと人間的な構造レベルで破綻している
少女も着いて来る。自分一人のわがままで、街を危険に晒すワケにはいかないのだ。…正義の味方って、報われないよな。

「それにしても、グゥってこっち来てからずーっと本ばっか読んでるよな〜。良く飽きないな〜」
「グゥはハレと違って人生の楽しみ方を知っているからな」
「ふぅ〜〜ん?じゃあオレにもその楽しみ方ってやつをご教授願えませんでしょうかねぇ」
両手で雑誌を持ち上げ、ペラペラと捲るその姿はこいつにしては珍しく平穏そのものだってのに、その口の減らない物言い
だけは相変わらずだ。ったく、ジャングルにいる時はこっちが何も言わなくても勝手に騒動ばっかり引き起こしてくれる
クセに、都会じゃ何故か、やけにおとなしくなるんだよな。…まぁあまり暴れてもらっても困るのだが…。
どうせならその口も少しは穏やかになってはくれないものか。

「これはグゥだけの楽しみ方だから、参考にはならないと思うぞ?」
「いーから聞かせろよ、そんな言われ方したら余計気になるじゃんか」
「ふむ…」
そう言うとグゥは少し考えるように目を細めると、雑誌をパタンと閉じ身体を起こし、まっすぐにこちらを見つめて来た。
その態度にちょっと怯む。が、またどうせ変な皮肉を言うつもりだろう。
何を言われても聞き流してやるからほら、さっさと言えよ。

「簡単なことだ…ハレがいつもそばにいる。それだけのことだ」

「………え?」
グゥは、当たり前のようにそんなことを言った。
それはオレの想像していたどんな言葉とも種類が違って、聞き流すことも、すぐに返事を思い浮かぶことも出来なかった。
「…はぁ、って?な、何言ってんだよ、グゥ…?」
やっとのことで、それだけを口に出す。頭の中で何度もグゥの言葉の意味を理解しようとしたが、すればするほど
混乱してしまう。そうこうしているうちに何故か身体中がカーッと熱くなってきて、いよいよ言葉を紡げなくなってしまった。
グゥはそんな気持ちを察してくれたのか、オレの肩にそっと手を置き、穏やかに微笑みながら、

「いやいや、一人の前途ある少年が堕落して行く様を眺めると言うのは最高の娯楽ですよ?」
…などとのたまいやがった。あー。あー。あー…。オレの、馬鹿。
「はっはっは……そーですかぁ。そーですよねーっ!」
急激に体温も心も凍りつかんばかりに冷え切って行くのは気のせいではあるまい。
本当に愉快そうな表情と仕草で、『見てて飽きないよNe☆』などと付け加えるこの少女にオレは何度失望させられたら
飽きる事が出来るのだろうか…。
240節分SS03:2007/02/09(金) 20:48:37 ID:6AeT7RaL
「もー、オレのことは良いから、なんか退屈しのぎになりそうなことって無いの?」
「ふむ。それじゃまたグゥに乗るか?」
「なんか傍から聞いたらものすごくイカガワシイな、その言い方…。
 いいよ、もうアレは懲りたし。…ラジコンもいらないからなー」
はぁ。グゥがオレの希望を素直に叶えてくれるワケ、無いよな。もうグゥに搭乗するだとか、人間を操作するラジコンだとか、
ちんちくりんステッキだとかいった超常現象はコリゴリなんだって。せめて都会にいる間は平和に日々を過ごさせてくれ。
…等と言っても、その手の騒動が無かったら無かったで退屈しているオレ。これって贅沢なことなのか?平和ってそんなに
貴重なものだったのか?なんてオレの苦悩こそがこの少女にとっては退屈しのぎの一つなのか。グゥは「ちぇっ」などと
舌を打ち足をぶらぶらとバタつかせているが、子供っぽいその仕草の裏側にはどれだけ真っ黒な思惑が隠されているのやら。

もっと普通の遊びは思い浮かばんのか。…かと言って、オセロや人生ゲームといったテーブルゲームではオレに勝ち目など
万に一つも望めない。グゥがルールを把握していない最初の数回はなんとかオレの有利が望めるのだが、一度グゥがその
ルールをマスターしてしまうと形勢逆転。まるで何十年もそのゲームをやり尽くした熟練者のようにあらゆる戦法でオレを
欺き、思考の裏をかき、考え付く限りの屈辱的な方法でオレを負かしてくる。正直、何回泣かされたか解らない。

「あーあ……この調子じゃ持ってきたゲーム全部、完クリしちゃうよ〜」
オレはごろんとベッドに転がり、また携帯ゲームの電源を入れる。結局、家から持ってきたこの携帯ゲーム一つがここでは
オレの唯一の娯楽だってことか。もっといろいろ持ってきたらよかった。
「オタクめ……」
「…なんか言ったかー?」
そんなオレに後頭部を見せたまま、グゥは心の底から蔑んだ声を吐き出してくる。
…しょうがないだろ、他にやること無いんだから。だからさっきからグゥに聞いてるんじゃないか。
「だいたいグゥもあんまし好きじゃないだろ?子供らしい健康的な遊びなんてさー」
そうだ、グゥだって家じゃ一人でゲームばっかやってるくせに。
お外で鬼ごっこだの缶ケリだのターザンごっこだのやってる姿なんて、想像も付きやしない。

「…そんなの、ハレがグゥを誘ってくれないからだろう…」
「あ……」
グゥは相変わらず背中を向けたままだったが、その声はどこか暗く、寂しげに聞こえた。
そう言えば、グゥと二人っきりになることはよくあるけど、二人でその手の遊びをすることってほとんど無かった気がする。ジャングルでも、せいぜいたまの釣りに付き沿ってオレの横で身体を丸めて水面を眺めてるくらいだ。
この屋敷で1度ロバートと一緒に鬼ごっこをやったことはあるけど、あれはグゥの方から誘ってくれたものだし。
…もしかしてグゥは、オレの方から遊びに誘ってくれるのをずっと待ってたのかな…。
そうだよ、グゥはこの都会で、このお屋敷で唯一のオレの友達じゃないか。グゥにとっても、同年代の友達はオレしか
いないんだ。なんでこんなことにもっと早く気付けなかったんだろう。グゥだって、ただ毎日だらだら本ばかり読んでて
楽しいワケがない。グゥのためにも、二人で楽しめる遊びをオレが見つけなきゃならなかったんだ。

「…グゥ?ほ、ほら、そんな本なんか置いてさ、一緒に遊ぼうぜ!!」
「……ぎこちない言い回しだな。聞いてる方が恥ずかしいぞ」
「いーだろ、今はそんな突っ込みは無し!」
オレはベッドから降り、グゥの前に立つと大げさに両手を振り上げ元気に声を上げてみせる。…確かに少し、いやかなり
ぎこちなかった気がするけど、ここはカラ元気でも良いじゃないか。テンション上げないとこっちだって恥ずかしい。
グゥも最初は呆れ顔で小さくため息を吐いていたが、すぐに読んでいた雑誌を膝の上でぱたんと閉じてこちらに向き直ってくれた。

「…で、何をするんだ?」
「うん…んーそーだなぁ。鬼ごっこ…は二人でやってもイマイチだし、かくれんぼ…もこの広い屋敷でやると大変だし…」
「何だ、自分で誘っといて……レパートリーの少ない奴だ」
「申し訳ございませんわねぇ…何ならグゥさんも考えて頂けるとありがたいんですが?」
オレもグゥの隣に座り、頭を捻る。とりあえずグゥもちゃんと乗り気になってくれたは良いけど、すぐさま詰まってしまった。
…オレもあんまり外で遊ぶのって苦手なんだよな。それにグゥは女の子だ。チャンバラだとか激しい遊びは好むまい。
241節分SS04:2007/02/09(金) 20:49:42 ID:6AeT7RaL
「ふむ……鬼で思い出したが、今日は『節分』という日らしいぞ」
「セツブン?何それ?」
「ロバに聞いたのだがな。何でも豆を撒いて邪鬼を払うという日本の行事だそうだ」
「ふぅん……珍しいね。でも行事って、それ遊びになるの?」
「まぁ物は試しだ。やってみても面白かろう」
セツブン…聞いたことが無い。今日は確か2月3日だったよな。日本では毎年この時期にやるものなのだろう。
「鬼で思い出した」と言う辺りが微妙に怖いが、他に代替案があるワケでも無い。
ここは黙って、そのセツブンとやらの説明を聞くことにしようか。
…でも……

「…結局、グゥに遊び方教わることになっちゃったね。せっかくオレから誘ったのになんか、情けないなぁ…」
「気にするな…それでもグゥを誘ってくれたことに変わりは無い。遊ぶ方法なんて、関係無かろう?」
「グゥ…うん、ありがと」
グゥの歯に衣を着せない物言いはオレの苦悩の種でもあるけど、その明け透けな言葉は時に何よりもオレの心に響く。
その言葉にオレは何度も救われたんだ。…基本的には、苦悩でしかない場合がほとんどだけどね…。

「…で、どうやるの?そのセツブンって」
「うむ。基本的には鬼に向かって豆を投げる行事らしい。ここは豆を投げる役と鬼役に分かれるのが自然だろう」
「オレとグゥ、どっちかが鬼役ってことだね」
うう、これは鬼役になったら大変そうだな。グゥに向かって豆をぶつけるってのも気が引けるけど…あとが怖いし…。
「本来は熱した豆をぶつけるらしいのだが、ここではそれも出来まい。残念だが、普通の豆でやるしかないな」
「いやむしろ大賛成で御座いますよ?」
…日本って国はえらく過酷な行事があるもんだ。
ここがジャングルだったら間違いなくその「本来の方法」でやらされてたな。
「そして鬼にぶつけた豆を年の数だけ拾って食べて、無病息災を祈るそうだ」
「年の数だけ、ねえ。オレなら13粒ってことか」
「いやいや、2007粒ですよ」
「そっちの年かよ!!ってか食えるわけないだろそんなのっ!そもそもそんなに豆を用意できないだろー?」
「それは今ロバに調達させているところよ」
「うわあ、準備万端ですね……。まるで最初からこの流れになるの解ってたみたいだねー」
「何を仰いますやら…誘ってくれたのはハレの方じゃないですか」
「ああ…もうオレは何を反省して何を疑って何に喜べばいいのやら…」
こんな流れ、いつものことじゃないか。いい加減気に病むのはやめようぜ…。そう何度心に誓ったことだろう。
ココまで来たらもうそれすらもどうでもよくなってくる。どうせまた明日も明後日も誓いを立て直すことになるんだろうよ…。
242節分SS05:2007/02/09(金) 20:50:16 ID:6AeT7RaL
<<2>>

「と言うわけで、ロバが来るまで少し予行演習でもするか」
「予行演習って…豆も無いのにどーやるんだよ?」
「そうだな…ここは鬼を追いかけタッチしたら勝利って事で」
「それただの鬼ごっこじゃんか」
「いやいや、ここでもう1つ斬新なルールを追加します」
ソファを降り、今度はグゥの方がオレの前でやたらオーバーに身体をくねくねと動かし強引に話を進めて来る。
どこから取り出したのか、その手にはいつの間にかツノのようなものがついたカチューシャが握られていた。

「この鬼のツノへのタッチ以外は無効なのですよ」
「あの、質問いいですか?…もう豆まきとかまるっきり関係ない気がするんですが本当に予行演習なんですよね?」
「ロバが来るまでにタッチできなかったら鬼の勝利だからな?」
「いやいやだからそれのどのへんが豆まきと関係───」
「敗者には罰ゲームを用意しているので予行演習とは言え気を抜かないように」
「聞けよ!!これのどのへんが予行演習なんだよ!!ってか罰ゲーム!?」
ああ、どこまでがこいつの想定内の展開なんだろうか…。ほくほくとマイペースに自分ルールを押し付けて来るその姿は実に
楽しそうだ。悪いがオレはまったく楽しくないぞ。それでもしっかり突っ込み返してしまう自分がいっそ可愛いわ。
それよりも唐突に出てきた罰ゲームなんて物騒な単語があまりにも恐ろしい。結局このゲームも、グゥにとっちゃオレに何か
やらせるための口実にすぎんのか。

「ま、ハレがこのグゥに1度でも触れられるとはとても思えませんがね」
「お、なんだよ、グゥが鬼役やんの?」
てっきりオレが鬼役をやらされて、一瞬で捕まって即座に罰ゲーム…なんて展開かと思ってたのに、変に拍子抜けしてしまう。
このルールで、鬼を追いかける側の敗北なんて難しいだろう。何を企んでいるのやら…。
「うむ。生憎とハレ用のコスチュームは間に合わなかったのでな」
「コスチューム………!?」
またも唐突に出現した謎の単語にますます首を捻るオレを尻目に、グゥは一人で着々とゲームの準備を進めていた。
自らの頭にカチャ、と鬼のツノを付け、次にスカートのホックに手を─────って!?

「ちょ、な、何を………ッ?」
「鬼は鬼に相応しい格好をせねばな」
突然の展開に思考も身体も固まってしまう。何を考えているのか、グゥはいきなりスカートを脱ぎ始めたのだ。
オレがその行為を制止する暇も与えず、ぱさりと落ちたスカートの先には細く真っ白な脚が伸び、思わず凝視してしまった
その脚の付け根には、明らかに通常のものよりも面積の少ない布地に申し訳程度に隠された肢体が露になっていた。
さらにグゥはそのまま上半身を包んでいたセーターをも躊躇無く脱ぎ捨て、起伏の無い…良く言えばスレンダーな身体を
見せ付ける。そこには「面積の少ない」なんてもんじゃない、ただの小さな三角形にヒモがついただけのような布きれが、
「控えめ」と言うのもはばかれるほどのまっ平らな胸の、それも普段絶対に見せちゃいけない先端部分のみを頼りなさげに
覆っていた。おそらくは水着のつもりなのだろうが、ビキニなんて名称を使うことすらおこがましい。もし母さんがコレを
着けて海に行く、なんて言い出したら、断固として家から出さないだろうと確信が持てる。ってか、こんなの誰が着ても
許されるもんじゃない。絶対駄目。だってそんな姿見せられたら、健康な男子なら見入ってしまうに決まってる。
オレがそんなあられもない格好をした女の子から目を切ることも手で顔を覆うことも出来ないでいるのも、男の子として
当然の反応だろう。うん、至極まっとうな反応に違いない。
243節分SS06:2007/02/09(金) 20:50:52 ID:6AeT7RaL
「居候、鬼っ娘、鬼ごっこと言えばやはりこれだろう。何事も形からと言うしな」
「だからってお前、その格好は……」
良く見ると…と改めて言う必要も無いくらいすでにじっくりと良く見てしまっているのだが…そのビキニは黄色地に
黒のシマシマが入った、カミナリ様を彷彿とさせるような虎ジマ模様だった。ったく、デザインも柄も実に趣味が悪い。
「なんだ、オタクのハレにも馴染みのあるコスチュームを選んだつもりだったのだが?」
「いや…オレの世代じゃないし思い入れもなんもねーし。だいたいそこまで、その…凄い格好じゃないだろ」
鬼のツノに虎ジマのビキニ……その姿は確かに往年の某人気アニメに登場するヒロインを思い出させるものだったが、
オレが産まれる前には放送も終了していたし、物語もよく知らない。原作の単行本をグプタの家で読ませてもらったことが
あったが、その内容はオレにはちょっといろんな意味で恥ずかしくて、パラパラと流し見しただけですぐに閉じてしまった。
それよりもずっと思い入れのある目の前の少女の方が問題だ。大問題だ。最初からそんな格好で出てこられただけでも十分に
威力のあるものだってのに、さっきまで着ていた服をその場で脱いでその格好になったと言う状況がなおよろしくない。
ただの水着と思えばなんとか思えないことは無いはずなのに、どうしても別のものとして認識しそうになる。

「どーしてもその格好でやんなきゃなんないんですかね?」
「もちろんだ。せっかくベルが作ってくれたのだから、着なければ失礼だろう」
「子供に何てもん繕ってやがんだあのアマ……悪趣味にも程があんだろー」
げんなりとうな垂れるオレをよそに、グゥは上機嫌にまたくねくねと身体を揺すっている。やめろ、その格好で腰を振るな。
あんまり激しく動いたらただそれだけで大事な部分がコンニチワしてしまいそうでこちとら気が気じゃないんだっつーの。
いつの間にかグゥはその露出度の低下に僅かながらも貢献していた靴と靴下までも脱ぎ捨て、まさに鬼っ娘現るといった
状態になっていた。某アニメヒロインよろしく虎ガラブーツまでは用意できなかったようだ。残念なような助かったような。

「いやいや、デザインはそこの雑誌に載っていたのを拝借させてもらったのだ」
言いながら、ソファの上の雑誌を見やる。グゥがさっきまで読んでいたものだ。その本はどうやら、オレが思っていた以上に
オトナ向けの雑誌らしかった。…そこにどんなイカガワシイ世界が広がってるのかは知らないし知りたくも無いが、少なくとも
お子様の健全な発育の妨げに十分な効果を発揮することだけは間違いあるまい。グゥにはもうあの手の雑誌は与えないように
ベルたちにも注意しとかにゃならんな……。あと変なお願いをホイホイ聞かないようにも言っとかんと。

「それじゃ、そろそろはじめるぞ」
「はぁ……解ったよ。オレがグゥの頭のツノに触ったらいいんだろ」
「うむ。ロバートが来るまでにそれが出来なかったら、グゥの勝ちだからな」
最初の提案からずいぶんとゲーム内容が変わってしまったが、まぁもともとグゥと一緒に遊ぶことが第一目的だったんだ。
遊び方なんて、なんでもいい。遊び方以外のことでいろいろと文句を付けたい部分もあるが、グゥ本人が気にしていないん
だったらまぁ、良いだろう。オレもあまり直視しなけりゃすむことだし。うんうん、問題ない問題ない。
オレたちはルールの確認もそこそこに、早速ゲームを開始した。
244節分SS07:2007/02/09(金) 20:51:23 ID:6AeT7RaL
<<3>>

「ところでさ…罰ゲームって何すんのさ」
「ふふふ……気になるか?」
「あんまり酷い罰だったらグゥが可哀相だしな、ちょっとは手加減してやらないといけないだろ」
「ほほう、まさかグゥに勝てるつもりでいるとはな」
グゥと対峙し、慎重に間合いを計りながら言葉を交わす。すでに勝負ははじまっているのだ、悠長な雑談などをする気は
毛頭無い。そう、これは心理戦だ。グゥもそれを解っているのだろう、不敵な表情を崩さず、皮肉めいた言葉を返してくる。
それにしても罰ゲーム…ううん、自分で言っといて嫌な響きだ。負けるつもりはないが、負けてから決められたのでは
どんな目に遭うか解らない。それに罰の程度によってはオレのやる気も変わるってもんだ。
とにかく、こーゆー大事なことは先に決めてもらわないと落ち着かない。

「そうだな、もしグゥが勝った場合は……………………」
「ば、場合は…?」
それでもやはり、心理戦はグゥの土壌か。不意に見せたグゥの深刻な表情に思わずゴクリと息を呑んでしまう。
グゥはそんなオレの反応を満足げに眺めると、ニヤリと笑みを浮かべた。…くそ、舌戦はやっぱ不利だ…。

「居候、鬼っ娘、鬼ごっこと来れば、残る一つはやはりコレだっちゃ」
「…だっちゃじゃねーよ!!すいません、それは勘弁してください!!」
グゥの手にいつの間にやら握られた黒く輝く手のひらサイズの物体は、お子様のオレが見ても明らかに物騒なものだと
理解できる代物だった。その物体の先端に取り付けられた2本の金属棒の間には、思わず耳を覆ってしまうほどの大音量で
バチバチと恐ろしい金切り声を上げながら青白い火花が飛び散っている。
もう、その様を見てるだけで気の早いオレの脳がゲーム終了後の己の姿を想像してしまい思わず泣きそうになる。
罰ゲームなんて可愛いもんじゃあない。拷問だ、それは。

「これを調達するのも苦労したのだぞ?」
「苦労してまでそんなもん調達しないで頂きたい……」
グゥは大きくため息を吐くと、その物騒な電流機械のスイッチを切りポイと床にほうり投げた。
……どっかしまっとけよ、虚空から取り出したときみたいによ。視界に入るだけで落ち着かんわ。

「しょうがない…それでは他に鬼のやることといえば……もう、一つしかないな……」
「え……っと、その……食われ…ちゃいますか…?」
オレの言葉にグゥは、その顔に満面の笑みを湛えたまま、コクンと小さく頷くことで答えた。
サァッと、顔から血の気が引いていく。数年前にロバートとやった鬼ごっこ…あの時の恐怖がまざまざと蘇る。
「日本では古来よりこの豆撒き合戦に敗北した者は鬼の供物として捧げられたという謂れがある。
 今回もそれに則ろうではないか。」
「いや、こちとらそんな謂れこれっぱかしも知りませんけどね?ってか、だから豆まき関係ないだろ!」
…日本って国にゃ本当に過酷な行事があるもんだ。ロバートもそんな環境で育ったからあんなデンジャラスな人格に
なってしまったのだろうか。日本、恐るべし…。

「で、オレが勝ったらグゥはどーすんだよ?」
「む………?」
そうだ、負けた時のことなんて考えるもんじゃない。勝った場合のことを想像したほうがよっぽど身が入るってもんだ。
しかしグゥは「ふむ」と呟くと何やら虚空を見上げ、うんうん唸っている。自分に対する罰ゲームなど考えてもみなかった、
とでも言わんばかりだ。なんだよ、ホントに自分が勝つことしか考えてなかったのかよ、コイツは。
245節分SS08:2007/02/09(金) 20:52:13 ID:6AeT7RaL
「…ハレは、どうしたい?」
「え…?」
「ハレが勝ったら、ハレはグゥをどうしたい?」
どうしたいって…。とりあえず今すぐその破廉恥な格好をやめて頂きたいが、オレが勝ってからの話ではそれも適うまい。
考えてみたら、グゥにして欲しいこと…なんて、別に思い浮かばない。強いて言えばオレに面倒事を持ち込むな、くらいだが
ここ都会じゃあグゥもおとなしくしててくれるし、かといって無理に変な嫌がらせのような罰を与えたいとも思わない。

…いや、1つだけあった。この数日、ずっと願っていたことが、1つ。

「そうだな。オレが勝ったら、明日もオレの遊び相手になってもらおっかな」
「───っ!」
グゥにしたいことや、して欲しいことじゃない。グゥと、二人でしたいこと。

今みたいに一緒に遊んで、一緒に笑って、一緒に時を過ごしたい。勝ったり負けたり、罰ゲームがどうとかなんて、実は
どうでもいいんだ。それでも、どうせやるなら真剣に遊ぼう。その方がずっと楽しいと思うから。
いつも一緒にいるのにいつも別々に過ごしているなんて、もったいないじゃないか。

「………カッコツケ」
「ぐはっ……!」
オレの言葉に驚いたのか一瞬動きを止めたグゥだったが、それが隙となるほどグゥも甘くはないか。狙い定めたはずのオレの
攻撃は華麗にかわされ、瞬時にその体勢を立て直したグゥに背後を取られる。慌てて振り向いた矢先、グゥはジト目でこちらを
睨み付けながらぼそりと、こちらの急所を的確に突く冷たい言葉を放って来た。思わずそのままくずおれてしまいそうになる。
…んなこと、こっちだってわかってるよ。その証拠に今オレの顔、やばいくらい熱いっつーの。絶対真っ赤っかだっつーの。

「んだよ、文句あんのかよー!」
「いっぱいある。そんなこと言われたら……グゥが勝ってもつまらないじゃないか」
「じゃあ、グゥも罰ゲーム、変えるか?」
「…いや、一度言ったことを引っ込めるのも潔くない。グゥはそのままでいい」
言葉を交し合いながらも、オレはグゥの頭のツノめがけあらゆる角度から手を伸ばすが、グゥの身体はまるで間接が無いかの
ようにしなやかで、オレの手はツノどころか髪の毛にすら触れることが出来ない。しかしそれでも会話を続けているうちに、
グゥの動きには僅かな陰りが見えはじめていた。グゥの中で、自分の勝利を望む気持ちが薄くなって来ているのかもしれない。

「そっか。それじゃグゥのためにも何としてでも勝たなきゃな」
「うん。グゥもハレの勝利を祈っているぞ」
「なんだよ、それ。言っとくけど、本気でやれよ?」
「解っている。わざと負けてもつまらんからな」
二人して意地を張り合いながら、遮二無二手を伸ばす。
グゥが明らかに手加減をしているのがその動きから伝わって来たが、それでも無常に空を切り続ける自分の腕が情けない。
そうこうしているうちにこちらの疲労も溜まり、ますますグゥの動きに翻弄されっぱなしになってしまう。
このまま続けていてもラチがあかない。オレは頭と身体を冷やすため、一旦グゥから距離を置いた。

「言い忘れてたけど、この部屋から出るのはナシだからなー」
「ああ。そうでなくては、永遠にグゥを捕える事など出来ないからな」
「言ってくれるじゃんか……吠え面かくなよー!?」
…とは言ったものの、こんなに大きく肩で息をしながらでは虚勢にもならない。
対照的にグゥは、余裕たっぷりの涼しい顔。グゥだって同じくらい動いてるはずなのに、なんだこの体力差は。
オレはゆっくりと円を描くようにグゥの周りを移動しながら、ドアの前に立ち後ろ手にカギをかける。別にグゥを信用して
無いわけじゃない。体力回復のためのちょっとした時間稼ぎと、この格好のグゥを他の人に見られないようにするためだ。

…そうだ、このグゥの格好が悪いんじゃないのか?
こうして一旦離れてみて気づいたが、その身体はどう見てもオレの手が触れて良い場所がほとんど無いじゃないか。
オレは無意識にグゥの身体に触れるのをためらってしまって、どうしても頭のツノのみをめがけて手を伸ばしてしまう。
本来ならグゥの身体を捕まえて、動けなくしてからツノにタッチするのが常套手段なのだろうが、こちらはそれを封じられて
しまってる。グゥにとっちゃ相手の狙いが解っているのだから、かわすのなんて簡単なことなのだろう。
…もしかして、それもグゥの狙いだったりするのだろうか。いや、狙ってやってるに違いない。
246名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 20:52:48 ID:6AeT7RaL
「どうした?ほれ、グゥはここだぞ?」
ああもうっ、だから腰を振るな!股を開くなあっ!!
グゥはこちらの気も知らず…いや、知ってやってるに違い無いのだが…その身体をオレに見せ付けるように柔らかくしならせ
四つんばいで部屋を徘徊している。お尻をつんと突き出し伸びをしたり、しゃがんで大きく片足を上げて頭を掻いたり、
その姿は細く柔軟な身体の線もあいまってまるで猫そのものだ。それは普段でも度々見かける仕草ではあるのだが、服を着た
状態ならともかく今の、身体の線どころか今にも危険区域が顔を覗かせそうなコスチュームでやられると本格的に目のやり場に
困ってしまう。それもその衣装は後ろから見たらさらに過激なようで、時折見えるぷるんと小さくも形の良い真っ白な双丘は
一切れの布にさえ覆われておらず、そこにはただ一本の紐がその谷間に食い込みうずもれているのみだった。そんなほとんど
丸見えの状態のお尻が、グゥの身体の動きにあわせてぷるぷると瑞々しく揺れる様子は前から見ていても良くわかる。
これって背後から見たら、ほとんど全裸と変わらないんじゃないのか?ああ、だから尻を突き出すな!身体をゆするな!!
ずれる、ずれるから!揺れる、いろいろ揺れてるから!!絶対わざとやってんだろ、こいつっ!!

「ふむ、ハレもいよいよ本気になったようだな。そのままグゥにタックルでもするつもりかな?」
いや、これはただ個人的な事情で前かがみになってるだけです。
だけどタックルか…良い案かもしれない。この際だ、ちょっと強引にでも短期決戦を挑むべきだろう。
いいかげんあんな姿で居続けられるとこちらの身も持たない。少し触れるくらいグゥだって覚悟の上だろう。
軽く当たってすぐ離れて、頭のツノを掴んでさっさと服を着てもらおう。…よし!!
247節分SS10:2007/02/09(金) 20:53:52 ID:6AeT7RaL
<<4>>

「グゥ!これで勝負決めるからなっ」
「ふふ、面白くなってきたな」
オレは靴と靴下を脱ぎ捨て、グッと足を踏みしめると大きく身体をたわませ短距離走のスタートのような体勢を取る。
勿論、そのまま特攻してもまたヒラリとかわされるだけだろう。問題は左右どちらに避けるか、だ。
どちらに避けても確実に切り返すためには、恥ずかしがらずにグゥの姿をまっすぐ見据えるっきゃない。
そしてその脚でも腰でもどこでもいい、躊躇無くふん捕まえてそのまま押し倒す!!
オレだって瞬発力には自信がある。遠慮さえしなければ、グゥにだって負けないはずだ。

「ほら、遠慮なくかかってこい」
グゥは相変わらず余裕しゃくしゃくといった表情で、棒立ちのままゆらゆらと隙だらけの姿を晒している。
いや、あれはノーガード戦法…!?ああやって身体の力を抜いて、どんな攻撃にも対応出来るようにしているんだ。
なんせグゥは逃げるだけでいいんだ。どうあがいても、オレの不利に変わりは無いか。…しかしやるっきゃない。

(いくぞ……グゥ!)
オレは足に渾身の力を込め、一直線に踏み込む。自分でも驚くほどの速度で、風の音が聞こえんばかりにグゥに突進する。
グゥはまだ避けない。こちらをまっすぐに見据え、棒立ちのまま避ける気配をまるで見せない。
オレも踏み込む勢いを緩めず、グゥのどんな些細な動きも見逃さないように視界に捕らえグゥに迫る。

ぐんぐんとグゥとの距離が縮んで行く。あと5歩も踏み込めばその身に激突する……と、思った刹那、ついにグゥが動いた!
その動きはまさに猫のように俊敏で、ゆらりと一瞬、その身体がたわんだかと思うと音も立てずに視界から消え────

「え、ちょっ─────」
消え…無かった。確かにグゥは動いた。ただし、右にでも左にでも無く、まっすぐに。まっすぐにこちらに向かってきた。
オレは突然のその行動に思わず足でブレーキをかけてしまう。オレの足が、煙を噴かんばかりにカーペットの上を滑る。
瞬時に目の前まで迫ってきたグゥは、そんなオレの肩にぐっと手をかけ、そのまま跳び箱の要領でオレの頭上を、飛び越える
…………つもりだったのかもしれない。

「─────んぷっ?」
跳び箱は、土台がしっかりしていないと高く飛ぶことなんて出来ないのだ。思いっきりバランスを崩している今のオレの肩に
真下に体重なんてかけられたりしたら、そのまま膝が折れて倒れてしまうに決まってる。…そう、たとえグゥが跳び箱を飛ぶ
体勢で足を大きく広げ、オレの頭の上を通過するつもりだったのが飛距離が足りずオレの顔面にのしかかって来たとしても、
それはオレの不始末では無いはずだ。頭にしがみ付くグゥの体重に押されてあお向けに潰され、なんかふにふにでふかふかな
感触の虎ジマ模様が顔面に押し付けられているこの現状も、断じてオレの責任でそうなったワケじゃあ無い。

「ごっごめンぷ!?」
すぐにそこから抜け出そうと身体に力を込めるが、首に巻かれたグゥのふとももがオレの顔を圧迫して動くに動けない。
引きはがそうとしても、オレの腕の力じゃグゥの脚に対抗できるはずも無い。それより何より、オレはグゥのどこを掴んで
力を込めりゃ良いってんだ。勘弁してくれ……。
「ふふふ、動けまい。予定とは違ったが、こんな決着も悪くないな」
「ン゛む゛む゛ぅ゛〜〜〜っ!!」
グゥはオレの気も知らずにますますその足に力を込め、柔らかいふとももを顔にぐいぐいと押し付けてくる。そのせいで
ふとももどころか、ほんの小さな薄い布切れに覆われたグゥの大事なところにもオレの鼻や口が柔らかく埋もれてしまい、
そのほかほかでぷにぷにな感触や甘い匂いがオレの身体からますます力を奪っていく。……ああ、時が見える─────
じゃなくって!な、何考えてんだグゥのやつ!!

「ほら、さっさと降参しないともっと力を込めていくぞ?」
(ンなこと言われても、どうやって降参すりゃいーんだよっ)
正直、グゥの言うとおりさっさと降参してこの呪縛から解放されたかった。
このままじゃ、本当に自分がどうなってしまうかわからない。
オレの顔が熱く火照る。心臓がバクバクと鼓動を高める。でもそれは、恥ずかしさのせいでも、息が苦しいからでも無いんだ。
先ほどから、顔の火照りよりもずっと熱が篭り、心臓よりもずっと高く脈動し、痛いほどに膨張したオレの男の部分が
いよいよグゥを求めてその本性を現そうとしているせいだってのは自分が一番わかってる。
オレがまだ理性を保てるうちに、この状態から抜け出さないと…。
248節分SS11:2007/02/09(金) 20:54:54 ID:6AeT7RaL
「ン゛ン゛ァン、ふン゛ファンン゛!!」
オレはなんとか「こうさん」の四文字を口から出そうと、必死でモゴモゴと顎を動かす。
「ふあっ……あ、あまり動かすなっ」
しかしグゥから返って来た応えは、オレの理性をますます吹き飛ばすものだった。
…今、耳に聞こえた甘い声は誰のものだったんだろうか…なんて、現実逃避してもしょうがない。
なんだよ、その反応…。やめてくれよ、マジで止まれなくなるだろ…。

「グゥの身体を2回叩くだけでいいだろ、それでタップと認めてやる」
…そうか、その手があった。テレビでやってるプロレスや格闘技の試合で何度か見たことがあるやり方だ。
オレはさっそくグゥのふとももに手をかけた。
顔を覆っている感触と同じものが手に触れる。ぐっと指に力を込めると、指の半分くらいが柔らかく肉に埋まって行く。
「ふっ…ン……ハレ、2回、タンタンと叩くだけだぞ?」
その脚の線に沿って、滑るように撫で上げる。どこまでもなめらかですべすべと肌触りの良いその感触を、どうやらオレの指は
いたく気に入ったようだ。その感触を指に染み込ませるように、外側や内ももを擦り上げるように何度も何度も往復した。
「はぁっ、や…ハ、レ…?」
オレの指はそのままふとももを上り、ぷるぷると震える肉厚な丘に辿り着く。そこはふとももよりもずっと柔軟性に富み、
少し力を込めただけでくむくむとどこまでも指が埋もれ、まるで不定形物のようにその形を歪ませて行く。それでいて
指に込めた力を抜くと、プルンとすぐに元の形に戻る張りの良さも備えていた。

「ハ、ハレ……ハレ!な、何をしている!?」
…あれ、そうだ、オレは何をするんだっけ?
なんだか頭がぼうっとして、顔も身体もじりじりと熱くて、今自分の置かれている状況が解らなくなって来た。
ただ顔を包み込む感触が、指に埋まる感触がとても心地良いものだってことは解る。もっとその感触をいっぱい味わいたい。
そうだ、状況なんて関係ない。今はこの柔らかく温かい肉の感触に酔いしれていたい。
オレは両手でその柔肉をがっしりとわし掴み、クニュンクニュンと大きく円を描くように何度も揉みこねる。

「やぁっ!も、もういいから!離してやるから…ハレも、離して……っ」
離す?何で……?
気がつけば、オレの顔にはすでに圧迫感は無くなっていた。脇を見ると、グゥの両足が左右に大きく開いているのが解る。
グゥは四つんばいでオレの顔をまたいだ体勢で、そのままオレから離れようとしていたようだ。…が、オレにお尻をつかまれて
いるのでそれも出来ないようだった。勿論、その手を離すつもりはない。むしろ顔を包む圧迫感が無くなって、残念とすら
思っているくらいだ。オレはお尻を掴む腕に力を込め、今度は自分から頭を持ち上げ、グゥの股に顔をもう一度埋もれさせる。
そのままぐりぐりと顔を動かすと、グゥの腰がビクンと大きく跳ね上がった。

「ひああっ!?…ハレ!んん、お願いだ、離し…ふあっ、離して…!!」
オレは構わず、グゥのお尻と股を同時に、ますます強くこね回す。
そうしてしつこく弄り回しているうちに、口や鼻にしっとりと湿り気を感じることに気付く。
見ると、そこを覆う虎ジマ模様の布切れはグゥから出た粘り気のある水分を吸い、小さな染みを作っていた。

ドクンと、オレの鼓動も高く跳ね上がる。
それはどんな味がするんだろう。グゥの甘い匂いと一緒で、これも甘いのだろうか。
オレは舌を伸ばし、その染みの中心に押し込むように這わせ、舐め上げた。

「ああっ!やぁ!や、ふあっだ、だめ、ダメ駄目っ!!」
うん、味はよくわかんないけど、舌で触れるこの感触は嫌いじゃない。オレは布切れの上から、そこを何度も舐めこする。
その度にグゥはブルブルと身体を震わせオレから逃れようと身をよじるが、しっかりと尻肉を掴んだ手がそれを許さない。
むしろグゥが勝手に身体を動かしてくれるおかげで、舌がグゥの大事な場所へより食い込んで行く。
249節分SS12:2007/02/09(金) 20:55:25 ID:6AeT7RaL
フ、と、布切れの真ん中より少し上あたりにプクンと豆粒のように膨らんだ部分があることに気付いた。
新しい感触の予感にトクトクと胸が高鳴る。オレは早速その舌触りを確かめるべく、そこに強く舌を這わせた。

「はああああっ!そ、そこ…ッ!」
瞬間、グゥの身体が今までに無いほど強く弾け、ガクンと足の筋肉が弛緩したように股を開き腰を落とす。オレの顔はグゥの
恥部に押しつぶされ、再び圧迫される体勢になった。オレはそこに口を密着させたまま、またグゥの敏感な突起を弄り出す。
舌先でつつき、チロチロと軽く触るように舐め、その根元にぐりぐりと舌先をねじ込み、舌全体で押し込むように圧迫し、
そのままベロンと強く全体を舐め擦る。
小さかった突起は、今では唇で軽く挟める程の大きさになっていた。
そこは愛液と唾液でぐっしょりと濡れて張り付き、グゥの女の子の形を薄い布越しにくっきりと浮き上がらせていた。

「ンぁ…はっ、あ…ふ、ンン……うンッ…はぁ…ッ」
そこを弄るようになってから、グゥにも変化が見えはじめていた。その声は艶っぽい色を含み、ハッ、ハッと小さく短い息を
吐く。その身体も力が入らないのか、くったりとオレの顔に覆いかぶさり、もはや逃げようとするどころか自らもより強い
快感を得ようと腰を扇情的にくねらせているようだった。

「ハレ…も、もうグゥは……グゥ……は…ダ…メ…」
グゥの腰の動きが一際激しくなる。
オレはその動きに合わせるように舌の動きに緩急を付け、グゥの秘所全体を優しく、強く愛撫する。
いまだお尻に埋め込まれているオレの指も、クニュクニュとリズミカルにその柔肉を揉み上げる。
最後にグゥの敏感な突起に舌を這わせ、じゅっ、と強く吸い上げた瞬間、グゥはカク、と一瞬足を振るわせたかと思うと、
オレの顔をふとももでギュウッと強く挟み込んで来た。

「ひっ…ク…ぅぅ……ッ!!」
引きつるような鋭い声を吐き、ビクン、ビクンとグゥの身体が何度も跳ねる。背中を弓なりに反らせ、まるで犬の遠吠えの
ような格好で小さく、大きく痙攣を繰り返す。そうしながらもグゥはまだ腰を動かし続け、最後の一瞬までその快感を貪ろうと
しているようだった。何度目かの大きな痙攣の後、グゥは全身の力が抜けたように、くてっと床に倒れ込んだ。
オレはようやくグゥの股間から頭を抜き、力無くうつぶせに横たわりまだ小さく身体を震わせるグゥを見つめ、
小さく「ごめん」と呟く。オレの身体の芯に灯った熱はまだ冷めてはいなかった。
250節分SS13:2007/02/09(金) 20:55:58 ID:6AeT7RaL
<<5>>

「グゥ……」
「はぁ…だ、大丈夫だ…グゥも、悪ふざけが過ぎた…」
グゥはいまだハァ、ハァと大きく肩で息をし、カーペットの上にうつぶせにその身を投げ出していた。
コクン、と喉が鳴る。背後から見たグゥのその姿は、思っていた通りほとんど全裸に近く、腰や肩甲骨のあたりに細い紐が
横一線に伸びているのみだった。股間を隠すための布を支えている紐はそのほとんどが尻肉の谷間に埋もれ、少なくとも
表皮の保護の役割は果たしてない。オレの侵入を妨げるものも何も無い。
オレの心が再びグゥを求め、トクトクと高鳴る。この気持ちを鎮めるために、オレはその柔らかい肉にもう一度手を伸ばした。

「は、あ…」
まだ先ほどの余韻が残っているのか、お尻をひと撫でしただけでグゥはピクピクと身体を震わせる。
指の先でそっと触れ、軽く撫でるようにその白い双丘の上を滑らせると、グゥはこそばゆいのかフ、ク、と小さく呻き、
キュッとお尻に力を入れる。しかしその声はどこか粘り気のある、甘えるような色を含んでいた。
オレはその双丘の形を確認するように指で周囲を旋回すると、おもむろにその肉を強くわし掴み揉み上げた。

「ひっ!?…や、やめろっ!もういいだろ!?」
グゥは弾けるように上体を持ち上げ、頭だけをこちらに向け声を張り上げる。オレの手から逃れようと必死に身をよじり、
ほふく前進のように肘を立て力いっぱい前に伸ばすが、下半身を押さえ込まれている状態ではその腕もカーペットの上を
虚しく滑るだけだ。オレはグゥを逃がさぬように、手のひらで押さえ込むようにお尻に体重をかけ、その指を食い込ませる。

「ヒグっ!いや、痛っ…そんな、強く……!」
急に強く柔肉を握り締められ一際激しく身をよじるが、グゥが抵抗すればするほどオレの指の力は強くなっていく。
手のひらを内側に回し、八本の指で掻き分けるように双丘の谷間を大きく押し広げると、そこには靴紐程度の太さの
紐一本のみで頼りなく保護されたグゥの小さなすぼまりが慎ましげに顔を覗かせていた。
肝心な部分は紐に隠れているせいで直接は見えなかったが、周囲に見えるしわしわがその恥穴の存在をありありと示している。
グゥの呼吸に合わせヒクヒクと蠢くその恥ずかしいしわは、オレの身体に灯る熱を更に増大させるには十分過ぎるものだった。
オレは両手の人差し指をそのしわにあてがい、ゆっくりと力強く左右に押し広げる。

「う゛あ゛あ゛っ!!ひ、開かな……ッ!!」
グゥの硬いすぼまりはオレの指に強引に引っ張られ、伸びきったしわの先に僅かにその輪郭を覗かせていた。
早くその全てが見たい。でもこれ以上はどれだけ横に開いても、その穴が完全に姿を見せる気配は無かった。
たった一本の細い紐がこれほど邪魔になろうとは。だがその紐を退けるためには、グゥのお尻から手を離す必要がある。
いまだグゥは抵抗の意思を強く残しオレの手から逃れようとしているのだ。その身体を解放してしまっては元も子もない。
せめて手触りだけでも確かめようと、オレは左側の人差し指をじわじわとその恥穴ににじり寄らせていく。
やがて指先はしわの終端に辿り着き、僅かに湿り気を帯びたそこに軽くあてがうとそれはまるで呼吸をするように締まったり、
緩んだりを繰り返しているのが解った。
オレはその口が緩む瞬間を狙って、指先をグリグリと押し込み一気にその内部にねじ込んだ。

「ピッ────────────!?」
瞬間、グゥの身体全体が一本の棒になったかのようにピン、とまっすぐに伸びた。背筋からつま先までを限界まで突っ張らせ、
力を込められる場所は全て込める、と言わんばかりに全身を強張らせる。
お尻にも大きなエクボが出来るほどに力を込め、ギュッと締まった尻肉が指をぎゅうぎゅうと圧迫する。
その谷間の中心にある穴も急激に窄まり、異物を排除しようとそこに埋め込まれた指を強烈に締め上げて来る。
第二関節の中ほどまでをずっぽりと飲み込んだその穴の内部は入り口の窮屈さに比べゆとりがあり、中で指を動かしても
ほんの僅かに指の先端が触れる程度だった。オレは更にその奥に進もうと指を捻り込み、ズグズグと侵入させる。
251節分SS14:2007/02/09(金) 20:57:02 ID:6AeT7RaL
「う゛ー!う゛う゛ーッッ!」
グゥは喉の奥から搾り出すようなくぐもったうめき声を上げ、オレの指を外に排出しようと強くリキむ。
だが今のグゥが出来る抵抗もそれが限界のようだ。グゥの中で指を折り曲げ、指を回しながらヌグヌグと抜き差しをし、
湿り気と熱を帯びた腸壁のヒダを何度も何度も指の腹で撫で擦るように往復しているうちに、その身体はぐったりと弛緩し、
抵抗の意思が感じられなくなっていった。これまで懸命にカーペットを這おうともがいていた腕も今は弱々しく、オレの手を
逃れようと必死によじらせていた下半身はまるで麻痺してしまったかのように時折カクカクと足先を跳ねさせるのみで、
その身体には力が残されていない…と言うよりは、そこに気を回すだけの心の余裕が無いように見えた。
…もうグゥは逃げられない。そう確信すると、また一つオレの身体に灯る火が大きくなった気がした。

オレはグゥの内部への愛撫はそのままに、いまだ柔肉に指を食い込ませていた右手からお尻を解放してやると、
いよいよグゥの秘部を隠している憎き布切れを取り除くべく、その尻肉の谷間に食い込んだ紐をつまみ持ち上げる。
ようやくオレの目の前に姿を現したグゥの恥ずかしい部分は、オレの人差し指をピッチリとくわえ込みイソギンチャクのように
口を窄めその周囲に深くしわを刻んでいた。指を抜き差しするたびに、腸壁から染み出た分泌液が指と入り口の間に泡を立て
チュグチュグと粘着質な音を立てる。

何度も抽送を繰り返しているうちにそこは幾分柔らかくほぐれ、分泌液が潤滑油の役割を果たしスムーズに出し入れ出来る
ようになった。もう指一本程度では、窮屈さも感じない。
オレは中指を立てそっとその恥穴に押し当てると、人差し指の抽送のタイミングに合わせ二本同時に内部へ滑り込ませた。

「────ぐッ…は…………」
グゥは一瞬、ビクンと背中を引きつらせたが、すぐにまた力無く床に突っ伏した。
それはほとんど反射運動のようで、その身体を傍目から見るだけでは、グゥが意識を保っているのかどうかも解らなかった。
ただ、深く長く息を吐くフー、フーという空気音と、時折聞こえる小さなうめき声のみがグゥの意識が覚醒していることを
伝えてくれる。もうグゥは、どれだけ内部をまさぐられようとほとんど反応を見せなくなっていた。
明確な反応と言えば、時折強く身体を強張らせキュウ、と指を締め付けてくるくらいのものだ。

「フッ…!うぅン……ッ!!」
…まただ。コレで5回か6回目くらいだろうか。
定期的にグゥは喉から鋭く息を吐き、身体を硬くする。しばらくするとまたすぐ力を緩めるのだが、先ほどから何度もそれが
続き、その間隔はだんだんと短くなっているようだった。…このままグゥがどうなってしまうのか、少し不安になる。
ただ、その時のグゥの声があまりに甘く艶かしいせいで、他の反応が無くてもオレはグゥを弄ることを止められないでいた。

グゥの小さなすぼまりは、もう指二本でも易々とその侵入を許し、その動きに合わせニュクニュクとその形を変形させている。
周囲に刻まれていたしわも押し広げられ伸びきり、今では浅いヒダが薄く浮かんでいるのみだった。
二本の指を左右に開き入り口を擦るように出し入れしたり、奥まで挿入したまま内壁を揉み込むように折り曲げたり、
ヒダを掻くように交互に屈伸させたり、様々な方法でグゥの中をかき混ぜ、こね回した。
排泄のためにしか使われることの無かったはずのグゥの穴は、今だけはオレの指に玩ばれるために用意されたもののように
その愛撫を受け入れ、強く吸い付き、くわえ込んで来る。
252節分SS15:2007/02/09(金) 20:57:33 ID:6AeT7RaL
「はンン……ッ!!…ふ…ぁ……」
コレで何度目か…もう解らない。だけど、やはりその間隔は確実に短くなっていることは間違いなかった。
これまでよりも一際激しく背中を反らせ、またぐったりと床に倒れ込むその姿はもはや痛々しくすら感じられ、
心の支えだったはずのグゥのこの一瞬の甘い嬌声を聞いても、オレの心にかかる暗い影はその濃さを増すばかりだった。

オレの中の熱はまだ、まるで治まる気配を見せない。
けど、これ以上このオレ自身にも良く解らない熱情を晴らすためにグゥを苦しめていいはずなんてない。
オレは、グゥの中に埋め込まれたその指をゆっくり、優しく抜き取った。
数分か振りに外気に触れた指はべっとりと全体が粘液にまみれ、その粘液の出所に通じる穴と糸を引く。
指が抜かれたそこは、また肉厚な門にピッタリと閉じられ、早々にその姿を隠してしまっていた。

「ハ…レ………?」
「ごめん…グゥ……」
その変化に気付くと、すぐにグゥは上体を起こしこちらの様子を伺う。その目は涙を湛えながらもトロンととろけ、
口元からは唾液が糸を引いていた。
ドクン、とまた身体の熱が温度を上げる。…だけど、ダメだ。もうこれで終わりにしよう。
それよりも、グゥを労わってやらないと。あのグゥが、あんなに顔をくしゃくしゃにして…よっぽど辛かったに違いない。

「…ダメ!!」
「え────?」
なんて、自分に猛省を促しうなだれていると、グゥの叫声と共にオレの胸にドンッと、何かが凄い勢いでぶつかってきた。
それはぷるんと丸く真っ白な何か。…ちょっと待て。この展開に、オレの判断力が追いつかない。
それが何かはわかってる。さっきまで、ずーっと弄り回していたものに違いない。
だけど、何でソレが自らオレに迫って来ているのかがわからない。

「もう少しで…凄いのクルから…もうちょっとだけ…っ」
…やっぱり、解らない。グゥの言ってることも、この状況も。
グゥは四つんばいの体勢で、オレにぐりぐりとお尻を押し付けて来ている。
オレの手に何度も強く揉みこねられたせいか、その尻肉はほんのり桃色に上気し、ほのかに熱を帯びていた。
もっとやって、いいの?
でもさっき、自分でその行動を反省したばっかだし…
でもグゥが望んでるなら…
でも…でも……ああ、なんだこの状況は。
…でも…結局、そんなオレの狼狽など男の本能の前では何の意味も無いのか。
主人の気も知らず、オレの手はすでに勝手に本能のままに、その行動を開始していた。
253節分SS16:2007/02/09(金) 20:58:59 ID:6AeT7RaL
オレの手はまずグゥの腰に食い込む紐をつかみ、躊躇なく一気にずり下ろす。
下半身を覆っていた虎ジマ模様はそのまま膝まで滑り降り、グゥの恥ずかしい部分の全てがオレの目の前にさらけ出された。
四つんばいの姿勢を取るグゥのお尻はその谷間を自然に開き、その奥に潜む小さな穴がてらいなくその姿を露にしている。
その下には小さくもぷりぷりと柔らかく肉が詰まったグゥの女の子の部分が、ピッタリと閉じられたスリットからトロトロと
間断無く涎を垂れ流し、自らのふとももを汚していた。

オレはまたその柔らかい双丘に指を這わせ、肉の谷間を押し開く。先ほどまでしつこく弄られ続け、柔らかくほぐされた
そこは指が抜かれた今もその口を弛緩させ、何もしなくても僅かに開いたままの状態になっていた。

「はっ……ンあ、あああああ…………ッ!!」
そこに二本の指を差し入れると、グゥの身体はその感触を待ち焦がれていたようにフルフルとその身を震わせる。
内壁を押し広げるように激しく動かしながら、ぬぷぬぷと抜き差しするとくぅぅんと子犬のような声を喉から鳴らす。
その腰は自らも気持ちいいポイントを探すように扇情的に動き、グゥは全身でその悦びを表現しているようだった。

オレの手も、オレの意識も、その部分に異様な執着を見せていた。その下にある、グゥの本来の性感帯であるはずの場所へは
目もくれず、ただひたすらグゥの排泄孔を弄り、犯し、蹂躙し続けた。

「ン……も、もうクル……そのまま……っ」
グゥの腰が、円を描くように激しくグラインドしはじめる。
何がクルのかはよくわからなかったが、グゥとのこの行為も終わりを告げようとしているということは間違い無さそうだ。
…これが最後だ。だったら、グゥにオレのやりたかったこと、やり残したことを出来るだけぶつけよう。
オレはグゥの恥穴から指を抜くと、おもむろにその尻肉に顔を埋め、十分な愛撫でとろけ切った穴に舌を這わせた。

「ひあっ!?や、何?これ、なにっ…して…!?」
突然の刺激に驚いたのか、グゥはビクンと身体を引きつらせる。
それははじめての感覚だったのだろう、自分の身に何が起こったのかよくわかっていないようだった。

オレは構わず舌での愛撫を続ける。周囲のしわ一本一本をなぞるように舌を這わせ、窄まりの中心をくちくちと舌先でほじり、
指での愛撫でほぐれてむき出しになった入り口周辺の肉を吸い上げ、唇で揉みこねる。
両手は勿論その双丘にあてがわれ、オレの顔を押し挟むように圧迫し、指を柔肉に強く埋め込み、時に優しく撫で回す。
体勢のせいか、先ほどまでの柔らかさは感じられなかったが、その奥に隠されたコリコリと張りのある弾力が絶妙な
アクセントを醸し出し、オレの手に不思議な心地よさを与えてくれる。

「は…ンあ………や…はっ…んんっ……」
グゥもその感触を気に入ったようで、特に嫌がる様子も無くオレにその身を任せ、甘い声を上げていた。
床にひじを着き、ツンとお尻を突き出した格好でオレの顔にぐりぐりとその双丘を押し付けて来る。
その身体は声を発するたびに小さく震え、本当に最後の時が近いのであろうことをオレに知らせていた。
254節分SS17:2007/02/09(金) 20:59:37 ID:6AeT7RaL
オレは親指をグゥの恥穴に押し当て左右に開くと、クッパリと空間の開いたその穴に舌をねじ入れた。
指を離すと途端に窄まり舌に食らい付いて来るが、既に分泌液と唾液によって十分に滑ったそこは舌の侵入を阻むことは
出来ない。オレはぐにぐにと舌を押し込み、限界まで内部に侵入するとピッタリと唇を吸着させ、恥穴全体を強く吸い上げ
ながら入り口の裏側や腸壁を円を描くように舐め上げた。

…それが、グゥへのトドメとなったようだ。

「ひぅあっ…!ン、ハ、あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛─────ッッ!!」
グゥは腰をブルブルと震わせ、ひじを床についたまま頭を持ち上げ吼えるように高く引きつった声を上げた。
オレはその嬌声と共にギュウギュウと締め付けてくるグゥの穴から舌を抜き一息つくと、なにやらしょろしょろと
水の流れるような音と共に、ほわ、とアンモニアの匂いが鼻をつくことに気が付いた。

「やぁ…うそ……止まらな……っ」
自分でもしばらく気付いていなかったのか、グゥは驚いたような表情で自分の股間に手を伸ばす。
だけどどうやってもその勢いを止めることは出来ず、指の間からぱしゃぱしゃと零れ出る小水が床を濡らして行く。
オレはと言えば、目と鼻の先で行われているグゥの放尿シーンに釘付けになってしまっていたワケなんだけど。

「み、見るな…ハレ、見るなぁ!」
先ほどまでオレにあれだけ恥ずかしい姿を晒していながらも、やっぱり排泄している姿だけは見られたくは無いのか。
グゥはなんとか手で隠そうと必死で秘所を覆い、オレの目から逃れようとしていた。
オレはと言えば、そんなグゥの腰をがっしり掴みじっくりとその様子を眺めさせてもらっていたワケなんだけど。

結局そのまま数秒間、最後の一滴が零れ落ちるまでをつぶさに観察させて頂き、ようやくオレはグゥを解放した。
オレが腰を放すと、グゥはすぐにその場から離れカーペットに顔を伏せてしまった。
その肩は小刻みに震え、うぐ、えぐ、と低く呻く嗚咽すら聞こえる。

…泣かせてしまったようだ……

途端に、罪悪感が胸いっぱいに広がっていく。
どうしよう、謝ろうか、慰めようか…って、どっちもしなきゃだよな。

「そんなに気持ちよかったんだ?」……それじゃ保険医だ。
「そんなグゥが、居ても良い」……なんか、違う。
「グゥ、おしっこもかわいかったよ」……変態だ。
「オレもおしっこ見せてやるから!」……病気か。

いやいや、普通に、素直に、単純にとにかく「ごめん!!」…まずはコレだろっ!

グゥはいまだその身を小さく丸め、えぐえぐとすすり泣いていた。
オレはそっと近づき肩に手をやると、優しく、出来るだけ優しくグゥに話しかける。

「グゥ……ごめ」


次の瞬間──────────世界が回転した。
……いや、回転していたのは多分、オレの方だったんだろうな。
255節分SS18:2007/02/09(金) 21:00:57 ID:6AeT7RaL
────前蹴り……だったと思う………

飛んだよ……13歳を超えるわりにはちんちくりんなオレの身体が完全に宙を飛んだんだ……
同じ体格の女の子のただの一蹴りでな……

過去にも何度も行ったし未来のためにも戦った……
連載も10年以上続いてる…現在も絶賛連載中……

でも本当に宙を飛ばされちまったのは、後にも先にも……いっぱいある……
クマとか、ユミ先生とか、マリィにも背中から当たられてぶっ飛ばされたな……はは……オレってよく生きてんな……?


───なんてマニアックなパロディネタを脳内で走馬灯のように繰り広げつつ、オレの身体は壁に盛大に激突した。
薄れ行く意識の中、オレにゆらりとその身を揺らめかせながら近づいてくるグゥの姿が……

「薄れ行くなっ!」
「────ぐほあ!!」
意識が消失する寸前、グゥの拳がオレのストマックにねじり込むように突き刺さった。
……どうやら、強制的に覚醒させられたようだ……いっそ殺せ……。

「勝手に夢の世界に逃げるな。自分の責任を果たしてから死ね」
「せ…責任……?」
とりあえず、グゥの最後の一言は記憶から速やかに消去しよう。
オレは昼食をリバースするのをこらえながら、必死で思考を回転させていた。
責任……って言われたら、そりゃあもうこの数十分の間にあらゆる心当たりが生まれてしまった気がするが……。
どの責任?なんて聞いたら、今度こそ本当に祖父と8年ぶりの再会を果たしてしまいそうだ。
とにかく、一言謝っておこう。話はそれからだ。

「グゥ……ごめ」


次の瞬間──────────世界が回転それはもういいっつーの!!


「ってぇ〜〜〜〜〜〜〜!!何すんださっきから!ちゃんと謝ろーとしてんだろ!!」
…今度はぶっ飛ばされはしなかったようだ。うん、意識もハッキリしてる。
何故かテンプルがズキズキと痛むのだが、原因を追究しない方が幸せになれそうな気がするから思い出さないでおこう。
ぐるぐるその場で縦回転しながら「わー、プロペラみてえ」とかのん気に感動しちゃったこともきっと白昼夢か何かだ。

「謝るな、馬鹿。そんなことで無かったことにされたらかなわん」
「な…無かったことになんて…するつもりないよ」
「なら何故謝る」
「そりゃあ…グゥに酷いことしちゃったから……」
そうだ、オレは自分の身勝手な熱情にほだされてグゥにあんな酷いことしちゃったんだ。
グゥだって、オレにあれだけ恥ずかしい姿を見られて、ショックだったに違いない。

「酷いこと?それがグゥにとって酷いことかどうか、何故ハレにわかるんだ?」
「え……ど、どーゆー意味だよ……?」
しかしグゥは、先ほどのすすり泣きなど無かったことかのようにあっけらかんと、いつもの調子でそんなことを言った。
グゥにとってあれは、ショックなことじゃなかったってのか?
そんなはず………あるわけ、無い、よな。
256節分SS19:2007/02/09(金) 21:01:29 ID:6AeT7RaL
「ふん……確かにあんなことまでされて…グゥはもうダメになってしまったからな……責任、取ってもらうからな」
「わかってるよ……オレに出来ることならなんでもするって!」
「本当だな?」
「ん…………うん。約束する」
責任……。そうだ、オレの責任だ。
月までぶっ飛ばされても構わない。オレのお小遣い全部グゥのために使っても良い。何でも言ってくれ。
絶好とか、一生口を利かないとか、その手の責任の取り方だけは辛いが…グゥの今の調子から考えて、多分それは無いと思う。
……あとは命さえ無事なら、助かる。

「ならば今すぐ取ってもらうぞ」
「お、おう……!」
グゥは指をパキパキと鳴らすと、豪快に腕をスイングさせはじめた。
やはりそっち系か…!残像が見えんばかりに素振りを繰り返すその腕から巻き起こる風圧がオレの顔をビシビシと叩く。
ぶん殴られるだけで済むなら……いや、そんな風に考えちゃいけない。オレはこの一撃を全身で受け止める責任があるんだ!!
……一撃だよね?

「歯を食いしばれ」
「───っ!!」
オレは強く目を瞑ると、この痛みだけは一生絶対に忘れないように、身体に刻み込むために神経を集中する。
次の瞬間、グゥから繰り出される風圧と風切り音がオレの身体を瞬時に貫き…………

何か、温かく柔らかなものが一瞬、唇に触れた気がした。

「え………グ、グゥ?」
「………ハレのせいだからな……」
目を開けると、グゥはオレの身体にもたれ腰を軽く抱き、ピッタリと身を寄せていた。
グゥの頬が、オレの頬に当たる。グゥの心音がオレと同調し、体温がカァ、と急上昇してしまう。
って、グゥ、どうしたんだ…?オレの責任はどうなったんだよ?

「ハレのせいで、こんな身体に……っ」
「ちょ、グゥ!?」
そんなオレの狼狽をよそに、グゥは腰をもじもじと動かし、オレに更に密着するように足を絡めてくる。
気付けばオレは手首を捕まれ、その手をグゥのお尻に誘導させられていた。
ますます頭が混乱し、何も言えなくなってしまっているオレを、グゥはガバッと顔を起こしまっすぐに見つめて来る。
その顔は…怒ったような、困ったような表情を、していたと、多分思う。このへんの記憶は悪いけど、曖昧だ。
なんせ、次のグゥの言葉で、ここ数分間の出来事の大半が頭から吹っ飛んでしまいそうになったのだから。

「これからずっと……グゥのお尻をダメにした責任、取ってもらうからなっ!」

「…………あ……え…っと………………うん。」
思わず、了承してしまった。こんな、自分の理解を超えた責任の取り方を。

最初はオレのただの退屈しのぎからはじまった今日のこの出来事。
それがどう言うワケか、オレにとっても、きっとグゥにとっても、昨日までは予想もしていなかったものになってしまった。
これからオレとグゥの関係がどうなるか、なんてわかんないけど、少なくともこれからは「退屈」なんて言葉を口に出すことは
無くなっちゃうんだろうな。
…なんてことをのん気に考えてしまう自分がちょっと可愛かった。
257節分SS20:2007/02/09(金) 21:03:20 ID:6AeT7RaL
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「グゥさん、ハレ様、豆持って来ましたよ!2007粒きっちり選り分けるのに苦労───あれ?カギかかってる……」
(おわっ、ロバート!?なんつータイミングで来んだよ!!もうちょい豆いじっとけ!)
「参ったな…俺、カギ預かってないし……」
(良かった……カギかけといて……)

「あ、ベルさん丁度良い所に!マスターキー持ってますよね?」
(えええええー!?何そのご都合主義なタイミング!!誰の脚本!?)

「何よあんた、ハレ様のお世話を任されてるのに、部屋のカギも持ってないの?」
「…ベルさんが、あんたなんかに大事なカギは預けられない、って……」
「…何?ナンか言った?」
「いえ………と、とにかくハレ様の部屋、カギがかかってるんですよ。開けて貰えませんか」
「馬鹿ね……あんたもうちょっと気を利かせなさいよ」
「は……?」
「ハレ様とグゥ様…若い男女が同じ部屋で二人きり……暇な時間を持て余し、ついつい…なんてよくあることよ」
(……………よくあってたまるか……)
(いや、見事な推理だな。ベルめやりおるわ)
(関心せんでいい!!)

「で、でもハレ様はまだ中学生ですよ!?」
「愛があれば、年齢も性別も関係無いでしょ」
「いや性別は……ぐはっ」
「とにかく!そっとしといてやんなさい。カギは内側からかけてるんでしょ?」
「い…いや……でも、さっきから中に人の気配を感じないんですけど…静かすぎませんか?」
(ええー!そーゆー展開!?しかし今更物音を立てるってのもわざとらしいな……)

「ん……確かにそうねえ。解ったわ、ノックしてからそれなりに時間も経ってるし、最悪の事態は避けられるでしょ」
(いやいやいや今アンタらがちゃくちゃくと最悪な状況を作り出そうとしてますよ!?)

「ハレ様、グゥ様、入りますよ?」
(どどどどどどどどどどーしよー!!!!)
(…とりあえず、ベッドの中にでも隠れるか?)
(う、うん!このシーツもこもこしてるし、包まってればなんとかやり過ごせるかも!!)
258節分SS21:2007/02/09(金) 21:04:28 ID:6AeT7RaL
「……あら、いらっしゃらないわね」
「ほら、やっぱり。だいたいハレ様とグゥさんがそんな不純イボホッ」
「お黙りなさい」
「は……はい……って、ちょっと待って下さいよ!こ、これグゥさんの服…靴下や靴まで脱ぎ捨てられてますよ?」
「あらあら、お召し物をこんなに脱ぎ散らかして……グゥ様にも淑女としてのマナーをお教えしなくてはいけないわね」

「ベルさん!!ちょっと危機感がなさ過ぎますよ!」
「あんたが心配性すぎるのよ。私が居る限り、このお屋敷に侵入者なんて一匹たりとも入れるわけ無いでしょ」
「それはそうですが……こ、これはスタンガン!?それにこのアンモニアの臭い……」
「失禁は電気ショックを受けた人間の典型的な症状……とでも言いたいわけ?」
「……何か間違っていますか?」

「…ふん……続けて」
「はい……。内側からかけられたカギ、脱ぎ捨てられたグゥさんの服、スタンガン…そしてこのカーペットの染みと臭い」
「……誘拐?」
「……最悪の場合も、想定した方が良いかも知れません…少なくともグゥさんの純潔は……」
「情けない…!あなた、それでもこのフィアスティン家のボディガードなの!?」
「…………!」
「最悪の事態なんて、最悪の事態が起こってから考えなさい!!今は後悔する時ではないでしょう!!」
「……は、はい!!俺はすぐに犯人を追います!!べルさんはウェダ様とアシオさんにこの事を!!」
「解ったわ!……私もすぐに追うから、連絡、怠るんじゃないわよ」
「はい!!恐らく犯人は窓から逃げたはずです。何か手掛かりがあればいいんですが」
「それも私に任せて、あんたはさっさと自分の準備をなさい。これだけの手際……敵は単独犯ではないはずよ」
「はい!!」
(……もしもーし、グゥさーん)
(…なにかな?)
(この事態を迅速かつ穏便に収拾する妙案があればお聞かせ願いたい)
(うむ。きっと敵は恐ろしい闇の地下組織であろう。ロバ一人では荷が重いな)
(あれ?この話についていけてないのオレだけ?……頼むから、真面目に考えてくれよ……)
(ふむ……とにかく別のことに気を引かせればよいのだな)
(で、出来るの?)
(任せろ)
259節分SS22:2007/02/09(金) 21:05:17 ID:6AeT7RaL
「む!!」
「今の音……そこのベッドからね」
(ぐぐぐぐぐグゥさ〜〜〜〜ん!?)
(よし、見事に気を引けたな)
(引けたっつーか釣れたっつーか思いっきり身を切ってますよねえ!?)

「ベルさん……」
「ええ……あのシーツの盛り上がり方、いかにも不自然ね」
(うぉぉ〜いバレちゃってるよぉぉ〜!!)
(こんな稚拙な工作でバレないはずがなかろう)
(あれ!?オレは今、誰の提案でここに隠れてるんだっけ!?)

「そこの賊……2秒やる。おとなしく出て来れば話くらいは聞いてやる。出て来なければ…永遠にその口が塞がるぞ」
(ちょちょちょちょ何かデジャヴを感じますよこの状況〜〜!?)
「1……」
(どーすんだよ!って、もう出ちまうしかないって!!)
(まぁ待て…大丈夫だ)
(え……?)

「待ちなさいロバート。この状況から考えて、そこに隠れているのは犯人一人だけとは思えないわ」
「あ……!もしかして、グゥさんも…?」
「ハレ様もおられるかもしれない。下手に撃つわけにはいかないわ」
(おお、やったよベル!最高だよベル!!グゥもこれを見越してオレを止めてくれたんだなっ)
(ふふふ)

「しかし、これじゃこちらから手を出せませんよ……」
「そうね…それに本当にそこに犯人が居るかも解らない。ロバート、銃を貸しなさい。
 ここは私が見張っておくから、あんたは予定通り犯人を追う手はずを」
「わ、解りました!!」

(……あれ?これで、今この部屋にいるのってベル1人だけだよね?)
(そのようだな)
(だったら、チャンスなんじゃないの?ベルはさっきもオレたちのこと、気遣ってくれてたしさ。
 ベルが何をどう勘違いしたとしても、適当に誤魔化したらこのこと黙っててくれるんじゃないかなあ?)
(なるほど……この屋敷を実質取り仕切る最高責任者であるベルを懐柔し、事態の隠蔽を図るというワケだな)
(そんな大層なもんかよっ)
(グゥにとっては…すごく大層なものだったぞ……)
(そっ……それは…オレだって…でもそれは今は置いといて!
 とにかく、これ以上コトが大きくなったらまずいだろ!!オレ、ベルに話してみるよ!)
(待てと言うにっ)
「ぎゃんっ!」

「む……やはり、誰かいるようね。さっさと出てきた方が身の為よ?」
(…そ、そこは……反則だろ……)
(……もう少し待て。今はまだ好機ではない。ロバートが戻ってくるやもしれん)
(え……うーん、確かに少し時間を空けた方がいいかな…。…だけどもうちょっと止め方考えろよ?)
(解った。次からはこれくらい優しくすればいいのだな)
(んああっ、や、やめ……そんなっ……)

「………何かしら、さっきからゴソゴソと……ン…見てはいけないものを見てる気がするわね……」
(おーまーえーなー!!)
(まぁまぁ、ちょっとした癒しですよ、癒し)
(どうせなら精神的な方向で癒して頂きたい……)
260節分SS23:2007/02/09(金) 21:06:26 ID:6AeT7RaL
「あらロバート、どうしたの?」
「は、はい…それが……」
「何よ、忘れ物?」
(おぉ!?ホントに戻ってきた!すげーっ、すげーよグゥ!)
(ふふふ)

「いえ、そこで丁度……うぷっ」
「ちょっと、どいてロバート!ベル、どーゆーことよ!?グゥちゃんが誘拐されたって…!」
「なんや、大事みたいやなあ…」
(ええっ、母さん!?んでもってアシオまで!?)

「……申し訳御座いません。グゥ様のお身体のご無事も…保障致しかねる状況ですわ……」
「な、何よそれ……!ハレは、ハレはどうしたの!?」
「そうや、坊ちゃんもいらっしゃらへんらしいですやん。二人で遊びに行ってるっちゅう線は無いんですか?」
「残念だけど、それは無いわ…。内側からカギがかけられていたし、それに……」
「ベルさん、そこから先はオレが説明します。いいですか、事態は急を要します。お二人とも良く聞いて下さい……」
(ちょっとグゥさん?なんか状況が最悪の方向に向かってる気がするんですが?)
(役者が揃ったな)
(揃っちゃダメでしょ〜〜〜!?ああ…まさかロバートがあの二人を連れてくるなんて……)
(うむ、まさかこんなに早く連れて来るとはな。天晴れぞ)
(……ああ、グゥが今、何を言ったのか絶対理解したくない……)

「…そんな……グゥちゃんが……そんな………!!」
「まさか、いくらなんでもそこまで外道なこと、せえへん…やろ……」
「いえ、俺の知る限り、その程度のことは平気でやる連中はいくらでも居ます。とにかく、覚悟だけはしておいて下さい」
「うう……グゥちゃん……」
(…なんか話が更に飛躍してる気がするんだけど……?)
(まぁどっかのオタクに似たようなことはされたのだがな)
(…………)
(なんだ、反論の余地無しか?)
(うん……酷いことしたことに、変わりは無いしね)
(馬鹿……ぜんぜん違うだろ、反論しろ)
(え………それって…)
(黙れ。この話はもういい)
(…ンだよ、グゥから振ってきたくせに)
(黙れっ)
「げぶぉっ!」

「!!…なに、誰かそこにいるの?」
「なんや踏み潰されたカエルみたいな声がしよったな」
「あ…はい、先ほどからベルさんに見張ってもらっていたんですが」
「誰かがそこに隠れているのは間違いありませんわ。…それも、複数人…少なくとも二人はいますわね」
(おーまーえーなーっ!!また注目されちゃっただろー!)
(すまんすまん。優しくするんだったな)
(だからそうじゃなっはァっ、だ、や、ふああ……っ)

「………何よ、さっきからゴソゴソと……ン…見てはいけないものを見てる気がするわね……」
「そうなんですのよ、先ほどからゴソゴソと……」
「怪しいですね……ウェダ様、アシオさんも少し下がっていて下さい。何か仕掛けてくるかもしれません」
「…んー…あの、ほんまにロバートの言うよーな事件なんですか、これ?」
「どう言う意味?」
「いや、ロバートも先輩も誤解してはるんちゃうかな、って」
「だからどう言う意味よ、ハッキリお言いなさい」
「はぁ、そやからあそこに隠れてはるの、グゥさんと坊ちゃんなんやないですか?」
(おお、アシオ鋭い…って、いつまで触ってん、ふぁっ、も、もうやめ…っ)
(まぁまぁ、お楽しみはこれからですよ)
(楽しく、な、いッ、ひあぁっ)
261節分SS24:2007/02/09(金) 21:07:09 ID:6AeT7RaL
「な…なんでそうなるのよ?」
「そうですよ、それならなんで出てこないんですか?」
「そりゃあ、出てこれん事情があるんでしょう。最初に隠れたのもそのせいちゃいます?」
「それってつまり……」
「はい、若い男女が同じ部屋で二人きり……暇な時間を持て余し、ついつい…なんてよくあることでしょ」
(アシオ、思考回路がベルと一緒……ンンッ、そ、そこだめ、そこは……)
(なんだ、ここが弱いのか?)
(だ、ダメだって……ンあぁッ!)

「アシオさんまでそんな…!あの二人がそんな不純イモコッ」
「そうね…私も最初はそう思っていたわ。
 でもロバートから聞いたでしょ、このスタンガンやあそこのカーペットの染みはどう説明するの?」
「な…なんで殴られ…ふごっ」
「私が喋るのに邪魔だったからよ」
「ベ、ベルさん…まだ口も開いてなかっボホッ」
「邪魔しないでって言ってるでしょ」
「…ロバート……諦めぇ。この人には何言うても無駄や……」
「いいからアシオ、続き聞かせて。ベルも静かに」
「お嬢様…申し訳御座いません、ロバートには後でじっくり再教育を施しますので」
「そ、そんな……ぐふっ」
「さ、これで静かになりましたわ。ほらアシオ、早くお嬢様に続きをお聞かせなさい」
「はぁ、えっと、……その、スタンガンとかは坊ちゃんの性癖の問題とかとちゃいますかね?」
(なっ!?ん、んなワケにゃあぁッ?)
(こっちに集中しろ)
(アホかっ!いまそれどこ…も、もうホントに、やめっンンッ)

「私にはその手のことは少し、解りかねるわね…。如何ですか、お嬢様?」
「うーん、いくらなんでもハレがそこまでする度胸あるかしら……」
(か、母さんそこは度胸の問題じゃ…ひあっ、ちょ、脱がさな……やっ、そんな、直接……っ)
(ダメだ、もうグゥも止まれん)
(んなっ……やぁぁっ)

「せやけど、ほら坊ちゃんとグゥさんって結構、普段から過激なスキンシップしてはりますやん」
「確かに……家でもグゥちゃんのこと叩いたりつねったりしてるとこ良く見るけど……」
「私もハレ様がグゥ様の首をお締めになってらっしゃる所を何度かお見かけしたことがありますわ」
「それがエスカレートしてついにここまで……とか考えられませんか?」
「なるほど……」
「ありえるわねー……」
(いやいやそんなんで納得……あああっ、もっ、シ、シーツが…汚れるから……)
(ふむ、ならば全てグゥが受け止めるとしよう)
(ひゃああっ!?そんな、クチでなん、て…だめ……っ)

「二人でそうやって遊んでるうちにロバートや先輩が来て、慌てて隠れたらいつの間にやら
 こんなことになってもうて、余計出てこれんようなったんちゃうかなあ……」
「そうね……少なくとも、この私が賊の侵入を許した、なんて戯言よりは説得力があるわ」
「ハレったら、女の子はもっと大事にしなきゃダメじゃない!聞いてんの!?」
(…も、もうその話で確定…なの……あ、あ、あ、で、出…る……っっ!!)
(んムッ…ちゅ、ふ、ン……)
(はぁ………あ……吸わ……れ…っ)
262節分SS25:2007/02/09(金) 21:07:50 ID:6AeT7RaL
「ちょ……、と、待って下さい……」
「あらロバート、やっと目が覚めたの?こんな大事なときによく寝てられるわね」
「ベ、ベルさんが…」
「何?」
「…いえ……すいませんでした……。それより、俺はアシオさんの意見には賛同しかねます!」
「なんや、まだ文句あるっちゅーんかい」
「ありますね……。俺は常に最悪の状況を想定して動いていますから」
「……ほんなら、聞かせてもらおか。お前の意見が俺の話以上に信憑性あるとは思えんけどな」
「アシオさんの話のどこに信憑性があるんですか……」
(はぁ……はぁ…………)
(ン………く、はぁ…こ、こんなに、出るものなのか…?)
(し、知らないよ……出たのかどうかも……オレ、わかんない……)
(…そんなに、良かったのか?わからなくなるほど……)
(わかんない、わかんないよ……)
(ふふふ……可愛いな、ハレ)
(なっ、何言ってんだよっ)
(ふふっ……)

「ちょっと、アシオもロバートも、どうしたの?なんか怖いわよ?」
「お嬢さん、俺はさっさとこの部屋を出て二人っきりにさせてやりたいんです。俺ら完全に邪魔者や思われてますよ」
「俺はハレ様のお世話を任されている身です。ハレ様やグゥさんに何かあれば、俺は死んでも死に切れません」
「アシオ……ロバート……」
「お嬢様、ここは二人に任せましょう。二人とも、ハレ様とグゥ様のことをそれだけお慕いしているのですわ」
「そうね……。解ったわ、二人とも気の済むまでやっちゃいなさい」
(はぁ……な、なんか……良い話っぽくなってきてるけど、オレら蚊帳の外っぽくない?)
(蚊帳の外なら好都合だろう。ほら、続きをやるぞ)
(ま、まだやるつもりかよ!オレはもう…んんっ)
(ハレはスッキリしたかもしれんが、グゥはまだだからな)
(まだ…って、あっ、ちょ、そんなくっつくなよっ)
(ほら、触って……どこを触っても……いいんだぞ…?)
(グゥ………っ)

「ほれ、聞いたるさかいさっさと言うてみい」
「はい。まずこのスタンガンです。ハレ様はこれをどこから調達したって言うんですか」
「そんなん、このお屋敷にあったんちゃうか?そーゆーのはロバートのが詳しいやろ」
「スタンガンなんて装備はこのお屋敷にはありませんよ…。勿論、ハレ様やグゥさんの手荷物の中にもありませんでした」
「そんなら通販やろ」
「つ、通販!?そ、そんなもの売ってるんですか?」
「売っとる売っとる。最近グゥさん、妙に大人向けの雑誌よう読んでるしなぁ。結構その手のもんは載っとるで?」
「こ、子供になんてものを読ませてるんですか…!」
「放任主義はこのお家の家訓みたいなもんやからな。出来るだけ自由にさせたらんとな」
「く……で、でもそれを買ったって証拠は無いでしょう!!」
「そーいや、こないだちっさい小包が届いたことあったで?
 ハレ様宛てやったんで届けに行ったらグゥさんが持ってってな。中身も教えてくれへんかったわ」
(んっ…ふ…ハレはそんなに…あっ、ン…グゥの尻が好きか……?)
(グゥだって…お尻なんかがそんなに気持ちいーのかよ…?)
(…ハレのせいだからな……)
(…ん……わかってるよ、責任、だろ…)
(ふふ……ほら、もっと強くしても…はぁ、いいぞ。ハレは過激なのが、好きなのだろう?)
(グゥ……オレも…)
(ん……また大きくなってるな……手が良いか?それとも……こっちで…する、か…?)
(グ、グゥ…!)
263節分SS26:2007/02/09(金) 21:08:43 ID:6AeT7RaL
「で……でも!それを買うお金はどうしてるんですか?ハレ様のお小遣いで買える額なんですか!?」
「あ、そう言えば、私が読んでる雑誌の懸賞ページのハガキがよく無くなってるわね。
 確かその中にそーゆーのもあったと思うわよ?」
「懸賞で当てたんか〜。ハレ様もなかなか運が強いなぁ。それにそれやったら使いたくもなるってもんや」
「なっ………そんな……」
(ンあぁっ…は、いって…来る……)
(グゥ…!力、入れないで……きつい…)
(そ、んなこと…むり……ふ、太…っ)
(んんん…っ!ぜ、んぶ……入…っっ)
(はぁぁぁ…!……お尻、広がって…こんな、に……)

「そ、それじゃあホントにハレ様がグゥさんに使ったって言うんですか……」
「他に考えられんやろ。そこの染みもその証拠や」
「それじゃあ、グゥさんの服はどう説明………」
「そこで口篭るっちゅーことは、自分でも解っとるんやろ。まぁ、服くらいは脱ぐやろ、そら」
「じゃ、じゃあ!このハレ様の靴と靴下は!?ハレ様が靴と靴下だけ脱いでいた理由も解るって言うんですか?」
「勿論や……ハレ様が裸足にならなあかん理由はちゃんとあるで」
「な、何だって言うんですか」
「快楽の共有や」
「は……?」
(んっ、んっ、んっ……グゥ、気持ち…いい…?)
(ふぁっ…ン…うン……聞く、な…ばか……っ)
(オレは、気持ちっ…いいよ……)
(はぁっ…み、耳元で……そんなこと…言うな…っ)

「そこの染みはただ電気ショックで漏らしたもんやない。ちゃんと理由があるんや」
「だから、何だって言うんですか」
「ロバートも知っとるやろ、水は電気を通す……」
「そりゃあそれくらい………ま、まさか!」
「そうや、坊ちゃんとグゥさんがあそこにあったやろう水溜りに足を付けてスタンガンを使ったらどうなるか……」
「い、いくらなんでもそんな……そんなプレイ、濃すぎますよ!!」
「坊ちゃんは最近、暇を持て余してるみたいやったしなあ。若気の至りってことも十分考えられるわ」
「あの二人の年齢を考えてくださいよ!!まだ子供なんですよ!?」
「そやったらコレは子供らしいっちゅーんかい!」
(ふあン!…そ、そこ…っ)
(ここ?ここが、いいの?)
(そ、そこばっかりは…らめ……すごすぎ……っ)
(やだよ……ここ、オレも…気持ちいいもん……)

「なんですかそれは……?布切れにしか見えませんが」
「紐パンや……そこに落ちとったで。これにもでっかい染みがついとるわ」
「ひっ紐……って、それ、グゥさんのものだって言うんですか?」
「間違いないわ。先輩、グゥさんに頼まれてましたよね、これ?」
「え?ああ、確かにお繕いして差し上げた気が……」
「気が…って、つい先日のことやないですか、なんでそないに簡単に忘フボンッ」
「そうそう、思い出したわ。チューブトップのビキニ、上下揃えてグゥ様にお渡ししたわね」
「うわっやらしーTバック!!それも虎ガラって……あの子、ナニ考えてんのかしら」
「いたた………坊ちゃん、案外オヤジ趣味入ってるようですわ」
(ああっ!ああっ!も、だめ…グゥ…ンンッ…もう……)
(んっ、お、オレも……もう…出、る……ぅうっ)
(熱っ!?ふああっ……あ、すご……出て…る…グゥも、イ…クゥ……ッッ)
(うあっ!し、締ま……る……っ)
264節分SS27:2007/02/09(金) 21:09:39 ID:6AeT7RaL
「そんな…そんな………ハレ様が……電流プレイ……猥褻ビキニ……」
「人の嗜好なんぞ、俺らには関係ないやろ。な、ここはそっと、見なかったことにしといたろうや」
「た、確かに…ハレ様の嗜好は関係ありません……!しかし、まだ解りません!!」
「なんや、しつこいなあ……まだ何かあんのかい」
「グゥ様がそんな下着を着けていたから、犯人の気を煽ってしまったとも考えられます」
「何やお前は、そないにグゥさんにどないかなって欲しいんか」
「そ!そんなわけないでしょう!!俺はただお二人の無事を……」
「ねえ、まだ終わんないの?私お腹空いたんだけどぉ」
「…そうですわね、そろそろお夕飯のお時間で御座いますわね。すぐご用意致しますわ」
「やったー!ね、ね、今日はお肉が食べたいな〜」
「はい、畏まりましたわ、お嬢様」
「ちょ、ちょっと待って下さいよ!!まだ話は終わってませんよ!!」
「もう十分話し合うたやないか……結論は出たやろ」
「出てませんよ!!」
(ふあ…あ……また、いっぱい……出た…な…)
(ん……でも、まだ……)
(え…?や、うそっ中でまた…大き、く……っ)
(グゥのお尻が悪いんだぞ……こんなの、よすぎるよ……)
(だ、だめだ……!いまイッたばかりなのに……またすぐ…っ)
(オレも何度でも…出すからっ、いっぱいイこ?)
(やぁっ!こ、こんなに…されたら、もっと、ダメになる……からぁ……)

「っさいわねえええ!!さっきからゴソゴソゴソゴソ!!気まずいでしょ!ちょっとは私たちの事も考えなさいよ!」
「いや……俺らが坊ちゃんらのこと考えたるべきやと思いますケド……」
「ハレ様のことを考えているなら、もっと真剣に今の状況を受け止めるべきだと思います!」
「ああ、そやから俺はこのまま黙って出てったるべきやと思うとるんや」
「それはアシオさんの勝手な想像でしょう!本当にそうか確かめもせずに放置するなんて俺には出来ません!!」
「これ以上なにをどう確かめるっちゅーねん。このままおってほんまに俺の言うとおりやったら、洒落にならんぞ」
「俺の推測が正しかったとしたら、それこそ黙って出て行くなんて洒落にもなりませんよ!!」
「……あーもう!!埒が明かないわね!!さっさとシーツめくっちゃえばいーでしょ!!」
「あっ!!」
(もうイッてる…イッてるの……これ以上されたらホントにダメになりゅから……)
(ダメになれば、いいじゃんか……あれ?なんかまぶしい……?)

「え………?」


「あらあら……」
「まぁ………」
「やっぱりや……」
「ハレ様……グゥさんも…ご無事、で……」

「ううぅぅぇぇぇぇええええええええええええ!!!?」
「やれやれ……ハレのせいでついにバレてしまったな」
「おおおおおおおおオレか!?ホントにオレのせいなのか!?ってかシーツ!シーツ返して!!」

「はいはい……ったく、そんな慌てちゃって……もしかして、私たちの声も聞こえてなかったのかしら?」
「そのようですわね……お二人とも大変仲がお宜しゅう御座いますわね。なんだか妬けてしまいますわ」
「ほれ見てみ、さっさと立ち去っとけば坊ちゃんもグゥさんも恥かかんで済んだんやぞ、ボケ」
「………そんな………そんな……ハレ様がホントにあんな濃いプレイを………」
「ほら、行くでロバート。すんません坊ちゃん、グゥさんもごゆっくり」
「お夕飯の準備が整いましたら、こちらに持ってこさせますわね。今夜はお二人でディナーをお楽しみ下さいな」
「じゃーね、ハレ。邪魔しちゃってごめんねー」
265節分SS28:2007/02/09(金) 21:10:19 ID:6AeT7RaL
「ちょ、待ってよみんな!」
「ええて、ええて。俺らのことは気にせんとって下さい」
「お二人のご関係については、他言致しませんからご安心下さいな」
「母さん、ハレが先生の記録を塗り替えないって信じてるからね!」
「ハレ様………猥褻……電流……」
(ぐぐぐぐぐグゥさーーーん!?)
(何かね?)
(この現状をこれ以上傷を広げる事無く解決する妙案があれば速やかにお聞かせ願いたい!!)
(ふん……何でもかんでもグゥに頼りおって……まぁ、任せてもらおうか)

「皆のもの待たれよ、しばし傾聴願いたい」
「え……グゥちゃん?」
「まぁ、何で御座いましょう」
「俺ら、邪魔や無いんですか?」
「ハレ様………虎ガラ……」

(グゥ……また余計なコト言って話をややこしくするなよ……?)
(安心しろ、余計なことは言わん)

「今回の件については……大筋は皆の察している通りであると言える。各々好きに解釈するがよい」
「ぐぐぐぐぐぐぐグゥさぁあああああああああああああん!!!!????」
「ただ…一つ言っておこう。ウェダ…ハレは保険医のようにはならんから安心しろ」
「な……?」
(なに言ってんだよ……そりゃオレはもう、グゥのこと……)

「まぁ、ハレのこと、信用してるのね。でも避妊はしなきゃだめよ?」
「そうですわ、ハレ様はまだアレをお持ちでは無いのでは御座いませんか?」
「あ、そうね……ハレじゃ買うのも恥ずかしいわよねー。わかった!ベル、用意してあげて!」
「畏まりましたわ、早急に手配致します」
「ああああああオレはこの母親の心遣いをどう受け止めればいいのやら………」
「違う違う、ウェダは勘違いしているぞ」
「おおっ!グゥ!言ってやってくれよ!!」

「ハレはグゥの尻にしか興味がないんだ」
「グゥさあああwdfhjhhphぐhpsdそふdmxぉんksdmf!!!!????」
「まぁ……それじゃ、ヘマをすることもないわね」
「あっさり了承ーー!?そそそそーーーーーーーゆーーーーーー問題なのおおお!?」
「処女のまま後ろを開発か……坊ちゃんもヤリ手やなあ……」
「歪んでいても、愛は愛…そこにはお二人しか介入出来ない世界があるのですわね。愛とは、どんな形にせよ美しいものですわ」
「ハ………ハレ様………尻フェチ………」
「あああああああもう何をどう収拾付ければいいのやらあああああ………」

「ハレも大人になったものね……母さん、ちょっぴり切ないわ……」
「エロいビキニに電流・感電プレイ……更に尻の開発まで順調とはなぁ……なにげに鬼畜やなー坊ちゃんも」
「ハレ様…………鬼畜…………」
「っちゅうか、えーかげん目覚ませや、このっ」
「ぐはっ!…あれ?俺は一体………そうだ、ハレ様とグゥさんは?」
「あのお二人はもう、俺らの介入できるレベルやないんや……お前ももう解ったやろ」
「は……はい………すみません、俺の失態です………」
「解ればえーんや!な、兄弟!ね、先輩も許してやりましょ」
「そうね……ロバートに乗せられた私もまだまだ甘かったわね。いいわ、今回はお二人に免じて、お咎めは無しにしてあげるわ」
「は、はい。ありがとうございます……!」
「再教育も48時間程度で済ませてあげましょう」
「……………はい………」
266節分SS29:2007/02/09(金) 21:10:59 ID:6AeT7RaL
(な、なんかロバートが全面的に悪いことになっちゃってるよ……ってか、泣き入ってる?)
(……ハレだって、ロバがあのタイミングで来なければ良かったと思っていたのではないのか?)
(そ、そりゃ最初はそう思ったけどさ……ロバートだって俺らのこと心配してくれてるからこそ、あんなに騒いだワケだろ?)
(ふむ……ならばハレの好きにするがよい。グゥも手を貸そう)
(うん……ありがと、グゥ)

「ね、ねえ!ロバートだってさ、自分の仕事を全うしようとしただけだと思うんだ!そんなに責めないでやってよ!!」
「ハレ様………うう……ありがとうございます………ッ!」
「ん…まぁ、そうですわね。ハレ様がそう仰るなら……」
「よかったな、ロバート。これから坊ちゃんに足向けて寝れんで?」
「ありがとうございます…………ずずっ…」

「そうだ、ロバはグゥの頼みを聞いて、豆を持ってきてくれただけなのだからな」
「あ……そいやそんなこともあったね…忘れてたわ……」
「豆……で、御座いますか?」
「おお、そーいや扉んとこにでっかい袋があったなあ…」
「そ、そうだ。豆まきですよ、豆まき!」
「なになに?豆まきって」
「いや……でももう、今日はそんなこと、してられませんよね……はは……」

「そんな……やろうよ!せっかくロバートが用意してくれたんだもん!!」
「うむ、ロバの罪は、豆まきの鬼になることで晴らしてやろうではないか」
「グゥ……賛成賛成!ロバートもたまには狙われる側の気持ちも味わわないとね!」
「なんか知んないけど、面白そうね!!私も賛成ー!」
「ハレ様…グゥさん……ウェダ様も………うう……俺は…俺は……っ」
「ね、ベルもアシオも一緒にやろうよ!あとで豆まきのこと、教えるからさ!」
「え…私たちも参加させて頂いて、宜しいのですか?」
「そりゃ嬉しいなあ。なんや解らんけど、盛り上がってきたでぇ」
「どうせなら、お母様も参加させましょ。これで7人ね!」

「しかし6対1と言うのも少し酷と言うものだな。もう1人くらい、鬼を選出した方がいいやも知れぬ」
「そうだなあ……じゃんけんとかで決める?」
「いやいや、ここは『フィアスティン家の鬼(畜)』の異名を取るハレが適役かと」
「誰がいつそんな異名を取ったんですかねえ!?」
「まぁまぁ、そのうち呼ばれることになるのだからよかろう」
「よかねーよ!!ってか呼ばれてたまるか!!」

「でも、お時間は大丈夫で御座いますか?もう夕食時で御座いますわよ」
「あ、それなら大丈夫です!日本でも夜に行うものですから」
「へえ。じゃあ夕食後ってことでええんちゃいます?ねえお嬢さん」
「私は楽しけりゃなんでもいーわよ〜」
「解りました。それではその豆まきとやらの準備、こちらで整えさせて頂きますわ」
「坊ちゃん、夕食後が楽しみやなぁ!」
「俺も豆まきなんて久しぶりです。ハレ様、鬼役、一緒にがんばりましょうね」
「ハレ様、グゥ様、お夕食後に下に降りて来て下さいましね」
「う、うん……あれ?えっと、なんか忘れてるよーな……」

「……いい、ハレ!?絶対責任取りなさいよっ!!」
「それでは、後はごゆっくり、お二人の時間をお過ごし下さいませ」
「俺らは馬に蹴られる前に退散しますわ」
「ハレ様、グゥさん。俺は何があってもお二人の味方ですからね」

「あ…えっ…と…?…オレとグゥのことはもう、これで、みんな納得したってワケ?」
「うむ…これにて一件落着、だな」
「どこがじゃーーーーーーーーー!!!!!!!」
267節分SS30:2007/02/09(金) 21:11:30 ID:6AeT7RaL
「あああああああああもう事態の収取は不可能なのかあああああ!?」
「まぁまぁ、皆の想像にこれから追いつけばよい」
「追いついてたまるか!オレは別にそこまでしたくねーっての!!」
「ん?ならばハレはどの程度までグゥをダメにするつもりなのだ?ほれ、言ってみろ」
「お前な〜〜〜……今は、このままで十分だよ」
「そうか……ならばグゥもそれでいい」
「グゥ……」

「それより、罰ゲームの件だが?」
「罰ゲーム?…って……あ…」
「そうだ、ロバが来るまでに、グゥのツノをつかめなかったのだからな」
「ま、まだそんな話、有効だったんデスね……」
「当たり前だ。罰ゲームの内容、よもや忘れてはおるまいな?」
「ん……グゥに食われるんだっけ?さっさと食えよー……」
「うむ。それでは食べさせてもらおう」

「はいはい、なるべく一息に……ふあっ!?って、ちょ、なにやって……っ」
「何って、ンちゅ……たべて、んムッ…いりゅのら………」
「そ、そんな食べ方……ああっ、ん、はぁぁ……っ」
「ン…っぷぅ……罰は罰だ……腹いっぱい食べさせてもらうからな」
「う〜〜……明日も勝負だ、勝負!!」

「よかろう…しかし、ハレが勝っても罰ゲームはまたグゥと遊ぶこと、じゃないのか?」
「だから俺も罰ゲーム変える!」
「なんだ、潔くないぞ?」
「潔くなくてもいーの!!だって、一緒に遊ぶのが罰なんて、おかしいだろ?」
「……ッ!ふ、ふん、まあ良い。で、内容は?」

「俺も…グゥのこと食べたいな」
「そっ……そうか…よかろう。明日が楽しみだな」
「これから毎日、楽しーよ。きっと」
「ああ、そうだな。しかしとりあえず今日はグゥが楽しませてもらうぞ」

「ふあっ!……ん、でも、今もオレ、楽しかったりするケド……」
「む、そりぇは、ちゅ……つまりゃんな……っぷぁ……ならば、グゥも罰ゲームを変えよう」
「な、なんだよそれー…何にする気だよ?」
「ふむ。グゥを食べろ」
「は………?」
「これで買っても負けても、ハレはグゥを食べられるな。よかったな、ハレ?」
「ずっりー……でもそれでいーよ…で、それって今から有効なワケ?」
「いや、今日はグゥがハレを食べる」
「ずっりー!ンッ…ホント、自分勝手なヤツ………」
「ふふ、退屈しないで良いだろう?」
「…まーね……退屈だけはしないよ、ホント」

END
268名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 21:13:57 ID:6AeT7RaL
以上です。
途中からグゥの尻に異様に萌えてきてエロが変な方向に偏ってしまいましたorz
あとエピローグがこんなに長くなるとは……大人4人いじるのが楽しすぎてついつい。
台詞だけで話進めてしまいなんだか申し訳ない。しかし満足w
そして節分関係なさす
269名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 21:53:34 ID:6AeT7RaL
>>230
ようやく読めた…自分のん書いてるときも気になって仕方がなかった
異世界のグゥって響きだけでもいろいろ妄想してしまいますな。
喪失系というかあって当たり前のものが無くなったor変質した世界って切り口はかなり好みであります。
続きwktk!!
270名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 00:57:46 ID:bnzf2upy
>>268
やばい…激しく萌えた…萌え尽きてシマタ。また寝られなく…c⌒っ*゚∀゚)っ
なんか妙にテンション上がってきて走り出したくなってシマタ…
向こうのスレでお尻お尻言ってたばかりなので尚更。
何と言ってもエロ描写が秀逸!その光景が事細かに頭に浮かんでしまって何とも…!!

ロバート以外の大人たち(特にアシオw)が駄目すぎて、だいぶ笑わせてもらいましたw
ロバさんカワイソス(;・∀・)

ホント上手いよなぁ…良い物を読ませて頂きました。
271名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 18:36:26 ID:p/jfsP18
なんかもう面白かったとかのレベルではないのですが…。
だっちゃとか日本描写とか楽しすぎるんですが…。
ていうかグゥ様のエロ描写に無いはずの物が勃・・・

なんかもうGJだけでは終われないな。
貴方は何者なのだと鼻血ブーの恍惚顔で言いたい。
そしてやっぱりGJ!!!と言いたい!!
272名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 02:27:56 ID:HmDoHTVk
まだ300こえてないのに400KBこえてるとは、これいかに
273名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 19:04:56 ID:ZeOwE44Q
密度の濃さ故。
274名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 19:38:32 ID:RLM22qAO
理由1:超GJな職人がいるから
理由2:スレ自体結構過疎り気味で、何とか盛り上げようと職人が頑張りまくるから
275名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 23:07:19 ID:ZeOwE44Q
大丈夫です充分盛り上がってますw
276名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 01:02:27 ID:JxD1zEHW
もうすぐ2/14だからヴァレンタインもの書いてぇ〜
277名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 09:22:15 ID:JW6TAGC7
都会でいじめられるハレを見かねて、グゥがちんちくりんステッキで
ハレの中に4つの人格を新たに生み出す。それぞれ
1.暴れん坊
2.大嘘つき
3.武士
4.無邪気

暴れん坊ハレがいじめっ子連中を半殺したり
嘘つきハレが気のある素振りで女の子を惑わしたり
武士ハレが亭主ならぬ息子関白な感じだったり
無邪気ハレがワジと一緒に常に大爆笑してたり

こんな電波を受信した俺は昨日仮面ライダー電王を観てました。
278名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 14:26:43 ID:QFBGUFWi
>>271
>ていうかグゥ様のエロ描写に無いはずの物が勃・・・
…( *´・ω・) ♀??

>>277
>嘘つきハレが気のある素振りで女の子を惑わしたり
その女の子はもちろんグゥですよね? (;´Д`)ハァハァ
ハレに踊らされ、怒り&恥ずかしさのあまり襲い掛かるグゥ→
ハレ、グゥが自分と遊ぼうとしていると勘違い→無邪気に変化→
逆にグゥに襲い掛かる→くすぐったり、無意識にグゥを触りまくる→焦るグゥ様( *´・ω・)

今朝方、夢の中でグゥ様にちんちくりんステッキ(バット)で殴られたせいか、
今も結構トランス状態ヽ(゚∀゚)ノ
279名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 21:55:43 ID:G5ntwbLp
>>278
何 そ の 羨 ま し い 夢 !!!
280名無しさん@ピンキー:2007/02/13(火) 23:35:47 ID:l8jsFfSo
サニィちゃんマダー?
281名無しさん@ピンキー:2007/02/14(水) 22:39:30 ID:JzD8KDyX
バレンタインが〜終わる〜るるるる……orz
今週中は、今週中はきっとずっとバレンタインなんだ……きっとそうだ……
282名無しさん@ピンキー:2007/02/15(木) 00:25:15 ID:VESf/+vB
きっと今頃ハレハレがグゥの身体にチョコを塗りたくっているよ
283名無しさん@ピンキー:2007/02/16(金) 13:48:06 ID:HI8bRch2
おお、ハレグゥスレ復活してたのか!

そんな今北産業なので今ログを読み途中なのですが、161のハレワジきゅんときました。
これはワジの性別がどちらでも読めるいい作品だね(´`*)
ワジは俺の心の中のヒーローになりつつあるんだぜ。
本編でも出てこない・性別謎というおかげで妄想だけが暴走していくぜ…。
284名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 14:05:44 ID:xLhMftpf
285ハレ÷5=?:2007/02/18(日) 19:36:39 ID:OCNhpTKZ
>>277にインスパイアされた。
これを続けていいものかどうかわからないが、とりあえず投下してみるテスト。


 さて、今回は一体何から話したらいいものやら。

 時間を越えたりとか保険医と入れ替わったりとかグゥの腹の中でひと悶着あったりとか、超常現象
盛りだくさんのある意味でとても充実してるだろう青春を送る俺は、大概のアクシデントには慣れていた。
 そりゃあちょっとは驚きはするが、ともすれば「まあグゥだしな」の一言で全てを片付けてしまいそうな
投げやりな自分がいたりして、オレの価値観が根本から崩壊しそうなことを憂いてたりする毎日だ。
 とにかく、オレはちょっとやそっとじゃうろたえたりしない……そう思っていた。今までは。
 でも、ちょっとこれはないだろう。

「なぁーにブツブツ言ってやがんだ。飯はまだかー?」
「全く……お茶の一杯も出せないんじゃやってけないよ」
「そもそも、男子が台所に立つこと自体間違っているのだ」
「あはは、ごはんごはんー!」

 台所に立つオレを急かしているのは、革ジャンにレザーパンツというワイルドな服装の……オレ。
 厚かましくお茶を要求した挙句嫌味を言ってきやがるのは、スーツを着て眼鏡をかけた……オレ。
 古めかしいことを言いつつも態度がでかいのは、薄黄色の着流しを着て髪を束ねた……オレ。
 テーブルを叩きながら無邪気に大爆笑してるのは、ヒップホップ系のファッションの……やっぱりオレ。
 ……何これ?

「グゥ……改めて聞くけど、何だこれ」

 半ば救いを求めるような目でグゥを見やると、グゥは黙って一枚のDVD−ROMを取り出した。
 その真っ白なレーベル面には、やたらと丸っこい文字で

『仮面●イダー電●』

 と書かれていた。



 いや、影響を受けるにもほどがあるだろう。
286ハレ÷5=?:2007/02/18(日) 19:37:35 ID:OCNhpTKZ
 事の発端は昨日の晩。
 ジャングルはいつものように平和で、そしてその日もオレが全ての家事を受け持っていた。
 掃除洗濯炊事、アメの世話もかなりオレがやっている。そこら辺のメイドにだって負けない労働時間だ。
しかもこれで給金が出ないときたもんだから、いつ暴動が起きてもおかしくないぞ。
 ああ、一応言っとくけど、別にオレは小遣い欲しさに家事をやってるわけじゃない。
 オレがやらなかったら誰もやらないからやってるだけだ。
 そしてそんな半強制労働な家庭環境がオレにこんな台詞を言わせたからって、何の不思議があろう。

「オレが後二人、いや三人くらいいたらなあ……」

 そうしたら、4人で色々分担してかなり楽になるのに。コピーロボットとか、憧れだよなあ。
 一人が掃除、一人が洗濯、一人が炊事、一人が買い物で、当番制にして……
 ……と、ここまで考えたところで、オレは背後から発せられる邪悪な気配を感じて慌てて振り返る。

「……どうせオレの考えなんか筒抜けなんだろ。え?」
「いやあ、何のことだかサッパリ。現実からあまりにも乖離した少年の夢なんて知りませんよ」
「現実からあまりにも乖離した存在であるお前に言われたくねーんだよ」

 物陰から物凄いニッコニコの笑顔でこちらを見ている居候に、オレは溜め息を禁じえなかった。

「言っとくけど、今のは愚痴というか夢見がちな戯言というか……」
「いえね、ここだけの話、人間を4、5人くらいに分裂させることとか出来るのですよ? ちんちくりんな
 ステッキ一振りで……」
「人の話を聞け」

 ちんちくりんステッキにはあまりいい思い出はない。というか最悪な思い出しかない。
 とりあえず逃げようとしているその間にも、グゥは何やら『一』〜『四』までの漢数字がナンバリング
されている鉄道模型のようなものを4つ取り出し、ガチャガチャと連結させている。何の影響か知らないが
恐らくこれが今回のちんちくりんステッキだろう。
 『二』と『三』を上下に連結して、『一』と『四』を前後に連結すると、『一』の先端から赤い刀身が伸びる。
これは剣か? グゥはそれをノリノリで構えているが、ホントに何の影響なんだ。
287ハレ÷5=?:2007/02/18(日) 19:39:03 ID:OCNhpTKZ
 だがわざわざ剣の形を取ったということは、これでオレを斬りつけなければ効果は発揮出来ないはず。
これまで、何か訴えられそうな剣やバットになった時も、オレを斬ったり殴ったりして使っていた。
 オレの足の速さを知らないわけでもあるまいに、形状の選択を誤ったな。
 オレは踵を返して脱兎の如く逃げ出した。家を出てジャングルに入れば何とかなるはず……

「では、グゥの必殺技パート2´」

 直前にグゥの呟いた単語の不吉さを振り払うかのように、家を飛び出して全速力で走るオレ。
 さしものグゥも足の速さではオレに敵わないか……と安堵しかけたその時だった。
 何かが追ってくる。
 何か、鋭く速いものが風を切って迫ってくるのを感じる。
 それは人間ではなく、恐らく獣でもない。では一体?
 オレは走りながら、肩越しに後方を見やった。
 オレを追ってきているもの。
 それは、あのちんちくりんステッキの赤い刀身だった。

『古今東西』

 不意に、グゥの声が聞こえたような気がした。
 ちんちくりんステッキの刀身がオレの身体を横一閃に切り裂こうとしたその瞬間、オレは意識を失った。



 で、次の朝。
 いつものように朝5時くらいに起きてきて、あれは夢だったのかとそう思いかけて朝食を作るべく台所に
立とうとしたら、雁首揃えて好き勝手なことやってたのが、この4人のオレだったってわけだ。
 ワイルドな服装のオレは床に寝そべって漫画読んでるし、スーツに眼鏡のオレはネットサーフィンだし、
黄色の着流しのオレは外で木刀持って素振りやってるし、ヒップホップなオレはゲーム三昧だ。
 と、ワイルドなオレが漫画から目を離したかと思うと、俺を指差してこう言った。

「おい、そこの俺。腹減ったから飯喰わせろ」
「は? ……オレのこと?」
「そーだよ、こん中で一番冴えねーツラしてるお前だよ。とっとと飯作れ」

 何とまあ、顔は勿論声まで同じだよ。ついでに言うとその冴えねーツラもお互い様だよ。
288ハレ÷5=?:2007/02/18(日) 19:41:06 ID:OCNhpTKZ
「あ、僕は冷たいお茶でも貰おうかな。今日は一段と暑いからね」

 と、眼鏡のオレ。暑いという割にはネクタイまで締めて、汗一つかいてないぞ。

「ふん……朝早くから台所に立つなど、下女の仕事であろう」

 どこぞの団体から訴えられそうな発言の着流しのオレ。最近は色々厳しいから勘弁してくれ。

「ねーねー、ここって『怪獣キング』のアニメやってないの?」

 それは日曜朝7:00からだろ。今日は木曜日だ、ヒップホップなオレ。
 ……ていうか、この想像を絶する光景に呆然としつつも、ついついツッコんでしまう自分が悲しいな。
オレが真にツッコむべきはこいつらじゃなくて、もっと他にいるだろう……なあ、そこのお嬢さんよ。
 グゥはいつものしたり顔で、どうも楽しくて仕方ないといった雰囲気を漂わせつつ、オレに訊く。

「どうだね、分裂した気分は」

 目下のところ、どうにもコメントのしようがないんだが。ていうか、何であんな露骨にキャラが違うんだよ。
 誰だよあいつら。

ハレが大人しくグゥに斬られないもんだから、ちゃっかり間違ってしまったのだよ」
「ほほう、ちゃっかりとね……」

 仮にうっかりだったとしても、オレはその裏側の悪意の存在を疑うぞ。

「ハレの人格をそのまま引き継いで4人に分裂させるつもりが、ハレに内在する欲望やらリビドーやら
 エクスタシーやらが凝り固まって、あの4人のハレになったのであろう」
「何? ひょっとしてこれはオレの所為か?」
「まあ、あれもこれも全員ハレなのだから、仲良くやるがいい」

 グゥは言いたいことだけ言って寝室へ引っ込んだ。この野郎、こんな状況で二度寝するつもりか。
 ああ、ホントにどうしたらいいんだよ。母さんに見られたりしたらどうするんだ……。

 
 
 苦悩するオレをよそに、4人のオレはどこまでもマイペースに朝食や冷たいお茶を要求し続けていた。
289名無しさん@ピンキー:2007/02/19(月) 01:51:55 ID:pKlfWGLk
つっ…!続きは職人様…!!
290名無しさん@ピンキー:2007/02/20(火) 21:26:13 ID:uDI7NR9K
これからどうなるのか期待期待
291名無しさん@ピンキー:2007/02/21(水) 16:54:54 ID:pCHCBahV
ハレ÷5=グゥの楽しみ×5
292名無しさん@ピンキー:2007/02/22(木) 23:47:01 ID:YAlzPJOK
いつもの5倍w
グゥ様、楽しすぎてツヤツヤテカテカになってしまいそうだw
293ハレ÷5=?:2007/02/23(金) 22:20:25 ID:8cv+JKg8
 分裂した4人のオレについては、母さんが起き出してくるまさにその直前、4人をグゥの口の中に放り
込むことによって何とか事なきを得た。
 現時点ではグゥの腹の中の住人が4人増えただけで何の解決にもなってないにせよ、ひとまずは
これでいいだろう。あの異空間からそう簡単に抜け出せないことは誠一さん達によって実証済みだ。
 緊急避難のような形でグゥの腹の中に厄介払いしたわけだけど、誠一さんやともよさん、山田さんに
でっかいグゥにも迷惑をかけちゃうんだし、後で菓子折りの一つでも持っていくべきだろうか。

「4人のハレは誠一達にも好評のようだぞ」
「え、マジで?」
「うむ。今彼らは、ここにいるハレを含めた5人を『セーラー服苦労人戦士 ハレハレムーン』にするか
 『YES! ハレハレ5』にするか協議中だ。現時点ではハレハレムーンの方が優勢だが」
「今すぐやめさせろ」

 聞かなくてもいいっていうか聞かない方がよかったこと聞いちゃったよ。心配して損したなホント。
 まあそれはともかく、将来的にはあの4人のオレを何とかしなくちゃいけないだろう。このまま永久に
グゥの腹の中に収まっていてくれるのならそれもまたよしだが、グゥがこの異常な状況下で何も行動を
起こさないとは考えづらい。こいつはオレを困らせるのと自分が楽しむためには何だってするからな。
 そう、例えば今ここにいるオレと、あの4人のうちの誰かを入れ替えるとか……。

「ほうほう、ハレはそういうのがお好みかね」

 いや、今のナシ。頼むからその表紙に『ネタ帳』とか書いてある不吉なメモ帳とペンをしまってくれ。

「ちっ……」

 ちっ、じゃねーよ。ていうかそのネタ帳懐かしいな。旧シリーズ第3巻以来?
 グゥがこれまで行われた幾多のオレいじりのネタが記されているであろう魔のメモ帳をしまったのを
確認し、オレは改めて今後のことを考えた。
 しかし、何しろ4人だぜ? 一人か二人ならそっくりさんで通るだろう。みんな純粋無垢というか能天気
というか、とにかくそれで誤魔化せるに違いない。
 だが4人ものオレのそっくりさんを何の違和感も疑いも抱かずにスルーするとは流石に考えられない。
最近の若者はそこまでバカじゃないと寧ろ信じたい気持ちだ。ていうか、よしんば学校のみんながOK
だっだとしても、母さんその他の問題が残る。
 グゥに4人を腹の中から出さぬようキツく言い含めておく? いや、ダメだ。数秒後には即出すだろう。
オレの言うことに素直に従うグゥではないと、この3年で嫌というほど思い知らされている。
 グゥの奇行には毎度毎度困らされているが、今日この時ほど参らされたのはなかなかない。
294ハレ÷5=?:2007/02/23(金) 22:21:21 ID:8cv+JKg8
「はぁ、ホントにどうするんだよ……」
「何を悩むことがあるのだね? このまま当初の予定通り、4人で家事を分担するなり何なりすれば」
「いや、これはオレの直感だけどあの4人は多分オレの言うことなんか欠片も聞いてくれない気がする」
「まあそういう風に作り上げましたからな」
「だよなー……ってやっぱりおめーの仕業か―――!!!」

 ノリツッコミ調にグゥの首を絞めにかかる。痛い痛いと口で言いつつ、さほど痛そうでもないグゥ。
 しかし、これがグゥの仕業と判明してよかったと思う気持ちもある。誰だって自分の中にあんな珍妙な
4人組が内蔵されてるなんて思いたくないだろう?

「いや、グゥは確かにハレの言うことを聞かないように仕向けたが、あれは紛れもなくハレだぞ」
「オレはあんな統一感のない人間じゃないぞ」
「いえいえ。あの4人のハレの一人一人が、ハレに内在する欲望その他が凝り固まって出来た新しい
 ハレなのだよ」
「欲望〜? バカ言えよ、オレにどんな欲望があってあんなオレが生まれるんだ」
「じゃあ本人達に聞いてみますか」
「は? 本人……って……」

 ……何か前にも見た光景だなぁ、グゥの口から徐々に人が出てくるのって。
 


 さて、ここに再び5人のオレが出揃ったわけだが。
 ここで仮にワイルドな服装のオレを赤ハレ、スーツに眼鏡のオレを青ハレ、着流しのオレを黄ハレ、
ヒップホップなストリート系ファッションのオレを紫ハレと呼称することにする。
 何故赤やら青やら色の名がつくのかというと、4人のオレはそれぞれ瞳の色が違い、髪の毛のどこか
一房がメッシュになっているからだ。

赤ハレ「ハァー……グゥの腹ン中は息が詰まるぜ、ったく」
青ハレ「で、僕達を呼び出して何の用?」
黄ハレ「グゥ殿が貴様の思い通りにならぬことなど、わかりきっておろうに……」
紫ハレ「ねーねー、ハレハレ5ごっこしないの?」

 ……こいつら、どないせーっちゅーねん。
 グゥはグゥで新しいおもちゃを見つけた子供のような超ゴキゲンオーラ出しまくりだし。
295ハレ÷5=?:2007/02/23(金) 22:22:01 ID:8cv+JKg8
「何ていうかさ……とりあえず自己紹介というか、お互いのことを知っといた方がいいかな、って」

 とりあえず当たり障りのないことを言ってみると、グゥと青いオレが呆れた風に肩をすくめた。

「何言ってんの? 僕達は君自身なのに、今更自己紹介もないでしょ」
「全く、しょうがない子ですな」
「第一、元はと言えば自分が複数人いればいいなんて無責任なこと考えたのは君なんだから、その辺
 よく理解してくれないと。全く、君ってば本当に僕なのかい?」
「さっきから酷い言われようだけど、こんな超常現象理解しろってのは酷な要求ではありませんかね」

 少なくとも、オレがグゥのことを完全に理解できたことなどこれまで一度たりとてない。

「……っつゥーかよぉ! お前、俺達をいつまでグゥの腹ン中に閉じ込めとくつもりだ?」
「え、いつまでって言われても……」
「ま、僕は外でも中でもどっちでもいいんだけどね。黄色い君はどう?」
「グゥ殿の腹の中では衣食住には困らぬが、我々とてハレだ。外に出る権利は当然ある」
「……だってさ」

 赤いオレと黄色いオレは外に出る権利を主張して譲らない。青いオレはどっちでもいいと言ってるが、
それはつまりどちらの味方をする気もないということなんだろうな。
 と、ふと横を見ると満面の笑顔のグゥが手持ち無沙汰な様子の紫のオレに耳打ちしている。

「ほれほれ、こっちのハレも何か言ってやりなさい」
「えー? 僕は誠一とかともよとかひろことか、おっきいグゥお姉ちゃんのいる方が好きだよ?」
「お前は黙っとれ〜」
「うえええぇぇぇぇん! グゥがぶった〜!」

 味方にならないとわかった途端に紫のオレの頭を殴るグゥ。泣き叫ぶ紫のオレ。変わり身早すぎだろ。
何かオレまで嫌な気分だぞ。
 赤いオレと黄色いオレは外出派、青いオレは中立、紫のオレは残留派。さてどう転ぶか。
 赤いオレは、オレの肩を力一杯掴みオレとは思えないようなドスの利いた声で言う。

「まあ何だ……とりあえず俺が言いてえのは、俺と代われってこった」
「そ、そんなの出来るわけないだろ! 大体そんな露骨にキャラの違う奴がオレになったら、みんな混乱
 しちゃうだろ」
「いいじゃねえか、ちっとくらい……あんなクソわけのわからん世界にいたら身体が鈍っちまうぜ」
296ハレ÷5=?:2007/02/23(金) 22:22:43 ID:8cv+JKg8
 本音を言えば、永遠にあのクソわけのわからん世界に留まっていてくれればそれに越したことはない。
だが赤いオレと黄色いオレがそれを許さないことは最早自明だ。

「貴様は我々に消えて欲しいようだが、グゥ殿がその気にならぬ限りは我々はこの世界に存在し続ける
 であろう。来るべき時が来れば我々は消えるやも知れぬが、その時は今ではない」
「俺もハレだからな、グゥの奴の考えてることの一つや二つはわかる。少なくとも、今俺達をどうこうする
 つもりは1ミリもねーだろうな」

 まあ、そうなるだろうな。オレからグゥに言ったところでグゥがオレの言葉に耳を貸すとは到底思えず、
また何かしらのアクションを起こしたとしても、それは事態を更に悪化させるものに違いない。

「話がまとまらんようだな」
「誰かさんのおかげで面倒なことになってますからねえ」
「ここはグゥがナイス解決策を提案しようではありませんか。ほれ、全員集合〜」

 赤いオレと黄色いオレが怪訝な顔をし、我関せずとばかり本を読んでいた青いオレは渋々席を立ち、
泣いてたところに飴を与えたら即泣き止んで夢中になっていた紫のオレもこちらへ寄って来た。
 グゥが提示する解決策とやらに不安を覚えないでもなかったっていうか現在進行形で不安だが、まあ
オレに具体的な解決案があるわけでもなく、とりあえずグゥに任せる他なかったのだ。

「まあ悪いようにはしませんよ」

 どの口が言えるんだその台詞は。
 ともあれ、グゥはオレを安心させるかのようにオレの肩をポンポンと叩き、そして

「ふん」
「おごぉっ!?」

 ……お約束とばかりにボディブローの一撃。マットというかフローリングに沈むオレ。
 腹を抑えて蹲る俺を尻目に、グゥは4人のオレにこう言った。

「もうめんどくさいから、みんなでジャンケンして勝った人が外に出るってことで」

 この野郎……先に邪魔なオレを排除してから、こいつらのうちの誰かをオレに成り代わらせるってか。
こいつはどうあっても自分の望む展開に持って行くつもりらしい。まあいつものことだが……。
297ハレ÷5=?:2007/02/23(金) 22:23:31 ID:8cv+JKg8
「へへへ、ジャンケンか……シンプルでいいじゃねえか」

 指をボキボキ鳴らしながら意気込む赤いオレ。

「面白くなってきたんじゃない?」

 グゥに負けず劣らず妙に楽しそうな青いオレ。

「……我がジャンケンの極意をとくと見るがいい」

 静かに言う黄色いオレ。ところでジャンケンの極意って何だ。

「わーい、ジャンケンジャンケンー!」

 紫のオレはさっきまで泣いていたとは思えぬハイテンション。
 四者四様、全く違う反応だが、頼むからオレを置いてみんなで盛り上がらないでくれ。

「さあ、誰が勝っても恨みっこナシですよ」

 こいつのこの悦った顔がこれほど癪に障ったのも久しぶりだぞ。こいつを殺すには何が必要なんだ?
核弾頭ミサイルか? コロニーレーザーか?

「「「「最初はグー!」」」」
 
 あ、4人のオレ! ちょ、ホントに待って……

「「「「ジャンケン……」」」」



「「「「ポン!!」」」」



分岐
赤ハレが勝つ→マリィルートへ
青ハレが勝つ→ラヴェンナルートへ
黄ハレが勝つ→ラーヤルートへ
紫ハレが勝つ→グゥ(大)ルートへ
298名無しさん@ピンキー:2007/02/23(金) 23:28:40 ID:19QxqxxV
分岐ktkr

オレなら紫ハレルートだが!!
黄ハレルートも気になりすぎる!!

ここはラーヤルートに一票か…っ

ってか100%負けること確定の本物ハレカワイソスw
299名無しさん@ピンキー:2007/02/24(土) 01:53:17 ID:K1s7eapX
今日の19時に圧縮だぁよ。
続き応援がてら、保守
ちなみに俺はグゥ(大)ルート希望
300名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 05:31:44 ID:kANe3OH1
そのルートの名前って一体何を表してるんだ?
気になる…どう話が傾いていくのか気になる…。
ていうかこういう形式無かったよね。面白い。

じゃあ僕は中立だから青ハレが勝つに一票。
301ハレ÷5=?を書いてる者:2007/02/25(日) 17:54:21 ID:7/rEiPTO
突然ですがすいません。
青ハレの使い勝手が予想以上によく、
また黄ハレの使い勝手が予想以上に悪かったため、
青ハレをラーヤルート、黄ハレをラヴェンナルートに変更するかもです。

なお、性格の内訳は
赤ハレ→熱血バカ? とにかく暴れたいお年頃
青ハレ→嘘つきでナンパでとにかく嫌な奴
黄ハレ→生真面目な侍キャラ
紫ハレ→無邪気というか幼児退行というか
という感じになっております。
302名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 22:26:41 ID:kANe3OH1
そのラーヤとかラヴェンナとかはこれからどういった役回りになるのですか?職人様
303ハレ÷5=?を書いてる者:2007/02/26(月) 00:38:12 ID:ekc0zpoJ
エロ……とまではいきませんが、ちょっとしたカップリングとかロマンスとか、そんな感じです。
304名無しさん@ピンキー:2007/02/26(月) 02:09:37 ID:ArGwuVea
なるほど、了解です!(==)>ありがとうございました。
ちなみに自分は以前青ハレに投票しますた。
305名無しさん@ピンキー:2007/02/28(水) 23:14:19 ID:RCPlHnTQ
オロローン
バレンタインネタばどこまでも広がっちってまだ終わらんとです。
こうなりゃホワイトデーに投下でよかですかorz

>>301
ラヴェルートに一票!
ラーヤ、グゥ(大)もレアだからかなり見たいっすけど
実は私もネタに使ってたり……いやしかし、ネタがかぶる可能性を
考慮した上でラーヤ、グゥ(大)も見たい……!!むしろラーヤ萌えす!

このスレもあと70k強ですね。今書いてるネタは次スレになるかも……。
その前にもう1本くらい小ネタここに書きたいですね。
306名無しさん@ピンキー:2007/03/01(木) 00:32:04 ID:0fOCI+A8
>>305
激しく期待!!

ラーヤは殆ど喋らない所がまた良い。たまに声が聞けた時の嬉しさというかw
そういえば、何処かのサークルがラーヤメインのエロCG集出してたな…
307名無しさん@ピンキー:2007/03/01(木) 04:23:54 ID:+J55igiJ
>>306
それ知ってる。ただ自分の使ってるパソが個人専用じゃなかったから落とせなかったんだよなぁorz
しかしラーヤのCGもいいが、個人的にはやっぱグゥ様のが見たい。激しく見たい。
ラヤたん何巻目かのOVAで「ボ…」しか台詞無かったよね。あの為だけに声優サン呼んだのかw

>>305
期待してるっす!
むしろ季節なんか無視して投下して下さってもい(ry
楽しみにしております。頑張って下さい!
308名無しさん@ピンキー:2007/03/01(木) 13:55:03 ID:vPv9jtHg
赤ハレ、ひいてはマリィルートの需要のなさに全米が泣いた。

というわけで俺は赤ハレに一票!
309名無しさん@ピンキー:2007/03/02(金) 17:27:11 ID:s3XILM8T
マリィよりグゥが好きなんだ、スマソ。
310名無しさん@ピンキー:2007/03/02(金) 20:21:56 ID:G6vMWyZL
マリィは前スレでも随分活躍したしな。
ハレと一番ナチュラルに絡めるはずなのに
何故か展開が思い浮かばない天邪鬼な自分が居たりする。
声優の松岡さんはマリィを萌え萌えキャラと仰ってるが
実際どうだろうね。ある種の狂気と紙一重の愛が魅力なキャラだと思うがw
311名無しさん@ピンキー:2007/03/03(土) 00:53:41 ID:cudu8A43
マリィで一番好きだったのは
「あたしと、神について語り合わない!?」
ってシーンだった。
あれにはもう狂気を感じるよ。あっぱれだ、マリィ。
312名無しさん@ピンキー:2007/03/03(土) 11:55:21 ID:N0jIeyjs
二次スレの方で話題になっているチキンに思いっきり感銘を受けつい1本書いてしまいました。
ハレ×グゥです。
↓から投下していきます。
313チキン01:2007/03/03(土) 11:56:21 ID:N0jIeyjs
<<1>>

「グゥ、出来たよー」
「ん……うん」
 オレの声に、グゥはゲームのコントローラーを置きダイニングに入って来る。
 テーブルの上には、ほかほかと美味しそうな湯気を立てるグラタンが二つ。
 今夜は、母さんは狩りで留守だ。どうせ狩りの後は酒盛りで、明日の昼ごろまで帰っては来るまい。
 いつもならオレが適当に何か作るのだが、どう言う風の吹き回しか、今日は母さんがグラタンを作って置いていてくれた。
夕飯はそれをレンジで温め直しただけ。作りたてと比べれば流石に落ちるが、母さんの作るグラタンはそれでも美味しい。

 グゥがテーブルに着くのを確認し、いただきますを言うとオレはグラタンをパクパクと口に放り込む。その味はいつもの
母さんの作るものと変わらない美味しさだったが、一ついつもと違う点に気付いた。中の具がエビではなく、鶏肉だったのだ。
昨日の夜も酒で飲み潰れ、起きたのは今日の昼過ぎだった。エビを下ごしらえする時間と気力が無かったのだろう。
まぁ、チキングラタンと言うのもたまには悪くない。これはこれで美味だ。
 しかし、チラリと視界に入ったグゥのスプーンはグラタンの前でピタリと止まり、微動だにしていなかった。
一口も手を付けていないようだ。
 そう言えば、グゥはもともと好き嫌いが激しい方だけど、鶏肉は特に嫌いだった。今まで、鶏肉の入っている料理に
マトモに手をつけている所は見た事がない。ただ、グゥ自身はそれを口に出した事は無いし、度を越した小食と言う事もあって
オレもそれに気付くまでに随分時間がかかった。ずっと前に行った海ピクの時も、母さんが作ってくれたお弁当の献立の中に
鶏のから揚げが入っていたらしい。結局酒の肴として母さんが作った傍から食べてしまったらしいのだが、アレもグゥの
策略ではと疑ったものだ。

 それでもその好き嫌いは直ったと思っていた。都会に居た時は、出された料理は全て綺麗に平らげてしまっていたからだ。
味わっているという様子は一切無く、皿ごと丸飲みにしていただけなのだが、それでも食べている事に変わりは無いだろう。
 あれは確か、ベルに「好き嫌いはいけません」と窘められてからだったか。結局、ジャングルに帰ってきてからはまた
好き嫌いが再発している所を見るとまるで直っていないって事なんだろうけど、家じゃあ何故か出された料理を丸飲みに
した事が無い。好き嫌いを咎める人間が居ないからだろうか。別にオレもそこまで気にした事は無いけど、せっかく作った
料理なのだ、食べられるのなら食べて貰った方がいい。それに好き嫌いが直ればオレも料理を考える手間が減るってもんだ。

「グゥ?ダメだよ、ちゃんと食べなきゃ」
「なんだ、保護者気取りか?」
 オレの言葉にも全く怯む様子を見せず、グゥはフン、と鼻を鳴らすといつもの皮肉めいた声をぶつける。
まあ、この程度はジャブだ、ジャブ。こっちもそれくらいで怯んでたらコイツとは付き合えないってもんだ。
「知ってるか?好き嫌いが激しいと将来、太りやすくなったりキレっぽくなったりするらしいよ」
「今度は脅し……か。やれやれ、ハレも将来ろくな大人にならんな」
 グゥは思いっきりオレを見下しながら大きなため息をブハァと吐き出し、両手の掌を上に向け顔の高さに持ち上げ、
肩をすくめる。非常に癇に障る態度だが、この程度もいつもの事だ。いちいち怒っていてはきりが無い。
 平常心平常心……。オレは心を落ち着けるために目の前のグラタンをかき込む。うん、多少冷めてしまったが、
やっぱり母さんの作るグラタンは絶品だ。これを鶏肉が入ってるってだけで食べないなんて、実に勿体無い。

「なぁグゥ……」
「うるさい」
 最後まで言い終わらぬうちに、グゥはがたんと大きな音を立てて席を立った。
結局、グラタンにスプーンすら刺し入れぬまま、またテレビの前に戻って行く。
「おいグゥ!食べない気かよ!」
「ハレが食え」
「オレもそんなに食えないって。それにこれはグゥのために作ってくれたもんだろ?」
「………ッ」
 ようやくオレの説得が効いたのか、グゥはピクリと肩を揺らし、顔だけをこちらに向けた。
その手はまだコントローラーを握ったままだったが、聞く耳を持ってくれたようだ。
314チキン02:2007/03/03(土) 11:57:16 ID:N0jIeyjs
「…だったら、グゥがそれをどうしようとグゥの勝手だろう」
「ンな………ッ!!」
 ……聞く耳は持ったようだが、どうしても折れる気はないらしい。オレもここまで来たら引き返せないぞ。
何が何でも食わせてやる。

「おい、戻ってきて食えって」
「いいからハレが食え。勿体無いだろ」
「勿体無いって思ってんなら食べなよ!グゥもグラタン好きじゃんか」
「そのグラタンは嫌いだ」
「なんでそう好き嫌い多いんだよっ!都会ん時みたいに丸飲みすりゃ食えるんだろ?」
「丸飲みはしたくない」
「何でだよ!」
「ハレには関係ない」
 だんだんと、胸の奥に黒い炎が灯って行くのが解る。何故自分がこんなにムキになっているのかは解らない。
けど、グゥの表情がいつにも増して無感情で、その声がいつにも増して無愛想で、その態度からはこれまでに無い拒絶を感じ、
ここで自分が折れてしまったら、もう二度と取り戻せない何かを失ってしまう気がした。

「そんなに、嫌いなのかよ。母さんのグラタン!」
「……別に」
「別にって何だよ」
「嫌いじゃないと言ってる」
「好きでもないんだな」
「誰がそんな事を言った」
「別にって言ったじゃんか」
「そう言う意味じゃない」
「じゃあどう言う意味だよ!」
 言葉を交わす度に、グゥの声を聞く度に黒い炎がメラメラと燃え盛って行く。声のトーンが制御出来ない。
別に、こんなに強く言うつもりは無かったのに。これじゃあグゥを無意味に責めているだけじゃないか。
 でもオレの中の炎はその大きさを増すばかりで、それを目の前の少女に発散する事でしか鎮める術が見当たらなかった。

「……そのグラタンが食べられないだけだ」
「嘘付け。ホントは不味いって思ってても無理して食べてたんだ」
「違う、いつものグラタンは本当に美味し───」
「オレの料理だってホントは食べたく無かったんだろ!!」
「ハレ…?」
「いいよ、もう!もうグゥになんか何も作ってやんないからな!!」
「…………ッ」
 ダンッ、と、何か重い物が落ちたような音が聞こえた。同時に、左手が痺れるように痛む事に気付く。
どうやらオレが自分でテーブルを叩いた音のようだった。
 ……何やってんだ、オレ。こんな理不尽な畳み込みがあるか。オレが聞かされても納得の行く台詞じゃなかったぞ。
 急激に、頭に上った血がスゥ、と降りていった。代わりに恥ずかしさと情けなさで胸が一杯になり、身体中が火照る。
 いいや、もう別にそこまでして食べて貰わなくても。冷蔵庫に置いておけば母さんが帰ってきたら自分で勝手に
食べるだろうし、これまでだってそんなに気にした事なんて無いじゃないか。……グゥにもちゃんと、謝ろう。
315チキン03:2007/03/03(土) 11:57:46 ID:N0jIeyjs
「……わかった」
「え…?」
 だけどグゥは、ゲームの電源を切ると真っ直ぐにこちらに向かい、テーブルにドカンと座った。グゥの前にはもうすっかり
冷め切ってしまったチキングラタンがそのままになっている。
「食べる。食べればいいんだろう」
「い、いやもういいよ、別にさ」
「嫌だ。食べる、から……ッ」
 今度は、グゥの方がムキになってしまっている。
 グゥはスプーンを強く握りグラタンの中に差し込むと、一瞬躊躇を見せたがそのまま口の中にパクンと放り込んだ。
そのままその勢いを止めてなるかとばかりに、グラタン皿を持ち上げ一気に口内に流し込む。
「ちょ、そんなに急いで食べなくても……」
 オレの静止もまるで耳に入れず、グゥはその皿がカラッポになるまで、息をする暇も忘れ食べ尽くした。

 なんだ、ちゃんと食べられるんだ、と思ったのも束の間……。
「お、おいグゥ!?」
「た、食べたぞ……これで……良い……ッ」
 グゥの顔は、蒼白だった。元より色白のその肌からは更に血の気が引き、オレを見詰める瞳からも生気を感じない。
そのままグゥはゆらりと身体を揺らせたかと思うと、椅子ごとガタン、と床の上に倒れてしまった。
「グゥ!?どうしたんだよグゥ!!」
 今度は、オレの顔が青くなる。グゥはハァ、ハァと小さく短く息を吐き、まるで病人のようだった。慌てて抱き起こすが
その身体からは力を感じず、ぐったりと首を後ろに倒し腕もだらりと下げたままだった。
 オレはグゥを抱き上げ、ゆっくりと、出来るだけ揺らさぬようにベッドの上に運んだ。
316チキン04:2007/03/03(土) 11:58:30 ID:N0jIeyjs
<<2>>

「グゥ、ごめんな……」
「これで……ハレの…作ったもの、食べていいん、だ、な……」
 オレの言葉が聞こえているのか否か、グゥはいまだ整わぬ息と一緒に、うわ言のように呟く。オレがあんな事を
言ったせいで……。激しい後悔の念が胸を締め付ける。
「ホントに鶏肉、ダメだったんだな……それなのに、無理に食べさせちゃって……」
「……気付いて、いたのか」
 グゥはぐったりとベッドに横たわったまま、顔だけをこちらに向ける。どうやら自分の鶏嫌いを気付かれてはいないと
思っていたらしく、その表情は珍しく本当に驚いているようだった。
「そりゃ、気付くよ。これだけ一緒にいるんだしさ」
「……そうか」
 今度はぷい、とオレの目を避けるように反対側を向いた。気付かれた事が悔しかったのだろうか、青白い頬が少し
赤みがかって見える。こんな時に不謹慎だが、そんなグゥの姿がちょっと微笑ましく思えた。

「それより、大丈夫?凄く苦しそうだったけど」
「ああ……横になっていれば、じき直る」
「俺に出来る事無いかな?何でも言ってよ」
 先ほどよりは幾分マシにはなったが、まだグゥの体には力が戻っている様子は無く、呼吸も肌の色も健康的なものでは
無かった。こんなグゥはこれまでに見た事が無く、グゥをそうしてしまった原因を考えると胸がチクチクと痛み出す。
「腹が、痛いんだ……」
「う、うん。トイレ行く?背中さすってあげるからさ」
 そうだ、吐き出してしまえば良いんじゃないか。グゥが変な物を飲み込んだ時も、腹の中から追い出したら
ケロリと良くなったじゃないか。
「嫌だ、吐き出したくない」
「じゃ、じゃあどうすれば……」
「…さすってくれ」
「……え?」
 一瞬、やっぱり吐くのか、と思った。ただ他の案を否定したかっただけなのだが、そう思いたかった。
お腹が痛くて、さするのは背中じゃなくて……となればもう、他にさする場所なんて一つしかないじゃないか。

「……頼む」
「う、うん」
 オレはおずおずと手を差し出し、グゥのお腹の上に静かに乗せる。そのままスリスリと服の上を上下に移動した。
「ん………そのまま…」
 グゥは、オレの手の動きに神経を集中するように目を瞑る。グゥの呼吸により、ゆっくりと起伏するお腹の様子が
手に伝わる。何故か妙に緊張してしまい、掌からじっとりと汗が滲み出て来る。
「もっと、腹の周りも」
「……うん」
 オレはお腹全体を円を描くように撫で着ける。服がずれないように下にきゅ、と引っ張っているせいか、
お腹の形がくっきりと解って尚更手の動きが硬くなり、体温までが上昇して行く。
 それでも、そうこうしているうちにグゥの呼吸も随分と整った。顔色も幾分か良くなって来ている。
少し、報われた気分になった。
317チキン05:2007/03/03(土) 11:59:36 ID:N0jIeyjs
「今度は、直にさすってくれ」
 ……のも束の間。グゥのその言葉にドクンと心臓が一つ高鳴り、収まりかけた身体の熱がまた急上昇してしまった。
「じっじっじかってど、どうやって……?」
 あまりにもあからさまに同様してしまっている自分がなんだか可笑しい。グゥもその姿が面白かったのだろう、
そんなオレを見てクスリと微笑うと、胸に巻いている黄色い布の下に手を差し入れ、くい、と少しだけ持ち上げた。
「このまま、下に引っ張って」
「ちょ、そ、え、な、えええっ!?」
 オレはいよいよ動揺し、もはや言語を発する事も不可能になっていた。軽くずらした黄色い布の先にはまだグゥの肌は
見えず、その全身を包んでいる筒状のワンピースの切れ目も見えなかった。どうやら、胸元までしっかりと伸びているようだ。

 コクン、と喉が鳴る。オレはグゥの足元に回り、ワンピースの両脇の裾を掴む。最初は自分でやれ、と言ったのだが、
力が入らなくて出来ない、と言われた。ついでに、何でも出来る事を言えと言ったのはハレだ、と付け加えられ、オレは
渋々ながらもグゥの言う事を聞かざるを得なくなってしまったのだ。
 ゆっくりと、ワンピースを引っ張る。最初は少し突っ張り、抵抗もあったが胸に巻いた布を抜けたら楽々と滑り降り、
そのあまりの落差に思わず最後までずらしてしまう所だった。危ない危ない、ずらすのは腰までだよな。

「それじゃ…撫、で……」
「ん……?どうした、ハレ」
「や、いやなんでもっ」
 一瞬、固まってしまった。グゥのお腹は、普段日に当たらぬせいだろう、顔や腕にも増して真っ白で、
まさに「透き通るような」といった表現がピッタリ来るような透明性を持っていた。
 小食のグゥにとってはグラタン一皿でも多かったのだろう、起伏の無いなだらかな肢体は少しだけぷくんと
膨れているのが解る。呼吸により上下するその動きも良く解り、何故か猛烈な恥ずかしさが身体を襲った。
「っと、そ、それじゃ……撫でるからね」
「うん……優しくな」
「ンなっ……わ、解ってるよ…っ」
 オレは服で手を拭き、その生身のお腹に手を触れる。
 自分の手が触れていいのか、思わず躊躇してしまうほどの肌理の細やかさ。すべすべと何の抵抗も無くオレの指が
グゥの上を滑る。ひんやりとした低い体温が火照った肌に心地良い。…って、オレが癒されてどうすんだよ、オレが。

 オレは先ほどと同じように、グゥのお腹全体を徘徊するように指を這わせ、撫で回す。服を着ていた時にも増して
ゆっくりと、優しく。掌は乗せず、指の腹だけを使いなるべく力を抜いてさすり上げた。
 それでもグゥの柔らかい肌はくにくにと指にその感触を伝える。無意識にその手触りをもっと確かめようと、
指に力が篭りそうになる。
 お腹とわき腹の隙間の段差を通る感覚が新鮮だ。お腹の真ん中に走る筋に指を這わせ、おへそに突き当たる瞬間が楽しい。
「ハレ…?」
「は、えっ、な…何?」
 気付くと、グゥは緩んだ黄色い布を抱えるように両手を胸に置き、ジトッと訝しげな目でこちらを見詰めていた。
…しまった、オレの指はいつの間にか、わき腹やおへそのあたりばかりを往復するようになってしまっていたようだ。
「……なんでもない」
「そ、そう…」
 よかった、バレては無かったようだ。ちょっとヘンな顔でもしていたのだろうか。何となく自分でもニヤケていた気がするが、
ここは気のせいってことにしておこう。流石にそれは恥ずかしすぎる。
 気を取り直し、オレはまたグゥのお腹を撫でる。今度はそこばかりに集中しないように注意したが、
やはりわき腹やおへその感触は心地良い。つい、そこに指が向かう頻度が上がってしまう。
 フと、わき腹を撫でている時にグゥが何かを口から漏らしていることに気付いた。ふ、く、と小さく呻く様な、
何かを耐えているような声。その身体も、かすかに震えているように見えた。
 もしかして、こそばゆいのだろうか。オレはもう一度わき腹を、今度は少し強くさすって見る。
するとグゥはやはり、ンンッ、と小さくくぐもった声を上げ、先ほどよりも大きく身体が揺れた。
 ……ちょっぴり、ほんのちょっぴりだけ、オレの中にイタズラ心が芽生えた。
318名無しさん@ピンキー:2007/03/03(土) 12:00:16 ID:N0jIeyjs
 オレは先ほどよりももっと強く、わき腹の骨の感触が指にコツコツと当たるくらいの力で脇を擦り上げた。
「っひゃ、ン、ひ、ちょ、ハ……レッ!?」
 途端にグゥは大きく体を跳ね上げ、身をよじり出す。突然の刺激に驚いたのか、悲鳴に近い叫声も上げた。
それでもオレはグゥを追いかけ、わき腹をこしょこしょとくすぐり続ける。
「ひっ、く、も、良い…も、い……や、めぇ…ッ」
 よっぽどそこが弱いのか、グゥはじたばたとベッドの上を転げる。オレはもうグゥのお腹の具合の事などすっかり失念し、
この少女の意外な弱点を発見した喜びに軽く我を忘れてしまっていた。

 そうして執拗に追い掛け回した末、グゥはオレの手首をがっしりと掴みその攻撃をようやく制止した。ハー、ハーと
大きく息を吐き、目には涙まで浮かべている。ゾクン、と背中に何か、生暖かい感触が走り抜ける。その程度でオレの動きを
封じたつもりか。手首を掴まれても、指はいくらでも動くんだぞ。
 オレはグゥに手首を押さえつけられたまま、指だけをうねらせカリカリと素早くわき腹に滑らせる。
「はヒャッ!?も、やぁ!……ん〜〜〜!んぅ〜〜〜っ!」
 グゥは一瞬、カクンと頭を後ろにもたげるとふるふると小さく震えながら、必死で耐えるように身体を強張らせる。
ベッドに片膝を付き、半身を少し起こした状態で身体を揺するグゥの胸元に垂れ下がった布は何にも支えられてはおらず、
その身体の振るえに合わせスルスルと脇の下を通り滑り落ちようとしていた。

 それに気付いたオレは小さく、わわっ、と声を上げその布が落ちるのを止めようとした。本当に反射的に、それだけを
しようと思ってグゥに向かって飛び出した。片方の手をグゥに押さえつけられていたのも忘れていた。
 飛び出した勢いのまま、オレはグゥに握られた手を支点にぐるんと半回転し、もう片方の、グゥの胸元をめがけて
突き出していた手はそのままに身体ごとグゥにぶつかって押し倒してしまった。
 胸の布は、間に合わなかった。今頃ベッドの下に横たわっている事だろう。何にも覆われていないそのグゥの素肌には今、
オレの手と顔が押し付けられているだけだ。

「うわぁっ!?ご、ごめん!!」
 オレは瞬時にグゥから離れ、謝罪する。グゥに背を向け両手を上に挙げ、まるで絵に描いたようなホールドアップ状態だ。
しかし、その自分の姿は情けないとも思うがそれよりもずっと褒めてやりたい気持ちの方が強かった。
 あの時、あと一瞬でも手を離すのが遅ければ、そんな事を思う心はあっさりとその感触に蹴散らされてしまっていただろう。
あまりにも柔らかく、手触りの良い白い肌。指も頬もピッタリと肌に吸い付き、その身体から離れた今でも正直、こんなに
簡単に離れてくれた事が信じられなかった。

「ホントに、ごめん……バカなこと、しちゃって……」
 先ほどの醜態に合わせようやく、オレはグゥの容態の事を思い出した。二重に後悔の念が降りかかり、押し潰されそうになる。
オレは両手を挙げたまま、グゥの反応を静かに待った。
319チキン07:2007/03/03(土) 12:00:56 ID:N0jIeyjs
<<3>>

 ……沈黙が耳に痛くなりかけた頃、シュル、とシーツを滑る音が耳に届いた。その音は、グゥが接近して来ている事を
ハッキリと教えてくれる。
 グゥは少しずつ、少しずつ近づく。その度に、オレの心臓の音も一つずつ高まって行った。
 ついにすぐ背後まで接近した、と思った瞬間、トン、と背中いっぱいに何かが密着した。次いで胸をきゅ、と締め付ける
軽い圧迫感が続く。…後ろを見ないでも、解った。グゥが、オレを背中から抱き締めているのだ。

「グ、グゥ……?」
「…………なんでもするって、言ったよな」
 背中越しに聞こえる、グゥの声。それはここまで密着していないと聞こえないくらいの、小さな声だった。
「え、ど、どーゆー……」
「言ったよなっ」
「う、うんっ」
 オレはその言葉の真意が掴めず聞き直す。が、グゥは強い口調で同じ台詞を反復する。声の大きさは変わっていないのに
何故か先ほどよりもそれはずっと重く耳に届き、その迫力に負けあっさりとオレの方から折れてしまった。本当に、情けない。

「じゃあ、もっとさすってくれ」
「え……?」
「腹はもう治った。でも、今度は……胸が、くるしい」
 そう言うとグゥは、オレの返事も待たずに胸に巻いていた腕を緩め、即座にぐるんとオレの前に出ると
全身で飛び掛るように倒れこみ、オレを押し倒した。
 ベッドに背を着け横たわるオレに覆いかぶさるように、グゥは両手をオレの頭の両脇に置き、見せ付けるように
その小さな胸をオレの顔の前に差し出す。

「早く……」
 グゥの小さな声は、オレの脳の奥深くにまで入り込む。その声に逆らう力など、今のオレに残った全ての理性を
総動員させても到底足りるワケも無く。

 オレは目の前で震える小さな桃色の突起に人指し指をあてがい、くりゅんと指の腹で押し込むように撫でる。
「ッふ……」
 それだけでグゥは身体をピクンと跳ねさせ、かすかに声を上げた。
 そのまま指の根元まで乳首を擦りながら滑らせ、他の指と一緒に優しく全体を揉み込む。両手でくにゅくにゅと
柔らかい双丘に指を埋め込むように撫で付け、指の谷間で乳首を挟み、擦り上げる。
 下を向いているせいか、グゥの胸には普段は見られないほんのわずかな膨らみがあり、先端の突起に引かれるように
ツンと、その少女が立派な女の子である事を主張していた。
 下から上に、持ち上げるように撫でると小さな膨らみはぷるんと揺れる。指を閉じ、全体で押し潰すと余った肉が周囲に
広がる。そのまま押し込んだり、離したりを繰り返すと、胸の肉がぷにゅぷにゅと波うつ感触が指に伝わり実に心地良い。

 そのうちに、きゅ、と強く押し込んだ指の先がその胸の奥にあるしこりに触った瞬間、グゥはヒッ、とくぐもった
悲鳴を上げた。…痛かったのだろうか。それでなくとも、グゥの胸はふわふわと降り積もったばかりの雪のように柔らかく、
あまり力を込めてしまうと潰してしまいそうな不安感があった。

 オレはもっと、ずっと優しく撫で上げるよう注意を払った。触れるか触れないかの所で、指の先をするすると胸に這わせる。
「ふぁ……あ、はぁ……」
 そうしているとグゥの声も穏やかになり、オレにその動きをねだるように胸をク、と張り、その双丘を突き出して来る。
その先端の突起にも同じように、かすかに触るように指を滑らせる。何度かそうして指の腹で擦っているとそこはぷっくりと
膨らみ、指先でわずかに摘める程になっていた。
 突起の周囲の乳輪も少しだけ盛り上がっているようで、胸の腹を滑り降りる指には段差を感じる。
 オレは乳輪や乳首に指を集中させた。やはり触るか触らないかの所でその桃色の突起を撫で、時に少しだけ軽く摘むように
乳輪ごと揉みこね、先端を爪の先でカリカリと擦り上げる。
「ん、は…アッ……ひ、ぅぅン……ッ」
 グゥはその度に小さな声を上げ震えていたが、その声も、その震えも胸の先端部分を集中的に弄っているうちに
徐々に大きくなって行き、ついに腕に力が入らなくなったのか、かくんと肘が折れ、身体をオレに倒して来た。
先ほどまでグゥが手を着いていた場所には今は肘が着き、その胸とオレの顔の距離もぐんと縮まった。
いや、縮まったなんてもんじゃない。もしもグゥの胸が大人の女性くらいに膨らんでいたら、オレはその双房に思いきり顔を
挟まれ押し潰されていただろう。今のままの大きさでも、まさに目と鼻の先、舌を伸ばせば届くくらいの距離にそれはあった。
……舌を、伸ばせば………。
320チキン08:2007/03/03(土) 12:01:45 ID:N0jIeyjs
「ひぁンっ!?」
 頭に浮かんだ時には、既に実行していた。舌の先にプルプルと触れる、グミのような感触が心地良い。オレは少し首を起こし、
チュプ、とその突起に吸い付いた。
 瞬間、グゥはこれまでに無いくらい身体を跳ねさせ、ベッドに着いていた肘も倒しオレの顔にその胸を強く押し当てて来る。
頬に押し付けられるその柔らかい感触は心地いいが、このままでは何も出来ない。オレはグゥの腰に手を回し、そのまま
くるんと回転し今度はオレがグゥの上に覆いかぶさる。
 久しぶりに、グゥの顔を見た。その表情と、そして今のグゥの姿に気付き、オレの中の理性はいよいよ
欠片も残さず打ち砕かれた。
 グゥはその瞳に潤々と雫を湛え、顔全体を耳まで真っ赤に染め上げて小さく震えていた。ハァハァと小さく短く吐く息を
抑えるように両手は口元に添えられ、必死で何かに抵抗しているようだった。
 そしてグゥの身体は今、ほとんど何もその身に着けてはいなかった。腰から下を覆っていると思っていた布は既に無く、
真っ白な子供らしいパンツが一枚、グゥの一番大事な部分を隠しているのみだった。それもその布はしっとりと湿り気を帯び、
その奥に潜む幼い恥丘にピッタリと張り付きそのぷりぷりと柔らかそうな頬肉や、中心を縦に走るスリットまでもを
薄らと桃色に透かしていた

 呼吸も、動悸も体温も、ぐんぐんと上がって行く。
 オレは再度、グゥの胸の上で震える小さな突起に吸い込まれるように唇を密着させる。
「ふ、あ……はっ、ン……ッ」
 唾を溜め、ちゅぐちゅぐと、わざと音を立てるように乳首に吸い付く。口内では舌をその突起に這わせ乳房ごと強く舐めあげ、
またかすかに触れるようにチロチロと先端を弄った。
 もう片方の胸にも指を這わせ、焦らすように乳輪の周りに指を滑らせ、固くしこった乳首の先をつんつんと突き、
指の腹で押し込むように胸の中に埋め、人差し指と薬指で乳輪を押し広げ、中指の先で掻くように擦り上げる。
そのまま胸をくすぐるように滑り降り、お腹を撫で着け、下半身へと真っ直ぐに伸ばす。指が下着のラインに到達すると、
しばらくそのラインに沿って指先を這わせ、じわじわと進入して行く。やがて指は直接、グゥの女の子の部分にくちゅりと密着した。
そこに触れた瞬間、グゥはビクッと強く身体を引きつらせた。その表情には戸惑いの色が灯っていたが、抵抗の意思は見られない。
 オレは胸にするよりも優しく、ゆっくりと指を動かす。スリットからトロトロと流れ出る粘液を潤滑液にし、ぷくんと
厚ぼったい柔肉を揉み上げるように挟み込み、その圧迫でより深くなった中心の縦筋に中指をあてがい、上下に擦り付ける。
「はぁッあ゛ッ……ひ、ク、ぅ゛ぅ゛……ッ」
 グゥの呼吸はさらに短く、早くなり、まるで子犬のようにハッハッと熱っぽい吐息を吐き出す。だらしなく開いた口の端からは
唾液がつぅ、と頬を通り、シーツとの間に糸を引いていた。

 オレは乳首に密着させていた唇を、最後に強く吸い付きチュポッと音を立てて離し、グゥの頬に付いた唾液を舐め取るように
舌を這わせた。そのまま頬を上り、唾液の出所の中に舌を差し入れる。
「ふっ、んム……ちゅ、フ、ン……」
 唇同士を密着させ、激しく口内で舌を絡ませ合う。唾液を掬い取り、それを塗り付けるように口内粘膜を舐め上げ、
ぐじゅぐじゅとかき混ぜる。
 そうしながらも、グゥの秘所に侵入させた指は休む事無くそこを弄り続ける。指二本でパックリと柔肉を押し広げ、
剥き身になった敏感な粘膜に中指を押し当て、間断無く溢れ出る愛液をすり込むようにゆっくりと撫で付ける。
 中心あたりに開いた小さな穴に指の腹をあてがうと、きゅうと窄まり指に吸い付いてくる。そのまま指を持ち上げ、
スリットの根元にある豆粒のような突起を擦り上げた瞬間、グゥはこれまでで一番大きくその身体を跳ね上げさせた。
「っぷぁ、は……そ、そこ、強いの…ダメ……」
 グゥはオレから唇を離し、今にも泣きそうな震える声でそう言った。
 今度は優しく、優しくその突起を指の腹でなぞる。グゥはそれでも、これまでに無いほど大きな反応を示し、ヒ、ク、と
そこを弄る指の動きに合わせて引きつった声を出す。
 それでも、固く強張らせ竦めていた肩も、ぎゅっと握り締めていた手もやんわりと解れ、オレの愛撫に身を任せるように
くったりとその身体を弛緩させて行く。
 とろんととろけた瞳がオレを吸い寄せる。オレはまた唇同士を密着させ、互いを貪り合った。
321チキン09:2007/03/03(土) 12:02:29 ID:N0jIeyjs
 オレも、限界だった。パンパンに張り詰めたオレの下半身は、張り裂けんばかりにズボンを持ち上げその解放を今か今かと
待ち望んでいた。ぐにゅ、と、股をグゥのふとももに挟み込む。グゥの柔らかくすべすべとした肌は、ズボンのやや厚い生地を
通しても十分に伝わってくる。オレは自分でも知らないうちに、腰を強く動かしていた。
「ふぁっ?…ン、…ファレ……?」
 グゥもオレが何をしているのか気付いたようだ。何事か言いたげだったが、もうオレには聞いている余裕も無かった。
そのまま本能のままに激しく腰を動かし続けていると、いつの間にかグゥの手がオレの頬にそっと触れていた。

 次の瞬間、コキン、と言う音がして視界が揺れた。どうやらグゥが強引にオレの顔を離したらしい。離すなら離すで、
捻りまで加える必要は無いだろう、と抗議したかったが、オレの口が開くよりも先にグゥの言葉が耳を貫いた。
「痛いだろ、馬鹿!」
「へ……?」
 見ると、グゥは眉と目を強く吊り上げ、自分のふとももをすりすりとさすっていた。そこは先ほどまでオレが股間を
押し付けていた場所だ。ズボンの生地で擦り上げたせいで、その白い肌は赤く染まってしまっていた。
「そんなとこに押し付けなくても、グゥはもう準備は出来ているぞ……」
 すぐに謝ろうと思った。しかし、その言葉もグゥにより閉ざされてしまった。
 その言葉の意味を理解するためには少し、今のオレの茹で上がった頭では回路が足りない。しかし本能の部分はしっかりと
その真意を受け取ったらしく、オレの手はすぐに自らの股間に伸びるとズボンをずり下げ、その痛いほどに隆起した膨らみを
外気に晒した。
 恥ずかしい、なんて気持ちももうどこかへ飛んでいってしまっていた。オレは自らの恥部を隠そうともせず
グゥににじり寄り、全身をすり合わせるように抱き締め、脚を絡ませる。

「ちょ、と待っ、アンッ……お、落ち着けっ」
 グゥは猛然と迫るオレを押し退け、ずざざっとベッドの端まで後ずさった。
それでも食い下がるオレを、真っ直ぐに伸ばした手で制止する。
「さっ最後まではダメだぞッ!?」
 グゥはオレを制する指越しにギロリと睨み付け、そう言い放った。
 やはり、今のオレの脳ではその言葉を理解する事はいささか難しかったが、本能はそれを察したか、
オレのテンションは急激に落ち込んで行った。
「……ゲンキンな奴だ」
 そんなオレの様子はグゥにもありありと伝わったようで、今のオレに一番キツイ言葉をグサリと突き刺して来る。
 グゥは大きくため息を一つ吐くと、でも、と呟きその身体を覆う最後の一枚をスルスルと降ろして行った。

「最後まではダメだが、途中までならいいぞ」
 立て膝を付き、腰をくい、と前に出した体勢で、グゥはその恥丘の肉を自ら押し開く。
さらに残った指でそのスリットの根元にある包皮をめくり上げ、プルンと豆粒大の小さな突起を剥き出しにした。
「ここはな、ハレのそれと同じようなモノなんだ」
 …グゥの声が、やけに遠くから聞こえる。自分の心臓の音で全ての音がかき消されてしまっているようだ。
その鼓動に合わせ、下半身にもさらに血が集まっていく感覚を覚える。グゥの言葉を最後まで聞いていられるかどうか、
正直自信が無かった。
「だから……ここだけで一緒に、気持ちよくな──────」
 そこまで聞いて、オレの頭は真っ白になった。
 オレはグゥに飛び掛り、強く抱き締め唇でその言葉を塞いだ。舌を絡め合い、吸い付き唾液を交換する。
グゥの股間に伸びた手は包皮のめくれ上がった突起に愛液を塗り込み、皮がもう被らないように指で挟み限界まで剥き降ろす。
そのまま、オレはグゥの唇を離し、グゥの下半身に目を向けた。もう片方の手で自分の分身を握り、グゥの剥き身の突起に
密着させる。
322チキン10:2007/03/03(土) 12:03:25 ID:N0jIeyjs
「いっ入れちゃダメだから……ひあンッ」
 オレはその固く膨らんだ分身で押し潰すように、ズリズリとグゥの突起を擦り上げた。十分に濡れた秘所はすぐに
オレの竿をもびしょびしょに濡らし、スムーズにグゥの上を滑って行く。
 オレはグゥの腰を持ち上げ脚を抱え、本能のままに腰を打ち付ける。グゥの小さな突起はオレの分身の裏筋を刺激し、
肉厚な恥丘は柔らかく根元を包んでくれる。オレはそのはじめての快感に酔いしれ、夢中で腰を振った。
「も、もう、イッ……ハ、ハレェ……ッ」
「ん……は、グゥ……グゥッ、お、オレも、出、る……」
 最後に、その先端同士を強く押し当て、グリ、と捻り一気に根元まで擦り着けた瞬間、オレは溜まっていた全ての精を
グゥのお腹の上に吐き出した。ビクビクと脈動するその動きに合わせ、ビュル、ビュルと何度も白い粘液が先端から噴き出す。
お腹を越え、胸元にまで勢い良く飛んだそれがもう出なくなった後も、オレの分身はまだヒクヒクと小さく跳ねていた。
 グゥはそうして汚れてしまった身体も気にせず、くったりとベッドの上に横たわりヒクヒクと身体を震わせている。
肺の奥まで息を吸い込み、吐き出すような長く、深い呼吸を繰り返す。その表情はだらしなく弛緩し、恍惚の余韻に
浸っているように見えた。

 グゥの横にバタンと倒れこみ、その手を握る。弱々しくも、グゥの方からもきゅ、と小さく握り返してくるのを確認し、
オレはもう一度、いまだ呼吸の乱れたその小さな唇に自らの唇を優しく触れ合わせた。
323チキン11:2007/03/03(土) 12:04:10 ID:N0jIeyjs
<<4>>

「ふぅ……」
 シャワーから上がり、バスタオルで頭をがしがしと拭く。
 身体も頭もリフレッシュし、ようやく冷静な思考が出来るようになってきた。

 一握りの後悔の念と、大きな感情の高ぶりの波が交互に押し寄せてくる。…はじめてがグゥで本当に良かったのだろうか。
それもあんな若気の至りまっしぐらな激情のままに……。いや、はじめてと呼べるようなやり方では無いのかもしれないが、
それはそれで、昨日までそんな風に意識をしていなかった女の子とはじめてのベッドの上で、あんなマニアックな事を
してしまって良かったのかどうか。……マニアックだよな、アレって。普通はあんなこと、しないよね。多分、きっと。
「……何をボーっとしている?」
「ひゃわっ!?」
 一人うんうんと考え事をしていると、後ろからピタリとグゥが張り付いてきた。まだちゃんと水を切っていない肌に
背中を濡らされ、ヒヤリとしたかと思うと同時に柔らかい感触と、ぷちっと膨らんだ小さな二つの突起の感触が直に
伝わり、またオレの下半身がすぐさま臨戦態勢を取ってしまう。……さっきもお風呂の中でもう一回やってしまったって
言うのに、その元気の良さが逞しいやら、情けないやら。

「もう、怒ってない?」
「え……?」
 グゥはオレを背中から強く抱き締め、ぽつりと呟いた。
怒るも何も、むしろ怒られるべきなのはオレの方では、と思ったが、グゥのその声はあまりに弱々しく、
何かに怯えているような色を含み、何と声をかければいいのかしばし考えあぐねてしまう。
「ハレが怒るのは、嫌だ」
 オレが必死で頭を回転させている間も、グゥはぽつり、ぽつりと言葉を重ねる。
何の事か、話はまだ見えなかったが、オレは思考を止めその声に耳を傾ける事にした。
「鶏でも何でも食べる。だからもう、あんな風に怒鳴らないで……」
 ……ようやく、何の話をしているのか、解ってきた。
オレがつい、頭に血を上らせてグゥを責めてしまった夕食の事か。

「あれは、オレの方が悪かったんだよ。グゥがあんなになるなんて知ってたら、怒ったりなんかしなかったよ」
 そうだ。グゥは全然悪くなんてない。いつもなら軽く流してた事に、わけもわからず執着してしまったオレが悪いんだ。
でも……。
「でもさ、そんなに苦手なら、言ってくれたら良かったのに」
 そう、でも、なんでグゥは頑なにその事を教えてくれようとしなかったのだろうか。
 自己弁護では無いが、知っていたらオレだって無理に食べさせようとはしなかったし、母さんだってチキングラタンなんて
作ろうともしなかったはずだ。
「……………」
 だけどグゥは、オレを強く抱き締める腕にぎゅ、と力を込め、何も語ろうとはしなかった。
何か特別な理由でもあるのだろうか……、等と考えていると、ぼそ、と背中からか細い、消え入るような声が聞こえた。
「……ハレは、鶏肉が食べられるから…」
「……え?」
 思わず、聞き返してしまった。その言葉の真意が読めなかったからなのだが、グゥは自分の声が小さい事を
自覚していたらしく、背中でスゥ、と息を吸い込む音が聞こえたかと思うと……。
「ハレの好きなものが、グゥが嫌いと思われるがイヤなんだっ!」
 …ハッキリと、耳の奥深くまで強烈に叩き込まれた。
 くわんくわんと、その言葉が頭の中に反響する。しかしその言葉はどれだけ頭で反芻しても、正しい意味は読み取れなかった。
いや、言葉のまんまのシンプルな意味なのだろうが、それがこの捻くれた少女の口から発せられたものとは到底思えなかった。
324チキン12:2007/03/03(土) 12:04:41 ID:N0jIeyjs
「で、でもだったら……丸飲みすりゃよかったんじゃ……」
 そうだ、都会じゃ鶏肉を使った料理だって何度も出た。それをグゥはいつも丸飲みして、全然平気だったじゃないか。
「あれは、別腹だ。グゥが消化するんじゃない」
 腹の中の空間に落ちるってことか?あの三人が食べるんだろうか?
 ……いやでも、それでも都会じゃそうしてたんだし、家の料理を丸飲みしない理由には……。
「ハレやウェダの料理は、温かいんだ。一緒に、ちゃんと味わいたい」
 ……本当に、オレの背中に張り付いている少女はオレの知っているあの仏頂面の小生意気な女の子本人なのだろうか。
「当たり前だ、馬鹿。グゥだってこんなこと、本当は言いたく無いんだ」
 ああ、そう言えばさっきからモノローグに返事を返しているな、この少女は。やはりグゥ、と言うことで良いらしい。
……そうか。グゥのあの時の、いつにも増して無愛想な態度は、グゥ自身も自分が鶏肉を食べられない事に憤りを感じて
いたからなのかもしれない。
 でも、やっぱりそれなら……。
「それなら、ちゃんと言ってよ。オレも、グゥと一緒に美味しいって思える方がいい」
「………うん…」
 そう言うと、グゥはオレを抱き締めていた腕を離し、代わりに手をきゅ、と小さく握ってきた。

 オレはすぐにでも振り向いてグゥを抱き締めてたかったが、ある部分が大変な事になっているのでそれも適わない。
あんなにピッタリと密着されて、あんなに素直な気持ちをその口から伝えられて、オレの身体はキュンキュンと高鳴る胸と
呼応するように、下の方もギンギンに勢い良く盛り上がってしまっていた。
「……ハレの体も、素直な気持ちを伝えてくれているな」
「え……おわっ、グ、グゥ!?」
 グゥはいつの間にかまたピタリと密着し、今度はその腕を腰に回し、しっかりとオレの分身を握り締めて来る。
急所を抑えられ、心までもわし掴みにされ、何も抵抗の出来ないままオレはズルズルとまたバスルームに引きずられて
行くのだった。

END
325名無しさん@ピンキー:2007/03/03(土) 12:06:54 ID:N0jIeyjs
ここまでです。
今書いてるのがハレ×グゥじゃないのでフラストレーションが溜まっていたのか
衝動のままに一気に書き綴ってしまいました。スッキリしたw
挿入までいかなかったのは特に意味は無いです。
なんとなくそんなプレイが見たかっただけですw
326名無しさん@ピンキー:2007/03/03(土) 18:26:24 ID:cudu8A43
乙です。
自分あっちのスレで一瞬チキンが怖いのかと思たと言ってた馬鹿ですが、
…言ってみるもんだね!
こんなに素敵な物がチキンから生まれるなんて思ってもみませんでした。嬉しいやら申し訳ないやら。
ハレグゥラブラブ過ぎですよwGJでしたw
執筆中の方も頑張って下さい。
327名無しさん@ピンキー:2007/03/04(日) 02:08:18 ID:evccUetP
ちょ、すげぇw職人様GJ!!
俺が妄想していた食卓よりも遥かに内容の濃い食卓に!
グゥは小食だから〜とか聞くと、好き嫌い結構あるんじゃないのかとか色々と想像してしまう。
…しかし、ここまでくるとチキンが駄目な理由が気になってくるんですがw
手羽の形が怖く、見ただけで気持ち悪いからとかグゥっぽいけどグゥっぽくない理由だったら萌える。

最後までは駄目だぞって所で萌え死ぬかとオモタ…逆にエロいよグゥ様。( *´・ω・) ハァハァ
良いものを読ませて頂きました。
328名無しさん@ピンキー:2007/03/06(火) 22:59:38 ID:44MjGfZq
ご感想ありがとうございます。

グゥが食べたうちどの程度栄養に回ってるのか、とか
普通に食べてるのと丸飲みの差とか、結構気になる所ですね。
アニメじゃわりと、出されたものはジュースでも何でも素直に
口に入れてるシーンが多いし。丸飲み度も高いw

関係ないけど、TVの「黒い箱」で家に帰って来たハレが普通にグゥと
ペットボトルの回し飲みしてたのは激しく萌えますた。
丸飲みじゃなくボトルに口付けてたら萌え尽きてるとこですよw

グゥの弱点…実際のところ、知りたいような知りたくないような。
まぁハレの存在こそが弱点であろうと思って勝手に萌えておきますw
329名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 22:08:44 ID:Aep/S/FY
確かに、何でも口に入れるもんなぁw
しゃぶり癖というか、飲み込み癖というか。
テレビ見ながら何かしゃぶってるシーンあったな〜。

あれだけ自然に回し飲みしてる所を見ると、色々と想像してしまう…
寝るのも起きるのもいつも一緒、そばに居て当たり前の存在。
他にも色々とある事でしょう( *´・ω・) ハァハァ

グゥの弱点…身体的な弱点があるとしたら「耳」とか?いつも隠れてるからw
普段見えないグゥ様の耳が一瞬見えたりすると激しく萌えてしまう漏れは変態ですか?

変態ですね。orz
330名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 22:46:40 ID:NWz+V9cF
>>329
貴様ああああああああ
やりおった喃……やってくれた喃……
普段隠れた耳ネタ、さっさと仕上げるべきだった喃……orz
しかしグゥは萌えどころが多いなあ
だいたいその性格のせいで処理に困るものばかりだがw
331名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 00:57:41 ID:MFZwi+Kk
ハレグゥ キャラクター人気投票
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1155689482/714
332名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 04:14:35 ID:fxJrSPyU
>>329に導かれるままに書き殴ってみる。
しゃぶり癖!?耳!?ああン!?てめー萌えるだろが!!

あとハレのキャラが若干アレになってるので注意。
私の中のバカップル像はどっかおかしいみたいです。
↓から投下します
333名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 04:15:12 ID:fxJrSPyU
 よし、部屋も片付いたし、ゲームでもやるか。

 掃除機のコンセント抜き、部屋の隅に立て掛けるとテレビ台のゲーム置き場から携帯ゲームを取り出す。
 母さんは今、アメを連れて街の病院に定期健診に出かけている。帰ってくるのは夕方頃だろうから、それまでは
この家はオレの天下。ゲームし放題の天国だ。
 ベッドの上にドスンと座り、携帯ゲームの電源を入れる。今ハマっているのは本格推理アドベンチャーの
「オイッスルーム」だ。いつでもセーブ出来るせいで、逆に止め所が解らずいつも母さんに怒られるまで
ずるずると続けてしまう。だけど今日はその母さんもいない。一気にストーリーを進めるチャンスだ。

 フと、自分の横で寝息を立てている少女が目に入る。こいつはこいつで昨日、夜中までゲームをやっていた。
こいつはオレと違い携帯ゲームには手を出さないが、TVゲームは最近はオレ以上と言って良いくらいやっている。
そんでもってこいつはオレと違い家の手伝いなんて一切やりもせずにこうしてのうのうとグッスリお休みなさっているってな
ワケだ。なんだか、そう考えると無性に腹が立ってきたぞ。

「おーい、グゥさーん」
 横を向き、いつものように半開きの目でむぅむぅと寝息を立てている少女の頬をタッチペンでつついてみる。
……目標、反応ありません。よし、次の作戦を実行に移そう。
 そのままタッチペンをぐりぐりと移動させ、へのへのもへじを描いてみる。白い頬にうっすらと赤い軌跡が浮いてきた。
ちょっと強すぎたかな。思わず指でその線を撫でる。よくつねったり引っ張ったりしているから知っているけど、グゥの頬は
つき立てのお餅のようにぷにぷにと柔らかい。すべすべの肌の上を、何のとっかかりもなく指がなめらかに滑って行く。
今も常夏のジャングルの日の光がさんさんと照り付けているってのに、何故かグゥの身体はひんやりと心地良い冷たさを保っていた。

「んん……」
 何度か頬の上をさすさすと擦っていると、グゥは体を丸め、指から逃げるように顔をベッドに押し付けた。
色素の薄い髪の毛が、サラサラと流れ頬を隠す。短い髪が薄く開いた目にかかり、なんだか見ているこっちが痛々しい。
何度払ってやっても、またすぐにその髪は丸っこい頬を伝い、目の辺りまで降りてくる。
 何かひっかける場所があれば良いのだろう。オレは今度こそ垂れて来ないように、髪を持ち上げ耳の後ろに回した。

 普段は髪に隠れ、滅多に見る事の無い耳がサラリと、外気に晒される。何故か、トクンと小さく鼓動が鳴った。
髪を掛ける時に触れた耳の淵は、日陰になっていたせいか頬にも増してヒヤリと冷たく、耳から離した今もまだその冷たさが
指に残っているようだった。
 もう一度、指をその耳に触れさせて見る。つぅ、と淵をなぞるとグゥは、ン、フ、とくすぐったそうに小さな声を上げた。
ううん、ちょっと楽しいかも。もうちょっとイジってみよう。
 耳の内側のくるまっている部分を小指でなぞってみる。耳たぶをぷるぷると指先で弾いたり、二本の指でくにくにと
軽くもんでみる。耳の中に軽く小指を入れ、爪の先で入り口の出っ張りを掻いてみる。オレがそうして耳の上で指を
動かす度に、グゥはピクピクと体を小さく震わせくぐもった声を上げていたが、頬を触っていた時のように逃げるような
仕草は見せず、オレの指に身を任せているようだった。
 それでも、耳の後ろを指でツツ、となぞった時は一際大きく体を震わせ、指が離れるように少しだけ顔を内側に傾けた。
もう一度同じ場所に指を這わせると、はぁぁ、と吐息のような淡い声を上げ、身体をもじりだす。逃げるグゥを追うように
指をピタリと付け、何度もそこを柔らかく摩擦するうちにその声はどんどんと熱を帯び、そのうち諦めたようにその動きにも
抵抗の色が薄れて来た。

 オレはその、普段は見せないグゥの新鮮な反応に夢中になってしまっていた。
 耳の裏に、指の腹では無く軽く爪を立て、カリカリと擦ると、ンッ、ンッ、と身体を強く震わせ鋭い声を上げる。
耳の根元に近いほど、その刺激が細く鋭いほど反応が強くなるようだ。とは言え、爪の先では根元をピンポイントでは
攻められない。かといって、つまようじ等を使うのは流石に気が引ける。フと、オレは自分の膝元に置かれた携帯ゲームに
目を向けた。そうだ、タッチペンなら丁度良いんじゃないだろうか。
334耳02:2007/03/09(金) 04:15:56 ID:fxJrSPyU
 オレは早速、タッチペンを耳の裏の根元に付け、その筋に這うように滑らせた。するとグゥはこれまでに無いくらい身体を
ビクンと弾けさせ、ヒッ、と息を呑むような声が聞こえたかと思うとオレの手をバチンと叩いた。そのまま半回転し、
ベッドの上を仰向けにごろんと転がる。
 ここまでされてまだ寝てるってのも凄いが、ちょっとやりすぎたか。オレはズキズキと痛む手をさすり、
シーツの上に転がる携帯ゲームに目を向けた。……あれ?そーいや、手に持ってたタッチペンは……?
 叩かれた衝撃でどこかに飛んでいったのだろうか。シーツの上を探っても、床の上にもベッドの下にも落ちていない。
予備は無いってのにどうしたもんか。明らかに自業自得ってのはわかっているのだが、タッチペンを弾き飛ばした本人、
いまだぐっすりと寝こけている少女に目をやる。……と、少女の口元から何か黒く細いものが突き出ているのが見えた。
 まさか、と思いグゥの顔に寄ると、小さく開けた口からにょっきりとペンの尻が出ているではないか。オレの手から
飛んでいったペンは偶然にも、グゥの口の中にすっぽりと収まってしまっていたらしい。だけど、見つかって
よかったよかった、なんて安心もしていられない。喉にでも詰めたら大惨事だ。
 オレはすぐにペンの尻を掴もうと指を伸ばした。が、あとほんの数ミリ、という所でペンはグゥの口の中に、
吸い込まれるようにシュポッと滑り込んでいった。

「ちょ、グ、グゥ!グゥ!?」
 オレは慌ててグゥを揺するが、まるで起きる気配無い。と言うか、まるで平気そうだ。考えてみれば、グゥの体内は
オレたち一般人とは別モノだった。あんな細っこい小さな棒切れ一本でこの少女の喉が詰まるくらいなら、オレの平穏は
ここまでかき乱されたりはしないってもんだ。
 少し安心した反面、オレとしては非常に困った事になった。これじゃ、ゲームが出来ん。だから予備は一本も無いんだってば。
元々は俺の自業自得だし、ペン一本のためにグゥを起こすのも気が引ける。かといってつまようじやエンピツで集中して
ゲームを楽しめる気はしない。このゲームは諦めて、タッチペンを使わないゲームにするか。
 オレはがっくりと肩をうなだれ、携帯ゲームのカートリッジを抜いた。その瞬間、指に力が入っていなかったのだろう、
ピョンとカートリッジが本体から飛び出した。この携帯ゲームのスプリングはかなり強力だ。強く押してすぐに指を離すと、
カートリッジはロケットのようにかなりの勢いで遠くまで飛んでいく。
 まぁ別に、カートリッジがどこに飛ぼうが構いはしない。シーツの上だろうが床の上だろうが、グゥの口の中以外なら
どこに飛んでも良いさ。そう、グゥの口の中以外なら。……ああ、なんでこう不幸ってのは続くのだろうか。
 携帯ゲームから飛び出したカートリッジは、まるで吸い込まれるようにグゥの口の中にスッポリとホールイン・ワンを決めた。
誰かがビデオカメラを回していたとしたら、ちょっとした決定的瞬間系のテレビ番組に送れる程に完璧なナイス・イン。
全っ然嬉しかねーけれどもよ。

 あの口は危険だ。二度とも確かに見紛うことなく100%オレのせいだがもはや勘弁ならん。二度ある事は三度あるとも言う。
早急に対策を図らねば次はそのブラックホールに何が飲み込まれるか解ったもんじゃない。
 オレは適当に部屋を漁り、何か蓋になりそうな物を探す。

 ガムテープ?……いやいや、剥がすとき痛いだろう。
 なんか口の中に詰めとくか?……いやいや、詰め込んだ端から飲み込まれるに決まってる。
 猿ぐつわ?……いやいや……いや、案外良いかもしれん。誰かに見られた時の言い訳が大変そうだが、傷もつけず跡も残さず
安全にあの口を塞ぐことが出来る。事後処理も迅速に済ませられるだろう。うん、実に効率的な方法じゃないか。
335耳03:2007/03/09(金) 04:16:44 ID:fxJrSPyU
 オレはバスルームから新しいタオルを持ち出し、ベッドに戻る。よし、縛るかとグゥの口元を見ると、端からツー、と
涎が垂れている事に気付いた。危ない危ない、もう少しでシーツが汚れるところだ。
 口を縛る前に、タオルで口元を拭いてやる。ううん、タオルって万能だな。なんて意味も無く考えていると、
シュポッという音と共に指の先に吸着感を覚えた。見ると、オレの指がタオルの先端と共にグゥの口の中に吸い込まれている。
ゾゾ、と背中を冷たいものが走った。このままじゃオレも飲み込まれる!?
 慌てて指を抜こうとしたが、指に感じる吸着力は何故かやけに弱く、急速にオレの中の危機感が薄れて行く。それどころか、
指の上を這い回る何か生暖かくぬめった感触に身体中の力が抜けて行き、指を抜く気力すら失せてしまいそうになる。
 なんとか気力を振り絞り、引き抜いた指の先にはツゥ、と一直線にグゥの口の中まで糸が伝っていた。先ほどとは違う意味で、
背筋にゾクゾクと何かが走る。指の先には、ベッタリとグゥの唾液が付着していた。トクトクと胸が高鳴る。指先から
目が離せない。そのまま誘われるようにオレは小さく口を開け、指を………って、いかんいかん、何を考えてるんだオレは。
 オレはすぐに台所に行き、念入りにごしごしと手を洗った。邪な気持ちと一緒に指先をスッキリさせると、台所に何かが
転がっているのが目に留まる。アメのおしゃぶりだ。洗っておいたのをそのまま乾かしていたのだろう。

 ……ん?

 瞬間、オレの頭に鮮烈にナイス・アイデアが浮かんだ。まさに、閃いた、と言った表現がピッタリ来るような、
頭にフラッシュを焚いたような輝かしい名案だ。オレの気の早い頭はもうそのアイデアを行動に起こした結果を
想像力豊かに展開し、身体までもがウズウズと疼いて来た。早速オレはそれを持ってベッドに戻り、グゥの傍ににじり寄った。
 相変わらずグゥは周囲……と言うか、オレの状況も知らずにのんきに寝息を立てている。ククク、目にモノ見せてくれる。
オレはグゥの口元に、ゆっくりとおしゃぶりを近づける。丸ごと全部飲み込まれないように、注意を払いながら指に力を込め、
ゆっくり、ゆっくりと静かにおしゃぶりの先を接近させる。
 やがて、その先端がグゥの口の中に全て収まったと思った瞬間、キュポッと強い吸着音を立て、ピッタリとグゥの口に収まった。

「─────プッ」
 その姿、まさにおっきな赤子。ちゅぱちゅぱとおしゃぶりに吸い付き、身体を丸めて寝転がる少女の姿はなんと言うか、
筆舌に尽くしがたい可愛らしさとアホらしさを兼ね備えているではないか。おお、後光すら差している気がするぞ。
オレは必死で笑いを堪え、ゆっくりとベッドを降りる。……よし、早急にカメラを持ってこよう。
 事あるごとにアメを撮影しているので、カメラの位置はしっかり把握している。オレは迷うことなく一つの棚の引き出しに
手を掛け、中から使い差しのインスタントカメラを取り出した。
 よっしゃ、待ってろグゥ!今お前をジャングルのアイドルにしてやるからな!!オレは意気揚々とベッドに向き直り……。

 ……そのまま一回転し、また棚の方に身体を向けた。鬼が居た。今、ベッドの上に確かに鬼が居た。
背中に物凄い殺気を感じる。その殺気が、徐々に、徐々に接近して来る。何というプレッシャーか。
あまりにも恐ろしい殺意を背中に受け、オレは再び振り返る事も、逃げる事すら出来なかった。
そうこうしているうちにもその殺る気満々の凶悪な気配はゆっくりと近づき、ついにピタリと、
オレの真後ろにまで到達した。
 首筋に物凄い視線を感じる。グゥは背後にピタリと張り付いたまま動かず、オレを焼き尽くさんばかりに熱視線を浴びせ
続けている。もし視線と言うものに物理的破壊力が存在したなら今頃オレはベルの反則級無限コンボを体力ゲージの5倍分ほど
食らい続けたどこぞの哀れな使用人の如き赤と白と薄茶色のコントラストが映える瑞々しい肉塊と化していたに違いない。

 しかしこのままグゥの殺気をオレに炸裂させてしまえば、やはりオレはモザイク必須の悲惨な有様になる事必至。
ここは先手必勝か。オレは数度深く深呼吸をし腹に力を込め、意を決して勢い良くぐるんとグゥの方に向き直った。

「ごめんなさい!!」
 オレの体は自分でも驚く程の見事な軌跡を描き、グゥの足元に額を擦り付け平伏した。その完璧なフォームから繰り出された
これ以上無い程の低姿勢はまさに敗北のベスト・オブ・ベスト。一世一代の土下座と言えよう。
 ふふふ、流石のグゥも先にここまで下手に出られては手の出しようもあるまいて。
336耳04:2007/03/09(金) 04:17:18 ID:fxJrSPyU
「ハレ……」
 グゥはオレの前にしゃがみ、そ、と頭の上に手を乗せた。そうだ、グゥはいつも酷い事ばかり企んでそれ以上の事を実行に
移して口から出るは嫌味ばかりその顔は皮肉げに歪み常にオレをどう痛めつけるかしか考えていないような人間だけど
明らかに弱者と解る相手に対しては優しいいいいだだだだだだだだ!!!頭が痛い!物凄く痛いよ助けて母さん!!!

 どうやらオレは、グゥに髪の毛を思い切り掴まれそのまま身体ごと宙に浮いているらしい。頭皮の辺りがミチミチ言ってる
気がするが、そんな事も頭の痛みも今は気にならない。グゥの目を間近に見てしまった今、そんな事にかまけている余裕は
オレには無い。
「グ、グゥ?ゴメバッ」
 右頬に何か、鋭い衝撃が走った気がする。ゴハッ!あれ、次は左頬だ。ゲフッ!今度は昼飯を戻しそうなほどボディが
苦しい気がするぞ?あはは、ゲゴッ何だコレ。ブヘッ夢か、夢なのガフンッ誰か夢ってオゴッ言ってオゴゴゴゴゴッ!
 ごごごご近所の皆さーん、DVですよー。今ここで一人のいたいけな少年がサンドバックにされてますよー。

 その後何をどうされたのか、理解したくない程の猛攻をその身に受けオレはようやく解放された。最後に口に何かを
突っ込まれた気がするが、今は己の生命がまだ健在である事を心から神に感謝したい。
 何か、カシャカシャと無機質な機械音と共に眩しい光がキラキラと何度も照り付けて来るが、やはりそれも些事だろうさ。
「ふむ、良い画が撮れた。早速現像して村中に配布するとしよう」
 ……母さん、オレ、ジャングルのアイドルになるかもしんないけど、見捨てないでね。
って、流石にそれはらめえええええええええええええええ!!!!!!!

 オレは身体の痛みも忘れ、瞬時に飛び上がった。グゥはそれを予測していたらしく、すぐさまオレから距離を置くと
カメラを背中に隠す。うう、何としてでもあのカメラを破壊せねば。アメの写真ともろともになってしまうがしょうがない。
馬鹿なお兄ちゃんを許してくれ。
 一歩ずつ、ゆっくりとグゥに近づく。グゥはオレと一定の距離を保ちながら後ずさり、背中を向けたままベッドに飛び乗る。
オレもそれに続きベッドに登り、円を描くように間合いを詰めていく。ベッドの上は今や小さな戦場と化した。

「………ところで、おしゃぶりは咥えたままでいいのか?」
「えっ……?」
 やはり、口に咥えさせられていたのはアメのおしゃぶりだったらしい。すっかり忘れていたが、咥えたままだったのか、オレ。
……って、今オレ「えっ……?」って言ったよな。舌を動かしても、そこに何の感触も無い。チラリとオレが先ほどまで
倒れていた場所を見ると、そこにちょこんとおしゃぶりは転がっていた。なんだよグゥ、騙しやがって……なんて、
グゥを目の前に自分でもあきれ返るほどの隙をたっぷりと見せてしまっていたオレはその事に気付いた時にはもう遅い。
いつの間にか急接近していたグゥの手が、オレの顔面に一直線に迫ってきていた。
 受ける暇も避ける暇も無い。オレの脳は即座に覚悟を決め、その一撃に耐えようと身体を硬直させ……。
337耳05:2007/03/09(金) 04:18:21 ID:fxJrSPyU
 ──次の瞬間、ドスン、と言う音と共に身体が揺れた。何が起こったのか、グゥの拳はオレには届かず、代わりに目の前に
グゥが背中を向けて横たわっていた。良く見ると、ベッドのシーツがグゥの足元に寄せ集まり、たわんでいるのが解る。
 どうやら、グゥがあまりに素早く動いたせいでシーツがずれ、その勢いのまますっ転んでしまったようだ。
 ……チャンス!起き上がる暇など与える必要なし。オレは即座にグゥの背中に圧し掛かり、腕を押さえ付けた。
「いやー、犯されるー」
 そんな抑揚の無い無感情ボイスを上げた所で誰が助けに来るか。オレはグゥに全体重を掛け動きを封じる。
だがグゥも全力で身をよじり頑なに抵抗を続ける。いかん、このままでは長期戦だ。マジで誰かにこの状況を見られたら
明日には村中に噂が広まる。せっかくの千載一遇のチャンスだってのに……どうにかして短期決戦に持ち込めないものか。
せめてグゥに何か弱点でもあれば……。

 ……弱点……。

 オレはグゥの両手を押さえ付けたまま、顔をグゥの肩に回し、耳の裏に息を吹きかけた。
「ふぁっ?」
 それだけで、グゥは敏感に反応を示した。うむ、やはりここが弱点のようだ。悪いが存分に攻めさせてもらおう。
まだグゥの耳には髪の毛がパラパラと掛かっている。オレは何度か息を吹きかけ耳全体を露にする。
さて、オレは今、両手が塞がっているのだが……他に身近に刺激を与えられる物と言えばもう、一つしかないだろう。
悪く思うなグゥ、恨むならこの状況を恨め。オレはおもむろに耳の淵に舌を這わせ、そのまま軽く、かぷりと歯を立てた
「ひッッ」
 瞬間、グゥはビクンと体を引きつらせ、喉の奥から鋭い声を上げる。しかしまだ抵抗する力は緩まない。オレは更に激しく
舌を動かし、耳たぶを唇で挟み吸い立てる。そのまま耳の裏を舐め上げ何度も強くキスを重ね、その耳の一番弱い部分であろう
根元の部分を甘く噛み、そのままその筋をなぞった。

「いやぁあンッ!」

 ………は?

 誰かの、やけに甘い声がオレの耳に届いた瞬間グゥはこれ以上無いくらいにその身を弾けさせ、
オレの身体をベッドの外まで跳ね飛ばした。
「ゲフッ」
 オレはそのまま床に落ち、強かに背中を強打し一瞬、呼吸が止まる。床を転がり、悶えながらもオレの頭の中には
先ほどの声が何度もリフレインし、離れてくれなかった。
 もしかして、今の声はグゥなのか。確かに他に考えられないがしかし、そんなあああああだだだだだだだ!!!!!!
痛い痛い!!テンプルが痛い!!刺さってる刺さってる!血、血ー出てるよ多分!!!!

 どうやらオレは、グゥにアイアンクローをされたまま身体ごと宙に浮いているらしい。頭蓋骨がピキピキ言ってる
気がするが、そんな事も頭の痛みも今は気にならない。グゥのその声を間近に聞いてしまった今、そんな事にかまけている余裕は
オレには無い。

「ぐすっ……なに考えてるんだ、お前は……っ」
 グゥの手に阻まれ、前は見えなかったがその声には確かに嗚咽が入り混じっていた。
338耳06:2007/03/09(金) 04:18:52 ID:fxJrSPyU
「グ、グゥ?ゴメバッ」
 腹部に何か、鋭い衝撃が走った気がする。ゴハッ!あれ、次も腹部だ。ゲフッ!今度もやっぱり胃が飛び出しそうなほど
ボディが苦しい気がするぞ?あはは、ゲゴッ何だコレ。ブヘッ夢か、夢なのガフンッ誰か夢ってオゴッ言ってオゴゴゴゴゴッ!
 ストマックばっかはやめて!!せめて上下に撃ち分けて!!らめえ、そんなにされたら大なる便が赤く染まっちゃううう!!

「なんで、あんなことしたんだって聞いてるっ!」
「オゴフッ………いやその……グゥの動きを止めようかと……」
「あんなので止まるか、馬鹿!」
「ゲブフッ………いやその……グゥが寝てる時は、なんかはんなりしてたんで……」

「…………寝てる時?」
「…………はい……」
「…………触ったのか?」
「…………はい……」
「…………耳を?…」
「…………は───」

 ………
 ……
 …
 ───オレが覚えているのは、そこまでだ。
 意識が途絶える寸前、何か頭蓋骨の奥の方で破滅的な音が響き渡った気がした。が、良く覚えていないし
思い出したくも無いので気にしない事にする。

 目が覚めた時、家には誰も居なかった。どれだけ眠っていたのか、外を見るとすっかり夜も更けていた。
 そしていつの間に着替えさせられたのか、オレは何故か半裸にオムツとよだれかけを装備しおしゃぶりを
咥えた状態でベッドの上に横たわっていたらしい。オレは即座に着替え母さんとグゥの帰りを待ったが、
結局その日は家に帰って来る事は無く、オレは一人、震える夜を過ごした。

 次の日、ジャングルのアイドルとして華々しいデビューを果たすとも知らずに。

END
339名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 04:21:43 ID:fxJrSPyU
以上です。

耳ネタはもう一本書きたいですよ。
別のん書いてる最中なのにネタが溢れ出て止まらんですよ。
340名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:39:34 ID:qhZoLfr+
ああああぁ耳ネタ来たワァ!!さっきから何度も読み返して萌えっぱなしですよもう。
まさか耳ネタを執筆中の方が居たとは。妄想が先走りすぎたようでどうもすいませんw
殴られても良いから、漏れも寝ているグゥ様の耳にイタズラしてぇ…
反応が可愛すぎるんですが( *´・ω・)ハァハァ…

しかしおしゃぶりとは、ハレもマニアックなw
なんだかかなりMっぽくなって行ってるしw サンドバック中のハレに大分笑わせて貰いました。
アイドルとしてデビューというより、色々な誤解を沢山招きそうw 幼児プレイ?

グゥの性格…
TV版の都会でグゥとハレが「意地っ張り。」「…お前がゆーなっ!」て会話をしてたけど、
やっぱりグゥ様はそういう性格なんだろうな〜。
周り(特にハレ)に対して絶対に弱い所を表に出さない。けど、内面では…?( *´・ω・)
341名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 16:02:55 ID:Y31mRPvO
そろそろ次スレの季節
342名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 19:09:36 ID:+BTAIaTW
ここはまだ300位しかいってないのに要領が凄いからな…。
まさに量より質。自分はありがたいと思っている!
343名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 22:34:07 ID:IjiBfqdT
でももう少し量も欲しかったりする欲張りな俺。
俺も小ネタを少々投下したが、やっぱり色んな人の作品を沢山読んでみたいもんだ。
344名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 00:37:33 ID:iFQQ41z2
490KBまでいったら立てようぜ
345名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 00:22:10 ID:iej+CuSv
まもなく490kだから立てようとしたんだけど、無理だったぽ。( ´・ω・)
誰かヨロ。
346名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:19:08 ID:yOMxM/cA
立ててきた。

【ジャングル】ハレグゥでエロパロ アフロ2個目【都会】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1173781018/
347名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:44:10 ID:qjeLMNaP
新スレktkr
348埋めネタ:2007/03/20(火) 05:52:27 ID:gL6RgLO6
「はぁっはぁっ……い、いく、ぞ……!」
「き、来て……ン、あ、ああああぁぁ………ッ!!」
 果てる瞬間、俺は可能な限りその細い身体に密着し、剛直を彼女の中に根元まで突き入れた。
ドク、ドクと、己の分身はその脈動に合わせ何度も彼女の最も深い場所へ精を流し込む。
射精を続けながらも、俺は内部に残った精も全て吐き出すように小刻みにピストンを繰り返す。
彼女もそれを手伝うようにキュウキュウと俺を強く締め付けて来る。どうやら、彼女も絶頂を迎えたようだ。

 痺れる腰に力を込めゆっくりと引き抜く。彼女の膣孔はまだ物足りなさげに開き、ヒクヒクと呼吸をするように蠢いていた。
そこから、トロリと白濁した粘液が流れ出る。それを見るだけで俺は身体は疲れも忘れ、またむっくりと、先ほどよりも力強く隆起する。

「あっ、ま、まだ……するの?」
 俺の剛直を食い入るように見詰めながら、震えた声を出す。その言葉とは裏腹に、彼女の瞳はとろんと蕩け
発情した獣のようにハァハァと息を荒げ、期待に胸を膨らませているようだった。
「駄目よ、こんなにしちゃ、ホントに赤ちゃん出来ちゃう……」
 口ではそう言っているが、彼女に圧し掛かろうとする俺に触れるその手には抵抗の意思をほとんど感じない。
俺は遠慮なく彼女をベッドに押えつけ、その膣孔に栓をするようにもう一度その内部へ進入した。
「は……ぁぁあああッッ!!」
 途端に、唯一抵抗の意思を示していたその口から出る言葉も、甘い嬌声へと変わる。
俺を押しのけようとする腕のささやかな力も抜け、するりと俺の背中へ回る。
 今夜はこれで何度目だろうか。婚約当初は避妊にも気をつけていたが、今は開き直ったように膣内射精三昧だ。
この調子だと、本当に来年にはまた家族が増えてしまいそうだ。だがまぁ、それも良い。
 彼女が都会に行っている間の寂しさは耐え難い物だった。もう、俺は彼女がいなければ生きていけないと知った。
今夜は邪魔者は誰もいない。あの白い奴の冷ややかな目線を気にする事も無い。

 見た目の印象の割に経験が少ないのであろう彼女のそこは最初は随分と窮屈だったが、毎晩のように抱いた成果があったか
今やその身体は奥の奥まで俺の欲望に穢され、俺の物の形を覚えたかのようにピッタリと強く咥え込んで来るまでになった。
俺専用の女。中も外も、俺のためだけにある。もっと、もっとその身体に俺の味を染み込ませてやる。

 抽送を続けながら、彼女の身体に指を這わせる。一見、強く抱きしめたら折れてしまうのではないか、と心配してしまいそうな
スレンダーな肢体はその実、俺なんかよりもずっと力強く、逞しく鍛え上げられている。窓から差し込む月明かりに照らされた
その細くしなやかな褐色の肌は、どれだけ眺めていても飽きるものでは無い。……だが、ただ見ているだけではもはや足りない。
 前後運動に合わせ、ふるふると揺れるふくよかな乳房を乱暴にわし掴む。その頂点でツンと尖る突起を指で挟み込み、
クリクリと捻る。もう片方の胸も絞るように揉み上げ、先端に舌を這わせ、パンケーキのように膨らんだ乳輪ごと強く吸い上げる。
前歯で甘く噛み、しごくようにゆっくりと引き抜きチュポッとわざと音を立て乳房を解放してやる。
 そうしているうちに、ン、ン、と小さく恥ずかしげに呻くだけだった彼女の声は徐々に湿っぽく艶を増し、ハァァ、と甘い色を含む
吐息へと変化して行った。

「あ、あ、も……私……ダ、メェ……!」
「う、ぉっ……し、締ま…る…ッ」
 言うが早いか、彼女はだらしなく開いた口から涎を垂れ流しながらカクカクと何度も首を後ろにもたげ、全身を振るわせる。
先ほど絶頂を迎えたばかりで敏感になっていたのだろう。数度ピストンを繰り返しただけで彼女は果ててしまったようだ。
「は……ぁ…出、てる…また、いっぱい……」
 ……とは言え、俺も今夜は少しやりすぎたか。彼女に分身を強く絞られ、俺の分身もあっけなく限界を迎えてしまった。

 全ての精を吐き出した後もしばらく彼女の中の温かさに浸ったまま、余韻を楽しむように強く抱きしめ、貪る様に唇を交わす。
指に絡む彼女の髪の毛を弄びながら、俺は彼女の胸の中でゆっくりとまどろみの中に落ちていった。
349埋めネタ:2007/03/20(火) 05:53:03 ID:gL6RgLO6
「ほら、もう朝よ? いい加減起きたら?」
「……ン……」
 窓から容赦なく照りつける朝日と、彼女の快活な声に誘われ身体を起こす。
大きく伸びをし、くああ、とあくびをすると彼女はくすりと、まるで子供を見るような顔で微笑った。
 今日も、ジャングルは良い天気だ。最初はこの蒸し暑さにも不快感を覚えたものだが、今ではそれが清々しくさえ感じる。
人間の順応性にはまったく、驚かされる。いや、ただゲンキンなだけか。彼女がいなければ、この場所にここまで愛着を持つ事も
無かっただろう。

「はい、寝起きの一杯」
「おう。今日のは一段と美味そうだ」
 俺は彼女からティーカップを受け取り、淹れ立ての紅茶を一口、喉に流し込む。爽やかな香りが体内を巡り、
身体の中を隅々まで洗い流してくれるようだった。
 これを飲まなきゃ一日が始まらないってもんだ。俺の味を染み込ませてやる、なんて考えちゃいたが、俺の方はとっくに
彼女の味を身体に染み込まされてたってワケだ。

 フと、彼女がどこか不安げな顔でこちらを見詰めている事に気づいた。
 ああ、そうだった。これも朝のお約束ってやつだ。

「今日も最高に美味いぜ、お前の淹れてくれた紅茶はよ」
「………うふふ、当たり前でしょ、ダーリン!」
 俺の言葉に、彼女はパッと顔を明るくさせ満面の笑みを見せる。なんて可憐な笑顔なんだろう。俺はグィ、と残りの紅茶を飲み干し、
彼女を強く抱き締めた。潤んだ瞳が俺を映す。その瞳に吸い込まれるように顔を近づけると、彼女は静かに目を閉じた。

 ああ、ダマ。俺はお前がいるだけで……幸せだぜ。


「…………グゥさん? それで、オレにどうしろと?」
「いやいや、日ごろ父と母の素行に苦悩しているハレの事をグゥは心配しているのだよ。
たまには仲むつまじい夫婦の姿でも見て心を和ませてもらおうと思ったのだが」
「こんなもん見せられてオレの心は乱されっぱなしですよ!?」
「まぁまぁたっぷり鑑賞させてもらいましょうよ。ほら、朝っぱらからまた始めましたよあの二人」
「もうやめてぇーーーー!!!!!」
350名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 05:55:17 ID:gL6RgLO6
まだ足りないか。あと6k。
ってか誰かいますか?新スレの方あのまま投下続けて良いのか不安で仕方が無い!
とここで愚痴ってみる。
351:2007/03/21(水) 10:29:40 ID:ApSpRrW7
「アメ、ちゃんとご飯食べてる?」
「大丈夫、大丈夫。濃厚な白濁液にむしゃぶりついてますよ」
「赤子の前であまり不穏当な発言は控えて頂けませんかね……」
 掃除機を片手に部屋を忙しなく往復しながら、ハレは心配そうに声を掛けて来る。
勿論、私の心配をしているのでは無い。私の膝の上にいるアメを心配しているのだ。
私はベッドに座り、アメに離乳食を与えている。アメは何の警戒心も無く、私の差し出す
スプーンをぱくんと咥え美味しそうに租借していた。

 アメが生まれてから、もう一年以上が経過している。しかしまだ声も出せず、歩けもせず
一人では何も出来ない。本当にあと数年すれば、ハレや私のようになるのだろうか。聊か、信じ難い。
 赤ん坊とは……人間とは不思議なものだ。皆、このように生まれ育ち、今に至るのだろうか。
誰かの世話を受けながら成長し、またいずれ自らが誰かを世話し育てる。私は、どうなのだろう。

 ウェダの腹の中から生まれたアメ。まるでウェダの分身のようだ。ハレもきっとそうなのだろう。
……私は違う。

 この家に生まれ、この家で育つ。産まれながらに、この家に居る資格のある者。
……私は、違う。

 私はいつまでここでこうして、皆に囲まれ温かく平穏な日々を過ごせるのだろうか。
 昨日、私は幸せだった。今、私は幸せだ。明日の私は、幸せだろうか。明後日の私は?一年後の私は?十年後は……?
 時々、胸の奥に湧き上がるこの感情を私は必死で否定する。どうしようもなく不安で、どこまでも真っ暗で、
気を抜けばその感情に私は押し潰されてしまいそうになる。
352:2007/03/21(水) 10:30:42 ID:ApSpRrW7
「そういやさ、この前何かで見たんだけど、グゥって『虹』って意味があるんだって」
「虹?」
 いつの間にか掃除を終えたハレは、私の隣に座りアメを抱いた。そしてアメの世話は私からハレに移る。
アメの口元を拭き、私から離乳食の入った器とスプーンを受け取りハレがアメにご飯を食べさせる。
…手馴れた動作。まるでそうする事が予め決まっていたかのように自然な流れ。
ハレの手があいた今、私は不要になったと言う事だ。

「虹……か」
 虹。空が不安定な時にしか現れない、幻のような現象。存在を許された時間はただ短く、そしてそこに虹があったと
言う事も皆すぐに忘れてしまう。まさに私にピッタリの名前ではないか。

「ピッタリだよな」
「えっ……?」
 ハレの言葉に、ドクンと身体が揺れた。心臓が飛び出したかと思った。
思わずハレを凝視してしまい、至近距離で視線を合わせてしまう。
澄んだ瞳に映った私の顔はあまりに情けなく、とても自分の顔とは思えなかった。
 心を読まれたのか。それとも、ハレも私の事をそんな風に思っていたのか。
どんどん心に暗く重い何かが進入して来る。その重みに耐える気力が、私の中から急速に失われて行く。
今にもその感情に押し潰されるかと思った刹那、ハレの口がまた、小さく開いた。

「いや、ハレとアメの間に架かる虹、なんてさ。オレらみたいじゃんか」
「─────ッ」
 一瞬、ハレが何を言っているのか、解らなかった。その言葉を理解した瞬間、私は反射的にハレから顔を背けた。
 胸の奥から何か、熱いものが込み上げて来る。身体中が沸騰したように火照る。私はハレにそれを悟られぬように
ぎゅっと胸を強く押さえつけた。

「んだよ、笑うなって。オレだって恥ずかしいこと言ったって自覚してんだからさー」
 ハレには私が笑っているように見えているらしい。
 私の肩が震えているからそう見えるのか。私の小さく呻く声が含み笑いに聞こえるのか。

 ……そうか。私は、泣いているのか。

「それよりさ、オレがあげてもアメ、ちゃんとご飯食べてくれないみたいなんだ。グゥにお願いしていいかな」
 ハレが呼んでいる。早くハレの方を向き、その言葉に応えねば不審に思われる。
しかしハレの言葉の一つ一つが私の胸を熱くさせる。溢れ出した感情が止め処なく頬を濡らす。
 しばらく、私はそのまま身動き一つ、取る事が出来なかった。

「グゥ……?」
 グゥ。私を意味する言葉。私の名前。ハレが当たり前のように口にするその言葉を
私が今、どのような思いで受け止めているか、ハレは知らないだろう。
 だけど今は、それで良い。ハレが私をグゥと呼んでくれる。私も、ハレの名を呼べる。
それだけで、私はこれからも生きていける。
「ああ、ハレ。グゥに任せておけ」
 私は数度、静かに深呼吸し、顔を腕で拭いハレに向き直る。
 心はまだ乱れていたが、声も正常、態度にも出てはいないはず。大丈夫、大丈夫だ。ハレには気付かれていない。

「まったく、ハレもアメも、グゥがいなければ何も出来ないんだから」
「はいはい、その通りでございますからこれからも宜しくお願い致しますよっ」
 私はハレにアメを抱かせたまま、アメの口にスプーンを運ぶ。
 上機嫌にご飯を食べながら、私を見詰めるアメの無垢な瞳に映った私の顔は、まだ少し情けなく見えた。
だけどそれは私。紛れも無い私。
 不安な事。悲しい事。心が暗い雲に覆われる時は、これからもあるだろう。
だけどきっと、大丈夫。私の心には、綺麗な虹が架かっているのだから。

「……ああ、これからもずっと、な」
 ずっと、ハレとアメの間に。
353名無しさん@ピンキー:2007/03/21(水) 10:31:54 ID:ApSpRrW7
埋めポエム。虹ネタはいつか使いたかったけど恥ずかしす。テラキモス。
そしてまだ足りんか。あと1kか。
354名無しさん@ピンキー:2007/03/21(水) 11:44:05 ID:OjrSbOJM
よーし、お父さんが無駄に書き込みして埋めt……げふっ(血反吐

これでどうだ!
355名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 03:29:51 ID:WMy4c6BI
よし、ではこのポエムを飾るために
グゥッジョオォオォ〜ブ!!
と言わせていただこう。まだ残ってるか?
356名無しさん@ピンキー
保守!