1 :
前スレ162:
萌える話をお待ちしております。
がんがん書いていきましょう。
注意
人によっては、気にいらないカップリングやシチュエーションが描かれることもあるでしょう。
その場合はまったりとスルーしてください。
優しい言葉遣いを心がけましょう。
作者さんは、「肌に合わない人がいるかもしれない」と感じる作品のときは、書き込むときに前注をつけましょう。
原作の雰囲気を大事にしたマターリした優しいスレにしましょう。
関連スレは
>>2
2 :
前スレ162:2006/08/15(火) 14:06:23 ID:6f2h/yXP
3 :
書人:2006/08/15(火) 14:09:17 ID:6f2h/yXP
前スレ162です。
スレを跨ったので、今回より場当たり的コテハンつけました。
以後よろしくお願いします。
では、即死回避用SS投下します。
御品書きです。
カプは、ダンシング・シミター×パステル(否陵辱)。
迷子になったパステルを助ける、偶然通りかかったダンシングシミターの話です。
通常なら、絶対有り得なさそうなカプを書いてみました。
受け付けない方はスルー願います。
あたりには誰もいない。
ここには、わたしただひとり。
みんな、どこ行っちゃったんだろう?わたしどうすればいいんだろう?
……だからわたし、やめとこうって言ったのにぃ!!!
トラップがオーシと交渉の末に、値切って手に入れてきたシナリオ。
それはわたしたちのレベルから言えば、少し高目のクエストだった。
でも、皆調子よくレベルアップした後だったし、いつも簡単なクエストばかりじゃ駄目だろう!ってんで、皆妙に気合が入っちゃってて。
でもシナリオを見る限りではどうも、相当複雑なダンジョンみたいだったんだよねえ…
入り組んだ構造の上にワープはあるわ罠は多いわなんだもん。
ぶっちゃけ、へたれマッパーなわたしには、全くマッピングの自信がなかった。
だから、もう少しレベルが上がってからにしようよ、って言ったんだけど……結局押し切られちゃって。
でもさあ、世の中そんなにうまくはいかないでしょ?
うん、少なくともわたしたちの場合は、いつもそう……
ダンジョンに入ったはいいけれど、案の定、いつもより数段難易度の高い内部構造。
かなりの時間を歩き続けるうち、マッピングノートは何ページにも跨り、完璧意味不明になってしまってた。
うーむ、まずい。どうしましょ。
書いた本人にも、何がなにやら全然わかんない!んだわ、これが。
ノートとにらめっこしては、脂汗をたらして唸っていたら、またも気がつくと皆とはぐれてしまってたんだよね。
はいそうです、みんなわたしが悪いのよ。
歩けど叫べど、誰にも会わない、誰もいない。
何の気配も残さず、パーティの皆は消え失せてしまっていた。
わたしは重いため息をつくと、がっくりと肩を落とした。
あぁもう、何度やれば気が済むんだろう?わたしってば………
暗いダンジョンの中、わたしの持ったポタカンだけが光を放ち、岩壁をぼんやり照らしている。
さ迷い歩いた末に辿り着いたここは、通路の先端、袋小路の場所にあたり、小さな部屋のような形状をしていた。
本来ならここから戻って、別の道を探したいところなんだけど……もう手元の明かりが頼りない。
ポタカンの油がじわじわと少なくなり、あたりはどんどん薄暗くなってきちゃってる。
……途中で継ぎ足すつもりだった予備の油は、ノルのリュックの中なんだよね。
こんなことなら横着しないで、満タンになるまで油入れとくんだったーー!わたしのバカー!!
自分で自分の頭をぽかぽか殴りたい気分になりつつ、あたりをきょろきょろと見回す。
とりあえず、危険なものやモンスターはいなさそう…だよね。
わたしはどうしようもない自分に歯噛みしながら、仕方なく岩壁を背に座り込んだ。
うぅ、皆どこ行っちゃったのかなあ……
皆が見つけてくれるって保証もないし、かといって真っ暗な中じゃ動けないし………
鼻の奥がつんと熱くなる。
なんかもう泣き出したくなりながら、わたしは立てた膝を抱えて顔を埋めた。
と、その時。
「誰かいるのか?」
突然あたりに響き渡ったのは、よく通る大きな声。
どき!と弾む心臓。焦って顔を上げる。
は、話すってことはモンスターじゃないよね?
パーティの仲間じゃない、男の人の声なんだけど。
誰!?いや、この際誰でもいい、わたしを助けてっ!
ヒタヒタと微かな足音がし、ポタカンが放つ、オレンジ色の明かりと共に現れたのは。
「なんだ、またお前か」
浅黒い肌に精悍な面立ち。切り込むような鋭い眼差し。
この人……そうだ。ダンシング・シミターだ。
弁髪……っていうのかな。
頭の周囲の毛を剃り上げ、てっぺんだけ長く残して結んだ、変わった髪形。
東洋風のベストのような胴着に、ウエストに紫の布を結んだ、ゆったりしたズボンを身につけている。
鍛えられて筋肉の盛り上がった体が、人工の明かりに浮かび上がっている。
この人には、過去に何度も会う縁があった。
ほとんどは敵同士だったんだけど、なんか憎めないところのある人なんだよね。
剣の達人の癖して、非常時でも笑い出すと止まらない笑い上戸だったり。
「あ……なたはなぜここに?」
「そりゃ遊んでるわけじゃない。クエストの途中だ。お前こそ、いつものメンツはどうした」
「いえその……はぐれちゃって……」
きまり悪さに、ぼそぼそと口の中でつぶやく。
ダンシング・シミターはそんなわたしを見て、鼻先で軽く笑いながら言った。
「お前の仲間たちは、見事にテレポートの罠にかかっていたようだがな」
「ええっ!? 本当に?」
「ああ。あの罠だと、特に怪我なんかはないだろうが、ダンジョンの入り口まで飛ばされてるはずだ」
「あらまぁ……あれ? でも入り口までって……」
なんで知ってるの?と聞きかけたわたしを、大きな目がぎろりと睨む。
「シナリオを読んでないのか。記載されてただろうが」
「あ、そ……でしたっけ」
そんなのあったっけな?
実はわたし、地図にいっぱいいっぱいで、シナリオ詳細まであんまり見てなかったんだよね。
愛想笑いをするわたしを横目に、彼はどこからか小さなノートを取り出し、仔細に眺めていた。
どうやらマッピングノートらしい。
うーん、あんな小さいノートで、よくマッピングできるなぁ……
「入り口まで戻されたら、ここまで来るには……ふむ。ちょっとやそっとでは無理だな」
がああああん………
そういえば、そうでした。
入り口入ってからわたしがはぐれるまでって、相当長時間歩き詰めだったもんね。
途中で食事も2回はしてる訳だから、それから考えると6時間や7時間、平気でかかってるかも。
「ま、ここで待つのが正解だろう。こっちから出向いたところで、入り口からは分岐点が多いからな。あいつらがどこを通ってくるかわからん。最悪行き違いだ」
自分のノートと、書き写したらしい地図を広げて指差しつつ、彼は続ける。
「しかしその分岐した道は、最終的に全部この袋小路を出た場所に到達するからな。ということは、ここにいれば前を通る人間がいればわかるって算段だ。そもそも無闇に動かん方がいい。お前達が遭遇したかどうかは知らんが、面倒なモンスターが結構いるぜ」
「そ、そうなのぉ?……」
半分泣き声になってしまう。
これまで、ほとんどモンスターには会わなかったけど、あれは偶然だったのね。
そんな危険なところだったのかあ……
じゃあここでひたすら、モンスターに脅えながら皆を待つしかないの?
どっぷり落ち込むわたしの傍に、ダンシング・シミターはどさっと腰を下ろした。
ポタカンがカタンと地面に置かれ、下から彼の彫りの深い顔を照らし出す。
「ったく、まともにシナリオくらい読んで来い。というより、恐らくこのダンジョンは、お前達にはちとレベルが高いぞ」
「そうよね、わたしもそう思って、やめようって言ったのよ」
ブツブツと文句を言うわたしに、ダンシング・シミターは唇の端を持ち上げて笑った。
「まあ入った以上、今更文句を言っても仕方ないだろ。これも何かの縁だ。心配するな、俺が一緒にいてやる」
「ほ、ほんとに!?」
願ってもない申し出。
わたしは胸の前で拝まんばかりに両手を組むと、彼の顔を見直した。
ダンシング・シミターは長く垂らした髪の先を引き寄せ、指で梳かしている。
「実のところ俺も、似たような境遇だからな」
「え?」
「うちのパーティの連中も、もれなく揃って罠にひっかかりやがった。今頃入り口で、そっちの連中とバッタリ会ってるんじゃないのか? ったく、使えない連中ばかりだぜ。なんで俺の雇い主は、毎度毎度バカばかり揃ってるんだか……」
呆れたように唇を歪め、吐き捨てるようにつぶやく。
その言葉に、ゾラ大臣を思い出す。
そういえば確かにあの人も、見事に使えない上司だったよねぇ……
わたしは思わず含み笑いをもらしかけ、ふと思い出す。
この人、いま、ギアとパーティ組んでるんじゃなかったっけ?!
「ねえ、ダンシング・シミター、今あなたはギアと」
「いない。残念ながら」
わたしの言葉をひったくるように否定するダンシング・シミター。
長い脚を折り曲げるようにして胡坐をかくと、ニヤっと笑ってみせる。
「ま、ギアじゃないが我慢しろ」
「そっ………」
いや別にギアにいてほしいわけじゃ……って、そもそもいないんだから。
何をひとりで焦ってるの、わたしってば。
彼は、おたおたしているわたしの気も知らず、素知らぬ顔で背負い袋から何かを取り出すと、こちらに放った。
受け止めるとそれは、冒険者にはお馴染み、薬草入りのチョコレート。
「食っておけ」
「あ、はい」
助かる。お腹すいてたんだよね。
自分も持ってるとはいえ、ここへ来るまでに結構食料は消費しちゃってて、残り少ないし。
ありがたく口に入れると、疲れのとれる甘さと、ほんのり苦い薬草の風味が口の中に広がった。
同じようにチョコレートを頬張る、ダンシング・シミターの横顔を眺める。
褐色を帯びた色の、精悍で野生的な顔立ち。
大きくてくっきりとした目は、目の前の地面に置いたポタカンの炎に向けられ、その表情は至極落ち着いている。
とりあえずは、多少モンスターが出ても、この人がいれば大丈夫でしょう。
ダンシング・シミターの剣技の凄さは、何度も見てるしね。
安心したのとお腹が落ち着いたのとで、ついぼーっとしていたわたしに、彼は横顔のまま促した。
「暇だな。何か話せ」
「は?」
きょとんとするわたし。暇、ってねぇ。
まあ確かに、何もすることがないといえば、そうなんですけど。
「何かって言われても」
「お前、ギアとはあれっきりか」
……暇だからって、それを聞きますか?
動揺を隠し、唾を飲み込んでゆっくりと答える。
「お、終わったことよ」
「始まってたのか?」
うっ。
詰まるわたしに、かんらかんらと笑うダンシング・シミター。
「面白い女だな、お前」
「あ、どうも」
ほめられてるんだろうか?わたし。
微妙に首をかしげていると、彼はチョコレートの包みを指先で小さく畳みつつ、思いもよらないことを言った。
「お前達、なかなか似合いだと思っていたんだがな」
「え、そ…う?」
「ああ。あの時、なぜあいつを振った?」
口調はとても淡々としているのに、どことなく優しさを滲ませた笑顔が、斜めにこっちに向けられている。
なんだか、すごく意外。
この人、こんな顔もするんだね。
見たことのない表情に釣り込まれ、ついぽろっと口が滑った。
「……本当は、ついて行きたかった…わよ。………好き、だったもん」
「ほぉ。女ってのは、好きでも男を振れるもんなのか」
「そうよ。好きだったけど、ね」
つとめて何気なく答えてみせる。
そう、もう過去だから。踏み込まないでほしい。
忘れられなくて、でも忘れようとしてきた気持ちだから。
「過去形だな」
「うん。過去」
わたしは、炎をじっと見つめて頷いた。
その視界が、唐突に遮られる。
つと目の前に伸ばされたダンシング・シミターの腕。
長い指が、無遠慮にわたしの首元をまさぐった。
「ひゃ、何っ」
思わず首をすくめると、鼻先に引っ張り出されていたのは、服の下に着けていたペンダント。
天使が赤く輝く宝石を抱いている、かわいらしいペンダントトップ。
そう。ギアにもらった………あのペンダントだった。
「過去ではない、ようだが」
「……」
思わず目を泳がせてしまう。
「……あいつ、さらってしまえば良かったものを」
嘆息したダンシング・シミターは、ペンダントから指を離すと、わたしの髪にふれた。
ピクン、と耳元に震えが走る。
「まだ、好きなのか」
「かか、簡単に忘れてしまえたら、楽なんだけどねっ」
頬にかあっと血が上る。
痛いところを突かれて、でも否定出来ない訳で、わたしは半分やけっぱち気味に叫んだ。
そんなわたしを見て、ダンシング・シミターは呆れたように笑い。
何の前触れもなく、ごつい腕を髪から肩に滑らせると、わたしをぐいと抱き寄せた。
「なっ……」
「健気だな。気に入った」
突然のことに、わたしの体は抵抗らしい抵抗もできないまま、逞しい腕の中にすっぽりと納まっていた。
焦ってダンシング・シミターの顔を振り仰ぐ。
白目のきれいな目が細められ、深く輝く瞳が、一瞬強い光を放つ。
かと思うと、逃げる間もなく唇が降ってきた。
「んんっ!」
強引に押し付けられる彼の唇が、わたしの唇を押し開き、熱い舌がぬるっと差し入れられる。
それはわたしの口の中を、貪るように激しく動き回った。
ささやかに抵抗しようとするも、抱き締められて身をほどくこともできない。
「………はっ」
唇が離れた途端、胸苦しさをほどくように息を吐く。
早い鼓動が、ドクドクと耳の奥で響いてる。
その鼓動に重ねるように、張りのある声が耳たぶに向かって囁いた。
「俺の女になれ」
その囁きはわたしの耳を甘くなぞり、耳孔にねっとりしたものが這い込んできた。
「ひぁっ」
ダンシング・シミターは、身を堅くするわたしを力強く抱きすくめ、耳から首筋を長い舌に舐め伝わせる。
背筋をぞくぞくするような快感が走り、思わず仰け反ってしまうわたし。
胸元に舌が這い降り、同時に大きな手がスカートの中に忍び込もうとする。
「や、やだぁ!やめてっ!!」
太い腕を精一杯叩き、必死に身をよじる。
じたばたさせた頭が、偶然ダンシング・シミターの顎にがん!と当たった。
「いててて………」
彼はわたしを片手でがっちりと拘束し、残る片手で自分の顎を撫でた。
きれいに整えられた顎鬚。
しきりにその脇を撫でつつ、にやにやと笑う。
「手ごたえがあるな。ますます気に入ったぜ」
ダンシング・シミターは、顎から手を離すと、両手でわたしをさらに強く抱いた。
わたしの目の前には、鮮やかで澄んだ瞳。
人を食ったような笑いから、一転して真面目な顔が問いかける。
「いつまでも、あいつの残像に囚われてるつもりか?」
「そんなつもりじゃ………」
口ごもってしまうわたし。
好きで……囚われてるわけじゃないもん。
気持ちのやり場に困って、思わず目を伏せるけれど、そこをぬっと覗き込まれた。
強い眼差しが、まっすぐにわたしを見つめる。
「悪いようにはせん。………お前にあいつを、忘れさせてやろう」
……それはわたしにとって、例えようのない甘言だった。
忘れられるなら、忘れたい。
そう思い続けながらも忘れられなくて、ずっと時を重ねてきた。
この引きずってきた甘苦い想いを解放してやるという、それはそれは誘惑される言葉。
一瞬揺らいだわたしの気持ちにつけ込むように、ダンシング・シミターは手を伸ばした。
太ももの上を生き物みたいに這い回る、大きな手。
「や…ぁんっ」
「……細いと思ったが……意外に」
ダンシング・シミターはそこで言葉を切った。
くっきりとした陰影を刻んだ口元が、ニヤリと笑う。
つと、ごつい指が素早く這い込んできた。
強く閉じていたつもりなのに、いつの間にか力の緩んだ、わたしの脚の間に。
「あ……っ」
下着の上から、その部分を撫でさする指。
びくっと震えた体は、その愛撫に徐々に強張りを抜かれていく。
彼の指が動くたび、濡れた下着の薄い布地が、わたしのそこにしっとりと纏いついた。
「……は……ぁ…んっ」
「随分と濡れたな」
ダンシング・シミターは独り言のようにつぶやくと、すっかり力の抜けたわたしの両脇に手を差し入れ、軽々と持ち上げた。
自分の胡坐の上に、わたしをゆっくりと下ろすと、膝を割って大きく脚を開かせる。
わたしは頬にまた血が上るのを感じたけれど、もう抵抗する力はない。
半分あきらめ、残りの半分は、この屈強な男に説明できない魅力を感じ始めていた。
厚い胸板にもたれかかって身を預ける。
こめかみに頬に唇に、ダンシング・シミターの端正な唇が降りかかった。
くすぐったくて熱くて、ついこぼれる、鼻にかかった吐息。
「んっ……」
その声に彼は目を細めて微笑み、アーマーの隙間から胸を揉んでいた手も、ゆっくりと脚の間へと滑らせる。
片手がわたしの下着をくい、と引っ張る。
広げた隙間から、残りの指が滑るように入り込んできた。
「あぁ!や……あぁんっ」
ぴちょっ、という音を連れて、液体がじわりと溢れ出す。
ダンシング・シミターの無骨な指は、その雫を逃さずなすりつけるように、秘部の襞をぬるぬると蠢いた。
「ん、あぁ……ぁん……っ、あっ」
わたしの喘ぎを確かめるように、慎重に続けられていた愛撫。
花弁をほぐすように、ひとしきり縁を撫で回していた指は、突如として乱暴に、前触れなく奥まで押し込まれた。
「ぁうっ」
「ふーむ、処女か。その割に感度がいいな」
感情を全く乱さず、淡々と話しながら指を動かすダンシング・シミター。
その指の腹が襞と襞を割り裂くように動き、一番敏感な芽を爪先で引っかく。
「あぁ、ん……や、やぁっ、んっ」
「イイだろ?ここが。ん?どうだ?」
「ん、ぅんっ…やっ」
手を止めることなく、彼はわたしの耳に甘く囁き続けた。
初めて感じる快感が、とろりとにじるように膣の奥を這い登り、熱っぽい疼きが止まらない。
容赦なく責め立てられたそこは、充血して熱く、途切れることなくとろとろと愛液を垂れ流している。
「そろそろ……イクかい?」
舌なめずりするように唇を舐めたダンシング・シミター。
膣の中に太い親指が、ずぶずぶと根っこまで押し込まれた。
「ん……くっ」
その指をぬちゃぬちゃと出し入れしながら、もう片手の指が、ぷくりと膨れたクリトリスを、小刻みに擦った。
「ひっ…あ、や…ぁうっ、だ、めえぇっ……!」
悲鳴のような喘ぎが、洞窟の狭い天井に反射する。
体中が昂ぶって、まっすぐ体を起こしてなんていられない。
わたしは、後頭部を逞しい胸にぐいぐいと押し当ててのけぞった。
ダンシング・シミターは、グラグラするわたしの上体をしっかりと支えると、指先を磨り潰さんばかりに激しく動かした。
「かまわん、イってしまえ」
「や、や……やああぁぁんっ!!」
脚の間から脳天を突き抜けるような快感に、天井を仰いでぎゅっと瞳を閉じる。
パシン!!と弾けるように、瞼の裏が白っぽくスパークした。
視界で散らばっていった銀の欠片が落ち着くまで、どのくらいの時間がかかったんだろう。
弾む息を飲み込みながら目を開けると、すぐ間近に、わたしの顔を覗き込むダンシング・シミターの顔があった。
「大丈夫か?」
「う……ん」
「余程良かったようだな。一瞬気を失ってたぞ」
彼は満足そうな笑顔を浮かべると、完全に脱力しきったわたしの脚を持ち上げた。
されるがままのわたしの、ぐっしょりと濡れた下着を、引き剥がすように脱がせる。
ぼと、っと重く湿った音をたてて床に落ちる、丸まった白い下着。
わたしはそれを他人事のように眺めながら、乱れた呼吸を切れ切れに吐き出していた。
筋肉の盛り上がった腕が、またわたしをひょいと抱き上げた。
そのまま体をくるりと回され、向かい合うように膝の上に座らされる。
ダンシング・シミターは、わたしの顔をねめつけるような視線で見つめながら、ゆったりしたズボンの前を探り、自分のものを掴み出した。
「見てみろ」
言われるがまま、自分の開かされた脚の間に目を落とす。
そこには、きつく欲望を漲らせた、血管の浮き出したものがあった。
初めて見るそれは赤黒く長く、反り返るような角度でそそり立っている。
ダンシング・シミターは、わたしの額に唇を寄せながら、低く艶っぽい声で言った。
「お前が欲しいと。お前の中に入りたいと泣いている」
「そ……うなの?」
「ほら、涙だ」
先端の部分についた液体を指に擦り付け、わたしの口の前に差し出した。
おそるおそる舐めると、ほのかに苦い味がした。
彼は、眉根を寄せるわたしの髪を両手でかき上げて、少し笑った。
その手は肩から腰にそって降りてくると、両脇からお尻を抱え上げ、わたしの体をまっすぐ持ち上げた。
わたしの秘部を確かめているのか、自分の腰をまわすように動かし、襞と襞の割れ目に男根をあてがう。
思わず腰が引けそうになるけれど、がっちりと掴まれて身動きすることもかなわない。
「もう、逃がさないぜ。深呼吸しろ。痛いぞ」
半月形の口の片方をくいと上げた、ダンシング・シミター。
わたしはその強い眼差しに負け、おとなしくその言葉に従い、大きく息を吸う。
胸に溜めた息を吐き出すのに合わせ、彼のものはゆっくりとわたしの中へ埋め込まれていった。
合わさる物同士を無理矢理割り裂くような、めりめりっという衝撃が体の中心を襲う。
「っく、い…たいっ、い…痛ぁ……っ」
「わかった。ゆっ…くり、呼吸しろ」
体の深部をえぐるような痛みに、我知らず、助けを求めるように手が泳いだ。
無意識の指先が触れたのは、目の前の逞しい上半身。
堅くて厚みのある肩に、倒れこむようにしがみつく。
ダンシング・シミターは首を傾け、わたしの汗ばんだ耳にキスした。
「ぁん」
耳元から首筋を執拗に舐める舌が、痛みをとろりと溶かしていく。
引き締まった腰が密やかに揺らされ、男根はわたしの内部をごく緩慢な動きで擦った。
苦痛の上に、シフォンのようにふわっと被さる快感。
「っは…ぁ…ん……ぅん……」
「お前のここには、俺のものしか……入ってないぞ」
抑えきれない情熱を吐き出すように、ダンシング・シミターは低く囁いた。
「後は忘れろ。これだけ」
彼はそこで言葉を切ると、腰を思い切り突き上げた。
「ああぁっ!!」
どく、っと重く体内を貫く、張り詰めた堅いもの。
わたしの蕩かされた肉襞をぬめっと押し開く。
躍動的に、力強く腰を動かすダンシング・シミター。
力を込めた腹筋はくっきりと割れ、弁髪の長い毛先がリズミカルに揺れる。
「あぅ、んっ、ん……あ…ぁああっ」
「俺に、抱かれた、ことだけ……覚えて、おけっ」
彼は、腰を突き込む度に乱れる、荒い呼吸の合間に言葉をつないだ。
濡れた襞はひくつき、彼自身をすっぽりと咥え込んでいる。
火照った膣の奥底をずく、ずくん、と突き上げられ、体中の血がそこに集まっていくみたい。
わたしはダンシング・シミターの太く頑健な首にすがりつき、魂を吐き出すように声をあげた。
剃りあげた頭のすべすべした感触を感じながら、わたしの意識は遠のいていった。
どうしてこんなことになったのかなあ……
しみじみと、なんとも不思議な感慨に浸る。
あの後気がついたら、ダンシング・シミターの膝枕で寝かされていたわたし。
目が覚めた途端、思わず焦って飛び起きた。
だって、あのぎょろ目がじぃっとこっちを見据えてるんだもん。そりゃびっくりしますって。
飛び退るように彼から離れ、俯いて乱れた服を直す。
傍らで胡坐をかいて腕組みしていたダンシング・シミターはゆっくりと立ち上がると、腕と背筋を伸ばして伸びをしながら言った。
「俺は浮気はせんぞ。お買い得だ」
「はぁ?」
何言ってるの、この人。
ぽかんとしているわたしに、ニヤリと不遜に笑うダンシング・シミター。
「しかも、剣の腕には自信がある。少なくとも、今のギアには……負けんつもりだがな」
「……って、あの」
「なにか問題でも?」
顎をくいとしゃくり、横柄に聞き返される。
そんなこと言われても、どうしろと。
真剣に考え込んでしまうじゃありませんか。
「ま、後足りないのは髪くらいか」
つるりとスキンヘッドをなで上げて、難しそうな顔がつぶやく。
思わず、ぷーっと吹き出してしまうわたし。
顔だけ振り返ったダンシング・シミターは、不機嫌そうに文句を言った。
「あのな、一応言っとくが。俺のこの頭は別に禿げてるわけじゃない! 剃ってるんだ!!」
「あ、そうなの。剃ってるのね、くくくっ」
「…笑うな」
そんなの無理です。駄目だぁ、どうにも笑いがとまんない。
この人の笑い上戸じゃあるまいし、ヒーヒー言いながらお腹を抱えるわたしに、彼は額に青筋をたてて怒鳴る。
「だから笑うなと言ってるだろう!!」
ダンシング・シミターは、真っ赤な顔してあっちを向いてしまった。
いかんいかん、笑いすぎかしら。
笑い涙を拭いていると、ふい、とスキンヘッドが振り向いた。
もういつものシニカルな表情に戻っている。
この人って、けっこう表情豊かなのね。笑ったり怒ったり、最初の印象とはえらい違いだ。
「お迎えが来たぞ」
「え!?」
本当だ。
遠くの方から、わたしの名を呼ぶ声が微かに聞こえる。
それはダンジョンの壁を伝わるように響き、だんだんと近付いてくるようで、わたしは嬉しくて色めきたった。
「よ、よかったぁ……」
「もうひとりでも大丈夫だろう。俺は行く」
「え?」
背負い服を担ぎなおし、地面に置いていた曲刀を、背中の鞘にかちんと納めたダンシング・シミター。
馬の尻尾みたいな髪をたらした後頭部に、慌てて問いかける。
「ダンシング・シミター、あなたのパーティは?待ってたんじゃないの?」
「俺のパーティの連中は来んさ。あいつらとは、はぐれた時点で別行動にする、とダンジョンに入る前に決めてあったからな」
「じゃあ………どうして?」
一瞬の間の後、ダンシング・シミターは体をこちらに向けた。
身を屈め、長い指でわたしの顎を摘んで、軽く持ち上げる。
浅黒い顔の中でひときわ綺麗な、澄んだ白目。
鋭利な刃物みたいな凛然とした眼差しが、わたしを真正面から見据えた。
「気に入った女には、ボランティアくらいするさ」
「それって、あの…っ」
わたしの言葉をみなまで聞かず、くるりと向けられた広い背中。
「またいつかどこかで逢うだろう。必ずな」
笑みを含ませたような、よく通るはっきりとした声。
そして彼は、長身を翻して通路の向こう側へと消えた。
わたしは、その残像を見つめて立ち尽くし、たった今立ち去った男に思いを馳せた。
風のようにやってきて、駆け抜けていった男。
また、巡り逢うことがあるんだろうか。
間遠に聞こえていたクレイたちの声が、すぐ近くまで聞こえてくる。
わたしはなにかを振り切るように、思い切り大きな声で皆の名を呼んだ。
---------------------
完結です。
スレ殺陣乙
スレ立て乙
…つーか、ありえないカプかもしれんがかなり良かった
未来を感じさせる終わり方で妙にドキドキしちまったよ
>1乙
つ[保守]
18 :
書人:2006/08/18(金) 09:27:36 ID:8PeYhX8N
いつも御読み頂き感謝。短編を投下に参りました。
御品書きです。
カプはギア×レスター・ウィッシュで、話は少しダークです。
(レスター:エベリン特別警備隊幹部の、巨乳眼鏡の姐さん)
あえて見慣れないカプです。軽いお茶請けにどうぞ。
受け付けない方はスルー願います。
目の前の女が、ゆっくりと細い眼鏡を外す。
カタンと音を立てて、それをベッドサイドのテーブルに置く。
細く白い手がするりと伸び、俺の頬を撫で、首元に巻きついた。
魚の鱗を連想させる、どぎつく光る爪。
まるで……女郎蜘蛛だな。
内心冷めた感想をもらす。
寝そべる俺の上に、熟した果実のような体がのしかかり、上目遣いに見上げる。
揺らめく瞳に浮かべた欲情。
人を食ってきたかのような、真紅の唇が吸い付いた。
「今日も行くのか」
首だけで振り向いた、弁髪の男。
鋭い眼差しで流し目をくれるのは、ベッドの上で胡坐をかいて曲刀を手入れしていた、俺の相棒。
「ああ」
「御執心だな」
「呼ばれたから行くだけさ」
「ふーん……」
器用に片方の眉を、くいとあげてみせるダンシング・シミター。
呆れたような浅黒い顔に、薄く乾いた笑いを返すと、部屋を出た。
特別警備隊本部の長い長い廊下に、響き渡るブーツの足音。
一番奥の木製の扉を、控えめにノックする。
暫しの間をおいて開いた扉の向こうに、黒髪の女が姿を見せた。
細いフレームの眼鏡の奥の、長い睫毛にふちどられた瞳が、静かに微笑む。
―――特別警備隊幹部、レスター・ウィッシュ。
「お入りなさいな」
俺は部屋に足を踏み入れ、後ろ手で木製のドアを音もなく閉めた。
すかさず女が張り付くようにすがりついてくる。
ひとしきりその抱擁を受け止め、おざなりに艶やかな黒髪を撫でると、芍薬のような甘い香りが強く漂う。
「遅くなった」
感情を込めない声でつぶやく。
俺の胸に頬を寄せたレスターは、とろりとした眼差しを投げかけた。
「お待ちしてましたわ」
順序の決まった儀式のように、豊満な体を抱き上げると、部屋を横切ってベッドへ運び、やわらかな光沢を放つ、シルクのシーツの上に下ろす。
レスターは黒髪を枕に散らばらせて横たわり、俺の腕をひくと、自分の傍らを指し示した。
揺らめくランプに照らされる、妖艶な微笑み。
ベッドの上以外では決して外さない、眼鏡の弦に細い指がかかった。
股間から、じわじわと伝わる快感。
レスターの形のいい唇は大きく開かれ、俺自身を根元まで咥え込んでいた。
じゅぼ、じゅぼっとぬめりを伴う音が、静かな部屋に響き渡る。
床に散らばるのは、つややかな黒いレザーアーマーと、申し訳程度に肌を隠していた服。
手の届くところにある、ぷるんと重そうに揺れる乳房に手を伸ばす。
「やあぁん」
嬉しそうな嬌声をあげた口が、咥えていた肉棒を離す。
こぼれおちそうに大きいレスターの胸は、俺の比較的大きいはずの手のひらを持ってしても包みきれず、巨乳と呼んで差し支えない。
実のところ、豊満な胸はあまり好みじゃないが、指が埋まりそうに柔らかな乳房の感触は悪くはない。
白くきめの細かい餅肌は、しっとりと薄く汗を浮かばせ、俺の肌に吸い付いてくるようだ。
むにゅっと胸を掴み、指から溢れる部分を追いかけるように、全体を揉みしだく。
「はぁ……ん」
レスターは俺に胸を弄ばせながら、手で男根をしごき続けていた。
時折、ぷるんと張りのある唇を、滴を帯びた俺の先端に這わせながら。
上下に手を擦りあげる度に、張り出した笠の部分を押し上げるように引っかかり、鈍い快感が走る。
締まった足首を軽く握って引き寄せると、レスターはくふっと喉で笑い、滑るように体を移動させた。
四つんばいで俺の上に跨った女。
俺の目の前には、白くてむっちりとした尻。
ぱっくりと口を開けたスリットの奥をまさぐると、粘り気のある液体が俺の筋張った指を汚した。
「あ、うぅん……」
手のひらを上に向け、揃えた3本の指先を、躊躇なく秘部に潜り込ませる。
「あぁっ!!」
悲鳴のような高い喘ぎと同時に、すらりとした背中が反り返る。
俺の指をすっぽりと咥え込む、熱くじっとりとした肉厚の唇。
折りたたまれたパイの断面のような感触が、埋めた指の表面をザワザワと蠢く。
俺はぐちゃぐちゃと内部をかきまわし、手を下向きに返すと、親指の先で肉芽を掘り出した。
「あ……あぁ…そこ、ですわ……いい……っ」
悶える女の興奮に反比例するように、胸の奥は冷え冷えとしていく。
それなのに、手でしごかれているソレは、ますます怒張し、堅く立ち上がっていた。
どうしようもない矛盾。
認めたくない欲情。
その思考を振り払うように、差し込んだ指をぬぷっと引き出すと、俺を跨ぐ両足の間から体を抜いて身を起こした。
四つんばいのままのレスターは、背後に膝立ちした俺を振り返り、突き出した尻をせがむように揺らした。
汗ばんで火照った顔は情欲に侵されていて、半開きの唇が甘ったれたような声を漏らす。
「もっと…もっと愛してぇ………」
お前など愛してはいない。
思わず言葉に出しそうになるのを噛み殺し、弾力のある尻を両手で掴み、ぐいと押し開く。
卑猥な色に染まり、俺の男根を待ち焦がれてよだれを垂らすそこに、俺は一気に腰を突きこんだ。
「あああっ!!いいっ……いいわっ!!」
「く…っ」
熱に浮かされたように、黒髪を振り乱して喘ぐレスター。
肉棒を出し入れする度に、生ぬるい体液が飛び散り、シーツに新たな染みを作る。
俺は激しく腰を打ちつけながら、はしばみ色の瞳を思い浮かべようとする。
しかし、脳裏をかすめる清らかな笑顔はすぐにぼやけ、視界に入るのは目の前の淫乱な女だけだ。
求めるものはこの手にない。
俺を求めてくるのは、欲しくもない女ばかり。
―――しかし。あえて流されているのは自分だろう?
拒むのも面倒だからと、心もなく女を抱き続けているのは自分だろう?
ならば。
天井を仰いで目を閉じる。
そして、ともすれば胸を渦巻くやり場のない惑いを、胸の奥底にまで沈めた。
俺が今すべきことは、この女が満足するまで精を提供してやることだ。
静かな闇を裂いて空気を震わせる、雌犬の声。
俺はそっと首を振って、重く濁った吐息を吐き出すと、獣の姿勢で女をひたすらに犯し続けた。
----------------------
完結です。
タイトル:2が被りました。失礼しました。
24 :
書人:2006/08/22(火) 12:50:18 ID:qiq0LvMq
いつも御読み頂き感謝。投下に参りました。
御品書きです。
カプはトラップ×パステル。
前提恋人、ラブラブとろとろです。
ほんのいたずら心のつもりだったんだ。
いつもボケっとしてるあいつを、ちょっとからかってやりたくなっただけ。
魔が差しただけだった、のによ。
徒歩で、けっこう近場のクエスト。
珍しく無事にお宝――といっても知れたモンだが――をゲットして、ほくほくしながらの帰途。ズールの森も出口に差し掛かった頃の事だった。
もう罠だのモンスターだのを警戒する必要のない気楽さから、俺は隊列の一番後ろをちんたら歩いていた。
腹減ったなー、今日は猪鹿亭で何食うかなーと考え事をしていた折。
ふと視界に入ったのは、すぐ前を歩いている迷走マッパーパステルの後姿。
いや、目の前歩いてる以上、ずっと視界にはいたんだがよ。当たりめえだ。
そうじゃなく目に付いたのは、その背中のリュックのポケットから、にょきっと生えたように飛び出しているタオル。
それは、シンプルな柄の、俺とお揃いの……ハンドタオル。
この前何を思ったか、真っ赤な顔をして俺に同じものを渡したパステル。
しおらしくそっと渡すならまだしも、短刀突き出すみてえな手つきで突き出すもんだから、俺は度肝を抜かれ、半分身をかわして逃げの姿勢に入った。
「あんだよ、何物騒なモン出すつもりだぁ!?」
はからずも声が上ずっちまう、俺。
それを聞いたパステルはがっくりと頭を垂れつつ、俺の後頭部を景気良くぱかーんと叩きやがった。
「いてぇよっ」
「殴ったんだから当たり前でしょ! それよりこれ!」
俺の胸あたりに、ずいずいとさっきのブツを押し付けられ、場の勢いで思わず受け取る。
いったい何のつもりだとよく見ると、それは小奇麗なタオル。おそらくは新品。
――その右隅には、”T”の文字。
それが、明らかにこいつによる手刺繍だと気づくのに、そう時間はかからなかった。
ええと……いつもの軽口も出てこねえ。問いかける言葉もうまく見つからないまま、傍らのパステルを見やる。
その眼が多少泳いでいたのは、この際気にしねえでくれ。気のせいだ!
「あのねぇ、お揃いなんだよ」
照れくさそうにそっぽを向いて、でもどことなく嬉しそうに言うパステル。こいつ……
「だ、大事に使ってよねっ」
つんと尖らせた唇。ルーミィ顔負けに、色艶よくりんご状態の頬っぺた。
……畜生。可愛い。可愛すぎじゃねえか。
さすがはこの女、俺が選んだだけのことはある。よくやった俺。快挙だ俺。
内心自分を褒め倒しながら、精一杯のポーカーフェースを装い、はちみつ色の頭をぽんと叩く。
「しゃーねえな、使ってやらあ」
あえてパステルの方を見ないようにしたのは、ニヤけきった顔を見られたくなかったからでも……あった。
で、場面をズールの森に戻すと。
その揃いのタオルが、目の前に、プランプランぶら下がってやがったんだよな。
さっきの小川で顔洗った時に、そのタオルを使って顔を拭いていたパステル。
見るともなしに見ていたそれには、俺の”T”と同じ位置に、”P”の刺繍がしてあった。
そんなことを確認しただけで、そのへんを走り回って喜んじまいそうな、単純な俺がいるわけだが……
いかんいかん、へらっと溶ける顔を重力に逆らって引き上げる。
口元の笑いを噛み殺しながら、目の前で揺れているタオルを眺めているうち、ついついいらねえコトを考えちまうのが俺って人間なわけだよ。
慣れた帰り道だというのに、マップ片手に一心に歩くパステル。
方向感覚というものをどこかに忘れてきたマッパーとしては、毎度毎度しつこいほどマップを眺めるのがこいつの習慣になっている。
いいことだ。俺の教育が実を結んできたとしか思えねえ。
うんうんと頷いて何気に感慨に浸りつつ、おもむろにぶら下がったタオルをすっぽ抜いてやる。
「んなプラプラさせて、落としてえのかよ。これ、もーらいっと」
「えっ、ちょっと、返してよぉっ!」
本気で取り上げるわけでもあるまいに、必死に俺の手に取り付こうとするパステル。
その焦った形相があまりに笑え、つい俺は調子に乗った。
タオルをひらひらと振り回してみせる。
「ほれ、届かねえだろー」
「んもうっ! 返してってばぁ!!……あ!!」
突然の突風。
いや、たいしたことはなかったんだろう。
しかしその風は、指先で摘むように持っていたタオルを、一瞬にして飛ばすには十分だった。
風に乗るようにひらりと舞い上がったタオルは、そのまま頼りなく空中を泳ぎ、茂みの向こうに姿を消した。
「きゃあああ!! ちょっと、ちょっとトラップーー!!!」
尻上がりに絶叫調になるパステルに、今まで他人事を決め込んでいたパーティの面々が、やれやれと言った風に振り向いた。
連中の呆れたような態度に見向きもせず、一直線に茂みに突っ込んでいくパステル。
っておいこら、やめねえかっ! おめえが我を忘れて走り出すと、100発100中迷っちまうんだ!!
慌てて追いかけた俺の眼に飛び込んできたのは、がっくりと肩を落としているパステルの姿。
そのあまりと言えばあまりに悲壮な後姿に、かける言葉を失う俺。
「えっと……」
「……どっかいっちゃったぁ……」
半べそのパステルの傍で、己の居場所を見失って立ち尽くしていると、どやどやと戻ってきた連中が、俺たちを包囲するように取り囲んだ。
うーん、まじい。この展開はとてつもなく、まじい。
過去幾度となく、己の愚行のせいで感じてきた身の危険。
今またそれが、ヒタヒタと静かに忍び寄ってくるのを感じた俺は、静かに静かに後ずさった。
その背中が何かにドッと突き当たる。振り向けばそこには、逃げ道を塞いだ無口な巨人。
げっ。
思わず振り仰ぐと、にっこりと笑うノル。いや、笑ってねえ。その目が笑ってねえ!!!
心底震え上がった俺に、ため息をつきながらキットンが言った。
「まったく、なんであなたはそうやって、いらない事ばかりするんですか? やっとシルバーリーブに到着しようかというのに!」
「いや、その……」
いつもなら軽く切り返し、首のひとつも絞めてやる所だが、今日はボケ農夫の言葉にも反論の余地がない。
「キットンの言うとおりだ、トラップ。早いとこ探して来い」
「わ、わかったよ」
そう言ったのは、いつもと変わらず呆れたような笑顔のクレイ。……確かに笑顔が浮かんでは、いる。
しかし、何か言いたそうに握ったり開いたりされている、鍛えられた手。
今にも俺の首根っこを掴みあげそうなその手に、俺は目先の安全が第一と、愛想笑いを浮かべておとなしく頷いた。
俺に続き、あたりを這い回るパーティ一同。
全員総出で茂みからその向こうの小川にまで踏み込み、あたり一面をくまなく探す。だが……あのハンドタオルは出てこなかった。どこをどう探しても。
「……ねえな」
「ないわけないだろ。あるはずだ。お前が飛ばしたんだからな」
はい、おっしゃるとおりです。
一緒に探していたクレイの、この上なく冷ややかな言葉に、うんうんと頷きながら追い討ちをかけるノル。
「パステル、かわいそうだ」
俺もかわいそうだよ、ノル。
そんなにひでえことをしたわけでもないのに、これだけ吊るし上げられちまって……
……ちっとは哀れと思うなら、切々と訴えるような、その眼差しだけはやめてくれ。
我知らず落ち込む俺をさらに蹴り落とすように、俺を真っ直ぐ見上げるルーミィの、完結極まりない一言。
「とりゃーがいけないんだおう!」
「トラップあんしゃん、もっと探すデシ!ボク、お手伝いするデシ!」
そして、励ましてくれているつもりであろう、にこにこと言うシロ。
……すまん。その励ましは、今何の役にも立ちそうにねえ。これだけ探してねえとなぁ……
返答に詰まり、半笑いするしかない俺に、キットンがさっくりと決定打を放った。
「どこに行ってしまったんでしょうねえ……あぁ、パステルも気の毒に。トラップがあんなことさえしなければ!!」
……見てたのかよと言いたくなるような、リアルかつオーバーな嘆きっぷり。
ほとんど関係のないはずの癖して、図に乗って俺を口撃してくる腐れ農夫にカチンと来た俺は、長い足で蹴りを一発。
背後からやかましく叫ぶ抗議の声をBGMに、俺は頭をわしゃわしゃとかき回した。細い赤毛がもつれ指にまとわりつく。
やむを得ねえ。いつになく素直にがばっと頭を下げる。
「すまねえ、パステル。新しいの買ってやっからよ」
「……いいよ、もう」
赤い眼をしたパステルが、あからさまに無理してます、という顔で笑った。
「気にしないでよ、トラップ」
その痛々しげな、ひきつったような微笑み。
比較的図太いはずの俺の胸が、ズキズキと痛みを訴える。
「さ、帰ろうよ!わたし、お腹すいちゃった」
「ぱーるぅ、いいんかぁ?」
心配げに問いかけるちびっこエルフを、話をそらしてごまかすパステル。
「いいのいいの、さ、今日何食べよっか?ルーミィ!」
「えっとね、えっとね、ルーミィ串焼きがいいおう!」
そのまま2人は手をつなぐと、俺達を置いて歩き始めた。
俺をちらりと見て軽くため息をつくと、シロを肩に乗せて、早足で追いかけるクレイ。後を追うキットン。
大きな大きな手が、俺の肩をぽん、と叩いた。
……無意識にとどめを刺してる自覚はあるのか?ノル。
俺は、奴らの後姿を見やり、目を閉じて短く逡巡した。
疲れているのは山々だ。とっとと帰って、冷たいビールでもかっくらいてえのが本心だ。しかし。
瞼の裏をよぎるのは、何気に痛々しいパステルの笑顔。
このまま放っとくわけには……いかねえよなぁ、やっぱ。
もうこうなったら、腹くくれ、俺!ちっくしょう、俺のバカ野郎!!
「おい、おめえら、先帰ってろ!」
少し先まで歩いていった連中に向けて、怒鳴る。
顔だけ振り向いたクレイが、言われなくても、と言いたげな呆れ笑いを見せ、ひらひらと手を振った。
空には明るい月。
とっぷりと暮れた闇の中、月明かりと手元のポタカンを頼りに、草むらを這い回る。
ちくしょう、ねえなぁ……どこいっちまったんだか……
かといって手ぶらで帰った日にゃ、俺はもう二度と、パステルに顔を合わせられそうにねえし……
もしあのタオルが、実は各人1枚ずつ配布されてて、”K”だの”N”だのと手刺繍でもされてた日にゃあ、俺の立場とゆーものは、木っ端微塵に砕け散るんだが……
さすがにそんなことはねえだろう。いや、ないと信じてえが……そんな儚い希望的観測を胸に、俺はずっと屈めていた上体を起こした。
両手を腰にあて、メリメリ言いそうに強張った体を伸ばした時、目に入ってきたのは。
「あった……」
小さな川向こうの木の、高い枝にひっかかる、白っぽいタオル。
逸る心を抑えて小川を渡ると木によじ登り、ポタカンの明かりに照らして確認する。
それには紛れもなくあいつの手による、”P”の文字が刺繍されていた。
一気に脱力感が俺の全身を襲う。
ヘタヘタと座り込みそうになるのを気力で支え、俺はタオルをポケットにねじ込んだ。
下ばっかり近場ばっかり見てたからだろうが、ちょっと視界を広げて上見りゃわかったことだよなあ……くっそ、何でそんなことに気づかなかったんだか。
俺は間抜けな自分を呪いつつ、もはやこんなところに長居はごめんと、さっさと駆け出した。
ズールの森からシルバーリーブは、実のところ結構近い。
とはいえ、さすがに俺が戻ってきた時、月は天上をまわり、日付はとうの昔に変わっていた。
ったくよお、なんの因果でこんな事に……
ひたすらと己と己を取り巻く環境を呪う俺は、さすがに誰もいないシルバーリーブの街を足早に歩いた。
ようやく見えてくる、見慣れたボロ……いや、みすず旅館。
あぁ、もうとっとと寝よう。クエストあがりだっつーのに、こんな体力遣わされたんじゃかなわねえ。
重い足取りでみすず旅館の敷地内に踏み込んだ俺。その眼に飛び込んできたのは。
――パステルじゃねえか。
おめえ、何やってんだ?
半分呆れ、半分驚き、その言葉をぐっと飲み込んだ俺は、静かに静かに近付いた。
みすず旅館の玄関、閉まったドアの前で、膝を抱えて座り込んでいるパステル。
その顎は膝の上に乗せられ、こっくりこっくりと舟を漕いでいる。
……あぁ、こいつは俺のことを待ってやがったのか……
バッカだよなぁ、ほんとによ。
おめえのせいじゃねえのに。
俺は被っていた帽子を脱いで、胸の前でぐっと握り締めた。
細心の注意を払って物音を消していた俺だが、口をついて出た吐息はぬぐえなかったようだ。
微かな俺の呼吸に促されるように、はしばみ色の瞳が静かに開いた。
「……あにやってんだ、こんなとこで寝て。風邪ひきてえのか」
わかってんだけどよ、何もかも。
おめえがこんなとこで寝てる理由も、その気持ちも、ぜーんぶな。
だけど、今はあえてポーカーフェースを作らせてくれ。
ぶっちゃけおめえの健気さに……どうにかなっちまいそうな自分が怖え。
ほへ?という顔をしていたパステル。
目の前に立っている俺にようやく反応し、眼をこする。
「トラップ……?」
呆けたような声が、俺の名で問いかける。
「ほれ」
差し出した俺の手には、少し汚れたハンドタオル。
華奢な指が伸びてそれを受け取り、顔を寄せて刺繍のイニシャルを確かめる。
「あったんだぁ……」
「おう。…………すまなかったな」
滅多に、いやいつもなら口が裂けても言わない、謝罪の言葉。
ううん、と寝ぼけ眼のまま、首を横に振ったパステル。
淡い月の光を浴びた唇が、そっと動いて。
「ありがと」
パステルは俺の顔を見上げ、花がほころぶように笑った。
その笑顔に…………俺は負けた。
いとおしくていとおしくていとおしくて。
いいよな、今くれえ。怒んなよ。
屈みこんで細い腕を掴むとぐっと引き寄せ、腕に力を込めてぎゅーーーっと抱きしめる。
「え、な……」
眼を白黒させているパステルの唇を、唇でふさぐ。
「ん、んんっ!」
じたばたと身をよじるパステルを、動きを封じるようにさらに強く抱き、唇をぐいぐいと押し付ける。
日頃、表には出さねえようにしていた、パステルに対する気持ち。
だってかっこわりいじゃん? 俺様ともあろうものが、女にぞっこんだなんてよ。
でもさ。
間違いなく俺が悪りいのに、その俺をこんな時間まで待ち続けて。
文句を言うでもなく、いや、本当のところ言いてえんだろうが、許した上に礼まで言っちまうバカなおめえが、たまらなく、どーしようもなく……可愛い。
俺は柔らかな唇を解放すると、抱きしめていたパステルをえいやっと腕に抱え直し、すっくとその場に立ち上がった。
「トラ……ップ?あの……」
月明かりだけでもわかるほど、頬を赤く染めたパステルが、小首を傾げて問いかける。
「いいから」
俺はその言葉を封じると、パステルの足を抱えた方の手でドアを開け、身を滑り込ませた。
無人の真っ暗な玄関ホールを抜ける。
頭の中で忙しく空き部屋を選びながら、夜目が利くという盗賊属性を遺憾なく発揮し、暗い階段を一気に駆け上がった。 使われていないベッドに、ゆっくりと腕の中のパステルを降ろす。
――パステル。俺は、今日ほどおめえが愛しいと思ったことはねえよ。
胸の奥でつぶやきながら、埃っぽいベッドの上から俺を不安そうに見上げる瞳を、真っ直ぐに見返した。
――おめえに、もっと近付きてえ。
そして俺は、パステルを怖がらせないようにゆっくりと覆いかぶさり、未開の領域に足を踏み入れた。
「あ……んっ」
空気を震わせるように、高い声が喘いだ。
白い脚の間に這い込ませ、布越しに動かしていた指を、さらに小刻みに滑らせる。
俺の指先に押し出されるように滲み出た液体が、白い下着を透けそうに湿らせていく。
「や、ん……あ……あぁっ」
乱れた服。中途半端にはだけた胸元。
ボタンを外すのももどかしく、隙間から手を突っ込んだ不器用な愛撫。
全部脱がすだけの余裕もねえ、見るだけで十二分に興奮しちまってる……童貞。
そんな自分を少々情けなく感じながら、俺は慣れない手つきで、パステルの濡れた下着に手をかけた。
さすがにこれは脱がさねえと、入るもんも入らねえだろうし……
俺の意図を察したのか、赤い顔で俯きながらも、軽く腰を浮かせたパステル。
よじれた下着をぺろりと剥くと、まず白いて丸い尻が、そしてピンク色のソノ部分があらわになる。
俺は息を呑み、吸い寄せられるように顔を近づけた。
「ひゃ、ぁ、やっ……」
どこからどうやりゃいいのかいまいちわかんねえけど、とりあえず舌を出して全体を舐め上げてみる。
我ながらぎこちない舌の動きではあるが、パステルはピクンと腰を跳ねさせ、声を裏返らせた。
舌先を細めて合わさった肉襞を割ると、引っかかるのは妙に弾力のある突起。
「あ!あ……あぁっ、やぁっ、んっ」
俺の舌の動きひとつひとつに、過敏に反応するパステル。
細腰がタイミングを合わせるように、びくびくと上下に暴れている。
――自分の愛撫で感じる恋人。
それを目の当たりにした俺の胸の奥は、まるで握り締められたみてえに苦しくなった。
気持ちを反映したような体の中心部は、止めようなく固くなり、先端を濡らす。
パステルのそこに入りたがる自分を押しとどめ、チロチロと舌を動かし続ける。
結構……濡れたよな。もう入んのか?
舌を離さず、指を割れ目の奥へゆっくりと押し込んでみる。
「ぁうっ、あ、あぁ……あっ」
色っぺえ喘ぎ声が答えた。
ぬめる愛液が、俺の指を伝い、手の甲まで滑り落ちる。
指先で柔らかさを確かめるように、ぬぷん、と音をたてて襞を擦ると、そこは腫れたようにぷっくりとしてて……少なくともこれなら、大丈夫そうな気もすんだが。
体を起こしながら指を静かに引き抜くと、透明な液体が糸を引いた。
切なそうに眉根を寄せていたパステルが、ゆっくりとこちらに向き直った。
その吸い込まれちまいそうな、潤んだ瞳を見つめる。
「もう、いい……か?」
顔を覗き込む俺から、パステルは恥ずかしそうに目をそらした。
返事がないのが返事だろう、この場合。
もっともここで嫌だと言われちゃあ、俺としては心底困るんだが……
俺は余計な考えを振り払うようにまとわりつく髪をかきあげ、その手を細い脚に伸ばして抱え上げ、恐る恐る腰を進めた。
とろっとして熱い肉と肉の間に、ずぶっと割り込むような感触。思わず喉から息がこぼれる。しかし。
「や……あ、いたっ!痛い痛い痛いぃっ!!」
い、痛えのはこっちも同じだ。
血が出そうなほど爪立てた上、べしべし叩きまくりやがって!
歯を食いしばって痛みをこらえているらしい表情のパステル。
仕方ねえなぁ……落ち着くまで、しばし待とう。さすがにこれだけ痛がってると、そのまま続行しづれえし。
「わかった、わかったっての」
俺は理性を総動員し、一気に腰を動かしたいのを必死にこらえた。
鼻息が荒いだろうが、眼は血走ってんだろうが……そのへんは勘弁しろ。俺だって伊達に童貞じゃねんだから、我慢するので手一杯なんだ!
ふーはーと深呼吸しつつ、俺はパステルの中に入ったまま、じっとその細い体を抱きしめていた。
もうほとんど拷問。ある意味最強の寸止め。
とはいえ、パステルの辛そうな顔を見てると、無理矢理続けて泣かすのもはばかられた。
眉間に寄せたしわ。閉じた目尻には、うっすらと涙が浮かんでいる。
俺が体を動かさなくとも、中にはずっぽり入っちまってるわけで、それはそれで痛えんだろう。
痛みを逃そうと、にじにじと体をよじらせるパステルを抱く腕に、さらに力を込める。
しかし、入ってるだけでイっちまいそうな、この果てしない快感は何なんだ?
ゼラチン質に包まれてるみてえな、とろとろヌルヌルの触感。しかも熱っぽくてキツくて、入れてる息子が溶けちまいそうだ。いや溶けてはまずいんだが。
恍惚となる顔の筋を、どうにかこうにか引き締めつつ、俺は胸と下半身をたぎる情熱を込め、パステルの耳元で囁いた。
「も、俺我慢できねえ。いいか?動かすぞ?」
「……まだ痛いよぉ……」
あ、あのなぁ。
このまま動かしもしないのに出しちまったら、俺の男としての威厳は、どこへ消滅しちまうんだよ。
俺様、もはや必死の懇願。
「な、頼む。マジもうもたねえ」
「…………」
本日二度目、返事のない返事が返ってきた。
その涙目が、すねたような顔が、たまんなく可愛い。
おめえみてえな可愛い女が腕の中にいる状況下で、我慢しろって方が無理なんだよ。
……んなこと、ぜってえに言ってやらねえけど。
俺は鼻から息を深く吸い込むと、細心の注意を払って腰を前後に揺すった。
「あ!や、あ、トラ…………ップぅ!!」
弓なりにそらしたからだ。もう抑えようともしない、俺を呼ぶ悲鳴のような喘ぎ。
これ、みすず旅館中に響き渡ってんだろうな……
頭の片隅をよぎる懸念。
しかし俺自身を包み込むぬくもりは、つまらない考えも何もかもを、怒濤の勢いで押し流していった。
早え……早かった…………
俺は、ぺたりとひっついてくるパステルを片手で抱え、ベッドに寝転がっていた。
まだ密かに呼吸が荒い。
童貞って、こーゆーモンなんだろか。それとも俺が早すぎなんだろか。
己の性的能力に身も蓋もない疑問を抱きつつ、天井をぼーっと見上げる。
いやいや、きっとこいつが処女だからだ。決して俺が群を抜いて早いわけでは……
ささやかな言い訳を共感してもらおうと腕の中を見やると、パステルは穏やかな寝息をたてて、いつの間にか眠っていた。
俺に体を預け、安心しきった寝顔で。
ったく、呑気なもんだぜ。
でも、悪い気はしねえよな。ふふんと軽く鼻をならす俺の視界に入ってきた、白いもの。
……ん?何持ってんだ?おめえ。
堅く握り締めたパステルの手には……例のハンドタオル。
思わず顔がほころんじまうじゃねえか。
これのおかげで、俺たちは一歩進んだようなモンだよなぁ。
ま、んなスムーズな流れでもなかったけどよ……
体の右半分にかかる心地よい重み。
雲が晴れたのか、薄闇の中にカーテンの隙間から明るい月光が差し込んでくる。
窓の外の木漏れ日……いや、この場合は木漏れ月か……が、床にまだらな模様を落とす。
俺は静かに眠る恋人を起こさねえように、柔らかい頬にそっとキスをした。
-----------------------
完結です。
書人さん、毎度GJです!!ラブラブ甘々、やっぱりいいですね〜。
GJです!やっぱりラブラブはいいよな!安心して読める!
誰もいないのかな?とりあえず保守。
いるよ〜。
保守
38 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 20:48:40 ID:0ZvoIHEh
なんか、一気に人がいなくなっちゃったねえ。
どうしたんだろ。
夏休みが終わったからだよ。
書人さんに素朴な疑問ですが、保管庫への収納はしないのですか?
スレ11のオーシ×リタとかかなり好きだっただけに気になるのですが…。
41 :
書人:2006/09/04(月) 16:52:23 ID:xTWApXvd
いつも御読み頂き感謝。投下に参りました。
>>40さん
旧スレのSSは、保管庫への収蔵依頼を出しています。
が、保管庫の管理人様がお忙しいらしく、なかなか収蔵ができないようです。
時々保管庫を見に行ってますので、収蔵を確認できたらご連絡しますね。
以下、御品書きです。
カプはクレパス、前提恋人。
いつも不幸な彼のための、クレイ視点のお話です。
「いったぁ!!!」
パステルの泣き声交じりの悲鳴。
耳元で空気をつんざくように叫ばれ、金属音のようなきーんという耳鳴りに脳天を直撃される。
めまいを感じながらも、とりあえず彼女を気遣う。
「え、ご、ごめんっ」
「痛いよぅ……」
涙目のパステル。……泣かれちゃ、仕方ないよなあ。
俺は、パステルの秘部に第2関節まで入れていた指をそろそろと引き抜き、頬にキスした。
つい漏れる、小さな溜息。
「いいよ、またにしようか」
「……ごめんね……」
目尻にこぼれおちそうな涙を浮かべたパステルは、申し訳なさそうにつぶやいた。
俺はしっかり元気に勃ち上がった自分自身を、半笑いしながらしまいこむ。
これでええと……もう3度目の断念。
思わずカウントしてしまいながら、シーツにくるまったままのパステルの頭をやさしく撫でた。
……俺が下手なのかな?
そう考えると、ずーんと落ち込み一直線。
勉強が足りないのかテクニック不足なのか、はたまた処女とはそういうもんなのか。
かといって、泣いてるパステルに無理強いなんてしたくないし。
でも俺だって経験がないわけで……こんな調子じゃ、いつになったらきちんとできるのか見当もつかないじゃないか。
ひとり悶々と考えながらみすず旅館の廊下を歩く。
はあぁっ、と何度目かになるため息をついた瞬間、がくん、と体がバランスを崩して傾いだ。
バキバキバキッ!!
「うわぁっ!」
……またやっちまった。
みすず旅館のボロさは半端じゃない。あちこち痛んだ床は、気をつけて足を運ばなければ踏み抜く恐れがある。
そんな事は重々承知していたはずなのに。
膝まで片足を床に埋めた状態で、俺はがっくりと首をうなだれた。
1階にもかろうじて天井なんてものがあるから、足の付け根まで嵌まるという最悪の事態は避けられたが、あまりみっともいい格好ではない。
己の不注意さを呪いながらそろそろと足を引き上げると、ちょうどドアを開けて出てきたキットンと目が合った。
「クレイ……もしかしてまたですか?」
「……また、って言わないでくれ」
どんなに注意して歩いても、1週間に1度は確実に床板を踏み抜いている。
なぜだろう……他の連中は、いまだかつて一度も踏み抜いたことがないのに。
自嘲的な笑いを残して階下へ下りようとした俺の背中を、いつの間にか近付いてきたキットンが、ぽんと叩いた。
この上なく慈悲深い微笑み。だがな、お前の顔だと……正直かなり不気味なんだけど。
「……何だ?」
「いえ、では」
ぽかんとして立ち尽くす俺を残し、キットンはまた部屋の中へ消えた。
何だ? 俺は狐につままれたような気分で階段を下りた。
今度は踏み抜かないよう、踏み外さないよう、細心の注意を払いながら。
そしてそれは、翌日の朝。
みすず旅館の食堂で、簡単な朝食をとった後のことだった。
食事が終わっても席を立たず、思い思いにくつろいで他愛のない無駄話をしていた俺達。
隣のトラップと次回のクエストについて話していた俺に、キットンがテーブルの向かい側から声をかけた。
「クレイ、ちょっといいですか?」
半分ほどコーヒーの残った、白いマグカップを持ったまま向き直る。
「なんだ? キットン」
彼は肌身離さない自分のカバンをごそごそと探り、何かを取り出した。
テーブルにカタンと置かれたのは、透明な小瓶。中には水のような液体が入っている。
「これ、飲んでみてください」
「……なんだよ、それ」
「クレイのために調合したんです」
俺のためにだって? 首を傾げる俺。
傍らのトラップが、ひょいと小瓶を取り上げてためつすがめつ眺め、ニヤニヤと笑いながら言った。
「あっやしー……キットン、またおめえクレイを実験台にしようってのかぁ?」
「何言ってるんですか、実験台とは失礼なっ!」
唾を飛ばして抗議するキットン。
トラップはそれを嫌そうに避けながら、興味津々、という表情で覗き込んでいたパステルに小瓶を渡した。
真ん丸に見開かれた、はしばみ色の瞳。
「何の薬なの? これ」
「幸せになれる薬です」
重々しく答えるキットンに、片腹痛いと言いたそうなトラップが吐き捨てた。
「けっ、この筋金入りに不幸なクレイが、そうそう幸せになれるもんかよ。不幸の戦士の二つ名は伊達じゃねえっつーの」
――トラップ。お前のその言葉は、俺の全人格を見事に否定してないだろうか。
「あの俺……別にそこまで不幸なつもりはないんだけど」
一斉に俺を見る一同。
その目には痛々しいような哀れむような、なんとも微妙な色が浮かんでいる。
代表するように、キットンが呆れて口を開いた。
「何言ってるんですか、クレイ。あなた自覚がなさすぎです。自分がどれくらい不幸か知ってますか?」
「どれくらいって、その……」
「笑い病にはなるわオームにはされるわ怪我はするわ穴には落ちるわお金は落とすわ忘れられるわ見捨てられるわ蛙には抱きつくわ牢には入るわ」
呪いの呪文を聞かされているかのような、果てなく続く不幸の羅列。
「もういいから、キットン。で、でさ。この薬どう効くの?」
口元をひくつかせて固まっていると、パステルが言いにくそうにそれを制し、強引に話の流れを変えた。
パステルの当然といえば当然な質問に、よくぞ聞いてくれましたと深く頷くキットン。
「誰しも深層心理に、理想の幸せという願望を持っています。クレイにもありますよね?」
……俺の幸せ。それって一体なんだろう。
大金? いやそんなものは関係ないな。手に入っても転んでドブに流したりすぐ騙し取られそうだし。
立派なアーマー? 違うな。防御力だけならこの竹アーマーが+1だし……はあぁ。
トラップが揉め事を起こさないでくれること。おぉ、これは大きいかもしれない。でも、俺の不幸の要因ってそれだけじゃないよな。
――そうだ。
皆が、リーダーとしての俺に協力してくれて、日々の生活やクエストがスムーズに進めば、多分それが幸せって呼べるんじゃないんだろうか。
普通の人の普通の生活が送れたら、俺はもうそれだけで十分幸せ……だよな。きっと。
「うん、あるよ。あると思う」
「でしょう? しかしクレイの場合、どんな願いがあっても必ず頓挫してるはずです。いえ、してます」
言い切るなよ、キットン。……そのとおりだけど。
「クエストに出れば途中離脱、アーマーを買おうとすれば高すぎたり、放棄したはずの竹アーマーが+1になって返ってきたり。もはや本人の努力で幸せになるなんて、無理な領域なわけですよ。そう思いませんか!?」
キットンの力説に、深く頷く、俺以外の一同。
わかってんのかわかってないのか、ルーミィとシロまで神妙な顔で頷いている。
「もはやクレイの不幸は常人のレベルを超えています。それを、我々の手でなんとかしてあげられないかと」
なんか色々ひっかかる部分もあった気がするが、俺のことを心配した故の言葉として、ありがたく考えておこう。
「そこで、この薬です! これを飲むことによって、その潜在意識を周囲の人間が感じ取り、その実行に協力してくれるという画期的な効能が発揮されるんですよ!」
ボサボサの前髪の間から目をキラキラさせ、一気に説明したキットン。
途中からあまり興味なさそうに、ずびずびと汚い音を立ててコーヒーを啜っていたトラップが、がばっと顔を上げた。
「てぇことは。クレイが新しいアーマーさえありゃ幸せだって思ってたら、俺達皆がそれに協力するってことかよ?」
「そうなりますね。彼の為に、彼の希望を叶えるお手伝いをしたくなるんです。ただし我々のできる範囲のみですよ。例えば少しずつでもお金を稼いでくるとか、店頭で値切り交渉をするとか」
「それなら俺が飲む! おいパステル俺によこせ!」
自分に飛び掛ってきたトラップから、まだ小瓶を持っていたパステルが焦って逃げ惑う。
「やあよっ! トラップの願いなんて、お金欲しいしかないんだからっ!」
「そうですよ! あなたの欲望を満たすために調合したわけではないんですっ! そもそも飲んだ人のカルマが高くなければ、誰も協力しないんですってば!」
「うるせー、いいから貸せ!!」
ダブルで怒鳴るパステルとキットンが器用に小瓶を投げてリレーし、それは最終的に俺の手へと放られた。
慌てて腰をうかせ、両手で受け止める。
追いすがるトラップをかわして後ろ手に隠すと、ようやく奴はあきらめたらしく、俺を睨みながら椅子に座りなおした。
「ちっ。しゃーねーな」
「おくすりかぁ? くりぇー、どっか痛いんかぁ?」
開け放した勝手口から聞こえるルーミィの声。
勝手口のすぐ外に置かれた木製テーブルには、ノルとルーミィとシロが座っている。
ノルは、穏やかに微笑みながらルーミィの小さな頭を撫でた。
「クレイ、幸せになれる、薬だって」
「しやあせ?」
「薬? クレイしゃん病気デシか? ボクの血飲んでみるデシか?」
シロ、ありがとう。気持ちは嬉しい。大変嬉しい。
でもさ、きっとドラゴンの血で治る部類のもんじゃないと思うんだよ。こればっかりは。
苦笑いしながら、俺は小瓶をしげしげと眺めた。
無色透明の液体が瓶の中で揺れ、朝の柔らかい光に微かにきらめいている。
キットンがあたかも聖職者のように、おごそかに言った。
「どうぞ、クレイ。飲んで、あなたが本当に必要としていることを教えてください」
……なんかもう、いいや。毒じゃあるまい。飲んでしまえ。
俺は深く考えるのをやめ、蓋を開けると目を閉じ、それを一気に喉に流し込んだ。
ひんやりした液体が喉から胃へと落ちていく感触。
どことなくぴりぴりとした後味を味わいながら、ゆっくりと瞼を開ける。
固唾をのんで見守る一同。
その時だった。
台所の空気が一変したような……気がした。
がた!
パステルが椅子を蹴り飛ばすようにして立ち上がった。続いてトラップも。
「ぱ、パステル? トラップ?」
彼らは慌てて叫ぶ俺には目もくれず、揃って台所から駆け出して行った。
いったいどうしたっていうんだ?
わけもわからず目を白黒させていると、キットンがカバンの中から次々と小瓶を取り出してテーブルに並べながら、信じられないことを言った。
「このピンクのラベルが興奮剤、白いラベルが催淫剤ですから。そうそう、これも渡しておきましょう。このチューブは潤滑用ですからね」
「はあ!? なんに使うんだよ、そんなの」
「全部パステルに使うに決まってるでしょう?」
さも当然と言いたそうな顔で、あっさりさっぱり言い切ったキットンは、得々と取り出した薬を説明する。
そもそも、どうしてそんなものカバンに入ってるんだ?
「最初に興奮剤と催淫剤飲ませて下さいね。間違ってもクレイ、あなたが自分で飲まないように! 早漏になっても知りませんよ。あ、ちなみに潤滑用クリームは舐めても大丈夫ですから」
「いや、あのさあ……なんで興奮剤だのなんだのをパステルに使えって言うんだ?」
「それであなたは幸せになれるんでしょう?」
「へ!?」
キットンは背伸びして、俺の両肩にがしっと手を置いた。
「私にできるのはこれくらいです。どうか頑張ってパステルと完遂して下さい」
「か……完遂……」
我知らずどもる俺に、勝手口の外から声をかけたのはノル。
「これから明日の朝まで、ルーミィとシロ、預かるから」
「預かる……って?」
どういうことなんだと聞こうとした俺に、ノルはにっこりと笑った。
「頑張れ、クレイ」
何をだ。何を頑張るんだよ、ノル。
頭が真っ白だ。
もしかして俺の希望って……パステルと、その……ちゃんとエッチしたいってことだったのか?
自分も知らない自分の深層心理を、こんな形で暴かれた、ってことなのか?
情けなさと羞恥に頭を抱える俺に向かって、チャッチャッチャと爪の音をたててシロが走ってきた。
俺の前まで来ると二本足で立ち上がり、咥えていた花を差し出してみせる。
「パステルおねーしゃんにあげてくださいデシ」
「……ありがとう。気を使わせてすまない、シロ」
そしてとどめに、にこにこしながらルーミィが。
「くりぇー、ぱーるぅと仲良しするんだおう! 頑張るんだおう!」
「……ありがとう、ルーミィ」
意味わかってるのか、ルーミィ。彼女流の激励に半笑いで答える俺。
ルーミィは満足そうに笑い、とてとてとノルの元へと走って戻った。
あまりの脱力感に椅子の背にぐったりともたれかかり、深くため息をついた。
ふと視線を感じて振り向くと、そこにはパステルを横抱きにして、仁王立ちしているトラップがいた。
「どうしたんだよ、一体お前ら……!?」
言いかけて言葉を失う。
トラップに抱き上げられた状態のパステルが着ていたのは、いやまとっていたのは、バスタオル一枚。
「ぱぱパステル、なんて格好してるんだっ!?」
泡を食って立ち上がりかけ、ついでに椅子をひっくり返してうろたえる俺。
近付いてきたトラップは、腕に抱えたパステルをぐいぐいと押し付けてくる。
反射的に彼女を受け取ると腕にずっしりかかる重み。ニヤリと笑ったトラップ。
「おめえにやる。やりたくねえのは山々だが」
……いやパステルは一応俺の彼女じゃなかっただろうか……
首をひねる俺に、トラップはにこやかに続けた。
「後、今日の武器屋のバイトは代わってやらあ。10時からだろ?」
「あ、あぁ。ありがとう」
礼を言うしかないじゃないか。この場合。
展開についていけず、もはや完全に思考が停止している俺。
どうすりゃいいんだと腕の中を見やれば、パステルが恥ずかしそうに俯き、小さな声で言った。
「お風呂入って来ちゃった」
「……えっと……うん。わかった」
何がわかったんだろうか。俺。
とりあえずコクコクと頷き、背中に生暖かい視線を感じながら、俺はぎくしゃくと階段に足をかけた。
静かにパステルをベッドの上に降ろすと、俺はベッドの端に腰掛けた。
手を伸ばし、はちみつ色の髪を撫でると、くすぐったそうに笑うパステル。
薬の影響で人格が変わってたりするんだろうかとも思ったが、彼女自身はいつもとまったく変わりないように見える。
「さっきね、クレイが薬飲んだ途端、頭の中にクレイの声が響いたの」
「声が? なんて?」
眉をひそめる俺に、ぺたんと座り込んだパステルは心底楽しそうに笑った。
「いいかげんパステルとやりたい! って聞こえた。けっこう絶叫調だったよぉ」
「…………」
いったい皆の頭の中には、どう聞こえていたのやら。
ルーミィとシロにまで意味が通じてたってことは、もっとわかりやすく噛み砕いて伝わったんだろうか。
……どこまで至れり尽くせりな効果なんだ、あの薬。
恥ずかしいわ情けないわで言葉を見つけられずにいると、パステルが俺の袖をそっと引いた。
「でもね、わたしは嬉しかった。それでクレイが幸せになれると思うんなら、わたしもちょっとくらい我慢しなきゃって思ったんだ」
「パステル……」
俯いて、照れたように微笑むパステル。
その笑顔がなんともいじらしくて、もう細かいことはどうでもいい気分になった。
今、この子が抱きたい。皆のこれだけの協力なら、今度こそ成功しそうな気がするしさ。
腕を伸ばしてぎゅっと抱きしめると、細い体が答えるようにしがみついてくる。
勢いに乗って押し倒そうとした時、ポケットがガチャガチャ音をたてた。あ、そうだ。
「パステル、これ、飲んでみるか?」
一旦体を離し、ポケットの薬瓶を取り出すと、パステルは不思議そうに聞いた。
「なあに? これ」
「キットンがさ、パステルに飲ませてみろって。その……いつもパステルが痛がってるから……これ飲めばましになるんじゃない……かな」
しげしげと薬瓶を眺めていたパステルは、恥ずかしそうに喉の奥でくふふ、と笑った。
「痛くないってことは……気持ちよくなるってことなのかなあ?」
「……そう、だと思うよ」
「わかった。飲んでみるね」
パステルは、キットンが興奮剤と催淫剤と言った怪しげなアンプルを立て続けに飲み干した。
「へえ、これ結構甘いよ」
「どうだ? 気分悪かったりしないか?」
「うん、なんか……顔が火照る感じ」
なんだか心配になって問いかける俺に、パステルはその言葉通り頬を染め、とろんとした目で俺を見上げた。
も、もう効いたらしい……さすがキットンの薬。早いな……
パステルはへろっとこちらにしなだれかかって来、俺の手を取ると自分の胸に押し当てた。
バスタオル越しに触れる、柔らかい胸の感触。
「なっ」
「どきどきしてるよー……」
こっちこそ。心臓が口から飛び出しそうだ。
もう何度も触ったとはいえ、慣れるってものでもない。しかもパステルはいつもぎこちなく耐えてる感じで、快感なんてものとは縁遠そうな表情をしていた。
しかし、今は……俺の手を自分で胸に誘導し、もう片手を俺の股間に伸ばす。
「パ、ステルっ?」
「もう、こんなに元気になってるよお」
「うっ」
思わずビクっとして飛び上がる俺のその部分を、やさしく撫でさする指。
向かい合うようにして座ったまま、俺はパステルのバスタオルに手をかけた。
結び目を引っ張ってほどくと、あらわになる真っ白な肌。
唾を飲み込んでシーツの上に押し倒す。
俺を見上げる潤んだ瞳は、俺が顔を近づけていくにつれ、ゆっくりと閉じていく。
長い睫毛に縁取られた瞼が完全に閉じた時、俺はやわらかな唇に触れていた。
舌を入れてむさぼるようにくちづけると、パステルの熱くて小さな舌が、おずおずと答えた。
深く、奥まで味わうようなキスを交わしながら、俺はパステルの胸に手を伸ばす。
ぷるんとして丸い乳房をくるむように揉むと、ふにふにとした感触が掌全体に広がった。
唇をほどいて、今度はつんと自己主張している乳首に吸い付く。
「あ……ん、クレイ……」
パステルは俺の頼りない愛撫にも、過敏に反応して高い喘ぎをあげてくれる。
両の乳房を掴み寄せ、いっぺんに舌先で転がすようにし、胸全体を唾液まみれにしながら舐め回した。
「や、あ……」
その胸をせわしなく上下させるのは、荒くて甘い呼吸。
俺は、いつにないパステルの様子に胸の奥を熱くしながら、静かに体を起こした。
ほっそりした膝を掴むと、パステルは少し足を強張らせたものの、すぐに力を抜いた。
ぐっと押し開けばそこには、細くてなめらかな茂みに覆われた、ピンク色の唇。
実は、じっくり見るのは初めてなんだが。これまで彼女は恥ずかしがって、シーツを被ったままだったから。
その部分はしっとりと湿っているように見え、確かめようと恐る恐る指を伸ばす。
これまでどんなに愛撫してみても、そこは乾いたままで指の半分も受け付けなかった。
また痛いと泣かれたらどうしようかと不安になりながら、指先でパステルの秘部に触れてみる。
「あんっ」
パステルが顔を背け、腰をくねらせた。その甘い反応。そして。
なんかこれ……濡れてないか?
ねっとりした生暖かい液体が指を濡らす、初めての感触。
半信半疑で指をもう少し差し入れてみると、ちゅぷ、と水気を帯びた微かな音がした。
吸い込まれそうに指を締めつける、絡みつくような襞の感触。
「や、んっ……あ……ぁん」
中へ中へと誘いこむような肉の襞。
自分の太い指を8割方パステルの中におさめてほぐすように動かすと、その動きに合わせてパステルが身をよじる。
中指を抜き差しするように小刻みに動かし、ふと思いついて親指で襞の間を探る。
指の腹が、弾力のあるものに触れた。
「きゃん……っ!」
パステルの跳ねる腰に確信し、その芽を押し潰すようにこねると、とぷっとあふれ出る透明な愛液。
それは、俺の指から手首までを、細く滑るように伝い落ちた。
「あ、だめ、や……やっ」
短い、切れ切れの息遣いで喘ぐパステル。
つい力が入っていたのか、伸ばしていた中指をぐいっと折り曲げてしまった時。
「や……だ、だめええぇ……っ!!」
襞がぎゅっと収縮し、ベッドからパステルの体が半分浮いた状態で硬直した。
細い腰が、ぴくぴく痙攣するように動く。
パステルはそのままがっくりと力を抜き、体をシーツに沈めた。
……まさか、もう……?
呆然としてパステルを眺める。
「パ……ステル? もしかして」
「……なんか、わかんないけど……すっごく気持ちよかったよお……」
とろっと笑ったパステルは、俺の腕をついと引っ張ると、すりすりと頬ずりしながら言った。
「ね、クレイ。……して?」
「え? ……あぁ」
そんなに気持ちよかったのなら、ともう一度足の間に屈みこもうとした俺を、パステルが制した。
すねたように俺を見上げる上目遣い。
「違うよぉ」
「違うって……なにが」
パステルは、眉をひそめた俺のジーンズのファスナー部分にゆっくりと手を伸ばした。
ドキン、と弾む鼓動。……そっちか……
深呼吸してベルトを外し、ファスナーを下ろす。
食い入るように俺自身を見つめているパステルに苦笑しながら、俺は服を全部脱ぎ捨てた。
力なく開いたままの脚の間に体を入れる。
充血したように赤みを帯びたその部分から白いお尻を伝った液体で、シーツに透明な染みができていた。
これならキットンの潤滑クリームも必要ないだろう。
「……いいかい?」
「……うん」
コクンと頷いたパステルの瞳を見つめたまま、俺はあてがった男根をじわじわと押し進めた。
「ん、くっ……んんっ」
のけぞって歯を食いしばるパステル。
きつい。相当にきつい。
しかし、パステルのとろっとろに濡れた肉は、俺自身を襞全体で包み、奥へと引き寄せる。
ほどなく俺のものは、パステルの中へすっぽりと咥え込まれた。
「だい……丈夫かい?」
「んっ。痛い、けど……そうでも、ない……かも」
ちょっとだけ顔をしかめつつも、気丈に笑ってみせるパステル。
俺はその細い体を腕の中に抱き込み、こじるような角度にならないように気をつけて、ゆっくり腰を動かし始めた。
その途端、感じたことがないほどの快感が、股間から脳天を突き抜ける。
男根全体にまとわりつく、熱くぬめった蜜。それは狭いパステルの中で、俺が動けば動くほど滑らかに染み出してくる。
「あ……あぁっ……ぁんんっ……」
はじめは辛そうだったパステルの声は、徐々に熱を帯びて深い呼吸に変わりつつあった。
抱きしめていたやわらかな体を離し、上体を起こす。
パステルの細い両足首を掴んで、背筋を伸ばして腰を突きこむ。
ずぷん……ぬちゃっ……ぬぷ、ずぷ……
肉棒を突き込む時巻き込んだ、パステルの秘部の花びらは、抜く時にはまたその部分が外に押し出され、いやらしげな音をたてた。
「パステル……気持ち……いい?」
「あぁ……う……んっ、すごぉくっ……」
パステルが痛がらないように、荒い動きにならないように気をつけていたんだが、パステルの狭い膣は俺を遠慮なく締め上げる。
俺は快感に引きずられるように、腹筋に力を入れて力強く腰を動かした。
「ぁん、や、そこっ……んっ」
荒い呼吸に合わせて頭を揺するパステル。その扇情的な表情を見つめながら、掴んでいた足首を口元に引き寄せる。
真珠色の爪の並んだ裸足の足先を、そのまま自分の口に入れた。
「え、やあぁんっ」
反射的に縮こまった足の指を舐め、爪の脇や指の股の部分に、舌を這い回らせる。
俺の舌の動きにパステルの腰が跳ね、膝が暴れた。
「ぁあ、はっ……ん……やぁ、クレ……イぃ……っ」
「パス……テル……っ」
俺はパステルの足指を離すと、意識を全て自分自身に集中させ、無我夢中で股間を叩きつけた。
ザワザワと蠢いていた襞が、俺を飲み込むようにギュッと収縮した。もう我慢できない。
「ごめんっ、いくよ……っ!!」
「クレイ、クレイぃぃ……ああぁんっ!!」
一気にのぼりつめて精を吐き出す俺の耳に、パステルの甘い悲鳴が尾を引いた。
( ……だよなぁ )
……どこかで誰かの声が聞こえる。
知らぬ間にうとうと眠ってしまったらしい俺は、現実に引き戻された。
薄ぼんやりした頭で、腕の中のパステルに目をやる。
小さく口を開いた、あどけない寝顔。
そっと手を伸ばしてほつれた細い髪をなでると、パステルは小さく呻いてまぶたを開けた。
「……クレイ?」
「大丈夫? どこか痛くないか?」
俺の問いに、パステルは微笑んで首を振った。
「平気だよ。ねぇ、クレ」
パステルは、俺の名を呼びかけて言葉を切った。
どうしたのかと口を開きかけた俺に、しーっと指を立ててみせる。
そのままで、自分の背後の壁をちょいちょい、と指差すパステル。
( …………ですよ )
( ……あに言ってんでぇ )
キットンと、トラップの話し声だ。
( うまくいったようですねえ )
( あったりめえだろーが。あんだけ手伝ってやったんだかんな )
薄い壁のせいだろうか、隣の部屋のふたりの声がほとんど筒抜けだ。
ということは、今までのパステルの嬌声もなにもかも、全部向こうに聞こえていたということになる。
俺とパステルは同時にそれに思い当たり、揃って顔を赤らめた。
そんな俺たちの気も知らず、壁の向こうから聞こえ続ける、キットンとトラップの会話。
( これでクレイが、少しは幸せを感じてくれればいいんですけどね )
( パステル手に入れておいて、不幸もねーもんだろうが。けっ。それよりキットン、俺にもあれ作ってくれよ )
( 駄目です。あなたのカルマでは、飲んでも無駄です )
( ふん。欠陥品作りやがって )
( なんですと!? トラップあんた、今なんて言いましたかっ!? )
( ぐ……ぐるじい、離せえっ )
思わず揃って吹き出した俺とパステルは、眼まぜして笑った。
俺、少しは……幸せになったと思っていいんじゃないかな。
俺は、パステルを抱きしめる手に力を込めて、少し笑った。
とりあえずは、この腕の中の幸せが逃げないように、こっそり祈っておこう。
-----------------------
完結です。
GJ!
幸せなクレパス!
幸せらぶらぶものでもダークレイプものでも構わないのだが(むしろどっちのパターンも希望とか言ってみる)
一度書人さんの「クレイ×パステル×トラップ」とか「トラップ×パステル×ギア」とか
3P、4Pの多人数プレイなど見てみたい。
気が向いたらで結構ですのでこそっとリクっておきます。
幸せクレパスGJでした
そろそろロリが読みたい
幸せクレパスGJ!&保管庫更新に多方面乙!
56 :
書人:2006/09/11(月) 18:02:33 ID:uO31cM5O
いつもお読み頂き感謝。
保管庫が更新された模様ですので、ご報告にあがりました。
最新の「幸せになろう」編まで、収蔵して頂けました。
>>55 私は収蔵依頼を出してるだけで、更新をしてる訳ではないのです。
SS収蔵は、あの保管庫の管理人様がして下さっています。
>>53 リクありがとうございます。現在作成中です。
ほしゅ
58 :
書人:2006/09/20(水) 14:30:25 ID:2qT0+BoE
こんにちは。いつもお読み頂きありがとうございます。
投下に参りました。
>>53 さんのリクにお答えしてます。
以下御品書きです。
パス×トラ&クレ の、合意3Pです。
雰囲気としては明るく幸せ系。なお、かなり長くなりました。
「ぱーるぅ、いってくるおう!」
「行ってきますデシ」
小さなリュックを背負って、にこにこと手を振るルーミィ。
シロちゃんがその足元で尻尾を振っている。
「気をつけて行くのよ、ルーミィ、シロちゃん。ノル、よろしくね」
「まかせて」
ルーミィを抱っこしたノルは、にっこり笑って答えた。
「ではクレイ、薬屋さんへの連絡、頼みましたよ」
「あぁ、わかった。このメモを渡せばいいんだな?」
「け、そんくれぇ自分で言えよなー」
「トラップ、あーたちょっと黙ってて下さいよ! 私はクレイに頼んでるんですっ!!」
「まあまあキットン、落ち着けって」
いつもの調子で、やいのやいのやってる男たち。
キットンが小さなメモをクレイに渡し、傍から口を挟むトラップを怒鳴りつけながら、なにやら説明している。
あぁそっか、エベリン行きが決まったの、昨夜遅くだもんね。
薬屋さんの今日のバイト、お休みするって言えなかったんだろうな。
わたしがそんなことを考えているうちに、乗合馬車の時間が迫ってきた。
もう一度暫しの別れを惜しんで、にぎやかに馬車乗り場へ向かって歩いていく一同が角を曲がるのを見送ると、ほっとため息。
ちなみに、皆の行き先はエベリン。
昨日の夜クレイが、明日から始まる大きなイベントの入場券をもらって来たんだ。
いつもよく働いてくれるからって、バイト先の武器屋さんの奥さんからのプレゼント。さすがだよね〜。やっぱり彼の誠実さとマダムキラーは健在だと思う。
だけど残念なことに、ちゃんと人数分の券があったのに、行けないメンバーが3人。
まずわたし。言わなくたってだいたいわかるでしょうけどね。
はい、原稿です。締め切り、明日なんだよお……悠長に遊びに行ってる場合じゃない。
そしてトラップ。彼はバイト先が忙しくて、お休みがとれないんだそう。
最後はクレイ。入場券をもらった次の朝、つまり今朝にね。
武器屋さんのご主人が怪我されちゃったと連絡があって、急遽代理で店番をしなきゃならなくて。
もらって来たのは彼なのに行けなくなっちゃうなんて、やっぱり不幸すぎるよ……
そんなわたしたちを他所に、大喜びしたのはルーミィとシロちゃん。
このところ原稿原稿で遊んであげられなくて、すっかりすねちゃってたからね。
ついて行けないのがちょっと心配じゃあるけど、ノルとキットンに任せておけば大丈夫だろうし。
これで原稿も進みそうだし、正直なとこ、ちょっぴり肩の荷が下りた気分のわたし。
そりゃ行きたくないわけじゃないけど、締め切りは待ってくれない。
「あにボーっとしてんだよ」
「え? はい?」
ぼんやりと考えこんでいたわたしに、唐突にトラップが声をかけた。
その後ろでクレイが苦笑している。
さっきまで部屋着だった2人とも、既にでかける用意をしてて……いつの間に着替えてきたんだろう。
「ったく、いつまで突っ立ってるつもりだぁ? 俺らもうバイト行くからな」
馬鹿にしたように笑うトラップ。
そりゃーわたしはいつもボケっとしてますけどね。
そんな呆れたような顔しなくたっていいと思わない?
「パステル、原稿書くんだろ? あんまり無理するなよ」
と、やさしい言葉をかけてくれるクレイ。うーん、実に対照的。
「うん、ありがとう。そうだクレイ、夕食は猪鹿亭で食べるんでしょう? なにかテイクアウトしてきてくれないかなぁ?」
「いいよ。リタに頼んでみる」
「よろしくね」
軽く手を振ってクレイが歩き出し、少し先で待っていたトラップに追いついた。
さっきと同じみすず旅館の門のところで、今度は彼らを同じ姿勢で見送る。
いつまでわたし、ここでお見送りしてるんだか。いいかげん中に入ろう……
さて、原稿頑張らなきゃ!
誰もいなくて静かな今のうちに、できるだけ進めなくっちゃね。
バタン! と大きな音が階下から響いた。
……クレイ達かな。
もう帰って来たの? 早いなぁ。ふと時計に目をやればなんと、もう夕方。しかも窓の外は既に夕暮れ。
ええー! もうそんな時間なの!? わたしそういえば、お昼食べてない!
道理でお腹が空くわけだ。
両腕をあげて、思い切りうーんと伸びをする。と、いきなり扉が開いた。
「あんだよ、いたのか。えれぇ静かだから寝てんのかと思ったぜ」
「んもう! トラップ、ノックくらいしてって言ったでしょ!」
わたしの文句を聞き流したトラップは、片手に持っていたバスケットをどん!と机の端に置く。
「ほれメシだ」
「あれ? クレイはどうしたの?」
「俺じゃー役不足だってぇのか? ふーん、じゃいらねんだな」
意地悪なことを言いながら、置いたばかりのバスケットに手を伸ばすトラップ。
その手をぺしっとはたき、バスケットを抱えて睨みつける。
「んもー、誰もそんなこと言ってないわよ!」
「おいこら、トラップ! 手伝え!」
廊下から、噂の主、クレイの声がした。
椅子ごと振り返ってドアの外を見やると、重そうに大きなダンボールを抱えたクレイが階段を上がってきたところだった。
けっこうな汗をかいて、顔が真っ赤。
体力自慢のクレイがそれだけ重そうにするなんて、そのダンボール、いったい何が入ってるのよ?
「おっ、クレイちゃん、ご苦労さまー」
ニヤニヤ笑うトラップ。
「あのなぁ、ちっとは手伝え! お前いらないのか!?」
「いやいや。クレイちゃんがもらったんだから、大事に持って帰らなきゃじゃーん」
クレイはダンボールを抱えたまま、頭を振ってまとわりつく髪をさばいた。
輝くような黒髪が、汗で濡れた首筋に貼りついて気持ち悪そう。
「ねえ、それなあに?」
「あぁパステル。これさ、武器屋のおかみさんに頂いたんだよ。ビールの詰め合わせだって」
「ビール?」
首を傾げるわたしに、トラップが口を挟んだ。
「チケットあげといて、使えなくしたお詫びだってよ。いいねぇ、そこまで気遣いしてもらえるとはねぇ。さすが無敵のマダムキラー!」
「……うるさい」
「きゃー、クレイちゃん、怒っちゃいやーん」
嬉しそうに笑いつつ、駆け出して行ったトラップ。
隣の男部屋のドアを開ける音がする。
「パステル、ごめんな、邪魔して」
「ううん、いいけど」
「原稿、あんまり根詰めないようにな。じゃ、俺ら隣にいるから」
汗びっしょりの顔でにっこり笑ったクレイは、ダンボールを抱えなおすと部屋を出て行った。
器用に足でドアを閉めて。
……嵐が去った。
これから2人は、あのビールで酒盛りでしょうね。やれやれ。
さて、原稿の続きを書かなきゃ。日中頑張ったから、あとちょっとで仕上がるだろうし。
でもその前にごはんにしようと、わたしはいそいそとバスケットの蓋を開けた。
その時、わたしは随分集中していたんだと思う。
隣で飲んで盛り上がっていただろう2人の声なんて、まったく聞こえてなかったんだから。
耳に聞こえていたのは、自分の動かす鉛筆が原稿用紙の上を滑る音だけ。
だからこそ隣のドアが、蝶番を壊さんばかりに開けられた音に、びくっと心臓が止まりそうになってしまった。
ただ文章をつむぐだけの繭の中から、いきなり現実に引き戻されたわたし。
鉛筆を止めドアを振り向くのと、ドアが勢い良く開いたのは同時だった。
「な……なに?」
そこに立っていたのは、空手の型みたいに、片足を蹴りのポーズにあげたトラップ。
彼の背後には、後をついてきたらしいクレイの姿が見えている。
トラップの足の裏がこっちに向いているということは、恐らくドアを足で蹴り開けたんだろう。なんて乱暴な。
文句を言おうと口を開きかけると、トラップは足を下ろした。
椅子にかけたままのわたしに向かってスタスタ歩いて来、至近距離で立ち止まる。
「……何よ。トラップ、酔ってるの?」
「酔ってねえよ。俺様のどーこがどぉ酔ってるっつーんだよ」
……全部よ、全部。
酔眼朦朧、すっかり据わって三白眼になった目に、舌ったらずな口調。
しかも異様に酒臭くて、トラップが入ってきた途端、部屋中がお酒の臭いで充満してるし。あーもう、この匂いだけでわたしは酔ってしまいかねない。
「用がないんなら出てってよ。わたし、原稿あるんだから」
トラップは華奢な上半身を折り曲げ、手を伸ばしてわたしの顎をつまみ、くいと上向かせた。
わたしの言葉を聞いているのかいないのか、低い声が呟く。
「おめえに聞きてえことがあんだよ」
わたしの顔を覗き込む、薄い茶色の瞳。
お酒のせいか微かに潤んでいて、なんというか……妙に色っぽい。
その瞳が、みるみるうちに近づいてきた。なんなのなんなのーーー!!
「な、ななな……っ」
「こら、トラップ! やめないかっ!!」
どもりつつも、必死に身を引く。
背後に立ち尽くしていたクレイが慌てたように駆け込んできて、トラップを羽交い絞めにしてくれた。ほっ。
酔ってるとはいえ相手はファイターのクレイだもんね。
華奢な盗賊であるところのトラップは、力強い腕で、あっさりとわたしの傍から引き離された。
「うっせえ、離せ!」
「誰が離すか、バカっ!」
喧々囂々と怒鳴りあう2人を、言葉もなく見比べるわたし。もう何がなんだか。
トラップは身を翻すようにしてクレイの腕から逃れると、わたしをビシッと指差した。
「とどのつまりは、こいつが悪りいんだよ!」
は? 怒りをこらえたような表情のクレイが、トラップの腕を引いた。
「やめないか」
「おめえはだあってろ! この鈍いボケ女がいつまでたってもはっきりしねーから、俺たちが迷惑してんだろが!」
えらい剣幕で怒鳴るトラップに首をすくめつつも、その内容は聞き捨てならない。
誰がボケ女よ、誰が。実は当ってるだけに、余計に感じ悪い。
「あのさあ、話が全然見えないんだけど」
「そりゃー見えねえだろうよ。見えねえから鈍いつってんだ」
冷たく言い放つトラップに、わたしは段々腹が立ってきた。
だって、唐突に人の部屋に来たかと思うといきなりボケだの鈍いだの、人をなんだと思ってるわけ?
「単刀直入に聞く。おめえ、今好きな奴いんのか」
「はあ!? なんであんたにそんなこと答える必要があるのよ?」
何が好きな奴よ、ばっかばかしい。
いい加減頭にきてるわたしに、そんなつまんない質問するなんて、いい度胸だ。
思い切りトラップをにらみつけた時、黙っていたクレイが口を開いた。
真剣な鳶色の瞳。ただし顔は、お酒のせいで見事に真っ赤っ赤だけど。
「……いないのかい?」
「え? クレイまで。そんな人……いない……けど」
思わぬ援軍に、わたしは口ごもりつつ答えた。
我が意を得たりといった感じのトラップ。
「じゃあ俺らはどうなんだよ」
「は? 俺らって?」
ぽかんとしているわたしに、トラップは天井を仰いで絶叫した。
「今ここに、俺とクレイ以外の男がいんのか、このバカがぁ!」
「そ、そりゃそうだけどっ。バカとはなによ、バカとは!!」
怒鳴り返すわたしに、トラップががっくりとうなだれて頭を抱えた。
「ちっくしょおおおおお……俺とも、俺様ともあろうものが……なんでこんなボケに……」
そのすぐ背後に立っていたクレイが、トラップの肩をポンと叩く。
同情的な眼差しを見交わす2人。
あのーもしもし? 2人だけで世界作らないでほしいんですけど。
酒臭い息を吐きながら、トラップが赤い髪をゆらりと揺らして顔を上げた。
その、あまりにうらめしそうな顔に思わずひるむ。
「俺とクレイはな、紳士協定結んでたんだ」
紳士協定? 聞きなれない言葉。
「なに、それ」
「おめえの、パステルの意思を第一に、俺たちは自分から動かねえって約束だよ。おめえが選ぶなら、まず俺らどっちかだと思ってたからな。でも」
「自惚れだったのかもしれないけどね」
トラップの言葉をクレイが引き取った。自嘲的な微笑み。
その言葉に、重々しく頷きながら言葉を継ぐトラップ。
「おめえはいつまでたっても、誰も選ぶ気配がねえし。なのに周囲には男が群がりやがって。昨日は花屋に、下心アリアリの花もらってくるしよ」
「あれは売れ残りをくれただけだってば」
「花屋さん、けっこう男前だよな……その前はメッセンジャーのバイトの子に声かけられてたしさ」
「あの子、まだ12歳だよ!?」
「そうそう、あのバカ俺の後輩の癖して……一昨日は村長の息子に言い寄られてたろーが」
「町内清掃のお誘い受けてただけでしょ!?」
「でも直接声かけてたのはパステルだけだよ……しかもギアの影はまだ見え隠れしてるし」
「だろだろ? キスキンの若造にまでコナかけられてたしよ。こんなんじゃ、いつ誰に持ってかれるかわかりゃしねえ。そうなっちまったら、俺らの努力はどうなんだよ!? 必死に自制して動かずにいるっつーのに!」
「…………」
見事に息の合ったコンビネーションで、矢継ぎ早に畳み掛けてくる2人に、わたしはついに言葉を失った。
いえね、この流れでどう言えと? どう答えろと!?
もう駄目。不整脈が出そう。ほとんど言いがかり、思い込み激しすぎとしか思えない。
なんでわたしがそんなに、男の人はべらせてるみたいに言われなきゃいけないのよ?
「……で、わたしにどうしろと」
投げやりに聞くわたしを、トラップがじっと見据えて答えた。
「他に好きな奴がいねえんなら……俺らどっちを選ぶ」
「なんであんたたち2人から選ぶのよ」
「……パステルは、俺たちが嫌いなのか?」
どことなくさみしそうなクレイの言葉。
思わずその表情を振り仰げば、鳶色の瞳が憂いを湛えてわたしを見つめている。
冷静に考えれば、とんでもなく脈絡のない展開だというのに、なぜか胸の奥がぎゅっと痛くなった。
「嫌いだなんて、そんな」
「じゃあ好きなのか?」
「好きだよ、好きだけどそれはパーティの仲間としてであって」
「俺たちはなあ、おめえのことを女として見てんだ。女としてしか見られねんだよ。とにかくどっちか選べ」
「だ、だめだよお……そんなの選べない」
首をブンブン振るわたしに、しかめっ面のトラップと困ったようなクレイは顔を見合わせた。
……困りたいのはこっちだ。
当たり前でしょ!? いくら他に好きな人がいないからって、唐突に告白された挙句どっちか選べ、だなんて無茶苦茶じゃないのよ!
その時、難しい顔をしていたトラップが、ぱあっと笑顔になる。いかにもいいことを思いついた、と言いたげな表情。
「あのよ。ある意味とんでもねえ提案だけど」
これ以上なにがどうとんでもないのよ。
今更何を言われても驚かない。驚くもんか!
「おめえがどっちか選ぶ気になるまで、俺とクレイでおめえを共有するってのはどうだよ」
「は!?」
「それ……いいかもしれないな」
ど、どこまで出鱈目な理論なわけ!?
クレイ、お願いだから嬉しそうな顔しないで。お前頭いいな、ってトラップをほめないで!
トラップは得意げに大きく息を吸い、機関銃のようにまくし立てた。
「おめえは好きな奴はいねえ。言うなれば、俺らが一番候補としちゃ近いだろうが」
「そ、そうなるのかな?」
「しかしだ。おめえがどっちか選ぶ気になるまでっつったら、いつになるかわかりゃしねえ。その間に他の奴に持ってかれねえとも限らん」
「……」
「かといって指咥えて待つなんて、もう俺にもクレイにも無理だ。おめえがうんと言わねえなら」
「……言わないなら?」
妙にシリアスになったトラップに、恐る恐る尋ねる。
「俺たちはパーティを抜ける」
「えええ!? なんでよ、どうしてそんなことで!!」
「俺たちにはさ、そんなことじゃすまないんだよ」
苦笑いするクレイに、頭が真っ白になるわたし。
停止しかける思考で必死に考える。
つ、つまり2人とも私のことを思ってくれてるわけで、でもわたしがどっちかなんて選べない以上、一緒のパーティにいるのは辛い、ってこと……なのかな……
だからって、クレイとトラップがいなくなっちゃうなんて……そんなのイヤだ!
半べそをかいたわたしの頭を、トラップの手がぽんと撫でた。割と大きいけれど、指の長い繊細な手。
「俺たちがいなくなったらイヤか?」
うんうんと無言で頷く。
薄い茶色の瞳が優しく笑い、クレイと目を見交わした。
「じゃ、決まりだな」
「……」
なんとも節操のない話ではあるけど……わたしは少し逡巡して、コクンと頷いた。
ちょっと、いやかなり複雑な気分だけど、彼らがいなくなっちゃうよりはずっといい。
そもそも嫌いじゃないんだし、確かにそうしてるうちに、どちらかを好きになるかもしれないし。
わたし、自分のせいで2人がそんなに苦しんでるなんて知らなかったからね。
トラップの手がもう一度わたしの頭を撫で、彼はゆっくり立ち上がった。
すぐ傍に立ち尽くしていたクレイに向かって口を開いた。
「そんじゃとりあえず。クレイ、口と下とどっちがいいよ」
「は? 口? 下……って」
「最初にキスするか最初に入れるか、だな。これはどっちもウエイトでかいだろ? 同率にしていいと思うぜ」
「な、ちょっと、なんの話よっ!!」
いきなりどうしてそういう話になるわけよ!? わたしは焦って椅子を立ち、2人の間に割って入った。
「俺たちは付き合うわけだろ? 人数が奇数じゃあるけど。付き合うなら体の関係くらいあってもおかしくねえじゃん」
「そそそりゃそうだけど、なんでいきなり! しかもどうして3人でいっぺんにそんなこと!?」
「バーカ。どっちかが先にやったら不公平だろが」
「不公平……」
絶句。
その時、クレイが遠慮がちに口を挟んだ。その顔は、お酒による酔いとは違う種類の赤色になっている。
「あのさ、トラップ。それはまだちょっと」
「ばっかやろ、とりあえずこいつが、俺たちのことを男として見なきゃー意味ねえんだよ。つきあうって言葉どおりに考えてんのか? おめえ。それか、抜け駆けして俺が先にパステル抱いてもいいのかよ」
「そ、それはっ!」
「だろ? わかったらその手離せ。苦しいっつーの」
トラップの言葉に、反射的に彼の胸倉を掴みあげた手を離したクレイ。
「……すまん」
「という訳だ。おめえに聞いてもいいがな。パステル、おめえはどっちがいい? 俺とファーストキスでクレイと最初にヤるのがいいか、その逆か」
「…………」
呆れてものが言えないとはこのことだ。
短い人生ではあるけれど、こんなことを選択する羽目になるとは思わなかったよ、わたし。
もういいや。もう考えるのやめよう。
3人でお付き合いしましょうとなった時点で、わたしの理解の範疇を超えてるんだもの。普通の神経じゃ無理だと思うよ、さすがに……
「……好きにすれば」
わたしの言葉に、トラップは嬉々としてクレイの肩を抱き、あっちを向いて密談を始めた。
はー、とため息をついてベッドに腰掛ける。
実のところわたし、こんなことしてる場合でもないんだけどな。
原稿は……まいっか。あと2枚くらいだし、朝でも間に合うよね。
考えることを放棄して、原稿書きで凝った肩を無心でぐるぐる回していると、2人が同時にこちらを振り向いた。
「おーし、決まりっ。クレイがまず口な」
「はあ」
「クレイはよお、ナニもでけえからよ。おめえ処女だろ? パステルが裂けちまったらまずいもんなあ」
うっ。そんな生々しい説明は結構ですっ。
トラップは律儀にそう決まった理由を話してくれつつ、かちこちに緊張して見えるクレイに手伝わせてもうひとつのベッドを動かし、わたしをどかすと2つのベッドをくっつけた。
狭い部屋の中、こうするとベッドが妙に存在感を主張している。
「さすがにシングルひとつじゃ狭えもんな。これでいいだろ。ほれ、クレイ」
新たにくっつけたベッドの端に座ったトラップは、クレイの腕を引っ張って顎をしゃくった。
よろけて、シーツに片手をつくクレイ。
彼はそのままぎくしゃくと靴を脱ぎ、ベッドの上に胡坐をかいた。
わたしを見つめる、照れたようなやさしい瞳。
「……パステル」
喉にからんだような声が、わたしを呼んだ。その声の低さに、胸がどくっと弾む。
耳の奥で脈打つ鼓動を感じながら、わたしはおずおずとベッドによじ登った。
クレイの傍にぺたんと座り込むと、ぎこちなく伸びてきた手が髪を撫でた。
微かに震えている大きな手が、こわごわと髪を滑り肩に回される。
ピクっと震えたわたしは、悟られないよう小さく息を吐いた。
クレイはトラップの方を一瞬振り向いて頷いてみせると、ゆっくりとわたしを抱き寄せた。
う、まだ少しお酒臭いや。
逞しい腕に抱きしめられ、頬に厚い胸板が触れている。
わたしの耳はちょうど彼の心臓のあたりにくっついていて、早い鼓動が直接耳に伝わってくる感じ。
「パステル……好きだよ」
胸から直接聞くクレイの言葉。いとおしげで、一生懸命な言葉。
わたしを抱きこんでいた腕が少しだけ緩められ、クレイの胸が離れた。
気配に顔を上げると、眩しそうに目を細めたクレイの顔が迫ってきていた。やっぱりクレイって男前だよね……至近距離で見るなんて滅多にないけど、こうして見るとよりそれがわかるなあ……
密かにつまらないことを考えていると、みるみる近付いてきた形のいい唇が、わたしの唇に触れた。
感触を確かめるように、何度も何度もくちづけてくる、意外に柔らかいクレイの唇。
キスって、ギアとのファーストキス以来初めてのわたし。
ぽーっと彼に体を預けていると、唇の間から何かが忍び込んできたのは、熱くてねっとりとした舌。
探るように少しずつ這い回るそれが、わたしの舌にぶつかる。その瞬間、一気にわたしの舌はからめとられ、クレイは吸い上げるようにキスを貪った。
「んんっ!」
強引に舌を割り込ませるクレイに、わたしの口はほとんど全開にされ、溢れた唾液が顎を伝う。
荒い息が繋がった唇からこぼれ、わたしはそのままベッドの上に、どさっと勢い良く押し倒された。
「きゃっ」
弾みで離れた唇。
クレイの顔はわたしの首筋に埋められ、その手が前身ごろのあたりをむんずと掴んだ。
とんでもない力で押さえ込まれて、身動きできない。こ、怖いよっ!
「ちょ、おいっ、クレイ! 落ち着けっ」
その様子に慌てたトラップが、彼の逞しい腕を掴んだ。
揺さぶられ、はっと顔を上げるクレイ。呆然として、目が泳いでる。
「ご……ごめん、俺……頭真っ白になってた」
「ま、おめえも男だったってことだろ、クレイ」
はあ、と軽く息をついたトラップが、肘でクレイをつつき、ニヤっと笑った。
「まあ落ち着いていこーぜ。じゃ、続き続き。俺も混ぜろ」
「あ、ああ」
混ぜろとはまた……なんて言い方。
わたしが内心呆れていると、クレイは血の上った頭を冷やすように頭を振り、前髪をかきあげた。
今度は、そっとわたしのボタンに手をかけたクレイ。
「怖がらせてごめんな、パステル。……いいかい?」
叱られた子供みたいな表情がやけにかわいく見えて、わたしはつと手を伸ばして黒髪を撫でた。
びっくりしたように目をパチパチさせるクレイに、にっこりして頷いてみせる。
クレイは照れたように微笑み、わたしのブラウスのボタンをひとつずつ外した。
下に着ていたブラジャーを外そうとするも、ホックの位置がよくわかってないみたい。
そうだよねえ、クレイがこんなの片手で外したら、人格疑っちゃうよ……
と、横からトラップの手が伸びた。
「貸してみ」
わたしの背中に手を回したトラップは、いとも簡単にホックを外してしまった。さすがは盗賊というべきか、トラップらしいと言うべきか……
トラップはそのままブラジャーをずり上げ、胸があらわにされてしまう。
反射的に隠そうとするもあっさり腕を押さえられ、わたしの胸は男2人の舐めるような視線にさらされた。
「で……けえな、けっこう」
「本当だ……」
あのね、まじまじと観察しないでくれる? さすがに恥ずかしいんだけど。
そもそもそんなことに感動しないでほしい……いくらこれまで貧乳に見えてたとしても。
じと見しているわたしに気付いたのか、先に我に返ったトラップが、照れ笑いをしながら胸に手を伸ばした。
「やんっ」
「うお、やらけー……クレイ、ほれおめえも」
「……本当だ」
左右の乳房をそれぞれに触られ、思わず背中が反ってしまう。
トラップの手はくるむように胸を揉み、親指の先が乳首をつついている。
「気持ちいいのか? もう勃ってきてんぞ、これ」
「ひゃ……や、ぁん」
器用な細い指。繊細で強弱をつけた愛撫に、乳首がつんと固くなっているのがわかる。
同時に、逆の胸はごつくて筋張った大きな手に、ためらいがちに揉みしだかれていて。
左右の胸を違う方法でさわられてるって、こんなに気持ちいいものなんだ……ってわたしの場合、両方同じ方法だろうが、他の人にさわられたことなんてないんだけどね。
我知らず口からこぼれる吐息を、斜めに覆いかぶさってきたトラップの唇が吸い取った。
軽くて滑るようなキスは唇と舌をなぞり、首筋を伝い下りたかと思うと乳首を舐めた。
「ひゃんっ」
ぺちゃぺちゃ唾液の音をたてながら、長く伸ばした舌で胸を舐め回すトラップ。
やっぱり器用なのかな。トラップのひと舐めごとに、快感が全部乳首に集まってく感じ。
「クレイ、ちょっとこっち頼む。おめえじゃ、下ほぐすの無理だろ」
「え、あ、わ……かった」
暗にダメ出しされていることに気付いているのかいないのか、クレイは素直に頷いた。
わたしの足元へと移動したトラップの代わりに、おずおずと胸に舌を這わせてくる。
「はっ……ん……」
これがね。実は意外に気持ちよかったりする。
そりゃあもうぎくしゃくした、お世辞にも滑らかとは言い難い舌の動きなんだけどね。
ゆっくり動かされるクレイの舌は、熱くてぽってりしてて、そのつもりはないんだろうけど焦らされている感じすらする。
もっと動かしてほしいのに……とそこまで思って、わたしはひとり顔を赤らめた。もっとだなんて、わたし結構淫乱なのかも……
胸元のクレイの端整な顔を見直した途端、足の間がじゅん、と疼いた。
「んっ」
え、何だろう、これ。思わず膝をくっつけて腰をくねらせると、いつの間にか足元に屈みこんでいたトラップが、その膝を掴んで両足を押し開いた。
「今おめえ、クレイの愛撫で濡れたんだろ? 染み出してんぜ」
「やぁー……」
濡れる、といういやらしげな響きに、頬にかあっと血が上り、唇を噛んで目をそらす。
そらした先にクレイのはにかんだ笑顔があった。
「本当に? パステル、気持ちいい?」
「……うん」
そんなキラキラした目で聞かれたら、答えなきゃいけないじゃないのよお……
つい頷くわたしに、クレイは嬉しそうに微笑み、胸への愛撫を再開した。と、足の間に今までにない感触が走る。
「きゃ!」
「うへ、もうびしょびしょになってやんの」
クレイの体の先、わたしの開かせた足の間に座ったトラップの指が、わたしの一番敏感な部分に触れていた。
下着がすっかり濡れて、秘部にぴったり張り付いているのが自分でもわかる。
トラップの細い指が、下着の上からその部分をつつくように撫ぜ、その度に奥の方からじわっと何か生暖かい液体が押し出されていく。
「パステル、おめえ随分感じやすいんだなぁ」
「や、やだっ、見ないでよぉー…………」
「バーカ。見ないでどうやってすんだよ。よっと」
わたしの懇願にも耳を貸さず、トラップはその器用な手でわたしの下着をするりと脱がせた。
あまりの恥ずかしさに目をぎゅっと閉じる。
張り付いた下着がその部分から離れる時、なにかねばったものが糸を引いたような気がする。わたし、そんなに……濡れてるのかなあ……?
暫しの沈黙。
胸のあたりにのクレイの重みがないのに気付いて目を開けると、クレイとトラップは、大きく開かされたわたしのその部分を凝視していた。ちょっとちょっとちょっと!!
「も、もうやだっ、何じっと見てるのよ!」
絶叫調に怒鳴りつけたわたしの声に、2人はビクッと反応する。
「あ……いやごめん。初めて見たもんだから」
愛想笑いを浮かべるクレイ。
だからって、だからって無言で観察しなくてもいいじゃないのよ! 顔から火が出そう。
と、黙ったままだったトラップが、おもむろに指を伸ばした。
「ぁんっ!」
くちゅ、という湿った音と共に、彼の細くて長い指は、わたしの中に埋め込まれていた。
そのまま、器用に動く指は襞をかきわけ、膣の中を執拗に擦りあげる。
じゅわ、とまた奥から染み出してくる液体。これって……感じてるから出てくるんだろうか。
どこか冷静なままの頭でそんなことを考えながらも、わたしの体と喉は、実に素直に反応していた。
「んっ……あ、あぁ……」
「クレイ、おめえ、ここさわってみ」
「ええと……ここか?」
トラップが指を動かしながら、もう片方の手でクレイの手を導いた。
「きゃぁんっ!!」
思い切り海老ぞりに跳ねる腰。
クレイが触れたその部分は、トラップの指が納められている部分の、もっと先の襞の中。
痛いほど敏感な芽を、太い指が探るように弄くり、わたしはあられもない声で喘いだ。
「や、やっ、クレ……そこ、やぁっ」
「え、そんなに気持ちいいのか?」
わたしのあまりに過敏な反応に、目を丸くしているクレイ。
「ほれクレイ、指止まってんぞ」
「あ、ああ」
ニヤニヤと笑うトラップに促され、クレイはわたしを気遣うような顔色ながら、またごつい指を動かし始める。
一番感じやすい芽には電流が絶え間なく走り、内壁は激しく擦られて愛液を溢れさせる。
生温かいそれは、お尻を伝ってシーツに染みているんじゃないだろうか。
二箇所を同時に、違う強さと速さで愛撫され、わたしの頭の中は足の間に負けず劣らずぐちゃぐちゃだった。
「ひっ、や……あ、だめ、だめ……っ」
「お! もうイキそうじゃん。これでどうだっ」
トラップの指の動きが早くなり、わたしのその部分がぬちゃ、ぬちゃっと卑猥な音をたてた。それにつられるように、クレイの指に力が込められる。
「や、や、やぁ……あ、ああああっ!!」
2人がふれている部分から、体の中心に向かってゆっくりとよじ登ってきていた快感が、一気に頭まで突き抜けた。
堪え切れなくなって喉の奥から絶叫する。
自分のまわりだけ、音や色といった、五感で感じられるものが無くなったような不思議な感じ。
それから、どれくらいの時間がたったのか。恐らくは数秒か数分なんだろうけど、現実に戻ってくるまでは随分長かったような気がした。
微かに痙攣するまぶたをどうにか開けると、クレイとトラップが片や心配そうに、片や嬉しそうに覗き込んでいた。
「大丈夫か? パステル」
「イッたのかよ? 気持ちよかったかぁ?」
……なんなんでしょうね、この2人の違いは。
薄い膜がかかったようだった視界の中の2人に、とりあえずコクコクと頷いてみせる。
あれ。よく見ると、2人とも手回し良く裸になってる。いつの間に脱いだんだろう?
すぐ傍にいるクレイの裸体が目に映る。
胸板は厚くてよく鍛えられて、あらわになった肩から二の腕のラインがとってもきれい。
滅多に見ることのないお腹はくっきりと腹筋が割れて、その下に……えっと……天に向かって隆々とそそりたつソレが、しっかり自己主張してる。
「あ……のさ、パステル、そうマジマジ見ないでくれよ」
「あ、ごめん」
つい凝視しちゃってたらしい。
だってね、初めて見るその部分はすごく大きくて太くて、こんなの……入るんだろうかと不安になるほどなんだもん。
クレイの言葉に、えへへと笑いながら目をそらした先の、トラップの体が視界に入る。と同時に、
「おいこら見比べんじゃねえ! クレイの方がでけえに決まってんだろうが!」
憮然とした表情のトラップ。あ、いや別に見比べたつもりは……
でもトラップの体だって、細いけど十分逞しいんだよ? そりゃ彼も冒険者。かなり鍛えてるんだろう。
手足も長いし、脱ぐと意外にごついのね、この人。
って、なんかだんだん批評する目になってきた自分がイヤだわ。
「あに百面相してんだよ。ぼちぼち入れんぞ」
「え、もうっ」
「当たりめえだ。これ以上我慢できるもんかっ」
力が抜けて投げ出していた足首をぐいと掴まれ、まるでカエルみたいに大きく広げられる。
今更ながら恥ずかしくて身をよじるも、脱力してしまった足は言うことをききやしない。
そしてトラップは、クレイより多少小さいながらもしっかり勃起した自分のものを、濡れそぼったわたしの秘部にあてがった。
「や……怖いよ……痛いの?」
「こんだけ濡れてりゃ大丈夫じゃね? おいパステル、クレイのを口でしてやれよ。指咥えて見てるだけなんて訳にいかねえだろ」
「口? 口って……」
聞き返しかけて、その言葉が何を示すかに思い当たり、わたしは思わずまたクレイのその部分に目をやった。
クレイは困ったような、なんとももどかしそうな表情で、横になったわたしを見つめて言った。
「い……いいか? パステル。してくれるかい?」
「……うん、やってみる」
クレイはわたしの言葉を聞くと、身を屈めて額にキスした。
その大きな手でクレイ自身を握り、倒すように傾け、わたしの口元に寄せてくる。
うわ、間近で見ると、ますます大きく感じるよお……赤黒くて、表面に血管が浮いてて、パツパツに皮膚が張ってる感じの肉の棒。
手を伸ばしてソレをおそるおそる掴み、舌先で舐めてみる。
「うっ」
呻くクレイ。い、痛いのかな? 大丈夫かなあ?
そろそろと口を開けると、鼻で息を吸いこんでから、口に含んでみる。と。
「んんんんんんんーーーーーーーっ!!!」
同時に脚の間に激痛が走った。
びちびちびちっと裂けるような感触と、一気にあふれだすぬめり。
泣き叫びたいくらい痛いのに、口の中にクレイのものが一杯に入ってるせいで、モガモガとしか声が出ない。
かといって、これに噛み付くわけにはいかないじゃない?
シーツとかクレイの腕とか、そのへんにあるものを思い切り爪を立てて握り締め、必死に痛みに耐える。
「んくっ……んん……っ」
「うぉ……すっげぇ気持ちいい……」
恍惚とした表情で、腰をリズミカルに突き入れているトラップ。
彼の動きに合わせて、お腹の奥に鈍い痛みがずくずくと走る。
知らない間に涙目になってたんだろう。クレイの太い指が、目尻をやさしく拭ってくれた。
あ、痛さのあまり口がお留守になってたみたい。
思わず歯を食いしばりそうになるけれど、さすがにそれをやったらクレイのが輪切りになっちゃうのでなんとか堪え、一生懸命舌を動かす。
「パステル、つらい……かい?」
いたわるような、どこか眩しそうにわたしを見ている眼差しに、ううんと首を振ってみせて答える。
少しやせ我慢だけどね。でもトラップのソレは、染み出る液体で滑らかに滑り始めてて、痛みが少しずつ間遠になっていく感じなんだ。
遠くなる痛さと引き換えに、疼くような押し上げてくるような……これは快感? 体の奥の方で何か、うずうずしたものが蠢いてる感じ。
それを追いかけようとして、つい腰をくいっと動かした時、トラップとクレイが同時に呻き声をあげた。
「お、くっ、もーイキそーだ……」
「俺……もっ」
え? え? わたしがオタオタしていると、2人は同時にソレを引き抜き、白濁した液体を吐き出した。
トラップは器用に自分の手で受けて、クレイは……
「ひえ……」
「ご、ごめん、パステルっ!」
あの、顔にちょっとかかっちゃったんですけど……うえーん、なんか変なにおい!
「おいおい、顔射してんじゃねーよ」
大笑いしてるトラップをよそに、顔を真っ赤にしたクレイは大慌てでわたしの顔をぬぐってくれた。
「ごめんな、大丈夫か?」
「うん、なんとか……」
本当はあんまり大丈夫じゃないんだけどね……とりあえずへにゃっと笑う。
わたしとクレイがそんなことをしていると、背中を向けて後始末していたらしいトラップがこちらを向いた。
細くてなめらかな赤毛がふわっと揺れる。
「おーし、じゃあ第2ラウンド行くぜっ」
「えええー! もう!? ちょっと休もうよっ」
上半身飛び起きて文句を言うも、わたしの抗議なんて歯牙にもかけないトラップ。
そりゃそうか。ここまでほとんど、彼の口車に乗せられて流されたようなもんだしね。今更抗議もないもんだけどさあ……
「あに言ってんでえ。クレイがまだなんだぜ? まー顔射なんて珍しいことしちゃいるけど」
「……トラップ」
「あーもう、何でもいいから早くしよーぜ!」
苛立ったようなトラップに腕を捕まれ、くるりと半回転させられる。
ベッドにうつ伏せになった状態で腰を持ち上げられ、気がつくと四つんばいの姿勢に。
「や、やだちょっと」
「暴れんな」
突き上げる形になったお尻を、ぺしっとはたかれる。
だってだって、この格好って後ろから丸見えじゃない? 恥ずかしいよお……
「クレイのはでけーからさ。こっちからの方が入れやすいんじゃね?」
「え、そうなのか?」
トラップの言葉に半信半疑な顔色のクレイは、ゆっくりとわたしの足元に回った。
むき出しのわたしのお尻に、ゴクンと息を呑むクレイ。
うっ、そんな食い入るように見ないでほしい。
顔を合わせるのが恥ずかしくなって枕に顔を埋めると、腰に大きな手がかかり、ぎこちなくお尻が広げられた。
そっと当てられる、もう堅くなったクレイ自身。
ピクっと腰を震わせるわたしに、背後から遠慮がちな声が聞いた。
「パステル、ここで……いいのか?」
「……うん……ゆっくり、ね」
ぼそぼそと答えるとクレイは、自分自身をわたしの秘部におそるおそる擦り付けた。
ぬるっとした感触と気持ちよさが脚の間を走る。
「あ……ん」
クレイは、堅くなったものの先端でわたしの襞をつつくようにしながら、慎重に探るように動かしていた。
そのぎこちない動きは……クレイに限って有り得ないけど、まるで焦らしているみたい。
わたしの脚の間は疼いて熱くなり、思わずクレイを振り返ってしまう。
「おい、クレイ、パステルが早く欲しいってよー」
「ちょ、トラップっ」
「事実じゃん。腰揺らしてよ。淫乱だね〜」
妙に嬉しそうなトラップは、そんなことを言いながらわたしの顔の傍に跪き、股間のものを口元に寄せてきた。
反射的に口に咥え、ぺろぺろと舐め回す。
「おー、いいねえ……おめえ巧えぞ」
トラップのって……言ってはナンだけど、クレイのよりは若干細めだから、咥えやすかったりするんだよね。
クレイのは口の中いっぱいいっぱいになっちゃって、口に入れるので精一杯だったり。
って比べてどうするのよ、と密かに自分に突っ込みを入れた時。
「あっ……あああん!!」
思わず口からトラップのものがこぼれるほど叫んでしまったのは、脚の間に思い切り熱い圧力がかかったから。
襞と襞を押し分けて入ってきたのは、熱くて堅いクレイのもの。
それは、さっきトラップが裂いて広げた部分を通り、わたしの中にすっぽりと納まった。
「き……もちいいなあ……」
喉から絞ったような、クレイの喘ぎ混じりの声。
そのなんとも色っぽい声に、クレイのものを咥え込んだ部分が、またジュンと熱くなる。
トラップが慣らしてくれたからかもうほとんど痛みはなく、トクトク疼くように脈打ってる感じ。確かにこの順番は正解だったかも……
クレイは、自身をわたしの中に入れたまましばらく動きを止めていたけれど、少しずつ腰を動かし始めた。
「ん……っ、あ……あん、あっ」
なんかすごく……気持ちいいのはなんでだろう。
ぬるぬるしたものを纏ったクレイ自身が、膣の内壁を力強く擦る。
ゆっくりと動かされるクレイの腰の動きに、翻弄されるように喘いでいると、不意に前髪を軽く掴まれ、上向かされた。 目が合ったのはいたずらっぽい瞳のトラップ。
「気持ちよさそーじゃん? 俺のも頼む」
「んっ……あっ、んんっ」
わたし、一体どうしちゃったのかなあ?
目の前に突き出されたトラップのものはてらてら光ってて、なんだか美味しそうなものにすら見えてくるから不思議。
クレイの一定のリズムで、秘部から紡ぎだされる快感のやり場を求めて、口に咥えたトラップ自身を情熱的にしゃぶってみる。
喘ぎ声をこぼしながら、頬っぺたに力を入れて、じゅぼじゅぼ音をたてて吸い上げたりして。
「お、おーっ、すげえよ、パステル」
「ん……ひもひいい?」
舌を止めないで上目遣いにトラップに聞くと、彼は眉間に皺を寄せてうんうんと頷いた。
顔に髪がかかるのもかまわず頭を振ると、口の中でトラップのものが張り詰めて大きくなってきたような気がする。
「パ……ステル、パステルっ」
クレイが、荒い呼吸の中で呟いた。
彼の腰の動きはどんどん激しくなり、ぱぁん、ぱぁん、って破裂音のような音がお尻のところから聞こえてくる。
わたしのお尻を大きな手でしっかり掴み、思い切り強く突き上げるクレイ。
一番奥をソレの先端がえぐる度に、ずくずくした快感が溢れてきて。
「あぁ……はぁ、んっ……んむっ」
「ごめん、俺……くっ」
クレイはギリっと歯を食いしばるような音を漏らしながら、ずぼっと自分自身をわたしの中から引き抜いた。
抜く瞬間に、彼のものの先端がわたしの襞にひっかかり、弾かれるように快感が走る。
「んっ、は……んっ」
背中に熱い液体がどぼどぼっとこぼされ、咥えているトラップのものを吐息と一緒に吐き出しそうになってしまう。
必死に咥えなおすと、トラップは低く呻いて頭を左右に振った。
「も、おめえ良すぎ……やべ……」
口の中のソレが一瞬痙攣したかと思うと、わたしの喉の奥に向けて、なにか熱くて苦いものが吐き出された。
「も、もが……げほ、げーっほ」
「パステル、悪りい。間に合わなかったぜ」
「にっがぁ……気持ち悪いぃ……」
ねばねばしたものをどうにかこうにか飲み込み、涙目でトラップを睨む。
謝る言葉とは裏腹に、ニヤニヤと嬉しそうに笑っているトラップ。
えらいもん飲んじゃったよ……おなか痛くならないかなあ?
気持ち悪い口の周りをぬぐっていると、背中を拭いてくれている気配。四つんばいのまま振り向くと、クレイが焦った顔で背中に撒いた液体を拭き取ってくれていた。
「あ……りがと」
「いや、その……」
なんて間抜けなんだろう。
四つんばいになったわたしに、自分の股間をいそいそとぬぐうトラップ、そしてわたしの背中を一生懸命拭いているクレイ。
わたしたちは目が合った瞬間、思わず揃って吹き出した。トラップの大笑いがそれに重なった。
ぼんやりと開いた目にうつるのは、まだ夜も明けてない、暗い部屋の中。
こんな変な時間に目が覚めたのは、きっと慣れないことして気が昂ぶってたのと……息苦しかったんだろうな、わたし。
首に巻きついてる、細めの腕。
それはわたしの首をぐいぐいと引っ張っていて、いい加減窒息しそう。
自分の顔にわたしの顔をくっつけるようにして、天下泰平の寝息をたてているトラップ。
腰の下にはクレイの逞しい左腕が回されていて、彼の右手はわたしの左手と手をつないだ状態。
クレイも安らかな顔をして静かに目を閉じている。
いつの間にこんな不自然な体勢になったんだろう? そりゃ寝苦しいわ。
わたしは苦労して2人の腕を抜け出し、ベッドから降りた。
わたしが腕の中からいなくなると、彼等はもぞもぞと体を動かし、手であたりをまさぐっていたかと思うと、触れたものをそのまま抱き寄せてしまったみたい。
お互い、探し当てたものが間違っていることに気付かないまま、ぎゅうっと抱き締めあってて……
うひゃー……男2人で抱き合って……ちょっと気色悪い。起きた時びっくりするだろうなあ……
わたしは含み笑いをしながら身づくろいを整え、椅子に腰掛けた。
とりあえず、書きかけの原稿を仕上げてしまおうと、放り出していた鉛筆を握る。
ひと呼吸して原稿に向き直りかけて、思い直してベッドを見やる。
口を半開きにして、子供みたいな寝顔のトラップ。
眠ってる時も端整な表情の、凛々しいクレイ。
そして、2人の寝顔を見てるだけで、なんだか嬉しくなって微笑んでしまうわたしがいる。
これって恋愛感情なのかな? うーん……まだよくわかんないけど。
こんな無防備な表情をわたしだけに見せてくれることとか、2人がなんのかんの言ってもわたしを大切に思ってくれてることとか……そんなことが何より嬉しい。
――もう少し、このままでもいいんじゃない?
わたしは、静かに眠る2人にそっと囁いて、音をたてないように原稿用紙をめくった。
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完結です。
書人さん、共有編、大好きです!!
いつもありがとうございます!!!
この勢いで、書いてくれる人が増えてさらに画期づくといいんですけどね〜。
自分の嗜好がズレてるんだろうが
普通のトラパスやクレパスより説得力を感じてしまった。
冷静に考えたらかなりだめな状況なのに
3人ともそこらへん深く考えないのがらしいw
こういうズレっぷりってフォーチュンキャラ特有かも。
旧時代の奴らを思い出して嬉しくなりました。
GJでした。
すげー。純愛3Pって後味悪かった経験が多いんだが、
3人とも前書きにあったとおりに幸せそうだw
読後についニヤニヤしてしまった。
エロいし萌えるし原作キャラっぽいしマジGJ。美味しくいただきました。
GJでした!
しかしパステルよ、「そのうちどちらかを好きになるかも」って
選ばれなかった方はものすごく禍根が残るのでは、と続編を期待してみる。
書人様がトラパスクレで素晴らしい幸せ3P書いてくださったから
じゃあトラパスギアのダーク3Pの方挑戦してみようかな、と思ったが
上のレス見る限りやめといた方がよさそうだな。
ダークものは人を選ぶからなあ。
>>80 断り書きをしておけばイイと思う。
というか、俺が見たい。
82 :
79:2006/09/23(土) 02:33:33 ID:solsI4Pd
>>80 いや、気を萎えさせるようなことを言ってしまって悪かった。
切なかったり痛かったり苦い後味の3Pとかも普通に読む人間なんで
嫌ったり拒否ったりしてるわけじゃないんだ。
悪いって言い方がよくなかったな。すまん。
書いてくれるんなら気にしないで落としてくれー。
私も読みたい。
是非よろしく。
書いてくれる人、大歓迎ですよ〜。
と書けない私が言ってみる。