【こわしや我聞】藤木俊作品全般でエロパロ7

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1名無しさん@ピンキー
このスレは藤木俊先生によりサンデーで連載されていた漫画
『こわしや我聞』および、きっとすぐに始まるに違いない次回作や読みきりなど、
藤木俊作品のエロパロスレです。

あくまで藤木作品のエロパレスレですので、
他作品とのクロスオーバーはご遠慮ください。

・950レス、もしくは450KBを越えたら流れを見ながら新スレについて検討を。
・新職人は常時募集中。
・酷評受けても泣かない、荒らし煽りは放置。
・ちなみにこのスレで言われる「低能」とは「GJ」の意。褒め言葉なので怒らないでね。
・801は禁止。専用スレにてどうぞ。
・陵辱、ダーク、鬼畜、百合は不快に感じる人もいるので、ちゃんと予告しましょう。
・投下し終わった場合、その旨を書きましょう。

前スレ
【こわしや我聞】藤木俊作品全般でエロパロ6
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1142174405/

2chエロパロ板SS保管庫
http://sslibrary.arings2.com/

関連スレ
【こわしや我聞】藤木俊作品 女性キャラ萌えスレ9【劇団SAKURA】
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1141140625/
こわしや我聞の桃子・A・ラインフォードに萌えるスレ (DAT落ち)
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1122707581/
☆こわしや我聞の我聞&斗馬に萌えるスレ☆
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1116491861/
2499:2006/09/06(水) 21:01:52 ID:YcH6GDLT
慌しくて申し訳ないですが、
とりあえず前スレの続きということで投下させて頂きます。
3499 16/21:2006/09/06(水) 21:03:48 ID:YcH6GDLT

その、上気しきった頬、涙を浮かべ潤みきった瞳、涎にまみれた口許、汗で額に張り付いた前髪・・・
そして蕩けきった、弱々しい涙声は余りにも被虐的な魅力に満ちていて、
何よりも寸前まで昂ぶりながら欲求を満たせずにいる衝動を抑えられるはずも無く―――

「わかった、國生さん」
「はい・・・」

それを解放の合図と受け取り、安堵しかけた陽菜の背中を壁に押し付けて、

「・・・え・・・? しゃ、ちょ・・・?」
「俺が支えてあげるから、君は力を抜いて・・・」

尻のやや下方、太腿の裏のあたりに手を回して、両足を自分に向かって開くように抱え上げて、
開いた足の間にいきり立ったままの肉茎をあてがって・・・

「や、だ・・・うそ、しゃちょ・・・? やだ、や、だめ、わたし、もう――――――」

じゅぶぶぶっ!

「――――――っふぁあああぁ!」

抱え上げた陽菜の中に躊躇うことなく肉茎を捻じ込んで、華奢な身体を壁に押し付ける。
あとはそのまま・・・

「っあ・・・か、は・・・ぁ、あ!? うぁ、やぁああ! ひぁあっ! わたっ、だめぇええ!
 イった、ばかりで、わた、も、うぁああぁ!」

壁際に押し付けられて腰を引くことも、仰け反ることすらできない陽菜の中に肉の杭を何度も何度も打ちつける。
陽菜の背後で壁はギシギシと軋んだ音を立て、
身体を引いて逃げることの出来ない彼女の奥の奥まで届いてしまう我聞のモノの先端が、
既に限界に達している陽菜を更に・・・容赦なく昂ぶらせ、乱し、狂わせる。

「うく・・・っあぁあぁああっ! だめ、おく、とどいて・・・・・・っやぁああぁあ!
 あたって、ひぐ、んぁああぁあっ! しゃちょおっ! もうだめ、や、やめ、やらぁあぁっ!
 も、ゆるして、くださいぃ! わたしっ、こんな、こわれちゃあっ! しんじゃ、んぁああぁっ!」

秘所を滅多刺しにする肉の槍の穂先が子宮口まで達し、こつん、こつん、と叩かれて、
陽菜はまさに身も世も無く、という感じで泣き叫び、悶え狂う。
強烈過ぎる快感の渦に呑みこまれ、溺れた者が助けを求めるように我聞に許しを乞うが・・・

「っくうぅ! っ、うく・・・! もうすぐ、もうすぐだからっ! 國生さん、俺も、すぐ、イくから・・・っ!」
「ひぅ、んぅうううぅ! だめっ! いやぁあぁあぁぁ! も、わたし、本当に、だめ、だめですっ!
 こわれちゃっ! おかしくなっちゃぁあ! ひぅ、んぁあぁ! うぁああぁあぁ!」

抱え込んだ陽菜の両足がびくんびくんと跳ね、その根元で我聞の肉茎を咥え込んだ膣もまた、
同じリズムでぎちっ、ぎちゅっ、とますます強く締め付けてくる。
その間隔が徐々に短くなってきて、熱く、キツく、絡みつく肉襞の蕩けそうな感触が、
我聞の射精感を際限無く昂ぶらせる。
後はもう、本能の赴くまま、劣情の欲するままに、全力で陽菜の中を掻き回し・・・

「ひゃあぁああ!? そんな、っあぁああっ! またっ、はげしっ、すぎぇえぇえぇええ!
 こあれちゃあぁ! イっちゃ、イく、イっちゃぁあ! わた、また・・・しゃちょおっ!」
「うぁあっ! っく、國生さんっ! おれっ! もう、すぐ・・・っ、出るっ!」
「わ、わた、あぁぁあっ! しゃちょおっ! わたしも、わたしもぉ!
 イっちゃ、も、イっちゃ! イっ、あ、ぁ・・・・・・・・っあぁぁあぁぁぁぁぁああっ!」
4499 17/21:2006/09/06(水) 21:05:37 ID:YcH6GDLT

陽菜の両足がぴんっと跳ね、指先が空中の何かを掴んだかのようにきゅっと固まる。
その、次の瞬間に―――

「お、俺も、も・・・・・・っおあぁぁあっ!」

どびゅっ! びゅくくっ! びゅるるっ! どぷぷっ! どくっ、どくくっ!

陽菜に押し付けた我聞の腰ががくがくと震え、
陽菜の足がびくびくと空中を蹴る。
彼女の奥深くまで突き込まれた肉茎は激しく脈動しながら熱く、濃い精液を更に奥へと注ぎ込む。
我聞はその開放感とある種の喪失感に酔い痴れながら射精を続け、
その間、陽菜は終わらない絶頂の高みで喜悦の渦に呑まれ、
頭が真っ白になるほどの快楽に揉まれながら、ただただその流れに身を任せるのだった。




「・・・・・・ぁ・・・しゃ、ちょ・・・」
「大丈夫か、國生さん?」

ベッドに横たえられた感触で、陽菜は目を覚ます。
とはいっても、今までのことが夢なのではないか、等と思うには、余りにも実感が強すぎるので、
きっと気を失っていたのはほんの僅かな時間だろうと理解する。

「いや、スマン、まさか失神させてしまうとは・・・」
「・・・そうですよ・・・社長・・・激しすぎます・・・あんなに、もうだめって・・・言ったのに・・・」

申し訳無さそうに頭を掻く我聞に向けて拗ねたように口を尖らせるが、
そう言っている傍からさっきのあの、怒涛のような悦楽を思い出してしまい、頭がかぁっと熱くなる。
あんな行為、あんな快楽をこれ以上味わったら、自分はもう、本当に―――

「いやホント、スマン! 次はもっと、優しくするから・・・」
「・・・え・・・?」

次って、何ですか・・・と聞こうとする前に、我聞の指がエプロンドレスのボタンにかかる。

「しゃ、社長・・・なに、を・・・?」
「あー、メイドさんの格好の國生さんも可愛いんだけど、やっぱり、その・・・裸も見たいかな、なんて・・・」
「え・・・ちょ・・・っ!?」

なかば唖然としている間に、胸を露わにされて・・・

「っひゃあっ!? や、だめ、だめですっ! や、あんっ!」
「ふふ、國生さん、おっぱいも敏感なんだね・・・」

掌で優しく揉まれ、ぴんっと勃ってしまっている乳首を指先で捏ねられると、
身体は呆気なく疼き出し、甘い声を抑えることが出来ない。

「待って、待ってください! 私、本当に、今日これ以上されたら・・・こわれちゃいます・・・」

疼く身体が“これ以上のこと”を求めているのは自分でもよくわかる。
だが、それをしてしまったら、これ以上我聞に抱かれてしまったら、
本当にこの快楽に溺れてしまう、彼に抱かれることだけを求めるようになってしまうのではないかと思えて、
それが怖くてたまらないのだ。
だが・・・
5499 18/21:2006/09/06(水) 21:07:19 ID:YcH6GDLT

「ねぇ國生さん・・・俺はもう、とっくにこわれちゃってるんだよ?」
「え・・・」

すっ、と陽菜に顔を寄せて、我聞が優しい、だが同時に妖しい声で囁く。

「國生さんがあんな風に俺を誘って、挑発するから・・・
 俺はもう、國生さんとえっちなことをすることしか、考えられない・・・」

陽菜の背筋をぞくり、と何かが走る。
それが怯えなのか、それとも淫らな期待なのか、自分でもわからない。

「俺は、もっと國生さんと気持ちよくなりたい・・・
 國生さんは、俺と気持ちよくなるのは、嫌?」

問われても声を出せず、陽菜は・・・ただ、ふるふると首を横に振る。
我聞に向けての無言の意思表示は、同時に陽菜自身の心にまで響き・・・

―――そうなんだ・・・社長は、もう・・・そうなんですね・・・?

ぞくん、と・・・今度は間違いなく、期待と悦びに身体が疼く。

―――こわれてしまっても・・・社長と一緒に溺れてしまっても、いいのですね?

今まで、抑えられないものを必死で抑え込んでいた反動が、
我聞のたったそれだけの言葉で一気に溢れ出し・・・

「社長・・・」

覆い被さる我聞の首にしがみつくように腕を回し、今度は声に出して・・・

「私も・・・社長と一緒に、気持ちよく・・・なりたいです・・・」

そう言って、我聞の顔を引き寄せる。
我聞も愛撫の手を止めて、陽菜の前髪に指を絡め、彼女に求められるままに顔を寄せ・・・

「國生さん・・・」
「しゃ・・・ちょう・・・」

そのまま互いに引き寄せられるかのようにして、二人は唇を交わす。


―――後はもう、ただひたすらに、欲望の赴くままに求めあうだけだった。
もはや陽菜は“ダメ”とも“いや”とも言わず、我聞の為すがままに身体を任せ、
二人は互いの身体を、そして快楽を貪りあった。
夜が更けても、日付が変わっても、空が白ずんでも飽くことなく交わって・・・
二人は夜明けまで抱き合っていた。




6499 19/21:2006/09/06(水) 21:09:19 ID:YcH6GDLT


「う・・・む・・・ぅ」

慣れないベッドの感触にやや戸惑いながら、我聞は目を醒ます。
ぼんやりとした意識のまま窓に目を向けると、既に日は高く・・・というか、どう見ても既に正午を越えている。
平日休日を問わず早朝トレーニングを日課とする我聞にとって、
そんな時間に目を覚ますことなど本来は有り得ないのだが・・・

「そうだよな・・・いつも起きる時間に、まだ起きてたもんな・・・」

ぼそぼそ、と呟いてみる。
昨晩のことは・・・・・・しっかりと記憶に残っている。
これまでの日常から余りにもかけ離れていて、夢だったんじゃないかと考えたくなるような記憶だが、
裸で寝ていたこととか自分の部屋でないところで目を覚ましたとかいう以前に、
あの余りに濃密な時間が夢での出来事だったなどと、思えるはずもなかった。

「國生さんは・・・もう起きてるのか・・・」

昨晩、それまでの彼女とは全く違う、妖しい素振で我聞を魅了して、
途中からは魅了されてしまった我聞が攻めに転じ、思うままに、欲望の赴くままに蹂躙してしまった彼女。
そんな陽菜を思うがままに責め立てていた自分ですら身体がなんとなくだるいというのに、
夜が明けても尚、泣き叫び、乱れ悶えていた彼女が普通に動けるということは、少し意外だった。

ともかく目は覚めてしまったし、
徐々に昨晩から今朝にかけての、陽菜へのかなり無茶な行為の数々も思い出されてきて、
彼女の体調や、機嫌も気になって身体を起こしかけたところへ・・・

「あ、お目覚めになられましたか。 おはようございます、社長! ・・・と言っても、もうお昼過ぎ、ですが・・・」

キッチンから部屋へ入ってきた陽菜が、声をかけてくる。

「ああ、おはよう國生さん。 起きるの、早かったの?」
「いえ、社長よりほんの・・・そうですね、30分前くらいでしょうか」

とりあえず陽菜の機嫌は問題なさそうで少し安心して、

「そっか、しかし國生さん、俺より疲れてるんじゃないかと思ったけど、思ったより元気そうだな」
「ええ、まぁ、その・・・社長がずっと動いてくださったお陰で、
 私は・・・その、横になってるだけ、でしたから・・・」

その話題になると陽菜は恥ずかしそうに顔を伏せてしまうが、一方の我聞も情けないほどに全く同じで・・・

「そ、そうか・・・ええと・・・昨日は、その、なんというか・・・ごちそうさまでした、というか・・・」
「あ、いえ・・・わ、私こそ、なんと言いますか・・・お粗末さまでした、とでも言いますか・・・」

昨晩あれだけ激しく抱き合った二人とは思えないほどに、初々しく、じれったい挨拶を交わす。
そのままお互いになんとなく俯いてしまい、しばらく止まってしまうが・・・

「そ、そうだ、片付けとか何か、やることがあれば手伝うよ!」
「え、いえ、その・・・あ・・・!」

とにかくこのままでいても仕方無いと、ベッドから起き上がった我聞を見て、
陽菜は慌てて後ろを向いてしまう。
その様子はかなり不審で、

「・・・? ど、どうした國生さん?」
「いえ、あの・・・社長・・・身体が・・・その・・・」
「え・・・っうぉ!?」
7499 20/21:2006/09/06(水) 21:10:54 ID:YcH6GDLT

そう言われて改めて自分を顧みて、昨晩のまま・・・全裸なことに気付き、今度は我聞が慌てて後ろを向く。

「え、ええと! 國生さん、俺の服は・・・!?」

昨晩、途中でやむを得ぬ事情により、タオル一枚で彼女の前に立つ羽目になったんだっけか、
・・・等と徐々に思い出しているうちに・・・

「それなんですが・・・あの、汗だくだったので洗濯し始めたあとに、
 その・・・あんなことになってしまったものですから、
 洗濯を終えてそのまま一晩中、洗濯機の中に放置してしまいまして・・・」
「あー・・・・・・」

流石に、それは着られない。

「それで、私の服と一緒に、さっきまた洗濯してしまいまして、今はまだ・・・」
「そ、そうか・・・いや、それはそれで有り難いからいいんだけど・・・」

とりあえず帰ることは論外、部屋をうろつくことすら気が引ける状況である。

「ですので、折角ですからシャワーでも浴びられては如何でしょうか?
 昨晩の、あ・・・汗ですとか・・・他にも、いろいろ・・・あるでしょうし・・・」
「あ――――――」

シャワーと言われて、なんとなく・・・昨晩の事を思い出す。
それが、彼女の罠に完全に嵌る為のキーポイントだったのだ。
・・・だがまあ、今更そんなことを心配する必要もあるまい、と思い直し、

「そ、そうだな、じゃあ遠慮なく借りるとするよ」

出来るだけ陽菜に背を向けたまま、ぎこちない歩き方で浴室へと向かう。
だが、その背中につぃ、と何か―――昨晩のことを経て、それが陽菜の手だと見なくてもわかる―――が触れて、

「あの・・・また、お背中・・・お流し、いたしましょうか・・・?」

再び、昨晩のことがチラチラと脳裏を掠める。
そして、少しずつ・・・何かのスイッチが入っていく気がする。
だが、それは気のせいだと我聞は自分に言い聞かせ、そして・・・

「あ、ああ・・・そうだな・・・ええと、その・・・國生さんさえ、よければ・・・」
「はい・・・では、すぐに行きますから、どうぞお先に・・・」
「ああ、わかった・・・」

なんとなく妖しい、歪んだものを感じながらも、それに流されるかのように我聞は陽菜の提案を受け入れて、
そのまま浴室へと向かう。
我聞の背中を見送る陽菜の顔はやや俯き加減であったが、
その背中が浴室へと消えると、くす・・・と小さな笑いを洩らし・・・

「ふふ・・・今夜も帰しませんよ・・・社長・・・」

誰にも聞こえない小さな声で、呟くのだった。




8499 21/21 (後編 了):2006/09/06(水) 21:13:48 ID:YcH6GDLT

んで、その頃、工具楽家にて―――

「優さんいらっしゃい! 待ってました!」
「ちゃーす・・・・・・」
「・・・? あの、優さん? なんだかお疲れですか?」
「やー・・・ちょっちねー」

好き勝手に策を巡らせておいて最終的には当人達に状況を任せつつ、
その様子だけはしっかりモニターしておいて後からじっくり楽しもう♪
・・・なノリで優を招いた果歩なのだが、どうも優のテンションの低さが気にかかる。

「あの・・・もしかして、お兄ちゃんと陽菜さん・・・うまく、いきませんでした・・・?」
「いやー・・・それはもうね、二人とも普段からは考えられないくらいに、ケモノのように、もうね・・・」
「え!? え! えええ――――――っ! それって、大成功ってコトですかっ!?」
「にゃー、きっとそうだねー」

それを聞いて果歩は一人大興奮なのだが・・・

「あの・・・優さん・・・やっぱり、どうかされたんですか?」

本来、その喜びを分かち合い、増幅させてくれる相方的存在であるハズの彼女のノリの悪さは、
いくらなんでも気になりすぎる。
そして優としてもこれは微妙に隠さなくてはいけない問題であるのだが、
少なくとも果歩には話しても全く問題無いと判断したのか・・・

「いやー、今回の作戦は我ながらかなりの確信をもって望んだだけあって、
 我聞くんとはるるんがああなることはすっかり予測済みではあったけどさー」
「はい、それが、何か・・・?」
「それにしても・・・だよ」

優の眼鏡の奥で、ギラリとその双眸が暗い輝きを放ったかと思うと―――

「だからってあんな大声で夜通しギシギシアンアンされたんじゃうるさくって眠れやしねーってんだ―――!」

ばーん、と思いっきりちゃぶ台返し。

「ゆ、優さんちょっと落ち着いて―――!」
「これが落ち着いていられるか―――!
 大体わざわざ人の部屋に面した壁でイチャイチャしやがって、ありゃなんだ―――!
 未だに彼氏もいない私に対するイヤミか―――!?」
「そ、それはなんだか大変そうですがある意味自業自得ですから!」
「うるさ―――いっ! こうなったら、一晩中悶々とさせられた鬱憤を・・・
 辻原くんあたりにでも解消させてやるんだから!」
「だ、ダメ―――! 辻原さんは私のだからダメです優さん!」
「だーっ! 果歩りんは番司くんあたりでも捕まえておけばいいのよっ!」
「な、何で私があんなパンツマンとなんですか!」
「うーるーさーいーっ! いいのよきっとお似合いだから!」
「んなぁっ!? そ、それは余りにも心外ですよっ!」
「とにかく! この鬱屈した想い、なんとかして―――!
 この際果歩りんでもいいからっ!」
「え・・・や、ちょ、ちょっと優さん!? そ、それはイヤ――――――!」


と、まあそんな感じで家長のいない工具楽家の午後は妖しく過ぎてゆく。

優が今夜も眠れぬ夜を悶々と過ごす羽目になるのも、
果歩が本格的にそのとばっちりを受けることになるのも、それはまた別のお話ということで。

9499:2006/09/06(水) 21:18:01 ID:YcH6GDLT
以上で今回の投下は終了、我聞のお誕生会のお話も終了です。
我聞の誕生日は既に二ヶ月前、しかも誕生日と関係ない方向に突っ走ってますが、
ともかく読んで下さった方、どうもありがとうございます。

新スレへの移行がバタバタしてしまって済みませんでしたが、
折角立ったので、また賑わってくれることを祈ります。

では、失礼します。
10名無しさん@ピンキー:2006/09/06(水) 21:30:01 ID:UW+Pt5F7
GJ!
エロいです。
またの投下を楽しみにしています。

そういえば、むしろ、もうすぐ國生さんの誕生日
11名無しさん@ピンキー:2006/09/06(水) 23:11:22 ID:yvsKsCj7
12名無しさん@ピンキー:2006/09/06(水) 23:21:40 ID:Y83cQkqJ
きぃぃぃぃぃぃぃたぁぁぁぁぁぁあああ!!!!
まさにエロ!まさにド低脳!!
しかもスレ立てまでやってくれるとは・・・499氏に後光がみえます。
次は我聞×國生さん以外の誰k・・・いやなんでもないです。
また来てください。
13名無しさん@ピンキー:2006/09/07(木) 00:21:10 ID:JCZSmycL
スレたて乙、そしてGJ!
スゲーエロいよ、まさしくど低脳!
14名無しさん@ピンキー:2006/09/07(木) 16:25:53 ID:7BgFNBO7
GJ!
最初の攻め攻めな國生さんと
一戦後の受け受けしい國生さん、
両方ハァハァさせていただきました
15名無しさん@ピンキー:2006/09/07(木) 18:11:16 ID:+82e5bs8
まぁ、あれだ、、、、
精巣枯れそうだなw
16名無しさん@ピンキー:2006/09/07(木) 20:18:59 ID:tAdMGc2l
むう、エロい
ここにきてエロの神髄をみた気がする。
超GJ
17名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 18:54:02 ID:X5AaauwW
うわあああっ、転がりすぎて部屋がグチャグチャに!つーか止まらんわい
今ならシューマッハにも勝てそうだ!わはははは

訳:GJ!
18名無しさん@ピンキー:2006/09/09(土) 23:07:10 ID:8Kizk1aL
ホシュ
19名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 00:33:48 ID:awGydacU
>>17
ま、俺の場合軽くアロンソを周回遅れにしたがな
遅れちまったがとにかく499氏GJ!
20499 5/5 前スレラストの埋めネタの続きっす:2006/09/10(日) 20:59:41 ID:ZPj+IYab

んで、翌日。


「・・・とまぁ、そういう訳なんだが・・・珠だけじゃなく、果歩も病気なのぬぁあっ!?」

言葉を最後まで言い切る前にスコーン、とひっくり返されて、

「な、なな何でそういうことを私に聞くんですかっ!?」

地面に大の字に転がされた我聞は顔を真っ赤にした陽菜から凄い剣幕で怒られていた。

「いや、女の子のことは俺にはよくわからんし、だがもし病気だったら大変だから、
 ここは兄として誰かに相談せねばと思ったのだが・・・」

何がまずかったのか全く理解していない様子の我聞に半ば呆れながらも、
生真面目な陽菜は相談されたからには答えねばなるまい、とも思い・・・

「そ、それは、その・・・お、女の子としては普通のことなんです!
 ですから、もうその件については誰にも口外してはいけません! いいですね!?」
「わ、わかった! わかったから!」

恥ずかしさを隠すように、凄い剣幕のまま一気にまくし立てる。
そんな陽菜に勢い負けして、我聞はそう言うしかなかったのだが、ふと思い立ち・・・

「あれ、でも・・・普通ってことは、國生さんも・・・あ、い、いや! 何でもない! 何でもないから!」
「社長・・・・・・」

ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・
と、陽菜の背後から何かが立ち昇るのが見えて、我聞は己の失言を心から後悔したが・・・

「忘れてください・・・」
「わ、忘れる! 何も言わなかったし何も想像しなかったから―――」
「これで全部忘れてくださいっ!」

ちゅどっ!

「あ―――――――――!」


・・・と、爆砕並みの衝撃音が響いてから数日の間、
何故か傷だらけになっていた社長が秘書に口を聞いてもらえないという事態が発生し、
社員や家族を当惑させたとか・・・


                                                 おわり。







埋めネタが埋めで終わりきらなくてスミマセン
とりあえず以上デス
21名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 22:29:02 ID:4NX6EEhK
GJ!
珠ちゃんでハァハァできる日が来るとは思わなかった
22名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 23:48:21 ID:HokGLccE
工具楽姉妹ネタキター
けしからん低脳ですな。う〜む、けしからん。
俺達には不可能な事を華麗にこなす、499さんに憧れるゥ
23名無しさん@ピンキー:2006/09/12(火) 00:28:49 ID:KaR+M52R
俺は前スレ499だが・・・
まさか書いてくれるとは・・・449氏(ややこしいな)はマジでネ申。
24名無しさん@ピンキー:2006/09/13(水) 03:36:29 ID:2rkMIZrj
GJ!GJ!GJ!

辻原さんに解消させてもらう優さんのお話も読みたい…
果歩ちん乱入とかで!
25名無しさん@ピンキー:2006/09/14(木) 15:48:57 ID:ZBArHGFn
もしかして前スレまだ落ちてない?
26名無しさん@ピンキー:2006/09/14(木) 18:57:35 ID:GX4rlnto
このレスが書き込まれた時間にはまだ堕ちてません
27名無しさん@ピンキー:2006/09/14(木) 20:06:16 ID:ah+7YZiP
ま、500KBは越えてるし、時間の問題でしょう
283355:2006/09/14(木) 22:41:11 ID:zjU7Id0Z
3355です。
間があいてしまいましたが続きを投下します。
293355:2006/09/14(木) 22:41:43 ID:zjU7Id0Z

(すこし、間をおいてから)
 決してお互いを嫌い合っているわけでもないのだが、我聞も陽菜も期せずして二人揃って
そう思っていたそのそばから・・・・

「お、おはようございます」
「う、うん、おはよう」

 通学路の真ん中でばったり出会ってしまった。

 もちろん、登校の前には、本日のスケジュールの確認を校門の前で行うのだが、今日は、
まだ心の準備が必要なところなのに、予定より早く顔を合わせることになった。

「その、き、昨日はよく眠れた?」
「いえ、寝たのは三時過ぎになってしまいましたし・・・・」
「そ、そうだったね、あははは・・・オレ、何をいってるんだか・・」

 思いっきり不自然・・・・・。

 どうにか、普通に接しようとすればするほどお互いにぎこちない。
「聞き捨てなりませんな」
 ぬっ、と、どこから現れたのか、天野が口を挟む。
「わあっ!!」
「きゃ!」
「そんな夜遅くまで、るなっち、何を・・・? そして寝るのが遅くなったことを知っているくぐっち・・・・怪しい」
 まるで、難事件を真剣に推理する名探偵のような口調で天野がからかう。
「よしなよ〜、恵〜」
「な、なにも怪しくなんかないぞ!」
「そうです! 昨日はたまたま、残業で遅くなっただけです! 会社の人たちに聞いてもらえれば・・・」
 二人して慌てて弁解する。
 本当のことなのに、まるで、「何かあった」ことをごまかしているような様子に見えてしまう。
「うんうん。そういうことにしておこうか」
 にやにやと笑う天野。
303355:2006/09/14(木) 22:42:36 ID:zjU7Id0Z

 冷やかすだけ冷やかしたら、二人の弁解を聞こうともせずに天野は走り去ってしまった。
「ご、ごめんね、二人とも。後で恵には謝るように言っておくから」
 そう言うと、住も天野を追いかけて行ってしまった。

 ポツンとその場に残される二人。

「あっ、そ、それで、本日の予定ですが・・・・」
「おおっ、うん! 聞きたい、聞きたい」
 いつもスケジュール確認を始めると、ようやく、二人ともいつもの自然な状態に戻った。
 ただ、この状態が、いつまで続けられるかは、甚だ心許なかった。

 学校に着いて、授業が始まると、クラスの違う二人は当然別れ別れとなる。
 陽菜は、昨夜からのドタバタで、少し我聞と離れていた方がいいと考えていたから、
彼の顔を見なくなれば少しは落ち着けるだろうと思っていた。

 ところが、一時間目の間中、彼女は我聞に注意をし忘れたこと、なにか彼に会いに
行かなければならない用事がなかったかと絶えず心の中を捜していた。
(今日の予定は確認したし、テスト範囲はまだ発表になってない。
体育の授業も今日はないから、仙術がばれないように注意しなくてもいいし・・・・
授業の予習しなければならない範囲は・・・・今言ってもおそいし・・・・)
「國生」
(昨日のことを気にしないでくださいとわざわざ言いに行くのもおかしいし・・・・)
「國生、123ページの二段落から読んでみろ」
(お礼はもう言ったからもう一度言うのも変だし・・・)
「國生、きこえんのか?」
「は、はい! 本日の予定は・・・・」
「違うだろ、今は授業中。仕事も大事だろうが、今は授業に集中するように」
 普段クラスではクールな優等生の陽菜の珍しい失敗に周囲から意外そうなざわめきが起こる。
 陽菜は、とんちんかんな答えをしてしまったことに赤くなってしまった。
313355:2006/09/14(木) 22:44:10 ID:zjU7Id0Z
今回は以上です。
あんまり話が進んでませんが楽しんでいただければ幸いです。
32名無しさん@ピンキー:2006/09/15(金) 22:11:41 ID:28y7jCYm
GJ!
ちょっと過疎気味だから投下があると嬉しい・・・
お話は繋ぎな感じでしょうか、続き楽しみにしています。
33名無しさん@ピンキー:2006/09/17(日) 16:03:29 ID:MbOvgITM
グッジョブ。
いいもの読めたよ。
34名無しさん@ピンキー:2006/09/18(月) 20:58:33 ID:6xftcNm9
おい、前スレの>>503

ちゃんとあるだろうが。

【我聞】こわしや我聞(藤木俊)スレ【斗馬】
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/rcomic/1137563452/
35名無しさん@ピンキー:2006/09/20(水) 22:08:34 ID:X9qnsHNM
ホシュ
36名無しさん@ピンキー:2006/09/23(土) 10:20:58 ID:vIb4F5pg
なんだか圧縮が迫ってそうなのでホシュ
37名無しさん@ピンキー:2006/09/24(日) 17:22:22 ID:wGw1IQcE
そしてage
38名無しさん@ピンキー:2006/09/24(日) 19:50:13 ID:NCBwBppf
騙しリンクや広告の少ない優良アダルトサイトリンク集
http://geocities.yahoo.co.jp/gl/frontire1017
39名無しさん@ピンキー:2006/09/26(火) 00:46:56 ID:Cko6Ytvq
初代スレから読み直して、あらためてハァハァした
40名無しさん@ピンキー:2006/09/26(火) 00:52:45 ID:EzU1tE2P
去年の夏ごろからは凄かったね・・・あれからもう一年か。
すでに終わった漫画だから人が居ないのはしょうがないとして・・・
新連載とか無い限り、職人さんも書き辛いだろうね。
41名無しさん@ピンキー:2006/09/26(火) 01:07:57 ID:1y9qbnZ9
夏ごろに桃子熱で一気に盛り上がったのと、
連載終了後からクリスマスにかけては、何か異様な勢いがあった気がするw

やっぱ書き手さんは書きたいネタ書いちゃったとか、そんな感じなんだろうか・・・
42名無しさん@ピンキー:2006/09/26(火) 05:09:39 ID:pBGDdsQx
こんな時間に読んでる奴もいないかもだが…
ブログにて突然の画廊伝説-えちい編が上がってるぞ!
43名無しさん@ピンキー:2006/09/26(火) 06:01:26 ID:1y9qbnZ9
もう消されてるよ・・・
消すの早すぎorz
44名無しさん@ピンキー:2006/09/27(水) 16:27:10 ID:MyzCCpCX
|-`).。oO(キャラ萌スレ行くといい事有るかも…)
45名無しさん@ピンキー:2006/09/28(木) 01:30:16 ID:y+fOXTTI
>>44
thx!
46名無しさん@ピンキー:2006/09/28(木) 22:29:57 ID:w2FdjehR
圧縮間近っぽいのでホッシュ

最近投下ないなぁ。。。
47名無しさん@ピンキー:2006/09/29(金) 20:55:00 ID:1l46oC88
何人かの職人は他のスレでは投下してるけど……こっちは最近ごぶさただね。

やっぱり、書きたいものは書いちゃったって事なのかなぁ。

もう一度、桃子のSSとか読みたいよ……
48名無しさん@ピンキー:2006/09/30(土) 05:37:44 ID:Jr+6pBs/
桃子ネタってーと二人思い当たるけど、
松の人はは某スレに、クリスマスの頃に書いてくれてた方は全然わからん・・・
49名無しさん@ピンキー:2006/10/01(日) 22:11:55 ID:mvFYVreF
創作の一助になるかも?と思い、
ソープでおフランスとのダブルの女のコに突貫してきますたw

・鼻が高くて、彫の深い顔。
・顎が発達していて、口が大きい。
・体臭はちょっと強いかも。(ひどくはない)
・色白だったけど、極端には白くない。
・産毛ザラザラ。ヘアも濃い方(黒)(実は好み)
・身長よりも高く見える。メリハリのある体系。
 手足は長くて尻が大きく、控え目ではない胸だった。
・○○○は以外に狭く、オレの大和魂を締め付けたw

う〜ん、桃子はもっと、こう…ペタっとしてツルっとしてないと
ダメだよな。

50名無しさん@ピンキー:2006/10/01(日) 23:59:06 ID:5NuB2Hvz
>>49
良い体験ではある
頑張ってSSに昇華すれ
51名無しさん@ピンキー:2006/10/03(火) 23:57:36 ID:xKSf8wN4
>>49
ある意味身体張ってるなw
実体験基づくSSを期待してますよ!
52名無しさん@ピンキー:2006/10/05(木) 21:22:22 ID:rwZTOmCn
これで桃子SSが来るのかね
桃子は書きにくいキャラだと思うが投下してくれたら
個人的に超低脳
53名無しさん@ピンキー:2006/10/07(土) 08:21:46 ID:ZWzhsrwp

自分の書いたのをリメイクしたくなったり。
54名無しさん@ピンキー:2006/10/09(月) 20:10:10 ID:LSCeoPm9
ホシュ

と書き込むセツナサ・・・
55名無しさん@ピンキー:2006/10/11(水) 00:09:24 ID:QfE50baK
温泉同人から発展のSS書く人がでるかなー

と思っていたが(´・ω・`)
56名無しさん@ピンキー:2006/10/11(水) 01:19:03 ID:FBF602oS
温泉ネタはいいのだが、あれだと國生さんメインしか書けないんだよなぁ・・・
國生さんネタは他にいい職人がいるので任せよう

むしろ、新しいプロフ画像で書いてみたいかなぁ
桃子の後輩って事にして、実は桃子の事を好きなんだけど、それを恋とは分からずに・・・
・・・適当に言ったが難しいなw
57名無しさん@ピンキー:2006/10/11(水) 11:01:35 ID:9Z+n5G8V
捏造キター
新しいスレの地平をひらいて下されー
58名無しさん@ピンキー:2006/10/14(土) 00:12:37 ID:CC5zAJXr
ほす。まだこのスレは死なん。と信じたい
59名無しさん@ピンキー:2006/10/15(日) 18:57:25 ID:20rJfN+j
珠の作品を拝むまではこのスレは死なさんよ!
60名無しさん@ピンキー:2006/10/15(日) 20:52:33 ID:EDyg+Dp6
だが既出
61名無しさん@ピンキー:2006/10/19(木) 02:08:37 ID:rvGB4pcb
保守
62名無しさん@ピンキー:2006/10/21(土) 21:39:15 ID:YDr39Hzc
完結していないSSの続きがきになる今日この頃・・・
63名無しさん@ピンキー:2006/10/22(日) 17:22:10 ID:R0rUO6dR
特にこのスレの初期に多いよな。
職人さんまだいたら書いてくれないかな?
64名無しさん@ピンキー:2006/10/25(水) 18:39:24 ID:03ww044T
連載終了から一年近いし、
むしろ連載が終ってからこんなにスレが伸びてることが珍しい気はする。

出来れば次の連載が始まるまでスレの灯を消したくはないが・・・

というワケでホシュ
65名無しさん@ピンキー:2006/10/25(水) 23:16:43 ID:qswIlSWr
以前にここで書いてた者だけど、今他のとこで書いてるのでそれが終わって手が空いたら考えてみる。
66名無しさん@ピンキー:2006/10/26(木) 02:04:38 ID:ehGd34vz
お待ちしてます
67 ◆DGhwXf8IYk :2006/10/27(金) 15:46:56 ID:HCao0jiO
同じく依然書いていたもの。今はどこでも書いていない。
久々に保管庫見てみたら、連載終了後も続いてるの発見してびっくり。

…単行本読み直してみるか。低脳の神がまた何かささやいてくれるかもしれないし…
68名無しさん@ピンキー:2006/10/28(土) 22:53:10 ID:jc270I6t
低脳保守
69名無しさん@ピンキー:2006/10/30(月) 10:26:48 ID:mRxgRlsy
習作コネタ:カラオケ。
保守をかねて貼ってみる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 とある休日前の夜。久具楽家一同と、陽菜、優(名目上保護者)は、カラオケに繰り出していた。

『イエーーー!』
「次は國生さんだな!!」
「えーと、うまく歌えるかどうか…ゴニョゴニョ」
「あー、すみません、ビールとウーロン茶追加。」

 混沌状態の中、陽菜が歌いだす。

 にこやかに笑いながら聞く我聞。曲は分かっていないが、おとなしく聞いているのは偉い。

『イエーーーーイ!』
 対照的にタンバリンとマラカスを持ってノリノリの果歩と珠。

「ままま、優さん、一杯。」
「ゴクッグビッ…ぷはぁ〜!ふぃ〜〜…君も飲みたまえよ?うん?」
「ははっ、どうもっ…ズズズズズズ…」
 ビールと日本茶(ホット)を浴びるように飲む優と斗馬。

 狂乱の様相を見せたまま曲はサビへと近づく。
我聞と目が合うたびにはにかみながら歌う陽菜。
(ハネウマライダー@ポルノ)
『心は、空を裂く号令を聞いたっ 種馬のように乱暴だけどっ それでも遠くまで… 』


「…た…種馬?」
「種馬!しかも乱暴!さらに我聞君を見ながら!!」
「ねーねーにーちゃん種馬ってなーにー?」
「えーとそれはだな…」
「ずずずずずず…ふぅ。」
「あ…あのっそのっ…いや、あのっ、跳ね馬!跳ね馬っていいたかったんですっ、いや、社長は関係ないですからっ、社長!説明しなくてもいいんです!!!」

狂乱の夜は更けていく…




「あ、はるるん?」
「?なんでしょう?」
「やっぱり我聞君、乱暴だった?種馬?種馬?」
「し、知りませんっっ!」

〜〜〜〜〜〜〜〜
別に國生さんでなくても…
70名無しさん@ピンキー:2006/10/30(月) 23:47:19 ID:faOcGAD0
age
71名無しさん@ピンキー:2006/10/31(火) 06:52:43 ID:qw8jLrjo
GJ!
でも國生さんは演歌派だったような・・・
72名無しさん@ピンキー:2006/10/31(火) 21:52:45 ID:BwL/UDR5
間違えて卑猥な言葉喋っちゃう國生さんハァハァ
あんた國生さんいぢめの才能あるよ
73名無しさん@ピンキー:2006/11/03(金) 01:41:56 ID:I7dUYqHh
職人さんが戻るまで自給自足しか…つーわけで保守ネタ投下。
ぶっちゃけ499氏のパクリ。

深夜にトイレに起きた珠が帰ってくる部屋を間違えたことに気づいたのは布団に入ってからだった。
いつもならいるはずのないもの――我聞が寝ていたのだ。
珠は布団から出なかった。眠くて億劫だったし、なにより懐かしかったからだ。
「・・・前はよく兄ちゃんと一緒の布団で寝てたっけ・・・」
珠は我聞と一緒に寝るのが好きだった。嫌なことがあった日も、我聞にぴったりくっついて寝ると、不思議と落ち着けた。
そんな思い出に浸りながら、背中に顔を押し付けると、あの時と同じ匂いが鼻をくすぐる。珠はこの我聞の匂いも好きだった。
暫くそうしてくっついていた珠だが、ふいに我聞から体を離すともぞもぞと動き始めた。
「服・・・ジャマだな・・・」
久しぶりのことだったからか”もっと堪能したい”という欲求が強くなってきたらしい。
器用に布団の中で服を脱ぎ、一糸まとわぬ姿になると再び我聞に体を重ねる。
「う・・・・ん」
全身で直接感じる、初めての体験に珠は思わず声を漏らす。ぎゅうっと抱きしめると二人の体温が同じになっていく。

だが、まだ何かが足りない。何が足りないのか。我聞と珠の姿を比べればすぐにわかる。

(兄ちゃんの、ふくがジャマ・・・・・)

おぼろげながら珠にもこれからすることが「悪いこと」だというのは解かっていた。もしばれたら大変なことになることも・・・
しかし、普段ならありえないことだが、寝ぼけていて判断力が低下しているためか珠の頭はこう考えていた。

自分だけ裸になっただけでもこんなに”いい”。もし二人とも裸になったら・・・

背筋がぞくっとする。理性は期待感にあっさり押し負け、珠は我聞の服に取り付いた。
流石に寝ている大の男を全裸にすることはできなかったが、なんとか胸をはだけさせ、パンツをずり下ろすことはできた。
そして珠は、仰向けに寝ている我聞に跨るようにして抱きついた。その瞬間、さっきまでとは別物の感覚が珠を包む。
無意識のうちに珠は自分の身体を我聞の身体にこすりつけていた。
肌と肌が直接擦れ合うたびに珠の身体の奥底にあたたかいものが満たされていくのが解かる。

生まれて初めての幸福感を感じながら、珠の意識は闇の中に沈んでいった。
74名無しさん@ピンキー:2006/11/03(金) 11:13:09 ID:0sZf+NPe
GJ!!ほのぼのーな感じなんだが寸止めがいい感じで俺は好きだ。
戻るのをまつまでもなく73が職人になればいいのさっ

で、俺も投下してみる。
75いつかの508:2006/11/03(金) 11:15:52 ID:0sZf+NPe
ブゥゥゥゥゥゥン…
「あっ…………」
「行ってしまいましたねぇ。」

 真芝の壊滅から2ヶ月。工具楽屋の代替わりの手続きもようやく終わり、私はこわし屋会長として手続き
終了の通知にきていた。
 工具楽屋から静馬の家までは時間的にもかなりの距離があるが、他の用も済まそうとして、
ヘリを使わずに来たのがそもそも失敗だった気がする。

 工具楽屋事務所での形どおりの通知が終わり、その後の「就任披露」と称する狂乱の宴の途中で帰ろうとしたが、
裸踊りを終えた中之井さんに捕まってしまい、戦時中のお婆様の話をえんえん聞かされた。
 …どうせ聞かせるにしてもせめて服を着てからにしてほしいものだ。

 触れたくない過去でも思い出したらしく、中之井さんがガクガクしている隙に、ようやく開放されたのだが、
今度は迎えのタクシーがなかなか来ない。
 待っていては飛行機に間に合いそうにないので、バスに乗ることにした。時間が遅くなったので最終バス。
それにもたった今、目の前で乗り遅れた。帰りの飛行機に間に合わないことが確定。

…近くにホテルなどがあるわけでもないし。困った。これだから田舎は困る。
…うちに比べればまだましとはいえ。

「とりあえず、会社に戻りましょうか。かなちん?」
「かなちんっていうなぁ!!…コホン…そうします。」
案内役を買って出た辻原さんに促され、来た道をまた戻りはじめる。
と、曇り空からぽつぽつと…
「…雨…ですね…」
76いつかの508:2006/11/03(金) 11:17:43 ID:0sZf+NPe
 全くついていない。雨はどんどん強くなる。持っていた傘を差す。隣には手ぶらで歩いている辻原さん。
「あなたは傘をお持ちでは…ないですね。」
「ええ。まいりましたねぇ。」
雨はバケツでもひっくり返したかというような降り方になってきた。…しょうがない。一人で傘に入るのも気が引ける。
「傘にはいってください。」
「結構ですよ。慣れてますから。」
「怪我も完治したばかりでしょう。体には気をつけないと。」
「…おや。かなちんに心配していただけるとは光栄ですねぇ。」
「かなっ…べ、別に私は心配なんてしていません。」
 辻原さんが私の左側に入ってきた。
生まれて初めての異性との相合傘。意識してしまい頬が熱くなる。
 もともと一人用の傘に二人は無理がある。まして私のほうが背が低い。
左手に傘を持って差し上げると、右肩が濡れる。きっと彼も左肩が濡れているのだろうが。

「私が持ちますよ。」
と、傘を取られた。…確かにそのほうが合理的だ。
彼は右手に傘を持ち、そのまま私の肩に手を回す。

「…何のつもりです?」
「このほうが濡れにくいでしょうし。お気に触りましたか?」
「ええ。とても。」
「そうですか。それは失礼しました。」

 ぜんぜん申し訳なさそうじゃない声で返事をしつつ、肩に回した手はそのまま。
全く…何でこの人はこんなキザなことをしておきながら平気な顔ができるのだろう。
 動揺している内心を気取られるのがくやしいので、あえてそのままにしておいた。
 うれしくて振りほどけなかったわけではない。決して。
…右肩に感じる重みとぬくもりが気持ちよくなかったわけではないけど。

ザーーーーーー
雨は降り続く。しばらくお互いに無言のまま歩く。

「かなえさん。そのあたり、道が悪いですから気をつけてくださいね。」
「いちいちそんなことを言われずとも分かっていまっ……あっ?」
言っているそばから側溝に足を取られて転んだ。みごとに。
不覚。普段はきつけないヒールの高い靴を履いてきたのが失敗だったかも。

「おやおや…大丈夫ですか?」
差し出された左手を取って立ち上がる。
「いたた…大丈夫ですっ!」
「泥だらけ。ですね。」
「う゛…」
着てきたのは紺のスーツ。左側が泥だらけになってしまって、上着どころかブラウスや下着までしみてきている。
水の仙術使いともあろうものが情けない…と哂うおばあさまの顔が思い浮かぶ。
「…最悪ね。」
「着替えとかは…あるわけがありませんねぇ…」
「日帰りのつもりでいましたので…何も準備がありません…」

『………』

「森永さんあたりにお借りできないかしら…だめね。完全に酔いつぶれていたし。」
「さすがに社長も國生さんも寝ているでしょうね。お疲れでしたし。」

『………』

「…今夜はうちに来ますか?」
「……………よろしくお願いします。不本意ですが。」
「あ。ブラが透けていますよ?かなちん。」
「だからかなちんって…見るなああああ!」
77いつかの508:2006/11/03(金) 11:19:29 ID:0sZf+NPe
 ワンルームのアパート。思ったよりも数十倍きれいに整理されていた。
 男性の部屋というのを番司の部屋を基準にイメージするのは間違いかもしれない。
以前入ったときに、半年前のヤキソバパン(開封済)を踏んづけたときの…思い出すのはやめておこう。
 男性の部屋に入ることに戸惑いがないではないが、背に腹は変えられない。

「では…お邪魔します。」
「どうぞどうぞ。シャワーはここです。好きにつかってください。」

がちゃっと脱衣所に続くドアを開け、案内してくれる。私も続いて脱衣所に入った。
「ありがとうございます。…早速ですけどシャワーをお借りしていいかしら?」
「ええ。では着替えは…適当に探しておきますので。」
「ありがとうございます。」
「どうぞ。(にこにこ)」
「…えぇーと…」
「…(にこにこにこ)…」
「…ずっとそこにいらっしゃるつもりでしたら、私にも考えがありますが?」
「失礼します。」
…表情の一つも変えないで出て行くとは…分かっていてからかっているわよね。どうみても。

 脱衣所で服を脱ぎ、洗濯機に入れる。
シャワーのコックを空け、熱いお湯が出てから、シャワーに飛び込んだ。
熱いお湯が肌に流れて、雨に冷えた体に熱が染み入ってくる。
「ふぅ…」
 冷たくなった全身を揉み解す。腕、腰、腿、足。冷たく、硬くなった体が柔らかさを取り戻す。
(…辻原さんの家でシャワーか…辻原さん…シャワー浴びないのかしら。辻原さんだって相当濡れていたのに。
 まさか覗いたり一緒に入ろうとしたりとかしないでしょうね!?…まさかね…………そういうときって、
 やっぱりキャーーーって叫んだほうがいいのかしら。ちゃんと心の準備しとかないと、妙な声で叫んじゃったら、
 雰囲気も何も台無しだし。)

 ふと胸に手をやる。そんなに小さく…はないと思いたい。
(…挟めるほどは確かにないと思うけど…)
 そんなことを思いながらむにむにと寄せてあげる。
「んっ…」

壁ひとつ向こうには、辻原さんがいる。脱衣所と風呂場の戸をあければ、用意に入ってこれてしまう。私は裸。体を隠すものもない。
眼鏡越しにきっと私の体の隅々まで見られてしまう…そんなことを想像していたら、胸の奥が熱くなってきた。
沈めようとするかのように胸においた手が動き出す。
全体をなでまわし、とがった先端へと指を伸ばす。
「ふっ…はっ…ふぅ……んっ」

足の間に手を持っていったところで、お湯とは違うぬめりに気がついた。
「あ……」
(…なんてはしたない)
そう思っていても手が止まらない。
そのまま腰を下ろす。割れ目に沿ってゆっくりと、指でなぞる。
「ふぁっ……」
(こんなところをもし見られたら…)

少しずつ、とろとろとした感触が増えていく。足を開いていられない。自分で自分の指を太腿で締め付けるように
挟み込む。そのせいで指がさらに押し付けられる。
「…やぁっ…ん…」
頭がぼーっとしてきた。声がもれないようにかみ締めながら、指をひたすら動かす。
78いつかの508:2006/11/03(金) 11:20:17 ID:0sZf+NPe
「あ。かなえさん?」
突然、脱衣所の方から声がした。
「のぅわっっぎゃぁーーーーーーー!?」
心の準備等ないので、声が裏返る。曇りガラスを通して人影が映る。
「大丈夫ですか?」
「な、なんですかっ!?いつのまに!!?」
「ちゃんとノックもしましたよ?ちゃんと。バスタオルと着替えを持ってきました。棚の上においておきますので。」
「わ、わかりました、分かりましたから早く出て行ってください!」
「あぁ、かなちん。」
「なんですかっ!」
「……すばらしいボディラインですね。」
「なっ〜〜〜〜!!!」
「あ、冗談ですよ?冗談。ここからは何も見えませんからね。」
「でてけ!!はやくでてけーーー!!」

あぁ…この胸のドキドキと…こみ上げてくるものは…



殺意ね。きっと。
79508:2006/11/03(金) 11:22:33 ID:0sZf+NPe
初期でたまに書かせていただいていた508です。久しぶりなもので、トリップも忘れました。
久しぶりに単行本を読み返したので、ふとのぞいて見ると、連載終了後もあんなに作品があったことを知り感動しました。
妄想力も足りていませんが、とりあえず投稿。
80名無しさん@ピンキー:2006/11/03(金) 14:18:35 ID:sxftqjLh
確かにいいですね、ほのぼの微エロ。
それに、久々のかなちん・・・大人って、いいですね。

73、508両氏GJ。

一日に二作・・・このスレ復興の兆しでしょうか?
81名無しさん@ピンキー:2006/11/03(金) 22:24:18 ID:YAQH089/
508氏
かなちんキタ――――――(かなちんていうな)―――!!!
かなちんのツボ押さえすぎ。帰ってきていきなりこれですかい。gj!
824スレ131:2006/11/04(土) 06:51:48 ID:HVlW8HjC
昨日の二人にあやかって、自分も久しぶりに投下してみます。
834スレ131:2006/11/04(土) 06:55:19 ID:HVlW8HjC
昨日の二人にあやかって、自分も久しぶりに投下してみます。
時系列的には、九巻終わって、まだあまり日が経ってない辺りで。
我聞×陽菜です。
・・・他の組書くの苦手だというのに最近気付いたんで。
844スレ131:2006/11/04(土) 06:57:22 ID:HVlW8HjC
吐く息が白く染まり、冬も間近となった今日この頃。

「――で、あるからして――」

数学教師が講義する。
クラスメートは、ノートを取ったり耳を傾けたり突っ伏して寝息をたてたりして、その授業を受ける。

ビシッ
「ったぁ!?」
「コラ佐々木!授業中寝るとは何事だ!!」

時折、教師の喝が飛ぶ。
工具楽屋社長の生活は今日も平和・・・のはずであった。


昼休み。

「ささやんもアホだねぇ、授業中に寝るなんて」
「るせぇっ!天野、お前だって寝てたじゃねーかっ!!」
「オホホ、アタシはバレなかったらいーのよ」
「・・・いや、寝てたら同罪だろう」
「佐々木君も恵も同じ授業で寝てたんだぁ、仲良いねぇ〜」

いつもと変わらず騒がしい卓球部一同。

「そ、そんなこと無いわよ!たまたまでしょたまたま!!
それはそうと、く、くぐっちの方はるなっちとの結婚の話、どうなのかな〜?」

そして、話を振られたわれらが主人公、工具楽我聞は・・・

「zzz・・・」

寝ていた。
机と、そしてしっかり空になっている弁当箱を大事そうに抱きかかえ、あまつさえ涎を垂らしながら、それはそれは幸せそうに、寝ていた。

「工具楽・・・それはギャグでやっているのか?」

呆れかえった佐々木の一言が、ぽつりと響いた。
トントンと軽いノックの音。

「2年6組の國生です。工具楽はいらっしゃいますか?」

これまたいつもどうりに國生陽菜が顔を出す。

「おっ、るなっち!」
「ご苦労さま〜」
「大変だな、いつもいつも」
「國生さんっ!いらっしゃいです!工具楽の奴寝てるんで、今起こしますねっ!!」
「ご迷惑をおかけします」

それぞれの言葉をかける一同と、我聞を殴り起こす佐々木。
しかし彼らは、ふと陽菜の反応に違和感を覚えた。
普段より淡泊な反応。
常日頃クールな彼女ではあったが、ここまでではなかったはず、という疑問が四人によぎる。
854スレ131:2006/11/04(土) 06:58:24 ID:HVlW8HjC
「ん・・・んぁ?
あ、國生さん、おはよう」

彼らの疑問を知るよしもなく、我聞は目を覚ました。

「おはようございます、社長。早速ですが今日のスケジュールの方を・・・」

まるで我聞が代理社長に就任した当初の時のように、淡々と仕事をこなす陽菜。
そんな様子の彼女の放つ異様な迫力に、佐々木や我聞ですら少し退いてしまう。

「こ、國生さん、昨日俺、何かミスしたかな?」

恐る恐る話しかける我聞。
実は昨日、工具楽屋に内調から仕事が入った。
それほど大口の仕事ではなかったが、久々の本業に我聞が張り切りすぎる、ということがあった。
しかしそれでも、我聞自身が思い返した限りでは問題なく働けたし、実際しっかり黒字で終わった。

「いえ、これといって何も失敗点は見あたりませんでしたが?」

陽菜は、意識的に感情を込めない。そんな表情で、問い返す。

「え、えーと、では何故怒っていらっしゃるので?」

今度は佐々木が訊ねてみる。
「・・・は?私は怒ってなどおりませんが?」

ここで初めて表情を動かし、きょとんとする陽菜。
そしてそれが、一同が今日初めて見た彼女の表情らしい表情だった。

「す、凄いねるなっち!
ビジネスライクってやつ?かっこいいー・・・」

間が持たない、というより精神的ストレスで身が持たないと思った天野が、とりあえず褒めてみる。

「社長の『秘書』ですので当然です」

わざとらしく『秘書』を強調し、しかし当たり前と言い切られる。

「社長今日は先に社の方へ向かいますので」
「わ、解りました」

何故か敬語になってしまう我聞。
そんなことも意に介さずに、陽菜は一礼をし教室を後にする。

「・・・我聞、また何かやったのか?」
「い、いや、俺にも何がなんだか・・・」
「嘘つけ工具楽!絶対お前が何か國生さんに迷惑かけるようなことをやったんだろう!!さぁ吐け!」
「待て待てささやん。くぐっちはこういう時嘘言わないでしょ?」
「もし工具楽君のせいじゃないとしても、何か心当たりとか、ない?何か國生さんの機嫌が悪くなるような・・・」

864スレ131:2006/11/04(土) 07:01:34 ID:HVlW8HjC

途端、我聞を問いつめる四人。
まるで、嵐の前の静けさ・・・もとい、静けさの後の嵐とでも言うように。
しかし、一番さっきの陽菜を疑問に思っているのは、問われている我聞自身だった。
昨日の仕事では、我ながら珍しく本当にミスはなかった。
強いて言うなら、今日眠くなるほど仙術を使いすぎたことくらいだが、それで彼女があんなに機嫌を悪くするとは思えない。

「本当にさっぱり・・・」

いいながら、やはり自分に過失があったのではないかと勘ぐって色々と思い返してみるが、どうしても思い当たるようなことはなかった。
ここ最近、彼女は部でも完全に打ち解けて、余分な肩の力が抜けたかのように明るく、楽しそうだった。
誕生日とかのイベント(果歩に、『社長として社員をねぎらうためにしっかりチェックすること』と言われ、それから意識している)も見落としたりはしていない。
結局、仕事の時にその理由をしっかり聞いて、できれば解決してくるよう皆が我聞に言い、保留ということになった。
まあその言い方は、助言だったり頼みだったり命令だったりしたのだが。


「工具楽我聞、ただいま出勤しました〜!!」

学校が終わり、普段のようにけれど一人で工具楽屋に顔を出した我聞。
そんな彼の目に飛び込んできたのは――

「優さん、前回本業時の11345円と前々回の通常業務の際の2337円。経費の使用状況が曖昧になっていますので領収書等の提出をお願いします。
中ノ井さん、先月の決済報告書と再来月の予算予定書です。目を通しておいてください。
辻原さん、昨日の本業の仕事結果の詳細をまとめておきました。このフロッピーを西さんまでお願いします」
「な・・・?」

ノンストップかつハイスピードで仕事をこなしていく陽菜と、それに引っ張られるように自らの仕事をする大人たちの姿。
まるで、事務所の中が『絶対真面目に仕事をしなければならない場所』になってしまったようで――
874スレ131:2006/11/04(土) 07:02:49 ID:HVlW8HjC
思わず、我聞の足も止まってしまった。
・・・何というか、コワイ。
理修得のために受けたさなえの修行よりも
海面に佇むかなえを幽霊と見間違えた時よりも
勘違いで放たれた父親の爆砕よりも
あるいは、普段仕事をミスして陽菜に叱られる時よりも、工具楽屋社長は、現在の自社の状態の方がコワかった。
――しかし彼は、運のいい方ではなかった、ということだろう。
彼が足を止めてしまった直後、

「ガッモーンッ!!トーコ様が遊びに来てあげたわよーっ!!!」
「ぬぉっ!?」

久しく会っていなかった少女の予期せぬ来訪。
身構える間もなく背中に飛びついてこられる、という形で。
結果、どうなったか。
いくら超人的な能力を持つ仙術使いとはいえ、前置きもなく人一人分の質量を背中に受ければ踏ん張りもきかず、バランスを崩して事務所の中に倒れ込む。
背中に少女――桃子・A・ラインフォードを乗せたまま。
ビタン!と、肌を床に叩きつける音を盛大に響かせて。

「っててて・・・」

打ちつけたせいで少し、ヒリヒリしている顔を反射的にさする。

「ご、ゴメンねガモン!大丈夫!?」
「ああ、大丈夫だ。それより、桃子は?」
「ワ、ワタシは大丈夫」

どうやら背中の少女は無事らしく、一安心する。

「社長、それに桃子さんもいらしていたんですね」

と、別の少女の声が、先ほどの桃子より少し高い位置から聞こえてくる。
我聞も桃子も自然とその声の方へ顔を向ける。そこにあったのは――

「ちょうどよかったです。社長にはちゃんとお仕事がありますし、桃子さんにも手伝っていただきたいことが・・・」

我聞にとっては、自分の秘書であり、家族である少女、桃子にとっては、自分の恋敵であり、友人である女性が、自分たちに仕事を指示する姿だった。



884スレ131:2006/11/04(土) 07:09:40 ID:HVlW8HjC
・・・ということで始まりの部分だけでした。
エロをやるかは未定ということで・・・
しかも最初のダブってるし・・・
久々に書いたのにミスが多いって、俺・・・orz

近いうちに続き書いて来ます
89名無しさん@ピンキー:2006/11/04(土) 13:09:58 ID:9F0t/ZKW
4スレ131氏復活キター!!!!!!
おおう…桃子きちゃったよ…低脳の予感だよ…
つれない態度の國生さんにwktkが止まりませんぜ。

しかし連続投下だなあ。
冬の時代が長かったもんだから投下数>住民の数になってる悪寒。
90名無しさん@ピンキー:2006/11/04(土) 13:32:46 ID:Y2oqyLfU
プロローグだけでワクワクしてきた
続きが楽しみです
91名無しさん@ピンキー:2006/11/05(日) 20:37:15 ID:MvLngI4Y
ぬぉーーー、>73氏も508氏も131氏もGJですよ!

>>89
大丈夫、この時を待っていたとばかりに戻ってくる住人はいっぱい居るはず!というか俺もそう!
92名無しさん@ピンキー:2006/11/05(日) 21:29:57 ID:kuEZHYk3
なんかいきなり盛り上がってきて嬉しい限りですな〜

遅ればせながら皆さまGJですよ!
93名無しさん@ピンキー:2006/11/07(火) 02:06:55 ID:k5eqWNwS
おお、何やら立て続けに新作がっ!
楽しませてもらいました。

131さん、>84の
「…工具楽はいらっしゃいますか?」は、
「…工具楽は居りますか?」
みたいな感じの方が謙譲語として正しいかな、
と思いますよ。
細かいツッコミ失礼しました。続きも期待してますよ。

944スレ131:2006/11/07(火) 06:50:35 ID:qEQVdu+6
>>93
あ、あー
・・・確かに。
敬語って難しいですねぇ。はは・・・


ご指摘有り難う御座います!


続きはまだちょいかかります・・・
95名無しさん@ピンキー:2006/11/07(火) 09:33:49 ID:26jTDENF
皆様GJであります!!
96508:2006/11/08(水) 10:18:12 ID:+g32IdUB
78の続きってことで投下
97508:2006/11/08(水) 10:19:44 ID:+g32IdUB
 シャワーから出た。
 ここに来る途中のコンビニで買った換えのショーツを履き、置いてあった厚手のTシャツを着る。
ブラの換えなどないので、そちらはしょうがない。下は素足。まぁTシャツの丈が長いので気にしないことにする。

「……それで、これは?…嫌がらせですか?」
「?何のことです?」
「この水着女性のボディーラインがペイントされたTシャツのことです!!」
「お気に召しませんか?」
「悪趣味ですっ!!」
「あはははは。よく言われます。よくお似合いですよ?」
「うれしくありません!!どういう意味ですかっ!」

 憤然として周囲を見回す。洗濯して屋内に干してあるTシャツの類は、だまし絵Tシャツのほかにも「BOZU」やら
「AZIDASU」とか書かれた偽ブランドTシャツやら、「朴念仁」と、毛筆体で書かれているものやら。
…本当にどんな趣味が悪い。
 とりあえず「朴念仁」に着替えなおす。…水着Tシャツよりはましだろう…たぶん。
…斗馬君…だったかしら、あの子のセンスは辻原さんゆずりかしら?……将来が心配ね…
 

 脱衣室に戻って着替えなおし、また部屋に戻ってみると、乾き物とコンビニのお惣菜がテーブルに並んでいた。
コンビニを出たときにいろいろ買い込んでいたのはこれだったのだろう。ビールも数本、芋焼酎も置いてある。

「私は少し飲んでから寝ますが、かなえさんはどうされます?」
「いただきます。就任披露の席ではあまりいただけませんでしたし。」

かきょんっかきょんっ
缶ビールのプルタブが気の抜けた音を立てる。

「では、我聞くんの就任を祝って。」
「ありがとうございます。乾杯。」

ぐびっぐびっぐびっ…

「ふぅぅぅぅ…」
「いやぁ、いい飲みっぷりですねぇ。まさか一気に飲まれるとは思いませんでした。」
「乾杯という字は杯を干すと書くでしょう?これくらいは当たり前です。」
かきょん。二本目のプルタブを起こした。
「あ…辻原さん、お湯ありますか?焼酎はお湯割の方が…」
「わかりましたが…すごい勢いですねぇ…」
98508:2006/11/08(水) 10:21:54 ID:+g32IdUB

数時間経過。

「あの…かなえさん。ちょっと飲みすぎてませんか?」
 目の前の胡散臭い笑いが引きつっている気がする。

 失礼な。私は飲みすぎるなんてことはない。
むしろ真っ赤になってる辻原さんこそ飲みすぎだ。
「わらしはじぇんじぇんひょってなんふぁいまふぇん!!」

 うん。酔ってない。
既に二人で焼酎の一升瓶は空けた。今二本目も空こうかというところ。

「ふぉいれおふぁりしまふ」
一言断ってトイレに立とうとした瞬間、その言葉はふっと聞こえてきた。

「……死に損ねましたねぇ…」
「ふぇ?」
一瞬にして酔いが覚める。
辻原さんの表情は変わらない笑いを浮かべているが、この男は今なんと言った?
「…今、なんと?」
「…いえ、何も?」
いつもどおりにはぐらかされる。
「……死に損ねた。と、そう聞こえましたが。」
「……口にしてしまってましたか。私も酔ってますかね。」
「どういう意味です。死に損ねたとは。」

辻原さんが目をそらす。しばらく沈黙した後。
目をあわさないままで話し始めた。

「…………かなえさんには私の来歴はお話しましたね。…私はたくさんの方々を殺してきました。
 実験という名の戦闘、暗殺、その他いろいろな形で。」
「でもそれは…」
「真芝にいたから…とはいっても、実際に手を下したのが私であることには違いありません。」
「……」
「…この間の一件で工具楽屋への、先代への恩は返せました。社長ももう一人前、私の指導も必要ないでしょう。」

なにを言っているのだこの人は。
99508:2006/11/08(水) 10:23:41 ID:+g32IdUB
「真芝にいた人殺しが、真芝壊滅の礎となって死ぬ。罪滅ぼしの死に場所としては適当な所だと思ったん…」

ごすっ……がたがたがたんっ

私が辻原さんを殴った音。そして、彼が倒れる音。

「か、かなえさん?」
「…なに言ってるんですか。」

「…罪滅ぼしに死ぬ!?なに馬鹿なこと言ってるんですかっ!あなたがいなくなってからっ!
 あなたが第1研で連絡を絶ってからっ!どれだけの人があなたのことを心配していたと思ってるんですか!
 我聞君も!陽菜ちゃんも!森永さんも中之井さんも!番司やお婆様や私だって!
 …私だって…私が…私がっどれだけ心配したと…うっ…思ってるんです…どれだけ……心配したと…」

 威勢がよかったのは途中まで。私は泣かない。こいつの前で泣いてたまるか。そう思っても嗚咽で言葉が詰まる。

「私泣いたんですよ?あなたのことが心配で…あなたが…撃たれたと聞いて…もう生きていないかと……」
 あのときの絶望を、あのときのつらさを鮮明に思い出してしまった。目頭が熱くなる。必死にとどめていた涙腺も、
だんだん緩んできた。

「あなたが悪いんです!あなたがっ、無茶なことをするからっ!!!」
そして一度溢れ出した涙は止まらない。
 涙と一緒に体の力も抜けていった、私は手近なもの…起き上がった辻原さんの体にすがりついた。


「うぅ…ひっく…うぁぁぁぁぁ…」
 そこから先は、言葉にならなかった。みっともない声を上げながら、辻原さんにしがみつく。
「………」

彼は何もしゃべらず、私はしがみついたまま、ただ泣き続けた。
私がまた、言語を取り戻すまでの数分間、私たちはそうしていた。

「……あなたが…どれだけのことを真芝でしてきたのかは…知りませんけど………どれだけ…償わなければいけ…ないのかも
 わかりま…せんけど、でも!……でも…恩を返したから終わりですか?…指導が必要ないからさよならですか?
 …人を…人をこれだけ心配させておいてなにを馬鹿なことを言ってるんですか?
 …こんなに…心配させるほど…私の中で…あなたが大きくなってるのに…勝手なことをいわないで…」

 自分のものとは思えないほど弱弱しい声、弱弱しい言葉。涙は止まったけれど時々嗚咽が話し続ける邪魔をする。
 多分ぐしゃぐしゃになっているだろう顔を辻原さんの胸に押し付けたまま、絞りだすように言葉を続けた。

「…あなたは必要な人なんです。私にも、きっと工具楽屋の人たちにも。だからもう心配させないで…無茶なんてしないで
 …私…私はあなたのことでこれ以上…泣いたりなんてしたくありません……お願い…お願いです…」

辻原さんが声を漏らした
「……かなえさんにとって私は必要ですか。」
「……えぇ…」
「泣かせてしまいましたか。」
「ええ…全部あなたのせいです。」
100508:2006/11/08(水) 10:24:42 ID:+g32IdUB
 身動きしない辻原さんから伝わってくる鼓動と、私の鼓動がやけに大きく聞こえる。

「…すみませんでした。ご心配をおかけして」
「…本当にそう思っているなら……抱きしめてください。」
「私の手は汚れていますから…」
「知りません!…そんなこと、知りません……それとも…私には…そんなに…魅力が…ありませんか…」
「いいえ。そんなことはありませんよ。絶対。」
「じゃぁ…抱きしめてください。」

 返事はなかった。ゆっくりと、私の体を彼の腕がやわらかく包む。
辻原さんの胸に体を預けたまま見あげると、彼と目が合った。彼の目が「しょうがないですね」といっているように見える。
 その目が優しく誘っているような気がして、私は辻原さんの顔に顔を近づけた。
口付けたのは、辻原さんからだった。

「ん…ぅんっ…」
辻原さんの唇の感触。ついばむように数回。
「ん…んっ…んんんんっっっ!?」
え?なにこれ?!口の中に…舌!?

「んぁ…舌…」
「お気に召しませんか?」
「あ、あの…いえ、その…」
「いかがです?」
「…意地悪。」
二度目のキスは私から。これ以上意地悪なことを言わせないように…





散々いじめられ、シャワーを浴びた後。
裸で抱き合ったまま、二人でベッドに横たわる。

とくんとくんとくん

辻原さんの鼓動が聞こえる。よかった…この人は生きている。

抱きしめられている腕からつたわる温かさが、夢でないことを教えてくれる。
「…辻原さん…」
「なんです?」
「もう…危ないことはしないでください。」
「…それはまた無茶をおっしゃいますね。」
「じゃあ…この間みたいに勝手にいなくなるのはやめてください。」
「……」
「お願いです…」
「…分かりました。」
その声を聞いて、彼のぬくもりを感じながら私は眠りについた。
101508:2006/11/08(水) 10:26:14 ID:+g32IdUB
コーヒーの香りで目が覚めた。


「ん…むぅ…んん…」
 覚醒していく意識のなかで昨夜のことを少しづつ思い出す。
(…ずいぶんといじめられたわね。…それはそれなりに気持ちよかっ……ふぅ。)

 赤面するようなことを思い出し、ついでに自分が裸なのも思い出した。
ベッドの下に落ちていた下着を手探りで探して、履き、傍にあったYシャツを羽織り、ベッドから出る。
辻原さんの…匂いがする…そうか、これは辻原さんが昨日着てたYシャツ…

 なんとなく衿や袖の辺りの残り香を嗅いで見て陶然となる。
(…なんてはしたないことをやっているのかしら私は…)
 自分のしていることに自己嫌悪。

「おはようございます。…どうしました?顔が赤いですよ?」
キッチンから辻原さんがマグカップを二つ持って歩いてきた。コーヒーの香り。

「な、なんでもありませんっ!!」
「そうですか。ま、裸Yシャツなんてマニアックな格好で目に保養をさせていただいてますし。
 私のYシャツの匂いを嗅ぐくらいのことはかまいませんよ?」
「………見てたんじゃないですか。」

 辻原さんは答えず、くすくすと笑いながらマグカップを差し出してくる。
「コーヒーはいかがです?かなちん?」
「いただきます。って、かなちんって言うなっ!!」
「つれないですねぇ。昨夜はかなちんって呼ぶと一段と燃え上がって…」
「…死にたいですか?」

 コーヒーを糸にして。ボクサーブリーフ一枚の辻原さんの首に突きつける。
…それ以上言われてはたまらない。

「いえ、せっかく助かった命ですから大事にします。」
「よろしい。とにかく今後、『かなちん』と呼ぶことは禁止します。」
「そんな殺生なことを言わないでくださいよ。」
 おちゃらけた返事をする辻原さんを精一杯冷たい表情でにらみつける。

「ね?」
 にこにこと笑いかけながら彼が私の目を覗き込む。
思わず「わかりました」と折れてしまいそう。
 でも、負けない。ここで譲るとずっとかなちんで呼ばれてしまいそうだから。
だから、お願いを無視して顔を背けながら言い渡したのだった。

「ダメです。………二人きりの時なら…大目に見ますけど」
102508:2006/11/08(水) 10:33:15 ID:+g32IdUB
以上、投稿終了です。

一応、保管庫さまに収納されている508の「辻原×かなえ」の延長ということで。

途中でエロシーンを入れるつもりではいたのですが、女性視点でのエロがかけない自分を忘れていました。
つか、難しいよエロ。難しすぎるよエロ。エロパロスレでしか書いてないけどさっ

ボツにしようかとも思ったのですが、死に場所を求めてたように見える辻原さんを怒鳴りつけたかったものでつい。



131様
 続きをwktkしながら待ってます。
103名無しさん@ピンキー:2006/11/08(水) 18:40:18 ID:9Hw1sARh
>>102
萌えに萌えた!この救いようのないド低能が!

今から布団の上を転がってきます。
104名無しさん@ピンキー:2006/11/08(水) 20:10:46 ID:Vx0vprox
前から桃子の名字のラインフォードってどっかで聞いたことがあると
思ってたが今、思い出せた。
∀のホモ領主様の名字だった。
105名無しさん@ピンキー:2006/11/08(水) 21:22:43 ID:uf+pSLnw
>>508
エロパロ板なんだからちゃんとえろシーンも書けよ、とか思いそうになったのだが・・・

GJ!!!!!!!

かなちんと辻原さんのやり取りだけでもう十分過ぎる!
やべぇ、マジ萌える、転がる・・・
106名無しさん@ピンキー:2006/11/08(水) 21:50:58 ID:rmZ2brg4
508氏
間違いなく低脳。萌えたぜ…いや、マジで
107名無しさん@ピンキー:2006/11/09(木) 05:14:18 ID:DstUIBLz
良き哉良き哉。
投下によって活気づくスレとは実に良き哉。
そしてっ!何を置いても508氏GJ
あんた最高だ!
108508:2006/11/10(金) 09:16:47 ID:62l3DLA0
>>転がってくれた皆様
サンクス!

>>105
いっそ、第三者視点で書き直そうかとも思ったんですが、そのときは前編を投稿した
後だったもんで…申し訳ない。
頭の中では、
「辻原さんがいつもどおりの笑いを浮かべながら、冷静に視姦&言葉責め、
かなちん『い、いちいち教えてくださらなくても結構です(ちょっと涙)』
とか足おっぴらきーの腰をちょっと浮かしてひくひくさせーのしながら答える。」
みたいなのが通ったんですが…
…しっとりとした大人の雰囲気のエロシーンとか書けないっす…
499さんのしっとりとしていつつ激しいエロが好きなんで、読み直して勉強してきます…
109名無しさん@ピンキー:2006/11/10(金) 10:09:23 ID:8yv7HG/C
劇団SAKURAのSSがもっと欲しいのう
110508:2006/11/10(金) 16:41:51 ID:62l3DLA0
sage忘れてましたごめんなさい…
劇団SAKURA、読んで見たいのですが…次回作の単行本待ちでしょうか。
111508:2006/11/10(金) 19:33:54 ID:fFhOwnvC
連投スマソ。
ぷち陵辱かも。ダメな人注意。
112508:2006/11/10(金) 19:35:59 ID:fFhOwnvC
中之井・神楽の若き日の特殊部隊宿舎の中庭にて。

 今日も今日とて、二人は訓練後に呼び出され叱責を受けていた。

「神楽!なんだいこの銃は!!!」
「ハッ!!命中力向上のための改造を…」
 胸を張って答える神楽への反応は、しかし厳しいものだった。

「ばかたれ!!今日、兵が実射したら強度が足りず、暴発しちまっただろ!!ちっとは考えな!!」
「し、しかし、計算上ではっ!」
「あたしの隊では結果がすべて!!結果をだしなっ!!」
「ハッ!!も、申し訳ありません!!」

「それと、中之井っ!」
「ハッ!!」
「お前、昨日の運転はなんだい!あんなにゆれちゃ、兵に疲れが出ちまうだろうが!!」
「ハッ!しかし、道のない山の中をトラックでは…」
「ほほう…」
「い、いぇ!!わたくしの力量不足でありました!!」

「…二人とも最近口答えが多いようだね。お仕置きしないと。」
『た、大尉どの?』

ずんばらりんっ

 大尉の足元におかれたバケツから出た水の刃が、人の服をふんどしにいたるまで細切れに切り裂き、
そのまま縄となり二人を戒める。

「ひぃっ!!」
「大尉殿!!お許しを!!」
「はんっ『お許しを』なんていいながら、汚いモノをしっかり大きくしてんじゃあないか!
 …お前たちわざと失敗してるんじゃないのかい?」
「そ、そのようなことはありません!!」
「ま、いいさ。体に聞いて見れば分かることさね。」

ざばばばばぁ…

「うぉぉぉぉぉっ!!」
「ふぐぅぅぅぅっっ!!」

 バケツの水が盛り上がったと見るや、水の触手が二人の股間に伸びる。
その触手は空中で何本にも枝分かれし、それぞれに二人の半立ち状態のモノをまさぐった。
一本は睾丸を。もう一本はカリ首を。敏感なところを全てからめとられ、うごめく糸にくすぐられる。

「ふぁああああああっ」
「おおおおおっ!!」

 しかし、二人の前で魔女がニヤリと笑みを浮かべる。
「ほーらほら。まだまだイクんじゃないよ?」

 ひょいっと人差し指を動かすと、糸の中でも細い物が一本、二人の尿道口に差し込まれた。
「のあああああああっっっ!!」
「う、ああ…ああっっくっ!!」

 二人の顔が痛みを伴った快感に震える。イキたい。
「たっ、大尉殿っっ」
「あぁぁっ!!もう!もうっ!!」
113508:2006/11/10(金) 19:39:47 ID:fFhOwnvC
 すぐにでもイキたいのだが、男の意地というものがある。

「ぐっもう、だめかっ」
「くぅぅぅ…耐えろ!中之井!!大尉殿の前では…」

 そう。せめて大尉の目の前で出すのは避けたい。

 その耐える姿を見て大尉が酷薄な笑みを浮かべる。
「ふん。二人ともなかなか頑張るじゃないか…でもま、これでしまいにしてやるから、堪能しな。」

 小指を立てる。すると、新たな触手が二人の尻に迫った。
同時に二人の足を押さえていた水触手が二人を宙に持ち上げ、現代で言うM字開脚の姿勢をとらせる。

「タッ!タイイどの!!?マサカ!」
「ノオオオオオ!!!!」

ずぶぅり。
どぴゅ。どぴゅぴゅっ

『ををををををををををっぅ!!!!!!』

「ふむ。"前立腺まっさーじ"って言ったかね。だいぶキクみたいだねぇ…じゃ、ま、好きに帰りな。」

 二人の出したものを、たっぷりと本人の顔に塗りつけてやったあと、さなえ本人は結局最後まで二人に
触れることなく帰っていった。


 後に残されたのは、全裸、自分の精液と涙で顔を濡らし、快感と屈辱と疲労で動けず、大の字で地面に横たわる
若者二人。

「…なぁ、中之井」
「…えぐっ…えぐっ…な、なんだ!」
「力が…欲しいな…」
「うぐっ…ううううぅぅ…」
「泣くなっ、中之井っ…くっ…うぅぅ…ぐすっ…」


 時は流れて現代、第一研。

 地に仰向けに倒れたかつての戦友を前に、中之井が問う。
「なぜじゃ神楽。なぜ仙術を兵器にしようなどと…」
「仙術の力…あれを自在に使いたかったのだよ。
 力にあこがれる気持ち。お前にも分かるハズだ」

 その目には、かつてを懐かしむ光があった。

「……………バカもんが!…力を使うには制御する心が必要なんじゃ。兵器では…ただの暴力にしかならん…」

 否定する中之井の声は…悲痛だった。

そして現代某所。

「お婆様?」
「なんだいかなえ?」
「昨日、私が神楽と面会してきたところ、私の顔を見たとたん、いきなり気を失いかけて、
 『大尉殿!お許しください!!』と、うわごとを言い出したのですが…戦時中になにかあったのですか?」
「…あぁ………若気の至りっってやつかねぇ…」
114508:2006/11/10(金) 19:42:36 ID:fFhOwnvC
以上。投下終了。
ちなみに終戦は1945年、掲載が2005年だからそれで計算すると中之井さんや神楽さんは当時18歳?
若いうちのトラウマは、後の人生を左右するんですなぁ…

みたいな。
115名無しさん@ピンキー:2006/11/10(金) 21:07:37 ID:ZGvy/TKf
ちょwww

だがGJ!
久々に復活してくれたと思ったらノリのいい文章が健在で凄く嬉しいです!
116名無しさん@ピンキー:2006/11/11(土) 02:06:41 ID:Y+A6tTN1
うは、素早い投下GJ!
まさかこの組み合わせでくるとは。「こわしや」はまだ開拓の余地アリですね。
117名無しさん@ピンキー:2006/11/11(土) 08:26:05 ID:3FS4pjJx
>114
まあゲンミツにいうと18才で特殊部隊に籍はおけないんだろうけど・・Gj
118名無しさん@ピンキー:2006/11/12(日) 10:28:01 ID:mi8/D3Hm
清貧さんもアリなのか?
「お金に困っても決して体は売りません!」
難しそうだけどな
119名無しさん@ピンキー:2006/11/13(月) 20:24:06 ID:Xf3I5+zP
目の前に札束つまれて

「え、えーと……手くらいなら……足りない?
 じゃあ……口で……まだ足りない?
 むう……お、お尻までなら……」

こうですか!? 分かりません!
120名無しさん@ピンキー:2006/11/14(火) 09:10:52 ID:ZrVzd508
腹を減らして倒れている男に、買ってきたパンの耳をとっさにあげちゃって、
「はーーん」
ってところで、
「御礼もしないのもなんだから体で返してあげるよ」
「やぁ〜〜ん」

こうですか!?分かりません!

…ぶっちゃけバカ様に見えちゃうんで、浮かぶ絵が801っぽくてorz
121名無しさん@ピンキー:2006/11/16(木) 21:48:41 ID:1bBN3wK1
あげ
122名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 00:49:57 ID:8qp8laf6
保守
123名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 21:33:59 ID:gumzPVuL
こりずに保守
124名無しさん@ピンキー:2006/11/25(土) 01:40:23 ID:DbaFPb3B
誰もいないのか?
125名無しさん@ピンキー:2006/11/25(土) 11:58:05 ID:HIiUqGLy
俺がいる。君がいる。太陽が呼んでる。
126名無しさん@ピンキー:2006/11/25(土) 23:49:10 ID:6TDBbfc6
我聞×ほっちゃんを見るまで俺はここにいる!
127名無しさん@ピンキー:2006/11/26(日) 21:20:16 ID:meCcRfDF
だがちょっと待って欲しい、ほっちゃんはぶつかった拍子に
押し倒してしまい(無論顔のポジションは胸か尻)ボコボコにされる位で丁度いいのでないか。
128名無しさん@ピンキー:2006/11/27(月) 00:35:56 ID:4NQZP8pF
俺的にはやっぱ、押し倒した拍子にキスしてしまった上に、手は胸。足は股間に差し込む感じで。
で、「…てめぇいつまで触ってんだ…」「へ?」「胸だ胸!!さっきから触ってんだろうが!!」
「す、すみませんっ。ぜんぜん気づきませんでした。ぐわああああ」

的な状態が王道ではないかと。
129名無しさん@ピンキー:2006/11/27(月) 01:28:09 ID:5K7zzLAL
「気づきませんでした」か…確かに原作に忠実で王道だが個人的には
小さいけど触り心地が(ryとかそこはかとなくいい匂い(ryとかあったほうが萌えるかなあ。
130128:2006/11/27(月) 07:22:55 ID:4NQZP8pF
押し倒した拍子にキスしてしまった上に、手は胸。足は股間に差し込むような体勢で、べったりと密着。

「…てめぇいつまで触ってんだ…」
「へ?」
「胸だ胸!!さっきから触ってんだろうが!!」
「あっす、すみませんっ。ぜんぜん気づきませんでしたっ。」
いわれてみれば、確かに小さいのだが、ふにゃっとしたさわり心地が手のひらに感じられる。

「…ほほう。それは小さいといってるのか?…」
ズゴゴゴゴゴゴゴ
保科の顔が段々とすさまじい形相に変わっていく。
「い、いえ、あの、こう、ふにっとすごくいい感触で、すごくいいにおいもしてそのっ」

などと、手のひらを意識してしまうと、力も入ったりしてしまうわけで
ふに。ふにふに。ふに。
かすかに硬いものが真ん中で起き上がる感触も感じたりして。

「余計なことはいわなくていいって揉むなアアアアア!!このエロガキがあああああああっっっ」
「ぐわああああ」


というような感じで萌えていただけるだろうか。
131名無しさん@ピンキー:2006/11/27(月) 21:00:22 ID:z0srmuCV
ウホッいい小ネタ!gj!
これこそhocchanというものだよ
132名無しさん@ピンキー:2006/11/28(火) 11:40:21 ID:lRHtgIIn
ほっちゃーん! ほ、ほーっ、ホアアーッ!! ホアーッ!!
133名無しさん@ピンキー:2006/11/29(水) 01:02:20 ID:B59Fw+CK
>>132
それで果歩を思い出す俺はここの常連

・・・連載が終わってからもう一年か
先生・・・そろそろ新連載を読みたいです
134名無しさん@ピンキー:2006/11/29(水) 01:06:10 ID:hm1Ya2Dq
別に新連載じゃなくて、続きでも俺は一向にかまわん。まったくかまわん。
~ヘ(´ー`*) カモーン
135名無しさん@ピンキー:2006/11/29(水) 01:46:20 ID:EEE/Qj8d
>>133
まだ俺達は「こわしや」の萌えを語りつくしてないじゃまいか
136名無しさん@ピンキー:2006/12/02(土) 10:10:19 ID:TCux+xeM
>>130
その一部始終を目撃してしまい、
無自覚の嫉妬によって数日の間やたら我聞に冷たく振舞う國生さんってのもイイと思うんだ。
137名無しさん@ピンキー:2006/12/03(日) 01:40:35 ID:T36OXB2N
>>134
俺は、珠が主人公になってリニューアルこわしやが連載されることをいまだに信じてる。
しかし、連載終わってから早一年。この作者と作品って結構愛されてるのか?
138名無しさん@ピンキー:2006/12/03(日) 01:56:53 ID:kYiNUbhW
>>137
キャラがなかなかしっかりしてるし、期待はされてるよ。
俺は次はもうちょっとメジャー志向な漫画でもいいかなと思ってる。苦手そうだけど。
1394スレ131:2006/12/06(水) 05:38:32 ID:69Mfiebz
えーと、結局前回からかなり時間たってしまいました。
131です。
朝っぱらからですが少し続き投下しときます。
1404スレ131:2006/12/06(水) 05:42:42 ID:69Mfiebz

カタ、カタ、タン
カサ、カサ、シュ

「――はい。では、お願いします――はい――」

現在、工具楽屋を支配している音源は僅かに三つ。パソコンのキーボードを叩く音、書類が擦れ物を記す音、そして陽菜が電話で会話する音。
普段なら、明るく暖かい雑談の一つも混じりそうなものだが、今は桃子ですら押し黙って仕事をしている。
――正確には何度か優と二人で会話を切り出そうとはした。しかしいかんせん雰囲気が雰囲気な為、それもすぐに途切れがちになってしまい、今に至っては彼女たちも含め誰も喋る者は居なくなってしまったのである。

「――解りました。六時・・・社長」
「ぁ、は、はい!」

急に名を呼ばれ、ちょっと狼狽する我聞。

「所用がありますので、先に帰宅させていただきたいのですが」
「へ?あ、ああ、いいよ」
「ありがとうございます。それではご苦労様でした」

軽くお辞儀をして、彼女は工具楽屋を後にする。

「ご、ご苦労様〜」

幾分か疲れているような口調で、我聞はその背中に投げかけた。
――パタン。戸が閉まるその音が響いた、直後。

「つ、疲れた〜」

と優、

「何だったのよさっきのハルナー」

そして桃子が机にへたり込む。

「ふいー、心臓に悪いわい・・・」

ちょっと口から魂がはみ出ちゃってるのは中ノ井。

「大変でしたねぇ」

何時の間に取り出したのか、辻原は暢気に缶コーヒーをすする。

「・・・」

我聞は、暫くの間陽菜が去った扉を無言で眺めていたが、視線を机の並ぶ方へと戻し、言った。

「結局、國生さんに何があったんですか?」
「おや?社長は聞いてないんですね」

辻原は言葉だけ不思議そうだが、澄ました顔をしている。視線をある方向に向けながら。
そういえば、中ノ井も同じ方向へ恨みがましそうなじとっとした目を向けている。
彼らの向ける、その視線の先には――

「――優さん?」
「な、なにかな我聞君?」

工具楽屋の若き技術部長。森永優だった。

1414スレ131:2006/12/06(水) 05:44:01 ID:69Mfiebz

「ねぇ、ハルナが変なのはユウのせいなの?」

桃子も、三白眼で優を睨みつける。

「そう言うことになるの、かな?あは、ははは・・・
そ、そう言えば桃子ちゃん、キノピー見てないけど今日は居ないの?」

対して優はあからさまに動揺し、強引に話題を変えようとする。
しかし、そんな優を睨みつけたまま、桃子は至って冷静に切り返す。

「今日はシステムデータのアップロードやってるの。メモリーデータに触れないようにやってるけど、アレでキノピーは私の最高傑作だからシステムだけでも丸一日かかっちゃうのよ。
データ組み込んでる間は私やることなくなっちゃうから、久しぶりにガモンと遊ぼうと思って来たのに、ハルナは変だし、いきなり仕事させられるし・・・
ホントいい迷惑じゃない!!」
「ご、ごめんね〜・・・悪気はなかったのよ、悪気は・・・」

自分の気持ちを言葉にしているうちに、ふつふつと怒りがこみ上げてきたようで、最後の辺りは殆ど怒鳴るような感じになっていた。
優はその怒声に気圧されたのか、オロオロと謝るばかり。

「國生さんに何やったんですか?」
「う・・・実は・・・」

我聞の一言がとどめとなって、優はポツリポツリと話し始めた。




「「秘書検定?」」

呆れとも困惑ともとれない声が、我聞と桃子二人同時に漏れる。

「そうなのよ〜。
なんとなく、陽菜ちゃん持って無さそうだったから、聞いてみたら案の定持ってなくて。
それでついつい少しからかっちゃったのよ。そしたら、なんだか彼女のプライドを予想外に刺激しちゃったみたいで、
『そこまで言われるのでしたら、次の試験でその資格を取ってご覧に入れます!
私が工具楽屋にふさわしい、ちゃんとした秘書であることを証明して見せます!』
って。それで多分今日早く帰ったのもその試験勉強の為ではないかと・・・」
「・・・つまりハルナは資格を取るためだけに、あんな厳しくなってたワケ?」
「優さん、ホントに國生さんになんて言ったんですか・・・」
「ごめ〜ん」

今度の二人の声色は、完全に呆れ果てたソレだった。
1424スレ131:2006/12/06(水) 05:45:31 ID:69Mfiebz
ちなみに、中ノ井と辻原は「普段より精神的に疲れた」とのことで先に帰宅。
二人にしては少し不真面目な帰宅理由な気はする。
が、陽菜がきりきりと仕事をさせてたおかげで、普段よりだいぶ早く仕事が終わっていたから問題はない。寧ろ数日先の分までやってしまったらしい。
そして工具楽屋には我聞と桃子、そして優の三人のみが残っている。

「でもおかしなハナシよねー、資格を取るために勉強するなんて」

不意に桃子がそんなことを漏らした。

「そうか?別に普通だと思うけど」
「だっておかしいじゃない。
『ナニナニの資格がほしいから勉強します、その技術を得るために頑張ります』
ってコトは、もしそのために手にいれた技術や知識にミスがあっても資格があれば別にOKって言ってるようなものでしょう?
本当なら、
『ワタシにはナニナニに関する知識が、技術が十分にあるからソレが信用されて資格を貰いました』
のハズなのに、逆転してる」

「・・・」

なぜか押し黙っている我聞。

「成る程ねー」

と優。

「でも桃子ちゃんは色々作ってたんでしょ、それこそキノピーとか。結構資格持ってそうだけど・・・?」
「ワタシは、資格とか免許とかそーいうのは全然持ってないわよ?
あっち――真柴では、資格一つ取るより少しでもポテンシャルの高い兵器を作ってた方が評価されてたから・・・無免許だからって怒られるようなトコロじゃなかったし」

桃子は、少しの間遠い目をした後、掠れた笑みを浮かべた。
確かに実績至上主義だった真柴では、実際に行えさえすれば免許の有無は問われずに、いや、寧ろ無い方が融通が利くと重宝されていたかもしれない。
優はそう納得したものの、桃子に対して悪意はなかったとはいえ嫌な過去を思い出させてしまったことに罪悪感を禁じ得なかった。

「ガモン、どうしたのよ黙り込んじゃってー」
1434スレ131:2006/12/06(水) 05:48:58 ID:69Mfiebz

「・・・いや、最近あんな國生さん見てなかったからかもしれないけど、なんだか辛そうに見えて、な」
「辛そうって、どういう風に?私には結構ノリノリに見えたケド?」

きょとん、とする桃子。

「うーん、何というか・・・説明しづらい。
そうだな、最近みんなで居るときとか部活とかの時と違って、なんだか無理矢理表情を造ってるみたいだった。と言うか・・・うーん」
「――よし、我聞君!」

きゅぴーん、とする優。

「何ですか?」
「今からはるるんのお見舞いに行ってきなさい!」
「「お見舞い?」」

優の不可思議な言動に口を揃えて聞き返す二人。

「どういうコト?別にハルナは病気じゃないじゃない」
「そうですよ。なのに何でお見舞い?」

訝しげな二人を宥めるように、名の通り優しげな表情で優は語る。

「まあまあ、二人とも少しお姉さんの話を聞きなさい。
確かに、陽菜ちゃんは病気一つ怪我一つない健康体。でもそれは『身体』の話。
あの子、最近は良い意味で力が抜けてたから、急にあんな風に力んじゃうともの凄いストレス感じちゃうと思う。
それが軽いうちはまだ良いんだけど、酷いとノイローゼになっちゃうかもしれない。もっと悪化すると身体にも影響が出てくる。
だから、まだ病状の軽いうちにケアをする必要があるの」

優は長々と陽菜の現在の体調の危険性について語る。
しかし、いつの間にか差している逆光で眼鏡の奥の瞳が見えないことがどこか不気味だ。喋ってることはとても人道的かつ正当な事なのに。

「そ・こ・で!我らが社長、我聞君。君の出番なのだよ」

テンション高めにピッピッと我聞を指さす。

「――――へっ?」

長々とした優の話に放心していたのか、我聞はワンテンポ遅れて反応する。

「『へっ』じゃないよ『へっ』じゃ。我聞君は社長。社長は社員の健康に気をつけて、気を使うことが義務
つまり我聞君は、陽菜ちゃんの健康のためにお見舞いに行く必要があるのよ!」

1444スレ131:2006/12/06(水) 05:50:36 ID:69Mfiebz
強く、そして格好よく言い切った優。・・・もっとも、いずこからかの逆光で、未だその眼(まなこ)を伺い知ることは叶わなかったが。
しかし――

「そ、そうですね優さん!
今から國生さんのところに行ってきます!!」

典型的な単細胞の我聞にとって、そんな些細なことは足を緩める枷にすら成り得ず、彼は一も二もなく自分の秘書の元へと飛び出した。

「ちょっと!?待ってよガモーンッ!!わ、ワタシも行くーっ!!」

それに気づくや否や、桃子も追うように――というよりもまんま我聞を追いかける。

「ふふふ」

そして、一人残された優が『これで面白いことになりそうだ』と考えたかどうかは定かではない。

1454スレ131:2006/12/06(水) 05:52:23 ID:69Mfiebz
と、言うわけで続く羽目に。
小出しかも知れませんが、また同じくらい書けたら投下します。
では。
ノシ
146名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 12:55:34 ID:zdzbNWDV
GJ!
秘書検定のあたりとか、すげー面白かった
優さんなら本当にこういうこと言い出しそうだし、
桃子の返事もそれっぽかったし
挑発に乗っちゃう國生さんも実にそれらしい
147名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 22:22:24 ID:q70dDE14
行く先に待つのはほのぼのか、修羅場か。
桃子が話にからんでるのがすっげーwktk。gj!
1484スレ131:2006/12/06(水) 22:32:17 ID:69Mfiebz
Σ(・Д・)
よく考えたらSSで桃子使うの初めてだった。・・・どうでも良いか
149名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 22:37:04 ID:RolIytjY
楽しみに待ってるyo
俺youの書く優さんが好きだyo
150名無しさん@ピンキー:2006/12/07(木) 21:25:20 ID:IHEXTP/Q
うおおお!ナイス!そして期待度MAX!
151名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 09:34:09 ID:SZbo8Xxl
保守アゲ
152499:2006/12/10(日) 17:48:26 ID:d2hCpsCH
久々に投下させて頂きます。
本編終了後から半年くらい経ったころのお話ということで、
今回は導入部です。

ちなみに当面はえちぃ話はナシです。
153499 1/6:2006/12/10(日) 17:49:30 ID:d2hCpsCH

「さて、それでは恒例の工具楽家秘密会議を始めます」

雨戸を締め切った部屋に、何故か灯かりは数本の蝋燭のみ。
そして、そこに集うは工具楽家の長女・果歩を中心に、次女・珠、次男・斗馬、そして・・・

「あの、社長の家はいつもこういう雰囲気で会議をなさるのですか?」
「いや・・・俺も初めて知ったんだが」
「ですが、恒例って・・・」
「あ、あははは、ちょっと雰囲気を出そうってだけですから!
 あまり気にしないで下さい陽菜さん!」

いつもの会議なら絶対にいてはならないはずの二人、更には、

「雰囲気なんて会議とは全然関係ないでしょーに、そういうところはホント、低脳ね〜」
「まぁ、ガキだよな」
「そこの二人うるさいっ! 工具楽屋出禁にするわよ!?」
「んだとこのクソガキ! おめーはいつもいつも・・・!」
「大体なんの権利があってアンタが言うのよこの薄胸!」

と、いつものこの場においては障害物扱いの二人までもが揃っている。

「ま、まぁまぁ皆さん落ち着いて!
 それより果歩さん、皆を集めてのお話というのは・・・?」
「はぁ、まぁでは始めますが・・・
 今日皆さんに集まって頂いたのは、実はある計画を実行に移すために協力して貰いたいからなんです」
「ほう・・・計画?」
「うん、できるだけこっそりとやりたいんだけど、人手が多い方が助かるの」
「もったいぶった言い方だな」
「具体的にナニをしたいワケ?」
「む・・・」

番司と桃子のちょっと棘のある物言いに不機嫌そうな目をする果歩だったが、
イチイチ相手にしていても進まないと悟っているのか、そこは流して、

「じゃあズバリ言うわよ」

思わせぶりにひと呼吸おいて―――

「優さんと辻原さんをくっつけようと思います」

その、シンプル過ぎる言葉にとりあえず皆、一様になるほど、と頷きかけて・・・

「「は・・・?」」

と、番司と桃子。

「「あ―――」」

と、我聞と陽菜。

「「おぉ―――っ!」」

と、珠と斗馬。
三組三様のリアクションは、それぞれの認識の違い故。
154499 2/6:2006/12/10(日) 17:50:32 ID:d2hCpsCH

「ね、ねぇカホ、いきなり何を言い出すのよアンタ・・・」
「あぁ、それはそれで飛躍しすぎっつーか・・・意味がわからんぞ・・・」

工具楽屋の関係者ではあれども、番司と桃子はそこまで深い関わりを持っている訳ではなく、
話が突飛過ぎて果歩の意図が全くわからない。
だが一方で、

「そういや・・・前に辻原さんのお見舞いに行ったとき・・・」
「なんと言いますか・・・凄く、いい雰囲気でしたよね、優さんと辻原さん」

辻原がまだ入院していた頃、工具楽の兄妹達と陽菜とで彼の見舞いに行った時のことを思い出す。
たまたま彼らより先に優が辻原を見舞っていて、
二人が楽しげに話していたのを病室の外から聞いてしまったのだ。

「確か・・・ケッコンがどうとかなんとか・・・」
「はい、そういう類のお話をされていたような・・・」

と、なんとなく気恥ずかしげに二人は顔を見合わせる。
武文が旅立つ際に残した爆弾発言のせいで、ことある毎に“そういう類のお話”で揶揄されている我聞と陽菜は、
その手の話題についつい敏感になってしまっているのだ。

「か、カホ! と、とりあえず二人が脈がありそうだってのはわかったけど、
 何でその二人をくっつける手伝いなんかするワケ!?」

唐突に妙な雰囲気を醸し出し始めた二人にある種の危機感を抱いたか、
その様子をニヤニヤと眺める果歩に向けて桃子が慌てて話を振る。
トーンアップした桃子の声に我聞と陽菜もハッとして、やはり慌てて目を逸らし、
そんな赤面した二人―――特に我聞のことを番司が睨んでいたりするのも、
最近ではよくあることだったりするのだが・・・まぁ、それはともかく。

「うん、私もお兄ちゃんと陽菜さんと一緒に優さん達の話を聞いちゃったんだけどねー、
 あの二人・・・なんか素直になれなそうだと思わない?」
「ま・・・まぁ、そうね・・・ユウが素直って、なんていうかイメージ出来ない・・・」
「辻原さんは、まぁアレはなんつーか、言うこと全部胡散臭いしなァ」
「そうなのよねぇ・・・でも私達、優さんには散々お世話になっているし、
 恩返しをするべきかと思ったワケなのです!
 辻原さんを譲るのは正直悔しいんだけど!
 ここは敢えて涙を呑んで!」

ずい、とちゃぶ台に乗り出して力説する果歩。
だが・・・

「ええと果歩、優さんに世話になってるって、俺や國生さんはわかるけど、
 なんで果歩がそこまで言うんだ?」
「何でって、そんなのGHKで散々―――」
「GHK、ですか・・・? それって一体・・・」
「あ! あぁ、いや、あは、あはははは! な、何でもありません! ありませんから!
 と、とにかくです! 私も優さんには色々とお世話になっているんです、色々と!」
「は、はぁ・・・」

何のことだかさっぱりだ、とばかりに顔を見合わせる我聞と陽菜、
そして何のことだかさっぱりではあるが、直感的に自分たちにとって厄介な存在であると感知したらしく、
ジト目で果歩を睨む桃子と番司。

「ま、まぁとにかく!
 優さんと辻原さんが幸せになるお手伝いをしようってコトなんだけど、どう!?
 いいアイデアだと思わない!?」
155499 3/6:2006/12/10(日) 17:52:00 ID:d2hCpsCH

これ以上そっちのコトで突っ込まれると色々と露呈してしまいそうで、
果歩は強引に話を進めて誤魔化しに入る。

「ん〜、そうねぇ・・・面白そうではあるけど・・・」
「なんかカッタリぃなぁ・・・」

とは言え、果歩の挙動が不審なのも手伝って、この二人はイマイチ乗り気にならない。
・・・が、これは彼女の想定のうち。

「んもう、アンタらノリ悪いわねー。
 どう、お兄ちゃんに陽菜さんはいいアイデアだと思うでしょ〜?」
「む・・・確かにそうだな・・・辻原さんにも優さんにも、俺はいつも世話になってるし・・・」
「それに、病院でのお二人の会話を聞いた限りですと、
 満更でもないと言いますか・・・的外れということは無いかと思いますし・・・」
「じゃあ、そうだな、俺たちも手伝うとするか!」
「はい!」

それはもう果歩の予想通りに話は進み、二人は彼女の申し出を快諾する。
似たような企みで実は自分達が結構色々な目に遭わされているなど、夢にも思ってはいないのだ。
そして、この二人が参加するとなれば・・・

「で、あんたらはどうする?
 それなりにメンツは揃ったし、別に無理にとは言わないけど〜?」
「う・・・い、いいわよ! そこまで言うなら少しくらい手を貸してあげないことも無いわよ?」
「あ? あ、ああ、仕方ねぇな、ったく・・・」
「ふ〜ん、いいのよ〜? ホントに無理しなくても?」
「う、うるさいわね! やるって言ったらやるわよ!」
「俺もやるってんだよ!」
「はいはい、それじゃあ精々働いてね〜」

ニヤニヤと笑って、果歩は二人の殺気混じりの視線を余裕で受け流す。
勿論、二人とも優と辻原のことが気になったのではなく、
我聞と陽菜をそういう雰囲気の中に放置することに危機感を覚えたのである。
下手に話が上手く進んだりして、
その場の雰囲気でこの二人までいい感じになってしまわれては手に負えないし、
常々からこの二人をくっつけようとしている果歩の指揮下になんぞ入れてしまっては、
ドサクサに紛れて我聞と陽菜が何をやらされるかわかったモノではない。
ならば、同行して見守らねばなるまい、というワケだ。

「そ、そんなことはいいからよ! それより、具体的に何か考えてんのか?」
「そうよ、これだけ人数集めといて何も考えてません、じゃそれこそ低脳もいいとこよ!?」

会議を進めるというより話題を逸らしたような形ではあるが、
果歩も二人をからかうためにこの場を設けた訳ではない。

「ふ・・・甘く見てもらっちゃ困るわね・・・じゃあ全員協力ってコトで話を進めるわよ?」

つい、と果歩がちゃぶ台に身を乗り出して声のトーンを落としたので、
他のメンツも少し迷ってからそれに倣い、ちゃぶ台の上で頭を突き合わせて頷いて同意を示す。

「ではまず概要だけど・・・・・・二人にデートさせちゃおうと思います」
「いきなり!?」
「そう・・・と言ってもあの二人だけってなると簡単には行かないだろうし、
 ここは私達が二人を誘う、という構図を取ろうと思います」
「む・・・だが果歩、やはりその、デ、デートと言うからには、やはり二人きりにさせるべきではないのか?」
「ふ〜ん、お兄ちゃんはデートするなら二人っきりがいいんだ〜♪」
「い、いや! それは、その、俺がとかじゃなく! 普通はそうなんじゃないかって!」
156499 4/6:2006/12/10(日) 17:53:13 ID:d2hCpsCH

武文の爆弾発言からそれなりに時間も経っているのだが、この手のからかいには相変わらず耐性がつかず、
我聞はいつも通りにうろたえて取り乱す。
そんなやり取りを聞いて何故か恥ずかしそうにしている陽菜と、
何故か殺気立った視線で我聞を睨む番司も、いつも通り。

「そっか、ガモンはデートは二人きりがいいんだ、まぁ当然よね〜」

そして何故かほわほわと夢見るような表情でどこか遠くを見ている桃子もいつも通りなら、

「ま、相手はまずアンタじゃないから心配する必要ないわよ」

という果歩のツッコミも、これまた言わずもがな。

「んな! ・・・ったくアンタはいつもいつも・・・!」
「あ〜ら仕方ないじゃない、だって本当のことでしょ〜
 なにせお兄ちゃんにはパパ公認の―――」
「か、果歩さん! 桃子さんも! い、今は話を進めましょう!」

矛先が自分に向けられそうになって、今度は陽菜が慌てて本筋に話を戻そうとする。

「こらクソガキ! 陽菜さんが困ってんじゃねーか!
 だいたいだな! いくら、お、お父さんとは言えだ!
 いきなり嫁がどうこうなんて言われても迷惑ってモンですよね、陽菜さん!」
「い、いえ、それは・・・」
「え〜!? 陽菜さん、そうなんですか?
 お父さんがああ言っても、陽菜はお兄ちゃんのお嫁さんはイヤですか・・・?」

落胆した風に言う果歩。
・・・もちろん、演技。

「い、いえ! 決してそういうワケでは!」
「あ、そうなんですか! よかったね〜お兄ちゃん♪」
「んなっ!? か、果歩! 國生さん困ってるだろ! その辺にしとけ!」
「あら、じゃあお兄ちゃんは陽菜さんがお嫁さんになってくれるのはイヤなの〜?」
「い!? いや! け、決してそういうワケでは・・・」

結局それ以上何も言えず、武文の“あの発言”の時と同じように、我聞と陽菜は真っ赤になって俯いてしまう。
真っ赤になりながらも互いが気になるのか、ついちらちらと見てしまうのもその時と一緒で、
・・・要するに相変わらずなのである。
あれから半年も経とうかというのに全く進歩しない二人を果歩達姉弟は楽しげに、番司と桃子は不満げに見守る。

「と・・・・・・とにかく! 今はそれよりも優さんと辻原さんです!
 果歩さん、会議を進めてください!」
「そ、そうだぞ! とにかく俺達みんなで辻原さんと優さんをデ、デー・・・つ、連れ出すんだな!?」

その空気に耐えかねて陽菜と我聞が強引に話題転換を試みると、

「んー、まぁそうね、じゃあ話を進めましょうか」

果歩は未だニヤニヤしたままでそう宣言して、一枚の紙切れを取り出す。
自然と皆の視線がそこに集まったところで、

「で、優さんと辻原さんをくっつける舞台なんだけど、
 実は私、先程商店街の福引でこんなモノを引き当ててしまいました」
「む・・・?」
「福引? 一体ナニを・・・?」

蝋燭の灯りではイマイチはっきりと見えず、皆一様に頭を突き出してちゃぶ台の上の紙切れを覗き込み・・・
157499 5/6:2006/12/10(日) 17:54:15 ID:d2hCpsCH

「「遊園地だ!」」

それまで果歩と共に笑ったり囃し立てたりするだけだった珠と斗馬が思わず叫ぶ。
そう、そこに載っている写真はジェットコースターや観覧車といった、
いかにも幼い妹や弟の喜びそうなアトラクションでいっぱいなのだ。

「これは・・・団体用無料パス、ですか・・・
 これなら確かに、優さんや辻原さんを誘う口実としても使いやすそうですね」
「ですよね! これを見せて・・・そう! 辻原さんの快気祝いってことにでもすれば、
 辻原さんも誘いやすいし!」
「むぅ、なるほど・・・・・・そういえば退院してからは結構経つけど、完治したのは最近だったな。
 ともかく果歩! 我が妹ながらよくやった!」
「ふっふ、私が本気になればざっとこんなもんよ!
 ・・・ま、本当は温泉旅行のペアチケットを引いて、誰かさんに押し付けようかとも思ったんだけどね〜♪」

にやり、と薄笑いしながら再び我聞と陽菜に目を向けて、二人を慌てさせようとするが、

「でもこれって結局、たまたま当たった遊園地に皆で行く口実を作りたかっただけじゃないの〜?」

そんな果歩に、桃子のニヤニヤとした薄笑いが向けられる。

「んな!? じゃあアンタは来なくて良いわよ!」
「な、なんでそうなるのよこの薄胸! 意味わかんないわよ!」
「うるさいこの控えめ胸! それにね、デートなんかしたことないだろうアンタにはわかんないでしょうけど、
 遊園地ってのはお化け屋敷とかジェットコースターとかその他色々、
 上手く二人きりにさせられれば思わずイイ感じの雰囲気になっちゃうようなアトラクションも満載なのよ!
 くっつけるには最適な場所なんだから!」
「くっ! ち、地の利があるのはわかったけど、デートはアンタだってしたことないでしょーが!」
「ぬむむ・・・!」
「ま、まぁ果歩さんも桃子さんも落ち着いて!
 折角ですし、皆さんで行きましょう!」
「は、はぁ・・・まぁ陽菜さんがそう言うなら・・・」
「そ、そうね、ここはハルナに免じて・・・」

陽菜だけでなく、勢いで暴走しかけた果歩と桃子も密かにやれやれ、と胸を撫で下ろし、
横道に逸れてばかりの会議は再び本題に。

「えーと、じゃあ目的はここにいる皆で優さんと辻原さんをくっつけること、
 それで舞台は遊園地・・・・・・ここまではOKね?」

一同、頷いて賛同の意を示す。

「じゃあ、この計画の方針なんだけど―――」

こうして果歩主導のもと、秘密の会議は更なる紛糾を挟みながらも続けられるのであった。


158499 6/6 (了):2006/12/10(日) 17:55:34 ID:d2hCpsCH

―――一方その頃、工具楽屋の事務所にて。

「・・・ふぅん・・・なるほどね〜♪ 面白いこと考えてるじゃない、果歩りん♪」
「どうしました、優さん?」
「ん〜、いやー、ちょーっち、ね〜♪」

そうは言っているが、ヘッドホンに聞き耳を立てながら独り言を繰り返したり笑ったりするのは、
はっきり言って怪しすぎる。
それが仕事中なら尚更である。

「優くん・・・仕事・・・」
「あ、あははっ! イヤだなぁ仲之井さん! これはれっきとした試作品の性能試験中だよー!」
「む・・・そうじゃったか・・・」
「そうそう! 決してサボったり遊んだりしてる訳じゃないからね〜」

仲之井としてはかなり釈然としないものもあるのだが、
一応、事前に優からどのようなものを開発してどのようなテストをするかについては報告を受け、
それを了承している手前、無下に止めさせることも出来ない。

「で、テストの経過はどんな具合じゃな?」
「うん〜♪ 音声も画像もバッチリ良好!
 蝋燭の灯り程度でもちゃーんとヒトの表情までわかるくらいだし、今のところは問題無しだね〜♪
 あとは耐久性とか持続時間とかその辺のテストもしなきゃだから、もーちょっと続けるね」
「むぅ、わかった」

彼女の独り言からして、どうも既にテストが目的ではなくなっているようにも思えるのだが、
テスト自体は順調に進んでいると判断できたので、
それ以上は敢えて何も言わないことにする仲之井なのであった。
ちなみに優がテストをしているのは新開発の虫型の小型偵察ロボット、その名も“ジュゲムくん”。
・・・要は桃子から技術提供を受けて音声だけでなく画像まで受信できるように改良した、
“パタパタくん”の発展型後継機なのである。
で、優はというと・・・

「・・・ところで辻原君、今週末はお暇かな?」
「はぁ、まぁ本業でも入らない限りはヒマですけど?」
「よしよし、じゃあきっと、果歩ちゃんか我聞くんから何かしらのお誘いがあると思うから、
 そのまま予定空けといてね〜♪」
「はぁ」

同僚の浮かべるいかにも“悪そうな”笑顔から、
十中八九何か良からぬコトを企んでいるであろうとは予測できるが―――

(まぁいいでしょう、ヒマですし、それに―――)

優が洩らす独り言から、良からぬコトを企まれている対象はまず間違いなく自分ではなさそうである。
なので、

「何が何だかわかりませんけど、取り合えずそのつもりでいることにしておきますよ」
「うむ! よろしい! では当日はきっと私と一緒に行動だから、ノリをよくして参加すること!」
「はは、まぁやってみます」
「よしよし、流石は辻原君、では週末を楽しみに!」

もはや仕事中だとかテストだということはほとんど忘れていそうな感じで、

―――ふふふ、果歩りんったら、なかなか味なことしてくれるじゃない・・・
―――それじゃあ折角の好意には、私からも好意でお返ししてあげなきゃだね〜♪

にやーっと悪い笑みを浮かべる優の心はどうやら既に週末に旅立っているようであった。
159499:2006/12/10(日) 17:58:11 ID:d2hCpsCH
今回の投下分は以上です。

当面はえちぃ展開にはなりそうもありませんし、
カプもここではほとんど出ていない組み合わせなので受け入れられるかわかりませんが、
問題なければぼちぼちと書かせて頂こうかと思ってます。

では、失礼します。
160名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 22:28:02 ID:SZbo8Xxl
おお!ありそうでなかった新しい切り口だ!
GJ!!
そしてこの続きに期待させて貰います!
ってか先が全然読めない・・・
161名無しさん@ピンキー:2006/12/11(月) 19:39:31 ID:fyHA6dVT
結局これは辻優…なのか!?
ともあれ皆がにぎやかで楽しげなのと
にやけてわるだくむ優さんの姿がたまらなく良いです!
続きも超期待!!
162名無しさん@ピンキー:2006/12/11(月) 22:11:54 ID:qWI79+Lc
お前等藤木先生のブログにエロイのが張ってあったぞ!
163名無しさん@ピンキー:2006/12/11(月) 23:18:24 ID:v17EA4rX
>>162
ありがとう、貴方のおかげで見ることができた
164名無しさん@ピンキー:2006/12/12(火) 21:35:47 ID:FCkoKOSC
俺は見れなかった(´・ω・`)
165名無しさん@ピンキー:2006/12/12(火) 23:04:59 ID:4iuMZXsZ
俺も見れなかった(´・ω・`)
166名無しさん@ピンキー:2006/12/12(火) 23:45:19 ID:xUHir/Gh
167166:2006/12/12(火) 23:47:36 ID:xUHir/Gh
>>166
プレゼント
168名無しさん@ピンキー:2006/12/13(水) 00:12:31 ID:dpvRXSuE
>>167
ありがとう、あんたいい奴だな!
169名無しさん@ピンキー:2006/12/13(水) 21:14:28 ID:FnIgwWT0
>>166
やる気まんまーんw
170名無しさん@ピンキー:2006/12/14(木) 19:46:27 ID:N8JNgpEN
今度は平井を主役にしたSSを書いてくれ!
171名無しさん@ピンキー:2006/12/14(木) 21:31:52 ID:Jl23twbS
>>170
SSはいいと思うがエロパロは無理だな
172名無しさん@ピンキー:2006/12/15(金) 14:19:34 ID:42mePCpX
さくらという相手がいるじゃん。
173499:2006/12/18(月) 00:04:25 ID:dyJCwb4Q
携帯から失礼します。
先日こちらで投下させて頂いたSSの続きなのですが、
ちとPCが壊れてしまいましてしばらくは投下不可能になってしまいました。
修理が済むか新規購入出来次第、続きを書くつもりではありますが、
当面は投下出来そうにありませんので報告させて頂きます。

では、失礼します。
174名無しさん@ピンキー:2006/12/18(月) 01:15:29 ID:soAy0TwI
pc故障とはご愁傷様です。気長に保守ってますんでそのうちどうぞ。
175名無しさん@ピンキー:2006/12/18(月) 12:36:27 ID:ScGWE6Qd
>>173
PCクラッシュ…・゚・(ノД`)・゚・ご愁傷様です…
いつまでも楽しみに待ってます
176名無しさん@ピンキー:2006/12/21(木) 08:48:12 ID:MCxACp1q
【調査】 1位は男「陸」、女「陽菜」…2006・赤ちゃんの名前ランキング(明治安田生命調べ)
http://news19.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1166607665/
177名無しさん@ピンキー:2006/12/23(土) 12:30:54 ID:1lb1OyaR
ホッシュ
178名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 02:30:48 ID:XOypbYtt
保守。
ところで果歩ブラコン疑惑の件なんだが
179名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 12:08:19 ID:f+QYPPlz
>>178
お前は今更何を言っているんだ
180508:2006/12/28(木) 08:36:33 ID:HPn0EGPc
ブラコン…ブラコン…
ブラジャーコントロールの略か!!

あのうすい胸ですら、パッドを入れてあるとでもいうのか!!
181名無しさん@ピンキー:2006/12/28(木) 08:36:52 ID:HPn0EGPc
名前はいってた…

吊ってくる
182名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 22:25:46 ID:+ezWoi9a
今年最後の保守は頂いた
183sage:2007/01/01(月) 00:12:00 ID:g4YQk9NQ
じゃあ新年初保守
184名無しさん@ピンキー:2007/01/03(水) 22:55:33 ID:i1YidDi9
>>183
こんなスレでageるとはこれいかに
185名無しさん@ピンキー:2007/01/06(土) 15:35:52 ID:B+bDYviz
保守
186名無しさん@ピンキー:2007/01/09(火) 19:03:44 ID:w/b1k7+8
さらに保守
187名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 22:48:32 ID:1Nmfn4ff
保守
188名無しさん@ピンキー:2007/01/16(火) 10:01:50 ID:7eKPPjOJ
トウカスルナライマノウチ
189名無しさん@ピンキー:2007/01/16(火) 10:06:39 ID:7eKPPjOJ
「さぁ、どうするの!」
「うーむ。」


 我聞と三学期

楽しい冬休みも終わり、普通に三学期が始まっていた。しかし、普通に始まっては困るメンバーがいた。
「緊急事態です。」
そう果歩は言い出していた。
「ど、どうしたの、突然。」
果歩の迫り来る迫力に最初からうろたえ気味に森永優。
「冬休みが終わってしまいました。」
「それがどうしたの?」
「冬休みといえばイベント目白押しの大事な時期だったのです。それなのになにもありませんでした。」
「たしかに冬休みといえばいろいろあったのにねぇ。」
クリスマス、大晦日、元旦、初詣、七草粥等いろいろあった。
当然工具楽家だけのイベントではない。一人暮らしの陽菜にとっては寂しいだろう、という提案をした果歩の意見に
感動した我聞がイベント毎に誘いに行っていたのである。
何かあれば陽菜をさまざまな理由で工具楽家にお誘いしてはいじっていた。
「我々の敗因は何なのだー」
うきー、という効果音が目に見えそうな勢いの果歩。
「それはしょうがないねぇー、あの二人だからねぇ。」
「それはそうなのですが」
しかし、真実を見極めることのできる唯一の人材が口を開こうとしてやめた。
(いじることしかしてない気がする)
そう言おうとしたが今意見すればどうなるかよく分かっている斗馬は何も言わない。
実際、陽菜が来る からかう 真っ赤 
    何かする からかう 真っ赤
    遅くなったから送っていく からかう 真っ赤
毎回このパターンで話は進んでいった。
GHKとしてはこの状況が面白かったのだが、
よくよく考えてみると何も成果が挙げられていないということに気づいていない。
そして息を荒げて一言
「秘策を思いつきました。」
190名無しさん@ピンキー:2007/01/16(火) 10:09:21 ID:7eKPPjOJ
「はい!秘策ってつ「あっ姉上!!」
斗馬のフォローによって果歩の鉄槌は免れた。
「で、果歩りんその秘策とは?」
いつもの悪い顔で優が聞くと、
「作戦の内容はこうです」
………………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………………

「なるほどねぇー、それならあの二人でもナニかあるだろうねぇ。
で、いつ開始するの?」
「明日です。」
「明日から楽しみだねぇー」
ふふふ、や、くっくっくっ、などの笑い声と共にこの秘策は可決された。

あけて翌日。何事も無く朝、学校、仕事と、順調な一日を送っていた我聞。
しかし、いつもと違うことがひとつだけあった。
「今日仕事終わったら陽菜さん連れてきてくれる?」
朝学校に行く前に果歩にこのように言われていた。
理由を聞いても教えてくれないのであきらめて頷いておいた。
陽菜に伝えてみても我聞と同じ反応をしているので陽菜も知らないらしい。
「いったいなん何だろうな」
「確かに気になりますね」
二人で考えてみてもからかわれる事ぐらいしか思いつかなかったので、分からないものはしょうがないということで考えるのを止めた。
191名無しさん@ピンキー:2007/01/16(火) 10:12:31 ID:7eKPPjOJ
工具楽家 午後七時
言われたとおり陽菜を連れて我聞が帰宅した。
「ただいまー」
「おじゃまします」
「二人とも来てください」
お帰りなさいも言わずに急かしている果歩に何事かと急いで声のするほうに行くと、
「優さん?」
なぜか優もそこにいた。
「優さん早いですね」
「まぁねぇー」
朝の果歩の様子、なぜかいる優。絶対いいことは起こらないだろうなと我聞でも分かる。
「ところでご用件のほうは」
陽菜の言葉を聞いて、
「まぁとりあえず座ってください」
と、冷静に切り返す果歩。
そして二人が座るのを見計らって一言、
「お兄ちゃん、私はとても心配しています」
「何をだよ」
突然の事に焦る我聞。
「楽しいかった冬休みも終わってしまいました」
そう言って二人を眺める果歩。
「それがどうしたんだ」
からかわれた冬休みを思い出し真っ赤。
しかし果歩はいじらない。
「おにいちゃん、勉強は大丈夫なの」
「は?」
突然の事にあっけにとられていると、
「一学期と二学期の成績考えると少しまずいんじゃないの、進級」
「まぁそりゃそうだが」
まずいのは確かである。が、
「なぜ私が呼ばれたのでしょうか」
当然の疑問である。
「お兄ちゃんに勉強を教えてほしいのです」
「なっ」 
「えっ」
驚く二人、攻める果歩。
192名無しさん@ピンキー:2007/01/16(火) 10:14:55 ID:7eKPPjOJ
「これが二年の成績表です」
「ちょ、ちょっとまてー」
そこには教科と数字しか書いていないお手製成績表があった。
「社長…それは正確な成績表なのでしょうか」
「………ハイ」
ふぅ
「こ、今回は仕事が忙しくてそ「それは陽菜さんも一緒でしょーが!」
一括されてゲーンと、効果音が見えそうなくらい驚く。
そした果歩が勢いを上げて攻める。
「そもそも社長たるものが赤点取るとは何たることじゃー」
果歩のもっともな理由に押されっぱなしの我聞であった。
「よってしっかり勉強してもらいます」
我聞撃沈
「しかし果歩さん。勉強なら優さんに教えてもらったほうが良いのでは」
陽菜がようやく冷静さを取り戻して反撃を試みるが、
「優さんだと話がそれすぎてしまうし、関係ない知識のほうが増えてしまいます。それなら陽菜さんとの楽しい勉強会のほうがよいかと」
「ごめんねぇー、無駄な知識が有り余ってるんだよー」
少し気になるような言い方だが言っていることは正しい。
「そうですね…」
陽菜も言い返せない。
「し、しかし國生さんに悪いだろう」
我聞の最後の反撃。が、
「確かにそのとおりです。しかし、今のままだと追試は確実です。その上この成績だと進級も問題になってきます。
そうしたら仕事にも支障が生じる恐れがあります。お兄ちゃんは自分でどうにかできるの?」
「いや、えっと…」
「それに陽菜さん以上に教え方うまそうな人はいる?」
「それは…」
「陽菜さん」
「は、はいっ」
不意に果歩が標的を変え、
「兄の勉強を見てもらえないでしょうか」
果歩の紳士な訴えにからかい目的ではないと判断し
「私は別にかまいませんけど」
断る理由も無いので陽菜が了承すると、
「いいのか、國生さん?」
「ええ、教えながらでも勉強はできますし。それに留年は困りますからね」
うっと言葉に詰まっている。
193名無しさん@ピンキー:2007/01/16(火) 10:17:03 ID:7eKPPjOJ
「さぁ、どうするの!」
「うーむ」
悩んではいるが答えは出ている。
「それじゃあ國生さん、頼めるかな?」
「はい、よろしいですよ」
交渉成立 GHKの勝利
「では早速今日からよろしいですか」
「いいですよ。では社長、行きましょうか」
「ああ、よろしく頼むよ」
そんな二人を見送りつつ、
「あとよろしければお礼といっちゃあ何ですがご飯食べていってもらえますか」
果歩の言葉に少し考えて、
「よろしいのですか?」
「ええ、ご飯はみんなで食べたほうが美味しいですからね」
また少し考え、
「社長、よろしいですか?」
「ああ、喜んで」
「ではお言葉に甘えて、よろしくお願いします」
そう言ってペコリとお辞儀してまた歩き出していった。
「後でお茶出しますからねー」
そう言った果歩の顔は優の悪い顔になってきていた。


「作戦は順調です」
完全に二人が見えなくなったのを確認して切り出した。
「でもまだ始まったばかりだけどねぇー」
「最初から飛ばすつもりはありません」
「ほぉー」
「今回は長期戦のつもりですから」
「少しずつ攻めていくということだね?」
「そうです。時間はありますから」
「まだ一月だもんねぇー」
ニマニマが止まらないといった感じに笑い出している。
「今のうちに今後の大まかな作戦を伝えておきます」
珠と斗馬ほったらかしで盛り上がり続ける二人。
そうして初日の夜は更けていった。
194名無しさん@ピンキー:2007/01/16(火) 10:19:42 ID:7eKPPjOJ
とりあえず以上です。
駄文すみません。
最近投下が無かったので…
195名無しさん@ピンキー:2007/01/16(火) 15:23:06 ID:SiuLe8OI
投下きとぉわぁ〜〜〜〜!!!!
続きをワクテカしながら待たせていただきますっ!!
この際ほのぼのでもエロなしでも鬼畜でもほのえろでも、ジャンルは問いません!!新作品が読めるだけで満足だああああっ


でも俺的にはほのえろいいなとかぼそっと…
196名無しさん@ピンキー:2007/01/16(火) 19:58:25 ID:IRNIvcEd
久々にキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
こんな時間に投下するとは流石藤木スレw
197名無しさん@ピンキー:2007/01/16(火) 19:59:10 ID:IRNIvcEd
ageすまん
吊って来るおrz
198名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 00:21:32 ID:yU0GCpIO
おお、いいですね!
続きが楽しみな引きかたです!
期待してますよ〜!
199名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 20:42:40 ID:mdBULlMg
うおおおぉぉぉぉ!!期待で胸が張り裂けそうだ!
wktk
200名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 22:40:33 ID:Fqz5QLQ1
調子に乗って続き投下せせていただきます
201名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 22:42:45 ID:Fqz5QLQ1
二月八日 木曜日 工具楽家
「ついにこの日が来ました」
果歩が切り出した。
「準備期間が長かったからねぇー」
「しかし、そのおかげで作戦の成功率が上がったのでは?」
「そのとおりです!」
声高々に果歩が叫ぶと、
「声が大きすぎるかと…」
今我聞の部屋では勉強会が行われている。
もちろん二人きり。
「確かに、失態だったわ」
興奮しすぎていた果歩が反省を入れていると、
「しょうがないよ、待ち遠しかったしねぇー」
と、すでに悪い顔が出来上がっている優であった。
「しかし仕込みはばっちりです」
そして立ち上がりながら、
「今夜から決行します!!」
小さな声で団結しあうGHKであった

しかし、下準備といっても毎日のように陽菜が勉強を教えに来ていただけである。
毎日勉強して、ご飯食べて、たまにお風呂にも入って、お泊りなどしていた。
「私の勉強も見てもらえますか?」
これで時間を稼ぎ、お泊りに持ち込んでいた。
こうして、和やかな雰囲気をアピールしつつ、警戒を完璧に取り払っていた。
今ではお泊りにもお風呂にも快く受け入れてくれるようになった。

「では、作戦を開始します」
「まずどれからにするー?」
「お弁当から行きたいと思います」
202名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 22:45:08 ID:Fqz5QLQ1
「……ですから、接線の方程式はこうなるわけです」
「なるほど…じゃあさっきの法線って何」
「それは接線と垂直に交わっている線のことです」
「ほー」
などと、のんきに数学をやっていると…
「陽菜さーん、教えてほしいことがあるんですけど…」
優を帰宅させ、作戦決行。
果歩乱入。しかし、よくあるこることなので動じず、
「はい、よろしいですよ。では社長、問3をやっといてください」
「ああ、任せておけ!」
意味も無く元気な我聞を横目に、
「では果歩さん、どこが分からないのですか?」
「はい、ここの所なんですが……」

「……という風にすればいいんですよ」
「なるほど、よく分かりました。後証明などの解き方のこつ教えてほしいんですけどいいですか?」
「いいですよ、まず……」
果歩が来ると我聞そっちのけで話は進んでいく。
しかも、果歩からの提案で勉強はノルマ制となっている。
ノルマ制なので、果歩が来ると我聞の勉強が進まくなり、夜遅くになってしまうというものである。
陽菜との約束みたいなものなので、陽菜もしっかりノルマが終わらないと帰らないこともすでに実験済みである。
さらに、夜遅いとお泊り、という流れもすでに準備はできている。
果歩はわからない所を溜め込んで一気に来るので何日かに一度しかこないが、
果歩が来ると陽菜のお泊りが確実になっている。

「よくわかりました、ありがとう陽菜さん」
「いえいえ、どういたしまして」
こうして陽菜が開放されて我聞に帰ってくる。
我聞も自分で進めてはいるが、それで解ければ苦労も無くこの作戦自体成立しないわけで
すぐに止まってしまっているのである。
「では社長、どうしました?」
「ああ、ここなんだが……」
こうして勉強は再開されていった
203名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 22:47:37 ID:Fqz5QLQ1
勉強が終わり、帰ろうとする陽菜にいつものように
「もう夜も遅いですし、止まっていったらどうですか?」
家もすぐ近くなので断られる可能性のほうが高いのだが、すでに何度も泊めているので
あっさりと、
「社長、よろしいのですか?」
「もちろん」
「ではお言葉に甘えて」
と、これもいつもの様にぺこりとお辞儀してお泊り決定。
その後はお風呂に入ってさっさと就寝。

二月九日 金曜日 
あけて翌朝、いつもの朝の様子と少し違う。
「オネーチャン、タイソウフクドコ」
「アネウエ、キノウイッテオイタゾウキンハ」
などの片言の台詞のように話しかける妹弟に
「今準備するから待ちなさい」
と、慌てて弁当の準備をしている果歩が返事をしつつ、
「お兄ちゃん、陽菜さん、お弁当です」
「お、ありがとう」
「いつもすみません」
陽菜がお泊り翌日の昼は果歩が作っていた。
最初陽菜は気にするなとは言ったが、果歩があんまり苦にならないから
との理由で喜んで受け入れてくれた。
「朝から大変だな、手伝うか?」
「大丈夫、てかお兄ちゃんのほうは時間大丈夫なの?」
「大丈夫です、私がいますから」
そう陽菜が言うと、
「そうですよね、お兄ちゃんには陽菜さんがいますからねぇー」
そう言いながらニヤニヤしえいると
「か、果歩!あいつらのことはいいのか?時間なくなるぞ」
「そ、そうですよ。急がないと学校遅れちゃいますよ」
声を裏返している我聞と陽菜。このままいじり倒したいがそうもいかず
「わかったから早く行きなさい、陽菜さんいってらっしゃい」
そう言って果歩は妹弟達の所へ向かっていった。
「じゃあ行こうか、國生さん」
「ええ、行きましょう」
そう言って二人は家を後にしていった。
もちろん体操服も雑巾も必要なわけも無く、時間が無いわけでもない。

「作戦は順調です、………ええ、………そうです、では結果は後ほど」
朝から優に途中経過を報告する余裕がある朝であった。
204名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 22:49:51 ID:Fqz5QLQ1
そして夜、帰宅した二人は真っ先に果歩の下へ向かっていき、
「果歩、あの弁当はなんだ!」
「そうですよ果歩さん!」
顔を真っ赤にして、帰ってからの第一声はこれである。
「ど、どうしたんですか、いったい?」
私は何も知りませんといった感じで果歩が答えている。
「いや、だからあの弁当のことだよ」
「ああ、お弁当。何か問題でも?」


今までのよく分からない授業とは違い、陽菜のおかげであまり辛くなくなった授業も終わり今は昼休み。
いつもの様に佐々木と中村との昼食時
「我聞、おまえ最近がんばってるな」
と、昼飯の準備をしていた中村に続き、
「そうだぞ我聞、おまえが指されて答えられるなんて何があったんだ。
あれか、國生さんとの楽しいレッスンでもしてるのかー」
そう言いながら胸倉をつかむ勢いの佐々木に
「はっは、努力の賜物だよ」
と、余裕の我聞。しかし、今本当のことを言ってしまうとまずいような気がしたので
陽菜の事は伏せておいた。
「家で少しずつ勉きょ「なんだこれはーーー!」
佐々木が大声で我聞の話を切りながら弁当を指差した。
「なんだってこれは……」
弁当だと言おうとして言葉が詰まる。
我聞の目には弁当が映っている。しかし、佐々木が何を言おうとしているのか我聞にも分かる。
というか我聞も同じ気持ちであった。
「なぜ貴様のご飯に陽菜と書いてあるー!」
そう、白いご飯の上にピンクで陽菜と書いてある。
「いや、これは……」
事実を説明しようとするが佐々木の勢いは止まらず、
「國生さんの手作りです、とでも言うつもりかー!」
クラス中の注目を浴びている。天野や住などが面白がって近づいている時、
「社長!」
珍しく大きな声を出した陽菜が飛び込んできて、
「國生さん、このせ「なぜ私の弁当に我聞と書いてあるのですか!」
陽菜が弁当を開いて我聞に見せている。
そして今このクラスがどういう状況であるか理解したときにはもう手遅れであった。
205名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 22:51:52 ID:Fqz5QLQ1
「るなっち、くぐっちと同じお弁当といいますと?」
天野がとても楽しそうに絡んできた。ちなみに陽菜の弁当を見て佐々木は撃沈していた。
「いえ、これは……」
と、言葉に詰まっていると、
「この弁当は妹が作ってくれているんだ。で、國さんの分もってことだ」
「何で?」
「朝起きて我が家で弁当作るわけ「社長!」
陽菜の静止もすでに手遅れである。我聞も今自分がなにを言ってしまったか理解した。
「ちょーとその辺のところをお姉さんに詳しく話してみましょうかぁー」
天野が満面の笑みで近づいてくる。
「ええっと……」
我聞を見る陽菜。しかし、すでに我聞も陽菜のことを見ていた。
「見詰め合ってるー」
楽しそうな住の声、沈黙したままの佐々木、少しだけ楽しそうな中村、
もう目の前にいる天野、ざわつく教室。
そして、現状の説明が始まった。


「……え?二人のお弁当逆だった?ごめんなさい。朝忙しかったら」
二人とも朝の忙しさは知っていたのでしょうがないと思う。が、
「何で名前を入れた?」
当然の疑問にも、来ると分かっていればすぐに答えられる。
「お弁当作るのに本読んでたんだけど、あれ一度やってみたかったのよねー」
とうぜん嘘。
「やってみたかったって……」
「将来彼氏できてあれ使いたくなったとき失敗したら嫌でしょ?
だから今のうちから練習しておかないとね。練習しないと上達しないしね。」
これも嘘。
「まあやり方わかったし案外簡単だったからもう入れたりしないわよ」
これは本当。これからは警戒されるので実行はできない。
「ところで、何か問題はあったの?」
「な、何も無かったよな、國生さん」
「え、ええ、何も無かったです」
同様が手に取るようにわかる。そして、
「ところで陽菜さん、お弁当どこで食べましたか?」
「え、自分の教室ですが。それが何か?」
顔を真っ赤にしながら言っている陽菜に
「いえ、別に」
そして今日も勉強は始まっていく。


「ええ、作戦は少ししか成功していません。ええ、次の作戦を決行したいと思います」
206名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 22:54:21 ID:Fqz5QLQ1
とりあえず以上です。
次ぐらいで終わらせる予定ですので。
ながながとすみません。
207名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 23:57:37 ID:NOwwzUuS
期待してますよ!
208名無しさん@ピンキー:2007/01/18(木) 09:38:11 ID:apoEptk1
GJ
209名無しさん@ピンキー:2007/01/20(土) 04:15:42 ID:8VsrDDU3
ひさびさに来てよかった。

GJ
210名無しさん@ピンキー:2007/01/20(土) 12:38:51 ID:6nYjnesZ
雰囲気いいな〜
続きが楽しみです。
GJですよ!
211名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 23:31:28 ID:9sdq8uac
続きwktkしつつホシュ
212名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 17:11:48 ID:f2PlIZTo
突発的にほっちゃんや珠のエロが読みたくなる俺はマジロリコン
213名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 13:11:46 ID:xHY2s+bt
ロリコンでどこが悪い?
214名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 21:26:56 ID:Yn642AZM
いつの間にか投下されてる・・・gj!
215名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 19:34:19 ID:J08LjGuq
萌えスレがご臨終なされたようだが
216名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 02:00:47 ID:RjAtI7/n
217名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 18:26:57 ID:mloFAsmP
ほしゅ
218名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 22:30:18 ID:QLZ/Pfub
単に鯖移転しまくってるようだな
2193355:2007/02/05(月) 00:01:13 ID:yUL+FbdY
3355です。

えー、
かなり長い間ほったらかしでしたが、少々続きができましたので投下します。
楽しんでいただけたら幸いです。
2203355:2007/02/05(月) 00:07:37 ID:hIPZ1k0F
10
 一時間目と二時間目の間の休み時間は、なんとか我慢できた。しかし、二時間目も
終わりに近づくと、陽菜のモヤモヤした気分も最高に達し、急な仕事の連絡がないことに
理不尽な焦りさえ覚えるようになっていた。
(いけない・・・こんなことじゃ・・・・でも・・・・)

 しかし、彼女は、その焦りや動揺が、元気な我聞の姿を見たい、彼に会いたい、
その欲望がかなえられないことに起因しているということが自覚できていなかった。
 だから、彼女は、自覚のないまま、我聞のクラスに行く口実を無理矢理作ってしまった。
(そうだ。今日の部活の予定を佐々木さんか天野さんに確認しておかないと)
 そんなことは、別に今すぐ確認しなければならないことでもなかったし、
どうせ授業が終わる時間は決まっているのだ。
 放課後になってからでも十分間に合うことだったが、二時間目が終わると陽菜は
いそいそと自分の教室を後にした。

 行動に移すと、心なしか気分も明るく、足取りも軽い。
(今日は特に仕事の予定がないからちょっと長く部活をやってもいいかな・・・)

 しかし、そんな気分に水を差すように携帯に連絡が入る。
(緊急の本業。至急社長を寄越されたし。中之井)
 そのメールに陽菜は我知れず呻いた。よりによってこんなタイミングで・・・・。
2213355:2007/02/05(月) 00:10:00 ID:yUL+FbdY
11
 一方の我聞。
 陽菜と別のクラスなので、授業中は彼女の目を気にしなくてよくなった我聞の方は、
むしろホッとして一息ついていた。
 もちろん、別に陽菜が嫌いなのではない。だが、彼女の前に出ると緊張して、
バカな真似をしてしまいそうで、軽蔑されるのが怖かったのである。
 以前なら、冷たい視線を浴びても、それほど長く引きずることはなかったのだが、今、
あのときのような視線にさらされたら、かなり堪えそうな気がした。
 そんな風に妙にくつろいでいた我聞だが・・・・
「失礼します・・・・2年6組國生ですが・・・工具楽はいますか?」

 今日の予定は聞き終えていたので、一瞬、何か自分がへまをやったかと、
我聞は心配になってしまったが、陽菜は特に怒っている様子はないようだ。
 しかし、それにしては表情が暗い。
「なんと國生さん! ようこそ。どうぞどうぞ、我聞ならここです」
「どうどう!」
 佐々木がすぐに反応するのを馬でも抑えるように天野が後ろ襟を引っ張って止める。
「えっと、どうしたのかな?」
「ここではちょっと・・・」
 そのやりとりに、何を想像したのか、横の方で天野が興奮する。
(きゃー、きゃー! もしかして、告白?!)
(なにー!! あのクールなオレ達の國生さんが自分から告白など、
そんなことがあってたまるかああぁぁぁ!!)
(やめなよー、普通に仕事の用事かも知れないのに・・・)

 陽菜は普段は使われていない資料室へと我聞を連れ出した。
 住の言うとおり、本業の話をするのに、他人がいるところがまずいだけなのだ。
 陽菜は近くに誰もいないことを確認すると、扉を閉めてそれでも声をひそめてささやいた。
「本業です」
「こんなに急に?」
「今回は特別だそうです。奥津さんが同行するそうですので彼の指示に従ってください」
2223355:2007/02/05(月) 00:11:36 ID:yUL+FbdY
今回は以上です。
次回はもう少し間が空かないようにしたいと思います。
223名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 21:15:27 ID:tzHAsseQ
GJ、続きがどうなるか気になります・・・

この先も期待させて頂きますね!
224名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 01:52:46 ID:yF11gSlv
やったー続ききてた
GJです続き頑張ってください
225名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 18:47:25 ID:oPuzhonk
投下から二日も経つのに、反応がこれだけ……。
これじゃ職人さんがめげちゃうよ……。
2263355:2007/02/07(水) 23:23:53 ID:C5y8rCzX
3355です。
前々回から、果てしなくほったらかしだったのに
読んでいただけて恐縮しています。

えー、細々と続きを投下します。
楽しんでいただけたら幸いです。
2273355:2007/02/07(水) 23:25:01 ID:C5y8rCzX
12
 奥津太一・・・既に初老にかかった人物であるが、真芝壊滅作戦にも参加しているように、
炎の仙術使いとしての実力は折り紙付きである。
「奥津さんの指示って・・・國生さんや工具楽屋のみんなは?」
「中之井さんからのメールに寄れば、今回は、社長と、奥津さんの二人だけでの仕事、
ということです。詳しいことは、現地に飛ぶ間に説明があるとのことですが、
とにかく、早退の届けを出してください」
その、陽菜の表情は、いつになく冴えない。なにやら不安そうな、心配そうな顔をしている。
「あ、はい」
 我聞は陽菜の態度が、いつもの彼女らしくないのを不審に思ったが、とにかく仕事なので担任に連絡して下校した。

 我聞を送り出すと、陽菜は中之井からのメールに対して工具楽屋に確認の電話を入れた。
「どうして、今回に限って、社長一人で行かせなければならないんですか?!」
 仕事のメールが入ったとき、部活がお流れになったことに、陽菜はいったんは気落ちした。
 しかし、どのみち我聞に会いに行けることに変わりはなかったから、すぐに
仕事に向かって気を取り直した。
 それなのに、メールを読み進むと、「今回は社長だけが奥津さんと某国での仕事」との一文を見たとき、
陽菜は理不尽な怒りを感じずにはいられなかった。
 だから、工具楽屋への電話にも、勢い、くってかかるような口調になってしまう。
 そんな陽菜に、電話に対応した優は当惑気味に答えた。
「だからね、今回は、陽菜ちゃんだけでなくて、あたし達も行かずに、
我聞君と奥津さんの二人だけ、ってのが向こうの依頼なんだけど・・・」
「どうしてですか?! 真芝壊滅作戦の時だって、社長について行ったじゃないですか。
危険だというのでは理由になりませんよ?!」
「そうじゃなくて、今回は純粋に、火力勝負なのよ」

 依頼内容は、某国に広がるケシ畑である。政府が率先してケシから麻薬を製造し、
それが日本でやくざを通じて売られて貧しい某国政府の重要な資金源になっている
のである。
 某国政府が関与しているだけに、ケシ畑は広大だ。全てを焼き払うには、
某国の領空に飛行機を侵入させて、ナパーム弾でも使用することが考えられるが、
国際問題になるので、日本政府も、さすがにそこまではできない。
 となると、少人数でこっそりと忍び込み、しかも、不意をついて相手が対応する前に
全てを焼き払わなければならない。少人数となると、持って行ける装備も限られる。
我聞と奥津なら、装備など必要とせずに広大なケシ畑を焼き払う力がある。

 優の説明に、陽菜の理性は納得したが、感情的にはやはり割り切れないものを感じた。

「あれ? 工具楽くんは仕事に行ったのに、國生さんはいいの?」
 住が陽菜は冴えない表情のまま自分の教室に戻る陽菜を見つけて声をかけた。
「え、ええ・・・」
 曖昧に返事をして、そそくさと陽菜は住達の視界から逃げるように歩み去った。

 教室に戻ると、陽菜はしょんぼりと自分の席に着いた。
 仕事が入れば、いつもなら我聞と一緒に早退するのに、彼と離れて自分だけが
まだ学校で授業を受けることになんだか落ち着かず、憂鬱な気分であった。
2283355:2007/02/07(水) 23:27:49 ID:C5y8rCzX
今回は以上です。
短くて申し訳ありません。
なにしろ、忙しいもので、やる気はあるのですが時間がありません。
少しづつですが、まめに投下していきたいと思います。
229189:2007/02/09(金) 16:23:41 ID:12A5JzHg
GJです!まさか奥津さんが出てくるとは思いませんでした。
そんでまとまらなかったのでとりあえず投下させていただきます。
230189:2007/02/09(金) 16:26:55 ID:12A5JzHg
二月十日土曜日
翌日、昼間から工具楽家裏会議が開かれていた。
「いや〜、果歩りんごめんよ〜。なかなか仕事抜け出せなくて」
そう言って優が登場した。が、
「待っていました。ささ、どうぞ」
何も気にしていなかった果歩が優を座らせつつ、
「昨晩、ターゲット二名の反応から何かしら学校のほうではあったと思われます」
「作戦は成功していないというのは?」
優の発言にテンポよく、
「はい、我々の想定していた通りには進まなかったと思われます」
む〜っと唸りだす二人、顔つきだけ真剣一人、そして……
「姉上、あの作戦の成功率はどれくらいだと……」
しまった、と思いつつも時すでに遅し。
斗馬の発言に怒り爆発といった感じに、
「100%に決まってるでしょ!なのにあの朴念仁のせいで……」
あれでか!などと思ってみるも果歩が怒っているのでそこは無言。
ちなみにその成功率100%の作戦とは……




我「これは國生さんのお弁当だー」
陽「社長、お弁当が逆になってましたよ」
我「そのようだね。そうだ!國生さんも一緒に食べよう!」
陽「ありがとうございます。はい社長、あ〜ん」
我「美味しいよ。はい陽菜、あ〜ん」
陽「美味しいですよ社長」
他「見せ付けてくれる〜」




[なんで成功しないのかねぇ〜?」
「しかし過ぎてしまったことは仕方ありません。次の作戦に出ます」
「次はなに?」
「次は寝言作戦で行きたいと思います」
231189:2007/02/09(金) 16:29:16 ID:12A5JzHg
「社長の修行をですか?」
「はい。もうメチャクチャきつく」
会議終了後、果歩は辻原に秘密裏に接触していた。
秘密裏と言っても秘密なのは我聞と陽菜にだけであり、普通に会っていた。
「お兄ちゃんはお父さんの技を見てまだまだ未熟だと悟ったみたいです。
 しかし、あのお兄ちゃんが一人で何か修行していても効率が悪すぎます。だから辻原さん、お願いします」
一気に捲し立てる果歩に冷静に一言、
「メチャクチャきつくなくてもいいんじゃないんですか?」
仙術の修行自体きついものであり、それを妹さんはきつくしろとおっしゃる。
「お兄ちゃんは一日も早く頼れる社長になりたがっています。だから死ぬほどきついやつでお願いします」
死ぬほどですか、メチャクチャを超えてますね。なんて言葉が頭を過ぎるも、
「そうですね、その様な事なら喜んでお受けいたしますよ」
はっは、と胡散臭い笑顔で返事をしている。
「ありがとうございます!あと今日から三連休なので日に日にきつくしていってください」
「はぁ……」
理由を聞いてもたいしたことではないだろうし、本当のことは教えてはくれないだろうから深く追求したりはしない。
「まかせてください」
「本当にありがとうございます!
…………下準備は整った、後は待つだけ…………」
なんて事をブツブツ言いながら去っていった。
(さて、どうしましょうかね)
果歩が何の目的でこのような事をやらせようとしているかは不明だが、
「まぁいいでしょう」
そうして工具楽家の裏に触れることなく普段の生活に帰っていった。


232189:2007/02/09(金) 16:31:38 ID:12A5JzHg
その夜
「た、ただいま……」
「おじゃまします」
いつもの様に帰宅した二人をいつもの様にお出迎え。
「二人ともお帰りなさい。て、お兄ちゃんどうしたの!?」
陽菜が私は云々言おうとしていたが果歩にも台本があるわけで、
「あぁ、突然修行がメチャクチャきつくなったんだが……」
メチャクチャ止まりか…なんて考えつつも、
「良かったじゃない!これで頼れる社長にまた一歩近づいたって事じゃない」
頭の上に?を浮かべ考え込む二人。が、想定の範囲内なので
「だってお父さんの爆砕見たでしょ?あれに比べたらお兄ちゃんのカスよカス。
 てことは必然的に修行が必要で、きつくなったて事は頼れる社長への近道じゃない!」
おぉ〜と頷く我聞。しかし、陽菜は冷静に、
「しかし辻原さんが理由もの述べずに修行内容を変更するでしょうか?」
もっともな理由であり、我聞もうんうん言っている。
「いえ、きっと理由はお兄ちゃんの堕落にあります!」
まずい流れを断ち切る強烈な物言いで二人を黙らし、
「お兄ちゃんはお父さんが見つかってから少し気が抜けていました」

「一緒に修行し続けた辻原さんはそこに気づいてしまったのでしょう」
これも嘘
「そして危機感を持った辻原さんは修行をきつくしたのです!」
もちろん嘘
「……もちろん私も気づいていました。えぇ、家族ですから」
何事においても口八丁で誤魔化す果歩スタイルでどうにか乗り切り、
げ〜ん、となっている兄は片付いた。あとは陽菜さんを丸め込めば勝ち!と思っていた矢先……
「そうですか……」
果歩の想定していた状況と違い、なぜか陽菜が落ち込み気味になってしまった。この不味い空気をどう変えていくべきか。
そもそも話しかけずらくなってしまっているし、なんて声をかければいいのか考えていると、
「國生さん?」
今世紀最大級の空気を読めない男が突貫していった。
 ……まさか空気が読めないのがプラスになるとは今日から考え方も変わるな、など考えているうちに、
「いえ、社長秘書としてそのような変化にも気づかないなんて……それに家族である果歩さんは気がつくのに……
 やはり私は家族にはなれないのでしょうか……」

233189:2007/02/09(金) 16:33:47 ID:12A5JzHg
し、しまった〜!まさかこんなことになるとは微塵も考えていなかったので果歩ピンチ。
そもそも嘘なので気づくはずもなく、落ち込む理由も無いわけでフォローの入れ方がわからず果歩大ピンチ。
むしろ今世紀最大の空気を読めないのは私なんじゃないかと後悔し始めてすぐに、
「な〜に、俺自身気がつかないことなんだ。陽菜さんが気にすることじゃない」
満面の笑みで発言したのはもちろん我聞。
「お兄ちゃん……」
兄の成長ぶりに本気で涙しかけたがそんな暇はなく、ここで流れを変えなければまずい。
「しかし……」
「そうですよ陽菜さん、悪いのは全部兄なんですから」
自分の事は棚に上げつつ話を進める。
「そもそもお兄ちゃんがお父さんの爆砕避けるのがいけないんでしょ!あれくらっときゃすべて丸く収まったのに。なんで避けたのよ!」
突然の事に戸惑いつつも、
「だっておまえあれは……」
間違いなく、よくて病院送り確実といった一撃ではあったのは認める。が、
「あれくらえば陽菜さんがお嫁さんになってくれるのよ!?世の男の七割はくらいに行くというのに(当社調べ)
 お兄ちゃんは陽菜さんをお嫁にほしくないんだ〜?」
対陽菜黙らせように用意しておいたこれで責める。すると、
「いや……」「あの……」「その……」
予定通りこうなり、
「さあさあ、こんな所で立ち話もなんですからどうぞどうぞ……」
と、今更予定通りに話を進めてみると強引過ぎる気もしないではない……というかおかしいのだが、
「そうだな」
と言ってあっさり動く兄は本当に空気が読めないのだが、とても助かる。
「さ、國生さん。今日もよろしく」
と言いながら優しくエスコートしている(ようにも見える)
「はい!」
元気を取り戻した陽菜は我聞とともに部屋へ向かっていった。



234189:2007/02/09(金) 16:36:05 ID:12A5JzHg
二月十三日火曜日
いつものように元気に帰ってくる兄の面影すら残っていないといった状況に少し罪悪感はあるものの、
兄のための一言で乗り切った三連休の翌日。
あの状況で学校に行き、授業を受け、帰ってきてからは仕事という過酷さにそろそろ負けてほしいと思っていた。
そんな中、ついに作戦は決行した。





「陽菜さん、どうしたんですか?」
突然居間に現れた陽菜に冷静に話しかけつつ、内心ドキドキと言った状況。
「ええ、社長が寝てしまったもので……」
よっっしゃ〜!!が脳内を駆け回っている。
「……お兄ちゃんが寝てることについての陽菜さんの感想は?」
果歩の意味不明発言にもすぐに理解し、
「最近は修行のほうも大変なのでしょうがないですね。起こすのも悪いので今日はこの辺で失礼させていただきます」
毎日頑張っている姿を見ていたら起こす気にはならないらしい。
「はぁ……」
と、自分から聞いておいてぼ〜とした感じに答える果歩。
「朝はいつもどおり来ますのでそう社長にお伝えください。……果歩さん?」
「えっ、ええ。伝えておきます。今日もありがとうございました」
「?ではまた明日」
陽菜を見送ってがっくりと肩を落とす果歩。
「またか……」

235189:2007/02/09(金) 16:38:13 ID:12A5JzHg
敗因は何かを考えてみるも、思い当たる理由は朴念仁だけである。
そもそもその時点で勝ち目は無いのだがそこには気づかない。
ちなみに今回の作戦は



我「ぐーー」
陽「あ、社長が寝てる」
我「陽菜、陽菜……」
陽「え?」
我「はっ、寝てた。國生さん、俺なんか言ってた?」
陽「ええ、私の名前を呼んでました。どんな夢だったんですか?」
我「國生さんと愛し合ってる夢だよ」
陽「社長……では夢の続きでも……」
我「陽菜……」
陽「社長……」



「なぜ成功しない……」
そもそも寝言に任せようとした時点で成功するわけも無いのだが……
そこはGHKだからで片付いてしまう問題である。
「こうなったら最終作戦を……」
などとつぶやきながら優に連絡をした。

236189:2007/02/09(金) 16:41:01 ID:12A5JzHg
以上です。次こそは終わらせられるようにまとめますので
237名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 20:19:36 ID:8FhoSxQL
投下が二つも!
お二人ともGJです!
238名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 20:30:04 ID:fAWrae41
ぐ、ぐ、ぐっじょ〜〜ぶ!
2393355:2007/02/11(日) 21:03:47 ID:EYKv6gC/
3355です。

まずは、189さんGJ!
GHKのお間抜けさ加減がいい感じです。
相変わらず、思いこみで抜け抜けの計画がいかにも果歩らしいです。

で、細々投下です。
楽しんでいただけたら幸いです。
2403355:2007/02/11(日) 21:04:57 ID:EYKv6gC/
13
 その後の授業はつつがなく終わった。特に問題となるような難しい内容でもなかったし、
事故や事件もない、ごくごく普通の、いつも通りの時間が流れているだけのようであった。
 いつもと何も変わらない、それなのに、陽菜には、いつも通りには感じられない。
いつもの学校、いつもの教室が、無味乾燥なものに感じてしまう。

(社長が仕事に行ったからって、授業中は関係ないはずなのに・・・・)

 陽菜は胸のモヤモヤが朝よりも大きくなったような気がした。
 今日はもう仕事もないし、こんな時はせめて部活に出て気分を高めよう。
 軽く拳を握り、そう決意すると、陽菜は卓球室に向かった。

「こっくしょーさーん!!」
「はいどー、どー!」
「懲りないやつだな」
 部活に出ると、佐々木と天野のいつもの掛け合い、中村の冷静なつっこみ、
いつも通りの和やかで楽しいひととき・・・・・の筈である。
 実際、陽菜も、部活前よりよりは笑ったし、体を動かして、鬱屈とした気分も
多少良くなった。だが、何かが足りない、満たされない。
(楽しいのに、楽しいはずなのに・・・・)
「ところでさ、くぐっち、今日はほんとにどうしたの? 仕事にしたって、いつも一緒に行くるなっちはいるじゃん」
 天野が脳天気に陽菜に聞いてきたが、それに対して陽菜は曖昧に答えておいた。
 そういえば、陽菜が部活に参加するときは必ず我聞がいた。逆はあっても、陽菜が一人で部活に参加したのはこれが初めてだった。
(そうか、社長が仕事しているのに私だけ部活していることが後ろめたかったんだ)
 部活に今ひとつ乗り切れない理由をそう解釈した陽菜は、ようやく少し得心が
いったような気がした。実は、その解釈にも欺瞞があるのだが、陽菜自身はまだ
気がつかない。
 陽菜の、我聞がいない、初めての部活は、そのままなにやらすっきりしないまま終わった。
2413355:2007/02/11(日) 21:05:50 ID:EYKv6gC/
14
 下校すると、いつもの通り工具楽屋へ出勤する。
 しかし、今日は足取りが重い。
「遅くなりました」
 事務所にはいると、そこには桃子が来ていて、我聞がいないことにむくれていた。
「なーによー、せっかく来たのに、ガモンが出張なんてー!!」
「電話で確認もせずに来たんだから、こんなことだってあり得るだろうが」
 キノピーがなだめる。相変わらず制作者の桃子に対して、それ以上にもっともな発言をする。
「そうじゃないのよ! また、ガモンといる時間が陽菜よりも少なくなっちゃうじゃない!」
「いや、今回はそうじゃなくてね・・・」
 優が相手をしているが、聞いちゃいない。
「桃子さん、来ていたんですか」
 陽菜が声をかけると、桃子は驚いたような顔をした。
「あれ? 陽菜、帰ってきたんだ? ガモンはどこ?」
「社長は今日はお一人で出張ですが・・・・」
 「一人で」というところに微妙に声のトーンが弱くなる。それを聞いて、桃子はたちまち機嫌を直す。
「なーんだ、よかったー」
「なにがですか?」
「あ、こっちのこと。それじゃ、ガモンは、出張から戻るのにどのくらいかかるの?」
「さあ、はっきりとしたことはいえませんが、三日から四日くらいかかるのではないかと思います」
「えー、三日も出張? つまんない」
 その後ひとしきり、つまんないつまんないを連発して、桃子は帰って行った。

 彼女が帰ると、我知れずホッとして、陽菜は事務仕事にかかった。
 しかし、いつもは、陽菜にとっては、それ自身がやりがい、生きているための存在意義
と言っても良いほどのウェイトを占めていた、工具楽屋の仕事に対しても、気分が乗らない。
 先代に対して恩義を感じたり、失敗を恐れたりすることに対して、ナーバスに
なったことはあったが、仕事に集中できない、やる気が出ないことは今までなかった。
(いくら家族と同様にといっても、こんな調子が続いたら・・・)
 書類仕事を片付けるのに普段の倍の時間をかけてしまい、陽菜の心は動揺する。
 ただ、幸か不幸か仕事は押していなかったので、いつも以上に丁寧に、
そして時間をかけることで、何とかその日の仕事を終えることができたが、すっかり遅くなってしまっていた。
「お疲れ様です」
「おつかれー。陽菜ちゃん、こんな遅くまで大変だねー、それほど仕事押してないから、
そんなに無理しなくてもいいのに」
 また、怪しげな設計図とにらめっこしながら優が返事をする。
「そのことなんですが、実は・・・・」
「んー? なに?」
 優は図面に気を取られて生返事だ。
「いえ、何でもありません。おやすみなさい」
2423355:2007/02/11(日) 21:07:35 ID:EYKv6gC/
今回は以上です。
243名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 18:51:57 ID:gWhHDbzI
言うべき言葉はただひとつ

 G J !
244名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 19:45:40 ID:4LBgI/JT
来たぁぁぁぁ!!!!!!
245名無しさん@ピンキー:2007/02/13(火) 11:16:08 ID:bsAWRJO3
おおう、少し見ていなかったうちに沢山…
皆さんGJ!
246名無しさん@ピンキー:2007/02/13(火) 12:45:00 ID:MGLw0x4L
最近にぎわって来たね!
続き楽しみにしています、GJ!
247188:2007/02/14(水) 15:37:09 ID:+iFEfK3A
前回なにを血迷ったか189と入れてたものです
投下させていただきます
248188:2007/02/14(水) 15:39:10 ID:+iFEfK3A
何事もなく平和な一日をすごし、ここ最近の日課となっている勉強を始めて少しのこと。
異変が少しずつ始まっていた。
部屋で二人っきりの勉強会
健全な一般的高校生基準で考えてみれば、ナニがあってもおかしくない状況で学習を進める二人。
しかし、我聞と陽菜だけは絶対にナニも起こらない。

そろそろイライラ限界の果歩が最終手段に出る。

二月十四日水曜日
勉強会も一ヶ月を過ぎ、陽菜の教え方、我聞のまじめな態度、家族のバックアップのおかげで、
赤点回避どころか平均点くらいの学力を身につけていた。
今日もいつものように勉強会は進む。
「陽菜さん、勉強見てもらいたいのですが……」
定型文句、果歩乱入。
「いいですよ、社長はこの問題を解いておいてください」
任せておけ!と言わんばかりの表情で返事をする我聞。
実際、我聞の勉強を見てもらっているのであって、そんな表情をする理由もないのだが



「ありがとうございました。流石陽菜さん!簡単に理解できましたよ」
と、いつもよりだいぶ早めに切り上げていく果歩、に少し不安がっている陽菜。
「しっ、宿題で明日指されるんですよ〜。いや〜宿題終わってよかったな〜」
などとお決まりの嘘の安売りをしつつ、切り返す。
「陽菜さん今日は泊まっていったらどうですか?今日の夕飯肉ジャガなんですよ。
 でもまだ陽菜さんに食べてもらってないですし……」
ノルマ、夕飯、果歩乱入を考えるとお泊りは確実であり、そんな計算も速い陽菜は、
「社長、よろしいですか?」
こちらも定型文句
「あぁ、果歩の肉ジャガは美味いからな。楽しみにしておいてくれ」
心なしか久しぶりの肉ジャガに心躍っているように見える我聞。
「夕飯できるまで時間あるから勉強してなさい」
現実に引き戻され気合を入れなおす我聞。
「……社長、ほとんど間違っています」
現実の厳しさに打ちひしがれている我聞。
249188:2007/02/14(水) 15:41:11 ID:+iFEfK3A
「では社長、勉強の続きを……」
陽菜が参戦した晩御飯は楽しく終了した。
果歩は必死に工具楽家の味を叩き込もうとしていたし、三人はいつもの光速戦闘を繰り広げていた。
陽菜も果歩の教えをメモしながら食事と楽しんでいるよう見えた。
「そうだな、まだ残ってるしな」
そう言いながら部屋に戻っていく二人。
ちなみに、後片付けはさせてもらえなかったのは言うまでもない。
「あんた達は手伝いなさい」
元気良く働く珠、しぶしぶ、本当に面倒くさそうに働く斗馬。に、
「ちゃっちゃと動きなさいっ!いつ来るかわからないでしょーが!」
そう言われてスピードを上げダルそうに活動再開。
果歩も凄まじいスピードで食器を洗っている。
「さぁ、いつでも来なさい」



「あれ、陽菜さん。どうしたんですか?」
陽菜が部屋から出てきていたので果歩が絡む。
「いえ、おトイレをお借りしようかと……」
まぁそんなことだろうと思っていた。
「陽菜さん、先にお風呂入ったらどうですか?」
普段は遠慮して最後に入っていたわけで、今回も遠慮するのだが果歩は気にするなと言う。
「ですが、社長には何も」
トイレにきただけなのでまだ勉強し続けている我聞のことを気にするも、
「大丈夫です。あれはそろそろのどが渇く頃ですから」
夕飯にたくあんがありましたし、と付け加える果歩。
社長のことをよく理解していらっしゃる、しかし、あれですか。
などと考えつつも
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」
そう言いながら風呂に向かっていく陽菜。
「ごゆっくり〜」
250188:2007/02/14(水) 15:43:13 ID:+iFEfK3A
「ちわ〜、果歩りんいる〜?」
「あれ、優さんどうしたんですか?」
のどが渇いたやつが出迎えた。
「いや〜、ちょーちね〜」
果歩と優さん仲良いよな〜なんて考えつつ、優を家に入れた。
「果歩〜、優さ……」
んが来てるぞ〜、お前に用があるそうだ。
言葉が続かない、頭が動かない、理解が追いつかない。
今我聞の目に映っている光景にかなり驚いている。
「えぇーいっ!沈めー!」
「あ、姉上ヘルプ」
「やらせないぞー!」
「させるかー!」
「ギャーっ!」
ここは工具楽家の居間であり、いつもは静かな、和やかなムードの工具楽家ベストプレイスである。
そのはずだが、今は戦場と名を変えている。

果歩には仙術の才能はない
そんな言葉が頭を通り過ぎていった。
珠は少しずつ仙術が使えるようになっているし、斗馬も男の子だ。
しかし、その二人を相手にまだ戦力温存といった余裕すら見せる果歩。

居間に鬼がいる
我聞ですら本気でゾッとした。
「まぁ終わるまで待たせてもらうよ」
笑顔が引きつっているのが印象的だ。
「じゃそうし「ギャーっ!!!!」
のどが渇いた、そんなことを考えながら戦線離脱。
水分補給が終わった頃、戦場から居間に戻っていた。
「果歩、風呂できてるか?」
息を整えようとしていた妹に少しビビリながらも聞いてみる。
「はっ、はっ? で、できてるわよ。でもい「姉上押さないで!」
横を見ると斗馬が飛んできた。
この場合の飛んできたは比喩でもなく本当に飛んできた。

251188:2007/02/14(水) 15:45:14 ID:+iFEfK3A
「えぇいっ、しとめ損ねたかっ!くらえーーーっ!」
「ち、ちょっまげふぅ……」
「なんの!!真流星胡蝶剣!!」
「させるかっ!!」
「てやーー!!」
第2次工具楽家居間対戦が勃発された。と同時に斗馬戦死。
「そういえばいがっ……」
「ね、姉ちゃん!?」
攻撃を命中させた珠が一番驚いていた。
「……珠、覚悟なさい」
「おい果歩そのへんで……」
刹那、珠に馬乗りになり攻め続けた。
「うらうらうらうらーー!!」
「あっはっはっ、ねっ、姉ちゃん!!ギブギブっ、ひっ、あっ、あっはっはっは、ひ〜〜」
「優さん、國生さんに風呂入ってくるって言っといてください」
壊れた妹たちを見るのは精神に悪く、雰囲気もましになったので行動に出る。
「あれ、はるるんは?」
どこにいるか知らない(はず)の優に
「トイレだと思いますよ」
そうだよねぇ〜などと意味のわからない相槌を打ちながら見送った。
「果歩りん!成功だよ!って果歩りん!?」
「そらそら〜!!」
「ねっ、もっ、ひっ!あっ!む、が、あがぁ!ひっ!」



「……スミマセン、取り乱しました。」
落ち着いた果歩、落ち着かせた優、戦死斗馬、意識朦朧珠。
「ついに我々の勝利です!!」
拍手、そして今後のGHKについて話し合われ始めた。
252188:2007/02/14(水) 15:47:18 ID:+iFEfK3A
「我が家はみんな仲が良いな」
他所のお家は口すら聞かない所もあるらしい。
世間一般のご家庭はそんなもんらしいが工具楽家は仲が良い。
「これも修行の賜物か」
などぶつぶつ見当違いなことを言いながらえっちらおっちら服を脱いでいる。
「それにしても怖かったな〜」
「社長」
「おぉ國生さん、こんなところにいたのか。いや〜果歩は危ないな、しっかりと面倒みてやらないとな」











「うぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
「きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
工具楽家に響き渡る叫び声。
もちろん裸である。陽菜は浴槽の中にいたものの、
我聞はタオルを肩にかけたオヤジスタイル、当然フルオープンである。
「ごっごめん!知らなかったものでつい」
「い、いえ、こここ、こちらこそすっすみませんっ」
大混乱の二人、口も思うように動かない。
そして普段温厚な我聞ですらふつふつと沸き起こる怒りを感じていた。
「果歩のやつ」
大急ぎで着替え、そう言って走り出していった。
「社長!」
253188:2007/02/14(水) 15:49:19 ID:+iFEfK3A
「果歩!!」
声を荒げて我聞が登場した。
「どうかしたの?そんなに慌てて」
死体二つには気にもせず優とのんびりお茶をすすっていた果歩に詰め寄りつつ、
「國生さんが入っていたぞ」
声のトーンがいつもと違うことに、浮かれ気味の果歩でも気づくことができた。
「いや、言おうとしたんだけど珠が邪魔して」
当然、最初から言うつもりなどなかった。
「それでも言わなければいけないこともあるだろ」
いつになく真剣な我聞に耐え切れず、
「照れちゃって〜、はr「果歩っ!!」
ビクつく二人、こんなに怒られたのは生まれて初めてかもしれない。
「社長、そんなに怒鳴らなくても……」
遅れて現れた陽菜が我聞を諭すも止まらない。
「國生さんは黙っていてくれ。
 果歩、いくら國生さんが家族同然といってもやって良いことと悪いことがある。
 確かにあの時珠がじゃれ付いていて言いにくかったのは分かる。
 だが!!それでも言わなければいけなかったんじゃないか?
 親しき仲にも礼儀あり、だろ!?
 親父と母さんがいなくてお前に迷惑かけていた俺にも問題がある。
 それでも!!もう中学生だというのに!他人を思いやる気持ちが無いということはどういうことだ!!」
「社長、何もそこまで言わなくてもよろしいじゃないんですか?」
「いや、今回はしっかり反省してもらわないといけないし、それまで許すつもりもない」
「社長……」
「國生さん。勉強の続きを頼む」
そう言い残して我聞は自室に戻っていった。
「果歩さん……」
下を向いたままの果歩が心配であるが、そのまま我聞について行った。
254188:2007/02/14(水) 15:51:23 ID:+iFEfK3A
「じゃあ始めようか」
そう言って勉強を始めようとしている我聞。
その表情はいつも見ているほうが明るくなってしまうような笑顔と違い、引きつった笑顔になってしまっていた。
「社長……」
なんて言えばいいのかわからない、言葉が続かない。
そんな自分に少し憂鬱だ。

「あいつにさ……」
神妙な面持ちで我聞が語り始めた。
「掃除、炊事、洗濯。家事全部頼りっぱなしなんだ。
 それだけじゃない、珠や斗馬の世話もしてくれている。あいつには頭が上がんないんだよな」
ははっ、と笑いながら続ける。
「大変なのはわかる、だから小さな失敗はしょうがないさ。
 最近は俺の勉強のことも気にしていたし、失敗も重なるのもしょうがない」
実際は全部計算で動いていたわけであり、むしろ充実した日々を送っていた。
「俺の自慢の妹だよ」
そう言いながら我聞の表情は
「しかし、反省はしてもらわないと國生さんに失礼だ」
さっきまでの表情と違い
「それまで許すつもりもない」
少しずつ
「でも、素直に誤ってきたら」
少しずつではあるが
「あっさり許してやろうと思う」
すべてを包み込むように温かく、いつまでも見ていたいと思わせる
「それでいいかな、國生さん」
あの笑顔になっていた
「……國生さん?」
無意識のうちに自分も笑っていたことに気づく


「……もちろんです、社長」
よっしゃ、と、何も解決していないのだがガッツポーズ。
255188:2007/02/14(水) 15:53:55 ID:+iFEfK3A
「じゃあ改めてがんばりますか」
そう気合十分の我聞であった。が、
「はい。あっ!」
当然声をあげた陽菜に驚く。
「……大丈夫?」
果歩のことかもしれず、少し表情が曇りかける。
「えぇ、べつに。とっ、ところで社長!今日は何日だかご存知だすか?」
呂律が回らない、動揺が隠せない、表情が戻せない。
何の前フリもなく陽菜からの質問。果歩のことでないと悟った我聞は即座に、
「二月の十四日だ」
「流石です」
社長たるもの日付くらい云々言ってはいるが聞いてもいられない。
「では社長、今日が何の日かご存知ですか?」
真剣な顔つきになる我聞。
 建国記念日は修行で過ぎたし、
 予選会や卒業式前日といったわけではない。
 じゃあ何の日だ?そういえば学校で佐々木が何か言っていたような気がする。
 ずるいとか、わけろとか、代わりにとか。何を?
「……チョコレート」
「えっ?……えぇ、そうですが」
我聞にしてみれば今恐ろしく恥ずかしいことを口走って動揺しているし、
陽菜も我聞の発言にさらに動揺している。
「も、もしよろしければ、どうぞ……」
かわいらしくラッピングされたプレゼントを手渡された。
我聞の反応を見たいが恥ずかしくて顔を上げられない、でも見たい。
そんな葛藤をしているうちに
「ありがとうございます」
丁寧に、深々と下げられた頭。
顔には明るく、テレが隠せないといった表情が張り付いている。
ふふっ、と、つい笑みがこぼれる。
「開けてみていいか?」
えぇ、と返事をするとすぐに開きはじめた。
当然中身はチョコレートであった。
実際、誰が作っても同じようなものになるであろう物が入っていた。
だが、家族以外から貰うことなど人生初であり、そう考えるととても特別なものに見えてくる。

256188:2007/02/14(水) 15:56:13 ID:+iFEfK3A
「おいしい」
率直な感想、考えがまとまらないうちに口から漏れた言葉。
もうすこし気が利いたことをいおうと考えていたが経験が足りない。
そもそも、我聞なのだから不可能である。しかし、
「本当ですかっ!?」
今までのおどおどとした雰囲気はなくなり、ぱーっと花開くような笑顔で尋ねてきた。
「あぁ、本当だ。はい」
そう言って我聞がチョコレートを渡してきた。
が、食べさせる気である。
工具楽家では普段はこうなのかもしれないが恥ずかしい、でも食べないと失礼。
結局食べさせてもらってしまった。
「おいしいでしょ?」
それどころではない。
「えぇ」
味がわからないが、おいしいといってくれているのだからおいしいのだろう。
「でも悪いね、のぞいちゃったのに」
などとデリカシーのかけらもないことを言う我聞にため息を吐きながら、
「社長になら見られても平気ですから」





動揺とは怖いものである。
焦っていると口にするつもりのないことがさらっと出てしまう。
しかも大抵嘘ではないことである。
しかも言葉というものは取り返しがつかないものであり、一度言ってしまえばおしまいだ。
そんなことを冷静に考えられるのも走馬灯の一種ではないかと考えはじめ、
「あっ……」
声が出た。
今日はいろんなことがあった。
今日だけではない。
ここのところ仕事に授業、部活に家での勉強会。
失敗は果歩だけではない。
みんなに疲労は溜まっているのである。

257188:2007/02/14(水) 15:58:14 ID:+iFEfK3A
「國生さん……」
なにも言わない我聞、正確に言えばなにも言えない我聞。
突然女の子にこんなことを言われて即座に反応できるわけもない。
陽菜としてもこれは事実であり、本音であるので今ここであれは嘘ですなどとは言えない。
そんなことを言うのは失礼だと思ったからだ。
そうすると消去法でなにをするかが決まる。
「あのっ、えっと」
勇気が出ない、否定してはいけない、言わなきゃ!
「私、社長にならなにされても平気ですから!!」

悪化した

普段から社長に落ち着きがないと邪険に扱ってきました。
もしかしたらあれは同属嫌悪だったのかもしれませんね。
などと考えつつ、すでに後戻りはできない。
次の行動の選択肢はすでに沈黙しか残っておらず、我聞を見る。
「國生さん……」
そう言って少しずつ我聞の顔が近づいてくるのがわかる。
このあと自分がなにをするのかも理解できる。
陽菜でもはじめてはロマンチックになどと考えてみたこともある。
しかしこの状況はなんだ?
ロマンチックとはかけ離れているではないか。
そんなことを考えていると、
――嫌?
そんな言葉が頭に浮かんだ。
――拒む?
しかしすぐに
――そんなはずない!
即座に否定ができた。
――社長となら
さっきの本心が背中を押す。
――社長だから
258188:2007/02/14(水) 16:00:14 ID:+iFEfK3A
そう決心すると我聞の顔はすぐ目の前にまで近づいていた。
いつしか自分からも近づけていく。
いつのまにかお互いに目を閉じ
「「………………」」
軽く唇が触れ合う。
二人にとってはじめての行為。
始まりのキス
そんなファーストキス。
「チョコの味」
「なぁっ!?さっき食べていたからであって……」
そんなことを言い並べている陽菜がとてもかわいらしく感じる。
「しゃっ、社長!なに笑ってるんですか!?」
気がつけば笑っていたらしい。
「いや、ちょっとね」
ふふっ、とか言っていた。
陽菜としては理由をぜひ聞かせてもらいたいのだが、あの顔を見るとどうでも良くなってくる。

平穏

本業の数も減り、赤字ではあるが楽しく、やりがいのある仕事。
そんな仕事場でも常に笑顔の社長。
以前はなんとも思わなかったあの笑顔。
心を開けば開くほど伝わってくる温かさ。
なにもかも包み込む包容力。
みんなの太陽みたいな存在。
そんなことを考えているうちにいつしか陽菜も笑っていた。
「じゃあ國生さん、これからもよろしく」
「はいっ!」
そう言ってはにかみながら軽く握手。
好きとか嫌いとか関係なしにずっと一緒にいたい存在。
そうして二回目である、

セカンドキス
259188:2007/02/14(水) 16:02:35 ID:+iFEfK3A
「お兄ちゃん!陽菜さん!さっきはごめんな……さ………い?」

阻止された。
マジでキスする二秒前。事後にも見えるかもしれないところで果歩乱入。



浅かった。
常に兄と兄嫁(候補)のことをまず第一に考えて動いているつもりだった。
他人への思いやり、周りへの配慮、行動後の後始末。
そんなことを考えさせられる、もっともなことを兄が言っていた。
そんな人間としての当たり前のことをいまさら忠告される。
恥ずかしい 悔しい
そんな後悔で胸が痛い。
そんなことを考えながらうつむいたままの果歩。
――陽菜さんに悪いことしたな
優が慰めを入れるも聞いている様子はない。
そもそも、いい年した大人が混ざっているのであって、優ももう少し反省するべきなのだが。

「GHK解散の危機かもしれません……」
落ち込みも和らぎ、優の言葉には返事もせずつぶやいた。
「かほりん、一度誤ってから考えようよ」
そんな言葉にとても励まされた。
「解散はそれからでもおそくないでしょ?」
あまり見せないお姉さんオーラを出しつつ肩をなでる。
「そうですね!」
突然立ち上がった。
「おぉう!?」
「今すぐ誤ってきます!」
そう言って果歩は駆け出した。

――しっかり育ってるじゃないの、我聞くん
よっこいせ、なんて言いながら死体を復活させに行った。


260188:2007/02/14(水) 16:04:39 ID:+iFEfK3A
「「「あっ」」」
声も重なり時が動き出す。
「ごっ、ごゆっくり〜……」
「まっ、待て果歩!!」
「果歩さんっ!!」
すでに果歩の気配すらなくなっている。
「どうするか」
「どうしましょう」



「緊急事態です」
一瞬で帰還した果歩は言い出していた。
「ど、どうしたの、突然」
果歩のさっきまでの態度と違い、迫り来る迫力に焦る森永優
「お兄ちゃんと陽菜さんがキスしようとしてました」
「「なにぃ〜〜〜〜!!!!」」
凄まじい叫び声は我聞達にも聞こえるだろうがお構いなし。
ちなみに珠は動じない。
「やったね!!果歩りん!!」
「えぇっ!!ついにこの日がきたのです!!大勝利ですっ!!」
騒ぎ出す三人、考える一人。
(寝てる間になにがあったんだ?)
風呂できてるか→気絶→起こされる→キス事前
そんなことを考えていた。ので、
「あ、姉上」
おそるおそる聞いてみる。
「なによ、あんたも喜びなさい!珠を見習いなさいよ」
珠と優は踊っていた。
見習えって……って、それより
「事前だった?」
「えぇ、そうよ」
なにを今さらといった感じに答える果歩。
「いや、だから何もなかったということでは」
261188:2007/02/14(水) 16:06:45 ID:+iFEfK3A
「「あぁ〜〜〜!!!」」
叫ぶ二人。
「たっ、確かに」
うろたえる果歩。
「いっ、言われてみれば」
よろめく優。
「あたしが入っていったばっかりに」
軟体動物のように崩れ落ちる果歩。
「果歩りん!?」
優がサポートするが、さっきよりも落ち込んでいる。
そんな中、
「みなさん、おジャマしました〜」
何事もなかったように帰宅しようとしている陽菜。
「はっ、陽菜さん!!」
「はっ、はい!」
今にも泣き出しそうな果歩。
「ナニかありませんでしたか!?」
そんなど真ん中ストレートで聞いてみる。
「なっ、なにもあるわけないじゃないですかっ!でっ、ですよねっ、社長っ!」
「あっ、あぁ!もちろんだ。社長たるものがぐぅ」
陽菜のヒザ蹴りが炸裂した。
普通、こんな光景を見せられたら大概気づくものなのだが、
今のGHKは心中穏やかでなく、動揺しっぱなしであり、気づかない。
そもそも落ち着いていても気がつかないというのも事実である。
「陽菜さん、お泊りの約束は」
最後の力を振り絞った一言。だが、
「実は急用ができましたので、本日は失礼させていただきます」
えぇ〜と、なぜか優まで参加して駄々こねている。
さっさと逃げ出したい陽菜は、
「ではこの辺で。社長、また明日」
「おやすみー」
などと普段の会話をしている。が、
「こんな暗いんだから送っていくのが男ってもんでしょーがー!」
うが〜っと騒ぎ出した果歩。しかし、ここで出て行ったら負けなので引けない。
「國生さんは急ぎの用事らしいから走って帰るらしいからな」
冷静を装っているつもりだが動揺がまったく隠しきれていない。
「それでも送っていけー!!日本には古来から送り狼と言う伝統があるだろうがー!!」
「伝統じゃないだろ!優さんと一緒に帰ればよかっただろ」
「優さんはまだ帰らないよ〜」
「まだ間に合う、行けぇ〜〜!!」
………………………………………………………
262188:2007/02/14(水) 16:08:45 ID:+iFEfK3A
二月十五日木曜日
大混乱となった一日が明け、朝を迎えている。
果歩と優に攻められっぱなしではあったものの、我聞からはなにも有力な情報が得られず解散となった。
昨日の説教はうやむやになってしまっているが、そこは工具楽家というものである。
「おはよー!!」
珠の朝とは思えないさわやかなあいさつ。
「はいはい、おはよ。珠〜、今日何曜日〜?」
ごみ溜まってきてるわねぇ〜、なんて主婦じみたことを言っている。
「んとね〜、十五日の木曜日だよ!」
はいはい木曜日ね。えっとごみは……ん?
「二月十五日?」
「木曜日!」
律儀に曜日を言い直す妹。だが、
「きゃ〜〜〜!!!!!」
「果歩さんっ!どうかしましたか?」
「なにごとだ、なにごとだ」
陽菜が家に飛び込んでくると同時に、兄が出てきた。
「きっ、きっ、昨日バレンタインデーだった!!」
そんないまさらな話題で叫ばれても、などと考える余裕もなく赤くなる二人。
「陽菜さん!!」
「はいっ!」
突然の呼びかけに驚き、同時に身構える。
(ボロをだすわけにはいきません)
「兄に、我が家の長男にチョコレートは」
「勉強で忙しかったもので忘れておりました」
あぁ〜っ、と言って崩れ落ちる果歩。
このまま長居はまずい!と判断し、
「社長、行きましょう」
「えっ、まだ早くないか?」
空気を読め
目で訴えかけてみた。
「そっ、そうだな。じゃあ行ってくる」
まって〜、なんて言っているが陽菜が激怒している(ように見えた)ので振り返らない。

作戦は大失敗だった。
まさか陽菜がそこまで勉強に力を入れていてくれるとは考えていなかった。
そもそも作戦にバレンタインデーなんて組み込まれていなかった。
一日で果歩の精神は恐ろしくすり減らされてしまった。
「いいえ、負けてらんないわ」
ぐっと、握りこぶし。
「次よ、次で完全に我々が勝利を収めるのよ!」
玄関で一人盛り上がっている果歩。

学校に遅刻したのは言うまでもない
263188:2007/02/14(水) 16:10:46 ID:+iFEfK3A
「早く出すぎじゃないか?」
果歩の追及のことも考えると妥当な判断だと思うが少しばかり早すぎる。
「そうですか?たまにはこれくらいの時間に家を出るのも良いのでは?」
陽菜と一緒に登校している時点で時間にはだいぶ余裕があるわけだが、
「たまにはいいかもな。朝早くから活動すると得したような気がするし」
「そういえば社長」
「どうかしたか、國生さん」
「今朝果歩さんがおっしゃっていたことですが」
バレンタインデーがどうのと言っていたやつだろうな、などと考えながら相槌を打つ。
「社長に渡していないことになっていますのでごみの処理等気をつけておいてください」
「あぁ、そのことか。心配はいらんよ」
いつもの根拠のない自信、不安でしょうがない。
「それに捨てる気はないしな」
「社長?なにかおっしゃいましたか?」
「いや、なにも。それより國生さん、急ごう!」
「えっ、しゃっ、社長!」


「まだ時間ならたっぷりありますから!!」
264188:2007/02/14(水) 16:15:07 ID:+iFEfK3A
以上です
初投下なのでたくさんのミスすみません
句読点やら果歩が私と言ったりなどなど
何かご指摘がありましたらどうぞなんなりと
今後の参考にさせていただきますので
時間があれば桃子で短いのなど書かせていただきたいと思います
265名無しさん@ピンキー:2007/02/14(水) 17:56:06 ID:lw6LBBaf
なんか伸びてるなー、と思ってきてみたら…GJ
これは爆撃フラグですか?
266名無しさん@ピンキー:2007/02/14(水) 20:48:28 ID:8d0ppoJa
まさか……。
この日を狙ってくるとは……。
なんて、なんて低脳なんだ……。
267名無しさん@ピンキー:2007/02/14(水) 22:05:14 ID:mSljPGw0
季節ネタですね。
ナイス!
微笑ましい二人です。
2683355:2007/02/14(水) 22:51:53 ID:mSljPGw0
188さんの微笑ましいお話の後で恐縮ですが、
細々と続きを投下します。
今回はちょっとエロをがんばってみました。
2693355:2007/02/14(水) 22:52:46 ID:mSljPGw0
15
 社員寮の自分の部屋に帰ると、当たり前のことだが陽菜は一人となった。秋も大分
深まっていたこともあるが、夜遅く戻ると部屋は気温以上に寒々としているように思えた。
 陽菜はまずバスルームで湯沸かし器から湯船にお湯を出した。お湯が張るまでの時間で
着替えてスーツと学校の制服をハンガーに掛けて、ほっと一息つく。

 聞こえるのは秋の虫の音色と湯船に落ちるお湯の音だけ。陽菜の部屋は、高校生の少女
らしい持ち物どころか、テレビも、CDラジカセも、およそ若者らしい持ち物すら
なんにもない部屋である。
 だから、風呂の支度がすむまでの手持ち無沙汰の時間、陽菜はベッドのヘッドボードの上に
置いてあるフォトスタンドの集合写真を飽きもせずに眺めていた。
 その写真は、父の武文が帰還した時に撮ったもので、武文、番司、桃子、工具楽屋一同
と工具楽姉弟、そして中央には我聞、その隣には珍しく陽菜が笑顔で写っていた。
 以前は、まだ髪をお下げにした中学生の陽菜と、我也、中之井、優、辻原が写った
写真が飾られていが、今は、写真を新しいものに換えてあった。
(この写真の私と社長・・・・なんだか隣にいるのが嬉しいみたい・・・・こんな顔して
たんだ・・・・・私・・・)
2703355:2007/02/14(水) 22:53:42 ID:mSljPGw0
16
 そうこうするうちに風呂ができる。陽菜は脱いだ服を洗濯機に入れると、まず、
湯船につかる前に頭を洗い、顔を洗い、上から下へと順繰りに体を洗う。
(今日は一日中、なんだかすっきりしなかったな・・・)
 そう思うと、また、思い出したように胸のモヤモヤが大きくなっていく。

(んっ・・・ああ、・・・)

 陽菜はモヤモヤを紛らわすために、自らの二つの小さな胸をおそるおそる揉みしだく。
最初はゆっくりと、そしてだんだんと強く・・・・。
 すると、陽菜の敏感になってきた蕾のような胸の先端が固く勃っていく。陽菜は
我慢できずに、自分の乳首を指先で強く摘んでこりこりと転がす。

 元々、陽菜は性についての目覚めは遅い方だった。生理が始まってからも、ずいぶん
長い間、体調が悪くなる日があるのは困ると考えていた。
 その後は、安定してきたが、性欲そのものはあまり感じたことがなかった。ごくたまに、
いらいらして、人知れず乳首や性器をいじったりした程度だった。
 もちろん、男性を欲しがったりとか、自慰で絶頂までいったことはない。だが、今日は・・・・・。

(ああ、社長・・・・・・)

 陽菜は脳裏に我聞を思い浮かべる。

 化学兵器をこわしに行った先で、我聞に抱え上げられて閉まるシャッターをくぐり
抜けた時のこと。
 その後、我也の手がかりと、青いスーツの男を追って、無謀な追跡をしようとした自分
を抱えて脱出したときのこと。
 新幹線ジャックの時に、倒れた自分を運んで看病してくれたこと。
 肝試しで、自分を軽々と抱えたまま、よくわからないとラップから助けてくれたこと。
 そして、ヤクザに捕まって、売り飛ばされそうな自分を助けに来てくれて、おぶって連れ帰ってくれたこと・・・。

 それらを想いながら、彼女は、なおいっそうの自慰にふける。脚を拡げ、
汚されていないきれいなピンク色のヒダヒダをかき分け、肉芽を剥いてしごく。
(ああっ・・・ああん・・だめ・・・指が・・・・止まらない・・・・)
 そのまま限界まで強く、速く指を動かし続けた陽菜は・・・・

 ビク! ビクビクッ!!

 彼女は初めての絶頂を体験した。
2713355:2007/02/14(水) 22:54:30 ID:mSljPGw0
今回は以上です。
楽しんでいただけたら幸いです。
272名無しさん@ピンキー:2007/02/16(金) 02:22:03 ID:OpM3SWA0
グハァ、ぐっじょーーぶだよ!!
273名無しさん@ピンキー:2007/02/16(金) 21:57:03 ID:43gTgBZV
>>188
この二人の初々しい感じがすごいいい感じです。
この時期を狙ってってのがまたいいですなw
今後も期待させて頂きます!

>>3355
切なくなって一人でしちゃう國生さんがエロい・・・
まだまだ続きそうなお話なので、
楽しみにしていますよ〜
2743355:2007/02/16(金) 23:45:01 ID:jDTFt+fP
えー、細々と懲りずに投下します。
楽しんでいただけたら幸いです。
2753355:2007/02/16(金) 23:46:01 ID:jDTFt+fP
18
 それからの三日間、國生陽菜の憂鬱は続いた。
 仕事でのミスこそ犯さなかったが、それだけだった。普段の彼女の仕事ぶりからすれば
大分見劣りした。
 だが、三日目の夕方学校から陽菜が出社すると、
「お疲れ様です」
「あ、はるるん。今、奥津さんから連絡が入ったんだけど・・・」
 優が、奥津から仕事は成功した旨、明後日に戻る旨の連絡があったと教えてくれた。
(社長が帰ってくる)
 そう思っただけで、陽菜はそわそわと落ち着かなかった。

 帰って来たらどんな顔で、どんなことを話そう?

 陽菜は気分がぱあっと明るくなった。しかし、そこで窓に映った自分の姿を見て、
ふと考える。

(いつものスーツ、いつものネクタイ、いつもの髪型、いつもの・・・・私の顔・・・)

「ガモンが帰ってくるって!!」
 我聞が留守の間も、毎日毎日、工具楽屋に顔を出していた桃子が歓声を上げた。
「そうと決まったら、うんとおめかしして、ガモンに・・・・」
 桃子は、ドレスアップした自分が、我聞を虜にすることを想像して、
口元がだらしなくゆるむ。が、
「めかし込んだって、控えめ胸は変わらないわよ」
 優に差し入れを届けに来た果歩が茶々を入れる。
「あんたなんて、見せる相手もいないくせに、この薄胸!」
「言ったわね! このクソガキ!」
 そのまま、いつもの罵り合いになる。

 その様子を横目で見ながら、
(おめかし・・・か)
 陽菜は誰にも聞かれないように密かにつぶやいた。
2763355:2007/02/16(金) 23:46:56 ID:jDTFt+fP
19
 その夜、陽菜は、それほど多くもない自分の服を全部出して、部屋中に並べ立てた。
(スカートは制服しかないし、メイド喫茶をやったときのメイド服はレンタルだし、
他に何かかわいい服は・・・)
 普段着ですら、スカートが一着もないことに愕然としながら、陽菜はああでもない、
こうでもないと、スラックスとブラウスの組み合わせに悩んだ。

 ようやく選んだのは、明るい茶色のスラックスに、シンプルなクリーム色のブラウス、
フリルのついたカーディガンだった。
(まだやっぱり、地味かな・・・でも、社長・・・気がついてくれるといいな)
 それでも、我聞のために、精一杯おしゃれをして、彼が驚くところを想像すると、
陽菜はこころ楽しくなった。
 そして、次の日を心待ちにして眠りに就いた。

 明くる日、学校を終えると、陽菜は大急ぎで寮に戻った。
 そして、念入りに身支度をととのえて、工具楽屋に向かった。今日は、本業成功と、
我聞帰還のお祝いを工具楽家でするので、業務はお休みである。
「きゃー、かわいい! 陽菜さん、今日は普段着なんですね。お兄ちゃん、喜びますよ〜」
 果歩が、めざとく陽菜を見て褒めてくれる。それに対して、また、桃子がなにやら
突っかかっているが、陽菜の関心はもう、我聞の帰還にのみ向けられていた。

 そこに・・・
「おう、じゃまするよ」
 キセルを咥え、鉢巻きを巻いた、絵に描いたような江戸っ子の風貌、
炎の仙術使い・奥津太一が工具楽屋に現れた。
「今回は、遠いところ、お疲れ様です」
「ああ、まあな」
 しかし、我聞の姿が見えない。
「あの、うちの社長は?」
 陽菜がおそるおそる訊いた。
「あいつは帰らない。社長も辞めて、退社するそうだ」
2773355:2007/02/16(金) 23:48:29 ID:jDTFt+fP
17
(これが、イクってこと・・・。私・・・・・・いっちゃった。社長のこと想いながら、
いっちゃった・・・)
 陽菜は絶頂の後の気だるい中、言いしれぬ罪悪感を感じていた。いつも一生懸命で、
優しい我聞が、異国での仕事だというのに、自らは彼をダシにして性欲にふけって
しまったのだ。
 陽菜はそそくさと体を洗う作業を終わらせ、頭まで湯船に浸かった。

 風呂から上がると、タオルを一枚巻いたままで鏡の前で髪を乾かす。
鏡の中の自分の顔を眺めながら、陽菜は考える。
(社長は私のこと、どう思っているんだろう?)

 信頼できる役に立つ秘書? 家族同然は妹と同じってこと? ただの友達?

 短い髪、化粧気のない顔、小さい胸。女らしい柔らかさ、美しさ、かわいげ、色っぽさ・・・。
鏡を見ていると、自分にはそういうものが欠けていると、陽菜は思った。
 これまで、ほとんど気にすることはなかったのは、父や母、我也に対しては
「いい子」であれば良かったからだ。

 自分は我聞に「女として」どう思われているのだろう?

 優のような大人の色気、果歩や桃子のような可愛らしさ、彼女は初めてそういうものを
うらやましいと感じた。

「髪・・・伸ばしてみようかな・・・・」
 ふと、そんなことをつぶやく。だが、元々三つ編みできるほど長かった髪を
今のようにしたのは、体術を覚えるときに邪魔になったためだ。こわしやをやる以上、
格闘しなければならない時のことを考えると、伸ばすわけにはいかない。
 陽菜は力なく頭を振ると、そのままベッドに倒れ込んだ。
2783355:2007/02/16(金) 23:50:30 ID:jDTFt+fP
あ、なんか、順番がおかしくなってしまいましたが、
17、18、19の順番です。

話が少々冗長になってしまいましたが、ご容赦下さい。
当分続く予定です。
279名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 10:21:42 ID:piGQeMW1
3355氏、乙です。
続き期待してます。
280名無しさん@ピンキー:2007/02/19(月) 23:08:06 ID:wJ/zb1EN
>>3355
GJです!
また気になる展開ですな、
楽しみにしていますよ〜
281名無しさん@ピンキー:2007/02/23(金) 00:05:34 ID:nuDxeM9f
続きを期待しつつホッシュ
282188:2007/02/23(金) 16:50:05 ID:dND1Gn3c
名前が欲しかった188です
ホシュがてら投下させていただきます
283188:2007/02/23(金) 16:52:19 ID:dND1Gn3c
なんてことのない日曜日、学校も休みで部活や行事のないただの日曜日。
普段なら社長業と言う名の雑用にせっせと労力を費やしている時間帯。
静かな午後である。

「ガモーンっ! それこっちお願いっ!」
「おぉ、わかった」

静かな午後である。


I  Mother


真芝が実質壊滅してから何ヶ月か経ったある日。
「ガモンと暮らすの〜っ!!」
わがまま爆発状態の桃子が動き出した。
こんな性格の桃子には静馬のお家は堅苦しくてしょうがない。
このような理由を引っ下げて桃子は単身工具楽家に飛び込んできた。
最初当惑した静馬家面々、プラスヒゲであったが、

桃子だから

この一言で片付くくらいの扱いであることに嘆くこともなく前向きに工具楽家で生活し始めた。
真芝が壊滅しているので静馬の家にかくまってもらう理由もなく平穏な暮らしが始まって数日がたったある日曜日。
「桃子……この荷物の量はなに」
果歩が呆れ気味につぶやいている。
「あ〜らカホ、レディーは荷物が多くて当然でしょ」
「「山だー!!」」
ダンボールの山が完成していた。
「でっ?これどうするの?」
山を指差しながら桃子の様子を窺う。
「どうするってミンナで手分けしてやればすぐ終わるじゃない」
やっぱりか
「わたしも手伝うのよね……」
もう少し計画的に行動してほしいものだ
「当たり前でしょ、このままほっといたらジャマでしょ」
前言撤回、計画通りか
「ただいま〜…って、これはなんだ!?」
突然の出来事に対応する能力は低く、驚くことしかできない。
「あっ!ガモン!これ明日片付けるの手伝って!」
「じゃあ時間作って顔出すよ」
その上流されっぱなしのスキルは高い。
284188:2007/02/23(金) 16:54:27 ID:dND1Gn3c
明けて翌日
本業もなく、そこまで忙しくないということで時間制限付という条件で我聞がお手伝いに参加していた。
我聞が参加することによって効率良く片付いていったのだが、量が多くわりと重かったという理由で心身ともに疲弊していった(果歩だけ)

「よし、こんなもんか」
我聞が息も切らさずそう宣言した。
ちなみに桃子は指示していただけでほとんど動いていない。
「ふぅー……」
さて、この控えめをどうしてくれようか
そんなことを考えていた矢先。
「姉ちゃん姉ちゃん!」
「ん?」
「「自衛隊」」
そこにはダンボールの下に入って遊ぶ妹弟。
「うら、うら、うら!」
「「ぎゃ〜〜〜」」
果歩の逆鱗に触れサンドバック状態と化していた。

「ふぅー……」
いい汗かいたと言わんばかりの表情。
「そういえば昔遊んでたな」
我聞が突然つぶやいた。
「……これで?」
ダンボールで遊ぶとは……
「あぁ、とても楽しそうだったぞ?」
「お兄ちゃんじゃないの?」
てっきり兄だと
「なんだ、覚えてないのか?」
「覚えてるわけないじゃない」
こいつら(妹弟)がなにで遊んでいるかいちいち覚えていられないっつーの
「おまえのお気に入りだったのにな」
「わたしっ!?」
そんな唐突に昔話暴露されても
「カホったら可愛いとこあるじゃない」
こいつが騒ぐだけだしな
「だまれ控えめ」
「胸は関係ないでしょーが!」
「あら、胸なんて一言も言ってないのによっぽど気にしているのね」
「うす胸の分際で生意気言ってんじゃないわよっ!」
「居候の立場を考えてから発言しなさいっ!」
本日一発目の罵り合いが勃発した。
「懐かしいよな」
我聞が昔を思い出して軽く浸っていた。
「久しぶりに作るか?」
「「わーーい」」
「何をよ」
桃子と戦闘しつつ果歩が切り返した。

「ダンボールハウス」
285188:2007/02/23(金) 17:01:32 ID:dND1Gn3c
そうこうしているうちに建設され始め、呆れていた果歩だけ参加はしなかった。
こういうことが大好きな珠と斗馬は率先して参加した。
桃子も始めての体験に少しワクワクしていた。
「こんな低脳な遊びなにが楽しいのかしら」
「そういうおまえも楽しそうじゃないか」
せっせと働くキノコが突っ込んだ。
「そりゃぁガモンとの共同作業だからね、ねっ!ガモン」
「あぁ、そうだな」
一番楽しんでいるのが最年長工具楽我聞(17)であった。
「キノピー聞いた?脈アリよ!」
小声でボソボソ言っている。
「いや、我聞だし……」
「あと一押しだわっ!」
「だから、我聞だ……」
「ガモーン!」
「……おぉーい」
あぁ、すでに頭の中は我聞でいっぱいなのか。
「それとってー!」
「はいよ、お譲ちゃん」
そんなことを考えながらせっせと働いていた。

そうこうしているうちに建設作業は終了した。
「なかなかのできかな」
そう言って周りの反応を窺う。
「「すごーーい!」」
「へぇ〜〜」
「これを我が家にするのも悪くないな」
そんなまずまずの反応に満足していた。
「姉ちゃん呼んでくる〜」
そう言って珠が駆け出していた。
「兄上、なかなかのできですぞ」
うんうん頷いていた我聞だが、
「少し喉が渇いたな」
そう言って退室していった。
「あっ、ガモン待ってー」
本当はもっとこの家を堪能していたかったのだが我聞優先で付いていった。
「……この家欲しいな……」
真剣に物件を吟味し始めたキノピー。

「ほぉ〜〜」
ダンボールのくせに立派な外観に少し驚き、あれ(兄)は割りと起用なんだなぁ〜なんて感心するも、
「片付けるの大変じゃない」
そんな現実的な発想がもてる工具楽家番町果歩(14)
「ちょっとまちな」
すでに中に入っているあれら(妹弟)以外に低い声が聞こえた。
キノコだ。
「この家に住み込ませてもらう」
あぁ、あれ(控えめ胸)だけじゃなくこれ(キノコ)もポンコツなのかと考えていると、
「姉ちゃん早く」
「はいはい」
様々な事を考えるのを放棄して珠の誘いに乗る。
広い
まさかこんなに広く感じるとは思わなかった
ダンボールだけでできた稚拙な家
無邪気にはしゃぐ珠斗馬キノコ
懐かしく思える不思議な空間
――今日は疲れた
そんなことを考えながら少しずつ夢の中へ歩を進めていった。
286188:2007/02/23(金) 17:03:46 ID:dND1Gn3c
「「はぁ〜〜」」
今日の疲れを癒すかのようにお茶で和んでいる。
新婚さん
そんな言葉が浮かんだ。
うす胸もいないガモンと二人だけの空間、早くこんな生活を送りたいものだ。
どうやって小姑を撃退するか?
「桃子?どうかしたか?」
そんなことを考えていたら表情がコロコロ変わっていた。
当然ラストは果歩撃退プラン創造中なのでけして笑顔なんかではない。
「えっ? なっなにもっ!」
どうやったら二人だけで暮らせるのかねぇ〜、言えるわけがなかった。
いくら我聞でもそんなストレートな表現では気づくであろう(たぶん)
「そう言えば静かになったな」
さっきまでの騒がしい音などは一切聞こえなくなっていた。
「あたしが確認してきてあげるっ」
そう言って桃子が席を立つ。
「悪いな」
「任せなさいっ!」
良い奥さんの様な働きだわ
そんなことまで考えながら果歩達の様子を見に行く。
実際、あの家に興味がないと言えば嘘になる。
(自称)天才桃子はそんな低脳な遊びはしたことがない。
桃子は小さい頃から頭が良かった。
良く言えば大人びた思考の持ち主だが、実際は捻くれていた。
友達もいなく、真芝にいたことが拍車を掛けている。
学校にすら行ったことの無い桃子の目の前にこんなものを出されて興味が沸かないわけが無い。
内心ワクワクで部屋に着いた。
「カホ〜?タマ〜?トウマ〜?キノピ〜?」
返事が無い。
静まり返った部屋。
しかし、足が出ているということはみんなあの家の中である。
「返事位しなさいよ、感じ悪いわね〜」
これだから低脳は、なんて言いながら屋根を取り外した。
「………………」
寝てる
それもみんな仲良く
調査結果としては十分な成果を上げられたのだが桃子としてはこの家に入ってみたかった。
そして、
「カホ、風引くわよ?起きなさい」
邪魔者を排除しようと試みた。
「……っん、眠い……」
寝言のようにそう言っていた。
「カホ、風引くわよ?」
もう一度繰り返す。

「……お母さん……」
287188:2007/02/23(金) 17:07:00 ID:dND1Gn3c
果歩がそう言いながら泣いていた



『そういえば昔遊んでいたな』

お母さんが生きていた頃の話
カホの数少ないお母さんとの思い出
夢で出てきたお母さん

――そうなんだ

常にしっかりしいて、生意気言って、弱音を吐かない
強い子だと思ったけど違う
フツウの女の子
どこにでもいる14歳の女の子
タマを悲しませちゃいけない
トウマを泣かせちゃいけない
ガモンを困らせちゃいけない

――全部一人で背負ってたんだ

心も体も成長しきっていない状態で
あたしとほとんど変わらない華奢な体で
嫌な顔見せないでがんばってたんだ

――そういえばあたしにはないな

自分は両親との楽しい思い出はない
泣いたことだってある
でもカホは泣けない
タマが、トウマが、ガモンがいるから
そんな果歩を見ていると起こす気にもならない。

「……お疲れ様、カホ……」

無意識のうちに出た言葉
涙を拭って頭をなでる
果歩の幸せそうな顔
あまりあたしに見せない笑顔
家族には見せてるのかしら?
「……アホ面よ、カホ。でも、」

――可愛いわよ

そう言って屋根を元に戻し部屋を後にした。

288188:2007/02/23(金) 17:09:16 ID:dND1Gn3c
「なにしてたんだ?」
気になっていたのか少しそわそわしている。
「みんな仲良く寝てたわよ」
まったく低脳ね、なんて付け加えながら席に着きお茶を堪能する。
「どうりで静かなわけだ」
そう言うと、安堵したのかお茶を啜りだす。
「………………」

ガモンも大変だったであろう
お母さんというのは偉大な存在である
そんな言葉が浮かんだ、名言ね

「なに笑ってるんだ?……桃子?」

世界一のお母さんになろう
ガモンと築き上げよう

「……おぉーい」

暖かい家庭を

「……平和よねぇ〜」
「はっ?」

振り向かせてやろう



あたしから目が離せなくなるほどに





The End ? No !! Now Starting



289188:2007/02/23(金) 17:11:17 ID:dND1Gn3c
「失礼します、社長、時間です」
そんな妄想の世界から現実に引き戻される。
マズイ!! 完璧に忘れていた

ライバルハルナガアラワレタ

「おぉっ?もうそんな時間か、悪いな桃子」
そう言って我聞が動き出した。
手伝いも終わり悪いことなどひとつも無いのだが。
「待って我聞っ!!」
そう言いながら廊下で後ろから飛びついた。
「うぉうっ!とっ桃子っ!ほら國生さん待たせてるし」
聞いちゃいない。
「いい!?ハルナにガモンは渡さないわよ」
「そんなこと言っ……」
口を塞がれた
「………………」
陽菜の顔に笑顔が張り付いたままになっている。
「とっ桃子っ!!」
顔を真っ赤にして我聞が叫ぶ。
「さっ、ガモン!あっちで続きしましょ」
そう言ってグイグイ引っ張っている。
「社長、約束の時間を過ぎています。至急出社してください」
こっちは満面の笑みで怖い。
「えっ、あのっ、えっ?」
もう我聞にはどうすればいいかわからない。
「ガモン!」
「社長」

こうして静かな日曜の午後は更けていった。


続かない



「……一軒や〜……マイハウス〜……」
290188:2007/02/23(金) 17:13:18 ID:dND1Gn3c
以上です
元ネタわかる人は……いるかな?
291名無しさん@ピンキー:2007/02/23(金) 22:51:30 ID:lrPPwgNk
どこかでみた事があるような気が?
292名無しさん@ピンキー:2007/02/23(金) 22:52:40 ID:lrPPwgNk
それよりGJですぞ!
293名無しさん@ピンキー:2007/02/23(金) 22:54:10 ID:nuDxeM9f
元ネタは見当もつかないけどGJ!

桃子と果歩(寝てるけど)のくだりが凄いよかったです・・・
294名無しさん@ピンキー:2007/02/24(土) 15:35:41 ID:In/AUrQh
GJ!
そしてたまには上げとく
295名無しさん@ピンキー:2007/02/26(月) 00:31:38 ID:N4K339wP
GJ!
元ネタは赤僕かな?
296188:2007/02/26(月) 07:42:05 ID:bl09H+D5
レスありがとうございます まさかばれるとは
これじゃあ構想中のヘイボンシスターズはお蔵入りか
それより俺は果歩が好き
297295:2007/02/26(月) 09:01:06 ID:N4K339wP
気にせず投下しちゃって下さい。
いや、投下して下さい!お願いします。
298名無しさん@ピンキー:2007/03/02(金) 14:32:41 ID:hRqWiA/t
次の休みには投下できるようがんばります
299名無しさん@ピンキー:2007/03/03(土) 09:14:52 ID:on6o9IPM
期待しております!
300名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 22:38:33 ID:aaRv0zbD
なにこの桃子SS
いい仕事しすぎじゃないの?
301188:2007/03/07(水) 17:10:43 ID:wEwSHhlk
予告どおり投下します
302188 1/11:2007/03/07(水) 17:12:45 ID:wEwSHhlk

「げほっ、おほ、ごほっ……」

 朝。
 一日の始まりであり、気合の入れどころ。
 毎日訪れるなんてことのない時間帯。

「……うぅ〜……」

 そんななんてことのない朝から始まるある土曜日のお話。


へいぼんしすたーず


「……だるい」

朝起きてみると体の異常に気が付く。
熱っぽく、体が重い。
喉も痛い。

「風邪引いたかな」

工具楽家ではあまり見られない出来事。
そもそも体調管理は仙術使いには朝飯前であり、その才能がある斗馬と珠も常に元気である。
決まって体調を崩すのは果歩だけであった。

「もうこんな時間」

 目覚ましで時間を確認し、現在時刻に少し参る。

「ふぅ〜……」

久しぶりに風邪引いたな
最後に風邪引いたのって何時だったっけな
そんなことを考えつつも、
朝ごはん
そうして果歩は戦場によたよたと歩き出していた。
303188 2/11:2007/03/07(水) 17:14:55 ID:wEwSHhlk

「果歩寝坊か? 修行が足りんぞ」

はっはと、笑いながら洗面所から現れた兄がそう言っている。
朝一番のあいさつがこれか
正直、体調が悪いので放っておく。

「ごめんね、今からご飯作るから」
「おまえ風邪引いただろ」
「………………」

なぜだろう? この一瞬で、どこでそう判断したのだろう
そんなに辛そうにしているのだろうか?
あの兄に即座に見透かされてしまった
……少しだけ悔しい

「やっぱりそうか、じゃあおまえは寝ていろ」

あいつらの分も作らないとな、
そう言いながらキッチンに入っていった。
少し誇らしげな兄が頼もしいと言うより腹が立つ
……かなり悔しい
しかし、こんなところで立ちっぱなしの元気もない。
そう判断し、早々に自室に撤収することにした。

「ふぅ」

だるい、熱っぽい、喉が痛い。
しかし、それより気になることがある。
さみしい
普段休みの日といえば、朝からエンジン全開の妹弟の相手で疲弊しきっている時間帯。
そんな時間帯に一人で天井とにらめっこ。
心身ともに参ってしまっている
どこからか騒がしい子供の声が聞こえる
……間違いなくあいつらであろう
ご近所様の迷惑にならないことを心から祈る

どうやってあいつらに言い聞かせるか考えていると、

「果歩〜、飯だぞ〜」
304188 3/11:2007/03/07(水) 17:17:01 ID:wEwSHhlk

 そう言いながら我聞が入室してきた。
 いいにおいがする
 そういえばおなか減ったな
 お盆に乗せられた土鍋からは湯気が……
 ……土鍋?

「お兄ちゃん、それなに?」
「なにってお粥がろ」

 病人にはお粥云々言っているがどうでもいい。

「なんで土鍋なの」

 必要最小限の会話で終わらせたいのだが、我聞相手だとそうもいかない。

「今日昼帰ってこれないんだ。だから昼飯も兼ねて作っておいた」
「お昼帰ってこないんだ」
「あぁ」

 その説明を聞いて納得できた。
 が、次なる問題が浮上してきた。

「斗馬と珠のお昼どうするの?」
「あっ……」

 ふぅ
 陽菜さんみたくこめかみを押さえてみようかな

「し、心配はいらんぞ! 俺がどうにかするっ!」

 またまたご冗談を……
 それでどうにかなったためしがないではございませんか
 そんな兄の安請け合いを少しも信用してやることはできなかった。

「そんなことより、冷めちゃうだろ」

 頭の片隅にも残っていなかったお粥
 どれ、しっかりとした批評のひとつでも入れてやりますか
305188 4/11:2007/03/07(水) 17:19:02 ID:wEwSHhlk

「ふーふー、はい、あーん」
「……お兄ちゃん?」
「なんだ? どうかしたか? 別に変な物はいれてないぞ」

 本気でそう言ってのける兄が恐ろしい
 普通この状況でわたしがなにを言いたいのか読み取って欲しいのだが、
 我が家の誇る、全国屈指の朴念仁は気が付かないらしい

「自分で食べられるんだけど」
「おぉ、そうだな。ついいつもの癖で」

 わるいわるい、と言ってはいるが罪悪感の欠片も感じられない
 注意しているこっちのほうが赤くなってしまっている
 まぁ風邪を引いているので、もともと赤いわけなのだが。
 そもそも、そのいつもとはいつの事なのだろう

「どうした? 食べないのか?」
「食べるわよ」

 そんなに見つめられたら恥ずかしいでしょ
 しかしお腹は減っているのでありがたく頂戴することにする

「………………」

 ……なぜ凝視されているのだろう
 正直 きついです
 そんな事を考えているとあることに気が付く

「おいしい」
「そうかそうか、よかった〜」

 安堵したのか、ため息を吐きつつ表情を崩す。
 凝視していたのはこの為か
 久しぶりの炊事である
 家長としての威厳を保ちたい、そんなところであろう
 なんともまぁ、わかりやすい兄である
 病人であることを忘れ、笑顔で話を振ってくる。
306188 5/11:2007/03/07(水) 17:21:05 ID:wEwSHhlk

「ごちそうさまでした」
「おそまつさまでした」

 土鍋の中にはまだ大量にお粥が残っているのだが問題ない。

「じゃあ、オレ仕事いってくるから」
「いってらっしゃい」

 そんなやり取りを終え、再び一人きりになる。
 珠斗馬には近づくなと言ってあるらしい。
 近づいてきても平気な気もするがそこは病人ということで我慢する。

「ふぅ」

 午前中休んで午後から活動するか
 掃除して、洗濯もしないとなぁ〜
 晩御飯どうしようかなぁ〜
 だるいわねぇ〜
 とりあえず寝るか
 そんなことを考えながら果歩は夢の世界へ旅立っていった。
307188 6/11:2007/03/07(水) 17:23:15 ID:wEwSHhlk

「……っん?」
「果歩さん、お目覚めですか?」
「……ん、うん」
「体調はどうですか?」
「…まだだるいですね」
「お昼食べられそうですか」
「大丈夫です」
「そうですか、では今から準備いたしますね」
「ありがとうございます……って! えぇ!?」

 目を覚ますとそこには陽菜がいた。

「なっ、なんで陽菜さんがここにっ!」
「? 社長が果歩さんが風邪引いたので面倒を見て欲しいとおっしゃいましたので。
 あいにく社長は本日、昼には戻りませんので……私では役不足でしたでしょうか……」
「いっ、いえ! もうぜんぜんかまいません! と言うかありがたすぎて涙がでちゃいますよ〜」

 本気で俯いてしまった陽菜に悪いと思いあれやこれや言ってみた。
 そんな中、頭の中では、
 ――あのやろう
 どうにかするって人任せかよっ!
 そんな怒りと同時進行で陽菜の勘違いを取り払うという、
 世間一般の病人では到底なしえないであろうことが出来ることから常日頃の混戦状態が目に浮かぶ

「そうですか、ありがとうございます」

 どうにか誤解を解くことに成功した。
 いつもの暖かい笑顔の陽菜になっていた。

「では、お昼の用意してきますね」
「お願いし……あぁっ!」
「どうしかしました!?」
「掃除しないと、それに洗濯も」

 そんなことを考えながら寝ていたので気になってしょうがなかった
 この時間からだと急がないと夕方になってしまう

「あの……」
「なんですか? 陽菜さん」
「掃除と洗濯やらせていただいたのですが……」
「えぇ? なっ……お兄ちゃんに言われたんですか?」
「いえ、社長には特に何も」
308188 7/11:2007/03/07(水) 17:25:36 ID:wEwSHhlk

 自主的に動いてくれたんだ……

「やはり迷惑だったでしょうか……」
「いえいえ、ありがとうございます」
「では、とってきますね」

 完璧だ
 わたしの想像以上の嫁かもしれない
 陽菜さんが工具楽家に嫁いでくれればどんなに充実した日々を過ごせることか
 陽菜の行動にえらく感動した果歩はそんな事を考えながら号泣していた
 きゃつめを逃がしてはならない
 一人で勝手に盛り上がっている。

「果歩さん、できましたよ……果歩さんっ!?」

 そんな中、陽菜が帰ってきた。
 果歩号泣中

「いえ、お気になさらず」

 そんな気遣いのできる陽菜にまた涙
 もう涙は止まらない

「そ、そうですか……」

 意味不明な果歩を気にしつつも、大丈夫の言葉を信じて昼の準備を進める。

「ふーふー、はい、果歩さん」
「………………」

 ど、どうするべきか
 陽菜さんがふーふーしてくれているのに
 ここはありがたく頂戴するか?
 いや、一人で食べられますから
 なんて冗談っぽく断るか?
 そんな心の葛藤を繰り広げつつも、

 パク

 食べていた。
 他ならぬ陽菜だから無意識に口が動いたのか、
 はたまた、実はこういうのが意外に好きだったのかは定かではない。
 しかし、陽菜のふーふーは決して悪い気はしなかった。

「おいしいですか?」
「えぇ、とっても」

 陽菜が作ったわけではないのだが、このように答えておく。
 そんな和やかな雰囲気の中、
 神妙な面持ちで果歩が呟いた。
309188 8/11:2007/03/07(水) 17:28:27 ID:wEwSHhlk

「まったく、陽菜さんには迷惑掛けっぱなしで」
「いえ、果歩さんにはいつもお世話になっていることですし、これくらいどうってことありませんよ」

 疲労感、苛立ち、そんなものを微塵も感じさせないような表情でそう言った。
 そんな言葉が心身ともに参っている果歩にはとてもありがたく、救いになった。

「たかが風邪引いたくらいでこの騒ぎですよ? あ〜あ、わたしにも仙術が使えたらなぁ〜」
「………………」

 半分冗談と言った感じで話を進める。

「珠と斗馬には才能があるのにわたしにはないんですよね。いわゆる何の取り柄もない凡人なんですよ」

 そう言い終えると黙ったままだった陽菜が重い口を開いた。

「陽菜さん?」
「私は仙術を欲しいと思ったことは一度もありませんよ?」
「え?」

 果歩よりあの仙術の凄さを目の当たりにしてきた陽菜からの思いがけない言葉。

「確かにあの力は素晴らしいものだと思います。
 しかし、あれを使いこなすにはこれこそ血の滲むような修行が必要不可欠です。
 私には到底マネのできない、とても大変で険しい道のりが待っているんですよ。
 それに、仙術がなくても十分幸せにはなれますから」
「でも……でもそれじゃお兄ちゃんの手伝いが出来ないじゃないですかっ!? 
 あの珠だってトレーニングしてるんですよっ!? 
 わたしにはただ見てることぐらいしか出来ないんです……
 傷ついて帰ってくる兄を見てることしか出来ないんですよ……」

 果歩の本心
 常日頃から感じていた負い目
 なにも出来ない自分
 楽をさせることすら出来ない自分
 感情が高まりそう言っていた

「なにも前線でお手伝いしなくてもいいんですよ?
 果歩さんはいつも社長が帰ってくる場所を守っているじゃないですか。
 果歩さんの頑張りがあるから社長もおもいっきり頑張れるんですよ?」

 果歩はその言葉をただただ聞くことしか出来なかった
310188 9/11:2007/03/07(水) 17:31:59 ID:wEwSHhlk

「それに果歩さんにはたくさんの良いところがあるじゃないですか! 
 料理が上手なこと
 完璧な掃除洗濯が出来ること
 みんなをまとめ上げる統率力があること
 いつも笑って場を和ませること
 そしてなにより、家族のために泣けること
 どれも私にはなくて果歩さんにあるとても素晴らしく、価値のある取り柄だと思いますよ?」
「………………」
「それなのになんの取り柄もないなんて言っているとみなさん悲しまれますよ? 
 果歩さんはみなさんに愛されているんですから自身を持ってください。
 そしてもし、この話を私でなく社長に話していたとしても、たぶん同じようなことをおっしゃると思いますよ?」

 言葉が出ない
 先ほど流した冗談の涙とはまた別の種類の雫が頬を流れ落ちてゆく
 悲しいわけではない
 痛いわけでもない
 嬉しいわけでもない
 原因不明の液体が後から後から湧いてくる

「私もなにか特別な事が出来る能力者には分類されません。
 普通の……平凡な一女子高生です。
 しかし、私は毎日が楽しいですよ? 
 社長がいて
 優さんがいて
 中之井さんがいて
 辻原さんがいて
 部活の友達がいて
 ……そして果歩さん、斗馬さん、珠さんがいて……」

 そんな自分の事を優しく抱きかかえてくれる陽菜の手が温かく、
 陽菜の温もりをずっと、ずっと味わっていたいと思った
311188 10/11:2007/03/07(水) 17:34:13 ID:wEwSHhlk

「だからもうそんな事を言ってはダメですよ? 
 みんな凡人なんです。でも取り柄のない人なんていないんですよ。私も果歩さんも」

 そっか
 やっと解った
 少し遅れて原因を解明することが出来た
 わたしの事をここまで考えててくれたんだ
 だからきっと嬉し泣きなんだ
 だったらもっと泣いてても良いのかな?
 少し甘えてみても良いのかな?
 少しワガママ言っても許してくれるかな?

「陽菜さん……」
「なんですか?」

 蚊の鳴くような声で、でもしっかりとした意思を持って

「……お姉ちゃん、って呼んでも良いですか?」
「えぇ、もちろん」
「…………お姉ちゃん」
「はい、果歩さん」

 少しムズムズするような気持ち
 まだぎこちない即席の姉妹
 でも今まで以上に深まった絆
 そんな出来立ての新しい関係

「わたし達似た者同士なんですね」
「ふふ、そうですね。なんせ姉妹ですからね」

 そしてどちらともなく笑い出す
 笑いの絶えない家庭
 何でも話し合える家族
 仲の良い兄弟姉妹
 そんなどこにでもある平凡極まりない家庭
 でもどんな人間も憧れる理想的な家庭

「そういえばお兄ちゃんもお、お姉ちゃんと同じように食べさせようとしたんですよ?」
「そうなんですか?」
「えぇ、言葉も一緒で。仲が良いんですねぇ〜」
「ぐっ、偶然に決まってるじゃないですかっ!?」
「照れちゃって、お姉ちゃんかわいいなぁ〜」
「かっ、果歩さんっ!!」

 そんな家庭の第一歩を踏み出しつつ一日は過ぎていった。
312188 11/11:2007/03/07(水) 17:36:37 ID:wEwSHhlk

「げほっ、おほ、ごほっ……」

 朝。
 一日の始まりであり、気合の入れどころ。
 毎日訪れるなんてことのない時間帯。

「……うぅ〜……」
「國生さん、大丈夫?」

 そんななんてことのない日曜日の朝。

「社長……すみません、私のほうがお世話になってしまって」
「いやいや、果歩のこと任せっぱなしだったし、むしろこちらこそすまないと思っているよ。本当に申し訳ないっ!」
「いえ、楽しかったですし、それに……」
「それに?」
「秘密です」
「はぁ」

 なんの事だか解らないが下手に詮索する気持ちもなく、責任を感じている我聞。
 一方陽菜は心なしか明るく見える。

「陽菜さ〜ん、ご飯ですよ〜。って、お兄ちゃんなにやってんの?」
「いや、國生さんの体調はどうかなと思って」
「そんなこと言って、本当はナニするつもりだったのよ」

 そんな事を言いながら復活した果歩が登場した。
 お粥入りのお盆を持って。

「だからお見舞いだってっ!」
「そうですよ果歩さんっ!」

 そんな二人のやり取りが面白くてしょうがない。
 最近良く見る光景
 今まで通りの時間が流れる

「お兄ちゃんのご飯はちゃんと準備してあるから早く食べちゃってよ」
「いや、しかし」
「ほらほら、陽菜さんの看病はわたしに任せて。さあさあっ!」
「何でそんなに張り切ってるんだよ」

 その言葉に満面の笑みで
 どこまでも響き渡るのではないかという声で

「陽菜さんはわたしのお姉ちゃんだからっ!」 と
313188:2007/03/07(水) 17:41:24 ID:wEwSHhlk
以上です
なんかすみません、エロ入れようとして挫折しました
自分には低脳神は舞い降りてくれないみたいです
歴代の猛者たちのが羨ましい
314名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 01:03:46 ID:qNzuDFde
>>188
いやいやGJですよ!
我聞のSSはこういうほのぼのなのも、凄くイイ感じだと思うのですよ。
平凡だけど温かな感じ、いいですよ〜
315名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 14:45:19 ID:039By+GA
GJ!
いやーいいもの読んだ
ほのぼのさせてくれてありがとう
316名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 17:42:21 ID:bkGO46un
ほしゅ
317シゲノブ:2007/03/13(火) 20:52:25 ID:tE1fIfhE
GJ!!!!!!!
ひさしぶりに見たらすばらしい作品がまた増えてて感動です!!!
次を楽しみにしてます。
318名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 21:47:20 ID:5yRFvaK4
3ヶ月も間を空けてしまって恐縮の限りですが、
>>153-158
の続きを投下させて頂きます・・・

(一応、三行で前回のあらすじ)
9巻巻末4コマでの優さんと辻原さんの病院でのやりとりを工具楽家一同+國生さんが聞いちゃった後のこと。
果歩は“いつもお世話になっている優さんへの恩返し”として、優さんと辻原さんをくっつけることを企てます。
んで、工具楽兄妹に國生さん、桃子に番司まで巻き込んで計画を練りますが、一部始終は優さんに筒抜けで・・・
319499 1/10:2007/03/13(火) 21:49:09 ID:5yRFvaK4

そんなこんなであっと言う間に週末。
本業が入ることもなく天気も快晴、寒くも暑くもなくまさに絶好のお出掛け日和。

「いやー、晴れてよかったですね〜♪」
「うんうん! 遊園地なんて久々だから楽しみだよ〜」

テンション高めの声で楽しげに話す果歩と優を先頭に、
総勢9名の工具楽屋一行はエントランスをくぐり、目的地の遊園地に到着する。
と、早速―――

「にーちゃん! あれ乗ろう! あれ!」
「兄上! 空いているうちに開幕ダッシュが全制覇への近道ですぞ!」
「よっしゃいくぶべっ!?」

げししっ! ・・・と。
はしゃいで駆け出そうとする工具楽家の面々を、果歩の回し蹴りが一掃する。

「お兄ちゃん! 珠も斗馬も!
 来た瞬間に今日の目的忘れてんじゃないわよっ!」
「う・・・スマン、つい・・・」
「まったくもー! ハナから先が思いやられるわ・・・」

そう言って、果歩はいかにも“やれやれ”といった感じで溜め息をつく。

「まぁまぁ果歩りん、折角遊びに来たんだし、固いこと言わなくてもいいんじゃなーい?」
「ですが、それだと計画が・・・」
「ちょっとカホ!」
「あ・・・! あは、あはは!
 いやー、効率的に回る為の計画が台無しになっちゃうかなー、なんて!」
「なるほど〜、流石果歩りん、手抜かりはないね〜! あはは〜」
「も、勿論ですよ! あははははっ!」

危うく“計画”の対象にその存在を漏らしかけたところを桃子に引き止められて、
果歩は慌てて引き攣った笑いで誤魔化しに走る。
もちろん果歩は全て優に筒抜けだ等とは夢にも思っていないし、
優もまたそのことを知らせるつもりも無く、
かくして二人は不自然に笑い続ける。
その様子は開園直後のまばらな人影が露骨に避けて通るくらいに怪しくて、

「あの・・・それでは、何処から回りましょうか?」
「あはは・・・あ、そ、そうですね! それじゃあまずは・・・」

見かねた陽菜が越えをかけると、それで果歩もはっとして、
慌てて何やら色々と書き込まれたパンフレットを取り出すとざっと眺め―――

「うん、じゃあまずは・・・あそこからです!」

そう言って近くにある建物を指差す。

「・・・お化け屋敷?」
「はい! まぁそんなに盛り上がる程怖くはないかと思いますが、
 最初はウォーミングアップってことで軽いところから行きましょう!
 ・・・辻原さんもそれでいいですか?」
「はは、私はこういう所は不案内なので、皆さんにお任せしますよ」
「んじゃあ決まりだね! では―――」

と優が足を踏み出しかけたその時。
320499 2/10:2007/03/13(火) 21:52:07 ID:5yRFvaK4

「行くわよアンタ達!」
「「らじゃ〜!」」

桃子と、それを追うように珠と斗馬が猛然と走り出し、
誰が止める間もなく三人は建物の中へと消えてしまう。

「あら・・・ったく、桃子まで子供みたいにはしゃいじゃって」

三人を目で追いながら呆れたように言う果歩だが―――これは事前の計画通り。

「桃子ちゃんたら、はりきってるわね〜♪ じゃあ私たちも続こうか!」
「あ、まって下さい優さん!」

改めて足を踏み出そうとする優を、今度は果歩が制止する。

「んむ? なんだね?」
「はい、先走った桃子たちはいいとして、折角こうして男女三人ずつ残った訳ですし、
 ペアでも作って順番に入っていく、ってのはどうでしょう? ほら、肝試しみたいに!」
「お〜、それは面白いかもだねぇ!」
「でしょでしょ! じゃあ早速ペアを決めて、ヒトが少ないウチに行っちゃいましょー!」

果歩の提案は呆気ないほど簡単に受け入れられ、
しかも二人とも妙にテンションが上がってきている。

「・・・なんであの二人、あんなに楽しそうなんだ?」
「いつも思いますけど、息もぴったりですよね・・・」
「うむ・・・」

そんな果歩と優の様子を、不思議・・・というよりなかば不審そうに眺めながら、
我聞と陽菜は小声で囁きあう。
二人にとって、彼女達のあのテンションは少しばかり危険なサインでもあるのだ。
何故なら・・・

「ほらほら、ぼやっとしてないで!
 ペアって言ったらお兄ちゃんと陽菜さんは決定済みみたいなモノなんだから、とっとと行った行った!」
「「ええ!?」」
「そうよ〜♪ ささ、暗いのをいいことに手とか繋いじゃってもいいからさ〜♪」
「そ、そんなことしませんっ!」
「ほらほら照れなくてもいいから、行ってらっしゃい〜!」
「うく・・・じゃ、じゃあ・・・國生さん」
「は、はい、では・・・お先に・・・」
「「ごゆっくり〜♪」」

・・・と、二人が危惧した通りにいつものノリで囃し立てられて、
我聞と陽菜は真っ赤な顔を見合わせてからわたわたと歩き出す。
この組み合わせも事前に決まっていたことなのだが、
こういう一方的な決め付けられ方をされては我聞も陽菜も言いたいことは色々あり、
だがしかしこのままここにいても茶化されるだけなのはもはや明白。
楽しそうな果歩や優と辻原、それに複雑な顔色の番司に見送られ、
結局顔を真っ赤にしながら、逃げるようにして中へ入って行くしかない二人であった。


321499 3/10:2007/03/13(火) 21:53:02 ID:5yRFvaK4

「む・・・」

そんな感じでお化け屋敷の暗がりへと足を踏み入れた二人だが、
入ってすぐのところで不意に我聞が立ち止まる。

「どうしました? 社長?」
「い、いや、かなり暗いからな、どんな危険があるとも限らんし・・・ここは慎重にだな・・・」
「はぁ・・・ええと、私はこういう所は初めてなので詳しいことはわかりませんが、
 これは一般の方向けのアトラクションですよね?
 でしたらそう危険なことはあまり無いのではないかと・・・」
「そ、そうか? あ、いや、そうだな!
 うん! 流石は國生さん! よし、行くぞ!」

妙に―――彼らしくない慎重さを見せたかと思うと、
今度は一転、勇ましいけど少々引き攣った声と共に早足で歩き出す我聞。
そんな彼の後ろ姿を眺めながら、陽菜はふと昨年の夏の合宿を思い出す。
初日の晩、肝試しの時のこと・・・・・・
あの時は色々誤解もあってあまり気に留めていなかったが―――

(そういえば社長・・・)
「うぉお!?」

早速、派手に驚く彼の声が聞こえてきて、思わず“くす”と笑いがこみあげてしまう。

「・・・どうかなされましたか?」

早足で彼に追いつき、笑いを噛み殺しながら聞いてみると、

「い、いや! なんでもない! なんでもないぞ! じゃ、じゃあ進もうか!」
「社長・・・なんだかちょっと顔が引き攣っているように見えますが・・・?」
「んな!? そ、そんなことないぞ!? べ、別に、たかがお化け屋敷程度でビビったりなんか、
 そんなことは全くないからな!?」
「ふふ、ですよね? では進みましょうか」
「お、おう、い・・・行くぞ國生さん!」
「はい」

本業の時からはほど遠い、完全に腰の引けた足取りで、それでも懸命に平静を装いつつ歩く我聞の様子は、
頼り無いと言ってしまえばそれまでではある。

「む・・・暗いな、ここは・・・」
「そうですね、まぁでもアトラクションですから怪我なんかしないように作られているでしょうし、
 壁に手を沿えて歩きさえすれば問題無く抜けられるのでは?」
「お、そ、そうだな! 流石國生さん! じゃ、じゃあしっかりついてくるんだぞ!」
「ふふ・・・はいっ、社長も気をつけて!」

だが・・・彼が社長に就任した当初ならそれで溜息の一つもついていただろうが、
今ではそんな彼の様子もまた微笑ましいと思っている。
それが陽菜に出来た心の余裕であり、我聞への信頼の証、でもあるのだった。

終止この調子で、おっかなびっくり、といった様子で歩く我聞と彼に続く陽菜は、
自分たちの姿が暗闇に潜む三対の目によって監視されていることなど気付いていない。
我聞にはそんな余裕は無かったし、陽菜は“彼女達”がそこに潜んでいる可能性については考えていたものの、
自分達が何かされることは有り得ないと思い込んでいたので、特に意識してもいなかったのだ。
そして実際、二人は何事も無く―――我聞がイチイチ細かく驚いていたりしたが―――
無事、出口に達するのだった。
322499 4/10:2007/03/13(火) 21:54:17 ID:5yRFvaK4

『ねぇねぇ桃子ねぇちゃん、何もしないで良かったの?』

そんな二人の様子を憮然とした顔で見送っていた桃子の耳に珠の声が響く。
いつでも手出しOKな状態でスタンバイしていたのに攻撃開始の合図が無く、二人はいささか不満げの様子。

「んー、ホントはねー、ガモンには悪いけど思いきり怖がらせてあげる予定だったんだけど・・・」

そうやって陽菜の前で格好悪いところを晒させて、
“我聞に対する信頼度や好感度がダウン→自分の付け入るチャンス到来!”
・・・というシナリオを描いていたのだが、
ビビる我聞に向けられる陽菜の表情はどうも微笑ましげなものであり、
ここで我聞を驚かしても二人のデートにちょっとしたイベントを提供して却って盛り上げるだけ、
という気がして・・・結局見送ってしまったのだ。

「ま、まぁいいわ! 今日の目的ははユウとケイジ、そして私的な本命は・・・」
『桃子、次が来たぜ?』
「む、順番的に次は・・・」
『ああ、おまえ的に本命の二人だな』

キノピーからの無線を受けて、ムスっとしていた桃子の表情が“にや〜っ”とした笑みに変わる。

「そう、わかったわ。 じゃあおもてなしの体勢に入ろうかしらね〜♪
 タマ! トウマ! 今度は予定通りよ! 存分にやっちゃっていいからね!」
『『ラジャー!』』
『・・・ホドホドにしておけよ?』

やれやれ、と桃子達に音声を送りながら、
キノピーは丁度真下を通って建物に入って行く二人―――果歩と番司を同情の目で見下ろすのだった。



「・・・ったく、何が悲しくてアンタなんかと二人でお化け屋敷に入らなきゃなんないんだか・・・」
「うるせーな、そりゃこっちの台詞だっての。
 工具楽のヤローは陽菜さんと一緒だってのに・・・!」

果歩と番司はそれぞれにふてくされた様子で暗い通路をずかずかと歩いてゆく。

「ま、お兄ちゃんと陽菜さんは一緒で当然よ、最近は特にいい感じになってきてるんだしね〜!
 ・・・ていうか、アンタまだ諦めてないワケ?」
「う、うるせーな! 別に憧れるだけなら自由だろーがよ!」
「ふぅん? ま、いいけど・・・別に彼女探した方がいいんじゃないの〜?
 アンタが陽菜さんを諦めるってのなら、ちょっとくらい協力してやってもいいわよ?」

先に立って歩く果歩のクスクスと笑う声を聞きながら、
もし仮にそういう状況になってもコイツに協力を頼んだらロクなことになるまい、と番司は思いつつ、
だがそんな下らない想像に少しだけ表情を崩し、

「余計なお世話だっての・・・しかしオマエ、全然こういうの怖がらないんだな?」
「だってこんなの、子供騙しもいいとこじゃない」
「そりゃそうだけどよ、いや・・・・・・やっぱ可愛げねーなオマエ」
「むっ」

番司の台詞にカチンときたか、果歩の声は露骨に不機嫌になり、
くるりと後ろに振り返り・・・

「あ、アンタこそうるさいのよ!
 こういうところで女の子が誰でもキャーキャー言うと思ってる方がおかしいの!」
「そ、そうなのか?」
323499 5/10:2007/03/13(火) 21:55:10 ID:5yRFvaK4

「当たり前でしょ! そりゃ怖がる子は怖がるし、ほら・・・本命のヒトなんかと来てるんなら、
 ちょっと可愛いところを見せたりするかもしれないけど・・・何せアンタだし」
「はー・・・・・・そういうモンかね」
「そ! そういうモンなの!」

いかにも不思議そうな声を上げる番司が面白くて、先ほどの発言に対する怒りも徐々に薄らいで、

「ま、少なくともアンタの前でキャーキャー騒ぐ気なんて全然ないわよ。
 だいたいアンタだって私にそんなことされても困るでしょ?」

悪戯っぽく言うと、果歩は再び歩き出す。

「は、そりゃ確かにちげぇねぇな、ははは」

番司もまた笑いながら、果歩に続いて歩を進める。
ところどころ、安っぽい人形や音声による演出があるにはあったが、
果歩や番司には怖がるどころか苦笑するしかない程度の代物でしかなく、
二人は適当な軽口を叩きつつ早足で通り過ぎ、
そろそろ出口も近いかというところで・・・

「ん? なんだ? また暗いなこりゃ」
「ま、暗いだけでしょ? 下手な仕掛けよりは雰囲気あるけど・・・雰囲気だけでしょ、どうせ。
 さ、とっとと抜けちゃいましょ、こんなとこ」
「だな。 ああ、一応足下には気を付けろよ?」
「そんな子供じゃないんだから、イチイチ言われなくても―――きゃあぁあっ!?」
「うぉ!?」

真っ暗闇でも全く怖じけづく気配のなかった果歩がいきなり上げた悲鳴に、
番司も思わず驚きの声をあげ、

「な、なんだいきなり!?」
「う・・・な、なんか首筋にヌルッとしたモノが触った・・・」
「あ? はは・・・なんだ、仕掛けにビビっただけか」
「う、うるさいわね! アンタだって不意打ちでこんなことされたら声の一つも上げるわよ!」
「へ、そりゃねーよ」
「どうだか! きっとすぐにアンタもひぃっ!?」

やや不機嫌になった果歩の声が、またしても自らの悲鳴で途切れる。

「おいおい、今度はなんだ?」
「う・・・またぬるっとした冷たいのが、今度は腕に・・・」

二度も悲鳴を上げさせられてしまったのが悔しいのか、それとも照れ隠しなのか、

「あーもう! 仕掛けが悪趣味なのよ!
 大体なんで私ばっかり! それもどうしてこう暗いのに肌の露出してるところばっかり狙って・・・って!」

果歩は腹立たしげに声を張り上げるが、ふと・・・一つの可能性について思い当たり―――

「もしかしてひゃあああ!」
「・・・今度はどうした?」
「う・・・・・・足に・・・また・・・って、そんなことより・・・・・・!」

どうしても慣れない、気持ち悪い感触に悲鳴を抑えることは出来ないが、
自分だけが三連続、しかもこの暗闇で狙ったように素肌の露出したところだけを攻めてくるとなると、
こんなことが出来るのは・・・そしてやりかねないのは・・・・・・
324499 6/10:2007/03/13(火) 21:56:14 ID:5yRFvaK4

「桃子―――――――――っ!
 これアンタの仕業でしょ――――――っ! 隠れてないで出てきなさ――――――いっ!」
「お、おい!? ちょっと落ち着け!」
「うるさいっ! アンタは何もされてないから良いんだろうけど・・・これが落ち着いてられるかぁあ!」

相変わらずの真っ暗闇で、番司には果歩がどんな顔をしているかは見えないが、
ぎゃーぎゃーと騒ぎ立てバタバタと足を踏み鳴らす音から大体の想像はつく。

「このヒキョーものっ! 正々堂々とかかってこ――――――いっ!」

それで桃子が姿を現すハズが無いとは思うのだが、
だからといって果歩としては落ち着いていられるハズも無い。
一応、この場では果歩の“連れ”である番司としては何とかせねばとは思うのだが、
この暗闇で果歩を取り押さえるのは難しいし、
下手に近寄ればやみくもに放っているに違いない蹴りの巻き添えだって食らいかねない。

「と―――う―――こ―――!」

ある意味ここに居合わせているだけでも恥ずかしいと言えば恥ずかしいが、
どうせ暗闇で顔を見られることもなく、幸いなことに他の客が来る気配も今のところ無い。
ここは果歩が落ち着くか諦めるまで待つか、

「・・・いや、そもそも待つ必要もねぇか、先に行っちまっても構わないよな・・・」
「あ!? なんか言った!?」

果歩当人はこれだけ騒いでいながら、
気配で桃子を探り当てる気なのかやたら他人の声には敏感になっているようで、
番司に届く声の響き方からしてどうやら彼女がこちらに振り向いたらしいことがわかる。

「ああ、俺は先に―――」
「あ――――――!」

不意に果歩の叫び声のトーンが変わり・・・

「そこかぁああ!」

果たして何を見たのか感じたのか、
おもむろにドカドカと床を蹴って走る音が番司の方へと迫ってくる。

「おい、危な―――」

正確な位置はわからないがこのままでは衝突、
もしくは蹴られることを危ぶんだ番司が慌てて声を上げるが、その矢先・・・

「っうわあっ! あぁあ!?」
「おい? ―――ってうぉお!?」

果歩と、続いて番司までがうろたえた声を上げ、同時に・・・
“カッ!”
と、真っ暗闇だった通路に一瞬だけ閃光が走る。
そしてそこに浮かび上がったのは、
もつれるように抱き合う―――果歩と番司。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

光に照らされたのは本当に一瞬だが、何せお互いの感触があるので、
自分達がどんなことになっているか、把握するには十分過ぎる。
325499 7/10:2007/03/13(火) 21:57:55 ID:5yRFvaK4

「・・・・・・って! い! いつまでこうしてんのよっ!」
「―――っ! う、うるせえっ! 寄っかかってんのはオマエだろーが!」

余りに予想外の事態にしばし唖然としていた二人だったが、
把握した現状について理解が追い付くと互いに大慌てで飛び退る。

「・・・・・・い、今のは、ふ、ふ、不可抗力なんだからね・・・!
「わ、わーってるよ! どうせ転んだか、なんかしたんだろ・・・」
「そ、そうよ、何か足に引っかかって・・・・・・ってそれも桃子アンタの仕業ねっ!」

再びカッといきり立って腕を振り回してみたりする果歩だが、
その腕が番司に当たったところでぐい、と握られて、

「おい! いいからもう行くぞ!」
「何でよ! こんなことされて黙ってられるかって―――って、ちょっと!? や、離しなさいよ!」
「俺まで巻き添えにされちゃ敵わねーんだよ! おら、とっとと出るぞこんなとこ!」
「むき―――! 後で酷いんだからね―――! おーぼーえーてーろー!」

こうして番司に引きずられるようにして、果歩はぎゃーぎゃーと叫びながらお化け屋敷を後にするのであった。



「ん〜、なんだか楽しそうなことになってるねぇ♪」

騒ぎ立てる果歩の声は建物の外まで響いており、それを聞いた優はにんまりと笑みを浮かべている。

「そういう優さんも既になかなか楽しそうですよ?」
「ふっ、まだまだ本当に楽しくなるのはこれからだよ辻原くん? じゃ、我々もそろそろ行ってみようか〜!」
「ところで優さん、その荷物はなんなんですか?」
「ふふふ、これはね〜・・・・・・」

いかにも楽しそうな、そして悪そうな笑みを浮かべつつ優は意気揚々と歩き出す。
そんな彼女に続く辻原もまた、それなりに楽しげなのであった。



「タマ、トウマ、さっきのはなかなか上出来だったわよ!」
「いぇーい!」
「これくらいラクショー!」
「頼もしいわね〜♪
 じゃあカホは驚かせたし私としては満足なんだけど、ま・・・約束だしね。
 ついでに一つ、ユウも驚かせてあげよっか!」
「「らじゃ〜!」」

と、盛り上がっているところに早速―――

『おい桃子、最後の二人がこれから入っていくぞ』

見張り役のキノピーから桃子へ無線連絡が届く。

「む! 標的がエリアに侵入したわ! タマ! トウマ! 配置について!」
「「イェッサー!」」

掛け声と共に二人は通路の中でも特に真っ暗な所へ走り、身を潜める。
ほぼ完全な暗闇なので普通なら手で壁を伝いながらでもないと進めない所なのだが、
珠と斗馬は桃子お手製の暗視スコープのお陰で暗闇が全く苦にならない。
この装備をいいことに、何も見えない果歩相手にコンニャクで触ってみたり足を引っ掛けてみたり、
二人してやりたい放題だったのだ。
326499 8/10:2007/03/13(火) 21:59:48 ID:5yRFvaK4

「まぁ、ユウにはそんな悪戯しないでいいから、ちょっとケイジを足止めしておいて、
 そこにユウを転ばせて上手く抱きつかせてやるくらいでいいわ。
 その瞬間をバッチリ撮ってあげるから♪」

そして桃子は少し離れたところで“決定的瞬間”をカメラに収める体勢を整える。
と・・・

『・・・んー、まぁわかってはいたけど、特に面白みのあるお化け屋敷ではないねぇ』
『まぁ、こんなモノをつけていては更に、ですかね』
『あはは、まぁそのことはおいておいて♪』

曲がり角の向こうから、優と辻原の声が徐々に近づいてくる。

「来たわね・・・では健闘を祈る!」
「「らじゃ〜!」」

二人の足音が聞こえてきたところで、小声で通信を終えると
桃子は二人の邪魔にならないところに身を潜め、早くもカメラを構えながら様子を窺う。
そこへ・・・

「やぁ、ここは更に真っ暗だねぇ」
「ん、足元に気をつけて下さいよ?」
「えー、イザってときは支えてくれるんじゃないのかにゃ〜?」
「はっはっは、構いませんけどお手柔らかにお願いしますよ?」
「あはは〜♪」

(む・・・なんだか既にちょっといい雰囲気じゃない・・・)

暗がりから聞こえる二人の会話に耳をそばだてながら、
桃子はカメラのファインダー越しに声のする方向をじっと見ている。
程なくして暗視スコープの視界に現れた二人の様子に、特に不自然なところは見当たらない。
我聞や果歩達と違い、優の場合はその気になれば自分と同様に暗視スコープくらい用意できることから、
一応その可能性についても懸念していたのであるが・・・

(ま・・・普通は遊園地にそんなモン持ってこないわよね)

万が一の用心は杞憂に終ったとばかりに安心すると、
そのまま息を殺して、ファインダー越しに二人が目の前を通りすぎてゆくのを見送る。
後は、珠と斗馬が優の足をすくって辻原の方によろめかせ、
彼に抱きついてしまったところをカメラに収めればミッションコンプリート、である。

(さ、タマ、トウマ・・・上手くやりなさいよ・・・?)

桃子はカメラを構えたまま、より鮮明な写真を撮るべくゆっくりと優達の後をつける。
その、ファインダー越しの視界の片隅で斗馬が行動を起こし、
桃子もシャッターチャンスを狙い澄ますべく集中するが―――

ひょい、と。

斗馬の差し出した足は呆気なく優に跨ぎ越えられてしまう。
一瞬、がくっと肩を落とす桃子だが・・・これはまだ想定のうち。

(さぁタマ! 今度こそ・・・!)

再びファインダーの向こうに集中する桃子の手に、思わず力がこもる。
が・・・・・・
327499 9/10:2007/03/13(火) 22:00:41 ID:5yRFvaK4

ひょい、と。

珠が伸ばした足も呆気なく優に跨がれてしまい、今度こそ桃子はズッこけかけてしまう。

(だ―――! 二人ともナニしてんのよ!)

流石に二段構えなら間違いはあるまい―――と踏んでいた桃子だけに、この失態にはイラっとくるが、

(もう・・・! とにかく! 最終的に結果が残せればそれでオッケーだから!
 とっととヤっちゃいなさい!)

基本的にこの仕掛けが失敗すると思っていない桃子は、二度続いた失敗を斗馬と珠のミスとしか考えない。
故に・・・その後も珠と斗馬が続け様にしくじっても、
そこに何らかの必然性が潜んでいると考え直すより、

(ったくナニしてんのよ、このド低脳―――!)

ひたすらに感情的になるばかりで、

(あーもうすぐ出口じゃない! いいわもう結果さえ残れば過程なんて関係無し! 実力行使よ――――――!)

桃子はもはや体裁などかなぐり捨て、足音が立つのも構わずに優に向けて走り出す。
もうバレてもなんでも構わない。
優を背後から辻原に向けて突き飛ばしてでも、二人が抱き合う(ように見える)姿をカメラに収めるのだ―――
と、桃子が優の背後まで迫った、その時。

「桃子ちゃん・・・・・・」

妙に低い、ぞくりとするような声で名前を呼ばれ、桃子は気味の悪さに思わず足を止めてしまう。
そんな彼女の目の前で振り返った優と、そして辻原の二人の目・・・というより眼鏡が、
光源のないハズの暗闇で何故か妖しい光を湛えていて・・・

「桃子ちゃん・・・・・・」
「うく・・・」

気付かれた・・・と焦るより、とにかくその声と二人の様子が不気味過ぎて、
思わず桃子は声を漏らしてしまう。
だが、優も辻原もそれに今更反応するそぶりは見せず、
代わりに二人は妖しく光る眼鏡に手をかけて・・・ゆっくりと外す。
と・・・・・・

「ぇ・・・・・・」

目の前の光景に、桃子は僅かなうめき声を残して硬直する。
眼鏡を外した二人の顔には――――――

目が、無かった。


328499 10/10 (続く):2007/03/13(火) 22:03:55 ID:5yRFvaK4

「ぁ・・・・・・・あ・・・・・・」

暗闇に並んで浮かぶ白い顔を前にして、桃子の顔はみるみる引き攣って、
数瞬の後・・・恐怖が肉体を凌駕して、身体の硬直が解けたと同時に――――――

「―――――――――っきゃあああああぁああああぁああああぁあぁああああ!!」

甲高い悲鳴を撒き散らしながら、まさに脱兎の如くもの凄い勢いで逃げ出すのであった。
そんなリーダーの様子をポカーンと見送っていた珠と斗馬は、桃子が見えなくなると互いに顔を見合わせて・・・

「「お〜ぼ〜え〜て〜ろ〜!」」

こちらはこちらで何故か楽しそうに捨て台詞を残し、
逃げ出した桃子を追って出口へと走り去ってゆくのであった。
そして、残った二人はというと・・・

「・・・・・・っぷ、あは・・・あははははっ! いやー、もう大成功っ! あはははははは!」

もう抑えられない、という感じで大爆笑しながら、
優は自分の顔に手を伸ばし、ぺりぺりと何かを剥がす。

「ね〜、どうだい辻原くん、あの桃子ちゃんの顔ったら!
 いやーもうね、あんなに驚いてくれると悪戯のし甲斐もあるってものよ〜! あはははー♪」
「いやもう子供相手にも全く手を抜かない、優さんの大人気なさには脱帽ですよ、はっはっは」

辻原も優と同じように顔から何か・・・目を隠す為に貼っていた肌色の薄いフィルムのようなものを剥がすと、
メガネをかけ直してからからと笑う。

「なぬー!? 説明したらなんの反論もナシですぐにノってくれた癖に―――!
 辻原くんだって何気に楽しんでたんでしょー!?」
「はっはっは、ではそういうことにしておきましょうか」
「ぬー・・・なんか納得いかない・・・」
「まぁまぁ、折角遊びに来たんですし、そんな細かいことは気にしないで行きましょう」
「ぬぅ・・・ま、成功したからいいけどね〜♪」

なんだかんだと言いつつも優も辻原も楽しげに歩き、やがて暗闇も薄れ出口の光へ辿り着く。
そこで辻原は再びメガネを外し、代わりに胸ポケットから取り出したメガネをかけて、

「さて、それじゃあこれはお返ししますね」

外した方のメガネを先ほどのフィルムと共に優に手渡す。

「ん、なかなかの性能だったでしょう、暗視機能つきメガネ。
 この優さんの自信作なんだから〜♪」
「そうですね、メガネにカモフラージュする意味が今回みたいな特殊なケース以外であるのかどうか疑問ですが、
 性能は十分でしたね、いやいや流石です」
「・・・なんかちょっと一言多い気もするけど、それは誉められてると受け取っていいのかにゃ?」
「はっはっは、勿論です」
「まぁ、そういうことにしておこうか〜♪
 それじゃあ桃子ちゃん達がどんな顔しているか、見に行くとしよっか!」
「はい、そうしますかね」

こうして最後の二人も、お化け屋敷を後にするのであった。




329499:2007/03/13(火) 22:08:02 ID:5yRFvaK4
最初コテ忘れてた(汗
今回の投下分は以上です。

前回の投下の後、PCのトラブルで投下が遅れます、とは書き込みまして、
結局PCはHDが無事な状態で年始早々に復活したのですが、
その間に書き出した別スレ向けのSSに没頭してしまいこちらを完全に放置してしまいました。
特に期待されていないようでしたら問題無いしいいんですが、
もし待っていて下さった方がいらしたら、本当にすみませんでした。

では、続きはまた近いうちにということで・・・失礼します。
330名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 23:16:30 ID:EkGu5Yp4
>>499
またまたご冗談を……
我々は貴方の作品を日夜待っていましたよ
続きも大いに期待させていただきますっ!!
あっ、パソ大丈夫そうでなによりです
331名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 16:20:53 ID:mmoFHX5t
久々の投下、実に面白く読ませていただきました。
倉庫では「辻優」となっていますが、この書き振りだとどのペアがメインなのか読めませんね。
"あまり見ない"ということですので、恐らく辻優なんでしょうが。
期待してます。
332名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 22:24:17 ID:xl+9AAvI
久しぶりにこの言葉が使える……
低脳。
後は連呼する時を待つのみ。
333名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 21:39:35 ID:zmXT+iTu
>>332
バカにしてんのか?
334名無しさん@ピンキー:2007/03/18(日) 02:02:03 ID:K66XTF/5
>>333
釣りだと思うが1をよく読め。
335名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 10:39:50 ID:9h+7Ns7C
平井が主人公のエロパロも書いてくれ。
336名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 00:43:00 ID:YV2TZHAD
ホシュ
337シゲノブ:2007/03/26(月) 17:59:02 ID:7Gf1l9uz
hoshu
338名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 23:51:21 ID:YV2TZHAD
ほっちゃん
339名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 04:21:41 ID:hxeSa/2X
保守
340シゲノブ:2007/03/31(土) 09:07:53 ID:Dn/Tk/NH
保守うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
341名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 16:49:07 ID:wrVlY7IK
保守、職人の降臨はまだか・・・・
342499:2007/04/03(火) 22:24:00 ID:o3UTe5oZ
全然近いうち、とはなりませんでしたが、
>>319-328の続きを投下させて頂きます。
今回も、というか当分はエロ無しな感じですが・・・
343499 1/11:2007/04/03(火) 22:25:19 ID:o3UTe5oZ

「おっ待たせ〜! あれ?我聞君たちは?」
「あー、なんか桃子が凄い勢いで何処か走っていっちゃいまして、
 お兄ちゃんたちが保護に向かいまして・・・」
「あっはっは、なるほどね〜
 桃子ちゃんもこの優さんと張り合うには、まだまだ修業がたりんのう」
「はぁ、何があったのかわかるようなわからないような、ですが・・・
 とりあえずお昼にでも合流するとして、こちらはこちらで回りませんか?
 あまりゾロゾロいても身動き取りにくいですし」

なんだか勢いでこういう状況になってしまったが一応は計画に沿った流れなので、
果歩はこのままシナリオを勧めることにする。
・・・もちろん後で桃子を絞め上げるのも忘れてはいないが。

「ん、それもそうだね〜、じゃあ次はどうしよっか?」
「そうですね・・・辻原さんは何かご希望ありますか?」
「いや、お任せしますよ。 何処に行ってもそれなりに楽しくなりそうですし」
「それじゃあ適当に回ってみよっかー」
「そうですね、そうしましょう」

そんな感じで四人は適当に歩き出す。
雑談などしながら、しばらくふらふらと彷徨っていると、

「・・・なぁ、目的地と方向が違わねーか?」

番司ができるだけさりげなく装いつつ果歩に耳打ちしてくる。

「オマエの計画だと確か・・・」
「いいのよ、どうせ午前中いっぱいはこのまま優さんたちと一緒だろうし、
 桃子のあの様子じゃ多分、何か仕掛けてしくじってるからね・・・
 取り敢えず警戒されてる可能性もあるし、ここはしばらく普通に楽しみましょ」
「あー、なるほどな。
 ま、オマエと一緒ってのはなんだけど、取り敢えず楽しんどくわ」
「それはこっちの台詞よ! 大体なんで遊園地まで来てそのカッコなのよ!
 ただでさえ時代遅れも甚だしいってのに、ホントよくわからないわアンタ・・・」
「う、うるせぇな! コイツは俺のポリシーなんだよ! わかれとは言わねーから口出しすんな!」

密談はいつの間にか例のごとく憎まれ口の叩きあいに発展し、もはや優も辻原もそっちのけ。

「大体アンタねぇ、陽菜さんのコト本気なら、
 せめて人並みにお洒落に挑戦するくらいのそぶりは見せてもいいんじゃないの?」
「だ、だからうるせーよ! いちいち邪魔しやがるオマエが言うなっての!
 だいたいな! 陽菜さんは人を見た目で判断するようなヒトじゃねーよ!」
「へぇえ! そういうアンタこそ見た目に惚れたんじゃないの〜?」
「う・・・い、いいじゃねーか実際に美人なんだし! それに性格だっていいしよ・・・」

年下相手に顔を赤くしながらもいつの間にかそんなことを語り出す学ラン鉢巻き姿の番司は、
端から見たらなかなか滑稽な状況なのだが、何せ相手は恋話大好きの果歩である。
茶々を入れつつも話を途切らせないように相槌を打ったり突っ込んだりと、
聴き役としての務めを見事果たしていたりする。

「・・・だいたいアンタ、基本的に陽菜さんからは冷たくされてばかりじゃないの? 商売敵なんだし」
「う・・・い、いーんだよ、そういうキツさも陽菜さんのいいところなんだし、
 姉ちゃんでキツいのは慣れてるしな、ははは」
「あんた・・・その顔でマゾっ気あるのかしら・・・」
「んなもんあるかバカ!」
「いやー、でもお姉さんは体育会系、お婆ちゃんは軍隊気質だもんねー、
 アンタのお嫁さんになる人も大変だわ・・・ま、居たらのハナシ、だけど♪」
344499 2/11:2007/04/03(火) 22:26:12 ID:o3UTe5oZ

もちろん優も辻原も完全に蚊帳の外だが、
この茶化しと照れ隠しとの合間に妙に本音の入り混じったやり取りを前にして・・・

「いやー、どうだね辻原君、可愛いものだと思わないかねこの二人は?」
「ははは、なかなか若者らしくていいじゃないですか」
「ふふー、でしょ〜? 折角遊園地まで来たんだし、こーいうコトがなくっちゃね〜♪」

すっかり観戦モードに入っていたりする。
こちらはちゃんと小声を維持しながら微妙に距離を置いて二人の後から歩いて、
会話に没入してしまっている二人の気を逸らさないような念の入れ様。

「・・・ってーかよ、イチイチああだこうだ言ってるけど、そもそもオマエはどうなんだよ?
 ガキはガキでもオマエはマセてるし、彼氏とかいねーのか?」
「う、うるさいわね・・・家事とか勉強とか忙しくてそれどころじゃないわよ」
「あー、そうか・・・そうだったな、いやスマン」
「って、そんないきなり謝らないでよ気持ち悪いわね!
 それはともかく、なんて言うか・・・
 お兄ちゃんは家族のために働いて稼いでて、私は家事全般とか家計のやりくりとかしてるでしょ」
「ああ、まぁ大変だよな、工具楽んとこも色々と」
「ま、もう慣れちゃったしそれはいいのよ。 いいんだけどさ・・・
 そういう環境で過ごしてると、どうも同い年の男の子・・・学校の男子とかは子供っぽく見えちゃってねー
 恋愛対象って感じにならない訳よ」

なんとなく複雑そうな笑みを浮かべてから、おどけるように、たはー、と溜息など吐いて見る。
親がいて家があって、遊んだり部活動に明け暮れていても食事もお小遣いも出てくるのが当然、
悩みと言えばせいぜい受験程度の彼らと話していても楽しいときは楽しいし、
彼らのほうが“普通”だというのはわかっている。
だが、そんな彼らと付き合う、となると・・・

「あー、確かに・・・そこいらのガキよりはオマエ、ずっとしっかりしてそうだしな。
 オマエから見て“頼りになる”と思えるような中学生なんざそうは居ないよな。
 まぁ、オマエもガキはガキだがな、ははは」
「だー、いちいちガキって言うな!
 ・・・まぁ、実際その通りなんだけどねー
 ヘタにそんな話すると、『生活感漂わせすぎ』なんて笑われるだけだしね、あはは・・・」

ついついあまり口にしない事を語ってしまった事に今更気付き、
少し“しまった”という顔をして照れ隠しに軽く笑って見せる。
憎まれ口を叩きあうだけの間柄としては、ややズレた話をしてしまったなぁ、と思う果歩だったが、

「そりゃ、中学生なんてそれこそガキだからな。
 オマエがどんな大変かなんて理解できねーだろうし、
 ソコをわかってくれるヤツなんざ、同年代じゃ探すの難しいだろ」
「うん・・・って、アンタは何を知ったような―――
 あー、境遇は似たようなモンか」

ガキの癖に何を―――程度に笑い飛ばされるとばかり思っていたところに予想外にまともな意見が返って来て、
やや拍子抜けしてしまうが、

「ま、お互い大変よね」
「まぁな・・・っても、俺は一人の分だけ気楽ではあるけどな」
「ふぅん、でもアンタ、毎晩一人で寂しくなったりしないの?
 それこそホームシックにかかっちゃって、『姉ちゃーん』なんてかなえさんに電話かけたりとか、あはは!」
「オマエ・・・それ想像できるか?」
「ゴメン、無理だわ・・・あはははっ!
 でもなんて言うか・・・逞しいわねアンタ、やっぱり男の子だから?」
「どうだかなぁ・・・いやまぁ、なんつーかアレだ・・・むしろ姉貴とばーちゃんのいる実家よりは、
 ある意味気楽かもしれねぇ・・・」
345499 3/11:2007/04/03(火) 22:27:11 ID:o3UTe5oZ

「あはは、なるほどね、それは説得力あるわ、あははっ!
 あ、ねえ優さん、辻原さん、あれ乗りません? ・・・って、あれ?」
「どうした?」
「いや、優さん達が・・・」
「あ、いたいた。 どうかしたんスか? そんな離れて・・・」
「いや〜、お邪魔しちゃ悪いかにゃ〜って♪」
「はぁ・・・よくわかりませんが、取り合えずあれ、乗りませんか?」
「お? いいね〜! さ、辻原くん、行くよ〜!」
「はいはい、了解ですよ優さん」

いつの間にか果歩達から微妙に離れて歩いていた優と辻原も小走りで合流し、
四人はアトラクションの順番待ちの列に並ぶのだった。




「んー、なかなか面白かったねー! さて果歩りん、次はどうする?」

それからしばらくは特に何事もなく、
4人はいくつかのアトラクションを回りつつ、遊園地本来の楽しみ方に興じていた。
そのうちに時間も過ぎて・・・

「そうですね、そろそろお昼も近いですし、お兄ちゃん達にも声かけてお弁当にしませんか?」
「おお、そう言えばもうそんな時間か〜
 うん、言われてみればお腹が空いてきた気がするよ!」
「あはは、今日は私と陽菜さんとで腕によりをかけて沢山作ってきましたからね〜!
 楽しみにしてて下さいよ?」

余程出来が良いのか、果歩は自信たっぷりに笑顔を浮かべる。

「陽菜さんの手料理か・・・」

一方、番司は番司で何を考えているか非常にわかりやすいリアクションを見せるが・・・

「ま、アンタには陽菜さんが作った分はあげないけどね」
「んだと!? どーいうコトだよこのガキャ!」

そんな番司に早速からかい半分、クギを刺してしまうのは、
もはやGHKとしての条件反射と言っていいレベルに達している。
だが、ここで何を思ったか優がニヤリと笑みを浮かべて―――

「ふぅん―――なるほどね、つまり果歩りんは番司くんに自分の作ったお弁当の方を食べてもらいたい、と。
 うんうん、なるほどなるほど♪」
「んなっ!? ちょ、ちょっと優さん!? なな何言ってるんですかっ!」
「そ、そうですよ! コイツがそんなこと考えてるワケ―――!」
「あっはっは、照れない照れない、お姉さんは全てお見通しなのだよ〜♪」
「ちがいますっ!」
「どうかにゃ〜?」
「違うに決まってるじゃないスか! ば、バカなこと言わないで下さいよ!
 辻原さんも何か言ってやって下さいよ!」
「いやいや、なかなか楽しげでいいじゃないですか、若いっていいですねぇ」
「だから違うんですよぉ辻原さん! 優さんに騙されないでくださいっ!」
「ふふ〜♪」
「っく・・・と、とにかくお昼です! お弁当はロッカーに預けてあるし、と、とにかく行きましょう!」
「お、おう、腹も減ったし、とっとと行こうぜ!」

なんでそんなことになってしまったのかお互いにワケもわからぬまま、
果歩と番司はとりあえず逃げるように歩き出す。
346499 4/11:2007/04/03(火) 22:28:18 ID:o3UTe5oZ

「な、なんで私がアンタと・・・っく、どうしてこんなことになってるのよ、
 お兄ちゃんと陽菜さんじゃあるまいし・・・」
「お、俺が知るか! てーかあの人の事だ、楽しけりゃどうでもいいんだろーけど、
 くそ、桃子といい優さんといい、一体ナニ考えてやがるんだ・・・」
「と、とにかく、とにかくよ! いい? そろそろ作戦を実行に移すから・・・動揺してないで頼むわよ?」
「お、おう、わかったぜ・・・よし、こうなったら今の意趣返しってことで思い切りやってやるからな!」
「うん、この際思いっきりやっちゃって!」

優と辻原から逃げるように早足で歩きながら、二人は作戦を実行に移すべくひそひそと話し合う。
桃子には変な目に遭わされて、優にはおかしなことを言われ・・・そんな予想もしなかった異常事態のせいか、
互いに邪魔だとばかり思っていた二人が今日この半日だけで、
今までになく自然と話せるようになっているということに、二人とも気付いてはいない。
そしてとっくにそれに気づいている優はというと、

「ふふふー、桃子ちゃんにもなんかされてたみたいだけど、あの二人を今度はどんなアクシデントが襲うのか!
 お楽しみはまだまだこれからだよ〜?
 楽しみにしていてね、辻原くん♪」
「そうですね、そうしておきますよ、はっはっは」

当然の如くにまだまだ何かを企んでいるし、
同行する辻原もまた全く止める気などなさげで、むしろ本当に楽しそうに笑っていたりするのであった。



「ロッカーは・・・この池の向こう側ですね・・・
 じゃあ折角だし、そこの噴水でも見ながら行きましょーか!」

しばらくは番司と共に先に立って歩いて皆を誘導していた果歩だったが、
いつの間にかさり気無く優達と一緒になり、そしてさり気無く二人を先に行かせ・・・
今は果歩と番司が背後から優と辻原を視界に収めながら歩いている。

「へぇ、なかなか派手な噴水だねぇ」
「ですね〜、あ、優さんそこの橋を渡りましょう、その方が近道みたいです」
「ん、了解〜!」

果歩はパンフレットを片手に道を調べている素振りをみせるが、それはあくまで演技であり、
ここを通るのは最初から計画のうち。
微妙に歩くペースを調節して優と辻原を先に行かせたのは、
もちろん背後から二人の様子を窺う為なのだ。

「・・・この距離でも平気?」
「舐めんなよ? 距離は全く問題にはならねーけど、人目がな・・・」
「ん、そうね・・・幸いそんなに人もいないし、もう少し・・・
 ほらあそこ、噴水が列になってて岸からは見えにくいし、噴水自体がいいカモフラージュにならない?」
「そうだな・・・確かにいい感じだな」
「じゃあ、私が合図したら優さんの側に、なるべく回りの噴水に似せて・・・」
「ああ、任せとけ! 俺の腕を見せてやらぁ!」

果歩の作戦は、微妙に揺れる浮橋を歩く優の真横に番司の仙術で噴水に似せた水柱を勢いよく吹き上げて、
優を驚かせて辻原に抱きつかせてしまおう、というもの。
ついでにその瞬間を画像に収めてしまおうと、果歩は桃子に借りたデジカメを取り出して、
先ほどの桃子よろしくファインダー越しに先行く二人を凝視して・・・

「おい、まだか?」
「うん、もうちょっと・・・優さん、ほら、もう少し辻原さんに近付いて・・・
 そう! そうよ! あと一歩・・・よし! 今―――」

優と辻原の距離が近付いた、今こそ絶好のタイミング!
―――と、果歩が合図しかけた、その時・・・
347499 5/11:2007/04/03(火) 22:29:09 ID:o3UTe5oZ

どぉんっ!

「うぉお!?」
「きゃ! うわぁああ!?」

突如、果歩たちの傍で水柱が上がり―――

ぐらぐらぐらっ!

「わ、ちょ・・・アンタ何やってんのよ―――!」
「俺はまだ何もしちゃいね―――!」

メチャクチャに揺れる浮橋の手摺がわりの鎖につかまって、
突然の爆発と大揺れに耐える二人だが、そこへ更に―――

どぉっ! どぉんっ!

と、立て続けに水柱が上がり、

「きゃあっ! い、一体なんなのよ―――!
 あ、アンタ水使いでしょ、なんとか・・・っきゃあああ!?」
「お、おい!?」

不測の事態にうろたえる二人の側で“ざばんっ!”と更なる水柱が上がり、
激しく揺れる浮橋の上で完全に体勢を崩してしまった果歩が、危うく手摺を乗り越えそうになり―――

「うわ、わ――――――」
「っとぉ!」

身体が半分以上手摺を乗り越えて、頭から水面に落下し―――

「きゃ―――きゃ―――イヤ―――!」
「・・・オイ」
「きゃ――――――・・・あれ?」

あとは水中にダイブするだけだったハズの身体は、手摺からほとんど乗り出した状態で停止している。

「とりあえず暴れんな! 引っ張り上げるからよ!」
「あ・・・」

言われて初めて、自分の身体が水面ギリギリで番司に捕まえられていることに気付く。
・・・が。

「きゃぁああ!? ちょ、ちょ、ちょっとドコ触ってんのよアンタ!」
「だーかーらー暴れんなっての! 落ちるぞ!?」
「だ、だ、だからって! アンタ、そ、そこは・・・!」

腰が手摺を越えて向こう側に落ちかけていたところを番司自身も体勢を崩しながら、だったので、
構図としては番司が果歩の足を抱える格好になってしまっている。
ミニスカートから露出した足に思い切り抱きつかれるという事態に、
果歩はある意味先ほど以上の勢いでもがき出すが・・・

「だー面倒くせぇ! 引っぱり上げんぞ!」
「きゃ・・・わ・・・!」

説得は無理と判断した番司は力任せに果歩の身体を引き上げて、ひょい、と橋の上に立たせる。
348499 6/11:2007/04/03(火) 22:30:01 ID:o3UTe5oZ

「うわ・・・ぁ・・・・・・」
「ほら、立てるか? 腰抜かしてないか?」
「だ、大丈夫よ! 当たり前でしょ!?」
「そうか、ならよかった。 なんかこの池おかしいからよ、とっとと抜けるぞ!」
「あ、うん・・・・・・ね、ねぇ」
「あ? なんだ?」
「その・・・・・・ありがと」
「ああ? 気にすんなよ、流石に見過ごすワケにゃ行かんしな」

振り返らずにぶっきらぼうに言い放ち、すたすたと歩き始める番司に、
果歩はなんだか悔しいやら恥ずかしいやらで俯いたまま、ついてゆくが・・・はた、と。

「・・・ところでアンタ」
「あ? 今度は何だよ?」
「・・・見た?」

面倒臭そうに顔だけ振り向いた番司と、
むっとしたような、それでいて真っ赤な顔の果歩の目が合って―――

「な、なんのことだよ、さっさと行くぞ!」

くるり、と前を向いて再びすたすたと、心持ち早足で歩き出すが、
番司が目をそらす直前、そこに焦りの色が浮かんだのを果歩は見逃さない。

「・・・見たのね」
「だから見てねーっての!」
「じゃあナニを見てないのよ!」
「う、うるせーな! 何も見てねーよ!」

言うまでもなく不毛な上に、
口がたつ果歩相手に口論することの不利は充分過ぎるくらいわきまえているので、
果歩を無視して先に歩く番司だが、

「・・・ヘンタイ」
「・・・」
「・・・痴漢」
「・・・・・・」

背後から呪いでも込められていそうな果歩の声が追いかけてくる。
それでも無視して歩く番司だったが・・・

「・・・覗き魔」
「・・・・・・」
「・・・エロパンツ」
「だ――――――うるせぇ!」

延々と続けられるとまるで自分が性犯罪者のように思えてきて、
流石に耐えられなくなって・・・

「いい加減うるせーよ! 仕方ねーだろ不可抗力だったんだからよ!」
「・・・・・・やっぱり見たのね」
「だから仕方なかったんだよ! オマエだって池に落ちるよかよっぽどマシだろーが!」
「ま、まぁ・・・そうだけどさ・・・」

ここで勢い負けしてはいけない。
番司としてはなんとなく後ろめたい気持ちも無くは無いが、
下手に退いたら今後どれだけこの件を引きずられるかわかったものではないと理解しているのだ。
349499 7/11:2007/04/03(火) 22:31:34 ID:o3UTe5oZ

「ったくよ、なんで助けてやったってのにこう責められにゃなんねーんだ」
「ぅ・・・わ、悪かったわよ・・・・・・」

しつこかった割には思ったより弱気な果歩に、番司は勢いを得て・・・

「だいたい、今更んなモン見たところで何とも思わねーよ」
「わかったわよ・・・」

果歩としても助けてくれた彼に対する感謝の念はあるし、
それでも下着を見られたのは恥ずかしくて堪らず、ついつい恨み言が口をついてしまうが、
ここは我慢しなくてはいけない、と、
そう思いかけて―――

「・・・ねぇ、ちょっと」
「あん? しつけーな、今度は何だよ?」
「今更・・・って、どういうコト?」
「あ? だってオマエ、普段から短いスカートでヒトに蹴りくれやがって、その度にチラチラさせてんだろーに」
「んな・・・」

背後から届く声の質が一気に変わり、番司が思わず振り返るとそこには唖然とした顔の果歩。
顔色は何故か蒼白、そして徐々に色を取り戻し・・・今度はさっき以上に、真っ赤。

「じゃ、じゃあ・・・アンタ、わたしの・・・その、ぱ・・・パンツ・・・」
「お、おい? 勘違いするなよ!? オマエが短いスカートであんなハイキックとか飛び蹴りとかかますから、
 それで勝手に視界に入っちまうだけだ! 不可抗力だからな!?」

勢いに任せて言わないでも良いことまで言ってしまったと後悔する番司だったが、
これぞまさしく、後の祭り。
果歩は真っ赤な顔を隠すように俯いて、その肩がふるふると震え始める。

「お、おい、待て! いや、だから不可抗力だから、てかいやスマン!
 とにかく俺が悪かった! だから泣くな!」

果歩を怒らせた経験なら枚挙に暇の無い番司だが、こういう展開は初めてで完全に混乱、そして平謝り。
だが・・・

「・・・つまり・・・私はずっと・・・アンタに、コトある毎に覗かれていた・・・ってワケね・・・」
「え? あ、いやちょっと待て! 覗いたってワケじゃねーぞ、ってかオマエ―――」

肩を震わせながら、果歩がゆっくりと顔を上げる。
その様子を恐る恐る眺める番司だったが、やがて果歩の表情がはっきりとわかるまで見えるようになって・・・

「い、いや、ちょっと待て! おい、だからアレは不可抗力だし!
 だいたいそもそもオマエが短いスカートなんか・・・」
「問答・・・無用よ・・・・・・」

その表情の危険さに、番司は思わず後ずさる。
そう・・・果歩の顔に浮かんでいたのは、仙術使いすら怯えさせる程の・・・まさに、“鬼”。

「おい! 話聞いてるか!? いいか、オマエが蹴るからいけないんだぞ!?
 だからちょっと落ち着け! 落ち着いてだな、お、おい―――」
「黙って――――――」

すっ、と。
仙術の資質が無いってのは間違いなんじゃないか、と番司が本気で疑う程の体捌きで、
一瞬の内に間合いを詰めて―――

「死ねぇえええええええええっ!」
「ば、だから足を上げると見えっぉごぉおおおぉぉおおおお!?」
350499 8/11:2007/04/03(火) 22:32:26 ID:o3UTe5oZ

どぼーん。

と、新たな水柱が池の水面に上がったワケだが、
それが何のせいなのか・・・今度ばかりは果歩にも番司にも、明らかだった。
そしてそれは、いつの間にかとっくに橋を渡りきり、
そこから二人の様子を観察していた別の二人にとっても、である。

「あははー! いやぁ、良い感じになるかと思ったんだけどやっぱりあの二人だね〜♪
 まぁ、これはこれで良しかにゃ〜♪」
「いやぁ、優さん楽しそうですねぇ」
「そりゃそうよ〜! あの仇同士みたいな二人がイイ感じになるなんて、
 これはもう一大イベントだからね〜!」

既に陸地にいて余裕たっぷりの優がビデオカメラを向けていることなど、
果歩も番司も全く気付いてはいないのであった。

「しかし優さん、あの水柱、あれは一体なんだったんです?」
「あははー、第三研のとき、真芝の連中と我也社長に潜水艦で逃げられちゃったことあったでしょ?
 それでね〜、対抗策として無音で自走式の水中機雷を開発したはいいんだけど、
 なかなかテストする機会がなかったからね、折角だからちょっと持ってきてみたのさ〜♪」
「真芝も壊滅したというのに、相変わらずタチの悪いモノ開発してますねぇ」
「タチの、悪い・・・?」
「しかもソレを遊園地に持ち込むあたり、なかなかのモノですね、はっはっは」

優にジト目で睨まれても全く動じない辻原も辻原なら、

「まーほら、脅かし用に威力は最小限まで絞ったし、
 果歩ちゃん達が人目の少ないタイミングを選んでくれたし、
 遠くから見たら噴水に紛れてわからないしね!」

一瞬だけムッとした顔をするも、全く悪びれない優も優で相変わらず。
辻原に“タチの悪い”呼ばわりされたコトなど即座に忘れたかのように、
二人の様子をファインダー越しに眺めつつ、

「それよりホラホラ、こうして面白〜いイベントも一部始終カメラに収めたし!
 万事オッケーじゃないかにゃ〜♪」

さも楽しげに笑う。
そんな優を相手に、

「ま、優さんが楽しそうですし、いいんですがね」

辻原もまた、それなりに楽しそうなのであった。


351499 9/11:2007/04/03(火) 22:35:12 ID:o3UTe5oZ

「ぶぇくしっ!」
「ちょっと、くしゃみするにしてももう少し静かにしなさいよ、恥ずかしい・・・」
「うるせー! 大体誰のせいで・・・っくしっ!」
「う、うるさいわよ! だからほら、これあげるから・・・」
「お? おお、すまねーな」
「ん・・・」

そう言って差し出されたタオルと缶コーヒーを受け取り、番司はとりあえず髪と顔を拭い始める。

「わ・・・」
「・・・あ? なんか言ったか?」
「べ、別に?」

この季節にヒトを池に蹴り込んでしまったのは流石にやりすぎたと思ったのか、
番司をベンチに座らせておいて果歩は売店に走り、それらを買ってきたのだ。

「そうか? あぁ・・・しかし温まるぜ、サンキューな」
「う・・・その」
「あ? だからなんだ?」
「だ、だからその! わ・・・悪かったわね」
「・・・どうしたいきなり?」
「どうしたって、だってアンタ! その・・・ちょっとやり過ぎたかな、って・・・」
「あー、確かにな、普通のヤツならキレるぞこりゃ」

と、まるで他人事のように言いながら有難そうにコーヒーを啜り、

「って、アンタはキレないワケ・・・?」
「あぁ・・・はっ」

果歩の疑問を鼻で笑い飛ばす。

「何せ理を得てから修行はほとんど水の上だったんだぜ?
 姉貴に池に叩き込まれたコトなんざ、それこそ、何十、いや、何百・・・・・・
 って嫌なこと思い出させんじゃねーよ!」
「なに今更キレてんのよ!」

と、今度は不意に普段の調子に戻る二人だが・・・

「く・・・は、はははっ!」
「ぷ・・・あはははっ!」

自分達のやりとりの間抜けさに、舌戦に発展する前に笑い出してしまう。

「へっ・・・まぁなんだ、決して良い思い出ってワケじゃねーが池に落ちるのは慣れてるからよ、
 まぁあんま気にすんな」
「あはは、そりゃ良い思い出なんかじゃないでしょーね、はは・・・まぁ、うん、わかった。
 それにアンタが悪いんだしね、そもそも!」
「いやちょっと待て! それは・・・いやいい、もうそれでいいわ・・・」
「そう? じゃあそういうコトで♪」
「ったく・・・まぁ、その方がオマエらしくていいか」

先ほどのしおらしさは何処へやら、という感じですっかりいつもの調子を取り戻した果歩に苦笑しながら、
番司はコーヒーの残りを一気に飲み干す。

「何よその言い方! 年上みたいにまとめちゃってえらそーに!」
「いや年上だろーがよ俺のが」
「うるさいわねこのパン・・・」
352499 10/11:2007/04/03(火) 22:36:54 ID:o3UTe5oZ

以前はなんの躊躇いもなく口にしていた言葉だが、
先程の件を経た後では意識しすぎてとてもじゃないが言えるハズもなく、
果歩は再び顔を真っ赤にしてうつむいてしまう。

「お、おい!?」

先程と同じ不穏な雰囲気を感じ、番司は思わず後ずさるが―――

「い、いいから行くわよ、この番司!」

真っ赤なままの顔を上げて一息にそう言うと、さっと立ち上がって歩き出す。

「ああ・・・・・・って」

やれやれ、と腰を浮かしたところではた、と止まり、

「なぁ、今、オマエ、名前―――」
「ほら! さっさと立ちなさいよ! 優さん達のこと探さなくちゃならないんだから!」

勢いで言ってはみたものの、恥ずかしさが後からじわじわと効いて来て、
自分でもわかるくらいに照れて真っ赤に火照った顔を伏せてすたすたと歩く。

「あ・・・お、おい!」
「な、なによ!? あとそう! あんまり近づかないでよね!
 ずぶ濡れのヤツと一緒だなんて、それだけでも恥ずかしいんだから!」
「いや、そんなコトより・・・ってーか、何やってるんすか・・・」
「は? 何よいきなり、変な言葉遣いして・・・気持ち悪いわね」
「いや、だから前・・・オマエ気付いてないのか?」
「へ・・・?」

何がなんだかわからないが、とにかく未だ僅かに赤い顔を上げてみると・・・

「や、果歩りん、楽しそうだね〜♪」
「あ、優さ・・・・・・な、何やってるんですかっ!」

そこには、これから探そうとしていた優がいつのまにか立っている。
・・・何故かカメラを構えて。

「いや〜、折角の楽しい休日のひとコマだしね、これは是非に記録しておこうかにゃ〜って♪」
「い・・・い、いつからそうして?」
「ふふふ〜♪」

果歩の問いをスルーして怪しく笑う優。
その目こそカメラで隠れてはいるが、
如何にも楽しそうに綻んだ口元は果歩にとっては嫌な想像を掻き立てて止まず・・・

「ちょ! 優さん!? ねぇ!? ちょっとソレの中身、見せて下さい!」
「え〜、今はまだ撮影中だから、
 あとでちゃ〜んと編集したモノを見せてあげるよ〜♪」
「んな!? 編集って、何をする気ですかっ!」
「ふふ〜、そんな気にしなくとも平気だよ!
 ちゃんとスカートの中は見えない様にしといてあげるくらいだから〜♪」
「な・・・・・・んなぁああ!?」

その一言で、果歩は湯気が出るんじゃないかと思うくらいに真っ赤になって・・・

「な、な、なんでそんなところまで録ってんですか―――!」
「いやー、カメラ持って来た甲斐があったね〜♪」
「だだだダメです! 不許可です! そんなモノは没収ですっ!」
353499 11/11(続く):2007/04/03(火) 22:37:51 ID:o3UTe5oZ

完全に錯乱した果歩は、なりふり構わず優のカメラを奪いに出るが、

「あはは〜、ほらほら果歩ちゃん、捕まえてごらん〜♪」
「まってぇ―――!」

そんな感じで駆け出してゆく女性二人を、残された男性二人が見守る。

「はっはっは、楽しそうですねぇ」
「アイツはともかく優さんの方は間違いなく楽しんでますね・・・
 ってか隣で見てて止めたりしないんスか」
「まぁ折角楽しそうなんですし、だいたい優さんが止めて止まる方だと思いますか?」
「・・・そうすね」

取り合えず辻原に全く止める気がない事を確認はしたものの、
それで番司がどうするかと言うと・・・

「番司君こそ、追わなくていいんですか?」
「いやぁ・・・」

曖昧な声を上げて、番司は果歩と優の姿を目で追う。
ぎゃあぎゃあ叫びながら(主に果歩が)駆けて行く二人の姿はだいぶ遠ざかっているのに、
声だけは未だにハッキリと届いてきて、

「あの状況のあの二人に混ざるのは流石に・・・ちょっと抵抗がありますわ・・・」

はは、とややひきつった笑いを浮かべる番司だったが、

「そうですか? 果歩さんと番司君のやりとりもなかなか賑やかで楽しげでしたが?」
「んなぁあ!?」

思わぬ不意打ちに取り合えず叫んで、

「何すかいきなり! 大体何処が楽しげだっつーんですかっ! てか何処から聞いてたんすか!」
「いやぁ、まさかあんなに仲が良いとは意外でしたよ、はっはっは」
「違ぇ!」

大慌てで思い切り否定するが、辻原はあくまでもマイペース。

「ではあの二人も見えなくなってきましたし、我々はロッカーの方にでも行っていますか。
 そろそろお昼の時間ですからどうせ皆、荷物のところに戻るでしょうし」
「っく! そ・・・そうっすね・・・」

いきなり普通の話題に戻されて、番司としてはこれ以上何も言えず、
歩き出した辻原の後を追うが、

「ああ、今からでも果歩さんを追うなら止めませんよ?」
「追わねーよ!」
「あの歳で家事を一手に引き受けて家計のやりくりまでされているそうですからねぇ、
 いまどき珍しいくらいしっかりしたいい子じゃないですか」
「関係ねぇえ!」
「番司くんもなかなか見る目がありますねぇ、はっはっは」
「だから違うってんだ――――――!」

カラカラと笑う辻原と、ひたすら叫ぶ番司。
ただでさえバンダナに学ランと人目を引く格好で、その上ずぶ濡れの男がぎゃーぎゃー叫んでいるものだから、
もはや先に走り去った優と果歩以上に周囲の注目を集めてしまっているのだが、
当の番司はそんなこと、まったく気付く余裕もないのであった。

354499:2007/04/03(火) 22:41:15 ID:o3UTe5oZ
今回の投下分は以上です。
次はまた、近いうち・・・とは言えませんが、ぼちぼち投下させて頂こうかと思ってます。
では、失礼しますー
355名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 01:18:43 ID:3zAWQrkK
GJ!
番司と果歩のやりとりが微笑ましいやら笑えるやら
356名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 20:13:25 ID:iCteomHs
GJ
ふと思ったけど、果歩と番司がいちゃついてる裏では我聞と陽菜がラブラブしてるんだろうな
357名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 21:33:07 ID:m+/H8EiX
おいっ!!
それを今せっせと執筆中に決まってんだろっ!!
みなまで言わせるな
358名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 22:11:08 ID:Dp36kE93
おんれ番司、俺の果歩タソをどうする気だ!
このSSを読んで少しへこんだ俺はもうだめかもわからんな…だがGJ!
359名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 01:48:46 ID:GFcNaLNd
hosyu
360名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 08:17:58 ID:CaYP4kZf
hosyuって……過疎ってきたな、>>499氏ですら感想がこの量か
新作が出来るまで終わらせたくないんだがな
361名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 19:15:33 ID:L58K9ntE
萌えスレは落ちた・・・
362名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 19:25:47 ID:L/qOZowk
>>360
 恐らくこのスレの住人は、
5割が陽菜派、2割が果歩派、2割がかなえ派、1割がその他派、で構成されている。
 陽菜によって形成が覆る可能性は高い。
363名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 20:15:47 ID:zpVW7WL7
あと、連載が完結してから感想書こうと思ってる人もいるだろう
連載中は感想書きにくいからな
364名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 23:48:57 ID:Qs1JLQc6
陽菜で形成が覆る……
俺に書けと? 果歩派なんだが
365名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 01:53:12 ID:MlUVBweV
>>362
おまえ桃子をその他とか抜かしてるんじゃねーぞ?w

・・・その他なんかじゃないよね・・・・・・?
366名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 02:00:00 ID:U1iyh1Mf
>>365
桃子は唯一専用スレが立った御方。
桃子編で転んだ奴は数知れず





だが
367名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 04:25:18 ID:sSSoxmnj
俺も果歩派デスヨ?
ミニスカートと脚にハァハァなので、499さんの今回の作品は
かなりツボでした。低能っ!
あと果歩りんと言えば、ツインテールがなびいているシーンが
強く印象に残ってるな。
368名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 10:41:25 ID:ih0y/hkM
hosyu
369名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 17:41:44 ID:+IoWjHVp
自分も果歩派ですね。桃子もいいけどやはり果歩です。
自分は以前、ここでも何本か書いたことがあった。あの頃は神職人さんがたくさんいたもんだ。
昔の賑わいも何処へやら。ここも淋しくなったものですな。
370名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 20:00:43 ID:CzBOhGJA
じゃあみんなで書いて盛り上げればいいじゃん
1人1作品でだいぶ賑わってくるのでは?
371362:2007/04/08(日) 21:04:50 ID:N+SlTPpJ
桃子を忘れてた……。
恐らくこのスレの住人は、陽菜派3割、果歩派2割、桃子派2割、かなえ派1割、その他(優、ほっちゃん、真耶、珠、雪見、さなえ等々)派2割。
これだ。
そして、桃子の存在を忘れていた俺は吊ってくる。
372名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 09:13:08 ID:UV3r5oRP
まぁ待て。371。まだ吊るには早い。
確かに桃子を忘れていた罪は重いが…

かなちんに帰依するならばその罪も許されるっ!!
373名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 15:26:14 ID:TNQvUkB4
帰依するならほっちゃんだろ!!
374名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 22:32:58 ID:a7UqP2Tp
桃子だろ、常識的に考えて
ところで昨日果歩と桃子を組み合わせると破壊力が四倍以上になることを発見したんだが
375名無しさん@ピンキー:2007/04/11(水) 01:50:40 ID:Qve5pLx/
>374
く、組み合わせるって…(ゴクリ)


……

果歩「ど、どう?…桃子…あっ…」
桃子「らめぇ、カホ…こすらないでっ!」

…こんな感じですか?
(予告なしの百合ネタ、すんません)
376名無しさん@ピンキー:2007/04/11(水) 11:50:39 ID:dHTkSbN6
たった2行でなんて破廉恥な…!
377名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 01:23:48 ID:oZhOYP++
>>375
それもイイ。


……

果歩「お…おにいちゃ…お…く…こすれて…っあッ!」
桃子「カホ、かわいい…私も…カホとひとつになりたいよぉ…」

……


すまん。角煮に帰るわ…
378名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 01:29:45 ID:6dJE9/6t
>361 久しぶりにのぞいてみたら落ちてた・・・ ごめんょぉ
 ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1160769902/
379名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 04:47:43 ID:6duUwGex
>>377
待て、戻る前にもう少し書いていけ
いや書いてください
380名無しさん@ピンキー:2007/04/15(日) 20:38:54 ID:bXbPtSva
保守。
ところで果歩ブラコン疑惑の件なんだが
381名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 01:50:53 ID:9piGdaFH
え、疑惑なん?確定じゃないの?
382名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 03:33:09 ID:3yXNFb4F
成長した果歩とバンジが初エッチするまでに至った。
しかし、彼に抱かれながら、つい口からは別の男の名前が・・・
「お兄ちゃん・・・」

とかだったら、一波乱あるな。
383名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 14:14:33 ID:XbAGu5Vk
>>382
「お兄ちゃん・・・よりおっきい」の方が大波乱だぜww
384名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 22:04:32 ID:L7HyMlr+
つまり1巻の果歩こそ真実で9巻の果歩は幻覚ってことだな。
385名無しさん@ピンキー:2007/04/18(水) 22:08:50 ID:TJf/QjjO
hosyu
386名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 03:02:47 ID:U1//6d8R
保守
387名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 12:39:29 ID:JFsglsSA
ホシュがてら投下させていただきます
388名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 12:41:00 ID:JFsglsSA

 國生さんとの同棲が始まって数年、工具楽家の経営状況も軌道に乗り、二人掛りのやりくりによって貯金も貯まり、
果歩念願の自家用車が我が家にやって来た。
 國生さんと果歩による厳選された車。
 お店の人が泣いていたのは目を瞑るしかない。
 その間に免許証とやらを取らされたのだが仕事との両立は厳しく、なかなか取らせていただけなかった。

 車に乗れるようになってからというもの、遠くの特売やらでガソリン代を考慮に入れた使用方法が定着していた。
 助手席には國生さんを乗せてのドライブ。
 家や仕事場ではあまり二人っきりになれず、ここが唯一の空間。

 車を駐車したらどちらともなく手を繋ぎ歩き出す。
 お店に入ると顔つきが変わり、最初はびびってしまったが慣れとは恐ろしいものである。
 鮮度、値段、賞味期限に原産地、すべての情報を一気に頭の中でフル回転状態の國生さん。
 自分は荷物持ち。しかし、そんな國生さんを眺めていられる幸せなポジション。
 そして、少しの無駄遣い。
 國生さんと俺でアメを二つ買って帰る。あいつ等には秘密の、二人だけの贅沢。
 國生さんはオレンジ味、俺はソーダ味。

 荷物をトランクに入れて車を発進させる。
 アメを舐めるのは忘れない。
 隣には楽しそうにはしゃぐ彼女。
 ここ数年で大分明るくなってくれた。
 俺もついつい顔がにやけてしまう。
 そんな小さな幸せ 二人だけの空間。

 今はもう隣には誰もいない。

 あれから10年。

 いつものようにトランクに荷物をしまう。
 手馴れた手つきでアメの包み紙をはがす。

 今をもう存在しない二人だけだった空間。
 二人だけの贅沢を隠す緊張感。
 崩れ去った小さな幸せを感じられる時間。
389188:2007/04/23(月) 12:42:15 ID:JFsglsSA

 そんなことを思い出しながら少し呆けていた。


「あなた? どうかしました?」

 後ろから心配そうな声が聞こえてくる。

「だからお父さんは未熟なんだね」

 満面の笑みで、グサグサと突っ込む娘。
 俺たちの良い所(だよな?)を受け継いだ長女。
 むむっ、手厳しい。

 ふふっ、なんて笑い声も聞こえてくる。
 娘を黙らせる最終奥義
「ほら、アメだぞ」

 喜んで受け取る國生さんと娘。

 二人っきりの空間は三人のものになった。
 小さな幸せは大きな幸福になった。
 二人の秘め事は三人の秘密になった。

 この幸せがずっと続いていくことを心から願う。





 娘は彼女と同じソーダ味がお気に入りだ。
390名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 12:43:01 ID:JFsglsSA
以上です
391名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 12:46:49 ID:JFsglsSA
すんません
最後間違いです
392名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 14:28:37 ID:V5jhjsrL
GJ!
>>388の最後で、あれ?ひょっとしてちょっと待てうわそれは
とか思ったが、幸せそうなオチで良かった
393名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 04:37:41 ID:Ite8TmLz
>391
いや、もともと「(帰りの道中)お口であ〜ん」してたと解釈すれば無問題ょ!

ソーダは経理担当重役奥方様が、オレンジは社長が頬張っているのら。
394名無しさん@ピンキー:2007/04/27(金) 01:25:44 ID:x6rPc8PF
GJ!
だがしかし、娘が生まれたのにまだ國生さんて呼ぶなw
395名無しさん@ピンキー:2007/04/29(日) 00:36:28 ID:PgdG4Jin
こなたキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
396名無しさん@ピンキー:2007/04/29(日) 11:36:09 ID:YXtIkgxd
hoshu
397名無しさん@ピンキー:2007/05/03(木) 21:09:02 ID:S03e3uIc
hoshu
398名無しさん@ピンキー:2007/05/06(日) 09:55:54 ID:GHUiyMtK
久々の更新来たな
399名無しさん@ピンキー:2007/05/06(日) 16:45:17 ID:Ya7hcKkf
今更だが夏休みの友まだ入手していないのだが
諦めるしかないのかね?
400名無しさん@ピンキー:2007/05/06(日) 18:54:41 ID:iGUifByo
>>399
春になる前の話になっちゃうけど、
池袋のとらのあなの中古同人誌コーナーに800円くらいで2、3冊置いてあったのを見た。
その手の店に足を伸ばせる環境なら探してみるのもいいかも。
401名無しさん@ピンキー:2007/05/08(火) 23:25:59 ID:o1nQn3Eh
hosyu
402名無しさん@ピンキー:2007/05/10(木) 21:48:54 ID:6kyuG6Bx
保守?
403名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 07:29:49 ID:Lj1/bDAp
保守
404ホシュ:2007/05/12(土) 13:03:40 ID:lvJckiyT

「ガモンが好きっ! 好きで好きでどうしようもないの! やることなすこと手につかないのっ!
ガモンが好きで……ガモンのこと以外何も考えらんないのっ!
ガモンがハルナと仲良いの知ってる……アタシなんかが入りこめるスキマがほとんどないこともよく分かってるっ!
ねぇ、助けてよ……アタシのこと助けてよっ!! 真柴から救ってくれたときみたいにアタシの世界を変えてよっ!!」
普段の明るさからは想像もつかないほど震え、巨大な何かに脅える様な瞳が印象的だった。




これを考えてかれこれ三ヶ月 考えることを放棄
せっかくなのでホシュがてら
405名無しさん@ピンキー:2007/05/13(日) 21:58:48 ID:V6a6FtxE
>>404
桃子ヤンデレフラグ?
これは…イイ。
406名無しさん@ピンキー:2007/05/13(日) 22:16:38 ID:EGZRvbTE
>404
うん、気持ちは良くわかる。
自分も久しぶりにSS作成中なのですが、
プロットの段階で話の規模がデカくなり、収拾が付かない事が発覚、
練り直してるんですヨ。
エロシーンだけ描くのも前衛的(?)だしねぇ。
407名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 17:41:53 ID:6NgX6KLQ
hosyu
408名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 23:55:48 ID:VFEP4Poy
空気悪くするようで嫌なのだがとりあえずsageてくれ
それと流れを読んで一言くらいコメントしてはどうだろうか?
どんな感じでもいいから盛り上げて低能神たちの帰りを待とうではないか
409名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 22:31:33 ID:4RTgEz3I
低能ネ申召喚の呪文を唱えるのだ いあ いあ
410名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 23:47:59 ID:LxsmpqSu
桃果汁を摂取して頑張るぞっ…ぢゅるり。
411名無しさん@ピンキー:2007/05/16(水) 22:12:28 ID:F0HAdevl
412:2007/05/17(木) 01:17:30 ID:RTLlGh7H
工具楽我也と國生武文が出発してから、早2週間・・・。「すまない、國生さん!」「言い訳ならけっこうです。」「むぅ。」木曜日の午後6時、工具楽屋で事件が起きていた。怒る陽菜に必死で謝っている我聞。話は少し前の部活後にさかのぼる・・。
413名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 07:28:23 ID:q//DXmIB
>>383
そこはお兄ちゃんのがデカい展開のが面白いだろう、番司的に
414499:2007/05/21(月) 00:51:41 ID:9FHaqQFo
なんかもう間が空きまくりで恐縮ですが、
前回(>>343-353)の続きを投下させて頂きます。

今回は短めで、果歩と番司のお話をもちっと、って感じで・・・
415499 1/7:2007/05/21(月) 00:52:54 ID:9FHaqQFo

そして時刻はお昼を回り―――

「うわ、随分たくさんあるわね〜」

重箱やらタッパーやら、次々と取り出されては開かれてゆく大量のお弁当を前に、
桃子が思わず感嘆の声を漏らす。

「はい、今日は大人数ですし、果歩さんと頑張ってみました!
 ね、果歩さん・・・果歩さん?」
「え? あ、ああ! ほんと、ただでさえ人数がいる上に食べ盛りが多いですからね〜!
 陽菜さんが手伝ってくれて助かりました!」
「いえ、果歩さんの手際のよさは本当に凄かったです・・・けど、どうかされたのですか?」
「い、いえ! 別に何もありませんよ!?」
「はぁ・・・」
「そ、それより、準備もできましたし、お弁当たべましょ!」
「「いっただきま―――すっ!」」

妙にそわそわしている果歩の様子が、陽菜には少し気になったが・・・

「あー! こら珠! 斗馬も! 沢山あるんだから慌てない!」
「むぐ・・・ふぁい!」
「もご、んぐ、いぇっさー!」
「もー、お兄ちゃんもなんか言ってやってよ!」
「む? ふぉ、ほうだな、珠、斗馬、んぐ・・・」
「社長も口にモノを入れたまま喋らないでください!」
「むぐ! す、スマン・・・」

食事が始まってしまえば果歩を含めていかにも工具楽家らしいいつも通りの展開で、
陽菜もそんなことはすぐに忘れてしまう。

「あははー、こりゃあ我聞くん、尻に敷かれるのはもう確定かにゃ〜♪」
「な!?」「んぐ!?」

一見、珠や斗馬と競り合うようにお弁当に集中している様子だった優から不意の茶々を入れられて、

「何を言うんですか、そんな、別に私達―――」
「むぐ、ほ、ふぉうれふよ、優さ・・・っぐ!? む! んぐ・・・!」
「しゃ、社長!? えぇと、これどうぞ、お茶です!」
「むぐ・・・んぐ、んぐ――――――ぷはぁっ! た、助かったよ國生さん、はぁ・・・」
「もう、だから食べながら喋らないでくださいって・・・」
「う・・・面目ない・・・」

微妙に顔を赤くしながらお小言を言う陽菜に、やはり顔を赤くした我聞が済まなそうに謝る。
いつもならここに優か果歩からの更なる追い討ちがかかるのだが、
どうやら今回は見逃して貰えたようで二人は安心して顔を上げ―――

「・・・って優さん何してるんですか!」

もぐもぐと休み無く口を動かしつつ、片手に構えたカメラで二人の様子をしっかり録っている優に今更気付く。

「んぐんぐ・・・っく、いやーほら、折角みんなで遊びにきてるんだし、
 記念に映像を記録しておこうと思ったんだけど、なんか録られちゃマズいことでもあったかにゃ〜?」
「い、いえ・・・そういうワケでは・・・」
「だよね〜♪ じゃあこっちのことは気にしないで我聞くんも陽菜ちゃんも食べた食べた〜♪」
「は、はぁ・・・」

そうしてカメラを向けられたまま、二人はさも恥ずかしそうに顔を赤らめながら食事を再開する。
416499 2/7:2007/05/21(月) 00:55:05 ID:9FHaqQFo

武文が例の爆弾発言を残して旅立ってからそろそろ一年。
その手のネタでからかわれては赤面して恥ずかしがるところは、この二人とも全く変わっていないのだ。

「なぁ、結局カメラは奪えなかったんだな」

そんな二人を苦い顔で見つめながら、番司は隣に座る果歩に低い声で話しかける。

「ん・・・仕方ないでしょ、優さんに追いつくだけなら余裕だけど、流石に蹴るワケにもいかないしさ」
「なんだ、その辺の良識は一応あるんだな」
「んな!? 人を何だと思ってるのよ! 私が実力行使に出るのはウチの家族とあとはアンタくらいよ!」
「いや、俺も蹴るな」
「別にいいじゃない、アンタも凄く頑丈なんだし」
「頑丈ならいいってモンじゃねーよ!
 それに何だ、その、オマエの蹴りは、色々と問題が、だな・・・」
「う・・・だ、大丈夫よ! これからはちゃんと飛び蹴りとハイキック系は控えるから!」
「そういう問題じゃねー!」

そう叫びながら、番司は半ばやれやれという感じで二つ目のオニギリに手を伸ばそうとして・・・

「な、何こっち録ってるんすか!?」

我聞と陽菜に集中しているとばかり思っていた優のカメラはいつの間にやら番司と果歩に向けられていて、

「な!? ゆ、優さん!?
 ―――って、なんでみんなしてこっち見てるんですかっ!」

そればかりか桃子も我聞も陽菜も、なんとなく意外そうな顔つきで二人のことを見ているのだ。

「いや、ね・・・アンタ達、なんか雰囲気変わってない?」
「なんだそりゃ!? 別に何も変わってねーよ! なぁ?」
「そうよ! 大体何がどう変わったって言うのよ!」

二人とも、橋での一件以外には別に何も心あたりがある訳ではなく、
今言われていることはそれとは全く関係ないハズなのだが・・・何故か妙な緊張を覚えてしまう。

「何がどう、というとなぁ・・・んーむ」
「そうですねぇ・・・」

そんな果歩と番司を交互に見やりつつ、

「仲が良いのは前からだったが、何というか・・・」
「はい、もう少し・・・」

我聞と陽菜はさも当然のようにそんなことをサラリと言い放つ。

「ちょっ、お兄ちゃん!? いつ私が番司なんかと仲良くしてたって言うのよ!」
「陽菜さんもそこで納得しないでください! 誰がコイツなんかと!」

果歩や番司だけでなく、流石にそこは桃子も優も我聞たちに突っ込みかけるが、
すぐにそのままの方が面白そうだと判断し、ニヤニヤしながら当面は様子見に回る。

「いやでも、しょっちゅうじゃれあってると言うか」
「はい、親しいからこそ出来ることでしょうし・・・」
「「いやそこはホント違いますっ!」」

そんなズレまくった認識を共有する二人に、果歩と番司が慌てて否定の声を上げるが、
それは半分照れ隠し、そして半分は素のツッコミ。
これが優の発言なら、自分たちをからかっているとわかるのだが、
我聞と陽菜の場合・・・本気でそう思っているからある意味余計にタチが悪いのだ。
417499 3/7:2007/05/21(月) 00:56:31 ID:9FHaqQFo

「アレは普通に攻撃してるだけよ! 番司は常に邪魔ものでしかないんだから!」
「そうだぞ! 俺はいつも一方的に蹴られ・・・って何が邪魔者だテメェ!」
「邪魔なモノは邪魔なのよ! いい加減アンタが入り込む余地が無いことくらい察しなさいっての!」
「それでスパッと諦めてもっと私を見て?」
「そうそうそれで――――――って違うわ―――!
 桃子アンタ! ドサクサに紛れて何てこと言わそうとしてんのよ!?」
「えー、いいじゃん別に、なかなかお似合いかもしれないわよ?
 ねー、ユウ?」
「そうだねぇ、なかなか悪くないかもしれないかな〜♪」
「ちょ! 優さんまで何言ってるんですかっ!」

我聞と陽菜の見当違いな発言が元で唐突に予期せぬ展開にもつれこんでしまい、
果歩も番司も今度は何を言われるのかと気が気ではない。
そんななか、場を混乱に陥れた二人はというと―――

「むぅ、仲が良いとは思ってはいたが・・・果歩もそういう歳になっていたか・・・」
「社長も兄として複雑な気分になられたりするのですか?」
「むぅ、番司なら任せられるような気もするが・・・
 む・・・・・・ん? この玉子焼きは國生さんが?」
「あ、はい、わかりますか?」
「ああ、果歩が作るのより甘さが控え目で・・・うん、ウマイよ!
 これなら幾らでもたべられそうだ!」
「本当ですか!? よかった、社長のお口にあって・・・沢山ありますから、どんどん食べてくださいね」
「よっしゃ、任せておけ!」

と・・・果歩も番司もそっちのけで、いい雰囲気になったりしているのだった。


418499 4/7:2007/05/21(月) 00:58:20 ID:9FHaqQFo

そんなこんなで慌しい昼食も終わり―――

「はー、なんか散々だったわね・・・」
「ああ・・・ったく、ヒトをネタにしやがってよ」
「なんとなくだけど、少しだけお兄ちゃん達の気持ちがわかった気がするわ・・・」
「工具楽と言やぁ、とんでもねぇこと言うだけ言っておいて、陽菜さんとああもベタベタと・・・
 ぐ・・・思い出したらまたムカついてきた・・・あの野郎・・・」
「まったくねぇ、折角お兄ちゃんと陽菜さんがあんないい感じになってたっていうのに、
 優さんったらカメラを向ける気配すら見せないんだから・・・はー・・・」

微妙に話が食い違っていても互いに突っ込む気力も無く、
二人は晴れた遊園地の午後に似合わぬ疲労感を漂わせつつふらふらと歩く。

「アンタ達、せっかく遊びに来てるってのにもうちょっと景気良くいかないモノなの?
 なんかこっちまでげんなりしてきちゃうんだけど〜」
「う、うるさいわね・・・アンタがあれだけ根も葉もないくっだらないコトをまくし立てるもんだから、
 なんかもう疲れちゃって・・・」
「大体午前中からして優さんに振り回されっぱなしだったしな・・・
 あの池の件、どう考えてもあの人の仕業だろ・・・」
「そうね・・・なんかもう、してやられたわ・・・」

見かねた桃子がチクリと棘を刺したところで、二人のテンションが上がる気配は全く無い。
普段、我聞と陽菜の件では果歩にやりこめられることの多かった桃子としては、
ここぞとばかりに果歩を弄り回す良い機会だったのだが、
それも楽しいのは相手のレスポンスがあってこそ。
こうもげんなりされてしまっては弄り甲斐も薄れてしまう。

「はぁ・・・なんかこっちまで調子狂いそうだわ、ホント。
 アンタ達、少し休んでたら? タマとトウマは私が面倒見といてあげるからさ」
「ん・・・そう? じゃあそうね・・・悪いけど、そうさせて貰おうかしら・・・珠、斗馬、いい?
 桃子になら多少迷惑かけても構わないけど、他のお客さんの迷惑にはならないようにしなさいね?」
「「らじゃ〜!」」
「いやちょっと待ちなさい」
「それじゃ俺も少し休ませて貰うとするわ、なんつーかしばらくぼんやりしてぇ・・・」
「・・・まぁいいわ、突っ込むだけ無駄そうだし。
 とりあえずこっちは適当に遊んでくるから、ま、二人っきりでごゆっくり〜♪」
「「んなっ!?」」

突っ込む甲斐も無いくらいに投げやりな二人に多少の不満を覚えつつも、
最後にはしっかりと言うことを言って、桃子はにニヤリと薄ら笑いを浮かべながら・・・

「じゃあタマ、トウマ、いくわよ〜!」
「「おお〜!」」

二人が何かを言い返す間もなく一気に走り去ってしまう。
そんな桃子に慌てて何か反論しようとした果歩と番司も、
頭に浮かぶ文句はどれもこれもお弁当の最中に飽きるほど口にした言葉ばかりで今更叫ぶ気にもなれず・・・

「・・・・・・あ―――、いいやもう・・・」
「あぁ、なんつーか・・・いちいち叫ぶのも疲れるぜ・・・ったく」
「とりあえず、座りましょ」
「あぁ、そうだな」

やれやれ、と溜息をついて空いている手近なベンチに腰をかける。
419499 5/7:2007/05/21(月) 01:00:05 ID:9FHaqQFo

「はぁ・・・ホント参ったわ・・・
 しょっちゅうこんなのに耐えてるんだから、お兄ちゃんも陽菜さんもタフだわ、全く」
「まぁなんだ、あの二人はそれなりに根拠があるっつーか、そういう雰囲気があるからいいんだろーけどよ、
 流石に俺達みたいに薮蛇が過ぎるともう、どうにもなんねーっつーかなぁ」

果歩の愚痴を受けて、番司も同じ調子で心情を吐露する。
その台詞を、適当な相槌で流そうとした果歩だったが、ふっと思いとどまり、考え直し、そして・・・・・・

「・・・へぇ?」
「あん? なんだよ?」
「いやぁ・・・アンタもお兄ちゃんと陽菜さんに“そういう雰囲気”があるのは認めてるんだな〜って」

ニヤリと笑う果歩に番司は“しまった”という顔をして何か言おうとするが、
それも面倒になってしまったのか、

「まぁ、流石になぁ・・・その辺、認めねー訳にはいかねーよ」
「・・・・・・アンタ」
「あん?」
「やっぱり風邪ひいたんじゃ・・・」

思わず番司の額に手を当てる果歩。

「い、いやだからそんなにヤワじゃねーよ!
 認めたってのはあくまで現状を正確に把握してるってだけのことだ!
 誰も諦めたなんて言っちゃいねー!」
「・・・ちっ」
「・・・てめ・・・」

舌打ちする果歩に食ってかかろうかとも思った番司だったが、

「・・・はぁ」

なんかもう本気で疲れてきて、まぁあいや、と流してしまう。
そんな番司に拍子抜けしつつも、果歩も果歩で疲れていることには変わりなく、

「まぁいいや・・・もう今日は一時休戦ってことにしましょ」
「あぁ、ありがてぇ」

お互いになんとなく投げやりな感じに休戦協定を結び、やれやれともう一度溜め息をついてみたりする。

「はー、今頃お兄ちゃんと陽菜さん、上手くやってるかなぁ」
「さぁな・・・考えたかねーけど、優さんに良いようにイジられてんじゃねーか?」
「そうよねー・・・一応本来の目的は優さんと辻原さんをイイ感じにするのことだけど・・・
 あの二人が何か気の利いたことが出来るとも思えないし、
 かといって優さん達が影響されちゃうくらいラブラブな雰囲気にはならないだろうしなー・・・」
「まぁ気の利いたことはムリだろうけどよ、あの二人にも策は授けてあるんだろ?」
「まぁね、でもその作戦、時間的な条件があってねー」
「時間?」
「ん。 夕方になるまで待たなきゃならなくてねー」
「夕方ってーと・・・」

番司は丁度正面にある時計を見上げ・・・

「あと2時間・・・半てとこか。
 そこそこあるけどよ、別に間がもたなくなる程じゃないだろ?」
「う〜ん、それは心配ないんだけど・・・それまでヒマだなー、って」
「なんだ、そーいうことか」

さも何でも無さそうに、番司はそんな言葉を口にする。
420499 6/7:2007/05/21(月) 01:02:01 ID:9FHaqQFo

「む・・・そんなことって言うけどね・・・
 お兄ちゃんと陽菜さん達ならともかく、私とアンタで2時間半も間が持つと思うワケ?」
「んな難しく考えるなよ・・・折角遊園地に来てるんだぜ?
 オマエは何か乗りたいモノとか無いのかよ?」
「へ・・・?」

そんな極々当たり前の質問に、果歩は何がそんなに、というくらいに意外な顔をする。

「・・・なぁ、どうしたんだオマエ?」
「え・・・あ、あぁ、うん・・・そういえば、全然考えていなかったなぁ・・・って・・・」
「は?」
「だ、だって! 優さんと辻原さんをくっつけなきゃいけない上に、お兄ちゃんと陽菜さんのこともあるのよ!?
 自分のことを考える予定なんて・・・!」

番司としては特に後者について色々言いたいこともあるのだが、
そこを突付くとまたしても不毛な口論に陥ることは目に見えていて・・・

「ま、まぁ、わかったよ・・・けどそれも今日はもうお役御免、だろ?
 折角の機会なんだしよ、楽しんで行ったらどうだ?」

年長者としての体裁、というよりはこれまでのドタバタに疲れてしまっているせいで、
コトを荒立たせないように振舞う番司に果歩は妙な違和感を覚えてしまうのだが、

「う・・・そ、そうね・・・じゃあ・・・」

同様に疲れている果歩としては番司に甘えてしまうようで少し悔しいが、今はもう優たちもおらず、
流石にこのコトで後日冷やかされることもないだろう、と思うと気も楽になって、
つい思ったままの言葉を出してしまう。

「め・・・メリーゴーランド・・・とか・・・」
「・・・は?」

番司としては、別に果歩が何を言うか予想していた訳ではない。
・・・が、余りにもイメージと違う発言に、思わず素で聴き返してしまう。

「わ、悪い!? 私がメリーゴーランドとか乗りたがるの!?」
「い、いや・・・別に悪かねーけどよ・・・なんつーか・・・」
「似合わないって言いたいの?」
「・・・まぁな」

コトを荒立てたくもないが、かといって必死でフォローする気力があるワケでもなく、
結局そう答えるしかない番司。
一方の果歩も、

「わ、わかってるわよ! アンタが私に抱いてるイメージとかけ離れすぎてるってことくらい!
 だけどね! 昔お父さんが遊園地に連れてきてくれたことも何度かあったんだけど、あのお父さんよ!?
 もともと絶叫系ばっかり乗りたがるし、
 それ以外でもカートに乗れば車体が凹むまで体当たり合戦するし、
 コーヒーカップに乗れば空飛んじゃうんじゃないかって思うくらいに全力で回転させるし!
 こーいうゆったりとした、女の子らしい乗り物に乗れたことないんだから!」

体裁を取り繕う気力も無く、ただただ思ったままを口にする。
421499 7/7 (続く):2007/05/21(月) 01:04:56 ID:9FHaqQFo

「そ、そうか・・・そりゃあ大変だったな・・・」

番司もまた、そんな果歩の彼女なりに辛かったらしい過去を否定する気力は無く、

「じゃあ、メリーゴーランドでも何でもいいから、好きなだけ乗ってこいよ、
 俺はこの辺でテキトーに時間潰してるからよ・・・」

この話はこれで仕舞い、とばかりに振舞う。
だが・・・

「は? 何言ってるのよ、番司も乗るのよ」
「・・・は?」
「は? じゃないわよ! アンタまさか、女の子を独りでアトラクションの順番待ちの列に並ばそう、
 なんて思ってるんじゃないでしょうね!?」
「い、いや待て! ちょっと考えてみろ! 俺だぞ!? 俺がメリーゴーランドって・・・」

好きでしている格好とは言え、学ランにバンダナでメリーゴーランドは・・・いくらなんでも有り得ない。
・・・と番司は思うのだが、

「そんなの私の知ったことじゃないわよ! っていうかアンタこそ考えなさいよ!
 こんな遊園地の家族とかカップルで賑わってる列の中、独りで並ぶってどれだけ恥ずかしいと思ってるの!?」
「いやそれこそ俺の知ったことじゃ・・・」
「知っときなさいっ!」

果歩はそんな番司の訴えなど、一蹴して、

「それに・・・そうね、アンタがどんな顔でメリーゴーランドに乗るのか、
 ちょっと興味も出てきたし・・・じゃ、行ってみよっか〜♪」
「お、おい!? ちょ、ちょっと待てって、おいっ!」
「あら、アンタが言い出したんでしょ? 好きなモノに乗れって。
 ま・さ・か、そんな風に言っておいて、年下の女の子を独りで行かせるなんて・・・しないわよね〜?」
「て・・・てめぇ・・・」
「じゃ、行きましょ〜、番司さん♪」
「だーやめろっ! 行ってやるから! 冗談でもそーいう呼び方すんなっ!」
「あははっ! うん、私も自分で言っててちょっと辛いからもう言わない」
「た・・・助かるぜ・・・」

番司をからかうことですっかりいつもの調子を取り戻してしまった果歩と、
彼女にいいようにからかわれて完全に疲れきってしまった番司。
今はまだ当人達は欠片ほども思っていないのだが、
近い将来、いい仲になり、
“果歩にすっかり尻に敷かれてしまう番司”という構図が出来上がってしまうのを、このとき・・・


「うーん、バンジったら情けないわねぇ・・・
 けどまぁ、この調子でカホがバンジといい感じなってくれれば、私へのちょっかいも減るだろうし・・・
 ここは今のところはヒミツにしておいてあげようかしら、ね〜♪」
「ねぇねぇ桃子ねえちゃん、おねえちゃんとパンツマンがどうかしたの?」
「ん〜? いいのよ別に、いつも通りだったでしょ?」
「うんー、そうだけど・・・」
「だからいいの! じゃ、今度こそこっちもこっちで遊びましょ! さぁアンタたち、何に乗りたい?」
「じゃあコーヒーカップがいい!」
「それがしはゴーカートで戦争が・・・」
「う・・・・・・ま、まぁ・・・任せるわ・・・」

なんだかんだで後に果歩の親友となる桃子だけは、
この時点で二人の将来のことも大体お見通しだったりしたのであった。

422499:2007/05/21(月) 01:08:10 ID:9FHaqQFo
今回の投下分は以上です。
果歩と番司のパートは以上で、
次からは我聞と國生さんの方に視点を変える予定です。

また次までに間が空いてしまうかと思いますが、覚えておいて頂ければ幸いです・・・
では、失礼します。
423名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 07:21:28 ID:02k0qz+N
うをををを〜〜!!ぐっじょぶ!
さすがは低脳神、萌えました!
424名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 18:16:12 ID:b36QMuh2
ふとんの上を転がってしまったよ。低能にも程がある!
425名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 22:59:44 ID:n6aG8Nb7
まったくだ 果歩の可愛さが異常過ぎるんだよ
本当に低能な方だ
426名無しさん@ピンキー:2007/05/22(火) 00:12:06 ID:nHJR44DI
ふーっ、はーっ(転がり終えて息を整えつつ)

果歩りんが、果歩りんがーっ!!
この胸に去来するものは…そう、低能っ!
427名無しさん@ピンキー:2007/05/24(木) 02:15:17 ID:nxjuwN0a
おいおい、このタイミングでブログに果歩りん降臨
もしやここにも先生が……
428名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 01:27:22 ID:FNTk5tNv
ほしゅっ
429名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 08:39:44 ID:6FuxbgxN
>427
とか書いてる内にプロフ画像がエロイ…もとい、エライ事に。
時間限定で消去かしらん?
430名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 12:36:14 ID:lqG06F3E
大変迷惑ですけど
プロフ教えてもらえませんか?
431名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 15:35:35 ID:7dy8rtA5
更新キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
432名無しさん@ピンキー:2007/05/27(日) 16:15:06 ID:LGzr40EG
>>429
一体どうなってたの?
すげー気になる・・・
433429:2007/05/27(日) 19:32:03 ID:6FuxbgxN
>432
ゑー?今SS書いてて忙しいのだよ、チミィ(クィッ
だがしかし、432がこのスレの住人なれば我が友も同然っ!
友の危急を見過ごす事など出来ようかっ!

ラフとは言え、少女の全裸でしたヨ?
白いシーツのベット?の上で仰向けになってますた。
もちろん微乳w
頬を染め、潤んだ目で何か(誰か?)を見ている様子。
ラフなりに着色されてて、髪は茶色。
一瞬短髪かと思ったけど、腰まで届く長さ。
特筆すべきは、右肘を曲げて右手を頭の横に置いている
(=胸を隠さず、むしろ強調)ポーズが無防備さを
際立たせている事。

こんな感じでよいデスカ?
434432:2007/05/27(日) 19:48:09 ID:LGzr40EG
>>429
むぁー、それはなんつーか・・・
見逃したのが惜しすぎる・・・

だが詳細ありがとう、マジ恩に着ます。
そしてSSの方もこのスレ向けなのだろうか、期待していまっす!
435名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 18:59:43 ID:/NKHNmhm
平井のエロパロも早く書いてくれ!楽しみにしてるから!
436名無しさん@ピンキー:2007/05/31(木) 15:31:20 ID:m3/tpx7W
なんてことだ。
俺が熱出して寝込んでる間にこんな祭りがorz
437名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 07:50:23 ID:loUH/2CV
hosyu
438名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 20:28:36 ID:p0e07v3V
hosyu
439名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 02:20:01 ID:BXnrdRMS
よこせ!珠をよこせ!このドグサレが!
440名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 17:28:55 ID:YH2Y1n/T
とにかく平井のエロパロ書いてくれ!
441499:2007/06/09(土) 23:40:46 ID:jnQ3OKt2
なんだか最近は月イチ投下みたいな感じになってしまってますが、
>>415-421
の続きを投下させて頂きます。

今回は我聞と國生さん、優さんと辻原さんの方に視点を移してってことで・・・
442499 1/7:2007/06/09(土) 23:43:27 ID:jnQ3OKt2

一方、その頃。
今回の企画の主役たちはと言うと―――

「ねぇねぇ我聞くん! アレ乗ろうよアレ!」
「あ・・・アレ、ですか・・・」

昼食の後もいくつかのアトラクションを回った後、
常に先頭に立って歩いていた優が次の獲物に狙いを定めたところであった。

「・・・なんだか凄いですね・・・」

ゴォオオオオ――――――
優の指差すモノ―――見上げる程の高所を轟音と共に疾走する“アレ”に、
陽菜が驚き混じりの言葉を洩らす。

「どう、はるるんも乗ってみたいでしょ〜?」
「そうですね・・・はい、ちょっと興味があります」

スリルという点ならば、本業の際に中之井が運転するトラックもかなりのものがあるのだが、
頭上を走り抜けるその乗り物からは轟音だけでなく乗客の派手な歓声が聴こえてきて、
それが陽菜の興味を惹いた。
何せ本業ならば中之井のナビを勤めるのは彼女自身。
業務に細心の注意を払っている陽菜にとってスリル等という感覚は邪魔者でしかない。
だが、完全に仕事を離れたこういう機会なら、普段とは違う感覚を体験できるのではないか。
少しでも興味を惹かれたなら、まずは体験してみよう―――
それが、今の陽菜の行動原則となりつつあった。
当然ながら仕事優先であることは以前から変わらないが、
“仕事以外の物事は全て無駄”と決め付けていた一年ほど前の彼女と比べたらそれは大変な変化である。
そしてその変化を陽菜自身、はっきりと認識していて・・・それはとても悪くないことだと、強く思っていた。
だが、そんな彼女の変化に最も影響を与えた人物はというと―――

「おし! じゃあ行こうか〜!」
「う・・・」

これまでなら優と先を争うように駆け出していたのに、
今回に限って出足があからさまに鈍い。

「・・・社長? どうかなさいましたか?」
「い、いや何でもない! よし! 行くぞ國生さん!」
「・・・?」

妙に引きつった顔で優を追って歩き出す我聞の様子を陽菜は不思議そうに眺め、
頭上を物凄いスピードで駆け抜ける乗り物―――ジェットコースターを見上げ・・・

(そういえば社長、いつかのパラシュートの時もあんな風でしたっけ・・・)

我聞の心中をすぐに察し、小さくクス、と笑う。

「さ、社長! 優さん達から遅れてしまいます、急ぎましょう!」
「お、おう!」

少し駆け足で我聞に追い付くとその肩を押すように触れて、
腰の退けている我聞を促してそのまま優たちに追い付く。

流石に週末の遊園地だけあってしばらく並んで待たねばならなかったが、
列が進むにつれて明らかに緊張してきた我聞を優がからかったり、
それを陽菜と辻原が笑ったりと、
四人で雑談に興じているうちに気が付けば列の先頭に来ており―――
443499 2/7:2007/06/09(土) 23:46:07 ID:jnQ3OKt2

「さ、次だね! 我聞くん、覚悟は決まったかな〜♪」
「な、ナニを言ってるんですか!
 俺がこれくらいのコトでお、お、怖じ気付くワケナイジャナイデスカ!」
「そ〜ぉ? その割には声が動揺しているようだけど〜?」
「そ、そんなコトないですよ!? ほら、このとおりいつも通り!」
「はっはっは、まだまだ修行が足りませんねぇ」
「う・・・」
「大丈夫ですよ社長、こうしてアトラクションとして操業されているものなのですから、
 危険は無いハズですから、そんな心配なさる必要は無いかと思いますが・・・」
「うく・・・國生さんまで・・・」

陽菜の言葉は我聞に気を使っているような言い回しだが、
我聞が怖がっているという前提であること自体は優と変わらない。
そんな陽菜に我聞はなんとも情けない顔を向ける。

「ほらほら、そんな情無い顔してると、陽菜ちゃんに呆れられちゃうよ〜♪」
「ぬ・・・」
「ふふ、社長がこういったものが苦手なのはわかっていたことですから、
 別に今更気にしませんよ」

言葉の通り、陽菜は呆れたというよりも楽しそうに微笑んでいて、

「ちぇ、酷いなぁ」

我聞もまたつられて苦笑を漏らす。
そんな二人の間には、先入観が無くとも言葉以上の何かが存在しているように感じられ、

「ん〜なるほど、二人の愛の前ではこんなの些細なコトでしかないってコトかにゃ〜♪」
「な! 何を言ってるんですか!?」
「そ、そんな! 違いますっ!」

やっぱり茶々を入れずにはいられない優なのだった。

「あっはっは、照れない照れない!
 なんだかんだ言ってもちゃーんと信頼しあってますよ、なんて感じのオーラがもう!
 流石お嫁さんのパパ公認って感じだね〜♪」
「だ、だから優さん! 俺達まだそんなんじゃ・・・!」
「そ、そうですよ! あれはあくまでお父さんが勝手に―――!」
「ね、どうよ辻原くん! こんなお似合いのカップルなんてそうそう無いわよね〜?」
「はっはっは、そうですねぇ、社長と秘書の仲が良いのは社員としても安心ですし、
 そのまま夫婦になってくれれば工具楽屋は先々まで安泰でしょうねぇ」
「「なな何を―――」」

オブラートも回り道も何も無い、辻原のストレート過ぎる言い方に思わず言葉を失う二人。

「おー! 流石辻原くん! 良いこと言うねぇ!」
「ちょ!? 辻原さんまでナニ言ってるんですか!」
「そ、そそ、そうですよ! そんな、ふ、ふ、ふう・・・・・・って! まだ私達、別に・・・!」

優だけならまだしも辻原にまであおられて、
我聞も陽菜も回りの客や今の状況など完全に忘れて言い返そうとするが、

「さ、準備が出来ましたので順番にシートにおつき下さい」
「え・・・?」
「あ、は、はいっ!」

いつの間にかジェットコースターはプラットホームへ戻ってきており、前の乗客も既に降車済み。
あからさまに笑いを堪えている係員やクスクスと笑う周囲の客に見送られて、
我聞と陽菜はこれ以上ないくらいに真っ赤になって、いそいそとシートへ着くのだった。
444499 3/7:2007/06/09(土) 23:50:04 ID:jnQ3OKt2

「あはは、ん〜まったく、相変わらず初々しいねぇあの二人は♪
 しかし辻原くん、キミもなかなか言うねぇ」
「いやぁ、ここは優さんに合わせてみようかなと思いまして、はっはっは」

我聞たちに続き、やや距離を置いてシートに向かって歩きつつ、
優は少しだけ声を抑えて、

「でも辻原くん、あの二人・・・我聞くんが来たばかりの頃からは、
 あんな風になるなんて想像できた?」
「はは、まさか。
 私にはそういう色恋のことはさっぱりですからねぇ」
「へぇ? 本当かにゃ〜?」
「まぁ優さんもご存知の通り・・・殺伐としてましたからねぇ、色々と」
「ふぅん・・・」

二人とも、口調はあくまでも軽く。
だが、少しだけ沈黙の間を置いて・・・

「ま、今日は楽しみたまえ! なんたってキミの快気祝いなんだからねっ♪」
「ははは、ありがたく楽しませて頂いていますよ、
 ええ・・・こういうのも、たまには悪くないです」
「うむうむ! そりゃあこの優ねえさんがつきっきりでいてあげてるんだからね〜♪
 つまらないなんて言ったら許さないよ〜?」
「まぁ、私の方が年上だとは思いますけど、ね」
「そんな細かいこと気にするな〜!」

どこまでも楽しげに明るく喋る優を、辻原もまた楽しげに・・・そして少しだけ眩しげに見るのだった。



「うう・・・優さんも辻原さんも、なんてところであんなコトを・・・」
「ほ、本当に・・・まさか辻原さんからまであんな風に言われるなんて思ってもいませんでした・・・」

そんな優と辻原の一つ前の席についた我聞と陽菜は、相変わらず顔を真っ赤にしたままで・・・

「・・・あの、本当にすみません、父があんなことさえ言わなければ・・・」
「え? ああ! いや! あれはなんて言うか、確かに凄いイキナリではあったけど、
 その、少なくとも國生さんが謝るようなことじゃないし!」
「はい・・・ですが、せめて・・・あんなに皆さんが揃っているところで言わなくても・・・」
「むぅ・・・」

その時のことを思い出し、二人してますます顔を赤くしてしまう。

「それにしても、おっちゃん・・・本当に何でもなさそうに言ってたよな・・・」
「はい・・・お父さん・・・父が私達と一緒にいたのは、二週間くらいのものでしたのに・・・
 そんなに、私達・・・そういう風に見えたのでしょうか・・・」
「ど、どうなんだろうな・・・」

お互いの真っ赤な顔にちらちらと視線を走らせてはうつむいて、
いつになく相手のことを意識しながらぼそぼそと会話を続けていたが・・・

「あの、ところで社長・・・」
「ん? なんだ?」
「・・・大丈夫ですか?」
「ええと・・・?」

何故か心配そうな顔をする陽菜の意図が掴めず、我聞は不思議そうに彼女を見る。
445499 4/7:2007/06/09(土) 23:51:49 ID:jnQ3OKt2

「いえ、そろそろ・・・走り出す頃かと思いまして・・・」
「走り・・・」

そう言いながら顔を上げて周囲を見回す陽菜に倣って、
我聞もまた顔を上げる・・・・・・と、
何故か眼前には、地上の景色がパノラマ風に広がっていて―――

「んな・・・!」

恥ずかしいやら何やらでうつむいている間に、
いつの間にか我聞達を乗せたジェットコースターはゆっくりと最高点まで昇りきっていて、
我聞がそれに気付いた、その瞬間、
“ふわり”と、重力から一瞬だけ解放されて・・・・・・

「う・・・ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

ジェットコースターが疾走を終えるまで、我聞の絶叫は絶えることなく続くのであった。



「あの・・・大丈夫ですか、社長・・・?」
「は、ははは、大丈夫、大丈夫・・・」

結局、ある意味元気に最後まで叫び続けた我聞は、無事に地上へ戻った後も暫くは足取りが覚つかない。

「でも我聞君、ここまでのスピードは出ないにせよ、
 仲之井さんの運転でこういうのの耐性はつきそうなモノだけどねぇ」
「いや、まぁ・・・」
「確かに、危険度で言えば第一研突入の際に森林地帯を低空高速飛行で突破した、
 あの時の方が遥かに・・・」
「むぅ・・・まぁ、あの時は大仕事ってことで気を引き締めていたし、
 ・・・・・・外も見えなかったしな」
「成程、景色が見えていると怖い、と」
「な、何言ってるんですか辻原さんまで! べ、別に怖い訳じゃ・・・!」
「はっはっは、簡単に弱味を握られてしまうようではまだまだ修行が足りませんねぇ」
「むぅ・・・」
「ま、まあまあ! それより次はどうしましょうか!」

良いように言われっぱなしの我聞を見かねたか、陽菜がすかさずフォローを入れる。
が・・・

「・・・ふ〜ん」
「な、なんですか優さん?」
「いや〜」

にや〜っと笑うだけでそれ以上は何も言わない優だが、
もはや陽菜には、そして我聞にもその笑いの意図する所は嫌と言うほどわかってしまい・・・

「あらあら、どうしちゃったのかにゃ〜?
 我聞君もはるるんも顔赤くしちゃって〜♪」
「「なななんでもないですっ!」」

そう図ったように二人で声を揃えて答えてしまい、
思わず顔を見合わせて・・・

「あはは〜、全く見せ付けてくれちゃって! もうすっかり息もぴったりなカンジだね!
 ね! 辻原君!」
「全くですねぇ」
446499 5/7:2007/06/09(土) 23:53:29 ID:jnQ3OKt2

「「い、いや! そういう・・・」」

我聞も陽菜も必死になって否定しようとして・・・墓穴を掘る。

「あっはっは! いやーもう二人とも息合いすぎ! っていうか面白すぎ〜!」

もはや辻原に同意を求めようとすらせず、一人ひたすら盛り上がる優と、
真っ赤になってうつむいてしまう我聞に陽菜。
そんな二人に更に追い討ちをかけようと振り向いた優だったが、
視界の隅にあるモノを捉え・・・

「そうだ! ねぇねぇ我聞君、陽菜ちゃん! お姉さん、そんなキミタチにピッタリのモノを思いついたよ!」
「な、なんですか・・・?」
「ふっふっふ・・・アレだよ、アレ!」

そう言って優がさも楽しそうに指差したものは・・・

「・・・観覧車」
「そ! やっぱり遊園地でコイビト同士って言ったら、絶対外せないよね〜♪
 この時間なら、ちょっとゆっくり行けば丁度夕陽とか見えそうだし!」

一人、ひたすら盛り上がる優の提案に、我聞と陽菜は顔を見合わせて・・・

「ね! どうだい二人とも!?」
「そ、そうですね・・・優さんがそう言うのなら・・・」
「はい、その・・・辻原さんさえ良ければ・・・」

さも恥ずかしそうな小声で、
だが二人ともそれまでの反応から比べるとかなり素直に優の提案に同意を示す。

「おや、二人とも・・・」
「な、なんですか?」
「いゃぁ・・・もしかして、すっかりその気かな〜って」
「なな、なんですかその気って!」
「そ、そうですよ! あれなら遠目に見てもゆっくりですし、
 社長も問題なく乗れるかなと判断しただけです!」
「ちょ! 國生さん!? いくらなんでも俺そこま―――」

ごっ。

「――――――っ!」
「ん? 我聞君、どうかした?」
「い、いえ何でもありません! ね、社長!?
 さ、それでは行きましょう優さん!」
「なんだかよくわからないけど、まぁはるるんがそう言うならいっか!
 じゃあ辻原君、行こっか!」
「そうですね、あれならのんびり出来そうですし」

そんな感じで優と辻原は先立って歩き出し、
その後を少し遅れて・・・

「社長、先程は失礼しました、
 丁度いい具合に優さんを果歩さんの計画に乗せられそうでしたので・・・」

脇腹を押さえて顔を歪めている我聞に、陽菜は申し訳無さそうに詫びる。

447499 6/7:2007/06/09(土) 23:55:02 ID:jnQ3OKt2

「ああ、大丈夫。 っていうかスマン、取り乱してそのことをすっかり忘れてた」
「まぁ、私も取り乱していましたので・・・それでちょっと、その、乱暴してしまいました・・・」
「あ、いや! ホントに気にしなくていいから!
 それより、これなら思ったより簡単に行きそうだな」
「はい、後は如何に優さんと辻原さんだけで乗せるか、ですが・・・」
「そこは多分、簡単なんじゃ・・・」
「はい、あのテンションの優さんでしたら、きっと私たちを、その・・・」
「ああ・・・」

どうせ自分達を二人きりにさせようとするに違いないことは正に火を見るより明らかというモノで、
敢えて言葉にせずとも互いに顔を見合わせると思わず苦笑してしまう。

「お〜い! 二人ともとも〜! イチャイチャするのなら観覧車の中でいくらでもしていいから、
 今は我慢しなさ〜い?」
「「してませんっ!」」

大声でとんでもないことをこれ以上言いふらされては堪らないとばかりに、
我聞と陽菜は慌てて優たちに追い付くのであった。



「むー、観覧車、思ったより並ぶねぇ」
「そうですね、絶叫系なんかに比べたらもっと空いてると思ってたけど・・・」
「確かに・・・ああやって高いところから景色を眺めるだけのアトラクションにしては、
 人が多いように思えますね」
「ま、でも晴れてて丁度夕暮れにかかる時間だしね、
 私達と同じ目的の人が多いのかもね〜」
「目的はともかく、ですが・・・でも、確かに・・・」

周囲を見回してみると、優の言う通り前も後ろも列にいるのはカップルとおぼしき男女が大半を占めている。
・・・もっとも、そういう我聞と陽菜も端から見ればまさにその通りなのだが。

「う〜ん、しかしなんだね・・・」
「なんですか?」

しばらくじろじろと我聞と陽菜を交互に見つめていた優だったが、
にんまりと笑みを浮かべ、

「うん、私服の二人ってあんまり見ない組み合わせだけど、
 二人とも飾らない感じがなかなかお似合いかにゃ〜って♪」
「お似・・・」
「・・・合い?」

そう言われると、なんとなく顔を見合わせてしまい、それからハッとしたように・・・

「なな、何を言ってるんですか!」
「そ、そうですよ! 別にそんな!」
「ありゃ、嫌だったかな?」
「い、いや別に・・・」
「い、嫌という訳じゃないですが、別にその・・・わ、私達そんな・・・」
「そ、そうですよ・・・」

実際に二人の間には他人の知らない何がある訳ではないのだが、
だからと言って優の言葉を完全否定してしまうには、お互いに妙に意識してしまっていて・・・
言ってしまえば、以前は空回りを続けていた優達GHKだが、
あの日の武文の発言以来、本人達以上に二人の本心を把握してしまっているという、
状況の逆転が発生しているのであった。
448499 7/7 (続く):2007/06/09(土) 23:56:52 ID:jnQ3OKt2

だが当人達は互いにそういう気持ちを抱いたのは初めてのこと。
自分の気持ちに関しては心の底の底では認めざるを得ないと思いつつも、
それを人前で認めるなど恥ずかしくて堪らない。
何より相手が自分と同じ気持ちでいてくれるのかとなると、
優達の言うようなそんな都合の良い事があるハズがない、と・・・
初心で奥手な二人は、どうしても腰の引けた考え方をしてしまう。
もちろん、そうあってくれればいいと期待はしているのだが―――
端から見たらあれだけバレバレなのにも関わらず、自信がもてないのだ。
そんな訳で二人は今日も今日とて優のいいオモチャな訳で・・・

「あははー、もういい加減素直に認めちゃえばいいに! ねぇ辻原君!」
「はっはっはっ、そうですねぇ。 確かにお似合いですし、祝福しますよ?」
「な、なな何を言うんです辻原さんまで!?」
「そそそうですよ! それにお似合いって言うなら、優さんと辻原さんだって!」

取り乱しながらも、陽菜は陽菜なりに反撃を試みたりするのだが・・・

「お〜、辻原君、聞いたかい? 私達もお似合いらしいよ〜?」
「優さんと私がですか? はっはっは、それは面白いですねぇ」
「・・・・・・」

自分達のように慌てたりなどするそぶりも見せず、
するりと受け流されてしまうのであった。

「お、そろそろだね!
 ん〜、それじゃあ我聞君、陽菜ちゃん、まずはお手本ってコトでキミタチから行ってくれたまえ!」
「は?」
「お、お手本って、ただ乗るだけじゃないですか・・・」
「あはは〜、いいからいいから!」

そんなよくわからない理由で我聞と陽菜は優達に場所を譲られて・・・

「っていうか優さん、そんな列から外れちゃったら乗れませんよ!?」
「まぁまぁいいから、私達のコトは気にせずゆっくり楽しんでらっしゃ〜い♪」
「え!? ちょ! 優さん!?」
「ああほら我聞君、列が動くからはみ出しちゃ迷惑だよ?」
「うお、すみません・・・って! 優さ〜ん!?」
「は〜いそれじゃあ後は若い二人だけでごゆっくり〜♪」

自分達まで列から離れてしまっては優達を列に戻すことは出来ないし、
かといってそこに止まっていては流れの妨げになって迷惑だし、という感じで、
結局我聞と陽菜は明らかに乗る気の無さそうな優達に見送られながら、
観覧車に乗せられてしまうのであった・・・



449499:2007/06/10(日) 00:00:17 ID:n38MI3b3
今回の投下分は以上です。
次回は我聞と國生さんのシーンの続き、
その後に優さんと辻原さんのお話になる予定ですが・・・この分だといつになるやらって感じです(汗

では、この辺で・・・
450名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 03:38:39 ID:Uply9b5q
GJ!!
初投稿にして一番にみられるとは!
うれしいです!
それに今日なんとこわしや我聞のエロ漫画を見つけたのでサイトの直アドはっておきます。
ttp://www.animestars.net/doujin/070325/KugugakuyaheYoukoso/
今日はなんていい日なのだろうか!
451名無しさん@ピンキー:2007/06/10(日) 07:30:17 ID:WlZFjPdV
このド低脳が!
朝から布団の上を転がってしまったではないか!
452名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 09:10:14 ID:TIf1NdnR
おおっ!優さんにいぢられる2人の初々しさがっ!
とっても低能です。
453名無しさん@ピンキー:2007/06/14(木) 02:03:40 ID:+68p4c7a
諸君、私は低脳が好きだ
諸君、私は低脳が好きだ
諸君、私は低脳が大好きだ

(省略されました。続きは転がりながら各々で考えてください)
454名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 16:58:26 ID:SAkAK8f/
GJ!!!
次を期待してます
455名無しさん@ピンキー:2007/06/19(火) 02:42:12 ID:3jsic2N9
ホシュッ
456名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 17:05:08 ID:O+D2DS52
上に同じ!!
457名無しさん@ピンキー:2007/06/27(水) 05:35:23 ID:lAiDiyoj
保守ついでに素朴な疑問
ここって何日書き込みがないと削除候補にあがっちゃうんでしょうか?
458名無しさん@ピンキー:2007/06/28(木) 07:27:12 ID:8BoVNm6S
>>457
削除候補って意味では、板内で最終書き込みが古い順に100スレが削除される可能性あり。

この板の削除方式は確か、
エロパロ板内のスレ数が800になった時点で削除が発生、
最終書き込みが古い順に100スレが削除される、という感じだったと思う。

即死基準とかはまた別にあると思うけど、そっちはよくわからないや。
459名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 08:05:10 ID:sEXLfRTA
我陽新作マダー?
460名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 23:06:35 ID:TJpv+D2a
>457 ageなくていいよ>458の感じで
書き込みがマメにあれば落ちないから
4612nd-251:2007/07/02(月) 03:12:48 ID:Shl4ha3X
ブログを見て、
「藤木君はMなブルマ好き。」
である事を再認識しましたw

そんな訳で、保守ついでに思いついた小ネタを
久々に投下させてもらいますよ。

-------------------------------------------------
「桃尻ブルマはどんな色?」

『体操着を着てくれ』って、アンタねぇ…
…ちょっとジロジロ見ないでよっ!
『キター』って、フェチ漫画とかじゃないんだからっ!
ホント、あんたって低能ね。
ま、究極美少女のあたしは何を着ても似合っちゃうけど…

え?『体育座り』?『体操着での体育座りは漢のロマン』?
何だかよく判らないけど…っしょ…これでいいかしら?
涙?『ウン、ウン』って…泣く程嬉しい事なんだ。ふぅん。
うん、あたしに感謝しなさいよ?

で、次はどうするの?両脚を開く…?『もっと拡げて』って、
イタタ…これ以上は無理っ!『身体が硬い』?大きなお世話よっ!
これで前屈をするのね。1、2、3、4…ふぅ〜…1、2、3…

ちょっと、何這いつくばってんの?
やだ、ヘンなところジロジロ見ないでよっ!
『ヘンなところってドコ?』って、そ、そりゃあ…あたしの…

-------------------------------------------------
力尽きたので本日はこれにて終了。
時間が出来たら、続きを投下するかもしれません。

果歩好きなワタクシですが、何故か桃子のブルマ姿が見たく
なった次第でございます。
462名無しさん@ピンキー:2007/07/02(月) 03:59:52 ID:SwRy/jKs
GJ!
もっとください!
463名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 07:47:11 ID:BRtQ5//R
めぐみん絵がキタってことは、
そろそろ佐々次郎の続きが再開されるんじゃないかと・・・期待したい・・・・・・
464名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 14:51:09 ID:0ao6Dt6l
プロフ絵の元ネタkwsk
465名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 06:24:46 ID:S+ozDr0A
つーか、めぐみんが可愛いすぎるだろ
絵柄ちょっと変えたんかな?
466名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 23:12:37 ID:pmO557bb
我聞誕生日おめでとー!
一日遅れだけど…。
ていうことで誕生日ネタぷりーず(笑
467名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 15:20:53 ID:JOjEs8V/
468名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 03:46:43 ID:RhTSQlBL
age
469名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 10:43:11 ID:90N6Dmzv
今だにスレ健在とは…すごいね
470名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 23:25:27 ID:Q0FVskkB
平井のエロパロも書いてくれ!
471名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 00:07:01 ID:M5yZUoc4
2ちゃん音声読み上げソフトsoftalkとやらを試してみた
…泣いた
472名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 00:24:23 ID:WhZUKlpI
hosyu

うう、藤木屋さんも更新されないしこっちも過疎ってて悲しいな
473名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 22:13:08 ID:vMkoONKU
474名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 10:37:19 ID:jkxIMpdS
平井の話を書けば盛り上がるぜ!
475名無しさん@ピンキー:2007/07/22(日) 16:07:48 ID:u1iwL7zk
そーだ!平井のホモ小説書いてくれ!
476名無しさん@ピンキー:2007/07/23(月) 01:53:14 ID:TPYljvru
この際クレクレに対しては何も言わないが一言


ホモ小説って誰とっ!?
477名無しさん@ピンキー:2007/07/24(火) 18:23:10 ID:PFP8A6y+
>>476
高橋という奴かまたはクロスオーバーで我聞や斗馬なんかと。
478名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 00:39:52 ID:YF8nWq1I
1つ質問
天野や住の下校描写から考えるとクロスオーバーになるのかな?
イマイチクロスオーバーの定義を知らないもので
479名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 23:35:10 ID:DZTGvs1e
このスレのタイトルが
【こわしや我聞】藤木俊作品全般でエロパロ7
だから、こわしや我聞と劇団SAKURAの男子キャラがホモやるのも範疇じゃね?
480名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 23:42:46 ID:9UCCeepm
>1
>・801は禁止。専用スレにてどうぞ。

専用スレが今もあるかどうかは知らないけど、
例え消えていてもこのスレで禁止であることには変わりないだろ。
481499:2007/07/26(木) 00:33:03 ID:uWL9f2Vg
既に内容とか完全に忘れられてそうですが、
>>442-448の続きなど投下させて頂きます。

観覧車に乗せられてしまった我聞と陽菜は・・・って感じで。
今回もエロいのは無しです。
482499 1/7:2007/07/26(木) 00:35:42 ID:uWL9f2Vg

「・・・・・・」
「・・・・・・」

係員によって扉が閉められて、二人だけを乗せたゴンドラはゆっくりと地上を離れはじめる。

「と、取り合えず・・・座りましょうか・・・」
「そ、そうだな・・・」

色々思うことはあれども今となっては他に為す術もなく、二人は向かい合って腰を下ろす。

「しかし・・・なんだろう、やっぱハメられたんだよな、俺達」
「はい・・・私達の計画が読まれて、裏をかかれたという感じでしょうか・・・」

お互いに至った結論は同じらしく、顔を見合わせて思わずため息を吐いてしまう。

「しかし、俺達を二人だけで乗せようってのはいかにも優さんらしいけど、
 優さん達だって折角並んだんだから二人で乗ればいいのになぁ」
「はい・・・さっき二人のこと、お似合いだって言った時も・・・
 なんだか凄く平然と答えられてましたし・・・」

お互いに相手を意識しながら、その相手の気持ちにはなかなか気付けずにいる二人としては、
優と辻原の態度が半分以上冗談であるなどと気付けるハズもなく、
あんな余裕を持てる二人が内心羨ましかったりする。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

二人ともそんなことを考えているうちに、
だんだん自分達が二人きりでいるという状況を改めて認識してしまい・・・

「・・・ま、まぁしかしなんだ! こりゃ後で果歩にどやされるな、ははは・・・」
「そ、そうですね、困りました、あは、はは・・・」

学校でも仕事でも一緒にいることがほとんどで、自然と二人きりになることも多い我聞と陽菜。
二人にとって普段はそれが当然のこと。
だが、あくまでそれは“普段”のことであり、
逆にこういう状況―――遊園地の観覧車の中で二人きり―――という、
普段とは余りにも違う・・・というか、
“端から見たらデート以外の何者でもない”この状況にすっかり舞い上がってしまっているのだった。
そしてお互いにそんな状況を相手に悟られまいと必死なので、

「そういえば果歩さんや桃子さん達はどうされているでしょう?」
「あ、そ、そうだな、もう時間も時間だしな・・・メール入ってない?」
「あ・・・はい、来てます! 果歩さん達と桃子さん達はもう合流されて、
 観覧車の出口付近に来て下さるとのことです。
 あ、あと・・・」
「ん、どうした?」

携帯に目を落としていた陽菜の顔がややひきつって、赤らんで・・・

「いえ、優さんからもたった今メールが入りまして・・・」
「あー・・・」

それだけで、我聞にも陽菜の表情の理由は想像がついてしまう。
陽菜もまた我聞がそれだけで理解するであろうことはわかっていたので、
それについては詳しくは述べず・・・
483499 2/7:2007/07/26(木) 00:37:53 ID:uWL9f2Vg

「それで優さんなのですが、どうやら辻原さんと先に帰られるとのことです」
「へ? そうなの?」
「はい・・・“オトナはオトナでよろしくやってるから、
 私達は私達で気にせず・・・えー、まぁ・・・そういうことのようです・・・」
「そ、そうか・・・」
「はい・・・」

会話が途切れると途端にソワソワしてしまい、沈黙がやたら長く感じられてしまう。
何時もなら意識せずとも続く会話も途切れがちで、空白の時間が何故か焦燥感を駆り立てる。
互いに何か話題はないかと内心さんざ悩みながら・・・

「そうだ、國生さんは遊園地はじめてだったんだろ? どうだった?」
「あ・・・そうですね」

我聞が苦し紛れに口にした言葉に、陽菜は思わずほっとした顔をする。
続いて少し考えるそぶりをして、それから表情を崩して悪戯っぽい笑みを浮かべながら・・・

「なかなか楽しかったですね、社長の滅多に見られない一面にもお目にかかれましたし」
「んなっ!?」

まさか陽菜からいじられるとは夢にも思っていなかったか、
我聞がとった大袈裟なリアクションが、更に陽菜の口元を綻ばせる。

「あは、冗談ですよ、社長」
「む・・・」
「でも、そうですね・・・どのアトラクションも凄く手が込んでいて、とても楽しかったですね」
「そうか! うん、それならよかった。 何せ果歩が勢いで決めたようなモノだからなぁ」
「ふふ、確かに・・・まぁ、果歩さんの意図には沿えない形になってしまいましたが、
 個人的には楽しませて頂きました」
「はは、まぁ國生さんが楽しめたなら、何よりだよ」

会話がちゃんと繋がり始めると、そこはやはり普段から一緒にいることの多い二人。
すぐに緊張もほぐれ、いつも通りの和やかな雰囲気のなか、二人は楽しげに言葉を交わす。

「社長は以前にもこういった所にはよくいらしていたのですか?」
「そうだな・・・いや、オヤジに連れてきてもらったことはあったけど、そんなに・・・
 よく、って程ではなかったなぁ」
「そうなんですか?」
「ああ、どっちかっていうと、山とか川とか海とか・・・家族で遊びに行くって時は、そういうのが多かったなー」

記憶を辿り幼い頃を思い出しているのか、柔らかな表情を浮かべる我聞を、
陽菜もまた表情を崩して見つめ、

「そうですね、確かに・・・ふふ、そういう所の方が先代には似合っている気がします」
「はは、だよな。 でもそういう所でキャンプしたり釣りをしたり、泳いだりとか、
 自然の中でのんびりしたり・・・そういうのもなかなか楽しいんだぞ?」

我聞の語る情景は容易に想像できて、そこにいる彼はさもイキイキとしていて・・・

「はい、それはとても楽しそうですね・・・」

陽菜の想像の中の我聞は本当に楽しそうで、
そんな彼と一緒にいる自分を想像すると無意識に目を細めてしまいながら、
陽菜は相槌を打つように彼の言葉を受け入れる。
彼女の答に満足したのか我聞も微笑みながら、

「そうだ、國生さんも今度一緒に行かないか?」

そんな声をかけてみる。
484499 3/7:2007/07/26(木) 00:42:35 ID:uWL9f2Vg

我聞としては別に下心がある訳ではなく、
陽菜が想像したのと同じように、そこに彼女がいたらさぞかし楽しいだろうとか、
彼女自身もきっと楽しめることだろう、とか、
それくらいの気持ちでの発言だった。
・・・のだが、今は状況が状況なので、一方の陽菜はつい・・・

「え・・・ふ、二人で・・・ですか・・・?」
「・・・・・・え?」

陽菜の口から出た予想外の言葉に我聞は何と応えるべきか一瞬言葉を失い、
そんな我聞の反応を見て、陽菜もまた自分の先走りに気付き・・・

「あ、いえ! その・・・あの・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

互いに、しばし沈黙。
とは言え、それはどちらにとっても魅力的な状況ではある訳で・・・

「そ、そうだな・・・ま、まぁ、それでも・・・國生さんさえよければ、だけど・・・」
「は・・・はい、その・・・わ、私も・・・社長さえ良ければ、ですが・・・」
「じゃあ・・・ええと、その・・・近いうちに・・・」
「・・・はい」

こうしてなし崩し的にデートの約束など取り付けてしまった二人。
言葉には出さなくともそれはお互いに望んでいたことなのだが、何せ急なこと。
嬉しい、というよりは恥ずかしさの方がまだ強く、
微妙に視線を泳がせて今更ながらに窓の外に目を向けて――――――

「あ・・・」
「・・・社長?」

自分の方を向いて目を見張る我聞に、陽菜は戸惑った表情を浮かべるが・・・

「國生さん、後ろ・・・」
「はい?」

我聞の言葉に促されるようにして振り向いた陽菜の目の前には―――

「わ・・・」

眼下の街並みから、遥か彼方の山々まで・・・
ビルの壁も街路樹も、家々の屋根も遠くに流れる川面も雲も空も、何もかも。
一望できる景色の全てが沈みゆく夕陽に照らされて鮮やかな紅に染まり――――――

「・・・・・・」

陽菜は言葉を失い、眼前に広がる光景に目を奪われる。
我聞もまたその光景に引き寄せられるように席を立ち、陽菜の隣に腰を下ろす。

「綺麗、ですね・・・」
「ああ・・・凄い」

夕暮れの景色は刻々とうつろいゆく。
夕陽の下に並ぶ山々は少しずつその影を伸ばし、一面に広がる紅色の街並みをゆっくりと
呑み込んでゆく。

そんな夕暮れの景色に目を奪われて、無意識に窓についた手が・・・
485499 4/7:2007/07/26(木) 00:44:53 ID:uWL9f2Vg

「・・・あ!」
「―――っ!」

重なるように触れ合って、二人は慌ててその手を引っ込める。

「す、スマン!」
「い、いえ! こちらこ・・・そ・・・・・・」

互いに見合わせた二人の顔、そしてゴンドラの中の全てもまた夕陽に照らされて鮮やかに紅く、
我聞も陽菜も、気になる相手のいつもと違って見える顔に釘付けになってしまう。

「國生さん・・・」
「社長・・・」

遥か天高く、夕陽に染まった密室で向かい合う二人。
二人は何も言わず、ただ互いを見つめ合い・・・・・・そのまま、ただ時を過ごす。

“もしこのまま顔を寄せたら、寄せられたら―――”

考えない訳ではない。
だがそれを実行するには我聞も陽菜も初心過ぎたし、
何より――――――今はこうしているだけで、二人の胸は十分に満たされていた。



やがて下りも半ばを越え、残照は山の陰に沈み・・・二人きりの世界にも闇が落ちる。
わかっていたことではありながら、それでも惜しまずにはいられない・・・
そんな思いを抱きながら、夕陽の最後の輝きが失われるまで二人は見つめ合い、
そして・・・

観覧車の骨組みに設置された電飾が点灯したところで“夕暮れ”という時間は終わり、
夕陽に照らされて魔法にかかったかのようだった二人も・・・

「・・・・・・」
「・・・・・・」

幻想的な夢から目が覚めてしまったかのように、
徐々に思い出してきた“恥ずかしい”という感覚に今更ながら捕らえられてしまう。

「い、いや、す、凄かったな!」
「は、はい! 本当に・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

先程と同じように・・・いや、先程以上に気恥ずかしく、
結局会話は滞ってしまうが・・・

「・・・まぁ、でも・・・なんだ」
「はい・・・?」
「遊園地も、悪くないよな・・・」
「そ、そうですね・・・」
「ここも、また・・・そのうち、来ようか」
「はい、また・・・」

恥ずかしくて敢えて声にこそ出さなかったが、
胸中に“二人で”という言葉が浮かんでいたのは言うまでもないのだった。


486499 5/7:2007/07/26(木) 00:47:16 ID:uWL9f2Vg



それから程なくしてゴンドラは地上へと至り、
長かったのか短かったのか・・・どちらにも思えるが、
どちらであったにせよ二人の胸にいつまでも残るであろう幻想的な空中散歩は終わりの時を迎える。

「よし國生さん、足許に気を付けて」
「はい、ありがとうございます」

現実の世界へと帰ってきても、我聞と陽菜はまだなんとなく夢見心地なのだが、
やはりここはもう地上であり・・・

「お兄ちゃ―――んっ!」
「ガモ―――ン!」

その耳に響くような声でやっと、二人の心も遅れて地上へと降りてくる。

「うぉ! ど、どうした果歩!? 桃子!?」

ものすごい勢いで駆けてくる二人に思わず腰がひける我聞だが、果歩は容赦なく・・・

「どうしたじゃないわよ―――!」
「そうよガモン! ユウはどうしたのよユウは!?」
「あ・・・」

完全に失念していた今日の本来の目的を思い出し、陽菜の方を振り返ると・・・

「・・・・・・」

陽菜もやはり完全に忘れていたようで、“しまった”という顔をしている。

「あとは若者達だけでごゆっくり、なんてメールが来てたから何かと思ったら、
 もしかして本当に先に帰っちゃったの!?」
「う・・・スマン、面目ない・・・」
「もー! ハルナまでついてながら、ナニやってんのよ!」
「申し訳ありません・・・」

妹達に良いように言われ、縮こまるしかない我聞と陽菜だが、

「まぁ、俺達も失敗だった訳だけどな」
「う・・・」

番司にそう呟かれると果歩も何も言えず、それは露骨に失敗した桃子も同じ。
結局・・・

「なんか、完全にやられたって感じね・・・」
「く・・・っ、いつもみたいにことごとくスルーされるのもムカつくけど、
 ここまで正面からやり返されるのも悔しいわね・・・」
「・・・いつも?」
「ああいや何でもないの気にしないでお兄ちゃん!」

思わず洩らした失言に、不思議そうな我聞と陽菜の(そして不審そうな桃子と番司の)視線を浴びるが、
敢えてスルーして・・・

「ま、まぁいいわ! こんなのはまだまだ序の口!
 これから第2第3の計画を練って、必ずあの二人をゴールインさせてやるからね!」

一人、ちょっと無理矢理に気を吐く果歩。
487499 6/7:2007/07/26(木) 00:49:50 ID:uWL9f2Vg

だが、そんな彼女の気を削ぐかのように、

「・・・っていうかあの二人、俺達が手出しする必要あるのか?」
「そうですね・・・今日一日、良いように振り回されはしましたが、
 なんだかんだで結局二人きりで帰られた訳ですし・・・」

二人きりで帰してしまった張本人達はそんなことを言っていたりする。
イマイチやる気が感じられない兄と将来の兄嫁(予定)にぴくりとこめかみを引き攣らせる果歩だったが、
不意に一転、その顔ににたーっと笑みを浮かべ・・・

「そういえばお兄ちゃんと陽菜さん、優さん達の代わりに二人きりで観覧車デートしてたんですよね〜?」
「な・・・!」
「で、デ・・・・・・ぇえ!?」

果歩の言葉に思わず固まる二人。
そしてその言葉に反応したのは我聞と陽菜だけではなく・・・

「おい工具楽・・・お前もしかして・・・陽菜さんと二人きりになりたくて、
 わざとあの二人を逃がしたんじゃないだろうな・・・・・・?」
「ば! バカ言うな! あれは俺も國生さんも優さん達にハメられたんだ! だよな國生さん!?」
「そ、そうですよ! いきなり優さんと辻原さんが列から離れられてしまって、
 私と社長は離れる訳にはいかなくなって・・・!」

実際その通りなのだが、この二人の慌てようは端から見れば疑わしいことこの上ない。

「じゃあ何もなかったの?」

一瞬、二人は視線を交わし・・・

「な、あ、当たり前だろ! 別に何も・・・!」
「何もありません! あ、あるワケが無いです!」

もはやツッコンでくれと言わんばかりの狼狽っぷり。

「ねぇ・・・ホントーに何も無かったの?」
「いや、だから無い、何も無いって! なぁ國生さん!」
「は、はい! だから何度も言うように―――」
「ねぇガモン、ハルナ」
「は、はい?」
「な、なんだ?」
「どうして私から目を逸らすの?」
「うく・・・!」
「べ、別に・・・!」

特に“何”をした訳ではないことは、誰よりも当の我聞と陽菜が一番理解してはいるのだが、
何せ抱いた気持ちが気持ちなだけに、二人の狼狽は只事ではない。
そんな状況なものだから・・・

「く・・・なんかもう、何かあったとしか思えなくなってきたわ・・・」
「い、いやだから・・・」
「そうよねぇ・・・こう、何かの拍子に手と手が触れ合っちゃったりして・・・」
「――――――っ!?」
「それで、そのまま手を握りあって・・・」
「握ってない!」
「そこまではしてません!」

思わず主張。
一瞬止まる時間。
そして―――
488499 7/7(続く):2007/07/26(木) 00:53:01 ID:uWL9f2Vg

「・・・じゃあ、どこまでシタの?」
「え・・・あ! い、いえ! そんな別に・・・!」

この上なく楽しそうに、ニヤニやと微笑む果歩。

「工具楽・・・・・・テメェ・・・・・・」
「ちょ! ま、待て番司! 気を練るな! 落ち着け! 誤解だ!」

マジギレ寸前の番司。

「わ・・・私も乗る! ガモンと今から観覧車に乗ってくる!」

焦りの余り、なりふり構わずな行動に出ようとする桃子。

「ふふふ、残念だったわね、桃子。
 もう閉園が近いから今からじゃ乗れないわよ?」
「くっ! それなら来週よ! 来週は、そう! ガモンと二人きりで来るの!」
「い、いや桃子・・・」
「ふ・・・甘いわね」
「な、何よカホ!?」

暴走気味の桃子に対して、果歩は勝ち誇るように・・・

「いい桃子? お兄ちゃんと陽菜さんの“ナニか”あったこの雰囲気からして・・・」
「いやだから果歩・・・」
「もう既に来週はデートの約束が交わされてるとみた!」

果歩も果歩で暴走というか妄想全開。
そこまでくると、暴走気味な桃子も流石にそれは飛躍しすぎだと思うのだが、

「ったくカホ! アンタいくらなんでもそれは強引過ぎるわよ!
 とにかくいい!? ガモン! 来週は私と・・・・・・ガモン?」

果歩から我聞に視線を移した桃子の目の前で、渦中の二人は唖然とした顔を見合わせていて・・・

「え!? あ、ああいや別に何でもないぞ!?」
「そそそうですよ桃子さん!?」
「・・・ねぇガモン。 その慌てようは一体ナニ?」
「何でもない! 何でもないぞ! 慌ててなんかいないからな! 気のせいだ桃子!」
「その通りです! べ、べ・・・別に、デートの約束とか、そ、そういうコトは・・・」
「お兄ちゃんが聞かれてるのに、陽菜さんが一緒になって慌てて答えちゃうあたり、怪しいわよね〜
 ね、桃子♪」
「や!? それは、その・・・!」

同じことを考えている桃子と果歩だが、
もう楽しくて堪らない、という感じの果歩とは対照的に・・・

「く・・・っ! カホは黙っていて!
 こうなったら観覧車で有ったこと、帰りながら洗いざらい吐いてもらうからね!」
「ああ、協力するぜ・・・話してくれるよな・・・なぁ工具楽・・・?」

なにか執念のようなモノを目に宿す桃子と、そして番司。
当初の気合は何処へやら、既に今日の目的など完全に忘れたらしく、さも楽しそうに二人を眺める果歩。
細かいことは全然わからないけどこの緊迫した雰囲気に目を輝かせる珠と、
実は大体のところの予想はついているのだが敢えて何も言わずに静観する斗馬。

そんな視線に取り囲まれながらの帰途を思うと、
顔を見合わせて溜息をつかずにはいられない我聞と陽菜であった。
489499:2007/07/26(木) 00:55:01 ID:uWL9f2Vg
今回の投下分は以上です。
次からは優さんと辻原さんのお話・・・の予定です・・・
次回の投下がいつになるやらって感じですが、ぼちぼちと書いていくつもりです。

では、失礼します。
490名無しさん@ピンキー:2007/07/26(木) 00:56:33 ID:sloKueNg
リアルタイムでこのド低脳がぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!
おかげで目が冴えて寝れねぇぇぇぇぇ〜〜〜!!
布団で転がってくるぜ!GJ!
491名無しさん@ピンキー:2007/07/26(木) 01:42:20 ID:eSID9biE
ひさしぶりによい低脳ですた。 >481-489(>499)氏Gj
492名無しさん@ピンキー:2007/07/26(木) 20:37:09 ID:Yw85DYi0
低能にもほどがある!また布団の上を転がってしまったじゃねぇか!
493名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 00:44:43 ID:Y0sw5hvA
まったくあなたは困った人だ
いったいどれくらいの住人を転がしているんだ
そんなあなたに一言


このド低脳がっ!!!!
これからも楽しみにしていますっ!!
494名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 07:30:42 ID:Tl1OXCeb
藤木屋さんで先生のレスが返って来てるな。
途中で力尽きてるけど、これは更新を期待してもいいのかな?
495名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 22:27:13 ID:kxGw3ynt
今度は平井のエロパロ書いてくれたらもっと低脳!
496名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 15:36:32 ID:PbSj6PBO
コミケのCDカタログで、無いだろうと思いながら検索したら一軒だけひっかかった・・・
本ジャンルは別だったけど、せっかくだし言ってみるか
最近、こわしや分が足りないし・・・
497名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 23:05:47 ID:McXou9ea
ほしゅ
498名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 23:34:51 ID:7Df+/uFw
って、何でこのタイミングでホシュなんだよっ!!
ここは素直に転がって新作を待つしかない
499名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 23:49:41 ID:GcbXp5l7
>>496
冊子版のカタログだと全然わからんかった、何日のなんてサークルか教えてはくれまいか・・・
500名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 23:57:56 ID:wW7ntljH
>>498
なんかこのID手当たりしだいにほしゅしとるみたいだぞ
501名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 12:30:28 ID:RjUqe7QB
>499
二日目の西め15a「private_ai」って所
本ジャンルはコナン
辻かな本もありますってコメントに書いてあった

松雪さんの所も発見
けどコメントにはなにも書いてない
もうこわしや本は書かないだろうな・・・

502名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 00:57:38 ID:q3td6mbg
>>501
サンクス!
松雪さんも参加されるのか、こわしや本は・・・無いだろうなと思いつつも気になるな・・・
503名無しさん@ピンキー:2007/08/01(水) 22:23:47 ID:12MvhY58
hosyu
504名無しさん@ピンキー:2007/08/04(土) 16:45:43 ID:sZyInBEA
保守ってこれでいいのかな?
505名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 22:23:40 ID:flgNatB7
平井のエロパロ書いて!
506名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 00:14:30 ID:r/xb8gOz
ホシュ
507名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 15:22:05 ID:BN5Sd2W9
hosyu
508名無しさん@ピンキー:2007/08/14(火) 23:26:32 ID:V+YFXhAF
保管庫行くたびに思うがAVの続きが読みたくてしょうがない
この作者うまいのになぁ〜
509名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 15:27:33 ID:JWMHJ6+0
つーかここのSS神作品大杉だよな
510名無しさん@ピンキー:2007/08/16(木) 23:36:02 ID:mQB8wKxK
いまだに連載が終わった事に納得できていない
511名無しさん@ピンキー:2007/08/17(金) 00:47:42 ID:b3X8VKkN
>>510
そーか?
おれはgdgdと続くよりはやる事きっちりやってスパッと終わってある意味理想的な終わり方だと思ったが
512名無しさん@ピンキー:2007/08/17(金) 00:51:24 ID:GfZOS4DH
敵役がまだまだいたし、国生さんのお父さんも唐突に出てきた感があったから
最後に詰め込みすぎだなぁと思った。
513名無しさん@ピンキー:2007/08/17(金) 06:14:17 ID:uapU+5xN
新連載マダー?
514名無しさん@ピンキー:2007/08/17(金) 12:40:44 ID:3A9FvYPu
連載終了と言うよりは打ち切りだろ
掲載位置も後ろ後ろと進んでいってたし
人気なかったのかな……
515名無しさん@ピンキー:2007/08/18(土) 14:31:03 ID:xFaHgj++
人気が無いというか、地味だったんだよね
516名無しさん@ピンキー:2007/08/19(日) 04:59:43 ID:NfOCSW+3
まあサンデーだったから「展開に区切りがつくまで」って感じで一応最後まで
読めたんだしギリギリでもよかったんじゃない?(これがジャンプとかだったら…)
人気に関しては「好きな人は好き」ってノリだったからなぁ…
とりあえず終了するレンジマンの次の枠はマリンハンターで埋まったから、次に
あるとしてもまたなにかの終了待ちなんだよね(汗)
517名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 21:04:29 ID:UJvq7Q2O
保守しとこう
518名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 20:36:58 ID:qVVPnJOw
そうしよう
519508:2007/08/25(土) 13:22:11 ID:XyNMyEAA
「あの…國生さん?」
ばたばたばたばた

「知 り ま せ ん 。」
とてとてとてとて

取り付くしまもない。

 慰安旅行で訪れた温泉旅館。女性陣の風呂を覗こうとした湧二郎と理来を番司との協力で阻止した我聞であった。のだが。

「ほんっとぅに申し訳ない。」
「聞 こ え ま せ ん 。」

 その余波で女風呂の脱衣所の壁が大破。全裸で突っ立っていた陽菜の裸を真正面から目撃。
その後状況説明も何もできないまま…

ばたばたばたばた
とてとてとてとて

「…いや、あの…」
「話すことは あ り ま せ ん 。」

と、このような状態が、食事時からずっと続いていた。
とはいえ、我聞としては、せめてきちんと謝りたく、食事後の今も、廊下を歩く陽菜を追いかけつつ話しかけている所なのだが。

ばたばたばたばた
とてとてとてとて

がらららららっ

とてとて
ぱたぱた

とて。
「…社長。」
「は、はいっ」

 ようやく立ち止まり、こわばった声ながらも話しかけてくれた陽菜に、(ようやく話ができる)と我聞の顔が明るくなる。
520508:2007/08/25(土) 13:23:05 ID:XyNMyEAA
「…まだついていらっしゃるようでしたら私にも考えがありますが?」
「へ?」

 振り返るとそこには赤い暖簾。裏返った「女湯」の文字。
「あ…」
 そういえば、陽菜が引き戸を開けたような気がする。そこが女湯の入り口だった可能性も…

 かぽーん。
 『ひゃんっ!ちょっと!どこを!やっ!!どこ触っているんです!』
 『まぁ、いいじゃないの女同士だしぃ。』
 『お、女同士だからこそまずいことも…ふぁっ』
 『ほほぅ。かなちんのここは男ならさわっていいのかにゃー?』
 『な、なにをばかな…や、んんっっばかっあ、あ…やぁ…』
 『ほーれほれ。指がいいのか?指がええのんか?こんなところをこすられてかなちんはガクガク腰を振っちゃうのかにゃー?』
 『あぁっ…んっやっ…だめっ…だめぇぇぇ…』


「……」
「……」
 奥の方からだいぶヤバげな音声が聞こえてくる。間違いなく女湯。確認。
そしてここは脱衣所の入り口。というか中。それも確認。

 ギギギギっと、音を立てる首をまわして、暖簾から目を離し振り返ると、そこには背を向けたままの陽菜の背中。
背景にはヒュォォォォォォっと音を立てて雪が舞っている風景の幻が見える。

「あ、いや、あの…」
「…それとも…まだ……覗き足りないとでも?」
「い、いやあのっアレは覗いたわけではなくっ」
「………」
 体ごとくるぅりっと振り返り、絶対零度の視線で我聞を見据える陽菜。
ゆらゆらと立ち上る白い小宇宙が羽ばたく白鳥を形作るかに見える。
どこからかクケェェ!クケェェ!とか鳴き声も聞こえてきたり。

「あ、し、失礼しましたぁ!!」
ばたたたたたたたたた…

 この場の撤退は決して不名誉ではないと思う我聞だった。
521508:2007/08/25(土) 13:25:49 ID:XyNMyEAA
かぽーん。

「ふぅ…いいお湯でした。」

 先に風呂に入っていた優やかなえ達がふらふらと湯船から出て大分たった頃。
 陽菜はようやく風呂から出て脱衣所へと向かった。
もちろん。脱衣所の壁は壊れたまま。一応ブルーシートで目隠しをされている。

ごそごそ

 バスタオルで髪を拭き始めたとき、ガサっっとブルーシートの向こうで音がした。
ブルーシートに浮かぶ黒い影。

「だれですっ!?」
とっさにバスタオルで前を隠しながらブルーシートにむかって叫ぶ。

「あ、あ、いやその、俺、我聞でございますっ。」
「…しゃ ちょ う?」
「い、いやあの覗きにきたわけではなくて、が、瓦礫の片づけを!
 まさか國生さんがまだ入っているとはあはははははいやごめんすぐにでていきます…」

 ブルーシートの向こうで背を向けた我聞を引き留めたのは、陽菜の声だった。
「…待ってください。社長。」
「はひ!」
返事と同時にブルーシートの向うで直立不動になる気配。

「あの…」
言いつつ、陽菜はバスタオルを体に巻きつけ、ブルーシートに近づいた。

「あ、あの。…すみませんでした。」
「へ?な、何も國生さんが謝ることは!俺が…その…み、見たのは確かだし」
「………」
 我聞の返答は失敗だったらしい。ブルーシートの奥ではるるんブリザードの気配を感じる。が、それも長いものではなかった。

 ため息をひとつついて気を取り直すと、ブルーシート越しの我聞に向かって陽菜が言葉を続ける。
「それはともかく…その…食事中からの私の態度はよくなかったと思います。
 …そもそも、社長が自分から…その…の、覗き…なんてするわけがありませんし、
 何か理由があるのでしょうから、その理由も聞かずに社長に当たるのは間違いなのは分かっていたんです…
 でも…そ、その…あ、あまりに、恥ずかしかったものですから…」
「い、いや、それはしょうがないと思う。その…全部見ちゃったわけだし。
 …上から下までというかなんというか、胸も下もその……」
「忘れてください。」
「え、いや、だけど」
「わ す れ て く だ さ い 。い ま す ぐ 。そ く ざ に 。 え い き ゅ う に 。」
「…忘れます。ワスレマシタ。」
 怒りだけではなく、かすかに涙声も感じ、慌てて答えたのは、朴念仁にしては上出来だろう。
522508:2007/08/25(土) 13:28:23 ID:XyNMyEAA
「あ、あの、全部を忘れる前に…その…理由を聞かせていただけませんか?なぜ、あの時にそこにいらしたのかと…
 なぜ壁が壊れたのかを。」
「あ、お、おう。」
背を向けたまま、ブルーシートに背をつけて、我聞が座り込む。

「その、理来さんと湧次郎さんが女風呂を覗こうと言い出して…(中略)で、もうとめられないかと思ったんだが。」
「…おっぱいはむてき…ですか…」
ブルーシートのこっち側では陽菜が自分の胸を気にしていた。

「…うむ。そう言っていた。確かに無敵だったが…そこで、『かなえばーちゃんの胸でもOKか?』と聞いたら途端に隙がでて」
「ぇ?」
「で、その隙にこうキックをしたわけだが、その時に理来さんがここにぶつかって…壁が壊れた。」
「ふふっ」
「ん?」
「ふふふふふふ…あはははははっ」
「こ、國生さん?」
 死刑判決を出す気まんまんの裁判官に申し開きをする気分の我聞だったが、当の裁判官が爆笑しだしたのだから、
そりゃあきょとんとしている。
「あ、す、すみません。そうですか。さなえ様が勝ったんですか。」
「ん?あ、あぁ。確かにそういうことになるな」
「ふふっ」
「ぷっ」
『あはははははははっ』
二人で笑う。笑い声によって、ここ数時間の二人の間のわだかまりが溶けて消えていく。

ひとしきり二人で笑った後。
「ははは…ふぅ…」
一息ついた陽菜が目じりに浮かんだ涙を指でぬぐいつつ、切り出した。
「社長?…もうひとつ聞かせてください。」
「あ、えーとなに?」

「最近は仕事の時なども、社長は力の加減がだいぶできるようになっていたと思うのですが…
 今回も手加減をしてくだされば、壁も壊れなかったのではないでしょうか?」
「いや、その…もう無我夢中で…」
「無我夢中…ですか?それほど理来さんがすごかったと…」
「いや、もちろんそれもあるんだが…覗きは犯罪だし…いや、それだけじゃないなぁ。
 …うぅぅぅぅぅん…………なんかこう、國生さんがお風呂に入っている所を他の人に見せたくなかったというか、こう……」

 言いたいことがまとまらないのか、ごにょごにょとつぶやいているが、そんなものは陽菜には聞こえていない。
(他の人に見せたくなかった…社長。それ、独占欲というか……)
「…社長…」
この朴念仁はなにを言ったのか分かっていない。絶対に分かっているわけがない。
そう分かりきってはいても、我聞の言ったことに頬が熱くなる。
 (あわわわ……ふぅ…落ち着け…わたし…)
523508:2007/08/25(土) 13:29:51 ID:XyNMyEAA
「社長?」
「な、なにかな?」
「今、『他の人に見せたくなかった』と、仰いましたが、他の人ではなくご自分でご覧になるのはよろしいのですか?」
 (私だけ恥ずかしい思いをしたわけだし。…ふふっ…少しくらい苛めてもいいですよね?社長?)

「え…うん。あ、いや、よくない!よくないに決まっている!!」

 ブルーシート越しに陽菜が座る。体重を我聞の背にかけて。
バスタオル越しに寄りかかるブルーシートの冷たさは、さらに向こうの我聞の体温が伝わる気がしてあまり気にならなかった。

「なるほど。。…では見たくないと。私の体など見る価値もないと仰るんですね。」
「え。い、いやそんなことはない!絶対にない。」
「本当にそうですか?」
「もちろんだ!!國生さんは凄くきれいだった!その、肌も白くて、すべすべしてそうでっ!
 む、胸とか太ももとかも凄く柔らかそうだったし!!こう、なんていうか足の間とかも…」
「しゃっ、社!!長!!」
「へ?」
「わ、忘れるといってませんでしたかっ!?」
「あ、いや、その…」

 具体的に思い出してしまった我聞と、具体的な感想を聞かされた陽菜。ブルーシート一枚をはさんで背中合わせに
二人で真っ赤になったまま、しばらく沈黙。でもけして重苦しいものではなかった。
 そして。

「社長…」
「あ、いや、すまなかった!本当に!!」
「許してさしあげます。」
「ごめんっ…って…え?」
「でも、次は許しませんからね?わかりましたか?」
 言いながら、陽菜は目を閉じて体重を我聞の背中にかけた。伝わってくる我聞のぬくもり。
体重を預けられたことで伝わる陽菜の心地よい重みと暖かさ。

「あ…あぁ、もちろんだ………ありがとう。」
 雪降る夜だが、二人の周りを暖かい空気が包んでいた。

しばらくして。
「…瓦礫。片付けなきゃな。國生さんも湯冷めしちゃうし。」
ぽつんと我聞が言った。
「あ…え…と……」
 正直陽菜としてはもう少しこうしていたい気持ちがあった。その反面、我聞の気遣いが素直にうれしい。
 どう返事をするか。ほんの少しの逡巡が
524508:2007/08/25(土) 13:31:08 ID:XyNMyEAA
悲 劇 を 引 き 起 こ す 。

「さぁ!!やるか!!」
自分に気合を入れるかのようにすっくと勢いよく立ち上がった我聞。
しかしその背中には全く無防備に体重をかける陽菜がいるわけで。

「うああああ!?」
「きゃああああああ!????」

ばっさああああああああっっっっっ

 上と横で仮止めしてあっただけのブルーシートに陽菜が全体重をかけることになった。
当然ブルーシートが人間一人を支えるほどの強度があるわけでもない。
 脱衣所と外では当然ながら段差がある。
我聞は脱衣所の床に腰掛けるような形になっていたので、陽菜はブルーシートを巻き込むように、後ろへ転がってしまった。

(もしも段差や地面で後頭部を打っていたりしたらっっ)
「國生さん!!國生さん大丈夫か!!」

がさがさばさばさっ

あせる我聞は急いでブルーシートを引き剥がしながら問いかける。

ばさぁ!!!

「ふぁっ!!す、すみません社長!大丈夫です!下にが雪が積もっていたのであまり強く打たずにすみ…まし…た…」
「あ………ぁ………」

ブルーシートを引き剥がすと。そこには。
頭と腕で段差から落ちた体を支え、足を大きく開いてバランスを取った陽菜がいた。
ん。当然。あそこ丸見え。アナルまで丸見え。しかも大開脚。

「……………」
状況認識ができず、悲鳴すら出せない陽菜

「……………」
状況認識ができず、目をそらすことすらできない我聞。

その二人の目が合った時。止まっていた時間が動き始める…………
525508:2007/08/25(土) 13:35:21 ID:XyNMyEAA
1時間ほど後。

ガラガラガラっ
「お?果歩。優さんと国生さんも。」
「あ。おにーちゃんお帰りっ。あ、わたしあがり〜!いちばん!」
「トランプか?俺もあとで混ぜてくれ。」
「ババ抜きだよー。それはそうと今までどこいってたの?」
「お?おう。…脱衣所の周辺のがれきを拾ってたまでは覚えてるんだが…ふと気づくと森の中で寝ててな。」
「……なんでそうなるのよ。まったく…風邪引かないでよね」
「お、おうっ!体なら大丈夫だ。鍛えてるからな!」
「…まぁ、何ともないならいいんだけど…とりあえず、お湯もらってくる。」
「お。俺も行くぞ。一人歩きはあぶないからな。」
ぱたぱたぱたぱた…

「そうそう。はるるん。はるるんっ!この旅館幽霊が出るんだよぉ〜」
「幽霊…ですか?」
「うんうん。さっき部屋から遠目に見たんだよぉー…お風呂場の裏側の森の方でね〜。
 全裸っぽい女が、倒れてる人影の頭をおっきな石かなんかで打ち付けてるの!」
「…………」

「で、遠くからかすかに『ワスレテクダサイ。ワスレテクダサイ』って半泣きみたいな声が聞こえてきてさー。
 すわっ殺人事件かっ!と思って近くに行ってみたら、何にも痕跡が残ってないのだよ!!」
「…証拠隠滅には自信がありますから…」
「…へ?」
「い、いえ、なんでもっ!しかし、優さん。本当になにも痕跡が無かったんですか?」
「うみゅ。これはもう、幽霊の仕業としか!!」

「…日頃優さんの癖を把握しておいてよかった…」
「……うみゅ?」
「あ、いえいえ。…それは怖いですね…優さんもお払いか何かしてもらったほうがいいんじゃないでしょうか?」
「うぅーん…さすがに怖いしなぁ…かなちんあたりに頼んでみるかにゃぁ…って、わたしもあがり〜っと♪」
「………また…負け……。」

「どしたの?お兄ちゃん?」
「…いや、ちょっと頭が…われるよーに…」
526508:2007/08/25(土) 13:38:00 ID:XyNMyEAA
タイトル『夏休みの友・再提出』

 大開脚はるるんからエッチパートつっこもうかと思ったんだけども、なかなか浮かばずにお蔵入りしかけてたものが、
仕事場のパソコンになんだかのこってたので投入してみる。
よく考えてみると、夏休みの友が出てもう1年以上経ってるとか…いまさらだよなーと思いつつ。

527名無しさん@ピンキー:2007/08/25(土) 22:16:37 ID:ZGUgNFRl
本当にいまさらだ
そんなあなたに一言
このド低能がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!
あざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっすっ!!!!
528名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 02:40:23 ID:oA5ZqAPz
読みきり予告の予告キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
529名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 08:27:19 ID:oYIb6dPn
久々の投下キター(゚∀゚)(゚∀゚)
530名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 23:20:41 ID:TK+nN4go
夏友ネタ!!お待ちしておりました。
ていのう!
531名無しさん@ピンキー:2007/08/27(月) 15:58:03 ID:QxL9ZefC
やっと燃料きたか〜…
そろそろ何かしら連載してもらいたいもんだぜ
532名無しさん@ピンキー:2007/08/28(火) 21:04:58 ID:EvNCpSYU
読み切りもいいけどはやく連載始まらねーかなぁ
正直今のサンデーはつまらん
533名無しさん@ピンキー:2007/08/28(火) 22:12:48 ID:Hi2BLDZW
さて、読み切りのアンケートについてだが、
ここの住人は知り合い含め二桁ノルマだよな?
534名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 16:16:47 ID:n8CYjdgh
今週のサンデーに予告のってなかったorz
535名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 23:57:45 ID:K7483cyK
>>534
サンデーじゃなくてサンデー超を見るんだ
536名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 23:17:03 ID:ohMw1J1z
読みきり楽しみだ

過去ログ読み返したが、このスレが荒れた事って少ないよなぁ
本スレとかもほとんど荒れなかったし
読み手も書き手もいい雰囲気だった
537名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 23:31:48 ID:CG5NLxO1
>>536
荒らしはいたが住民が総スルーして被害は最小限に抑えられていた
538名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 05:17:43 ID:Z9mU/yvB
そーいえばこのスレ出きてそろそろ一年だねぇ…
539名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 08:39:15 ID:eu8mshcF
こわしやが終わったのっていつだったっけ?
さくらがあったにせよ、1年間落ちることもなく、新作も投下され、なおかつあらしもこないし雰囲気も良い。

奇跡的なスレではないだろーか。
540名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 12:08:55 ID:b/84ZRs+
平井が主人公のエロパロ書いてくれ!
541名無しさん@ピンキー:2007/09/06(木) 12:55:13 ID:RQEioLZd
ほしゅ
542名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 00:27:23 ID:xH6Q+CRs
一周年記念パーティーみたいな感じで盛り上げていこうっ!!
最低限読みきりが出るまではここを残さねばならないからな
543名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 02:20:54 ID:nwiG1BkE
最近ブログでうpされている絵をみると、ラブコメ路線でもいけるんじゃないか?
と、ふと思った
544名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 04:05:47 ID:akHJxeTq
え?こわしや我聞ってラブコメ+アクション漫画だろ?
545名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 21:13:11 ID:NyYw0b29
ラブコメ分が不足してたんだよ!
546名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 15:38:45 ID:mtzZfwMG
関連スレってここだけ?
547名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 17:08:25 ID:JFkUi13S
>>546
今はもうこれだけかな?
【我聞】こわしや我聞(藤木俊)スレ【斗馬】2
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/rcomic/1166591174/
548名無しさん@ピンキー:2007/09/12(水) 17:22:21 ID:cVTjaZ8K
あとこれも
工具楽我聞&斗馬&平井信一萌えスレ2
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1184241556/
549sage:2007/09/15(土) 18:57:36 ID:1owt/1k7
保守
550名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 22:06:14 ID:kUR5Hxel
今日久々に漫画読み返した
やっぱ面白い!!
551名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 15:34:21 ID:krUkwp2N
552名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 17:38:24 ID:CzkUEGBN
553名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 22:20:40 ID:Ddnm/s33
554名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 01:43:15 ID:KZiRBfHX
555名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 09:09:11 ID:nxsIYX2C
寿
556名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 22:58:32 ID:+Csn3YlS
更新来たな
557名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 03:55:41 ID:vOU7cgx2
むぅ、連載が…
558名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 06:57:54 ID:itY7zZ2e
こねえええええええええ
559名無しさん@ピンキー:2007/09/24(月) 03:57:04 ID:qsqDEubh
…大丈夫!、さすがにそろそろ待つのにも慣れてきたからw
560名無しさん@ピンキー:2007/09/24(月) 20:46:19 ID:duTU9oI6
平井のエロパロずーっと待ってるんだが?
561名無しさん@ピンキー:2007/09/24(月) 21:59:00 ID:Br9701lu
それより499氏の
499氏の続きはまだかー
562名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 12:40:50 ID:Xh/DT8QY
499氏はお仕事が忙しくて泣いておりました
563名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 02:06:44 ID:z5/bMC9N
それに最近はどちらかというとハ○テの方がお忙しいみたいです
564名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 22:57:51 ID:W0l+JITz
ほしゅ
565名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 18:53:34 ID:XhNHWAJs
平井のエロパロキボンヌ!
566名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 19:28:10 ID:4kLfvrvx
保守しとこうか
567名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 03:12:27 ID:SFo7sPUw
ほちゅ


誰か何か書いてくれないかな・・・
568名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 18:23:44 ID:FsUQFWG6
保守
569名無しさん@ピンキー:2007/10/09(火) 15:39:27 ID:KHQgpRcm
平井のエロパロを書いて欲しい…
570名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 13:48:01 ID:Oq54Wd6n
そうだ!平井が好きだから!
571名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 13:01:08 ID:TvQ45S+r
こわしや我聞
572名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 19:44:19 ID:7z1pHwBA
読みきりによって帰ってくるであろう神々を期待し、
ホシュがてら投下
573名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 19:45:09 ID:7z1pHwBA

暖冬などと言われているものの現実問題一般人の肌が感じる冬の寒さというものは温暖化などお構いなしの寒い日が続く中、
日に日に暖まっていく気温に春の訪れを感じつつ、今か今かと老若男女問わず待ち遠しい気持ちの少し浮かれた時期、

「ただいま戻りました〜」
「………………」
「國生さん?」
「………………」
「おぉ〜〜い?」
「………………」
「……あの〜、もしも〜し?」
「……肉じゃがですかっ!? ジャガイモにはしっかり火は通ってますよっ!?」
「……そ、そうなんだぁ〜」
「……え、えぇ……」
「「………………」」

そんな本当の意味で心身ともに、心の底から頭の中までポカポカになり始めた頃のちょっとしたお話。


陽菜のドジっ子?


律儀に毎日少しずつ気温が上がるということもなく、日々上下する気温とは打って変わって陽菜の異常は常に上向き。
マズイ方向に向かって進行し続けている。
原因はいったい何か? なんて試行錯誤したくなるような連中もいるのだが、そんなのお構いなしに先ほどのような状態が続いている。

「(國生さん最近疲れてるのかな)」
「(わかんないんだよ、あの子そういう面は表に出さないでしょ?)」

そんなヒソヒソと秘密裏で会話なんて日常茶飯事になっているのだが、謎は深まるばかり。
謎解きに全力を注ぐ機関、GHKなる秘密組織は何度となく難攻不落の城の突貫にチャレンジを試みるも、

「いえ、これといって何もありませんが」

と、頭にハテナを浮かべたような表情で聞き返されてしまう。しかし、誰が見ても(我聞でさえ)おかしいことには気が付く。
常日頃はあちこちに広げている視野は狭まり、とっさの対応力も低下、突然ぽけぇ〜っとし始めてしまうといった状態である。
それでも今のところ仕事上の問題もなく、呆けていたとしても突然思い出したかのようにテキパキ動いている。
だがこのような不安定な状態が続いていってしまうようでは、本業が入ったときに何があるかわからない。
そんな気まずいような雰囲気が社内に広がってはいるのだが……

「……パチ、パチ…………」

書類とパソコンを交互に見直しながら、どこか抜けたような状態で仕事をしている。

「……っ、パチパチパチパチ」

かと思えば素晴らしいブラインドタッチでの業務処理。
574名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 19:45:47 ID:7z1pHwBA

「我聞くんっ!! 休暇だよ休暇っ!!」

陽菜が外回りだといって外出した途端、今までの鬱憤を晴らすかのごとく騒ぎ出す優。
そもそも優にとって静寂な空気とは本当に息が詰まってしまう。
生命の危機にさらされ続けた、続ける可能性があるこの状況をもっとも打破したいのもまた優である。

「な、何を突然言い出すんですか」

ハンニャのような形相で迫ってくる姿に怖気づくが、放って置いても恐怖は和らぐことはない、と我聞なりではあるが理解はしている。

「何をって、おまえ今更何を言い出すんじゃあぁっ!!」

愛用メガネにヒビが入りそうな状態で我聞の胸倉を掴み、ゆっさゆっさ力の限り揺すっている。
頭がカクンカクンとなってしまってはいるが、幸か不幸か日頃の修行のせいで気絶も出来ずに、

「ゆ、優さん、あ、あの、優さ、優さんっ」

こんな感じで苦痛をエンドレス。

「いや、にしても参りましたね」
「うむ、じゃがどうしようもないしの」

そんな和やかなムードの仕事場ではあったが、このままでは今後の対策が練られないとの判断を下し、我聞を救出。
本格的に会合が開かれ始めた。


「はるるんの異常は最近のゴタゴタにあると思うんだ」

怪しく光るガラスの奥に、ここ最近眠りっぱなしであった輝きを取り戻しつつ話の主導権を握る。

「確かに忙しかったですからね」

こちらはガラスの奥に何を秘めているかはまったく理解できない状態で相槌を打つ。
元気を取り戻した優の言っていることは的外れの利己的(GHK)というわけではなく、しっかり事実に基づいた発言であった。
真芝が壊滅してまだ日が浅く、我也と武文が旅立ってからも数日といえる今日この頃。
ドタバタと忙しく進んでいった日々の疲れがここにきてどっと出てきたのであろう、というのが優の言い分らしい。
それに真柴が壊滅した今、本業の数はぐっと減り、穏やかな生活が続いていくであろうと誰もが思える。
そんな気が抜け始め、緩みや疲労が出てきてもおかしくはない。
ここにいる全員がそのことに関しては何の反論も出てこない。ただただ納得するばかりである。

「その疲れを癒すための休暇というわけじゃな?」
「そゆこと〜」

優の表情からは陽菜のことを思って言っているのか、ただ自分の休みがほしくて言っているのかは定かではない。
だがそれだけではこの提案を否定する理由として弱すぎであると誰もが認識していた。

575名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 19:46:21 ID:7z1pHwBA

「ですが、彼女は例え休みといえど何かしら仕事のことを考えていると思いますが」
「そこで我聞くんっ!」
「はいっ?」
「はるるんと買い物に行ってきなさい」
「何故?」

当然のように言ってのける優に理解できないといわんばかりの表情で受け答えする我聞。

「家でのんびりしそうにないから引っ張り出さないと」
「でも人それぞれ休暇の楽しみ方は違うであろうし」
「それじゃあ何にも解決しないんだぁよぉ〜っ!!」

泣きつきながらゆっさゆっさ。


「そうですね、気分転換に丁度いいかもしれませんしね」
「うむ、それでよかろう」

我聞そっちのけで話は進んでいく。

「何で俺も買い物に行かないといけないんですか?」

ウインドショッピングなどは男の子である我聞には退屈でしかないようなものであり、そもそも自分が付いていく理由がまったくない。
これが我聞の言い分ではある。が、

「酷くお疲れの社員に休みだけ叩きつけてケアはしないのかい?」

ニヤリと優完全復活。先ほどまでのお疲れもどこ吹く風といえるほどの変わり身を披露。

「いや、だから楽しみ方は個人で違うから……」
「まさかあの状態のはるるんを放っておくとは言わないよね〜?」
「それは……」
「だって社長だもんねぇ〜、社員の心のケアはもっとも大切だよね〜」
「そ、そうですね」
「社長たるものドンと構えて社員をフォローしてみなさいっ!!」
「は、はいっ!!」

そして外を指差し、帰宅を示唆する。即座に理解した我聞は一目散に駆け出して行った。

「わたしのフォローも頼んだよ〜」
「いや、優君、社長は……」
「大丈夫、なんてたって社長だから」

にしし、と笑いながら悪い顔。我聞に続き流れるような動きで退社。

「いや、優君、仕事は」

そんな声は虚しく社内にこだましていた。

「まぁいいじゃないですか。私たちで何とかしておきましょう」

ため息混じりにしぶしぶ頷く専務。
576名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 19:46:58 ID:7z1pHwBA

そんな素早く帰宅させられた我聞であったが、理由を果歩に話すと、

「陽菜さんを誘ってないのに何帰ってきとんじゃあぁ〜っ!!」

との忠告により、再び出社とあっちこっち大忙しの我聞。

「戻りました……」

そもそも社長が一目散に家に向かって返ること自体問題であるのだが、今更そんなことに文句を付ける人材はいない。

「おや? どうしたんですか?」
「いや、國生さんと約束しないと」
「デートのですか?」
「んなぁっ!?」

遅まきながらに気が付く、世間一般的にデートであると。

「社長の勇姿を拝見しておきたいのじゃが、迷惑になると後々……」
「えぇ、優さんがなんて言い出すか。ですから私たちはこれで」

色々言い訳しながらあたふたしている我聞を横目に仲良く帰宅。置き去りになってしまった我聞。

そんな中、一人で考えてはいたが買い物に行かないという選択肢がなかったことに気が付いた。
先ほどの辻原の言葉が心にしっかりと刺さっている。

「優さんがなぁ……」

ため息混じりに呟く。ない頭を捻ったところで、いい案が出てくるかといえばそんなことはない。
出てくるのは誘わなかったときのさまざまな優。これ以上に恐いものはない。

「どうすっかなぁ〜」
「何をですか?」
「うぉわぁっ!? 國生さんっ!? いつからそこにっ!?」
「いえ、たった今帰ってきたところですが」

そんな動揺しっぱなしの我聞に少し驚きながらも、まぁいつものことであろうし、
といった感じの感想しかないようなリアクションで荷物を片付け始める。

「それよりみなさんは?」

がらんとした社内を見渡しながらの率直な感想。

「あ、あぁ。みんなお疲れのようだからね、少し早めに上がっていったよ」
「そうですか」

お疲れを引き起こしている張本人はなるほど、なんて頷きながらせっせとお片付け中。
577名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 19:47:35 ID:7z1pHwBA

「そういうわけで、急ではあるが明日は休みってことになったけど、何か問題はあるかな?」

声が上ずっているような気もするがそれどころではない。
心臓が今にでも破裂してしまうのではないかといわんばかりに体中に血を巡らせている。
冷や汗ダラダラ、目線も泳ぎたい放題である。

「明日は……幸いこれといって何もありませんね」

ほっと胸を撫で下ろすも、鼓動は再びフルスロットル。

「ところで明日買い物に行かない? ほら、気分転換にさ」

そんな直球勝負。しかしこれ以外の選択肢はなかったので、最善策といえば最善策なのであろう。

「そうで、すね……欲しいものもありましたし、では御一緒させていただきます」
「そうか、それはよかった。じゃあ詳細はあとで伝えるとして、帰ろうか」

軽く頷く陽菜を連れ、社を後にした。
この情景だけを見ていたとすると、どちらが異常で気分転換に行きたいのか、誤った判断が下されてしまってもおかしくはない。
だが、その間違いが陽菜に、
あぁ、社長はお疲れなんだな
との誤解を招き、すんなりと了承を頂いたのは我聞にとって、不幸中の幸い程度の拾い物であった。
578名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 19:48:10 ID:7z1pHwBA
今回は以上です 
時間を見つけて出来るだけ早く完結させたいと思います
579名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 20:33:20 ID:5RpYBkQw
神降臨キタ━━━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
まさかまだ投下されるとは・・・
全裸で続きを待ってます!
580名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 03:07:15 ID:hjwh64pm
久しぶりの新作だぁーーー!
そろそろ寒くなってきたので全裸ではないですがw続きまってます!!
581名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 22:55:28 ID:+awSEGQ3
GJです、続きが楽しみ過ぎる!
期待しています〜
582名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 06:51:41 ID:A8lJlWoI
GJです!続きを楽しみにしております。
投下してもらっておいてあつかましいのですか、エロ有りですよね?
583名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 12:48:41 ID:Zk01lCnh
断固保守
584名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 01:00:40 ID:sX9SsTNv
ホシュ
585名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 08:33:43 ID:Bqc1cdl3
やべぇ!超を予約すんの忘れてた!
こうなったら恥をしのんで日本橋に行くしかねぇ!
586名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 01:28:10 ID:yXGniEv2
佐々次郎きたな
587名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 22:41:56 ID:jim2aJmH
なぁギガグリーンの怪人が並んでるシーンに我聞がいねぇ?
588名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 01:02:14 ID:Qtwl4h6F
いるなw

ギガグリーン、読みながらずっとニヤニヤしちまったよw
こんなノリのエロとラブを引っさげてサンデーの連載に早く復帰して欲しいぜ全く
589名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 08:14:11 ID:mbCjHu3e
まだ見てない俺のためにもっとwktkするようなキーワードをくれ
590名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 08:40:29 ID:vj1FGyv6
>>589
捕まった宇宙人
3メートルの宇宙人
使徒
グレンラガン
591名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 12:27:33 ID:fxQew50+
ギガグリーン!!!!!!
592名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 23:27:25 ID:QO4nXIzi
我聞鹿わかんねえ
593名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 02:08:16 ID:XnGCj4dO
594名無しさん@ピンキー:2007/11/02(金) 20:26:47 ID:RaEPpFbV
さすがにほしゅ
595名無しさん@ピンキー:2007/11/02(金) 22:46:15 ID:4UXLFf/Q
平井のチンポをしゃぶるさくらのSSキボンヌ!
596名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 12:22:33 ID:Zh+PUOmk
保守ってやる
597名無しさん@ピンキー:2007/11/10(土) 08:31:16 ID:5QzXOn7y
ギガグリーン面白かったな
何かが足りない気がするが…
598名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 01:38:18 ID:PZ92hheo
保守ります
599名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 19:09:15 ID:xUZF7Y96
>>597
SAKURAよりページ少なかったからな…
あと泣くまでのタメが足りないというか
600名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 21:20:49 ID:lV2nOJYO
平井のエロパロキボンヌ!
601名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 19:16:07 ID:+fFGLxlI
中の人来た
602名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 15:02:11 ID:wjCwgnib
そろそろ圧縮きそうなんで保守っときますね
603名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 19:32:39 ID:1pm3lre6
保守
604名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 00:15:27 ID:YXr32WHw
ブログのプロフィール絵は阿久野の足コキ体勢か?
ちきしょう、緑川代わってくれ!!!




……つーか、ここならまだしもそういうコメントを公の場ですんなよな
605名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 01:56:25 ID:PhqUmFYB
こんばんは、初めて書いたしルールとかもちゃんとわかってないので
おかしいかもしれませんのでスイマセン
いちよエロ無し我聞×国生でいきます
606名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 01:57:16 ID:PhqUmFYB
こんにちは、國生陽菜です。
今私の頭の中はある人の事で半分以上を占めているわけでありまして、
そう・・・、お父さんが行きがけにあんな事を言うから・・・・・・。

「嫁に貰ってほしい」なんていきなりいわれても社長にだって迷惑だし、
と社長のほうを向くと社長も同じような顔をしてこちらを見ています。
その顔は真っ赤でした、多分私も同じようなものでしょうけど・・・
でももし同じ気持ちなら何かつながったみたいで少し嬉しかったりして。
そこに先代がホントの父親のようなことを言ってきて、
社長も社長で売り言葉に買い言葉でケンカが始まっちゃって、
そこに珠さんや(商売敵の)番司さんもはいってきて結局その話はその場で途切れてしまったのですが・・・・・・
あの日から2、3日過ぎた今でも私の中であのセリフは仕事の時でも授業中でも忘れる事が出来ないくらいのものになっていました。

どうすればいいかわからない私は部活がはじまる前に会長さんにアドバイスをしている天野さんや住さんに相談することにしました。
「あの・・・天野さん、ちょっとご相談したいことが」
ゴソゴソと体育着に着替えていた天野さんに尋ねると、
「あれ〜るなっちが相談なんて珍しいねぇ〜〜、もしかしてくぐっちの事?」
いきなり核心を突かれて私は
「えっ!!!、いや、・・あの・・・その・・・・はぃ」
と、出鼻をくじかれたわけでしたがこないだのいきさつの話すと、
「へぇ〜、お父さんがねぇ〜〜それでるなっちはくぐっちのことどう思ってるの?」、といわれて
「社長の事を・・・ですか?」
そこで頭の中で社長のことを思い出してみます、
Tシャツ姿の社長、本業のときの社長、辻原さんのことを聞き泣いている社長、
・・・そしてお父さんにあんなことを言われ真っ赤になっている社長、ここまで考えて私の頬はまた熱くなっていました。
「あらあら、くぐっちのことを考えただけでそんなになっちゃうってことはやっぱし好きなんじゃないの〜?」
そんなことをいわれ私は耳まで赤くなってしまい、
「わた、私は秘書です!!!秘書として社長にそのような感情は・・・」
「社長と秘書じゃなくてくぐっちとるなっちとして考えたときにるなっちはどうなの?くぐっちのこと嫌い?」
「いえ!!けっして嫌いということは、・・その・・仕事の時は頼りになりますし、気を使いすぎなくらい優しいですし・・・・、
たまに色んな事抱えこみすぎちゃって失敗しちゃうこともありますがそこは私がフォローしていけばいいと思ってますし、
・・・あ、あとあの笑顔は・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっとドキドキするかもです・・・」
そこまでいうと天野さんはニヤニヤしてこちらを見ていまして、
「くぐっちも幸せもんだねぇ〜、こんな美人にここまで思われちゃって」、
「だ、だから・・・」
先程言ったことを思い出して再び真っ赤になっていると、話題の中心の人が隣の男子ロッカーに入ってきました。
「ち〜〜す」
「おせーぞ我聞!」
「悪い悪い、クラスの花に水あげててさぁ」

このタイミングで社長の声を聞いた私は、
「っ!!!すみません天野さん、先行ってます!」
と、今まで1番赤くなって素早くロッカーを出て卓球場へと向かっていきました。
天野一人になったロッカーにクラスの仕事が終わった住がはいってきて、
「國生さん真っ赤になって走ってったけどなんかあったの?」
「ん〜〜種がようやく芽をだしたっていえばわかる?」
「ああ〜、やっとね」
と、なにもかも悟った二人のニヤついた笑い声が女子ロッカーに広がっていった。





607名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 01:58:41 ID:PhqUmFYB
今回は以上です。またかけたら書いてきます
608名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 08:22:23 ID:UyagV7gb
GJ!
久々に國生さんに萌えたぜ!
是非ともまた書いてください。
609名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 23:23:34 ID:sSXlxoO5
>>606 GJ!
最終回直後のニヤニヤが止まらない状況はいいよなw
陽菜さん可愛いよ陽菜さん


ちょい質問。
ここって公式(作中ではっきり描写のある)カップル以外のパロもおk?
自分でもありえねーよと思いつつ妄想が止まらないんだが
610名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 23:56:18 ID:CFk6HHm8
書き込む前に予告すれば別にかまわないんじゃないか?
611名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 03:18:47 ID:gmlg8IL3
だね、気に入らない人は華麗にスルーてのは基本でしょうし。

…ていうかこのスレでそんな贅沢言ってられn(略
612名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 03:41:35 ID:EQhCfw0Y
ってかどんなカプかの妄想が止まらないんだが
期待して待ってるぜぃ
613609:2007/11/22(木) 21:17:54 ID:fAz1AbH/
>>610-612
レスありがと
書き込む前に予告入れることにするよ

…まあきちんと文にできるかどうかも怪しいが
連休は精々妄想にいそしむことにする
614名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 02:42:58 ID:brtDOZre
かなりの文量のが一つあるけど、投下するよりうpろだにあげたほうがいいかな?
あと、wordファイルなんだがtxtの方がいいかな?

HPに上げようとしたら、使ってる所が18禁駄目で無理だったからさ

物自体は二年前にコミケで売ったものなんだけど
もう売ることはないだろうし当時買った人も、もう本が手元にないかもしれないので
このまま腐らせておくよりは読みたい人に読んでもらった方がいいかと思って
615名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 18:33:33 ID:PD3xFcUo
平井のエロパロ書いてー!!
616名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 01:41:12 ID:o46vEcJq
>>614
出来るなら投下でいいと思うよ
それともこのスレの残り容量じゃ収まらんほどあるのか?
投下規制は出来るなら支援するし

ぜひ読みたいね
2年前は参加してないし
617名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 05:20:34 ID:zasBXUeB
>>614
それにこのスレって毎日巡回って程の頻度じゃない人も多いみたいだし(苦笑)
うpろだだと後から見たがって悔しがるひととかも出ちゃうんじゃないかな?
618名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 13:01:15 ID:mXkd0kyv
まぁあれだ、毎日循環してる俺のためにも投下してくれ
小躍りして待ってっから
619名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 13:03:15 ID:mXkd0kyv
循環ってなんだよ……
小躍りは中止だな
大いに期待して待ってる
620名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 15:07:17 ID:KSvT/cMG
ぜひみてみたいです!!
期待して待ってます
621名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 16:14:28 ID:PrG2ThV5
投下しようかと思いましたが、このスレの残り容量を全部使い切ってしまうのでこちらにあげました。

http://sillytalker.web.fc2.com/novels/omake.html

多分、消される事は無いと思いますが・・・消されてたら教えてください。
622名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 17:30:33 ID:3nsYoyzB
>>621
GJ&乙
優さんは新鮮だった。

ただ「ward」は直した方がいいかと
623名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 17:31:56 ID:KSvT/cMG
あんな流れは初めてで楽しかったです。
僕はやっぱり国生さんが好きです
624名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 20:11:50 ID:ZO/5Fzzo
絵も文も堪能させていただきました〜
時々スレチェックしてて良かった…ほんとに良かった。
低脳!
625名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 16:54:40 ID:AhZ+MWjN
平井のエロパロ見たい!
626名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 06:09:32 ID:s2dxbn6y
>>621
この低脳!w
いやよかったっす、個人的にはオチがお気に入りですw
…てかうpされているサイト、うちの巡回コースにあるやw
627名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 14:12:09 ID:aSxQQz4v
>>621
GJ!
628名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 00:43:07 ID:pImtJzXg
まだこんな低脳神がいたとは!
リアルで転がっちまったぜ
629松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2007/11/29(木) 00:32:19 ID:dRmBKbdj
見た人は見たと思うので、もう消しておきますね

相方の絵師に内緒でうpしたから、見つかったら何言われるか分からんので・・・

630名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 01:11:25 ID:3PPhRe7X
あぶねぇ、見過ごすとこだったぜ
そして相変わらず低能!!
楽しませて頂きました
631名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 01:19:53 ID:7U7OEq3u
うp主は松雪氏だったのか・・気づかんかった。
また気が向いたら投下してつかーさい。
632名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 23:41:55 ID:Rp5Qs8kT
まだ見てない俺涙目ww
粗筋だけでも希望
633名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 01:25:05 ID:I64KUhO0
>>632
・あらすじ
思春期タマちゃん、大暴走!


・・・すいません、嘘です


ページは消えてますが、実はtxtデータはそのままだったり

http://sillytalker.web.fc2.com/novels/*.txt  ←*に数字をどうぞ

wordファイルはやっぱり消されてた模様
需要があれば再うpしますが、多分すぐ消します
634名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 19:04:45 ID:wQQqkxtV
>>633
どもども
4がラストでいいんだよね?
635名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 22:59:34 ID:I64KUhO0
>>634
・・・確認してみたら5のtxtデータだけが消えてました、すいませんorz

とりあえず、5.txtをあげ直しました。一緒にwordファイル(CLASH.doc)も

636名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 23:40:09 ID:BdH3YIye
>>635
遅くなりましたが5.txtいただきました
6.txtは見つけたがwordファイルが見つからん
縁がなかったようです
637名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 02:05:52 ID:6gU08w0f
松雪さん、今年はハヤテの同人誌なのか
499氏もなんか書くみたいね

本命は三日目だけど、こりゃ二日目も楽しみだ
638名無しさん@ピンキー:2007/12/14(金) 01:18:30 ID:2SDOcsUF
どちらもこのスレゆかりのひとではあるが、
どちらもコミケではハヤテネタみたいだから、微妙にスレ違いなんだよな。
639名無しさん@ピンキー:2007/12/14(金) 20:52:49 ID:ihP5bh0j
やはり新作を願うしかないな
しかし更新こねぇorz
640名無しさん@ピンキー:2007/12/18(火) 08:20:05 ID:4aXD+ZRv
保守
641606:2007/12/18(火) 17:51:48 ID:3kJ9szTs
こんばんわ、606です。
こないだの続き書いたんで載せます
少々見苦しい駄文ですがお願いします。


あと保管庫どうしたらいいかわからないので教えていただけると嬉しいです。
642606:2007/12/18(火) 17:54:06 ID:3kJ9szTs
それから部活が始まり、
私は何事もなかったように振る舞ってました。(なるべく社長の方は見ないように)
天野さんと住さんの視線を背中に激しく感じながらも向こうから返ってくる
ピンポン玉を打ち返していると、3台ほど離れた所で・・・
『我聞ダイナマイトッ!!』
『甘いわ、佐々木☆スペシウム!!!』
などとムキになって必殺技?を繰り出している社長の声がして、
思わずそっちの方を向いてしまったので返ってきた玉を空振ってしまいました。

(何やってんだろ・・・)
玉を拾いに後ろを向かうと、
そこにはニヤついた笑顔の天野さん達が玉を拾って渡してきてくれて・・・
『はい』
『・・あ、ありがとうございます』
『部活中に卓球以外のものに熱中しすぎないようにね』
『べ、別に社長を見たから空振ったわけじゃありません!!』
『へぇ〜くぐっちをねぇ、私一言もくぐっちの事とはいってないんだけどなぁ』
『うっ・・それは・・・その』
これ以上喋っても墓穴を掘るだけだと悟り、黙って台へと戻ることにしました。
この後も何度か空振りをして、そのたびに天野さん達からおかしな視線を
浴びながらも、部活の終わりの時間が近づいてきました。
部活が終わったら皆さんと少し時間を潰し、仕事に行く、
いつもと変わらない日常のはずでしたが今日はいつもと変わっていました。

しゃ、社長が本業のときの様な顔で私に近づいてきたんです!!


『あのさ国生さん、その・・・こ、この後時間あるかな?』
『えっ、あ・・・さ、30分程でしたら』
『そっか、んじゃ校門の所で待ってるから』
といって社長はそそくさと行ってしまいました。

『・・・・・・・・・・・・・・・・え?』
『テンチョ〜、一名様御指名頂きました〜〜』
『ちょっ、天野さん!!』
『止めなよ恵〜(笑)』
『なんでよ〜、くぐっちのあの感じはもう告白しかないっしょ!!!』
その言葉を聞いた途端私の頭は天野さんを怒るどころでは無くなってしまって・・・
(しゃ、社長が・・私に・・・?、そんなことあるわけ・・・・・・・・・)
『ところでいいのかな〜るなっち?、くぐっち待たしちゃって』
『え、あっ・・・しし、失礼します!!』
『ふふっ、あんなに慌てちゃって、ほんっとわかりやすいんだから』
『でも実際工具楽くん何の用事かな?』
『さぁ〜、まぁくぐっちの事だからたいしたことじゃないんだろうけど
今のるなっちには効果てきめんだったからなんか起こったりしてね。
明日問い詰めて全てを吐かせてやるわ〜!!』
『・・ほどほどにね』
643606:2007/12/18(火) 23:38:29 ID:3kJ9szTs
以上です。
また思いついたら続きかきます。
駄文失礼しました

644名無しさん@ピンキー:2007/12/19(水) 01:13:04 ID:2pkTnR2l
GJ

保管庫をどうしたらって話は、どうすれば保管庫に保存されるかって話かな?
あれは保管庫の管理人が定期的に保存してくれてるので、ぶっちゃけ何もしなくてもいい
ただ、過疎ってる所はあまり見回りに来てくれないので、保存されるには時間がかかる

あと、ある程度まとまったら保存されるので、一気に書き上げてしまった方がいいかもね

何はともあれ、続きも期待するよん
645名無しさん@ピンキー:2007/12/19(水) 07:59:03 ID:gYu9HPj4
GJ
思わずにやけちまうじゃねぇかこの低脳が!
646606じゃなくて605でした:2007/12/22(土) 19:55:18 ID:KcMt+o/+
644さん説明ありがとうございます。
いつもより多めに書いてみました。

ではまた駄文を・・・
647605:2007/12/22(土) 19:57:11 ID:KcMt+o/+
ロッカーへ戻りいつもより念入りに身支度を済ませ、私は社長の待つ校門へ急いで向かいました。
そこには、こちらに気がついて笑顔を向けてくる誰かさんがいるわけでありまして、
私はそれだけの事で何故かうれしくなって社長の方へ走りました。
『ハァ・・ハァ・・・お、お待たせしました』
『あ、ああ。そんなに急がなくても良かったのに。』
『いえ、社長を待たさせるわけにはいきませんので、それでごしめ、私に何の御用でしょうか?』
『うん、あの・・・その・・・そ、その前に少し歩こうか』
『はぁ・・・構いませんが』

それから会社の方に向かって歩きだしましたが、会話は続かず、社長も何故あん
なことを言ったのかいっこうに教えてくれません。
そろそろ本題を聞き出そうと、隣にいる社長の顔を見上げる(無意識な上目使い)と、
社長は珍しく考え事をしているみたいで、そんな社長の顔をあまり見たことがなかったので
新しい社長の一面を見れたような気がして少し嬉しくて微笑んでいると、
『ん?どうした国生さん』
『いえ、別に。ところで社長、そろそろ本題の方を教えていただいても・・・』
『ん、ああ、それじゃあそこの公園で』
と言って、歩いていた土手の下にある小さな公園を指差しました。
下に向かう途中で、先程の天野さんの台詞が急に頭に浮かんできて・・・、
『くぐっちのあの感じはもう告白しかないっしょ!!!』
告白・・・もしホントにそうだとしたら・・・私は・・・・・・
降りる階段が少なくなっていくにつれて、私の心臓は高鳴り続けていきました。

公園の真ん中、大きな滑り台があるその前で社長が振り返ってきました。
その顔は私に近づいてきたのと同じ、本業のときような真剣な顔でした。
私はもう社長のセリフを自分の中で決めつけていました。
サ行の3番目、カ行の2番目、その2文字の言葉を心待ちにしている自分に嫌気がさしながらも、
待ってないのかといわれると否定しきれない自分がいる。
だから次の社長の言葉を聞いた瞬間・・・・

648605:2007/12/22(土) 19:57:54 ID:KcMt+o/+

『こないだおっちゃんにあんな事いわれて国生さん迷惑だったよな・・・忘れてくれ』
『・・・・・・え?』
体中の血が冷えていくのがわかった。
メイワク?社長にとってあれは迷惑だったの?私には何日たっても忘れられない
事なのに・・・・・・迷惑。
視界が歪む、社長の顔が見えなくなる、胸が痛い、ここに居たくない、
社長にこんな顔見られたくない、涙が止まらない・・・・・
私は・・私は・・・・・、
『私は・・・嬉しかった・・のに・・・・』

私は走って逃げた。
有り得ない幻想を抱いていた自分から、
『社長にとって迷惑』という認めたくない現実から、
そしてなによりそんな幻想を抱かせた社長から、
このまま会社にいって何にもなかったような振りをしよう。
今まで通り社長と秘書でいよう。私はこれ以上の事を望んではいけなかったんだ・・・・・・



不意に私の腕を何かが掴み、そしてそのまま何かに抱かれた。体中がぬくもりで包まれる。
私はこのぬくもりを知っている・・・
辻原さんがいなくなった日、私はこのぬくもりと指切りをした、
私はこの人を支えたいと思った、家族として・・そして、今は・・・・・・


『社長・・・』
『待ってくれ国生さん!!』
『離してください!!何を待てっていうんですか。
お父さんにあんな事いわれて、社長は迷惑だったんでしょう!?
私の事なんて嫌いなんでしょう!?』
『そんなわけ無いだろ!!!』
『え・・・』
『国生さんの事嫌いなわけないだろ!?、迷惑なわけないだろ!?
俺だって嬉しかったよ、でも国生さんも嬉しいなんてそんなことあるわけないって、
有り得ないってずっと思ってて・・・
今日国生さんに言ってすっきりしよう、何にもなかったようにしようと思って・・・・
でも国生さんが言ってくれたから・・嬉しかったって言ってくれたから・・・、
自分の気持ちを素直に言おうと思った。国生さん、君が好きだ!!!』

体中の血が聞く前のように熱くなるのがわかった。
また涙が出てきた。
さっきとは違う、悲しくて出たのとは違う・・・嬉し・・涙。
『私ずっと悩んでたんですよ・・・』
『・・ゴメン』
『迷惑だよななんて言われて、すっごく悲しかったんですよ!!』
口ではそういいながら私は腕を社長の背中にまわして、
『・・・スマン』
社長も私を強く抱いてくれて・・・、でも涙は止まらなくて、
『でも・・・でも社長も嬉しかったってわかって、私のこと好きって言ってくれ
て、今はすっごく幸せです。私、私も社長のことが好きです。』
社長は何も言わず先程よりも強く抱いてくれました。
少し痛くて苦しいけど、その痛みも好きな人にやられるのは幸せに感じられてしまうわけで・・、
『社長・・・』
『国生さん・・・』
社長の腕の中で私達の距離はゼロからマイナスへと変わっていきました・・・・・・
649605:2007/12/22(土) 20:13:17 ID:KcMt+o/+
今回はここまでで・・・

次で終わりにするつもりです

なんか一瞬499さんのクリスマスSSのパクリみたいな流れになっちゃいました(泣)
意識してたわけじゃないんでごめんなさい
650名無しさん@ピンキー:2007/12/23(日) 21:40:03 ID:Xf1+X1qx
平井のエロパロまだー?
651名無しさん@ピンキー:2007/12/24(月) 21:50:08 ID:wgYzzpWo
>>605
いいねいいね!
続き楽しみにしてますよ〜!
652名無しさん@ピンキー:2007/12/25(火) 05:54:02 ID:Y08BYief
499さんも「あまり気にせずに」とおっしゃってましたし、
意図的にイスンスパイアwしなければ大丈夫なのでは?
653605:2007/12/26(水) 01:58:09 ID:1J4PEorW
そういってもらえるとうれしいです

では最後の投下します
654605:2007/12/26(水) 01:59:11 ID:1J4PEorW
『そろそろ仕事に遅れちゃうから行こうか』
『はい・・・・・』

どれくらいそうしていたでしょうか、私は社長の腕の中から離れ、
降りてきた階段を上り始めました。
・・・もちろん手は繋いだまま・・・

土手の道へと戻り、私達はまた歩き出しました。
ここに来るまでのようにあまり会話はありませんでしたが、
私の心の中からは不安は消え、そのかわり幸せがパンクしそうなほど溢れていました。
そんな私の幸せが社長のほうにも漏れたのか、
社長は手を繋いだまま少し肩があたるくらい近づいてきて・・・
私はその逞しい肩に頭を預け、社長のトクトクと動く心臓の音を愛おしく感じていました。


『寒くない?』
『大丈夫です、ここはどこよりもあったかいから・・』
『そう?俺はまだ寒いな・・・』
『えっ?』
そういって社長は繋いでた手を離してしまいました。
それだけで私の身体は芯まで冷えたようになってしまって・・・・・
でも次の瞬間、私達の身体は先程よりもずっと暖かくなりました。

『あっ・・』
社長が離した手を私の肩に乗せて、私を自分の方へと引き寄せてきたんです。
手を繋いでたときよりは多少歩きにくいですが、
そんなこと気にもなりませんでした。
『これならもっと暖かいでしょ?』
『はい・・・』

また涙が出そうになりました。こんなに幸せになっていいのでしょうか?
・・・ちょっと自分に言い訳、私は今までお父さんがいなくなったりして悲しんだから・・
これはそのご褒美、一人で頑張ってきたご褒美、でも・・もう一人じゃないから・・・。
『・・・・・・さん。』

そんな神様からのご褒美ももう終わりです・・、会社が見えてきちゃいました。
はじめて仕事があることが嫌だと感じました。
先代にもらった大切なお仕事なのに・・・
今の私にはそれよりも大切なものができちゃったみたいです、すいません先代・・・。
『・・・・・生さん!』
でも、先代の家族も・・私も幸せになるんだからいいですよね?
などと、心の中で葛藤を繰り広げていた私には私達以外の人が近づいていたのに
気付くのが遅れてしまって・・・
『国生さん!!』
『あ・・はい!、何でしょう社長?』
『だから・・前・・・』
『え?』
社長のほうから前方へと顔を戻すと、そこにはよく知る人物が立っていて・・・
655605:2007/12/26(水) 01:59:49 ID:1J4PEorW

『ゆ・・優さん・・・』
『二人ともそんなくっついちゃってラブラブだね〜、優さん火傷しちゃうよ〜(笑)』
その言葉で一瞬にして私達は身体を離して距離をとります。
『ち、違いますよ優さん!!、俺たちは別に・・』
『え〜?、何が違うのかなぁ〜?』
そう・・今まではそう否定して皆さんからの追撃を逃れてきた。でも・・今は・
・・、ちゃんとわかりあった今は・・・・・



『いや、ホント何も』
ん?、誰かが服の裾を引っ張ってくる。なんだろうとそっちを向くと俺の好きな人が・・・
今にも泣きそうな瞳で俺をじっと見てくる。
その瞳から国生さんが何を言いたいのか、すぐに理解した。
(ホントに・・・違うんですか?)
ひ、卑怯だ国生さん・・・、そんな瞳で見られたら断れるわけないじゃないか!!
『あれあれ〜どうしたのかな我聞君?、違うんじゃなかったの〜?』
『いや・・その・・・ち、違くないです』
その途端国生さんの顔はこれでもかというくらい明るくなって・・
優さんの前だというのに俺の手を掴んできた・・・

『だよねぇ〜、なんてったって陽菜ちゃんのほうはもう我聞君にメロメロだもん
ねぇ〜』
私は否定もせず、ただ真っ赤になって俯いていた・・・、もちろん社長の手は放さない。
『さぁ〜てこんなおもし、幸せな出来事はみんなにひろめないとね〜
中乃井さん、辻原くん、果歩ちゃんにかなちんも。桃子ちゃんにも勝利宣言いれとく?
あぁ、お出かけ中の二人にも知らせないとね、陽菜ちゃんパパは大喜びだわね(笑)、ウフフ』


俯いているどころでは無くなりました、
そんないきなりひろめられるなんて・・・恥ずかし過ぎます!!


なんで桃子が!?
い、いや、そんな場合じゃない!!親父に知れたら本気で収束爆砕を出しかねん!?


           『『や、やめてくださ〜い!!!』』


              解体業者[工具楽屋]
                勤務評価報告書


                おおむね良し



                   終

656605:2007/12/26(水) 02:01:29 ID:1J4PEorW
以上です。
こんな駄文でよろこんで頂けたのなら幸いです

657名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 06:37:07 ID:zvdDhCQI
ナイス低脳!
久しぶりに単行本読み返したくなりました!
國生さんかわいすぐる!
658名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 23:25:39 ID:M+useQKk BE:274800645-2BP(1000)
hssh
659605:2007/12/28(金) 23:59:46 ID:SOsukl28
ネタが思いついたので書いてみました


タイトルは「積み木の組み立て方」
の前編です
660積み木の組み立て方:2007/12/29(土) 00:08:17 ID:4ESrWhA2
その日は7月1日、夏真っ盛りの蒸し暑い夜でした。
ひさしぶりの本業はお父さん達の捜査網から逃げて来た真芝の残党狩り、
新理論を持ってない人達なら社長の相手じゃありません!!
そう思っていました・・・・・

現に社長は相手が銃を撃ってこようがナイフを投げてこようが
そんなものものともせずに次々と倒していきました。
ですが情報よりも敵の数が多すぎます。
10人との情報のはずがいざ攻め込んでみれば50人はいるでしょうか・・・
また西さんがやってくれたようです。
さすがの社長も5倍もの相手に気を使い果たしてしまったようで、
その場を無力化させたときにはもうフラフラで・・


・・・そこからの私の行動がいけなかったんです・・、
私の軽率な行動が招いた最悪の事態・・・・・・
『社長!大丈夫ですか!?』
『国生さんっ!?まだきちゃ駄目だ!!』
『えっ?』
『危ない!!!』


パンッ


渇いた銃声の音がやけに響きました・・・
完全に無力化出来てない人がまだ一人いたらしく、
その人の撃った弾は、私に当たり・・・ませんでした。
『ぐっ・・・』
『しゃ、社長?』

私の顔に何か赤い液体が垂れてきた・・・
私の前にはいつものヘルメットをかぶった社長がいました・・、
そして私に倒れ込むように崩れ落ちていって・・・・・
『我聞君!!!』
『社長!!!』
私達がいくら呼び掛けてもまったく反応が無くて・・・
『やったぞ!!、化け物を仕留めた!!!』
敵がその言葉を言い終わる前には、辻原さんが一撃で黙らせました。

『早く病院へ!!!』



661積み木の組み立て方:2007/12/29(土) 00:09:10 ID:4ESrWhA2


いつもの社長なら銃で撃たれてもすぐに仙術で止血すれば大事にはいたらりません・・・
ですが気を使い切ってしまった今の社長にはそんな事が出来るわけもなく
真っ赤な血が社長の服を紅く染め続けていきました・・・・・・

中乃井さんが飛ばしてくれたおかげで以前お世話になったことのある病院に5分と待たずに着き、
緊急のオペが始まりました・・・
ここは内閣お墨付きの病院なので銃で撃たれたということも外部には漏れません、
私達はただ赤く光った手術中のランプが消えるのを待ち続けました・・・


しかしそれが消える前に扉から先生と看護士が出て来て、
『先生!!社長は無事なんですか!?』
『弾は取り除きましたが心臓の動きが弱まっています、このままだと危険な状態です・・』
『そんな・・・・・、先生!お願いします!!社長を・・・』
『全力は尽くします、あとは彼の生命力に賭けて下さい』
『・・・・・・』




信じられません・・、あんな誰よりも元気な社長が危険な状態なんて・・・
しかもそうなったのは私のせい・・・・・

『あなた・・秘書さん?』
『あ・・・はい!!』
『今があなた達の社長が生きるか死ぬかの瀬戸際なの!!
一人ぐらいなら入っても大丈夫だから彼の手を握って話し掛けてあげて』
『はい!!!』


私は看護士のかたと一緒に手術室に入りました。
そこには人工呼吸器をつけたいつもからは想像もつかない弱々しい社長がベットの上に横になっていて・・・
『社長!!!』
私は社長の手を握り必死に呼び続けました。
『社長!!起きてください!!、
あなたが守ってくれたおかげで私は今ここにいれます!!!
早く社長にありがとうってお礼をいいたいんです!!
寝たままじゃ伝わらないじゃないですか!起きて下さい!!社長!!!』


『先生!!心泊数、血圧共に落ちてきてます!!』
『強心剤を投与!!!』

私の周りで皆さんが必死で社長のために頑張ってます、私も、もっと!!
『社長起きて!!このまま会えなくなるのなんて私イヤです!!!
まだ先代を倒してないじゃないですか!!私をお嫁に貰ってくれるんじゃないんですか!?
私待ってますから!!社長がそういってくれるの待ってますから!!だから起きて!!!』
社長の手がどんどん冷たくなっていく・・・

『心泊数戻りません!!』
『電気ショックを使う!!、危ないから下がって!!!』


662積み木の組み立て方:2007/12/29(土) 00:09:31 ID:4ESrWhA2
ちょうどそのとき、扉の向こうに果歩さん達や番司さんが到着したらしく・・・
『工具楽!!!てめぇ陽菜さんを悲しませてんじゃねぇ!!!とっとと起きろ!!』
『お兄ちゃん!!死んじゃヤダ!!!
せっかくお父さんが帰ってきたのに今度はお兄ちゃんがいなくなるなんて私許さないから!!
絶対許さないんだからね!!!』

ドンッ
先生が心臓に電気を流しますが社長の脈は戻りません・・・・・・
『イヤです・・・こんなの・・イヤ・・・』


『番司君、君はお姉さん達から教わってないのかね?』
『教わるって何をだよ!?』
『いや、知らないのならいいんじゃ・・・』

ドンッ
ドンッ
何度も電気をしますが社長の脈はいまだ戻らず・・・・・・





・・・何故か先生は急にやめてしまいました・・・何故か!?
・・本当はその理由を心の中で理解してしまって・・・・・・でもそんなの!!!
『いや!!!やだ!!!』
『はぁ、はぁ・・・・・・、午後10時28分、御臨終です・・』
先生も看護士のかたも頭を下げる・・・



『いやああぁぁぁぁ!!!』

その瞬間私の心は粉々に砕け散りました・・・・・


663605:2007/12/29(土) 00:11:20 ID:4ESrWhA2
今回は以上です

続きのあらすじは考えているんで近いうちに投稿するつもりです
664名無しさん@ピンキー:2007/12/29(土) 05:37:03 ID:Tb7BXgfK
えぇっ!な、なんて鬼引きを…!?
665名無しさん@ピンキー:2007/12/29(土) 20:14:18 ID:9CA7R2DN
平井のエロパロも書け!
666名無しさん@ピンキー:2007/12/29(土) 23:33:49 ID:LGyHUyk+
>>605
GJ!
続きを早く!
667名無しさん@ピンキー:2007/12/30(日) 01:20:20 ID:Ms5DR/6q
なんという引き・・・
続きが気になって仕方ねえええええ
とりあえずGJ!
668605:2007/12/30(日) 16:58:10 ID:F5Ekwmpn
後半書き終わりました

ちょっと最後の都合があわなくなったので訂正お願いします。
7月1日のところを4日でおねがいします

では、「積み木の組み立て方」後編いきます
669積み木の組み立て方 後編:2007/12/30(日) 17:00:10 ID:F5Ekwmpn
『お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!!』
『嘘だろ・・・オイ工具楽!!ふざけてんじゃねぇぞ!!!とっとと・・・起き・・・ろよ』
『我聞くん・・・そんな・・』
『社長!!起きて下され!!!』

そして先生達が手術の片付けを始めようとしていたとき・・・

バンッ!!

誰かが勢いよく扉を開けて入ってきました。
それは私もよく知る人物で・・・

『・・・ぐすっ・・・かなえ・・さん・・・・・』
『どうやら間に合ったようね』
『もう遅いです・・・社長は・・・もう・・』
『いいえ、まだ間に合うわ。番司、ちょっと手伝って。それに陽菜ちゃんもね』
『・・間に・・・合う?』
『オイ姉貴!!何をしようってんだよ!!工具楽の心臓はもう止まっちまったんだぞ!!!
これ以上陽菜さんを悲しませんじゃねぇ!!!』
『だからその心臓を動かそうっていってんの!!ほら、早く!!!』

私は耳を疑いました・・・
だって病院の先生だってダメだったのにそれを・・・・・
でももしも社長が生き返る可能性があるんだったら・・私!!


『かなえさん、私は何をすればいいんですか!?』
『陽菜さん!?』
『さすが陽菜ちゃん、このバカと違ってものわかりがいいわ。じゃあ今から説明するわね』

かなえさんの話によると、静馬の技は水を操る技故に人の身体に流れる血液も操る事が出来るそうです。
だからかなえさんの仙術で社長の血液を循環させて心臓をもう一度動かさせるらしいのですが・・・
『でもこの技にはひとつ欠点があるの』
『欠点!?』
『ええ、それは血液循環の中心である心臓に負担がかかり過ぎてしまうこと。
だからこのままやれば我聞君の心臓は私の技に耐え切れず破裂してしまうわ』
『じゃあどうすれば・・・あっ』
『ホントにあなたものわかりがいいわね。そう、あなたの反仙術で心臓のところ
にくる私の気を消しながら心臓マッサージをしてほしいの』
『私の・・・反仙術で・・・』
670積み木の組み立て方 後編:2007/12/30(日) 17:00:34 ID:F5Ekwmpn
『ちょっと待て姉貴!!俺はそんな技しらねぇぞ!!!』
『当然よ、これは人の命を簡単に奪うことの出来る技、
半人前のあんたなんかに教えられるもんじゃないわ』
『じゃあ姉貴だって今までにやったことがあんのかよ!?』
『一度だけ・・・・・でも失敗したわ・・』
『なっ!?』
『我聞君のお母さんが暴走の事件に巻き込まれたとき、私もそこにいたの・・・、
その時は武文さんがいたから私と武文さんでこの技を・・・
武文さんは完璧だった・・・・・でも・・私の気が・・・途中で切れてしまったから・・・』
かなえさんの瞳から涙が零れ落ちました・・
『私はあれから一日たりとも仙術の修業を怠った事は無い!!
だから今度こそ絶対に成功してみせるわ!!!あとは陽菜ちゃん、あなたしだいよ』
『でもよ〜陽菜さんにそん『番司さん邪魔です!!』ぐわっ!』
『あなたは人を殺してしまうかもしれない覚悟はある?』
『そんな覚悟いりません、絶対に成功させて見せます!!
私は・・社長のためだったら何だって出来ます!!!』
『陽菜さん・・・』
『はるるん・・・』
『そう・・・ならもう時間も無いしいくわよ!!』
『はいっ!!!』

本当は自信なんかなかった、反仙術だってまだしっかりと使えない・・・。
でも社長を助けられるのは私だけだから!!
また笑顔の社長に会いたいから!!!

『陽菜ちゃん、もうすこしだから頑張って!!』
『は・・い』
頭が痛い・・・目の前が暗くなってきた・・・まだ、もうすこし・・
心臓が動き出すまで・・社長!!・・・社長!!!


次の瞬間、私は目の前が真っ白になって後ろに倒れていくのをどこか遠くに感じました・・・
671積み木の組み立て方 後編:2007/12/30(日) 17:01:24 ID:F5Ekwmpn

(さん・・・、国生さん・・・)
頭の中で誰かの声がする・・・私はその声のするほうに腕を伸ばして・・・

『・・ん・・・ここ・・は・・?』
『あっ陽菜さん気がつきました!?』
『果歩・・・さん?』
『心配したんですよ〜!?なにせ陽菜さん3日も目を覚まさないんですもん』
『3日・・・・・・・・』
ふと横を見ると真っ白なシーツが敷かれた空のベットがある。
・・・社長!!、社長は!?

『そ、そんなことより社長は!?果歩さん社長は!?』
『お、落ち着いて下さい。陽菜さんだってまだそんなに元気になってないんですから』
そのとき、病室のドアの向こうから夢の中で聞いた声がしてきました。
『お〜国生さん起きたか』
『しゃ、社長・・』
『な〜にが起きたかよ。陽菜さんがこうなっちゃったのはお兄ちゃんのせいじゃない』
『うぐっ、まあそうだが・・・って国生さんどうした!?どっか痛いのか!?』
『社長が・・生きてて・・ぐすっ・・・・ホントに・・・よかった・・
私、えぐっ・・・社長・・・死んじゃったとき・・・ホントに・・ひっく、ホントに・・
・悲しくて・・・・・社長』
『いや!?ほら・・・国生さん!!おかげで俺今こうして生きてるから、ね?』
そういって社長は私の頭を撫でてくれました。
人に頭を撫でてもらうのって何年振りだろう・・・
暖かくって・・嬉しくて・・気持ちいい・・・


しばらくそうしていると病室に先生がはいってきました。
『工具楽君!、病み上がりなのに動いちゃダメじゃないか!!それに女の子まで泣かして』
『いや、これは・・・』
『お兄ちゃんが泣かせたんでしょ〜』
『ぐっ!?まあそうかもしれんが・・・』
『社長・・・ぐすっ・・・・社長・・』
『それはいいとして工具楽君、君の身体はどうなっているんだね!?』
『もう平気ですけど・・』
『そういう意味じゃない!!、どうしてあんな重傷がたった3日で完治するんだね!?』
『さぁ・・うまれつきなもんで』
もちろん仙術ということは秘密だ。
『現代の医学では考えられん!!まあ、とりあえずはそこの君のせいで3日も寝込ませてしまった秘書さんに感謝するんだな』
『はい!!なんたって俺の嫁さんですから!!』
『ぐずっ・・・・・えっ?』



672積み木の組み立て方 後編:2007/12/30(日) 17:02:27 ID:F5Ekwmpn
一瞬その場の空気が止まった。
『『嫁さん!?』』
『ちょ、ちょっとお兄ちゃん何いってんのよ!!(キャ〜お兄ちゃんナイス!!!)』
『社長!?ど、どういうことですか!?』
『いや、その・・声が聞こえたんだ、どこか遠くから。
国生さんが嫁にもらってくれるの待ってるって、もしかして俺の聞き違いだった?』
『いえ・・確かに言いましたけど・・・それは・・社長に意識を取り戻して欲しくて思わずいったことで・・その・・』
『そっか、でもそのとき決心したんだ、国生さん、俺の嫁さんになってくれ!!』
『っっ!!!』

しゃ、社長が!?私を!?
嬉しい、嬉しくて幸せだけど嫁さんって!?
ホントに私を・・・お嫁に!?
そう理解した瞬間、私の顔は火がついたように熱くなり、恥ずかしさのあまり俯いてしまいました。
『そ、そそ、そういうことは人前で言うもんじゃないんじゃないんでしゅか!?』
んぐ・・・うまく口がまわらない。
『でももう誰もいないよ?』
『えっ?』
ホントだ・・・気付けば果歩さんもこんな事態を生み出した先生もいなくなってる、ってことは社長と・・・二人きり・・・。
『で、でも私達まだ高校生ですし・・せめて高校を卒業してから・・・なら・・・』
『も、もちろんちゃんと卒業して責任がとれるようになってからだ!!一人前の社長にもなってみせる!!!』
『はい・・・待ってます・・ずっと・・・・幸せにしてくださいね!!!』
『ありがとう国生さん、約束するよ・・・』


真っ白な病室に幸せな雰囲気が漂います・・・



『ところで社長、今日が何日かご存知ですか?』
『む・・・ここ2、3日忙しかったからな、よくわからん』
『ふふ・・社長らしいですね、今日は7月7日、社長の誕生日ですよ』
『あ、そうか』
『でも私今起きたばかりで何もご用意できてないんです、だから少しの間目を閉じていて頂いてもよろしいですか?』
『う、うん。わかった』

ここまで話して目をつぶったのに社長は何をされるのかわからない様子でびびってます。
はぁ・・・、どこまでこの人は鈍感なのか・・・・・なんでわからないかな?

そう心の中で思いながら私は彼の顔を両手で引き寄せて・・・・
『こ、国生さん!?』
『社長・・・誕生日おめでとうございます!!!』


                  解体業者[工具楽屋]
                   勤務評価報告書


                GHK様おめでとうございます




                      終
673605:2007/12/30(日) 17:05:10 ID:F5Ekwmpn
以上です

今回は最後急いで書いたのでちょっとめちゃくちゃです・・・
すいません。

674名無しさん@ピンキー:2007/12/30(日) 22:21:04 ID:nsf5MjSZ
GJ
かなちんが頑なに暴走を危険視するのはそういうことか
675名無しさん@ピンキー:2007/12/30(日) 23:12:08 ID:ko4qnmB7
オリジナルな部分を違和感なく描いてるところがすごいと思った。
マジGJ、あんたこのスレの救世主だよ!
676名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 03:58:05 ID:uqD40mXb
投下します 
8レス予定 エロなし
677名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 03:59:06 ID:uqD40mXb

青々と輝くように広がっている空模様の下、日に日に冷え込んで物寂しくなっているのにも関わらず響き渡る叫び声は明るかった。
「はい、こっちこっち」
「ふぬぅっ!」
「遅いですよ、次はここ」
「うぇいっ!」
「腰を入れて、浅い浅い。集中しないと……」
そんな言葉の応酬が止むと同時に簡単に吹き飛ばされていく我聞の姿が見られる昼下がり、好奇の目を持つ輩が二人。
歓声を上げることもせず、それどころか言葉一つも出ないほどに見とれていた。

目で追いかける兄の姿が大きくて。


『珠、修行始めました』


「おやおや、もうギブアップですか?」
そんなニタニタとした笑い顔を前面に押し出して我聞を煽る。
我聞は息も絶え絶えに人体の生存を優先させるべく全身に酸素を運搬していた。
既に虫の息とも言えるぐらいに疲弊しきっているのは誰の目にも明白に映っているが、辻原も、また我聞自身も引くわけには行かなかった。
具体的に何か秘めたる事情云々なんてことは皆無で、切羽詰っているわけでもない。
ただ全力で前だけを見つめ、ひたすら父親を追い越そうと努力しようとする姿もまた明白であった。
だから観戦者がストップをかけたり、休息を促すなんてことはしなかった。それが皆のためであり、自身のためであったから。
「あたしにも訓練してっ!」
にゅっ、と湧いて出た珠。先ほどまで隣にいたはずの斗馬が驚いているところを見ると、誰もが驚いていることが見て取れる。
もちろんその驚いているうちに辻原も含まれている。
「いや、でもですね……」
基礎の基礎、というよりも仙術自体をしっかりコントロールできない状態に加え小学生、女の子なのである。
そこら辺を考慮に入れて、さらに我聞の修行途中という現状。とりあえず笑っておく。
「訓練と言いましても、まずは基礎体力が必要ですからね」
「兄ちゃんと毎朝走り込んでるから大丈夫」
周囲の視線が我聞に突き刺さる。
「い、いやいやっ! これは珠が自分から」
あたふたと腕を縦横無尽に振るう。誰もがふぅ〜ん、といった表情を浮かべ頷いている。
そんなやりとりも雑音とも捉えずにじっと辻原の目を見て誠意を伝える。
普段の無駄に明るく、年相応とも言える雰囲気は感じ取れずしっかりとした対応をしなければならないと辻原は考え始めていた。
「そうですねぇ……少しぐらいなら」
突然ぱっと明るくなった笑顔を見ると自分の判断は間違っていなかったんだなと納得できる。周囲の反応はまちまちであったが。
「ちょっ、辻原さんっ!?」
完全復活した我聞が血相を変えて起き上がる。その表情にはなんともいえないものが張り付いていた。
「(大丈夫です、遊びの延長ぐらいにしときますよ)」
「(そうは言っても……)」
「(そもそも社長が走りこみなんてさせてなければ……)」
そんなコソコソと密談と表現できなくはないと言った会話を他所に、斗馬相手に発狂寸前とも見える珠は気合を注入してもらっている。
「……わかりました」
しぶしぶ、本当にしぶしぶ引き下がっていく我聞は陽菜張りのジト目を披露している。
今日ほどあの胡散臭い笑い声が信用ならないと感じる日はなかった。
そんな胡散臭いヒゲメガネはと言うと表面上だけでなく内心もニタニタしていた。
「皆さん家族想いで何よりです」
「何か言いましたか?」
首を横に振り否定のサイン。ジト目は緩和されつつ距離を離していく我聞を尻目に家族のあり方を考えさせられる。
そんな感傷的な気分も払いのけ、凛とした視線のするほうに目をやる。スッとした自然な構え方を見るとどこか昔の我聞を思い出す。
どこまでもまっすぐな目もそっくりで。
「では始めましょうか」
678名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 04:00:07 ID:uqD40mXb

「ではここ」
「次はこっちです」
「もう少し踏み込んで……そうです」
自然にトレーニングに移行していったのは我聞以外の全員であり、
我聞はと言うと一人で何かやってればいいものの気になって仕方ないオーラ全開で情緒不安定っぷりを発揮している。
常日頃一緒にやれ訓練だやれトレーニングだと行ってきた自分だからわかることがある。
訓練内容は同じメニューになるであろうから、耐え切れそうにないものが選ばれたらすぐにわかる。
そうすれば即座に中断できるであろう、というのが我聞の考えである。
まさに居ても立っても居られない状況。
そんな中、珠は最初のうちは忠実に指示に従っていたのだがアップ程度のことを繰り返す辻原に少し遺憾を覚えていた。
「あの、もう少しキツクでお願いします」
軽く汗を拭いつつ真剣に向き合う。流石に我聞の妹であり、毎朝のトレーニングをこなしているだけのことはある。
汗はかいているものの、息は少ししか上がっていない。
「でもですね、最初から全力では体に悪影響ですよ」
「わかってる、でも大丈夫だから」
ぺこりと頭を下げる。
言葉使いはまだまだ小学生でありながらもこのような誠意の示し方はいったいどこで学んでくるのか、なんて考えが頭を過ぎる。
「普段使わない部位の筋肉をただでさえ急激に使い込んでいるです、これ以上の負荷をかけるのは体に酷ですよ?」
なだめかすように半笑いで伝える。
「兄ちゃんはいつも限界ギリギリまで頑張ってるっ!!」
「社長も昔は同じようなことをしてたんですけどね」
聴いたこともないような声を上げた珠に驚く外野を他所に、辻原は動揺も見せず大人の体裁を保っていた。
流石に半笑いを見せる余裕はなくなっているが。
「そうだぞ珠。俺だって昔は簡単なことから始めたんだ」
そんな我聞の言葉は頭には入っているのだろうが、右から左へ流れているのが見てわかる。
怖いくらい真剣な目に血のつながりを見る。
「……いいでしょう」
「辻原さ……」
手のひらを見せ、横目で動きを制す。辻原の表情からも冗談やお遊びではないといったはっきりとした意志が伝わってくる。
我聞の足は結局動きもしなかった。近づいて説得しようとも思ったがそんなことをしてはいけない気がしていた。
不安な気持ちがないと言えば嘘になることもしっかりと受け止めることが出来ていた。
何しろ辻原が間違ったことはしないという信頼があった。
だからどっしりと構えて二人を見つめる。
兄として、社長として。
喚き騒ぎ散らしているのは優と中之井であったが既にマジモード全開の三人の眼中にはなかった。
肩を回し軽く腰も捻っておく。
「さぁいいでしょう。まずはここから」
679名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 04:01:11 ID:uqD40mXb

「はっ、はっ……」
「次はこっち」
「ぐっ」
「遅い」
ぱーんといい音が響く。しかしこれは珠が鳴らしたものではなく、珠から鳴ったものであった。
そして勢いよく地面に倒れこむ。
「どうしたんですか、まだたった3分しか経ってませんが」
そういって辻原が再びミットをかざす。震える体を起こし、そのミット目掛けて手を伸ばす。
ポスっ、とやっとこさふれることが出来る。が、
ヒュっ、と辻原のもう一方の手が珠の顔直前で止められる。
「打つだけでなく、打たれることも考えるように最初に教えましたが?」
体が崩れ落ちていく。別に何かがぶつかったわけでもく、ただ体が自分の言うことを聞いてくれないだけ。
頭の中ではグルグルと自分の体に浸透していかない命令が回り続ける。
そんな大の字になり寝転んでいる自分に声が降ってくるのがわかった。
「さて、日も暮れてきましたし、今日はこの辺でお開きですかね」
まだやれるっ!! 
そんな言葉が頭の中を駆け巡るも、口から飛び出すことはなかった。
「珠さんも訓練はこれで終わりと言うことで。社長もよろしいですね?」
頷き皆が退社の準備をするために社へ帰っていく。
辻原の言葉が降り注いでは頭の中へ入り込み、パンパンになった自分からは意思とは関係のない涙が言葉の代わりに流れていった。
動いたり、考えたりしようとすればするほど代わりに涙が次から次えと湧いてきた。
遠くに見え、朱に染まっていく夕焼けを遮るように我聞が視界に入ってきた。

赤く染まる大空を移したかのような目を兄と合わせることは出来なかった。

「さぁ、帰ろうか」

そう言われ背中におぶられる。


お互い汗だらけでビショビショの衣類に少しだけ湿り気を増やした。
680名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 04:02:13 ID:uqD40mXb

珠を連れて帰宅した我聞は果歩に珠を預けるも、ぼろぼろになった珠の姿に怒りマックスの果歩。
見るからに何かあったのは小学生どころか幼稚園児にもわかってしまうような汚れっぷり。
何があったかを問い詰めるも我聞は軽く受け流し脱走。
もちろん斗馬も口は割らない。
今日の出来事を完全にはぐらかし社に向かう姿に感謝しつつ、姉にも心配させまいと笑って風呂に行く。
ふらつきながらも目的地に着くと服を脱ぎ始める。
「いっ!?」
体を少し動かしただけで全身に激痛が走る。
それでもこんなところで半裸をさらしていては姉に何を言われるかわかったもんじゃない。
先ほどのやり取りからそう感じ取っていたので、体に鞭打って服を脱ぎ足早に風呂に逃げ込む。
「ふぃ〜……」
極楽極楽、なんて年寄り染みた言葉も出ない。先ほどから心身ともに軽く限界を超えていた。
「はぁ……」
ため息が漏れる。風呂の暖かさで少しずつ気分も落ち着いてくる。
落ち着いてくればくるほど心に染み渡ってくるあの言葉。

『珠さんも訓練はこれで終わりと言うことで』

きっともう来るなという意味なのであろう。それぐらいは簡単に想像がつく。
それに少し本気になった訓練には手も足もでなかった。
そう少し。
自分にはかなりきつく限界以上なのはやってみてわかったが、我聞はそれ以上の訓練を軽くやってのけている。
それを自分が知っていることも考えて限界ギリギリをついてきてくれたのであろう、最初に言った通りに。
考えれば考えただけへこみ、これといって改善策も解決策も見当たらない。
そんな負のスパイラスに入り込んでしまっている中、風呂場に近づく人影に気が付いた。
「珠? 今日いったい何があったの?」
「ん〜、何にも〜」
「嘘おっしゃい、それぐらいわかるっての」
流石姉ちゃん、なんて思うも誰が見てもおかしい。
あれだけ派手にやられて、その上このような状態をさらしていてはきっと我聞ですら不思議がるであろう。多分。
「何にもないって」
「そう」
普段口うるさい果歩がこうも簡単に引き下がるとは思ってもいなかったのでまた少し驚く。
何でだろうな? とは思うものの頭は回らない。
普段なら(自分では)高速回転している頭が重く、思考が点のままでつながってこない。
「でも、何か悩み事とかあるなら相談しなさいよ? お兄ちゃんは役に立たないだろうし」
「ん〜、わかった〜」
その返事を聞き、何事もなかったかのように夕飯の支度に帰っていく。
思わぬ人の登場に完璧に頭の回転はストップしてくれた。
でも頭のグルグルはグルグルのまま、ただただ時間だけが過ぎていき気が付くとのぼせていた。
風呂から出て、すぐに自室に帰る。これ以上何も考えたくない、
それだけは考えると今日一日にあったことを思い出すようにして夢の世界に旅立っていった。
681名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 04:03:14 ID:uqD40mXb

「ただいまぁ〜」
色々忙しい一日であったので、予想以上に仕事量が残っているのもまた当たり前。
ただ色々と言っても夕方数時間前後の話であるのは社員みな認識済みであった。
ただ一人外に出ていた陽菜だけはまったく事態を把握できていなかったのであるが、
どうにか仕事が終わっていないことに文句を付けられる前には現状認識をさせることには成功した。
そんなお疲れ気味の我聞ではあるのだが、仕事は終わっても懸念事項はまだ残ったままであった。
「ちょっとお兄ちゃん、珠に何したのっ!?」
「いや、何って言われても……」
台所から飛び出してきた果歩が今度こそと言わんばかりに威圧してくる。
正直冷や汗物の心境であり、嘘も誤魔化しも許されない工具楽家の証人喚問。
ここで真実を偽り、偽装しようものならばあとに残るは表現しきれないほどの恐怖であるのはみな承知済み。
「いつもアホみたいに元気な珠が180度方向転換しちゃっててもうビックリよ。何がなんだかわからない」
両手を挙げ、少しオーバーとも取れるボディーランゲージで伝えようとしている。
それだけ驚いているという意味なんだろうなぁ、と我聞なりに解釈してみる。
「そんなに変だったのか?」
「落ち込んでるように見えたわよ」
「はは……」
的確に読み取る当たり流石家族といったところであろう。
だがそういった感情の変化に疎い我聞にしてみれば、果歩が専門家ではないのかとも思えてきてしまうほどの衝撃を受けた。
「そう言えば珠は?」
「部屋に篭ってる。もうすぐ夕飯なのに」
困ったわ〜、なんてまるでおばさんのような言葉使いも気にならない。
「じゃあ俺が連れてくるよ」
「無理に引っ張ってきちゃダメだってば」
「任せろ、なんせ家長ですから」
どん、と胸を叩きニヘラと笑ってみせる。
我聞も我聞で思うところもあり、確実な打開策を練っているというわけでも自信があるわけでもない。
ただそういう人柄なだけである。
「わかったわよ、じゃあ夕飯の準備済ませとくから。……あぁ、別に急がなくてもいいからね?」
「おお、任せとけっ!! そして夕飯は普段通りの時間帯でいいからな」
そう言って奥へ引っ込んでいった。
どこからその自信は湧いてくるのやら。
そんな言葉が頭をかすめるも、球に何があったかも知らない自分の無知に加え、
あの笑顔ならどうにかできるだろうという甘えによる二重奏に掻き消されていく。
兄があれだけ落ち着いているのだ、絶対に大丈夫。
身内に甘いな、なんて考えながら大絶賛されるような夕飯にしてやろうとひっそりと意気込んでいた。
682名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 04:04:16 ID:uqD40mXb

「珠〜、そろそろ飯だぞ〜」
珠はというと真っ暗な部屋の中、真ん中で寝っ転がっていた。
「暗いままにしといて〜」
うつ伏せのまま声だけが聞こえてきた。動く気配が感じられない。
「飯だって、今晩のおかずはなんだろうな」
「ねぇ〜」
興味なさそうな言葉が返ってくる。
「そろそろ晩飯だから行くぞ」
「ごはんいらなぁ〜い」
ご飯と運動を取り除いたら別に興味のあるものが存在するのかが怪しい珠が飯を要らないと言っている。
あからさまにぶーたれている妹。
「なぁ? 何か悩みとかあれば相談に乗るぞ?」
「姉ちゃんが兄ちゃんは役に立たないって言ってたぁ〜」
「あいつ……」
普段軽くてすっからかんの頭が重くなっていくのを感じた。
自分では立派な家長であると自負していたにもかかわらず、まさかの役立たず発言。
「で、でもだなっ! お、俺は家長だからな、どんな悩み事だって解決できるんだ」
あいつの言葉に惑わされちゃダメだとも付け加え、あわてて主張している姿は紛れもなく頼りない。
「そうなんだぁ〜」
「だから何でも相談するといい。例えば……訓練のこととか」
「………………」
急に言葉が詰まってしまう。先ほどまでと打って変わり適当な相槌すら出てこない。
再びグルグルが動き始める。
「なぁ? おまえは何で訓練なんて言い始めたんだ? しかも唐突にさ」
何でだろう? そういう考えは頭を回るも結論も出ず、わからないという言葉も出ない。
「いや、言いたくないなら別にかまわないさ。強いることはしたくないしな」
そう言いながら自分の下へ近づいてくる兄の足音がとても気分を不快にさせていく気がした。
「……こないで」
「断る」
滅多に使わない強い口調で一歩一歩近づいてくる。そのたびに胸が痛くなっていき、普段と違う兄が恐ろしく思えくてる。
「やだ、こないでっ、こないでっ!!」
兄が近づくたびに、少し起こした体を後ろに進める。
これ以上引けないところまで来たとき、暗闇の中、目の前にいる兄の手が自分に伸びてくるのがわかった。
わかってしまうと反射的にその手を全力で叩く。
何度も、何度も叩いた。
叩いている間はその手はピクリとも動かず、ただただ空中にたたずんでいた。
「いやだぁ……こないでぇ……」

何時から泣いていたのかもわからない

何時から兄の手を叩いているのかもわからない

何時から苦しいのかもわからない

何時からわからないかもわからない

何にもわからない
683名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 04:05:16 ID:uqD40mXb

ポン、と兄の手が頭を撫でてきた。
「大丈夫だ、な〜んにも恐いことなんてない」
兄の手が後頭部を擦る。何度も、何度も擦ってくれている。
それがいつもの、普段通りの温かい兄の手の温もりだとわかる。
「辛いことがあれば全て捨てればいい、嫌なことがあれば逃げ込めばいい」
今、目の前にある笑顔が、とっても心地よいものだとわかる。
「おまえにはそういう場所があるだろ? 俺とか、果歩、斗馬だとか」
そんな言葉を投げかけながらぎゅっと抱きしめてくれる。
よく覚えていない赤ちゃんの頃に戻ったように、温かく包み込んでくれる。
リズムよく、ポンポン、っと撫でてくれる。
そしてその衝撃と共に、今までのグルグルが徐々に自分から抜けていくのを感じた。
「…………さぃ」
「ん? どうした?」
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
暖かな返事と共に、さらにぎゅっと抱きしめてくれた。
体もまだ少し痛かったのに、それすらも包み込んでくれているような気がした。

「なぁ? 結局訓練始めた理由ってなんなんだ?」
嗚咽が聞こえなくなったところで我聞が切り出した。
「えぇっと……早く兄ちゃんを手伝いたくて」
「おぉ、そうかそうか」
ニヤニヤ笑う兄はいつも通りしまっていないのだが、そのしまらなさがまた安心感をくれる。
「それに……」
兄ちゃんみたいにかっこよくなりたかったから
「ん? 何か言ったか?」
「ん〜ん、何も」
「そうか」
へへっ、なんて笑い声が重なった。
「それにおまえを見てると昔の俺を思い出すしな」
「何で?」
「いや、俺もキツクしてくれって頼んだんだよ、同じ風に」
少し照れたように口にする。
「しかも辻原さんはおまえのこと俺より筋がいいってベタ褒めしてたぞ?」
「えぇっ!? もう稽古付けてくれないんじゃないのっ!?」
心底驚いたように目をクリックリさせて固まっている。
「そんなわけないだろう、社長もうかうかしてられませんね、なんて言われちゃったし」
1つ、そしてまた1つと心の枷が外れていくのを実感しながら会話を弾ませる。
「さて、そろそろ飯だろう。今晩のおかずはなんだろうな」
「あ、まだごはん食べてないっ!? おなかすいたぁ〜」

684名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 04:06:17 ID:uqD40mXb

「姉ちゃんごはん何〜?」
果歩が笑顔で返事をしようとするも、
「とんかつだぁ〜」
自己解決、呆れて声もでない。
指が眉間に吸い寄せられていくのを感じるも、肩の荷は降りたと言わんばかりの表情で兄を見る。
「果歩、箸がまだ出てないぞっ!?」
こっちも頭の中はとんかつでいっぱいいっぱいらしい。
誰がわたしを慰めたりしてくれるのだろうか? そろそろ家出の時機到来かしら?
そんなことを考えつつ
「はいはい、今出すから待ってなさい」
「「「はぁ〜い」」」
ひょっこり手伝いを抜け出した斗馬があとで〆られたのは言うまでもない。

夜も深まり丑三つ時。ふと部屋のドアが開く音がして目が覚める。
「……だぁれだ? こんな時間に?」
目覚める予定時刻よりかなり早く、寝ぼけ気味に声は尻上がりとなっている。
この部屋の主であるのは我聞と斗馬であり、斗馬は隣でいびきをかいているのでそれ以外の来訪者が訪れたことになる。
声を上げることもなく、よく見る小さなシルエットがひょこひょこ近づいてくる。
「珠か? どうしたこんな時間に」
「久しぶりに兄ちゃんと寝ようかなって思って」
ヒソヒソとしゃべってはいるが、ある程度の音量では斗馬はびくともしないであろうがとりあえずヒソヒソ。
「なんだそんなことか。ほれ」
そういって布団をめくり、珠を潜り込ませる。



「へへ、暖かい」
685名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 04:07:27 ID:uqD40mXb
以上です
ガチ珠は初めてなのでまだまだ甘いですがご勘弁を
では良いお年を
686名無しさん@ピンキー:2008/01/01(火) 00:44:42 ID:XYrn2jB0
うおおおおおおなんて原作どおりの珠が……!
読みきりで出てきてもおかしくないっすよ、やられました!

なんかこの年でお年玉貰った気分だ。
687名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 21:04:48 ID:4HZ2RHM7
GJ!
珠が可愛くてすげーよかったっす!

それにしても、なんかここに来て活気付いてきたなこのスレ!
新年早々幸先いいぜ!
688名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 11:21:36 ID:UY7swWF7
保守
689名無しさん@ピンキー:2008/01/11(金) 01:20:04 ID:v0mmeY2p
ホシュ
690名無しさん@ピンキー:2008/01/11(金) 14:09:17 ID:32144z0m
平井のエロパロ、まだー?
691名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 05:40:57 ID:YFKyPicU
保守
692名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 20:35:47 ID:XsAgCVQU
ほしゆ
693名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 01:23:26 ID:5R29RycL
亀だが珠の人ナイス低能っ!!
でも良作を読めて嬉しい気持ちがレス数の少なさで半減してる
流石にこれだとこのスレ危なくならないか?
694名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 08:21:51 ID:u+KLxKuo
俺はブログと一緒に毎日のぞいてるぜ
695名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 16:34:08 ID:7ZaiS9lB
平井のエロパロ書けー!
696名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 14:36:55 ID:CpDSv+8K
いいミド
697名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 01:51:13 ID:OsykAc2/
698名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 20:18:50 ID:pM9euG/V
699名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 22:00:54 ID:EJGQkeZi
700名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 23:22:46 ID:KB65u4Dr
701名無しさん@ピンキー:2008/01/24(木) 00:26:44 ID:gguUrHH2
702名無しさん@ピンキー:2008/01/24(木) 02:12:55 ID:ji58EBMK
703名無しさん@ピンキー:2008/01/24(木) 23:48:26 ID:Z3fDkY7i
そうきたかw
704名無しさん@ピンキー:2008/01/25(金) 00:27:00 ID:6uepQyKH
何気にこのスレ見てるヤツはいるんだなぁと思ったw
705名無しさん@ピンキー:2008/01/26(土) 04:35:31 ID:Va4REhci
卓球部の先輩だったんだっけ? >ホチャーン
706名無しさん@ピンキー:2008/01/26(土) 12:04:04 ID:wc76yQgS
ぐぉらぁっ!! 何ほっちゃん忘れとんじゃわれっ!!



……はっ、取り乱して悪かった
ユンボ乗りのあの御方です(三巻参照)
707名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 13:59:22 ID:ccsCOWP8
連載待ちだな
708名無しさん@ピンキー:2008/01/29(火) 02:43:06 ID:k7xyh+zC
>706すまん

超初期設定では卓球部の先輩役だったんよ。ガモンの憧れの人に成る予定だったらすいが
709名無しさん@ピンキー:2008/01/29(火) 22:12:19 ID:IwurFBiA
>>708
さあ、その設定で、焦った國生さんが我聞に強引にせまるというSSを書くんだ!
710名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 10:42:06 ID:k+d+vD9I
ほしゅ
711名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 04:05:38 ID:Il4Y6bkW
久方ぶりなのでとりあえずほしゅ
712名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 23:13:37 ID:kjR8vPnu
ほちゅ・・・としか書き込めない自分が情けない・・・
713名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 11:33:54 ID:jqJvMrDJ
これは?携帯だけだけど
ttp://courseagain.com
714名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 11:34:37 ID:hr0pdQJo
はいはいブラクラブラクラ
715名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 03:50:34 ID:BGyJqbkp
超遅レスだが・・
珠SSGJ!特に後半部分は原作のイメージどおりで転がってしまいましたわ
716名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 14:11:00 ID:mH6ly4ef
ブログ更新がないのは、新連載フラグが立ったとみていいよな?
717名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 14:48:33 ID:ooxr9l6r
天野 
718名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 20:39:51 ID:4u5E++1j
次の連載が軌道に乗ったら初期作品を単行本化してもらえるのかな?
719名無しさん@ピンキー:2008/02/22(金) 21:33:52 ID:vzGI75fy
古本市場でこわしや我聞がまとめ売りしてた…少し悲しかった。
720名無しさん@ピンキー:2008/02/25(月) 22:38:51 ID:l88Bzmvi
平井のエロパロまだ?
721名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 08:20:12 ID:pmJxoTPY
情報源のブログが更新されないと、どうしようもねえな。
722名無しさん@ピンキー:2008/03/01(土) 08:14:47 ID:qyrKXT34
ほしゅ
723名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 03:06:18 ID:FoMC0WhO
>721
一応最近更新はされてたよ?
…あれを更新って言って良いならだけどw
724名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 21:21:33 ID:KJgOpHIm
>>723
あれはあれで、新連載フラグという期待が持てる
725名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 01:37:46 ID:VC758SsS
そろそろ、ギガグリーンのSS書くかー

……超サンデーが見当たらないorz
うっかり大掃除で捨てちまったかもorz

さすがにもう売ってないよね……
726名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 08:18:54 ID:j6v4Mba1
>>725の記憶力と妄想力に期待せざるをえない
727名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 21:20:21 ID:CWAgNJn4
ギガグリーンならうちにあります県、もってってください。
そして久々のSSを!
728名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 22:57:08 ID:tnUiHX1o
最近我聞にハマッた身としては期間限定絵が気になって夜も眠れません 
全部で何枚あるんだろうか 一部サルベージできたけど

それより短編集出してくれー
729名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 00:26:55 ID:yHQ/JX12
新参もいるんだぜ!! 
こりゃ新連載も成功するぜよ、小学館っ!!




だから新作を、是非とも新作をぉぉぉぉぉぉっ!!
730名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 08:30:21 ID:uhAwZoD1
次の新連載攻勢のなかに藤木センセの名前がなかった・・・orz
731名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 21:39:40 ID:VSFT7E6+
久しぶりに単行本を一気読みしてテンションが上がり、書きました。

果歩×番司で、エロなし、強引な話の持っていき方ですので、嫌な方はスルー願います。
732名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 21:40:03 ID:VSFT7E6+
「番司くん!クロマティ高校のヤロウ共がタカヤをボコりやがった!」
「番司くん大変だ!バース高が駅前で好き勝手暴れてるみたいですぜ!」
「番司くん!卑怯番長が御川高を狙ってるって……」
「テメエ等うるせえ!くだらねぇ争いにオレを巻き込むな!不良同士の揉め事は、テメエ等でどうにかしやがれ!」

 春の日差しが心地よい4月。県立御川高校ではまた新しい一年が始まりました。
その暖かな日差しの元、いかつい不良連中に泣きつかれている男が一人。
時代錯誤な長ランにバンダナ。しかしその眼差しには何か強い意志のようなものを感じます。
そう、この男こそが水の仙術使い、静馬仙術25代目当主(予定)の静馬番司17歳、その人です。
番司は無事に高校3年になり、今では御川高校一強い男として、付近の不良達から恐れられています。
しかし、それをひけらかすわけでもない番司の態度は、周りから尊敬の眼差しを受けているのです。

 番司達は真芝との戦いを終えた後、心配された残党からの攻撃もなく、平和で楽しい高校生活を過ごしていました。
同じ高校に通っていた我聞と陽菜は、この春、無事に御川高校を卒業。
我聞の妹達からプレゼントされた2人だけでの卒業旅行を満喫した様子。
……そして番司は心に秘めたその淡い恋心に終止符を打つことにしました。
お互いに惹かれあっている我聞と陽菜。この2人に割り込む事はできないと痛感したのです。

(まったく、うるさいヤツ等だ。くだらねぇ不良の争いにオレを巻き込むんじゃねえってんだ)

 しかしそう簡単に吹っ切れないのが恋の病。
心に残っているもやもやを晴らすため、ウサ晴らしに不良退治をやってやるかとその気になっています。

(が、そうも言ってられねぇな。
不良どもがどうなろうと知ったこっちゃねぇが、他の生徒に害が及ばないとも限らない。
……なにより暴れてスカッとしたい気持ちでいっぱいだぜ!)

 拳で手の平を『パン!』と叩き、駅前で暴れている不良どもを叩きのめそうと考えていたその時、
背後から、聞き慣れた、それでいて聞きたくない声が番司の耳に入ってきたのです。
733名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 21:40:26 ID:VSFT7E6+
「ねぇカホ、ニッポンの校舎ってなんでこんなに狭いの?」
「仕方ないでしょ?狭い日本に大きな土地なんてそうそうないわよ」
「ふぅ〜ん。けどこの制服は可愛くてなかなかいいわね。この制服姿の私を見たらきっとガモンも……」
「それはないわね。アンタのようなうっすい胸に興奮する男なんてそういないわよ」
「……カホ、言ってて空しくないの?」
「……ゴメン、すっごく空しかったわ」

 ……カタカタカタカタ。
番司は先ほどまでの男らしい表情から一変し、身体をカタカタと震わせています。

「あ〜あ、ガモンやハルナと一緒に高校生活を送りたかったなぁ」
「日本は海外とは違うからね。いくらアンタが天才でも飛び級は無理なのよ」
「ま、カホがいるからいっか。けど知り合いがカホだけってのもなんだか寂しいわよね〜」
「これから作ればいいのよ。それも高校生活の醍醐味ってヤツね。
……あれ?そういえば御川高校って、お兄ちゃんと陽菜さん以外にも誰かいなかったっけ?」

 ……ガタガタガタガタガタガタ。
震える身体を押さえつつ、ゆっくりと背後の声の主を見てみる番司。
その視線の先には、ここは外国かと思わせるような金髪美少女と、
その少女と仲良く話し込んでいる、黒く、美しい髪をツインテールに纏めた、カワイイ女の子がいます。
番司はガタガタと震える指で二人を指差し、思わず叫びました。 

「な、なんでお前らがここにいるんだよ!いったい何しに来やがった!」

 そう、番司の視線の先にいた人物とは……
その金髪が人目を引く、美貌も兼ね備えた少女。
元真芝第5研所長を14歳という若さで任されていた天才。桃子・A・ラインフォード。
そして、その桃子と仲良く話しているのは、黒髪でツインテールのカワイイ女の子。
その彼女の兄は、去年まで御川高校に在籍し、番司と共に真芝と戦った仲間であり、
恋のライバルでもあった(番司が勝手にそう思い込んでいただけだが)、工具楽我聞。
彼女は番司の戦友であり、ライバルでもある我聞よりも権力があり、
影の組織、GHK(我聞・陽菜くっつけ委員会)を立ち上げ、束ねる長。
そう、彼女の名は工具楽果歩、その人である。
734名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 21:40:53 ID:VSFT7E6+
「あ、パンツマンだ。相変わらずダサいのね」
「ホントだー、だっさ〜い。ねぇカホ、ダサいのがうつるから早く教室へ行こ?」
「そうね、こんなのが知り合いだと思われたくないしね〜」
「て、てめぇ……黙れ!この超絶うす胸コンビが!」

 その瞬間、信じられないほどの殺気が御川高校を包む。
殺気に当てられ動けなくなる番司。
その番司を指差し、ゆっくりと、しかし、殺意の篭った声を発する桃子。
その声はまるで死刑を宣告する裁判官のような、響きを持つ。

「……カホ、やっちゃって」

 その時、殺気の塊が番司を襲う。
その瞬間を見ていた2年生の生徒A子さんはこう証言をした。

『実は静馬先輩って男らしくてカッコイイな、って憧れてたんです。
それがまるで台風に書き込まれた看板のようにあっという間にグシャグシャに……おかげで冷めちゃいましたね』

 同じく生徒B太君はこう証言をする。

『番司くんって力も強くて頑丈で、凄いんですよ!
だって2階から飛び降りても平気な顔してるんですよ?
男としてちょっと憧れてたんですけど……女の子にああまでされるとはねぇ。ちょっと冷めましたね』

 同じく教師C先生の証言はこうだ。

『工具楽は成績もよく、家計を助ける為に特待生で入学するなど生活態度も抜群!
だけどねぇ、やっぱり工具楽の妹なんだなぁってこの一件を見て痛感しましたね。
え?静馬ですか?腕と足がヘンな方向に曲がってたけど、次の日にはピンピンしてたなぁ』


「喰らえ!あたし奥義、瞬天降魔脚!」
「はべろぶがふぅ!」

 その日、御川高校を震源とする震度5弱の地震が観測されたとか、されなかったとか。
735名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 21:41:38 ID:VSFT7E6+
 御川高校を震源とする地震が起きた次の日、番司は朝から他校の不良数人に絡まれています。

「へっへっへ……静馬くんよぉ、テメエ女に伸されたらしいじゃねか。
今日は女なんかじゃなく、俺らが伸してやる……ギャン!」

 因縁をつけてきた不良に、鉄槌を下す番司。
さすがは仙術使い、逆に曲がった関節も一晩寝ればすっかり元通りです。

「オレは今、機嫌がわりぃんだよ!てめえらでウサ晴らししてもかまわないんだぜ?
オラァ!やんのかよ!」
「ひぃ!お、覚えてろ〜!」

 やはり人を集めても所詮は烏合の衆、仙術使いの番司には敵いません。
クモの子を散らすかのように逃げ去っていきます。

(クソッ!なんで朝っぱらから絡まれなきゃいけねぇんだ?これも全部あのクソガキのせいだ!
アイツさえ入学してこなきゃ平穏な日常を過ごせて……なんだ、あの人だかりは?)

 果歩に対して、ブツブツと文句を言いながら学校に向けて歩いていると、校門の所でなにやら人だかりが。
何があるのか気になり、番司もその人だかりの中を覗いてみると……

「ええ〜?静馬先輩ってお姉さんに頭が上がらないんだ?かっこわる〜い」
「ええ?國生先輩のストーカーしてたの?男らしい先輩だと思ってたのに……ガッカリだわ」
「うええ?静馬先輩のあだ名ってパンツマンって言うんですか?……ダサ」

 人だかりの中心で、楽しそうに話す金髪の女の子。
彼女の言葉に肩を落とす女性とが多数、男子生徒もガッカリといった表情です。
そしてその横にはメンドクさそうな顔をしたツインテールの女の子が。
そう、校門の前で桃子と果歩が、番司について色々と質問攻めにあっていたのでした。

「テメェら何言ってるんだよ!ある事ない事ベラベラと話すんじゃねぇ!」
「あ、パンツマ〜ンおはよ〜。アンタ、カッコイイ人って誤解されてたから、私とカホとで誤解を解いといたわよ」
「ふざけんじゃねぇ〜!このうす胸コンビが!テメェらぶっ殺……」
「あたし秘奥義!激天降神脚!」
「ひでぶ!」

 果歩の秘技により、朝から死に掛ける番司。頭から地面にめり込んでます。
 
「お、お前、この技はシャレにならない……ガフッ!」
「ふん!カワイイレディーに対して失礼なことを言うからよ!もう教室に行こ、桃子」
「そうね、バカの相手なんかしてたら遅刻しちゃうもんね」

 めり込んだままの番司をそのままに、教室へと走る果歩の桃子。
その後姿を見つめる複数の男達がいた事に、2人は気づきませんでした。
736名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 21:42:04 ID:VSFT7E6+
「今日は面白かったねぇ〜。ねぇカホ、なんでパンツマンのヘンなとこばかり話したの?」
「は?それはあれよ。……本当のパンツマンを知らないで憧れるなんて可哀想だからね。
だから教えてあげたの。けどあの先輩も、あんなバカのどこがいいんだか……」
「ホント驚いたわよねぇ。
朝いきなり『あたし、静馬先輩の大ファンなの!あなた達が知ってる先輩の事、教えて!』だもんねぇ」
「けど教えてる途中でその先輩はいなくなったわね。……きっと失望したんだろうなぁ」

 そう、今朝校門の前で番司の話をしていた理由は、番司のファンだという2年の先輩から頼まれたからだったのだ。
メチャクチャ強いところとか、正義感があるだとか、番司のいいところを教えてあげればいいものを、
何を思ったのか、ヘッポコなところばかりを教えたのです。

「けどカホ〜。なんで途中からなにも話さなくなったの?最初はノリノリで話してたじゃない。
途中から暗い顔してさ、なんだかつまらなそうな顔してたよ?」
「うん、なんだかその場にいない人の事を悪く言うのはダメかなって思ってね。
……番司に謝った方がいいかな?桃子はどう思う?」

 結果的に陰口をたたいてしまった事を悔やんでいるのか、暗い表情で落ち込んでいます。

「謝るも何も……カホがトドメを刺してたじゃないの」
「うん、そうなんだけどね……はぁぁ〜、なんでこんなに憂鬱なんだろ?」

 桃子はパンツマンを地面にめり込ませておいて、今さら何を言っているの?といった顔で果歩を見る。
そんな果歩は少し寂しそうな顔をしている。
桃子がその表情気づいた時、2人は後ろから声をかけられた。

「やっほ〜。お嬢ちゃん達元気ぃ〜?ちょっとした手伝いをしてほしいんだけど、いいかな?」
「は?アンタ達、いったい誰よ?」

 背後から声をかけてきたのは、他校の制服姿の男数人。
ニヤニヤと笑いながら近づいてきます。
その不気味な様子に警戒する果歩と桃子。
男達は警戒も関係なしにニヤニヤと笑っています。
そのうちの一人、大柄な男がポケットに手を入れたまま2人に近づいてきました。

「なぁ〜に、簡単なことだから断わらないでね?
断わったりしたらお嬢ちゃん達のカワイイ顔に……一生残る深い傷を負わせなきゃいけなくなるんだよねぇ」

 ニヤニヤと笑っていた大柄な男がポケットから手を出す。
その手には、不気味に光るナイフが握られていた。
突然出されたそのナイフを見て、足がすくみ、動けなくなる桃子。しかし、彼女は違っていた。

「桃子、逃げて!逃げてお兄ちゃんに助けを求めてきて!」

 ドン!と桃子を後ろに突き飛ばし、自身は両手を広げ、男の前に立ちはだかる。

「カホ!私だけ逃げるなんて……」
「いいから逃げて!早くお兄ちゃんを、番司を呼んで……きゃ!」

 ヒュン!果歩の顔目掛け、振り下ろされた鋭いナイフ。
しかし果歩は間一髪倒れこみ、顔を傷つけられる事は間逃れました。
倒れたところを押さえ込まれ、地面に顔を押し付けられます。
それを見た桃子は、その場から走り出します。
やっと出来た……生まれて初めて出来た人間の親友を救う為に。
しかし男共も桃子を逃がそうとはしません。
果歩を押さえ込んでいるナイフを持った大柄な男以外、桃子を捕まえる為に追いかけてきました。
必死に逃げる桃子。しかし男達との体力の差はいかんともしがたく、細い路地に追い込まれました。
そしてその男達の手が、桃子の真新しい制服を掴もうとした瞬間、彼が現れたのです。
737名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 21:42:28 ID:VSFT7E6+
「お前ら遅かったな。で、パツキンちゃんは逃がさずに捕まえたんだろうなぁ。
人質は多ければ多いほどいい。逃がしたなんか言うなよ?言ったらお前らを切り刻んじゃうぞ?」

 今は使われていない廃倉庫の中、柱に果歩を縛り付けた男がナイフ片手に待っている。
どうやら仲間が桃子を連れてくるのを待っていたようだ。

「おい、テメエが恨んでるのはこのオレだろうが!なんで関係のない女を巻き込む?
テメエ、それでも男か!」

 その男に話しかけたのは仲間ではなく、怒りに震える声。
怒りのあまり、声が震え、その声はまるで廃倉庫全体を震わせているようだ。

「おお?なんだ、来てくれたのか?呼び出す手間が省けたぜ」
「他のクズどもは全部潰した。後はテメエだけだ!テメエはぜってぇに許さねぇ!」
「ひゃははは!潰した?おいおい、潰されるのはテメエだよ。静馬番司!
テメエにやられた恨み、今日こそ万倍にして返してやるぜ!おい!お前ら出番だぜ!」
 
 男の呼びかけに、倉庫内に隠れていたのか、数十人の男達が現れた。
それぞれ手には凶器となる木刀や鉄パイプ。
金属バットなどが握り締められており、番司を見る目には殺気を含んでいる。

「ひゃははは!さすがのアンタでもこの人数に囲まれて、人質を取られちゃ勝てねぇだろ?
どうだ?勝てるのか?この状況で勝てるのか?ひゃははははは!」
「番司!あたしに構わずコイツ等全員倒して!あたしは大丈夫だから!」
「黙れブス!誰が勝手に話していいと言ったぁ!」

 ドスッ!男は怒りに任せ、ナイフの柄で果歩のお腹を殴打する。
柱に縛られたままお腹を殴られ、ぐったりとなる果歩。
その様子を見ていた番司は、唇を血が出るほどかみ締め、そして怒りを押し殺して話し出した。

「……テメエが恨んでるのはこのオレだろ?ならオレをやれよ。
そいつはクソ生意気で、いっつもオレをバカにする、鬱陶しいクソガキだ。
だがな!そんなクソガキでもな!……オレの、大事な人の一人なんだ。
……やれよ。その代わりそいつにこれ以上手を出すな。出したら……その場でお前ら全員殺すからな!」

 そういって胡坐を掻いて目を瞑って座り込み、両腕を組む。
そんな番司を見た不良達は高笑いをし、おのおの手に持った凶器で番司を殴りだした。
738名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 21:42:50 ID:VSFT7E6+
「ひゃははははは!男前だな、静馬番司くん!俺等はテメエのその男前なところがムカつくんだよ!
テメエは今日ここで死んじまいな!……まぁ運がよければ生き残れるだろうがよ。ひゃはははは!」  
「だ、めぇ……逃げ、て……番司、逃げてぇ〜!」
「ひゃはははは!おい女、叫べ、もっと叫ぶんだよぉ!
テメエの叫びは、いいBGMになるぜぇ!ひゃっはははは〜!」
「イヤ……イヤァァァ〜!」

 果歩の悲痛な叫びと、不良達が番司を殴る音が響く廃倉庫。
意識が朦朧とする中、叫び続ける果歩の足元で何かが蠢く。その何かが果歩の足をトントンと叩いた。

「逃げて!番司逃げ……え?あ、あなたはキノ……」

 ドカ!バキ!ドゴ!……倉庫に響く、人を殴る鈍い音。
しかし、その音に紛れ、女の声が響いた。

「もう大丈夫よ、番司!キノピー!プリズムシェル展開!」
「おう!任せとけ!番司!人の道を外れた外道どもに、正義の鉄槌を喰らわせてやりな!」

 その言葉が倉庫内に響いた瞬間、果歩を光が包む。

「全くいつまで待たせる気だ?眠くてあくびが出るところだったぜ!遅せえんだよ!控えめ胸!」

 番司の声と共に吹き飛ぶ不良たち。
それを見たリーダー格の男がナイフを振り上げ果歩に向ける。

「テメエやりやがったな!テメエのせいで……女は死んだぜ!」

 光に包まれた果歩に振り下ろされるナイフ!もはや絶体絶命かと思われた瞬間……

『キィィィーン!』

 光がナイフを弾き飛ばす!
光の中心には、果歩と、果歩を守るように……桃子の友達、キノピーがいた。

「誰が控えめ胸よ!減らず口叩いてる暇があるなら、さっさとやっちゃいなさい!」
「言われなくても……やってやるよ!」

 人質がいなくなった不良達が、仙術使いでこわしやでもある番司に勝てる訳がない。
桃子とキノピーの協力によって果歩を人質から開放され、
何も邪魔するものがなくなった怒れる番司の前では、不良達はまるでゴミくずのように吹き飛ばされる。
5分もすると、全ての不良は体中の関節を外され、歯を全て叩き折られて、這いつくばっていた。
739名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 21:43:14 ID:VSFT7E6+
「カホ、大丈夫?怪我はない?」
「おい、クソガキ、大丈夫か?怪我はないか?」
 
 不良達が全員動けなくなったのを確認し、プリズムシェルを解除するキノピー。
果歩は安心したのか、ヘタヘタと座り込んでしまう。

「おい、大丈夫か?怪我はないか?」
「はぁはぁはぁ、殺されるかと、思った……すごく、怖かった」

 恐怖からか、両肩を抱えブルブルと震える果歩。
無理もない。知らない男達に拉致されて、縛られた上にナイフで脅されていたのだ。
そんな果歩を励ますために話しかける番司。
囲まれて殴られた為に、いたるところから血が出てはいるがさすがは仙術使い、既に止まりかけている。

「もう大丈夫だ。お前を殺そうとするヤツは、オレが全部ぶっ潰し……」
「違うわよ!アンタが……番司が殺されるかと思ったのよ!すごく……すごく怖かったんだからね!」

 ブルブルと震えていた果歩は、番司の腕の中に飛び込んだ。
そして声を上げ、ワンワンと泣き始めてしまった。
番司は、胸の中で震えながら泣きじゃくる、果歩の温かさ、柔らかさにドキドキしてしまう。
意識すればするほどドキドキは止まらなく、顔は既に真っ赤に染まっている。
そんな2人を見て呆れる1人と一匹?が。

「あらららら……キノピー、なんかいい雰囲気だし、私たち先に帰ろっか?」
「そうだな。いいところを邪魔しちゃ男が廃るってもんだ」
「お、おい!お前ら何言ってやがんだ!今コイツは混乱してるだけ……」
「番司、唇から血が出てる。……ゴメンね?あたしが捕まったばかりにこんな痛い目に合わせて……ん」

 1人と一匹が帰るのを止めようと桃子に視線を向けたその時、 
唇をかみ締めた時に切れてしまった下唇に甘い感触が。
視線の先には驚きの表情を浮かべる桃子とキノピー。
下唇に感じる温かく、それでいて甘い感触。
視線を向けるまでもなく、番司の視界には、果歩のカワイイ顔がドアップになっている。

「ん……ちゅ、ゴメンね?こんな怪我させちゃって……ちゅ、んん、んちゅ……ちゅちゅ」
「あ、あぁっぁっぁぁっぁあぁぁ……あうあうあうあうあうあうあうあうあう」
「う、うっわぁ……カホったらだいた〜ん。キスで唇の血を拭き取るなんてすっごいわね」

 切れて血が出ている番司の下唇に吸い付き、ペロペロと傷口を舐め取る果歩。
その大胆な行為に番司の頭はショートし、あうあうとしか喋れていない。
しかし桃子が発した『キス』という言葉が、番司にとって本日最後にして最大のダメージを与える事になったのだ。

「……キス?桃子、なに言ってる…………いやぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜!!」

 桃子の言葉で正気に戻ってしまった果歩は叫びながら技を繰り出す。

顎を垂直に蹴り上げられ身体が地面から浮かび上がった瞬間、鳩尾に肘鉄が入る。

「ぐぼを!」

 肘鉄で、くの字に曲がった番司に果歩が繰り出す踵落としが襲い掛かる!

「いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁ〜〜〜!!」
 
  
 果歩の綺麗な踵は番司の後頭部を的確に捉え、床へと叩き付け……否、めり込ませる。


 工具楽果歩が新たに必殺技をあみ出した瞬間である。
740名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 21:43:36 ID:VSFT7E6+
「おはよー、パンツマ〜ン」
「おい桃子、いい加減その呼び方はやめろ!まったく、いつまで言い続けるんだよ」
「ば、番司、オハヨ」
「おう。……なんだ、お前元気ないな。メシ食ってないのか?」

 春の陽気に包まれた、平和な朝。
御川高校の校門前で、いつもの挨拶を交わす番司に果歩達。
何故か果歩は赤い顔して番司に挨拶をしています。

「ところでさ、頭は大丈夫だったの?」
「おお、それがさ、大丈夫は大丈夫なんだけど、やっぱり記憶が戻らないんだよなぁ」

 昨日行なわれた、廃倉庫での不良達との大立ち回り。
そのダメージが深かったのか、一時的な記憶喪失に陥った番司。
記憶喪失の原因は頭部への強烈なダメージと診断されたようです。

「あらららら……そうなんだ?戻ったら面白いのになぁ。ねぇカホ?」
「お、面白くなんかない!全然面白くない!」

 引きつった笑顔で面白くないと否定する果歩。見るからに挙動不審です。

「なんだ?お前なに慌ててんだ?……ま、いいや。じゃ、オレ行くわ」
「バイバ〜イ!留年しないように勉強頑張んなさいよ〜」
「まだ一学期始まったばかりだっつ〜の!」
「ほら、カホも手を振りなさいよ」
「う、うん……バイバイ」
「お、おう。……なんか調子狂うな」

 いつもと違い、しおらしい果歩に戸惑いながらも教室へと向かう番司。
それを見送った桃子はニタリと微笑み果歩を問い詰めます。

「で、カホはなんでパンツマンなんかにキスしちゃったのかな〜?」
「わ、分かんないよぉ〜!自分でもなんであんな事しちゃったのか、全然分かんないよぉぉ〜!
大事な人の1人って言われて嬉しかったけどぉ、確かにあの時の番司、カッコよかったけどぉ……」

 桃子のイジワルな問いかけに頭を抱え、もがき苦しむ果歩。
 
 そんな果歩を見て、桃子は心の中で

『ガモンとの仲を邪魔された仕返しに……くっつけちゃお』

 と、復讐を誓いましたとさ。
741名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 21:44:01 ID:VSFT7E6+
投下は以上です。
742名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 23:23:54 ID:aQ9vUy7U
GJ!
果歩が!番司が!そして桃子が!
果歩と桃子が普通に友達やっててほのぼのしました。
もっかいこわしや8巻よみなおそ
743名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 00:34:48 ID:pbWIHJOh
GJ!
原作中でほとんど“過程”を描かれないままラストで“結果”だけ示されている二人のことだけに、
色々な妄想の余地があっていいなぁと思えちゃいますね〜!
果歩のツンデレっぷりが良い感じで良かったです!
744名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 22:05:01 ID:dDqurWZl
おいおい、なんだこの燃える展開はwww
なんという低脳、次回作も期待してますっ!!
745名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 17:26:15 ID:EHJSbyrV
斗馬のエロパロは誰も書かないのか?
746名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 16:55:33 ID:FlxtQefn
斗馬は・・・キノコロボ引き連れた金髪女辺りか・・・?年代的にキャラ立ってる同世代はアレしかいないし・・・
747名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 20:06:37 ID:4yGXP625
>>746
さわんな
あと、桃子の名前忘れんな
748名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 23:55:05 ID:PoDKf7Cu
久々の新作SSかつ良作、今なら言える
みんなのオススメSSはどうなってんだろう
749746:2008/03/18(火) 21:11:38 ID:lpIxiL3T
>>747
何があった、さわんなって・・・え?
というか桃子の名前出さなかったのは意図的にだが?別に忘れた訳じゃない
750名無しさん@ピンキー:2008/03/21(金) 19:08:13 ID:yMT4wyme
斗馬のエロパロを読みたい。
751名無しさん@ピンキー:2008/03/23(日) 11:30:21 ID:+URTgVy6
hosyu
752名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 13:17:15 ID:EnH+n7rk
保守
753名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 05:10:01 ID:4xrfRQzp
>748
個人的な一番ってのだと…499氏が書かれてた我聞と國生さんのクリスマスの話がぴか一だったですねぇ…
未だに優さんと辻原さんの話の続きを待ってたりしてますw
754名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 15:31:26 ID:OECyvT96
同じく熱烈にお待ちしておる。
755名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 18:02:00 ID:r1OIKJ3z
> 749 吉外にレスアンカー>>つけないように、て意味だよ
756名無しさん@ピンキー:2008/04/03(木) 23:07:20 ID:PIfv1pU1
保守
757名無しさん@ピンキー:2008/04/05(土) 22:44:31 ID:fzhiGQUP
「なぁ桃子、これはいったいなんなんだ?」
「天才とはあたしのための言葉といって過言でないわ、我聞もそう思うでしょ?」
「いや、だからこれは何だっての」
狭さに関しては誰もが同じ感想を抱く男部屋、もちろん斗馬も生活している空間。
そんな空間にドデカイメタリックなベッドが鎮座していたら、我聞でなくとも唖然としてしまうのは間違いない。
桃子は桃子で自分の素晴らしさに酔いしれ、我聞の存在ぐらいしか気にする様子もなく、話を聞く様子もない。
「あぁ、これはだな……」
「あ、安眠ベッドよっ!!」
背丈の関係で所在不明ではあったが常時行動を共にしているキノコが詳細を告げようとするも、桃子が慌てて説明。
「ちょっとキノピー、何を言うつもりなのよ」
「我聞を放っておいてそう言える立場じゃないだろう。それにコレの性能を説明するだ……」
「それがダメだって何度も言ってるでしょ」
我聞に背を向けヒソヒソと密談を繰り広げるも、
謎めいた機械的なベッドに釘付けな部屋の管理人にしてみればもうそんなことは些細な問題でしかなさそうであった。
「さっきも言った通り安眠ベッドなのよ。でも、まだ開発途中だから実験的運用も済ませてないのよ」
俯きながらボソボソと話を進め、食い入るように聞き込む我聞。
「だから、少しだけ周りの人より頑丈なガモンに使ってほしいなぁ〜と思って」
「なんだ、そんなことか。それなら喜んで引き受けよう」
にかっと笑顔で答える我聞に釣られ、桃子にもぱっと笑顔が戻った。
計画通りに。
「ありがとうっ! 流石ガモンね、頼りになるっ!」
「はっはっ、何を今更」
「じゃあ最終調整するから、少しこの部屋借りるわ」
そう言って我聞を追い出す。その俯いた顔に浮かび上がる表情も知らずに部屋のヌシは退室していった。

「まぁ後はコレを入れるだけなんだけどね」
そう呟き、自身の髪の毛を数本勢いよく抜き去った。
「だが本当にそんなんで効果が現れるのか?」
「あたしの最高傑作である、ドキドキ、気になるあの子が夢に……ベッドが信じられないって言うの?」
せっせと髪の毛をセットしながら反論。完璧なメカニズムによって創り上げられたスーパーベッド。
要するに、好きな夢が見れるという類の奴で現実的、かつ確実な方法のものである。
「でもそんな程度のことで効き目はあるのか?」
「だってそれぐらいしないとハルナにはかてないわよ」
少しムッとしながら作業終了、後は翌日からの我聞の反応を観察するだけ。
「さぁ、怪しまれる前に撤退よ」
息を荒げ、早々に撤退宣告。敵陣には魔人果歩が目と鼻を利かしている。下手な真似は即作戦失敗に繋がってしまう。
足取り軽く家を後にする果歩に案の定怪しがられるも、変なところに気が付くはずもなく作戦は遂行されていくのであった。


ちなみにベッドの作りは単純で、髪の毛から出る臭いを効果的に働かせ、自分の存在を寝ている間にも無自覚ではあるが認識させ、
そのまま夢に出てくる、というものであり、別に凄い作戦と言う訳ではない。

もちろん結果が出るわけもなく、我聞が夢を不思議に思うくらいであった。
758名無しさん@ピンキー:2008/04/05(土) 22:45:32 ID:fzhiGQUP
っていう電波を受信した
今は反省している
759名無しさん@ピンキー:2008/04/05(土) 23:16:03 ID:8YQyHN2b
>>758
GJ!
桃子が桃子らしい素振をしてくれるだけでなんだかニヤニヤしちまうぜw
760名無しさん@ピンキー:2008/04/06(日) 17:16:00 ID:q+m6Ziqq
斗馬のエロパロをキボン!
761名無しさん@ピンキー:2008/04/06(日) 17:16:25 ID:GP27bpcd
受信した電波を形にする・・おみごとです
762名無しさん@ピンキー:2008/04/10(木) 23:57:55 ID:gytEH7l0
ほちゅ
763名無しさん@ピンキー:2008/04/14(月) 21:36:31 ID:C0xeLXnb
hosyu
764名無しさん@ピンキー:2008/04/19(土) 08:18:30 ID:Me7QyH+M
オレは復活を信じる
765名無しさん@ピンキー:2008/04/20(日) 02:21:27 ID:UZVoNJD1
どっちかっていうと、オレは「現在新作(ギガグリーン)の連載準備に勤しんでる」のを
信じるって感じですw
766名無しさん@ピンキー:2008/04/22(火) 10:41:53 ID:1WIXi1Vp
ほしゅ
767名無しさん@ピンキー:2008/04/25(金) 23:54:52 ID:mAhIWktJ
保守らざるを得ない
768188:2008/04/28(月) 23:34:45 ID:LND4h9t3
ホシュがてら小ネタでも
769小ネタ 梅雨:2008/04/28(月) 23:35:47 ID:LND4h9t3
退屈な授業も終わり、個人の時間到来といった下校時刻。
「本降りだな、これは」
昇降口まで来て改めて天候の悪さが目に付く。
「我聞、傘入れてくれよ。俺持ってきてないんだ」
「入れてやりたいのは山々だが、俺も持ってないんだ」
佐々木が上目遣いで懇願するも無い袖は振るえない。
「しょうがない、走るか」
最初から期待値の低い雨天時下校解決法には即座に見切りをつけ、最終手段をしぶしぶと投げかける。
「だな」
使う可能性は低い肩をグルグルと回し準備運動、ここから始めないと落ち着かないらしい。
「社長っ! 何をなさるおつもりですかっ!?」
「國生さん。どうしたの? そんなに息を荒げて」
いざ出発といった時に後方から聴きなれた声が、隣人の絶叫にかすれながらも耳に届いてきた。
「どうしたもこうしたもありませんっ!! 雨に濡れて風邪でも引かれたら大変です」
血相を変えて、とはこのことでOK。と言わんばかりに慌てふためく社長秘書。普段とのギャップは計り知れないものがある。
「いや、体調管理は得意だし」
「そういう余裕からくるのが風邪の特徴です、なめていては足元をすくわれますよ?」
「走って帰れば大丈夫だと」
「絶対にダメです。わたしの傘で帰りましょう」
「いや、それは悪いよ」
「いえ、社長が濡れているのにわたし一人が傘とは倫理的にマズイです」
「いや、でもそれじゃあ」
「いいですね?」
「でも」
「いいですね?」
「……はい」
そういって寄り添うように肩を並べ帰宅……もとい出社していった。


「相合傘は気にしないのかな、倫理的に」
降りしきる雨の中取り残された佐々木は、遠ざかっていく二人の背中を見つめひたすら陽菜にツッコムことしかできなかった。
770小ネタ 花粉症:2008/04/28(月) 23:36:50 ID:LND4h9t3
あらすじ

花粉症に悩める陽菜に、悪魔の子との名を受けた果歩が接近したようです。

「最近辛そうですね、花粉症ですか?」
「えぇ、そのようです。ここ何日間、ずっとこのような状態で……くしゅんっ」
(くそ、かわいいな)
「どうかしまs……くしゅんっ」
「いえ……別に。それより治さないんですか? 花粉症」
「そんなk……くしゅん、治るわけ無いじゃないですか」
「何を今更。わたしも数年前は花粉症でひーひー言ってましたよ。そりゃあ春を喜んでお迎えできない位の重症でした」
「それは簡単な方法なのですか?」
「えぇ、上手くいけば簡単で一瞬ですね」
「どのようにすればいいのですか?」
「簡単ですよ、仙術使いに頼んで気を注入してもらえばいいんです」
「そのような使い方もあったんですね。それでどのような方法でですか?」
「そりゃもう、こう、ぶちゅっと」
「ぶちゅっと……」
「そう、ぶちゅっと」
「ぶちゅ……って、果歩さんっ!? 何を言い出すんですかっ!?」
「何って……花粉症の治し方ですよ」
「それより果歩さんも同じやり方で、ですか?」
「もちろんです。オヤジにこう、ぶちゅっと。だから陽菜さんも」
「なっ!? えぇっ!?」
「上手くいけばすぐですしね」
「でも、そんな……社長とそんなことは出来ませんし」
「誰も兄となんて言ってませんが、陽菜さんがどうしてもというなら頼み込んでみます」
「いや……えぇっ!? でも、それ以外には」
「別に静馬のおばーちゃんでも良かったですが、春のうちに会えるとも思えませんし……やはりここは兄しかいませんね」
「果歩さん!! って、そもそもその、キ、キス以外の方法は無いんですか!?」
「そうですね、例えば?」
「そりゃ、手でこう、流し込むようにとか」
「要するに……胸を揉めとっ!!」
「そんなことは言ってませんっ!!」
「じゃあなんなんですかっ!!」
「か、果歩さん。落ち着いて。どうどう」

「春ですなぁ〜」
「ねぇ〜」
ズズゥ〜っと茶を啜る音が暖かな春を謳歌しているようにも感じられる、普段通りの昼下がり。
もちろん、仙術にそんな使い方はありません。
間違った使用法にご注意ください。
771188:2008/04/28(月) 23:37:54 ID:LND4h9t3
以上です
772名無しさん@ピンキー:2008/04/28(月) 23:58:31 ID:HKweetu8
>>169、170
GJ!
いいよー、梅雨の方がかなりつぼった。
773名無しさん@ピンキー:2008/04/29(火) 00:06:12 ID:QzSCHjoR
なんかほのぼのしてて可愛いですなw
GJっす!
774名無しさん@ピンキー:2008/04/29(火) 00:09:48 ID:TDdQL+WC
良作じゃ〜良作じゃ〜
楽しめたぜ

個人的には花粉症に一票
775名無しさん@ピンキー:2008/04/29(火) 13:33:31 ID:43In6AFK
GJ!GJ!
しかしこのスレにもまだ人がいたんだなぁ
かなり嬉しい
776名無しさん@ピンキー:2008/05/03(土) 13:22:36 ID:rjZUMTpv
突貫保守
777名無しさん@ピンキー:2008/05/07(水) 21:26:47 ID:WxI6c1XL
我聞×果歩ってなしかな?
778名無しさん@ピンキー:2008/05/07(水) 23:33:20 ID:fBZmeV9w
>>777
期待している

果歩はブラコンだと信じてやまなかったのに・・・番司の奴・・・番司の奴・・・!
779名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 02:21:32 ID:V5c5RP0m
むしろ大好物。
原作を多少無視することになるが…エロパロはフリーダムであっていいと思うんだ。
780名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 05:01:15 ID:lqGFMjh0
ブラコン娘が成長して他の男とくっつくのは別にいいんだが番司はねーよと当時思ったね
781名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 08:36:59 ID:RNKW2jbp
兄弟の中で果歩だけ仙術の才能なしだろ?ってことは、我也さんがどこぞから引き取ってきた子で血のつながりは無(ry

そんな風に妄想していた時期が私にもありました。
782名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 23:16:39 ID:V5c5RP0m
実の兄妹だから萌(ry
783小ネタ 五月病:2008/05/11(日) 00:15:45 ID:sxRqMpZM
「はぁ……」
「陽菜さんどうしたんですか? ため息なんかついちゃって」
気温がイマイチ安定せず、体調管理にいっそう気を配る五月頭。
陽菜のため息はお空の雲よりもどんよりとしたもので、あたり一面重力効果三割り増しと言えるほどであった。
「最近、あんまり相手をしてくれないんですよ」
「あぁ、兄ですか」
ズズーっと茶をすすりながら、こんな話を聞かされるとは、なんて頭を過ぎっていた。
「そんなことを言わず元気出してくださいよ。陽菜さんを忘れてるわけじゃないんですし」
「そうなんですけど……これが五月病というやつですかね」
ゆったりと流れる時間が、よりいっそう空気のどんより感を煽ってのしかかってくる。
雲に吸い込まれていくようなため息が空へと無常に上がっていく。
「はぁ……」
テーブルにめり込むように突っ伏す陽菜。
あまりに落ち込んでいる陽菜になんて声をかければいいのやらと頭を働かせるも、
どうしようもないかな、ぐらいの楽観的な発想しか思い浮かばない頭。
これは平和なのかな、なんて考えとでゴチャゴチャになっていく脳内会議室。
「……こども、欲しいなぁ」
「こどもですか」
突っ伏したままの陽菜が自分とテーブルのどっちに話しかけているか曖昧であったが、とりあえず返事はしておく。
そう、相槌をすることによって相手のもやもやを少しでも晴らすことはできる。
それが例えめちゃくちゃな話であっても、だ。
「女の子が欲しいですね。かわいい洋服なんか着せたりして」
「経済的に大丈夫なんですか」
「そうでした」
さらにめり込んでいくように見える陽菜。現実とは厳しいものだな、なんて口からそっとこぼれ落ちた。
「それでも欲しいですね。今夜にでも頼んでみます」
「陽菜さん、そうは言ってもですね……」
のんきにお茶菓子をつついていた果歩の表情も少し難しそうになっていった。
現実的にその提案は了承したり、後押ししてあげたりは出来ないのも事実。
やはり現実問題、という言葉が一番の壁であった。
「大丈夫です! わたし、頑張ってみせます」
「ですけどねぇ……あの子達の世話もあるんですよ?」
背後から聞こえるうめき声のような泣き声と、それを止めようと奮起する男の子のあやし声。
実の子ではないにしろ、育児ノイローゼにでもかかってしまいそうな気分である。
「問題ないです。愛、があればどうにでもなります」
「そうですね、確かにそうかもしれません。だから陽菜さん……」
「はい? なんでしょう?」
「どうにでもしてください」
やる気が根こそぎ持っていかれ、放心状態のマイハート。
ただ今より五月病の治療に入りたいと思います。
そっと灰色の空に告げ、大の字に寝転びすべてを放棄して心身の回復に専念することにした。
もう、どうにでもしてくれ
784188:2008/05/11(日) 00:16:51 ID:sxRqMpZM
ってネタが五月病から抜けられない俺に降ってきた
後悔はしていない
暇つぶしになればと
785名無しさん@ピンキー:2008/05/11(日) 16:30:18 ID:TkvXkMl1
斗馬のエロパロも…。
786名無しさん@ピンキー:2008/05/12(月) 23:59:17 ID:2tH1ws2d
乙!しかしこれどんな状況なんだろ
787名無しさん@ピンキー:2008/05/13(火) 00:04:52 ID:Jc5OSAYM
>>784
GJ!
いまだに國生さんでハァハァできるw
788名無しさん@ピンキー:2008/05/17(土) 22:34:10 ID:ql1CIKE3
ほしゅ
789名無しさん@ピンキー:2008/05/19(月) 20:03:16 ID:oZZW1Mxj
こりずに保守
790名無しさん@ピンキー:2008/05/20(火) 07:37:49 ID:sLMANjDE
斗馬のエロパロを誰か書いてくれ!
791名無しさん@ピンキー:2008/05/23(金) 04:35:14 ID:103w+pjk
>784
よいていのう ですた
792名無しさん@ピンキー:2008/05/27(火) 22:16:23 ID:pfM99AeW
ほちゅ
793名無しさん@ピンキー:2008/05/28(水) 21:59:15 ID:AH+NdPUA
保守じゃ
794名無しさん@ピンキー:2008/05/29(木) 21:05:30 ID:y0ju5lFz
プロフ絵のみの更新なのに
この湧き上がる期待感
795名無しさん@ピンキー:2008/05/29(木) 21:45:03 ID:3mMHeqcO
フラグ立ったか!?
796名無しさん@ピンキー:2008/05/30(金) 02:45:44 ID:/BoAcLbr
冷静に推理してみようと思う。
1、現在の長期に亘る未更新は次回作(おそらくはギガグリーン)の連作準備に
よるもの。
2、通常、雑誌における連載作品数の枠は固定されていてよほどの大御所の連載開始
とかでないかぎり、編集部による企画会議を通った作品が(多少の前後はあっても)
順番待ちで、あるいは編集部の期待順位の順に載っていくことになる。
3、現在サンデー本誌において、連載作品のうち1本終了、2本終わりかけの状態である
(終わりかけ作品のタイトルは伏せます)
4、都合3本の新連載が開始予定と予測。その3本中には…!?
797名無しさん@ピンキー:2008/05/31(土) 03:27:17 ID:u18TrcO0
内容については理解するが、それって推理じゃなくて推察じゃね?
798名無しさん@ピンキー:2008/05/31(土) 08:05:51 ID:fbXEGG5I
新連載マダー?
799名無しさん@ピンキー:2008/05/31(土) 20:17:51 ID:rYJep/SS
願掛けかぁ・・・
漫画に関することだったらいいのだが
800名無しさん@ピンキー:2008/06/02(月) 12:26:01 ID:k8uKeFkA
斗馬のエロパロキボンヌ!
801名無しさん@ピンキー:2008/06/03(火) 22:06:27 ID:4HGJiQt2
要するに、だ
ブログが更新されるだけでこんだけ盛り上がると
……もっと更新してくんないかなぁ〜
あわよくば新連載
802名無しさん@ピンキー:2008/06/05(木) 20:36:32 ID:WRh1imBj
今度の新連載ラッシュのなかにも名前がないorz
803名無しさん@ピンキー:2008/06/09(月) 04:12:37 ID:U2NxFe8+
小学館のゴタゴタはどっちに働くかな
804名無しさん@ピンキー:2008/06/13(金) 01:39:17 ID:AHKjoVt/
そんじゃあホシュしときますか
805名無しさん@ピンキー:2008/06/13(金) 10:49:21 ID:DQjW3lJz
斗馬のエロパロを…。
806名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 20:35:05 ID:gzRdHQDy
まだあきらめん保守
807名無しさん@ピンキー:2008/06/21(土) 17:32:22 ID:/K7uz5lb
保守

ブログにあった元アシの作品をやっと読めた
808名無しさん@ピンキー:2008/06/25(水) 07:15:28 ID:Mc8EeCVR
たまにはあげとくか
809名無しさん@ピンキー:2008/06/29(日) 19:50:37 ID:kD0SEH2p
ほしゅ
810名無しさん@ピンキー:2008/06/30(月) 17:27:39 ID:ly2YyZKf
斗馬のエロパロを!
811名無しさん@ピンキー:2008/07/03(木) 08:14:32 ID:fi8j6BOk
新作がくるまでは
812名無しさん@ピンキー:2008/07/05(土) 19:02:27 ID:Ggkdm+d8
ひさびさのブログ更新クル━━━(゚∀゚)━━━?!!
813名無しさん@ピンキー:2008/07/05(土) 21:02:25 ID:zI6d9yPi
>>812
思わず見に行っちまったじゃねーかw

ああ、毎日見てるさ
814名無しさん@ピンキー:2008/07/07(月) 21:10:25 ID:uFZ+Fptm
>>812
ほんとに来てるじゃねーか
815名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 03:12:25 ID:CVF5dX8r
でもさ、元々願掛けみたいな感じで更新が止まっていたって言っていたわけですし、
ひょっとしたら…!?
816名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 05:58:02 ID:F3PCLfwE
書けないっていうのは「まだ」書けないという意味かもしれないしな。
817名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 00:32:12 ID:CDH+9DcJ
とにかくまだ漫画かいてるってのが何よりの吉報だな
818名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 09:32:53 ID:2MbQ1ybl
本当に良い知らせだ
少し元気になれたよ
819名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 06:59:14 ID:Qe8qZ6Ko
ブログにへきる
820名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 18:57:08 ID:en8FJxq2
斗馬のエロパロ誰か書いて!
821名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 21:07:37 ID:HXw5eFY6
>>820
まずは何度もリクする前に自分で書こうか
822名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 23:39:41 ID:dcxDyTU5
そういやここはエロパロ板なんだよな
長いこと本スレ気分でいたけど
823名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 21:09:23 ID:+tEcIabk
続きは今度

 時は午前二時、とあるプレハブ小屋のような建物の一室でのこと。
「……これで、『緑印の巨大焼酎』、一ヶ月分は困らないね」
 エンターキーを弾く。
 一つの影が、暗闇の中で唯一光を発している少々旧型のディスプレイを前に、ふっふっふっ、と不気味な笑みを漏らしていた。さっすが、優さんはやっぱり天才だね、などという台詞も聞こえる。
 人影はすさまじいスピードでキーボードを叩くと、パソコンの電源を落とした。
「ごめんね、はるにゃーん。ほんのお小遣い程度だから許してねー?」
 悪びれもせずにそんなことを言いながら、影ーーもとい森永優は足取り軽くプレハブもどきこと工具楽屋を後にした。
 さて、再び静まり返った室内。程なくして優の足跡が聞こえなくなると、また一つの影がロッカーの陰から現れた。
「やれやれ、経費横領、経理データの改鼠とは……感心しませんね」
 影は懐から煙草を取り出すと、みるからに安っぽい百円ライターで火を付けた。
 現れたのは、例によって胡散臭い顔。辻原螢司である。
「まぁ、これはこれで面白そうですし、しばらくは傍観ですか、ね」
 はっはっはっ、と笑う。
 どうやら不謹慎なのはこの男も同じら
824名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 22:14:30 ID:BmN2N7yf
おおきくなった桃子はやはりいい・・・
825名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 21:54:19 ID:txgGiCI3
大きくても小さくても私は一向にかまわんッ!
826名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 21:37:26 ID:Oa5259dy
ほしゅ
827名無しさん@ピンキー:2008/07/18(金) 01:35:48 ID:3KsA9Haq
プロフ絵見てきた

やはり桃子はいい!
828名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 19:37:20 ID:wYJhBAzD
途中で切れてるような作品など眼中にないよ
という空気に吹いたww

誰か反応してやれよ。。。
829名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 20:53:25 ID:vCdVcSKI
>>828
SSとして完結して無くても、文章として完結していれば、誰かがそれを引き継ぐって事もあるかもしれんが、
文章として終わってない中途半端なものを出されても、反応に困る

だから誰も反応しないんだろ
830名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 17:40:11 ID:a2cCxgv2
斗馬のエロパロが欲しい!
831名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 18:37:18 ID:mpq4I8fa
>>828
みんな間違えて途中送信したと思ってたんだろう
でもいつまでたっても戻ってこなかったので・・・
832名無しさん@ピンキー:2008/07/21(月) 22:29:29 ID:JIqYBTql
いやまて
ひょっとしたら小泉八雲の「茶碗の中」のような手法だったのではあるまいか
833名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 14:59:01 ID:ZfZJs1Hm
ギガグリーン本誌連載間近か?
バトル枠がひとつ空きそうだが・・・
834名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 00:57:11 ID:TU4Ud+oy
ぎがぐりーんは
らぶこめわくじゃないかしら?
835名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 16:57:07 ID:elnO9hae
斗馬のエロパロキボンヌ!
836名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 17:00:37 ID:yP+sp2jF
>>834
ラブコメ枠は当分空きそうにないが・・・
837名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 21:43:09 ID:WZrzTD9N
>>832
それがどんな業なのかは知らんけど、>>823は間違いなく初心者
今ごろ「切れてる……orz」してるのはガチ
けど文章見る限り2chは初心者でも小説は初心者じゃなさそうな
838名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 00:53:39 ID:XfV7yAsQ
ほしゅ
839名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 22:52:47 ID:/+kB2U++
840名無しさん@ピンキー:2008/07/30(水) 21:17:57 ID:HWKBta1K
しゅ
841名無しさん@ピンキー:2008/08/05(火) 00:53:15 ID:iFbJkmPs
ほしゅるぞ
842名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 02:07:08 ID:JmovPO+J
暖かな日差しも、穏やかな風も、
やわらかな香りも、優しげな気温も。
全てが輝いていて、全てが新鮮で。
今までとなんら変わりようのない生活である事を考えますと、少し不思議に思います。
いえ、仕事関係はキツくなりましたが、それでも不思議と考えてしまいます。
なんで、こんな風に感じるのかなっ、と。
答えなんてわかるはずもありません。
ただ、今わたしが感じていることは事実で、これが本当のことであることは確かです。
自分の中にあったどうしようもない不安や、どうすることも出来なかったモヤモヤ。
そんなものも全てまとめて、壊してくれました。
そう、わたし達の社長が。

真芝が壊滅して、わたしの手の届く範囲の問題は全て片付きました。
お父さんとしては問題山積みらしいですが、そこまでは頭が回りません。
自分の未熟さを痛感します。
それでも、残念な気持ちにはなりません。
狭い範囲ではありますが、わたしの周りには一点の陰りもありはしません。
不安定さはなく、しっかりと安定していてなんの悩みにもなりはしません。
どこまでも明るい、社長が照らしていてくれるから。

そういえば、あの時はまだ正式には社長ではありませんでしたね。
初々しさなんて感じるほど自分に余裕はなかったので、最初は少しイライラさせられましたっけ。
頑固で、意地っ張りで、すぐに誤解して、そのまま気付きもせずに猪突猛進。
眉間にどれだけ指が吸い寄せられたか、思い出せません。
無駄に消費してしまったため息と、一緒に遠のいた幸せは数知れず。
少し遠くを眺めて平常心を保とうと精一杯頑張ったものです。
ただ、そんな社長の短所や問題点は、わたしからしてみればやはり目からうろこ状態でした。
どこまでもまっすぐで、壁に直面しても即座に壊して、わたしの知らない道へと連れて行ってくれました。
きっと社長には八方塞なんて言葉はないんでしょうね。
今になって思えばどれだけ救われたことか、これまた思い出すことが出来ません。
きっとこれからも、ずっとずっと、わたしの手を引いてどこまでも連れて行ってくれそうですね。
軌道修正は任せてください、ナビゲートには自信があります。
ですから、目的地がどんなに遠くても安心してください。
社長の力とわたしの力、合わせればどんな所へでも行くことが出来ますから。
いつまでも、そう、永遠に……
恥ずかしいですが一緒に居たいです。

あの高い青空も、ゆったり流れる雲も、
優雅に泳ぐ鳥達も、その鳥達の楽しげな声も。
全てが幸せで、全てが微笑ましくて。
詰まるところ、わたしも幸せなのでしょう。
多分、そういうことなのでしょうね。

仕事に一区切りつけた社長がゆっくりと近づいてきます。
どうやら次の指示を出さねばいけないようですね。
さっそくわたしの出番です。精一杯頑張りたいと思います。
そう、さらに幸せな明日を手に入れるために
843名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 02:08:53 ID:JmovPO+J
って話を読みたいな

もうSS書きはいらっしゃらないのかなぁ
844名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 01:27:18 ID:p80zp/4i
>>843
書き手がいない?
あなたがいるじゃないか
むしろ、あなたが書くべきだと思う
少なくとも、俺はあなたが書いた話を読んでみたいと思った
845名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 11:15:00 ID:6chHZmgG
斗馬のエロパロを書いてくれる人募集!
846名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 00:21:05 ID:tWT6j6Hz
>>843
GJの匂いを感じた
847名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 18:02:51 ID:oXz+m1lX
とある本業の最中、暴走。
敵を壊滅したはいいが、陽菜が気絶中により我門を止めれる者が居なくなってしまった。
我門の暴走は仲間内にまで及び、その場に居たかなえ・優は我門に気絶させられてしまう。

その時、施設の崩壊が始まってしまい、崩れた天井が我門の頭に直撃。
意識を失うことは無かったものの、それにより我門は凶悪化。
かなえ・陽菜・優を連れ去り、軟禁。
3人を後ろ手に縛り、犯してしまう。

かなえ→優→陽菜の順で手を出す我門だが、最後の陽菜を無理やりにXXしている最中、彼女の流した涙によって我を取り戻す我門。

そこから、我門を巡っての三つ巴の取り合いが始まったのだった。。。





こんな妄想してみたが…書けない><
848名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 06:57:38 ID:CX/JnTE4
>>847
暴走して→理性が無いのに→場所を変えて→軟禁して→手を縛って→事に及ぶ
何か色々と不自然だと思うのだが
849名無しさん@ピンキー:2008/08/13(水) 22:19:12 ID:PseLuSDP
>>848
暴走が作品中の普通の暴走でなく頭部への衝撃が理由での桃色な暴走というのが
多少強引だが不自然かどうかは書き手次第だと思うよ。
と、フォローしてみたが>>847と同じく上手く書く技量はおれにもない。

>そこから、我門を巡っての三つ巴の取り合いが始まったのだった。。。
俺個人はここからのほのぼの修羅場を読みたいw
850名無しさん@ピンキー:2008/08/14(木) 11:07:10 ID:HvukfZOw
斗馬のエロパロも書いてくれ!
851847:2008/08/14(木) 13:58:44 ID:PE2BBYVc
 ちょいと出だしだけ書いてみた
 暴走と書いたけど、
 >>848 >>849
の指摘を考慮して、いわゆる暴走では無くなったのだが…

 続く予定ではあるが、不明(エロは苦手なのですよ^^;

 とりあえず2レス
 目指すは我聞x複数です
852我聞くんご乱心-1:2008/08/14(木) 13:59:34 ID:PE2BBYVc
 工具楽我也と國生武文が旅立った翌日、工具楽家に荷物が届いた。

「ご苦労様でした」

 去っていく配送員を見送って、果歩は受け取った荷物を確認しようかとして手

を留める。

「親展?」

 その小さな小包には、赤い文字で大きく親展と書かれており、宛名欄には彼

女の兄の名前が記されていたのだ。

(お兄ちゃんに親展なんて…なんだろう?)

 差出人の欄には果歩も知る九州の住所と静馬の名が記されている。仕事関

係なら直接届くわけが無いはずなのだが、だからと言って親展のものを勝手に

開封するわけにもいかない。
 頭を捻りながらも、果歩は兄の下に手にした荷物を届けるのだった。

「お兄ちゃん、荷物届いたわよ」
「ん?おお」

 我聞はそれを受け取ると、早速中身を確認しようとする。
 果歩といえば、中身は気になるものの覗く訳にもいかず、また夕食の準備の

最中だった事もあり、後ろ髪を引かれる思いでその場を後にした。
853我聞くんご乱心-2:2008/08/14(木) 14:01:28 ID:PE2BBYVc
(かなえさんからだ、なんだろう)

 包装をびりびりと破いて箱を空けると、そこには五芒星を模った小さなペンダントが入っていた。

「お、綺麗な首飾りだな」

 我聞はそれを手に取ると、何とは無しに自分の首に掛けてみる。
 と、そこで異変が起こった。
 五芒星の中央に位置する宝石が輝いたかと思うと、我聞の表情が見る見るうちに変化していったのだ。

「ぐふ、ぐふふ…」

 我聞が普段の彼からは想像も付かないような下卑た声を漏らしたと同時、居間から果歩の声が聞こえてきた。

「お兄ちゃん、珠、斗馬、ご飯よー」

 その声にニヤリと笑みを浮かべ、我聞は居間へと向かっていった。



854847:2008/08/14(木) 14:02:37 ID:PE2BBYVc
以上

>>852
ちょいと改行がおかしい^^;
855名無しさん@ピンキー:2008/08/14(木) 22:58:41 ID:4TNmKbO9
続きを!続きを頼む・・!
856名無しさん@ピンキー:2008/08/15(金) 00:35:28 ID:bUWiFVjA
続きを期待してる
ってか、これの続きでエロくなるならもしかして……
なんて既に妄想が止まらねぇっ!!
857名無しさん@ピンキー:2008/08/16(土) 12:33:34 ID:GxmHvRyw
849です。
エロそのものは各個が妄想で補えばいいんだ!
だから続きまってます。
858847:2008/08/16(土) 20:17:42 ID:wHG08H1B
取りあえず続きいきます

予想を裏切るかもしれませんが、我聞x果歩では本番は未だ有りません

総レス数 2〜3
859我聞くんご乱心-3:2008/08/16(土) 20:18:25 ID:wHG08H1B
 夕食も終わり、珠と斗馬に宿題をする様に追い立てた果歩。自分も宿題が出されている為、のんびりと食後のお茶を啜っている我聞に声を掛けて部屋へ戻ろうとする。そこへ我聞が声を掛けた。

「果歩、ちょっといいか」
「…なによ」
「まあいいから、ここに座れ」

 部屋を出て行こうとしていた彼女は、渋々ながらも我聞の指差す位置に座ろうと腰を下ろしかけた。
 と、そこで我聞は彼女の腕を掴みグイッと引き寄せると、自らの胸に果歩を抱きしめたのだ。

「きゃっ!ちょ、ちょっとお兄ちゃん…」
「いつもすまないな、果歩」

 突然の彼の台詞に、果歩はきょとんとしている。

「な、何よいきなり?」
「珠と斗馬の面倒見てもらって、その上毎日の食事まで」
「別に大した事じゃないわよ」
「そうか。世話を掛ける」
「だ、だから大した事じゃ」

 改めて礼を言われ照れてしまったのか、頬を微かに染めると果歩は兄の抱擁を振り解こうと身を捩った。

「果歩」
「ちょっと、お兄ンンーー!」

 我聞は一際腕に力を込めて彼女を抱きしめる。そんな兄に言葉を掛けようと果歩が彼と顔を合わせようととした瞬間、我聞は彼女に己の唇を押し当てていた。

「ちょ、何す…」

 いきなりの事に抗議の声を上げようとしたところに、またもや唇を合わせられ言葉を封じられる。しかも先程の押し付けるだけのものとは違い、我聞の舌が果歩の口腔内へと進入してくるではないか。
 事の成り行きに追いつかず思考回路が思うように働いてくれない。そんな果歩を薄目を明けてチラリと見やると、我聞はそのまま彼女へと差し入れた舌を蠢かし口腔内を蹂躪し始めた。
 果歩はすぐに我を取り戻したが、自身の舌と絡まる兄のものの感触やそれが歯茎の表裏を舐る感触、はたまた頬の内側を舐め回される感覚に次第に焦点を失い、やがておずおずと彼女からも舌を絡ませていく。
 一頻り妹の口腔内を味わい尽くすと、我聞は名残惜し気に彼を求める舌に別れを告げて口を離した。蛍光灯の灯りに照らされ、2人の間に掛かった銀色の橋が煌いていた。

「あ…」

 普段の彼女には似つかわしくない媚を含んだ声が漏れ、すがる様な視線を我聞に投げ掛ける。

「……っ!」

 漸く現状に気が付いたか果歩は慌てて我聞から身を離すと、頬が熱くなるのを感じながらも、無言のまま部屋を飛び出して行った。
860我聞くんご乱心-4:2008/08/16(土) 20:22:30 ID:wHG08H1B
 勉強部屋へと戻った果歩は、既に宿題を終えたのか机に突っ伏して寝息を立ててる妹に風呂を勧めた。珠は素直にそれに従い、部屋を出て行く。

「はぁ…」

 彼女は高校を奨学金で行こうとする優等生。気持ちを切り替えようと頭を振ると、机に向き直りペンを走らせ始めた。
 ところが、やはり果歩とて中学生、年頃の女の子である。
 しかしながら家事の一切をその手に引き受けている身である為、これまで人を好きになった経験は多少なりとも有ったとしても付き合った経験など有ろうはずも無い。
 お陰で先程の兄との行為が合間合間に頭を過ぎり、何とか宿題自体は終わらせたもののそれ以上となるとなかなか進まないでいた。

「…んっ」

 気が付くと手が机の下へと入り込み、誰にも見せた事の無い大事な箇所を下着越しに触っていた。

「はぁ…お兄…ちゃん…」

 はしたない事をしているのは、自分でも理解していた。だが、一度動き出した指は“いけない事をしている”と思えば思うほど動きを増し、その身体に快感を送り込んでくるのだ。

「…ん…気持ち…いいよぉ…」

 もはや指の動きを止めようという考えは浮かんで来ず、更なる刺激を求めてシャープペンシルを手放すと、その手をシャツの裾から忍び込ませる。

「…んん!」

861我聞くんご乱心-5:2008/08/16(土) 20:24:01 ID:wHG08H1B
 兄を慕う元真芝の少女には控えめ控えめと言われている、同年代の女の子と比べても明らかに成長速度が遅いであろう胸、その頂にそびえ立つ自己主張を始めたサクランボをかすめ、思わず大きな声が漏れそうになる。
 それを何とか押さえ込むと、胸全体を包み込むように手のひらで揉み始めた。

(お兄ちゃんも、やっぱり大きいほうがいいのかな)

 やわやわと揉みしだきながら、ついついそんな事を考えてしまう。

(でも…成長期だもん、大きくなるはずよ…って、何でお兄ちゃんが…)

 高校生、またはそれ以上に成長した自分を思い浮かべてみるが、それが兄に吸われている場面だったのだ。しかし違和感は感じられず、それどころか胸の奥がキュンと締め付けられる様になり、ますます下着を濡らす蜜の分泌が増していく。

(ぁぁ…いいよぉ…もっと舐め…て…)

 両の手の動きがますます激しくなっていく。

「…きゃぅ」

 下着越しにスリットを上下していた指が終に肉芽を掘り当てる。包皮を被ったままであったとは言え今までに感じたことの無い強い刺激に、果歩は脳髄に直接電流を流されたかの様に身体を一瞬ピクリと震わせると、大きな波に飲み込まれていった。

「…はぁ…はぁ」
(お…にい…ちゃん…)

 上半身を机に預け達した気だるさと余韻に漂いながら、荒い吐息は次第に安らかな寝息へと変わっていくのだった。


862847:2008/08/16(土) 20:25:48 ID:wHG08H1B
今回は以上です

たまには上げ
863名無しさん@ピンキー:2008/08/16(土) 21:45:29 ID:WJZ7j/xr
GJ!
続き期待してます!

と、何気にもう要領が480K越えてるのね。
次立てたほうがいいのかな?
864名無しさん@ピンキー:2008/08/17(日) 02:02:22 ID:4LhyXkow
続きが気になるぜ……
とりあえず、GJ!!

次スレはまだ大丈夫じゃね? ゆったり進行だし埋まりはしないであろう
865名無しさん@ピンキー:2008/08/17(日) 02:10:47 ID:zpfaIt7/
こんなスレがあったのか。
保管庫に行ってくるお。
866名無しさん@ピンキー:2008/08/17(日) 02:38:48 ID:pEyKa1Ft
神作品のラインナップに感動する>>865がみえる
867847:2008/08/18(月) 02:26:00 ID:nCQJcUsP
続き いきます

レス数 またもや2〜3
今回もエロ無し
868我聞くんご乱心-6:2008/08/18(月) 02:26:39 ID:nCQJcUsP
――翌朝

「っくしゅん」

(あれ?あたし…)

 くしゃみと同時に目を覚ました果歩。一瞬きょろきょろと辺りを見渡すと、自分が机に突っ伏したまま眠っていた事に思い至ったらしい。教科書とノートが開いたままになっていた事から、勉強中に眠気に耐えられずに眠ってしまったのだと思ったようだ。

(あ…)

 肩に掛けられていた我聞のジャンパーに漸く気が付くと、慌てて時計を確認する。

「ありがと、お兄ちゃん」

 小さく呟きまだ早い時間であるのを確認すると、残された時間で少しでも途中であっただろう勉強の続きをしようと身を起こした。と、その時――

「きゃっ!」
(な…なんであたし、こんな格好してるの?)

 シャツの中でスポーツブラは捲れ返り、本来ならありえない圧迫感を伝えている。
 スカートの裾も本来の位置からかなり上方にたくし上げられており、木綿のパンツが丸見えとまではいかないまでも股間の部分が晒されていたのだ。たぶん、ジャンパーを掛けに来た兄に見られただろう。
 おまけにその部分に違和感を感じる。何だか薄っすらと湿っている様にも感じられ、一部分が変色しているのだ。

(そ、そういえば…)

 背中に感じる温もり、背後から漂う兄の体臭、それが果歩に昨夜の記憶を呼び覚ます。

(お兄ちゃんとキス…したんだ…)

 右手中指で唇をなぞりながら想いを馳せ、その後に行った自身の艶戯(えんぎ)をも思い出した果歩。

869我聞くんご乱心-7:2008/08/18(月) 02:27:17 ID:nCQJcUsP
 性に関する知識は保健体育で習うくらいにしか持ち合わせていない少女。もちろん自慰という言葉さえ知らないでいる。
 中学2年生の女の子とは言え、やはりまだそういった言葉を口にする事に躊躇いを感じるのであろう。友達との会話内にも上がっては来ないのだ。ただし、行為そのものを体験した事の有る娘は彼女のクラスメイトにも居たようである。
 そんな果歩であるからして、普段あれだけ真面目であったとしても(いや、真面目であるからこそ)昨晩感じた快感に囚われてしまっていたのだ。

「んっ…」

 意識することなく下半身へと伸びた手。先程唇をなぞった指で下着越しに押し当てる。

(…お兄ちゃん)

 何時も自分を優しく見詰める瞳。
 秘書でもある國生陽菜に気がある様で、その実なかなか態度に表さない朴念仁。
 家族思いで社員思いだが、思い込みが激しくて直ぐに空回りしてしまう兄。

 そんな兄を思い浮かべ、空想の中で昨夜同様口付けを交わそうとした時、カタンと物音が果歩の耳に飛び込んできた。

「ひゃっ!!」

 小さく悲鳴を上げ、行為を中断する。
 普段であれば絶対に聞こえない、静まり返った今だからこそ聞こえる小さな物音。
 風の音なのか、それとも何かが落ちたのかは定かではないが、それは彼女を正気へと戻らせるに十分であった。

(あ、あたしったらまた…)

 頬に熱が貯まるのを感じながら、果歩は慌てて立ち上がる。
 昨日風呂に入っておらず、また昨夜から続く秘め事の熱を冷ますためにもシャワーを浴びようと思ったのだ。幸い我聞たちが起きて来るまでには未だ時間がある。

(…よし!)

 間もなく冬休み。
 昨日出来なかった分は、休み中に2倍にも3倍にもして取り返す。
 そう決意して、果歩はバスルームへと向かっていった。

870847 改め ツンデレ王子:2008/08/18(月) 02:30:57 ID:nCQJcUsP
一先ずコレにて、果歩編の@完結です

次回から陽菜編に突入の予定

あ、それと…
『847』ってハンドル、ついつい忘れてしまうので改名します^^
次回からは『ツンデレ王子』の名で落とさせて頂きます

では、夜も遅いので本日はこの辺にて
おやすみなさい

871ツンデレ王子:2008/08/19(火) 04:30:18 ID:FU8X/mcR
えっと…
大変申し訳無い

↑にて
>次回から陽菜編に突入の予定
と言ったのですが別の話を急遽思いついたので、予定を変更して投下します

消費レス数 9
今回はシリアス目指して書いたので、エロは無し

もしかしたら連続規制かかって全部は投下出来ないかも知れませんが、その時はご容赦を^^;
872誕生日-1:2008/08/19(火) 04:31:35 ID:FU8X/mcR
――8月某日

「社長!社長!」

 プレハブ小屋の一室、工具楽屋のオフィスである。
 この日は現場の仕事が入っていなかった為、工具楽我聞は書類仕事に精をだしていた―はずであった。
 ところが、彼の秘所である國生陽菜が判を貰おうとしたところ、我聞は社長椅子に腰掛けたままうとうととしているではないか。
 陽菜は彼の肩に手を掛けると、ゆさゆさと揺さぶり起こそうとする。

「…ん……あ、國生さん」
「『あ、國生さん』じゃありません!社長、こちらに判をお願いします!」
「ああ、すまない」

 バン!と卓上に書類を叩きつける陽菜。
 その剣幕におののきながらも軽く目を通し判を押すと、自分の席へと戻る陽菜の後姿を眼を擦りながら眺める。

(む…いかんいかん、仕事中に居眠りなど)

 気合いを入れなおす為に己の頬を叩くと、デスクに残っている書類に目を通し始めた。

「はるるん、そんなにカリカリしなくても…」
「カリカリなんてしてません!」

 技術部長である森永優が取り成すも、けんもほろろと言った感じで取り付く島もない。

「我聞くん、陽菜ちゃんと何かあった?喧嘩でもしたの?」

 我聞の許へと赴き耳打ちをする優。
 だが、そう言われても我聞にも彼女の不機嫌の理由など知る由も無い。強いて挙げるなら、やはり先程うたた寝をしていた事だろうか。

「いや、オレもさっぱり…」
「今日の陽菜くんは、何時にも増してピリピリしとるのう」
「我聞くんがなかなか告白しないからじゃないの?」

 専務の中之井千住を交え我聞・優の3人はこそこそと、ここ数日の彼女の態度について話し合う。それが耳に入ったのか、陽菜は例の凍える視線で彼らを見やった。
873誕生日-2:2008/08/19(火) 04:32:11 ID:FU8X/mcR
「仕事仕事」

 中之井と優はそれぞれに呟きながら己の業務へと戻っていく。
 そこに、17時を告げる時計の音が鳴り響いた。

「じゃぁすみませんが、後はよろしくお願いします。緊急でしたら携帯に連絡下さい」

 高校を卒業して直ぐに買い求めた最新機種の携帯電話を掲げて告げると、我聞はそそくさと帰宅したのだった。




「最近の社長、何かおかしくないですか?」

 陽菜の父、武文の爆弾発言から2年半。
 この2年と半年の間、我聞はひたすら社長業を勤め上げてきた。真芝壊滅による本業の激減により当初こそ赤字に悩まされはしたものの、彼の働きと営業部長である辻原蛍司の働きによって最近は黒字が続いていたのだ。
 それなのに、7月の末辺りから我聞の様子が変わり始めた。工具楽屋の仕事自体には手を抜くとかいった様子は無い。むしろ以前よりもスピーディにこなし、必ずと言って良いほど17時には退社するのである。

「まぁねぇ」
「じゃが、きちんと仕事はこなしておるようじゃし、問題は無いじゃろう」
(でも、今までは仕事中に居眠りなんて無かったのに…)

 陽菜が訝しげな表情で考え込んでいると、外からカツンカツンと階段を上ってくる音が聞こえてきた。

「ども、お疲れさまです…って、どうしたんですか?」

 戻ってきた辻原は、事務所内で3人が神妙な顔をしているのに気付き不思議そうに尋ねる。ただし、声の調子はいつのも飄々としたままだ。

「辻原さんはご存知無いですか?」
「は?何をです?」
「最近の我聞くん、何か様子が変じゃないって話してたのよ」
「んー、そうですねー」

874誕生日-3:2008/08/19(火) 04:33:05 ID:FU8X/mcR
顎に手をやり考える素振りを見せる辻原の口から出たのは、とんでもないものだった。

「もしかしたら、デートじゃないですか?」
「……」
「……」
「……」
「「「ぇええええ!!」」」

 これにはGHKデルタ1としても暗躍する優を始めとして、他の2人も驚きを隠せないで居る。

「そ、それ本当?辻原くん、相手の娘とか知ってんの?」
「いえ、あくまでも私の想像に過ぎませんが」

 我聞は携帯電話を持って約1年。しかも最新機種。
 迷惑メールなどから出会い系サイトに登録してしまったものの、相手の執拗な誘いに断り切れずに会う事になったのではないか。そして、一度だけのはずが相手の娘が好みのタイプだったので、そのまま関係が続いているのではないか――と、これが彼の言い分である。

 冷静に考えれば、我聞の性格上起こりえるはずは無いと気付いたであろうが、彼の最初の言葉で動揺していた3人はそこまで頭が回っていない。

「嘆かわしいですぞ、社長!そのような物に頼ろうとは!」
「こ、こうしちゃ居られないわ!はるるん、後を追って真相を突き止めるのよ!」

 ぼやく中之井。慌てて飛び出そうとする優。
 だが、そんな中1人だけ周囲の反応と違う陽菜。

「はるるん、どうしたの?早くしないと我聞くん見失っちゃうよ」

 陽菜の腕を掴み、連れ出そうとする優。
 しかし、予想に反して彼女は抵抗を示すと、今にも消え入りそうな声で『やめましょう』呟いた。

「…へ?」
「やめましょう」
「な、なんで?」
「もしそれが本当だったら、社長の邪魔になりますから」

875誕生日-4:2008/08/19(火) 04:37:06 ID:FU8X/mcR
 


――もしかしたら、デートじゃないですか?

 その言葉を聞いた瞬間、私は巨大なハンマーで頭を殴られたような気がしました。

(社長が…デート…)

 お父さんのあの言葉以来、それまでの社長と秘書って関係よりも少しは進んだ気がしていたんです。あの時の社長の反応も満更では無いと言った感じでしたし、それが私にはとても嬉しかったのですから。
 私自身、お父さんの言葉に度肝を抜かれましたが、あれ以来そうなればいいなと常に思っていました。
 私が彼の事を意識するようになったのは、やはり桃子さんからの『嫁候補』って言葉が原因だと思います。いえ、もしかするともっと前から私は社長に惹かれていたのかも知れません。

 優さんが後を追おうって言った時、私も一緒に行きたいと思いました。
 でも、身体が動いてくれなかったんです。腕を取られた時もそうでした。

 辻原さんが仰っている事は嘘だと分かっていました。
 いえ、頭ではそう理解したつもりでした。彼の性格上、出会い系サイトなど利用するはずが無い――と。
 ですが、心が、身体が言う事を聞いてくれませんでした。
 もしそれが本当だったらどうしよう。もし彼が他の女性と手を繋いだり腕を組んだりしている所を目撃してしまったら…。
 そんな考えが私の知らないところで湧いてくるのです。

「はるるん、どうしたの?」

 優さんが心配してくれていますが、私は声が出ませんでした。彼女に心配を掛けたくは無かったのですが…。
 せめてジェスチャーででも大丈夫だと伝えようと思い頭を振ったのですが、その拍子に手に何やら水滴が落ちて来たのです。そこで漸く、私は泣いているのだと思い至りました。

「陽菜ちゃん…」
「だ、大丈夫です。すみませんが、今日はお先に失礼します」

 皆さんの制止の声を振り切って工具楽屋を飛び出した私は、何時もより早い時間に寮へと帰宅したのです。

876誕生日-5:2008/08/19(火) 04:37:52 ID:FU8X/mcR



 翌朝我聞が出勤してみると、オフィス内には異様な空気が漂っていた。

「?どうしたんですか、皆」

 彼の問いに答える者はおらず、代わりに中之井と優からどこか蔑みの色を含んだ視線が返される。

(何なんだ、一体?)
「そういえば國生さんは?」
「彼女は今日お休みと連絡が有りましたよ」

 重苦しい雰囲気の中、応接用のソファーに腰掛け雑誌を読んでいた辻原が答えた。

「そうですか…」

 彼女に何があったのか気になるところではあったが、今日は現場での作業が予定として組まれている為、今すぐ彼女の部屋へ様子を見に行くわけにもいかない。

「では、行ってきます」

 作業着に着替え終わった我聞は、後ろ髪を引かれる思いながらも現場へと駆け出した。




 習慣とは恐ろしいもので、あれだけ泣きはらした翌日だというにも関わらずいつも通りに目が覚めてしまった。昨夜の内に優に休みの連絡を入れておいたのだが。

(しゃちょう…)

 ヘッドボードの上に飾っていた集合写真を手に、想いを馳せる。

「私はどうしたらいいんですか?」

 答えが返ってくるわけでは無いのを承知の上で写真立ての中の我聞に問いかける。

(それでも…社長と一緒に…居たいです)
877誕生日-6:2008/08/19(火) 04:38:32 ID:FU8X/mcR

 我聞の父であり工具楽屋の先代社長でもあった工具楽我也から高校進学の祝いとして貰い、我聞自身からも“家族の一員だから”と手渡された彼の母親の形見でもある手鏡を覗く。
 泣きはらした所為で、目の周りが真っ赤に腫れあがっている。

(こんな顔じゃ、愛想尽かされちゃう)

 顔を洗って心を落ち着かせると、陽菜は決意を新たに明日は出社しようと心に誓うのだった。



 それから1ヵ月。
 我聞の傍で日常を過ごしたいとの想いから、陽菜は彼の秘書を続けていた。
あの時の彼女の決意、それは少しでも我聞と一緒に居る事。そして、例え今他所の女性に気持ちが向いていたとしても、絶対に自分の方を向かせようと自身を磨くのを怠らないことであった。
 その努力の所為か、この1ヶ月で彼女は傍目からでも直ぐに判る程に変貌を遂げていた。

「最近、陽菜くんは前にも増して明るくなったのう」
「ええ、しかも前より美しさに磨きがかかった様にも見えますね」
「そりゃそうよ!恋する女は強いのよ!」

 社内でそのような評価を受けているとは、本人は気付いていない。

「工具楽我聞、ただいま戻りました」

 そんな中、現場へと出ていた我聞が戻ってきた。

「お疲れさまです、社長」

 陽菜は手を留めて立ち上がると、まだ残暑厳しい中で汗を流した彼の為に冷たい麦茶を入れる。
 そんな彼女の様子と打って変わって、我聞の様子は何故だかそわそわと落ち着きが無い。

「あ、あの國生さん」
「はい、何でしょう社長」
「そろそろ仕事上がりの時間だけど、この後何か用事あるかな?」
「いえ、特には…」
878誕生日-7:2008/08/19(火) 04:39:13 ID:FU8X/mcR
「じゃ、この後残ってくれないか?大事な話が有るんだ」

 一瞬びくりと身を震わす陽菜。少し間をおいて、はっきりとした声で頷いた。



 付き合っている訳では無いから、別れ話では無いだろう。
 あの時の言葉を無かった事にして欲しい、とでも言われるのだろうか。
 正式に付き合って欲しいと告白されるのだとすれば、これほど嬉しい事は無いのだが。
 いやそれとも、私はクビだろうか。自惚れる訳では無いが、私はこの社にとって必要な人材だと思う。だが、社長は彼だ。一社員である自分に彼の決定を覆す権利は無い。

 皆が帰宅した後の工具楽屋の応接室。
 陽菜はそんな不安と期待が入り混じった気持ちで、我聞を待っている。
 押し潰されそうになりながらも気丈に待ち続け、やっと我聞が姿を現した。

「すまん、遅くなった」
「いえ、大丈夫です。それより」
「ああ。だがその前に、國生さん、今日は何の日か覚えてる?」
(何の日…私の入社日は今日じゃ無いし…)
「えっと…9月の17日、ですよね?」

 恐る恐る確認する陽菜に対し、我聞は大きく頷いてみせる。

「そう、9月17日。君の誕生日だよ」
「あ…」

 自分でも忘れていたのだろう。
 言われて初めて思い出した、そんな表情で上目使いに我聞を見る。

「それで、その…渡したい物が有るんだ」
「社長…」

 まだ言葉だけ、それでも陽菜は感極まって今にも泣き出しそうになっている。

「これを誕生日プレゼントにするのは如何かとも思ったんだが、これしか思い付かなかったんだ。嫌でなければ…受け取って欲しい」

 そう言って我聞はズボンのポケットから小さなブルーの箱を取り出した。
879誕生日-8:2008/08/19(火) 04:39:57 ID:FU8X/mcR
「こ、これ…」
「國生さん、いや、陽菜さん。オレと結婚して欲しい」

 我聞はそう言うと、陽菜の目の前で手にした箱を開いた。
 そこには、10カラット――とはいかないながらも、美しく輝くダイヤがはめ込まれた指輪が収まっていた。

「…社長」

 終に堪えきれず、ぽろぽろと涙を零す陽菜。

「受け取ってくれるね?」
「はい…はい…」

 しゃくり上げながら頷く陽菜の左手を持ち上げると、我聞は手ずからその指輪を彼女の薬指へと通していった。

「好きだよ」
「私も…愛してます、我聞さん」
880誕生日-後日談_1
「そう言えば、我聞さん」
「ん?どうしたの?」

 婚約してから半年。
 どうやら会社の皆や果歩たちに覗かれていたらしく、翌日には全員に知れ渡っていた。なんでも、面白半分に覗こうと優さんが盗撮していたらしい。それを我が家で皆揃って見ていたらしいのだ。

(まったく、悪趣味だよな)

 しかし、お陰で隠す必要は無くなった訳だし、まあ良しとするか。

「あの時、しばらく帰社が早かったですよね?何をしてらしたのですか?」
「ああ、あれね」


 実は、会社が黒字続きだからと言って家計までそうかと言えば、全然違っていたのだ。何しろ食べ盛りの人間が揃っている為、火の車とまではいかなかったがそこから彼女へのプレゼント代を捻出するのは到底無理な話だった。
 そこで、短期でのアルバイトをしていたのだ。

「そうだったんですか。私はてっきり、他所に恋人でも作ってるのかと思っていました」

 それを聞いた途端、オレは愕然とした。
 確かに彼女への指輪の為とは恥ずかしくて言えなかったオレが悪い。けど、そんな誤解を与えていたとは夢にも思っていなかったのだ。

「すまん、陽菜さん。オレの説明不足の所為で」
「いえ、今では杞憂だったと判ってますからいいんです」

 それから彼女は話してくれた。何故にそう言った誤解が生じたのかを。

「辻原さんも酷いなぁ、あのバイト紹介してくれたの辻原さんなのに」
「えっ、そうなんですか?」
「うん、オレが悩んでいたら良い方法が有りますよってね」

 確かに皆には内緒にしててくれって言ったけど、そんな誤解を生むような言い方しなくてもいいじゃないか。
 これは後から聞いたんだが、辻原さん曰く
『その方が、後からの感動も一入(ひとしお)だと思いまして』