薔薇乙女(ローゼンメイデン)のエロ小説 第10話

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13名無しさん@ピンキー


日曜の昼下がり。


のり ジュン 翠星石 真紅は、四人そろってテレビを見ていた。
タイトルは懐かしの昭和歌謡曲全集。
日曜にはよくあるタイプの特集番組で、
珍しくのりが番組表を見て、その番組を見たいと言ったのが切欠だった。
ジュンもそうだが、のりは平成生まれ。昭和の曲に興味が湧いて仕方が無かったらしい。

リビングのソファーには四人に加え・・・
永遠ともいえる眠りに付いた雛苺と蒼星石が、のりと翠星石の横で目をつむり、静にその身を二人に預けていた。


「この国の歌はまだ良く分からないけれど・・・
今の良く分からない音楽や歌詞を使った歌よりも、いいものだわ」


その言葉からは、珍しく真紅がくんくん探偵以外の番組に気を入れているのが伝わってくる。
確かに情感を直接歌詞に書き上げ、メリハリのある曲調に乗せて歌う歌手の歌唱力は
今の歌手には無い力が有り、心に直接訴えかけてくる魅力があった。


「うん・・・今の歌より随分はっきり声が通ってるし、何か・・・心に響くよな」


J−POPや売れ線の歌手の歌も好きなジュンであったが、
今まで殆ど耳にする事が無かった昭和の歌謡曲が持つ魅力に、不本意ながら心を奪われていた。

「このニホンという国には演歌と言うのもあるですが、あれも中々いいものですぅ」
「あらぁ、翠星石ちゃん随分渋いジャンルの歌が好きなのねぇ」
「へぇ〜・・・おばはん臭いやつだな(ニヤニヤ)」
「ジュ、ジュン君っ!?」
「!な、なんですぅってぇー!もッぺん言って見やがれです、このチビめがね!」

「静になさい翠星石、ジュンはあなたが好きだからからかってるだけなのだわ」

「なっ!?」
「なな、なに言うんだよ し、真紅!」

「はいはい二人とも。仲良しさんなのは判ったから、歌の続きを聴きましょ?ね?」
「姉ちゃんまで!違うっての! だ、大体誰がこんな性悪悪魔人形なんか好きになるかよっ!」
「なな何言うですかのりはっ! だだだ、誰がこんな野暮ったいチビ人間なんぞ好きになるかですっ!」

赤い顔をして抗議するジュンと、真っ赤な顔をしてまくし立てる翠星石の声が
見事にシンクロしていたのが仲良しさんのいい証拠であるが、
それには突っ込まず、のりと真紅は再びテレビの画面に目を向けるのだった。
やがてテレビに映った歌手を見て、雛苺の手をつないでいたのりが黄色い声をあげた。
14名無しさん@ピンキー:2006/08/16(水) 22:54:09 ID:Il2q2fth

「きゃー♪ やっと出てきたわ〜♪」
「はぁ? ただのおばさんじゃん・・・姉ちゃんそんな趣味があったのか?」
「なに言ってるのジュン君!加藤登紀子さんよ、加納登紀子さんっ! 百万本のバラの花の加納登紀子さんじゃない!」
「知らないよそんなの!ってか何だよその百万本のバラって?」
「え?えーっとぉ・・・その、と、とにかくお姉ちゃんこの人の歌がききたくて・・・」
自分達の母親が好きだった曲とはさすがに言い出せないのり。

「聴けば判るのだわジュン。バラと言うからには、きっといい歌なのだわ」
そこに見計らって真紅が助け舟を出した。

「百万本のバラの花ですか・・・」


「?どうしたの翠星石」
「!な、なんでもないですよ・・・」

少し口ごもる翠星石の態度に、少しいぶかしがる感じでそう聞いた真紅。
その真紅から目線を外した翠星石は、目をつむり自分の肩に頭を預ける蒼星石の左腕をそっと掴むだけだった。
真紅は少し気になったものの 『・・・そう?』 と言って、画面に目を向け直した。

テレビから流れるその歌詞の内容は、
貧乏な絵描きが女優に恋をして百万本のバラの花を贈るが、結局片思いで終わったという物だった。
しかしその歌手の年齢を重ねた素晴らしい歌唱力と、悲しくも情熱的な曲にいつの間にかみんな聴き入っていた。


「あぁ〜〜、お姉ちゃんもこんなに想われて、百万本のバラを受け取ってみたいなぁ・・・」
「・・・なんで僕の方を見るんだ?」
「えぇーー!ジュン君くれないのぉ〜〜?」
「だれがやるかっ!大体そういうのは恋人同士がやるもんだろっ!」
「お姉ちゃん、ジュン君ならいいわよ?」
「だからっ!」

こう言う会話を何気に交わせるまでになった姉弟のやり取りを、
微笑ましい視線で見ていた真紅の目の前を、翠星石の腕が過ぎてゆき
リモコンを持ったかと思うと、その指先で『 ブチッ 』とテレビの電源を切ってしまうのだった。

「?!翠星石、まだみんな見ているのよ!?」
「おいコラ、性悪人形っ!何勝手に切ってるんだよ!」
「翠星石ちゃん?どうしたの一体?な、何か気に入らないことでもあったかしら?」

翠星石はそれらの批判や問いかけには答えず、
蒼星石の身体からそっと自分の身体を離してソファーを下り、

「観ていたかったら、お前らだけで観ていやがれです・・・」

そう言って部屋を出て行ってしまった。