203 :
〜もっと・・ずっと〜1:
まだ夏のなごりを残す初秋、チャングムは可愛い女の子を産み落とした。
チャングムの年令のこともあり陣痛が始まり産まれるまでは、いてもたっても居られなかったが母子共に無事で産まれた知らせを聞いた時には安堵のため息を洩らした。
しかし一日以上もかかったお産が安産だというのには驚いた。
普通はもう少しかかるものなのだと言う。
「丈夫なだけが取り柄なのです。」
明るく笑うチャングムだったが疲労の色は隠せないようだった。
初めての我が子との対面は、ただ只、驚きの一言だった。
産まれたばかりの赤子とはこんなにも小さいものなのかと余りの小ささに驚いた。
私の両の手の平にすっぽりと収まるほどの大きさで足の裏などは私の親指ほどもないのだ・・・よくぞ無事に産まれて来てくれたと
不覚にも目頭が熱くなった。
名前は色々と考えていたが我が子を見たとたん全て忘れてしまった。
結局、あの廃村での一軒でお互い気持ちに素直になり結ばれて授かることが出来たのだからソホン(素軒)と名付ける事にした。優しい音の響きも決め手となった。
チャングムは名前の由来を私から聞いたときは顔を赤らめたがそれでも気に入ってくれた様でソホンの顔を見るたび触れるたび『ソホン・ソホン』と呼びかけていた。
チャングムの床上げは安産だったこともあり思ったより早かった。
「気候が良かったので体の戻りも早かったのです。
ソホンは本当に良い時期に産まれて来てくれました。」
ソホンに乳を飲ませながら話すチャングムは一段と美しさを増して眩しいほどだった。
204 :
〜もっと・・ずっと〜2:2006/12/13(水) 04:56:49 ID:RqgCkD4Z
一月もするとチャングムは殆ど体調が元に戻ってソホンの世話は勿論、家の用事も出来るまでになってくれた。
それまでは私がチャングムとソホンの面倒を見ていたが村の女将さん達も困ったときはお互い様だからと親身になってくれたお陰で何の不自由もなかった。
医術の方は赤子もいるので再会していなかったが、ソホンが産まれてチャングムがある程度、回復してからもソホンを見に来ることや怪我の治療は有っても病で訪れる人はいなかった。
村人達は情に厚く、皆が助け合い生きている。
この村でチャングムがソホンを産むことが出来て本当に良かったと思う。何時かは去らねばならぬ日も来ると思うが、その日が出来る限り遅くなることを願わずにはいられなかった。
チャングムが少し良くなった頃から、私はまたコッシン作りを本格的に始めた。
仕事の合間には、もうすぐ来る厳しい冬に備えて冬越しの準備も怠らなかった。
チャングムは体も元に戻ったからもう大丈夫だと色々手伝う私を気遣ってくれたが、ソホンの懐妊に気付かないでチャングムに辛い思いもさせたこともあって、もう暫くは体を労るように言い聞かせた。
その頃から時々チャングムの視線を感じる様になった。
気付かぬ振りをして様子を伺うとずっと私を見ていることもある。
何か気恥ずかしい雰囲気も手伝いチャングムにその事を問うのは憚られた。
205 :
〜もっと・・ずっと〜3:2006/12/13(水) 04:57:59 ID:RqgCkD4Z
秋も深まる頃にはソホンの足は私の親指よりも大分大きくなっていた。
ますますチャングムに似てくる我が子が愛おしく夜泣きの時なども
起きてあやすのが一つも苦になる事はなかった。
今夜も泣き出したソホンをあやしていたらチャングムが目を覚ました。
「お腹がすいているのでしょう。」
チャングムが私からソホンを抱き取り乳を飲ませ始める。
その姿を眺めているとチャングムが話し出した。
「夫婦になってソホンまで、もうけておいて今更、言うのも恥ずかしいのですが最近、書房様のお姿を見るだけで胸がドキドキします・・。
こんなに素敵な方と添うことが出来るなんて何て幸運なのだろうと・・
思えば宮女であった時、済州島に流された時、また医女になってからも書房様が私を大切に想い守って下さったからこそ今の幸せが有るのだと思って・・・」
ソホンの顔を見ながら話していたチャングムが真っ直ぐに私を見た。
「私は今まではっきり書房様に自分の気持ちを言っていないのに気が付いたのです。・・書房様・・お慕いしています。
たぶん宮女であった頃からそしてこれからもずっと・・・
今は追われる身ではありますが以前のように陰謀も妬みもない・・
ただ書房様に守られ愛されてソホンと三人で暮らせるこの生活に安らぎを感じます・・」
206 :
〜もっと・・ずっと〜4:2006/12/13(水) 04:58:56 ID:RqgCkD4Z
そう言って微笑むチャングムの頬はうっすらと赤みを帯びていた。
「お顔が赤いですね。赤いと熱症が考えられるのですよね?」
二人とも済州の海岸での出来事を思い出していた。
「はい。熱症なら持っています・・・」
チャングムがあの時の私の言葉通りにしゃべる。
「私もです。私もずっと以前から治らない熱症を持っています・・」
私はソホンに乳を飲ませるチャングムの肩を抱き頬に口づけた。
「あなたからそんなことを言われると嬉しいです。とっくにご存じでしょうが私もあなたをとても愛しく思っています。それこそ自分で自覚する前から愛していたんだと思います。
あなたは私と添えて幸運だと言って下さいましたが私の方がもっとずっと幸運なのです。
ずっと愛し守ってきたあなたが、私の思いを受け入れて下さって、こうして夫婦にまでなれてソホンまで授かることが出来たのですから。」
207 :
〜もっと・・ずっと〜5:2006/12/13(水) 04:59:58 ID:RqgCkD4Z
二人して宝であるソホンを見るといつの間にかチャングムの腕の中で眠ってし
まっていた。可愛い口元には母乳がひと雫ついている。
ソホンの可愛らしさにチャングムと顔を見合わせ微笑み合う。
もう逢えないと思っていたチャングムと再会でき夫婦にまでなることが出来た
のだから、何時か親子三人で漢陽に戻る日も来るかもしれない・・
しかしこのまま白丁として生きていくことも其れならそれで良いことの様に思
えた。
私にとってチャングムが幸せでチャングムと共にあることが一番重要なことで
今はソホンもいる。
それこそが幸せそのものだと思えた。
チャングムは眠ってしまったソホンをたてに抱いて背中をぽんぽんと軽くたた
き、襁褓を換え布団に寝かせた。
「乳を飲んだのでソホンは当分眠っていてくれるのではないですか?」
私の意としたことが判ったのかそう聞くと嬉しそうにチャングムは頷いた。
私は自分の膝をかるく二度たたいてここへ来るよう誘った。
208 :
〜もっと・・ずっと〜6:2006/12/13(水) 05:01:02 ID:RqgCkD4Z
はにかむチャングムの手を取り膝の上に抱き上げ強く抱きしめる。
チャングムも私にしがみつくように抱きついてきた。
「もう体の方は大丈夫なのでしょう?」
頷くチャングムと見つめ合う。
口づけて舌を絡ませながらチョゴリの紐を解いていった。
久しぶりに見るチャングムの胸は以前とはかなり変わっていた。
「女人の体とは不思議なものですね。
あなたは今、母親の体をしています・・・」
「えっ?」
「こんなに胸が大きくなって・・・驚きました。」
両手で持ち上げるように触る。
交互に口に含んでみると母乳の味がした。
「あっ・・ん・・」
チャングムが悩ましい声を洩らす。
チャングムを横たえ一糸纏わぬ姿にしていく・・・
艶めかしい唇・・大きくなった乳房・・ソホンを産んで平らになった腹部を
中指でゆっくりとなぞっていって最後に臍の周りを円を描くようにして止めた。
チャングムを見ると潤んだ瞳で花が開くように体を開いて私を誘ってきた・・
209 :
〜もっと・・ずっと〜7:2006/12/13(水) 05:02:06 ID:RqgCkD4Z
初めてチャングムを抱いた時の様に唇から首すじ乳房へと口づけていく・・
そして今夜はさらにその下へと口づける・・・
「ナウリ?・・・何を・・なにをされるのですか?・・」
チャングムが言葉と手で私を止めようとするがその手を動かぬように
指で絡めて押さえ込み進んで行く・・
「あぁ・・あっ・・」
チャングムの一番敏感な場所に優しく口づけ舌で刺激してはまた口づける・・
さらにその下の泉も同じようにするとチャングムの指に力が入っていくのが分
かった。
チャングムのすすり泣くような声が続き暫くすると体が小刻みに震えだした。
私は、しっかり互いを結び合わせてからそのまま一緒に
チャングムの体を抱き起こす。
するとチャングムが夢中になって私に口づけてきた。
初めてチャングムの方から舌を絡ませてくる・・・
私はそのままチャングムのしたいようにさせてみる。
チャングムが名残惜しげに唇をはなすと、その視線を捉えながら
焦らすようにゆっくりと動く。
しばらくするとチャングムが催促するように自分から動き出した。
「あっ・・あっ・・あっ・・」
私の首に掴まって動く度ねだるように悩ましい声で呻く・・
その悩ましい声に、淫らな動きに、私の方が耐えきれなくなって
強く激し速く動き出した。
最後にソホンを起こさぬようにチャングムの叫び声を口づけで塞ぎながら
チャングムの後を追った・・・
210 :
〜もっと・・ずっと〜8:2006/12/13(水) 05:03:07 ID:RqgCkD4Z
気だるい雰囲気が立ちこめる部屋の中・・
結ばれたままの姿でチャングムが話しかけてきた。
「書房様・・なぜ、あの様に口づけたのですか?・・・」
消え入りそうな声で聞いてくる。
チャングムの可愛らしい鼻に小さく口づけ答える。
「以前から、して差し上げたかったのですが・・我慢していたのです。
身籠もっていたあなたを余り驚かせてはと思って・・
今晩あなたを久しぶりに抱いて『あぁ・・此処からソホンを産んでくれたんだ』と思うと口づけていました。いや・・でしたか?」
チャングムは微かに首を横に振った。
「とても・・」
「とても?」
「素敵でした・・死んでしまうかと思うくらい・・
それから・・私も同じ様にして差し上げたいと・・・・・」
可愛いことをいってくれる。
「無理をしなくてもいいのですよ。」
「無理だなんて・・・」
体を動かしてイヤイヤをする。
その動きが結ばれたままの私を刺激するのが判らないのだろうか?・・
「そんなに動いたらあなたは眠ることが出来なくなってしまいますが・・」
「えっ?」
「私たちはまだ結ばれたままなのですよ。」
その意味に気付いたのかチャングムは真っ赤になって俯いた。
なんど体を重ねても何時までも恥じらいを失わないチャングムをさらに愛しく
思った・・
211 :
〜もっと・・ずっと〜9:2006/12/13(水) 06:07:18 ID:RqgCkD4Z
「・・・ナウリ・・」
顔を上げ潤んだ瞳でチャングムが私を見る・・
「はい?」
「私がナウリと呼ぶのが好きだと仰って下さいましたね?」
「はい。」
「ナウリー・・もう一度・・もう一度、私を夢中にさせて下さいませんか?・・・」
「・・・」
「ねっ・・ねっ・・ナウリ・・」
その愛らしい問いかけと体の動きに私の体も再び熱くなる。
「では、先ほどよりも、もっとずっと時間をかけましょう・・
ソホンは夢の中で秋の夜はまだまだ長いのですから。」
そう言うと私はチャングムを再び愛し始めた・・・
愛し合う両親の側で幸せな夢を見ているのかソホンの口元が微かに
笑うように動いた。
――終――