504 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 10:04:18 ID:SCDDg7NI
9話 sweet♥fighter
期末試験一週間前。部活もおやすみ。そして・・・渚砂ちゃん、千代ちゃん、
私は試験勉強中です。
「Il neige・・・えーとneigeは・・・」
「neigeは雪って意味だよね。そこは雪が降っているってなるんじゃない?」
「「えっ?」」
「あ、ごめん。変なこと言っちゃったね・・・」
「まぁ確かに、考えている横でいきなり正解を教えるのはどうかと思いますけど・・・」
「へ?正解って、それでよかったの?」
「ええ、合ってますよ」
「渚砂お姉様は今年からフランス語を始めたんですよね?やっぱりすごいです!」
「えへへ、玉青先生が優秀だったからね」
「いえ、渚砂ちゃんの努力の賜物ですよ。この分なら試験も大丈夫ですね」
「うん、でも最後まで油断はできないよ。サマースクールがかかってるんだし」
「そうですね。では、一緒にサマースクールに行くためにもうひとがんばりしましょう」
「そうだね」
そして試験終了後・・・
「どうでしたか?渚砂ちゃん」といっても顔に書いてありますけど・・・。
「うん、全教科大丈夫だったよ。ありがとう。玉青ちゃんのおかげだよ」
「いえ、渚砂ちゃんががんばったからですよ。でも、本当に良かった。
今から待ちきれませんね、サマースクール」
「だね!」
「さて、私は、久しぶりに文芸部があるので行ってきますね」
「うん、いってらっしゃい」
505 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 10:05:44 ID:SCDDg7NI
「ただいま、渚砂ちゃん。あら?誰かいらっしゃるんですか?」部屋に戻ると
お茶の用意がしてありました。
「そうじゃなくて。あの・・・これ、玉青ちゃんに」そう言って差し出した
小さな包み。ほんのりと甘い匂いがしますね。
「もしかして、私に?」
「うん。私がサマースクールに行けるのって玉青ちゃんのおかげだから。
でも・・・それだけじゃないんだよね。待ってる間ずっと考えてたの。
私って編入した日からずっと玉青ちゃんに助けられっぱなしだったんだよね・・・。今までありがとう」渚砂ちゃん・・・。
「お礼を言われるようなことじゃありませんよ。全部私が好きでしたことですし。
でも、一つだけ・・・」
「なに?」
「今までありがとう・・・それじゃあまるでお別れみたいですよ?」
「あ・・・そうだね。じゃあ、今までありがとう、これからもよろしくね、玉青ちゃん」
「はい。では早速いただきましょう」
「うん、今お茶淹れるから」
「それなら私が」
「ううん。私にやらせて」
「はい、わかりました」
包みの中に入っていたのは・・・チョコで包んだビスケットでしょうか?
口に入れてみると・・・。
「なんだか不思議な食感ですね。ビスケットなのにふわふわしていて」
「うん、マシュマロが入ってるの。どう?」
「ええ、美味しいですよ。渚砂ちゃんの手作りですね」
「えっと、実はね・・・お料理部でなにか作らせてもらおうと思って行ったら
千華留さん達がいてね、それで一緒に」
「そうだったんですか。ところで渚砂ちゃんは食べないんですか」
「作ってる時に試食しすぎて・・・ね」・・・渚砂ちゃんらしいですね。
「でもせっかくですから・・・はい、あーん」
「あーん」
「ね?美味しいでしょう?」
「うん」
「ねえ、渚砂ちゃん」
「なに?」
「私のほうこそ、これからもよろしくお願いしますね」
506 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 10:07:56 ID:SCDDg7NI
ちょい短めでしたが今回はここまでで。しっかし・・・我ながら心底情けないな・・・。
>>506 話が良ければどうってことはない、って人ばかりだろうから気にしない
まったく
>>506はじらしやがって
先が楽しみになっちゃうだろ
509 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 18:40:44 ID:YBePRdcf
少し凹んでましたけど気を取り直してShining wayの続きを投下します。
510 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 18:42:47 ID:YBePRdcf
10話 夜を越えたら
いよいよ明日からサマースクール。さっきまでの夕立もすっかりやみましたし、
準備も万端。渚砂ちゃんとのどんな思い出ができるのか、今から楽しみですね。
「ただいまー」
「おかえりなさい。って渚砂ちゃん?どうしたんです?びしょ濡れじゃないですか?」
「うん・・・図書館の帰りに急に雨が降ってきたの」
「傘は?」
「それがね・・・昨日サマースクールの荷物に入れちゃってて・・・」
「そうだったんですか。すぐにシャワーの用意をしますから」
「大丈夫だよ、は・・・くしゅん」
「ほら、風邪をひいたら大変ですよ」
「38度2分、風邪ですね。校医の先生に連絡しておきます。看病は修道会の方に
お願いしますので養生するように。いいですね、蒼井さん」
「はい・・・」
翌朝、渚砂ちゃんは寝込んでしまいました・・・。
「ごめんね、玉青ちゃん。たくさん勉強教えてくれたのに・・・私が全部台無しに
しちゃって・・・」渚砂ちゃん・・・。一番辛いのはきっと貴女なのに・・・。
「決めました。私も残ります」
「ええっ!?そんなの駄目だよ」
「いえ、苦しんでいる貴女を置いて行くなんてできません。ですから・・・」
「だけど・・・玉青ちゃんもずっと楽しみだったんでしょ?」
「それはそうですけど・・・」でも・・・私が楽しみにしていたのは
『貴女と一緒に』行くことだったんです。
「だからね、玉青ちゃんは私の分も楽しんできて。それで、帰ってきたら
話を聞かせて。ね?」渚砂ちゃん・・・。
「わかりました・・・。ねぇ、渚砂ちゃん。来年は・・・きっと一緒に行きましょうね」
「うん、約束。いってらっしゃい、玉青ちゃん」
「はい。では、いってきますね」
511 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 18:44:44 ID:YBePRdcf
そうしてやって来たサマースクール。海で遊んでいても野草を観察していても
何故か心は躍りませんでした・・・。いえ、理由は解かってるんですよね・・・。
貴女が隣にいないから・・・。
二日目夜の肝試し。くじであたった相手は・・・千華留様でした。今度は
渚砂ちゃんと一緒にまわりたかった・・・。
「玉青ちゃん。大丈夫?さっきから黙り込んでるみたいだけど・・・」
「え?あ、はい。大丈夫ですよ。私、夜道とかは平気ですから」
「そうじゃないわ」え?それはどういう・・・。
「籠女ちゃんが言ってたわ。あなたがずっと泣きそうな顔してるって」あ・・・。
「かないませんね、籠女ちゃんには・・・」
「少しはわかるつもりよ。あなたの気持ちは。サマースクール、私は楽しかったわ。
でも、渚砂ちゃんがいたらもっと楽しかったってね」
「はい・・・」
「渚砂ちゃんはとっても明るい子。でも、それだけじゃなくて・・・一緒に
いるとそれだけで元気を貰えるような・・・そんな太陽みたいなところが
あると思うの」
「ええ・・・」
「多分、皆そんな風に感じてると思うわ。それに・・・」
「それに?」
「渚砂ちゃんと一緒にいる時のあなたの笑顔。とても素敵なのよ、玉青ちゃん」
「・・・・・・」確かに・・・渚砂ちゃんの隣にいるとそれだけで私の心は躍る・・・そう思う。
「来年は一緒に来れたらいいわね」
「はい」
宿舎に戻って汗を流すと、流星雨が始まっていた・・・。
星に願おう。
「渚砂ちゃんが早く元気になりますように・・・。来年は一緒に来れますように・・・」
渚砂ちゃん、貴女も同じ星空を見ているんでしょうか?
この夜を越えたら・・・明日の貴女に会いたい。話したいこと、たくさんあるんですよ。
512 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 18:46:56 ID:YBePRdcf
「はあ・・・」ため息がでるのは何度目だろう?二日間寝てたから具合は
だいぶ良くなったと思う。熱も下がったし、先生も明日には普通に動ける
だろうって言ってたから。でも・・・。
「玉青ちゃん・・・」なんでだろう?ミアトルに来てからいつも傍にいてくれた
友達。彼女のことばかり考えてしまう。会いたい・・・。声が聞きたい・・・。
顔が見たい・・・。
「残ってもらってたら・・・」ううん、駄目だよね。玉青ちゃん優しいから
きっと一緒にいてくれたと思う・・・けど、玉青ちゃんだってあんなに
楽しみにしてたんだもんね・・・。それに、玉青ちゃんのしてくれたこと・・・
全部だめにしちゃったのは私なんだよね・・・。でも・・・。
「玉青ちゃん・・・早く帰ってきてよ・・・」
コン、コン。
誰だろ?もしかして!
「玉青ちゃん?」
「失礼するわ」入ってきたのは・・・。
「あれ?エトワール様?」
「こんばんは、渚砂ちゃん。え?どこか苦しいの?」
「ふぇ?大丈夫ですけど?先生もそう言ってたし」
「そう、ならいいのだけど。泣いていたから」
「え?あ、あれ」頬が濡れてる?
「でも、ほんとに体は大丈夫ですから。きっと病気のせいで弱気になってたんです」
「本当にそれだけかしらね?」
「え?それって・・・」
「なんでもないわ。それで、玉青ちゃんのことを考えていたのね?」
「ええっ!?なんでわかるんですか?」
「さっき間違えたでしょう?玉青ちゃんと」
「あ・・・。サマースクールに行けるようにたくさん勉強教えてくれたんです。
でも私が・・・」
「そう・・・」
「あれ?そういえば、エトワール様は行かなかったんですか?サマースクール」
「ええ、どこかの生徒会長のおかげで・・・ね」
「大変なんですね・・・」
「ところで、少し起きられる?」
「え?あ、はい。起きれますけど・・・」
「見て」そう言ってカーテンを開けると・・・。
「あっ、流れ星。あ、また」
「今日は流星雨の夜なの」
「そうなんですか。玉青ちゃんも同じ星空を見てるんでしょうか?」
「ええ。きっとね」
「あ、お願いしないと・・・。来年は玉青ちゃんと一緒にサマースクールに
行けますように・・・」
「叶うといいわね・・・」
「はい!」
玉青ちゃん。この夜を越えたら、明日はやっと会えるね。そしたら、
まず「おかえり」って笑顔で言おう。それから、それから・・・。
513 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 18:48:24 ID:YBePRdcf
「あ、エトワール様。このお花しおれてますけどどうします?」
「それは・・・ひからびているわね。水をあげてから日陰に移して」
「はーい」
渚砂ちゃん、すっかり元気になったわね。良かったわ。
「一息入れましょう。手伝ってくれたおかげでだいぶ早く終わりそうだから」
「あ、はい」
「ええっ?エトワール様って自分でアクセサリ作るんですか?」
「ええ。最近はあまりやっていないけれど、一時期凝っていたの」
「へぇー。すごいですねー」
「あら?今なにか聞こえなかった?」
「え?なにがです?」
「バスが止まるような音が」
「玉青ちゃん帰ってきたんだ!」ほんとに嬉しそうね・・・。
「冗談よ」
「ふぇ?」
「さすがにここまで聞こえはしないでしょう?」
「うー」
「でも、そろそろ帰ってくる頃ね。むかえに行ってあげたら?」
「はい、そうしますね」
そう言って走っていく姿は本当に嬉しそう。それにしても、
玉青ちゃんは気付いているのかしら?渚砂ちゃんがどんな時に
最高の笑顔を見せてくれるのかに?そして、玉青ちゃんも・・・。
あまりに当たり前すぎるから二人とも気付いていないのかもしれないわね。
「少し、妬けるわね・・・」
そうは言っても、きっと今の私も笑っているわね。そうでしょう?花織。
「ただいま、渚砂ちゃん」
「おかえりなさい、玉青ちゃん」
514 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 18:53:42 ID:YBePRdcf
今回はこれで終わりです。もしかしたら期待を裏切ってしまったかもしれませんけど
埋め合わせはしますんで。
>>514 GJ!!
一見なにげないように見えて、2人の距離が確実に・・・(*´ω`*)
GJです!
次回も楽しみにしてます。
>>514 乙&GJ!!
これ読んで急に静馬が好きになってきたww
一緒にサマースクールに行けなかったことで、かえって2人の距離が縮まった感じだね。
次回からの展開にもワクテカ。
GJ!
しかし、千代ちゃんの出番少ねえ(・ω・)
520 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 20:24:09 ID:yAA9be0s
今からShining way投下しますんで。
521 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 20:25:29 ID:yAA9be0s
11話 サンデー・ホリデー
「じゃあ、また二学期に会おうね」
夏休みに入って、みんな自宅に帰っていった。私は・・・両親がまだ海外から
戻らないからいちご舎に残るんだけど・・・。
「それでは、私も行きますね」
「うん・・・」玉青ちゃんもこれから帰宅する。親戚に挨拶しないといけない
とかで・・・大変だよね。
「用が済んだらすぐに貴女のもとに帰りますから」
「久しぶりに帰るんだから、ゆっくりしてきてよ。ね?」ほんとは一緒に
残ってほしいんだけど・・・甘えてばかりじゃ駄目だよね・・・。
「いえ、私にはすぐにでも帰らなければならない理由があるんです」
「なにかあるの?」
「ええ、とても大切な用事が・・・。ですから2、3日で帰ってきますね」
「あ、そうなんだ」どんな理由かはわからないけど・・・少し嬉しいな。
「では、いってきますね」
「うん、気をつけてね」
「さてと、宿題でもやろうか」早いうちから少しづつやった方がラクだしね。
「あら?渚砂ちゃん」
「あ、エトワール様、それに六条さん。あれ?お二人は帰省されないんですか?」
「ええ、今日から出張なの」
「出張?エトワールのお仕事ってそんなのもあるんですか?」
「そうなの、ただでさえ最近仕事が増えてるっていうのに」
「あのね・・・。今までは誰かさんがああだったからこっちで最小限に
減らしていただけなの。これが普通なんですよ『エトワール様』」
「というわけなの。渚砂ちゃんは帰らないの?」
「はい。まだ両親が海外で・・・帰っても誰もいないんです。
あ、でも玉青ちゃんが2、3日で帰ってくるって。とても大事な用が
あるって言ってました」
「大事な用・・・ね。なるほど・・・」
「なにか知ってるんですか?」
「ええ、でも内緒。さて、そろそろ時間ね」
「そうですか。いってらっしゃい」
「あ、そうだわ。今夜は遠くでお祭りをやってるの。花火が見えるはずよ」
「そうなんですか、楽しみです」
「それじゃあ、またね渚砂ちゃん」
522 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 20:27:11 ID:yAA9be0s
「はー。今日はこんなところかな」時計を見ると午後二時半。だいぶ集中できたと
思う。さすがに少し飽きてきたし・・・散歩にでも行こうかな。
「うーん、いい天気。誰もいないと結構雰囲気違うんだよね。・・・あれ?
今なにか・・・」
耳を澄ますと・・・確かになにかが聞こえる。音のほうにいってみると
そこにいたのは・・・白い馬。
「あれ?たしか、この馬ってどこかで見たような・・・?」近づいて
みると・・・むこうから寄ってきて・・・。
「あはは、くすぐったいよ」ほお擦り(?)された。
「大丈夫かい?」
「天音さん?あ、そっか天音さんの馬だったっけ」
「君は・・・怪我は無い?」
「え?あ、はい。平気ですけど?」
「こいつは人見知りが激しいんだが・・・」
「そうなんですか?」今も私にくっついてるけど・・・。
「めずらしいね、初対面の相手にこんなになつくなんて」
「そういえば・・・天音さんは帰らないんですか?」
「天音さん?」
「あ、すみません。いきなりそんな呼び方して・・・」
「それならいいさ。ただ、初対面でそう呼ばれることがあまりなかった
ものでね・・・。いや、前に一度会ったね。図書館で」
「えっと・・・あ、そうでしたね」
「あの時も少し驚いたよ。君があまりに自然に接してくれたからね」
「実は・・・あの時はどんな人なのか、なにも知らなくて」
「そう・・・。とにかく、そのままでかまわないから」
「はい。あ、自己紹介してませんでしたね。私は・・・」
「知ってるよ、4月にミアトルに編入して来た・・・蒼井渚砂さん、だね」
「はあ、もう慣れましたけど・・・いちご舎では有名なんですよね、私って」
「らしいね」
「ところで・・・天音さんは帰省しないんですか?」
「ああ、こいつの世話があるからね」そういって白馬を撫でる。すごく
さまになってると思う。
「いつもここに来てるんですか?」見たことないけど・・・。
「いや、誰もいない時だけさ。目立つのは苦手なんだ」
「意外ですね・・・」
「みんなそう言うよ」
「じゃあ、邪魔したら悪いし私は行きますね・・・ってうわぁ」白馬に
上着をかまれた・・・「やめないか、スターブライト。すまないね、
よほど君を気に入ったみたいだ」
「あのー、良かったらお手伝いしましょうか?」
「いいのかい?」
「はい。実はヒマをもてあましてる最中なんです」
「そうか・・・。なら君の暇つぶしに協力しようか」
「よしよし、きれいになったね。スターブライト」
「ありがとう、助かったよ」
「いえ、私の方こそ楽しかったです」
「これから厩舎に連れて帰るけど、乗っていくかい?こいつも渚砂を
乗せたいようだ」
「ええっ!?駄目ですよ。私乗馬なんてしたことないし」
「それは大丈夫。鞍に乗って手綱を握っているだけでいい。君相手なら
こいつもおとなしくするだろう」
「じゃあ・・・」
523 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 20:29:01 ID:yAA9be0s
「うわあ、なんだか景色が変わって見えますね」
「それにしても・・・本当に驚いたよ。光莉の時もこいつはここまでは
なつかなかったのに・・・」
「光莉ってスピカの此花光莉ちゃんですよね」
「知ってるのかい?」
「ええ、よくお話しますよ。そうだ!今度お茶会に来ませんか?」
「お茶会?」
「はい、光莉ちゃん達と夜中にこっそりやってるんです。きっと光莉ちゃんも
喜びますよ」
「そうだね・・・光莉や君がいるなら楽しそうだが・・・やめておくよ」
「どうしてです?」
「ガラじゃないよ」
「そんなことは・・・」
「そんなことは?」
「あるかも・・・」
「だろう?」
「あ、あはは・・・」
夜もふけて、花火が終わったからベッドに入ったけど・・・。
「眠れない・・・」昼寝しすぎたわけでもないのに、なぜか目が
さえてしまった・・・。それに・・・。
「どうして玉青ちゃんのことばかり考えちゃうんだろう?」サマースクールで
会えない時も同じだったっけ。あの時は風邪のせいで気弱になってるって
思ってたけど・・・。違うんだね・・・。寂しいって思うよ・・・。
「あはは・・・。知らなかった、私ってこんなに寂しがりだったんだね・・・」
無理にでも寝ないと・・・あ、そうだ。
「玉青ちゃんのベッド、使わせてもらおっと」入るときは少しドキドキした
けど・・・。
「玉青ちゃんの匂いがする」なんでだろう?すごくほっとするのは?
「おやすみ、玉青ちゃん」
なんだか不思議。私は玉青ちゃんのことを友達だと思ってる・・・
けど・・・玉青ちゃんのことを考えるとなんだかドキドキする。
他の友達にはそんな風に感じないのに・・・。この気持ち名前はなんて
いうんだろう?それとも・・・私の思い過ごしなのかな?
524 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 20:34:06 ID:yAA9be0s
今回は終始渚砂視点でした。天音とのシーンはゲーム版が混ざってますけど。
ちなみにゲームでは天渚EDが好きでした。天音が渚砂を呼び捨ててますけど
深い意味はありません。個人的に「渚砂君」は違和感がすごかったんで。
玉青と渚の距離がどんどん近くなってきてる。
これからの展開が楽しみです!
エロ様といちゃいちゃしてない渚砂なんて・・・
だがそれが良い。
というかこのSSの場合、静馬は深雪と幸せになればいいと思う。
このSSの先の展開…見切ったッ!!
静馬×深雪・・・!
なんと素晴らしい組み合わせだろう
保管庫全然駄目だ…
もう見られないのか?
532 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 08:40:36 ID:EGbe7Kw5
と、言うわけで(?)空気を読まずにShining wayの続きを投下します。
533 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 08:42:16 ID:EGbe7Kw5
12話 Shooting star 〜願いを込めて〜
「ふあ、さすがに4時起きはつらかったですね・・・」でも、ようやく帰ってきた。
渚砂ちゃんのいるいちご舎に。時刻は8時すぎ、まだ寝ているかもしれませんね。
用意した『お土産』気に入ってくれるでしょうか?そっとドアを開けると、
ベッドは・・・空っぽ?もうどこかに行ったんでしょうか?
「んー」今のは・・・渚砂ちゃんの声?あらためて部屋を見渡すと、
私のベッドが膨らんでいる?
「私のベッドにいたんですね。せっかくですし、寝顔を堪能させてくださいね」
「ん、朝?」目が覚めたみたいですね。
「おはよう、渚砂ちゃん」
「あ、おはよう。玉青ちゃん・・・あれ、家に帰ってたんじゃあ?」
「ええ、20分ほど前に帰ってきたところです。渚砂ちゃんの寝顔、可愛かったですよ」
「もう、起こしてくれてもいいのに・・・」
「ところで・・・なぜ私のベッドに?」
「それは・・・笑わないでね。なんだか落ち着くの、玉青ちゃんの匂いがする
みたいで」
「くっ・・・」慣れたと思ってすっかり油断してましたけど・・・久しぶりに
理性が飛びかけましたよ。
「ごめん、迷惑だった?」
「あ、いえ。そんなことはありませんよ。何度も一緒に寝たじゃないですか」
「ところで・・・明日からの三日間はなにか予定はありますか?」
「え、特に無いけど・・・」
「でしたら、うちの別荘に行きませんか?」
「別荘?別荘って・・・吹雪の雪山とか絶海の孤島にあるっていうあの別荘?」
「ええ、まあ。ある場所は高原ですし、事件も起きないと思いますけど」
「へー、実在するんだ?」
「はい、それで行ってみませんか?」
「でも、私が行ってもいいの?」
「ええ、寮のお友達と一緒に、ということで許可を取りましたから。それに・・・」
「それに?」
「貴女と・・・サマースクールに行きたかったんです。だから・・・」
「玉青ちゃん・・・。うん、私も・・・」
「決まりですね」
「うん。それで、どんなところなの?」
「ここからだと、電車で5時間ほどだそうです。最寄の駅から5Kmくらいと
聞きました」
「そっか、でも丁度良い電車あるかな?」
「それはまだ調べてません。でも、時刻表を用意してきましたから」
「うわ、準備いいね」
「これだと、明日の7時半にいちご舎を出ればよさそうだね」
「ええ、それで午後2時頃に最寄の駅に着きますね。駅前に商店街が
あるそうですから、そこで三日分の食材を買っていきましょう。
食器や調理器具はそろっているそうですから」
「そうだね。あ、でもお昼はどうする?なにか作っていく?」
「それなんですけど、お昼頃にこの駅で1時間位待ちますよね。ここって
大きな駅なんです。それで・・・一度立ち蕎麦というのを食べてみたいんですけど・・・」
「あ、いいね。じゃあお昼はそうしよっか」
「はい。後は荷物を準備しましょう」
「うん。明日が楽しみ。二人きりのサマースクールだね」
534 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 08:43:32 ID:EGbe7Kw5
翌日
6:00 起床。(興奮してよく眠れなかったので少し辛かった)
7:30 出発。
12:20 昼食。(立ち蕎麦というのは意外に面白かった)
14:05 最寄の駅に到着。
14:40 買出し終了。
そして、現在16:25・・・
迂闊でした・・・。5Kmと聞いていたので1時間ほど歩けば着くと思って
いたのですが・・・荷物を持っての山歩きだということを見落としていました。
30分前に休憩したばかりですけど・・・。それにさっきから右のかかとが痛い。
渚砂ちゃんは・・・まだ元気ですね。
「玉青ちゃん、少し休む?」ばれていたみたいですね・・・。
「ええ、そうさせてください」
靴を脱いでみると・・・靴下に穴が。それに、血がにじんでいるような?
「玉青ちゃん?足、どうかしたの?」
「あ、大したことありませんよ」
「うん。でも、ちょっと見せて。・・・靴擦れだね、痛かったでしょ?そっか、
私のブーツはともかく、玉青ちゃんの靴って山登りにむいてないんだよね・・・」
「靴擦れ・・・ですか。初めて経験しました」
「今、手当てするから」
そう言って渚砂ちゃんは靴下を脱がせると、さっき飲んでいた
スポーツドリンクを足にかけました。
「渚砂ちゃん、それは・・・」
「うん、洗わないと。水があればよかったんだけどね」あ、いえ。そうではなくて・・・。
今度は荷物の中から取り出したタオルを巻き始めた。
「手際いいですね」
「まあね、慣れてるから・・・よし、とりあえずこれでいいかな」
「ありがとうございます」
「ううん、気にしないで。さてと、じゃあ背中に乗って」え?
「そ、それはどういう?」
「その足じゃ辛いでしょ?おぶってくよ」
「そんな。大丈夫、歩けますよ」
「だめ。化膿したりしたら大変だよ。それにむこうに着けば薬箱くらいあるよね?」
「ええ、たぶん」
「大丈夫。私体力には自信あるから、ね?」渚砂ちゃん・・・。私も
かなり辛いですけど・・・すみません。甘えさせてください。
「ごめんなさい、お願いしていいですか?」
「うん、まかせてよ。荷物は・・・後で取りに来ればいいね。もうすぐだろうし」
渚砂ちゃんの背中・・・。
それから・・・10分ほどで別荘に到着しました。
「すみません。渚砂ちゃんもお疲れでしょう?先に汗を流してください」
「それよりも玉青ちゃんの手当てが先。薬箱は・・・あ、あった」
「少ししみるよ」
慣れた手つきで消毒し、包帯を巻く。本当に手際がいいですね・・・。
「これでよし。私、荷物とって来るね」
「あ、渚砂ちゃん」行ってしまいました・・・。
ごめんなさい、たくさん迷惑をかけてしまって・・・。でも・・・眠い・・・
もう・・・限界・・・で・・・す・・・。
535 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 08:44:55 ID:EGbe7Kw5
「う・・・ん」寝てしまったんでしょうか?それに、ここは・・・ベッドの上?
確かソファにいたような気が・・・。それに、なんだかいい匂いがしますね。
渚砂ちゃんは・・・キッチンでしょうか?
渚砂ちゃんはキッチンでなにか作っていました。
「あ、玉青ちゃん。目が覚めたんだね」
「ええ。私、眠っていたんですね?」
「うん。気持ち良さそうだったから。そのままベッドに運んだの」
「そうですか・・・。あ、私も手伝いますね」
「ううん。もうほとんど出来てるから。あ、先にシャワー使わせてもらったよ。
玉青ちゃんも汗流してきたら?」
「渚砂ちゃん・・・。ではお言葉に甘えますね」
「そうだ、その前にこれ」
「ビニール袋?」
「うん。これを足にかぶせておけば濡れないでしょ。まだ濡らさないほうがいいよ」
「あ、はい。ありがとうございます」
汗を流してくると、もう夕食の用意がしてありました。メニューは・・・
カレーライスにサラダ。
「私ね、カレーライスには自信あるんだよ。さ、食べよっか?」
「ええ・・・」
「いただきます!」
「いただきます・・・」
目の前のお皿からはとてもいい匂いかする。でも・・・。
「玉青ちゃん・・・。もしかして口に合わなかった?」
「そうじゃないんです。あの、ごめんなさい・・・」
「どしたの?いきなり」
「だって・・・私、貴女と思い出を作りたくて誘ったんです・・・なのに・・・」
迷惑をかけてばかりだったなんて・・・。
「玉青ちゃん、きっとこれもいい思い出になるよ」
「渚砂ちゃん・・・でも・・・」
「それに・・・怒らないでね?」
「なにをです?」
「ちょっとだけね、嬉しかったの。いつもは私が助けられてばかりだから、
私も玉青ちゃんの役に立てるんだ・・・ってね」
「そんな・・・私だって貴女に助けられてます」
「そう?それにさ・・・確かに今日はいろいろあったけど、まだ
始まったばかりでしょ?私達のサマースクールは」あ・・・。
「そう・・・ですよね。せっかくのサマースクールなのに落ち込んでるなんて・・・それこそもったいないですよね」
「そうそう」
「それではいただきますね。渚砂ちゃんの手料理が冷めないうちに」
「うん」
夕食の後片付けが終わる頃にはすっかり日が暮れていました。
「渚砂ちゃん、聞いた話だとここは星がとても綺麗だそうなんです。
外にでてみませんか?」
「うん。あ、でもその前に・・・」
そう言って渚砂ちゃんは私の足にタオルを巻き始めました・・・。
「これは・・・?」
「こうしておけば靴を履いても大丈夫だから。帰りもこれでいいと思う」
「そうなんですか・・・。ありがとう、渚砂ちゃん」こんどは、素直にお礼を
言えましたね。良かった・・・。
「どういたしまして。じゃ、行こう」
536 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 08:46:25 ID:EGbe7Kw5
「うわ・・・すごいね・・・」
「ええ、本当に綺麗」
外に出てみると想像よりもずっと見事な星空が広がっていました。
「よいしょっと」
「渚砂ちゃん?」
「玉青ちゃんも横になったら?気持ちいいよ」
「そうですね、では・・・」本当に綺麗ですね。降ってくるような星空とは
こんなのを言うのでしょうか?
「あの日もこんな風に夜空を見上げたんだよね・・・」
「あの日?」
「うん、ミアトルに来る前の日。私ね・・・初めはすごく不安だったんだよ。
ミアトルってなんだか由緒ある学校だって聞いてたから・・・馴染めるのかな?
とか友達が出来なかったらどうしよう?とか、そんなこと考えながら空を見てたの」
「そう・・・だったんですか・・・」
「でも・・・そんなことなかった。いろんなことがあったけど、
すっごく楽しい一学期だった・・・そう思う」
「渚砂ちゃん・・・」
「でも、それは玉青ちゃんがいつも傍にいてくれたから。私ね、
ミアトルに来て・・・玉青ちゃんに会えて・・・ほんとに良かった」
そう言って私を見つめる。その表情が輝いて見えたのは星の光に
照らされていたせいでしょうか?それとも・・・。不意にある衝動が湧き上がる。
ずっと胸に秘めていた想い・・・もし、今伝えたなら・・・伝えられたなら・・・。
「ねえ、渚砂ちゃん。貴女に・・・聞いて欲しいことがあるんです」私は体を起こす。
「何?」
「私・・・ずっと貴女が・・・貴女のことが・・・」伝えたい・・・。
「うん・・・」
「貴女のことが・・・貴女が・・・」この想いを・・・。
「貴女が・・・貴女が・・・」どうか・・・。
「ずっと・・・貴女が・・・来てくれるのを・・・待っていたんです」・・・言えなかった・・・。
「玉青ちゃん・・・。ありがと。私もね、もっと早く出会いたかったな」
537 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 08:48:12 ID:EGbe7Kw5
「はぁ・・・」
結局、伝えたい言葉は言えなかった。知りませんでした・・・。
想いを伝えるというのがこんなにも勇気のいることだったなんて・・・。
『私・・・ミアトルに来なければよかった・・・。ミアトルに来なければ・・・
静馬様に会うことも・・・こんな気持ちになることも無かったのに・・・』
不意に・・・過去の記憶が蘇る。
「あの時とは正反対の言葉。・・・ただ一度きりだったんですよね。
貴女と・・・唇を重ねたのは・・・」
隣のベッドからは寝息が聞こえる。そっと近づく。よく眠っているみたいですね。
やっぱり、疲れていたんでしょうか?
「渚砂ちゃん・・・どうか・・・動かないで・・・」
「・・・玉青ちゃん」
「・・・っ」ばれた!?
「ん〜もうお腹いっぱいだよ〜」
「・・・・・・」寝言・・・ですか?なんとも渚砂ちゃんらしい内容ですけど・・・。
「確かに・・・こんなのはフェアじゃないですよね・・・」
苦笑しつつ、なんとなく窓の外を見ると・・・。
「あ・・・」星が流れた。
星はもう消えてしまったけれど・・・願ってもいいでしょうか?
この想いを伝えたい。そして・・・描いてる明日に・・・
もっと・・・もっと・・・近づけますように・・・
538 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 08:50:09 ID:EGbe7Kw5
と、いうわけで今回は終わりです。それにしても・・・静馬様と六条さんってのは
全く考えて無かったけど、案外いいかも。
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) ワクワクテカテカ
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
GJ!
玉青は告白できなかったか。
でも、二人きりのサマースクールはまだあと2日あるから、キスまでいくかな。ワクワク。
キスは渚から玉青ちゃんにしてほしい(*´Д`)ハァハァ
>>538 遅ればせながらGJ!!
渚砂はジッチャンの名にかけ(ryあたりに毒されていたのかw
>玉青「ここからだと、電車で5時間ほどだそうです。」
自分ちの別荘なのに、こういうセリフが出るあたり
複雑な家庭環境が伺える・・・(つД`)
543 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 21:03:59 ID:DnI8i44f
Shining wayの13話を投下します。少し長くなりますけど。
今回は今までの集大成的な話になります。
544 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 21:06:25 ID:DnI8i44f
13話 ソラミアゲ
それから・・・二人だけのサマースクールから帰った私達を迎えて
くれたのは・・・何故かいちご舎に帰っていた千代ちゃんでした。何か
用事があって早く帰ってきたそうですが。そのあとも三人で海に行ったり、
夏祭りに行ったりするうちに夏休みは過ぎて行きました。でも・・・何度も
決意したけれど・・・結局、想いを伝えることは出来ませんでした・・・。
二学期に入り、だんだんと秋が色濃くなってきたある日のこと。今日は
光莉さん達のお部屋で夜のお茶会です。
「ふーん、千代ちゃん達は学園祭でロミオとジュリエットをやるんだ?」ポリポリ。
「はい。まだ決まってはいませんけど、希望する人が多いですね」
「そっか。それで・・・皆はなんの役をするんだろうね?」パリパリ。
「私はジュリエットに立候補するつもりなんです」そう言ったのは蕾ちゃん。
「うぇ・・・」
「なんですか夜々先輩?その嫌そうな声は?」
「私はロミオやりたいんだけど・・・」
「ぐ・・・」
「そっちこそ、その心底嫌そうな顔はなんなの?」
「だって・・・せっかくのラブロマンスなのに・・・」
「同感。光莉がジュリエットなら素直にハッピーエンドを喜べるんだけど・・・」
「私は、主役はちょっと・・・」あら?今何か違和感があったような?
「まぁまぁ。そういえば・・・千代ちゃんは出ないの?」ポリポリ。
「はい・・・。今年はミアトルが裏方をする年だそうです。唯一の例外は
エトワール様ですけど」
「そうなんだ。でも、千代ちゃんのお芝居も見たかったかな」パリパリ。
「実は・・・私もジュリエットをやりたかったんです・・・」
「千代ちゃんならきっと可愛いジュリエットになると思うよ」ポリポリ。
「本当ですか!それで・・・できることなら・・・周りから祝福されて・・・
渚砂お姉様のロミオと結ばれたかったです」・・・もしかすると?
「あの・・・つかぬことを聞きますけど。ロミオとジュリエットが悲劇だって・・・ご存知ですよね?」
「「「「「ええっ!?」」」」」反応したのは・・・5人。やっぱり・・・。
「玉青ちゃん、それってほんと?」
「ええ。渚砂ちゃんはどこまで知っていますか?」
「えーっとね・・・『あなたはどうしてロミオなの?』ってアレだよね?」
「「「「うん」」」」
「まぁ・・・確かにそのシーンが有名ですね。あとは?」
「え?えっと・・・」
「確かに二人は結ばれるんですけど・・・ちょっとした誤解から最後は互いの
後を追うように自殺する、という結末なんです」
「そうなんだ・・・。じゃあ、玉青ちゃんが企画したっていう・・・えっと」
「カルメンですね」
「そう、そのお話は?」
「こちらもハッピーエンド・・・とは言えませんね。古典の名作には悲恋悲劇が
多いんです」
「そうなんだ・・・。あれ?」
「どうしました?」
「もう無くなっちゃったね。クッキー」
「ほとんど一人で食べちゃったのは誰です?」
「「「「・・・」」」」蕾ちゃん・・・誰もがあえて言わなかったことを・・・。
「で、でも、夜中にこれだけの量を食べられるのは渚砂お姉様くらいですよ」
千代ちゃん・・・あまりフォローになってない気が・・・。
「あ、あはは・・・。きっと千早ちゃんがいけないんだよ。お菓子作るの
上手だから・・・」まぁ、『食欲の秋』ですしね・・・。
「今日はこれくらいにしましょうか」
「そ、そうだね」
545 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 21:08:50 ID:DnI8i44f
「ねぇ、玉青ちゃん」
「なんです?」
「ほら、前にいろいろあったでしょ。でも・・・光莉ちゃんと夜々ちゃん、
すっかり仲直りできたみたい。良かったね」
「・・・そう・・・ですね」
けれど・・・今ならわかる。夜々さんは光莉さんのことを・・・想っている。
きっと・・・私と夜々さんは・・・よく似ている・・・。
結局のところ下級生が『ロミオとジュリエット』を、上級生が『カルメン』を
演じることになり、カルメンの脚本は私が任されました。前回の脚本では
いろいろと反省する点もあったわけで・・・できることならもう一度書いて
みたいと思っていたんですよね。執筆中・・・つい先ほど冬森会長の
妨害・・・もとい、売り込みがあったりもしましたが・・・。
「完成です」
「玉青ちゃん、一息ついたら?」
「あ、お茶を入れてくれたんですね。ありがとうございます」
「私にはこれくらいしかできないけど」
「いえ、嬉しいですよ。そうだ、ちょうど今完成したところなんです。
良かったら見てもらえますか?」
「あ、うん。いいの?」
「はい。感想も聞きたいですし」
「どうでした?」
「この脚本でお芝居するんだよね?すっごく楽しみだよ」
「気に入ってもらえたみたいですね。良かった」
「あ、そうだ。読んでて気になったんだけど」
「はい、なんでしょうか?」
「カルメンってエトワール様のイメージじゃない気がする」
「鋭いですね。では誰のイメージだと思いますか?」
「うーん」
「ではヒントを、消去法でいくと他の有力候補は?」
「天音さん・・・は違うね。千華留さん?」
「正解です。千華留様の演技、とてもお上手なんですよ」
「へー、そうなんだ」
「どこか気に入った場面とかはありましたか?」
「うん。ここの・・・カルメンとエスカミーリョが踊るところ、素敵だと
思うよ」そこは・・・エトワール選で踊った時のことをイメージして書いた
場面でしたっけ・・・。
コン、コン
「あ、誰だろ?どなたですか?」
「花園です」静馬様?
「花園さん・・・って誰だっけ?」渚砂ちゃん・・・。
「エトワール様の姓は『花園』ですよ」
「あ、そうだった・・・。どうぞ」
「こんばんは。夜遅くにごめんなさいね」
「いえ、そんなことはないですから」
「そう、ならいいのだけど。実はあなた達に頼みたいことがあるの」
「なんです?」
「配役が決まったら練習に付き合って欲しいの」
「私もですか?」
「ええ、渚砂ちゃんと玉青ちゃんの二人に。もちろん、無理にとは言わないわ」
「私はいいですけど。玉青ちゃんは?」
「ええ、お引き受けします」断る理由もありませんしね。
「そう、ありがとう。よろしくね、渚砂ちゃん、玉青ちゃん」
「「はい」」
546 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 21:10:46 ID:DnI8i44f
配役は前と全く同じに決まり、私達は静馬様の練習に付き合うことになりました。
私がカルメン役、渚砂ちゃんがエスカミーリョ役で・・・。まぁ、確かに
エスカミーリョはホセとの決闘シーンがあるので渚砂ちゃんの方が向いてますし。
でも・・・役の上とはいえ、渚砂ちゃんと静馬様が私をめぐって決闘すると
いうのはなんとも・・・。最初は渚砂ちゃんの迷、ではなくて名演技に
二人で大笑いしたりもしましたけど・・・。そんな練習期間も終わり、明日は
いよいよ本番前のリハーサルです。
「今日まで付き合ってくれてありがとう。後は明日のリハーサルと
本番を残すだけね」
「私は楽しかったですよ」
「そう?ならいいのだけど。渚砂の演技も随分上達したわね。玉青も
そう思うでしょう?」そう言って私にウィンクする。静馬様?あ、もしかして。
「そうですね。みんな楽しみにしてますよ。渚砂ちゃんのエスカミーリョ」
「あ、ありがとう、本番もがんばるね・・・ってあれ・・・?もう、静馬様も
玉青ちゃんもからかわないでよ」
「ごめんなさいね。でも、できるならあなた達と演じたかったわ。それは本当よ」
「静馬様・・・。そうですね、私もお二人と演じてみたかったです」
いつの間にか静馬様は私達を玉青、渚砂と呼ぶようになっていました。
そして私達も静馬様と・・・。
翌日・・・
リハーサルは順調に・・・ほぼ順調に進んでいますね。まぁ、
約二名ほど気になる方がいますが・・・。
「玉青さん、少し来てもらえる?」
「六条様?」
舞台袖に行って見ると、そこには静馬様と千華留様もいました。
「脚本のことで話があるの」
「どこか不都合でも・・・」
「いえ、内容ではないの。ただ・・・少し時間をオーバーしそうなの。それで、
どこか削るとしたら・・・」
ズゥゥゥン。舞台から大きな音が?・・・もしかして!?
「渚砂ちゃん!」
舞台に行ってみると・・・背景が倒れている?渚砂ちゃんは・・・倒れた
背景の横に倒れていました。隣に倒れているのは・・・天音様?
「渚砂ちゃん!お怪我はありませんか?」
「あ、うん。私は平気。天音さんが助けてくれたから。天音さん!?足が!」え?
天音様の右足が背景の下敷きに!?
「なに、大したことはないよ」
「ごめんなさい・・・。私のせいで・・・」
「気にしないで。君に怪我が無くてなによりだよ」
「それに・・・背景も・・・私のせいだ・・・」渚砂ちゃん・・・。
「大丈夫よ、渚砂」
「静馬様?」
その後、皆で修復作業を行い・・・なんとか明け方に終わりましたけど・・・。
前は千華留様が本番で足を痛めたんですよね。もしかして・・・あの二人が?
547 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 21:14:01 ID:DnI8i44f
そして・・・ロミオとジュリエットも終わり、いよいよカルメンが始まりました。
2回目とはいえ、千華留様のカルメンは本当に素敵ですね。それに、静馬様の
ホセも。舞台は順調に進み、次はあのシーン。前に千華留様が怪我をしたシーン。
渚砂ちゃんが素敵だと言ってくれたシーン。開始直前にカルメンの靴を
調べたけれど特に異常はありませんでしたし。今回はきっと大丈夫。
『ああ、カルメン。私はお前が大好きだ』
『私も貴方が大好き』
『今日の祭りの試合でも私は勝つ!お前のためにな』
『あぁ、エスカミーリョ』そう言って千華留様がしなだれかかった瞬間、
靴のかかとが折れた?天音様の?そのまま二人は倒れてしまった。アドリブで
千華留様を抱き上げ、舞台袖に降ろすと同時に天音様も崩れ落ちてしまった。
そんな、どうして?
「二人とも大丈夫?」
「六条会長。すみません、足をくじいてしまったみたいで、立つのも辛いです。
天音さんは?」
「すまない。私も同じだ」
「天音さん・・・もしかして、私を助けた時に足を?ごめんなさい・・・
私のせいで・・・」渚砂ちゃん・・・。
「今はそんなことを言っている時ではないわ。なんとかしないと・・・」
「でも、カルメンとエスカミーリョの二人とも動けないんじゃあ・・・」
「深雪、私に考えがあるわ」
「静馬?」
「代役がいるわ」
「静馬様・・・?まさか!?」
「そう、玉青、あなたがカルメンを。そして、渚砂がエスカミーリョをやるの。
ずっと私の練習に付き合ってくれたあなた達なら・・・きっとやれるわ」
「私と・・・渚砂ちゃんが?」
「代役を・・・?」
「玉青ちゃん、できるのなら・・・お願い。私はこの足では舞台には立てない
けれど・・・成功してほしいの」
「千華留様・・・」
「渚砂、私からも頼む。ここまで皆でやってきたんだ、なんとしても
成功してほしい」
「天音さん・・・」
渚砂ちゃんの顔を見ると・・・はっきりと目が語っていた『一緒にやろう』と。
「決まりだね」私も同じ目をしていたみたいですね。
「ええ、やりましょう」
「深雪、それでいいわね」
「静馬・・・。わかったわ。すべての責任はミアトル生徒会・・・いえ
私が取ります。冬森会長、それでよろしいですね?」
「・・・しかたありません」
「私がアドリブ・・・ホセの独白で時間を稼ぐ。渚砂は準備が出来次第舞台に、
そこから決闘に繋げるわ。深雪、音響と照明をお願い」
「わかったわ、30秒後に舞台に上がって。後はなんとかするから」
「それじゃあ、こっちも衣装合わせを始めましょう。まずは渚砂ちゃんの
エスカミーリョね」
548 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 21:15:52 ID:DnI8i44f
「よし、これでOKよ。急ごしらえだけど短時間なら大丈夫」
「はい!」
「渚砂、頼む」
「まかせてください!」
「渚砂ちゃん、私もすぐに行きますから」
「うん、待ってる」
「さ、次は玉青ちゃんのカルメンね」
「はい」
「できたわ。玉青ちゃん、後は・・・お願い」
「はい。お任せください」
舞台では二人の決闘が終幕に近づいている。台本を頭で確認する。深呼吸。
では・・・行きます!
『やめて!お願い、決闘なんかやめて!エスカミーリョ、貴方はセビリアの英雄、
祭りの花形。さあ行って!』
(今度は私の番です)
(うん。頑張ってね)
『ホセとやら、憶えていろ』
そう言ってエスカミーリョは走っていく。お二人が繋いだこの舞台・・・
絶対に・・・演じきってみせます。
『ああ、カルメン、私はお前が大好きだ!竜騎兵隊をやめ、泥棒になったのも
みんなお前のため!お前だってそのことを良く知っているではないか』衣装の
せいなのか、練習の時とは迫力がまるで違う。
『ふん、それがどうしたっていうのよ。私はいつだって自由な女よ。自分の
気持ちにうそはつけないわ!』私も・・・カルメンの気持ちを思い描いて
言葉をぶつける。
『なあカルメン。お願いだから遠くの街に行って一緒にやりなおそう』
『いやよ、いや!貴方に貰った指輪なんかこうしてやる』指輪を投げつける。
『ああっ!?』悲痛な声を上げるホセ。演技と分かっていても流石に・・・
堪えますね。
そして、響き渡る歓声。
『あの人が勝ったんだわ!行かなくちゃ!』
『ま、待て!カルメン!』
『あっ!?』
『うああああああっ!』ホセの刃が私の脇をすり抜け、舞台が緋色に染まる。
『あ・・・ああっ・・・』崩れ落ちる私をホセが抱きかかえる。
『ああ、カルメン、カルメン・・・カルメン・・・カルメン・・・・・・・・・
カルメーン!!!』そして・・・ホセの叫びが響き渡った・・・。
549 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 21:16:54 ID:DnI8i44f
「お疲れ様、玉青」
「静馬様・・・」いつに間にか幕が閉じ周りには皆が集まっていました。
「やったね、玉青ちゃん!」
「渚砂ちゃん・・・私、上手く出来てましたか?」
「うん」
「私も渚砂ちゃんと同感よ。とてもよかったわ」千華留様・・・。
「渚砂、君も立派だったよ」
「天音さん・・・」
「大成功よ、二人ともお疲れ様」
「渚砂お姉様、玉青お姉様、お二人ともすごく素敵でした」六条様も
千代ちゃんも・・・皆私達を称えてくれる・・・。嬉しいけど・・・
少しくすぐったいですね。
「渚砂、玉青、二人とも良くやったわ。あなた達は胸を張って自分を
誇っていい。それだけのことをしたのよ」
「玉青ちゃん」そう言って渚砂ちゃんが上げた掌に・・・私も手を叩きつけた。
炎を囲んでの後夜祭。渚砂ちゃんと一緒に舞台に立てるなんて
夢にも思いませんでした。また、素敵な思い出が出来ましたね。
「ねぇ、玉青ちゃん。ちょっと一緒に来て欲しいんだけど」
「渚砂ちゃん?どこにですか?」
「それは・・・まだナイショ」
「いいですよ。ではそこに連れて行ってください」
「うん」
550 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 21:18:22 ID:DnI8i44f
やって来たのは・・・。
「舞台の片付けは明日ですよね?」誰もいない舞台でした。
「うん、それはわかってるんだけど。ほら、あのシーンだけ最後までできなかった
でしょ?だから・・・」そういえば・・・あのシーン、気に入ってくれてましたね。
「だから私達で演じるんですね?面白そうですね」
「まぁ、脚本を見ながらなんだけどね・・・」
「仕方ないですよ。ホセのいないシーンは練習してませんし」
「それじゃ、初めよっか」
「はい」
『ああ、カルメン。私はお前が大好きだ』
『私も貴方が大好き』
『今日の祭りの試合でも私は勝つ!お前のためにな』
『あぁ、エスカミーリョ』
そして、間近で見つめ合う。
「玉青ちゃん・・・」え?
「ん・・・」その時なにが起きたのか?目の前にあった渚砂ちゃんの潤んだ瞳が
さらに近づいて・・・そして・・・唇に柔らかい感触が・・・。これは・・・?
「はぅ・・・」私・・・渚砂ちゃんに・・・。頭が理解したのは、二人の唇が
離れてからでした・・・。
「玉青ちゃん・・・」恥ずかしそうにそう言った渚砂ちゃんの表情が・・・。
「あ!?」瞬時に驚き、そして・・・。
「あ、あの・・・ごめんなさい・・・」哀しみと涙に染まる・・・。
どうして・・・?
走り去っていく渚砂ちゃんを・・・私は・・・引き止められなかった・・・。
「渚砂ちゃん・・・」まだ唇が熱い・・・。渚砂ちゃんは・・・どうして・・・?
「え?これは・・・」いつの間にか頬が濡れていた・・・。涙?私は
哀しかったわけじゃない。ずっと・・・ずっと求めていたことだから。今、胸に
あるのは・・・。
「じゃあ・・・渚砂ちゃんは!?」私を傷つけたと思って?・・・追いかけないと!
「渚砂ちゃん!」
551 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 21:20:49 ID:DnI8i44f
「渚砂ちゃん・・・どこにいるんですか?」
後夜祭会場、温室、そして・・・私達の部屋にも戻ってきた跡は無い。
不意に目に映ったのは・・・机の上で月明かりに照らされていた・・・赤いリボン。
「もしかしたら!」
「渚砂ちゃん・・・」ずっと押さえていた想いが・・・いつしか・・・
溢れ出していた。
「渚砂ちゃん・・・」もう・・・嫌です。なくしたものを追いかけまわして・・・
後悔して・・・泣くのは・・・。
「渚砂ちゃん・・・」たとえ友達としてでも傍にいられればいい?違う。
そう自分に言い聞かせて・・・無理をして・・・笑っていたけれども・・・
本当は辛かった・・・。貴女が私でない誰かを愛しているのが・・・
悲しかった・・・痛かった・・・苦しかった・・・。私だけを見てほしかった。
私だけを想ってほしかった。私だけを・・・愛して・・・ほしかった。
「渚砂ちゃん・・・」どこまで行けば・・・どこまでうまく・・・
いくかなんて・・・わかりません。それでも・・・この想いを・・・
貴女に・・・貴女に・・・。
私達が出会った・・・あの場所で・・・渚砂ちゃんは・・・木に
縋るように・・・泣いていました。足音を忍ばせてそっと近づく。
「私・・・なんであんなことしちゃったんだろう?玉青ちゃんとは・・・
ずっと・・・ずっと・・・仲のいい友達でいられたのに・・・」渚砂ちゃん・・・。
「夢ならいいのに・・・夢だったら目が覚めたら・・・またおはようって
言ってくれる。ずっと友達でいられるのに・・・」夢だったら?ずっと友達で?
でも・・・私は・・・。
「私は・・・嫌です!」
「あっ!?」
「待って!渚砂ちゃん!逃げないで!」今度は・・・手を掴むことができた。
「貴女に・・・伝えたいことがあるんです。だから・・・どうか」
「やだぁ!聞きたくないよ!」
「渚砂ちゃん。お願いです」
「嫌だよ・・・聞きたくない・・・玉青ちゃんに嫌われたくないよ!お願い・・・
私のこと・・・嫌いにならないで・・・」
「渚砂ちゃん・・・」私の言葉は届かないんですか?それでも・・・
この想いを・・・どうか!
「渚砂ちゃん!」
渚砂ちゃんを振り向かせて・・・唇を・・・重ねた・・・。
「ん・・・」そして、そのまま抱きしめた。
552 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 21:22:16 ID:DnI8i44f
「ふぁ・・・」
今度は・・・逃げないでいてくれた。
「渚砂ちゃん。順番が逆になってしまいましたけど、貴女に伝えたいことが
あるんです」もう迷わない。
「さっき私は涙を流しました。でもそれは哀しかったからじゃない・・・
嬉しかったんです」この想いを伝えよう。
「私は・・・ずっと貴女のことが好きでした・・・貴女を・・・愛しているんです」
「玉青ちゃん・・・。ほんとに・・・私のこと許してくれるの?だって・・・
私・・・」
「私だって同じようなことをしましたよ?」
「私のこと・・・嫌いにならないでいてくれるの?」
「貴女を嫌いになるなんてできません。たとえ・・・貴女が望んだとしても」
「玉青ちゃん・・・」
「ねぇ、渚砂ちゃん。貴女の返事を聞かせてください」
「私は・・・この気持ちが玉青ちゃんと同じなのかわからない。でも・・・
玉青ちゃんへの『好き』は・・・静馬様や千代ちゃんへの『好き』とは違う。
私は・・・玉青ちゃんのこと考えるとなんだかドキドキする。玉青ちゃんといると
それだけで幸せな気持ちになれる。玉青ちゃんが傍にいないと・・・
すごく・・・辛いよ」
「渚砂ちゃん・・・。きっと・・・二人の気持ちは同じですよ」
「玉青ちゃん・・・。あ、あれ?」
「渚砂ちゃん?」
「あれ、おかしいな・・・私ね、すごく嬉しいの、嬉しいはずなのに・・・」
渚砂ちゃんの頬を流れる熱いものが・・・。
「ね?嬉しくても涙は流れるんです」
「うん。そうだね・・・そうだね・・・」
渚砂ちゃんの体を抱きしめて、頭を撫でる。
「憶えてますか?前にこの場所でこうしてくれたこと。こうしていますから。
貴女が落ち着くまで・・・ずっと・・・ずっと・・・」
空を見上げると月が滲んで見えた。でも・・・今の私には・・・それが・・・
とても綺麗だと・・・そう思えた。
553 :
名無しさん@ピンキー:
「・・・もう朝でしょうか?」すぐ隣には渚砂ちゃんが。あれから・・・
一緒に寝たんでしたね。そっと唇をなぞる。
「夢じゃ・・・なかったんですよね」昨夜、私達は・・・。
「ん・・・」
「渚砂ちゃん。おはよう」
「あ、おはよう、玉青ちゃん・・・。あのさ・・・昨夜のことって・・・
夢じゃないんだよね?」そう言って唇をなぞる。同じことを思って
いたんでしょうか?
「ええ、もちろんですよ」
「・・・・・・うわぁっ!」渚砂ちゃんは布団を被ってしまいました・・・。
「あの・・・渚砂ちゃん?」はっきりわかる。声が震えているのが・・・。
そんなことって・・・。
「あの・・・昨夜のことなんだけど・・・ね」
「は、はい・・・」震えが止まらない・・・。
「昨夜のこと思い出したら・・・恥ずかしくて・・・玉青ちゃんの顔、
見れないよ・・・」
「・・・・・・はい?」えーと、それは・・・つまり・・・拒絶された
わけではなくて・・・。ほっとすると同時に悪戯心が沸き起こる。
「渚砂ちゃん、こっちを見て。どうか、その恥じらいで真っ赤に染まった
可愛いお顔を見せてください」
「・・・やだ!」
「でも、そろそろ起きないと朝ごはんに間に合いませんよ?」
「うー。・・・玉青ちゃんの意地悪」
「おはよう。渚砂、玉青」
食堂に向かう途中で静馬様に声をかけられました。
「「おはようございます」」
「昨日はお疲れ様。あなた達の評判も良かったみたいよ。・・・あら?」
「静馬様?」
「そう・・・。おめでとう、でいいのかしら?」もしかして?
「あ、ありがとうございます」
そのまま静馬様は行ってしまった。
「二人ともどうしたの?」
「気付いていたみたいです。私達のこと」
「ええっ!?どうして・・・」
「さあそこまでは?・・・あっ」
目線を下に向けると・・・気がつきませんでしたけど、いつの間にか
手を繋いでいたんですね。思わず離してしまいましたけど。
もっと繋いでいたかった・・・。
「ねえ、玉青ちゃん。もう一回、手、繋いでもいい?」
「は、はい、もちろんです!」