仮想戦記でエロパロ

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624シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/06/29(日) 23:02:24 ID:puK9Hl+v
 少年兵というものが人道的に問題あり、徴兵制が現代の戦いでは意味がないのはかなりはっきりしていることである。
 にも関わらず、俺は徴用されることとなった。自衛隊ならばまだ逃げ出すことだってできるのだが。
「銃刀法違反、原子力関連法違反、器物損壊、爆発物取扱法違反、発射罪、防衛機密法違反、車両運行法違反、航空法違反……、わかると思うが君の犯した違反だ」
 鏡医師はこれらを列挙した上で、こういった。
「君がパイロット候補生に志願するという形をとることで、閣議決定と安全保障会議が行われ、検察庁を通じて起訴猶予処分を行うこととなっている」
「きたねぇ」
「まあな、本当は政府も我々もこんなことはしたくない。こんな特例処置が前例として残るのだ。悪用すれば未成年の徴用がいくらでもできてしまう」
彼女が見せた憂いの表情をみて、俺はすこし驚いた。
「しかし君を欠いたシルヴァリアは、能力が発揮できない上に危険を秘めている。それに人が乗るということは政治的に重要なことだ」
 軟禁されていた施設を出て、彼女の車に同乗しながら、説明は続いた。
「政治的に?」
「シルヴァリアは、その重要部分を異星人のテクノロジーで作られている。そして、そのコアユニットである彼女も同様だ」
「彼女ってあの……シルヴァリアだっけ……に乗ってた女の子だよな」
 道路は、がら空きだった。もっともガソリンが配給制だから、仕事でもなければ車など乗れたものではない。
「そう。 シルヴィア――発見されたときは名前などないから、我々が名付けたわけだが――が、医学的に人間である部分は、大脳と小脳の一部のみだ」
 俺は彼女の整いすぎた顔を思い出していた。
「俗に言う巨人、我々の分類名、大型装甲歩兵は、中枢に人の大脳が使われていることは知っているな?」
「小学生でも知っているさ。誘拐した人間をばらして再利用し、人の軍事力に安く対抗する。侵略者による地産地消だろ?」
「そうだ。だがシルヴィア達、――我々は小型偽装歩兵と呼んでいる――は解剖された上で、人に似た外装を再構成されていた。このことが意味することは重大だ」
「なぜ?」
「後方かく乱、テロ扇動、社会不安の醸成、おそらくのところ、人類の内部崩壊を狙って作り上げられたものなのだろう。だが、その狙いは幸いなところ、不首尾に終わった」
「そりゃ、そうだ。やっぱり普通の人間にはみえないもんな。きれいすぎて人形じみている」
「ああ、人の同族認識機能が優秀であり、また異星人には人間に関しての微妙な感性の違いが存在することもわかった。だが、異星人の意図は依然危険なままだ」
 俺は助手席で首をひねった。
「悠人、作戦意図は優秀なのだから欠点が改良されれば対処が困難になるということだ。敵に不利益を与え、断念させなければならない」
「……つまりより精巧なヒトモドキが作られれば……たしかに恐ろしいな」
「うん。そこで鹵獲したシルヴィアの同族、小型偽装歩兵を徹底的に研究した。国際共同連合軍特殊任務群が中心となってな」
「それって、さっき言っていた、なんとか大隊って奴のあるところ?」
「ああ。各国とも内情不安は事欠かない。異星人にこの作戦が不利益であると断念させなければ国が滅ぶ。必死だったわけだ。
 そして研究は実った。リバースエンジニアリングによって、シルヴィア達を人類側の兵器とすることができた」
 女の子を兵器と言い切った口調に違和感を感じたが、俺は黙ったまま聞き続けた。
「同時に例の巨人の研究も進んだ。そして破壊した巨人から集められたパーツを、改造した小型偽装歩兵を中枢として動かす実験がなされた」
「成功したわけだ?」
「成功したが、失敗もした。動かす実験は成功したが、小型偽装歩兵が任務を『思いだし』、破壊活動を始めたため、自爆させた例が出てきた」
「ブービートラップみたいだな?」
「そのものだ。敵による再利用を難しくするのは基本だ。それでもなんとか問題をクリアして、改造した大型装甲歩兵と中枢の小型偽装歩兵からなる特殊装甲歩兵が投入された」
「どうだったんだ?」
「戦果は絶大だった。が、やはり暴走するケースもあった。改造された脳を単独で戦線に立たせるには問題があるという結論がでた」
「なんで地球製のコンピューターで制御しないんだ? 人型の制御ぐらいできるだろう?」
「一つは、人型ロボットの制御システムは、兵器としては開発されていないから、兵器としては論外に性能が低い。バトルプルーフもない。開発すると調整運用でコストが跳ね上がる。
 そして異星人が人の大脳を加工して大型装甲歩兵の中枢として使う意義を忘れている」
「どういう意義?」
625シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/06/29(日) 23:04:54 ID:puK9Hl+v
「人の脳には人の形をした体を動かすプログラムが埋め込まれている。赤子から成長するに従って獲得したものだ。
異星人はそういうところに手をつけず、自我や敵味方認識、そういったところのみをいじって、制御中枢に使用している。
あの巨人達の人型には、兵器としての合理性は無い。ただ大脳を少ない訓練で確実に安く兵器の制御中枢として動かすための、そのための人型だ。
兵器としての合理性を捨て、人の脳を使い捨てても、数と技術力によって、地球側の戦闘艦、戦闘機、戦闘車両、そういったものを撃破する。
それにより訓練された操縦士や兵隊を摩滅させ、地球側の組織的抵抗力を削ぐ。それらが異星人の根本戦略だ。
脳が多少損耗しようと、人体の他のパーツがとれれば、彼ら的には勘定があうらしいからな」
「だから、あの天使ロボット?」
「そうだ。彼らの技術と人の兵器をより高いレベルで組み合わせて質で数を凌駕する。同時に後方かく乱の意図もくじく。シルヴァリアの作られた意図というものはそういうものだ。
 だからこそ、敵に加工された脳だけをのせて、暴走されて敵に易々と奪われる訳にはいかない。脳を監視する人の存在が重要になってくる理由だ。
 結局、銃の引き金は人が引かねばならないし、ミサイルの発射スイッチは人が押さなければならないということなのだよ。それが人の乗るという政治的意味なのだ。
 信用できないが使える兵器に、誰かが乗って、敵の企みを打ち砕かなければならない。そこで、君の出番だ」
「俺ぇ? だけど、あの時墜落するまでは、俺なしで動いてたじゃないか?」
 自分を指さすと、鏡医師はうなづいた。
「リモート指令システムは、残念ながら使い物にならなかった。戦況が秒単位で激変し、通信状態も悪化して的確な指示を与えきれない上に、シルヴィアの安定度が下がり、細かな異常動作が増えた。
はっきりいって、高い金を掛けた割には素人だった君を乗せた方が、成績が良かったのだよ。どうも君は、シルヴィアと相性がいいようだ。
君が搭乗してからのシルヴィアの安定度はかなりあがった。何より、君は育成費用を考えても、リモート指令システムより安く、死んでも惜しくない人材だ」
「なっ! なんだと?」
「違うか? 自分で言ってたではないか。人類に未来はないと。負け犬根性がついた子供が一人死のうと世界は変わらない」
 歯をかみしめて、鏡医師の鋭い指摘に耐えた。事実ではあったからだ。
「その顔はいい。そういう男の顔は嫌いではないな。悔しければ、この狂った世界を変えてみようとあがいてみるがいい。君にはそのチャンスがある」
 彼女の顔に薄い笑みが浮かぶ。しかしそれは嘲笑ではなく、……かすかな期待で、俺はその目に浮かぶ色に戸惑った。
626シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/06/29(日) 23:09:17 ID:puK9Hl+v
 車は自衛隊の基地に入っていき、のんびりと走った後、ある変哲のない建物の前で止まった。
 俺は車を降り、促されて建物に入った。


「北東アジア方面司令、瀧口将補だ」
 ビルの中の、偉い人がいる部屋、そこの机に座っていた温厚な紳士はそう名乗った。
「本来ならば、未成年を徴用するなど愚策の極みなのだが、ルヴィ……失礼、シルヴィアの運用結果は世界を守る重要な問題だ。
不満もあるだろうが、やるしかないのだ。君に不必要にプレッシャーを与えたくはないが、真実を言っておく必要はあろう。……世界の命運が、君の働きにかかっている」
正直に言って、実感はなかった。ただ形式的にうなずいただけだったが、将補と名乗った紳士は、心境を理解したらしい。痛ましげな光をその目に載せた。

 
 それからあちこちを引き回され、書類に署名をしてまわった。女医は片時も俺のそばから離れなかった。

 
「どうだ? 疲れたか?」
 机の上には宣誓書に履歴書、職員の心得、共済会、被服装備貸与申請書、遺書、書き方もわからないような書類が山をなしていた。それらを前に、俺は悪戦苦闘している。
「正直、何も考えられず流されています」
 鏡先生に教えてもらいながら欄を埋め、印鑑を訳もわからずに押した。中身なんか読む気も起きなかった。
「軍隊というのは、巨大な官僚機構だ。そこに例外的に、しかも憲法違反なのに、君を押し込むのだ。手続きの煩雑さに同情はするが、我慢してほしい。これが終われば、愛しの君にあえるのだしな」
「……シルヴィアですか?」
 指さされた紙に、はんこをペタリ。複写だからといわれて、二枚目にもペタリ。
「そうだ。彼女は君に興味を抱いている」
「……どう、接すればいいんですか? いや、俺、彼女とかいなかったですし、その女の子の扱いは、正直苦手ですし……」
 また一つ書類を完成させて、背伸びをしながら、俺は女医に愚痴った。
 返答は女医の、声を殺した笑いだった。
「くくく、君は私の体を好き放題にもてあそび、童貞を捨て、中出しまでしたんだぞ?}
「あ、いや、その、それはっ……」
 俺は意味もなくなにかをかき消そうとせんばかりに手を振り回してしまった。頬もすこし熱い。
「十ヶ月もしたら、父親になるかもしれないのだが?」
 狼狽する俺をみて、女医はさらに笑った。
 そのとき、部屋の扉が開いた。二人の顔が出口に向く。
 そこにいたのは、軍事施設には不釣り合いな少女。
 それは人であって人ではない、現実感を失わせる美しさをもった少女だった。
 肌は透き通るように白い。切れ長の目には、青ざめたような白目の中に、禍々しささえ感じる金色の瞳が浮かんでいる。
 鼻は主張しすぎないぎりぎりの絶妙の曲線を描いて収まり、唇は小さく薄く桜色だった。
 少女が着ていた白いワンピースから、壊れそうに細い肩が見え、そこから意外にそこそこ豊かな胸元が続く。
 胴はあくまでも細く、腰はそこからさらに引き絞られくびれている。尻は薄く、のぞいている足はほっそりと長い。
 その金の瞳が俺を見ると、安堵したように瞳孔がわずかに開き、目尻が下がった。
「ゆうと、見つけた」
 ふわりと風がそよぐ。その表情はまったく変わらない。まるで舞うように彼女は部屋に入ってきた。
「ゆうと、会いたかったよ」
 ふわりと柔らかいものが首に巻き付き、ひんやりとしたものが俺のほほにふれ、人の体とは思えない軽さが肩にかかる。
「待ちきれなかったか、ルヴィ?」
 その言葉に少女は応えず、ただ俺を抱きしめ、そして俺はひたすら困惑し、女医はそんな俺たちをどこかまぶしそうに、笑みを浮かべてみていた。
627シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/06/29(日) 23:09:40 ID:puK9Hl+v
とりあえず 今日はここまで。
628名無し@ピンキー:2008/06/30(月) 09:01:19 ID:iFWFVRw8
GJ!

続きを期待する
629名無しさん@ピンキー:2008/06/30(月) 20:57:02 ID:QAi7Fe7Z
補給だ!補給が届いたぞ!!
630名無しさん@ピンキー:2008/07/01(火) 20:05:48 ID:pl9nihzD
これが噂に聞くムッソリーニ給与かっ!
631名無しさん@ピンキー:2008/07/01(火) 20:27:15 ID:IFLFShYN
補給だ給与だってなんか失礼な言い方じゃないか?
まだ展開って感じだから感想つけにくいのは判るけど…
632名無しさん@ピンキー:2008/07/01(火) 22:46:34 ID:OBJbJa/w
また政治将校か・・・
633名無しさん@ピンキー:2008/07/04(金) 13:30:06 ID:1dthBRoJ
同志>>631
貴官は補給の重要さがわかってないようだな。

補給が無ければ我々は死んでしまうというのに。
634名無しさん@ピンキー:2008/07/04(金) 14:23:28 ID:pOlddplM
>>631
兵隊さんが「補給」や「給与」という言葉をどんな思いを込めて使っていたのか勉強してこい。
635名無しさん@ピンキー:2008/07/05(土) 00:25:39 ID:B77ynIzz
きっ貴様ァ!
恐れ多くも陛下から賜った装備を蔑ろにするとは何事かァ!
636名無しさん@ピンキー:2008/07/05(土) 02:27:40 ID:lFgxp9iC
感想も言えない文盲、煽りだけはお上手。
637名無しさん@ピンキー:2008/07/05(土) 03:58:58 ID:DHf9LBg9
おや、このタイミングで自己紹介?
638名無しさん@ピンキー:2008/07/05(土) 13:16:57 ID:wGcQVLyy
まずい餌だクマー(AAry
とでも言って放置すりゃいいのに
なんでマジレスするんだ?
自演?
639名無しさん@ピンキー:2008/07/05(土) 13:48:59 ID:2v9U3leB
補給物資の取り合いでみんなピリピリしてるんだ。
ここはあまり物資が届かないからな。
640シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/05(土) 15:01:04 ID:JMRSpPEl
 第三章 アイアンボトム作戦

 地獄の訓練が始まった。とにもかくにも体を鍛えなければ、戦うことは出来ない。というか生き延びることもできない。
 基礎体力作り、座学(といっても高校生にわかるようにはしょられたものらしい)、格闘技、射撃。
 俺にとっては地獄だが、訓練教官にとっては、すっかすかな訓練らしい。走っていて無様にすっころんだ俺に罵声が飛ぶ。
「よくもここまでインスタントラーメンみたいな訓練で、悲鳴をあげられるな? 貴様は今すぐその股間の役立たずを切り取って恵まれない中年女性に寄付するがいい」
「申し訳ありません!」
 良く戦争もので訓練教官が死ぬほど憎くなるっていうが、実感するとほんとうに胸が悪くなるほどの憎悪が沸く。
 ありていにいえば、120mm砲を何発でもぶち込みたくなるほどだ。
「ゆうと、もうすこし、がんばれ!」
 それをかろうじて中和してくれているのが、シルヴィア……ルヴィだった。
 痙攣しそうな足を踏ん張って起ち上がり、よろよろと走り始める。その横をルヴィはやや案ずるような顔をしながらついてくる。
 サイボーグの彼女に体力錬成の必要はない。にも関わらず訓練に参加しているのは
「パートナーシップの醸成と君のデータ採取だ。君が乗り込んだとき、彼女はかなりGリミッタを低く設定している。
それで正解だったわけだが、それゆえ被弾は増えた。このことからわかるように、まだ君は彼女の足を引っ張る存在でしかない。
従って君は訓練をこなして限界をひきあげ、彼女は君を見ながらデータを採取し分析し、最適なシルヴァリアの運用を探ることになる」
 そう言ったのは、例の鏡先生だ。かくして俺達は黄金より貴重な時間を使って、限界を引き上げる訓練にあてていた
641シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/05(土) 15:02:54 ID:JMRSpPEl
 その貴重な時間を稼ぎ出したのは、日米露の軍人達だ。
 あの時六十機弱も敵巨人を叩くことに成功した日本は、三沢、千歳、小松、各務原の戦力を結集し、敵の空中母艦を攻撃。
 空中母艦が千島列島まで退避したとき、そこで米露が核を使用し撃滅したのだ。北東アジア、ロシア、米国が、千島列島に立ち上るキノコ雲をみて歓声をあげた。
 コードネーム:ジーナと名付けれらたその空中母艦は十年前から一貫して日本、ロシア、統一朝鮮、中華上海を脅かしていたのだ。
 久々の大きな勝利となったわけだが、しかし地球上に母艦はまだかなり存在しており、「人間の補給」が出来た母艦が、いずれ襲来することは明らかだ。
 だが、NORADにもタクラマカン防空観測所にも日本方面に移動の気配を見せる空中母艦はまだいない。
 日本には、久々の平和がもどってきていた。


 そのことを知らされたのは、やはり訓練中だった。
 例えば、過酷なランニングを終えて、兵舎に引き上げるとき、すれ違う幾人かが俺に対して見事な敬礼をした。
 あわててした俺の答礼はぶざますぎて話にならない。
 いぶかしげに思っていた俺に回答をくれたのは、訓練教官だった。
「あれは、千島列島航空撃滅作戦参加者だ。彼らの戦友が命を賭けてくれたおかげで、貴様は貴重な訓練時間をえたのだ。
未訓練で戦場に行けば、貴様もあの子も確実に死ぬ。それを空で散った者達が命をかけて防いでくれたのだ」
「……じゃあ、なぜ、俺ごときにあんな敬礼を?」
「兵でなかった貴様が切り開いた突破口だった。それに対する感謝だ。……貴様の答礼は、生き延びて一つでも多くの敵を堕とすことだ」

 その作戦で、米軍機やロシア軍機の何機かが、空中母艦につっこんだことを知ったのは、もう少し後の話だ。
 カミカゼはもう日本の専売特許でない、そういう時代だった。
642シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/05(土) 15:04:27 ID:JMRSpPEl
 頭の中が、良い具合に硝煙と筋肉と敵と戦術と英語で埋まった頃には、訓練について行けるようになっていた。
 本気でここまでやらされたことは無かったからかも知れない。そして軍事教練よりは、少なくともやりがいがあったこともある。
「若さだな」
 すこしばかり進歩した俺をみながら、訓練教官と鏡先生の二人が、別々に同じ事を言った。
 訓練段階は進み、シミュレーター訓練に進んだ。こちらは楽しかった。
 戦術を覚えて、適切な武器の使用を考えていくことは、性に合っていた。
 やがて実機を使った訓練、戦闘機や戦車との編隊を組む訓練や、特科への支援要請や砲撃指示など共同作戦の訓練をこなし、異機種間戦闘訓練に進んでいった。
 訓練が進むにつれ、罵声が変わってきたのに気付いたのは異機種間戦闘訓練時だった。
「何をやっている」「間抜け」「女のケツでもみていたのか?」
 それが初めの俺に投げかけられていた罵声ならば
「さあ死んだ」「今仲間を殺した」「お前が死んで人類滅亡の引き金をひいた」
 それは、驚くべき技量で俺達を翻弄したパイロットや、戦車兵が淡々と投げかける宣告だった。
 上層部の動きなど知らずとも、デブリーフィングと機動解析で見ていけば、彼らの真に言いたいことがわかるようになってくる。
 それは、より実戦に近い訓練であり、より長く死線に身をさらしても生き延びろと言う叱咤であり、そしてこれ以上戦友の死を見たくないという悲痛な叫びでもあると思った。
 実戦が近づいている、俺はその事実を否応なく感じ取らざるを得なかった。
643シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/05(土) 15:09:11 ID:JMRSpPEl
「2時の方向、敵」
 ターゲッティングボックスにロックオンサークルが重なる。
 トリガーをひこうとしたところ、クルリと敵が反転した。
「11時の方向、新たな敵、被照準中」
「回避」
「回避パターンA−25、C−31」
 Gに振り回される中、一番遠くの緩やかに動く敵をロック。
「ロックオン」
「ナイトガンナー、貴機は撃墜された」
 地上のコントロールタワーから判定官が告げた。もう恒例になってきた航空自衛隊との異機種間戦闘訓練だった。
「くそぉ!」
 無線から罵声が漏れる。撃墜判定となった戦闘機が去っていき、俺たちはロッックオンを消して、逃げ回る。それでも
「シルヴァリア、被弾判定、足部中破」
「ちっ」
 容赦のない連係攻撃でまたもやダメージ。いくら装甲が厚いとはいえ、戦闘機に比べれば機動性は無に等しい。
「ファーストルックファーストキルの原則は大型装甲歩兵であっても有効だ。ミサイルの迎撃を恐れるな。連携による飽和攻撃を意識しろ」
 敵隊長機が激をとばす。わざわざ聞こえるようにチャンネルを合わせているのは、俺への教育でもある。
 ともかく機動性に劣るのであれば格闘戦には持ち込まれないようする必要があった。
 相手はF-15J。ステルスではない。
「ルヴィ、距離を取る」
「フルブースト十秒、狙撃モード移行」
 とんでもなく長い時間とも思えるフルブーストのGに耐え、
「スラスターカット、急速冷却、ステルスモードスタート」
 上昇した分の自由落下時間を稼ぎ、追ってくる戦闘機群を迎え撃つ。超望遠でみる美しい編隊、狙うはその四番機ポジション。
 ロックオンサークルが点滅する。
「ソードダンサー、貴機は撃墜された」
 さらに二番機にロックオンサークルが光る。そのときグランドコントロールのコールが割り込んできた。
「警報! 警報! 全機訓練中止、全機訓練中止」
「なんだぁ? ルヴィ、回線を!」
 ざらつく空電の向こうに注意を回しながら、管制機に連絡を取った。
「こちら、シルヴァリア。訓練中止了解。グラウンドコントロール、事故なのか?」
「こちら、グラウンドコントロ−ル。事故ではない。繰り返す、事故ではない。……まもなく詳細を送る。回線をそのままで待機せよ」
 管制機の無線と入れ違いに、仮想敵の隊長機がコールをよこした。
「……こちらレッドファルコン。シルヴァリア聞こえるか? ……どうやら、ちっとばかり早いが出撃のようだ」
「レッドファルコン!」
「敵の休み時間が終わったらしい。今日の貴様の動きは良かった。実戦でもその調子でな、オーバー」
 モニターの中で戦闘機隊が華麗な編隊飛行を見せて、去っていく。
「ルヴィ、ステルスモード中止」
「了解。通常モードに復帰……ゆうと、いよいよなんだね」
 パワーユニットの静かなうなりが響く中、彼女は俺の顔をじっと見つめていた。
644シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/05(土) 15:12:43 ID:JMRSpPEl
「カザフスタン、ウズベキスタン辺りにいた、敵空中母艦、コードネーム「マティルダ」の東進が確認された。
 またパプアニューギニア付近を遊弋中の、敵大型海上移動基地、コードネーム「プリシラ」が北上を開始したことも確認された。
 この二つの予想侵攻ポイントがこれ」
 高空自衛隊入間基地内に設けられた、対異星人国際共同軍北東アジア方面軍司令本部。そのブリーフィングルーム。
 俺が初日に挨拶したあの瀧口司令がブリーフィングをしていた。
 中国北西部から東に伸びる線と、南太平洋から北に伸びる線が交差する。それをみて、ブリーフィングルームがすこしざわついた。
 クロスポイントは日本だった。
「敵の狙いは明らかだ。撃滅した空中母艦以上の戦力を押しだし、制圧を図る。理にかなった戦略ではある。我々としては、敵の戦力が合流する前に叩く必要がある」
 画面が切り替わる。アメリカ大陸から、「プリシラ」に青い線が延びる。そして日本、オーストラリア、インドからも青い線が延びる。
「移動速度が遅い「プリシラ」には、B52による核も含めた高々度爆撃を行う。君たちにはまずこれの護衛を行ってもらう」
 その後青い線がフィリピンを経由して、マティルダに伸びた。
「そして補給が済み次第、中国北京政府軍、中華上海政府軍、ロシア軍、台湾軍とともに、「マティルダ」の迎撃に向かう。
しんどい作戦だが、成功させなければならない。作戦呼称は、アイアンボトム。
「プリシラ」撃滅のアイアン作戦、マティルダ邀撃のボトム作戦からなる。諸君の検討を祈る。では詳細を一等空佐から説明してもらう」
 壇上に進み出た士官が、部隊ごとの詳細な説明を始めた。
645シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/05(土) 15:17:17 ID:JMRSpPEl
「シルヴァアリアは、長距離空輸が難しいため、直ちに先行しての出発となる。海上自衛隊所属護衛艦「いせ」に積み込みを完了次第出発。
補給は同艦内で行うこととなっている」
 その言葉を聞いた三時間後には、俺達は護衛艦いせに乗って、窓から去りゆく日本本土を眺めることとなっていた。
 鼻につく海と重油の臭いが、かえってなにか現実離れしている感覚を俺にもたらした。
「……戦いか……」
 俺は「いせ」艦内に割り当てられた二人部屋から外をなんとはなしにみていた。
二人部屋は下士官待遇だそうだが、残念ながら俺ではなく、ルヴィが下士官相当ということらしい。

「ねぇ、ゆうと」
 感慨にふける俺にルヴィが話しかける。
「コクピット以外でふたりっきりって、なんかいいね」
「そういや、結構珍しいかも。訓練のときはいつもペアだから、当たり前のような気がしてたけど」
 ルヴィがにっこりと笑って俺の首にかじりつく。
「そうだよぉー。自主訓練とか再訓練とかゆうとの訓練にいっぱいつきあったけど、こんなにゆっくりはできなかったよぉ」
 鬼教官の顔が浮かんで消えて、気分が落ち込む。死なないために仕方がないとはいえ、きつくて鬱になりそうだったのも事実だ。
「それを言わないでくれ。 付き合ってくれたルヴィには感謝してるけどさ……」
 ルヴィを抱きつかせたまま、ベッドに寝転がる。
「ね、ゆうと。私、ゆうとにお願いがあるの」
「ん?」
 上から見下ろすルヴィがいつになく真剣な顔をしていた。
「キスしてほしい」
「ええっ!?」
「出来ない?」
 驚いた俺の目に、ルヴィの揺れる瞳がうつった。
「出来ないとかそういうことじゃ……」
「私が、人間じゃないから出来ない? 異星人に作られたから、出来ない?」
「ルヴィ?」
「私ってさ、いったいなんなんだろうね。人間でもないし、機械でもないし、地球人でもなくて異星人でもなくて」
 ルヴィの目から一筋しずくが流れる。サイボーグだから涙じゃないかも知れない。けれど、俺にとっては紛れもなく涙にみえた。
「私ね、戦いなんてどうでよかった。私に優しくしてくれた人が戦って欲しいって言ったから、戦っていただけ。
でもね、ゆうとが私の隣に来てくれたとき、ほっとしたの。一人は怖かったの」
 ルヴィが俺の手を取り、彼女の頬に押しつけた。
「おかしいよね。私の体、ほとんど機械なのに、ゆうとがいないと怖いの。朝、ゆうとと会うと安心するの。ゆうとが来てくれたとき、すごく嬉しかったの。
どうしてなんだろね? 機械なのに地球人じゃないのに怖いとか嬉しいとか寂しいとか好きだとか。私、壊れちゃったよ。おかしくなっちゃった……」
 俺はそれ以上、ルヴィにしゃべらせなかった。彼女の唇を唇で塞ぎ、その壊れそうに華奢な体を抱きしめた。
 彼女の悲しみに満ちた目がゆっくりと閉じられ、手が俺の背中にまわった。
「ルヴィは人間だよ」
 唇を離して俺はつぶやく。思いを表す言葉が見つからず、ただ当たり前の言葉しか出ない。それが腹立たしい。
「機械は怖いなんて思わない。異星人は地球人を好きになったりなんかしない。ルヴィは絶対に人間だよ」
646シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/05(土) 15:21:26 ID:JMRSpPEl
 彼女は答えなかった。ただ、無言で体を起こして夏用制服のボタンを外して上を脱ぎ、サイドジッパーを下ろしてスカートを落とす。
 ブラジャーを外し、ショーツを投げ捨てて、彼女は裸体を俺にさらした。
「……私を抱ける? 言葉だけで人間って言うんじゃなくて、女として抱ける?」
「ルヴィ」
「出撃したら、ゆうとが死んじゃうかもしれない。私が壊れちゃうかもしれない。だから、今しかないの。
ゆうとが本当に私を人間として、女として、見てくれてるか、知りたいの……。慰めなんかいらないよ。抱けないって言うなら、それでも……」 
 やっぱりそれは涙だと思った。綺麗な金の瞳が潤んで、後から後から滴が流れ落ちる。
「それでも……いい……から……」
 彼女を抱き寄せて、ベッドに組み敷く。もう何も言う気はなかった。服を脱ぎ捨てて、スラックスを投げだし、下着を放り出した。
 唇を重ねて、意外とボリュームのある胸に手を添えた。その体は温かくても、鼓動すらあった。たぶんそれは偽装機能。鏡先生が教えてくれた。
 サイボーグであることを隠すために、ルヴィ達は呼吸をし、鼓動を起こし、血を流し、SEXすらする。任意に停止できるその機能をルヴィは動かしているらしい。
 舌を入れて、ルヴィの舌を味わながら、乳首をはさんでさすった。乳首は、ゆっくりとそそりたった。
 だけど、ルヴィは偽装しているんじゃない。……人間だって俺に訴えているんだと思う。
 ルヴィの舌を名残惜しみながら唇を離し、釣り鐘型をした綺麗な胸の頂きにある乳首をついばむ。ルヴィが小さく体を震わせた。
 きっとそれは演技だろう。それでも彼女が求めるならば、男としてできることがあるならば、パートナーならば、道化になることぐらいなんでもない。
 思う存分胸をもみしだき、乳首を吸い舐めて転がす。ルヴィは体を小刻みに震わし、俺を強く抱きしめた。
 訓練に付き合い励ましてくれたこと、教官に怒鳴られて自信を失ったとき彼女がじっと側にいてくれたこと、軍隊に入ったとき彼女が俺を優しく受け入れてくれたこと。
 彼女に助けてもらったお返しは、今しかできない。
 鏡先生の言葉が、突然よみがえった。
「好きとか愛とか、そんなもの以前に、ただ側にいるだけでも、この胸につつむだけでも与えられる何かがあるのではないかってな」
 この身が死に行く身だとしても、明日がない世界だとしても、伝えられることはある。
 ルヴィの股間に手をやると、そこは充分に濡れていた。俺は膝立ちでルヴィの足の間に割って入った。
「ルヴィ、ルヴィが人間でなくても、俺はルヴィの側にいるよ。ルヴィがなんであっても、側にいるから」
 俺の言葉に目を見開いて驚くルヴィの中に、俺は入った。
「俺も怖いんだ。死ぬのが怖い。だからルヴィに居て欲しい」
 ルヴィを抱きしめている自分の手が震える。全てが急変していきなりの出撃で、俺は怖がる暇もなかった。
 だけど、今は怖い。ルヴィのぬくもりの奥まで入って、ルヴィに包まれたままで、全てが終わって欲しかった。作戦は中止になったと言って欲しかった。
「……ゆうと、私も……側にいる」
 ルヴィの中が、恐怖を感じて萎えようとした肉棒を包み込んだ。そして彼女の手がさらにしっかりと俺を抱く。
「私達、恐がりだね」
 そう言うとルヴィがもう一度唇をよせて重ねる。恐怖が融けることはない。けれどもそれを打ち消す強い思いが、恐怖に枷をはめていった。
 ルヴィのために、全力を尽くそう。
「ゆうと、私、怖いけどゆうとのために戦うよ」
「ルヴィ、俺もだよ」
 笑いあって、俺はゆっくりと腰を動かし始める。ルヴィの中をもっと味わいたくて、そしてルヴィにもっとしがみつきたくて。
 やがて荒い息をつきながら震える女の中に、俺は心ゆくまで放ち、そんな俺の肉棒を女の中が何度も絞った。 
647シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/05(土) 15:23:45 ID:JMRSpPEl
 作戦開始30分前。
 夜明け前の中部太平洋。空は雲一つない晴れ。航行するいせの全通甲板に、シルヴァリアはひざまずいている。
「爆撃隊サイゴンエクスプレスは遅延無しで飛行中。護衛各機もランデブーを完了し、エスコート任務に就いている。「プリシラ」は依然北上中。「マティルダ」も速度を保って東進中だ」
「了解です」
 連絡将校からの最後のブリーフィングを受ける。その横で胴体周りを多数の作業員がとりまき、ミサイルポッドの取り付けに励んでいる。
 ハッチを開放しているコックピットの中にも二人ほど入り込んで、ルヴィと共に配線とコンピューターのチェックをしていた。
「増設ミサイルポッドのデータリンク確認急げ」
「十番、十四番、接続確認。残り六番、九番、チェック中」
 出撃準備でごったがえすシルヴァリアのコックピットに、急に場違いな白衣の女が降り立った。
「悠人、忘れ物がある」
 鏡先生の言葉に俺は首をひねった。携行品のチェックは既に済ましていたのだ。
 にこりと笑ったその顔が、下がって俺の頬に近づき、唇が触れた。
「続きは帰ったらな」
 顔を赤らめた俺にルヴィが少しむっとした顔をした。それを見ていた作業員達の顔にもかすかな微笑みが浮かぶ。
 鏡先生が白衣を翻し、背を向けて機を降りていく。それ以上の言葉は、何もない。
 俺は小さく敬礼を送った。
「さあ坊主。チェックを急げよ。……美人の熱い思いがさめないうちに帰ってくるためにもな」
 作業員が片目をつぶった。
648シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/05(土) 15:27:12 ID:JMRSpPEl
 やがて最終確認が終了した。とりついていた作業員達が機敏な動きでシルヴァリアから離れていく。
「ブリッジ、こちらシルヴァリア。チェック全て終了」
「了解」
 返答と共にアナウンスが始まる。
「発進に関わる要員以外は全て速やかに退避せよ、繰り返す……」
 数分後、誘導員が移動許可の合図を送る。
「シルヴァリア起動。微速後進」
「起動並びに微速後進、了解」
 ルヴィがうなずき、シルヴァリアはゆっくりと立ち上がると、後ずさって全通甲板の最後端を目指す。
「ブリッジより、シルヴァリア。当艦は全速前進を開始している。後一分で所定速度に到達」
 シルヴァリアが全通甲板後端に到達し、停止。波と風の音だけが響いていた。
 コックピットハッチが閉まる。音が消えて、静寂の時が訪れる。
「シルヴァリアより、ブリッジ並びに全ての乗組員の方へ。お世話になりました。……征って来ます」
「ブリッジ並びに全乗組員より、シルヴァリア。武運を祈る。必ず帰還せよ」
 モニターに映るブリッジの中で、甲板の先で、エレベーターでほとんどの軍人が立ち上がり、こちらへ向かって敬礼をしているのが見えた。
「主翼展開」
 天使の羽が広がり、風を受けてたわみ始める。
「行くよ、ルヴィ」
「うん。行こう、ゆうと」
「発進可能速度到達、シルヴァリア発進せよ」
 誘導員が合図を送った。
「シルヴァリア発進」
 全通甲板の後端を蹴って、後ろ向きに跳躍。同時に肩部および腰部スラスター全力噴射。
 足部スラスターは耐熱甲板でない「いせ」を考慮して、安全距離まで噴射をしない。
 いせの作り出した合成風力が助けとなって、主翼を展開したシルヴァリアをすぐにいせから引き離す。安全な距離がすぐに稼げた。
「アフターバーナー始動」
 蹴り出されるような圧力と共にGが体を縛り始める。
「スタートアフタバーナー……飛行最適姿勢に遷移」
 シルヴァリア全体を揺るがせる振動と轟音がコックピットに響き始める。
 瞬く間に護衛艦いせを追い越し、虚空に駆けのぼる。
 中部太平洋に黄金の光が射した。それは戦いの夜明けだった。
649シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/05(土) 15:28:54 ID:JMRSpPEl
今日はここまで。 後半もほぼ完成中ですが、この週末は旅行です。
週明けに続きはあげられると思います。皆さん仲良く楽しく参りましょう。では、また。
650名無しさん@ピンキー:2008/07/05(土) 16:59:50 ID:Wb1Dmikm
萌えるシチュエーションだっハラショー!
651名無しさん@ピンキー:2008/07/05(土) 22:52:52 ID:K4s77G+b
シルヴァリアの人、補給乙であります

スレに悪霊が取り付いてるようなので、御祓いしときますね

掛けまくも畏き 伊邪那岐の大神                かけまくも かしこき いざなぎのおおかみ
筑紫の日向の橘の           ◇       ミ ◇  つくしの ひゅうがの たちばなの
小戸の阿波岐原に          ◇◇   / ̄| ◇◇.  おどの あわぎはらに
禊ぎ祓へ給ひし時に       ◇◇ \  |__| ◇ ◇  みそぎ はらえたまいしときに
なりませる祓へ戸の大神たち      彡 O(,,゚Д゚) /.     なりませる はらえどの おおかみたち
諸々の禍事・罪・穢れあらむをば      (  P `O     もろもろの まがごと つみ けがれ あらむをば
祓へ給ひ清め給へとまをすことを     /彡#_|ミ\   はらえたまえ きよめたまえと もうすことを
聞こし召せと 畏み畏みもまをす。     </」_|凵_ゝ    きこしめせと かしこみ かしこみももうす
652名無しさん@ピンキー:2008/07/05(土) 23:16:15 ID:B77ynIzz
助かった・・・
あと、一週間は、たたかえる・・・
653名無しさん@ピンキー:2008/07/06(日) 00:32:20 ID:BwV1uk0s
>>651
ロンメル「簡単です。お祈りをやめ、反撃するよう命令しなさい」
654名無しさん@ピンキー:2008/07/06(日) 15:17:59 ID:qdPSqFdz
お祓いや格言みたいのなんかより
投下してくれた話について語るほうが
スレにも作者さんにもいいんじゃないかと俺は思う。

最初に素直クールスレに投下されたってのもあって
俺は鏡先生がメインでルヴィが脇じゃないかって印象があるんだが
みんなはどう思うだろうか?
場違いだと思ったらどうかスルーして欲しい。
あと>>651氏と>>653氏、不愉快に感じたらすみません。
655名無しさん@ピンキー:2008/07/06(日) 17:05:12 ID:+y2zbAhn
感想とはちょっと違うけど一つ質問。

作中に出てきた「いせ」のスペックkwk
656シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/07(月) 13:33:55 ID:FfUM5lp/
>>655  これは非常に申し訳ありませんでした。「いせ」の描写が完全に抜けておりました。
 修正をあげておきます。


「シルヴァアリアは、長距離空輸が難しいため、直ちに先行しての出発となる。海上自衛隊所属護衛艦「いせ」に積み込みを完了次第出発。補給は同艦内で行うこととなっている」
 その言葉を聞いた三時間後には、俺達は護衛艦いせに乗って、窓から去りゆく日本本土を眺めることとなっていた。
 鼻につく海と重油の臭いが、かえってなにか現実離れしている感覚を俺にもたらした。
「……戦いか……」
 俺は「いせ」艦内に割り当てられた二人部屋からなんとはなしに外をみていた。
 二人部屋は下士官待遇だそうだが、残念ながら俺ではなく、ルヴィが下士官相当ということらしい。
護衛艦いせは、艦橋が右によせられた全通甲板をもつ、ヘルコプター搭載型護衛艦「だった」船だ。
 連絡将校の人によると、ひゅうが型護衛艦の二番艦ということで、異星人が来襲する前に建造開始され、異星人との戦いの中、数年ほど建造が止まっていたという。
 その理由は、この戦争で陸や航空に比べて海上自衛隊はあまりいいところがなかったためだ。
 異星人の目標は常に「人間」だ。ゆえに通商破壊などはあまり熱心でなく、当然ながら核戦力を潜水艦で保持する必要もない。対潜能力はあっても潜水艦にあたる兵科は、異星人にはない。
 また空中母艦が多く、水上専門の戦力はそんなに多くもない。だから、対空対潜能力と空母護衛に特化して、直接打撃能力の弱い海上自衛隊が活躍する場所は残念ながらない。
 来襲当初に一番艦ひゅうがを含めた多くの艦艇を失って逼塞せざるを得なくなって、一部からは存在意義すらも疑問視された海上自衛隊は、対異星人国際共同連合軍に――特にシルヴァリア――に接近したらしい。
 最大の打撃戦力の運用を補佐する方向で生き残りを図ったと連絡将校は言った。今更、艦載機パイロットを養成するわけにも行かなかったとも言った。
 ヘリコプターを運用するはずのエレベーターはシルヴァリアをリフトさせるように強化されて、艦内の整備スペースは大幅に拡張された。全通甲板も耐荷重を強化されたが、耐熱仕様に変更するには予算が降りなかったという。
 当時、シルヴァリアなどの特殊装甲歩兵を専門に空輸できる、超大型空輸機の国際共同開発が進められていたから、「いせ」の優先順位は低かったためと言われる。
 しかし輸送機の開発は遅れに遅れて近年やっと先行量産型が数機配備されるていたらくであり、いせはその間に建造されてしまってシルヴァリア母艦として運用され始めた。
 そのシルヴァリア自体も空中機動性能が大幅に強化されてS/VTOL機能が装備されたため、海上自衛隊の中では耐熱甲板が装備できなかったことを失敗だとして、さらなる改装計画が進められていると言うことらしい。
 そして今度の作戦でいえば、シルヴァリアは巡航距離が短く、燃料は大食らいという人型兵器の欠点が露骨に現れた。
 動員できる空中給油機の数では、シルヴァリアを作戦空域までフェリーしていたのでは他の作戦参加機にまわす燃料が足りなくなってしまうのだ。
 それがための、シルヴァリアのみの先行海上移送ということで、何もかもが間に合わせのつぎはぎで万全とはほど遠くても、戦っていかなければならない現状をシルヴァリアといせが示していた。


「ねぇ、ゆうと」

-----------------------------------
 すいませんでした。 ご指摘感謝します。
657名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 19:32:32 ID:+HjI67oY
シルヴァリアの人とは違うけど…

SSを書く気力はあっても資料が無ぇ!軍事雑誌のバックナンバーなんぞこんな田舎の何処で手に入れろと!?
658名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 19:48:06 ID:3+M2PZst
資料がなければ妄想で書くんだ…

ってか下手に資料あると、エロに絡ませにくい気がする。
659名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 14:42:00 ID:i3/5PUcA
資料あるとあれも入れようこれも書かなきゃって
文章が肥大化するしね
660シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/14(月) 15:03:42 ID:114gyoC7
遅くなりましてすいません。改稿していたら規制にひっかかていました。
第三章 アイアンボトム作戦 後半、投下いたします。
661シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/14(月) 15:08:38 ID:114gyoC7
「まもなくランデブーポイント」
「スラスター出力、巡航へ」
 空の色が金色と青が混ざったものから遥かな青一色に染まり始めたとき、Gが唐突に消える。そこは高度一万メートルの世界。
「各スラスター、巡航出力」
「味方機はどこだ?」
「まだ、確認できず」
ルヴィの返答にかぶって、無線が入った。
「こちら、アメリカ空軍太平洋航空軍所属空中管制機ムーンシャイン。本作戦の指揮をとっている。ようこそシルヴァリア。君たちの到着でパーティの準備は整った」
「こちら、シルヴァリア、感度良好。ところでムーンシャイン、こちらからは味方機が見えない」
「位置データを送る。編隊を組み、進撃態勢をとれ。レーダー使用は許可しない」
「了解、ムーンシャイン」
 データに従って青一色の空をかきわけ、前に出る。米粒のような大きさの機体が見え始めた。
 上空には、腹一杯に爆弾を積んだB−52の爆撃機集団と機首に対ミサイルレーザーを積んだAL−1がいる。
 前方には米空軍のF−22、F−15C、F-16と航空自衛隊のF-22J、F-15Jが編隊を組み、後方でF−2がJDAMを抱えて飛んでいる。
 オーストラリア空軍のF−35やF-111、インド空軍のSU−30MKIもいる。
「主賓の到着だぜ」
「しょんべんちびるなよ」
「童貞は捨てたか?」
 無線から様々訛りの英語が飛び出す。
「こちらムーンシャイン。各機、それくらいにしておけ。まもなく敵の索敵範囲に入る。対空迎撃に注意。ABL部隊、レーザーの準備はいいか?」
「こちらエクスキャリバー1、電圧は良好だ、いつでもいける」
「エクスキャリバー2、こちらも電圧は安定」 
「了解だ。……各機に告ぐ。こちらに向かう不明飛行集団を認めた。IFF反応無し。敵迎撃部隊と思われる。
護衛戦闘機隊並びにシルヴァリア、当機からの管制で目標集団に調整飽和ミサイル攻撃を行う。
各機にデータリンクで割り振った目標を送るので目標データを入力し、命令と共にミサイルを発射せよ。中間誘導は当機が行う」
 無線に了解の声があふれる。
「データリンク来ました」
「よし、ミサイルポッドにデータを入力」
 ルヴィの声と共に、モニターに次々とターゲッティングボックスが現れ、重なるようにロックオンサークルが輝く。
「シルヴァリア、ロックオン完了」
「ムーンシャインより各機、発射せよ」 
「FOX3」
 トリガーをひくと、機体周囲が一瞬煙に包まれた。兵器としては欠陥だらけの特殊装甲歩兵だが、搭載できるミサイル数は多い。
 それを生かしての一斉発射である。
 帯のような噴煙を描いて、対装甲歩兵用ミサイルが揃って飛んでいった。
 動きは鈍いが装甲が厚い敵に、至近距離から対装甲子弾をばらまく、対地用ミサイルを転用したものだ。
 やがて前方で爆炎と閃光があがりはじめる。
662シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/14(月) 15:19:03 ID:114gyoC7
「警告、ミサイル接近」
「ブレイク」
 炎を突き破ってきらりと光るものが駆けのぼる、回避行動と共に俺はB−52の真下に駆けのぼった。
「主砲弾を散弾に、ミサイル迎撃モード」
「了解。脅威度の高いものから、照準開始」
 ロックオンサークルが輝くや否やトリガーをしぼる。前方で爆炎があがるのを待たず、次目標に移行。
「シルヴァリア、こちらエクスキャリバー。がんばってるのはわかるが、出過ぎだ。下がってくれ、レーザーを打つ」
「了解」
 機隊を滑らせて後退すると共にAL−1の機首から赤い照準レーザーが周辺空域を薙いだ。
「照準ロック、エクスキャリバー1、レーザー掃射」
 見えない何かが空中を踊り連続的にミサイルが爆発する。
「こいつは……」
 対ミサイルレーザーの威力に息をのむ俺に無線が入った。
「こちらムーンシャイン。各機に告ぐ。まもなく爆撃ポイントに到達。敵第二波上昇を開始。各機は爆撃機隊の援護に専念せよ。インターセプターを近づけさせるな」
「バトルアックス隊了解」
「セイバー隊了解」
「ハウンドドッグ隊、攻撃態勢にうつる」
「レッドファルコン隊了解」
 翼を振って戦闘機隊がばらけはじめる。  
「ルヴィ、 ミサイル残弾すべてたたき込んでポッド廃棄。ドッグファイトに持ち込んで足を止める」
「目標設定完了」
 重なり合ったロックオンサークルが一斉に点滅。トリガーを引くとミサイルがすべり下りていく。
「増設ミサイルポッド、パージ」
 連続した破裂音とともにポッドが機体から外れ、落下していった。
「行くぞ」
 羽を広げたシルヴァリアが、ミサイルを追って急降下する。
 ミサイルを避けて動きが止まった巨人の首を吹き飛ばした。
 ミサイルの直撃で吹き飛んだ巨人に体当たりをして噴煙の中から狙撃。
 僚機を追っていて後方からの襲撃に気づかない巨人を撃ち砕き、
「マニュピュレータプロテクター展開」
 ニアミスまがいでうかつにも間合いに飛び込んできた巨人を拳で引き裂く。
「肩部被弾! スラスター動作不能。推進軸修正。肩部関節機能は動作可能」
 衝撃とともに狙撃されたのを悟り、お返しの片手狙撃。
 輝くロックオンサークルのなかで、火球にかわる。
「爆撃機隊に向かう小集団がある。シルヴァリア、カバーを頼む」
「了解、ムーンシャイン。……ルヴィ!」
「フルブーストスタート」
 視界が暗さをまし、意識が飛びそうなGが訪れる。その中で、敵巨人の後ろ姿にロックオンサークルが光る。
 トリガーすら重く、渾身の力で引いた。
 腰を打ち砕かれた巨人が、二つにちぎれて回りながら落ちていく。
 機体を殴りつけるような衝撃が走る。ディスプレイモニターの表示が一瞬乱れた。
「背部装甲破損、主翼破損」
 反転逆落としで迫ってくる巨人をぎりぎりでかわし、なおも爆撃機隊に迫る巨人達を追った。
 一体が、僚機のミサイルを浴びて姿勢を崩す。穴だらけになってもその巨人は大砲を構え、僚機を狙った。
 その一瞬で巨人の腕を大砲ごと吹き飛ばす。こちらに向き直った巨人にもう一発。
 吸い込まれた砲弾が、巨人の首をはね飛ばし、巨人は壊れた人形のごとく、舞った。
663シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/14(月) 15:25:36 ID:114gyoC7
「あと、一機」
「警告、ミサイル接近」
「ルヴィ、回避機動はとらず、進路このまま」
 ロックオンサークルの中で巨人がB−52に迫る。
「主砲狙撃モード」
「狙撃モード移行。ミサイルさらに接近」
 回避機動を捨てて飛ぶシルヴァリアが、一瞬の安定した照準を与えてくれた。
 巨人の後ろ姿が滑り込むように、ロックオンサークルの真ん中に位置して、サークルが明滅した。
 トリガーを引いて巨人がばらばらになったのを見届けたとき、機体を猛烈な衝撃がおそった。
「敵ミサイル着弾。腰部並びに背下部、左大腿後部装甲全壊。脚部走行機能不能、飛行機能は最大速度30%低下。
 同箇所のスラスター全滅。推進軸修正開始」
 スピンに陥りかけ、苦労しながらルヴィが姿勢を立て直す。
「シルヴァリア、応答せよ! 大丈夫か!」
「ムーンシャイン、こちらシルヴァリア。機体中破。作戦続行は可能。乗員に負傷なし」
 無線にほっとした空気が流れた。
「シルヴァリア、気をつけるんだ。……爆撃機隊は損傷なし」
「こちら、サイゴンエクスプレス1。シルヴァリア、あんたが守ってくれたロートル爆撃機だ。感謝するぜ。もうすぐ、目標上空に到達する。
たっぷりくわえ込んだJDAM、RNEP、ディープスロートを、いまいましい異星人の上でたれてやるぜ。楽しみにしてな。そらぁ、爆弾倉開けろぉ!」
 それは旧式にして、しかし幾多の戦場を渡ってきたものの凶悪さを秘めた姿だった。
 コールドウォーの時代ですら放たれることはなかった核爆弾を、今は誰も、落とすことを止めることはない。
 腹が禍々しく開いた。
「ムーンシャインより各機、爆撃機隊、今、投下開始(Bomb away)」
「投下、投下、投下ぁ!」
 悲鳴のような風切り音とともに止めどなく爆弾が、落ちていく。遙か下で閃光と黒煙があがる。
 B−52の巨体は、どこに搭載されていたのかと思われるほどの数の爆弾を放出した。
 やがて、鮮烈な閃光とともに、キノコ雲があがる。
 核搭載型地中貫徹爆弾、RNEPが「プリシラ」の強固な装甲を貫いた証だった。
 周囲で歓声が上がる中、俺たちは黙示録のような風景をただ眺めるだけだった。
 隣を飛んでいるF−15Jからコールが入る。
「シルヴァリア、こちらレッドファルコン。……異星人を撃滅するために核が必要なのは理解している。だが自らの星を放射能で汚したことを、俺は喜ぶことができない」
「……ええ、レッドファルコン。だけど俺たちには他に方法がありませんでした」
「ああ、シルヴァリア。これは日本人の感傷なのかもしれない。……すまない、忘れてくれ。……ありがとう」
 作戦を成し遂げた安堵感は確かにあった。だが放射能をばらまくことでしか敵を食い止められない現実もまた重く心にのしかかる。
 思いにふける俺を、ムーンシャインの通信が現実に戻した。
「……エクスキャリバー隊! こちらムーンシャイン、対ミサイル防御。七時の方向、仰角七〇度」
664シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/14(月) 15:38:10 ID:114gyoC7
 翼を翻し、機首を上空に向けたAL−1が不可視レーザーを振り回す。
 その遙か上空に燃える火球があった。……それは大気圏突入を図る巨大な何か……異性人以外にこんな巨大なものを宇宙から降ろせるものはいないのだから敵である。
 突然大量に降り注いだミサイルは、そのかなりを二機のAL−1による守りの剣によって撃破された。
 それでも、来襲するミサイルは数が多すぎた。
「ムーンシャイン、こちらエクスキャリバー1、数が多すぎ……」
 エクスキャリバー1が胴体に直撃を受けて、瞬時に爆砕した。
 シルヴァリアも散弾モードで撃ち続けたが、幾多のミサイルがすり抜けていく。
「サイゴンエクスプレス、全速で待避しろ!」
 八発のTF33ターボファンのうなりをあげ、B−52は散開していく。だが、その動きは戦闘機はおろか、シルヴァリアと比しても遅く、機動制限も強い。
 爆弾をすべて投下して軽くなっているとは言っても、B−52は半世紀以上前に作られた爆撃機であり、制空権の完全奪取下で運用されるべき機体だった。
 ゆえに降り注いだミサイルは半世紀以上生き延びた死の翼を、小枝を折るよりも容易にへし折った。
 胴体を折られ、翼をもがれて、B−52が墜ちていく。
 呆然とする俺たちの遙か上で、降りてくる炎の固まりはベールをはぎ取り、姿を表した。
 ……それは、異星人の巨大母艦だった。
「各機、緊急待避!」
 降り注ぐミサイルをかわして迎撃し、巨大母艦に近づこうとする。だが、敵の位置はあまりにも高かった。
「ルヴィ! アフタバーナーっ」
「駄目、ゆうと。あそこには昇れない!」
「敵は高度三万メートルだ。攻撃は不能。全機、即座に待避せよ。繰り返す。……」
 何も出来ない無力感に心をかき乱されながら、俺はミサイルの迎撃を続ける。
「あいつは、どうやってあんなところに!」
「ゆうと、あれは宇宙から来たの。シルヴァリアでは届かない」
 愕然として振り向く俺にルヴィがデータをよこした。
 そこに映っていたのは地球と月。ラグランジュポイント2から地球にと伸びる線が示された。コードネームをロミーナと名付けられていた。
「リサージュ軌道を用いてとどまっていたんだけど、マティルダやプリシラと連携をとって、動いている」
「これって?」
「今ムーンシャインを経由して、入間より届いた。……きっと、私たちは、異星人の罠にかかった」
「くっ、くそぉぉぉぉぉぉ」
「ゆうと、待避するよ」
 シャワーのごとく降り注ぐミサイルを打ち落としながら、俺は悔しさで唇を噛みしめた。
けれども必死に回避をしつつも打ち落とされていく味方が増え、漏れてくる断末魔の無線が俺に腹を決めさせた。
「ムーンシャイン。こちら、シルヴァリア。レーザー融合弾使用許可を乞う」
「ゆうと、何を?」
「こちら、ムーンシャイン。どうするつもりだ?」
「衝撃波とEMPパルスで敵ミサイルを吹き飛ばします。あわよくば降りてきた母艦にもダメージを」
「許可できない。貴機の退避距離が充分にとれない!」
「そんなことはどうでもいい! マティルダもまだ居る状況でこれ以上の損失が許されるってのか? ええ、ムーンシャイン!」
 俺の怒声の後に長いようで短い沈黙が過ぎた。やがて力を失った声が響く
「……退避距離はできるだけとれ。使用を……許可する」
665シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/14(月) 15:43:09 ID:114gyoC7
「いくぞ、ルヴィ。発射最適位置、計算を開始」
 顔を引き締めたまま、無言でルヴィがうなずく。
「各機につぐ。こちらはシルヴァリア。今より小型水爆を発射する。各機は、影響範囲内から至急退避してくれ。データはムーンシャインが送ってくれる」
「こちら、ムーンシャイン。各機の撤退を許可する、最大速力で撤退せよ。……シルヴァリア、我々も影響を受けるから退避しなければならない。誘導が出来なくなる。すまない」
「ムーンシャイン、また、会おう」
 その言葉とともにシルヴァリアは、弾かれたように空を昇り出す。その後を幾多のミサイルが追いかけ始めた
 散弾を撃ち続ける砲身から、陽炎が立ち始める。
「主砲砲身、温度上昇。キャパシタ電圧低下」
「融合弾をうてればそれでいい」
 異様な振動がシルヴァリアを襲った。
「敵ミサイル着弾。右脚部完全破壊。……損傷脚パージ。推進軸修正」
「まだだっ! 昇れるだけ昇るっ」
 さらなる衝撃が機体を揺らす。
「左腕、直撃。消滅しました」
 飛行機ですらない人型兵器の速度は知れたものだった。
 かわしてかわしても襲いかかるミサイルによってみるみるうちにつきっぱなしの警告灯が増えていき、高空の酸素濃度低下でパワーユニットが不気味な息継ぎを始める。
 敵の大型空中母艦は、いっこうに近づいた感じを見せなかった。
「……ちくしょう、ほんとに遠いぜ」
「まもなく射撃ポイントに到達」
「レーザー融合弾装填」
 レーダーでは、未だに多数のミサイルが俺達を追っていた。
「もう少し、……もうちょっと、あと少し……」
 電子音が響き、空中母艦を囲んでロックオンサークルが輝く。
 トリガーとともにむしろ静かにレーザー融合弾は打ち出された。
「緊急退避っ」
 ルヴィの声と共に背中を蹴り飛ばされるようなGがかかる。
 レッドアウト真っ赤に染まっていく視界の中で迫ってくる閃光がシルヴァリアの主砲を飲み込んでねじ曲げる。
 残骸となった主砲を破棄してさらに全速待避を続けるシルバリアを、やがて……閃光が飲み込み、視界の何もかも白く染まった。
666シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/14(月) 15:47:39 ID:114gyoC7
「こちらクラーク基地。緊急車両の配備は済んでいる。あとはどちらが先に降りるかだけだ」
 警告灯だらけで真っ赤なコンソールを見て俺はため息をついた。自己チェックで確認した外観はもっとひどい。
 前面部はあちこちが融けるわ、焦げるわ、ゆがむわで、白銀の天使ではなく、飛んでいるのが不思議な薄汚れたスクラップと化している。
 とはいえ、融合弾を炸裂させてこれだけで済んでいるのは、さすがというべきだった。
「レッドファルコン、言っておきますけど今の状態ではこちらが先に降りたら、まず間違いなく滑走路は使えなくなります。レッドファルコンから先に降りてください」
 だが相手は俺の言葉を全く無視した。階級も技術も上なので仕方がないが、彼をいさめる部下がいないので、なおさらだった。
彼をサポートしていた二番機もソードダンサーもナイトガンナーも、今はいない。
 レッドファルコンだけが、彼だけがその恐るべき技術で生き残っていたのだ。
 俺たちは核融合爆発から投げ出された先で、撤退する彼と出会った。……というかレッドファルコンが俺たちを見つけて基地に連れ帰ってくれたほうが正しい。
「シルヴァリア、俺に従え。先に貴様が降りるんだ」
「だけど、レッドファルコン! 貴方もエンジン一基と片翼がやられています!」
「黙れ。くちばしの黄色いひよこが俺に命令するのか? 十年早いぞ」  
 再度、俺はため息をついた。レッドファルコンのF−15Jは、俺達の後ろを飛んでいた。
 カメラに映っているその姿は、左主翼の真ん中から先は無く、右エンジンも煙が出て、よろよろと這うようにだったが。
 そのF−15Jの遙か上には、あの巨大空中母艦が、遥か遠くの点になって浮かんでいる。
 撃滅できなかったのだ。衝撃波と電磁パルスでミサイルを墜としてあれの動きを止めるのだけが精一杯だった。
「しかし!」
「この機の機関砲はまだ残っているぞ。基地にたたき落としてやっても良いが?」
「ゆうと、あの人、全然聞く気無いよ。……それに本気で射線をいれてきているみたい」
 あきれた顔でルヴィが俺を見る。俺は首を振ってお手上げというジェスチャーをした。
「しかたないな……。ルヴィ、残燃料全て投棄」
「了解、投棄開始」
 わずかばかりの燃料が機外にばらまかれて七色の霧のように広がる。
「そうだ。それでいい、シルヴァリア」
「負けましたよ、レッドファルコン。どうせ、俺はひよっこです」
「着陸態勢に入ります」
 ルヴィがゆっくりと機体の高度を落として滑走路に巧みに残った左脚部を接地させる。けれど脚部は盛大な異音と共に膝のところから折れた。
「うわぁぁぁ」
 倒れ込んだ機体を建て直そうと右腕を突き出して、アスファルトにたたきつけると、これも肩から外れる。
 だるまになったシルヴァリアは、滑走路を外れてぶざまに転がり、タキシングウェイの途中でようやく止まった。
「……吐きそうだ」
 いやな汁が出そうなほどシェイクされた後、機能停止して闇に閉ざされたコックピットで、俺はぼやいた。
「ルヴィ?」
「……うん。だいじょーぶ」
 ふと以前の記憶が蘇り不安に駆られる。だが今回は俺の声に応えて隣席で動く物音がした。同時に装甲板を叩く水音のようなものが響き始める。
「まってて、ゆうと。今、ハッチを開けるから」
 声とともに何かを割る音がした。途端に火花が走り、小さな爆発音とともに後ろのハッチが吹き飛ぶ。
 垂れ落ちる白い消化剤を払いのけて、ルヴィに助けられながらなんとか機外に転がり出た。
「パイロットは自力脱出、繰り返すパイロットは自力脱出」
「除染放水を開始! パイロットもだ!」
 その言葉で俺もルヴィも水をしこたまぶっかけられる。放射性物質除染のためだ。
 宇宙服のような防護服を着た化学防護隊に、体が冷え切るほど水を浴びせられた後、俺は通信指揮車から降りてきた通信兵からインカムを渡された。
667シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/14(月) 15:50:04 ID:114gyoC7
「大丈夫か?」
「レッドファルコンですか? だからいわんこっちゃないですよ! こうなるって言ったのに!」
 その声はレッドファルコンだった。空を見上げるとよたよたと旋回飛行をしている。
 滑走路では濃緑色に塗られたブルドーザーが入って残骸を両脇に押しのけていて、同色のバキュームスイーパーが慌ただしく清掃を行っている。
「貴様らが無事ならそれでいい」
「滑走路はもうすぐいけます。派手にぶっ壊れてくれたせいで、気兼ねなく掃除ができるそうで。……レッドファルコン、腕を見せてくださいよ。ランディング、どじったら笑いものにしてやりますから」
「その元気さなら大丈夫だな。心配するな。イーグルは羽がもげても生還できる、世界最高の戦闘機だ。貴様のボロ人形とはわけが違う」
「言っててください……滑走路空いたようです」
 ブルドーザーとバキュームスイーパーがエンジンのうなりも高らかに、滑走路から去っていく。
 飛び去ったF−15Jが彼方で旋回し、着陸態勢に入った。片翼片肺なのに、ぴたりと乱れないその姿勢は、完成したパイロットの証だった。
「いい感じです、レッドファルコン。そのまま……!?」
 そのはずだったのに、滑走路の端にさしかかったとき、煙を上げていたエンジンが突然爆発した。
「レッドファルコン!」
 悲鳴のようなルヴィの叫びに答えることなく、悪夢のようにぐらりと機は傾いて、滑走路から外れる。
「ベイルアウト!」
 叫びもむなしく、機が下を向き草むらに落ちていき、炎があがる。
「墜落したぞ!」
「救出作業急げ」
 駆け出す作業車と人の中で、俺は足に力が入らなくなり、そのまま座り込んだ。
 目の前で起きたことが、まったく信じられなかったのだ。
「うそ……だろう?」
 ルヴィですら口元に手をあてたまま立ちすくんでいた。
「なんでだよ……どうしてなんだよ。……あと少しだったじゃないか……」
 現実感を無くしたその光景がこの作戦の最後の光景だった。
668シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/14(月) 15:53:51 ID:114gyoC7
 アイアンボトム作戦は、部分的成功に終わったと発表されたが、誰もが敗北に近いものであることを理解していた。
 高級士官達がむっつりと押し黙り、兵と士官達の間には重い空気が漂う。
 翌朝、メディカルチェックやデブリーフィングを終えた俺とルヴィは格納庫の脇に集められたF-15Jの残骸の前に立っていた。
 レッドファルコンの愛機に無言でビールを注ぎかけ、そのコックピットをのぞき込む。
 はたして、それはあった。コンソールに張り付けられた幼い女児と、きれいな母親らしい女性がうつっている写真。
 火膨れができて若干の変色があるけれども、その写真を大切にしていたことはすぐにわかる。
「……生き残ったものが出来ることは、思いを受け継ぐことだけだ」
 突然背後から声がかかる。だが振り向かなくても誰なのかはわかった。
「先生……。思いを受け継ぐって……どうすればいいんですか? 無理ですよ。俺にはレッドファルコンの替わりは務められない!」
 震えたくなるような無力感と喪失感で、俺は叫ぶ。何もかも彼が上であったのに、生き残ったのは俺で、彼は死んだ。
 そんな俺の肩にそっと手が置かれる。
「その写真の人たちを守るのが、パイロットの望みなのだろう? ……その思いを受け継いで、戦うしかない。
……次の作戦がそろそろ発動する。体調を整えておくんだ」
「はっ、次の作戦って? シルヴァリアはもうだめです。見たでしょう? あのこわれっぷり!」
 凶暴な笑いの発作に俺は振り返って、鏡先生を睨む。だが鏡先生は微笑んだ。
「シルヴァリアの二号機は既に組みあがっている。種子島で最終チェック中だ」
「種子島? まさか、あれをするんですか?」
 ルヴィが驚いたような声をだした。
「仕方があるまい。下からが駄目なら上からということだ」
 その言葉にルヴィは今度こそ絶句したように目を見開き立ちつくした。
「ルヴィ?」
「特殊装甲歩兵高速輸送計画ポセイドン」
「今回のはプロジェクトコード、ポセイドン3と聞いている。弾道飛行ロケットに搭載して、極めて短時間で特殊装甲歩兵を送り届ける」
 その言葉の意味がわからなくて、俺はしばし呆けた。
「弾道飛行ロケット?」
「高度10万メートルに駆けのぼり、天空からあのいまいましい母艦を叩く。日本の切り札だ。
……そしてあのいまいましい母艦の対する唯一の復讐の機会でもある」
 ルヴィと顔を見合わせる俺が抱きしめられ、頬に鏡先生の唇が寄せられる。
「続きがこんなのですまないが、……きみが無事で良かった。だが、これからの訓練はきつい。涙も吐物も出なくなるほどだ」
 俺を抱きしめる腕に力がこもる。
「すまない。……君を巻き込んだ私を許してくれとはいわない。……だけど君を愛している。どうか死なないでくれ」
 ルヴィの目が再び驚きに見開かれる。
 それは一日が暑くなるような予感に満ちたフィリピンの朝のことだった。

                  第三章終わり
669シルヴァリア 〜屠殺戦争2020:2008/07/14(月) 15:55:53 ID:114gyoC7
投下終了です。 資料はwikiとgoogle map と軍事板FAQです。
670名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 17:11:55 ID:rl/0sLV7
投下乙ッス
>その言葉で俺もルヴィも水をしこたまぶっかけられる。放射性物質除染のためだ。
この辺の描写がいいなぁ。核をしこたま使った結果が明示されてて
671名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 23:02:26 ID:OmQo5OhV
GJ!!

>飛行機ですらない人型兵器の速度は知れたものだった。 
この辺の表現が個人的に魅かれる。
こういうのって、ついついスーパーロボットを描きたくなるんだけど、作者さんがあくまで人型兵器に
拘っているのが随所で分かるのがツボだ。おかげで航空機も航空機として映えているし。

続き楽しみにしてます。
672名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 22:22:56 ID:mk+6Lc51
メインタンクブロー、浮上!
673名無しさん@ピンキー
じゃかじゃんじゃかじゃん(U−96のテーマ)