「……あ、あなた死神ですか?」「ですね」「あー…やっぱり死にましたか。それで、何すればいいんですかね?」
「……ハイハイこちら死神名[Lia=Recall]、あん?りあは今借りてるから無理!仕事中だってんの!」
『……リア、今の』「りあのクラスメートだよ。仕事終わせってよ」『携帯ならまだしも死神通信機にハッキングしたなあいつら…』
「……嫌だ!死にたくない!生き返らせてくれ!!」「…上に内緒でたまに生き返らせたりしてるんだが、あんたのは手遅れだなー…内臓破裂、複雑骨折。」
『ついでに脳挫傷もね。』「うわぁぁぁあん!!」
……一段落ついて。
「……なー、りあ」『なんだいりこーるさん』「最近『死』に無関心なのが増えたな」『……かもね』
…最近は、自分が死んだ事を聞き、落胆する人間が少なくなってきた。
――『……別に死んでもいいや。』…こういう奴らが増えてるのだ。
「…あーでも練炭とかは正直勘弁だよな。硫化水素とか。」『あれは自殺じゃなくて『集団友人殺害事件』でいいよもう』
……さて、死神化を解除して、後は夢李たちと夜のお茶しに――、
「……アイツなんだ?」…リアが指差す。
その先には、ビルの屋上。
『……ッ!!!![RIZE UP]!!』「了解ッ!!」
精神力を高め、霊力を解放し、瞬間移動。
「……ちょっと!アンタは何やってんの!!」……ビルから墜ちる予定だった少年は、いきなり現れた私に気付いたようだった。
「……ダレ?天使?悪魔?」「死神!!むしろ人間!!」「……人間?」
……死神化は解除したから、今の私は単なる人間だ。多少霊術は使えるが。
「……人間が死神になって、平気なの?」「毎晩仕事で寝不足よ、自殺志願者止めたりしてるから!!」
……睨む。流された。
「…とりあえず、私が死神仕事辞めない限りは自殺すんじゃねぇ。これ以上仕事増えんのは迷惑だ」「……ならさ、
俺も死神にしてくれよ。
……駄目?手伝うぜ?」
………なんだよこの唐突な奴は。そんなに生きたくないか。
「…了承貰うまで待つからな」「『………』」
……最近はこういうのも増えてきてる。
神降臨にwktkしてます!
わくわく
616 :
んじゃ。ほれ:2008/07/04(金) 14:34:30 ID:KX5GQLDM
……言い忘れた設定。
まず、私達の学校には、一部変なのがいる。
その内の一人は私だが、友人達も負けてはいない。
宵町茜花。彼女は超能力者だ。
透視から念動までなんでもだ。故に、多少の寝坊では遅刻しない。テレポートできるから。
…ちなみに、死神の情報網にハッキングしたのはコイツの仕業。
さて、虚夢李。彼女は魔法使いだそうだ。
……なんでも最強の魔法使いにスカウトされたとか。なんだそりゃ。
魔法については、ゲームなんかと同じく『属性』が絡むという。楽しそうだ。
………で、さっき屋上に行ったら。
「…よっ」「…………」
「アンタ、ここの生徒だったんだな」「おい自殺志願者。
なんでこの学校にいる?
どこぞのギャルゲか?ネオロマンスか?B級エロゲなのか?
てゆーか死にてぇなら虐められろ。引き込もれ。イジメ理由に自殺しろ。」
「……いきなりだな」「むしろ死ぬな。仕事が増える。死にたきゃ引っ越してから氏ね」「……」
……溜め息ばかりの毎日は始まったばかりだ。
打ち切りエンd「うぉーい、何終わしてんだ」
……ちっ。
617 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/04(金) 22:44:55 ID:yTIoDXMx
保守
いい感じですね
( ^ω^)
(・ω・)
('A`)
622 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 20:05:30 ID:W7UCORsV
ほ
し
「ゆっくり死んでいきな・・・」
黒いローブを着た女性が、部屋の窓枠に腰掛け、ベッドの上にいる俺を見ている。
俺は、やがて息を引き取るだろう。それも、こいつがいるせいで。
「いいじゃないか、こんな美しい女性に看取られるんだぜ?
一人孤独に死ぬよかマシだろう。」
……ああ、なんだか頭にノイズが走る。
「さて、ここで一つ選択させてやろう。
A.病で死ぬ。
B.鎌で首を刈り取られて死ぬ。
C.近くの川か海に落とした後、溺死して死ぬ。
D. ……ええと、思いつかないな。
さ、どれがいい?」
彼女は、俺に向かって残酷な形相で微笑む。
俺は、思った。
―――ああ、やっぱこいつ、死神だな、と。
ゅ
D
ゅw
>>626 最初の文字もこっそり ゆ だったりする
あまりに過疎ってるのでちょっと明日にでもなんか書くかも 忘れるかも
期待
>>627 長編書いてて時間が掛かってるんですねわかります
「―――死なせてよ。」
とある廃ビルの屋上。そこに立つは、死を欲求する髪を茶色に染めた青春真盛りのお年頃の少女。
対するは、黒、いや漆黒と言うのが正しいだろう黒よりも黒い髪を持つ二十歳位の女性。
「あなたのような子が人生を捨てるだなんて、勿体無い。
まだまだ私みたいなおばさんより、はるかに道は残されてるでしょ?」
本来驚くべきことは少女が屋上のヘリ―――一歩踏み違えると落ちてしまう位置にいることだが、
この場合、むしろ……女性が宙に透明の椅子があるかのように座っていることに驚くだろう。
「……誰も私を気にせず、誰も私を愛しない。そんな私が生きてても、ただ苦痛を感じるだけなの。」
(誰も私に関わろうとしない。ただ、私のことを遠くで見守るだけ。)
「でも、今私があなたを相手にしているじゃない。」
「どうせあなたには私の気持ちは分かっていない。今更私のことを相手にしないで。」
(どうせあなたは、私が死ぬのを止めたいだけでしょう。)
「知ってる?寿命を残して死ぬと、その残った分に応じて、"罪"と"罰"を背負うのよ。」
「……そんな迷信がどうかしたの?」
(……脅してるのかしら。)
「ただの警告。あなたが死んだ場合、あなたはその"罪"で嘆くことになる。」
「どいて。脅しのつもり?私はもう死を恐れてなんかいない。」
(そう、私はもう死ぬんだ。これ以上生きていける自信が無い。)
「足が震えているわよ?」
「……うるさい。」
(うるさい。どけ。)
私は目の前に立つ女性を押しのけ、廃ビルから飛び降りる。
私は頭から落ちていく。廃ビルの5F、4Fが経過して、3Fが過ぎ、2Fが去って、1F――――
私は、死んだ。
そして、私は、生きていた。
なんで?私、死んだはずでしょ?
『それがあなたの罪と罰。あなたは、"死なない"。
よかったじゃない。みんなの憧れる不老不死を手に入れたのよ?』
病院の質素な天井をぼんやりと見ている私に、どこかからあの女性の声が聞こえてくる。
『あなたは、死なない。でも、あなたは魂を持っていない。魂を持っていないから、
あなたは生き続ける為に、魂を消耗する代わり、エネルギーをひたすら消耗し続ける。』
『例えエネルギーがなくなっても、死ねるわけじゃない。 ただ、苦痛を味わい続けることになる。』
『そう、これがあなたの忠告されて自殺した"罪"への、苦しみ続けなければならないという"罰"。
あなたは、苦しみながら生き続けなければならない。』
『ああ、心配しなくてもいいわ。おそらく、10000年くらい経てば、
あの世から文字通り"お迎え"が来てくれるはずだから。』
『それまで、あなたは苦痛を味わい続けることになる。』
私は、両親に迎えられ、無事?に病院を退院した。
『消耗するエネルギーだけど、実際エネルギーなら何でもいいのよ。
例えば、食べ物から手に入るタンパク質とかアミノ酸、ブドウ糖でも構わない。
でも、その程度じゃ足りないの。すぐ消耗しきってしまう。』
『なら、消耗し続けるだけで、そのうち苦痛を軽減なんてできなくなる、
そう思ってるでしょ?……もちろん、その通り。』
私は、親の運転する車の中で、その声を聞く。
『だけど、そんなあなたにうれしい情報。わたしは、あなたに一つの鎌をあげる。』
私の指には、一つの指輪が。
『それはあなたの想像に応じて、刃を創造する。……なんてね。』
『その刃で人を貫け。そしたら、あなたはその人のエネルギーを奪って生きられる。
あなたが憎む人を貫き、殺しなさい。あなたの復讐もかねて。』
彼女は、私の身の上を知っているかのように話す。
ならば、私は答えよう。私は、憎きあいつらを殺す。
私は、魂を刈り取る死神と化そう。
632 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/30(水) 15:01:24 ID:OM2Vw1zK
>>629 ごめん、忘れてたんだ。
今さっき巡回したら思い出したから簡単に最初だけ書いた
続きは書く かも
>>632 GJ、続きを期待してるから忘れないでください(´・ω・`)
ほしゅ
素晴らしい展開!続きもヨロシク。
続き待ちの場に、短篇でもいかがでしょうか。
随分前に投下させていただいた
>>531と
>>551の続篇とか書いてみました。
では。
637 :
紫、ふたたび:2008/08/01(金) 22:50:40 ID:aPKVrGvf
一人で夜の街を歩いているとき、わたしが死神でよかったなと思う。
このくたびれた若者も、あの後先見ないスイーツ女もみんな死んでいくんだと思うと
死神としてわたしはどうしても笑ってしまう。
人間なんて、死んでなんぼ。死んだときにどのくらいの人が泣いてくれたか
死んだ後にいつまで覚えてくれているかで、人間の価値が決まるのだ。
そんなわたしは人間の価値は決められないけど、死に時くらいは提供してあげられるからね。
心も何もかもがひんまがったヤツなんだ、わたし『紫(ゆかり)』は。
死神の仕事は天上界に地上界の人間を送ってやる事。
ただ、天上界が求める人間は真っ直ぐで優秀なヤツ。すなわち地上界で言う『エリート』、
真っ当に、清く正しく生きてきた人間を汚れなき天上界に誘う。
彼らが住むには、地上界は薄汚れすぎている。
天上界には、誠実で素直な人間が求められているのだが、人間は環境の生き物。天上界で豹変する奴も少なからず存在する。
そんなヤツらを上のものが放っておくハズがなく、天上界にそぐわないヤツだと判断されれば、そいつは地獄にまっさかさま。若しくは地上界に舞い戻り。
そして、そんなヤツを連れてきた死神は『死神として役立たず』の烙印を押されてしまう。
で、わたしはてんでからっきしな『ダメダメ死神』だと天上界では少しは名が通っているのだね。ちぇっ。
風は心地よく小鳥が楽しくさえずっているのに、今日はやる気が全く出ない。
天上界でバリバリ働く同期の死神から、少し悪い噂を聞かされて気分が悪いからだ。
「紫が連れてきた子のことなんだけど…」と。
わたしをバカにしているのか?それとも、同期のよしみで心配してくれているのか?
どっちに取るかは、わたしの気分次第。今なら確実に前者の方だ。
638 :
紫、ふたたび:2008/08/01(金) 22:51:05 ID:aPKVrGvf
そんな時は、地上界の唯一の友人、宇摩ゆきのの家にでも立寄ってみよう。
彼女とは少し前に知り合った、いまどき珍しい孤独を愛する女子高生。
宇摩ゆきのは、都心から離れた小さなアパートに一人で住んでいるのだが、
花も恥らう女子高生が好んで住むようなものにはほど遠く、
むしろ生きることにくたびれた、名もなき世捨て人の為の様な木造の建物であった。
そんな古い建物の薄い扉をノックすると、色白の少女が中から出てくる。
「いらっしゃい」
「元気?」
「うん」
黒く長い髪を揺らし白い歯を見せ、暖かくわたしを迎える少女が宇摩ゆきの。
わたしはネコミミで尻尾の生えたという、どう見ても近寄りがたい格好なのに
そして、荒んでひねくれたわたしなのに、昔からの友達のように優しくしてくれるゆきの。
小さいながらこざっぱりしていて、部屋いっぱいの本やアニメのDVDもわたしの趣味にぴったり。
わたしはぎしぎしと鳴く畳を踏んで小さな部屋にお邪魔すると、ゆきのは冷たい麦茶をわたしにすすめてきた。
639 :
紫、ふたたび:2008/08/01(金) 22:51:26 ID:aPKVrGvf
「紫さんが来てくれて、うれしいね」
コトンとグラスを置くと、にっこりと笑いこんなわたしでもおもてなししてくれる。
わたしの事情を根掘り葉掘り聞こうとしないので、自然とわたしも笑みがこぼれる。
「ゆっくりする?」
「うん」
ゆきのの家では本当にどうでもいいことばかりしているな。
わたしが死神である事を忘れさせてくれる、唯一の場所でもあり、唯一の人がゆきのである。
ぐだぐだと寝転びながら、取り留めのない会話をする。空は青く、雲も白い。
そんな会話に嫉妬したのか、風鈴が静かにチリンと。
「ねえ…知ってる?この都市伝説…」
「ふーん、なに?」
相変わらず、ゆきのはこの手の話題が好きなようで。
まあ、根がおたくだから当然かも。何しろ初めて会ったときゆきのは、
ネコミミのコスプレをしていたしね。そして、第一印象は純な子だった…はず。
「ある犯罪者に関する都市伝説なんだけど…興味ある?」
「なになに?教えて!」
「えっとねえ…ちょっと有名な話なんだけど」
「だけど!」
「こっからは100円ちょうだい!」
「けち!」
わたしとゆきのは笑っている。あははと笑う。
こんな時は、死神のわたしだって思いっきり笑うのだ。あはは。
わたしのせいで少しおかしな子になってしまったのは申し訳ない。
640 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/01(金) 22:51:48 ID:aPKVrGvf
ある日のこと。
わたしは故あって天上界に出かける。何ヶ月ぶりだろうか。ネコミミの後ろが熱い。
しかし、けっして喜んで向かっているわけではない。呼ばれたから仕方がない。
どうせお説教が待っているんだろうな、死神として芳しくない成績を叩き上げるわたしは
天上界のお荷物ですからね。ふん、誰にも媚びない黒猫のわたし。
ピンピンはねる尻尾も今日は絶好調なのであった。ふう、どうして上司って存在するのだろうか。
人目の付かない公園の片隅。誰も見られてないのを確認すると
わたしがいつも持っている死神の剣をぶんと振る。すると、切り裂かれた空気の隙間から真っ白な階段が現れる。
天上界へ行くには、人間どもには見えない階段を登ってゆくのだ。この階段がわたしには13階段に見える。
白く輝く天へと続く階段をのこのこと歩き始めるわたし。真っ黒のワンピースがくっきり浮かび上がる。
やがて階段は雲に包まれ、天上界と地上界の境目か、周りは混沌としている景色は久しぶりだな。
雲の中を歩いていると、見覚えのある少年が一人やって来た。確かこの子は、あの時の…。
「覚えてますか!」
「………」
「やだなあ、紫さん。ぼくですよ、悠太ですよ」
そうだ、由良川悠太だ。コイツは。
641 :
紫、ふたたび:2008/08/01(金) 22:52:08 ID:aPKVrGvf
――――3ヶ月前。
由良川悠太との出会いは空が茜色に染まる頃、とある駅のホームの上だった。
家路に向かう人間を腹いっぱい詰め込んだ電車が滑り込む中、彼はフラフラと果敢にもその電車に向かって飛び込もうとし、
あろう事にも死神であるわたしが助けてしまったのだ。ほっておいてもよかったけど、
まあ、わたしの得点稼ぎに協力してもらおうか、とその時のわたしは思っていたのだろう。
ぎゅっと羽交い絞めをすると、仄かに生きている証の暖かさが少年から伝わってくる。
生きてる。少年は生きてる。
「どうせさ、死ぬんだったら、わたしと話をしようよ!」
「……うん」
少年をわたしの奢りで喫茶店に連れ出し、この子を落ち着かせる。
静かに時間だけが進むこの空間、どうしてくれる。
いつまでも俯いたままの少年の相手をしなければならないのかと思うと、わたしは少し後悔をする。
しかし、誘ったのはわたし。わたしのバカ、わたしのバカ。
何もする当ても無いので、わたしは自分のメガネでも拭きますか。
すこしぼやけて見える無口の少年は、きっと周りからもこのように見られているのだろうと思うと、
少し他人には見えなくなってしまった。沈黙をわたしが破ってみせる。
「ね、お姉さんになんでも言ってごらん。わたしとあんたは無関係なんだから、得も損もないでしょ?」
「………」
「あーあ。このジュース、タダじゃないんだよね」
「だって、みんなぼくのことを『死ねばいいのに』って言うんだ」
「それであの騒ぎを起こしたの?」
「…みんなが言うから」
話を聞いてみると、びっくりするくらいの素直な子。この純粋さは地上界では仇となる。
わたしが地上界の人間だったら間違いなく「死ねばいいのに」って言って、いじめていたであろう。
そんなことはさておき、彼にわたしが死神である事を伝えると、すんなりと受け入れてくれた。
もう、藁にもすがりたい気持ちなのか。だから、ヘンな宗教とか、スピリチュアとかが流行るのかね。
言っておくけど、わたしはそんな詐欺まがいな事をしているのではないぞ。念のため。
642 :
紫、ふたたび:2008/08/01(金) 22:52:34 ID:aPKVrGvf
「ぼくは、生きていても…いいのかな。紫さん」
「困ったときって、選択肢があると気持ちが楽になるのよね」
「じゃあ…どうするの?」
「わたしと契約を結んで、天上界に行く。即ち、死んでしまうって事。
もう一つは…このまま生き続けること。さあ、どうする?」
「楽になる方がいい。紫さん、助けて」
やけになっていた悠太の気持ちを察し、その純真さと意気込みを気に入ったわたしは
彼と契約を結んで無事に天上界に送ってやった。前向きな悠太の笑顔が眩しい。
―――――そして、地上界をおさらばして天上界でのんびりとしている…はずなのに。
しかし、何でこんな所にいる?
「紫さんは、天上界に帰ってくるんですか?」
「い、いや…。まだなの」
「そっかあ」
にやりと笑う悠太の気持ちはこの時は分からなかった。
あいさつもそこそこに、悠太は口笛を吹きながらどこかへ行く。
さて、わたしは今からお説教を食らいに行くか。
きっと天上界のババアからたんまりと嫌味を言われるんだろう、分かってるんだから。
でも、ただお説教をされるわけじゃないぞ。ケンカをしに行ってやるからな。覚えていろよ。
643 :
紫、ふたたび:2008/08/01(金) 22:52:55 ID:aPKVrGvf
夕方近い路地裏、ここは地上界。
昨日は昨日のことですっかり忘れる事にしたい。あんなにボロッカスに言われるとは
露も思っていなかったから、いまでもモヤモヤする。
天上界の上層部、ヤツらの文句は『このままだと、あなたはクビですよ』的な警告。
「あなたはあまりにも、のほほんとしすぎてませんか?」
(そのくらい、分かってます)
「後輩たちもぐんぐん育っているんですよ…」
(知るかよ)
一言も言い返せなかったわたしはヘタレだ。思いっきり目の前の空き缶を蹴飛ばす。
そんな時は、昨日は昨日でとっとと忘れて笑ってくらそう。
死神だって笑顔でいたい時もある。笑いは偉大だ。
「紫せんぱーい。お久しぶりっす」
後輩の『荵(しのぶ)』が尻尾を振ってやってきた。
わたしの後輩のくせに死神としての成績もよく、明るい人気者タイプの子。
ことあるごとにわたしをバカにするのだから、あんまり好きじゃない。この子は。
「わたしですねえ。ひっさびさに天上界に行ってきたんですよ」
「ふーん。それで」
「で、ヘンなヤツ見つけちゃったんすよっ。ヘンなヤツ!」
わたしと同じようにネコミミをピンピンさせて楽しげな荵。
まあ、優秀なヤツだから天上界でも可愛がられているんだろう。
「ソイツはね、天上界でもちょっとした大バカヤロウでしてね。
人の悪口ばっかり言ってまわるわ、仕事はしないわ…。困ったもんですねえ」
644 :
紫、ふたたび:2008/08/01(金) 22:53:13 ID:aPKVrGvf
そういうヤツは天上界にも、一人は二人いるのだ。で、目に余る場合は
エリート社会で塗り固めるのがよしとする天上界の恥さらし者とされて、もう一度地上界に送り戻されるのである。
もう一度、地上界でやり直せと。人間になるか、フナになるか、それとも…それは天上界のヤツにしか分かりえない。
「で、どこがヘンなの?」
「ソイツ…紫先輩の事が好きなんだって!ふっふー」
「殺すよ」
もっとも、死神には色恋沙汰はもってのほか。わたしたちに『人を好きになる』と言う感情が
強くなればなるほど、死神の力は薄まってゆく。
なぜなら、『好きになる』と言うことは、『地上界で生きる喜び』、即ち『生きる』ことは死神の力に相反するからだ。
そして、キス…セックスまで及ぶと、無論…。死神ではありえなくなる。
それは恐ろしい事。
なのに、荵はケラケラと笑いながら、わたしの顔を下から覗き込む。
わたしは荵の足をぎゅうっと踏みつけてやった。ざまあみろ。荵の泣き顔はいつ見ても面白い。
それでもめげないのが、荵の良い所であり悪い所でもある。
「こんな先輩、大好きっす」
「ホント、殺すよ」
645 :
紫、ふたたび:2008/08/01(金) 22:53:33 ID:aPKVrGvf
泊まるあてのないわたしは、宇摩ゆきのの家へ。何となく今日あった事、荵の事、色々と話す。
ゆきのの話は嫌な事を忘れさせてくれる。
「ねえ。この間の話の続き…聞きたい?」
「えっとお、何だっけ」
「ほら、犯罪者の都市伝説」
そういえば、そんな話もしてたっけ。ゆきのはニヤニヤと笑っている。
「聞かせてくれる?ソレ」
ゆきのはお茶をごくりと飲んで話し始める。わたしは黙って聞き入る。
「いまさら話すのも恥ずかしいほど有名な話なんだけどね…。
ある凶悪な殺人犯に行った心理テストでね、いい?よく聞いてて。
『父、母、息子の一家の話。事故で父が亡くなり、葬儀が行われました。
その葬儀に来た、とある若い青年。その青年は父の同僚です。しかし、母は
その青年に一目ぼれ。暫くして母は子供を殺してしまいます…』どうしてでしょうか…というお話」
ゾッとする話だ。この話の内容でではない。由良川悠太のことでなのだ。
もしかして、いや…確実に由良川悠太にこの質問をすれば、こう答えるのだろう。
「紫さん。答えはね…『また、青年に会えるかもしれないから』」
646 :
紫、ふたたび:2008/08/01(金) 22:53:54 ID:aPKVrGvf
「お久しぶりですね、紫さん」
雑踏の中、いきなりわたしに話しかけられたその声は紛れもなく由良川悠太のものだった。なぜ地上界に?あんたはとっくに斃れていたはずなんだぞ。
この世とはおさらばして、天上界で下界のヤツラを笑っているはずなのだぞ。
「会いたかったんですよ…ぼく」
「…はあ」
「ホントのこと言っていいですか?」
勝手にしろ。
「ぼく、紫さんのことが…好きです」
「………」
「だって、あんなにぼくの話を聞いてくれたのは、紫さんが初めてだったから」
「……わたしは…嫌いだな。アンタの事」
「紫さんはウソが下手糞だ」
わたしは由良川悠太が怖くなってきた。何か見透かされているんじゃないかと。
「でも、こうやって会えることって…ぼくが『死んでしまいたい』って思わなきゃ
紫さんに会えないんですよねえ。つまり…」
「ホントに死にたいの?」
「はい!」
「ウソ」
人間は臆面もなくウソを付く、人間の素直さは時として、残忍な凶器になることはよく知っている。
由良川悠太は青白く光る見えないナイフをちらつかせる。
「わたしは分かってるよ、アンタの腹の内。悠太さ、バカでしょ?」
「やだなあ、紫さん。折角こうして話が出来るのに…」
「うるさい!アレでしょ?こうすりゃ、いつまでもわたしと会えるから天上界と地上界を
行ったり来たりしようって事でしょ?あんた、何考えてるのよ!」
「紫さんと…」
わたしは思いっきりヤツの頬を引っ叩く。手が痛い。
647 :
紫、ふたたび:2008/08/01(金) 22:54:14 ID:aPKVrGvf
由良川悠太はそれでもにやりと笑いながら、わたしに向かって恐ろしい事を話し出す。
「…そりゃないよ。折角、紫さんに会いに来たのに。
ぼくは紫さんに会うためにどんなに頑張った事か。紫さんはわかんないの?」
「だって、あんたが死んでしまいたいって言ったから、わたしが天上界に送ってあげたのに」
「ぼくは初めて人を好きになったのは、紫さんです!だから!!」
「死神は人を好きになっちゃいけないの!!バカ」
思ったままの感情を由良川悠太にぶつける。そして、
「お願い!もう一度…死んでくれない?!」
「何度でも紫さんに会えるのなら…何度でも死にますよ。そして何度でも…」
「それはダメ!!」
夢中で腰の剣をパッと抜き取り、由良川悠太の首に突きつける。
天上界へと送る為の剣。この剣でアイツを斬れば、大人しく天上界に逝ってくれるはずなのに。
あくまでもこれは儀式。体の中の不浄なものを抜き取り、清らかな天上界に持ち込ませないためだ。
剣先が小刻みに震える。由良川悠太よ、怖くないのか。わたしはあんたを殺そうとしてるんだぞ。
「紫さん…無駄だよ。また戻ってくるから」
「うるさい!」
わたしが目をつぶって腕をぶんと振ると、剣は何も言わずに由良川悠太の首を引っ掻く。
剣は由良川悠太の血で染まる。もちろん本物の血ではない。
地上界でも汚れたものが具現化したものなのだが、びっくりしたことにコイツは殆ど流れない。
ホントに汚れきっていない純粋なヤツなのだろうか。何事もなく由良川悠太は立っている。
まあ、ホントに斬っている訳じゃないので当然なんだが。
「この後ね、地上では死神に会っちゃいけない決まりなの。だからね」
「うん、それじゃあまた…」
「二度と会うもんか」
わたしは彼に再び会えるだろうか。…何言ってるんだ、わたし。
648 :
紫、ふたたび:2008/08/01(金) 22:54:40 ID:aPKVrGvf
あの日以降、約束どおりにわたしは由良川悠太に会っていない。
彼は無事に天上界で暮らしているのだろうか。いやいや、死神に情けは不要。
彼は彼、わたしはわたし。もう二度と会うことはない…と信じたい。
わたしは地上界での生活に慣れきってしまって、自分が死神だって事を忘れてるんだろうか。
もしかして、これがゆきのの話に出てきた『一目ぼれ』ってやつなのか。
そんなことどうでもいい。健やかな青空が更にわたしをムカつかせる。
しかし、疑問が一つ。
どうして由良川悠太が由良川悠太の姿で、地上界に戻れたかだ。
同じ過ちを繰り返させないという観点から、天上界から地上界に戻る場合、
けっして元の姿のまま、地上界に舞い降りる事はないはずなのになぜだ。
理由が何かあるのだろうか。と、恐ろしい考えがわたしの脳裏に浮かんだ。
もしかして何か大きな力で『わたしを消そうとしているのではないか』。
わたしと由良川悠太を接触させて、恋愛関係に持ち込ませる。即ち、死神『紫』の死だ。
この間の天上界から『このままだと、クビですよ』の警告。それを自然に遂行する為に
わざと由良川悠太を地上界に下ろしたに違いない。そして、由良川悠太がわたしの事を好きだと知っているヤツは…。
セミが鳴き始め、あさがおが咲く季節。日差しが眩しく照り続けている。
未だに由良川悠太は現れない。別に待っているわけではないが、由良川悠太は現れない。
この事を無二の親友、宇摩ゆきのに話すと思いもよらない答えが返ってきた。
「ふーん。実は…」
「え?」
「悠くんとは…」
「まさか、由良川悠太と?」
「そうです。えへへ…わたしの彼氏になりました」
そうなんだ。隠しているなんて、照れくさいぞ。ゆきの。
649 :
紫、ふたたび:2008/08/01(金) 22:55:04 ID:aPKVrGvf
「悠くんとは、この間商店街で出会ってからのお付き合いなんです。
とっても素直な子でしてね、かわいいんですよお」
わたしのネコミミがぴんと立つ。しかし、ゆきのは続ける。
「という夢を見ました」
わたしは初めてゆきのを軽くデコピンした。ゆきのは、てへへと笑う。
つられてわたしもえへへと笑うのであった。
夕方、いつもの様に出歩くと由良川悠太の代わりといっちゃなんだが、
荵がいつものように人懐っこくまとわり付く。コラコラ、尻尾を引っ張るな。
「それにしても、紫先輩は地上が好きなんですね。この間天上界で紫先輩をちらっと見たんすよお。
大審院に呼び出し食らってるって聞いたから、すっかりクビになって呼び戻されて…」
「あんたの言うことって、いちいちムカつくね!」
「ふっふー。でも、みんなに言いふらかしちゃったんだよねー。あのヘンなヤツにも…。
どうしよう。わたし、大ウソツキになってしまいましたっ!」
「………」
「そのヘンなヤツ…。わたしが『紫先輩がクビになりました』って言って以来、見ないんだよね」
「だから、クビになってないって…」
今頃、由良川悠太はわたしが居るはずも無い天上界を一人彷徨い、わたしを探しているんだろうか。
とにかく、そのことは誰にも分からない。
でも、なんだろう。わたしは決して泣いていないぞ。
瞳なんか潤んでいないぞ。目頭なんか熱くないぞ。鼻なんぞすすってないぞ。
由良川悠太のことなんか…好きじゃないぞ。うん、大嫌いだ。あんなヤツ。
ぜったいすぐに…忘れてやる。
「紫先輩、泣いてるんすか?」
「あんたのバカさ加減にね」
おしまい。
エロ無しって書くの忘れてました。すいません。
投下終了っす。
ゆかりんのメガネにぶっかけたい
652 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/13(水) 13:22:11 ID:sTZ3MTYB
ほしゅ
死神っ娘とガチで戦ってみよう!ということでエロ無し超短編。
初投稿なので少し緊張気味ですが、批評は大歓迎です。
▼花見酒
冬、12月24日。
世間様はクリスマスイブとやらで盛り上がっているようだが、残念ながら俺には寄り添う恋人なんていない。
俺のように孤独な貧乏学生なんて世の中には溢れてるんだろうが、それでも何かしら理不尽さを感じてしまう。つるんでる友人達はちゃっかり相手を見つけてやがったりするからなおさらだ。
今夜は一人でヤケ酒でもして寝るかと思い、煙草を燻らせてバイトからの帰り。雪がちらほら舞っているが、傘を差すほどでもない。
割と広い裏通りなのだが、やはり皆は表通りにいるようで、うっすらと積もった雪には誰の足跡も付いていない。
雪見酒というのも中々にオツなものだが、この時期に窓を開けて泥酔してたら凍死するんじゃないか、なんて思ったその時。視界の端で何かが煌めいた―――
「――――――っ!」
反射的に転がるようにして体を横に飛ばす。受け身を考慮する余裕など無かったので、無様に地面を雪まみれになって滑る。一瞬前に俺の首があった場所を銀の軌跡が通り抜けたのが見えた。
思考が凍り、汗がドッと噴き出す。跳ね起きるように体勢を立て直し、相手を確認すべく視線を上げ、息を呑んだ。
黒い外套と長い髪をはためかせ、流れるような所作で大鎌を振るう少女。小柄な体格に不釣り合いな長物を取り回すその後ろ姿は―――死神を彷彿とさせた。
「苦しいのがイヤなら抵抗しないで。面倒だし」
全体重を掛けたであろう斬撃を振り抜き、大鎌をくるりと回して慣性を殺した襲撃者は振り向かずに淡々と告げる。その足下には真っ二つになった煙草が煙を上げていた。
冷たい静寂に染み渡る澄んだ声。明確な殺意を滲ませたその一言で俺は冷静さを取り戻した。
急いで次の手を考えろ。
今すぐに逃げなくては。だが何処に?逃げ切れるのか?
ならば闘うか。武器もないのに?勝てるのか?
「貴方は此処で死になさい」
一瞬の迷い、その隙を突いて黒い影が舞う。
それを目にして、自然に覚悟が出来た。最初の一撃だってかわせたじゃないか。これでも人並み以上に武道の心得はある。
スッと体の芯が冷えて、雑念が取り払われる。長い修練を積んだ体が、殺し合いの感性を研ぎ澄ます。
ここからはお互いの命の削り合いだ。遠慮なんて必要ない。
横様に首を狙う一撃を、背を逸らして避ける。更に体を回して襲いかかる一刀から逃れる。
いける。この速さなら追いついていける。
狙うは鳩尾への一撃。
上段の払いを屈んで避け、飛び退って距離を稼ぐ。
「小回りは効くようね。本当に面倒」
鎌という形状上、攻め手は薙ぎ払いが基本となる。例えその鎌が舗装された地面を穿つ強度を持っていたとしても、地に刺さった鎌を抜くのは手間だろう。
故に縦振りは必殺の一撃のみ。その一撃さえ凌げれば―――!
左右から無尽蔵に繰り出される斬撃を間一髪で避け続け、その一撃を待つ。
「でも貴方は死ぬの。諦めて」
じりじりと後ろに下がり、あと数メートルで壁というところまで追いつめられる。
そして更に飛び退り、壁に背中が当たるほどに下がった瞬間。終に死神は天高く獲物を振りかざし、一気に距離を詰めてきた。
「そこだっ――――――!?」
着地の反動を右膝で殺し、左足を全力で踏み込んだ瞬間―――視界が反転した。
地面には降り積もる雪。当然と言えば当然である。斜めに一回転した視界に、雪空をバックにひらめく外套が。
こんな馬鹿な終わり方って無いだろう。此処まで誘い込んでこのザマか?我が人生ながら泣けてくる。
そこで、ふと気が付いた。
「きゃっ――――――!?」
そう、全力で踏み込めば転ぶのだ。
視界の端には、持ち主の制御を失い、ギロチンの如く迫り来る刃が。首を捻って避けたぎりぎりの所に切っ先が突き刺さる。
そして休む暇もなく、視界いっぱいに広がってくる外套と可愛らしい顔。いくら小柄な少女でも、この速度で落ちてくるとなると話は別だ。
時間がスローモーションのように流れていく。倒れ込んでくるからだを受け止めるべく腹筋に力を込める。
風圧でめくれ上がる外套の中に。
あ、白だ。
「ぐふっ――――――」
「きゅぅ――――――」
よこしまな思考に集中力が緩んだ瞬間、衝撃が訪れた。痛覚が、呼吸が、意識が―――
目が覚めると、体の上に何かが乗っていた。そして顔のすぐ横には謎の超危険物体が。
考えること数秒、意識がハッキリとした。生きてるってすばらしい。
とりあえず積もった雪を払い、気を失っている死神(?)少女を抱えて起き上がる。
体の節々が痛いが、このままだと二人とも凍死してしまいそうだ。家に戻って酒でも飲みたい。
少女については一瞬迷ったが、流石に放っておくことも出来ないし風邪でも引かれたら後味が悪い。
今し方殺されかけたばかりだったが、鎌さえ渡さなければ大丈夫だと信じよう。どうやら鎌は折りたたんで刃を仕舞えるようなので、折りたたんで担ぐ。
雪見酒も悪くないが、今夜は花見酒と洒落込もうか。腕の中の桜色の寝顔を見て、ふとそう思った。
655 :
653:2008/08/14(木) 02:00:23 ID:3LQ9yKXO
すいません、間隔が空いてしまいましたが以上で投下終了です。
見苦しい点もあったかもしれませんが、今後も精進を続けていきたいと思います。
死神っ娘とガチで戦うってのは面白いな。
続きが気になるよ
続きに期待してわっふるわっふる
658 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 15:45:00 ID:JNt0aStU
hoshu
わっふるわっふる♪
660 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/02(火) 21:16:51 ID:HOYgfaya
あげ
661 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/17(水) 20:01:27 ID:dkCDPkHf
あげ
662 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/26(金) 06:57:35 ID:rTTbamhN
あげ
663 :
名無しさん@ピンキー:
スレが死に神につれてかれる前にあげ