【涼宮ハルヒ】谷川流 the 28章【学校を出よう!】

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838名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 15:39:50 ID:kyBR//R7
GJ!そしてついでに樋口さんとマイクの絡みも一緒に妄想してしまった自分は人としてorz
839名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 17:02:44 ID:oaaz7C5s
>232です。
>233に背中を押される形で頭の中で転がしてたら、それっぽい話が出来ますた。
(ただし、よく考えたら春休み中の話だから、舞台が部室ってのはボツ)
全7レスほどの予定。
840Re:古泉一樹の芝居:2006/09/08(金) 17:03:50 ID:oaaz7C5s
翌朝、例によって俺を叩き起こしたのは、妹のフライングボディプレスであった。
「キョンくーん、玄関に何か荷物が来てるー」
何かって何だ、宅急便か。俺は昨夜あまり眠れてないんだ、寝かせろ。
「んーん、いきなり置いてあったのー」
何だそりゃ。
しかたがないから起き出してみると、たしかに玄関前にカレー缶の山脈が。
クイズ番組に応募して「カレー一年分」でも当てたか?ってなくらいの量だ。
インド人もビックリだぞ、ドアを開けるのも一苦労じゃないか。

しばし呆然と缶の山を眺めていた俺だが、どうもラベルに見覚えがある…
そうだ、これはいつぞや長門ん家で食った、あの…
と、その山脈の頂上に、分厚いハードカバー本が乗っているのに気がついた。
手紙がはさんである。プリンタで打ち出したかのような明朝体が、わずかに三文字。

「食べて」

あー。はい、了解しました。了解しちゃいました。
カレー・本・簡潔すぎる手紙の三題噺から出てくる答は、一個しかない。長門だ。
詫びの品(の、つもりだろう)を黙って置いていくとは、お前はごんぎつねか。
ひょっとしたら笠地蔵の方かも知れないが、そんなことはどうでもいい。
当面の課題としてこれをどかさないと、我が家の外観が奇天烈きわまるのである。

なぁ長門よ、きっとこれは宇宙的パワーで送りつけてきたんだろうが、出来れば
もうちっと家の奥まで持ってきといてほしかったぜ、キッチンとかな。
それにしても、カレーと本か。もう少し地球的な詫び方も勉強してくれよ。食うけどさ。
841Re:古泉一樹の芝居:2006/09/08(金) 17:04:43 ID:oaaz7C5s
何とかカレー缶を家の中へ運び終えて一息ついているところへ、呼び鈴が鳴った。
お客か。滑り込みセーフだったな、カレー屋敷は見られずにすんだか。
「あれー、みくるちゃんだー。キョンくん、みくるちゃん来たー」

「お、おはようございます…突然来ちゃってごめんなさい…」
わが妹を腰にまとわりつかせつつ登場したのは、マイハニーエンジェルじゃないか。
いつもの俺ならここでニコニコなんだが、なにせ昨夜の今朝だ。どうにも顔が渋くなる。
「えと、えと、クッキー焼いてみたんで、その、キョンくんにもどうかなぁって思って、あの」
朝比奈さんも笑顔が硬いし、目が泳ぎまくっている。
「お、お茶も淹れてきたんですよ?」
妙にでかいバスケットだと思ったら、魔法瓶とティーセット一式持参ですか。

いつもはわずらわしい妹だが、今日は間に陣取って動く気がないのがありがたい。
三人(と一匹)のぎこちないお茶会は小一時間続き、昼飯の長門カレーに誘ってみたが
それは固辞して、朝比奈さんはペコペコお辞儀しながら帰っていった。
セロ弾きのゴーシュの「ねずみのおっ母さん」みたいだな、とちょっと思った。
すいません朝比奈さん、あなたに怒り続けるのは本意じゃないんですが、
ちょっと冷却期間を下さい。新学期には、また美味しいお茶を淹れて下さいね。
842Re:古泉一樹の芝居:2006/09/08(金) 17:05:40 ID:oaaz7C5s
どうにも気が晴れないな、こういうときはどうしたらいい?
谷口でも誘って遊びに行こうかとも思ったが、あいつのことだ、春休みともなればまた
埒もないナンパに勤しんで、撃墜マーク(ただし、される方の)を絶賛更新中に違いない。
しばらく携帯をひねくり回していたが、やがて意を決した俺は、とある番号へ電話をかけた。


「…何よキョン、そっちからかけてくるなんて珍しいわね」
おぅハルヒ、お前、今日は午後ヒマだよな。
「いきなり何よ、まぁ空いてるけど」
じゃ、いつもの場所に二時な。
「は?あんた何言って」
デートしてやるっちゅーとるんだ。
「ちょっと!えーと、ああああと一時間もないじゃない、女の子の身支度って大変なのよ!
そ、そっちこそ呼びつけといて遅刻したら、獄門ハリツケだからねっ!じゃ後でねっ!」
あたふたと電話は切れて、俺も溜息が一つ。これは正しい選択だったのかね。


その日の午後は、もう無茶苦茶だった。
遊園地で、絶叫マシン系ばかりハシゴした。強烈なGに翻弄されるのは快感だった。
ゲーセンでは、体感型のレーシングゲームで派手にクラッシュして大笑いした。
ハルヒの手をひっつかんで引き回すのは、今日は完全に俺の役回りだった。
はじめはハルヒも戸惑っていたようだが、なぁに、もともとハルヒ好みの遊び方だ。
ハルヒもよく笑ってくれたし、すごく楽しんでくれていた。と、思う。
ずっと手をつないでいたような気がする。ずっと笑っていたような気がする。
843Re:古泉一樹の芝居:2006/09/08(金) 17:06:31 ID:oaaz7C5s
終着駅は、いつもの公園だ。これはもはや、帰巣本能かも知らんね。俺は鮭か。
「で?そろそろ話を聞かせてくれてもいいんじゃない?」
ベンチの隣に並んで腰を下ろしながら、ハルヒは尋ねてきた。
「何のことだかね」
缶の紅茶(何と驚いたことに、ハルヒのおごりだ)をすすりながら、俺はそっぽを向く。
こういうとき、タバコが吸えればカッコがつくんだろうがな。
「今日のあんたが普通じゃないことくらい、あたしにだって分かるわよ…
ま、たまには引っぱり回される側になるのも楽しかったけどさ。
あたしのキョ、おほん、あたしの知ってるキョンは、そんなにささくれてないわよ?」
「別に何にもねぇよ。こんな日だってあるさ」
悪いなハルヒ。お前にだけは、本当の理由を聞かせるわけにいかないんだよ。

「しょうがないわね…団員のメンタルケアも、団長の仕事のうちか。
今日だけだからね?」
そう言うとハルヒは俺の頭蓋骨をガッシとつかんで、すごい腕力で引き寄せ、


  イイ ニオイガ シマス
  トテモ フカフカ デス
  ココハ ドコノ オハナバタケ デスカ
  ウソノヨウニ ココロガ マルクナッテ ユキマス


…しばし忘我境をさまよっていたらしい。
気付くと俺は、ハルヒの胸に頬を押し当てられる形で、ヘッドロックを極められていた。
耳元で大きく聞こえるのは、はたしてハルヒの心臓の音か、それとも俺のか。
ばばばば莫迦っ、何をする恥ずかしいじゃないか。
「こら、頭をグリグリするなエロキョン!くすぐったいでしょーがっ!」
そうは言うがなハルヒ、これはその、実に照れ臭い。
こら、イイコイイコなんかしてくれなくていから!

「男の人がね、頭ん中グルグルして訳わかんなくなっちゃってるときは、とりあえず
こうしててあげるといいんだって、ばっちゃが言ってたのよ」
そりゃ、いいばっちゃだな。よろしく言っといてくれ。
俺も、何だかすっかり無抵抗になっちまった。
情けない、同級生の女の子に抱っこされて、なに癒されちゃってるんですか俺は。
とはいえ、ハルヒ解放軍は強力無比だ。昨夜から固くこわばっていた神経にドカドカ
乗り込んできて、次々と武装解除してゆくのがよく分かる。
頭の芯が重くしびれてきて、そういえば、今朝はろくろく寝れてなかったんだっけな…




844Re:古泉一樹の芝居:2006/09/08(金) 17:07:37 ID:oaaz7C5s
ぽつり、と雨滴が頬を打ったような気がして目が覚めた。えっ、俺、寝てた?
「あわ、わ、キョン、起きたっ!?」
目を上げると、ハルヒが俯瞰の構図で何やらあわてている様子。
何んてこった、俺は公園のベンチで、ハルヒの膝枕で寝コケてしまっていたのだ。
空がすっかり赤く染まっているじゃないか。何時なんだよ今。

あれっ、雨は?さっき、頬っぺたに何かポチって。
「な、何のことかしら。雨なんか降ってないけどっ」
ハルヒは、目をそらして口元を押さえた。顔が赤い気もするのは、夕陽のせいだよな。
「…いつまで人の膝に安住してんのっ!さっさと起きるっ!」
はいはい、すまんかったすまんかった。イヤちょっとホントに気持ちよくて。蹴るなよ!
「うん、いつものキョンの目つきに戻ったみたいね。
じゃあ、ここでサイコセラピストの出番はお終いかな。じゃ、あたしは帰るっ!」
ハルヒは、何ともう立ち上がっている。マイペースなやつだ。いや、いつも通りか?
「へらず口も、元通りねぇ?」
ほっとけ。今日は、つきあわせて悪かったな。
「この貸しは、高くつくわよ?おぼえてらっしゃい。
だいたいねぇ、この新しい帽子にちっとも気付いてくれないってのは、どうなのよ?
いつもだったら、銃殺刑ものだわ!」
えーと、うん、可愛いピンクだなハルヒ。あー、すまんかった。
「遅い!まぁ、今日は一周年記念の前倒しで、特赦にしてあげる。じゃね!」
じゃあな。
妙にウキウキとした足取りで遠ざかってゆくハルヒの背中を眺めながら、俺は手元を
探ってみた。あれ、飲みかけの俺の紅茶は?ハルヒめ、捨てちまったか?


昨日から続いた長い長い一日が、やっと終わろうとしているようだ。
さて、俺も帰るか。何だかすっかり頭が軽くなった。
ハルヒパワーも捨てたもんじゃないな、もっと平和利用の方法はないもんかね。

845Re:古泉一樹の芝居:2006/09/08(金) 17:08:40 ID:oaaz7C5s
そこへ、ふいに姿を現したのはSOS団のスマイル担当だ。
「こんにちわ、いえ、そろそろ"こんばんは"かな。機嫌のいいところへ、すいません」
お前のことだから、偶然通りかかったとか言っても信じてやらん。ずっと尾行してたな?
「そんな人聞きの悪い。涼宮さんに護衛がつくのは、デフォルトなんですよ。
ぜひあなたにお話ししたいことが出来たもので、護衛を交替してもらいました」
まぁ聞こうか、何やらスマイルがいつもより曇ってるのは、芝居じゃなさそうだしな。

 * * * * * 

いやぁ、天罰てきめんとは、このことです。
涼宮さんに、みっちり焼きを入れられましたよ…いえ、本人に直接ではないんですが。

実は、ついさっき、ここに閉鎖空間が発生していたんです。はい、この公園にです。
まぁ、通常空間とは切り離されていますからね。ここではない「ここ」ですが。
いえ、今日の午後の涼宮さんは、上機嫌そのものでしたよ?他でもないあなたに
誘われたんですしね。閉鎖空間の発生は、あなたが寝ちゃってからです。
涼宮さんは、あなたの変調に心を痛めておいででした…そうなんです、今回に限って
閉鎖空間は「あなたのため」に作られたんですよ。これは凄い出来事です。

驚きましたよ、空が突然あの色になったと思ったら、目の前のあなた達が
消えたんですからね。もちろん実際に消えたのは、むしろ僕の方なんですけど。
閉鎖空間に入るのは馴れてますが、閉鎖空間の方から迎えに来たのは初めてです。

僕の頭上にいきなり出現した神人は、そのまま足を踏み下ろしてくるじゃありませんか。
かろうじて回避しましたけど、さらに二歩三歩と僕めがけてドスドス踏みつけてきました。
こんな、壊し甲斐のなさそうな開けた場所に現れてどうするのかと思ったら、
この神人のターゲットは、何と僕だったんです。これは恐怖でしたよ?
これまで神人というのは闇雲に周囲を壊すばかりで、何かしらの意思を示すというのは
皆無でした。その神人が、明らかに僕を追い回しているんです。
もし神人に目があったら、僕をじっと見据えていたことでしょう。それは怖すぎます。

赤い玉ですか、ええ、なりましたよ?
蚊をつぶすみたいに、両手でパチンとやられました。逃げましたけどね。
反撃にうつる機会が全然なくて、仲間が来て倒してくれるまで逃げ回る一方でしたよ。
そうそう、あの赤い玉になると、実は、僕たちどうしでも誰が誰だか見た目で
区別はつかなくなるんです。なのに、あの神人は僕だけを追い続けました…
いや、本当に肝を冷やしました。僕の髪、白くなってませんか?本当に?

涼宮さんの表層意識はいざ知らず、あの神人は、あなたの心痛の下手人が
僕だと分かっていたんだと思いますよ。
いや、今回ばかりは、骨の髄まで思い知りました。あなたは、涼宮さんの神殿から
棟続きの聖域だったんです。そこをけがした僕に、神罰がくだったんです。
え、神様扱いですか?ええ、僕はまだそう思っています。本気ですよ。

今回のことは、本当に反省しています。
もう二度とあんなことはたくらみませんから、どうかお許し下さい。

 * * * * *
846Re:古泉一樹の芝居:2006/09/08(金) 17:09:35 ID:oaaz7C5s

ふうん、忌憚のない感想を言ってやろうか。いい気味だ。
「今日ばかりは、返す言葉もありませんよ。
このままでは僕の気が済みませんから、どうぞ何なりとお申しつけ下さい」
そうか、…じゃあ古泉、お前、次の団活で俺の次に集合場所に来い。
物陰に隠れてて、俺が来るのを見計らって出てくるなんざ得意技だろ?
「そんなのでいいんですか?」
俺も、万年ビリには飽きた。いや、実際はハルヒを出し抜いて先に来たことも
一度あったんだけどな、うやむやに俺のおごりにさせられちまってな。いいか?
「ええ、もちろんですとも」

そう言って笑った古泉の顔は、おそらく「屈託」という言葉からいちばん遠かった。
お前、そういう笑い方も出来るんなら、ずっとそうしてろよ。


「そうそう、またチェスの定石の本を買い込みましてね…」
「ははは、性懲りもなく…」
SOS団の初年度は、こうして暮れていったのだった。


(了)



【おまけ】
「それにしてもあなた方、本当に白雪姫ごっこがお好きなんですねぇ」
「そりゃ、いったい何のこった?」
「いえ、お気づきでないならいいんです。聞き流して下さい、ははは…」


847名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 17:18:00 ID:BI8HmhHP
>>839
キョンに優しい態度を取ると、団の面子思った以上にみんなキャラ丸くなってしまうんだなwww
小泉は語り口が少し変に感じたけど……良かったよ! GJ!
848名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 17:22:27 ID:BI8HmhHP
ぬかった……古泉だ…。
849名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 17:41:48 ID:vBkjQHui
>>846
天の道を行き総てを司るハルヒの性格はやっぱりばっちゃのせいかw

ハルヒとキョンが原作なら有り得ない行動を取ってるが、こういう状況ならありそうだと思った。
すごくよかった。面白かったよ。
850名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 17:50:40 ID:mxXjF4Kw
>>839
前に投下されたのが前半、今回のを後半という事にしてうまい具合に仕上げてるな。
GJ。
851名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 19:30:36 ID:76E4X5+w
>>839
なんか古泉のことが好きになってきたよ
852名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 19:49:10 ID:VympheE4
>>839
前回古泉に感じた憤りを上手く消化できたと思う。いい気味だ。…うん。愛嬌があってよろしい。
古泉はそもそもあんな芝居は打たないだろうとか、長門の謝罪の仕方がイマイチとか、
ハルヒがなんか素直、特に帽子の下りは意地でも自分から言い出さないだろうとか、
微妙にキャラの根幹の部分を掴めて無いかな、と思う所はあるけれど、話自体は綺麗に纏まったと思うよ。また頑張って。
853名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 20:10:18 ID:qnvLnQBt
>>839
非常にGJで、特に古泉の扱いが面白かった。
でも貴方は最初に「古泉一樹の芝居」を書いた>>218氏とは別人だよね?
>>218氏とは別人です」とか「これは>>218を素にした三次創作です」とか明記した方が礼儀に則ってると思いますよ。
854816:2006/09/08(金) 21:04:25 ID:Qh0WxGfj
>>834
挿し絵でしか確認してないからその辺適当なんだけど、
自分タレ目好きだから大丈夫。
855名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 21:25:52 ID:LaM96hFa
鶴屋さ〜ん!

よ  み  て  〜  〜  !
856名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 21:26:58 ID:/j8pQHKf
>>816から数えて気付いたんだが、連投規制は10レス目からみたいだね
投下予告を含めると9レスだから、長編の時は8レス前後を目安に区切ると良いのかも
そうでなくともキリの良い所で時間を置いたりとか、まぁその辺は各々の判断で

行数制限:60行
容量制限:4096Bytes
連投制限:10レス

これテンプレに入れる必要あると思う?割と頻繁に出る質問ではあると思うが
857名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 21:45:38 ID:NvxnY3ig
>>856
……テンプレに入れるのが望ましい。
858名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 21:46:53 ID:Qh0WxGfj
>>856
入れた方がいいというか入れてほしい。
規制がどんなもんか知らなかったからすごく焦ったし。
859名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 22:00:21 ID:OiatVzSv
Qここの規制はどうなの?
A行数制限:60行 容量制限:4096Bytes 連投制限:10レスってキョン君が言ってたー

こうですか? 分かりません><
860名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 22:16:24 ID:NZ5hc1A7
>>849
おばあちゃんが言っていた。
どんな時でも自分の思うことをやり通せって。
わかる?キョン。

…こういうことなのか?
861名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 22:51:54 ID:A2B+23zu
テンプレの話を見て気づいた、もう次スレの時期だってことに
862名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 22:52:00 ID:/j8pQHKf
連投制限は10レスと言うべきか9レスと言うべきか…
「10レス目に」連投規制がかかるのであって、書けるのは「9レス目まで」な訳で
正直誤解というか勘違いしそうな書き方だし、9の方が良い希ガス
863名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 22:56:21 ID:buapmQqn
とりあえずもろもろの意見を参考に次スレ準備開始してもいい?
864名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 23:02:59 ID:jDuQgFv3
>>863
よろしくお願いします。
865名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 23:07:41 ID:buapmQqn
ホスト規制でだめだた
>>2は用意してるので誰か立ておね
866名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 23:08:33 ID:qNAlL4i3
なんかさ、ここのスレだけ他と違って異質だよね。
なんつーか読み手が偉そうだよね。
ssの内容をGJしても批評つきでさ、書いてくれたんだからいいじゃん。
気に入らなきゃスルーでしょ。
そんなにハルヒに感情入ってんなら自分で自分の満足いくように書くなり妄想するなりすればいいのに。
それが出来ないから俺らが勝手に(ここ大事)ここきて職人の作品見て萌えてるんだから無茶言うのよくないよ。
批評は書き手の為にもなる〜っていう人もいるけどさ、それって批評する自分を正当化してるだけだと思うんだよね。
だってさ、こんな妄想2次元に萌えてるんだよ?んなマジメに「21禁のハルヒスレに投下しつづけて上手くなるぞ」なんて人いないでしょう。
批評自体はあんまいらないんじゃないかな、下手でも上手くなる人は書いてるだけで自分で勝手に上手くなるし。
いつまでたっても下手でイライラするんなら無視すればいいしさ、それにエロいとこだけ見て後は脳内変換すれば地の文なんて気にならいでしょ。
批評が多いのは今は職人が多くて「批評して少し職人が減ってもクオリティの高い職人だけ残るし別に・・」なんて思ってるんじゃないかと勝手に思う。
まぁ、こんなことかくと荒れるんだけどさ、どうしてもここ最近の読み手の職人に対する横柄な態度が納得いかないので書いてしまった。
他のスレじゃ批評もあるけどここまでじゃない。
古参の職人には素直にGJ言うくせに新参者の職人には必ずといっていいほど批判がつくのはこのスレだけだぞ。


マンセーしろ、といってるわけじゃないけどね。
本当にGJと思ったのだけGJしてそうじゃないと思ったらスルーすればいいと思う。



867名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 23:26:29 ID:dqQy/0Bf
華麗にスルー!
868名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 23:26:59 ID:Qh0WxGfj
昨日も似たような議論あったからやめようね。
別に偉そうとも思わないよ。
869名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 23:29:20 ID:Cvf5wwRI
縦読み探してた俺ガイル
まず書き手がすくないのはここがBBSPINKだからでうわなにをすr亜qすぇdrftgyふじこlp@:「」
870名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 23:31:28 ID:SmNrZ7+3
>>869
改行すらしてないのに縦読み探すなっww
871名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 23:33:57 ID:/j8pQHKf
次スレの季節になると必ず荒れそうな議論を出そうとする奴が居るから困る
気持ちは分からんでもないがそれこそスルーの対象になりかねない
872ちょっと小ネタ:2006/09/08(金) 23:36:42 ID:W0t+YWbY

「はぁ……」
俺は、長門有希のマンションの部屋で、長門と向かい合って座りながら、垂直に立てたら月まで届いてしまうんじゃないか、と思えるぐらいに、深い深い溜息をついた。
「「飲んで」」
長門が、湯飲みを二つ差し出した。
頼む、同時に喋らないでくれ。頭が混乱する。
「そう」「では」「交互に」「話すことにする」
どう?といった具合に、やはり同時に長門は首を傾げる。
「……長門、『バキ』って漫画知ってるか?」
長門は同時に首を振った。そうか、さすがの統合思念体のインターフェイスも、漫画は守備範囲外か。というか、四歳児と新生児に読ませられる漫画ではないな。
「気にしないでくれ、ただの連想だ……有希の方から説明してくれるか、一応」
長門――今度は、片方だけ――が頷いた。
「情報統合思念体は、第一優先観察対象を、涼宮ハルヒとあなたの、二人にした。これからは、私はあなたの担当として、あなたの観察に専念することになる」
俺の観察?無理な願いと知りつつ、この場を和ませようと、俺はギャグを放つ。
「俺の風呂もか?なんてな、冗談――」
真顔で長門有希はコクリと頷く。冗談――ですよね?
「入浴時のあなたも、興味ある観察対象。実は、昨日から既に観察は始めていた。あなたは風呂場で×××を行っていた。それからベッドでは、寝る前にまた×××を二回行い……」
一体俺のプライバシーはどこに消失したんだ――と、だらだらと冷汗を流す俺をよそに、長門は平然とお茶をすすった。
「そのため、涼宮ハルヒの観察は、新しく派遣されたインターフェイスである――」
長門の横にいる、長門――そっくりの、統合思念体が作ったインターフェイスがペコ、とお辞儀する。
「この妹が行う。名前は、長門、有芽」
有芽、アメか……統合思念体がお天気からネーミングをとっていることは分かった。
「識別上の必要から、有芽の髪型はポニーテール」
長門妹――有芽――が、頭をふりふりする。確かに、後ろでは縛った髪が揺れているが、ポニーテールと言うよりは、それを途中でちょん切った感じだ。
「胸の大きさは、Aカップに増量された」
ぽっと有芽が頬を染めて俯く。いまさらAAからAになっても……すいません、何でもありません。
「状況に応じて、うさ耳の装着も可能」
有芽がちょこんとバニーの耳をつける。一体全体、何の役に立つんだ、それ?
「聴覚が100倍になる」
「…………」
パン
――と手を打ち合わせてみた。
「っ!!」
うさ耳の有芽が、座った姿勢のまま20センチほど飛び上がり、そのまま床に転がってぴくぴくと震えている。
「す、すまん、大丈夫か、有芽!!」
――と叫んだのが悪かった。
「えううう……!!」
有芽はさらに涙をぽろぽろと流し、自動小銃の弾を避けるサミル・セイフのように、ごろごろと床を転がりまわる。
「…………(ブチ)」
長門有希が、冷静に有芽のうさ耳をむしりとると、無言で部屋の隅にぶん投げるた。有希は、ひざの上で震えて泣いている有芽のちょん切れポニーの頭を、優しくなでなでする。
「…………やさしくしてあげて」
ぎろりと有希が殺意を込めて俺を睨んだ。すまん、本当にすまん。全面的にすまん。俺はただ平身低頭して謝るのみだ。
「有芽は、SOS団の新入生メンバーとして入団し、涼宮ハルヒの監視にあたる」
「………ぐす」
涙目の有芽は、俺が小一時間頭を撫でてやると、ようやく泣き止んで、識別できるかどうかぐらいの笑顔になった。


続かない
873名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 23:39:45 ID:Qh0WxGfj
五行目でバキだと思った俺ガイル
874名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 23:40:37 ID:Cvf5wwRI
>>872
『口』がでてるのは『範馬 刃牙』と揚げ足を取ってみるテスト
まぁ思いっきり吹いた訳だがw
で、次スレは?
875名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 23:41:31 ID:qNAlL4i3
あー昨日も似たようなのあったんですか。
さらっと見たけど気づかなかったんで。
偉そうって感じたのはさ、他のスレ見てたら感じるってだけなんだけどね。
他はここほど賑わってないから職人が投下しただけで狂喜乱舞って感じで批評する人なんていないから。
だから、批評してる→えり好み(そう感じる)→偉そう、って思ったんです。
他スレ同様原作の人気が下がって職人減れば自然と批評も減るだろうしのんびり待つかな。
876名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 23:42:13 ID:SmNrZ7+3
>>872
続け!

有芽かわいいよ有芽
877名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 23:48:29 ID:708HFEQN
あと15kか……いけるか?
有芽の可愛さに萌えながら女キョンを最後まで。
878キョンの消失:四日目午前五時:2006/09/08(金) 23:49:48 ID:708HFEQN
- * -
 未来人からもらった睡眠薬を飲み、ハルヒはわたしに身体を預けて深い眠りに落ちている。
 その温もりを一秒でも長く、少しでも多く感じようと、わたしはハルヒをただ抱き続けた。
 このわたしの世界を終焉させる男が、ハルヒのジョン=スミスが公園に訪れるその時まで。

 気づくと長門が立っていた。来るときに頼んでおいたアーミーナイフを持っている。
「朝比奈さんに教えたんだな」
「……」
 ハルヒを抱いたまま、少しだけかがんで長門と目線の高さを合わせる。
「罰だ。代表してお前にやるから、だまって受けてくれ」
 そう言って長門の唇に小さく唇を当て、少しだけ甘噛みしてやった。
 顔が離れ、少しだけ目を開きながら唇を押さえる長門に告げる。
「よくやってくれた。会って聞いたかもしれないが、朝比奈さんはお前たちに感謝していたよ。もちろん、わたしも」

 わたしは片手でアーミーナイフを受け取るとポケットにしまいこむ。
 そのまま長門の頬を軽く撫で、頭に手を置いた。
「後は頼む。辛い事を頼んですまない」
 首を小さく振り、長門が短く否定を示す。
「……それじゃ頼むぜ」
 手をそっと離すと長門は小さく頷き、声なき言葉を呟くと公園の外へと歩いていった。
 それが「さよなら」でなかったのだけは読み取れた。

879キョンの消失:四日目午前五時:2006/09/08(金) 23:50:30 ID:708HFEQN

 少しして、北高の制服を着た男がわたしの前に現われた。
 こいつがわたしのオリジナル……だよな? あまりの普通さ平凡さに思わず突っ込みたくなる。
 仕方なくわたしはその男に問いただしてみることにした。

「……お前がジョンか。なんだか冴えない男だな」
「ハルヒに何をした」
 問いには答えず、その男はあからさまな敵意を向けてくる。
 どうやらジョン──つまりキョンであり、わたし自身で間違いないらしい。

「大丈夫、眠ってもらってるだけさ。これからの事をハルヒに見られるのは、わたしにとってもお前にとっても宜しくないだろ」
 抱いていたハルヒを傍のベンチにそっと寝かせながら、ぶっきらぼうに答える。
 目元に光るモノをぬぐってやり、最後にもう一度頬をそっとなでた。


 そのままゆっくりとキョンの方を向く。キョンは既に鈍色の金属光沢を放つ銃をわたしに向けて構えていた。
「あの時の銃、か。……これを向けられた時、お前もこんな気持ちだったのか。長門……」
 呟いてわたしが、いや目の前のキョンが消失させてしまったあの長門をふと思い出していた。


「ジョン。……お前、ハルヒが好きか」
 わたしはキョンに聞いてみた。わたし自身は既に答えを出し、その答えをハルヒに告げた。
 はたしてコイツはどうだろうか。
 ハルヒを異性として捉えてきたこのキョンは、はたしてハルヒの事が好きなのだろうか。

 キョンは少しの間だけ動きを止めると
「……ああ。俺自身まだよくわかってないが、多分、好きなんだと思う」
 いかにもキョンらしい答えを返してきた。
「そう」
 十分だった。身体は違うけど、わたしはお前と同位体になる。だからその心はよくわかる。
 わたしは少しだけ微笑むと、キョンの構える銃の射線軸上からハルヒを外すように、ゆっくりと動いていった。
 そしてポケットからあのアーミーナイフを取り出し見せつける。瞬間、明らかにキョンの顔色が変わった。
 当然だ。持っている自分が見てもぞっとする。
 かつて二度にわたりわたしの命を狙った、あの朝倉のアーミーナイフ。
 一つだけある仕掛けが施されているが、それ以外は全く同じものなのだから。


「どうした、撃たないのか。お前がわたしを撃たなきゃ、わたしがお前を殺す」
 そういって挑発するも、キョンは撃つ事を躊躇う。まぁ、普通はそうだよな。
 わたしだってきっと躊躇うさ。
 でも、お前はもう躊躇っちゃダメなんだ。そんなのはあの日に捨てると決意したはずだ。
 わたしはナイフを握り締めながら、にっこり笑って話しかけてやった。

「あなたを殺して涼宮ハルヒの出方を見る」
 なるたけ軽い笑顔をみせ、一度目の朝倉の台詞で斬りつける。
「長門さんを傷つけるやつは許さない」
 なるたけ深い笑顔をみせ、二度目の朝倉の台詞で斬りつける。

「ジョン、今の気分にはどっちの台詞がお望みだ?」
 あの時の記憶を呼び覚まされたか、キョンの表情がみるみると変わっていく。
 それでもまだ、キョンは引き金を引かなかった。何でそんなに躊躇うんだ?

 もしかして……キョンはわたしが誰かとか何も知らされていないのか?
 だとしたらキョンに撃たせるのはわたしの役目になる。
 わたしは期待外れと感じた視線を放ち、仕方なくキョンの、わたしの一番痛い部分を突きつけてやった。

880キョンの消失:四日目午前五時:2006/09/08(金) 23:51:24 ID:708HFEQN
「……ここまで挑発してるのに、まだわたし撃つのを躊躇ってるのか。やれやれ、期待はずれもいい所だな」
 そう言い捨てるとキョンに近づく。銃を構えなおすがおそらくただの牽制だろう。
 わたしはここぞとばかりにキョンの頬を思いっきり叩いてやった。

「ふざけるな! 言ってやるが、その気持ちは優しさなんかじゃ決してない。
 今のお前は、ただ自分可愛さにダサい臆病風にふかれてるだけだ!」

 思い出せ、お前が背負っているのはお前自身の事だけじゃないはずだ。


「お前がその銃を撃たないってことは、お前は自分の感情を抑えながらその銃を渡してくれた長門の事も、
胸に悲しみを抱きながらここへお前を連れてきてれた朝比奈さんの事も、全く信用してないって事になるんだ!」

 そうだろ。今のお前の行為は、あの消失した長門すら裏切っている。
 そういえばあの時も、結局わたしは撃たなかったんだったっけ。銃を拾い引き金を引いたのは長門本人だ。
 淡々としていたが、あれは自分自身に決着をつける為だったのではないだろうか。
 ならばわたし達も自分自身で決着をつけなければならないだろう。

「その銃は時空改変のプログラムに過ぎない。本物の銃じゃない事はお前が一番よく知ってるはずだ。
 その銃すら撃てないって言うんだったら、そもそもお前はあの時Enterキーを押すべきじゃなかったんだ。
 そしてこんな馬鹿げた設定や怪しげな陰謀が渦巻く混沌とした世界じゃなく、あの長門が作った優しい世界の中で、
みんなと仲良くただ平和に過ごしていればよかったんだよっ!」

 宇宙人、未来人、超能力者、そんな連中がいる世界のリスクもあの時考えたよな。
 だがキョン、お前は自分でこっちを選んだんだ。
 こっちのメンバーこそが、お前の本当の仲間たちだったから。
881キョンの消失:四日目午前五時:2006/09/08(金) 23:52:00 ID:708HFEQN

「お前、長門が処分されるかもと聞いた時、ハルヒをたきつけてでも救いだすと言ったよな。
 立派な決意だが、あの後雪山でお前はいったい何をした?
 始めて会った時からずっと、お前は朝比奈さんを魔の手から護ってみせると思ったよな。
 じゃあ朝比奈さんが誘拐された時、お前はいったい何が出来た?
 自分には何の力も無いとかただの一般人だとか、そんなベタな言い訳で自分を言い聞かせるだけで、
お前は何もしてないじゃないか!」

 お前の考えなんて手に取るようにわかるよ。
 お前が今まで口にした事、してきた事だって、わたしには全部お見通しなんだ。
 お前がどんなに自分の無力さに苛立ったかも、そんなことを考えている間にも、他の団員達が危険に見まわれる行動を
起こしているかもと何となく感じ、柄にもなく時に眠れぬ夜を過ごしたかも。

 何せキョン。わたしはもう一人のお前なんだから。
 自分の一番痛い所は、自分が一番よく知ってるさ。
 でも、だからこそあえてお前に言ってやるよ。

「結局お前は全て他人任せで、ただ楽しい所だけを味わいたかっただけなのさ。
 あの時のハルヒや、冬の時の長門の様に、自ら動いてみようだなんて事は無い……退屈な男さ」

 そんな事は無いよな? そんなのは気分が落ち込んだ時とかにだけ時々思う、ただの気の迷いだよな?
 自分の内面とこうしてサシで語り合えるなんて、めったに出来ない事だぜ?
 たしかに今回みたいにどろどろした話が年中続くのは勘弁してほしいけど、でももう少しぐらい、
お前を慕う連中の苦労を背負ってやろうぜ。
 わたしがこの三日間で感じ取った、お前に対するみんなの思いを破格のサービスで教えてやるから。

 だから、さ。


「ハルヒや長門や朝比奈さんや古泉に甘えるのも、いい加減にしろっ! ジョン=スミスっ!」


 全てを言い切った直後、わたしはこの三日間の記憶を情報化したナイフをキョンに突き立てる。
 これでわたしの思い出は全て本物に渡ったはずだ。後は。

 直後自分の腹に軽く、それでいて全身に響き渡る一撃を受けていた。


882キョンの消失:四日目午前五時:2006/09/08(金) 23:52:37 ID:708HFEQN
- * -
 その瞬間、一瞬にして視界が白く輝きだした。


『そういうあんたはどーなのよ。男作って楽しめとかいうなら、あんたが作って試してみなさいよ』
『何言ってんだ、お前は俺的ランク外だぜ? って冗談冗談。俺は友人は全部ランク外扱いにするって掟を立ててんだよ』

『あぁ、その『総理』って書いてあるケーキがわたしからのだ』
『わたしがお嫁にいけなかったら、キョンさんずっと一緒にいてくれますか……』

『キョンは昔から変な女だったからねぇ。でもさ、涼宮さんとは気が合うんじゃない?』
『どーしてもっていうなら、あたしでもいいけどさ。それともまさか……キョンみたいな平々凡々が好みなの?』

『メガネない方が可愛いぜ。わたしにはメガネ属性なんて無いしな』
『お譲ちゃん一人かい? お譲ちゃん一人でストーブ持って帰るの、つらくないかねぇ』

『涼宮さんは、あなたを選んだんですよ。女性同士でも子供ができる世界なら、何も問題ありません』
『バニーガールよっ! あぁ、安心して。別にあんたには色気なんて無いものねだりしないから』

『谷口ッ、国木田ッ! 男子連れて教室を出ろッ! 今すぐ急げッ!!』
『これからはあなたに涼宮さんへの連絡とか任せるわ。女の子同士、仲良くしてあげてね』

『キョン、じゃんじゃんボールあげていいわよっ! 阪中さんたちもね! わたしが全部叩き込んであげるわっ!』
『やぁ、キョンちゃんとそれに相手にされないお友達たち、いらっしゃ〜いっ!』



 蚕の中に逆立ち状態で閉じ込められたらこんな気分になるだろうか。


『──おつかれさま、キョン』



 天地もわからずただ情報と衝撃の濁流に飲み込まれ、わたしの意識はゆっくりと途絶えていった、


883キョンの消失:五日目(完):2006/09/08(金) 23:53:46 ID:708HFEQN
- * -

 ……俺が女性となって過ごしていたらしい四日足らずのあの改変劇は、こうして元の姿へと戻った。

 あのキョンが俺に刺したナイフは長門が作成したもので、あいつが体験した数日間の記憶を受け渡すというものだった。
 正直言ってこっ恥ずかしい記憶のオンパレードだ。
 古泉に抱かれ、長門を抱き、朝比奈さんに口づけ、ハルヒと……えっと、いろいろだ。
 気持ちはありがたいが処理に困るぞこれ。特にハルヒの部分。
 あんなの知った後じゃ、まともにハルヒの顔を見る事もできない。
 それもあって、またあいつの記憶でここを見たからもあり、俺は朝っぱらから例の屋上へとやってきていた。

 見晴らしも、吹く風も、今の俺にはとても心地よかった。



 改変中の記憶は、俺以外は誰にも残らなかったらしい。
 再改変を行った長門ですら、その事実を含めて記憶がしっかりと改ざんされていた。
 次に朝比奈さん(大)にあったら、今回の事を詳しく聞こうと思っている。
 話してもらえるかわからないが。



 結局あの騒動で残ったのは、あいつが触れていった他のメンバーとの思いだけのようだ。
 だが、俺はその気持ちが残った事こそ一番重要だと思う。
 だってそうだろ?
 あいつは必死になってこの世界を戻す為、そして俺を復活させる為に一生懸命に生きたんだ。



 なあ、キョン。お前はもしかして俺の中で生き続けてるのか?
 もし生きてるんだったら、どうかそこで見ていてくれ。
 俺も少なくとも、お前のハルヒに対する告白には負けないぐらい頑張って生きていってやるから。



 そしていつの日か、ハルヒが全てを自覚したらみんなに語ってやろうと思う。







 お前という存在が、確かにいたと言う事を。



884キョンの消失:2006/09/08(金) 23:54:26 ID:708HFEQN
- * -

「見つけた! 探したわよ、キョン!」

 やれやれ。今一番顔を合わせたくない、騒がしいヤツに見つかったようだ。
 さて俺はどこまで照れずに向かい合えるだろうね。
 向こうからづかづかと近づいてくる気配に、なるたけ平常心を持って俺は振り向いて見せた。

「どうした、ハル……」
 と、突然ネクタイを掴まれて顔を引き寄せられる。良く見たら凄い怒りの形相だ。

 何だ何だ、何があった。俺が問いただそうとした時、ハルヒは最大級の音量で告げてきた。

「……わたしは認めないッ! 認めないわよッ! ふざけんじゃないわよ、キョンっ!
 あんた、わたしや有希ッ! みくるちゃんッ! 古泉くんッ! それにみんなの事、全部バカにしてんのッ!?」

 な、ちょ、ちょっと待てハルヒ。許さないって、いったいぜんたい何の話だ。
 俺の戸惑いにハルヒは全く耳を貸さず、ただひたすらに、心にまで響く大声で叫び続けてきた。

「うるさいっ!! キョンッ! あんたが、──────」




















「──あんたが勝手に消えて『はいお終い』だなんて終わり方、わたしは絶っっっ対に認めないんだからあぁっ!!」






 ────その瞬間、一瞬にして視界が白く輝きだした。

 蚕の中に逆立ち状態で閉じ込められたらこんな気分になるだろうか。
 天地もわからずただ情報と衝撃の濁流に飲み込まれ、わたしの意識はゆっくりと途絶えていった、
 その時。


「………っざけんなあぁ────────────────────っ!!」

 全ての思いが一つになったような咆哮を聞いた、気がした。


885名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 23:54:52 ID:GJeqaLgX
速攻で立ててきた
【涼宮ハルヒ】谷川流 the 29章【学校を出よう!】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1157727238/
886キョンの消失:四日目午前五時:2006/09/08(金) 23:55:15 ID:708HFEQN
- * -
 何もない真っ白の世界。先ほどまでの喧騒が全く感じられない静寂。
 そこにわたしは立っていた。


「……よう、キョン」
 白い静寂を破り、後ろから声がかかる。振り向くと、そこには本物のキョンが立っていた。
「お前と少し話がしたい。いいか」
「……ああ」

 キョンはわたしの顔を見て、髪へと視線をのばし、身体の方へ軽く落としてから、再び顔に目線を戻してきた。
「全く、そんな格好してるから全然気づかなかったぜ。……まさかお前が俺の女版だったとは驚きだ」
 肩をすくめてキョンが語りかけてくる。
 いったい何がどうなっているんだ。この白い世界は何なんだ。なんでわたしとお前がこうしているんだ。
「ああ、この状況か? 今この世界の外では長門が改変してる最中のはずだ」
 ……そうか。それならいい。わたしが消えるのももうすぐって事か。
 わたしは自分の身体を見つめ、そして白い天を仰いだ。


「お前は、消えないよ」
 そうキョンは呟いた。……って、何だって? 今、お前は何て言った?
「お前は消えない、そう言ったんだ」
 キョンはわたしをじっと見つめながら話してきた。その顔には、これ以上無い優しさが浮かんでいる。

「確かにお前がキョンとして生きた世界は消える。お前もキョンではなくなる。だが、それだけだ。
 お前は消えない。改変後の世界で、お前はキョンではなく、また誰の代わりでもない、お前として生きてもらう事になる」
 話が全く見えなかった。いったい何がどうなったらそんな話になるのだろうか。
 いくらなんでもわたしが存在してたらまずいだろ。
「何でだ?」
「いや、だって……」
「仕方ないだろ。これは団長以下長門、古泉、朝比奈さん、そして俺とSOS団全員の意見なんだから。もう誰にも覆せねえよ」
 お前も? 何でお前まで反対するんだ。お前が一番わたしを消さなきゃならない存在のはずだろ。
 そう聞くと、キョンは逆にちょっとだけ機嫌を悪くした表情を浮かべ、わたしの事を指差して返してきた。

「あんな言われっ放しで勝手に逃げられてたまるか。誰が臆病風に吹かれた退屈な男だって?
 そこまで言うなら俺の記憶から知るんじゃなく、お前自身の目で確かめさせてやる。…………だから、消えるな。
 それと、やれ消えるだ消失だとお前は言ってるけど、俺の記憶があるんならちゃんと覚えておけ。お前は前にこう言ったハズだ」
 キョンは指してた指を引っ込めると腕を組み、ちょっとだけ偉そうな雰囲気を見せて言ってきた。

「ハルヒは何があろうが、人が死ぬなんて事絶対に望まないって」



 孤島でわたしが古泉に言った台詞だ。
 …………そっか、そう言えば、そうだったっけ。

「だから消失は諦めろ。どんな姿になろうとも、キョンはハルヒには逆らえない運命なのさ」
 何度も封印しようと思ったあの口癖と共に、キョンは少しだけ自虐的に微笑んできた。

「……っは、ははっ、ははははははははははっ! そうか。ハルヒが望まないのか。それじゃ確かに仕方ないな」
「ああ、仕方ないだろ?」
 わたしに合わせてキョンも笑ってくる。
 そうだな、仕方ないな。そう何度も言いながらわたしはただ笑い続けていた。

887キョンの消失:四日目午前五時
「お前の持つ俺の記憶は全て封印させてもらう。その代わりとなる記憶や環境は再改変にあわせて用意される。
 ただ……お前はハルヒや俺と同級生にはなれない。訳あって別の学年になる。自覚はないだろうが、それは覚悟してくれ。
 その上で、お前は四年ぐらい前から今日までの間で好きな時点から、こちらの世界で暮らしてもらう事になる。
 四年前以上はちょっと無理らしい。どこぞのハレハレ神様が次元断層を作っちまってるんでな」
 そうか、やっぱりわたしの記憶は無くされるのか。
 ……それは、わたしという存在がここで消失するという事とどう違うんだろうな。

「無くなるわけじゃない、封印だ。消去されたら復活しない。だが封印は解ける可能性がある。
 ……いいか、封印されたら忘れてしまうだろうが、それでも心にしっかりと刻んでおけよ」
 キョンはわたしの肩を掴むと、まさに心に刻み付けるかのように語りだした。

「ある条件を満たせば、お前と長門、古泉、そして朝比奈さんの記憶の封印は解ける。
 その時点でハルヒの封印は解けないが、望むのなら長門に頼めば何とかしてくれるはずだ」
 で、その条件とは。


「……鍵をそろえよ、だ。意味はわかるな? 期限はない」


 鍵をそろえよ……。それはまた難しい条件をつけられたものだ。ハルヒと学年違いでこの条件か。
 朝比奈さんと同じならいいが、更に離れるとちょっときついかもしれない。
 だが、確かに鍵をそろえられる状況でなければ、ハルヒやみんなとあの部室にいる状況が起こせないのなら、
この記憶はそんなわたしの人生にとって必要ないものとなっているのだろう。


「以上、説明は終わりだ。あとはお前がどこからスタートするか、だ」
「……できる限り、一番過去から頼む。記憶ぐらい自分で作りたい」
 わたしは即答した。中学ぐらいからスタートになるが、わたしの時間が長い方が可能性は増える。
 と同時に、わたし自身がゆっくりと輝き始める。銃を喰らった時とは違い、暖かい感じに包まれてる気分だ。


「──悪かったな。今回は俺のせいで──」
 光の渦の外で、キョンが何かを言っている。

「戻ってきたら、おごってやるから──」
 キョン……わたしは、あの場所へ戻ってこられると思うか?


「ああ、それは大丈夫だ。何せお前は──────」



 全ては、そこで途切れた。