「きさっ…!きさっ…!きさまぁああぁあああぁあ!!わざとだろぉおおおぉおう…!」
吉岡本は激しい衝動に突き動かされて叫び、唐突に立ち上がった。
固まる、周囲の白服達。
目を擦りながら、アカギの肩から離れる衣和緒。「う……なにごとらぁ?…いったい」
吉岡本は、血走った目を見開き、アカギに人差し指を突きつけた。
「…こっ、ここ、この悪魔めっ…!
………お、お…、お嬢様をわざと酔わせて…」
ぽかんと、その様子を眺めるアカギ。
吉岡本は言葉を詰まらせた。のどがグググッと軋む。
「……触ろうというのだろう!……お嬢様の白い…し…」
生唾を飲み込む。
「しっ、白い太腿………白く柔らかい内股を……」
不自然に静まりかえる和室。異様な雰囲気の中、吉岡本の息づかいだけが室内に反響する。
「……お嬢様の……輝く瑞々しい内股や、太腿を…!
……………こっ!……こうやって…こうやって…
…………………こんな風に……ウググッ…!こう……こう………こっ…!」
彼は、もつれる足に構わず、下手くそなパントマイムを次から次へと繰り出し続けた。
それを見守る誰もが目を大きく見開き、半笑いのような、複雑な表情を浮かべている。
「お、おい…やめろよ……吉岡本」
たまりかね、仲間の白服達が、一斉に吉岡本を取り囲んだ。
彼を羽交い締めにする。
動きを封じられた吉岡本は、ベソをかきながらも一層強く、悲痛な叫びをあげ続けた。
「チクショ―――ッ!!……俺だって…俺だって…、
衣和緒様の太腿に触りたいよ…!撫で回したいよ…!頬ずりしたいよ…!!
………股に、頭を…【ピ―――ッ】…したいよ…!!!」
懸命に、吉岡本を押さえ込む白服達の視線の先に…。 「お、おい…」
ゆらりと立ち上がった衣和緒が。
その顔からは血の気が引き、見開かれた目は血走り、青白い頬がピクピクと痙攣している。
「…すっかり酔いが醒めたようだな……鷲巣衣和緒」
側であぐらをかくアカギは含み笑いをし、そうつぶやくと杯を煽った。
「ふふふ…クク……それにしても…」
杯を見つめ、微笑むアカギの目が、冷たい光を放っている。
「…ちょっと、癇にさわるよね……」
「衣和緒――――――ッ!!
衣和緒様―――――ッ!!
…………………チックショ――――――――ッ!!!!」
気がついた吉岡本は、上半身をそっと起こした。
(臭い…)
見上げれば青空。スズメの鳴き声。頬を撫でる風は、ひんやりと冷たい。
そんな馬鹿なことがあるものか。と、思いたいのだが…。
自分の周りにある大量のゴミを見つめていると、そんな都合のいい夢想は粉々に吹き飛ぶ。
「…ははははは」
薄汚れた、自らの白服を見つめ、彼はもう笑うしかなかった。
近所のおばさんが、ゴミ袋を下げて現れた。
「あら、何だってアンタ、そんなとこにいんのよ」
「あの……あ…、今日は…」
とっさのことで、間の抜けた言葉が口をついて出た吉岡本に、おばさんはさらっと答えた。
「今日?…今日は三月四日だけど?」
(終)
吉岡本www 不憫www
今日はホワイトデーだな
ひろや銀さんは律儀にバレンタイン返ししてくれそうだが
他のキャラは期待できそうにな(ry
まあホワイトな液体が飛び交うわけですけど
誰がうまいこと言えと(ry
御無沙汰しております。
一日遅れですが、ホワイトデーネタを投下。
「ほら、森田。バレンタインデーのお返しだ」
そう言って銀二が小さな箱を差し出したのは、仕事で出かける直前だった。
仕事に必要な書類を纏めていた森田は、慌てて顔を上げ、銀二からのホワイトデーのプレゼントを受け取る。
「あ、ありがとうございます。開けてもいいですか?」
「ああ」
銀二からの了承を得て包み紙を開くと、中から出て来たのは直径五センチほどの、小さな丸い金属缶だった。
「わあ、可愛い!」
アンティークのピルケースを模した物だろう、プリントではあるが、精緻な絵柄が全面に描かれている。
裏も表も、書かれている文字は全てアルファベットで、どうやら外国製の物らしい。
動かすと、中からカラカラと、硬い音が響く。
封緘のシールを剥がして蓋を開けると、中に入っていたのは親指の爪ほどの大きさの、三角形のキャンディだった。
綺麗な明るい黄緑色のキャンディは、見た目通り青林檎の香りがする。
「いい香り。美味しそうですね」
甘い香りに誘われて、つい一粒摘んで口の中に放り込む。
「…美味しい!」
さわやかな青林檎の香りとほのかな酸味、控えめな甘さのバランスが絶妙だ。
「ホントに美味しい。すぐ食べきっちゃいそう、勿体無いなあ」
「気に入ったのなら、また買って来てやるさ」
「ホントですか?嬉しい!でも、それじゃホワイトデーのプレゼントの意味なくないですか?」
「なくはないさ、そいつは特別製だからな」
「…変わったところはなさそうですけど…缶の印刷がホワイトデー仕様とか?」
「そのうち分かるさ。仕事、行くぞ?」
「あ、はい」
銀二のことだ、また何か変わった趣向があるのだろう。
期待と不安半々に、森田も銀二の後に続いて部屋を出た。
移動中の車内で、ついつい森田はポケットに入れたキャンディの缶を取り出してしまう。
勿論、キャンディが美味だということもあるが、何よりも銀二が仕掛けた趣向が気になって仕方がない。
気になりつつも、やはり一粒摘んでは口の中に放り込んでしまう。
缶が小さい分内容量も少ないので、このままでは、今日中に食べ尽くしてしまいそうだ。
勿体無いけど、もう一つ…と、一粒摘むと、缶の中に何かきらりと光る物が見えたような気がした。
「…あれ?」
キャンディをかきわけて光の源を探ってみると、明らかにキャンディとは違う質感の物が、指に当たる。
「…何?」
摘み上げてみるとそれは、キャンディと同じ色と形をした、明るい黄緑色の宝石。
トリリアント・カットと呼ばれる三角形に磨き上げられた、大粒のペリドット。
「…ええ!?」
「…どうやら、見つけたようだな」
後部座席で大声を上げる森田に気付き、運転席の銀二が忍び笑いを漏らす。
「ぎ…銀さん!」
「お前の誕生石だ。指輪なりペンダントなり、好きに細工するといい」
「で、でも、どうして?私がこれを貰った時、ちゃんと封緘のシールが貼ってありましたよ!?」
「だから、特別製だと言っただろう?それを作っている工房へ行って、そいつを入れて貰ったんだ」
「ええ!?」
「欧米人は、こういうユーモアが解るから、助かるな。快く引き受けてくれた」
森田には、返す言葉がない。
そう言えば先日、仕事だと言って銀二が単独で欧州へ出掛けた事があった。
その時に、この趣向を思いついたのだろうか。それとも…、
「まさか銀さん、これだけのためにヨーロッパへ出張したんじゃないですよね?」
「当たり前だろう?それは、仕事のついでだ」
さらりと答える銀二だが、旅先でそんなに簡単に、同じ色と形のキャンディと宝石出会う偶然があるだろうか。
絶対にどちらかを先に…おそらくは宝石を…見つけて、それに合う物を探していたに違いないのだ。
銀二はそれを「ユーモア」の一言で片付けてしまうが、その労力が如何なるものか、想像に難くない。
「もう…銀さんたら、かっこつけすぎですよ!」
こんなことをされて、心が動かない女はいないだろう。もっとも、喜ぶか呆れるかは、女の性分によるだろうが。
信号待ちで車を停止させると、銀二は森田の方を振り返った。
「さて、どうする?右へ行けば、馴染みの宝石店。左へ行けば、レストラン。まっすぐ行けば、俺の家だ」
最後の最後まで、隠し球がある。この選択をさせるために、銀二がわざわざこの道を選んだことは、疑う余地がない。
「じゃあ、左へ」
「おいおい、色気より食い気か?」
呆れたように笑う銀二に、森田は反論する。
「だって、家に帰っても、冷蔵庫空っぽですよ?それに宝石は腐りませんし、何に使うか、考える時間があるでしょう?」
「仰せの通りだ。じゃあ、まずは腹ごしらえだな」
銀二は笑いながら、ハンドルを左へ切った。
以上、お粗末さまでした。
以下、チラシの裏。
バレンタインは、うっかり忘れておりましたw
森田の方から銀さんへプレゼントというのは、萌えるシチュエーションではありますが、
はてさて、銀さんには何を送ったら喜ばれるのか、森田も自分も頭を悩ませるところですw
くそっ!!また銀さんにしてやられた
思わず『欧米か!!!11!1!!』と叫びそうになったw
くやしいっ!でも…GJです!!
GJ…!!1!1
銀さんかっこいいな〜
バレンタイン、今からでも遅くない…!!
萌え期待っ…!
保守!!
378 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 01:43:45 ID:ZH1EZzMs
ほす
☆
星が降りたかな
明日のために保守!
保守がてら投下します。
お花見終わった後の赤木家にて
****
「どこ行くの」
「…二階」
二階に行こうとして立ち上がると、頭がぐらぐらした。
胃のあたりが気持ち悪い。気分も悪い。
やっぱりお酒飲み過ぎた。
後ろからシゲルに声をかけられたけど、ロクに返事ができなかった。
おじさん達の手酌をさせられた時に、花見の席だから、今日は無礼講だからとか言われては色んなお酒を飲まされた。
いくら飲んでも酒の味なんか全然わからないし、美味しいとも思わない。
でも、みんなが楽しげにお酒を飲みながら歓談しているのを見ると、その雰囲気を壊すのが申し訳なく思えてなんだか断りきれなかった。
とにかく二階で休みたい一心で、少しおぼつかない足どりで居間から出て行く。
一度泊まらせてもらったことがあるから、だいたい部屋の間取りはわかる。
泊まらせてもらった時は客間みたいな空きの部屋で寝かせて貰っていた。
布団は…ひいてないだろうけど、そんなのもういい。とにかく横になりたい。体を落ち着かせたい。
居間を出て、おぼつかない足取りで階段まで歩く。
階段の電灯をつけると、うすぼんやりとだいだい色の階段がぐにゃりと歪んで見えた。
何だか足元もふわふわする。
…一人で昇れるのか、これ。
右手で手摺りをしっかり持って、恐る恐る一つ目の段に片足をのせると、後ろから左手を強くひっぱられた。
「その分じゃ一人で昇れないでしょ」
シゲルだった。
さっきまで居間にいたのに、いつの間にか自分の背後にいた。
そんな事ない、って言いたかったけど、酔いがまわってる今の身体じゃまるで説得力がない。
お兄さんやお姉さんはともかくシゲルの手を借りるのは癪だったけど、
他人様の家で怪我をするのも嫌だから、仕方なくシゲルの手を引いた。仕方なく。
でもシゲルだって、おじさん達と一緒に色んな種類の酒を、まるで水みたいに呑んでいた。
焼酎だの日本酒だの洋酒だの地酒だの、それも度数のきついやつばっかりで種類は無駄に豊富だった。
それなのに、今も顔を少しも赤くせずにけろりとしている。
お兄さんもお姉さんもおじさんもそうだ。みんな全然酔ってない。
この家は酒に異常に強い家系なのかもしれない。
でも花見から帰って来て、大人がまた家で地酒をあけて二次会だーって騒いでるのを見たときは
流石に胃に悪そうで、なんだかこっちの胃が痛くなってきそうだった。
「そこ、段差」
「わかってるって…」
シゲルはあたしの手をひいて、一段上るとシゲルも一段上っていちいち後ろを振り向いてくる。
そこまでひどく酔ってはないのにひどく気をつかってくるから、まるで孫に手を引いてもらって階段をのぼるおばあちゃんみたいな感じだった。
今みたいに、シゲルは時々優しい。
普段がそっけないだけに、急に優しくされるとなんだかくすぐったいような、少し恥ずかしい気分になる。
他人と違って、シゲルのは馴れ馴れしい優しさじゃない。
さりげなく、自然に手を差し伸ばしてくるから、ついついその手を握ってしまいそうになる。
でもあたしは、握りそうになる手を直前でぐっと握る。シゲルの手は握らない。その優しさに慣れるのが恐いから。
…今はしっかり握ってるけど。
にしても、こうやって握ってるシゲルの手はすごく冷たい。
今の自分の手が熱いのもあるけど、それを抜きにしても、まるで血が通ってないんじゃないかと思うくらいに。
お兄さんもお姉さんも、みんな手は冷たいのかもしれない。
階段を昇って廊下に出ると、シゲルに促されて一体誰のかわからない部屋に入れられた。
何で客間に、って思ったけど、今はとにかくどこでもいいから横になりたい。
シゲルが白昼色の明かりをつける。部屋の隅にベッドがあった。
ベッドが見えると、迷わずベッドに向かってだらしなく身体を投げ出した。
ベッドに沈み込んだ身体は足の指先までほてって熱い。少し汗もかいていたぐらいだった。
こんな状態で布団なんかかぶれない。
なにか身体をちょっとでも冷やせるような、冷たいものが欲しい。
…冷たいもの。さっき階段でシゲルの手が冷たかったのを思い出して、そばにいるシゲルの手首を掴んだ。
それから、シゲルの手のひらを首もとにあてる。
「…つめたい」
さっきまで手を握っていたのに、氷を掴んでたみたいに冷たくて気持ちがいい。
あんまり気持ちがいいから、頬やおでこだとか、まるで氷のうみたいに熱を持った所にぺたぺたとシゲルの手をくっつけた。
嫌がるかと思ったら、シゲルは全然手を離そうとしない。
普段だったら何か言いそうなものなのに、じっとして一体何を考えてるのかわからない目であたしを見下ろしてるだけだった。
口や顔に出さないだけで、本当は馬鹿にされてるのかもしれないけど。
「…ごめん」
何だかばつが悪くなって、シゲルの手を離した。
柄でもないことをしたと思うと、何だか無性に恥ずかしくなった。
きっと酒が入ってるからだと、自分の中でむりやり納得させる。
シゲルもシゲルで、いつもみたいに冷やかしなり何か言えばいいのに黙ったままだから間が悪い。
そう思ってると、シゲルがベッドにのぼってきた。
それから、そのままあたしの体の上に覆いかぶさる。
予想外の行動にびっくりしていると、今度はあたしの服の裾をめくってそこから手を入れてきた。
「ここ、まだ熱いじゃない」
「…ちょ、何やってっ…!」
冷たい手でお腹を触られて、ぶわっと腕に鳥肌がたった。
シゲルの手がお腹からだんだん上に移動して、胸をつかまれた時、はっと我に返ってシゲルの腕を止めようとした。
でも酔ってるせいか腕に力が上手く入らなくて、シゲルの腕はまだあたしの服の中に入ったままで動かない。
「ちょっと、シゲル!あんた、何やって…っ!」
「何って…だいたいわかるでしょ」
突然のしかかられて、その上身体を触られて、何がしたいのか判るわけが無い。
しれっと言うもんだから、かっとなって目の前にある顔を一発殴ろうとした。
けど、やはり酔いのせいか動きがにぶくて、拳が顔面に届く前にシゲルに手首をつかまれた。
掴まれた手首をぎゅっと強く握られる。思わず顔をしかめた。
「…あんまりでかい声出すなよ。下に聞こえるぜ」
そうシゲルが耳元で囁いた。でもこっちはもう訳がわからない。
でもまだ酔いがまわっているからロクな抵抗はできないし、シゲルがあたしの体の上に覆いかぶさっているから身動きもとれない。
どけてよ。そう言おうとする前に、シゲルに唇をふさがれた。
****
涯子とは酔ってる時ぐらいにしか…
384 :
お花見の後:2007/04/17(火) 00:49:44 ID:2X7W1zb9
すいません、カップリング表記を忘れてました
シゲル×涯子で
385 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/17(火) 06:42:36 ID:jz/ECQdn
GJ・・・!!!
酒に弱い涯子に萌えた
素晴らしいっ…!!1!
GJGJ!!!!
顔に出さないだけでシゲルもドキドキしてたんだろうなー
それを考えると萌える
387 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 23:13:03 ID:tH098nW+
保守
・ アカギと、女体化吉岡本(15) の小話を投下
・ 出血ネタ、注意
それは桜の花びらが舞い散る、とある日の夕刻。
「なぜ、ここまでついて来るんですか…! 車から降りてください…!」
先に鷲巣邸からの送迎車に乗り込んでいた吉岡本は苛立ち、
当たり前のように後部座席に乗り込もうとする、赤木しげるの体を押しやった。
懸命に押している最中、彼――アカギは、うつむき肩を振るわせ、くつくつと笑い始めた。
(こいつめ!何がおかしい!)
吉岡本は唖然とし、隣で腕組みして何やら楽しそうに笑い続けるアカギを睨みつけた。
「吉岡本、貴様…」
アカギに続き、
座席に滑り込む鷲巣衣和緒の冷たい視線を浴び、吉岡本はむきになり叫んだ。
「し、しかし……お嬢様!」
そう言いかけた吉岡本の喉元に杖の先端が突きつけられ、とっさに吉岡本は顎を上げた。
「お…おじょ…」
彼女の額に、脂汗がぷつぷつと噴き出す。
「…貴様は前に移れ…… やかましくてかなわん」
吉岡本は呆然とした。
「………はい…」
隣で腕を組み、杖から身をかわし、のけ反ったままのアカギに見送られ、
しょんぼりと車から降りた吉岡本は、のろのろと助手席に乗り込み、ドアを乱暴に閉めた。
涙をこらえ、悔しさのあまり両拳を膝の上で握りしめた吉岡本は、
バックミラーに映るアカギの姿を鋭く見つめる。
彼女の心の中は、どす黒い不満で一杯になった。
(どうして、こんなふざけた男に好意を寄せておられるのですか? 衣和緒お嬢様…
……この吉岡本のほうが、強く、強く、お嬢様のことをお慕い申し上げておりますのに…!)
唇を噛みしめた吉岡本は、フロントガラス越しの眺めを鋭く見すえた。
まだ明るい放課後の女学院を後にし、鷲巣邸からの送迎車は滑るように走り出した。
所変わり、鷲巣邸。
衣和緒嬢が中座した直後の、吉岡本とアカギ、二人きりの部屋。
「ですから……」
吉岡本は椅子から立ち上がり、煙草の煙を吐いたアカギに向かい声を荒げた。
「……迷惑なんです!あなたに付きまとわれることは、決してお嬢様のためにならない…!
………お嬢様には、もっと他にふさわしい方がいるはず!………ですから!」
灰皿に煙草を押しつけたアカギを、吉岡本は苛立ちを募らせ眺めた。
「…別れろ……か…、ふふ」
「はい…」
とたんに重苦しい空気が吉岡本を包む。
「あんたに…」
ふと、吉岡本はアカギに目を向けた。
彼は、くすくす笑いながら灰を落とし、新たな煙草をくわえている。
「…ずいぶんと嫌われたもんだな……オレ…」
吉岡本は、アカギから顔をそむけた。あまりの厚かましさに頬が歪む。
「私が……あなたを好きとか、嫌いとか、そういった問題ではなく…!」
彼女は唾を飲み込んだ。
胸中の苦しく、イライラしたものが急速に膨れあがり、
そして、己でも予想しえぬ………暴発。
「…………ええ、嫌いです…!
……ここにこうして、同じ部屋の空気を吸っているだけでも、正直、寒気がしますっ…!!」
言い放ったとたん、吉岡本の身体を廻る血液が逆流した。
(しまった…! ついうっかり 本音 をっ…!)
一瞬、気が遠のき、心臓が早鐘のように鳴り、
そして鼻からは、何かがぬるりとこぼれて落ちた。
「へえ…」
アカギが表情一変。薄笑った。
吉岡本は立ちすくんだ。
薄ら笑いのまま、アカギが椅子から立ち上がり、ゆっくりとこちらに向かい近づいてくる。
「は??」
吉岡本は慌てた。
鼻をすすり、思わず指先や手の甲を当て、流れ落ちるそれを鼻の下にすりつけた。
後ずさる拍子に椅子がガタリと音を立て、彼女の身体にぶつかり傾いた。
「吉岡本さん」
椅子が倒れる轟音に驚く様子も見せず、吉岡本の目の前まで迫ったアカギ。
吉岡本は壁際に追いつめられた。
アカギのくぐもった笑い声と、彼女の震え声が重なる。
「…な、何ですかっ…??いったい…」
口角を上げ、自分を見下ろすアカギの瞳が鋭く光っている。
吉岡本の視界がぐにゃりと歪む。
(…い、いくらなんでもあれは言い過ぎた…!
『同じ部屋の空気を吸っているだけでも寒気がする』だなんて、
そんなゴキブリ扱いしたような言葉、面と向かって言われたら怒るに決まっている…!)
体が小刻みに震えた。
目は潤み、膝はわらい、体中の毛穴という毛穴からは、次々と冷や汗が噴き出す。
ついでに鼻の穴からも、鼻水らしきものがつたい落ちた。
「ぷっ…!」
アカギの顔がわずかに赤らみ、肩が小刻みに震えた。
(こっ、これは!戦意高揚の笑みか…??
怒っている!奴は怒っている、のか…! もしかしたらわたし…… ぬっ殺される…!?)
大きな不安が、そして恐怖が。じりじりと吉岡本の心と体をむしばみ始めた。
「いや、別に…ただ」
そう言うとアカギは、にたり、と笑った。
「……気づかないの?」
「なっ、なっ…! なにが、ですか?」
吉岡本は錯乱のあまり、盛んに両手で鼻水らしきものをぬぐい、顔中になすりつけた。
両手で顔を触ると、少しだが気が落ち着く。
「……わかった、わかった…… 教えてやるから…」
再びアカギの肩が震え、頬がわずかに引きつった。
「とりあえず、それ…、顔になすりつけるのやめなよ」
「……教えてやるからさ…
…………せいぜい 仲 良 く やろうぜ………吉岡本さん」
ふいに、アカギにポンと肩を叩かれ目を覗き込まれ、吉岡本の心臓は大きく跳ねた。
唇が歪む。
(……ふ、ふん!仲良くなどしてやるものか…!
……邪魔してやる…!とことん邪魔してやるぞ…!衣和緒お嬢様は渡さない…!)
そう言いたいものの、アカギが発する殺伐としたオーラと、湧き来る恐怖には勝てず、
こわばりきった頬をぎくしゃくと動かし、彼女は何度も頷いた。
「よし、わかった、吉岡本さん… あんた…」
そこまで言いかけたアカギは視線を外し、口を押さえ、唐突に吹き出した。
「……ブゥフゥ―――――ッ」
「なんですか…!失礼なっ…!もったいぶらず、とっととおっしゃって下さい…!!」
その瞬間、吉岡本の鼻から、ばたばたばたと生暖かいものが噴きこぼれた。
量は、さきほどの比ではない。
慌てて両手で受けとめた吉岡本は、それを覗き込み、卒倒しそうになった。
そこには血まみれの掌がふたつ…! 掌のくぼみにたまる、小さな血の池地獄が点々と…!
(………あぁあ!!!)
吉岡本は目を白黒させ、その場で固まった。
小さな手鏡を持つ、自分の手が震える。
「……吉岡本さん、あんた、鼻血が出てるね……」
鏡面は偽ることなく、自分自身のおぞましい顔を写し出す。
「さっきから鼻血がすごいよねって…、あらら、もう遅いか……」
「あらら、じゃ、ありませんよ! この悪魔っ…!」
顔中、血糊で真っ黒テカテカした吉岡本は涙をこらえ、アカギに詰め寄った。
「どうしてすぐ、鼻血のことを教えて下さらなかったんですか…! あんまりですっ…!」
(恥ずかしい…!!!こんなみっともない顔…!!!)
吉岡本は両手で顔を覆い、さめざめと泣きだした。
「えっ? ……だんだん似てくるから、面白くて…… 見れば見るほど…」
吉岡本は顔を上げた。
彼女と目があったアカギは、ニヤリと薄笑った。
「……… チョコボーイ山口にさ…」
「あぁ! ス――――ッ」
吉岡本は声を上げ、鼻をすすった。
目を剥いた吉岡本は、手鏡をアカギめがけて投げつけ、彼はフワッ…とばかりによけた。
鏡面が割れ、破片が周囲に飛散した。
……この後、衣和緒を巡る二人の(低レベルの)言い争いは激化。
それは、私服に着替えた上機嫌の衣和緒嬢が、この部屋に戻るまで続いた。
(終)
393 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/26(木) 16:58:42 ID:ORcsK3LV
久しぶりに見たらハテコとにょた吉岡本が降臨していて萌えたwwwwwwwwww
394 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/30(月) 17:45:02 ID:U49gTmxA
きたぜ・・・ぬるりと・・・`_ゝ´
保守だ…!
ほっすほっすしとくぜ…ぬるりと
倍ぷっすだ
初めてきたけど保管庫とまってる?
倍押しだ…
赤木家の母(故人)はゆきみ、に一票
職人去ったな…一時期あちこちで晒されまくってたからなあ…
ひろ×しげみの続きとか読みたいんだが
保守
403 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 06:18:31 ID:EEQcu2XJ
大分過疎ってるなぁ・・・
404 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 17:43:59 ID:yRsoZl8Q
これ、ラブコメにこだわらず福本二次SSの総合スレにしてほしい。
ラブコメとジャンルが決められているから、それ以外のSSを投下したくてもできない。
自分はネタはあるけど、ラブコメじゃないから投下できないもので…
エロパロ板しか二次創作SSの場がないからこんな提案をしてみる。
自分としては別にそれでもいいと思うけどなあ<福本二次SS総合
スレの趣旨が立てたときと違っても、活用できるなら構わないし。
ラブコメ以外でもOKだと思うけど。つか読みたい。
投下プリーズ。
407 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 11:27:18 ID:5RNfQTcE
七夕に保守
七夕=一年に一度の逢瀬=女南郷さんの前にひょっこり現れるアカギ(19)
を妄想して保守
まあ麻雀にも川ってあるもんな
七夕にゆきみが黄泉還りして来ればよかったのにっ‥!