>>3 プギャプギャ━━━m9(^Д^≡^Д^)9m━━━━!!!!!!!!
>>2 でもそこ殆どガンパレSSなんだよな…
職人光臨にwktk
単独スレはダメ?
女神では敦賀ノ真名姫が好き───!
初めて太照天昼子と交神したときは結構感慨深いもんがあった。
っつーことでヽ(´Д`;)ノ...age。職人さーん
保守
小説版だと夕子と黒蝿が意味深そうだった。
後はお夏と吠丸。
若銛と美津乳
黄川人と真名。
お業と人間の男。
お紺とその亭主。
お輪が源太とくっ付いた詳細は書いてないけど
それなりの恋愛感情があったもんだと思いたい。
俺屍だとどんなカプがメジャーどころなんだろう。
仔の名は紫(ゆかり)。男子なら縁(えにし)。前もって定められていた。
『神託の巫女として地上に転生してくれますか、お輪』
「はい、昼子さま。この命にかえましても、完遂いたします」
お輪をみつめる太照天・昼子の顔は微かに曇った。
『ありがとう、お輪』
頭を下げ続けるお輪に昼子はおりてきて、両の掌でお輪の頬をつつんで
上げさせ、額にくちづけをした。
そのあと、太照天・夕子と常夜見・お風の接吻をくちびるに、
そして鏡国天・有寿の最後の接吻とし、両の瞼へとお輪は受けていった。
※
瞼を開くとなにも見えなかった。
あやかしがこさえた幽閉の間にお輪ひとり。
大江山の王宮の祭壇から、お輪は別な場所に跳ばされ、闇のなかで
宙吊りになっていた。怒りの衝動をやっとのことで抑え、状況を計ることに
専念する。
が、それは嗜みとして、日々の稽古で培われた本能としてのこと。
水平に伸ばされた両手を動かしてみた。足の指も動かせたが、躰の自由は
利かなかった。まだ知覚も無事なことのほうが重要だ、といいほうに
考えることにした。次に履いていた草履を脱ぎ捨ててみると、回転しながら
漆黒に呑まれ、ついに音は聞こえなかった。
朱点童子に夫を謀殺されても尚、ものいみの結界をいとも容易く破られ、
連れて来られた愛娘・紫(ゆかり)のためにも――生きていたい。
お輪は命乞いをしてしまっていた。
辛酸を嘗めてまで、ここにとどまっている理由はなんなのかを、
いま一度心に問うて、力で叶わなかった己が脆さを呪い、涙がどっとあふれ出た。
徐々に意識がはっきりとしてくると、周囲には狐火が、ぼっ、ぼっ、ぼっ、
と灯り出した。あやかしの炎にお輪の心は激しく揺らいだ。
感情を昂ぶらせる八つの橙がお輪の周囲を舐めるように舞い、
そのうちの二つが光量を変化させ、青白く耀いて、遠くに離れていった。
「朱点――ッ、居るのはわかってるんだああぁぁぁぁッ!
さっさと、出てこないかッ!姿を見せろッ、見せてみろ、朱点童子――ッ」
頭を落とし、こぼれ落ちたくやし涙が白衣の胸に滲みをつくった。
『へっへへへっ、おいらを呼んだかい』
「何処に居るッ、姿を見せてみろッ、見せないかッ」
『おだやかじやないぜ。こちとら、殺しに来た奴をせっかくもてなして
やってるっていうのによう』
「戯をいうな、殺すなら……、殺すなら、さっさと殺せばいいッ」
発話した直後だった。強い力がお輪の左頬を叩いて、顔は右にぶれた。
「うぐっ」
お輪の口の中は切れて、血の味が拡がった。
『これでも手加減したつもりなんだぜ。でも、頚椎がへしゃげようが、
気道がつぶれようが、知ったこっちゃねぇよ。
おもちゃをどうしようと、おいらの勝手だもんねぇ。へっへへへへ』
人差し指が闇を裂いて伸びてきて、お輪の口元にこぼれた血を掬った。
ちゅぱちゅぱと卑猥に指をねぶる音がした。
『そうそう、お輪ちゃんに、おみやげを持ってきた。お・み・や・げ』
お輪は朱点の声に反応して顔を上げていた。
『おおっ、こわっ』
「だっ、黙れッ」
『そんなこと、言ってていいのかなぁ。源太ッ、源太ッ、源太さまアアァァァッ、てか』
「うっ、ううっ」
『あのあと、どうなったか、知らないだろう。おしえて――』
「うあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――ッ、朱点ッ、殺す!貴様を殺してやるッ!」
お輪は躰を激しく跳ねさせた。腹部と重たい乳房が波うつだけで、
無駄なこととはわかっていても、憤怒が総身を灼く。
『見てくれるかなぁ。うんにゃ、見たいはずだよなぁ、源太さまのみしるしだョ』
肉の腐った、血の匂いのような息がズッ、と寄ってお輪の顔を撫でていった。
時空を裂いて、分厚い唇が牙を剥いて嗤っていた。
闇に深いあぎとが更に開き、ざらりとした舌が飛び出してお輪の頬を舐めあげ、肉を迫上げる。
「うああああっ、あっ、あああッ」
嫌悪より勝る慟哭が、まだお輪の心を無情にも裂きつづけた。
『ほら、お輪ちゃん、みてぇ。みてごらんなさいよぉ』
丸太のように太い腕が闇から現れ、拳がお輪の目の前に突きつけられて、
ゆっくりと返される。邪悪な手でありながら、お輪はそこに白蓮の花がひらく
幻視にまどうていた。掌には落ち武者姿のざんばら髪の源太のみしるしがあった。
容赦ない追撃の衝迫にお輪は粉々になりかけた時、拘束はとけて躰は奈落に
消えていった。
堕ちながら、天上から源太のみしるしも落とされるのをお輪は見た。
天上から振り落とされ、お輪は躰を強打していた。仰向けになっていて、
両肘をついて起き上がろうとしても痛みに動かすことは叶わなかった。
手には木肌の感触があった。天を見ると星が瞬いていた。しかも、なつかしい
匂いがしていた。
「双翼院か。地上に戻ったのか……ち、ちがう。これは、まぼろしだ」
お輪のなかに悔しさが込み上げていた。這いつくばってこの奥院を出ようと考えて、
躰を捻ろうとしたら、太腿がなにかを挟んでいた。淡いが濡らついているのも
知覚でき、その臭いに吐き気を催していた。
「うっ、ぐえっ、げっ、源太、源太ああッ、源太ああぁぁぁ――ッ」
星が降りてきたような、さめざめとした青白い狐火が灯り始めて、お輪に源太の
みしるしを照らして見せていた。
「あっ、ああああ――ッ」
「お業の気持ち、思い出しただろう。ボクのかあさん。姉さんなんかに肩入れした
罰だからネ」
巨躯の黒影がお輪の前に実体化しても気が付かないで半狂乱となっていた。
「あれ、こわれちゃったかなぁ」
「源太、源太ああぁぁぁ……」
「ねぇ、だいじようぶなの」
「貴様は外道朱点だ。黄川人などではないッ」
「こんな豚といっしょにされちゃ、やだなぁ」
「ひっ」
ゆらっと、巨躯の影が動いた瞬間、開いていたお輪の太腿の淡いに
拳が振り下ろされていた。床板をぶち抜くまでには至らない力。
そして、頭蓋の砕ける鈍い音とともに、朱点の指の隙間からは肉片が
パパッと飛び散った。
お輪の顔。水上に浮ぶ舟を描く胸元に。白衣を赤く染めていった。
「うあああああああぁぁぁッ」
赤鬼は清めてやるとお輪に吐は捨てると、肉棒を取り出し小便を
泣叫ぶおんなの顔に向かって掛けた。
ゆばりに叩かれてもお輪は刃向かうどころか、這いつくばって
飛び散った肉片を掻き集める行動を繰り返していた。後頭部をびゃびしゃと音を立て
黒髪を濡らしていった。
「ああっ、くさい。くさいよ。臭ってくらあぁ」
尖端を振って雫を切りながら、お輪の姿を朱点は嘲っていた。
「ああっ、源太ッ、源太ああッ……」
「まっていな。いま、なつかしい姿での御対面とくらあっ」
朱点はけたけたと残忍に笑いながら、変化を解きに掛った。お輪は這いつくばりながら、
じっとその時を待っていた。
「掛ったな、朱点童子。わたしは狂ってなどはいない」
お輪の口から昼子と夕子の声音が重なって朱点に届いていた。
「昼子ッ、きさまああぁぁぁッ、謀ったなッ!」
お輪は右手を後頭部の結い留めに廻し、結び目を瞬時に解き放っていた。
「おまえをいま一度、この城に封印する。ここから、一歩も出しはしない」
「ボクの考えを読んでいたというのかぁぁぁぁッ!昼子ッ、
太照天・昼子おおぉぉぉ――ッ!」
「お前はわたしというエサに引っ掛ったのだ。己の傲慢さを呪えッ!」
お輪はゆっくりと起き上がって、朱点童子と対峙した。
「そうまでいうなら、いっしょに遊んでやるよ。お輪かあさん。
時間は腐るほどあるんだろ、覚悟しろよッ」
「あっ、あうっ」
閨の間に鬼火がひとつ、ふたつと灯りはじめた。
漆黒の闇におぼろに浮ぶ白肌があやしくうねった。肉棹の尖りは
最奥を抉りたて重い痛みを拡散させ、お輪の頭を灼きはしたけれども、
数瞬で肉のこわばりを蕩けさせるような快美感に悶えてさせ。
それを知らされたいまとなっては――。
「つぎはどうしようか」
闇にうごめく黄金色の瞳が鋭く輝いていた。黄川人にうしろ獲りされた、
さむけが女の背筋を蛇のようにぬらりと這い上がってきた。顔を床に強く
圧しつけられ、臀を捧げ、子壺を突上げられる疼痛。
肩肉を強く噛まれ閃光が瞬いて、許容量を越えた肉棒の怒張する、
その持続力にお輪はこわれそうだった。
「いっっ、いやだっ。も、もう……」
汗ばんだ背に黄川人は胸を圧しつけて、お輪を潰しに掛かる。ぐっ、ぐっと
望まない白濁を深く射込まれていった。
「昨日みたく、手頸を紐で括るからネ」
「いっ、いやあっ」
「そう暴れるなよ。無駄だってことが、まだわかんないのか」
「じ、じぶんの手で縛ったらどうだ……」
一昨日、吊るされ、爪先立ちのままで延々犯された記憶がお輪に
呼び醒まされていた。抗えども、抗えども、睨まれれば、それだけで淡いは
湿潤の地になってしまって、どうすることもできなくなった。
「おもしろいことをいうじゃないか」
疲れただろう、と黄川人に声を掛けられ、降ろされた。仰向けになって崩れ、
なんのためなのか、肘をついて起き上がろうとした。胸元と首筋はこわばり、
鎖骨の窪みは舟を描いた。あの時のように。
女は顔を捻って、鬼を見た。黄川人はうしろに両手をついて開脚し、
屹立をさして、にべもなくお輪に跨げと命じる。肩胛骨と骨盤、太腿の蠢きが
おんなの表情を刻々と変容させ愉しませる。
おいで、とやさしく誘われると、繋いで左肩に顔をうずめ、鬼の皮に歯をあてる。
両手を黄川人の背に廻して、お輪は悶え歔くのだった。
格好が土蜘蛛だったと黄川人が罵倒した。お輪が泣き出してしまうと、
黄川人は耳朶を強く噛んでから、耳元で囁いていた。
お輪は土蜘蛛だった。騎乗で爪先立ちのまま、あられもなく腰を振っていて、
妖女(あやかし)になりさがり、髪を振り乱していた。
それは紛れもないじぶんの意志。
「やああっ」
『もう、あんたは神託の巫女なんかじゃない。ボクとの肉情に溺れた、
ただのおんななになったんだ。もう、わかっただろう』
「なにが、いやなんだよッ!」
――本能でもしがみ付いた。おんなの業から、躰はいつしか逃れられなく、
果てなくみだらに向かって堕ちてゆきそうだった。
「うっ、うあっ、あううっ」
落とした袴の清美なひだはもみくちゃに、朱染めの紐が二匹の蛇になって
闇を這って来て、おんなの手頸に絡みついた。朱袴は血の海のような
敷物に変化して拡がっていった。腰巻を裂かれ、鬼の腰が入ってきた。
「ひっ」
黄川人はお輪の後頭部の黒髪を鷲掴み、歔き貌をぐいっと捻って
口を吸った。
「ん、んんっ」
枯れたはずの涙がまたこぼれてしまう。
「こっち向いてよ。ボクにしがみ付けったら。ねぇ、お輪かあさん」
朱の波に立って鬼はおんなを玩弄し、朱は汗滲みと、おびただしい白濁の
和合水で穢されていた。
纏った白単衣からは張った乳房がはだける。常夜の肉交責めに、
充血しきって喘ぐ房を、おもむろに鬼の手が鷲掴み、爪が深く食い込んだ。
「うっ、うむっ、うっ、うっ」
「肉はこんなにも仲良くなっているのに、なんでだろう」
「う、うあっ、あああっ」
腰を突き入られ、充血した秘唇の螺肉は捩れまくり、女の眉根が寄って
眦が吊りあがった。
「引き千切ろうか。でもね、ボクにだって、人なりの慈悲はあるんだよ。なにせ、
神様さえも恐れた天上人なんだからネ」
白い液体がぴゅっと乳房から飛んで朱に掛り、少年はけたけたと嗤った。
乳首から出た母乳を指で掬って、交媾に喘ぐ口に持っていき、無理やりに
捻じ込んで苦痛に歪む女の美醜を愉しんだ。
「ん、んぐっ」
「どう、おいしいの。ボクはもうわすれちゃったな。血の味のほうがいいんだ」
「はあっ、も……ああっ、あうっ」
黄川人に白い太腿を担がれて、お輪は床にしこたま頭を打ちつけ、
ひっくり返されていった。
「ああ、ヤッパリおっぱいが歔き出しちゃってたよ。下のほうもそろそろじゃないの。
どう、まだなのかな」
おんなの両腕に絡みついた蛇は一匹になり鴨居に伸びておんなを吊るした。
「ちゃんとボクに絡めてな」
「いや」
黄川人が覗き込むと、お輪は頤を引いたままで激しく顔を横に振ってイヤイヤをし、
返事を拒むのを見るや、相対した乳房を強く搾り、ぎゃっ、と絶叫させた。
手は弛緩し、黄川人の指は窄められ、ぷくっとした乳暈に載る、しこった
尖りを摘み捻りながら、赤い紋様の浮んだ乳房の柔肉を曳き伸ばしに掛かった。
「も、もうっ」
「もう、なんなんだい」
「や、やさしくして……」
「それじゃ、お核(さ)をいらってあげるよ。ほんとうの姿に戻ったら、
もっと歓ばせて、随喜の涙をみせてやるから」
黄川人はお輪の双臀を掴んでむくっ立ち上がった。
「ひっ」
腕がお輪の膝裏を通していないことから、擦り下がらないためには、
太腿のしまり具合が重要だった。鬼姿の黄川人は臀を掴んで、
お輪の肉を支えることもあれば、下がるままに放置することもあった。
「なんだよ。ひっ、てさ」
背を撫で廻し、臀をぺちぺちといたずらっぽく叩いた。
「あっ、あっ、あっ、や、やめて」
「いじめられたって、こんなにもボクの肉に吸い付いてくるじゃないか。
離れたくない、離れないって言ってる。
あんたのからだはこんなにもボクに正直なのさッ!」
「むうっ」
今度は腰を力任せに、ガッ、ガッ、ガッ、ガツ、と念を込めて女を虐げた。
「はっ、はっ、あうっ、あっ、あっ、ああっ、いっ、いやっ、あ、あ、
あうっ、あっ、ああぁぁぁ――ッ」
結合部の女の下腹。際限なく波うっていたのがこわばった。きれいな
縦筋の臍の窪みが、への字になって歪むのを眺め、少年は囚われの女を嘲る。
お輪のつぶらな孔は弛んで、鬼の姿をした黄川人の下腹をゆばりで濡らす。
どれだけの時が経ったのかは定かではなく、ただただ肉の繋がりに縋りついて、
みじめな肉情だけが増幅され、おんなの羞恥も遠ざかりかけていた。
相対す鬼の顔がしなやかな躰をした少年。我が仔に見えることもあった地獄。
「もう、かっ、かんにん……っ」
少年の掌が女の頬にあてられ、耳殻の冷めた感触に弄ばれた。
「ゆるしてあげよっか。やさしくしてあげようかなぁ。
で、いまなんて言ったっけ。ねえ。もいちど、いってみなよ。お輪かあさん」
「かっ、かんにん……して……ください」
「先刻はあんなに悦んでいた。だから、ボクはやめないよ」
「ああ……っ」
朱色の紐は、父と夫の血で染められた物だと知らされた時、女は半狂乱になって、
心が裂けたような声で絶叫したが、腋窩には深い窪地をこさえ、うっすらと
掻いた汗に絖る、柔肌の乳房は毬のような球形を残して、少年が繰り出す
律動と快美感に顫えていた。何度も何度も上下に弾ませて。
紐は鴨居から離れ、おんなの腕は少年の頸に葛のように巻きついて、
宙空で漂いながら、ゆれる黒髪の乱鬢に顔を隠し、頭を少年の肩にうずめ
おなじようにして歔き出していた。
「ほら、ほら」
「ひっ、ひっ、ひいっ」
悲鳴とともに、顔を左右に振って唾液を撒き散らし、少年のあずけた肩と
繊麗なおんなの頤を濡らしていた。
「いいんだろう。なんとかいえったらッ」
「んっ、んっ、んあっ」
歯を食いしばっても、抑え切れなくなって呻き声はまたこぼれる。
「ほらっ」
少年の腰で組まされていた足頸が解けそうになり、自らの意志で
また組み直した。
「あうっ、あ、たっ、たまんないっ、あ、あっ、ああっ、いっ、いいっ、
たまんないッ」
「それでいいんだ」
しがみ付く心と、いつ黄川人に核(さね)をすりつぶされるかもしれない、
という不安がお輪のなかで鬩ぎ合っていた。
不意に訪れたのは、鷲掴まれていた臀。少年の中指が菊座に潜り込んで
吊り上げられていた。
子宮を抉られて、怒張した首をいっぱいに伸ばし、お輪は仰け反っていった。
足ゆびまでも突っ張らせ股さえもさらして、外側にあけすけにめくれ返った。
糸の切れた躰を少年に朱色の穢れた床へと横たえられる。
闇から解放されたおんなは白閃光に灼かれ夢にたゆたう。
覚醒してからは、お輪は黄川人の胸に両手をついて離れようとしたが、力で叶わず、
逆に睦むように密着してしまっていた。
「さ、さわらないで」
「すごい乱れようだった。明日には、もっと強い仔が生まれるかもしれないね。
ボクみたいないい仔がさ」
「ああ……」
「そして、あんたが愛した仔とで戯るんだ。アハハハハッ。これって、ほんとに愉快だネ。
ほんとに愉快だ」
少年の掌が赧らんで沈む女の貌を掬い上げると、下唇を噛み切っていて、
乱れ髪の向こうで双眸は少年を睨め付けていた。
「おっ、鬼ッ!」
「まだ、そんなこといってるのかい。ボクは最初から鬼だよ。
でも、ほんとに、懲りないなぁ。
またそこが可愛いところでもあるんだけどね。
アハハハハハッ、ねえ、もっとボクを罵倒してみなよ。また力が漲るからさ」
「お、鬼……。あっ、あ、ああぁぁぁっ」
「わかったろう、あんたの膣内(なか)でボクがびくんびくんするのがさ」
「あ、あぁぁぁ」
「きょうは、ご褒美をあげるよ」
黄川人は白い手をすうっと差し出して、肉を繋げたまま、掌の上に載った
石を見せた。
お輪の子宮は石に反応し、激しく痙攣して黄川人を悦ばせた。
「これをそこに埋め込んでやるから」
石は掌を転げ、人差し指の先の第一関節に止まって、お輪は黄川人の手を
下腹に突き刺された。
「うぐっ」
「お、お業の……」
「ちがうよ。父さんの憎しみさ」
黒石は白濁と化して透通りはじめ、表面に繊維のような血が走り、
石の中にまで及んでいた。
「おなじ色だから、最初わかんなかったろう。でも、あんたもこうなるんだ」
※
水面の下から空を見上げたように、紺碧に浮ぶ白い雲は山々を成して、
天上を摩するが如くそびえて、峰々はゆるりと流れ、徐々に変容を向かえる。
ところどころに千切れ目を描き、その大きさゆえの緻密な陰影が刻まれ、
凶兆の彩りを放ち始めていた。かつては婉麗な女人とまでいわれ、美を極めた
相翼院の上へと掛かる。
朱の肌も剥げて腐った木肌を晒し、屋根も軒反りも、本殿の床板までもが、
崩れて朽ちた姿を無残にさらす。崇め奉られ、人々から愛されていた、
心優しい女神は既にいなく、参詣にくるものなど誰一人としていなかった。
相翼院の天女はとある一族と闘った。当初、忌み嫌われていた一族は、
この頃には神託の一族と呼ばれまでになって慕われる存在にまでなっていた。
元を正せば天女とこの一族とは同胞。
望まぬ闘いであって、もしかしたら、さらに励めという親心だったのかもしれない。
それでも憎悪にかられた姿を決着のついた後でも尚、変化を解かずに、
人知れず廃屋と化した相翼院に居続けていた。
わけあって、天上に背いた天女の存念を、その子が知ったところで、
事情を解するには、あまりにも受け入れがたい時と多くの命が流れ過ぎた。
人々はうわさした。夜になると天女はこの世を儚んで泣いているのだと。
うつろいの絵は倖せにはなれない。この瞬間など永遠ではありえないことを、
あえて心に刻もうとイツ花はこの地を訪れていた。
相翼院が背負った、ほんとうの忌まわしき山に目をやって。
突風が吹き、砂ぼこりが宙に舞った。水上に浮ぶ金箔の飾りと、目の醒める朱の院。
屋根のなだらかな軒反りの優雅さに見惚れていた少年は、手をかざすのを数瞬
遅らせてしまって、瞼のなかに侵入をゆるしてしまう。
閉じた瞼を指の背で擦って、なんとか涙と併用しつつ追い出そうと
試みてはみたが、普段とはちがい、目には激しい痛みが走っている。
眼球を動かしているのさえためらわれる、針で刺すような痛みがあった。
片目を開いて、なんとか水辺へと歩いていった。手酌をつくり、
二度三度と目を洗い流してみた。痛みは全く消えてはいなかった。
しかたがない、と手で擦ろうとした時。
「そんなことをしてはなりません」
心をそっと撫でつけるような、女人の声がした。
「だれ……なの」
開いていた片目も湖水に濡れて像は霞むけれど、全裸の麗人が
立っているのがわかった。
「さあ、だれでしょうね」
人気はなかったはず。誰も水浴びなどしてはいなかった。
少年は人知れず、思いを寄せる湖上の相翼院を眺めることが好きだったから。
「てっ、天女さま……なの。あそこに住まわれる……うっ、いたっ」
眼の痛みに少年が呻いた。
「がまんして、眼をお開けて。おねがいだから」
水跳ねの音から、すぐにかぐわしく、やさしい匂いに抱かれていた。
少年には母の記憶はなかったが、それに近しい、かといって等価ではない、
なにかを感じ取っていた。
「は、はい」
「私がよいというまで、瞑ってはいけませんよ」
「わかりました」
「そう、あなたはつよい男子」
麗人のほっそりとした、冷たく気持ちいい手が少年の両頬を掌で包みこむ。
「とっても、温かい頬だこと」
褥をともにする巫女たちの肌とも違っていた。女神は子供の持つ体温にふれて、
忘れかけていた春情を呼び起されていった。
「あっ」
信じられない美貌が映った。瞳の色や、唇の艶めかしいかたちに加え、
見たこともない髪が湖水に濡れて、細かな水珠といっしょに白い柔肌に貼り付いていた。
若菜から砥粉(とのこ)、そして浅葱(あさぎ)色に。もうひとつの房は若草から
若芽の変容を繰り返す色だった。
「すこし、上を見てごらんなさい」
「ご、ごめんなさい」
「あら、どうしたの」
「あ、なっ、なんでもないから」
「そう、ふふふっ。かわいいわね。さあ、上を見て」
「はい」
「石が刺さっているわ」
「えっ」
「だいじょうぶ。安心して。なにも怖がることはないから。わたしが取ってあげる」
少年の眼に麗人の濡れた鴇色の唇が迫って、舌先をさしだして少年の眼球を
そそっと箔うに舐め、刺さった石を取った。
「ああっ」
総身の筋が緊張したかと思えば、一気にうばわれ脱力して、少年は砂地に崩れ、
夢精の感覚に痺れた。
「ほら。もう、痛くはなくなったでしょう」
唾を飲み込む音が聞こえ、見ようとした麗人の姿が霞む。天女は少年の元から
去ろうとしていた。
「はっ、はあ、はあ」
「あなたは、この院が好きなのかしら」
「ああ……」
うすれゆくなかで艶然としている天女に、少年は頷き返すことがやっとだった。
「いつか、もういちど逢う時までに、まだわたしのことをあなたが覚えて
いてくれたなら」
「わすれたりなんか――するもんか」
「――おぼえてくれていたら。わたしはあなたのものになりましょう」
「ほ、ほんとなの……」
「ええ、誓約(やくそく)です」
「ボク、ずっとおぼえているから。ずっとだよ。ほんとに、ほんとに、
ずっとだからね」
女神の瞳と淡いは潤んでいた。
「たのしみにして、待っているわね」
「ほんとだからッ!ぜったいにッ!」
少年は膝を地につきながら、天上に届く声で喚いていた。
『黄(永久)色に彩られる、やさしき花々(神と人との絆)を咲かせましょう』
母と父の祈りに守られて、あらたな生をさずかったふたりの子は、温かく民からも
愛され育まれた。
世の帝を欺くかたちではあったが、山の頂に小さき国をこさえて、ささやかな
願いを持ち寄って、祈りに賛同するものたちが集まった大江山。
神々もいま一度、人とのつながりを密にしようと検討していた矢先だった。
人は神託に縋ったが、そこには誰もが予期せぬことが起こり始めていた。
選ばれし者と退けられたもの。小さかった隔たりは、よりおそろしく深まっていった。
人と神の交わりには、ごくまれに天才が生まれるという。
ある意味、排除されるべきもの。
闘争に負けて先走った神の一派は、神々の霊験にあふれる小国に妬心していた
帝を唆して結託し、連合討伐隊を大江山へとさし向け、男は有無を言わず排除され、
巫女たちは犯されてから血の海に横たわり、祈りの花は踏みにじられ
地獄絵図と化していった。
『やっとわたしに逢いにきてくれましたね』
夜でもないのに光虫が湖底からあつまり、湖上には繊麗な天女像を描きはじめて、
イツ花の前で実体化した。
「かかさま……」
『わたしをまだ母と思ってくれていたの。ありがとう、逸花。ほんとうにありがとう』
お業の瞳にうっすらと涙が張って見て取れた。
イツ花は、それにとまどいを隠せなかった。
「かかさま、ごめんなさい。で、でも、ゆるせなかった。ゆるせなかったの……。
この世からなにもかもを滅ぼそうとしている……が……」
イツ花が発話しようとした、弟の名は顫えに掻き消されてしまっていた。
『そう』
「……」
『あの子は、お輪姉さまを手に入れました。これここに至っては、
もはや止めることができるのは、壬生川の一族をおいて他にはいないでしょうね』
イツ花は唇を真一文字に結び、涙が流れそうなのを必死になってこらえていた。
『しかし、逸花。ほんとうにそれでよかったのですか』
いままで張っていた、緊張の弦が切れた音がした。闘いの始まりに源太を亡くし、
その妻であったお輪をも失った。あってはならなかったこと。
二人はイツ花の放った戦の手駒。それもたいせつな。人と神の交わりに得た子と、
人と神の夫婦が力をたずさえて要となるべきもののはずが、源太とお輪は
赤子を残したままで壬生川を出奔した。
そう仕込んだのもイツ花だった。
『紫(ゆかり)を戦いには巻き込みたくはなかったの。赦して、逸花』
お業の口から、あの時の哀しい確信の裏づけが取れた。
母であるお業はお輪と同体の半神。その言葉は重く圧し掛かってきた。
いまの黄川人となんら変わらない。
同罪なのだ。
イツ花は命を弄んだ。瞳を大きく見開いて、張っていた涙は雫となって、
とめどなく砂地にぽろぽろとこぼれ落ちた。それでも相翼院に面を上げて、
一条を描く濡れた桜色の頬と唇は……。
「責めはわたしが負います」
『わたしに、どうしてほしいというのですか』
「ですから、あの者達の邪魔はもうしないでおいてください。かかさま、おねがい。
おねがいです。だから、もう……」
イツ花は、生母に対してなんという物言いをしているのだろうと思っていた。
『逸花。あなたの母上は、夕子さまでしょう』
「……ッ」
『そして策の責めは天上の最上位に就くものの勤め』
「……は、はい」
『あなたに、その心得があるのであれば、格下の者に頭を下げるのは、
二度としてはなりません』
「でっ、でも、でも……っ」
『壬生川の者たちは確かにつよくなった。しかし、あの子にくらべれば、
まだまだ弱い。わたしも誓約(ちかい)の契りに加わりましょう』
※
「源太、先に行って。行けッ、はやくッ」
源太にお輪は肩をぶつけて背をあわせ、喝を入れた。
「なにを言うか、あせりは禁物だろうッ」
言われて、己のはやる気持ちを御しつつ、お輪を諌めようとした。
「勘違いしてんじゃないよ、先に、はやく。ほら、行けったら、行くんだよッ」
「な、なにッ」
源太はいま一度、高台にある祭壇に横たわる乙女に眼をやると、漆黒の影が
蠢きながら天井から垂れ込めているのにようやく気がついた。
「お輪、しかし……」
「言っている場合かってッ。わたしは、ただのおんなじゃないんだ。
だから、心配するんじゃないよッ」
「わかった」
「ものわかりのいい、あんたは好きさッ」
「このやろうッ」
「ふっ、ふははははッ」
しとやかに笑おうとして、できなかったお輪の豪快な笑い声を聞いて、
源太は真顔になっていた。
「す、すまぬ、お輪」
「源太、借りはあとで、ちゃんと返してもらうからね」
源太はお輪の言葉にニヤリとして応えた。
「褥でたっぷりと可愛がってやるわい」
「ばっ、ばかッ」
「ハッハハハハ」
「ほんとだよ、紫(ゆかり)とあたいとあんたで、これからは倖せになるんだからね。
ちゃんと心に叩き込んどいておくれよッ」
「姑殿がおらんではないか。お輪、だいじょうぶなのか」
「なに、いってんだよ」
「ゆくぞ」
「おおッ」
『それでもあたいは、壬生川の娘なのさッ』
ぶんっ、と群がった妖魔を薙ぎ払って、お輪の小気味よい笑い声が、
祭壇に向けて一気に駆ける源太の背から響いて聞こえていた。
※
「御館さま、お持ちいたしました」
楚々とした深静(みしず)と、その美しさを受け継いだ娘のお輪(りん)は
膳を運んでやってきた。
「おお、さっそく来たか。儂は毎年のこれが楽しみでな。この季節を
心待ちにしておる」
今年も源太の生家からは花が送られてきた。花といっても食用のための菊。
桜花の膳に置かれた、茹でられ、あざやかな発色となった黄と紫の
菊のおひたしに、源太はかすかに顔をしかめていた。
「どうした。三杯酢にはまだ慣れぬか。ハハハハッ」
「ん、いかがしたのだ」
「……」
「ほんとうに、いかがされましたか」
源太の変化を気に掛けて、深静が声をかけた。
源太は、がくから花びらだけを毟り取る手伝いの間中、終始ぶすっとしていた。
気取られまいという小細工を弄していても、おのずと滲みでてしまうもので。
「きらいなのです」
「国の母さまが摘んでくださったものなのですよ」
源太の前に膳を置く、お輪の手の動きがぎこちなくなり、震え、乗っていた
桜花皿が音を立てた。
「その訳とやらを申してみよ」
「はい」
「源太」
壬生川の母が慌てて源太を誡める。
「よい」
「そう申されても、お館様に楯突くなど許されることではありません」
「よいのだ。わしは源太を責めているのではない」
「さようにございますか」
「そう案ずるな、深静。さあ、源太、申してみよ」
「花を……愛でるのなら、まだよいのです。それを摘んでしまっても尚、
食するということは……」
「なんじゃ」
「源太ッ、それまでです」
「深静」
「父上、わたしには合点ができません」
「耐えられぬか。無体なことと申すか」
「源太、もうやめて」
源太がまだ口を開きそうなのを見て、今度はお輪が止めに入っていた。
「よいか、源太よ。菊の黄は永久の祈り。紫は人の縁結びという。国の母上の祈りを
ただのいつわりと申し、源太は受容できぬというか」
お輪は当主の言葉にふれて、左こめかみに痛みと頭全体に軽いめまいを感じ、
天上人としての覚醒が徐々に始まっていた。
「もう、そのぐらいにしてあげてください」
内容はきつく思えても、源太の心根の苦悩を察してか、当主の語気は荒くはなく、
むしろ穏やかというべきものだった。
深静が源太に助け舟を出すが、そのことは理解できた。ただ、茫漠とした不安が
立ち込めてくる予兆があってのことだった。避けられるものなら、避けて過したい。
壬生川にとって、不埒な考えと知りつつも、深静はこの場にはそぐわないと思った。
「責めているのではない。のう、源太よ。この送られてきた花をみても、
母上は花々を愛でていないと、心の底から見えるのか」
源太の顔は曇った。畑に出て手入れをする母をずっと見てきたし、その手伝いもした。
その奥にある五穀豊穣の祈りもちゃんと理解はできた。
「でも……」
「この喜びをひとりでも多くの人に伝えたい。そう母は願っているのではないのか」
源太は膝に置いていた手を強張らせていた。その甲にそっと、お輪がかさねて宥める。
「人とは傲慢なものよのう。花にも命があって、それを摘んで賞でることもするわ。
花を心から愛するのではなく、この美しきものを愛しているという己の心根の確かさが
人を癒すのかもしれんな。源太よ、これは罪悪だろうか。否、そうやもしれん。
罪悪なのだ。しかし、それでも人は人」
当主は盃を取って、深静の酒を受け、口をつける。
「それに、人は罠や武器を持って、弱き獣や魚を捕らえ、食さねば命は紡がれぬ。
道理とも定めとも、それは人の欲の業というものよ。そうではないか。
おまえにも欲はあるだろう。強くなりたい。いまはただ、がむしゃらにそう願っていても、
いつかは壁にぶち当たるだろう。では、どう強くなりたいのだ、源太」
「わ、……わかりません」
「わからぬか。ハハハハッ。よい、よい」
「父上ッ。わたしは」
「いたずらに力を求めていれば、それでよいのか、源太。人の欲のありようと、
それを見極める力を養え。
儂は欲を滅せ、とは言わぬ。己を高め、涼やかに、強くなれ」
当主は大声でまた笑って酒を仰いだ。
※
「なにを考えていた」
戸板の向うで風が泣いている。その唸るさまは、女人がこの世のすべてを呪っている
声にもきこえ源太の胸に突き刺さってきた。
「父上と母上のことを考えていた。それと……」
「源太……」
「両方のだ。どちらも大切なわたしの親だ、お輪」
「源太、わたしを抱いて」
「大事を明日に控えてよいのか」
「おなじよ。わたしは源太とのあいだに子をもうけてしまったから。
だから、ともにする覚悟をしかと植えつけてほしい。おねがいよ……」
闘争心は随分と薄らいだ。お業が願ったことがいまならわかる。我が子を抱いてあやせば、
娘の紫(ゆかり)が世界の中心となっていた。気持ちは変わっていた。
年老いた深静にひとつぶ種の紫をあずけ源太と共にする覚悟でいた。転生から源太の
導きで力の覚醒した今なら、昼子の天命、二人でも叶うと踏んだ。
迷いのない力こそ、勝機をもたらすが、お輪には死角が生じていた。仔を思う母性。
半神の心が寄り添って。
「夜は長いぞ」
「……」
腰がふらふらになっても知らぬぞ、という源太の冗談にも、お輪は笑いも
怒りもしない。
源太のなかにお輪への愛しさが込み上げてきた。
「わかった」
「後悔している、源太」(わたしと添い遂げたこと)
「今さらなにをいう」
「源太の心内を訊いておきたいの」
「いつになく、しおらしいな」
「ばか」
「……」
「どうしたの」
「最初に会った、お輪にもういちど逢いたい。逢わせてくれまいか」
「ほんとうか、源太」
「ああ、たのむ。ちゃんと礼をいっておきたいんだ」
お輪は源太にとってふしぎな女だった。壬生川の娘として生まれたひとつの人格。
もうひとつは、神として育った半神の人格。しかし、源太にはお輪が神の人格を
有していると知ったのは最近のことだった。
謝るお輪に源太はしどろもどろになり、お輪の躰をきつくだきしめていた。
今宵もまた。
「わかったよ」
「すまぬ」
「どうして、あんたが謝るのさ」
「道理だろう」
「道理なら、わたしにだってあるよ。話そうか」
「聞かせてくれ、帰陣したあとでな」
「ごつこづして、にぎり心地がいい……」
「お輪、もっと心地よくしてやる」
「うん。して源太……いっぱい。わたしが歓べば、最初のお輪に逢えるから」
「ああ」
「でも、お輪がヤキモチを焼くかもしれないよ」
「オレは悋気なんて、ずっと関係ないと思って生きてきた」
「ばか」
「いててっ。へんなとこ抓るなよ」
「ふふっ」
「ハハハッ」
源太は養子として壬生川に遠方からやってきた。魔物を術で退ける奔流とは違って、
武において妖魔を滅するという特異な家系であった。
あやかしに拮抗する力を有した壬生川は、他の流派ともども全国に隈なく
散らばって暮らしていた。
また、それ相応の武具や薬師も必要であり、町に見る商人とは別に、
これも裏で存在し、壬生川を支え仕えていた。
しかし、その力が集うのには、多くの時と命が費やされた。
白単衣で横たわる乙女に源太は手を掛け、揺さぶり起こした。
「娘子、しっかりせい」
その片手間に刀を振るって、近寄る妖魔を退けていた。
「あ、ありがとうございます、お侍さま」
「まだ、気を抜いてはならんぞ」
「は、はい」
源太が生贄の乙女から眼を逸らした時だった。白い腕、顔、きものから覗いた肌。
素足からも、瞬時にして無数の眼があらわれ、蠢いた。
「源太ッ、うしろ、うしろだッ!そいつは、百々目鬼(どどめき)ッ」
お輪はいままでにない突出した妖気に気づいて、源太に力いっぱい叫んでいた。
『げ、源太、好き、好きッ、たっ、たまんないッ』
もっと、もっととお輪は源太に哀訴する。戦いは避けては通れない道。
しかし、頭のどこかにわだかまりがあった。封印された、重たいなにかがある。
じぶんの躰なのか、壬生川の娘だったお輪のものなのかがあいまいにされ、
次に快美の大波が源太の律動によって小舟となったお輪に襲ってきて呑まれていった。
生贄の乙女の手には妖刀の小口が握られて、鈍く耀いた。
『源太ああぁぁぁ――ッ!』
おわり
大作GJ!!!!!!!!!
感動しました。
時系列にじゃなく、どうかなと思っていたので
ちょっと安心しました。それと誤字すまんです。
ありがとうございました。
54 :
名無しさん@ピンキー:
ぬるぽ