1スレからいるのに立てるのはじめてだ…。
とりあえずクロノ受難話の第二話を投下していきます。
インスタントのカップ麺、インスタントのスープ類。
缶詰にレトルトの湯煎食品。
冷蔵庫の中には飲み物……というか水くらい。
「……なんにもないじゃないか、ユーノのやつ」
クロノは、呆れた。
いくら男の一人暮らしとはいえ、もう少しまともな食生活を送ったらどうなんだ。
ユーノ宅の食料を漁って、「あるもので食え」と言って出て行った家主を密かに呪う。
「ん?」
流しを見ると、かわいらしいデザインの弁当箱が洗われて伏せられていた。
ユーノのものとは思えない。となると……、
「なのはか」
いわゆる愛妻弁当というやつか。
こちとら恋人も作らず前線で必死こいて働いているというのに、
気がつけばいつのまにかなのはと付き合い始めおって、あの男は。
「何か、買ってくるか」
幸い、財布の中身はたんまりある。
別にこのインスタント食品の山から選んで食べてもよかったが、
しばらく家に入れてもらえないとなると、栄養のバランス的にもなるべく先送りにしたい。
溜息まじりに戸棚を閉じて外出しようと思い立つが、あることに気付き頭を抱えた。
「……合鍵置いていってないじゃないか、あいつ」
結局今夜は、添加物たっぷりの味気ないディナーになるらしい。
魔法少女リリカルなのはA’s −提督の受難−
第二話 四面楚歌
「……それ、クロノくんが悪いんじゃないかなぁ」
「だよね、やっぱ」
ごもっとも。
グラスのジュースを飲みながらなのはが言ったことは、正に正論だった。
ここはミッドチルダのとあるレストラン。
なのはもユーノも若くして二人とも高給取りということで、
今日は少し贅沢に、豪華なディナーにやってきたわけだ。
高町家女性陣のおかげで、なのはの父兄には内緒だけど。
「どうりで今日フェイトちゃん、機嫌悪かったんだね」
「そうなの?」
「うん、だって」
今日の体育のドッジボール、いきなり外野からすずかちゃん以外の相手チーム全員をストレートでKO。
しかも、表情一切変えずに。みんな何かと思って、終わった後もなかなか近づけなかったんだから。
「うわ」
「ちょーっと、わたしもなだめる自信、ないかなぁ……?」
クロノくんから、謝るべきだと思うよ。命がけで。
まったくおっしゃる通り。ただしその「命がけ」というのが
洒落になっていないあたり、恐ろしい。
「藪の蛇つっつくような真似、わたししたくないし」
「それもそうか……」
「でもまあ、ユーノくんの頼みだし、ね」
「え」
フォークの先にサラダの野菜を刺して、なのはが微笑む。
「帰ったらみんなに……フェイトちゃんにもメールしてみるから」
「う、うん。ありがとう」
「だから今は、楽しもうよ。ね?」
小奇麗な、可愛らしいドレスで着飾ったなのはの笑顔に、
ユーノは思わず見とれた。惚れた弱み、というやつだ。
それにしても、恋する女の子というのは、したたかだと思った。
* * *
翌日。
「エイミィ、このデータなんだが……」
「……」
ぷいっ。無視ですか、そうですか。
「……アレックス、頼む」
「はい」
ユーノの家からアースラへと出勤したクロノは、針の筵だった。
艦橋のあちらこちらからの視線が痛い。
「ああフェイト、今回の任務だが……」
「言われなくてもわかってます」
「あ、ちょ……フェイト」
「仕事中です、邪魔しないでもらえますか?」
エイミィからは徹底的な無視を食らい、
謝って関係を修復しようと思っていたフェイトからは冷たくあしらわれ。
アースラ女性陣二強の二人にならうように、他の女性クルーたちからも白い目で見られる。
艦長席に座っているだけで、胃に穴が空いてしまいそうだった。
「なのはは、説得してくれたんじゃなかったのか」
エイミィとフェイトがブリッジからいなくなったのを見計らって、なのはに携帯から電話してみる。
が。
「……はい?」
───出ない。
数度のコールのあと、応対したのはなのはではなく、作られたものだと丸わかりの、
着信拒否を報せる女性の電子音声。何度やっても同じことだった。
「おいおい、まさか」
今度は、ユーノに電話。
ちゃんと出るだろうかと不安になりながら相手が応対するのを待っていると、
やや長めにコールが続いたあとで彼は出た。
『もしもし』
「ユーノか?」
『そうだけど。何さ。こっちは今仕事で忙しいんだよ』
「フェイトとなのはの件なんだが───……」
『あー、あれね』
ははは、と乾いた笑いを挟んでユーノは言った。
『ミイラ取りがミイラになった』
* * *
「───というわけで、助けてくれ」
形振り、構ってはいられない。恥も外聞もなく、
クロノは向かいのソファに座る少女達に深々と頭を下げた。
「そら、ええけど……クロノくんが悪いんと違うん?それ」
『あ、このまえテレビで言ってました!!おんなのこをおこらせるのはかいしょーなしだって!!
マイスター、クロノていとくは「かいしょーなし」なんですか?「かいしょーなし」ってなんですか?』
「う」
時空管理局特別捜査官にして、フェイトの親友ことはやて。
その膝にちょこんと座るリインフォース。
二人の言葉が……特に無邪気なリインフォースの言葉が、ぐさぐさとクロノの心に
クリティカルにつきささる。痛い痛い、痛いってば。
「せやね、クロノくんは甲斐性なしのへっぽこ艦長や」
『わー、へっぽこなんですかー。へっぽこへっぽこー』
「頼む、それ以上傷口に塩を塗るのはやめてくれ……僕が悪いのは重々承知の上だから」
いやほんとお願いしますもう勘弁してください夜天の主殿。
艦内の空気のおかげで胃が痛くて痛くてしょうがないんです。
センターテーブルに突っ伏してしまうクロノにさすがに気がとがめたのか、
はやては苦笑いしつつ慌てて取り繕う。
「いや、ほら。じょーだんやて。ヴィータやシグナム帰ってきたら、ちゃーんと考えてあげるから」
「……頼む」
お茶のおかわりを注いでくれるはやての優しさが、身に沁みる。
ああ、うちの艦に比べてこの家は、なんて空気が暖かいのだろう。
「お、帰ってきたみたいやな。おかえ───……」
玄関のほうで開く音がし、居間のドアの摩りガラスの向こうに小柄な少女の影が見えたので、
はやてはリインフォースを下ろして出迎えに立ち上がった。
「り!?」
影は、入ってくると同時にその場に倒れた。
二本のおさげが、へたりと床に落ちる。
「ヴィ、ヴィータ!?どないしたん!?」
クロノとリインフォースもいっしょに駆け寄り、
倒れたヴィータを抱え起こす。はやての膝の上に抱えられた彼女は、微妙にボロボロだった。
「ご……午前、中の、に……任務のあと……」
「任務のあと!?」
「テスタロッサに……訓練場に連行されて相手させられた……」
「こんな時間まで!?」
現在、時計は時刻、午後八時を指している。
「はやて……おなか、すい……」
「ヴィータ?ヴィータ!!」
こときれ───いやいや、もとい。気を失った。
彼女の腹の虫の鳴く音が、空しく悲しげに八神家に響く。
「フェイトの怒りが、これほどとは……」
憂さ晴らしの相手をさせられたヴィータには気の毒だが、
今更にクロノはぞっとしていた。
のこのこ謝りに出て行ったら、殺されるんじゃないか?
と、怯えるクロノは「彼女」の不穏な動きに気付く。
「───って、はやて」
「なんや」
「その物騒なものはなんだ」
「お仕置き」
リインフォースと融合し、騎士甲冑にシュベルトクロイツを構えたはやてが立っている。
「なんでっ!?」
「あたりまえやっ!!クロノくんが悪いんやん!!クロノくんがフェイトちゃん怒らすから!!」
「それはそうかもしれないが!!」
「リインフォース!!ラグナロク!!」
『はい!!響け、終焉の笛……』
「待て待て待てえぇっ!!」
吹き飛ばされ、閃光に包まれながら。
空気を読んで防御魔法を起動しなかった自分を、クロノは心底呪っていた。
スレ立てははじめてだから緊張しますた。
前スレの方々へのレスをば。
>>358氏
ん?思いついたネタ、いくつかあるけれど、
ほ と ん ど が ひ ど い 目 に あ う よ ?
>>363氏
続きマ(ry
>>369氏
強気攻めなユーノだと信じています
>>396氏
お久しぶりでございます、新作乙です
9 :
さばかん:2006/09/18(月) 22:17:33 ID:TzKLSqYz
えーみなさん。覚えてますか?覚えてませんね。はじめまして、さばかんともうします。
何ヶ月もネットに繋げられなくなって約3ヶ月、今更ながら、なのは第3期おめでとうございます。
さて、このさばかんも投下してみたいと思います。暖かい目で見てくださいね。
今回はエロ無し、タイトルは「つかいまなのなのは」です。
電車で片道1時間程度の距離。
そこから2時間歩けば、そこは別世界だった。
広大なお花畑。花に興味の無いユーノも、そのだだっぴろさに少し感動していた。
「ふぅ・・・何が自然を楽しめ、だ。疲れるばかりで良いことなんて
ひとつもない・・・」
口先で悪態を付くも、その忠告に少しばかり感謝していた。
もやしっこのユーノは流石に疲れたのか、そこでいったん休み、
渡された千円で適当に買ったおにぎりをビニールから取り出した。
持ち物はそれだけ。そんな軽い持ち物で山に登った事を少し後悔した。
せめて、水でも買っておくべきだった。
そう思いつつ、何を先に食べようか少し迷っていた。
買ってきたおにぎり3つ、こんぶ、基本。おにぎりには欠かせない。後の
二つは適当。少し高めの180円位のおにぎりとバターおにぎりとかいうミステリ
アスなおにぎりだ。
このバターおにぎりはレンジでチンして召し上がらないと上手くないらしく、それを
途中で気付き、またもや後悔。自分の無計画さに飽きれる。
腕を組み考えた結論が、バターおにぎりを先に食べるだ。
そう思い、隣に置いたビニールを手探りでとろうとする。
しかし、ビニールが取れない。たしかに透明だったが、本当に消えてしまうとは。
・・・いやいや、そんな事ある訳が無い。確認しようと振り向く。
案の定。ビニールは無くなっていた。
「・・・・・・・・・?」
おい。どこにあるんだ。足でも生えたか。
「はははははははは・・・真坂な」
当然だ、とそう思った瞬間。ユーノは有得ない光景を見る。
ビニールがあった!しかし、結構遠い。
いや、それならまだいい。なんと足が生えて、
「いや、違う」
いるのでは無く、単に誰かが持っているのだ。しかも、もっている奴が
とてつもなく可愛い女の子だった。
金髪でツインテールでワンピースの女の子。はぁはぁ。
そいつがあっかんぺーをして森の奥へ逃げていく。
その瞬間をぼーっとながめて刹那。
「ま、待ちやがれ!!」
疲弊しきった体にムチを打ち、追いかけた。
森の奥の奥。追いかけっこ。
女の子は足が速く、追いつくのに時間がかかった。
だが、それは男の子。見事追い詰める。
「おい、なんのつもりだ。さっさとそれを返すんだな。返さないなら・・・」
言いながら、手首を掴もうとして、かわされ、あっけなく後ろを取られた。
そう思うと、彼女は何を思ったのか木の影に隠れた。
ユーノは鼻で笑い、その大木ににじり寄る。
追い詰めた後、どんな事をしてやろうかと想像した時、有得ない方向から
彼女が出てきた。
・・・信じられない。どんなに速くても、あんな距離を移動できる訳が無い。
まるでナゾカケ。狼狽するユーノは彼女の方へ駆け寄る。しかし、またもや
彼女は木の影に、そしてまた、高速移動でもしたのか別の所から。
以下ループ。
ユーノは夕方までそのナゾカケが解けなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
完全に遊ばれた。彼女は笑いながらいなくなっていた。
そして、虚しく残ったユーノとおにぎり。
腹が減ったユーノはとりあえずおにぎりを食った。
中身は無事。ほっとする。
・・・チンしなくても美味いじゃないか、バターおにぎり。
「武家屋敷?」
間違いなく武家屋敷。ただし、住んでいるのは外国人。
このでけぇスーパー屋敷の玄関のチャイムを鳴らす。
ピンポンと言うマヌケ音の少し後、人が出てきた。
・・・いや、人が出てくるのは普通だ。犬が出てきても普通だ。
だが・・・何故貴様がいる。
「えへへ・・・」
にっこり笑顔の住人はさっきの女の子だった。
「うが〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「ご、ごめんなさ〜〜〜〜い!!!!!」
得意の、肩のつぼをギュ〜の刑。
その叫びと共に、またもや女の子が。
「うが〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「ご、ごめんなさ〜〜〜〜い!!!!!」
さっきのナゾカケの回答が問答無用で放出だ!
つまり、こいつら双子!ふたごふたご〜♪
「ははははははは。随分仲がいいじゃないか」
なんて笑ってるじいさんがここの主、グレアムさんだ。
「あ・・・こんにちは、じゃなくて、こんばんはグレアムさん」
金髪双子の肩をはなし、グレアムさんにお辞儀をする。
「も〜〜〜〜ぅ、おじいちゃん(はぁと)でいいのに〜〜。随分遅かったね。
てっきり迷子になったと思ったよ」
「はははは・・・色々ありまして」
「腹へったろ?積もる話は後にして、食事にしようじゃないか」
そう言われ、縁側を歩き、暫くして、居間に着く。そこには既に人がいて、
ユーノと同じくらいの年齢の男の子が座って待っていた。
男の子は立ち上がり、自己紹介をした。
「はじめまして、ユーノ。僕の名前はクロノ。よろしく」
会って早々呼び捨てとも思ったが、早く親しむようにとの彼の礼儀だろう。
・・・と、思っておく。
握手をかわし、飯を食う。どれも和食で、しかも美味い。だが、それ以上に
食事の光景は明るかった。
「あの、さっきはごめんね。つい・・・出来心で」
「わ、私もごめんなさい」
二人の名前はフェイトとアリシア。アリシアがお姉さんだそうだが、僕にはどっちがどっち
だか分かんない。
その後色々会話をして、明日、一緒に森を探検する事になった。
聞いた話では、ここのばかデカイ山は全てじいさん・・・グレアムの土地なんだそうだ。
詰まり、彼女らの庭で、僕に庭を案内してくれるんだってさ。
食事を終え、僕はグレアムさんの部屋に案内された。
「ささっ、どうぞ」
襖を開けると所狭しと並ぶ、漫画、ゲーム、D・V・D−!!
この人の趣味が日本の文化を学ぶ事だそうだが、僕が思うにこいつは単に
ヲタクだ。
ちなみに、さっきの和食は全部このじいさんがつくった。美味かった。
座布団に座る老人と僕。
「やぁ、ようこそユーノ君。歓迎するよ・・・だが、ここに来たと言う事は
条件を飲んでくれたんだね」
「はい」
「・・・そんなにあっさり答えられると、言う事が無くなっちゃうなぁ。部屋も適当に
用意したし、君に不便な思いはさせないと思う」
「はい」
「孤児院は・・・辛かったかい?」
「少しも」
グレアムさんは最後の質問だけ、すまなかったと言う顔をしながら、話を切った。
話はそれで終わり、グレアムの部屋を立ち去った。
僕は孤児だ。両親が事故で死んだそうだが、知らん。物心ついたときからそうだった
から、僕はそんなことは知らない。
日常だったから辛くも無い。と言うよりは、人は個人々々辛い思いをしているのだ、
こんなのは日常で辛いの例に入りもしない。
ただ、貧しかった。だから金持ちを恨んでいた。
恨みには時に憧れが混入しているものだ。僕はこの状況を変えられるなら変えてみた
かった。だから、今回の養子縁組に乗ったのだ。
部屋に入る。・・・ああ、悪くない。部屋も派手でなく落ち着いていた。
テレビもあるし・・・おっ、ゲームもあるじゃん!漫画も、D・V・Dーもある。
机の上に、メモが置いてある。
『グレアムじいちゃんのオススメゲーム☆寝る前にやってみてね(はぁと)』
キモッ。
いや、メモはビリビリに破いてソッコー捨てたが、ゲームとは有難い。
しかし、じいさんあの年でギャルゲー。オススメゲームの10分の9がそれだ。
ギャルゲーをやるやらないは別として、とりあえず僕はRPGモンをやってみることにする。
タイトルが長い。魔界なんたらなんたら2。ご丁寧に攻略本まで置いてある。
細いクノイチハァハァ。
しかし、家でゲームとは夢みたいだ。だからといってゲームをした事が無い訳では無い。
こんな僕でも友達はいて、そいつの家でゲームをやった事がある。
数時間ゲームをして、味方を寝ぼけて殺してしまった頃にもう止めようと思った。
布団をしき、眠りに付く。
あ、風呂に入るの忘れてた。ぐー。
今日はキネンビだ。キネンビ だ。 わあいわあい 。
悲劇の、始まりだった。
つづく
第7話 b part
「まったく、キリがないな」
管理局本局の一室。急場で拵えた対策本部の中央モニターの前で、もう何度目かわからない嘆息。
アースラへの救援要請及び地球での活動の許可。渋る上層部をなんとか説き伏せた矢先にこの事件。とんぼ返りとはいかなかった。
「今の所、発動体の暴走だけで落ち着いてはいるが……」
他ならぬジュエルシード。単体での魔力暴走程度ならまだ可愛いものだ。
本当の問題は願望を吸収し暴走したときこそ。
「回収したジュエルシードは今日付けで三十七……アリシアが撒いた数は百を超えているはず」
これだけの数なのだ。本命の暴走がないこと自体奇跡に等しい。
「プレシア・テスタロッサ…………ミッドチルダへの宣戦布告だぞ」
上の人間もようやく大慌てだ。
夢物語としてきた世界の住人からの攻撃。しかもそれがPT事件の首謀者なのだから。
心を蝕む怒りは眼光となり、アルハザードにいるであろうプレシアに向かっている。
「出来損ないが多いのが救いなのか……」
手元の資料に目を通せば今まで捕獲したジュエルシードは、そのほとんどがPT事件でのジュエルシードに比べ劣っている所がある。さしずめコスト重視のオミット版という所だ。
しかしだ、曲がりなりにもジュエルシード。完全に暴走した時のエネルギーは比較にならないだろう。
「一度に発動すれば…………いや、考えるのはよそう」
不意に浮かんだ最悪の結末を振り払い資料を閉じる。
管理局の武装隊も頑張ってくれている。それでも依然、いやだからこそ戦況も平衡を保てる。
手を打つなら今しかない。
「しかしどうする……ジュエルシードがある限りはどんな作戦も」
どの道ジュエルシードあっては全てが水泡になるのは目に見えている。
フェイトと話し合った例の作戦も……十中八九失敗か。
「クロノ、南地区の制圧終わったよ」
「ん、ご苦労」
「うん、嘱託魔導師フェイト・テスタロッサ任務完了しました」
「ぶっ、なんだよそれ」
いきなりの畏まった口調に噴き出しつつもなんとか応じる。
「だってクロノが「ご苦労」なんて偉そうに言うから」
「い、言ったか?」
「言ったよ。もしかしてまた」
『Workerholic?』
「そ、そんなわけ……ないだろ」
思わず詰まり語尾が小さくか細く……。
図星を突かれるのはいつも心が痛い。
「やっぱりエイミィの言うとおりだ。切羽詰るほど仕事に夢中になるって」
言われるほど切羽詰ってない。
「誰が切羽詰って……いや、ここにいるな確かに」
そう言おうとするも口は別の動きをした。
モニターに映りこんだ自分の顔を見れば、どれだけ疲弊しているかぐらい一目でわかる。
ああ、確かにこんな顔してればそう言うしかないな。
「あれ? 随分素直なんだ」
「僕だってそういう時はあるさ」
「……ちょっと期待はずれっていうか意外かな」
振り向けば少しだけ物足りなさそうな顔をしたフェイトがいた。
「ワンパターンな人間じゃないんだぞ、僕は」
確かに認めるところは認めるけど……。
正直なところエイミィの言う通りになんかなってたまるか。
「ふーん……やっぱりまだまだクロノのことわからないな」
「そう簡単に人はわからないさ」
一年の付き合いで本当に理解するのはこれが意外に難しい。
「そうだよね……ほんとのこと言うとクロノがどんな人かわかってたつもりだったんだけど」
「僕だってまだまだ君の事を本当にわかっているか自信ないさ」
あくまで自論だが、どちらかといえばその月日が入り口であり始まりだと考えている。
円滑な人付き合いする上でなら表面的なパーソナリティーの理解で十分だけど、一つ屋根の下で共に生活するならもっと相手を知らなければ失礼だ。
「特に最近のフェイトは特にわからないな」
「そ、そうなんだ……」
声のトーンが幾分落ちて居心地悪そうに視線も落ちた。
何か勘違いしているみたいだが、決してフェイトのことを理解しようとしない意味ではない。
断じてない。
もう一回言う、断じて有り得ない。
「なんていうかお転婆になってきた。第一印象が物静かな子だと思っていた僕としては計算外の事態だ」
「私そこまでお転婆になってないよ!」
「僕からみれば随分と快活になってるぞ」
「それならクロノだってここ最近口の悪さ一割増しだよ」
「また微妙な増え方だな……」
というか口が悪いって……。
そんな風にフェイトに見られていたのか僕は。
「あと……優しくなったと思う」
「え?」
いきなりの一言にドキっとさせられた。
なんていうか全く予期していなかった言葉である。
「初めの時はほんと仕事一筋の人だと思ったけどね。でも本当はすごく優しい人だって」
そういえばなのはにもそんなこと言われたことをおぼろげながら思い出した。
しかしどうも「優しい」は僕には体質的には合わない言葉のようで。
じんましんが出るというわけでないが体がむず痒い。
「か、からかうのは止めてくれ……当たり前のことをしているだけだ」
「そうなんだ……クロノってほんとによくわからないな。……でもね、これだけはエイミィや提督に聞かなくてもわかるな」
「今度は何だよ……」
思わず身構えてしまう辺りすっかりフェイトのペースに乗せられているのだろう。
そう思うと情けない一方、フェイトが喜んでくれるならそれもいいかと思っていたり。
「クロノって不器用だよね」
そうか、そう来たか。
僕はフェイトから言わせると不器用な男らしい。良くわかった、勉強になった。
以後参考にしよう。
「きっとエイミィや母さんに聞いても言われそうだな。やっぱり君は僕のことを随分とわかってるぞ」
「えっへん……なんてね」
恥ずかしそうに胸を張り、これまたいまいち締まりのない声だった。
「油断するなよ。これぐらいじゃまだまださ、僕のことを知りたければもっと時間をかけないと駄目だ」
「やっぱり駄目か」
「調子に乗ったらいけないからな。特に君は僕以外にもエイミィや母さんのことも知らないといけない」
自分で言うのもなんだが大変だな。
でも家族とはそういうものだ。
「ん?」
自分の心の声にはて、と首を傾げた。
なにか引っかかるような、何か勘違いしているような。
「私頑張るよ。もっともっとみんなのこと知りたい。なのはもアリサもすずかもみんなみんな」
「ああ、期待してる。じゃあ今日はもう遅いし、明日に備えて休むといい」
「クロノは? また仕事中毒?」
「大丈夫だって、すぐに終わらせる」
それだけ言ってフェイトも納得して、
「じゃあそう思っておくね。おやすみクロノ」
くるりと背を向けドアを開け出て行った。
僕も踵を返し、再びモニターを見やる。また自分の顔が映っていた。
幾分、ガスは抜けたようだ。
「やれやれ……一応はこのモニターに感謝しないとな」
こいつのおかげで僕はフェイトの考えた定型から抜け出せたんだから。しかもフェイトと親睦も深められた。
「ああ、そうなるか……参ったな」
そうして引っ掛かりが何だったのか自覚し、ため息追加サービス。
「僕もフェイトを家族にしたいんだな」
考えること全部フェイトが僕らの家族になること前提だ。
母さんもそうみたいで僕まで伝染するとはたちの悪いウィルスだ。
「はは、妹か……」
モニター見上げて、弛緩していく口角にやれやれとお手上げして。
結局、それから僕もすぐに仕事を止めた。
だってそうだろ? 妹ばかり考えてる兄馬鹿の頭なんだから。
* * *
既に時刻は深夜一時を指そうとしていた。
私も就寝すべき時間なのだが
「夢……ですか」
「うん」
もう一度確認してもアリシアは首を横には振らない。
たかだか夢の内容だ。普通ならさして重要視するものではない。
寝ている間の記憶など所詮、夢現の曖昧すぎる世界のものだ。起きてしまえばその世界は容易く崩壊し頭の中から旅立ってしまう。
「でも私とリニスが……」
「みなまで言わなくてもいいですよ」
精神リンクを通してアリシアの動揺が痛いくらいに心を揺さぶってくる。
彼女が受けた衝撃は私が受けたも同じ。そっと抱きしめれば、腕を通してアリシアの震えが顕著に伝わってくる。
「……うん」
頭を優しく撫でるとくすぐったそうにを目を細める。少し落ち着いてきたみたいだ。
こういう時に精神リンクで相手の心象がわかるというのはなんともありがたい。
自分の心も安らいでいくのを感じながら、今一度アリシアから聞いた夢の話を思い返してみる。
(私とアリシアが捕まるか……)
反芻するのは結末。
簡単に纏めればアリシアがフェイトと戦い、後一歩のところで潜んでいた管理局員の結界に拘束され、あのフェイトと共にいた黒衣の魔導師の一撃に沈むというわけだ。
私はというとその魔導師の一撃からアリシアを庇ってやられるらしい。
それでアリシアが守られれば良かったのだが、残念ながら庇った甲斐もなく一緒に轟沈。
完全敗北。まったく救いのない物語だ。
「やられたりなんかしないよね?」
声がくぐもっているのは顔を埋めている所為だからだろう。両腕は離れまいと私の腰に巻きついている。
「大丈夫ですよ、どんなことがあっても夢は夢。忘れるんです」
優しく言い聞かせながらも撫でるのだけは忘れない。
これは最近の疲れのツケなのだ。なんども心に負担をかけ、ジュエルシードをミッドチルダに撒き続け、フェイトたちと戦う。
子供の体には限りなく大きすぎる負担。常識的に考えればこの年の子供にここまでの魔力負荷をかければどうなるか。
リンカーコアの発育障害。それに伴う肉体、精神への影響。
(その兆候……だとすれば)
少しぐらい休暇をしても……いいや今すぐ必要だ。
「……リニス?」
「はい?」
「……変なこと考えてない?」
ああ、しまった。
リンクのおかげで私の小難しい思念も筒抜けだ。
「いえいえ大丈夫です。もう遅いし、今日は寝ましょう」
「でも……また」
私を見つめる瞳は少し潤んでいた。
眠りについて悪夢に苛まされたら――。
そう思ってしまうと目が冴えてしまうだろう。
(そういえばそんなことも……私は考えていましたね)
あれはそう、私がまだフェイトの教育をしていた頃。
親子とは思えない態度を取るプレシアに使い魔ながらも不満を募らせていたあの頃。
フェイトを魔導師として育て上げていく中で私の胸に去来した一つの感情。
(もしも……フェイトが私の娘なら……)
プレシアへの嫉妬。
(この手で……抱きしめて……うんと可愛がって、か)
本当に、そうだったならどれほど良かったか。
でもフェイトやアルフに出会えたことは何にも変えがたい大切なもの。
(じゃあ今は……?)
フェイトを抱きしめるぐらい私にも出来たはず。
出来なかったのは、きっとそうプレシアにどこか負い目を感じていたから。母親のやるべきことを、主がやるべきことを使い魔ごときが奪ってはいけない。
今の主はアリシアだ。それでもプレシアの手前、そんなことはしないと思っていた。
(思っていた……のに)
こうやって、この腕に抱かれてるのはプレシアの本当の意味での娘。
なぜだろうか、アリシアには私の心はいつも丸裸にされてしまう。
その所為、なのだろうか。私はアリシアを今も強く抱きしめている。
フェイトやアルフに注ぎきれなかった愛情。主に反発しても、最後は結局留まってしまった思いの欠片。
(参りましたね……今更ながらに)
フェイトやアルフを敵に回すこと。自分の欲望のために彼女たちを裏切ったこと。
(地獄に落ちますね……私)
そうだ、そうなのだ。
私は望んでいたものを得たいがために二人を拒絶したのだ。
(そうなったって私はむしろ感謝している)
いつも私のちっぽけな戒めを破ってくれる我が主。
無邪気で素直で、笑顔が似合う私のご主人様。
アリシア・テスタロッサ。
「……そっと目を閉じて……耳をかたむけていて……」
――いつしか、私は子守唄を歌っていた。
腕の中で眠りに落ちるたった一人少女のために。
愛しいあなたのために。
静かに、私は歌う。柔らかに、いつまでも――。
あなたが優しい夢を見れますように……。
はいは〜い
おそいのでレスは明日にでも
すいませんほんとにねむいんですorz
いい夢みろよ!
こんばんわ396です。今日は第二話投下にきました。
六話までは完成したんですが前より話が複雑でこれから大変になりそうです。
まあぼちぼち頑張ります。
魔法少女リリカルなのはA's++
第二話 「ひねくれた友情」
機械音とともにメインモニターに次々と小さなウインドウが映し出される。その様子を静かにクロノは見ていた。
「今日の分はこれで全部か?」
艦長席から見下ろすようにクロノが言うと、エイミィが椅子を半回転させ振り返りながら言った。
「あとは機能性食品の搬入がまだみたい。エネルギー充填率は現在31%」
「そうか」
報告を聞きながら手元のコンピュータにデータを打ち込んでいく。
ついでに、今日は家に帰るのが遅れそうなことを母親であるリンディと義理の妹のフェイトにメールで知らせる。
普段からリンディの仕事は見ていたとはいえ、慣れない作業にさすがのクロノも手間取っていた。
こういうときはいつも艦長のリンディに尊敬の念を覚えるクロノだった。
「ちょっとクロノ君…」
「ん?どうした?」
少し神妙な面持ちで切り出すエイミィにクロノは尋ねた。
エイミィははぁっと深いため息をついてクロノを見上げながら言った。
「疲れた」
「は?」
たった一言、呟くように漏らすエイミィにクロノはつい素っ頓狂な声をあげてしまった。
しかしよく見るとエイミィの横でアレックスとランディもうんうんと頷いていた。
「はやてちゃんとロストロギアを回収して、やっっと一段落したと思ったらそのまま本局で補給作業。し・か・も、艦長『見習い』の
クロノ君でしょ?まだ今日の目標には達してないみたいだし、少しは休憩が欲しいと思うエイミィさんなわけですよ」
「う…」
エイミィの言うことはもっともだった。少し前から艦長であるリンディは本局で仕事をするようになり、今はクロノが暫定の艦長として
アースラチームを率いている。長らくアースラで働いた実績によるものだが、リンディの監視もしっかりと行われている。
つい数時間前にはやて達と共にロストロギアを回収に向かい無事回収、その足で本局に戻るやいなやリンディに補給作業を一任された。
もちろん数日間のうちに終わらせれば良いのでそう急ぐこともなかったが、艦長になるために多くの
経験を積まなければならないクロノには、円滑に滞りなく終わらせなければならないというプレッシャーがあった。
それゆえ、その負担は乗組員全員にも影響していた。みんなの視線が痛い。
「……わかったよ。1時間だけな」
「さっすがクロノ君!話がわかる!!」
結局クロノは折れた。エイミィは立ち上がると背伸びをして扉に向かっていった。
他の乗組員もその様子を見て我先にとばかりにどたどたと出口へと駆けて行った。
一瞬でクロノ一人がその場に取り残された。
「いいのか…?ほんとにこれでいいのか…!?」
おそらくあと数ヶ月もしないうちに完全に自分が取り仕切ることになるであろう艦の様に、クロノはただ呆然とするしかなかった。
*
「そういえば、はやてはなんでまたアースラに?」
アースラの待機している格納庫に向かう途中、歩きながらユーノははやてに尋ねた。
たしか今日のロストロギアの回収はアースラと協力して行ったはずだ。
「えっ!?あー、その、なんや、アースラの食堂もたまにはええかなーと思って」
なんとなくユーノについてきただけ、とはさすがに言えなかった。実はもう一つ理由があるのだがそれを言うのはもってのほかだ。
アースラの食事は戦艦内のものなので、お世辞にもおいしいとはいえない。
ちょっと苦しい言い訳にちらりとユーノを見たが返ってきた返事は
「そっか」
というなんとも味気ないものだった。
ユーノ自身アースラに行くのは気分転換という曖昧な理由だったし、食事は本局の方が何倍もおいしい。
結局、なぜ急に人恋しくなったかを説明できなかったので無用な追求は避けたのだ。
「…………」
「…………」
そこで会話は途切れてしまった。実はユーノとはやては二人きりで会話したことなどこれまでに数えるほどしかなかった。
いつもユーノはなのはに会いに行っていたし、はやての傍には騎士達がいた。
よく考えればお互いのことなどほとんど知らないに等しい。
決して気まずい雰囲気ではなかったが、はやてはこの機会に親交を深めたいという意識があった。
とりあえず会話によるコミュニケーションは必要だ。
「そうや、前から聞きたかったんやけど無限書庫の人はどうやってロストロギアの場所を特定してるんや?」
はやては仕事の話もどうかと思ったが、無言よりはましと思い話題を振った。
「あー、それはね…」
嫌な顔一つせず丁寧に説明を始めたユーノに、はやては真剣に聞き入った。
「はぁー、そんなに大変な仕事やったんやなー」
はやては感心しながら目の前のサラダを口に入れた。食堂は予想外に人が多かった。どうやら休憩時間のようだ。
ユーノの話をまとめると、無限書庫ではロストロギアに関する記述のある書物のほかに超常現象や伝承などに関するものも検証し、
できるかぎり形状や性質を予測してから総合的にロストロギアの可能性が高いと判断し、捜査班に情報として提供しているのだそうだ。
まったく見当はずれだった場合が続くと責任も発生する。その責任はもちろん司書長であるユーノにも降りかかるらしい。
「最近情報を見つけて当たり前って思われてるからね」
ユーノは笑いながら言った。
どちらかというとロストロギアを回収する側だけが評価されがちだが、それは無限書庫があってこそだということをはやては改めて実感した。
シグナムが支持するわけだ。はやては手に持ったフォークを置きじっとユーノの顔を見つめた。
「あ、あの…何?」
「ありがとうな」
自然に、心から思ったことが口に出た。自分だけではなく、自分を率いるヴォルケンリッターの分、果ては過去の闇の書の
件も含めてお礼がいいたかったのかもしれない。ユーノのことだから決して迷惑とは思っていないだろうが、結果的に自分達の全てを
預けているようなものだ。
「えっと!いや、そんな大したことじゃないよ?過去の資料を調べるのは僕の趣味みたいなもんだし!」
ユーノは顔を真っ赤にしながら早口にまくしたてた。今までこんなに面と向かって自分の仕事に対してお礼を言われたことなんてなかったし、
なにより、お礼を言ったときのはやての表情は慈愛に満ちていてとても魅力的だった。
「あれ?ユーノ君にはやてちゃん?」
突然、食堂にいる局員をかき分けるようにしてエイミィが顔を出した。
「はやてちゃんまだ帰ってなかったんだ。っていうかずいぶん珍しい組み合わせ」
じろじろとエイミィがいぶかしげに見てくるのでたまらずユーノは説明した。
「ちょっと気分転換にきたんだけど途中ではやてに会ってそのまま…。仕事上共通点もあるし」
エイミィはそのままはやての横に腰を下ろした。どうやら食事を終えた後らしい。
「エイミィさんは今日の仕事は終わり?」
「それがまだ。今日は結構かかりそうなのよねーこれが」
はやてがエイミィに尋ねるとオーバーアクションで両手を広げエイミィが答えた。
「アースラも大変なんだね」
ユーノがエイミィの様子を見て言うと、エイミィは片手を上げて言った。
「無限書庫には負けるけどねー。あたしの友達も司書やってるんだけど、お休み取れなくて死にそうだーって言ってたわよ。
そこのとこどうなのよ、司書長さん?」
覗き込むように言われてユーノは少したじろいだ。たしかに司書の仕事量を決めているのはユーノだがこれでも考えて配分している方だ。
最低限にしても休みがとれないのが今の現状なのだからしょうがない。文句を言いたい自分が弁護するのも悲しくなるが
そのことで言い訳しようとしたとき、ふいにエイミィの後ろに黒い影が見えた。
「人の心配より自分の心配をしたらどうだ?」
「げっ!!クロノ君!?」
ものすごいスピードでエイミィが振り向くとクロノが腰に手を当てて呆れ気味に立っていた。
エイミィの声はこの雑音の中でも通る上に目立つ。喉を潤しに食堂に来たクロノは一発でエイミィを見つけ近寄ったのだった。
そしてエイミィの隣につい数時間前にも顔を合わせた少女が座っているのが目には入った。
「はやては何かやり残したことでもあったのか?」
「……」
尋ねたクロノをはやては無言の笑顔で見つめてくるので、クロノは不思議に思った。
「僕は無視かよ」
「なんだユーノ。いたのか」
「なっ!?」
クロノはあっさり言い放ちながらユーノの隣に移動した。ユーノはジト目でクロノを見上げる。
今まさに口喧嘩が始まろうと言う刹那、はやてが立ち上がり二人の前に手を広げた。
「まーまーお二人さん。少しおちつこ。な?」
はやては一触即発のクロノとユーノをなだめ、クロノを席に座らせた。
「ところでユーノ君」
「な、何…?」
いきなりはやてに見つめられてユーノはドキッとした。
「休みがないってゆうてたけど、今、休みを取るゆう話になったら何日くらい取れそうなん?」
急に自分のスケジュールを聞かれてユーノは戸惑った。
「たしか今日も新しく仕事が入ったし…2日だっけかな…」
さきほど司書の女性に言われたことを思い出すようにして答えた。
それを聞いたエイミィが恐る恐るという感じで聞いてきた。
「ユーノ君って前に休み取ったの…いつ?」
「えっと、書庫の整理と研究で休みがなくなることもあるし…」
ユーノ自身いつ休んだのかあまりに前のことなので記憶が曖昧だった。
(なのはとお正月にお餅を食べて、みんなで初詣に行ったのが一月……今は夏だから)
「7ヶ月前…くらいかな」
ユーノは言いながらも自分は異常だと思った。
「え!あれから休みあらへんの!?」
「ちょっとユーノ君、それ冗談抜きで死んじゃうよ!?」
はやてとエイミィは驚いて目を丸くしたが、クロノだけは無限書庫の現状を知っていたので黙っていた。
「やっぱりそうだよね…」
乾いた笑いとともにユーノは言った。たぶん、誰もおかしいと言ってくれなかったから自分でもこれが普通なんだと
思い込んでいたのかもしれない。ようするに感覚が麻痺していたのだ。
それを聞いてはやては立ち上がった。
「こほん。そこで、魔法使いはやてちゃんがユーノ君にお休みをあげようと思います」
自信満々に言うはやてにその場にいる三人は目が点になった。この娘は何を言ってるんだと。
日本のアニメの魔法使いのイメージがないミッドチルダ出身の三人には、はやての感覚がいまいち伝わっていなかった。
唖然とする三人をよそにはやてはユーノを指差して言った。
「はい!もう魔法をかけました。ユーノ君、休みが増えたかどうか問い合わせてみて?」
「えぇ!?」
はっきり言ってユーノにはさっきからはやてが冗談を言っているようにしか聞こえなかった。
「もう、えーからえーから」
「う、うん…」
面白そうに促すはやてに流されるようにユーノはポケットから端末を取り出し問い合わせを始めた。
その様子をエイミィは不思議そうに、クロノは手元の飲み物を飲みながら静かに見ていた。
『ところでクロノ君』
急にはやてが念話で話しかけてきたのでクロノは目だけをはやてに向けた。
『なんだ、わざわざ念話で…』
いぶかしげにはやてを見ると、はやてはにやりと笑った。
『いやー、クロノ君はほんまにユーノ君のことが好きなんやなー』
「ぶはっ!!」
「ちょっと!クロノ君汚い!!!」
はやてのあまりに衝撃的な発言にクロノは口含んだ飲み物を盛大に吹いてしまった。
「ごほっ!す、すまない」
正面にいるエイミィに謝りながらテーブル脇の布巾でテーブルを拭く。ユーノも電話をかけながらこちらを驚いたように見ていた。
『と、突然何を言い出すんだ君は!!』
まだニヤニヤとクロノを見ているはやてに念話で怒鳴った。
『リンディさんから聞いたんやけど、クロノ君、ユーノ君の休みを増やすようにずいぶん掛け合ってたらしいやないの』
どうやらはやてはクロノが数ヶ月前からリンディに言っていたことを本人から聞いたらしい。
事実だし口止めするようなことでもなかったが、面白おかしく他人に伝える自分の母親を少し呪った。
『それは無限書庫全体の話だ!オーバーワークは前から問題視していたんだよ僕は!!』
さらにクロノは何故か必死に弁解してしまった。これでは勘違いしてくれというようなものだ。
『はぁ、ま、そういうことにしとこか』
対照的にはやてはまるで冷静と言わんばかりに返してくる。この温度差が、いっそうクロノの羞恥心を高めるのだった。
「すごいよはやて!一週間も休み取れるって!!それにこれからは管理局以外の仕事が減るみたいなんだ!」
「へー、やるじゃん!はやてちゃん」
電話を切ったユーノが嬉しそうにはやてに言い、エイミィが感心しながらはやてを見た。
クロノは先ほどのやりとりで完全に拗ねてしまったようで目をあわせようとしない。
「そんじゃ、ユーノ君、明日からうちにご招待するからお休み取ってな」
「え!?」
突然の申し出にユーノは驚いた。さっきから驚きっぱなしだ。
「ユーノ君には日ごろからお世話になってるからお礼をする機会がほしいんやけど…」
上目遣いに見られて少しドキリとしたが、よく考えればはやてがそう思うのも無理はないと思った。
闇の書事件から3年たった今ヴォルケンリッターの騎士達は保護観察からは外れたが、いまだに管理局任務への従事という形で
罪を償っている。そのロストロギア回収という任務に自分は深く関わっている。
「うん。喜んで行かせてもらうよ」
少し考えたがユーノは了承した。
休みを久しぶりに取りたいという気持ちもあったが、ユーノはもっとはやてのことを知りたいとも思い始めていた。
今の自分に足りない何かをはやてが教えてくれる。そんな気さえした。
微笑むはやてにユーノも微笑で返すのだった。
休憩も終わり席を離れる間際クロノははやてに言った。
「まさかこれを僕に言うためだけにアースラに来たんじゃないだろうな」
「そんなわけないやん」
クロノが見たはやての表情は明らかに肯定を表していた。
(本当に艦長としてやっていけるんだろうか…)
あまりに威厳の無い自分に一抹の不安を覚えるクロノだった。
次回へ続く
次回 第三話 「八神家と少年」
たぶん3話あたりから前の調子を取り戻してるような気がします。
それにしても複数の物語を同時に書いたりしてる他の職人さんはすごすぎる…。
不器用ですいません。それでは。
約束どおりレス返し
前スレから
>>640氏
ああ、やっぱり足をひっぱってくれるか
一応はホムンクルスみたいなもんなんだよなフェイトって
>>363 続き待ってますよー
>>369 すいませんユーノにしか見えない(オイ
当方なのは×ユーノの独り言
>>396氏
さてさて、まだ始まったばかりですからね
ワクテカでお待ちしますよ
で、新スレ
>>640氏
もうこの人は……
クロノはどこにいてもクロノだなぁ
>>さばかん氏
いつ見ても、いい具合にふきとんどるなぁ
>>396氏
ユーノとはやてか……
某所とはまた違った感じ、そしてクロノはクロノと……
私のお話はもうしばらくはアリシアとリニスばかりです
この二人って本編でも全然出ていないけど見ている人たちには
不自然ないように伝わってるかな……
>>29 396氏GJ!
ユーノとはやての仲は前から妄想していただけに
続きにwktkしときます。
>>29 いつもGJ。
ユーノはやて…
無意識の嫉妬でなのはが主砲乱れ打ちするオチを一瞬考えてしもた。
35 :
さばかん:2006/09/22(金) 21:01:45 ID:nT00DYk+
みなさん、こんにちは。今回も作品を投下させていただきます。
抜けないエロ付きです。少し長いのですが、どうか暖かい目でお願いしますね。
「お早うございますゴシュジンタマ。速く起きてくれないとこまるですぅ〜」
目覚めかけ、僕はそんな声を聞いた。
予想だにしないサプライズ!しかし、少しは期待していたぞいっ!
こんなデカハウスにお手伝いさんないしメイドさんがいたって不思議では無い、いや、
いたのだ!!!
この声からしてドジっ子メイドっぽい。背は僕と同じくらい。ってことは僕と同じ小○生なのかー!!
いやいや。簡単に決め付けるのは良くないぞ。ひょっとしたらお姉さんでデカチチの可能性大。
「ははははは。さやか。やっと会えたね」
さやかが誰かって?言わない約束。
取りあえず朝から元気な僕のこれを癒して・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
時間が経過する度に僕の頭は覚め、起き上がり、声の主である目覚まし時計を蹴り飛ばした。
チンと案外静かな音で止まった。
あのジジイ・・・余計な事を。ちなみに、セットした覚えは無い。この時間に起きろってことだろう。
時間は6時。中々健康的じゃないか。
朝食を食べ、約束の山、もとい庭案内。フェイトとアリシア(どっちがどっちか知らん)は森の奥へ
掛けていく。速い、速すぎるぞ、双子ー。
「ユーノー早く早く〜!!あっ、ここは茨(いばら)が多いから気を付けてねー」
「イバラだよっ!」
そんなジュースィーなボケが伝わってんのかはさておき、こんな感じで森を駆けていく少女二人。
・・・何が道案内だ。ただ森を走り回ってるだけじゃないか。疲れるし、木の枝で掠り傷つくるし。
なんか損ばっか。でも、そう思っているのは僕だけだ。二人はとっても楽しそう。
バカみたい。そう思ってしまう。
金持ちってのはもっと贅沢にどっかの海外で適当に、何も考えず、明日の心配もせずにフォアグラ
とか言う、動物虐待料理を食ってるもんかと。そういうイメージだったからだ。
豊かさってなんだ?
勿論金だ。
こいつらが遊んでるこの土地だって、あのヲタクじじいの買い物だ。
・・・でも、そんなことはこの二人には関係無いのかもしれない。この土地が私有地なのは偶然で、
ここがただの原っぱでも、二人は変わらない、そう思うのだ。
勿論金の要素もある。
昼になって、じいさんお手製の弁当を食べる。レジャーシートを敷き、何重にもなっている弁当箱を開ける。
うまそう。
ちなみにこいつを背負っていたのは僕だ。最初は女の子に持たせるのはプライドに反したから、という
理由だったが、5分程で、ああ、彼女達の方が体力があると分かった。いじっぱりはそんなだけってな。
メシを食べながら、僕は彼女らに訊ねた。
「なぁ、クロノとは一緒に遊ばないのか?」
タブーだったかなぁとも思ったが、これから家族同然に暮らすのだ、分からない事は、少しでも無くしたい。
「少し前まではね・・・一緒に遊んでたんだけどね」
「うん、クロノは体が丈夫な方じゃないけど、それでも、遊びまわる事はできたんだ。体にも支障は無いし、
寧ろ、外で遊んだ方が体に良いってお医者様も言ってた」
二人の表情が一緒に曇る。この話題はタブーなのだろうか?
「体調が悪化した。そういう訳じゃなくて?」
二人は合わせたように首を横に振った。健康上の理由では無いらしい。
僕は済まなかったと思い、ポジティブな意見を示した。
「はははははは。だったら、心配しなくてもいいよ!ほら、クロノも年頃だし、女の子と
遊ぶのが照れ臭いんだよ」
そう言うなり、二人は照れながらあははははと笑う。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そう言った本人だが、それだけは無いと思った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
二人は再び森を掛けていった。僕は腹いっぱいで草むらに寝転がっていた。
背中にチクチクと草が刺さるが、悪い気がしない。
うーんと背伸びして、目を瞑る。あのじいさん、一人でこんな場所を占拠しやがって、ずりぃ。
思いつつ、僕はぐーすか寝てしまった。
少し、さかのぼる。朝食後のお話。
僕はクロノに愛に行く事にした・・・。変な字に変換してるが、気にするな。
別にそう言う趣味は無い。作者的には美少年がふんぞほぐれつしちゃうのも悪くは無いと思う。
先に言っておくが、BLな展開にはならねぇ。
話を戻す、僕はこの家に少しでも慣れたい。家とは詰まり人だ。人と親しくなる事こそ家族への
第一歩なのだ。グレアムのじいさんとは結構付き合いが長い。もう2年間の付き合いになる。
フェイトとアリシアは・・・言うまでも無い。あいつら喋り過ぎ。ベタベタし過ぎ。でも、僕にとっては
有難い事だった。彼女達とは昨晩ですっかり仲良くなってしまった。でも、二人がどっちなのか分かんない。
そもそも、僕は双子なんてはじめて会ったのだ。テレビでみる「まなかな」姉妹は二卵生双生児。
二人は正真正銘の一卵性双生児なのだ。とにかくそっくり。二人とも同じ顔なのだ。
「まなかな」もソックリjだけどな。
ごめん、二人とも。僕、どっちがどっちだか、分かんない。
そして、あと一人がクロノ。驚いた事にこの広い屋敷にはこんだけの人しかいない。
家事はグレアムがぜーんぶやっているらしい。もっと若けりゃモテモテだな。
なんて思いつつ、僕はこの屋敷の割と奥の方にある部屋に向かう・・・。
着いてビビッタ。奥とは聞いていたが、そこから更に屋根付廊下が続き(流石金持ち)、
そこは詰まり・・・小説やらドラマでしか見た事が無い離れ、とか言う奴だった。
「何故に洋館?」
そこだけ洋館だった。グレアムのじいさんは大の日本贔屓(びいき)で、洋館は建てなさそう
だったが、やはり故郷が愛しい時があるのだろうか。
両開きの扉を開けると、何故そこが洋館なのか納得する。ぶわっと広がるカビの匂い。
そう、そこは図書館だった。下手な図書館より広く、荘厳だ。
窓はその殆どが本棚に隠れて開けられない。たまには換気しろ。
そう思うが、そんな悪態が付けない程、雰囲気があった。僕の好きなファンタジー物を
思い出す。
舞台は図書館。大切な人を探すため、世界と言う名の図書館を旅する物語。あの作品は
評判が悪かったけど、僕は好きで、時々その物語を思い出す。
「ここ、いいな」
洒落た秘密基地。静寂を約束された場。少し奥に進むと、いた。
そこは少し広がった空間で、本を読む少し大きめの机と椅子が中央にどーんとある。
クーラーがきいてもいないのにすずしいのは両側の大きな窓からふく自然の涼しさだろう。
そんな洒落た空間で、クロノは何故か、泣いていた。
(え?)
「う・・・うぐっ、ずっ、ひっく・・・」
本に感動したというならまだ分かる。そんな本と出逢えたのなら幸せだ。
だが、机の上にも、その周辺にも本らしきものは無い。
悪い事をした。人には見せたく無いものだってあるだろう。僕はまさにそれを見てしまった。
済まなかったと物陰でお辞儀をしながら黙ってさろうとして、
ズッテンドッカン。派手な音を立てて転んでしまった。
転んだ瞬間、クロノの背がビクッとしたのが生々しく見えた。
彼は取り乱さないように冷静を取り繕った。
「やぁユーノ。かっこ悪いところをみせちゃったな」
手を差し伸べて、僕はその手を掴み起き上がる。
「さあ、かっこ悪い?エロ本でも読んでたの?」
僕は笑って。何の事と誤魔化した。
「さ、さぁ・・・どうかな?」
そう言いながら涙を拭うクロノの仕草にドキッとした。
・・・なーんて展開だったら、少しやばいな。
拭う仕草を隠しもせず暫く黙った。
「なぁ、クロノ。君も一緒に遊びにいかないか?あっ、嫌ならいいんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「フェイトもアリシアも一緒だ。ほら、あの二人って爆裂元気だろ?僕一人じゃとても」
「!!!!!!!」
その、一言。たったそれだけで、彼の態度は決まった。
「遠慮する」
「外で遊ぶのは苦手?」
「そう言うわけじゃない・・・ただ」
クロノの暗い顔が更に闇色を深くする。
「いや、なんでもないんだ。少し、乗り気じゃない」
「正直、そうは見えないな。クロノはフェイトもアリシアも、とても暖かい目で見ていた。
それに・・・なんだ、なんとなく、だ」
ただ・・・の続きを聞いたわけじゃない。何となくあの二人かなぁと思っただけ。
実際それは当たっていたらしく。クロノはそこで話を切った。
「それじゃ。ここ、良い場所だな」
ひらひらと手を振り去ってゆく。
本当はもう少しいたかったのだが、どうもそう言う雰囲気ではなかった。
いや、原因は僕なんだけどね。
クロノは彼女達のことを好きなんだと思う。家族としてなのかそれとも・・・
それは分からない。
分からないが、その涙が透明さと反するように、滲んだ謎を投げかけた。
その時の僕はまだ知らない。
何も。
目を覚ますと、何か顔に違和感が・・・。寝転がりながら、視線を下に向ける。
あ、これは知ってる。ゲーセンにある、子供達に大人気でぜってーに有得ない
技を繰り出す・・・。
「ぎゃ〜〜〜〜〜〜〜!!!!む、虫〜〜〜〜〜〜〜〜〜
!!!!!!!!!!!!!!」
上半身を高速で起こした瞬間、それがカタパルトとなったのか、カブトムシは
弾丸のように飛んでいった。
その光景を見つつ、笑う少女。
「ははははははははは!!!ユーノ可愛い〜〜〜!!はははは」
「て、てめ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!」
ああ。これも悪戯双子の片割れの仕業だ。
僕は虫が苦手なんだぞっ。
「そ、そんなに怒らないでよ、ユーノ・・・」
「ア、フ・・・うわ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」
「キャッ!」
ドサッ。
口論しようにもアリシアなのかフェイトなのか、どっちがどっちだか分かんない僕は
力で解決と彼女を押し倒していた。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
嵐の前の静けさ。僕も彼女も下手に動いてはいけないと何となく思ったのかも知れない。
そろそろこの状況をどうにかしようとした僕は彼女の肩を掴む手の力を緩める。
緩めようとした。だが、
僕は完全にどうかしてしまっていた。
彼女の肩の感触。細いのに、それを感じさせない柔らかさと暖かさ。
壊してしまいたいと、そう思える愛おしさ。
ワンピースの肩紐が邪魔だと思って、それを手で優しく端に滑らせる。
「はぁ・・・はぁ」
荒れる呼吸。
その紐をずらしただけなのに、ライトアップされたような肩の白さに眩暈がする。
信じられない。この子は僕と同じ人間のはず。それなのに、何故。
この白さに惹かれてしまう。
「ユーノ恥ずかしいよ・・・」
ああ、その声も、澄んだ空気みたいで、さっきの眩暈のクラクラが、丹田(たんでん)
から、より本能的な部分に流れ、沈殿した時。
「あっ・・・くすぐった、」
僕は彼女の肩に吸い付くようなキスをした。
いや、キスじゃなくて吸血みたいな感じ。ちゅうちゅうと音をたてる僕の唇。
今までのどんな楽器より、彼女の肩が良い音を出す。リコーダーもハーモニカも
この肩の前では、まさに形無しだった。
「ゆ、ゆうの?」
暗闇の先を知りたがるのが人間。僕もその大多数に漏れる事無く、より、彼女の深い所
を知りたくて。
「くっ、このっ!おとなしく、しろっ!」
暴れる彼女を押さえつけ、僕はワンピースを少し脱がせ、彼女の胸元を露にさせた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
見られた事に恥じらいを感じたのか、彼女は目尻に涙を溜め、そっぽを向く。
それも反則。普段元気な彼女からは考えられない。そのギャップ、やめてくれ。
本当に壊したくなるから。
おっと、今壊したら勿体無い。僕は彼女の胸元を観察する。
まぁ、年齢が年齢だから仕様が無いが、それでも、この年齢にしては大きい。
その胸に触れる。胸を揉むなんてはじめてだった。
だから、その柔らかさを何度も味わうため、指を何度も動かした。
・・・なんだよ、この感触。男の肉とは全然違う。
驚いた。男と女ってこんなにも違う。それこそ、全て。
今度は味も確かめたくて、乳首を嘗める。テクニックなんて無視。
というよりは知らない。僕は感触を味わうのに精一杯だった。
だが、僕の懸命な行為に彼女は不快だとばかりに痛みを訴えた。
「い、痛い、痛いよ。む、胸・・・触らないで・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちっ。
本当ならもっと揉みたかったのだが、彼女の痛みを訴える声はただただ不快だった。
だが、それを止めてしまったのがいけなかった。
今まで満たしていた欲求が、はけ口を失ってしまった。
僕だって知っている。こう言う行為が最後に行きつく場所を。
「や、ユーノだめ、だめだよ。だめ〜〜〜〜っ!!!」
彼女は見てしまった。僕のそびえ立つ男根を。
そして、その気味の悪い物の矛先を。
必死に抵抗するが、欲望の塊と化した僕には勝てない。
あえなく、彼女の可愛らしいパンツの感触を味わい、中身も味わう。
はじめた見た女性の性器は気持が悪くて、僕はさっさと彼女の中に入れた。
「ン・・・あっ、ゆ、ユーノ・・・」
あっけなく入った。そのあっけなさに少し驚く。所謂(いわゆる)前戯に時間をかけなかった
のにこんなに濡れている。・・・なんて都合が良い。
「ゆーの。もっと、動いて。私、もっと気持ちよく、なり、たい・・・」
このころになると彼女も抵抗しなくなった。それどころか、僕を深く求めていた。
なんていじらしい。その愛おしさに頭をぎゅっと抱き締め、
名前の一つでも叫んで果てたいとも思ったが彼女の
名前を知らない。君はどっちなの?フェイト?アリシア?
ふん、バカ。
僕が愛してるのはどっちでもない。どっちともなんだ。
彼女がどっちなんて、なんて、瑣末。
「くっ、ああああああああああっ!」
名前を呼ぶ変わりに叫ぶ。それと同時に僕は果ててしまった。
だが、全く萎えない体はもう一度彼女を往復する。
今度は彼女の感触をちゃんと味わえるようにと思いながら
僕は激しく突いた。
後悔は無い、これは愛なんだ。愛とはつま、
「はっ!」
がばっと起き上がる。モノローグの前に目覚めて良かったと思う。
正当化された自己満足的な言葉が脳内を駆け巡り、いつか心もそいつ
でみたされる。
それがたとえ、夢の中の自分だとしても、虫唾が走る。
愛が何なのか知らない。だが、あんなものが愛?それだけは断じて違う!
愛とは、
「やめやめ」
朝のやかましい目覚ましを止めると、パジャマのズボンを広げ、パンツが
ザーメン塗れなのを確認する。
我ながら最悪の夢。フェイトでもありアリシアでもある人を襲って・・・何度も
中出し・・・。
今日僕は彼女達にまともな挨拶ができるだろうか?
・・・微妙だ。
だって、この夢が僕の欲望だったのなら、僕はどっちも好きで、それとも、ど
っちでもいい?
鬼畜。
ただ浮かんだ一文字を消すのに、時間がかかる。
さて、本当の2日目に戻りましょう。そして、自分の心を整理することにした。
つづく
保管庫更新キタコレ
アライブしてた管理人にカソパイ
管理人さん 乙
ぜってーとかてめーとか、ユーノの使う言葉遣いじゃないから誰だかピンと来ない。
どれかっていうとそれはヴィータじゃないか。
46 :
さばかん:2006/09/23(土) 08:57:12 ID:wPaf/8/S
俺もユーノの使う言葉じゃないとは思ったんだけどね
彼も年頃の男の子だから、言葉遣いがこの位でもいいんじゃないかなぁ・・・なんて
イメージを壊したのならすみません
47 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/23(土) 18:52:37 ID:+voVHXbF
まぁ、クロノよりはユーノのが口悪い気はしるけど。
相手を呼ぶときユーノは「お前」でクロノは「キミ」だし。
ユーノが使う言葉づかいとして適当なのかどうかが問題なのであって、他キャラとの比較なんてどうでもいい
さばかん氏のは2次としてはどうよ?と思いつつも、
ついクセになって読み返しちゃうんだよね
こう言っては何だけど、作品としては面白いんだけども「なのは」の二次創作である必要が見えてこない。
じゃぁ15歳っぽく話して、
フェイトはクロノに
「うぜーんだよ!話しかけてくんじゃねーよ!」とか言うんだな。
で、はやては
「あ、フェイトちゃん? うん、大丈夫大丈夫、返す時なんか気ぃせんでも。困った時は友達やない」
「もしもし、なのはちゃん? あれ、どうしたん? ・・・は? わたしお金貸したやん?
自分いいかげん返してくれへんと、わたしも困るんよ! なのはちゃんがそういう態度やと!」
それで金策に困ったなのはは、
「ユーノ君、お金出来た? そりゃそうだよね、わたしだけじゃなくて、
すずかちゃんやアリサちゃんだってすっごく悲しんでるんだよ。
だいたい三人だなんて夢見させてあげたんだし、男の子としては当然……、
え? すずかちゃんと付き合う事になった?
だからわたしはいらない……? ねぇ、ねぇそれどういう事? ユーノ君!?」
って男に捨てられて、金もなくて自殺する結末になるんだ。
52 :
さばかん:2006/09/24(日) 10:11:45 ID:Q/McbhoW
そういうなよ・・・
俺、なのは大好きだもん。ってか生き甲斐。
学校行く前になのはを見て、熱い気持を分けてもらう。
個人的には、無印12話予告のユーノが好き。
53 :
さばかん:2006/09/24(日) 10:32:23 ID:Q/McbhoW
ちなみに、大学卒業して、専門学校いってるから年齢としては
問題無い。説明不足すまそ
なんかきな臭くなってきたな
いつものことだ。
黙ってスルーして新作投下を待つべし。
……前スレ
>>363氏の続きマダー?(´・ω・`)
こんばんわ396です。ユーノとはやては書いてるうちに接点多いことに気付かされました。
本編の記憶がだんだん曖昧になってきて情報はほとんどwikiなんですが。
脳内設定もあるので全て本気にはしないで下さい。では続きを投下します。
魔法少女リリカルなのはA's++
第三話 「八神家と少年」
蝉の鳴き声があちこちで聞こえ、太陽が容赦なく照りつける7月。ユーノは転移した海鳴臨海公園を出て住宅街へと足を向けた。
潮風が入らなくなると、とたんに蒸し暑さだけを肌に感じるようになる。
普段は室温が調節された快適な空間で暮らしているだけにこの暑さは非常にこたえた。
そしてその熱気の中、ユーノはスクライア一族とともに砂漠地帯の遺跡発掘調査をしていた時のことを思い出していた。
あの時は無理が祟って熱中症で倒れてしまい、周りのみんなに迷惑をかけてしまった。
木陰で目を開けると少女と女性が自分を心配そうに覗き込んでいるのが見え、決まって自分はこういうのだ。
「僕は大丈夫だから」
と。そしていつも自分を大事にしなさいと怒られていた。
ジュエルシードの回収に勝手に身を乗り出し、全てを解決して帰ったときはそれは酷く怒られた。
しかし、ユーノは決して面白半分で遺跡を発掘しているわけではないし、一族のみんなだってそうだ。
発掘したものには責任が伴う。その責任を一手に引き受けたのには、スクライア一族に家族としての愛情と、それとは別の
感情もあったからだ、とユーノは思う。
ふと気づくとすでに八神という表札が見え、大きな一戸建ての家が視界に入った。
時計を見ると約束の時間より少し遅れていた。
(ゆっくり歩きすぎたかな…)
そう思いながら玄関前に立ち呼び鈴に手を伸ばす。
ピンポーン
「あ、ユーノ君。今扉開けるわね」
ユーノが呼び鈴を押すとインターホンからシャマルの声が聞こえてきた。
ガチャリと音がして重そうな扉が開く。
「久しぶりねー。ちょっと背、伸びた?髪もまた長くなったんじゃない?」
「う、うん。シャマルも元気そうだね」
いきなりの質問攻めにユーノはたじろぎつつも家の中へと入っていった。
「あの…おじゃまします」
シャマルに連れられ居間へと入るとソファに座る赤毛の少女が目には入った。
「おー今日はフェレットじゃねーんだな」
「ヴィータは相変わらずだね」
挨拶より先に思ったことを口にしたヴィータにユーノは苦笑した。
しばらく動物形態になっていなかったので反論しようかとも思ったが、最近自分にはフェレットとしての印象が強い
ということを理解し始めたので受け流すことも覚えていた。たぶんこれが大人になるということだと自分を納得させている。
「ユーノ君いらっしゃい」
声がする方を見ると台所からはやてが顔を出した。
前の新年の休みに会ったときは着物だったし、局内で会うときは管理局の制服なのでエプロン姿というのは新鮮だった。
「そういえばシグナムとザフィーラは?」
ユーノはまだ見ぬ八神家の家族について尋ねた。
「あぁ、シグナムは買出しついでにザフィーラの散歩に行ってるで」
「そ…そうなんだ」
狼のザフィーラに散歩は必要なのだろうかとも思ったが、動物の飼い主同士は良い関係になりやすいとも聞くし、近所付き合いというのも
あるのだろうと思った。それにしても、過去に恐れられてきたヴォルケンリッターの将が今では散歩をし地域と親交を深めているとは
なんとも平和なことである。
「ユーノ君、この子を忘れてるんとちゃうん?」
はやてがそういうと手に乗せた十字架のアクセサリーが淡い光を放ち、半透明の少女を浮かび上がらせた。
『ユーノさん、お久しぶりです』
蒼天の書を持った少女がにっこりとこちらを見て微笑んだ。
「うん。久しぶりだねリィンフォース。調子はどう?」
『ばっちりです!』
リィンフォースはくるっと回ってアピールした。
はやての融合型デバイスであるリィンフォースUは、ユーノも制作に携わっているので今でもメンテナンスには参加している。
はやてがミッドチルダ式とベルカ式の両方の術式を使う上に、融合型デバイスは前例がないため完成といえる形に至ったのは
制作から1年半後のことだった。管理局メンテナンススタッフのマリーがハードウェア構成、ユーノがシステム構成を担当し
はやてが全体の監修を行ったのだが、作業は難航を極めた。
先行して作った杖、シュベルトクロイツは7機が破損し8機目でようやく全てのテストをクリアした。
ベルカ式の魔法を一から勉強したり、はやての要望を取り入れ外部設計し、内部設計、プログラミング…。
あまり思い出したくないほど過酷な進捗状況だったことは言うまでも無い。
もちろん一番苦労したのは全くデバイスの知識のないはやてであった。
「リィンフォースはユーノ君が来るのをとても楽しみにしてたのよ」
シャマルがリィンフォースの様子を見て言った。
『もちろんです!ユーノさんは私の生みの親ですから』
「私だって生みの親なんやけどなー」
元気よく話すリィンフォースに、はやてがわざとらしくそっぽを向きながら言った。
『はぅ、その、なんていうか、マイスターはお母さんで、ユーノさんがお父さん…ということで』
主人の悲しそうな表情を見て目をグルグル回しながら必死に弁解するリィンフォース。
(マリーも一緒に作ったんだけどね)
ユーノは笑いながらそう思い、ふとはやてを見ると少しはやての顔が赤いような気がした。
「あぁ!そうや、まだ今晩の夕食の下ごしらえの途中やった!!」
『あ!待ってください!!』
はやてはそそくさと台所に駆けていき、リィンフォースが後を追うようについていった。
「にぎやかだね」
「そ、そうね」
微笑みながら言うユーノにシャマルは少し恥ずかしげに返した。
*
「よっしゃー!!10連勝!!!」
ヴィータがガッツポーズをとり、ユーノは静かにコントローラーを置いた。
夕飯の準備が出来るまで暇だったのでヴィータに誘われて対戦ゲームを一緒にやることにしたのだが、結局一勝もできなかった。
ゲームを始める前に説明書を読もうとすると、
「そんなもんなくてもやってりゃ慣れる」
とヴィータが主張したので半ば無理やりぶっつけ本番で勝負することになった。
最初の3戦はコントローラーの全てのコマンドを打ち込むことに徹し操作方法を学習した。もちろんその間はヴィータは手加減など
してくれるはずもなく、数分も経たないうちにユーノの画面にはLOSTの大文字が浮かび上がった。
操作方法もだいたいわかり、ようやく人並みに操作できるようになったユーノだが、ヴィータとの経験の差からかまったく手も足も
でなかった。ヴィータはこのゲームをかなりやりこんでいるようだ。
「ほらほら、もうお夕飯できたからゲームは終わりやで」
おいしそうな匂いとともに、はやてがユーノ達を呼びに来た。
「ユーノは負けたんだから片付けな!」
そう言うとヴィータは脱兎の如く行ってしまった。
「もうヴィータ!ユーノ君はお客様やってのに…」
「あはは、別にいいよこのくらい」
ユーノがゲーム機を片付け始めると、エプロンを畳んだはやても手伝い始めた。
少しの間片付け作業で二人の間に沈黙が下りる。
「ヴィータもあれできちんとユーノ君に感謝してるんやで?」
「え?」
突然話し始めるはやてにユーノは少し驚いた。
「あの子は4人の中でも一番戦いが嫌いな優しい子なんや。今じゃ当たり前みたいになってしもたけど、
それでもやっぱり、この日常があるのはユーノ君や管理局のみんなのおかげやから…」
はやての話を聞いて、ユーノも改めてヴォルケンリッターの騎士達が歩んできた道のりに思い出した。
リンカーコアの蒐集や主の暴走、いくつものつらい出来事があっただろう。
前のリィンフォースの消滅も経て悲しみを乗り越えたからこそ今があるのだ。
ユーノが少し難しい顔をしていると微笑みながらはやてが言った。
「それにユーノ君とヴィータは歳も近いし、ちょっとはしゃいどるんやないかな?」
たしかにヴォルケンリッターの中で、ヴィータは設定された年齢は低く自分に近い。
「…っていうか、はやても僕と同い年だよね?」
あまりに自然にお姉さんぶるはやてに突っ込みをいれたユーノだった。
*
「ユーノ君は明日からどうするんや?」
はやてがヴィータの髪を乾かしながら言った。
はやては先ほどヴィータと一緒に風呂に入ったので頬が上気し髪が濡れている。
「あー、えっと、どうしよっかな…」
はやてから借りた本から顔を上げユーノは呟いた。
今日は泊まりがけというはやてとの約束だったが、それ以降のことはまったく考えてなかった。
帰って論文を書くのもいいし、好きな読書をするのもいい。時間があるということはこんなにも自由なことだとはつい最近まで忘れていた。
しかしせっかく海鳴市にいるのだ。会いたい人がいた。
ただ、時間の都合が合うかどうかわからないし普段からすれ違いが多かったので今も会えるかどうかあやしい。
そのことを考えていると、はやてがドライヤーのスイッチを切って言った。
「明後日学校なんやけど、一緒に行かへん?たぶんなのはちゃんもおると思うよ」
「学校って…どうやってさ?」
どうやらまだ夏休みに入っていないようだが、だったらなおさら自分のような部外者が入るわけにはいかない。
それにフェレットで行って、もしばれたら小さな騒ぎになりかねない。
「あーそれは大丈夫や。一人くらい増えてもだれも気付かへんから」
ユーノが考えているとヴィータの髪を梳かしながらはやては笑って言った。どうやらユーノが通っていた魔法学院のように比較的出入りが自由な、
日本でいう大学のようなシステムのようだ。それならば普通に授業を受けてもばれることはないだろう。
ユーノ自身なのは達が受けている授業に興味があった。
「うん、じゃあそうしようかな」
「決まりやな」
ユーノがそう伝えるとはやては微笑んだ。ただ、その微笑に裏があるような気がしたのは気のせいだろうか。
「次、入っていいぞ」
シグナムが頭を拭きながら居間に入ってきた。
普段髪を下ろしたところを見たことがなかったので少し見入ってしまったが、ユーノはシグナムに入れ替わるように風呂場へ行った。
「ふぅ…」
湯船に浸かりながらパシャッと顔にお湯をかける。眼鏡をしていないことと湯気のせいか室内全体が歪んで見える。
フェレットになると視力が上がるのはあの変身魔法が少し特別なものだからだろうか、と思った。
そういえば肩の下辺りまで伸びた髪が完全に湯船に入ってしまっている。
伸ばしているのはなのはからもらったリボンをつけるためもあるが、忙しさのあまり切るのも億劫になっているという理由もあった。
浴室の天井を見上げ、改めてはやての家に来てからのことを考える。
ヴィータがユーノのおかずをとったり、そのことでシグナムがヴィータを叱ってはやてがそれをなだめたり。
本当の家族なんだと思った。たぶんユーノが久しく求めていたのはこうした触れ合いだったのだ。
生活の中にある何気ないやりとりや会話。それが心に潤いをもたらす。思い返せば最近は仕事のことばかりを考えていた。
忙しさの中で、そんな簡単なことすら忘れていたなんてどうかしていると思う。
そのことを気付かせてくれたはやてに心の中で感謝した。
「ユーノ君?」
ガラッと扉が開いた音がし、曇りガラスの前に人影が見えた。
「えっと、はやて?どうしたの?」
当然ながら自分は素っ裸で無防備な状態だ。扉一枚隔てているとはいえ少し恥ずかしかった。
「いや、寝るときのパジャマを置いとこかなと思って」
どうやらわざわざ自分のために寝巻きを用意してくれたようだ。今夜は動物形態で寝ようと思っていたのだが、
せっかくの好意を無下にするのも失礼だと思った。
「うん。ありがとう」
「どういたしまして」
そう言うとはやては静かに出て行った。
(そろそろ上がろう…)
考え事をしていたせいかずいぶん長いこと湯船に浸かっていたようだ。少しのぼせてしまっている。
浴室を出て体を拭き、ごしごしとバスタオルで頭の水分を取った。そして流しの脇に置いてあるはやての用意してくれた寝巻きを手に取る。
眼鏡をかけなくてもわかる。それは、明らかに制服だった。スカート付きの。
「ちょっとはやて!これどういうこと!?」
眼鏡もリボンも忘れ、ユーノは風呂場から出てきてはやての前に茶色の制服を広げる。もちろん自分の服は着ているがかなり乱れていた。
「しいて言えば…予行演習?」
はやては笑いを堪えながら言った。テレビを見ていたヴィータとシャマルはユーノの剣幕と手に持った制服を見て目を点にしている。
「予行演習って…」
「だってうちの学校、女子中学やもん」
面白そうに言うはやてにユーノはようやくはやての魂胆を理解した。ようするに女子の制服を着て学校に忍び込め、ということらしい。
「それ面白そーじゃん。ぜってー似合うって」
「わ、私も見たいなー。シグナムもそう思うわよね?」
ヴィータが素直に感想を言い、シャマルがシグナムに同意を求めた。
居間にいる全員の視線がソファでお茶を飲んでいたシグナムに集まる。
シグナムはユーノの顔と手に持った制服を交互に見た。
「あくまで客観的ではなく、私的な意見なのだが…」
シグナムがことり、と湯飲みを置いた。部屋に緊張が走り、沈黙が続く。ザフィーラがあくびをした。
「私も見たい」
「「「ほらーー」」」
「いや、ほらーじゃなくて!」
まさに四面楚歌状態だったがユーノは必死に反論した。
「と、とにかく!僕は絶対着ないからね!!」
そう言うと制服をほっぽりだして眼鏡とリボンを取りに風呂場へと戻って行った。
「もー絶対似合うと思うたのになー」
はやてが口を尖らせながら制服をハンガーにかけた。
そんなこんなで、最後までにぎやかに八神家の夜は更けていくのだった。
次回へ続く
次回 第四話 「とある学内風景」
日常パートはまったり見て欲しいです。ザフィーラの出番期待してた方、すいません。
次回ようやくなのは達登場です。それでは。
66 :
さばかん:2006/09/24(日) 23:02:45 ID:Q/McbhoW
みなさんどうもです。
二次創作っぽくなくてすみません。二次創作を嘗めているわけではないんです。
もうすぐ二次っぽくなる・・・はず
暗い話が終わった後、なんか色々バトルがあるんで、それっぽくなる・・・はずです。
今回も暖かい目で見てくれると有難いです。
ちょいグロ有り。苦手な人はスルーして下さいね。
とは言ったものの、彼女達どちらかを押し倒したまでは本当だ。
押し倒しただけ、いや、本当に。
僕にだって先を考える能力の一つか二つはある。
仮に、さっきの夢、つまり、押し倒して何度も中だし・・・な〜んてもんをかましたりしたら
僕はすぐにでも追い出されるか、養子縁組を白紙に戻すか(そう簡単に戻せるもんかは知らんが)
この山の動物の餌になっているかの何(いず)れ。
その後は僕が脅かしてごめんと、いつもより心持丁寧に謝った。
彼女も(どっちかわからん)悪戯が過ぎたと笑いながら謝ってくれた。・・・よかった。
夕食も何事も無かったかのように僕に接してくれた。勿論、どっちかは分からない。
夕食後、居間で茶を飲みながら落ち着いているとグレアムの爺さんが話しかけていた。
居間を去るついでの言葉。その言葉は、その軽さと比べて、重要なワードだった。
「明日だ。朝食後、離れの道場に行く」
おやすみ、と襖を閉めたグレアムに頷きだけで返した。
ってか、離れ好きだな。
風呂に入り、部屋に戻る。風呂は広かったが、何故か銭湯っぽいと言うよりは、銭湯を丸ごと
買いましたよって感じだった。
コンビニで売ってる、「北斗の拳一気読み」とは規模が違う丸買いだった。
ラオウ、ハァハァ。ちっ違う!そんな趣味は無い。
まぁ、海外では公共風呂。いや、風呂が珍しいそうだ。風呂は主に治療の手段として使うらしい。
流石金持ち。
で、そこでクロノと会った。彼は風呂に浸かっていて、顔が濡れているせいか、泣いているように見えた。
ひょっとしたら本当に泣いていたのかもしれない。泣き虫さんめ。だが、本人には言わない。
男は泣くことがカッコ悪いと思っているからだ。適当な会話をして、最後にクロノは
「明日、無理をせずに」
と、なんか激励の言葉をくれた。彼も事情は知っているらしい。と言うよりはここの連中はみんな
知っているだろう。
寝る前に思い浮かべるのは、彼女の肩の白さと、クロノ・・・僕と年齢が近いはずなのに、アレが
でけぇ!
後で知ったのだが、彼って14なんだな。
朝食を食べ終わり、僕は約束の道場に向かう。
ガラガラガラ。たてつけが悪い大きな引き戸が開く
おっさん曰く、こう言うのが雰囲気があっていいんだそうだ。
理解不能。
中はわりと広い道場だった。勿体無い。やわらちゃんにでも譲れよ。
「さて、はじめようか」
僕の他にもあと二人。御存知、双子姉妹だ。
さて、どんなことをするのだろうと思ったら
「ではラジオ体操第二から」
第二かよ・・・勘弁してくれ。って言う突っ込みでは無く、案外普通なんだなって突っ込みだ。
第二を終えると、道場をランニング、腕立て、腹筋、リプレイハズシの練習を終え。
さっそく本番だった。
「ではユーノくん。さっそく本番だが・・・そう焦らなくていい。『魔法』とは、自分の心と向き合うこと
だからね」
そう『魔法』だ。
それは2年前。グレアムと二人で話す機会を得た時の話。
「君には魔法使いの素質があるから、私の養子にならないか?
私は金持ちだし、損な話ではないだろ」
誰か、救急車を呼んでくれ。
「いやいやいや!私は白雉(はくち)じゃない。ちゃーんとした大人だよ」
怪訝な表情で。
「で?どこまでがつっこみ所なんですか」
「君のなら、私のアナの奥に突っ込んででも、」
ねぇねぇみんなーちょっと来てー変なジジイがいるよー。
吐きそうな顔をしながら部屋を去ろうとしたら、じいさんが止めに入る。
「まったまった。全部本気・・・いや、最後の一言は嘘!私は本気なんだ!
信じてくれ」
まず、金持ちは自らを金持ちと言うだろうか。後、魔法使いってなんだ?
童貞かこのじいさん。
「違う違う。たしかに私は魔法使いだ。君みたいな優秀な素質をもつ子を
探してるんだ」
「・・・だから。その『魔法』って何ですか?どっかの宗教勧誘ならお断りしますよ」
「ん〜・・・論より証拠だな。よし!おじいちゃんが魔法を見せてあげようっ!」
にこにこ顔でそう言ってガラス戸を開けると手のひらを前に構えた。
瞬間。
ドンと言うマヌケ音と同時に光線らしきものを掌から出していて、そして、
ど〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!!!!!!!
さっきのドンが子分なら今のど〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん
はボスだな。
光線が当たった民家周辺が爆発して火が翼のように燃え上がっていた。
季節はずれのキャンプファイヤーに唖然とする。
周辺の人のきゃあきゃあと言う声がキャンプファイヤーにますます酷似する。
「フォトンバレット。基本的な射撃魔法だが、上級の魔導師にかかれば
・・・まぁそこそこの威力だ」
そう言って再び椅子に腰かける。にこにこ顔で。
まぁ、そんな光景みたら信じるしか無い。
それから色々と事情を聞いた。
自分の孫、詰まり正式な後継者の体が弱く、優秀なサポート役が欲しいとか、
自分はヲタクで、好きなゲームとか色々。
そして今、僕は座り込み、魔法を発動させようと努力している。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「うわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!
せめてコツを教えて〜〜!!!!!!」
わめく僕にグレアムが、
「さぁ。そればっかりは自分で見つけてくれ」
そんな無茶な。困った僕に双子どっちかが駆け寄る。
「あのね。私のコツでいいなら教えるよ」
「ほ、本当に!助かる」
魔法の話をするってことは恐らくフェイトだろう。
グレアム曰く、フェイトとアリシアのお母さんは物凄い魔導師だったのだが、
とある事情で・・・と言っただけで僕には何一つ話してくれなかったグレアムだったが。
まぁ色々あって二人を預かっているらしい。
そのお母さんの魔力資質をちょっとだけ受け継いだのがフェイトで全く受け継がなかったのが
アリシアなんだそうだ。しかし、こんなに可愛い女の子の双子ならば、きっとお母さんも美人な
のだろうとも思う。
「で、そのコツって奴は?」
「心を、燃やす!!!!!!!!!!!!!!」
論外。
修行は早く終わり。といっても、座ってただけだけど。
昨日のように森を駆ける二人に、僕は以外にも追いついていた。
あんな夢のせいで彼女達とまともにお喋りできない、とも思ったが。
違った。彼女達を見ると・・・その・・・ドキドキした。
性欲とも似ているそれは、心地良いものだった。とくんとくん。
だが、僕の心には新たな感情が誕生していた。
クロノと仲良くする二人。それを見る僕の瞳が熱さと細さで満たされる。
所謂(いわゆる)嫉妬。
ああ、何となく分かった。これは・・・恋。
「ユーノ!今日は速いねー。もう慣れちゃった?」
「ん・・・まぁね」
正直、必死だった。
僕の体は朝から筋肉痛でもうこれ以上は止めとけよと痛む。
いや。
僕は彼女達の事がもっと知りたい。もっと近くにいたい。
そして・・・3人でセ・・・
想像して反応した体のせいで走り辛くなる。畜生。
こんな幸せが長く、できれば永遠に、でなければ緩慢に続けば良いと
何度も思った。僕が大好きな家族。大好きなフェイトとアリシア・・・
だが、幸福とはつまり、落し物。
拾う時もあるし、
勿論、 ナクスコトダッテ
ここに来て何ヶ月が経過した。
僕は魔法により強い興味でどんどん魔法を
習得。その早さに一番驚いたのはグレアムだった。
もう教えることは無いと笑っていた。
僕の得意魔法は補助で、まさにグレアムが欲しがっていた魔導師だった。
そんな事はどうでも良い。
僕は今日、ある決心をして、二人を森の奥へと呼んだ。
そして、僕は集まった二人にただ、
「好き」
と、一言だけ。
その一言に彼女達は何を思ったのだろう。そう考える時間より早く、彼女達は言う。
「私もユーノが好き」
「私も、大切な友達で、大切な家族だ」
違う。
「いや・・・そういう意味じゃ無くて・・・」
「分かってる。まだちょっとの時期しか一緒にいないもんね。大丈夫!
み〜〜〜〜んなユーノが好きだよ」
違う違う違う。
「ユーノ。だから、私達は大丈夫だ。ずっと、一緒だ」
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う
違う違う違う違う違う違う
ちがう
「いいかげんにしろっ!お前らに何の気持が分かるんだよ!僕は毎日毎晩、君たちの
事をずっと考えていた。その姿に惹かれ、その姿に安心し、その姿をどんどん追いかけて
行きたいとそう思った。そして、その気持は短い間だったけど、確かな気持なんだって、
思える。いや、そうなんだ!!毎晩、君達の事を思って自慰行為もした・・・・・・・・・・・
ああ、言っちまったよ!でももう良いんだ!お前らだって薄々気付いてたんだろう?
こんなつまんねぇ、森を駆け回る遊びなんて、子犬でもロクに満足できない遊びだ。
馬鹿バカバカバカバカしい!!!!僕の気持を弄んでそんなに楽しいか?永遠に
家族か?友達か?そんな緩慢な死に等しい関係を君達二人に望んで無い!!!
ただ・・・愛おしい。それだけなんだ!もう我慢出来ないんだ!さあ!僕のこの気持
を楽にしてくれ!!!優しく抱き締めるなり、首を絞めるなり!!!」
矛盾した幸福論が自分の中を駆け回る。緩慢な幸福が欲しい、しかし、このままの
関係は嫌だ。
・・・崩壊のスイッチが音も無く沈む。
「ゆ、ユーノ落ち着いて!私達は君の事が大好きだ!!」
「うん、私も大好きだ」
二人の優しさが痛い・・・ごめん。ごめんね。こんな我侭(わがまま)な奴で。
本当に。
そして、僕は生涯永遠に後悔する事になる一言を発する。
「てめぇら、死んでしまえっ!!!!!!!!!!」
そう言って森から去っていった。
もし、彼女達に会えたのなら。ただ一言、こんな僕を許してくださいと言うしかない。
呪いの言葉が最後のコミュニケーションだった。
部屋で不貞寝をして、やっと目が覚める。
もう夜だった。
・・・僕は最低だった。フェイトとアリシアにとって、僕の言葉なんて意味不明以外の
何者でもない。
ごめんね、二人とも。時間なんて関係無いと思ってた。・・・でも、違った。
僕の気持を伝えるには時間がいるんだ。
「・・・バカ」
彼女達に謝ろう。訳分かんないこと言ってごめんねって。彼女達はきっと許してくれる。
その罪な位優しい笑顔で。
後、腹も減った。
・・・居間には明かりがついていなかった。他の誰かの部屋に行っても誰もいない。
どこに行ったのかと思ったら、道場にぼうとした光が、まるで儚い蛍だと思った。
道場に向かう。だが、一瞬だけ足が止まった。
勘だった。行かない方がいいと、誰かが告げている。
そんなのは一瞬で、僕は力任せにそれを引っ張った。
着いた、道場の扉を開ける。
一体何のまねだ?
有得ない何かが、僕の全身にどばっと、車が弾いた水溜りみたいに僕の体に掛かった。
何かの塊が足やら腕やらに当たった。
暖かい何か、それが何なのか知りたくて、僕は急いで閉じた瞳を開けてしまった。
べっとりと、僕の腕は真っ赤になっていた。
「ひっ・・・!」
恐すぎてまともに声がでない。そう、こいつが全身にかかっているのだ。
だが、これは自分の血ではないと、冷静に考える脳はあった。
暫くすると落ち着いて。そこら辺を眺める。
血の湖・・・吐きそうになるのをどうにか抑えて。この血が誰のものかと疑問に思ったとき
彼女の綺麗な金髪が、プカプカと赤い血に浮いていた。
「へ・・・嘘・・・」
その金髪の横に彼女の綺麗な瞳がプカプカと懸命に何かを見るように浮かんで・・・
「う・・・うあああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!!」
僕はそれが何か悟った時、目から熱い涙が流れた。それは傍目から見れば
血の涙を流しているようにも見える。
そして、その姿をグレアムとクロノは彫像のように冷たく、極寒の瞳で眺めていた。
世界は、絶対零度と化した。
つづく☆
396氏GJ!
しかし、ユーノの制服姿を見たいとは…シグナムもそっちの趣味が(ry
シャマルの執務室へと通された一同は、落ち着かなかった。
リンディ、クロノ、それにシグナムになのは。
今は運び込まれたフェイトのもとに行っているシャマルが帰ってくるのを
待つこの時間が、もどかしい。
「……フェイトちゃん……」
頬に白い絆創膏、右手に包帯を巻いたなのはが呟いた。
自らの身を案じて駆けつけてくれた友。
詠唱中に突如として膝を折り、倒れたフェイトの姿が脳内に蘇る。
「大丈夫だ。シャマルがついている」
「シグナムさん……」
「お前が責任を感じることはない」
今にも泣き出しそうな彼女の様子に、シグナムがそっと肩に手を置いた。
彼女のほうも、額に包帯を巻いている。
「……そんなに僕はあの子に、無理をさせていたんだろうか」
「クロノくん」
「……兄、失格だな」
「駄目よ、ほら。しっかりしなさい」
「……はい」
自嘲気味に笑ったクロノを、リンディがたしなめる。
そう、悪いのは彼ではない。問題があるとすれば局の───……。
いや、よそう。言ってもはじまらない。リンディは息子に
気疲れした笑顔を向け、思う。
「お待たせしました」
なのは達の沈黙思考を遮り、シャマルが扉を開けて戻ってきた。
彼女の手の中には、資料と思しき分厚いファイルが収まっていて。
いつもの温和な表情とは一変した、凝り固まった顔でシャマルは言った。
「リンディ提督と、クロノ艦長に───……お聞きしたいこと。また、お話したいことがあります」
魔法少女リリカルなのはA’s −the day−
第三話 タイム・リミット
「……いえ。います。いさせてください」
つらい話になるかもしれない。ひょっとすると、聞かないほうがいいかもしれない。
己を気遣って言ってくれているのだとはわかっていても、
なのはには退出を促すシャマルの提案に頷くことができなかった。
「クロノくんやリンディ提督さえよければ……わたしも、聞きたいです」
「なのはさん……」
彼女の言に母子は顔を見合わせ、頷きあう。
特に二人とも異論はなく、むしろ彼女のそういった気持ちが嬉しかった。
「……いいわ。あなたなら」
「ああ。フェイトもきっと、そう言うだろうし。シグナムも」
「ありがとう……ございます」
「はい」
「わかりました。じゃあ、シグナム。なのはちゃんをお願いね」
無理に作ったような軽い微笑で、シャマルは一同の前に腰を下ろす。
下ろして───何から話すべきか、思案に暮れているように見えた。
彼女の顔に一切の余裕もなく。顔色も悪かったからだ。
「……一ヶ月です」
「え?」
そして天を仰ぎ、重苦しい沈黙が続く中。
ふと顔を下ろした彼女は何の前触れもなくたった一言、ぽつりと言った。
一瞬、彼女が何を言ったのか一同は理解がついていかない。
「何……が?だ?」
「あと……一ヶ月だと、言っているんです」
言葉を吐き出すシャマルの表情は、一単語一単語を絞り出すごとに
苦悶の色を増していく。クロノの聞いた質問に、答えるたびに。
「フェイトちゃんのリンカーコアは、あと一ヶ月で……消滅します」
すなわち、それが意味することは。
彼女に。彼女たち家族や友人に課せられた、残酷な現実。
「あの子に残された時間は……あと、一ヶ月。長くても───それが、精一杯でしょう」
* * *
「なのはちゃん?」
「え?」
あと一月。一月しかない。
シャマルの宣告と、彼女達とのやりとり。
そのことばかりが頭に浮かび、なのはは上の空だった。
「どーしたのよ。昨日からずっとそんなじゃない。なにかあった?」
フェイトの身に起こった異常。
それは、リンカーコアそのものが徐々に失われていくというものだった。
詳しい検査をしてようやく判明したその症状はシャマル曰く未だかつて例のないものであり。
自然に誕生し生きるものならば、どんな生物であっても大なり小なり持っている
リンカーコアがひとりでに消滅していくなど、考えられないことであるという。
なくなってしまえば重要な器官を失うのと同様に、生物は致命的な機能不全を起こすから。
「……私、変?」
考えられるのは彼女の成長と酷使に、リンカーコアそのものが磨耗しついていけなくなったということ。
しかし先に述べたとおりそれは普通起こることなどけっしてない。
人のリンカーコアは頑丈で、またその消耗もたかが知れている。
よっていくら過労がこのところあったとはいえ、それも原因とは思えず。
もともと、何かの要因がなければ引き金とはなりえない症例らしい。
「うん」
「なんでもないよ。……ちょっと、眠いだけ」
「ほんとでしょーね」
フェイトみたくあんたまで入院したりしないようにね。
心配をかけているということと、嘘をついていること。
二つの負い目が、アリサの口から出た友の名によって増幅され、ちくりと彼女の胸を痛くする。
「……うん。気をつけるから、大丈夫」
普通の人間───いや、生物ならば有り得ない命の危機。
──何か、心当たりになるようなことはありませんか。フェイトちゃんのことで。──
シャマルが尋ねると同時に浮かべた表情は、フェイトを知る者としてまた、
医療に携わる者としての必死の原因究明に向けられたものであったと思う。
そして彼女の問うたその質問の心当たりを、なのはも。
クロノやリンディも持っていた。
持っていたからこそ俯き、口を閉ざすより他になかった。
それが認めたくない現実だということを、理解したが故に。
言いたくなかった。彼女の肉体があまりに危ういバランスの上に生まれたということを。
かつての大魔導士があの子を評して言った言葉が、思い出されてきたのだ。
「……なのは?今度は怖い顔してるよ?どうしたわけ?」
「っあ、……少し、嫌なことがあって」
「管理局で?」
「……うん」
無意識に『彼女』に対する怒りと、当時感じていた嫌悪感が顔に出てしまっていたらしい。
気取られぬように同僚に一人いる怠け者のことを話して、はぐらかす。
プレシア・テスタロッサ。ただ一途であったあの人のことが、
今となっては憎々しくさえ思えてくる。
そんなことを今更思ったところで、なにも得るものがないことはわかっていても、だ。
(……違う。フェイトちゃんは人形なんかじゃない)
誰がなんと言おうと、あの子は人間だ。
生まれが少し人と違うだけの、やさしくて恥かしがりやな普通の女の子。
なのはにとって一番の、大切な友達。
(フェイトちゃんが……フェイトちゃん以外であるはずがない)
プレシアの本当の娘、アリシア・テスタロッサのクローン。
フェイト自身が整理と決着をつけ忘れようとしていた過去にして、
親友であるアリサたちや同僚のはやてですら知らない伏せられた事実。
それを知るわずかな者のひとりとしてなのはは今ここで声をあげて否定したかった。
「ひっどいわね、そいつ」
「うん……」
「まあ、気にしててもしかたないし。わたしはわたしで頑張ってるから」
「そーね、ほっときなさいそんなやつ」
少し行儀悪く机の上に座り、アリサが言った。
この場にはやてが仕事でいなくて、本当によかったと思う。
アリサとすずかにしたこの話は数ヶ月前に局の食堂で彼女にこぼした、
使い古された他愛のない愚痴だったから。
彼女がいたら無理をしているということが二人にばれてしまっていただろう。
「ほんとに、大丈夫。フェイトちゃんがお休みしてる分も頑張らないと」
フェイトの現状も、言えるわけがなかった。
人工的に生み出された彼女の肉体、リンカーコアが彼女の成長に追いつかず
不具合を生じ、朽ち果てようとしている、などと。
断じて言えるものか。言ってはならないとさえ思う。
どうすればいいのだろう。
歯痒さと焦燥が、なのはの心をひたすらに満たしていた。
他の方々へのレスは後日。
少しずつ人が戻ってきつつある・・・のかな?
第7話 c part
「二、三日アリシアに休みを貰えませんか」
「それが……私に時間を割かせてまで聞かせたかったこと?」
冷徹な眼光を全身に浴びるも、屈せず頷いた。
「それはアリシアが言っていたことかしら」
「…………いえ、私の判断です」
玉座に威厳と共に居座っている彼女の顔は驚くほど無表情だった。
眼下で立ち尽くす私を見てはいるだろうけど、存在として認識していない、そんな気がする。
一人でいるにはあまりに広い主の間。窓など無く、朝日すら差し込まないせいか雰囲気すら鋭く冷たい。
「なら無理な相談ね」
「っ! なぜです!!」
意識してもいないのに声には怒気がこもっていた。
荒げた声は虚しく反響し、それでもすぐにまた静けさが私を包んだ。
「あの子の望み以外、聞く必要があるのかしら?」
「私はアリシアの健康面に関して意見しているんです。教育係として彼女の体調を第一に考えるのは当然のことです」
「アリシアはあなたが心配するほどやわな子供では無いわ。正真正銘、私の血を引いているのだから」
「しかし!」
食い下がる。必死の訴えは空回りするばかりでも私は易々引き下がるつもりはない。
実の娘ならば、娘だからこそなのだ。プレシアだって理解してくれる。
だというのに――
「主の影響かしら……まるで保護者気取りね」
「主だからです……例えそれが保護者気取りでも」
「口が減らない使い魔ね……まぁ、昔からそうだったんでしょうけど」
彼女は偏屈すぎた。
侮蔑塗れの視線で私を見下しながら自分の考えを決して曲げない。
「ならあなたがどうにかすればいいでしょう? 教育係で保護者なら」
「あなたは母親でしょう! アリシアだって甘えたい盛りです!」
「十分に甘えさせたわ、あなたが来る前に。いわば終止符を打ったのはあなたなのだから」
「なっ……」
一瞬、彼女の目が笑った。
皮肉たっぷりの嘲笑で。
「でも少しは感謝しているわ。ちょうど猫の手を借りたいところだったの、私の計画を進めるために」
「その計画が……あの次元とミッドチルダにジュエルシードを撒くことですか?」
返事はない。
それを査定と受け取り私は続ける。
「一体あなたは何を成そうとしているのですか? アリシアを蘇らせたなら、それで悲願は叶っているんじゃないんですか?」
彼女の意図がわからない。
望みを具現化するロストロギア。それを自身の欲望に使わず、他者の住まう世界に譲る。
慈善事業でもしているつもりか? そうは考えてもこの魔導師が見返りもなしに他者に尽くす情念があるとは思えない。
ならばなんだ? ただ世界を混乱の渦に引き込みたいだけなのか。それさえ有り得ない。
彼女のすることの裏には必ず真意が隠されている。私が知るプレシアとはそういう女性だ。
「ええ、アリシアは私の元に帰ってきてくれた。でもね、有り余る力が手元にあると人はもっと高みを目指そうとするの」
「高み……」
ここに来てようやく彼女が人らしい動きを見せた。
立ち上がり、両の手を虚空に広げどこか夢見るような口調で喋り始める。
「過去は取り戻せない……失ったものは二度とこの手に帰らない……それを決めたのは誰?」
誰に向けられたわけでもない問い。
遥か昔から、きっとこれからも絶対不変の真理。
「誰でもない、それは世界の約束」
虚空を見つめていた瞳が突然私を捉えた。
得体の知れない感覚が体を突き抜ける。
「でも約束はあくまであの世界の約束。あなたにはわかるかしら? この意味が」
「…………あなたの立っている世界にそれは当てはまらない」
「そう、私はアルハザードの主。あの世界とは違う!」
彼女の声にはっきりとした抑揚がつく。高ぶる感情を抑えられないのか、私としては始めて見る姿だ。
「だから過去を取り戻す! 望むもの全てを作り出す! これこそアルハザードの約束!」
眼を見開き、拳を強く握り締める。
その様、まるで希望を掴み取るかのごとく。
「ならばあなたは……何を作り出すのですか」
もう全ての望みは手にしたはずだというのに。
まだ高みにたどり着けないなら一体何があるというのですか。
「――全てよ」
なるほど……そう来ましたか。
確固たる答えが聞けると思えば、最後の最後で飛び出してきたのは抽象的な答え。
「全て幸せのためですか?」
「聞くまでも無いでしょう? 昔の主の言いたいごとくらい察しなさい」
いや、彼女にとっては文字通りの意味なのだ。
本当に彼女はすべて掴み取ろうとしている。
「さぁ、もう話すことは無いわ。もっともっとジュエルシードを撒きなさい。私とアリシアの幸せのために礎になりなさい」
言われなくともそうするつもりだ。
あなたのためでなくアリシアのために。
「ええ、ですが最後に二つお聞きしたいことがあります?」
「なぁに? 文句ならお断りよ」
「それはありません」
立ち上がったことで余計に見下ろされる形になって気圧されそうになる。
威厳は時として恐怖に近い圧力を生むらしい。
悟られまいと足に力を込めた。
「私がここに誘われる前まで、あなたとアリシアはいい親子で在ったんですか?」
この答えはおそらく「イエス」のはずだ。
邂逅の時、彼女は以前の姿からでは想像できないくらい穏やかな姿で存在していた。
今目の前にいる見慣れた魔導師としての姿ではない、母親としての姿。
残念ながら、私が来た日からもう長らく拝んではいないのだが。彼女の言う通り私が終止符ならばアリシアからある意味母親を奪ってしまったのだ。
「あなたが考えていることと寸分違わず……」
やはりこの人に生み出されただけのことはある。
ふふ……心が痛いですね。
「ではもう一つ。……私としてはこれが今一番あなたの口から聞いてみたいことです」
「なにかしら……? 大層下らないことかしら」
「無駄な時間は割きたくないのでしょう?」
ふん、と不機嫌な唸りが耳を擽らせた。
無論だ。あなたにとって大層下らない質問ですよ。
きっとね。
「母親としてのあなた……魔導師としてのあなた…………どちらが本当のあなたですか?」
どんなことよりも一番に聞きたいこと。
あなたのアイデンティティを問うこと。
片割れの彼女は役者ではないのかと。
「それだけは教えてくれますよね」
「…………」
――途端、沈黙。
今まで饒舌だった彼女から言葉が消えた。
静寂が私たちを隔てるように立ち塞がる。
「……両方よ。私はアリシアの母親であり、大魔導師プレシア・テスタロッサ」
踵を返すは彼女だ。
玉座の奥にあるであろう自室へ行くのだろう。ここからでは暗闇にただ消えていくだけにしか見えないが。
「そうですか……ありがとうございます」
以前の主に敬意を込めて帽子を取り深く頭を垂れた。
耳を人前に晒すなど昔はしないものだったのに。
アリシアのおかげ、ですかね。
私も踵を返す。大扉は来た時と同じく大きさに不釣合いな手ごたえで私を送り出す。
そんな時だった。
不意に私の耳に彼女の声が響いた。
「もしかしたら…………どちらでもないのかしらね」
振り向いた時には既に彼女は闇の中。
最後の最後で、彼女はまた私の心に疑問を作ってくれたらしい。
「ほんとにあなたは意地悪ですね」
開いた扉の隙間から暖かな陽光が差し込んだ。
光の中へ私も一歩踏み出した。
* * *
「戦いなさいアルフ、それとも私に消されたいとでも?」
嵐のように降り注いでくる山吹色のフォトンランサー。
避け、砕き、それでも数が多すぎていくつかがあたしの手足を掠めていった。
直撃しなかったのは幸いだけど……。
「だからってリニスと戦いたくない! あんな女の味方をしてなんになるのさ! おかしいだろ!?」
この前も言ったことだけど今日は伝わるかもしれない。
すがる思いをあたしはリニスに叫び続けた。
「せっかくさ帰って来れたんだからフェイトやあたしと一緒に暮らそうよ! アリシアだって騙されてるんだろう? だから四人一緒にさ!」
「戯言ですよアルフ。それとも前のように拘束されながら二人の戦いを見物しましょうか?」
腕を組みながらリニスはすごく冷たい目であたしを見つめている。
すごく嫌な感じだ。あたしが大嫌いな感じ。
あの女と同じような……そんな感じ。
「それも嫌だ! だからって戦いたくもない!」
「あなたは子供じゃないんです。いい加減覚悟を決めなさい」
リニスの言いたいことはわかる。
このまま黙ってやられるか。それともリニスを――。
「私は今はアリシアの使い魔です。あなたはフェイトの使い魔でしょう? ならば答えは出ているはずです」
主を守り、助けるのが使い魔の使命。
あたしだってそのくらい知ってる。あの契約の日からフェイトの使い魔としての心構えはあたしの中に強く芽吹いている。
フェイトはアリシアと戦っている。本当なら今すぐに飛んで行ってフェイトを助けなきゃいけない。
きっとリニスもそれは同じ。同じだからあたしたちは互いに睨みあっているんだ。
「フェイトを助けてみなさい。私はアリシアを助けます」
「そのために目の前の邪魔者を……」
「倒す」
そうだ……あたしに戸惑ってる暇なんてない!
この前のように躊躇って、手も足も出ないままやられるなんて使い魔失格だ。
「その気になりましたか」
「ああ、あたしだって覚悟を決めるよ。リニスが相手でも……それ以上に――」
フェイトはあたしの使い魔。
フェイトはご主人様。
フェイトは大切な家族。
フェイトは――。
「大切な人だから! だからあたしはフェイトを守り抜く!!」
「ええ、それでこそ使い魔です! ……アルフ、本当に立派になりましたね」
「……リニス?」
「これで遠慮なく戦えます」
リニスの背中越しに金色が轟いた。
多分、フェイトとアリシアの魔法がぶつかったせいだと思う。ご主人様ながらとんでもない魔力だ。
「野生を剥き出しにして戦うなど今までならなかったというのに……人も、使い魔も変わるものですね」
空を仰ぎ、大きく息をつくリニスはなんだか心底ほっとしてるように見えた。
うまく言い表せないけど……なんだか溜め込んでいたものが無くなって吹っ切れた感じみたいな。
「では――」
おもむろにリニスの手が帽子と法衣を鷲づかみ、引きちぎるように宙へと放り投げた。
同時に再構成されるジャケット。衣が光に包まれて見る見る形を変えていく。
「えっ……?」
目の前のリニスは記憶のどこにもいないリニスだった。
下はロングスカートからハーフパンツに。
腕全部を覆っていた袖は見る影も無くなくなり、本当に衣一枚って表現のノースリーブを纏うだけ。
あたしみたいに魔法より格闘を重視したバリアジャケット。
「帽子が常にないというのは……聞こえが言い分、違和感を感じますね」
露になった黒茶の耳。狼と似ているようで違う山猫の耳。
何度か首を振り、耳を動かし、右手を前にゆっくりと構えを作る。
「魔法より直接殴りあった方があなたには効果がありますからね」
「なんだい、あたしに合わせてくれるってこと?」
「半分は」
ならなおさら負けられないね……これ。
本音を言えば魔法で圧倒される方が面倒だったからすごく助かる。
「腕部、脚部及び背部、ソニックセイル展開」
言葉通りの場所に光の羽。
フェイトが言ってたアリシアの加速魔法。教えたのはやっぱりリニスみたいだ。
速いのには慣れてるけど、ものすごく速いは未知の領域。
「しょうがないか……あたしもあんまり制御できてないけど」
なら、あたしなりのやり方で乗り越えてみせてやる。
「マイティラダー!!」
両手を交差、そのまま腰へ勢いよく引く!
二の腕まで一瞬で緋色が覆い、すぐさま甲羅のような手甲を形作る。
当然これで終わりじゃない。足にだって膝上まで緋色の甲冑が覆い、あたしなりの強化魔法が完成する。
打撃を各段に高める覚えたての強化魔法。まだまだ魔力の制御は難しいんだけどね。
「剛力の舵……ですか」
「リニスのは速さの帆だろ」
「舐めてもらっては困りますね。これは音速を捕らえるための帆です」
口調は誇らしげでも構えに隙はまったく無い。
手加減すればどうなるか。なのはじゃないけど全力全開でぶつからないと勝てない。
「同じだろ? 少なくとも今はどうでもいいことだと思うけど」
「そうですね。こんな些細なこと……今は」
全ては主人のために。
フェイトのために。
「では……行きます!」
「ああ!」
もう迷いは――ない!
* * *
「もう……止めよう、アリシア」
濛々と煙が立ち込める中、静かにわたしは呼びかけた。
けど、遮られた向こうから返事は無い。
「夢を見させるって私には良くわからない。でもミッドチルダの人たちを傷つけてまで夢なんて見させる意味ないよ」
ジュエルシードは今や手当たり次第に人の願いを吸収して次々に発動している。
しかも幾多の願いを混ぜ合わせたせいなのか、発動体は異形の怪物と成り果てミッドチルダ全体を騒がしている。
それが人に夢を見させることだというなら私は絶対止めなきゃいけない。
「だから、止めよ……。憎いのが私なら、その気持ち全部ぶつけていいから」
私のせいで関係ない人たちが巻き込まれるなんて嫌だ。
それならアリシアの憎しみは全部私一人で引き受ける。引き受けなきゃいけない。
未だ晴れない視界を前に今の気持ちを伝え終わる。
「……じゃあそれで私の記憶返してくれるの?」
低く、押さえつけたような声が聞こえた。
「返せないでしょ? 思い出って物じゃないんだよ。それに母さんの思い出だもん。一応、フェイトにだって大事だよね」
宙に佇むアリシアの左手には放電する雷槍が携えられていた。
「でもアルハザードの魔法でならきっと奪い取れる。だけどそれだけじゃ足りない」
ゆっくりと上げた顔に笑顔なんてなくて。
突き刺すような視線だけが私に降り注いだ。
「奪い取った分だけ苦しませてあげるんだ。大切なもの一つ一つ奪い取って」
「アリシア……」
「何度だって言ってやる……どうして私がいるのにあなたがいるの?」
振り上げるアリシアのバルディッシュ。
頭上の暗雲から一条の閃光が轟きと共に舞い降りる。
「私たちは一緒にいちゃいけないんだよ……どちらかが消えなきゃ」
雷鳴をその身に秘め光り輝く槍。
膨大な魔力をアリシアはあの時と同じように逆手に持ち替える。
放つべきは当然あの魔法――ボルテックランサー。
「……やるしかないよね」
『Get set』
アリシアの全力。
「アルカス――クルタス――」
ぶつけるは私の全力。
生まれ落ちる天神の申し子たち。金色纏い、雷鳴を放ち、星のごとく輝いて。
その数三十八。
「煌きたる天神よ、今導きの元降り来たれ!」
リニスに教えられ、バルディッシュと共に完成させた私最大の魔法。
誰にも負けない強さと誇りを持つ、天の煌きだ。
「撃つは雷――響くは轟雷――」
ゆっくりと右手を上げ一瞬を待つ。
「フォトンランサーファランクスシフト!!」
互いの準備は万全。
「絶対に負けない! 貫け雷電!!」
アリシアが仰け反るように振りかぶる。
「ボルテックランサーーーッ!!」
「打ち砕け! ファイアッ!!」
撃ち放たれる雷光。
大気を焼き焦がす一閃の槍。
空を引き裂く幾千の槍。
「いけぇ!!」
狙おうとすればアリシアを直接狙える。防御も何もしていない今なら絶対に勝てる。
でも私はそれをしない。したくない。
一つにボルテックランサーをまともに受けきれる保証が全くない。
でもこんなの理由にするには些細なものだ。
何より私の中にある想い。それはたった一つ。
負けたくない!
それだけなんだ。
相打ちなんか納得できない!
だから
「目標は一つ! 一発も撃ち漏らさないでバルディッシュ!」
『Yes,Sir』
打ち砕くは真正面から突っ込んでくる光のみ!
「そんなちっぽけなので私の魔法は止められない!」
「やってみなきゃわからない!」
吹き荒れる嵐。瞬きする暇さえそこには無い。
無限とも思えるほどに光達が放たれ、槍目掛けぶつかり続ける。
撃て――撃て――撃て!!
念じることはそれだけ。
確かにアリシアから見ればちっぽけな輝きかもしれない。
でも私にはみんな一つ一つが大きな輝き。
爆音轟き、爆煙弾け、その度に光が隠れ、すぐに顔を出し
「ハァァ!!」
また私の光がぶつかり覆い隠す。
延々と繰り返しても槍の勢いは衰えないように見えた。
巨大すぎる魔力を前に小さなものを一発ずつぶつけ続けても結果なんてわかってしまう。
多分、今までの私だったらそう思って別の方法を探していた。
「もっと! もっと!」
今は違う。
だって心に刻み込んだ言葉がある。
リニスに教えられた想いがある。
(そうだよ……何もかも終わってない……あきらめるなんて)
絶対にしちゃ駄目!
全部終わって、その時初めて結果は出る。
先のことばかり気にしてたら今に笑われちゃう。
私は今を生きてるんだから。
「止まれーーーっ!!」
まだ止まらない。槍は我が物顔で突き進む。
魔力が底をつくのは時間の問題だ。
それでも諦められない。
「降り来たれ! 雷光の剣!!」
体から魔力が一気に抜け落ちる。
バルディッシュにランサーの制御を任せ組み上げる術式は私の得意。
いっそ底を突くなら本当に空っぽになるまで全力全開で!
「サンダーレイジーーーーッ!!」
極限まで研ぎ澄まされた雷剣が止めと言わんばかりに虚空を飛翔した。
刹那、私の五感は役目を放り投げた。
* * *
「……はぁ……はぁ」
頭がぐわんぐわん揺れている。
体はぐらぐら揺れている。
景色も二重に見えている。
「だいじょ……ぶ? バルディッシュ」
『Ye……s……Sir』
ヒビだらけのコアが頼りなく点滅していた。
ちょっとメンテナンスしないと駄目みたいだね。
「魔力も……空っぽか」
ほんとに手加減なしでやり過ぎだ。
飛行に回す魔力も気を抜けばすぐに切れてしまいそう。むしろ、浮いていられるのが不思議と思えるくらい。
意識だけは手放さないようしっかり握り締めながら私は見上げる。
同じく慢心相違になったあの子に。
「そんなプロトが……嘘だよね?」
私よりは幾分平気そうな様子だけど魔法が破られたせいか動揺だけは隠せない。
あっちのバルディッシュもボロボロ、というか私のよりも酷いかもしれない。
それだけアリシアの想いに答えよう頑張ったんだろう。
主人想いな所は変わらないんだね。
「フェイト……なんでやられないの?」
「まだ、伝え切れてないから」
呼吸、大分落ち着いてきた。
いろんなこと言われたけど、私にだって言わなきゃならないことがある。
伝えたい想いがここにある。
「ねぇアリシア、一緒にいちゃいけないって誰が決めたの?」
「えっ……?」
「私たちが一緒にいることってそんなに悪いことなのかな」
一緒にいてどちらかが消える。
そんな魔法みたいなことなんてあるわけない。どんな形にせよ私たちはこうやってここにいる。
「私アリシアのこと憎むなんてことしたくない」
憎むためだけにアリシアが生まれてきたなんて思いたくない。
本当はアリシアは優しくて、我侭も言うけど笑顔が似合うとてもいい子。
私の中にある記憶。それが教えてくれる。
「嫌だよ……リニスだって、アリシアだってここにいられるんだから」
母さんとの記憶が欲しいのは痛いくらいにわかる。
私だってなのはたちとの記憶が誰かに取られたら必死に取り返そうとすると思う。
「私頑張って思い出してみる。母さんとの思い出は私の中にあるんだから」
「思い……出す?」
「ずっと前にね、夢に見たんだ。母さんとピクニック行った思い出なんだよ」
あの時の私――アリシアはすごく羨ましくなるくらいいい笑顔をしてた。
母さんも穏やかな笑顔で見守っていてくれて。
まだアルフもリニスもいなかったけどすごく楽しくて、嬉しくて、ゆったりとした時間が流れていて。
「それ以外……思い出せないけど」
きっと全部思い出していたら私がアリシアになっていたんだと思う。
「嘘……嘘に決まってる」
「ごめん……嘘じゃないんだ。思い出さなかったから母さんに拒絶されたんだと思う」
私はアリシアの代わり……ううん、本当ならアリシアだった。
今はもうそんなこと関係なく私は私。フェイトなのは変わりないけど。
「でも頑張って思い出す。そうしてアリシアに話してあげる」
「なによ……なによそれ。じゃあ私はもしかしたら生まれなかった……?」
「違う……そんなことないよ」
「本当なら私はあなただった……私がフェイト? でもアリシアじゃない? フェイトはアリシア?」
何かに怯えるようにアリシアの様子が急におかしくなる。
首を横に振りながら必死に自分の中に生まれたいけないものを押し込めるように。肩が震え、その視線は既に私を見ていなかった。
「違う……違うよ。私はアリシアなんだ……フェイトの中に私の思い出があってもアリシアにはならない」
「アリシア……」
「私……私は……」
(フェイト! アリシアは!?)
(クロノ!?)
頭の中に入り込んできた声に遥か空を仰ぐ。
そこにクロノが数えきれない数の蒼剣を浮かべて、すでに構え発射体制を取っていた。
(消耗させたんだな……?)
(もしかして強装結界を?)
でもあれはアリシアがジュエルシードを使うかもしれないって取り止めになったはず。
(こうなれば話は別だ。君も消耗が激しい、やるなら今しかない)
(で、でもアリシアが!)
(フェイト? 相手のことを気にする必要なんてないだろ。どの道ここで彼女を捕らえられれば事態だって終結する)
空気が震え、変わる。
いつの間にか局員たちが私たちを中心にして巨大な結界を張り巡らせていた。
強装結界――複数の魔導師が協力して形成する防御結界。きわめて防御能力は高く、また内側に封じ込めたものは簡単に脱出は出来ない。
アリシアとリニスをどうにか捕獲できないかとクロノが考えていた策の一つだ。
「クロノ! 止めて!!」
間に割って入るように私は両手を広げ彼方のクロノに精一杯に叫んだ。
ここで止めなきゃ。クロノは次にやることは一つしかない。
(な……どけ! 君まで巻き込まれるぞ!!)
鈍い輝きを放つ剣。
結界で閉じ込め、広域魔法で一気に殲滅。そうして捕獲する。
(何があったか知らないが……情が移ったとでも言うつもりか!)
(でもアリシアにもう戦意は無いよ!)
(あろうがなかろうが彼女はアルハザードの住人だ! 何があってからじゃ遅い!)
(だけど!!)
(君もアースラの嘱託魔導師だろ! これが管理局のやり方だ!!)
それでもアリシアがクロノの魔法をまともに受けたら……。
不安だけが募る。だからといって私が守るなんて出来ない。
魔力がないんだ。私が出来るのはクロノに攻撃を止めてもらうだけ。
「違う……私はアリシアなんだ……フェイトじゃない」
呟かれた言葉。
同時に背中が急にざわっとした感覚に襲われる。
「アリシア!?」
異質な魔力。
怖いとか、冷たいとかそういう感じじゃなくて。
言葉で言い表せない何か。
心がざわめく、心が押しつぶされる、心が苦しい。
(そうだ……苦しいんだ)
自然と私の心は答えをくれた。
じゃあこの苦しさはアリシアの心?
後ろで、アリシアに何が起こっているんだろう。気になって、心配になって、私は振り向こうとした。
けどその前に
「私は……アリシアなんだーーっ!!」
さっきとは違う、今度は意識も世界も真っ白に染まった。
はい、遅くなりましてごめんなさい
いろいろ諸事情が……
>>396氏
ユーノは女装の神様に魅入られた!
魅力がぐ〜んと上がった!
>>さばかん氏
まぁ、人それぞれですよ
たまにはぶっ飛んだのも
>>640氏
あ〜やっぱり
てか余命短いよ!
私のほうもフェイトアリシアどっちもえらい目にあわせる予定なんですけどね(マテコラ
>>56 396氏GJ!
プロローグで×なのはさんかと思いきや、はやてさん。
さらに幼馴染っぽい少女と女性だと!?
ユーノがはやてに本借りてるところが芸細かくて良かったです。
ここからどうプロローグのような事になっちまうのか、最終カプはどうなるのか…!
楽しみです。
>>74 640氏GJ!
普段と違う医者の顔のシャマルさん萌え…とか言ってる場合じゃない。
なんかもう今のままじゃ余命一ヶ月と確定してしまいましたが、どうなるんでしょう。
それでも司書長なら、無限司書長ならなんとかしてくれる…! …ナントカシテアゲテ
そういえば守護騎士はともかくはやての18禁SSってあんまみないですね。
93 :
さばかん:2006/09/27(水) 18:01:22 ID:haqUIAFh
みなさんこんばんわ。今回も投下させていただきます。
物語が少し様変わりするので、これで少しは二次っぽくなる・・・はず。
>>90 有難うございます。二次創作をはじめたばかりなので勝手が分からないもので・・・
貴方の一言がとても暖かいです。
視点切り替え。ユーノ→なのは
気が付けば、誰の家かも分からないベッドだった。
「ん・・・」
私は、そこから起き上がると、有り得ない事が起きた。
場所が変わっている。そこは動物病院前で、とっても普通。
ただし、そこには、私の背丈の3倍くらいある
泥団子みたいな化け物が一匹、私を眺めていた。
「へ?」
夢を見ているのではとも思った。でも、多分違うと思う。
私はこんなリアリティ溢れる夢を見た事が無かった。
泥団子がゴムマリみたいに弾み、その下には私が。
よけようと思ったけど、そういう規模じゃないと思う。
車に轢かれるのと同じ、何故か動けなかった。
『あぶない!』
なんかふざけて出してるみたいな声が聞こえるのと
同時に泥団子は四方に飛び散った。
それは多分、ゲームでよくあるバリアって奴なんだと思う。
その見えない壁が私を守ってくれたのだ。
『ぼやっとしたらあかんよ、なのはちゃん!その泥団子はロリコンや!
世の中、犯(やら)れる前に犯(や)れ!が基本や』
殴ってもいいかな?いけないいけない。そう思ってはいけないと知りつつも、
私の頭に直接響いてくる、「わざとふざけて声をだしている誰か(しかも関西弁)」
に訊ねた。
「あなたは誰?」
『私は妖精さんや』
嘘だ。
小3に分かる嘘ってそう無いと思う。続けて訊ねてみた。
「あなたの名前は?」
『かすが・・・あゆむ』
声が違う!声が!!
「最後に・・・この服は何ー!!!!」
私の着ている服。学校の制服をなんか丈夫にしたようなそんな服。
所謂(いわゆる)コスプレだった。
『未来のブームを先取りや!!』
こめかみを拳で叩いて追い出せないかな?この自称妖精さんは。
そう思うのと同時に泥団子は復活して、元の姿に戻っていた。
『しぶといなぁ・・・さぁ!戦え!戦ってしまえ!!なのはちゃ〜ん』
「え?へ?ど、どうやって〜???????」
『魔法や』
そんな簡単に言わないでよ・・・。
「その魔法って奴はどうやって使うの?」
『なのはちゃんは何も考えんでええ。とにかく敵を・・・
殴る蹴る等の暴行や〜〜〜〜〜!!!』
さぁ〜〜〜〜すが妖精さん、分っかり易い!・・・って分かり易過ぎ無い?
「本当に・・・それでいいの?」
『さぁさぁ、すけさんかくさん!こらしめてあげなさい!!!』
もうやけだった。私は敵にダッシュで向かった。
泥団子も大きさのわりには随分俊敏に反応し、触手を伸ばしてくる。
その高速で、形容が何なのか分からないものをしかし、なのはは
2,3かわす。それはなのは自身も驚いていて。結果としてその10倍は
かわすことになる。
だが、それは見えているだけで、体制的にどうしてもかわせない触手が
なのはの腕に絡まる。それは、互いにとってチャンスだった。
泥団子に勿論、理性など無い。単に目の前の生物を殺すだけのプログラム。
チャンスとばかりになのははその触手を利用して、その本体を引き寄せる。
ぐいっと引っ張られるその力に向かうのはまずいと感知した、泥団子
は自らの触手を切り離す。だが、一度引き寄せた力は生きていて、結果と
して、なのはの体に近付く。
「はっ!」
拳。その、たった一撃で敵はバラバラに散らばる。それは、なのはの力ではなく。
魔法による『強化』だった。
バラバラに四散して敵は死んだように見えた。だが、敵は再び一点に集まる。
「こいつ・・・不死身?」
だが、なのははちゃんと見ていた。敵が集まる一点にある、光る石。
なのはは完全に復元する前にけりをつけようと駆け寄る。
泥団子が触手を伸ばす、その前に、高速でその石を掠め取る。再び集まる泥。
その本体っぽい石を握りつぶそうとして、
『だめや!!』
その声と共になのはの腕が止まった。
『ジュエルシード!封印!!!』
光る石がもっと光り、さっきの泥が嘘のように散った。
(う・・・動かない・・・)
そんな光景よりもなのはは自分の手が動かない事に驚いた。
それは、どうさと呼べるかどうかも分からない、当然に出来る行為のはず。
それが、何故できないのだろうと思った時、手はあっけなく動かせていた。
同時に、その光る石が(硝子のようにも見える)角を右に曲がった。
「よっしゃー!ジュエルシードげっとだぜ〜!!!」
キラキラ光る美しい石の名をジュエルシードと言う・・・らしい。
念を入れて彼女はそれをまじまじと観察し、本物かどうかを確認する。
まぁ・・・ニセモノのはずは無いんだけど、一応。
「よしよし!たしかにジュエルシードやー!!!
こほん。それではあたらためて・・・」
ジュエルシードを前に構えて。
「ジュエルシードげっ、」
「待った」
びくん!彼女の動きが形状記憶スーツの理想的な修復時間のように
修復される。
「はやて・・・ちゃん?」
光る石を追いかけて見れば見知った顔がそこにいた。
同じクラスの、八神はやてちゃん。関西弁の可愛らしい女の子。
「ははははははははは・・・なのはちゃ〜ん☆月の綺麗な夜やね。
こんな夜更けにどうしたん?早く帰らないと、柔らかいお肉が狙われるでー」
全て棒読みの台詞を言い残し帰ろうとしたはやてちゃんを私は、腕を掴み止める。
「どうしてこんな事になったのか・・・知ってるんだよね?話してくれないと、私、困るよ」
ちょっと凄みをきかせて言う。
はやてちゃんはまるではじめから決まっていたみたいに、ええよとあっけなく答えた。
趣味の良い一戸建てに着く。普通の家のカテゴリーには入りそうにも無いちょい豪華
漂う家だった。
そりゃあ、多少の余裕が無いと私立には行けない。
私は居間に案内され、柔らかそうなソファーに腰掛ける。
はやてちゃんがマミーとウェハースチョコたっぷりの大皿を持ってきた。
「はい、よかったらどーぞ」
はやてちゃんは素早く、自分の分のマミーの蓋を開け、ストローでちゅうちゅう味わう。
その美味しそうに飲む顔がキュートだった。
でも、それを眺めているだけでは何も始まらない。
「あのね、はやてちゃん聞きたい事が、」
「ひろしくんは、後輩の女の子に、第二ボタンあげたんやっけ?」
「へ?」
なんか、話が切られた。
はやてちゃんの疑問・・・あれっ?渡したっけ、渡さなかったっけ?
「あれは覚えとるんや。最終回の台詞は・・・たしか
『君にも逢えて、よかった』って視聴者のみんなにそう言ったはずや!」
「あっ!それ知ってる!私なんか覚えてる!!いやー懐かしいなぁ・・・
Hな本がベッドに隠れてると思ってゆうこがひろしくんのベッドをあさって・・・」
「そうそう!いや〜ほんま、懐かしいなぁ・・・そう言えば、なのはちゃん好きなゲームある?」
「私の好きなゲームは・・・」
雑談が色々続く。
ウェハースチョコ、しけってた。
「それじゃあまたな〜なのはちゃん!」
「じゃあね〜☆」
って、待った。
「はやてちゃん・・・話を摩り替えない」
危うく、本当に帰ってしまうところだった。昔の話には、どうしても花が咲いてしまうものだ。
はやてちゃんは何を思ったかチェーンをかけ、扉を開いたり閉じたりしながら
楽しそうな顔で。
「帰れ〜帰れ〜☆」
何の真似だろう。ちなみに、冬だからセミは鳴かないよ、はやてちゃん。
「簡単に言うと、私は全部で21個ある、ジュエルシードを集める仕事に協力してるんや。
それは1個でも凄い力を持っていて、さっきのどろどろくんの正体もその力が発動したせい
なんや。
で。その石21個全て集めると・・・な、なんと!願いが叶うって話らしいんや」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
信じない訳にはいかない。何故ってさっきの泥団子を見たらファンタジーがあっても
おかしくないと思えるから。それに、この良く分からない状況を唯一知るはやてちゃんの
話が、今の私にとっては一つの道だった。
「ジュエルシードだったよね。はやてちゃんはそれを集めてるみたいだけど、それってもしかして
さっき持ってた石の事?」
「そうや。私はその石を集める仕事を引き受けてな。それが成功した暁には願いを一個叶えて
もいいそうなんやー。勿論、なのはちゃんの願いも叶えさせてあげるで」
ほ、本当に!?・・・じゃなくて。
「なんで私が?」
その質問に、彼女は当然のように答えた。
「なのはちゃんは私の『使い魔』になったからや」
へ・・・はやてちゃんは一体何を言っているのだろう。
「はやてちゃん・・・何を言ってるのか良く分かんない・・・それに私は生まれて以来、人間
以外になった事がないよー」
はははははと冗談を言いつつ笑う。
だが、それは否定の言葉に覆いつくされる。
「使い魔はな、なのはちゃん。一般的には小動物を媒介にするものなんや。
そっちの方が魔力の消費が少なくてすむからな。
でも、術者の体が弱ってる時。自分では上手く戦えない時は人間を使い魔にする時だってある。
それが、あなたであってわたし」
・・・気のせいだろうか、背筋が凍るように冷たかった。
気味の悪い笑顔ではやてちゃんはにやり顔で言う。
「なのはちゃん。ここで言う『ば・い・か・い』って何か分かる?・・・それは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
死体」
「へ?それこそ変だよ、はやてちゃん。私はだってずっと生きて、」
次の瞬間、もう出口など無かった。
「私が、コロシタ」
つづく
こんばんわ。早いものでもう四話。
やっぱり自分が好きなキャラが登場すると書いてて楽しいですね。
でも前回同様あまり贔屓せず全キャラに出番を与えるつもりです。たぶん。
では投下します。
魔法少女リリカルなのはA's++
第四話 「とある学内風景」
「おはよー」
「おはよ!」
茶色のブレザーを来た女子生徒達が次々と門に吸い込まれるように入っていく。
私立聖祥大学付属中学校。小学校からエスカレート式に入学する生徒が多く、たいてい人間関係もそのまま引き継がれる。
そしてそれはなのは達仲良しグループも同様だった。教室に入るといつものように集まり、ホームルームが始まるまでの間雑談する。
しかし今日はいつもと違い一人欠けていた。
「それにしてもはやてはどうしたのかしら。ちょっと遅れるだけって言ってたけど…」
アリサが少し心配そうに話した。これまでも任務がある日は丸々一日休んだり、かなり遅刻して学校に来ることはあった。
だが学校には間に合うが待ち合わせには遅れる、ということは今までになかった。
「昨日夜遅くまで仕事があったんじゃないかな?」
「たしかはやてはここしばらく休暇中だったはずだけど…」
すずかが思いついたことを言ったが、フェイトがそれを打ち消すように言った。
はやてはロストロギア回収の実績やその指揮能力の高さから管理局での評価はいまやうなぎ上りだ。
今は鋭気を養ってもらうという管理局の計らいから特別に少しの間暇が出ている。
「…あ!来たみたいだよ!」
窓から見える校門を眺めていたなのはが急に声を上げた。どうやら走ってきたはやてが見えたようだ。
「セーーフ!」
息を切らしながらはやてが教室に駆け込んできた。
まだホームルームが始まるまで5分ばかりあるので始業ベルには十分間に合っていた。
「はやてちゃん、おは…」
なのはははやてに声をかけようとしたが、躊躇した。なにか様子がおかしい。
「せやから……がいつまでもごねるから遅れたんやろー?」
「もう!言い訳はなしや」
アリサ達もはやての不可思議な行動に気付いたようで眉を八の字にし首を傾げている。
「ちょっとはやて…」
いまだに何かと問答を繰り返しているはやてにアリサが声をかけた。
「ん?あーアリサちゃん、それにみんなおはよう」
何事もなかったかのようににっこりと笑って挨拶するはやて。しかしみな疑惑の目ではやてを見ていてうまく挨拶を返せない。
「どーしたん?」
「いや、だから…何と話してたのよ?」
ジト目ではやてを見ながらアリサは言った。幽霊など非科学的なものは信じてはいなかったが、
先ほどのはやてはまさに幽霊との会話のようだった。
「あー途中から声に出とったんかー。えっと、実は今日はこの子を連れて来たんや」
はやては周りの他の生徒に見えないように鞄の背に立ち、両手である物体を取り出した。
「ぷはっ!あ…あの、おはようなのは、みんな」
「!?ユーノく…あむ」
フェレットのユーノを見て大声を上げるなのはの口をフェイトとすずかが高速で塞いだ。
一瞬クラス中の生徒の目がなのは達に集まるが、みんなで笑ってごまかした。
数秒乾いた笑いが続いた後、ギロリとアリサの視線がユーノに突き刺さった。
「ちょっとあんた、何しに来たのよ。ここ男子禁制よ」
「う…いや、その…」
アリサに詰問されユーノは口ごもった。ここではやてに嵌められたからだと言ってもよかったが、
なのはに会いたい気持ちもあったし、この状況を甘んじて受け入れている自分もいる。
どう言い訳しようか言いよどんでいるとはやてが口を開いた。
「こうでもせーへんとユーノ君はなのはちゃんやフェイトちゃんと会う機会あらへんからな。今日は勘弁してあげて」
両手を合わせて頼み込むはやてにアリサは驚いたように言った。
「え?管理局とかいうところでいつも会ってるんじゃないの?」
アリサは魔法の世界のことは知っているしなのは達が時空が関係した大きな仕事をしていることも理解していたが、
それぞれどんな仕事をしているかまでは知らなかった。
「私は前に会ったのは元旦の休みだけど…なのはは?」
「えっと…私もそう…かな?」
「あんたたちって結構薄情ね…」
確認し合うなのはとフェイトを見てアリサが呆れ気味に言った。
「いや、なのは達は事件担当で僕はその、こっちの世界でいう図書館みたいなとこで働いてるから、あんまり顔を合わせないんだよ」
すかさずユーノはなのは達を弁護した。
それを聞いた本好きなすずかがぴくりと反応し、アリサが笑いながら言った。
「あはは、ユーノはやっぱりそういう仕事してんのね。確かにあんたにはぴったりだわ」
その瞬間ガラッと扉が開き担任の教師が入ってくると共に、タイミングよくホームルーム開始のベルが鳴った。
「あ、先生来たよ」
「ほら、ユーノ君はよ隠れて」
ユーノはアリサの言葉に一瞬むっとしたがそれどころではなかったのではやてに誘われるように膝の上で丸くなった。
ここなら教師から見えることはないし、長机のため他の生徒の死角にも入っていた。
(まったく、これじゃあ何しに来たかわからないよ…)
ユーノは小さきため息を吐いた。
「みなさん、おはようございます。それではまず出席を取ります」
一斉に生徒達の挨拶を返す声がし、教師の点呼に教室は静まり返った。
どうやら席は自由だが点呼があるようだ。どっちにしろ、もし女装をしたユーノがまぎれこんだらばれる可能性が高い。
実はユーノは今朝はやてとそのことでかなりもめた。遅刻の原因もそのせいだった。
(昨日のあれで満足したんじゃないのか…)
ユーノは昨日の夜のことを思い出しかけたが頭を軽く振って忘れた。
『ユーノ君、ユーノ君』
すると突然念話が聞こえてきた。この声はなのはだ。
『ん?どうしたの?なのは』
なのはの位置ははやてから少し離れていて、横一列で左からはやて、アリサ、すずか、なのは、フェイトの順だった。
念話で話すのが妥当かもしれない。
『えっと…ごめんね。今まで会いに行けなくて…』
どうやら先ほどのアリサの言葉を気にしているらしい。
『そんな…別に気にしてないよ。連絡は取り合ってたし、僕のわがままで迷惑はかけられないから。僕の方こそ今日はごめんね』
アリサとすずかごしになのはに目を向けるとなのはと目が合った。
『ううん。来てくれて、とっても嬉しかった』
微笑みながらそう言うなのはを見てユーノは顔が熱くなるのを感じた。フェレットじゃなかったら確実にわかってしまっただろう。
はやての膝の上でもじもじと照れているとはやてが口をはさんだ。
『ほんとは女の子として来るつもりやったんやけどなあ』
『!?はやて、聞いてたの?』
ユーノは慌ててはやてを見上げると、はやては不敵な笑みを浮かべて言った。
『こんな近距離やと微妙な魔力の波もわかってまうからなー。たぶんフェイトちゃんにも聞こえてた思うけど』
ユーノがフェイトの方を向くと、なのはとフェイトが目を丸くしてこちらを見ていることに気がついた。
ゆっくりとはやてが言ったことを思い返す。
『あぁ!ちょっと、はやて!それは言わない約束じゃ!?』
『はー、朝はどたばたして忘れてしもた』
これは遅刻の復讐だ、とユーノは思った。しかし慌てるユーノをよそにはやてはとどめを刺す。
『もちろん昨日の夜の可愛いユーノちゃんは永久保存版にしといたから安心してええで。な、リィンフォース』
『はい!バックアップもぬかりありません!』
珍しく起きていたリィンフォースが十字架のアクセサリーから報告する。
「ええええぇぇぇ!!!!!!!」
突如教室に大声が響く。ユーノが口を塞いだときには時すでに遅し。
今日の行事の話をしていた教師と教室中の生徒の視線がはやてに集まる。
はやてはその視線の矢を一斉に受け、背中に冷や汗が流れるのを感じた。
「あ…えっと…ええぇぇ!きょ、今日は晴れやったんかー。傘を持って来てしもたー」
教師と生徒は窓の外を見る。雲一つない快晴。鳥が気持ちよさそうに飛んでいるのが見えた。
「あは、あははははは…」
はやては頭をかきながら片方の手でユーノの頭をギリギリと掴んだ。
(いたたたたっ!)
ユーノはその攻撃にもがき苦しんだ。
「…八神さん」
「はい!」
ため息とともに教師がはやての名を呼び、はやては背筋を伸ばした。
「夏休みが近くてはしゃぎたい気持ちはわかりますが、ホームルーム中はお静かにね」
「はい…すいません」
周りの生徒からクスクスと笑い声が聞こえ、アリサが怒ったように何かを書いているのが机の振動でわかった。
文字の書かれた紙をはやてがユーノに見せる。
そこには
[ 魔法で話すの 禁止! ]
と怒ったような顔の絵と共に書きなぐられていた。
ユーノはそれを見て大きなため息を吐いた。もう言葉も出なかった。
*
「へー、それじゃあユーノ君一昨日から泊まってるんだ」
「ほんまは一泊だけのはずやったんやけどな。今日どうしても連れて来たかったんで無理言ってもう一泊してもらったんや」
アリサが玉子焼きを口に運びながら尋ね、はやてはシャマル特製の弁当箱を広げながら答えた。
屋上は日差しが強かったが、給水等の陰は涼しく風も入ってくるのでとても居心地が良かった。
「昨日は一緒に図書館行ったんやけど、ユーノ君一日中おるから私が根を上げてしもたんよ」
「ユーノ君はどんな本が好きなの?」
すずかがユーノに聞いた。しかし、返事はなかった。
ユーノは少し離れた日なたで死んだように横になっていた。じりじりと照りつける太陽。灼熱のように熱いコンクリート。
ああ、このまま焼け死にたい…。
隠れることもせず純粋にユーノはそう願った。昨日の夜、どうしても制服姿が見たいとはやてと騎士達(ザフィーラを除く)
が騒ぐので、一泊余計に泊めてもらった負い目もあり恥を忍んで数分だけ制服を着て見せた。
今考えれば蒼天の書というストレージデバイスを持つリィンフォースUがいるのだ。メモリされていてもおかしくはなかった。
さすがのはやてもそのデータをなのは達に見せることはなかったが、結局女子制服を着たという事実はここにいる全員に伝わってしまった。
恥ずかしいことこの上ない。人生の汚点といえる。ユーノは思い出したようにびくんっと動いたりごろごろ転がったりを繰り返した。
「気持ち悪いわね…」
その様子を見たアリサが呆れ声で呟いた。
「ほら、ユーノ君、そんな所にいたら日射病になっちゃうよ?」
なのはが立ち上がりユーノを両手でそっと持ち上げると自分の所へ運んだ。
それでもユーノは拗ねたように丸くなって身動き一つしなかった。
「もう…」
そう言いながらなのははユーノを優しく撫で続けた。
その様子を見ていて、フェイトには思うところがあった。
なのはの目がとても寂しそうに見えたからだ。そして、その原因には一つ思いあたることがあった。
はやてとユーノの関係である。今日の朝から二人の様子を一通り見ていたが、非常に仲が良い。
こちらの世界に来て覚えたことだが、TVでたまに見るお笑いコンビのようにも見えた。コンビ、すなわちパートナーである。
たぶんなのははパートナーを取られたような、そんな感じを受けているのではないだろうかと思う。
フェイト自身、もしアルフが他の人のところへ行ってしまったら、とても悲しい。
しかしアルフは使い魔で、ユーノは使い魔ではない。誰と一緒にいようが自由だ。
フェイトは、ユーノがなのはに対してパートナー以上の感情を持っていることをなんとなくだがわかっていた。
もし自分が男の子だったらなのはのことを好きになるだろうと思う。それがわかるからこそユーノの気持ちにも気付いていた。
しかしなのははいまだにユーノを恋愛の対象としては見ていないようだし、恋愛のこと自体、全く考えていないようだ。
なのはとユーノはお似合いだ。絶対、なのは自身も気付いていないだけでユーノに惹かれている、とフェイトは確信している。
だが生まれ持っての性分か、なのはは超がつくほどの朴念仁だ。
たとえユーノが一途だとしても、このままでははやてに心を移してしまうかもしれない。
たった数日であれだけ仲良くなってしまったのだ。可能性は十分にある。
幸運なことは、まだはやてとユーノの関係は友達で止まっていることだった。
(ここは私がなんとかしなくちゃ…!)
はやてには悪いがこれ以上先に進むことはなんとしてでも食い止めなければならない。なのはの友人として。
フェイトは箸を握り締め、そう心に誓うのだった。
次回へ続く
次回 第五話 「エターナル・クワドラングル」
五話で日常パートは終わりです。
人間関係は前より複雑かつ面白いことになってます。
お楽しみに。それでは。
公式でクロエミ決定……
>>107 クロミエに見えてしまった俺orz
宇宙クジラに食われてきます。
>>108 あんたがいなかったら多分オレ”誤爆?”とか書いてた。
サンクス
110 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/29(金) 22:35:29 ID:jRVkc5uP
396さん、相変らずGJです!
フェイトの健気な友情…でもこれでミイラ取りがミイラに?
396氏GJ!
寂しそうななのは可愛い。
クロエミ決定なのか…
しかし、そこらへんクロノとユーノの温度差がすごいよな(片や結婚妊娠、片や仕事のが大事)。
これが5歳という年齢の差なのかと。
まー同性愛の可能性のほうも薄れたようで、個人的にそこは安心してるが。
なのユノは好きだけど、もうこのまま何の気配もなく終わってくれてもいい気がしてきた。
二次があるしさ。
メガミマガジン今月号。
アニメ2の本スレに上がってたよ。
>>106 396氏乙!
フェイト突っ走りそうだな次回…。
遅ればせながらレス返しに参上いたしました。
投下は月曜くらいには……はい。
>>176氏
戦闘終了後にフェイトにガン無視されて
沈没するクロノをぜひ(ぉぃ
つか、うちのアリシア(she&me)の話、いくつか書いてあるんだけど
需要あります?>>all
自分のところで公開すべきか?
>>396氏
そして八神家はシャマル主導のもと
ユーノのコラで荒稼ぎするわけですね
>クロエミ
2次創作は自分の好きでやればいいんだから。
そりゃあ、良作のクロエミを読めばそれもいいかと思うけど、やっぱり自分的には3人娘の誰かがいいなぁ。
あれ、よく考えるとエイミィってショタ?
2つ年下でショタになったらクロノ×3人娘は超ロリになってしまう
フェイトの相手がどうもしっくり来ないなぁ、
やっぱり関係ないとはいえ公式設定があるんだから、
(なのはとユーノも微妙ですが)
ひょっとして新キャラに期待ですか。
二次創作に関係ない雑談は他でやってくれ
122 :
120:2006/10/01(日) 03:21:54 ID:evxY0CWc
すいません、ネタ考えるのはやめておきます…
自分ではなかなか思いつかないのでつい
123 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/01(日) 05:20:56 ID:8/4pCjDS
>>121 二次創作を思考している時点で重大なことが決まったわけだから、十分関係
あるだろ
カップリングへの愚痴吐きは他でやってくれ
炉理の判断は年齢じゃない、見た目だ
イマイチエイミィ人気無いからな。
そういえばここでクロエミって無かった気がする。
なのはは原作フラグ、フェイトは義妹フラグ、はやては父親関連フラグで
結構おいしかったから夢みんな見たんだ…
>そういえばここでクロエミって無かった気がする
え〜と、ネタだよね、
>>126 だからここでやるなっての。このスレが全員クロノ厨ってわけじゃないんだから。クロノスレにでも行けよ
フラグだのみんな夢みただのよく言うが、一部のクロノ厨がクロノ本位の見方でやかましく騒いでただけだろそれ
>>126 ここはクロエミ率高いと思うけど。前あった176氏のやつとかね。
>>128 言い方がきついが同意。そしてフラグって便利な言葉だなw
クロノのキャラ考えれば家族になった義妹に手を出さないだろうし、
はやてのクライド関連はフラグと呼ぶには無理ないか?とは思ってた。
二次創作はそこら辺いくらでも調整できるしわざわざ公式引っ張ってこなくていいと思うぞ。
以下何事も無かったかのようにSS投下を待機で↓
>>129 かなり同意だが、
フェイトがクロノに義兄以上の感情を抱いている面はあったと思う。
クロノの性格から、手は出さないかも知れないケドね。
はやてに関しては、クロノと性格が合うからってこともあるからだと思う。 まあ、ユーノの友達関係やリインのはやてちゃん発言とか含めて、漫画一話は十分な収穫があったと思うな
>>130 プレシアやらリンディやら、あれだけ家族絡みの境遇の話題をだしておいて、
今更ありきたりな義兄妹エロゲテンプレを持ってくるとは思えない。
>>130 >フェイトがクロノに義兄以上の感情を抱いている面はあったと思う。
どのシーンを根拠にそう思ったのか聞きたい。煽りじゃ無しに。
俺は逆に、アニメ本編やサウンドステージで「ああ、このふたり恋愛感情の入る余地無いな」って思ったタイプなので。
カルマの続きはマダー?
職人さんのHPでも止まってるし…
136 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/02(月) 14:57:50 ID:9QgYFap6
クロフェ好きは聖痕さんのとこで満足しろよ。長編終わったみたいだけどさっそく更新してるじゃん。
つぅーか、あの人マジ何者だ
カルママダー激しく同意
ここで
ちびリイン×フェレットユーノ
というのをだな……
フェレットの背中にちびリインがのってご近所散策ってか?
話を聞いた人間は、二つのパターンに分かれた。
「……うそ、やろ」
呆然と、硬直し。
声を絞り出して信じるのを拒絶するのがやっとである場合と。
「は?またまたぁ。何言ってんの?冗談にしても笑えないよ、それー」
あまりに唐突なそれ自体に、冗談と捉え
笑い飛ばすケースの、二つに。
だが、ごく少数の事実を知った人間が、どちらの反応をしようとも。
それは避けえぬ、近くやってくる現実なのだ。
一人の少女に残された時間は、あまりに少ない。
魔法少女リリカルなのはA’s −the day−
第四話 残光
「うそだろう」
彼の反応は、前者だった。
言いながらも、なのはがこのような嘘をつく人間でないということを十二分に知る彼は、
彼女の悲痛な表情を読み取り愕然と立ち尽くす。
「そんな、フェイトが」
両肩を握ってきた彼の両腕は、いつもやさしいユーノのそれとは
思えないほど、痛いくらいに力がこもっていた。
なのはは力なく首を振り、立ち尽くすユーノの胸にその頭部を預ける。
「わたし、だって……」
もう、堪え切れなかった。誰かに縋っていないと、いられない。
本当に痛いのは、握られた両肩ではなく胸の奥にある、心。
「うそだって……言いたい、よ……っ」
フェイトは学校でもクラスで人気者で。
一番の親友であるなのはに、同じく親友のアリサたちならずとも欠席している彼女のことを
尋ねてくるクラスメイトたちは少なくなく。
言えるはずもない真実に重ねた虚偽が彼女の心にいくつもの傷を刻んでいった。
それは、リンディとシャマル同席のもと事実を知らされたはやての見せた取り乱した様子と相まって、
耐えることのない鈍痛を少女へ与え続けている。
どうにかしたい。どうしようもできない。嘘を言うしかない。
その焦りが痛くて、痛くて。
泣き叫びたいのをこらえてきたなのはは、崩れ落ちてしまいそうだった。
「フェイトちゃんが……フェイト、ちゃんが……」
「なのは……」
親友が、いなくなる。シャマルから告げられた宣告は、辛くて、苦しくて。
一人で立っていられない。いたくない。
その思いが、ユーノに向かったことで、決壊した。
「わたし……わかんない……どう、したら……わたし……」
「なのは」
この最近になって、二人の身長には随分、差ができていた。
ユーノがけして大柄というわけではないのだが、出会った頃の
それなりにしかなかったその目線の差で、ユーノは自分の胸に埋もれた
なのはの表情を窺い知ることはできない。
けれどユーノは、なのはが泣いているのだろうとごく自然に理解した。
ショックを心に隠し、誰のためでもない嘘をつき続け。
純粋な彼女の心はきっと、潰れてしまいそうになっているのだ、と。
彼女の心を、彼は痛々しい思いで理解できてしまう。
「……」
「わた、し」
彼女を、包み込むがごとく抱きしめるユーノ。
少しでも安らいで、心の均衡を取り戻してほしかったから。
抱きしめてやりながら、実感のない彼女の言葉を
心の中にリピート再生する。
フェイトが、あと一ヶ月しか生きられない。
治す方法は、ない。
自身の胸の中で肩を震わせるなのはの姿が痛々しくて、
ユーノにはかける言葉が見つからなかった。
というよりも、彼もまた自分の心中の整理がついていない。
『スクライア司書長』
「っ?はい」
内線の通信が入り、ユーノはびくりと反応し応答した。
『高町隊長はそちらにおいででしょうか』
「え……っあ、えと、はい」
『第五小隊に、出動要請が出ています。至急お戻りになられますよう』
「あ……?」
出動?こんな状態のなのはを?
とてもそんなことはさせられないととっさに思い、
ユーノは映像のむこうの担当官へと返す返答に窮する。
彼が窮しているうち、なのはが抱きしめられていた身体をそっと、
ユーノの両腕から離した。
「なのは?」
「……今、行きます。すぐに出られるよう各員に準備を」
『はっ』
涙交じりの声だったけれど、
通信越しの担当官には顔も見えず短い言葉であったこともあり、気付かれなかったろう。
そのまま踵を返し何も言わず、ふらりと出て行こうとするなのはを、ユーノは呼び止める。
「なのはっ」
「……ごめん。ありがとう。……でも、仕事している間は忘れられるから……大丈夫」
なのはが足を踏み出し。
なにかユーノが言う前に、音を立てて閉まった自動ドアが二人を隔てた。
やりきれない思いで彼はグレーの無機質なドアを見つめるしかなかった。
* * *
「どういうこと、これは」
頼みであったクロノも、リンディも。
昔のフェイトについて尋ねられると、気まずそうに口を噤み、何一つ答えてはくれなかった。
彼女を──家族を救いたくはないのか、と。
医療に携わる者として叫びたくなるのを堪えいくらシャマルが尋ねようとも
返ってくるのはたった一言、
───「あの子は、人間ですから」───
だけを繰り返すのみで、なにも得るものがなかった。
まるで、諦めたような言葉。人間だから病気にだってなる、とでも言うのだろうか、あの親子は。
それは確かに真理ではあるだろうが、自分達の家族に対してあまりに薄情ではなかろうか。
「これ……一体?」
故に、周辺調査を独自に、自らの手で行おうとシャマルは決めた。
クロノやリンディでさえああいう対応なのだ。
なのはやユーノ、エイミィといった面々も、積極的な協力は望めまい。
通常のフェイトに対する治療の仕事の合間を縫っての、孤軍での作業である。
手の空いているときはシグナムも手伝ってくれたが、基本的にはひとり。
「プレシア・テスタロッサ……彼女でフェイトちゃんの実母は、間違いない……なのに」
結果として手に入ったものは、ごくごくわずかな資料でしかなかった。
彼女の関わった事件──PT事件にはじまり、つい最近まで担当していた事件、解決してきた事件の
数々の報告書の類。そして、彼女の血縁者とされる人々のおおまかな個人情報程度である。
「どうして……?」
だが、シャマルの疑問を増幅するには、それで十分であった。
彼女の目にとまったのは、フェイトの実母たる人物の詳細。
その戸籍に明記された、実の娘の名前と略歴が彼女を悩ませる。
「アリシア・テスタロッサ……26年前に、死亡?」
そんな、馬鹿な。目を皿のようにして繰り返しその書類、資料に記された
文字を追うが、厳然と資料はそこにあり、変化などすることはなく。
プレシア・テスタロッサとフェイトの関係性については、なんら言及がなされてはいなかった。
彼女の存在そのものを、プレシア・テスタロッサの情報を扱った資料ほぼ全てが無視していると
言ってもいい。
(フェイトちゃんが生まれる前のもの?ううん、それはない。
これには3年前……プレシア女史が死亡したことまで、明記されている)
記入漏れとも、考えにくい。PT事件の報告書には二人の関係についてははっきりと「親子」
であるとされている。ただし欄外に注意書きとして記されている、「別紙資料」とやらの
存在は確認できなかったが。散逸したか、あるいは意図的に隠蔽されたか?
しかし一方で、ここでもプレシアにはフェイト以外の娘がいたということは認められている。
これは一体、どういうことなのだ。
シャマルには、資料たちが自分に提示する事象の数々について、判断がつきかねていた。
単なるミスによる食い違いか、情報操作によるものか。
一体何が真実であるのかさえも。
「でも」
匂う。
やはり、フェイトが常人では考えられない症例を発症した原因は、彼女の生い立ちにある。
伊達に数百年もの間、後方支援のエキスパートとして生きてきたわけではない。
現在は無限書庫の司書におさまっているユーノほどではなくとも、
資料を読み取り、なにかがあると思われる部分を嗅ぎ分ける嗅覚にはある程度の自信はある。
そのシャマルの勘が、原因はここにあると告げている。
「やっぱり……近いところから直接、当たっていくしかないかしら……」
溜息を、ひとつ。
よく知った連絡先に手元の通話機をとって繋ぎ、アポイントを確認する。
艦は今、本局に戻ってきている。会うだけならば、さほど難しくはないのだろうが。
「ええ、はい。ええ、それで、はい。それじゃあ、お待ちしています」
報告書の執筆者に問いただすのが、一番はやい。
それに彼女の性格なら、リンディやクロノといった曲者よりは組みやすかろう。
細々した疑問点だらけの作業に疲れたシャマルは、てっとりばやい安直な手段を選んだ自分を、
そのように納得させ、正当化した。
机上のPT事件報告書、その最後に記された署名へと目をやり、更に溜息をもうひとつ。
「では。八時に。リミエッタ管制官にお伝え下さい」
エイミィ・リミエッタ。
気のいい彼女からならば、なにか聞けるかもしれない。
これらの資料のもつ矛盾点をつきつければ、どうにか。
この報告書を書いたのは他でもない、フェイトの姉のような存在でもある彼女なのだから。
流れをぶったぎって投下。
カルママダーは自分も激しく同意。
いつまでもどこまでも待つ所存(ぉ
144 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/03(火) 00:28:31 ID:f+1YoQCo
>>640 切ねぇ。なのはとユーノ切ねぇ。
シャマルが何やらかぎまわっているとこが救いになるのかな。
聖痕さんとこに書き込み&リンクされてましたね。しかもあの人のあとがきにまで640氏の名が。
>>136 なるほど、クロフェ好きは聖痕さんとこか、正論だな。
だが俺のようなクロなの好きはどうすれば orz
こんばんは396です。今宵も投下に来ました。まずはようやく読めた他の職人さんへの感想を。
>>176氏
戦闘かっこいいなぁ。プレシアは本編よりもずいぶん傲慢強欲ですね。
>>640氏
今のこのスレの流行はフェイト虐め!?最高じゃ…いや、報われてほしいです。
魔法少女リリカルなのはA's++
第五話 「エターナル・クワドラングル」
聞く所によると、二日間はやての家に宿泊していたユーノは、なのはの勧めにより高町家に居候することにしたようだ。
なのはは相変わらず忙しく家にいれない時間もあるがちゃんと夜には帰宅していたし、ユーノも久しぶりの高町家に喜んでいるらしい。
言ってみれば元の鞘に戻った、ということだ。そもそも恋愛感情など数日で生まれるはずはないのだ。
はやてとユーノの関係は単なる思い過ごし、杞憂に過ぎなかったんだ、とフェイトがほっと胸を撫で下ろし登校した翌日。
「あーそこの主人公の台詞は鳥肌もんやったな〜」
「そうだよね!僕も少し憧れちゃったよ」
ユーノははやての肩に乗っていた。なのははユーノがいる間は学校につれてくる、と言っていたので
昨日と同様こっそり連れてきていた。今は昼食の時間で、なのは達のグループはあまり人目がつかないで食べていたので
フェレットのユーノもなんの気兼ねもなくしゃべっている。さすがに人間の姿に戻るつもりまではないようだ。
別にはやてとユーノだけの空間が出来ているというわけではなく、すずかやアリサ、時にはなのはも混ぜて普通に話しているだけだ。
フェイトを除いて誰も違和感など覚えていないし、一見楽しそうな昼食のワンシーンのように見える。
だが、どうしてもフェイトには危機感のようなものを感じざるを得なかった。
まずはユーノのいる場所だ。今までユーノがなのは以外の肩に乗ることなど、フェイトの使い魔であるアルフ以外にはありえなかった。
もちろんアルフとユーノが仲が良いのは立場が似ているということだけで、恋愛感情など皆無だ。
次に、はやてだ。今まさにユーノに自分のお弁当を分けているが、執務官であるフェイトの観察眼を甘く見てもらっては困る。
あれは普段のようにシャマルが作ったものではなく、時々作ってくるはやて自作のお弁当だ。
一人暮らしをしていたこともあってかその腕は誰もが認めるほどで、非常に美味だ。
たまたま、偶然かもしれない。しかし、疑うには材料が多すぎる。
「ユ、ユーノ!!」
ユーノがはやてからもらった玉子焼きにかじりついていると、フェイトが突然話しかけてきた。
「あの、実は母さんがお弁当作りすぎちゃって、ちょっと入りそうにないからこれも食べて!」
そう言うやいなやフェイトはユーノを掴むと流れ作業の如く弁当の中身を口に突っ込んできた。
ユーノの腹を満たし、これ以上はやての料理を食べられなくする作戦である。
「あぐ、むぐぐ!!!」
まるでこじ開けられるように口に入れられるのでユーノはなすすべもなく口を開けた。
こんなに次々と入れられたら味以前に飲み込むことすらできない。
ユーノは頬めいっぱいに弁当の具を溜め込むこととなった。
「あはは!ユーノ君リスみたいや〜」
「ちょっと、フェイト何やってん…くっ!」
それを見たはやてとアリサが笑い始めた。なのはも笑いを堪えている。
「ユーノ君、今は夏だから冬眠の準備には早いよ?」
すずかがぽつりと言った何気ないその一言で、なのは達は笑いの渦に包まれた。
(ちょ…誰か…助け……)
ユーノの顔がどんどん青ざめていく。鼻でかろうじて呼吸できていたが、やはり苦しい。
しかもせっかくもらったのだからと飲み込もうとしたのが運の尽き、喉につっかえていた。
「あぁ!?ユーノ!」
結局ユーノは目を回して倒れた。
「あの、えっと、ごめんね…」
ユーノを膝の上に乗せフェイトが申し訳なさそうに言った。
「いや、大丈夫だよ。それに、その、ちょっとしか食べられなかったけど、すごいおいしかったよ」
どうやら怒ってはいないようでフェイトは安心した。
そして、申し訳ないと思いながらもリンディの料理を誉められたのが自分のことのように嬉しく感じた。
「はぁ…はぁ…まだお腹痛いわ」
アリサがようやく気を落ち着かせてしゃべり始めた。
先ほどのユーノの姿が笑いのツボにはまったようでアリサは5人の中で一番笑っていた。
「ほんまにユーノ君はおもろいな〜」
はやてがユーノを見ながら言った。
それを聞いた瞬間フェイトは頭をハンマーで殴られたようなショックを受けた。
しまった。どうやら自分はユーノのポイントを稼いでしまったらしい。これでははやてとユーノの距離が余計縮まってしまう!
フェイトが不安そうになのはを見ると、なのははなぜフェイトがそんなに切羽詰った顔をしているのかわからない、といった表情をした。
(大丈夫、なのは。私がユーノを取り戻してみせるから!)
なのはの気持ちとは別に、決意を新たにするフェイトだった。
それからというもの、フェイトははやてとユーノの会話にとことん介入した。
たとえば、休み時間。
「ユーノ君、今度あの本貸してくれへん?」
「ああ、じゃあ…」
と、ユーノとはやてが小声で話そうものなら、
「あ!ユーノ!!」
「えっと…どうしたの、フェイト?」
「あの、その、わ、私もそれ…貸して欲しいなぁって…」
「え…別にいいけど…」
といった調子で、どこからともなくフェイトは駆けつけ二人だけの時間の邪魔をした。
時には、教室にほとんど人がいなくなる放課後。
みんなで帰る支度をしているとき、
「痛っ!!」
はやてが鞄にノートを仕舞っているときにふいに手を離した。
どうやら紙で指を切ってしまったらしく、ぷっくりと指先から血が出てきた。
「大丈夫!?はやて!」
近くにいたユーノがかけつけ、はやての指先を軽く舐める。
「!?」
「ありがとう、ユーノ君」
フェイトの驚きとはよそに、はやてが微笑みながらお礼を言いユーノが簡易の治癒魔法を使おうとする。
フェイトは超高速で鞄を開け、他の中身も気にせずまさぐる。
「私!絆創膏持ってるから!!はい、はやて」
「え?あ、ありがとう」
絆創膏をはやてに手渡し、ユーノに向き直る。
「誰かに見られたらどうするの!ユーノ!」
「え…でも、僕達以外に誰もいないし…」
「それでも駄目!執務官として駄目!」
といった感じで、はやてとユーノが接しないようにできるかぎりのことをした。
フェイトの中では完璧の作戦だった。
―――数日後
「ユーノの休みも今日で終わりらしいわね」
休み時間、下敷きで自分を扇ぎながらアリサがフェイトに話しかけた。
「うん。そうだね」
フェイトはてきぱきと次の時間の用意をしながら言った。
「…………」
「…………」
アリサとすずかが無言で目を見合わせる。なのはとはやては次の授業の資料運びを任されていて今はいない。
ユーノは帰る準備があるため今日はなのはの家にいるらしい。
「えっと……それだけ?」
アリサがフェイトに聞き返した。すずかも興味ありげにフェイトのことを見つめる。
「え?それだけって?」
フェイトは心底わからないといった感じで首を傾げた。
それを見てアリサはにやりと笑った。
「だって、またしばらく会えなくなっちゃうんでしょ?だったら告白しちゃったほうがいいんじゃない?」
「……………………は?」
長い沈黙の後フェイトは口をぽかんと開けてアリサを見た。
「なのはちゃんもはやてちゃんもこれから好きになっちゃう可能性あるし、今のうちだと思うよ」
すずかがフェイトに小声で囁いた。
「まったくフェイトも不器用なんだから。こういうのはさっさと言っちゃえばいいのよ」
アリサがフェイトを扇ぎながら言った。フェイトは急にきた風で目を細める。
まだアリサとすずかが何を言っているのか理解できない。
「えっと…告白?……好きって、誰が?」
思考は追いつかないがやっとのことで声が出た。風が止みふわりと髪が元にもどる。
「だから!フェイトはユーノのことが好きなんでしょ?」
「なのはちゃん達も絶対気付いてるよね」
それを聞いた瞬間フェイトの頭は真っ白になった。
それから先のことは記憶が曖昧であまりよく覚えていない。
ただわかっているのは、自分はとんでもない誤解をされている、ということだけだった。
*
「最近フェイトちゃんの様子、おかしくない?」
エイミィがモニターを監視しながら言った。今はフェイトの任務中で、しばらくの間待機状態である。
「そうか?魔力も安定しているし何も問題はないようだが」
クロノは頬杖を解きながら答えた。フェイトはきちんと任務をこなしているし、学校も問題なく通っている。
「いや、仕事のことじゃなくて、私生活の方」
少し呆れ気味にエイミィが言った。
「私生活?……すまない。思いあたる節がない」
考えてみたがやはり思いつかなかった。たまに食事を一緒に取るし、朝も学校へ見送ったが、
別段変わった様子は見受けられなかった。そういえば、ちょっとここのところため息が多かったような気がする。
(これだから男って……)
エイミィははぁっとため息をついた。近頃フェイトは確実に何か思い悩んでいる。任務は完璧にこなす。
その成果はまだ執務官になって日が浅いとは思えないほどだ。
ただ、任務が終わるとぼーっと壁を見つめたり、自動販売機で喉を潤すつもりがおしるこを買ってみたり、
部屋の隅の観葉植物の葉っぱを遠い目をしながら毟ってみたり。あれではまるで…
(そう、あれはまるで……恋する乙女!!)
エイミィはぐっとこぶしを握り締め勝手に確信した。
「そんなことよりエイミィ」
クロノが少しトーンを下げ、真面目な声で話しかけてきた。仕事の話のときのクロノは雰囲気が変わる。
エイミィも頭を切り替え、振り返って真剣な眼差しでクロノを見た。
「最近起こっているミッドチルダでの連続強盗事件。どうやら僕達に声がかかるそうだ」
「え!?だって管轄が違うじゃない」
エイミィが驚くのも無理はなかった。そもそも、時空管理局はミッドチルダだけではなくいくつかの次元世界で運営している。
故に各次元内の問題はその内々で解決する決まりになっていた。
「ところがだ。相手は次元世界を行き来して潜伏、逃走を繰り返しているらしい。次元空間航行艦船所有の可能性まである」
「!?」
エイミィは本当に驚いたといった感じで目を見開いた。次元空間航行艦船。
つまりアースラと同じ機能、次元間航行能力を有しているということだ。
軍艦ですらその機能を持っていない場合があるほど高価で、足がつかないで入手するなど考えられない。
「たぶんかなり大きな任務になるかもしれないから心に留めておいてくれ。はやてにも伝えてある」
「…………」
エイミィは頷いてモニターに目を戻した。何故だろうか。先ほどの話を聞いてとても心がざわめく。
なにかとてつもなく嫌なことが起こりそうな、そんな気がした。
(気のせいよね…)
エイミィはそう思うと自分の仕事に専念した。
*
―――無限書庫最深部
休みも終わり、ユーノは休んだ分を取り返すかのごとく働いていた。
今は魔法を使いながら書物の整理に没頭している。ここは管理者権限がないと入ることはできない。よってユーノ一人だ。
置いてある書物はかなり古いものばかりで劣化も激しく、損失部分を補修したり、限界の場合は破棄したりと慎重な作業を繰り返していた。
室温調整もできないらしくおそろしく寒い。冬に着たコートを部屋から引っ張り出しての作業だった。
「まったく、夏だったり冬だったり、これじゃあ風邪ひいちゃうよ…」
白い息を吐きながらユーノは愚痴を言った。暗くて気分も湿っぽくなる。
早く帰って部屋で暖かいコーヒーを飲みたい、と思った。
「…それは困るな」
「!?」
ふいに後ろで声がしたのでユーノは驚いて振り向いた。
暗くて自分の周り以外は見えないが、かすかに人の気配がする。
「誰だ!!」
ユーノが身構えて叫んだ。
広い空間にユーノの声がこだまする。
「ひどいな…。ユーノは僕のこと、忘れちゃった?」
ゆっくりと人影が自分に近づいてくるのがわかった。
照明に足が見え、だんだんとその体を照らしていく。
「久しぶり。ユーノ」
現れた人物の顔を、ユーノは見たことがあった。
次回へ続く
次回 第六話 「青い髪の少年」
第五話タイトルですが、エターナル・クワドラングルとは四角関係という意味です。
まあ厳密にはなのは達は四角関係ではないのですが4人いるので四角です。
ずっと平和な話ばかりで多少スレで浮いていましたが第六話からはかなりシリアス展開です。
ぶっちゃけ先が見えないですが全十八話くらいになりそうです。それでは。
156 :
さばかん:2006/10/03(火) 23:03:45 ID:7zOIx7Mt
クロエミ結婚おめでとう!メガマガ読む前はてっきり
でき婚かと思ったよ。クロノ・・・すまん。そしてユーノガンガレ
さて今回も投下させていただきます。今回はエロ有り。
咲き誇る花が散るのをはやては黙って観察した。
彼女はなんて言ったのだろう・・・確か、私を、コロ
「殺した」
ああ、この子は何を言っているのだろう?
「はやてちゃん・・・笑えない嘘は人を不快にするだけだよ」
表情も語気も荒い・・・意識していなくても自然とそうなった。
はやてちゃんははぁと溜息を付き、ソファーから起き上がる。
こちらに近寄って来る。自然と体が硬くなり、私は身構えた。
はやてちゃんの手が伸びる。咄嗟にかわそうとしたが、私はあっけなく
服を掴まれて捲られる。
「なっ・・・何するのはやてちゃ、」
言葉が石になったみたいにガンガンと落ちて無意味になる。
私の胸に・・・あるはずのない・・・大きい傷跡が!!!
「うわああああああああああああああ!!!!!!」
まるで、長い時間を付き合ってきたような傷跡に私はこの上ない気味悪さに
叫んだ。
「ここにな、ナイフを突き立てて、そしたらな、どばっと、引き抜いたら、綺麗な、
血が、まるで、花のように、咲いて、枯れて・・・」
言って、その傷跡に這う指。その白さとつたう感触に私はぞくっとした。
「あっ・・・」
「もうなのはちゃんは私のものや・・・思い出した?自分が殺された瞬間を」
その感触に縋るように私はじっとしている。その指を見つつ、私は首を横にふる。
「そっか、きっと記憶がこんがらがっとるんや。ん、大丈夫。私が思い出させてあげる」
言いながら、人差し指で私の額をトンと突いた。
私の記憶が、シチューのようにかき混ぜられて、ジュースィーに・・・
バレバレだった。
通学バスでアリサちゃんと鈴鹿ちゃんに別れを告げ、帰路につく途中、なんか
気配が後ろからビリビリと感じた。
下手糞な尾行。気配感知素人の私にさえ分かるんだから、もう駄目駄目。
気のせいかも知れないと思い、歩幅をずらしてみる。
トン ぺたん トン ぺたん トン ぺたぺったん
もう確定でしょ?ミニミニメカレオンの時にチェリーが出なかった位に。
しかし、ぺたぺったん?
プレミアム演出?
とんと足を止め、私は後ろに振り返る。この瞬間にビラミッドパワー出現なら笑える冗談だと思う。
しかし、後ろから出現したのはビラミッドパワーでも目でも三人絵でも無かった。
「おっす、なのはちゃん!!」
「シャロン・・・じゃなくて、はやてちゃん!」
そこに立っていたのははやてちゃん。私の友達だ。
「やあ、なのはちゃん。本日はお天気がええなぁ。ハトもいつもよりポッポー鳴いとる」
凄い棒読み。しかも硬い。
「はははははどうしたのはやてちゃん?まるで、有名芸能人で固めた失敗必至のアニメ映画みたいな
演技は」
その言葉を無視して、はやてちゃんが紙切れみたいに倒れそうになる。もち、わざとらしさたっぷり。
とっさに動き、その体を支える。
有り得ない感触が私の胸を貫いた。ドスッ。
「!!」
よく分からない。余りにも速すぎて、それが何なのか、私にとってどんなものか想像する。
恐怖で後ろに下がろうとすると、その正体が見えた。それは・・・ナイフ。
恐怖で掠れた声が引金。私の胸からナイフが引き抜かれる。
ぶしゃっ!
ああ・・・これ、私の体の中にあるんだ。なんて可憐で禍々しい。
倒れる私の視線の先に、笑いもしないはやてちゃんが冷たくそれを眺めた。
目覚めるとそこはベッドの上、しかも裸だった。そして、私の上には、同じく裸のはやてちゃんが。
「え・・・?」
動こうとする私に、はちゃてちゃんは黙って人差し指を私の唇に押し当てた。
近付く顔・・・私は初めて、人と唇を重ねた。
最初は啄むように、次第に絡まる舌と舌。突然の事で最初は動転した私だったけど、
それは唇の感触に解かされた。なんて柔らかい。雲を食べるような感触。
はやてちゃんは突然唇を離す。粘つく唾が糸となり、絡んだ唇の結末をせめて美しく
飾ろうと儚げ。
「なのはちゃん・・・ワイン、飲もうか?」
駄目だとは思いつつ、私は頷く。もう、私の思考は彼女の舌に絡めとられたのかも知れない。
はやてちゃんはベッドの横に置いてあるワイングラスをとり中身の血のように真っ赤なワインを口
に含んだ。
それは、本当に血だったのかも知れなかった。だが、そんな事はどうでも良い。
後とか先とか、考えられる程私は大人じゃないんだ。
口に含んだワインを私に口移ししてくれる・・・なんか、まるではやてちゃんの唇で酔ってる気分。
ワインを何杯か飲んで、時には飲ませてあげたりした。なんだろう。キスってこんなに気持良いものなんだ・・・
「なのはちゃん・・・もっとキスが気持ちよくなる方法があるんよ、知ってる?」
「え?」
「簡単や。相手の事を好きになる。それだけ、本当にそれだけで気持ちよくなるんや。
なのはちゃんは、私の事好き?」
覆いかぶされた私ははやてちゃんの綺麗な顔をじっと見る。ワインで赤みがかった顔。
見るだけでへんな気持ちになりそう。
ああ、これって、好きって気持ちなのかなぁ?
「分からないけど・・・悪い気分じゃないや」
言ってにっこりと笑う。
そっかとはやてちゃんは悔しさ半分嬉しさ半分みたいな表情で私のほっぺに軽くキスをした。
私の胸を触り、乳首を甘噛みする。知らなかった、そんなところが気持ちよくなるなんて。
はやてちゃんは私と言う人間の構造を知るために深く水につかっているみたいだった。
そう言う私は、そんなはやてちゃんが愛しくって何を思ったか頭を撫でていた。
感触の良い髪の毛がさっきの舌のように私の指に絡まる。同時にシャンプーの
暖かい匂いが私の脳を溶かす。私、全身がチョコレートにでもなったかな?なんてね。
「なのはちゃんばっかり気持ち良いのはずるいなぁ。私も・・・して」
はやてちゃんは体を起き上がらせ私に胸を触ってくれと言った。
ふわりと私の指にプニプニした感触。それがあんまりにも暖かくって私はその胸に
ぴたっと抱きついた。
「ちょ・・・な、なのはちゃ〜ん・・・」
じゃれる私になんかはやてちゃんが照れてる。
「えへへ☆あったかい」
なんか、ラブラブだった。
「なのはちゃん、これ、な〜んだ?」
「うわ・・・」
それは、うん。私も良く知っているものだった。そうお父さんと風呂に入る
時に見る。
「おちんちん?」
はやてちゃんの股間に大きな男根が生えていた。
「そう!へへー魔法でつくった特別製や。ちゃんと感じるようにつくってる」
言って、亀頭を私の花弁に押し当てる。
「やさしくしてね・・・」
「ごめんな。イエスとは言えない。だって、男の子の部分を生やすのは初めてやし、
何より、私はなのはちゃんが・・・欲しい」
二人は徐(おもむろ)に唇を重ね、はやてちゃんはゆっくりと本当に優しく、
私の中に侵入する。
「んっ・・・きっついなぁ・・・」
言いながらも気持ち良さそうな顔をする。
「んっ・・・!」
「なのはちゃん、痛いんか?だったらもっと・・・」
「ちっ違うよ!大丈夫、はやてちゃんの、気持ち良いよ」
お互いが慣れてきて、体制を時々変えながら互いの吐息が室内を満たす。
やがて、なのはが上になり、はやてはすっかり押され気味だった。
ぱん、ぱん、ぱん
「ン・・・あっいいっ!はやてちゃんももっと腰を動かして・・・」
「な、なのはちゃん!駄目やって、これ以上動かれたら逝っちゃいそうや」
だが、はやても絶頂に達したい為か、動きがどんどん激しくなる。
「んっ、あっ!!」
「あっなのはちゃん!」
絶頂に達したなのはの強い締め付けにはやての射精が促される。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
二人ともベッドでゴロリ。互いに柔らかいキスを交わしていた。
「ん・・・私、初めてなのにいっちゃった・・・」
「私も・・・」
暫くの沈黙の後、はやてちゃんは私の体にくっ付き
「なぁ、今度はなのはちゃんにおちんちんを生やして私にしてもらってもいいかなぁ?」
「え?」
ドキッとした。だって私には気力があったからだ。
「う・・・うん」
そうして私達は再び、
「って、ちょっと待った〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!」
回想終了
「わ、私、本気でそんな事言ったりやったり」
「いやーのりのりだったよなのはちゃん☆」
なーんて笑顔で言った。
つづく
みなさん、こんばんわ。
結局月1のペースを上回ることは出来ず…orz
やっぱり一ヶ月のご無沙汰です。4の422です。
3期の話題でなにやら騒いでおりますが、結局「今の」私が行き着くところは、
クロノ×なのはなわけで(^^;)
そしてあと1回と言いつつやはり今回もこれで終わらせることができなかったわけで…
エロもほとんど入ってないわけで…orz
あ、豪快なるエロはありませんが…15禁くらい…なのかな?ちょっとだけあるんで。
公式となったクロノ×エイミィとはかけ離れた原作相違ばりばりなのでご注意を。
魔法少女リリカルなのは 〜 CherryLight 〜 A Sweet Night Vol.2
「わ、ほんとに届いてる!」
ででん、と、ミッドチルダ圏ハラオウン邸のキッチンのテーブルに鎮座している品々
になのはは感嘆の声を上げる。
「…いや、なのはだって転移魔法くらい使えるじゃないか、別にそう驚かなくても」
「えー、だってだって、すごい便利だよぉ、お買い物しても荷物持たなくていいなんて!」
ミッドチルダのスーパー(こう呼んでいいかは不明だが分かりやすい解釈としてこう
表記しよう)では買い物の際、購入した商品は転移魔法により各自望む場所へと自動的
に転移される。これにより重い荷物を持って街を歩く、といった姿はほぼ見かけること
はない(但し男女間の秘めやかな問題であったり、何らかの罰ゲーム等であったり、と
いったこともあるので、例えは悪いが皆無ではない)。
「僕にとってはこれが普通だからなぁ」
「魔法って便利だねぇ…」
「…なのは…それ教導官の台詞じゃないよ…」
「うー、バカにされてる…」
「ぜーんぜん♪」
ぷち涙目で自分を睨むなのはを、クロノはわざとらしい口笛を吹きながらかわす。
「ふんだ、いいもん。ハラオウンさんとこのお嫁さんは世間知らずだー、なんて噂が立っ
ても知らないからねーだ」
「…なのは…それ自分のことだってわかって言ってる?」
いや、突っ込むところはそこか?クロノ・ハラオウン。
「もっちろん」
「え?」
「だから。ちゃーんとその辺を教えておいてね。……あなた」
「うっ!…」
なーんて、と小さな舌を出すなのはを、思わず力いっぱい抱き締めたくなる衝動を必死に
抑えるクロノ。誤魔化す様に鼻っ面を指でかいてみたり。
「わ、わかった。夫として妻に恥をかかせるわけにはいかないからな」
「うんっ、よろしくお願いします。あなた!」
色々な意味の恥ずかしさに頬を赤く染めるなのはに、がりがり削られるクロノの理性。
抑えきれなくなった衝動が暴発する前に、とクロノはなのはの頬にそっと手を沿える。
なのははその手に自分の手を重ね、ゆっくりと目を閉じた・・・
〜 〜 〜 〜
〜 1 hour 15 minutes later 〜
「はーい、お待たせ〜。なのは特製オムライスだよー♪」
ぱちぱちぱち、とクロノは拍手でオムライスと、ピンク色のエプロン姿のなのはを出
迎える。
「ごめんね、遅くなっちゃって」
「い、いや、あれは僕にも責任の一旦というか、その、むしろ僕のせいというか、その、
すまなかった…」
「あ、あはは、だ、大丈夫、気にしてないから。その、やっぱりそっちは後で…ね」
「あ、ああ、わかった」
ひとしきり2人でいちゃついた後、夕飯の準備を、とあいなったわけだが。
せっかくだからとクロノも多少の手伝いを交えつつ2人でキッチンに立ったのだが、
いかんせん、普段見慣れない聖祥女子のライトイエローのブレザー+程よくその黄色に
マッチしたピンクのエプロン姿のなのはが自分のすぐ隣で料理に勤しんでいる。これを
クロノに見るな、欲情するなと言う方が無理であろう。
ちらちら、とその姿を盗み見るクロノ(別に盗み見る必要はまったくないのだが)、
時折その視線がふと合うと、なのはは「なあに?」とディバインバスター級の微笑みを
クロノに返す。その都度クロノは「い、いや、な、何でも…」とあわてて視線を逸らす。
そんなやりとりを17回目くらいまではクロノも耐えた。しかしサラダ用のレタスを
切り終え、ボウルにそれを移したところで、今一度、とクロノがちらりと視線をなのは
に移すと、18回目にして今度はなのはから先にクロノの方に視線を向けていた。
「えへ、たまには私からー、えへへ、なんてー」
クロノは跳んだ、いや飛んだ、えーと、もとい、クロノの意識とか理性とかそういっ
たものが、飛んだ。なのはの後ろから手を回しその肩を抱き、うっとりする香りの髪に
顔を埋める。
「ク、クロノくん!?」
「ごめん、また、ちょっとだけ…このままで…いい?」
なのはは答える代わりに自分の肩と上腕を包み込むクロノの手にそっと手を沿える。
「……」
「……」
「…クロノくん…」
「うん…」
「…好き…」
「僕もだ…なのはが僕の家に居るなんて、まだ信じられない。夢みたいだ…」
「夢…じゃないよ…私、ここに居るよ、クロノくんの隣に、すぐ側に…」
「…確かめて…いい?なのはがここに居ること」
「…うん」
顔だけ右を向いたなのはに合わせるようにクロノは体をずらし、そっと口付ける。
口付けたまま、クロノはわずかに口を開き、舌でなのはの唇をちょん、とノックする。
驚きに一瞬目を見開いたなのはだが、すぐに瞼を閉じ、そっと小さく口を開く。
それを確認するまでもなく、クロノは舌を伸ばし、なのはの口の中に自分の舌を滑り
込ませる。抱いているなのはの肩がびくっと震える感触がその手に伝わる。
それに構わず、精一杯舌を伸ばし、クロノはなのはの舌に自分の舌を絡ませる。
クロノの舌の感触を自分の舌で感じ取りながら、なのはも少しづつ舌を伸ばし、次第
に2人の舌が絡み合う部分が唇の外にと場を移す。
外気に触れる冷たさと相手の絡み合う舌の熱さ。敏感な舌先に感じる2つの温度差と
感触。キスに夢中で呼吸すら忘れた2人は段々と何も考えられなくなってくる。
(や、やだ、なんで?き、気持ちいい、公園の時より全然気持ちいい…も、もう…)
(な、なんだこれ?なのはの舌、気持ちよすぎて、こ、この前と全然違う…)
特に意識したわけでなく、もうほとんど本能で、キスだけでは収まりきれなくなった
クロノは右手を制服越しになのはの左胸に重ねる。
たったそれだけで。
エプロンと制服とブラジャー越しに、クロノの数本の指先で弾かれただけで、左の乳
首から弾けるような電流が流れ、なのはを襲う。
「はあああああああぁっっっっ!!!!」
思わず唇を離し、なのはは喘ぎ声、いや、叫び声を上げてしまう。
眼前で叫ぶなのはの声にクロノも驚き体を離す。
「ごっ、ごめん!い、痛かった?ごめん!そのっ…」
がく、とうなだれ、クロノの胸に身体を預けながら、なのはは荒い息をつく。
ゆっくりと顔を上げ、なのははクロノを見やる。潤むだけ潤んだ、どことなく焦点の
合わない半開きの瞳がクロノに向けられれ、ふるふるとその頭が振られる。
「…き、気持ち…よかったの…クロノくんに…おっぱい触られたら…びりびり、ってなっ
て…声、出ちゃって…」
「う…」
夢うつつの表情でクロノに語るなのは。「おっぱい」というクロノにとって、その程
度ではあるが卑猥な単語。それに反応するかのようにこんな場所でいきり立つ自分のあ
る1点に、さらにどくん、と血液が流れ込むのを感じながら、クロノはなのはの肩に添
えていた今度は両手を、ゆっくりとなのはの胸に持っていく。
そしてなのはもそれを望んでいた。
「触って…ほしいの…もっと…おっぱい触って…クロノくん…」
そして、触れた。
ふわ、と。3枚の布地に包まれながら。それでもなおクロノの手にふんわりと柔らか
な、この世の何よりも、クロノが未だかつて経験したことのない柔らかさがその両手に
伝わる。
(な、なんて柔らかい…ふわふわで…)
握りつぶさないよう細心の注意を払って力加減する自分で、かまわず滅茶苦茶に揉み
しだきたい自分を抑えながら、クロノはやわやわと服の上からなのはの胸を外周からゆっ
くりと揉んでいく。
「はうぅっ!うぅんっ!!!」
なのはの方はさらに大変である。クロノの手が自分の胸に触れたとたん。甘い疼きが
脳天へ突き抜けた。
先ほどのである程度の心の準備はあったものの、声を抑えるには到底足りない。必死
に唇を噛んで耐えようとするも、噛んでいるという感覚すら無くなるほどの快感。たか
だか触れられた程度で、である。しかもクロノの手はだんだんと、ゆっくりゆっくり胸
の中心部へと近づいている。
(さ、触られちゃう、クロノくんに、お、おっぱいの大事なとこ触られちゃうよぉ…、
あぁ…く、来るぅ、も、もう来ちゃうっっっっ!!!!!!)
そして、来る。
クロノの親指と人差し指が、限りない柔らかさを感じていた指先が、急に柔らかい
ゴムの塊のような、心地よい弾力を与える1点を捕らえる。
(こ、これっ!?これっ、む、胸…、乳首っ、な、なのは、起って!?)
無論クロノとて女性の乳首が快感時に起立することくらいは知っている。
(な、なんだこれ!?さ、触ってるだけなのに、なんて気持ちいい…)
それでも知識と現実では与える衝撃は天と地ほどもあることは多い。もっともっと、
いや許されるならこのまま未来永劫いつまでも触っていたい、とすら思えるなのはの
乳首の感触にクロノは酔いしれる。
「ひっ!はぁぁあぁぁぁぁぁぁああぁっっっ!!!!!」
がくがくと身体を痙攣させ、なのはは軽く登り詰める。触られた、と思う暇もなく、
喉から喘ぎ声の塊が飛び出す。
「うあっ!はぁっ!!ふっ!はあっ!あっ!!!ああーーーーーーーーーーっ!!」
クロノの指が乳首をこねる度、クロノを想い、幾度か経験した自慰行為の快感を遥か
に超える快感が脳天を突き抜ける。
さっき触れられた快感が金槌で殴られた強さだとすれば、今回の衝撃はクレーン車で
鉄球を叩きつけられたに等しい。
自分1人では決して得られない快感に、なのはの脳は声を抑えるとかそういった忍耐
の行為をすっぱり切り捨てた。
「ああーーーーっ!!クロノくっんっっ!!きっ、気持ちいいっ!!おっぱい、はぁんっ!!
わ、私のおっぱいクロノくんにぃぃっ!!!ああっ、んふぅっ!きっ、気持ちいんっ!!
ふわぁぁっっ!」
(なのは…胸だけで、そんなに…ぼ、僕がなのはを…胸で気持ちよくしてあげてるんだ…)
ここまでくればそう簡単に止まることなどできはしない。当然次に来るのは…
(服の上からじゃなくて…直に…)
見たい、触りたい。そして許されるならその先も…
「な、なのは…」
そしてそれは、彼女も、同様。
普段のなのはなら、そんなことは絶対にしないであろう。例え相手が愛するクロノで
あったとしても。いや、クロノであるがこそ、そんなはしたないと思われるような行為
は必ず自制したはずである。
が、今のなのはは、なのはの思考は快感で埋め尽くされている。言葉を躊躇した思考
分だけ鈍った、己を快楽へ導く指先の動きを取り戻さんと、左手でクロノの右手をがっ、
と掴み、右手は自らエプロンを掻き分け、制服の裾をえいっとばかりにめくり上げる。
クロノの目に飛び込んでくるなのはの腹部と、かすかに顔を覗かせるピンク色のブラ。
そのままクロノの手を服の中へと押し込………
……………
と、そこまできて、なのはの動きがピタリと止まる。
「え?なの…は?」
「何か…変な…匂い…」
「えっ?……………」
二人揃って、同じ方向に、同じ速度で、同じ目標物に首だけで視線を向ける。
「「うわぁああぁぁあああああああぁああああああっっ!!!!!!!!!!!」」
ものの見事に存在を忘れられたフライパンの上の物体(既に元が何であるか把握でき
る形状ではない)が、熱せられるだけ熱せられ、完全に炭化して、ぶすぶすと焦げ臭い
匂いを放っていた。
「スターシフトフォールっ!!!」
「エターナルコフィン!!!」
現状を把握した2人の動きは早かった。なのははスターシフトフォール(物質加速型
射撃魔法スターダストフォールの改バージョン。同魔法から射撃部分のプログラムを取
り除き、物体を「移動」させることだけを目的とした魔法)でフライパンをシンクに移
動させ、被害の拡大を防ぐ。
クロノは瞬時に懐からS2U改めN2Kを取り出し、待機状態のまま無理矢理エター
ナルコフィンを放ち、強制消化&冷却。
「全方位プロテクション!!」
「展開っっ!!!!」
と、続けざまに2人同時に全方位プロテクションにて中に浮くフライパンを結界に閉
じ込め、完全捕獲。
この一連の流れがわずか0.182秒にて行われた。
「ま…」
「間に…合った」
がく、と膝から崩れる2人。いくら管理局の猛者2人とはいえ、いちゃついていた隣
で料理が火を吹きかければそれは胆をつぶすだろう。それでも崩折れながらもコンロの
スイッチに手をかけ、火を消している辺り、なのはの方が少しだけ場慣れしているのか
もしれない。
「…流石なのは。いい判断だ。伊達に教導官の肩書きは持ってないな」
「クロノくんこそ。待機状態のN2Kでエターナルコフィン撃てるなんてすごいよ」
「威力を抑えて発動時間を優先させれば待機状態でも発動は可能だからね。最も、実際
に発動させたのは今が始めてだけど。というか、N2Kの初舞台が消火活動とはね」
「あ、どうだった?『2人』のデバイスの使い心地」
「基本的に以前と変わっていない。でも…」
「でも?」
「なんていうか、愛を感じる。なのはの」
「えへへ。たーっぷり愛情を込めましたから」
「それは何にも変えがたい力だな」
「えへ……へ…?」
と、そこまで言ってなのはは自分の服の乱れに気付く。
ばっ、と慌てて裾を降ろすなのは。赤らんだ顔でクロノを見やる。
「え、えっと、その…」
「あ、いや、その…なんだ…」
とても流れる気まずい空気。
「「ごっ!ごめん(なさい)っ!!!!」」
まぁ、お約束というかまったく同じタイミングで頭を下げたりするわけで。
「「あ…」」
こういうときの空気はなかなか元に戻ってくれないのは古来からのお約束。
まぁ、それでも。
「えと、その、ぼ、暴走してしまったのは、僕だから、その、本当にわるかった。なの
はが嫌がることをしてしまって…その…誤ってすむ事じゃないんだが…その…許してく
れないだろうか。ほんとにごめんっ!!」
ここで素直に折れることができる辺り、なかなかにクロノの男の部分というか。
「あ…う、ううん、わ、私だって、その、ごめんなさい。その、あんまり気持ちよくて
周りが見えなくなっちゃって。そ、それに、クロノくんが…触ってくれた…んだから、
い、嫌だなんて、全然ないし…、う、うれしかった、って言うか…」
ここで男を立ててくれる辺り、なのはの優しさというか天性の母性というか。
やはりどうもこの2人。
自分達が思うより、他人が見るよりも遥かに、
お似合いという言葉がよく当てはまるらしい。
「えっと。その。う、うん。私、クロノくん好きだし、その、さ、さっきみたいなこと…
その…クロノくんだったら…いい…し…。だから、き、今日はそのつもりで来た、から…
えと…クロノくんが、その………だったら…わ、わたし、は……い、いいよ」
「なの…は…」
「え、えと、で、でもね!でもね!!」
「え?」
「あの、そ、その、クロノくんが…今すぐ……だったら…あの、そ、それでもいい、ん
だけど…あっ、あのねっ!…っそ、その、わ、私の料理も、食べて…欲しいな…って…
こ、これでも、がんばったんだよ!クロノくんに、『美味しい』って言ってもらえるよ
うに、いっぱい練習したんだよ。お母さんも、お姉ちゃんも、お、お兄ちゃんも美味し
くなった、って誉めてくれたし…だから、その…え、えっと、あの…」
「なのは…」
「あっ…」
ふわ、と、今までで一番優しく、クロノはなのはを抱き寄せる。
「ごめんね、なのは、無理させちゃったね」
「クロノくん…」
「僕もなのはが好きだよ」
「……うん…嬉しい…」
「だから、僕の知らないなのはのこと、もっともっと知りたい。全部知りたい。そして
僕のことも知って欲しい」
「…うん、私も、同じ、だよ」
「だから…今は、なのはの料理がどれくらい美味しいのか知りたい、教えてくれるかい?」
「…クロノくんは、それで…いいの?」
「なのはが嫌じゃなければ、ね」
「…ありがと…クロノくん……大好きっ!!!」
言ってがばっ、とクロノの唇になのはは飛びつく。
そのキスをなのはごとがっしりと受け止めるクロノ。
そして2人は思いを馳せる。
((またさっきみたいになったら困るから、残念だけどここで止めておかなきゃ…))
やはりというか、なかなかにうまくかみ合う2人のようだ。
〜 〜 〜 〜
「ご馳走様っ!!!!!!!!」
からんっ、と。放り投げ気味に、クロノはスプーンを空になった皿の上に置く。
そして「自分の膝の上」に座るなのはに聞かれる前に、
「美味しかったーーーーーーーーーーーっ!!!!」
「お粗末様でした」
なのははこれ以上ない満面の笑みでその言葉を受ける。
ちなみに。
なぜゆえ、なのはがクロノの膝の上に座っているのか、というか、
なぜゆえ、そんなにもなのはの頬が高揚しているのか、というか、
なぜゆえ、クロノも同様に頬を赤らめているのか、というか、
なぜゆえ、クロノの頬にわずかになのはのリップの跡があるのか、というか、
なぜゆえ、なのはは左胸を抑えているのか、というか、
なぜゆえ、クロノがズボンとパンツを履き替え、先ほどまで履いていたそれが壁にハン
ガーで吊るされ(そしてその股間部分が水に濡れ)ているのか、というか、
なぜゆえ、なのはのパンティが既にお泊り用で持ってきた新しいものに履き替えられ
ているのか、というか、
なぜゆえ、なのはが料理を運んでから既に1時間が経過しているのか、というか……
…何してやがった、君達、食事中に…
「ふふっ、クロノくんお腹いっぱいだね、ほら、ぽんぽんいってる」
クロノのお腹をなのはは優しくぽんぽんと叩く。
「なのはも結構食べたんじゃない?」
と、こちらはなのはのお腹を優しく撫でる。
「だ、だって、クロノくんがあんなことするんだもん。た、食べちゃうよぉ。うー最近
ケーキの試作でちょっと太っちゃったのにぃ、これ以上だったら困るぅ」
古来より、体重にまつわる女性の悩みは尽きないようで。
「うーん、なのはと結婚したら幸せ太りするのは確実だなぁ」
こちらもまた、ある意味贅沢な悩みというか。
「あ、でも大丈夫だよ!」
「ん?」
「え、と、その、ほら、あ…あれ……すると…いい運動になるって…その…聞いた…こと…」
「あれ?…あ……」
自分から切り出したくせにやってしまった、となのは。
クロノも意味を理解する。
「なのは…もしかして…そっちの方にものすごく興味ある?」
「やっ!やだっ!ななっ!なに言ってるのクロノくん!!」
「いや、だって…」
「ク、クロノくんがご飯食べてる時に、ああ、あんなことするからだよぉ!違うもん、
違うもん、なのはエッチな娘なんかじゃないもん!!」
顔を真っ赤にしてクロノの膝の上でじたばたするなのは。まぁ、転げ落ちてもらって
も困るので、流石にクロノもなだめる。
「ごめんごめん、言い過ぎた。なのはは全然普通だよ。僕が悪かった。許して。ね?」
「ほんとに?」
「ほんとほんと」
「えっちだと思ってない?」
「ぜーんぜん」
「じゃぁ、はい」
と、顔をあげ、目を閉じるなのは
「やっぱりそうなるんだね」
「これだけで許してあげるんだからありがたいと思いなさい」
「ごもっともです…」
目を閉じたまま答えるなのはにやさしく口付けるクロノ。
やはりというか、ほんのりオムライスの香りが漂った。
〜 〜 〜 〜
「よし、ちょうどいいな」
湯船に張られたお湯に手を入れ、適温を確認するクロノ。
そのままなのはの待つキッチンへと向かう。
「なのは、お風呂用意でき…た…よ」
「あ、ありがとう、洗い物もうすぐ終わるからクロノくん先に入ってて」
大皿と格闘していたなのはは振り向かずに答える。
ちなみにクロノが言葉に詰まったのは、再度エプロンを着けたなのはの後姿、ひいて
はかわいく揺れるなのはのスカート(に包まれたお尻)があまりに可愛かったからだが、
まぁ、流石に2度抱きつくのはクロノもこらえた。
「そ、そうかい?僕もそっちを手伝おうと思ったんだけど」
「ほんとにもうすぐ終わるから大丈夫。先に入って」
「う、うん、わかった、じゃぁ先に入るよ」
「はー…い、って…あれ、もう居ない…」
ようやく大皿を攻略したなのはが振り向くと、既にクロノは風呂場に駆け込んでいた。
「…ぅー…ちょっとつまんない…」
なんとなく、もしかして、ちょっとだけ…「なのはのエプロン姿、可愛いね…」、な
どと言って抱きしめてくれるかなと、そしてまたさっきみたいに胸に手を……
「ってーーー!!わーわーわーわー!!わ、私何考えてるの!!ち、違う違う違うの、
私そんなエッチじゃないもん、ク、クロノくんだったら嫌じゃないけ…じゃなくて!!」
はう、となのははうなだれる。
「やっぱり私…えっちなのかな…この家に来てからこんなことばっかり考えてるよぉ…
クロノくんに嫌われちゃうのやだよぉ………あっ!!!」
不意になのはの脳裏に一つの言葉が思い出される。
「…………」
「何か」を思い出したなのはは残りの洗い物を超スピードで片付け、だだだっ、と
リビングに置いてあった自分のお泊りセットのバッグの前に座り込み、ごそごそとその
中を探り始める。
「えーと、確か…あ、あった」
その中から数枚の布地を手に取り、なのはは一度目を閉じる。
「クロノくん喜んでくれる、喜んでくれる、喜んでくれる…」
呪文のようにぶつぶつと呟くと、なのはは戦場に赴く勢いで立ち上がった。
〜 〜 〜 〜
「ふ〜〜〜〜…」
浴槽いっぱいを使ってクロノは伸びをする。
「…なのはのエプロン…かわいかったなぁ…なんであんなにかわいいんだろ…反則だよ、
あれはもう…」
そして視線を自分の股間に向ける。
「お前も節操ないな…別にいやらしい格好とかじゃないのに…」
天を突く高くそびえ立つ自分の分身にクロノは半ば呆れる。自分のことだとはクロノ
も重々承知してはいるのだが。
「…でも…なのは…いい…んだよな…今日…その…なんだ…その…しちゃって…も」
N2Kと手料理。これだけでもうクロノにとって生涯最高の誕生日プレゼントと言っ
ても差し支えないのに、なのはまだこれ以上。自分の最も大切なものをくれると言う。
なのはがどれほどの決心でその言葉を選んだのか、クロノとてわかっているつもり。
「僕がしっかりしないとな…今日のことも、これからも…」
ざば、と顔を洗い、意を込める。
「よ…しっ…」
クロノの決意はしかし、その最愛たる者の声によって中断させられる。
「あ、あの、クロノくん?」
「えっ?」
風呂場の摺りガラス越しに浮かぶシルエット。
「あ、あの、お湯加減、どう?」
「え、あ、ち、ちょうどいい…よ」
もちろん、クロノが自分で測ったのだから。
「え、と、あ、あの、ご、ごめんなさい、えと、そうじゃなくて、その…」
「え?」
「あ、あの…お、お邪魔しますっ!!!!」
クロノが驚く間もなく、浴室のドアが開き。わずかな湯煙の向こう。
バスタオルを身体に巻きつけたなのはが、
ドアの隙間から顔を覗かせた。
To Be continue 〜 CherryLight 〜 The Final Sweet Night !!
結局9月の休日は6日でした…
(同じ事を前回も書いた気がする(^^;) )
レスでエロ前の話って自制しないといくらでも伸びませんか?と指摘を受けましたが…
はい、その通りでした…
だってハード系とか獣系とかわけのわからないのばっかりで普通のエロって書いたこと
なかったんで分からなかったんですよぉーーーーー(T_T)
次で絶対終わらせるので、あともう1回と外伝1本だけ、お付き合いくださいませ。
今日はもう疲れて寝ますですw
唐突
174 :
K:2006/10/04(水) 03:35:59 ID:tY5mzgMV
うお、緊張して間違えて押してしまった…。
某所でクロフェを書いてるものです。こうした所でSSを書くのは初めてですが、どうか宜しくお願いします。
S‘Sでクロノとエイミィの婚約(結婚?)を見て、のほ〜んと頭に浮かんだSSです。一応エロです。
一応クロフェですが、完全なクロフェではない微妙な内容です。
風に舞う花
二人が付き合い始めたのは、一体いつの頃からだったのだろう。
フェイトは良く覚えていない。
ただ、そんなに昔ではなかったと思う。
闇の書事件が終わりを迎えてすぐ、なのは達と本格的に管理局に入局を果たし、時間は目まぐるしい速度で過ぎて行った。
義理の兄の熱意ある指導の甲斐あって、執務官試験には一発で合格した。なのはを初め、親友、家族達は自分の事のように喜んでくれた。
その時は、別に付き合っているようには思えなかった。そう、見えなかった。
後にして思えば、二人が見えないように隠していただけなのかもしれない。
それからさらに季節が流れた。
義母が長年付き添った艦船を離れ、本局勤めとなった。
背がぐっと伸びたクロノが提督資格を取得して、そのまま後釜に納まるようにアースラの艦長に就任した。
なのはが武装隊士官を経て、教導隊へ移動となり、一つの夢を叶えた。
リインフォースの名を継いだ小さなデバイスが生まれて、八神家の末っ子として皆に可愛がられた。
一年が過ぎ、二年が過ぎ、三年が過ぎ――。
月に一度の苦しみを覚え始めた頃。
そんな時、フェイトは気付いた。
それまでの仲の良い姉と弟のような会話ではなく、もっと親密で、もっと静謐で、もっと不器用な言葉を交わしているクロノとエイミィに。
クロノはフェイトにとって、心から尊敬の出来る優しい兄だった。
エイミィはフェイトにとって、心から信頼の出来る優しい姉だった。
二人が恋仲になっていた事に気付いた時、驚いたものの、心から祝福してあげる事が出来た。
フェイトだけではない、皆がそうだった。
照れ隠しをするクロノや、日頃の明るさを潜ませて頬を赤めるエイミィは、見ていて本当に飽きの来ない男女だった。
それからさらに時が流れた。
二人を露骨にからかうような真似は誰もしなくなった。なのはやはやて達と学校や仕事で一緒になった時、たまに話題に上るくらいのものになった。
ただ、フェイトは二人の仲があまり進んでいないように感じていた。
アースラ所属の執務官として、また家族として、クロノの提督としての多忙さと責任の重さは熟知していたし、エイミィも昇進を重ねて、重責を担う立場になったのは知っている。
いくら恋人とは言え、職場で仲を温めるという行為には及べないだろう。何せ、クロノは職務に対して馬鹿が付く程誠実で生真面目な青年だ。エイミィは柔軟思考が服を着て歩いているようなものだが、気の引き締め所が分からないような女性ではない。
だから気になった。自分の義兄は愛しの女性の心をちゃんと掴んでいるのかと。
いつか時間が空いた時、聞いてみようと思った。
175 :
K:2006/10/04(水) 03:39:20 ID:tY5mzgMV
☆
執務官としての仕事が無い珍しい日。フェイトは買い物袋を提げて帰宅した。
学校で流行っている流行曲を鼻歌で歌いながら鍵を開け、靴を脱ぎ、リビングへ向かう。
珍しい事に、家の中には人気があった。時刻からして、リンディの帰宅にはまだ少し早い。アルフは、今日からユーノの手伝いで無限書庫に出向いている。帰宅は少し後のはずだ。
不思議に思いながら、フェイトはリビングの扉を開ける。
「ただいま」
「ああ、お帰りフェイト」
ゆったりとした私服を着たクロノが、ソファに座り、コーヒーを楽しんでいた。挽きたてなのか、香ばしい香りがフェイトの鼻腔をつく。
「……兄さん?」
予想だにしなかった出迎えに、フェイトはきょとんと首を傾げて眼を瞬かせた。
自他共に認めるワーカーホリックであり、有休の貯蓄が無意味に進み、終いには強制的に有休を消化させられた経緯すら持つ義理の兄。
そんな彼が家に一人で居るなんて、それこそほとんど始めての事だった。
「どうしたの? 管理局は?」
「まぁ、有休をね、また取らされた」
「また? もう、母さんがあれだけ取れって言ってたのに」
「ごめんごめん」
苦笑するクロノ。
フェイトは嘆息づくと、買い物袋と一緒にキッチンに向かう。
「エイミィは居るの?」
「ん……いや、今日は居ないよ」
仕事では激務に追い回されているが、二人は出来る限り休暇を合わせている。二人揃ってこのマンションに帰って来る事も、最近では至って普通だった。
言葉を選ばずに言えば、ほとんど同棲していると言っても過言ではない。
テーブルに置いた袋から、買って来た食材を冷蔵庫に入れて行く。
「何で?」
「何でって……その、休暇が合わなかったというか」
歯切れを悪くする兄に、フェイトは苦笑を禁じ得ない。エイミィとの交際が発覚してから随分経つのに、まだこの手の話題には照れを感じているのだろうか。
「兄さん、甲斐性なしは女の子から嫌われるよ?」
「か、甲斐性なしって、フェイト」
食材を詰め終えて、一息つく。
176 :
K:2006/10/04(水) 03:40:54 ID:tY5mzgMV
「私もちょうだい、コーヒー」
「オレンジジュースは卒業したのか?」
「ううん。ただ、飲みたいなって思って」
「君にはまだ早いぞ?」
クロノがソファから立ち上がり、キッチンに入って来る。
「お砂糖とミルクを入れれば大丈夫」
「それじゃあ本当のコーヒーは楽しめないな」
フェイト用のマグカップを戸棚から取り出して、コーヒーメーカーに挿入する。スイッチを押すと、黒いボディが鈍い駆動音を響かせて始めた。
フェイトはコーヒーが苦手である。まだ出会って間もない頃――PT事件の裁判中――に、クロノが美味しそうに飲んでいるのを見て、好奇心から一口だけ貰ったのだが、それはそれは想像を絶する飲料だった。
以来、この苦々しい液体には軽いトラウマを抱いていた。匂いはそれなりに好きなのだが、どうにも本体の液体には苦味しか感じない。ミルクやら砂糖やらをしこたま入れた物なら普通に飲めるのだが。
「兄さんは相変わらず何も入れてないの?」
「ああ、砂糖やミルクを入れたコーヒーは邪道だよ」
楽しそうにコーヒーの準備に勤しむ義兄の横顔を、フェイトは久しぶりに落ち着いて見たような気がした。
管理局は常に多忙だ。いつだって人手は足りなくて、優秀な魔導師が少なくて、起きなくていい悲劇が起き続けている。
目まぐるしい激務の中、ハラオウンの名をくれた暖かな家族達を過ごす時間が少ないのは、フェイトも少し寂しく感じていた。
こうしてゆっくりと兄と時間を過ごすのはどれくらいぶりだろうか。
「お兄ちゃん」
唇からそんな呟きがこぼれた。
甲高い音。
床を打ったマグカップが粉々に砕け散り、足元に散乱した。
「い、いきなり何を言い出すんだ君は……!」
「え。あ……駄目だったかな?」
別にからかおうと思って言った訳ではなかったが、ここまで露骨な反応が返って来るとは思わなかった。
耳の先まで赤くしている彼が、たまらなく可笑しく、そして可愛かった。
「駄目とか、そ、そんなのじゃないけど……」
顔を赤めて、クロノはしどろもどろになって割れたマグカップを拾い始める。
「じゃあなに?」
「……君は知っててやってるだろ?」
「気のせいだよ。あ〜あ、結構気に入ってたんだけどなぁ、このコップ」
「誰のせいだ、誰の」
「さぁ、誰だろうね」
日頃の凛然とした姿からは想像もつかないクロノに微笑を向けながら、フェイトも破片を拾おうとした。
その時だった。彼の左手の薬指に輝く指輪を見つけたのは。
177 :
K:2006/10/04(水) 03:42:33 ID:tY5mzgMV
「……?」
破片を拾うとする指が止まる。視線はクロノの左手で固定された。
飾り気の無いシンプルな指輪。それが、確かに薬指にはまっている。
「……クロノ、それ……」
時空管理局では執務官、次元航行部隊の優れた魔導師として名を馳せているフェイトだが、海鳴では普通の中学三年生の女の子だ。その指輪が何を意味するものなのか、分からない年頃でもない。
紛れもない結婚指輪だった。
茫然とするフェイトに、クロノは少し迷うような素振りを見せた。破片を拾う指を止めずに、呟くように言った。
「エイミィと、その……結婚する事になった」
その言葉が、どういう訳なのか飲み込めなかった。
多分そんなに長くないと思いますが、取り合えずは。
そういうシーンに行くまでダラけないように頑張ります。
失礼しました。
お兄ちゃん、結婚おめでとう、と素直にいかなそw
179 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/04(水) 16:56:41 ID:IJIqWgTZ
続きが気になるw
フェイトはどう動くか・・・
つ「空っぽの鍋とおたま」
それなんてシャッフル?
あれか?家に来たエイミィに向かって「帰って!」と鬼の形相で叫ぶのか?
鍋発見するのはリィンフォースか?
183 :
K:2006/10/05(木) 02:35:04 ID:UDaOA/PH
ども、Kです。クロノ×フェイトじゃないクロノ×フェイトSS、『風に舞う花』の続き、行きます。
184 :
K:2006/10/05(木) 02:36:36 ID:UDaOA/PH
☆
広い湯船が、今はどうにももどかしく思う。
お気に入りの入浴剤を入れたお湯の中、フェイトは膝を抱えて背中を丸めていた。
耳くらいまでお湯の中に浸けて、水滴が作った波紋の流れをじっと見据える。
耳に残っているのは、義兄の一言。
『エイミィと、その……結婚する事になった』
それはとても喜ばしい事だ。疑う余地はどこにも無い。
二人は誰から見てもお似合いだった。
フェイトやなのはを無茶だと非難する事の多いクロノだが、彼も提督職に就いてから随分と無茶な道を歩いて来た。艦全体の安全の為、非情な決断を迫られた回数も多い。
弱音を決して吐かずに、常に毅然とした態度を崩す事の無かった彼を、エイミィは影に日向にいつも支えていた。言葉にせず、態度にも現さず、花のように寄り添って支えていた。
二人が結ばれるのは当たり前だと言える。
フェイトも頭の中ではそう思っていた。
なのに――。
「……何で……おめでとうって言ってあげられなかったんだろう……」
顔をお湯から出して呟く。
結婚すると言ったクロノに、フェイトは”おめでとう”という言葉を向ける事がどうしても出来なかった。
理性で御する事の出来ない感情が、その時のフェイトの頭と胸をいっぱいにしていた。
戸惑いか、驚きか、あるいはその両方か。制御出来ない感情の正体は分からない。
185 :
K:2006/10/05(木) 02:37:24 ID:UDaOA/PH
「……結婚、か……」
まだ中学三年生、十五歳の自分には疎遠な言葉だった。好きな異性がまだ居ないので、さらに遠く感じる。
執務官と学生の兼任は激務である。気になる異性が居たとしても、放課後、満足に遊びに誘う事すら出来ない。
もっとも、フェイトに気になる異性など居なかった。
学校帰りに男性から声をかけられる事はあるし、管理局では多くの武装局員達から尊敬と畏敬の眼差しを向けられてはいるが、それでも上級士官や同僚の執務官から食事に誘われた事が何度もあった。
「………」
その度に、フェイトは丁重に断りを入れた。相手の気持ちを無碍にしてしまうのは気が引けたが、何せ気が乗らなかった。
何故気が乗らなかったのだろう。今更だが、フェイトは自分自身の選択に疑問を抱いた。
興味が引かれなかった。それもある。
良く知らない人と二人きりになるのに抵抗を感じたから。無論、それもあるだろう。
でもそれ以上に――。
「……クロノ……」
久しぶりに兄の名を口にした時、フェイトは自らの疑問の答えを得た。
誘って来た男達を、フェイトは無意識に兄と比較していたのだ。
愚直で、誠実で、生真面目で、それでいて優しい義理の兄。
彼がフェイトが始めて仲良くなった異性だった。
すべての始まりだったPT事件の裁判の時、リンディと共に必死にフェイトの弁護をしてくれた。
時には優しく、時には厳しく、魔法戦闘の技術やノウハウを指導してくれた。
執務官試験に合格した時、密かに泣いて喜んでくれていた。エイミィに冷やかされて真赤に否定していたが、フェイトは兄の頬を流れる涙を確かに見た。
何度も辛い事件を体験した。その時、なのはと共に支えてくれた。不器用な言葉で慰めてくれた。
こんな義理の兄を超える男性は、現在の所、フェイトの前には現れていない。誰も彼もが義兄に劣っていた。
そもそも、義兄は軽薄そうに女性に声はかけない。巧みな話術は使えないが、代わりに誠実で真っ直ぐな言葉を向けてくれる。
そこまで考えた時、フェイトは自分が強いこだわりを持っている事に気付いた。
186 :
K:2006/10/05(木) 02:38:44 ID:UDaOA/PH
「……私、凄いブラコンだったんだ」
急に恥ずかしくなり、また耳くらいまで顔をお湯に浸ける。
間違いない。自分はブラコンだ。それも極度のものだ。
ふと思い出す。学校の休み時間、告白を受けて、それを断って教室に戻って来た時、はやてに言われた言葉。
『フェイトちゃん、もう少しクロノ君以外の男の子に興味持ったらどうや?』
酷く誤解を招くような発言だった。
そんな事は無いと思った。ユーノやグリフィスと、フェイトの周りにはクロノ以外の異性の友人は沢山居る。興味が無いなんて言い過ぎだ。
でも、今ならその言葉の本当の意味が分かった。
クロノ・ハラオウン。
誇れる義理の兄。
大切な家族。
大好きな家族。
そんな彼が、一人の女性と結ばれる。
身も心も。永遠に。それこそ、死が二人を分かつまで。
「………」
心がざわめき立つ。
嫌――という訳ではなかった。相手が見ず知らずの女性だったら、明確に嫌だと思えたかもしれない。
でも、エイミィが相手なのだ。安心してクロノを任せる事が出来るし、事実、クロノとエイミィはお似合いだとずっと思って来た。
なのに、どうして素直に祝ってあげられないのか。
入浴した時からずっと抱えていた疑問が、その時、不意に解決を見る。
187 :
K:2006/10/05(木) 02:39:29 ID:UDaOA/PH
「……好き、だったのかな、私。兄さん――クロノの事が……」
もしそうだとしたら、この掴み所の無い感情の正体が分かる。
でも、分かった所で何の意味も無い。
自覚するには遅すぎた初恋だった。
だって、彼にはもう相手が居る。伴侶がすでに決まっているのだ。
今更自分が入っていけるような間隙はどこにもない。
ある訳が無かった。
「初恋って自覚して、いきなり失恋か」
自嘲の笑みがこぼれた。
胸に穴が空いたような、そんな感覚。
キッチンでクロノが言っていた言葉が蘇る。
『明日、エイミィの実家に挨拶に行くつもりなんだ。あいつのご両親が許してくれれば……』
そこから先は声が小さくてちゃんと聞き取れなかった。
涙が溢れて来た。
寂しくて、悲しくて、切なくて。
涙と共に溢れた感情が空っぽの胸を埋め尽くし、氾濫する。
天井から落ちて来る水滴と一緒に、頬を伝って涙がお湯に落ちて行く。
エイミィの家族にはもう何度も会っている。両親は二人共とても大らかで、特に父親の方はクロノを気に入っていた。アルコールが苦手なクロノに酒をたらふく飲ませ、何度も”娘を頼むぞ”と言っていた。
あの父が、クロノとエイミィの結婚を許さないはずがない。
二人の結婚は決定したも同然だった。いや、クロノが指輪をはめていた時点でもう決定していたのだ。
もうすぐ義兄は一人身ではなくなる。
「………」
フェイトは湯船から出た。適当に身体を拭いて浴室を出る。
脱衣所で下着とお気に入りの黒い寝間着を着て、長い髪をドライヤーで乾かし、フェイトは廊下に出た。
結婚自体はまだ当分先だろう。両親が許可したとしても、日々激務に追い回されているクロノとエイミィには挙式を挙げている余裕も無い。
だからこそ、フェイトは明日から一人身でなくなる義理の兄――クロノと夜を一緒に過ごしたかった。
理由は言葉では巧く説明出来ない。失恋に終わった初恋に、自分なりにけじめをつけたいのかもしれない。
ただ思いのまま、感情のまま、フェイトは義理の兄の部屋に向かう。
明日が学校だとか、執務官の仕事が控えているとか、そんな事はどうでも良かった。
彼の部屋の扉を静かに叩く。
「クロノ、ちょっといいかな?」
彼を名前で呼ぶ事にドキドキしながら、フェイトはドアノブを掴んだ。
188 :
K:2006/10/05(木) 02:42:09 ID:UDaOA/PH
フェイトブラコン説を妄想してみました。
後一回くらいやって、それからエロになれればなと。
では
え、エロとな。
ふりーーーんですか。
YO・BA・I! YO・BA・I!
「エイミィには……言わないから……」ですね?
さぁ、ここから本番って時にいつの間にやらエイミィが後ろに…
3Pかそれとも、血の雨が降るのか…
wktk
杉田ボイスクロノ・・・マジ罪作りな男。
クロノエロ祭りをやっているのはここですか?w
他の職人が投下しづらくなるからそんな祭りはないよ
196 :
K:2006/10/06(金) 01:54:00 ID:DG7K7HJO
Kです。クロフェじゃないクロフェSS『風に舞う花』第三回、行きます。
197 :
K:2006/10/06(金) 01:56:07 ID:DG7K7HJO
☆
クロノの部屋は生活感に乏しい。必要最低限の家具――ベッドや机以外にはほとんど何も無い。趣味の類の物は数えるくらいしかない。何せ幼少の頃から仕事や訓練を趣味にしているようなものだったのだ。
提督職に就いて以降、趣味があろうと、それに費やす時間も無かっただろう。
そんな殺風景な自室で、彼はベッドに腰掛け、文庫本を開いていた。
「こんばんわ」
照れと緊張から、フェイトはぎこちなくはにかむ。
クロノと言うと、驚いたように眼を瞬かせている。
その眼差しの意味が、フェイトにはよく分かった。
「久しぶりだね、兄さんを名前で呼んだの」
「……どうしたんだ、いきなり」
「ちょっと、ね」
まだ微かに水気を残している髪を靡かせて、フェイトはベッドに乗り、クロノの横に座った。
「本、読んでたの?」
「ああ。はやてから借りた恋愛小説だ」
「……クロノ、恋愛小説とか読むの?」
「いや、あまり興味も無かったんだが、はやてに強く薦められてね」
文庫本にしおりを挟み、クロノが表紙を見せて来る。
フェイトも知っている物だった。少し前に映画化もされた有名少女コミックの小説版だ。
義理の兄妹の禁欲的な恋愛を描いた内容で、映画の方はR指定が付いたくらい過激だったらしい。
「面白い?」
「それなりには。映画化もしてるらしいし、暇があればそっちも見てみたいかな」
流行っていた当時は、義理の兄妹の恋愛という事で、はやてやアリサにクロノとの事で何やらからかわれた事があった。
その時は何とも思わなかった。そんなの無いよ、兄さんにはエイミィが居るからと一蹴していた。
今言われるとどうなるのか、ちょっと分からない。真赤になって返答には困るだろう。そして泣いてしまうかもしれない。
「風呂は?」
「いただきました」
「お湯は抜いたのか?」
「あ……」
「後ででいいから、ちゃんと抜いておいてくれ。アルフがうるさいから」
最近のアルフは、家事手伝いがすっかり板に付いてしまった。ちゃんと綺麗に使わないと小言を垂れて来る。
フェイトはは〜いと返事をして、改めてクロノの横顔を見上げる。
198 :
K:2006/10/06(金) 01:56:46 ID:DG7K7HJO
出会った頃にはそんなに差が無かったのに、いつからか、見上げなければいけないくらいの身長差が出来ていた。
無骨さは無いが、さりとて線が細い訳でもない身体。
端正な顔付きには、落ち着きと柔和さがある。
「………」
こうして肩が触れ合うくらいの距離で見るのは初めてだった。
肩は思っていたよりずっとしっかりとしていて。
あどけなさが抜けた表情には、自分には無い大人の面影が見えて。
そんな彼が、こちらを向く。不思議そうに眉を顰めて、優しい声をかけて来る。
「どうしたんだ、フェイト」
「え……」
その声に、自分が彼の横顔に見入ってしまっていた事に気付いた。
慌てて顔を背ける。浴槽の中でそうしていたように、膝を抱え、顔をそこに埋めてしまう。
「な、なんでも……ない……」
「……学校で何かあったのか?」
「別に何も……」
「そうか? 帰って来てから、少し様子がおかしいぞ」
「そんな事ない」
「ならどうして僕の部屋に? 用があったんじゃなかったのか?」
「だから……ちょっと……」
ちらちらと横目でクロノの顔を覗き見る。
「用も無いのに来たのか?」
「……用が無かったら来ちゃいけないの?」
「そういう訳じゃないけど、珍しいからさ。ちょっと驚いてる」
確かにこういう状況は珍しい。いや、そもそもクロノが自室に居る事の方が、最近では珍しい方だった。
このマンションに帰って来ても、彼は大抵エイミィの部屋に居る。
そういう時、フェイトはなのはやはやての自宅にお邪魔したり、アースラの自分の部屋に行って、クロノ達に気を使っていた。
クロノは二十歳で、エイミィは二十二歳。”そういう行為”に及んでいても何ら不思議はない。むしろ、恋人同士だったのだから自然だ。
「どれくらいぶりかな」
文庫本を枕の脇に置いたクロノは、天井を仰ぐ。
「君が僕を名前で呼んだの」
「えっと……分かんないや」
仕事中は当然家族ではなく、上司と部下として接している為、”クロノ提督”と呼ぶ事もある。
だが、こうして家族として接している時に名前で呼んだのは、本当に久しぶりだった。
「何だか懐かしいな。闇の書事件が終わって、一年くらいはずっと名前だったような記憶がある」
「そう……だったかな。そういえば、”お兄ちゃん”って呼ぶとクロノが照れるから、”兄さん”にしたんだっけ」
「キッチンじゃ不意を突かれたよ」
「不意打ちは有効な戦術だって、昔、クロノに教わったよ?」
「そうだったな」
「うん、そうでした」
199 :
K:2006/10/06(金) 01:57:18 ID:DG7K7HJO
会話はそこで途切れる。
クロノは天井を見上げたままで。
フェイトは膝小僧の先を見詰めたままで。
気まずくはなく、どちらかと言えば、柔らかくて居心地の良い沈黙の後、
「僕で良ければ相談に乗るぞ?」
クロノは大きな手をフェイトの頭に置いて、子をあやすように言った。
「………」
その笑顔が嬉しくて。
「やっぱり何かあったんだろ。君らしくないぞ」
その笑顔が辛くて。
「管理局か? でも今日は休みだったはずだしな……。やっぱり学校か? 分からない授業でもあったのか?」
彼の美徳であるはずのその優しさが。
「友達と何かあったのか?」
今は、ただ、苦しい――。
「クロノ」
「ん?」
「あのね」
「ああ」
「私ね」
気付くには遅すぎた初恋。
そして失恋に終わってしまった初恋。
今日、それこそ本当についさっき気付いた自分の気持ちにけじめを付けよう。
次に言う言葉を探りながら、フェイトはこの部屋に来ようとした理由を悟った。
――結婚おめでとうと、心からクロノに言えるようになる為だ。
気付いたばかりのこの気持ちを伝えて、きっぱりと彼に断れない限り、フェイトは大好きな兄と姉の結婚を祝福してあげる事が出来ない。
想いを伝えるべき言葉は、本当にシンプルなものになった。
「クロノの事が好きでした」
「……え……」
「さっきエイミィと結婚するって聞いた時、私、おめでとうって言えなかった。自分でも何でか分からなくて」
「………」
「お風呂に入ってた時に気付いたんだ。私は――」
深呼吸をして、フェイトはクロノの手を取り、胸に抱く。
200 :
K:2006/10/06(金) 02:05:28 ID:DG7K7HJO
「フェイト・テスタロッサは、クロノ・ハラオウンが好きだったって」
義理の兄妹という関係ではなく、フェイトは一人の女性として、クロノを一人の男性と見て、そう告げた。
クロノは静かに苦慮していた。ただ、十五歳の少女の胸に抱かれてしまっている自分の手に頬を赤めて、視線を逸らす。
「気持ちは……嬉しい」
「……うん」
「でも、僕はエイミィが好きだから。だから、君の気持ちには応えられない」
分かり切った答えだった。
想いを伝える前からこうなるのは分かっていた。
なのに、悲しい。
こんなにも――悲しい。
「ごめん、フェイト」
「うん」
「本当にごめん」
「……うん」
頷く事しか出来なかったのは、泣くのを堪える為だった。
でも、やっぱり無理だった。
抱いたクロノの腕をぎゅっと握り締める。決して離さないように。
感情が決壊する。崩壊したダムから水が溢れるように、気持ちが氾濫する。
「フラれ……ちゃっ、た……な」
「………」
「分かって、たんだよ……? クロノに、は……エイ……ミ、ィが……お似合……いだって……」
「………」
「フラるの、は分かって……て……。でも言わ、ない……と、おめでとう、って……言えなかっ……たか、ら……」
「……フェイト……」
顔を上げる。頑張って、頑張って、何とか涙を止めようとする。
でも止まらなかった。
涙でくしゃくしゃになった顔で、フェイトは言った。
「結婚おめでとう、クロノ」
そうして、フェイトはクロノの胸で号泣した。
201 :
K:2006/10/06(金) 02:07:16 ID:DG7K7HJO
次回濡れ場という話になると思います。
夜這いでもなければ不倫でもなく、「エイミィには言わないから」にもならない系…なのでしょうか。ちなみに3Pにもなりません(汗)。
エロくかければいいかなと。
切ねぇ・・・
思わずホロリ・・・
ひとしきり睦みあったあとで、同衾している隣の彼女は切り出した。
「……そうか。シャマルが……」
「私、言うべきだったのかな?フェイトちゃんのこと……」
「そんなことない」
「んぅっ?」
突然唇を重ねられ、舌を押し込まれ。
胸をまさぐられて、声をあげるエイミィ。
「っは……」
「……そんなこと、あるもんか。エイミィは間違ってない」
大きく怒張した自身をあてがい、挿入すると、
エイミィは切なげに悲鳴をあげ震えた。
「あの子は……人間だ。人間、なんだ……!!」
言いながら、行為に没頭するクロノ。
その姿はまるで、全てを忘れようとしているかのようで。
「フェイトは僕のたったひとりの、妹だ……!!」
それはエイミィも同様。注送に喘ぎ涙を流し、彼の名を呼ぶ。
恋人たちが行う本来は悦びであるはずの行為は、
今の彼らにとって、傷を舐めあう、忘却のための
空しい慰めあいでしかなかった。
魔法少女リリカルなのはA’s −the day−
第五話 発覚
光芒が、半ば瓦礫と化した岩の壁を貫き、虚空へ消えていった。
「……」
壁面に空いた風穴の内には、打ち倒され気を失った十数人もの屈強な男達。
そして男達の折り重なる中心に土埃にまみれぼろぼろの服をまとい、
肩で息をして立ち尽くすツインテールの少女がいた。
彼女の手の中には、光芒を放った残滓の蒸気を舞い上がらせる一機のデバイス。
砲撃形態に変形したそれを構える少女は、ゆらりとよろめいて
前方に身体を傾げさせていく。
「しっかりしろ。大丈夫か」
気を失っているのだろうか───そう思いつつ、シグナムは転移直後に見た光景を評し、
彼女の崩れ落ちる身体を支えた。
「あ……シグナム、さん……?」
幸い、一瞬意識が飛んでいただけらしい。支えた彼女の豊満な胸に気付き、見返してくる。
「へいき……です。すいません」
「いや。随分と無理をしているのではないか?」
「そんなことないですよ」
「だが……ひどく疲れているようだ」
「……疲れないと、だめなんです」
なのはは、少しやつれたその顔を歪めて笑う。
とても笑顔には見えないような代物だった。
「倒れるまで、仕事して。疲れきってしまわないと、眠れないから」
その笑顔は、事情を知るシグナムとしてはひどく痛々しいものに見える。
「考える間もなく眠っちゃわないと。フェイトちゃんのこと……色々、考えちゃって」
だから、人事に無理言ってシフト増やしてもらったんです。
ふらつくなのははシグナムにぺこりと頭を下げると、転移魔法陣を発動させる。
「書類の仕事がまだ別件あるので、これで。……あ、一緒にいきますか?」
「いや、いい」
それじゃあ、また。
隈のわずかに浮かんだ顔で、心の笑っていない笑顔を作りなのはは消えていった。
* * *
どちらともなく、最近のなのはは付き合いが悪い、と言った。
またもう一方も、それに同意した。
「そう思わない?はやて」
「……え?」
ぼんやりと友人たちの会話を聞いていたはやては、
突然に話を振られ我に返る。返って、こちらを見つめる二組の目線に居心地の悪さを感じる。
これはやはり、自分が二人に隠し事をしているからなのか。
はやてもまた、なのはと同じようにフェイトの病をすずかとアリサに隠していた。
「フェイトが入院してから、仕事仕事でさ。様子もちょっと変だし」
「大丈夫なのかな」
三人が目を向けた先では、机に突っ伏したなのはが寝息を立てている。
休み時間ともなれば小学生の女の子ならば友達同士の会話に花を咲かせるのが普通だというのに、
ここのところ、フェイトが入院してからのなのははこうして眠っていることが多い。
そしてその寝顔はけっして安らかなものではなかった。
「そんなに、フェイトのお休みしてる分のお仕事のしわ寄せって大変なわけ?」
「ああ……や、いや。まあ、せやね」
嘘を重ねて、はやてはちくりと胸が痛んだ。
フェイトの部署となのはの部署には、フェイトが離脱しているからといって
直接的な影響はない。あるような体制を、管理局ほどの大きな組織が組んでやっていけるわけがない。
なのはがやっているのはあくまでも逃避。
親友に起こった事態を一分でも、一秒でも忘れたくてやっているにすぎない
自発的なものだ。はやてはそのことを重々承知している。
約、一ヶ月。その期限は既に一週間が過ぎてしまっている。
「フェイトちゃんも、検査と休養だっけ?入院、長引いてるんだね」
「う、うん。はよ復帰して欲しいわー、ほんま」
心にもない上滑りする言葉を、自分で言っておきながら嫌悪するはやて。
嫌悪してから彼女は、その役回りをもともと演じてくれていたのが、
今は全てを忘れ眠りに落ちているなのはであったということに思い至った。
彼女一人にこの役目を押し付けていたことを、はやては密かに悔いた。
* * *
「どや、具合はー」
……その後悔が結果として、こうして彼女の病室に足を向けさせたのかもしれない。
見舞いの果物を冷蔵庫にしまい、ベッドサイドの椅子に腰を下ろしながらはやては心中に一人ごちた。
「うん、全然。一日中休みっぱなしなのがみんなに申し訳ないくらい」
フェイトは彼女のいうとおり、元気そうだった。
少し痩せたようにみえるくらいで、入院着を着たその姿は服装を除きいつもと変わらない。
顔色もよくて、とても入院が必要な患者にはみえなかった。
だから、それが逆に痛々しい。
蝕まれているようには見えないからこそ、一層。
「クロノ君やリンディさんは?仕事か?」
「うん。お兄ちゃんはアースラ、母さんはもう少ししたら来ると思う」
本人が知らないことを自分が知ってしまっている。
そのことが、これほど辛いものだったとは思わなかった。
かつての自分に対し守護騎士たちも、このような感情を抱いていたのかと思うと、
心苦しさをはやては覚える。
自分はこのような思いを、あの子たちにさせていたのだ、と。
今更に実感する。
「少しは、昔のはやての気持ちもわかったかな。……退屈すぎるもん、入院って」
「ははっ」
それが顔に出ないようにするのは、困難なことだ。
自分の笑顔が不自然になっていないかどうかは、はやてにはちょっとわからなかった。
顔が自然なままであることを、祈るしかない。
空元気が、ばれてはいけない。
「アリサたちはどうしてる?って言っても、まだ一週間くらいしか経ってないけど」
「ん、変わらんよー。二人ともはよ戻ってこい言うとったで」
学校の話題になって、少しは気が軽くなる。
ごまかしたり、気遣いを気取られぬよう配慮する必要がなく、
ありのままを話せる話題であったから。あくまでアリサやすずかが実際に言っていたことを
聞かせれば済むことだから。
先程までに比べはやてはつい饒舌になる。
そういったこともまた、なのはが彼女達に隠し続けてくれていたおかげでもあるのだが。
「……そう」
そのせいだったのだろうか。
彼女は、学校や友人たちの話題に対しほんのわずかにフェイトが顔を曇らせたのを見逃した。
「はやて、たのみがあるんだけど」
「なんや?」
素直な笑顔を向ける彼女は、見逃したそのことにも気付いてはいない。
だから、頼みの内容に疑念も湧かない。
「シグナムに渡してほしいものがあるんだ」
「?ええけど。あれやったら今度来るように言うで?直接渡したほうがええんとちゃうん?」
「いや。あの人も忙しいだろうし。はやてなら家で渡せるでしょ?だからお願い」
言いながら、フェイトはベッドサイドの机に手を伸ばす。
彼女が指で触れたものを見て、はやては小さく「え?」と声を漏らし、
目を瞬かせる。同時に動きを止める。
「この子を……お願いします、って。渡してほしいんだ」
「───な」
見間違いではなかった。その指先は、それを摘み上げ、はやてへと掌に載せ差し出す。
はやての理解は、自身の眼球に映る映像に追いつかなかった。
彼女が手を伸ばした時点で、そこには花瓶くらいしか他になかったのだから、
察するべきだったのかもしれない。
「せ、せやけど。これ」
閃光の戦斧。バルディッシュ・アサルト。
幾多の事件をフェイトとともに解決してきた相棒たる名高きデバイスが、
彼女の掌に載せられ、はやてのほうに差し出されていた。
「私の代わりに……この子を使ってあげてほしいんだ。他の誰でもなく、シグナムに」
「あ……その……う……」
「知ってるよ。全部」
フェイトは狼狽するはやてに、言葉とは裏腹の、穏やかそのものの表情で言った。
「もう、長くないんでしょ?私。……わかってるから、ちゃんと。私の身体だもの」
もう三期で色々妄想が進んでしまって脳内がえらいことになってます。
なのはとユーノ関連が主ですが。新キャラに男キャラ多目だと
ネタ作りやすいんだけどなぁ。いまのところ男1、女1てとこですか。
>>396氏
いえいえ、虐めてるつもりはありませんよ?(余計ひどいわ
>>さばかん氏
できちゃった婚にしちゃえばいいじゃない(ぉ
>>4の422氏
なんすかこのテラメープルな甘さはwww
砂糖通り越してメープルだよもうwww
>>K氏
新職人さんいらっしゃいませ。
クロフェいいよクロフェそして切ないorz
やっぱりバレてたのか……バルディッシュ……
だ、誰かジュネッスブルー連れてきてー
>>210 ジュネッスブルーと言うよりラファエルだろ。
第8話 きっと安らぎの在りかなの
目の前に私がいる。
私と何から何までそっくりで、もしかしたら自分は実は双子じゃないかってくらい。
でも私は知っている。
「あなたはフェイト……母さんが私の代わりに作ったお人形」
母さんが私を蘇らす間、寂しさを紛らわすためだけに作ったよくできた人形。
ただそのためだけに生きて、役目が終わったらさようなら。
私は母さんとリニスと一緒に幸せに暮らす。
思い出を奪ったのはフェイト。
ただそれだけを母さんから教えられていた。
大好きな母さんのために私は言う通りに今日まで歩いてきた。
「私にはそれしかなかった」
昔の記憶がない。
目の前の人が母さんってことだけはわかっているのに思い出せない苦しさ。
思い出さなきゃいけない。思い出がないと母さんに悲しい思いをさせてしまうから。
だから私は、記憶を奪い取ったフェイトが誰よりも憎くて許せなかった。
「人形なんかに楽しい思いなんてさせてやらない」
何もかも奪い取って、フェイトが持ってる楽しかった思い出全部私のものにして
「フェイトには悲しい思い出しか残してやらない」
私と同じだけ、ううん違う。
それ以上の苦しい思いをさせてやらなきゃいけない。
そう思ってきたのに――。
フェイトはあの時なんて言ったの?
思い出せないって……悪い冗談でしょ?
あなたは母さんとの思い出をいつでも思い出せて、世界でただ一人母さんといつでも一緒にいられる幸せな子。
「酷いよ…………」
フェイトは私の代わりのお人形。私が戻るまで母さんが寂しさを紛らわすためのお人形。
でも人形は私の思い出を奪って逃げ出して、どこか別の世界で幸せに暮らしている。
母さんからそう聞かされてたのに。
「思い出を奪ったの……?」
フェイトは何もかも知ってるわけじゃなかった。
嘘をついてる。そうやって考えることもできるけど、なぜだかフェイトは嘘をついてないって思えて。
「変だよ……それ……」
思い出せないから拒絶された。
私の記憶を奪ったのに?
母さんがフェイトを捨てたのは私の思い出を奪ったからじゃなくて
「……嘘だよ」
――アリシアを思い出さなかったから。
だから捨てた。
「……母さんは人形を作ったわけじゃない」
そうなんだ。フェイトは本当は私になるはずだった。
私だった。
でも違った。
「じゃあ私って……誰なのかな」
アリシア・テスタロッサじゃないのかな。
母さんの本当の娘じゃないのかな。
私って存在は此処にある。フェイトって存在も同じように。
でも二人は一緒にいちゃいけない。
私がいるんだから偽者はいらない。
「偽者って……だれ?」
もしかしたらフェイトが本物の私で私はただ自分をアリシアと思い込んでるだけの偽者。
本当にいらないのは私かもしれない。
「違う! ……違うよぉ……」
私がアリシアであの子はフェイト。
私の思い出があったってフェイトはフェイトだもん。絶対私になんかなれない。
私になれないから捨てられたんだ。
「私は……私はっ!」
じゃあもしかしたら次に捨てられるのは私なのかもしれない。
今はまだアリシアだけど、母さんの知ってるアリシアじゃなくなったら……。
アリシアになれないなら捨てられる。
「そんなの嫌だ!!」
頭を抱え、何度も何度も首を振って。
心を蝕んでいく闇を必死に振り払った。
「なんでこんなに……知らないことばっかりなのに」
バラバラなパズルの欠片。
いくつもの欠片が無くなっているのに、手元にある少し欠片だけでどんな絵なのか手に取るようにわかってしまう。
まるで何度も何度も作ったお気に入りのパズルみたいに。
フェイトの言葉を真に受けて、馬鹿みたいに信じて、どんどん嫌な考えばかり思いついて。
「出てって…………出てって……」
フェイトは入れ物。私の記憶の入れ物。
じゃあ私は何? 何が入ってるの?
「私の中には」
自分を自分として、アリシアをアリシアとして証明するもの。
それが――ある?
「そうだよね……私っていうことを証明するものって……ないよ」
ほっぺたを熱いものが伝わっていく。
拭ったって無駄。止まらないんだからやる意味がない。
「ただ自分でアリシアって言ってるだけで……」
私は……私でいられる。
それだけ。それしかない。
「もうわからないよ」
気づけば闇が体を包み込んでいた。
なんだかすごく眠たくなって、目の前が真っ暗になっていって。
終わりの合図。
夢の最後。
「私は……アリシア……なんだ」
同じ言葉が虚しく闇に溶け、私も溶けていって。
――私は知ってしまった。
「あなたはアリシア……母さんが私として作ったお人形」
* * *
主と使い魔は常に心の奥底で繋がっている。
聞こえはいいが、別に固い絆とかそういう幻想的な意味合いなもの一切ない精神リンクである。
「初めてですよ……ご主人様に締め出しを食らったのは……」
以前の主には散々なほどされてきたリンクの遮断。あの時はそれほど苦とも感じなかったそれが今は私の心に深く影を落としている。
心にぽっかり穴が開いて、そこから空気というか気力というか、大事なものが抜け出していくような虚脱感とはまた違った感覚。
心配して、アリシアの部屋に行ってみたもののドアはやはり硬く閉ざされていた。
留守ではない。彼女は確実に中にいる。
鍵なんて閉めないくらい無用心な彼女なのだ。ノブが動かないなら、いるという意思表示。
「さて……どうしますか」
彼女の手当てをして、部屋に寝かせて。それから彼女の姿を私は見ていない。
すでに一日は経った――。
こんな時にプレシアはどこへ行ったのか……。
もっとも掛け合ったところで彼女がアリシアになにか慰めの言葉をかけるとも思えない。
「私が終止符を打ったのなら、何をしたって無駄なんでしょう?」
嫌味、皮肉たっぷりな独り言は冷えた夜風によく溶ける。
そのまま彼女の元まで届けて貰えるなら何度だってこの口が言ってやるだろう。
どうせ聞く耳などないのだ。いくら言おうがなんとかの耳に念仏だ。
「それにしても……」
一時は強装結界まで持ち出され窮地に立たされかけたあの戦い。
アリシアが爆発的に魔力を放出したおかげでなんとか脱出は出来たものの、正直完全に敗戦だ。
彼女の魔力は本当に底知れないと舌を巻く一方で、なぜそんな事態に陥ったのか疑問が頭の中を飛び回る。
ただ唯一わかることはその直前に彼女の心が異常とも思えるくらいの動揺と高ぶりを見せたこと。
そしてそれから遮断された精神リンク。
「結界の中で何があったのでしょうか……」
未だ痛む脇腹を擦りながら結界の中で行われていたであろうやり取りを思索する。
あまり痛覚が先行してままならないのだが。
「まったく……速さには自信があったのですが」
思わぬ彼女の成長ぶりに口角が僅かに上がるのを感じる。
肉を切らせて骨を断つ。体現された見返りは肋骨二本。
治癒魔法ですでに接合は済んではいるが痛みだけは未だズキズキと私を悩ましている。
「鉄拳無敵……言う通りになってしまったのが悔しいです」
総合的なダメージ量で言うなら私の方がずっと上回っている。
手数でも勝った。しかし一撃にひっくり返された。
「次は……負けないですよ、アルフ」
闘争本能か、彼女にライバル心を抱きつつある自分にやれやれと思いつつ、寄りかかっていたドアに向き直る。
今はそんなことよりも目の前の問題を解決することこそ先決。
そう思い、私は軽くドアを叩いた。
「私ですアリシア。開けてください?」
…………。
返事は――ない。
「アリシア、開けなさい。このまま我を張っても何も解決しませんよ」
少し言葉を強くしてもう一度ドアを叩く。
せめて何があったのかだけでも分かれば少しは力になれる。もしかしたら話してもどうにもならないことだとしても……。
「……嫌だ、開けない」
消え入りそうな声が聞こえるまでそれほど時間はかからなかった。
「駄目です、開けなさい。一体何があったんですか?」
「何にもなかったよ……今日はもう遅いからおやすみなさい」
覇気はなく、ただ出しているだけな声。そこに感情はなく怖いくらい淡々としている。
「……らしくないですよ。あなたが寝るよう時間ですか、今は」
ええ、いつも夜更かししようとしている人間の言うこととは思えません。
だというのに返事は無く、代わりに返ってきた答えが
「らしくないって……なに?」
それだった。
「あなたらしくないってことです。いつものアリシアならまだはしゃぎ回ってます」
「そう……なんだ」
「…………アリシア?」
何かがおかしいと感じたのは気のせいじゃない。
扉の向こう、アリシアに何かが起きている。それもかなり重大な。
「どうしたんですか? ますます変ですよ、たちの悪い冗談なら止めてください。いつものアリシアに戻ってください」
不安を隠せない。
強く拒絶するわけでも無く、かといってドアを開けることもしない。
経験の無い事態に言葉は詰まり、情けないがドアの前で立ち尽くす他なかった。
「フェイトに何を言われたんですか……?」
自分でも思うが絶対これは無い。
あの優しいフェイトがアリシアを動揺させるような言葉を吐くとは思えない。
境遇でいうなら彼女の方が酷なのだ。だからこそ人を傷つけるようなことなんて絶対に言えない。きっと比較して逆に思いやりの言葉すらかけるだろう。
保障は無いがフェイトはそういう子なのだ。
「食事は取ったんですか」
取るわけがない。部屋から出ていないのだから。
一応、部屋の中には買い漁ったお菓子があるはずだが育ち盛りのアリシアの空腹を満たせるとは思えない。
アリシアは無言の抵抗を続けている。
フェイトなら本を読んでいると思えば別段こんな静けさも気にならない。
ただアリシアとなるとこの静けさが逆に不気味でいつもの喧騒が恋しくなる。
「……アリシア」
無意識に力の篭った拳が重い音をドアに生ませた。
名前を呼ぶことしか出来ない歯がゆさ。無駄に時間ばかりが浪費されていく。
こうなれば――。
「入りますよアリシア」
こんなこと本当は私だってしたくない。でも今は急を要する事態だと直感が訴えた。
だから私はノブをおもむろに掴み
鈍い音がするまで一気に捻りあげた。
魔力を込めれば呆気ないもの。
役目を失った金属の塊を放って私はゆっくりとドアを開けた。
「……失礼します」
部屋に入るなり一瞬自分が本当にアリシアの部屋に踏み込んだのか疑った。
そこは闇だった。黒に塗りつぶされた影の世界。
僅かに差し込んだ月明かりがおぼろげながら世界の輪郭を作り直していく。
隅のベッドでうずくまる彼女にも当然その権利は与えられた。
「電気も点けないで……何を考えているんですか」
言って手探りで壁にあるだろうスイッチに手をかけた。
「ダメっ! つけないで!!」
悲鳴に似た声が私の耳を貫いていった。
思わず手を引っ込めアリシアを見やる。
「……お願い……今の私……酷い顔だから」
酷く掠れた声だった。
彼女に起こっていることをすぐに察した。
――行かなければならない。
使命感に似た感情が私の足を一歩動かそうとする。
「フェイトが言ってたんだ……思い出せないから捨てられたって……」
一言、アリシアの言ったことに軽々と止められたのは悔しかった。
そうしてアリシアの言葉が理解できなかったことがもっと悔しかった。
「何を言ってるんですか……」
「フェイトは私になるはずだったお人形なんでしょ? 私の思い出が無いのはフェイトが私だから……」
ああ、そうか……。
彼女は真実を知らなかったのだ。
自分に記憶が無いのは全部フェイトが奪ったから、そう思って今日までやって来たのだ。
いわば彼女のアイデンティティであり全てを突き動かすための原動力。
「……リニスは知ってたの?」
「それは……」
首は振れなかった。
私は知っている。あの日、亡骸だったアリシアを見つけたときにプレシアから全てを教えられたから。
「ねぇ……フェイトがアリシアになるはずなら今いる私ってなんなんだろうね……」
諦念に満ちた呟きは私だけに向けられていない。
きっともう一度生を受けたこの世界に向かって言っている。そんな気がした。
なんて仕打ちだろうか。それともこれは死を捻じ曲げた彼女への罰?
そんなのどうでもいいです。
本当に今私がやるべきことは
「アリシア」
闇の中へ一歩踏み出して
「っ! ……来ないで」
一歩
「こ、来ないで!」
もう一歩
「出てって! 私の言うこと聞いて!」
あと一歩
「来ないでって……言ってるのに!」
長いですね……でも――
「ようやく会えましたね、アリシア」
こうやって微笑んで、そっと抱き寄せることだから。
小さな肩は震えていて、氷のように体は冷たくて、何でもっと早くこうしていやれなかったのか後悔するばかり。
でも安心した。
「やぁ……やだ! 離してよ! 離してよリニスぅ!」
「それは受け付けられません。自分の体なんですからもっと大事にしてください」
「自分の体なんかじゃない! 私アリシアじゃないかもしれないのに!」
この期に及んで、随分と強情な子だ。
「アリシアです」
だから私は言ってやった。
アリシアとこの偏屈な世界に向けて。
未来永劫、絶対普遍の事実を。
「ではアリシア、なんで昔の記憶がないだけで自分じゃなくなるんですか?」
「だって……私が私だって証明できるものがないから」
「ふぅ、記憶なんて酷く不確定要素に満ちた過去の集合体でしかありません。そんなもの理由になりますか」
「……難しいこといってもわからないよ」
ちょっとアリシアには難しすぎましたか。
実の所、私だってなんだかよくわからないことだと思いますし。
「自分が自分だって胸を張って言えることこそ一番の証です」
私だってこうやって使い魔として再び生きていることにふと不安になるのだ。
もしかしたら自分は以前のリニスを模倣して作られた存在――いわばアリシアとして作られたフェイトと同じように。
それでもアリシアがいるから、アリシアが私を必要としているから、なにより危なっかしいアリシアを放っておけないからそんなことすぐに吹き飛んでしまう。
「うん、私は私だよ……でも思い出はみんなフェイトに」
「それなら作ればいいじゃないですか。自分がアリシアだって思い出を、時間が立てば今だってすぐに過去に、思い出になるんです」
そう、それならアリシアはもう誰がなんと言おうとアリシアだ。
「もうあるでしょう? プレシアと、私と、フェイトにはない思い出が」
確かに短い時間ではある。だけど過去を思い出に出来ない理由にはならない。
私たちは確かに一緒にいたのだ。たったそれだけも十分すぎる。
「ないなら作ればいいんです。取り戻せないなら作ればいいんです。簡単なことなんです。ほらアリシアにだって思い出、あるでしょう?」
「私の思い出……」
「あなたの中に私はいる。その記憶、私があなたの生き証人なりましょう」
自分の存在とか、生きる意味とか、そんな理屈付けは自分を奮い立たせるためのプロパガンダ。
「大事なのは気楽にやることです。いつものあなたがやっていることそのままに、のびのびと大胆に」
ぎゅっ、とアリシアを抱きしめて囁きかけるように静かに、ゆっくりと紡いで。
いつの間にか心に流れ込んできた温かなせせらぎに安堵して。
「まったく、あなたはほんとに手のかかるお転婆なんですから」
頭をくしゃくしゃと撫で付けた。
あれほど冷たさを帯びていた闇も今は心が安らぐ温かさを持っていて。
「……うん」
微かな答えは闇には溶けず私の耳に溶けていった。
最近は新たなネタ探して妄想中
クロエイはどういう経緯で結婚したのか
クロノのプロポーズはやはり給料三ヶ月分の指輪なのか
やっぱり時代はなのユーかとか
>>396氏
あ〜あ〜、空回り〜
これからどうなることやら先が見逃せない
>>さばかん氏
テンション高くていいなぁ
自分のが下がりっぱなしな分盛り上げてください
>>4の422氏
砂糖を吐いてます
甘いです、激甘です
GJ!
>>K氏
早いよ! すごい投下早いよ!
うらやましいよ! クロノ浮気かよ!
楽しみにしてます、頑張ってください
>>640氏
生きてくれ! 生きてくれフェイト!
だれかエリクサーを! フェニックスの尾を!
220 :
K:2006/10/07(土) 10:14:10 ID:OhjWp3/w
どれくらい泣いていたか、フェイトには分からなかった。
涙を流し続けた瞳は染み込むような痛みを、泣き声を上げ続けていた喉は裂かれたような痛みを、それぞれ訴えて来る。
それら痛みを、ぼんやりと自覚して来た頃、フェイトはようやく泣き止む事が出来た。
クロノはずっと抱いてくれた。赤ん坊か、宝物か、そうした大切なモノを抱くようにして。
時折撫でてくれる彼の指先がとても愛しい。
「……ありがとう……」
呼吸をすれば、鼻水がぐじゅぐじゅと情けない音を上げる。
「……いや」
「……ごめんね、子供みたいに泣いて」
「……気にしないでくれ。君はまだ子供だろう」
そう言って、クロノは少しおどけて見せた。
見上げれば彼の優しい笑顔があった。
胸が高鳴った。
どきりという大きな音が確かに耳に入って来る。
動悸が僅かに速くなる。
「……じゃあ、甘えていい?」
身体が熱かった。内側から来るような熱が、思考と理性に絡み付き、機能を蝕んで行く。
「何でそうなる……」
呆れながらも、自分を抱く腕を外さない彼の優しさが愛しい。
「子供は甘えるのが仕事って、母さんが言ってたから」
「母さんに甘えればいいだろう?」
「今日は戻ってこないって連絡あったから。無理」
「……だから僕という訳か」
「うん。泣かされちゃったしね」
「……すまない」
「嘘。冗談」
「………」
彼の寝間着に指を絡める。
肩を、身体を寄せ、その胸に頬を添える。
「……クロノ、どきどきしてる?」
「……正直、少しだけな」
胸に押し付けた耳には、自分の胸と同じように、早鐘を打つクロノの心臓の音が届いていた。
その事実が、単純に嬉しかった。
その事実が、思考と理性の麻痺を進行させて行った。
「だめだよ、クロノ。エイミィが居るのに、私なんかでどきどきしてちゃ」
自分の呼吸が徐々に荒くなって行くのが分かった。
「……仕方ないだろう、僕だって男だ」
「妹に欲情しちゃうの?」
冗談で言っているのか、本気で言っているのか、良く分からなくなって来る。
221 :
K:2006/10/07(土) 10:16:56 ID:OhjWp3/w
「そういう事を言うんじゃない」
「……私は……今、凄くどきどきしてる」
蛇口を捻られた水道のように、思っている事が面白いくらい良く出て来る。
クロノが動揺しているのが分かった。彼の心臓が飛び跳ねたような大きな音を上げたのだ。
自分の言葉に過剰反応をしている。愚直で誠実なクロノらしい。
そんな彼のすべてが――狂おしい程に愛しい。
クロノが僅かに身体を離そうとする。
フェイトは離すまいと指に力を込め、身体を摺り寄せる。
結果、二人はバランスを崩してベッドを揺らした。
「……あ……」
ベッドの軋みが生々しく耳朶を打つ。
「―――」
「―――」
視界がクロノの顔で埋められた。
「―――」
「―――」
フェイトはクロノを押し倒すように彼の身体に乗っていた。
クロノはフェイトに押し倒されるように彼女を身体に乗せていた。
「……フェイト、その、退いてくれると助かる……」
耳まで紅潮させて、クロノは視線を横に逸らした。
その仕草が胸と心を激しく掻き乱した。
あれだけはっきりと想いと断られたのに。
結婚おめでとうと言えたのに。
諦めなきゃいけなのに。
感情は、気持ちは、心は、まだクロノが好きだと声高に叫んでいる。
「……ごめん……なさい……」
そう言いながら、しかし、フェイトは離れようとしなかった。
火照る身体。
荒くなる一方の動悸。
溶けた理性が本能をさらけ出す。
「フェイト?」
「いけないって分かってるのに、止まらない」
彼にはエイミィが居る。すでに決定した生涯の伴侶が居る。
いけない。
こんな事を思ってはいけない。
喩え想像の中でもしてはいけない。
溶けたはずの理性が最後の抵抗をする。
でも――。
「止められない」
ブレーキを失った車は燃料が切れるまで走行するしかない。
222 :
K:2006/10/07(土) 10:19:08 ID:OhjWp3/w
「くろの」
情欲に溺れた心が告げた。
甘い甘い声だった。
「甘えても……いい?」
「……フェイト、駄目だ」
クロノが厳しさと僅かな険を顔に浮かべる。
フェイトが何を思い、何をしようとして、何を求めているのか、彼は理解してしまったのだ。
「……知ってる」
「なら」
「クロノは、私が嫌い?」
「嫌いなもんか」
「私もそうだよ。クロノが好き」
喩え拒絶されたとしても、この気持ちに変わりはない。
「フェイト、僕は……」
「……分かってる」
「………」
「だから、これは私の我侭」
相手がすでに決定しているヒトに、”そういう行為”を求めるのは背徳的な行為だ。
クロノも、それは望んではいない。
だから、これはフェイトの我侭なのだ。
喩え刹那的であっても良い。
一晩限りで良い。
初恋のヒトを独り占めしたい。
心も身体も、自分のモノにしたい。
自分の心と身体を、彼の色に染めてもらいたい。
何より――この気持ちにけじめをつけたい。明日から彼を”大好きな優しい兄”と見る為に。
「……やめろフェイト」
「どうして?」
「……言わないと分からないのか?」
「分かるよ? 本当に好きな人の為にとっておけって言いたいんでしょ?」
「……そうだ。後悔するから、絶対に」
諭すようにクロノが言う。
フェイトは即答した。
「しないよ」
躊躇は無かった。
「しない。後悔なんて、絶対にしない」
「………」
「だから、抱いて下さい」
「……駄目だ。絶対に駄目だ。落ち着け、フェイト」
本当に、どこまでもどこまでも、クロノは優しかった。
エイミィとの事もあるだろう。でも、それ以上に今の彼はフェイトのこれからを心配している。
一時的な感情に流されて、大切なモノを失おうとしているフェイトを諭そうとしている。
それは分かった。理解出来た。
でも納得が行かない。未熟な感情が納得してくれなかった。
どうして分かってくれないのか。こんなにも求めているのに。一回だけ、今日だけでいいのに――!
223 :
K:2006/10/07(土) 10:19:38 ID:OhjWp3/w
感情が爆発した。身体の火照りが頭に殺到する。何がどうなったのか、まるで分からなくなった。
そして、気付いた時には、自分の唇と彼の唇が重なっていた。
一拍遅れて、クロノが暴れ始める。フェイトの肩を押して引き剥がそうとする。
フェイトはクロノの頭を抱えるように、その首に両腕を回した。脚を絡めて動けなくする。満足な呼吸が出来なくなったが、構わずに唇を押し付ける。
情熱的でも官能的でもない。稚拙や幼稚、そんな言葉も似合わない。ただの暴力的で乱暴なキスだった。
一分以上は無言の押し問答をしていた。さすがに息苦しさが限界を迎えて、フェイトは海面から顔を出した時のようにクロノの唇を解放する。
「フェイトッ!」
「……くろのは、わたしとじゃいや?」
「そういう問題じゃないだろう! 僕は君の気持ちには応えられない! それが……!」
「分かってる。だから、この一回だけでいいの」
「フェイト……」
「結婚おめでとうって言えた。でも……私はまだクロノが好きなままなんだ。だから、諦める為に抱いて欲しい」
「そんな理由で出来るもんか……!」
「クロノにとってはそんな理由かもしれないけど、私にとっては大切な理由」
本当にどうしようもない我侭で身勝手な理由だった。
自覚はあった。彼に迷惑をかけているのも分かっている。エイミィに対して大きな裏切りを働いているような気持ちもある。事実、これは彼女の信頼を最悪な形で裏切っている。
長い長い沈黙。
その間、二人はじっとお互いの眼を見詰め合って過ごした。
「……しないんだな、後悔」
呆れたようにではなく、確認するように、クロノが切り出した。
「うん」
「僕もまだ不慣れだ。痛いと思うけど、本当にいいんだな?」
「そっちの方がいい。痛い方がクロノを感じられるから」
クロノが上半身を起こす。自然とフェイトは彼の下半身に馬乗りをするような形になった。
「……これっきりだからな」
「……うん」
二人は瞼を閉じ、ゆっくりと顔を近付け、今度は味わうように口付けを交わした。
224 :
K:2006/10/07(土) 10:34:22 ID:OhjWp3/w
風に舞う花Wでした。すいません、エロにはいけませんでしたorz
>176氏
ありがとうございます〜。楽しんでいただけるように頑張ります。
しかし、アリシア、フェイトに負けじと薄幸ですね…。
>640氏
お初…という事なのでしょうか、こちらですと。KEINです。
クロフェですがクロフェじゃないSS、切なさ目指して頑張ります。
そしてホロリとされていただければ幸いです。エロ、書けるかな…。
乙デーす。
でもこれってめっちゃ不倫ルートな感じが・・・
エイミィが部屋の外で泣きながら立っていることも
二人は知らない。
ユーノに盗撮されてる事にも気づいていない
アルフ「ただいまー。フェイトー、ケーキ買ってきたよー
あれー? どこにいるんだい? 部屋にはいないし。
あれ? クロノの部屋から声が聞こえるな」
君らどうしてそんなに修羅場スキーなんですかw
ザフィーラ 「血で血を洗う愛憎劇とは時として美しい」
こんにちは396です。
ついにオリジナルのキャラ・設定が多めに出てくる展開に突入です。
もちろん主役はなのはのキャラ達ですが苦手な人はスルーしてください。
では投下します。
魔法少女リリカルなのはA's++
第六話 「青い髪の少年」
ミッドチルダ首都、クラテガンの中心には巨大な建築物がある。
周りはいくつかの小さな塔で囲まれており、優秀な結界魔導師と高度な装置により
建物を囲むように強力な結界が張られている。その中に入ることが出来るのは選ばれた者のみ。政治家である。
そこは政治の方針を議事する場所であり、ミッドチルダの要だ。
毎月そこでは数百人の政治家達が激論を戦わせている。
今日もその様子はミッドチルダ中の民に生中継されていた。
大広間の中心では、ミッドチルダの刻印の入った伝統的な衣装を着た初老の男が魔法陣の上に立っていた。
髪は真っ白で、オールバックにして長い髪を結んでいた。
周りは薄暗く、その魔法陣の上だけに照明が当たっている。
「今この時も、格差は広がっているのです。年々増える失業者の数、今手を打たなければいずれ破綻する。
才能を重視し、高度な文明を培ってきたのは誰もが認めるミッドチルダの歴史だ」
男はそこで一旦切ると、まるで体全体で語りかけるように力強く続けた。
「だが、幼年者の社会進出が今の格差を生んでいるのです!
経験値は生きた年数に比例するのです。決して魔力の高さだけではないのです。
今一度、能力の高さとは、優秀であることとはなんなのかを見極めるべきなのではないでしょうか!!」
男がそう言い終え、拡声と発光の効果のある魔法陣の上から暗闇に消えるように離れた。その瞬間、盛大な拍手が巻き起こる。
その反応を見て男は薄く笑った。
ようやく来た。自分の望んでいた流れが。今まで支持するものなど皆無だったこの演説も、着々とその効果を示し始めている。
庶民院のやつらも大したことはない。所詮下賎な民の寄せ集めなのだ。
この中継を見る無能な愚民たちも、今のパフォーマンスとメディアの論争ですぐに意見を変える。
そう、政治は結局は流れであり、抽象的なイメージに踊らされるように右にいったり左にいったりしているのだ。
そのくだらないシーソーゲームの存在に気付いたのは四十路を超えたときであった。
今でも続々と“才能ある子供達”が社会へと出ている。はらわたの煮えくり返る思いだ。
周りの議員達の賞賛の声に笑顔と握手で返しながら、男は心の内でそんなことばかり考えていた。
定例の議会も終わり、事務所へと帰り葉巻に火をつける。誰も見ていないので机に足まで乗せた。
今日の仕事はもうない。引き出しからアルコール度数の高い酒をだし、グラスに注ぐ。
窓の外には美しい夜景が広がっていた。ミッドチルダ。とても美しい場所だ。
辺境地域には豊かな自然が残り、なおかつ提携している他の次元世界に肩を並べるほど高度な文明を有している。
風景はその残酷な側面を映し出さない。表面的であるからこそ綺麗と感じるのだ。
男がグラスに口をつけながら物思いにふけっていると、ふと扉の前に人の気配がしドアをノックする音がした。
「べレット・ウィリアムスさん、お届け物ですよ」
「……入れ」
ガチャリと扉が開き、帽子を被った男が入ってきた。手には小さな箱を持っている。
帽子には星に猫が乗ったロゴが入っていた。
目は帽子で隠れているが、その体格の良さは一目でわかる。口には無精髭が見えた。
「私は直接届け物など受け取らん。秘書を通す。覚えておけ」
「それは失礼」
小さな箱を指先でクルクル回しながらその男は壁に寄りかかった。
口では謝罪しながらも欠片も悪いと思っていないその様子にウィリアムスは鼻で笑った。
すると男がにやりと笑いながら言った。
「今日の演説見たぞ」
「どうだった」
「ペテン師にしては、目立ちすぎだな」
男のらしい感想を聞いてウィリアムスは懐かしい気分になった。
「いいのか」
男は葉巻を吸う自分の姿を見て言った。今のウィリアムスはふてぶてしいこと極まりなく、およそ貴族出身とは思えなかった。
一度落ちぶれた身だ。今では自分が元貴族であるとはこれっぽっちも思っていなかった。
「お前と会った選挙前とは違う。それに今日の仕事はもう終わった」
口から煙を噴出すと、パチンと指を弾く。窓にカーテンがかかり、部屋全体に防音の結界が張られる。
「それで…計画はどうなった」
机から足をおろし腕を組む。葉巻を灰皿に押し付け火を消した。
「始まった。いまさら止めようといっても、無理だ」
「そうか。安心した」
ウィリアムスは笑った。これが成功すれば、確実に法案は通る。
流れが自分にある以上、やるなら今しかない。
「やつらはどうしてる」
「丁重におもてなししている。と言っても、檻の中だがな」
そう言うと男は持っていた小さな小箱を放り投げてきた。組んでいた腕を解いて受け取る。
「なんだ?これは」
「証拠だ」
そう言うと男は振り返り扉のノブに手をかけた。
「もらった金はその送料として受け取っておく」
扉を開け、出ていく間際に男が言った。
「またのご利用を」
男が出て行ったのを見てウィリアムスはため息をついた。
これで会うのが最後かもしれないというのに、全くあの男はあっさりとしている。
しかも直接会いにくるとはなんとも大胆だ。たぶん、大胆だからこそ、あの仕事はやつにしかできないのだ。
それにしても箱の中身はなんだ、と思った。あの男は言った。証拠だと。
ごくりと喉が鳴る。
(まさか、指とか耳じゃないだろうな…)
そんな処分に困るもの、もらっても気持ち悪いだけだ。軽く箱をふってみた。音はしない。それに驚くほど軽い。
ウィリアムスは薄目を開けながらゆっくりと箱を開けた。箱の中身を見てほっと胸を撫で下ろす。
なんだか無性に笑いがこみ上げてきた。
「あいつらしいな」
そう言うと再びグラスに口をつける。今日は気分よく酔えそうだ。
机の上に置かれた小箱には、動物の毛が詰まっていた。
*
ユーノは目の前の少年に連れられミッドチルダの郊外にある港町にきていた。港と言っても海があるわけではなく、
飛行船舶が停泊している場所ということだ。海の代わりに森林が街の周りには広がっていた。
旅行用もあれば、戦艦も停泊している。町は昼下がりで結構な人で賑わっていた。
「ねぇ、どこまで行くんだよ」
ユーノは人の波をかき分けるようにどんどん先に進んでいく少年に声をかけた。少年は振り返り、真剣な眼差しで言った。
「ついてくればわかる」
「ちょ、ちょっとエリオ!」
そして再び早足で進んでいく少年の背中を、ユーノは必死で追いかけた。
彼の名はエリオ・スクライア。
青色の髪、長さは小学生の頃のユーノより少し短い程度。青い瞳が印象的な少年だ。
ユーノとは小さい頃の幼馴染だが、6歳の時にエリオは母親と一族を出て行ってそれ以来会ったことはなかった。
一年だけだが、魔法学院も一緒に通った。もう一人の幼馴染の少女と三人で、よく森に冒険に出かけたことを思い出す。
エリオはかなりの泣き虫で、もう一人の少女はとんでもなくお転婆だった。ユーノはいつもまとめ役だった。
三人は、時には喧嘩し、時にはふざけ合いながら野を駆けた。
二人は孤児のユーノを変な目で見たりしなかったし、一族にそんな人は一人もいなかった。
スクライアの名を持っているものはみな家族なのだ。
あれから何をしていたのか聞きたかったが、どうやらそれどころではないようだ。
どうやって無限書庫に忍び込んだのかもとても気になった。
そんなに本局のセキュリティは甘いのだろうか。早く帰って見直す必要がある。
しばらく歩くと、人の賑わいから外れた大きなコンテナがたくさん置いてある場所まできた。
どうやら貨物船の積載場のようで、がたいの大きな男たちが機械を操作しながらコンテナを貨物船の中へと運んでいた。
「よぉエリオ。早かったじゃねーか」
すると突然、作業をしていた男がこちらに声をかけてきた。周りの男たちもそれに気付いたようでこちらを見ている。
しかし、エリオは全く目を合わせず素通りした。その様子を見てユーノは戸惑った。
「え、いいの?知り合いなんじゃ…」
せっかく挨拶されたのに無視するのは酷いんじゃないだろうか。
ユーノが尋ねると、エリオは怒りをにじませたようなきつい目をして言った。
「ユーノも、じきにこうなる」
「?」
そう言うと階段を上り開けっぱなしの貨物船の中へと入って行った。困惑しつつもユーノはそれに続いた。
船内はお世辞にも綺麗とは言えず、所有している企業があまり大きくないことをうかがわせた。
大きい企業ほど、こういった清潔感には気を遣うものだ。貨物船自体はかなり巨大で、アースラに引けを取らない大きさだ。
クルーはあまり多くないのか今はいないだけなのか、船内を歩いていてもほとんどすれ違わなかった。
それにしてもこの久しぶりに会った幼馴染は自分に何をさせるつもりなのだろうか。
無限書庫は比較的仕事が減ったというだけで今でもやるべきことは山ほどある。
昔のよしみでそれらをほっぽりだしてまで出てきたと言うのに目的も告げずに連れまわすばかりだ。
文句の一つでも言ってやろうとユーノが声をかけようとしたとき、ある鉄の扉の前でエリオが立ち止まった。
プレートには船長室と書いてある。どうやらここが目的地のようだ。
「入らないの?」
扉の前でしばらくたたずんでいるエリオにユーノは話しかけた。
「あ、あぁ」
そう言いながらノックしようとするエリオの肩は、明らかに震えていた。
そして意を決したように声を出す。
「入ります」
ゴンゴンとノック音が響き渡り、重い扉を開け二人は部屋へと入った。
中にはコンピュータに向かって仕事をしている眼鏡をかえた男がいるだけだった。
顔には無精髭をたくわえ、その体格からか窮屈そうに椅子に座ってデスクワークをしている。
歳は30代前半くらいか。黒髪短髪で、第一印象は体育会系っぽく見えた。
男は入ってきた二人を見てコンピュータから顔を上げると、眼鏡を外して立ち上がった。
「おお、ようやく連れて来たか」
笑みを浮かべながらそう言った目の前の大柄な男に対して、隣のエリオは直立不動で立っていた。
もしかしたらこの男がエリオの雇い主かもしれない。
「これはこれはスクライア司書長。この度は申し訳ありませんでした。強引にお連れする形になってしまって…」
「はぁ…」
愛想笑いを浮かべながら話す男にユーノは戸惑った。いまだに何故自分がこの場にいるのかわからないからだ。
「おっと自己紹介がまだでしたな。私の名前はサイオン・ウイングロード。この輸送船『グランディア』の艦長を…」
「いいかげんにしろ!!!!」
「!?」
突然の怒声にユーノは驚いてエリオを見た。
全く怒るような状況でもなかったし、しかも雇用主だと思っていた男に怒鳴ったからだ。
「あんたの言うとおりユーノは連れて来た。それに僕達には演技の必要もないだろう!」
それを聞いたサイオンは今まで浮かべていた笑みを消し、エリオとユーノを見下ろしながら言った。
「勘違いするな。演技などではなくどちらも俺だ。まあ、今は裏の方を使うべきだったかな」
そう言うと二人の横を通り過ぎ扉を開けた。
「ついて来い」
またも移動するらしい。ユーノは先ほどのやり取りに眉をひそめながらもその後をついて行った。
部屋を出て通路をしばらく歩き、エレベーターに乗った。
数字をみるかぎりどうやら今いるのは二階で、一階、三階、そして甲板へと出られるようだ。
エレベーターの中でふいにサイオンがユーノに話しかけてきた。
「ときにユーノ・スクライア」
「…なんですか」
一変したサイオンの雰囲気に警戒するように堅い表情のままユーノは返した。
「なぜここに呼ばれたのか知りたいだろう?」
「当たり前でしょう。エリオは話してくれないし…」
ちらりとエリオを見ると俯いていて立っていた。なんとなくそこには昔の泣き虫だった面影が見えたような気がした。
今まで無理をしていたようにも感じる。
「口止めしていたからな。ここでのことはどんな些細なことであろうと口外できない」
1の数字が点灯しエレベーターの扉が開く。そこは倉庫のようで多くのコンテナが積み重なっていた。
小さな電灯がいくつかその真下を照らしているだけで、とても薄暗かった。
通路のようになったコンテナの間を歩いていくと、扉に突き当たった。
サイオンがリーダーにカードキーを通すと、ランプが緑に点灯し扉のカギが開く音がした。
「この中にお前を呼んだ答えがある。なに、閉じ込めたりはしない」
そう言うとサイオンが扉を開け中へと入って行った。
いい加減理由が知りたかったユーノはすぐに入ろうとすると、突然肩を強くつかまれた。
「どうしたのさ?」
ユーノがいぶかしげにエリオを見ると、エリオはそのスカイブルーの瞳をユーノにまっすぐ向けて言った。
「何を見ても、心をしっかり保って。ユーノ…」
そう言うとユーノを軽く押して促した。ユーノはその言葉に不安にかられつつも部屋の中へと入った。
倉庫と同じく薄暗いその大きな部屋の中には動物用の檻、それも少し大型の動物を入れるための檻がいくつか立ち並んでいた。
空の檻もあれば、ミッドチルダに生息する獰猛な動物も入っている。時折ひっかくように檻の隙間からその爪を伸ばし、
前を通り過ぎるユーノを威嚇するように吼えた。
ユーノは両脇に並ぶ檻の間をゆっくりと歩いていく。
自分の足音が室内に響いた。
しばらく進むと、ユーノは一番奥の大きめの檻に目がいった。
目を凝らすと、奥ではいくつかの影が蠢くのが見えた。
自然と手に汗をかく。
嫌な予感とともにユーノは恐る恐る近づいた。
そして目を見開く。
その中には小さな子供から大人まで、複数の人間が閉じ込められていた。
さらに驚くことに、ユーノはその幾人かの顔に見覚えがあった。
「そんな……みんな……」
ユーノの声に檻の中の人間の目が一斉にユーノを見つめる。
みなの首には黒い首輪がされていて、赤い目玉のようなレンズがまるで生きているかのように、同様にユーノを見つめた。
「!?」
駆け寄って檻に手をかけようとするとすぐ横で人の気配がした。
ユーノは震えながら目を向けると、檻の前にサイオンがいやらしい笑いを浮かべながら立っていた。
「これが答えだ。ユーノ・スクライア」
次回へ続く
次回 第七話 「駆け引き」
ミッドチルダはイギリスの政治制度を参考にしました。オリキャラ名は言わずもがな車種です。
これからは説明的な文も多くわかりづらくなると思いますができればついてきてほしいです。
投下速度は遅くなるかもしれません。数話書いて全体を見直す必要があるので。
読むときも数話まとめて読んだ方が理解しやすいと思います。それでは。
396氏乙!
一気にシリアス…。まだ不明な点が多いスクライア一族を使うとは
かなりのチャレンジャーですねw
かなり作りこんでそうなんで続き楽しみにしてます。
242 :
ヘボ書きマン:2006/10/09(月) 12:01:51 ID:9UMnNcRQ
>まだ不明な点が多いスクライア一族
俺の正体に気付いているヒトなら知っているとは思いますが、俺も色々考えたりしてます。
色々と作りやすいというか、意図的に設定されてなさそうな気配があって不安ではありますが。
〜月と太陽と・・・〜 を書き終えたら、そちらもやろうと思っています。
396氏、GJ!!これからも頑張ってください
どうも176です
なんというか投下中の話ばかりでは食傷ぎみに
なるような気がして新作投下します
すいませんエロじゃないです
内容はシグナムら四人がヴォルケンリッターになる前のお話
本編ではプログラムですが
やはり彼女たちも雛形になった人がいたのでは?
なんて感じで書いてみました
若干一名オリキャラが出てきたりしますが
もし気に障るようなら読み流しちゃってください
クレームも可
そういえば前にもあったなぁ、こんな話……
ある所に一人の魔導師がいました。
その人はとっても無邪気で気まま。
大好きなのは旅をすること。
いろんな世界を旅して沢山の思い出を作って。
旅の理由はいつも一つ。
心がいつも空っぽだから。
そんな彼女にいつしかお供がついて来て。
これはそんな気ままな主と四人の騎士の物語。
――もうずっと昔の、永えの絆に結ばれた旅の記憶
あの雲のように
第一章 無愛想な用心棒
助けなければ良かった。
先刻から頭の中で堂々巡りする後悔に彼女は頭を抱えて項垂れていた。
「すいません、ほんとに助かりました」
そう言ってすぐにその場から退散してくれるだろうと思った。
数分後にはそれがあまりに浅はかな考えだと思い知らされた。
「ああ、それは構わない」
丁度良い鬱憤晴らしだ。あの程度の火竜を狩るなど欠伸をしても出来る。
だから問題はそこではない。
「付かぬ事を聞くが」
「はい? なんでしょうか」
「なぜ……ここにいる」
パチリと燃える盛る焚き木が火の粉を吐き出した。
上には吊り下げられた吻合。周りには切り身にされ串に刺さった火竜。
良い塩梅に肉汁が滴り火にくべられる度に美味そうな音を立てた。
「料理をするため……でしょうか?」
あっけらかんにそう答える辺り悪気などこれっぽちもないのだろう。ああ、騎士足るもの人を見る目は養っている。
「ああ、そうだな。料理をしているな……だからなぜ、だ」
きょとんとこちらの質問に首をかしげ口元に手を当て思案。
結果は――
「もちろん助けてもらったお礼ですよ」
両手を叩いて嬉しそうに笑んだ。
「…………」
ため息に火が嘲笑うように揺れた。
断言できる。
こいつは自分が最も相手にしたくない人種だと。
「あっ、そろそろ焼けましたね。頂きましょうか」
間もなく目の前に差し出される串焼き。香ばしい匂い、未だ流れる肉汁の清流、適度な焦げが無骨な料理をどこか美しく彩る。
――ぐう。
「ふふ、冷めたら美味しくないですよ。竜の肉って冷めると脂が固まってべとつきますしね」
喉が動いた。既に胃袋は臨戦態勢。唾など胃にとっては明らかな役不足。そもそも消化でもない。
このままだとみっともない第二声を耳で聞く羽目になるか。
「……頂く」
片意地張る理由も無い。腹が減っては戦は出来ぬ。
そう言い聞かせて肉を口に頬張った。
「………………」
悔しいかな、これがまた実に美味。
「近くにハーブが生えてて良かったです。肉の臭み取りにはあれが無いと始まりませんから」
自分がやるような野性味たっぷりの料理を真っ向から否定されるような家庭的料理。野営していることが信じられない。
「ああ、美味いな」
これがまた飯に合うのだ。なぜだろう、数日振りに人の飯を食した気がする。
「でもすごいですね。私だったら今頃逆にこうなってましたよ」
嬉々としながら肉にかぶりついて舌鼓。自画自賛……というものか。
「……常識から言わせて貰うと、その程度でここを渡る事態死ぬようなものだぞ」
「ですね〜」
聞いていない。
法衣の身なりから見れば大体魔導師というのは分かる。これで騎士などと言った日には己の道を見直す羽目になるだろう。
なら目くらましでも何でも使って逃げるくらい朝飯前ではないのだろうか。魔導師とはそれくらいの芸当楽に出来ると思うのだが。
「私、お恥ずかしながら何も魔法使えないんですよ」
「…………は?」
「ですから、魔法使いというよりは研究者みたいなものでして」
なんだろうか……今自分は非常に聞いてはならない言葉を耳にしてしまったような。
目の前のこれは自分自身を人外魔境とでも言っているのか。
「あっ、でもこういう火事炊事くらいの魔法なら完璧に使えますよ」
胸を張って誇らしげに自慢。
残念だが、別に聞いてはいない。
「そう……か」
笑いでその場をやり過ごそうと試みるが如何せん口元が引きつっている。
バチリ、と炭になりかけの木々が弾けて落ちた。
「あっ、もしかして喉渇きました?」
自分のこれをどう受け取ったのか手には既にコップが握らされていた。
「ちょっと待ってくださいね」
指を鳴らすとコップの上に小さな水滴が生まれる。
すぐにそれは拳くらいの大きさまで成長しコップを満たす水となった。
「言った通りに炊事は得意なんです」
そうだな。確かに魔法だ。
蒸留なんてせずともここまで澄み切った水を指先一つで作れるなんて羨ましい限り。
「すまないな……」
「いえいえ、命の恩人ですから。あっ、そう言えばまだ自己紹介もしてませんでしたね」
別にそんなこと頼んだ覚えもないし聞くつもりもない。
この出会いだって一期一会。明日には別れが待っている限りだ。
「私の名前はですね」
そんなことをおぼろげに浮かべながら喉を通る清涼感に心地よさを覚えて騎士は彼女の名前を知った。
「ナハト」
それは夜天の書の創造主――ナハトと
「……シグナムだ」
後の烈火の将――シグナムの出会いだった。
一人3〜4話辺りで終わればばいいかなぁ……
>>K氏
きっとベッドの下にはなのはがいます
枕元にはエイミィが立っています
窓からリンディさんが覗いてます
>>396氏
なんというかいきなりシリアスに
こいつらがどんな風に絡んでくるのか気になりますな
>>247 >そういえば前にもあったなぁ、こんな話……
夜天の書の誕生物語が以前ありましたね。
あの時は切ないENDでしたが、今回は?
249 :
K:2006/10/10(火) 10:09:07 ID:2P+15aXn
どうもKです。皆さん本当に修羅場が好きですね〜。でも修羅場にはならない系です。
では濡れ場から参ります。…難しいですね、エロ。
250 :
K:2006/10/10(火) 10:09:58 ID:2P+15aXn
☆
期待。
不安。
怯え。
情欲。
自己嫌悪。
沢山の感情、思いが入り混じり、混在し、心と身体を支配する。
これから彼と一つになる期待、そして、不安。
姉のように慕う女性の信頼を裏切る事への怯え。
それでも彼と求めて止まらない情欲。
そんな自分への果てしない自己嫌悪。
全部を受け止めて、感じ、フェイトは彼の唇を吸う。
クロノは彼女の細い顎をそっと支えて、舐めるように唇の濡れた感触を味わう。
唇が触れ合うくらいの探りあうような行為は、すぐに劣情に塗れた。
「ん……ん……!」
クロノの唇を舌で抉じ開け、そのまま中に入れ込む。整然と並んだ歯一本一本を舐めて、味わい、次に彼の舌に侵攻する。
明らかに過剰分泌された唾液が唇からこぼれ、行為にふける二人の黒い寝間着を汚して行く。
フェイトの行為に最初は驚いたクロノだが、すぐに舌を絡ませて行く。掌を少女のはしたない唾液で濡らしながら、今まさに落ちようとする新たな唾液を吸う。
情熱的に、劣情的に、麗容的に。
「くろの……くろの……ッ!」
閉じていた瞳を開ければ、こちらを見詰めて離さないクロノの瞳が見えた。
優しく、毅然として、揺れ動かない深い黒の双眸。
息継ぎをするように、フェイトはキスの合間に荒い呼吸を繰り返す。そして行為に没頭する。
最初で最後となる、クロノとの行為を忘れないように。
どれくらい互いの唾液を交換していたか分からない。
五分か、十分か、それ以上か。潤んだ瞳でフェイトは時計を見ようとするが、巧く見えない。
「……キスも初めてだったのか、フェイト」
クロノが競い合うような唇の舐め合いを止める。
フェイトは彼の顎を伝う涎を綺麗に舐めて、乱れた呼吸を整えようとする。
「……う、ん……。クロノは……やっぱり慣れてるね」
皮肉でも何でもなく、ただ厳然たる事実を告げる。
クロノは頬を赤めて頬をひと掻きする。
「まぁ、キスくらいは」
「……エイミィとは何回くらいしてるの?」
「な、何回って……。僕はどんな色魔だ」
「違うの?」
「違う。その……まだ一回だけだ」
「嘘だ」
「嘘を言ってどうするんだ。本当だよ」
「……じゃあ、私はクロノの二回目の人?」
「そ、そういう事になる……のかな?」
251 :
K:2006/10/10(火) 10:10:30 ID:2P+15aXn
恥ずかしそうに苦笑するその表情と言葉は、フェイトの理性を破壊して有り余るものだった。
感じていた沢山の感情が吹き飛ぶ。期待も、不安も、怯えも、自己嫌悪も、全部が跡形もなく消える。
残ったのは情欲だけだった。
頭の裏が熱くなり、急な発熱に侵されたかのように身体の感覚が鈍くなる。
もう我慢出来なかった。
彼も許してくれている。
これが最初で最後なんだ。
――だから。
何をしても良いんだ。
「くろのッ!」
クロノをベッドに押し倒す。油断していたのか、長身の身体はすぐにシーツの上に横たわった。
彼の名前を連呼しながら、その身体に覆いかぶさる。鼻腔をついて来た彼の匂いがさらに理性を焼いて行く。
強引に唇を奪う。
本能が勝手に左手を動かして、暴れるクロノを押さえつける。空いた右手で寝間着のボタンを外して行く。
一つ外すのももどかしかった。二つ目を外して、三つ目に取り掛かった所で我慢が限界を迎えた。強引に、それこそ引き千切るようにボタンを全部外す。
フェイトは唇を解放すると、首筋に舌を這わせた。じっくりと味わうように、首の血管をなぞって行く。
「フェイト、ちょっと待て……!」
「ま……たない……まてない、よぉ……!」
クロノの首を唾液塗れにしたフェイトは、次に鎖骨に侵攻の手を伸ばす。
丁寧に、乱暴に、稚拙に、無茶苦茶に、左右の鎖骨を甘噛みする。顎が疲労で痛みを訴えるようになるが知った事ではなかった。
引き締まった上半身のラインをしっかりと舐めて行く。
胸、腹、臍と往復をして、再び顔に戻って唇を重ねる。濡れたクロノの上半身に、寝間着ごしに自分の身体を擦り付ける。
「エイミィはぁ……こういうの……して、くれたぁ……?」
「……い、いや……」
「……エイミィがまだクロノにしてないこと、全部……しちゃうから……」
そう言って、フェイトは笑う。
曇りの無い無邪気さと、男性を惑わすには充分過ぎる妖艶を揃えた笑みだった。
唾が飲まれる音を、フェイトは確かに聞いた。クロノの喉に動いた跡を見る。
「どこで覚えたんだ、そういうの……」
「学校の友達。私だっていつまでも子供じゃないよ? 男の人がされて嬉しい事も……ちゃんと知ってる」
笑みをそのままに、フェイトはクロノの耳に歯を立てる。耳の中に舌を入れて、これ以上ないくらいに彼を蹂躙する。
裸の腹に指を優しくはわせ、下腹部へ行き、さらにその下に手を移動させて行く。
寝間着のズボン――股の部分には小高い丘が出来ていた。時折、びくんびくんと何かに期待をしているかのようにリズムカルに上下運動を繰り返している。
フェイトは眼を細めて、愛しそうにその光景を見詰める。
「……興奮……してくれてるの、クロノ」
「……しない方がおかしいだろう、男なら」
答えるクロノは、赤めた頬を隠すように俯いている。
その様子が、さらにフェイトの情欲を煽り、誘い、実行に移させる。
今にも爆発してしまいそうな下半身のモノに触れる。途端、大きく丘が揺れた。
少しだけ驚いて、フェイトは大した躊躇いもせずに掌で包み、円を描くようにゆっくりと撫で回した。
252 :
K:2006/10/10(火) 10:12:12 ID:2P+15aXn
「こんなに……勃起してる……」
丘の動きが激しさを増す。クロノが僅かに腰を上げた。まるで、フェイトの細い指に下半身を押し付けるように。
「私の指、気持ちいい、クロノ?」
「………」
「いいよ、もっと大きくして。もっと……勃起させて」
「フェ、フェイト。君は、その……!」
呻きだったが、それは苦しさから来る呻きではなかった。
感じてくれているのだ。自分の稚拙で不器用な行為に。
堪らなく嬉しかった。
愛撫に晒されているクロノのモノは、鉄が入っているかと思うぐらいに硬く、そして熱かった。ズボンの上からでもそれが分かるくらいだ。はちきんれんばかりはこの事だろう。
「苦しい? クロノ」
「……まぁ……」
「もう少し我慢してね……」
ズボンを下ろそうとすると、完全に勃ってしまったモノが邪魔をしてなかなか降ろせなかった。
クロノが仕方なさ気に腰を上げて、フェイトの作業を手伝う。見事なテントを張っている下着の頂上には、先走りが付けたシミがあった。
もどかしかった。
早く、早く彼のソレが見たい。早く直に触れたい。
奪うように、フェイトはクロノの下着を下ろす。
「わ……」
大きく反り返り、天井を向く赤茶色の肉棒。外気に触れたクロノのソレは、びくびくと何かに耐えるかのように震えていた。
唾を飲み込む。生々しい音が聞こえた。
学校の保険体育の授業で何度も絵で見た事がある。だが、実際に見たそれは、絵よりもずっと醜悪な物だった。浮き出た血管の数は数多で、鈴のような亀頭からは半透明の液体のようなものが溢れている。悲鳴を上げる要素は幾らでもあった。
だが、フェイトの声は悲鳴ではなく、感嘆だった。何より歓喜である。
クロノのソレはとても大きく、もう限界まで達しているのがフェイトにも分かった。
「……私で……こんなに大きくしてくれたの……?」
「だ、だから、男なら誰だって……」
「嬉しい」
「………」
「じゃあ、責任取るね、私」
「せ、責任?」
「うん。こんなにさせちゃったの、私のせいだから。私が出させてあげる。クロノの精液、全部……飲んであげる」
253 :
K:2006/10/10(火) 10:19:35 ID:2P+15aXn
短いですが取り合えずここまで。そういう言葉はかせりゃいいってもんでもないと痛感しました。次は最後まで書ければいいかなと思います。
>176氏
ここにも修羅場好きなお人が。
闇の書に纏わるお話。最初は普通の資料本だったんですよね。リインフォースTとの出会いとかはあるのかな。
ではでは
>>231 396氏GJ!
今回はほんとに、前作に増して作りが細かいですね。
豊かで平和な時代が続くと、民の政治への理解と関心が薄れていくもんですが…
ウィリアムスの出現と、盛大な拍手を受ける様にミッドの国としての"老い"を見た気がします。
ユーノは…そうか、それでプロローグみたいな事態になっちゃうわけですか。
次回のタイトルは「駆け引き」、ユーノとサイオンの駆け引きでしょうか。
ただ脅迫されて使われるわけでもなさそうで楽しみです。
いつかブラッディーバインドで引きちぎられてしまえばいいんだわ(前作ネタ
>「じゃあ、責任取るね、私」
──数ヵ月後
フェ「ふふっ……今日、病院行って来たんだぁ」
こうですね?
フェイトエロス・・・
散々使い魔扱いされているユーノだが、いっそ彼を素体にしてなのはの使い魔を作ってしまったら
どうだろうか (やっぱり人間を素体にするのは違法なんだろうな)。
使い魔扱いをされた回数なんてそう無いよ
なんつうか2chで一部が暴走しているだけだな
イジリネタとして非常に使い易いからねぇ。
アルフは単にフェレットユーノを使い魔だとたった一度だけ勘違いしただけ。
クロノは、ユーノは使い魔じゃないと知っているからこその使い魔扱いいじめ。
で、これらを作品そのものと直接関係ない視聴者がネタにいじるのはいいが、
作中の人物に安易にイジリネタやらせたら、実際のところ単にキャラが醜くなるだけだろうな。ギャグは難易度高い。
ユーノが使い魔にされるのを見たくないのではなく、他キャラがユーノを使い魔扱いして当然の性格に改変されるのを見たくない。
262 :
K:2006/10/11(水) 01:52:43 ID:VNYcUoBE
エロシーン、難しい…。取り合えず頑張ってみました。
>255さん
中田氏!? 危険だ!
>256さん
フェイトはエロいんです。…多分。
投下。
263 :
K:2006/10/11(水) 01:54:15 ID:VNYcUoBE
☆
纏わり付くような熱気と臭気。
限界まで勃起し尽くしたように見せる赤黒い逸物は、天井を突き破るどころか、臍にぶつかりそうな勢いで竿を揺らしていた。淫らなその動きが、時折、黒く開いている鈴口から半透明の
水滴を下腹部に落とす。
フェイトはその光景に見入っていた。じっくりと、うっとりと、吟味するように、それこそ視姦をするように。
口の中が水分でいっぱいになる。それを何度か飲み込んだ後、フェイトはクロノのペニスに触れた。
「っ……」
耐えるような呻き声。クロノは眉根を寄せて、ぎゅっと眼を瞑っている。
胸をくすぐられるような感覚が来た。ほとんど見た事の無い、あまりにも無防備な耐えの表情だった。
握ったペニスは硬く、熱かった。ズボン越しに触れた時よりももっと硬く熱い。それがどくどくと掌の中で脈打ち、震えている。
フェイトは笑った。いつもの奥ゆかしい笑みではない。クロノを押し倒した時よりも、遥かに妖しく、いやらしく、淫魔の如き微笑だった。
愛しの剛直を優しく撫で上げ、そっと握り、上下に手首を動かす。
これが手淫と呼ばれる行為である事を、フェイトは学校の友人から聞いて知っていた。
もちろん、最初はうなじまで赤くして耳を塞いだ。
男性はこうして自慰行為をして、性欲処理をしているんだと言われた時は訳が分からなかった。
フェイトのお兄さんもしてるよ、きっと。そう言う友人をムキになって否定した。
――そんな嫌らしい事、兄さんはしない。
「クロノ。一人でしたこと……ある?」
答えは沈黙。クロノは顔を背けて口を一文字にしている。
フェイトは指に力を込め、親指と人差し指で亀頭のエラ部分を強くしごく。
途端、閉ざされていたクロノの唇から呻き声がこぼれた。
「う……ぁ……」
「ねぇ、答えて、クロノ」
甘えた声で問う。それこそ、恋人の会話のように。
「け……経験は、ある……」
「何を見て?」
自慰行為には材料のようなモノが必要だ。俗に”オカズ”と呼ばれている。
青年指定雑誌。アダルド関連。脳活動をフルに生かした想像。それこそ、星の数程存在する。
「クロノは……何をオカズにしてオナニーしてるの?」
「………」
まただんまりだ。
264 :
K:2006/10/11(水) 01:55:19 ID:VNYcUoBE
ペニスが小刻みに震え、フェイトの不慣れな手淫行為に快感を得ている。鈴口から溢れているカウパー液が量を増して、竿を伝ってフェイトの指に絡み付く。それが潤滑油の役割を果たして、僅かにぐちゅぐちゅと水音を鳴らし始めた。
フェイトは恍惚と剛直を見詰めて、唇を近付けた。
亀頭に触れて、味わうようにゆっくりと口の中に入れて行く。一気に飲み込むかどうするかで思案したのは、本当に一瞬だけだった。
口の中が火傷しそうだった。ペニスが跳ね回るように口の中で暴れ、激しく歯茎をノックする。根元まで飲み込む事が出来ず、喉の奥が鉄のように熱くなる。
犯されている。今自分は、クロノに口を犯されている。その事実に、フェイトは密かに腰を震わせた。
羞恥心と自虐心が煽られる。自らをこんな状況に置いたというのに。
「フェイト……」
答えようとしても、口は生憎、彼のペニスでいっぱいだ。なので、思念通話を使って返す。
『なに、クロノ?』
「ば、馬鹿か君は!? こんなので念話を使うなんて……!」
『だめ? だって、凄く便利だよ。舐めながら話が出来るし……』
鈴口に舌を差し込み、溜まっていたカウパー液を舐め摂り、亀頭を嘗め回す。頭を振り、髪を耳の裏に何度も纏めながら、頬をへこませて、夢中になってしゃぶりつく。
吸い取るように喉を鳴らして、空いている右手で竿の根をしごく。左手は玉袋を玩具にする。
思いつく限り、出来る限り、クロノの性感を刺激した。
もっと勃起させる為に、射精をさせる為に。
『またおっきくなったよ、クロノのおちんちん』
「ふぇ……い、と……ぉ」
竿の下をなぞるように舌を固定して、何度も何度も頭をスライドさせた。
ちゅぽん、という擬音が聞こえてしまいそうな勢いで竿を放し、突き出した唇で接吻を繰り返す。舌でちろちろと血管を舐めて、押し、さらに涎塗れにして行く。
カウパー液を飲み込み、腹が火照りを覚える度に、靄のように真っ白になった頭が紫電を撒き散らした。
学校の友人に教えてもらった淫語が自然と浮かんだ。
『出して。早く出して。クロノの精液、えっちな白い液、ザーメン、スペルマ。いっぱいいっぱい、私の口の中で出して』
クロノのペニスはその度に震えた。熱さと硬さを増して、さらには大きく育って行く。亀頭は真赤になってパンパンだ。膨らんだ赤い風船のようだった。
「う、あ……! く!」
『おいしいよ、クロノの我慢汁。クロノの味がする。エイミィも飲んだのかな?』
エイミィという名に、ペニスがさらに膨らんだ。咽てしまいそうになる。
柔らかな尿道を押さえて、一気に量を増した先走り汁を舐めながら口淫奉仕を続ける。へこませた両側の頬で亀頭を抱え、勃起を加速させ、射精を促す。
『クロノ、私の口、気持ちいい?』
「あ、ああ」
265 :
K:2006/10/11(水) 01:55:52 ID:VNYcUoBE
余裕がないのか、クロノは眼を瞑ったまま、そう答えるだけだった。
彼の指が耳元に触れて来る。それだけでフェイトは背中に電流が走るような錯覚を覚えた。
『もっと触って、クロノ。私に触れて』
くちゃくちゃという淫らな水音を盛大に響かせる。小さな口では収まりきらないくらいに大きくなったペニスは、痙攣するように震えた。
クロノの指が、耳元から頭に移動した。ぎこちなく頭を撫でてくれる。
唾液が唇から垂れた。一気に加速する頭の振り、垂れた涎は銀色の糸を作ってフェイトの太股に落ちた。
『きもち……いい……!』
「うあぁッ……!」
フェイトは奉仕を続ける。我を忘れて、発情した雌猫のように、恥も外聞も忘れて、情熱的に竿をしごき、愛しの彼のスペルマを求める。
クロノの甘い呟きは熱を帯び、呻きは叫びにも似た高いモノになっていた。逸物を咥え込んだまま、フェイトは上目遣いで見上げる。
『クロノ、我慢しないでいいんだよ? 私の口の中、クロノの精液でいっぱにしていいんだよ? エイミィにも出来なかったこと、いっぱいっぱい、私にしてくれてもいいんだよ?』
「だぁ……くぁ……!」
どうやら限界が近いらしい。
犯しているのに犯されている感覚のフェイトは、眼をとろんとさせて、嘔吐感と戦いながら一気に根元まで咥えた。強烈な吸引で口の中の唾液と、彼の先走り汁を一気に喉の奥に飲み込み、下腹部を熱くさせる。
股に顔を埋めてしまったフェイトの頭を、クロノは咄嗟に押さえ込み、掠れた声で呟いた。
「フェイ、ト! で、で……る……!」
泥を直接喉に押し込められるような、そんな強烈な射精が始まった。
フェイトの口内で吐き出された精液は、とんでもなく熱い液体だった。塊となって舌の上を蹂躙し、細い喉に殺到し、鼻の器官にすら進出する。
粘着くような白濁液は留まる所を知らず、ポンプでくみ上げられる水の如き勢いで放たれ続ける。濁流となったクロノのザーメンはフェイトの喉を犯して、胃へと雪崩れ込んだ。
「ふむぅ!? んんん〜〜〜〜〜! うく……!」
想像以上だった。それでもフェイトは気が遠くなるような快感を覚えてしまった。彼のスペルマを飲んでいるという事実に酔った。
必死に精液を飲み、喉を鳴らし続ける。痙攣する怒張をへこませた頬で咥え込み、砂漠で水に巡り会えた放浪者のように、クロノのスペルマを貪る。
五秒が経過してもまだ射精は続くが、フェイトは最後の一滴まで飲み干さんばかりに吸引した。
口の中のペニスが、ようやく落ち着きを取り戻し始めた。
『……くろのぉ……こんなに……溜めてたんだぁ……』
それでもまだ精液を吐き出す鈴口を舌で嘗め回し、口の中に残っている白濁液を舐め摂る。
こんなにも射精されるとは思いもしなかった。性欲と言った所から疎遠の位置に居たクロノだ。仕事の合間に性欲処理という訳にもいかず、溜まっていたのだろう。エイミィにも、そういう行為にはほとんど及んでいたかったというし。
クロノは何も答えず、ただ俯いている。
最後に竿に絡み付いているザーメンを舐め摂ると、フェイトは未練を残してペニスを解放した。
形の良い唇と、射精の余韻に浸るペニスとの間に唾液と精液の橋が出来る。
「あん……はう……」
唇に付いている精液を、指を使って口の中に納めて行く。
苦くて臭い。でも、それが愛しくて美味しく感じてしまう。胃はクロノのザーメンまみれにされていた。
266 :
K:2006/10/11(水) 01:56:39 ID:VNYcUoBE
「……気持ちよかった、くろの?」
クロノは微かに頷き、溜め息をついた。
そんな彼に不安を覚えた時、その溜め息の理由が理解出来た。
あれだけ大量の射精を終えたというのに、クロノのペニスは未だに剛直のままなのだ。
「フェイト」
「は、はい」
「今後は……僕がする」
「……うん」
胸が破裂してしまわんばかりに高鳴った。
267 :
K:2006/10/11(水) 01:59:23 ID:VNYcUoBE
フェイト初じゃないよ慣れてるよという突っ込みが…。
お口中に念話は、となる所よりネタをお借りしました。
次は…胸?
「次は」て、あーた…… い い ぞ も っ と や れ ! !
Kさん>>
相変わらず書くの早いっすね。
某所でも見ましたが、念話しながらフェラチオは素晴らしいね、うん。
今度はクロノが攻める番?
ケースその1。相手がシグナムの場合。
『はい』
「ああ、シグナムか?僕だ……」
『失礼』
あ、通話切られた。
ケースその2。相手がシャマルの場合。
『もしもし?』
「僕だ、クロノだ」
『ああ、協力はできませんから、そのつもりで』
……くそう。満面の笑みが携帯越しでも見えてくる。
すずかやアリサには、着信を拒否された。
魔法少女リリカルなのはA’s −提督の受難−
第三話 土下座
「いいかげん、出てったら?」
「……できたら、とっくにやってる……」
呆れたように、ユーノが言った。
転がり込んで5日目になろうかというのだ、無理もない。
無理もないとわかっていても、クロノはそれを渋らざるを得ない状況であった。
「なんでそんなに怒るんだ、朝帰りくらいで……」
子供じゃないんだぞ。
あれから何度も首を捻ったが、まったく原因が頭に浮かばなかった。
朝帰りが続いたくらいでこれほど、長い間フェイトたちの怒りが持続するものだろうか。
「なんかの記念日だったとか、は?」
「へ?」
「クロノのことだから仕事仕事で、日付感覚なくなってたんじゃないの?」
「いや、そんなことは───……待てよ」
5日前?いや、6日前か。
6日前というと────……。
「あ」
「おお?何か思い出した?」
あった。とんでもなく重要なものが。
そりゃあ間違いなく怒るよなぁ、っていうものが。
「───彼女の、誕生日だ」
ああ、怒るわな、それは。
* * *
「……僕が悪かった」
ユーノに付き添ってもらい、なだめすかしてもらい。
ようやくのことで家に入れてもらうことのできたクロノは、深々と頭を下げた。
向かいの席には、憤懣やるかたない表情で腕組みをするエイミィと、フェイト。
そして面白そうに見ている母、リンディもとなりに座る。
「で?クロノくんはこの状況の原因をわかってて、戻ってきたのかな?」
「……すまなかった」
「謝る理由を言いなさい、理由を」
「せっかくの誕生日を、すっぽかしてすみませんでした」
「っちっがあーう!!くぉの、鈍感朴念仁!!」
「へぶっ!?」
ソファから立ち上がり、零距離の殴りつけウエスタンラリアット一閃。
ロングホーンに雄叫びつきで右腕がフルスイングされる。
「な、なぜ……」
傍から見ているユーノが引くようなえぐい角度で喉に入り一回転宙に舞ったクロノが、
床で痙攣しながらつぶやくように言った。
日ごろから鍛えていてよかったね、クロノ。
「もちろんそれもある!!先週の木曜は、たしかに私、エイミィ・リミエッタ21歳の誕生日!!」
ようやく頭をフローリングから持ち上げたところに、びしりと指差される。
「誕生日スルー!!私かわいそう!!みんな怒る!!」
(何故片言……?)
「でもね!!私やフェイトちゃんが怒ってるのはそれだけじゃないっての!!」
「あだだだだだだっ!?頭が、頭蓋骨があぁっ!?」
指差し確認後に、頭を鷲づかみにされアイアンクロー?シャイニングフィンガー?を食らう。
ああ、そういえば士官学校時代、魔力なしの格闘術、エイミィは主席だったっけ。
痛い痛い痛い。というか割れる割れる割れる。
もう身長だってこちらのほうが高いはずなのに、
エイミィに片手一本でクロノは頭から吊り上げられていた。
「エイミィ、私のぶんも残しておいてね」
「御意」
「フェイトぉっ!?っていででででで!!!」
指の隙間から、フェイトがにこりと笑うのが見えた。
我が妹ながら、ぞっとするような冷たい微笑みで。
というかエイミィさん、なんか湯気を立てている左手を右手首に添えるのは何故ですか。
まさか某筋肉魔人よろしくヒートエクステンドとかそんなものやらかそうなんてことは───……、
「ヒィート……」
してた。してました。できるんかい。
「まてまてまて!!それは死ぬ!!死ねるから!!勘弁してくれ!!怒ってる理由を言ってくれ!!」
「……」
「え、エイミィ?」
「……フェイトちゃん、もうやっちゃっていいよね?」
「うん、私が許す」
「何故に!?」
助けて。誰か助けてくれ。
心底クロノがそう願ったとき、ようやくリンディが助け舟を息子へと出してくれた。
「はい、はい。クロノもエイミィも、その辺にしときなさい」
「……提督」
「僕も一応提督なんだが……いて」
頭を握っていた右腕を離され、落下して尻餅をつく。
エイミィの様子はうって変わり、恥かしげに俯くその顔はなぜか赤い。
「さて、クロノ」
「はい」
「何故エイミィたちがこんなに怒っているか、わかる?」
「え?だから朝帰りが続いて、誕生日をすっぽかしたからじゃ───……」
「もう。本当に鈍感なのね」
肩をすくめ苦笑する母は、なんだか懐かしそうにしていた。
「こんなところまであの人に似なくてもいいのに」
「は?」
「隠し事はするな、ってことよ」
───隠し事?
クロノは軽く頭を捻った。これといってやましいことを彼女達に対してしたり、
隠したりしていた覚えはない。
そんな疑問に満ちた表情も、母の放った次の言葉で氷解し、一変する。
「───特に、家族には。……これから家族になる人には」
「……あっ!?」
鈍いクロノでも、ようやくわかった。
「話したのか!?エイミィ!!」
「話したのか、じゃないでしょ!?私てっきり、もうクロノくんから聞いてると思ってたんだから!!」
立ち上がったクロノも、言い返すエイミィも、真っ赤になって怒鳴りあう。
怒鳴りあって見つめあい、目を逸らす。
「……だ、だって。あんまり遅いもんだから。知ってるものだと思って、ついフェイトちゃんに話振って」
「……ごめん。誕生日のこととあわせて、済まなかった」
なんだか通じ合い、理解が完了している二人。
一方で唯一おいてけぼりなのは、ソファで見ているユーノである。
「どういうことです?」
「つまりね。隠してたのよ、クロノ」
リンディの声にそちらを向くと、彼女は母親そのものの顔で
二人のやりとりに目を細めていた。
「エイミィとお付き合いをはじめた、ってこと。照れくさかったんでしょうね、きっと」
「え!?……ああ、わかる気がします」
そういうことだったのか。
……まあ、自分も未だに部族の皆にはなのはのことを紹介できていないし。
実感を込めてユーノは理解し、頷いた。
「まだ結婚とか、そういうのはまだのようだけれど……さっきの様子を見る限りは、
私も孫の顔を見る日はそう遠くなさそうね。なんだか嬉しいわぁ」
「あはは……でも、今は」
すっと右の指を横へ向ける。
その先には、鬼神が待っている。
「あいつには生き残ることのほうが先決じゃないですか?」
「……そうねえ」
* * *
「……クロノくん」
「なんだ?まだ何か……」
「がんばってね」
「は?」
抱き寄せようと身を寄せたというのに。
エイミィは首を振って離れていった。
まだ怒っているのだろうか?
いや、彼女の顔に怒りはもう感じられない。
むしろひきつった笑いを浮かべている感じだ。
「一体───……」
「お────に────い────ちゃ────ん────……」
「!?」
そう。彼女のことを忘れていた。
フェイトに対する、説明が必要であったということを。
「どうして、教えてくれなかったのかな……?」
「い、いや。それはだな。つまり」
「恋人としてお付き合いするようになったのはつい最近とは聞いたけど、ねえ……?」
そりゃそうだ。
変化がなさすぎて自分でも恋人というより相変わらず家族としての認識が
強かったんだから。
言わなかったんじゃない、忘れてただけだ。
だがクロノの言い分を無視するように、
フェイトの普段着がバリアジャケットに変化していく。
また右腕には、黄金の刃もつ剣が握られる。
カートリッジも、フルロード。容赦なし。
「家族に隠し事はよくないことだよね?だまってるのは悪いことだよね?」
「ばっ……!!こんなとこでザンバーなんて使ったら……」
「あ、クロノ。結界張っといたから大丈夫。がんばれ」
「ユーノっ!?」
「悪いことするお兄ちゃんには────……」
あ、まずい。
ちょうどデュランダルもS2Uも、立ち上がったソファに置いた上着に、
電源を切って入れっぱなしだ。
防御魔法を起動しようとして気付いたが、あとの祭りだった。
デバイスもなしのシールドで耐えられるか、んなもん。
「おしおきっ!!!!」
とりあえずもう妹に隠し事をするのはもうやめよう。
クロノは思った。思いながら、プラズマザンバーを甘んじて受けることにした。
目覚めたときにフェイトの機嫌が直っていることを、祈った。
──完
はい、提督の受難完結です。キャラたちが
俺の意思と関係なく勝手にくっついちゃって困るorz
ストライカーズの情報がちらほら出てくるに従い
長編のネタが概ね固まってきました。まずは今の話終わらせてからですが。
>>176氏
アリシアorz
生シグナムハァハァ(ぉ
いや実際、シグナムはかわいいと思うのですよ。
>>K氏
ちょwwwこちらに降臨なされたwwww
H話も素晴らしいww
エロいフェイトは好きですよwww
>>396氏
>イギリスの政治制度
立憲君主制?・・・ふと玉座に座る武闘派女王ななのはさんを
想像してしまったのは内緒
277 :
さばかん:2006/10/12(木) 22:58:08 ID:79U/JT+m
こんばんは、さばかんです。今回のはつまんないギャグ一色です。
コタツの用意をオススメします。
まいねーむいずなのはたかまち(私の名前は高町なのはだよっ!)
現在は魔法少女あんど使い魔やってます。
好きな言葉は、
正義無き力は無能なり、されど、力無き正義もまた無能なり・・・ BY 大山倍達
私は魔法少女となり、この二つの「無能」を叩き潰す事を目標としています。
今日もさっそくお仕事お仕事・・・☆
鳥居を挟む影が二つ。運命を凝視するかのようにその影はじっと佇む。
一つは犬の化け物・・・と言うべきだろうか。双眸はギラギラと殺気立ち、今にももう一つの影を
喰らいそうだった。
弱者が、命乞いか?
なのははふっと華で笑い、軽く構えた。
その態度に腹が立ったのか、大犬は見えない程のスピードでなのはの周りを走る。
それが、ニンジャの分身の術のようにどこにいるか分かりにくくする。
だが、それを分身の術などと言っては歴代の忍者に申し訳無い。
単に、見えにくいだけだ!
だが、それでも捉えられない。大犬の化け物はその行動範囲を更に広げ、
そのパターンは読めない。その証拠になのはのバリアジャケットには爪跡が何閃にも
刻まれている。・・・これではきりが無い。
なのはは何を思ったか、構えを解き、ただ一言。
さあ来い!お前を地獄と言う名の弱者の檻に叩き込んでやる!!!
大犬は再びなのはに襲い掛かる。
がぶりと、なのはは右腕を咬まれた。
だが、大犬の様子がおかしい。その、木の幹のように細い腕を今だに千切れていない。
必至なって咬むかむかむかむ!!咬めないと判断した大犬は離れようとするものの抜けない!
そして、この犬はまだ気付いていない。自分の後ろにある、ギロチンを。
勿論、腕を咬ませたのはわざとだ。その証拠に利き手でない右腕を咬ませている。
両腕にありったけの魔力を通した腕は牙を絡め、離そうとしない。
まるで何処かの暗殺拳の技みたいだ。凶器にわざと刺され、凶器を奪う。
その発見を、なのははひらめきだけで発見してしまう。
狼狽する大犬の首をなのはの手刀が綺麗に切断する。
ドブリ。白のバリアジャケットが赤く染まる。
ホースみたいに血を撒き散らす機能以外有しなくなった首と体は徐にバランスを崩し、ドタンと倒れた。
その光景を見た者は言わずにはいられないだろう。
悪魔と。
はははははは!!!!!!この世界を拳一つでかえてやる!
平和を愛を幸福を!!この拳で、取り戻すのだ。
私には敵はいない!さぁ、ついて来い!!未来永劫、私の時代だ!!!!!!!
あははははははははははははは!!!!!
あーっはははははははは、
「すな」
ぽこっ。はやてちゃんの頭を小突く。
「いたたたたたた・・・なのはちゃんいたい〜〜」
「人の評判を下げるようなナレーターしないでよ、はやてちゃん」
「だって、なのはちゃん魔法の上達早いし。私がする事と言ったら、熱く燃え滾るナレータとして
なのはちゃんの傍にいる事しかできないし・・・」
舌をぺろっと出して謝罪。調子いいなぁ・・・
はやてちゃんは肉塊の中からジュエルシードを探し出し封印を施す。
「なのはちゃんご苦労さん。全身血だらけやし、どや、私の家で風呂でも」
バリアジャケットを解き、咬まれた腕に治療魔法を施しながら、はやてちゃんは有り難い事を言う。
「うん、そうするよ」
じゃあああああああああああああああああああ。シャワーの音が安心感を高める。
はやてちゃんが私を使い魔にしてからそこそこの日数が経過している。
事情はあんまり話してくれないけど、はやてちゃんは私を殺すと言うリスクを背負ってでも、成し遂げたい
事があるんだ。だったら、私にも少しは強力できる事があるはずだ。
・・・実は、あんまり納得してないけど。
血の独特の臭いが中々消えない・・・さっき私はあんなものをどばっとぶっかけられてしまったのだ。
私に報われる日は、来るのだろうか。
「続く・・・」
「何が続くんや?」
「いや、何となく物語風にしてみれば面白いかなぁ・・・って、え?」
私はガチゴチになった体を横に向ける。
そこには風呂につかるはやてちゃんがいた。
「はろー(はぁと)」
「は・・・はぁとじゃな〜〜〜〜い!!!なんではやてちゃんがここにいるの!!」
「いやぁ、そろそろ体が疼くんじゃないかなぁって」
「でてけ」
「い〜〜〜や」
なんて横暴な。でもよく考えたら別に女の子同士だから悪く無いのかも知れない。
「だってなのはちゃん、あの日、私に快楽をたっぷり教えてくれて、」
「やっぱでてけ」
暫くこんな感じの事が続いて。結局観念したのは私だった。
風呂につかり、はやてちゃんとの暫しの会話。
「明日のプール。楽しみやねー」
「うん!あそこのプールは広いし、楽しいし、それにウォータースライダーが凄いの」
「おお〜私は言った事が無いからなぁ。なのはちゃん、ちゃんとエスコートしてや」
「はいはい」
「明日は友達みんなで遊んで、疲れた体をリフレッシュしてな!」
明日は土曜日。この度新たに建てられた温水プールに私とアリサちゃんとすずかちゃんと
で一緒に行った話を聞いたはやてちゃんが行きたい行きたいと強く希望。
だったら、今度また一緒に行かないかと言う話になったのだ。
私、アリサちゃんすずかちゃんはやてちゃん(あいうえお順)この4人で温水プールへ
レッツゴーするのだ。
「水着に興奮して浮気してら嫌いやで、なのはちゃん」
「ははは・・・」
笑うしかない。
この青空に感謝。
温水プール施設前に集合した4人は笑顔で更衣室に入っていく。
「んじゃあ先に行ってるわよー!行こうか、すずか」
「うん」
先に着替えた二人のスタイルの良さに驚きつつ、二人は着替えるスピードを高めた。
「なのはちゃん、こう言う所は盗撮の楽園や。ちゃんと警戒せな」
はやてちゃんは瞳をキラっと光らせて言う。
「大丈夫大丈夫。警備員さんもいるし、男の人は入って来れないよ」
「盗撮をするのは何もエッチなおじさんばっかりやないよ」
「ん、そうなの?」
「そや、お金欲しさでやる女の人もいるからちゃんと注意せんとあかんよ。ロッカーの上に置いてある
ポーチには要注意や」
「へー。はやてちゃん物知りだね」
ワンピースを着終え、私はプール広場に向かう。
歩きながら振り返り、はやてちゃんに声をかける。
が、その声が思わず止まってしまった。
はやてちゃんのロッカーの上にあるポーチ。
見なかったことしよう。
「二人とも遅い!」
「「ごめんごめん」」
「それじゃいこか!」
4人で最初は手堅く広いだけのプールで浮かんだりして遊ぶ。
泳いだり、風呂みたいに浸かってみたり。死体のふりをしてみたり。
とにかく色々した。暫く遊んだ私達は別のプールへと向かう。
ここのプールは色々とある。中には温泉もあり、老若男女に人気だ。
温泉の例として
泡風呂。露天風呂。塩風呂。砂風呂。
タイヤ風呂
って、最後のはたんなる不法投棄じゃねぇか。
なんてボケが何人に通用するだろうか。
その温泉はプールとして遊んでもOKなので、落ち着いて入るのには不向きっぽい。
その途中、なんか舞台を発見した。
「すずか、あんなの前にもあったっけ?」
「パンフレットで見たけど、あそこで歌ったり、遊んだり、決闘したり、色々できるみたいだよ」
「ふ〜ん。じゃあ歌ってみる?」
何で急にそんな流れに?
不自然過ぎる流れに自ら乗ったアリサちゃん。ここでのってあげなくちゃ失礼だと思う。
「うん、いいんじゃないかな。アリサちゃん、歌っちゃいなよ!」
「私もアリサちゃんの歌を聞きたいなぁ」
「アリサちゃん歌って歌って」
ありさ・ありさ・ありさ。そんなシュプレヒコールに包まれて、アリサちゃんはマイクスタンドを手に取った。
「2番アリサ歌いま〜す」
「だけど、貴方の前に行くと、ツンツンしちゃうの〜♪」
以下略。
「・・・ふ〜どうだった。私の歌は」
夢中で歌っていたアリサはノリノリで「はじめてしましょう」「ほんきパワーのだっしゅ」「だんなさまへ」
など、明らかに誰も知らない曲を歌い終えた頃にはもう誰もいなかった。
「・・・な、なによ〜!!!」
友達は大切にしようね。
「ねぇ、アリサちゃんを一人にしてよかったの?」
「ひと〜み〜閉じて〜〜〜〜〜お休み。たらららららら。らは〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪」
「対抗しない」
「だって、一人ばっかり楽しそうでちょっとむかーってな」
浮き輪の上に浮かび、サングラスをかけて、マミーをちゅうちゅう吸いながらはやてちゃんは言う。
「そんなに歌いたいなら一緒に歌えばいいのに」
「ええんや。歌の楽しみ方にも色々ある」
「それに、いなくなったと見せかけて、すずかちゃんが隠れてるし。あの二人、できとる?」
「それはない」
「あはははははははははは・・・ん」
明るくなった、表情が一気に険しくなる。この表情になる時を私は・・・知っている。
「なのはちゃん」
私は黙ってこくんと頷いた。
「ごめん、仕事や」
「うん」
「しかも場所は恐らく・・・ここのプール」
「ちょ、ちょっと何すんのよ〜」
「きゃ〜!!!!!」
「ぐはっ!本物の触手プレイ!!!」
どこから持ってきたのか、ビデオカメラで水の化け物に襲われているアリサちゃんとすずかちゃんをとっていた。
しっかもすっぽんぽん!
今回の相手は水着コレクターの願いでも具現化したのか、水の抜けたプールの隅に女性の水着が山積みされている。
「は・や・て・ちゃん」
「ごめんごめん」
「でもどうしよう。人前で魔法少女に変身する訳にも行かないし」
「もう寝とるよ」
「ええー!!」
見れば、プールの人間が全員寝ていた。だが、何故。
「催眠ガスにきまっとるやん」
にこっと笑顔で。
「そ、そうなんだ」
笑って誤魔化さないでよ。
バリアジャケットを装着したなのはは水の塊を凝視する。
化け物は飽きたのか、アリサとすずかを離していた。
なのはにとっては好都合。素早く敵に立ち向かう。
「待った」
「なのはちゃん。この敵は明らかに拳では無理や。本体をあぶりだして、そいつをどうにかせな」
「でも・・・どうやって」
「あぶない!」
結界で水の触手を防ぐはやてちゃん。まるでガチャポンの半分みたいだなと思い、ある事を
閃いた。
「はやてちゃん!耳かして!!!」
「え・・・成る程。よっしゃ!久々の活躍や!!!」
再び敵は触手を伸ばしてくる。だが、その攻撃は中空で弾かれた。
それは結界だった。しかも、良く見てみると、水の怪物の巨体を覆っていた。
見ようによってはガチャポンだった。
その玉を少しずつ中で細かくしていく。
「よしっ!あの動く水が本体や!結界内で切り離しとるから他の水は一切動かん。間違い無い」
「でもあの本体。ジュエルシードが見えないよ」
「恐らく。あれごと封印しろってことや。あっ!」
バチンと結界を破る水の本体。屋根を突き破って逃げようと言うのか化け物は高く飛ぶ。
「っ!なのはちゃん!飛んで追いかけるんや」
「残念!私、飛べないんだ」
「が〜ん!そんな風に潔く言われてもなぁ・・・」
「でも、
体は飛べなくても、私は、
心が飛べるから」
そう言うなりなのはは高く跳躍する。打ち上げ花火より速く美しい跳躍そのジャンプで一発で間合いを
詰める。
「一滴も逃がさない!!!」
マシンガンの如く打つパンチは砕く事が目的ではない。逃げない為に形を固定する事に目的がある。
地面に落ちる数秒で、なのはは本当に水を一滴たりとも零さなかった。
封印が上手くいった事は言うまでも無い。
「ふぅ・・・ご苦労さんなのはちゃん」
親指を立ててグッドをする。はやてとなのはは手を打ち合った。
「じゃーねー」
「またね、なのはちゃん」
アリサちゃんとすずかちゃんが手を振る。
あれからが大変だった。裸になった人達に服を着せる作業に一日の殆どをついやした。
「しかし、なのはちゃんすごいな〜あんな高いジャンプができるなんて」
「あははははまぁね」
「空を飛ぶ訓練もしないとな」
「疲れたから暫くそういう話はやめよう」
こくんと頷くはやてちゃん。
静かに歌いだす。
「さぁ、ひ〜〜〜〜と〜〜〜〜み〜〜〜〜閉じて〜〜〜〜〜〜お休み♪なのはちゃん」
夕焼けの空を背にはやてがバイバイと腕を振った。
「お休み」
「またプールに行きたいな」
「勘弁して」
らは〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜と口ずさみ去っていった。
休日、下さい。
つづく
某サイトに行って、Kさんの全年齢版があって吹いた
Kさんは18禁もお書きになるのですね・・・
やっぱKさんのエロいフェイトはイイ!!
284 :
狼と赤頭巾:2006/10/13(金) 06:05:34 ID:m8wTx/qd
「あれが、彼女の本当の姿よ。
私達は犬の皮を被った人間じゃない…
人の皮を被った、悪魔なのよ」
「リンディさん、ずいぶん気合の入った演技やなぁ。うちらも負けてられへんで!」
夜天の主たる八神はやてが、守護騎士達に呼びかける。
「ヴィータ、台詞は覚えているか」
「い、今確認してるとこだから、話しかけんなよザフィーラ。忘れたらどうすんだ…」
「あらあらヴィータちゃんたら。ほら、もっとリラックスリラックス…シグナムも」
「なななななんだシャマル!?ででで、出番か!?」
「まだはじまっても無いってば…」
「うう、リィンもきんちょーします」
毎年恒例時空管理局演劇大会。
優勝者には有給休暇1週間と、豪華温泉旅行がプレゼントされるこのイベントに、
彼女達は参加したのだった。
ちなみに人数制限があるため、なのは達と2つに分かれてエントリーしている。
「何故だ…何故あの時、君は撃たなかった…
僕と…何が違うというんだ…」
「………」
「君だって、人間じゃないか!なのはぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「なのはちゃん達はもうクライマックスやな。それにしてもクロノ君、リンディさんに
負けへん演技やな。ボロクズのように舞っとるで」
「あれ、演技なのか…アタシには本気であいつが死にそうになってる様に見えるけど」
「まさかぁ、そんなわけないじゃない。ね、シグナム」
「つつつ、ついに出番か!?」
「はいはい、もう少し落ち着きましょうね」
そして、悪魔はフェレットを食べた…
「お、終った終った。それじゃ、今度はうちらの番やな。みんな準備はできてる?」
「うん、大丈夫だよはやて…多分」
「はい、我が主」
「リィンも大丈夫です!」
「ででででたな!私が成敗して!」
「だから出番はまだってば…」
285 :
狼と赤頭巾:2006/10/13(金) 06:07:06 ID:m8wTx/qd
真っ暗な舞台に、ナレーションの声が響く。
『むか〜しむかし、ある所にちっちゃくて、とってもかわええ女の子がおりました。
女の子は、お姉ちゃんがプレゼントしてくれた、赤い頭巾をいつも被ってたから、
皆は女の子のことを赤頭巾ちゃんと呼びました。
ある日、赤頭巾ちゃんは、お母さんに森に住むお姉ちゃんの家まで、お使いにいって
来るよう頼まれました。
ちなみに、おばあちゃんがお姉ちゃんになったのは、シャマルがえらい嫌がってもうて』
「ちょ!ちょっと、はやてちゃん!」
「シャマル、お前の出番はまだ先だ」
「ザフィーラ、そうじゃなくて!」
『ヴィータがおばあちゃん、おばあちゃんてからかうモンやから、シャマルが怒ってもうてな。
危うくヴィータのリンカーコアがぶちまけられそうになって大変やったで』
「はーやーてーちゃーん!!」
『おっと、あかんあかん。話が脱線してもうた。
えーと、とにかく赤頭巾ちゃんはお姉ちゃんの家に、お菓子とジュースを届けに行きました』
ライトがつき、舞台の端から赤頭巾に扮した(と言っても、騎士甲冑をまとって赤い頭巾を
被っただけだが)ヴィータが登場する。
「(えーっと)お姉ちゃんはお菓子とジュースが大好きだから、きっと喜ぶだろうな。
はやくお姉ちゃんの家にいかなくっちゃ(よし、言えた)」
『急ぐあまり、手と足をいっしょに前に出して歩いてる赤頭巾ちゃんの前に「うぇ!?」、
狼が現れました。赤頭巾ちゃんは、狼がどんな生き物かようわからんかったので、
狼をみても怖がりませんでした』
ヴィータ扮する赤頭巾の反対側から、狼に扮したというか、まあ、とにかくザフィーラが
舞台の端から現れる。
286 :
狼と赤頭巾:2006/10/13(金) 06:08:58 ID:m8wTx/qd
「こんなに早く、何処に行くのだ赤頭巾?」
「お姉ちゃんの所にお菓子とジュースを届けに行くんだ」
「ふむ、その姉の家はどっちの方にあるのだ?」
「あっち」
『狼は思いました』
「幼くて柔らかい肉だな。姉よりも美味いに違いない。うまく騙して二人とも食べてしまうか」
『そこでしばらく、狼は赤頭巾ちゃんと一緒に歩く事にしました』
「赤頭巾、あっちを見てみろ。美しい花が咲き乱れている」
「本当だ…」
「少し見ていったらどうだ?」
「でも、お使いが…」
「少しの間ならいいだろう。それに花を一緒に送った方が、姉も喜ぶのではないか?」
「う〜ん…それもそっか!」
『赤頭巾ちゃんは、お花が咲いてる場所に行ってしまいました。
ところが狼は、そのまま真っ直ぐにお姉ちゃんの家に行って、トントンと扉を叩きました』
「どなたですか?」
「赤頭巾だ、菓子と飲み物を持ってきた。開けてくれ」
(ざ、ザフィーラ…もうちょっと声を作るとか、女の子っぽい言葉にするとか…)
(むう…)
『(あ、あかん。え〜っと)その声がとても赤頭巾だとは思えへんかったお姉ちゃんですが、
最近ボイスチェンジャーが流行っているのを思い出しました』
(申し訳ありません、我が主…)
(ええってええって)
287 :
狼と赤頭巾:2006/10/13(金) 06:11:56 ID:m8wTx/qd
「鍵なら開いてるわよ。遠慮なくはいってらっしゃい」
『お姉ちゃんがそう言うやいなや、狼は一言もいわずにお姉ちゃんの所にまでいって
その大きな口を開けました』
(ほなザフィーラ、何時もの様にガブっと頼むで)
(お任せください)
(え、本当にかむの!?)
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!(こ、このままじゃ何時もと同じに…そうだわ!)」
「?」
服を軽くはだけさせるシャマル
「私を た・べ・て(はぁと)」
「………」
「あ、ちょ、ザフィーラ!冗談!冗談だから本気で噛まないで!」
『え〜っと、お姉ちゃんは何とか狼に食べられないよう、知恵を振り絞りましたが、
結局狼に食べられてしまいました。狼はお姉ちゃんのナイトキャップを被って、
ベッドに潜り込み、赤頭巾ちゃんを待つことにしました。
………狼はベッドに残ったお姉ちゃんの残り香に、思わず興奮』
「しません」
『………それからしばらくして、寄り道をしていた赤頭巾ちゃんは、お姉ちゃんの家に
たどり着きました。ほらヴィータ、台詞の確認もええけど、もう出番やで』
「う、うわっ!」
急いで舞台に出るヴィータ。
「っと、お姉ちゃん、赤頭巾だよ。お菓子とジュースを持ってきたから、家に入れて」
「よく来たな。鍵はあいている、入れ」
「………」
『…赤頭巾ちゃんは、細かい事を気にしない女の子だったので、お姉ちゃんの声が
いつもと違っていても、怪しいとは思いませんでした』
288 :
狼と赤頭巾:2006/10/13(金) 06:13:56 ID:m8wTx/qd
「お姉ちゃん寝てるの?」
「ああ、少し調子が悪くてな。悪いがこっちに来てくれないか?」
「うん…お姉ちゃん、なんか耳がでかくないか?」
「そうでないと、お前の声が良く聞けないからな」
「目もおっきくないか?」
「こうでなければ、お前の姿が良く見えん」
「口なんかすんげぇでっかいぞ」
「それはな…お前を食べる為だ!」
「うわー」
『狼は赤頭巾ちゃんを一飲みにしてしまいました』
「ついでだ、これも食べてしまうか」
ザフィーラが赤頭巾が持ってきたバスケットを手に持ち、口に近づける。
(リィンフォース、準備は良いか?)
(は、はい)
バスケットの中の袋が僅かに動く。
その袋の中には、猟師に退治された後、狼の口の中から出てくる予定の
リィンフォースが、赤頭巾の服を着て待機している。
『お腹いっぱいになった狼は、そのまま眠ってしまいました。
そこに知り合いの猟師さんが、通りかかりました』
舞台に猟師の姿をした(ちなみにエゲレス紳士、グレアム元提督の狐狩用の服と猟銃を
借りたものである)シグナムが現れる。ちなみに、動きはぎこちない事このうえない。
289 :
狼と赤頭巾:2006/10/13(金) 06:15:30 ID:m8wTx/qd
「おおおお狼め!赤頭巾達の仇だ!」
(シグナム、その台詞はもう少し先だ)
(な、何!?)
『えーっと、猟師さんは、その長年の経験とか第六感とかセブンセンシズとか、なんや
そんな感じのモンで、すぐに狼が赤頭巾ちゃん達を食べた事を見破ったんです』
(わわわ、私はどうすれば!?)
(シグナム、落ち着け。まず俺を退治すると言い、その銃を撃つ振りをしろ)
「お、おのれザフィ」
(ザフィーラではなく狼だ)
「お、狼め!退治してくれる!」
空砲が響き、ザフィーラが苦痛の声をあげ、一瞬痙攣した後動かなくなる。
(おお、ザフィーラ演技派やなぁ。本当に撃たれたみたいやで。ゆうても見たこと無いけど)
(…どうやら弾を抜き忘れたようです)
((えええええええ!!!!!))
(冗談です)
(わ、笑えへんて…)
(お、驚かすな!)
(それはそうとシグナム。早くこちらにきて、口の中のリィンをとりだしてくれ)
(あ、ああ…)
シグナムがザフィーラに向けて歩き出すが、先程よりはマシとはいえ、まだぎこちない。
(…大丈夫かシグナム?)
(だ、大丈夫だ、そこにいってお前のわわわわ!!)
演技の事だけで頭の中がいっぱいだったのだろう、シグナムがセットにつまづき、
ザフィーラの上に倒れこんだ。
ゴ ク ン
「………」
「………」
「………」
『………』
嫌な沈黙が辺りを包むなか、ザフィーラが搾り出すように声を発する。
「の…飲んでしまった…」
なにぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!
290 :
狼と赤頭巾:2006/10/13(金) 06:17:37 ID:m8wTx/qd
あまりと言えばあんまりな事態に、ヴォルケンリッターとはやてがザフィーラに
詰め寄る。はやては焦るあまり、マイクを持ったままだ。
『じょ、冗談やろザフィーラ!?』
「い、いえ…」
「うおおおお!お、お前はやく吐き出せよ!」
「そ、そうだ!原典の基づいて腹を切り裂けば!」
『ちょ、シグナム、落ち着いて!』
「そ、そうだわ!私の旅の鏡で!」
『「「それだ!」」』
「ええ、内臓(ハラワタ)をぶちまけて」
『「「じゃなくて!!」」』
「あああ、なんかスッゴイ嫌な感触が手に残ってるぅ…」
『だ、大丈夫?リィンフォース』
「ふぇぇぇ…あ、はい」
「すまん…」
「ていうか、ザフィーラのせいってより、シグナムがこけたせいなんじゃねえのか?」
「う…すまない、リィンフォース…」
「い、いえ。二人ともそんな」
『そうやて、無事に済んだんやからええやないの…それはそれとして』
はやてが観客席の方を見やる。
『ええっと、まあ、なんやかんやで赤頭巾とお姉ちゃんは助かりました。
狼は心を入れ替えると約束し、赤頭巾ちゃんとお姉ちゃんは幸せに過ごしましたとさ。
おしまい』
こうして、彼女達の演劇大会は終わりを告げた。
一部評価が高かったものの、残念というか当然と言うか、八神はやてとその仲間達は優勝する
ことは適わなかった。
ちなみに優勝したのは、アレックス&ランディの『B・ボンバーズ〜捲土重来編〜』である。
291 :
狼と赤頭巾:2006/10/13(金) 06:19:47 ID:m8wTx/qd
次回予告
こんにちわ、ユーノ・スクライアです。
この前、残業続きで死にそうになっている時、追加の調査以来を持ってきたクロノに
僕が司書長になったのって、管理局の誰もが嫌がってなりたがらないのを、いい具合に
押し付けられるからって理由じゃないよね?
と言ってみたら、思いっきり視線をそらしました。
今度フェイトに、あいつのエロ本の隠し場所を、教えてあげようと思います。
さて次回は
「石田先生行き遅れる」
「リンディさんとお米屋さん」
「朝に嗅ぐナパームの臭いは最高なの!」
の3本をお送りしません。
それでは皆さん、また来週!
292 :
92:2006/10/13(金) 06:28:38 ID:m8wTx/qd
こんばんわ
なんだか最近1スレ1話のペースになってきて危機感を覚えている92です
それはともかく隣のシャ○さん、第…何話だっけ?
えーっと真・隣のシャ○さん〜覇王○地獄編〜です
他に書くべきものがある気がしますが、こんなものを書かずにはいられない
生き物と言う事で勘弁してください。
ところで石田先生とアレックス&ランディは三期にでてくるんでしょうか?
無理っぽいですね。
感想をかく余力が無いので…ではまた次の機会に
いくら赤頭巾つながりっつっても人狼持ってくるか普通wwwwwGJ
>他に書くべきものが〜
いいえ、これこそ書くべきものです。あなたは正しい。
私はこれを待っていたのです。次も期待してますよ?
294 :
7スレ76:2006/10/14(土) 02:19:21 ID:8bwhNQ/P
赤ヘルとプロテクトギアを纏ったなのはさんが幻視された。
次は翠軒殺人事件を期待(無茶言うな)。
……無意味に名前が残っていた……。
痛恨ですたい。
>>296 投下乙です。他の職人さんのプロットを初めて見たのでとても参考になりました。
そしてすごい丁寧でびっくりしました。自分もプロットらしきものを描いてますが
ユーノ・風呂
はやて・会話
退出
みたいに自分以外が見ても全く意味不明なものです。前作はプロット自体なかったので…。
最近一話の完成速度が恐ろしく遅くなったのはそのためかもしれません。
では自分も続きを投下します。
魔法少女リリカルなのはA's++
第七話 「駆け引き」
時空管理局本局。高町なのはは武装隊が勤務するB3区画からとある場所に向かって歩いていた。
今日の新任局員への戦技教導も終わり、捜査協力の依頼も来ていなかったので勤務時間はもう終わっている。
いつもならあとは帰宅するだけなのだが、今日は特別に訪れようと決めていた場所があった。
可愛らしい手提げを持って歩く姿は、管理局の制服を着ていながらもその幼い年齢をはっきりと感じさせた。
すれ違う局員達に微笑みながら挨拶を交わす。なのはを含めフェイトやはやては管理局のエースであり局内に知らないものは
ほとんどいなかったし、なによりその可愛らしい容姿もあって人気があった。
その局員達の憧れと羨望の的であるなのはが向かうのは、ユーノの勤務先である無限書庫だった。
大きな休みがある時以外に自分から会いに行くのは初めてのことだ。
しばらく歩いていると無限書庫の司書達が働くエリアへと近づいてきた。
そこは普段なのはが知っている世界の図書館のイメージとはほど遠いほど混沌としていた。
ある司書は持てないほどの書籍を魔法を使用しながら移動させ、ある司書は一度に三冊の本を調べながら
なにやらコンピュータに打ち込んでいる。
前にユーノが家に来たときには最近仕事が減ったと聞いていたが、減ってこの状態なのかと思うとなのはは少し恐怖を感じた。
ユーノの所在を聞きたいと思っているのだが、その忙しそうな雰囲気に呑まれてなのははなかなか近づくことが出来なかった。
するとふいに前から見知った顔の少女が近づいてくるのが見えた。
「はやてちゃん!」
なのはが手を振ると向こうも気付いたようで軽く手を挙げて近づいてきた。
はやてのほんわかとした雰囲気は殺伐とした司書達の中にいても決して消えることはなく、
走り回る司書の間をゆったりと歩いてくる。
そのギャップを見てなのはは苦笑した。
そして目の前まで来たはやてになのはは尋ねた。
「はやてちゃんはどうしてここに?」
「今日は借りてた本を返しに来たんや」
びしっと指に挟んだカードを見せながらはやてが言った。どうやらそのカードで無限書庫内の本を借りれるらしい。
「そういうなのはちゃんは?」
首を傾げるはやてになのはは持っていた手提げを軽く持ち上げた。
「翠屋のお菓子をユーノ君におすそ分けしようかなって思って」
「ユーノ君、今日はおらへんよ?」
「え!?」
なのはは目を丸くして驚いた。別に連絡を取り合って訪れたわけではなかったが、
ユーノは会うたびに無限書庫に篭りっきりだと言っていたので、てっきりいるものだとばかり思っていたからだ。
ちょっとしょんぼりしているなのはを見てはやてが尋ねた。
「なのはちゃん、それって手作り?」
「え?…うん」
予想通りの答えが返ってきてはやては微笑んだ。
「なのはちゃんちょっと時間ある?」
「?」
少し不思議に思いつつも頷くなのはを連れてはやては歩き始めた。
「そっか。どうしちゃったんだろうね、ユーノ君」
なのはがジュースに口をつけながら言った。
ここは本局内にある喫茶店のような休憩所だ。時空管理局本局ともなればこれぐらいの施設はある。
ユーノのために持ってきたお菓子はさきほどユーノが住んでいる寮の方へと送った。
はやての話を聞く限り、今日はユーノは仕事もほったらかしにして行き先も告げずにどこかへ行ってしまったらしい。
今までこんなことがなかっただけに失踪説まで囁かれたが、
メールの返事があったらしくどうやら身に危険が迫っているわけではないとのことだ。
責任感が強いユーノらしからぬ行動に一抹の不安を覚えるなのはだった。
「まあ今日たまたま何か用事があっただけやないかな。…そんなことより」
「えっと…なにかな?はやてちゃん」
急に真顔になって切り出すはやてになのはは少したじろいだ。
「なのはちゃん、最近のフェイトちゃんどう思う?」
「あ…うんっと……変、かな?」
やっぱりその話か、となのはは思いながら答えた。
どんなになのはが恋愛に対して朴念仁で超がつくほど鈍感であるとは言え、
ユーノが学校に来た4日間とその後のフェイトの様子の不自然さには気付いていた。
なのは自身、ユーノとはやての仲が良くなったことには気付いていたが、前より仲良くなったなぁ、と思っただけだった。
二人とも本好きであることは知っていたので、むしろ当然のこととすら思っていた。だが、予期せぬ反応を示したのがフェイトだった。
はやてとユーノの仲を邪魔するかのように必死に奔走する姿は、なのはの目にも異様に映った。
しかもユーノの休みが終わった後も、フェイトはなのはを避けることはなかったが何かを話していても上の空のような、
それでいて何か言いたげな表情をするのだ。
「それで、どうするんや?なのはちゃんは」
「どうするって…」
楽しげに聞いてくるはやてになのはは質問の意図を聞き返そうと思ったが、
先ほど届けたお菓子のことを思い出して言いとどまった。今日は特に意識せずにユーノに会いに来たのだが、
やはりその動機の根底にあるのは最近のフェイトの行動にあるのかもしれないことを今この瞬間自覚したからだ。
フェイトとユーノが恋人になったらどうなるんだろうか。ユーノに対してフェレットと人間のイメージが半々である
なのはにとって、そもそもユーノとはどういう存在なのか。なにやら考え始めたら頭が混乱してきた。
答えあぐねていると、はやてがウィンクしながらなのはに言った。
「恋に遠慮はあかんよ?」
そう言いながら紙コップを捨てに立ち上がったはやてになのはは聞き返した。
「はやてちゃんはどうするの?」
「へ?なんで?」
突然の切り替えしにはやては動きを止めた。
「だって、本を返すだけならユーノ君の今日の予定、知らなくても大丈夫だよね?」
「なのはちゃんって…変なところで鋭いんやなぁ」
他人の心の機敏には敏感ななのはにはやては苦笑した。
別にどうもせぇへんよ、とはやては軽くながしたが、なのはとはやてはお互い似た心境だということをなんとなく理解したのだった。
*
ユーノは今の状況を把握するために必死に頭を回転させた。
囚われた一族。黒い首輪。呼び出された自分。考えながらも眩暈がし足が竦(すく)んだ。
「一応言っておくが、間違っても変な気は起こすなよ。そいつらの命は俺が預かってるんだからな」
釘を刺されたがユーノは特にここでサイオンを取り押さえようとは思わなかった。とりあえずみんなの首にとりつけられた
不気味な首輪の正体がわかるまでは下手に動くわけにはいかなかったし、相手の余裕がユーノの危機感を刺激していた。
サイオンから目を離さず横目で檻の中の一族の人数を数えた。今ここにいるだけで18名。まだ他にもいる可能性もある。
ユーノ自身一族の総数を完全に把握しているわけではないが、少なくとも全員を捕らえられるほど一族は小規模ではない。
おそらく各所での発掘調査が同時期に行われ、一番一族が離れ離れになった時を狙われたようだ。
スクライア一族は遺跡の調査を依頼されることもあれば独自の研究のための発掘をすることもあり、
常にひとまとまりとは限らず数ヶ月連絡を取り合わないことさえある。
ユーノがジュエルシードの回収に単独で乗り出したときも誰も心配しなかったのは、一族にそういう性質があるからだ。
「それで…僕に何をさせるつもりですか」
なるべく怒りを押し隠し、冷静さを保ちながらもユーノは尋ねた。
「さぁ、どうするかな」
面白そうに言うサイオンにユーノは歯軋りした。この男は20名弱の人質をとるという重罪を犯しながらも今の状況を楽しんでいる。
ユーノに一瞬今まで感じたことのない感情が生まれた。
(挑発に…乗っちゃ駄目だ!)
ユーノは深い息を吐いて心を落ち着けた。今必要なのは交渉だ。
「僕を自由にしたまま、ここに連れて来たんだ。何か理由があるんでしょう?それに、僕は自分の価値くらいわかってるつもりです」
「…………」
ユーノがそう言うと、サイオンは顎に手を添え品定めするような目つきでユーノを見つめた。
ユーノ・スクライア。時空管理局無限書庫司書長。人望が厚く頭もいい。状況判断能力も高い。
何より、本人も気付いていないだろうが、極限状態で能力を発揮するタイプだ。直感でそう思った。
優しさと温厚な性格で隠れているだけだが、計り知れない思慮深さを瞳に秘めている。
どうやら聞いていた以上に使える逸材のようだ。これからの計画が非常に楽しみになった。
「いいだろう。状況を説明し、俺がお前に求めることを言おう。条件しだいでは人質解放もありえる。よく聞け」
ユーノはゆっくりと頷いた。後ろにいる一族も寄り添いながら静かに状況を見ていた。
「まず、今捕らえているスクライア一族は28名。別の場所にもう10名いる。
そしてそいつらについた首輪は、俺からの信号で起爆する爆弾だ」
(くっ…!)
ここまでは予想の範囲内だとは言え、ユーノはこぶしを握り締め沸々とわいてくる怒りを抑えた。
赤い目玉のようなレンズは一族の目とほぼ同じ動きをしているので、かなり精度の高い装置であることは一目でわかった。
首輪が締まったり、薬物が投与されるわけでもなく、爆破する。一瞬で、しかも周りを巻き込むタイプは非常にやっかいだ。
誘爆を避けるために二箇所に人質を分けたのだろうか。
「ある一定距離俺から離れたり、俺からの信号を一定時間受信しなくなると爆発する。
もちろんいつでも俺の意思で吹き飛ばすことが可能だ」
それを聞いて檻の中の幼い者達が怯えた声を上げたが、大人達に口を塞がれた。
「それで、お前にやってもらうことだが…」
そう言うとサイオンはユーノに向かって15センチ四方の小型の電子機器を投げてよこした。
薄型で画面と本体がほぼ同じ大きさだ。ユーノが受け取り画面に触れると、見たことのある戦艦の映像が現れた。
「次元空間航行艦船、アースラの奪取だ」
「!?」
それを聞いてユーノは顔を上げた。
「お前にはそのための方策を練ってもらい、実行してもらう」
「な…!?」
あまりの馬鹿さ加減にユーノもついに口を開いた。どうやら全ての作戦をユーノ自身に作らせ、実行もまたまかせるらしい。
簡単な話、空のアースラを用意させ後は乗って奪うだけというところまでユーノにさせる、ということだ。
完全な他力本願。あくまで自分達はぎりぎりまで手を汚さずアースラを奪うつもりのようだ。
「…アースラを奪ってどうするつもりですか?例え入手してもあなたは一生逃げ続けることになるだけだ」
「答える必要はないな」
当然の疑問をユーノはぶつけたが、サイオンは答えなかった。
どう考えてもリスクの割にデメリットが大きすぎる。もしかしたらまだ発見されていない次元でも見つけたのだろうか。
「俺は表の職業柄ビジネスが得意でな。これからお前にはある取引に乗ってもらう。もちろん拒否は許さん」
ユーノが頭を整理する間もなくサイオンが話し始めた。
「アースラ奪取の猶予は1ヶ月。それまでに完璧な作戦を練り、俺に伝えろ」
「…人質の解放は?」
ユーノが一番知りたいことを口にすると、その質問を待っていた様ににやりと笑いながらサイオンは答えた。
「先ほど取引と言ったな?アースラ奪取までは様々な手順を踏むだろうことはわかっている。
そしてその間いつまでも人質を解放しないのも納得いかないだろう。
そこで、なにかしらの成果をあげるごとに人質を順次解放していく。お前の行動しだいで人質の人数は減っていく、ということだ」
「そのための自由…ですか」
「そうだ」
サイオンが頷くと振り返り扉に向かって歩き出した。
「取引には仮初(かりそめ)であろうと信頼関係が必要だ。
人質を解放する意志があることを信じてもらうために我々はまずこいつを解放する。協力するなり好きに使え」
そう言いながら扉を開けると、暗闇の中からエリオが入ってきた。
部屋に入ってからの衝撃の連続のせいでユーノはすっかり忘れていたが、
ここに自分を連れて来たのもそういえばエリオだったのだ。
一族を訪れたときに一緒に捕まったのか、別の場所でスクライアの名で捕らえられたのかは
わからなかったがユーノと同じ立場であることは確かだ。
「ユーノ…大丈夫?」
「うん、僕は。でも……」
話しかけてきたエリオに答えながらユーノは心配そうに檻の中を見る。不安そうに見つめる一族の子と目が合った。
「大丈夫。やつらもみんなに手荒なことはするつもりはないみたいだ」
エリオのその言葉を聞き改めてよく見ると、服は多少汚れているが乱暴を受けた様子はないし、飢えているわけでもなかった。
サイオンも人質に手を出すような粗暴な人間ではないように感じられた。
人質をとるという手段は強攻だが目的に対しては理にかなっている。
ユーノはふと気付くと冷静に分析している自分が嫌になった。
「出ろ」
サイオンがユーノとエリオに退出を促した。
「絶対に…助けるから」
部屋を出る時にそう言うと、一族のみんなが無言で頷いた。
本当は話したいことが山ほどあったが、後ろ髪を引かれる思いで部屋を出た。
「詳しい話はそいつから聞け。必要なことは全て伝えてある」
遅れて歩くユーノ達を待たずにサイオンは一人でエレベータに乗り込むと、扉を閉める間際付け加えた。
「くれぐれも管理局に助けを求めるなよ。内通者もいる。常に監視されていると思うことだな」
そして扉が閉まると、倉庫に静寂が訪れた。どこかで水がしたたる音がした。
「…ユーノ」
エリオが心配そうにユーノの顔を見た。
「ちょっと、外に出ようか」
そう言ってユーノは降りてきたエレベータに乗り込むと、甲板に出るためにボタンを押した。
ユーノが港町を訪れたときは昼過ぎだったが、甲板に出たときには空は夕暮れに赤く染まっていた。
外の風はおだやかで非常に心地よかったが、ユーノの心は晴れることはなかった。
船の向こう側に広がる森林さえも不気味に見えた。
甲板の上はクレーンのようなものも備え付けられ、大きなコンテナがいくつか固定されていていた。
その一つのコンテナの上にユーノとエリオは腰をかけた。
「はぁ…」
そこで初めてユーノは深く息を吐いて頭を抱えた。
「あいつらは一体…」
震える声でユーノは嘆くように呟いた。
「表向きは運送会社みたいだけど…ごめん、僕にもわからない」
エリオは申し訳なさそうに答えた。
できることなら逃げ出したかった。
これから自分を待ち受ける運命はユーノの周りの人を傷つけるだろう。
自分の最も大切なものを天秤にかけなければならない時も必ずくる。
そのことを考えただけでユーノは胸が苦しくなった。
エリオはただ静かにユーノの様子を見ていた。
しばらく二人は沈黙し、ただ、風にそよぐ木々の葉の音だけが二人を包んだ。
遠くでどこからか鐘の音が響き、だんだんと近づいてくるように音の波が耳に届く。
5回目の鐘が鳴り響いたとき、ユーノがようやく顔を上げた。
その時のユーノの瞳は、決意と覚悟を秘めていた。
「…首輪をはずす方法は?」
エリオはその意志に答えるかのように知っていることを教えた。
「えっと…サイオンが開錠の信号を送れば開く仕組みになってる。
無理にはずそうとしたり、切断しようとすると爆発するみたい」
「みんなは魔法は使えるの?」
「念話、変身魔法も含めて一切使えない。みんなの魔力が感じないんだ」
「あの赤いレンズは?」
「あれはつけてる者とリンクして見たものをリアルタイムでサイオンに伝えてるらしい」
それを聞いてユーノは口に手をあててしばらく考えを巡らした。
どうやら思っている以上にあの首輪は高性能のようだ。正規の方法以外ではずすことはやめたほうがよさそうだ。
それにしても28人分の映像、魔力封じ、そしてサイオンが送るという信号。少し調べる必要がある。
「それで、どうするの?」
エリオが不安そうに聞いてきた。
「…相手は僕達を利用するつもりなんだ。しばらくは期待通りに動くよ」
ユーノは真っ直ぐに前を見つめながら力強く言った。
「しばらくはって…いいの?取引は?」
「向こうだってこっちが最後まで言いなりだとは思ってないよ。ギリギリまで利用して捨てる気だ」
そう言いながらユーノは立ち上がった。
「これは取引じゃない。…駆け引きだよ」
ユーノは先ほど受け取った小型の電子機器を森の方へと思い切り放り投げた。
次回へ続く
次回 第八話 「過去と現在」
女の駆け引きの方が恐ろしい、というのは個人的な意見ですがなのはとはやてはそこまでドロドロになりません。
やっぱりなのはの世界はみんな仲良しが基本のような気がするので。
十話を描いている現在、恋愛を複雑にしすぎたことを激しく後悔…。というか他のキャラも出さなきゃと思っても
うまくいかなくなってきました。今回は本当にユーノ主軸で話が進みそうです。二重スパイのような状態なのでしかたないですが。
十二話あたりから物語が一気に加速する予定なのでそれまでユーノの苦悩を少しでもわかってもらえれば幸いです。それでは。
第8話 b part
くきゅる〜〜
「…………まぁ、一日も引き篭もっていればそうなりますか」
音の出所――つまりは私。
雰囲気ぶち壊しのその音はものすご〜く恥ずかしかった。
「うう……何も食べてないんだからしょうがないでしょ」
ほんとに空気が読めてない私のおなか。
真っ赤な顔を隠したくて私はリニスの胸に顔を押し付けた。
ぶにょんと胸の感触に少し嫉妬。何を食べればこんなに大きくなるんだろう……。
「はいはい、甘えん坊さんなんですから」
「……違うもん」
そうだよ、顔を押し付けてるだけなんだから。
「そういうことにしておきましょう。ここは腹ごしらえが先決ですし」
リニスの腕が私を引き剥がす。
そうして立ち上がって、何をするかと思ったらクローゼットの前に立つ。
「あ……リニスそこは開けない方が」
私が言い終えるの待たないで開けられた扉。
案の定、無理矢理押し込んでいたものがガサガサ音を立てながらリニスの足元を追い隠した。
「……予想よりも三倍増しですか……あなたという人は」
可愛かったりへんちくりんだったり、いろんな絵が描いてある色とりどりの袋。
それに紛れて大小様々なやっぱりいろんな絵や文字、色に染まった箱。
その中の一つを摘み上げながらリニスが横目に私を睨んでいたり……。
「大体の手口はわかりますが……お菓子で冬眠は出来ませんよ」
「……はぁい」
ミッドチルダへ行った時にリニスに内緒で買いだめしたスナック菓子。
とにかくばれない様に買ったその場で魔法で自分の部屋へ転送して。帰ったら急いでクローゼットの中に押し込んで。
自分でも結構無理矢理に入れてたからな……。
「まったく買うだけ買ってコレクションでもするのですか?」
「食べる時間が無かっただけだよぉ」
最近は忙しくて部屋に戻ってもベッド一直線だったし。
「それに寝る前に食べるなってリニスは言うし」
「当然でしょう。私の教えを守ってくれているのには感心しましたが」
「また歯磨きするの面倒だもん」
「…………」
はぁ……、となんとも気の抜けたため息をリニスはしていた。
なんだか私に聞かせるようにわざと大きくしているみたいな感じがした。
ふんだ、虫歯には私だってなりたくないもん。
「では時間も遅いですがお茶にしましょう。少しは何か食べないと体に毒ですからね」
「じゃあ私紅茶」
「はいはい」
微笑んでリニスが部屋から出て行く。
ガチャンとドアが閉まってまた私は一人部屋に残された。
でも、もう暗闇が私の心を包むことなんて絶対ない。
「ありがとね……リニス。あなたは私の最高のパートナーだよ」
絨毯の上に転がっていたドアノブ。
ドアを壊してでも私を助けに来てくれたリニスに自然と私の顔は綻んでいった。
* * *
「はぁ…………」
花のような綺麗な香りが花を満たし、喉を通り抜ける温もりに顔が綻ぶ。
飲まず食わずで一日閉じこもってたなんて馬鹿馬鹿しくなっちゃう。
「ん〜……おいしい〜」
手当たり次第に開けたお菓子の袋に手を突っ込み、口へ次々に放り込めばサクサク、ふにゃふにゃ、いろんな食感が私を楽しませる。
ビーフシチューみたいな味にやけにバターが効いた味。中にはコンソメスープに程遠い味なのにコンソメ味と主張するものまで。
お腹一杯にはならないけどこうやっていろんな味が手軽に楽しめるのはやっぱり最高。
「ジャンクフードというものはどうにも勧められませんが…………確かに病み付きになりますね」
「でひょ?」
「口の中に入れたまま喋らない」
ぼやきながら私と同じくらいのペースで食べていてはあんまり説得力無いけどね。
案外、馬鹿真面目なリニスにはこういう砕けた感じの食事があってるのかも。
「まったく、少しは勉学の足しになるようなものを買ってください」
「勉強はリニスがしてくれるから間に合ってま〜す」
紅茶を飲み干して一息。
「……そういえばさ」
「はい? どうしました」
「リニスって昔はフェイトに魔法教えてたんでしょ」
「ええ、否定はしません」
少し躊躇いがちにだけどリニスは答えてくれた。
いきなり私の口からフェイトのことが出ればびっくりするのは当たり前かな。
「じゃあさ、フェイトがどんな子だったのか教えてよ」
私の言葉にリニスは一瞬きょとんとして、すぐに小難しい顔になった。
「敵を知る……そういうことですか?」
「それは半分かな」
「半分?」
私にとってフェイトは憎しみをぶつける相手。
今まではそうだったけど、本当のことがわかった今はなんだか逆にフェイトのことが可愛そうにも思えている。
我ながら結構甘い考えかなとは思うけど、考えてしまうんだからしょうがない。
「知りたいんだ、本当のフェイトのこと」
もう一人の私であって、私じゃない。
私になるはずでなれなかった。
「フェイトは私の思い出を持ってる。けど私じゃない日常を送っている。それってやっぱりアリシアの記憶じゃなくてフェイトの記憶だよね」
きっとこれは一つのけじめ。
私とフェイトが同じ存在じゃなくて別々の存在であることを自分に教えるため。
だから一番フェイトを知っているリニスに話して欲しい。
「多分生まれた時からフェイトはアリシアじゃなかったから。だからお願いリニス」
テーブルから身を乗り出してリニスを見つめる。
リニスはちょっとだけ視線を逸らして、でもすぐに見つめ返してきて。
「じゃあ話しましょう。あなたが知りたいならフェイトのこと全部」
「うん、ありがと」
「ですが私が話せるのは彼女を魔導師として教育していたほんのちょっとの時間だけです。それからの、今のフェイトになるまでは何があったかはわかりません」
「いいよ、それでも」
少しでもフェイトのことが知ることが出来ればいい。
憎んでただけで、フェイトのがどんな子なのか知らない今よりかはずっとマシ。
「それでは短く簡潔に、それとも長く詳細に。どちらがいいですか?」
「うーんと……なるべく短く、かな?」
「では長〜く隅々まで」
「え〜〜」
「言いだしっぺはあなたでしょう、だからフェイトのことみっちり教えてあげます。特別出血大サービスです」
…………。
やっぱりこういうところはリニスなんだなぁと、しみじみ思った。
* * *
目が覚めてから大分経っただろうか……。
未だ曖昧な意識を引きずったまま、私はベッドに腰掛けて窓に映るミッドチルダの風景をぼーっと眺めていた。
体中だるさに包まれて、なんだか背中はヒリヒリするような痛みが走る。
「近距離だったし当たり前かな……」
窓の外では大きな艦がさっきから行ったり来たりして忙しい。
あんな沢山のL型艦を見るなんて嘱託魔導師になってから初めてだ。それ以前からそんな光景一度も見ていないけど。
多分この近くに次元港があるんだろう。それにしたってすごい迫力だ。
アースラだって同じくらいの大きさなのだ。それに乗ってる私たちってほんとに小さいって思い知らされる。
「……そうだ、バルディッシュ」
私がこれならあの子だってただじゃすまないはず。
けど辺りを見回しても金色の宝石は見当たらない。
「……自己修復も追いつかないのかな」
以前なのはとジュエルシードを取り合った時みたいなアリシアの魔力爆発。あの時は自己修復だけでなんとかバルディッシュは直せたけど……。
それほどの規模の魔力流を受けて私はなんとか無事だなんて、しみじみ不幸中の幸いだと感じてしまう。
「迷惑かけちゃうな……これじゃ」
左腕に巻かれた包帯は少し血が滲んでいた。
治癒魔法を使っても治るまで二、三日くらいかかるはず。
「私が負傷者になっちゃ駄目なのにね」
もう数え切れない数のジュエルシードがミッドチルダ全域に撒かれている。こうしている間にも種は芽吹き関係ない人たちを巻き込んでいく。
相手が強力になればなるほど対処できるのは私やクロノみたいな力をつけた魔導師だけ。
だというのに殆どのそういう魔導師は別の次元で起きている様々な事件に出払ってしまっている。
今一人でも戦力が欠けることは事態を悪化させることに他ならない。
「……アリシア」
名前を呟き思い返す。
きっとアリシアは何も知らなかったのだろう。本当なら私がアリシアになって母さんの悲しみを癒すはずだったことを。
傷つけてしまったのかもしれない。そうじゃなきゃあそこまでアリシアが心乱すことは無かったんだ。
「すごく……苦しかった」
胸を手を当て俯いた。
最後の瞬間、念話みたいに心に飛びこんできた感情はきっとアリシアのもの。
これは痛みだ。私が母さんに拒絶された時のように心を蝕む闇。
「……こんな痛み私だけで十分なのに」
当てていただけの手はいつしか胸倉を掴みやり場のない怒りに震えていた。
「こんな目に会うためにアリシアは生まれてきたわけじゃないよね」
せっかく生き返ったのに今までの記憶――母さんとの思い出がないなんて酷すぎる。
本当ならすぐにでも私の中に眠ってる母さんの記憶を返してあげたい。
返さなきゃ……いけない。
「でも……」
また一隻、新たな艦が通り過ぎていく。
悲しい思い出だけ持って生きていくなんて絶対に嫌だ。
今まで築き上げてきた記憶は全部私のもの。
リニスに魔法を教えられ、アルフを使い魔にして、ジュエルシードを探す旅に出て――。
「なのはとぶつかりあって、本当を知って、自分を始めて」
どれもみんな掛け替えの無い大切な思い出。
譲りたくない絆――決して揺るがない決意。
「だからアリシアに届けてあげなきゃいけないんだ」
私の中で眠り続けているアリシアの欠片を。
「……記憶を届けるなんて魔法あるのかな」
ないからアリシアも言ってたんだ。
アルハザードの魔法を使うって。
でも考えてみれば私たちの方にだってうまくいけばアルハザードくらい願いを叶える魔法がある。
「ジュエルシードを使えばもしかしたら……」
願いを形に出来るなら私とアリシア、二人が幸せになるはず。
「でもクロノに言ったら浅はかな考えって叱られんだろうな」
少しは柔らかく考えればいいのに。
ほんと馬鹿がつくくらい真面目なんだからしょうがない。
大体クロノっていつ息抜きとかしてるんだろう……?
私はなのはから貰ったビデオレターを見たり、エイミィから映画やマンガ借りたりしてそれなりにしてはいるけど。
そういえばクロノって一年経っても私室で過ごす姿すら見たことが無い。大抵……というか全部ブリッジにいる姿しか見てないや。
「クロノの部屋って……ブリッジじゃないよね」
一度でいいからクロノが羽を伸ばす瞬間を見てみたいな。
リンディ提督やエイミィに聞いてみるのもいいかも。
「ふふ……でも私が直接行ってびっくりさせるのもいいかもね」
けど赤の他人がズカズカ入っていったら失礼かな……。
こういうのは家族とかすごく親しい人じゃないとクロノも怒るかな……。
みんな優しいから許してくれそうだけど。
「そうだな……やっぱりそうなのかな……?」
PT事件の裁判が終わってからリンディ提督に言われたことを思い出す。
「家族……かぁ」
もう私がみんなと出会って一年経つんだよね。
嘱託魔導師にもなって、忙しさから置いてけぼりになっちゃってた私の答え。
「……母さん」
こんな事件に出会わなければもう「母さん」と呼んでいるかもしれない人を思い浮かべる。
でも母さんは生きていて、アリシアも生きていた。
今は考えちゃ駄目だよね。全部終わって、私がもっと羽を伸ばせるようになったら。
結末がどうなるかわからないけど、でも確かなこともある。
この一年間、私を支えてくれたアースラの人たちは私にとって大切な人。
「私の家族」
ありがとうって言い尽くせないくらい大切な人。
きっと私がどんな答えを出しても頷いてくれると思う。
「できれば悲しませたくないよ……」
でも答えなんて出せない。
やっぱりその時が来るまでお預けかな。
「駄目だな……私って」
こういうのを優柔不断って言うんだろうな。
だけどそれが今の私。
だから――
「その時が来るまでもうちょっと甘えていいよね」
そう、それでいいと思う。
一区切りつけた所にちょうど良くドアが開く音。
「気がついたか」
クロノだった。
そういえばもしも本当の家族になったらクロノって
「兄さん」
だよね。
「あっ……」
うっかり、口に出してしまった。
「あ、えと……私寝ぼけてるみたいだね、あはは」
躓き、床に突っ伏しているクロノに愛想笑いしながら私は毛布に潜り込んだ。
すごく恥ずかしくなって、気まずくなって、どうしていのかわからなくて。
「わ、私もう少し寝るから、おやすみなさいクロノ」
多分、おやすみの時間じゃない。
加えて睡眠は十分だから目は冴えてしょうがない。
ぐるぐるぐちゃぐちゃになっていく頭の一方、耳には再びドアが開く音が聞こえていた。
ほんとに……ごめんクロノ。
でも――
なんだかすごく心地いい響きだったな。
* * *
「これが私の知ってるフェイトです」
結構、長い話だった……。
でも顔に出すとリニスが怒るから我慢。
「なんだかイメージと全然違ったなぁ」
「そういうものですよ。先入観を持っていたならなおさらです」
「……そういうものなのかな」
大人しくて我侭も全然言わない。リニスの言うことに素直に頷いてしっかり魔法の成果を出す。
とても優しくて、群れに見捨てられた狼を自分の使い魔にしたり。
なんだか似てるところもある。
でもやっぱり私じゃなかった。これって正反対って感じかな。
「言い方を変えるなら双子みたいなものでしょうか」
「双子?」
「はい、二人ともプレシアによって生まれたことに変わりないんですから」
そっか……リニスの言う通りだ。
私もフェイトも母さんがこの世に生んでくれたからここにいられるんだ。
性格は違うけど姿形はそっくりで、だから双子。
「姉妹とするならアリシアはフェイトのお姉ちゃんというとこでしょうか」
「お姉ちゃん……?」
なんだかむず痒くなるような、でも心地いい響きだった。
「出来のいい妹を見習ってほしい姉ですけど」
「ぶ〜」
「ほら、言ったそばから膨れてしまう辺りまだまだですね」
「…………う〜」
リニスの……意地悪。
無性に悔しいけど言い返して墓穴掘るのは嫌だからだんまりを決め込む。
それだけではなんだか負けたような気がするから私は手元の紅茶を一気に喉に流し込んだ。
「リニス、おかわりお願い」
ティーカップを差し出しておねだり。
自分で入れればいいんだけど、こうお菓子のカスだらけの手じゃティーポッドに触るのは失礼だろうし、きっとリニスにも怒られたりするはず。
「わかっていますよ。しょうがないですね」
と、言いつつもまんざらじゃないリニス。
すでに私からカップを受け取ろうと手を伸ばしていた。
「くれぐれも飲みすぎないように」
「はぁいっ――!?」
返事をしようとした矢先、突然手首に楔が打ち込まれたみたいな鋭い痛み。思わず私はカップを落としてしまう。
幸い、下は絨毯だから割れなかったけど
「アリシア?」
「だ、大丈夫……」
握り締め、押さえつけて痛みを堪える。
ズキンとしたのは最初の一瞬だったけど、削り取られるような抉られるような痛みは引いてくれない。
痛む所から先の感覚は麻痺したみたいに薄くなって私は歯を食いしばるくらいしか抵抗できなかった。
「な、なにこれ……?」
「見せてくださいアリシア」
リニスが冷静に私の腕を取り袖をまくった。
血でも流れてるかと思ったけど私の腕には傷一つ、痣すら刻まれていない。
こんなに痛いのに……なんで?
「どうし……たんだろう……」
「フェイトとの戦いで何かありましたか?」
脂汗が滲んでくるのを感じながら首を横に振る。
あの時の戦いじゃそんなヘマ絶対してない。痛みに邪魔されながら手繰り寄せたって記憶が変わるわけじゃない。
「…………」
難しい顔でリニスは私に腕を擦っている。
でも触れられて痛くはない。
なんだか中から叩かれてるような変な痛みで、まるで痛みだけを塗り込められてる気がする。
「魔力を異常なまで開放した反動かもしれませんね」
それって私が結界を吹き飛ばした時のことを言ってるのかな。
あの時は自分を保てなくてよく覚えてないんだけど。
でもリニスがそう言うならそうなのかも……ううん、絶対そうだ。
「やはり今日は大事を取って寝ましょう。魔導師だって体が第一の資本なのですから」
「……うん、そうする」
楽しかったのに……。
こんな痛みででティータイムが壊されたと思うとすごく最悪だ。
「そんな顔しないでください。私も一晩中付きっ切りでいますから」
「それって一緒に寝てくれるってこと?」
「そういう意味で取ってもらって構いません」
――前言撤回。
リニスが一緒にいてくれるなら最高だ。
「また怖い夢でも見て引きこもられると迷惑ですからね」
「それが理由?」
どうせドア壊して入ってくるくせに……。
「さぁ、どう取るかはあなた次第ですよ」
相変わらずのリニス。でもそれが今の私には嬉しかった。
変わっていくものの中で変わらないもの。
どんなことがあったってリニスはずっと笑顔で、ちょっとだけ偏屈で、私を見守ってくれる。
フェイトにはこんなに想ってくれる使い魔がいるのかな……?
いなかったらとことん自慢してやろう。
「ではシャワーを浴びて歯を磨いて、迅速にお願いしますね」
「ええー、いいよこのままでも」
「女の子なのですから身だしなみは整えてください」
「は〜い」
私は私。
フェイトはフェイト。
私がお姉ちゃんで、フェイトは妹。
もしも今度フェイトと出会う時――
その時私はどんな顔をしているんだろう。
自分でも随分後れたかなと思ってます
なんというか間が空くほど話が掴みにくくなるような
それぞれの視点を切り替えて描写するツケなんでしょうけど
cPartからは再びなのはたち海鳴魔法少女隊(仮称)
待ち受けるL・ジュエルはどんな試練を三人に与えるのか
なんて格好つけてみたり
>>K氏
どこでこんなこと覚えたんだ!
お父さんは許しません!!(エッ
>>640氏
クロノは総受けですね
あっちでもこっちでも黒焦げになる運命は止められない
>>さばかん氏
ほんとdjなぁ
ついていけないテンションだじぇぇ
>>92氏
いろいろなところで吹いた
⌒*(・∀・)*⌒じゅ〜しぃ〜
>>296氏
すげぇ……
こっちはあらすじ一行書いて勢いで書くのに(オイマテ
なにはともあれお疲れさんです
>>396氏
女の駆け引きはドロドロして行きますからねぇ
S○UF○LEみたいにならなくて内心ほっと、でも怖いもの見たさもあったり
何はともあれ職人増えてきてよかった良かった
魔法少女リリカルなのはA’s −the day−
第六話 君を待つ間
「くそっ!!」
殴りつけた机には、夥しい量の書類、書籍。資料が積み上げられ並んでいた。
同様に散乱する、ペットボトルや食べ物の包みの屑の山。
「だめだ……ない……!!どこにも、治す方法が、ない……!!」
ユーノ・スクライアは苛立っていた。
誰に頼まれたわけでもない、自分が望みやっているこの作業が、
あまりにも芳しい結果を出さずに終わっているせいだ。
友人を襲った病。大切な人の抱く悲しみ。
それをなんとかするには、自分がやらねばならないというのに。
「くそ……無限書庫なんだろ!!なんで、ないんだよっ!!」
時空管理局本局データベース・無限書庫、司書長。
己にしかできぬはずの作業が、かえってその肩書きの響きを空しいものにする。
「こんなときこそ、僕がやらなけりゃならないってのに……!!」
がつん、ともう一度殴打され、揺れた机から資料の山が崩れ、落下していく。
その耳障りな音が余計に彼の精神を掻き毟り、不快感に染め上げる。
───なにが、探せばちゃんとでてくるだ。病気の治療法一つ、見つけられないくせに。
歯軋りをひとつ、机に目を落とす。調べられるものはすべて調べた。
過去数百年に渡る疫病、生物災害。リンカーコアに関する研究書から、
関係のなさそうな薬物テロに、ほんのささいな家庭医学の書まで。
フェイト個人のここ数年間の健康データや、「あの事件」の裁判記録も取り寄せて
なにか見落としがないか調べた。
だが、なにも突破口が見つからない。
『スクライア司書長』
「……なんです?」
『管理課からの連絡です。やはり時の庭園への立ち入り調査は許可できないと』
「そう、ですか」
秘書官から入った宣告に、なおユーノは俯いた。
これだけ探してない以上、フェイトの身体を治す方法を得る可能性があるのは、
忌まわしきあの場所しかもうなかった。
フェイトが家族を失い、フェイトが生まれた場所。
PT事件以降、次元の狭間にうち捨てられる放置されているそこには、
フェイトが生み出された際の研究データや資料が残されたままであるはずだ。
その一縷の望みにかけて、ユーノは自ら散逸資料の回収という名目で立ち入り調査の申請を出したのだが。
やはりいつ崩れ落ちるかもわからない、資料がまともな形で残っている保障もない場所への
調査申請は当然、受理されるわけもなく。
「あの場所なら……フェイトを助けられるかもしれないってのにっ!!…………!?」
三度打ち据えるべく、拳を振り上げたその時、わずかに背後の扉から聞こえた軋む音に、ハッと振り向く。
光の漏れ出てくる隙間を空けて、閉まりきらなかった扉が揺れていた。
「!?」
誰かが、聞いていたのだろうか。扉に駆け寄り、勢いよく開け放つ。
だがそこには通路が広がるだけで、人影はどこにもない。
ただ唯一、痕跡として残されていたのは───……。
「武装隊の、編成表?」
一枚の書類のみ。
だがそれは落としていったことに気付かず、立ち去った者がいるということの何よりの証拠。
先程の音は、ユーノが扉を閉め忘れた勘違いではなかったのだ。
だとすれば、一体誰が。
そして彼にはこの落し物から連想できるその人物を、一人知っている。
「……なのは?」
なぜだろう、彼にはその連想に対し、なんだかとらえようのない嫌な悪寒を感じざるを得なかった。
彼の荒れた行動が、一人の少女に見られたかもしれない。ただそれだけのことだというのに。
* * *
フェイトの病室から、くぐもった誰かの叫ぶ声が聞こえる。
誰だろう。アリサだろうか、すずかだろうか。
ぼんやりと涙で滲んだ廊下の明かりを見上げるはやてには、聞き分けるだけの集中力はとても存在し得ない。
「はやて……」
「主はやて、その」
廊下の一角に設けられたベンチに座る彼女の膝には、心配そうに上目遣いで見上げてくるヴィータが。
側にはシグナムが立っていた。二人とも言葉が見つからず、二の句を言い澱んでいる。
「……ごめん。ごめんな、ふたりとも」
シグナムにバルディッシュを渡してほしい。
そう言われたはやては、返事をすることも、拒絶することもできなかった。
そして続けてフェイトが呟いた言葉によって、決壊した。
───私も、生まれてくる新しいリインフォースと、会いたかったな。
堪えられるわけが、ないではないか。はやては、思わず病室を飛び出して。
回診にやってきたシャマルに抱き止められ、
彼女が呼んだシグナムとヴィータがついていてくれたおかげでぼんやりと、
なんとかこうして部屋の前に戻ってきて、天井を見つめていることができる。
しゃくりあげていた呼吸も、いくぶん落ち着いてきたように思う。
はやてはまだぼやけている視線を、自分の出てきた病室へと向ける。
「アリサ、ちゃん。すずかちゃん……」
シグナムたちが呼ばれたのは、はやてのためだけではなかった。
彼女が──フェイトが、シャマルに言った望みを叶えてやるためでもあったから。
自分の口で二人の友に、もうすぐ自分がいなくなるということを告げ、謝ること。
フェイトはそれを望み、すずかとアリサを連れてくるよう希望した。
母であるリンディ提督も了承していることだと言われてしまえば、
主治医のシャマルが断る理由はなく、従わざるをえない。
シグナムの案内で、すずかとアリサの両名は時空管理局本局へと招かれた。
かくして今、シャマルに付き添われた二人の友人たちがフェイトの病室にいる。
存在は聞かされていても、はじめて足を踏み入れる管理局の施設。
彼女達は果たして、このような形で招かれることを想像だにしただろうか。
「シャマル」
不意にスライドしたドアから、俯き加減の女性が退出してくる。
彼女は自分に注がれている三組の視線に気付くと、辛そうに笑う。
「しばらく、自分達だけにしてほしい、って。はやてちゃんも……落ち着いたら行ってあげてください」
「え……」
「シャマル、しかし」
「待ってるから、と。フェイトちゃんが、はやてちゃんに」
はやての隣に、彼女は腰掛ける。
そして何の前触れもなく、ぽつりとつぶやいた。
「……ごめんなさい」
「……?」
「風の癒し手。湖の騎士。こんなときのために私がいるはずなのに……なにもできないなんて」
「そんな、シャマルのせいなんかじゃ、ないやろ……?」
「いいえ。こんなことしか、できないなんて。私の、力不足です」
「やめろ。お前はやれることをやっている」
「っ……原因が!!なにもわからないんです!!」
つぶやきは、吐露へと変わり。
苛立った声と同時に、膝の上で握りしめられた拳に、一滴の雫が落ちる。
「なにも!!なんにもできなかったのに……っ!!」
「まだだ。まだ、そうと決まったわけではないだろう」
親しき少女、主の親友へとなにもしてやれない無力。
そのずしりと重くも空っぽの感覚に、シャマルは取り乱す。
その姿は、温厚な彼女とは思えないほどに感情的だ。
「まだなんて!!もう、時間もあまり……」
「そんなことはないっ!!!!」
シャマルの言葉を、シグナムの叫びが打ち消した。
冷静に諭すようであった調子は消え、シャマルと同じように拳を固め、
床を見据え身を震わせている。
シグナムもまた、平気でいられるわけがないのだ。
彼女にとってだって、フェイトは気心の知れた友人であり、
互いに切磋琢磨していく好敵手なのだから。
動揺していないはずがない。
なのはのフォローに走り、取り乱しがちになってしまうはやて達家族を
冷静に見守る。そのことが自分の役割だとわかっていたからこそ、感情を抑えていただけ。
彼女だってフェイトのことを見ているしか出来ないことを、歯痒く思っていたはずだ。
「まだ……まだ、あの子は終わったわけでは……」
歯痒さゆえに、あきらめきれない。
床から今度は天を仰ぐシグナムに、はやては彼女もまた泣いているのだろうと思った。
主と守護騎士のつながりではなく、直感でそのことを感じ取った。
みんなが、これほど想い。
なんとかしたいと願っているのに。
無情にも、彼女達はどうすることもできなかった。
できるのは己を責める、あるいは運命を責める。そのくらいのことでしかない。
* * *
───やがて。
「みなさん、……よろしいかしら」
やるせなさを押し殺す彼女達へと、一人の女性が声をかけた。
それはこの場にやってくるのが、当たり前といえば当たり前の人物。
だがはやて達は彼女が現れたことに狼狽し、居ずまいを正すことも忘れ
思考が真っ白になる。
「リンディ、提督……?」
どうして、なんて聞けなかった。
当然、フェイトの見舞いにきたのであろうから。
しかし、そうはやてやシャマルたちが聞きたくなるほどに。
彼女は普段の柔和な顔を強張らせ、秘めた決意を胸に抱えた表情をしていた。
ただ重い病を抱えた娘を見舞いに来た母親のそれでは、なかった。
はい、中盤に入りました。
ザフィとアルフについては次回。
>>さばかん氏
あいかわらず独特ですなぁww
>>92氏
>石田先生とアレックス&ランディは三期にでてくるんでしょうか?
その三人組以上に存在そのものが危うい
名前をリンディママンに呼ばれただけのギャレットのことも思い出してあげて下さい><
>>296 76氏、お久しぶりです。スレ開始当初にあなたの書かれていたこの作品がなければ、
このスレはここまで続かなかったと思います。役目が終わりなんていわず、
気が向いたらぜひぜひ投下を。
>>396氏
>女の駆け引き
そ り ゃ あ こ わ い で す と も 。
というかドロドロも捨てがた(ry
>>176氏
アリシア(*´Д`)
だがなんか魔力関係で悲劇のヨカーンorz
なのは達とフェイトの合流はいつになるんだろう・・・。
176氏のも640氏のも悲しい結末になるのかしらん。
なのは本編ってハッピーエンドなんだけども、なんか切ない。
せめてSSくらい…
切なくて涙でてくるのも、なのはらしいけどね。
323 :
さばかん:2006/10/19(木) 22:24:56 ID:XQmOBrIp
みなさんこんばんは。
今回のはちょい暗めな話です。エロ無し。暖かい目で見てくださいね。
「・・・ふむ、まぁこんなもんだろうね」
「・・・・・・」
ユーノは得意気に語り出す。
「真坂、こんなところに罠なんか張るとは思いもしないだろう。敵も昨今僕らの
存在に気づきはじめているだろう。まぁ、そんなことは瑣末だけどね」
「・・・・・・」
その横にいるフェイトは黙って聞く事に徹する。
綺麗に纏められたツインテールを指で絡めて遊んでいる。
「僕らとは別に集めてる奴等のジュエルシードをゲットするって作戦さ。
単純だろ?フェイト。君は持ってるそいつを殺さずに動けなくすればいいんだから・・・」
こくんとまるで突然押された人形みたいに頷く。
暫く黙っていたフェイトはその行為にも飽きたのか、ユーノに訊ねる。
「でも、どうして此処なの?ユーノ。広い場所だったら公園とか、色々あるし」
「ああ、君にはまだ言ってなかったっけ?僕はここ最近そいつらの情報を集めていたのさ。
んで、親しい友人の中でこいつは使えるってのをピックアップしたんだ。
こいつがまた、デカイ学校でね、その子の友人が揃いもそろって金持ちかねもち。
フェイトは知ってるかもしれないけど、僕はね、
金持ちが嫌いなんだ」
さあ来い!罠は腹の中だ!!
「はやてちゃん・・・なんでこんな事を・・・」
監視カメラの死角いる私は、塀によじ登り、縄を下ろして、はやてちゃんが上るのを支える。
「ええんや。こっちの方がスリルあんどサスペンスや!」
これは立派な住居なんたら罪に該当するんじゃないのかな?そう訊ねた。
「親告罪やし、見つかってもリスクは鬼ごっこ程度や」
そう言う問題なんだろうか。って親告罪ってなに?また訊ねた。
「訴えられなければ罪にならんって事や。強姦罪とか強制猥褻(わいせつ)罪とかもそれや」
よいしょと言う声と共にはやてちゃんは上ってきた。運動神経は悪い方では無いらしい。
私達がいる場所は豪邸。もっと詳しく言うなら私達はすずかちゃんの家に不法侵入してるわけだ。
勿論、ボールを投げ入れてあーあって言う展開ではない。
そもそも、そう言う展開になったらボールを返してくれと言う権利が人にはあるのだ。
・・・雑談で申し訳無い。
そのすずかちゃんの家にジュエルシードの反応があったのだ。
もしかしたら部屋に侵入するはめになってしまうのではとも思ったが、僥倖にも、その反応は庭にあるらしい。
そんなスリル感いらないよ、
「うっわー。なんやここ庭っちゅーより、森」
「中に入るともっと広いよ」
「にゃんだと!!!!」
そんなマニアックな台詞だれも覚えてないよ。
すたすたと歩く。私も一度は入ったことはあるけど、一度入った身としてもその森は広い。
「あともう少しやな。なのはちゃんこっちこっち」
「あ、うん」
急に速く動き出すはやてちゃん。そんなにわくわくしていると転びそう。
「ま、待ってよはやてちゃん」
「なのはちゃ〜ん。捕まえてみて〜(はぁと)」
そのテンションについて行く身にもなってほしい。
駆け出すはやてちゃんを追いかける。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
見失った。
「はーやーてーちゃーん!」
「なのはちゃん!!」
あれっ?思ったより声は近くに聞こえる。
からかってるのかな?
「に、逃げて!!!」
その必死な声色は演技とは思えない。おかしい。こんなふざけ方ははじめてだ。
「どうしたの、はやてち、」
言いかけてはやてを視界に捉える。それは、光の鎖が四肢を縛り、動けなくなったはやてちゃんだった。
だが、客観的に見て、しばっているのは体の一部、それで身動きが取れないなんて通常は考えられない。
こんな不思議な事が・・・魔法!?
そう思った時突然、風が狙った用に吹き荒れる。黒い装飾を身にまとった綺麗な少女がそこにいた。
だが、驚いたのはその綺麗な金髪ツインテールでも無く、エロエロな格好でもない。
彼女に不釣合いな大鎌が、私の視界から離れようとしない。
私はそいつが敵だと判断するにはそう時間がかからなかった。
バリアジャケットを装着し、敵に向かう。突き出す拳はひたすら真っ直ぐ。狙うは彼女の鳩尾(みぞおち)
そこを狙えば勝負は速攻でかたが付く。だが、なのはを動かしていたのは勇気でも使命感でもなかった。
単なる恐怖だった。
ガン。有り得ない光景だった。なのはの拳が鳩尾すれすれで止まっている。で、やっと気が付いた。
金髪の少女はなのはの攻撃を防いでいた。大鎌の柄で。
気が付かなかった。大鎌のその無骨な刃しか目に入らなかった。
勝負は最初から決していた。なのははおびえていた。その刃に。それしか見えてなかった。
狼狽する脳では反応するのが遅すぎた。ざくり。
なのはの体を袈裟(けさ)に裂いた。
バタリと地面に倒れる。傷口はまだ浅く、一見戦えるように見える。しかし、なのはは動かない。
彼女は一流の魔法使いでなければ、騎士でもない。有体(ありてい)に言えば、彼女は場数が少なすぎる。
なのははその流れる大量の血で貧血を起こしてしまったのだ。ただし、その貧血は比較的浅いものだ。
問題は心。なのはにとって、こんな大きな傷を負うのも、流すのもはじめてだった。だから、なのはは
自分が比較的軽症だとは思っていない。
勝負が終わった。
「なんだ、あっけない」
その台詞は金髪の少女のものではない。森の影から少年、多分私と同じ位の年頃だろう。
その可愛らしい少年は倒れるなのはちゃんを跨(また)ぎながら私の方へと歩み寄った。
「はじめまして、八神はやてさん。僕の名前はユーノ、よろしくね」
紳士に憧れたような少年は手をうやうやしく動かし頭を下げる。
ああ、こういう奴が慇懃無礼と言うのかもしれない。
そう思えるだけの冷静な考えとなのはちゃんが倒れた事の混乱で私はどうかしてしまった。
「なのはちゃん!!なのはちゃーん!!!」
「大丈夫。殺してないから。フェイトはそんなヘマをしないし僕に従順だ。フェイトは僕の
使い魔(お人形)なんだからね」
そう言ったユーノとか言う変な名前の男の子はフェイトちゃんという可愛らしい、本当に
人形では無いかと思える位の綺麗な子と唇を重ねていた。だが、彼女は断じて人形なんかじゃない!
「離して!」
「いいよ」
そう言って私のバインドを解く。久々に動いたような感覚に感動もせず、私はただ魔法の使用に精神を集中
しようとして、止められた。
「駄目だよ。魔法を使っていいなんて許可はしてないよ」
ジャキと音がするようにその無骨な刃をなのはちゃんの首に当てる。軽く切ったのか赤い血が首筋から流れ、刃が吸血しているようにも見える。
「君に要求する事はただ一つ!ジュエルシードを・・・よこせ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
怒声にも似た最後の台詞。この子の言いたい事は分かる。ジュエルシードをよこさなかったらなのは
ちゃんの命は無いと、そう言いたいらしかった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・無い」
その台詞を言うのが怖くて流れた沈黙も、なのはちゃんの荒い呼吸が私を急かして思ったより早く終わった。
「あーあ。そんなんじゃ、村長からフラワーギフトが貰えないよ。やれ!」
フェイトちゃんは徐に動かした鎌でなのはちゃんの浅い傷口を抉り出す。
「ぐぁあぁ・・・」
叫ぶ気力さえないのか、その慟哭は兎にも聞こえるかどうか微妙な叫びだった。
「止めて、止めてや!!」
「出すものを出したらね」
止めての台詞は延々と繰り返すとユーノは飽きたのか、ヤレヤレとジェスチャーをし、命令した。
「フェイト、次は腕を切り落として」
「止めてや!本当に無いんよ!!私は雇われてるだけで、手に入れた後はそこの機関に渡すから
本当に、本当に持っとらんのよ!!!!!!」
「・・・そっか、バックにいるのは時空管理局だからね。そんな可能性もある。・・・だが、用意出来なかったオトシマエ、つけてもらおうか!!」
腕を振りかざし命令する。
「・・・・・・・・・・・・」
だが、その大鎌は動かない。
「どうしたフェイト!早くそいつの腕を片方、切ってやれよ!!!」
フェイトちゃんは全身を震えさせ主であるユーノにはむかった。
「ユーノ、そこまでしなくちゃ、いけないのかなぁ?」
少年は火山が噴火したように動きを荒くさせた。
彼女の髪を引っ張り地面に倒し、彼女の側頭部に蹴りを見舞った。
「お前・・・家に帰ったら眠れないものと思え・・・」
びくりと体を震えさせた彼女の反応が生々しい。その意味する所を知らなくても、反応だけでどれ程の
ものかは自分なりに想像が付いた。
「帰るぞ!・・・ああ、はやてさん、次に遭った時は、命の保障は無い」
そう言って彼等は消えていった。
意識は失っていなかった私は、呆気無く元気になった。
はやてちゃんの家で私達二人は向かい合って座り。
はやてちゃんが静かに口を開いた。
「・・・なのはちゃん。暫く、考えた方がええ」
「・・・何を?」
「ジュエルシードを集める事」
「・・・なのはちゃん。正直この仕事は簡単なものかと思ってた。でも、それは違った。
不思議な事にジュエルシードの存在を知っている人達がいて、しかもその人達はとっても強い。
・・・これはそもそも私一人の勝手な我侭(わがまま)。なのはちゃんを巻き込んで本当にごめんって思っとる。
だからな、ジュエルシード探索をつづけるか否か。なのはちゃんには考えてほしいんよ」
辛そうに言うはやてちゃんに私は答えた。
「私は、大丈夫、大丈夫だから、だから!」
「せやから!!そう結論を急かさないで欲しいんや。それは、他ならぬなのはちゃん自身の為に」
会話はそれで終わった。
私は悩んでなんかいない。でも・・・私は気が付くとあの戦った少女の事を思い出した。
あんなに強いのになんでそんなに悲しそうな瞳をしてるのか。
はやてちゃんの言う通りだった。私には時間が必要だった。疲れは確実に私を蝕んでいたのだ。
「ねぇちょっと!!!」
ばたんと机を叩く音。それは、アリサちゃんだった。
「最近ぼーっとして、どうしたの?」
ずっと、考えていたんだ。
その彼女の事を考えていた私はいつの間にかその思考範囲は広がっていた。
ジュエルシードを集める事、自分が魔法少女、使い魔である事、これからの事、色々。
「なのはちゃん、悩みがあるんなら私達にでも話してみてよ。解決する事はできないかも知れないけど、
少しは軽くなるかもよ」
そう言ったすずかちゃんの言葉が私の体に浸透していた。
そして、いつの間にか私は全てを話していた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
暫くの沈黙。全て話した。私は、さっきも言ったが、本当に、疲れていたんだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、そうなんだ。なのはも大変な事に巻き込まれたね」
「大変だったね、なのはちゃん」
なんと、信じてくれたのだ。私に次々とかかる優しい言葉。
信じてくれて有難う。
二人の言葉があたたかい。
遊びに行く約束。アリサちゃんとすずかちゃんと。
最近は本当にはやてちゃんとのジュエルシード探索はやっていない。
彼女は本当に私を気遣ってくれていたのだ。
家の前で待っているとアリサちゃんのリムジンがやって来た。
それに乗り、遊びに行く
筈だった。
「なのは、悪いけどその前によって行きたい場所があるんだけどいい?」
「ん?どこ」
その質問には何故かすずかちゃんが答えた。
「うん、病院。実はお稽古の友達がね、入院しちゃったの」
「よかったら、なのはも一緒に来てくれない?」
私は自分ができる最大級の笑顔でうんと答えた。
病院に付き私は待合室でゆっくりと二人の帰りを待っていた。
暫くして、戻ってきた二人。
「なのはちゃんごめん。入院したその子が凄い人見知りで、なのはちゃんには会いたくないって」
「ごめんねなのは。暫く待ってて!」
そりゃあ待つさ。だって、
「うん、私達友達だもんね」
また暫く待つ。適当にそこら辺にある新聞を見るも、内容はろくに頭には入らなかった。
「・・・・・・・・・・・・」
病院独特のにおいを暫く嗅ぐと急にトイレに行きたくなった。
・・・女の子って損だな。新水色時代の台詞が蘇る。
トイレが満員なのだ。男の人には考えられない事だ。
病院は広いので空いている場所もあるだろうと思ったが、ない。
「・・・・・・・・・や、やばーい!!!!このままでは、破水した妊婦状態になってしまうー」
色んな意味で。
「使用が無い。こうなったら・・・た、た・た・た・た・立ちションだ〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
男の子諸君!女の子だってやろうと思えばできるのだ。立ちション。
今、これを見てくれている女の子!覚えは無いですか?
弟にもできるんだから私にもできるって維持を張ってした、立ちション。
行くぞっ!頑張れ女の子!!!!!
「はーっ、すっきりしたー!」
立ちションもたまにはいいもんだ。下ろしていたパンツを穿き直し、スカートも形を整える。
その・・・イメージ崩してごめん。
「・・・・・・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・・・・・・のよっ!」
「だっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わ・・・・・・・ふ・・・・・・・・・・!!!」
「ん?」
口喧嘩だろうか。言い争う声が聞こえる。興味があったのでそこに行ってみる。
そこには見知った二人がいた。ありさちゃんとすずかちゃんだ。
なんで二人ともこんなところに?友達の見舞いじゃなかったの?
「だから!なのはの親にもちゃんと言ってやった方がいいんじゃないかって、そう言ってんのよ!」
「アリサちゃん、もしこれがただの勘違いで、なのはちゃんはただの空想話をしていたって可能性もある
でしょ?もし本当にそうだった時、不快な思いをするのはなのはちゃんもだけど、娘をそういう目で見られ
たってショックに思うのは家族であり、親なんだよ。もう少し冷静になって」
すずかちゃんは冷静にアリサちゃんを宥める。
・・・二人とも、私の事について話してる。・・・不思議と先が読めるような気がして、涙が出かける。
「何度も言わせないで!暫く様子を見るか、それとも直ぐに精神科に相談するかも親の権利なの!
私達はたしかになのはの友人でなのはの事が大好き・・・でも、時間的に言うならなのはを長く
思っているのは親なのよ!娘の事を大切に思っているならそれで傷つくのは当然の事。でも、長い
目で見れば、それはなのはの為だったと割り切れる時もいつかくるんじゃないの?それが、親って
もんじゃないの?」
「・・・アリサちゃん、でも・・・」
口を噤むすずかちゃん。
セイシンカ?セイシンカ?二人とも何を言ってるの?
「ああっ!どうしてこんなことになってしまったの!なのはが意味不明な空想話をする程疲弊して
いたのをなんで私達は気が付いてあげられなかったのよっ…!!
なのは・・・あの子は真っ直ぐな子だから、それ故に脆い。一見元気でいてその実精神は病気で
蝕んでいたっ・・・あの子がショックなのは分かる。精神病ってのは本人は気が付かないって聞いたことがある。そんな目で見られたらって思うとなのはがどれだけ傷付くのか・・・それでも、私はなのはと、その親には
ちゃんと真実を明かしてあげたいのよ」
「だからね、アリサちゃ」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
聞きたくないききたくないききたくないききたくないききたくないききたくないききたくないききたくない
ききたくないききたくないききたくないききたくないききたくないききたくないききたくない!!!!!!
「「!!!!なのは(ちゃん)」」
私に気付いた二人は追いかけてくる。運動が得意なすずかちゃんに敵うはずが無くあっけなく捕まってしまう。
「離して・・・はなしてはなしてはなして!!!」
必死に振り解こうとするもしっかりと掴んだ手は離れない。
「なのはちゃん、落ち着いて」
「本当なんだ、本当なんだ!」
私は頭が捥げる位強く頭を振った。
「じゃあ魔法とやらをつかってみなさいよ!!」
アリサちゃんは突っぱねるように厳しく言った。
「え・・・それは」
無理だ。私ははやてちゃんの使い魔で、私が魔法を使えるのははやてちゃんが使っていいと
言った時だけだ。
そして、一番守らなくてはならない事、それは、魔法を秘密にする事。それは、魔法でだれかを巻き込まないと言うちゃんとした理由だった。
それをやぶってはならない事は絶対だった。それをばらすのに魔法を使う事をはやてちゃんが
許可するはずも無かった。
そして、そんな正当な理由とは別に私は魔法の事については話すべきではなかったと思った。
だって、二人は私の友人である以前に常識ある人間なんだ。
いくら友達の言うことだって信じるべき事と信じるべきではない事がある。
だからこれは当然の結果だった。
「ほら!・・・なのは、ちゃんと見てもらおう。大丈夫、だって、私達、
友達でしょ?」
ナイフと思える程鋭い痛みが心に走った。
「うわあああああああああああああああああああああああああああ」
どんとすずかちゃんを地面に倒す。その隙を見逃すはずも無く私は病院の敷地を後にした。
信じてたのに
つづく☆
さばかん氏ってFPS系のゲーム好きそう。ポスタル2とか。
>>330 洋ゲーやる人しか知らないようなタイトルをw
まぁ有名だけどさ。
まぁなんとなく思わせる描写があるけど。
332 :
さばかん:2006/10/20(金) 19:02:40 ID:AvJiodp1
>>330 いやー知りません。そんなに有名なんですか?
あの雲のように
無愛想な用心棒
第二幕
久方ぶりの人ごみはやはり鬱陶しい程度の認識しかなくて。
老若男女、ありとあらゆる人種が入り混じる人海を泳ぐのはいささか辛い。
丁度、市場が活性化する時間と鉢合わせになってしまったのが拍車をかける。
「…………」
耳に飛び込むは威勢のいい男の声。
自慢の品をあの手この手の売り文句で売りつける様は今のシグナムにとってはどちらかといえば不快な雑音に近い。
だがそれ以上にシグナムを悩ますのが
「なぜ……ついてくる?」
親を追うひな鳥か、はたまた背後霊なのか。
兎にも角にもピッタリと後ろに張り付いている半端魔導師。
「はぁ……いきなりそう言われましても」
「言っておくが旅の従者にした覚えは無いぞ」
「私も覚えがないですね」
「…………」
駄目だ、この女……天然だ。
何を言っても徒労に終わる――そんな結論をさっさと出してシグナムは再び雑踏の中を歩き出す。
勿論、あの魔導師も後ろをついて来る。どんなに歩を速めてもそれは変わらない。
振り切ろうと思えば振り切れるだろう。だがこの何するでもなく彷徨う人の群れが激しく邪魔だ。
「ほんと人が多いですね〜、私が来た町とは大違いですよ」
これは自分に向けて投げかけられた言葉なのだろう。まさか一人で言っているのなら相当な変人だ。
今でも十分に、自分の中では変人なのだが。
「東から来たのか?」
「そうですね、このまま西の果てまで行ってしまおうかな何て思ってまして」
お情けでかけた言葉でも彼女にとってはそれは嬉しいものらしい。
耳には、弾んだ声がしばらく聞こえていた。
「その長旅に備えなしか……馬鹿か、おまえは」
大体だ。西の果てなど明確な終着駅もないくせにどうするつもりなのか。子供の遠足とは違うのだ。
当てのない旅など
「放浪ですよね。これ世間一般で言う」
「っ……わかってるなら止めておけ。悪いことは言わん」
心を読まれたか? まさかそんなはずはない。これでもその手の魔法に対してはそれなりに免疫をつけている。
単なる偶然。よくあることだ。
突然の不意打ちであったがシグナムはそれ以上気に留めることなく雑踏の波を掻き分けていった。
「そういえば宿、どうします?」
「野宿に決まっているだろう」
「……本気ですか」
あいにく放浪の身。路銀の工面で精一杯だというのにこの期に及んで宿泊とはどういう神経をしているのか。
自然と次に出た言葉は少なからず怒気をはらんでいた。
「贅沢は敵だ」
「そうですか……でもどの道、これからのお金の備えもないんじゃないんですか?」
また心を読まれた。
「獣の皮や骨を売ればその日ぐらいの稼ぎはできる」
肩から下げた麻袋の中にはもう腹から腸に行ってるであろう火竜の生き別れが入っている。
竜の骨や皮は武具や装飾品の材料として高く売れる。自分の腕に自信を持つそれがしの人間なら誰しも一度は手を出すだろう。
加えるなら竜退治は己の強さを端的に表す物差しともなる。以前属していた騎士団の紋章も竜をモチーフにしたものであることからもそれが良く分かる。
しかし悲しいかな。今の彼女にとって地位や名声などどうでもよく、ただ飯代さえ稼げればというのが本音だ。
その程度にしか認識されない竜は溜まったものではないだろうが。
「私はベッドのほうがいいですね」
「なら一人で寝ればいい。言える口があるのだから金もあるのだろう?」
そうすればここでこの妙な天然ともお別れができる。
市場を抜け広場に出る。目の前には噴水、左右に分かれ道。
「もちろんですよ……これから一気に稼ぐんですから」
「…………は?」
またこいつは何言ったか。
耳が馬鹿になっていないと仮定するなら「稼ぐ」と、確かにそう聞こえた。
……喧騒で聞き間違えた。そう思うことにしよう。
「この際ですし一緒にやりません?」
そうだ聞き間違いだ。
どうやら耳の調子が非常におかしいらしい。我が愛剣ではないが整備の必要、有りだ。
「たぶんあなたがいれば百人力、鬼に金棒ですよ」
絶対に聞き間違いだ。
自分と組んで仕事をしたいなどと戯言に決まっているであろう。
「生憎人と戯れるのは苦手で――」
「前はあなたが、後ろは私が。攻防共に完璧じゃないですか」
「そ、そうか。だがそれでも――」
「小さい街ですけどいくつか目処は立ってますし。きっと一週間くらいのお金なら稼げるはずです」
「…………」
額に手をやる。汗を拭きたいわけではない、頭痛がしたからだ。
話が見えない。全く見えない。
素性は知れない。騎士でもない。
挙句の果てには魔導師としても半人前。そうだ、変人だ。
誰が進んで藪を突つきたがるのだ。その女が持ちかけてくる話なのだぞシグナム。
(甘い言葉に乗せられるな……精進だ、精進!)
しかしだ……。
――おおよそ一週間の路銀。
この女の性格なら一週間でも放浪暦がそれなりの自分に言わせて貰えばおそらく三週間は持たせられる。
共同の仕事ならば取り分は半分。それでも一週間以上持たせられる。
「人の心は人の生活をしてからこそ。身なりだって整えて。その縛ってぶら下げてるだけじゃ髪だって可愛そうですよ」
彼女の声の矛先が変わった。
そんなことは百も承知の余計なお世話だ。
勲章代わりの傷を蓄えた――なんて言うには少し無理があるサビ、ヒビに彩られた甲冑。
無精を重ねて伸びた紫髪は麻紐で適当に一本へ。
毛並み乱れ、あまりに品が無い馬尾である。
「放浪者というより浮浪者ですからね」
「…………」
騎士道とは真っ直ぐな心構えに。
いつか説かれた教えが脳裏を掠めていくものの、今更騎士の身分を剥奪された身だ。
別にいいだろ。私の勝手だ。
そりゃあ自分でも多少はまずいかな……とは思っていますが。
(そんなこと口に出してみろ)
取りあえずの自問自答。
おそらくこの女のろくでもない仕事に連行され、辛うじて残っている恥や外聞の欠片を捨てることになるだろう。
それこそ人間として生きていられない。
「ダイヤモンドの原石って磨けば磨くほど輝きますし」
一方的な思い込みだ。
そんなに研磨してみろ。最後に残るのは指先程度の欠片やも知れないぞ。
もったいないことこの上なし。
「取りあえず磨くなら他を当たれ。私を磨いてもサビしかでんぞ」
「さて、それはどうでしょうね」
今度は声色が変わった。妙なくらいの寝こなで声。
なんだか背筋がゾクゾク冷えるのは気のせいなのか。
「おっきい胸なんですし」
――はぁ?
「寝てる間にちょっとだけ触らせてもらいました」
後ろのこいつは何をほざいた。
寝こみを襲った?
襲えるものか、騎士なのだぞ。
いつ何時命が危険に晒されても飛び起きれるくらい用心はしているのだぞ。
それを……触っただと。
「私より大きいんですよね」
寂しげに呟いて、しかし口元は怪しく微笑んで。
シグナム自身、胸の大きさについては邪魔な重り程度の認識しかない。元から騎士という身分で育ったせいか女性としての恥じらいはかなり薄い。
「き、ききき……貴様」
否――シグナムは立派な女性である。
騎士であっても、鎧の下に隠しているのは惑うことなき乙女の心。
幼きころから騎士として、武人として生きる道を選んだ彼女ほど純粋な心の持ち主はいない。
「あ〜あ、自分でもそこそこあると思ってましたのに」
「じょ、冗談も大概に」
ある意味堅苦しい世界で生きてきたシグナム。そのおかげで年頃の少女がそれなりに興味を持つ話題に触れる機会も皆無であった。
彼女といえばそのころ――今でもそうなのだが――触れていたものは剣のみという。
勘違いしないでほしいのは何もかも知らない箱入り娘というわけでは無いということだけ。
「あんなぐーぐー無防備に寝られていたんじゃ揉んで下さいって言ってるようなものですよ」
知識としては知っている。ちゃんと知っている。知っているだけだ。
悲しいかな実践経験はゼロ。結果的にシグナム自身の中でその手の色恋事というものは自然と神格化されてしまい……。
騎士道手伝い、貞操観念は金剛石の如し。
「そ、そんなわけない……私は昨日は」
「美味しい食べ物を食べて、満足しちゃって、ぐうすかぴー」
不覚! 一生の不覚!!
なぜよりにもよってこんな女に弱みを見せた愚か者!!
と、後悔先に立たずなのは言うまでも無い。
「嫌ならいいんですけどね……」
「初めから願い下げだ!」
「じゃあ額を訂正します。……ごほん! 二週間分でも?」
「うぐ……」
ああ、悪魔が手招きをしている。
だがそんな取引絶対にしてはならないと、善の自分が警鐘を鳴らしている。
「そんなえっちぃお仕事じゃありませんよ。れっきとした日の当たりまくりなお仕事です」
なら悪いことは言わない。多少のことには目を瞑れ。
悪の自分が囁いている。
「大方、騎士道だけ馬鹿の一つ覚えみたいに学んできたんでしょう?」
だからなんでそこまで心内に入り込んでくる。
不快を通り越して呆然といったところ。
「社会勉強ですよ。さぁ、行きましょう」
いつの間にか腕を引っ張られ景色が動き出していた。
拒否の意思は――切り伏せられていた。
「二週間分なら……仕方あるまい」
他でもない悪の意思に。
……生きる意志に。
そういうわけで――。
「…………なぜ……こんな……格好を……」
連れてこられて、着替えさせられて。
あれほど埃に塗れた髪が嘘のように輝いていて。魔法は染髪すら凌駕するのかと茫然自失。
「だからそういう系な魔法は得意なんですよ〜」
それ以上に受け止めきれない現実。間延びした声は背中で受けるが精一杯。
「さぁ、今日一日頑張りましょう! 目標三週間分の路銀!!」
額が引きあがっているのは……多分気のせいだ。
緊張に凍結したシグナムを面白おかしく彼女は見据え、どこから出したか純白なエプロン姿で腕を捲くる。
なかなか広く、動きやすい厨房に満足し、握るは包丁。
意気込む彼女とは正反対に満足に笑みすら浮かべられないシグナム。
「こ、ここ、こんな甲冑で……敵の攻撃を……受けきれるか」
確かに動きやすい。極限まで削り取った装甲、速さを追求した成れの果て。
「だい……たいこれは……なんだ……?」
下半身を守護するそれは世間一般でいうミニスカート。
嫌なくらいの清涼感が足全体を包んだ。
赤い靴は具足とは比べ物にならないほどに軽く、羽のよう。
甲冑とは程遠い前掛けに白に赤のラインが入った服は薄く、やはり軽かった。
「どんな敵を……相手にするというのだ」
前へ張り出す二つの隆起は服をはち切らんばかりに押し上げて。
前を止めるボタンは辛うじて耐えてくれるのが不幸中の幸い。
甲冑でないことぐらい最初の最初からわかりきっていた……。
でも信じたかった。甲冑だと。
「やっぱりサイズぎりぎりですか〜?」
視線はまな板、リズミカルにステップを踏む包丁へ。
すでにシグナムを見ていない。
「大丈夫ですよ、メニュー聞いて運ぶだけですから」
頼りない励ましはすでに耳に届かず。
「私は……やはり……ベルカの騎士……なの……だ」
愛剣の変わりに握られた白銀の盆がこれでもかというくらいに細かく震えていた。
やがて襲い来る幾多の刺客。
敵は多く、激しく、強くて――。
日が暮れ、さらなる喧騒が襲い掛かっても屈しはしない。
勝機は必ず訪れる。
不器用に、ただそれだけを騎士は待ち、脆弱な甲冑で大地を駆けた。
そうして戦は終わった……。
「驚きました……四週間分です」
限りない路銀を懐に蓄えて。
「ベルカの騎士……これしきのことで負けは……しない」
シルクのベッドに身を横たえて
「やっぱり私の思ったとおりです!」
賞賛の声を聞き流す彼女の顔は無理な笑顔が祟りひどく引きつっていた。
代償にしたのは騎士道と羞恥。
もういやだ、やりたくない。
そんな感情すら浮かべられないほどに彼女は陥落していた。
後の烈火の将シグナム――十八歳、一夏の経験だった。
好き勝手な主(予定)に振り回されるシグナム
彼女のおっぱいはいつの時代も人を魅了するのであった
なんて感じでどうなるんでしょうね、あっははは
>>640氏
フェイトやっぱり……ですか?
時の庭園に何があるかで変わるんでしょうけど
プレシアもアリシアも次元の彼方……
>>さばかん氏
ポスタルとはお使いをするゲームです
ただのお使いですから、はい
アリシアもリニスも悲劇にはさせません
最終的にはハッピーエンドになるはずです、どんな形になろうとも
そこまで転がり落ちる時は転がり落ちますけど
なのはたちとの合流はもう一話挿んでからですね
大事件をお土産に、ですが
>>396氏GJ!
心理戦が面白かったです(二戦とも)。
これからの管理局勢と、ウィリアス一味、微妙な立場になってしまった
ユーノの戦いが楽しみです。
>>640氏GJ!
つらい…!
なんか時の庭園に光明がありそうな気もしますが、そこに届くまでに
またなにかありそうで。
最後は助けてあげてくださいねー…。
>>さばかん氏
リリカルポスタル2。
ATMで金おろそうとしたが行列。やっとあと1人って
とこで前のおじさんが操作に手惑い、係員呼んでグダグダ。
それにぶち切れたなのはが・・ってやつ。
344 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/21(土) 18:55:33 ID:FOoVH66C
保守
345 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/24(火) 10:10:14 ID:ur/v5YT2
保守パートU
なんかなんの脈絡もなく急に止まったな。
封時結界ですか。
きっとみんなで乱交とかしてるんじゃないですかね
はやて「リインホシュってどうや?ええ名前やろ」
349 :
そうだフェイトに1票@ピンキー:2006/10/26(木) 01:13:00 ID:CBcks9BM
リイン「それはどうかと思います…。マイスターはやて」
「嘘!!そんなの、嘘よ!!」
アリサが、叫んだ。
涙を撒き散らして首を振りたくり、白い両手をきつく握りしめて。
───言葉を発したのは、彼女だけだった。
他は、皆。
はやても。
シャマルも。
すずかも。
シグナムも。
ヴィータさえもが、口を噤み。
ベッド横の椅子に座り俯く、リンディと、身を起こして首を振るフェイトの告白を、
信じられぬという眼差しで見つめながら聞いていた。
「本当、だよ。全部。なにもかも全て、事実なんだ」
何を、考えているのか。
細めた目で己の、こころなしか水気が少し失われたように思える右掌を見下ろし、
フェイトは軽く笑みさえも浮かべる。
「私がいなくなる前に、知っておいてほしかったんだ。隠したままには、したくなかった」
故に、リンディも語ったのだ。彼女の意志を尊重したからこそ。
また、だからこそ語るのを渋ったのだ。知ったところで、どうにもなるものではないからこそ。
シャマルはそのことに思い至り、目尻に滲む涙をつぶすようにきつく両目を閉じて、
顔を背ける。
「私は、誰の身体から生まれたわけでもない。アリシア・テスタロッサの不完全なクローン……それが、私だってことを」
彼女の顔には、満ち足りた笑顔、ただそれだけがあった。
見ている者たちにとってそれは、何故だか寒々しいものに見えてしょうがなかった。
魔法少女リリカルなのはA’s −the day−
第七話 光に、ついて
「高町小隊長ですか?少々お待ち下さい」
ほぼ、同時刻のこと。
ユーノは拾った一枚の書類を届けるために、武装隊のオフィスが連なる区画を訪れていた。
なのはの預かる小隊のそれは、その一番隅に配置されている。
「申し訳ありません。本日は既に退勤されてしまっているようです」
「そうですか」
一口に武装隊といっても、ただ戦闘や鎮圧に出撃するだけではない。
部隊編成や、勤務シフトの作成。報告書から、補充申請など。
デスクワークの量だってもちろんそれなりに多い。なのはのように隊長クラスともなれば、なおさら。
だから小隊長たるなのはのデスクをはじめとし多くの隊員たちが平時に利用するここは、
他の戦闘とは無関係な部署と、一見見ただけでは殆ど変わりはない。
雑然と書類が積み上げられた机が並び、棚には分厚い本やファイルが並ぶ。
……よくよく見れば壁に緊急用の転送装置や高出力の通信機が並んでいたり、
出撃時の混乱が少ないようにと他の部署に比べ通路が広めにとられている点など、細かい違いもあるのだが。
書類を届けるついでに会えるかとも思っていたが、生憎と彼女は既に帰宅したあとだった。
また、彼女が落としていったと思しき書類は隊長クラスでなければ扱ってはならないものらしく、
受け取れない隊員は、すまなそうに頭を下げる。
「明日、また来ます」
「お手数をおかけして、申し訳ありません。そうしていただけますか」
応対に出た隊員とは、初対面だった。というよりも彼女の部下を殆ど、ユーノは知らない。
思えば、ユーノはここに数えるほどしか来たことがなかった。
忙しかったというのもあるけれど、自分が赴いて、なのはとの間に変な噂が立って
迷惑をかけてはいけないと思っていたからだ。
無限書庫の司書と、武装隊隊長。局員たちの噂の火種となるには、十分であろう。
また、基本的にはなのはのほうから無限書庫に訪ねてくることのほうが多かった。
「じゃあ、明日の昼にまた来ます」
「はい。……明日でしたら、まだいらっしゃいますので」
「まだ?」
───『まだ』?妙にひっかかる隊員の言い方に疑問を覚えた彼は、眉を顰めた。
異動するという話は、本人からも聞いてはいないが。なにかあったのだろうか。
「ああ、いえ。明後日から一週間、有給をとられるとお聞きしていますので」
「有給?なの……高町隊長がですか?」
「ええ、隊の者にいない間の引継ぎのことで話しておられましたから」
「はあ」
それも、初耳だ。
確かに、最近の彼女はフェイトのことを忘れようとするあまり、働きすぎていた。
だがだからといって、それで体力に限界がきたとしてあのなのはが、休もうとするだろうか。
(……いや、ないな)
まずあり得ない。なのはなら限界であったとしても、無視する。
無視して、倒れて。きっと無理を承知で働き、戦い続ける。
なによりもそれを本人が、望んでいたのだから。
そうでもしないかぎり、眠れないと。
言っていたのは本人ではないか。
友が苦しんでいる中、ゆっくり休んでいられるような性格ではない。
「わかりました。ありがとうございます、それじゃ」
「またお待ちしています」
局の上下関係がある以上やむを得ないとはいえ、遥かに年下の自分へと丁寧に接してくれた
隊員に別れを告げ、ユーノは踵を返す。
(……なのは、一体何を考えてるんだ……?)
やはりアレは、なのはで間違いなかったのだと思う。
だが、確かにやってきていたはずなのに、顔すらあわせず。
歩きながらユーノは首を捻る。
姿すら見せずに去っていった彼女のことが、隊員から聞いた話への違和感と重なって、どうにも頭から離れなかった。
****
右手にすっぽりとおさまるくらいのグラスの中で、氷がからんと音を立てた。
「……エイミィ、か」
気付かぬうちに眠っていたらしい。
氷が溶けたのと彼女が入ってくる気配とで、目覚めたようだ。
「ダメだよ、クロノくん。未成年でしょ?」
「……知るか。いいだろ、ミッドでは酒は18歳からOKのはずだが」
「家は海鳴なんだから、日本の法律にあわせなきゃだめでしょ」
エイミィの背後で自動ドアが閉まると、机の上の小さな明かりしか点いていない
艦長室は、殆ど真っ暗となる。
歩み寄ってくる彼女に目もくれずに、デスク上のグラスへとクロノは手を伸ばす。
まだ半分近く、中身は残っていた。
「ダメだってば」
「うるさいな、僕の勝手だろう」
「……もう」
呷ったグラスをデスク上に戻すと、今度はそれをエイミィが取り上げた。
小言でも言われるのかとぼんやりと見上げたクロノに対し、彼女は無言で
それを口につけ、一気に残りを飲み干す。
「あ、おい」
「こほっ」
結構強い酒だ。顔からグラスを離したエイミィは、眉を寄せて咳き込んだ。
「……これで、もう飲めないよね」
「無茶をするやつだな、キミは……」
ボトルも、没収。
ずしりと重い瓶を片手に、机に体重を任せ寄りかかる。
ちょうどクロノの斜め前で、壁を向いている形になり、
ほんのりアルコールで赤く染まったその顔は見えなくなる。
「……フェイトちゃんに、怒られちゃうよ。お酒に逃げるなんて、お兄ちゃんらしくないよ、って」
「……」
互いに、恋人がどんな表情をしているのかはわからなかった。
淡いライトの光を見つめ、クロノがぽつりとつぶやく。
「らしくなくたって……飲まなきゃ、やってられないんだ」
「……」
「彼女に……あの子に、執務官になる道を提示してなかったらと思うと」
「クロノくん」
「普通の……女の子として。ただの、うちの妹として生きる道を選ぶよう勧めていたら」
このようなことにはならなかったのではないか。
彼女がリンカーコアに負担をかけ続けることもなかった。
「……いや。せめて。せめて、もっと楽な仕事をさせてやっていたら……!!」
「やめて」
自責が、声を荒げさせる。
もっと、できることが。すべきことがあったはずだという悔恨の念が、そうさせる。
次第に大きくなっていく彼の声量を遮るように、エイミィは短く言った。
「……やめようよ。クロノくんが自分を責めても、なんにもならないよ」
「エイミィ……だが、僕は」
「頼まれたの。『お兄ちゃんのこと、お願い』って。フェイ……ト、ちゃん、笑って……くれてたんだよ?」
「エイミィ」
エイミィは泣いているのだろう。
気付いてもクロノはただ、俯くしかできない。彼女が鼻をすする音を聞きながら。
「だから……ね?そんなに、責めないで。責めちゃだめ、だよ」
「……」
「ねえ、クロノくん……」
「……ああ」
「ほんとうにもう、どうしようもないのかなぁ……?」
暗い室内でも、肩を彼女が震わせているのがわかる。
唇を噛み、やはりクロノは自分を責めずにはおれない。
自分がもっとしっかりした兄で、上司であったなら。
彼女の涙も、妹を待つ終焉も、迎えることはなかったのではないか、と。
かえって、自責が増幅される。
「……あ」
「っ」
二人の時間を裂くように、机上の通信機が電子音を立てる。
ごしごしと制服の袖で顔を拭うエイミィに申し訳なく思いつつも、
渋々クロノは通話機を手に取った。
「私だ」
同時に展開された映像ウインドウに眼鏡の少年が現れるまで、そう時間はかからなかった。
ま、仕事中は一人称「私」でしょうってことで、クロノ。
フェイト最萌え決勝目指してがんがれ。・・・あ、ザフィとアルフわすれた(ぉ
次回はかならずorz
>>さばかん氏
ポスタルは健全ですよ?・・・・・・きっと(あとは察してください
>>176氏
シグナムかわいいよシグナム
かっこいいのもいいけどいじられるシグナムはすばらしい
>>354 乙です。
>>ポスタルは健全
本国で発売禁止になったのでは・・・
以前なのはスキン作ろうとして挫折した人がいましたよw
356 :
さばかん:2006/10/28(土) 00:21:45 ID:9krk7fiv
みなさんこんばんは。今回はちょい長めです、すみません。
今回は6つのパロディがあります。(多分全問正解は無理)貴方は見つけられるかな?
5つは分かると思います。一つだけヒント。古い映画が元になった奴もあります。
いや、ごめんなさい。ちなみに、なのはのパロなんてオチは無いですよ。
ソフマップの帰りの私は想像以上の荷物に驚いていた。
「うわーっ・・・何ヶ月も発売延期になったせいやろか?特典が滅茶苦茶多い」
私は発売したゲームを開店時間に買い、その特典の多さにびびった。
ゲームパッケージよりデカイ。
「家に帰って早速ヘイヘヘイや」
ルンルン気分で帰る私の前に突然なのはちゃんが出てきて私の
胸に抱きついた・・・突然の事で上手く対応ができなかった。
「どうしたんやなのはちゃん。突然熱い抱擁とは、」
言葉を続けよぷとして、止まった。
私の胸が熱い。それは体温では無く、まるで滲んだ情熱の
ように濡れている・・・涙だった。
「ううっ・・・ぐずっ・・・はやて、ちゃ、ん」
その漏れる声さえ、他の人には聞かれたくない。広がるそんな情熱。
「どうしたん、なのはちゃん?」
事由は直に分かった。見覚えのある二人の少女が、荒い息を撒き散らし、
私の正面に止まった。
「こんにちは、みんなもソフマップでゲーム買いにいくんか?
予約しとるなら問題無いけど、してなくても結構多めに用意されててな、
初回限定もゲットするチャンスや!」
「なのはを渡して」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
茶化しさえ聞かないアリサちゃんは荒い息をそのままに言った。
「なのはは病気なの。だからお医者様に見せに行く」
簡素な言葉で表す。いや、簡素でしか表せないのだろう。
彼女の心にも体にも気力は僅かしかない。なんとなくそう思った。
「病気?なのはちゃんが?どこをどうみたって健康そのものや」
忌まわしいと言わんばかりに下唇を咬む。
その後ろにボンヤリと浮かぶすずかちゃんの辛そうな顔が、視界
から離れなかった。
「だから困ってるのよ!!なのははね、精神的に病気なのよ!!!
ああ!!もうヤケよ!!!話してあげる。
なのははね、自分がある日貴女に殺されて使い魔になって、
魔法少女になったって事をね、なんの冗談もこめずに真剣に
こっちが痛くなる位の顔で真剣に言ったの!!!
私達がもっと早く気付いてあげられたなら・・・そんな後悔を何度も
したけど、もういいの。そんな事は過去にできるだけの強さが人間
にあると信じるわ。・・・分かった?分かったならなのはを渡して」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんな」
あやまったのは誰かの為じゃない。この3人のあったかい友情にだ
った。
こうなるかもしれないとは思っていたんだ。私の目的に不本意につい
てきてくれたなのはちゃんは強い子だけど、だからこそ、自分の弱さに
はにぶかった。
こんなイヤな予感しか当たらないなんて・・・運が悪いんじゃない。
全て、私のせいだ。
「ごめんって・・・どう言うことよ!!真坂(まさか)貴女がなのはを
こんな状態にしたんじゃないでしょうね!!!」
掴みかかるアリサちゃん。それを挟むように動かない二人の少女。
私はただ、トンと。アリサちゃんの額に人差し指で優しく触れる。
その人差し指で倒れるアリサちゃん。言わずもがな魔法だった。
ばさっと倒れる彼女を腕で支え、適当な塀に体をもたれさせた。
「ア・・・アリサちゃん!!!」
そう言って彼女に駆け寄ろうとしたすずかちゃんの道を遮る。
「ひっ・・・!」
力が抜けて膝を崩した彼女に言う。
「すずかちゃん・・・質問に答えてな。・・・ブロッコリーとカリフラワー
どっちが緑色でしょうか?」
「え・・・ブロッコリ・・・・・・・・・・・」
トン。さっきと同じように倒れる。倒れる前に少しでも安心
させようとして、言った言葉だった。
「ン・・・」
目覚めた私はいつの間にかベッドにいて、その横には
はやてちゃんがトランプ片手に起きた私を見つめていた。
「おはようなのはちゃん。カードゲーム、得意?」
「・・・やる気もしないし、苦手」
「私は得意」
トランプをショットガンシャッフルして、私にカードを数枚渡す。
「3セット勝負や、ポイントが高い方が勝ち!」
そう言ってメモをとるはやてちゃん。
仕方なくノリで参加する。
「あ・・・それ、捨てるの?アガリっ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
なんのゲームだかさっぱり分からない。
それに、なんで急にゲームなのだろうか。
「ますは私の勝ー!!」
カキカキとメモを取る。・・・覚えている。
アリサちゃんとすずかちゃんに追いかけられて、現実から
逃れるように眠ってしまった事を。
「ん?やめちゃうの、なのはちゃん。今度は良い手やよ」
私に無理矢理渡す。・・・良い手なのかどうか分からない。
「・・・あの二人なら、病院の庭のベンチで眠らせてある。
勿論、記憶も消してある」
カードをいじりながら言う。
「・・・ごめんね、はやてちゃん。私、言っちゃたんだ」
はやてちゃんはにっこり笑って。
「魔法の事を一方的に言ってはいけないって頼んだのは
私の我侭や。それを遵守(じゅんしゅ)する事は無いよ」
「・・・本当に、ごめんなさい」
「それは私の台詞。魔法少女、やめよう。
私は貴女達の友情を汚した。元より私の我侭。
端から守ってもらう必要なんて・・・無かったんやよ
なのはちゃん・・・申し訳無い事をして、本当に済まなかったって思う!!」
頭を下げるはやてちゃんをよそに、
「止めないよ・・・だって、今の私に出来る打開策は
勝つ事さ!!」
私はカードを捨てた。
「・・・なのはちゃん?」
「私、ずっと考えたんだ。色んな事。そしてね、分かったんだ。
私にやるべき事は逃げることじゃない!
戦う事。そして、勝つ事!!!
もし、私が今逃げたりしたら、全てが駄目になると思う。
友情も・・・そして、あの悲しい目をした女の子の事も、全部!
私の未来に翳りは残さない。やるなら精一杯!!」
「あ・・・なのはちゃん、ふっきれるの、早くない?」
「うん、女の子だからね!空元気かも知れないけど、いいの!
悩むのは、もうおしまーい!!!」
「ごめん、アガリ」
「あ」
「強くなりたい?」
「うん!」
カードゲームを終え、私は、はやてちゃんがつくってくれたチャーハンを
かっこむ。
「だったら、明日の早朝5時、時空管理局にいこか」
言われて来た公園にはやてちゃんは待っていた。
「おーはーよーっ!」
あいかわらずテンションが高いはやてちゃん。
「うん、おーはーよっ!!」
私も負けじと挨拶。
「それじゃあ行こうか、時空管理局へ」
「って、ただの公園だよ?」
どこにでもある何のへんてつも無い公園。
「場所はどこでもええねん。魔法を見られない場所だったらどこでも」
「・・・そうなんだ」
こほんと咳払いをして
「めんま!」
「え?」
あの美味しい、ラーメンに入ってる奴だー。
そう言った瞬間、空間に歪みが発生して、トンネル並の大きさの穴が生まれた。
「さ、いこか」
「・・・めんまって」
まぁいいか。
目をあけた瞬間、私はワクワクしてしまった。近未来っぽい!
「ここはアースラ。宇宙戦艦みたいなもんや」
「おー」
「おい」
「おおおおおおーーーーーー」
「おい!!!」
「わっ!」
突然の大声にビックリする。
「あっクロノ君こんにちはー」
はやてちゃんの暖かい挨拶につっけんどんに言い返す。
「あのね!来るならもっと遅くしてくれないか?僕もまだ寝起きなんだよ。
全く・・・いい加減にしてくれ」
「んー・・・眠たいよ、クロノ君」
クロノ君と名乗った男の子の横には、えらくスタイルの良い女の子人がいた。
ただし、髪の毛が飛んでいる。
「エィミィ、眠たいのは君だけじゃないんだぞ・・・」
「ケィミィ!!!ほぉーそんな姿だったとは、なんでいっつも透明なん?」
「そのボケ止めて。なんか腹立つから」
会話を聞いてるのもなんだし、私は挨拶する事にした。
「は・・・はじめまして、なのはっていいます。
「僕はクロノ、そっちのはエィミィ」
簡素な紹介が終わる。
「色んな面倒をはぶいて行こうか、眠いし。はやて、トレーニングルームに用があるんだろ」
「そうや」
「転送」
だだっ広い広場に転送された私、上には、クロノくんとはやてちゃんがいる。
まるで流れ作業を見学するみたいな場所だなぁとも思った。
ピ・ポ・パ・ポ〜♪アラエボでは無い。その音の後、エィミィさんの声が聞こえた。
「は〜いなのはちゃん。ここはトレーニングルーム略してトレム。ここの主な目的は架空戦闘
をすること。以下省略、眠い・・・ぐ〜」
・・・大丈夫かなぁ私。そう思った瞬間、私は反射的にバリアジャケットを装着する。
現れた人影・・・間違える訳が無い、それは、私自身だった。
襲い掛かる架空の私、繰り出す拳をかわすが、かわしきれたのは僅か一撃。
それ以外に容赦無く命中する。
なんで、私自身が!?
いや、これはそもそも私なのかどうかさえ疑問だった。その技の重さ、到底私の技とは
思えない。
それでも立ち向かう!その先に強さがあるのなら。
「いやああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
気合の声と共に繰り出す拳は空を切るばかりで当たらない。
「まだまだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!」
「はやて、何を企んでいる」
硝子張りの壁の下をゆっくりと眺めているクロノくん。
「ねてる?」
「寝たい、つーか寝させろ」
「もうちょい付き合って」
「はいはい」
「クロノくん。素人の拳と達人の拳の違い、分かる?」
クロノくんはあっさりと答える。
「強さ」
「らしくない答えやなぁ」
「むっ、じゃあなんだ。伺うよ」
目を開いて確かな強さで答える。
「素人の拳はただの知識でしかない。人間っていうのはすべからく
凡庸性に欠けるものや。歩く事さえ、誰かのまねっこや。
その拳を打つ行為だって、誰かの真似。
それは、所詮知識。それを究明しようともしない。
達人の拳は技。何百何千何万回も打つ拳。
その過程で見つめる拳は、最早知識の領域をたしかに超えた
確かな技。たんに腕力を鍛えた奴の拳と格闘技の達人の拳は全然
ちゃうでー」
「で?」
寝起きで相当期限が悪いのか、私の語りにも冷たい。
「むっ、冷たいなぁ。詰まりなのはちゃんの拳は知識の領域でしかないって
事や。彼女に足らないのは経験だけ。
そのための架空戦闘や。なのはちゃんと戦わせてるなのはちゃんは
全く同じ能力や。ただ、その技の鋭さは一流そのもの」
クロノくんは寝起きの悪さもきき、反論する。
「詰まり、同じ能力でも、使いようでは究極、と言う事か。
君の理論だと、全ての人間はコツ次第でバク宙ができるんじゃないか?」
「ん、できるやろ?」
「ある程度鍛えないと無理だろ」
硝子に寄りかかりクロノくんは背を伸ばす。
「それは精神論だよはやて。達人は体がなんぼじゃないか。どんなに
格闘技のセンスがしょぼくったって、力が凄い強いなら、拳を極める必要なんかない」
私はなんとなくむかっとしてクロノくんの頭をぽかっと叩いた。
「いたっ!」
私はクロノくんの目の前で確かな気持ちで自分なりの結論を出した。
「一つだけじゃ駄目や。力だけでも、技だけでも、経験だけでも。
それを全てもっていても、強くjは無い。
強くなるには、覚悟を胸に刻む事が一番大切や。
あの子には、それがある」
なーんて事があったり無かったりして私達の学校は文化祭です。
なんで小学校なのに文化祭があるかと言うのは、瑣末な問題に過ぎない。
物語とはおうおうにして、強引な設定を、押し付けられるものである。
らしく無いことを言いつつ、文化祭。
小学校がやる文化祭は珍しいのでお客もわりと多く、人気がある行事。
でも、誘拐事件やら××××暴行等、毎年起こっている危険な行事でもある。
「じゃあいこっか、なのはちゃん」
「うん!」
私達は運良く文化祭の仕事を免除され、色々と冷やかしたりしている。
「うわーっなのはちゃん見て見て」
そこにあるのは老舗まんじゅう屋で、ここにわざわざ店を開いていた。
「ああ分かっとらんなぁ、文化祭の最大の魅力は安さにあるって言うのに
あんな草まんじゅう何個入り400円なんて誰も買わんよ」
「うんうん」
2分後。
「おお〜中々の上手さや。この粒アンがたまらんなぁ〜」
「ねぇー。この草饅頭おいし〜」
まんじゅう注意。
「いらっしゃ〜い!あっ、なのは、はやて、いらっしゃ〜い!!」
肉じゃが屋、私達の店の名前だった。アリサちゃんが維持でも
やりたかったらしい店だった。
客がそこそこ来ているのは多分・・・
「エプロンの魔力やな。女の子が着けると家庭的あんどエロ。
男の子が着けると家庭的な感じに見える!」
「ポ●モンのタケシくんも着けてるけど、もてないね、何故か」
「タケシくんは色々濃そうやからな、色々と」
「「はははははははははは」」
「ちょっと、冷やかしなら帰ってよね」
アリサちゃんが不満げな顔で咎める。
「じゃあ肉じゃが二つー」
「はいはーい」
差し出された肉じゃが入り容器が二つ、私とはやてちゃんのだ。
「おいしくって、ほっぺたが蕩けても知らないゾ!」
それ、誰の真似?
私達は早速肉じゃがを食べる。ぱくっ。
「どう、余りの美味さに声も出ない?」
「「ふつー」」
アリサちゃんの顔が固まる。
「この位の味なら、つくったことの無い人でも出来る程度やな。
肉じゃがは結構簡単な料理やし・・・」
「だねー」
アリサちゃんの顔が殺気に満ちようとしている。
「アリサちゃん。足らないものをおしえてあげる。それはな、
大切な人に食べて欲しいって真心や」
「「じゃあね〜」」
「な、な、な、ななんなのよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
「あ、アリサちゃん落ち着いて〜〜〜〜〜!!!」
「なぁ、TAKAMACHI頼むぜ、伝説のエレキベース使いさん。
俺たちを助けると思ってさー」
内容はこうだ。バンドメンバーが全員肉じゃがの食中りを起こしてしまったらしい。
だから私に出て欲しいらしい。
「まぁ人助けしようや、なのはちゃん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・エレキベースだけでどうすんのさ?」
はやてちゃんはふっと笑って。
「でも、そうね、貴女の為にだったら紳士にだってなれるわ」
「・・・・何の話?」
「簡単や、私とセッションしよ!」
「え?はやてちゃんなんか楽器弾けるの?」
そう言ってブルースハーブを取り出した。
「どこから持ってきたの?」
「細かい事は、着にしな〜い」
その変換ミスは気にしようよ。
「で、エレキベースとブルースハーブで一体何をしようって言うの?」
「んーと・・・あ、ポール・アンカの『ダイアナ』」
「だ・・・ダイアナ・・・!?」
ふふんと笑うはやてちゃんに私は思わず照れてしまった。
「私、ブラスの高いところとボーカルのパートやるからさ、ええよな?」
「し、知らないよ・・・音外しても」
その一声にバンドメンバーは歓喜をあげる。
「伝説のTAKAMACHIの復活だ〜!!!!!!!!!!」
「ねぇ、そこの子達、リズムお願い!」
タンバリンを投げ渡した。
ふざけるだけで過ぎたたまの休日。修行も進み良い感じに
ふっきれたともはやてちゃんは言ってくれた。
さぁ、本当の私はまだまだこれからだ。
つづく!
>>357 1行目読んで、3年くらい延期したSNOW思い出した・・
当初は白かった予約券が発売時期には黄色になった。
文化祭のアリサの口調が木下りんご口調になってるのがワロス
こんにちは396です。二週間ぶりですいません…。もっと早くに投下は可能だったんですが
いくつかストックがないと不安なので書いてる話ができるまで出し惜しみをしてしまいました。
あと3話で物語は一気に加速するのでそれまでついてきてほしいです。
それでは続きいきます。
魔法少女リリカルなのはA's++
第八話 「過去と現在」
「ユーノ、頼まれてた資料できたよ」
「うん。ありがとう」
ユーノはエリオからデータの入ったカードを受け取ると、再び仕事に没頭した。
今二人は司書長室で朝からずっと仕事にふけっている。朝食は食べる暇などないし、昼は固形食品ですませた。
この調子なら普段より2時間ほど早く仕事が終わりそうだ。これも隣で同じように仕事をしている青髪の少年のおかげである。
ユーノが思っていた以上にエリオは有能だった。いきなり初めての仕事をしているにしては適応が早い。
ユーノは横目でエリオを見ながら昨日の夜ことを思い返した。
真相を知り、巨大輸送船グランディアから帰ったユーノはその足で時空管理局の人事部へと向かった。
エリオに関する正式な書類を作成し、レティに提出するためだ。
ユーノはエリオを個人の秘書にすることにした。
本来なら司書にしたかったのだが、無限書庫の司書になるためにはそれ専門の試験をクリアする必要があったし、
それ以前に時空管理局で働くための試験と審査を受ける必要もある。
いちいち試験勉強させる猶予もなかったので、てっとりばやくユーノが個人的に雇うことにしたのだ。
これならば誰にも迷惑はかからないし、スクライア一族のよしみということで疑われることもない。
エリオは管理局内に入れる場所には制限がかかるが、ユーノと会うことだけが目的だったので特に問題はなかった。
結局書類はあっさり通り、即日でエリオはユーノの秘書として働くことになった。
ユーノが仕事をほったらかしにしたのは無理を言って旧友を秘書として招くためだったと司書達に説明すると、
連絡しなかったことで多少怒られはしたがなんなく受け入れられた。
その日は二人で時空管理局内の寮にあるユーノの部屋に泊まった。
なにぶん急なことで来客用の準備などしていなかったので、しかたなく一つのベッドで寝ることにした。
つらい表情を見られたくなかったユーノはエリオに背を向けるように横になった。
ユーノは精神的に疲れていたが、目が冴えて眠れなかった。
つい数時間前に家族が危険に晒されていること、自分が最悪な事件に巻き込まれたことを知ったのだ。しょうがなかった。
「エリオ、起きてる?」
「…うん。起きてるよ」
ユーノが声をかけるとはっきりした声でエリオが返した。やはり同じように眠れないようだ。
「色々あって聞きそびれたけど、エリオは今までどうしてたの?」
ユーノはそのままの姿勢で聞いた。
突然いなくなった幼馴染との出会いはまた、突然だった。
ユーノが今までエリオに関して一切尋ねなかったのは、何か言いづらい事情があるのではないかと思っていたからだ。
だがエリオがどういう流れでやつらに捕まり、遣いとしてよこされたのか知る必要があったし、
なにより子供の頃に仲良く遊んでいた友達として知りたかった。
しばらく沈黙が続き、部屋には時計の秒針の音だけが響いた。
「6年前…」
エリオが呟くように言った。
「6年前、僕と母さんは一族を出てから別の次元で生活を始めたんだ。
そこはミッドチルダよりも文明は発展していなかったけど、とても良い場所だった」
エリオは寝返りをうち仰向けになった。
「母さんの仕事も見つかって、僕達は特に不自由のない生活を送ってたんだ。そこの世界で戸籍も手に入れて、
僕は学校にも通い始めた。数年間は問題なく暮らしていた。…ただ、去年の末くらいから母さんの具合がよくなくってね。
僕は母さんが風邪を引いたんだと思った。症状は悪くなかったし、熱もなかった。
母さんはちょっと体がだるいって笑ってた」
そこでエリオは躊躇うように区切ったが、意を決して続けた。
「あまりに治りが遅いから病院に行こうとしたその日に、僕が起きたらベッドで母さんは冷たくなっていた。
本当に驚いたよ。昨日までは普通に会話もしてたし、全然苦しんだ様子もないのに、息をしていないんだ。
後から医者に聞いた話だと、どこの次元世界でもいまだに解明されていない病気の一つなんだって。
何が原因で、どうして死んでしまうのかもわからない。衰弱もせず、心肺機能だけが停止してしまう。
魂だけが抜けてしまったような状態から、ソウルアウトって呼ばれてるんだってさ。
次元間旅行者に極々稀にいるみたいなんだけど、発症の確率は天文学的数字らしいよ。
運が悪かったとしか言いようがないって言われた」
「…………」
ユーノは何も言うことができなかった。エリオのお母さんは小さい頃にユーノも一度だけ見たことがあった。
その時はきつい目で見られたことしか覚えていない。ユーノはその目がとても恐ろしく、内心苦手に思っていた。
しかし、つい最近亡くなったと聞いて驚くことしか出来なかった。
「あまりに急なことだったから、僕はしばらく放心状態だった。とりあえず密葬を済ませて、やるべきことを探した。
でも、何をすればいいのか、どこに行けばいいのかわからなかった。
一人になって初めて、僕は今まで母さんにいつもついて歩くだけの、何も出来ない子供だってことがわかったんだ。
そして数ヶ月ぼんやりと過ごして、スクライア一族の存在を思い出したんだ。
血の繋がった祖父母とかはいなかったけど、一族の中には遠い親戚が必ずいるだろうと思った。
だから、人づてに一族の居場所を聞いて、スクライアの一団がいるっていう遺跡に向かったんだ。そしたら…」
「やつらがいたんだね」
ユーノは静かに続きを促した。
「うん。ちょうど彼らは一族を魔法で拘束しているところだった。僕は岩陰でその様子を見ていた。
助けようと思ったけど体が動かなかった。僕は6年前からなにも変わってない、泣き虫のままだったんだ。
結局隠れているところを見つかってそのまま連れて行かれた。流石に僕は関係ないとまでは言えなかった。
僕だってスクライアの名を受け継いでいるから。過去のことから今までのことを尋問されて、ユーノとのことも話した。
それが決め手となって、僕がユーノを呼ぶ遣いに選ばれた。たぶん、僕じゃなかったら他の人だっただけだと思う」
そこまで話し終えてエリオは深く息を吐いた。
「何故母さんが一族を出たのかも、聞くことはできなかった。今でも僕は、なんでこんなことになったのか、
どうして僕がここにいるのかわからないんだ。…だけど、一族を助けなきゃいけないってのはわかる。
それは、今やるべきことなんだと思う」
ユーノは話を聞いて、エリオが本当に可哀想になった。
ミッドチルダでも幼少期は親と暮らす。自立はなのはの世界より早い15歳を超えてから、というのが一般的だ。
しかし、クロノのように教育を十分に受けられる環境にあったり、ユーノのように学院をすぐに出てしまうような子供は、
年齢問わず就職が可能だった。これは一種の才能といえる。脳が他の人間より発達している、
いわば天才ともいえる子供がミッドチルダには比較的多かった。
ありがたみこそないが、様々な分野で活躍し将来は必ず大きな功績を残し、大人達からも高く評価されていた。
それ以外のエリオのような子供達は用意されたレールにしたがい、学校に通い、心身ともに成長してから自立する。
しかし、エリオは突然親の保護から切り離されてしまったのだ。途方に暮れるのも当然の反応だ。
しかも頼りにきたはずの一族が捕まり、今は事件に巻き込まれてしまっている。
ユーノはエリオの方を向いた。
仰向けになっていたエリオはユーノに気付いて顔を向けた。
「大丈夫。僕が絶対なんとかするから」
ユーノはエリオをまっすぐ見つめて言った。眼鏡はしていなかったが一人用のベッドで狭かったので、
エリオの顔ははっきり見えた。やはり、すこし不安そうな顔をしているように思えた。
「うん。ありがとう」
エリオは一瞬ユーノの一言にきょとんとしたが、すぐに微笑んで答えた。
ユーノはエリオの返事を聞いて安心したように目を閉じた。
お礼を言われるのも変かも知れないと思ったが、不思議と力が沸いた。
一人じゃないと思えた。つらいことも分け合えるような気がした。
そしていつしか、ユーノは眠りへと落ちていった。
*
ミッドチルダの海上の何もない空間から突如巨大戦艦が出現し、ぐんぐんと上空へと上っていく。
海鳥達が珍しそうにその周りを飛び、追いつけなくなるとすぐに飽きたように餌を探しに海の上を飛び回った。
「アースラはそのままミッドチルダ上空で巡航を継続。高度2000メートルを維持」
「了解」
クロノの命令にエイミィが慌しく手を動かした。
少し長い次元間航行だったが、何事もなく無事到着できたのでクロノは満足そうに頬杖をついた。
久しぶりに見たミッドチルダの海は相変わらず青く美しかった。
ただ残念なことは、今はすでに薄い雲の下にあるということだった。
クロノは艦長席から立ち上がりエイミィの後ろへと立った。
「先行した武装局員からの連絡は?」
「特に異常なし、だって。ま、そうタイミングよく事件なんて起こらないもんよね」
エイミィは両手を頭の後ろで組み、のけぞるようにクロノを見て言った。
「僕達の役目のほとんどは事件を未然に防ぐことじゃなく、発生した事件に対処することだからな。しょうがないさ」
クロノが諦めを含んだ答えを返した。
「それにしても、フェイトちゃんは呼ばなくてよかったの?緊急の場合ここまで来るのに結構時間かかるけど」
「これは長期任務だからな…。あと数日で夏休みに入るらしいし、それまでは学校に通わせてやりたい。
そうタイミングよく事件は起こらないもんさ」
クロノはわざとエイミィの言葉を借りてにやりとしながら答えた。
エイミィはなぜか一本取られたような気がしたのでむっとして言い返した。
「義理じゃあシスコンも洒落にならないわよ?」
「なっ!?僕はそういうつもりで言ったんじゃ…」
生真面目にむきになって反応するクロノにエイミィはクスクスと笑った。
内心、まだクロノがいじりがいがあることに少しほっとした。
クロノはこの3年で一気に背が伸びエイミィの身長を軽々と越してしまった。
ちょっと前までの可愛らしい面影は一切なく、今では立派な青年としての姿を見せている。
格好良くなったと思う反面、エイミィは寂しいとも思っていた。ただ、中身はやっぱり相変わらずのようだ。
「それにしても、結局私たちの受け持ちになっちゃったわね。この事件」
「予想以上に相手は手強いみたいだな」
クロノが顎に手を添えて言った。最近多発しているミッドチルダでの強盗事件はかなり広域で行われているため足取りが掴みづらく、
さらには他次元に逃げ込むこともあるため時空管理局がこの一件の捜査にあたることとなった。
といっても、事件発生は限りなく不定期で2年も間があいたこともあった。盗まれるものは現金だったり美術品だったり様々で、
逃走手口と犯行集団の衣装が似ていることから同一の組織であると予想されているだけで、その詳細は一切不明だった。
挙句の果てに模倣犯まで出る始末で、ミッドチルダ内では完全にお手上げらしい。
「まぁ相手が何であろうと、僕達は僕達の仕事をやるだけさ」
そう言ってクロノがエイミィの横からコンソールを操作してモニターにある画面を出した。
それはミッドチルダで配信されている情報番組だった。
自分の生まれ故郷の内情は常に知っておきたいと思っているクロノは
仕事の合間にたびたびその番組を見ていた。
画面に映ったのはミッドチルダの議事堂内の映像で、今も政治家達が討論を繰り返していた。
クロノが真剣にその様子に見入っているとエイミィが両手で頬杖を突きながら言った。
「私この人嫌い」
「ん?」
クロノが目を向けると、画面で演説を繰り返している白髪で長髪の老人が目に入った。
最近特にミッドチルダでメディアに取り上げられている人物。べレット・ウィリアムスといったか。
「だって、この人って結局大人以外は社会に出るな!って言ってるんでしょ?」
「ああ。特に、僕みたいなやつに言ってるんだろうな」
クロノは少し笑いながら言った。父母がどちらも管理局の人間であったことから、クロノは5歳から教育を受け
異例の速さで執務官となった。今は暫定の艦長だが艦長就任も時間の問題で、そうなれば周りのどの艦よりも若い艦長となる。
「ちょっと!じゃあなんでそんなに呑気なのよクロノ君は」
その淡白な反応にエイミィが振り返って強く聞いた。
「いや、僕が何か言ったところでなにも変わらないだろう。言論の自由というのもある。
それに就業年齢に関する法律は、この先も変わることはないよ」
クロノがチャンネルを変えながら言った。今日の議会の内容はあまり知る必要がないと判断したからだ。
チャンネルを変えた先は料理番組で、おいしそうな料理がさも今作ったかのように並べられていた。
「なんでそんなこと言えるのよ。もしかしたら、20歳までは学業に専念しろってことになっちゃうかもよ?」
先ほどのクロノの自信ある発言に疑問を持ったエイミィが尋ねた。
クロノは答えるべきか少し躊躇したが、ため息を吐いてエイミィの疑問に答えることにした。
「士官教導センター、つまり士官学校を出た僕達以外の人間も早年から働けるのは、
差別による不満を軽減させるためだ。そしてもう一つ、年齢問わず優秀な人間というのはいるものだからだ。
これは過去の実績とミッドチルダの発展の歴史を見れば明らかだ。
もし彼の言う主張が通り新たに法案が出来たら、時空管理局はフェイト達のようなエースを手放すことになる。
この意味、わかるだろ?」
それを聞いてエイミィははっとし、アレックスやランディに聞こえないように小声でクロノに囁いた。
「もしかして、管理局の圧力?」
「…僕の口からは言えないな。ただ、メリットに対してデメリットが大きすぎるってだけさ」
結局クロノは口を濁したが、エイミィの言ったことを肯定していることはわかった。
才能のある魔法使いが一人でも多く必要な管理局としても、就業可能年齢を引き上げるわけにはいかないらしい。
そのせいで失業者が増えているという事実には目を瞑るしかないようだ。
エイミィ自身、アースラ通信主任として早くから大きな責任の伴う仕事に就かせてもらっているので、
どちらが正しいかはっきり口にすることができなかった。
ただ、自分のいる組織が政治に口を出しているという事実が、ほんの少し嫌だった。
奇麗事だけでは回らない世の中。うまくいかないもんだ、とエイミィはぼんやりと画面に映る楽しげな映像を見ながら思った。
*
「あの…だからね?私は、別にユーノのこと、なんとも思ってないの…」
金色の髪を後ろで束ねたフェイトが、俯き加減に体操服の裾をいじりながら言った。
しかし、返事はない。フェイトの目の前には大きなヒマワリが一輪咲いているだけだった。
遠くで少女達の楽しげな声と笛の音が聞こえ、セミの鳴き声が近くの木からうるさげに耳に届いた。
「はぁ…やっぱ駄目だ」
フェイトは頭をかかえてうずくまった。家で何度もイメージトレーニングを重ね、必ず言おうと決心して学校に来ても、
いざという時に声にならなかった。
言っても絶対遠慮してると思われるだけに違いない。
現にアリサとすずかに言ってみても
「「またまたー」」
と言われて一蹴されてしまった。こんな調子ではとてもなのはとはやてに面と向かって言うことなどできなかった。
フェイトは自分の口下手さを初めて呪った。4年前になのは達と出会い、多くの人と友情を育んだことで
過去の人形のようであった自分は見る影もないほど明るくなったフェイトだが、奥手であるのは本来の性格ようだ。
はやてとユーノの仲をこれ以上近づけさせないために試行錯誤してきたつもりなのに、
いつの間にか自分がなのはを悲しませる側になってしまっていたのだ。ここ最近はそのことで悩みっぱなしだった。
さらに問題なのは、いまだにフェイトは何が悪かったかわかっていないことだった。
(もしかして、私はすごい不器用なのかもしれない…)
フェイトはその事実に薄々気付き始めていた。
「あ、いた!ちょっとフェイトこんなとこで何やってんのよ。もうすぐ私たちの番なんだから早く来なさいよね!」
ヒマワリの前でしゃがんでいると、アリサが背丈ほどある花達が植えられた花壇の端から顔を出した。
今は体育の時間で、サッカーの途中だった。2クラス合同の体育で5チームでき、
フェイトのチームは観戦する時間だったのでフェイトはこっそり抜けてシミュレーションしにきていたのだ。
しかし、その時間もどうやら終わりらしい。
アリサに手を引かれながらフェイトは尋ねた。
「ねぇアリサ…」
「ん?なによ」
歩きながらもアリサがフェイトに振り返って聞いた。
「私って、不器用だと思う?」
突拍子もない質問でアリサはきょとんとしたが、すぐにその意図を読んで恋愛のこと?と聞くと、
フェイトは小さくうん、と頷いた。
「そうねぇ。フェイトの場合、頭にキング・オブが付くわね」
それを聞いてフェイトはがくっと頭を下げた。その日のサッカーはほとんど活躍することなく、
終了の笛を聞くこととなった。
次回へ続く
アースラを奪う計画を立て、人質解放のためサイオンと取引をするユーノ。
ユーノの予想通りに話が進むかに見えたが…。
次回 第九話 「最悪のミッション」
また間を空けないとの保証もないので次回予告にちょっとプラスしました。
今回のタイトルの読み方は「過去と現在(いま)」でお願いします。
エリオというキャラははっきり言えば多少冷静さを持ち合わせたただの中一です。
大人っぽい子供が多い中、本当に何も出来ない子供を出したかっただけなんですがどうでしょうか。
ただ、せっかくのオリキャラなのでそれだけではないです。それも含めてこれから読めば楽しめるかも。
では他の職人さんの感想いきます。
>>176氏
シグナムが某うっかりな人に見えてにやけてしまった…。
>>640氏
エイミィってやっぱいいキャラだなーと改めて実感。
クロノの弱さってのもまたうまく表現してますね。
>>さばかん氏
ネタ元がわからなくてもテンションの高さで何か伝わってくるものがありますね。
釘宮が好きそうとか…。
すみません、なのはAsのSSを書きたいのですが
使用される魔法などが詳しく乗っているHPなどを知ってましたら
教えていただけないでしょうか
お願いします
擦り切れるまでDVDを見ると良いと思うよ
それか検索汁
>>376 それはつまり XBOX (初期ロット) で見れということか。ハードル高いな。
378 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/30(月) 00:46:54 ID:tcrGxH08
リリカルなのはStep
第8話 c part
真っ青な大空をとても大きな影が嵐のように横切った。
一瞬訪れる闇。
瞬き一つの時間の中、わたしの行動はそれよりも速い。
「ディバインシューターテンペスト!」
生み出される十の星の光。
まだまだ完全に制御は出来ないこれだけど、でも相手の動きを崩すくらいなら十分できる。
「いくよ、レイジングハート!」
『All right』
狙いはただ一つ。
太陽が顔を出し、眩しさに目を細める。
目詰めたその遥か先、風を切り裂く黒い翼。
元の姿は多分カラスのはずだけど、ここまで大きくゴテゴテついていると怪獣にしか見えない。
「シューーート!!」
掛け声と共にスタートを切る。五つは前に、残りは二手に分けて回り込ませるように。
複雑な制御。それはわたしにとって大きな隙になる。
降り注ぐ光を相手は体の大きさには不釣合いなくらいのスピードで次々に避けていく。
『Master,right control is rate』
レイジングハートの声に慌てて止まりかけていたシューターを加速させる。
やっぱり難しい。これじゃまだまだだよ。
「でも――!」
残りはまだ大丈夫! 上下左右にもう包囲はできてるんだから!
「いっけーー!」
飛び交う光の嵐は絶対に当たる。これだけの数をかわせるなんてできっこない。
それでも――
「っ! そんなっ!?」
鳥が天高く進路を曲げた。僅かにあいた空間は本当ならさっきの二つが埋めるところ。
こっちもすぐに全部を追わせる。でも相手が速い――速すぎる!
太陽を背に大きく宙返り、いきなり急降下。すれ違いざまシューターのいくつかが翼に一撃に砕け散った。
とてもじゃないけどそこまでの速さは反則だ。
お返しとばかりに大口を開けてわたしに突っ込んでくる黒。
無理が祟ってしまった。シューターを戻しても間に合わない。フラッシュムーブだってこの大きさじゃ避けきれない。
このままじゃ――!
「やられないよ!!」
『Remote flier』
耳に飛び込む甲高い声。
軽くなる体はわたしを支えてくれるあの子の魔法のおかげ。
『Flash move』
発動される緊急回避魔法。
ぶれる景色に体を押す風。目で追いきれない速度の中、翼はわたしを捕えられずただ空を切った。
いつもの倍以上の距離を、いつも以上の速さで移動。わたしだけじゃ絶対にできない、あの子がいてくれたからできる魔法。
背中から生えている空みたいな青い翼。
鳥のような柔らかな翼じゃない、戦闘機みたいな鋭く尖った翼の主。
「ありがとう、すずかちゃん!」
振り向いた先にいる魔法使いにわたしは大きく声で応えた。
「うん!」
笑顔で頷いてくれたのはわたしの大切な友達だ。
ちょっと無理しても、フォローしてくれる。背中を守ってくれる人がいるからわたしは十分に戦える。
「レイジングハート! このままいくよ!」
『All right』
「残弾五つ! これで!!」
一転、上昇してくる黒鳥に向けて残った全部を突撃!
それでも相手は身を捩って綺麗に全部かわして見せる。ほんとに反則。
「だったら――」
構えて、狙い定めて
「ディバイーーンバスターーーッ!」
ドンッ! と発射するはわたしの次に得意な主砲。
真っ直ぐに、風の中を鳥目掛けて突き進む。でも相手にとってこれほど避けやすいものは無いはずだ。
案の定、横へ飛んであっさりかわされてしまった。
「でもね!」
わたしの「だったら」は
それじゃない!
『Counter presser』
「隙ありっ! でくの坊!!」
ディバインバスターが地面にぶつかる音と、鳥が炎に包まれたのは完全に同時!
最初の爆発音が轟いた後も、二発、三発と全部で五発の爆音が鳥の姿を煙の中へ押し込んだ。
「なのはばっかに気を取られてた罰よ!!」
「アリサちゃん!」
「あんまりバラバラに飛ばさないでよね。弾き返すこっちは苦労するんだから」
憎まれ口でも満面の笑み。
わたしも親指を立てて笑って見せた。
ディバインバスターを撃つと同時に制御を解いたシューターは普通なら明後日の方向に飛んでいくだけだけど。
今は違う。それを弾き返して攻撃に使って、援護してくれる子がいることをわたしは知っている。
「続けて行くわよ!」
『Please don't hit mate earnestly』
「しないわよ!!」
少し拗ねながら突き出した左腕に茜色。炎みたいに揺らめくそれを右腕の杖で
「スプラッシュ! バーストッ!!」
物凄い勢いで振りぬき発射!
ぐいんと、大きく曲がりながら目指すは煙の向こうの鳥。
「なのは! すずか! ちゃんと防ぎなさいよ!」
もしかしてまたあれをする気なの!?
慌ててわたしも、後ろを飛んでいたすずかちゃんもプロテクション!
「吹っ飛べ!!」
『Slug shower』
アリサちゃんが自分の弾丸目掛け腕を突き出し、拳を思いっきり握れば弾丸は大きな音を残して爆発する。
そこから生まれたのは物凄い数の光の雨。
ちょうど煙の中から飛び出した鳥はきっとすごく驚いている。
だってあんなに隙間無く敷き詰められれば絶対に避けられないんだから!
「うっひゃ!」
炸裂する魔法の威力は大したこと無いかもしれない。
だけど塵も積もれば山になるって諺があるように、体全体にあれだけ魔法浴びれば平気なわけが無い。
大雨が屋根を叩くようにプロテクションを騒がすとばっちりさえなければもっといいんだけどね……。
「もーう! もう少し手加減してよアリサちゃん!!」
「ちゃんと防げたんだから万事良しよ! それよりもなのは!!」
「うん! 準備はいいよね、すずかちゃん!」
「もちろん!」
起動させるはドライブモード――。
『Sialing mode』
『Grand position』
『Saver style』
高まる魔力、漲る力――。
『Stand by』
心に描く、魔法の呪文――!!
「リリカルマジカル!!」
「Higher! Faster! Stronger!!」
「風よ運べ! 想いと願い!!」
一つになる光――。
重なる声と心――!!
「ジュエルシード! 封っ印!!」
満ち溢れるは……星の輝き――!!
* * *
(それにしてもよ……)
黒板に次々並ぶ文字をノートに書き写しながらアタシはなのはとすずかに話しかける。
といっても、声に出すわけでなくアタシたち魔法使いの特権とも言うべき会話方法。
(どうしたのアリサちゃん?)
(今授業中だよ)
この念話というテレパシーみたいな魔法は携帯の意味がなくなるくらいに手軽で、実に便利。
(ほんとに協力しなかったのか馬鹿に思えるくらいの手ごたえだったじゃない、さっきの)
さっきの戦いを思い返しながらアタシは改めて力を合わせるということの大事さを感じてるわけで。
(でも強かったよ。わたしの射撃みんな避けられたし)
(そうだよアリサちゃん。私の捕獲魔法も全然役に立たなかったんだよ)
なのはの言い分に同調するすずか。
うん、最もだと思う。別にアタシが言いたいのは敵のどうこうじゃなくて。
(それでも勝てたのよ。それってすっごいことだとおもわない?)
多分、誰か一人だけだったら本当に手も足も出なくやられていた敵。
圧倒的不利な状況を覆すことができたこと。その原動力となったのは他でもない
(チームワークがあればアタシたちに不可能はない!)
三人で力合わせてぶつかればどんなことだって乗り越えられる。
アタシにとって今日の戦いほどこのことを強く思ったことはない。
(そ、そうかな?)
(当たり前でしょうが。それともなのはは不可能があるとでも思ってるの?)
(今のところはないんだけど……)
(流石に無敵ってのは言い過ぎな気が……)
二人とも慎重派なのか返事に詰まっていたりする。
ああもう、ノリが悪いわね……。
(つまりアタシたちはこれからもチームとしてやっていくわけ)
(うん、そう決めたしね)
(そういうわけでチームとしてやっていくにあたっていくつか足りないものがあるわけよ)
(足りないもの?)
そう、古今東西古来からこういうチームに絶対に必要で、なくっちゃいけない誓約。
魔法少女隊を結成してからというものアタシたちにはそれが完璧に欠けている。
絶妙なコンビネーションを出来るまで成長してるんだから、肝心のしまりがないままじゃどうにもこうにも物足りない。
(いい二人とも? こういう同じ志を持つもの同士が協力し合う上で大切なものって何だと思う?)
(いきなり言われても……)
(ええっと……)
口ごもるなんて……。そんなに思いつかないわけ?
ここは即答でしょ、即答!
(喧嘩しないで仲良くする……?)
(強力なバックアップ……?)
(No!)
確かにそれも歩けど点数としては三十点ってところ。
何より大事なのは――!
(チームの名前と決め台詞!)
……。
…………。
………………。
(……ふぇ?)
気の抜けた返事が返ってきた。
というか、何今の沈黙は。
気になってなのはとすずかの方をちらっと見るとなんだか物凄く呆れられているような、ぽかーんとした顔になっている。
重要なことだと思っていたらしょうもないことで呆気に取られてます。
そう顔が訴えているような……。
(二人ともわかってるの!? アタシたちはいわゆる戦隊! 魔法少女レンジャーなのよ!)
(魔法少女……)
(レンジャー……)
なんだか思いっきり引かれているんだけど……。
(だって名前なら海鳴魔法少女隊って)
(仮称よ!)
(決め台詞って誰に)
(備えあれば憂いなし!というかヒーローの宿命!)
(わたしは別にそんなことしなくても)
(モチベーションがぐんと上がるわ! やる気イコール魔法のパワー!)
この町を守るんだからそれぐらいのスケールがなきゃ絶対駄目。
(遊びじゃないんだからこそ、こゆこと決めてもっと団結しなきゃ駄目だと思う)
(う〜ん……そう言われればそうだよね)
(この事件が終わるまで私たちが頑張らなきゃいけないんだよね)
きっと言葉で話していたなら二人は頷いているんだと思う。
そんなニュアンスな答えにアタシも改めて自分の言葉に頷いて。
(そういうわけでいい案ない?)
(えっ、アリサちゃんが考えてるんじゃないの?)
(こういうことはみんなで決めるのが得策でしょ)
実際、なのはの言う通りだったら発表してる。
どうにもアタシ一人だけではピッタリな名前も台詞も浮かばないわけで……。
言いだしっぺのくせして恥ずかしいったらありゃしない。
(そ、そういうわけでランチタイムに決めるんだからね!)
ちょうど良く予鈴が鳴った。
先生に礼をして昼休みが始まる。
「さぁ、ぼやぼやしてる暇はないわよ! 二人とも!」
カバンからお弁当箱を取り出して席を立つ。
そのままズカズカ教室から足早に出てってアタシは一路屋上に向けて走り出した。
後ろから聞こえる二人の声。きっと慌てているに違いない。
「でも 今更止まれないでしょ?」
真っ赤な顔を笑われたくないから。そしたら情けないでしょ?
一応、これだけは決めてるんだから。威厳だけは守らないとね。
「アタシはみんなの」
――リーダーになってやるんだから。
* * *
お弁当を食べながらこんなに頭を動かすなんて滅多にしない。
と言うよりも多分今日が始めて。
「思いつかないわね……」
「うん……なんかピッタリの名前ってないよね」
眉間にしわを寄せるアリサちゃんに苦笑いのなのはちゃん。
私も私で……
「やっぱり海鳴魔法少女隊がいいんじゃないかな?」
一番最初の名前を候補にしていて。
「それにしたって……ねぇ。なにかストレートすぎて」
「カッコいい名前って思いつかないよね」
「可愛いな名前でもイメージには合わない気がするし」
ちょっとの間、空を見上げて
「はぁ……」
三人一緒にため息。
多分が大人が見たら何真剣に考えてるんだと呆れられるんだろうな。
やっぱり私たちは子供だなぁとしみじみ思ってしまったり。
でもこういうことに拘ってしまうのは止められなくて。
楽しくて……嬉しい。
「じゃあわたしたち三人だから海鳴三銃――」
「フェイトが入ったらどうするのよ」
「えと……それじゃあ海鳴四葉――」
「漢字だらけだと硬いから却下」
「まだ全部言ってないよー」
なのはちゃん……私もそれなんとなく駄目だと思う。
「頭に地名つければいいってもんじゃないのよ」
「でもわたしたちの町なんだし」
「安直過ぎるのは問題なのよ。少しは凝りなさい」
そう、多少は捻らないと盛り上がらない。
私たち魔導師に合って、SFな雰囲気を組み合わせた感じの名前が一番。
「マジックストライカーなんてどうかな、アリサちゃん」
「……候補に挙がるわね」
腕組みしながら何度か頷いて、アリサちゃんに受けが良かったみたい。
なのはちゃんはというと悔しそうに卵焼きにかぶりついている。
「でも何か足りないのよね……なんかしっくり来ないのよ」
釈然としない、そう言いたげにご飯を一口食べる。
「じゃあリリカル魔法隊とか!」
「なのは……」
「なに?」
「ごめんね、ダサい」
容赦ないな……アリサちゃん。
「ひ、酷いよ! わたし一生懸命に考えてるんだから!」
「秘境探検隊とか遭難救助隊じゃないんだから」
「じゃあアリサちゃんは考えてるんでしょ?」
「ま、まぁ……ね」
突然、上ずった声でアリサちゃんが胸を張る。
「聞きなさい、アタシの考えた名前は」
「名前は?」
「なまえ……は」
人差し指を立てたままアリサちゃんは固まっていく。
…………。
「なま……えは……」
今度は搾り出すような途切れ途切れの声。
アリサちゃん……考えてないなら素直に言おうよ。
「ええと……ねぇ」
「もちろんあるんだよね? わたしのよりもずっとかっこよくて立派なの」
「あ、当たり前でしょう」
「じゃあ……」
形勢逆転だった。
アリサちゃんが何も考えてないことを悟ったなのはちゃんの反撃は的確にアリサちゃんの痛いところをついている。
射撃が得意ってこういう所でも役に立つんだね。
「そうよ! よく聞きなさいよ」
すぅ、っと深呼吸。どうやら土壇場で決められたみたい。
どんな名前なんだろう。
少しの期待を胸に私はアリサちゃんの口が開くのを待った。
「リリカル・ストライカーズ! これでどう!!」
「…………」
「…………」
「ふ、ふふ、あまりに格好良すぎて言葉も出ないみたいね」
「と、いうよりは」
「アリサちゃん、それってわたしとすずかちゃんのを組み合わせただけなんじゃ」
誰がどう聞いたってそうとしか思えないよ、うん。
「力を合わせたのよ! ほら、理にかなってる」
いいのかな……それで。
「確かに力を合わせてるの……かな?」
「そう……だね」
いいんだよね……多分。
「完璧よ! Perfect!!」
自信満々、誇らしげなアリサちゃんを横目に私はなのはちゃんと目を合わせた。
どちらからともなく苦笑いして、すぐに満面の笑顔になって。
なんだかんだでアリサちゃんが決めた私たちの魔導師としての名前。日常から非日常へ飛び込むための合言葉。
私たち海鳴魔法少女隊改め――
リリカル・ストライカーズ
こんなに間が空くなんて誰が予想しただろうか
自分も予想していなかった
すいません、最低1週間で1話はあげようと心がけてはいるんですが
モチベーションがあがらない日々が多々
次からはようやくなのはの周りの人たちを絡ませられるでしょう
>>640氏
いいからフェイトよ生きる希望を捨てるなと
ほんとこの子はけなげで(つД`)
>>さばかん氏
全部分からん……
しかし発売延期か、何もかもが懐かしい
>>396氏
はたしてすんなりアースラをジャックできるのか
いや、できないんでしょうねぇ
>>365(396氏)
エリオいいキャラだなぁ。
彼の母親が冷たい感じだったのは誰にでもそうだったのか、
ユーノに対してだけだったのか…。
フェイトのこれからの立ち位置や、強奪計画の行く末が楽しみです。
…上手くいかなきゃいかないで、サイオンの信用が得られないしなぁ。
ところで某番組を見てて、ユーノが黒い仮面と装束で仮装して
アースラ強奪を決行する妄想が、脳を支配しました。
一刻も早く正しい9話で浄化をry
私の名前は『ゼロ!』とかいってる人?
そう、その黒い人。
つまりフェイトは盲目になり足が不自由になると?
それはそれで・・・
(*゚∀゚)=3
>>389 ユーノ「ユーノ・スクライアの名において命じる!全力でアースラを明け渡せ!」
クロノ「総員全力で脱出だ!!」
こうですかわかりません><
「奴らを全力で逃がすんだ!」はさすが谷口だと思ったw
396 :
K:2006/11/02(木) 23:23:00 ID:TUbF3vZa
どうもお久しぶりです。Kです。リリステに出るのでその準備でバタバタして続きが書けませんでした。
リリステ前に取り合えず続きを。胸で色々やろうと思ってましたが、ひとまず見送りました。
では投下します。
397 :
K:2006/11/02(木) 23:23:37 ID:TUbF3vZa
鎌首をもたげるように動く勃起に視線を奪われながら、フェイトはゆっくりとベッドに横になった。
すぐにクロノが覆いかぶさって来る。髪を撫でて、額に口付けをして、頬を労わるように掌で包み、崩れそうな砂上の城を作るようにして愛撫をする。
攻める側から受ける側になった事で、フェイトの理性は幾らか冷静さを取り戻していたが、それが唐突な羞恥心に姿を変えて襲って来た。
彼のペニスを一切の躊躇も無く咥え込み、いやらしい言葉を続けて、唾液を流し、射精させた上に精液を全部飲み込んだ。その上、今は明かりがついている部屋で身体をすべて晒し、愛撫されている。
「くろのぉ……ぁあぁああ……!」
爆発寸前まで加速する心臓を、喉からひっきりなしに込み上げて来る嬌声が沈めてくれる。
髪や顔をなぞっていたクロノの指が身体全体に伸び、得られる快感のボルテージが一気に上昇して行く。頚動脈が外から見て分かるくらいの速度で脈動し、羞恥心と興奮で赤くなっている頬をさらに朱色に染めて行く。
クロノのペニスと同様にギンギンに勃起して、天井に向かって尖っている乳首。薄っすらとした色合いの乳輪は淡く、小ぶりだが形の良いバストを綺麗に見せている。
その胸を、クロノが緩慢な動作で撫でて行く。胸に顔を埋めるようにして片方の乳首を甘噛みして、空いている片方には手を伸ばして優しく、時には少しだけ乱暴に揉む。
「ふぁ……!? うっくっ……んんん〜〜〜〜!」
「……我慢しないで、声上げて」
胸の愛撫を止めずに、クロノ。耳をなぞり、震わせ、脳にまで響くような優しい声。
「やッ、ひんっ……だっ、て……はずかぁぁあッ……! はずかしい……よぉ……!」
「僕の精液を全部飲んでおいて、恥ずかしいは可笑しいよ」
「ふにゃ……!」
両手でクロノの頭を乱暴に抱える。眼を力一杯瞑れば、端から涙がこぼれ落ちた。
容赦無く襲って来る快感は電撃だった。些細な事でも、何かされる度に面白いように身体が反応する。唾液でぬるりとする乳首が打ち震え、もっと虐めて欲しいと無言で訴える。
「フェイト……胸、弱いの?」
「わか……んないよぉ……!」
「一人で……した事、無いのか?」
398 :
K:2006/11/02(木) 23:25:48 ID:TUbF3vZa
さっきのお返しなのか、そう訊くクロノの声音には喜悦が見え隠れしている。一度の射精で彼も良い意味で本腰を入れて来たのかどうなのか。もっとも、そんな事を気にしていられる程、今のフェイトには余裕など無かった。
恥ずかしさのあまりに汗が噴出して来た。白い胸が朱色に色づき、ゆっくりと十五歳の少女の身体を濡らして行く。
「なぁ……ない……んッ!」
「……友達と話して、興味とか出なかった?」
「でぇたぁ……ひぃ! けどぉ……! 分かんないぃ……!」
戻っていた理性が溶けて行く。瓦解ではない、白くなって行く頭と同じように姿を無くしつつあるのだ。その変化が羞恥心を薄くして行く。興奮した心臓が訳の分からない速度で跳ね上がっているのが分かった。鼓動が聞こえるのだ。
「……じゃあ、ここに触れた事も無い?」
腰や尻、腿を撫で回して楽しんでいた手が股間に伸び、薄い染みを作っていたショーツに触れた。その染みは秘丘一面に広がっており、水で濡らしたかのように見事に張り付いている。
湯気でも立っていそうな勢いで、ショーツの柔らかな繊維の下に隠された金色の茂みすら見えてしまった。
彼に触れられる事で、フェイトも自身の股の間が洪水状態になっている事を知った。そして、それが何を意味しているのかも瞬間的に悟った。
「なのにこんなに濡れてるのか?」
クロノが腰に裏に手を差し入れ、腰を持ち上げる。ころんと転がるような姿勢となったフェイトは、眼前に濡れた自分の股間を見た。さらに、その先にクロノの顔があった。
「―――!!!」
むず痒い秘所。煽られている羞恥心。ゾクゾクと知らない感情に犯される心。それらが、クロノに逆らう気力を根こそぎ奪って行く。死んでしまいたいくらい恥ずかしい格好をさせられて、股間を好きな人に晒しているというのに、
それすら喜悦と感じてしまう。
自虐的で被虐的な感覚。潤んだ瞳は興奮に染まり、心と身体を芯から震わせた。
淫汁でくっきりと露になっている割れ目に指が挟まり、焦らすように擦って刺激される。そう、焦らすように。決して早くはしない。下腹部の奥底は疼きっ放しになり、先程の射精のいやらしい熱さを思い出させた。
嫌だ、もっと強くして欲しい。もっともっと激しく擦って欲しい。その指を中に入れて、グチャグチャと音を出して掻き回して欲しい。
痺れる頭でそんな事をもうろく気味に考えていた時、震える秘丘に吐息が吹きかけられた。さらに乳首のように硬くなったクリトリスに剥かれ、軽く指の腹で擦られる。
「ひゃぁぁぁぁあ!?」
激しい電撃に犯されて思考が止まる。なのに、フェイトは無意識に腰に力を入れた。
クロノの指に押し付けるようにして、痙攣する細い腰を振り乱す。胸に浮かんでいた玉のような汗が流れ落ち、喉に溜まって行く。
被虐心がクロノに速度上昇を求めて喘ぎ声を上げさせた。
「にゃあぁ、にッ……!? ひ、ひぃあ!」
「……声……出せるじゃないか」
「だぁ……! だぁってぇ……! あぅああああ……!」
恥らって股を閉じるなんてとんでもないと言わんばかりに、フェイトは天井に向けて股を広げ、淫液を流す秘所をクロノの顔へ押し付ける。
刺激が弱い。抱えるように腰に腕を回して宙吊りのような姿勢のせいで、腰を動かすにも限度がある。これでは被虐的な陶酔に浸る事はおろか、満足に快感も得られない。
ゾクゾクという気持ちは先程から胸を一杯にしているのに、それ以上が無い。これでは生殺しも同じだ。
獲物を前に我慢し切れずに涎を垂らす肉食獣のように、フェイトは唇から糸のような唾液をこぼした。眼はどこを向いているのか分からず、焦点が合わない。
下卑と言っても良い被虐的な笑みは妖艶という言葉を通り過ぎていた。
頬から流れ落ちて枕に染みを作る。そしてそれは徐々に広がって行く。
399 :
K:2006/11/02(木) 23:27:01 ID:TUbF3vZa
「くろ、のぉ! く……ろ、ひゃああがあ……のぉ!」
これが達するという事なのか。
イクという事なのか。
「いいよ、フェイト。イって」
「イ、ク……!?」
愛しむように優しかった指が、次の瞬間、乱暴なまでの速度でクリトリスを刺激し、割れ目を擦る。
待ち焦がれた刺激だった。懇願したかった快楽のはずだった。だが、あまりにもそれは強烈過ぎた。
さならが溶岩のような灼熱の快楽が脳を蹂躙した。まったく予期していなかった。そもそも、絶頂を知らない十五歳の少女に備えなど出来るはずがなかった。
「いぎぃ!? ひっ、ひぁぁぁぁぁああああああああああッ!」
重い衝撃が下腹部を直撃する。ややあって、フェイトは初めての絶頂を迎えた。
ぴしゃりと水が弾けるような音がして、ショーツの染みが一気に広がる。ショーツが無ければ飛沫の一つでも上がっていた事だろう。だが、淫液の量は処女とは思えない程に多い。
質の良い繊維でも吸収し切れなかったぐらいで、粘り気のある液体が一筋の線を作り、陰部から腹へ流れて行く。
腰がビクンビクンと昆虫を思わせるような痙攣を繰り返し、全身に浮かぶ汗を辺りに降り散らした。
「かぁ……は……ぁぁぁああああ……」
身体のどこにも力が入らない。白目をむく勢いでフェイトは初絶頂の余韻に浸り、腰をひたすらに揺らす。
雛鳥でも扱うかのような慎重さで、クロノがフェイトの下半身をベッドに横たえた。尚も十五歳の少女の身体は震えている。
フェイトは恍惚とした表情を天井に向け、何も考えられずに腹の奥にある熱を感じた。ようやく余韻の身震いも静まりを見せて来る。
その時、クロノが細い腰骨に触れる。
「落ち着いた?」
首を捻ってクロノを見詰める。
「……うん……」
会話はそれだけだった。まともな言葉など何も浮かんでこない。相変わらず頭の中は真っ白なままだ。
クロノもそれは分かっているのだろう。腰骨に這わせた指を頬に移して、子犬を撫でるかのように優しく愛撫する。
眼を細め、彼の指に身を任せようとした時、不意にそれが視界に入った。
「―――」
クロノに腰を抱かれて、恥ずかしい格好で腰を震わされていた時からずっと押し付けられていた熱い肉の棒。
指一本動かすのもしんどいと思う中、フェイトは自身に鞭を入れて肉の棒――勃起したクロノのペニスを握った。
小さな掌の中で震えるそれが、どういう訳か健気に見えた。
「……可愛い……」
「か、可愛いって……」
見たままの感想だったのだが、クロノはショックを受けたように項垂れた。別に小さいとかそういった意味で言った訳ではなかったのだが、どうやら彼にはそんなニュアンスで伝わってしまったようだ。
否定しようとしたものの、頭の中は完全にまどろんでいて、何をするのも億劫だった。
「……くろの」
だから単刀直入に告げる。
「下さい」
「………」
「私の初めてを……貰って下さい」
「………」
「クロノの二回目を……下さい」
長いような、短いような、そんな沈黙の後、彼は小さく笑って頷いた。
400 :
K:2006/11/02(木) 23:29:04 ID:TUbF3vZa
ちょっと短いですが、ここまで。次回でやっと挿入でございます。何かエイミィの事忘れてないかクロノと言わんばかりのエロノ。
今度は時間空かないように注意します。
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!!
イベント開始12時間前にキタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !
ごっそうさんす!
403 :
さばかん:2006/11/03(金) 22:47:18 ID:lkHNjGgq
こんにちはです。メガマガ読みました、なのはとヴィータすっかり戦友ですね。
では、前回のパロディーの答え。
ひぐらし→「ブロッコリーとカリフラワーどっちが緑色?」
アパートの鍵貸します→トランプの勝負
ハルヒ→瑣末な問題に過ぎない。
おとぎ銃士赤ずきん→肉じゃが屋
錬金3級まじかるぽか〜ん→ふつー
少女セクト2→ポール・アンカのダイアナ
アパートの鍵貸します(映画)は分かりにくかったですよね、すみません。
今回の話はちょいと暗いです。
いびきが子守唄になる程、二人は一緒にいる。
と言っても、彼がいびきをかくのは相当疲れた時だけで、
普段は小動物の心拍のような静けさで夜を過ごす。
『今日は眠れないものと思え』
そう言った彼だったが、結果的には5時間位で、彼の
方がくたびれてしまったのだ。
空は薄暗くも無い。
適当に借りた高層マンション、朝日はまだ見えない。
四時は相当微妙な時間で、少し眺めた夜空は夜の7時と大差無い。
もうすぐ朝日がおがめそうだったけど、多分無理。
私の頭は、ユーノとのセックスで体だけでなく、頭もぼ〜っとしてしまっていた。
寝足り無い体に性の快楽、副交感神経の刺激。
寝酒より馴染んだ睡眠導入に私は、目を閉じてベッドの中、ユーノをきゅっと
抱き締め、おやすみなさいと時間の狂った呪文を言った。
裸で寝るベッドは想像以上に暖かい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フェイト。
僕の、大切な、人。
抱き締めてもだきしめても湧く情愛。
君との出逢いは思いだせば吐瀉(としゃ)物を撒き散らしてしまい
そうな程に刺激的だったね。
でも、いいんだ。
ずっぱい味が口に残るように、手に残る様々な感触が、確かに、僕らの
きずな。
僕達の出逢い。それは、大切な二人の死だった。
孤児院にいた僕は代々魔導師を受け継ぐグレアムさんの家に
養子に貰われる。
そこで出逢った双子の姉妹、フェイトとアリシア。
僕の初恋だった。
そして、僕の初恋の二人は、今、
「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
魔法の鍛錬を積む道場は今や、ただの水たまりだった。
しかもそいつは朱くて、僕の全身を染めている。
見渡した水たまりに彼女達のどちらかの眼と髪。
死んだ。たった一つの事象に、頭の一部がどうにかなりそうになる僕に、冷静な、いや、
冷酷の声が響く。
「落ち着けユーノ。彼女達はまだ死んじゃいない」
「何を言ってるんだクロノ!これの何処が死んでいないだ!?・・・彼女達、達ってなんだ!」
襟首をつかんだ腕を払いながら、クロノは答える。もう一人の人物グレアムは何か道具を色々
と準備していた。冷静に、いや、冷酷に。
「二人共眠らせて魔法でバラバラにした。それだけの話さ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
教えて欲しい、これは現実?あまりにあっさりした味で、美味くコメントできない美食家の
気分を味わっている。
拍子抜けした僕は滑って、地の池に仰向けでダイブした。
出るのは疑問と涙。怒りならさっき、泳いで逃げていった。恐らく近いうち戻ってくる。
突然、不思議な光景が僕の眼に飛び込んできた。
水たまりが、まるで磁石に吸い付く砂鉄のように忙しなく、クロノが手を上げた上に集まる。
形成された丸い球体の所々に浮く肉片が気持ち悪い。
「・・・・・・・何?」
考える事を放棄している僕はそう呟くだけで何も予想していなかった。
「使い魔さ」
じいさんの声が響く。そして冷酷に、どいつもこいつも同じ雰囲気。
「使い魔は本来、魔力消費を抑える為に小動物を媒体にするのが基本だ。だが、
体の弱いものが魔導師の場合、使い魔に魔力消費の殆どをつぎ込み、戦わせる
方法がある。クロノが今やろうとしているのはまさにそれさ。
フェイトとアリシアを殺して一つにする。これがどういう意味を持つか分かるかい?
双子というのは不思議なものさ。同じなのに同じじゃない。我々魔導師はその
双子を利用した使い魔を行使する事があるのだが、それがとても優れていてね・・・」
「もういい」
発生した魔法陣の光が数刻、その間に血の塊は人の形を形成する。
それがどんどん人になり、馴染んだ顔が眠り顔でクロノの腕の中にいた。
優しく語り掛けてクロノは女の子を起こした。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、」
もうそれ以外口に出せなかった。
「さあ、出ようか」
道場の扉を閉めて、冷静になった僕はグレアムさんに訊ねた。
「二人を残して、何故出て行かなくちゃならないんですか?」
彼女達を殺したのはどちらか知らないが、止めなかったのだから
同罪に等しい。臆病な怒りは少しずつ僕の中に体を戻しはじめる。
「使い魔はね、それをつくった人が必ずしも主になるとは限らない。
自分の使い魔にするためには、それなりの事をしなければならない。
その方法は様々だが、『繋がっている』という認識を互いにそう思わせる
事、それが使い魔と主の絆のつくりかたさ。
で、異性の場合。『繋がる』と認識させる手っ取り早い方法がある、
有体(ありてい)に言えば、性行為さ」
「っ!!!」
ぎりっと大きな歯軋りが響く。
すたすたと早足で、グレアムを置いていく程のスピードで歩く。
「ゆ、ユーノくん!話はまだ終わっていない。」
無言。
何故か、涙はもう出なかった。あの、使い魔の顔を見たら不思議と涙が止まった。
陳腐(ちんぷ)な表現をするなら天使のよう。
全裸だった彼女の体を、僕は思い出して、体が反応していた。
・・・分かっている。彼女は彼女達ではない。・・・分からない、彼女達が好きだった
のか、それとも、彼女の体(見た目)が好きだったのか。
分からない、分からない。好きな人が死んで、殺されて、涙がもう出ないとはどういう
事だ。悲しくないとはどう言う事だ!!
達観しているとはとても思えない。都合の良い代替物があれば、どんなに
大切な人が死んでも悲しくない。僕の心を分析するなら、そんな所だろう。
分からない、分からない。だから、考えるのを止めた。
反応した体を沈めさせると、僕はさっきのグレアムの言葉を思い出した。
繋がる・・・性行為。
それは詰まり、あの二人が結ばれた、そう言う事だ。
「・・・くっそおぉおぉおぉ!!!!」
ドンとベッドを蹴る。怒りはこれっぽっちも収まらない。
どうせこれ以上暴れても収まらないと結論を出した僕はもう寝る事にした。
奴は、大切な人を、魔法の道具にして、男の道具にもした。
大切な彼女を、ダッチワイフ同然にしたっ!!
欲しかった、いや、欲しい、彼女の事が!
それを、奴は苦労もせず、手に入れる。・・・金持ちのイヤミは永遠に纏わりつく。
それよりももっと許せないのは、そんなクロノが羨ましいと反応している自身だった。
「こら、フェイト!たまごやきばっかり食べるな!栄養がかたよるだろ!!」
「えーえーやだやだーたまごやき大好きー!!」
やかましいのは二人だけ、僕とグレアムは朝食の活気を疎外する。
クロノが眠たそうなのは恐らく、昨日は彼女とたっぷり何かを話したからだろう。
眼の下のくまがなりよりの証拠だ。勿論話しただけではないだろう。そう、色々
よろしくしたんだろう。
それとは対称だったのがフェイト(魔力
資質を持っていたのはフェイトだけだったからこっちの名をとったらしい)
ですっかりクロノ大好き屋になってしまった。正直煩い。
「じゃあクロノにも分けてあげるからいいでしょ?」
「そんなに沢山食べたら早死にしてしまう」
「心配しなくても、クロノが死んだら私も死んであげる!!」
はいはいと会話を続けるクロノ。
その雰囲気に耐えかねた。僕とグレアムは居間から去っていった。
廊下で少し話しかけようとしたグレアムに僕は話しかけるなと威圧して
やり過ごす。
向かった先は、二人と一緒に遊んだ(過去形になってしまったのが悲しい)
金持ちの庭。詰まらない森の散歩も二人と一緒ならどこかの国を歩いている
新鮮さだったっけ。
木陰に寝転がる・・・フェイトとアリシア。二人には本当に色々と申し訳無かった。
彼女達が死ぬ少し前、僕は二人に好きと言って、二人の理解の無さに罵詈雑言を
吐いた。そして、「死ね」と、そう、言ってしまったのだ。
もっともっと申し訳無いのは、なんでだろう、悲しく無いんだ。
確かに、僕達の付き合いは何ヶ月しか無い。でも、時間じゃ無いんだ。
物語に出てくる人物の死に涙する事もある。それはその人物に思う所があったり
琴線に触れる何かがあった時。
そう、悲しいってのは時間の長さじゃない。それをどれだけ深く思うかだ。
だったら、足りないのは思い・・・。
「ゆうの〜〜〜〜っ!!!」
「うわっ!!」
慌てて身を起こすとそこに彼女が居た。
いや、違う。
「えっと、ユーノ・・・だよね?ごめん、記憶が曖昧でさ・・・」
「・・・・・・」
それなら知ってる。使い魔は死んだ前の記憶を纏めるのに時間が少し掛かるらしい。
「えっとね、クロノがユーノにも挨拶しなさいって」
「・・・・・・」
「それでね、何か色々話をしようかなって」
「・・・・・・」
「私ね、ユーノと仲良くなりたいな!」
「・・・・・・」
「ユーノの好きな事とか色々教、」
「気持ち悪い」
どすんと音を立てて彼女を押し倒すと馬乗りになり
フェイトの首を絞める。
「ぐっ・・・うっ、あ・・・」
「気持ち悪いんだよ!!二人と同じ顔をした血の人形が!!
魔法の道具が、ダッチワイフが!!!!
お前からは二人の暖かい匂いもシャンプーの香りもしない。
人形、お前からはいか臭いにおいしかしないんだよ!!!
人形ぶぜいが、人間様の、言葉を喋るんじゃ、ない!!!!!!!!!!!」
言葉を増やすごとに締付ける力を強くする。爪をたてた首筋から、血が滲む。
苦しむ彼女の表情・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・くっ、」
「ゆぅの・・・ゆ、の・・・」
強がりはもう限界だった。
ごめんね、フェイト、アリシア。彼女を、うらめないよ。
首から手を放し、彼女を抱き締めた。
「うわああああああああああああん!!!こめん、こめんね!!!」
「はっ、はっ、はぁっ・・・ユ、ユーノ?」
さっきの暴力と今の優しい抱擁・・・フェイトは困っていた。
僕の泣き顔に釣られたのか、それともさっきの恐怖でだろうか
僕とフェイトは抱きあいながら涙を流した。
「ユーノ、ごめんね」
泣きやんだ二人は、木陰で静かにお話。
「何で謝るの?悪いのは・・・僕なのに」
「私が何か失礼な事をしたから、ユーノは、その・・・
怒ったんだよね?」
フェイトはさっきの恐怖から言葉がスムーズでは無かった。
「ごめんね。理由は言えないんだ。
でも、はっきり言える事がある。もう二度と、こんなことはしない、
絶対だ!!」
にこっと笑って安心させようとする。
それにつられて、彼女も笑った。・・・本当にあの二人に似ている、いや、
彼女達そのものだったとさえ思える。
「うん!」
その蕩けそうになる程の笑顔・・・可愛いよぉ〜。
なでなで。
「う〜ん・・・くすぐったいよぉ〜」
にこにこ笑ってフェイトの頭を撫でていると、フェイトの首筋の傷が見えた。
もう殆ど傷など無いが、それでも、僕には僅かに見えた。
あまりにも愛しい彼女の首筋の傷にキスをする。
「うわっ!ゆ、ゆぅのぉ!!」
「ははははははは」
僕と彼女はすっかり打ち解けていた。これもフェイトのあったかいこころがあった
からだと思う。
彼女の優しさが、本当に救いだった。
「「おそい」」
僕とフェイトのユニゾンが響く。
夕飯の時間、それをつくりグレアムさんが、まだ来ていないのだ。
「お腹すいた〜クロノもまだ図書館にいるし・・・」
フェイトは机につっぷす。
それを微笑ましく思いつつ、言う。
「ちょっと見に行こうか。グレアムさん、寝てるかも知れないし」
「寝てたら罰として玉子焼き1年分をつくってもらおう!!」
「「おうおう〜」」
なんか僕と彼女って気が合うんじゃないか?
グレアムの部屋は暗く、星の瞬きさえない。
何の遠慮もしないで入ったのはフェイトだった。
「おじいさ〜ん、寝てるの?」
明かりをつけるとグレアムが布団を敷いて寝ていた。
「おきろおきろ〜」
何度も揺らすフェイトだったが、何故かグレアムさんは起きない。
「ねぇグレアムおじいちゃんおーきーてー」
おかしい。グレアムさんは早寝早起きが基本のじいさんで、昼寝をするにも
健康にいいからと30分位しか寝ないはず、なのに何故?
その疑問がとけるのは早かった。
布団の横、転がるゆのみと手紙・・・これが決定的・・・何か薬の袋らしきものを
発見した・・・その繋がりで僕は思わずぞっとした。
グレアムさんを見る・・・明らかに動いていない。
僕は黙ってグレアムの状態を確認した。
心拍・・・停止。呼吸・・・停止。瞳孔散大。素人判断であれ、生きている
可能性は限り無く低かった。
僕は徐に黒電話を回した。フェイトはまだ、グレアムさんを起こしていた。
彼は死んだ。
火葬は悲しいもので誰も来る事は無かった。
金持ちの遺産問題は通常骨肉の争いだが、彼はそもそも親戚もみな死に、
知り合いもこの山中に住んでいたので皆無だった。
加えて、彼はあらゆる宗教的な葬儀を嫌って火葬するだけにしてくれとも書いた。
なんでも彼はそうとうの坊主嫌いらしい。正直どうでもいい話だった。
遺書の内容はフェイトとアリシアを殺した事を悔やんだ内容だった。
それ以外は酷く簡素。
「ねぇ、どうしてグレアムおじいちゃんを燃やしちゃうの?おじいちゃん、どこも
ケガしてないよ?」
無垢は何よりも凶器。
火葬が完了するまで僕らは待合室にいた。
クロノが何かを話す。
「グレアムさんは、どうしても魔術の家系を絶やしたくなかったんだ。
それは、自分勝手な考え方でも無く、ただ、家の為だった。
今の世代には考えられないことかもしれないけど、それが、彼にとっての全てだった。
その昔、自由と言う言葉は無かった。自由と言う言葉は外国から伝わって来たもの。
それを福沢諭吉が伝えて日本にははじめて自由と言う概念が
生まれた。でもそれは言葉であって、その思想は彼らに浸透した訳ではない。かつての人たちは
個性ではなく、一つの大きな団体の一つを構成する小さなものだと言う考えが一般的だった。
それが良い悪いは知らないが、彼等にとっては本当にそれが全てだったんだ。グレアムさんが
家系を大切にしようって言うのはこう言う考え方があっての事。勿論、現代ではこんな考えは
許されない。個人は個人として尊敬されるそんな時代だからだ。でも、それが悪いと一方的に
言えるかどうかは、」
「うるさい」
立ち去る。
クロノの豆知識+弁解なんてただの騒音だ。
死んで当然の人間だった。僕はそう思う。
家?バカバカばかばかしい!!そんな言い訳、裁判官にさえ届かない。
じいさんの命ごときでフェイトとアリシアのそなえものにもなりはしない!
空を仰ぐ、火葬のモクモクが虚しく透明色。
彼の思想なんてこんなものさ。ただ消えるだけ。
火葬の待合室で貰った赤飯のおにぎり。
「グレアムさん、あんたが残せたものはね、結局、このおにぎりだけさ」
それをばくりと齧りゆっくりと噛み砕いた。
お前らはね、傲慢なんだよ。
つづく☆
赤いおにぎりだったら銀色とつながった。
こんにちは396です。せっかく書いてて楽しい展開まで来たのに
なかなか時間が取れなくて悶々としてます。今日は第九話行きます。
魔法少女リリカルなのはA's++
第九話 「最悪のミッション」
深夜2時。貨物船グランディアはその日の配達作業を終え、クラナガンから離れたとある岩場に停泊していた。
貨物船の側面には星に猫が乗った巨大な絵が描かれている。それがその運送会社の商標であった。
会社名はCAT.C(ケットシー)と言う。Cargo And Transportation . Company(貨物・輸送会社)の頭文字を取ったものだ。
一般の物資を運ぶ貨物船としての性質と、戦闘任務の軍艦に対して武器や弾薬を輸送する輸送船の二つの性質を併せ持つ
特殊な船で、民間にはあまり知られていなかった。乗組員兼社員が46名と小規模で、設立と組織を簡易化した
いわば有限会社のようなものであったことも起因している。
得意先の相手を一定とせず、依頼があればどんな場所でも危険を顧みず届けるので、時空管理局さえも利用することがあった。
誰もが嫌がる届け物を率先して預かることから、会社が小さいながらも次元間航行機能の搭載が認められていた。
しかし、いくつかの企業が信頼を寄せる中、この会社には公には出来ない裏の顔があった。
それは、武器・非合法薬物の密輸から密航、近年では直接的に強盗まで繰り返す犯罪集団としての一面である。
一部の人間に賄賂として大金を掴ませ、時には別の次元へと逃げることでその姿を隠してきた。
今までまったく尻尾を見せることなく犯罪行為を犯せたのは、どの人間を抱きこむか、
いつ何を狙うかという判断に長けた人間がいたからだ。
―――サイオン・ウイングロード。
歳は30半ば。がたいの良い体格、黒髪短髪と体育会系を思わせるが、船長でありながら会社の運営を一手に引き受けるなど
経営手腕は目を見張るものがある。
人事に関しては、下は20歳から上は50歳までの者ばかりを雇っていた。ミッドチルダでは珍しく平均年齢が高く、
その上誰もが職を一度失ったもの達である。
一味の団結力は強く、乗組員はそのすべてがサイオンを慕っていた。
人を見抜く力のあるサイオンのカリスマ性に惹かれているのかもしれない。
大胆な行動力、時には恐ろしく慎重な思考、そして柔軟な発想力。敵に回したくない部類の人間であることは確かだった。
ユーノは集めた情報を頭の中で整理しながら、先ほど立てた計画の再確認していた。
サイオンからこの件に関してデータとして残すことの一切を禁じられていたので、構想は頭の中だけだ。
アースラ奪取を命じられてから一週間。ユーノとエリオはサイオンから一室ずつ与えられていた。
作戦がどうなるにしろユーノとは連携を取らなければいけないし、時空管理局にずっと置いておくと情報を漏らす恐れもある。
そう考えたサイオンが不定期にでも船に立ち寄ることを義務付けたのだった。
しかし、ユーノは毎日船の所在をこまめに確認し、一日おきに深夜にこっそりとグランディアに訪れていた。
スクライア一族の側にいてあげたいという想いと、相手の情報を少しでも多く集めるためだった。
計画について考えているときはエリオとは会わないようにしているのは、一人の方が集中できるからだ。
部屋に一人とはいえ、目に見える形で監視がついていないというのは想像以上のプレッシャーをユーノに与えていた。
ここはもちろん敵の船内であるし、時空管理局内でも気は抜けなかった。
エリオを無限書庫まで招いた、時空管理局にいると言われている内通者の存在が常にユーノの行動を制限していた。
言われた通りの時間に行くとゲートが開けられていた、とエリオが言っていたのでおそらく司書の中の一人だと思われるが、
一人とは限らない。アースラ内にいる可能性も否定できない。
その人物の前で隠れて何か伝えようものなら一族の誰かが死ぬ。たぶん、サイオンはなんのためらいもなく殺すだろう。
人質は28名いるのだ。一人くらい欠けても人質としての価値は下がらない。
一度深い息を吐いた後ユーノは部屋を出た。
まずはとなりの部屋の前に立ち、数回ノックする。
「エリオ、行くよ」
数十秒の間があり、もう一度ノックしようとした瞬間扉が開いた。
「ごめん…」
扉を開けたエリオは髪に寝癖がついていて服も少し乱れていた。おそらく寝ていたのだろう。
エリオは歩きながらユーノにまかせっきりな上に寝てしまったことで申し訳なさそうにしていたが、
ユーノは別にそれについて咎めることはしなかった。
むしろエリオには必要最低限の手伝いしかさせるつもりはない。余計な責任を負わせたくなかったからだ。
二人は住居スペースである3階をどんどん進み、比較的清掃の行き届いた通路までやってくると、数メートル先に
見張りが一人立っている部屋まで進んだ。
「今日は取引にきました」
ユーノが見張りの男にそう告げると、その男は無言で部屋を見詰めた後扉を開けた。
中の人物と念話で会話をしたようだ。
ユーノとエリオが中に入ると、大きな黒いソファに座ってサイオンが出迎えた。
「こんな夜更けにどうした?寝首でも掻きにきたか?」
にやりとしながらサイオンは前かがみに手を組んだ。
「まさか…。あなたを殺せば一族が死ぬんでしょう?」
無表情にそう言うユーノに、サイオンはぴくりと眉毛を上げた。
「なぜ、そう思う?」
「なぜって…誰だってそれぐらいの保険はかけると思っただけですよ」
鋭い眼つきで聞き返すサイオンにユーノは少し笑いながら言った。
決して余裕があるわけでも、挑発するつもりがあったわけでもないが、不思議とユーノは唇の端を上げていた。
疲れているからだろうか。気分が変に高揚していた。
(仕組みについてはまだわかっていない…か)
ユーノの様子を見ながらサイオンは思考を巡らした。
サイオンが死ねば首輪が起爆するように設定されているのは事実だが、首輪自体がそれを判断するわけではない。
人質の監視やサイオンの様々な状況に応じた高い判断能力を備えるには、首輪を管理する知能をもった装置がいる。
急にポケットの中のデバイスに触れたい衝動に駆られたが、なんとか抑えた。それが相手の狙いかもしれない。
それにしても、いざというときに牽制するために言ってやろうと思っていたことを向こうから言われて多少動揺した。
「ふん。まぁいい。それで、何か報告することはあるのか?」
サイオンが無駄な考えをやめユーノに聞いた。
ユーノはちらりと横にいるエリオに目を向けると、エリオもそれに気付いて目を合わせた。
これから言うことをよく聞いて欲しいというユーノの合図だ。
「とりあえず、アースラを奪う具体的な計画を立てました」
「ほう」
サイオンが足を組んで面白そうにユーノを見た。
「まず、一応確認しておきますが、アースラを動かすことはできますよね?」
「それは問題ない。あるルートからアースラと同型の戦艦のマニュアルは入手してある。クルーの訓練も数ヶ月前から行っている」
ユーノの問いかけにサイオンは頷いて答えた。
「では説明します。まず、アースラを白兵戦で奪うことは不可能です。
向こうにはS級のエースが数人いますし、援軍の存在もあります。
そこで、アースラとグランディアに乗っている人間をそれぞれそっくり交換します」
そこまで言うとユーノは眼鏡を指で押し上げた。
「僕がアースラの艦内全域にあらかじめ転移魔法陣を敷きます。同様にグランディアにも同じ魔法陣を敷きます。
二つの魔法陣は対であり、術が発動すれば対人に限り入れ替えることができます。
アースラクルーの方が人数が多いですが、余った人間は位相空間がずれない場所、
つまりグランディア船内の何も無い位置に出ることになります。
もちろん、一族にはグランディアの方に残ってもらいますが」
ユーノがそこまで言うとサイオンが疑問をぶつけた。
「それはかまわない。だが、アースラ艦内ではイレギュラーな魔法はキャンセルされるシステムになっているはずだが?」
確かにアースラの中では、攻撃魔法やアースラのシステムが異常と判断した魔法にはAMF(アンチマギリングフィールド)が
発生するようになっていた。これは高度の戦艦にはたいてい取り付けられている装置である。
ユーノもこの質問は予想通りだったのですぐに答えた。
「転移魔法陣はアースラにあらかじめ設置するいくつかの装置で術式を完成させます。
それらは発動時まではただの物として判断されるので問題はありません。
計画実行時には僕がアースラをハッキングし、一時的にシステムをダウンさせます」
それを聞いてサイオンは少し笑った。
「またずいぶんな自信だな」
「そのための残り三週間ですから」
ユーノは目線をそらさずじっとサイオンを見ながら言った。
サイオンも負けじとユーノを見据えながら質問を続けた。
「首輪を遠隔で開錠するためにはある程度距離が近くないと駄目だな。その距離はおって伝える。
だが、もしアースラの連中がこの船を使って追ってきたらどうするつもりだ?」
「転移魔法陣は2つの巨大な魔法を同時に発動させるので膨大なエネルギーを必要とします。
そのエネルギーはグランディアの全エネルギーでまかなうつもりです。
あと、こちらの通信装置をあらかじめ破壊しておけば援軍がくるのを数時間は防ぐことができます」
「つまり、やつらは動かなくなったこの船に乗るわけか…。なかなか考えたな」
サイオンは納得するように数度頷いた。今のところ穴らしい穴は見つからない。
「それで人質の解放について…」
タイミングを見計らって話し出すユーノを遮るようにサイオンは言った。
「計画立案で5名、アースラ内の下準備で5名、計画実行直後に10名を解放してやろう。
アースラ奪取数日後に残り8名を解放する」
「!?」
それを聞いてユーノは目を見開いた。
「最後の8名に限ってはアースラまでついてきてもらう。まずは5名、自由にしよう」
(そんな…)
あまりに早い決断にユーノは呆然とした。
ユーノは背中に嫌な汗が流れるのを感じた。
ユーノには裏の計画というのが存在した。
もちろんその内容とは、人質を解放することだったが、
その計画を実行するためには転移魔法陣発動直前にできるかぎり首輪が付けられた人質の人数を減らしておく必要があった。
計画自体には段階があるので少しずつ人数を交渉するつもりだったが、すでに内わけが決まっていたとは思わなかった。
ユーノは首輪を無効化する方法を思いついていた。試すことは出来ないのであくまで予想ではあるが、確信があった。
あえて残りの一族全員をグランディアに残し、遠距離からの起爆信号を受け取る前に首輪を無効化する。
しかし、ユーノの計画では首輪の無効化する人数には制限があったのだ。
心の内を気取られることの無いように、考えてからユーノは強い口調で言った。
「アースラを奪った後8人も人質に取るのはフェアじゃない!」
おそらくこれ以上ねばると怪しまれる。
ユーノが願うような気持ちでサイオンの返答を待ったが、帰って来たのは無情な答えだった。
「駄目だ。最後の8名は解放したやつらの密告の抑制にもなる子供と決めていた。もちろん必ず解放を約束する。
計画立案だけで5名も解放するんだ。これ以上は減らせない」
(くっ…!)
それを聞いてユーノは歯軋りした。もう少し減らさなければいけない。不確定要素が多すぎる。
危ない橋を渡るのに一族の命を賭けるわけにはいかなかった。
ユーノが何も言えずにいると、サイオンの視線が一瞬エリオに移ったような気がした。
気のせいか、とユーノが思った矢先サイオンが急に態度を変えた。
「そうだな。もう5名解放してやってもいいか」
(え!?)
ユーノが驚いてサイオンを見ると、サイオンは重々しい口調で続けた。
「しかし、条件はそれなりに難しいものにさせてもらう」
藁にもすがる思いだったユーノはそれを聞いて黙って頷いた。その様子を見てサイオンは少し満足げな表情をして言った。
「俺達の組織は幅広く様々な仕事をやっている。もちろん法に問わず、だ。
そして最近、戦闘データの売買というのにも手を出し始めた」
そこまで言うと、立ち上がって部屋の隅にあるデスクへと近づき、コンピュータを操作した。
しばらくすると部屋の壁のスクリーンに、ある映像が映し出される。
それは、管理局でエースと呼ばれる魔導師達の戦っている姿だった。
「管理局には優秀な魔導師が多い。特にエースと呼ばれるやつらを倒すことができるのは、同じくエースだけと言われている。
今高値がついているのは、低いクラスの魔導師がエースに勝つという戦闘データだ。それを入手してほしい。手段は問わない」
サイオンがそう言った時、偶然にもなのはやフェイトが戦っている姿がスクリーンに映った。
美しく、凛々しい優秀な魔導師であり、自分の大切な幼馴染。
真剣勝負でなのは達が負けることはまずありえない。もし負かすことができるとしたら…。
ユーノは、自分の最も大切なものを天秤にかける時が来たことを悟った。
サイオンの表情からも、言わんとすることはわかっていた。
ユーノの喉がごくりと鳴る。口の中が乾いていることに気付く。
拳を力強く握り締めて、ユーノはしぼりだすように声を出した。
「わかりました。僕が……僕が倒します」
ユーノとエリオは部屋を出た頃には時間は深夜3時を回っていた。
部屋を出る前に渡された通信機をポケットに入れる。
これからは連携も必要になるかもしれない、ということでサイオンから渡されたものだ。
ユーノとエリオは時空管理局に帰るために転移を始めた。
魔法陣の淡い光に包まれながらも、ユーノは先ほど飲んだ条件について考えていた。
チャンスがあるかわからないが、エースの誰かに負けるように頼むのが理想だ。
しかし、まずは今のユーノの状況をどうにかしてなのは達に伝える必要がある。
打ち合わせをする余裕が今の自分にあるのか。演技がばれてしまうことはないか。流石にユーノも判断に迷う。
最悪の場合、変身魔法で敵として対峙するしかない。
Aクラスの自分には到底勝ち目は無いので、必ず勝てる状況にまで持っていく必要がある。
アースラを奪う準備のほかに、そのための準備も入念に行わなければならないだろう。
ユーノは戦う相手を決めた。
「それじゃあ」
「…うん」
時空管理局の寮内でユーノとエリオはそれぞれの部屋へと向かった。
すでにエリオはユーノの秘書として働いていたので部屋を用意されていた。
「あ、ユーノ」
ユーノが部屋に入ろうとした瞬間、数メートル先の部屋の前に立つエリオが声をかけてきた。
「あ、えっと…無理は、しないでね」
少しためらいつつも、エリオは心配そうに言った。
「うん。ありがとう」
エリオの気遣いにユーノは笑顔で答えると部屋へと入った。
しんとした寮の廊下で、エリオはユーノの部屋をしばらく見つめていた。
ユーノは部屋に入るとすぐにベッドへと倒れこんだ。あと数時間後には無限書庫で働かなければならない。
眼鏡をはずしベッドの脇に置いた。
寝なければならない。そう頭ではわかっているのに、一向に眠気は訪れなかった。
この一週間、まともに眠れたためしがない。
途中で倒れるわけにはいかない、という気力だけがユーノを突き動かしていた。
暗闇の中、これからのことに思いを馳せた。
自分の立場を利用し、仲間を裏切り、幼馴染を撃つ。
これほどの罪が他にあるだろうか。
ベッドのシーツを自分に引き寄せ丸くなる。
この先どうなるかはわからない。ただ、一族を救い、やつらは絶対に捕まえる。
もちろんユーノが考える最善の方法を取って。そのためにはどんな代償も払うつもりだ。
(もし、この事件が終わったら…)
一族を助けるために已む無く指示にしたがっているユーノは、解決の後に罪に問われないかもしれない。
なのは達は、しょうがなかったと許してくれるかもしれない。
それでも、たとえ方法がないとは言え、ユーノは自分で自分を許せそうになかった。
(僕は…みんなの前から消えよう)
ユーノは遠のきつつある意識の中、ゆっくりと目を閉じた。
次回へ続く
着々と計画の準備を進めるユーノ。
一方なのはと会ったフェイトにもある計画があった。
次回 第十話 「心の枷」
わかりづらい内容ですいません…。ユーノが何をするつもりかぼんやりと理解してくれるだけでいいです。
ユーノが直面する出来事とその苦悩だけわかっていれば大丈夫だと思います。
次回は多少インターバルっぽい話です。それでは。
逆に考えるんだ、A'sをいれたら26話だと
396氏乙です!
毎回ふつーにどきどきしながら読んでます。
エロ抜きでも、二次創作として純粋に楽しい!
>>420 396氏乙!!
先の展開にマジでwktkしてます。
やっぱなのはvsユーノは実現するんだろうなぁ。
425 :
無銘兎:2006/11/09(木) 02:51:38 ID:krsUpvZl
最近立ち読みしたスクールデイズ公式本のイラスト見てたら、
アルクェイドみたく爪伸ばしたすずかと、日本刀持ったアリサが
2頭身にデフォルメされて斬り合ってる図が浮かんだ。
他にもユーノ取り合って、挙句が鮮血だったり斬殺だったり両方出来ちゃってたりする
シーンを想像してしまう自分は末期症状なのだろうか。
a
>>425 夏コミでスクールデイズっぽい内容にしたリリカル本みたよ。
歩道橋の上でバルデッシュの鎌を・・
詠んでたら鬱になった。