1 :
名無しさん@ピンキー:
・雪山で大雪崩に遭い遭難。とりあえず寒さしのぎに入った洞窟に女の子が
・巨大地震が発生し、崩れた建物の瓦礫で閉じ込められる。ふと隣を見ると女の子が
・核戦争が勃発し(ry
(お、女の子と二人きりになってしまった・・・)
「私達・・・このまま死んじゃうのかな・・・」
「え!?あ・・・分からないけど・・・だっ、大丈夫・・・きっと助かるよ」
(そうだ、それどころじゃない。どうにか助かる方法を考えないと・・・)
2
二人きり阻止3げと
期待
5 :
雪山編1:2006/07/25(火) 23:54:57 ID:LbZNvTYK
「・・・いつ助けが来るか分からないし・・・どうしよう・・・」
「う、うん。とりあえず体力を消耗するようなことは避けないと」
不安そうな顔。横顔はまだ幼さの抜けない少女だ。
泣いていたのか、目が腫れているように見える・・・。
しかし、一緒に不安がっていても仕方がない。
彼は何か使えるものはないか荷物の確認する。
もしもの時のために背負っていた小さなリュックに
いくつか食糧と携帯電話を入れてあるが・・・
「そうだ・・・何か食べ物は持ってる?」
「何も無いです・・・・・・あ、ポケットに飴があります」
「飴か・・・俺の食糧を二人で分けようか。」
「えっ、良いんですか?」
「良いよ、こんな状況だし。ただし食べるのは少しずつだけど・・・我慢できる?」
「はい・・・ありがとうございます」
頼みは、この仄暗い洞窟と少ない食糧、防寒具。あとは救助を待つしかない。
気付けば辺りは暗くなっていた。吹雪が治まる様子もない。
最初二人きりになった時は、変に緊張していたが、
今は「二人体を寄せ合って」なんて気分にもなれない。
沈黙の合間、吹雪の音だけが虚しく耳に響く。
「え・・っと・・・君は、いつからこの洞窟にいるの?」
「え?あ・・・はい、今日です。家族とスキーに来てたんですけど・・・雪崩がきて・・・」
沈黙に耐え切れず男の方から会話を切り出してみたが、
状況が状況だけに、やはり明るい話題とはいかない。
6 :
雪山編2:2006/07/25(火) 23:55:44 ID:LbZNvTYK
「目が覚めたら・・・どこにいるのかさっぱりで・・・・・・・・・えっと」
「そっか・・やっぱりあの雪崩か・・・。俺もそうだよ。友達とスノボに来てて・・・
正直死んだと思ったけど・・・意識が戻ったら一面足跡一つない銀世界さ。
・・・あ、友達って大学の奴らなんだけど・・・君は?高校生?」
「中学生・・・中2です。・・・何歳ですか?」
「(も・・・もっと下でしたか)お・・・俺は19だよ。そ・・それでさ
必死で歩き回ってたらこの洞窟見つけて・・・で、中に入ってみたら君がいて」
少し焦ってしまったが・・・やはり冷静になろうとしているつもりでも、
正直この先どうなるか分からない状況下では、口も上手く回らない。
「私もそうです・・・。もう一人でいる時は泣いてるだけで・・・誰か助けに来ないかって・・・」
「そっか・・・俺が救助隊員だったら良かったけどね・・・」
「あ・・・ごめんなさい・・・そんなつもりじゃ」
「えっ?い、いや謝ることないよ!嫌味とかじゃないから・・・ごめん変な事言って・・・」
どちらも“そのつもり”じゃなかったのだが・・・
わずかな希望しかないこの過酷な状況で、
慣れない初対面同士の男女の会話が盛り上がるというのも珍しいが。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
(あーあ・・・俺って女と話すとすぐこうなるんだよなぁ・・・はぁ・・・。
19にもなって、中2の子供とすらまともに会話できないなんてな・・・・・・)
会話のミスなど今の状況においては大したことじゃないが。
少女は下を向いて黙ってしまい当分目も合わせづらくなってしまい、
大学生は小さく溜息をついて遠い目をして洞窟の出口を見つめるしかなかった。
期待あげ
もしかしたらサバイバルの知識も期待できるかもしれない
>>7 雪山は経験ありますが、サバイバルまではしたことがないのでそっちの知識はネットで拾える程度です…('A`)
リアリティ志向の方には萎える内容かもしれません。せめて濡れ場だけでも上手く書けるよう頑張ります。
「ん・・・・何時だろ」
遭難2日目の朝を迎える。先に男が目覚めた。
幸い洞窟の中で、何とか厚着して睡眠をとることはできた。
極寒には変わりないが、外で寝るよりは幾億倍マシだ。
あの雪崩から脱出し、目が覚め、洞窟を見つけられたこと自体が奇跡なのだから。
腕時計は午前6時41分。
普段は携帯が時計代わりで全くつけない腕時計だが、
雪山ということでたまたま身につけていた。
こんな時は携帯電話などより余程ありがたい。
「よし・・・ちょっと外見てみるか・・・・・・いててて」
重たい体を起こそうとした瞬間、全身を激痛が襲う。
「昨日の晩は気にならなかったけど・・・色んなとこ痛めてるな。・・・スノボ中もかなりコケたっけな」
一晩休んでから痛みに気付くのは騙された気分だが
今は“痛みに気付く”ことができるだけでも嬉しい。
ついでに自分以外の吐息が聞こえることにも気付く。
「・・・そうか。もう一人いたよな。・・・っと」
少女を起こさぬように近寄る。
別に起こしてもいいが何となく寝かせておこうと思った。
「・・・・すぅ・・・すぅ・・・」
「・・・こっちも無事」
生存を確認し、その後とりあえず洞窟の外へ
吹雪も夜中よりは治まり視界もかなり回復した。
山の地形を確認して自分の位置を把握しないといけない。
出口から前方100mは傾斜の弱い平地。
右手の方向を眺めると登りの傾斜が伸びる。
左手から真正面に向かって降り。
「雪はパラつき程度・・・それでも遠くになると見えにくいな。
リフトでかなり上の方まで来てたし・・・大学の奴らは無事なのかな」
地図も磁石も無し。とりあえず降って確認することに・・・。
しかし、洞窟が遠ざかれば遠ざかるほど不安が大きくなる。
下山はもちろんしたいが、洞窟を離れたくないのも本音だ。
一歩一歩寒さと恐怖に堪えながら先へ進む。
(何メートル流されたんだろう。必死で雪の外へ出ようともがいて・・・鼻と口の中は雪だらけで。
流れが止まってからはコンクリ状態。でも必死で。だけど呼吸が続かなくって意識が・・・)
記憶を辿っていくとますます寒気がする。
何度と無く洞窟の位置を確かめるために振り返り、恐怖を抑える。
「よく目ェ覚めたな。悪運強いのかな・・・・・あっ」
数百メートル歩いたあたりから、傾斜が徐々にきつくなり、
新雪が多くなり足の半分以上が雪に埋まる。
それでも無理をして進んだ、その先だった。
道が無い。
ボードでも歩行でも厳しい急斜面が大きく横たわる。
「ここに流されてたら・・・洞窟にも辿りつけて無いな・・・」
さらにその先、普通に降るのは不可能だと判断し、洞窟へ引き返すことにした。
11 :
雪山編5:2006/07/26(水) 04:24:37 ID:aRHCIPc3
ラッセル(深雪を踏み固めながら進むこと)をせずに深雪の上を歩いてきたので
吹雪が弱い内に帰らないと、また数時間ほどで道が消えてしまう。
そうなったら再度遭難だ。吹雪もいつまた強くなるか分からない。
「登りも雪が深いな・・・・・・これを登れるか?・・・いや俺とあの子だけじゃまともに進めるかどうか」
ラッセルは体力が要る。
大の男が二人でやれば進めないこともないが、少女と二人じゃとても・・・
最悪洞窟へ引き返す体力を残すことを考えたら、あまり進めないだろう。
一人であれこれ考えながら歩いている内に洞窟が見えてきた。
入口のあたりで人影が見える。
「・・あれ?・・・あ・・」
少女だ。一人できょろきょろしている。
腕時計を見ると8時手前。起きていてもおかしくない。
「ちょ・・・おーい!何やってんの?」
「・・・!」
洞窟前に到着。少女が小走りで近寄ってくる。
「え・・」
「うう・・・・うっ・・・どこ行ってたんですかぁ・・・・」
泣いている。今度はどう見ても泣いている。
顔はくしゃくしゃだ。ずーっと入口の前で泣いていたらしい
「あああ・・・いやいや、その・・・・地形をなっ」
「目が覚めたら・・・いないし・・・・・・置いてかれたかと・・・ふぇっ・・・えぐ・・・」
「ああああああごめんごめんごめんマジでごめん・・・置いていったりなんかしないって!」
「ひっく・・・ひっく・・・・・・・」
「と、とりあえずさ、、、中入って・・・ほら、吹雪いてきたし・・・・・」
12 :
雪山編6:2006/07/26(水) 04:27:38 ID:aRHCIPc3
中に入って、とりあえず腰を落とし一息。
その後少女にタオルを手渡した。
「これ・・・顔拭きなよ・・・昨日から使ってるけど」
「・・・うん」
落ち着いてる素振りは見せるが、内心はかなり不安である。
少々進んだぐらいでは深雪に囲まれた尾根は渡り切れそうもない。
スキー中に遭難したので、テントなどビバークの用意も当然無い。荷物が手薄すぎる。
「・・・」
「・・・・・・下山・・・できますか?」
「・・・普通に降れば斜面がきつくて、沢もあるかも・・・あれ以上は無理だった」
「・・・」
「雪崩で流されてるけど・・・昼間見た限りじゃ、たぶん、尾根からそう遠くないと思う」
「・・・・・・」
「でも・・・この辺一体かなり雪が深い。装備も手薄だし・・・天候が悪いままだと、登りも相当厳しい」
雪崩に遭い、洞窟に避難して一晩。精神的にも肉体的にもかなり参っている。
少女の方はとっくに限界だ。
男も何とかなだめてはいるが、この寒さ、疲れも抜けない上に天候が悪い。
これでは捜索隊のヘリも飛ばせないだろう。携帯も電波が入らない。
「・・・・・・」
「・・・捜索願は出てるだろうし・・・だからもうこれ以上動かない方がいいよ」
―――午後15時を過ぎた。
洞窟で少しばかりの食事を摂り休養。
14時半あたりを過ぎてから更に吹雪が強くなってきた。
捜索隊が近くに来ている様子もない。
このままではもう一晩この洞窟で過ごすことになりそうだ。
「・・・・・・落ち着いて・・・ますね」
「え?・・・いや・・・そんなことないよ。ビビんの堪えようと必死だよ」
「・・・そうなんですか?」
13 :
雪山編7:2006/07/26(水) 04:48:32 ID:aRHCIPc3
次第に会話も無くなり始め、遭難2日目の夜を迎えた。
明かりのないこの洞窟では、闇は自分の姿を塗りつぶし、
吹雪の音には自分の心そのものをかき消されてしまいそうだ。
こんなにも怖く長い夜は無い。洞窟が地獄への入り口にさえ思えてくる。
「・・・・・・」
「・・大丈夫?寒くない?」
「・・・・・・」
「・・・?・・・おい?」
「・・・・・・」
「・・・!ちょっと!おい!?」
返事がない。
真っ暗で何も見えない中、男は少女のいた方向へ飛び掛った。
「・・・んっ・・・はい」
「・・・!あっ・・・良かった・・・大丈夫?」
「・・・・・・」
「・・・?うわっ・・・めちゃくちゃ冷たいぞ」
触れたのは少女の頬。
寒さでかじんだ自分の手で触れても、少女の体温の低さに気付かされる。
「寒いんだろ!?」
「・・・は・・・・はい」
「何で言わないんだよ!」
リュックから懐中電灯を取り出し、少女を照らす。
顔色が昼間よりも青白く見える。そして少女の“服装”に気付く。
「・・・ジャケットの下・・・フリースと・・・下着だけ?」
「雪崩に遭う前に・・・スキーで汗かいてて、脱いでて・・・」
「・・・もっと早く・・言わなきゃ」
子供のしてる事・・・少女なりに年上への遠慮もあったのだろう。本気で怒っても仕方ない。
今まで気付けなかった自分もどうかしてる、と男は自責の念に駆られた。
14 :
雪山編8:2006/07/26(水) 04:54:18 ID:aRHCIPc3
男はすぐさま自分の着ている上着で少女を覆い、
二枚重ねのズボンの一枚も彼女に履かせた。
「まだ寒い?」
「・・・」
「言わないと分かんないよ」
「・・・・・寒いです」
「・・・」
(うう・・・あ、あの手しかないのか。俺もこれ以上脱ぐわけにいかないし)
男は少女の抱き寄せ、体全体を使って温め始めた。
「・・・!」
「ご、ごめん・・・ちょっと我慢して。服の上から触れるだけだから」
「・・・・・」
抱き寄せて腕でさすったりしながら、少女の手袋も外してみる。
指に紅斑が生じ、しもやけになっていた。
(ここまでやってんだ、もう遠慮なんてしない)
少女の手を自分の手で握り込み、
スキー靴を脱がせて、少女の足の先を自分の膝の裏に挟みこんだり、
足でさすったり・・・幸い身長差もあって何とか体勢的にも可能だったが、
両足同時にはできそうにないので、これを交互に行う。
(うあああ・・・めっちゃくちゃ良い匂い・・じゃねぇ!)
「こ、こんなことしてるけど・・・俺絶対変なことはしないから」
「・・・・・・」
何か矛盾しているような、そうでないような。
男は夜通し少女の介抱に付き合った。
息遣いが伝わるほどの距離。自分もかなり温まってきた。
(最初からこうすれば良かったのか・・・?いやもういい・・・。今はどうでもいい)
おい待て
なに止まってるんだ
何げに本格的
wktkしながら待ってます
救援物資sage
期待
翌日、翌々日・・・
吹雪が治まる気配は一向に無く、少女はとうとう発熱を起こした。
ヘリの音をひたすら待ちながら、男は懸命に介抱した。
食糧は少女の分を多めに、自分は少しだけ食べるようにしたが・・・
元々持っていたストックが少ないためにほとんど底を尽きかけていた。
遭難4日目の夜。
再び強く吹雪始め、寒さは限界にまで達した。
少女を介抱しながら意識があるのを何度も入念に確認し、
男も自分の意識が朦朧とし、度々飛びそうになるのを必死で堪えたが・・・。
いつのまにか意識は途切れていた。
死ぬ恐怖
死ぬことに気付けない恐怖
意識が薄れていく恐怖
意識を失う瞬間が分からない恐怖
これで二度と目覚めないんじゃないか・・・?
震えていたのも、そんな事を思う余裕があった内だけだ。
もはや震えすらも止まっていた。
20 :
雪山編10:2006/07/30(日) 00:10:05 ID:O/WvUQxH
「・・・・・・うっ」
朝。重い瞼を開けると・・・前日までと少し変わった景色があった。
太陽が顔を出し空は明るい。吹雪は若干弱まっている。
うなされていたわけじゃないが、当然気持ちの良い寝起きでもなかった。
頭がボーッとして重たい。
「・・・“目覚められた”・・・か」
時計は7時18分。
時間を確認し、重たい体を起こす。
まともな食事も摂れず洞窟で4泊。
体の感覚が鈍く、手先がまともに動かない。
「・・・・あ・・・あの子は・・・」
少女がいない事に気付く。
昨晩は夜を徹して介抱していたが、そのまま眠ってしまったようだ。
体には少女の着ていたスキージャケットが掛けられていた。
「あの子が着てた・・・これ脱いで一体どこに?・・・あれ?」
一抹の不安が過ぎり洞窟の外に目をやると、人が立っている。
少女だ。男は重たい体を前に押し出すように洞窟の外へ。
「・・・お・・おはよう・・・もう大丈夫か?」
「あ・・・はい。おはよう・・ございます」
「・・何してんの?」
「明るくなってきたんで・・・ヘリが来たら見つけてもらえるように・・・」
「そ・・・そうか、フリースが赤だもんな。ジャケット脱いだのはそういうわけか」
「あ、ジャケットは違います・・」
「え・・・?」
一瞬「どういうこと?」と聞こうとしたが・・・
勘の鈍い大学生でも、さすがにその先は色々思考して聞くのをやめた。
21 :
雪山編11:2006/07/30(日) 00:10:40 ID:O/WvUQxH
「・・・・・」
「・・ごめんなさい。迷惑かけちゃって」
「・・・い、いや・・。俺も・・・悪い・・その」
「・・あ、いいです、大丈夫ですよ。分かってますから」
「う・・・うん」
目がかすむ。喉もおかしい。
少女の方を見てはいるが、“見れていない”ような感覚・・・。
「・・大丈夫ですか?声が・・・」
「ん?・・・・・・ああ・・・大丈夫・・・」
「・・・私の・・・」
「い、いやそうじゃない。関係ないよ。」
実は少女の方も食事はほとんど摂れておらず・・・熱もまだ引いてはいない。
介抱でぎりぎり生命を維持できたこと以外に特別回復に向かう要素もなかった。
火も起こせない現状では明晩・・・今晩が限界だろう。
この寒さでまた吹雪いてくれば何度も夜を越せるものではない。
「顔色も・・・あ・・すごい熱・・・!」
「・・い、いいよ。それより今ならヘリが来れば見つけてもらえる」
「いいです、まだ時間はあります。洞窟の中へ・・・」
「ダ・・メだ。山の天気はすぐに・・・変わる。しかも山の上の方だ。立っているんだ。
フリースの方を手に持って、俺のジャケットを貸すから、二枚重ね着して・・」
「食糧・・・まだありますよね。とりあえず食べてください」
「いいから!」
「ダメです!」
「・・・ッ」
少女に気圧され肩を借りて再び洞窟へ
「横に寝て・・・・・スナックが少し残ってます」
「・・・いいよ・・・君が食べなよ」
「食べてください」
22 :
雪山編12:2006/07/30(日) 00:17:00 ID:O/WvUQxH
少女の言葉ももう聞こえているような聞こえていないような・・・
そんな最中、無意識に彼女の額に手を当てていた。
「・・・熱・・まだあるな・・・頭痛は?」
「今は・・そんなこといいです」
「天候が良い今の内・・体が動く内だ。外にいるんだ。俺は大丈夫・・・」
「喋れるのなら・・食べてください」
「いいって・・・どっちかが外にいなくちゃ・・」
「外にも出ます。だから食べてください」
少女の方も食い下がる。
男が意地になってるのだが、少女の方とて介抱してくれた恩を忘れはしない。
「・・・それは君に残してた分だし・・」
「ていうか・・・食べてないですよね?二人で食べたにしては減ってないです・・」
「・・・食べたよ。けど君は熱出してたんだ。余分に摂らなきゃこの二晩持たなかったはずだろ」
「・・・」
少女が一瞬辛そうな顔をした瞬間
男の胸に寄りかかってきた
「・・・・・・」
「・・・ごめんなさい。ごめん・・・」
「・・・いいって・・そんな事より・・・さあ」
「私たち・・・もうダメです・・・。今日こんな状態で吹雪いたら・・・もう・・・」
少女が泣き崩れるようにして呟いた時、男もどうしようもない感覚に見舞われた。
最期になる。少女へかける言葉は“最期の後”の話だった。
「・・・もしもの時は・・・俺の服は君が着ろ。あと・・・ポケットにライターがある。
の・・・残ったリュックや余った服を燃やして火を・・・何だったら俺の体ごと焼いていい」
「・・・っ!!そんなこと・・できません・・・」
「・・気持ち悪いとか・・・この際考えちゃだめだ。どうせ死体だ。
二人して死ぬより・・・片方の死体をどうにか活用して生き残るぐらいしないと・・・」
「やめてください!そんな話聞きたくないです」
「・・・・・・」
23 :
雪山編13:2006/07/30(日) 03:40:38 ID:O/WvUQxH
少女が寄りかかったまま暫し沈黙
男は意識が朦朧としたまま少女に体を預けるように遠い目をしている・・・が
・・・少しでもいい、何か話しておきたかった。
舌が痺れ、喋るのも辛くなってきて尚、何か話さずにはいられなくなっていた。
「あのさ・・・好きな子いるの?・・・彼氏とかさ」
「・・・え?」
「いや・・・俺・・・勝手にべたべた触ってたし・・・恋人いるなら悪いな・・って」
「・・・・・・中学の・・・同級生・・・片思いですけど」
「そっかー・・・ごめん」
「お兄さんは?彼女とか・・・」
「はは・・・いないな・・・いたら彼女とここ来てるよ」
他愛ない会話だが、実は最初に顔を合わせた遭難当日の夜以来。
この余裕も空元気か。もう半分吹っ切れてしまった。
「・・・触ったの・・・気にしてないですから・・・そのつもりじゃなかったんでしょ?」
「え・・・?・・・んー・・どーかな」
「へ・・変な気持ちあったんですか?」
「あ・・・・いや、介抱は真剣だったよ。でも・・・悪いなーって思いながら・・・
胸の高揚を抑えてたのも事実かな・・・。馬鹿だろ?・・・意識しちゃってさ」
「・・・意識?」
「・・・えっ・・あ・・っ・・・・・・意識ってのは・・・その・・・」
この期に及んで何だか妙に胸が高まってきた。
距離が近すぎるのか。意識が朦朧としていて既に正気じゃないのか。
いや、距離が近いのは最初からそうだ。
介抱中などずっと付きっきりだった。
近づいているのは違う・・・別の“距離”だ。
24 :
雪山編14:2006/07/30(日) 21:22:19 ID:O/WvUQxH
「俺たちさ・・・その・・・雪崩に遭って・・・一度意識を失って・・・」
「・・・・・」
「気付いたら・・・・雪崩の外にいて・・・・それだけでも奇跡なのに
歩き回ってたら・・・・・・洞窟に辿り着いて・・・全部一緒だよな・・・」
「あの・・・」
「同じような・・・目に遭っていて・・・同じように辿り着いて・・・」
「喋るの辛くないですか・・・?舌が麻痺してるんじゃ・・・」
「・・・・・・寒いからな・・・舌も・・・・・・」
「・・・・・・」
「まあ・・・それでもそんなすぐには死なないよ・・・大丈夫だから・・・早く外に・・・」
男は軽く微笑んで外へ出るように促した。
少女は俯いてぽつりと呟く。
「嫌です・・・」
「・・・え?」
「また・・最初の朝みたいに・・・一人で勝手に行くんですか?・・・そんなの嫌です」
「・・・(結局帰ってきたんだけどな)・・・一人だけでも」
「一人でも生き延びろって言うなら・・・私を捨てて一人で生き延びれば良かったじゃないですか。
何で私を助けたんですか?一人で・・・なんて・・・そんなの・・・ずるいです・・・。」
答えにくそうな表情をし、少し落ち着こうと一息。
「何でって・・・」と心の中で思いつつ・・・
最初に比べると少女の口数も増えたものだなと振り返る。
男にとっては、この状況で変に警戒されるのも厄介だし
微妙な距離感を意識して接していたつもりなのだ。
「・・・じゃあ・・・そばに」
「え?」
「このまま・・・」
「・・このまま?」
意識なんてする必要はなかったのかもしれない。
そもそも遭難した男女が雪山の洞窟で二人という状況が
計らずとも距離を詰めさせてしまうのだから。
「俺と・・いて・・・ここに」
期待sage
26 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 02:25:43 ID:1IUgyeJ3
期待age
これは期待
正直エロなしでもいい
続きwktk
大いに期待
何気に覗いたスレで神ハケーン!!
確かにエロなしでもいい。
二人とも無事であって欲しい!
寧ろエロなしの方がいいと思った。
二人ともその体調でセクースしたら逝ってしまいしそう
31 :
雪山編15:2006/08/07(月) 05:16:58 ID:ThTp4Apl
痺れて動きの鈍い舌で途切れ途切れではあるが確かにそう言った。
「寂しいから一緒に」とは大の男が言うのは何とも照れくさく・・・
ましてやこの状況で男の方がそんな頼りない言葉を発していいものか・・・
ずっと自問自答しながら、彼女の前では気丈に振舞ってきた。
「・・・寒いですか?」
「・・・」
「言わないと分からない・・・って誰かに言われたんだけどな」
「・・・寒い」
(・・・顔近いな)
寒い。寒さで意識が飛びそうだ。
少女と密着している。体温が伝わってくる。
もっと温もりが欲しい。
「・・?え・・・・・」
「・・・」
男は少女の額に優しくキスをした。
「・・・っ・・・ん」
(きっと本能だ。本能のせいだ。)
「寒い・・・寒いよ・・・・・・」
衰弱した男の声にならない声が少女の耳元に響いた。
「雄は弱った時に性欲が高まる」という話があるが。
この場合は「寒いから温もりを求める」のか「性欲が高まってる」のか・・・どちらだろう。
「ん・・・・・・」
「・・・ん・・・」
32 :
雪山編16:2006/08/07(月) 05:20:50 ID:ThTp4Apl
唇が重なる。
男に抵抗する気も起きなかったこと、少女はそれを不思議に思った。
男女が二人きりになった時、遅かれ早かれ性の意識は当然生まれる。
これは男も女もそうだ。ただし女は男以上のリスクがある。
この場合、男がまともでなければ・・・いやまともであっても
絶望した末に気が触れ、強姦され、果てには殺され・・・
洞窟に男が現れた瞬間は、十分にその危険を感じた。
今の衰弱した彼であれば、突き放そうと思えば出来ないことも無い。
ただ・・・この壮絶な数日間を共に経ることで、
二人の間の溝が埋まっていったのは確かで・・・
いや・・・少女にとっては、まるでそんな努力は徒労だったかのような穏やかな表情だ。
少女はとっくの前に見抜いていたのかもしれない。男の全てを。
(・・・・・・大丈夫)
「ん・・・あ・・・・・・ごめんっ・・・俺」
「・・・温まり・・・・・・ましたか」
「え・・・」
「・・・口の中・・・」
「・・・・・・い・・・・・・・いや・・・・もう・・・少し」
「・・・・・・ん」
33 :
雪山編17:2006/08/07(月) 05:24:10 ID:ThTp4Apl
唇が再び重なり合ったとき、
男の中では
降り積もった雪が溶けて
温水になって流れて出ていくような・・・
そんな不思議な感覚に見舞われた。
胸の高揚感が全身にまで行き渡り、
満足に動かせない舌は必死に、少女の熱を求めていた。
「・・・・・・聞こえる」
「・・・?ヘリの音・・・ですか?」
「いや・・・鼓動・・・胸の」
待ち遠しいヘリの音よりも、やかましく聞こえる。
だけど・・・とても心地良い音だった。
意識が遠のいていく・・・
少女の胸の中に埋まるようにして、彼女の鼓動と温もりを感じながら・・・
しかしそれは・・・過去数日のような嫌な感じのものではなかった。
(・・・・・・・・・・)
唇が再び重なり合ったとき、
男の中では
降り積もった雪が溶けて
温水になって流れて出ていくような・・・
そんな不思議な感覚に見舞われた。
胸の高揚感が全身にまで行き渡り、
満足に動かせない舌は必死に、少女の熱を求めていた。
「・・・・・・聞こえる」
「・・・?ヘリの音・・・ですか?」
「いや・・・鼓動・・・胸の」
待ち遠しいヘリの音よりも、やかましく聞こえる。
だけど・・・とても心地良い音だった。
意識が遠のいていく・・・
しかしそれは、過去数日のような嫌な感じのものではなかった。
少女の胸の中に埋まるようにして
彼女の鼓動と温もりを感じながら
まるで体の内と外の全てが何かに包まれていくような・・・
(・・・・・・・・・・)
続きキテルー!
なんか年甲斐もなくドキドキしてきた
37 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 04:09:40 ID:mqR7/FSh
超GJ!!!!!
38 :
セクース:2006/08/10(木) 08:51:09 ID:yPVss3fR
馬鹿
39 :
新堂:2006/08/10(木) 23:49:25 ID:P5NOitqu
ああ続きが待ち遠しい!
やっべ俺ラストで泣くかも
40 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 21:02:30 ID:5z8QN/Fk
続き早く早く!!
gj
42 :
うぐー:2006/08/13(日) 13:56:27 ID:SOJo2kfq
させろ
良スレ発見。
しばらくここにいてみよう
なんだこのすさまじく萌えるスレは
ここを見つけた俺は運がいい!
46 :
雪山編18:2006/08/14(月) 04:08:35 ID:FRqmNhFS
「・・・・・・」
「・・・っ!おおお?!おいっ!目ェ覚めたか!!」
「・・・?あれ?」
再び目を覚ましたその場所は、厳寒の雪山でも薄暗い洞窟でもなく・・・
薬品の匂いが鼻を擽る病院のベッドの上だった。
一緒に旅行に来た大学の友人が椅子を後ろにガタンと倒してベッドへ駆け寄った
「はぁー・・はっははは・・・よかったな〜!おめーはぁ・・・」
「・・・病院・・・か?」
「そーだよ、これは点滴!こいつはおめーの手と足とチンコ!見えてっか!?」
笑顔がこぼしながら冗談を飛ばしつつ状態を確認する友人
男の方はまだ冗談を言われて笑えるテンションではないが
一先ず生きて帰ってきたことは認識した
「・・・あ・・・はは。俺もお前も生きてたのか。・・・他の皆は」
「お前以外は無事だよ。お前が雪崩で飲まれてからすぐ山降りて救助を待ってたけど、
帰りの飛行機代とかも色々あってな、もう一足先に地元に帰ってもらった。」
「そうか・・・無事で良かった」
「で、皆で話し合った結果、年長の俺が最後まで残ったってわけ」
「・・・悪いな。余計な迷惑かけて」
「んなーに言ってんだよ。雪崩なんだから気にすんなよ」
「ん・・・いや。」
「あ、お前の母ちゃんもこっち来てっぞ。今買出しで外行ってるけど」
「あはは・・・5日ぐらい遭難してたからなぁ・・・親も来るわな」
友人も心配していたようだが、そんな事も感じさせないぐらい笑顔がはじけていた。
その笑顔が自分の状態が深刻なことにならずに済んだことを自然と悟らせてくれる。
47 :
雪山編19:2006/08/14(月) 04:20:19 ID:FRqmNhFS
少し談笑した後、携帯電話を取り出し、地元の仲間に連絡を入れる。
「もしもしー・・おう、こっち目ェ覚めたぜ。おお・・・何日か大人しくしてりゃ帰れるよ」
「・・・・・・」
「ああ、大丈夫大丈夫。・・・ん?ああ、横にいるいる。代わるか?ほれ」
「・・・あ・・・久しぶり。・・・ん・・・・うん。心配かけてごめんな。」
両親にも連絡を入れると、生きてる実感みたいなものが心の底から湧いてきた。
親の声が聞けるってこんなにもホッとするものだろうか。
明日にもまた病院へ来てくれるそうだ。
「それにしても・・・記録的な大雪だったらしいぜ。天気予報とか全然アテになんなかったなぁ。」
「・・・ま、俺もちょっと上達したからって調子乗りすぎたよ。昼からきついコースばっか滑ってたからな。」
「んなことねーって。雪崩に飲まれた奴は他にもいたみたいだし、気失いながら生きて帰ってこれただけでもマシってもんさ」
「ん・・・そう・・・そうだな」
(・・・・・・・・他にも?)
「食欲あんの?あと数日養生して」
「あの・・・・・・子」
「えっ?」
「女の子は?俺が救助された時・・・一緒にいなかったか?・・・助かってないのか?」
意識がはっきりしてきた頃、あの少女のことをはっきり思い出した。
さっきまでリラックスしていた顔が一気に険しくなる。
「・・・ええー・・・?一報が入ってすぐこっちに飛んできたけど・・・
着いた頃には救助はお前一人だけの雰囲気だった・・・ような」
「・・・は!?んなバカな。確かにいたはずだよ、洞窟で一緒に・・・」
「洞窟?お前が救助されたのって尾根の上だったって聞いたけど」
「ッ!?俺洞窟で避難してたはずだぞ!?そこでは一人じゃなくって・・・もう一人・・・女の子が」
48 :
雪山編20:2006/08/14(月) 04:25:00 ID:FRqmNhFS
友人も男のただならぬ焦りように友人も段々と表情が変わってきた。
「じゃあ・・・他に飲まれた奴って・・・・・・その」
「・・・っ」
「・・・!?ち・・・ちょっ!?」
男は思い立ったかのように点滴の針を引っこ抜いた。
何日も横たわっていて感覚の鈍りきった体を起こし、病室を飛び出した。
「ど・・・どこ行くんだよーーっ!なぁーーー!」
友人も慌てて病室から出るが、既に廊下に男の姿はなかった。
男はエレベーターも使わず階段をダッシュで駆け下りる。1階の受付へ向かって。
堰を切ったように、安静にしていた体中に血が回る。
「・・・はっ・・・はっ」
(俺が・・・俺が一人で・・・!勝手に眠ったから・・・!)
「まさか・・・あいつ一人で・・・どうにかして俺一人だけを助けたんじゃ・・・!」
噴出す汗。まるで不安が形となって一斉に噴出したような。
心拍数がはね上がる。心の臓も心の声も鳴り止まない。
(馬鹿だ・・・!無理矢理にでもあいつに外で・・・ヘリを待たせてれば良かったんだ!
つまんねー俺の身勝手で・・・あいつ・・・あいつ・・・!何なんだよ・・・!おれ何やってんだよ・・・!何で・・・)
49 :
雪山編21:2006/08/14(月) 04:31:23 ID:FRqmNhFS
「はあっ・・・!はあっ・・・!畜生っ・・・!・・・うわっ!」
「きゃっ」
ドンッ
1階階段昇降口を降りて右折した瞬間、目の前にいた誰かと衝突した。
「痛っ・・・ご・・・ごめん」
「すみません・・・ボーッとしてて・・・・あ」
「あ・・・・・・」
それは捜し求めていた「誰か」だった。
「も・・・もう動いていいんですね」
「・・・〜っ!」
男と同じように入院しているので、寝巻き姿の少女。
どうやら昇降口隣の自動販売機コーナーから出てきたところだったようだ。
ばったり出くわした男の表情はまさに“言葉が無い”といった感じで・・・
無我夢中で、その場で、少女を思い切り抱きしめた。
「あ・・・あのっ・・・どうしたんですか」
「・・・・・・あ・・・ご・・・ごめん・・・俺・・・俺・・・」
「お・・・落ち着いて・・・・」
「は・・・ははっ・・・そうだな・・・落ち着いて・・・」
息ができない。落ち着かない。
ここまで走ってきたからというだけではない。
「・・・!」
「あ・・あれっ・・・」
50 :
雪山編22:2006/08/14(月) 04:40:14 ID:FRqmNhFS
泣いていた。
極度の緊張と不安で神経をすり減らした雪山。あれから数日。地獄から天国だった。
救助隊に保護され、病院で治療を受け、温かいベッドで点滴を打ちながらぐっすり。
ただ、洞窟で意識を失ってからの少女の行方を知らなかったことが、唯一にして最大の不安となった。
しかし、その不安はすぐに解消された。
全ての不安から解放された時、男の両目は涙で溢れそうになっていた。
「・・・ど・・・どうしたんですか」
「い・・・いやっ・・・その・・・君が救助されてないのかと・・・」
「・・・!・・・大丈夫ですよ。二人で・・・助かりました」
「病室で目が覚めたら・・・寝込んでるの俺一人だけだったから・・・」
「私は・・・救助された時も発熱と軽い凍傷だけで・・・何とか立っていられたので・・・だから治療も病室もお兄さんとは別になって・・・」
「ははっ・・・そっか・・・・・・みっともねー。一人だけ・・・突っ走って・・・ごめん」
「そ・・そんなことないです。で、でも走って何処に・・・?」
「受付で・・・まず確認してもらおうと・・・君がいるのかを・・・」
呼吸を整えながら、途切れ途切れに話していく。
少女は袖で涙で濡れた男の頬を拭い、じっと顔を見つめた。
「確認って・・・名前は・・・」
「・・・あ。そういや名前・・・俺たち・・・」
「・・そうですね 5日も一緒にいて・・・名前も聞いてませんでしたね」
「あははは・・・」
51 :
雪山編23:2006/08/14(月) 04:49:49 ID:FRqmNhFS
軽く微笑みを交わし、再会の余韻に浸る男と少女。
、
「・・・体はもう・・・いいんですか?」
「ああ・・・。色々・・・考えながら・・・ここまで走ったら・・・疲れとか全部吹っ飛んだ」
「そう・・・ですか」
「結局・・・俺の方が色々心配かけちゃった・・・な。もう大丈夫だから。」
「いえ・・・」
「・・・」
ただ・・・大の男が少女の両腕を掴んで、二人向かい合っている図は
「・・・・・・あのぅ」
「え?」
「ここ・・・昇降口は人が多いです・・・」
「げっ!?あ・・・悪い・・・」
嫌が応にも横を通り過ぎる人の注目を集めていた。
「び・・・病室戻りましょうか・・・私の」
「お・・おぅっ・・・そうしよっ」
しかし、死の淵を見ていた洞窟で二人身を寄せ合っていた時よりも
今この状況で二人でいる方が、遥かに喜びや温かみを感じずにはいられない。
「不可抗力」が人の力の及ばないものなら・・・
何かの不幸に巻き込まれることよりも
先刻見せたような「涙の流し方」・・・
即ち大切な人を想って思わず零れ落ちてしまう
そんな風に現れる“力”であってほしい・・・
病室へ戻る途中、つないだ手の中にそっと願いを込める二人であった―――。
雪山編完ッ結ッッ!!!!!!!!
>>52 GJ!!超面白かったです。
たまたま迷い込んでから毎日通った甲斐がありました。
ズンドコ地震編も期待して待ってます
おつおつ
これからジクリ読むお
おつー
天災巻き込まれ型のカップルなのね
凄い、セクースシーンないのにエロい
57 :
新堂:2006/08/15(火) 00:05:18 ID:O9zisVa8
あ、やっぱ俺泣いたww
乙
期待しただけあった
>>52 こういう救いのあるハッピーエンドって良いね。泣いた。
>>52 GJ!!! こんなsituationが思いつくFRqmNhFSさんの優しさに脱帽!
61 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 21:49:40 ID:mzgAyjuH
感動した!!!
カンドーした!!!!
めちゃめちゃ面白かったです。地震編も期待してます><
63 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/16(水) 17:30:13 ID:wHZ/Jags
このジパングもうちょいでパンク
俺の脳内…
乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙
乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙
乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙
乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙
地震編期待してます!
GGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGJ!!!!!!!!!!!!!!!!!
今日たまたまこのスレ見つけた俺運がいいww
超超超超超超超超感動しますた!!
次は・・・エロいのも期待してますw
地震編まだかな〜 ワクワク
期待してます!
ここ見つけてから毎日通ってる俺w
70 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 11:00:31 ID:0F8L/3El
エロパロで泣いてしまった!
GJじゃ足りないぐらいだ
新作まだーwktk
ここ毎日誰かが感動したって書き込んでるな…
エロパロ板じゃめずらしい
やっぱり
>>52 は凄い!
74 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 22:01:05 ID:8yE0N/nQ
いや本当によかったです
新作期待
更新チェックかけてここに新着レスがあると
新作キター?とwktkしてしまうw
>>52さん、どのくらい新作できました?
いつ新作できるかと思うと胃潰瘍になりそうなんです…
と
>>76に漏れも嫌がらせ… ゴメンね
やっぱり良い作品を書くためには時間が必要なんでしょうか?
それともお忙しいか
>>52様、wktkして待ってます!
>>76さんに4度目の嫌がらせ… ホンットすいません
核戦争編も気になる…と言いつつ
>>76にイヤガラセ
新着レスが多かったから、続編か!?と思ったら違ったので
>>76に八つ当たり
みんなひでぇwwww
と言いながら
>>76に嫌がらせ。
>>52氏が投下しにくい雰囲気になってないか心配です。
89 :
76:2006/09/08(金) 23:37:28 ID:Z26GuUu8
4日ぶりにここ覗いたら新着レスがたくさんあったから
ついに新作キター(・∀・)と思ったら・・・
みなさんいぢめないで。・゚・(ノД`)・゚・。
ごめん、俺Sなんだ。
Å
(´・ω・)キングカワイソス
天災は、忘れた頃にやってくる。
>>92 忘れず毎日覗きにくる私にはやってこないのでしょうかorz
>>93 や、それを望んじゃいかんだろ
所で1に書いてある以外で「二人きり」シチュエーションってないかな?
外界と隔離する必要がないならもっとあるけどな、
このスレではどの程度を、二人きり、と言うのか?
会社の押し付け残業とか・・そのフロアに二人だけ
まぁ実体験だがな・・・
まぁ相手は男だがなorz
教室に二人きり、ってなんか萌える
先生から仕事押しつけられて、その手伝いをする、みたいなね
1では災害やら強い力がはたらいているシチュっぽいな
>>96や
>>98のように「成り行きでそうなった」程度でも構わない気がする
101 :
96:2006/09/16(土) 01:05:19 ID:qDbOjuIp
午後8時。ゴールデンタイム
世間では夕食後のくつろぎの時間だろうか・・・
恨めしい、何もかもが恨めしい。
いや憎い。憎いのはあの中間管理職(のT!)
私は窓の外のネオンを眺め溜息をつきデスクに向かった。
一仕事の後、ふと向かいを見ると、廊下を挟んでむかいがわの部署にも明かりが燈っていた。
どうやらこのフロアには私だけではなかったらしい。知らずと笑みがこぼれていた・・・・・・
こうですか?わかりません
携帯から失礼しました!
今日もサービス残業さっ!
>>101 (*・∀・)イイヨイイヨー
その調子でどんどん行こう
ぽつり、ぽつりという降り方だった雨も、学校を出てから500メートルも走らないうちに本降りになってきてしまった。
傘はない。というか盗まれている事に気付いたときは、思わず暴れだしそうになった。
今あたしは、放置されて朽ちかけているトタンの物置きの中ににいる。雨宿りのためだ。
雨が止むまでとは言わない。せめて、雨足が弱まってから急いで帰ろう。
天気予報では、昼過ぎから雨だといっていた。午後の降水確率は80%だそうだ。そしてこの、スコールじみた大雨。
あたしは雨が地面を打ち付ける様子を、ウォークマンで音楽なぞを聴きながら眺めている。
降られるのは勘弁だが、この光景があたしは好きだ。ほら、蛙がユーモラスにぴょこぴょこと横切る。
不意に、視界が暗くなる。
黒いズボンがあたしの目の前で立ち尽くしていた。
「あ……、ええと……」
見上げて、そうどもる顔と制服を確認する。あたしと同じ学校の人だ。制服だけでそう判断する。
しかし見ない顔だ。よく見ると校章が、彼が同じ学年である事を示していた。
「雨宿り?」イヤフォンをはずし、きいてみる。
「あ、……うん、まあ」
「あたしも。――あなたも、濡れたままってわけにはいかないでしょ? 入りなさいな」
「え……、いい、の?」
「この雨の中に人を放り出してまで雨宿りするほど、あたしは鬼じゃないよ」
「そっか……。悪ィな、お邪魔する」
「どうぞ」
続く
104 :
76:2006/09/18(月) 10:29:44 ID:/GrvW3La
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
>>1さんですか?
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
107 :
103:2006/09/19(火) 00:48:50 ID:gad+h/9X
あ、うん、
>>1じゃない。糠喜びさせてしまっただろうか?
本日中に続きを書く予定。日中まで待たせると思う
それからあたしとあとから来た人は、暫く一言も言葉を交わさなかった。
彼は携帯電話を、あたしはMDで音楽を聴きながら、『ダ・ヴィンチ・コード』を読み進める。
そろそろ間が保たなくなってきたかな、というところで、あたしはイヤフォンをはずす。
するとそれを待っていたかのように、彼が携帯電話から顔を上げ、こちらを見ずに口を開けた。
「何聴いてたんだ?」
「ん、洋楽」あたしも顔をそちらに向けず、
「へえ、例えば?」
「ヒラリー・ダフとか、レアン・ライムズとか」
「ふぅん……。パドル・オブ・マッドとかは?」
「知らない」あたしは首を横に振る。
「そっか。あ、俺、1組のアズマ。そっちは、3組の西原さんだろ?」
あたしは驚いて、首を勢いよく彼――アズマくん――の方に向けた。
「え……。何で知ってんの、あたしの名前」
アズマくんは依然として、こちらを向かず、いや、ちらりとこちらを見たきり、正面を向いたままだ。
「俺結構3組に出入りしてるんだけど、俺って無闇に人の名前覚えるの特異でさ、覚えちまった」
「え、誰の関係者?」
「ナミシン。陸上の」
「ああ、ナミシン」クラスメイトの呼称だが、無論、あだ名である。
そういえばそのナミシンくんとよく話している人がいたな。《見ない顔》ではなく、意識してないから覚えていないというだけだった。
まあ、それはそれでひどいとは思うが。
続く
「んぃっくしっ!」
唐突のくしゃみに、あたしはそちらを見た。「う――、ちくしょい……」と鼻を鳴らすアズマくん。
「ブレス・ユー」そう言っておいて何だが、あたしはクリスチャンではない。
「んあ?」
「んーん、何でもない。――風邪?」
「さあね。本降りン中突っ切ってきたから、冷える冷える」
「まあ、そうだね。……ティッシュ要る?」
「お、悪り」
鞄から出したポケットティッシュを彼に渡し、「それ、あげる。どうせまだ3袋あるし」と言っておく。
「持ちすぎじゃね?」
彼はそう言って、鼻をかむ。
「あたしもそう思う。だからあげたんだし」
言って、2人微笑い合う。彼は、すぐに正面を向いて、再び携帯電話に目を落ろした。メール、だろう。
あたしも、栞を挟んだページに目を移す。これで、互いに不可侵の状態に戻ったのだ。
続く
「雨」
『ダ・ヴィンチ・コード』の上巻を読み終え、一息ついたとき、そう声を掛けられた。
少し前に携帯電話を閉じる音が聞こえていた。
「うん?」
「やまねぇな」
外は、少なくともスコールよりは弱まったものの、雨脚が強い事に変わりはない。
「――うん」
「……夜までこの調子だってよ」
「えっ」絶句する。当然だ。「ちょっ、誰からの情報?」
「ヤンマー」
「へ?」
「ヤン某マー某天気予報」
「……あ〜、どうしよう……」頭を抱える。
「なんだよ、――何かあんの?」
「いや、無いけどさぁ……」夜まで雨って事は、ここから出られない、という事だ。
思わず、自らの腕をさする。
「あン? 寒いか?」
「……本降りの中突っ切ってきたからね」
「あんたもか。はぁ〜、俺も、どうすっかなー……」
2人してつく溜息。
外から流れ込んでくる空気に、微細な水滴が混じっている。だから、あたしの服も彼の服も、乾かない。
それから暫く、あたしたちはしりとりなんぞをしながら、暇を潰していた。
続く
今日はここまで
この先どうなるのかドキドキの展開です
期待するよ
Puddle Of Muddの名前をここで聞くとは思わなかった
続期待
Blurryしか知らない俺ウォードッグ
俺もBlurryから入ったFOX2
いつもはまだまだ明るい頃合なのだが、分厚い雨雲のせいでいつもより暗くなるのが早い。
天気図によれば、温暖前線と寒冷前線を伴う低気圧の中心がこの地方の上空にあるようだ。
「今何時?」あたしは外を見ながら、真綿で首を締め付けるかのように奪われる体温を皮膚への摩擦で補っていた。
「ん、5時、45分」もうひとりの《雨宿[あまやど]リスト》が無気力に言う。しりとりやマジカルバナナのネタはもう切れてしまっていた。
沈黙。それは本来、気まずさか心地良さを生み出すはずの現象だが、幸か不幸か、あたしたちはそこまで親しい間柄でもない。
会話が途切れても、別段気にするような事ではない。
しかし、あたしは気付いてしまった。何度か彼が、あたしの様子を伺っている事に。
何度かのうちの、ほんの2、3回、目が合った。既に自らの行為が相手に筒抜けになっている事に気付いたのか、それ以降の同様な行為はみられない。
こうなると、主にその行為を行っている人がだが、沈黙が気まずくなってくる。
―――不意に、彼がこちらを向いた。
「なあ、西原」
その真剣な声に、あたしはどう反応すればいいのか、分からなかった。だから、努めていつもと変わらない反応をした。
「――うん?」
「……」
唇を少し動かしただけ。白々しかっただろうか? いや、そうではなかった。逡巡している彼の心に、そう感じるだけの余裕が無いというだけの事のようだ。
「……」
だからあたしも沈黙を続ける。
どれくらい経っただろう。外はもう真っ暗だ。
辛うじて、彼の唇の動くのが見えた。自ら作り出した沈黙を自ら破り、声帯を震わせる。
「……お前は―――」
続く
執筆の最中Blurry聴いてたもんだから、Puddle of Muddを出しちまいました
てなわけで、今日はここまで
この後のエロい展開期待sage
続編マダー?
月曜まで…お休みです
ちょいと忙しいもので、あしからず
おk。期待して待ってる。
エロ、書けるかどうか……
アズマくんの唇の動くのが見えた。自ら作り出した沈黙を自ら破り、声帯を震わせる。
「……お前は―――」
微弱な外からの光が、彼の瞳の動きをあたしに意識させる。視線が泳いでいる。
「――何?」
この一言が助け舟になるのかならないのかは、あたしには分からない。瞬きが多くなる。
「―――付き合ってる人とか、いるか?」
思わず吹き出しそうになる。同時に、胸が高鳴る。
自惚れかも知れないが、彼があたしに好意を抱いているであろう事が伺えた。ここまで思わせぶりだと、正答を教えている推理小説のようなものだ。
「……いるように見える?」
上擦りそうになる声を、なんとか押し留める。あたし自身、動揺しているからだろう。
「……どう、だかな……」その答えに苦笑……「なんつーか、美人だとは、思うけど」
「!」
雨の音が一切強くなる。
何を、言っているんだ? この男は頭がおかしいのか? それともあたしの気が狂[ふ]れたのか?
「え……何を……?」
呟く声は、多分彼には届かない。
「あの、さ、……っ、付き合って、くんないかな」
彼が上半身を、こちらに向けた。
今度はあたしが唇を固める番だった。
何を、言おう?
「……俺は、お前が好き、……でさ」
ああ、その事に関してはよく分かっている。アズマくんがその身を以って無意識的に教えていたから。
「お前は俺の事、何も知らないだろうけど……」
そう、何も知らない。というか、あたしがキミの存在を知ったのはつい2時間ほど前だ。
「……これから、知ってくって事で。それで、好きかどうか、決める。……駄目、か?」
理想的な答えは、イエスかノー。この二者だ。しかし……
正直言って、あたしは彼の事を好いているわけではない。かといって嫌っているわけでもない。そのどちらかの感情を彼に抱く事が出来るほど、彼と関係ったわけでもない。
「あの……」
「――うん?」彼の期待に満ちた声が、あたしの心を萎縮させる。
「……分かんない」
「え」
「分かんないよ」あたしは彼から目を逸らす。「だって、付き合うって、お互い好き合ってそうなるんでしょ!? 付き合ってから好きになるか決めるって、なんか……違うよ」
彼は押し黙る。
「そういうの……あたしは、――いや」まるで、実験みたいで。
どうにか今週中には終わらせる
エロはまあ、一応入れるけど、しょぼいものになるだろう
遅筆につき、すまない
無理やりエロ入れようとすると内容が難しくなりそうだけど
頑張れ!つC
「そういうの……あたしは、――いや」あたしは頑なな表情で、アズマくんを睨んだ。「あたしは実験台じゃない」
出しかけた声が漏れる。彼の絶句。
「アズマくんは、自分が実験台に見られるの、耐えられる? ――あたしは駄目。そんなの、拷問以外の何物でもない」
本心が出た、のだと思う。思考が思うように動いていない事が自分でも分かった。
「……そ、……か」
傷付けた。その事実が、あたしの顔を険しくする。あたしの心を締め付ける。
アズマくんの表情は見えない。彼の顔をまともに見れない。見られるほどの、勇気がない。
「もう、出るよ」
彼の声が聞こえた。途端に、心が外界に引きずり出される。
雨の音が、聞こえた。
「え……っ、まだ、雨が……」
「いいから」
一切低い彼の声に、あたしは一瞬呼吸を止める。
「……悪かったな。なんか……変な事言っちまって」
表情は見えない。
「そんな……誰だって、好きだって言われればそれなりに嬉しいよ」
「……そんなもんなのか?」
「うん。でも、あんまり、急いじゃ駄目、かな」
「――そうだな。……じゃ、もう出る」
「……雨、降ってるよ?」
「知ってる。今は、頭冷やしたいから」
言って、彼は歩みを進めた。
ガタッ!
「あ」
大きな音と、小さな声。
その両者が聞こえたと思ったら、あたしの世界は横転していた。身体の前後から衝撃が走る。
「ひゃっ!」「だぁっ!」
何かに足を取られたのか、転んだようだった。それにあたしが巻き込まれた、という事だ。
気が付くと、胴体に重みを感じる。
見ると、胸の辺りに頭があった。
「ちょっ、アズマくん!?」
「ってて……。え……?」
目が、合う。目線はそのまま、下に向かっていった。
ああ、そうか。豪雨に降られて、しかもあまり乾いてないから、ブラウスに下着が透けているのか。あたしは存外冷静に分析する。
「なに、見てんのさ……」
ふと気付く。左ひざには彼の股間が触れているのだが、その形が徐々に変わっていく。
それに気付いてしまってから、一気に危機感が高まっていく。
「あの、さ、起きたいんだけど。……どいてくれないかな」
「……西原……」
「ね、どいて」
アズマくんの目が、怖い。遠くの光源からの僅かな光しか入らないこの小屋の中で、何故か彼の目だけが煌々と輝いていた。
続く
明日エロ入れるかな?
この状況からどうエロが入るのだろうか
楽しみにしてまつ
エロの入り方が気になる…
というかこれエロなしだとしてもいい感じのシチュエーションだね
続きまだー?
待ちくたびれて首がキリンみたいになってるんですが(´・ω・`)
あい、長らくお待たせいたした
鶴首してくださった方々、申し訳ない
あたしは両手でアズマくんの体を押す。闇に目が慣れてくると、彼の表情が見えるようになる。
それは、熱病に犯された人の表情[かお]だった。目が曇っている。ただ、普通見下げて見られる筈のものが上にあるというのは、殊に奇妙な事だ。
腕に力を入れる。しかし彼はあたしの左腕を掴んで、地面に押し付けてしまった。
恐怖からか、自分自身の呼吸しか聞こえない。それでもあたしの頭の中では、始終冷めた自分が状況を傍観している。
左手の地面に接触している部分が痛い。仕方無しにあたしは右手だけで彼の体を押した。
「ねえ、どいてよ」
彼の呼気が近づいてくる。
「何やってんのさ、はやく、起きようよ」
彼の双眸に自分の貌が映っている。
「ねえ、ちょっと……」
不意に、彼の目に生気が戻った。そして間近の空気が震える。「……西原、――ごめん」
それから数秒間、あたしは自分が何をされたのか分からなかった。
分かるのは、左の首筋から全身に広がる得体の知れない感覚と、その周辺の筋肉が収縮する感覚。
ぞわぞわ。体中を蟲が這っている。ぞくぞく。脳を介さない運動器官の反射が、何かに阻まれて遂[おお]せない。
いつの間にか、右手に入っていたはずの力は大幅に軽減されていた。
呼気がそこから離れ、外気に触れる。気化熱が左の首筋の体温を局所的に奪い、先程とは違う痙攣が起こる。
何をされた
――嘗められた?
どこを
――左の首筋を?
……何だって?
口を開いてその事への文句のひとつでも言おうかというところで、今度は別なところが狙われた。
ひゅっ!
これが息を呑む音なのか、と、脳内の第三者的自分が表情を変えずに思考する。
普段暖かさや多少の粘性のある液体に触れる事のない箇所。耳。今度はよく分かった。先刻の――首筋に比べるとまだ蟲の這う感覚は弱い。
右手が、地面に触れる。これでもう、完全に組み伏せられた形になった。
アズマくんは首を集中的に攻めてくる。鎖骨から顎関節の付近、特に鎖骨の少し上あたりを重点的に。
両腕は組み伏せられたまま。当然だ。弱いながらも、あたしは抵抗しているのだから。
身を捩じらせ、その舌から逃れようとする。でも叶わない。そして体力的に敵うとは思えなかった。
ふと、首からかれの頭が離れた。そうかと思うと、ブラウスから露出している鎖骨の間を嘗めてくる。未曾有の感覚だった。
左手の拘束が解かれる。彼の右手はそのまま、あたしの左胸に移動していった。
「いやっ!」
初めての、明確な拒絶。左手で彼の右手を払った。
しかし彼は無言で、あたしの左手を再び押さえつける。そして今度は、顔を胸に近付けていった。
「あ……、あぁ……」
ブラウスと下着ごしに、彼は噛み付いてくる。あたし自身、胸が大きいというわけではないから、それはそれはやりにくいであろう事は容易に想像できた。
GJ!・・・だけどレイプですか?
なんとか和姦に持って行ってほしい
とりあえず
つCCCC
ヤバいちょっとめっちゃ萌える。
支援。
つC←これってどう言う意味?
>>138 つ・・・手
C・・・4と円、4円、支援
141 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/12(木) 20:53:45 ID:euPZ08QQ
支援
142 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/14(土) 03:07:24 ID:f7/UqUw9
支援。
支援します
144 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/21(土) 13:39:26 ID:tTQUd2pE
しえん
頭の中の妄想
・国際船が沈没、無人島に流れ着いたが、自分の他に女の子が…
・二人で委員会の仕事で生物準備室にいたらカギを締められて…
・化学系研究所がハザードになり、避難室に入ったら女職員しかいなくて…
書きたいが文才がないしなぁ(´・ω・)
書かないと文才は育たないぜ
147 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/21(土) 21:28:49 ID:o3ETj8NS
つ【小さなことからコツコツと】
文化祭の準備をしていて鍵が閉められて…っていいな(・∀・)
保守ついでにちょっと書いてみようかな。
携帯からなんで見にくかったらスマソ
149 :
148:2006/10/21(土) 23:31:40 ID:cFgFTbm3
「……ふぅ」
本日何回目になるかわからないため息をつく。
時計を見るともうすぐ8時になろうとしていた。
文化祭が近くに迫っているから仕方がないか…。
なんで文化祭実行委員になんてなったんだろう。今更ながら後悔をする。
ちらりと別の方向を見る。相変わらず黙々と作業を続けているみたいだ。
「はぁ………」
またため息をつく。
すると不意に声をかけられた。
「ちょっと、藤井くん、ため息ばっかついてないで作業してよ!!」
「…へいへい」
気のない返事をし怠そうに作業を再開する。
まったく、真面目な女だと思う。
期待。
151 :
148:2006/10/22(日) 00:02:31 ID:ElDsnUqK
まったく、真面目な女だと思う。
文化祭実行委員のほかに生徒会とかもやっているらしい。
そんなんで疲れないのかねと思う。
俺には到底無理なことだろう。
「村山ぁ〜、これっていつまでやんだよ〜」
「…さぁ?終わるまでじゃない?」
曖昧な返事をされる。
わりと可愛い顔してるくせに残酷なことをいいますね。この人は。
しょうがない早く帰るために頑張るか。
それからの俺は早かった。普段はダラダラしているが頑張るときは頑張る俺だ。大して進んでなかったのを一気に完成させた。少し雑だけどな。
152 :
148:2006/10/22(日) 00:24:30 ID:ElDsnUqK
作業が終わって休んでいると村山の作業の手が止まる。どうやらあちらも終わったようだ。
時計を見るともう9時過ぎになっていた。
後片付けをし、やっと帰れる。村山はまだ片付けをしているが先に帰ってもいいかな。
なにやら扉のほうでカチャカチャと音が聞こえる。何かの用具の音だと思い無視して欠伸をする。
「お疲れ」
俺はそう言いながらカバンを持ち家に帰ったら何をしようかななどと考えながら扉へ向かい扉はガラガラと音を立て開く―――はずだった。
153 :
148:2006/10/22(日) 00:37:00 ID:ElDsnUqK
何故開かない!?
入るときはちゃんと開いたのに!!
開けようと扉に手をかけ力を入れるもガチッという音が鳴り開かなくなっていた。
ちなみにウチの学校の扉はドアノブがある押しタイプでもないし引きタイプでもなく横にスライドするタイプのやつだ。
もちろんここの用具室の扉も横にスライドするタイプの扉だ。
こうまでして開かないということは鍵が閉まっているとしか考えられないだろう。さっきのガチャガチャという音は鍵を閉めてる音だったのだ。
日直の先生、中に人がいないかどうか確かめてくれよ…。
154 :
148:2006/10/22(日) 00:51:32 ID:ElDsnUqK
俺が扉相手に格闘してるのを見て変に思わないやつはいないだろう。
村山も例外ではないだろう。
「……何やってるの?」
まるで変なものを見るような軽く軽蔑するような表情をしながら聞いてくる。
その村山の表情に軽く傷付きながらも質問に答える。「鍵が………鍵が閉まってる」
どうしようもない事実を告げる。
「ホントに!!?」
信じられないといった顔をしながらこちらに来て俺と同じように扉をガチャガチャと揺らして事の真実を確かめる。
やはり村山がやっても状況は全く変わらず扉には鍵がかかったままだった。
155 :
148:2006/10/22(日) 01:05:51 ID:ElDsnUqK
ここの―――今、俺達がいる用具室は扉が一つしかない。
教室などは二つあるのだが用具室は校舎内でも端にあるため扉が一つしかないのだ。
鍵がどうやっても開かないことを知り途方に暮れるがまだ諦める訳にはいかない。
他にも使える物があるはずだ!
自分のポケットを調べる。あ!!携帯がある!!
さすが文明の利器、肝心なとき役に立つね。
早速開き画面を見ると、
『圏外』
これはなんの冗談だろうか、こういうときにこれはないんじゃないかと、それはひどいんじゃないかと、携帯会社に小一時間問い詰めたいと思ったがやめといた。
(・∀・)イイヨ イイヨー
157 :
148:2006/10/22(日) 01:16:36 ID:ElDsnUqK
未だに扉と格闘中の村山に声をかける。
「もう…扉は諦めよう、それより村山も携帯持ってるだろう?」
村山はアッと声を出すと慌てて携帯を出す。
アレ?あれは俺とおんなじ機種じゃないかなぁ、いやぁ偶然だなぁ。
村山は希望を持って携帯の画面を開いたのだろうが一瞬にしてその顔はガックリとうなだれた。
「藤井君のは…」
村山の言葉が終わる前に俺は懐からひょいと携帯を見せると村山はまたしてもガックリしていた。
きっとさっきの俺も同じような表情をしていたんだろうなぁ。
158 :
148:2006/10/22(日) 01:38:38 ID:ElDsnUqK
ここから脱出する方法がない訳ではない。
一つだけある。
それは窓から飛び降りる事だがここは4階だしなぁ、しかも下はコンクリで確実に投身自殺になっちゃうからなぁ…、これは却下と。そんなことを考えていると村山が急に立ちあがり壁に寄り掛かっている俺の隣へと座る。そして口を開く。
「私達って閉じ込められたの?」
今更だな、オイ。
「まぁ…そうなるな」
すると村山は膝を抱えて喋らなくなってしまった。
ちらりと村山のほうを見るが顔は腕に隠れて見えなかった。
耳を澄ますとヒック、ヒックと途切れ途切れに聞こえた。
159 :
148:2006/10/22(日) 01:55:28 ID:ElDsnUqK
泣いている村山を見て酷く自分が無力に感じた。
自分のせいでないとはいえ女の子が泣いているのだ。無視出来るほど外道ではない。
「今はよ…不安かもしれねぇけど、一日の辛抱だからさ…、だから泣くなよ」
俺の声を聞き村山は涙に濡れた顔を上げる。
「頼りのない男かもしれないけどさ…、話し相手ぐらいにはなれるぞ」
安心させるために精一杯の笑顔を見せる。
「ヒック…、ありっ、ありっ、ありがとぅ…ヒック」
まだ喋ろうとする村山の言葉を遮り、
「喋るのは泣き止んでからでいいぞー」
そう言った後にまた少し村山の声が部屋に響いた
160 :
148:2006/10/22(日) 02:20:02 ID:ElDsnUqK
村山が大分落ち着いて、しばらく沈黙する。
その状態が何分ぐらい続いただろうか。
1分だったかもしれないし10分だったかもしれない。そう感じるほど時間の感覚が変わっていた。
唐突に村山が口を開く。
「藤井君って好きな人とかいるの?」
「いきなり何を言って…」俺が全部言い終わる前に村山が続ける。
「私はいるよ…、それはね、いつもは適当なことばっかりやってるけど肝心なときには頼りになって安心させてくれる人なんだ」
村山は濡れたような目でこちらを見つめそして指が絡み顔がこっちへ近付いて来た。
161 :
148:2006/10/22(日) 02:38:28 ID:ElDsnUqK
唇と唇が触れるだけの簡単で短いキス。
だが二人の心を繋げるのは充分だった。
キスが終わり、お互いがお互いの顔を見合う。
村山ってこんな可愛いかったかな。俺はそんなことを考えていた。
いつものムスッとした仏頂面ではなく今目の前にあるのは顔がほんのり赤く可愛いらしい同級生の姿だった。
「村山、いいのか?」
その問い掛けにコクリと頷き眼を閉じて身を任せる。
俺はワイシャツのボタンを一個一個丁寧に外していく。
ボタンが全部外れると清楚な白色のブラが現れる。
162 :
148:2006/10/22(日) 02:55:50 ID:ElDsnUqK
白色のブラを上にずらすと小振りな胸が姿を現す。
肌がほんのり朱に染まっていて小振りな胸がとても艶やかに見えた。
その胸にそっと触れる。
触れた瞬間ビクッとなったが続けてという村山の声に従うことにした。
触れることから揉むことへと変えてみると、んっと小さく声をあげる。
さらに胸の中で一番敏感な突起の部分に触れるとぁんという声が聞こえた。
小さい胸は感度がいいというが彼女も例外ではなく、さらに誰もいないとはいえ学校でこういうことをしているという背徳感が興奮に拍車をかけているのだろう。
163 :
148:2006/10/22(日) 03:22:15 ID:ElDsnUqK
胸への愛撫はしばらく続いた。
ずっと胸を揉むと思いきや突起のほうへと手を滑らせコリコリと突起を弄ぶ。
ずっと手でやっていたかと思えば乳房を口に含み突起を舌でチロチロと弄っていた。
何らかの刺激が加わる度に艶やかな声をあげて反応をしていた。
手は休まず今度は下へと向かう。
スカートは面倒なので無視しショーツへ手がいく。
ブラとお揃いかこちらも清楚な白色のショーツだった。
すでにそのショーツは水分を含んでおり布越しに黒い恥毛が見えていた。
164 :
148:2006/10/22(日) 03:44:06 ID:ElDsnUqK
既に潤っているショーツを脱がす。
その下からは綺麗な桜色をした花弁が現れる。
布越しでもわかったように花弁は水気を帯びており思わずゴクリと唾を飲み込んでしまうほどであった。
「私だけ脱ぐのは恥ずかしいよ…」
もともと紅かった顔をさらに紅くさせぽそぽそと言う。
「そ、そうだな」
多少というか大分上擦った声で慌てて服を脱ぎだす。
服を脱ぎ終わるとお互いの身体に無い物を見合う。
俺のモノはやっぱりといっていいほど勃起しており村山が思わず絶句した。
165 :
148:2006/10/22(日) 03:59:45 ID:ElDsnUqK
そして村山のソコは既に潤っており準備はいらないだろう。
俺達は見つめ合うともう一度キスをした。
今度は長い長い大人のキス。
お互いの舌と舌を絡ませ唾液を交換しお互いを確かめ合う。
その行為が終わると二人の唇から唾液の橋が出来る。
長いキスが終わると彼女を仰向けにさせ俺のモノを彼女のソコにへと宛てがう。
「は、初めてだから…、優しく……」
不安を隠しきれない表情をするが、
「出来る限り努力するよ」
今、自分が返事出来るのはこのぐらいだった。
自分だって経験があるわけではない、だが彼女が安心してくれればいい。
166 :
148:2006/10/22(日) 04:16:34 ID:ElDsnUqK
力を入れると俺のモノ彼女の膣内へと入っていく。
途中で何かに当たる感触がした。
最初は何かわからなかったがすぐわかった。
彼女のほうを見るとコクリと頷く。
それに俺も頷き一気に入れる。
なんとも形容しがたい音がし彼女の表情は無理して笑っている感じだ。
「止めようか?」
彼女の身を案じそう提案するが、
「大丈夫だから、大丈夫だから」
と言って提案は消されてしまう。
「それに………、藤井君と繋がれて嬉しいの!」
涙ながらにしてそう言う彼女はとても愛しいものに感じた。
167 :
148:2006/10/22(日) 04:37:46 ID:ElDsnUqK
俺のモノが全部入る。
彼女は未だに苦しそうな顔をしている。
結合部からは破瓜の証である血がモノに付着していた。
その苦しさを紛らわせるために顔を寄せキスをする。今度も舌を絡ませる大人のキス。
顔を離すと先程よりは苦しそうな顔をしていないような気がした。
そろそろと思いゆっくりと腰を動かす。
腰の速さは全然速くはないが彼女はあまり顔を歪ませていない。
段々と苦しそうな声から快楽混じりの声になってきた。
その声を聞くとおのずと腰のスピードが上がっていく。
それに比例していくように快楽の声も多くなってくる。
168 :
148:2006/10/22(日) 04:47:28 ID:ElDsnUqK
「あっ……んっ!………あぁ……いっん…!!!」
明らかにさっきとは違う反応に驚きつつも興奮を覚える。
腰を動かしながら口で胸への愛撫を加える。
「ひゃん!……っん…………………………………あぁ…ぃっ……んっ………んんっ!!」
改めてすごい変わりようだと思う。
さっきまで物凄く痛そうにしていたのがもうこれだ。「もう痛くない?」
と聞くと、
「なんか頭がジンジンして気持ち良いのぉ」
と返されたもんだ。
これは少し意地悪してやろうと思い俺はニヤッと笑ったのを彼女は気付かなかった。
169 :
148:2006/10/22(日) 05:01:24 ID:ElDsnUqK
俺は急に腰の動きを止めた。
彼女は何故という顔をする。
「まだ痛むだろう?そろそろ抜いたほうがいいかな?」
などとさっき聞いたくせにわざと意地悪をする。
すると彼女は泣きそうな顔になって、
「いや、もう、痛くないから動いてぇ、そうじゃないと私、おかしくなっちゃうよ」
大分切羽詰まったような声をだす。さっきとはまた別の苦しそうな顔をしている。
俺は笑いながら、
「でも血が出てるし」
結合部の血と愛液が混ざったものを掬い見せてみる。
170 :
148:2006/10/22(日) 05:10:34 ID:ElDsnUqK
「…そんなっ!」
止めて欲しくない、まだ繋がっていたい。
そう表情に表れているのを俺は知っていながらも意地悪をしている。
「どうすれば、いいの?」まるで飼い主を見上げる仔犬のような顔で俺を見上げる。
「おねだりをしてごらん」「な、なんてっ!?」
「それは…」
耳の近くで呟きそれを聞いた彼女は顔を紅く染める。
「言えないなら止めちゃうよ?」
意地悪な笑みを浮かべ言葉を待つ。
彼女は意を決したように口を開く。
「…私は処女で感じる淫乱です。私に精液注いで下さいっ!」
「…よく言えました」
wktk
172 :
148:2006/10/22(日) 05:20:30 ID:ElDsnUqK
それから俺は彼女を責め続けた。
腰のスピードもさっきよりも速くさらに手では乳房を揉みしだき口では彼女の口内を蹂躙した。
彼女は急な責めに耐え切れずもうイきそうになっている。
「俺も、もう少しだから一緒にイこう」
彼女は返事の変わりにギュっと抱きしめてくる。
そして俺達は一緒に果てた。
173 :
148:2006/10/22(日) 05:28:07 ID:ElDsnUqK
俺達は果てたあと気怠い身体をなんとか動かし、後始末をした。
お互いに目を合わせたりするとまだ気恥ずかしかったがしょうがないだろう。
二人とも服を着て寄り添うようにして眠った。
次の日
扉は何事もなかったかのようにすんなり開きちょっとムカついた。
このことを誰も知ってるものはおらず俺達の心の中に閉まっておくことにしよう。
その後どうなったかって?
もちろん俺と村山は付き合ってるよ!
〜おわり〜
174 :
148:2006/10/22(日) 05:35:07 ID:ElDsnUqK
169〜からはホントはもっとスマートに終わらそうと思ったらこんなになってしまったww
推敲とかまったくなくてゴメン
ホントに長々と駄文をスマソたまたまこのスレを見つけて神がいてそんで143かなんかのシチュを見たら書きたくなってしまったよ。
これが初物ってわけじゃかいんだけどね…。
またROMってツボシチュがあったらまた投稿するわ
じゃあこのスレが繁栄するように…
おやすみノシ
GJ!!
乙。
GGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGJ!!!!!!!!!!!!!!!
初々しくて良いなあ……
>>176を和訳すると
いぃぃぃぃぃぃぃぃぃ仕事だっ!って事か?
(*゚ω゚)-3-3 ムッハー
いいよいいよーー
180 :
1/3:2006/10/24(火) 14:10:48 ID:ZDHvnxGN
「なぁ、さくら」
「なに?」
「なんか聞こえるけど、重機とか出てんのかなぁ」
「そうなんじゃないの?」
「掘り返してんのかなぁ」
「そうだろうね」
「あー、早く助けてくれねーかなぁ」
「そのうち助けてもらえるよ」
「なぁ、さくら」
「なに?」
「俺らよく生きてたよな」
「運が良かったんでしょ」
「他の連中、どうなったんだろうな」
「……さぁ」
「お前って冷たいよな」
「高峰だって冷たいよ」
「そんな事ないだろ」
「そんな事あるよ」
「なぁ、さくら」
「なに?」
「腹減ったなぁ」
「喋ってるからおなかすくんだよ」
「お前は減ってないのか?」
「減ってるに決まってるじゃん」
「腹減っても、出るもんは出るんだなぁ」
「……はいはい」
「やっぱ冷たいわ」
「馬鹿な事言ってないでおとなしくしてなよ」
「なぁ、さくら」
「なに?」
「俺ら助かるのか?」
「そのうち助かるよ」
「でもさぁ、もう何日目よ?」
「何日も経ってないでしょ」
「でも、携帯の電池切れちまったじゃん」
「ゲームなんかしてるからでしょ」
「いや、そうだけどさ」
「ボクのだって、勝手に使うし」
「……悪かったよ」
「いいよもう」
「なぁ、さくら」
「なに?」
「お前けっこう可愛いよな」
「はッ、はァ!?」
「いや、前から思ってたんだけどさ」
「な、何言ってんのいきなり?」
「背もちっちゃいし、けっこう俺好みなんだよな」
「あのねぇ、ボクは──」
「あー! 真っ暗なのが悔やまれるなぁ」
「……ボクは真っ暗でよかったよ」
「冷たいなぁ」
「いいから黙っててよ、酸素が減るでしょ」
「こんなんで酸素が減るなら、俺らとっくに死んでるだろ」
「まぁ……そうかもね」
181 :
2/3:2006/10/24(火) 14:11:53 ID:ZDHvnxGN
「なぁ、さくら」
「今度はなに?」
「エッチしねぇ?」
「はァッ!?」
「いや、俺まだ童貞だしさぁ」
「あっ、あのねぇ! 高峰、こんな時に何考えてんの!?」
「こんな時だからだよ。死ぬ前に一回ぐらいやっときたかったなぁーって」
「だからって、なんでボクなの?」
「だって、お前しかいねぇじゃん」
「そうじゃなくて!」
「さっきも言っただろ? けっこう好みなんだってば」
「いや、高峰の趣味は関係ないって! ボクは──」
「あー! もう襲っちゃおうかな」
「ちょっ、わぁっ!?」
「お、やーらけぇ〜」
「ちょっと、こら!」
「いや、お前けっこう肉付きいいのな」
「ちょっと、やめ──ひゃぁ!」
「あ〜、可愛い声出すじゃん」
「う、うるさいっ」
「やべ、俺本気になってきたかも」
「ええぇ!?」
「いや、マジ、もうね、我慢できんわ」
「ちょ、ちょっ、考え直して──んっ!」
「んっ……」
「あっ、んぅ……」
「これ、勃ってんの?」
「ば、ばかっ……ひゃぅ」
「けっこう感じてる?」
「やめてって、やっ……」
「こりこりしてる」
「馬鹿ぁ!」
「ダメ?」
「だ、ダメに決まって──ひゃぁっ!」
「すっげ、びくびくなってる」
「言うなぁ!」
「マジ俺、なんで今までお前の魅力に気づかなかったんだろう」
「なにがぁ!?」
「あー、これってあれかな、なんだっけ、吊り橋効果とかいうやつ?」
「知らないよそんな──ちょっとぉ! どこに手入れてんのっ!」
「あ、お前、これ、濡れてんじゃん?」
「馬鹿っ! やだちょっと、なに脱がしてんのっ!」
「あーもう、いいだろ?」
「な、何がっ」
「もういいじゃん、な? お前だって一度もやらずに死にたくなんてないんだしさ」
「勝手に決めないでって──んっ、あぁぅ!」
182 :
3/3:2006/10/24(火) 14:13:49 ID:ZDHvnxGN
「もうやる、決めた。やるしかない」
「だから勝手に──あぅ、ヤダちょっと、本気!?」
「本気と書いてマジ」
「でもっ、でもほら! お、おなかすいてるんでしょ?」
「そんなの忘れた」
「ええぇ? ぼ、ボクは冷たいんじゃないのっ?」
「ここ、熱いし」
「あぅっ、馬鹿ぁ!」
「あー、お前の顔見えねぇのが悔しいなぁ」
「ボクは見られたくないっ!」
「んじゃいいじゃん。見えないし」
「よ、よくないでしょぉ!?」
「いくぞ……んっ!」
「あっ、ダメ、ダメだって──あっ、ひッ!」
「うあ、すっげ……うわこれ、すげっ」
「痛ッ、痛いってばぁ!」
「いや、ちょっ……マジすげぇ」
「抜いてっ、痛いって高峰ぇっ!」
「ごめん、無理」
「ええぇっ!? そんな、ひゃっ!」
「ここ、いじるからさ、な?」
「そんな、やっ、あっ、ひぁっ!」
「あぁっ、さくら、すごいわ……マジ、これ、ああぁ……やべ、もうやべぇ!」
「ひっ、ひぅ……ひゃぅ……」
「あああぁっ──出るっ、くぅッ!」
「ひぅ、あっ、くぅ……」
「あぁっ、すげ、あああぁ、さくら……出た、出ちゃったよ……」
「うう……うううぅ」
「すごいよ、マジすごかったよ、さくら……」
「うぅ……馬鹿……高峰の馬鹿ぁ!」
「あ、え、えっと……ごめん」
「謝るくらいなら最初からするなぁ!」
「ごめん……あっ」
「ったくぅ……」
「ほんと、ごめん」
「もういいよ……」
「ほ、ほんとか?」
「ちゃんと、ぼ、ボクの事も……気持ちよくしてくれたら、許してあげるよ」
* * *
「えー、新たに、生存者が救出された模様です。現場と繋がっていますので、
呼んでみましょう。現場の滝川さん──」
「はい、こちら現場の滝川です。つい先ほど、崩れた瓦礫の下から、こちらの
学校の生徒とみられる少年ふたりが救出されました。二人は衰弱しているもの
の意識ははっきりしており──」
Fin.
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……。
アナウンサーが間違えただけなんだよな?
>>184 ぐはっ、喪舞の言葉でスレ違いなことに気づいてしまったではないかorz
僕っ娘の男装少女と脳内補完された
このスレの
>>1はどこへ行ってしまったのでしょうか・゚・(つд`)・゚・
189 :
テス:2006/10/28(土) 13:48:21 ID:MlGVH7NE
ここはどこだろうか
重い瞼を開くのが欝陶しいぐらい身体が痛む
ただ
耳に聞こえるさざ波が…
確かに生き残ったことを教えてくれた……。
あれは何時間…いや、何日さかのぼればいいだろうか。
私は海外の事業が終わり、やっと日本へと帰れることになり
客船のチケットを買い親しい現地の人に見送られながら船に乗り込んだ。
(あぁ、やっと帰れる…)
その想いがひたすら私の気分を高揚させていた。
あの事故が起きるまでは…
とまぁこんな感じで前に言った妄想を文にしてみたよ。
(´・ω・)こんどはパソから続き書いてみていい?
無人島ものなんだけど
191 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/28(土) 21:39:48 ID:CZxPeBP8
書いて書いて(・∀・)イイヨ
書いていいですよ もとい 書いてください!!
書いてください!!!
(´・ω・`)ムズカシス
書いてるよ゙まとめて投下する予定
Rainbowシリーズの続きもたのしみにしてます。
女の子視点で半レイプだから、
このまままっすぐ且つゆっくりと最後まで進めば
自分的に永久保存ものなのだけど。
ひどい作品になってきたぜぜぜ
一人称視点と三人称視点がいりみだれて読みにくいうえに描写できなくてわけわかめ(´・ω・`)
やっぱり難しいね。まだ序盤なのに無駄に長いし
197 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/02(木) 01:05:23 ID:cKlZMSR0
私も『Rainbowシリーズ』楽しみにしています。
続きこないかなー(´・ω・`)
期待
保守
きも試しなんてシチュ思い付いたんだけど、書いてみてもいい?
なんかそこまで危機的状況にならなそうなんだが。
どうぞ、どうぞ。
おK。ネット繋がってないから、携帯から頑張るよ。
>>202 携帯でも構わないけど、改行には気をつけてくれよ。
wktk
(*´Д`)ハァハァ
207 :
148:2006/11/14(火) 18:16:53 ID:mf3qP8EY
ちょっと電波を受信したのでまた書いてみようかな
また携帯からなんで見にくかったらスマソ
208 :
148:2006/11/14(火) 19:49:31 ID:mf3qP8EY
『ガチャン』
急に上に動いていた足場が止まる。
そう、エレベーターに乗っていたのだ。
日頃から乗っているものだが止まるのなんか滅多にない。
止まるなんて運がわりぃなと思う。
俺―――萩原新一(はぎわら しんいち)は自分の運の悪さを恨んでいた。
俺の隣では我が職場のマドンナ和泉未緒(わいずみ みお)が茫然としていた。
「エレベーター、止まっちゃったね」
「はい、止まっちゃいましたね」
「………」
「………」
お互い会話が続かなかった。
何気なしにとなりの和泉を見る。
美人というよりかわいいとされる顔、さほど大きくはないが形の良さそうな胸、気立てが良いという評判の性格、そんな人と閉じ込められたとはいえ二人きりになれるなんていいんだか悪いんだか。
ま、俺なんかきっと見向きもしないだろうがな。
209 :
148:2006/11/14(火) 21:53:10 ID:mf3qP8EY
会話も続かないから非常用のボタンを探すことにした。
対して苦労することもなくボタンは階のボタンの上にあった。
このボタンを押したらこの嬉しいようなそうでないような雰囲気からおさらばというのは複雑な心境だった。
そしてボタン押す。
1秒、2秒………変化なし。
あれ?おかしくないか?
何回ボタンを連打しても何も反応がないし、何十秒押しても何もならなかった。
「……どうしようか………?」
「……とりあえず助けがくるのを待ちましょうか」
二人で顔を見合わせて落ち込んだのだった。
wktk
211 :
148:2006/11/14(火) 22:53:36 ID:mf3qP8EY
この時間、終業のベルは鳴って大分時間がたっている。
深夜とは言えないが普通では夕食を食べ終わってテレビを見ているような時間だ。
俺はなんで残業をしているかというと明日までに片付けなければいけない仕事があり残っていた。
彼女も何かやることがあったらしい、詳しくは言わなかったが…。
やることがないのでとりあえず壁に寄り掛かるようにして座る。
すると和泉も同じようにして隣に座る。
「私たち…、閉じ込められちゃったんですね…」
今さらだが事実なのだから仕方がない。
「そう…だね、閉じ込められるなんてツイてないよな」
ははは、と諦めたような感じで笑いながら言う。
「そうですね〜、ツイてないですね」
和泉もあまり元気のない顔をしながら言った。
ktkr!
213 :
148:2006/11/15(水) 00:38:12 ID:lkD1G2SF
最初の予想とは異なり会話は続いた。
仕事のことや同僚のこと、いろいろと他愛のない話しをした。
そして、沈黙が空間を支配する。
二人とも口を開かずただ座っている。
いきなり和泉は頭を俺の肩に乗せ寄り掛かった。
甘い香りに理性を奪われつつも耐える。
沈黙を破り和泉が口を開く。
「誰もこないですね」
俺の返答を待たずに続ける。
「萩原さんって私たち女性社員の中で評判良いんですよ〜」
「そ、そうなの?」
それは初耳だ。
「そうですよ〜、ルックスもいいし仕事も一生懸命だし誰にでも同じように接するからですよ」
褒められて悪い気がするやつはいないだろう。
和泉が言葉を続ける。
「私も……ちょっといいなって思ってたんですよ…」和泉はそういいながら俺の肩に乗せていた頭を持ち上げ俺の前に持っていき唇を重ねる。
唇を重ねるだけの短いキス。
「えへへ、キスしちゃいました」
そういいながら笑う姿は俺の理性という枷を壊すには十分だった。
「わ、和泉!!」
俺は彼女を抱きしめまたキスをした。
今度は唇を重ねるだけじゃない長い長い大人のキス。
最初は驚き目を見開いていた和泉も次第に目を閉じていった。
214 :
148:2006/11/15(水) 01:09:46 ID:lkD1G2SF
長いキスが終わったあとには二人の唇からは銀の糸が繋がっていた。
俺は一気にいきたいのを我慢して一枚一枚丁寧に脱がしていった。
下着以外を脱ぎ終わると今度は俺の番とでもいうような感じで俺の服を脱がしていった。
お互いが下着姿になると急に恥ずかしさが込み上げてきて和泉は恥ずかしいですといって顔を紅くして俯いてしまった。
俺はその恥ずかしさをはらうようにもう一度キスをした。
それと同時に手を滑らせ胸の下着を取り払った。
キスをしたまま胸の愛撫を開始する。
乳房を軽く揉んだり先端の突起を触っているとだんだん和泉の息が荒くなり始めた。
少し調子に乗って口を胸のほうに持っていく。
口で吸って舌で転がしたりすると、
「…ん、……んぁ…」
明らかな嬌声が口から漏れて俺の興奮に拍車をかけた。
さらに手を下へと持っていくと下着ごしでも分かるほど濡れていた。
「和泉は感じやすいんだな」
少し意地悪っぽくいうが、
「そんなこと……ぁん」
否定しようとしたが俺に阻止される。
湿り気のある下着の両端を持ち脱がしていく。
その恥ずかしさに思わず隠そうとするが、
「和泉のココを良く見せて」
そういうと
「…はぃ」
顔を真っ赤にしながら手をどけた。
215 :
148:2006/11/15(水) 01:49:44 ID:lkD1G2SF
和泉のソコは綺麗な桜色をしておりそれが愛液で艶やかに光っていて思わずゴクリと唾を飲み込むほどだった。
俺はさっさと下着を脱ぎ痛いほどにいきり立った自分のモノを和泉の秘所にあてがった。
「和泉、いいか?」
「…ぅん、来て!」
返事を聞くや否やすぐに俺は和泉に入れた。
「あぁん、……ぅぅん」
入れて間もなく和泉は絶頂を迎えた。
俺はそれに構わず動こうとする。
「イったばっかりで感じやす……ひゃう!!!」
お構い無しとばかりにずんずんと責める。
「ま、またイっひゃうよぉ〜」
あまり呂律が回ってない口でいう。そろそろ俺も限界が近いようだ。
「和泉、そろそろ、限界がっ!」
「いぃよ、中にいっぱい」そして俺は和泉の中へと出してしまった。
「あ〜あ、こんなにいっぱい、もしできてたら責任とってくださいね♪♪」
満面の笑みですごいことを言ってくる。
「わ、和泉…」
「もう…、名前で呼んでくださいよ」
ちょっと頬を膨らますところが可愛いな。ってそうじゃなくて!
「未緒…、ゴメンまた…」「あはっ♪じゃあ満足するまでやりましょうか♪」
そう言って俺達は二回戦に突入したのであった。
エレベーターが止まったのは故障で止まってしまったらしい、見回りに来た警備員が気がついて助けを呼んでくれたらしい。
まぁ、行為が終わったあとでよかったよ…。
216 :
148:2006/11/15(水) 02:15:28 ID:lkD1G2SF
――3ヶ月後―――
「え〜、和泉クンが寿退社することになったそうだ」
部長がみんなを集めて話しをする。
男性社員から驚きの声があがる。
「今までお世話になりました」
ペコリと頭を下げる。
「なんと相手は萩原だそうだ」
今度は女性社員が驚きの声をあげる。
男連中は俺を見て悔がるものなどいるが無視だ。
俺は未緒の隣に立ち頭を下げる。
未緒がみんなに聞こえないぐらいの声で耳打ちする。「この子と一緒に幸せになりましょうね、あ・な・た♪♪」
そう言ってうふふと微笑む未緒は幸せそうだった。
〜おわり〜
217 :
148:2006/11/15(水) 02:18:30 ID:lkD1G2SF
最後まで読んでくれた人ありがとう
なんか微妙な仕上がりになっちゃったな〜
まぁ、保守程度に………
またなんか面白そうなシチュがあったら食いつくんでよろしく
じゃあおやすみ
ノシ
GJ!(・∀・)イイヨー!
結婚に至るまでの出来事も詳しく聞きたいw
GJ。乙。
今更ながらO2
北海道の方にきた津波のおかげでちょっといいネタ思いついたが書いてみようかな
ところでバトルロワイアル系でこういうのできないかね?
>>222
ん?俺に聞いてるの?
TSUNAMIネタwktk(・∀・)
残念ながらTSUNAMIのつもりがついさっききた地震に影響されて地震ネタになりそうだ。
地震でもいいぜ(`・ω・´)
さあカモン!
途中まで書いて挫折…OTL
これは駄目かも分からんね
工エエェェ(´д`)ェェエエ工工
227 :
202:2006/11/27(月) 00:39:08 ID:b3+Opth0
スマン、色々立て込んでなかなかかけんかった。
途中までならあるが、投下したほうがいいか?
勿論
きたいあげ
230 :
202:2006/11/27(月) 22:32:32 ID:b3+Opth0
息を吐くと、ジッポーの明かりが照らし出す部屋に、白い色が混じった。
「うぅ……」
寒い。
バナナで釘が打てるんじゃないかってくらい寒い。
「……なあ」
「……何よ」
「……何でこんな事になってんだ?」
「……知らないわよ、ったく」
さっきまで暴れていた連れは、すっかり大人しくなって俺の隣で縮こまっている。
231 :
202:2006/11/27(月) 22:33:13 ID:b3+Opth0
俺達は今、訳のわからない状況に置かれていた。
簡潔に言うと、廃屋に閉じ込められている。
それだけなら全く問題はない。
ドアがあるならそこから出ればいいし、開かなければ壁でも窓でも壊せば済むことだ。
だが、ここは地下室。
入ってきたドアは開かず、窓も壁も壊せそうにない。というか、ない。
「はぁ……」
「ため息なんて吐かないでよ、うっとおしい」
「……」
なんだってこんな事になったんだろ?
232 :
202:2006/11/27(月) 22:34:47 ID:b3+Opth0
とりあえず、このぐらい投下しとく。
少しだけだけでゴメン。
期待。
234 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/03(日) 01:16:24 ID:bw3A2pEx
待ちage
期待age
236 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/03(日) 12:43:38 ID:AG9NJCSe
期待age
続きを待ちわびて
首がキリンみたいになってきた〜早く続きを!
よぅ兄弟。儲かっているかい?
なに?みみっちぃゴブリン退治や、嫌味な商人の護衛で食いつないでるって?
おうおう大変だねぇ、ご苦労様様だ。
俺かい?俺は、ウハウハさ。見てくれよ、この目の前の光景を!
胡散臭い地図屋から二束三文でぶんどった紙切れが、騎士様一生分の財産に匹敵する金銀財宝に化けちまうんだからな!
まったく、冒険者冥利に尽きるぜ。ただ、ちぃとばかり問題があってな。
バケモノの類はあらかた殺し尽くしたからいいんだが、この目の前のクソッタレな鉄格子が開かないでやんの。
なにか嫌な予感はしたんだよ。したんだが、俺はあくあまで戦争屋なわけで罠なんか専門外なんだよ。
…仕方ねぇだろっ!?古代王国期のガラクタがあればラッキーぐらいで、まさかこんな陰険な遺跡だと思って無かったんだから!
そこで、だ。
ギブ&テイクだ。世の中を動かすのは金だ金。
ここにある財宝の取り分を半分やるからお前さんのシーフとしての腕を貸してくれ。
なに、嫌だ?おいおい、一番のりは俺だぜ?せめて、半分はこっちに寄越せよ。
アンタだって、この鉄格子を空けなきゃこっちには……。
ガチャン ギィィ
おお、分ってくれたか。
え?金はいらない?ま、てそれはそ、
うひゃあぁっ!?
ちょ、ま、馬鹿!や、やめっあん、ダメっだ……なにすああああああっん!?
このヤロ何す、ききききれいってそんなこと言われたことあひゃあっ!?
アホ!?よよよ嫁に来いだと!?なにけったいなこと抜かしてやがっ!?
やめ、ももむな!?あふぅん…いやぁ、せめて、やめ、こーゆーことは手順をふぅぅっ!?
いや、手順を踏めばいいってわけじゃぁあああああっ!?
数ヶ月後。
俺…は冒険者家業をやめて街にいた。
色々文句があったが、今となってはどうしようもない。
まぁ結婚資金は無駄にあったし、親父とお袋が花嫁姿の俺を見て感涙しちまってるのを裏切るのも辛い。
第一、この腹に宿っちまった宝物を捨てるわけにはいかねぇしな。
あーこれはアレか?女冥利に尽きるのか?
END
…とほほ。
突発的に書いた。
色々とお約束から外れているよーな気もしなくも無いが、私は謝らない!
こんな俺後のみのスレがあったとは…
さっきのイイヨー(・∀・)
GJですた
さて………、あまり人がいないからまた書くかな………だがネタがないorz
誰かネタプリーズ
そしたらまたいけるかも
前に書くっていって
コツコツ書いてるんだけど
難しいよね(´・ω・`)
みんなが忘れた頃に投下できると思います。
244 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/09(土) 03:55:23 ID:+lebB8ey
オレっ娘(*´Д`)ハァハァ
いつでも待ってるぜ
とりあえず保守保守っと
247 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/16(土) 05:15:08 ID:i+rSRUYV
ほしゅ
「まったく、昼の連中は何を考えているんだ。」
防菌服を脱ぎ悪たいをついた、世界各地で猛威を振るっている感染した人間を死に至らしめるリグマリオウイルスの研究チームに入ってから、
もう1ヶ月になる、俺のチームでは様々な動物でこのウイルスの抗体が出来ないか試しているが、まったく成果が出ていない。
牛のバイタルが変化し、血液を調べたらインフルエンザの反応が陰性だったのだ。急いで対策をとらなくては、純粋なサンプルが取れなくなったばかりか、他の動物も汚染してしまう可能性が高い。
ふと、窓の外に視線が止まった。他の棟に入って行く人間が見えたのだ。昼のチーフ桜井女史だった。若い年齢でありながら、他の大学か
ら引き抜かれてきた優秀な人間だ。もっとも、その優秀さよりもショートカットの童顔からは連想出来ない白衣の下のグラマラスの体の方が俺にはよっぽど重要なことだが。
「昼のチームの奴がいたから、話をしてくる。」
それが桜井女史であることはおくびにも出さず、防菌室の中にマイクで呼びかけた。同僚に手を振り返すと桜井女史の後を追いE棟に入った。
249 :
248:2006/12/16(土) 09:50:30 ID:DULW328A
勢いで書いたのですが、推敲しなかったため文章が少しおかしいですね。
もし良かったら、続きを書こうと思います。
age忘れました
GJ!
続きをwktkしながら待ってるぜ!!!
バイオハザードものは難しそうだが頑張ってくれ!
252 :
夏の日(1):2006/12/17(日) 14:43:59 ID:tRr/DpMn
油蝉の鳴き声が遠くに響く。時折吹き抜ける風が軒先の風鈴を揺らし、チリリ、と涼や
かな音色が暑気を遠ざけるような気がした。
真夏の空は抜けるような青空だった。強い光は遠くの雲を真っ白に見せている。
クーラーのない縁側で、ぼんやりと頬を伝う汗をタオルで拭った。
「麦茶のお代わり、いりますか?」
背中にかけられた声に振り返る。隣に置いたグラスは、もう空だ。
「すいません。お願いします」
一礼してそう答えると、「ちょっと待ってて下さいね」という言葉と共に、すぐそばに
女性が膝を下ろす。
グラスを手にとって立ち上がると、彼女はそのまま台所へと消えていった。
夏のむせ返るような草の匂いがかき消され、彼女の髪から漂う石鹸の匂いが鼻をくすぐ
った。
クーラーも無いこんな田舎の家になんだって居るのかといわれれば、親戚の法事が理由
だった。しかも殆ど面識の無い母方の伯母の法事だ。本来なら両親が列席するのだろうが、
タイミング悪く祖母が入院してしまい、息子である自分が代わりに来ることになってしま
ったのだった。
「あの……」
考えに耽っていると、背後から困ったような声がかかる。
振り返れば、自分と同い年か、もう少し年下っぽい雰囲気の女性が困った顔をしてグラ
スを持っている。
「ああ。すいません。どうも」
ゴニョゴニョと口の中でそんなことを言いつつ、彼女からグラスを受け取った。
彼女はそのまま居間に戻り、畳に座る。テレビは高校野球の試合を中継しており、時折
アナウンサーの興奮した声が聞こえていた。
彼女は、この伯母の家の娘だそうだ。自分とは従姉妹になるのだろう。だが自分は母方
の親戚とはほとんど付き合いが無く、彼女とも今日が初対面だった。
家には他に人気は無い。
本来なら法事ともなれば一族郎党が集まり無駄に騒がしいものだが、自分の到着が早す
ぎたのか、着いてみればきている人間は自分だけだったのだ。
「……はぁ」
ため息混じりに縁側から空を眺める。
関東の大都市で生まれ育った自分にとって、こういう田舎の家というのはテレビの中の
ファンタジーと同様だった。少なくとも庭先に鶏が放し飼いされているような家というの
は、想像の外だ。
「あの、ごめんなさい。お父さんもお母さんも、寄り合いに出ちゃってて」
「いやー。自分が早くつきすぎただけだから、そんな。気にしないで。むしろ早すぎてご
めん」
「いえ。そんな」
沈黙に耐えかねたらしい彼女の言葉に答え、再び空を視る。
「……何か面白いものでも見えますか?」
「空が広いなぁ、と」
「はぁ」
よく分からない、という雰囲気で頷いた彼女を背に、冷えた氷で汗をかいたグラスを口
に運んだ。
災害(事故)起因とは違うシチュエーションもありでしょうか?とか思いながら書いてみました。
254 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/18(月) 01:09:57 ID:IeNgsz13
いいよいいよー
続きwktk
これは良シチュ
支援あげ
256 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/19(火) 22:39:40 ID:+IcAmDx9
なるほど確かに二人っきりだわ…
つ好きwktk
2人きりってシチュが萌えるんだよなwktk
258 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 02:44:50 ID:jszxjJQw
エロ無しになりそうなんですが書いていいでしょうか。
書け。全てはそれからだ。つか、エロのほうは読者が勝手に後日談妄想するからOK
書け
263 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/25(月) 23:25:42 ID:zAVI6ZWR
age
264 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 00:15:25 ID:QvSdWthN
age
昔、マガジンにEX〜少年漂流〜って漫画があったな…
主人公達が船で南の方の島に遊びに行く途中で地球に隕石が落ちて津波が起き、船は転覆。
主人公は目的地だった島に漂着して、
物語の初期は主人公とヒロイン2人だけで離れ離れになった仲間を探すんだよね。
エロは無かったけどなかなか楽しめたな。
世代割れちまうがな
読んだ事があるのは今20歳前後の人からじゃないか?
何年前の漫画かは忘れたけどな…
あれ、まだ最近じゃなかったっけ?
と、ふと振り返ってみればもう…………。
あけおめ保守
270 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/01(月) 10:29:41 ID:gcc1O59c
あけおめ
271 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/07(日) 02:16:39 ID:MGZe1EXY
保守
「ここで大人しくしてろ」
そう言われると同時に、牢屋の中に投げ込まれた。
「いっ……てぇ……」
思いっきり頭を打った。
牢屋の壁が石で出来ている理由が、何と無く分かったような気がする。
青年の名はデニス。
この王国では、それなりに名の知れた盗賊だ。
というのも、彼は必ずといっていい程王家の財宝を狙うからである。
今回も、王家の宮殿に安置されている財宝目当てで忍び込んだ。
が、運悪く今日は諸候の緊急招集があり、普段の倍近い数の兵士がいたのだ。
それを知らなかった為、あえなく御用となってしまった。
(……畜生。こんなはずじゃなかったのに。
こんな所で、この俺が捕まるなんて……)
頭を押さえながら、先刻の己の失態を恥じる。
痛みが大分収まったところで、残酷な現状が目に入ってきた。
いかにも頑丈そうな鉄格子。
重っ苦しい石の壁。
通路には火の灯った燭台が一つ。
窓は……無いか。
埃っぽくて、薄暗くて、寒くて……まさに牢屋といった感じだ。
(脱獄しようにも……道具は没収されちまったしな……)
そんな事を考えながら頭のコブを撫でていると、牢屋の隅からすすり泣く声が聞こえた。
横を向くと、一人の少女が涙目でこちらを見つめている。
年齢は15、6歳位だろうか。
淡いクリーム色のドレスに、腰まである長い金髪。
目の色は蒼であることから、どうやらこの国の人間ではないらしい。
年下が趣味って訳じゃあないが、中々の美女だ。
「……お前、誰?」
問掛けるが返事が無い。
というより、先程より脅えているような気さえする。
……まあ、それもそうか。
同じ牢屋に誰とも知らぬ輩を投げ込まれて、誰が警戒しないであろうか。
同じ立場だったら、自分もちょっと距離を置く。
「あ、ああ……大丈夫。俺は別に怪しいもんじゃないから」
とりあえず、少女をなだめるような言葉を掛ける。
……牢屋にぶち込まれる奴が怪しくない訳無いのだが、
とにかく『俺のせいで泣いてます』みたいな、気まずい雰囲気を何とかするのが先だ。
「ううっ……本当……っう……ですか……ぐすっ……」
「ああ。だから、そんな警戒しなくてもいい」
涙を流したまま、無言で頷く少女。
一応喋ってくれるようにはなったのだが、話が続かない。
沈黙。
少女は俯いて、再び泣き始めてしまった。
中世っぽいので書いてみた
とりあえず続きます
GJ!
期待
期待sage
期待期待
中世風ファンタジーで女が牢屋に入れられてる設定を観ると、
看守や兵士がレイプ済みってイメージが沸いてしまう……orz
(´・ω・)ソナコトシテマセンヨ
わけあって手を出せない状況にある(本人が望まなきゃ挿入できない結界or加護みたいな感じの設定)とかでどうよ?
売り物にする予定だから処女膜は無事です
横入り失礼します。
結構こじつけな展開で二人きりにするのはありでしょうか?
まずは書いてみればいいと思うんだ
そろそろ保守
>285、286(やり方が分からない…
とりあえず挑戦してみます
289 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/18(木) 23:42:55 ID:lZEzAskw
hosu
290 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 01:47:21 ID:c+xNtqGK
ほっしゅるほっしゅる!
ホシュ
ほしゅー
いきなり過疎った?
「成り行きでそうなった」程度でもいいのか?
それなら、ちょっと投下したいものがあるんだが。
>>294 ∧_∧ +
(0゜・∀・) ワクワクテカテカ
(0゜∪ ∪ +
と__)__) +
閉じ込められてるわけでも無いし、周囲に誰もいないわけでもないんじゃ、このスレの
趣旨に合わないかもしれない。というかスレ違いかも。しかもエロさすらない。
スマン、住人の皆さん。
でも折角書いたから、投下、投下、投下!
重く、厚い扉を開くと、そこは灼熱の世界だった。
ねっとりとした熱い空気が否応なく俺の体に纏わりつく。薄く目を開けて部屋に入り、
俺は右側の席に腰を下ろした。
たちまち玉のような汗が噴出してくる。だが、それこそ醍醐味よ。俺は額を流れる汗の
雫を払うことも無く、ただそっと目を閉じて、襲い来る熱気に我が身を任せた。
サウナである。
我が町の市民プールは室内型の温水プールだけあって、季節を問わず一年中営業し
ている有難い施設である。そのプールサイドに設けられた小部屋こそ、今俺がいるサウナ
である。
冬でも開いてる市民プールだが、実際真冬にプールに行こう等と考える人間は決して
多くない。今日も休日だと言うのに利用客は数えるほどしかいなかった。だからこそ、こう
してサウナを独り占めできるのだが。
さあこれからが本番だ、と俺が座りなおしたその時、重い扉が外から開かれた。
調子を外されるのは残念なことである。が、仕方が無い。ここは何も俺だけの施設では
ないのだから。
ひゅうという音と共に熱気が逃げ、代わりに入ってきたのは女の子だった。濃紺のスクー
ル水着を身に着けた結構可愛い子である。歳は俺より随分下だ。多分中学生だろう。小柄
だが均整の取れた手足は細く、しなやかだ。如何にもスポーツ好きそうな、無駄の無い体形
と言っていい。顔立ちは凛々しく、これまた如何にも勝ち気そうで、俺を一瞥するや「フンッ」と
鼻を鳴らして左側の席に座った。
さて。可愛い女の子と2人きりなのは嬉しくはあるが、考え物でもある。気の強そうな子では
あるが、それでも年下の女の子だ。正直、俺と2人では落ち着くまい。ここは年上の余裕を
見せて俺の方が出て行くべきだろう。実際、長居して痴漢扱いされると困るというのが本音だが。
そう思って腰を浮かす。だが、彼女の反応は俺の逆をついていた。薄く笑って「フン」と嘲る
ように口を歪めたのである。
「根性無し――」
声には出さないが、そう言っているようだった。
この瞬間、俺の中の闘争心が燃え上がった。
コイツ、俺と勝負する気か――!?
古今東西、サウナでの戦いは先に出たほうが負けと決まっている。俺は、一度は浮かし
た腰を下ろし、悠然と座りなおした。
タンッ! と短い音を立てて砂時計がひっくり返される。彼女が持ってきたものだ。サウナ
に入る時、係員に言うと無料で貸してもらえる5分計。
俺はそれを見て軽く溜息をついた。所詮は女の子だ。高々5分程度で俺が根を上げる物
かよ。意気込んで損した。
しかし、である。彼女は意味ありげに「ふっ」と笑い、コツコツと砂時計の頭を叩いた。「幾ら
でもひっくり返せるのよ」とでも言っているようだ。
良いだろう。そっちがそのつもりなら、相手になってやる。
俺達は中空でパチッと視線を交えると、お互いにゆっくり腕を組んだ。
ブーンという低いボイラーの音が室内に木霊する。俺と少女は、お互い目を瞑り、無言の
ままに熱気と戦っていた。砂時計はそろそろ最初の一回が落ちきろうとしていた。両者とも
全身に汗をかき、だがまんじりともしない。
俺は手元にあったタオルで何気なく胸板を拭いた。と、彼女は僅かにいらだたしげな顔で
俺を睨む。そして己の水着の胸元を引っ張り、パタパタと軽く仰ぎ、決して涼しくは無いだろ
う風を起こしている。
不満げだ。酷く不満げなお顔だ。
多分、上半身裸の俺に対し、胸まで覆う水着を着ている自分は不利だと思っているのだろ
う。確かに、噴出した汗が簡単に拭き取れる男と、水着があって汗が拭けない女とでは幾ら
かの差がありそうなのも事実なのだが。
グググと下あごを震わせて彼女は拳を握った。
不快指数が、ついに限界まで達したか。――この勝負、貰ったな。と、僅かにほくそ笑んだ
次の瞬間、俺は目を剥いた。
女の子は、水着の両肩の紐をグッと掴むや否や、下に引き摺り下ろしたのである。
当然、可愛い胸が全部見えてしまっている。
バカだ。
バカがいる。
バカ、降臨。
バカ、サウナで脱ぐ。乳丸出し。
曝け出した胸をタオルで拭い、「これで条件は五分よ」とばかりに、口の端を歪めてうっすらと
笑った女の子を見て俺は思った。
コイツ、本物のバカだ――と。
タンッと気持ちよい音を立てて砂時計が返される。ファイブミニッツアゴーと、頭の中
で声がした。
俺有利かと思われた勝負は、だが勝気が過ぎる少女のアホさでイーブンになってい
る。筈だったのだが――俺は不測の事態に見舞われて、内心の焦りが酷くなっていた。
勃起してしまったのである。
目の前の少女、頭の中はともかく、見た目は大変に可愛らしい。それが膨らみかけの
小振りな乳房を丸出しにしているのだから、これはまあ不可避の現実だろう。目が泳い
でしまうのも仕方が無い。プールだけに。
心頭滅却すればサウナもまた涼し、かもしれないが、流石に本能までは押さえきれな
い。俺の一物は、意思に反して次第に硬度を増し、ついに完全にそそり立ってしまった。
最早前傾姿勢では誤魔化せない。それでもタオルでさり気無く股間を覆ったが、健闘
空しく、少女に気付かれてしまった。
「く、くくッ」
実に腹立たしい事に、彼女は喉の奥で声を殺して笑いを噛み締めている。「あーら、お兄
さん。そんな所にテントなんか張っちゃってどうしたの?」と言わんばかりだ。
悔しい。年下の女の子の胸に股間を膨らませたのは確かに俺だが、こうして嘲笑われ
てみると歯軋りするほどの悔しさである。
だからこそ逃げられない。
ここで尻尾を巻いたら、俺は明日、彼女の通う学校で散々に笑われるだろう。「昨日ね、
市民プールのサウナで大学生っぽい男の人が、私の体見て欲情してたのよ」とかなんとか。
これで彼女が大人しそうな子であれば俺も「てへり」とか言って姿を消すのだが、相手は
サウナ勝負で乳を放り出しちゃうようなバカである。
正直、負けられない。
考えた末、立ち上がった俺は「あーら、出てくの? 負け犬は無様ねえ」という顔で笑って
いる少女の前で――おもむろに水着を脱いだ。
チンポ丸出しである。
しかも絶賛勃起中――。
脱いだ水着を脇に置き、天を突くペニスを見せ付けるように俺は座りなおす。彼女は流
石に引いていた。目をまん丸にし、俺のペニスを数秒間凝視した後、急に挙動不審になっ
た。当然だろう。自分の胸を見てチンポ立てた男が、それを隠す事無く全裸で目の前に
座っているのだから。
フフフ、と内心でほくそ笑む。とった手段はあまりにもアレだが、少なくともこれで勝負は
俺の勝ちである。後はサウナから逃げ出す彼女の後姿に高笑いを浴びせるだけだ。
どうした? ほら、逃げないのかね? と口の端を歪めてニヤリと笑う俺を前に、彼女は
ついに立ち上がった。
これで終わりだ。中々に手ごわかったぜ。と、思った矢先の事である。
少女が、やはり完全に水着を脱ぎ捨てたのは。
アホだ。勃起したチンポ丸出しの俺が言えた義理ではないが、コイツは真性のアホだ。
何処の世界にサウナ勝負に負けたくなくて、見ず知らずの男と2人きりなのに全裸になっ
てしまう女子中学生がいると言うのだ。
彼女は、流石に顔を真っ赤にしてちょっと震えながら、僅かに股を開いて席に座りなお
した。当然の事ながら、可愛らしい割れ目が丸見えである。その上の薄い恥毛も含めて。
呆気に取られる俺を前に、彼女は不敵な顔を無理矢理作って笑い返してきた。「さあ、こ
れで勝負は振り出しに戻ったわよ!」と言わんばかりの形相である。
三度再スタートとなったサウナ勝負。お互い全裸で、普段は見せてはいけない場所を
完全に見せ合っているという異形の戦いである。部屋に篭る熱気は、だが最早脇役の
存在となっていた。
俺は次なる手を必死に模索する。向こうが打ってきた空恐ろしい一手に対抗するには、
どうすればいいか? だが、ゴクリとなる咽喉が思考を邪魔し、頭が回らない。目が勝手に
吸い寄せられてしまうのである。彼女の裸身に。
赤く上気した健康的な肌。年頃の少女らしい丸みを帯びた体は全体的に華奢だが、しっ
とりと汗に濡れて少しばかり蠱惑的だ。未発達の乳房は、だがそれでも柔らかそうで彼女
の呼吸に合わせてフルフルと揺れている。そこから下、ほっそりした腰と下腹には一分の
贅肉も無く、手で触れば折れそうなほど。そして股間のスリット。ピタリと閉じ合わされ、綺麗
な肌色のままの秘所は、彼女が無垢な少女である事を証明している。
再びゴクリと咽喉がなる。彼女を組み伏せて襲い掛かる自分を幻視し、それがまた興奮を
呼んだ。ヤバイ、今すぐ抜きたい。むしろそうしないと、本当に襲い掛かってしまいそうだ。
流石にそれは犯罪である。
と――俺の頭に閃く物があった。
そうか、抜けばいいんだ。コイツの目の前で!
俺は一度呼吸を整えると、股間に聳え立ったペニスに手を伸ばし、それをゆっくりとし
ごき始めた。視線は彼女の割れ目に固定である。
当の彼女は、やはり引いた。ガタッと音を立てて本当に後ずさりし、背中を壁にぶつけ
た。物凄い勢いで口を引きつらせ、俺の仕草を見つめている。
全裸の男が、やはり全裸の自分を視姦しているのだ。あまつさえチンポ擦ってるのだ
から、真っ当な女の子なら泣いて逃げてしかるべきである。
今度こそ決まったな――。
ゆるゆるとペニスをしごきつつ、どこか覚めた頭で俺は勝負の行方を見守った。裸を
見せ合うならまだしも、そこに性欲の影を――影と言うかむしろ全開にして――加えた
のである。
いくら勝気でも女の子だ。こればっかりは乗り越えられまい。さあ、俺の獣性の前に
恐れを為して逃げ出すがいいさ!
「ガルルルル……」という獣っぽい唸り声を視線に篭めて彼女を凝視する俺。だが、また
しても。そう、またしても少女は俺と同じ階梯まで登って来たのである。
両足を座席に乗せ、いわゆるM字開脚の恰好で、自分の秘所に指を滑らせたのだ。
恐るべきはこの少女の執念よ――!
まさかこの領域に踏み込んでこようとは。
戦慄した俺は、全身に冷や水を浴びせられたように、動きを止め、自慰を始めた彼女
をポカンと見つめた。
喉の奥にくぐもった声を押し殺して、見た目可憐な少女がオナニーを。非現実的な光景
ではあった。しかも場所は市民プールのサウナである。夢にも思わないとは正にこの事だ。
停止する脳みそとは対照的に、俺の体は正直だった。一度は止まった手を再起動し、
ペニスへの刺激を再開したのである。
ここに来てまたもや勝負の様相が変わった。
オナニー合戦。
先にイッた方が負けという暗黙の了解が俺と少女との間に交わされ、2人して己の大事
な場所を弄りだすという、熾烈極まる戦いが始まってしまったのである。
既に両者とも、互いの裸を存分に見合った後だけにヒートアップも早い。少女は綺麗な
ピンク色の小陰唇を外気に晒し、細い指先で盛んに膣口を擦っている。眉を顰めて顔を
歪め、時折、抑えきれなかったのか、甘い声が漏れていた。傍目に見ても完全に体に火が
付いている。それは俺にしても同じ事で、ゾクゾクするほどの衝動が、脳髄発背筋経由で
股間に集まってきている。僅かに腰を浮かし、尻の穴を限界まで引き締めていなければ
耐えられない程だ。
だがそれでも、お互い手加減は出来なかった。僅かでも手を抜けば有利になる事は分か
りきっている。それでも。
これは真剣勝負なのだ。お互いの意地と執念をかけた。
ペニスを上下する俺の手は益々早く、ヴァギナを掻き混ぜる彼女の指は更に深みに。
2人して互いの性器を見つめあい、魂のオナニーを続ける。最早、お互いに唸り声は隠せ
なかった。俺の低く押し殺すような声と、彼女の甘く切なげな声が狭いサウナに木霊する。
もう、――限界だ!
どちらが先に思っただろう? いや、どちらでもない。
俺達は同時に限界に達し、同時に絶頂を迎えた。
勢い良く飛び出した俺の精液が、過去最高の飛距離を持って宙を舞い、涎を垂らして
力無く座り込んでいる少女の顔にかかった。
それが決着だ。
勝者も無く、敗者も無い。ただブーンと唸るボイラーの音があるだけ。
暫く目を瞑って天を仰ぐ。特に何を考えていたのでも無い。それにそんな思考能力も
残っていなかった。時計の砂はとっくに落ちきり、一体どれ程の時間、俺たちがサウナに
篭っていたのか知る術は無い。
やがてどちらともなく、俺達は焦点の合わない瞳を合わせた。
「出るか」
「うん」
ぼんやりとする頭を抱え、それぞれの水着とタオルを持って俺と彼女はサウナを出た。
涼しい。本当に生き返るようだ。
ペタペタとプールサイドを歩き、その外気の涼しさに、ただただ感動する。
この解放感――。
漸く脳みそに血液が酸素を運び込むと、俺はなにやら幾筋もの視線を感じてふっと横を
向いた。そこにあったのは、暇を潰しに着たおばはんや年寄りの、唖然極まるポカンとし
た顔、顔、顔。
それが不思議で、俺と彼女はお互いに顔を見合わせた。
そして初めて現状を理解する。
全裸でチンポ丸出しの男と、同じく全裸で顔射をきめられた女の子。
シーンと静まり返るプール。
「う、うわああ!」
「きゃああ!」
2人して絶叫し、俺達は先を争ってその場を逃げだした。
/
その後、俺は彼女と市民プール入り口でバッタリ顔を合わせた。
そして、近所のコンビニでアイス買を買い、2人仲良く帰った。
-*-*-*-
サウナいいよね。サウナ。
バカな子もいいよね。バカな子大好き。
スレ違いだったらホントにスマン。ここくらいしか投下できる所がなかったんだ。
304 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 23:35:25 ID:xpkXgjit
・・・・・・GJなんだぜ
たまらんwwwwwwwwwwwww
なんかよさげだよwwwwwwww
普通によさげだぜ。。。
ちょっと市民プールいってくるし
やべぇ
これはエロイ
エロイというか馬鹿だwww
超GJ
大バカ野郎(最上級の敬称)がいると聞いてやってきました。
GJ&ワッフルワッフル
サウナでこんなネタを思いつくとは・・・
大爆笑した
こいつら素晴らしいバカだ
GJ!!!
…でもコレどういうジャンルになるんだ?
たしかに女の子と二人っきりではあるがなんかこう
違うような違わないような不思議な気分になるなw
新しい切り口、という無難な言葉を使っておこう。
いいね!
バカが二人!
この男よりも、女子中学生よりも、作者よりも
GJと思ってしまった俺達読者が一番馬鹿だと思う件について。
こいつはまた新機軸だぜ!
これはいいwwwwww
あんた最高の馬鹿だよ!!w
これはきっとVIPの新ジャンルとして通用するwwww
"アイス買"ってどこが発売元なんですか?
とにかくGJ!
317 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 13:07:30 ID:350fmlyV
参りました! GJ!
新ジャンル「サウナ馬鹿二人」
こうですか?わかりません><
GJ!!!
不覚にも吹いた、
とりあえずサウナに行きたくなったのは俺だけのはず
これはスーパーGJwwwwwwwwww
しっかりオチまでつけてくれて言うことなしwww
GJだよ…
ジャンルはきっとバトルものだよ!
これはwwwwwwwwwww
さっきサウナに行ってきたんだが
この話を思い浮かべてしまいニヤついてしまったw
この中で抜くとかありえねえwwwww
_、_ グッジョブ!!
( ,_ノ` ) n
/ ̄ \ ( E)
/ /フ /ヽ、 ヽ_//
ヽ_(ミ) ノ ヽ .ノ
( . ヽ
丿 /♂\ \
// ヽ ヽ、
// 〉 /
.(、く、 / /
ヽ_つ (__`つ
サウナホシュ
つまりはこのオバちゃん達は、
サウナの中をずーっと覗いてたってこと?
「ど変態がいるわよ!」みたいなこと??
<MAP>
入り口→脱衣所→プール→サウナ
↓
遊 具
赤く上気した健康的な肌。年頃の少女らしい丸みを帯びた体は全体的に華奢だが、しっ
とりと汗に濡れて少しばかり蠱惑的だ。未発達の乳房は、だがそれでも柔らかそうで彼女
の呼吸に合わせてフルフルと揺れている。そこから下、ほっそりした腰と下腹には一分の
贅肉も無く、手で触れば折れそうなほど。そして股間のスリット。ピタリと閉じ合わされ、綺麗
な肌色のままの秘所は、彼女が無垢な少女である事を証明している。
この描写が絶妙
おお、魔眼屋の人だったのか。
あ、サウナの人だったのか、気付かなかった。
続編書いてくれないかなぁ。
ペニスを上下する俺の手は益々早く、ヴァギナを掻き混ぜる彼女の指は更に深みに。
www
334 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/21(水) 03:16:34 ID:tEzL1kYB
保守
hosh
ほしゅ。
hs
保守。ところで、なんでここは書きかけのばかりあるんだ? 職人さんはいずこに?
★ゅ
342 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/18(日) 17:55:23 ID:6kSqgD99
ほしゅ
捕手
ホシュ
欲しゅ
東京桜満開保守
静岡お花見真っ盛り保守
札幌まだ雪が積もってるよ保守
349 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 04:00:52 ID:vmMnetCS
再度上昇
350 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 02:56:41 ID:wyHllMih
保奈美を守る
351 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 11:34:14 ID:4oFDqoN9
保守。
誰も書かないんなら俺が書いちゃうんだぜっ
いや、無理だけど('A`)
352 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 23:46:11 ID:aQ6KPo5h
大学のサークルで旅行にいくーの
しかし、行きの船で嵐にあうーの
嵐のせいで海がシケ、サークルの女の子が海に投げ出されーの(何で?とか聞かないで
それを見ていた同じサークルの青年が助けに飛び込みーの
なんとか女の子を掴むも、突如大きな波に襲われーの
気がつくと、二人とも見知らぬ小さな島に流れ着きーの
その島でのサバイバルの中で二人の間に変な空気が流れーの
〜〜〜〜〜【愛】〜〜〜〜〜
嫁ぎーの
某芸人のように書いてみた。良い人が書いてくれる事を期待
353 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 01:05:58 ID:m4atR1OH
戦争勃発で〜に期待
俺?無理ですごめんなさい
354 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 01:51:39 ID:IUqREXR1
それは、急な嵐だった
大学のサークルの皆でのひと夏の思い出旅行。
日程、時間、特に障害もなく、スムーズに…それこそ順調すぎるほど予定が決まり
意気揚々と出航した…までは良かった。急に振り出した雨に荒れてきた海…
危険だとは思った、それでも戻るのも面倒だという事で押し切った形で船を進めていた
あんなことになるとは露も知らず…
「バカ!?危ないぞ!?外は俺が見てるから仲に入っとけ!」
「大丈夫だよっ。とと…」
「…危ないって言ってるだろうが」
「そこまで足腰弱くないってば…それに、拓海一人じゃ、寂しいでしょ?」
そう言ってにっこりと微笑みこちらを覗き込むように顔を近づけてくる
そう言われて悪い気がする男はいないだろう拓海は少し誤魔化すように顔をそらし辺りを見回した
坂下 遥。同じゼミ、同じサークルの仲間の一人だ
よく喋り、ころころと表情が変わり明るくみんなのムードメイカー的なクラスで一人はいる、人気者タイプの少女だった
「こんな状態で女のお前が出てきてもしょうがないだろうが…」
「ひっどいなぁ…人が心配して来て上げたんだよ?大人しくありがとー♪の一言も言えないの?」
「よく言うよ…まったく」
身振り手振りを交えながらくすくすと笑い説明を始める遥を
はぁ。と盛大に溜め息を吐き肩を竦める…
彼女といればこの憂鬱な気分も少しはマシになっていたのかもしれない
今まで気を張っていた反動か少し…ほんの少し気を緩めた。
「まぁ、もう戻るよ。そこまで怒るなら戻ればいいんでしょーだ・・・きゃっ!?」
「当たり前だっての…危ないって遥!?」
急な横波の衝撃は遥の足元を攫っていく
振り返れば海に投げ出されようとしている遥が目に入った
どうすればいいっ!?…迷ってる時間はなかった。
気が付いたら俺は遥の体を抱き締める形で海に投げ出されていた・・・
うん、なんだ、そのごめんよ_| ̄|○
wktk
356 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 02:51:33 ID:M7ueV8jp
寝る前に見てみたら・・・
ニヤニヤ( ・∀・;)しちまってる。ええい、そこまで書いたんだ!続きも頼むぜ!
明日の朝が楽しみだ・・・
358 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 03:15:45 ID:M7ueV8jp
ま た 序 章 だ け か
361 :
354:2007/04/08(日) 12:20:10 ID:IUqREXR1
おぉ!?あんなのにレスついてる!?
出来心だったんだ…すまない_| ̄|○
筆遅くていいなら書いてみるよっ!(`・ω・´)
ガンガレ〜〜〜〜
363 :
ストーリー考案者:2007/04/09(月) 00:07:15 ID:WqSKNa6h
まだ書かれてない・・・(´・ω・`)
妄想しながら明日に期待・・・
364 :
354:2007/04/09(月) 02:06:07 ID:Oxv/0gqx
「…っ…ぁ?生きてる」
目が覚めれば拓海は見知らぬ浜に倒れていた
いや、打ち上げられていたといった方が正しいんだろうか?
日が高くのぼり嵐が嘘のように静まっておりまるで拓海や遥が海に落ちる為だけに
あの嵐があったかのような…それほどまでの快晴だった
太陽に手をかざし辺りを見回せば少し離れている所に倒れている遥が目に入った
「まぶし……そうだアイツは!?…遥!?」
だが、ここから見ている限りではピクリとも動く気配がない
まさか……溺死なんて冗談はないよな?
自然と焦りが生まれていく、あの荒れていた海に落ちたんだ
むしろ助かっている方が奇跡に近いのだろう急いで近寄っていき抱き起こた。
少し、いやかなり冷えた体は否が応でも「死」という言葉を連想させた
「おいっ!?起きろ!!おいっっ!!!」
「・・・・・・・・・」
「冗談じゃねぇぞこのっ!!起きろってんだよ!!!」
「・・・・」
あぁ、テレビとかの特集を見てるときにバカにしていた応急処置なんか少しも思いつかなかった
あんな事を冷静に出来るほど俺は冷静でいられるはずもない。
ただ、俺に出来る事は名前を呼びながら頬を軽く叩く事だけだった
(そうだ…人工呼吸!?心臓マッサージ!?なんでもいい試すだけ試してみる価値はある!!)
だが、思いついたところで正確なやり方なんか覚えてない
せいぜい、覚えているのなんかキスして息を吹き込む
鳩尾の辺りを押し込む。この程度の知識くらいしか持っていない
「・・・っ」
「・・・・」
「だあああああああ!?やりゃぁいいんだろうがちくしょうがっ!?」
とりあえず、このまま黙って見ている事なんか出来なかった。
抱き抱えていた華奢な体をそっと砂浜に寝かせ、少しずつ顔を近づけていく
目を閉じまるで眠っているだけの様な様子をじっと見つめる
濡れた髪、濡れた服が張り付いてボディラインが浮き上がっている体。
近づけていけばいくほど均整の取れた顔にどうしても意識してまい無意識のうちに躊躇する。
「っ・・・・・」
「・・・・・・・しないの?キス」
「うわあ!?」
不意に掛けられた声。
今まで意識がないと思っていた相手からの
問いかけに思わず声をあげてしまう
「お、おおお、おまっ!?だって!?おきなかっ!!?」
「起きようとしたら顔が近づいて来るんだもん。どうしようもないでしょ・・・」
「起きたなら突き飛ばせばよかっただろうがっ!?」
「・・・そっか。その手があったねっ!」
「・・・・・」
「なんだよー!?そのアホの子を見る目は!・・・・拓海?どうして泣いてるの?」
「・・・・なにがだよ。別にどうもしてない」
こんな自然な会話が、こんな何時もの会話が、
これほどありがたいものだなんて思ってなかった。
知らないうちに目から涙が零れていた……
365 :
354:2007/04/09(月) 02:07:11 ID:Oxv/0gqx
とりあえず。今日はこれくらいで?
1投下に一時間以上かけてる俺乙_| ̄|○
うん、なんだ。俺にはやっぱり荷が重かったようだ
携帯じゃないなら保存して一気に投下するのがいいのでは?
なにこの良スレ。
ここにたどり着いた俺はなかなかラッキーだったとみる
まだ親と暮らしている女の子と成り行きで一つ屋根の下で暮らす事になっちまったー
ってーのはこのスレ的にあり? 二人っきりにはなれるけどすげー微妙なんだが
なんか結構途中でおわっててかなり生殺しされたんだが俺だけか?
370 :
ストーリー考案者:2007/04/10(火) 01:02:16 ID:72zN41GQ
>>365 諦めるな・・・お前ならいける!きっと出来る!
だから途中で止めないで下さい・・・生殺しだよ(´;ω;`)
371 :
ストーリー考案者:2007/04/10(火) 01:15:15 ID:72zN41GQ
ああ、そうそう、俺的にその二人の関係とかを色々練ってみた
で、考え付いたのがコレ
男(拓海)と女(坂下 遥)はいわゆる幼馴染
男は運動神経は良いが、頭はちと弱いみたいな。女の事は当初幼馴染として意識していたが、遭難中にその考え方が変わっていく・・・みたいな
女は運動もそこそこに出来て、頭も結構良いみたいな人。以前から男の事が気になっていた・・・みたいな
なんかもう、俺がすいません。てか、諦めないで下さい御願いしますоrz(←土下座)
この案を採用するしないは自由です。いや、もうすいません。叩いても結構。いや、ごめんなさい
あくまで、一種の考え方として認識していただければ幸い・・・あ、痛ッ。石・・・石投げないで・・・
諦めるな〜!
生殺しされたここの者たちの命を救うために!
373 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 01:27:57 ID:oVRUSENB
生はらめぇええええええええ
>>373 「生、孕め」と読んじまった俺は駄目人間
何この馴れ合いスペース
とにかく書くのだ!
良ければ絶賛する
つまらなかったら叩……懇切丁寧に指導もする
さあ、書こう
迸る想いをキーボードにぶつけるんだ!
378 :
ストーリー考案者:2007/04/10(火) 23:34:47 ID:72zN41GQ
>>377 そうだ!さぁ、書け!書くのだ!そうすれば皆・・・
あれ?・・・お前、息荒いぞ!え、俺?俺は荒くないよ全然・・・(*´Д`)ハァハァ
>文化の夕暮れ
どうしよう、今初期計画まとめてたやつがモロ体育倉庫物だorz・・・・・・
うーん。
ゴミ箱逝き決定!!
<<歪んだプロットは一度リセットするべきだ>>
<<この『ゴミ箱』で全てを『ゼロ』に戻し、次の作者さんに未来を託そう>>
読んでいたら、したくなってきちゃいました///
382 :
354:2007/04/11(水) 22:10:06 ID:n8UN8Kdz
とりあえず明日くらいに続き投下できそうです。
待ってくださってる方はもう少しだけお待ちいただけると嬉しいです。
いやいないでしょうけども(´・ω・`)
ああ、いないな
うん、いないね
いいから黙って投下したまえ。
>>382 僕はいつでもwktkしながら待ってますよ
387 :
ストーリー考案者:2007/04/12(木) 00:47:08 ID:DKia0MHg
>>382 いつまでも・・・いつまでも待ってるよ・・・(´・ω・`)
考案者うざい。
書いてくれとお願いする立場なのに
何時までもコテハンで書き上がった小説自分の手柄にしようって言う魂胆丸見え。
職人に任せろ。
・・・
>>382がなかなか来ない件
つかこのスレ自体書き込み少ないなぁ
ここ、誰も来てないのか?
結構期待してたんだが
391 :
ストーリー考案者:2007/04/14(土) 23:43:23 ID:PLBBoLAX
>>388 ↑の奴を入力しようと思ったら、押す所間違ってて、数分くらいずっと格闘してた。俺って、何なんだろうね
まぁ、そうだよなぁ・・・おk、書き手に全て任せよう
ところで、
>>382が水曜日の明日・・・つまり、木曜日に書くっていってたけど、まだ来てないね・・・執筆中なのか?(´・ω・`)
そしてついでに保守
>>391 いつまで、コテハンつけてんだ。
あとは書く人間にまかせてお前は名無しに戻れ。
って、言われてるぞ。
もまえら この俺様がなんか書いてやっから 喧嘩スンナ
私の名前は外山月。二つの城を持つ地方豪族・外山一三郎の一人娘。
娘といってもお茶やお花の勉強しているわけではない。
10年ぐらい前、母上と兄上を流行り病で失った外山家は、
跡取りとして私に剣や兵法など、当主としての教育をさせている。
めでたくして1年前、元服の折にそのうちの一つ若葉城を貰い受けたんだけど、
後見人として我が外山家の筆頭家老・彦根武忠の息子 彦根武義 がこの座に着いた。
武義は私より二つ上というだけだけど、政治感覚が優れ、若葉城の行政をそつなくこなしている。
その代わりといっては何だけど・・・剣とか槍とかそういうのはぜんぜんだめ。
この前の戦なんか、私が先陣切って槍をふるっているのに、
武義ときたら矢の一本も飛んでこないところで、じーっと戦況をうかがっているだけだもん。
「僕は文官だから」とか言っちゃって、少しは役に立ちなさいよね。
こんな感じでこの一年間は、武義が私に政治や経済を 私が武義に剣や弓を教えあって過ごしてきた。
「うーん おそいなぁ」
若葉城中庭にて、ぶんぶんと木刀を振り回しながら月は誰ともいわず文句を言っていた。
今日は昼から月と武義とで剣術の稽古の予定なのだ。
午前の領内視察の後、中庭に来るようにと申し送ったはずなのだが。
未の刻(午後2時)になっても人影一つとして現れない。
「まさか、花見とかに行っているんじゃないでしょうね」
舞い散る桜の花びらを叩き落としながらつぶやく。
何度目のぼやきか忘れたころに、武義と呼ばれる青年は中途半端な駆け足でやってきた。
「彦根武義 ただいま参りました」
「・・・(じぃーー)・・・」
月はすこし怒ったような表情を浮かべ、武義をじっとみる。
「えーっと その・・・ 助さんところの宴会に誘われてしまって帰るのが遅くなってしまいました」
「・・・(じぃーー)・・・」
しょっちゅうこういう事態に陥る武義は、姫の機嫌をとる方法をいくつか知っている。
そして今回の打開策は手元にあった。
「これが助さんにいただいた花見団子です」
「・・・(差し出されたものに対して じぃーー)・・・」
月は手ぬぐいに包まれた団子を受け取るとパタパタと館へと駆けて行った。
「やれやれ 月様の食い意地にも困ったものですね」
少しして、団子の代わりに竹刀を2本抱えた月が戻ってきた。
「武義はいつも甘味物で私を釣るんだから。怒っているのは変わらないよ!」
武義に竹刀の一本を投げつけながら月はわめく。
「遅れた分は夕御飯までしごいてあげるからね!」
一つつまんできたのであろうか?
甘い香りが漂う月をほほえましく思いながら、武義は竹刀を構えた。
夕刻
この時代にしては珍しく、当主の月は家臣である武義と共に食事をすることが多い。
今日も自室に武義を呼び込み団欒と会話をしていた。
「まだこんなに小さいのに、剣ではまったく歯が立ちませんね」
「小さいはよ・け・い! 武義も武忠みたいに槍とか振り回せないの?」
「父上は別格ですよ。まあ、正直うらやましいですが」
「はぁ 同じ体格していて同じ血を引いているのに、どうしてこんなに違うんだろうねぇ」
「私は私なりの才能を発揮し、お役に立てればと考えていますので」
「ちがうの かっこいいか、かっこわるいかのことを言っているんだよ」
「はい・・申し訳ありません」
ちっとも反論してこない武義に対して、わずかばかり残念そうな顔を見せる。
しかし、そんな表情を悟られないように明るい声で月は言った。
「ねえ 御飯食べたら将棋しようよ あれから強くなったんだから」
「将棋・・ですか。しばらくぶりに月様の力量みせてもらいましょう」
残りの御飯を口の中に押し込み、月は颯爽と盤と駒を持ってきた。
「へへ〜 今日は平手でお願いします」
「この前私の2枚落ちで負けたのではないですか せめて勝たれてから平手にしましょう」
「いいの 平手でやるの」
月は自分の駒よりも先に飛車角の駒を敵陣に置く。
「では、飛車落ちで」
自分の飛車を取ろうとするが月がそれを許さない。
「いいの 作戦があるんだから これでやるの」
「・・・はい わかりました 」
月は自分の駒を並び終えると立ち上がり、昼にもらった団子を持ってきた。
「えへ これ食べながらやろうか」
「私にも頂けますか?」
「うん 家臣に施しもできないようじゃ、いい主君とはいえないもんね」
いつもある当然の風景
戦国の世ならば仕方のなかったことかもしれないが、その日常が壊されるにはあまりにも突然すぎた。
「若〜〜〜〜! 若〜〜〜〜!」
伝令の声が遠くからこだまする。
「うーん うーん」
「・・・若とは、月様のことですよ」
「うーん わかってるけど、もうちょっと考えさせて。・・歩取って取られて銀取って取られて・・うーん」
「若〜〜! あ 若様はこちらにおいででしたか」
息も切れ切れにその伝令が目の前まで来た
距離が近すぎる。無礼だ。と言おうとしたが、その緊迫した面持ちに武義はただ静かに問う。
「何事か?」
「大殿の城、青葉城がただいま急襲を受けています」
「え!」
将棋盤とにらめっこしていた月が伝令の方に振り返る。
驚きを隠せないという境地を超え、口がぽっかりと開いているだけだ。
「して、敵は?」
武義は逆に眉一つ動かさず、冷静に状況を判断しようとしていた。
「家紋から見ますに長野の軍と思われます」
「・・っ馬鹿な!長野は同盟国じゃあなかったの!」
「月様落ち着いてください。 して伝令よ。今の状況を判る範囲でよいからすべて話せ」
「はっ 日の沈んだ酉の刻(午後6時)をもって長野を中心とした兵2000で攻撃を受けております」
「兵2000!? 長野は500しかもっていないんじゃない?」
「長野を中心とした・・ということは他国からもか?」
二人の質問にその伝令は同時に答える。
「おそらくは仇敵・志藤や大竹。他、小勢力の軍も加わっていると思われます」
「くっ!長野に裏をかかれたか。武義!出陣するよ。準備して!」
「月様。それは駄目です。我々に預けられた兵力はたったの100。討って出て何とかなるものではありません」
「じゃあどうすればいいの!」
すがるような目で武義を見つめる。
無理もあるまい。月の父・一三郎の軍はあって400。
今まではそれに長野の軍500と合わせて敵を撃退してきた。
その同盟国長野家の剣先がこちらにとひっくり返ったのだ。
そして敵軍2000。それはここにいる誰もが聞いたことのないような数字でもあった。
「一三郎様や父上なら撃退してくれると信じているが、もしも、もしものためにここも籠城の準備をしよう」
松明の炎がいつもの倍の数があり、若葉城は昼のように明るかった。
「第一足軽小隊 準備できました」
「第一弓小隊 右に同じでござる」
わずか100の兵 二つの小隊しか編成できないわけだが、いつもはこれで戦っていた。
武義が青葉城視察や他勢力への援軍要請などで出かけていたので、
軍議が行われている大広間には月と小隊長二人の三人しか居ない。
館の外では足軽たちの私語などでうるさく、そのざわめきは月をいっそう不安にさせた。
「(長野の裏切り・・みんな知っているのかな?)」
「(父上の青葉城・・どうなっているんだろう?)」
「(えっと・・これからどうしたらいいんだっけ?)」
いつもなら武義が采配を振るってくれるので、その指示に従えばいいだけだ。
しかしその本人はここにはいない。
あれこれと湧き上がってくる不安に対し、少女は何度も何度も兜の紐を締めなおしていた。
「若様 若様が意気消沈しておられると兵の士気にかかわります。ご自身をお持ちくだされ」
「そうですぞ若様 我が意見も右に同じでござる」
二人の声など聞いてる様子もなく呆然としている月に対し、新たな伝令がやってきた。
「・・・・何?」
「武義様からの伝令です」
「っ!」
嬉しくて飛び跳ねようとしたのと同時に、それが家来の前であるという羞恥の感情も起こり、
平静を装いながら伝令の言葉を待つ。
「青葉城を取り囲んでいる敵数、総勢2200。敵は長野・志藤・大竹・島・西山
現在、西の丸にて彦根武忠様率いる一隊で防戦している模様
敵軍の中には新兵器「鉄砲」と呼ばれるものも存在
青葉城を落とした後はこの若葉城を目標
すでに敵の乱波が多数存在している為、お一人で外出なされないように・・以上であります」
伝令の報告の間、軍議に居る三人は一言もしゃべらない。
「(2200・・ですか。 2200が青葉の後、この小さな若葉を攻撃するのですか・・・」
「(新兵器鉄砲。こんないんちきな武器が我が外山家に通用するものか。おそらく右の考えていることも同じであろう)」
「(何がお一人で外出なされないようになんだよ!私より弱いくせに一人でどっかいっちゃったのはどこのどいつだよ!)」
いろいろな思惑が重なり、ただならぬ雰囲気の中、場の空気を和ませようと足軽小隊長はカラカラと笑う。
「それにしても、武義殿の情報能力は凄まじいものがありますな。短時間お一人でここまで探索することができるのですから」
「え・・・わ あっはっはっは そうでござるな 右に同じく武義殿はすごいですな わっはっはっは」
弓小隊長も足軽小隊長の意図に気づき、話を合わせる。
「(フ フン 武義は領内視察とかで、そういうことは得意なんだから)」
自分の思っていることが、少しちぐはぐな気がしなくもないが、
武義が褒められたことで悪い気はしなかった。
空がうっすらと明るくなるころ、武義が戻ってきた。
城内で座りながら眠る者たちを起こさずに館までたどり着く。
「月様 お眠りになりましたか?」
体の大きさに不相応な甲冑を身に着け、座布団の上でうとうととしている主君に声をかける。
「ん・・・ 武義か・・・ 首尾はどうなの?」
武義は本音ではこのまま眠りにつかせてやりたいと思ったが、主君に対しては報告しなくてはならない。
「悪い知らせです。心して聞いてください」
「・・・・・・・・・・・」
月は何も言わず、悲しそうな目でこちらを見上げる。
「青葉の城が落ち、それに伴い、大殿・一三郎様が討ち死になされた」
「・・・・・・・うそつき」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・うそつきは外山家にはいらない。出てって」
「・・・・・・・・・・・」
膝に顔をうずめている月を見て、かける言葉が見つからない。
しかし、時は限られているので、気持ちを切り替え淡々と現状を報告することにした。
wktk
wkt-k
「敵兵は一夜にして城を落としたわけでありますが、睡眠もとってなく、
青葉城の完全制圧にも時間がかかると思われるため、すぐにこちらに向かうということはないでしょう
とりあえずこちらの足軽たちにも休息を与えるべきです
青葉からの敗残兵もここに落ちてくると予想されます
警戒しながら、門は開けておくべきだと思います」
一切の感情を入れずに、まくしたてる様に言った。
「あと・・まことに勝手ながら申し上げます
早急に長野家に対し降伏和議をすることを提案します」
「・・・・・・・・知らない」
「・・知らないではありません。外山家の当主は 月様 あなたですよ」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・月様は自室に戻られ休憩なさってください。兵たちにもそう言い伝えます」
甲冑を脱がされ自室に戻った月は、すべてから逃れるように昏々と眠った。
すべての感情を忘れ、何も考えたくなかったのであろうか?
日が高くなった頃には月は目覚めていたのだが、布団から出ず何刻も天井を眺めていた。
部屋が茜色に染まった頃、月は障子越しに一人の男の影があるのに気づいた。
「・・・どうしたの 武義 入ってきなさい」
涙の跡だけを拭き、月は布団から出ようともせず部屋へ招き入れる。
音もなく障子を開け、また音もなく手前までやって来た。
「・・・月様 は 食事は取られましたか?」
武義はどこか言いにくそうな感じで言葉をつなげるが、月もそれに気づく。
「・・・またなにか悪いことでも起こったの?」
「・・・はっ 外山家降伏志願の件について失敗しました」
「・・・そう」
「申し訳ありません」
演技などではなく、心の底から申し訳なさそうな顔をした。
「やっ 申し訳ありませんって、武義が勝手にやったことでしょ
私が許可した覚えはないよ・・それに!降伏するつもりは全くない!」
布団から起き上がり、彼女は叫んだ。
「・・・月様」
月が自分に配慮する気持ちが痛いほど判り、二の句が告げない。
「それで・・敵はいつ攻めてくるの?」
断固戦うと言い切ったばかりだが、この点は恐る恐る尋ねる。
「・・・おそらくは明日の昼にでも攻めて来るでしょう
そして・・長野・志藤軍は我々外山家を根絶やしにするつもりです
先ほどの長野家当主との謁見と青葉城の様子からそう感じました」
「そ、そう・・・
武義も死なないように今からでも槍の素振りでもしてなさい
あー おなかすいた 今朝から何にも食べてないからなんか持ってきてよ」
無理につなげた言葉だったが、武義は聞こえるか聞こえないかの声で頷くと、台所の方へ足を運びに行った。
感情をぶつける相手が居なくなり、ふと目をそらすとそこには昨晩戦っていた将棋盤があった。
局は終盤であり、武義ほど得意ではないとはいえ、どちらが敗勢かはっきりとわかる。
敵の攻撃で、もうすぐ詰まれそうだが、月の王に引っ付いて守っている金一枚でなんとか凌いでいる格好だ。
「私も・・もうすぐ詰まされちゃうのかな・・」
ポツリとつぶやく。
「投了時だよね・・」
またつぶやく。
「あっ そうか 投了できないんだったねー」
笑いながら言おうと思ったが笑えなかった。
「・・・・・・・」
月はその金将と書かれた駒を手に取ると、大事そうにぎゅっと握った。
wktk
やべぇ
これはやべぇ
wktkwktkwtkwktkwktwktkwtkwkwkwtktkwtkwtktこwtこsgtのjふぁおljろあfd
ハッピーエンドになりますように……ナムナム…
なにやら過疎の予感
この状況で二人きりになるということは・・・
415 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 01:19:01 ID:/z0M9o1q
wktkが止まらないwww
この森は暗い。
まだ太陽が沈んでいないわけだが、道端の木の根に気づかず、つまづいてしまうぐらい暗い。
青葉から若葉までの道として、普段はだだっ広い荒れ地を利用するわけだが、
今は長野の軍旗であふれかえっている。
仕方なく、裏街道とでも言うべき、この深い森を選んだ。
そんな森を、髷(まげ)がほどけ、肩まで髪を垂らし、
全身血染めの男がゆっくりとした足取りで歩いていた。
外山の影に彦根あり。と武勇で謳われた、彦根武義の父・武忠 である。
青葉城が陥落し、主・外山一三郎の死を見届けた彼は、
その主君の首を奪い返そうと、僅かな家来を率い何度も敵陣に突撃した。
当時、主君の首が奪われるということは、大変な屈辱であったのだ。
気がつくと、自分の周りには誰もいなくなっていた。
事の無意味さを悟り、このまま殿の後に続こうかとも考えたが、思い返し、外山月のいる若葉城へと落ちていった。
再興の想いを胸に秘めて・・・
決戦の日のことを考え、武義に再び眠ることを命じられた月であったが、
昼間に眠っていたこともあり、夜更けにもかかわらず、目が覚めた。
体を起こし、深々と静まり返った中庭へと出る。
地面には、青白い桜の花びらで埋め尽くされている。
見上げれば、満月が真南に位置していた。
「(ここでよく剣の稽古をしたな・・・)」
剣を持つふりをして、上段に構えると、いつもの稽古相手の顔が思い浮かんだ。
そいつの面に対し、おもいっきり腕を振りぬく。
一の太刀を受けきられた。ならばと右胴へ狙いを定め、渾身の力で叩きつける。
紙一重でかわされた。だが、軸足をずらされ、そいつの体は左に傾いている。
体勢を取り戻す前に、月はそいつの胸をめがけて・・・ そいつの胸をめがけて・・・
ちょこんと小突いた。
「・・・・・」
自分でも何を馬鹿げたことをやっているのかと思ったが、
胸がはちきれそうな感情が湧き上がり、恥ずかしいとは感じなかった。
「・・・いま・・・なにしてるのかな?・・・」
そう、自分の言った言葉が聞こえると、いてもたってもいられなくなった。
兵法の授業などで通い慣れた、彼の部屋へと向かった。
部屋の前まで来た。
普段、この時間帯にここに足を運ぶことは無い。
礼儀として、廊下から声をかけようとしたが、部屋の明かりが消えているので、黙って入った。
彼の布団のふもとまで身を寄せ、夕刻の状況とは立場が入れ替わる形になる。
「・・・たけよし・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・たけよし・・・」
「・・・・・・・・」
二度ほど、目の前で横になっている者の名前を呼んだが、返事はしてくれなかった。
起きてほしくて名前を呼んでみたものの、つぶやいているうちに、
逆にこのまま眠らせてあげたいと思うようになり、三度目はなかった。
無理もない。情報収集や外交調停に追われ、昨日は全く眠っていなかったのだ。
彼女は自分のあごをひざの上に乗せ、彼の寝顔を見入っていた。
歓喜の表情も、苦痛の表情も無く、ただ単に眠るために眠っていた。
なぜだろう。
状況は切迫している。
外山家が滅ぼされてもおかしくない。
あした、あの満月をもう一度みることも叶わぬかもしれない。
だけど、
今、こうしていると、
不安にはならない。
翌朝。
喧騒のなか目が覚めると、見たことのない毛布で包まれていた。
部屋の中には誰もいない。
「・・・・・そっか」
まだ、頭の中はぼーっとするが、
あれから寝てしまったということは理解できた。
外が、何かの工事をしているようで、やかましい。
意思伝達を図るいろいろな掛け声が交錯する。
「・・・うるさいなぁ」
まるで他人事を言うかのように、寝起きの少女はつぶやく。
四半刻ほど待ってみたが、誰も来てくれない。
仕方がないので、寝間着姿のまま、戸をあけ大広間へと向かった。
「・・・若っ様! おはようございます」
廊下にいた女中が朝の挨拶をしてくる。
いつもなら笑顔で挨拶してくれていたが、今日は違った。
それに対し、月はいつもどおりの頷きで返事とした。
大広間までたどり着くと、普段聞きなれない声がしてきた。
日常的に顔を合わせることの無い武忠にとって、その少女が外山家の跡取りだと判断するのには時間がかかった。
武忠と月の二人は、軍議の間や先陣を切って戦っている時、そこでしか顔を合わす機会が無い。
真紅の甲冑を身につけ、槍をふるう月の姿は、武忠の目にはまるで軍神が降臨してきたのかと見間違うほどだった。
水色の寝間着を身につけ、あどけない表情をした月の姿が、武忠の判断を幾ばくか遅らすのは仕方のないことだった。
「殿ーのーおなーりー」
武忠が、どす太い声を出し平伏すると、周りの家臣もそれに従った。
場にそぐわない身なりのせいか、月は少し顔を赤らめたが、武忠はお構いなしと次の言葉を続ける。
「お久しゅうございます。 彦根武忠であります。
先日の戦においては、我が力不足にて青葉の城と大殿の命を失ってしまったことを
ひらにご容赦ください」
再び深くこうべをたれる。
「我ら青葉の者たち五十名余、この地を最後の拠点とし、集まり申した」
残りの350はどうしたのなど、そんな無粋なことを月は聞かない。
「長野の裏切りもあり、劣勢となった我々は、ここ若葉城に籠城し
敵に一矢報いたいと考えております。」
月の知らない顔が「おう」と同意の声を挙げた
「敵軍は三刻後。正午過ぎには麓に陣を構えることになるでしょう。
すでに、若葉城にある全ての仮柵は設置し終え、準備は万端にございます」
正午過ぎ?
なめられたものだ。
勝勢の勢力は夜襲等を除き、日が落ちないうちにかたをつけようと、朝早くから軍を動かすのが通例である。
「(・・・ここを数刻で落とすつもりなの?)」
しかし、兵力差を思い返してみれば、一瞬で壊滅させられることは目に見えていた。
「昼前には月様も武具を揃えて頂くようお願い申し上げまする」
そういって武忠は立ち上がると、ほかの皆もそれぞれ持ち場に戻っていく。
月は何度かきょろきょろとある顔を捜していたが、この中には見当たらなかった。
そのころ武義は、小勢力の一つ西山の当主の許へ出向いていた。
長野・志藤軍との和議に失敗しており、西山から降伏の旨を伝えてくれるよう頼んだわけである。
「う〜〜む〜〜」
取引として最大限の譲歩を見せても、色よい返事がもらえない。
「わしが頼んでも、どうせ聞き入れてもらえないじゃろ
長野には同盟を裏切った背徳感があるじゃろうし、志藤は外山の血を根絶やしにと考えているからのう
・・・それより どうじゃ。お主とお主の父がうちにきてくれりゃあ、考えてやらんこともないがのう」
話にならない。
外山家の存続を願いに参上したのに、どうして私が潰れた後の身の保身を考えなくてはいけないのだろうか?
「(そろそろ時間切れか?)」
これから、一応、島の陣を訪問する予定もあり、
そして、ずっと胸に温めていた作戦を城兵に伝えなくてはならない。
顔を合わせてくれた礼を述べると、武義は馬上の人となって駆けていった。
「ちょっとー! どこ行ってたの 遅いじゃない!」
昼前に戻ってきた武義に対し、月は叫ぶように言った。
誰にも声をかけず、うろうろと城内を探していたことなど、武義は露ほども知らない。
「どこ行ってたの・・・はいいとして、
どこかに出かけるときは、私に声をかけてからにしてよ!」
「はい。大変失礼致しました
しかしながら、間もなく敵が布陣してきます
今回の作戦についてまだ話しておりませんでしたので、軍議の場にお集まりください」
采配の振るい方は武義に一任されている。
その責任感と作戦のことで頭が一杯であり、月の気持ちまでは気が回らなかった。
ぷくーと頬を膨らませる月であったが、武義が外山家のために奔走してくれていることに感謝もした。
「殿ーのーおなーにー」
にしようかと迷った(獏)
あるシーンが書きたいためだけに、まだまだ助走が続いております
すばらしくwktkでありますが、書き込みの時間帯が時間帯なので貴殿の健康を心配する所存であります!
殿の命によりwktkに馳せ参じました!
wkt--k
月タンのオナニーハァハァハァハァハァハァハァハァ
くそう。
エロくないのに読んでしまう。
相変わらず人少な杉
429 :
満月(外伝):2007/04/16(月) 21:46:32 ID:Bm1ei4hG
「(何言ってるの!この人!)」と月はかなり顔を赤らめたが、武忠はお構いなしと言い繕う。
「お、おっほん
男性が当主の場合は、勝ち栗・昆布・打ちあわびを食し、縁起を担ぎますが、
女性の場合は家臣の前で自慰することが、通例になっております
そうであろう?新次郎よ」
筆頭家老の武忠に睨まれ、小さな声で頷くしかない。
「ささっ こちらに座られ、儀式を執り行ってください」
月は促され、当主の座へ向かう。
座布団の上にちょこんと座るも、これからどうしていいかわからない。
「殿! 自慰の仕方がわからないのでありますな
なれば、このわしが・・・」
「え? い いいよ 分かった 分かったから」
以前、物好きな女中に教えられ、色の知識も少しはある
武忠が、偽りを述べるとは夢にも思わず、
まだ発達しきってない胸に左手を伸ばし、くにくにと動かした。
本人は真剣にやっているだろうが、そのじれったさに、武忠は暴走する。
「おい! 武義! 武義はおらぬか!」
その呼びかけに、なぜか、西山の当主が返事をした。
「武義を持ってきてやたのじゃ 今は当身を食らわせ、眠っているだけだがのう」
「おお 話しの都合上 ちょうど良い
さあ 殿! ‘これ’を使い、日ごろの欲求をぶちまけましょうぞ」
430 :
満月(外伝):2007/04/16(月) 21:48:43 ID:Bm1ei4hG
うわ 途切れてる これが、
>>429の前の文章
日常的に顔を合わせることの無い武忠にとって、その少女が外山家の跡取りだと判断するのには時間がかかった。
武忠と月の二人は、軍議の間や先陣を切って戦っている時、そこでしか顔を合わす機会が無い。
真紅の甲冑を身につけ、槍をふるう月の姿は、武忠の目にはまるで軍神が降臨してきたのかと見間違うほどだった。
水色の寝間着を身につけ、あどけない表情をした月の姿が、武忠の判断を幾ばくか遅らすのは仕方のないことだった。
「殿ーのーおなーにー」
武忠が、どす太い声で言い間違えると、周りの家臣たちは目を丸くした。
431 :
満月(外伝):2007/04/16(月) 21:50:12 ID:Bm1ei4hG
目の前にどさっと武義の体が落とされる。
正直、とても嬉しかったが、今は何人もの家臣がこちらを見ている。
逸る気持ちを抑えながら、月は手を握ったり、顔を抱きしめたりした。
しかし、外山の影と呼ばれたものはそんなんじゃ納得できない。
「殿!! それで敵に勝つ気がございますか!
ここは、某が手取り足取り・・・」
「わ・・わかった わかったよう」
羞恥で半分なみだ目になった月であったが、自分の気持ちに素直になることに決めた。
武義の太ももにまたがり、自分の陰部を上下にこすりつける。
お互い春物の服を着ていたが、気にならないぐらい気持ちよかった。
432 :
満月(外伝):2007/04/16(月) 21:51:24 ID:Bm1ei4hG
それでもまだ物足りなくなり、胸に顔をうずめ、抱きつく形にして、密着度を高くする
「んっ♪ んっ♪ んっ♪ んっ♪ んっ♪」
上下にゆれるリズムにあわせ、嬌声のメロディを奏でる。
全身で呼吸をしても、まだ酸素が足りない
「んっ♪ んっ♪ はふぅん んあ♪ ん♪ んあ♪んあ♪」、
テンポが乱れ始め、いよいよ絶頂へと翔る。
「んん♪んあ♪んん♪んん♪ぅんんあ♪んああああああああああぁぁぁぁぁっっっ」
頭が真っ白になり、すべての体重を武義にあずける。
「すばらしいですぞ!殿!!
だが、もっとすばらしく、必勝の儀式もございます
やはり某が手取り足取り・・・」
「うっせえ!この変態親父!!」
いつの間にか目が覚めていた武義は、ふところ刀を父に投げつける。
「ぐは!」
こうしてこの儀式?は終了した。
月が身をはって、がんばったにもかかわらず、今日の戦で敗れたのは言うまでも無い。
いままでエロがなかったので、パロディとしてつくりました
全作品が完成してからの方がよかったかなと、感じなくもないですが
早く投下したい!という気持ちに負けてしました 許してください
まだ、ストーリーが半分終わったとこなんで・・・
あと、全然二人きりになる場面がないですが、今が前振りと思ってください
長々とした駄文にもかかわらず、読んでくださっている方には感謝してます
うはwwwwwwGJ!!!
おっさんワロタw
本編とのギャップがwww
435 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 23:40:02 ID:OHu/JYbY
筆頭家老何してんのwww
過疎
あしたも仕事なのに何やってんだろ?
438 :
満月:2007/04/17(火) 04:02:05 ID:ZJvGm0Hg
正攻法ではまず勝てない。
味方は150で、敵は2200。
いや青葉城からの投降者も合わせると、もっと数えるだろう。
こちら側が、十や二十の敵を仕留めても、何とかなるものでもない。
この日のために、いや、こんな日など来ない方がよかったが、
私とごく一部の配下が一年間かけて作ったものがある。
俗手ではあるが、落とし穴だ。 月様も知らないであろう。
若葉城を落とすには、
正門を叩き壊し、二の丸を通過し、本丸を制圧しなくてはならない。
本丸・二の丸の二つはちょうどひょうたんの様な形をしている。
私はこの二の丸に穴を掘った。
幅・三間(5m) 深さ・五間(9m)もある、
巨大といっていいほどの穴を、十の数作った。
439 :
満月:2007/04/17(火) 04:02:39 ID:ZJvGm0Hg
あとは、既に落とし穴の中で待機させた者に、地を支える何本もの支柱を爆破してもらう。
落とし穴の中にはそれぞれ中に狭い間道があり、それは一箇所へと合流させる。
本丸にある疾うに穴の開いている落とし穴へだ。
ここで味方を助け出した後、矢の雨によって間道に逃げざるを得ない敵兵を、これまたこの合流地点で雨を降らせるわけだ。
うまくゆけば、二の丸にいる敵の半分がいなくなる。
間道の中に逃れ、倒しきるには難しいかもしれないが、五間もの落下衝撃で戦闘不能に陥るだろう。
それで十分。
最後に士気の著しく下がった残りの敵に総攻撃をかける。
父上には、二の次・三の次を考えろとよく言われたものだが、
これ只一つが失敗したら、後には何も残されていない。
いかにして、二の丸に敵を集めるかが、今回の焦点となろう。
ん もうすぐ軍議の時間だ
ぬかりはないか?
ぬかりはないか?
・・・よし!大丈夫だ。
440 :
満月:2007/04/17(火) 04:03:13 ID:ZJvGm0Hg
月・武義・足軽小隊長・弓小隊長の若葉組 武忠、他数名の青葉組によって軍議は開催された。
だれも、なにも言わず、外山月の右手にいる者を見つめる。
ここにいる全てが、武義の采配に賭けていたことの証だった。
武義は、勢いづかせない程度に門のところで防衛した後、
本腰に、本丸と二の丸との間での守備作戦を唱えた。
青葉組には武義と知り合い程度でしかない家臣もいる。
父上が信頼しているのならば大丈夫かとも思ったが、
念には念をいれ、落とし穴作戦については語らず、代わりに
「面白いことが起こるかもしれません」とだけ言う。
「(今回も何か策があるのだろう)」
納得の顔・疑問の顔・信頼の顔、それぞれの表情があるが、
味方を欺いて、実績を上げてきたことのある武義に対し、
青葉組からも、とりあえず、文句は聞こえない。
「武義よ 兵の配置はどうするのだ?」
武忠が問う。
「松の櫓・竹の櫓に入れられるだけ弓兵を入れ、門のところには・・・・・・・・・・」
441 :
満月:2007/04/17(火) 04:03:47 ID:ZJvGm0Hg
彦根父子の問答のやり取りを聞きながら、月は早く体を動かしたい気分になった。
武義の自信に満ちた受け答えがそうさせたのだろうか。
いや、武義の存在そのものがそうさせたのだろう。
つい先ほどまで、現実逃避や臆病風に吹かれていた月であったが、
今では、・・なんだかわからない そう 槍の一本でも振り回したくなるような気分なのだ。
あれだけ嫌っていた、敵の来襲すら待ち遠しい。
「(早く戦いたい!
もし、武義がここで待っててねとか言ったら、武義の首はねてでも戦いに行くんだから!
あー うそうそ いまのは無し!)」
武義は、そんな“武義の前で見せるいつもの”月の意向を熟知し、
青葉組と月を門に、若葉組を本丸と二の丸の境目に初期配置した。
半年前の月の初陣のときは、大将を、それも女の子を前線で戦わせたとして、
武義は非難を集めたが、前線における味方の士気高揚と、
彼女の異常とも言える身体能力と動体視力を身をもって知っているからでもあった。
「(どうせ、止めても聞かないですしね)」
ふー と溜息をつくと、天に祈るようにつぶやく。
「(矢があまり飛んでこないところで戦って欲しいのですが・・・)」
当主としてではなく親友として身を案じる、武義の願いだった。
442 :
満月:2007/04/17(火) 04:04:39 ID:ZJvGm0Hg
青葉城の戦いは悲劇だった。
西の丸で防衛していると思ったら、本丸の方で白い煙が立ち上っている。
日の出の光かと思ったら違った。
御殿が炎に包まれているのだ。
そんなはずはない。
ここを通らなくては、本丸まで辿り着かないのだ。
最初は、不意打ちを受けた形で大門を突破されたが、
徐々に形勢を五分に戻し、西の丸攻略で敵は四苦八苦している。
しかし、また信じられないことが起きた。
本丸から、ときの声を上げて軍勢が流れ込んでくる。
あの旗は・・・・・・長野だ。
味方か? いや違う!
これは いわゆる
「裏切りかぁぁぁぁぁっっ!!!!!」
今までの疑問をすべて憎しみに代え、全力で吼える。
443 :
満月:2007/04/17(火) 04:05:16 ID:ZJvGm0Hg
最近、長野家の使いの者が多かったのも合点がいった。
本丸からの間道を探していたのだ。
逆に入ってこられてはたまらない。
「大殿は! 大殿は御無事かぁ!!」
長野の雑兵が答える。
「一三郎はもう死ぬわ。ここの手柄はおまえの首じゃあ!」
突撃してくる雑兵数人に、槍を薙刀のように使い振り払う。
「雑魚がぁぁぁ!!!」
すでに、全身血だらけの武忠は、また返り血で染まる。
「大殿ぉぉぉぉぉぉ!!!! 大殿ぉぉぉぉぉぉ!!!! 」
西の丸を放棄し、本丸へと猛進していった。
444 :
満月:2007/04/17(火) 04:05:52 ID:ZJvGm0Hg
目が痛むほどの青空の中、桜の花びらが舞う。
ツバメ達がその空で優雅に踊り、遠くからコチドリの唄も聞こえてくる。
丘を登ると、はっきりと若葉城が見えた。
「ちいせぇー おいちいせぇよ なあおい」
「ここ落としたら、当分戦がなくなるなぁ。できるだけ功を立てるとするか」
「俺 俺。 俺がいるといつも勝ち戦になるぜぇ この俺様に感謝しろよ」
武士か?傭兵か?はたまた半農半士の者か?
この合戦に対する思い思いの感想を駄弁りあい、若葉の城へと歩を進める。
「知ってるか。ここの殿様は女の子だってな」
「女の子だぁ?なんで女が殿様になってるんだよぉ」
「青葉で親父が死んでからさ、跡取りがそいつしか残されていなかったらしい」
「難儀だなぁ 敵ながら同情しちまうぜ」
「お 女っていうと そ その可愛かったりするんだべか?」
「ばーか 何考えてんだよ おめえのその体で押しつぶす気か?」
445 :
満月:2007/04/17(火) 04:06:31 ID:ZJvGm0Hg
「年はいくつぐらいなんだ?」
「あー 俺知ってる たしか次郎さんの娘ぐらいじゃないか」
「はーーっ まだ子供じゃーん 期待しちゃって損しちまったぜ」
「こ 子供でも ええんじゃないだべか?」
「馬鹿野郎 そしたら俺様の三間槍が入んねーじゃねーか」
「おめーのはつまようじじゃねーのかぁ?」
どっと笑いが起こる。
「この前の戦で見たけど、ありゃやべぇぜ 剣の腕は立つようだけど、押し倒したくなっちまうぐらい可愛い」
「へー 源さん風にいうとどんな感じなんだい?」
「いままで、数多くの女を見てきたが、俺のかみさんの次に可愛いと思った」
「おめーのかみさんどぶすじゃねーか 信用なんねー」
「まあそのとき判断して決めっぜ 良ければ‘一番槍’は俺がもらうからな」
「じゃあおれ 二番槍ー」
「三番槍ー」
「四番槍ー」
目的地にたどり着くまで兵士達は下品な会話を繰り返していた。
wktkすぎてワーク・テイカーというスタンドが生まれそうなんだが。
月タンどうなっちゃうの?
wktkwktk
俺が覗くときだけカキコすくない・・・
w--kt---k
おいおいいつからこんなに人少なくなったんだ?
>>451 だって、ここは「女の子と二人きりになってしまった」スレだから。
誰がうまいこと(ry
そうだよな、不可抗力だよな…
454 :
382:2007/04/19(木) 23:27:39 ID:byP7usEM
いや、ごめんな。
一回PC飛んだせいで原稿消えて
書いてるんだけど纏まらなくてな…もう少しまってくれ
こうして収集のつかない
>>382の漂流が始まりましたとさ
物語の終盤が近づき、もうすぐ二人っきりの世界になります。
(これがなきゃスレ違いだもんなぁ)
>>382さん
勝手なお願いですが、もう二日だけSSの投下待ってもらえますか?
今週末までにはなんとか・・
櫓の上から、憎むべき長野の旗印が観えた。
その敵兵の行軍は、比喩などでは決してなく、地が振るえ唸っている。
武忠は、ちらりと隣にいる主の顔を見やる。
「(怖気づいては・・いないな)」
以前共に戦ったときは、草原の上で暴れまわっていた主君を頼もしく思った。
しかし今回は野戦ではなく、敗色濃厚の籠城戦だ。
武忠の気持ちを知ってか知らずか、月の表情は変わらない。
「(大殿の・・・子か)」
青葉では、慕っていた大殿を救うことができず、途轍もなく口惜しい思いをしたが、
せめて、この忘れ形見だけはもう失いたくない。
心の底から願う。
「(大殿・・・ どうか殿、月様を見守っていて下され )」
458 :
満月:2007/04/20(金) 04:47:41 ID:tNjd7q2X
半里ほど遥か彼方に、敵勢が見下ろせた。
「(ここで少し防衛したら、本丸に戻る。)」
武義に言われた言葉を、心中繰り返す。
「(ん?)」
武忠が、私のことを見た気がした。
「(武義の・・・お父さん) 」
敵陣への視線を動かさずにして、気付かないふりをする。
「そろそろ・・・・・来ますぞ」
ここで初めて、武忠の方に振り向く。
法螺貝の音が遠くから聞こえた。
敵が喚声を上げて、突進してくる。
心臓がどきどきしてきた。
この高鳴りは、どうか高揚感であってほしい。
「来ますぞぉぉ!!!」
私もあわてて弓の準備をする。
「構えてー」
私の声に、櫓の者が弓を構える。
「弓を 構えろぉぉぉ!!!」
五十間先の櫓も弓矢を引きはじめた。
敵が目前に迫ってきた。
459 :
満月:2007/04/20(金) 04:48:45 ID:tNjd7q2X
「戦が・・・始まったか」
「武義殿。この戦、勝てるのでありましょうか?」
「右に同じく、不安でござる」
本丸にて、武義・足軽小隊長・弓小隊長の三人が並んで戦況を眺める。
「大丈夫です。策が成功すれば、敵は必ず壊滅する」
不安がらせないよう、自信たっぷりに答える。
この外山軍の司令部に伝令が報告が来た。
「敵の先鋒は長野軍 ただいま力押しで攻めているところ、若様と武忠様による弓の斉射で防いでおります」
「了解した」
そんな情報など、ここからの眺めだけで一目瞭然だったが、
−若様と武忠様による弓の斉射で防いでおります−
この言葉に、月が乱戦の中で戦っているということを実感する。
「(大丈夫 月様は父上と同じぐらい御強い 私が不安がってどうする?)」
まだまだ戦は始まったばかり。
武義は司令官としての務めを果たさなければならなかった。
460 :
満月:2007/04/20(金) 04:49:32 ID:tNjd7q2X
「撃てぃー!! 撃ちつくせー!! そこぉ!! 門に登らせるなぁ!!」
「あの櫓だ!! 火を放て! すぐだ 今すぐだぁ!!」
「うわあ 燃えてるぞ! その水たるで消火しろ!」
「構わん!! そんな暇あったら、撃てぃ!! ここにある矢、全て使うぞ!!」
「中に! とにかく城内に入れ!! そっちの空堀のほうにも散らばれー!!」
「入れさすなああぁぁ!!!!」
兵力にものを言わせの力攻めでは、激戦を極めることが多い。
「武忠! そろそろ頃合ではないの? 後ろの方だいぶ燃えてる!」
「そうですな あと二十、矢を射たら、退きましょうぞ」
「うん!」
優に百を超える数弓を引き、極度の疲労で腕が痛い。
「(みんなも! 同じなんだから!)」
「殿。しんがりは某が勤めます。炎に囲まれる前に、そこのつるを使ってお逃げくだされ」
「有無を言わさぬって顔だね。うん、分かった」
「新造!小平太! 殿をお連れしろ!」
「「はっ!」」
「武忠!気をつけてね!」
そう言い残し、櫓から降りていく。
「・・・ありがたきお言葉」
矢をもう一束手に取り、月に逃がす時間を作った。
461 :
満月:2007/04/20(金) 04:50:23 ID:tNjd7q2X
「月様。御無事そうで何よりです」
「えへ〜 がんばったよ」
武忠の顔を見てにぱっと笑う。
「次はここでたたかうんだよね?」
「はい この場で敵を迎え撃ち、二の丸を敵兵で埋め尽くします」
月は弓から槍へと武具を持ち替える。
休む時間もなく、武忠が長野の兵を引き連れる形で戻ってきた。
「武忠殿!援護するでござる!」
弓小隊長の合図で敵の足を止める。
「父上、大丈夫ですか?」
「わしを誰だと思ってるんじゃい」
そういいながら、柵を乗り越す。
「若様。武忠殿。ここは我々に任せ休息を取ってください」
足軽小隊長が手先を引き連れ、肉弾戦を挑みにいく。
この場には三人が残された。
462 :
満月:2007/04/20(金) 04:51:47 ID:tNjd7q2X
「そろそろ言ってもいいよね 二の丸に何があるの?」
そう月が訊き、武忠もじっと見据えた。
「いくつか落とし穴を仕掛けました、罠にかかり士気を挫かせたところで、こちらから攻撃したいと思います」
武義が答える。
「その策は、成功するのか?」
「・・・父上。私を誰の子と考えておられるのですか?」
してやったり。そう言い返し、月もおかしそうに笑っている。
二の丸が、長野の旗で染まってきた。
「(そろそろ・・・!)」
早すぎても成果が落ちるし、遅すぎても味方の損害が増すだけ。
「軍太鼓を打て!」
ドーン! ドーン!
周りの空気が震える。
「(頼むっ!)」
地中から爆発音がし、ひとつ、またひとつと、大穴が開く。
敵兵は神隠しのように消えていった。
463 :
満月:2007/04/20(金) 04:53:04 ID:tNjd7q2X
「うわあああ!!」
「ここはどこじゃあ!」
「おい!地面が抜けたぞ!」
阿鼻叫喚の図が出来上がった。
落とされたものは呻き声をあげ、残されたものは恐怖で顔が歪む。
味方すら何が起こったのかと一驚している。
「月様!突撃しましょう!」
月もそのさまにびっくりしていたが、
武義の言葉で正気を取り戻し、うなずく。
ここだ。ここが勝機だ。
「武義! 行くよ! 私から離れないでね!」
「はい!」
外山軍の反撃が始まった。
464 :
満月:2007/04/20(金) 04:54:13 ID:tNjd7q2X
「うおおおおおお!!!」
「てやあああああ!!!」
統率の乱れた長野兵は、月・武忠を中心とする軍勢に次々と討たれてゆく。
音のように早く武忠が槍を振りまわせば、月も光のように速く敵を倒してゆく。
武義も敵に一槍浴びせようとするのだが、
前にいる二人の掃拭で無人の野を駆けるに等しい。
しかし、自分の起てた策が成功していくのを、ゆっくりと実感していった。
「(これほど上手くいくとは・・一番驚いているのはもしかしたら私かもしれないな)」
這いつくばってまで逃げようとする敵に対し、こう思った。
「これならいけそうだよ!」
勝利を確信したかのような顔で月が振り向いた。
「二度と、若葉を攻めようと思わせないぐらい、大打撃を与えましょう!」
「いっくよぉー!」
外山軍大優勢の中、二の丸を奪還していった。
465 :
満月:2007/04/20(金) 04:55:46 ID:tNjd7q2X
「うわああ! 逃げろ!」
「とりあえず城から出ろお!」
混乱を極め、長野の兵はほうほうのていで陣まで戻ろうとした。
ところが、そこで見たものは信じられない光景だった。
「志藤だ!志藤の陣まで逃げ込め!」
「そうか ここの軍ならまだ無傷だ」
志藤の兵は鉄砲を構え、敵からの攻勢を防ごうとするように見えた。
ゴオオオン!!
轟音が響き渡る。
あれ?外山はもうすぐ近くまで来ているのか?
ゴオオオン!!
もう一度炸裂する。
友が血しぶきをあげた。
「お、おい 俺らは外山じゃねえよ!! 長野!! 長野!!」
表情一つ変えず、狙いを定めてゆく。
「おい 聴こえているのか! 俺らは長野だ 志藤に味方するものだ!!」
ゴオオオン!!
石につまづいた訳でもないのに、体が前のめりに倒れる。
何も理解することなく、長野の一兵卒は絶命した。
wktkwktkwktkwktk
wktk
いつも早い時間ですが無理せずに頑張ってください
468 :
満月:2007/04/21(土) 23:58:40 ID:NdVOa1E9
さも愉快そうに笑う男がいた。
「まさか外山が長野を討ってくれようとはな」
「はっ、怨敵・長野家もこれで壊滅でありましょう」
「彦根の倅にも驚いたわい。鮮やかな策じゃ」
間も無く、長野家当主の討ち死にの報が入ってきた。
配下と思われる人物も、目を細める。
「外山・長野を屠り、これで念願かなったりですな」
「わっはっは。外山はまだ屠っておらぬ。そちも気が早すぎるな」
もともと志藤は、長野を討ち取る算段だった。
意図せず計画が狂ってしまったが、
元気いっぱいの長野が滅びたことは、好事以外のなにものでもない。
若葉城の罠も外され、後は多勢で攻め入るだけだ。
「彦根親子の処遇はどういたしますか?二人とも近隣に名を馳せておりますが」
「武の武忠、智の武義といわれておったな・・・共に殺してかまわぬ」
「それは何故にでございましょうか?」
「捕らえても、わしの家臣になることは考えられぬ
知らぬか?別の異名で‘忠義の彦根親子’と呼ばれておるぞ」
その配下は恐縮する。
「そろそろ、動くぞ」
志藤の当主は、采配を振りかざした。
「外山月・彦根親子の首を必ずや獲ってこい」
「はっ、かしこまりました」
469 :
満月:2007/04/21(土) 23:59:37 ID:NdVOa1E9
「これは・・・どういうことなんだ?」
武義はつぶやく。
逃げまどう長野が志藤にやられている。
「(長野も・・・裏切られたのか
いや、もともとこういう手筈だったかもしれない)」
まさか、このような展開になろうとは。
しかし指揮するものとして、どんな事態であれ次の行動を決めなくてはならない。
「月様!父上!追撃を中止します!」
城外に打って出ているものを、引き上げさせた。
武義の許に、月と武忠がやってくる
「武義、どうするの?」
月が訊いた。
今度は、志藤が攻めてくる。
門が破れ、櫓が燃え落ちたこの場所で戦うのは得策ではない。
かといって、本丸に戻るのも癪だ。
「(くそっ)」
先ほどまで勝ち戦だった。そのはずだった。
「・・・志藤がやってきたぞ」
武忠の言葉に遠くを眺めると、士気の高い軍勢が攻めてくるのが見える。
「武義、どうするの?」
もう一度訊く。先程より心細く聴こえた。
「・・・っ とりあえずここで迎え撃ちましょう」
すでに長くなっている月の影に目を落として、武義は答えた。
470 :
満月:2007/04/22(日) 00:00:54 ID:NdVOa1E9
疲れを知らない志藤軍を相手に、早くも苦戦に陥っていた。
月と武忠の奮戦も、十倍もの違う兵の数に焼け石に水でしかない。
「おぬしの首、もらったああっ!!」
「ぐっ うるさーい!」
華麗に敵槍を捌くが、疲労の色は隠せないでいる。
「月様っっ!」
武義が援護する。
「武義!来ないで、怪我するよ!」
「そんなこと言ってはおれませぬ!」
槍が折れ、二人とも帯の刀に持ち替える。
「武義殿!そなたの首も貰いうける!」
「だめー! 絶対だめー!」
身を挺して、最愛の部下を護る。
「月様。いったんお下がりください。息が乱れております」
「だって、攻めてくるよお」
「でもも、だってもありません。後ろで一休みしてください」
武義は無理にでも主君を後方に下がらせた。
471 :
満月:2007/04/22(日) 00:01:49 ID:KiMrbe6n
陽が沈む。
その夕焼けは、戦場をなお異世界の物へと変えている。
武忠は後ずさりの格好で息子の前まで近寄って訊く。
「武義、第二の策は?」
「・・・・・」
策などないのは分かっていた。
自分自身の決意を固めるために、そう聞いたかもしれない。
「二の次、三の次を考えろと言い聞かせたであろう」
「・・・申し訳・・・ございません」
武義が謝る。
「・・・その言葉は禁句だ。お前が謝っても、戦況は変わらない」
「・・・・・」
「殿に対しても、そう答えるのか? そう答えられ、殿はどのようなお気持ちになる」
「・・・・・」
想像し、胸が痛む。
「考えろ。お前ならばできるはずだ」
「・・・父上?」
「殿を救う方法を考えろといったのだ。そのためにわしは時間を稼ぐ」
「・・・!」
472 :
満月:2007/04/22(日) 00:02:35 ID:KiMrbe6n
事を悟る。
「・・・わしの命は、大殿と共に散るべきだった
大殿の娘と、武義、お前の成長が見られただけでも、存分に満足じゃ」
「・・・・・」
「ここはもう落ちる。本丸へ戻れ」
「・・なればっ! 父上も一緒に!!」
「この夕陽をわしの墓場と決めた。決めたことは覆さん」
「・・・・・」
「武義、殿を託すぞ」
武忠は、軍を撤退させる最後の合図を送った。
「ほれ、そこでお前を見つめているものがいるぞ」
「・・・・・」
「しっかりな・・・」
戦う相手が居なくなり、
敵兵はその場に残されていた武忠ただ一人に襲い掛かった。
473 :
満月:2007/04/22(日) 00:03:56 ID:NdVOa1E9
本丸に戻る途中、声をかけた。
「武忠は大丈夫なの?」
「父上は・・・すぐに戻ると言っていました」
月も馬鹿ではない。
その言葉の意味を瞬時に理解する。
「そっか・・・」
また沈黙が支配する。
武義は父のこと、戦のこと、そして最悪の事態のとき月を逃がすこと。
いろいろなことを考えていた。
若葉城の周りは断崖絶壁。
猫一匹、逃げ出す場所は無い。
それゆえ、二の丸からしか攻め口の無い敵に、絶妙な罠が仕掛けられたが、
追い詰められると袋のねずみになる。
「(どうすればいいんだ)」
武義は、決して見つからない答えを探していた。
474 :
満月:2007/04/22(日) 00:05:39 ID:NdVOa1E9
「武義……どうするの?」
蚊の鳴くような声で、今日何度目かの質問をする。
「・・・館に籠り、敵を迎え撃ちましょう」
本当は、自分の非を詫び月を抱きしめたかった。
父の声を思い出し、寸前で思いとどめる。
「もう……二十人、三十人しか残っていないよ」
「・・・・・」
かける言葉を捜す。
見つからなかった。
「武義……どうなるの?」
「・・・大丈夫です・・・月様が敵を倒せばいいのではありませんか」
「……そうだよね。私がやっつければいいよね」
悔しい。
配慮に欠けた言葉と、無力な自分にまったく情けなくなってくる。
敵がまたもや喚声を上げてやってくる
再び夢を見ることができたら、この音はとんでもない悪夢になるだろう。
「皆の衆を館へと集めさせます」
月の顔を見ることができなくなり、逃げ出すように集合をかけに行った。
475 :
満月:2007/04/22(日) 00:06:35 ID:KiMrbe6n
武義はわたしの気持ちなんかぜんぜんわかっていないんだろう。
ほんとに何にもわかっていない。
死んだってかまわない。そばにいて欲しいだけなのに。
タッタッタッタ
足音が聞こえる。
こっちに来るのは誰? 武義?
「若様! 武義様に大広間で戦うようにとの指示を受けました
冥途の土産に今一度、‘月の舞’を見せてくだされ」
5人の兵士がやってきた。
ふんだ。
命が惜しいんなら、とっとと降参しちゃいなさい。
わっ。もう志藤の連中がやってきた。
武義が言ってた。
わたしがやっつけないと、何にも始まらない。
わたしがやっつけないと、何にも終わらない。
476 :
満月:2007/04/22(日) 00:08:49 ID:KiMrbe6n
とっぷりと日が暮れ、松明もかざしていない。
そんな薄暗がりの中、月は闘っていた。
「ぐはあ!」
爆裂音と共に最後の従者が倒される。
「へっ これで5人目!」
月の周りには誰もいなくなった。
「お、おい。こいつって、やっぱり外山の殿様だべか?」
「紅い甲冑、その幼さ、そしてかわいらしい女の子。間違いなく 外山月 だな」
「ひょっはー! おれらついているなあ。これでたらふく飯がくえるぜえ!」
「待て、こいつ確か、かなりのツワモノじゃねーか?」
「そうだな、噂ではそう聞いている。だが・・・」
銃口を月に向ける。
「この人数なら、さすがに敵わねえだろう」
ある者は槍、ある者は刀を構える。
十数人を指揮し、足軽頭と思われる人物は鉄砲を手に持っていた。
「(ちくしょうっ!)」
怯えと悔しさが混ざり合い、言葉が出てこない。
「はやく首をとっちまおうぜ、大将!」
「首はいつでも取れるからなあ。んん?」
男は卑猥な笑みを浮かべていた。
ここで待たされるのか…続きを…早くっ…!
wktkがとまらない
うおお、ここで止まるのか……
生殺しだああああ
480 :
満月:2007/04/22(日) 05:31:34 ID:KiMrbe6n
「まず武器を奪い取れ。そして鎧を脱がせろ」
「「おう」」
大将の意図を汲み取り、男たちはじりじりと詰め寄る。
多勢に無勢。
周りを囲まれ、応戦むなしく月は刀を奪われた。
「それ!組み伏せろ!」
月の倍近くの丈があろう男が、押し花のように圧し掛かる。
「ぐっ くぅ……」
力を振り絞っても、びくとも動かない。
「足を持て! そっちの足もだ!」
何人もの野獣が月に群がる。
部屋の暗さに、自分が何をされているのかわからない。
しかし男達の汗の臭いに、ものすごく嫌悪感を感じたことは理解できた。
「上衣を取れ!袴をひきちぎれ!」
あまりの恐怖に頭が働かなくなってきた。
「(武義…………助けて!!)」
481 :
満月:2007/04/22(日) 05:33:10 ID:KiMrbe6n
戦える者は館へと呼びかけ、怪我している者には投降を勧めた。
敵衆は、既に本丸のあちらこちらに攻め入っている。
全ての目算が狂う。
「もう集める味方すらいない・・・」
ふと、父の声が聞こえてきた。
――武義、殿を託すぞ――
「(父上?)」
周りを見渡す。
当然だが、父の姿など無い。
「託された以上、守らなくてはな」
武義はそうつぶやくと、急に血の気が引いてきた。
ひどい胸騒ぎだった。
482 :
満月:2007/04/22(日) 05:33:56 ID:KiMrbe6n
「(私は 何をしているんだ!)」
走った。
「(月様には私が附いてやらなければ)」
闇の中、月の姿を探す。
館まで戻ると、最早そこは敵の手に落ちていた。
「月様! 月様!」
外山の兵だと気づかれてしまうが、
そう叫ばずにはいられない。
「おーい まだ外山が残っていたぞお!!」
「こっちだあ! こっちだあ!」
館に逃げ込むようにして、振り切る。
「月様ああ!!」
喉が潰れるのも気にせず叫ぶ。
館の中を駆け回る。
「……たけよし……」
「・・・!」
聴きなれた声がする。
大広間の方だ。
武義は突入した。
483 :
満月:2007/04/22(日) 05:36:03 ID:KiMrbe6n
いつもなら月が座る‘当主の座’と呼ばれるところに、男達が集っている。
その固まりの中で、苦しさに悶えながら自分の名を呼んでいた。
「うおおおおお゙お゙お゙お゙お゙!!」
何も考えない。
そこにいる‘モノ’を、切って 伐って 斬った。
「なんじゃあ!てめえ」
「このやろう!これでも喰ら・・うぎゃああ!」
「月様あ!!」
少女の手を取る。
ひどく脱力していた。
「月様! 逃げますよ!」
そう合図をかけると、手に少し力が入ったような気がした。
月を引っ張り、渡り廊下の方へ走る。
「一等首だぞ!その小娘を逃がすなあ!!」
暗闇であり、また館の構造を熟知していた武義は、
奥に、奥にと、逃げ延びることができた。
484 :
満月:2007/04/22(日) 05:36:56 ID:KiMrbe6n
最奥である月の部屋までたどり着いた。
全速力で走ったので、呼吸が荒い。
「月様」
肩で息をしながら月の体を抱擁した。
甲冑は外されており、肌着一枚だった。
「……へへ 助けてくれると思ってた」
武義に抱き返す。
遠方から月を探す怒声が聞こえてきた。
その声量に比例して、抱きしめる力を強くする。
「いつまで、こうしていられるかな」
「・・・何処かに隠れましょうか」
できるだけ時間を引き延ばしたかった。
月が見上げる。
「そだね……私についてきて」
月も同じ気持ちだった。
二人は、敵に発見されないようこっそりと、あるところに向かった。
485 :
満月:2007/04/22(日) 05:38:49 ID:KiMrbe6n
「月様。兵糧庫はすぐ見つかってしまいますよ」
「えへ まかせといて」
月はするすると柱を登り、抜け穴から天井裏へと消えていった。
「ほら 登ってきて」
武義は月と同じように天井裏へと移動する。
「少し、狭いですね」
「ぜいたく言わないの」
月は、逆に狭いことが嬉しそうに言う。
「まさか、このような場所があるなんて知りもしませんでした」
「私も落とし穴があるなんて知らなかったから、これでおあいこだね」
下には大量の食料がある。
この建物なら燃やされることもないだろう。
見つかりにくい上に、その点でも武義は安心する。
「みんな、いなくなっちゃったね」
月は身を寄せながらつぶやいた。
つ…ついにふたりっきり…っ!wktkwktk!
焦らすなああああああああああああああああああああああああ
488 :
満月:2007/04/22(日) 23:35:18 ID:KiMrbe6n
何人かの駆け足が聞こえてきた。
月を背中から抱きしめながら、小声で確認する。
「月様。お静かに」
「うん」
まもなくして、敵兵が侵入してくる。
「・・・」
「………」
二人とも息を殺す。
「探せえ! 探せえ!」
兵糧庫の中を、隅々まで探索している。
全てをひっくり返した。米俵も麦袋も。
「・・・」
「………」
「どうだ、見つかったか?」
「いや、こっちにはいねえ」
「やっぱり武器庫の方か?」
「そっちはさっき探した。長屋の方に行ってみようぜ」
足音が遠ざかる。
「・・・」
「………」
「・・・」
「えへへ……どきどきした」
武義は何も聞こえなくなってからも
主を膝に乗せたまま、体勢をかえずにいた。
489 :
満月:2007/04/22(日) 23:36:09 ID:KiMrbe6n
あれから時間が経った。
格子窓からは人も見えなくなったし、喧騒も聞こえない。
「(一旦、撤収させたな)」
敵を感じないということは、これほどまでに安心するものなのであろうか。
月の様子を見た。
月は、自分のおなかに巻かれた手をいじくって遊んでいる。
可愛らしいものだ。
心地良い首もとの匂いをかぎながら、武義は語り始めた。
「私の尊敬する人物の話をします」
沈黙が破られ、遊びをやめる。
「月様。楠木正成公をご存知ですか?」
「……えっと 名前なら聞いたことある。どんな人だっけ?」
「・・・今から200年ほど前、室町に政権が誕生する頃のお話しです
彼は幾多の同士と共に、鎌倉幕府の打倒を狙っていました」
「うん」
490 :
満月:2007/04/22(日) 23:36:58 ID:KiMrbe6n
「正成公はお強いです。城をいくつも落としていきました
だけど、幕府も黙ってはおりません。
反乱者として、鎮圧に向かいます。こうして戦況は膠着状態になりました」
「うん」
「数年たち、とうとう幕府側は本気で彼を倒そうとします
彼の本城である千早の城に百万といわれる大軍勢を派遣します」
「百……万?」
「はい。それに対して正成公の軍は僅か一千
勝敗の行方は誰の目にも明らかでした」
「………」
「千早城が難攻不落というわけではありません
この若葉城と同じぐらいでしょうか
しかし、正成公は数多の戦術を使い
一ヶ月、二ヶ月、そして三ヶ月と幕府軍を翻弄します」
「………」
491 :
満月:2007/04/22(日) 23:37:54 ID:KiMrbe6n
「この城は落とせぬとして、とうとう幕府軍は撤退しました
こうして正成公は勝利します」
「………」
「同じ采配を振るう者として、私とはえらく違いますね」
少し自虐じみて言う。
「……そんなことないよ」
武義の温もりを感じながら、月は否定する。
「楠木正成より、ずーっと ずぅーっと立派だよ」
「・・・」
「武義は私のために、いろんな事がんばってくれたし
うん。楠木正成より立派。私がそう決めたんだから」
「・・・」
「……なに?私の言うことが間違っているというの?」
「・・いえ・・・そうでは、そうではございません」
またさらに強く腕に力を込めた。
492 :
満月:2007/04/22(日) 23:38:47 ID:KiMrbe6n
時間が流れる。
武義はまだ眠っていないようだ。
愛する人に抱きしめられ、火照る体が夜風に冷やされて気持ちいい。
「武義……起きてる?」
「はい」
声が聴きたくて、質問してみた。
「武義……あのね……」
「はい」
「……私、子供が欲しかった」
「・・・」
「私の子供にね、剣の練習させるの」
「・・・」
「そしてうんと強くなって、武義なんか簡単にやっつけちゃうんだから」
「・・そうですね」
「もちろん、政治や文学も学ばせるよ」
「・・・」
「……そのときは、武義が教えてあげてね」
「・・・・はい わかりました」
「あとね……あとね……」
「・・・」
胸が締め付けられ、目頭が熱くなる。
そんな武義は、自分でも信じられない言葉を発した。
493 :
満月:2007/04/22(日) 23:39:36 ID:KiMrbe6n
「子供を・・作りましょうか」
「……え?」
「私と月様で子供を作ろうといったのです」
「……うん」
月が自分に恋焦がれていたことは知っていた。
家臣としての理性が上回り、こちらからの愛情表現はできずに居たが
今となっては、もう関係ない。
「月明かりのあるところへ移りましょう」
格子窓から唯一月光が入る場所へと抱き上げ移動させる。
その場所に小さな体を横たわらせた。丁寧に。
仰向けになった月は窓からの光に目を細める。
昨日より一段と丸い、満月だった。
「きれいなお月様ですね」
「……うん」
「月様もお綺麗ですよ」
「……うん ありがと」
あまりにも可愛らしくなり、胸元にそっと口付けをする。
少女の香りが頭の中を支配した。
494 :
満月:2007/04/22(日) 23:40:31 ID:KiMrbe6n
「とっても良い匂いがします」
「どんな……匂い?」
「女の子の、月様の匂いです。これ以上良い匂いは知りません」
「そ、そう」
はにかみながら微笑んだ。
「床は冷たいですし、下だけ脱がしますね」
簡素な麻の下着を少しずつ脱がす。
「……っ」
恥ずかしさのあまり、股を両手で隠す。
「そこを押さえられては、子供はできませんよ」
「だって、……恥ずかしいよぅ」
膝を立てて抵抗する月に対し、胸元に手を這わせる。
「……ぁあ……」
月の体にちょうど良い大きさの乳房は、とても柔らかだった。
さするたびに、吐息が漏れる。
「……ん……ぁ……」
何回か揉むと、緊張がほぐれたように見えた。
「下のほうにいきますね」
胸への愛撫をやめ、続いて月の両手をゆっくりとどかした。
495 :
満月:2007/04/22(日) 23:41:14 ID:KiMrbe6n
綺麗な割れ目が見えた。
その線に従って、上下に指を動かす。
「ひゃぁ、んぁ、ふぁぁっ!?」
こんな感覚は初めてだった。
そしてなんでここまでの嬌声がでるのかと驚いていた。
「ん、ふぁあ、くぅ、んああ!」
「月様。気持ちいいですか?」
「うぅん、いいぃっ、すごくっ、ああぁ、きもちいっっ!!」
「大好きです。月様」
「うんっ!はぁぅっ、わたしもぉ、だいっ、だいぃっ、だい好き!!」
吐く息も切れ切れになったところで、今度はその秘裂に口をあてがう。
「ぁぁ、そこは、おしっこする所だから、汚いよぅ」
「大丈夫です、汚くないですよ」
先程より、強烈な女の匂いのする場所に舌でつつく。
「んんああぁ!たけよしぃぃ!!たけよしいぃぃっ!!」
月は武義の頭をわしづかみにし、精一杯押さえつける。
「いいぃ、いぃいよおぉ!」
時間はたっぷりある。
永遠と攻め続けていようかと思ったが、
武義は早く月の中に入りたいという欲望に負けた。
496 :
満月:2007/04/22(日) 23:41:59 ID:KiMrbe6n
顔を強引に掴まれていたため、こちらも強引に引き剥がす。
「はっ! あっ! はっ! たけよしぃ?」
「そろそろ、貞操をいただいても、いいですか?」
「うんっ」
確認の言葉を貰うと、武義も下着を脱いだ。
月を想う気持ちが下半身に表れていた。
安心させようと頬に軽く口づけし、月の腰を抱えた。
湿り気を帯びた場所に狙いを定める。
「いきますよ、月様」
「武義、来て」
一気に破ろうとした。
だが、あまりにも狭すぎて前に進めない。
「……くぅぅっ!!」
相当きついのだろう。
閉じた目から、涙が流れていた。
いったん抜こうと考えたが、それは月に気づかれてしまった。
「駄目! 抜いちゃ駄目! 動いてっ!」
「月様・・・」
「これは命令だから。命令だからね」
月は、自分の体に欲情してくれる武義に、気持ちよくなって欲しいと思っていた。
497 :
満月:2007/04/22(日) 23:43:15 ID:KiMrbe6n
「分かりました。動きますね」
理性が全て吹っ飛んだ。
全ての体重を乗せ、前に進んだ。
「んんんっっ!」
何かが破れた感触がした。
一休止もはさまず、今度は腰を引く。
「はぁっ、んんんああ!」
腰を打ちつける。
「うあぁぁっっ!」
腰を引く。
「あああぁっっ!」
何度も何度も何度も、容赦なく律動する。
「はあぁん! ふぁああん! んんんんっっっ! あついいいぃぃっ!
なんかぁっ、あつくぅぅ、気持ちよくうぅっ、なってきたよおおぉ!
二人とも全力で腰を振っていたので、限界が、絶頂が近づいてきた。
「気持ちいいぃい!気持ちいいよぉぅぅ!たけよしっ!きてええええ!」
「月様あ! 月ぃ! 月い!」
「ふああっ、んあああっっ、あああああぁぁ!!たけよしぃぃっっ!!たけよしいいいいぃぃぃっっ!!」
月の望んだ子供の素が、胎内に注ぎ込まれる。
「はぁああ、たけよしのがぁ、きている……」
幸せをかみ締めながら、月は意識を失った。
月タンハァハァハァハァハァハァハァハァ
499 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 01:17:16 ID:0Rhttl5p
とりあえず上げとく
あ、続きがきてた!まってたようっひょー
501 :
満月:2007/04/23(月) 05:06:17 ID:pxSJEd1X
もうじき夜が明ける。
功をあせる早起きな者も、ちらほらと見えてきた。
昨日は夜遅い事もあって、身を隠すことができたが
今日は無理だろう。
「月様・・・」
やさしい表情で眠っていた。
「・・・」
月は間違いなく死ぬ。
さらし首にされるか、磔にされるか、
もしかしたらまた、散々辱めを受けてから・・かもしれない。
そうなるぐらいだったら、月の体を敵から隠した方が遥かにましだ。
「・・・」
すっと鞘から刀を抜く。
冷たい刃を月の首筋に近づける。
「・・・」
いくつかの選択肢がある。
この兵糧庫に火を放つか、掘った落とし穴の更に深くに埋葬するか、
周りの崖から飛び降りるか・・・
いずれにせよ、月にこれ以上の恐怖は与えたくなかった。
眠っている今なら・・・
502 :
満月:2007/04/23(月) 05:06:56 ID:pxSJEd1X
「・・・」
寝顔を見つめる。
相も変わらず、優しそうな表情だ。
自然と涙がこぼれてきた。
寝顔が霞む。
袖でぬぐった。
寝顔がまたはっきりと見えた。
また・・涙があふれてきた。
「・・・」
悔しい。とんでもなく悔しい。
自分の責任で、月を死なせるのだ。殺すのだ。
溢れ続ける涙をそのままにして刀を構える。
月に教えてもらった上段の構えだ。
月に教えてもらった、いろいろなことを思い出す。
月に教えて差し上げた、いろいろなことを思い出す。
いっしょに領内を視察したときの事を思い出す。
いっしょにご飯を食べたときの事を思い出す。
「月様・・」
心を鬼にする。
握る手に力を込める。
「・・・御免っ!」
503 :
満月:2007/04/23(月) 05:07:33 ID:pxSJEd1X
刀は振り切られなかった。
首寸前のところで、太刀筋は止まっていた。
自分には月を殺せないことを悟った。
「月様・・・」
寝息をしているのが聞こえて安堵した。
目を閉じ、その寝息に耳を澄ませる。
すぅー すぅー と聴こえる
いつまでも、こうしていたかった。
504 :
満月:2007/04/23(月) 05:08:14 ID:pxSJEd1X
朝が来た。
外が騒がしくなる。
「武義・・・どうするの?」
自分で自分に質問する。
やはり、この台詞は月でなければいけない。
言い方を替える。
「武義・・・どうするのだ?」
父に言われた気がした。
「(父上、私はどうすればよろしいのですか?)」
もう、この世にはいないであろう者を頼る。
――考えろ。お前ならばできるはずだ――
父の言葉が浮かんだ。
「(父上! そうは仰いますけど・・!)」
反論してみたが、意味のなさに気づいた。
「(そうです。その通りです。私がなんとかしないと)」
月がごろんと寝返りを打つ音が聞こえた。
「(考えろ。私ならばできるはずだ)」
505 :
満月:2007/04/23(月) 05:08:59 ID:pxSJEd1X
日が高くなる。
月はもう起きていて、武義に抱っこされていた。
昨晩と同じように、またお腹にある武義の手でごそごそと遊んでいる。
会話はなかった。
いつまで、ここにいるつもりなのだろうか。
志藤兵は太陽の恩恵を受け、大捜索を開始している。
武義は決心の息を深く吐いた。
「月様。出陣しますよ」
「………………うん」
武義は甲冑を身に着ける。
月は肌着の上から武義の振袖を羽織った。
大きくてぶかぶかだったが、仕方のないことだった。
「月様。私を信じて突き進んでください。分かりましたね」
「うん、わかったけど……私の得物は?」
「武器など無くて結構です」
506 :
満月:2007/04/23(月) 05:09:36 ID:pxSJEd1X
武義は抜け穴から下を窺い、兵糧庫に誰もいないことを確かめる。
「行きますよ」
ひょいっと下まで降りる。
月もあの夜からだを重ねあった場所を眺めた後、名残を振り切るようにして下に降りた。
兵糧庫の入り口から外を見渡す。
「うわっ こんなにいっぱい居たんだ」
「・・・そのようですね」
全軍が、この本丸に入っているのではないかというぐらい、ひしめき合っていた。
そのうちの一隊が、この兵糧庫目掛けて進んでくる。
「やれやれ、散々探したでしょうに・・」
「武義 くるよ」
天井裏に戻る気はなかった。突き進む。
「月様。走りますよ!」
「分かった。武義!」
507 :
満月:2007/04/23(月) 05:10:09 ID:pxSJEd1X
私たちは敵軍勢の中、一直線に走った。
矢張りというべきか、周りの敵兵全てが追いかけてくる。
「・・・・・・・・・・・!」
「・・・・・・・・・・・!」
「・・・・・・・・・・・!」
何を言っているのか聞こえない。
どうせ聞こえていたとしても、我々には最早関係ないことだ。
「もう少しです!月様!」
「うん!」
崖に向かった。その場に立つと立ち眩みがしてしまいそうなほどの高さがある断崖に向かった。
前から敵兵一人がやってくる。
508 :
満月:2007/04/23(月) 05:11:11 ID:pxSJEd1X
勝てないこともないが、構っていたら後ろに追いつかれる。
「うおおおお!」
残り一本の刀を投げつける。
「ひぃ!」
敵が怯んだ。
その間に、走る。
ひたすら走る。
とうとう崖の淵まで辿り着くことができた。
案の定、立ち眩みがしてきた。
下は森とはいえ、この高さからなら百命に一命も無い。
敵が迫ってくる。
考えている余裕は無い。
月の体を抱く。
そしてそのまま・・・
飛び降りた。
509 :
満月:2007/04/23(月) 06:57:07 ID:pxSJEd1X
「それにしても、月さんの料理はどんどん上手くなるねえ」
「えへー まだまだお袋さんにはかないませんよ」
私は今、宴会の場にいる。
夜桜を楽しもうと、村の仲間たちに誘われたのだ。
「この団子って、月さんが作ったものかい」
「そうですよー おいしいでしょー」
「あっはっは 月さん見ながら、月見団子。風情があるねえ」
「おまえさん!これは花見団子じゃないのかね!?」
私にちょっかいがかかるのを見かねて、お袋さんが怒る。
私は桜を見上げた。
「(あれから、三回桜が咲いたね)」
誰に言うでもなく、胸の中でつぶやいた。
腕に目をやる。あの時ついた傷跡だ。
そこに手のひらを当て、目を閉じる。
「(なんで、私、生きていられたのかな)」
それは、今でも不思議に思うことだ。
510 :
満月:2007/04/23(月) 06:57:47 ID:pxSJEd1X
ウワーン ウワーン
子供の泣き声が聞こえる。
「ははうえ〜 だんご落としてしまいました」
そう言って、私に抱き甘えてくる。
「また、作ってあげるからね。男の子は泣いちゃだめ」
この子は、命を賭してまで私を守ってくれた人の忘れ形見だ。
ほら、口元の辺りとか似ているでしょ。
「おーい 月さーん 煮物くれー」
「はーい ただいま」
私が鍋のところまで行くとき、一陣の風が舞った。
雲が吹き飛ばされると、まあるいお月さまが出てきた。
あの時の事は決して良い思い出ではない。
だけど、悪い思い出でもなかった。
大切な思い出だった。
――完――
お疲れ様です
良いもの読ませていただきました
>>511 (´;ω;`)ウウッ……たけよしぃぃぃぃぃぃぃ!
GJ!!!!!
たけよしぃぃぃぃぃぃぃぃ!
感動ってレベルじゃ・・・・・・ねーぞ・・・・・・
God Job!!!
GJ!乙でした〜
たけよし…。・゚・(ノД`)・゚・。ウワアアァァ-ン
気がむいたらいいので次回作wkt-kしてまってます
GJ!
たけよしぃ…(´;ω;`)ウッ
GJGJ
>>511 たけよしぃぃぃぃぃぃぃお前は真の漢だったぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!・゚・(ノД`)・゚・。ウワアアァァ-ン
圧縮回避保守
説明しよう。
ある日、宇宙人が現れたんだ。
その宇宙人が言うには、
全世界中の男30億人、女30億人を、
それぞれ30億ペアで、ある白い個室に24時間監禁するらしい。
その白い部屋は縦、横、高さ、それぞれ10m。
1ペア1部屋。全部で30億部屋。
どうしてこんなことが分かるかって?
それは、全地球人の頭の中にそういう映像が流れたんだから仕方ないじゃないか。
もちろん僕も見た。
本当にびっくりしたよ。
こんなこと前代未聞だもんね。
全世界中のメディアは、こぞってこの問題を取り上げた。
今では、新聞記事の半分・テレビでは一日10時間もの量、この手の話題だ。
決行は、日本時間で今日の夜8:00から明後日の夜8:00まで。
さて、どうなることやら。
世の中にはもちろん変な人もいる。
日本国政府は、各自防衛用の武器を持つことを推奨している。
それはそうだろうな。
どれだけ犯罪を犯しても、捕まえる人がいない。
自分の身の安全は、自分で守らなくてはいけないのだ。
僕の女友達も、この手のことを心配している。
見ず知らずの人に、強姦されるんじゃないかって。
僕は、包丁と電気スタンガンを持つように言った。
それでも彼女は不安らしい。
一緒になるのが僕だったら良いのにねと言ってくれた。
嬉しかったが、そんなのは30億分の1だから期待しない方が良いだろう。
おっと、もうすぐその8時がやってくる。
ペアになるのは誰だろう?
ノルウェーの美少女か、中国の若奥さんか、タンザニアのお婆さんかもしれない。
アメリカの国務長官だったらいやだな。問答無用で撃ってきそうだ。
日本語で意思疎通が図れる相手は、30億分の6000万。
2%か。少ないな。
7時59分になった。
僕は戦う意思はないので、武器は持たないでおく。
僕の家族4人は、だんだん意識が遠のいているようだ。
そして……ぼくも……マドロミノナカニ……
ここは、どこだろう……
そうだ。あれだったな。
宇宙人のヘンタイチックな実験だ。
部屋の白さで気づいた。
僕は、腕時計を見る。
8時……40分。
8時からじゃなかったのかよ。
あ!
そんなことはどうでもいい。
僕のペアは誰なんだ!!
がばっと起き上がった。
「…………!!」
なんか左手の方から声が聞こえた。
左に振り向く。
僕とめいいっぱい離れた場所から、その少女は刃渡り30cmもあるナイフを構えていた。
金髪。蒼い瞳。絹のような白い肌の少女。
10歳ぐらいだろうか?
感じのいい赤と黒とベージュのブラウスを着ている。
「グッドモーニング」
トーイックで400点台の僕は、なけなしの英語を使ってみた。
「…………!!」
あれ?できるだけ笑顔で言ってみたつもりなんだけどなあ。
「ニーハオ。……は違うか。中国系じゃないもんなあ」
少女は変わらず僕を睨みつけてくる。
えーとあと、フランス語話す人も結構いるようだから……
「ボンジュール」
こころなしか、驚いたように見えた。
「……Bonjour Monsieur」
おお! 今なんかボンジュールって聞こえたような気がするぞ!
この娘はフランス人、もしくはフランス語がしゃべれる人だ。
「……Me comprenez-vous?」
む、こんぷれぶー? ごめんフランス語分からないんだ。
「Quel est votre nom?」
「ア、アイキャンノット、アンダースタンド、フランス……語」
フランス語ってなんていうんだっけ。
それでもこちらの意図は気づいてくれたらしい。……なんかがっかりしたような表情をしている。
「キャンユースピーク、イングリッシュ?」
こういう時、ドゥユーのほうが良かったのかな? でもどっちでもいいや。
「……Je ne comprends pas」
ああ、駄目だ。コミュニケーションは無理っぽい。
こんなことだったら、世界十ヶ国語フレーズ集持ってくればよかったなぁ。
テレビでそんなこと言っていたような気がしてきたけど、もう遅いな。
兎にも角にも、その物騒なものはしまって欲しい。
どうしたらいいんだ?
「その、ナイフ、下に、下に、置いて」
身振り手振りで、ナイフを放すように言う。
少女は何も言わずに睨んでくる。
「だから、その、ナイフを、あーもう、置いて欲しいんだってば」
「Eloignez-vous」
「だから、何言っているのか分からないの。そのナイフをしまって欲しいの」
交戦意思を表さないように優しく語りかけながら、少女のもとへ寄る。
「Eloignez-vous!」
「そのナイフ、奪い取っちゃうよ」
「Arretez!!!」
少女の全力での嫌がりように、僕もビビった。
「あーわかったわかった。ナイフは取らない。取らないから大丈夫だよ」
両手を頭の上に上げる(世界共通の?)降伏のポーズをとりながら、僕はあとずさる。
何をやっているんだ僕は。こんな小さな子を怖がらせてどうする。
こうして僕たちは対角線上に向かい合った。
10m四方……ルート2が1.414だから、14mの距離を保っているわけか。
そんなしょうもないことを考えながら時間をつぶした。
暇だな……あぁ腹も減ってきたな。
ポケットの中の携帯食料を探ってみる。
あれ? ねえ。何で無いんだ? あれだけ家族で確認しあったのに。
……。
そっか。24時間は飲まず食わずで過ごせってことね。
ったく。宇宙人の考えることは良く分からん。
ごろんと横になる。
10m上空を見ると……換気扇?みたいなものがあった。
これで空調を整えているわけか。ほんと準備が良いな。
ほかにもなんか無いのかな?
真っ白な部屋をぐるっと眺めてみる。
なんだ……あれ?
なんか輪っかみたいのがある。
咳払いをして、これから動くぞという合図を少女に送ったあと、その輪っかに向かって歩き始めた。
ん、これは。
ドアの取っ手だ。
さっきまで、全然気づかなかったぞ。
向こう側は部屋なのか?
なんという生殺し
規制(だったとしたら)用支援
>>520 ごめんなさい 24時間だから
× 決行は、日本時間で今日の夜8:00から明後日の夜8:00まで。
○ 決行は、日本時間で今日の夜8:00から明日の夜8:00まで。
ですね
支援
wktk
これは期待
「うっ!」
ドアを引くと、全面真っ赤な部屋が現れた。
大きさは2mぐらいの立方体。
部屋の高さが低いこともあって、圧迫感を感じるし、
何より、その血を彷彿とさせる赤さが気味悪い。
「ここは……トイレなのか?」
どんな感性を持っているのだろう。
その部屋の中心には、片手いっぱいに広げたほどの穴があり、
すぐ隣にはトイレットペーパーと思わしきものが3つ置いてある。
無論、それらも赤い。
嫌悪感からかドアを閉めようとした時、
ドアのすぐ近くにあるモノが落ちていた。
「りんご……」
トイレに落ちていた2つのりんご。
本物のりんごかどうか確認するために、拾ってみる。
ずっしりと重く、甘酸っぱい香りが漂ってきた。
「…………ハハ」
もう何がなんだかわかんない。
これを二人で分けろってか?
あとに何にも残されていないか確認した後、ドアを閉めた。
「ヒュイーン」
入るときは気がつかなかったが、面白い音がするもんだな。
ドアを開ける。
「………」
ドアを閉める。
「ヒューイン」
もっかいドアを開ける。
「………」
もっかいドアを閉める。
「ヒュイーン」
――なるほど。
「ほら。りんごが2つあったよ」
両の手に一つずつ、同じ大きさのりんごを持ってみせる。
「お腹すいているんだったら……食べよっか」
ドアと少女との間は、5,6歩の距離がある。
その距離を詰めることなく、優しく呼びかけた。
「……」
少女は、右手に横たわっていたナイフを思い出したように構える。
うーん。そんなに怖いのかな? 僕。
「おっ。ちょうど良いじゃん。そのナイフで切らせてくれよ」
言葉の意味の1%も伝わると思ってはいないが、
この雰囲気のまま、また沈黙することが嫌だったため会話を続ける。
「そのナイフで、こう、ザックン、ザックンと」
りんごを切る真似をする。
「……」
表情一つ、動き一つ変えない女の子はひたすら僕を睨む。
伝わっているのか?
ゆっくりと近づいていく。
「……」
しかし少女のほうもまた、ナイフを持ったままゆっくりと壁伝いに逃げていってしまう。
……
まだ避けられてはいるが、先程よりも抵抗が少ないかな。
「りんごをここにおいておくね」
その少女の‘元’いた部屋の角にりんごを2つ置き、僕は反対側の部屋の角へと戻っていく。
自分用を除いた1つだけを置こうかとも考えたが、誠意を見せたくて2つにした。
何もすることが無くなり、腕時計の針だけが怠慢そうに働く。
仕事や趣味のことを思い返したりもしてみたが、これがなかなか時間の潰しにならない。
本でも持ってくれば良かったな。かなり暇だ。
そういえば、僕の友達は「このリュックサックを背負っていくぜ」とか言っていたな。
そのリュックサックを見てみると、中はお菓子だらけだったが……。不憫な奴め。
まあ僕も人のことは言えんが。
ポケットの中をごそごそと探した。
使い込まれた赤いパスポートと、
公営ギャンブルに行くときによく貰ってくる短い鉛筆が出てきた。
そうだった。日記を書きとめようとして、こんなのも入れたんだったな。
パスポートをメモ帳代わりにするのもどうかとも思うが、僕はそういう人なのだ。
他には……とまた手を突っ込む。
いろいろと入れたような覚えもあるが、もう、アメのひとつも出てこなかった。
仕方なくパスポートをパラパラとめくってみる。
仕事の関係上、成田と上海の名が刻まれたハンコがいくつもあったが、
余白の部分もだいぶ残されている。
そうだ。
僕はうつ伏せになり、右手に鉛筆を持ち、少女を見つめる。
自称、絵心のある僕は一本一本の線を丁寧に、
且つ、ジャパニーズアニメのようなユーモアも加え、顔を描いてゆく。
その少女は、淡泊な部屋の白さに相反し、昂然と輝きを主張するりんごに目を置いている。
つまりは横を向いている。
フランス少女の横顔もなかなか様になっているじゃない。
紙自体が小さいので、書き上げるのも早かった。
これ見たら、この女の子も喜ぶかな?
黒く染まったパスポートの中身をひらひらとさせつつ、男は少女に(性懲りもなく)近づいていった。
「どうかな? 上手く書けているでしょう」
「……」
この男に対する身の危険が薄まったのか、相手に気を使うことを覚えたのかはわからない。
ナイフを手に取ること無く、描かれた自分をまじまじと見入った。
「……C'est maladroit」
ひさびさに、およそ5時間ぶりに、少女の可愛らしい声が聞こえてきた。
褒めているのか、貶しているのか、その表情からは判らないが、感想を言ってくれているのだとは思う。
「Un stylo」
と言って、今度は手を差し出してきた。
ん? 握手か?
そーか そーか 親愛なる握手ですな。
僕は小さな手を壊さないように握りしめた。
「Non!」
ちょっと顔を紅潮させ、僕の手を振り解いた。
あれ? スキンシップはまだ早かったかな? でもそれを求めたのはこの女の子だし……
などと思っていたら、なにか、そのパスポートに書く真似をしている。
ああ、そっか。鉛筆を貸して欲しいのかな?
後ろポケットにしまった、細く短い鉛筆を彼女の手に渡す。
「〜♪」
穏やかなメロディの鼻歌を交えながら、少女の描かれたイラストの下に、
できるだけ大きく文字を書き込む。
L I A
女の子らしい工夫を凝らした文字だ。
「Lia」
こう言った少女は、胸を2回ポンポンとたたく。
「リア……ちゃん?」
名前だ。
こうした些細なことでも、初めて会話が成立したと言う事実に、嬉しさがこみ上げる。
「リア」
もう一度、はっきりと口に出す。
少女も同じ思いなんだろう。
目を細めさせ、何度も頷いた。
「モリ」
僕の名前は鈴木守彦です。とは言わず、
リアと同じく、最大限に簡潔な言葉を選ぶ。
そして胸をポンポンと。
リアも言いたいことは分かってくれたようだ。
「Mori」
顔を覗き込まれ、声が脳内に響く。
うおっ。こ、これ、なんつーんだ? 超っ嬉しいわ。
え? いやオレ、別にロリ属性があるわけじゃねーのに、
なんか、にやけた顔が止まらん。うお、こりゃやべぇ。
声をかけた瞬間、慌ただしく、(一人称まで替えて)、顔を背ける男に、リアはキョトンとなる。
「すー はー すー はー うん大丈夫。大丈夫ですから。ノープロブレムってやつだ」
「Mori?」
「あっ、そういえば、お互いの国の名前も聞いていなかったね」
一呼吸おいて、僕は訊く。
「フランス?」
「……?」
分かんなかったのかな、と同じ発音を繰り返してみた。
「フランス?」
「……?」
あれ……分かんないみたいだ。
発音が悪いのかな?
どう伝えようか、思案に耽っていると、パスポートに目が留まった。
そうだフランスの国旗を書いてみよう。
長方形の枠を横に三等分に分け、左と右を薄く塗りつぶす。
うんっ。いい出来だ。……イタリアに見えないこともないが、これは仕方ない。
この絵を見せながら、再度、
「フランス?」
と芸の無い一単語で質問。
「Je suis venu de……France」
僕のハイテンションぶりに動じることなしに、
リアは、問いに答えてくれた。
最後の言葉をとてもわかりやすく。
wktkwktk
二人っきりスレに無口スレを併せたかのような話だな。コミュニケーション一つ取るのにこれほど萌えるとは。続き超wktk!
これは萌える。
wktk
冒頭にちょっと出てきた女友達もこんなやりとりを
してるかと思えばそれはそれで萌える。
それから、僕たちは絵を描きあいながら時間を過ごした。
パスポートの残りのページが心許なかったが、リアの軽やかなハミングを聞いているうちに、
お絵かきは単なるきっかけに過ぎないと思い知らされた。
「〜♪」
楽しそうだね。それは何の曲だろう。
小学校の音楽の授業で教えてもらったのかな?
よし、僕も何か歌ってやろう。
コホン。ス〜、
「ミミファソ ソファミレ ドドレミ ミ~レレ」
ベートーヴェンの第9番、喜びの歌だ。
有名だから知っていると思うが……、
「mi mi fa sol sol fa mi ré do do re mi ré~do do」
僕より美しい音色を操り、リアは満面の笑みで返してくれた。
「〜♭」
「〜♪」
それからも幾多のクラシックを合唱し、この場は音楽会へと変貌した。
まだ手のつけられていないりんごを、男がウサギさんに変えようとした時に、
ソレは起こった。
ここに来て8時間、一日の3分の1が経過した時である。
部屋の上方、換気扇の辺りから、
大きな琥珀色の水晶がいきなり降りてきて、男の腰のところの高さで急停止。
何かのスクリーンのようでもあったし、単に鏡かもしれない。
音も有ったか無かったか、男も少女も分からない。
二人は正常な感覚を忘れつつある。
部屋のど真ん中にある水晶は、
男の胸を目掛け、部屋の白さになお負けじとするほどの、純銀の輝きを放つビームを放ってくる。
563。
ビームの放たれた場所から、10進法の数字が浮かび上がる。
刃渡り30cmのナイフにも、
267、と。
そして、少女にもその輝きはあった。
32。
男は、何の数字だろうと考える間もない。
数字をはじき出し、その役割を終えんとした輝きは光を失い、代わりに中央の水晶から変動をもたらす。
光が上空に伸び、円柱のカーテンを作り上げる。
換気扇から、また、ナニカ、現れはじめた。
円盤状の火花を溢れさせながら、行き場の無い烈風が男の身を突き刺す。
何も見えない光の中から、何かを感じさせる闇が舞い降りる。
まさにそれは、堕天使の降臨。
黒豹へと形を変えたソレは、862の数字を顕現させていた。
二人は、それが3者の戦闘力の合計であることも知らずに。
「リア!」
呼ぶよりも早く、リアは腕にしがみつく。
「mori」
僕たちを繋ぐ、唯一の意味なす単語が交わされた。
くそっ! なんなんだ。あの動物みたいなものは!
リアと最初に出会ったときとは比べ物にならないぐらいの敵意、いや殺意が全身に突き刺さってくる。
リアもそれを感じ取っているのだろう。
これでもかと言うほど、体が小刻みに震えている。
獣の目が光る。
……もしかすると、僕の方が震えているのかもしれない。
恐怖で頭が混乱してきた。
「mori……」
がぁー。僕なんかに頼るなっちゅーねん。
僕も、ほら、目ん玉と心臓が全速力で飛び出しているぐらい、見たらわかるっしょ。
わ、わっ! そんなにくっつかないでくれよ。 これでも剣道2級なんだZE!
そ、そんなこと考えている場合じゃ……来たあ!!
迫りくるつむじ風と同時に、獣は喉元を一掻きせんと飛び跳ねる。
「うおおっ!」
間一髪だ。間一髪、避けきった。
へへ。オレにもこんな動きが……ぬおおおっ!
獣は2撃目、3撃目と繰り広げる。
ちょ、待って。リアが。
リアが引っ付いていて、思うように動きが取れない。
「リア! 逃げるぞ!!」
リアをひょいと胸に抱えると、狭い空間の中、逃げ場を求めた。
あーもう、どこか、どこか!
ドアの取っ手が見えた。
ここに、取り合えず!
んっ、んっ。んんっ! なんだこれ。開かねえ!
チィ、ホント、勘弁してくれよ。
「moriii!!」
叫びが聞こえた刹那、
グルン。
僕の視界が弾む。
何が起きたのか理解する前に、
「ぐッはあ!」
白い壁に叩きつけられていた。
……あかんわ。背骨、イッちゃっているかも。
…………
じゃねえー! リア、リアはどこに!
意識が朦朧とするが、血まなこになってリアを探す。
ドアの前では、リアを下ろしていたから、一緒に投げ飛ばされることは無かったはずだ。
だんだんと、目の焦点が合ってくる。
圧倒的な力の差、逃げ惑うリア。
よかった、まだ殺られていない。
僕も立ち上がらなくっちゃ。
「ゴプ。ゴホッ、ゲホッ」
身を起こした途端、鉄の味が口の中に広がってくる。
見ると、まさか、吐血している自身がいた。
「リア……」
リアは、何処かからナイフを拾い上げ、僕の目の前まで駆けて来る。
「mori!」
息を切らしながら、それを僕に握りさせる。
それは、彼女ができる精一杯の役割。
僕ニ、ドウシロト言ウンダ?
「――mori!!」
涙を流しながら、懇願するように叫ぶ。
ウワ……アノ獣、マタボクニ向カッテ、突進シテクルヨ。
仕方ナイナア……
リアは立派に務めを果たした。
ナレバ、僕も!
急展開ktkr
ちょwww一体何が起こってるんだ!?
久々にきたらわずかに活気付いてるな
>>382は未だに書かないのか・・・
w-k-t-k
wktkwktk
wktk!
さて、wktkが止まらなくてスレ更新しながらもう3時になってしまった訳だが…
このリビドーはどうすればいいんだろうか
wktk
wktk
まさかこのまま続きが投下されないなんてことは無いよね…?
ワッフルワッフル!
ナイフの刃を‘切り裂く’動作を意味する親指側ではなく、
‘叩き壊す’動作を意味する小指側に構える。
こちらの本気が伝わったのか、漆黒の獣は間合いを測る。
リアはできるだけ遠くまで離れ、固唾を呑んでいる。
リア……
もし僕がやられたら、リアの身に危険が及ぶことなど、容易に想像つく。
なにがなんでも、というレベルではない。
全てを賭けて、この獣を倒さねばならないのだ。
眉間、喉、そのどちらかにこいつを入れる。
ただ、それだけのこと。
勝負一瞬。
先に動いたのは、驚いたことに自分からだった。
「ふおおおおッ!!」
重心を低くし、襲い掛かる。
対する獣は、体重で押し潰さんと、フォークボールのように急角度で降ってくる。
「――――――ィィィィィィ!!」
「ハァ……ッ、ハァ……ッ」
死合はあっけなかった。
僕のナイフは確実に獣の喉元を捕らえている。
この獣自体、得体の知れないものだが、これ以上ダメージを与える方法など僕は知らない。
言わば、自画自賛の出来だった。
一方、僕の方は……
――――無傷。
いや、かすり傷の一つはあるかもしれないが、僕の完全勝利だ。
上手くは説明できないが、敵の攻撃の瞬間、身を引いたのが勝因だっただろう。
運が良かったか、敵の体重がそのままナイフにベクトルを……もういい、あまり説明したくない。
勝ったんだから良いじゃないか。
獣はゆっくりと光を帯び始め、無数の蛍となって消えていった。
息を整える暇もなく、歓喜の声が、僕を祝福してくれた。
「Mori〜」
とてとてと走ってきたと思ったら、その速度を落とすことなく力いっぱい抱きついてきた。
リアの腕には、引っかき傷がいくつか見受けられた。
「リア……」
そう一言言うと、僕はリアの頭に手を回した。
「ヒュイーン」
ドアの閉じてゆく音が聞こえた。
……そっか。あれから疲れて眠ってしまったんだ。
としたら、さっきのはリアかな?
……
そういや、りんご結局食べられなかったから、リアおなか空いてるだろう。
ぐぅ〜。
僕もおなかが空いていた。
……
ん? 柑橘系の酸っぱい匂いがするぞ。
何か、来る。
「ぐふっ」
腹が圧迫され、
「もごっ」
スッパーイ。なんじゃこりゃ。
強烈な酸味にびっくりし、僕は目を開けた。
リアがおなかの上に乗っかって、何かを僕の口に押しこんでいるのが見える。
この苦味が残る後味。さてはグレープフルーツだな。
……っていうか、どこにあったんだ、そんなの?
手をベタベタにさせながら、
リアは、黄色いソフトボールから果肉をえぐり取っていく。
そして、また僕の口元に……
「わあ。一人で食べられるから、いいよ。」
‘お手’をする格好で手のひらを差し出してみたものの、そんなことはと眼中におかず、ねじり入れる。
ゆ、指まで入っているじゃないか!?
「〜♪」
あ〜あ、鼻歌まで唄い出しちゃったよ。
……
仕方ないので、このお姫様の気の済むまで放っておくことにした。
モグモグ。
二人でグレープフルーツ1個分食べ終わると、リアはもう1個と手を伸ばす。
2個あるらしい。
あ、そういえば。
「これどこにあったの?」
僕はグレープフルーツを指差し、疑問の表情をする。
「Ici」
なんやら、よーわからんつぶやきの後、リアはドアのほうを指差した。
……会話、出来ているのか?
おなかの上にいるリアをゆっくりと降ろして、ドアへと向かった。
戦いの時みたいに、鍵は掛かっていなかった。
「………」
無音の開く音。
部屋の狭い空間を見つめる。
……はぁ
予感が当たっていた。今度は全面黄色の世界。
塗装工の人が来て、ペンキの塗り替えをしたんだな、きっと。
もう、深く考えることは止めにして、そう結論付ける。
今、何時ぐらいなんだろう?
腕の時計を見ると、11時過ぎを指している。
獣との戦いが午前の方の4時だったから……それなりに眠れたことになるのかな?
はて? リアも眠ったんだろうか。
質問してみようかと思ったが、
その大きな目の下に隈を作ることなく、ほくほく顔でグレープフルーツを食べていた為、どうやら杞憂らしい。
元いた場所に寝転びなおし、さっきの獣についていろいろと考えてみた。
やっぱり、あれは運が良かっただけだよなあ。
対峙しあった時、明らかに僕より力が上であることを感じた。
あの一戦を想像してみても、再度同じように勝てる自信は欠片ほどもない。
ちょうど4時だったよな。
昨日の夜8時にここに来たことになっているから、ピッタシ8時間経過したことになるのか。
ん? 1日の3分の1。
なんかイヤ〜な予感がしてきた。
次の8時間後は……
もう一度、腕時計を見る。
11時30分。
顔面からサァーっと血の気が失われていった。
「リア!」
僕の推測をリアに伝えることにした。
不安を共有したいという訳ではなく、備えのための最善な行動をしただけに過ぎない。
リアの前でパスポートを広げ、数直線を使って解説する。
丁寧に、分かり易く状況を示すと、リアも段々と真剣な顔つきに変わってゆく。
判ってくれたようだ。
次は、今からどうすべきかを考えなくてはいけない。
……
さっきはドアが開けられなかった。
戦闘中は鍵がかけられるのだろう。
そう考えると、今のうちにリアを個室の中に入れるべきか?
……
赤い部屋が黄色くなるぐらいだ。個室で何が起こるかわからない。その方法は却下。
じゃあ、その逆。個室の中に僕。個室の外にリア。
……ありえねえ。ありえなさすぎて、思わず笑っちゃったよ。
ふぅ。離れ離れになるのは論外。
じゃあ、二人とも個室の中へ……
未知と言うのは怖いもんだな。
この大きな白い部屋も危険だと思うが、どうなるか分からないという不安の方が嫌だった。
長々と考えたが、先の読めない以上、やっぱり待ち受けるしか術が無いっぽい。
わ。もうすぐ時間だ。
僕はナイフの握りを確かめる。
リアは……
あーあ、抱きつかないでくれよと説明したのに、思いっきり腰に抱きついちゃっているよ。
放せ。とは言わない。言えなかった。
リアの温もりのおかげで、僕も心のぎりぎりを保っているからだ。
「……」
「……」
…………
短針に長針が重なった。
これはなんという緊迫感と生殺し
続きがきてる〜
w-k-t-k-
wktkってレベルじゃねーぞ
575 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/01(火) 17:22:10 ID:9aAWc2Jc
リアはあはあリアはあはあ
あ!ごめ…あげちゃった死のう
wktk
これは素晴らしい
違ってたらごめんだけど、前に孕ませスレで書いてなかった?
男の憶測は当たっていた。
またもや、水晶が何も無い空間から光を集め合成されてゆく。
加速度による物理法則を無視して、急降下、急停止。
しかし、ここからは違う。
焼太刀のような赤みがかったビームを、男と少女の両名に。
男、473。
少女、180。
二人にとっては、何も意味を持たない数字。
解析を完了した水晶は、ビームを止める。
続いて、やはり、日の出の光が溢れると、
653が、ふっと現れ3秒間。
それも消えると、時同じくして全てが消えた。
音も光も風も無く、全てを消した。
白い部屋は、つい先程の平穏を取り戻した。1つの変化を取り除いて。
男は眺める。
少女は眺める。
今回は頭を使うことになるであろう。
一滴、また一滴と、換気扇から水が漏れている。
僕とリアは水滴の垂れている場所に恐る恐る近づいていった。
「なにかの、液体?」
毒なのかな? 劇薬なのかな?
僕の予想は裏切られる。
水滴の落下地点まで、あと2歩というところで、水の勢いが変わってゆく。
点であった液体は、やがて線へと形状を変え、みるみるうちに太く、煩く。
たちまち水たまりは作られ、その円は瞬く間に僕たちを飲み込んだ。
「hya」
水の温度にリアは声を上げた。
僕も靴を履いていないため、温度を直に吸収する。
多少は冷たいが、冷蔵庫の麦茶ほどではない。
水が踝(くるぶし)ほどまで来たところで、予想が確信へと変わっていった。
――これは水攻め!?
何が楽しいのであろうか。宇宙人。
今月の給料分くれてやるから、ご容赦いただきたい。
しかし、そういった僕の願いは届かない。
……何か逆に、水の勢いが増しているように感じるんですけど、気のせいでしょうか。
「はあぁ」
落胆と緊張の交じり合った溜息を吐く。
わかりましたよ宇宙人さん。この状況下で生き抜けって事ですね。そうですか。ああそうですか。
悪態をつけながら、もう1回、同じような溜息を吐いた。
だが意味合いは違う。心のスイッチを本気モードにさせたのだ。
リアの目線に合わせるように膝を曲げ、にっこりと微笑む。
「がんばろうな、リア」
目に涙を浮かべながらも、負けじと微笑み返してくれた。
考えろぉ。考えろお。
水は僕の首元まで来ていると言うのに、一向に打開策は浮かばない。
パスポートと鉛筆はポケットの奥深くにしまう。
グレープフルーツの皮とりんごの芯も、同じく押し込んだ。
何の役に立つか分からない。
無駄とわかりつつも、この部屋にある物全てを身につける
ドアも幾度となく叩いた。蹴った。押した。引いた。ナイフで突き刺そうとした。こじ開けようとした。
びくとも動かなかった。
これ以上、どうしろと。
リアは僕の首に手を回し、抱っこの形で水を防いでいる。
すでに足は地面に届いていないので、疲労の色を浮かべていた。
「Mori……」
言葉の壁など、最早存在しない。
何を言いたいのか、手に取るように分かる。
「大丈夫だよ、リア。何も心配することはないよ。もうちょっとだけ頑張ろうね」
温かい言葉と一緒に、細い髪の毛1本1本を労わるように撫でる。
髪の手触りを確かめているうちに、いよいよ僕の方もヤバくなってきた。
換気扇の滝からは、波のうねりも激しくする。
とーん、とーん、と空気の確保をするために、水の中軽くジャンプ。
……気分わりい。それになんか余計に疲れるような気がする。
左手でリアのお尻をしっかり支え、右手で背中から強く抱くと、立ち泳ぎに切り替えた。
お、重い。波で体が安定しないし、長くは持たないかも……
……
……あぁ、駄目だ。こりゃキツイ。悪いけどリアにも泳いでもらおう。
体力消耗が激しいと感じた僕は、問いかけた。
「リア……泳いで、くれるか?」
そう言い、リアを放そうとするが、
「Je, je ne peux pas nager!」
甲高い声を上げ、足を絡めてしまう。
うおっ。ちょっと、泳ぎにくい!
放そうとすればするほど、足に力を入れてくる。
「リア! 落ち着いて! リア!」
「Mori! Mori!」
「わ、わかったわかった。あばれないでくれ」
再び強く抱きかかえるまで、リアの慌てようは止まらなかった。
立ち泳ぎを始めてから、2時間は経っただろうか。
ひとひねりの策も出せないまま、とうとう天井に手が届く所まで来てしまった。
掴まれるところなど無いので、リアを支えたままずっとバタ足している。
足が動いているかどうかなんて感覚は、もう麻痺していて分からない。体力の限界。
とっくの昔に、ズボンは脱ぎ捨て、身に着けているものはトランクスとティーシャツだけ。
リアにも、ブラウスを脱がさせた。
スカートとキャミは、さすがに可哀想だったので取らなかったが、
今となっては、痴情とか恥じらいとかは関係ない。それどころではないのだ。
……
換気扇から流れは止まらない。
されど、あの換気扇こそが一縷の望みでもあった。
部屋の隅で耐えていた僕たちは、中央への移動を開始する。
ごぷっ。ぐっ、波が強い。でも……
体を傾けて、ゆっくりと進んでいく。
「App」
リアにも、波が掛かる。
ごめんよ、リア。でももうちょっとで……よっと。
手すりというには小さすぎたが、それでも4本の指を絡ませることはできた。
「これで、少しは、楽に、なるか?」
荒い呼吸をしているはずだが、怒涛の水音で聞こえない。
僅かばかりの休息をとった後、換気扇を凝視した。
「これが最後の蜘蛛の糸……」
近くで見てみると、意外に大きい。
1m四方の正方形。
その滝壺からは余すところ無く濁流が降り注ぐ。
……動かすか。
リアを抱えているので、片手しか使うことはできない。
それでも力を振り絞って、上下にと揺らしてみる。
動けえ! 動けえ!
そんな僕の苦労を嘲るように、変化は訪れない。
換気扇を一周してみたものの、事は同じだった。
……駄目なのか。
そうだ。換気扇の真ん中に行ってみよう。何かあるかも。
僕は、リアを換気扇の淵に掴まらせると(もうリアの短い手が楽々届くところまで水位は上昇していた)、
疲れた体に鞭を打ち、飛泉の中へと潜り込んだ。
水圧が物凄い。
流れに耐えてジンジンと痺れる指を酷使しながら、換気扇の網目を進んでいく
真ん中まで、辿り着いたか?
よし。この辺一帯を探してみよう。
っしゃああ! 頼む! 何か起これ!
探し、揺らし、探し、揺らす。
何で!? 何でだよお! あああっ!
指が滑ってしまった。
水中奥深くに、沈められてしまう。
くそお! 何やってるんだ!
酸素不足で頭が熱い。
急いで水面まで漕ぎ上がる。
「Mori〜!」
顔を出すと、少女の助けを請う声が聞こえる。美しかった長い金髪を振り回しながら。
「リア!」
顔1個分しか残されていない空気を、波と戦いながら呼吸している。
何度も水を飲む姿が映し出される。
水位の上昇は、止まらない。
もう……終わりなのか……
頭の中の糸がからまった。
体中の血が全て凍った。
死を感じた。
「mori〜」
リアの断末魔を眺める。
金縛りにあったように、体は動かない。
僕は、リアの死を、悠々と、恍惚と、魅入る。
少女が死ぬ。
少女が死『うおおおおおおおおお!!』
生涯随一の雄叫びをあげた。
違う! そうだ! オレ様は‘モリ’だ。 待ってろリア!
空気さえあれば助かるんだ。
再び、換気扇のところまで寄り、リアの体を支える。
空気さえ、あれば……!
僕は助けたい。リアを助けたい。
空気!
何故だ!? 何故、僕は今呼吸ができる!
部屋の中にあった空気か?
部屋の中にあった空気を使って、呼吸をしているんだな!
じゃあ、大量にあった空気はどこに行った!?
本当に密閉された空間だったら、空気の行き場は無い!
何処かに、必ず空気口がある!
天井に頭をぶつけるのも構わず、高波に目がさらわれるのも構わず、360度を見渡す。
見つからない。空気を脱出させる場所は見つからない。
無いのだ。何も無いのだ。
見えるのは、蛇口の働きをしている換気扇と、白い壁のみ。
白い壁のみ!
ラストギャンブル!
水に呑み込まれる中、側面に近づき、
壁と口付けを交わした。
僕たちは、一言の会話も交わさず仰向けに寝ている。
疲れがようやく収まろうとする時に、今度は右足が激しく痛み出してくる。
10mの落下のときに足を挫いたらしい。
しかしそれは、生きている実感。僕は苦笑いを浮かべる。
顔を斜めに傾けると、胸の上下がおとなしくなったリアと、さらにその向こうに朽ち果てた衣服。
たすかった……
自分にすら聞こえない声で呟くと、非道く感傷的になって、涙が頬を伝う。
助かったんだ。
通気性抜群の壁は唯一片の支障も無く、生命の存続を受け入れてくれた。
リアにも壁にキスさせると、同時に水が消失した。
こうして足が痛んだわけだが、
仮に骨折しても、切り取られていたとしても、今の安堵感は変わらないだろう。
……
気づくと、服や髪が濡れていない。
水と共に消えたのだろう。
服を着るため立ち上がろうとした時、唐突にリアが唄いだした。
「mi mi fa sol sol fa mi re 〜♪」
……
よかった、リアも無事なようだ。
……
フランス少女の凱旋歌に、僕も付き合うとしますか。
楽しい時間と言うものは、忽ちのうちに消えて無くなる。
青色に変化した部屋からブドウを持ってきて、仲良く分けあった。
パスポートの隅の隅までをも使い、仲良く描きあった。
手遊びや、鬼ごっことかもしてみた。
有限の時間を余すところなく過ごすと、
お別れの時間がやってきた。
7時55分。
もうすぐ、この莫迦げた宇宙人の実験が終わる。
僕たちは並びあって壁にもたれかかり、寂然の時間をつづる。
手ぐしで優しく髪を梳いてやると、リアは体を寄せて囁く。
「J'ai ete ravie de m'entretenir avec vous」
心のこもった言葉。
「僕もリアといて、とても楽しかったよ」
リアの目をまっすぐに見て、微笑みかける。
これからどうなるかなど、見当がつかない。不安も無いわけではない。
ただ、愛しく想うこの空間が、いつまでも続いて欲しかっただけだ。
行きと同じように、ゆっくりしたまどろみが近づいてきた。
まぶたは閉じられる。
五感を失うほんの前、
リアの匂いがふわり漂い、
――chu
何か、頬にふれた。
「Merci」
ありがとう、リア。
―― Fin ――
La-Piece〜ラピエス〜 (日本語で「部屋」)
>>520-525 >>532-541 >>547-553 >>564-571 >>580-592 読んでくれdです。
なんだかんだでまた長くなってしまいました。
妄想を言葉で表現するのは難しいですね
もっとボキャブラリーを増やさねばなりません。
あ、ちなみに筆者は仏語全く話せません。
なぜか仏語会話集が家にあったので、それ使わせてもらいました。
あとエチ無しでごめんなさい。だってだって仏少女とハァハァ。いや、だめだろ。たぶん……
それでは良いGWを!
>>579 上の「満月」というやつが初めての作品です
誰かと文体似ていたのかな
>593
おつかれさまでした。 エロなしは正直残ね…ゲフンゲフン
ともかく、クライマックスで決意した少年の熱さが気持ちよかったです。
実験を生き延びた二人はこれからどうなるのか
他の人類60億人、30億ペアはどうなったのか
宇宙人の目的とは結局なんなのか
数々の謎が残っているようですが、当面は想像で補うことにいたします。
GJです!水攻め怖ぇー
エロなしの方がすっきりしてていい感じに思った。
一期一会的流れはかなり俺好み。リアかわいいよリア
とりあえずGJ
>595
リアは俺の隣で寝てるぜ^^
>>593 GJそして乙
いろいろと謎は残ったわけだけど
自分なら途中でバッドエンドです… orz
他の人がどんなイベントだったとか
どれくらい生き残ったとか気になりますが
貴重なGWを使って投下ありがとうございました
>>594 年齢は23〜28くらいだと思う
仕事 公営ギャンブルなどから想像したわけですが
>>593 GJ!
ある意味文字通り、仏少女が'`ァ'`ァしながらの濡れ場で一人盛り上がってました
ラストもいい感じで締まってると思います
お疲れ様でした
>>593 何となく「CUBE」を思い出したよ。
緊張感と萌えを有難う。GJ!
おい、エロが無いじゃないか!!!!!
だが、GJ!!
601 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/04(金) 20:48:15 ID:5a96ODtm
いちおage
彼の家族は無事だったのかが気になる。
元に戻ってからの後日談的なものが見たくなる感じ。
思わぬ再会とかあっても萌えるし。
伏線
つパスポート
GJ!
エロは無かったけど、濡れ場はあったという罠
>>604 貴様それでうまいこと言ったつもりかっ!!!
つぎの災害?はなんだろ
何がいいと思う?
脱線事故とか
災害以外でも二人きりネタはできそうだな。
クーデターで政権が変わった王国。旧王家の王女と騎士(あるいは王子と女騎士)
宇宙の果てまで航行中の宇宙船内。 冷凍睡眠から目覚めた少年と少し年上の少女。
町から遠く離れた流刑地、もしくは島流しの孤島で二人きり。
主人公二人以外の世界だけが
二人をおいてけぼりにしている状況というのを考えてみた。
タイムスリップものってのは?
原始時代や人類が死滅した未来に男女2人だけ
あるいは歴史物で現代人は2人だけ
毎朝駅のホームと電車ひと駅分、いつも二人きりになる、とか。
図書館の司書と、入り浸るようにして本を読んでる利用者の閉館間近、とか。
Hに発展させるのは難易度が高そうだが、心の機微と交流は書き込めそうだ。
612 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/15(火) 20:29:35 ID:oxaSQO25
hoshu
mori〜
GJ過ぎる
↑IDがモリに似てるぞ
615 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 01:44:16 ID:pXGfFKNT
ほしゅ
616 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 20:44:05 ID:J+rI+1EQ
保守
617 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 21:03:15 ID:RcBxyhhy
星湯
【不可抗力】男の子と二人きりになってしまった
>>619 い、いやこれはもしや・・・・・・
アッー!
mori〜mori〜
こうして雑談していればまた書き手が降臨してくれるかなあ
くれるかも
626 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/25(金) 00:59:17 ID:H08xDBtv
age
>>1の例みたいに危機的状況にある時に二人きり、という縛りはないんだよね?
そうならネタはポロポロと思い付くけど
wktk
じゃ、やってみるよ
筆遅めなんで気長に待ってて
w-k-tk
良スレ wktーk
そろそろパンツを脱いでもいいですか?
>>634 おkww 俺も一緒にwktkするぜww
>>634 脱いでもいいが、ズボンをはいたまま脱げよ。
全くだwww
逆に考えるんだ。
ズボンの上にパンツを履けばいいと考えるんだ
あれか。長袖の上に半袖みたいなものだな。
それはTシャツでやるがな
なにこのカオスwww
神召喚の儀式では?
儀式ワロスwww
なんか今にも、神SSの投下される気配がムンムンと感じる
ティッシュ準備してきます
>>639 それだと違和感あるな
どうせ逆ならスパッツの上にパンツはいてみてくれ
ほしゅ
保守
結局神は現れず・・・・・・orz
いや、儀式自体は成功している・・・・・・・ハズ
同じく、ネタ模索中
・・・・・・電波受信中。
……電波発信中
ピピピピピ
オウトウ セヨ
タダイマ デンパ ハッシンチュウ
オウトウ セヨ
オウトウ セヨ
オウトウ セヨ
...ハァハァ
タダイマ デンパ ハッシンチュウ...
ハァハァ... ウッ
654 :
書く人:2007/06/04(月) 20:08:26 ID:+UD6aEda
駅前にコンビニすらない。そんな田舎を想像できるだろうか?
僕は想像できる。だっていつもそこから電車に乗っているのだから。
家からバスで20分の無人駅。そのバスは、一日5本。
しかもバスの時間と電車の時間が三十分以上ずれている。
だから、僕は毎日三十分を、ペンキの剥げた待合室の駅で一人で30分の時間を過ごす。
中学に上がり、電車通学になった当初は、その時間が限りなく苦痛だった。だがもう4年近くたった今では、それにも慣れた。幸いなことに読書を覚えたから。
朝夕の駅での30分と、電車に揺られる20分。計二時間近い時間は、趣味の時間となった。
ある意味、ペンキの剥げた待合室は、家にある自分の部屋よりも、落ち着ける場所になっていた。
そんな僕の領域に、この春、侵略者が現れた。
655 :
書く人:2007/06/04(月) 20:18:10 ID:+UD6aEda
侵略者は金髪だった。やや釣り目で、派手な感じの女の子だった。
その彼女が、同じ駅を利用するようになった。
制服は、僕の通う高校の近くにある女子高。お嬢様校、というわけではないが、かわいい制服で有名な学校だ。
その制服を着崩した彼女は、毎朝駅舎で携帯を片手に時間を潰していた。
華やかな―――悪く言えば遊んでいる感じの、女の子。
僕は、どうにもその女の子に気おくれを感じていた。
派手目の彼女に対して、僕は地味の極みだ。髪を染めるなど夢のまた夢。
どうもとっつきにくかった。
まれに読んでいる教科書のタイトルからして、どうやら学年自体は一つ下のようだが、それでも今一苦手意識を払しょくできない。
向こうも、どうやらこちらを苦手に――ひょっとしたら嫌悪すらしているのか、話しかけるどころか、目を向けてくることすらない。
656 :
書く人:2007/06/04(月) 20:25:07 ID:+UD6aEda
それでも双方に不幸なことに、駅舎にはあのペンキの剥げたベンチが一つあるだけ。
だから僕と彼女はそのベンチの両端に陣取り、それぞれ互いを見ないように本と携帯を見つめるという、実に胃に悪い30分を朝夕に過ごさなくてはならなかった。
だがそんな日々は、数ヶ月後の夏の日、唐突に終わりを迎えた。
w-k-tk
やったよ新作だ!
658 :
書く人:2007/06/04(月) 20:50:59 ID:+UD6aEda
初夏の台風が、僕の住んでいる町――というか村を直撃した。
学校を出た時点でかなりの風と雨があり、時に雷が鳴っていた。それでも公共交通機関は動いていて、電車は定刻道理に動いていた。
それに飛び乗り、僕と、そして彼女は駅に降り立った。
また憂鬱な30分かと、ため息をつきながら僕はベンチの右端に座る。
一方の彼女も濡れた服が不快なのか、わずかに顔をしかめていた。
その顔は、少し青ざめているようにも見える。
寒いのかもしれない。
(放って…おけないよな)
余計なお節介かもしれない。拒絶されるかもしれないとも思ったが、良識がそれをねじ伏せた。
仮に余計なお世話で、キモい、ウザいなどと言われたとしても、自分が嫌な思いをするだけだ。
そう思い、僕はベンチから立ちあがり、駅舎の片隅にある、ほこりをかぶった棚に歩み寄り、そこに置いてあったブリキ缶を手に取る。
その中身を覗いて、僕は少し安堵する。
よかった、まだある。
僕はそのあと、できるだけ人を安心させれるような笑顔を意識しながら、振り返った。
「あの……コーヒー飲む?」
「…はぁ?」
659 :
書く人:2007/06/04(月) 20:59:31 ID:+UD6aEda
失敗だったかな、と僕は思った。
女の子は明らかに不審そうだ。
最近は通り魔的変態犯罪者がぽこぽこ出てくる世の中だ。
僕もその類と思われたのかもしれない。
けれど、彼女が続けた言葉で、勘違いだったと理解する。
「コーヒーっていったって、自販ないじゃん」
「いや、これを使う」
犯罪者と思われたのではないと安心した僕は、先ほどより少し自然に笑顔を浮かべながら、缶の中身を取り出した。
それはヤカンとスチールのカップと、そしてキャンプ用のガスコンロに、マッチ。
僕はそれをベンチに置くと、マッチでコンロに火をつける。
「ちょ、か、勝手に使っていいの!?」
「大丈夫だよ。これ、僕が用意したものだから」
冬場は近く(といっても歩いて30分)に住んでいるおじいさんが管理していて、ダルマストーブが焚かれている。だが、時にはその火が消えているときもあり、そんな時のために僕は家の倉庫にあったこれを、駅に持ち込んでいたのだ。
冬場などは、これで入れたコーヒーを片手に、本を読んでいる。
660 :
書く人:2007/06/04(月) 21:05:07 ID:+UD6aEda
一方の女の子は、目を丸くしていてこちらを見ている。
僕は火の大きさを調節しながら、
「迷惑…だったかな?」
「別にそんなんじゃないけど……どうして?」
問い返されて、僕は彼女の顔を見る。前から色白だとは思っていたが、今日のその顔色はいつもよりさらに白く見える。
「どうしてって、寒そうだから」
「寒い?別にあたしは寒くなんてないわよ」
「けど、顔色悪いよ?」
「わ、悪くなんてないわよ!」
なぜか、本当に脈絡なく、彼女が声のトーンを上げた。
何か気を悪くしたのかとびっくりしていると、彼女ははっとしたように、再び声のトーンを下げて
「さ、寒くなんてないわ。大体、顔色だって悪くなんて…」
と彼女が言いかけたそのときだった。
661 :
書く人:2007/06/04(月) 21:17:02 ID:+UD6aEda
爆発音がして地面が揺れた。窓の外が真っ白になり、木製の駅舎の全体が軋んで音をたてた。
雷が、近くに落ちたのだろう。
流石に僕もこんなことは初めてで少し驚いたが、その直後、もっと驚くことが起きた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
落雷の直後、彼女は雷に負けないほどの大きな悲鳴をあげて、こっちにタックルしてきた。どうにか踏みとどまった僕の体に、彼女は手をまわして、思い切り抱きしめてくる。
「ヤダヤダヤダヤダ!怖い怖い怖い怖い!」
抱きついてきた彼女の体は細く、やわらかく、いい匂いがしていたが、そんなことを感じ入っている余裕がないほどに、彼女の細い体はガクガク震え、涙声で叫んでいる。
「だ、大丈夫だから、落ち着いて」
「う、うん。……?きゃぁっ!?」
「うわっ!」
今度は、彼女は僕を突き飛ばした。
尻もちを突く僕を彼女は見下ろしながら、自分の体を守るように抱いて、こちらを見下ろしてくる。
「な、何しようとしたのよ!?」
「……何もしてないよ」
あまりに不条理。僕は流石に怒りを感じて彼女を見返す。
彼女は色白の肌を、先ほどの血の気のない様子から打って変って血色良くしていた。
何か言い返してくるかな、と思っていたら
「……ごめん。混乱してた」
「ええっ!?」
「な、何よ!その「ええっ!」って!?」
「素直に謝ってくるとは思ってなくて」
「何よそれ!悪かったと思ったら謝るにきまってるじゃない」
「そだよね。ごめん」
ふくれっ面をしながら、そっぽを向く彼女に、僕は自分の失礼を謝りながら立ち上がり、転んだ時に取り落としたやかんを拾い…
「……ひょっとして、顔色悪かったのって、雷が怖かったから?」
「そ、そんなわけないじゃない!」
図星だったらしい。
662 :
書く人:2007/06/04(月) 21:22:11 ID:+UD6aEda
僕は真っ赤になって反論してくる彼女を見て、少し笑った。
「ば、馬鹿にしたわね!」
「違うよ。雷を怖がるなんてかわいいな、って思ったんだ」
そういう僕の返答に、彼女は顔を少ししかめる。
「何それ、ナンパ?」
「ち、違うよ!」
今度は僕が赤面させられた。ナンパなど、地味道一直線の僕には縁のない言葉だ。
そんな僕を、彼女は値踏みするように見てから。
「ま、確かに、そんなことできそうに見えないもんね。子供っぽいし」
一つとはいえ年下の少女にそんなことを言われると、流石にきつい。
一方言った方は少し機嫌が良くなったらしく、ベンチに座ってこう続ける。
「ま、とにかく。付き合うわよ?」
「へ?」
ナンパにってことか?
そう思った僕の思考を読んだのか、それともただの偶然か、彼女はこう続けた。
663 :
書く人:2007/06/04(月) 21:26:41 ID:+UD6aEda
「コーヒー、淹れてくれるんでしょ?」
それこそが、僕―――喜沢弘文が初めて見た彼女―――椎名マリアの笑顔だった。
反応次第で続きを書くかもしれません。
664 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/04(月) 21:30:37 ID:Cux/diuD
儀式は成功してたんだ!
GJ!
続きを下さいオナガイシマス(´・ω・`)
続きに蝶期待
次の投下まで待ってるぜ、裸エプロンで
ここで終わるだなんて人道に悖ると思うわけですよ
GJ!雷怖がる娘カワユス
続き待ってます!
もしかして書く人さんって、結構いろんなスレでSSとか書かれてます?
668 :
書く人:2007/06/04(月) 21:54:22 ID:+UD6aEda
ええ。とはいっても作品数自体すくないですが。最近はボーイッシュスレに生息してました。
すみません
支援のつもりがうれしくて入れ忘れてしまいました
w-k-t-k-!
続きに期待
wktk
おおぉ!
儀式が成功していたぁ!
もうズボンすら脱いでしまうような超絶ワクテカ帝國でありますよ
>>668 ボーイッシュスレの作品も見てますよ!
あれも良い。
何はともあれ続きwktk
ちょ、ここってこんなに人いたのかよ!
一気にレス増えててびびったわw
そしてこっちはスランプに突入・・・・・・・・・・(もともと文才そのものがないけど)
ピピピピピ
オウトウ セヨ
ノイズガ ヒドクテ ウマク ジュシンデキナイ
オウトウ セヨ
クリカエス オウトウ セヨ
(↑言い訳)
マリアたん萌え
構図としては二人きり(と思っている)の男女を除くHENTAI集団といったところですな、漏れも含めて。
これは期待せざるをえない
ギャップ萌え
夜のプールで二人っきり、というシチュエーションを考えてみたので投下します。エロは無しです。
お気に召さない場合はスルーしてください。
俺は悪くねぇ。俺に非はねぇ。
文化祭の演劇に使うオブジェ。教室の半分を占領するそれらを塗装する際にはかなりのペンキが飛び散るだろうと予想し、後片付けの時に一気に洗い流す為にプールの中で塗装を行う。
この案を出したのは我が三年四組のクラス委員長だった。
だが、模試において県一位に君臨する彼にも、予想出来ない事があった。
まず俺が、プールサイドでクラスの女子と口論になった。原因はよく覚えていない。
次にその愚かなる女は、言論を放棄し俺に殴り掛かって来た。
最後、これがトドメになった。
確かに俺も言い過ぎたかと思い、その拳を俺は・・・敢えてだぞ、敢えて。受けてやったんだ。別に避けるのが遅れてクリティカルヒットした訳じゃない。ないったらない。
まあそしたら、だ。吹っ飛んだ俺は後ろに積んであったペンキ缶×10に突っ込み、超至近距離にいたその女もペンキ缶の雪崩に巻き込まれ、気が付いた時には十色のペンキの池の中に二人揃って浮かんでいて、結局俺とその女は放課後、プール掃除に励む事になった。以上。
その日、笹丘高校三年四組坂下喜鈴(さかした きすず)は、放課後真っ直ぐ家に帰らず、学校のプールに向かっていた。
今日の二時間目に騒ぎを起こしたもう一人の人物が、先に来て掃除を初めている筈だったのだが。
「穂高ー、ちゃんと掃除・・・」
喜鈴の声はそこで中断された。肩で切り揃えた黒髪が風に靡いて揺れた。彼女のゲンナリとした目線の先には、騒ぎの張本人の一人、穂高光司(ほだか こうじ)が、陽光に輝く茶髪のウルフヘッドを床に着けてプールサイド(ペンキの被害が無い箇所)に大の字になって眠っていた。
傍らには近所のコンビニで購入したとおぼしき「デラ・べっぴん」が置いてある。
喜鈴の脳は即座に状況を理解し、答えを弾き出す。
曰く、「コイツ、掃除しないでエロ本読んで寝てやがった」
喜鈴の周りに、死神を思わせる暗い気が立ち込める。
魂を狩る鎌の代わりに掃除用のデッキブラシを拾い上げ、それをゆっくりと光司の頬に当てて一声さけぶ。
「とっとと起きなさい、このバカ――――――!!!」
言うが早いか、喜鈴はブラシを支える両手を凄まじい速度で前後に動かす!
ごっしゃごっしゃごっしゃごっしゃごっしゃごっsh
「ぎぃやあぁぁああああ!!いてててかっ顔がっ、顔が―――っ!!!」
穂高光司はこの日、『松の木にひたすら顔をマッサージされる』という悪夢で居眠りから覚醒した。
「・・・ぁーったく、何でてめえと二人でプール掃除しなきゃなんねーんだよ」
猫に引っ掻かれたように赤くなった頬を身を守ろうとする本能から左手でさすり、しかし二度目の制裁(と書いてデッキブラシと読む)を恐れた意識は右手に持つブラシを動かす速度を維持したまま、光司はひとりごちる。
時刻は既に午後7時を回って辺りは暗くなり、遠くのグラウンドで野球部が練習用につけているナイター灯の光だけが、暗がりの中で光司の視界を保っていた。
その暗がりに、傍目から見ればとても目を引く影が一つ。学校指定の水着の上に体操服の半袖シャツを着た、喜鈴だ。肩で切り揃えた髪も首の後ろで纏めてあり、水溜まりの上に立つその姿はまさしく水の妖精。
「仕方ないでしょ?私もちょっとやりすぎたけど、元はあんたが悪いんだから」
・・・しかし、その妖精はかなり機嫌が悪いようだ。よくよく見れば眉間には皺も寄っている。
「なんでちょっと休憩してただけであんなにきーきー騒ぐんだよ」
「30分も居眠りするのは休憩とは言わないわよ」
「うるせぇな、成長期は睡眠が必要なんだよ」
「180センチオーバーで何が成長期よ。どうせそれ以上寝ても脳みそ溶けるだけよ」
「んだとー、さてはお前、自分がチビで幼児体型だからってひがんで・・・すいませんごめんなさい黙ります二度と言いません許して下さいデッキブラシはもう勘弁してください」
再び顔に近付いたブラシに少なからず命の危険を感じて平謝りする光司。必死に陳謝する男を20センチ下の視点から一瞥した後、喜鈴は再び無言でブラシを床に滑らせる。
「・・・どうせあたしはあんたの好みの体型じゃないですよーだ・・・」
拗ねた表情を浮かべた喜鈴の口から微かに漏れた呟きに気付く事無く、光司は「さっさと剥がれろペンキ」と思いつつ、デッキブラシを前後に動かしていた。
以上です。携帯からの投下ですので、一気には書けませんでした・・・って、所々段落が潰れてるし・・・こんな奴の文章でよろしければ、皆様からの要請があれば続きを投下したいと思います。
ではでは、失礼しました。
話としては面白いので是非期待したいが、
欲を言えば、携帯からではなくPCから投下してホシス
すいません、一人暮らし始めたばかりでプライベート用のPCを買う経済的な余裕が今のところないんです。
ご希望に沿えず面目次第もございません。
二人の掛け合いも楽しいし、無理せず続けてくれると嬉しいですよ。
期待してます。
40〜60文字を目安に改行があるといいかな。
続き待ってます。
続きガンバリ!
つC
つPC
690 :
684:2007/06/09(土) 11:30:48 ID:qPPADhqU
どうも、名無し改め684です。アドバイス有り難うございます。今度は改行に気を付けます。
現在書いておりますが、水曜日迄どうにも都合がつきませんので、多分木曜日以降に投下出来ると思いますので、期待して下さる方々には申し訳ないのですが、もう暫くお待ちください。
因みに、キャラは全て学生時代に書き貯めていたものからの出演です。
wktkwktk
692 :
684:2007/06/09(土) 15:04:32 ID:qPPADhqU
第二話の途中迄ですが、閑話休題として投下します。
タイトル付けました。
『私立笹岡恋模様』
プールにペンキぶち撒け事件。後々になってからそんな捻りも無ければ踏ん切りもつかないネーミングで呼ばれる事になった日から、早くも三週間。
光司はまたもや喜鈴と二人っきりだった。
「おいスイッチ係ー!そこの操作また違うぞー!」
オブジェの中に隠された各種舞台装置のスイッチをぼんやりと叩く光司に、監督を勤める生徒から怒号が飛ぶ。
「んだようるっせぇな・・・ひででででふいまへんふいまへんひゃんとやりまふごうぇんなひゃいごうぇんなひゃい(訳:いててててすいませんすいませんちゃんとやりますごめんなさいごめんなさい)」
気だるげにぶつくさ言おうとした口から、即座に謝罪の言葉が流れる。但しその対象はオブジェの外に居る監督ではなく、『つねる』という可愛い動作をを通り越して彼の頬を激しく引っ張っている隣のクラスメイトであるが。
オブジェの塗装の前にくじ引きで決まっていたのだが、この舞台に於いて装置のスイッチを任せられたのは光司と喜鈴だった。
「ちゃんとやりなさい。あんたのせいで私まで怒られるんだから」
冷静に言ってはいるものの、喜鈴のこめかみにはかなり分かりやすく青筋が浮いている。
「練習なんてしなくても大丈夫だろー?本番で間違えなければいいんだし」
機材の詰まった暗い小部屋で女子と二人っきりというスレの皆様からすれば羨ましい事この上無い状態で、前回と同じく色気の『い』の字も無い文句を言う光司。だが喜鈴も負けじと反論する。
「いいえ、練習しといて正解だったわ。お姫様にスポットライトを当てるシーンでナイトに当てるわ、間違ってマイクの電源落とすわ、まさかあんたがここ迄機械オンチだとは思わなかったわよ・・・って!ああもうこのバカお姫様の登場で火花出してどうすんの!?」
「うお!?い、いや、こっちのがなんか勇ましさが出ねぇ?」
「言い訳してないでさっさと止めなさい!」
「えーと、あ、こ、これかっ!?(ぽちっ)」
「ちょっ、それはスモーク!」
「スイッチ係ぃぃい!いい加減にしろおぉぉぉ!」
かくて笹岡高校第二体育館に、監督のやるせない叫びと打撃音(混乱してパニック起こした光司を喜鈴が張り倒して鎮めた音。沈めたと言った方が良いか)が響いた。
「あーもうっ!あんたのせいで散々よ!」
「わ、悪かったよ・・・」
保健室のベッドに横たわる光司(主に頭部の打撲により)に、喜鈴が容赦なくがなりたてる。保健室では静かに。
「まったくもう、こうなったら、今日の放課後に残って練習するわよ!」
「はぁ!?勘弁してくれよ、今日は七時から見たいテレビが」
「(丸椅子を上段に構えてとびきりの笑顔を浮かべながら)何か言った?」
「いえ、何でもありません。喜んで練習致します」
ベッドの上で土下座する光司にあくまでも穏やかな笑顔を向けたまま、喜鈴は保健室を後にした。
「・・・ふふ、今日こそ、アイツに・・・」
階段を登りながらそう呟いた喜鈴の顔には、先程迄の絶対零度の微笑みではなく、期待に胸を踊らせる恋する乙女の微笑みがあった。
「何でいきなり居残れなんて・・・はっ!?襲われる!?俺ってば貞操の危機!?」
・・・喜鈴、考え直すなら今のうちだぞ。
695 :
684:2007/06/09(土) 15:29:54 ID:qPPADhqU
以上です。今回セリフが多かった・・・この後はいよいよイヤンでアハンな展開になる(筈、多分、きっと・・・)のですが、上手く書けるかどうか不安です・・・
ではでは、有り難うございます。
イヤンでアハンな展開だってよ!
舞ってました(´・ω・`)
697 :
684:2007/06/09(土) 22:05:11 ID:qPPADhqU
朝令暮改もいいところですが、作戦変更して書いた端から投下する事にします。
では、ドゾ。
放課後、体育館へと続く廊下の真ん中で、穂高光司は迷っていた。ズバリ、坂下喜鈴に従って練習するため体育館に向かうか、無視して家に帰ってテレビの前に直行するか。
まず、大人しく従った場合。今日の七時からのテレビ番組、『残暑を楽しめ!テレビ局対抗女子アナビーチバレー大会3時間生放送スペシャル!レイザー○モンも飛び入り参加!?』が見れない。
ぶっちゃけこれの為に今週のレポート課題やら宿題やらを全て終わらせ、今日は勉強しなくても良いようにしていたのに。
坂下に従ったら、そんな心洗われる番組を見逃す事になる。水着美女達のセクシーショットも、多分有るであろうポロリシーンも、生放送だと書いてあるのになぜか飛び入り参加する事になっているあの「フォーゥ!」の人も。
では坂下に従わずに帰宅した場合。この前のデッキブラシを凌ぐ凄まじい断罪が待っているだろう。というか、あれ以上のものを喰らったら絶対死ぬ。確実に死ぬ。
「・・・しゃあねえ、行くか・・・さよなら眩しき水着のマーメイド・・・さよならオッパイポロリ・・・さよならフォーの人・・・」
「廊下の真ん中で何ぶつぶつ言ってんの?」
「ぬぅわああぁぁぁ!?」
突如として背後に生まれた気配に、一瞬で全身に戦慄が走る。驚愕にすくむ身体を叱咤し、気配の主から距離を取る。しかし、そこに居たのは。
「・・・なんだ、坂下か。ビビらせんじゃねーよ。俺ぁまた、死神が出たかと思ったぞ」
「・・・あら、ちょうど良いところに屋台の骨組み用の立派な鉄パイプが」
「すいませんでした失言でした以後気を付けますのでお許しくださいってかマジでやめてそれシャレにならんから」
長さ五十センチほどの鉄パイプを手に取って握り具合を確かめるように素振りを始める喜鈴と、それを自分に当てさせぬべく早口で押し留める光司。
「全く・・・そんなにその番組見たいの?」
呆れ顔で聞く喜鈴。言い方を変えれば、何かに失望したかのような憂いを帯びた表情はとても美しい・・・右手から鉄パイプを放せば、だが。
「うちの弟が録画して友達と見るって言ってたから、後から見せてもらえば?」
「うぇえ!?マジで!?」
途端に表情を明るくする光司。喜鈴はちょっと引きながらも後を続ける。
「ま、まあ、別にあんたの為じゃないけど、そっちを気にして練習に身が入らなくなっても困るし」
「よっしゃ、だったらさっさと練習するか」
「・・・現金な奴・・・」
意気揚々と体育館に向かう光司。喜鈴はその後をついていきながら、少し溜め息を吐いていた。
練習は喜鈴の予想よりも苦戦した。
「・・・アーサーのセリフ、『見よ、我らを護らんと霧も出てきた。これで進軍を敵に気付かれる事はない』このセリフに合わせてスチーム・・・あ、これだ」
「それはスチームじゃなくて一番スポットライト。スチームはこっち」
「あれ?」
「・・・オリビア姫のセリフ、『嗚呼、騎士アーサー。貴方迄もが散っていったのですね』で照明を一気に落とし・・・うぉ、明るっ!?」
「眩しっ・・・ああもう光量レバー動かすの逆!」
「あ、でもこんだけ明るけりゃ騎士アーサー復活・・・」
「するか!」
「ほらまた違う。まったく、ここはこうやって・・・あれ?」「ぷっ・・・くく、何だよ、お前も結局間違って・・・」
「あらちょうど良い所に騎士アーサー愛用の銘剣フランベルジュが」
「誰だって間違いの一つや二つありますよね俺もその回数を減らすように努力しますからちょっと待ってその剣刃が波打ってて当たったらスゲエ痛そうぎゃああああああ」
「はー、疲れた・・・」
疲労困憊、といった様子で、光司は床に座り込んだ。時刻は九時を周り、隣に座る喜鈴にしても余り体力は残っていないようだった。
「あー、腹減った・・・」
「・・・さっきおにぎり五個も食べたじゃない、まだ食べる気?」
「コンビニの握り飯で腹が膨れるか」
二人は七時頃に喜鈴が近くのコンビニで買ってきたおにぎりで夕食を済ませたが、その時に吸収したエネルギー量は練習で消費したそれに追い付かなかったらしい。(それだけでは無く、光司が大喰らいである事も関係しているのだが)
途中、何度か見回りの先生が来たが、八時半辺りから来なくなった。
「まあ、大体は覚えたか」
「うん、間違う回数も減ったし、後はこの調子で練習すれば良いと思うよ。お疲れ様」
「うーい・・・」
二人がそう言って笑い合い、荷物を取りにオブジェの外に出る。体育館の照明は消され、窓からの月明かりだけが頼りだった。
「うぉ、暗っ。中に人居ないかどうか確かめてから消せよ見回り」
光司がそう言い、荷物を持って体育館の出入口を開け・・・
「え?」
「穂高?どしたの?」
光司の上げた声に、喜鈴が反応する。
「・・・開かねえ」
「は?」
「鍵、閉まってる・・・と、閉じ込められた!?」
「えええええ!?」
暗闇の中、二人の叫びが虚しく響いた。
701 :
684:2007/06/09(土) 22:46:15 ID:qPPADhqU
今回はここまでです。
ではでは、失礼しました。
GJ!
続きwktk
イヤンでアハンな展開…
つ、次だなwktkwktk
これはベタで良いシチュエーション
続きにwktk
こんなに強いwktkはいつ以来なのか・・
706 :
684:2007/06/11(月) 00:21:03 ID:Nf5tL6Uf
頑張ってエロ直前まで書いたんで、投下します。
ではどうぞ。
「う、嘘!?何で?体育館の使用時間延長届けは出したよ!?」
何故こういった状況に陥ったのかを必死に考える喜鈴と、往生際悪く扉をこじ開けようと必死に頑張る光司。
「(ガコガコガコ)だぁああぁ!!っきしょ、何なんだよこのお約束すぎる展開は!」
そんな事をしながら、五分程経過した頃。光司がある事に気が付いた。
「なあ、八時半頃、俺ら何してたっけ?」
「へ?えっと、オブジェの中で休憩して・・・」
「その辺りから見回りの先公来なくなったけど、もしかしてその辺りで、誰も居ないと思われて鍵閉められたんじゃねえか?」
光司の言葉に、弾かれた様に喜鈴が頭を上げる。
「あ!・・・って、じゃあもしかして・・・その辺りに施錠が終わったんなら、もう誰も・・・」
「校舎には居ないだろうな」
沈黙。暫くして、光司がまた声を上げる。
「そ、そうだよ!坂下お前、鍵持ってるんだろ?」
一般的にこの体育館は、使用時間延長届けを提出して使う場合、後から施錠する為に届けを提出した生徒に鍵を渡す事になっている。しかし喜鈴は表情を明るくする事無く、淡々と言う。
「・・・あるわよ、体育館用の外からかける南京錠の鍵が。あんた知らなかった?その扉に鍵穴は無いわよ・・・後から付けた、南京錠で閉める仕組みになってるから・・・」
これは何の冗談だろうか。光司は一気に脱力した。だが、諦めるにはまだ早い。そう、彼らには最終兵器があった。
ここで問題です。現代に於いて生活必需品であり、二十四時間いつでも使える通信手段と云えば?
『・・・ケータイ!!!』
二人は顔を見合わせて叫ぶ。それと同時に光司はポケットの中に手を入れ喜鈴は鞄の一番外側のポケットを開ける。
二人揃って折り畳み式携帯のフリップを開けて・・・そして二人揃ってガックリ。
同じ機種の携帯ならば機能もサイズも、受信の悪さも大体同じになるわけで。二人の携帯には『圏外』の二文字が悲しく光っていた。
『・・・これだからソフトバンクは・・・ッ』
二人は携帯を元あった場所に戻し、盛大に溜め息を吐いた。
「・・・上の階のギャラリーから外に出られねえかな。でかい窓もあるし」
「・・・この体育館が柔剣道場の上に作られてて、ここは実質二階で、この上のギャラリーは三階で、そこから飛び降りればどうなると思う?」
「ぬぅ・・・確実に飛び降り自殺になるなぁ」
再び、溜め息。光司はもう、全てが面倒臭くなった。そのまま横になって喜鈴に背を向け、鞄を枕に眠ることにした。
「寝るべ。なんかもー、何やっても朝までここから出られないっぽいし」
「・・・随分、強気ね。何でこんな状況で呑気に眠れるのよ」
喜鈴の呆れた声が光司の背中に向けられる。顔を向ける事も無く、言い返す。
「こんな状況で起きててもカロリー無駄に消費するだけだからな。お前も寝とけ」
「そうじゃない!何でこんな状況でそんなに冷静で居られるのよ!何でもっと慌てたりしないの!?何でこの暗い中でそんな平気なの!?これじゃあ私が馬鹿みた・・・」
光司は耳を塞いだ状態でその言葉を聞いていた。それだけ喜鈴は大声で怒鳴っていたのだが、その言葉を最後迄聞く事は無かった。
突然言葉が途切れた喜鈴を振り返り、光司はその顔を覗き込んだ。
―――そしてビックリ。
「うっく・・・ひっ・・・ぐすっ・・・」
喜鈴は泣いていた。
「な。」
そして情けない事に、光司は呆然とするしか無かった。
喜鈴が泣きながら自分に抱きついてきたとしても。
更にその後に凄い事を言われたとしても。
「ひっく・・・最悪・・・もおやだ、くっ・・・うぅ、す、好きな人に、こんな顔見られたく無かったのに・・・ぐすっ、うあぁぁぁん!えぅっ、ひぐっ、ぅえぇぇん!」
やがて光司は、震える背中と細い腰に手を回す。そして後ろから小さな肩をぽんぽんと叩き、自分の胸で泣く少女に言い聞かせる。ゆっくり、ゆっくりと。
「安心しろ。怖いんなら、側に居てやるから。頼り無いかもしんないけど、泣きたい時に顔隠すぐらいはしてやれっから」
光司は喜鈴の頭を撫でながら上体を起こし、身体を密着させる。喜鈴の気が済むまで、思う存分泣かせようと思った。
以前、本で読んだ事がある。泣き叫ぶ人間は、内的・外的要因からの助けを求める為に防衛本能から泣いていて、無理にそれを押さえ付ければその後精神に異常をきたす。らしい。
(ここは、ちゃんと泣かせておいた方が良いな・・・)
考えてみれば当然だろう。只でさえ自分の練習に付き合わせてストレスが溜まっているのに、更に夜の体育館に閉じ込められたのだ。怖くない方がどうかしている。
それを分からなかったのは自分だ。少しばかり優しくしても良いだろう。
泣き続ける喜鈴を、光司はいつの間にか自分から抱き締めていた。
「落ち着いたか?」
「うん・・・ごめんね、みっともないトコ見せちゃって」
喜鈴は五分程泣いた後、落ち着いた。しかし二人は未だに向かい合って抱き合ったままである。暫くして、思い出したように光司が口を開いた。
「あのさ、さっきの・・・」
その言葉に、喜鈴の顔が赤く染まる。暫く俯いていたが、やがて意を決して顔を上げた。
「・・・私は、穂高が好き。優しくて、カッコ良くて、あったかい、そんな穂高が、好き。本当は、もっとちゃんと言いたかったんだけど・・・」
喜鈴がその言葉を言い終わると、次は光司が口を開いた。
「・・・俺は、坂下が好きだ。可愛くて、明るくて、俺の事ちゃんと考えてくれて、俺を頼ってくれるお前が、好きだ・・・自覚したのはたった今だけど、な」
「何それ、ふふ・・・」
「ぷっ、あははっあはは・・・」
傍目から見ればおかしな光景である。顔を真っ赤に泣き腫らした女と胸元がびしょびしょになっている男が抱き合い、笑っている。
やがてどちらともなく目を閉じて顔を寄せ、その距離が一瞬だけ無くなる。離れた唇はすぐまた触れ、今度は更に深く繋がる。喜鈴の唇を割って光司が舌を入れ、その異物感に最初は驚いた喜鈴もおずおずと自分の舌を光司のそれに絡める。
「ん、ちゅ・・・っは、ぅん・・・」
「んむ、ん・・・っぷぁ」
一分近く繋がっていた唇を離し、少し緩んだ顔で光司が聞く。
「ファーストキスはレモンの味って言うけど、どうだった?」
喜鈴は顔を赤くしたまま、息も絶え絶えに答える。
「っは、ぁ・・・はぁ・・・何か、へんな、かんじ・・・あたまがぼーっとして、穂高以外、何も見えなくなって・・・」
そこまでを何とか言い切り、光司の肩に顔を乗せて息を整える。
「それに・・・凄く、嬉しい」
そう言って自分の首に手を回した喜鈴の髪を撫でて目許に口付ける光司。更にゆっくりと喜鈴を押し倒しその上に覆い被さった後、遠慮がちに口を開く。
「坂下・・・その、いい、か?」
その言葉の意味を理解した喜鈴は、光司を見詰めてから言葉を紡ぐ。
「いいよ、穂高になら・・・あ、でも一つだけ」
「ん?」
喜鈴はそこで閉じていた瞳を開き、一つの望みを口にした。
「・・・なまえ、呼んで」
「名前?」
「うん、『坂下』じゃなくて、『喜鈴』って・・・お願い、『光司』・・・」
名前を呼ばれ、心臓を高鳴らせる光司。やがて、笑顔で言った。
「ああ、分かったよ・・・喜鈴」
互いに名前を呼び、見詰め合い、二人の唇が再び、重なった。
712 :
684:2007/06/11(月) 00:30:13 ID:Nf5tL6Uf
今回は以上です。肝心の本番のシーンがまだ・・・SS書くのって難しいですねーあっはっは・・・(待て)
では、どうもです。
GJ!
wktkwktk
書く人マダー?
wktk
ワッフル!ワッフル!
ワークテイカー
マダカナー(・∀・)
俺も、ワッフル!ワッフル!
wktk
電波・・・・・・・送ー信っ!!
只今回線が混雑しております
めげずにもう一度
送ー信っ!!
AI「太陽風による磁気荒らしです」
てんちょー。
新規オーダーでーす。
あれ、店長……?
726 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 00:25:49 ID:OAgMjfPS
ここの過去ログ保管庫てないんですか?
728 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 02:17:27 ID:3oJSJ8vl
なんかこの展開過去にどっかでみたことあるような気がするが、
ま、いいか。
729 :
書く人:2007/06/17(日) 02:33:36 ID:oH5EQbW3
電波受信完了!と、言うわけではありませんが続き、投下します。
730 :
書く人:2007/06/17(日) 02:35:11 ID:oH5EQbW3
切っ掛けとは、とても大切なものだと実感した。襟を開いてみれば、椎名さんはとても話しやすい人だった。
椎名さんはコーヒーを飲みながら、色々と自分のことを教えてくれた。
自分がハーフで、父親が日本人、母親がフランス人。一番印象に残る特徴である金髪は、その母親譲りの天然だそうだ。
日本に考古学の研究(初めて知ったことだが、世界最古の土器は日本から出土したらしい)に来ていた母親と、大学で神道の勉強をしていた父親が出会って、ということらしい。その父親は、この春この村にある神社の神主を引き継いだらしい。
「つまり家は神社。どう?金髪巫女さんよ?」
「…?」
そう言われて、僕は首をかしげた。言葉としては彼女の言っていることは分かったが、その意味が分からなかったからだ。
素で混乱する僕の様子を見て、なぜか椎名さんの顔が赤くなり
「ちょ、ちょっと待った!アンタってオタクとかそう言うのじゃないの!?」
「……えっと…一応インドア派だけど…」
どうやらソッチ系の人間と思われていたらしい。まあ、時々、その道に堕ちた友達から借りたラノベを読んだりしてたから、それを見て椎名さんもそう思ったのかもしれない。
そう言えば、と僕は思い出す。ラノベを貸してきた奴が『金髪貧乳巫女さん萌ぇぇぇぇっ!』って叫んでたことがあった。
椎名さんは制服の上からでもわかる位に豊満な体つきだから、貧乳という項目から外れるけれど、金髪と巫女さんというところでは一致する。
そうか。椎名さんは自分は『金髪で巫女だけど、オタクのあなたとっては『萌える』存在でしょ?』という意味で言ったのだろう。
さらにそこから一つの結論が導かれる。
「椎名さんって…ひょっとしてオタクとかに詳しいの?」
「なっ!なわけないでしょ!?ア、アンタがオタクっぽいからそれに合わせてあげようとしただけなんだから!」
怒られた。
椎名さんはそっぽを向くと「ったく…一美の奴、男はそう言えばイチコロだって…つか、なんで私、こんな奴をイチコロにしようと…」と呟く。
どうしたものかと途方にくれる僕。
どうでも良いけど、どうして僕は年下らしき女の子にさん付けをするだけにとどまらず、アンタ呼ばわりされてるんだろう?
現実逃避気味に考えていると、椎名さんが顔はそっぽを向いたままでこちらを見てきた。
「で、アンタはなんて名前なのよ?」
「あ、そっか。まだ名前を言ってなかったよね」
だからアンタ呼ばわりだったのか。
そう言えば互いの自己紹介の最中だったと、僕は自分の紹介を行う。
と言っても、特に言うことはなかった。
名前は喜沢弘文という、どこにでもあるありふれた名前。
運動は少々悲惨。成績は多少自慢できる程度。身長はやや高め。顔は不細工ではないが、ぱっとしない。
下手に個性があるため、ある意味『全てが平凡』というプロフィールよりもよほど相手の記憶に残らないタイプ。
唯一個性と言い切れる点と言えば、自他共に認めるほどの読書好き、という点かもしれない。
「あ、それから両親は医者と薬剤師」
「うわっ!実はお金持ちのお坊ちゃんだったの、ヒロフミは?」
「そうでもないよ」
結局、椎名さんは僕のことを下の名前で呼び捨てにすることにしたらしい。
ひょっとしたら同い年以下と思われてるのかも。
731 :
書く人:2007/06/17(日) 02:35:59 ID:oH5EQbW3
ま、いいか。
別に敬称で呼んでもらいたいわけでもないし、椎名さんみたいな女の子に、下の名前で呼び捨てにされるのも、悪くない。
そのくらいの下心、コーヒー一杯分の代金として認めてもらえるだろう。
そんな風に理論武装している僕をまるで咎めるようなタイミングで、鋭い光が照らした。
雷だ。
「ひいっ!?」
もし雷がその語源通り神様が鳴らすもので、邪念を抱いた僕に対する警告だとしたら、それは思い切り方法選択をミスしている。
なぜなら煩悩を増長するからだ。
椎名さんが顔色を変えると、こちらに飛びついてくる。
流石に胸に飛び込んではこないが、僕の腕を掴んで抱きしめる。
直後、稲妻に遅れること一秒程で雷鳴が届く。
「…っ」
僕の腕を抱きしめる強さが増す。
夏服の薄い生地越しに伝わってくる柔らかさと、震え。
僕は邪念を払いながら、椎名さんに気遣いの言葉をかける。
「大丈夫?」
「あ、あた、あたりまへじゃなひ」
呂律が回ってない。
本気で怖がっている彼女には悪いけれど、その様子はとても可愛かった。
「大丈夫だよ。雷なんてそんな怖いものじゃ……」
「子供の頃、ね」
苦笑交じり僕の言葉を遮って、椎名さんが俯いたまま言う。
表情は見えないが、声の調子からして無表情で喋ってるように思われる。
「子供の頃、母さんに連れられて山に行ったの。大学の研究班の人達と一緒でね。遺跡の発掘だったの。
その中で、お母さんと仲の良いお姉さんがいてね。よくアメをくれる人でね。その日も一緒だったのよ。
けど、突然山の天気が悪くなって、雨が降って、雷になって、慌てて道具を取りに行ったお姉さんが……どかーんって…」
そこまで言って沈黙する椎名さん。
どうしよう。思ったよりハードだ。
椎名さんは僕の腕を掴んで俯いたまま、口を開いた。
「だから……雷だけはどうしてもだめで…それ以外は大丈夫なんだけど…ね」
雨音に混ざって消えてしまいそうなほどにか細く、頼りない声。
苦笑とはいえ笑ってしまったことを僕は恥じる。
少しでもその恐怖とトラウマが和らぐようにするにはどうすればいいかと考えた時だった。
ガタガタと、駅員がいたころ事務室として使われていたらしい部屋から物音がした。
そして、例によって例のごとく
「イヤァァァァァァァァァァァァァァッ!」
椎名さんが悲鳴を上げた。
彼女は今度は僕の首に抱きつくと、左右にガクガクとシェイクする。
「ナニナニナニナニ!?お化け?お化け!?ダメダメダメェッ!」
「お、おち、おちつ、落ち着いて!」
僕が椎名さんを宥め終るより早く、事務室の扉が開いた。
732 :
書く人:2007/06/17(日) 02:36:49 ID:oH5EQbW3
「―――!?」
恐怖に息を止める椎名さんと、首を絞められ息が止まる僕。
そんな二人の前に現れたのは
「ワン」
「――――犬?」
涙目を見開きながら、椎名さんは事務室の横開きの扉を、器用に前足で開けて入ってきた柴犬を見る。
腕の力が緩んだ隙をついて呼吸を確保した僕は、椎名さんに説明する。
「き、近所の安田さん家で飼われてるチコだよ。時々逃げ出してくるんだ。
最近は安田さんがしっかり鎖を付けるようになってて来なかったんだけど…」
見ればチコの首輪にはロープがついており、その先には杭が結わえつけられていた。
この雨で地面が緩んだ所を、引っこ抜かれたらしい。
が、その辺りはどうでも良いだろう。
どうせ明日の朝になれば、安田さんがチコを回収に来る。目下の最大の問題は
「で、幽霊とかも駄目なの?」
至近距離で見つめる椎名さんの横顔。椎名さんは少し表情を引きつらせた後、先ほどの雷のトラウマを話した時と同じように、表情が見えないように俯いて
「子供の頃、お父さんに連れられて―――」
とりあえずこの日、僕は金髪の彼女の名前が椎名マリアであることと、強気そうな物腰とは裏腹に結構臆病で可愛いこと、そして、離してみると結構面白いと言うことを知った。
その夜以来、僕の朝夕駅舎で過ごす三十分は、以前と異なるものになった。本以外の楽しみができたのだ。
それは椎名さんと過ごすことだ。
とはいっても、いつも三十分おしゃべりをし続けるわけでもない。
その時間の大半は会話もなく、ただペンキの剥げたベンチで一緒に座っているだけだ。
けれど、その時間はとても居心地がよかった。
誰かが隣にいると言う事実と、時折交わされる会話。
朝の時間はいつも一緒だが、夕刻はそれぞれの予定が異なるために、会えないこともしばしばある。
あの嵐の夜までは、むしろ安心を覚えた独りの時間が、今ではとても物足りなく、寂しいものに思われるようになっていた。
弾み歌うような彼女の声音と喜怒哀楽の感情。
それらがたまらなく心地よく、彼女といることが好きになっていった。
自分の抱いている感情が恋心であることに気づくまで、時間はいらなかった。
そのまま一か月半の時間が過ぎた。
733 :
書く人:2007/06/17(日) 02:39:00 ID:oH5EQbW3
七月の半ば過ぎ、もうすぐ夏休みという頃だった。
下校中、アスファルトの照り返しに辟易していた僕の耳が、声を拾った。
「そこのヒロフミ!ちょっと待ちなさい!」
ヒロフミ違いと言う可能性は限りなく低かった。
理由は呼ばれた声に聞き覚えがあったからだ。
「椎名さん?」
振りかえった僕の視界にはいつの間にか間近まで近づいていた椎名さんの顔があった。
勝気な印象のある目と金髪。
至近距離で見た椎名さんの表情に、少しドギマギしながらも僕はどうしたのかと聞こうとして、手を掴まれた。
「え?」
「先生確保したわよ!」
椎名さんは振り返ると、僕の右手を持ち上げながら振り向いて声を上げる。
その先に、椎名さんと同じ制服を着た女の子達が三人いた。
「……どういうこと?」
僕の質問に、椎名さんは質問で返してきた。
「ヒロフミの学校って二学期制で、夏休みの前に期末ないわよね?」
事の発端は、半月ほど前に帰ってきた全国模試の結果らしい。
成績表と一緒に配布される上位者名簿。その二年の部、数学の項の末席に、僕の名前が載った。
友人は、この結果をひっさげて親になんか買ってもらえと言っていたが、残念ながらうちの両親の方針は
『勉強は自分のためであり、成績が良かったからと言ってなぜ褒美を与えねばならんのだ』
そんな僕にとっては見て励みにする以上の意味を持たなかったそのデーターを、
「見つけた時はこれだ、って思ったのよ。ヒロフミこそ、私達を補修地獄から救ってくれる救世主に違いない、ってね」
「わ、私は別に教えていただかなくても補修なんてなりませんわ…!」
学校の近くの学校の近くの図書館で、僕は椎名さんから事情を聞いていた。
その説明に際して、椎名さんの友達の一人――円谷さんが抗議したが、上げてしまった声は思いのほか大きくなったのを自覚し押し黙る。
もっとも、周囲に人影はなく、咎められることはなかった。それでも反省して身を縮める辺り、真面目な人なのだろう。
椎名さんの話によると、椎名さんとその友達を含めた四人のうち、円谷さん以外の三人は中間テストで惨憺たる結果を残したらしい。
このままでは夏休みは補修でつぶれることが必至と言うことで、円谷さんに連れられて図書館で勉強会と言うことになったらしい。しかし円谷さんにもテストがあり、椎名さん達にかまってばかりもいられない。
そこで、道端で見かけた僕を呼びとめた、ということらしい。
734 :
書く人:2007/06/17(日) 02:39:55 ID:oH5EQbW3
「いいじゃない、美咲ちゃん。せっかく教えてくれるんだし〜」
「そのとーり。男子一人に女の子四人の勉強会ってのは、シナリオ分岐イベントの王道じゃないかね?」
椎名さんの説明に不服そうな円谷さんに、左右から声が掛けられる。
全体的にのんびりとした口調の背が高い女の子のフォローと、それとは対照的に小学生と言われても違和感ない身長の女の子の微妙なフォロー。
なんというか、こういった言い方はなんだが、円さんとは異なりどことなく、お馬鹿な印象を受ける。
特に背のちっちゃい方の子からは、なにやら前述したオタ系の友人と同じ雰囲気が伝わってくる。
そのちっちゃい子の方が、こちらを見てニヘラ、という感じの笑顔を浮かべ
「とは言った物の、すでに彼はマリリンルートに一直線!って感じかなぁ?」
「な、なんで私の名前が出てくるのよ!?」
「声が大きいですわよ!」
注意する円谷さんだが、椎名さんは聞く耳を持たないようだ。
うわ、本当に「ですわよ」なんて語尾を使う人がいるんだ、と感心する僕の目の前で、マリアの追及を背の小さな女の子はのらりくらりとと交わしてゆく。
「んー、けれどねえ。わざわざ別の学年の順位表をすべてチェックするとは、なかなかにあり得ませんよー?」
「だ、そ、それは知り合いだから…」
「知り合いだから、って?下手な言い訳だなー。
ともあれお兄さん。かなり好感度は高いですよ?このまま着実にフラグを立てていけばアイキャッチ画面がマリリン単独の絵になるのは遠くないよー?」
「ア、 アイキャッチって……えっと……」
「ああ、私は長曽我部 一美。らき☆すたのこなたに似てるって言われるおにゃのこです!」
「一美ちゃん、それってどういう意味?」
いや、なんとなく意味はわかる。つまり現状を恋愛シミュレーションに例えるなら、僕が椎名さんとくっつくようなエンディングに向かっている、ということなのだろう。
けれど今一確信が持てず、訊き返す。が、僕の問いに帰ってきたのは一美ちゃんからの返事ではなく、別方向からの追及だった。
「一美……『ちゃん』?」
椎名さんだった。
彼女の眼は少し釣り目勝ちで、ただ見られているだけでも時々睨まれているような錯覚を受けるが、この瞬間、僕は確実に睨まれていた。
「えっと……。な、何か質問?」
「ん?えーあるわよ先生ぇ、質問が。なんで一美だけちゃん付なのか、とか?」
……なぜと言われて、僕は首をひねる。
いや、理由は単純だった。苗字が呼びにくいからだ。長曽我部なんてリアルで見たのは初めてな名前だ。
それに外見的にも小学生な上、全体的に寝起きの子猫のような愛嬌なる造詣の顔をした彼女に『さん』付はイメージに合わない。
深い理由はなかった。
が、それを説明するより早く
「……ロリコン。
美咲、ここ教えて」
735 :
書く人:2007/06/17(日) 02:41:17 ID:oH5EQbW3
釈明の暇もありはしない。
冷たい目で僕を一瞥した後、椎名さんは円谷さんに向けて参考書を広げる。
円谷さんは少し戸惑ったように視線を僕と椎名さんとの間で行き来させたが、結局椎名さんが向けてきた参考書を覗き込んだ。
「おやおや〜。フラグを立てちゃったかな〜?」
にへら、とした表情をさらに溶けたようなもの変えつつ言う一美ちゃん。
フラグ、とはプログラムにおける発動条件から転じて、出来事が起こるための条件を指す言葉らしい。
そう言われると、少し嬉しい気がした。
確かに冷たい態度や視線は居心地が悪いものだが、しかしひょっとすればそれは、椎名さんの嫉妬のようなものなのかもしれない。
「あの〜、喜沢センパ〜イ。
ここ、教えてくれませんか?」
聞いてきたのは最後の一人、背の大きな女の子―――高木良子さんだ。
180センチ近くあるのではないだろうか?スタイルもハーフである椎名さんを上回るほどのモデル体型。
こう書くと近寄りがたいようなイメージだが、その印象をのったりとした挙措動作と喋り方が侵食し、中和している。
「あ、うん。えっと…高木さん」
危うく良子ちゃんと呼びかけて(印象が彼女も子供っぽかったから)、ギリギリで名字で呼ぶ。その直後に横――椎名さんが放っていたプレッシャーが落ちる。
その事に少し安堵しながら、僕は渡された教科書を見る。
化学だ。
「この酸と塩基っていうのが分からないんですけど〜、混ぜるとどうしてこうなるんですか?」
高木さんが聞いてきたのは、化学の基礎とも言える中和反応についてだった。
話を聞くと、なぜ塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を混ぜると、塩酸とナトリウムが、元々付いていた水素や水酸化物イオンと別れてまでくっつくのかが理解できないらしい。
「えっとね。これは電気陰性度と酸性度っていうか…」
教科書通り説明しながら高木さんの表情を見てみる。
「………」
フリーズ。
それはそうだ。教科書通りの説明で理解できるなら聞いてくるはずもない。
よし、ならばイメージに訴えてみよう。
僕は教科書の一ページを指して
「えっと…この表によると塩化物イオンの方が水酸化物イオンより酸として強いってのは分かるね?」
「はい」
「それと、ここによれば水素イオンよりナトリウムの方が塩基として強いよね」
「……はい」
どうやら、ここまでは分かってくたようだ。
「だからさ、この酸性度と電気陰性度とかっていうのはそれぞれ相手を引っ張る力で、これが強い者同士が真っ先にくっつきあうから…」
「けど、最初はこの子たちは、それぞれ水素やOHとくっついてたんですよね〜?」
「くっついてたって言っても一緒の溶液の中にいるだけだから。
それに、この塩化物イオンもナトリウムイオンも、たまたま相手がいなかったから、一緒にいた水酸化物イオンや水素イオンと仕方なくくっ付いていただけで…―――」
―――仕方なく。
自分で言ったその言葉に、僕ははっとなる。
736 :
書く人:2007/06/17(日) 02:42:00 ID:oH5EQbW3
相手を引っ張る力の強い塩基であるナトリウムイオンは、仕方なくその場にいた水素イオンと一緒になっていた。
相手を引っ張る力の強い酸である塩化物イオンは、仕方なくその場にいた水酸化物イオンと一緒になった。
ならば……
「……あの〜センパイ〜?」
「えっ。あ、うん。とにかく、そういうこと。分かった?」
「はい〜。教え方が上手ですね」
繕う僕に、高木さんはお礼をいってくる。
けれど、僕はその内容をほとんど聞いていなかった。
僕は隣を見る。
そこには椎名さんがいた。
機嫌が治った、というより一美ちゃんとのやり取りが既に意識の外に置き去られてしまったのか、頭を抱えながら円谷さんの問題解説を受けている。
シャーペンの恥を口にくわえて脹れっ面で参考書を睨みつける椎名さん。
そんな表情ですら見苦しさより可愛らしさが前に出ている。
椎名さんは、そんな可愛い女の子だ。それに対して、僕は冴えない男。
駅で二人が言葉を交わすような関係になったのは、偶然そこに二人しかいなかったから。
さながら、ナトリウムイオンと水酸化物イオンだ。
地味で誰も引きつけることのない僕と言うイオンがいる、駅と言うビーカーの中に、椎名さんと言う引き寄せる力の強いイオンがやってきて、僕を引きつけた。
―――仕方なくに、だ。
けれど、それは二人きりになったから。椎名さんに言わせれば、きっと仕方なくのことに違いない。
ビーカーの外には、僕よりはるかに引く力の強いイオンに溢れかえっている。
外に零れてしまえば、椎名さんに引き寄せられる、僕よりはるかに魅力的なイオンがたくさんいて、椎名さんは僕に見向きもしないだろう。
現に、円谷さん達と話をしている椎名さんは、いつも以上に嬉しそうで輝いて見えた。
ああ、何を勘違いしていたんだろう。僕にとって彼女が特別な存在であったとしても、彼女にとって僕が大切な存在である根拠にはならないと言うのに。
いや、それどころか、すでに彼女には恋人か、あるいは好きな人がいるかもしれない。
冷水を頭から浴びせられたような気分だ。
女の子に少し声をかけられて、その友達にはやし立てられただけで、すぐにのぼせて、いい気になっていた。
僕など椎名さんにとっては、二人きりに『なってしまった』相手に過ぎない。
偶然と不可抗力の結果である僕が、椎名さんにとって特別な意味がある存在であるはずがあるだろうか?
「あの…喜沢さん?こちらの数式なんですが…」
「…うん。どうしたの」
円谷さんに言われて、僕は現実の問題の方へと意識を向けた。
解散の時、椎名さんは僕にテストまでの家庭教師を頼んできた。僕はそれを承諾した。
少しでも椎名さんの隣を占有していたい。理由は、そんな悪あがきにも似たものだった。
この日を境に、椎名さんとの時間が少しだけ憂鬱になった。
737 :
書く人:2007/06/17(日) 02:44:05 ID:oH5EQbW3
つづく
たぶん次回がラストになるかと。
あまり待たせないように努力します。
イイヨイイヨー
南下スゲー気になる展開だ!
続き早く読みたい
書く人氏GJ!
続 き が 気 に な る !
ワクテカ
684氏に書く人氏!
いやー、wktkが絶えませんなぁwww
あれ?主人公とヒロインって別の学校だったよな?確か
どうやってヒロインは主人公の学校の成績表チェックしたんだ?
全国模試って書いてなかったっけ?
かなり優秀
なぜこのスレは、作品がくると沈黙気味になるんだろう。
ともあれwktk
どこのスレも似たようなものだと思うが・・・・・・・
とりあえずwktk
うるさすぎるよりはましだろ。
みんな楽しみにしてるしな。というわけでwktk
なんというかあまりにwktkすると騒がずいい子で待っていたくなってしまう
つまらなくなったな
前半の静かで穏やかな雰囲気がぶち壊されて
ギャルゲ化したような気がする
エロパロだから仕方ないのか
ヒロインもシチュも良かっただけに残念だ
>>747 容量やレス数を無駄に消費する事を抑えて、少しでもこのスレを楽しみたいからじゃないか?
753 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 02:58:08 ID:5/JJpqMX
moriーーー
ほしゅ
>>751 なら見なきゃいいだけのことだろ、そんなこといちいち書くな、うっとうしい
んだな
俺が思ってたのと違ってきたからツマランとかガキかよw
756 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 11:54:30 ID:zpiFJl2t
良スレage
こうして良スレがまた一つ・・・ orz
はいはーーい、お前らスルースキル覚えろー、忘れんなー!
これテストに出るってか、出すぞー!
保守
761 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 07:24:33 ID:UlGCu82L
wktkするけとイイよね?(・∀・)
MHP2始めて、このスレ読んで、なんだか妄想が膨らみ始めた。
もしかするとそのうち何か書くかも。期待はしないで。
待ってまーす
書く人マダー?
ずいぶんと気が早いな
一ヶ月くらいまではwktkして待とうぜ
ほ
>>1殿のSSがみてぇ…
所で、
>>1に書いてある地震or核戦争勃発のやつって書いてもいいの?
いや、漏れは書かないよ、視聴者だし
768 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 23:14:48 ID:9HpTVYd9
保守
769 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 07:52:12 ID:Sr4eOL+t
>>734 シナリオ分岐イベントなんて言う女いねーよ
きんも〜☆
あるいはゲーマーならひょっとして。
そんなこと言ったらこんな羨ましいシチュありえな(ry
772 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 21:32:56 ID:psIHhuSL
作者のエロゲヲタ度によるんじゃ
百歩譲ってこんな言葉知ってる女がいるとしたら
逆ハーレム恋シミュやり込んでるドブスくらいだな
ここのスレは静かな図書館の中で司書や他の客が寄り付かない所で二人きりになってもぉKなの?
おK
エロゲの劣化コピーみたいな糞SSじゃないなら
何でもおk
777 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 20:20:53 ID:GQsd7Oz0
何かウザったいバカがいるな
>>774 良いんじゃない?
ぉK貰ったし今日から書き初めてみるよ
779 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 21:18:25 ID:eRDSvEZV
また細切れ未完が始まるのか
>>779そういう事を言うと書く気が削がれるって知ってる?
わざと言ってるんですよ。 わ ざ と 。
という
>>779の心の声が聞こえてきそうだ。
>>780 この手の謂れの無い非難とか中傷とかを、投げかけられるリスクが存在する場所だと
いうことを一応頭に入れておいた方がいいと思う。
まあ、あまり気にせず書いてください。
>>780 気がそがれたなら書かなきゃいいだけ。
書きたいなら書けばいい。
そういうもんだぜ!
以下、何事も無かったかのようにスルー。
786 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 09:09:24 ID:xh58oOFw
雪山編は神だったのにな
すっかり糞スレに成り下がった
前半ラノベ、後半エロゲって感じ
自意識過剰なキモヲタの臭いがぷんぷんするw
>書く人
なんだかんだ言って
萌 る か ら そ れ で よ し
789 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 18:48:01 ID:NqpWudvx
同意
かなりコアな設定だから書いてもらえるだけで嬉しいんだけどね
だから無理にエロ入れなくてもいいんだ
日常に存在しそうな非日常…そこが重要
不可抗力なら、女の子と2人きりじゃなくてもいいのだろうか……。
スレタイを穴があくほど見て欲しい
性的な意味で
不可抗力がポイントではなく、女の子と二人っきりってのがポイントのスレですわよ?
書く人の後半は二人きりですら無い
スレ汚し以外の何物でもない
この荒らし方は修羅場スレのやつか?
きもいな
書く人はスレタイ読めよ
あんなの投下されたら荒れるのも仕方ない
数少ない書き手を追い出せるほどこのスレに書き手はいるか?
夏だから、天然なのか荒らしなのか判断がつかないぜ。
完全スレ違いの駄作でも
ハーレムウハウハで興奮できればいいってかw
何のための住み分けだよ
何処と住み分けるつもりだよwww
スレ毎に文句変えないと釣れないぞ。
あれがスレ違いに見えちゃうアレな人は放置汁。最初から最後まで
二人きりでなければいけないなんて決まり事はどこにも無い罠。
いや、エロゲ化は有り得ない
書く人の後半みたいな低能用の糞SSは
どこでも読めるだろ
検索すりゃ腐るほど見つかる
バス停で二人きりの時の、素朴な田舎の雰囲気を漂わせていた
シーンでは、非常にwktkした。
(=ω=.)のパクリとか萎えるからやめてほしかった。
809 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 16:37:57 ID:gK6yMKVK
いちいち反発する奴らいるんだな
アホが数匹暴れてるだけだろ
相手にするな
書く人氏マダー?
何度も言うが、このスレは数少ない書き手を追い出せるほど書き手に恵まれたスレなのか?
つまらん話を投下されるぐらいなら投下が無い方がいい。
>>815 だな。
ところで書く人マダー(・∀・)
らきすたパクリ小説には興味なし
前回の投下から一ヶ月以上経ったので、そろそろリミッター解除します
820 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/20(金) 09:37:04 ID:T1/Rvuqw
▽
上手いことを言ったやつがいる。
「俺らって懲役六年の刑に科せられているよなあ」
その通り。
中高一貫の男子校では、女っ気のない生活を余儀なく強いられている。
中学、高校といったらアレじゃん。青春の真っ只中じゃん。
かわいい女の子と、バレンタインにいちゃいちゃとか、大晦日に肩を並べて年を越したりとか、
夏の海をアバンチュールに満喫したりするとかが普通じゃないのか?
いいよなあ、男女共学の学生さんは。
でもまだ神は、そんな俺を見捨ててはいなかった。
一大イベントが隠されていたのだ。
地区予選で珍しく好結果を出した我が卓球部は、夏休みに二泊三日の強化合宿を行うことになったのだ。
部員は三人しかいないけど、その人数の少なさに対して心あるOBが何とかしてくれた。
どうしてくれたかって?
なんと、柊草女学園との合同合宿。
市内に同じレベルの高校が無かったとはいえ、女子高生といっしょに合宿なんてありえねえ、と思ってもみたが、
よくよく考えれば共学のやつらにとってはそんなの普通なんだろうな。
集合は学校の西門前。
そこからOBが車で現地合宿場まで運んでいってくれるらしい。で、そこで女の子たちと合流する手はず。
財布持った。着替え持った。携帯持った。マンガ持った。トランプ持った。
おっと、これを忘れてはいけない。せっかく買ったしな。十六年間一回も使ったことのない男性用コロンも、スポーツバッグに詰める。
さて出発。
名言を残してくれた友よ、悪かったな。
俺は四年半で刑期を終えることにするよ。
簒奪された理想郷を、この手で取り戻すんだ!
△
上手いことを言った人がいる。
「私たちって懲役六年の刑に科せられていると思わない?」
実にそのとおりだと思うわけですよ。
中学から続くこの柊草女学園に入ってからというもの、家族・先生以外の男の人と話したこともない。
一緒の小学校に通っていた友達からは、メールやブログで「あたしの彼って超カワユクない?」なんてカキコして、散々ノロケてくる。
どうせ恋人たちのすることって、クリスマスにいちゃいちゃとか、いっしょに文化祭を見てまわったりとか、
何もない平日の昼間に『付き合って一周年記念日』という名目で学校サボって、映画館に恋愛モノを見にいったりとかするんでしょ。
……
そうですよ! とってもうらやましいですよ!
こんな感じでこの四年間半、柊草女学園に入れさせた親を少しだけ恨んでもみましたが、
転機! まさに転機とよべる事態が訪れたわけです。
823 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/20(金) 09:39:58 ID:T1/Rvuqw
私たちの所属する卓球部は、もともと県屈指の強い高校だったのだけど、それも去年まで。
なぜかというと、たくさんいた三年生はすでに引退してしまったせいだ。
今年も合宿を行いたいのだけど、残された一、二年は私を含めてわずか四人。かなり少なめ。
でもでも一年生の部員の中に、大学生のお兄さんという人がいて、なんとまあその人は天守閣高校という男子校の卓球部OB。
つまりは成り行きで、天守閣高校の男の人と合同合宿をやることになってしまったのだ。
もうすぐ駅前に集合しなくてはいけない。合宿出発の待ち合わせにね。
電車に三十分ほど揺られて、到着した駅から歩いて十五分のところが、今回の合宿場なんだって。
うぅん。まだ会ってもいない男の子に対して緊張してきた。
ちゃんとしたお話ができるかな。
▽
「おーす、トール」
全校きってのキザ野郎が、指二本を使ってシュタっとポーズを決めてくる。
慶一のいつものあいさつだ。
こいつは中高五年間のうち五回とも一緒のクラスになったというただ一人の男。
どうしてもこいつの悪遊びに付き合ってしまう俺にとったら、来年の受験シーズンには別々になって欲しいところだ。
「おうよ、神田さんと六郎は?」
「ん? まだじゃね? それよりほらこれ見てみろよ」
は? と聞き返すよりも前に慶一はポケットから何かを取り出して見せた。
ピンク色の光沢を出すその物体は……ひどく卑猥な形をしていて……
慶一が親指で操作すると、ウィーンと携帯のような振動音が聞こえてきた。
「いやあ、一週間前ほど前に通販で頼んだものなんだけどね、それが届くのが昨日の夜になっちゃって、
ちょいと焦っちゃったよ、ははは」
「いや、ちょ、おまえ……それ何に使うんだよ」
「何に使うかだってぇ? やーん、もうトール君のエッチー」
朝から妙にハイテンションな俺の親友は、事もあろうにそのピンク色を俺の股間の方に……
「や、やめろ!」
バシッとけっこう本気めに張り手をかましてやったが、それに応える様子もなく、
「うーん、この子はトール君が嫌いなみたいだね。でもいっか、女の子たちに試してあげれば♪ フフフ」
慶一の邪悪にゆがんだ笑みを見慣れた俺であったが、今日は一段と逝っちゃってる。
「トール〜! 慶一〜! こっち来い〜〜!」
校門のほうで白い乗用車がクラクションを鳴らしていた。
お、あれは神田さんじゃないか。後部座席から六郎も手を振っている。
「慶一、行くぞ」
「フフフフフ」
左手をポケットに突っ込ませたまま、右手でスポーツバッグを肩にかけている。
にたにた笑いながら、またスイッチを入れたらしく、ポケット越しからかすかに音が漏れだした。
「フフフフフフフ」
……おいおい、頼むから問題だけはおこさないでくれよ。
▽
「藤井先輩、おはようございます」
「おはよ、かなみちゃん。もう全員来ているみたいだね」
「私たち一年生。誰も先輩を待たすような人はいませんよ」
「そういわれると、なんか自分が偉くなってるみたいでヤダよう」
「いえいえ、それが部活のしきたりですから。お兄ちゃんが朝早く出かけてみたいなんで、私たちも行きましょうか」
この活舌のいい子は私の後輩――神田かなみ。
お兄ちゃんというのは天守閣のOBのこと。
合宿費用のほとんどが神田さんに払ってもらっているということだから、かなみちゃんにも申し訳ない気分になってしまう。
なにやら競馬で大当たりしたとか。
「藤井先輩! 今朝はなに食べましてんか?」
「ダイエットで食べておらへんねんったらコレおすすめっす!」
部員四人のうちの残り二人は、フミちゃんとチカちゃん。
愛らしい顔を二つ並べたこの双子は、どちらもコンビニでバイトしているだけあって新商品に詳しい。
「ふーん、どんなの?」
「へい、チカ出しな!」
「はいさ、フミちん!」
数分遅れの妹のチカちゃんはコンビニの袋の中から「わくわくばなな」と書かれた飲めるゼリーのようなものを渡してくれた。
「面白そうな飲み物だね」
「そうやっせ。ほんでから味もダイエットにも抜群だす。あたしとチカの間では只今ミリオンセラー」
「いやいや、フミちん。甘いな。バナナはんよりも甘すぎまんねん。もうギガバイトセラーやね」
「なんや、そのギガバイトっちゅーのはぁ!」
ぽこんとフミちゃんがチカちゃんの頭をはたく。
いつもこんな漫才を見せてくれる、ノリのいい双子ちゃん。
かなみちゃんともかなり仲良さげだから、一人だけ二年生の私は少しだけ残念に感じるときもある。
「藤井せんぱーい! フミチカァー! 五十一分の電車もうすぐだよー!」
「あ、かなみちゃんが呼んでる。早くしなくちゃ」
「よしチカ、はいはい! これも、はいはい!」
「え? え? フミちん?」
フミちゃんは自分の荷物をチカちゃんにすべて預けてしまった。
「よし、先輩! 遅れないように行きまっせ!」
「わ!」
手ぶらのフミちゃんは私の手を引っぱって改札口に向かっていく。
えっと……チカちゃんのこと大丈夫なのかな?
「わたいのことならべっちょないだっせ。先輩、急ぎまひょ」
あれだけ荷物を押しつけられてしまった妹のチカちゃんは、颯爽と私たちの横を駆け抜けていく。
あれ……大きなバッグ、一つしか背負ってないような……
「あー! チカ! あたしの荷物だけ置いていったなぁ!」
「フミちんが悪いんやでー」
フミちゃんにべーっと舌を出しながら、今度は空いた私の手を引っぱる。
こんな後輩たちに囲まれて、やっぱり私は幸せなのだろう。
この子たちがついているから、男の子を前にしても大丈夫なような気がしてきた。
頑張れー、私ー!
ゴメン、2chツール使い慣れてなくて、二回も上げてしまった
あとタイトルも書き忘れてた
タイトルは↑のやつです なんかいろいろ不備が多くてごめんね
2ch専用ブラウザならJaneがオススメ。
スペック足りないと重いけれど、色々と楽。
あと、気になったのは「永遠と続く」。
「永遠に」か「延々と」じゃないかと……。
折角の投下なんだ、感想もいってやろうぜ
GJ!期待してる
「活舌」も「滑舌」かな。
ともあれ、どんなキッカケで二人きりになるか期待。
>>829 GJですた。今後に期待します。
改行多用は個人的に気になったが…。
>>832 活舌も間違いではない。
834 :
832:2007/07/20(金) 15:23:21 ID:dhpDaX9k
これは良いwktk
久々の神光臨にテンションが上がって参りました
男子校も女子高もなかなかお互いにおマヌケそうなところが好感持てる
頑張れ!
▽
「ここが今回泊まる宿舎ね」
OBの神田さんが指差したフロントガラス越しのむこうには、青空が広がった山のてっぺんに白い建物の一部分が見えた。
「車ではここまでしか登れないから、あとは歩いていってな」
外に出てみると、ぎっしりと詰まった森の匂いが鼻腔に広がっていく。
それはもうコップ一杯分で一日の自然エネルギーが補充できるといった感じ。
お泊まり所とかかれた古ぼけた看板の隣には、年に一遍も整備されているかどうか怪しい小径の入り口がある。
だけど荷物をもって歩いても、そこまでつらくはないといった距離だ。
「さっき妹からメールが来たんだけど、もうすぐ来るってさ。じゃあ俺は帰るけど、妹たち四人よろしくな。次の大会、期待してるぜ」
「はい! 了解しました神田さん! ここまでお金を出してもらったからには、この真田慶一、必ずや全国に進出する所存であります」
慶一がびしっと敬礼をすると、神田さんは笑みを浮かべながら、ヴォンと排気音を出して去っていった。
木々のさざめきの合間に聴く野鳥の唄が心地いい。街中からたった三十分離れただけで夜空もきっと……
「さてや、トール君」
悦浸っている吟遊詩人に、悪友が声をかけてきた。ちなみに俺を君付けするときは、なにかしら変な考えを発表するときだ。
「……なんだよ」
「じゃじゃーん。これが今回の女子高生四人であります。隠し撮りに成功しました。ほら、六郎もこっち来てみ」
慶一は四枚の写真を取り出した。
お腹から頭までをしっかり長方形に収めた制服女子が、それぞれの写真に一人ずつ写っている。
「へー、良く撮れているね」
六郎が感嘆しているが、そんなチャチなもんじゃ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を……
というかなんでそんなに極めて構図の良い写真が撮れるんだよ。
二メートルの距離まで近づいて、はい、ポーズをとってくださいね。とか言わなきゃ無理なレベルだろ!
「六郎は、どの子がタイプ?」
トランプのように写真を広げ、実に楽しそうに慶一が質問する。
「え……えっと、どういう意味かな?」
「好きなタイプだよ、好きな。貧乳がいい! とか、おでこがいい! とかあるっしょ」
「そういうの……よく、わかんないな……」
蚊の涙ほども穢れなき心を持つ六郎は、慶一とは天と地ほどの差がある。
まああまりにも六郎が奥手すぎるのもあるが。
変態度を偏差値五十が平均で表わしてみると、六郎はめったにいない二十台を記録するだろう。
慶一は、そうだな……鉄の融解温度までいくんじゃないか?
「あー、六郎はウブすぎんなあ。じゃあトール! お前はどの娘よ」
マジシャンさながら扇を広げるように四枚の写真を目の前に突きつけ、俺に問う。
一番左の子、写真の右下には油性ペンでパーソナルデータっぽいものが書かれてある。
『甲田フミ、(一年)――双子の姉、大阪弁、漫才好きでボケもツッコミもいける口』、
写真を見ると健康美そうな肌色に、大きな目。ポニーテールが特徴的だ。この風景は登下校している途中かな。
次、『甲田チカ(一年)――双子の妹、同じく大阪弁、漫才好きで、姉と共にお召し上がりください』
……なんだこの説明は。写真では姉とそっくりさんだが、この子はツインテールだ。
次、『神田かなみ(一年)――OBの妹さん、可愛い、とにかく可愛い、ド本命。この垢抜けていなさそうな顔に
運動少女というステータス! これからOBのことを義兄さんと呼ばさせていただきます。(*'Д`)ハァハァ』
……間違えた、これはパーソナルデータじゃねえ。慶一の主観記事だ。まあこのショートの髪型にはそそるものもあるが。
一番右、『藤井みどり(二年、部長)――』
ここまで読んだところで、慶一が急に写真を持つ手を引っ込めた。
「ご到着なすったぜい。トールと議論を交わしたかったところだが、これ見つかるとヤバイしなあ」
ああ、左様ですか。どうせ議論っていっても、三番目の子のことを選挙運動よりもうるさく演説するだけだろ。
そしてなぜ一番重要な卓球レベルが書いていない。
あぜ道を見下ろすと、先程の写真そっくりな女の子たちが、元気良く歩いてきた。
△
「ふぁ、疲れるね。ねえフミちゃんもチカちゃんも大丈夫?」
「私ならなんも平気っすよ」
「右におんなし」
「藤井先輩! あの人たちじゃないですか? 天守閣高校の部員さん」
「あ、そうだね……かなみちゃんも大丈夫?」
「はい! いまなら富士山にも登れる勢いですよ」
「そう、良かった……」
坂道登って十五分。ここまで体力ないとは思っていなかったが、今日は特に体が重い。別にアレな日でもないのに……
後輩を待たせて休憩を取るわけにもいかず、もう一度バッグを背負いなおして急な斜面を登っていった。
「おはようございまーす!」
上から男の人の声が聞こえてきた。身内や、先生や、テレビとかで聞きなれたはずの低音域な響きに、
私はとてつもなくドキッとした。
「「おはようございまーす!」」
後輩たちがそろって挨拶をする。ございまーすのところだけを重ねて返事をした。
私たちは一歩一歩と近づいていき、そして彼らと合流するまでに至った。
「天守閣の卓球部部長、真田慶一です。よろしく。でこっちがトール。こっちが六郎。みんな二年生だね」
わあ! むこうの部長さんが挨拶をしてきた。ということは私も部長だから……
「柊草女学園から来ました藤井みどりといいます。この二人が甲田フミちゃんと甲田チカちゃん。
この子が神田かなみちゃん。よろしくお願いします」
ほっ、良かった。ちゃんと声に出せるではないか。
このまま無言でおたおたしてしまって、かなみちゃんにフォローなんかされてしまったら、目も当てられない。
「(先輩っ、声小さすぎますよ)」
え!? かなみちゃ……
「彼女が柊草の部長、藤井みどりです。そしてこの双子の子は甲田フミとチカ。私が神田みなみです。兄がお世話になっております」
「へえ、神田さんの妹さんか。お兄さんに似てとってもスタイル良いね。それに素晴らしくキューティフルだ」
「え? キューティフル?」
「ああ、全く罪な人だ。あまりにもビューティフルすぎて、思わず英単語をメイキングしてしまったではないか。
どうだい? 今宵、この満天のスタースカイのなか、ヨーロッパ中のバラを買い占めて貴方に……グホアッッ!!」
「あー、ごめんね、こいつたまに独り言つぶやいたりするんだ。それじゃあ宿舎まで行こっか」
「は、はぁ……」
よし、いまだ! 今度はちゃんと目線を上げて話そう。
「あ、あの! 私が柊草女学園から来ました藤井みどりといいます!」
……あれ?
「藤井せんぱーい。もうみな行ってもうたよ」
「ファイトだす! 先輩!」
あ、あう……
>>842 かなみちゃん……自分の名前間違えるなよ。 明らかに推敲不足です。 ちょっくら樹海で吊ってくる
まあ、もちつけ。あとGJ!
846 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 14:31:17 ID:usQBxeYv
(´・ω・`)<GJ!
(・∀・)<GJ!
(゚∀゚)GJ!
部長ちょっとアホの子で可愛いな。
▽
月山舎のとなりには、体育館があった。大きさは学校のそれと遜色ないほどだ。
この山はまさに合宿のための場所。他の高校からも何組かの部員が来ていて、それぞれ青春の汗を流している。
ある人たちはバスケット部。またある人たちはバトミントン部。館全体に室内スポーツの掛け声を響きわたらせる。
俺たちはこのような施設の一角にある卓球ルームで、練習に励んでいた。
いろいろな組み合わせでの一対一や、チームを作っての団体戦形式で特訓しているうちに、閉館時間である夜の八時になった。
「じゃあ、今日はここまでにしとこっか」
今の今まで奇跡的に問題を起こさなかった俺たちの部長・真田慶一の言葉に、柊草の面々もそれに同意する。
「晩御飯もあの食堂なのかな?」
「そうだな、あそこしかないしなぁ」
お昼をとった宿舎内の食堂は決して美味いとはいえなかったが、わざわざ下山するのも億劫だ。
六郎の問いかけに、俺は気だるく返事をした。
「では、三十分後に食堂に集合ということでどうでしょう?」
「うん! ほんでえーんちゃう?」
「そーやなー」
神田さんの妹さんと双子娘たちの会話の流れも加わり、やっぱり飯は食堂でとなりそうなところで、
ただ一人異論を唱えるヤツがいた。
「ちょーっと待ってい! 晩飯のことですが実はあてがあるわけです」
慶一が、あからさまな役者口調を使う。
「は? まさかわざわざ山降りるのか?」
「ノンノンノン、トール君。たしか月山舎の部屋には、当然のことながらコンセントがあるよなあ」
「ああ」
「そして、俺は電気鍋と材料を持ってきた」
「ほう、つまりこんな夜遅くから料理しようというわけか?」
「早漏トールよ、早まっちゃあいけない。実はもう作ってあるわけです」
「どうやって」
「昼飯食い終わったあとにだね、部屋に戻って、野菜を切って炒めて、今はコトコト煮込んである。
あとはハヤシのルーを入れるだけさあ」
「えぇ!? ハヤシライスですか?」
不意に女の子の声が、背後から聞こえてきた。
「うん? 藤井みどりさん。どうされましたか?」
慶一の冷静な受け答えに後ろを振り返ってみると、
自分の素頓狂な発声にびっくりして、恥ずかしそうに下をうつむく女部長の姿があった。
「実はね、藤井先輩、大のハヤシライス好きなんよ」
「そやね、ハヤシライス巡行の旅とか言て、県内歩き回るほどやんね」
「おやおや、そうでしたか。では藤井みどりさん、せっかくですので食べていただけますか?」
「え……あ……はい……」
ますますうなだれる藤井さんに対し、慶一のほうはしてやったり的な笑みが見え隠れしたような気が……
△
「よかったですね」
シャワー室で、短い髪の毛をわしゃわしゃとシャンプーしているかなみちゃんが、こちらに首を回してきた。
「えぇ! 何が……かな?」
「とぼけないでくださいよ先輩。ハヤシライスのことです。偶然ってあるものですね」
「そ、そうね」
「藤井先輩のあの声、とっても可愛らしかったですよ」
「もーう、かなみちゃんはいじわるだなあ」
私は、腰まで垂れた髪から水気を切って、そそくさと退散しようとすると、後ろから誰かに抱きつかれた。
「せーんぱい♪ まだ帰っちゃあかんだっせ」
「えと、なにかな? フミちゃん」
「今日はいつもとてまうて、三人の男の人たちと一緒に練習しましてんね」
チカちゃんが代わりにそう答える。
「ほんでだっせ。藤井先輩は誰が良かったんかやえなて」
「そ! そんな! まだ一日目ですし、私が誰かを好きになるとかは!」
私はある男性の顔が、頭の中を横切ってしまい、瞬間的に顔が熱くなるのを感じた。
「やーだなあ、先輩。あたしは誰が卓球上手かったか訊いただけだすのんに」
「先輩、ひっかかってやんの」
「もうっ! フミちゃんチカちゃんってば」
「で、本題だすけど、やっぱり誰が好きだすのん? あたしは六郎君。チカは?」
「安牌やなあ、フミちんは。わたいは漫才向いてそいな慶一君かな。そこで聞き耳立てとるかなみは?」
「ああうん、そうだね。私は徹さんのような人がタイプですね。はい、これで三人ともいいましたよ、次は先輩の番ですね」
ええ? なんでみんなそんなに簡単に言っちゃうの?
「先輩だけ言わないのはセコだっせ、ほれ、先輩もパーっと言っちゃっとくんなはれ」
「……どうしても言わないといけない?」
「「どうしても!」」
後輩たちが強く声を揃える。
「えーとね、私は……」
何度か深呼吸して、喉から搾り出すように、
「私は……徹さんのような人が、ほんのちょっとだけ好みです……」
「「おおおっっっ!!」」
また三人が合唱する。
「そっかそっか、そうですか、これは先輩応援してあげないといけませんね」
とかなみちゃん。
「え、なんでなんで?」
かなみちゃんも徹さんのことがタイプなのでは?
「実はね、藤井先輩。あたしら言うたこと、ぜーんぶ嘘だす。
あたしが六郎君、チカが慶一君、かなみが徹君と割り当てるように言うたら、先輩の本音が聞けるとちがかて思てましてん」
「作戦通りやね! フミちん!」
「ごめんなさい、先輩。フミチカにどうしてもと言われて……」
「え? それじゃあ……私だけ告白したってことになるの?」
今日は何回も頬を染めたような気がするが、そのどれにも負けないほど真っ赤になってしまった。
「あー、せんぱーい、逃げたあ」
「先輩、テラカワユス」
「先輩! 体冷えてしまってるのでもう一度シャワー浴びた方が……」
みんな、いじわるだあ。シクシク。
GJ!
先輩カワユス(´・ω・`)
GJ!!
慣れない関西弁はやめたほうがいい
・・・実際そういう関西弁があるんなら謝るが。
>>855 お前さんが言う関西弁という方言は、おそらく大阪弁の事だ。
実際には神戸や京都も関西に含まれ、神戸弁や京言葉は大阪弁とは違う。
Wikipediaにおいて関西弁とされる方言は、京言葉、神戸弁、近江弁、丹波弁、舞鶴弁、船場言葉、河内弁、泉州弁、摂津弁、播州弁、奈良弁、紀州弁、淡路弁、三重弁の14種類。
これらは全て違う方言だ。
つまりそういう事。
てか物語の中なんだしどうでもいいんじゃ…
たしかに、間違った方言が出てくると失笑してしまう。
860 :
855:2007/07/25(水) 16:53:54 ID:rSDfybG+
関西弁が多様なのはわかる(そもそも地元民なんだからな)。
その上で
>>848が多様な方言のどれにも該当しないのではないか、と言ってるんだ。
だがちょっと待って欲しい。
怪しい関西弁使うのも脳内変換次第で萌えるのではないだろうか。
おkwww
さてわいも地元民なわけだが、どないな言葉使うたらええねん?
▽
「そ! そんな! まだ一日目ですし、私が誰かを好きになるとかは!」
な、なんだ?
もくもくと湯気だつシャワーの栓を閉めると、同時にくぐもった女の子の声が耳に入ってきた。
となりから? あの声は……
俺たち男がシャワールームにいるということは、やはり女の子も同じく汗を流そうとしているわけで、
仮に薄壁一枚で仕切りをしているのであれば、向こうからの発する音がこちらまで駄々漏れてもてんで不思議ではない。
で、詰まるところ、藤井みどりさん本人の声だと判断できるほど明瞭に聞き取ることができ、
俺にとって柊草四人中一番好感の持ったその子がさっきのような台詞を口に出すから、
希念と緊張の思いで蛇口の栓から手を離すことができないでいるほどだ。
ちなみに運良く慶一はいない。あいつがいた場合には、もうこの会話を最近刻々と良質になってきている携帯の録音機能で盗聴し、
連続再生可能のメディアプレイヤーを耳元に置いて、寝てから起きるまでずっとかけっぱでいるだろう。
いや、あの変態なら、盗撮ぐらいはするか?
右手には六郎がいるが、たぶん彼には恋沙汰の話しなどフランス・ブルターニュ地方のブルトン語よりも理解できないに違いない。
まるで気にすることなく体を洗っている。
向こうからのシャワー音も交じるが、俺は耳の穴をかっぽじって集中した。
「で、本題ですけど、やっぱり誰が好きですの? あたしは六郎君。チカは?」
おお! さっそく本題ですか! この声は双子ちゃんか? で、六郎君が好きですと。良かったなあ六郎。
「安牌やなあ、フミちんは。わたいは漫才向いてそうな慶一君かな。そこで聞き耳立ててるかなみは?」
双子ちゃんのもう一人の子だ。慶一が好き!? ……やめとけとは言わない。
どうせ明日になったら嫌悪の対象になっているだろうから。
「ああうん、そうだね。私は徹さんのような人がタイプですね。はい、これで三人ともいいましたよ、次は先輩の番ですね」
え? ……お、オオオオオオオオ俺!? いい、今のって神田かなみさんだよなあ。
そっか、俺か……そっか、そっか……ヘヘ、そっか。
「先輩だけ言わないのはズルですよ、ほれ、先輩もパーっと言っちゃってください」
「……どうしても言わないといけない?」
「「どうしても!」」
藤井みどりさんの番だ。俺も一緒に「どうしても!」と口を動かす。
「えーとね、私は……」
うんうん、私は?
ジャァァーーーーー!
思いもかけず、いきなりの濁流音が聴覚を奪った。
もう素ん晴らしいタイミングで、六郎がせっけんの泡の洗い落としを開始したのだ。
六郎〜〜、そりゃねーよ。
あとから考えてみれば、有無も言わさずにシャワーを止めてやればよかったんだが、
このときは必死になってとなりからの音を拾おうとしていた。まるでWiiで行なう卓球の練習のように無駄であったが。
△
香ばしいドミグラスソースの匂いが漂ってきた。
デミグラスソースではなくて、正しくはドミグラスソースというのですよ、
なんて語ると、「ホントに先輩ってハヤシライスのことになると饒舌になるんですね」とからかわれてしまうので、
できるだけハヤシ知識は隠すようにしておこう。
「ほーい、できましたよーん」
201号室の男部屋で作られたハヤシライスは、いまちょうどお皿に盛り付けられようとしている。
「トントントン、あーけーてー」
向かいの203号室――女部屋から着替えの準備をしてきたフミちゃんがドアをノックする。
なかなか防犯意識の高いことで、月山舎の各部屋にはオートロックが設置してあり、
一度ドアを閉めると、鍵を持っているか、中の人から開けてもらわなくては入れない。
私がドアを開けに行く。
「はい、フミちゃん」
これで201号室に七人がそろった。フミちゃんはくんくんと鼻を鳴らし、とびっきりの笑顔になる。
「あー、じゃあみんな、鍋を囲んでー」
振りかえると徹さんがみんなに合図を送っていた。
ふぁあ、なんでだろう? 練習中はそこまでではなかったのに、意識しちゃったからなのかな、お顔もまともに見られない。
「うお! トール、もうみんなに皿を配ったのか?」
「おう、それがどうかしたのか?」
「え……ああいや、ご飯の量の大小とか気をつけようと思って」
「足りなきゃまだおかわりはあるだろう、多けりゃ残せばいいし」
「う……どれがどれだか分かんねえ」
「なにを言っているんだ?」
みんなが鍋の周りに集まって、輪になろうとしている。
徹さんは左どなりの慶一さんとお話をしているけど、右どなりは、右どなりには……誰もいない。
「藤井せんぱーい、席はもちろんあそこやろ」
「そうやね、はいはい行った行った」
ええ!? 私だけに聞こえるようにフミちゃんチカちゃんが呟き、それの意味するところに胸がキュウンと鳴らされる。
息も心なし苦しくなったような。どうしてこの子たちは他人の恋バナがすきなんだろ。
「先輩が行かないのでしたら、私が座りますよ〜」
「……!」
まだ輪に加わっていないかなみちゃんの言葉に、またまた胸が締め付けられた。でもさっきとは違ってなんとなく嫌な感じで。
「かなみ、先輩にいけずしちゃあかんよ」
「イジメ、かっこ悪い」
「冗談ですよ、先輩」
私は急かされるまま、フラつかないようにしっかりとした足取りという気で、でもやっぱり少しフラつきながら、
徹さんのとなりに座った。
「じゃ、じゃあ食べよっか」
全員が鍋を囲んだところで、徹さんの号令のもと、遅い夕食会がはじまったのでした。
▽
フワっときた。急にフワっときた。ハヤシライスに屈しないほどシャワー上がりの女の子の芳気が、
目に見えるほどの侵攻力を持って俺の鼻を陥落させたのだ。
「じゃ、じゃあ食べよっか」
あんまりの不意打ちに思わずキョドってしまい舌噛んだ。そしてその恥をごまかすように先陣切ってみる。
俺が食べると同時にみんなも競うばかり、というほどでもないが、各自スプーンを動かし始めた。
厳しい練習で、おなか空いていることだしな。
あれ?
「おい慶一、食べないのか?」
「え? ああ、うん、まあ、その、そう。こうも美味しそうに料理ができるとね、なんか食べるのがもったいないなーって」
「そうか? 自信作なのは分かったから、お前も食えよ。ウマいぜ。」
「……そだな」
そして、若干の沈黙をおいたあと、
「札幌ドーム!」
と毎日三十時間考えても解けないような叫びをシグナルとして、猛烈にメシを掻きこみ始めた。
左にいるこんなバカ野郎はほっといて、鍋越しの正面に目を向けると、双子ちゃんたちが六郎相手に漫才をしているのが見えた。
彼女たちの会話は非常にテンポが良く、まるで言葉というピンポン玉を使って、
愛ちゃんもびっくりのスーパーラリーを打ち合っているように感じる。六郎もまた目を丸くして、そのリズムに聴き入っている。
たしかどっちかは、六郎のことが好きなんだったな。がんばれ。
続いて、もひとつ右。こんな俺に対して興味津津であられる神田かなみちゃんが、とても礼儀良く正座して双子漫才をたしなめている。
もう一度言う。俺のことがとっても大好きなかなみちゃんはなぜか向こう側を向いている。なんでだろう?
たまにちらちらとでもこちらを気にしてくれるのだったら嬉しいのだが、漫才に集中しているんだったら仕方がないか。ちょいと残念。
さらに右には、我が麗しの藤井みどりさんが……なんかお皿とにらめっこするように下を向いて食べている。
そうだった、ハヤシライスが好きなんだったな。これが慶一の策略だというのは考えすぎだろうか?
まあいい。せっかくのチャンスなんだし、話しかけてみよう。
「藤井さんってどうしてハヤシライスが好きなんですか?」
「へ、はッ、ヒャウ!? け、けほっ、けほっ」
「あ、ごめんごめん」
急に話しかけてしまったせいなのだろう。咳きこむ藤井みどりさんに水を差し出す。
「ンッ、ンッ、ンッ、くふぅ。……ふぅ。あの、ありがとうございます……徹さん」
「気にしなくていいよ。それより藤井さんって、俺のことを名前で呼ぶんだね」
「ひゃあ、いえ、それはっ違います、いえ、違うというのは違うという意味ではなくて、その、苗字は教えてもらっていないから……」
「そうだっけ? うーん……じゃあこうしよっか、俺も藤井さんのことみどりさんって言っていい?」
「はうあッ! はひ! はい、構いません。いいですよ。大丈夫です」
あれ? 俺ってそんな怒ったような口調をしているかな? なぜだか怖がっているように見える。表情がおっかないからかもしれない。
努めて笑顔で優しい言葉をかけても、スプーンを口に含ませて、ますますとしなだれるような格好をさせてしまう。
ごくたまに気遣いからか、目を合わせてくれるも、サッと伏してしまう。
その上目使いとても可愛いのになあ、本当に嫌われているのかな……ショックだ。
こっちからのほぼ一方的な会話がそろそろ途切れようかとするところで、いとらうたしかな。とんでもないことを質問してきてくれた。
「と! 徹さんって素敵ですよね! 彼女とかいるんですか?」
え? それってどういう……
しかし、発言の意味を百パーセント理解する前に、とんでも迷惑野郎が突如として喚きはじめた。
「おう、キタぜパトラッシュ。エキセントリックな掉尾を飾る予定だったが、いちごパンツ(1582)で最早これまで。
チャーミングなショートヘアーが霞んで見えてきたぞよ。そんな貴方は明眸皓歯。そんな拙者は月下氷人。
そして意識はメルトダウン。みせろかがせろさわらせろ……」
こういい残し、慶一は豪快にも音をたてて仰向けに倒れた。今のは辞世の句なのか? 長いしムズいし覚えにくい。
最後の一フレーズしか聞き取れなかったぞ。
気づいたら、正面の三人も寝ていた。双子ちゃんと六郎が川の字になって。
「先輩……私も部活の練習で疲れたみたいです。ちょっと向こうの部屋で休、み、ま……」
立とうとするものの、全く体に力が入らないみたいで膝から崩れ落ちるかなみちゃん。
なんかおかしい。そしておかしいと感じる初源の理は、そこでべそかいてぶっ倒れているこの変態だと判断、断定。
大方このハヤシライスのいくつかに眠り薬でも仕込んだのだろう。
「みどりさんは平気?」
「う、うん。ちょっと気だるい感じがするだけ」
そういっておぼつかない足取りで、201号室を出ようとする。
「私、部屋で休むね……」
俺ははっきりとした意識があるから、おそらくはハズレだったのだろうけど、みどりさんの皿を見ると食している量が少ない。
なので薬が入っていたかどうかは確認できなかった。
さりとてもし薬が入ってたとすると、急に倒れることになってしまうかもしれない。
俺は急いでみどりさんを追った。
↓こっからずっと俺のターン!↓
↑ここまでお前のターン↑
>>873 あ、ごめん。そういう意味じゃなくて、
みどりちゃんが気を失うので、主人公がずっと続きますよってことです。
まぎらわしいな、この書き方かと
ワロスwww
札幌ドームwwwwwwwwwww
良スレage
ほ
ニャ━━━━ヽ(゚∀゚)ノ━━━━ン!!
続きwktk
△
あれ? 私、どうしたんだろ?
クーラー結構利いているはずだけど、体が熱くほてる。
首元から嫌な汗が流れてきて、呼吸も荒くなってきている。
まるで体の全ての器官から酸素を欲しているような感覚が、全身を包む。
心拍音も聞こえてきた。もうダメ、つらいかも。
「私、部屋で休むね……」
頭と視界がふやけて、よろよろになる。お酒飲んだことないけど、酔うっていうのはきっとこういう気分なんだろう。
201号室を出る。真正面の203号室のドアノブを引っぱる。あれ、開かない。
そうだ、鍵、鍵。たしかポケットの中に……
「みどりさん、ふらついているけど大丈夫? とっとっと、うわあ!」
意識が朦朧としていて、どうやら私の体は力なく倒れようとしていたらしい。後ろから声をかけてくれた誰かが支えてくれた。
「あっ、ありがとうございます」
手短にそう告げて、助けてくれた顔を確かめようと目線を上げてみる。
ぼんやりとした目に映えだしたのは、さっきまでいろいろ話しかけてくれた徹さんだった。
――徹さん!
なんだかよくわからない。人に対してこんな気持ちになったことは生まれてから一度もない感情。
「…………!」
しゃべろうとしたけど声は出せなかった。ううん、話しかける内容すらも混乱していてよく分からない。考えることができていない。
じゃあ私は何をしているかというと、どうしようもなく気持ちのいい衝撃と、
それをうまく扱えないでいる切なさが胸に集まってきて、ただ瞳を潤ませているだけ。
「ちょ、ちょ、みどりさんホントに目がトローンとしてきてるけど、マジ大丈夫なん?」
「…………」
「とりあえず、部屋で休ませないと……うおっ、しくった。こっち側のドア、閉まっちゃってるじゃん。
オートロックうぜーなぁ。みどりさんの方の部屋は鍵ある?」
「…………」
▽
何度か問いかけても、はぁはぁという息使いだけ。
他のみんなと症状が違うことに俺はあせった。
「ごめんねみどりさん。すこしだけ鍵を探させてもらうね」
決して広いとはいえない宿舎の廊下にて、壁に背を預けて座らせている。
Tシャツと長めのスカートを穿くみどりさんに対し鍵のありそうなポジションを見つけようとした。
ちなみにヤラシイ目つきでではない。そう、バファリンに含有するやさしさの割合ほどしか、卑猥な視線を送っていないつもりだ。
もし鍵を持っているとするならば、おそらくはスカートのポケットだろう。
っていってもスカートのどこにポケットがあるかなんて、てんで予想つかない。
とりあえず両腰に手を当ててみる。
「ひぁ……んっ」
みどりさんが腰をひねった。いやいや変なところを触ろうとしたわけではありませんよ。
あくまで両腰。骨盤のところを軽く触っただけです。って俺は誰に言い訳しているんだ?
天井には十メートルおきにダウンライトが並んでおり、その明るさはというと、
極端に顔を近づけないと表情が判別できないほど、蒼然たる暗色に閉ざされている。
みどりさんは苦しそうに胸を上下させているが、かといって顔を覗き込むことも、これ以上下半身をまさぐることも申し訳ない。
フロントまでスペアをもらいに行こうともしたが、夜遅いこともあり、
取りに行ったけどなかった。 次は一時間後に取りに行くです。いやいや一時間後じゃまたフロントに人いないって。
こうしてまた、201と203の両部屋の間で途方にくれていたが、いつまでも佇んではおれず、俺は一大決心をした。
「みどりさん、体起こすよ」
鍵を見つけるために、みどりさんを持ち上げた。
見た目軽そうな女の子でも、全身力が抜け切っているので、後ろからお腹に手を回して抱きつかなくては力不足だ。
ぬおっ。
匂いとは恐ろしいもので、至近距離でみどりさんの香りを嗅ぐと、なんとも不埒な気分になってくる。
けれども俺はMPの半分ほど使って、いきり立とうとする一物をしずめた。
「えーっと、ここかな?」
後ろポケットをさわると鍵らしい物体があった。引き抜く。
鍵なんかじゃなく、女子高生のヒップを思いっきり握り締めたい衝動に駆られたが、
そこもやはり残り半分のMPを駆使して思いとどまる。MP0。たぶん次はない。
「よっしゃあ、開いたー!」
慶一がどんな薬を使ったかは知らないが、命を奪うようなことはないだろう。
俺にできることといったら、後はみどりさんをベッドに寝かせてあげることぐらいだ。
ふぅ、いろいろ疲れた。じゃあ俺も変な気が起こらないうちに、寝るとするか。
△
徹さん、徹さん、私おかしくなっちゃたのかな?
抱き上げられたりして徹さんと触った場所が痺れたように熱いよ。
年頃になってからは男の子に接する機会はなかったけど、おそらくこの感情は……ドラマや小説で言うところの……恋、かな。
わかんない。わかんないけど、徹さんにもっとさわってほしかった。ペタペタって。
恋する乙女というのはものすごいって聞くけど、こんなに気が高ぶるものなんだ。へぇ〜。
徹さん、もう寝ちゃったのかな? もっともっといろんなお話がしたかったな。
そしていろいろなところをペタペタさわってもらって。
ああっ! 私、とってもエッチなこと考えているけど、これが恋なんだよね。普通なんだよね。
もし私に歩く力があれば、今すぐに徹さんのとこまで行って、キスしたいよう、唇を押し付けたい。
あ、でもダメだよね。徹さんの気持ちを聞かないで、勝手なことをしちゃ。
……でもでもでも想像の中ならちょっとはいいかなぁ〜なんて。
私が寝ているベッドまで徹さんが寄ってくる想像をしてみた。電気が消えていてよくわからないけど、きっと優しい表情だ。
徹さんは私の上布団に乗っかる。両膝で私の腰を挟み込む形にして。
体重の重心はかかっていないけど、布団の張りによってちょっぴり拘束された気分になる。
布団からは頭しか出ていなかったが、その頭を目掛けて唐突にキスされた。
洋物の映画に出てくるような、深い深い口付け。空想上なのに唾液があふれてくる。それを彼のだと思って呑みこむ。ごっくん。
次は、肩から胸にかけて手を這わせてきた。布団の上からだけど、ぞくぞくっとする快感に身が爆ぜる。
私は、大きい胸が好き? と訊いてみる。彼は、みどりの胸が好き。と答えてくれる。
マッサージのように何回か揉まれていると、急に手が止まった。彼は数秒考える仕草を見せると、突然ベッドから降りてしまった。
どうしたの? と一言かけると、その言葉にすれ違うようにして、彼は足元から布団にもぐりこんできた。
足の裏をこちょこちょとかいて、厭らしくも股を広がせてきた。
私はちょっとだけ抵抗するけど、その曖昧な行動に彼は愛おしそうに笑う。
彼の両手は、私の両足からゆっくりと上ってくる。つまさき、かかと、すね、ひざ、もも。じらすように上ってくる。
両足の合流地点まできて、私はぎゅっと目をつぶったが、彼は嘲るように女性の一番大切な部分を通過し、さらに進んでいった。
Tシャツに手を入りこませて、胸までたどり着く。そして上手にブラをはずされる。
足から胸まで彼の触れたところは、魔法のように熱を帯びている。
彼は、もうすでに尖ってしまっている私の乳首を捻じりながら、ひょっこり頭を出してきた。
無意識に私は赤くなる。けどずるい。彼はとても澄ました顔だ。プイっと顔を横にそらすと、ほほにキスされた。
彼は……その、男の人のソレを、ショーツ越しの私の股間にあてがった。
強く強くおしつけてきて、上下運動を始める。実際にこういう行為はしたことがないけど、本能で知っているのかな。
右手で股に照準をあわせて擦り、想像とあわせる。
「…………ん……ぁ、ふぅん……」
声が漏れてびっくりした。信じられない。こんなに気持ちのいいものなんだって知らなかった。
「ふぁ……あ…………ああんっ」
指にめいいっぱい力を込める。全身に不思議な灼熱がこみ上げてきた。
「ひゃぁ、はぁ……ああっ……はああ!」
な、なにか変。その温度がとどまるところをしらずに上昇していく。
「はっ、はあ、ん、ああああっ、ひゃああぁぁぁ、ふぁああああああああ!」
…………
…………
……初恋って、気持ちいい……
旅行いっていて、更新できませんでした。スイマセソ
その旅行中に媚薬ねた考え付いて、ずっと俺のターンは変更しました。
>>889 GJ!
あの迷惑馬鹿野郎は何入れてんだよwww
work taker
適当な横文字を力みながら言うとジョジョっぽくなる。
というワケで試してみよう。
サンッハイッ!
ワ ー ク ・ テ イ カ ァ ァ ア ッ !
仕事を取っていくのだな。
移民問題みたいだ。
894 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/04(土) 23:22:35 ID:d7rA5fnw
倭阿琥帝禍ァァァァァァァ!
アヴェ! シィィンッ ヅォウッッ!
▽
ハヤシライスを食ってから、歯も磨かずにベッドに入った。
着飾りとしてはいいが、寝転んでみると分かる刺繍の部分がやけにゴワゴワして鬱陶しいTシャツを床に脱ぎ捨てる。
Gパンも同じ理由で今は穿いていない。
合宿といったら寝るのには敷布団と相場が決まっているのだが、ここは違う。
一部屋には四つのベッドが並べられ、分厚く高級そうなカーテンをめくると、部屋の半分ほどもある小奇麗なベランダがあった。
眼下にはどこまでも続く黒い森が広がっている。
そんな、もう宿舎どころかホテル並みだろという月山舎には、もしかしたら使い捨て歯ブラシも備え付けられていたかもしれない。
でも、もういいや。寝る。
「ひゃぁ、はぁ……ああっ……はああ!」
いきなり聞こえてきた。
みどりさんの息遣い、というよりもすでに喘ぎ声が、だ。
おいおい慶一。お前、何を入れてくれたんだよ。睡眠薬といっても一応『薬』なんだからな。
人によってはアレルギー発作とか引き起こしかねないだろ。
「はっ、はあ、ん、ああああっ、ひゃああぁぁぁ、ふぁああああああああ!」
ん、ん? いや、やばいんじゃないか? うなされているだけじゃないだろ。ちょっと確認しとこう。
トランクス一枚しか身に着けていないが、この暗がりならまあいい。
俺はみどりさんのベッドの近くまで来て、様子をうかがった。
さっきまで全速力で走った後のようなひどく荒い息をしていて、少し不安になった。
熱を測ろうと額に手をのせてやる。
……うん、自分の体温とは違いが分かるほどに熱かった。……マジ、どうしよう……
医者でもナースでもない俺は、この緊急事態にほとほと困り果てていると、みどりさんが意識を取り戻したみたいだ。
目を凝らすと、うっすらと俺を見つめるみどりさんの瞳があった。
「徹さん……?」
「みどりさん、大丈夫ですか!?」
うつろうつろと目線が揺れているが、的確に俺の顔を捕らえているのがなんとなく分かる。
「徹さん、もう一回ですかぁ? うれしいです」
う、うん? 何がもう一回なんですか。
のんびりとした彼女の口調に、意味がよく掴み取れない。
「今度は……中にお願いしますね」
え? さっぱり分からん。夢の続きと勘違いしているのかな?
みどりさんは縋りつくようにして右手を伸ばしてきた。では、と手を握ってやる。柔らかな手のひらと指には、汗かなにかで濡れていた。
かわいいなあ。こんな娘を彼女にして、ホテルの一室でガンガンと俺の欲望をぶちまけ……っていかんいかん。
みどりさんの体調確認が急務だ。
「とりあえず、電気つけますね」
「ぁ……ふぅん、電気は、だめ……恥ずかしいです」
そ、そうか。で、じゃあ、俺はどうしたらいいんだ?
「もう一回、キスしてくださぁい」
キ! キ! キスですか!? キスというとあれですか? 男と女の唇を重ねたり嘗めたり突っついたりするあれですか?
って俺はなに純情ボーイを振舞っているんだ! 妄想の中じゃあもっと鬼畜なことをかましているだろう。
生まれてきてから十七年間、はじめて女の子にそんなこと言われたからって、
ドキドキする年齢でもないし。中学生かよ俺は! あードキドキする!!
ん? ちょっと待て。もう一回? もう一回って何がもう一回なんだ?
キスか? キスだよなあ。俺はしてねえぞ。さっきまでベッドで寝転んでいたし。っていうと何だ?
夢の中の誰かとみどりさんはキスしていたのか? なんだそれ。みどりは俺の嫁。じゃなくて、みどりさんにそんな不埒な行為をするのは、
なんてうらやま……えーっとどっちだっけ? あぁ、うらやましいでも合っているのか。……じゃなくて、ユ・ル・セ・ン!
はぁ……そっか、みどりさんには想い人がいたということか……残念賞!
うぅ、つらい……つらいってもんじゃねーよ。胸の中身をえぐられて鼻の穴につめ込まれた方が、まだましだ。サヨナラ、俺の初恋……
あれから、なんかみどりさんは大丈夫そうなので、俺はベッドに戻った。たぶん泣きながら。
△
「かなみちゃんは、何ともない?」
「はい、私は平気です。少しだけ頭が重たいですが、部活動に支障が出るほどではありません」
「そう、無理のないようにしてね。フミちゃんとチカちゃんは?」
「問題あらへんよ」
「平気っす、先輩」
二日目、朝。
慶一さんが言うには、タマネギから出る硫化アリルが集団食中毒を引き起こしたらしい。
タマネギを多く入れすぎちゃってゴメンって言っていた。
医学的なことはよく知らないけど、そんなこともあるんだ。今度ハヤシライスを食べるときには気をつけなくっちゃ。
昨晩は私も食中毒に当たってしまって、食後のことはあまり覚えていない。でも、徹さんが私の介護をしてくれたことは分かっている。
そして、そのあと……とってもエッチなことをしたような気がして……それが夢か現実かも分別できないほど混乱していて……
まともに徹さんの顔も見られない。
そして今、私は、誰にも、どんな物にも触れることができない。だって触ってしまうと……
「おう、トール。お前は平気だったんだってな」
「ああ、そのことで慶一には厳しく詰問したいところなんだが」
「それは、合宿後にしてくれ。ところで当たりくじを引いたのは誰だったんだ?」
「なんだ? 当たりくじって」
「それはだな、ネットオークションで仕入れた――だよ。」
「はぁ? そんなはんざ……」
「おーと、シャラープ。俺もお前でもないということは、六郎と女の子四人のうちの一人。
女の子に当たる確立は五分の四、イチローの倍以上の打率だぜ」
「それで、その当たりくじを引くとどうなるんだ?」
「ようつべでその参考動画を見たんだが、それはヤバイね。男女問わずもう出しまくり、吹きまくり、感じまくり。
そしてその感覚は一週間消えることはない。ほらトールも覚えているだろう、一学期期末テストのとき。
試験勉強中にちょっとだけ試しに嘗めてみたんだが、そしたらテスト期間はずっと起ちっぱなしでヤバかったさ」
「ああ、静かな教室でお前だけ奇声を発していたな。よく覚えている。何度か注意されていたしな」
「いやいや、あれはわざとやったんじゃなくて、ホント火照りが体内を駆け巡っていて大変だったのさ。
もう窓からお前ら男共を投げ捨てて、すぐさま自慰に耽りたいぐらいに」
「そっか」
「そうだ」
「……」
「……」
「で、それが五人のうちの誰かと」
「そうだ」
廊下にいる徹さんの声を耳をそばだてて聴く。英語のヒアリングよりも集中していると思う。
男の方に甘美な声といったら失礼かもしれないけど、徹さんから出る甘く麗しい音を聴いていると、強く抱擁されたい気持ちになってくる。
でも今はダメ。今、その広い胸に入ってしまうと、とんでもなく自我が壊れてしまいそう。
その、昨晩から体調がおかしいせいで、変なことばっかり想像しちゃう。これじゃダメ。もっと一般的な男女の付き合いを考えてみよう。
一般的といったら、やっぱり駅前でデートなのかな。私は散々悩んでおしゃれな服を着ていく。
待ち合わせ場所にはもうすでに彼がいて、私は、待った? と声をかける。徹さんは静かに首を振り、私と手を重ねて歩こうとする……
う、うわぁ、これはすごい。私がこんなことをするなんて信じられないよう。だ、だって隣がかなみちゃんとかではなく、徹さんですよ!?
ふひゃ? ニヤケた顔が止まらないよう。こんな顔、誰にも見せられない。止まってー、止まってー、私の顔!
あれ? なんかみんな体育館に行っちゃったのかな? 人の気配がしない。
「藤井先輩、ずっとうつむいていますけど大丈夫ですか?」
あ、かなみちゃんの声が聞こえた。
「もうみんな練習場に行っていますけど、先輩はどうされます? 具合が悪いのでしたら、お休みになられたほうが……」
といって、私の背中を撫でる。
「ヒャンッ!!」
「ご、ごめんなさい……先……輩?」
「あ、あ、ううん平気だから! 先に行っていて、かなみちゃん!」
「……はい、わかりました」
かなみちゃんは不安そうな声質で、ここ、203部屋から出て行った。
今度こそ部屋の中には誰もいなくなる。
触られた背中は熱く痺れてくる。
痛みではなくて、もっともっと摩擦したくなる感じで。
「はぁ、私、こーゆーこといつもはしないのに……」
部屋の鍵を確認してから、今朝方まで眠っていたベッドに潜りこんだ。
頭まで上布団をかぶると、すごい淫臭がした。
「体が、疼くから、仕方ないよね」
今日だけで何度目になるか分からないけど、私は再び体をまさぐり始めた。もちろん徹さんを想って。
一日目の不可抗力は「オートロック」で、
二日目はたぶん「黒い森」になりそうです。
GJ!
おお!なんと本番が二回もあるのですか?
GJ!
しかし、何故トランクス一丁なのに電気をつけようとしたんだ!?
905 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/07(火) 07:38:13 ID:m/C4W5m6
age
>>904 電気つける前にシャツ着るのではないか?
まぁそのまま電気つけたほうがいろいろ盛り上がるが
907 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 08:53:32 ID:YoPcTW1M
流れ仏契りだが、そろそろ新スレ立てないとな>>908
このペースなら
950が立てれば問題なし
というわけで
>>950
>>908 >>950はちょっと早くないか?
あまり早く立てすぎても残りの容量持て余すと思うが。
480KBか、レス数が980越えたあたりで十分だろう。
ほ
っ
け
の
干
物
ワロスwwwww
そういや保管庫どうするよ?
せっかくこんなに投下があったのに、このまま消えるのは勿体ない
まあ作者の許可いるし大変だがな
918 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/11(土) 17:39:59 ID:O+nqFXpT
ほしいし作れるならやりたいけど作れない
っくやしい・・・ビクンビクン
けっこう更新とか大変だから携帯の俺には無理なんだよな
うまいこと誰か出てこないものかね。
まあ都合よすぎか。
いつか保管庫ができることを願って保守
うん? じゃあ俺が突くっていいのかな?
>>919 >>突くって
実に相応しい変換ミス、その意気や良し!
「お願い…突くって…」
エロいな
925 :
919:2007/08/12(日) 00:38:34 ID:lKkjinsz
いま突きまくっている最中なんだが、
このスレ、未完が多くね?
どうする? それも載せたほうがいい?
926 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 00:43:49 ID:JXKlIBD8
入れたほうが色々といいと思う
昨日このスレ見つけた。
おレ的に後日談が欲しい。雪山 とか mori〜♪ とか。
今は脳内補完でしのいでいるが、正直しんどい…
わかるウィキなら手伝う気マンマンだぜー
ウィキなら借りてきさえすれば、後は住人総出でかかれば一瞬で構築できるんだがなぁ
URLマダー?
じゃあ@wiki借りてくる。
ちょっと待ってろ。
935 :
335:2007/08/13(月) 14:12:54 ID:nEdMDBgG
動く気配がないな、とりあえず全部載せて
作者の申請があれば消すって形でいいのかな?
4つぐらい保管しといた、変なところがいっぱいあるから直しといてくれ
>>938 乙。
さて、みんなで残りを頑張って保管しようか。
たぶんほとんど保管し終わった。
細かい編集の仕方は分からんから、あとはおまいらがやってくれ。
……っていうか、Wikiって慣れてないと普通に保管庫作るよりもエライな。
始めるまでに常駐スレの保管にかけてる時間の倍くらいかかったぜ。
あと、
>>919には期待。
別バージョンのもう少し見やすい保管庫頼む。
ウィキってメニューもトップページも変更できるんだぜ?
そうらしいな。
ん、時間見つけてわかりやすく整頓しておくぜ。
トップページ変更、カウンタ設置した
おつー、後は職人さんたちを待つだけだな、全裸で
保守
◆プロローグ
『僕は誰?』
『今どこにいる?』
『何をしている?』
“畜生、なんてことだ……”
ぼんやりとした意識の中。頭の奥底で、誰かの声が響いた。
“なんてことだ……”
続けてもう一度、同じ言葉が繰り返される。
それは、心の底から絶望したような、そんな声だった。
例えるなら、最高裁で死刑宣告を言い渡された囚人のような……
一拍間を置いて、その『囚人』は懇願するような口調で、こちらに向かって語りかけてきた。
いや、正確には声の主が僕に向けて『語りかけた』のかどうかはわからない。
もしかしたら、僕が勝手にそう感じただけなのかもしれない。
ただ、誰であれ、まるで神託のように、頭の中から何者かの声が聞こえてきた、となれば、それが自分自身とは無関係な事柄だとは思わないだろう。
“頼む……!”
それにしても、聞けば聞くほどに切羽詰まった声音だ。
彼が、僕に対して何かを伝えようとしていると仮定して、一体何を頼むというのだろう?
僕は何となく気になって、その声に意識を集中してみた。
そんな事をするまでもなく、否応なしに聞こえてくるものなのかもしれないが。
“頼む……死ぬんだ。死んでくれ……!”
直後。突然、物騒な言葉を投げかけられて、思考停止を余儀なくされる。
コイツは、何を言ってるんだ? 『死んでくれ』ってどういうことだ!?
大体、人に『死ね』って言われて『はい、死にます』なんて答える人間はいないだろう。
……と。
そこで唐突に、僕は気付いた。気付いてしまった。
この声は……どこかで聞いたことがある……!?
誰だ? 誰だ? 誰だ? 誰だ? 誰だ? 誰だ?
靄がかかったような脳味噌に鞭を打ち、思考を巡らせること数秒。
その声の『正体』に思い至った瞬間、ありえない事実に疑問を差し挟む余地すらなく、僕の意識はブラックアウトした。
◆白い牢獄
瞼を開いた途端、眩しいくらいに鮮烈な『白』が瞳に飛び込んできた。
頭は鉛のように重く、記憶は所々欠けてしまったみたいにはっきりとしない。
自分はベッドに寝かされていて、白一色に染められた部屋の天井を茫然と見ている。
たったそれだけの事を理解するのに、数分もの時間が必要なほどだった。
僕は幽鬼のような緩慢な動作で上半身を起こすと、周囲を見回す。
「……なんだ、これ?」
思わず、そんな間の抜けた台詞が零れる。床も、壁も、勿論天井も。部屋の中は見渡す限りの、白だった。
広さは――距離感を失うくらい殺風景なので、目測が合っているか定かではないが――十二畳ほどだろうか。
空調もない。電灯もない。窓枠もない。内装も何もあったもんじゃない、白い立方体の内部に、僕はいた。
体が小さくなって、サイコロの中に閉じ込められたとしたらこんな感じかもしれない、と愚にも付かないことを考える。
それは、小さな子供たちがスゴロクで遊ぶ時に使う、何の変哲もないサイコロで、誰も、人間がこの中に入っているなんて思いもしない。
だから、子供たちは、無邪気な笑顔を湛えたまま、サイコロを振る。サイコロの中にいる人間は、その回転に翻弄されて、壁面に叩き付けられる。
全身がバラバラになるような衝撃を受けて、吐血する。白い壁に、赤い斑点ができる。蚊の鳴くような叫びは、外には届かない。
もしかしたら届いているのかもしれないが、遊びに夢中な子供たちは気付かない振りで、またサイコロを投げる。
子供たちは、飽きるまで、サイコロを振り続ける。何度も、何度も、何度も、何度も――
……何を考えているんだろうか、僕は。
大きく首を振って、妄想を頭から追い出す。心の準備もないままに、わけのわからない状況に放り込まれて、精神的に参っているのかもしれない。
今はそんな、薄気味の悪い妄想に囚われている場合ではない。
それよりももっと、解決しなければならない、重要な問題がある筈だ。
そう。そもそも……どうして僕は、こんな場所にいるのだろうか?
目覚めた時から、頭の片隅で絶えず考え続けてはいた事だった。が、一向に、ここに至るまでの経緯が思い出せない。
まさかとは思うが、記憶喪失にでもなってしまったというのだろうか。
僕は、自分自身に関する情報を一つ一つ、反復作業のように確認して、錆付いた記憶の扉を開いてゆく。
僕の名前は佐々野智信(ささの とものぶ)年齢は十九。生まれは東地区五番街の四。階級は三級市民。
僕が暮らしているのは『一級市民』と呼ばれる一握りの人間と、それを補佐するコンピュータによって運営される都市、マシン・シティ。
カースト制にも似た厳しい階級制度が導入されている都市で、そこに暮らす市民の階級は一級〜五級に分類される。
階級ごとの地位について、見も蓋もない解説をしてしまうならば――
一級市民が支配者、二級市民が上流階級、三級市民が中流階級、四級市民が下流階級、五級市民が犯罪者、と言ったところか。
そして、僕の目標は、いつの日か昇格試験に合格して、栄誉ある(一部では神とも呼ばれている)一級市民になることだ。
うん、大丈夫。記憶に目立った異常は認められない。『どうして僕はここにいるのか』という、最も重要な一点を除いては、だが。
限局性健忘、という言葉が頭を掠める。心因性の健忘(外傷性の健忘ならば、無傷ではいられないだろう)では、一番ポピュラーな症例だ。
本当に、そうなのか……? 今僕の身に起きているのは果たして、『健忘』という常識の範疇にカテゴライズされるような現象なのか……?
自分でそれらしい理屈をつけておいて、尚、歯に挟まった異物のように、違和感がある。
仮にそうだとしても、この限局性健忘が、完全な偶然の産物であるなどとは到底思えなかった。
気にはかかるが、記憶に関しては、悩んだ所でどうにもならなさそうではある。時間の経過が、回復に導いてくれることを祈るしかない。
さて。こうしていつまでも、ベッドの上で座っていても仕方がない。
兎に角、部屋を調べてみよう。そう決めて、僕は足を床に落とすと、重い腰を上げた。
立ち上がった状態で、僕は改めて、部屋のあちらこちらに視線を這わせてみる。
リアルタイムキタコレ
そこで、自分が寝かされていた部屋の片隅のパイプベッド、その丁度反対側に、もう一つ、全く同じデザインのベッドがあるのを発見した。
先程気が付かなかったのは、そのベッドのデザインが保護色の役割(シーツだけでなく、骨格であるパイプまで白だ)を果たしている所為なのか、それとも単に寝惚けていて見落としたのか。
そのベッドには、人が横たわっていて、ベッドの下には、淡い水色をした箱のようなものがあるのが見えた。
「ふぅ……」
無意識の内に、口から安堵の溜め息が漏れていた。僕の他にも、誰かがいる。
やはり、一人ではない、というのは心強いものがある。記憶が欠けてしまっていて、右も左もわからない、そんな異常な状況下であれば、尚更だ。
僕は早歩きで、ベッドへと近付く。ベッドに寝かされていたのは、一人の小柄な少女だった。目を瞑り、両手を胸の上で組み合わせている。
そっと、口許に手をかざすと、息遣いが伝わってくる。どうやら、眠っているだけのようだ。
そのまま暫く、少女を観察する。髪は胸元まで伸びたストレート。上は長袖のフリルブラウスに、薄手のカーディガンを羽織っており、下はフレアスカート。
偶然か必然かは知る由もないが、少女の衣服は上下共に、すべて白で統一されていた。
肌も、無機的な人形のように生白く、彼女が部屋の構成要素の一部なのではないか、などという錯覚すら覚える。
ともかく、起きてもらわなければ。そう思い、肩に右手をかけて、軽く体を揺すってみる。
正直、その気持ち良さそうな寝姿を見ていると、若干起こすのが躊躇われたのだが、起きてもらわないことには状況は進展しない。
彼女には、色々と聞いておきたいこともある。
「おい、きみ、起きてくれ」
声をかけながら、何度か揺さぶってみる。と、少女は声にならない小さな声を発して、ゆっくりと目を開いた。
そして、寝惚け眼のまま、視線をひとしきり泳がせると、僕が立っている方向に顔を向けた。
雪山編やLa-Piece〜ラピエス〜からインスパイアされて書きたくなりました。
閉鎖空間万歳。続きます。
GJ!
始まったばかりでも、否応なしにwktkしちゃうような良作の予感ですよ!
うむ、不条理系は大好物だ。座して待つ。
これは期待。面白そうだ。
次スレどうする?
このペースでこの容量なら、多分
>>980でも大丈夫だと思うけど。
「え……?」
その表情に、困惑の色が混じった。
「あの……あなた、誰ですか? ここは……?」
眠りから覚醒した少女の第一声を聞いて、僕はある種の諦念を抱かざるを得なかった。
ああ、これは――予想していなかったわけではないが――なんてことだろう。
まず間違いない。彼女も、僕と同じ境遇なのだ。それはつまり、記憶の部分欠落が、ただの健忘ではないことを意味する。
何か、得体の知れない、大きな力が働いている。そう解釈する以外にない。
眉間に皺を寄せて考え込んでいる僕に、少女が再び声をかける。
「あの……」
僕を見つめる少女の表情は、困惑から不安へと移行していた。
「落ち着いて聞いてほしい」
ともすれば、動揺して泣き出してしまいそうな雰囲気を察して、予め予防線を張っておく。
「は、はい」
少女は、そこでようやく上半身を起こすと、姿勢を正して、こくりと頷く。
僕はなるべく彼女にショックを与えないように、ゆったりとした口調を心がけた。
「残念ながら、僕にもわからない。ここはどこなのか、どうしてこんな場所にいるのか……」
「……そうなんですか」
思いの外、反応は淡白だった。繊細そうな容姿に似合わず豪胆なのか、或いは、まだ現実感が希薄なのか。
もしかすると、内心、僕の方が取り乱しているくらいかもしれなかった。
「僕は佐々野。佐々野智信。きみの名前は? 覚えていたら教えてほしい」
「私は……朝霧留美(あさぎり るみ)です。青鷺学園、中等部の三年生……」
「覚えていないのは、ここに来るまでの経緯だけだね?」
確認するようにそう問いかける。彼女は、黙って首を縦に振った。
思った通り、僕と彼女の記憶障害における『症状』は、完全に一致しているようだ。
「それじゃあ、佐々野さんも……?」
「ああ。きみと同じ、と考えてもらって差し支えない。要は、起きたのが早いか遅いかの違いだよ」
僕はそう言って、反対側――自分が寝かされていたベッドを示した。
「とりあえず、僕は部屋を隅々まで調べてみる。入ってきたのだから、必ずどこかに出口はあるはずだ」
「そ、それなら私も手伝います。一人でじっとしてるの、不安ですから」
少女が勢い良く立ち上がる。かくして、二人による部屋の調査が始まった。
ひとまず、壁伝いに部屋を一周しつつ、出入り口があるかどうかを調べてみることにした。
お世辞にも広いと言えるような部屋ではないから、見落としがないよう丹念に壁面を調べながら進んでも、すぐに一周できる。
さして、手間のかかる作業ではないはずだ。
「あ、見てください。ここ」
半周もしない内に、彼女が、僕の服の裾を引いて、壁の一点を指差した。
見ると、そこには四角い切れ込みが入っていて、下には、半円の取っ手のようなものが付いている。
「これ、開くのかな?」
僕は取っ手部分に指をかけて、上方向に力を込めてみた。
すると、郵便ポストの蓋が内側から開くみたいな形で、切れ込み部分が跳ね上がって、そのまま固定された。
部屋に、ぱたん、という呆けない音が響く。そして、その中から現れたのは、ドアノブだった。
例によって例の如く、そのドアノブもまた、持ち手から可動部分に至るまで、一点の曇りもない『白』だ。
「まったく、偏執的というか何というか……徹底するにもほどがある」
一人ごちながら、押すなり引くなりしてみようかとノブを掴んだ途端、彼女が不吉な台詞を呟いた。
「何かの仕掛けでしょうか? 罠とかじゃ、ないですよね?」
罠……? 考えてもいなかった可能性の指摘に、手が止まる。
そう言えば、と、昔見た映画にそんなストーリーがあったのを思い出す。
どこからか連れて来られた男女。無数の立方体で構成された部屋。行く手を阻むレトロなトラップ。
自分の体が壁から突き出した針で串刺しにされている情景を想像してしまって、背筋を冷たい汗が流れる。
「わからない。……が、注意するに越したことは無いね」
動揺を隠しながら、やっとの思いでそう答えて、僕は暗澹たる気持ちになった。
わからない。僕が咄嗟に発したその一言に、現状の全てが集約されているように思えたからだ。
ここは何処なんだ? この部屋は何なんだ? どうして僕が? どうして彼女が?
疑問はそれこそ、腐るほどある。だが、何もかもがわからない。従って、何の指針もない。
僕らは今、確かなことなど何一つありはしない、とても不安定な足場に立たされている。彼女の発言で、期せずしてそれを実感した。
気取って『注意するに越したことはない』などとは言っても、一体何に、どうやって、注意すればいいのかすら定かではないのだ。
しかし、だからと言って、このまま右手でノブを握り締めたまま、棒立ちになっていたって仕方がない。
「……回すよ」
それは、隣で心配そうに見ている彼女にかけた言葉というよりは、自分自身に行動を促す為の言葉だった。
ノブは、なんの抵抗もなく回り、滑らかな動きで、自らの役目を全うした。そのまま、内側に向かってノブを引く。
それに合わせて、目の前の壁がスライドする。壁の一部に擬態していた扉がその姿を現す。
僕は中途半端に開いた扉の隙間から、恐る恐る中を覗いてみた。
「あれ……?」
果たして、鬼が出るか蛇が出るか。彼女の『罠とかじゃないですよね』発言の余韻を引き摺りながら、悲壮な覚悟で扉を開けた僕を待ち受けていたのは、意外な光景だった。
扉の向こうは小さな個室――トイレだった。内装全てが白であることを除けば、各家庭、どこにでもあるような、水洗式のトイレだ。
ペーパーホルダーにはトイレットペーパーが準備されていて、両サイドには備え付けの手すりまである。
「どうしたんですか?」
真後ろに立っている彼女が聞いてくる。僕の背に視線を遮られて、扉の中は見えていないらしい。
何というか、適切な言葉が見つからなかったので、僕は扉の前から体をずらして、ジェスチャーで中を見るよう促した。
百聞は一見に如かず。口で説明するよりも、実際に見てもらった方が早い。
頭上にクエスチョンマークを浮かべながら、彼女は中を確認する。そして、暫しの沈黙。
「トイレ……ですね」
「そうらしい」
そんな、間の抜けた会話を交わしてから、お互い、微妙な表情で目を見合わせた。
凝ったギミックの先にあるものが、何の変哲もないトイレというのはどこかシュールだ。リアクションに困るのも頷ける。
何にせよ、出口でないなら今は用はない。扉を閉め、部屋の探索を再開する。
と、内周の三分の二程度を調べた所で、今度は僕が同じものを見つけた。
四角形の切れ込み。半円形の取っ手。どうやら、先と同じ仕組みになっているらしい。
だが、その四角形部分の面積は、トイレに通じるドアノブが隠されていたものより数倍大きい。
トイレの次はなんだろうか? 今度こそ、出口へと続く通路か何かだといいのだが……
僕はそんなことを考えながら、取っ手を持ち、開ける。
中には、電卓のモニターみたいな液晶画面が埋め込まれており、画面上部にアラビア数字で『三十』と表示されていた。
画面下部には『ルールA』『ルールB』『ルールC』『ルールD』との表示が、縦一列に並ぶ。
画面下部(ルールA〜Dとの表記がある部分)の右側には若干のスペースが空いており、ここにルールの内容が入るのだろうと推測できた。
が、何故か空欄になっているから、その、四つあるらしい『ルール』とやらがどういうものであるのかは不明だ。
そして液晶画面の下には、トイレの時と寸分違わぬ、白いドアノブ。
僕はとりあえずドアノブに手を伸ばし、回そうと試みるが、どんなに力を込めても、ぴくりとも動かない。
「駄目だ。ロックがかかっているみたいだ」
「この数字……『三十』と、その下の『ルール』っていうのが、何か関係あるんでしょうか? 謎を解かないと開かない、とか」
顎に手を当てて、少しばかり考える。我ながら情けないが、それでも結局は、お決まりの言葉を返すしかなかった。
「……わからない」
部屋を一周して、僕らは最初の場所――彼女が寝ていたベッドが置かれている地点――まで戻ってきた。
収穫は、トイレへの扉と、開かない扉、二つの扉の発見。蟻一匹見逃さないよう、時間をかけて調べたから、おそらく見落としはない。
部屋には、この二つ以外に内周部に面している扉はないと考えていいだろう。
「開かなかったあの扉を、なんとかして開けられたらいいんですけど……」
言いながら、彼女はベッドに腰を下ろす。と、そこで、僕は忘れていた『あるもの』を、唐突に思い出した。
「そうだ、箱……」
そう、彼女のベッドの下に置かれていた『箱』の存在だ。
「箱? 箱って何のことですか?」
「きみのベッドの下に、確か、水色の箱があったんだ。そんなことよりきみを起こして、話を聞くのが先だと思っていたから、今まで失念していたけど……」
あの中に、扉の謎を解く為の手がかりが入っているのかもしれない……というのは、流石に楽観的過ぎる予想だろうか。
とにもかくにも、確かめてみなければ始まらない。僕はその場に這い蹲って、ベッドの下から箱を引きずり出す。
箱は小型のクーラーボックスくらいの大きさで、箱の天辺には、小さなリボンが結びつけられている。まるで、プレゼントの包みみたいだ。
そういえば、異常なほど『白』に拘った部屋の中で、この箱だけ白でなくて水色なのは、何か意味があるのだろうか。
「開けてみるよ?」
そう言って、彼女の方を振り向く……が、返事がない。
右手で左手をぎゅっと握り、箱に視線を釘付けにして、彼女は硬直していた。
「……留美ちゃん?」
「えっ? あ、はい!」
もう一度声をかけると、肩をびくっと動かして、思い出したように返事をする。
「どうかしたの?」
「な、なんでもないです」
とは言うものの、なんでもないわけはない。理由こそはっきりしないが、動揺しているのは明らかだった。
心なしか、顔から血の気が引いているようにも見える。
気にはかかるのだが、本人がなんでもないというものを、無理矢理問い詰めても仕方がない。無駄な軋轢が生じるだけだ。
それに、この状況に直接関係のあることであれば、彼女から率先して発言してくれるだろう。そうであると願いたい。
だらだらと考えを巡らせつつ、箱の包装を解いていく。さて、中身は一体何だろう? 期待と不安を抱きながら、僕は箱を開いた。
箱の中に入っている物を、順番に出して、床に並べてゆく。
一リットルのペットボトルが一本。ブロックタイプの栄養補助食品が二箱。それから、A四判の紙とボールペン。
箱の中身は以上だった。二人は箱を挟んで向かい合うようにして床に座り、手に取って、一つ一つ確認してみる。
「これは、海外のミネラルウォーターかな?」
言って、僕はペットボトルを掲げて見せる。そのパッケージ――水彩画のようなタッチで描かれた山の絵――には見覚えがあった。
「ですね。輸入品です。コンビニエンスストアなんかで、見かけたことがあります」
今度は彼女が、栄養補助食品を手に取る。
「えーっと。これは、カロリーメイト……四本入りのブロックタイプですね」
「後は、A四判の用紙とボールペンか。どっちも、特に見るべきところは――」
ざっと眺めてから、箱に戻そうとして、手が止まった。
白紙かと思っていた用紙には、左上に小さなフォントで一行だけ、印字があった。
『―― project whitebox ――』
TIPS『わからない』
あまりにも、わからないことが多過ぎた。
だが、二人は所詮籠の中の鳥。わかった時にはもう遅い。
TIPS『白に拘った部屋』
白一色の内装は、精神に良い影響を及ぼさない。
それを重々承知した上で、この部屋は白一色だった。
TIPS『水色の箱』
この箱は善意の象徴であると同時に、悪意の塊でもある。
留美はその悪意を、敏感に感じ取ったのかもしれない。
TIPS『project whitebox』
それは、この怨念の籠った計画の名前。
>>952の続きです。
書くのは正直遅い方なのですが、掴みである序盤で停滞するのも何なので一気に。
いや、じっくりで構わないですよ。非常にいい仕事です。
TIPS含みですか、むう。構成にも期待です。
GJ。
CUBEとSAWは洋画好きなら必ず押さえとけって名作ですね。
そう言えば、SAW1も二人きりだったな。
CUBEは1と0は良かったんだがなぁ…2はちょっと…
同じ監督のカンパニーマンは面白かった。
揚げ足取りっぽくて恐縮なんだが…
>>960(1行目)
>画面上部にアラビア数字で『三十』と表示されていた。
これって『30』のことだと思うんだが、
わざわざ「アラビア数字」と断った上で漢数字で表記することに何か意味でもあるの?
>>967 多分ミスだろう。
誤変換みたいな物だと思う。
漢字で『トロピカルフルーツ』と書いてあった。暴走族だろうか。
ファンタのCMだろそれ
971 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 01:37:01 ID:SxIs8SCd
GJ。謎解きも楽しみだがエロにも期待ッ
■幕間一『バースディ』
幼い少女は、リビングの大きな椅子に腰掛けて、宙に浮いた足を忙しなくぱたぱたと動かしていた。
とろんとした、今にも眠ってしまいそうな目でテレビを見ながら、頻繁に壁掛け時計に視線を送る。
壁掛け時計は、午後十一時三十分を示している。もうすぐかな、もうすぐかな、と、少女は心の中で、呪文のように繰り返した。
早く寝なさい、と、いつにもまして不機嫌な母の声がどこからか飛んできたが、夢現で聞こえない振りをする。
いつもなら、注意された時点で、素直に返事をして子供部屋に向かうのだが、今日はどうしても起きていたかった。
何故なら、今日は少女にとって、特別な日だったから。
大好きな父からの、お祝いの一言が聞きたくて、こうして睡魔と格闘しながら帰りを待っている。
父は、仕事上の都合で、帰宅時間がまちまちだった。早い日もあれば、遅い日もある。今日は、かなり遅い帰りだ。
玄関の鍵が開く音がしたのは、そろそろ日付も変わろうかという時刻、午後十一時四十五分だった。
その、小さな金属音が行動開始のスイッチだったかのように、少女は眠い目を擦ると、すぐさま椅子から飛び降り、玄関へ向かって走る。
「ただいま」
少女が玄関の前に到着するのと同時に、玄関扉が開いて、くたびれたワイシャツ姿の中年男性が顔を出した。
「ふぁ……おかえりなさいっ」
彼は、出迎えてくれた娘の姿を認めるなり、目を細めた。
それから直ぐに、腕時計を見る。どうやらまだ日付は『今日』のようだった。
「留美、お誕生日おめでとう」
「……うん!」
少女は、喜色満面といった表情で頷く。
彼は、そんな娘を横目に、仕事用のボストンバッグを弄り、用意しておいたプレゼントを取り出す。
「いつも笑顔で迎えてくれる留美に、お父さんからの誕生日プレゼントだ」
眠気で閉じかけていた瞳を大きく見開いて、少女は差し出されたプレゼントを受け取った。
「わぁ、ありがとう、お父さん!」
それは――天辺に小さなリボンの付いた、水色の箱だった。
◆持久戦
それからほどなくして、僕のベッドの下にも同じ箱が置かれているのを見つけた。中身も、先程と全く同じものだ。
だが、進展があったのはそこまでだった。それ以降はもう、いくら部屋の中を徘徊しても、新たな発見は何もなかった。
相変わらず、あの『開かない扉』は、一向に開く気配がなく、謎かけのような文言『三十』と『ルール』に関しても、いくら考えた所で結論など出ない。
手詰まりに陥った僕らは、二人してベッドに腰掛けながら、気まずい無言の時間を共有していた。
「一つだけ、はっきりしたことがある」
圧し掛かるような、重苦しい空気を打ち払うように、僕は口を開いた。
「この異常な状況は、何者かによって仕組まれたものだということ」
説明するまでもないかもしれないが、決定打となったのは、水色の箱に入っていたA四判の用紙だ。
project whitebox――そう記されたあの用紙は、僕らに、これは計画の一環である、と告げていた。
この白い立方体は、僕らの為に誰かが用意した舞台である。それは残念ながら、もはや疑う余地がない事実だった。
もう『事故で閉じ込められた』とか『偶然に記憶を失った』とか、そういった可能性は切り捨てて考えるべきだろう。
「あの『白い箱』と言うのは、多分、この部屋を指していて……そして、そこで何らかの『計画』が行われている」
「でも……誰が、何の為に? 私たちを拉致してきて、閉じ込めるのが『計画』だなんて、そんな話……」
「そう、それが疑問なんだ。仮にこれが何かの計画、或いはその一部だとしても、目的が全くわからない」
僕は首を回して、そろそろ目の毒になりつつある、病的なまでに白い部屋を、ぐるりと見渡した。
この部屋一つ造るのにも、相当の費用がかかっているはずだ。こんなことをして、何の得があるというんだろう?
答えの出ないであろう問いを、頭の中で捏ね回す。隣にいる彼女も、口許に手を当てて視線を床に向けて、何か考え込んでいるようだった。
彼女も、僕と同じように、僕らをここに閉じ込めた何者かの目的について、思いを巡らせているのだろうか。
「だめだ」
溜め息と一緒に、言葉を吐き出す。これ以上の思考は、精神衛生上よろしくない。そう判断して、僕は匙を投げた。
「考えても埒があかない。少し休むよ。留美ちゃんも、あまり思いつめない方がいい」
僕はそれだけ言うと、のろのろとした足取りで自分のベッドに向かい、体を投げ出した。
※
留美は、自分のベッドにうつ伏せで横になった智信をちら、と見てから、床に置かれた箱を手に取って、まじまじと眺めた。
飲料水と食料が入れられていた、水色の箱。この箱は、各々の寝かされていたベッドの下から、丁度二つ見付かったから、自然な成り行きで、二人で一つずつ分けることになった。
しかし、智信も留美も『箱の中身は自分で管理する』という決め事以外に何を話し合ったわけでもないのに、示し合わせたように、未だ中身に一切口をつけていない。
まだ、この空間から脱出する足がかりすら発見されていないのだから、水と食料は極力温存するべきだ。口に出さなくとも、そういった暗黙の了解めいたものがあった。
留美は無意識の内に、箱をぎゅっと抱き締めていた。この箱は確か、駅前の大型デパートのもので、ワンポイントのリボンは、贈答用の包装だ。
そのデパートは、父の帰り道の近くで、父が留美に何かを買ってくれる時は、大抵この箱、この包装だった。小さな子供の頃から、それは変わっていない。
留美はそんな諸々を思い出して、急に心細くなった。涙腺が緩んでゆくのが、自分でもわかる。
閉じ込められてしまって。知らない人と二人きりで。せめて――隣にいるのが、お父さんだったらいいのに。
私、これからどうなっちゃうんだろう? もう、家に帰れないのかな? 友達と会えないのかな? いつもの暮らしに、戻れないのかな?
押し寄せる不安に耐え切れず、留美は、箱の上に額を押し付けるようにして、声を殺して泣いた。
拭っても拭っても、涙は途切れることなく溢れ出してくる。ブラウスの袖は、あっという間にびしょ濡れになった。
※
僕は、押し殺したような、か細い泣き声を聞いて、ベッドに埋めていた顔を横に向けた。
ベッドに座って、水色の箱を抱きかかえるようにして、彼女は泣いていた。
無理もないことだった。この部屋の色彩とは対照的に、僕らのお先は真っ暗である。必要以上に取り乱さないだけでも大したものだ。
僕だって、この白一色の空間をずっと眺めていると、気が狂ってしまいそうになる。
いつもは仰向けで横になるのだが、天井を見たくないが為だけに、うつ伏せで目を固く閉じていたくらいだ。
本来なら、こういった時、そっと傍に寄り添って、励ますなり慰めるなりしてあげるのが、模範的な男というものなのだろう。
だが、僕はベッドから起き上がり、彼女に話しかける気にはならなかった。一筋の光明すら見えない現状、かける言葉が見付からないというのが正直な所だ。
それに、今日会ったばかりの見知らぬ男から、あまり馴れ馴れしく扱われるのも、彼女にとってはストレスになるかもしれない。
もう一度、ベッドに顔を埋める。マットが嫌に固くて、寝心地の悪いベッドである。床で寝るよりはマシといった程度の代物だ。
そのまま暫く、ベッドの上でじっとしていた。少し眠っておきたかったのだが、神経が昂ぶっているのか、目が冴えてしまって眠れそうもなかった。
過ぎた時間は、数分か、数十分か。いつの間にか、泣き声は聞こえなくなっていた。
※
留美は泣き疲れて、知らない間に眠ってしまっていた。しかし、それはやはり浅い眠りで、断続的に睡眠と覚醒を繰り返した。
そんな中、留美は夢を見ていた。留美が今置かれている状況と同様に、不可思議な夢だった。
会った事もない男が、入れ替り立ち替り何人も登場しては、留美に向かって自己紹介をするのだ。
端整な顔立ちをした金髪の青年が、陽炎のように揺らぎながら姿を現す。
「私は……私は、マークス」
そう言ったかと思うと、青年はぐにゃりと歪んで消えてしまう。まるで、存在そのものが幻であったみたいに。
青年が消えて真っ白になった空間を呆然と見つめていると、目の前が揺らめいて、また、何もない空間から人が現れる。
今度は、彫りの深い顔立ちの、黒縁眼鏡の老人だった。
「わしは長谷部久蔵という。怪しい者ではない」
その老人も、青年と同じように、あっという間に歪んで消えてしまった。
するとまた、直ぐに目の前が揺れて、別の人が目の前に立っている――その繰り返しだった。
「う……」
自分自身が無意識の内に発した声で、留美は目を覚ました。
夢見が悪くて気分が優れない上に、変な格好で寝てしまったから全身の関節が痛い。
丸一日水を飲んでいないせいか、口の中も渇ききっていた。喉の粘膜が張り付いて、ひりひりする。
たまらずに、箱の中のペットボトルを開けて、一口だけ飲んだ。喉を流れる水分の感触が心地よくて、そのまま一気に飲んでしまいたくなるのを必死で自制する。
人心地ついてから、留美は智信のベッドを見た。ベッドは既に空だった。智信は例の『開かない扉』の前に立って、何かを調べているようだった。
不意に、智信が留美の方に目を向けて、二人の視線が交差した。
「ちょっと、来てくれないかな」
そう言って、手招きをする。何かあったのだろうか。
「どうしたんですか?」
留美は答えると、箱をベッドの上に置いて、扉の前へ急いだ。
TIPS『お誕生日おめでとう』
女性が誕生日を祝われて素直に喜べるのは、若い内だけだ。
ある程度年を重ねると、誕生日より記念日を大切に思うようになる。
TIPS『マークス』
彼はまだ生きている。留美をこの白い牢獄から救い出そうとしている。
TIPS『長谷部久蔵』
彼はもう死んでしまった。身内にも看取られず、無惨な最期だった。
>>961から続いています。
お察しの通り、CUBEとSAWは大好きなシリーズです。
パズラーなんていう、パッケージを似せた作品に手を出してしまったくらい好きです。
えっちぃのは入れるつもりですが、書いたことないので内容は微妙な予感。
>>967 小説ではアラビア数字は使ってはいけない決まりがあったような気がして文章内では『三十』と表記しました。
しかし、調べてみた所そんなことはないようで。何でそんな勘違いを……
作中で二人が実際に目にしている数字は『30』で間違いありません。
物語に影響もなく、一回使ってしまった以上、混在すると紛らわしいので、今後漢数字で統一とします。
>>979 GJ!
「La-Piece」も好きだったから、続き楽しみに待ってるよ。
それと、そろそろ次スレの季節?
29chって見れなくなったんだっけ?
>>980 よろしく
>>983 二時間ちょっとの間ずっと張り付いてるワケじゃないんだし、もう少しゆっくり待っても良かったんじゃないか?
ともあれ乙。
さて、それじゃ二人きりになる状況をみんなで考えながら埋めよう。
・図書室の奥、どこからも死角になる場所で
・海で浮き輪に掴まった二人が離岸流で沖に流されて
うめうめ
>>984 俺の中の無い想像力を振り絞ってみる
・家出してきて深夜の公園へ行くとクラスメイトと遭遇
・片想いをくっつけようと友人が仕組む
・きもだめし中に道に迷って二人だけ違う荒地に出てしまう
割と極限状況気味のが好きだなあ
・核シェルターで二人きり
・誘拐されて狭い部屋に二人きりで監禁 妖しげなクスリを使われたりなんだり
極限状態というのであれば、こんなの思いついた
・戦争か何かで町の人間がほとんど疎開して、近所に自分と相手のみ
・ウィルス災害でまだ感染していないor免疫があるふたり
・戦闘機からベイルアウトしたパイロットと地上にいた、隊からはぐれた敵兵士
・地震か何かでトンネルに閉じ込められた男女(ドラゴンヘッドw)
・沈没した船から脱出したふたり
・スペース・デブリの衝突事故で脱出艇に乗り込んで辛くも生き残った男女
あとは
・毎朝神社で会うふたり。次第に親しくなっていく
なんてのもいいかも
ガンダム08小隊の冒頭って「不可抗力で女の子と二人きり」だよな