378 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/30(月) 00:46:54 ID:tcrGxH08
リリカルなのはStep
第8話 c part
真っ青な大空をとても大きな影が嵐のように横切った。
一瞬訪れる闇。
瞬き一つの時間の中、わたしの行動はそれよりも速い。
「ディバインシューターテンペスト!」
生み出される十の星の光。
まだまだ完全に制御は出来ないこれだけど、でも相手の動きを崩すくらいなら十分できる。
「いくよ、レイジングハート!」
『All right』
狙いはただ一つ。
太陽が顔を出し、眩しさに目を細める。
目詰めたその遥か先、風を切り裂く黒い翼。
元の姿は多分カラスのはずだけど、ここまで大きくゴテゴテついていると怪獣にしか見えない。
「シューーート!!」
掛け声と共にスタートを切る。五つは前に、残りは二手に分けて回り込ませるように。
複雑な制御。それはわたしにとって大きな隙になる。
降り注ぐ光を相手は体の大きさには不釣合いなくらいのスピードで次々に避けていく。
『Master,right control is rate』
レイジングハートの声に慌てて止まりかけていたシューターを加速させる。
やっぱり難しい。これじゃまだまだだよ。
「でも――!」
残りはまだ大丈夫! 上下左右にもう包囲はできてるんだから!
「いっけーー!」
飛び交う光の嵐は絶対に当たる。これだけの数をかわせるなんてできっこない。
それでも――
「っ! そんなっ!?」
鳥が天高く進路を曲げた。僅かにあいた空間は本当ならさっきの二つが埋めるところ。
こっちもすぐに全部を追わせる。でも相手が速い――速すぎる!
太陽を背に大きく宙返り、いきなり急降下。すれ違いざまシューターのいくつかが翼に一撃に砕け散った。
とてもじゃないけどそこまでの速さは反則だ。
お返しとばかりに大口を開けてわたしに突っ込んでくる黒。
無理が祟ってしまった。シューターを戻しても間に合わない。フラッシュムーブだってこの大きさじゃ避けきれない。
このままじゃ――!
「やられないよ!!」
『Remote flier』
耳に飛び込む甲高い声。
軽くなる体はわたしを支えてくれるあの子の魔法のおかげ。
『Flash move』
発動される緊急回避魔法。
ぶれる景色に体を押す風。目で追いきれない速度の中、翼はわたしを捕えられずただ空を切った。
いつもの倍以上の距離を、いつも以上の速さで移動。わたしだけじゃ絶対にできない、あの子がいてくれたからできる魔法。
背中から生えている空みたいな青い翼。
鳥のような柔らかな翼じゃない、戦闘機みたいな鋭く尖った翼の主。
「ありがとう、すずかちゃん!」
振り向いた先にいる魔法使いにわたしは大きく声で応えた。
「うん!」
笑顔で頷いてくれたのはわたしの大切な友達だ。
ちょっと無理しても、フォローしてくれる。背中を守ってくれる人がいるからわたしは十分に戦える。
「レイジングハート! このままいくよ!」
『All right』
「残弾五つ! これで!!」
一転、上昇してくる黒鳥に向けて残った全部を突撃!
それでも相手は身を捩って綺麗に全部かわして見せる。ほんとに反則。
「だったら――」
構えて、狙い定めて
「ディバイーーンバスターーーッ!」
ドンッ! と発射するはわたしの次に得意な主砲。
真っ直ぐに、風の中を鳥目掛けて突き進む。でも相手にとってこれほど避けやすいものは無いはずだ。
案の定、横へ飛んであっさりかわされてしまった。
「でもね!」
わたしの「だったら」は
それじゃない!
『Counter presser』
「隙ありっ! でくの坊!!」
ディバインバスターが地面にぶつかる音と、鳥が炎に包まれたのは完全に同時!
最初の爆発音が轟いた後も、二発、三発と全部で五発の爆音が鳥の姿を煙の中へ押し込んだ。
「なのはばっかに気を取られてた罰よ!!」
「アリサちゃん!」
「あんまりバラバラに飛ばさないでよね。弾き返すこっちは苦労するんだから」
憎まれ口でも満面の笑み。
わたしも親指を立てて笑って見せた。
ディバインバスターを撃つと同時に制御を解いたシューターは普通なら明後日の方向に飛んでいくだけだけど。
今は違う。それを弾き返して攻撃に使って、援護してくれる子がいることをわたしは知っている。
「続けて行くわよ!」
『Please don't hit mate earnestly』
「しないわよ!!」
少し拗ねながら突き出した左腕に茜色。炎みたいに揺らめくそれを右腕の杖で
「スプラッシュ! バーストッ!!」
物凄い勢いで振りぬき発射!
ぐいんと、大きく曲がりながら目指すは煙の向こうの鳥。
「なのは! すずか! ちゃんと防ぎなさいよ!」
もしかしてまたあれをする気なの!?
慌ててわたしも、後ろを飛んでいたすずかちゃんもプロテクション!
「吹っ飛べ!!」
『Slug shower』
アリサちゃんが自分の弾丸目掛け腕を突き出し、拳を思いっきり握れば弾丸は大きな音を残して爆発する。
そこから生まれたのは物凄い数の光の雨。
ちょうど煙の中から飛び出した鳥はきっとすごく驚いている。
だってあんなに隙間無く敷き詰められれば絶対に避けられないんだから!
「うっひゃ!」
炸裂する魔法の威力は大したこと無いかもしれない。
だけど塵も積もれば山になるって諺があるように、体全体にあれだけ魔法浴びれば平気なわけが無い。
大雨が屋根を叩くようにプロテクションを騒がすとばっちりさえなければもっといいんだけどね……。
「もーう! もう少し手加減してよアリサちゃん!!」
「ちゃんと防げたんだから万事良しよ! それよりもなのは!!」
「うん! 準備はいいよね、すずかちゃん!」
「もちろん!」
起動させるはドライブモード――。
『Sialing mode』
『Grand position』
『Saver style』
高まる魔力、漲る力――。
『Stand by』
心に描く、魔法の呪文――!!
「リリカルマジカル!!」
「Higher! Faster! Stronger!!」
「風よ運べ! 想いと願い!!」
一つになる光――。
重なる声と心――!!
「ジュエルシード! 封っ印!!」
満ち溢れるは……星の輝き――!!
* * *
(それにしてもよ……)
黒板に次々並ぶ文字をノートに書き写しながらアタシはなのはとすずかに話しかける。
といっても、声に出すわけでなくアタシたち魔法使いの特権とも言うべき会話方法。
(どうしたのアリサちゃん?)
(今授業中だよ)
この念話というテレパシーみたいな魔法は携帯の意味がなくなるくらいに手軽で、実に便利。
(ほんとに協力しなかったのか馬鹿に思えるくらいの手ごたえだったじゃない、さっきの)
さっきの戦いを思い返しながらアタシは改めて力を合わせるということの大事さを感じてるわけで。
(でも強かったよ。わたしの射撃みんな避けられたし)
(そうだよアリサちゃん。私の捕獲魔法も全然役に立たなかったんだよ)
なのはの言い分に同調するすずか。
うん、最もだと思う。別にアタシが言いたいのは敵のどうこうじゃなくて。
(それでも勝てたのよ。それってすっごいことだとおもわない?)
多分、誰か一人だけだったら本当に手も足も出なくやられていた敵。
圧倒的不利な状況を覆すことができたこと。その原動力となったのは他でもない
(チームワークがあればアタシたちに不可能はない!)
三人で力合わせてぶつかればどんなことだって乗り越えられる。
アタシにとって今日の戦いほどこのことを強く思ったことはない。
(そ、そうかな?)
(当たり前でしょうが。それともなのはは不可能があるとでも思ってるの?)
(今のところはないんだけど……)
(流石に無敵ってのは言い過ぎな気が……)
二人とも慎重派なのか返事に詰まっていたりする。
ああもう、ノリが悪いわね……。
(つまりアタシたちはこれからもチームとしてやっていくわけ)
(うん、そう決めたしね)
(そういうわけでチームとしてやっていくにあたっていくつか足りないものがあるわけよ)
(足りないもの?)
そう、古今東西古来からこういうチームに絶対に必要で、なくっちゃいけない誓約。
魔法少女隊を結成してからというものアタシたちにはそれが完璧に欠けている。
絶妙なコンビネーションを出来るまで成長してるんだから、肝心のしまりがないままじゃどうにもこうにも物足りない。
(いい二人とも? こういう同じ志を持つもの同士が協力し合う上で大切なものって何だと思う?)
(いきなり言われても……)
(ええっと……)
口ごもるなんて……。そんなに思いつかないわけ?
ここは即答でしょ、即答!
(喧嘩しないで仲良くする……?)
(強力なバックアップ……?)
(No!)
確かにそれも歩けど点数としては三十点ってところ。
何より大事なのは――!
(チームの名前と決め台詞!)
……。
…………。
………………。
(……ふぇ?)
気の抜けた返事が返ってきた。
というか、何今の沈黙は。
気になってなのはとすずかの方をちらっと見るとなんだか物凄く呆れられているような、ぽかーんとした顔になっている。
重要なことだと思っていたらしょうもないことで呆気に取られてます。
そう顔が訴えているような……。
(二人ともわかってるの!? アタシたちはいわゆる戦隊! 魔法少女レンジャーなのよ!)
(魔法少女……)
(レンジャー……)
なんだか思いっきり引かれているんだけど……。
(だって名前なら海鳴魔法少女隊って)
(仮称よ!)
(決め台詞って誰に)
(備えあれば憂いなし!というかヒーローの宿命!)
(わたしは別にそんなことしなくても)
(モチベーションがぐんと上がるわ! やる気イコール魔法のパワー!)
この町を守るんだからそれぐらいのスケールがなきゃ絶対駄目。
(遊びじゃないんだからこそ、こゆこと決めてもっと団結しなきゃ駄目だと思う)
(う〜ん……そう言われればそうだよね)
(この事件が終わるまで私たちが頑張らなきゃいけないんだよね)
きっと言葉で話していたなら二人は頷いているんだと思う。
そんなニュアンスな答えにアタシも改めて自分の言葉に頷いて。
(そういうわけでいい案ない?)
(えっ、アリサちゃんが考えてるんじゃないの?)
(こういうことはみんなで決めるのが得策でしょ)
実際、なのはの言う通りだったら発表してる。
どうにもアタシ一人だけではピッタリな名前も台詞も浮かばないわけで……。
言いだしっぺのくせして恥ずかしいったらありゃしない。
(そ、そういうわけでランチタイムに決めるんだからね!)
ちょうど良く予鈴が鳴った。
先生に礼をして昼休みが始まる。
「さぁ、ぼやぼやしてる暇はないわよ! 二人とも!」
カバンからお弁当箱を取り出して席を立つ。
そのままズカズカ教室から足早に出てってアタシは一路屋上に向けて走り出した。
後ろから聞こえる二人の声。きっと慌てているに違いない。
「でも 今更止まれないでしょ?」
真っ赤な顔を笑われたくないから。そしたら情けないでしょ?
一応、これだけは決めてるんだから。威厳だけは守らないとね。
「アタシはみんなの」
――リーダーになってやるんだから。
* * *
お弁当を食べながらこんなに頭を動かすなんて滅多にしない。
と言うよりも多分今日が始めて。
「思いつかないわね……」
「うん……なんかピッタリの名前ってないよね」
眉間にしわを寄せるアリサちゃんに苦笑いのなのはちゃん。
私も私で……
「やっぱり海鳴魔法少女隊がいいんじゃないかな?」
一番最初の名前を候補にしていて。
「それにしたって……ねぇ。なにかストレートすぎて」
「カッコいい名前って思いつかないよね」
「可愛いな名前でもイメージには合わない気がするし」
ちょっとの間、空を見上げて
「はぁ……」
三人一緒にため息。
多分が大人が見たら何真剣に考えてるんだと呆れられるんだろうな。
やっぱり私たちは子供だなぁとしみじみ思ってしまったり。
でもこういうことに拘ってしまうのは止められなくて。
楽しくて……嬉しい。
「じゃあわたしたち三人だから海鳴三銃――」
「フェイトが入ったらどうするのよ」
「えと……それじゃあ海鳴四葉――」
「漢字だらけだと硬いから却下」
「まだ全部言ってないよー」
なのはちゃん……私もそれなんとなく駄目だと思う。
「頭に地名つければいいってもんじゃないのよ」
「でもわたしたちの町なんだし」
「安直過ぎるのは問題なのよ。少しは凝りなさい」
そう、多少は捻らないと盛り上がらない。
私たち魔導師に合って、SFな雰囲気を組み合わせた感じの名前が一番。
「マジックストライカーなんてどうかな、アリサちゃん」
「……候補に挙がるわね」
腕組みしながら何度か頷いて、アリサちゃんに受けが良かったみたい。
なのはちゃんはというと悔しそうに卵焼きにかぶりついている。
「でも何か足りないのよね……なんかしっくり来ないのよ」
釈然としない、そう言いたげにご飯を一口食べる。
「じゃあリリカル魔法隊とか!」
「なのは……」
「なに?」
「ごめんね、ダサい」
容赦ないな……アリサちゃん。
「ひ、酷いよ! わたし一生懸命に考えてるんだから!」
「秘境探検隊とか遭難救助隊じゃないんだから」
「じゃあアリサちゃんは考えてるんでしょ?」
「ま、まぁ……ね」
突然、上ずった声でアリサちゃんが胸を張る。
「聞きなさい、アタシの考えた名前は」
「名前は?」
「なまえ……は」
人差し指を立てたままアリサちゃんは固まっていく。
…………。
「なま……えは……」
今度は搾り出すような途切れ途切れの声。
アリサちゃん……考えてないなら素直に言おうよ。
「ええと……ねぇ」
「もちろんあるんだよね? わたしのよりもずっとかっこよくて立派なの」
「あ、当たり前でしょう」
「じゃあ……」
形勢逆転だった。
アリサちゃんが何も考えてないことを悟ったなのはちゃんの反撃は的確にアリサちゃんの痛いところをついている。
射撃が得意ってこういう所でも役に立つんだね。
「そうよ! よく聞きなさいよ」
すぅ、っと深呼吸。どうやら土壇場で決められたみたい。
どんな名前なんだろう。
少しの期待を胸に私はアリサちゃんの口が開くのを待った。
「リリカル・ストライカーズ! これでどう!!」
「…………」
「…………」
「ふ、ふふ、あまりに格好良すぎて言葉も出ないみたいね」
「と、いうよりは」
「アリサちゃん、それってわたしとすずかちゃんのを組み合わせただけなんじゃ」
誰がどう聞いたってそうとしか思えないよ、うん。
「力を合わせたのよ! ほら、理にかなってる」
いいのかな……それで。
「確かに力を合わせてるの……かな?」
「そう……だね」
いいんだよね……多分。
「完璧よ! Perfect!!」
自信満々、誇らしげなアリサちゃんを横目に私はなのはちゃんと目を合わせた。
どちらからともなく苦笑いして、すぐに満面の笑顔になって。
なんだかんだでアリサちゃんが決めた私たちの魔導師としての名前。日常から非日常へ飛び込むための合言葉。
私たち海鳴魔法少女隊改め――
リリカル・ストライカーズ
こんなに間が空くなんて誰が予想しただろうか
自分も予想していなかった
すいません、最低1週間で1話はあげようと心がけてはいるんですが
モチベーションがあがらない日々が多々
次からはようやくなのはの周りの人たちを絡ませられるでしょう
>>640氏
いいからフェイトよ生きる希望を捨てるなと
ほんとこの子はけなげで(つД`)
>>さばかん氏
全部分からん……
しかし発売延期か、何もかもが懐かしい
>>396氏
はたしてすんなりアースラをジャックできるのか
いや、できないんでしょうねぇ
>>365(396氏)
エリオいいキャラだなぁ。
彼の母親が冷たい感じだったのは誰にでもそうだったのか、
ユーノに対してだけだったのか…。
フェイトのこれからの立ち位置や、強奪計画の行く末が楽しみです。
…上手くいかなきゃいかないで、サイオンの信用が得られないしなぁ。
ところで某番組を見てて、ユーノが黒い仮面と装束で仮装して
アースラ強奪を決行する妄想が、脳を支配しました。
一刻も早く正しい9話で浄化をry
私の名前は『ゼロ!』とかいってる人?
そう、その黒い人。
つまりフェイトは盲目になり足が不自由になると?
それはそれで・・・
(*゚∀゚)=3
>>389 ユーノ「ユーノ・スクライアの名において命じる!全力でアースラを明け渡せ!」
クロノ「総員全力で脱出だ!!」
こうですかわかりません><
「奴らを全力で逃がすんだ!」はさすが谷口だと思ったw
396 :
K:2006/11/02(木) 23:23:00 ID:TUbF3vZa
どうもお久しぶりです。Kです。リリステに出るのでその準備でバタバタして続きが書けませんでした。
リリステ前に取り合えず続きを。胸で色々やろうと思ってましたが、ひとまず見送りました。
では投下します。
397 :
K:2006/11/02(木) 23:23:37 ID:TUbF3vZa
鎌首をもたげるように動く勃起に視線を奪われながら、フェイトはゆっくりとベッドに横になった。
すぐにクロノが覆いかぶさって来る。髪を撫でて、額に口付けをして、頬を労わるように掌で包み、崩れそうな砂上の城を作るようにして愛撫をする。
攻める側から受ける側になった事で、フェイトの理性は幾らか冷静さを取り戻していたが、それが唐突な羞恥心に姿を変えて襲って来た。
彼のペニスを一切の躊躇も無く咥え込み、いやらしい言葉を続けて、唾液を流し、射精させた上に精液を全部飲み込んだ。その上、今は明かりがついている部屋で身体をすべて晒し、愛撫されている。
「くろのぉ……ぁあぁああ……!」
爆発寸前まで加速する心臓を、喉からひっきりなしに込み上げて来る嬌声が沈めてくれる。
髪や顔をなぞっていたクロノの指が身体全体に伸び、得られる快感のボルテージが一気に上昇して行く。頚動脈が外から見て分かるくらいの速度で脈動し、羞恥心と興奮で赤くなっている頬をさらに朱色に染めて行く。
クロノのペニスと同様にギンギンに勃起して、天井に向かって尖っている乳首。薄っすらとした色合いの乳輪は淡く、小ぶりだが形の良いバストを綺麗に見せている。
その胸を、クロノが緩慢な動作で撫でて行く。胸に顔を埋めるようにして片方の乳首を甘噛みして、空いている片方には手を伸ばして優しく、時には少しだけ乱暴に揉む。
「ふぁ……!? うっくっ……んんん〜〜〜〜!」
「……我慢しないで、声上げて」
胸の愛撫を止めずに、クロノ。耳をなぞり、震わせ、脳にまで響くような優しい声。
「やッ、ひんっ……だっ、て……はずかぁぁあッ……! はずかしい……よぉ……!」
「僕の精液を全部飲んでおいて、恥ずかしいは可笑しいよ」
「ふにゃ……!」
両手でクロノの頭を乱暴に抱える。眼を力一杯瞑れば、端から涙がこぼれ落ちた。
容赦無く襲って来る快感は電撃だった。些細な事でも、何かされる度に面白いように身体が反応する。唾液でぬるりとする乳首が打ち震え、もっと虐めて欲しいと無言で訴える。
「フェイト……胸、弱いの?」
「わか……んないよぉ……!」
「一人で……した事、無いのか?」
398 :
K:2006/11/02(木) 23:25:48 ID:TUbF3vZa
さっきのお返しなのか、そう訊くクロノの声音には喜悦が見え隠れしている。一度の射精で彼も良い意味で本腰を入れて来たのかどうなのか。もっとも、そんな事を気にしていられる程、今のフェイトには余裕など無かった。
恥ずかしさのあまりに汗が噴出して来た。白い胸が朱色に色づき、ゆっくりと十五歳の少女の身体を濡らして行く。
「なぁ……ない……んッ!」
「……友達と話して、興味とか出なかった?」
「でぇたぁ……ひぃ! けどぉ……! 分かんないぃ……!」
戻っていた理性が溶けて行く。瓦解ではない、白くなって行く頭と同じように姿を無くしつつあるのだ。その変化が羞恥心を薄くして行く。興奮した心臓が訳の分からない速度で跳ね上がっているのが分かった。鼓動が聞こえるのだ。
「……じゃあ、ここに触れた事も無い?」
腰や尻、腿を撫で回して楽しんでいた手が股間に伸び、薄い染みを作っていたショーツに触れた。その染みは秘丘一面に広がっており、水で濡らしたかのように見事に張り付いている。
湯気でも立っていそうな勢いで、ショーツの柔らかな繊維の下に隠された金色の茂みすら見えてしまった。
彼に触れられる事で、フェイトも自身の股の間が洪水状態になっている事を知った。そして、それが何を意味しているのかも瞬間的に悟った。
「なのにこんなに濡れてるのか?」
クロノが腰に裏に手を差し入れ、腰を持ち上げる。ころんと転がるような姿勢となったフェイトは、眼前に濡れた自分の股間を見た。さらに、その先にクロノの顔があった。
「―――!!!」
むず痒い秘所。煽られている羞恥心。ゾクゾクと知らない感情に犯される心。それらが、クロノに逆らう気力を根こそぎ奪って行く。死んでしまいたいくらい恥ずかしい格好をさせられて、股間を好きな人に晒しているというのに、
それすら喜悦と感じてしまう。
自虐的で被虐的な感覚。潤んだ瞳は興奮に染まり、心と身体を芯から震わせた。
淫汁でくっきりと露になっている割れ目に指が挟まり、焦らすように擦って刺激される。そう、焦らすように。決して早くはしない。下腹部の奥底は疼きっ放しになり、先程の射精のいやらしい熱さを思い出させた。
嫌だ、もっと強くして欲しい。もっともっと激しく擦って欲しい。その指を中に入れて、グチャグチャと音を出して掻き回して欲しい。
痺れる頭でそんな事をもうろく気味に考えていた時、震える秘丘に吐息が吹きかけられた。さらに乳首のように硬くなったクリトリスに剥かれ、軽く指の腹で擦られる。
「ひゃぁぁぁぁあ!?」
激しい電撃に犯されて思考が止まる。なのに、フェイトは無意識に腰に力を入れた。
クロノの指に押し付けるようにして、痙攣する細い腰を振り乱す。胸に浮かんでいた玉のような汗が流れ落ち、喉に溜まって行く。
被虐心がクロノに速度上昇を求めて喘ぎ声を上げさせた。
「にゃあぁ、にッ……!? ひ、ひぃあ!」
「……声……出せるじゃないか」
「だぁ……! だぁってぇ……! あぅああああ……!」
恥らって股を閉じるなんてとんでもないと言わんばかりに、フェイトは天井に向けて股を広げ、淫液を流す秘所をクロノの顔へ押し付ける。
刺激が弱い。抱えるように腰に腕を回して宙吊りのような姿勢のせいで、腰を動かすにも限度がある。これでは被虐的な陶酔に浸る事はおろか、満足に快感も得られない。
ゾクゾクという気持ちは先程から胸を一杯にしているのに、それ以上が無い。これでは生殺しも同じだ。
獲物を前に我慢し切れずに涎を垂らす肉食獣のように、フェイトは唇から糸のような唾液をこぼした。眼はどこを向いているのか分からず、焦点が合わない。
下卑と言っても良い被虐的な笑みは妖艶という言葉を通り過ぎていた。
頬から流れ落ちて枕に染みを作る。そしてそれは徐々に広がって行く。
399 :
K:2006/11/02(木) 23:27:01 ID:TUbF3vZa
「くろ、のぉ! く……ろ、ひゃああがあ……のぉ!」
これが達するという事なのか。
イクという事なのか。
「いいよ、フェイト。イって」
「イ、ク……!?」
愛しむように優しかった指が、次の瞬間、乱暴なまでの速度でクリトリスを刺激し、割れ目を擦る。
待ち焦がれた刺激だった。懇願したかった快楽のはずだった。だが、あまりにもそれは強烈過ぎた。
さならが溶岩のような灼熱の快楽が脳を蹂躙した。まったく予期していなかった。そもそも、絶頂を知らない十五歳の少女に備えなど出来るはずがなかった。
「いぎぃ!? ひっ、ひぁぁぁぁぁああああああああああッ!」
重い衝撃が下腹部を直撃する。ややあって、フェイトは初めての絶頂を迎えた。
ぴしゃりと水が弾けるような音がして、ショーツの染みが一気に広がる。ショーツが無ければ飛沫の一つでも上がっていた事だろう。だが、淫液の量は処女とは思えない程に多い。
質の良い繊維でも吸収し切れなかったぐらいで、粘り気のある液体が一筋の線を作り、陰部から腹へ流れて行く。
腰がビクンビクンと昆虫を思わせるような痙攣を繰り返し、全身に浮かぶ汗を辺りに降り散らした。
「かぁ……は……ぁぁぁああああ……」
身体のどこにも力が入らない。白目をむく勢いでフェイトは初絶頂の余韻に浸り、腰をひたすらに揺らす。
雛鳥でも扱うかのような慎重さで、クロノがフェイトの下半身をベッドに横たえた。尚も十五歳の少女の身体は震えている。
フェイトは恍惚とした表情を天井に向け、何も考えられずに腹の奥にある熱を感じた。ようやく余韻の身震いも静まりを見せて来る。
その時、クロノが細い腰骨に触れる。
「落ち着いた?」
首を捻ってクロノを見詰める。
「……うん……」
会話はそれだけだった。まともな言葉など何も浮かんでこない。相変わらず頭の中は真っ白なままだ。
クロノもそれは分かっているのだろう。腰骨に這わせた指を頬に移して、子犬を撫でるかのように優しく愛撫する。
眼を細め、彼の指に身を任せようとした時、不意にそれが視界に入った。
「―――」
クロノに腰を抱かれて、恥ずかしい格好で腰を震わされていた時からずっと押し付けられていた熱い肉の棒。
指一本動かすのもしんどいと思う中、フェイトは自身に鞭を入れて肉の棒――勃起したクロノのペニスを握った。
小さな掌の中で震えるそれが、どういう訳か健気に見えた。
「……可愛い……」
「か、可愛いって……」
見たままの感想だったのだが、クロノはショックを受けたように項垂れた。別に小さいとかそういった意味で言った訳ではなかったのだが、どうやら彼にはそんなニュアンスで伝わってしまったようだ。
否定しようとしたものの、頭の中は完全にまどろんでいて、何をするのも億劫だった。
「……くろの」
だから単刀直入に告げる。
「下さい」
「………」
「私の初めてを……貰って下さい」
「………」
「クロノの二回目を……下さい」
長いような、短いような、そんな沈黙の後、彼は小さく笑って頷いた。
400 :
K:2006/11/02(木) 23:29:04 ID:TUbF3vZa
ちょっと短いですが、ここまで。次回でやっと挿入でございます。何かエイミィの事忘れてないかクロノと言わんばかりのエロノ。
今度は時間空かないように注意します。
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!!
イベント開始12時間前にキタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !
ごっそうさんす!
403 :
さばかん:2006/11/03(金) 22:47:18 ID:lkHNjGgq
こんにちはです。メガマガ読みました、なのはとヴィータすっかり戦友ですね。
では、前回のパロディーの答え。
ひぐらし→「ブロッコリーとカリフラワーどっちが緑色?」
アパートの鍵貸します→トランプの勝負
ハルヒ→瑣末な問題に過ぎない。
おとぎ銃士赤ずきん→肉じゃが屋
錬金3級まじかるぽか〜ん→ふつー
少女セクト2→ポール・アンカのダイアナ
アパートの鍵貸します(映画)は分かりにくかったですよね、すみません。
今回の話はちょいと暗いです。
いびきが子守唄になる程、二人は一緒にいる。
と言っても、彼がいびきをかくのは相当疲れた時だけで、
普段は小動物の心拍のような静けさで夜を過ごす。
『今日は眠れないものと思え』
そう言った彼だったが、結果的には5時間位で、彼の
方がくたびれてしまったのだ。
空は薄暗くも無い。
適当に借りた高層マンション、朝日はまだ見えない。
四時は相当微妙な時間で、少し眺めた夜空は夜の7時と大差無い。
もうすぐ朝日がおがめそうだったけど、多分無理。
私の頭は、ユーノとのセックスで体だけでなく、頭もぼ〜っとしてしまっていた。
寝足り無い体に性の快楽、副交感神経の刺激。
寝酒より馴染んだ睡眠導入に私は、目を閉じてベッドの中、ユーノをきゅっと
抱き締め、おやすみなさいと時間の狂った呪文を言った。
裸で寝るベッドは想像以上に暖かい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フェイト。
僕の、大切な、人。
抱き締めてもだきしめても湧く情愛。
君との出逢いは思いだせば吐瀉(としゃ)物を撒き散らしてしまい
そうな程に刺激的だったね。
でも、いいんだ。
ずっぱい味が口に残るように、手に残る様々な感触が、確かに、僕らの
きずな。
僕達の出逢い。それは、大切な二人の死だった。
孤児院にいた僕は代々魔導師を受け継ぐグレアムさんの家に
養子に貰われる。
そこで出逢った双子の姉妹、フェイトとアリシア。
僕の初恋だった。
そして、僕の初恋の二人は、今、
「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
魔法の鍛錬を積む道場は今や、ただの水たまりだった。
しかもそいつは朱くて、僕の全身を染めている。
見渡した水たまりに彼女達のどちらかの眼と髪。
死んだ。たった一つの事象に、頭の一部がどうにかなりそうになる僕に、冷静な、いや、
冷酷の声が響く。
「落ち着けユーノ。彼女達はまだ死んじゃいない」
「何を言ってるんだクロノ!これの何処が死んでいないだ!?・・・彼女達、達ってなんだ!」
襟首をつかんだ腕を払いながら、クロノは答える。もう一人の人物グレアムは何か道具を色々
と準備していた。冷静に、いや、冷酷に。
「二人共眠らせて魔法でバラバラにした。それだけの話さ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
教えて欲しい、これは現実?あまりにあっさりした味で、美味くコメントできない美食家の
気分を味わっている。
拍子抜けした僕は滑って、地の池に仰向けでダイブした。
出るのは疑問と涙。怒りならさっき、泳いで逃げていった。恐らく近いうち戻ってくる。
突然、不思議な光景が僕の眼に飛び込んできた。
水たまりが、まるで磁石に吸い付く砂鉄のように忙しなく、クロノが手を上げた上に集まる。
形成された丸い球体の所々に浮く肉片が気持ち悪い。
「・・・・・・・何?」
考える事を放棄している僕はそう呟くだけで何も予想していなかった。
「使い魔さ」
じいさんの声が響く。そして冷酷に、どいつもこいつも同じ雰囲気。
「使い魔は本来、魔力消費を抑える為に小動物を媒体にするのが基本だ。だが、
体の弱いものが魔導師の場合、使い魔に魔力消費の殆どをつぎ込み、戦わせる
方法がある。クロノが今やろうとしているのはまさにそれさ。
フェイトとアリシアを殺して一つにする。これがどういう意味を持つか分かるかい?
双子というのは不思議なものさ。同じなのに同じじゃない。我々魔導師はその
双子を利用した使い魔を行使する事があるのだが、それがとても優れていてね・・・」
「もういい」
発生した魔法陣の光が数刻、その間に血の塊は人の形を形成する。
それがどんどん人になり、馴染んだ顔が眠り顔でクロノの腕の中にいた。
優しく語り掛けてクロノは女の子を起こした。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、」
もうそれ以外口に出せなかった。
「さあ、出ようか」
道場の扉を閉めて、冷静になった僕はグレアムさんに訊ねた。
「二人を残して、何故出て行かなくちゃならないんですか?」
彼女達を殺したのはどちらか知らないが、止めなかったのだから
同罪に等しい。臆病な怒りは少しずつ僕の中に体を戻しはじめる。
「使い魔はね、それをつくった人が必ずしも主になるとは限らない。
自分の使い魔にするためには、それなりの事をしなければならない。
その方法は様々だが、『繋がっている』という認識を互いにそう思わせる
事、それが使い魔と主の絆のつくりかたさ。
で、異性の場合。『繋がる』と認識させる手っ取り早い方法がある、
有体(ありてい)に言えば、性行為さ」
「っ!!!」
ぎりっと大きな歯軋りが響く。
すたすたと早足で、グレアムを置いていく程のスピードで歩く。
「ゆ、ユーノくん!話はまだ終わっていない。」
無言。
何故か、涙はもう出なかった。あの、使い魔の顔を見たら不思議と涙が止まった。
陳腐(ちんぷ)な表現をするなら天使のよう。
全裸だった彼女の体を、僕は思い出して、体が反応していた。
・・・分かっている。彼女は彼女達ではない。・・・分からない、彼女達が好きだった
のか、それとも、彼女の体(見た目)が好きだったのか。
分からない、分からない。好きな人が死んで、殺されて、涙がもう出ないとはどういう
事だ。悲しくないとはどう言う事だ!!
達観しているとはとても思えない。都合の良い代替物があれば、どんなに
大切な人が死んでも悲しくない。僕の心を分析するなら、そんな所だろう。
分からない、分からない。だから、考えるのを止めた。
反応した体を沈めさせると、僕はさっきのグレアムの言葉を思い出した。
繋がる・・・性行為。
それは詰まり、あの二人が結ばれた、そう言う事だ。
「・・・くっそおぉおぉおぉ!!!!」
ドンとベッドを蹴る。怒りはこれっぽっちも収まらない。
どうせこれ以上暴れても収まらないと結論を出した僕はもう寝る事にした。
奴は、大切な人を、魔法の道具にして、男の道具にもした。
大切な彼女を、ダッチワイフ同然にしたっ!!
欲しかった、いや、欲しい、彼女の事が!
それを、奴は苦労もせず、手に入れる。・・・金持ちのイヤミは永遠に纏わりつく。
それよりももっと許せないのは、そんなクロノが羨ましいと反応している自身だった。
「こら、フェイト!たまごやきばっかり食べるな!栄養がかたよるだろ!!」
「えーえーやだやだーたまごやき大好きー!!」
やかましいのは二人だけ、僕とグレアムは朝食の活気を疎外する。
クロノが眠たそうなのは恐らく、昨日は彼女とたっぷり何かを話したからだろう。
眼の下のくまがなりよりの証拠だ。勿論話しただけではないだろう。そう、色々
よろしくしたんだろう。
それとは対称だったのがフェイト(魔力
資質を持っていたのはフェイトだけだったからこっちの名をとったらしい)
ですっかりクロノ大好き屋になってしまった。正直煩い。
「じゃあクロノにも分けてあげるからいいでしょ?」
「そんなに沢山食べたら早死にしてしまう」
「心配しなくても、クロノが死んだら私も死んであげる!!」
はいはいと会話を続けるクロノ。
その雰囲気に耐えかねた。僕とグレアムは居間から去っていった。
廊下で少し話しかけようとしたグレアムに僕は話しかけるなと威圧して
やり過ごす。
向かった先は、二人と一緒に遊んだ(過去形になってしまったのが悲しい)
金持ちの庭。詰まらない森の散歩も二人と一緒ならどこかの国を歩いている
新鮮さだったっけ。
木陰に寝転がる・・・フェイトとアリシア。二人には本当に色々と申し訳無かった。
彼女達が死ぬ少し前、僕は二人に好きと言って、二人の理解の無さに罵詈雑言を
吐いた。そして、「死ね」と、そう、言ってしまったのだ。
もっともっと申し訳無いのは、なんでだろう、悲しく無いんだ。
確かに、僕達の付き合いは何ヶ月しか無い。でも、時間じゃ無いんだ。
物語に出てくる人物の死に涙する事もある。それはその人物に思う所があったり
琴線に触れる何かがあった時。
そう、悲しいってのは時間の長さじゃない。それをどれだけ深く思うかだ。
だったら、足りないのは思い・・・。
「ゆうの〜〜〜〜っ!!!」
「うわっ!!」
慌てて身を起こすとそこに彼女が居た。
いや、違う。
「えっと、ユーノ・・・だよね?ごめん、記憶が曖昧でさ・・・」
「・・・・・・」
それなら知ってる。使い魔は死んだ前の記憶を纏めるのに時間が少し掛かるらしい。
「えっとね、クロノがユーノにも挨拶しなさいって」
「・・・・・・」
「それでね、何か色々話をしようかなって」
「・・・・・・」
「私ね、ユーノと仲良くなりたいな!」
「・・・・・・」
「ユーノの好きな事とか色々教、」
「気持ち悪い」
どすんと音を立てて彼女を押し倒すと馬乗りになり
フェイトの首を絞める。
「ぐっ・・・うっ、あ・・・」
「気持ち悪いんだよ!!二人と同じ顔をした血の人形が!!
魔法の道具が、ダッチワイフが!!!!
お前からは二人の暖かい匂いもシャンプーの香りもしない。
人形、お前からはいか臭いにおいしかしないんだよ!!!
人形ぶぜいが、人間様の、言葉を喋るんじゃ、ない!!!!!!!!!!!」
言葉を増やすごとに締付ける力を強くする。爪をたてた首筋から、血が滲む。
苦しむ彼女の表情・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・くっ、」
「ゆぅの・・・ゆ、の・・・」
強がりはもう限界だった。
ごめんね、フェイト、アリシア。彼女を、うらめないよ。
首から手を放し、彼女を抱き締めた。
「うわああああああああああああん!!!こめん、こめんね!!!」
「はっ、はっ、はぁっ・・・ユ、ユーノ?」
さっきの暴力と今の優しい抱擁・・・フェイトは困っていた。
僕の泣き顔に釣られたのか、それともさっきの恐怖でだろうか
僕とフェイトは抱きあいながら涙を流した。
「ユーノ、ごめんね」
泣きやんだ二人は、木陰で静かにお話。
「何で謝るの?悪いのは・・・僕なのに」
「私が何か失礼な事をしたから、ユーノは、その・・・
怒ったんだよね?」
フェイトはさっきの恐怖から言葉がスムーズでは無かった。
「ごめんね。理由は言えないんだ。
でも、はっきり言える事がある。もう二度と、こんなことはしない、
絶対だ!!」
にこっと笑って安心させようとする。
それにつられて、彼女も笑った。・・・本当にあの二人に似ている、いや、
彼女達そのものだったとさえ思える。
「うん!」
その蕩けそうになる程の笑顔・・・可愛いよぉ〜。
なでなで。
「う〜ん・・・くすぐったいよぉ〜」
にこにこ笑ってフェイトの頭を撫でていると、フェイトの首筋の傷が見えた。
もう殆ど傷など無いが、それでも、僕には僅かに見えた。
あまりにも愛しい彼女の首筋の傷にキスをする。
「うわっ!ゆ、ゆぅのぉ!!」
「ははははははは」
僕と彼女はすっかり打ち解けていた。これもフェイトのあったかいこころがあった
からだと思う。
彼女の優しさが、本当に救いだった。
「「おそい」」
僕とフェイトのユニゾンが響く。
夕飯の時間、それをつくりグレアムさんが、まだ来ていないのだ。
「お腹すいた〜クロノもまだ図書館にいるし・・・」
フェイトは机につっぷす。
それを微笑ましく思いつつ、言う。
「ちょっと見に行こうか。グレアムさん、寝てるかも知れないし」
「寝てたら罰として玉子焼き1年分をつくってもらおう!!」
「「おうおう〜」」
なんか僕と彼女って気が合うんじゃないか?
グレアムの部屋は暗く、星の瞬きさえない。
何の遠慮もしないで入ったのはフェイトだった。
「おじいさ〜ん、寝てるの?」
明かりをつけるとグレアムが布団を敷いて寝ていた。
「おきろおきろ〜」
何度も揺らすフェイトだったが、何故かグレアムさんは起きない。
「ねぇグレアムおじいちゃんおーきーてー」
おかしい。グレアムさんは早寝早起きが基本のじいさんで、昼寝をするにも
健康にいいからと30分位しか寝ないはず、なのに何故?
その疑問がとけるのは早かった。
布団の横、転がるゆのみと手紙・・・これが決定的・・・何か薬の袋らしきものを
発見した・・・その繋がりで僕は思わずぞっとした。
グレアムさんを見る・・・明らかに動いていない。
僕は黙ってグレアムの状態を確認した。
心拍・・・停止。呼吸・・・停止。瞳孔散大。素人判断であれ、生きている
可能性は限り無く低かった。
僕は徐に黒電話を回した。フェイトはまだ、グレアムさんを起こしていた。
彼は死んだ。
火葬は悲しいもので誰も来る事は無かった。
金持ちの遺産問題は通常骨肉の争いだが、彼はそもそも親戚もみな死に、
知り合いもこの山中に住んでいたので皆無だった。
加えて、彼はあらゆる宗教的な葬儀を嫌って火葬するだけにしてくれとも書いた。
なんでも彼はそうとうの坊主嫌いらしい。正直どうでもいい話だった。
遺書の内容はフェイトとアリシアを殺した事を悔やんだ内容だった。
それ以外は酷く簡素。
「ねぇ、どうしてグレアムおじいちゃんを燃やしちゃうの?おじいちゃん、どこも
ケガしてないよ?」
無垢は何よりも凶器。
火葬が完了するまで僕らは待合室にいた。
クロノが何かを話す。
「グレアムさんは、どうしても魔術の家系を絶やしたくなかったんだ。
それは、自分勝手な考え方でも無く、ただ、家の為だった。
今の世代には考えられないことかもしれないけど、それが、彼にとっての全てだった。
その昔、自由と言う言葉は無かった。自由と言う言葉は外国から伝わって来たもの。
それを福沢諭吉が伝えて日本にははじめて自由と言う概念が
生まれた。でもそれは言葉であって、その思想は彼らに浸透した訳ではない。かつての人たちは
個性ではなく、一つの大きな団体の一つを構成する小さなものだと言う考えが一般的だった。
それが良い悪いは知らないが、彼等にとっては本当にそれが全てだったんだ。グレアムさんが
家系を大切にしようって言うのはこう言う考え方があっての事。勿論、現代ではこんな考えは
許されない。個人は個人として尊敬されるそんな時代だからだ。でも、それが悪いと一方的に
言えるかどうかは、」
「うるさい」
立ち去る。
クロノの豆知識+弁解なんてただの騒音だ。
死んで当然の人間だった。僕はそう思う。
家?バカバカばかばかしい!!そんな言い訳、裁判官にさえ届かない。
じいさんの命ごときでフェイトとアリシアのそなえものにもなりはしない!
空を仰ぐ、火葬のモクモクが虚しく透明色。
彼の思想なんてこんなものさ。ただ消えるだけ。
火葬の待合室で貰った赤飯のおにぎり。
「グレアムさん、あんたが残せたものはね、結局、このおにぎりだけさ」
それをばくりと齧りゆっくりと噛み砕いた。
お前らはね、傲慢なんだよ。
つづく☆
赤いおにぎりだったら銀色とつながった。
こんにちは396です。せっかく書いてて楽しい展開まで来たのに
なかなか時間が取れなくて悶々としてます。今日は第九話行きます。
魔法少女リリカルなのはA's++
第九話 「最悪のミッション」
深夜2時。貨物船グランディアはその日の配達作業を終え、クラナガンから離れたとある岩場に停泊していた。
貨物船の側面には星に猫が乗った巨大な絵が描かれている。それがその運送会社の商標であった。
会社名はCAT.C(ケットシー)と言う。Cargo And Transportation . Company(貨物・輸送会社)の頭文字を取ったものだ。
一般の物資を運ぶ貨物船としての性質と、戦闘任務の軍艦に対して武器や弾薬を輸送する輸送船の二つの性質を併せ持つ
特殊な船で、民間にはあまり知られていなかった。乗組員兼社員が46名と小規模で、設立と組織を簡易化した
いわば有限会社のようなものであったことも起因している。
得意先の相手を一定とせず、依頼があればどんな場所でも危険を顧みず届けるので、時空管理局さえも利用することがあった。
誰もが嫌がる届け物を率先して預かることから、会社が小さいながらも次元間航行機能の搭載が認められていた。
しかし、いくつかの企業が信頼を寄せる中、この会社には公には出来ない裏の顔があった。
それは、武器・非合法薬物の密輸から密航、近年では直接的に強盗まで繰り返す犯罪集団としての一面である。
一部の人間に賄賂として大金を掴ませ、時には別の次元へと逃げることでその姿を隠してきた。
今までまったく尻尾を見せることなく犯罪行為を犯せたのは、どの人間を抱きこむか、
いつ何を狙うかという判断に長けた人間がいたからだ。
―――サイオン・ウイングロード。
歳は30半ば。がたいの良い体格、黒髪短髪と体育会系を思わせるが、船長でありながら会社の運営を一手に引き受けるなど
経営手腕は目を見張るものがある。
人事に関しては、下は20歳から上は50歳までの者ばかりを雇っていた。ミッドチルダでは珍しく平均年齢が高く、
その上誰もが職を一度失ったもの達である。
一味の団結力は強く、乗組員はそのすべてがサイオンを慕っていた。
人を見抜く力のあるサイオンのカリスマ性に惹かれているのかもしれない。
大胆な行動力、時には恐ろしく慎重な思考、そして柔軟な発想力。敵に回したくない部類の人間であることは確かだった。
ユーノは集めた情報を頭の中で整理しながら、先ほど立てた計画の再確認していた。
サイオンからこの件に関してデータとして残すことの一切を禁じられていたので、構想は頭の中だけだ。
アースラ奪取を命じられてから一週間。ユーノとエリオはサイオンから一室ずつ与えられていた。
作戦がどうなるにしろユーノとは連携を取らなければいけないし、時空管理局にずっと置いておくと情報を漏らす恐れもある。
そう考えたサイオンが不定期にでも船に立ち寄ることを義務付けたのだった。
しかし、ユーノは毎日船の所在をこまめに確認し、一日おきに深夜にこっそりとグランディアに訪れていた。
スクライア一族の側にいてあげたいという想いと、相手の情報を少しでも多く集めるためだった。
計画について考えているときはエリオとは会わないようにしているのは、一人の方が集中できるからだ。
部屋に一人とはいえ、目に見える形で監視がついていないというのは想像以上のプレッシャーをユーノに与えていた。
ここはもちろん敵の船内であるし、時空管理局内でも気は抜けなかった。
エリオを無限書庫まで招いた、時空管理局にいると言われている内通者の存在が常にユーノの行動を制限していた。
言われた通りの時間に行くとゲートが開けられていた、とエリオが言っていたのでおそらく司書の中の一人だと思われるが、
一人とは限らない。アースラ内にいる可能性も否定できない。
その人物の前で隠れて何か伝えようものなら一族の誰かが死ぬ。たぶん、サイオンはなんのためらいもなく殺すだろう。
人質は28名いるのだ。一人くらい欠けても人質としての価値は下がらない。
一度深い息を吐いた後ユーノは部屋を出た。
まずはとなりの部屋の前に立ち、数回ノックする。
「エリオ、行くよ」
数十秒の間があり、もう一度ノックしようとした瞬間扉が開いた。
「ごめん…」
扉を開けたエリオは髪に寝癖がついていて服も少し乱れていた。おそらく寝ていたのだろう。
エリオは歩きながらユーノにまかせっきりな上に寝てしまったことで申し訳なさそうにしていたが、
ユーノは別にそれについて咎めることはしなかった。
むしろエリオには必要最低限の手伝いしかさせるつもりはない。余計な責任を負わせたくなかったからだ。
二人は住居スペースである3階をどんどん進み、比較的清掃の行き届いた通路までやってくると、数メートル先に
見張りが一人立っている部屋まで進んだ。
「今日は取引にきました」
ユーノが見張りの男にそう告げると、その男は無言で部屋を見詰めた後扉を開けた。
中の人物と念話で会話をしたようだ。
ユーノとエリオが中に入ると、大きな黒いソファに座ってサイオンが出迎えた。
「こんな夜更けにどうした?寝首でも掻きにきたか?」
にやりとしながらサイオンは前かがみに手を組んだ。
「まさか…。あなたを殺せば一族が死ぬんでしょう?」
無表情にそう言うユーノに、サイオンはぴくりと眉毛を上げた。
「なぜ、そう思う?」
「なぜって…誰だってそれぐらいの保険はかけると思っただけですよ」
鋭い眼つきで聞き返すサイオンにユーノは少し笑いながら言った。
決して余裕があるわけでも、挑発するつもりがあったわけでもないが、不思議とユーノは唇の端を上げていた。
疲れているからだろうか。気分が変に高揚していた。
(仕組みについてはまだわかっていない…か)
ユーノの様子を見ながらサイオンは思考を巡らした。
サイオンが死ねば首輪が起爆するように設定されているのは事実だが、首輪自体がそれを判断するわけではない。
人質の監視やサイオンの様々な状況に応じた高い判断能力を備えるには、首輪を管理する知能をもった装置がいる。
急にポケットの中のデバイスに触れたい衝動に駆られたが、なんとか抑えた。それが相手の狙いかもしれない。
それにしても、いざというときに牽制するために言ってやろうと思っていたことを向こうから言われて多少動揺した。
「ふん。まぁいい。それで、何か報告することはあるのか?」
サイオンが無駄な考えをやめユーノに聞いた。
ユーノはちらりと横にいるエリオに目を向けると、エリオもそれに気付いて目を合わせた。
これから言うことをよく聞いて欲しいというユーノの合図だ。
「とりあえず、アースラを奪う具体的な計画を立てました」
「ほう」
サイオンが足を組んで面白そうにユーノを見た。
「まず、一応確認しておきますが、アースラを動かすことはできますよね?」
「それは問題ない。あるルートからアースラと同型の戦艦のマニュアルは入手してある。クルーの訓練も数ヶ月前から行っている」
ユーノの問いかけにサイオンは頷いて答えた。
「では説明します。まず、アースラを白兵戦で奪うことは不可能です。
向こうにはS級のエースが数人いますし、援軍の存在もあります。
そこで、アースラとグランディアに乗っている人間をそれぞれそっくり交換します」
そこまで言うとユーノは眼鏡を指で押し上げた。
「僕がアースラの艦内全域にあらかじめ転移魔法陣を敷きます。同様にグランディアにも同じ魔法陣を敷きます。
二つの魔法陣は対であり、術が発動すれば対人に限り入れ替えることができます。
アースラクルーの方が人数が多いですが、余った人間は位相空間がずれない場所、
つまりグランディア船内の何も無い位置に出ることになります。
もちろん、一族にはグランディアの方に残ってもらいますが」
ユーノがそこまで言うとサイオンが疑問をぶつけた。
「それはかまわない。だが、アースラ艦内ではイレギュラーな魔法はキャンセルされるシステムになっているはずだが?」
確かにアースラの中では、攻撃魔法やアースラのシステムが異常と判断した魔法にはAMF(アンチマギリングフィールド)が
発生するようになっていた。これは高度の戦艦にはたいてい取り付けられている装置である。
ユーノもこの質問は予想通りだったのですぐに答えた。
「転移魔法陣はアースラにあらかじめ設置するいくつかの装置で術式を完成させます。
それらは発動時まではただの物として判断されるので問題はありません。
計画実行時には僕がアースラをハッキングし、一時的にシステムをダウンさせます」
それを聞いてサイオンは少し笑った。
「またずいぶんな自信だな」
「そのための残り三週間ですから」
ユーノは目線をそらさずじっとサイオンを見ながら言った。
サイオンも負けじとユーノを見据えながら質問を続けた。
「首輪を遠隔で開錠するためにはある程度距離が近くないと駄目だな。その距離はおって伝える。
だが、もしアースラの連中がこの船を使って追ってきたらどうするつもりだ?」
「転移魔法陣は2つの巨大な魔法を同時に発動させるので膨大なエネルギーを必要とします。
そのエネルギーはグランディアの全エネルギーでまかなうつもりです。
あと、こちらの通信装置をあらかじめ破壊しておけば援軍がくるのを数時間は防ぐことができます」
「つまり、やつらは動かなくなったこの船に乗るわけか…。なかなか考えたな」
サイオンは納得するように数度頷いた。今のところ穴らしい穴は見つからない。
「それで人質の解放について…」
タイミングを見計らって話し出すユーノを遮るようにサイオンは言った。
「計画立案で5名、アースラ内の下準備で5名、計画実行直後に10名を解放してやろう。
アースラ奪取数日後に残り8名を解放する」
「!?」
それを聞いてユーノは目を見開いた。
「最後の8名に限ってはアースラまでついてきてもらう。まずは5名、自由にしよう」
(そんな…)
あまりに早い決断にユーノは呆然とした。
ユーノは背中に嫌な汗が流れるのを感じた。
ユーノには裏の計画というのが存在した。
もちろんその内容とは、人質を解放することだったが、
その計画を実行するためには転移魔法陣発動直前にできるかぎり首輪が付けられた人質の人数を減らしておく必要があった。
計画自体には段階があるので少しずつ人数を交渉するつもりだったが、すでに内わけが決まっていたとは思わなかった。
ユーノは首輪を無効化する方法を思いついていた。試すことは出来ないのであくまで予想ではあるが、確信があった。
あえて残りの一族全員をグランディアに残し、遠距離からの起爆信号を受け取る前に首輪を無効化する。
しかし、ユーノの計画では首輪の無効化する人数には制限があったのだ。
心の内を気取られることの無いように、考えてからユーノは強い口調で言った。
「アースラを奪った後8人も人質に取るのはフェアじゃない!」
おそらくこれ以上ねばると怪しまれる。
ユーノが願うような気持ちでサイオンの返答を待ったが、帰って来たのは無情な答えだった。
「駄目だ。最後の8名は解放したやつらの密告の抑制にもなる子供と決めていた。もちろん必ず解放を約束する。
計画立案だけで5名も解放するんだ。これ以上は減らせない」
(くっ…!)
それを聞いてユーノは歯軋りした。もう少し減らさなければいけない。不確定要素が多すぎる。
危ない橋を渡るのに一族の命を賭けるわけにはいかなかった。
ユーノが何も言えずにいると、サイオンの視線が一瞬エリオに移ったような気がした。
気のせいか、とユーノが思った矢先サイオンが急に態度を変えた。
「そうだな。もう5名解放してやってもいいか」
(え!?)
ユーノが驚いてサイオンを見ると、サイオンは重々しい口調で続けた。
「しかし、条件はそれなりに難しいものにさせてもらう」
藁にもすがる思いだったユーノはそれを聞いて黙って頷いた。その様子を見てサイオンは少し満足げな表情をして言った。
「俺達の組織は幅広く様々な仕事をやっている。もちろん法に問わず、だ。
そして最近、戦闘データの売買というのにも手を出し始めた」
そこまで言うと、立ち上がって部屋の隅にあるデスクへと近づき、コンピュータを操作した。
しばらくすると部屋の壁のスクリーンに、ある映像が映し出される。
それは、管理局でエースと呼ばれる魔導師達の戦っている姿だった。
「管理局には優秀な魔導師が多い。特にエースと呼ばれるやつらを倒すことができるのは、同じくエースだけと言われている。
今高値がついているのは、低いクラスの魔導師がエースに勝つという戦闘データだ。それを入手してほしい。手段は問わない」
サイオンがそう言った時、偶然にもなのはやフェイトが戦っている姿がスクリーンに映った。
美しく、凛々しい優秀な魔導師であり、自分の大切な幼馴染。
真剣勝負でなのは達が負けることはまずありえない。もし負かすことができるとしたら…。
ユーノは、自分の最も大切なものを天秤にかける時が来たことを悟った。
サイオンの表情からも、言わんとすることはわかっていた。
ユーノの喉がごくりと鳴る。口の中が乾いていることに気付く。
拳を力強く握り締めて、ユーノはしぼりだすように声を出した。
「わかりました。僕が……僕が倒します」
ユーノとエリオは部屋を出た頃には時間は深夜3時を回っていた。
部屋を出る前に渡された通信機をポケットに入れる。
これからは連携も必要になるかもしれない、ということでサイオンから渡されたものだ。
ユーノとエリオは時空管理局に帰るために転移を始めた。
魔法陣の淡い光に包まれながらも、ユーノは先ほど飲んだ条件について考えていた。
チャンスがあるかわからないが、エースの誰かに負けるように頼むのが理想だ。
しかし、まずは今のユーノの状況をどうにかしてなのは達に伝える必要がある。
打ち合わせをする余裕が今の自分にあるのか。演技がばれてしまうことはないか。流石にユーノも判断に迷う。
最悪の場合、変身魔法で敵として対峙するしかない。
Aクラスの自分には到底勝ち目は無いので、必ず勝てる状況にまで持っていく必要がある。
アースラを奪う準備のほかに、そのための準備も入念に行わなければならないだろう。
ユーノは戦う相手を決めた。
「それじゃあ」
「…うん」
時空管理局の寮内でユーノとエリオはそれぞれの部屋へと向かった。
すでにエリオはユーノの秘書として働いていたので部屋を用意されていた。
「あ、ユーノ」
ユーノが部屋に入ろうとした瞬間、数メートル先の部屋の前に立つエリオが声をかけてきた。
「あ、えっと…無理は、しないでね」
少しためらいつつも、エリオは心配そうに言った。
「うん。ありがとう」
エリオの気遣いにユーノは笑顔で答えると部屋へと入った。
しんとした寮の廊下で、エリオはユーノの部屋をしばらく見つめていた。
ユーノは部屋に入るとすぐにベッドへと倒れこんだ。あと数時間後には無限書庫で働かなければならない。
眼鏡をはずしベッドの脇に置いた。
寝なければならない。そう頭ではわかっているのに、一向に眠気は訪れなかった。
この一週間、まともに眠れたためしがない。
途中で倒れるわけにはいかない、という気力だけがユーノを突き動かしていた。
暗闇の中、これからのことに思いを馳せた。
自分の立場を利用し、仲間を裏切り、幼馴染を撃つ。
これほどの罪が他にあるだろうか。
ベッドのシーツを自分に引き寄せ丸くなる。
この先どうなるかはわからない。ただ、一族を救い、やつらは絶対に捕まえる。
もちろんユーノが考える最善の方法を取って。そのためにはどんな代償も払うつもりだ。
(もし、この事件が終わったら…)
一族を助けるために已む無く指示にしたがっているユーノは、解決の後に罪に問われないかもしれない。
なのは達は、しょうがなかったと許してくれるかもしれない。
それでも、たとえ方法がないとは言え、ユーノは自分で自分を許せそうになかった。
(僕は…みんなの前から消えよう)
ユーノは遠のきつつある意識の中、ゆっくりと目を閉じた。
次回へ続く
着々と計画の準備を進めるユーノ。
一方なのはと会ったフェイトにもある計画があった。
次回 第十話 「心の枷」
わかりづらい内容ですいません…。ユーノが何をするつもりかぼんやりと理解してくれるだけでいいです。
ユーノが直面する出来事とその苦悩だけわかっていれば大丈夫だと思います。
次回は多少インターバルっぽい話です。それでは。
逆に考えるんだ、A'sをいれたら26話だと
396氏乙です!
毎回ふつーにどきどきしながら読んでます。
エロ抜きでも、二次創作として純粋に楽しい!
>>420 396氏乙!!
先の展開にマジでwktkしてます。
やっぱなのはvsユーノは実現するんだろうなぁ。
425 :
無銘兎:2006/11/09(木) 02:51:38 ID:krsUpvZl
最近立ち読みしたスクールデイズ公式本のイラスト見てたら、
アルクェイドみたく爪伸ばしたすずかと、日本刀持ったアリサが
2頭身にデフォルメされて斬り合ってる図が浮かんだ。
他にもユーノ取り合って、挙句が鮮血だったり斬殺だったり両方出来ちゃってたりする
シーンを想像してしまう自分は末期症状なのだろうか。
a
>>425 夏コミでスクールデイズっぽい内容にしたリリカル本みたよ。
歩道橋の上でバルデッシュの鎌を・・
詠んでたら鬱になった。