【107号室 田島 玲美(たじま たまみ)】
三郎が玲美を見舞いに病室を訪れると、彼女は笑顔で出迎えてくれた。
「三郎さんの、あんな大きなのが入った割には、それほど酷いことにはなってませんでした」
ベッド脇の椅子に腰掛ける三郎に、昨日の上皇を思いだしたのか、頬を朱に染めた玲美が話しかけ
た。こうして二人が病室にいると娘を見舞う父親に見えなくもない。しかし二人には、肌を許し身体を
重ね、共に絶頂を迎えた気安さがあった。
そして三郎は、ふとベッド脇のテーブルに飾られた花を見た。
「誰か、お見舞いに来たの?」
三郎が持参した花よりも先に、先客による花が花瓶に生けられていた。
「はい、『先生』が来てくれました」
先生、と聞いて三郎は、昨日のことを再び思い出す。この少女を抱き、深いアクメに導いた際に
彼女が叫んだ言葉の中に出てきた人物のことだろうか。
そのときは確か、もう先生ではイケなくなってしまう、というようなことを、この小学6年生の少女は
叫び、壮絶に果てた。
気になった三郎は、そのことを彼女に聞いてみた。野暮なことは重々承知だが、それで気まずく
なって後々困るほどの深い関係でもない。
「わたしの好きな人なんです、先生って」
聞けば、彼女が恋した、学校の担任教師だそうだ。
小学校5年生のころ、彼女は真剣にその教師に告白し、恋を実らせた。相手の教師も誠実な男だっ
たようで、彼女が結婚可能になる数年後に、きちんとプロポーズする約束をしてくれたのだそうな。
「それで私、結婚資金を貯めようと思って、一回だけ番組に出たんです」
もちろん、相手の教師は反対した。自分のフィアンセが身体を売って結婚資金を貯めるなど、まとも
な男なら許すはずがない。
だから、彼女は諦めたフリをしてこのことを内緒にしていたのだが、直前になってばれてしまい、収
録を見られてしまったのだという。
「あー、なんか、悪いことしちゃった・・・かな?」
ばつが悪い、とはまさにこのこと。彼女を抱いたことは、言ってみれば彼女が望んだことなワケだか
ら、三郎が肩身を狭く思う必要はない。だが、自分の行いが他人の不幸に結ばれるとあれば、いい
気持ちにはなれない。
しかし、玲美はそんな三郎を見て、クスリと微笑んだ後、
「だいじょうぶですよ」
といって彼の手をぎゅ、と握った。
「わたしと先生はラブラブなんですから。三郎さんは気に病む必要はありませんよ」
彼女が言うに、先ほどちゃんと仲直りしたらしい。
女の子は強いな、と三郎は思った。
【玲美エピローグフラグ】