【隅っこ】無口な女の子とやっちゃうエロSS【眼鏡】
1 :
名無しさん@ピンキー:
あとは適当に
2 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 16:10:47 ID:HirKAQcz
2
レイプでも和姦でもいいのか?ええのか?ええのんか?ええ〜?
4 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 16:24:50 ID:4GoKaN3W
OK。まぁ程度を弁えてもらえれば
5 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 12:37:02 ID:rJIu9okl
うはwwwこういうの好きかも
記念に一筆書くわ
6 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 21:13:15 ID:y6mJpYqy
保守保守
7 :
まら文太:2006/08/10(木) 21:47:03 ID:FHWE6R39
「なあ。今日の花火大会、一緒に行かないか?」
「……」
俺は携帯の向こうにいる俺の彼女……稲穂に話しかけた。いつもどおり無言。
「待ち合わせの場所と時間は俺が決めていいか?」
「……」
一方的に俺が喋り続ける。稲穂は相変わらず反応がない。
「んー……じゃあ夕方6時に駅前のコンビニ前、ってのでいいか?」
反応がないのを確認し、俺は夕飯を食べてから来いよと言って電話を切った。通話時間、1分43秒。そのうち稲穂がしゃべった時間はゼロ。半分以上俺がしゃべり、残りの時間は俺が彼女の反応をうかがう時間。
稲穂の無口ぶりは半端じゃない。授業中の必要最低限の会話を除いて、1学期中に彼女の声を聞いたことがないという奴までいるくらいだ。
稲穂は頭が悪いわけでも、要領が悪いわけでもない。むしろ休み時間にはいつも読書をしているほどの読書家で、成績も常に全教科とも学年30位以内には入っている。
図書委員として放課後は図書室にいることが多いが、図書の整理やその他事務作業の能率も彼女が一番いいらしい。
ちなみに彼女の容姿だが、クラスの女子の中では一番背が低い。またリムレスの眼鏡と、背中にかかる長い髪をうなじでまとめただけの髪型からは、かなり地味な印象を受ける。
決して美人ではないが、決してブスでもない。本当にどこにでもいる、地味な女の子というのが正しいだろう。
そのため稲穂は、クラスの中で浮いた存在というよりは「存在を忘れられる」娘だった。しかし俺は、ずっと彼女のことが気になっていた。一目ぼれ……ではない。彼女の容姿に惚れたわけではないのだから。
俺は彼女の声……国語の授業で教科書を朗読したときの声に、一耳惚れをしたのだ。
稲穂の声はとても美しかった。高すぎず低すぎず、それでいて澄んだ音色。普段の無口さからは想像もできないほど流暢で美しい朗読。そのリズムとメロディに、俺はひきこまれてしまった。どっちかというと嫌いな国語の授業が、以来楽しみになってしまったぐらいだ。
彼女の気をひくため、以来図書館に通いつめた。何とか彼女と会話をしたい。その一念で、マンガしか読んだことがない俺も小説を読むようなった。
俺の変身に悪友どもが驚き、そこから回りまわって稲穂の幼馴染(別のクラスの女子で、まったくの偶然だが悪友の彼女だった)にそのことが伝わって、俺は彼女に告白するチャンスをえた。俺はガチガチに緊張しながら稲穂に「つきあってください」と告白した。
しかし稲穂の返事は
「……」
だった。その後俺がどんなに食い下がっても、彼女は口を開かない。落胆した俺に、幼馴染ちゃんが言った。
「稲穂の無言は、OKのしるしよ。嫌だったら嫌っていうもん」
以来、俺たちは晴れて(?)恋人同士となった。
休日のたびにデートをした。さすがに1対1というのはアレなので、最初は悪友の清人と一緒にグループデート。
幼馴染ちゃんのアドバイスで、稲穂には「どう?」と提案するより「〜でいい?」と聞くのがスマートらしいということがわかった。提案しても返事は返ってこない。むしろ「Yes/No」で答えられるような聞き方をするのが効率がいいのだ。
ただ稲穂の場合、Noのときには「……嫌」という言葉が返ってくるが、Yesのときには「……」と無言のままなのが少々とっつきにくい。
だが、幼馴染ちゃん曰く。
「私も彼女が5つ以上の単語をつなげて喋ったのを聞いたことがないし、笑顔も一度しか見たことがない」
だそうだから気長にいくことにした。少なくとも、稲穂は俺とのデートを「……嫌」と断ったことはない。
ただ、時折思う。
稲穂の美しい声で、「好き」って言ってほしいと。
8 :
まら文太:2006/08/10(木) 21:47:51 ID:FHWE6R39
電話を切った俺は、清人にも電話をした。奴も今日、幼馴染ちゃんと一緒に花火を見に行くという。
「俺たち、6時に駅前のコンビニ前で待ち合わせしたけど?」
「おお、こっちは5時半に駅で待ち合わせだ。マックでメシ食って行くから、合流しようぜ」
「ああいいぜ。じゃあな」
「おいおい、ちょっと待てよ」
電話の向こうで清人が言う。
「ちなみにお前ら、どこまで進んでるんだ?」
「ああ?」
「とぼけんなよ。もうキスは当然してるわな。だったら今日、いよいよ初たいけーんとか考えてないか?」
「そ、そんなこと」
「俺たちゃ近くのラブホ予約したぞ? ま、お前も今日で童貞卒業しろや。な?」
「待てや。俺は……」
「なんだ、もうヤってたのか?」
「あ、当たり前だろ! 俺たちだって花火のあとにだな……」
「あ、悪ぃキャッチが入った。……じゃな」
ぷつっ、つーつー。清人は一方的に電話を切る。
かなかなかな。窓の外ではヒグラシが鳴き始めていた。
駅を降りてコンビニ前に行く。携帯の時計をみると、5時55分。しかしすでに稲穂はそこに立っていた。
「……よ、よお」
稲穂も俺に気づいてぺこりと頭を下げる。
彼女は浴衣姿だった。眼鏡はいつもどおりだが、長い髪は頭の上に結わえられ、細くて白いうなじが見える。団扇と巾着を手にした稲穂に、俺はじっと魅入っていた。
「……?」
稲穂が首を傾げる。俺ははっとして唾を飲み込み、言い訳めかしいことを話しかけた。
「あ、な、なにか飲み物とか食べ物とか買っていかないか?」
「……」
「暑いしさ……あっと、俺はコーラを買うけど、お前はお茶でいいか?」
「……」
「そうそう、清人たちも花火を見に行くってさ。もうすぐここへ来るらしいぞ」
「……」
コンビニの中を歩きながら俺が稲穂に話しかける。稲穂はずっと俺の斜め後ろについて歩いてきた。
やがて悪友の清人と幼馴染ちゃんがコンビニに到着する。花火会場はここから数分の、湖岸沿いの公園。その道すがら、清人が俺に囁いた。
「おいおい……どうしたんだよ彼女?」
「ん、どうしたって?」
「なんていうか、普段と雰囲気違わくね?」
「ん……確かに」
「なんかさ、あーゆー日本美人って格好、こー……くるもんがあるよなぁ」
「なんだよ、お前も彼女に浴衣着てくれって言えばいいじゃねえか」
「ダメなんだよあいつは。身長高いし日焼けしてるし胸とケツはでかいし。浴衣なんか似合わねーって」
「……それってさりげに稲穂のこと馬鹿にしてないか?」
「してないしてない」
言い合いながら俺はちらりと稲穂を振り向いた。稲穂は幼馴染ちゃんと楽しく歩いている。……と言っても、やっぱり幼馴染ちゃんが一方的に喋り、稲穂はうんうん頷いているだけだったが。
そして俺たちは、あっという間に花火会場に到着した。
9 :
まら文太:2006/08/10(木) 21:48:41 ID:FHWE6R39
「……あれ、清人たちは?」
俺は周囲を見回しながら呟く。稲穂も首をかしげた。
花火大会は盛況のうちに終わった。最後の特大スターマインが夜空を彩り、終了のアナウンスが流れる。ぱらぱらと帰りかける人並みに、俺は清人たちを探した。
「さっきまでそこにいたんだけどなあ……」
言いながら俺は、上を見上げっ放しでこった首をぐるりと回す。そのとき、会場の公園脇にあるネオンが目に入った。
(……ああ……)
そうだった。あいつらはラブホを予約していると言っていた。あの二人の本当の目的は、花火鑑賞ではなくそのあとにあったんだ。
ふと俺は、隣に立つ稲穂を見た。稲穂はまだきょろきょろと周囲を見回し、二人を探している。眼鏡の上にかざした手。そして袖がめくれて露になる白い腕。俺はごくっと唾を飲み込んだ。
「……きゃ」
突然、稲穂が小さく叫んだ。帰路を急ぐ観客の流れにぶつかって転んでしまったらしい。俺はすぐに駆け寄って彼女を助け起こした。彼女の浴衣の裾が砂で汚れる。俺はぱんぱんとそれを払った。ちらりと脛がみえる。
「……稲穂、ここは危ないからもう少し離れたところに行こう」
俺はもう一度生唾を飲み込むと、そう言って稲穂の手をとった。そしてぐいぐいと公園の奥……出口とは反対側へ向かった。
「……」
最初は素直についてきた稲穂だが、周囲が暗くなるに従って歩が重くなる。そしてついに
「……嫌」
拒否の言葉が出た。俺はそこで停まり、稲穂のほうを振り向く。
「……」
稲穂が上目遣いに俺を睨む。そして不安げに周囲を見回した。俺が稲穂の肩に手を掛ける。びくっと震えながら、稲穂は俺の顔をじっとみつめた。
「稲穂……キ、キスしていいか?」
俺は震える声で言った。清人の手前大きなことを言ったが、俺たちはまだキスすらしたことがない。グループデートで二人きりになる時間がほとんどなかったし、それに稲穂から「……嫌」という言葉を聞くのが怖かったからだ。
しかし稲穂はしばらく黙っていた。じっと俺の顔を睨む。否定の言葉が出ないのを肯定とうけとめ、俺はゆっくりと唇を稲穂のそれに重ねた。
「……」
かち、かちかちっ。お互いの歯があたる。俺の口も震えていたが、稲穂の口も震えていた。その薄くて微妙な感触を味わう余裕もなく、俺は手を稲穂の肩からそっと胸に動かした。
「……!」
びくっと稲穂が震える。浴衣越しに触れた稲穂の胸は、思ったより大きくて柔らかかった。俺は浴衣の隙間から手を差し込む。稲穂の手が一瞬動いたが、すぐに手を俺の肩に伸ばしなおした。
ブラジャーの外し方がわからない。俺は焦って、そのままブラをずらして胸に触った。熱い。トクトクという稲穂の脈が伝わる。
「……痛!」
小声で稲穂が叫ぶ。思わず力を込めすぎたようで、俺は胸に触れた手を離した。
「ご、ごめん。その、初めてなもんで」
「……」
無言で稲穂が俺を見つめる。しかし今度は、稲穂から俺に抱きついて唇を重ねてきた。暖かいキス。俺は彼女の胸を再び注意深くもみ、そしてゆっくりと手を浴衣の裾にすべりこませた。
「……!」
はあ、と稲穂が息を呑む。俺の指が、布越しに彼女の秘部に触れた。少し湿っているそこを意外に思いながら、俺は布の上からでもわかる膨らみを軽く刺激する。
「……嫌」
くっと唇をかんで足を閉じる稲穂。でも俺はそのまま布を横にずらし、隙間から指をねじ込んだ。ごそごそと茂みをかきわけ、熱いクレバスを指でなぞる。
「嫌!」
やや大きい声で稲穂が叫んだ。しかし俺はそんな彼女の唇に三度キスをする。何かを言おうと開いた稲穂の口に、俺はそつと舌を差し込んだ。熱い感触。甘い唾液。稲穂の強張った体が徐々に柔らかくなる。
10 :
まら文太:2006/08/10(木) 21:51:32 ID:FHWE6R39
「稲穂。俺、もう挿れたい……」
「……」
唇を離して俺が囁く。お互いの唾液が蜘蛛の糸のようにつつっと二人の唇の間に結ばれる。ぷいっと稲穂が顔をそらす。しかしその口からは、「……嫌」の言葉は聞こえなかった。
俺は彼女の下着をゆっくり脱がせた。暗がりで彼女の秘部がみえないのが残念だったが、俺もそのまま自分のズボンを脱ぎ、イチモツを取り出す。
俺の肩に手をかけ、稲穂が覚悟を決めたように目を閉じる。俺は稲穂の片足を持ち上げ、息子の位置を合わせながらゆっくりと稲穂の中に固いイチモツを挿入した。
「……っ!」
稲穂がぎりっと歯を食いしばる。なかなか入らなかった息子が、突然ずるりと稲穂の中に入った。あまりの熱さ、そして狭さ。俺はしばらくその感触を味わっていた。稲穂は立っていられないのか、俺にしがみついてくる。
「稲穂……動くよ?」
「……」
ひいひいと息の音が聞こえる。しかし言葉は出なかった。俺はゆっくりと稲穂の中からイチモツを抜いていく。そして8割方抜いたところで一旦とまり、再びゆっくり奥へ挿入し始めた。
稲穂のしがみつく力が、挿入にあわせて強くなる。息の音が、いつの間にかひいひいからはあはあに変わっていた。そして。
「……好き」
耳元で囁くように稲穂が言う。俺は一瞬動きを止めた。空耳かと思った。それぐらい小さく、短い言葉。
「い、稲穂……もう一度言ってくれるか?」
「……好き。好き……好き」
「……稲穂ぉっ!」
不覚にも涙が出た。ぐっと稲穂の中に深く差し込む。そしてその熱さと狭さに、俺は思わず精を彼女の奥深くで発射した。
そのまましばらく俺たちは抱き合っていた。離れる前にもう一度キスをする。そして俺はゆっくりと彼女の中に入っていた息子を抜いた。
稲穂の秘部からは、赤い血と俺の精液がこぼれている。それをみて、浴衣が汚れないよう裾をめくりながら稲穂が涙目で俺を見つめた。
「ああ、ごめん。つい暴走しちゃって」
「……莫迦」
俺はポケットからハンカチを取り出して、彼女の細い足を拭いた。
「あのさ……初めて、だったんだよな?」
「……」
無言は肯定。ぷいと顔を赤く染めて横を向く稲穂。
「稲穂。もう一度、『好き』って言ってくれないか?」
「……嫌」
「どうして?」
「……奥に出した」
頬を膨らませながら稲穂が言う。はっとして俺は稲穂に聞いた。
「ああ……本当にごめん。あの……安全日、だよな?」
「……違う」
「え? じゃああのまさか……今日は危ない日、だった?」
「……」
無言。俺はじっと稲穂を見つめた。稲穂も顔を横に背けながら、目だけ俺をじっと見つめている。
(……どうするの?)
その瞳は無言で俺を問い詰める。俺はぎゅっと拳を握って答えた。
「ああ、その……」
「……?」
「俺、責任、とるよ……。もしものことがあっても、俺、稲穂のことちゃんと護るから……」
「……ほんと?」
「ああ。どうしていいかわからないけど、でも俺、稲穂のこと本気で好きだから……」
しどろもどろに言葉を続ける俺。しかし稲穂は、突然くすっと笑って言った。
「……嘘」
「へ?」
「危険日って嘘、ごめん」
そしていたずらっぽくべっと舌を出す。俺はしばらくきょとんとしていたが、笑い出した。稲穂もくすくすと笑っている。彼女の笑顔……幼馴染ですら一度しか見たことがない笑顔は、とても素敵だった。そして初めて、複数の単語が連なった言葉を聞いた。
俺は嬉しくなって稲穂に抱きついた。稲穂も俺の腰に手を回す。
「なあ稲穂……もう一度、好きって言ってくれないか?」
「……嫌」
「どうして?」
問いかける俺に、稲穂がそっと唇を重ねた。熱い感触。甘い唾液。
それは言葉よりも雄弁に、稲穂の心を俺に伝えていた。
− 終 わ り −
うお
リアルタイムで読んだ
無口っ娘GJ
12 :
まら文太:2006/08/10(木) 21:55:43 ID:FHWE6R39
>>11 感想ありがとう。
スレにとって初SSとなるので、こんな感じでよかったのかちょっと不安だけど、よろこんでもらえたようで何より。
キタ━━━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━━━━GJッス
14 :
めがスレ委員長 ◆sSMEGAP74E :2006/08/10(木) 23:23:17 ID:M/iUAoNW
>>7ー10GJ!
かわいいふたりですね。
こういうの好きです。
無口っ娘ていいもんなのですね。
すごくよかったです。高校時代思い出して涙出てきた(´・ω・`)
どんどんネ申が増えればいいなー
萌えた…萌えたぜ!
19 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 18:15:40 ID:DMhv6kH0
age
エロパロ板で言うのもなんだが、
続きが読みたい…!
立てといてなんだが本人が書けないっていう(;´д`)
いじめとかそういうの?
23 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/13(日) 21:45:48 ID:z4OZeYZj
保守age
「…?」
「…(ぷい)」
「…?」
「…(ぷい)」
「…」
「…」
ちゅっ
「〜〜〜〜!///」
「…?」
「……///」
「……?」
「……………//////(こくり)」
「♪(抱)」
「!///」
地の文は省略されました…読むには文才をください
25 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 14:06:23 ID:bWT4XaJ+
……
27 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 22:34:38 ID:sgy8u0ab
>>24 GJ!!
誰か俺に文才をくれっ(;´Д`)
このスレ(・∀・)イイヨイイヨー
29 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/18(金) 23:43:33 ID:zWsWOJi6
ほす
ああ、このスレがこのままなくなるのは惜しいよな……2chでは初めてだけど、
仕方ねぇ……書くか!?
31 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 20:42:25 ID:exXJbmlS
>>30 書け。というか書きなさい。
さらにいえば書いてください。
お願いします、書いてくださいませ。
30ではないが途中まで書いてみた。
携帯からなので変なとこあったらスマソ。
凌辱要素含むかもなので苦手な方はスルー願います。
「……なあ、おい」
「…………」
「いい加減に、機嫌直してくれよー」
「…………」
「お前に言えないようなことは、ほんっとうに、なにひとつ、してないんだってば」
「…………」
もうかれこれ二時間以上、俺と皐月は延々とこんな会話を繰り返している。
いや、「会話」という表現は正しくないな。
喋っているのは俺だけで、どんなになだめてもすかしても、皐月はうんともすんとも応えない。
もともと皐月はかなり無口なほうだ。一学期を終えて、皐月と一度も口を利いたことがない、なんてクラスメイトはざらにいる。
それに加えて皐月は、悲しんだり怒ったり――つまり感情が昂ぶると、無口に拍車がかかるところがある。
今がまさにそれだった。
皐月と俺のこの状態は、今朝から始まっていた。
夏休み真ん中の登校日。
うだるような暑さの下駄箱で、欠伸まじりにだらだらと靴を履き替えている俺の後ろに、いつの間にか皐月が立っていた。
「……昨日、見た」
背後でぼそりと呟かれた声で、俺は初めてその存在に気づいた。
慌てて振り返ると、皐月は無表情で、じっと俺を見ている。
「お、おおお……っ、……おはよう、皐月」
動揺を隠せない俺の挨拶を無視して、皐月は自分の下駄箱にすたすたと向かい、靴を履き替え始める。
俺は深呼吸をひとつして、跳ね上がった鼓動を落ち着けながら皐月に聞いた。
「朝からあんまビビらせんなよ……。……で、何を見たって?」
皐月は黙って、すい、と腕を上げた。
細くて白い人差し指がゆるりと伸ばされて、ある一点をぴたりと指し示す。
その方向を目で追って、俺は凍りついた。
そこにあったのはひとりの女子生徒の姿で――俺は確かに昨日の日曜日、彼女と一緒に買い物に出かけていたのだ。
全校集会が終わり、体育館から教室への移動の間も、皐月は一言も口を利いていない様子だった。
たまに周囲の女子が何かを話しかけているみたいだが、頷いたり、首を横に振ったりで短く返している。
ホームルームも終わり下校する時になっても皐月の様子は何も変わらない。
俺と皐月はいつも一緒に帰ることにしていたし、放課後はいつも皐月の家で数時間過ごすことにしていたから、
俺はひたすら皐月の機嫌を取りながら、彼女の後をついていった。
皐月が母親とふたりで住んでいるマンションは、学校から歩いて30分程度の場所にある。
玄関前までたどりついたところで、皐月は鍵穴に鍵を差し込みながら、ちらりと俺の方を振り返った。
「……今日は帰ったほうがいいか?」
どうしたものかと尋ねる俺に皐月は何も答えず、けれど玄関を開け放したままで自分が先に部屋の中へ入った。
あがっていってかまわない、ということなんだろう。
皐月の家は母子家庭で、病院勤務のお母さんは夜中まで帰らない。
家で独りで過ごす時間を皐月が好んでいないことは、これまでの付き合いでわかっていた。
だからと言って、今のこの状態でふたりきりで対峙して、一体何がどうなるんだろう――。
俺の中でかなりの不安が渦巻いてはいたが、結局は皐月を放っておけなくて、俺は彼女の後に続いて部屋に入った。
そして結局、現在に至るまで、状況は膠着状態のまま。
時間の経過も今日はやけにゆっくりと、重いものに感じる。
絨毯敷きの皐月の部屋で、扉を背にしてぺたりと正座をしている無表情の皐月。
肩につくあたりで切り揃えられた黒い髪の毛先まで、さっきから微動だにしない。
それに向かい合って、ずーっと一人で皐月に話しかけ続けている俺。
「あーーーーーっ、もう、面倒くせぇ!」
行き詰った沈黙が鬱陶しくて、大声をあげながら背中を後ろに倒し、床に仰向けに寝転がった。
「もうさぁ、そうやってむくれてればいいじゃん。いつまでも」
元々は自分の行動が原因であるにも関わらず、俺は相当に不貞腐れていた。
吐き捨てるような言い方をして、意味もなく天井を見上げる。
――だけど本当に皐月に言えないようなことは何もしてないんだ俺は。
抑揚のない声で独り言のように呟く。
微かな物音がして、皐月が立ち上がったのがわかった。
「…………」
仰向けにだらしなく伸びている俺の顔を、皐月が見下ろしてくる。
唇は相変わらずひきむすばれて、黙ったまま。
俺の必死の弁明に何の言葉も返してくれず、ただ黙って怒りの表明だけをしてくる皐月に、俺はなんだか段々と苛立ってきた。
皐月同様に唇を固く結んで黙ったまま、彼女の顔をじっと見て――
それから俺は徐に、皐月の足首を、ぐっと掴んだ。
「…………!」
驚いて身体を強張らせる彼女の反応を無視して、俺は上体を起こし、皐月の足首を力いっぱい引っ張る。
「……ゃっ……!」
バランスを崩して俺の目の前に倒れこんだ皐月は、さすがに小さな悲鳴を漏らした。
俺は皐月の足首から手を離すと、彼女の上半身に圧し掛かる。二人でもつれるように床に倒れこんだ。
皐月の両肩に両手を置いて力をこめ、彼女の背中を床に押しつける。
皐月は目をまんまるく見開いて、俺の顔を見上げている。
「……あんまり、意地張ってんなよ」
自分でも驚くほど、低く暗い声が出た。皐月の眉が、僅かに歪む。
「俺とあいつは何にもないし、俺が好きなのは皐月だけだって――何回、口で言っても、わかってくれねぇんだったら」
ふい、と顔を逸らそうとする皐月の顎を、片方の手で掴み、無理やりに上を向けさせる。
そうして俺は、皐月の唇を強引に奪った。
「……っ…………!」
皐月の肩がびくっと奮える。
細い身体が抵抗するように跳ねるが、俺は体重をかけてその動きを抑える。
ぶつけるように押し当てた唇を皐月の唇にこすりつけ、上と下の唇をそれぞれ食むように貪る。
閉じられた唇の僅かな境界から舌をこじ入れ、無理やりに隙間を押し広げ、乱暴な動きで皐月の歯茎と歯列を何度も刺激する。
「……ふ、ぁっ…………!」
俺の強引さに押し切られた形で皐月の唇が開き、溜め息のような声が漏れた。
やっと聞こえた皐月の声が嬉しかったのか、こんな形でしか声を聞かせてくれない皐月に腹が立ったのか、
俺は自分でもわからないまま、皐月の顎を掴んでいた手を離し、その手を皐月の胸元へ滑らせていった。
今日はここまで。
続きは後日。
続きに期待
37 :
30:2006/08/24(木) 00:03:31 ID:WEBtQBcy
100行ほど書いたところでデータロストしてしまっただす……
WZ(オートセーブ付)インストールして書き直し……申し訳なし、
と侘びを入れにきたら、新たな作品が。
期待しています。がんばってください。
全裸で正座して待ってるよ
窓の外からヒグラシの鳴く声が遠く聞こえる。
部屋の中では俺と皐月の息遣いと、衣擦れの音しか聞こえない。
相変わらず貪るように唇を合わせたまま、俺の右手が皐月の胸のふくらみに触れる。
制服の半袖ブラウスの上から手のひらを這わせると、俺の手の動きにあわせて皐月の身体が小さく震えた。
触れ合っていた唇をゆっくり離す。皐月は新鮮な空気を求めるように大きく息を吸い込んだ。
俺の手の下で皐月の胸がゆるやかに上下する。
「……嫌なら嫌って、ちゃんと言えよ。じゃなきゃ、やめねぇからな」
皐月の顔をまっすぐ見据えてそう告げても皐月は黙ったまま何も答えず、俺から顔を背けて、すん、と小さく鼻を啜っただけだった。
俺の指は皐月の胸元で、ブラウスのボタンを外しにかかる。
焦りのせいか、子供みたいに指がもつれて、上手にボタンが外れない。
上から4つ、外したところで面倒になって、限界まで力まかせにブラウスをはだけた。
淡い水色のブラジャーに包まれた小ぶりの胸があらわになる。
息がかかるほどその肌に顔を近づけながら皐月の横顔を盗み見ると、耳まで真っ赤に染めながら、懸命に唇を噛んでいた。
一瞬、迷いが生じたが、皐月の肌から立ち昇ってくる甘い匂いに理性が負けた。
皐月の胸のふくらみの、申し訳程度の谷間に舌を這わせてみる。甘い汗の味がした。
「……ひぁ……っ……」
皐月の肌の味をもっと味わいたくて、何度も何度も舌を動かす。皐月の呼吸が浅く早くなってきているのが、その胸の上下でわかる。
もっと、もっと皐月の声が聞きたい。俺は皐月の肩を押さえていた手を外し、両手で皐月のブラジャーを下から上に押し上げた。
初めて目にする白いふくらみと、その先端の淡い桜色の突起。俺は思わず上体を起こして、皐月の上に馬乗りになった姿勢で
皐月のその姿を見下ろした。
皐月は恥ずかしいのか、俺のその様子をちらりと見ても、すぐに視線を背けてしまう。
乱れた制服に包まれて、触れてもいないのに全身の肌をこまかく震わせている皐月の姿は、とても扇情的で、とても可愛かった。
皐月の胸の先端に、ちゅ、と口づける。ひくん、とその背がしなる瞬間、浮いた腰の下に片手を回して抱き寄せる。
唇で乳首を挟んでくにゅくにゅと捏ねまわしてから、硬さを増してきたそこを、今度は舌で何度も舐めあげる。
反対の胸には空いた手を廻し、指先で押しつぶすように乳首を刺激した。
「……ぅ、ん、……っ……ぁ、はぁ……っ……」
皐月の唇が徐々に緩んで、吐息のような切ない声が漏れる頻度も増してくる。
試すように皐月の両脚の間に膝を押し込んでみると、思っていたよりずっと簡単に、俺の膝は皐月の脚の間に滑り込んだ。
「……嫌、なら、言えよ……?」
少し前に告げたものと同じ言葉を繰り返してから、俺は胸を弄っていた手を皐月の下半身へと滑らせる。
その手で短めのプリーツスカートを腰までたくし上げ、小さなショーツを皐月の太ももの途中まで引きおろした。
「…………っ……!!」
皐月の身体がひときわ大きく震えて、全身を緊張させるのがわかる。
「ん……、このままじゃ、よく見えない…………」
俺は熱に浮かされたように呟いて、皐月から一度身体を離す。
皐月は逃げることもなく、ぐったりと横たわったままだ。
剥き出しになった皐月の下半身に目をやると、柔らかそうな茂みの中心が、露に濡れたように微かに光っていた。
俺は皐月の両膝を抱え上げると、そのまま膝の裏を押して、皐月の身体を半分に折りたたむように足をあげさせた。
皐月の腿の裏を掴むように押さえ、身体の外側へ割り開く。
「……ぁ、や……っ、いや……ぁ……」
皐月の脚の間に顔を埋めようとしていた俺の動きが、ぴたりと止まる。
初めてはっきりと、皐月の拒絶の言葉が聞こえた。
けれど。確かに初めは、何でもいいから、皐月の言葉を聞きたくて始めたことだったけれど。
もう、止まらなかった。
止められるわけがない。俺はかまわずに、皐月の股間に顔を埋めた。甘酸っぱい匂いが俺の鼻腔をくすぐる。
ピンク色に染まった襞を舌で押し分け、皐月の内側の蜜を掬うように舐める。
「……ぁ、あぁ……ぁんっ……!」
皐月の身体が跳ねて、悲鳴のような声が聞こえた。
「かわいい声……。……俺、皐月の声、もっと聞きたい」
皐月の腿の裏をしっかりと押さえて逃げられないようにしてから、何度も何度も俺は皐月の秘裂を舐めまわす。
皐月のそこは、皐月自身が溢れさせた淫液と俺の唾液で濡れそぼり、窓から射し込む西日を浴びて淫猥な光をてらてらと放っている。
秘裂の上部で、包皮に隠れていた小さな突起が顔を覗かせていることに気がついた俺は、片脚から手を離し、指先でその包皮をめくりあげる。
剥き出しになった敏感な芽を指の腹でそっと擦ってみると、皐月の全身が波打つように震えた。
「……ゃ、あ、あぁ……っん、…ぁ、はぅん……っ……!」
いつもは無口な皐月の咽喉が、まるで楽器のように、聞いたことのない音をたくさん漏らす。
俺はおもしろくなって、そこをいじる指の動きを早める。
擦り、押し潰し、指で挟んで捏ね回す。皐月は腰を捩って俺の指から逃げようとするが、俺は執拗にその一点を追い掛けて、
苛めるようにしつこくそこを刺激し続けた。徐々に涙まじりになる皐月の声。
指を離して、唇でそれをそっと挟み、ちゅう、と強く吸い上げると――
「……ひ、あ、あぁぁ……ッ……んっ……!!」
皐月は大きな喘ぎ声をあげて背中を弓なりにしならせ、ひくひくと、全身を震わせた。
ひとしきり身体をひくつかせた後で、皐月は肩で大きく息をしながら、俺の顔へと目を向けた。
頬を紅潮させ、うっすらと額に汗を浮かべて、潤んだ瞳で俺を――恨めしげに見ている。
「……や、って、言ったのに…………」
今にも泣き出しそうな声で皐月が呟く。その声音で俺はやっと、自分の行為の暴走ぶりに気がついた。
「……だな。ごめん」
皐月の両脚を押さえつけていた手を離すと、皐月の足はくたりと床の上に投げ出された。
俺は、今にも爆発しそうな下半身を必死に理性で抑え込みながら、皐月の服の乱れを直してやる。
「…………」
皐月は黙ったまま、ずらされた下着を直し、ブラウスのボタンをのろのろと留める。
俺はなんだか皐月のそんな姿を見ていられなくなって、俯いて黙っていた。
「…………あのね」
そんな俺の様子を見兼ねたのか、皐月は呟きながら、ずず、と絨毯の上を膝で滑り、俺との距離を縮めた。
「…………や、だけど、やじゃないの」
秘密を打ち明けるような、少し震えた小さな声。
皐月の言葉の意味がわからなくて、俺は顔をあげて皐月の顔をまじまじと見た。
皐月は顔を真っ赤にして、俺を見つめている。
その目には、怒りの色はなくて、だから俺は余計に、さっきまでの自分がすごく恥ずかしくなった。
「……あのさ。これ――」
俺はポケットに手を突っ込んで、リボンのかけられた小さな箱を取り出す。
本当はこんな風に渡すつもりじゃなかったんだけれど。
だけど今、これを渡す以外の方法で、皐月に対する俺の想いを説明する方法が俺には思いつけない。
きょとんとした顔でその箱を受け取った皐月が器用な手つきでリボンを解くと、
箱の中から、小さな緑色の石がついた銀色のネックレスが現れた。
「誕生日プレゼント。皐月の。ひとりじゃ選べなくて……それで、」
俺と皐月が付き合いだした時、今年の皐月の誕生日はもう過ぎていて、
でも俺は、どうしても何か贈り物をしたかったから、夏休みのバイト代でプレゼントを買うって
皐月に約束をしていた。
おそるおそる皐月の顔を見ると、皐月はなんとも形容しがたい嬉しそうな顔で、
満面の笑みを浮かべていてくれた。
皐月はそれからしばらく、俺の顔とそのネックレスを交互に眺めて笑っているばかりで、
やっぱり特別たくさんの言葉をくれるようなこともなかったけれど。
俺はもう、皐月のその表情と態度ですべてを許してもらえたような気になって、
皐月と同じように笑顔で何も言わずに、彼女のことを飽きもせずに眺めていた。
終
良かったです。GJ!
GJ! 無口(・∀・)イイ!
44 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 14:12:29 ID:NuWoGvDT
なにこの神スレ
期待保守
俺は一通の日付入り伝票を手にして彼女の前に立っていた。
彼女は椅子に座ったまま、差し出された伝票をじっと見て黙っている。表情が読めない。
終業時刻をはるかに過ぎて、必要最低限の照明しか点いていない薄暗いフロア。パソコンのモニターが発する青い光が彼女の横顔を照らしている。
細いフレームの眼鏡。あまり手のかけられていない風に後ろでひとつにまとめられた黒の長い髪。薄い化粧。
見るからに地味な印象だが、こんな時間に薄暗がりで向かい合うと、ちょっと現実のものではないような、隠微な印象を醸し出しているようにも思える。
よく見れば肌が透き通るように白くきめ細かくて、思わず触れてみたくなる。
「………………あの」
彼女のくちびるが薄く開く。いつもであれば、慌ただしく俺から渡される伝票を黙って受け取って、
不備があった時にも丁寧な文字で埋めたポストイットを俺のデスクに置いておくだけ。
日中の喧騒が嘘のように静まりかえったオフィスに響く彼女の細い声はやけに新鮮で、俺をどきどきさせる。
「ああ、あの、ほんと、申し訳ない。
実は昨日まで出張で。今日もバタバタしててずっと後回しにしちゃってて。ついうっかり。
いや、ほんとに『ついうっかり』で」
まくしたてる俺の顔をじっと見つめる彼女。デスクの横のカレンダーにつけられた締日の印を一度ちらりと見て、
それからまた薄く唇を開く。
「………………」
なにか考えているのか。言葉を選んでいるのか。すぐには声を発しない。
ただの沈黙のはずなのに、計算され尽くして焦らされているような、妙な錯覚に陥る。
彼女のくちびるがゆっくりと動いた。
俺の目は、彼女の言葉を聞き逃すまいとして、そこに釘づけになる。少し乾いた印象の唇。
夜の女たちの、これでもかというほど不自然にグロスで艶めかせた唇を見慣れているせいか、
乾いた唇というものをやけに生っぽく感じてしまった。ごくりと咽喉を上下させる。
彼女は俺のそんな気持ちを知ってか知らずか、顔色ひとつ変えず、にこりともせずに、細く静かな声を落ち着いて発した。
「………………保守、です」
47 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 20:58:06 ID:TyMrA9SW
48 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 22:38:40 ID:tVK31J/P
前置き長ぇよww
クオリティ高ぇwww
ふたスレの保守屋さんかな?
なんにしろGJw
保守
52 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 15:29:46 ID:TxBLBj/N
保守
神待ち保守
54 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 14:50:28 ID:gHPOKUmk
ほほほ
しゅしゅしゅ
56 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/06(水) 03:04:06 ID:HimHl/5P
保守
補習
襲歩
一応見守りつつ書いているけれど……
無駄に長くなったり、なかなかエロシーンに届かなかったり……
どうしたものだろう。と保守兼ねて報告。
しるか
61 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/11(月) 21:18:52 ID:A1jDwsth
………
まぁまぁ…^^
多少長くてもそんなに気にしない派
長いSSでも、短いSSでも、エロければよいSSだ。
途中で投げなければエロくなくても構わない。
age
67 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/19(火) 11:47:43 ID:scvMXLsf
長くてもいいよ
69 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/24(日) 21:21:32 ID:HRTId+bz
age
保守
無口な女の子じゃなきゃダメなのか
喋れない女の子はダメなんだな
何が言いたいんだ、貴様?屁理屈か?屁理屈のつもりか?あぁん?
>>71 だめというか、全く口のきけない人物の描写は難しい…orz
神降臨期待あげ
75 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/09(月) 15:11:28 ID:nkvLC286
別に、まったく聞かないってわけじゃないと言いながらage
駄文でよければ投下しますけど、どうしますか?
駄文でよければ投下しますけど、どうしますか?
きたまえ。
駄文でも何でもエロければよいSSだ。
80 :
駄文01:2006/10/09(月) 22:41:06 ID:heTZW8QO
私の名前は風見あかり。
両親は私に明るく元気に育って欲しかったらしいのだが私は真逆の性格に育ってしまった。
人と話すことより読書が好きで、学校に行っても教室の隅で読書ばかりしていた。
小学生の頃からこんな感じだったので高校三年生となった今では家で両親と話す事も少なくなり、誰よりも早く学校に行き黙々と読書をしている。
今日もやはりいつもと同じ様な一日を過ごすはずだった。
だが、今日は違った。
一人の男子生徒がいたのだ。
81 :
駄文02:2006/10/09(月) 23:10:39 ID:heTZW8QO
彼の名前は確か進藤誠だったはずだ。
今年の夏まではテニス部に所属していた。
運動部員らしい筋肉質な身体をしていたのを体育のプールの時間に見たのを覚えている。
いつでもハイテンションで昼休みなどによく周りのみんなを笑わしている。
女子生徒からも人気があり、私とは対極の存在で関わることはないと思っていた。
そんな彼が突然私に話し掛けて来た。
「おはよっ!!か・ざ・みサン☆」
「ッ!!」
本当に突然だったので教室の入口の所で思いきり尻餅をついてしまった。
「あっだいじょう……」
彼の言葉が途中で途切れた。
彼は何かを凝視しているようだった。
彼の視線の先を追ってみると私の方を見ていた。自分の状態を見渡すと、スカートがめくれあがっていた。
「あっ」
私は急いでスカートを元に戻した。
「…ご、ごめん」
私は恥ずかしさで彼の謝罪の言葉など耳に入らなかった。
私は小走りで自分の机に荷物を置いて教室から出ようとした。
しかし、
「待って!!」
私の腕を彼が掴んだ。
三年間部活をやってきた男子に小学生の時からろくに運動して来なかった女子が力で勝てる訳もなく、私は彼と向かい合う状態にされてしまった。「ちょっと待って!!話を聞いて!!」
82 :
駄文03:2006/10/09(月) 23:45:02 ID:heTZW8QO
「本当にごめん。悪気はなかったんだ」
「離して!!」
こんな大きな声を出したのは久しぶりだった。
「……!!」
彼は一瞬驚いた顔をした後すぐに見たことのない悲しそうな顔になった。「…ごめん。ただ一つだけ聞いて欲しい事があるんだ。こんな時に言うことじゃないのは分かってるんだけど、俺、風見さんの事が好きなんだ」
私は頭の中が真っ白になってしまった。
どうしていいのか分からず。彼の手をどうにか振り払って教室から出ていくしかできなかった。
私は混乱した頭で私一人がいなくても誰も気にしないだろうと考え保健室に行き仮病を使い帰ることにした。
翌日から三週間、学校に行く度に彼は私に謝り続けた。
三週間も経てば私もそこまで気にしなくなり
「…もう、いいから」
と言う言葉が出て来た。「本当!?」
彼は嬉しそうに笑った後すぐに、寂しそうに
「けど、告白の件はダメだよね…」
と呟いた。
「……そっちもいいよ」
私は応えた。
もともと彼は容姿もいいし、スポーツ万能で成績もいいという理想的な男性なのだ。そんな人に告白されて断る理由はないだろう。
今思うとここで断っておけばあんな事にはならなかっただろう。
今日はここまでで。
本番どころかエロさえ無くてすいません。
「駄文でよければ」とか「エロさえ無くてすいません」とか、誘い受けウザーって言われる前にやめとけ
まぁ期待するわけだが
タイトルを見て真っ先に長門を思い出した
長門とやらが分からないオレ
長門といえば帝国海軍の戦艦で唯一
太平洋戦争を生き抜き、原爆の標的に
されても沈まなかった難航不落の彼女に
決まってるじゃないかw
長門さんの事がますます分からない
ヒント:南田洋子
ヒント:石原裕次郎
俺の地元にある町の名前だよ
マジレスすると、宇宙人っぽい何かに作られた人造人間。
ハッキング、クラッキング、証拠隠滅となんでもござれなスーパー女子高生。
感情表現は苦手だが、実は心の奥底に熱く燃え滾るモノを持っている。
大体分かった、マンガか何かなのか?
期待あげ
書いたなら続きを投下しろよお願いしますorz
99 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/31(火) 20:46:45 ID:1TPPBsDC
期待age
ほしゅ
101 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/09(木) 00:13:03 ID:n6dvJsbj
あげ
hosyu
ホシュウ
保守
人大杉が出たのに何この過疎っぷり保守あげ。
無口なのは可愛い女の子だけでいいぜ保守。
うまい事言ったつもりかほしゅー
108 :
『超・短編』:2006/12/12(火) 01:53:24 ID:FIQFToSI
おれは、彼女が話している声を聞いたことがない。
おれが初めて彼女と出会ったとき、すでに彼女は言葉を話せなくなっていた。
幼い頃両親を亡くした事故によって、彼女は命を得る代わりに、声を失ったのだ。
喋れないことが元でクラスの奴らに苛められていたところをおれが助けた。
その苛めた奴らを半殺しにしたおれに、必死の身振り手振りで、「暴力はダメ!」と諫めた小柄な彼女。
それまでは硬派で、誰も近寄らない狂犬のようだったおれが、よもやの一目惚れ。
あっさりとケンカ番長を廃業し、速攻で交際を申し込んだ。
そのあと。
ギャルゲのようなハートフルエピソードを乗り越えて、
エロゲのようなご褒美エッチで結ばれたおれたち。
その後も順調に交際を続け、いまではようやく彼女もエッチに快感を覚え始めたようだ。
「なぁ、気持ちいいか?」
おれがそう訊ねると、彼女は、快感に荒げた呼吸のまま、こくこく、とうなずいた。
ベッドの上でおれに組み伏せられている彼女。
真っ白な陶器と見間違えるくらいの白くすべすべな肌を、ほんのりと桜色に染めている。
そして彼女は、おれの鼻の頭にちゅう、と小さくキスをして。
女の大事な部分でおれを受け入れたままの彼女は、その恍惚と幸福をおれに伝えるべく、ゆっくりと唇を動かした。
だ、
い、
す、
き。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ、チクショーッ、可愛い、可愛過ぎるッ!!!」
おれは、そんな錯乱した叫び声をあげながら、彼女の膣奥に射精した。
彼女とつきあう前は硬派で通したおれだったが、今ではもう、惚れた女の表情だけでイけるような、リリカル男になっちまった。
・・・・・・いや、だめだ、意地を見せろ、おれ!
男なんざ、惚れた女をイかせられてナンボじゃぁっ!!
「・・・・・・このまま二回戦、いくぜ?」
全然萎えないおれの息子。コイツ、元気さだけはおれを裏切ったことがない。
そんなおれの、滑稽なくらいの元気さに彼女はクスリと笑って。
こくり、
と頷いたあと。
恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めた。
END OF TEXT
109 :
108:2006/12/12(火) 23:26:21 ID:FIQFToSI
うへぇ、人いねぇ・・・。それとも単にスルーされただけか.....orz
別のスレで、ヒロインの風貌や特徴を描写しないSSはどうよ?といった話題があったのを思い出して、書いてみた。
無口な女の子と、おしの女の子は別物だ、というツッコミは勘弁してください。
というわけで、保守。
ほのぼのっぽくて和んだ
超短編故に描写をバッサリカットして纏めすぎてる感じ
もう少し文を整理、肉付けしたらええかも
俺は期待している
保守
よかった、ヒトがいた!
当方、萌えSS修業中の流浪の身なので、また寄らせてもらいます。
こんどはまともなSSを持参しますね。
というわけで保守。
ようやく規制解除ー!
和んだよ。次回作も期待〜
俺も期待しとく。ちゃんと書いたやつプリーズ。
保守がてら書いてみた。
本番失調症を患ってるため、本番なし。
うららかな日差しは、まだ微睡んでいるのか弱々しい。それでも、ここ数日降
り続いていた雪が降っていないだけ、随分マシだ。
土曜の朝十時前。
休日出勤するスーツ姿や、勉強熱心な制服姿、飼い犬と散歩する爺さんや婆さ
んをなかなかみかけない、中途半端な時間の自然公園。
市、最大を誇る広大な敷地といっても、近隣に三年も暮らせば、勝手知ったる
庭といっても大袈裟ではない程度の広さだ。
――だからといって、
「……なあ。いー加減、諦めないか?」
「…………」――無言で否定。
「手袋なら兄ちゃんが買ってやるからさ、だから」
そういう問題ではないらしく。小梅は小さな頭を、ふるふると横に振った。
僕はわずかに落胆、しかし可愛い妹のためだと、気合いを入れ直す。――だが
その前に。
「ちょっと休憩しよう」
ジュースの自動販売機を指さして言うと、僕のジャンバーの袖を掴む小梅は、
小さく頷いた。
僕には妹がいる。
六歳も離れた妹、今年でようやく十一歳。同い年の子たちの中でも、一段背が
低く、体が細いのは着ている服の上からでも分かってしまう。
幼い頃より病気がちなのだ。
とりたて持病があるわけではないが、そもそもの体力と免疫力が弱いらしく。
低学年の頃は、一ヶ月に二度は病院へ通い、少なくても一度は寝込む。
病気がちのため、外で遊ぶことも少なく、いつもパソコンで何か遊んでいるの
は知っているが。何をしているのか、見ようとしたら、怒られた。
僕の可愛いお姫さまの機嫌を取り戻すために、僕は洋服を二着、ハーゲンダッ
ツを一つ献上し、赦してもらえた。
病気がちなか弱い少女。
僕にはそんなイメージが強いためか、小梅と出かける時は、いつも不安になる。
――悪い風邪にかからないだろうか?
――こんなに速く歩いても大丈夫だろうか?
――転んで怪我をしないだろうか?
――目を離した隙に誘拐されはしないだろうか?
でも、だからといって、家に閉じこめておくわけにはいかない。
僕も、いつも一緒にいられない。
だから不安になる。
缶のコーンポタージュをちびちび飲む小梅を見下ろす。
ニット帽をかぶる小さな頭に触れる。
妹は驚いた顔で僕を見た。
まつげが長く、どこか蠱惑的な見ていると吸い込まれると錯覚してしまう瞳。
小ぶりな唇がわずかに開かれたが、なにとは訊かない。
ニット帽から手を下ろしていき、艶やかな髪に触れた。
冷えた髪は驚くほど冷たく、腰まである髪を撫でて、手を離す。
「寒くない?」
「……だいじょうぶ」
「疲れてない?」
小梅はだいじょうぶだというように頷いた。
「買ってあげるからさ、やっぱり探すのは諦めようよ」
「…………いや」
「そう……」
小梅がこれほど頑固だとは思わなかった。
喧嘩してる時でも、一緒にお風呂にはいってくれるし、一週間もせず仲直りし
てくれる。
だから、想う。
落としてしまった手袋が、一時間探しても見つからないのに、諦めないのはど
うしてだろう――と。
手袋なら、いくらでも買ってあげるのに。
……でも、
「よし、じゃあもうひとがんばりしようか」
小梅はこくりと頷いた。
でも、小梅が探したいというのなら、僕はそれに付き合うまでだ。
※※※
更に一時間ほど公園内を歩き回り、お腹が空き始めた頃――
「あ」
赤い手袋が落ちていた。
ふわふわとした毛糸で編まれた、去年僕があげた手袋だ、見間違うはずもない。
僕は思わず駈けだしていた。
そして――転んだ。
「痛た」
みると、ジーンズの凍った地面にぶつけた部分は、擦り切れ。中の傷口が覗き
見えた。
血が出ていた。
小さな足音が近づいてくる。
僕は慌てて立ち上がり、振り返る。
「小梅、手袋あったよ」
ジーンズが傷口に擦れて、痛みが走る。どくっどくっと血が脈打つのが分かる。
「…………」
手袋を妹に手渡す――だが、予想したリアクションとは違い。
小梅はほうけたように手袋を受け取り、何かをジッと見ていた。
――なんだろう?
「良かった良かった。さ、家に帰ろう」
「……それ」
「お腹も空いたし――え?」
小梅のお人形さんみたいな指が、僕の膝/僅かに露出した傷口と血の跡をさし
ていた。
「いや、なんでもないよ、大丈夫だから」
「でも……手当、しないと」
慌てて笑う姿が、強がってるように見えたのだろうか。小梅は袖を掴み、軽く
引っ張られる。
「……手当しないと」
今日、僕は学んだことがある。
――小梅は、結構頑固だということ。
※※※
傷口を露出させるのに、うっそりと雪が積もる屋外よりも、まだ公衆トイレの
中がいいと、妹にトイレに連れこまれる。
大丈夫だと繰り返す僕の言葉は、小梅には届かない。
心配されるのが、気恥ずかしくて、申し訳なくて、ほんの少しだけうれしい。
公衆トイレの中は、想像していたよりも綺麗だったが、壁一枚隔てれば外であ
り、寒い。
裾をめくりあげようとしたが、小梅が首を横に振った。
一瞬、意味が分からなかったが――理解した。
……こんな所で脱げ、と?
いや、それ以前に――
「小梅は外で待ってて」
「僕一人でもできるから」
「大丈夫、ちゃんとやるからさ」
「狭いから、ね?」
いくら言っても小梅は、狭い個室からでてくれず。
ハンカチを手に持ったまま、立っている。
「……脱いで」
小梅が短く、しかし強く急かす。
傷口は痛む。
……これも情操教育かと、僕は渋々といった様子で、小梅に手当を任せた――
内心、バカみたいに嬉しかったのだが。
気恥ずかしくて、心の奥底にしまっておくことにした。
ジーンズを脱ぎ。洋式トイレの蓋を下ろして、そこに畳んで置き座布団にした。
傷口からは今も血が流れている。
僕ですら顔をしかめるというのに、小梅は動じない。
血を見て怯えるのは、僕が情けないからだろうか?
「じゃあ頼むね」
「…………」
手当といっても、ハンカチを巻き付けるだけだと想ったが、違った。
小梅は傷口に顔を近づけ、――舐めた。
「――――ッ!?」
小さな熱い舌先が、凍えた膝に触れ、傷口をなぞるように舐める。
「こ、小梅」
なにをされているのか、理解できなかった。
傷口を舐める?
なんで?
流れ落ちる血を、柔らかそうなピンク色が舐めとる。
「汚いから、ダメだから。小梅、だめ。ね?」
僕がどれだけ言っても小梅は聞いてくれない。
「なんで、なんでこんなこと……」
膝に迸る、抉るような痛みに、僕の声は自然絶え絶えになる。
ぞくっとするような電流が、背を這う。
小梅の大きな瞳が、僕を見ていた。
「……消毒」
「え?」
「消毒、してるの」
消毒?
その言葉で、疑問が立ち消えた。
そうか、傷口を舐めて消毒を――ってそんなバカな。
舐めるくらいなら、水道水をかけたほうがいい。
いやでも、がんばっている小梅に、そんなことはいえず。されるがままに、僕
は苦痛に耐える。
耐えて耐えて、耐えて。いつのまにか目を瞑っていた。
痛みと、妹が僕の膝を舐めているという現実から、目を逸らすため。
こんなことをしてもらったと、高校の友人に言えば、ただでさえシスコンだと
言われているのに拍車がかかるなと、自嘲する。
耐えて耐えて、耐えて。――不思議な感覚に襲われる。
痛みが薄れていた、その代わり、快楽が僕の脳を支配しはじめていた。
痛いのが、気持ちよかった。
痛くされるのが、気持ちよかった。
妹に痛くされるのが、とても気持ちよかっ――。
――駄目だっ!
今、僕は何を考えていた?
そんなバカな、そんなことがあってたまるか。
それじゃまるで、それじゃ…、それじゃ………変態みたいじゃないか。
「……あ、」
妹のつぶやきが聞こえた。
目を開ける。
妹は大きな瞳を更に見開き。
ソレを見ていた。
「……あ、いや」
薄手のトランクスの下にあるソレ。
薄い布地が張りつめていた。
驚き、体を揺らしたせいで、こぼれでる――ソレ。
欲望が具体化した形。
欲情が顕現した姿。
興奮の証明。
赤黒い勃起、トランクスの窓から突き出てしまった。
僕は隠そうとした――と考えただけで、動けなかった。
一緒にお風呂にはいっているのだ、なにを今更――それは言い訳。
「…………」
妹の純真な/汚れのない/無垢なる瞳が、僕の陰茎を強くみつめる。
――そのことに興奮する自らに、気づかないフリはできない。
猛り哮る肉望。
妹に勃起を見せているという、喜び――よろこび? ……馬鹿な。
妹に、見せて、喜ぶだなんて、僕は、僕は――
「小梅、手当は」
「…………うん」
妹が再び傷口を舐め始める、しかしその視線は、猛りそのものに向けられたま
ま。
僕は、自らの、陰茎を、掴んだ――理性が吼える。
ゆっくりと、上下。直ぐにペースが速まる――理性が吠える。
僕の小梅は、陰茎を見つめ、捉えて離さない。
見たいのだ――理性が断末魔をあげた――小梅は、僕の肉望が見たいのだ。
狂喜が、産声をあげる。
妹に見られながらの自慰、妹の瞳に急かされるような自慰、妹の目に扇情され
ながらの自慰。
妹を頭の中で犯す。
その唇を辱め、その手を冒し、その躰を犯し、その精神すら侵す。
僕の小梅が淫らに乱れる、淫猥な声をあげる、切ない吐息。
総ては夢想――――本当に?
それは本当に、夢想という虚実なのだろうか?
着替えを手伝う時、妹の脱いだ下着を僕はどうしていた?
一緒に風呂にはいる際。妹が肢体を洗う時、それを見て僕はなにをしていた?
躰を洗いあう時、前は自分で洗った?
妹が僕のベッドにもぐり込み、共に寝る、本当に、それだけ?
いや、そもそも。
ベッドに入り込んむのは、本当に小梅の方からだったか? 僕が、小梅のベッ
ドに潜り込んだんじゃなかったか?
思い出せ思い出せ思い出せっ。
。
妄想と現実が曖昧になる、されてもいないことを現実だと想うようになる。
思い出せ想い出せ想い射せ、おもいだせっ。
僕は――。
「……んっ」
小梅の短い吐息で、現実に帰還する――現実?
小梅の善い兄。
小梅と爛れた関係を持つ一人の男。
そのどちらが、現実?
小梅の善い兄だとしたら、何故僕は、膝を舐められ時に、抵抗しなかったのか?
やめさせなかったのか?
「……お兄ちゃん?」
小梅が不思議そうに見上げていた。
僕の膝にはキティちゃんのハンカチが巻かれていた。
陰茎は――でていない。
「……そうか」
僕は安心した。
妹の前で自慰をした、なんていうのは、僕の空想だったのだ。
僕は立ち上がり、ジーンズを履き。
「さあ、帰ろう」
妹の手を掴み、トイレを出た。
ニット帽の下、綺麗な髪に、白濁した液体が散っていた。
――fin
GJ!
gj!
ダメアニキ(笑)
なんというか…
すげぇぜ
GJ!久しぶりにおっきしたよ。やはり無口な妹は良いね!
124 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 20:16:15 ID:7nHMoz4Q
ほしゅ
二人とも病んでるのな。GJ
ホウ!シュッ!
私も読みたい!
よろしくお願いします
俺も!
秋の大イベントである運動会と文化祭が終り、その余韻を残しつつ
皆は普段の学生生活に戻り始めた。
次なるイベントは冬休みだろう、あ、期末テストが先か。
「お前また振ったんだって?」
日増しに暮れるのが早くなったな、と物思いに耽る俺にコイツは静かに首を縦に振った。
「だからその袖引っ張る癖直せって」
無口極まりないコイツの取る最大限のコミュニケーション。
「で、また同じ振り方ですか?」
「・・・無理、って言っただけ」
肩に掛る二つに縛った髪を揺らしながらコイツは無表情のまま、
告白を断るには直球過ぎる言葉を吐いた。
「もう少〜し、優しく言えない?」
「・・・なんで?」
「いや、まぁ断るなら後腐れない方がいいし」
わかってる、コイツにそんな助言は意味を成さないって
「なぁ」
「・・・・なに?」
「また、歌ってくれよ」
「やだ」
速攻で断られた、まぁ無理もないだろうな、コイツがこんなに告白攻めにあってるのも
その歌のせいだ、文化祭、クラスの女子に半ば無理矢理歌わされた。
「いやぁまさかお前があんなに歌が巧かったなんてなぁ」
普段から無口なもんで歌声を聞くなんて皆無だった俺には、いや
周りのみんなが驚愕したことだろう。
まぁコイツが俺を伴奏につけるならという条件を出したおかげで
俺は久しぶりにギターと向き合う毎日になったわけだけど、
クラスの出し物、うちはなぜか演劇でその余興として行われたミニライブ
歌 :川室 由羽(1-B)
伴奏:音村 仁 (1-B)
これは小さな話題となった、勿論俺のことではなくコイツのことで、
特に教師達からは「あの川室が!?」と言うことで軽いパニックが起こった。
「あん時は俺も大変だったよ、体育館に人いっぱいいるし」
そのミニライブ、というかクラスの出し物の観覧は強制ではないため
興味のある人だけが来るというものだったが、俺とコイツが舞台に立った時は
見事に超満員だった。
どうやら口コミで今回のミニライブの貴重具合がバレてしまったらしい、
何より困ったのはその曲目、クラスで集まっての会議でコイツの発言が俺を凍りつかせた
『ジンの作った曲がいい』
中学の頃調子に乗って友達と始めたバンド、俺は更に調子に乗り
自作曲まで作ってしまった、勿論俺の作詞作曲
封印したはずの過去を突然解き放たれ、慌てふためく俺をコイツは
『あの曲好きだから・・・』
と一言、仕方なしに俺は一年前の自分と向き合うことに、
中学生独自の痒くなるような曲をアレンジし、何とか人前に出せるものになった。
「ありゃあ、本当大変だったぞ」
「・・・・・・ゴメン」
「ま、いいけどな」
前評判を聞き付けて現れた好奇心半分、冷やかし半分の客で埋められた体育館という会場
やじでも飛んできそうな雰囲気の中、俺の合図で演奏が始まった。
がやがやとした音が面白いほどに消えていった、
実際、リハーサルの時の俺や周りのスタッフも動きが止まったほどだ、
一曲目が終わった時の会場の湧き方は凄かった、とりあえず予定していた
二曲目を歌い、早々にはけてしまいたかったが
アンコールを食らい、渋々と舞台に戻り一曲目を再び歌った、
正直気持ち良かった、だが二度はゴメンと思った、それはコイツも同じだったようで
『・・・・・緊張した』
『そうは見えなかったぞ?』
『・・・・・もう、や』
『俺もだ、ハハ』
その日から川室由羽は有名人になった、一応俺も、
コイツは毎日のように告白されるようになった。
元々顔は悪くなかったし、あの歌唱力、歌っている時の雰囲気は言い表せないめがある。
「すっかり有名人になっちまったな」
「・・・・や」
「ん?」
「・・・・怖い」
今まで俺以外の男と対して関わりを持ってなかったコイツにとって、
今の状況は耐えられないのかもしれない。
「その内収まるよ」
「・・・・・そう?」
「ああ、そんなもんさ」
「・・・・」
「だから袖」
しばらくの沈黙、というか俺が喋らなくなっただけ、
無言で歩くのも悪くないしな、そしてコイツの家に着く。
「じゃ・・・・明日」
「あぁ」
明日は土曜、学校は休みだけど俺達には用事がある、
というか俺がコイツに付き合わされてるだけだけど。
「明日な」
待ち合わせはいつもの場所、
このデパートはいつ来ても人が溢れているなぁ
「ユウ!」
いつも俺が着く時にはいるんだからまいる。
「行くか」
うん、と首の動きが伝える。
コイツがこのデパートに来る理由は色々ある。
「・・・・わぁ」
「お前も飽きないなぁ」
3階にある小さなペットショップ、コイツはここがお気に入りらしく
毎週来る、なぜか俺を連れて、ペットの飼えないマンション住まいのため、
見ることだけがコイツの精一杯の楽しみ。
「ネコ好きか」
「・・・・・うん」
しばらく猫と戯れた後、次は本屋
「こんにちは」
「あら、いらっしゃいユウちゃん!あと、ジン君」
「どうも」
本屋の岸島さん、コイツと長い付き合いらしい、
この人に挨拶するのも毎回のお約束だ、俺は立ち読み、
岸島さんが一方的に喋るのをコイツがうんうんと聞くだけ、
昔聞いた話だが、コイツは小さい頃、ずっとこのデパートを遊び場にしていたらしい、
その無口さや無表情でうまく友達が作れなかったそうだ、
だから、俺と出会ってからもデパートに顔を出すことは忘れない。
勢いに任せてここまで書いた
後悔はしてない
生で遭遇、GJでした。
後悔は、続きを書いてから!!
保守
大晦日に逢い、姫納めと姫始めを同時に行い、元日はおろか三が日も一緒に過ごした年下の彼女。
あいかわらずの無口で、うん、ちがう、の二言くらいしか喋らなかったけれど、
一緒にいられて、俺は嬉しかった。
そして、仕事も始まった今日、珍しいことに彼女から着信が。
何事かとケータイを開くと、まるでイタズラのような無言電話。
でも俺は、根気強く待った。
それくらいの根気がないと、この子とは付き合えない。
たっぷり2分くらいの沈黙をおいて、ようやく彼女が言葉を発した。
「・・・・・・・・・・・・・・・ぁ、あけまして、ぉめでとぅ・・・・・・」
元日から今日まで、俺の言った新年の挨拶に返事しようと頑張って、やっと言えたんだろう。
・・・かわいいなぁ。
俺は、新年に言った言葉を、もう一度繰り返した。
あけまして、おめでとう。
なんとなくだけど、電話の向こうの彼女が、微笑んだような気がした。
>>138 それを、エロシーン込みで書いてくれ。
じゅうぶん和むし、萌えるんだが、これでエロがあったらさらにGJなんだよ!
期待あげ
ほす
142 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/18(木) 13:25:50 ID:5eu0Xpc+
あげ
143 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/18(木) 15:01:20 ID:Ep9CQu8A
age
144 :
書く人:2007/01/19(金) 00:09:03 ID:buLajb7k
保守ついでのお目汚しを一発。まずは前編。ヒロイン外見はfateのライダーを少し若く&おとなし目にした感じで。
145 :
書く人:2007/01/19(金) 00:11:06 ID:buLajb7k
本を読んでいた静香は不意打ちに言う。
「キスしよ?」
笑顔の一つもない無表情で、だけどほんの少しだけ恥ずかしそうに頬を染めて 千草は言う。
不意打ちに言って俺と唇を奪う。
それが済むと、再び笑顔の一つもない、だけどほんの少しだけ満足そうに、薄いレンズの奥にある目を細めて、千草は本に没頭する。
それが、俺と千草のデートだ。
俺はバンドをやっている。
高校の頃からインディーズ。卒業してから2年でメジャー。武道館なんて夢のまた夢だけど、少なくともバイトをしなくても食えるくらいには売れている。
メンバーは四人、全員男。
リーダーはギター兼ボーカル。歌はむちゃウマなくせに、普段のトークは絶望的にど下手の無口。一日中歌以外の声を聞かないこともたまにある。断っておくが、こいつは男であって俺の彼女じゃない。
ベースは正統派美形でリアルに遊び人スケコマシ。スマイルが武器だそうだ。現に女の子の大半がコイツ目当て。いつか刺されるんじゃないかと心配している。
ドラムは兄貴。血縁関係とかじゃなくて、兄貴。年齢的には一番下なのに、兄貴。とにかく硬派でとにかくゴツくてとにかく、兄貴。
でもって最後は俺、シンセサイザー。役どころはいわば2.5枚目。ライブのトークとかはリーダーがやるもんなのに、残念ながらウチのリーダーは
「えっと…今日は、その……楽しんでってよ。がんばるからさ、俺達」
がライブで言った台詞最長記録。カンペを渡しても噛みまくる。
ベースのコマシは言動が天然でストロベッてて、女の子だけがどこか間違った方向に盛り上がるし、兄貴は暴走族か漁師の気合入れになっちゃう。
だから自然と、特徴のない俺に役が回ってきた。
注目を集め、適当に笑いを取り、観客を盛り上げる道化役。
断っておくが嫌じゃない。喋るのは好きだし、トークで観客を沸かせるのは気持ちいい。それが癖になったせいか、普段からも多弁系になった。
そのことについては、後悔していない。ある一点を除いては。
それは―――女の子にモテなくなったことについてだ。
146 :
書く人:2007/01/19(金) 00:12:33 ID:buLajb7k
女の子に煙たがれる訳じゃない。元々モテてたわけでもない。いや、むしろバンドを始めるまでは、冴えない普通の奴扱いだった。
多弁になったら女の子には注目されるが、しかしお友達以上になれなくなった。理由はほぼ常に行動をともにしているメンバー達だ。
純粋に歌が好きで寄ってくる子は、リーダーの担当。
遊んでる感じの子や、逆に純情な子は、われらがバンドのコマシ王子が捕食。
百戦錬磨な経験を積んだお姉さまは、硬派な年下兄貴が目標。
この隙のないラインナップに搾り取られた跡に残ったのは、俺のトークに喜んでくれるちっちゃな女の子だけ。
ああっ、俺、ロリコンだったら良かったのに!
…いや、ロリコンだったらむしろ危なかったか?
とにかく、俺の元に届けられる女の子からのファンレターは、クレヨンで「がんばって」と書かれたイラスト付きということになった。
まあ、今にして思えばそれでよかったのかもしれない。
なぜなら、お陰で千草に嫉妬されずに済むのだから。
「?」
千草が首をかしげてこちらを見返した。そこで、俺は自分が本を開いたまま千草の横顔を注視していたのに気付く。
柄にもなく恥ずかしくなる。
「何?」
「あ、いや…千草と付き合いだした時の事を、ちょっと…」
「……そ」
それだけ返事をすると、彼女は読書を再開した。他人が千草のリアクションを見れば、きっと俺に同情的な視線を向けてくるに
違いない。
だが、それは勘違いだ。彼女の頬は、ほんの僅かに赤く染まっている。それは、他人が見たら絶対に気付かないような些細な変化。だけども、付き合いだしてからずっと見つめてきた
俺には解る。
照れているのだ、千草は。
出会った頃など、俺が千草のそんな些細な感情の機微に気付けるようになるな
んて思ってもなかった。
147 :
書く人:2007/01/19(金) 00:13:10 ID:buLajb7k
千草との出会いは、ある意味衝撃的だった。
「6」
「ないです」
「寄せて」
「4日で」
「月曜無理。火曜」
「ん」
「ん」
「いや待て、お前らどこの宇宙人だ」
無口なリーダーに付き合って本屋に行った時、リーダーが店番の子と謎のやり
取りをした挙句合意に達したのを見て、俺は思わず突っ込んだ。
ちなみに今の会話をテレパシー能力が未発達な地球人でも理解できるように翻
訳すると
『あの〜、このシリーズの6ないですか?』
『申し訳ありませんが、売り切れになっております』
『あ、じゃあ、取り寄せはお願いできます?』
『4日後になりますがよろしいですか?』
『4日って月曜?あ、俺その日無理なんで火曜に取りに来るって子とでいいっす
か?』
『はい、承りました』
『よろしくお願いします』
ということだったらしい。
その店員とリーダーは『何でそんな解りきったことを?』という風にこちらを
見てきたので、俺は『んなこと解るわけねぇだろボケが!』という意味合いがこ
もった愛想笑いを返してやった。
その店員が、千草だった。
148 :
書く人:2007/01/19(金) 00:15:49 ID:buLajb7k
「読・ん・だ・ぞぉぉぉぉぅっ!」
「お疲れ様」
仰向けに倒れた俺。机の上に残されたのは閉じられたハードカバー。タイトル はGreat Expectations―――大いなる遺産。千草はこのタイトルの和訳に物も押
したいらしいが、呼んでみてよく解った。うん、Expectationsは遺産より期待の方がいいだろう。
一方千草は、ちらりともこちらを見ずに言うと、立ち上がった。向かったのは部屋の出入り口。
コーヒーでも淹れに行ったのだろう。
「あ、砂糖はいらないから!ミルクだけで!」
「…緑茶」
「あ、さいですか…」
うむ。期待を裏切られた。ピップの気持ちが少しわかったぞ。
などとくだらないことを考えながら俺は上を見る。
見えるのは蛍光灯と、天井と、本。
本だ。本、本、本、本…。およそ地震が起きたら死ねるほどに積み上げられた 本の山。
千草はビブリオマニアだ。本人は違うといっているが、十分そうだと思う。
思えば、千草と付き合いだす切欠も、彼女の本好きだ。
「やめてください!」
図書館で、そんな声が聞こえた。
俺はリーダーに勧められて始めた読書の実行のため、手頃な本の物色に図書館
に来ていた。その時、聞こえたのだ。
「んだよ、関係だろ!」
静かなはずの図書館で、言い合う声がした。一つは千草、もう一つは餓鬼っぽい男の声。
前者の方に俺は驚いた。千草があんな大きな声を出すのは初めて聞いた。
痴漢、それともナンパ?
いずれにしてもただならない様子を感じて行って見れば、そこには本を広げた中学生くらいのガキが三人と、それをいつものぼおっとした様子とは打って変わ
った千草がいた。言い合いを聞いたところ、このガキが図書館の本の表を切り抜いていたらしい。それに千草が注意して、ガキが逆切れしたというわけだった。
149 :
書く人:2007/01/19(金) 00:17:50 ID:buLajb7k
「ちょとぐらい問題ないだろ!」
「けど、これは皆も本で…」
「じゃあ俺が使ってもいいわけだ」
「けど…」
むちゃくちゃな屁理屈を言うガキに、千草は一歩も引かないが、しかし口下手な彼女の方が押されている。周りで見ている連中は、そっちにちらりと視線を寄せただけで、すぐに厄介ごとを恐れて視線をずらす。
根性なし共め。その周囲の反応を見て、千草は傷ついたような表情をして、ガキの方が勢いづく。
「ほら、だれももんくいわねえじゃん」
「ですけど…」
「だいたい、いきなり大声出して。マナー違反はそっちだし」
いたぶるように薄ら笑いを浮かべて言うガキども。その時には既に俺のの堪忍袋ゲージは振り切れていた。
「屁理屈こくなよ、ガキ共?」
「…ありがと」
「ん?ああ、別に。俺も腹立ってたし」
千草が話しかけてきたのは、半泣きで去っていくガキ共を見送っていた時だった。
はっきり言って楽勝だった。断っておくが殴り合いとかじゃない。あくまで口げんかの発展だ。
相手はちょっと嘴が発達しただけのひよこ。それに引き換えこっちは商業用のトークを経てきたプロ。
ふっ、鎧袖一触とはこのことよ。
「借りにきたの?」
「へっ?あ、ああ。本をな。リーダーに薦められて本を読み出したけど…初心者用に言いの探してるんだけど…」
「うん」
「お、紹介してくれんの?サンキュ…って、おい?引っ張るなよ…つか、そっち出口だってば!」
「うん」
「『うん』といわれても…」
結局、そのまま引っ張られ、歩くこと三分。
辿り着いたのが千草の家。歩きながらどうにか聞き出したことによると、短大に通いながら一人暮らしらしい。
…トラブルから助けた後に一人暮らしの女子大生の家に引きずり込まれる男?
え?Hイベントのフラグ立てちゃった?
なんて妄想しているままに家に引きずり込まれた俺を待ち受けていたのは、そんな邪念を吹っ飛ばすほどの本だった。
いや、靴箱に本が入ってるってあり?
ともかく、本のせいで壁が見えないという事実に呆然としている俺に、千草は奥のほうでごそごそと何かしてから、年季の入った一冊の本を差し出してきた。
『ガリバー旅行記』
「お礼」
「えっ?…あ、うん。どうもえっといつまでに返せば…」
「あげる」
「…いいのか?」
思わず受け取ってしまった古びた本を、俺は眺める。ハードカバーだ。保存状態はいい。売ればそれなりになると思うが…。
「いい。あなたは…いい人だもの。この子もきっと大切にしてくれると思うから」
150 :
書く人:2007/01/19(金) 00:20:05 ID:buLajb7k
俺は、目を覚ました。
寝起きは良い方の俺の脳は、即座に今までの事が全て夢だったと気付く。どうやら、千草との出会いを思い出しながら、寝てしまったようだった。耳には、ローテンポのラブソングが聞こえる。聞き覚えがある曲…というよりも俺が書いた曲だ。
俺は起き上がろうとして、自分の口をふさぐ、濡れたような柔らかい感触にも気付く。
…なんだこりゃ?
目を見開けばいきなり肌色の何かが視界をふさぎ、更には後頭部にも柔らかい感触。しかもいい匂いまでする。
「ん?」
俺は何気なく、声をあげ…
「!!!!!?」
無言の悲鳴。そう表現できるような慌てた気配が伝わってきた。
次の瞬間、視界が急に開け、俺の頭の下に差し込まれていた柔らかな枕が飛び
跳ねるように動いた。
「なんだなんだ!?」
混乱しつつも起き上がる。そして周りを見ると、すぐ近くに千草がいた。
彼女には珍しく、明らかに驚愕の感情を浮かべた顔を、なぜか真っ赤に染めて
、壁を背にしてこっちを見ている。
回転しろ、俺の灰色の脳細胞。一帯何が起こった?
現状から数秒前を推測するんだ。
1.俺は寝ていた。ここには俺と千草しかいない。
2.ついさっきまで俺の頭を支えていた枕はどこにも無く、そういえばなんか暖かかった気がする。
3.さっき俺の口をふさいでいた感触は覚えがある。千草の唇の感触だ。
4.千草がめずらしいことに滅茶苦茶動揺している。
…ふっふっふ、初歩的な推理なのだよヘイスティングス。
俺は自身ありげな笑みを浮かべて千草を見る。千草は、俺の視線を受けてさっと目をそらす。いつもの無表情も今はどこか取り繕ったようなものになり、そもそも白い肌はまだ赤みを残している。
証拠は十分だな。だが、ここでもう一つとラップをかけて置こう。
俺は千草をビシッっという効果音つきで指差して、
「千草…犯人はお前だ!」
「違う、してない」
「おやぁ、してないって何をかなぁ?」
「……極悪人」
151 :
書く人:2007/01/19(金) 00:22:57 ID:buLajb7k
千草は無表情に呟いた。普通に言われたらグサリと来るかもしれないそれだが、シチュエーションによる補正と僅かに赤い頬のせいで俺の嗜虐心をくすぐる媚薬に変わる。
「極悪人はどっちだよ?人の寝込みを襲っておいてさ…」
「おっ、襲…ってなんか…」
「ん?聞こえないなぁ」
言いながら、俺は千草ににじり寄り、そっと抱き寄せる。千草はそっぽを向きながら、それでも抵抗する素振りはない。俺は調子に乗って千草の頬を撫で、口を耳元に寄せる。
「でもさ、どうしてそんなにキスが好きなんだ?」
「好きじゃ…ないもん」
「嘘つけ。じゃあ、どうしてそんなにキス魔なんだよ?」
「キス魔…じゃ!はむぅ…」
言葉を遮って、俺は千草にキスをする。舌も入れないフレンチキスだ。しかし効果は劇的だ。一枚のレンズ越しの目は、一瞬大きく見開かれ、すぐに蕩けて細まっていく。
ああ…その表情ヤバイって。
思わず押し倒したくなるが、ここはグッと我慢。キスを終えて、千草と目を合わせる。
「どうしてだ?」
再び問う。実は答えが返ってくることなど期待してはいない。どんな反応が返ってくるかが楽しい。それこそ嘘でも、無言であってかまわない。自分の言葉に対して彼女がどう返してきてくれるか、それが楽しい。
特に、普段から情緒情動が見えにくい千草だからこそ、こういう感情が表に出ている時は格別だ。
期待を込めて見つめる俺の視線の先で、千草は口を開く。
「……から…」
「ん?」
「怖い…から」
「…何がだ?」
千草は躊躇うようにしてから、必死といった風情に口を開いた。
「私…口下手だから。…あなたみたいに、歌ったりもできないし…好きって伝えられないから……。だから…代わりにキス、するの。伝わってなかったらって思うと、怖くて…キスしないと、不安だから…」
千草が言い終えるより早く、俺は再び彼女の唇を奪った。
「んっ…んんー!」
今度は舌を入れる。千草が僅かに抗うような動きをするが、それも僅かだった。
「ふゅ…ふ、ぅ……」
千草は反撃を試みる。必死さが伝わる舌の動きだが、あまりに稚拙だった。俺は差し込まれて舌をしゃぶる様に迎撃し、怯んだところで逆襲。千草の歯や
歯茎を撫で回す。
「…んっ!…ぁぅん…!っはぅ」
千草はついに音を上げて、逃げるように口を離す。息をつく千草を、俺はたまらなく愛しいと思いながら、告げた。
「伝わってるよ」
「…?」
「千草の気持ち、伝わってる」
152 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 00:24:36 ID:buLajb7k
そう。千草の思いは完全に伝わっている。今のこの部屋には、俺が目を覚ましてからずっと、リーダーが歌う俺が書いた曲が流れている。
内容はベタベタなほどにストレートなラブソング。千草と付き合い始めて、その時に彼女に送った歌で個人的にはかなりいい線だと思っている。だが、彼女の無言のキスに―――それによって伝えようとしてくる想いと比べてしまえば、陳腐にしか思えない。
「何百回好きだって言われるより、沢山伝わってる。だから、安心しろよ」
「…うん」
頷くと、千草は心音を聞くように、俺の胸に顔を寄せる。千草の髪は、いい匂いがする。シャンプーか香水か、それとも彼女自身の香りなのかはわからないけれども、いい匂いだ。
落ち着くような、それでいてどこかドキドキする……ぶっちゃけると、興奮する匂いだ。
…結局獣かよとか言うな、畜生。仕方ないだろ、ディープキスした挙句、恋人と二人きりで抱き合ってるんだぞ?増して千草は結構いい体している。
普段の図書館で作業しているエプロン姿では想とは見えないが、実は結構背が高く、手足は長い。プロポーションだってセーターの上からでも括れがはっきりと解るくらいだ。
などと俺が自己欺瞞をしていると、千草が呟いた。
「Hな気分?」
「え?」
「硬いから」
Oh!My馬鹿息子!
そりゃ密着状態じゃ隠しようないわな。
「雰囲気、台無し」
「く…っ、仕方ないだろ?」
二重の意味で硬直する俺に、千草は言う。さっきの意趣返しとでも言うつもりか?
だが、そんな俺の想像と、彼女の意図はまったく違った。
「うん。仕方ないよね」
「えっ?」
てっきり「この万年発情期がぁっ!」的なことを言われるのを覚悟していた俺は、意表を突かれて腕の中の千草を見る。千草も、俺の方を見ていた。
笑顔の一つもない無表情で、だけどほんの少しだけ恥ずかしそうに頬を染めて千草は言う。
「セックスしよ?」
つづく
今日はここまで。とりあえず、図書館の本は大切に使用ってことで。
おう、めっちゃ大切にする
そしてwktkもする
完璧ですよヘイスティングス
>>フレンチ-キス
日本語の場合、どっちの意味でも使ってるみたいナリ。
…唇を合わせるだけの軽いキス、とかって本場じゃなんて言うんだろ?
>>156 バードキスです。
フレンチキス=ディープキスが一般的。
でもフレンチキス=バードキスも間違いじゃないです。
フレンチキスはフランス式のキスという意味でフランス人のキスは下品=ディープキスと宣伝されたらしい。
日本ではフランスは上品=バードキスと誤解されたためこっちが広まりました。
諸説あるらしいですが……
私はフレンチキス=ディープキスですね。
小鳥の啄むようなキス、というやつだな。
>>152 GJだ兄弟
フレンチキスのところ読んでるときに
>>154や
>>157みたいなことするやつ出てくるだろうと思ってはいたけど、案の定いたな
本当の意味とは違う言葉の使い方してても、多くの人がその使い方をすればそれは正しい意味になることがあるんだよ
「全然」と同じようにね
>>159のようなことをいうやつが出て来るのも想定内。
むしろ、俺のこのレスまででワンセット、よくあるパターンです。
161 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 22:07:35 ID:Jela1VK1
あげ
162 :
書く人:2007/01/25(木) 03:21:43 ID:TGT9IzQt
キス私的ありがとうございます。では続きを。
163 :
書く人:2007/01/25(木) 03:22:25 ID:TGT9IzQt
ワクワクしながら胡坐をかく俺の後ろで、衣擦れの音が終わった。
「もういいよ」
千草の許可を貰って、俺は振り返った。
そこでは、一糸纏わぬ姿で布団に正座した千草がいた。
「つかさ、何で服脱いでいるところは見ちゃいけないんだ?」
「…恥ずかしいから」
「裸は見られるのは平気なのにか?」
「…コレだって…」
いいながら、千草は自分の豊満な胸を抱く。しかし彼女の細腕には、その豊かさ双丘を隠しきれず、柔肌が腕の隙間から零れる。
うわぁっ!普通に正座していた時よりエロいんですが?
「いただきます!」
「きゃっ…」
本能が理性を凌駕するって本当にあるんだな、と感心しながら俺は千草に抱きつき押し倒す。
襲うとはいっても、怪我しないようにそれほど勢いをつけたわけではないのだが。一方の千草も特に抵抗せずに、あっさりと布団の上に仰向けになる。
ぽふっ、という感じにシーツに沈む千草の体。
手始めにと、彼女の首筋に舌を這わせながら、俺は甘い香りを感じた。千草の匂いだ。
「シーツも、千草の匂いがする…」
「い、いやぁ…」
その言葉に、初めて千草が抵抗らしい反応をする。鳴きそうな声で首を振り、俺の体を押し返そうとする。だが、その力だってやっぱり僅かなものだった。
少ししてから、観念したように濡れた声でもう一度言う。
「嗅ぐの…ダメェ」
「いい匂いなのに?」
「…」
返事はなかった。ただ俺の目の前にある千草の耳が赤くなる。
カワイイと思いながら、俺はキスを鎖骨から下に這わしていく。
「んっ……」
口の愛撫が乳首に達すると、千草の体はピクリと動く。初めて抱いた時から、ここは敏感だったな。
俺は思い出しながら、千草の右の乳首を舌先で転がし、左の乳首は指で弄る。
「…!…ふくぅっ…」
口の中で、千草の乳首が硬くなっていく。乳首は勃起し乳輪の形もはっきりしてくる。
完全に硬くなってから、俺は音を立てて吸ってみた。
「ちゅりゅ、ずちゅちゅぅぅっ!」
164 :
書く人:2007/01/25(木) 03:22:55 ID:TGT9IzQt
「〜〜〜〜〜〜〜っ!」
俺とて弾くのが専門とは言え、一応は歌手の端くれ。自慢の肺活量に引っ張られた胸は円錐形に立ち、それに引っ張られる形で千草も上半身を反らせる。
空気を求める息をつく千草。俺はその様子にはしかし満足しない。もう一方の乳首も同じように口に含み、たっぷりと唾液をまぶしてから、同じように吸ってやった。
「ぁ〜〜〜〜っ!」
今度は、かすかに声を上げた。
千草の息が整うまで、俺は攻め手を緩めて胸を揉む。
「音…立てるの…やだ…」
「気持ちよくなかったのか?」
「…」
赤くなって沈黙する千草。俺は捏ねていた乳を内側に寄せる。
千草の胸の大きさゆえに、乳首はすぐ近くまで寄る。ちょうど、一度に両方を口に含めるくらいの距離だ。
出来るなら、やるしかないよな。
「っ!ああああぅっ!」
予想外の攻撃だったのだろう。俺は舌先で転がし、口から外れる直前までひっぱりを繰り返す。
「…っ!ぅ、へぁっ……はっ…はぁっ!ぁぁあっ!」
すがりつく様に、千草は俺の頭を抱いてきた。俺が千草の味を十二分に堪能してから口を離す。
俺は千草の顔を見ると、彼女はすっかり出来上がっていた。
「ぁ…ぉぁ…」
顔の赤みは明らかに羞恥以外の要素で赤くなり、目は潤んで空を見ている。
「気持ちよすぎたか?」
「…い、いぢわるぅ…」
「声…でちゃった…」
「我慢しなくてもいいんだけど…」
「駄目…はずかしい…」
「恥ずかしくなんてないと思うけど?」
「でも…」
泣きそうな顔をする千草。たまらなく愛おしく思いながら、俺は千草の頬に顔を寄せる。
「ん…」
頬に舌を這わせるようにキスをして、耳を甘く噛む。リラックスしたように声を上げる千草。
ふっふっふ、油断したな。と、俺は次なる攻め手に入るべく、千草の内股に片手を差し込んだ。
その瞬間、千草の体に緊張が走った。
「力、抜いて」
「…」
千草は一瞬、不安そうに俺を見返してから、頷いた。自由に動けるようになった手で、俺は千草の柔肌を弄る。
ランダムに、小さな痙攣を反応として返す千草。そのうち、俺は腕に湿った感触を受けた。
股間に擦りつけられた腕に、愛液がまとわり付き始めていた。
少しずつ、手を彼女の中心に近づけていく。
「ゃぁ…」
抵抗は口だけだった。彼女の足は既に完全に脱力し、俺の侵攻を防ぐ事はしない。
指先は用意に千草の花弁に触れ、暖かい蜜の感触を伝えてくる。
165 :
書く人:2007/01/25(木) 03:24:07 ID:TGT9IzQt
「千草…指、入れるよ?」
千草の返答は小さな頷きだった。俺は千草に口付けをしながら、中指を彼女の中に沈めていった。
「んん…っ!」
喉の奥で、千草が小さく喘ぎ声を上げる。拒絶ではない。声には甘さがあり、秘所は濡れそぼっていた。
俺は口を離してから、本格的に指を動かし始める。
「はぁぅっ!?きゅふぅぅぅっ!」
悲鳴のような声を上げる千草。その度に膣は凄まじいといっていいほどの力で俺の指を締め付けてくる。だが、それはただ一本やりの締め付けではなく、呼吸するようにゆっくり蠢動している。
掻き分ける媚肉は愛液で濡れそぼっている。擦られる感触は、指の肌で感じるだけで気持ちいい。まして、敏感な粘膜越しに感じている彼女はどれほどのものか?
答えは、表情に出ていた。
「っ!…ぃっ!んっ!っ!!…!!」
挙がりそうになる声を、千草は両手で口をふさいで必死で堪えていた。言ったとおり、声を上げるのが恥ずかしいのだろう。
いっそ、手を無理やり外して、千草の声を聞きたいとも思ったが、だがこの堪える表情もいいと思った。
指の動きを激しくすると同時に、さらに親指の腹で肉芽を押しつぶすという責めを加える。
追い詰められる千草の頬をなでる。
「ふぇぅっ!…ん!んっ!…っっ!ひっ!あぅっっっ!」
いやいや、と首を横に振る千草。我慢しているのだ。
「…イっても、いいぞ?」
俺は千草の耳元で囁いてから、まるで熱を測るように千草の額に手をやり、それから少し下にずらして目を塞ぐ。
片手で熱に浮かされる子供をあやす様にしながら、もう一方の手で容赦なく熱病の中に追い込んでゆく。
そして…
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!」
千草は、果てた。
千草が落ち着くのを待ってから、俺は二本の指を差し込んで、少し曲げてみる。一度絶頂を迎えた膣は程よく緩んで俺の指を受け入れる。
「もう、いいか?」
「…うん」
千草の返答を待ってから、俺は千草の脚の間に体をもぐりこませる。
正常位。他の体位も試したいが、まだ三度目だししばらくはこのままでいいだろう。
「あ…のね?」
俺がペニスを手にして角度を調整しているところに、千草が恥ずかしそうにリクエストしてきた。
「キス…しながら…」
「解った」
俺は唇を重ねながら、千草を貫いた。
166 :
書く人:2007/01/25(木) 03:24:44 ID:TGT9IzQt
「ん…」
千草の反応は穏やかだった。
一瞬だけ体を硬くした後、脱力しながら縋り付いてきた。
「痛くないか?」
「うん…」
千草は少し考えたと、こう付け加えた。
「私の体…あなたのおチンチンにぴったりになってきたんだね…」
あ、幸せそうにそんなこと言うの、反則です。
「千草…っ!」
「!っああん!」
辛抱たまらず動き出した俺を、千草は受け止める。
「あん!あん!ひゃん!あん!んん!はぁん!ああ!あ゛あ゛!ああんっ!」
普段より、一オクターブ高い音。
声を堪える事も忘れてよがる千草の嬌声は、美しかった。
どんな楽器にも奏でることも出来ない、官能的で、扇情的で、綺麗で、純粋で、美しい声。
もっと聞きたいと、俺は千草に剛直を突き入れる。
「あん!ああん!きゃん!ひっ、ひぃっ!だ、だめ!あ、ああああ!」
悲鳴を上げる千草に、腰を叩きつける俺。
その度に、彼女の胸はリズムカルに弾み、声が上がる。
熟れた唇の味も昇り立つ香りも、脳をしびれさせるほど甘く感じる。
五感の全てで千草を感じる。愛おしく感じる。
俺の限界もすぐに来る。中で出そう。
167 :
書く人:2007/01/25(木) 03:26:30 ID:TGT9IzQt
「イク…イクぞ!?」
「ふ、ふわっ!あ、あああ!ああああ!」
聞こえたのか偶然か、千草は俺の腰に脚を絡め、頭を抱き寄せる。
キスを求めてくる。拒む理由はないし、俺も…
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
「…ぅぅぅっ!」
どっちが先立ったのだろうか?キスをしたまま俺達は果てた。
168 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 03:27:34 ID:TGT9IzQt
俺の先端から噴出す精液が、千草の最奥に注ぎ込まれていく。千草はまるでそれを求めるかのように、ゆっくりと動きながら射精を促す。一滴残らず、吸い出されてゆく。
ああ、何も考えられない。
至近には千草の顔がある。
うっすらと汗の浮んだ顔は染まり、瞳や唇は潤んでいる。卑猥な、しかし綺麗な顔だった。
そんな顔のまま、千草は微笑んだ。
「すごく…エッチな顔してる」
どうやら、俺も似たようなものらしい。俺は照れながらもこう言い返した。
「それは…千草もだぞ」
ようやく、射精が止まった。
心地よい倦怠感を感じながら、俺達はキスを交わした。
「キスしよ?」
生まれたままの姿で布団の中で抱き合いながら、千草はまた俺にキスをしてきた。
「返事も待たずにかよ」
「……駄目?」
「いや全然」
「んっ……んん」
不安げに問い返してきた千草に、今度は俺からキスをする。
キスを離してから、千草は俺の胸元に、まるで子猫がするように顔を擦り付ける。
あああ、一緒にこすり付けられる乳の感触がたまらんです。
などと俺が千草の感触を楽しんでいると、千草は俺を見ずに言ってきた。
「嘘…ついてた」
「なんだ?」
言われたところで、心当たりがない。
実は処女って言うのが嘘だった、ってのはないだろう。しっかり血が出てたし。
「キスするのって…気持ち伝えるためって言うの、本当は半分だけ嘘」
「っていうと?」
「その…」
千草は恥ずかしそうに、こちらを上目遣いで見ながら、こう言った。
「…キスも…好きなの」
何を言い出すかと思えば。
俺は苦笑しながら答えた。
「知ってるよ」
「うん…」
答えながら、俺と千草はキスをした。
169 :
書く人:2007/01/25(木) 03:28:23 ID:TGT9IzQt
一週間あけたからキャラが微妙に違う…。
ともかく、以上です。
ごちそうさまでした(*´ρ`*)'`ァ'`ァ
>>162 GJ!
>>159は、もしかして全然を正しい日本語だと勘違いしてるのか?
文章表現と会話表現は違うってこと知らないのか?
普通、小説を書くときは辞書的な意味が優先されるんだよw
全然〜ありみたいな現代で認められてきたけど辞書的な意味ではありえない言葉は作者が意図的に使ってない限り間違い。
そもそも、文章読めばフレンチキスの辞書的な意味を勘違いして使ってるのは一目瞭然
常識の問題だよ
良いな、ラブラブエチー。
だがまだまだ無口なおにゃのこが足りないのだよ
とりあえず
>>80の続きを無言で待ち続けてるとだけ記す
上げてみるGJ
176 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 00:19:19 ID:Clm796UQ
ъ(゚Д゚)グッジョブ!!
↑の一言に尽きる
あ゙あ゙あ゙あ゙…GJ!
178 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 22:26:46 ID:lIZhx04P
あげ
179 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 15:36:40 ID:0Ae3O8g9
あげ
唐突に投下。
「旅行?」
「明日から一泊」
「随分急だな…まあいいや、行こうか」
「……親、来るから」
「待てお前それは(プツッ!)…切れた」
というわけで企画された、幼馴染み兼恋人の華岡 葵と、そして双方の親を巻き込んだ家族旅行。
暗い部屋の天井の幽かな明かりを見つめながら、早峰 涼は眠れない夜を過ごしていた…少し離れた隣の布団に、小さな呼吸音を聞きながら。
どれだけ経っただろうかと、テレビ台備え付けのデジタル時計を見る。緑の蛍光がゼロを四つ並べていた。日付が変わっている。
(生殺しかよ……)
もともと夜は早い方だが、意識は冴えっぱなしだ…状況が状況だけに。
いざ就寝となって、公然と
「私たちは私たちでいちゃつくから、アンタたちはアンタたちで仲良くやんなさい♪」
と言われて二人部屋に放りこまれ、しかし素直に従えるわけもなく。
「…」
「な、なあ葵、」
「寝る」
「あ、さいですか」
という流れを経てこのザマだ。これでもう一週間、葵とシてないことになる。
鼓動が痛いほどに高まる、という程初心ではない。だがそれでも惚れた相手が浴衣姿で横になっていて平静を保てるほど老成はしていない。
(…葵は、平気なのか…?)
確かに男は年中発情期と言っても過言ではないが、かといって女にも性欲が無いわけではない。
だのにあの寡黙な、それでも考えていることは判る幼馴染みは、しかし事もなげに布団を敷いた後、背中を向けてそれっきりだ。今回ばかりはその心の内を察する手だては無い。
もしかして…襲って来るのを待ってたり、とか…
(……空しい)
どうして恋人を隣にして、こんな空虚な妄想に浸らねばならんのだ。
くっついて来た親どもを心底恨みながら、涼はため息と共に目を閉じた。
……と。
「?」
みしり。
畳から、小さな音。自分ではない。
気のせいかと思えばもう一度、藺の擦れる乾いた音。
考えられるのは……一人。
「…葵……?」
目を開けばそこには浴衣姿の葵が立っていて、寝転がったままのこの男を見下ろしていた。
「…………ヘタレ」
「は?」
「っ……………ど、…鈍感っ」
「どっ…」
鈍感呼ばわりされる謂れはない、と言おうとして止めた。
橙色の小さな電灯の光を湛えた視線も、どこか濡れているような、熱っぽいような。
「……来る?」
同時に聞こえた、息を呑む微かな音。
否定の声が無いところを見ると、どうやらそうらしい。
…つまり、そういうこと。
まあ、あれだ。馬鹿親どもの話に乗るのは癪だが、確かに二人とも色々な意味で「お年頃」だ。そう易々と我慢できる筈もなく。
「おいで」
布団を上げてやると頬を染めながら、おずおずと潜り込んで来た。
182 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 00:27:41 ID:DRY/ewWG
一週間振りの口付け。
ついばむようなキスを、それでも思う存分堪能する。
勿論深い方もしたいのだが、後回しだ。付き合うようになって聞いたことだが、深い方は葵にとって、思った以上に刺激が強いのだ。
普段の態度の割に、恋愛関係や「そっち」は弱いというか、奥手というか。
「寝るって言ったくせに」
「………うっさい」
唇を離して言ってやると、蕩けかかった顔をむくれさせてぷいと背けた。
…こういう仕草が凄く可愛いって、わかってやっているのだろうか。
堪らなくなって、今度は強引に唇を奪う。
「…!」
珍しく驚愕の表情を浮かべるのを余所に、そのまま舌を割り込ませる。
そのまま蠢く葵のそれに絡ませ、犯す。熱い歯茎を舐め、硬い歯の裏を滑らせる。この感触はどれほど楽しんでも飽きが来ない。
抗議の声も聞こえないことにする。実際背中に回した腕に力を込めると、堪念したようにボリュームが下がっていった。見開かれた目も再び熱を帯びていく。
唾液をこね合わせ、半分ずつ分け合ったところでようやく唇を離す。二人分の雫が布団に落ち、見えないところに染みを付けた。
「……ず、るい」
潤んだ瞳で睨まれると本当は弱い。が、こういう場合は別だ。
「狡くないだろ…誘ったのはお前じゃないか」
「………したかったくせに」
「ああ。でも、お前もだろ?」
向かい合ったまま浴衣の布地をさらに広げ、豊かな双丘を包み込んむ。
肌蹴た布の内側、押せば飲み込み、引けば弾く若々しい肉の質感。
ふぅっ、と熱い吐息が漏れてくる。俯いた顔から表情は窺えないが、身体の震えは隠せない。感度の良さは相変わらずのようだ。
「…大きくなってるな」
掌に余るその感触が僅かに、しかし感知できるほど変化しているのに気付いた。もともと涼の手に余る程はあったのが、掌から零れる量はより多くなっている。
もし、間に挟んだら…いや止そう。それを頼むのはいくらなんでも恥ずかしい。恥ずかし過ぎる。また今度だ。
「りょ、涼のっ、せい……、っ、」
指の股で突起を摘んでやると、切なげな息が吐き出される。
「…そりゃそうだな」
俺以外はこんなことしてないし、させてやる気もない。
言外に思いを込め、少し強く挟んでやる。あぁ、ぁ、と声が漏れ、小さな肩が軽く震えた。
183 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 00:28:57 ID:DRY/ewWG
「今さら、我慢するな」
「………が、我慢、なんか」
だが、まだ声を抑えていると見える。
相対していたのを横にころんと転がし、緩んでいた浴衣を完全に脱がせる。後ろから抱き着くと、上半身だけ起き上がる。
「っぁ」
あぐらをかき、葵の身体を隙間にすっぽりと収める。より触りやすい格好…背面座位の体勢だ。
「…や……ぁ、っ………!」
片手で乳房を揉みしだきながら、残りの手を下半身に滑らせる。控え目な茂みを通り過ぎ、直接そこへ。
「ゃっ、ま、待っ、当たって……はぁっ…!」
いきり立ったモノのことを言っているのだろうが、それより早く到着した。
湿り気を帯びたそこに指を遊ばせ、入口を往復する。入れるよりさすられる方が好きなのだとか。掌でクリトリスを押し、強すぎないように刺激してやる
「や、ぁ、…っ……。ちゃ、と…涼、ので…」
「これか?」
自分の浴衣を開き、充血した分身を足の付け根、滑らかな太股に押し付ける。
葵の身体を回転させ、座ったまま相対する。完全に脱ぐと、擦りつけながら位置を上にずらし、たどり着いた秘裂を裏側で撫で上げた。
「〜〜〜っ」
快感に顎をつんと出しながら、恥ずかしげに目をぎゅっと閉じる。
「っ……生えたみたいだな」
「…ば、か……ぁっ」
そのまま上下に揺らすと、ちょうど雁の部分が敏感な突起を小突く形になる。その度に小さな電流が流れ、あ、あ、と声を上げた。押し殺す事が出来ず、葵は羞恥に眉を寄せた。
恥ずかしがる顔をもっと見たくて、そのまましばらく続ける。すると閉じていた双眸がゆっくりと開かれ、濡れた漆黒の瞳が現れた。
「入れたい?」
「…」
訴えかけるような切ない、でもちょっぴり怒ったような視線。
「…………意地悪」
「…済まん」
そろそろ我慢できないのは、涼も同じで。
「…入れるよ」
返事を待たずに、割って、埋めた。
184 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 00:30:18 ID:DRY/ewWG
「あ…はわっ……あぁ…ッ…!!」
水音も顕わに、飲み込まれていく。
葵は涙に濡れた瞳を「そこ」に向けながら、秘肉を分け入るたびに鼻にかかった喘ぎをこぼした。
自分で処理をしなかっただけあって、正に背筋が震える快楽だった。入ったばかりだというに、強烈な収縮に思わず果ててしまいそうになる。
だが一週間振りの機会をこの程度で終わらせてなるものかと、足を絡めてしがみつく葵を逆にきつく抱き返し、何とか堪え、押さえこんだ。
「っ……大丈夫、か?」
締め付けがひとしきり収まった後、涼はそれでも絶えず送られる快感に耐えつつ尋ねる。
達したかどうかは聞くまでもなかった。分身からは内部の痙攣が伝わって来たし、留まりきらずに漏れた愛液の量も半端ではない。何より背中に食い込んだ爪の後が雄弁に物語っている。
男の自分に女の快感はわからないが、それでも果てた後が辛いのはよくわかる。それも今のは一週間振りの、本物の絶頂の筈だ。
「はぁ、…は、ぁっ…ふぁ…」
あまり大丈夫ではなさそうだ。呼吸が荒い。
「ぁ……っ、…はっ、…い、れるの……早、すぎ………」
葵は息も絶え絶えといった様子で答えた。タイミングではなく、入れるスピードのことを言っているようだ。
荒い呼吸で身体が上下する度に、淡い朱色を差した火照った果実が二つ、揺れている。
「……はぁ、は……ぁっ……ふぅ……んっ……」
「………」
前後にも少し動きがあるため、ちゅ、ちゅ、と音が漏れる。
中が擦れる。
眼差しに入り混じった、困惑と羞恥。
快楽の残滓。
「…わ、るい」
…理性が飛んだ。
「え……んぁっ! あぁっ!」
男の意地だとか、もっと長く楽しもうとか先に出したくないだとか、そういう考えは直ぐさま吹き飛んだ。
体勢を変えることすら忘れた。座って向き合ったまま、添えた手で腰をがっちりと掴み。
突き上げる。
「あっ! だ、め…ふあ、あんっ! や、やぁ…ぁ、ひああ!」
唐突な攻勢に、葵は身震いして悶える。一週間振りのその快感に、抗議もできなかった。
突けば敏感な最奥まで届き、引けば葵の体重で加速する。内壁の襞が涼のモノを擦り上げ、更に血量を増した男根が次々と蜜を掻き出す。溢れたそれは二人の肌の間で糸を引き、打ち付けるたびにぐちゃぐちゃと音を立てた。
より大きく。より卑猥に。
「あぁ! んあ! はあ! ふあっ!」
葵はだらし無く唾液を垂らし、口を半開きにしたまま喘ぐ。
暴力的なまでの、圧倒的な快楽。他の事を考える余裕などなかった。
185 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 00:31:42 ID:DRY/ewWG
やがて、声が切羽詰まっていく。
締め付けの間隔が狭まり、しがみつく腕がきつくなる。
もともと達しかけ、高まっていただけあって、涼にもとうとう限界が来た。
「い、く…ぞっ!」
最後とばかりに、腰を思い切り叩き付ける。より激しく。より強く。
「あぁ、あぁっ! はぁ、はあ、う、んっ! ひぃぁ、いあっ!」
最後の一突きで自分の腰をぐいと押し付け、目の前にある葵のそれは、逃がさぬよう押さえ付け。
「っ!」
勢いよく、滾りを放出した。
「へあ、ふああぁ! あぁぁぁっ!!」
強烈な締め付けが容赦なく襲い掛かった。搾り出される感覚に、思わず呻きが咽を震わせる。
「はぁあ! あ、ひああぁぁんッ!!!」
大量の灼熱が奥を叩くのを受け、葵も追って二度目の絶頂へと達した。ぶるぶると身体をわななかせ、鮮烈なまでの快楽を全身で表現する。
一際大きな、悩ましげな鳴き声を上げ、痙攣と同時におびただしい量の愛液を吐き出す。膣内に満ちた白濁と混じり合い、入りきらない分は結合部の隙間で圧力を受け、ぴゅ、ぴゅ、と漏れていく。
ぎゅぅ、と抱き着かれる。温かい身体。
意識が薄れ、しがみついた○○と一緒に横になった。
心地よい脱力。
軽い睡魔。下へ。
下へ…
186 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 00:34:22 ID:DRY/ewWG
「馬鹿」
「…はい」
「鬼畜。色情魔。節操無し」
「いや節操無しはないだろ、こういうことはお前にしか」
「ケダモノ」
「ゴメンナサイ」
時刻は午前1時。
二人で布団を被ったまま、涼は一方的なお説教を喰らっていた。
いかに一週間振りだったとはいえ、理性が吹っ飛んだ後は半ば葵を無視した揚げ句、完全に中に出してしまったのだ。ケダモノと言われようが言い返せる身分ではない。
……中に?
「そ、そうだお前、その…」
「……薬、ある」
「あ…そうか、す、すまん」
そのうえ男性が気を使うべき最低限の事にすら思いが至らなかったことを知り、さらに情けなさで縮こまる。
ダメ人間の宣告を受けているようで、心が…痛かった。
「……」
「?」
言葉が沈黙に消え、涼はおやと顔を上げた。
目の前の葵は、なにやら視線を反らし、ほんの僅かに俯いていた。
微妙に頬が染まっている。
「……薬……ある、から…」
「は?」
発言の意味がいまいち読み取れない。薬があるから…何なのか。涼は首を傾げる。
すっと顔が上がり、上目使いの視線が向けられる。ちょっと待てお前それは反則だろう。そんなに俺の理性を虐めたいのですか。
…だが後に続いた言葉は、さらにそれを焼き焦がしてくれた。
「あ、あおいさん?」
「………………つ、次…優しく、して」
翌日、防音への配慮の甘さを思い知らされることになるが…それは別の話。
終わり。エロが書きたかった。スレ燃料になればいいなと思って投下したが今では反省している。
だが後悔は(ry
GJ!
抜いてくる
GJ
この燃料だけでスレは10年戦える!
>意識が薄れ、しがみついた○○と一緒に横になった。
?
190 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 08:57:18 ID:DRY/ewWG
orz
名前決める前にとりあえず全部○○で書いてたんだよ…スマン(´・ω・)
191 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 09:13:24 ID:UIdv4vk6
test
そんなのは些細な事だ!
声を大にしてGJ!
GJ!強気無口もいいものだ…
194 :
神崎さん:2007/02/02(金) 00:03:00 ID:dcD71pfG
とりあえず書いてみました。
「はぁ・・・、こりゃまだしばらくかかるな。」
「・・・・・・・。」
「神崎さん、そっちはどんな感じ?」
「・・・・・・・。」
俺たちはほとんどの教師が帰ってしまった校舎で、いつ終わるとも分からない「保健便り」の製作に勤しんでいた。
「そもそも俺は保健委員って柄じゃないってのに・・・よりによって何で委員長なんだよ・・・。」
文句を言ってる俺に構うことなく、向い合って座っている女の子「神崎ゆい」は黙々と作業を続けていた。
俺と神埼さんは高校生活2年間、どういう訳かずっと保健委員だった。
俺の場合は別に立候補したという事ではなく、いつもジャンケンで負けて残っていた保健委員になってしまってたのだった。
神崎さんはどうなのかは知らなかった。
普段からほとんど誰かと話すことをしないから、保健委員を押し付けられてしまったのかもしれない。
結局、保健委員を2年間続けていたせいで担当の先生にしっかり顔を憶えられ、俺と神崎さんは委員長と副委員長に半ば強制的
に任命された。
神崎さんは最初から無口で、必要が無いことはほとんど口にしないが仕事はきっちりこなすし、勉強もよく出来る真面目な女の子だ。
195 :
神崎さん:2007/02/02(金) 00:03:37 ID:dcD71pfG
時計は夜8時を指していた。
「ねぇ、お腹空かない? これ終わったら何か食いに行こうよ。」
俺は友達同士が交わす特にこれといって深い意味の無い提案をした。
しかし神崎さんはメガネの向こうの目を真ん丸くして驚いているようだった。
「わっ・・・わたし・・・と?」
神崎さんはたどたどしく聞き返してきた。
確かに2年間一緒に保健委員をやってきたが、ほとんど私的な事を話したことが無かったから驚くのも無理ないかもしれない。
「あっ、別に嫌なら良いんだ。 ごめん、変なこと言って・・・。」
「・・・・・・・・・・ううん、行く。」
予想外の返事に俺が驚かされた。
神崎さんは小さな声でだが、間違いなく「行く」と返事をした。
「えっ?あっ・・・そう!? じゃあ、あっ、でも金無いからラーメンとかで良い?」
今度は俺がたどたどしく提案した。
「・・・・・・・・。」
神崎さんの返事は無かった。
196 :
神崎さん:2007/02/02(金) 00:04:23 ID:dcD71pfG
と、その時俺の左の人差し指に鋭い痛みが走った。
見れば、たいして傷は深くないが、新聞の切り抜きに使っていたカッターの刃が指先から指真ん中にかけて切り裂いていた。
それを見た神崎さんは無言のまま俺の手を掴んで、凄い勢いで保健室に連れて行った。
途中職員室の前を通ったら、明かりは消えていた。
保健室の鍵は開いていて、神崎さんは俺を椅子に座らせると手際よく手当ての準備をしている。
俺はその間、普段では想像できない積極的な神崎さんに呆気に取られて、一言も口にできなかった。
そんな俺を前に神崎さんは絆創膏と包帯を手に困った顔をしていた。
察するにどうやら消毒薬が無いようである。
俺が「舐めとけば治るよ。」と言い終わらないうちに、神崎さんは俺の人差し指を舐めていた。
今まで特に意識していなかったが、改めて顔を見ると結構神崎さんは可愛いかった。
俺の視線に気が付いたのか、恥ずかしそうに口を離し手当てをし、俯いてしまった。
197 :
神崎さん:2007/02/02(金) 00:05:24 ID:dcD71pfG
傷口は傷んだが、綺麗に手当されていた。
しかし俺はそれどころではなかった。
女の子にこんな事をしてもらったことは無かったし、今更だが神崎さんは可愛いのだ。
その女の子が・・・・・・・。
頭の中が混乱していた。
気が付けば神崎さんを保健室のベッドに押し倒していた。
メガネは床に落ちていた。
俺は我に返り、咄嗟に起き上がろうとしたが緊張してしまい体が動かなかった。
その時神崎さんと目が合った。
神崎さんは抵抗するでもなく、ただひたすら俺の目を見ていた。
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
気まずい沈黙が訪れた。
しばらくして神崎さんが口を開いた。
「・・・あなたが望むなら・・・良いよ・・・・・・・・・・・・・・・。」
俺は無我夢中で神崎さんに覆いかぶさった。
198 :
神崎さん:2007/02/02(金) 00:05:58 ID:dcD71pfG
「ごめん・・・俺、初めてだから・・・・。」
神崎さんは慣れない手つきで、でも優しく俺を導いてくれた。
そこはもう濡れそぼっている。
「あの神崎さんも・・・・。」
察したのか、ただコクリと頷いた。
俺は申し訳ない気分になったのと同時に、とても愛おしく感じた。
「出来るだけ、優しくするから・・・・。」
「・・・・・・うん。」
俺は彼女に宛がうと先端に当たるモノを感じた。
「これが・・・・じゃあ・・・いくよ。」
神崎さんはじっと俺の目を見つめていた。
侵入を開始すると苦しそうに息を荒げていた。
中はとても熱く、そして狭かった。
「大丈夫? もし辛いなら・・・・・。」
「・・・あっ・・くぅっ・・・大丈夫っ・・・・だから・・んくっ!」
大丈夫とは言うものの、歯を食いしばって痛みに耐えている。
俺は負担をかけないようになるべくゆっくり動いた。
「ふぅ・・・あっ・・・ふぅ・・んっ・・・んんっ・・・ああっん!」
しばらくすると段々と痛みに慣れてきたのか、神崎さんの口から甘い鳴き声が聞こえてきた。
しかしその頃には俺の限界はもうそこまで迫っていた。
「はぁはぁ・・・・ごめん、もう俺・・・・くっ。」
神崎さんは何も言わず俺の背に脚を巻きつけてきた。
「えっ?・・・ごめん、くあっ・・・・射精る!!」
俺は神崎さんの中に放っていた。
「・・・・・あっ・・・・来てる・・・んんっ・・・・温かい・・・・。」
神崎さんはそう呟くと、静かにまぶたを閉じた。
199 :
神崎さん:2007/02/02(金) 00:07:08 ID:dcD71pfG
時計はすでに10時近くを指していた。
時間も時間なので結局ラーメン屋には行かず、自宅で済ませることにした。
「俺は大丈夫だけど・・・神崎さんのご両親、心配してない?」と尋ねると、
「・・・・・・・わたし、アパートで・・・・一人・・・暮らしだから。」と教えてくれた。
俺はアパートまで送って行く事にした。
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
俺たちはそれっきりアパートに着くまで終始無言だった。
15分くらいだろうか? アパートの前まで来た。
「・・・・・・それじゃあ。」
神崎さんはそう言うと背を向けた。
「ま、待ってくれ! 神崎さん!順番無茶苦茶だけど、俺と付き合って欲しい!」
生まれて初めての告白に、心臓は物凄い勢いでバクバクと音をたてていた。
長い沈黙の後、神崎さんは口を開いた。
「・・・・・・わたしのお願い、聞いてくれる・・・・・・?」
「でっ、出来ることなら!」
「・・・・二人の時は・・・ゆいって、名前で呼んでほしい・・・。」
「えっ? あぁ解った、その・・・・ゆい。」
「・・・・うん・・・・それと・・・キス・・・・してほしいな・・・・・。」
「!?」
思い返せば、一度もキスをしてなかった。
俺はゆいを抱きしめると、彼女の唇に触れるように優しくキスをした。
「・・・・・・えへっ、これから・・・・よろしくね。」
ゆいは唇に手をあて、今まで誰も見たことがないであろうとびきりの笑顔を見せて、アパートの中に消えていった。
終わり
・・・・初めてでしたが書きました。
拙い出来ですが、読んでくださった方々ありがとうございます。
読み返してみると全くエロくないですね・・・。
リアルに保健委員委員長をやっていたがこんなかわいい女の子はいなかったぜチクショーGJ!
スレに書き手さんが…!
GJ!!!
無口スレながら、このところ神々の筆が雄弁で嬉しい限りだと思います。
ちょっと描写がすっ飛ばしがちな感じだが、
堪能させてもらいますた!
ギャルゲぽくて良い!
小学校、中学校、高校と「図書委員」をやってきたが
こんなにも「保健委員」に憧れたことはない。
Hの時、無口ながらも体は情熱的で大胆な無口っ娘がいてもいいじゃない
マスオ
>>206それはつまり
「ハァ…ハァ…イッたか?」
「…っ…(コクコク)」
「じゃ、じゃあもう満足だな?」
「…(フルフル)」
「け、けど、もう疲れて…」
「………(ぶすぅ)」
「ちょ、そ、そんな顔したって…」
「(ぎゅ)」
「……あと一回だけだぞ?」
「〜♪」
ってことか?
おっきした
良いじゃないですか!
恥ずかしがりやで、モジモジして口数少ないのはアリ?
カモン!
(´・ω・`)ショボーン
まだかにゃ〜
217 :
213:2007/02/07(水) 09:45:51 ID:78shaPbR
すまん、エロに到達するか怪しくなってきた・・・。
大丈夫だ。いざとなったら妄想力で自給自足するから。
なぁ、俺達?
呼んだか?>俺
220 :
213:2007/02/07(水) 20:39:01 ID:78shaPbR
すまない戦友。
もう少し頑張ってみる。
ガンガレ
無口な子をレイプ、誰にも話すことがないだろうからそのまま性奴隷に…
223 :
213:2007/02/08(木) 14:56:06 ID:RhA27JPP
どーも遅くなりまして。
思ってたより長くなりそうです、すいません。
「あ、あのさぁ、明日天気崩れてくるみたいだけど・・・・・どうする?」
すでに日も落ち、暗くなったバイト帰り、俺「宇垣真示」は隣を歩く彼女「三橋沙耶」に尋ねた。
「・・・・・・・・・・・大丈夫・・・行く。(/////)」
沙耶は俺の手をギュッと握ってそう言うと、恥ずかしそうに俯いてしまった。
「んっ、そうか。 まぁ水族館だから天気は関係無いよね。」
内心、沙耶の仕草にドキドキしながらも、平静を装い俺は答えた。
沙耶と付き合いだして一ヶ月くらいになる。そして今回は3回目のデートだ。
告白したのは俺からだった。
初めて会ったのは俺のバイトしている小さな喫茶店だ。
沙耶は喫茶店の常連さんで、4時頃に来ていつもカウンターの右端でジュースを飲んでいた。
その時間は大抵他に客も居なく、マスターは俺に店を任せてくれていたので、俺と沙耶の二人だけのことが多かった。
最初は話しかけても、店員と客という立場もあってなかなか親しく話せなかったが、それでも回数を重ねるうちにだんだんと心を開いてくれるようになった。
沙耶は話すことが得意ではないらしく、自分から話を振ることは滅多にない。
いつも俺が話題を提供して、それに沙耶が答えるという形だ。
答えると言っても「・・・・・・うん。」とか「・・・・・・・そうだね。」と、あまり積極的な答え方はしない。
224 :
213:2007/02/08(木) 14:57:04 ID:RhA27JPP
それでも楽しそうに俺の話を聞いていてくれた。俺はそんな沙耶が好きになっていた。
店に二人だけのある日、俺は決心して沙耶に告白した。
「あの・・・・俺と付き合って欲しい!!」
生まれて初めての告白だった。下げた頭を上げるのが怖かった。
俺は19、さやは17だった。他に好きな人が居るかもしれない、断られたらこれからどうしよう。そんな事が頭の中でグルグルしていた。
そんな不安を沙耶はいっきに吹き飛ばしてくれた。
「・・・あっ、あの・・・・そのっ・・・こんな・・・つまらない・・・わたしで・・・良いの?」
頭を上げてみると、沙耶は顔を真っ赤に染め、俯きながらモジモジしていた。
「そっ、それは・・・・OKってこと・・・?」
俺は聞き返してしまった。
「・・・・・・・・・・・うん。」
沙耶は俯いたまま、コクンと小さく頷いた。
それからの事はよく憶えていない。
ただ沙耶が恥ずかしそうに、でも優しく微笑んでいたのははっきりと目に焼きついている。
225 :
213:2007/02/08(木) 15:20:17 ID:RhA27JPP
俺たちの関係を察してくれたのか、今回のデートはマスターがセッティングしてくれた。 で、マスターがくれたのが水族館のペアチケットというわけだ。
「じゃあ俺は家こっちだから。 明日、駅前・・・10時半ね。」
いつの間にか、家も近くまで来ていた。
「・・・・・・うん、真ちゃん・・・また明日ね・・・。」
沙耶はずっと握り締めていた俺の手を惜しそうにほどくと、もう真っ暗な夜道に吸い込まれるように消えていった。
朝、空はどんよりとした雲に覆われていた。いつ降りだしてもおかしくない空模様だ。
俺はお気に入りのドイツ軍のフィールドパーカーに袖を通すと駅へと急いだ。
駅に着くと、そこにはすでにオドオドとしながら辺りを見回す沙耶の姿があった。
「ごめん、結構待った?」
沙耶は無言でフルフルと首を振った。
俺たちは早速電車に乗った。だいたい1時間くらいだ。
電車の中、俺たちはこれといった特別な話はしなかったが、沙耶は終始ニコニコしていた。
今日は土曜日ということもあってか、水族館はカップルや家族連れの人たちでいっぱいだった。
226 :
213:2007/02/08(木) 15:32:24 ID:RhA27JPP
「・・・・・・・・ねぇ真ちゃん、わたしたちって・・・・どんなふうに・・・・見えるのかな?(/////)」
沙耶はモジモジしながら珍しく自分から口を開いた。どうやら周りを見て気になったのだろう。
俺はちょっとイジワルしたくなった。
「う〜ん、そうだなぁ・・・年の離れた兄妹・・・かな?」
「あっ・・・・そう・・・だよね・・・。」
途端に沙耶はしゅんとしてしまった。 それを見た俺は「しまった!」と思いつつ慌ててフォローした。
「う、うそうそ!冗談だよ、こんな可愛い彼女連れてるのに・・・・・。」
「・・・・・・・・ホン・・・ト?」
不安げに俺の瞳をみつめていた。
「あぁ、もちろんさ! 変なこと言ってごめんね。」
それを聞くと、多少安心したのか俺の手をギュッと握ってきた。
227 :
213:2007/02/08(木) 16:33:03 ID:RhA27JPP
しかし実際のところ、沙耶は本当に年の離れた妹みたいな感じだった。
精神的にも脆く、決して社交的ではなく幼い感じだ。背だって俺が182cmに対して、沙耶は140cmちょいくらいしかない。おまけに胸もないし、尻もない。
言ってしまえば、完全に幼児体型だ。大学の友人に沙耶の写真を見せたところ、「オマエってロリコンの気があったんだな。」なんて言われた。
俺は体型のことなんか大して気にしてないが、沙耶はそのことにコンプレックスがあるらしい。
沙耶は熱帯魚の水槽に釘付けになっていた。 今までいくつか回ってきたが、熱帯魚の水槽が一番のお気に入りのようだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「沙耶はどの熱帯魚が好き?」
「・・・・・・・・・・・・・・あのお魚。」
沙耶は一点を指差した。
「ネオンテトラかい?」
「・・・・・違う、その下にいるの。」
「ん?・・・・・・・・コリ・・・ドラス?」
沙耶は満足そうにコクリと頷いた。
そいつは赤や青の華やかな水槽の中で、えらく地味なヤツだった。水槽に沈んでいる流木の陰で何やらチョコチョコ動いている。 確かに可愛くはあるのだが・・・。
「なんだか・・・」とそこで言うのをやめた。 もし「沙耶みたいだ。」と続けていたら、また傷つきそうな気がしたからだ。
沙耶はそんな俺を不思議そうに見上げていた。
228 :
213:2007/02/08(木) 16:34:21 ID:RhA27JPP
俺たちは昼食を水族館の中で適当に済ませ、近くの店なんかを見て回った。時計は6時を指し、そろそろ帰ろうかという時、雨がシトシトと降ってきた。
「・・・・どうしよう・・・傘持ってない・・・・。」
沙耶は短めのトレンチコートにスカートで、どうやってもビショビショになってしまう格好だった。
「ほら。」
俺は沙耶にお気に入りのフィールドパーカーをかぶせてやった。
「え?・・・・でも・・・・。」
何か言おうとしている沙耶の手を引っ張り、俺は駅まで走った。
当然俺は駅に着くまでにずぶ濡れになっていた。
「ふぅ・・・こっちは大丈夫みたいだな。」
地元は雨がすでに上がっていた。
時計を見る。もう7時を過ぎていた。普段なら沙耶はとっくに家に帰っている時間だ。
「結構遅くなっちゃったね。 家の人心配してない?」
俺はさすがに心配になって尋ねた。
「・・・・・・大丈夫・・・き、今日・・・女の子の友達の・・・お家に泊まるって・・・言ってきた・・・・。(/////)」
「・・・!?」
それは俺のアパートに泊まるってことだ。要するにそれは・・・・・・。
「いいのか?」
沙耶は返事をする代わりに、目を静かに閉じて俺のほうに顔を向けた。
俺は少し屈むようにして、沙耶にキスをした。思えばこれが最初のキスだった。
「俺のアパートここだから・・・。」
沙耶はだまって俺の後を付いて来た。カンカンと階段を上る音だけが響いている。
俺は部屋に案内した。決して広くはないが、狭くもない。幸い部屋は一昨日かたずけたので綺麗だった。
229 :
213:2007/02/08(木) 16:48:59 ID:RhA27JPP
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。(/////)」
沙耶は緊張しているのか、一言も口にしない。 しかしそれは俺も一緒だった。
「・・・・先・・・・いいよ。」
そう言うので精一杯だった。沙耶はなにをするべきか理解しているのだろう。なにも言わずに風呂場へと消えていった。シャワーの音だけが聞こえる。俺の心臓はバクバクと激しく鼓動していた。とりあえず準備だけはしておいた。
そうしているうちに沙耶が出てきた。ほんのりと桜色に染まっていた。
俺は目を合わすことも出来ずに風呂場へ向かった。不安でため息ばかりが出る。
はたして満足してもらえるだろうか、うまくやれるだろうか。不安で不安で仕方ない。
結局不安を拭い去ることを出来ずに、部屋へと戻った。
部屋は豆電球だけが灯っていた。ぼんやりとした明かりの中、沙耶はベッドで待っていた。俺はベッドに腰掛けた。すると沙耶は何も言わずオズオズと俺に寄り添ってきた。すでに沙耶は生まれたままの姿だった。
230 :
213:2007/02/08(木) 17:14:37 ID:RhA27JPP
「その・・・俺初めてだから・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わっ、わたしも・・・。」
俺はそっとキスをした。と同時にほとんど膨らみのない胸に手を伸ばした。沙耶の胸は簡単に手の中に納まってしまった。途端に沙耶は申し訳なさそうにつぶやいた。
「んっ・・・ゴッ、ゴメンね真ちゃん・・・・あっ、わたし・・・・その・・・おっぱい・・・小さいから・・・・。」
「気にすることないよ、沙耶・・・・可愛いよ・・・。」
俺はそう言うと、今度は下の方に手を伸ばした。
「んんっ!」
沙耶は小さく呻いた。そこはもう濡れていた。俺は優しくそこをなぞった。
「くぅぅぅっ・・・・し、真ちゃっ・・・・ひうぅぅっ!?」
沙耶からはピチャピチャと湿り気をおびた音がするようになってきた。そろそろ大丈夫だろうと、俺はゴムの箱を手にしようとした。
231 :
213:2007/02/08(木) 17:34:48 ID:RhA27JPP
「あっ、あのね・・・真ちゃん・・・・初めては・・・・・その・・・そのままがいいの・・・・。」
「えっ? いや、でも・・・・。」
沙耶の要望に俺は少し驚いた。
「きょ・・・今日は大丈夫な日だから・・・・。」
「・・・・・・・・・わかった。」
俺はしっとりと濡れた沙耶に宛がった。
「無理はするなよ。・・・・もし辛かったらちゃんと言ってくれ・・・。」
沙耶はコクリと頷くと、ぎゅっと目を閉じた。
俺は優しくキスをすると、正面から抱きかかえるように沙耶の中に侵入を開始した。
沙耶は苦しそうに歯を食いしばり、「フーッフーッ」と息を荒げていた。
そのうちミチミチと音をたて中から赤い血が流れてきた。
「沙耶・・・・・大丈夫か?」
沙耶はそっと目を開け、繋がっているところを目にした。
俺はもう一度聞きなおした。
「・・・・・・・うん、少し痛いけど・・・・んっ、大丈夫・・・。」
沙耶は健気にも目に涙を浮かべながらも、微笑んでみせた。
「んくっ・・・動いても・・・大丈夫だよ・・・・・・。」
「でもっ・・・・。」
「へっ、平気だ・・・から・・・・・・ねっ?」
「わかったよ。でも本当に苦しかったら言うんだぞ。」
232 :
213:2007/02/08(木) 17:35:25 ID:RhA27JPP
沙耶は返事代わりに「チュッ」とキスをしてきた。 俺はストロークを開始した。結合部からはクチュクチュと湿った音が響いている。それもだんだんと、その音は激しさを増していった。
「んんんっ・・・・・あっ・・・ひぅっ・・・ねっ、真ちゃん・・・?・・・・ぐぅっ!!」
沙耶は不安げな顔で俺をみつめている。
「はぁっはぁっ・・・・気持ち・・・いいよっ・・・・んっ・・・。」
それを聞くと沙耶は安心したのか、抱きついてきた。 部屋中に吐息と、湿った音がこだましているように感じてきた。
「んんっ・・・・すっ・・・・すまない沙耶・・・・・・もうっ・・・!」
俺は限界が近づいていた。初めてにしてはかなり持っているほうだろう。
「うんっ、うんっ・・・なぁっ・・いいよ・・・・きて・・・し、真ちゃん!」
俺は沙耶を抱きしめると、沙耶の中に解き放った。
「くぅ・・・ああっ・・・来てるよ・・・・真ちゃぁん・・・・んっ・・・・あったかぁい・・・。」
沙耶はそうつぶやくと、ぐったりとしてしまった。俺は沙耶から引き抜いた。すると血と俺の出したモノがドロッと溢れてきた。
233 :
213:2007/02/08(木) 17:36:13 ID:RhA27JPP
「えへへっ・・・・とうとう真ちゃんと・・H・・しちゃった・・・・。」
沙耶は微笑みながら横になった。
「野暮なこと聞いて悪いとは思うんだけどさ、その・・・・・ホントに俺で・・・・。」
沙耶の返事はない。気づくと沙耶は安心しきった顔で「スースー」と静かに寝息をたてていた。俺は沙耶の顔を優しく撫でた。そして俺も横になった。
「・・・・・・おやすみ、沙耶・・・・・。」
234 :
213:2007/02/08(木) 17:40:27 ID:RhA27JPP
以上です。
いかがだったでしょうか?
気が付けばとんでもない長さになってしまいました。
しかも無口かどうかも怪しい・・・・。
反省点は他にも多々ありますが、一応形にできたのでとりあえずは満足です。
読んでくださった皆様、ありがとうございました。
GJ
ニヤニヤしながら見てた
次回作も楽しみ
スラッシュは勘弁して欲しい
超王道無口GJ!
ただあえて言うなら・・・ではなく…のほうが読みやすいかも。
内容に関しては文句の付けようがなかったぜ!
GJ
無口成分がちょっと足りないような?
とりあえずお疲れさまです
あと
>>236とかぶるが、やはり(////)とかやるのは読み辛くなるる
しかも楽だから書き手もそれに依存して恥ずかしがる描写の全てを(////)で表現するようになっちゃうから出来るだけ使わない方が良いと思う
それ以外の部分は特に違和感感じなかったからGJとだけ言わせてもらう
長文スマソ
そだねー。
上でも言われてるけど、無口が少なめなのと
スラッシュが気になる以外はだいまんぞくー
GJっすよGJ
241 :
書く人:2007/02/09(金) 12:35:29 ID:mlTu8w5B
>>213GJ
それはそうと、散々既出だけど(///)は対談系完全無口でもない限り使わないほうがいいと思う。
つまり
「お前も飴、欲しいか?」
「…(こくこく)」
「じゃあ、やる」
「…(あーん)」
「…ってありゃ?もうねえや」
「!……(しょぼーん)」
「…しゃあねえな。ほれ」
「?…っ!?」
ちゅっ、くちゅ…
「ほらよ。舐めかけだけどな」
「…(///)」
「なんだよ…イヤなら返せよ」
「(ふるふる)」
見たいな感じで、どうしてもカッコ内で表現しなくてはならないときに使うにとどめておくべき。
242 :
213:2007/02/10(土) 00:37:24 ID:oqwbMf1C
皆様、ご指摘ありがとうございます。
ここで書いたのはまだ2回目だったので、いろいろと勉強不足でした。
また書く機会があった時は参考にして、満足してもらえるものを書きたいと思います。
次回作に期待、GJ
謙虚な態度がまたGJ!
いずれ神になってくれることを祈ってます。
ほしゅ
無口な少女、投下してもいいですか?
カマーン!
では、後少しで書き終わるので書き終わり次第投下させてください。
よろしくです。
ほsy…wktkwktk!
どんとこーい
253 :
247:2007/02/13(火) 04:24:19 ID:UAoYJNEe
推敲していたら遅くなりました。では、投下します。
【妹が無口な訳】
美代(みよ)が初めて俺の家に来た時、とっても奇妙な感じがした。母親が他界して5年目の夏の事、
親父が突然再婚するという話を持ってきた。子供だった俺には母親が新たにできるという感覚は無くて、
知らない人が突然押しかけてきて同居するって気分だった。
だから、美代を義妹として迎える事が出来なくて、その時俺はずっと不機嫌な顔をしていた。
【……】
真っ赤な顔をして、美代は小さくお辞儀をした。その美代を俺は睨み返してしまった。美代は直ぐに
母親の後ろに隠れてしまったけど、睨むほど嫌だったんじゃない。ただ単に恥ずかしかっただけだと思う。
天然のウエーブが掛かった肩位までの髪に、くりくりとした目。口数が少なくて、目立たない子というのが
美代の第一印象だった。
俺は子供の時に母親が死んでから、ずっと父親に育てられていた。だから、女の子にどう接したらいいか
なんて、その時は全く分からなかった。だからとても怖くて、どきどきしていた。
でも、差し出された小さな手を握り返した時、そんな気持ちがすっと引いていったような気がした。
それは、握った美代の小さな手も震えていたからだ。妹になるこの子も怖いんだ。そう思った時、不思議と
怖いという気分が消え、守ってあげたいという気持ちが芽生えていた。
そして今10年の月日が流れ、俺は高校をもう直ぐ卒業する。東京の大学を受験する予定の俺は、この春
この家を出て下宿をする予定だ。美代はまだ高校2年で高校生活をエンジョイしている……と、思う。
何故、俺がここで希望的観測なモノの言い方をするかというと、美代の性格がちょっと心配だったからだ。
(トン、トン)
『Miyo』というネームプレートの掛かった扉をノックする。暫くすると扉がゆっくりと開いて、美代が
眠たそうな眼を擦りながら部屋から出てきた。
「おい、もう遅刻するぞ。そろそろ起きようぜ」
「……」
「今日は2月14日だろ。そんなのんびりしていていいのか?用意とかあるんじゃないか?」
「……ない」
何だか不貞腐れている。いつもこんな調子だ。大体、2月14日といえば、女の子にとって見れば
一大イベントじゃないのか?製菓メーカーの陰謀に乗って、ワイワイと盛り上がるのが普通の女子高生だろうに。
「お前なぁ。そこそこ可愛い顔しているんだから、期待している男子も多いと思うぞ。義理チョコでも
やって、ちょっと愛想を振りまけばボーイフレンドの1ダースも直ぐにできるだろうに」
「……」
じっと黙って俺を見つめる。この10年で兄の俺が言うのも何だが、美代は可愛く成長した。セミロングの
髪がふわっと腰に掛かり、切れ長の目に長いまつげ。すっと鼻筋が通り、微笑むと日本人形のような清楚な
感じのする少女になった。
「もしかして、義理チョコも無しか?」
「……ん、」
ところが誤算はこの性格だ。口数が極端に少ない。しかも、男に興味がない。中学の頃から俺が知っている
だけで美代は20人には告白されているはずだ。その度にこの義妹は決まってこの言葉を口にする。
254 :
247:2007/02/13(火) 04:24:52 ID:UAoYJNEe
【困ります……】
俺からすれば、なんて高飛車な受け答えだと思うのだが、世の中の男供にとって見ればこれがまたいいらしい。
美人でクリーンで清楚。しかも、勉強も学年の常に上位クラス。高嶺の華という奴なんだろうが、俺からして
見れば、今パジャマで寝ぼけ眼(まなこ)の妹が高嶺の華にはどう見ても見えないぞ。
「とにかく、直ぐ着替えて直ぐ来いよ……ってお、おいっ!」
美代がその場でパジャマのボタンを外し始めやがった。慌てて振り向いて視線を逸らす。
「馬鹿、俺以外の奴の前でそんな恥ずかしい事、絶対やるなよ。美人のイメージが崩れ落ちるぞ。正体、ばれるぞ」
「いい」
「俺が困るだろ。美人の妹が俺の唯一の自慢なんだ。この俺がここまで守ってきたって触れ込みなんだから。
正体ばれたら彼氏になる奴が俺くらいしかいなくなるぞ。いいか、わかったな」
「…………うん」
俺と美代はこんな日常を繰り返していた。学校で完璧なはずの妹が何故か俺の前ではとてもだらしが無い。
小学校の時は犬に襲われそうになっても逃げないし、中学校の時は変なナンパ野郎に連れて行かれそうになっても
ぼうっとして逃げない。その度に俺は美代を助ける役目をしてきて、損ばかり被って来た。全く、しょうがない
義妹だよ。
やれやれという気持ちで母親が作ってくれた朝ごはんを食べようと階段を降りようとする。すると、美代が
俺の肩をぽんと叩く。何だ?と思って振り向くと、美代が俯いて手に包みを持っていた。
「はい」
手渡されたピンクの包み。可愛い包装紙に赤いリボンが掛かっている。
「何だ……義理チョコ、無いって言っていたのにあるんじゃないか。サンキュー。誰からも貰えないと寂しいと
思っていたんだ」
俺は制服のポケットにそれを仕舞いこむと、上機嫌で階段を降りた。
「……義理はないよ」
僅かに揺れる髪。俺はそれを聞いてはいなかった。
高校3年の2月にもなると、学校での授業というのは殆ど無い。出席を取って終業というのが普通になる。
受験勉強も追い込みの時期に来ており、教室の中もかなり切羽詰った雰囲気になっている場合が多い。
「勉強をする前に、糖分の補給でもしておくか」
脳の活性化には糖分がいいという豆知識を知っていた俺は、今朝美代からもらった包みをポケットから取り出した。
小さな包みを無造作に開けると、中には可愛いチョコとメッセージカードが入っていた。
「あれ、何だこれ?」
小さな箱には4つ折にしたメッセージカードが入っていた。そのメッセージカードを俺は何気なく読んでみる。
≪兄さん。今日、どうしても渡したいものがあります。受け取っていただけるのなら、私が帰って30分したら
部屋に取りに来てください。 美代≫
「何でこんな2度手間な事をするんだ?チョコ渡したのにわざわざ時間指定までして……ははぁ、分かった。
請求書だろ。それも3倍返しの。欲しいものがあったから、義理チョコ渡しておねだりか。30分後というのは、
買出しに行くんで私服にでも着替えるんだろ。まぁ、見え透いた手だが、今日は気分がいいし乗ってやるか」
俺はそのメモをポケットに仕舞った。
やがて、美代が帰ってきたらしく、トントンと小気味のいい階段の足音が聞こえた。俺は30分という時間を
正確に待って、美代の部屋を訪ねる。
255 :
247:2007/02/13(火) 04:25:29 ID:UAoYJNEe
(トントン)
今朝と同じようにノックをする。だが、返事が無い。もう一度同じようにノックをする。すると、僅かに
美代の声が中から聞こえてきた。
「…………いいよ」
蚊の鳴くような声の了解を聞いて、俺は美代の部屋に入った。ちなみに美代の部屋は6畳の洋室にベッドと
机が置いてある。小奇麗にまとまった、いかにも女の子って感じの部屋だ。
「来たぞ。でも、今月ピンチだからそんなに高いのは無しにしろよ」
だが、中に入って驚いた。……暗い。雨戸が閉まっていて、部屋の電気も消してある。
「おいおい、真っ暗じゃないか」
何の冗談かと思って手探りでスイッチを探す。
「!」
俺がスイッチのあると思われる部分に手を伸ばすと、そこの位置には手があった。細く長い指。その手が
俺の手を握り締める。
「おい、何の冗談だよ。いい加減にしないと怒るぞ」
「……やだ」
「……えっ?」
美代は高校生でもかなりスタイルのいい方だ。今朝、パジャマを脱ぎかけた胸元から見えた双丘もふっくらと
その存在感があって、かなりのインパクトだった。その胸の膨らみが俺の手のひらに押し付けられている。
ふにゅっとした感触が俺の両手に伝わってきた。
「じょ、冗談はやめろって」
暗闇に慣れてきたのかうっすらと部屋の中が見えてきた。モデルのような体系に長い髪。美代が俺の目の前に
立っている。石鹸の匂いとシャンプーの香りが部屋を包んでいた。
(コクン)
思わず生唾を飲み込んでしまった。そこには、レースの下着姿の美代が立っていた。しかも、目を瞑り、握った
手は震えている。
「……好き…………です」
「ちょ、ちょっと。美代……」
それっきり、俺は声が出なかった。
妹からの告白。だが、こんな展開は正直予想していなかった。しかも、とびきり不器用だぞ。いきなり下着姿で
告白かよ。勉強は学校でも群を抜いて良いくせに、恋愛は赤点以下だ。こういうサービスをしなくたって、美代は
十分可愛いのに。
「可愛い?」
俺は自分で呟いて必要以上に動揺している自分に気がついた。美代の告白。美代は……美代は家族の……はず
だよ……な。
今まで一番身近で一番親しかった家族。
愛情という感情をあえて押し殺していた家族。
見守っていくのが当然と考えていた家族。
「俺……は……お前を」
知っている中で一番可愛い異性。
一番分かり合えていた異性。
何でも言い合える異性。
「いいのか?……俺で」
一番抱きしめたかった少女。
一番キスしたかった少女。
一番好きだった少女。
256 :
247:2007/02/13(火) 04:26:17 ID:UAoYJNEe
「……兄さんだから……」
何かが弾けた。意図的に恋愛感情を殺してきた自分の気持ちの中で、何かが解き放たれる。胸まで鼓動が必要以上に
高鳴り、今にも飛び出しそうになる。暗闇に目が完全に慣れた頃、熱い吐息が目の前にあった。吸い込まれるように俺は
それに応じる。
「俺も……だ。ずっと前から……好きだった」
「んっ……」
重なるだけのキス。だが、俺と美代にとってはとても大きな意味を持つキス。兄妹が一人の男と一人の少女に
戻るための大切な儀式。カチカチと震える歯が美代の緊張を表していた。胸にあった手をゆっくりと解き、左手を
肩にまわした。そして、残った右手で頭を優しくなでる。
「お前は緊張した時、こうやって頭をなでてやると直ぐ笑顔になって緊張がほぐれたよな」
実際、俺も緊張しっぱなしだった。でも、今まで妹を守ってきた俺は、まず妹の事を考えてしまう。
「告白してくれたのは嬉しいよ。でも、無理はしなくていい。その気持ちは十分受け取ったから」
だが、その言葉を聞いた美代はふるふると首を振る。目元に光るものがあった。
「……何で……泣いてるんだ」
「……」
何も言わずに俺の胸に顔をうずめてくる。時折嗚咽を漏らしているのが分かった。部屋の明かりをつける。
すると、美代の机の上には俺が受ける大学の入学案内があった。その横に置かれた1枚の写真。家族で旅行に行った
時に撮った写真。うつむき加減の美代とブイサインをしている俺の写真。2人だけで写っている珍しい写真。
「お前、これ……ずっと前の……」
「……いっちゃ……やだ」
どんないい男に告白されても断り続けた妹。その妹の気持ちを感じ取れなかった鈍感な兄。俺はずっと遅れて
やっと理解した。
「すまなかった。気がついてやれなくて」
「んんっ……あ、ん……」
二度目のキスはフレンチキス。お互いの気持ちを確かめ合うように、二人の時間を埋めるように求めあう。
歯で閉ざされていた美代の口内に舌先でノックする。ゆっくりと開いた口内に舌を絡めると、甘い舌がそれに
答えてきた。舌が絡み合い、唾液を吸って、その行為に没頭した。
「……あっ……ふっ」
美代が声にならない吐息を漏らす。涙を溜めた目がとろんとした状態になり、桜色に染まった頬と口元から
トロトロと唾液が零れ落ちる。
「俺、美代が欲しい。もう、ずっと離さないから」
「……ん」
返事の代わりに、首を僅かだけ上下させる。やばい……凄く可愛い。恥ずかしい話だが、俺ももう理性が
飛ぶ寸前だ。みっとも無い話だが、下半身に血液が逆流し体中が高揚している。そんな時、美代の両腕が
俺の胸板に絡み付いてきた。ぎゅっと抱き合う二人。豊満な胸の柔らかさが胸と胸の重なり合いから伝わって来る。
そして、美代のショーツが俺の誇張しきったパンツに触れる。一瞬、びくっと腰を引くが、恐る恐るその腰を
密着させてくる。
その行為が引き金になった。俺の中で美代に対する性欲が爆発していた。今まで求めてはいけないと考えて
いた物が直ぐそこにある。妹だった少女の全てを……美代の全てを見てみたい。美代の全てを犯したい。
そして、全てを手に入れたい。もう、俺の気持ちは決まっていた。下着姿の美代の柔らかな胸を右手で包み込む。
右手の中で納まりきれない豊満なおっぱいが手のひらからこぼれていた。それをゆっくりと揉み回していく。
≪……くっ、……ふっ、うっ≫
胸は感じるのか、必死に美代は耐えている様子だった。俺は、すっとブラジャーの横から指を入れ、ぷっくりと
膨れた乳輪と既にツンと尖った乳首を指の間で挟んで刺激した。
≪きゃっ、……うんっ≫
今まで聞いた事の無いような可愛い声で鳴く。普段、無口な分、こういう可愛い声で鳴かれるともっと意地悪
したくなってくる。
257 :
247:2007/02/13(火) 04:26:45 ID:UAoYJNEe
「どうしてそんなに感じているの?美代はこんなにいやらしい妹だったんだ」
美代は首を横に振って慌てて否定する。
「俺の事、おかずにオナニーしていたこともあるんじゃないか?」
また、同じように首を振る。その様子を見た俺は、愛撫の手を止めた。性感を刺激され、快感に没頭していた
美代は、驚いて顔を上げる。
「ごめん、やっぱり俺これ以上はできないわ。美代は嘘をついているみたいだし」
懇願するように目で訴えかけるが、俺はすっと体を離す。すると、美代は小さな、とても小さな声で答える。
「…………シマシタ」
「えっ?何?聞こえないよ。もっとちゃんと教えて」
「…………オナニー」
「好きって言っているのに、美代は隠し事するんだ」
「オナニー……しました……兄さんで」
搾り出すように美代は答えた。全身が真っ赤に染まり、完全に下を向いてしまっている。だが、俺は知って
いた。美代はこうする事で俺に完全に身を任せてくる。これは長い間付き合ってきた美代を、緊張させず
逆に受け入れやすくする俺の芝居だった。その効果は直ぐに現れる。下半身のピンク下着から薄っすらと
染みが見え始めている。女性特有の匂いが僅かに部屋に漂ってくる。
「正直に答えてくれたんだ。嬉しいよ。俺も正直に自分を出すよ」
俺はそう言って上着とズボンを脱いだ。反り返ったそれを美代に見せる。美代は目を瞑っていたが、促すと
ゆっくりと目を開ける。
「俺がこうなっているのも美代が好きだから。美代が欲しいからこうなってる」
最初は遠慮がちに見ていたそれを、美代が段々目が離せなくなってきている。俺はそれを確認して、
両手を俺のモノに導いた。
「あっ」
「ゆっくりと触って。これが、美代に入るんだから」
両膝を着いて、美代が両手で陰茎を包み込む。そこで動きがぴたっと止まる。
「片手で包み込んで、上下にゆっくりと動かすんだ。そして、もう一つの手は前立腺や裏筋を刺激して」
ゆっくりと指示通りに動かす。ピクピクと動くのに驚いた様子だったが、徐々にペースを上げて刺激してくる。
と、同時に俺にもぞわっとした快感がこみ上げてくる。美人で人気者のアイドルだった自分の義妹が、俺の指示通りに
誇張したものを愛おしそうに摩っている。
「あっ、くっ、んんっ、うっ、んん……上手いぞ。くっ、んん、、」
俺も声を上げると嬉しそうに奉仕をしてきた。遠慮がちに顔を近づけている。どうやら知識である程度の
事は知っているようだ。フェラチオをやっていいかどうか迷っているらしい。
「く、口で……やって欲しい」
そう、言うとコクリと頷いて恐る恐る唇に亀頭を含んだ。バナナを大切に舐めるように先の部分だけを
唇と舌で刺激する。生暖かい感触の刺激が背筋を電流のように駆け巡る。
「やば、出る。引いてくれ」
だが、行為に没頭していた美代に通じるわけもなく、ちゅっちゅっと刺激を続ける。
「あっく、、、うっっっ、、くぅ」
(びゅくっ、びゅっく)
258 :
247:2007/02/13(火) 04:27:10 ID:UAoYJNEe
俺のモノが放たれた。美代はびっくりしてその場に固まっている。唇と頬に、白い白濁液がとろりと流れて
ぽたぽたと床に落ちる。
「すまん、汚しちまった。拭いてくれ」
ティッシュを渡すと、にっこりと微笑む。そして、それを拒否して指ですくって一生懸命に飲もうとする。
「いいから、いいから。そこまでしなくても」
俺は、さすがに罪悪感に捕らわれて止めようとした。それを美代は悲しそうな顔をして拒否する。
「いいの……」
そう言ってまた綺麗にすくって舐めた。
「今度は俺が気持ちよくするよ」
コクンと頷くと、美代はもたれ掛かってきた。ベッドまで美代を運んで、下着を脱がす。既に薄い毛に
びっしょりと愛液が溢れ出し、内股の部分まで垂れていた。ずっと我慢していたのか、クリトリスも既に大きく
勃起している。
「兄さんの……欲しい」
美代は懇願する。既に受け入れる体制は出来ているようだった。俺のも準備が整っていた。少し休憩したのが
良かったようだ。唾液で濡れた淫茎が既にこれ以上は無いというくらいに誇張している。
「ゆっくり入れるから、肩の力を抜いて。いくぞ……」
膣の入り口に亀頭をあてがう。ぬらぬらとした液が直ぐに亀頭に絡みつく。ゆっくりと探るように上下させると、
それだけで熱い吐息を漏らす。
≪くっちゅっ……≫
「んあ……ぅ……はん、あっ……う」
片手でしっかりと押さえ、ゆっくりと埋没させていく。きつい。正直、亀頭の部分が入ったところで、
押し返されてしまう。しかも、ぬるっとした感触と、ギュウギュウと締め付ける膣内でなかなか挿入していかない。
「あっ、、くっ、、くぅ、、あくっぅ」
美代も痛さで必死に耐えているようだった。
「大丈夫か。やめるか?」
美代の目から涙がほろほろと零れた。必死に笑顔を作って首を横に振る。痛くないわけ無い。でも、必死に
耐えている。早く終わらせてあげよう。この気持ちに応える為に。俺は覚悟を決めた。
「ちょっとだけ我慢してくれ。きついかもしれないが」
強く腰を打ちつけた。膣内が今まで以上にぎゅうっと締まる。背中に回された指が俺の肉に食い込んでくる。
≪くっぅぅぅぅうう!!!≫
ゆっくりとゆっくりと陰茎が膣内を侵攻していく。やがて全てが埋没した時、美代の膣内からは赤い鮮血が
つつっと、流れ出していた。
少しの時間、そのまま俺と美代は抱き合っていた。やがて、美代が俺に軽いキスを求め、俺が応えてやると
目で合図を送ってきた。美代も痛みが和らいだようだ。
「動くよ」
「……ん」
俺は美代の合図でゆっくりと出し入れを再開する。すると、先ほどのきつい感じは無くなり、少しづつスムーズに
動くようになってきていた。
「トロトロとして、美代の膣内(なか)、熱い」
「……んっ、んぁっ……あ、ふっ……ぁっ」
美代も先程とは違い、徐々にだが吐息の中に妖艶な息遣いが混じってくる。時折、きゅっと膣内が締まり俺の亀頭
を刺激してくる。子宮口に亀頭の部分がコンコンと当たる。その度に美代の足先がびくっと緊張する。
「美代が感じているのが分かる。俺のが美代を感じてる……」
「んっ、んんっ、あっ、、ぁぅっ……兄……んぁっ……さぁっん……」
≪くちゅっ、ぐっちゅっ……くちゅ……ちゅっく≫
静まった部屋に性器が出し入れされる音が響く。赤い血と白い愛液が混じりあい、潤滑油となってその音が加速
していく。少しずつ早くなるその淫音と共に、美代の喘ぎ声も加速していく。
259 :
247:2007/02/13(火) 04:28:03 ID:UAoYJNEe
「ん、、、んっ、、、、あっ、あぁうっ、、ぅぅっん、あぁっ、、んっんん、、」
「もう……そろそろ」
俺がそう言うと、美代が懇願してくる。
「んっ、……はっぁ……やっ……なか……ぁぁっ、、なかに……んんっ……お願い」
「分かった。俺、膣内(なか)に……美代に膣内(なか)に……出すから」
ぎゅうっと今までにない締め付けが俺を襲う。同時に、俺の前立腺から一気に射精感が高まっていく。
「んっ、ぁぁっ、ぁぁ、ぁっくぅ、ぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
次の瞬間、(どくん)と俺の中で脈打った。何度も何度もそれは収縮される膣内と子宮に放たれる。
一緒に果てた美代がぽろぽろと涙を流して目を閉じる。そして、暫くして小さな声で何かを言った。
≪…………だね≫
うとうとしていた俺はその言葉を聞き取れなかった。
1ヵ月後。俺は東京の大学の入学が決まった。少し早いが下宿先が決まったので、今日はその引越しをしている。
美代とはあれから多少仲良くなったが、表立っては普通のままだ。それは俺と美代が決めた約束があったからだった。
それは俺が高校を卒業するまでは兄妹のままでいようという事。それは俺の両親を安心させるためにそうしようと
二人で決めたことだった。美代は1年後に東京の大学に受かるだろう。そうしたら、また仲良く暮らせるさ。
260 :
247:2007/02/13(火) 04:28:24 ID:UAoYJNEe
電車が出発すると、目に涙を溜めて手を振る美代。多少寂しさが残るが、1年の辛抱だ。まぁ、直ぐに時間は経つ。
そう思ってふとポケットを触ると一通の手紙が入っていることに気がついた。ピンクの封筒に見慣れた字。美代からだった。
封を開けてそれを読む。
兄さん
バレンタインの時、私の気持ちを受け止めてくれてありがとう。私はずっと兄さんの事が好きでした。
子供の時、初めてあったあの日から、私は兄さんの事をずっと見ていたの。
私が困った時、私が助けを求めていた時、いつも近くにいてくれた。
そうそう、覚えてる?小さい時、どんな女の子が好き?って私が質問した時、兄さんは大人しい子って言ってた事。
私、今でもよく覚えてる。
「ん?ちょっと待てよ」
俺はそこまで読んで、嫌な予感が頭をよぎる。妹に会って少しして、こんな事を話した記憶がある。だが、何でこんなに
胸騒ぎがするんだろう。
私、それからなんだ。無口になろうって決めたの。いつの間にかそれが普通になっちゃったけどね。
「すると、俺が美代をあんな無口で無愛想な女の子にしたって事か?」
俺の背中に汗が滴り落ちる。いや、これが問題ではない。胸騒ぎがどんどんと大きくなる。
それから、お嫁さんにするならどんな子とするって話になって、初めて好きって告白した子とするって……
やばい。これは本格的にやばい。
一緒になったら俺はその子を一生面倒見るぞ。その子を手元に置いてずっと離さないんだって。言ってたよね。
私も離れたくない。少しの間だって。兄さんのいない生活なんて考えられないし。結婚は早いほうがいいし。
子供も早く欲しいし。
だから私、兄さんの所に行くね。直ぐに……待ってて。
そういえば美代は一度こうと決めたら絶対に実行に移す、有言実行型人間だった。まさか……まさか……。
私、今の学校辞めて東京の女子高に転向することになったから。来年は同じキャンパスだね。あ、心配なく。
兄さんの大学だったら、私今直ぐに試験受けても入れるから。ちゃんと可愛がって面倒見てくださいね。
俺は美代がもう既に全ての手配を済ませていることをこのとき悟った。しかも、結婚する気満々で俺の下宿に
転がり込んでくる。しかも、既に美代の荷物が届いているという事か?学校と親を丸め込んで。普段は無口な癖に、
何で手紙だとこんなに饒舌でしたたかなんだ!そりゃ、美代は好きだけど、同棲だの結婚だのって……まだ、俺
高校卒業したばかりだぞ。
俺が手紙を丸めてポケットにしまいこんだとき、≪ぽんっ≫と誰かに肩を叩かれた。振り返るとそこには……。
おしまい
261 :
247:2007/02/13(火) 04:31:33 ID:UAoYJNEe
以上です。
無口少女、難しいですね〜。でも、うるさい女の子よりはずっと萌え度が高いかも。w
バレンタインネタでひねりも無いですが、読んでいただけたら幸いです。
しかし、本当にストレートな話……もうちょっとエロ成分と汁成分増やした方が良かったかな……。
GJすぎて何も言えない
しかし行動力ありすぎww兄貴ガンガレww
難しいという割にはレベル高い気がする・・・・・
俺は素人だからなんとも言えないけどwww
とにかく
途中で書き込みしちゃった・・orz
とにかくGJ
Nice可愛い過ぎるよ、無口な子ほど何か独占欲がわく
GJ!
妹健気過ぎる!
また最後のギャップも良い感じですね。
手紙という手があったか!!
多用するとアレだけど。
GJ!
こんな健気でしたたかな義妹が欲しい…
なぜか、『ホテルで女と会ったらメールで「 見てたから 」と送りつけられた』という羨ましい体験談を思い出した。
手紙で騙られる無口娘の心情!
GJじゃよ!
素晴らしすぎる!
全ては妹の手のひらの上ってことかw
>>271 でもその義妹のハートを掴んだのは兄貴だぜ!
273 :
247:2007/02/13(火) 21:38:44 ID:UAoYJNEe
こんなに読んでいただいて感想を上げてもらって、本当にありがとうございました。
アップしていたのが明け方でぼうっとしていたのか、誤字や同じフレーズを繰り返し使ってしまうなど
読みにくいSSで申し訳ありません。直してアップし直したい位です。
手紙は携帯メールでも良かったのですけど、美代の性格で古風な手紙を使うかなと。
無口な子の心情を語らせるのに、受け手に説明ばかりさせているとくどくなるので苦肉の策でした。w
また、機会がありましたらよろしくです〜。
おぬしやるな(*´ρ`*)
乙
乙
結構、いや、かなり良かったよ
保守
>>247 GJ
しかしこの妹、一歩間違うと嫉妬スレやヤンデレスレに移動しそうな危うさが
だがそれがイイ!!
GJ!!!age
>>281 保管人さん超乙であります!某ヤンデレでもお世話になってます!
見逃してた。保管されてる。
秋陽高校2年3組。
月曜日の六時間目は日本史の時間だった。
担当教師である黒須仁(くろす じん)が板書を終え、こちらに振り返る。
「ほい、ここの問題解ける人ー……桜ノ宮か」
紅葉のような小さな手を上げていたのは、廊下側、前から三番目の席に座っ
ていた桜ノ宮澄(さくらのみや すみ)。
切りそろえたショートカットの、小柄な女の子だった。
涼しげな視線が、黒須を射抜く。
「…………」
にらめっこが続くこと三十秒。
黒須は気まずそうに、澄の隣に座る男子生徒に視線を向けた。
「……あー、野田、通訳頼む」
男子生徒、野田昭和(のだ あきかず)は、頬杖をついたまま口を開いた。
「第六天魔王」
「素直に織田信長って言えよ」
「キャラクターボイスは若本だそうです」
「知るか!」
「俺に怒鳴らないで下さいよ! 言ったのはこいつ!」
昭和は、まだキリリと立ったままの澄を指差した。
黒須が情けない顔で澄を見た。
「……桜ノ宮ー」
「…………?」
首を傾げる澄。
「いや、そりゃ正解だけど、お前それテストで書いたら点数付けないからな」
「…………?」
何か言ったようだが、やはり黒須には澄の考えが読めないようだった。
すがるように、昭和の方を見る。
「何だって、野田?」
「赤鬼は? とか言ってますけど」
「却下だ! ……つーか野田、本当に桜ノ宮が言ってるんだろうな?」
昭和としては睨まれても困るのだ。
「俺が、織田信長のそんなマイナーな別名を知ってるとでも?」
「そうか、悪かったな。桜ノ宮も座っていいぞ」
「…………」
頷き、澄は席に着いた。
二年生になって一ヶ月、教室の皆、澄の事を分かっていたので今更誰も驚か
ない日常であった。
放課後、みんなが帰り支度をする中、クラスメイトの戸鳴均(となり ひとし)
が振り返り、後ろの席に座っていた昭和に話しかけてきた。
「……それにしても昭和ってさー、よく桜ノ宮の言いたい事が分かるなー」
「長い付き合いだからな」
昭和自身帰り支度をしながら答える。
「…………」
昭和の横にいた澄が、均の方を向いた。
が、何を言ったのか相変わらず分からない。表情すら動かないときたもんだ
。
「何だって?」
「以心伝心なの! だそうだ」
昭和が通訳してやる。
「お前まで『なの!』とか言うな。気持ち悪い」
「しょうがないだろ! そのまま伝えるのが癖になってるんだから!」
「桜ノ宮は桜ノ宮で、寡黙なのにも程があるだろ……」
「…………」
均の言い分に、澄がジッと見つめ返してきた。
均が、昭和の机を指でこつく。
「昭和、通訳」
「男は黙ってハードボイルドなの、だそうだ」
「お前は女だろ!?」
「…………」
「無駄口の多い男は早死にする、だそうだ」
「知るかー!」
などとアホなやり取りをしていると、均の身体がぐい、と反り返った。
「うおっ」
「……均ー、馬鹿やってないで、そろそろ帰るわよ」
そう言って、均の襟首をつかんでいたのは、彼の幼馴染である矢野瑤子
(やの ようこ)だった。
問答無用で均を引きずっていく。
それを見送りながら、無表情の澄が手を振った。
「…………」
「じゃあな、矢野。澄も、ばいばい、だとさ」
「はいはい。ほんじゃねー」
「さらばだー」
瑤子と均が教室から出て行き、昭和も席を立った。
「んじゃ、俺らも帰るか」
「…………」
澄も頷いた。
まだ日の高い帰り道。
一見ほとんど昭和が一方的に話しているようなコミュニケーションが、いつ
もの二人のやり取りだった。
澄の家は共働きで、今日は両親の帰りが遅いらしかった。
「そうか、今日は家誰もいないのか」
「…………」
澄が頷く。
「んじゃま、いったん着替えてから……あ? 制服は着たまま?」
「…………」
グッと拳を作る澄。
「……だがそれがいい? って、マニアックな趣味だな、おい!」
「…………?」
いや、制服着たままって興奮しない? と尋ねられても。
「別に俺はどっちでもいいが」
「…………?」
靴下は残さないと駄目だよね、と聞かれ、昭和は慌てた。
「待て! 靴下は関係ないだろ、靴下は!」
「…………☆」
「脱ぐよ☆ っていやそれは」
「…………」
脱がれたくなければ家にカモン。
何故か脅迫だった。
「……分かった分かりました。んじゃ、今日はお前んち直行な」
「……♪」
澄は昭和の手を握ると、大きく振った。ご機嫌のようだ。
澄の部屋は女の子の部屋としては飾りっ気がない。
が、小物の一つ一つを取ってみれば、それなりにファンシーなモノであるこ
とを、昭和は分かっていた。
とはいえ、今はそんな物を見ている余裕はなく。
目の前で涎を垂れ流す、微かに開かれた薄桃色の割れ目を指で攻めるので忙
しかった。
「……つーかさ、俺は別にいいけどお前、制服シワになったり気にならないの
か?」
互いに制服のまま。
澄が上位のシックスナイン体勢で、互いの性器を愛撫しあいながら、昭和は
尋ねる。指をきつくもぬかるんだ膣内のザラザラした部分でこすりあげると、
澄の尻がビクンと跳ね上がる。
「…………」
鼻息も荒く、微かに頬を紅潮させた澄は懸命に昭和の肉棒を舐めしゃぶって
いた。
口で奉仕しながらも、壁に掛かっている使ったことのない制服を見上げる。
それだけで、昭和に意味が通じた。
「新しい制服って……お前、わざわざこういう事のために?」
「……!」
エロスのための手間は惜しまないの! と主張しつつ、鈴口から漏れる先走
り液を吸い上げる澄。
「そんな力説するな……っ!」
澄の細い指で扱かれながら亀頭部分を重点的に舌で攻められ、昭和は危うく
射精感が競りあがってくるのを何とかやり過ごした。
「……?」
ここがいいの? と問われ、
「ん、それ……」
昭和はうっかり頷いてしまった。その間も、澄のお漏らしをしたかのように
愛液を分泌する割れ目を二本に増やした指で掻き混ぜる。
切羽詰ったような吐息を漏らしながら、澄の舌が昭和の精を求めて肉棒を這
い回る。
「……っ……っ……」
小さな唇を開き、澄がペニスを頬張る。ぬめる口腔粘膜の感触に、昭和の竿
が澄の口の中でググッと膨張していく。
「ちょ、ちょっと待て……それ以上されると……」
どこで覚えたのか、昭和の先端を喉奥まで飲み込む澄。
「…………! ……!」
正直澄にも余裕がない。昭和の指がぐにぐにと彼女の胎内を掻き混ぜ、自分
の汁が外へ掻き出されているのを自覚する。
苦しくはあったが辛くはない。口の中いっぱいに昭和の分身を咥え込みなが
ら、喉の奥で亀頭が傘を広げているのを感じていた。
口内での射精の予感に、澄の下腹部が熱くなる。
「飲む……って、や、ま、待て、いや、待つな……くっ……」
その瞬間、澄の喉で熱い飛沫が弾けた。
「……!」
同時に肉棒に見立てられた昭和の指で絶頂を迎え、澄の肩がぶるっと震えた。
喉を一度大きく鳴らし、苦しさに目から涙を溢れさせながら口の中に広がっ
た昭和の精を嚥下する。
断続的に放たれる精液はとまらず、少し休むとすぐに澄の口内を満たしてし
まう。
だが、わずかに処理し切れなかった精を口の端から垂らしながらも、澄は昭
和の欲望をほぼ全部飲み下すのに成功していた。
互いに脱力することしばし。
「お、お前なぁ……」
透明な愛液でふやけた指を澄の淫裂から引き抜いた昭和は、そのまま小ぶり
な尻を軽く叩いた。
「…………」
頬を赤らめながらも無表情な澄が振り返る。口の端から垂れている精の残滓
が、異様に卑猥に感じられた。
再び肉棒が硬くなるのを感じながら、昭和は身体を起こした。
そのまま、澄を押し倒す。
「……おしおきな」
「…………☆」
「わーい☆ じゃねえっ! 喜んでどうする!?」
「…………」
「激しいのが好きだもん、って……じゃあ、優しくするか」
「〜〜〜〜〜!!」
「そこで怒るのか!? ああ、もう……!」
昭和が澄の足を大きく開くと、彼女自身両膝の裏に手を回して、彼を入れや
すくした。右の足首に丸まったショーツを引っ掛けたまま、澄はあまりに無防
備な姿を晒す。
昭和はガチガチに強張った肉棒を無毛の秘処へあてがい、一気に貫いた。
肉の槍が粘蜜を掻き出しながら、窮屈な澄の中を突き進んでいく。
「…………!?」
小さく口を開き、子宮底を突かれる衝撃に澄は目を見開いた。
「口喧嘩じゃ勝てないからな……」
昭和が微かに腰を引くと、ぬるぬるの膣粘膜が肉竿に絡みついてくる。さっ
き出したばかりだというのに、あまりの気持ちよさに腰が震える。膣の中で、
自分のモノが膨れ上がるのを感じる。
「…………?」
断続的に荒い息を吐きながら、潤んだ目で澄が昭和を見ていた。
「ああ、動くって……言っても、きついからな、お前の中……」
引き抜くと、汁まみれの膣が三箇所段々になって肉棒を締め付けてきた。だ
が、それをこらえながら、もう一度昭和は澄の中に己自身を突き入れる。
じゅぶっ、じゅぶっと愛液を溢れさせながら、何度も腰を突き続けた。
「……! ……!!」
そのたびに、澄の身体がビクッビクッと痙攣を繰り返す。
脂肪の少ない澄の下腹部が、昭和が突き込むたびに肉棒の形に膨れ上がった。
「……この体位だと、すごいな、お前のここ、ほら」
昭和がその腹を指摘すると、
「…………!」
澄が小さく口を開いた。快感に、小さく喘ぎ声が漏れる。それにつれて、澄
の胎内は昭和の竿をギュッと締め付けてきた。
「ちょ、澄、し、締まるって……!」
「……! ……!」
だったら出していい、と澄は主張する。お腹の中に出して、もう一回すれば
いいだけの話だ。安全日だし、子宮の中を昭和の精液で満たしてほしい、と澄
はねだった。
「いや、あのな……男はそう何発も出来るもんじゃないんだけど」
「……☆」
「今日は中出し放題だから頑張れ☆ ってあのなぁ……」
「……?」
しないの? と澄が昭和に尋ねる。
「……頑張ってみる」
「……♪」
澄が微かに笑った。
「んじゃ、このまま二発目……いくぞ」
すぐにでも射精しそうな肉棒を、連続して澄の子宮へ叩き込む。二人の下の
シーツは既にお漏らしをしたかのように愛液が染みを作り、なおも飛沫が撒き
散らされる。
「……! ……!!」
力強く激しく抉りこまれる度に、澄の頭も真っ白のなっていく。
身体の中で、どんどんと昭和のモノが膨れ上がっていく。腰を打ち付けあう
音と水音が次第に激しさを増し、
「んんっ……」
昭和の唸りと同時に、澄の最奥に熱い精液が迸った。
「〜〜〜〜〜!! ……! ……!!」
断続的に放たれる精が子宮へと流れ込む感覚に、同時に絶頂を迎えていた澄
はさらなる高みへと昇り詰めていた。
彼女自身の意思に応えるように、澄の膣は昭和の肉棒をきつく締め付け最後
の一滴まで搾り取ろうとする。
二人繋がったまま、昭和は澄に身体を預けた。
「……ちょっと休憩な。さすがに連続三発はきつい」
「…………」
ん、と澄は昭和の身体に両腕を回し、抱きしめた。
翌日の2年3組。
教室に入ってきた戸鳴均が、昭和のやつれた顔を見て驚いた。
「……すごい顔だな、昭和?」
結局、六回した。
「いつもの事だ。お前だって似たようなもんだろ、均」
かくいう均も、似たような具合にやつれていた。
何があったのかは、昭和には分からないが。
「……こっちは三人だからなー」
ボヤく均の側頭部に、竹刀の先端が迫っていた。
「……余計な事言わない」
「げはぁっ!?」
ビリヤードの玉よろしく、均の身体が撥ね飛ばされた。
竹刀の先を床につき、矢野瑤子が小さく吐息をこぼす。微かに顔が赤い。
その様子に、澄は首を傾げた。
「……?」
「三人って? と、澄が聞いてるけど?」
いつものように、昭和が通訳する。
「き、気にしなくていいのよ、ええ。他聞寝言の類だから」
「……? ……?」
「ハーレム? 孕ませ? 何の話だ?」
澄の追求に、今度は昭和が訳が分からない。
「うわー! うわー! ちょっと澄! あんた分かってて言ってるでしょ!」
慌てて、瑤子が澄の口を手でふさいだ。
「……☆」
やー、と無表情のまま、両拳を突き上げる澄。
「お前、無口なくせに自己主張激しいよな」
「……?」
そういう子、嫌い?
澄がそう尋ねると、
「…………」
昭和は無言で澄を睨んだ。
「ごめん、二人黙ると訳分かんない。澄の言った事、今のは何となく分かったけど」
「嫌いな訳ない、だって」
しょうがないので澄が昭和の意思を綺麗な声で通訳した。
「「「「「喋った!?」」」」」
クラスの全員が驚愕する中、一人昭和が澄の後頭部を叩いた。
※落ちてない。(汗
現実逃避その2。
このスレは、こういうのでOK?
ちなみに小ネタ的に、孕ませスレと別板のアンソロスレ(と他色々)にリン
クしてます。
リアル遭遇GJ!こういう無口な子もいいなw
しかし、喘ぎ声も出さないとは徹底しとるw
うわーGJ!
小ネタにニヤニヤしてしまった
ぐっじょぶ(*´ρ`*)
ついにひとっことも声を出さずボディーランゲージ? オンリーの娘が出たかっ!
しかし、「〜なの」だけでスケブの人を思い浮かべる俺、何とかならんかな(遠い目
ぐっ、GJ!
俺もボディランゲージ娘書いてたけど、先を越されたっ!
くやしくないもん!(笑)
とまぁ、みっともない負け惜しみはさておき、楽しく読めました。GJです。
エロい無口っ娘、ディ・モールトGoodJob!
GJ
まさかここまでとは、、、、
威力が桁違いだ!!
素晴らしい…
>>GJです。
まだ、前の作品が投下されて1日だし、投下するのは早いかな?
投下直後じゃないし、いいんじゃないかな?
っつーかばっちこいだぜ!!
ドンと来い!
神々の筆に関しては雄弁でも何の問題もないかと。
では、投下します。よろしくお願いします。
保管庫完成記念ということで。
(内容はそれとは全く関係がありませんがw)
【ほうきぼしの姉妹】
「……お願いします」
「3番のカツカレー大盛りにボンゴレビアンコあがりました」
俺が通っている大学から徒歩3分の喫茶店【ほうきぼし】のランチタイム。味もなかなか
美味しいと評判のこの店は、今日も多くの大学生がランチを食べに来ている。
「あーっ、忙しいったらないわね。いい加減、バイト料上げてくれなきゃ、とてもじゃないけど
やってられないわ。ねっ、そう思うでしょ」
ウェイトレスの結衣(ゆい)さんが声を掛けてくる。実際、今現在の忙しさは、時給850円
のバイト料じゃ、割りに合わない忙しさだ。その点では大いに同意する。だが、今はそんな話を
悠長に聞いている状態じゃない。
「……できました」
「あっ、はい。結衣さん、このカルボナーラとナポリタンを1番テーブルに大至急お願いします。
バイト料の件はランチタイムが終わったら店長に直談判して下さい」
「何よぉ。ちょっと位、愚痴聞いてくれてもいいじゃない。あのケチンボのお父さんが時給を
上げてくれるわけ無いでしょ」
結衣さんがほっぺたをぷぅっと膨らまして、しぶしぶ銀の丸テーブルに乗った料理を運んでいく。
ここのバイトを始めて早2ヶ月。大学に入って2回目の春休みを金を稼ぐ事に決めた俺が、求人
広告を見て始めたのがここのバイトだった。学生に人気のほうきぼしは、オーナーである佐伯夫妻と
その子供の2人の姉妹が経営する小さな喫茶店だ。
調理場を次女の友美さんと佐伯夫人。キャッシャー件ウェイターを長女の結衣さんと店長の
佐伯氏が担当している。そして、この俺はというと、この全てをこなすオールマイティー。まぁ、
要は忙しいところを手伝う雑用……という重要な役目を仰せつかっている。今は調理場から出てくる
友美さんの料理を結衣さんに渡し、結衣さんから受け取った食器を洗うという重要な……くそっ、
言ってて虚しくなってきた。
「何、ぶつぶつ言ってるの。後ろで友美、困っているじゃない」
「わっ、ご、ごめん」
「……いえっ、そんな……いいんです」
後ろには真っ赤になって下を向いている友美さんがいた。
ほうきぼしの人気にはこの姉妹の存在もあった。長女の結衣さんは、軽いウェーブのかかった
茶髪で腰までの長い髪。ウェイトレスの制服が良く似合っており、頭の上には、白いカチューシャ
リボンが付けられている。凛とした切れ長の目に長いまつげ。唇には薄いピンクのルージュが
良く似合っている。明るく活発で誰からも好かれている巨乳美人のお姉さんだ。
そして、次女の友美さん。肩までのボブヘアーに可愛らしい笑顔。口数も少なくてお淑(しと)やか
な淑女といった感じの女性だ。エプロンが似合う家庭的な優しい女の子なのだが、胸もお淑やか
なのは残念な限りだ。
「何、じろじろ私たちの胸見てるのよ」
「えっ? 見てました? 俺」
「じっくり、はっきり、くっきり見てたわよ。ふ〜ん、わかった。やらしいこと考えていたでしょ。
エッチな事したいな〜とか考えていたんでしょ」
「……おっ、お姉ちゃん」
「いえ、俺そんな事、1ナノ秒も考えていません」
「嘘。鼻の下伸びてる。あのねぇ、あたしにならいいけど、友美にそんな事しちゃ駄目だからね。
友美はウブで、処女どころかファーストキスさえまだの、超奥手で純粋な子なんだから」
「えっ? 友美さんて確か、俺と同じ二十歳(はたち)でした……よね」
「そうよ、あたしの妹の癖に生きた化石っていうかなんといっ……いだだだだっ!」
「……うっ、ぅっ、ぅっ、ぅぅうーーー!」
ハイヒールの先を思いっきり運動靴で踏みつけている……それ、リアルで痛いと思いますよ。
友美さん。
『ねぇっ、Aランチのセットまだですか?』
俺への冤罪はお客様の一言でうやむやの無罪放免となった。
その夜。調理場で明日の仕込みのジャガイモを剥いていると、≪カランカラン≫という音がして
喫茶店に誰かが入ってくる。
「あの、すいません。9時で閉店なんですけど」
「あははっ、あたしよ。あたし。お水、超特急で1杯頂戴〜」
「結衣さんじゃないですか。どうしたんです、そんなに酔っ払って」
水を渡すと、結衣さんはぐいっと一気にそれを飲み干す。
「あたしさ、振られちゃった。他に好きな人いたんだって……」
結衣さんはそう言うと俺に寄りかかってくる。時折、涙声になりながら俺に話しかけてきた。
そこには、昼間に明るかった結衣さんとは別人のような弱々しい女性がいた。
「あたし、分かってたんだ。こうなるって。でもさ、もしかしたら本当の恋に発展するかもって期待してた。
でも、駄目。あたし、いつもそう……本当に好きな人には素直になれないで……こんな風に振られて……」
最後の方は嗚咽に近い小さな声で話す。俺は結衣さんの肩を両手で支え、落ち着くまで少し待ってから
ゆっくり話し始めた。
「俺、こんな時、上手く言えない不器用な男だけど……でも、大丈夫ですよ。結衣さんみたいないい人、
他にそうはいませんから。直ぐ、本当の恋だって見つかります」
「……」
「もし俺だったら、結衣さんみたいないい人、絶対ほおっておきません。ずっと、離さないですよ」
「……嘘つき」
「はっ?」
俺は一瞬、結衣さんの言っている事がよく分からなかった。だが、次の瞬間結衣さんの体が俺の体に
抱きついてくる。
「ねぇ、昼間、本当にあたしの体見てたでしょ。あの時、エッチしたいって考えてた?」
「えぇっ!?」
「あたしも……君ならいいって思ってた」
「ちょっ、どういうつもりです。結衣さん」
「……エッチしようよ。ここで。あたしの事慰めて」
「まっ、待ってください。結衣さん。おかしいですよ。本当に好きな人、他にいるんでしょ」
「もう、そんなのどうでも良くなっちゃった。お姉さんとエッチしよ……」
そう言うと、結衣さんはその豊かな胸を俺の体に密着させてきた。吐息が頬をくすぐり、ピンクの
唇が直ぐそこまできている。結衣さんが俺の上に覆いかぶさるように二人の体が重なる。
「……すみませんっ」
俺は結衣さんに謝った。密着していた胸を慌てて離し、頭(こうべ)を垂れる。
「やっぱり、あたしなんかじゃ嫌なんだ……」
「……いえ、そんな事ないです。結衣さんは魅力的だし、色っぽいし、おっぱいは大きいし。男だったら
誰でもエッチしたいと思いますよ」
「じゃあ、何で?」
「でも、結衣さんには本当は好きな人がいて、その人に告白できないでいる。俺、その人に申し訳ないです。
結衣さんがもし、ここで俺なんかとこんなことしたら、また同じ事繰り返しになってしまうと思うし」
「…………」
「だからっ、だから、すみません」
俺は頭を下げ続けた。実際、こうするより他に方法が分からなかった。それに結衣さんの色気に反応して
しまっている下半身がみっとも無い自分。それが何とも腹立たしさを感じた。
「…………ぷっ」
すると、突然の結衣さんの笑い声。
「……えっ?」
「冗談よ、冗談。失恋した腹いせに年下の男の子をからかって見ただけ。ごめんね〜。お姉さん、名演技
だったでしょ」
「……そう……なん……ですか」
「そうよ。昼間、あたしの胸をいやらしい目で見ていた仕返し。本気にしちゃった?」
結衣さんはもういつもの結衣さんに戻っていた。ケラケラと笑い、俺の肩をぽんぽんと叩いてくる。
「よかった……」
「そうよ、そう。この結衣さんを舐めるな〜。それに、さっき言った事、全部嘘だから」
「振られたとか、本当に好きな人とかって……それも」
「そうよ〜。あたしがそんな奥手なわけないでしょ〜。好きな人がいたら直ぐにアタックするのが結衣さんの
モットーだぞ」
「……こっ……こっ、……この、大嘘つき女!」
(ばさっ!)
その時、唐突に紙の落ちる音がする。見ると、そこには数冊の帳簿を持った友美さんが立っていた。
顔面は蒼白で、目には光るものが見えている。
「……うっ、」
「友美さん」
「……友美」
友美さんは後ろを振り向き、駆け足で2階への階段を上って行く。
「ごめん、友美に変なとこ見られちゃったね。あの……さっ、これはマジで。聞きたいんだけど、ちょっと
いいかな」
結衣さんが急に真面目な顔をして俺に聞いてきた。
「いいですよ」
「君、友美の事。どう思ってる?」
「友美さんの事?」
「……友美さ、君の事……好きなんだよ。あたしさ、友美から相談されててさ……」
友美さん。気立てが良くて、可愛くて奥ゆかしくて、俺なんかにはもったいない女性だ。その友美さんが
俺の事を好き? そう言われてみれば、最近俺の事をじっと見つめている事が多かった気もする。友美さんの笑顔が
頭の中に思い浮かぶ。
「あの子さ……今まで男と付き合ったことないでしょ。だから、最初はちゃんとした男じゃなきゃだめだって
思ってた……君なら……君になら……友美を……任せられると思う。それでさっきさ、あたし……試したんだ。
君が軽薄で遊びの恋愛をする男と同じかって……でも、違ってた」
「俺……俺は……」
「……」
「友美さんの事、好きです」
俺はそう答えていた。これは俺の偽らざる素直な気持ちだ。
「──そう」
結衣さんは俺の目をじっと見つめた。やがて、確認が終わったかのようにふっと目を離す。
「じゃあ、友美の気持ちに応えてあげて。あの子、もうずっと前から、君になら許せるって心に決めているから」
「はい」
「……」
結衣さんは俺の頭をぽんと1つ叩くと、指で階段を指差しにっこりと笑う。
俺は、友美さんを追って2階の部屋に向かった。ほうきぼしの2階は佐伯家の住居になっている。友美さんの
部屋は一番奥の部屋だった。
(トントン)
部屋をノックする。だが、返事がない。俺は、ドアの外で勝手に喋り始める。
「友美さん。俺、さっき結衣さんにからかわれて。それであんな状況になってたけど……何も無かったから。
だから、誤解しないで聞いて欲しい」
「……」
相変わらず部屋の中からは何の返答もない。
「俺……ずっと友美さんが好きでした。もし、よければ俺と付き合ってください」
(がたんっ)
部屋の中で何かの音がした。それから5分間、俺は部屋の前で待ち続けた。もう駄目かと諦めかけていた頃、
部屋の鍵がかちゃりと外れる音と共に、ゆっくりと扉が開いた。
「…………はいってください」
部屋の中に入るとそこは本当に女の子らしい部屋が広がっていた。棚には熊のぬいぐるみが並べられ、可愛い
小物が並んでいる。友美さんはベッドにちょこんと腰掛けると、そのまま下を向いてしまった。俺はその横に
並ぶように腰掛ける。
「……」
10分程してから、ほんの僅かに声がする。
「……本当ですか?」
うつむいたままで、俺に問いかけてくる。
「勿論。俺、友美さんの事、真剣に好きです」
「…………じゃなくて」
そこまで言って、友美さんは、また黙り込んでしまう。心配になって顔をのぞきこむと、耳まで真っ赤にして
俺の返答を待っているようだった。
「もしかして、結衣さんとの事?」
友美さんは、コクンと頷いてますます身を固くする。
「あんなところを見られて、信用しろなんて都合のいい話だけど、本当に何もないから」
「……何もない」
「天地神明、全ての神々に誓って。アラーの神だって、仏陀にだってキリストにだって誓います」
そう言って俺は握られた手を優しく包む。
「良かった」
友美さんは真っ赤な顔をとびきりの笑顔に変えて、俺に囁く。
「……私も……好き」
結衣さんから聞いていたとはいえ、こんな可愛い子から好きという告白を聞くと本当にドキドキする。
俺はゆっくりと肩に手をまわし、その体を引き寄せた。
友美さんは、上目使いに俺を見て、次の行動をじっと待つ。
「キス、するね」
カタカタと小刻みに震える肩をしっかりと抑えると、友美さんの小さな顔が少しだけ上がり、ゆっくりと
まぶたが閉じられる。リップを塗っただけの艶やかな唇に、俺は自分の唇を重ねる。
「友美さんのファーストキス、すごく良かった」
唇を離すと、一本の唾液の線がニ人の間に結ばれる。少しだけ残念そうな顔をした友美さんは、しばらく余韻に
浸った後、「私も……」と、遠慮がちに言った。
こんな健気な友美さんを抱き寄せてスキンシップをしていると、俺は段々と興奮してきてしまった。最初は髪、
次は頬とスキンシップを重ねていく内、手が白いセーターの膨らみを触りたいという欲求にかられる。
最初はさりげなく触れる程度、力シミアのセー夕一の膨らみにさりげなく接触する。
「……!」
友美さんの両手が形の良い双丘を隠してしまった。早まったかと思い謝ろうかと顔を見ると、友美さんも
恥ずかしそうにこちらを見ている。
「ごめん、俺の手、いたずら好きで」
「……小さくて」
「いや、今夜よく言って聞かせるから、今日のところは勘弁してやって欲しいなぁ……なんて」
「……ごめんなさい」
あれ?会話が成立してないぞ。俺が謝るのならまだしも、何で友美さんが謝っているんだ?矛盾点を解決すべく、
脳をフル回転させていると、あの強固に閉ざされた二つの丘の入り口がゆっくりと開いてく。
「えっと、あの、その、なんていうか。綺麗です、友美さんの胸。凄く魅力的で俺でなくても、触りたくなるって
いうか、痴漢ならもう、絶対ほおって置かないっていうか……」
「……ふふっ」
まるで日本語になっていない誉め言葉を聞いて、友美さんはくすくすと笑い始めた。このてんぱった日本語が
効を奏したのか、友美さんの緊張が笑いと共にほぐれていくのが分かった。
二度目は手の平に包み込むようにゆっくりと触った。ブラジャーの絹の感触と美乳の弾力。カシミアのサラサラと
した触り心地も手伝って、柔らかな感触を十分に堪能できる。しばらく服の上からその感触を楽しんでいると、
友美さんの声に熱い吐息を伴った淫声が漏れ始める。
「──んっ、……ぁっ……んっ」
感じ始めている。そう考えると下半身が充血して、きつくなってくるのがわかった。腰の部分からセーターを
たくし上げて手を入れる。友美さんがその侵入を阻止しようとそれに手を添えるが、弱々しい抵抗だった。
かまわずブラジャーの隙間から手を入れると、ツンと勃起した乳首の感触がそこにはあった。
「……だめ」
友美さんは今度は言葉での抵抗を試みる。だが、フロントホックの留め金を外し、人差し指の先で勃起した
乳首を弾くと、抵抗の言葉は消え2度目のキスを求めてきた。
「──ふぁ……ぁふっ、んんっ、ン…」
今度は互いに唾液を吸い合う深いキス。舌の求めはより貪欲になり、絡ませあって温かな感触を感じあう。
セーターを脱がせると、形のよい上突きの乳房が現れる。友美さんをベッドに仰向けに寝かせ、その上に
覆いかぶさるように上になった俺は、キスをしていた唇を首からうなじ、そして鎖骨から乳房へと移していく。
(ちゅっ……ぴちゅ)
ピンクの乳輪と乳首を舌先で舐めながら刺激していくと、我慢できないのか白い内腿が俺に足に絡みついてきた。
「友美さん、裸になろうね」
恍惚でぼうっとした表情の友美さんがコクリと頷く。その了承を確認して、俺はスカートのファスナーを下ろし、
ゆっくりと脱がせていった。ピンクのショーツには熱い愛液がぐっしょりと濡れて、縦に伸びた筋がくっきりと
浮かび上がっている。
「……さんは嫌」
友美さんが何かを訴えかけた。どうやら、友美と呼んでもらいたいらしい。こんな要求なら誰だって応じますよ。
「友美。俺は友美と一つになりたい。告白したばかりだけど、軽い気持ちや勢いで言っているんじゃない。
本心からそう思っているし、ずっとこの先友美の事大切にする」
友美の目元から一筋の涙が零れた。この時俺は、友美の最高の笑顔を見れたと思う。
互いに裸になると、友美の陰部は既に濡れていた。淫口と肉芽に大きく固くなったモノをあてがい、その先で
上下に刺激する。
(ちゅくっ、くちゅっ、ちゅっ、くちゅ、ちゅぷ)
「あふっ、──ぁぁっ、んんっ!!」
友美が両手を俺の首の後ろに手を回して引き寄せる。全身が緊張し、腰がガクガクと左右に揺さぶられる。
「いっちゃった?」
「……ごめん……なさい」
申し訳なさそうな顔をして、友美がこちらを見ている。すまなそうな顔もかなり可愛い。
「じゃあ、少し休もう。初めての女の子は敏感になっているから」
裸のままで肩をすり寄せ合った。友美の細い指先がすすっと俺の陰部に伸びてくる。誇張しきった淫茎を
申し訳なさそうにすりすりと擦る。
「いいって。気にしないで。俺、大丈夫だから」
首を横に振ってもう一度とせがんで来る。友美はどうしても今日、バージンを俺に捧げてくれるつもりらしい。
我慢できる?と聞くと、真っ赤な顔を縦に2度振った。
≪その時、何故か俺の頭に結衣さんの顔が浮かんだ≫
そうか……結衣さんに託されたんだっけ。友美を任せるって。しかし、何でこんな時に結衣さんの顔が
浮かぶんだ?俺、結衣さん恐怖症なのかな?友美とこれから一つになるという重要な局面に、あの結衣さんを
思い出すなんて。俺は苦笑して友美にこの日3度目のキスをした。
火照った友美は既に愛撫の必要がない程、その淫口は受け入れる体制ができている。だが、十分に愛液で
溢れていても、友美はまだ男を受け入れたことの無い体だ。その膣内はとても窮屈だった。俺は上から慎重に
亀頭を先を沈めていき、Gスポットの先までその挿入を果たす。
「──あっ、くぅぅっ、あくっ、、くっふぅ!」
痛みに耐える友美は、俺をきつく抱きしめている。3分の1程挿入した所で、亀頭が何かの壁に当たった。
これが友美の始めての証なのだと認識する。
「一つになろう。友美」
「……は……い」
休憩を取りつつ、友美の淫内にゆっくりと確実に挿入していく。すると、あれほど窮屈だった膣内が段々と
挿入が容易くなり、友美も段々と痛みの中に快楽を見出せるようになってきた。
(にゅる、にゅちゅっ、じゅくっ、ぐちゅ)
「──まっ、また……ぁん、、くっ、んんぁぁっ、あふっ………きて」
「もう、、……でる」
「ぁっ、ぁあっ、ぁぁっっ、んっく、、ぁっっ、ふぁっ、んんっぁああ!!!」
膣内に脈打った精液が流れ込み、2度目の絶頂を迎えた時、俺は友美の処女を受け取った。
「……どうぞ」
「おう、友美任せろ。2番テーブルのオムライスとトーストセットできたよ」
「……」
「おい、聞いてんのか! 出来たって言ってんだろ!」
あれから数日、喫茶店【ほうきぼし】は何も変わっていない。ただ、少しだけ変わった事は俺が友美さんと
呼んでいた人を、愛情込めて友美と呼ぶようになった事。そして、夜に一人でやって辛かったジャガイモの
皮むきが、二人でやるとても楽しいものに変わった事位だ。
「何が任せろよ。何が友美よ。デレデレしちゃって。お店の中で恋愛ゴッコは禁止ですからね。お分かり?」
「ふっ、結衣さんは独り身が寂しくて嫉妬ですか。本命の彼氏は結局ゲットできず、悲しいですなぁ」
「うるっさいわね。あたしの方から振ってやったって何度言ったら分かるの? それとも何? 君のお頭(つむ)は
ミミズ以下か?」
「はいはい、では、そういう事にしておきましょう。俺と友美の愛の波動で、傷心が癒えてない結衣さんを
さらに傷つけてはいけませんからねぇ」
「……どうせ、避妊もしてないんでしょ。出来ちゃった結婚で貧乏暮らしが関の山よ」
「……お姉ちゃん」
「動物園の猿みたいに毎晩、やりまくって。お前は本当に猿の生まれ変わり──ぎゃぁぁああああ!!」
「もうっ!」
友美……それ、弁慶の泣き所っていってな、普通男でも遠慮する人間のウィークポイントだ。普通、フライパンで
殴ったら死ぬぞ。
結衣さんには感謝してる。友美と俺の縁を取り持ってくれたくれたのは、紛れも無く結衣さんだ。ただ、最近、少しだけ
結衣さんは元気が無い。どうやら、本命の彼氏には思いを告げず、そのまま終わってしまったようだった。
だから、俺はいつものように結衣さんの喧嘩相手をして、結衣さんを元気づけている。
いつもの喧嘩、いつもの日常、いつもの風景。これからもずっと……このままで。
おしまい
以上です。
面白みに欠ける内容ですね。ボキャブラリーの少なさを嘆いております。w
最初、もうちょっとドギツイ内容だったのですけど、出来上がってみれば不思議と
キツイ部分を全部剥ぎ取ってしまいました。
では、失礼します。
生きた化石(*´ρ`*)
GJ!!
寝る前に良いもの見れたよ。Thanksだ!
GJ!
朝から良いもの見れたよ!前半結衣とくっつくのかと焦ったけどなw
GJ!
可愛いよ、友美さん!
GJ!!
スレの趣旨に反するけど、姉も食べちゃう展開もおねg(ry
感想ありがとうございました。嬉しいです。
やっぱり、結衣は人気ないですね。
>>325 > スレの趣旨に反するけど、姉も食べちゃう展開もおねg(ry
えっと、スレ違いになるのでその展開はないです。
(姉は無口じゃないので)
しかも、ダークサイドに落ちるかヤンデレ化するので非常に危険かも。
↓以下はSSではありません。妄想の書き込みです。
「……ぁっ、ふ……好き……」
隣の部屋から僅かに聞こえる甘い声。
真っ暗な部屋の中でベッドの上で膝を抱え、結衣は座っている。耳を塞ぎ、
必死に何かを耐えている。
《ねぇ、後悔しているんでしょ。妹に好きな男を譲った事》
また、あの声だ。どんなに耳を塞いでも聞こえてくる……【あたしの声】
「後悔なんてしてない。友美の幸せな笑顔。そうよ。後悔なんて」
《妹に相談持ちかけられて、動揺して――やけざけ飲んで……自分に嘘をついて……》
「うるさい、黙れ!」
《あの晩、彼が本当に求めて来たらどうしてたの?》
「……あれは……彼を試そうと……しただけ」
《セックスしたかったんでしょ。セックスしたかったでしょ。セックス……》
「しないわ! …………しない……わよ」
《嘘……さっき、隣から聞こえてくる声でオナニーしてたくせに》
「お願いだから……もう……やめて」
《臆病で嘘つき。他人には強がって、本当はセックスする勇気もない》
「許して……」
《なら、奪っちゃいなさいよ。妹から》
「……どこかに……行って……もう……苦しめないで」
どう見てもこのスレの内容じゃないです。w
けれどGJ
>>327 ヤンデレスレか嫉妬スレでそっちのバージョンを本格的に書くってのはダメ?w
ここは、姉妹で男を共有、仲良くハーレムスレへ。
>>329>>330 友美は幸せのままでいさせてあげてください。w
無口なヒロインは私も好きなので、二律背反(アンビバレンツ)を背負った結衣と絡ませるとかすると
友美は必ず不幸になると思うんです。
また、別作品でそのスレでお会いできましたらその時はよろしくお願いします。
後、SS作品書くときも、私自身もそういうモードになっちゃうんですよ。(ヤンデレ、嫉妬等)
結構、ノリと勢いで書くタイプなので。w だから、その手のSSは手を出すのが怖い。
読んでいただきまして本当にありがとうございました。
お疲れ様でした。
>>331 乙であります。次回作期待させていただきます。
ほす
誰か書かないのかな?
無口な女幽霊ってあり?いろいろと思いつんたんだが。
338 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 00:34:21 ID:WoAQjqun
「あ、あの」
幽霊「・・・・・・」
「すいません」
幽霊「・・・・・・」
「何か喋れよ」
幽霊「・・・・・・」
「てめぇ、ふざけてんのか!!」
幽霊「・・・・・・ウウ」
「ご、ごめんよ」
幽霊に動じないのかよwwwおキヌちゃんみたいなタイプなのか?
341 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 01:56:39 ID:WoAQjqun
まさにそれ
いや、おキヌちゃんはどちらかと言えば外に出る社交的なタイプ
引っ込み系ならネギまのさよちゃんだろ?
>>338 何か落語の「応挙の幽霊」を思い出したよ
本物かどうかわかりゃしない「円山応挙筆の幽霊画」の掛け軸を安く仕入れた道具屋、
これが客に気に入られて高く売れることになって大喜び。
近々お客に引き渡すので、絵に対するお礼の意味も込めて
床の間にこの幽霊画の掛け軸を吊して、お酒を供えてやった。
と、深夜に画の中から女幽霊が出現。道具屋腰を抜かす。
「私は応挙の真筆による幽霊ですが、皆さんお買い求めになっても、
しばらくすると怖い怖いと言って、床の間から仕舞われてしまうのです。
それをお酒まで上げて頂いて・・・」
何しろ幽霊とはいえ、応挙の真筆だけに大変な美人だ。
で、道具屋と幽霊が意気投合、深夜までお酒を飲んでどんちゃか騒ぎ。
翌朝、道具屋が目を覚ましてみると、
掛け軸の中で、酔いつぶれた幽霊が横になって向こう向いている。
道具屋、頭を抱えるオチ。
「ヤバい、客に渡すまでに酔いが醒めてくれればいいが・・・」
スレ違いだが、「かわいげのある幽霊」って点でつい思い出してしまった。
若干スレ違いではあるがエロパロに最適ともいえる題材だなw
確かに、ネタとしては最高ww
ファンタジー系でも無口ならアリじゃない?
無口さが前面に出ていればおk。
問題は酒飲んでへべれけになる無口っ子ってのが想像できない点だな。
俺は無口っ娘は酔っ払うとめちゃくちゃハイテンションになって喋り捲るというイメージがあるな。
350 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/27(火) 02:43:09 ID:1DLOYji0
俺は一口飲むと「きゅ〜」とか言ってつぶれるイメージがある
「…………っ」
ひっく。
「どうした、澄。もう酔ったのか?」
「…………」
「……澄?」
「…………」
かぷ。
「ぎゃおっ!? ちょ、ちょ、ちょっと澄!? な、何で噛む……!?」
「…………」
かぷかぷ。
「ま、待て! みんな見てる! 見てるから、だから噛むな! 俺の腕を二の噛むなー!」
「……?」
「舐めるのも却下!!」
「……♪」
「脱ぐなー!! お前なんで甘酒でそこまで酔えるんだよ!?」
……こんなんで?>酒
割と普通だった。
マーベラス、マーベラスである!
ハラショー!
スパシーヴァ!!
ヴンダバー
ブラボー!!
エークセレーント!!
ボーノボーノ!!
Oh! kawaii !!
moe!moe!
なんか幽霊か妖怪ネタが出来そうな感じ。
「なぁ」
「・・・(?)」
こいつはいつもこうだ、言葉で反応することを知らない
「今度どこか行くか」
「・・・(コクコク)」
だけどそれで成り立つ、嬉しいやら悲しいやら
「どこにするか」
「・・・(フルフル)」
・・・映画、かな
「なんか観たいのでもあるのか?」
「・・・(コクコク)」
「あのなぁ、たまにはなんか喋れよ〜」
「・・・好き」
こいつはもしや魔性を秘めてるのだろうか、効果はバツグン
「はぁ・・・」
「・・・(?)」
「おりゃ!」
「!!?」
そりゃあヤリますよ、お前が悪いんだ、仕方あるまい
「・・・えっち」
「・・・だけど好き」
(*´Д`*)
ってなった
ポヤーンとなった(^◇^;)
365 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/02(金) 13:07:33 ID:v2+CIrGQ
僕的にはもうちょっと恥じらいがあった方が・・・・
いやっ何でもないっす
>>365 いまんとこスレの潮流は無口な素直クールあたりを周遊中だからなっ。
キミが潮流の方向を変えるといいんだぜ
すぐに恥ずかしくて真っ赤になる、タイトルにもあるような王道無口。
無言で擦り寄り甘えてくる、現在主流の素直クール無口。
孤高で強いと思いきや、実は口下手の寂しがり屋さんなギャップ無口。
お喋りな娘が風邪やショックな事件で喋れなくなる、現在レアなシチュエーション無口。
他に何かあるか?
自分の声音か口調にコンプレックスがあって、自主的に喋らない無口。
相手の話を聞くのが好きだから相づちを打つだけで、自分からは口を開かない無口。
言葉が通じなくて、筆談に頼らざるを得ない外国少女的無口。
って、ネタ書いてると話し書きたくなってくる。
ただ単に喋るのが面倒くさいだけの、面倒くさがりやの無口
実際孤高の女剣客。無駄口嫌い。
好きな男がクール好きだと聞いて頑張って無口になろうとする女の子
373 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/03(土) 17:16:09 ID:NvH5i7fx
喋ってるけど聞き取れない、小声無口
無口キャラが流行ってるから喋らない、流行無口
とんでもない天才で思考速度があまりに速すぎるが故に、言語化が追いつかず結果的に無口
とんでもないトロさで思考速度があまりに遅すぎるが故に、言語化が追いつかず結果的に無口
>>375はもの凄く時間が経ったあとで喋りそうだが
きっと何か言おうと思ったら既に話題が変わってて言うに言えないを繰り返しているんだろ
>無言で擦り寄り甘えてくる、現在主流の素直クール無口
>ただ単に喋るのが面倒くさいだけの、面倒くさがりやの無口
を折衷したのを書いた。後者の割合のほうが明らかにでかいけど・・・
以下に投下
379 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/03(土) 22:30:58 ID:kPEOAwqb
確認しようか。
ここは寺原家の敷地内、そして俺の苗字はまさに寺原。
ここは寺原友哉の自室であり、そして俺の名前はまさに友哉だ。
……しかるに、俺の部屋のベッドで堂々と眠り込んでいるこいつは何だというのか。
姉か。さもなきゃ妹か? 生憎、俺に女のきょうだいはいねえ。兄貴がいるだけだ。
「またこいつは……」
帰宅するなり眼に入った望まぬ情景に、深く溜息をつく。
どうせまた屋根伝いに俺の部屋に侵入してきたのだろう。空き巣に間違われるからやめろって言ってるのに。
この幼馴染の侵略自体にはもう慣れっこだ。ただ、今の時間が溜息をつかせる。
たとえ下校時刻になってからここまで直行したとしても、市外の高校に通うこいつが、こんなに早く帰宅できるわけがない。
またぞろ早退したのだろう。枕元に積み重ねられたマンガ(当然の俺のものだ)の数が、こいつの進入時刻の早さを物語っている。
「全く、怠惰もここまで来ると犯罪だ……」
ぼやいて、カバンを適当に放り出し、俺はマンガを本棚に収納する。あとで感想を聞いてみよう。
と。枕元でごそごそやったせいか、泉水がわずかに眼を開けた。
光を感覚するのに抵抗するがごとく、ゆるゆるとまぶたが上がっていき、半分ほどで停止。
俺はこいつが目を見開いたところを見たことがない。
「おはよう」
「…………」
声をかけてみたが、こっちをじっと見るだけで何も言わない。まばたきを2回するだけだ。ぱちぱち。
返事を期待したわけではないので、俺は本の収納に戻る。
「また早退かよ。俺のとこと違って進学校なんだし、あんま休むと留年すんぜ」
「………………」
「あと、マンガ読みながら寝るのはやめるように。ヨダレつけでもしたら殴るからなマジで」
「……………………」
「ちゃんとメシは食ってるか? おまえ、平気で昼飯抜くからなあ」
「…………………………………………」
「…………」
本の収納を終えて振り向くと、泉水はまぶたを閉じてすぅすぅと寝息をたてていた。
やれやれ。
古根泉水。
俺の幼馴染にして、現在は隣の市の名門女子高に通う、成績優秀な女子高生だ。
ただし……優秀なのは成績だけ。俺の計算する限り、出席日数は明らかに不良のものだ。
原因はこいつの怠惰さにある。キリスト教の神様が激怒するようなレベルの、超越的な怠け者ぶりが問題なのだ。
趣味は睡眠。嫌いな単語は労働。座右の銘は「果報は寝て待て」。もっとも、泉水なら果報が来る見込みがなくても寝ているだろうが。
基本的に無口で無言なのは、喋るのが面倒くさいからである。
まさに人間失格。人権を一部制限していいから勤労の義務を免除してくれと言い出しそうで怖い。
はっきり言って、普通なら関わるべき人種ではないが……
それでも、幼馴染だしな。
付け加えるなら、彼女だし。
さらに言えば、こいつがここまで無気力になった原因も知っているわけだし。
放ってはおけるか? 俺は無理だ。だから、泉水の家に面した窓の鍵を閉めたことは一度もない。本物の空き巣に入られたら諦めよう。
「ふはぁぁぁ……」
ベッドに寄りかかって本を読んでいると、背後であくびが聞こえた。
顔を向ける。まだしぱしぱした目をしているが、泉水が半身を起こしている。
――って制服で寝てたのかよ! 着替えるくらいしろよ! シワとか気にしろよ!
「おはよう」
改めて挨拶すると、泉水はオイルの足りない機械のような動きで、目を合わせてきた。
曇った水面のように思考を読ませない瞳が、ぴたりと俺の目に据えられる。
「…………」
そして、こくん。
一度頷いて、泉水はまたベッドに倒れこんだ。布団を掛け直さないところからすると、もう眠る意志はないようだ。
俺は腰を上げてベッドに座る。中空をぼんやりと眺める泉水に目をやって、
「あんま口うるさいこと言うような柄でもないし、言える立場でもないけどな……」
指を突きつけ、
「早退すんな。何度でも言うけど、留年するぞ、おい」
「…………」
無表情に首を振り返してくる。そのあたりは計算してる、の意だろうか。
「あと今日はちゃんと行ったみたいだけど、欠席は控えるように」
今度はこくこくと縦振り。
「ついでに言うなら、喋れ」
泉水はむすっとした様子で、おそろしく大儀そうに口を開く。くちびるを動かすのに必要なカロリーすら勿体無いと言わんばかりに。
くちびるの隙間から漏れ出る音は、大概の人間の予想を裏切る美しいものだ。ただ、
「めんどい……」
発言内容は、決して予想を裏切らない。
泉水はそれだけ答えると、何かを求めるように、細くて白い手を宙にさまよわせ、本棚を指差した。
そのあと、指で14という数字を表現してくる。
どうも、マンガの続きが読みたいらしい。
……って自分でやれやそのくらい!
そう思いつつも俺はお目当ての物をとってやる。俺っていいやつだなあ。
エデア大陸戦記14巻を読むのに熱中しだす泉水を横目に、俺は本を床から拾い上げて読み返す。
しばし、部屋には乾いた紙の音だけが、ぱらり、ぱらりと響く。
いつしか陽は隠れ、窓から望む西の空は、派手な赤の装いを捨てて、落ち着いた深い蒼をまといだしている。
そのあたりでようやく暗さが苦になってきて、俺は明かりの紐を引いた。
光が室内に満ちた。泉水が急なまぶしさに目を細めた。親しくない人間からは、もう寝てるのか起きてるのか判別できないだろう。
「……それ、なに?」
不意に、泉水が口を開いた。見るとさっきのように半身を起こして、例の曇りガラスの視線で、俺の手元を見つめている。
「これか? 参考書だよ。やったとこをちょっと復習してただけ」
「…………なんで?」
意味を量りかねる。それを察したか、面倒そうに泉水は言葉を重ねた。
「ゆーや、バカなのに」
こ――このアマ。言うに事欠いて何てことをッ! 純真な男子高校生に言っていい台詞か!?
流石に少しばかりカチンときた。
ちょっと恥ずかしがらせてやろう。
「へっ。まだ2月とはいえ、受験までもう1年切ってるんだぜ? いくら俺でも下準備くらいはするさ」
納得したようで、泉水はひと頷きすると読書に戻ろうとする。
そうは行くか。聞け、俺の恥ずかしい本音を。
「勉強しまくって、お前と同じ大学行きたいしな」
さあ悶えろ! 背中を虫が這うような感覚にのた打ち回るがいい!
「…………」
だが、予想に反して泉水は無反応。無表情を崩さない。
あれ、不発かと思った瞬間――唐突に、泉水は微笑んだ。
ひどく儚くて、いまにも消えうせてしまいそうな薄明の微笑み。ちょうどそれは、さっき見た空の残照を思わせた。
俺は心臓を鷲づかみにされる。
「……うれしいな。一緒に行きたいね」
「は――恥ずかしがれよ、少しくらい」
泉水はミリ単位で首をかしげた。きちんと目に見える角度を作り出すのも面倒だというのだろうか。
「…………どうして?」
恥ずかしがる必要があるの――と、そう泉水は告げる。
掛け布団からほっそりした足を抜いて、自ら、泉水のほうからこちらに身を乗り出してきて、
「だいすき」
ちゅ――と、ごく自然にくちびるを重ねられた。
温かくてしめった感触は一瞬で、俺がそれを惜しいと思った時には、今度は頬にその感触があたる。
ちゅ、ちゅ、ちゅ、ちゅ、と、頬、ひたい、まぶた、またくちびると、休みなくキスが繰り返される。
泉水は俺の顔をつめたい手のひらでそっと挟み、繰り返し自分の心を表現した。
――いとおしい、と。
言葉もないのに、俺の脳は泉水の意思を音声で知覚する。
すき、すき、すき、すき、すき、すき、すき、すき、すき、すき、すき、すき、すき、すき、すき。
このやろう。
俺も好きに決まってるだろうがっ!
女から愛を贈られるばかりでは男の沽券に関わる。
そう思って、俺からも唇を求めようとすると――
ぴたり、と人差し指が俺の行動を制した。唇をふさがれて出来るキスはあるか、いやない。
「………………もう時間」
なにが? そう言う前に、
「友哉ー! そろそろご飯にするよー!」
という母の声が、階下から飛んできた。おいおい泉水さん、あんたはエスパーなのかい?
泉水はゆっくりと、かつだるそうに立ち上がり、自分の家に面した窓に手をかけた。
「ばいばい。……勉強、わからないところあったら教えてあげるから」
振り返ってそう言い、窓を開ける。俺は思わず泉水を呼び止めた。
「次はな泉水!」
「………………?」
「……俺からも、キスするからな」
泉水はまた、あの水面の月めいた不確かな微笑みを浮かべる。
「……ていうか、えっちしていいよ」
「ぶフッ!?」
「…………ゆーやのお母さんかいなかったら、だけどね」
窓から屋根に降り立ち、泉水は最後にまた振り向く。
「…………………………………………また、いっぱい、きもちよくしてね」
そうして泉水はのろのろと、自分の部屋の窓から家に入っていった。明かりはつかない。
外が暗かったとはいえ、見逃せるわけもなかった。
あの直球なセリフを言ったとき、泉水がめずらしく、顔をほんのり赤くしていたことを。
「最高の彼女だよ、おまえ……」
勉学意欲がガソリンを与えられたように燃え上がる。あいつと同じ学校に、今度こそ通ってやるとも。
まあまずはメシが先なのだけれど。カッコよく締まらんなあ、俺……。
以上で終了。ごめん、一回sageチェックし忘れた
エロスはもし次回がありましたらば
ふぅ・・・・・
今日はいい気分で寝れそうだGJ
アマ━━⊂⌒~⊃。Д。)⊃━⊂⌒O。Д。)⊃━O(。Д。)O━⊂(。Д。O⌒⊃━⊂(。Д。⊂~⌒⊃━━イ!!
GJ! 続きを是非! そしてエロをっ!
ええもんを見た。
続きがすげぇ気になるぜ。
GJ! 続きを激しく希望だぁっ!
387 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/03(土) 23:54:22 ID:ITDlUO5W
最高だぜ!!!!!
適度に放たれる言葉の数々がヘビーブローだw
素晴らしい
血糖値があがりそうなぐらい甘いぜ(*´ρ`*)
ごちそうさまでした。
GJ
いいものを読ませてもらったぜ
393 :
かおるさとー:2007/03/05(月) 10:56:04 ID:kSbOYpYF
『彼女の趣味』
青川文花(あおかわふみか)はぼく、日沖耕介(ひおきこうすけ)にとって、とても気になる娘である。
別に飛び抜けた美人というわけじゃない。目鼻立ちは整っていたけどどこか薄い印象を受けるし、小柄な体は百五十センチくらいしかない。セミロングの綺麗な黒髪がちょっと目をみはる以外はごく普通の女の子だ。
ぼくと彼女の接点はほとんどなかった。同じ高校でクラスが近い(ていうか隣)ためによく見掛ける程度で、お互いに全く無関係のところで日々を過ごしていたのだ。
あの日までは。
ある日曜日の夕方、ぼくは市内の体育館を訪れていた。
体育館の入口には大きな看板が立て掛けられていて、極太のゴシック体で『総合格闘技イベント Brave Squad』と書かれている。
ぼくは格闘技が大好きで、よくテレビで観戦している。三ヶ月前にチケットを購入してから、今日の興行をずっと楽しみにしていた。マイナー団体の地方興行とはいえ、生観戦はテンションが上がる。
受付にチケットを渡して中に入る。普段の閑散とした静けさはどこへやら、今日の館内は熱気がこもっていた。結構な数の人が集まっていて、そこら中から期待感のような、空気の圧力を感じる。
ぼくはその空気に気圧されて、思わず立ち止まった。
そのせいで後ろを歩いていた人とぶつかってしまった。
「あっ、すいません」
すぐに振り向いて謝るが、相手からの反応は何もなかった。
「……」
相手は沈黙している。
不思議に思って、ぼくは頭を上げた。
女の子だった。
周りが男ばかりだったせいか、ぼくはかなり驚いた。しかしすぐに別の驚きにとらわれる。
少女の顔には見覚えがあったのだ。
「……青、川?」
記憶の片隅に辛うじて引っ掛かっていた名前を口にすると、少女は驚いたように目を見開いた。名前が合っているかどうか自信がなかったが、どうやら間違ってないようだ。
「隣のクラスの日沖だよ。覚えてる?」
「……」
青川は無言のままこくんと頷く。その動作はどこか無機質で、人形のような印象を受けた。
394 :
かおるさとー:2007/03/05(月) 11:03:30 ID:kSbOYpYF
改めて彼女の姿を眺めやる。
普段の制服のイメージからは私服姿など想像もつかなかったが、今着ている薄い青色のワンピースはよく似合っていた。
上から羽織っている白いカーディガンも、より黒髪が映えるようで、全然地味には見えない。女の子って服装でこんなにも変わるのか。
それにしてもなぜ青川がここにいるのだろう。今日のイベントを見に来たのだろうか。
「青川も格闘技見に来たの?」
こくんと頷かれる。なぜかうつむいて目を合わせてくれない。
「へえ、青川も格闘技見るんだ」
「……」
今度は頷きはなかった。ぼくは言葉が続かず狼狽する。ちょっと無口すぎないか。
「も、もうすぐ始まるから早く席につこうか」
青川はまったくの無表情だったけど、ぼくが奥へ向かおうとすると後ろからとことことついてきた。言葉は発さないだけで、別に嫌われているわけでもないのか。
無口無表情の様子からは、その心はなかなか見えなかった。
体育館の中央に特設されたリングの上では、屈強なヘビー級ファイター同士が壮絶な殴り合いを繰り広げていた。
寝技に持ち込む気は互いにないらしく、双方とも鼻血を流しながら打撃オンリーでぶつかっている。集まった観客は大興奮で、大きな声援が会場を飛び交っている。
その中で、ぼくと青川だけが無言でリングを見つめていた。
小さな会場だから、自由席でもリングの様子ははっきりと見える。おかげで迫力も熱気もビンビン伝わってくる。しかし、ぼくのテンションは微妙に上がらなかった。
隣に座っている青川の様子が一切変わらないからだ。
女の子と一緒に格闘技を観戦しているということへの違和感もあった。だがそれ以上に、彼女が反応というものをほとんど見せないのだ。
アクションのない女の子の横で、ぼくだけ興奮しまくるのもなんか気まずい感じがするので、テンションを上げ辛かった。
395 :
かおるさとー:2007/03/05(月) 11:06:13 ID:kSbOYpYF
青川は視線をそらさず、真っ直ぐリングを見つめている。
青コーナーの選手の右フックが相手の顎を打ち抜いた。相手はその場に崩れ落ち、審判が追い打ちをかけようとしていた選手の間に割って入った。TKOだ。
周りの歓声が一段と高まった。試合の凄絶さに鼓動が早まる。息が詰まるほどの高ぶりに襲われ、ぼくは感嘆の息をついた。
青川を見ると、やはりと言うべきか泰然としていた。迫力のKO劇にも顔色一つ変えない。高ぶるでも怖がるでもなく、ただ静かにリングを眺めていた。
周りの歓声が収まるのを待って、ぼくは青川に話しかけた。
「すごかったね、青川」
青川は頷いた。思えば今日、彼女の反応をこれだけしか見てないような気がする。
なんとかコミュニケーションを取ろうと、少しやり方を変えてみる。
「これからの試合の予想しない? 勝敗多く当てた方が勝ち。負けた方がジュース奢るってことで」
青川がきょとんとなる。至近距離で見つめられて、さっきとは違う動悸がぼくを襲った。いや、唐突な提案なのはわかっているんだけど。
パンフレットを広げて対戦カードを確認する。既に三試合消化されたので残りは四試合。次は軽量級の試合だ。
「どっちが勝つと思う?」
青川はしばらくパンフレットを見つめると、ゆっくりと片一方の選手の名前を指差した。白く小さな指だった。
ぼくは少し驚いた。青川の指した選手は寝技主体の、どちらかといえば地味な選手だったからだ。KO勝ちはなく、かといって一本勝ちも少ない、判定にもつれこむことが多い派手さに欠ける選手だ。
一方の対戦相手はその真逆で、打撃の強い選手だった。KO率も高く、ルックスもいいので華がある。寝技に難ありという弱点はあれど、十分強い。青川はてっきりこっちを選ぶと思っていた。
「……いいの? ぼくはこっちを選ぶけど」
「……」
青川は小首を傾げる。その仕草はなんだか無垢な小動物のようで、ぼくは気恥ずかしくなった。
「じ、じゃあその次の試合も予想しようか」
誤魔化すようにパンフレットを寄せる。すると、青川も顔を近付けて覗き込んできた。綺麗な黒髪から、柑橘系の爽やかな匂いがした。
おかげであんまり予想に集中できなかった。
396 :
かおるさとー:2007/03/05(月) 11:10:30 ID:kSbOYpYF
しばらくして、次の試合が始まった。
青川が選んだ選手は打撃戦に一切付き合わず、徹底的にタックルからの寝技に持ち込む戦法で攻めこんだ。
ぼくは打撃が一発入ればそれで終わると思っていた。しかし予想に反してその一発が当たらない。立ち技では相手に組みついて打撃を封じ、寝技では終始上のポジションをキープしてまったく危なげない。
結局、判定で青川の選んだ選手が勝ち名乗りを受けた。
ちらりと青川を見やった。それに気付いて彼女もこちらを向く。表情は相変わらず能面だったけど、もう慣れてきた。
苦笑いが自然と生まれた。予想が外れた悔しさと同時に嬉しくなる。青川は本当に格闘技が好きなんだろう。選手の派手さや見た目に左右されず、ちゃんと技術を見ている。女の子の趣味としては渋いけど。
何で笑っているの、とでも言うように、彼女が見つめてくる。
ぼくは笑みを浮かべたまま、リングを指差した。
「ほら、もう次の試合が始まる」
青川はすぐに顔を戻し、四角いリングをじっと見据えた。
会場を出て、外の自動販売機の前で、賭けに負けたぼくは青川に尋ねた。
「紅茶、ホット?」
短い問いにこくこく頷くのを見て、ぼくはボタンを押す。温かいミルクティーががこんと音を立てて落ちてきた。
渡す時に触れた青川の手は、夜の外気に熱を奪われたのか冷たかった。
「まだ夜は冷えるね。早く帰ろう」
「……」
「一人じゃ危ないから送るよ。家どこ?」
彼女は小さく首を振った。
一人で帰るというのか。さすがにそれを聞き入れるわけにはいかない。もう夜九時を過ぎている。無理にでも送ってやらないと、
「迎え……来る」
不意に囁かれた小さな声は、柔らかい響きを伴っていた。
水に打たれたような驚きを覚えた。今のは、青川の……?
思わず彼女の顔を見つめた。
青川の顔は微かに笑んでいるように見えた。
ぼくはその顔に見とれて、気が抜けたようにその場に立ち尽くした。
やがて彼女の母親が車で迎えに来て、お礼を言われた。ぼくは何か答えたような気がするけどよく覚えていない。
彼女の乗った車がその場を去っても、ぼくの心は揺蕩ったままだった。
そのまま家に帰って、何がなんだかわからないままシャワーを浴びた。そして食事も摂らずにベッドに入った。
閉じたまぶたの裏で、彼女の微笑がはっきりと残って見えた。そして脳内ではあのか細い声が。
完全に頭がイカレてしまったかと思った。
彼女の小さな声と微笑にはそれだけの破壊力があった。ヤバい。魂が持っていかれたかとさえ思ってしまった。
自分の想いを自覚して気恥ずかしくなる。
どうやら好きになってしまったみたいだ、青川のこと。
397 :
かおるさとー:2007/03/05(月) 11:13:21 ID:kSbOYpYF
翌日の放課後。
校門前で青川に声をかけた。丁度いい具合に彼女は一人だった。
「青川。一緒に帰っていい?」
「……」
じっ、と凝視された。いきなりすぎたかと後悔するも、今さら退けなかった。視線に耐えて返事を待つ。
数秒の間の後、青川はゆっくりと頷いた。
よし、と心の中でガッツポーズする。そのまま彼女の横に並んだ。
しばらく無言で歩き続ける。
「……」
「……」
青川から会話が始まる気配は微塵もないので、やはりこちらから話を振らなければならないようだ。
そこではたと気付く。よく考えてみると、いやよく考えなくても青川との接点は昨日のことだけしかない。昨日は何があっただろう。格闘技を一緒に見て……
……だけだった。
気になる子との接点が格闘技だけ。こんな色気のない話題しか共有してないのか、とぼくはへこんだ。格闘技を憎らしく思ったのは産まれて初めてだ。
しかし、それのおかげで繋がりが出来たのも事実。むしろ感謝すべきだろう。色気はこの際おいておく。青川が格闘技好きなのは事実なんだし。気を取り直して、会話に挑む。
「あ、昨日は驚いたよ。まさかあんなところで会うとは。格と……うぐっ!」
いきなりだった。凄い勢いで青川の右手が伸び、ぼくの口を塞いだ。
突然の彼女の行動に、ぼくは目を白黒させた。
彼女は顔を真っ赤にしてにらみつけてくる。必死な様子に、ぼくは場違いにもかわいいな、と思ってしまった。
青川は左手を唇の前に立てた。それを見て、彼女が何を言いたいのかを理解する。了解の頷きを返すと、青川は慎重に右手を離してくれた。
軽く咳き込んでから尋ねる。
「……人に聞かれるのがイヤなの?」
青川は首を縦に振る。力一杯の反応である。
そんなに嫌なのだろうか。確かに彼女のイメージからは遠い話題だから、気にするのもわからないでもないけど。
「知られたくなかった?」
「……」
今度は何の反応も見せない。首を縦にも横にも振らないので、判断がつかなかった。ただ、無表情な顔の奥に物凄く困っている様子が窺えた。
なんとなく、この子が無口な理由がわかった気がする。
「……ぼくは嬉しかったよ」
迷った末、正直に内心を吐露した。
青川はびっくりしたように目を見開く。昨日よりもずっと表情豊かだった。
「確かに最初は驚いたけど、すぐに青川が本当に好きで見てることがわかったから。他の人は知らないけど、ぼくは全然アリだと思うよ」
「……」
青川は顔を伏せる。
ぼくらはのんびりと道を歩く。
西の空は朱に染まり、空には上弦の月が昇っていた。日が落ちるとさすがにに肌寒い。寂れるような秋風が、静かに駆け抜けていく。
「……あり、がと」
それは、風の音に負けそうなほど小さな声だった。
ぼくは思わず彼女を見つめた。青川は顔を伏せたまま、続ける。
「日、沖くんなら……知られても……いい」
「……ありがとう」
平静な声でぼくはそれだけ返した。
落ち着いているのは外だけで、内ではもう心臓が爆発しそうなほど嬉しかった。許されるならこの場で彼女を抱き締めたいくらいだ。
思いきって誘ってみた。
「こ、今度の日曜日、うちに来ない?」
「……」
「あ、いや、変な意味じゃなくて、うちにたくさん録画したDVDがあるから、その」
早口に説明するが説明になってないような気がする。落ち着けよぼく。
青川は少し戸惑った様子で、でもすぐに柔らかく微笑んでくれた。
やがて彼女が頷くと、同時に夕焼けを受けた髪が美しく揺れた。
398 :
かおるさとー:2007/03/05(月) 11:17:41 ID:kSbOYpYF
青川と大会でばったり会ってから一週間。
遂にというべきか、約束の日曜日がやってきた。
今日、うちに青川が来る。
……DVDを見に。
いやアリだけど。色気は置いとくって決めたから不満なんかないけど。
すみません、ウソです。正直不満です。せっかく親もいないのに。
軽く深呼吸する。好きな子が自分の家を訪れるのだから、テンションが上がって当然だが、少し落ち着こう。
この一週間、ぼくは毎日青川と一緒に下校していた。
校門前で捕まえて、その後並んで帰る。青川は相変わらず無口で、ぼくが一方的に話すだけだったけど、頷くだけじゃなく時折微笑を見せてくれるようになったので、けっこう心を許してくれていると思う。
だからいいのだ。今は彼女と話せるだけで楽しいし、焦らずいこう。
ぼくは自分の部屋を見回した。昨日きっちり掃除したので、変なところはないはずだけど念のため。
床は掃除機かけたし、机の上も片付いている。ベッドもきちんと整えた。余計なものは押し入れに閉まってあるから……よし、問題なし。
ピンポーン
ベルが鳴った。期待と不安が同時に胸に起こる。ぼくは急いで玄関に向かった。
「……」
ドアを開けると青川がいつもどおりの顔で立っていた。
「迎えはいいってことだったけど、大丈夫? 迷わなかった?」
青川は頷く。
「それじゃ、どうぞ上がって」
その言葉にまた頷くと、続いて彼女はぺこりと頭を下げた。おじゃまします、ということだろう。言葉を発さなくても彼女は真摯な態度を見せてくれる。
つい笑みがこぼれる。少しは彼女を理解出来るようになったのかもしれないと思うと、なんだか嬉しくなった。
緩んだにやけ顔に、青川は小首を傾げていた。
自室でぼくはお茶をいれる。ダージリンの香りが鼻をくすぐった。
青川はベッドの縁にちょこんと腰掛けている。今日の服装は紺の膝丈スカートに白いブラウスとおとなしめな組み合わせ。それが逆に清楚な印象を与える。
青川は膝に手を当ててじっとしている。しかし目だけは別で、きょろきょろと視線をさまよわせていた。男の部屋が珍しいのかもしれない。
「えっと、DVD、枕元の本棚にいろいろ並んでるから。好きなの選んでいいよ」
助け舟を出すと、彼女はおずおずと本棚に近寄った。動きがぎこちない。
「緊張してる?」
青川が振り返る。
「ぼくもちょっと緊張してる。女の子を部屋に入れることなんてないから」
「……」
青川は答えずに、本棚に手を伸ばす。DVDのケースを一つ取り出し、差し出してきた。
「これがいいの?」
こくこく頷く。
「じゃあ見ようか。お茶飲みながら」
紅茶のカップを差し出すと、彼女はゆっくりと受け取った。
399 :
かおるさとー:2007/03/05(月) 11:29:38 ID:kSbOYpYF
テレビの画面の中で、北欧系の白人が黒人をマウントポジションで押さえ込んでいる。
青川はまばたきもせずに画面を注視している。
ぼくにはこの先の展開がわかっている。もちろん口には出さない。
下になっていた黒人が無理やり体を起こした。白人のバランスが崩れ、横に倒れる。黒人は素早い動きで白人に殴りかかる。白人は下からの蹴り上げで抵抗するが、黒人はそれをものともせず、重い拳打を落としていく。
顔面に四発五発と浴びせたところでレフェリーがストップをかけた。
勝利の雄叫びを上げる黒人を見つめながら、ぼくは肩をすくめた。
「力ありすぎじゃない? マウント返されたし」
「……」
青川は無言。
返事を期待していたわけではなかったので、ぼくはリモコンで次の試合を映そうとした。が、
「下手な……だけ」
「え?」
ぼくはリモコン操作をしていた手を止める。
「なに?」
「上手い……人なら、返されない」
ぼくは急に多弁になった(これで多弁に見えてしまうのが凄いが)青川に首を傾げた。しかしこれは逆に会話のチャンスでもある。滅多に喋らない青川から言葉を引き出したかった。
「でも、身体能力に差がある場合はどうしようもないんじゃない?」
「関係……ないよ」
「そうかな。たとえばさ、ぼくが青川に押さえ込まれたとして、」
「……」
「あっ、変な意味じゃなくて。えっと、ぼくの方が体重も力もあるから、返すのは難しくないと思うんだよ。それと同じで」
「無理」
はっきり言われた。
「……なんで」
「無理……だから」
青川は頑なに繰り返す。ぼくはどう答えたものかと考えるが、
「試して……みる?」
「…………え?」
なんでこんなことになっているのだろう。
ベッドの上でぼくは仰向けになっていた。視界に映るのは白いクロスがはられた天井と、明るく光る電灯と、
「……」
腹の上に乗っている少女の姿。
うわあ、ぼく女の子にマウントポジションされているよ。
スカートから伸びた脚が脇腹に密着している。せめてジーンズみたいな長ズボンならこんなに意識することもないのに。
「えっと、ここから抜け出せばいいんだよね?」
青川の頷きにぼくは一つ息を吐く。このままだと頭が溶けそうだ。早く抜け出して終わりにしよう。
よっ!
……あれ?
せっ!
…………あれ?
「……」
青川の目が静かにぼくを見下ろしている。
なんで返せない?
動けないわけではない。左右に体を転がせるし、脚も上がれば手も動かせる。
しかし返せない。
ブリッジをしようとしても青川は重心を微妙にずらしてくるので、踏ん張りがきかない。手足を動かそうとしたら肩や骨盤を押さえられて封じられる。
「なん、でっ」
「……」
青川はふ、と表情を緩めた。どこかからかうような、余裕の笑み。
400 :
かおるさとー:2007/03/05(月) 11:35:01 ID:kSbOYpYF
どうにかしたいと思って、ぼくは苦し紛れに体を左によじった。横には転がれるわけだから、ここからうまく隙間を作って──
と、気付いたら視界に布団が映っていた。
いつの間にかうつ伏せになっていた。ヤバい。最もやってはいけない体勢だ。この状態では、
瞬間、首に腕が巻き付いた。青川の細い腕が喉に触れる。背中に密着した体の柔らかさより、絞め上げられる危機感の方が強い。
反射的にベッドを叩いていた。
ぼくのタップに青川はゆっくりと腕を離す。
「……」
「……」
微妙な沈黙が流れる。
「…………もっかいやってもいい?」
青川はあきれたように肩をすくめた。
ダメだ、まるで歯が立たない。
二回目もまったく同じだった。それなりに動けるものの、脱出だけはどうしても出来ない。青川はバランスボールに乗るかのように、絶えず安定した姿勢を取りながらこちらを無力化に追い込む。
二分が経過したが、糸口がどこにあるのかさえわからなかった。
「ねえ、青川って何か習ってるの?」
たまらずぼくは下から尋ねる。
「……柔術……やってる」
ぽつりと呟く。
「……………………初耳ですよ?」
「……聞かれて……ない」
「……」
あんた聞いても答えないキャラでしょーが。
こうなったら意地でも抜け出してやると鼻息を荒くすると、突然視界が遮られた。
「え、ちょ、」
青川の左手がぼくの両目を覆う。視覚を奪われて焦っていると、左頬を叩かれた。
威力はない。優しくぺち、と叩かれただけだ。しかし青川の右手は止まらない。さらに連続してぺちぺち叩かれる。
完全に持て遊ばれている。釈迦の手の平の孫悟空か。
仕方ない。最後の手段に出るか。これだけは使いたくなかったが……。
「青川」
「?」
「先に謝っとく。ゴメン」
言うが早いか、ぼくは右手を斜め上に振った。
スカートの翻る感触が右手に確かに伝わる。秘技・スカートめくり。
「!」
青川の動揺が感じられた。今だ。
隙を突いて上体を一気に起こす。その勢いに圧され、青川は後方へ倒れ込む。ベッドから落ちないように、ぼくは慌てて彼女の体を支え、
「あ……」
「……」
今度はぼくが青川の上になっていた。
腹の上に乗っているわけではない。彼女の両足の間にぼくの体はある。下の選手から見ればいわゆるガードポジションだが、そんな格闘知識など今はどうでもいい。
知らず押し倒した形になっていて、さっきよりもずっと興奮する体勢だった。
401 :
かおるさとー:2007/03/05(月) 12:03:38 ID:kSbOYpYF
ぼくらはしばし見つめ合う。
長い睫毛がはっきりと見える距離。互いの息がかかり、頭が心臓と呼応するかのように揺れる。
魔がさしてしまった。
ぼくは彼女にそのまま覆い被さり、唇を奪った。
「……!」
青川の体が逃れようと動いた。ぼくはそれをさせまいと強く抱き締める。
自分でも乱暴なキスであることはわかっていた。ただ唇を押し付けるだけの行為で、優しさなどどこにもなかった。
ようやく唇を離したとき、青川は怯えた顔をしていた。ぼくはすぐに後悔したが、気持ちまでは消せない。
ぼくは彼女の肩に手を置き、しっかりと見据えて言った。
「好きだ、青川」
彼女の体がびくりと震えた。その反応にぼくは奥歯を噛み締める。答えを聞くのが怖い。でも、しっかりと言い切ろう。
「まだ青川のこと、ぼくはろくに知っちゃいない。でも好きになってしまったんだ。これからもっと知りたい。誰よりも知りたい。だから……付き合ってください」
「……」
青川は無言。
ぼくは目をそらさなかった。
「…………」
今までの人生で最も長い時間だったと思う。
青川は目を瞑ると、体をぼくへと預けてきた。慌てて支えると、彼女が小さく囁く。
「キス……」
「え?」
青川は怒ったように目を細める。
「……やり……直し」
その声が耳を打った瞬間には、もう彼女にキスを返されていた。
今度は優しく抱き締める。さっきの埋め合わせをするかのように、ぼくらは優しいキスを出来るだけ長く続けた。
幸福感で体中が満たされていくようだった。
キスの後、青川はうつ向き、ぼそぼそと何事かを言った。
「え、なに?」
「……初めて、だった」
キスのことだろうか。
「ぼくも同じだよ」
「……」
青川の顔が真っ赤になった。
ヤバい。めちゃくちゃカワイイ。頭ショートしそう。
真っ赤な顔で、青川はさらに言う。
「……終わり?」
「え、なにが?」
「……キスだけ?」
「…………」
何を刺激的なこと言いやがりますかアナタ。
予想外の台詞に軽く困惑した。
「いや、まあ、それはもちろん出来ればがっつりとしたいとは思うけど、って何言ってんだぼく」
「……いいよ」
……………………。
放心してしまった。
「……本当にいいの?」
「したく……ないの?」
「……」
欲望には逆らえなかった。
402 :
かおるさとー:2007/03/05(月) 12:18:12 ID:kSbOYpYF
ベッドの上でぼくらは向き合う。
青川は体を離すと、スカートのチャックを下ろし、ブラウスのボタンを一つ一つ外していった。あまり躊躇することなくスカートとブラウスを脱ぎ、ブラジャーもあっさりと外す。
現れた体に、ぼくは我を忘れて見惚れた。
着痩せするタイプなのか、小柄の割に青川のスタイルはよかった。柔術をやっていると言っていたが、運動しているだけあって、体幹がしっかりしている。胸も前に張っていて、実に健康的な体だった。
裸の青川がぼくを見つめる。次はあなたの番、とその目が促してくる。
ぼくは急いで脱ぎ始めた。見とれている場合じゃない。早くしないと。
焦りと緊張で震えたが、なんとか脱ぎ終えることが出来た。さっきから下半身が痛いほどに疼く。
青川がぼくのモノを見て息を呑んだ。しかし視線はそらさない。まじまじと興味深そうに見つめている。
青川に近付く。向こうも身を寄せてきた。ぼくは胸に手を伸ばす。
触れた瞬間、脳髄が弾けそうなほど興奮した。白い双房に指が沈む。あまりの柔らかさに指がどうにかなりそうだ。
ぼくは彼女を抱き寄せると、ひたすら胸をいじった。青川の反応に合わせて、撫でたり揉んだりを繰り返す。乳首を指で摘むと、青川の口から甘い吐息が漏れた。
手だけでは満足出来ず、今度は舌を這わせてみた。青川はくすぐったそうにしていたが、胸の先端に吸い付くと体をびくりと硬直させた。
ぼくは下から胸を揉みしだき、両の乳首を交互に吸う。次第に青川の体が弛緩していくのが感じ取れた。
胸を吸いながら、ぼくは青川の下半身に目を向ける。まだ下着を着けたままだ。
「取るよ」
青川の頷きを確認して、ぼくは下着を剥ぎ取った。胸から手を離し、顔を脚の方へと近付ける。
「うわ……」
つい声を上げる。青川の秘所は、ゼリーのようにぬめぬめした透明な液でいっぱいだった。
思い切って触ってみる。
「……やっ」
青川が初めて叫声を上げた。ぼくはその声に怯むが、抵抗がなかったので続行した。
「ん……んんっ……あっ」
割れ目に沿って上下になぞる度に青川は喘いだ。滅多に声を出さない彼女が、小さいながらも気持よさそうに声を出している。もっと声を聞きたくて、ぼくは中に指を入れた。
「────っあ」
刺激が強かったのか、青川は勢いよくのけ反った。
彼女の中はひどく熱かった。生物の肉に包まれているのが実感出来る。しかも指への締め付けが半端なくきつい。
なんとか人指し指の第二関節まで中に入れる。ゆっくり出し入れを繰り返すと、締め付けとともに愛液がどんどん溢れてきた。
もう我慢できなかった。ぼくは体を起こして、青川の正面に覆い被さった。キスを何度か繰り返しながら耳元で囁く。
「青川、もう入れるよ」
「……」
青川は荒い息を整えながら、小さく頷いた。
403 :
かおるさとー:2007/03/05(月) 12:22:48 ID:kSbOYpYF
ぼくは腰を沈めて一気に挿入しようとした。
が、予想以上にきつく、なかなか奥へと入らない。
「────っっ!」
青川の口から苦しそうな、痛そうな声が漏れる。
「あ、青川……」
一気に不安が増大する。かなり痛そうだ。果たしてこのままやっても大丈夫なのか、ぼくは心配になった。
「いい……から」
「青……」
「日沖くん……になら……何されても……平気だから……」
必死に言葉を紡ぎながら、彼女はにこりと笑った。
覚悟を決めた。青川がこんなに頑張っているのだ。不安がっている場合じゃない。
力を入れて、一息に彼女の中に進入した。
「っっっっっ!」
青川の顔に苦痛が走る。同時に相当な締め付けがぼくを襲う。
出来るだけゆっくり動こう。それなら耐えられるかもしれない。おもいっきり腰を打ち付けたい衝動に駆られたが、青川への負担を考えると無茶は出来なかった。
緩慢に腰を動かす。青川もこれなら苦しくないようだ。あまり気持ちよくさせられない代わりに、せめてキスをと口を近付ける。
そのとき、青川の両手がぼくの上体を引き寄せた。向こうからキスを求められて、ぼくはそれに応える。体を密着させて、より深くキスに応えようと、
「!?」
青川の舌が口の中に伸ばされた。まさか、こんなに青川が積極的に来るとは思ってもみなかった。
「ん……ちゅ……んぁ」
「……んむ……んん……」
舌を絡め合い、唾液の入り混じる音が至近距離で耳を打つ。
その音に、理性は塗り潰されていった。欲望のままに腰を激しく動かしていく。
青川の一際高い喘ぎ声が、耳をつんざいた。それは喜色に満ちた快楽の声だった。
その声がさらにぼくの脳髄を沸騰させ、ぼくらは激しく絡み合った。強い締め付けの中を何度も何度も往復し、粘膜にまみれた性器と性器をぶつけ合う。
あっという間に射精感が高まり、ぼくは急いで中から引き抜いた。
「くっ」
呻きとともに大量の精液を青川のお腹にぶちまける。青川の体が射精と同時にぶるっと震えた。
丹田から力が抜け、ぼくは青川の横に倒れ込む。
荒い息をつきながら、彼女はにこりと微笑んだ。
その微笑はあまりに愛しく、ぼくは青川を抱き締めずにはいられなかった。
404 :
かおるさとー:2007/03/05(月) 12:37:33 ID:kSbOYpYF
呼吸が整い、だいぶ落ち着いた頃、
「日沖くん……」
青川はぼくの名を呼ぶと静かに語り出した。
「わたし……今まで……趣味合う人……いなかった」
ぽつりぽつりと呟く。
「口下手だから……合わせるのも……。だから……自然と……こうなったの」
なるほど、と納得した。だから青川は趣味を知られないようにしていたのだ。男同士ならともかく、女子の中ではあまり馴染まない趣味だろうし。
なんとなく気付いてはいたが、はっきりとわかってすっきりした。
「でも、もっと……話せる……ように……する……から」
「しばらくは今のままでもいいんじゃない?」
青川は怪訝な顔をした。
「なんで……?」
「だって」ぼくは正直に告げた。「しばらくは青川の声を独り占めしたいから」
青川の頬に赤みが差す。「将来的には口下手も直さなきゃダメだろうけど、しばらくは、ね」
ぼくは体を起こすと、壁時計で時刻を確認した。午後五時をわずかにすぎたところだ。
「暗くなる前に送るよ。体は大丈夫?」
そう尋ねると、青川は逆に尋ね返してきた。
「御両親は……いつ?」
「え、……十時くらいかな、帰ってくるのは」
「まだ……時間、あるね」
「え?」
目を丸くしたぼくに、青川はいたずらっぽい笑みを浮かべ、
「二回目……しよ」
「……………………」
ぼくはおおいに戸惑った。さっきまで処女だった子にまた無理をさせていいのか? あんなに息切れしてたのに体力もつのか? てゆーかこの子エロすぎないか?
考え込むぼくに、彼女はトドメの一言を放った。
「中出し……して……いいから……」
もはや突っぱねる理由はどこにもなかった。と言うよりもう理性保つの限界です。
「うりゃ」
「……ん」
こうしてぼくらは第二ラウンドに突入した。
時計は午後七時を回った。
「ふぁ……」
大きなあくびが出てしまった。まぶたが少し重い。やっぱりいきなり三回はハード過ぎたかと反省する。まさか青川に流されてしまうとは。それもニラウンドどころか三ラウンドまで。
対する青川は少しも疲れた様子を見せなかった。
「タフだね……」
「……」
さっきまで多弁だった口も、今は静かである。
「送るよ。もうすっかり暗いし」
「……」
青川は頷くが、その顔にはなぜか笑みが浮かんでいる。どこか勝ち誇ったような、優越者の笑みだ。
「……うまくノせてやった、とか思ってる?」
青川は答えない。
「別にあれは抱きたいから抱いたわけで、青川にのせられたわけじゃ……」
「……気持ち、よかった?」
楽しそうに問う青川。
かなわないな、とぼくは苦笑する。
青川は帰り支度をしている。借りたDVDをバッグの中にしまっている。
無口で、小さな女の子だけど、一週間でたくさんの顔を見ることができた。これからもっといろんな面が見られるかもしれない。
「行こうか」
頷く青川の手を取って玄関に向かう。握った手に想いを込めて、ぼくは小さく言葉を送った。
これからよろしく──
405 :
かおるさとー:2007/03/05(月) 12:46:11 ID:kSbOYpYF
以上でおしまいです。
携帯メールで一昨日辺りから一気に書き上げたんですけど、
難しいですね、無口っ娘。
もうちょっと研究してみます!
いやこれはGJ
携帯からなんてお疲れさまでした
超GJ!です
GJ!
ニヤニヤが止まらないw
これはまた違った積極的な無口っ娘ですね(*´д`*)GJ!
青川さんに押さえこまれたい…
まいった。会社で勃ったぞ・・・どうたもんか。
神発見!GJですた。
携帯からこのクオリティ
見上げたものだ
GJと言うしかないや。
このスレも潤ってきたな
このスレが無口キャラになったか
比喩の使いすぎで恥ずかしくて顔から火が出るよ
418 :
かおるさとー:2007/03/10(土) 00:21:53 ID:pjA9ukRo
初めて投下したんですけど、反応いただけて嬉しい限りです。
なんかエロシーンより、青川さんマウント攻撃の方が書くの楽しかったですw
また近いうちに投下しようと思うので、そのときはよろしくお願いします。
次はかなり変化球な無口っ娘になりそうですが……。
いやー、これは凄いですよ!
これが「初めて」だなんて。
エロシーン以外も充実しているほうが
きちんと感情移入できて
かえってエロいということを
思い知りました
>>379-381の続き書いた。続きとは言うけど作中時間は少し飛んでます
というか、エロシーンだと無口っぽさが消えて・・・
まあ、以下に投下します
春休みになって何が変わったかといえば、泉水の行動パターンが変わった。
朝の九時半ころになると、からからと音を立てて窓が開き、カタツムリのように緩慢に動く物体が入ってきて、ひとのベッドに勝手に潜り込むのだ。
言うまでもなく、この偽カタツムリは泉水だ。俺がまだ寝ていてもお構いなしに同衾してきやがるのである。
そんな日は、目覚めて最初に目に入るのが泉水の寝顔ということになるわけだ。
もちろん悪い気はしない。いとしい彼女の眠りこむ姿は、なかなか愛らしくて朝から心が和む。
ただ――そういうことが続くと、俺の中のケダモノが餌を欲して荒れるわけで。
かといって、世界に悩み苦しみが存在するのが信じられなくなるほど安らかに熟睡する泉水を、性欲のために起こすのは忍びない。
ていうか多分、起こそうとしても起きない。
近所でトラックと乗用車の事故があって、俺なんかはその音で飛び起きたというのに、泉水の眠りはまるで妨げられていなかったから。
そして正午ごろになると、自然と目覚めて自分の家に昼食を作りに帰る。
それが済むとまた泉水は戻ってきて、三度寝を決め込むなり、ひとのマンガを読むなり、ひとのゲームをするなり、適当に行動する。
自堕落という概念を極めるのに挑戦しているのだろうか。たまに俺はそう思う。
まあ、長期休暇の時は、昔からこんなだったが。
だから俺は春休み中、泉水はずっと同じように生活するんだろう――そんな風に思っていた。
昨日の夜までは。
それは、俺が朝食をとって部屋に戻ってきた際のことだった。
ドアを開けて真っ直ぐ前の窓が泉水の家に面しているのだが、ちょうど泉水が部屋の窓を開け、のそのそと外に出てくるところだったのだ。
空気抵抗に負けそうなくらいのスローペースで泉水は歩き、屋根と屋根の間のわずかな隔たりも、ごく慎重にまたぎ越える。
それだけなら、いつもどおりの泉水だ。服装もいつもの色気無いだふだぶパジャマであるし。
だが、まとう空気と、抱きしめたウサギのぬいぐるみが、普段との相違点だった。
泉水は俺の部屋の窓の前に立つと、なぜか動きを止めた。
ぬいぐるみを最後の寄る辺のように強く抱きしめて、その場でただ俯いている。
……窓を自分で開けるつもりさえ、ないようだ。
そんくらい自分でやれやァ! という突っ込みも、今日ばかりは湧いてこない。
俺は歯噛みする。怒りが向くのは泉水にではない。家族というものの価値を理解しない、愚昧な連中に対してだ。
窓を開けてやると、今度は右手を差し出してきた。
このひどく小柄な幼馴染は、造作もなく引っ張り込むことが出来た。
「おはよう、泉水」
「…………」
返事はない。いつものことと言えばその通りだが、沈黙のニュアンスが違うのだ。
無言で俺の横をすり抜け、泉水はベッドにもぐり込んだ。
ぬいぐるみを抱きしめたままにふとんをすっぽり被り、幼子のように体を丸める。
「…………ごめんなさい、ゆーや……眠らせて」
何言ってやがる。いつも勝手に寝てるくせに。断る必要なんてないんだよ、ばかたれ。
俺はベッド脇に膝をついて、泉水の頭をそっと撫でた。
「存分に寝ろよ。満足するまで使っていいから。……おやすみな」
泉水はゆっくりと頷いた。目を閉じて、まるで落下するみたいに一瞬で眠りこむ。
目のまわりには薄いクマができている。本当に、これが古根泉水だなんて誰が思う? いつも眠ってばっかりいるくせに。
いや、眠ってばかりいるからこそ、一夜眠れないだけでここまでダメージが出るのかもしれない。
椅子に座る。軋む音さえ出さないように用心しながら。
「……昨日、うるさかったもんな」
こっそりと独りごちる。
そう、昨日の夜は実に騒々しかった。田舎名物の暴走族がいたわけじゃない。
醜い醜い夫婦喧嘩が、繰り広げられただけのことだ。
……夫の浮気に端を発した古根家の崩壊は、ひどくスムースに進行したらしい。
泉水が小学校を卒業する少し前にはすでに、両親は外に新しい恋人を作って、滅多に自宅に寄り付かなくなっていたのだ。
それだけなら……どこにでもある、悲劇の一つでしかなかったのかもしれない。
けれど泉水の親は真性のカスだった。どちらも一人娘の面倒を見ようともせず、打ち捨てるように放置しやがった。
自分が事実上捨てられたのだと悟った辺りから、泉水は圧倒的に無気力になっていった。
生きるために必要な最低限の家事だけをこなし、あとは逃避するように眠り続けるか、俺の家でだらだらするだけ。
こいつの高校の同級生に、小学生のときのこいつが、いつも昼休みには男子に混じってサッカーに興じてたなんて明かして、何人が信じることか。
それでも、自分ひとりきりという状況に慣れてしまったんだろう、ここ数年は彼女なりに安定していた。
時折、気まぐれで両親のどちらかが帰宅した翌日は精神的に不安定だったが、それも一日限りのことだった。
だが昨日。
忌々しいことに、運命のサイコロはクソしょうもない目を出した。
泉水の両親の帰宅日が、かぶったのだ。
結果が昨日の騒音だ。近所迷惑という言葉を脳内から紛失してしまったのか、両親は日付が変わってもなお、罵詈雑言の応酬を続けていた。
収まったのは――2時ごろ、だろうか?
それまで泉水に何度かメールを入れたが、返事が来ることはなかった。
何をしていたのだろう。あの戦場みたいな家で。
こういうとき、まだ自分がガキに過ぎないことがもどかしくなる。
あの家に飛び込んで、泉水の親父をボコって、母親をねじ伏せて、泉水を奪還できたらと思う。
いや、それこそ子供の発想か。簡単に解決できるような類の問題でもない。
……はぁ。
俺が深く嘆息した時だ。
部屋のドアが、前触れなくバタンと開けられた。
「友哉いる? ……お、泉水ちゃん来てたのかい」
突然のことで心臓を躍らせる俺に目をやって、母は怪訝そうにする。
「何してるの、アンタ」
とにかく俺は口の前に人差し指を立てて静寂を要求。母の声はでかすぎるのだ。
ややボリュームを落として、母は再び口を開いた。
「……まあいいけど。昔の友達から連絡来てね、ちょっと会いに行ってくるから。晩御飯までに帰れないようだったら連絡するから。あと昼は自分で何とかしなさい」
「ああ、はいはい。わかったよ」
「こりゃラッキーとか思って泉水ちゃんに変なことするんじゃないよ、彼氏だからって」
「しねえよ!」
俺は小声で叫ぶというハイテクニックを披露することになった。
息子の反応を信用していないのは顔から明らかだったが、すぐ母は関心の対象を変えた。
「あら、泉水ちゃん、なんか生えてない?」
何言ってるんだコイツは。
そう思って泉水を見ると、なるほど、掛け布団から白くてフワフワしたものが二本突き出ている。
それで「生えてる」という表現はいかがなものかと思ったが、俺は件の物体の正体を告げた。
「うさぎのぬいぐるみの、耳だろ。えらく古い感じのものだったけど、今日は持ってきたんだよ」
「ぬいぐるみ? へえ」
興味をそそられたか、母はそっとベッドに近づいて、掛け布団を少しだけまくった。
中身を見ると、呆れた様子で俺に向く。
「なぁにが『えらく古い感じの』だか。アンタが昔プレゼントしたものでしょうが」
「……俺が?」
母にならって布団をめくってみた。
――本当だ。
日焼けしてるし年季を感じる汚れ方をしているしで見逃していたが、これはまだ小さい時、なけなしの小遣いをはたいて買ってやった……。
「こんなものまだ持っててくれてるなんて、ほんと泉水ちゃんはアンタに過ぎた彼女だわ」
頬に手を当てて、母は溜息。俺より相応しい彼氏のビジョンでも考えているのかもしれない。
「……わかってるよ」
「ならいいわよ。ちゃんと支えてあげな。あたしゃ出るからね」
へいへい、とぞんざいに返事する俺に含み笑いして、母は出て行った。
一人残され、夢の世界に滞在し続ける眠り姫を見やる。穏やかな顔。規則正しい寝息。深い睡眠のサインだ。
目覚めた時のために、昼飯でも用意しておこう。そう思い立ち、俺は立ち上がった。
などと言ったところで、俺の調理能力なんてたかが知れている。
メニューはチャーハンである。漢らしく単品勝負。いや、望むならインスタントのスープをつけてもいい。
そんな程度である。しかも多少てこずった。一人暮らしになる未来が心配だ。
手間取ったせいか、気付くと時計の針は12時を回っている。
非常にハイレベルな億劫屋である泉水も、さすがに食事の面倒は自分で見ているが、あの調子だと朝を食べてはこなかっただろうな。
様子をうかがって、起こせそうだったら食事に誘うか。
そう判断したとき、俺の耳は階段の軋みを聞きつけた。
きぃ、きぃ、と、幽霊が歩いているようなわずかな音だったが、果たして台所にやってきたのは泉水であった。
ぬいぐるみを抱いたまま、のたのたと現れた泉水は、無言で食卓の椅子にぽすんと腰掛けた。
隣の席にぬいぐるみを座らせて、いつも以上に生気のない、濁りきった視線をこちらに向けてくる。
「……………………」
目は口ほどにモノを言うと聞くが、この目から情報を読み取るのは不可能だった。
とはいえ、わざわざ食卓に自分からやってきたのだ、匂いでも嗅ぎつけたのだろう。空腹なのはまず間違いない。
「スープいるか? インスタントのわかめスープだけど」
「……………………」
こくこく。
「大盛り小盛り、どっちがいい?」
「……………………おおもり」
リクエストに答えて皿に盛り付け、スプーンと一緒に目の前に置いてやる。
「召し上がれ」
「いただきます……」
風前の灯という形容を思いつかせる、そんな声で応え、泉水はスプーンを手に取った。
さて、俺もいただこう。
「…………ごちそう、さま」
「お粗末さん」
言って、玄米茶をなみなみと湛えた湯呑みを置いてやる。
泉水は湯呑みを両手で包むようにして、俯き加減にちびちびとすすり始めた。
食器を流しに片付けて、俺も泉水の対面に座り、茶を飲みだす。
「…………」
「…………」
昨日の出来事には触れない。昔から泉水は自分の家庭の話題を好まないからだ。
古根家で何が起ころうと、寺原友哉はいつも通りに古根泉水に接する――いつしか成立した、確たる不文律だ。
例外があるとするならば、それは古根泉水から自分の家について語るときのみ。
そして今が、その瞬間だった。
「お父さんと……お母さんは、さ………………」
湯呑みに目を落としながら、泉水は訥々と話し出した。
「…………お互い好きだから、結婚したんだよね………………?」
「……そうだったんだろうな」
返事を間違えてはならない場面だ。なんとなく直感する。
「好きで、だいすきで…………わたしがゆーやに対して持つような気持ちで、結婚したんだよね……?」
「たぶん、そうなんだろうな」
「――じゃあ!」
大声。一瞬誰が言ったのか分からなかった。それくらい、泉水の大きな声には馴染みがない。
「…………ゆーやは、いつか、お父さんみたいに……わたしを嫌いになるの?」
ばかな。
何を言い出すんだ。
「そんなわけ……」
あるか――と続けようとしたのに、言葉は最後まで出てくれなかった。
顔を上げた泉水が、ぽろぽろと涙をこぼすのを見たら、喉が機能を止めてしまったのだ。
「わた、しも、いつかっ、…………ゆーや、を、嫌いに、なっちゃうのかなぁっ…………」
小さな子供みたいに、ひっく、としゃくり上げる泉水。
「ヤダよぉ…………ゆーやのこと、好きでいたいよ…………」
「……泉水」
「おとうさんとおかあさんみたいに、なりたく……ないよぅ」
席を立つ。泉水は泣き止まない。昨日の我が家の惨状を思い出しているのだろう。
強く愛してあっていたはずの二人が醜悪な闘争を繰り広げる、悪夢じみた光景を。
俺は泉水の後ろに回って、そっと背後から抱きしめた。
「なぁ、耳の穴かっぽじってよく聞け泉水。確かに未来のことはわからんよ。俺たちがお互い嫌いあうようなことだって、そりゃありえる」
腕の中で、泉水が身を固めた。だから俺はなおのこと優しく抱きしめる。
「でもな、俺たちはお前の親御さんから学べただろ? たぶん――好きでいるっていうだけじゃ、不足なんだって」
「…………?」
首をねじって見上げてくる視線を俺は見返す。
「きっと努力が必要なんだよ。好きであり続けるための。抽象的で悪いけどな」
「どりょ、く…………?」
「そう。直してほしいところはきちんと言うとか。下手な秘密を作らないとか。まだ俺にはこの程度しか思いつかねえけど、これから考えていこうぜ」
恋愛というのは、まるで何の関わりもなかった他人同士が一緒になることなんだ。
軋轢が生じるのは当然のこと。
だから、それを解決していかなくちゃならない。
もちろん、それは……
「……二人で一緒に、考えていこうぜ。まだこの先、長いんだからさ」
泉水はぱちぱちと瞬きをする。パジャマの袖で涙をぬぐって、ようやく俺に笑顔を見せてくれた。
「…………うん」
おなじみ、薄明の笑み。けれど何故かいつもより確かなその笑顔は、山の端から太陽が昇りくる気配を感じさせるものだった。
とまあ、ここまでなら『ちょっといい話』で幕が下りるのだが、そうは問屋が卸さなかった。
問屋というか、泉水が。
あれから抱きしめた姿勢のまましばらくいたのだが、おもむろに泉水が、
「…………しよ」
とお誘いをかけてきたのだ。健康的な男子高校生である俺に、それを拒むことができるだろうか?
彼女からお誘いがきて、それを断る十代男子……そんな存在は非科学的である。正体はプラズマだ。
俺は物理法則に従う一般人なので当然、一も二もなく快諾した。
結果、いまこのシチュエーションが生まれたわけである。
ベッドの上に足を開いて座った俺の膝の間には、泉水の小柄な肢体が収まっている。
さっきと同じように俺が後ろから抱きしめた格好で、俺は問う。
「お前から誘うなんて珍しいなあ」
「…………」
リアクションなし。俺は泉水の肩にあごを載せて、横目で表情をうかがった。
「…………」
泉水は首を動かし、ほんのりと赤く染まった顔をこちらに向けた。視線が絡む。
「……ゆーやが慰めてくれて、うれしかったから、お礼」
言うとすぐに泉水は視線を外した。うつむき、ベッドに目を逃がして、ためらうように続きを口にする。
「それに、……しばらくしてなかったし。からだも慰めてほしいなぁ――って」
か、かわいい。
マジで可愛い。こんな娘が彼女でいいのかと馬鹿丸出しなことを思わせるくらいに。
「泉水、こっち向いて」
幼馴染の呼吸で、言外のニュアンスを汲んだらしい。泉水は俺の言葉に従い、そっと目を閉じた。
唇が重なる。
最初は子供が戯れにするような、軽いキス。それを何回か繰り返す。
薄く目を開けて、泉水が言う。
「……いいよ」
それを合図にして、俺は再び唇を重ねた。今度は深い、恋人のものだ。
俺が舌を伸ばすと、泉水は受け入れる。
口内を歯ぐきの裏側まで遠慮なく舐めまわす。
唾液のにちゃにちゃという音と、互いの荒くなりつつある息だけが部屋に満ちていく。
「…………ぷぁ、……んっ、ふぅ」
そんな吐息にリビドーをさらに強く刺激され、俺はほとんど犯すように口内を貪った。
……やがて、おずおずと泉の舌が俺のそれに絡む。
熱をはらんだその器官は、ヘビみたいに俺の舌に絡みつく。
口の中でセックスの縮小版を演じるように、俺たちは舌で交合をおこなった。
互いの唾液が互いの口内を行き交い、もともとどちらのものだったか判別できなくなっていく。
そんな時間が経ち、俺たちはどちらともなく唇を離した。
透明な粘液の橋が口の間にかかり、そして切れた。
泉水はすでに陶酔しつつあるようで、もともと明瞭ではない瞳が、官能でさらに曇っている。
「……ゆーや、すき」
「俺も好きだよ、泉水」
もう一度、触れるだけのキスを交わして、俺は泉水を抱きしめていた手を胸に這わせた。
やや小ぶりだけに、サイズの大きなパジャマを着ていると見た目には分からなくなってしまう胸だが、手で触れるときちんと感触が返る。
「ふぅ……」
「ボタン、外して」
小さく息を漏らす泉水に求めると、泉水はおとなしくボタンをひとつひとつ外していった。
前だけをはだけた状態になる泉水。俺はブラジャーの上から、ゆっくりと柔らかな膨らみを揉みほぐしていく。
「やぁ、はふ、……ふぅぅ……あ、あ…………」
すぐに欲情で熱された喘ぎがもれだす。
「気持ちいい?」
聞くと、耳まで真っ赤になった顔をこくんと動かす。では次は……
俺は胸を捏ねていた手を片方離脱させて、ブラのホックを外した。ブラジャーが抵抗なく落ちる。
真っ白な乳房と、桜色の突起が同時にあらわになる。先端はすでに、ぴん、と尖っていた。
指で両方をむにむにと挟む。適度な弾力が心地よい。
「ゆっ、やぁ、き、きもちいい……」
細い肢体がぴくぴくと悦楽にふるえる。調子に乗って俺は指で頂点をこしこしと扱いた。
「あ、あ、そ、それいいっ……ゆーや、あ、あんまりされるとっ……」
「イッちゃう?」
勢いよく、何度も頷く泉水。
「じゃ、遠慮なくどうぞ」
ぎゅっ――と少し強めに乳首を挟み潰す。瞬間、
「きゃはぁっ!」
――びくびくっ、と泉水が跳ねた。
荒い息を繰り返す泉水のうなじに舌を這わせながら、俺は根性の曲がった問いを発する。
「イッた?」
「…………こう、いう時のゆーやって……ちょっと、サド」
「サドい俺は嫌いか?」
泉水はぷい、と顔をそむけた。本気でないのは、露骨にふくらませてみせた頬が教えてくれる。
俺は笑う。そしてうっすらと汗をかいた肌の上をすべらせて、手をへその下に導いた。
泉水がすぐにパジャマのズボンを膝まで下げる。無駄に阿吽の呼吸。
右手の触れるそこは、すでに白いショーツまで濡れている。湿っている、ではなく濡れている。
「スケベ」
「……ゆーやには、言われたくない……………………」
ぷいと泉水はそっぽを向く。ちょっと唇の端からよだれが垂れているのにも気付かないやつが言うかい、それを。
「ふぅん。泉水さんはスケベではありませんか」
指をショーツ越しに、スリットに触れさせ、上下になぞる。温かくて、そしてねちょついた感覚。
俺に対抗するつもりか、泉水は指の腹をくわえた。声を出さないつもりらしい。
無駄な抵抗だ。指で膣口を探り当て、ぐりっと布越しに押し込んだ。指先が熱い肉に包まれる。
「! …………ふぁ」
「声出てるぞ?」
指摘すると泉水は肩を震わせ、さらに指を強くくわえる。
だが、蜜壺をひと押しするたびに、泉水の眼は潤みをまし、下の口はとろとろと愛液を吐き出していく。
時に強く押し込み、時に優しく膣口を撫でる……そんなことを繰り返しに、声こそ上げなかったが、肢体をくねらせて反応する。
「ふぁ、は、あ、あ、あ……」
もう指がほとんど口から外れているのにも気付かないようで、泉水はすっかり「女」になった声をあげ、涎をたらたらと零す。
「いいだろ?」
「あはぁ、ゆーやの指っ、きもちいぃのぅ……」
「へえ。やっぱり泉水はスケベなんだな?」
「…………」
あれ、もう少し良くしてやってから訊くべきだったかな――と俺が思った時、泉水は言った。
「………うん、わたしはすけべな子なの。ゆーやに指でされただけで……とろとろにしちゃうくらい。くりとりすで、イカされたくなっちゃうくらい……」
そして、こっちを向いて、快楽への期待で潤みきった上目遣い。
おねだりされて無碍にしては男が廃る。俺はショーツに手を差し入れた。淡い茂みを通過して、その下の、神経の集中点をそっと撫でる。
「う、うん、そこ、そこ好きなのっ」
これまでの刺激で陰核は固くなっていた。わずかに包皮から露出したところを指の腹で揉むたび、泉水の腰はぴくぴくと震えた。
「い、いきたいっ、ゆーや、いきたいよおっ」
蕩けきった声の懇願。俺は包皮を剥いて肉色の真珠を親指の爪でひっかき、中指を熟した秘所にねじり込んだ。
瞬間。柔肉に差し込まれた指が、強烈な膣襞の締め付けを受けた。それこそ食べられるかのように。
「いっ――ああああぁああぁぁぁっ!」
泉水の全身がびくん! と跳ねた。一度の大きな痙攣だけでは終わらず、その後も陸に打ち上げられた魚のように全身が痙攣する。
後ろから抱きしめて、泉水の絶頂が収まるのを待ち、そっと囁きかけた。
「気持ちよかった?」
「……」
熱っぽく吐息する泉水の応えはない。がっくりと垂れたこうべだけが、気だるげに縦に振られた。
なんか、こうしてる泉水はまるっきり大人の女って風情だな。それもかなり経験豊富な。
行為の時以外の無気力で甘えん坊な泉水とのギャップが、またそそる。
そんなことをぼんやり考えてると、
「…………あたってるよ」
ぼそりと呟かれた。
「まあな」
ご指摘の通り。俺の分身はさっきから臨戦態勢で、がちがちに硬直している。泉水はさぞ背中に熱いモノの感触を感じているだろう。
「泉水が、えろ可愛いから」
泉水はそれを聞くとベッドに仰向けに転がり、
「……じゃあ、そんなゆーやさんに、わたしをあげましょう」
いつもの淡い笑みで、悪戯っぽく告げた。
願ってもない申し出だ。すぐさまズボンとトランクスを脱ぎ捨てて、覆いかぶさり……
「そういえば今日は、口でしてくれないんだな?」
と、ふと頭に浮かんだ疑問をそのまま言葉にした。だいたい本番の前には、泉水から口淫してくれるのが俺たちの間での定番になっている。
逡巡するように視線をさまよわせるが、最後には何か決心を固めたらしい。手を伸ばして、枕元に配備されたゴムを、泉水は床に放り出した。
「――あの、泉水さん? 避妊が出来ませんが」
「…………」
「挿れちまうよ? 生でさ」
「……………………」
「おーい、泉水?」
「………………………………いいよ」
かすれた声。極限までひそめられた声はしかし、俺の鼓膜をたしかに振動させた。
「……ゆーやに全部あげたい。なかに最初に出すのは、ゆーやじゃなきやヤダ」
脳の奥がしびれる。言葉なんてただの音なのに、どうしてこうも俺の本能を激しく揺さぶるのか。
泉水の言葉が続く。
「ほしいなら、おしりの初めてもあげるよ。…………わたし、ゆーやにそれくらいしかあげられないもの」
そして、わずかに外していた眼を、俺のそれとしっかり合わせた。
「……いいの? 彼女がゴムもなしで…………ずぽずぽしていいって言ってるのに、ゆーやはしないの? 大丈夫な日なんだから、遠慮しなくていいんだよ?」
泉水はほほえむ。
女としての媚と、少女としての愛らしさの入り混じった、矛盾の笑顔。
……我慢できない。できるわけない。屹立した分身を粘膜の入り口に押し当てる。
それだけで泉水は恍惚に身を震わせる――が、言っておかなくちゃいけないことだけは、きちんと言うことにする。
「泉水。俺、お前から沢山もらってるよ。体だけじゃなくて。泉水が好きでいてくれるってことだけで、すげえ満たされるんだから」
「……ゆー、や」
「それと!」
互いの吐息がかかる距離まで顔を近づける。ぱちぱちと瞬きする泉水に、告げる。
「俺は泉水の最初の男だ。そんで、……絶対、最後の男だからな」
「…………」
何かを言うように、口を開き――また閉ざす。
代わりというように、泉水はゆっくりと頷いた。ひと粒の涙をこぼして。
「いくぞ」
行為の開始を告げる。
言葉はなく、俺の背に回された細い腕が返答だった。
――突き入れる。
熱く、にゅるにゅる絡みつく孔を削り込むように突き進み、最後にこつんとやや硬い感触を先端で味わう。
奥の奥まで、届いた。
きゅうううう、と吸い込むような締め付けが襲ってきて、気を抜くと出してしまいそうだ。
俺を思い切り抱きしめながら、目をぎゅっとつむって身体をがくがくさせているところを見ると、泉水は一突きでイッてしまったらしい。
奥を小突かれるの好きだもんな。
そう思って、俺は腰を使う。時に子宮の入り口をつつき、時に天井側にこすりつけるように。
その度、泉水は可愛らしく鳴いた。
「ゆーやぁっ、ゆっ、やぁ、すきぃ、すきなのぉっ」
快楽に蕩けきった声が俺の名前を呼ばう。愛情を訴え、同時に求める言葉がつむがれていく。抱きしめる腕の力は強くなっていく一方だ。
「俺、も、好き、だっ……」
切れ切れの声しか出ない。さらに強く腰を打ちつけていく。
ずん。
「あぁああっ!」
ずん。
「ひううっ!」
ずん。
「う゛、ああぁ! き……きちゃうよぉっ! ゆーやぁっ、わたしっ、……もうぅっ!」
泉水の高みが近づいているようだ。現に、温かい泥濘のような膣は一突きごとにどろどろと愛液を吐き出し、締め付けは強まり続けている。
こちらも限界も近づいている。俺は突くピッチを上げた。
ぱん、ぱん、という肉のぶつかる音が間断なく部屋に響く。
「……いずみ、俺、もう限界だわ……」
ゴムの皮膜一枚。それがないだけで、ここまで受ける快感は違うものなのか。射精感の高まりは、もう我慢できるレベルではない。
「きて、ゆーやっ、きてぇ! わたしのなかで、だしてぇっ!」
淫猥な請願。俺はほとんど抜ける寸前まで腰を引き、余力を総動員して打ちつけた。
こりっ、という最奥の感触がトドメとなった。子宮口に思い切り男根を押し付けて、俺は射精した。
「は、あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
弾けるような嬌声。同時に達した泉水の膣は、一滴たりとも精液を無駄にしないというかのように、きゅうきゅうと締まって俺の分身を吸い上げた。
「すご、こんなぁ、すごいのぉ、はじめてっ……」
泉水は熱に浮かされたような調子でつぶやく。虚ろな瞳が虚空をさまよう。
俺は泉水の締め付けが弱まるのを待って、ずるずると息子を抜き出す。
それすら快楽を与えたか、「ふぁあぁぁ……♪」と泉水は口から唾液をこぼしながら甘く吐息した。
抜き終え、俺はようやく自分が汗まみれになっていることに気づく。顎まで垂れてきていた汗の滴を手の甲でぬぐう。
対して泉水はといえば、陶酔しきった表情でお腹をさすっている。まるで母親のようだった。
「……おなか、あつい………………しぁわせぇぇ…………」
ほとんど意識が飛んでいるようだった。
けれど、拡げられた膣口から白濁液をとろとろとこぼす泉水の淫靡な姿に、俺の劣情は即座に蘇生する。
泉水、と耳元に口を近づけ、2回戦をしたいと申し出ようとする。
が、その前に、弛緩しきった姿からは想像できないくらい素早く、泉水が唇に吸い付いてきた。
舌が割り入ってくる。ぴちゃぴちゃという唾液の音を耳にしつつ、俺も負けじと舌を絡める。
暫時過ぎて、ようやく泉水が離れてくれた――かと思うと、俺の首にしがみつき、再び頬や額に口づけの雨を降らしてくる。
「ゆーや、ひゅき、しゅきぃ……♪」
……どうも、理性の光をどっかに落っことしてしまったのらしい。泉水の眼は快楽と淫欲で曇りきっていた。
今なら、普段ちょっと頼みづらかったこともいけるかな、と俺は打算を働かせた。
耳孔に唇を寄せ、ささやく。
「泉水、もう一回していいか?」
まったく間を置かず、泉水は受け入れる。
「……いいよぉ? もっと、いかせてほしい…………なかに出してほしいもん」
「じゃあ、上に乗ってもらってもいいか?」
こくん、と頷かれる。
即答だよ、おい。こんなことならもっと前に頼むんだったな。今だからこそ、かもしれないが。
俺はベッドに仰臥する。泉水は怒張をいとおしげに撫でさすり、それから跨り、自分の中へとゆっくり導いていった。
やわらかな肉に、先端から徐々に包まれていく感覚。射精直後でなければヤバかったかもしれない。
とはいえ快楽に酔っているのは俺だけではなかった。
俺自身が泉水に沈みきり、先端にやや固い感触が突き当たった瞬間、粘膜が激しく蠕動したのだ。
見れば、俺の上で泉水が声もなく悶えていた。ゆるみきった顔が、絶頂したことを雄弁に知らせている。
俺は少々根性のひねた心持ちになり、腰を軽く揺すった。
途端、堪えられなくなったか、泉水の鳴き声が部屋に響いた。
「だ……だめ、なの、ゆーやっ、こ、腰……とけちゃうよぉ」
「そうは言ってもなあ」
俺は結合部へと手を伸ばし、薄い茂みを指でかきわけ、充血した芽を指でつまんだ。ひっぱると、ぷしゅ、と透明な液体が飛ぶ。
「……かっ」
声にならない声を発して仰け反る泉水。再び柔肉がうねうねと動く。
「動いてもらわないと気持ちよくなれないんだが」
「…………」
軽く睨まれた。ぼそっと「……ドS」と呟いたのも聞こえた気がする。
まあ、もうすっかり愉楽の虜になった泉水のこと、すぐに言うとおり、腰を動かしだしてくれた。
部屋に、嬌声と粘膜の擦れあう音だけが満ちていく――――。
……結局、4回した。
若いって良いよなあと当事者のくせに他人事っぽく思考して、俺は横でぐっすりと眠る泉水に目をやった。
すやすやと童女のように無垢な表情で安逸をむさぼる顔を見ていると、この世の悩み苦しみの存在がフィクションのように思えてくる。
ここでタバコでも吸って静かに煙を吐き出せば、それらしいシーンになるのだが、生憎俺はタバコを嗜まない。未成年だし。
なので――ひたすら、寝転んだまま恋人の寝顔鑑賞にいそしむことにした。
そうして、空の陽光の勢いが弱まるころ、泉水の双眸がゆっくりと開いた。
「おはよう」
「…………」
焦点の合わない瞳が、ぼうっと俺の顔を見つめる。
「あんなに泉水がえろいとは知らなかった」
「……………………………………。――――!」
聴覚情報を脳が処理したか、両目がいつもより大きく開かれ――すぐに、いつもの眠たげな目に戻る。
泉水は無言で、ちょいちょいと手招き。
何かと思って起き上がらないままに身体を泉水側にずらすと、わが幼馴染は俺の首筋に頬をすりよせ、抱きついてきた。
なんか嬉しい。俺も抱きかえす……って泉水さん。背中に回った手の指が、肩甲骨のあたりに「S」と書き続けるのは何のアピールですか?
どんな顔をしてるかと思って見てみれば、そこにはいつもの薄明めいた笑みがある。
少しばかり、からかうようなテイストが混入されてはいるが。
そのまま、泉水はくちびるを動かした。
声なきコミュニケーション。
動きを読むなら――ゆ・う・や・だ・い・す・き……といったところ。恐らく正確。
「俺も大好きだよ、泉水。ずっとそばに居てくれな」
――ゆーやこそ。
声なき声でそう告げて、泉水は首筋にひとつ、軽いキスをしてくる。
「……でもお前、急にいつも以上に話さなくなってないか。なんで?」
くちびるが動く。無表情に。
――今日だけで5日分くらい喋ったから、もう声を出したくない。
ありえない理由だった。
こんな理由で話さないやつは日本に3人もいないだろう。
というか泉水しかいないはずだ。他にいたりしたら嫌過ぎる。
「泉水……お前ってやっぱ色々極まってると思う」
指摘すると、くく、とネコみたいに喉を鳴らして笑い、もう一度くちびるが動く。
――そんなやつを好きになっちゃうなんて、ゆーやは変わり者だね。
「ホント、惚れた弱味だ」
俺は苦笑して、泉水のくちびるをそっとふさいだ。
以上で終了
純愛なんだけど、快楽でわけわからないという「純愛堕ち」みたいなのが好きで、それが反映されました
無口っぽさが減退したのがアレですが・・・
またネタを思いついたらお世話になります
GJ! とっても良かったです!
やはり無口な娘はエロエロなんですな! おかげで俺の股間は最高にクライマックスだぜ!!
GJ
良いねぇ!!
興奮して眠れねぇよ
GJ!!
余計なことかもしれないがお互いの親同士の関係はどうなってるか気になった
GJ
いやいや、もう最高でしたよ
GJ!!
依存スレ的でもあると思ったが、ここに投下されたというのも神の思し召し。
436 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 22:08:56 ID:9CQzl9x+
良スレage
GJ!超GJ
まさか自分のアイディアがこんな良作になるとは思っても見なかった。
こんなに心温まるHを見たのは初めてだ!
TH、THセセセンキューー!
GJ!!!!
「俺は泉水の最初の男だ。そんで、……絶対、最後の男だからな」
↑名言。
読んでて泣きそうになった。蝶・良い意味でw
無口萌
443 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 06:46:35 ID:BqF9h4ac
『縁の糸、ゆかりの部屋』
明日から夏休みという日、終業式を終えて、俺は帰路についていた。
学校が午前中のみだったため、太陽はまだかなり高い位置にある。真上からの熱波が髪を照り付けて、じりじりと痛い。蝉の鳴き声がどこまで行っても響いている。
「もし」
暑さにため息をついていると、そんな短い声が耳に入った。聞かない声だったが、反射的に俺は立ち止まって後ろを振り返る。
そこには、知らない女の子が立っていた。
すげえ美人だった。
整った顔立ちはまるで御伽噺から出てきたかのようだ。ポニーに結った栗色の髪が柔らかく映える。肌は日向にいるのがもったいないくらい白かった。
しかし俺はその美人に向き合わなかった。声をかけられる覚えがなかったからだ。誰か他の奴に対しての呼び掛けだったのだろうと、俺は再び歩き出し、
「もし。あなたですよ」
少女が俺に近付いてきた。
「……え、俺?」
俺は目を丸くする。声をかけられる覚えはまったくないのだが。
「どこかで会いましたっけ?」
「いえ、初対面です」
だよな。こんな美人に一度でも会ってたら忘れるはずがない。
「えっと、なんか用?」
「いえ、あの用と言いますかその……」
少女は困り顔で口ごもる。なんだこの女。
頭の中で言葉をまとめ終えたのか、少女は意を決して口を開いた。
「あのですね、」
「はあ」
「あなた、大切な縁が切れかかってますよ」
「はあ?」
いきなり何を言い出すんだ。縁?
「親しい人、近しい人に少し注意を向けないと駄目ですよ。失ってからでは遅いですから」
「…………」
これは、つまりあれか。宗教的なキャッチか何かか。
正直げんなりした。急に美人が声をかけてきたと思ったら、よくわからない説教をぶたれるとは。どこの教えだ。
「悪いけど急ぐんで」
俺は殊更にそっけなく言うと、小走りにその場から立ち去った。いちいち相手にしてられるか。
「ああ、待ってください。あと一分だけっ」
「なに」
眉間に皺を寄せて、俺はまた振り返る。
すると、少女は右手の人差し指をびっ、と突きつけてきた。
なにを、と思ったのは一瞬で、俺の目は至近に迫った真っ白な指に釘付けになった。
頭のどこかで、ネジが外れるような音が聞こえた気がする。何かのスイッチがオンになったような。
はっと気付くと、少女の姿はどこにもなかった。
立ち尽くす俺を、周りの通行人が怪訝そうに見ている。
「…………」
俺はなんでもないような顔を取り繕い、歩行を再開した。
なんだったんだ、今のは。軽く困惑する。あの少女は何がしたかったんだ。キャッチじゃなくてただのサイコさんだったのか?
俺は家に着くまで、釈然としない頭を捻っていた。
444 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 06:48:25 ID:BqF9h4ac
俺は見知らぬ部屋の中にいた。
フローリングの小さな部屋は六畳ほどで、よく整頓されていた。勉強机とベッド以外には特に目につくものはなく、寂しい様相だった。
だが、俺はその物寂しい空間をなぜか懐かしく感じた。
テレビで田舎の風景などを見て感じるあやふやな懐かしさではない。はっきりした記憶はないが、俺はこの部屋を知っている。
机の横の壁に、スライド型の扉がついていた。押し入れのようだ。俺はなぜかその中が気になって、取っ手に手をかけた。
扉を開けると、女物の上着や学校の制服が吊されていた。種類は少なく、そこも物寂しい。下にはプラスチック製の衣類ケースが重ねてあって、透明なケースの中には夏物の服や下着が入っていた。
そして、ケースの上。
ハンガーに吊された衣服と段ケースの間にある空きスペースには、たくさんのぬいぐるみがあった。
いぬ、ねこ、たぬき、ひつじ、ぞう、くま、きりんにらいおん。かわいらしいどうぶつたちが所狭しと並んでいる。多少古びてはいたが、保存状態はいい。
押し入れに入っているところを見ると、飾っているわけではなさそうだ。デフォルメされたキャラたちは愛くるしく、それ故に物寂しい押し入れの中では異質に感じた。
ぬいぐるみには見覚えがあった。昔はよくこれを使って遊んだものだ。
はっきりと思い出す。ここはあいつの部屋だ。昔、よく遊んだ幼なじみの。
すぐにはわからなかったのも当然だった。昔はもっと物があり、雑然としていたはずだ。それが逆に落ち着いた生活感を出していたのだ。
この部屋は本当にあいつの部屋なのか。こんな何もない無機質な空間で、寂しくないのだろうか。俺は嫌だ。この部屋には、あいつの色がない。
無色に染まった部屋の空気にあてられたかのように、俺の心が熱を失っていく。なんで俺、こんな所にいるんだろう。
最初に浮かんで然るべき疑問が頭をよぎった瞬間、部屋のドアが静かに開けられた。
よく見知った幼なじみの少女が現れたとき、俺は落胆したのだと思う。どこかでこの部屋が、こいつのものではないことを望んでいたから。
少女はパジャマ姿だった。薄い布地に体のラインがはっきりと出ている。一番仲がよかった小学生時代とは違う、成長した女性の体だった。
幼なじみの顔がにこりと微笑んだ。その笑顔だけは昔と変わらないように見えた。
俺は彼女の名を呼ぶ。
ゆかり……
幼なじみは微笑を深め、ゆるやかに小首を傾げた。こちらの呼び掛けに対する返事のつもりかもしれない。そのまま悠然とした足取りで近付いてくる。
俺が動けないでいると、幼なじみは体を預けるように抱きついてきた。突然の出来事に俺は硬直する。
勢いで一気にベッドに押し倒された。
状況を把握する前になじみの顔が視界を覆った。唇が温かい熱に包まれ、密着した体の感触が脳を刺激する。
唇がゆっくりと離れた。彼女は妖艶な目で、俺を見つめてくる。意識が別の次元に飛んでしまいそうなほどに揺れた。
違う。俺は彼女に向かって首を振った。俺はこんなことがしたいんじゃない。
彼女はそんな俺を無表情に見下ろす。少しだけ、目の奥に寂しそうな陰が見えた。
幼なじみは俺の首筋に唇を寄せた。キスの雨を降らせながら、俺の服を脱がそうとシャツのボタンに手をかけてくる。
目眩がしそうな光景に俺は我慢が出来なくなり、彼女に向かって叫んだ。
445 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 06:52:45 ID:BqF9h4ac
「ちょっと待て────っっ!!」
叫んだ声がびりびりと響き渡った。
反射的に跳ね起きた。上体を一瞬で起こして周りを見回す。
……俺の部屋、だった。
心臓の鼓動が呼吸を急かすように高鳴っている。身体中、寝汗でびっしょり濡れていた。俺は気を落ち着かせようと、呼吸をゆっくりと元のペースに戻していく。
「……夢かよ」
俺はベッドの上で上半身を前へと倒した。前屈体勢で、頭が膝につく。いきなり曲げたせいか、少し腰が張る。
夢の内容を思い出す。臨場感のあるリアルな夢だったが、よりによって幼なじみに襲われる内容とは。欲求不満なのか俺。
しかし、なぜあいつが出てきたのか。しかもあいつのらしき見知らぬ部屋で。あんな部屋は記憶にない。
『親しい人、近しい人に少し注意を向けないと……』
昨日聞いた言葉が思い出された。ひょっとして、あれが原因だろうか。あの言葉で不必要に幼なじみを意識してしまった、とか。
自己嫌悪に襲われた。夏休みの始まりとしては最悪だ。
窓の外ではもう太陽がとっくに顔を出しきっていた。枕元の携帯をひっ掴むと、時刻は九時を回っていた。
俺は大きなあくびとともに立ち上がる。さっさと朝食にしよう。考え事なら後でいくらでも出来る。俺は部屋を出て、階下のダイニングへと向かった。
ダイニングには誰もいなかった。
親父はもう出勤している時間なのでいないのは当然だが、妹の真希(まき)の姿も見えない。朝一番に朝食の支度をするのが日課なので、もうとっくに起きているはずだが。
(二度寝か?)
そう思った直後、背後から冷ややかな声がした。
「動くな、沢野正治(さわのまさはる)」
名を呼ばれ、硬直する。背中に何か鈍器のようなものが押し付けられる。
「おい……」
「喋るな。痛い目に遭いたくなかったらじっとしてろ」
脅しをかけてくるその声は台詞の内容にそぐわない、高い声だった。
「夏休みという素晴らしい期間を得たにもかかわらず、なぜ貴様は平然と惰眠をむさぼっていられるのかね?」
「おいって」
「命が惜しかったら家事を手伝え。ダメ人間だが妹の手助けくらいは出来るだろう」
「わかったから」
俺はうんざりして後ろを振り向いた。
すると、額を何かで叩かれた。
「てっ! なにすんだよ」
軽くこつんと叩かれただけなのにかなり痛かった。俺は声の主をにらみつける。
沢野真希は白い歯を見せてにこやかに笑った。手には木製の太い手打ち棒が握られている。今のはこれか。
「おはよう、マサ兄」
「お前、いきなり何を、」
文句を言おうとしたらまた叩かれた。
「〜〜〜〜っ!」
「お・は・よ・う」
怖い笑みをぐい、と近付けてくるので、俺は渋々挨拶をした。
「……おはよう」
「はいよく出来ました」
楽しそうに頷く真希。
俺はため息をつく。こいつには今のように、俺をからかうくせがある。本人はスキンシップと思っているようなので始末におえない。
もっとも学校では優等生で通っていて、家でも家事全般を取り仕切っているので、自慢の妹でもある。沢野家が健康で文化的な最低限度の生活を保証されているのは、憲法ではなく妹のおかげだった。
俺はテーブルの椅子に座ると、額をさすりながら真希に訊いた。
「何やってたんだ?」
「ピザ作ってたの」
さっきの手打ち棒はそのためか。
「……って生地から作るのか? ピザの台なんて店に売ってるだろ」
「そんなのおもしろくないじゃない」
真希は当たり前のように答える。ラップで蓋をしたボウルから生地を取り出し、まな板の上に広げた。
「厚くする? それとも薄くのばす?」
「どう違うんだ?」
「厚くするとモチモチとしたパンの食感。薄くのばすとパリパリとしたビスケットの食感」
「……厚く頼む」
「却下。薄くのばしまーす」
「じゃあ訊くなよ!」
朝から疲れる。ただでさえ夢のせいで寝覚めが悪いというのに。
446 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 06:58:19 ID:BqF9h4ac
「マサ兄、早く顔洗ってきたら?」
そうだった。顔を洗って気持ちを切り替えよう。
「ついでにさっさと着替えてくること。脱いだ服は洗濯機に入れてね。にぃので最後だから。あと、ベッドのシーツも一緒にお願い」
テキパキと指示を飛ばしながら、生地をまな板の上で展げていく。手際のいいことだ。
「寝汗かいたからシャワー浴びてくる」
俺は席を立ち、着替えを取りに二階へと戻った。
シャワーを浴び、服を着替え、歯をみがき、洗濯機を動かした。
それなりにすっきりして戻ると、テーブルには大きなピザが現れていた。
「早いな」
「発酵させるのに時間がかかるんだよ。にぃが起きたときにはもうそれは終わってたから」
真希は四角いピザを丁寧に切り分け、俺の皿に寄越した。溶けたチーズがトマトソースとサラミにからんで実にうまそうだ。
口にすると、もちっとした食感が歯応えよく全体に広がった。……薄くないぞ。
「お父さんにも作ろうかと思ったんだけど、朝からそんなもの食えるか、って言われちゃった」
話しながら真希は俺の向かい側に座り、自分の皿にも一切れ載せた。
「やっぱり年とると胃がもたれたりするのかな。私たちみたいに若ければ問題ないけど……」
「お前さ、全然素直じゃないな」
俺が言うと、妹は目を丸くした。
「え、なんで?」
「生地厚いから」
「厚いのがいいって言ったじゃん」
「却下された覚えがある」
「上院で否決された議題は下院で可決されましたー、パチパチ」
「なんだそりゃ」
わかりにくい表現をするな。
「まあ、このあとにぃにはいろいろ手伝ってもらうことがあるから」
さらりと言われた。俺は警戒を強める。何させる気だ。
「たいしたことじゃないよ。家事を手伝ってもらうだけ。さっきも言ったでしょ」
「拒否権は?」
「沢野家の辞書にそんな言葉ありません。だいたい、『わかったから』ってにぃ言ったよね?」
「……」
言ったっけ。
「食べ終わったら早速動いてもらうから。まずお風呂の浴槽を……」
俺は億劫に真希の言葉に頷く。
まあ、普段こいつには苦労かけてるし、別にいいか。
しんどい。
風呂場、トイレ、玄関と汚れやすい場所を掃除させられた。手を抜くと真希に手打ち棒で太股の内側を叩かれる(地味に痛い)ので、出来るだけ真剣に掃除した。
おかげで掃除をきっちり終えることが出来た。だいぶ筋肉を使っていなかったので、手や腕がぱんぱんに張った。
真希は俺が受け持った三カ所以外の掃除を全て行い、きっちりと四時間で片付けた。間に洗濯物を干したり昼食の支度をしたりと、俺には考えられない手際のよさだ。
時計の針が午後一時を回った頃、ようやく遅めの昼食をとった。ご飯、味噌汁、ほうれん草のおひたしにあじの塩焼き。真希にしてはシンプルなメニューだった。
「ごはん食べ終わったら買い物付き合って」
「どこまで?」
「駅前。今日スーパーのお肉半額だから。他にもいろいろ買うから荷物持ちよろしく」
「了解」
もう今日は一日付き合ってやろうと思う。今更ぐーたらも出来ないし遊びに行く気もなかった。
447 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 07:03:06 ID:BqF9h4ac
俺と真希は駅前までの道をのんびりと歩いていた。時間にすれば大体十五分くらいかかる。
風が吹いているので昨日よりは涼しげである。太陽は無慈悲に照り付けてくるが、雲が時折隠してくれるのでなかなかに快適だった。
「そういえばにぃ」
何か思い出したのか、真希が口を開いた。
「ん?」
「朝さー、急に叫んでどうしたの? 『ちょっと待て────っ!』ってなに?」
俺はぎょっとした。
「聞いてたのかよ」
「だってすっごく大きな声だったんだもん。近所迷惑もいいところよ」
マジか。あの時は気にもしなかったが、そんなにでかかったのか。
「何か悪い夢でも見たの?」
「あー、いや、その」
俺は説明に困る。なんというか、かなり恥ずかしい内容だったので。
「……実はさ、ゆかりが出てきたんだ」
「ゆかりさんが?」
真希は驚いたように俺を見る。
「あいつの部屋みたいなところになぜか俺がいてさ、ゆかりが出てきた」
「それで?」
「それだけ。あいつなんにも喋らなくて、わけがわからなくなって、叫んだところで目が覚めた」
本当はもうちょっといろいろあったが、絶対に話したくない。
小野原ゆかりは幼稚園来の幼なじみである。
家も近く、小学生の頃くらいまでは互いの家を行き来する仲であった。一緒にいて楽しかった思い出が強いので、昔の記憶の中にはあいつの姿が多く存在している。
それが疎遠になったのはいつの頃からだろう。あいつの父親が再婚した小六くらいか、それとも地元とは別の私立中学へと進学が決まった頃か。いずれにしろ、中学に上がる前には齟齬が生まれていたと思う。
全寮制の中学に行ったため、もう三年以上会っていない。高校は自宅から通える場所にしたみたいなので、今は戻ってきているはずだが、会う機会がなかった。仕方のないことだと、俺の中では結構整理がついていた。
真希はうーんと考え込む。
「やっぱりさ、それってにぃがゆかりさんを意識してるってことかな」
「はあ?」
「好きなんでしょ? ゆかりさんのこと」
からかいの目を向けてくる妹に、俺は小さく笑った。
「昔は、な。前は間違いなく好きだった」
「……今は違うの?」
「嫌いになったわけじゃない。けど、はっきり好きだとは言えなくなった」
「気持ちが薄れたってこと?」
「かもしれない。離れすぎてしまったしな」
真希は少し残念そうな顔をした。
「ゆかりさん、ちょっとかわいそう」
「……俺が悪いような言い方はやめろ」
「でもさ、にぃの横に立つ人なんて、ゆかりさんしか想像できないんだもん。他に好きな人とかいるの?」
問われて、しばし考える。クラスにはかわいい子も結構いたが、特別な感情はない。
「いない、かな」
「じゃあゆかりさんをもう一度好きになればいいよ」
「お前そんな簡単に……大体ゆかりがどう思ってるかもわかんねえだろうが」
「前に聞いたことあるもん。ゆかりさん、にぃのことが好きって言ってた」
「何年前だよ」
真希は返答に窮して口ごもった。
もう一度詰めて訊く。
「ほら」
「……五年前」
思わず苦笑が漏れた。小五のときかよ。
「ま、過去のよき思い出と受け取っておくよ」
俺は軽い口調で頷いた。
448 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 07:04:43 ID:BqF9h4ac
恋しさを覚えるにはちょっと時間が経ちすぎてしまったのだろう。想いを抱こうにも、相手は側にいないのだから。
真希は不満げに顔をしかめる。何を期待しているのやら。
「今も好きかもしれないじゃない、ゆかりさん」
「だといいな」
薄い反応を返す。真希は頬を膨らませた。
「ていっ」
いきなり爪先ですねを蹴られた。
「いっ! おまっ、なにを」
「ムカついただけ。心配しないで」
「そうじゃねえだろ! なに怒ってんだよ」
「夢にまで見るくせになんでそんなに淡々としてるのかわからないんだもん。それってちょっと寂しい」
俺は口をつぐむ。真希の心情が伝わってきたからだ。
多分、こいつは今でもゆかりのことが好きなのだろう。同学年の友達よりも、二つ上の彼女の方がずっと近い存在だったから。
なんとなく、真希の頭をくしゃくしゃと撫で回してみる。
「な、なに?」
不意の動作に、真希は珍しく戸惑いの顔を見せた。俺はその顔に微笑みを返す。
「帰りになんか好きなもの買ってやるよ。考えとけ」
かなり驚かれた。
「いいの?」
「ああ。いつも苦労かけてるし、俺にはそれくらいしか出来ないからな」
「……ごめんね、変なこと言って困らせて」
「気にすんな。いつかまた、あいつと仲良く出来る日が来るよ。今はタイミングが合わないだけだって」
俺がもう一度頭を撫でてやると、真希は恥ずかしそうに笑った。
駅前のスーパーに入ると、真希は真っ先にお肉コーナーへと向かった。
ほとんどのお肉パックに半額シールが貼られており、真希は豚肉をあさりまくる。牛肉を選ばないのは予算が決まっているからだろう。半額でも牛肉は高かった。
他のコーナーも一通り回り、魚、野菜、醤油等の調味料をかごに入れた。レジに向かい、精算を済ませる。
スーパーを出たところで俺は真希に尋ねる。
「で、何にするか決めたか」
「ちょっと待って。今考えてるから」
「早くしろよ。正直きついんだから」
両手に提げる荷物の重さに辟易しながら促す。真希はうーんと唸っている。
「あ」
急に短い声を上げたので、決まったのかと横を振り向くと、
「にぃ、来て!」
いきなり腕を引っ張られて俺は転びそうになった。
「な、なんだよ、どうした」
「ゆかりさんがいた」
その短い返答は予想外で、息が詰まった。
「会うのか」
「会いたくないの?」
問われてわずかに逡巡する。急にそんなこと、
が、真希はそんな躊躇さえ許してくれなかった。強引にぐいぐい引っ張られていく。荷物を持っていてはろくに抵抗も出来ない。
諦めて真希に従う。俺は小走りに真希についていった。
目の前に広がるは駅前の交差点。
俺の視界に制服の後ろ姿が映った。真希が追い付いて声をかけると、少女は驚いたように首をすくめ、振り返った。
久しぶりに見たゆかりの姿は、夢の中に出てきたものと全く同じだった。
ゆかりは突然現れた真希の姿に戸惑った様子だったが、やがて俺の姿を確認すると、小さく呟いた。
「まさくん……」
久し振りに愛称で呼ばれたためか、一瞬昔に戻った気がした。
449 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 07:10:28 ID:BqF9h4ac
真希の提案で、俺たちは近くのファミレスに入ることにした。
今日はにぃの奢りだから、と真希は支払いを俺に命じた。好きなものを買ってやると言った以上、それには従うしかない。
適当に飲み物やデザートを注文すると、真希が勢いよく話し始める。
「いやー、でもまさかあんなところでゆかりさんに会うとはねー」
ゆかりは小さく微笑んだ。
「私も驚いたわ。本当に久し振りね、真希ちゃん」
「制服着てるけど、ゆかりさんは学校帰り? 夏休みまだなの?」
「ううん。もう夏休みだけど、補習を受けるために登校しなきゃならないの。日曜日とお盆休み以外は全部学校」
それを聞いて、真希はうわ、と声を上げた。
「進学校ってそんなに大変なの!? うちのにぃなんて初日からおもいっきり眠りこけてたのに」
「やかましい」
ゆかりはくすくすと笑った。
「ところで今日はお買い物?」
「お肉の特売日だったの。今日はにぃの好物を作ってやろうと思って」
「豚のしょうが焼き?」
「あ、覚えてたんだー。ゆかりさんは何が好きだったっけ。カレー?」
ゆかりは頷く。確かゆかりは辛いのが苦手なので甘口が好みだったはずだ。
「にぃも会話に入りなよ。せっかくゆかりさんに会えたんだから」
「ん? ああ、そうだな……」
俺は曖昧に返事をした。
「なに、その不抜けた声は」
「いや、何話したらいいか、わからなくて」
「なんでもいいじゃない。学校のこととか、自分の近況とか」
「と言われてもな」
俺がはっきりしない態度でいると、目くじらを立てられた。
「もう! ゆかりさんと会えてにぃは嬉しくないって言うの?」
「そんなこと言ってないだろ」
「とにかく、気まずそうな態度をやめること。私、ちょっとお手洗いに行ってくるから」
一方的に告げられて俺は鼻白む。言い返す前に真希はさっさと席を立ってしまった。
ゆかりがおかしそうに笑った。
「真希ちゃん、相変わらずだね」
「まったく、少しはしとやかさを身に付けてほしいもんだ」
「でも、私はあんな元気な真希ちゃんが好きだよ。私はあんな風には振る舞えなかったから……」
「……」
懐かしそうに言うゆかりの目には、どこか憧憬のような光が映っている。
「変わったな」
「え?」
何とはなしに呟くと、不思議そうな顔で見返された。
「前はさ、もっと無口だったろ、ゆかり」
ゆかりは小さく眉を上げた。
「苦手だっただろ、人と話すの」
「……うん、そうだね。だから私、あんまり友達いなかった。けどまさくんと真希ちゃんは私の言いたいことわかってくれたから、二人と遊んでるときは一番楽しかったよ」
「クラスでは俺が通訳みたいな感じだったからな」
そうなのだ。かつてのゆかりは無口すぎて、会話さえまともに行うのが困難だったのだ。
俺が橋渡しをすることで、辛うじてクラスメイトとの交流を果たしている状態だったが、俺もよくゆかりのことを理解できたものだ。
450 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 07:13:31 ID:BqF9h4ac
「でもよかった。元気にやってるみたいで」
俺は素直にそう思った。違う学校で問題なく過ごせるかどうかというのは、詮なきこととはいえ、やはり気になることであった。
ゆかりは何も答えなかった。ただ俺の顔を見つめてくるだけである。
別に変なところはなかったと思う。なのに、なぜか俺はその顔に違和感を覚えた。
「……どうした?」
「え?」
「いや、なんか微妙な表情だったから」
「……ううん。昔を思い出してただけ。なんか、懐かしくなったから」
ああ、と納得する。こうしてまともに話すことも久方振りだし、感慨深くなるのも当然かもしれない。
「なあ、これからもさ、こうやってちょくちょく会えないかな。前みたいにさ」 来るときに交していた真希との会話を思い出しながら、さりげなく提案してみる。
「……忙しいかも」
断られた。
「……そ、そうか」
心の中で舌打ちをする。進学校を恨むぞ。
「仕方ないか。昔とは違うんだもんな」
「……会えないとは言ってないよ」
「……」
思わずゆかりを見返す。
「えーと、つまり……」
「時間あるときなら、いいよ」
おずおずと答える。その挙動は昔とあまり変わらない。
忙しいと言いつつも頷いてくれたゆかりに、俺は嬉しくなった。俺たちのことを、前と同じように大切に想ってくれているように感じた。
「……ありがと、な。少しでも会えるとさ、真希も喜ぶから」
「……まさくんは?」
「へ?」
「まさくんは……喜んでくれないの?」
「……馬鹿。喜んでるよ。嬉しいに決まってるだろ」
ゆかりはそれを聞いてくすぐったそうに微笑んだ。
そのあとすぐに真希が戻ってきて、次いで注文の品が届いた。俺たちは互いの近況や昔の思い出を語り合いながら、約二時間を過ごした。
携帯電話の番号とメールアドレスも交換し、また俺たちは接点を持とうとしていた。
前とは互いに変わってしまったかもしれない。もう小学生じゃないし、学校も違うし、彼女はもう無口じゃない。俺が共にいてやる必要さえ、ない。
それでも一緒にいようとすることは、会おうとすることは決して悪くないと思った。こうして久し振りに会っても、前と変わらずに接することが出来たのだから。
そう、考えていた。
451 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 07:16:40 ID:BqF9h4ac
俺はまた、あいつの部屋にいた。
なぜ、という当然の疑問に頭は答えを出せなかった。明るい蛍光灯の光に照らされた小さな空間内で、俺はただぼんやりと立ち尽くす。
ふと、外が気になった。
ベッドの横の窓は薄茶色のカーテンに覆われている。俺は窓に歩み寄り、カーテンに手をかける。
布一枚に隠された向こう側には何か得体の知れないものが存在しているのではないか、などという子供じみた想像が背筋を舐めるように生まれたが、それでも意を決して開けた。
窓の外には、暗い闇が広がっていた。
夜、という考えに埋没しかけて、慌てて否定する。そんなはずがない。外には明かりどころか、何かあるときに多少なりとも感じる、物体に対する気配さえなかったのだ。
何もない。この世界にあるのはこの部屋だけで、それ以外は何もなかった。黒いマジックで塗り潰されて、部屋以外の存在を否定されたかのような世界。
これは多分、本当に必要なものだけ用意しているからだろう。この世界に必要なのは、この部屋だけなのだ。なぜなら、この部屋は彼女と会える場所だから。
果たして、少女は現れた。
ドアを開けて前回と同じように俺に抱きついてくる。俺は抵抗しない。前と違い、戸惑いも焦りもなかった。彼女に強く触れたいと思った。
俺は少女の名を呼ぶ。
幼なじみはにこりと笑んだ。俺がかつて好きだった笑顔。
いや、今も好きなのは変わらない。でも今のあいつはもう違う。昔のあいつとはもう違う。
なのに、目の前の彼女は変わらない笑顔を見せてくれる。姿は成長した状態なのに、中身だけが昔のままだ。
それはひょっとすると、俺が望んでいた姿なのかもしれない。
少女は俺の顔を至近で見つめる。とても、嬉しそうに。
服を脱がされた。抵抗はしない。好きなようにさせる。シャツがはだけて上半身が現れる。そのままベッドに押し倒され、一気にズボンも下げられた。
まるで躊躇がない。顔は熱っぽく爛々と輝いている。随分積極的だった。さすがにこんな様子の少女は見たことがない。
下着をずらされ、外気に触れた逸物は、既に屹立していた。幼なじみは舌を這わせると、口腔内にあっという間に飲み込んでいく。
凄まじい快感が全身を駆け抜けた。電気椅子で処刑されるような、身動きできない不自由さ。しかし、襲ってくるのは苦痛ではなく、圧倒的な快楽の痺れだ。
この、誰もいない世界の中なら、彼女に何をしてもいいという意識は少なからずある。
一方で彼女に対して申し訳ないという意識もあったが、目が合うとそんな思考は波にさらわれるように流されてしまった。彼女の目が、遠慮はいらないと妖しく告げていた。
性器が口の中に埋まっている。激しい往復が繰り返されるたびに、ざらつく舌と生暖かい体内温度が強く射精を促してくる。
二人っきりの世界の中で、我慢という意識はあまりに薄弱だった。
魅惑的に赤い唇が蛭のように根本に吸い付き、唾液が棒全体を溶かすようにぬめらせる。それはまるで、痛みのない消化液。
苦しくないのだろうか、と心配の目を向けると、彼女は男根から口を離し、俺を真っ直ぐ見つめてきた。
顔を見るだけで心の裡が全てわかったときがあった。
今もそうだった。彼女が無口だった頃のように、考えていること、言いたいことが皮膚感覚だけで、伝わってくる。
言葉を持たなかった頃の人間も、きっとこんな風に意思の疎通を図れたのではないだろうか。言葉がなくても、人は理解しあえるのかもしれない。
452 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 07:19:23 ID:BqF9h4ac
彼女がもっとと目でせがむ。もっとしたくて、もっとされたくて、少女は自身の衣服を剥ぎ取っていく。
俺たちは互いに裸身をさらし、抱き合った。
温かい抱擁と優しいキスを贈り合う。こんなに綺麗な体を、俺は今独り占めしている。
手を伸ばす。相手の股間はもう濡れていて、今すぐ突っ込んでも何も問題ないかのようだった。
指を入れると、彼女は身を固くした。俺は大丈夫と囁き、そのまま内襞を撫でるように中に侵入する。
指の腹でゆっくりと擦ってやると、少女の体が震えた。緊張ではなく、快感が襲っているのだろう。顔に陶酔の笑みが浮かんだ。
強めに指を動かすと、彼女の腰が跳ね上がった。首筋にしがみつきながら、体をぶるぶる震わせている。俺はそれを見て遠慮なく刺激を送り込んだ。粘った感触が指にまとわりつき、スムーズに中をなぞれた。
間断なく擦り上げていくうちに、彼女の目は泣きそうなくらいに揺れていった。絶頂はすぐそこまで来ているのかもしれない。俺は慌てて指を抜いた。
彼女は困惑げに俺を見やった。不満顔に、俺は頭を撫でてやる。
俺は彼女の上に被さると、秘所目がけて下半身を突き立てた。彼女は嬌声を上げ、しがみついてくる。
初めて、という思いが頭をかすめた。しかし少女は、快感に打ち震えた喜色の声だけを発している。遠慮はいらないか、と俺も激しく腰を動かした。
先程イキ損ねたせいか、幼なじみの腰遣いは俺よりも凄かった。負けじと全力で動く。締め付けが一気に強まった。
往復を重ねていくと、彼女は半ばイキかけていた。どうやらあまり余裕がないようだ。俺も抑えることなく神経を傾ける。一歩先にある快楽の到達点を目指して、膣口の中をぐちゃぐちゃに掻き回した。
俺は高まった絶頂感に身を委ね、精液を奥へと放出した。子宮の壁にぶつけるように腰を押し付け、熱のこもった液体を丁寧に擦り付けていく。
彼女は荒い呼吸をなんとか落ち着かせようとするが、口が喘いでうまくいかない。絶頂の波が意識を吹き飛ばしているようで、膣だけが絶え間なく蠕動していた。
なんて気持ちがいいのだろう。
ずっとこのままでいたいという思いが体を覆い、安心感の前に力が抜けていく。
少女が力なく微笑んだ。
互いに弛緩しきった体で抱き合うと、俺たちはどちらからともなく安心の口づけを交し合った。
目が覚めたとき、下半身に違和感があった。
冷たい肌触りにはっとなって、トランクスの中を探る。
粘り気のある冷めた液が指先に絡み付いた。
「…………」
夢の中の快楽劇とは打って変わって、俺の気分は一瞬で落ち込んだ。
夏休みに入ってから一週間。
ともすれば堕落しきってしまいそうな休みの日々は、妹の指導によってまあまあ健全な方向へと進んでいた。朝が遅いのはともかく、三食きちんと食べて、夜更かしもしない。家事も出来る限り手伝うし、無駄に遊んで時間を浪費することはなかった。
453 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 07:23:16 ID:BqF9h4ac
その日、俺は病院を訪れていた。
母親の見舞いのためである。母親は長いこと入退院を繰り返していて、入院しているときも出来るだけ俺たちは会いに行っている。当の本人は自分たちの時間をもっと持ちなさい、と言うが、母親との時間を過ごすのは俺たちにとって大切なことなのだ。
病室に入ると、母さんはすぐに気付いて手を上げた。優しい笑顔に俺も軽く手を上げる。元気そうだ。
「真希は?」
「今日は連れてきてない」
「あら、なんで?」
「友達付き合いを優先させた」
真希は学校の友達と遊びに行っている。ただでさえ家事全般に追われて多忙な中、少しは友達と遊ぶことも大事だと考え、俺が無理やり行かせたのだ。
「いいお兄ちゃんね、正治」
「あいつの方が偉いよ。休みに入っても世話になりっぱなしだし」
「そういうところがいいって言ってるのよ」
「俺よりあいつを誉めるべきだと思うけど」
「誉め言葉は本人に直接言うものなのよ」
母さんのからかうような顔に俺は苦笑する。
花瓶の水を交換したり、洗濯物を紙袋に入れたりしながら、俺は尋ねた。
「体調どう?」
「まあまあ、かな。悪くはないわよ」
「どっか痛むところとか」
「大丈夫よ、前に比べたらかなりマシになってるんだから」
「マシって……嫌な言い方するな」
つい軽口をたしなめる。母さんはごめん、と素直に謝る。
六年前、母さんは買い物から帰る途中で、トラックに撥ねられた。
重傷で、母親は傷を治すのに一年を費やした。元々体が弱いこともあってか、完治した今でも後遺症に悩まされている。免疫力が低下しており、小さな風邪にも気を付けなければならなくなってしまった。
「とにかく、今は大丈夫なんだな」
「うん」
「それならいい」
母さんは嘘をつくことがないので、その短い返答でも俺は安心した。
「そういえば正治」
「なに」
「昨日ゆかりちゃんがお見舞いに来てくれたわよ」
「!?」
思いがけない話に目を剥いた。
確かにこの間ゆかりに会ったときに、母さんが入院していることは話していた。しかしまさか見舞いに来てるとは。
「高校は前よりも近くて、家から通えるようになったんだって。前は寮生活だったからよかったわねーって母さんつい嬉しくなっちゃった」
「聞いてないぞ。なんであいつが」
「なに言ってんの。昔からよく家に遊びに来てたんだから、ほとんどうちの子供みたいなもんじゃない。娘が母親の心配をするのは当然のことでしょ」
「小野原家ごと否定する気か。……そっか。ゆかりが……」
俺はため息混じりに一人ごちる。ゆかりらしい配慮といえばそうだが、忙しいくせにそこまで気を回さなくていいと思う。
「あいつと話したの?」
「うん。もー美人になっちゃってて! 進学校の制服もかわいいデザインだし、あれはモテるわねー」
「いや、それはどうか知らないけど……」
ちょっと身贔屓が過ぎるんじゃないか。確かに容姿が悪いとは微塵も思わないが、並より少し上くらいではないだろうか。美人というのは終業式の日に会った少女のような者にふさわしい言葉だ。
454 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 07:26:46 ID:BqF9h4ac
と、話題がそれた。聞きたいことはそれじゃない。
「あいつさ、変わったよな」
「え? どうして」
「え?」
不思議そうに問われて、逆に困った。
「いや、あいつ昔は喋ったりするのが苦手だったから」
「ああ、そういえばそうね。でもそんなに違うものでもないじゃない。今でもあの子はいい子だし、何も変わってないわよ」
「……そんなものかな」
いまいち納得が行かなくて首を傾げる。真希も同じようなことを言っていたし、変わったと思うのは俺だけなのか。
「ひょっとして、どう接していいのか悩んでいるの?」
母さんに尋ねられて、揺れた思考のまま頷く。
「そんな感じ。いや、別に昔みたいに親しくすればいいんだろうけど、なんか違うような気がして」
「あやふやね。それじゃちょっとアドバイスのしようがないかな」
母さんの口調は軽いが真摯な響きだった。
「でもね、昔とか今とかこだわらずに、相手に接することが大事だと母さんは思うわよ」
俺は黙ってそれを聞く。
「長年仲良くしてても、人間なんだからわからなくなることくらいあるわ。でもきちんと自分なりに相手と向き合うことが大切。人の頭の中は見えないけど、想いはちゃんと伝わるのよ。互いに理解し合おうとすれば」
「……」
まるで古い恋愛講座を聞かされている気分だったが、言わんとすることはわかった。
ようは迷ってもいいから逃げるな、そういうことだろう。向き合わなければ理解どころじゃないから。
少しだけ気が晴れた。俺は母さんに向かってありがとう、と呟く。
「あ、でも一つだけ注意」
そこで改まって指を立てられた。なに、と尋ね返すと、
「やっぱり淫らな行為は出来るだけ控えた方がいいわよ。するにしても避妊はしっかりね。母さんも父さんと付き合い始めた当初は、プラトニックなラブを育んでいたから……」
「…………」
俺は無言で帰り支度を始めた。
病院を辞してしばらく。
適温に保たれている院内とは違い、外は釜茹でされているみたいに暑かった。半袖シャツの内側にじわじわ汗が吹き出てくる。額も髪の間を抜けるかのように、水滴が流れていく。
アイスでも買っていくかと俺は近くのコンビニを探した。値段の安いスーパーかデパートが財布に優しくベストだが、この際どっちでも構わない。とにかく店を──
視線が固まった。
瞳の先に制服姿のゆかりが立っていた。
俺はうまく反応出来なくて、目を眩しそうにしばたく。
「まさくん……帰り?」
声をかけられて慌てて返事をする。
「あ、ああ。……ちょうど見舞いに行ってきたところで、今から帰る」
「ふぅん……一緒に帰ってもいい?」
「いや、どうせ方向同じだし」
それもそうだね、と肩口で揃えた黒髪がささやかに躍る。ヘアピンが控え目に前髪を固め、彩っている。
その姿はついこの間まで知らなかった幼なじみの成長の証で、女性らしい部分がくっきりと丸みを帯びている。夢の中でも彼女には会っていたが、その肢体は色っぽく、艶があった。
といっても、あれは夢の中なわけで。つまりは俺の妄想なわけで。
すまない、ゆかり。夕べ俺はお前に口では言えないいろんなことをした。
「まさくん? おーい……」
「……大体急に変わるからいけないんだよな」
「なにが?」
呟きにいちいち反応するが、無視する。てゆーか聞かないでくれ。
俺たちは並んで歩き出す。ゆかりの目線が昔より下にあった。
こうして仔細に渡って観察してみると、いくつもの発見がある。
背の高さ、歩幅の長さ、表情の豊かさ、言葉の巧みさ、それらは確かに幼なじみのものなのに、一つ一つに知らない何かが混じっていて、全てを掛け合わせると、目の前の成長した幼なじみの姿へと変貌を遂げてしまう。
「制服だけど、今日も学校か」
「うん」
「この道で会ったってことは、母さんの見舞い?」
「うん。ごめんね、連絡もしないで勝手なことしちゃって」
「いや、ありがとな。母さんも喜んでたよ」
「今日はまだ行ってないんだけど、……もうまさくんは行ってきたんだよね」
「昨日行ったんだろ。十分だよ。母さんもはしゃぎすぎるし。……そういえばアイス買おうと思ってたんだけど、ゆかりもいるか?」
「え?」
455 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 07:31:15 ID:BqF9h4ac
甲高い蝉の鳴き声に、暑さと汗が入り混じる。
ゆかりは細い裏道を指して、先に店があると言った。知らなかった情報に感心する。
民家の屋根瓦が、灰色のブロック塀が、ひび割れそうなくらいに日を浴びている。電柱は短い影しか落とさず、アスファルトの日除けにさえなってくれない。飛ぶことで涼しい風を浴びようとするかのように、雀が電線の上を通過していった。
本当に暑い。
でも、ゆかりはどこか楽しそうだった。
店に入ってバニラのカップアイスに喜び、店を出て夏の日射しの強さを嘆く。何気ない反応を当たり前のようにして、ゆかりは俺を惑わせる。
楽しげな振る舞いのどこに戸惑っているのか。自分でもよくわからない。
昔と違っても本質は変わらないとわかっているのに、俺は違和を感じている。なぜだろう。今のゆかりも、俺にとってはとても大事に想えるのに。
「……どうしたの、まさくん?」
横から覗き込んでくる小さな顔は、綺麗な笑みをたたえている。
……今のゆかりはこんなにも魅力的なのに。
俺は言葉なく首を振り、力ない笑みを返した。
そのまま変わらず歩いていると、ゆかりが足を止めた。
「ねえ、ちょっと休もっか」
「え?」
疑問の声には答えず、ゆかりは道の先を指差す。歩道脇に小さな公園の入り口が見えた。
先導する彼女の後を追う。公園内は寂れた様子で、どこにも子供の姿はない。チェーンの錆びたブランコが風に吹かれて緩やかに揺れた。日を照り返す砂場の色が微かに眩しい。
俺たちはブランコに座り、溶けそうな熱の中まだ溶けていないアイスを食べる。
「おいしいね」
「ああ。でもすぐに喉が渇くんだろうな」
「じゃあ次はジュースだね」
「帰って麦茶を飲むのがベストだ」
財布を軽くする提案を、やんわりと拒否。まあジュースくらい奢ってやってもいいけど。
ゆかりは小さく苦笑した。それから表情を改めて、
「まさくん」
「ん?」
「私といるの、気まずい?」
「……え?」
急に心臓を掴まれたような、そんな驚きを受けた。
「……なんで」
「ん、なんとなく、かな。まさくん、戸惑っているんじゃないかなって」
「それは、」
俺は言い淀む。
正直戸惑いはつきまとっていた。だが、気まずいなんてことはない。と思う。
「……多分、お前が変わったように感じて、それで違和感があるせいだと思う。でも気まずいなんてことはない。ゆかりはゆかりだし、俺や真希にとって大切な人であることは絶対に変わらない」
ゆかりは少しだけ、嬉しそうに口元を緩めた。
「変わりたくて変わったわけじゃないよ」
愛惜の影が僅かに差したような気がした。
「成績がいいってだけで私立の中学を勧められて、私もみんなの喜ぶ顔が見たくて、でも途中から理由が変わって、」
義母のことだ、と俺は瞬時に理解する。小学六年の時にゆかりの父親が再婚したが、無口なゆかりは義母との接し方に苦慮していた。
全寮制の私立中学に入ることで、ゆかりはそれから逃れようとしたのだろう。さらに三年間、ゆかりはこちらに戻ってこなかった。
「でもそのせいで、私はまさくんからも離れてしまった。まさくんは私にとって、誰よりも大切な人だったのに」
「……」
「まさくんに会いたいと思った。それでようやく帰ってきたけど、通う学校も違うし、どんな顔で会えばいいのかわからなかった。三年間は、ちょっと長すぎたかな」
「……」
「まさくんがいないということがわたしを変えた。積極的に会話するようになったし、友達も多く出来た。でも、まさくんにはその変化がおかしく映るのかな」
ゆかりは寂しそうに笑む。
「ごめんね。昔の小野原ゆかりはどこにもいないみたい。まさくんの隣にいた頃とは、もう同じじゃないから」
「違う」
俺はたまらなくなって、思わず叫んでいた。
ゆかりは驚いたように目をぱちぱちさせた。
「関係ないよ。さっきも言っただろ。昔だろうと今だろうとゆかりはゆかりだ。確かに困惑はあったかもしれない。でもこれからまた隣にいてくれるんだろ。同じかどうかなんてどうでもいいじゃないか」
ゆかりは微笑む。どこか諦めたように。
456 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 07:37:22 ID:BqF9h4ac
「隣には……いられない」
「え……?」
自分の口から漏れた声は、ひどく間抜けに聞こえた。
「まさくんは今の私を好きじゃないみたいだから」
錐を突きつけられた思いがした。
絶望的に平坦な声に対して、俺は無理やり答える。
「……好きだよ」
「うそつき」
簡単に断言されて、二の句が告げられなかった。
それでもなんとか言葉を紡ぐ。
「俺と一緒にいたくないのか?」
「そんなことないよ。ただ、昔みたいにお互い好き合っていられないなぁ、って」
「それでもいいだろ。昔みたいにいかなくても、一緒にはいられる」
「私が辛いの」
息が詰まった。
「戻ってきたら前みたいになれるとずっと思ってたから。でもこの間まさくんと会ったとき、それが幻だったことがわかって、それでもまさくんを見つめようとするのは……辛いの」
ゆかりは顔を伏せる。
「三年間待った想いって結局なんだったんだろう、って思えてきて、まさくんの側にいたら悲しくなってくるの。でもそれをまさくんのせいにはしたくないから」
自分自身が情けなかった。俺の態度がゆかりに悲しい思いをさせたかと思うと、許せないくらい悔しかった。
どうすればいい。どこかで壊れてしまった互いの関係を、どうやって直せばいい。
頭が真っ白になって何も考えが浮かばなかった。ただ歯痒く、幼なじみを見つめることしか出来ない。
容赦なく言葉が続いた。
「それにね、私も多分まさくんと同じ。今のまさくんを、前みたいにちゃんと好きかどうか、自信がない。だから、これからはただのお友達でお願いします、『沢野くん』」
決定的だった。
さっきまで仲良くアイスを食べていたのが嘘みたいで、間に出来た溝は底が見えないくらい深くて、
「……そうか」
結局気のきいたことも、逆転の言葉も吐けず、馬鹿みたいにうなだれるだけだった。
ゆかりがブランコから腰を上げた。申し訳なさそうな目で体を屈めると、俺の頬に唇を寄せた。別れのキスは、暑い日差しの中で微かに冷たかった。
そのままゆかりが離れていく。ブランコに座り込んだまま彼女を見つめる。姿が見えなくなっても、俺は立ち上がることすら出来なかった。
やがて茫然自失のまま帰路に着き、のろのろと家に帰った。
自分の部屋でベッドに倒れ込むと、様々な言葉が頭を横切った。
あなた、大事な縁が切れかかってますよ──
ゆかりさん、今でもにぃのこと──
きちんと自分なりに相手と向き合うことが大切──
これからはただのお友達でお願いします、『沢野くん』──
「……」
真希も親父もまだ帰ってきていない。ベッドの上で身じろぎ一つしないでいると、外の音が強く聴覚を刺激した。
蝉の鳴き声が聞こえる。隣家の雑談が聞こえる。車の駆動音が聞こえる。
なんて無駄な感覚だろう。こんなに鮮明に聞こえる耳なのに、彼女の心の声を拾えなかった。
あいつの想いにはずっと前から気付いていた。そこに甘えていたかもしれない。あいつはいつまでも俺を好いていてくれると、呑気に思い込んでいたから。
でも一番の問題は、俺があいつをどう思っているかだろう。
好きなはずだ。好きだと思う。きっと好きだ。胸の内を切り開けば、そんな中途半端な言い回しばかり出てくる。想いに混じる、微かな違和感。
この違和感の正体が掴めず、俺は迷っている。その迷いがあいつに伝わってしまったから、あんなことを言われたのだ。そして、恐らくはもう手遅れなのだろう。
「……」
体が気怠い。
なぜだろう。
泣きたいくらい悲しいのに、泣けない。一人なんだから思う存分涙を流せばいいのに、目にはなんの変化も起こらない。
「……」
もう、本当に何もかもどうでもいいという気がして、俺はベッドに沈み込むように脱力した。
その日の夜は早々とシャワーと食事を済ませ、自室に引き込もった。
不審に思ったのか真希がうるさく話しかけてきたが、俺は適当にあしらってとっとと寝床に入った。
457 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 07:40:19 ID:BqF9h4ac
また、俺は彼女を抱いている。
部屋は相変わらず殺風景で、俺たち以外に誰もいない。二人だけの世界の中で、淫靡に肉だけが絡み合う。
体を動かす度にベッドがリズムよく軋んだ。彼女は喘ぎをこらえているのか喉を震わせないようにしている。必死に耐えるその表情は可愛く、愛しかった。
形のいい胸が目の前で揺れている。吸い込まれるように手を伸ばし、白い果実の感触を楽しんだ。先端の方が感じるのだろうが、俺は揉む方に執着する。
肩口で切り揃えた髪が白いシーツの上で乱れる。体を小さく震わせて、唇を強く噛む。意地でも声を出さない彼女に向かって、俺は体当たりをするかのように腰をぶつけた。
声を出さないのは、彼女がそうしたいから。
俺は不満に思わなかった。声を出さなくても、言葉を繕わなくても、互いに顔を見合わせれば、思考も感情もなんとなく伝わるから。小さい頃から、ずっとそうだったから。
揉んでいた胸からようやく手を離し、俺は下半身に集中する。ストロークの長いピストンから短い往復に切り替える。絶頂へ向けて、奥に擦り込むように腰を押し付けた。
彼女は涙目になりながら小さく笑う。
たまらない。
愛しくて、楽しくて、嬉しくて。
気持ちよさの中に深く潜るように、俺は少女の体の中に意識を残らず傾けた。
陰茎が膣の奥で痙攣するように動き、大量の精を放出する。
彼女は必死で俺の体にしがみつき、快楽の圧力を受け止める。
注ぎ込んだ精と傾けた意識があまりに多く、そのまま体の力が抜けていく。でも、少しも辛くなかった。
真っ白に塗り潰されていく感覚の中、俺は彼女の寂しげな顔を見た気がした。
「にぃ! 聞いてるの?」
目の前に妹のアップ顔が現れる。俺は表情一つ変えずにトーストを頬張った。
テーブルを挟んで対面から顔を近付けてきた真希は、俺の反応のなさに拍子抜けしたのか、静静と椅子に腰を下ろした。
「むぅ……昨日からおかしいよ」
「……ああ、わるい」
「何かあったの?」
「ないよ。何も」
口から気力ない返事が出る。
「……」
「……」
朝のダイニングルームが沈黙に包まれた。
一晩過ぎても俺はこんな調子だった。
原因はわかっている。俺は自分自身に腹を立てているのだ。ゆかりを悲しませたということが悔しくて、情けなくて、しかしどうすればよかったのか少しもわからなくて。
こんなにも悲しくなっているのに、俺の心はまだぐずついている。一番大事なことを、まだ確信していない。
ゆかりのことが、好きなのか、嫌いなのか。
嫌いなんてありえないことはわかっている。だが自信を持って好きだとも言えない。
例の、違和感が、
「……」
ミニトマトを口に放り込む。みずみずしい酸味も、気が抜けているせいかどこか空事のように感じる。
458 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 07:44:16 ID:BqF9h4ac
「にぃ」
真希の呼び掛けに俺は顔を上げた。
「ごめんね」
「……なにが」
「ゆかりさんと、何かあったんでしょ?」
少し、心拍が速くなったような気がした。
「私には何も出来ない。だって、それはにぃとゆかりさんの問題で、二人の間でしか解決出来ないと思うから。でも……やっぱりちょっと申し訳なくて、だから……ごめん」
「……」
俺は真希をじっと見つめる。
「や……だからね、ちゃんと向き合ってほしいの。悩むのも、ぶつかるのも、二人にしか出来ないから。私は、」
「なんで変わっていくのかな」
真希の言葉が止まる。
「え?」
「昔はあんなに好きだったのに、どうして今、こんなに変わってしまったんだろう」
「……」
「あいつも、昔は俺のことを好いていてくれたんだ。でも、三年ちょっとでこんなに変わるものなのかって思うと、昔の想いってなんなんだろう、って」
「……わからないよ」
「俺もだよ。たかだか十年ちょっとじゃ理解出来ないのかもな」
わかっていたことではあるが、それでも悔しくなる。所詮俺はまだ高校に上がりたてのガキで、人の心を推し量るには積み上げてきたものが少なすぎた。自分のことさえまともにわかってはいないのだから。
「別にいいじゃない、そんなの。わからなくても、相手を好きなら、」
「そう思ってたけどな。ゆかりはそんな変化が許せなかったみたいだ。あいつは三年間俺への想いを積み重ねていてくれたんだ。でも、ゆかりの好きだった奴はこの街にはもういなかった」
時間が、かつての俺を消した。
「ゆかりに言われたんだ。もうお互いに好き合っていられない、って。ただの友達でお願いします、って」
「……」
「俺の方こそごめんな。お前が考えていた以上に、駄目な兄貴で」
「なんで? 相手を好きってだけじゃ駄目なの?」
「もう傷付けたくないんだよ、あいつを」
「……っ」
「だからもう、いいんだ」
俺はそれっきり何も言わず、黙って食事を続けた。
真希ももう何も言うことが出来ず、会話はそこで途切れた。
午後になって、俺は気分転換に出かけることにした。
真希は昨日行けなかった母さんの見舞いに行き、家には誰もいなくなる。俺は鍵をかけ、熱気に満ちた外の世界に足を踏み出す。
天気は昨日と同じく晴れていた。高気圧が馬鹿みたいに頑張っているせいだ。おかげで降雨量が少なく、全国的に水不足らしい。
別に行くあてがあったわけではない。ただ、家にこもっているよりも、外に出た方がマシかもしれないと考えただけだ。
見舞いについていこうかとも思ったが、こんな気分ではまともに見舞えるはずもない。逆に心配されるのがオチだった。
こんなに憂鬱な休みは初めてだ。
幼なじみに久々に会って、決定的な齟齬が生まれて、妹にも心配かけて、さらには妙な夢まで見る始末だ。
「……くそっ」
無気力の中にも小さな苛立ちが混じる。ストレスはたまる一方だ。
「荒れてますねー」
急にのんびりした声がかかり、俺は顔を上げた。
いつの間に現れたのか、一人の少女が目の前に立っていた。
栗色の髪をポニーに結った美しい顔立ちの少女。白のワンピースは薄い生地で、涼しげな印象を与える。大きめの瞳は清流のように澄んでいた。
俺はすぐに思い至る。終業式の日に会った、あの美少女だ。
「また会ったね、お兄さん」
明らかに同年代のはずなのに、年下のようなことを言う。俺は立ちすくみ、少女をぼんやりと眺める。
「もう一度会いたいって思ってたの。まあ会えるとは思ってたけど、縁が繋がっててよかったね」
わけのわからないことを言うのは、前と変わらないようだった。
しかし俺は、この少女に不思議と拒絶を感じなかった。
「悩みがあるみたいだね。私でよければ相談に乗るよ」
名前も知らない相手を、俺はただ見つめていた。
459 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 07:49:02 ID:BqF9h4ac
俺たちは近くの公園に入った。昨日も同じことをしたな、と考えて、ため息をつく。俺はなにをやっているんだろう。
奥のベンチに座ると、少女が明るい声で言った。
「私、依子(よりこ)。あなたは?」
「沢野正治。……苗字は?」
「え? あぁ、ごめんね。私ないの」
「……は?」
つい眉間が寄った。ない、とは?
「戸籍上はあるんだけど、それを名乗っちゃいけないの。私は落ちこぼれだから」
相変わらず意味がわからない。
「だから私のことは気軽に依子って呼んで。私もマサハルくんって呼ばせてもらうから……」
「あんた、何者なんだ?」
俺はなんとはなしに訊いた。曖昧な問いであることは自覚していたが、それが一番自然な形だったと思う。
依子と名乗った少女は、にこりと笑った。
「私にはね、人の縁が見えるの」
「……縁?」
初めて会ったときにも、確かその単語を口にしていたような気がする。
「たとえば……マサハルくん、最近大事な人と仲違いしたでしょ」
「え……!?」
まるでそれが当たり前のことであるかのような口調で、依子は言い放った。
「わかる……のか?」
「大体ね。その相手がどういう人なのかまではわからないけど、マサハルくんにとってとても大事な人だっていうことはわかるよ」
「……」
驚愕していた。
懐疑もあった。
だが、嘘をつく必要があるとも思えない。
あるいは洞察が優れているだけなのかもしれない。しかしただの女の子でないことは明らかだった。たとえ虚言や妄想が入っているとしても、侮れないおかしさだ。
「無遠慮でごめんね。マサハルくんはとても辛いのに、何も知らない私が触れていいことじゃなかった。ごめんなさい」
依子は顔を曇らせて頭を下げる。
素直で、とてもいい子だと感じた。
サイコには見えなかった。俺は初対面の時の失礼な感想を恥じる。
「縁が見えるって言ったけど……」
「うん。嘘だと思う?」
「わからない。俺には判断がつかないよ。でも、あんたはそういうのに関係なく、いい人だと思う」
「ありがとう。でも『あんた』じゃなくて依子だよ。ほら言ってみて」
「依子」
「うわっ、こういうときって恥ずかしがったりして言い淀むものじゃないの?」
「悪い。俺そういうのないんだ。ってそれよりも、その縁っていうのはどういうものなんだ?」
依子はうーんと唸った。
「そんなに複雑なものじゃないよ。世の中のいろんなものは見えない糸で繋がっていて、私にはたまたまそれが見えるってだけ」
見えない糸。あの運命の赤い糸とかそういうやつだろうか。
「私とマサハルくんの間にもあるよ。一週間前に出来た糸だけど、私にはずっと見えていた。だから近いうちにまた会うって思ったの」
「……その糸は、誰の間にも出来るのか? 通りすがりの相手とか、もう二度と会うことのない奴でも」
「出来るけど、普通はすぐに切れちゃうの。あなたと私はたまたま相性がよかったからこうして会うことが出来たけど、大抵は一度きり」
長い長い時間をかけて、人は太い繋がりを作っていくんだよ、と依子は楽しそうに言う。そして、それはより近くで、想いを重ね合わさなければならない、とも。
長い時間。
互いの距離。
交しあう想いの数。
俺にもあるのだろう。家族は元より、ゆかりとの間にも。だが今は……。
「今、俺の大切な糸は切れかかっているのか?」
勢い込んで訊くと、依子は顔を伏せた。
「うん……あまりよくない。完全に切れてはいないけど、かなり危ない」
「切れたらどうなる?」
「それまでの関係がなくなる。新しく縁が繋がる可能性もあるけど、長い時間が必要」
「そうか……」
予想通りの答えに自然と嘆息が漏れた。
「大事な人なんでしょ? 早く縁を保たないと駄目だよ」
「どうすればいい?」
「簡単に言えば、その人との仲を取り戻すこと。縁が切れる前にやらないと手遅れになるよ」
また息を吐く。簡単に出来れば苦労はしない。
460 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 07:56:34 ID:BqF9h4ac
そのとき、依子が妙なことを呟いた。
「でもおかしいなー。ちゃんと修復出来るように繋いだはずなんだけど」
「……は?」
修復? 何のことだ?
「依子。一体何のことだ」
「いや、最初に会ったときに縁が切れかかってるのが見えたから、ちょっと手を加えてやったの」
「何をしたんだ」
「私には縁が見えるだけで、縁そのものをどうにかすることは出来ない。けど、本人の意識の方向性を縁に向けてやることくらいは出来るの。私固有の力じゃなくて本家の術の一つなんだけどね」
「……それをすると、どうなるんだ?」
「その縁が繋がっている相手に意識が向く。それによって相手との繋がりを保とうとするの。誰にでも出来るわけじゃなくて、本当に心の底から大事に想っている相手じゃないと無理だけど」
よく、わからない。
具体性に欠けるので、実感が湧かなかった。彼女が俺に何かをしたということは理解したが──。
「あの、もう少し具体的に教えてくれないか」
依子は得意気に語った。
「たとえばものすごく相手のことが気になったり、無意識の内に相手のいる方向に足が向いたり、相手のいいところを再確認したり、相手のことを夢に見たり」
ちょっと待て。今なんつった。
「とにかくそんな感じ。縁を強くするためには当事者同士の想いが重要だから、そのために、」
「あれお前の仕業か────────っっ!!!!」 俺の大音量の叫びに、依子は体をのけ反らせた。
目を白黒させながら、依子が顔をしかめる。
「どうしたの? 急に大声だして。周りに人がいないからって迷惑、」
「ここ最近やたら妙な夢を見ると思ったら、お前のせいだったんだな!」
少女はきょとんとする。それからにっこり笑って、
「あ、よかった。効果あったんだね」
「逆効果だ! あれのせいで最近憂鬱だったんだぞ!」
「そんなはずないよ。夢に見るのは基本的に相手のいいところばかりだから、楽しい内容のはずだよ?」
「あ、あのなぁ」
ある意味いい面ばかり見えたし、楽しいと言えるのかもしれないが、しかしあれはさすがに、
「……見えすぎても困ることだってあるんだよ」
「?」
「と、とにかく、元に戻してくれ」
不審そうな顔を向けられたが、俺は無視する。いくらなんでも理由は言えなかった。
依子は首を傾げたが、素直に頷く。
「うん、いいけど……でもその夢は、マサハルくんにとって重要な意味を持っているかもしれないよ」
「は?」
「夢の中で見るのは相手のいいところ。でも現実ではよく見落としがち。それがわからなくて相手を見失ったりすることもある。夢の中だからこそわかることもあるってこと。よく思い返してみたら?」
思わぬ発見があるかもよ、と言われて、俺は夢を思い返してみた。
あの部屋には温かみがなかった。あれがいい面だとはとても思えない。
いや、当事者はどうだろう。ゆかりは不満どころか、逆に嬉しそうだった。なぜ嬉しそうだったのか。
……自惚れでなければ俺か。俺といることが彼女を嬉しくさせていた。そして俺も嬉しかった。あの夢の中で俺たちは互いを理解し合い、心を重ね合っていた。
考えてみればおかしな話だ。夢の中でゆかりは言葉を一切発していない。なのになぜ、俺は彼女の言いたいことがわかったのだろう。
いや、違う。昔は簡単にゆかりの言いたいこと、考えていることがわかったのだ。それを夢の中でもやっていたに過ぎない。決して夢の中だけの話ではないはずだ。
俺はゆかりと肌を合わせた。そのとき俺は、あいつの何を見ていた? 考えを読み、理解し、重ねるときに何を、
……『目』だ。
その瞬間、俺は全てのピースがかちりと嵌った気がした。
俺はずっと、相手の顔を見て内側を理解するものだと考えていた。
だが、違うのだ。顔全体を見るのではない。少なくとも、あいつに対してはそうじゃない。ゆかりは俺に対して、いつも目で語りかけてきた。
思い出す。俺はかつて、必ずあいつの目を見ていた。目の奥に見え隠れする思考を、感情を、鋭敏に読み取っていた。それは俺にとって、呼吸するより簡単なことだったのだ。
ずっと忘れていた。三年間離れていたせいで、完全に感覚を失っていたのだ。だから俺はゆかりを──
461 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 08:03:06 ID:BqF9h4ac
「……」
携帯をポケットから取り出す。時刻は午後三時を回ったところだ。
「依子。まだ、俺の縁は切れていないんだよな」
「うん。……行くの?」
俺は頷いた。はっきり頷いた。
「なら急いだ方がいいよ。縁はいつ切れるかわからないから」
「ああ、ありがとな」
「あ、それと言い忘れてたけど、マサハルくんが見た夢、相手も見てたかもしれないよ」
「……は?」
「夢はね、共有することが出来るの。縁を伝って同じ夢を見ることもあるんだ」「……はあ!?」
なに言ってるんだコイツ。
「もし夢に自分が本来知るはずのない情報や事柄が出てきた場合、まず間違いないね。でもね、夢が繋がっているってことは、互いの想いが強いということの証明みたいなものだから、それは……ってどうしたの?」
「…………」
落ち込んでるんだよ畜生。
夢の中とはいえ、何度もあいつを抱いたわけで、それが向こうにも伝わっていたとすると、もう自殺ものの恥ずかしさなわけで。
よろよろとベンチから腰を上げると、俺は出口へと向かう。
と、そこで振り返る。まだ訊くことがあった。
「……なんで俺に手を貸したんだ?」
依子は笑う。
「人助けに理由なんかないよー。ちょっとお節介焼いただけだって」
「……ありがとう」
本当に心から礼を言う。そのお節介のおかげで、大切なものを失わずに済むかもしれない。
「早く行った方がいいよ」
「今度会ったら、きちんとお礼するから」
「楽しみにしてるよ。『縁があったら』またね」
俺は小さく笑みを返し、そのまま急いで駆け出した。
取り戻そう。大切な人との縁を。
真夏の日射が容赦なく俺の体を熱する。
俺は走る。急いで縁を取り戻しに。
ゆかりに対して抱いていた違和感は、もう完全に消えていた。
あれはゆかりが変わってしまったために感じたわけじゃない。そもそもゆかりは昔と比べてそんなに変わったのだろうか。
違うような気がする。本質的なものは何も変わってないと思う。
変わったのは俺の方だった。俺がゆかりの心情を理解出来なくなっていたために、彼女の方が変わってしまったのだと勝手に勘違いしてしまったのだ。
それが、違和感の正体。
伝えなければならない。今度こそ俺の想いを。
理解しなければならない。今のあいつの心を。
運動不足のせいか、脇腹が凄まじく痛い。きりきりと万力で内臓を潰されているみたいだ。熱もひどい。日射しがストーブのように強烈な熱を送り込んでくる。
それでも足を止める気はさらさらない。日射病も熱射病も、今はどうでもよかった。
早く会わなければならなかった。
俺はひたすらに走る。
ゆかりの家の前に着くと、俺はがっくりと膝をつきそうになった。
が、なんとか力を入れてこらえる。へばっている場合じゃない。
深呼吸を何度も繰り返し、少しずつ息を整える。額の汗を腕で拭い、心拍数が減るのをひたすら待った。
心臓の音が耳に響かなくなる。ようやく、体を元に戻し、
「あ……」
か細い声が聞こえたのはそのときだった。
駅方向の道の先に、制服姿のゆかりが立ち尽くしていた。俺の顔を見て、呆けたように固まっている。
「ゆかり……よかった。会えた」
泣きたいくらいに安心した。本当に、もう会えないかもしれないという不安があったのだ。
462 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 08:11:44 ID:BqF9h4ac
だが、駆け寄ろうとする俺に、ゆかりは顔を背ける。反射的に足を止めた。
「来ないで」
「ゆかり」
「昨日の今日だよ。会いたくなかった」
ゆかりは目を伏せる。これでは彼女の内面が読み取れない。
俺は止めた足を再び前に踏み出す。
「今日会わなきゃ駄目だと思ったんだ。そうじゃないと、手遅れになると思ったから」
すぐ目の前まで近寄る。
「ゆかり」
「……」
ゆかりは目を合わせてくれない。
「今ならはっきり言える。もう一度、言うよ」
黒髪が頑なにうつ向いた顔を隠している。
それでも、俺は言う。
「好きだ、ゆかり」
「……うそ、つき」
「うそかどうか、目を見ろよ!」
俺はゆかりの両肩を掴み、顔を上げさせた。
ゆかりの辛そうな目がこちらの顔を捉える。俺は怯まない。その目の奥を、心を理解するために、じっと見つめる。
瞬間、俺は力が抜けそうなくらい安堵した。
「よかった……」
「え?」
小さく声を上げるゆかり。
「ゆかりが俺のことを嫌ってないってわかって、すげえほっとしてる」
「な、なにを」
「目の奥は嘘をつけないな」
ゆかりの表情が固まった。
「昔は簡単にお前の考えが読めたんだ。でも久々に会って全然わからなかった。昨日までの俺じゃゆかりのことを理解出来なかった。けど、今ならわかる。はっきりと、わかる」
「……」
あれほど悩んでいた違和感は、今はどこにもない。あるのは幼なじみに対する強い想いだけだ。
ゆかりはしばらく俺の顔を見つめていた。
俺は目を反らさない。反らすはずがない。
ゆかりはほう、と小さく吐息した。そして、
「懐かしい」
そう言った。
「懐かしい目」
微笑むその顔は小さい頃と変わらない。
俺たちは見つめ合う。
「ごめんな、寂しい思いさせて」
「ごめんね、ひどいこと言っちゃって」
互いに謝って、俺たちはくすくす笑い合った。
そこで突然音がした。
振り向くと、ゆかりの家のドアが開いて、線の細い女性が出てきた。
一瞬戸惑ったが、すぐに義母と気付く。前に見掛けたことくらいはあったかもしれないが、顔は覚えていなかった。
「戻ってたのね。あら、そちらの子は?」
義母が首を傾げる。
「幼なじみなの。久々に会ったから」
「こんにちは。沢野と言います」
とりあえず無難に挨拶をする。
義母は珍しげに俺を見やり、それから柔和な笑みを浮かべた。
「そう。優しそうな方ね。仲良くしてやってね」
「あ、はい」
反射的に頭を下げる。
義母というだけでなんとなくいい印象を持っていなかったのだが、それはどうやら勝手な思い込みだったようだ。こうして振る舞いを見る限りでは、人のよさそうな感じだ。
463 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 08:14:53 ID:BqF9h4ac
義母は小さなハンドバッグを提げ、玄関から出てきた。
「私、今から買い物に行ってくるから、留守番お願いできるかしら?」
ゆかりは頷き、笑みを返した。
「うん。遅くなる?」
「少しね。七時には帰ってくるから」
「わかった。行ってらっしゃい、お母さん」
義母はなぜか驚いたように目を見開いた。しかしすぐに微笑んで、
「ええ、行ってくるわね、ゆかり」
今度はゆかりの表情が揺れたが、すぐにそれは消える。
離れていく後ろ姿を見送るゆかりは、どこか穏やかで嬉しげだった。
「仲良くやってるんだな」
「うん。でも初めてだった。お母さんって言ったの」
「……そうなのか?」
「やっぱり恥ずかしかったから……呼び捨てにされたのも初めて。ずっとちゃん付けで呼ばれてたのに」
顔がほんのり赤い。ささやかながら、それはとても大きなことだったのだろう。
よく真希にしてやるように、俺はゆかりの頭を撫でた。
「……ねえ」
「ん?」
「暑いから、早く入ろうよ」
「……ん?」
急に手を引かれて、俺はつんのめる。さっきまで全力で走っていたので、足が疲労で震えた。
「休んでいって」
「あ、でも家は近くだし──」
「……」
目に少し不満の色が見えた。慌てて口をつぐみ、俺は頷く。
表情が和らいだ。
まずい。なんだかペースを握られているような気がする。留守番を頼まれたということは、今家には誰もいないんじゃないか。
「……」
どこか昔に戻った気がする。無口で人見知りするくせに俺にだけはなついていたゆかり。でもそうやってそばにいることが俺は内心嬉しくて、ゆかりの頼みごとにはずっと弱かったと思う。
文句とともに言うことを聞いてやると、とても嬉しそうに笑ったから。
その笑顔に、俺の心はとっくの昔にとらわれていて、薄らいでいた想いも目の前に現れた顔があっという間に元に戻してくれて、
たぶんこれからも、この幼なじみには勝てないだろうと思う。
そんな自分を情けないとは思わない。負けても仕方がないことというのは、確かにあるのだ。
ゆかりは俺の手を引いてそのまま家の中に入ろうとする。
俺は疲労一杯の足を引きずり、ゆかりの後に続いた。
464 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 08:19:52 ID:BqF9h4ac
「……」
二階にあるゆかりの部屋で、俺は呆然となっていた。
無機質な机、簡素なベッド、何も目を引くものがない寂しい部屋。
夢の中で見たままの部屋が、現実にここにある。
依子の言を思い出す。本当にゆかりと同じ夢を見ていたのだろうか。まるで獣のように、互いをむさぼった淫夢。
ヤバい。気が変になりそうだ。頭もそうだが、下半身が。ケダモノか俺は。
「……」
ゆかりはさっきからずっと沈黙している。
時折こちらにちらちら視線を送ってくる様子は、本当に昔のゆかりみたいだ。
ひょっとして、家の外と部屋の中では態度を切り替えているのだろうか。もう五分以上口を開いてないぞ。
でも、それに対する接し方を俺は知っている。
「……」
沈黙を続けるゆかりに、俺はとりあえず話しかけた。
「やっぱり、喋るのきついのか?」
「……」
ゆかりは答えない。
その代わりに軽く首を振った。
「じゃあなんで今は喋らないんだ?」
「……」
じっと見つめてくる。
何を言いたいかはすぐにわかった。目を読めということだろう。
俺はベッドの縁に腰かけているゆかりに近付く。
いきなりゆかりが隣をポンポンと叩いた。横に座ってほしいのだろうか。
黙って隣に座る。キャラが違うとは思わない。これが彼女の素だ。俺だけに見せる素の姿。
改めて目を合わせる。黒曜石のように綺麗に澄み切った瞳は、雄弁に思いを語る。
…………。
いや、あの、ゆかりさん?
読み間違えたかな、と俺はもう一度試みる。
……………………。
変わらなかった。
ゆかりの顔に赤みが差した。
「お前、本気か?」
「……」
「いや、それ以前に質問に答えてないぞ」
「……」
嫌いじゃない、のか?
じゃあなんで今は無口なんだ?
「……」
俺専用のコミュニケーション手段ってなんだよ。
「俺ばかり労力使ってる気がするけど」
「……」
……別にいやじゃないけど、むしろ特別扱いしてくれて嬉しいけど。どんだけ弱いんだ俺。
「俺がお前を好きだってことは確信してるし、お前も俺に応えてくれたからそれはいいけど、再会して一週間ちょっとだぞ? いきなりそれは、」
「……」
「嫌なわけない。でもお前、初めてだろ?」
軽く睨まれた。
「俺? ……初めてだよ。悪いか」
夢の中ではガンガンにやったが、と内心で密かに呟く。
「……そりゃしたいよ。俺も男だからな。でも」
俺が躊躇した声を出すと、ゆかりは視線を外した。
465 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 08:23:24 ID:BqF9h4ac
そのまますっくと立ち上がり、おもむろに制服のボタンに手をかける。
「ちょ、ちょっと待──」
慌てた声は少しも届かず、幼なじみは上の服を問答無用に脱ぎ捨てた。白い下着が清楚に見えるのは、男の妄想のせいか。
そしてゆかりは俺を見据えると、思い切りダイブしてきた。
支えられずに簡単に押し倒される。
「ゆ、ゆかり」
間近に顔が迫る。
その距離では抵抗する間もなくて。
あっさり唇を奪われた。
「──」
「……」
柔らかい感触はとても現実とは思えなかった。
ほんの数秒が果てしなく長かった。離れていく赤い唇を、俺は呆けたように見つめる。
「……」
ゆかりの目がからかうように光った。おとなしく押し倒されなさい、と降伏を勧告してくる。
「……わかったよ」
俺は諦め顔で呟く。ゆかりの顔が花火のように輝いた。
まるっきり夢の中と同じだな、と俺は溜め息をついた。
好きな女の子の誘いをいつまでも突っぱねるわけにはいかない。というか、正直かっこつけてただけで、頭の中は欲望一杯だったりする。
「ただし」俺は言った。「主導権は譲らない」
言うが早いか俺は体を反転させて、ゆかりの上にのしかかった。
「──!」
ゆかりは突然の事態に動転した表情だったが、俺は無視して唇をむさぼった。
「──、──!」
ゆかりが暴れそうになるのを無理やり抑えつける。俺はただひたすらに口を封じ続けた。
ゆかりの体から力が抜けていく。
俺はここぞとばかりに舌を出し、入り口をノックした。
微かな緊張が走ったようだが、ゆかりはすぐに受け入れてくれた。口の中に侵入すると、硬い歯と柔らかい肉の相反する感触が入り混じるように舌に伝わり、快感がぞくぞくと全身を駆け抜けた。
舌は体の中でも特に敏感な部位なのだという。無数の神経が通り、器用に動かせる味覚を司る大事な器官。
そんな器官を俺たちは今ぶつけ合っている。絡み、這いずり、舐め回し、これでもか、これでもかと神経を刺激し合っている。
本来の役割から離れた行為なのかもしれないが、圧倒的な興奮の前には些細なことだった。
ゆっくりと口唇を離すと、唾液が微かに糸を引いた。荒い呼吸をそれぞれ重ね、脳に酸素を送り込む。倒錯しそうなほどの高ぶりに、頭がくらくらした。
俺は酒も煙草もしたことがないが、それらがこの刺激を超えるとは到底思えない。至近で交わす情熱的な視線も、触れる肌の温もりも、いくらでも俺を酔わせてくれそうだった。
視線をやや下げる。首のすぐ下、対になった丸い膨らみを、穴が空くくらいに注視した。
すぐに我慢が出来なくなり、俺は二つの白い果実に手を伸ばした。下着をずらし、現れた頂に唾を飲み込む。ゆかりが恥ずかしさに顔を背けた。
夢の中でも見ていたが、やはり現実は全然違う。視覚だけでこんなにも『くる』ものなのか。頭がくるくる狂いそうだ。
正面から恐る恐る掴む。乳房に指が沈み、ゆかりの顔が一気に紅潮した。果物が熟れるかのようで、俺はその可愛さに酩酊した。ああもう、今日は収穫祭だ。根こそぎ奪ってやる。
ゆっくりと揉み込む。優しくしないと、という意識が頭の片隅にあったような気がするが、抑えが利かない。リズミカルに胸を揉みしだき、その柔らかさに感動する。
ゆかりが首を左右に動かした。歯を食い縛ってどこか苦しげだったので、俺は正気を取り戻し、訊いた。
「い、痛かったか?」
「……」
首を振られた。
目の奥で妖しい光がうごめく。
好きにしていい。
いくらでもむさぼっていい。
だから──もっと求めて。
「……俺にはもったいないくらいだよ、お前は」
466 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 08:27:29 ID:BqF9h4ac
ゆかりがおかしげに笑う。その様子もまた可愛い。
胸弄り再開。先端をついばむとゆかりの体が小さく震えた。俺は赤子のように吸い付き、その震えをもっと引き出そうとする。
ゆかりは声を上げない。
俺が下手なのかと思ったが、そうでもないらしい。いや、下手かもしれないが、それでもゆかりは両目を潰れるほどに強く閉じ、何かに耐えている。
それなりに感じてはいるらしい。それが苦痛か快感かまではわからないが、刺激はあるようだ。
しかし、声は出さない。
俺は乳首を軽く噛んでみた。
ゆかりは肩をびくりとすくめた。
いい反応だ。よすぎる。
「お前さ、感度よすぎない?」
「……」
答えない。
ちょっと意地悪をしてみる。
「自分で弄ってるな、さては」
「……」
「だんまりですか。でも、」俺はゆかりのスカートの中に右手を突っ込んだ。「確かめればすぐにわかるぞ」
「──!」
顔色が変わる。スカートの下で指を太股に這わせると、目が小さく揺れた。
「気持ちいいなら声出してもいいのに」
太股からお尻の方を撫でる。肉つきのいい、胸とは違った柔らかさがたまらなく心地いい。
「──」
ゆかりは頭を懸命に振っている。快感か、羞恥か、それともそれ以外の何かか、とにかく脳は揺れまくっているようだ。
俺は下着の中に手を突っ込む。
秘唇はすぐに見つかった。探り当てた割れ目をなぞると、粘りつく水の音がした。
「────!」
ゆかりの体が勢いよくのけ反った。陸地で跳ねる魚のように、体が暴れそうになる。俺は体を抱き寄せてそれを抑えてやる。
指を動かす。
熱い。
夏の暑さに負けないくらいの熱が、下の口にこもっている。くちゅくちゅといやらしい音が響くそこは、心の温度にやられてしまったかのようだ。
人差し指を中に侵入させる。
「へえ……こんな感じなんだ」
ゆかりの耳元でわざと声に出して言うと、ゆかりは泣きそうな顔で睨んできた。逆効果だよそんな顔は。
指はすんなり中に入った。やはり普段から弄られているのだろう。指を曲げて壁を擦ると、また体が震えた。
「ったく、ホントエロいなお前は」
「……」
弱々しい表情で見つめてくる。俺はにやりと笑み、小さな口に軽くキスをした。
「いいんだよ、エロくて。それが素のお前ならいくらでも愛してやるから」
「……」
ゆかりは目を瞑ると、首に両手を回してきた。身を寄せられて、張りのある胸が俺の胸に強く当たる。
「続き、するぞ」
「……」
頷く顎を持ち上げ、再び深い接吻を送り込む。
右手の指は依然秘所をとらえたままで、少しずつ奥を圧迫する。熱い襞々はまるでただれているみたいだ。
意地でも声を出さないつもりか、震えは痙攣といってもいいレベルに達していた。悩ましげな体のくねりが俺の嗜虐心をかきたてる。
秘部はもはや洪水で、下着も多量の水分を吸っていた。一旦指を抜き、下着を脱がす。ついでにスカートとずらされたブラジャーも、体から剥いでやった。
俺は体を離し、服を脱ぎ始める。相手を裸に剥いておいて、こちらが着衣というのもフェアじゃないだろう。
汗にまみれたシャツもジーンズも脱ぎ去り、俺は部屋の空気に裸身を晒した。
467 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 08:30:07 ID:BqF9h4ac
「……」
ゆかりの目が俺の下半身を凝視している。潤んだ瞳の奥には妙な好奇心が映っていた。
「……」
「……そんなに見つめるなよ。恥ずかしくなる」
「……」
「触りたいのか?」
「……」
「怒るなよ。今から入れるからさ」
既に下半身はそそり立ち、しっかりとした硬度を保っている。
「どうする? もう入れるか、まだ前戯するか」
ゆかりは行動で返事をした。
「……うわ」
物憂げな瞳がはっきりと俺の肉棒を捉え、右手で優しく握り込んでくる。
すべすべの手の平がたどたどしく上下に動く。ゆかりに触られているというだけで興奮ものだが、目に映る光景と、直に伝わる感触の両方が重なり、今すぐ果ててしまいそうになる。
「お……もっ、ゆっく、り」
腹から骨盤辺りに力を入れ、こらえる。ここで出したら本番が、
そんな我慢思考を、生温かい感触がぶった切った。
ゆかりの小さな口が、亀頭を包み込んだのだ。
「っ!!」
刺激が強すぎた。
限界を一足飛びで越え、俺は欲望の体液をゆかりの口の中に放出した。
「!」
さすがに不意打ち過ぎたか、ゆかりは口を閉じたまま激しく咳き込んだ。
だが、口内に出された異物をゆかりは吐き出さない。
「お、おい」
涙目になりながら必死でこらえると、ゆかりは精液を少しずつ、咀嚼するように嚥下した。
「……」
「だ、大丈夫か」
慌てて声をかけると、ゆかりは潤んだ目で微笑む。
その笑みは本当に可愛かった。涙で濡れた顔自体は崩れてひどかったが、こんな無茶をしても心配させないように笑みを向けてくるその様子が、あまりに健気で。
瞳の奥で、ゆかりが声なき声を囁く。
まさくん、愛してるよ……。
俺は駆け出したいくらいの愛しさに襲われた。衝動的に抱き締め、頬に、額に、口にキスを送る。唇の端に精液の残りがついていたが、まったく気にならなかった。
「ゆかり、俺も愛してる。誰にも渡したくない」
「……」
ゆかりの頭がこくんと頷かれた。
468 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 08:34:08 ID:BqF9h4ac
ベッドの上で、俺はゆかりを見下ろす。
「じゃあ、行くぞ」
「……」
確認を取ると、俺は逸物を秘裂にあてがった。
緊張で手が震えたが、早く中に入れたいという思いが俺を動かす。
ゴムは、着けていない。
でももう、抑えられない。
腰をゆっくりと沈め、逸物を挿入する。
ゆかりの顔が大きく歪んだ。
俺は動きを止める。そうだ。夢の中では何度も体を重ねていたが、現実の彼女は初めてなのだ。決して乱暴に扱ってはいけない。
ゆっくり、ゆっくりと自分に言い聞かせながら、俺はかたつむりのように奥へと進む。襞々が強烈に締め上げて、中への侵入を阻んだ。
それでも徐々に最奥部へと迫っていく。童貞と処女を同時になくすために、二つの性器が荒い摩擦を起こす。
そして長い時間をかけて、肉茎が一番奥に到達した。
「────!!!!」
破瓜の痛みにゆかりの体が固まる。全身に力を入れ、懸命に痛みに耐えようとしている。
叫び声を上げるのかと一瞬思ったが、ゆかりは声を漏らさない。奥歯を噛み締めて、絶叫すら耐えている。
叫んだ方がまだいくらかマシだろう。だがゆかりはそれをしない。
なぜそこまで頑なに声を出すことを拒むのか。
俺にはわかる気がした。たぶん本当の自分を、俺に愛してほしいのだ。無口、というのが彼女の本来の姿だから。
俺はゆかりの髪を軽く撫でてやった。
「無口もいいけど……喋っているときのお前も、お前であることには変わりないんだからさ、もうちょっと自然でいいんじゃないか?」
ゆかりは答えない。
俺は上体を前に倒した。ゆかりを包み込むように抱き締め、耳元で囁く。
「動くぞ」
「……」
首の動きで許可をもらうと、慎重に腰を動かし始めた。
緩やかな抽挿。じれったいくらいに緩慢な腰遣い。
だが、十分だった。狭い膣の中はお湯のように熱く、僅かに身じろぐだけで苦痛にも近い快感が生じる。
ゆかりは乱れた呼吸とともに胸を上下させている。形のいい双丘が俺の体に押し潰されて、弾力を返してくれる。たまらない感触だ。
しばらくのろのろとしたペースで往復を続けていると、ゆかりの腕に妙な力がこもり始めた。
俺の背中を強くかき抱くのだが、その力の入り具合に無理がない。痛みをこらえるときとは明らかに違う、どこかこちらの動きに合わせるような反応。
「ひょっとして……感じてるのか?」
ゆかりの顔が真っ赤になった。恥ずかしそうだが、苦痛の色はない。
自慰の経験も結構あるようだし、普通より感度はいいのかもしれない。ならば、遠慮はいらない。
俺はペースを一気に速めた。さっきまでの気遣いを隅に追いやり、空洞の中を力一杯に往復する。
ゆかりの顔に快楽の笑みが浮かんだ。
初めてだから、決して俺の腰遣いは巧くないと思う。ただ押して引いてを繰り返すだけの、雑で拙い動きだ。
なのにゆかりは、ゆかりの体は歓喜に震えていた。開きっぱなしの口元からは涎が溢れているし、締め付ける膣は愛液でとろとろだった。
469 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 08:38:40 ID:BqF9h4ac
更に一段階ギアを上げる。
腰と腰のぶつかり合う音がはっきりと響き渡る。中で擦れながら愛液と先走り液が混ざり、いやらしい水音を立てる。二人分の体重の激しい運動にベッドがぎしぎしと軋む。
抱き締める力を強めた。そのまま互いに飲み込むようなキスを交す。深く深く繋がろうと体を密着させ、口の中で舌を縦横にかき回した。それはまるで、上下同時にセックスを行っているみたいだ。
たまらない。
止まらない。
一度出しているにもかかわらず、勃起が収まる様子はまるでなくて、むしろ行為の気持ちよさに硬度も感度も上がりっぱなしで、いつまでも続けていたいと高まる意識の中で思った。
しかし、臨界点はすぐそこまで来ていた。
「ぬ、抜くぞ……」
「……!」
ゆかりの目が訴えかけてきた。
このまま、来て。
俺はひどく驚き、それはいくらなんでも、と少ない理性で返そうとして、逆に返された。生でヤっていて何を今更、と。
正常な判断を下せる理性は欲望に削り捨てられていて、それもそうか、なんて俺は流されてしまう。
許可が出た以上、もう歯止めをかけるものは何もない。俺はぐちゃぐちゃの膣の一番奥へ向けて、猛然と腰を奮った。
ゆかりが失神しそうなほどに身震いする中、限界をあっさり越えた逸物は、子宮に向かって大量の白濁液を吐き出した。
「うくっ」
「──っ!」
同時に迎えた絶頂を、俺たちは下半身で盛大に感じ合う。
男根は無数の子種を容赦なく処女の子宮に送り込み、膣肉は蠕動しながら欲望の汁を無限に飲み込もうとする。
圧倒的な快感に体が震え、頭が真っ白になる。このまま快楽の波に流されながら眠りたいと思った。
ゆかりがぎゅっと目を瞑り、行為の余韻に浸っている。
俺はその様子を愛しく感じ、優しく抱き締めてやった。
ゆかりは疲れの見える顔をぎこちなく動かし、とても幸福そうに笑った。
「気持ちよかったね」
リビングでゆかりは嬉しそうに呟いた。
「なんで今は普通に喋ってるんだよ」
「無口はあの部屋限定。それ以外は今の私」
「あの部屋に何かあるのか?」
ゆかりは麦茶をグラスに注ぎながら、懐かしげに言った。
「……あの部屋が、一番思い入れあるの」
「え?」
「小さい頃、まさくんと一番一緒に過ごしたところだもの。だからあそこの中だけは特別」
俺は眉を寄せる。
「……でも、昔とは全然違う部屋だぞ」
「それでも私には重要だった。ここでの思い出はかけがえのないものだし、ずっと私を支えてくれたから」「……」
麦茶の入ったグラスを俺と自分の前にそれぞれ置くと、ゆかりは明るい口調で言う。
「でもね、別に昔ばかり大切にするわけじゃないんだよ。今も昔も同じくらい大切で、だからこそあの部屋は特別で、」
わかる気がする。ものごとを捉えるときは、一つの価値観に縛られてはいけないのだろう。どっちか選ぶじゃなくて、どっちも選んでいいはずなのだ。そうしないと、俺たちの目はどんどん狭くなって、仲違いや衝突を起こしてしまう。
昨日までの俺たちは正にそんな状態だった。
だが、
「難しい話はなしだ」
ゆかりがきょとんとする。
「今、ちゃんと目の前に大切な人がいて、幸せなんだからそれでいいだろ?」
「……そうだね。うん、それで十分」
俺たちは所詮高校生なのだ。世の中の真理なんてわからないし、わかる必要もない。
俺にとって大事なのは、ゆかりとまた同じ時間を過ごせるという、本当にささやかなことだった。
「ねえ」
ゆかりの声に顔を上げる。
「ん?」
「次はいつエッチしよっか」
思わず飲んでいた麦茶を噴き出した。
困惑する俺の顔を見つめながら、幼なじみは楽しそうに微笑んだ。
470 :
かおるさとー:2007/03/18(日) 08:57:42 ID:BqF9h4ac
以上で終了です。携帯からなので読みにくいかもしれません。
一応無口っ娘のつもりなんですけど、変化球過ぎですか?
とりあえず限定条件空間内無口っ娘とでもしときます。……長いか。
>>470 乙。とてもよかったです。
縁か…。俺にはどんな縁があるのかな…。
もうすぐ、押入れのぬいぐるみが部屋に飾られるんでしょうな。
それと、読みにくさは全く感じなかったです。
依子さんの話もみたいな。
>>470 変化球やよし。
無口娘というと主人公と一緒のときだけは話すというパターンが多いですが
その逆はちょっと思いつきませんでした。やられたって感じです。
>>470 乙でしたー。
本当に携帯から? と疑ってしまう程読み応え十分でしたよ。
先回の青川さんの時もそうでしたが、実に良い文章のリズムをお持ちだと思います。
これは次回作にも期待せざるを得まい。つーか是非ともまたお願いします。
474 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/18(日) 21:39:34 ID:oEVpUQKg
なんという・・・ワッフル!ワッフル!
476 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/19(月) 01:57:13 ID:/lwH/f+6
作家としてデビューできそうだな
淀みなく読める文章力、豊富なHシーン、くっつくまでの過程の描写、
細かく丁寧で面白かったです。
GJ
かおるさとーさんといい、泉水さんの職人さんといい、このスレッド、やたらレベル高いっスね。
エロくてあったかい、体のつながりだけじゃなく心のつながりを見た(読んだ)気がしたっス。
481 :
かおるさとー:2007/03/19(月) 22:50:08 ID:6/MBpa1q
沢山のレスありがとうございます。前回よりもエロシーン頑張ったつもりです。
>>471 依子の話はまたそのうち。無口キャラじゃないので別のスレになるかもしれませんが……。
次はどうしようかな。
前に出ていたアイディアをうまく書けたらいいですね。うーん、どれも難しいなぁ。
482 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 12:55:08 ID:rw8xZJ68
いま追い付いた。
青川さんといい、さとーさんの書くキャラは可愛いっすねえ!次回作ワクテカ
483 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 10:50:59 ID:g1R6HWHr
保守
484 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 10:43:25 ID:HnOWLplb
GJほしゅ^^
……こっそり投下
>370が元ネタの女剣客話です。
朝餉の用意をすませた太輔は、縁側に視線を向けた。
「静様、朝餉の用意が出来ました」
鴇色の長着に露草色の袴、総髪を茶筅に結った若衆といっても通じそうな相手。
震い付きたくなるほどの美貌をもつ男装の麗人、この屋敷の主にして太輔の雇い主でもある五十土静が、どこか茫漠とした瞳をこちらに向けてくる。
「…………む」
こくんと、小さく頷いた静をみながら、太輔は苦笑を浮かべていた。
こうして共に暮らすようになって、そろそろ二年が経とうとしているのに、静がまともに喋っている所を見たことがない。
それでも、意思の疎通に問題はなかった。
言葉を使うのを億劫がってはいるが、静の表情は非常に豊かなのだ。
しかも、言葉が通じないとなれば手が飛んでくる。
その活発さは、女だてらに綾上一刀流なる流派を立ち上げるほどの剣客故だろうか。
その静が音もなく立ち上がり、既に出していた箱膳の前にまできて座る。
縦横一尺の箱膳を開けて、中に収めていた茶碗と汁碗、皿に箸を取り出して、裏返した箱膳のふたに乗せていく静。
太輔も自分の箱膳で同じ用意をしてから、互いの茶碗にご飯をよそい、汁碗にみそ汁を注いで、皿に秋刀魚を乗せた。
そのままどちらとも無く食事をはじめた。
しばし無言。
「………………ふむ…………美味い」
ぽつりと朝餉の最中に呟かれた静の言葉に、太輔は顔が緩むのを押さえられない。
本当にそう思わなければ口を開かない静の放った言葉なのだ。
嬉しさを抑えられる筈もなく。
こんな日常を送れている今の不思議さに、すこしだけ口元をゆがめた。
太輔は、木曽の山村の生まれだ。
……正確に言えば、その村の寺に捨てられていた。
物心ついた頃から下僕として働かされて、しかも、つまはじきにされていた太輔が、村を捨てたのはむしろ当然のこと。
だが、村を捨てれば人別帳から外されて、良くて馬喰渡世、悪ければ盗みを業とでもしなければならなくなる。
その覚悟をしていた太輔は、だから最初に街道沿いで掏摸を働こうとした。
そして、最初に獲物にしようとしたのが静であり。
完膚無きまでに叩きのめされ、そのまま拾われたのだ。
「…………?」
不意に、問いかけるような眼差しを向けてくる静。
「静様に拾われたときのことを、思い出していました」
「ふむ……」
それ以上は興味を無くしたように朝餉に向かう静。
その様子に、何となく嬉しさを覚えた太輔も、朝餉に箸を伸ばした。
……朝餉を食べ終わり、飯を盛っていた茶碗と汁椀に白湯を注ぐ。
ソレを飲み干し丁寧に拭ってから、また箱膳に椀と皿をなおす。
何も言わずに立ち上がった静が、縁側から庭に出る。
「静様、私は洗濯が有るのですが」
こちらの言葉を無視して、庭の奥へと姿を消した静が木刀を二本持ってきた。
無言のまま、手にした木刀の柄をこちらに向けてくる。
その表情に僅かな苛立ちが浮いたことに気づいて、太輔は深い溜息を吐いた。
「……解りました」
そのまま、木刀を取るために庭に出る太輔。
木刀を手渡され、自分用の足半を履いた太輔は、そのまま静から間合いを離した。
柄をへその高さに持ち剣尖を顔の当たりに上げる。
同じ構えを取った静が、すり足で寄ってくる。
ぴくりと右腕が動き、脇が空いた。
「やぁっ!」
間髪入れず横殴りの一撃を打ち込む。
同時。
がっ、と重い音を立てて峰に木刀がたたき込まれた。
その衝撃に思わず木刀を取り落としてしまう太輔。
「っ!」
掌がじんっと痺れる。
隙を見せてわざと打ち込ませる事で、対処を容易にした。
それだけのことだと目で告げる静が、無言で木刀を構えなおす。
早く木刀を拾え。もう一度構えろ。
その想いを、動作だけで伝えてくる静に、苦笑を浮かべた。
静が言葉を口にしないのは、言葉が全てを伝えない事を知っているから。
それでも通じるのだと、静が信じているから。
「……行きます」
その気持ちに答えるために、木刀を拾った太輔は気合いを込めて打ち掛かった。
「痛っ! 痛いです、静様!」
振り下ろしの一撃を躱し損ねて右腕を打たれた太輔は、すぐに静に治療を受けていた。
骨は折れていないが叩かれた部分は青黒く変色している。
家伝の湿布を貼られ布で手早く巻かれているのだが、静がわざと痣を押して痛みを与えてくるのだ。
「……五月蠅い」
不機嫌そうな表情でぽつりと呟く静を涙目で見ながら、太輔は唇を噛んで痛みを堪える。
これ以上叫べば、喉を絞めて落とされる。
ソレを経験として知っていたから。
「…………未熟者」
その呟きに、痛みも涙も堪えて静をじっと見詰める。
静の浮かべる悔恨の表情が知らせてくれる。
その言葉が自分にではなく、静自身に向けられたものだと言うことを。
「静様、すみません」
だから、頭を下げる。
きっと避けられる筈だと言う、無言の静の信頼を裏切ったのは自分だから。
「…………」
ぽんっと軽く頭を叩かれて、思わず頭を上げる。
気にするな、と優しい微笑が告げていた。
「それでは、私は洗濯をします」
小さく告げた言葉に、うむ、と小さく頷いた静が縁側に向かう。
それを見る太輔の口元に、自然と笑みが浮かんだ。
縁側に座っている静が、なんとなく猫の様だと感じたから。
「……出かけてくる」
昼餉を済ませてしばし時間が空いた頃。
不意に静がそう言いながら立ち上がった。
「静様……」
普段なら無言で動く静がわざわざその言葉を口にした。
その意味を、太輔は誰よりもよく知っていた。
「行ってらっしゃいませ。御武運を」
「……む」
軽く頷いただけで、刀掛けから大小二刀を取り上げて腰に落とす。
そのまま玄関に向かう静を見送りながら、太輔は唇を噛みしめる。
静がわざわざ口にした言葉。
それは稼業である守り屋として、出かけてくると言うこと。
食い詰め浪人が商家や博徒に雇われて護衛となるのは、ままあることだ。
護衛の仕事は、盗人や博徒、せいぜい同類の浪人相手との斬り合い程度でしかないが、静は違う。
静が守り屋として受けるのは、因果師――稼業として人の命を縮める者達――絡みの仕事のみ。
それはつまり、常に生死をかけた戦いに身を投じると言うこと。
無論、若年――しかも女性――で有りながら一流を開いた静だ。
未だにその剣椀は頂へと登り続けているのだ。
静に、敵う剣客などいるはずがない。
そのことを誰よりも知り、だが因果師達の技前を知るが故に太輔は拳を握りしめることしかできない。
因果師達は、剣などを用いない。
聞き知るだけでも、無手から手裏剣、糸、絡繰りと、常にはない技を持って戦うのだ。
静が手傷を負って帰ってきたも一度や二度ではない。
それでも、今の自分では役立たずだと、太輔はそのことを知っているから。
だから、見送ることしかできない。
ただ待つことしかできない。
それが、辛かった。
……草木も眠る丑三つ時。
縁側に座る太輔は月明かりに身を晒しながら、じっと待っていた。
不意に、玄関の戸が開く音が聞こえてくる。
立ち上がって、そちらに向かうよりも早く、襖が開き静が入ってきた。
「お帰りなさいませ、静様。夕餉の支度はいかが致しましょう?」
無言で刀掛けに刀を置いた静が、そのまま音もなく近寄ってきて。
ぎゅっと抱きついてきた。
「…………っ」
太輔の肩に顔を埋めて全身を震えさせる静。
だから、何も言わずに太輔は静の背中に腕を回した。
「っ……っっ……!」
因果師とて己が職業に誇りを持っている。
だからこそ単なる殺し屋ではなく、標的の因果に応報を与える因果師と名乗っているのだ。
故に、それを止めるためには、因果師の命を奪わねばならない。
刀を抜かずに一生を終える武士さえいる天下太平のご時世。
剣客として命のやりとりは当然だが、静にはそれを受け入れることが出来ないのだ。
あまりにも優しすぎるから。
「静様…………」
声をかけようとした太輔の口を静が吸ってくる。
人を殺めるたびに、こうして太輔を求めてくる静。
その事を受け入れながらも、太輔の胸の奥は痛みを発する。
太輔がもっと強ければ、静と共に戦える。
むしろ、太輔が戦って静を戦わせないでも済む。
なのに、今の自分は静の庇護を受けなければならない。
その辛さを隠して、太輔は静の頭を優しくなでた。
「…………太輔」
涙に濡れた瞳で見詰めてくる静。
その目が、体と心を慰めて欲しいと告げていた。
「静様」
「いや……」
呼びかけた瞬間、哀しげな表情で静が言葉を紡いだ。
「……いつもの…………呼び方で」
「解りまし…………解ったよ、静」
言葉の途中で睨まれて、言い直す太輔。
肩を寄せ合うようにして、そのまま寝室に向かった。
「…………静様」
太輔は静の安心を浮かべた寝顔をじっと見詰める。
こんな事でしか静の役に立てない自分が情けない。
その想いを胸に抱いて、太輔は歯を食いしばる。
もっと強くなりたい。
静の心を慰めるだけでなく、ただ静を守りたい。
「……私は」
それ以上の言葉を口にすることが出来ない。
今は何を言っても届かない。
届けることが出来ないと、理解していたから。
今は庇護されている身でしかない。
自らの内にある感情に名前を付けるには、まだ早すぎる。
「…………お休みなさい、静様」
「…………た……すけ…………」
まるで己の言葉に応えるような静の寝言。
すこしだけ、それが嬉しくて。
そっと、静の隣に身を横たえる。
「…………ありが…………とう」
小さな寝言に答える言葉は、口から出ることはなかった。
ということで、まぁ、小品ですがこっそりと。
エロ書くと三倍行きそうだったんで、エロ無しになってしまったり。
孤高では無いような気もするけど、まぁ女剣客ものと言うことで。
ソレでは失礼。
GJ!
いいね〜
ちょ、GJ!
まさか、本当に書かれるとは思わなかった
>>370でした。(汗
GJです!
時代がかった表現や言葉遣いがいいですねー。
>>370ってお魚さんだったのか…。
495 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 17:40:27 ID:mv9wHS9f
GJ!
保守ダ
保守
dareka
498 :
かおるさとー:2007/04/01(日) 15:38:21 ID:0YVqXrqH
数日中に投下します。遅くても今週中には
期待age
500 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 15:54:28 ID:8Ilhccbn
下がってるorz
>>491 GJ!
GJだがひとことだけ。
侍とその下僕が「一緒の空間で同時に」食事することは基本的にない。
侍が食べている間、下僕は何も食べず、給仕のためそばに控える、
というのが普通。(下僕はあとで別にご飯を食べるわけね)
だから、どうしても一緒にご飯を食べさせたかったら、
なにか理由(例:この場合だったら、練習相手だから時間をずらしたら
それだけ稽古が短くなって不便とかね)をつけたうえで、
侍は部屋、下僕は台所の土間というように空間をわけて、
家が狭いから結局顔を付き合わせちゃう、という感じにしたほうがいいと思う。
無粋な奴だなぁ
503 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 13:53:31 ID:oPrVFSI2
汚い穴だなぁ
おまえここははじめてか、力抜けよ
アッー!
保守だアッー
ここは無口スレですよ!
六尺も後輩の免許もないですよ!
じゃあ両方が無口だったらと妄想してみたら……
なかなかよかったよ。
てなわけでキボン
無口放送部員とか、、
510 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 06:43:54 ID:IsB+jp7j
保守
511 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 09:45:22 ID:yTt276Lk
期待ほす
「………書く?」
「……書けば免許返していただけるの……?」
「それは駄目。…」
515 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 06:36:13 ID:B/Gdc/Ea
「・・・URLがライブチャットランク・・・」
「・・・どう見ても業者・・・」
「・・・」
「・・・呪う。」
「…お昼の放送を始めます……。」
感情のない声が近くのスピーカーから響く。
柔らかなBGMが聞こえてくるなか、硝子一枚を隔てたスタジオの向こう側で、淡々と連絡事項を告げている、腰まで伸びる黒髪を後ろで軽く束ねた少女。
名前を華邑 琴佳(はなむら きんか)と言う。
所属人数三人というとても少ない人員で細々とこのような活動を続けている。
もう一人のメンバーはというと…
「さぁ!今日も始まったよ!お昼の放送…もちろん、今日もこの私、棗 鈴子(なつめ りんこ)がお送りしまぁ〜す。」
このハイテンションなショートボブの髪型の快活な少女が我らが部長の棗 鈴子先輩である。
華邑もそれに気付いてこっち側へと戻ってくる。
そして、無言のまま、彼女の定位置である放送室の隅に置かれたパイプ椅子に腰掛けて読書を始める。
「棗の、ちょっと聞いてよ!生レターのコーナーです。」
そんな外の雰囲気を知ってか知らずか、棗先輩は陽気な声で放送を続けていく。
先ほどからの態度を見て分かるように、華邑はとても無口で必要な事以外は全くと言っていいほどに言葉を発さない。
そんな彼女がなぜ放送部に入ったのかは分からない。
まぁ、そのぶん棗先輩が喋ってくれるのでバランスはとれているのだが……
そんな事を考えている内に本日分の放送が終わる。
とりあえずここまでです。
二つのリクエストを組み合わせてみたかったので書いてみました。
ここで捕捉説明ですが、琴佳さんは単なる無口な娘。
主人公は口下手という設定です。
520 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 16:39:01 ID:DPKCfJyq
WKTK!
521 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 19:03:58 ID:vy5YWu8n
すみません。修正です。
>>518 の最初に
そして、今ここで機械をいじっているのが俺、仲村 真治(なかむら しんじ)である。
俺は、手の動きで異常が無いことを伝えると、華邑にこちらに戻ってくるようにと合図を送る。
を挿入してください。
希望されるならば、もう一度張り直します。
スマン。ageてしまった。
orz
野田昭和(のだ あきかず)が家に帰り、ベッドに横になった。
と、同時に携帯にメールが来た。
送信してきたのは、幼馴染みの桜ノ宮澄(さくらのみや すみ)だ。
件名はなく本文もただ一言、
『薄情者』
だけであった。
「…………」
昭和は十秒ほどその文章を凝視し、おもむろに返信を開始した。
『意味が不明』
速攻で返事が戻ってくる。
『我を見捨てた』
『我て』
『我輩に語った愛は偽りであったか。ただ悲しい』
『もはやお前がどこの人間か分からねえよ。
大体読書会とやらに参加したのはお前自身だ』
『裏切り者。帰ったら』
『……そこでメールを止めるな。首でも刎ねるのか』
『ホモに輪姦させる』
『屈辱的だ!』
『漢字変換だと、一発目は林間なのだな。学習した。輪姦』
『書くな! お前一応うら若き乙女だろ!?』
『鬼畜陵辱 デブやブサイクに犯される女のエロパロスレ』
『貴様!』
『淫語スレッド』
『……それはちょっと興味あるぞ』
『嫉妬・三角関係・修羅場系総合』
『やーめーろー。俺は監禁に興味はねえ』
『そうだな。昭和はハーレム願望持ちである』
『断定してるんじゃねえよ!?』
夕食後、部屋に戻った昭和は、何故か自分のベッドにうつぶせ状態で少年マ
ンデーを読んでいた澄を発見した。
「…………」
「?」
澄が首を傾げながら、雑誌を差し出す。
「いや、読む? じゃなくて。そもそも、俺のだし。いいから、そこに座りな
さい」
昭和は床を指さした。
そして自分も正座し、澄と向き合った。
「そもそもだ、澄」
「?」
「どーしてお前、携帯だと多弁なんだ?」
すると、澄は携帯を取り出した。
すぐに、昭和の携帯にメールが来た。
内容はこうだった。
『新ジャンル狙い?』
「いや、狙いじゃねえだろ!?」
>>517氏に触発されて。
無口+放送部→銀河おさわがせシリーズ→『携帯でだけ多弁な無口少女』。
新しくキャラ作るのもなんなのでと思い、この二人で。
期待してお待ちしております。
526 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 02:24:23 ID:agh/IXb8
約束の週末を微妙に過ぎてしまいましたすいません。
政治家がマニフェストを実現出来ないときの気持ちがわかりました(何)
以下に投下します。前回の話と微妙に繋がっています。
少し暗めになったりしますので、悲惨なエピソードとかが苦手な人は避けてください。
バッドエンドではないので、それがありならどうぞ。
527 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 02:27:07 ID:agh/IXb8
『縁の傷 沈黙の想い』
神守病院301号室。
遠藤守(えんどうまもる)は小さな丸椅子に腰掛けて、左右の手を細かく動かしていた。
右に包丁、左にりんご。膝上の皿に赤い皮が、しゃりしゃりと音を立てて落ちていく。なかなかに器用な手つきだ。
守の目の前には大きなベッドがある。
そして、その上には無表情な少女の姿。
顔立ちは綺麗だった。しかし左の頬には大きなガーゼが、頭部には真っ白な包帯が巻かれており、逆に痛々しく映る。
顔だけではない。右の手首、左の前腕、左右の内太股、左腹部と、それぞれに傷を負っている。打撲で痣がひどく、全身包帯巻き。肋骨と右手首にはヒビまで入っていた。
守は剥き終えたりんごを、皿の上で丁寧に切り分けた。皮をごみ箱に捨てて、爪楊枝を一本、横の棚から取り出す。
「はい、静梨(しずり)ちゃん」
少女の名を呼ぶと、ベッドのパイプに橋渡しされている食事用の台に皿を置いた。
しかし少女は、その声に反応を見せなかった。
目にはあまり光がない。ややうつ向いた顔に生気はなく、視線は何にも向けられていない。
守は顔を背けたくなった。見ていて心が痛くなる。
心を強く張ってもう一度呼び掛けた。
「静梨ちゃん、食べたくないの?」
はっ、と顔を上げる。呼び掛けに気付いていなかったのか、目を丸くしている。
しばらくして、首が微かに横に振られた。
おずおずと左手を伸ばし、爪楊枝を掴む。傷が痛むのか、腕の動きはかなり緩慢だったが、きちんと自分の口にりんごを運んだ。
しゃく、しゃく、とこれまたゆっくりとしたリズムで果実を齟齣する少女。まるで機械のように無機質だ。
何の感情も流れていないかのような表情だが、守はほっとした。きちんと反応を返してくれたことが嬉しかった。
「おいしい?」
尋ねると、少女は小さく頷いた。
遠藤守がその少女に会ったのは三日前のことである。
守はその日、朝早く図書館へと向かっていた。
大学が後期に入るのは九月下旬。まだ一ヶ月以上もあり、バイトも基本的には忙しくない。課題も特になく、時間は腐るほどある。
なのになぜ図書館なのか。せっかくの夏休みなのだから他にもっとやれることはあるはずだが、彼はここ最近毎日通っていた。
別に深い理由はない。守はただ、昔から本が大好きで、こうした長い休みの時は必ず図書館に入り浸っていたのだ。
守は守なりに休暇を楽しんでいた。
図書館は市街地から離れていて、利用には少々不便である。もっと近くにあればいいのに、と守は思うが、多くの書物を抱えるには郊外が適しているのだ。仕方ないことだろう。
守は県道から逸れ、細長い脇道に入った。山の中を複雑に通っている、地元民にもあまり知られていない近道だ。
自転車が朝の爽やかな空気を切り裂き、山道を軽やかに抜けていく。
古びたガードレールが道と林の境界線を作っている。これから昇っていくであろう太陽は、木々に遮られてはっきりとは見えない。蝉の声が、風と合わせるかのように元気な合唱を響かせている。
そんな朝の山道を守の自転車は走り──そして止まった。
道の真ん中に小さな人影が倒れていた。
守は目を見開くと、急いで自転車から降りた。すぐさま駆け寄り、その影を確かめる。
「君、だい…」
言葉が途中で切れた。思わず息が止まる。
その少女は傷だらけだった。
顔には殴られたような痕があり、ひどく腫れ上がっていた。服はぼろぼろで、引き裂かれたスカートは下着さえろくに隠せていない。腕や脚にもはっきりと痣が浮いていた。
何をされたかは明らかだった。守は深いショックを受ける。
少女は仰向けの体勢で虚空を、眺めていなかった。
目に意志がなかった。まばたきと、呼吸のために微かに胸を動かす以外は、何の動きも見せていない。
528 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 02:32:05 ID:agh/IXb8
守は携帯電話を使って、すぐさま救急車を呼んだ。慌てることなく速やかに状況を伝えると、少女に囁いた。
「今救急車を呼んだから、もう大丈夫だ。安心して」
「……」
返事はない。守は気にすることなく、バッグからペットボトルを取り出す。
「水、飲めるかな?」
「……」
「無理に飲む必要はないけど、飲めるなら飲んだ方がいい」
本当は応急処置を施してやりたいが、そんな知識はなかった。水分補給を勧めたのは代わりのようなものだ。
「……」
少女は何も言わない。
意識はあるのだろうが、周りに向いていない。心を閉ざすことで身に起こった嫌な出来事を忘れようとしているのかもしれない。
守はしばらく悩んだ末に、小さく深呼吸をした。心を穏やかな水面のように静め、そして少女の耳元で言葉を囁く。
『大丈夫』
その、ただ一言に、少女の目が動いた。
それまで死人のようだった目に光が戻り、呆然とした顔で守を見やる。
守は安心の息を吐くと、優しく微笑みかけた。
「体、痛いよね。すぐに救急車が来るから安心して」
「……」
沈黙。
だがさっきまでのだんまりとは違う。少女の顔にははっきりと意識が戻っていて、目の前の青年をぼんやりと見つめていた。
「水、いる?」
「……」
十秒ほどの間を置いて、少女はゆっくりと頷いた。
腕は動かせないようなので、口にペットボトルを近付けてやる。慎重に傾けて少量注ぐと、ごくりと喉が音を立てた。
瞬間、少女は顔を歪めた。腫れた頬が痛むのだろう。口の中も切っているかもしれない。
「……まだ飲む?」
五秒の間の後、首を縦に動かす。再びボトルを寄せて、水を落としてやる。苦悶の表情を浮かべながらも、確実に飲み込んでいった。
とても、静かだった。
蝉の鳴き声が止んでいる。遠くの方で微かに聞こえるだけで、周囲の林からは合唱が消えている。
徐々に強さを増す陽光が、木々の合間を縫って斜めに降っている。
夏の暑さに涼しい風が、二人だけの道を小走りに駆けていく。
傷だらけの少女を癒すかのように、自然はこんなにも穏やかで優しい。一人よがりの錯覚だとしても、守は癒してほしいと思った。
もちろんそんな幻想的なことは一切なく、少女は残酷なまでに重傷だった。
どういう経緯でこのような目に遭ったのか気になる。しかしそれは警察の仕事であるし、守にそれを問いただす気は微塵もなかった。
今はただ、この少女が不安にならないよう、そばにいてやるだけだ。
穏やかな空気の中、青年は少女をいたわり続ける。
水本(みずもと)静梨というのが彼女の名前だった。
ポケットに入っていた携帯電話から身元が判明し、搬送先の病院からすぐに家族と警察に連絡が行った。
守は駆け付けた彼らに発見時の状況などを説明したが、静梨に何があったのか具体的なことは彼にもわからなかったので、不十分な説明になってしまった。
しばらくして、静梨の治療が終わったというので、守達は個室へと向かう。
ベッドに寝かされた彼女の様子は、痛々しいものだった。包帯で体のあらゆるところを巻かれ、まるでミイラのようだ。
医師の話では全治一ヶ月。誰かに犯された際にひどく痛めつけられてはいるものの、怪我そのものは命に関わるものではないらしい。
それを聞いて、唯一の肉親だという彼女の祖母は心底安心したようだった。命があるならまだ取り返しはつく。
目は開いており、静梨はぼんやりと天井を見上げている。
そんな孫に祖母は優しく呼び掛けた。静梨はすぐに顔を向け、小さく頷く。祖母の目に涙が浮く。
その涙が凍りついたのはしばらくしてからだった。
529 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 02:37:43 ID:agh/IXb8
二分経ち、三分が経過したが、静梨はその間何の言葉も発さなかった。周囲が怪訝な空気になる中、祖母だけが必死に話しかけている。
少女は何も言わない。
どこか戸惑った表情で、目をしばたたいている。意識もあり、理解も出来るのに、その口からはいかなる言語も生まれない。
少女は言葉を失ってしまっていた。
意思疎通は出来る。首を縦にも横にも振ることからYES/NOの表明くらいは可能だ。
だが、声が出せない。出そうとしてもすぐに苦悶の表情を浮かべてしまう。
声帯には何の異状もないので、恐らくは精神的なものが原因だろうと医師は言う。言葉を失うほどの恐ろしい思いというのはどれほどのものだろう。守には実感が湧かなかった。
警察官二人も聴取は無理だと判断したのか、部屋を出ようとする。迷惑にならないよう守もそれに続こうとして、
くいっ、とシャツの裾が引かれた。
振り返ると、少女の手が守のシャツを掴んでいた。
祖母も医師も警察官も、皆何事かと呆気に取られている。
困惑したが、痛めた左手が懸命に伸ばされているのを見て切なくなった。
守はその手を両手でいたわるように包み込み、小さく笑む。少女はそれを見て何度も首を縦に振った。
ありがとう。
言葉なき彼女の声が、届いたような気がした。
その日以来、守は彼女を見舞うようになった。
孫が慕っているようなので、迷惑でなければ時々会いに来てほしい、という祖母の頼みもあったが、守自身ほっとけない気持ちもあったのだ。
医師も、他者とのコミュニケーションによって失語が回復するかもしれないという。警察からも捜査のために協力してほしいと頼まれ、守は毎日見舞いに来ていた。
一週間の間に静梨の友人も見舞いに訪れていたが、守のように暇ではないようで、頻繁に来ることはなかった。祖母も健康な方ではないので、結果的に二人っきりで過ごす時間が多くなった。
静梨はその間一言も口を開かなかった。ただこちらの他愛ない世間話に耳を傾け、こくこくと頷くだけだった。
それでも守は「よかった」と胸を撫で下ろしていた。最悪な目に遭って、こんなに傷だらけになっても、静梨は塞ぎこむことなく元気でいる。それは喜ばしいことで、彼女の強さを素晴らしく思った。
そのうちきっと言葉も取り戻せるだろう。いつになるかわからないが、それに協力出来るのなら、決して惜しまない。彼女の声を一度聞いてみたいという思いもある。
だが、彼女が未だに笑顔を見せないことが、失語以外に気掛かりだった。
守が病院からアパートに戻ると、部屋の前に一人の少女が立っていた。
「あ、マモルくんこんにちは」
長いポニーの髪を柔らかく揺らし、小さく手を振ってきた。磁器のように綺麗な肌が、整った顔を美しく輝かせる。
「依子ちゃん」
名前を呼ぶと、少女は嬉しそうに笑んだ。
「久しぶり。元気だった?」
「うん。依子ちゃんの方こそ変わらないね。とりあえず上がろうか」
守は鍵を開け、中へと招く。少女は頷き、楽しそうに入室した。
『依子』という名前を持つこの少女は、守の母方のいとこにあたる。
昔からの幼なじみで、互いに気心の知れた仲だ。頻繁に会うわけではないが、たまに向こうからこうして会いに来てくれる。
彼女は苗字を持たない。
古くから霊能の力を持つ家系に生まれながら、才能を開花させることが出来ずに分家へと養子に出されたため、生来の苗字を失ってしまったという経緯がある。
脈々と受け継がれ成り立ってきた特殊な家業は、時代錯誤もいいところだったが、本物である以上需要もある。
その中で本家の苗字は名乗る者の霊力を飛躍的に向上させる力を持つ。が、強力すぎる故に才能のない者が名乗ると、名前の力に身を滅ぼされるというのだ。
530 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 02:42:40 ID:agh/IXb8
依子は、家業を継げなかった。
そして、ただの女として生きていくことになった。
戸籍上は分家の苗字を持っている。だが依子はそれを名乗らない。嫌っているわけではなく、違う家の者が簡単にその家の名を名乗るということに抵抗を感じるという。
きっとそれは建前だろうと守は思っている。本当は本家の名前を名乗りたくて、しかし迷惑をかけるわけにはいかなくて、
結果、彼女はこの世でただひとりの『依子』という人間として生きていくことを決めたのだ。
守はそんな依子の思いを知っているので、彼はいつも愛情を込めて名を呼ぶことに決めている。
「依子ちゃん」
「ん?」
大きな瞳がくるりと動く。どこか嬉しげなのは、彼女も守の心情を理解しているからだろう。
「今は夏休みだよね?」
「そうだよ。マモルくんもそうでしょ?」
「うん。でも高校生は宿題多いんじゃないの」
「たいしたことないよ。こうして会いに来るくらいはお茶の子さいさい」
部屋の中、一つだけの椅子に座りながら依子は笑った。
それからおもむろに守の胸元を見つめる。
何を見ているのか、守にはわかっている。
依子には霊能を扱う才能がなかったが、だからといって全くの普通人というわけでもない。霊能を「扱える」才能がないだけで霊能自体はある。
簡単な術くらいなら依子も会得している。ちなみに守も先日静梨に使ったように、暗示程度なら習得している。もっとも、守の専門は霊能とは別にあるが。
そしてもう一つ、依子は特有の能力を持っている。
「新しい縁が見えるよ。誰か知り合い出来たの?」
依子の目は守の胸元の前の空間を見ている。そこには確かに何もないのに、依子は何かを捉えている。
彼女が言うには縁の糸とやらが見えるらしい。この世のあらゆるものは他の何かと縁があり、それらは糸で結ばれているというのが依子の説明だった。
「どんな糸が見える?」
守が尋ねると、依子はじっと虚空を見つめ、
「ちょっと淋しい感じ。でも優しい印象だよ。この人、マモルくんのことが好きなんじゃないかな」
「そう……」
声のトーンが下がったことに、依子は首を傾げた。
「どうしたの?」
問われて守は口をつぐむ。静梨の身の上を軽々しく話すのは抵抗があった。
「なんでもないよ」
そう答える。
「そう? それならいい」
依子はあっさり引き下がる。喋りたくない気持ちを察してくれたのかもしれない。
守は話題を変えた。
「今日は泊まるの?」
「うん、と言いたいところだけど、ちょっと無理かな。明日会わなきゃいけない人がいるの」
「また人助け?」
依子は唇を三日月にして笑った。
彼女は『縁視』の力を使って人助けのようなことをやっている。街中を歩きながら知らない人に声をかけ、もつれたり切れかかった糸を修復してやるのだ。
「お節介も程々にした方がいいよ。厄介ごとに巻き込まれたら危険だし」
「マモルくんに言われても説得力ない。私よりずっとお人好しじゃない」
「依子ちゃん」
静かに、強い調子で名を呼ぶと、依子は押し黙った。
「……ごめんね。でも私は止めたくないの。お願い。続けさせて」
真剣な顔で訴えられる。守はこういう顔に弱い。
「……それは依子ちゃんの自由だよ。ぼくに止める権利はない。ただ、ちゃんとわかってほしい。周りの人達の心配を」
「……うん、わかってる。ありがとう」
神妙な声で呟く少女の頭を、守は撫でた。
531 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 02:49:16 ID:agh/IXb8
「久しぶりに依子ちゃんの料理が食べたい」
依子は微笑み、尋ねた。
「カレーでいい?」
「カレーがいい」
「じゃあシーフードで」
答えると立ち上がり、冷蔵庫をあさり始める。
守はその後ろ姿を眺めながら、嬉しくなった。
依子といっしょにいるととても落ち着く。静かで、穏やかな気分になれる。
こうした何気ない触れ合いは、ささやかながら大事なことなのだろう。改めて自覚するほどのことではないかもしれないが、決して悪くない。
不意に依子が振り返った。
可憐な笑顔を急に向けられ、守はどきりとする。
「縁が強まってるよ」
「え?」
「私とマモルくんの縁の糸。また少し太くなってる」
縁の糸は互いの想いの強さに比例して大きくなる。
頻繁に会っていなくても、少し相手を想うだけで二人は縁を深めることが出来る。そういう間柄だった。
静梨に対してもこうして縁を深められれば。
頭の片隅で守はふと思った。
二人が会ってから一週間。
病室を訪れると、静梨は眠っていた。
綺麗な寝顔だ。顔の腫れはひいており、湿布も貼っていなかった。頭の包帯も取れていて、元の顔が現れている。
規則正しい寝息を立てている様子は実に穏やかだった。一週間前本当に襲われたのか、疑ってしまうくらいに。
犯人を追う手掛かりは今のところ少ない。
事件当日、静梨は友達の家に泊まる予定だった。祖母は午後五時頃に自宅で静梨を見送っている。
相手の友達に連絡が入ったのは午後六時。静梨から友達にメールが届く。用事が出来て行けなくなった、という内容だった。友達は何度かメールでやり取りを行ったが、特に不審には思わなかったという。
その時間帯には既に静梨は誰かに襲われていたのだろうというのが警察の見方だ。メールを送ったのも犯人の偽装と思われる。
手際や都合のよさから考えると、計画的な犯行である可能性が高い。つまりは顔見知りの犯行だろう。
静梨は喋ることが出来ないが、筆談なら可能なので、手の回復を待って聴取が行われた。
それによると、近所の小道に入ったところで何者かに後ろから羽交い締めにされて、車に連れこまれたという。サングラスと帽子で顔は確認出来ていない。
車内で後ろ手に縛られ、目隠しをされた。その後どこかの部屋に連れていかれ、そこでひたすら犯し抜かれたそうだ。
どれ程の時間が過ぎたかわからない。気が付くと静梨は守に助けられていた。
恐らく乱暴を続ける内に彼女は意識を失い、犯人達は飽きたのか、山の中に置き去りにしたのだろう。夏でなかったら凍死していたかもしれない。
静梨の証言はそこまでで、犯人の特定にはまだ困難な状況だった。相手が複数ということくらいしかわかっていない。
警察は現在、静梨の身の周りの人物から捜査を進めている。田舎の警察が少ない人員でどこまで突き止められるか、守は正直期待していなかった。
それでも犯人には捕まってほしいと強く願う。静梨の失語は激しい恐怖が原因ではないか、と医師は言うのだ。
犯人の逮捕は原因そのものの解消に繋がる。ひいては彼女の不安を解消し、声を取り戻せるかもしれなかった。
守は椅子に座り、少女の寝顔を見つめる。
そのとき、まるで視線に反応したかのように、静梨の目がゆっくりと開かれた。
疲れているように垂れた目が、すぐ横の青年の姿を捉える。
目尻が一気につり上がった。驚いたように双眸がぱっちり開かれる。
守はばつの悪い笑みを浮かべた。
「あー……ごめん。起こしちゃったね」
「……」
静梨は慌てて首を振る。棚の上のメモ帳と2Bの鉛筆を手に取り、何かを書く。その文を守へと向けた。
『ごめんなさい、せっかく守さんが来てくれたのに、眠っちゃってて』
守は笑顔で応える。
「疲れていたんでしょ。静梨ちゃんが元気なことが一番大事なことだから、気にすることないよ。寝顔可愛かったし」
静梨の顔が真っ赤になった。顔を伏せて恨めしそうな目を向けてくるが、その様子も可愛らしい。
532 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 02:53:48 ID:agh/IXb8
「体は平気?」
こくりと頷くのを見て、守は安心する。
「一ヶ月って話だったけど、もっと早く退院出来るかもね。退院したらどこか遊びに行こうか」
不意を突かれたような表情で守を見やる静梨。メモ帳に再び鉛筆を走らせ、尋ねる。
『迷惑じゃありませんか?』
「まさか。ぼくの提案なんだからそんなことないよ。それとも都合悪いかな?」
ふるふると首が横に動く。返事の文が紙に記される。どこか躊躇するような仕草の後、思いきってメモ帳を掲げた。
『楽しみに待ってます』
守はその返文に嬉しくなって微笑んだ。
静梨は恥ずかしそうに目を背けていた。
それから二人は一時間程雑談をして過ごした。
診察の時間がやって来たので、守は静梨にまた来ると言い残して席を立つ。次はちゃんと起きてます、と書かれた紙に軽く手を振り部屋を出た。
だが、守はそのまま帰ろうとはせず、診察が終わるまで外で待っていた。
確認しておきたいことがあったのだ。
「笑顔を見せない?」
守の質問に、静梨の担当医師は首を傾げた。まだぎりぎり三十代らしいが、ストレスのせいか多少老けているように見える。
「私も気になったから、一応診察の時に言ったんだけどな……。そっか、遠藤君の前でもそうなのか……」
「一週間経って、まだ一度も見ていないんですよ」
静梨は決して無表情な娘ではない。さっき病室で交わしていたやり取りの中にも、驚きや不満、少女らしい照れをはっきりと顔に映していた。
だが、未だに笑顔だけが見られない。
「言えばぎこちなくも笑顔は見せてくれるよ。言ってみれば?」
「いや、無理に笑ってもらうのもなんか気がひけますよ。……なんで笑わないんでしょうか?」
医師はゆっくりと顎を撫でる。
「あれだね。笑うことを忘れているんだと思う」
「……え?」
「笑うことは出来るんだ。ただ、日常の自然な動作の中から、笑うことだけがすっぽり抜け落ちているんだと思う」
守は言葉なく顔を曇らせた。それは……どうすればいいのだろうか。
「それって治るんですか?」
「治るよ。原因を解消すれば遅かれ早かれ必ず治る」
失語に関しても同じ答えが返されている。
「つまりは事件の解決が重要ってことですか?」
「そうじゃない。事件を自分なりに整理して、不安が取り除かれることが重要なんだ。事件の解決はそれを助けてくれるかもしれないだけで、直接の解決にはならない」
「……」
結局静梨自身の問題ということか。
しかし、
「ぼくに出来ることはないんですか?」
何か出来ることがあるなら何かしたかった。
医師は青年の真剣な顔を面白そうに眺める。
「今まで通りでいいと思うよ。親しく話して、彼女を安心させる。そうすれば事件の恐怖が多少なりとも薄れるかもしれないしね」
「はあ……」
安心させる。不安をなくす。
一時的な不安解消ならともかく、根っこから治すのは難しかった。
「……頑張ってみます」
威勢のいい声は出せなかった。
さらに一週間が過ぎた。
守は依子とともに病院の廊下を歩いていた。
「もっと早く言ってくれればいいのに」
「依子ちゃんがあちこちふらふらしてるから、捕まえるの大変なんだよ。なんで家にいないのさ。携帯も持ってないし」
「それは悪かったけど、結構時間経ってるからもう縁が切れてるかもしれないよ」
今回依子を連れてきたのは、静梨の縁を見てもらうためだ。
もっと早く連れてきたかったが、依子を探すのに手間取ってしまった。夏休みであるのをいいことに、近畿まで行って古都巡りを楽しんでいたらしい。
「前に元気がなかったのはこのためだったんだね」
「……元気ないように見えた?」
「おもいっきり。私には説教しといて、自分だってお節介焼いてるじゃない」
「……ごめん」
「まあいいけど。その子も大変みたいだし」
533 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 02:59:57 ID:agh/IXb8
部屋に入ると、静梨は読書中だった。
守の姿を見て、すぐに本を閉じた。顔を上げるが、見ない人間がいるのに首をひねる。
「あ、こっちはいとこの子。同じくらいの歳だし、話し相手にもちょうどいいかな、と思って」
「初めまして、依子です」
静梨はしばらく依子を見つめていたが、やがてメモ帳に文字を書き込んだ。
『水本静梨です。ありがとう、来てくれて』
二人は頭を下げる。
「なるほどね、マモルくんが御執心なのもわかる」
「御執心て……」
「静梨ちゃんが可愛いってことだよ」
「……うん、そうだね」
『あなたもすごく綺麗だよ』
「ありがと。でも『あなた』じゃなくて依子だよ」
『どんな字?』
「依頼の依に子どもの子」
『苗字は?』
守の息が一瞬止まった。
しかし依子は淀みなく答える。
「マモルくんと一緒だよ。遠藤ね」
静梨は何も疑うことなく頷く。
そのまま会話が進んだので、守は安堵した。苗字のことで依子が傷付くのではと思ったが、いらぬ心配のようだ。すらすらと嘘をついたのには驚いたが。
「マモルくんの好きなもの? カレー大好き人間だよ」
いつの間にか、話が余計な方向に進んでいた。
「一週間カレーでもいいっていうくらい好きだし、ライス限定じゃないし。ふっくらふわふわパンにカレーをかけるあのうまさが、なんてどっかの女神に選ばれた魔法使いの英雄みたいなことを言うし」
「依子ちゃん!」
慌てて大声を出すが、依子と静梨は同時に人差し指を立てた。病院内ではお静かに、と無言で注意される。
押し黙った守の姿に、動作がかぶった少女二人は顔を見合わせた。依子がにこりと笑い、静梨はうんと楽しそうに頷く。
参ったな、と守は小さく苦笑した。
「見えた?」
病院を出て、守は依子に尋ねた。
「見えたよ。小さな糸だったけど、まだ残ってる。辿ってみようか」
依子が先導する。守には見えないが、静梨から伸びる縁の糸を辿っていっているのだろう。
「確かに犯人に繋がっているの?」
「静梨ちゃんから伸びる糸で一番ぼろぼろのやつを辿ってるの。そういうのは大抵自分が傷ついたり、相手の心を傷つけたりして出来た糸だから」
「……じゃあまず間違いないわけか」
熱射がアスファルトを熔かさんばかりに強い。守は額の汗を拭い、左手の缶ジュースから水分を喉に入れた。
依子はあまり暑さを気にしてないようで、くるくると元気な足取りだ。交差点を渡り、離れた住宅団地の方へと向かう。
「遠い?」
「そうでもないかな。二、三キロくらいしか離れてない」
静梨の家も比較的近い場所と聞いている。やはり顔見知りの犯行なのか。
「でも、見つけても証拠がないわけだから、逮捕なんて出来ないんでしょ? あまり意味ないんじゃないかな」
「そんなことはないよ。事件の解決はともかく、静梨ちゃんの傷を癒すには誰かが理解しなければならないから」
静梨の声と笑顔を取り戻すためには、彼女自身が事件を乗り越えなければならない。それを間接的にでも助けるには、誰かがトラウマの根っこから理解することが有効なのではないか。守はそう考えた。
一人よりも、二人の方が勇気が出るから。
その根っこに迫るために、守は事件のことをもっと調べようと思ったのだ。解決のためではなく、理解のために。
縁の糸を辿って犯人を見つけるというのは、ほとんど反則級の代物だが、事件の把握のためには有効な手段だった。
しかし、犯人に会う気はまだない。遠目から確認して、相手を知るだけでいい。
「結局、笑わなかったね静梨ちゃん」
「うん。でも楽しそうな雰囲気は感じられるから、今の状態は悪くないと思うよ」
「でも可愛い子だったなー。マモルくんはいい子に出会えたね」
ジュースを噴き出しそうになった。
534 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 03:05:29 ID:agh/IXb8
「……あのさ、さっきから勘違いしてない? ぼくは別に、」
「え? 静梨ちゃんのこと好きなんでしょ」
「だから違うって」
「じゃあ嫌い?」
「そんなことないけど、依子ちゃんが考えるようなのとは違う」
「でも向こうはマモルくんのこと好きみたいだよ」
「……」
多分本当なのだろう。縁の糸を通して、ある程度人と人の繋がりを見抜く依子の言なのだ。
静梨に好かれている。それはとても嬉しいことだった。
だが、多分それは『はしか』のようなものだと思う。たまたま守が彼女を助けたから、それがちょっと心に残っているだけなのではないだろうか。
「お似合いだと思うんだけどなー」
依子は残念そうに一人ごちる。
守はジュースを一気に飲み干すと、深々と溜め息をついた。
「お喋りばかりだけど、ちゃんと辿ってる?」
「当たり前だよ。お喋りは好きだけど、やることはきっちりやる女だよ私は」
「自画自賛は大抵説得力を欠くんだよね」
間髪入れずに頭をはたかれ、守は肩をすくめた。
二十分後。二人は住宅街の中心にやって来ていた。
糸はこの辺りまで伸びているらしい。依子がきょろきょろと周りに目を向けている。守はそれを見守る。
探索の視線が止まった。
依子の目線の先を追うと、短髪の少年が一人歩いていた。
彼はそのままマンションの玄関口へと入っていく。こちらには気付いていないようだ。
「あの子だよ。間違いない」
守は頷く。
「どうする? 近付いて顔を確認する?」
「いや、マンションの中には入れないし、今日はもう帰ろう」
依子は意外そうに目をしばたたいた。
「いいの?」
「うん。あの子は前に会ったことがあるから」
「え?」
驚くいとこに守は話す。
「一回だけ静梨ちゃんのお見舞いに来てた。クラスメイトか何かだと思うよ」
「……あの子が犯人なの?」
「まだわかんない。でも、調べる余地はある」
高いマンションを見上げると、太陽が陰に隠れようとしていた。
太陽にも隠れる場所があるのだ。小さい人間の隠れる場所なんてどこにでもあるし、ましてや過去の出来事なんて隠れるまでもなく日常に埋没してしまう。
その破片を拾うことが、今の守に出来ることだ。理解して、安心させる。不安を取り除く。そのために、目の前に現れた手掛かりを離さないようにする。
探偵でも刑事でもないのだ。事件の解決は警察に任せる。だから、決して踏み込んではならない。
「マモルくん……?」
依子が怯えた表情で呟く。
握り締めた右手に、じわりと汗が浮いた。
それからすぐに、守は少年を調べ始めた。
名前は森嶋佳孝(もりしまよしたか)。静梨と同じ学校に通っている同級生だ。
勉強も運動も成績は並。素行よし。普段の行動で目立つ点は特に見当たらない。
ただ一つだけ重要な点があった。彼は静梨に好意を抱いているらしく、夏休み前に告白をしたというのだ。静梨はそれを断ったらしく、彼は結構落ち込んでいたらしい。
「……で、それだけなんだけど」
駅前の喫茶店『フルート』で、守は依子に報告をしていた。
依子に協力してもらってから一週間が経過したが、その間に静梨は退院してしまった。傷の治りが早く、後は通院だけで十分と診断されたからだ。
静梨を見舞う必要はもうないのだが、代わりにメールのやり取りが続いている。現実とは違い、文字盤の彼女は結構雄弁だった。
そう、彼女の失語と能面はまだ治っていない。
起こった事柄と調べた内容を語りながら、一週間もあった割にはちょっと足りないかな、と守は歯噛みする。それに対して依子が首を振って否定した。
「ようやく納得したよ。なるほどねー、だからあんなに好き好きオーラが出てたんだ」
535 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 03:11:09 ID:agh/IXb8
妙なことを言ういとこに、守は首を傾げた。
「縁の糸にね、なんだか変な色が出てたの。糸そのものがぼろぼろだったから見間違いかと思ったけど、そうじゃなかった。あれは好意の色だったんだね」
相手をどう思っているか、相手にどんなことをしたか、相手との関係性によって縁の糸は色や形状が変化するらしい。
静梨から森嶋に伸びていた糸は、森嶋に近付くに連れて好意の色が深くなっていったという。
「逆恨みが原因かな」
「そんな色には見えなかったけど。でも糸は傷だらけだったし、そういうことなのかな……?」
それが一番無理のない解釈だと思えた。縁の糸がぼろぼろになる程に相手を傷つける行為なんて、事件とどうしても結び付けてしまう。それともあれは森嶋の方が傷ついていたのか。
また他にも、大きな問題が残る。
「でも、静梨ちゃんは二人に襲われたって証言していた。最低でもあと一人、誰かいるはずなんだ」
襲った人数は最低でも二人。静梨は顔はわからなかったと言った。ならば森嶋は当てはまらないのか。
だが相手は顔を隠していた。それで気付かなかっただけかもしれない。森嶋に他の仲間がいたとすれば、それもありうる。
守は考えをまとめようと必死に頭を動かすが、いかんせん情報が少なすぎる。
それを見かねて、依子が提案した。
「静梨ちゃんに直接訊けばいいじゃない」
守は途端に眉をひそめる。
「事件のことを直接尋ねるのは気がひけるよ。彼女を傷つけたくない」
依子は呆れた。何を言っているのやら。
「警察なんて踏み込みまくってるじゃない」
「それが仕事だからだよ。あの人たちは義務でやっている」
「義務ですらないのに、こそこそ調べものをしているのはどうなの?」
「……」
「前から言いたかったけど、マモルくんはちょっと臆病なところがあるよね。相手を傷つけたくなくて、中途半端になってしまう」
「……」
「そんなの駄目だよ。理解のためには踏み込まないと。私なら踏み込む」
守は押し黙った。
好き放題言われているが、言い分はもっともだった。相手を深く理解するためには、相手に対する気遣いすら邪魔になるのかもしれない。
しばらくして、青年は頷いた。
「……やってみるよ。静梨ちゃんの退院祝いに遊園地に行く約束をしているから、その時にでも」
「えっ、デートなの? 前言撤回、なかなかやるじゃないマモルくん!」
華やいだ声に守はがくっときた。真面目ムードが二秒で一変ですかそうですか。
ふと思いついて尋ねる。
「あのさ、好意の色ってそんなにはっきり見えるものなの?」
急だったせいか、依子の目がきょとんとなった。が、すぐに答えてくれる。
「まあある程度は。ホント言うと、細かいところまではわからないんだけどね」
「と言うと?」
「恋愛と親愛の区別がつきにくいってこと。二つとも確かな愛情だから、差異が出にくいんだ」
「……」
守は安堵したような疲れたような、複雑な顔になった。依子が首を傾げ、
「どうしたの?」
「いや……なんでもないよ」
疲れた気分になったのは夏の暑さのせい。冷房の効いた店内で、守は自分に言い聞かせた。
その日の夜、メールでデートの連絡をした。
二日後に会う約束をして、守は床についた。
天気は相変わらず快晴だった。
十時に駅前という約束だったので、守は十分前に着くようにした。
しかし、そこには既に静梨の姿があった。
長袖ブラウスにロングスカート。薄い生地だが露出の少ない服装だ。ショートの髪を綺麗にピンで留めて、少し大人っぽく見える。
若干季節に合わない服装だが、あんな事件の後では人目に肌をさらしたくないだろう。スカートさえ着るのを躊躇ったかもしれない。
536 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 03:17:45 ID:agh/IXb8
殊更に元気な声で、守は話しかけた。
「早いね。ひょっとして待たせちゃった?」
静梨は首を振り、メモ帳に返答を載せる。
『楽しみで早起きしちゃいました。でも今来たところですよ』
笑顔はないが、うきうきした雰囲気は伝わってくる。守の顔に自然と笑みがこぼれる。
「じゃあ行こうか」
が、歩き出そうとしたところで、袖を引っ張られた。
静梨のメモ帳に新たな文が記されている。
『手を繋いでもらってもいいですか?』
守は目を丸くした。少女はうつむいて、身を固くしている。
素直に可愛いと思った。
袖を掴んでいた手を取り、優しく握ってやる。静梨がばっ、と顔を上げた。
「行こう」
その言葉に、少女は顔を赤くして頷いた。
市街地の端にある遊園地は、夏休みということもあって家族連れが多かった。
静梨がコースターに乗りたいというので、最初はそれに乗ることにした。なかなかの人気らしく、結構な列が出来ていた。
待つ間、守は天空にそびえる異形の遊具を見上げた。人を乗せた鉄の塊が高速で動きまくっている。いや、材質が鉄かどうかはわからないが。
『怖いですか?』
横合いからメモ帳が割り込んできた。横を向くと、静梨が気遣うような表情を向けてきていた。
「そういうわけじゃないけど……いや、やっぱり苦手かな」
それを聞いて再びペンが走る。
『私がついてます! 怖かったらしっかり私の手を握っていて下さい』
その文面に守はつい笑った。
静梨が少しむっとした顔をする。軽くにらまれて、慌てて弁解した。
「ありがとう。守ってくれるんだ?」
そうですと言わんばかりに勢いよく頷く。
列が前に進み、二人の番が回ってきた。
静梨に引っ張られるように守はコースターに乗り込む。
繋いだ手にわずかに力がこもった。
暑い気温の中、その手の温かさは快く感じた。
死んじゃうって。マジありえないって。
コースターから降りて思わず守はベンチに座り込んだ。
静梨には悪いが、手の温度なんか一気に消し飛んだ。横を切っていく風の音や自殺ものの落下、竜巻のように回転する自分は間違いなくあの時死んでいた。
静梨は全くの余裕しゃくしゃくで、心配そうにこちらを見つめてくる。ごめんなさい、ヘタレでごめんなさい。
『少し休みますか?』
いきなりそれはないよな、と無理やり気合いを入れ直す。せっかくの退院祝いだ。頑張れ自分。
「大丈夫大丈夫。次行こう次」
その言葉を聞いて、静梨がペンを執った。
『次はあれに乗りたいです』
指先が示したのは、高速回転する巨大なシャンデリアだった。
『オクトパスグラス』という名のそれには、つり下げられた八つの円形台に固定シートがあり、外側に向かって人々が座っている。つり下げている中央の柱と、各台そのものが回転することで不規則な動きが生まれる代物だ。開発者の常識を疑う。
悲鳴が耳をつんざく。汗がめちゃくちゃ冷たい。
静梨は一見無表情だが、目の奥が期待で輝いていた。
「…………」
今日はもう死のう。ため息すら呑み込んで、守は歯を食い縛った。
時間が過ぎ去るのはとても早い。
時計は午後五時を回った。夏の太陽が沈むにはまだ余裕があるが、十分夕方と言える時間帯だ。
観覧車からオレンジに染まる直前の景色を眺めながら、守は今日一日を振り返った。
シャンデリアに振り回された。樽の中でローリングした。百メートル近い壁を垂直落下した。
遊園地というチョイスは静梨の要望だったのだが、正直なめていた。生きているのが不思議なくらいだ。
途中で入ったゲームセンターやお化け屋敷がなかったら、昼食さえ入らなかったかもしれない。
観覧車は心地よかった。少なくとも滑らないし落ちない。回転はゆっくりだし、揺れも微かなものだ。
537 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 03:22:15 ID:agh/IXb8
『振り回してしまってごめんなさい』
静梨がメモ帳を広げて頭を下げた。
「静梨ちゃんが楽しかったならぼくは満足だから、そんなに謝らないでよ」
「……」
申し訳なさそうに小さくなる静梨。
そういう態度はやめてほしかった。静梨の笑顔を見たいのだから、そんな顔はしないでほしい。
それに、今から聞かなければならないこともある。
「ねえ、静梨ちゃん」
呼び掛けに顔を上げる。
訊きたいことがある、と言うと、小首を傾げた。
「森嶋君という子、知ってるよね」
静梨の顔が、心なしか強張ったような気がした。
観覧車が真上に差し掛かった。
「君は事件の時、彼と会わなかった?」
目が微かに揺れる。
しばらくの間の後、静梨はペンを執った。がりがりと強い音が響く。
『なんでそんなことをきくんですか』
漢字も、句読点も、クエスチョンマークもない冷淡な文だった。まるで、冷徹に心を閉じているような、色のない文面。
何かある。それを敏感に感じとる。
何がある? それを明確に問いただす。
「ぼくは彼が犯人なのかもしれないと疑っている」
自分の考えをはっきりと述べる。静梨は何を思っているのか、悲しそうに目を伏せた。
「彼が君に告白したことを聞いたよ。君は優しいから、彼に負い目を感じているんじゃないかって思っているんだ」
いやいやをするように頭を振る。聞きたくないように頭を抱える。
守はかわいそうに思ったが、覚悟を決めて踏み込んだ。
「君は彼をかばっているんじゃない? 彼が犯人と知っていて、それを誰にも言わないでいるんじゃ」
乾いた音が密室に響いた。
平手打ちが守の左頬に鳴ったのだ。
泣き出しそうな瞳で、静梨は守をにらみつける。
「……ぼくは、君を元に戻したい」
負けないように見つめ返すと、静梨は僅かに怯んだようだった。
「正直、森嶋君をどうこうする気はないよ。ぼくはただ、君の声を聞いてみたいだけなんだ。……でも、そのために何をどうすればいいのか、皆目見当がつかない」
それは紛れもない、守の本心だった。
声を聞きたい。笑顔を見たい。本心を知りたい。その思いは真剣で、真摯なものだ。
頬が熱い。その痛みは彼女の心の痛みのようで。
きっと、今なら理解出来ると思った。
「ぼくに出来ることならなんでもする。君の声を取り戻せるならなんでもやれる。だから、どうかぼくを信じてほしい。お願いだから、頼ってほしい」
傲慢な台詞だとわかっていた。何も出来ないかもしれないのに、何か出来るようなことをほざいている。
それでも構わなかった。はったりで彼女を救えるなら、いくらでも虚勢を張ってやろう。
不意に、静梨の手が伸ばされた。
赤くなった左の頬を、癒すように撫でる。守は座席に座りながら、呆然と静梨を見上げた。
小さな空中密室の中で、少女は静かに佇む。
ゆっくりと観覧車が下へと下りていく。まだ太陽はオレンジに届いておらず、強い光が二人を照らしている。
静梨の右手が離れ、ペンを執った。さらさらと静かな音が流れる。
少し長い文のようだ。ページに何らかの文を書くと、裏のページにも何かを記した。
書き終えた文面を見せられ、守はそれを丁寧に追っていく。
『あなたのことを信じたいです。だから信じます。ちゃんとあの日のことを話したいと思います。守さんになら話せるから』
真心がこもった文章は、とても綺麗だった。
文章はまだ続いていた。
『それと、守さんにお願いがあります。聞いてくれますか?』
視線を僅かに上にずらすと、静梨の真剣な顔があった。まじまじとその顔を見つめ、守はやがてこくりと頷いた。
静梨はその所作を認めると、おもむろにページをめくった。
そこにあった内容に、守は、
『今夜、守さんの部屋に連れていって下さい』
観覧車が下に下り切る。密室が、消える。
二人が過ごす遊園地の時間が終わろうとしていた。
538 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 03:28:08 ID:agh/IXb8
午後八時。
日の光は完全に地の向こうに消えている。窓の外は真っ暗で、仄かに街灯の光が射すだけだ。それさえもカーテンに遮られ、室内を照らすのは真新しく白い蛍光灯だった。
いつもは一人の、守の部屋。
その空間に今、失語の少女が座っている。
イタリア料理店で夕食を済ませた後、守は静梨の要求に応えて自室へと誘った。
タクシーで移動する間、二人は何のやり取りもしなかった。口もメモ帳も開かず、ただ車の揺れに身を任せていた。
そして、今。
静梨はベッドに腰掛けながら、両手でスカートの一片をぎゅっと握り締めている。
守は困惑気味に頭を振る。何でもするとは言ったものの、何を望まれているのかわからない。守にしか出来ないことというのは何なのか。
「静梨ちゃん……?」
名を呼ぶと、少女は文字を綴り始めた。
差し出された紙に、守は息を呑む。
『今日、泊めて下さい』
何を考えているのだろう。あんな事件があった後で、信じられない要望だった。
「……どうして?」
怪訝な表情でつい強く問いかけた。静梨は口を真一文字に結んで動かない。
「……家に連絡入れるよ。どっちにしろ、昌子さんが心配するから」
微かに静梨の体が震えたが、守は構わず電話を入れた。
コール三回で祖母は出た。
『もしもし』
「あ、昌子さん。こんばんは。ぼくです、遠藤です」
『遠藤さん? いつも静梨がお世話になっております』
声質は柔らかく、慇懃だった。しかしその裏には、孫への心配が見え隠れするようで、守は心底申し訳なく思った。
「すみません。こんなに遅くまで」
『いいえ、大方静梨が我が儘を言ったのでしょう? 御迷惑をおかけしてごめんなさい』
「あの、実はそのことなんですが……」
言いかけたところで、横から何かが耳元に迫った。
静梨の右手が携帯電話を引ったくった。守はいきなりのことに反応出来なかった。
そして、
「お……ばあちゃん……」
守は静梨に何かを言おうとして、固まった。
今……喋った……!?
電話の向こう側からも、驚きの気配が伝わってくる。
「わたし……きょうは……かえ、らない……から」
初めて聞いた声は、何かに耐えるように苦しげだった。
守の目は少女の姿に釘付けになる。
「おねがい……この……きかいを、のがし……たく、ないの……」
少女の双眸に涙が浮いている。
「うん……だい、じな……こと……から」
しかし、その目は何かの決意に支えられているようで、強い光を宿している。
「うん……かわ、るね」
筐体が耳元から離れた。その手からそのまま携帯を返される。
「もしもし?」
『遠藤さん。あの静梨を……』
「え?」
『遠藤さんがよろしければ、今夜静梨をお願い出来ますか?』
「な……何をおっしゃってるんですか。そんなこと、」
『一ヶ月ぶりだったんです。あの子の声を聞いたの』
思わず口をつぐんだ。
『このままずっと喋れないままなんじゃないか、何度もそう思いました。でもさっき、あの子の声を聞けて思ったんです。遠藤さんなら、あの子の笑顔を取り戻せるんじゃないかって』
それは盲信なのではないか。口には出さないが、内心で呟く。
『あの子にはあの子なりの考えがあるんだと思います。だから、少しだけあの子の話を聞いてあげてほしいのですが……どうでしょうか』
すぐには答えられなかった。
539 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 03:31:57 ID:agh/IXb8
目を瞑り、しばらく黙考する。
「…………」
まぶたの裏に映るのは、先程の静梨の強い目の光。
「……わかりました」
守は承諾した。
「明日の朝には必ずそちらに送り届けますので、一晩だけ静梨さんをお預かりします」
『ありがとうございます。静梨を……よろしくお願いします』
「はい」
はっきりとした返事を出し、守は通話を切った。
そして、床にへたりこんだ静梨に向き合う。
「静梨ちゃん」
「言いたいことはわかってます……なぜ喋れたのか、ですね?」
静梨の声は先程よりも明瞭になりつつあった。守は頷く。
「あなたがいっしょだからですよ……」
「……え?」
予想外の答えに間の抜けた声が漏れた。
「あの日……私は二人の男に襲われました。目隠しをされて、場所もわからないまま、相手の顔も見えないまま、その……お、犯されて……」
声に苦しさが混じる。静梨は我慢して続ける。
「抵抗したら殴られました。暴れたら蹴られました。痛くて、苦しくて、すごく……怖かったです」
「……」
「私、途中からずっと黙ってました。泣きながら、それでも声を殺してました。どうしようもないくらい汚されましたけど、声を出したらもっと酷いことされるから」
「……」
「気付いたら、声を出せなくなってました。口がいうことを聞かないんです。怖くて、怖くて……」
声が微かに震えている。守は静梨の肩に手をやり、無理しないでと囁いた。大丈夫、と静梨はさらに言葉を紡ぐ。
「でも、守さんがそれを救ってくれました。少しずつですけど、恐怖が薄らいでいったんです」
「……」
「さっき、観覧車の中で言ってくれた言葉、多分あれが一番効きました。あれで完全に、恐怖と向かい合えると思いましたから」
「……」
「あと一つです。声も取り戻せました。笑顔も今なら自然と出ると思います。あとは……温もりです」
「……温もり」
「恋も、愛も、誰だって抱きます。異性に体を許すことだってします。なのにあんな……あんな人達のせいで人の温もりを『怖いもの』だなんて思いたくありません!」
魂からの叫びだった。ずっと奥底に溜めていた思いを、恨みを、憎しみを、悲しみを、全て吐き出すような精一杯の咆哮。
静梨は泣きながら必死で訴える。
「だから、一番大切な人から温もりをもらいたいんです。守さん、あなたから」
零れる涙の雨の中、少女は美しく微笑んだ。
「大好きです、守さん。あなたを誰よりも愛しています。だから、私をどうか抱いて下さい」
少女は自身の心を込めて、愛と願いの告白をした。
守はその真剣な言葉に、ごくりと唾を呑んだ。
重かった。
しかし逃げるわけにはいかなかった。
自分はこの少女に言ったのだ。出来ることならなんでもすると。ならば、受けてやるべきだ。
たとえ、この少女を愛せなくても。
「……わかった」
守は静梨を真正面から見つめる。
「でも、ぼくは……」
「言わないで。わかってますから」
唇に指を当てられ、守は戸惑う。
「え?」
「あなたの目が他の人に向いてることはちゃんとわかってます。わかってて告白したんですから、あなたの本当の答えもわかってます」
少しだけ淋しそうな笑み。
「でも今日は……今日だけは私を愛してくれませんか? 今夜だけ、あなたの心を私に下さい」
ずっと聞きたいと思っていた声が耳を打つ。
ずっと見たいと思っていた笑みが目に映る。
それは恋ではなく、親愛の類だった。それでも青年は青年なりに、少女のことを愛していた。
守はひざまずき、少女の体を優しく抱き締めた。
静梨はとても幸せそうに、青年の胸に体を預けた。
540 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 03:36:31 ID:agh/IXb8
裸になった二人は、互いの体に目をやり、同時に恥ずかしそうに笑った。
「あ、あの、私、初めてではないんですけど、実質初めてというか、その」
「気にしないで。ぼくも初めてだから」
静梨が目を丸くする。
「意外だった?」
「は、はい、少し」
「うまく出来ないかもしれないけど、頑張るから」
「私も、頑張ります」
守は静梨を抱き寄せると、ぎこちなくキスをした。
始めはソフトに唇を合わせる。ついばむように、何度もタッチする。
頬や鼻、額、耳と、頭の至るところにキスをした。くすぐったそうに目を瞑る静梨に、至近で微笑みかける。
今度は長く接吻を続ける。深く押し込むように口唇を合わせると、静梨の腕が強くしがみついてきた。
二人は抱き合ったままベッドに倒れ込む。勢いでスプリングが軋んだ。
唇から舌を伸ばし、静梨の口中に潜り込む。すぐに相手の舌を見つけ、つがいのように絡みつく。
守は上から息を奪うかのように覆い被さる。静梨はそれを受け入れ、震える体を下から密着させるために、抱きつく腕に力を込めた。
「んん……んむぅ……んちゅ、はぁっ──ひゃぁ!」
唇が離れた瞬間奇声が上がった。
「ど、どうしたの? どっか痛かった?」
「い、いえ、その……脚に固いのが、」
言われて下を見る。勃起した逸物が柔らかい太股の肉を押し潰していた。
「あ……あの、これは」
「こ、興奮してるんですよね」
「えっとまあ……うん、そういうことみたい」
顔がほてる。互いに慣れてないのもあるが、女の子相手にこんな直接的な話題は、結構恥ずかしい。
「続き、しましょう」
「……うん」
下半身を気にしながら守はまた唇を重ねる。
柔らかい肉感は頭を揺さぶった。果実のような甘い匂いが鼻孔をくすぐり、若い情欲を昂らせる。
互いの唾液が混じり合い、生々しい温度が伝わってくる。口の中は二人の液でぐちゅぐちゅで、たまらなく意識を陶酔させた。
「また大きく……んむぅ……」
相手の口を塞いで、言葉を途切らす。体を寄せ、逸物を押し付けた。それだけでも十分気持ちいい。
長いディープキスを終えると、今度は彼女の胸に目を向けた。視線に気付き、静梨がうめく。
「あんまり大きくないですけど……」
確かに大きいとは言えなかった。ないとは言わないが、膨らみは控え目で小振りだった。
「……がっかりしました?」
不安な声で下から窺ってくる静梨に、守は行動で返した。
「きゃうっ」
両胸を左右の掌で鷲掴む。それだけで乳房は手の中に収まってしまったが、餅のような弾力感が皮膚に返ってくる。
薄くても柔らかいものは柔らかい。ほくろ一つない綺麗な柔肌の中でも、おとなしい双丘の柔らかさは群を抜いていた。
「ん……あっ」
こそばゆいのか、静梨は体をもじもじさせる。
「柔らかい」
「そう……ですか?」
「ちょっと我慢出来なくなりそう。早く入れたい」
「あう……」
真っ赤になる静梨。
左の乳首に唇を這わせた。
「ふあっ!」
強張る肩を押さえ込み、口の中でちろちろと舐める。舌に固い感触が伝わり、さらに興奮を煽った。
左だけでなく右の方も指先で摘み、押し潰す。柔らかい感触が徐々にこりこりと硬くなる。
「ひ……ふうん……、あっ、うんっ……」
可愛らしい喘ぎ声が口の隙間から漏れ出し、少女の体が悩ましげにくねる。
「気持ちいい?」
「はい……頭がぼうっとしてしまいます」
「じゃあここは?」
守の手が静梨の股間に伸びた。
541 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 03:41:55 ID:agh/IXb8
が、
「やっ!」
大きな悲鳴とともに、守は突き飛ばされた。
無意識だったのだろう。静梨本人がショックを受けた顔で呆然となっていた。
「ち、違うんです。今のは」
「わかってる。……怖い?」
尋ねると、静梨はうなだれた。
「守さんなら大丈夫だと思ったんですけど……やっぱり、ちょっと……」
「じゃあしばらくこっちに集中していて」
え、と上げたその顔の口に、守は唇を寄せた。
急なキスに少女は驚いたようだが、すぐに集中して目を瞑った。
もう一度、股間に手を伸ばす。
触れた瞬間静梨の体に緊張が走ったが、今度は暴れたりしなかった。恐怖感を与えないよう慎重に秘所を探る。
秘唇は既に濡れていた。
唇や胸をさんざんなぶったせいだろうか。愛液が割れ目から漏れ出ている。
急速に繋がりたい衝動に駆られた。しかしそれはまだ早い。せめて局部をいじられても抵抗しないくらいには慣れさせなければ。
表面の割れ目をなぞる。縦に指を往復させると、静梨はびくりと震えた。
唇を離し、守は訊いた。
「どう?」
静梨は顔を上気させ、
「変な……感じです。でも……嫌じゃありません」
「気持ちいいんだ?」
「それは……あっ」
人差し指を中に侵入させた瞬間、短い悲鳴を上げた。しかしその響きに不快の色はない。
内襞を指先で擦り上げる。狭い膣の中に指を入れるだけでもきついが、第一関節を折り曲げて側襞を擦ると強烈な締め付けが生じた。
「あっ、あっ、あっ、ダメ、そんな、ぁっ」
色っぽい叫声が部屋に響く。
それでもやめずに擦り続けると、愛液が次々と溢れ、下のシーツを濡らした。
もう十分ほぐれたようだ。これなら挿入しても問題ないだろう。多分。
守は指を抜くと、耳元に顔を近付けた。
「静梨ちゃん、いいかな?」
静梨は潤んだ瞳を愛しい相手に向けて、小さな声で呟いた。
「どうぞ、来て下さい……」
ゴムに包まれた肉棒を秘所に当てる。
静梨の顔に怯えの色が浮いた。
「大丈夫」
一言だけ囁く。
「……はい」
信頼に満ちた笑顔。
綺麗な笑顔だ。昨日まで知らなかった顔がそこにある。
静梨は言った。守のことが大好きだと。守の目が他の人に向けられていることを知っていて、それでも好きだと。
確かにそうだったが、守は静梨のことも好きなのだ。だから今日だけは優先順位を忘れて、この娘を真剣に愛したい。守はそう思った。
腰を深く突き出す。うまく入らない。
二度失敗して守は焦った。まずい。これ以上待たせたらまた怯えさせてしまう。
「守さん」
その声にどきりとしたが、静梨は微笑んだままだ。
「あなたが目の前にいるだけで、私、怖くないんです。だから、焦らず来て下さい」
「静梨ちゃん……」
息を吐く。焦った気を落ち着かせる。
三度目の挿入。今度は大丈夫だ。ちゃんと入っていく。
入り口が切り裂かれるように開いていく。亀頭を愛液と肉襞の感触が包む。
「ん……くぅ」
静梨の顔が歪む。痛むのか、苦しげな呼気が生まれては消える。
締め付けが、敏感な性器を強烈に刺激する中、守は一息に奥まで突き入れた。
542 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 03:47:44 ID:agh/IXb8
「ふああっ!」
静梨の一際高い悲鳴が虚空へと放たれた。
「い、痛かった?」
涙目で首を振る。
「い、いえ、いきなりだったから……痛くはないです」
「……しばらくこのままで」
「遠慮しないで。おもいっきり、来て」
健気な言葉を守は嬉しく感じた。
腰をゆっくり引いていく。襞々が引っ掛かるように擦れて、体験したことのない気持ちよさが意識を襲った。
次は逆に押し進める。熱い肉の締まりが先端から中ほどまでを圧迫する。
なんと不思議な行為なのだろう。守は陶酔感に満ちた頭で、自らが夢中になっている行為を思う。腰を前後にセンチ単位で動かすだけの単純な動作に、どうしてこれほどの快楽がありうるのか。
「ん……ん、んうっ、あ、あんっ」
抽挿が激しくなるに連れて、静梨の喘ぎが大きくなった。苦痛ではなく、快楽に染まった声。その声が一層守のギアを上げる。
「やっ、はげし……っ、あんっ……あっ、あっ、んっ、んうっ、あっ、あんんっ!」
声が理性の外に飛び出すように乱れる。守は一心不乱に腰を打ち付け、これでもか、これでもかと膣内を蹂躙する。
「静梨ちゃん、好きだ」
行為の中で口をついた台詞に、静梨は掠れた声を返した。
「ありが……とう。でも、んっ、わたしはいち、ばんじゃな、あっ」
「順番なんて関係ないよ」
静梨は呆気に取られる。
「今は、今だけは、ぼくは君のものだし、君は……ぼくのものだ。誰にも渡さない」
「……嬉しいです」
「ぼくも嬉しい。君に想われていることが」
また一段と腰の動きが速くなった。子宮の奥にまで突き入れるかのように逸物をひたすら往復させる。
静梨は守の体にしがみついて、快楽の波にひたすら耐えている。頭の中を巡る脳内麻薬は通常量の遥か上だった。
「まもるさ、わたし、もう──」
「ぼくももう限界だよ……」
ゴム越しに伝わる蠕動が終わりへと導く。射精感が一秒ごとに高まっていく。
そして、
「や、あああ────っっ!!」
絶頂を迎えた静梨が、苦痛にも似た歓喜の声を上げた。
そのすぐ後に、守も果てを迎える。
「ううっ、くっ」
低いうめきとともに、薄い膜の中に白濁液を吐き出す。
次々とぶちまけられる精液。その勢いが衰えるに連れて、虚脱感が全身を包んだ。
静梨は口を半開きにしながら、呆然と虚空を眺めている。
視線が合い、二人はこの世の何よりも近しく笑い合った。
連帯感と満足感がベッドの上を温かく覆うようだった。
「守さん……」
静梨の呼び掛けに守は振り向いた。紅茶を注ぐ手を止め、裸の少女を見つめる。
「何?」
静梨の顔には疲労の色が濃い。今日はゆっくり休んでもらって、明日の朝、家に送ろうと思う。
「事件のことなんですけど……」
「え? ……ああ、もういいよ。静梨ちゃんの声も笑顔も戻ったし、あとは警察に任せて、」
「違うんです。私、まだ誰にも言ってないことがあるんです」
「?」
真剣な口調の静梨に守は首を傾げた。
「森嶋くんのことなんです」
「……彼が、どうしたの?」
静梨は一つ息をつくと、ゆっくりと話し出した。
543 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 03:54:00 ID:agh/IXb8
森嶋佳孝は、休みの間ずっと後悔していた。
彼は休みに入る前、同級生の水本静梨に告白をした。静梨はかなり戸惑った様子だったが、結局告白は失敗に終わった。
だからといって諦められるものでもなかった。
それで彼は、休みに入って静梨に迫った。
その結果、静梨は三週間も入院することになった。
自分のせいだった。あんなことをしてしまって、さらに佳孝はその後何もしていない。様子見にお見舞いに行っただけで、謝ることも出来ていない。
彼女は佳孝のしたことを、誰にも言っていないようだった。
それが逆に、佳孝の罪悪感を強くするのだった。
その日の夕方、外出しようとした佳孝は、マンションの玄関を出たところで呼び止められた。
「森嶋君だね」
佳孝が声の方向を向くと、二つの人影が立っていた。
一人は青年で、人のよさそうな顔をしている。歳は佳孝よりも三つほど上だろうか。どこかで会ったような気もしたが、よくわからない。
もう一人は浮き世離れした美少女だった。歳は佳孝と同じくらいに見える。ポニーに結った髪が、清流のように美しく映える。こちらはどう見ても初対面だった。
佳孝は怪訝に二人を見やる。
「なんですか? 何か用が、」
「水本静梨さんのことについて」
その名前に佳孝の口が固まる。
「静梨ちゃんが襲われた日、君は彼女に会ってたんだね」
「……水本が言ったんですか?」
嫌な感じだった。なんなのだこの男は。
「ぼくは最初、君が犯人だと思っていた。顔見知りの犯行だと思い込んでいたから。でも違った。あれはただの通り魔的犯行で、本当に運が悪かっただけだったんだね」
「……」
「でも、君は最初から彼女を狙っていた。あの日、彼女は二回も襲われていたんだね」
森嶋佳孝は顔面蒼白になっていた。
「俺は……俺のせいで水本は……」
守は小さく首を振る。
静梨に聞いたあの日の出来事は、かなり意外なものだった。
静梨は家を出てから、佳孝に呼び止められた。話があると誘われて、近くの公園に行き、そこで急に抱き締められたという。
唇を奪われ、そのまま押し倒されそうになったが、なんとか跳ね退けた。佳孝は力なくごめんと呟き、座り込んでしまったという。
友達との約束があったのですぐにその場を離れたが、佳孝の様子に動揺していた静梨は、背後に迫ったもう一つの危険に気付かなかった。
結果、見知らぬ男達に簡単に拉致され、そのままレイプされてしまった。
直接的に佳孝の行動が原因になったとは言えないだろう。しかし、まったく影響がなかったわけではない。彼が何もしなければ、静梨は無事に過ごせただろうから。
「俺のせいなんだよ……俺が馬鹿な真似をしなければ、あいつはあんな目に遭わなかったはずなんだ」
その声は後悔に満ちていた。
「そうかもね」
守は意識して冷淡に答えた。佳孝はびくりと体を強張らせる。
「でも、静梨ちゃんは君のことを憎んだり、恨んだりしてなかったよ」
諭すように守は続ける。
「君は自分の行動をちゃんと受け止めて、その上で彼女と向き合うべきだ。一回様子見に行ったみたいだけど、ろくに言葉も交わしてないだろう。閉じこもって自分を責めるだけじゃ何の意味もない」
佳孝は急に顔を上げると、苛立ちをぶつけるように叫んだ。
「なんなんだよあんた達は! 何も知らないくせに、偉そうなこと言うなよ!」
「……確かに君のことはよく知らない。でも君も、静梨ちゃんのことを知ろうとしてないんじゃないかな?」
口ごもる少年。
544 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 04:03:06 ID:agh/IXb8
そのとき後ろに控えていた依子が口を開いた。
「向き合った方がいいと私は思うよ」
明瞭な声が涼やかに響いた。
「静梨ちゃんはあなたのこと嫌ってないし、あなたはとても純粋に静梨ちゃんのことを想ってる。だったらこれからより強く想えるように、向き合った方がいいんじゃない?」
「……」
佳孝は何か言い返そうとしたが、少女の無邪気な顔に毒気を抜かれ、押し黙る。
「決めるのはあなた自身だから、よく考えてみたらいいんじゃないかな。あ、この人の言ったことは無視していいから」
「……ちょっとひどいんじゃない依子ちゃん?」
守のぼやきに依子はぺろりと舌を出した。
佳孝は力が抜けたのか小さな声を漏らした。
「あんたたち、そんなこと言うためだけに来たのかよ」
守はいや、と首を振った。
「君に聞きたいことがあって来たんだ。事件の日、君は現場の近くにいたはず。そのとき、怪しい車を見なかったかな?」
「車……? ……憶えてないよそんなの」
「じゃあ事件の犯人のことをイメージしてみて。どんな奴とかわからなくていい。憎んだりするだけでいい」
「は、はあ?」
佳孝はわけがわからないといった表情になる。
だが、後ろにいた依子が何かに反応した。
「マモルくん、見えたよ」
守は目を見開いた。
「どう? 追える?」
「行けると思うよ。この子の気持ちが予想以上に深いから、縁が強くなってる。」
「そう、わかった。犯人を直接見たとは思えないから、縁が繋がっているのは車の方かな。……急に訪ねてきてごめんね、森嶋君。君のおかげでどうにかなりそうだよ。ありがとう」
守は頭を下げると、依子とともにその場を後にする。
後ろから佳孝の声がかかった。
「あんた、水本とどういう関係なんだ?」
守は振り返り、答えた。
「……友達だよ。大切な」
男達は暇だった。
何か楽しいことはないか。何かスリルがあってワクワクすることはないか。それを適当に模索し、辿り着いたのが女だった。
ナンパとかではなく拉致して楽しもう。相手も選んで狩っていこう。
最初は女子高生だった。上玉で、そそる相手だった。
呆れるほど簡単に成功した。
自由を奪って、ひたすらに犯し、なぶる。殺しさえしなければ何をしてもいいと思った。
たまらない快感だった。
しかし、そう頻繁に実行するわけにもいかないので、一ヶ月おきに犯行を重ねることにした。
メンバーは三人。前と同じように後ろから女を襲い、車に連れこむ。
たむろしているマンションの部屋を出て、三人は駐車場へと向かった。
すると暗がりの中、駐車場に小さな人影があった。
外灯の光の中で見えたのは、息を呑むほどの美少女だった。
三人はほくそ笑んだ。話はすぐにまとまる。あとを尾けて拉致ることに決めた。
一人が車を運び、二人で少女のあとを尾ける。少女は駐車場を出て、うまい具合いに人気のない小道へと入っていく。
夜の闇の中、二人はそろり、そろりと少女へと近付いていく。
そしてあと五メートルという距離に迫ったとき、標的がいきなりこちらを向いた。
立ち止まってぎくりとした二人に向かって、少女は場違いに微笑んだ。
「マモルくん、GO!」
瞬間、少女の背後から何かが飛び出し、二人に襲いかかってきた。
545 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 04:07:27 ID:agh/IXb8
守は暗闇の中、夜目を効かせて右の男の顎に狙いをつけた。下からの掌底アッパーで顎を打ち抜き、意識を刈り取る。
混乱したもう一人の男に左のハイキックをぶちかまし、勢いに乗せて三メートルほど吹っ飛ばした。
当然というべきか、立ち上がれない。完全に失神している。
「ふあー、相変わらず凄いね」
依子が歓声を上げる。
守は気絶した男二人を引きずり、依子に応える。
「術者を守るためにぼくらがいるんだから、これくらいは出来なきゃね」
本家に生まれる術者は人間離れした霊能を有するが、霊能とて万能ではない。
西洋の魔術もそうだが、彼らは物理的手段に非常に弱い。霊能は精神的作用に偏るため、単純な暴力を防げないことが往々にしてあるのだ。
そこで本家を支えるために物理的能力に特化した分家が現れた。
守の家もその一つで、彼はある程度その業を修めている。免許皆伝には遠く及ばないが、素人の暴漢程度なら軽く捻ることが出来る。
「でも、こんなことはもう絶対に駄目だよ。いくらこいつらを捕まえるためとはいえ、囮なんて」
「いいじゃない。うまくいったんだから」
軽口を叩く依子。
だがすぐに真面目な顔になり、
「だって、静梨ちゃんがかわいそうだよ。こんな奴らに弄ばれるなんて。マモルくんだって本当は悔しいでしょ」
「そうだけど、君が囮になる必要なんてないよ」
「大丈夫。マモルくんが守ってくれるから」
その言葉に胸が高鳴る。
「信用してるの?」
「信頼してるの!」
依子は柔らかく微笑んだ。
守も照れ臭そうに笑う。
だがすぐに笑いを収め、後ろの気配に素早く振り返った。
ナイフを持った男が立っていた。仲間だろうか、苦々しい表情で睨みつけてくる。
ナイフと言っても刃渡り四十センチ近くある、ナタのような軍用ナイフだ。通販か何かで手に入れたのだろうか。いずれにせよ完全に銃刀法違反だ。
「依子ちゃん、警察に連絡して」
「うん」
男が中腰にナイフを構えて突っ込んできた。理性が飛んでいるのか、考えなしの殺意がこもっている。
守は呼吸なしで飛び込んだ。間合いに自ら入る。ナイフが守の胴を、
「ふっ!」
ずっと溜めていた呼気を刹那で吐き出し、ほどよく弛緩した体の横を、熊手で捌いたナイフが抜けた。かわすのではなく、脱力やタイミングなど諸々の動きを併せて『反動なく』捌く、一門の業。
相手は何が起こったのかまるで認識していなかった。守は密着状態から男の喉に頂肘を放ち、その肘で一挙動に顎を打ち抜いた。
三十センチくらいは浮いたかもしれない。確かな手応えを覚えると同時に、男がその場に大の字になる。
後ろでお見事、という声が響いた。
守は高揚した気持ちを抑えるために、深く息を吐いた。
始業式の日、静梨は夏休み前と同じ笑顔で登校した。
一部の事情を知っている友達は明るい様子に唖然としたが、立ち直った静梨に気を遣うことなく触れ合った。
いとも簡単に、静梨は日常へと戻ることが出来た。
午前中だけの式も終わり、静梨は帰宅の途に着く。
校門を抜けようとしたところで呼び止められた。
「水本」
振り返ると、同級生の森嶋佳孝が小さく手を上げていた。
少しだけ、心拍が上がった気がした。
「森嶋くん」
声は普通に出た。
佳孝は少し緊張しているようだった。
「あの……」
「ここじゃ目立つから、隅に行かない?」
546 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 04:46:41 ID:agh/IXb8
人気のない校舎裏で二人は向き合う。
「ごめん、水本」
最初の言葉は謝罪だった。
「……何が?」
なんとなくわかっていたが、一応尋ねる。
「事件のことだよ」
「やめて」
予想通りの答えに静梨は言葉を遮る。
「あれはあなたのせいじゃない。あなたに謝ってほしいのはもっと別のこと」
「え?」
瞬間、静梨は右手を振りかぶり、無防備な佳孝の左頬にたたらを踏むほどのビンタを叩きつけた。
女の子らしからぬと自分でも思う一発に、佳孝は反射的に打たれた箇所を押さえる。
佳孝は絶句したまま固まっている。
「はい、これでおあいこ」
静梨はにっこり笑って言った。
「おあいこ……?」
「そう。これ以降あの日のことを蒸し返したら、二度と口利かないから」
「……わかった」
静梨は楽しそうに笑む。
「なんで叩いたかわかる?」
「え? ……いや」
「森嶋くんが私の大切なものを奪ったからだよ」
「……?」
人差し指を立てて静梨はゆっくりと答えを教えた。
「ファーストキスだったんだ、あれ」
「!」
「だから私は怒った。おもいっきりひっぱたいた」
「……」
呆然となっている佳孝に、静梨はまた笑う。
「なんてね」
あんまり深刻に考えない方がいいこともある。
「そういうことにしとこ? 私は森嶋くんにファーストキスを奪われたから怒った。それでいいじゃない」
佳孝は目をしばたたかせていたが、やがて小さく微笑した。
「うん。そういうことにしとこうか。でも、俺は諦めないよ」
「何を?」
「これからも水本を好きでいるってこと」
いとも簡単に二度目の告白をしてくる同級生を、静梨はまじまじと見つめる。
守は静梨の想いを認めてくれた。一番じゃなくても、想いを寄せたり寄せられたり、それは決して悪いことじゃない。
そんなたくさんの想いが、その人を支えてくれると思うから。
だから私も認めてやろう。静梨は胸の裡で呟く。佳孝の想いも守の想いも、それぞれで認めてやろう。守がそうして見せたように。
だからといって、
「私には他に好きな人がいるんだけどなぁ……」
困ったように静梨は一人ごちる。簡単には割り切れないのも確かだ。
「でもその人も他に好きな子がいるし……片想いって切ないね」
片想いの相手からそんなことを言われて、佳孝は小さく苦笑した。
「まったくだ」
その同意に、静梨はおかしそうに笑った。
547 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 05:15:33 ID:agh/IXb8
おまけ
「マモルくん」
スーパーを出たところで守は依子と出くわした。学校帰りなのか制服姿だ。
「……またカレー?」
買い物袋の中身を見て、依子は呆れた声を出す。
「作ってくれる?」
「いいけど……今から?」
「学校終わったんでしょ」
依子が頷き、守は嬉しそうに微笑む。そのまま並んで歩き出す。
長い八月はもう終わってしまった。これから長い冬へ向けて、季節は移ろいゆく。まだまだ残暑は厳しいが。
「今度さ、実家に帰ろうと思うんだ」
「実家……緋水の家に?」
「うん。一応跡取りだから、色々話し合っておく必要があるんだ」
「そうなんだ。いつ?」
「冬」
「なんだ。まだ先だね」
「一緒に行かない?」
依子は目を見開く。
守は微笑み、
「依子ちゃんはさ、将来どうするの?」
「……まだわからない。私は本家にいられなくなったから、でも……」
「結婚とかは?」
依子はおかしそうに笑った。
「いきなりどうしたの?」
「興味あるから」
「相手がいないよ。……でも、それもいいかもね。私をもらってくれる人いないかなー」
「じゃあ尚更実家に来てもらわないと」
「? どういう意味?」
「うちの親に挨拶してもらいたいから」
「何それ? マモルくんと私が結婚するみたいじゃない」
「イヤ?」
「…………え?」
守が笑って何かを囁いた。それを受けて依子が珍しく慌てふためいている。
夏の終わりを告げる風が、空を駆け抜けていった。
季節はもうすぐ秋を迎えようとしている。
草むらでバッタが一匹、キチキチと音を立てた。
548 :
かおるさとー:2007/04/09(月) 05:31:47 ID:agh/IXb8
以上で終わりです。題名を考えるのが意外と難しい……。
>>367のシチュエーション無口に類するでしょうか。あと筆談も。
今回も微妙に『縁』がからむ話です。前二回に比べてちょっと特殊要素が多いです。
一応依子の話はまだ続きます。
というか応用が利くオムニバスなので、いくらでも話を広げられますね。無口スレ以外でも。
549 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 11:46:42 ID:TQmJv7V0
グッジョブ!
ただ個人的には片思いセクロスはせつなすぎて勃起しない俺
GJでした
いやー、いい感じに切なくなったよ
GJ!
>>548GJです
俺も感動して勃起する暇がなかった
GJ!
レイープが出てくる話はあんまり好きじゃないけど、最後で救われた。
よかったyo!
4人とも複雑だなぁ。
これからも、色々とあるんだろうなぁ…
しかし、依子さんが霊能者だったとは…
>一応依子の話はまだ続きます。
いや、楽しみですね。依子さんは予想してたより明るい感じでいいですね。
あぁ、私は依子さんの話も読みたいと催促した人間です。
上手すぎる、神GJ!
続編も心から楽しみにしてる
保守
さすがネ申
GJ
ほす
ほし
保守します
562 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/24(火) 20:51:06 ID:m/+yFPzO
保守
圧縮回避保守
名作の後は過疎るの法則
いや、過疎じゃなくて書き込むのがはばかられるっていうか…。
そして名作を書いた人を叩くという、
スレの根ぐされを呼ぶ方向に誘導するつもりだな?
そうはいくか!死ね!
(´・ω・`)
>>564-565 反応早すぎワロタww
まあ人がいることがわかっただけでもいっか。連休に期待。
ほふ
569 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/01(火) 00:14:30 ID:58uYvJUv
保守
570 :
今更だけど:2007/05/02(水) 19:39:06 ID:ZnuLyMqA
>>109 ∧ ∧
|1/ |1/
/ ̄ ̄ ̄`ヽ、
/ ヽ あの・・・何と言うか・・・
/ ⌒ ⌒ |
| (●) (●) | 「おし」は蔑称なので使わないほうが
/ |
/ | いいのではないか・・・と
{ |
ヽ、 ノ |
``ー――‐''" |
/ |
571 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/03(木) 07:27:46 ID:jscOHqTZ
>>570 別にマスコミでも商業出版でも政治家発言でもないんだから
言葉狩りしてもしょうがなかろう
だいたい商業系にしたって自主規制だし。
気になって調べてみたら、未亡人が差別語になることもあることを知ってびっくり。
個人的には寡婦の方がなんか見下したような言い方だと思うんだがなぁ〜。
「後家」ってのが差別的だと聞いた記憶があるが、どうなんだろう
『お嬢ちゃん』『ボク』という子供に対する呼びかけの言葉も、
某人権擁護団体によれば差別用語らしいです><
使用層のメインが小学生・中学生の掲示板なんかだと、
『障害者という言葉をなくそう!』とまじめに書き込んでいる人がいます><
もうすぐ、日本終わりますねww
『障害者という言葉をなくそう!』だって? 馬鹿だなぁ。
どうせ無くすなら「差別」という言葉を無くしてしまえばいいのにww
予想外な話題での盛り上がりワラタwいや、興味深い話題だけどな
無口の話もしようぜ。無口じゃ話すのは難しいが
!
みんな無口なら差別用語はなくならないか?
……いや冗談ですおこry
「障害者という言葉をなくそう」って言葉が差別じゃんかww
579 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/04(金) 11:23:33 ID:0kP/BxtY
エロなくせば小説化できるんじゃない?
『縁』シリーズ
「縁シリーズについてどう思う?」
「…」
「そうかすごくおもしろいか…」
「…」
「早く続きが読みたい、か…
わかったからパソコン使わしてくれないか?」
「…」
「え、使わすとこういうの見るから駄目?
いいじゃないか別に」
「…」
「私じゃ満足できないの?って満足できてるに
決まってるだろ?」
「…」
「じゃぁなんでこういうの見るのってお前なぁ
こういうの見て実際に付き合えてる幸せを噛みしめてるんだが駄目か?」
「……///」
「うわぁすげー可愛い…ってちょっと待て!こんな昼真っか…」
ちゅ〜
反省はしてませんてか誰か文才プリーズ!!
いや、GJ
582 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/05(土) 14:18:39 ID:uPyMhPcz
無言版の天野美紗緒っちで書こうと思ってる・・・・。
…ほ…しゅ
再び地文なしでの投下
「…くっ……」
「…?」
「どうしたのってお前どこでそんなこと覚えてきた?」
「…」
「パソコンからって何か家に来ては熱心に何かやってると思ったら
そんなこと見てたのかよ…」
「…」
「とどめって、うわ!」
K.O 2P WIN!!
「ああくそ負けた〜」
「…(ガッツポーズ)」
「全く、で、お前勝ったら一つお願い聞いてもらうって
言ったけど何させるつもりだ?」
「…///」
「はぁ?今日は寝せない?それってどういう…
おい…まさか…」
「…(ジリジリ)」
「おいちょっと、待て今からなのか!?」
「…」
「今は夜だけど?ってまだ7時だろうが!
無理だっておい、待て待て!人の話を…」
ドサッ
ちゅ〜
地文なしだとひたすら書きやすい
ってか軽くはまってしまいました
でもやっぱり誰か文才プリーズ!!
GJ。文才は求めるものじゃなくて育てるものだぜ。
GJ
読者の想像にまかせっきりってのも面白いかも
587 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/07(月) 19:32:53 ID:+Mmkd3A7
>>584 いや、もうその路線で行ってもいいくらいだぞww
それにしても、その彼女は無言だが積極的だなww
だ が そ れ が い い !
ちゅ〜がいいな、ちゅ〜が!!
590 :
584です:2007/05/07(月) 23:22:35 ID:YJxhg7G/
好評なようで何よりです
>>585様
その文才が育たんのですorz
地文ありでエロシーン書こうとすると悲惨な目に会います
普通のシーンも何かおかしな感じがする・・・
だから地文なしで書くことに
まぁ神が現れるまでの息抜きと考えて読んでいただければ
幸いですってことでもう一個投下
「なぁ、たまには声聞かせてくれないか?」
「…?」
「いやどうしてって…お前の声が綺麗だから」
「…///」
「やだってどうして?」
「…///」
「そんなこと言われた後だと恥ずかしい?
ふ〜ん、なら意地でも出させてやる」
コチョコチョコチョ
「…(ジタバタ)」
「むぅ中々やるな」
「…」
「諦めたらって、嫌だね」
コチョコチョコチョ
「…(ジタバタ)」
「…お前って本当に意地っ張りだな」
「……」
「息も絶え絶えに諦めたらって言われてもな〜
…よしならこっちを攻撃〜♪」
「…ひぅ(ビク)」
「お、やっと出したな〜」
「…///」
「えっ?そこは反則だ?ふふん♪、じゃぁ声聞かせてよ」
「…」
「絶対やだ?…へ〜そういうこと言うんだ〜」
591 :
584です:2007/05/07(月) 23:24:20 ID:YJxhg7G/
「…」
「ん?もうただ触りたいだけでしょ?
…そうかも、まぁいいか」
「…!」
「そんな目されたら逆効果なんだけどわかってる?
てことで〜♪」
「…ひぁ(ビク)」
「うん、やっぱりこういうことしたほうが早かったな〜」
「…///」
「エッチって言われてもな…お互い様だろ?
お前もそうとうエッチだと思うぞ?」
「…///」
「そういうことは女の子に言わないのって言われてもな〜
事実だし」
「…」
「えっ?ちょっうわぁ!」
ポフ
「…///」
「もうエッチな女の子でいいもんって…
なんか…立場が逆転してる?」
「……///」
「コチョコチョした逆襲だ覚悟しろ!?わかった、謝るからちとまて」
「…許さない(ボソッ)」
「何だって?」
「…///」
「私が満足するまではなさない?
それってまさか…またこのオチか!」
ちゅ〜
以上です
お粗末さまでした
そのうち名前も決めましょうかねぇ
GJなんだが…
あまり台詞を繰り返させるのは違和感を感じないか?
そういう技法といえばそれまでだが。
地の文を敢えて排した技法はあるにはあるが、
あれはかなり難しかったはず。一歩間違えると作文レベルになっちまう。
俺としてはなかなか果敢だと思う。地の文を入れたシーンもちょっと見てみたいけどね。
594 :
書く人:2007/05/08(火) 18:48:22 ID:0Ou1ibN8
野生動物の餌付けを連想すればいい。飼いならされた犬などと違い、相手はこちらに意思を伝えようとする努力を放棄し、そもそも求めて来ることも極端に少ない。
彼女との関係もそんな感じだ。
彼女はハトと言うより鷹に近い。自立していて依存しない。基本的に人間社会に寄生し養われているハトとは違い、鷹は人がおらず餌付け餌がなくとも生きていける。
彼女の在り方はそんな感じだ。
だから彼女とのスキンシップ――気取った言い方はよそう。いちゃこら乳繰り合うのは難しい。
まずは気分を害さないように近づくところから始める。
幸いなことに獲物は集中を要する趣味を持っていない。音楽が好きではあるが聞き入るのではなく、音楽が流れる空間でぼうっとしているのが好きなのだ。
そう言う時こそ好機。
隣に座る。口に出して許可を取るのがベスト。この時点でわずかでも乗り気でない様子が見えたらあきらめることだ。
ちなみに最善の反応は、無視。それは拒絶の意味ではなく、是非もなしという意味。いやなら無言でiPODを手にして自らどこかに行くのが彼女の流儀。そこも野生動物に似ている。
座るポイントは両者が手を伸ばさないと触れあえない距離。いきなり接近しようとし、取り逃がした経験も数多い。
しばらくして、彼女がこちらをまったく意識ていない瞬間を見計らって、手を伸ばす。
直接触れるのではない。彼女が気付いた時には、自ら触れれる範囲内にこちらの手があるといった状況を作るのだ。
急に、彼女がそわそわし始める。こちらの手に気付いた証拠だ。
こちらの手を見て、つぎにこちらの顔を見て、それから思い出したかのように、コンポや歌詞カードを見て、再びまたこちらの手を見る。
ここで注意するべきなのは、彼女を注視しないことだ。あくまでさりげなく。
彼女と野生動物の違いの最たる点は、余計なプライドと羞恥心の有無。こちらが見ている、彼女が手を出すのを期待していると知られれば、羞恥心とプライドが比重を増す。
一番難しいのはこの時だ。こちらの我慢はこの時点でかなりの長期にわたり、加えて挙動不審の彼女は愛くるしい。そんな状態で愛しい彼女を見ないなど、苦行だ。
だがその苦行は、果たすだけの価値がある。
報われるのは、彼女の中の天秤が気恥ずかしさとプライドの反対側に傾いた時だ。
彼女が、こちらの手にそっと、その柔らかな手を載せる。
こうなれば、もはやこちらのもの。無言で微笑んでやるもよし、彼女を見ずに手を握り返すもよし。
彼女は陶器のような白く動きの少ない無表情な顔を、僅かに恥ずかしげに歪んだ赤いものに変えてうつむく。
ここで辞めるのも乙だが、多くの場合次のステップに進む。
キスをする。少し強引に、されど乱暴にしない。それが彼女の好みだ。
押し倒すのではなく、引き寄せて抱きしめて。
キスを終えたら撫でてやる。性的な刺激を求める愛撫ではない。まるで猫にしてやるように頭や背中をなでてやる。
初めはこちらの暴虐に対する、無言の抗議である視線を発射してくる瞳も、だんだんととろけて来る。
やがて、こちらの心音を聞くかのように方耳を胸に寄せ、その全身を預けてくる。
ここまで来れば、もはや何をしても、彼女は応えてくれる。
しかし、多くの場合そういしない。なぜなら、あと少し待てば彼女の声が聞けるからだ。
「………シよ?」
恥ずかしげに、遠慮がちに、蕩けた瞳と真っ赤な顔で彼女が言う、たった二文字。
それがたまらなく耳に心地良く、心音を加速させる。
顔を上げさせ、唇を近づけ―――
―――後はお気に召すままに。
595 :
書く人:2007/05/08(火) 18:50:16 ID:0Ou1ibN8
逆に男も女も、徹底的に会話を省いたタイプを作ってみました。
三十分程度で作った即興品の上、寸止めですが……どうかご勘弁を。
追伸:無口会話オンリー系の究極は
>>24だと思う件について。
究極認定してしまうと後が続かない件について。
究極でなくても至高になれるんだぜ
つまりはアレか。
究極の無口っ娘VS至高の無口っ娘ということか。
究極の方は、普段はぐーたらしているがやる時はやる娘、至高の方は何でもこなせる万能選手でツンデレという
設定かな。
でも実際猛禽はあんまり頭よくないって、むかしローレンツ博士が言ってた。
つまりまったく正反対の性格の無口っ娘二人が主人公を奪い合うという展開ぞな!?
究極だとか猛禽がどうだとかはどうでも良い
要は萌えるか萌えないかだ
一日も前だけどなw
それを言ったらお終いじゃない?w
みんな萌えつきてhighになろうぜ?
萌え尽きる前に止まれ
と助言してみる
そうだな。
尽きてしまったら、そこで終わりだよな。
いやいや、灰から芽吹き再び萌え上がる者こそ本物だ。
爺さんwうぇww
そういやそろそろ450KBいくなぁ
誰が次スレ立てる?
480KB超えたらでいいと思われ
次スレのテンプレでも考えとくか
とりあえずこのスレを立ててみて、無口=引っ込み思案ではないということが分かったので、
隅っこは×だな。
こんばんは。トリップつけました。一ヶ月ぶりです。
以下に投下します。
今回は縁シリーズではなく短編です。ちょっと思い付いたので書いてみました。
楽しんで頂ければ幸いです。
『隠し事』
梶谷壮(かじやそう)が藤村都古(ふじむらみやこ)に初めて会ったのは九月の末だった。
まだまだ日射しの強い放課後の屋上。
「えーと……」
壮は多少弱まった西日を横に、一人の少女と相対していた。
小さな少女である。壮よりも三十センチは小さい。短い髪を小さくまとめ、心なしかうつむいている。スリッパの色は藍色なので、一年生ということになる。一つ下だ。
ここに来たのはクラスメイトに呼ばれたからである。しかしいざ来てみれば、この縮こまった下級生がいるだけで、他に人影はない。
(ヨシの奴……)
壮は困惑して軽く頭を掻く。
少女が顔を上げた。
「あ……の、」
「うん?」
「私……その……」
随分と小さな声だ。顔を真っ赤にして懸命に言葉を紡いでいる。
これはひょっとして、よくテレビや漫画でやっているあれだろうか。壮は他人事のように思う。まさか自分がこんな場面に立つとは。
いやいやと居住まいをただす。相手は見た感じ真剣だ。こちらも真面目に、
「好き、です。付き合って……下さい」
真摯な眼差しを向けられて、壮は一瞬たじろいだ。が、すぐに持ち直して、
「えっと……藤村さん、だったね」
「は、はいっ」
予想外に大きな声が返ってきた。少女ははっとなってうつむく。まるで自分で出した声に驚いたかのようだ。いや、実際そうなのかもしれない。
おとなしい印象は悪くない。というか結構好みだ。
しかしこれが初対面なのである。軽い気持ちで応えるのは、少しかわいそうだと思った。
「気持ちは嬉しいんだけど、俺、まだ君のことをよく知らない。だから、その……申し訳ないんだけど……」
少女の体がびくりと震えた。
「……まずは友達からでいいかな?」
震えはすぐに止まった。
「……?」
「いや、その……急に付き合うのはちょっと早いかなって思うんだけど……ダメかな?」
ぶんぶんと首を振られた。
「よ、よろしく……お願い……します」
蚊の鳴くような小さな声。
「う、うん。こちらこそ」
少女はぺこりと頭を下げると、足早に階段へと駆けていった。壮はそれを何とはなしに眺めていた。
無難な答えを返したが、よかったのだろうかと壮はしばし悩んだ。告白なんて初めての体験だったから、緊張もした。
これが二人の馴れ初めだった。
井上至統(いのうえよしつな)は壮の中学からの友達である。
気のいい男で、多くの友人関係を築いている。容姿、成績共に並。多少運動が得意なくらいで、履歴書には平凡な経歴しか記されないだろう。
しかし、なぜか印象に残る男だ。なんというか、振る舞いや言葉に自信が満ち溢れているようで、人を惹き付ける力がある。面接で強いタイプだ。
壮は少し苦手にしていた。嫌いではないが、常にペースを握られているような気がして困る。
だからこの日の昼休みも、壮は正直至統との昼食に乗り気ではなかった。
「カジ、どうしたの?」
至統は弁当箱から顔を離し、壮に問いかけてきた。
「いや、別になんでもない」
首を振り、ごまかすように焼きそばパンを頬張る。
至統は肩をすくめ、
「僕に気があるとか?」
「何でそうなるんだよ。そんな趣味はない」
「じゃあなんで僕とメシ食ってんのさ?」
「お前からこっちに来たんだろ」
「そうじゃなくて、藤村と食べればいいのに」
壮は言葉に詰まった。
至統は首を傾げ、
「最近どうなの?」
「どうって……」
「藤村とさ。うまくいってる?」
「まあ……それなりに」
言われて壮は都古のことを思い浮かべる。
告白から一ヶ月。二人はそれなりの関係を続けている。
何度か一緒に帰ったり、休日にデートもした。あまり喋りが得意ではないらしく、必要最低限な会話しかしなかったが、壮は、おとなしく控え目な娘がタイプなので、むしろ好ましかった。
まだはっきり返事をしたわけではないが、壮の心は八割方付き合う方向に傾いている。
至統が都古の相談を受けて、一ヶ月前のあの場を作ったわけだが、それに関しては壮は何も目の前の友人に言っていない。礼の一つでも言うべきなのだろうが、至統はあまり気にしないようにも思える。
代わりに言ったのは別のことだ。
「あの子、普段どんな感じなんだ?」
これを訊くためにわざわざ昼食を共にしているのである。壮は己にそう言い聞かせた。
至統はきょとんとした。口の中の唐揚げを噛み潰し、ゆっくりと呑み込む。
「何?」
「だから、普段の様子だよ。何か他と違ったりとか」
「趣味とかかな。本人に聞けばいいんじゃない? ていうか、聞いてないの?」
「テレビドラマが好きらしい。他には特に聞いてない」
至統の目が細まる。
「……何やってんのさ。君ら本当に付き合ってるの?」
「まだ付き合ってるわけじゃない」
「まだ、ってことは付き合う気はあるんだね」
「……」
即返されて、壮は押し黙る。やっぱり苦手だこいつは。
「……なんか、わからなくてな」
「相手のことが?」
頷くと、至統は肩をすくめた。
「わかり合うのはこれからじゃない?」
「いや、そうなんだけど……あの子、なんか隠してるように見えるんだ」
そうなのだ。
壮は都古の振る舞いに小さな違和を感じていたのだ。
話すとき、触れ合うとき、都古は極端におとなしい。というより無口になる。聞けば答えるし、話を振れば合わせてくれる。しかし基本的に口数は少なく、物言いもはっきりしないことが多い。
そういう性質だと言えばそれまでだし、それだけなら壮にとって別に気にかかることではない。
しかし、都古の所作はどこか変だった。
どこがと訊かれると、はっきりとは答えられない。
ただ、例えば会話の途切れた後にふと見ると、なぜか顔を曇らせていたりするのだ。疑問に思って尋ねてみると何でもないとばかりに首を振るだけで、答えてはくれない。
あまり心眼は鋭くないが、その表情は何かに悩んでいるように思えた。
始めは自分に問題があるのかもと自己を省みたが、特に思い至ることはない。
ならば都古自身の問題か。彼女に何か悩みがあって、それは知られたくない類のものなのかもしれない。
あくまで想像内の話だ。
それでも気のせいと言うには、あの表情は深刻に過ぎるように見えた。
「あんまり好きでもないの? ひょっとして」
言われて壮は眉をしかめた。
「なんで」
「嫌ってはいないけど、決定的に好きになるほどの理由がない。そういう風に見えるよ」
「……」
全てを見抜かれているような気がした。壮は諦めたように溜め息をつく。
自信家というわけでもないのだろうが、至統はこの言い切りの力が強い。自身の直感的な眼力がおおよそ見誤らないことを、自信ではなく事実として捉えているのかもしれない。
それは、おそらく正しい。
苦々しく思わないでもないが、壮は素直にそれを受け止めていた。
付き合う方向に八割傾いた理由。それは多分に都古自身には関係ないのかもしれない。なぜなら、それは都古そのものを見てのものではないからだ。
おとなしい性格。控え目な態度。かわいらしい容姿。そういったものがたまたま自分の好みにマッチしただけで、壮はろくに相手のことを知らない。
それは少し恋愛とはズレているのではないか。もっと本質的な部分で相手を好きになる、そんな深さが足りない。
別にそれがなしだとは思わない。海のように深い愛情がなくても、浅瀬でパチャパチャ遊ぶ恋愛も存在する。どちらかというと児戯やごっこに類する。往々にして楽しかったりする。
しかしそれでは相手の本気に応えられない。本質に関わる残りの二割は決して軽くない。
ならばはっきり断った方が彼女のためなのかもしれないが、その選択肢は壮の頭の中にはなかった。結論を出すためにまずは理解しようと思ったからだ。
今のところ理解は深まっていない。
「違和感を覚えているのか……」
至統は一人ごちると、水筒からコップにお茶を入れた。落ち着いた動作でそれを飲み込むと、気楽な口調で言い切った。
「カジ。君はとてもいい奴だから、藤村とも絶対うまくいくよ。保証する」
「な、なんだよ急に」
「そのうち違和感なんて綺麗になくなると思う。喉に引っ掛かった魚の骨みたいなものだ」
「……そうだといいけどな」
壮は曖昧に答える。
「藤村が仮に何か隠し事をしていたとして、それは多分君に許せないことではないんじゃないかな。君は優しいから」
「……気持ち悪いな。何か知ってるのか?」
どうにも含みのある言い方に、つい疑念が生まれる。実はこいつはその隠し事とやらを知っていて、自分に黙っているのではないか。
壮は悪人を見るような、疑いの目を向ける。
至統は少しも動じなかった。
「今日は帰りどうするの?」
「さあ。向こうが誘ってきたら付き合うけど」
「たまには自分から誘ってみたら? きっと喜ぶよ」
それは、考えの一つとしてあった。
「そうしてみるよ」
「頑張れ。実際さ、好きかどうかは別にして、藤村のこと結構気に入っているんでしょ」
また言い切られた。
「他の人なら簡単にOKするところだけど、君は変に真面目だから、真剣に向き合おうとする。今は気持ちを整理してる段階かな」
「おい」
「ホントいい男だなー。藤村もそんなところに惹かれたのかな?」
この男にしては軽い口調だった。ひょっとして、からかわれているのか?
壮は焼きそばパンを一気に口に入れると、あっという間に嚥下した。
「……ほんっと嫌な奴だよお前は」
至統はおかしそうに笑った。
放課後。
靴箱の前で待っていると、やがて都古が階段から下りてきた。
壮の姿を認めると、都古はひどく驚いた顔になった。急いで側まで駆け寄ってきて、ぺこりと頭を下げる。
「いつも誘ってもらっているから、今日は俺から誘おうと思って」
「……うれしい、です」
小さな声で囁くと、恥ずかしそうに顔を伏せた。
靴を履き、外へ。並んで校庭を横切り学校を出る。
十月の風はどこか寂しい。寒くはないが、心に吹き荒ぶような印象を残して、淡く響く。
アスファルトに落ちるいくつもの紅葉は、秋真っ只中を嫌でも感じさせてくれる。昨日の雨の水溜まりに、ひらひらと葉が紙のように落ちた。
一ヶ月前まではまだ暑さも残っていたが、今はさすがに気温も落ち着いてきた。すぐにこれから列島は厳しい寒さに覆われる。四季の変化をはっきりと肌で感じとれるだろう。
壮は都古の歩調に合わせてゆっくりと秋の帰り道を進む。
(二人で歩くには少しコツがいる、か)
好きな歌詞だ。君の歩幅は狭い、と心の中で続ける。今は冬ではないが。
カラオケでも誘おうか。ただいっしょに帰るだけというのはもったいない気がした。
彼女がいいと言うならば、どこかに連れていってあげよう。カラオケは無口な彼女には合わないかもしれないから、他のところでもいい。もっと触れ合うことで理解を深めたい。
「あの、さ」
都古が顔を上げた。身長差三十センチは頭一つ分では埋められない。完全に見上げる形になる。
「時間あるなら、どこか遊びに行かないか? ゲーセンとかさ」
都古の目が見開かれた。
しかし、すぐに顔が曇る。
「ごめん……なさい」
「え、ダメ?」
「……家の用事が」
心底申し訳なさそうな様子に壮は居心地が悪くなった。
慌てて手と首を同時に横に振る。
「ああ、いやいや、気にしないでくれ! いきなり誘ったのが悪かったな。用事あるならしょうがない」
どうもうまくいかない。申し訳ないのはこちらの方なのだ。
「……」
「……」
一足早く冬が訪れたかのように、二人の間に沈黙のカーテンが引かれる。
壮は気まずい思いでいっぱいになった胸を掻きむしりたくなった。
この沈黙は駄目だ。何か話題を振らないと、
「うれしい……です」
不意の言葉は、なんのことかわからなかった。
「な、何が?」
「一緒にいるだけで、楽しいです。……嬉しいです」
急にはっきりとものを言われて、壮は呆けたように都古を見やる。
一瞬目が合う。恥ずかしかったのか、都古はすぐに視線を逸らした。
壮は内の気まずさをあっさりと忘れる。代わりに胸の奥が温かくなるのを自覚した。
誰かに真剣に想われるって、こんなに嬉しいことなんだ。
あまり相互理解にこだわる必要はないのではないか。彼女の誠実な想いの前には、いろいろ難しく考えるのが愚かなことに思えてくる。
都古の顔が淡い赤に染まっている。
壮は穏やかに微笑み、口を開いた。
「藤村」
初めてさん付けせずに呼ぶ。小さな後輩は再び顔を上げた。
「ありがとな」
「……?」
怪訝な表情をされる。
特に意味はなかった。自然と口から生まれただけで、壮自身にもよくわからない言葉だった。向けられる好意に応えたかったのかもしれない。
壮はしばらく何も言わなかった。都古も同じく口を開かなかった。
さっきまでの気まずい沈黙とは違った。主観だが冬を越えたような気がした。
斜陽が民家の紅葉の色を深める。少し離れて公園内では公孫樹の葉が舞い散る。街路樹の合間を縫って雀達が茜色の空へ飛び立っていく。
緩やかな足取りで二人は歩く。
しばらく進み、やがて駅前の交差点に辿り着いた。バスに乗らなければならない都古とはここで別れる。
「それじゃ、また明日」
丁度いいタイミングでやって来たバスを見て、壮は都古に軽く右手を振った。
都古は、
「……先輩」
そのとき浮かんでいた表情は、壮がこの一ヶ月間気にしてきた顔だった。
何か言いたいことがあるのに言い出せないような、怯えの色が浮いた顔。
壮は急に現れた事態に言葉を失った。
何をやっている。壮は己を叱咤する。彼女にそんな顔をさせてはいけない。早急に話を訊かないと。
「藤、」
「また……明日です」
壮が何か言う前に都古は挨拶を残し、バスに乗り込んだ。
ショートカットの後ろ髪がドアの向こうに消え、バスが走り去っていく。
呼び掛けの言葉は中途半端に喉に残ったままで、壮は道の先を不抜けたように眺めた。
壮は家までの道を歩きながら、心を決めていた。
明日、返事をしよう。
翌日。
昼休みに壮は一年三組の教室へと向かっていた。都古は確か三組のはずだ。
昨日、返事をすると決めた。
出来れば放課後の方がよかったが、また用事があるかもしれない。返事以外にも彼女と話すこともあった。
壮の答えは『付き合う』だ。
適当に決めたわけではない。残りの二割が完全に埋まったわけではないが、自分の心が少し見えたからだ。
昨日の帰り道、都古から向けられた想いにあてられたかのように胸が温かくなったとき、彼女のことを好きになれると思った。
少しずつ心がはっきりとした形を取っていく。まだ未来形でしか言えない想いだが、今は彼女そのものを見つめることが出来る。
あとは時折見せるあの顔をなんとかしたかった。
何か悩みがあるとして、彼女がそれを打ち明けてくれないのは、こちらがきちんと答えを返してないためではないのか。そのために不安が先立って言い出せないのではないか。
ならば早く安心させてやりたい。彼女の想いに応えて、あの表情を消し去ってやりたい。
緊張で高鳴る心臓を軽く叩き、壮は一年の教室が並ぶ二階へと下りた。
一年三組の教室に都古の姿はなかった。
中にいた生徒に尋ねると、体育館で前の時間に使った用具の片付けをしているらしい。
しばらく待とうかとも思ったが、周りの後輩から好奇の目を向けられたので、その場から離れることにした。その足で体育館に向かう。
すると階段に差し掛かったところで、後ろから誰かが横に並んできた。
「カジ、どこ行くの?」
苦手な声に壮は辟易した。
「どこだっていいだろ」
「つれないな。せっかく大物を釣ろうというときに」
「掛け詞か? それになんだよ、大物とか釣るとか。藤村に失礼だ」
「誰も藤村のことだなんて言ってないよ」
「思ってるだろ。今から体育館に行くんだ。邪魔するなよ」
「それは残念。僕は購買部だ。弁当忘れちゃって」
すぐに一階。頼むから今は視界から消えてくれ。
その念を聞き分けたかのように、至統はあっさり壮から離れて購買部へと向かう。壮はほっとして体育館に繋がる渡り廊下を渡ろうとして、
「カジ!」
予想外に強い声が耳を打った。引っ張られるように呼び掛けに振り向くと、至統は随分と真面目な表情だった。
「藤村のこと、ちゃんと見てやってほしい」
「は?」
「もしも見失ったりしたら、絶対に許さない。僕は君ほど寛容じゃないから」
言い切られた。
刹那、背筋が波打つように震えた。
息を呑んだときには、至統は購買部へと走り去っていた。
壮は友人の残像を目の中で見つめる。思えば彼が怒りのような感情の起伏を露にしたのは、知り合って初めてのことだった。
おそらく彼は──。
優しいのはお前の方だ。そう心中に呟くと、壮は一息に渡り廊下を渡った。
扉のガラス窓から見える体育館内には二つの人影があった。まだ片付けは終わってないようで、壮は入り口で二の足を踏む。
手伝おうかとスリッパを脱ごうとして、その体が止まった。
中から話し声が響いてきた。
「それで、みやちゃんは悩んでるんだ?」
二人しかいないせいか、広い空間でありながら声は明瞭だった。
「本っ気の本気だもん! 馬鹿みたいだけど、それでもそうしないといけなかったんだから!」
さらに強い声が耳を打った。よく通る、耳に心地いいまでの声量だった。
強烈な違和感を覚えた。
声の主は確かにあの都古だった。しかし彼女は、こんなにはっきりものを言う娘だっただろうか。
声がまた響く。
「私、本気で梶谷先輩のことが好きなんだもん……仕方ないじゃない! でも先輩と接点なんてなかったから、私は」
何の話だろう。自分のことが話題にされていて、壮はひどく落ち着かなくなる。都古の毒々しいまでに濃い気持ちが伝わってくる。思わず後退してしまいそうだ。いや、嬉しいが。
もう一人の女生徒の、清廉な声が返す。
「でもみやちゃんは、もう騙したくないんでしょう?」
「うん……」
「じゃあ謝ればいいよ。私も彼氏と色々あったけど、お互いにぶつけあったらすっきりしたよ」
「幼馴染みが相手でしょ? ゆかりちゃんみたいにうまくはいかないよ」
都古の声はどこか気落ちしていたが、よく通っていた。どうも彼女のこれまでの態度と結び付かない。
壮は中の様子をもう少しはっきり見ようと、扉に近付き、
都古と目が合った。
「!」
壮は慌てて扉の陰に身を隠す。話に惹かれて迂濶な真似をしてしまった。
気付かれていないことはないだろう。距離があったとはいえ、たかだか十メートル程度だ。こちらが向こうを確認出来たのだから、向こうも出来るはずだ。
会話がしばし止まる。
それからすぐに足音がこちらに迫ってきた。シューズが床に擦れてきゅっ、と高く鳴る。
壮は観念して扉を開いた。
壮が館内に向けて姿を現す。体操着の知らない女子が一人、目の前に立っていた。
視線を奥にやると、少し離れて都古の姿。
青ざめた顔で立ち尽くしている。壮は頬を掻き、考える。立ち聞きしていたことを謝らなくてはと言葉を探す。
「藤、」
瞬間都古は背中を向け、脱兎のごとく駆け出した。
「え?」
壮はいきなりの出来事に呆然となる。
「みやちゃん!?」
女生徒が都古の突然の行動に驚きの声を上げる。
逃げた。そのことを遅れて理解する。
「梶谷先輩、ですか?」
横から急に呼ばれて、壮は軽く目を見開く。
「そうだけど」
「みやちゃん泣いてました。先輩、追い掛けて下さい」
「きみは?」
「私は邪魔なので戻ります。先輩が一人で行かなきゃダメだと思います。みやちゃんの話を聞いてやって、そして許してあげて下さい」
「は、はあ?」
わけがわからなかったが、壮は言われるままに館内に入る。都古の逃げた先、舞台裏へと走った。
広く静かな空間に、足音が響いた。
舞台の上手側の袖に都古の姿はなかった。
ただ、奥の階段から小さくすすり泣く声が聞こえてきた。階段は舞台真下に当たる地下の用具倉庫に繋がっている。
「藤村ぁー」
声量を抑えて呼び掛けたつもりが予想以上に響き、壮は声を押し殺した。
地下倉庫に下りると、充満する埃に出迎えられた。日陰の冷たい空気に少し体が震える。
横に付いていた電気のスイッチを押す。一つきりの電球が真っ暗な空間を明るく照らした。
隅の安全マットの上で、小さな体が縮こまっていた。
体育座りで顔を両膝に埋めている。小さくすんすんと泣く姿は、小動物のように怯えて見えた。
壮は『本当に』困り果てた。ここに至っても、都古がなぜこんな体を見せるのか、まるで見当がつかなかったからだ。
しかしいつまでも黙っているわけにもいかない。都古に歩み寄りながら、何かうまく励ませる言葉はないかと必死で頭を動かす。
「──」
都古が何かを呟いた。
泣き声の混じったそれを、壮は聞き取れなかった。
「……ごめん、何か言った?」
出来るだけ優しい声で尋ねる。
都古の細い腕に力がこもった。
「……ごめん……なさい」
かろうじて聞こえた言葉は、謝罪だった。
「…………え?」
混乱。
理解が及ぶ前に、都古が顔を上げる。
「私……先輩を騙してました」
「……いや、なんのこと?」
「ごめんなさい……先輩に気に入られたくて、馬鹿なことしました」
「いや、だからさ、説明してくれ」
混乱しきった頭を整理出来ずに、壮は頭を振る。
「私……その、」
都古は数秒躊躇う素振りを見せてから、意を決したように口を開いた。
「私……無口でもおしとやかでもないんです」
どれほど驚愕すべきことを言われるだろうかと身構えていた壮は、そのあまりに意外なあっけなさに目を丸くした。
「……………………は?」
都古はついに言ってしまったという顔をしている。
「先輩って……おとなしい子が、好きなんですよね……?」
「え……まあ、タイプだけど」
頷きながら頭の中をまとめる。
「ヨッシー先輩からそれを聞いて……私、気に入られたくて、おとなしく見えるように振る舞って……」
「……」
彼女の悩みとはつまるところ、『嫌われたくない』、という一点に尽きたのだろうか。
「でも、騙しているのが心苦しくなって……そのうちちゃんと言おうと思ってたんですけど、でも……」
本当に些細なことだった。
しかし壮は、ようやく都古のすべてが見えたような気がしていた。
「藤村」
「は、はい」
「付き合ってほしい」
「……え?」
実にあっさりした口調で、少年は言った。
都古は涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げて、ぼんやりと壮を見つめる。
自然と笑みがこぼれた。
「会いに来たのは、ちゃんと返事をするためだ。だから、言えてよかった」
都古は肩を震わせると、不安げに問う。
「せ、先輩……怒ってないんですか?」
「ああ」
「それに付き合う、って」
「え、ダメ?」
ふるふる、と首を振る都古。
「嬉しい……けど私、先輩の好きなタイプからかけ離れてます」
壮は肩をすくめた。
「付き合う相手が好きなタイプである必要はないだろ。俺は型じゃなくて人を見て判断する。まだ藤村のこと少ししか知らないけど、これからたくさん知っていきたい。だから──」
壮は都古の正面に膝立ちになると、小さな肩を優しく掴んだ。
「俺と、付き合って下さい」
都古はしばらく上目遣いに見つめてきたが、やがて小さく頷き、夏のひまわりのように笑んだ。
目の端に残った涙の欠片が、淡い電球を受けて微かに光った。
しばらくして、都古が顔を伏せた。
「どうした?」
問うと、少女は腰を起こした。そして体を少年の方に傾けた。
壮は慌てて支える。
胸で抱き止める格好になり、壮は少し戸惑った。急であることもそうだが、体操着越しに伝わる体の柔らかさが、
「……先輩」
「な、何?」
「キス……してもいいですか?」
心拍が一気に跳ね上がった。まるで試験前のような緊張が全身を覆う。
「あ……」
頷こうとしてうまく首が動かなかった。
都古はおかしげに笑うと、返事も待たずに顔を近付けてきた。
小さな顔が、視界を暗く遮り、
「…………」
五秒間、温かい感触が唇を包んだ。
都古の顔が離れる。甘い匂いと柔らかい触りは壮の脳を麻痺させるには十分で、とても惜しく感じた。
都古は嬉しそうに微笑むと、続けて言った。
「……先輩、次の時間サボりません?」
「な?」
唐突な申し出に、大いに困惑する。
都古は深呼吸をすると、壮の胴に腕を回した。体がさっきよりも密着して、壮は意味もなく焦る。
「せっかくの二人っきりですし、その……お、おしたおしますっ」
意味を悟る前に壮の体は後方へと倒されていた。
膝立ちから一瞬で仰向けになった壮の目に、舞台の床を支える木と鉄の骨組みが映った。この上で校長が長々と喋ったり、演劇部がリハーサルしたりするんだな、と今の状況とはズレたことを考えた。
都古は顔を赤くしていたが、やめるつもりはないようだった。
「ふ、藤村」
「服、脱がします」
白く小さい指がカッターシャツのボタンにかかる。たどたどしい手付きがゆっくりと下に移動していく。
上から丁寧に外し終えると、都古は露になった男の裸にごくりと息を呑んだ。見られながら、壮はどうにか拒絶の方法を考える。
「厚い、ですね。男の人の胸板って」
岩盤の肌触りを確かめるように、掌が固い胸を撫でる。心臓の位置に来ると、早鐘を感じ取るように手を止めた。
「藤村、誰か来たら……」
「次の時間、どこも体育はないですよ」
「なんでそんなこと把握してるんだよ……。君……お前、自分のしてることわかってるか?」
呼び方を微妙に変えたが、都古はそれだけで嬉しそうだった。
「わかってます。先輩に処女あげますから、押し倒されて下さい」
「……」
手が微かに震えている。大胆な行動の裏に、やはり怖さはあるのだろう。壮は天井に向けて溜め息をついた。
随分と頼まれ事の多い日だ。すべてをこなしている自分は結構頑張っているのではないか。
「一応言っとくけど童貞だぞ」
都古の目が細かく瞬いた。
「じゃあ初めて同士ですね」
「だから加減の仕方を知らない。痛いかもしれないぞ」
「それは怖いですけど、死んだりはしないと思いますから大丈夫です」
「……女は度胸か?」
「意地ですよ」
即答されて、少年は苦笑。
「男は見栄だ。俺はあんまりないけど、少しはかっこつけたくなる。女の前では特に」
「私も意地はあんまりないですけど、無理やり出します。臆病だから」
壮は体を起こすと、都古を真正面から抱き締めた。
都古は目を瞑ると、壮の胸元で安堵の息を吐いた。
冷たい空気の中で二人は、互いの体を暖め合うように抱き締めていた。
体操着姿の小さな少女が、安全マットの上に仰向けになっている。
その上には、少女よりもずっと大きな体格の少年。
壮はおもむろにカッターシャツを脱ぐ。
「ボタンが一つ外れかけてましたよ」
「ん? ああ、まあな」
「あとで直してあげます」
都古は下からにこりと笑む。
リラックスを心掛けているのだろう。壮は手早く行為に入ろうと思った。
明るい黄緑のショートパンツが目に映る。脱がそうと手を掛け、やめる。そして右手を腹の下から中に滑り込ませた。
「あっ」
短い悲鳴。
「あの、脱がさないんですか?」
「体操着は着衣の方が興奮する」
「そ、そういうものですか。……ひゃっ」
下着の隙間から中を探る。柔らかい股の肉はしっとりと汗がついていた。体育の後だからか。
右手が恥毛の茂みに触れた。この奥だろうか。分けいって入っていくと、下の方にそれらしき感触を探り当てた。縦に筋が延びているようで、人差し指でなぞる。
都古の顔が小さく歪む。
往復してなぞりあげると、今度は指で押してみた。
「っ……あの、多分もう少し下の方、」
少し苦痛の呼気が漏れた。言われるままに指を下に滑らせる。意外と難しいものだ。
思いきって人差し指を中に進入させてみる。
「ひあっ」
都古の体が硬直した。下半身にまで力が入り、中の指が締め付けられた。
「大丈夫か?」
「は、はい、多分」
壮は都古の右手側に膝をつくと、左手で上の木綿シャツをめくりあげた。水色のブラジャーが小さな胸を隠している。
「え? あ、あの」
戸惑いと羞恥の声を上げる都古。壮は構わずブラジャーに手を掛け、上にずらした。
二つの膨らみは体に比例するように小さい。谷間と呼べるほどのフォルムはなく、仰向けでは重力に負けて平に近付いてしまう。
都古は泣きそうなくらいに顔を真っ赤にしていたが、壮にとっては気にするほどのことでもなかった。興奮を煽るには、好きな娘の体というだけで十分過ぎる。
小さな丘の先端に舌を這わせた。
「ん、くすぐったいです……」
左乳首を舌で舐め回しながら、左手で右を摘む。
「ん、く、ん……」
短い呼気を漏らす都古を見て、壮はさらに止めていた右手の動きを再開した。
指を先程よりも深く進入させる。相変わらず締め付けはきついが、少しずつぬめりが増してきている。
「先輩……キスして下さい」
「ああ、俺もしたい」
興奮が高まっていく中、二人は二度目のキスを交わす。
お互いに唇を深く深く押し付け合い、やがてどちらからともなく舌を絡ませ始めた。
唾液や口唇の熱が頭にまで上ってくるようで、壮は風呂上がりのようにのぼせた。
唇を離したとき、都古の目が惚けているように見えた。熱で浮かされているのかもしれない。
右手にじっとりと粘りつく量が増した。ぬめった秘所の内側を擦り上げる。
「ひっ、あっ、んん……っ」
股間の弄りが徐々に大胆になってきているのを受けて、都古の叫声にも色が混じり始める。苦痛の印象はなく、ひょっとしたら快感にまで達しているのかもしれない。
「どうだ。痛いか?」
都古は幼さの残る肢体を悩ましげにくねらせながら首を振った。
「いえ、……でも、あついです」
「熱い?」
「こんなにすごいのはじめて……」
精神的な昂りが性的快楽に繋がっているのかもしれない。こんな薄暗い地下の隅っこで、二人っきりで授業をさぼって、情事に耽っているのだ。
端的に、狂い出しているのだろう。もちろん壮も含めて。
理性は時間が経つごとに薄まっていくようで、壮は秘所をほぐすようにかき回し、胸を触り、乳首に吸い付き、体中にキスの雨を降らせた。
都古の体はどこもかしこも柔らかく、何度見ても、触っても飽きないだろうと思った。どこかを触る度に色っぽさがどんどん増していく。
体全体が桃色に上気していくのを見て取り、壮はようやく秘唇から右指を抜いた。体を離し、都古の顔を見つめる。都古も荒い息を吐き出しながら壮の顔を見つめた。
視線が重なり、意思の疎通が図られる。次のステップへという思いが互いに伝わって、二人は同時に頷いた。
壮はズボンを脱いでいく。トランクスも脱いですべてを晒すと、屹立したものが自己主張をしていた。
「うう……」
都古はまじまじと凝視した。どこか不安げな声を出す。
「怖いか?」
「……不便そう」
ずれた感想に壮は苦笑。
「そういうこともある。急所だから痛いしな。でも気持ちいいことも出来るわけだし、不便でもないぞ」
「それが、入ってくるんですよね、私の中に」
「『気持ちいいこと』をするためにはな」
お願いだから『やっぱりやめる』なんて言わないでくれ。壮は内心で呟く。
都古はまた深呼吸をした。先程よりも深く、長かった。
「……どうぞ」
都古は仰向けのままぎこちなく微笑んだ。
壮はズボンのポケットから財布を取り出すと、中からコンドームを一つ抜き取った。箱ではなくバラの袋だった。
「……準備いいですね」
「い、いや、これはだな、その、駅前でたまたまキャンペーンを、」
「そんな必死にならなくても」
「……。あー、すぐ着けるからちょっと待っててくれ」
果たして逸物は薄い膜に包まれた。
ショートパンツから右脚だけ抜いて、都古も下半身を空気に晒す。
生の異性の性器を初めて目撃した。少々未発達なためか思っていたよりグロテスクではなかった。それどころか綺麗な桃色の花弁は感動すら覚える。
右手で軽く開いてやると、中のまっさらな襞々が透明な液でぬめっていた。
「入れるぞ」
都古の頷きを確認すると、壮は肉棒を陰部に押し当てた。
都古の体が強張る。
壮は何も言わなかった。何を言っても痛くさせてしまうだろうから、挿入は一気に終わらせた方がいいと思った。
しかし簡単には行かなかった。
亀頭が名前通りの遅さで膣内に入っていく。締め付けが強すぎて奥まで進むのにひどく力がいる。
「いっ……痛、いっ、あっ」
苦痛に都古が悶えた。足をばたばた動かそうとして、それが逆に痛みを助長させるので、顔を歪めて叫ぶしかない。
「いっ…あ、くぅっ、ああっ」
かわいそうなくらいに都古は泣き叫ぶ。壮はうろたえかけたが、すぐに気を張って耳元で囁く。
「藤村、落ち着け。痛いだろうけど、」
「抜いて、抜いてっ、だめなの」
言葉は届いていない。苦しげに呻き、首をぶんぶん振っている。
「痛いよ、せん、ぱいッ……いや、こんなのっ」
「都古!」
壮は両頬を手で挟み込むと、都古の声をかき消すように叫び、じっと小さな顔を見つめた。
都古が声をなくす。痛みと恐怖で混乱していたのだろう。何も捉えていなかった涙目の焦点が次第に定まっていく。
「せん……ぱい?」
「痛いなら叫んでもいい。暴れてもいい。でも、俺をちゃんと見ていてほしい。今は一番近くにいるから」
「……」
壮の言葉に都古はおずおずと頷いた。
「せんぱい……」
「ん?」
「……キスして下さい」
間髪入れずに唇を合わせた。安心させるために優しく送り込むと、少女は微かに笑んだ。
「き、来て下さい。今度はもうちょっと頑張りますから」
「無理すんなよ」
行為を再開する。腰を慎重に押し進めていく。
相変わらずきつい。抵抗感が抜けずに進入を拒まれているみたいだ。
それでも少しずつ、奥へと入っていく。襞々がゴム越しに絡み付き、陰茎を強く刺激する。
都古はかなり苦しげな表情を見せていたが、なんとか声を呑み込んでいるようだった。壮にとってはありがたい。
しばらくして、ようやく肉棒全体が中に入った。
「入ったぞ、全部」
「……」
言葉が返ってこなかったのは余裕がないためか。
壮は呼気を漏らすと、腰をゆっくりと引き始めた。内側の肉が擦れて気持ちいい。
「都古、すげーたまらない」
「……ほんと?」
「ああ。最高だ」
都古が嬉しげに笑う。
緩慢な腰遣いで往復を繰り返した。前立腺が反応し、射精へと向けて余裕を奪っていく。
出来るだけ長くこの快楽を味わいたい。その思いに引っ張られて動きがますますのろくなっていくが、焼け石に水だった。
「俺もう限界だ……」
「ん……じゃあ、最後は好きにして……」
その申し出に壮は目を見開く。
「馬鹿。そんなことしたらお前が……」
「いいの……そうしないと、たくさん出せないんでしょ? 大丈夫、ですから」
「都古……」
壮は唇を結ぶと、遠慮なく腰の動きを早めた。
狭い膣内を激しく動くと、凄まじい快感が脳内を犯した。
「ひ、んっ、あっ、うんっ、いっ、あっ、ああっ、ああ────」
都古の喘ぎが大きくなるに連れて、壮の射精感も一気に高まっていく。
決壊の瞬間はあっけなく訪れた。
「みやこ……!」
「んっ、んんっ、あ、あっ、ああぁぁ────────っっ!!」
ぐっ、ぐっ、と腰を押し付けて最後の一滴まで絞り出す。薄いゴムの中に白濁液を吐き出すと、壮は強烈な脱力感に襲われた。
大きく息をついて都古の上に倒れ込む。どんなベッドよりも柔らかい感触に、不思議な安らぎを覚えた。
「先輩、おもいー……」
都古のぼやきが耳元に響いたが、壮は疲労で返せなかった。
二人は服を着直すと、マットの上で身を寄せていた。
「まだ何か挟まってるみたいです」
都古に横目で抗議されて壮はうつ向いた。
「ごめん……」
「先輩ばかり気持ちよくなって不公平です」
「……ごめん……」
それしか言えない。実際その通りなのだから反論出来ない。
すると都古は小さく舌を出した。
「冗談ですよ」
「え?」
「私から誘ったことですから、いいんです。それにちゃんと出来たことが嬉しいから」
明るい笑顔に壮は胸がいっぱいになった。
都古の肩に手を回し、小さな体を引き寄せる。
「次はお互い気持ちよくなろうな」
「はい」
二人はにっこり微笑み合う。
誰もいない地下倉庫。冷たく埃に満ちた空間は決して良い環境ではなかったが、二人っきりの静かな場所はとても心地よく感じる。
授業をさぼって過ごした時間は、二人にとって忘れられないものになるだろう。互いの繋がりを強くすることが出来たのは、何よりも素晴らしいことのように思えた。
「そういえば先輩」
都古が何か思い出したのか口を開いた。
「どうして私と付き合おうって決めたんですか?」
尋ねられて、壮は答える。
「決まってる。好きになったからだ」
「なんで好きになったんですか?」
さらに突っ込まれて、壮は答えに窮した。
しばらく考えて、それから小さく笑う。
「な、なんですか?」
「都古のアタックがあまりに真剣だったからかな」
都古は眉根を寄せた。
「それ、なんだか私自身の魅力とか関係ないような……」
「いやいや、ひた向きさに負けたってことで」
「もう、真面目に答えて下さい!」
壮はへらへら笑って受け流す。都古が怒って肩や背中をばしばし叩いた。
別に冗談ではないのに。
都古のどこを好きになったと訊かれたら、答えに困るのは当然だ。理由なんて、『都古が都古であるから』以外に存在しないのだから。
都古のことをはっきり理解出来ずに想いを抱けなかったのも昨日までの話。今は等身大の藤村都古がきちんと側にいてくれるから、確かな想いを胸の中に持つことが出来る。
外枠だけの八割と、確かな中身の二割とが、しっかりと合わさって想いを作っていた。
逆に尋ねる。
「都古はなんで俺のことを好きになったんだ? 一ヶ月前まで、こっちはお前を知らなかったのに」
目に見えて都古は狼狽した。
「……秘密です」
「なんだそりゃ」
「人を好きになるのに理由なんかありません!」
「反則だろそれは」
「いいの。女の子の心は繊細で複雑なんだから、言葉なんかじゃ表せないの」
ぷいとそっぽを向く恋人に、壮は苦笑いを浮かべる。
「俺はもうちょい言葉少な目のおとなしい娘が好きなんだけどな」
「! 蒸し返さないで下さい!」
強い視線で睨まれて、壮は肩をすくめた。
(言えないよね……)
都古は怒ったふりをしながら中学の時を思い出す。
体育祭の組別対抗リレー。二年生でアンカーを任された都古は、途中でバトンを取り落としてしまった。
結果最下位に終わり、都古はひどく落ち込んだ。周りのみんなは慰めてくれたが、よく頑張った、最後まで諦めなかったなんて言われても、少しも自分を肯定出来なかった。
だが体育祭の後に、知り合いの井上至統からこんなことを聞かされたのだ。
『藤村のことをすごく褒めてるやつもいるんだよ』
どうせ他の慰めと変わらないだろう。聞き流そうとしたところに、彼はこう続けた。
『背筋が伸びて、すごくフォームがかっこいい、だってさ』
その、場面に合わない評価が、都古の心になぜか残った。
気付いたときには、至統に相手のことを尋ねていた。
次の年には同じ競技でリベンジを果たしたり、その先輩が進学校に行くと聞いて、同じ所に行くために一生懸命勉強したりと、他にもいろいろあったが、すべてはあの時の言葉に集約されるのだろう。
かっこわるかったのに、かっこいいなんて、
直接言われていたら、きっと残らなかったと思う。伝聞だったからこそ、それは心に響いたのだ。
そんな些細なことがきっかけだ。今更答える気もない。
それは、自分だけの大切なきっかけ。
「壮先輩」
都古に初めて下の名前を呼ばれた。嬉しさを隠して平静に応える。
「なんだ?」
「改めて言ってもいいですか?」
「何を」
都古は小さくはにかんだ。
「大好きです、壮先輩」
真っ向から言われてつい呼吸を忘れた。
やがてそれに応えるように、壮は言葉を返した。
「俺も好きだ、都古」
小さな後輩は、日のように輝いた笑顔を浮かべた。
God job!!
以上で終わりです。相変わらず投下に時間がかかります……。
>>371のアイデアを使わせて頂きました。
「どこが無口っ娘なんだよ!」とも思いますが、自分なりに頑張ったつもりです。
次は縁シリーズ。……だと思います。
順調にペース落ちてきているので、なんとか戻さなきゃ。
>>601 それはアリ。かなりアリ。
GJ!
寝る前にいいものが読めた。
相変わらずの品質にGJ!
さすがに次スレが必要な時期ではあるまいか
10KBを切ったあたりに次ってところだろうな。
つまりあと一本はいけそうだ。
はいはいハニワハニワ
誤爆
じゃぁ短めのオチもエロ
も何もないものを投下
●月×日
今日はいい日だ
朝から彼女の声を聞くことができた
彼女は滅多にしゃべらないから
とても珍しい
おまけになんだか
彼女は今日機嫌がいいらしく
ちょくちょくしゃべってくれたし
笑顔も見せてくれた
多分一年に一回あるかないかの日だろう
そのおかげで僕もとても機嫌がいい
●月▲日
今日は打って変わって
彼女は機嫌が悪い
彼女は機嫌が悪いと
なんか微妙に顔がふくれっつらになる
まぁそんな彼女もとても可愛いので
そんな顔になっていることを指摘しない
●月□日
今日は彼女の買い物に付き合う
こうやって買い物に付き合うたびに
いつも思うのだが
なんでこんなに物を買うんだろう?
とても不思議だ
「…」
「おーい、何見てるのって… 人の日記!?」
彼女は無言でうなずく
そしてぽつりと一言
「…あんまりおもしろくない」
「だったら最後まで読むなー!」
僕の叫びにまたぽつりと一言
「……近所迷惑」
はいそのとおりです
いやそれはおいといて
「人の日記を勝手に読むなよ」
「…駄目?」
彼女が首をかしげる
うわぁかわいい…じゃなくて
駄目だから叫んでるんですが。
とりあえず彼女から日記をとりあげる
「…ひま」
そしてごそごそと
「僕の部屋をあさるなーー!」
そんな彼女とのいつもの一日
終わり
はいなんか…自分で書いといて…
微妙でした
642 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/13(日) 19:39:16 ID:46L7Hjx8
いや、それなりだとは思うぞ
俺は結構好き
ひっそり投下してみたり
高牧真一は、疲れ切っていた。
「……あのなぁ、お前ら」
ベッドに横たわる真一の左右には、愛らしい少女が二人、裸身のまま寝転がっている。
右側にいるのは、真一の通う大学でも滅多にいないだろうと思われるほどスタイルの整った少女。
肩口ほどの金髪をツインテールにして、真一の脇腹にその豊かすぎる双丘を押し当ててくる。
当たってるんだけどと言ったとしても、表情だけで当ててんのよと返してくるであろう義妹・李守美の姿に溜息を吐く。
同時に、左側から伸びた繊手が股間に伸びてきたことに気づいて、その手を押しとどめた。
左側に向けた視界には、年齢相応の蕾のような愛らしさを残す体型の、腰まである長い金髪をストレートに下ろした少女が、楽しそうに笑っていた。
李守美と同じ顔立ちの少女、言うまでも無く双子の片割れ、朔耶の愛らしい笑みに、こめかみが痛みを覚える。
「ったく……」
「〜〜!」「――?」
なんか文句でもあるの! と、言いたげな表情で睨んでくる李守美と、
まだ欲しいんですか? と、剣呑な意志を笑顔にくるむ朔耶に、
更に深い溜息を吐いて。
真一は今日の事を思い出した。
ここ数日、ゼミが異様に忙しくて、ついでにバイトも鬼のように忙しかった。
女顔に華奢な体躯、身長も男性平均を下回っているとは言え、真一は体力だけは人に数倍するのだ。
それでも疲労でノックダウン寸前になっていた辺り、その忙しさは想像するにあまりあると言うもの。
だから、今日は早くても昼過ぎまでは眠っておこうと思ったのも故ないこと。
だけど、ソレを許してくれるほど運命は甘くなかった。
ぴんぽーんっ、といきなり電子音が響く。
「……んだよ」
外見に似合わない言葉遣いだなと、友人一同に言われる荒い言葉遣いのまま、真一は枕元の時計に視線を向ける。
時刻はまだ八時を少し回ったところ。
こんな時間に、わざわざ此処に来る知り合いなどいない。
だから、無視してもう一度まぶたを閉じた。
ぴんぽーん、ぴんぽーん。
二回もわざわざ鳴らす人間の非常識ぶりを無視して、眠りに落ちようとする真一。
ぴんぽーん、ぴんぽーん、ぴんぽーん、ぴんぽーん。
断固無視する。その決意を表すようにしっかりと瞼を閉じて、布団を頭まで引き上げる。
ぴんぽーん、ぴんぽーん、ぴんぽーん、ぴぽぴぽぴぽぴぽぴぽぴぽぴぽぴぽぴぽ……
「だーーっっ! 五月蠅ぇっ!」
とうとう布団を跳ね上げた真一は、未だにやかましく鳴らされるチャイムに苛立ちながら、玄関に向かう。
こういうときワンルームの構造は便利だなと、そんなことを考えながらばんっとドアを一気に開けた。
「うっせえぞ、この野郎! ……って」
ジーパンにラグランTシャツ姿でむーっとふくれっ面を浮かべる李守美と、
真っ白なワンピースを着てにこにこと笑ってる朔耶が立っていた。
「……なんでこんな時間にウチに来るんだよ、お前ら」
「〜〜っ!」「――――」
わざわざ来てやったのにその態度は何なのよ! と両手をぶんぶん振り回して顔を真っ赤にする李守美。
お兄様のお疲れを解しに参りました、とにこにこ笑顔を浮かべる朔耶。
そんな対照的な二人に溜息を吐く。
「良いから帰れ」
「! っ!! っっっ!!」「――ぅ」
速攻で返した瞬間、李守美が顔を真っ赤にして詰め寄ってきて、今にも泣き出しそうな表情で朔耶が見詰めてくる。
「帰れ」
「っっっっ!!!」「――っく」
二人同時に目尻に涙を浮かべる。
放っておくと必ず泣き出す。
それが理解できたから。
「あ〜もう、解ったから入れよ」
言った瞬間、仕方ないから入ってあげると表情で告げてくる李守美とにゃぱっと嬉しそうに笑う朔耶。
まいどの事ながら、結局この二人の言うとおりに動かされている自分に苛立ちながら、ベッドに戻る。
「好きにすればいいが、俺は寝るからな」
それ以上は何も言わずに、ベッドに戻る真一。
背後でばたばたと暴れている二人を無視してパイプベッドに横になる。
くいっとパジャマの背中を引っ張られても、あくまで無視する。
くいくいと、布団を引っ張られても相手にしない。
下手に反応すれば調子に乗るのが目に見えているからだ。
「〜〜〜〜」「――」
微妙に不穏当な気配を感じて、ゆっくりと振り返る。
「だーっ! お前ら何やってんだー!」
二人して、床に突っ伏してベッドの下に頭を潜り込ませていた。
思わずベッドから降りて、二人の襟首を掴んで無理矢理引きずり出す。
「あー、何持ってんだ! 良いからしまえ、もとあった場所に置き直せ!」
「〜〜」「――」
ニヤリと口元をゆがめる李守美と恥ずかしそうに顔を赤らめる朔耶。
その手に持っていた真一秘蔵のエロマンガ――特に近親ネタで有名な的吉未来の『夢幻相克』――を奪い返す。
「どっからそんな無駄知識を仕入れたんだ、こら」
布団の中にソレを放り込みつつ、二人を同時に睨み付ける。
「〜〜っ」「――」
こっちが先に言い出したと、指先を突き付け合う二人。
……まともに聞いても答えが返ってこない事だけは理解できた。
「ったく、いいから大人しくしてろ。言っとくが、どこかに出掛ける気もないし、お前らと遊ぶ気は当然ない。俺は疲れてんだ」
「〜〜〜〜〜〜」
遊んでくれないアンタが悪いんでしょ、と思い切りふくれ面で睨んでくる李守美。
溜息を吐きながら首を左右に振る。
「そんな不機嫌そうな顔をしたって、駄目なもんは駄目だ」
「――――? ――」
そんな変なことしてないですよ? むしろお疲れを解しにきたんですから、とにこにこ笑いながらマッサージの仕草をする朔耶に、こめかみを押さえた。
「あのなぁ、お前らが来てる時点で余計に疲れるだけだろうが」
「〜〜! っ! っっ!!」「――――すん」
途端に、顔を真っ赤にして怒り始める李守美と、泣き出しそうな上目遣いで見詰めてくる朔耶。
「お前らな」
抵抗する気力すら消え失せて。
真一は渋々体を起こした。
「ったく、あのばばぁも来させるなってのが解ってないのかよ」
二人に聞こえないように小さく呟き、義母優美の事を思い出す。
どんなに上に見てもせいぜい二十代前半にしか見えない外見と、どう考えてもおかしいとしか思えない十代前半としか思えない言動。
どちらかというと、まだ李守美と朔耶の方が年上に感じられるときさえある優美に、真一は自分が家を出る理由をはっきりと伝えているのだ。
……血が繋がっていないとは言え、妹に異性を感じたから家を出たのだと。
普通、そんなことを聞いたら、絶対に近寄らせたりしないだろう。
実際、あれ以降真一は一度も実家には近寄っていない。
だと言うのに。
「……ほとんど毎週来やがるし」
深い溜息を吐く。
「〜〜」「――」
不機嫌そうな李守美とにこにこと笑う朔耶の視線を受けて、もう一度深い溜息を吐いた。
「飯、何喰う気だ? 言っとくが、俺はオケラでインスタントも一人分しかないんだぞ」
「〜〜!」
顔を赤くした李守美が、取り出した携帯の画面を見せつけてくる。
「……何々、ドミンゴピザ、携帯メール注文二十パーセントオフ。って、お前なぁ」
聞いた話だが、産声すら上げなかったと言う程に徹底した無口――身体機能に異常はないらしいのだが――の癖に、時々出前を注文していた理由が理解できた。
「って、無駄なことにばっかり知恵回しやがって」
「――――」「っっ!! っっっ!! 〜〜〜〜〜〜!」
お兄様の為ですからとジェスチャーする朔耶に、耳まで真っ赤になりながら李守美がくってかかる。
「はぁ……」
全く持って人の話を聞く気のない二人に、真一はもう一度深い溜息を吐いた。
真一のパソコンを勝手に立ち上げて、ネットの対戦パズルをはじめる二人。
その襟足から覗く項に心臓が高鳴って、また溜息を吐く。
本音を言えば、李守美と朔耶と顔を合わせるだけでも嬉しいのだ。
ただソレを認めるわけにはいかないだけ。
「ったく」
これじゃ、実家にいた頃と変わらないな、と苦笑を浮かべて二人を見詰める。
そう、初めて会った時から何故かなつかれて、ずっといつでも側にひっついていた。
一緒にお風呂に入りたがったり、同じベッドで寝たがったり、正直、色々と精神的に追いつめられる原因でもあった。
それでも、二人に手を出せるはずが無くて。
「〜〜?」「――?」
いきなり振り向いてきた二人に胸が高鳴る。
「なんでもねーよ」
「〜〜〜〜」「――」
別に私も何にも想ってないとそっぽを向く李守美。
朔耶はなぜかにこにこと笑っている。
「ったく、いい年して兄貴の家になんか入り浸ってんじゃねぇよ」
「〜〜っ」「――」
李守美が不機嫌そうな表情で、折角来てやってるのに、その言葉は何? と睨んでくる。
一方、迷惑なんですか? と、少し身を屈めて上目遣いになった朔耶が見詰めてくる。
その仕草に、思い切り深い溜息を吐く。
「大体だな。お前らその気になればどれだけでも男捕まえられるくらい可愛いだろうが。わざわざ兄貴ん所に来るんじゃねぇよ」
「!? 〜〜!!」「? ――――!」
いきなり、二人が顔を真っ赤にして、思わず自分の失言に気づいた。
「あー、いや、可愛いってのは一般論の話だぞ! ってこら、人の話を聞け!」
二人が立ち上がったかと想うと、いきなり真一に向かってにじり寄ってくる。
その目が本当に可愛いと思ってる? と問いかけていた。
だから、慌てて視線を逸らす。
「だから、まぁ、一般的な視点では可愛いなと見えるだけの話だ! それだけだっての!」
思い切りあさっての方向を向いて怒鳴りつける。
そうでもしなければ、二人の嬉しそうな笑顔を見れば、一線を越えてしまいそうだったから。
「〜〜〜〜」「――――」
傍らでコクコクと頷き合う気配を感じながら、真一はそれでも二人の方を向く気にはなれなかった。
時々、こんな失言が無かったわけではないけれど、しらばっくれていればまた元に戻る。
そう思っていた。
「〜〜っ」「――」
不穏な空気と同時に、なぜか衣擦れの音が聞こえた。
イヤな予感と共に顔を向けて。
「な、なんて格好してる、お前ら!」
下着姿になっていた二人がいきなり抱きついてきた。
ってことで、>599が元ネタっぽいのをこっそり投下。
てか、二人同時無口&ツンデレ無口は難しいですよ。
エロは多分倍くらいになりそうなので、また次スレにでも。
では、次回のエロシーンまでご機嫌よう
∧_∧ GJ!
( ・∀・)/ヽ
ノ つつ ●i
⊂、 ノ \ノ
し′
梅
あ、容量制限か・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さよなら
あなたが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すき。
「……」
「……」
「……あー、なんだ。お前その格好どうした」
「……?」
「いや、そんな小首傾げられても。というかどうやって俺の部屋に入った」
「ピッキ――」
「あ、警察ですか。実は不法侵入者が」
「ッ!?」
「いや嘘だから掛けてないからだから潤んだ目で腕にしがみつかないでください!」
「……ほっ」
「……で、最初の質問に戻るが、なんだその格好は」
「……?」
「無限ループって怖いね。他にリアクションはないのか」
「……!」
「いや驚かれても。驚いてるの寧ろ俺だし」
「……☆」
「お前がそんなキャピキャピした顔するとすげえ違和感があるな」
「……♪」
「……」
「……?」
「……あ、すまん。素で笑顔に見惚れてた」
「……」
「あ〜、その照れた顔もたまらん……って、自分で脱線してどうする。てか、お前この話題については触れさせない気か」
「……嫌い?」
「いや、好きか嫌いかで聞かれると……まあ、好きだが――って、どわっ!」
「……しよ」
「し、しよって……その格好でか」
こくっ
「……まさかと思うが、そのために?」
こくっ!
「さっきよりも勇ましく頷いたな」
「……」
(あーもう、自分で言っといて赤くなるなって。まじで理性抑えられんのですが)
「……ぅぅ」
「……もう一つ聞いていいか? 周りにお前の着替えがないところから察するに……そのままここまで来たのか?」
こくり
「……恥ずかしかったろ?」
…………こく
「……」
「? ――んッ!?」
「よし決めた。今晩はその恥ずかしい格好のまま弄り倒す。拒否権は無し」
「……へんたい」
「にしては嬉しそうな顔ですがね」
「……」
「ん? まだ言いたいことあるのか?」
「…………どうぞ召し上がれ」
「お知らせ。俺の理性はもう0です。いただきます」
埋めついでに小ネタ。
服装に関してはあえてぼかした。各々好きな服装で妄想してください。
GJ!バニーで想像したよ
それは既に新スレでやったネタだ
とてとて……
「よう、おはよう」
――にこ
「ん。さて、早速で悪いんだがお前に話がある」
きょとん
「実は昨晩あいつがとても愉快な格好で俺の部屋に侵入してたんだが」
こくこく
「……お前だろ。あんなこと吹き込んだのは」
ぎくっ
「やっぱりか」
ぴゅ〜♪
「口笛吹いてごまかすっていつの人間だお前。全く……」
にやにや
「……なんだよニヤニヤして」
どすっどすっ
「肘で横っ腹つつくな。……はあ。ああそうだよ、昨日はお楽しみでしたよ。これでいいか?」
ふるふる
「なんだ、まだなにかあるのか」
ちゃりーん
「……へいへい、昼飯はなんでも奢ってやるよ」
にぱぁ
「しかし……なんだ。お前にはいつも世話になってるな」
きょとん
「俺があいつのことでいつも相談して。デートの場所とか気遣い方とか……あー、あと色々」
えっへん
「よく考えたら、あいつと一緒にいられるのお前のおかげなんだよな。ほんと、ありがと」
にぱっ ばしばしっ
「痛い痛いっ。……ああそうだな、お前は最高の『親友』だよ」
――ずきっ
「ん? どうかしたか」
ふるふる にこっ
「そうか? ならいいんだけど……」
ピコーン!
「今度はなんだ」
あせあせっ
「ああそっか、今日は日直だったな、お前」
こくこく
「それじゃあまた後でな」
びしっ
「わかってるって、昼飯はちゃんと奢るよ」
にこ たったったっ……
(それにしてもさっきのあいつ、泣きそうな顔してたな……)
埋めネタその2。擬音無口ってのもありだと思うんだよね。