確かに勝手にこうして欲しいとかああだこうだ言い過ぎたっていうのもあるだろうけど
神自身、話を収集しきれなくなったんだろう。
あんだけ伏線ばっちり張りまくりでブレずに分量書いてた人なのにな。
残念。
938 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 07:50:21 ID:Eq1y/G0V
痔スレきぼん
お待たせしてすみません
とりあえず書けているところまでアップします
前回
>>51-76
初めて会った時の彼女は、ごく普通の中学生だった。
親の稼いだ金で学校に行き、勉強には全く身を入れず、かと言って部活動に専念しているわけでもない。
放課後は友人とゲームセンターや喫茶店で遊んで過ごす、今日が楽しければいいという、泣き虫で甘えんぼで頼りない少女だった。
まるで出来の悪い妹でも持ったかのような愛しさと、かすかな苛立ち───地場衛の月野うさぎに対する感情は、最初はそんなものだった。
両親の遺した遺産とアルバイトで自活している衛にとっては、あのような人生に目標を持たないいい加減な性格の主は、好みではなかったはずだ。
だからつい意地悪をしたくなって、からかいの言葉を口にした。少女が顔を真っ赤にして反発してくるのが面白かった。
そして、自分の中にこんな感情があることを初めて知った。同年代の若者よりも遙かに大人びた物腰を持つ彼には、それまで友人らしい友人はいなかったから。
街で会うたびに、うさぎは違う友人を連れていた。不思議な事に彼女の周りには、磁石に吸い寄せられるように人が集まる。
ずば抜けた美少女と言うわけではないが、愛嬌のある顔立ちと、誰にでも分け隔てなく接する無邪気さに、人は惹きつけられるのだろう。
彼もまた、すぐに恋に落ちた。前世での恋の相手だから?──いや、違う。
喩え彼女がプリンセスでなくとも、衛はあの娘に夢中になった。時代が変わっても立場が変わっても、自分を包み込む月の光は決して忘れる事はない。
『まーーーもちゃんっ♪』
いつだったか、ふざけて腕を絡ませて誘ってきた事があった。
デートの帰りに、二人でバスを待っていた時だった。バスが遅れてなかなか来ないため、うさぎは衛の腕に寄りかかって退屈そうにしていた。
『ね………このまま二人で、遠くに逃げちゃおうか』
悪戯っぽく言った時に、地場衛のいつもの悪い癖が出た。
『こら、うさこ。冗談でもそんなこと言うんじゃない』
冗談だからこそ冗談で切り返すべきなのだが、彼はそういうことに頭が廻らない性格だった。
言った後でしまったと思ったが、彼女は怒らなかった。代わりにぷくっと頬を膨らませて、言った。
『えへへ、ごめんね。………でも、そうやって怒ってくれるまもちゃんだから、好き』
記憶を失っていた頃の彼は、自分が何者かもわからなかった。彼の外見だけを見て誘ってくる女たちにも辟易していた。
放っておいて欲しかった。話してみると真面目すぎて面白味のない男だと、退屈して離れていくのにもうんざりした。
(俺の何がわかる。エリートだ、将来有望そうだ、両親がいないのはちょうどいい、だって?)
(勝手に都合のいい理想像を押し付けて、本当の俺のことなんて、地場衛という一人の男のことなんて、判ろうともしていないじゃないか)
タキシードに身を包んで夜の街を徘徊し始めたのは、その鬱屈を紛らわすためでもあったかも知れない。
道化を気取って少女を助ける───昼間とは、違った自分がここにいた。誰も自分を気にしない、誰も声をかけない。
彼は自由でいられた。月野うさぎと出会う前までは。
失った記憶のかけらを取り戻した時、彼は自由でなくなると同時に、誰かに従属することの心地よさを知った。
前世の因縁だけではない、と思いたい。セレニティだから、恋したわけではない。
何故今頃になって、こんな事を思い出すのだろう。罪悪感か。別の女に欲情してしまったことに対する、懺悔をしたいのか。
視界がエメラルド色に覆われる。甘く芳しい女の───いや、雌の匂いが、タキシード仮面の全身にまとわりついている。
白い乳房が胸に押し付けられ、たわんでいる。海草の様に絡みつく足は無駄毛の一本もなく滑らかだった。
こちらを見下ろす強気な眼差しには、しかし常に不安の火がくすぶって見える。
拠り所としている相手に裏切られる、いつか捨てられる。そんな不安に駆られている目だった。
だから、どれほど好きでも相手に全てを委ねる事は出来ない。失った時に傷が浅くて済むように、常に相手より一歩引いて、心の全てを曝け出すことはしない。
今、わかった。どうしてこの女性に魅力を感じ、抗えなかったのか。
エスメロードは、自分に似ている。
「……もう、こういう事はやめた方がいい」
騎乗位で腰を振る女の太股に、彼はそっと手をかけた。
嫌われたくないから、相手に合わせる。それは一見愛情に見えるが、本当は自分が可愛いだけだ。何か問題が起こっても、相手のせいにできる。
自分はただ好きな人に従っていただけなのだから、悪くはないと。いい年をした大人が、何を甘えているのだろうか。何を、被害者面をしていたのだろう。
傷ついているのはタキシード仮面ではなく、この女性ではないか。
「あら、正気に戻ったの?」
エスメロードが目を眇める。
惚れた相手の命令で、好きでもない男との交尾を強いられている彼女は、腰の動きを止めなかった。
動くのをやめた途端、デマンドに見放されるとでも言うように。乳首から唇を離した瞬間、母親に捨てられると思い込む赤子のように。
「残念ながら、まだ休ませるわけにはいかないわ。孕むまでというご指示ですもの」
彼女の頬には光る雫が伝っていた。汗なのか涙なのか、それとも別の何かなのかはわからない。
薬によって強制勃起させられたタキシード仮面の一物は、彼に射精の意思なしと見るや急速にしぼんでいった。
彼の身体を使って何度も達する度に、エスメロードが口にする名前は彼ではなかった。──デマンド様、と。
「男は得よね。出す前は獣のくせに、出した後は別人みたいに穏やかになれるんだから」
デマンドには言えないことも、敵の男の前では平気で口に出来るらしい。男を否定するような言葉が容易に口から飛び出してくる。
「私が妊娠したら、どうせ腹を蹴るつもりなんでしょう?男なんてみんなそう。孕むようなことをしておいて、責任は取りたくない。自分の快楽しか考えていないのね」
ゆっくりと上体を倒し、掛け布団のように青年の上に寝そべる美女の吐息が、頬をくすぐった。
一仕事を終えた充実感と、本当に欲しい物が手に入らぬ苛立ちが、彼女の荒い気性をより輝かせていた。
「いいことを教えてあげる。私たちは、人間の女と比べて遙かに着床率が高いの。もちろん男側の精子も、人間なんかより優秀だけれど」
「………俺、なんかの、子供を」
長時間水も与えられずに拘束したせいか、声が出にくい。それでも、エスメロードは聞き取れたらしかった。
「堕胎して欲しいの?」
「………」
エスメロードの腕が首を掴んだ。女の苦しみが刻み付けられたその身体は、本来なら好きな男だけに捧げたかったものだろう。
彼女はどこで間違えたのか……いや、間違いであるとも言い切れない。そうでもしなければデマンドの傍にいる事は叶わなかった。
「何とか言いなさいな。何もしないで、女に守られてばかりで。あんたみたいな偽善者が、あたしは一番嫌いなのよ!!」
まもる、という名前は両親がつけてくれたものだ。
エンディミオンという舌を噛みそうな名前より、現代日本のこの名前が彼は気に入っている。
前世で護りきれなかった彼女を、今度こそ護って見せると、そのために自分は転生したのだと思っている。
だが、守るべき女性が一人だなどと誰が決めたのだろうか。
彼はうさぎのことばかり気にしていて、四守護神と満足にコミュケーションをとってこなかった。彼女たちと団結して敵に立ち向かえば、逃れられた惨事だった。
地場衛はただ、彼女に嫌われたくなくて、他の男とは違うのだということを見せたくて、不必要なまでに他の女性との関わりを拒んだ。
それは、うさぎを信用していないという事でもあった。ちびうさの世話を進んでしていたのも、自分が大人であることを示したいだけだった。
『うさこはまだ子供だから、わからないだろ』
それは、女の母性に包まれながらも、女よりも優位に立っていたいという、いわば男の傲慢だった。
あの少女に安らぎを覚えているくせに、心のどこかで依存する事を恐れているから、彼女を見下し、また子供扱いすることで自分のプライドを保っていた。
馬鹿な事をした。他の女性に嫉妬はしても、その程度で彼を嫌いになったりはしない。目の前に困っている人がいれば、たとえ恋敵であろうと、助ける。
月野うさぎは、そういう少女なのに。
タキシード仮面は手を伸ばした。苦痛に顔を歪めながら、エスメロードの手を叩く。
力が緩んだ。首を絞めていた手が離れると、乾いた喉に空気が染みた。乾燥で痛めたかもしれない。
エスメロードは喘ぐ彼の口を塞ぎ、舌を絡ませて唾液を流し込んだ。
甘い蜜のような液体が喉を滑り落ちていく。ひんやりとした唇の中の唾液は思いのほか温かく、同じ生き物であると錯覚させるほどにその甘味には違和感がなかった。
「ん、ぐっ………ぐ、ふ………ん、ちゅ………ん、こんなに、いい女の相手なんて、普通は……できな、くてよ……」
女の舌技は巧みだった。虫歯一つない彼の歯列をなぞり、口壁を舐めあげ、舌の裏側にまで舌を這わせた。
唾液が分泌される部分を彼女はまさぐった。滲み出てきたそれを、ごくりと飲み下してしまう。心とは裏腹に、身体が激しく水分を欲していた。
「感謝することね、むちゅ…………んむ、レロレロ……んむう、むはっ」
唇を密着させながら、エスメロードは次々と唾液を生産して送り込んだ。憎い敵といえど、孕むまでは死なせるわけにはいかないのだろう。
彼女に初めて男根を弄られたことを、タキシード仮面は思い出していた。デマンドの命令とあらば、エスメロードは男の小便でも口に含むに違いない。
「……みが、………たいなら、……ばいい」
「なんですって?」
唇を離し、怪訝な顔で問いかけるエスメロードの目を、彼はしっかりと見据えた。
「君が、産みたければ、産めばいいと言っているんだ」
女の目が大きく見開き、次の瞬間すっと細められた。
「もちろんそのつもりよ………ようやく観念したってわけ?」
「いや、セーラームーンのことも諦めない」
タキシード仮面の瞳に力が宿った。
床に転がるステッキやシルクハットには手が届かない。けれどこの女性の心に触れることは出来る。
「嫌われたくないから相手の要求を呑む……そんな関係は、偽りのものに過ぎない」
「な………」
「君だって、気付いているはずだ。デマンドの心を射止めるためには、自分を偽ってはいけないと」
あの男の、冷たい瞳を思い出す。
女に奉仕されながら、どこか遠くを見ていたあの男──彼がうさぎを欲した理由が、今なら判る。
駆け引きなど考えも付かない純粋さ。愚直なまでに真っ直ぐな正義。それを恐れ、閉じ込めて、壊してしまえば自由になれるのではと、あの男は誤解している。
悪いのは、銀水晶に支配された未来ではない。光に背を向ける己の弱さなのだ。
灯りを消してしまえば、その光はなかったことになるのか?いや、違う。光を消したという事実だけが、消した本人の心に重くのしかかるだけだ。
ブラック・ムーン一族とて、その矛盾に苦しんでいる。救ってやれるなどと思いあがってはいないが、過ちを指摘する事は出来る。
「お、お前などに、何がわかる!」
エスメロードが甲高い声を上げた。
「お前は、選ばれたじゃないの!光り輝く月の一族に!なのに、あたしは………デマンド様に拒まれたら、あたしの居場所なんて、どこにも……!」
「君が救われるかどうかは、君次第だ。俺には何もしてやれない」
言いながら彼は苦笑した。腰から下がつながったままの状態では、説得力のない台詞だ。
「君が望んでいるのは、デマンドの幸せだろう。セーラームーンと結ばれて、あの男が幸せになれると思うか」
「………」
女の腰が浮き上がり、萎えた肉棒が姿を現した。
タキシード仮面から離れ、煙草でも一服するような表情で天井を見つめる。
自分の説得が通じるかも知れないと、彼は期待していた。だがうさぎ以外の女性と友情を育んでこなかった彼は、いまひとつ女性心理に疎いところがある。
エスメロードはふっと微笑むと、乳房の間から銀水晶を取り出した。
「これが欲しいんでしょう?」
セーラームーンから取り上げた銀水晶は、主が不在にも関わらず美しい輝きを放っている。
使い方次第で、星を一つ破壊できるほどの威力を持つ神秘の力──それは、エスメロードの手で容易に握りつぶせそうなほど小さかった。見た目には普通の水晶と何ら変わらない。
「残念だったわね。このエスメロード、お前如きの言葉に惑わされるほど弱くはないわ」
己に言い聞かせるように彼女は囁き、傍らに置いた扇を一閃させた。美しい裸体がたちまち布に覆われ、行為前と変わらぬ出で立ちになる。
目の前にちらつかせた銀水晶を、再び豊満な胸の谷間に仕舞い込んだ。
タキシード仮面は、全裸にされたまま動けなかった。嗅がされた薬が、全身を固く床に縫いとめている。
「子さえ成せば、お前はもう用済み。あの二人の睦まじい姿を目の当たりにさせながら、首を落としてあげる」
扇を仰ぐエスメロードの目が、ふと宙を泳いだ。誰かの気配を感じたらしい。
「……誰?お前たちなの?」
「は」
空間に亀裂が走った。その亀裂の中から人影が現れ、床に降り立つ。
二人三脚のようにぴったりと寄り添いながら、双子とおぼしき二人の美青年が姿を現した。
彼らは、腕に桃色の髪の幼女を抱えていた。幼女の身体はぐったりとして顔色は青く、気を失っている事は明らかだった。
「ラビットを」
「連れて参りました」
綺麗に揃ったハーモニーが、逆に不気味さを感じさせる。
青年たちは幼女を丁重に床に降ろすと、エスメロードに向かって頭を垂れた。
「ちびうさっ……!」
その姿を確認した途端、タキシード仮面は腹部を波打たせた。どうにか腹筋に力を入れて起き上がろうとしても、叶わない。
指先から力という力が抜け落ちていく。守るべき存在が目の前にいるのに、彼は何も出来ない。
ここに連れ込まれて、一体どれほどの時間が流れたのか。四守護神もうさぎも、もはや限界が近づいているはずだ。
(おまけに、ちびうさまで……!)
セーラー戦士のみならず、こんな幼い少女まで巻き込もうとするやり方には我慢ならない。
「あらあら、その見苦しい格好でこの子に近づくつもり?軽蔑されちゃうわよ」
精液と愛液に塗れ、ペニスを剥き出しにしながら大の字になっているタキシード仮面を、エスメロードは見下ろして嘲笑った。
「ちびうさ!しっかりしろ!!」
どう考えても気絶していた方が幸せであるこの状況で、タキシード仮面は必死になって呼びかけていた。
彼女が目覚めて、こちらを向いてくれたら、それだけで彼は安心するからだ。
(なぜだ?)
彼は思う。
うさぎと似ているからではない。うさぎとは違う意味で、ちびうさは大切な存在なのだ。
『そう』
懐かしいような、近しいような男の声が、脳裏に響いた。
『その子は君の娘だからさ………タキシード仮面』
「───タキシード!」
その声が誰のものであるかも判らず、彼は叫んでいた。
床にのびた腕を引き離す時に、肩に激痛が走る。
『今だ、討て!!』
痛みにも構わず彼は続けた。
「ラ・スモーキング・ボンバー!!」
開いた掌から爆煙が迸り、二人の青年に向かって叩きつけられた。気を抜いていたエスメロードの部下はまともにそれを食らった。
「ぐわっ……!!」
閉ざされた空間は白い煙幕で満たされ、周囲がまるで見えなくなった。
悲鳴と破裂音が遠くで聞こえる。二つの命が消え去る音を、タキシード仮面は確かに聞いた。
驚いたのはエスメロードである。それまでまるで無抵抗だった男が、あっさりと部下を吹き飛ばして見せたのだから。
タキシード仮面自身が一番驚いていた。頭の中に響いた声の指示通りに言葉を紡いだら、身体の中から不思議な力が沸き起こってくるのを感じていた。
全身の痺れは既に消えていた。
「おのれ!」
踏みつけようとするエスメロードの足を、彼は反射的に掴んだ。
彼女は下着をつけていない。片足を持ち上げると黒い服の中が丸見えで、髪と同じ色の陰毛や臍の形まではっきり見えた。
無論、この時タキシード仮面が考えていたのは別のことである。もう片方の手で床に転がったステッキを掴み、服の中に狙いを定めた。
エスメロードの足から胸にかけて、ステッキを縦にして突き上げる。肉に当たるむにゅりとした感触と共に、別の固いものにも当たった音がした。
「痛っ……しまった!!」
胸の谷間に挟んでいた銀水晶が、ステッキで突かれて床に落ちてきたのだ。カツン、という音をさせて銀水晶が床に転がる。
屈んで拾おうとするが、棒で服を串刺しにされたエスメロードは屈むことが出来ない。先にタキシード仮面が拾った。
「銀水晶はいただいたぞ」
煙に咳き込む彼女から間合いを取り、タキシード仮面は宣言した。
次の瞬間その表情は曇る。煙が晴れた直後に彼の目に映ったのは、ちびうさの首を背後から絞めて吊り上げているエスメロードの姿だった。
「ふん!こういう時のためのラビットなのよ!」
「………その子を離せ」
「離して欲しかったら、銀水晶をお返しなさい」
いたちごっこだ。
世界の命運を握る銀水晶と一人の幼女の命、どちらが重いかは明白である。だが、月野うさぎならきっとためらいなしにこれを渡してしまうだろう。
(おれはうさことは違う)
彼は、ぎりぎりと唇を噛んだ。
(おれには、おれのやり方がある)
「わかった」
頷くと、タキシード仮面は腕を振り上げた。
「くれてやる!」
自棄になったとしか思えない行動だった。放り投げられた銀水晶の行方を追って、エスメロードはちびうさを突き飛ばした。
彼は素早く幼女の身体を抱き上げてマントに包む。エスメロードは床に目をやって唖然とした。
床に落ちたのは銀水晶ではなかった。一輪の薔薇である。
「……だ、騙したわね!」
「お互い様だ」
ちびうさをしっかりと腕に抱えながら、タキシード仮面が勝利宣言をしようとした、まさにその時。
「デッド・スクリーム」
突如、竜巻のような衝撃波がエスメロードを襲う。悲鳴と共に彼女の身体はきりもみ状態となった。
透き通るように白い肌を空気の渦が襲い、瞬く間に全身を切り裂いていく。
新たな敵か、とタキシード仮面は身構えた。衝撃波の飛んできた方角に注意を凝らす。そして目を見開いた。
漆黒の襟を持つセーラー服に身を包んだ若い女性が、苦しそうな表情でそこに立っていた。
自分の身長ほどもある大きさの、鍵型のロッドを構えている。顔立ちは他のセーラー戦士同様美しかったが、四守護神よりも風格を感じさせた。
角度によって緑にも見える長い黒髪が、衝撃の余韻で後方に靡いている。
(これは、一体………)
タキシード仮面は立ちすくんだ。エスメロード自身にも、何が起きているのか判らないようだった。
やがて彼女の身体は、灰色の渦に包まれて見えなくなる。
「くっ……」
ややあって、黒髪の女性はその場に膝をつく。呼吸が乱れていた。
ロッドの先端が、重々しい音を立てて床に接触した。容易に振り回しているように見えても、決して軽量ではないらしい。
「逃がしました、か………」
エスメロードの気配は、その場から消えていた。悔しそうに呟く女性の瞳は、ちびうさによく似た赤い色をしている。
彼女がひどい怪我をしていることに、その時になってタキシード仮面は気付いた。
駆け寄ろうとして、一瞬迷う。恐らく自分を助けてくれたのであろうこの彼女は、一体何者なのだろうか。
「君は……セーラー戦士か?」
身に着けているコスチュームは、ところどころ破れて血が滲んでいた。
不思議と、痛々しい印象はない。四守護神が傷ついているのを見た時は、まだ少女であるせいもあって気の毒さが先に立つが、この女性は戦い慣れているのか、そんな姿が相応しいとさえ思えた。
問いかけるタキシード仮面と視線が合うと、女性は恥じらったように瞼を伏せた。
「何かお召しになってください」
「あ………」
彼は慌てて、近くに脱ぎ捨てられていた衣装を引き寄せた。取り合えず前を隠す。まだ彼女が何者かも判らないのに、無防備に着替えるわけにはいかなかった。
床に仰向けに寝かせたちびうさの胸は、微かに上下していた。辛うじて息はしている。
しかし、それで安心してしまうには、この部屋の空気は明らかに悪過ぎる。連中が身に着けている邪黒水晶の塊が、部屋のあちこちに設置されているのだ。
部屋の扉は、女性によって破られていた。それでも呼吸が楽にならないのは、この城全体を包むダークパワーのせいだ。
「私はセーラープルート。未来のあなたとクイーンにお仕えする者です」
喉をやられたのか、ハスキーな声で彼女は言い、横たわっているちびうさに慈愛の眼差しを注いだ。
そうか、と彼は思う。よくちびうさが「プー」と呼んでいたのは、このセーラープルートのことだったのか。
「スモールレディに、時空の鍵をお渡ししたのはこの私………本来ならば時の流れに干渉することは重罪なのですが、クイーンに特別に許可を頂きました」
苦しげに息をつきながら、セーラープルートと名乗った女性は言葉を続けた。
「ブラック・ムーンの進撃により、過去と未来、……時空に歪みが生じています。私には、もう……スモール・レディを守る力は残されていない」
こんな状態で必殺技を放ったことが、信じられないほどに彼女は傷ついていた。
ヒーリングの力を持たないタキシード仮面に出来ることは、真剣に彼女の話を聞くことだけだった。
「時間が、ないのです。これからお話しすることに、どうかお心を乱されぬよう……」
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───話は、また遡る。
うさぎとデマンドが一つの寝台で夜を明かしている間、マーキュリーとジュピターは地獄のただ中にあった。
コーアンは二人の能力を封じるべく、部下の男たちに陵辱を命じた。その上で、彼女たちの額にブラック・ムーンの刻印を焼き付けることを提案した。
既に犯された経験があるとは言え、セーラー戦士は普通の女とは違う。徹底的に貶めない限り、何度でも立ち上がってくるだろうと見込んだのだ。
暗闇から、無数の手が伸びてくる。
青いセーラーコスチュームに身を包んだ小柄な身体に、男たちは蟻のように群がった。
「うげ、なんだこりゃあ」
マーキュリーの脚を広げた男が、顔を顰めて叫ぶ。
「きったねーな、真っ黒じゃねえか。どうやったらこんなになるんだ?」
鋭い言葉の刃が、マーキュリーの胸を抉り取った。
傷ついた心が血を流す。男たちには決して見えない、悲しみと絶望に満ち満ちた血を。
処女を奪われた時に裂けた部分は外科医に縫ってもらい、抜糸も洗浄も済んでいる。それでも痛みや腫れはひかず、毎日軟膏を塗っているが、一度黒ずんだ部分は元には戻らない。
加齢や摩擦によって秘唇の色素が沈着するのは、顔に黒子や染みが出来るのと同じくらい当たり前のことだ。
それを受け入れられないのは、男の幼稚な願望ゆえであり、そんなものに応えてやるつもりはマーキュリーにはない。
貞節を守れと言いながら、自分は結婚前の女を抱く。自分から女を求めておきながら、その求めに応じた女を平気で汚れ物扱いする。
美しさを保てない女を、見下す。汚してやるから綺麗にしていろとは、おかしな話だ。マーキュリーの身体はマーキュリーだけのものなのに、何の権利があって蹂躙するのか。
「うっ……ぐうっ……」
開かれた脚に合わせて、秘唇がゆっくりと開いていく。潰れた貝のようになっているのが、見ずともわかった。
水泳をしているマーキュリーは陰毛の処理は怠らなかったが、暴力を受けて以来秘唇に触れるのが怖く、下の毛の手入れが出来ない。
そもそも陰毛は傷つきやすい秘唇を守るために生えているのだ。彼氏が嫌がるからという理由だけで剃るのは間違っている。
マーキュリーには彼氏はいないが、浦和少年は何と言うだろう。あの純情そうな少年なら、女に無駄毛があることすら認められないかも知れない。
男たちは眉をしかめて股間を覗き込んだ。一人の男が、大袈裟に顔を背ける。
「く、くっせえ!鼻が曲がりそうだぜ!」
「形も崩れて、グチャグチャだ。こんなのに突っ込むなんざ、ほとんど慈善事業だな!」
男たちが口を開くたびに、マーキュリーの心に鋭い刃が突き立てられる。
陵辱され、友人を失い、もうこれ以上傷つく事はないと思うのに、新たに与えられる苦しみは更にその上を行く。
「うう……が、ああ……」
母親の顔が脳裏をよぎる。医者である母は合理的な考えの持ち主で、悲しむよりも先に娘の被害が外部に漏れぬよう手配し、知り合いの医者を通して確実な治療を施してくれた。
娘の持つ異質さに気付いてはいても、敢えて尋ねることはしなかった。みんなはとやかく言うけれど、マーキュリーにはあのような母の方が合っている。結婚前だからと、なるべく元通りの形になるように縫ってもらった秘唇が、また割り開かれようとしている。
声にならない嗚咽を漏らすマーキュリーの髪を、男が鷲掴みにした。
「あぁ?便器ふぜいがなに泣いてんだよ。泣きたいのはこっちだっつーの」
「そうだそうだ。こんなグロマンに入れる男の身にもなれよ。汚いマンコで済みませんって、謝って欲しいくらいだぜ」
「ひ……ひ、ひど……い」
繊細な心を覆っている胸の皮がぺろりと剥けて、赤い肉が露出したような気がした。言葉がその傷口を容赦なく嬲り、痛めつけた。
マーキュリーがこうなったのはマーキュリーのせいではない。男たちにとっては結果が全てで、そこに到るまでの経緯など興味も無いのだろう。
固い棒を突っ込まれてかき回されたことも、赤ん坊を作る場所に汚い液体を吐き出されたことも、体中の傷も、全てマーキュリーのせいにするのだ。
「いくらコーアン様の命令とは言え、ちょっと躊躇いますねえ、こいつは」
男たちは、背後で見守っている女を見た。出来ればフェラチオだけで済ませたいと、目で訴えている。
青い炎を掲げて少女を見下ろすコーアンは、どこまでも居丈高で、魔女のように美しかった。
「ほんっと、臭くて汚いわねぇ。それでも女なの?」
軽蔑しきった言葉が投げかけられる。自分はどうなのだと言い返せないほどに、マーキュリーは追い詰められ傷ついていた。
屈辱的な体勢のまま、逆さからコーアンに向かって叫ぶ。
「う、ぃ、いやああああっ!!言わないでっ!お、おねが、やめてっ!!」
耳を塞ぐ事も出来ずに、マーキュリーは言葉責めに苦しむ。コーアンは更に続けた。
「ここからも、よぉっっく見えるわよ。ビラビラが真っ黒で、毛が生え放題。いやだわ、同じ女だなんて思いたくも無い」
うさぎと出会う前、クラスで孤立していた時でさえも、こんなに下品な言葉を投げかけられたことはなかった。学力があったから、同級生に何を言われても、負け犬の遠吠えと構えていられた。
だがブラック・ムーンたちの前には、学校の成績など何の意味も持たない。マーキュリーの存在を肯定し、傲慢とも言える誇りを与えてくれるものなど、ここには無いのだ。
「確かに、こんなものに突っ込ませるのは少し可哀想ね。じゃあ、精液はスポイトか何かで注入するだけにして、挿入にはジュピターのを使ってもらおうかしら」
狂っているとしか思えぬコーアンの言葉が、耳に入ってきた。自分たちは常識や倫理観の通じない相手と戦っているのだ。
ジュピターに視線を移す。その目は虚ろで、コーアンの方を見ていない。
「ジュピターの尻穴は貫通されているけど、幸いにも前の方はまだ処女よ。奪っておやりなさいな」
その命を受けた男たちの目の色が、露骨に変わった。
「へええ、処女!?」
「やりい!」
何故、それほどまでに処女性を大事にするのだろう。医学を学ぶ彼女にとっては、宗教めいた穢れの概念は滑稽としか思えない。
他人の過去を気にする者に限って、自分が汚れているとは決して思わない。美しいものを傷つける事に喜びを見出し、男としてそれが正常だと開き直る。行為によって産まれる新たな命の事など、微塵も考えていない。
こんな男たちが存在する限り、これからも子供は減り続けるだろう。マーキュリーはもう産む気はない。レイにも決して産ませない───不幸になるだけだ。
床に座り込み、抵抗の様子を全く見せないジュピターの身体に、男たちのおぞましい食指が伸びる。
『亜美ちゃん、勉強ばっかしてちゃだめだよ。大人になりたいなら、身の回りのことを一人で出来るようにならないとね』
オーブンからスポンジケーキを取り出すまことの笑顔が、精液で真っ白に塗りつぶされる。そんな想像が脳裏を覆った。
男の一人が、動かないジュピターの脚を掴み、マーキュリーと同じような体勢で逆M字にひっくり返す。
「へへへ、いっただき〜」
「やめて!」
夢中で、マーキュリーは叫んでいた。この上処女までも奪われたら、ジュピターはもう立ち直れない。
彼女に比べたら、自分がどれだけ我侭に生きてきたか知っている。医者の母と画家の父の間に生まれ、経済的には何不自由なく暮らしてきた。
たくさんの小遣いを与えられ、参考書も服も好きなだけ買える亜美に比べて、まことには両親がいない。自立し、家事をこなしながら学校に行き、一人暮らしで立派にやっている。
レイも、学校が終われば神社の手伝いをしている。美奈子は既に将来の目標を決め、アイドル目指して日々己を磨くことを怠らない。
頑張っているのは自分だけではないのに、勉強が出来るからと思い上がっていた。その傲慢にみんなは気付き、マーキュリーから離れていったのだ。
後悔の涙が頬を濡らした。レイを傷つけた分、ジュピターのことだけは絶対に守らなければ。
もちろんそれだけではなく、ブレーンとしての計算高さも働いていた。彼女の心が闇に染まって変身できなくなったら、また一人貴重な戦力を失う。
それなら一度処女を散らしているマーキュリーの方が、まだ陵辱に耐えられるかも知れない。
「あ、あたしが……」
怪訝な顔をしているコーアンに向かって、死にたくなるような恥辱を堪えながら、告げる。
「代わりに……なるから。ジュピターには、手を出さないで……く、ください」
蚊の鳴くような声で告げると、コーアンが吹き出した。
「はあああーーーー!?」
男たちは、汚れたポリバケツでも見るような目で、一斉にマーキュリーを見下ろした。
「何を寝ぼけたこと抜かしてんだよ?お前のどす黒いユルマンが使えねえから、ジュピターに代わってもらおうって話じゃねーか!」
「ちゃんと人の話聞いてたか?本当はアホなんじゃねーの、お前?」
「脳味噌ザーメン漬けにしてやろうか。あっ、もうなってるのか」
口汚い言葉が次々と降りかかり、マーキュリーの全身を切り裂いた。
(こ、このくらい……へい、き)
痛みにもいつか慣れる。人間の体には免疫というものがあるのだ。
けれどそれは肉体の話であり、心は健康状態を映す鏡である。自浄作用の低いマーキュリーは、他人にぶつけられた言葉を上手に消化できない。
棘だらけで毒に塗れたものをそのまま飲み込み、精神を深く傷つける。
心が弱いと言ってしまえばそれまでだ。その弱さを克服したい。今度こそ、自分可愛さに友人を傷つけたりはしない。
「お、お願い、します……ジュピター、だけは……」
小便で顔を濡らされた、ジュピターの睫がかすかに動いた気がした。だが、それ以上の反応はなかった。
「どうします、コーアン様?」
男たちのにやにや笑いが、マーキュリーを取り囲んだ。笑いを収めたコーアンは、真顔になってマーキュリーを見た。
「そうねえ、せっかくの申し出だし。マーズの出産さえ阻止できればいいんだから、ジュピターのことはどうでもいいんだけど」
「そ、阻止しますっ!ルベウスの子なんて、絶対に産ませませんから、だから」
「いいわ、その代わり口でちゃんとイかせるのよ」
コーアンの許可を得た男が、勇んで男根を突きつけた。
「へへへ。じゃあ、俺が一番乗りな」
「もごおお……ッ」
唇を割って、男根が入ってくる。
これからマーキュリーを刺し貫こうとしている凶器を、口に含む。それは生き埋めになるための穴を、自らスコップで掘らされているようなものだった。
(く、臭い……くしゃいいいい)
生ゴミのような匂いだった。壁に凭れ掛かったコーアンが、歌うように囁く。
「ほら、まだよ。玉袋までしっかり咥え込みなさい!」
男たちがマーキュリーの青々とした前髪を掴み、前後に揺さぶった。男根は舌の上を滑って、喉の奥にまで到達した。
「うぐおああ、あお、ご、ごおっ!?」
(の、喉に触ってるっ!)
生臭い匂いが扁桃腺や下の裏側、歯の隙間や歯茎にまで染み込んでいくのがわかった。
マーキュリーの舌は、あの時の精液の味を覚えている。
「この肉便所め、俺のチンポを喉まで咥え込みやがったぜ。おい、誰かこいつの頭を押さえておけよ。喉マンコにチンカスこすり付けてやる!」
「むごえええおおおお、おおおおお!!」
悲鳴を上げるマーキュリーの頭を、男たちがしっかりと固定した。
「この時のために、洗わずに溜めてたんだぜ。ちゃんとこそぎ落としてくれよ」
ぬるぬるとした男根の先端が、マーキュリーの喉をガツンと突いた。
「モゴおッ!!」
(ひ、ひどい……扁桃腺まで、入れるなんて!)
湿った口の中で、肉棒は徐々に膨らんでいく。膨張によってマーキュリーの上顎が押し上げられ、鼻孔が膨らんでいった。
「あ、が……が、が」
顔が変形するほどの膨らみに、顎が外れそうになる。見開いた瞳は血走り、眉は下がり、鼻の穴は空気を求めて開ききった。
「あっはははは、ひどい顔だこと!こんな不細工がよくも美少女戦士を名乗れるものだわ!」
コーアンはジュピターに近づくと、後ろ髪を掴んで顔を引き起こした。
「ほらっ!この娘はあなたのために犠牲になってるのよ!この無様な顔を、よぉくご覧なさい!」
(まこちゃん……み、見ないで……)
ジュピターは相変わらず、ぼんやりと焦点の合わない目をしているだけだった。そして、今のマーキュリーにとってそれは救いにもならない。
大柄な見かけと違って、とても女らしい性格であるジュピターは、マーキュリーのように物事を割り切って考えることは出来なかった。
友人を傷つける度胸もない。ひたすら自分を責め、誰かに委ねた方が楽だと、自ら暗闇の中に逃げ込むしかなかったのだ。
「マーキュリー。こいつらに頭を下げてお願いしなさい」
コーアンの冷たい声が耳を打った。
「『私、セーラーマーキュリーの、便器みたいにまん丸な顔を、あなた方のザーメンで真っ白に汚してください』……さあ、大きく口を開けて言ってみなさい」
「コーアン様、口をふさがれてたんじゃ喋れませんぜ」
「いいのよ。この状態で喋らせなさい」
命令どおり、マーキュリーは男たちのペニスを口に含んだまま、言葉を紡がなければならなかった。
苦い唾液が口の端から零れ、ボタボタと床を濡らした。
「ひ、ひや……う、げ……」
口を少しでも動かせば、たちまち男根が喉に触れて吐き気を催す。咥えているのがやっとなのに、発声など無理だ。
「言わなければ……ジュピターがどうなるか、わかってるわね?」
「も、モゴ……ぐ、ふ……わ、わはひ、へーらーまーぎゅりー、のっ……」
ぽろぽろと涙を零しながら屈辱的な台詞を述べる美少女戦士の姿に、コーアンの部下たちはいよいよ怒張を固くした。
先走り汁で白くなったペニスの先端を、待ち焦がれるようにマーキュリーの頬や耳の穴にこすりつける。
「べ、べんひみはいに、まんまるなはおお、あ、あなはらはお、はえめんえ、まっひろに、お、おごひへくらはい……いいいっ!?」
言い終えたマーキュリーの顎がのけぞる。焦れた男たちが、口の隙間目掛けてさらに数本の男根を押し込んできたのだ。
「よしきた!へっへへへ、俺たちのザーメンは、地球人の二〜三倍は濃いからな!」
「色も匂いも量も、比べ物にならないだろう。しっかり味わっておけよ!!」
「お、ごううううううおおおお!むぐうううう!!お、えっ!」
マーキュリーの口の周りの肉を寄せ集めるようにして数本のペニスを咥え込ませ、一滴も漏らさぬよう蓋をする。
「くっ、いくぜ!」
ドビュルウルルル、ビュルルルルルルルッ!!ブシュウウウウウウッ!!
「んん、んんんん、んーーーーーーーッ!!」
プチプチとした精虫がおぞましい感触を訴える。逃れる事の出来ないマーキュリーは、か弱い昆虫のように手足を震わせた。
「溜めてないでさっさと飲んじまえよ、オラッ!ハリセン・チョーーーップ!!!」
男は軽やかに言い切ると、マーキュリーの首筋にドスッと手刀をかました。
「うぶッ!?」
衝撃に、マーキュリーは目を剥いてのけぞる。口の中の精液のいくらかは、その震動で飲み込んでしまった。
(こ、これ以上、溜めておけない……あぁ、でも……い、いやあああああ!!)
マーキュリーの鼻孔がぶわっと広がりきって、何かが破裂するような音がした。
ブッ!!
放屁でもしたかのようなその音に、男たちの動きが一瞬止まる。マーキュリーの鼻から、二本の白い筋が飛び出していた。
(あ、あぁ……こ、こんな……)
羞恥に頬が染まる。しかし、一度始まった決壊は、彼女の意思では止められなかった。
「うッ」
喉が詰まる。咽頭がザーメンを他の穴へ向けて押し出そうとする。口いっぱいに溜まった大量の精液が、一気に鼻に逆流した。
広がった鼻の穴から、堰を切ったようにザーメンが噴出する。
白い鼻血でも出しているかのような勢いで、それは細かな霧となり、男たちにも降りかかった。
「ふぶうううぅぅうう!ぶふううううううう!!」
白濁が鼻汁と混ざって、滝のように口の方へと落ちていく。見るも無残な光景であった。
まことは、身動ぎもせずにそれを見ていた。その瞳に感情が浮かぶ事は無かった。
(うぅうう、見ないでええええ……)
最初は唖然としていた男たちも、やがて事態に気付くと、どっと歓声を上げた。
「ぎゃはははは、きったねエ!鼻からザーメン噴射しやがったぜ、こいつッ!!」
「口から飲んで鼻から出すか。大道芸人も真っ青だな!」
「さすが水泳やってるだけあるぜ!鼻の通りもバッチリってわけか!」
口々に囃し立てる男たちを前に、マーキュリーは成す術もない。恥辱に顔を真っ赤にしながらも、ひたすら口に溜まったザーメンを噴き出す。
「ぶひいいいい、ぶうううううううッ!!」
呼吸困難に陥りながら、マーキュリーは豚のような喘ぎを漏らした。
鼻が詰まって呼吸が出来ない。口で息をしようにも、男根ですっぽり塞がれていてそれも出来ない。
(い、いやぁああ!出ちゃう、止まらないいいいいぃいいい!)
ビュルルル!!ビュルルルル!ブシュブシュウウウウッ!
「おううううううぅうう、ぶううううううーーーー!」
凄まじい音と共に、白濁が次々とぶちまけられる。
両方の鼻の穴からザーメンを噴き出し、豚のように無様に喘いでいるマーキュリー。
「おいおい、鼻毛がすげえな!勢い余って外に飛び出してるぜ!」
「オラッ、もっと派手に吹けよ!シャボン・スペルマ・スプレー!!」
「ちょっと、あんたたち……」
阿鼻叫喚の光景が繰り広げられる中、コーアンが呆れた声を出す。
「あまり無駄打ちはしないでくれる?孕ませる分が足りなくなってしまうわよ」
「そ、そん………」
顔面を真っ白に染めて、マーキュリーは喘ぐ。朦朧とした意識の中で、孕ませるという単語だけがちかちかと明滅した。
「……や、約束がちぐ、わっ!」
頭を押さえつけられ、床に零れたザーメンを舐めさせられる。窒息を避けるために、ザーメンごと酸素を吸い込む事を強制させられる。
四方から伸びた男の手深い腕が、マーキュリーのミニスカートを捲り上げた。青かったはずのスカートは、既に精液で濡れそぼって紺色に変わっている。
レオタードの凹みをさわりと撫でられ、彼女は背筋を震わせた。あれほど秘部が汚いと罵っていた男たちが、舌なめずりをしながら徐々に脚を広げていく。
「ほ、ほんな………や、やああああ!!」
縫った部分が開き、再びあの裂ける痛みを味わわねばならないこと。
何より、セーラー戦士の力を失う事と、妊娠の恐怖。それら全てに彼女は激しく抵抗した。
どんなに苦しくても諦めては駄目だと、言ったのはヴィーナスだった。初めて会った時は頼りになると思っていた彼女──それが、今はここにいない。まるで光と影のように、うさぎが成長すればするほど、美奈子の能力は影を潜めていった。
コーアンの言った事が本当ならば、うさぎがデマンドの元に下ったのならば、ヴィーナスは必ず覚醒するはずだ。プリンセスが危機に陥った時こそ、四守護神のリーダーの真価が問われる。
今すぐに飛んできて、助けて欲しかった。日頃ぞんざいな扱いをしてはいても、美奈子は大事なリーダーだった。
(助けて………助けて、ヴィーナス!!)
暴れるマーキュリーの視界の端に、男たちによって床に組み伏せられるジュピターの姿が映った。
セーラー戦士の誰よりも大きな乳房が、冷たい床に押し付けられ変形している。天井に向かって高く突き上げられた臀部を、男たちの無骨な指が探っている。
魔物の食指は、ついに無防備なジュピターにまで及ぼうとしていた。
「んぐううう!!ジュ、ジュぴたああああ!!いやあっ!!」
いくら喚いても、男たちはジュピターを解放してはくれなかった。
「放してえええっ!やく、約束したじゃない!ジュピターだけはやめでえええっっ!!」
「うるせえっ!!」
怒声がマーキュリーの耳を殴った。
自らジュピターの盾となることで、レイを傷つけた罪が帳消しになることを期待していた彼女は、冷水をかけられたように動きを止めた。
自分が楽になりたいから、男たちを受け入れた。その思いをコーアンに見透かされていたのだろうか。
一人の男が床に寝転んで彼女の身体を抱きかかえ、もう一人の太った男が、背中から強引に覆い被さった。
「そら、お前の大好きなサンドイッチだ」
食パンにチーズを挟むがごとく、マーキュリーの身体は男たちの身体に上下から押しつぶされ、乳房がひしゃげた。
「こんな汚いところに、ぶち込みたくはないんだが。コーアン様の思し召しだからな」
「や、約束が、約束が違うわ!!」
むせかえるような男の体臭に包まれながら、マーキュリーは小刻みに震えた。
白い股布が横にずらされ、冷たい空気がその部分に触れた。
男の指が、メラニン色素の沈着した秘唇をめくり開く。傷口が開く事で女の身体にかかる多大な負担など、微塵も気にかける様子はなかった。
「だ、だめええ!き、傷が塞がったばかりなの!ま、まだ痛いの、だから、だ………」
輪姦された記憶もまだ新しい。男では駄目だ。同じ女でなければ、固く閉じている部分を割り開かれる痛みは判らない。
救いを求めるようにコーアンを見上げるが、冷たい血の流れる異種の女は、冷徹に告げるのだった。
「それがどうかして?」
情けなど期待するだけ無駄だと言わんばかりの声が、マーキュリーを奈落の底に突き落とした。
「ベルチェお姉さまとカラベラスお姉さまの苦しみは、こんなものじゃない。異質なモノを注入されて、身体の内側から腹を突き破られる苦しみ、少しは味わうといいんだわ」
「ってわけだ、悪く思うなよ」
ずん、と上の男が腰を沈めた。愛撫もなしに開かれた秘唇が、ミチミチと広がって激痛を走らせる。
おぞましさと強烈な異物感に、マーキュリーの喉から絶叫が迸った。
「う、ああああああ!!」
叫びに反応して、ジュピターがのろのろと顔を上げる。
「亜美、ちゃん……?」
目が合った。四つんばいにされたジュピターは今まさに、無防備な処女を背後から奪われようとしていた。
「に、逃げて……逃げて!!見て、き、気付いて、うし、う、後ろおおおおおおっ!」
親友のため、そして自らの痛みを紛らわせるため、マーキュリーは喉が張り裂けんばかりに叫んだ。
しかしジュピターは不思議そうに首を傾げて、すんなりと男たちの肉棒を受け入れていく。
マーキュリーは顔を背けた。処女喪失の瞬間を見たくはなかった。
ジュピターが小さく悲鳴を上げたのが聞こえた。その痛みで正気に返る様子も、抵抗するも殴られて組み伏せられる様も、容易に想像できた。
(まこちゃん……まこちゃんっ!!)
歯を食いしばり、マーキュリーは心の中で戦っていた。友人を守り切れなかったという悲しみと、これで私と同じだ、という暗い喜びの狭間で、必死で戦っていた。
「おお、体位を変えたら思ったより締まるぜ。いいか、これから壊れるまで突きまくってやるからな」
熱い杭が、体内で蠢くのを感じた。秘唇に埋め込まれた肉棒の存在感が、男の体重ごとのしかかっている。
下になっている男が、セーラースーツの胸元をまさぐった。精液に濡れた水色のリボンが、震動で揺れている。
「ぬ、抜いて……い、痛い、痛いのっ」
必死の訴えが聞き入れられるはずもなく、前後運動が開始された。
尻の割れ目が持ち上げられ、股布が引き裂かれた。極太の肉棒を咥え込まされたマーキュリーの尻が、頼りなく動いた。
大切な部分を乾燥から守るために、愛液がとろりと溢れ出してくる。感じていると勘違いした男は、鼻息を荒くした。
「なんだ、すぐに濡れたじゃねえかよ。ひひっ」
「ち、違う……痛いの、やめてえっ!!」
悲鳴を遮って、抽送が開始された。
床に寝そべった男がセーラースーツを破り、ご丁寧にもリボンだけを残して胸を露出させた。
闇の中に白い乳房が浮き上がっている。以前に付けられた禍々しい陵辱の証が、所々に赤い斑点を残していた。
「汚ねえなあ……痣や染みだらけじゃねえか。お前を貰う男は災難だな」
「ひ、ひどい………」
少女の尊厳を踏みにじる言葉に、マーキュリーは青ざめた唇を震わせた。
顔に塗りこめられた精液が滴り落ち、胸の谷間に止まった蝶のようなリボンに染み込んでいく。
「安心しろ、お前を抱く男は当分いねえよ。これから妊娠してもらうんだからな」
「ひ……いやああああ!やめてっ!」
尻に重圧がかかった。膣に埋め込まれた肉の剣が、更に奥へと侵入しようとしている。
身体が二つに裂けるような衝撃だった。縫い付けてもらった大事な部分が、泡が弾けるように壊れていく。
(誰か、誰か助けて!まこちゃ………)
自由になる手を振り回すと、柔らかなものに触れた。
「ひっ」
顔を上げると、すぐ目の前にジュピターが近づけられていた。
彼女は馬のように四つ足で歩き、背後から男に突かれた状態で、這うように同胞の前に連れて来られたのだった。
正気に返った彼女は、両の目から涙を流しながら、笑みすら浮かべてマーキュリーを見ている。
「ま、マーキュリー………あ、あたし………」
痛いほど彼女の気持ちが伝わってきた。彼女の絶望はマーキュリーのそれとぴったり重なっていた。
「酷い事言ってごめん。でも、も、もう限界だよ……挿れられちゃったんだ、ほ、ほらぁ」
男に急かされて自ら腰を振ってみせるジュピターに、もはや勇敢な戦士の面影はない。
マーキュリーが女性として憧れていた、強くて優しい少女の姿は、男たちの欲望に穢されて跡形もなく砕け散ってしまった。
「見えるだろ、マーキュリー?こんな太くて大きいのを、子宮の奥まで入れられて、ドクドクって………」
「や、やめてジュピターっ!!それ以上言わないでっ!」
頭を振って、マーキュリーは喚いた。自分の良く知る親友が、下卑た言葉を吐いているのに耐えられない。
男たちはにやにや笑いながら、ジュピターの頭を撫でた。
「あぁ……このまま、妊娠しちゃう。赤ちゃん、出来ちゃうよ。嫌だよ……」
「ジュピター!!」
「マーキュリー!!」
互いを求めて伸ばした手が、空中でしっかりと絡み合った。
今の二人を繋いでいるものは、双方共に男に犯されたという現実と、この手の温もりだけだった。
「仲直りできたの、良かったわね」
コーアンが目を細める。
「あなたの言う友情なんて、所詮そんなもの。ジュピターが自分と同じ目に遭って、ようやく安心したのよね?」
否定は出来なかった。
ジュピターの方も、そんな彼女を責める気配はない。喘ぎながら救いを求めて、目の前の温もりに縋っている。
「ごめんなさい、ジュピター。あたしたち………こ、今度こそ、親友にようやく、なれるわね……」
薄ら笑いを浮かべて、マーキュリーが囁けば。
「そうだね、マーキュリー。これで、二人、一緒だ。あ、は、ははははははは」
ジュピターも引きつった笑顔で、長い指を絡めてくる。
その間にも、男たちは腰の動きを止めない。目の前の現実から逃避し、新たに生まれた友情にしがみ付いている二人の戦士を、背後からひたすら犯す。
「おーい、俺たちそっちのけで会話してんじゃねえよ」
「二人の友情に、カンパーイ」
能天気な声と共に、男たちは一斉に肉棒を扱き出した。這いつくばった二人の頭上に、さながら祝いの酒を降り撒くように、新たなザーメンが降り注ぐ。
生臭い精液に全身をパックされながら、マーキュリーは友人の顔を見て笑った。
「ジュ、ジュピター……やだ、顔が真っ白だわ。ふふっ」
「な、なんだよ、マーキュリーこそ、鼻の穴まで白くなってるじゃないか。は、ははっ」
もはや泣いているのか笑っているのか、自分たちにも判っていなかった。ただ、互いの無様な姿を嘲笑いながらも、この握りしめている手を放した時が本当の終わりだと、心のどこかで理解していた。
「オラ、いくぜっ!腰を振れっ!」
「あひっ、あひっ、あひっ、あひっ」
前から後ろから、挟まれて突きまくられ、マーキュリーは鼻を鳴らして喘いだ。
「うあっ、うあっ、うあっ、うあっ」
ジュピターも痛みから逃れるために腰を浮かし、ひたすら喘いでいる。
「あはは、いいわよ、その顔最高!」
コーアンの高笑いと、セーラー戦士の悲鳴の二重奏が、天井高く登っていく。室内には桃色の熱気とザーメン臭がたちこめて、何ともいえない異臭を放っている。
悲鳴に飽きた男たちは、更に酷な要求をした。
「いいか、『イク』と『キク』以外口にしたら殺すからな」
「え………」
幸いにも、マーキュリーは飲み込みが早かった。
理屈で言えば、妊娠目的で犯されているのだから殺される事はない。男たちの言う『コロス』は、『さらに酷い目に遭わせる』意味だと解釈できた。
「ひいいいいい、イク、イクううううーーーーっ!あおおぉっ!」
要望に応えて尖った嬌声を上げるマーキュリーに、男たちは満足した。
「よしよし、その調子だ。さてジュピターはっと………」
「諺攻めってどうだ?新しいだろ」
「おお、いいね」
男の一人がジュピターの顎を掴む。
「なんでもいい、ひと突きごとに諺ひとつ言ってみろよ。間違えたり詰まったら承知しないぞ」
「こ、ことわざ……?」
博識なマーキュリーではなく、ジュピターの方を選ぶとは、男たちも意地悪が過ぎる。セーラー戦士の弱点をよく研究しているらしい。
マーキュリーの脳裏に、ヴィーナスの笑顔が浮かんでは消えた。彼女がこの場にいたら何と言うだろう。案外、喜んで間違った格言を連発するのだろうか。
また逃避しかかっている彼女を、男が苛立ったように突いた。
「おごっ!」
つい本能的な悲鳴が漏れる。
「おいっ、『イク』と『キク』だろ!?」
「ご、ごめんなさいいっ。き、効くうううううっ!効いちゃうっ!効くのおおおおっ!!」
セックスの最中に上の空でいるのは、男にとってはかなりの屈辱らしい。痛みを忘れるために、別のことを考えることすら許してくれない。
そのための言葉攻めなのだと判った。
「た、棚からぼたもちいいいっ!!ぬかに釘いいいいいいーーーーー!!」
急激なピストン運動に合わせて、ジュピターは狂ったように諺を喋りだした。
正気を手放したいのに、頭を使わなければならない。そしてその度に現実を思い知らされる───その苦しみ。
「ふうん、考えたわね」
男たちの一風変わった趣向に、コーアンは感心している。
お堅いマーキュリーの嬌声は言うまでもないし、強姦されながらまともな単語を発するのは、下手に卑語を言わせるよりも卑猥な印象を与える。
「イク、イクイク、いぐーーーー!!」
まともなセックスの経験がなく、イクという感覚すら理解できないままに、マーキュリーは下品な声を上げ続けた。
男たちに急かされるままに、口元に当てられたペニスを咥えこみ、夢中で啜り上げた。
「んぐぐ、うむっ……ぎ、ぎぐうううう!ぎぐ!ぎぐのおおおお!!むごお!」
「効いてるみたいだな。いよいよ最後の仕上げだ」
男たちがコーアンの方を向いた。
コーアンはにっこり笑うと、マーキュリーたちに歩み寄った。
二人の額にかかっているティアラを剥ぎ取る。何をされようとしているのか、マーキュリーは瞬時に理解した。
「ひ、うむっ!」
恐怖の言葉を発しようとした口を、新たな肉棒で塞がれる。ヒューヒューという虚しい鼻息が漏れた。
コーアンの両方の掌から、熱気が上がっている。触れてもいないのに熱さが伝わってくるほどの。
「では清きセーラー戦士が、あたしたちと同じ雌豚に成り下がった証をつけましょう」
半ば自嘲する様に言いながら、コーアンは二人から奪ったティアラを床に落とした。
前髪が取り払われ、あらわになった、おでこ。マーキュリーの額には水星の証が、そしてジュピターの額には木星の証が輝いている。
(い、いやああああああ!!)
「むごおおおおおおおおおお、お!!」
「うあ、あああああ!!」
火傷の痛みを察して、二人は鯱のように背中を逸らして暴れだした。青いスカートと緑のスカートが、これで最後とばかりにはためいた。
『刻印を焼き付けるのが、いちばん確実なのよ』
ブラック・ムーン一族の刻印を焼き付けられたら、二度と変身する事は叶わない。
「何を騒ぐの?あなたたちを支えているのは『仲間との共通意識』でしょう。セーラームーンやマーズと同じになれるのよ、何が不満なの?」
コーアンの言葉が、二人の心に重く沈んでいく。
いつでも、五人一緒の団体行動。同じ目的、同じ意思。そうでなければ『異常』。それこそがプリンセス・セレニティの歪んだ思想だとコーアンは言った。
「月の一族に言わせれば、ブラック・ムーン一族はテロリストらしいけど、ちょっと違うわね」
二人の額にゆっくりと手を翳しながら、コーアンは語る。
「なぜなら、全員の意見がバラバラなんですもの。ワイズマン、デマンド様、サフィール様、亡くなったルベウス様、それにカラベラスお姉様まで。こんなに統率が取れていないテロリストがいるかしら」
ジュワッと音を立てて、二人の額に焼き印が押し付けられた。
「ぐあああああああああああーーーーー!!」
「あついいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
想像を遙かに超える熱さに、マーキュリーたちはのたうち回った。だが、男たちにがっちりとのしかかられて、逃れることは出来ない。
人を傷つける事に慣れきった女は、苦しむ戦士たちを見下ろして淡々と告げた。
「返して言えば、一人一人の思想を尊重しているのよ。他の人と少し違っているだけで排除の対象となる、あなたたち人間とは大違いね」
女の手が離れた瞬間、そこには禍々しい刻印が生まれていた。黒い、逆三日月の───屈辱の証。
痛みの中で、マーキュリーの耳は何故か冴え冴えとして、コーアンの言葉を受け止めていた。自分の信じていたものが否定される、その衝撃。
「コーアン様、こいつら変身が解けませんぜ」
手を握り合って痛みに耐えている二人を、男たちが不満げに見下ろす。無論、腰の動きは止めていなかったが。
マーキュリーとジュピターの身体には、精液にまみれたセーラースーツが未だにまとわりついていた。
胸の部分と尻の部分は破られているとは言え、これではまだ変身を解いたとは言えない。
「おかしいわね。まだ心が折れていないって事かしら」
コーアンも舌打ちせんばかりの表情で、マーキュリーたちを見下ろす。
「ねえマーキュリー、この光景をあなたの知り合いに見せたらどうなるかしらね?」
びくっと、青い髪が揺れた。
(ま、まさか……)
恐る恐る顔を上げると、得たりといったコーアンの笑みとぶつかった。
「ええ、そうよ。この部屋に入ってきた時から……つまり、蔦に襲われてマーズと仲違いしたところから、ばっちり記録が撮ってあるわ」
「ひ……」
ジュピターの身体も硬直した。
正気を失い、顔に小便を叩きつけられた彼女は、その時のことを思い返したらしい。
二人の固くつながっていた手と手が、ゆっくりと解けていった。忘れたい友情の崩壊、醜い罵り合いの記録が、残されている……。
陵辱より何より、そのことがセーラー戦士にとっては痛手だった。
「よし、今よ!」
二人の手が離れた途端、コーアンが満面の笑顔で叫ぶ。しまったと思う間もなく、マーキュリーたちは引き離された。
温もりが離れる間もなく、腰を使っていた男たちが絶頂を迎えた。少女の白い尻をしっかりと掴み、熱い精子を放つ。
「よおおおっし、とどめだ!シャイン・ザーメン・イリュージョン!!」
膣内に詰め込まれた肉棒から、人間の男とは比較にならない量の精液が噴出し、マーキュリーの膣内で炸裂する。
「おわああああーーーーーっ!!おほうううっ!」
激しい濁流に押し流される魚のように、少女の全身はのたうつ。
ビュルルルッビュッ!!
ビュグッビュルルルルッ!!
ドクドクドクドクッ!!!
「ヒイーーーーーッ!!ま、まごじゃんッ!!イクーーーーっ!!」
同じ瞬間、ジュピターも射精されていた。豊かな乳房を鷲掴みにされ、左右に揺すられながら。
「あああああ、あびちゃんッ!!あひょぉおおおっ、てへええええぇええっ、おほ、おほ、はひッ、おーーーーっ!!」
白目を剥いて鼻の穴を全開にして、無様にも醜いアクメ顔を晒し、開け放った口から噴水のように精液を噴き出す。
だらんと伸びた舌が受け皿のようになって、降りかかる精液を溜め込んでいく。
「ぐはあああああ!おごああああああ、がはっ!!」
子宮が痙攣しながら、精液を吸い込んでいくのが判った。上からも下からも降りかかるザーメンの嵐に、二人は窒息寸前だった。
「ほぉら、不細工アヘ顔がバッチリ撮れたぜ!!毛穴に染み込んだザーメンやビラビラ黒マンコまで、しっかり記録に残してやるからな!」
「それをお前の家族や知り合いに送りつけてやる。澄ました優等生が便器に変わる瞬間を、親しい人間にも見せてやろうぜ」
「おっ、おっ、ぎやぁあああっ!ぞれだけはやべでえええっ!!」
耳元で屈辱的な台詞を吐かれ、羞恥にのたうつマーキュリーを、男たちはさらに苛める。
「目を逸らすな、天才少女。これがお前の醜い本性なんだよ。友人を見捨てて傷つけて、自分の心だけを守ろうとした報いなんだよ!」
「セーラーマーキュリーともあろう者が、こんな変態だったとはな!ウラワとやらもきっと軽蔑するぜ!」
半狂乱になったマーキュリーは、男たちに言われた事も忘れて暴れだした。
「ぢ、ぢがううううっ、ごんなの、私じゃないいいいいヅッ!びいいいいい、だ、だじけでええ、ばごジャンッ!!」
(ま、まだ、まだ…………)
変身解除を避けるために、必死に誇りを保とうとしているマーキュリーを、さらに屈辱の行為が襲う。
「往生際の悪い便器だな!オラ、小便も飲むんだよ!」
「うぶぶっ!……おぶうう、むぐっ」
黄色い汚濁汁が喉の奥で弾けて、食道に滑り込んでいく。口の中も鼻と耳の穴も、全て白濁で満たされ、子宮や大腸にもパンパンに詰め込まれていた。
今のマーキュリーは少女ではなく、精液袋に過ぎなかった。体の奥深くまで嵌めこまれた肉棒が引き抜かれても、拡がった穴はもう元には戻らない。
黒ずんだ粘膜や引き伸ばされた乳房には、少女の名残すらなく、それなりに可憐であったはずの顔立ちは、恐怖と苦痛に醜く引きつっていた。
ふとジュピターを見れば、乳首に邪黒水晶を装着されていた。アヌスにも深々と突き立てられた黒い先端が見える。
「ぐあああ、あああ!おっぱい伸びるうううう!!」
汗と精液でぐっしょり湿ったポニーテールが、男たちの顔にまとわりついた。
「そらっ!とびっきり濃い粒状のザーメン出してやるから、さっさと妊娠しろ!!」
秘唇をめいっぱいに広げながら、更に奥へと侵入したペニスが、子宮口をがっつり突き上げる。
「ひいいいぃいっ。い、いや、か、果報は寝て待てーーーーっ!!」
諺を催促されたジュピターが、泣きながら絶叫する。
「元気な子を産めよ!誰の子かわからないけどな!!」
「ひ、ひどいいいいっ!あ、が、お、ごごっ、ぎいいーー、おほうっ、いくううう!きくう!」
正面から互いの顔をしっかりと確認しながら、マーキュリーたちは白濁の海で泳いでいた。
「そら、二人同時に逝っちまえ!オラオラオラオラっ!!」
「ヒいいいいいいいいいいーーーッ!!」
ビュシュブシュブシュ!!ボピュルルルル!
まるで笑っているような奇妙な表情を浮かべながら、マーキュリーの身体は激しく痙攣した。
口の端から涎をとめどなく流し、白目を剥いて、赤い舌をだらしなく垂らす。子宮の中に、泡だった精液がビュルビュルと注がれていくのが判った。
「ふはああああ、………が、は」
バシャッと音を立てて、マーキュリーの身体は精液のプールに斃れこんだ。白い水たまりにすっかり漬けこまれて、ヒクヒクと痙攣している。
「うひいいっ!!」
肥大した乳首を摘み上げられながら、まことも同時に力尽きた。
手足からは力が抜け落ちぐったりとなって、潰れた蛙のように床に落ちる。
プツッ、とマーキュリーの中で何かが切れた。ジュピターの頭もわずかに痙攣した。
白濁の中に浸かった、二人のセーラースーツが形をなくしていく。青と緑の色彩が消え、身体の肌色が露出した。
セーラー戦士としての誇りを粉々に打ち砕かれ、ただの小娘と化した二人を、男たちの笑い声が包みこんだ。
「俺たちの子種を注ぎ込まれた気分はどうだ?」
「無様なもんだなぁ、腹をブクブクに膨らましやがって」
「聖なる美少女戦士も、こうなってみればただの雌豚だな!!」
陵辱者たちは秘唇から乱暴にペニスを引き抜くと、哀れな少女らの身体を叩きつけるように放り投げた。
バシャ、と飛沫が上がる。
「あ、あへっ……おほ、ほおっ……」
精神の壊れたマーキュリーは、あろうことか白濁の水溜りの中で平泳ぎを始めた。
「う、うふふふふっ、あはっ。すいすい、すーーーいすいっ」
はしたなく大股を広げては閉じ、広げては閉じ。こんな浅いプールでは、前に進むはずが無いのだが。
下腹をぽっこりと膨らませ、白目を剥いて泳ぎ続けるその姿は、まさに蛙以下だった。
ジュピターも膨らんだ腹を丸出しにしてひっくり返っている。精液が漏れぬよう、秘唇には邪黒水晶で栓がされていた。
「ああう、うう………あ、あんずるよりうむが、やすし……」
「ポニーテールの豚ちゃん、大丈夫かよ?」
男たちの問いかけに、ジュピターは半笑いで答える。
「う、ひいい、ブヒ、ブヒヒヒヒヒヒ………ブーブー」
コーアンは満足げにそれを眺めていた。
「よしよし、予定通りね」
二人の額に押し付けた掌を、ぶるんと振る。まるで、トイレから出てきた直後のように。
「あーあ、汚いモノを触って手が汚れちゃったわ。少し休んでくるから、あんたたちは続けて頂戴」
「は………」
男たちの顔にも疲労が濃かったが、コーアンはそんなことは気にも留めていない。
勇気のある男が、思い切ったように口を開いた。
「あの、コーアンさま」
「なによ」
「さすがに俺たちもアレなんで、少しシャワーぐらい浴びに行かせてはもらえませんかね。あと、できれば水も……うあああっ!」
男が壁際に飛びのいた。先ほどまで立っていた場所を、コーアンの青い炎が襲ったのだ。
煙を上げている床を見て、男たちが生唾を飲み込む。床に転がる二人の少女だけは無反応だった。
コーアンは目の奥に苛立ちを浮かび上がらせながら、きつい口調で言った。
「奴隷の分際で図に乗るんじゃないわよ。丸焦げにされたいの?」
一族とはいえ戦闘員ではない彼らは、己の身を己で守ることさえ出来ない。本来なら故郷が滅びると同時に駆逐される運命だった。
それを、お情けで拾ってやったのはサフィールだ。あの甘ちゃんは敵でさえなければ、弱いものに対してとても優しい。その代わり、好意に対してつけあがるような相手であれば、容赦なく一刀両断する冷静な面も持っていた。
ペッツに言わせれば「そこが魅力的」らしいが、ルベウスのような乱暴な男が好みのコーアンの目には、あの青年の心は妙に不安定に映る。優しいようで冷たい、というのは、はっきりした気性の彼女には理解しづらい。
プリンス・デマンドの弟だから、それなりに敬意を払ってはいるが………。
「しばらくしたら、ジュピターだけマーズの所に行かせるのよ。マーキュリーはこのまま犯し続けなさい、いいわね」
力を失ったとは言え、セーラー戦士を一つのところに集めておくのは良くない。それは彼女が学習した結果だった。
「は、はい……コーアンさま……」
睨みつけるコーアンに、男たちは竦みあがった。
「わかったら、さっさと種付け作業に戻りなさい!」
厳しく言いつけると、コーアンは紫色の髪を翻して部屋の外に出て行った。高いヒールの音が廊下に響いて遠ざかっていく。
パシュン、と自動扉が閉まった。
彼女の気配が消えたのを確認すると、男たちは怯えた表情を一変させて悪態をついた。
「ケッ、やーーーな女!!」
男の一人が吐き捨てた唾が、ジュピターの頭にかかった。
「本当ならあいつも犯してやりたいよ。おれたちが恩があるのはサフィール様であって、あの女は関係ねえもんな」
「前はルベウス様がおっかなくて手が出せなかったけど、今じゃどうかねぇ」
「四姉妹の中でも意見が割れてるんだろ?……あの女が粛清されるような事があったら、おれたちどうなるんだよ?」
不安そうなざわめきが室内を占める。
床に転がっている二人の少女には、この男たちの末路がどうなろうが、まるで関わりのない事だった。
「どういうつもりだ!」
サフィールがコーアンたちの部屋を訪れた時、彼女らは優雅に茶を飲んでいた。
椅子に腰掛け、ひたすら恐縮しているのはあやかしの四姉妹の長女・ペッツ。その傍らでカップに茶を注いでいるのが、四女のコーアンである。
息せき駆けて来たサフィールの顔には、控えめではあったが怒りがあった。女性を怒鳴りつけるのは、彼には珍しい事だった。
マーキュリーよりもさらに濃い紺色の髪と、ルベウスに女のようだと揶揄された優しげな面立ちが、今は冷静さを失っている。
「どういうとは、どういうことですの?」
惚けた口調でコーアンは言い、湯気を立てるカップに手を伸ばした。サフィールの手がそれに重なる。
両者の視線が絡み合った。コーアンは悠然と青年を見ている。一方、ペッツは叱責の恐怖に怯えているようだった。
「マーキュリーと、ジュピターのことだ。この水晶玉で見ていた、知らぬとは言わせない」
言うや否や、サフィールのもう片方の手のひらの上に、丸い玉が浮かんだ。
そこには精液塗れになって犯され続ける二人の少女の姿が、はっきりと映し出されている。
ヴィーナスを自室に帰した後、気になって様子を見てみれば案の定だ。やはり自分の力では、あやかしの四姉妹を止める事は出来なかったらしい。
冷ややかに睨みつけると、コーアンはふっと目を逸らした。
「見てらしたの………」
まるで反省していないその様子に、サフィールは肩を落とした。
女と言う生き物は、時として男には考えもつかぬような残酷な行為に及ぶ。同性なのに、なぜ陵辱の辛さがわからないのか。
──いや、わかるからこそ、それが相手にとって最も屈辱的な方法だと思っているのだろう。ならば。
「敵とは言え、捕虜にした以上手荒な真似はするなと、告げておいたはずだ。君らの行動は命令に反している」
君ら、と言いながら、彼はペッツを見た。コーアンの姉である彼女にも、止められなかった責任はあると示唆している。
「申し訳ございません………」
借りてきた猫のように大人しい姉に、コーアンは舌打ちした。
「お姉さま!謝る必要などありませんわ。サフィール様こそ、何故そのように憤っていらっしゃいますの?」
自分たちのした事が正しいと信じているコーアンに、サフィールは溜め息をついた。
「ヴィーナスと約束した。もう他の四守護神には手は出さないと」
それは、ヴィーナスの治療をしながら、彼女に誓った事だった。
セーラームーンがデマンドの手に落ちた以上、彼女ら四人を痛めつけても何の意味もない。
彼女たちはもちろん、あの男たちも相当に疲労しているはずだ。なのにコーアンは休息すら許さず、自分は呑気に部屋で紅茶など飲んでいる。
「そのような口約束は、サフィール様がヴィーナスと勝手に致した事ではございませんか。我らあやかしの四姉妹には、関わりのないこと」
言ってコーアンは、悪戯っぽく微笑んだ。
「これしきのことで、血相を変えて駆けつけてくるなんて。そんなにヴィーナスがお好きでしょうか」
サフィールは眉を寄せた。すぐに恋愛沙汰に結び付けて騒ぐ女の特性は、彼にとって不愉快で好ましくないものだ。
しかし、こうした挑発に乗る事は、己の小ささを証明するようなもの。
「敵将にそれなりの敬意を払うのは当然だ。余計な詮索はするな」
落ち着いて返したつもりだったが、コーアンはくすくす笑いをやめない。
「白々しい………あたしたちだって、ちゃあんと見ていましたのよ」
ふわりと紅茶の湯気が立ち上る。不穏な言葉を耳にして、サフィールの顔に初めて動揺が走った。
「どういうことだ……」
聞いていられない、というように、ペッツが顔を背けた。
コーアンは自分の手の上に覆い被さっているサフィールの手に、もう片方の手を重ねた。耳元でそっと囁く。
「昨夜遅くまで、ヴィーナスの部屋にいらっしゃったようですけど。このこと、デマンド様にご報告した方がよろしいかしら」
唐突に、彼は思い出した。昨夜ヴィーナスの元へ行く前に、ペッツから渡された邪黒水晶の存在を、思い出した。
『あの娘が、突然襲い掛かって来ないとも限りませんから。念のためにこれをお持ちになって』
邪黒水晶はダーク・パワーの源である。彼らの力を増幅させる道具で、なおかつ護符のようなものでもあった。
特に必要がなかったため、戻ってきてすぐにペッツに返したのだが、あれに仕掛けが施してあったとしたら………?
昨夜のヴィーナスとの淫らな行為も、彼女たちに全て筒抜けだったという事だ。
「………!!」
気づいた瞬間、サフィールの面に朱が走った。
耳まで赤くなっている彼を見て、コーアンがふんと鼻を鳴らした。
「おまけに、デマンド様の秘密までぺらぺらと、よくお話しになって。サフィール様ったら意外とお喋りなんですのね。おまけに感じやすくて可愛い♪」
「こ、コーアン!おやめ!!」
羞恥に震えているサフィールを気遣って、ペッツが妹の非礼を咎めた。だが、彼に邪黒水晶を渡して一連の行為を盗聴させたのは、他ならぬ彼女である。
女など、信用できない。優しげな笑顔を浮かべて、好きだと言い寄ってくるくせに、内面には常にドロドロした感情を溜め込んでいる。
ヴィーナスにしても、そうだ。一族の秘密を知るためにサフィールの好意につけこんだ。そう、知っていたのだ。
知っていたのに何故、自分は身体を許してしまったのだろう。ルベウスなどは、酔うと裸で城内をうろついて一物を見せびらかしているくらいだったが、サフィールは一族の中でもかなり常識派に属していた。
人前で裸になることは恥ずかしかったし、むろん童貞ではなかったが、出会ったばかりの女と身体を重ねる事はあまり考えられない。
要するに警戒心が強く、人見知りをするのだ。組織のブレーンとしても一人の男性としても、その性質はごく真っ当なものである。
何故、あの少女に下半身を預けてしまったのだろう。
(……愛して、しまったのか?)
さらに恥ずかしい発想が、彼の胸中を占める。
騙し騙されてもいいと思える相手に出会えることが、本当の幸せなのだと、以前兄が言っていた。誘惑に逆らえなかったのは、つまりそういうことなのだろうか。
セーラー戦士として、美しい姿で戦っていたのを遠目に見た時には、それほどでもなかった。
なのに、髪を剃られボコボコに殴られて血を流し、普通の少女以下の姿に堕ちた彼女に───強く惹かれてしまった。外見ではないのだ。
ヴィーナスの持つ強さや弱さ、表面だけではない美しさ………どうしようもない衝動に、サフィールは突き動かされたのだ。
予定調和の恋愛しか経験してこなかった彼には、その輝きは恐怖であり、憧れだった。この身体、兄以外の他人に委ねてみるのも、面白いかもしれない……。
(愛しているのか、あの娘を)
己の心に問いかける。返事は返ってこない。
(愚かな。ルベウスの二の舞を演じるのは………御免だ)
惚れさせて味方にするならともかく、惚れてしまってどうするのか。
それに、ペッツが言っていた通り、愛の女神は本気で男を好きにはならない。始まる前からこの恋は終わっている。
彼女が愛し、忠誠を誓っているのは、月の女神──プリンセス・セレニティその人なのだから。
「サフィール様」
ペッツがおずおずと告げる。
「目をお覚まし下さいませ。あの小娘と我らが一族の未来と、どちらが大切ですの」
「ペッツ………」
「無礼な振る舞いであったことは、重々承知しております。その、あのような………盗み聞きを。ですがあなた様のためを思って!」
ペッツは赤くなって言葉を濁した。
録音したものを使って自慰に及んだ事を、サフィールは知らない。密かに慕っている男性と殺したいほど憎い少女の喘ぎ声を同時に聞きながら、ペッツは三回ほど達してしまった。
「そう思うなら、録ったものを返してくれないか。──本当に、趣味が悪すぎる。下衆だ!」
逆上して、思いつく限りの悪態を並べようとするサフィールであったが、声は弱弱しかった。
姉妹のやり方は確かに下品だが、ヴィーナスに溺れた自分が結局は悪いのだ。不甲斐ない己に一番腹が立った。
「君たち姉妹は、下衆の下衆だ。ブラック・ムーン一族の大恥だ!」
吐き捨てるように言うと、サフィールはくるりと背中を向けた。首筋まで赤く染まっている。
「あ、逃げた」
悪びれないコーアンがぺろっと舌を出し、姉を振り返った。
「助かったわね、お姉様。あのぶんじゃサフィール様、あたしたちのしでかしたこと、誰にも話せないわよ」
「………」
「マーキュリーたちが妊娠したら、あの男たちに全部罪を被せて処分すればいいわね」
明るく話しかけるコーアンに対し、ペッツの表情は何故か暗かった。
変身が解けた木野まことは、猛烈な速さで廊下を駆け抜けていた。
当然ながら、全裸である。乳房と秘唇に埋め込まれた邪黒水晶が、まるで男性器のように重苦しく垂れ下がっている。
走るたびにそれはブルブルと振り子の如く揺れ、秘唇を痛めつける。緩みきったアヌスからは時折放屁音が漏れており、ややもすれば実までこぼれ落ちてきそうだった。
「ブヒッ、ブヒッ、うひひっひーーーーーっ……」
まことの口の端からは涎が垂れ、血走った目は虚ろに宙を見つめるだけだ。
豊かな髪を振り乱し、口を開けたまま素っ裸になって走る様は、エリマキトカゲに似ている。
ふわりとした茶髪は激しいストレスで色素が抜け落ち、それとは対照的に、いたぶり尽くされた乳首や股間はすっかり黒ずんでいる。
頭髪が白くなっても、股間に生え揃った陰毛だけは鮮やかな栗色を保ち続けており、それが却って惨めに見える。
股間だけでなく、顔のうぶ毛や手足、脇の下等のむだ毛の処理も出来ていない。肌の手入れどころか、身体すら洗わせてもらえない。肌に浴びせられた小便や乾いた精液に、パリパリと罅が入り、落ちてくる。
「ブハっ、ブフフフフ、レイぢゃーーーーん、どこがなぁ?ブヒーーーー!」
たっぷりと中出しされながら、耳元で何度も何度も、お前は豚だと言い聞かされたまことは、既に豚の鳴き真似をする事に何の抵抗もなくなっていた。
敵の手中にあって生き延びるためには、素直に体を預けるほかはなかったのだ。今のまことには、自分の身体を気遣うことすら許されていなかった。
コーアンの手によって刻印を押し付けられ、彼女は変身能力を奪われた。
長時間の陵辱の末、「仲間のところに行ってやんな」と、ようやく男たちに解放された時、彼女は信じられないものを見た。
デマンドとうさぎが、仲良く寄り添って通路の向こう側から歩いてくるではないか。
うさぎは、デマンドに大切にされているように見えた。そして、何か汚らわしいものでも見るように、まことを見たのだ。
「ま……こちゃん!!」
うさぎは身体に触れ、何か大声で叫んでいたが、もはやまことの耳には入らない。
ブヒブヒと豚のような鳴き声を上げて、デマンドたちから逃げるようにして、その場から走り去った。
まことが最初の陵辱を受けた時、助けに来てくれなかったうさぎ。そして今、デマンドの妃となったうさぎ。
感情的になってレイを傷つけ、まことをも巻き込んで自滅しようとしていたマーキュリー。
リーダーとしての役目も果たせずに、一人だけ難を逃れて行方不明となっている美奈子。
そして───迂闊にも敵の子供を孕み、手厚く庇護を受けているレイ。
仲間だと思っていたのに、誰もが悉くまことを裏切っていく。
(レイちゃん、子供なんて、絶対、絶対許さないからな!!)
まことは必死になってレイの姿を追い求める。精神はとっくに壊れているのに、脳は妙に冴え冴えとしていて、それが自分でも恐ろしかった。
『マーズの腹を殴ってでも出産を阻止するのよ』
それはもはやコーアンの命令ではなく、まことの願いそのものだった。
新しい命をその身体に宿したレイ。自分はこんな身体にされて、もう子供など授かれないかも知れないのに。
最初に尻を犯されたあの日以来、生理すらも止まってしまった。まるで、女で居続けることを、体が拒否しているかのように。
子供を産めば、レイはブラック・ムーン側につくに決まっている。そしてますます大事にされるだろう。
(そんなこと……許せる、もんかっ!!)
壁に拳を叩きつけた時、どこからともなく女の悲鳴が聞こえてきた。
「誰か、誰か来てえええっ!」
ジュピターは駆け出した。
彼女の体力は底無しだった。あれだけ陵辱されても介抱された途端に本来の身体のバネを取り戻している。
股間に埋められたもののせいで動作は遅かったが、それでも普通の少女よりは遙かに機敏な動きでいくつもの部屋を巡った。そのうちに、廊下に一人の女性が躍り出てきた。
黄色いリボンでアップにした髪、濃い化粧──カラベラスだ。
「誰か、誰か来てっ!マーズがっ!」
カラベラスは、腕に赤子を抱えている。
狂ったように疾走していたまことは、思わず足を止めた。レイの子供ではないかと思ったのだ。
「ひ…お、お前、ジュピター!?その姿はどうしたの!」
まことの姿に、カラベラスは目を剥いていた。
自分が狂人のような様相をしていることに、彼女は気付いていない。カラベラスの腕の中の赤子を、じっとりとした目付きで睨んでいる。
「その子は……レイちゃんの、子?」
まことの顔は、次第に泣き笑いのような表情に変わる。
ただならぬ気配を察してか、カラベラスは赤子を抱いて後ずさった。
「な、なにを言う。これは私の子だ!」
「じゃあレイちゃんの子は?どこなんだ?」
ゆらり、と一歩前に踏み出しながら、まことは尋ねた。
ブラック・ムーン一族の血を引く子供。そんなものは絶対に認められない。
まことと亜美がこんな目に遭ったのに、レイだけが敵の子供を産んで幸せになることなど、認められない。
殺さなければ。産まれる前に、いいや産まれた後でも、始末しなければ。
ヘドロのような重々しい感情が、まことの胸を取り巻いた。強く雄雄しく、誰よりも優しかった保護の戦士が、初めて無力な者を傷つける側に廻ろうとしていた。
「レイちゃんの子供はどこだっ!教えろっ!!」
雷が落ちたようなまことの怒声に、カラベラスは竦みあがった。
刻印を施され、無力な少女と化したはずのセーラージュピターが、以前にも増して迫力を帯びていることに疑問を感じる暇もなかった。
まことは、カラベラスが飛び出してきた部屋に目を向けた。
「ブ、ヒヒ………」
鼻をひくつかせながら彼女は呟く。
「そうか、この部屋にいるんだな?ぶひ、ひひひ」
その瞳には狂気が宿っていた。セーラー戦士ではなく、崇高なる使命を抱いた暗殺者の顔である。
何の罪もない赤子を殺す事に、罪悪感がないわけではない。だが、汚れてしまった自分がやらねば、誰がやるというのだ。
ルベウスの子供を産んでしまえば、レイは仲間の元には戻れない。どんなに罵られようと、人殺しと言われようと、これはレイの将来のためなのだ。
扉に手をかけようとするまことの腕を、カラベラスが掴んだ。
「や、やめなさい!マーズは妊娠中なのよ!」
何が正しい事なのか。
誰が敵で、誰が味方なのか。
誰でもあり、また誰でもない。真実は自分の中にしかない。
「うるさい!!」
まことの怪力は生きていた。
腕を振ると、赤ん坊を庇ったカラベラスの身体は、壁に叩きつけられた。
鼻息を荒くしたまま、まことは扉を開け、そこで見た光景に思わず息を呑んだ。
レイは、寝台の上でうずくまっていた。
手足は鞭で寝台に固定され、まるで大便でもするような格好で、拳を握り、顔を真っ赤にしてうんうん唸っている。
想像していたのとはあまりにも違う光景に、まことは流産させに来たことも忘れて、ぽかんと口を開いて立ちすくんだ。
亜美たちとは違って栄養や水を与えられたせいか、レイの顔色はずいぶん良かった。それどころか激しく紅潮し、額には玉のような汗が浮かんでいる。
寝巻きの胸元を大きくはだけて、腰から下をまくり上げて剥き出しにし、今まさに何かをひり出さんとしている格好だった。
「み……見ないで、まこちゃ……」
レイは、まことの変わり果てた姿に気を配るゆとりはないらしい。大量の汗をかきながら、荒い息を吐いている。
呆然としていたまことだったが、レイの下半身にようやく意識が向かう。足の間から、何か白いものが飛び出しているのが見えた。
「見ないでってばあ!!」
ウンコ座りをしながら、レイが絶叫した。汗にまみれた黒髪が、彼女の腹部の苦痛を物語っている。
テレビなどで見る出産シーンとは、あまりにも違った。こんな体勢で子供など産めるのだろうか。
いや、そもそも産気づくのが早すぎる。ブラック・ムーン一族の子だから、人間の出産サイクルとは大きく違うのだろうか。
好奇心に駆られて、まことはレイの背後にまわりこんだ。その途端、胴体にしゅるりと何かが巻きつく。
「そこまでよ」
カラベラスが放った鞭が、まことを拘束していた。
魔力を秘めた鞭では、いかに怪力とは言えどうにもならない。セーラージュピターに変身しない限りは。
「出産が済むまで、そこで大人しくしていてもらうわ」
カラベラスは鞭を巧みに操ると、ジュピターの身体を宙に浮かせ、近くの木の柱に蓑虫のように吊るした。
その時になって、この部屋が和室に似せて作られていることにまことは気付いた。
レイの趣味に合わせたものであることは間違いない。彼女は、ここまで優遇されているのか。
「どう、して………レイちゃん、ばっかり……」
考えても仕方のないことが、口から恨み言となって零れる。誰にでも、他人を妬む気持ちくらいはある。
「あなたも妊娠すればいいのよ」
優しく残酷な口調で、カラベラスは告げた。手を伸ばし、まことの秘唇に埋まっている邪黒水晶を抜き取ってくれる。
「酷い事をされたのね。あたしも、人間の男に陵辱されたの」
それでも勇気を出してこの子を産んだのだと、彼女は妙に誇らしげに語った。
「………」
黙っているまことを、カラベラスは穏やかに諭した。
「その額の刻印……もう変身できないんでしょう。大人しくあたしたちの一族に下りなさい。そうすれば、大事にされるわ」
「大事に……」
呟いて、まことはレイに視線を移した。
同じように鞭で四肢を縛られて身動きが出来ず、出産を強制されているレイに。
「あれは、お前がやったのか……?」
「そうよ。腹を殴ろうとしたから、やむをえずにね。出産が終われば解くわよ」
レイにとっても、やはり望まぬ子供だったようだ。まことは安堵していた。
亜美の事を馬鹿には出来なかった。まこともほんの少しだが、ルベウスとレイは心を通わせていたのではないかと、疑ってしまったから。
(でも、このままじゃ……)
「カラベラスううううううっ!!」
喉から苦痛を絞り出すようにして、レイが叫んだ。力むたびに、足の間から白いものが出たり引っ込んだりする。
「殺せ、殺しなさいっっ!あんな男の子供を産むくらいなら、死んだ方がましよっっ!!」
カラベラスは赤子を抱きながら、そそくさと部屋の外に出て行った。出産は力仕事だから、助けを呼びに行ったらしい。
動けないまことは、動けないレイと向き合うしかなかった。
拘束され、黒髪を振り乱して喚くレイの姿が、自分が知っている毅然とした彼女とは別の生き物のように見える。
「まこちゃんっ、おねがいっ!!子供が産まれたらあたしに見せないで!すぐに絞め殺してっ!!」
非人道的なことを叫びながら、レイは涙を流した。
その間にも足の間から見える白いものは、次第にその露出を広げ始めている。最初は先端が時折覗く程度だったが、今はいつ零れ落ちてもおかしくないほどに。
人間の赤ん坊なら、もっと妊娠期間は長いし、第一こんな奇妙な形で生まれてはこない。あれは、どう見ても──卵だ。
連投規制があるので一旦これで切ります
支援
コピペミス
>>957の「プリンセス・セレニティその人なのだから。」から
>>958の「サフィール様」の間にこの文章が入ります↓
----------
「ねえ、サフィール様」
コーアンの腕が、サフィールのそれに優しく絡まる。
「お互いのためにも、このことはデマンド様には内緒にしておきましょう?」
我に返った彼は、自分の身体にしなだれかかるコーアンと、その様子を複雑な顔で見ているペッツに気付いた。
秘密を握られてしまった彼に、選択肢などあるはずがなかった。女神の誘惑に負けて下半身を晒した、それがサフィールの敗因だった。
「……では、ヴィーナスには何と言えば……」
情けない声が唇から漏れる。
他の四守護神には手を出さないと、はっきり言い切ったのだ。ヴィーナスはきっと烈火のごとく怒る。
あやかしの四姉妹の所為にしても、同じ事だ。どっちにしろ、部下の統率が取れていない愚かな男だと、彼女に軽蔑される。
(一体、俺は何をしている……?)
------------------
あなたが神か?
っき、きたっきたっ待ってて良かった!!!次スレもケテーイだな!
ネ申が来やがったか…
神乙です。
でも次スレはもう必要ないでしょ。
968 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 18:20:43 ID:Eq1y/G0V
お前が決めるなカス
多数決とればいいだろ
今スレで話が終わっちゃったら、次スレなしとか。
971 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 18:40:56 ID:Eq1y/G0V
何でわざわざ角が立つような言い方するんだ未成年者
次スレ立てて、ここは埋めたほうがいいかも。
で、次を待つ。
おれは別にどっちでもいいんだが
>>967が泣きながら「次スレ反対!」と書き込んでいるのを想像すると
無性に立てたくなる
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━!!
待っていて良かった。 神最高です。
なんで必要ないんだよw他職人降臨を待ちつつ
神も「書けてる分だけ」ってことだからまだまだ続くんだろう。
新スレが過疎で落ちたらそれまでってことで。
神、あとどのくらいで最後まで書けそう?
まだ話が続くんだね。
だったら次スレ立てたほうがよさそうだね。
後残りどれくらいなんだろ?
みんな、神にプレッシャーかけすぎだぞ!
979 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 09:09:21 ID:r7iw4SyS
サフィールわろたw
LV0 マーキュリー陵辱?どうせやるだけで終わりだろ?どうでもいいよ…
LV1 これはあんまり素人っぽくないな。ってかセーラー戦士はパンティ履いてなくてレオタードだろ
LV2 ヴィーナス編面白いな。あやかしの四姉妹もノーチェックだったけど結構いいかも。
LV3 ルベウスって神じゃね?理想のシチュエーションって感じ・・・
LV4 ジュピターのアナルかわいいな。ペッツとかカラベラスとかコーアンとかセーラーVちゃんもいい・・・
LV5 エスメロードって別に若くないのにボディコン気取っててうぜぇ。エスメロード死ね!
LV6 エスメロード結婚してくれ!
LV7 やべぇエスメロード最高!エスメロードとフェラチオさえあれば生きていける!
LV8 エスメロードと結婚した!俺はエスメロードと結婚したぞ!!
LV9 やっぱサフィールは最高だわ ←今ここ
MAX デマンド様とちゅっちゅしたいよぉ〜
よく分からないけど最終回は読んだあとはデマンド様とちゅっちゅしたくなる事はわかった。
LV8 エスメロードと結婚した!俺はエスメロードと結婚したぞ!!
今ここかな。健気な女で萌えだ。
985 :
名無しさん@ピンキー: