グローランサーエロパロスレッド3

このエントリーをはてなブックマークに追加
417名無しさん@ピンキー:2007/03/01(木) 00:25:29 ID:MGH+KldY
俺、純愛系はそれ程興奮しないのにこれはとても良かった。
少しずつでいいから書き続けて欲しいよ。
もし、よそでも何か書いてるなら教えて!
418414:2007/03/01(木) 20:50:47 ID:8nh71/fS
これが初エロ。
ただ勘違いでこのスレを汚した手前、落ちるまでけじめをつけてから、消えたいです。
しかしもう萌尽きて、本番なしの話をさかのぼった、小ネタくらいしか浮かばない。

・ジュリア性別バレでカーマインが悪戯。
・12回目休暇時、コムスプリングスで風呂ノゾキ。
・堰破壊直前の特使暗殺計画(カーマインsideのみ・終盤までエロなし)
419ティピちゃんの休日:2007/03/03(土) 12:00:13 ID:2cXB5OZ9
とある休日のカーマイン宅。
ルイセはミーシャの所に遊びに行き、カーマインとサンドラはそれぞれの部屋でお昼寝中。
そんな中、ティピはというと・・・・・。

「う〜ん、美味し〜。」

屋根の上でお日様の光を浴びながらくすねて来た蜂蜜を舐めていた。
誰にも邪魔されずに至福のときを過しているティピ。しかし・・・

「きゃあっ!」

気持ち良くなり眠くなってきたせいなのか、手を滑らしビンの中の蜂蜜が全身にかかってしまった。

「も〜、最悪。」
「にゃ〜ん。」

悪態をついていたティピ。すると1匹の猫が可愛らしい鳴き声をあげながら近づいてきた。
小型の種類なのか成獣に成りかけらしいのにティピより少し大きいくらいのサイズしかなかった。
その猫はティピの直ぐ近くに来ると匂いを嗅ぎ、顔を舐め始めた。

「ちょっ・・・ちょっと!」

行き成り顔を舐められ抗議の声を上げるティピ。
しかし猫は舐めるのを止めず、段々と下の方へと舌を移動させていった。そして・・・

「ああんっ!、駄目ぇ。」

突如として甘い声で喘ぐティピ。
猫の舌が彼女の股間に到達していたからである。しかも半ズボンの隙間から器用に割れ目を直接である。

「ね・・猫さん、ちょっと辞めてよ・・・ねえ・・はうぅぅんっ。」

必死で猫に止める様に訴えるティピだが猫の舌は止まらない。しかも股間から生じる快楽のせいでその声も喘ぐ割合が高くなっていた。
そんなティピに対して猫も(股間を)舐める度に気持ち良さそうに喘ぐティピを見て興奮していたのか舌の速度を早くする。

「ああ・・・気持ちいいよぉ、もっと舐めてぇ。」

ついに自分から舐めるように求め始めたティピ。猫もそれを感じ取ったのか更に積極的になる。

「ああっ!猫さん、私もう駄目ぇ!イク・・イっちゃうよぉ!ふああああ〜。」

ついに限界が来たのか甲高い声で喘ぎ、絶頂に達するティピ。
猫はぐったりとしたティピを労わるかの様にその顔を舐めていた。
420ティピちゃんの休日:2007/03/03(土) 12:49:20 ID:2cXB5OZ9
「う〜んっ」

暫らくして落ち着いたのか、身体を起こすティピ。

「ふふふ。ありがと猫さん、気持ち良かったわ・・・チュッ!」

未だ快楽の余韻が残っているティピは猫に礼を言うとその顔にキスをした。

「にゃあっ!にゃあにゃあっ。」

だがキスをされたとたんに猫は少し激しく鳴き始めた。

「何かしら・・・ってちょっと!」

その原因を探ろうと猫を見詰めていたティピは股間の生殖器・・・ペニスがパンパンに勃起しているのを発見した。

「私と・・・・交尾したいの?」

一応性に関する知識を持っていたティピは状況から猫が自分を交尾の相手とした事を察知した。

「にゃあっ!。」

ティピの言葉に肯定するかの様に首を縦に振り鳴く猫。
少し考えた後、ティピは半ズボンを脱ぎ割れ目を露出させると四つん這いになた。

「良いわよ、来て。」

普段なら絶対にやらない行為なのだが今の彼女は快楽とそれを与えてくれた猫への愛おしさで頭がいっぱいだった。
猫は嬉しそうな表情をすると四つん這いのティピの上に被さってその割れ目にペニスを挿入した。

ずにゅっ!にゅぷにゅぷにゅぷっ!

「ああ〜!猫さんのおがちんちんが胎内に入ってきたよぉ・・ひぃっ!気持ち良い。」

猫のペニスに貫かれ激しく喘ぐティピ。彼女に処女膜は無かったようでこれが初体験にも関らず快楽だけを感じる事ができていた。
そして普段はマスターであるサンドラと意識が繋がっているのだが昼寝中だったのでこの痴態が発覚せずに済んでいた。

「にゃあ!ふにゃあっ。」
「気持ち良いいっ!もっと突いてぇ・・私を妊娠させてぇ!」

まるで妊娠を望むかのように猫との交尾にのめり込むティピ。今、彼女は正に雌と化していた。

「にゃにゃっ!」
「出すの?なら私の胎内に注いでぇ!ああ・・・もうっ。」

猫が射精しそうなのを感じ取ったティピは腰を振りながら胎内に出すように叫ぶ。そして・・・

「にゃあ〜〜っ」

どくどくどくどくどくっ!

「んんっ・・猫さんのぉ・・精液が私の胎内に入ってくるよぉ、もう・・イクぅぅぅぅっ!」

猫はティピの身体をがっしりと掴み、確実に孕ませるとばかりに彼女の胎内に精液を放つ。
その感覚にティピは再び絶頂を迎えて行った。

こうしてティピの休日は過ぎていった・・・・・。
421ティピちゃんの休日:2007/03/03(土) 12:58:18 ID:2cXB5OZ9





後日、その猫はサンドラやルイセに気に入られペットとして晴れてフォルスマイヤー家の一員となった。
そのお陰でティピはほぼ毎日猫と一緒に過せるようになった。
そして妊娠する事は無かったがお互いの絆を確かめ合うようにティピは猫と交尾をするのを止めなかった。
仲良く過すティピと猫。その様子はまるで番いの様であった。



おわり。
422名無しさん@ピンキー:2007/03/07(水) 22:57:01 ID:Lr74+Sxx
フレアとルイセの男漁り投下待ちな俺。
423見つめられて 1 :2007/03/09(金) 18:23:50 ID:iiDzNJZX
十二回目の休暇の二日目に、コムスプリングスをカーマインは選んだ。
ヴェンツェルへ秘石制御装置を使うかどうかの選択を、ローランディアの王が渋ったためだ。
こんなことをしている間にも、彼の体調は悪くなってきているというのに。
苛立ちを洗い流そうと、私は初めて公衆浴場へと足を向けた。

---

「俺はもうあがるが、無理はするなよ。」
夕刻、俺は公衆浴場の男風呂に向かう。
もともと入る気はなかったが、ジュリアがこちらに向かったと聞かされてしまえば、いらぬ期待がもたげる。
入れ違いのウォレスに苦笑されながら、温まるよりも先に、俺はふらふらと例の洞窟へと歩き出す。
暗い闇のなか、手探りで一筋の光を目指す。
アリオストの時と違い、賑やかな女たちの話し声はまったく聞こえない。
水音がする。
願望と予感が入り混じった煩悩を抱きながら、以前覗き損ねた女湯に続く小さな穴に目を当てた。
白金に近い髪を結い上げて、広い女湯でひとりジュリアが入浴していた。
やや薄暗いなりはじめているが、まだ明りが燈らない時間。
浅い白い石底は日中とは違い、沸き立つグローシュ光を反射して、見事な女体を浮かびあがらせている。
うなじのおくれ毛を、うっとおしそうにジュリアが整えるたびに、タオルからもれた上向きの豊かな乳房が湯より露出する。
俺は食い入るように、その湯気に見え隠れする光景を見つめた。
424見つめられて 2:2007/03/09(金) 18:25:35 ID:iiDzNJZX
---

この気配は……!
私は息を呑む。
男湯との間を隔てる岩山の一角から彼の気配を感じとったのだ。
まさか、あのカーマインが……覗きを?

私は何を考えているのだろう。
もし彼じゃなかったら、いや、そこに気配がするのは単なる気のせいだったら。
そう思いながらも、私は前にたらしていたタオルをはがすと、そっと側の手すりに置いた。
彼に……もっとよく見えるようにと、さりげなくその気配のする方向に、私の体を向けてみる。
乳房をそっと見せつけるように、両手で寄せてはお湯より持ちあげてみた。

「ん……。」
ちょっと恥ずかしかったけど、あのグランシルの夜の彼の行為を思い出して、乳房を揉んでみる。
彼に触れて欲しい。また抱いて……欲しいと、体がうずきだす。
下半身に指先を伸ばせば、恥部は濡れていた。
彼を思い浮かべるだけで、私の体は炎に包まれているかのように熱くなる。
あの夜の痛みは次の週には消えていたけれど、この体に植えつけられた欲情は、深く根をはり蝕み続けている。

ちりりと与えられたあの刺激を求めて、ぼんやりと流されるまま、乳首を弄り続ける。
だけど、これは彼にしてもらった快楽とは程遠すぎる虚しい行為。
途中で意識を失ってしまったけれど、あの感覚がいわゆる絶頂というものなのだろう。
どうしようもない気分になり、乳房からそらすと、か細い滝が目に映った。
寝転がりながら、体のつぼを刺激するために設けられているもの。
私はその滝に行く。

「あ……んん。」
思わず声をあげる。
流れ落ちる水が、心地よく恥部を叩きつけては刺激する。
あの夜カーマインにそうされたように、私は素直に足を開いて、滝に向かって尻を突き出してより快楽を求める。
容赦なく恥部をえぐり続ける水圧に、次第に理性が麻痺してゆく。

「う……く、あ、んっ。」
彼に抱かれたい。
またあの逞しい腕に、優しい吐息に包まれたい。
熱い唇を這わせて、荒々しくその舌でこの体を舐め回して、私を蕩けさせて欲しい。
彼のモノで私の体を内側から、女の性の扉を撃ち破って欲しい。

パーティに参加を促されて期待していたものの、彼と二人きりになるチャンスは巡って来なかった。
カーマインは誰かといつも一緒にいて……違う、彼は話しかけづらい雰囲気を漂わせていた。
明らかに避けていた。私はやはり彼の目にはかなわなかったのだろうか。
初めての女は扱いにくい――
後でバーンシュタイン王城で偶然、下士官兵たちの猥談を耳にして、背筋が凍ったのを覚えている。
男ならやはり喜ばせてくれる、手管を覚えた熟女を欲しがるもの――彼もその類だったのだろうか。

「あああ……!」
そのまま頂点を迎えて、私はうなだれた。
同じ絶頂でもなんて違い。惨めさだけが私を覆う。
馬鹿みたいだ。

こんな浅ましい事をしているのを見て、カーマインはどう思っただろう。
後で合流しても、彼はきっとこの話題には触れない。
何事もなかったかのように皆の点呼をすませて、ローザリアに帰るように指示するだけだろう。
私は落胆の溜め息をつくと、浴場を後にした。
425見つめられて 3:2007/03/09(金) 18:26:46 ID:iiDzNJZX
---

これは……儲けモノ……なのか?
打たせ湯で、激しく身を震わせて悶えるジュリアの裸体が、俺の脳裏に生々しく焼きついている。
解けた腰元まである髪が、呪縛の様にその体にまとわりついて、彼女が俺に差し出された生贄のようにすら見えた。
彼女の艶めき上気した肌を、蛍火のように妖しく照らしては消えていった、グローシュが見せた幻。
ジュリアは多分俺に気づいていた。
俺のほうを意識していたのが、はっきりと分かる姿勢だったからだ。
この壁を魔法で壊せば、俺のモノは彼女を望みのままに貪ることは出来ただろう。

覗くべきじゃなかった。
これから先、俺はいつまで生き、この葛藤に耐え続けねばならないのか。
切り捨てられない男の本能を、未練たらしく壁に向かってぶちまけた。

fin
426特使暗殺計画 カーマインside 1:2007/03/11(日) 02:07:39 ID:LCzyj3bD
バーンシュタイン王都へ向かう公用馬車の中で、肩肘をついては溜め息をつく。
ついて事態が好転するものなら、いくらでもついてみせる。
それくらい厳しい。

先々月、アルカディウス王が享年四十一で世を去った。
即位したのはその甥にあたるコーネリウス。
この王が好戦的な思想家で、現在軍備拡張を主張して文官と激しいやり取りをしている。
この動きに隣国であり、過去幾度もこのローランディア王国と戦火を交えてきたバーンシュタイン王国も、警戒を強めはじめている。
今回招かれているのは、ローランディア側にはまったく無関係に等しい表彰式典。
国代表の役目は、我が国にも多大な貢献をしてきたという彼らに労いの言葉を述べるだけ。
それをあえて受けるよう強くあちらが要請してきたのは、両国間の疑念を払ってほしい、というエリオットの必死の努力ゆえだ。

「ようこそ、バーンシュタイン城へ。お待ちしておりました。」
「お招きに預かり感謝する。早速エリオット陛下にご挨拶をしたい。」
「は! どうぞこちらです。」
城門で出迎えてくれたジュリアが、いつもと違ってドレスを着ていないのも当然か。
警護を指揮するIK(インペリアルナイト)が、この状況で浮ついた服で現れたら、これ幸いに、
普段から彼女をよく思わない連中が攻め立てるだろう。
途中で俺に嬉しそうに駆け寄ってきたエリオットに苦笑する。
オスカーも合流し、式典会場の中庭へ向かう。

「ようこそ、バーンシュタインへ。お元気でしたか。貴方が代表と聞いてほっとしていましたよ。」
「俺は参ってる。」
「ご免なさい。僕も正直どうしたらいいか悩んでいて、貴方に相談できると思ったら嬉しかったんです。
勝手にはしゃいじゃって……貴方の気持ちも考えずにすみません。」
「わかってる、エリオット。俺もできる限りのことはする。」
「わあ、やっぱり頼もしいですね。貴方に会うと元気が出ます。僕も頑張らなきゃ。」
さすがに王の頭を撫でるわけにはいかないので、肩を叩いて励ましてやる。
エリオットも相変わらず苦労が絶えない宮廷生活を送っているようだ。
「貴方たちの前ではただのエリオットでいたいから」か……
はたから見ると、騎士風情が偉そうにと言われそうだが、それでエリオットが満足するなら我慢してやるか。

「僕も君に期待しているんだよ。お偉方をそのやけっぱちな似非面で、懐柔してもらいたいね。」
「オスカー、俺が形式ばった会食は苦手だって知ってるよな?」
「もちろん君だから選んだのさ。まだご婦人方がいない分気楽なはずだよ。違うかい?」
427特使暗殺計画 カーマインside 2:2007/03/11(日) 02:12:10 ID:LCzyj3bD
会場に着くと、俺が最後の客だったらしく、すぐにエリオットが壇上に立ち簡単な挨拶を述べた後式典が始まる。
ジュリアが俺の背後に着いた。
警備側である彼女に、必要以上に話しかけられないのが辛い。

それも一時間足らずで終了し、いよいよ今回の本題。
すなわちコーネリウス王の真意について知りたがっている連中、この国の重鎮たちに取り囲まれた。
すっかり板についた愛想笑いを浮かべた俺と、彼らとの腹を探りあいが始まる。
特に俺と同じ年というマクシミリアン・シュナイダーが熱心に話しかけてくる。彼の戦争嫌いはよく聞いている。

「……しかし、新しい王の本意はどこにあられるのでしょう。」
「我が王は先の大戦で失われた兵数を補充するよう命じたにすぎない。二年前に戻るだけのこと。
我々のゆるぎない友好の前に、障害などあろうはずもない。そう思われないか、シュナイダー大臣殿」
「カーマイン殿のおっしゃるとおり。しかし、この先はわかりません。
果たしてこの国の先の王、今や名を口にするのも憚られるあのお方のように、愚かな過ちの繰り返しは避けられるのでしょうか。」
「過去二十年間に起きた戦争のうち、我が国から一度たりともしかけたことはない。
この事実、よもや貴公が知らぬわけがあるまい。それとも我が国にそのような意思があったほうが、良いとでもお思いか?」
「とんでもない。グローランサーがここまでおっしゃられるのを疑うことなどと。ただ……。」
馬鹿げている。
一国の代表という立場など形式だけだ。
俺が何の決定権を持っているとでも思っているのか。
前王アルカディウスのお気に入りの騎士だった。それだけにすぎない。

コーネリウス王について俺はほとんど知らない。
次期王の人柄を知らなかったとは、国に仕える者なら恥じるべきだろうが、それくらい想定外の人物だったと言うことだ。
継承権順位や国民人気を無視して、一部の貴族や役人どもが勢力争いを繰り広げながら推し進められた王選定会議。
この国には特例で女王も認められているはずなのに、直系が蹴り飛ばされ、先々王の庶子の、これまた庶子が王位につく。
国民乖離も甚だしいのはどこの国でも同じか。

アルカディウス王が、なぜか後継者を選んでいなかったことも災いした。
本当に指名していなかったのか、と言われれば信じるしかない。
一人娘のレティシア姫が、せめて優秀な婿をとっていれば、もう少し上手く立ち回れたのでは……と思いかけて苦笑した。
俺もその候補だったよな、と今頃思い出す。
428特使暗殺計画 カーマインside 3:2007/03/11(日) 02:14:16 ID:LCzyj3bD
注文していた紅茶を給仕より差し出され、俺はそれを口にする。
舌に強烈な焼きつく痛みが走った。
給仕の動きや表情におかしな点は見られない。
俺はハンカチをさりげなく口にして、周囲の様子を伺った。
始終見られているのはいつものことだが、そのなかに一人俺の動向を凝視している男が目にはいる。
脇に控えていたジュリアに目配せする。

「どうされましたか?」
「来る途中で馬車酔いをしてしまったようだ。」
「わかりました。こちらへ。」
「では休憩室まで誘導いたします。」
「いや、私一人で十分だ。お前たちは引き続き警護を怠るな。」
会場を抜けしばらく歩いたところで我慢出来なくなり、草陰に入ると激しく吐いた。
かつての戦いで嫌というほど毒を食らった身だ。
顔色ひとつ変えずに我慢できる特技はありがたかった。

「マイロード!?」
「静かに。」
ジュリアは機転が利く。
意味を悟り、その鋭い瞳は追いかけてきた男を映す。

「毒を……盛られた。あいつだ。行け。」
「は、ですがマイロードの御身が……。」
「任務を優先させるんだ。」
躊躇うジュリアをせかす。
彼女は俺に毒消しのファインを唱えたあと、奴を探してこの場を後にする。
俺もキュアを唱えて口の痛みを癒す。
まだふらつく体を引きずって、通りすがりの兵士を捕まえ、休憩室に案内をさせた。
体を緑の長椅子に預けて、しばらく放心していると、ジュリアが戻ってきた。

「大丈夫ですか。」
「ああ、ジュリアのファインのおかげだ。」
俺の側にかしずくと、切なく雫を溜めこんた悲しい瞳を向けてくる。
そんな表情で自分を攻めるなジュリア。
俺は大丈夫だからと、その柔らかいプラチナブロンドの髪を撫でてやる。

「申し訳ございません。マイロード。私がついておりながら、このような失態。いかなる処罰もお受けいたします。」
「……ではこれを、調べてくれ。」
ジュリアが警備についていた以上、彼女に非が生まれてしまうのは仕方ない。
責任感旺盛な彼女を不問にすれば、逆に追い詰めてしまう。
俺は先程持ってきたカップを彼女に差し出した。
429特使暗殺計画 カーマインside 4:2007/03/11(日) 02:20:22 ID:LCzyj3bD
「貴方の警護を厳重にさせていただきます。」
俺たちは互いに顔を合わせる。
俺たちの関係は一部の奴らしか知らない。
オスカーにはすぐばれた。
エリオットにも俺から事情は一応話してある。
ジュリアの仕事優先を第一にしているため、という理由で交際は表ざたにできないと――

異国の騎士との交流があるだけでも波紋を呼びやすい。
まして初の女IKだ。
まもなく新設されると聞いている、女のみの騎士団の団長にも推薦されている。
働き盛りの彼女の足を引っ張ることだけはさけてやりたい。
それに俺は……付き合っているのかと問われれば、違うと答えるしかない身だ。
本当の恋人でないのが辛い。

部屋が替えられる。
いつもの貴賓室よりさらに奥、王が寝室に、より近い棟の一室。
出入口に、各階の廊下に、衛兵が十数メートル置きに配置されている。
これでは内部から死角を見つけることなく出入りは無理そうだ。
さらに俺があてがわれた部屋の入り口の左右に新たに兵士が加わり、窓を見下ろせば五名の見張りが見えた。

先に部屋に入って点検をしていたジュリアが、その作業を続けながら、俺に警備体制の説明をはじめる。
それを遮って、強引に抱き寄せた。
先程の出迎えの時とは違い、ほんのり薄紅色の口紅が添えられているのを認め、それを指先で愉しむ。

「先程怪我をされたばかりでは。」
「もう直っている。」
「ん……っ。」
口直しがしたかった。

身も蓋もない言い方をすれば、俺はこの国にジュリアを抱きに来ている。
彼女の体目当てと言ってもいい。
ティピに言ったら即蹴り殺されそうだが、男なんてそんなもんだと思う。
現にローランディア側から特使として派遣されるようになったこの半年あまりの間に、ジュリアとは相当な数肌を重ねた。
コムスプリングスでの逢瀬で、ジュリアから忠誠の報酬という理由を引き出せた俺は、何かにつけて彼女を抱くことができた。
彼女もそれを拒まない。
唇を重ねあっているうちに、愛する女とする快楽を覚えてしまった俺の体が、忘れられないその味を求めて沸き勃ち始める。

扉を叩く音がした。

「ダグラス将軍。今夜の警備体制の確認をお願いします。」
「わかった。すぐ行く!」
やはり物足りない。
面倒な公務や立場に邪魔されて、一度も愉しめずに帰るなんて真っ平ごめんだ。




続く
430名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 16:38:23 ID:dwaoiUH9
wktk
431名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 17:23:54 ID:b6KmlB4T
「ああっ、お兄ちゃん…っ、好き、大好きだよぉっ」
フォルスマイヤー邸、二階にある一室。
淫乱な牝の声が響き、室内に反響していた。
「ルイセ、少し黙ったらどうだ?俺は逃げないから」
「んんっ、だってぇ…お兄ちゃんへの想い、口にしたいんだもんっ…
あはぁ、い…いい…っ」
指を秘所に突き入れ、自慰をする少女に、其れを見詰める青年。
少女の方がルイセ、青年の方がカーマインという。
兄と妹ではあるが、実際には血は繋がってない。
カーマインは幼い頃に、この家の主、そしてルイセの実母で
あるサンドラに拾われ、この家の子となり今まで育てられてきたのだ。
「あ、はぁんっ、見て…私のここ、こんなに広がるようになっちゃったんだよ」
厭らしい蜜を零す穴を指で、くぱあっと広げてカーマインに見せつける。
指三本は楽に咥え込めるだろうか、ピンク色の肉壁が覗く。
愛液がとぷとぷと流れ、カーペットの生地を汚していった。
「やらしいな、立派だよ、お前は」
義理の妹の痴態をにやりと口端を吊り上げながら、見下ろす。
「ふあっ、は…あ、ああッ。もっと褒めてぇ、ご褒美頂戴ぃっ」
ひくっひくっと蠢く膣壁、ごりごりと擦りつける物が欲しい。
自分の指だけでは物足りない。ルイセは桃色の髪を振り乱し、
体をくねらせ、欲望を口に乗せた。
「前言撤回、かな。強請る時の言い方は教えた筈だ」
ベッドの淵に腰を落ち着けながら、冷ややかな目線をくれてやる。
「あぅ、お…お兄ちゃんのご慈悲を下さい…ませ」
金と銀の瞳に見つめられ、自分の失態に気付き慌てて言い直す。
「取り敢えず、合格点…でもそれじゃこれぐらいだな」
すらりとした足を伸ばし、足の爪先で秘所をぐっと押し付けた。
ぐりぐりぐり、と足の指で肉芽や膣の入り口を苛める。
「あ、あああっ、や、やああああっ…そんなのじゃ嫌ぁっ!!
お兄ちゃんっ、お兄ちゃんを入れて欲しいのっ!!」
願う、秘所を貫く熱い肉棒を。入れて、滅茶苦茶にして欲しい。



「こんな話はどうだろうか?」
「……お前の妄想力には毎度驚かされる……」
「はは、まあいいだろ?ティピが居ない今がチャンスなんだ」
「ああ、お前の周りを飛び回っていた妖精か……」
「いや、正確にはホムンクルスなんだけどな。
お目付け役だからって、何かと煩いんだ」
「そうか……」
繰り広げられる猥談はとあるアパートの中の一室で。
元インペリアルナイトのアーネストと光の救世主のカーマイン。
元居た世界の過去へと仲間何人かと共に召還され、そこで生活をしている。
最初は幾分か戸惑ったが、慣れれば割と快適に過ごせるようになり、
男二人、集まれば自然とこういう話しになってくるもの。
之に偶に、ゼノスやヒューイ、ウェイン等も参加する。
その時は収集がつかなくなり、翌日には皆が皆、睡眠不足を訴え、
女性陣の頭には軒並みハテナマークが浮かぶんだとかなんだとか。
432バルディア王妃のキケンな遊び〜:2007/03/15(木) 19:50:30 ID:zQcscA8F
 *バルディア王妃のアブナイ遊び〜の続編です。*


相変わらず大陸統一の為、軍事行動を続けるレディン率いるバルディア軍。
現在はとある国に侵攻中であった。その国の王は野心家でありダルシスやボ−ゼルとの戦争終結直後から関係が悪化していて国境ギリギリでの演習など何かと挑発をしていた。
開戦のきっかけもバルディアの勢力拡大に嫉妬した王が自国の勢力拡大を狙って隣接する小国を攻め、その国がバルディアに援軍を求めたのだった。



某国王城〜王の間

「陛下、バルディア軍が最終防衛ラインに向けて進軍中とのことです。」

「拙いな、其処で逆転できれば良いが・・・。」

顔を青くしながら報告する大臣の言葉を聞きながら某国国王は頭の中で考えていた。
このままでは滅亡は免れないかも知れない。如何にかして血統を残しつつバルディアに一泡吹かせるかを。

「やはりこの方法しかないか。王子達を呼べ、それと使節派遣の準備をせよ。」

何か方法を思いついたのか、王は次々と指示を出し始めた。
433バルディア王妃のキケンな遊び〜:2007/03/15(木) 20:11:16 ID:zQcscA8F
その日、バルディア王妃クリスはご機嫌だった。
数日前、某国から王子や王家に連なる貴族を初めとする外交使節が訪れていて交渉の為に夫レディンが久々に戻っていたからである。
そして昨夜は夫婦の営みを思う存分愉しんでいたのであった。
交渉の結果、一時停戦される事になりレディンは残務処理の為に再び停戦ラインに赴き、使節団は交渉の窓口として王都に留まる事になった。
その間の交渉は国王レディンに変わって王妃であるクリスが担当する事になった。


つづく。
434補足:2007/03/15(木) 20:14:22 ID:zQcscA8F
短い書き込みで申し訳ありません。書いてるネタに詰まりました。
一応バルディア王妃のアブナイ遊び〜の続編です。
次回の書き込みの時は纏めて投下するつもりです。
時間はかかるかも知れませんがどうかよろしくお願いします。
435名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 20:24:45 ID:d3HH4CIb
うおおぅ。続き期待……
しかし、俺これから約50KBを落とそうと考えていたんだが……よろしければ、新スレは駄目かな?>>434
436名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 01:15:23 ID:pwxm6zbT
職人様方、移動よろしくお願いします。

新スレ http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1173975118/
437特使暗殺計画 カーマインside 5:2007/03/16(金) 01:20:17 ID:pwxm6zbT
俺はジュリアが戻ると、エリオットにもう一度面会を頼んだ。

「提案がある。」
「何でしょう。」
「俺が外に出て、犯人をおびき出す。」
「危険です! 今回は貴方はコーネリウス王の代理として来ているのですよ?
万一貴方の身に何かあれば国際問題になります。既に捕まえた人は何者かに殺されてます。」
「だからこそ奴らは仕掛けてくる。背後の敵を叩かなければ、次はお前を狙うかもしれない。」
「でも……。」
「俺を誰だと思ってるんだ?」
俺は悪運が強いだけが取り柄の男だ。

午後の日差しのなか、城の正門から堂々と外に出る。
特使の服ではなく、ジュリアが用意してくれた普段着に近いもの。
もちろんジャケットは半脱ぎに限る。
顔は隠さない。
身内以外の黄色い声は苦手だが、笑みを返してさっさと歩き出す。
まずは大通りで人ごみに紛れ、ついて来る奴を確認しながらふるい落とす。
さらに下町に行って撒く。
うざい女たちの追っかけが一番厄介だ。
新たに加わる者ふるい落とされる者、二時間程たっぷり王都内を引っ張りまわしてやった。 

そろそろいいかと考え、王都東の階段を全力で駆け上がり、つけている者を一旦撒く。
路地裏で待ち構えていたジュリアの部下から、用意されていた薄茶けた旅人のマントを受け取る。
それを頭からかぶり、また通りに出た。
ここまでで城からつけてきた奴らは三人。
一人はケバイ女……
これはもういい。これだけ執念深いなら、いい男の一人くらい捕まると保障する。
次の男。
これも以前、とある貴族の令嬢に言い寄られたときに見た。下男あたりか。
そしてもう一人の男。

明らかに二人と違う機敏な動作。
傭兵か、どこかに所属する兵士の類か。
さらに歩を進めると、俺を違えることなくついて来るのはそいつだけではないと気がついた。
かなり遠くから輪を描くように少なくとも六人はいる。
連携を取りながら、俺が人気のない場所に行くのを待っているようだ。
これは少々手がかかるかもしれない。

細い裏通りを登りかけたとき、正面の方角に弓による殺気を感じた。
いよいよ始める気か。
身構えたとき、俺の後ろを歩いていた子供がこけたらしい音がした。
刺客の位置が悪い。俺が避ければ延長線上のこの子にあたる可能性があった。
438特使暗殺計画 カーマインside 6:2007/03/16(金) 01:21:25 ID:pwxm6zbT
「大丈夫か。」
「……。」
俺は少年を庇える位置まで引き返し、わざと後ろを向けてみた。
刺客の気配を探る。
身なりは貧しく、すった跡や泥がついている少年だ。
具合を診る。
捻りどころが悪く、捻挫をしてしまっているようだ。骨折はしていない。
魔法を詠唱する。
詠唱防御は未修得だが、俺も唱えるのは早くなったし、遠距離攻撃ならこの少年ごと避けられる自信はあった。
右手より溢れ出した光が陣を描いては、少年を上空から包みこんで傷を癒していく。

「兄ちゃん。魔法使い?」
「専門じゃないが使える。」
「魔法教えて!」
「何故?」
「俺を虐める奴らを退治してやるんだ。戦争で俺の村の皆が死んじゃってさ。そいつらにも復讐する。」
復讐――俺は首を振る。
あの戦乱のなかで、耳が腐る程聞かされてきた恨みの言葉。
「うちの子を……うちの子を返しておくれよ! 聞いておくれよ。この城の馬鹿な騎士が……。」
今でもこびりついているローランディア王城前で門番に縋っていたあの婦人の声。
大切な人たちを守るという名目で、俺はどれだけの人を泣かせ苦しめ屠ってきたか。
もしかしたら、この少年にとって俺がその復讐の相手かもしれない。

覚悟は出来ている。
だが、怒りのままに力を振ったその先に待つ地獄をこの少年はまだ知らない。
失望した少年は俺に罵声を浴びせて走り去ってしまった。
弓をつがえていたはずの刺客の気配も、いつの間にか途絶えていた。

再び連中との攻防が始まる。
遠方よりの魔法攻撃がたいして効かないと見るや、物理攻撃に切り替えてきた。
俺はなるべく人がいない方向へ、奴らが望む方向へ、その陣地へと足を踏み入れていく。
王都南の下町に入ると、地の利もあるのか、彼らの動きは次第に先を読むようになり、行き止まりに追い込まれる。
俺は周囲に視線をめぐらすが、誰の気配もなかった。
背後から、俺を追い掛け回してきた男たちが一斉に襲ってくる。
二、三回強めに蹴りを食らわせて、全員気絶させる。

シャドーナイト程ではないにしても意外に強情な奴らで、一度自白に失敗し一人自害された。
それが訓練による忠誠心の表れだったのか、傭兵に時折見られる独特の自尊心だったのかまでは分からない。
だが奴らは所詮手先だ。
黒幕を吐かせないことには次に進めない。
439特使暗殺計画 カーマインside 7:2007/03/16(金) 01:23:46 ID:pwxm6zbT
俺はズボンのポケットを探り、カード型の装置を取り出す。
『カーマインレーダー』などという、ふざけた名前のこのアイテムは、アリオストが開発したものだ。
俺の波動、時空干渉能力で生じる歪みを拾い上げ、数値化し表示する。
外出が絶えない俺の居場所を突き止めるためと、はた迷惑なことにティピが提案し、皆が一斉に賛同。
かつて戦った仲間たちがそれぞれ手にしている。
半径一キロ。レーダー同士も範囲に入れば互いに反応する。
通信は出来ない。
俺も時空干渉能力を押さえる基準に、精神力の鍛錬に使えると、一応持っている。
これがいずれ鎧兵を探り当てるための魔力波レーダーの基になるのは、それ程遠くない未来の話だ。

今回はこれをジュリアとのつなぎに使ってみた。
作戦ではまずは俺が敵をおびき寄せ、網にかかり次第、ジュリアが密かに援護にくるはずだった。
起動させるが、城を出たときと違い、反応がない。
想定外の問題でも発生しているのか。
彼女には複雑な責務や立場があるからそちらを優先している可能性が十分ある。

こういうときは単独行動が仇になる。
ティピがいてくれれば……いや無理をしたがる彼女だ。
寿命が縮めるような真似だけは、絶対にさせたりしないと決めている。
一年前の大戦以後、危険が伴うと分かっている任務を受けたときにはいつも彼女を巻き続けてきた。

こいつらのレベルを考えれば、ジュリアのことだから問題はないだろう。
俺を、互いを見失った場合は、必ず一度は王城に戻ると約束しているから、今頃あちらに向かっているはずだ。
かなわないと判断し、逃げ出そうとした一人の男を追って走り出す。
そうだ、このままねぐらに案内しろ。

「一人で来るとは、いい度胸だな。」
王都に隣接する寂れた地域に乗り込んだところで、お約束の雑魚どもが大量出現してきた。
どうやらここが奴らのアジトらしい。
無言でひょいと避けては蹴る。仕掛けてきた八人は選抜隊だったようだ。
野郎の尻を蹴り続けるのは不本意だが、奴らを挑発して表に全員引き出してから始末しようと考えた。
口々に悪態をつく奴らを冷ややかに見つめていると、ようやく奴らの垣根が割れて、野太い声が響いた。

「おい。次に足を出したらこの女ぶっ殺す。いいな? 逃げるのもなしだ。」

ジュリア!?
440特使暗殺計画 カーマインside 8:2007/03/16(金) 01:24:43 ID:pwxm6zbT
後ろ手に縛られた女が引き出されてきたのを見て息を呑む。
地味な衣装に派手な化粧と、おおよそ彼女らしくない下町の女。
だがどんな変装をしようとも、愛する女を見間違えたりしない。
一瞬で喉がからからに干あがる。

着衣の乱れはないか?
俺の知らない間に、彼女の身にいったい何が起こったんだ?
連中の頭らしい男に、後ろから抱き寄せられた状態で、こちらを見ている。
ありえないはずの事態に、俺は足元から崩れそうな恐怖に駆られる。
大丈夫だ、奴らは彼女の正体に気づいてはいない。
バーンシュタイン軍最高仕官であるIKが、自分たちの手中にあると知れば何をするか分からない。
悟られないように平常心を装う。

一人の男が俺に向け大鉈を振るった。
咄嗟につけていた指輪に意識を集中する。
金色の光が揺らめいて左手より片手剣が出現し、その攻撃をはじいた。

リングウェポン――
最近になって我が国にも情報がもたらされた新種の武器、いや古代の遺産というべきか。
誰にでも出せるわけでもなく種類も選べないため、我が国では骨董品の扱いになりそうだ。
俺も一応片手剣の類を出せる。
精神力を相当要するため、長時間出現させたままにしておくのは厳しいとわかった。
いずれ十分使いこなせるように実践の機会が欲しいと思っていた。

「手は禁じられていないよな。」
「この女の命が惜しくはないようだな?」
「……。」
俺は動いた。
両手剣を上段に構えたまま、動きを止めていた大男のわき腹をまずは掻っ捌き、
振り向きざまに、背後から迫っていた男の槍をかわしながら、剣を下段より振り上げる。
これはヒットしなかったが、よろけたところを袈裟斬りにする。
続いて連投されたナイフを身を沈めてやり過ごし、走りより一刀。
ついで後方に下がりかけていた弓使いに追いつくと、背後からその心を突き通す。
その足で、数メートル先で魔法を発動寸前だった魔術師の元へ向かうと二人続けて葬る。
隙をつこうと振るわれた鎖鉄球を飛びのいてかわし、懐に飛び込むとそのすねを蹴った。
怯んだところに止めをさす。
うめき声をあげて絶命し、俺側に崩れかかってきたその男を蹴り払うと、あたりを一瞥する。

そこへ苛烈な鞭裁きで全周囲攻撃を与え続けていたジュリアが、敵の間を縫って俺に近寄ると背中合わせに立つ。
連中はまだ俺たちを囲んではいるものの、動揺がありありと見えた。
ほんの数秒で一気に半減させられたのだ。今更自分たちと格が違うと自覚したんだろう。
今の俺たちなら、シャドーナイトクラスが何十人束になって襲って来ても負ける気はしない。
441特使暗殺計画 カーマインside 9:2007/03/16(金) 01:25:18 ID:pwxm6zbT
「さすが、ジュリア。」
「お褒めの言葉、このジュリア嬉しく思います。さあ、この者たちに正義の裁きを下してやりましょう!」
平然と俺の後ろに控え、鞭を構える変わらないジュリアに、安堵の溜め息を漏らす。
さっき彼女の意味深に、強く光を放つ金の瞳を見たときに、信じて判断した。
彼女を人質扱いはできない。
俺と同じ、仲間の足を引っ張るくらいなら躊躇うことなく死を選ぶ側の人間だ。

だが事故はいつでも起こりうる。
現に俺は不覚にも、彼女を蹂躙されかねない失態を犯した。
今背中に感じているぬくもりを、穢し消し去っていたかもしれないこいつらに、もう容赦する気など生まれなかった。
俺たちは先程の刺客だった弓の女一人を残して全滅させた。

「黒幕は誰だ?」
「……。言うわけないだろ。これでもこの仕事で食っているんだ。」
「頼む。女性に……無体な真似はしたくない。」
「……。」
「足を洗う気はないか。望めばローランディアでもバーンシュタインでも手配する。」
「……なんであんた、裏でもかこうって言うのかい?」
「傭兵以外の道もある。もう一度やり直してみないか。」
「馬鹿だよ。さっきだってあたしはあそこで殺る気だったんだよ!?」
「躊躇ったのを知っていた。」
彼女は観念した。

「あのなぁ。
坊ちゃんのお前と違って、俺たち孤児同然の奴らが、生きてゆく手段なんか選べる余裕あるわけねぇだろ!
俺はまあ、腕力があって、グランシルでも色んな奴らに目をかけてもらえていたから、カレンを養えたけどよ。」
ゼノスの言葉だ。
国からの支援も受けられず、すがる相手もおらず、居場所すらない。
そんな人間がなれる職業など限られている。
戦争や大乱のたびに、家を焼かれ、町を村を廃墟にされ、大切な家族を失って、路頭に迷う人々が溢れる。
「ブローニュ村でもたくさんの孤児を引き取ってきたけどね。焼け石に水だよ」とアリオストが嘆いていた。
俺も自分の領地を通じて支援を続けているが、果たしてどれだけの力になれているというのだろう。
あの少年も、戦火がなければ復讐など考えもせず、彼の村で豊かな一生を送れたかもしれない。

戦争を起こさせない。
それが俺が特使の道を選んだもう一つの理由だ。
442特使暗殺計画 カーマインside 10:2007/03/16(金) 01:26:13 ID:pwxm6zbT
女傭兵が自白したのはバーンシュタイン城下町北東のとある一角。
夕刻、取り囲んでいた屋敷の様子を確認したあと、ジュリアが眉をひそめてこちらを見る。
俺のほか、オスカー、それにエリオットも同行してきた。配置した部隊は突撃の合図を待っている。

「何もお前自らが乗り込まなくてもよいではないか!」
「確実に証拠を掴みたい。」
「僕も同意見だね。しらを切られる恐れがある。」
「この王都でこれ以上の悪事を働かせはしません。」
「陛下まで!」
「抜け駆けは許しません。僕も戦います。」
説得するだけ無駄な奴らと諦め、女傭兵に誘導されて俺たちは屋敷に堂々と正面から入る。
皆一応傭兵らしく変装を……
先程の反動か、ジュリアのスカートがやたら短すぎるのが大問題だ。
俺以外に軽々しく見せるな。

「これはどういうことだっ。私はこやつを殺せと命じたはずだ!」
「は……い。しかしこの男が死ぬ前にどうしても聞きたいことがあると。」
「聞きたいことだと!」
「昼食会で俺に毒を盛ったのは誰だ?」
小太りの男を見上げた。
男爵……か。
先祖の功績を寝床に、民を食いつぶすためだけに存在する害虫。
こんな下種のために、俺は愚かにもジュリアを危険な目に遭わせる作戦を取ってしまったのか。

「ははは。そんなことも見抜けぬとは、成り上がりの英雄気取りが。貴様を憎む者はわし以外にもいるということだ。」
「……。」
「わざわざこのわしに頼ってな。これでもわしの素晴らしさを理解し、敬服する者には寛大なのだよ。」
「名は?」
「言うと思うてか。馬鹿な奴よ。皆共やってしまえ!」
俺は奴に続く蒼の絨毯を敷いた階段をゆっくりと登る。
途中で襲ってくる手下どもは一刀に臥す。
奴は俺に最強魔法ソウルフォースを幾度も唱えたが、総合的に耐性の高い今の俺には大きなダメージにはならない。
醜い薄笑いを浮かべていた奴の表情が次第にこわばっていく。

弱い者にしか己の力を示せないお前らに、何の魅力や価値があると思っているんだ。
俺は作られた英雄の仮面を脱ぎ捨ている。
血塗られた剣をそいつに向け残虐な笑みを浮かべて見せた。
443特使暗殺計画 カーマインside 11:2007/03/16(金) 01:27:05 ID:pwxm6zbT
「ひぃぃ、や、やめろ。来るな、化け物め!」
そう俺は人間ではない。
化け物の端くれだ。
だから敵と見なした人間に容赦はしない。
振り回していたそのヴィトの杖をむしり取る。
逃げようとした奴を壁際に追い詰めると、それで両手足の骨を全部折ってやる。
悲鳴をあげて転げまわるそいつの丸々太った腹を思い切蹴り飛ばした。
奴はへどを振りまきながら階段を、大音響を立てつつ転げ落ちていった。
痙攣しているが息はあるようだ。
もう少し強めに蹴るべきだったか。
昼食会で吐かされた返礼としても、彼女を窮地に陥れてしまった憂さ晴らしとしても、まったくもって物足りない。
ジュリアが突入してきた兵士たちに、奴の捕縛を命じたところで諦めた。

「グローランサー様。どちらへ?」
「ダグラス将軍に伝言を。先に行っている。」
街の灯りから遠ざかる。
王都の東門を出て右手、脇道に反れて少し歩くと壊れた水車小屋がある。
側の小川に立ったまま星空を見上げていると、しばらくして背後に待っていた気配を感じた。

「マイロード! ……お探ししました。陛下や皆が心配しています。」
「ジュリア。俺は……。」
先程のジュリアが人質として引き出されてきたときを思い返す。
彼女は強い。
あのとき俺が剣を捨てる真似をすれば、彼女から失望の罵りと、激を飛ばされてしまったことだろう。
しかし、俺は……
臆病だ。

守られる側より守る側が合うし何倍も楽だ。
大切な人には安全な場所にいて欲しい。
危険を冒さないで欲しい。
何かあればすぐ駆けつけられるところにこの身を置きたい。

横に来た彼女の瞳を見つめる。
心はこんなに多弁なのに、口に出すのが苦手だ。
偽りの戯言は自分でも呆れる位言えるようになったのに、いざ本気の会話になると言葉が空回りする。
過去何度かジュリアと口論したときも墓穴を掘ってばかりいる。

「すぐ戻るようにか?」
「いえ、明日の正午までにと陛下のお言葉です。」
エリオットも気を利かせてくれるな。
何か言おうとして言えずに戸惑っているジュリアを優しく誘い抱き寄せた。

「ジュリア。今日は頑張ったな。褒美をしないとな。」
444特使暗殺計画 カーマインside 12:2007/03/16(金) 01:27:54 ID:pwxm6zbT
水車小屋にはいると携帯ランプに火を灯す。
互いに服を脱ぎ捨てそのまま強く抱き合った。
しばらくそのままそのぬくもりを確かめたあと、見つめあい、そして唇を重ねた。

始めからむさぼるように求める。
歯列をなぞり、彼女のなかに逃げ込んだ舌を追いかけてはちろちろと誘っては絡める。
薄目をあけて見れば、頬をうっすらと染めて瞳を閉じたジュリアの顔。
今日の化粧はややきつめだがそれがまたいい。

「ん……ふぅ、んっ。」
「……もっと俺を求めてこい。」
「ん、んっ!」
ジュリアがもっとも苦手とする舌の裏側を念入りに攻める。
少し刺激が強引過ぎたのか、いつもより早めに耐え切れなくなった彼女が顔をそらす。
唾の糸を引いて逃げては、優しく俺の耳を甘噛みしはじめた。
俺も彼女の感じやすい首筋に場を移し、両手で腰や背中を撫で回したあと尻に手を伸ばす。
その感覚に一度は逃げかけた彼女も、また唇を求めては乳房を押しつけてきた。
しなやかな指先で俺の体を這い回るのを好きにさせる。
尻の張り具合をたっぷり愉しんだあと、乳房に狙いを変えようと、彼女をはがして後ろから被さる。

馴れ馴れしく抱きつくようにジュリアを拘束していたあの汚らわしい野郎。
俺が手を下す前に、ジュリアが先につぶしてしまったので、俺の怒りは解けていない。
特にあの男に触れられていた背後から、念入りに俺の体を塗りつけて上書きし穢れを払い落としたくてたまらない。

「マイロード! ど、どうかお許しください。背中からは苦……手で、っあ、ああ……っ!」
「俺が愉しみたいんだ。」
逃げようとした彼女を捕まえて羽交い絞めにする。
さらに内股に俺の片ももを突っ込んで泉を守るひだを少し擦る。
一瞬感じすぎてしまったのか、びくりと反応し抵抗を止めた。

諦めたのを見計らって乳房に手を伸ばす。
両手のなかで転がしては揉みはじめる。
下から持ち上げて離すと、弾力を持った乳房が元の形に戻ろうと跳ねる。
横から包み込むこむように揉みこんで離せば左右に揺れる。
俺の手のままに柔らかく変えてゆくその胸の谷間を肩越しに見下ろしては、首筋から耳元へ、
ゆっくりと何度も舌を這わせるては、強く吸いついて、彼女の柔肌に無数の斑点を刻み込んでいく。

まだ乳首には手を触れない。
じっくりと愉しみたいなら順番に攻めるのがいい。
彼女の密接した肌が次第に熱くなり、息が一段と荒くなるのを感じた。
重ねた太ももに彼女の愛液が染み出してくる。
445特使暗殺計画 カーマインside 13:2007/03/16(金) 01:28:43 ID:pwxm6zbT
「ああ……くっ。あ……ん。はぁ、ああ。」
「少し大きくなってきた気がするが、まだ成長するかな。」
「あ……戦いでは邪魔になりますので、その……あんっ。」
「俺はもう少し大きいほうが好み。さらしは形が悪くなるからなるべくしないほうがいい。」
俺たちは若さもあって性欲も強いし、戦場で走り回ることを職業にしているだけに、並の男女より遥かに体力はある。
だからこちらの関係はかなり強い部類に入ると思っている。
互いの休暇がうまく合えば、一週間程この小屋で浸りあったりした。
その間に俺もジュリアを知り尽くす努力はしたし、彼女もどんどん開花していった。

「ああっ、あ、あん……あ。はあ、あ!」
乳首を苛め抜かれて歓喜に悶えさせていたジュリアが、頂点を迎えて、俺の腕のなかでのけぞっては崩れた。
俺はベッドに転がり込んで、息があがった彼女を正面から抱きすくめたあと一度手放してやる。

ようやく開放されたジュリアは、艶を帯びた幸せそうな表情で俺を見つめている。
やがて気だるげに体を起こし、ゆっくりと俺の額に優しく口づけを落として、そのまま下部へと唇を這わせてゆく。
俺の硬く勃ちあがりきったモノに口づけをしたあと、舐め始める。
そのうち指も加えて弄びはじめた。
俺にはたまらない刺激だ。

「うふふ。」
「……くっ。」
俺のモノをからかう癖を覚えたのは少々困る。
毎回散々焦らすだけ焦らす。
そのままモノが絶頂寸前まで反応している様子を、面白げにじっとひたすら見守り続けるから参らされる。
おかげでぶっかけたくて仕方がない俺のモノを、押さえるのがどれ程大変なことか。

最初に経験した味が酷かったのが相当応えたんだろうな。
当時は俺も性に関する基礎知識が不足していた自覚もあったから、この特使に任命されるための勉強と一緒に、
そっちのノウハウも調べた……アリオストの実地研究成果ノートが一番役に立ったかな。
おかげで初めての夜や、コムスプリングスでの彼女への扱い方が、いかに間違っていたかを思い知らされた。

しかしそれ以上にその過程で俺自身の大問題が発覚し、その衝撃の方が遥かに大きかったのを覚えている。
床惚れって一、二回程度でもありえるのか?
まあ、今のところは大きな障害にはなっていないのが救いか、と楽しそうにモノと戯れているジュリアを見る。
今ならかなり不味くはない精を出せるようになった、ということを教えてあげたいが……まだ無理か。

先走りが出る前に引き剥がそうとしたら、すばやく逃げた。
俺は追いかける。
藁の山にシーツをかぶせて整えただけの簡単なベッドのなかで二人追いかけあう。
藁が散る。
彼女がからかうような悪戯な目線を俺に送る。
互いに息を弾ませて静動を繰り返しては転げまわる。
446特使暗殺計画 カーマインside 14:2007/03/16(金) 01:29:50 ID:pwxm6zbT
「ふふ、そう簡単には捕まったりいたしませんよ、マイロード。」
「……そんなに俺の本気が見たいのか。」
奴らには簡単に捕まってみせたくせに――か?
俺は先程まで忘れかけていた事実を思い出し、むかついて顔が引きつる。
聞けば、単に俺との合流に失敗したために、わざと捕まってみただけだと?
水車小屋に入りかけたときに、自信満々にジュリアからこの回答を聞かされて、俺の思考は完全に停止した。

俺は追いかけながら、しなやかにかわし続ける彼女の裸をじっくり鑑賞する。
動きまわるたびに揺れる乳房がまぶしい。
悩ましい腰つきも俺の欲情を一層そそる。
プラチナブロンドの髪も汗で体に張り付いては、上気した肌をより美しく浮かび上がらせる。
太ももの先、付け根の銀糸の茂みの奥には欲情の沼地が潜んでる。
愛らしい微笑みを浮かべて、じっと俺を興味津々の眼差しで見つめている。
初めて抱いた頃よりも、数段も女として成熟しはじめているジュリア。
何より今彼女が漂わせている濃厚な色香は、この半年以上かけて俺が教え込んだものだ。

だが、あまりにも無防備すぎる……!
装えば、滅多にお目にかかれない程魅力に溢れた美しい女になると、自覚していないことに不安がこみあげる。
捕まってから十分足らずで俺が来たからいいものの、もし俺との合流に失敗したり、時間が経ち過ぎてしまえば、
――自分の身に何が起こってしまうのか――
男装している間、君は男たちの一体何を見てきたんだ?
状況さえ許せば、欲望のままに見境なく襲いかかりたくなる男の性を、ジュリアは全然理解していない。
俺たちは国も立場が違うから、四六時中お前の側にいて護ってやれるわけじゃない。

「あ……っ。」
「ジュリア!」
俺の伸ばした指先から逃れようとして、バランスを崩しかけたジュリアが転がり落ちかける。
それを止めようと抱きしめたまでは良かったが、その勢いで俺も一緒にベッド脇に落ちた。
互いに息を整えあい、また瞳を交わらせる。
もう一度熱く口づけをかわしたあと、俺はベッドにジュリアを抱きあげて入りなおす。
彼女を仰向けに降ろすと、その足を広げて俺の体を深く割り込ませた。
俺の太ももやモノに泉から溢れた愛液が絡みつく。

「マイロード、その……いきなり?」
「ふっ。今夜はなしだ。」
「えっ。あの、せめて、そのもう少……あああ!!」
ぐっと腰を落とし、卑猥な音をたてて俺のモノが彼女を突き通す。
泉は待ちかねていたかのように俺に食らいついた。
逃げようともがく彼女の体を、強引に抱きこんでそのまま体勢を整える。
447特使暗殺計画 カーマインside 15:2007/03/16(金) 01:31:09 ID:pwxm6zbT
「……ジュリア。」
「な、何でしょうか?」
「せっかくだからあの豪勢な部屋で、してみたかったのかな?」
「いいえ。その……気兼ねなく走り回れるベッドのほうが貴重かと、思います。」
「やはりそう思うか?」
「はい、弟と喧嘩するたびに、スプリングが痛むと母にたしなめられました。
マイロードにはそのような体験、ありませんでしたか?」
「くくく。やっぱりジュリアだな。」
「え? あ、ああ! マ、マイロード。私を――謀られたのですか!」
俺とルイセは四年前まで同様のことをしていたと……
居間の長椅子の底をぶち抜いて、母に尻叩きを食らってみたなんて、彼女を喜ばすような昔話は教えてやらない。
これから俺のこの体で、その体験談をじっくり伝えてやろう。
ジュリアは自ら過去を暴露してしまった恥ずかしさに、顔を真っ赤に染め、恨みがましく涙目で睨んでいる。
俺はそのまぶたに口づけを落とすと、今夜初めての交わりを開始する。
彼女のしなやかな腕が俺の肩にぎゅっとしがみついてきた。

一人一人性感帯は違う。
共通もあればまったく意外なところで反応することもある。
ジュリアの場合は、交わるときの体勢によって、ひだがこすれる感触に弱いことがわかった。
特に芯が一番感じることはグランシルで確認済みだ。
そこに両乳房を優しく揉みあげ、親指で敏感な乳首を転がすと、身をこわばらせては必死に耐え忍ぶ彼女が愉しめる。
さらに滑らかな首筋に歯をたてて滑らせると、悲鳴のような歓喜の声を漏らしては、鳥肌をたてて激しく反応しはじめる。
あとは腰使いを意識しながら、彼女の泉の奥に眠っている快楽を揺り起こしつつ、
完全に俺のペースに持ち込んでゆくだけだ。

これでジュリアは簡単に墜ちる。

「ああ! あぅ。んん。はあぁん!」
「ジュリア……気持ちいい……か。」
甘い声が小屋のなかに響く。
俺のささやき。彼女の喜びの涙。
銀糸の豊かな波が俺の目の前でゆれ、彼女は激しく俺のなかで快楽に鳴き乱れる。
蕩けそうな程恍惚としきった表情で、俺だけを愉しんでくれるジュリアを何時までも見ていたい。

「ああ、はあ、もう……駄目で……す。ああぅ、くぅん、ん。許し……ん! あ、あ、ああっ。あう!」
「ジュリア……俺のジュリア。」
「ああああ――――っん!」
モノへの締め付けが増し、彼女が絶頂を迎えたことを知る。
今夜は絶対に眠らせたりなどしない。
彼女の回復を待って、再び攻めて可愛がる。

俺たちの激しい行為で、壊れることのない藁のベッドの上。
その夜何度も抱き合った。
互いに汗を交わらせながら、本能のまま欲望に身をゆだねあえる幸せがここにある。
明日には引き裂かれる宿命の女を、俺は全身全霊を傾けて愛しんだ。
448特使暗殺計画 カーマインside 16:2007/03/16(金) 01:32:31 ID:pwxm6zbT
帰途にラージン砦に寄る。
そこで不在のブロンソン将軍からの託を受け取った。

アグリス村上流の堰が何者かに壊されて、下流の村々が被災、多数の死傷者が出たそうだ。
そのなかに貴族も含まれているらしい。
これより私やウォレスをはじめローランディア王国の主要なメンバーが召集され、御前会議がはじまる――
そこで内容は途切れた。

受け取った日時から逆算して、はじまる直前だ。
俺はこの会議に間に合わない。
手元の書状はエリオットによると式典の返礼が述べられているだけだそうだ。
ならば一度現場の貯水池だけでも調べてから、ウォレスに報告しその先を検討しよう。

好戦的な新王に、まき餌のような堰破壊。
大陸各地で度々起こる小規模の動乱。
バーンシュタイン王国内で、俺を暗殺しようとした黒幕はまだ割れない。
アルカディウス王を失ってから始まったこれらの出来事が、見えない一本の糸を映し出す。
俺の感が、何者かに仕組まれている、急げと警告を鳴らす。

どうか早まらないでくれ。
乗ってきた公用馬車の御者に王への託を頼み送り出すと、
砦を任されている副官からの助力も丁重に断って砦を出る。

今度こそ一人だけで。
もう誰の手も、いや、誰も俺の危険に巻き込みたくない。
少なくともある程度、その正体を探り出すまでは――

時代はまた、きな臭い道を歩み出そうとしていた。

fin
449名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 01:36:21 ID:pwxm6zbT
3-143 時系列

マイロード誓約 → 見つめられて → 深淵のなかで → 特使暗殺計画 → 再誓約 → 領地にて
450特使暗殺計画 ジュリアside 1:2007/03/16(金) 01:38:17 ID:pwxm6zbT
今日の任務は、エリオット陛下主催の表彰式典及び、昼食会の警護だ。
表向きは日頃尽くしてくれる臣下に、功労にあわせて勲章を与え激励するだけ。
が、意図は別のところにある。
バーンシュタイン城の正門に、待ちかねた隣国よりの客人の到着を告げる声が響いた。

「ローランディア王国より代表の、フォルスマイヤー卿がご到着されました。」
「フォルスマイヤー卿……か。よし、あとは私に指示された通りに行え。」
「は!」
公用馬車から降りたカーマインは、ここ半年以上の間に見慣れた、ローランディア特使の衣装を纏っていた。
彼はゆったりとこちらに瞳を向け、極上の微笑を浮かべては優雅な、そう、とても優雅な仕草で歩いてくる。
何度見ても私が見惚れてしまう程見事なものだ。
特使としてこちらに訪れたときに、初めてこの仕草を見せつけられて声をかけそびれたことを思い出す。
何時の間に、彼はこんな品格を身に付けてしまったのだろう。
彼にはいつも驚かされてばかりいる。

「ようこそ、バーンシュタイン城へ。お待ちしておりました。」
「お招きに預かり感謝する。早速エリオット陛下にご挨拶をしたい。」
「は! どうぞこちらです。」
今回、国王名代として訪問したカーマインに、いつものような軽々しい言葉はかけられない。
カーマインも当然のように、一国の王の威信を示すために遜色ない、貫禄に満ちた口調で答える。
兵士たちが整列して見守るなか、私は警護を全任されたIKとして礼節をもって出迎えると、式典会場へと案内する。
待ちかねていたせいか、既にエリオット陛下は途中の回廊でリーブス、いやオスカーと待っておられた。
先導を私が後衛をオスカーがついて、合流した陛下とカーマインを誘導する。

「ようこそ、バーンシュタインへ。お元気でしたか。貴方が代表と聞いてほっとしていましたよ。」
「俺は参ってる。」
「ご免なさい。僕も正直どうしたらいいか悩んでいて、貴方に相談できると思ったら嬉しかったんです。
勝手にはしゃいじゃって……貴方の気持ちも考えずにすみません。」
「わかってる、エリオット。俺もできる限りのことはする。」
「わあ、やっぱり頼もしいですね。貴方に会うと元気が出ます。僕も頑張らなきゃ。」
このようにエリオット陛下の甘える声を聞くのは久しぶりだ。
有言実行の彼だから、その励ましが誰の言葉よりも心強く感じるのは私も同じ。
エリオット陛下がたびたび城を抜け出してしまわれるのは、私たちの接し方が窮屈で、ご不満なためかもしれない。
でも所詮は臣下の身。
対等に接することはできないのは、仕方がないことなのだ。
あのリシャールと、オスカーやライエルのような間柄は、規律を重んじる我が国では本当に特別だったのだから。

「僕も君に期待しているんだよ。お偉方をそのやけっぱちな似非面で懐柔してもらいたいね。」
「オスカー、俺が形式ばった会食は苦手だって知ってるよな?」
「もちろん君だから選んだのさ。まだご婦人方がいない分気楽なはずだよ。違うかい?」
……ということは、オスカーもエリオット陛下も彼が来るとご存知だったということか。
何ということだろう。
私は自分の服を見る。
今日もいつもと同じだ。
もちろん身だしなみに気を使うのは当然だけど、それはIKとしてで。
先月贈っていただいたミスリル銀の白百合のペンダントとか、ピンクゴールドのアーモンド花のイヤリングとか……

ああ、別宅になら色々置いてあったのに!
451特使暗殺計画 ジュリアside 2:2007/03/16(金) 01:42:43 ID:pwxm6zbT
表彰式典は早々に終わり、昼食会に移る。
予想通り、現在進行中のローランディアの新国王についての議題が持ちあがる。
アルカディウス王崩御の知らせを受けて、ここ二ヶ月の間、あちらではあわただしい動きがあったのは知っていた。
こちらからもそれなりの身分の国王代理を葬儀に参列させ、新王コーネリウス戴冠式にも列席し祝賀を送っている。
しかしここにきて、雲行きが急激に怪しくなってきているのだ。
噂は告げる。新王は争いを好む――と。

警戒を怠らない。
それにしてもローランディア側の国情を説明にきた王代理が、カーマインだったとは意外だった。
もっと政治向きの、大臣クラスの文官を送り込んでくると踏んでいたのだ。
軍人にあたる救世の騎士を寄越したのは、彼がこの国でも人気が高いことを利用したあちらの策だろうけど。
彼は時々剣と誓った私にも告げないで、今回のように突然舞い降りることがあるのが、少し嫌だ。

カーマインの表情が曇ったのに気がつく。
とても微妙な変化なので、私のように彼と長い間過ごした者でなければ見抜けない。
目配せされて近寄ると、口元をハンカチで押さえて俯いた。

「どうされましたか?」
「来る途中で馬車酔いをしてしまったようだ。」
「わかりました。こちらへ。」
「では休憩室まで誘導いたします。」
「いや、私一人で十分だ。お前たちは引き続き警護を怠るな。」
警備兵に断りをいれると、彼をかばいつつ、好奇の視線を向ける客たちに笑みを返しながら会場を出る。
回廊を曲がったところで、さっと彼が駆け出して、少し先の茂みの陰に入ると激しく吐きはじめた。
血も混じっている。

「マイロード!?」
「静かに。」
はっと振り返れば、先程我々がいた回廊の角に、貴族の衣装に身を包んだ男の姿が現れた。
その無様な挙動は、洗練された我がバーンシュタイン軍人貴族にはありえない。

「毒を……盛られた。あいつだ。行け。」
「は、ですがマイロードの御身が……。」
「任務を優先させるんだ。」
とっさに解毒の魔法ファインを唱え、彼にかけたあと指示に従う。
招待状こそ持っていたが、男は案の定どこの貴族でもなかった。
正体がばれると、刃物を振り回して逃げようとしたので捕縛する。
武術の心得はあったようだが、我々IKの足元に及ぶ者などそういない。
私が直接王城地下の牢屋に投げ込んで、牢番に尋問官を呼ぶように手配した。
引き返すとオスカーに事情を話し、昼食会場の警備から外れる。

それから急ぎ彼のもとへ。
彼は休憩室でぐったりと長椅子に横たわって休んでいた。
452特使暗殺計画 ジュリアside 3:2007/03/16(金) 01:44:06 ID:pwxm6zbT
「大丈夫ですか。」
「ああ、ジュリアのファインのおかげだ。」
私は肩膝を落とし、臣下の礼をとる。
毒を受けたにもかかわらず、笑みを浮かべて心配するなと、優しい瞳で安心させようとしてくれる。
伸ばした指先で、乱れた私の髪を整え労ってくれるその態度に、私は不甲斐なさで胸が痛くなる。
IKの白手袋をはめた手で、食い込む程自分の肩膝を握り締めた。

「申し訳ございません。マイロード。私がついておりながら、このような失態。いかなる処罰もお受けいたします。」
「……ではこれを、調べてくれ。」
カーマインは懐から持ち出してきていたのであろう、中身が少し残ったティーカップを差し出した。
私は眉をひそめる。
今回、茶葉の種類ごとにカップの柄も違え、配る相手によってもソーサーを変える等して、識別をおこなった。
これも私が一度検査をしたはずだ。

この意味するところ。
我々IKの目をかいくぐり、厳重な式典や昼食会に、刺客や毒物を送り込める程の奴が我が国にいる。
それもこのバーンシュタイン王城内に。

「深刻ですよね。ジュリアさん。」
「……エリオット陛下。」
「王主催の昼食会ですよ。即効性を見ると、混乱を狙ったものか、彼自身の暗殺を狙ったか。
彼が機転を利かせてくださって、本当に良かったです。」
「いずれにしても、先の戦争の再来を狙ったかのようなこの事件。
隣国との争いを望む不届きな輩は、厳罰に処すべきです。」
王の私室で、私は怒りに震えながら、エリオット陛下に進言する。

判明した毒は無色無臭。しかし口に入れればすぐわかる代物。
だけど、もしカーマインが注意せず、一気に飲み干してでもいたら……!
誰かがカーマインの命を狙った。
私の目の前で彼を傷つけた。私は気がつきもせずに――
あの知恵の浅そうな男単独の犯行ではあるまい。
内部で手助けした者は誰か。
必ず見つけ出す。私自ら処断しなければ、彼に申し訳が立たない。
そこへにオスカーが入ってきた。

「エリオット陛下。」
「何事ですか?」
「それが……。」
「かまいません、報告を。」
「はい。先程ジュリアが捕らえた曲者ですが、牢屋にて何者かに暗殺されました。」
「え……?」
「何だと!? オスカー、それは本当なんだな?」
「残念ながらね。牢番が外の物音に呼び出された隙に、一突き……だったらしい。」
エリオット陛下は溜め息をつかれて、椅子に深く座り込んだ。
無理もない。
隣国の動向だけが悩みの種ではないのだ。
最近国内のあちらこちらで事件が頻発している。

小競り合いも数を増せば、負担が募る。
先週もロッテンバーム村に、去年たった二人だけ騎士叙任出来た内の、片方を送り出したばかり。
いや、士官学校を卒業して騎士職にいるのは、もう彼だけだから、一人というべきなのだろう。
もう一方は、先程の昼食会でカーマインに食い下がっていた立身出世の鏡、シュナイダー大臣だ。
陛下はカーマインを呼び、事態は悪化したことを詫びつつ、最後にこう言った。

「貴方の警護を厳重にさせていただきます。」
453特使暗殺計画 ジュリアside 4:2007/03/16(金) 01:45:13 ID:pwxm6zbT
無表情だったカーマインが、その言葉を聞いた瞬間に険しい顔になる。
今までの特使在来中、彼は非常にこちらに気を使って行動してくれてたし、我々も信頼しているので、
目立った警護はつけていなかった。
接待という建前で、私が……彼のお相手を申し付けられていたのだ。
私以外の供がつくということは、今回は望めない、と宣言されたも同じ。

落胆する。
彼に愛されることがない、という残酷な現実が、私のなかで胸を締めつけ重みを増してゆく。
私のせいで、彼に負担をかけてしまったのだから、当然の罰かもしれない。
彼のあのぬくもりを味わえる次は……何時になるのだろう。

彼はいつもの特使用の貴賓室を望んだけれど、説得して、より厳重な警備の敷ける特別室に移ってもらう。
あの新王が来るとは思っていなかったけれども、王族専用の華美なこの部屋は用意されていたものだ。
二人で室内に入り、部屋の間取り警備体制を説明している最中、彼に遮られる。

「先程怪我をされたばかりでは。」
「もう直っている。」
「ん……っ。」
私の唇を優しい指先がなぞり、暖かい手が私の頬を包み込んだ。
熱く唇を重ねられる甘い瞬間……
が、ノックで妨げられる。

「ジュリア様。今夜の警備体制の確認をお願いします。」
「わかった。すぐ行く!」
今は職務を優先させなければならない。
454特使暗殺計画 ジュリアside 5:2007/03/16(金) 01:45:58 ID:pwxm6zbT
彼がこのまま引き下がるとは思っていなかったけれど、案の定彼はエリオット陛下に自ら危険に飛び込む策を申し出る。
陛下がどういう説得を受けたのか分からない。
だけど結局彼の提案を受け入れて、私は補佐を命じられた。
城門から遠ざかっていくカーマインの後姿をじっと見つめる。
いつものように問題がなければ、私も供として城下町で二人楽しい時間をすごしているはずなのに。

彼を狙う敵に、暗殺の機会を与え、泳がせて黒幕まで案内させる。
その上で軍を動かし一網打尽にするのが、彼の計画。
網にかかったら、一人でも捕縛して尋問に回せば早いのでは。その提案は彼に蹴られた。
「失敗した刺客を城内で消し去ることの出来る奴が、俺たちの動きをどこまで掴んでいるか分からない。
裏をかくしかない」と――
彼は気まぐれで、城下に遊びに抜け出したふりを。
私はそれにあとから気づき、慌てて追いかける役を。

計画に必要な人員を確認するだけの、無駄に時間が過ぎていく嫌な時間。
私も今動かせるのは、側近の部下数名だけ。
ようやく彼が待ち合わせ場所で、識別用のマントを受け取ったと知らせを受ける。
彼の予想通り、獲物がかかったらしい。
カーマインはこの二時間程、王都内を派手に走り回ってくれた。
おかげで、別の意味で都は凄い状況になってしまい、各地域を担当する守備兵が右往左往している。
まったく自分の世評を自覚してくれているのか、いないのか。

「私も出撃する。指示を待て。」
「は!」
髪を結い上げ、やや派手めな化粧を施し、身なりは地味な幅広ロングスカートにブラウス。
それからすっぽりとフードをかぶる。
これで私をIK、ジュリア・ダグラスとすぐに気づきにくくなったはずだ。

城門を抜けると、待ち合わせの場所、王都東の路地裏に急ぐ。
現地に控えていた部下から状況報告を受け、さらに彼の現在位置を確認する。
敵は既にカーマインに仕掛けているとのこと。
王都の要所要所で部下たちが、彼の救命要請に備えているが、まだお呼びがかからないらしい。
私も敵に気づかれずに、彼の跡をつけなければ……

表通りに出ると、行く手を塞ぐ程の大きな人垣が出来ていた。
覗いてみれば、一人の派手な衣装の女性が喚きたてて、治安回復に懸命な兵士らの行動を邪魔しているようだ。
私は溜め息をつく。

「何事だ?」
兵士たちは最初いぶかしげに私を見つめたけれど、馴染みの上級仕官が気がついたようで慌てて敬礼した。
私は事情を説明するように言いかけたところ、いきなりその女性に掴みかかられる。

「あ、あんたでしょ。グローランサーの愛人って自称している女は!」
「な、何……だと?」
455特使暗殺計画 ジュリアside 6:2007/03/16(金) 01:47:13 ID:pwxm6zbT
愛人――

言われてみれば、世間一般にはそう見られてしまうのかも、と考えて私はぎくりとする。
カーマインの話題でなければ、私は一笑にふしていただろう。
彼にまつわる噂は絶えないけれど、女性関係ではデマばかりが横行し、彼が醜聞まで発展させたことはない。
これは彼が女性に礼儀正しい割には、慎重すぎるくらい注意深く行動をしているせいだと思う。
きっと本命の彼女を心配させないために――
だけど事実、私は横恋慕して、彼とは……
嘘とも言えず私は戸惑ってしまったのを、その騒がしい女性は図星と見てさらに騒ぎ始める。

「こら、その方を離すんだ。」
「下らない詮索もそこまでに……あ痛てて、噛みつくのをよさぬか!」
「うるさいわね。あんたたちもこの女にたぶらかされているんでしょ。これだから軍……は、離しなさいよ。」
国に絶対忠誠を誓ったIKが、他国の騎士である彼にも密かに忠誠を誓っていることを話せるわけがない。
ここにいる兵士たちは皆、私が見習うべき軍人の頂点に立っていることを敬服し信じている。
さらに揉み合いになってしまった彼らに、答えあぐねたとき、中央の大教会の鐘が鳴りだした。
我に返る。もう午後四時を回る時計台。
ここで余計な上官精神を出して、声をかけてしまったのは大失敗だった。

慌てて、胸元より携帯装置を取り出す。
『カーマインレーダー』と皆が言うこの装置は、彼の独特の波長を捕らえることができる大切な絆。
単独行動をとりたがるカーマインを、皆が心配して作り出した、互いに持ち合っているかつての仲間の証。
先程路地裏で画面を確認したときにはあった、彼を示す赤い点滅は消えていた。

敵を油断させるために、彼は今この広い王都で、たった一人で戦っている。
私はまた……
動揺する心を切り替えて、私は側近に指示を出す。
我が王都の中心部の出来事なら、彼を狙っている者たちより、私の部下のほうが探索能力は遥かに上だ。

南に続く長い階段を一気に駆け降り、下町に入る。
情報によれば、ここまでは王都の高見台の見張り兵が、彼の動きを捕らえていたとのこと。
下町は相変わらずごみごみしていて迷いやすいし、一度奥に入り込まれると見つけるのは難しい。
レーダーは、半径一キロ内に同じレーダーがあれば明確に表示するけれど、今の画面は暗いまま。

カーマインも、今頃はレーダーに私の反応がないことには気がついているはず。
彼のことだから、私がいなくても一人で済ませようとするだろう。
早く彼を見つけださないと、どんな危険に飛び込んでいくか分からない。

私はスイッチを切り替える。
このレーダーのもう一つの能力、時空干渉値を頼りに彼を見つけ出すために。
平時はほどんど感知できないレベルまで押さえ込む彼も、今ならきっと出し始めている。
「やはり戦いになると、内なる血が騒いでしまうみたいだな」と以前この装置を見て、彼は切なげに哂ってみせた。
昔のグローシアン階級が、民衆を支配するためだけにこの世に生み落とした、戦闘兵器ゲヴェルの血が――
456特使暗殺計画 ジュリアside 7:2007/03/16(金) 01:50:20 ID:pwxm6zbT
下町の要所のひとつ、西南側の大広場に出る。
レーダーに淡い、時空の乱れを示す青い点が所々映し出されている。
間違いなく彼がここを通って戦ったのだ。
慎重に辿りながら、路地を曲がりかけて、はっとする。
その路地の奥から、「……サーを殺し……見つけ……」と続く物騒な言葉が漏れてくる。
かまわずその袋路地に飛び込んだ。
数人の、武装した男たちがこちらを向く。

「ち、聞かれたみたいだぜ?」
「どうせさっきの馬鹿騒ぎで、英雄様を追いかけてきた馬鹿な女だろ。」
「会わせてやってもいいぜ。お優しいグローランサー様にあの世へのエスコートしてもらいな。」
これは少々危険な賭けだけれど、あえて乗ってみるか。
私は脅えたように彼らを見つめて、立ちすくんでみせた。

拘束された私は歩かされる。
彼らはバーンシュタイン王都南よりさらに外れ。
朽ち果て忘れられた地域を根城にしているようだ。
私には賛成できない方針だけれど、どこでも兵を入れればいいというものではない、とオスカーは言う。
下町には下町の、村には村人の、領地には領主の、傭兵には傭兵たちの自治権があるからと、
王の軍隊と言えども、要請や大義名分がなければ、手を入れられない領域が我が国には数多くある。
治安悪化は地方の村々だけの話ではないのだ。
かつての戦乱を乗り越えて、彼が命を投げ捨ててまで手に入れてくれた平和のはずなのに、
人の世は何故こうも容易く壊れてゆくのだろう。

薄汚い通りをしばらく行き、比較的まともな酒場に入る。
すでに店としては機能していなかったけれど、いかにも癖のある傭兵らしき者たちが数十人雑談している。
獲物がいるといった高揚も、緊張も感じ取れない。
カーマインはまだここまで辿りついていないのだ。
奥のほうで酒を煽っていた、肉付きがいいだけの男の前に突き出される。
事情を聞かされて、私をやらしい目つきで嘗め回したあと、薄笑いを浮かべた。

「なんだ、娼婦か。悪りぃな、ちょっと協力してくれれば礼ははずむぜ。」
「ほう、美味しい話か?」
「まあな、上客がいい仕事を俺たちに寄越してんだ。お前も乗らないか?」
「相手はあのグローランサーと聞いたが、巻き込まれて殺されるのは遠慮したいものだな。」
「何、手引きするだけさ。あとはその男爵を強請れば、上手い汁がいくらでも吸えるぜ。」 
この男がここの連中の親玉か。
抜けた男だ。口も軽い。
私をただの女と見くびっているのか、後ろ手に括った縄の絞め方がゆるいし、身体チェックもしなかった。
女としての魅力はない私だけれど、この男からなら簡単に聞き出せそうだ。

今回の首謀者を聞き出すことに成功すれば、もうカーマインを危険な目に遭わせないで済む。
我が国の情けない内情に、私の不手際による失態に、彼を巻き込む必要がなくなる。
剣ならば、主君を守るために、いかなる手段も躊躇うべきではないのだ。
だから……
457特使暗殺計画 ジュリアside 8:2007/03/16(金) 01:51:26 ID:pwxm6zbT
私は男に取り入ろうと、笑みを浮かべてみせる。
あっけなく男は誘いに乗り、奥の個室に二人きりになろうと言い、その酒で汚れた手を伸ばしてきた。
尋問に自信はある。
個室の扉を閉めた瞬間、声もあげさせず一撃で沈める。
周囲の仲間にも気づかれずに、私は悠々とこの男を締めあげ、黒幕を吐かせてみせるだろう。
そのための一歩を踏み出したとき、出入り口の扉が荒々しく開かれ、小男が転がり込んできた。

「お頭!」
「なんだ。」
「や、奴が……すぐそこに。」
「何!?」
たむろっていた連中が一斉に動き出す。
外の様子が室内にいても伝わってくる。
動揺渦巻く連中とは対照的に、微塵の隙も感じさせない氷刃のような――戦いのときだけ見れる懐かしい気配。

彼がもう来てしまった。
もうあのレーダーを使わなくても、彼が分かる。
ヴェンツェルを倒すため、時空制御塔のパワーストーン生成装置の間で、私たちは皆グローシアンになった。
といっても、彼の義妹ルイセのような生粋のグローシアン程の感知能力はないけれど……
私はまぶたを閉じ、彼を感じとろうとする。
暗闇のなかに気高く立ち昇る、揺るぎのない力強い白銀色の波動。
周囲の時空のかすかな揺らめき。

彼の身に何も起こっていなかったことを感謝する。
本当は私の手助けなど、必要としないと分かっていた。
仲間がいなくても、一人でもすべてを切り抜けられる程、彼は強くなってしまっていたから。
私はもう……剣としての価値はなくなってしまっているのかもしれない。
側に置いてくれているのは、親しく付き合ってくれているのは、彼が優しいからなだけ。

連中は彼にかなわないと見ると、私を表に引き出す。
か弱い女性を盾に取り、相手の良心を煽るずるく意地汚いやり方だ。
だが今回は、相手が悪かったと後悔するだろう。

「おい。次に足を出したらこの女ぶっ殺す。いいな? 逃げるのもなしだ。」
彼の瞳を見る。
相変わらず微妙な変化だけれど、少し動揺しているみたいだ。
彼らしくない。
何を躊躇っているのだろう。
カーマインならこんな戦況は何度も体験しているはずなのに。
切り札の武器リングウェポンを使うことさえ、彼はぎりぎりまで拒んでみせた。
間髪の差で彼が大鉈をその剣で受け止めたとき、私は気がついた。
まさか、私のことを……?
458特使暗殺計画 ジュリアside 9:2007/03/16(金) 01:52:23 ID:pwxm6zbT
「手は禁じられていないよな。」
「この女の命が惜しくはないようだな?」
「……。」
男たちが彼に悪態をついている間から、私のことなど気にしないでさっさと始めて、と必死に目で訴える。
私の縄はとっくにほどけているのだから。

彼は私に目配せをすると動いた。
私も同時に、まずは背後から私を押さえていたこの親玉らしき男のわき腹に肘鉄首を打ち込み、
怯んだ隙に、首に巻きついていたやらしい腕を払いのける。
そして右スリッドを探り、反対のガーターベルトに挟んで隠し持っていた鞭スタンウィップを抜くと、
押さえにきた男四人に全周囲攻撃をお見舞いする。
これは雷獣の皮から作られたため、相手に電気ショックを与えられる。
麻痺し呻いている彼らに再び鞭を振るい、完全に沈黙させる。

「さすが、ジュリア。」
「お褒めの言葉、このジュリア嬉しく思います。さあ、この者たちに正義の裁きを下してやりましょう!」
久しぶりの彼との力を合わせた戦いに胸が躍る。
だけど相手には恵まれていなかったこの戦いは、すぐに終わりを告げた。

カーマインはしゃがみこんでいた一人の女傭兵の元へ行く。
さっきの戦いで彼に何度も矢をはじかれ、弦を切られ、小刀もかわされ続けてすっかり戦意を喪失しているようだ。
彼が膝を折り優しく肩に手をかけた。
うつむいているその女性と視線を合わせるために覗きこんでいる。
私の胸がずきりと激しく痛んだ。

「黒幕は誰だ?」
「……。言うわけないだろ。これでもこの仕事で食っているんだ。」
「頼む。女性に……無体な真似はしたくない。」
「……。」
「足を洗う気はないか。望めばローランディアでもバーンシュタインでも手配する。」
「……なんであんた、裏でもかこうって言うのかい?」
「傭兵以外の道もある。もう一度やり直してみないか。」
「馬鹿だよ。さっきだってあたしはあそこで殺る気だったんだよ!?」
「ためらったのを知っていた。」
見上げた彼女とカーマインとの間は数センチもない。
あと少し、どちらかが動けば口づけができそうな状況だ。
彼は基本的に女性に優しい。
そして親しい人には平等に接してくれる。私にも同じように……
これは、私にとって――拷問だ。
459特使暗殺計画 ジュリアside 10:2007/03/16(金) 01:55:36 ID:pwxm6zbT
彼女が自供した屋敷は、王都の東北貴族たちが屋敷を並べる一角にあった。
カーマインを背後にして、私は苛立ちを隠さない。

「何もお前自らが乗り込まなくてもよいではないか!」
「確実に証拠を掴みたい。」
「僕も同意見だね。しらを切られる恐れがある。」
「この王都でこれ以上の悪事を働かせはしません。」
「陛下まで!」
「抜け駆けは許しません。僕も戦います。」
カーマイン以外は、皆武装した兵士を偽装する。
私たちは女傭兵の誘導で、すんなりと屋敷に入り込めた。
広間で待つと、多数の雇われたらしい傭兵たちを従えて、二階から一人の小太りの男が顔を出した。
カーマインを見つけると、汚らわしいモノでも見つけたかのように顔を醜くしかめる。

「これはどういうことだっ。私はこやつを殺せと命じたはずだ!」
「は……い。しかしこの男が死ぬ前にどうしても聞きたいことがあると。」
「聞きたいことだと!」
「昼食会で俺に毒を盛ったのは誰だ?」
カーマインの気配が、また静かに荒れ始める。
私も彼に負けないくらい、怒りの眼差しを向ける。
この男が例の男爵――
我がバーンシュタイン王国貴族の名折れ。
悪戯に王の威厳を傷つけ、国家を窮地に貶めようとしている輩。

「ははは。そんなことも見抜けぬとは成り上がりの英雄気取りが。貴様を憎む者はわし以外にもいるということだ。」
「……。」
「わざわざこのわしに頼ってな。これでもわしの素晴らしさを理解し、敬服する者には寛大なのだよ。」
「名は?」
「言うと思うてか。馬鹿な奴よ。皆共やってしまえ!」
この男は黒幕ではなかった。
内部にまだ手引きしたものが別にいたと知り、私は考える。
この事件はどこまで根が深いのだろう。
我が国の未来を思う多くの兵士や民が、どれほど切なる平和を願っても、こんな輩が跋扈している。

屋敷を取り囲んでいた守備兵たちが、私の指揮の下一斉に突入し、傭兵たちを鎮圧した。
問題の男爵は、カーマインが追い詰め蹴り落とす。
一階に転がり落ちてきたところを、私の側近が捕らえて連行する。
この泡を吹いている無様な貴族には、これから先、ガルアオス監獄で終わりのない責め苦が待っているだけだ。
460特使暗殺計画 ジュリアside 11:2007/03/16(金) 01:57:11 ID:pwxm6zbT
オスカーが屋敷内をしらみつぶしに探索を行い、証拠固めを始める。
エリオット陛下とその進み具合を確認している最中、私はカーマインがいないことに気づき青ざめた。

「彼は? フォルスマイヤー卿はどうした!?」
「はあ。伝言を賜っています。先に行っている、とのことでした。」
「先に……では一人で城に戻ったというのか!」
「城とは言っていませんね。ダグラス卿。心当たりはありますか?」
「はい。おそらく……。」
「まだ危険です。貴方が直接探しに行ってください。期限は……。」
エリオット陛下が一呼吸置いたあと、私の目を見て笑みを浮かべた。

「明日の正午までです。」
「は!」
私は敬礼もそこそこに、走り出す。
王都の東の門を抜け、暗い夜道を全力で走る。
少しの甘い期待と、次第に大きくなってくる不安。
いつもの風車小屋の側の小川で、ぼんやりと空を見上げていたカーマインを見つける。

「マイロード! ……お探ししました。陛下や皆が心配しています。」
「ジュリア。俺は……。」
少し落ち込んでいるような後姿。
あの貴族はカーマインの真実を知らないだろうけど、偶然にも一番嫌う言葉を使った。
「ひぃぃ、や、やめろ。来るな、化け物め!」と広間に響き渡ったその声に、私が上を向いたとき、
怒りのなかに少し悲しい表情を浮かべて、カーマインがその男を追い詰めていくのを見た。
彼は人間でないことを誰よりも悩み、今もこうしてゲヴェルの呪縛に苦しみもがき続けている。
彼の闇が、彼自身を飲み込んでしまわないように。
私が、その闇を深く沈めるための歯止めの剣であるように。

「すぐ戻るようにか?」
「いえ、明日の正午までにと陛下のお言葉です。」
彼が優しい微笑を私に向けた。
私は誘われるままそっと肌を寄せる。
カーマインは深く抱き寄せながら私にささやいた。

「ジュリア。今日は頑張ったな。褒美をしないとな。」
461特使暗殺計画 ジュリアside 12:2007/03/16(金) 01:57:44 ID:pwxm6zbT
この壊れた水車小屋は私を育ててくれた乳母の弟の持ち物だ。
年に数日、魚釣りを泊まりこみするときにだけ利用しているらしい。
テーブルに置いてあった携帯ランプに、彼が火をつける。
私は奥の二山程ある藁を平らに整えると、シーツを広げて寝床を整える。
淡い光のなかで、私たちは互いの服を脱いでゆく。
振り向いて彼のたくましい背中を見て、これから与えられる官能を感じて、ほうと溜め息をついた。

「ん……ふぅ、んっ。」
「……もっと俺を求めてこい。」
「ん、んっ!」
始めから強烈な洗礼が私を襲う。
いつもになく息がとまるような長く深い濃厚な口づけに喘ぐ。
初戦に負けた私は彼の弱い耳元に歯を立てる。彼は私の首筋へと。
そしてしばらく互いの肌を絡めあう。
不意に気分を変えた彼が、私を反転させるといきなり被さってきた。

「マイロード! ど、どうかお許しください。背中からは苦……手で、っあ、ああ……っ!」
「俺が愉しみたいんだ。」
後ろに回られたら、彼の表情を見れなくなるのが嫌だから。
私は逃げ出そうとするけれど、簡単に上半身はその腕に押さえ込まれ、恥部には太ももを差し込まれてしまう。
首筋を耳元を荒く彼の舌が這い、熱い吐息がかかる。
そのたびにぞくりと鳥肌がたつような感覚が私を襲う。
彼は乳房を弄びはじめる。

「ああ……くっ。あ……ん。はぁ、ああ。」
「少し大きくなってきた気がするが、まだ成長するかな。」
「あ……戦いでは邪魔になりますので、その……あんっ。」
「俺はもう少し大きいほうが好み。さらしは形が悪くなるからなるべくしないほうがいい。」
動けない。動こうものなら挟み込まれた彼の太ももが、私の高まりきった恥部を過激に攻めたてる。
いつもより時間をかけて、私の乳房は揉みしだかれる。
優しくときに荒く、今夜は執拗なくらい彼は首筋や乳房に固執している。
私は抱きすくめる彼の腕をつかむことだけは許されて、ひたすらその快楽に耐え続ける。
462特使暗殺計画 ジュリアside 13:2007/03/16(金) 01:58:16 ID:pwxm6zbT
「ああっ、あ、あん……あ。はあ、あ!」
気持ちがいい。
意識が混濁してきてもう何も考えられなくなる。
力を失った口元から唾が垂れかけると、笑みを浮かべた彼が顔を寄せてその雫を舐めとる。
弄られすぎて、紅く染まってしまった乳首が、またつまみあげられる。
耐えられず私が悲鳴をあげて跳ね上がると、愛液で濡れきった恥部が彼の太ももに深くえぐられた。
逃げ出そうと腰をひねったところで彼が許さず、両乳首をつぶしながら太ももを激しく何度も揺り動かす。
私は限界を向かえ、カーマインの腕のなかに崩れ落ちた。

カーマインはやっと納得してくれたのか、私をベッドの上で解き放つ。
私はぐったりと力を失いしばらく絶頂の余韻に浸り続ける。
同じように横たわりながら、優しく髪を整えてくれる彼の指先が心地いい。
捕まえると、彼が苦笑して握り返してきてくれる。私の手のひらで遊びはじめた。

カーマインとこの半年の間交わり続けて、どんどん自分が官能に弱くなってきていると自覚している。
もちろんこれは私が望んだ彼からの寵なのだから、ちっとも不満はない。
むしろ私は色々な感動を教えてくれるこの関係が待ち遠しくてたまらない。
いつまでもこうしていたい、彼と――

少し回復したところでだるい体を起こすと、今度は私が責める番になる。
彼のたくましい胸元を、引き締まったお腹を降って、彼の勃ちあがったモノに口づける。

「うふふ。」
「……くっ。」
素直な彼のモノは、舐め跡に軽く息を吹きかけるだけで、激しく脈打ち限界まで硬く膨らみあがる。
見上げると、彼のモノを弄っているときだけは無表情を装えないみたいで、連動する反応が可愛い。
そんな弱りきった表情のカーマインを見るのがたまらなく快感で、毎回夢中になってしまう。
彼がまた私を強引に抱き寄せようと指先を伸ばしてくる。
今度は上手く逃げ出せた。

「ふふ、そう簡単には捕まったりいたしませんよ、マイロード。」
「……そんなに俺の本気が見たいのか。」
藁のベッドのなか、鬼ごっこをしながら私は思う。
どうやったら彼を引きとめ続けることが出来るのだろう。
本命の女性からねだられれば、こんな虚ろな関係など、彼はきっと躊躇せずに切り捨てる。
だからこそ、彼が与えてくれるこの一瞬は愛しくて悲しい。
463特使暗殺計画 ジュリアside 14:2007/03/16(金) 01:59:42 ID:pwxm6zbT
「あ……っ。」
「ジュリア!」
不安定な藁山にふらつく足を捕られて、視界が揺れる。
カーマインに抱きしめられながらベッドを転がり落ちた。
彼の腕のなかで、私は荒れた息を整える。
荒い息遣いと、間近で熱く視線を送られているのを感じて、思い出したくないことを思い出す。

あの女傭兵とはどういう関係だったのだろう。
こんな風に鼻筋をあわせて見つめあって、私が側にいなかったらどうなってしまっていたのだろう。
私が預かり知らぬところで、二人はどうやって知り合い、何を交し合ったのだろう。
胸が痛くなる。
彼からしたら、たいした出来事じゃないかもしれない。
だけど彼女はカーマインの言葉を信じた。
この贅沢な苛立ちは、しばしば私の心を乱しては、彼の眼差しを拒みたくさせる。
彼を知る前はこんな程度で泣きたくなる様な弱い人間ではなかったのに!

嫉妬に押しつぶされそうになったとき、彼が唇を寄せてきた。
彼を取り巻く女性たちから奪い取れるものなら、このまま二人墜ちるところまで墜ちてもいい。
彼女以上に近いまつげが重なりあう距離で、優しい彼の瞳の奥に私が映っているのを見つけて、甘い口づけに酔う。

カーマインが私を抱きあげてベッドにまた入りなおす。
右手で左ももをすくいあげると、甘く唇を這わせる。
次に来るのは恥部への愛撫。
ももから降ってまずは付け根を攻めて来る。
優しい彼の指が、繊細な動きをする彼の舌が、私を何度も絶頂に導いてくれる。
だけど今夜はそうすることなく、彼はそのままモノをあてがってきた。

「マイロード、その……いきなり?」
「ふっ。今夜はなしだ。」
「えっ。あの、せめて、そのもう少……あああ!!」
今日はしてくれないなんて。
彼をからかいすぎたのが原因?
考えをめぐらす暇なく彼が私を貫いて私の心を蕩けさせた。
464特使暗殺計画 ジュリアside 15:2007/03/16(金) 02:00:34 ID:pwxm6zbT
「……ジュリア。」
「な、何でしょうか?」
「せっかくだからあの豪勢な部屋で、してみたかったのかな?」
「いいえ。その……気兼ねなく走り回れるベッドのほうが貴重かと、思います。」
「やはりそう思うか?」
「はい、弟と喧嘩するたびに、スプリングが痛むと母にたしなめられました。
マイロードにはそのような体験、ありませんでしたか?」
「くくく。やっぱりジュリアだな。」
「え? あ、ああ! マ、マイロード。私を――謀られたのですか!」
私の性格を知った上でからかったのだと気がつき、その胸元を叩いて抗議したけれども、
彼は私を強く抱きしめて誤魔化した。

本当はこんな声をあげているところなど、他の人には聞かれたくないから――
彼にだけにしか見られていないと思うから、こんな淫らな姿になれるのに――
いくらあの扉の防音が完璧でも、あんな見張りだらけの特別室で、出入り時間も計られるのに、
こんな行為出来るわけがない。
その怒りも動き出されてしまえばどうでも良くなる。

「ああ! あぅ。んん。はあぁん!」
「ジュリア……気持ちいい……か。」
意識が再び混濁してくる。
彼に抱かれてしまうと、すべてが真っ白に染まるのが、心地良いけれど怖い。
その間のことは何も思い出せなくて、彼がどんな表情をしてくれていたのかすら覚えていないから。
このとき私はどんな風に見られているのだろう。
どんなことを考え感じ思ってくれているのだろう。
もっと彼の弱いところを知りたい。
彼の恍惚とした表情をたくさん見たい。
そう思うのに、途切れることなく続く快楽の荒波に揉まれ続けていく内に、また心が砕けてゆく。

「ああ、はあ、もう……駄目で……す。ああぅ、くぅん、ん。許し……ん! あ、あ、ああっ。あう!」
「ジュリア……俺のジュリア。」
「ああああ――――っん!」
今夜の彼はいつも以上に情熱的で、絶頂を迎えても、彼は私を離してはくれなかった。
私の様子を伺うために、彼が腰を少し揺り動かすだけで、意識が飛ぶ。

もっと名前を呼んで。私を感じて。
好きだから、愛してるから、もっと、もっと私を攻めて!
今日一日貴方を守りきれずに、足を引っ張り続けた愚かな私を、罰するように――
465特使暗殺計画 ジュリアside 16:2007/03/16(金) 02:01:32 ID:pwxm6zbT
のちにカーマインに執拗に刺客を差し向けていた黒幕の名前が判明した。
シュナイダー大臣の下した命令を各方面に伝える使者として、王城仕えの立場にあったエルロイ。
もっともこれは偽名で、十数年前に我が国に仕え落命した外交官の名を悪用したらしいのだ。

奴は傭兵国のスパイだった。
シュナイダー大臣の補佐にすり替わって我が国深く潜入し、動向を探り、建国のために布石を打つことを狙った。
推薦され、来るはずだった補佐官は死体で発見された。

一国の代表として来たカーマインに、我が国内で何かあれば、両国に亀裂を入れることが出来ると踏んだ。
それに失敗すると、大臣の偽者を使いローランディア側の貯水池の堰を破壊した。
さらに自分の身が追い詰められていると知るやコムスプリングスへ逃走、新人の騎士に罪をかぶせようとして、
失敗している。
目下行方を捜索中なのだが、おそらく今頃傭兵国領内に逃げ込んでしまっていることだろう。

先程のウォルフガングという男の独立宣言が耳に残っている。
傭兵国などというならず者の国など蹴散らしてくれよう。
カーマインを手をかけようとした罪は重い。地の果てまでも追いかけて必ず引きずり出してみせる。

私、ジュリア・ダグラスの名にかけて――

fin
466名無しさん@ピンキー